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1985-08-27 第102回国会 参議院 内閣委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年八月二十七日(火曜日)    午前十時三十分開会     ―――――――――――――    委員の異動  七月九日     辞任        補欠選任      太田 淳夫君    塩出 啓典君  七月十日     辞任        補欠選任      塩出 啓典君    太田 淳夫君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長        亀長 友義君     理 事                大島 友治君                曽根田郁夫君                野田  哲君                原田  立君     委 員                板垣  正君                岡田  広君                源田  実君                沢田 一精君                桧垣徳太郎君                堀江 正夫君                森山 眞弓君                穐山  篤君                小野  明君                矢田部 理君                太田 淳夫君                内藤  功君                柄谷 道一君    国務大臣       国 務 大 臣  藤波 孝生君       (内閣官房長官)       国 務 大 臣  後藤田正晴君       (総務庁長官)       国 務 大 臣  加藤 紘一君       (防衛庁長官)   事務局側       常任委員会専門  林  利雄君       員   説明員       内閣法制局長官  茂串  俊君       人事院総裁    内海  倫君       人事院事務総局       給与局長     鹿兒島重治君       総務庁人事局長  手塚 康夫君       防衛庁教育訓練       局長       大高 時男君       防衛庁人事局長  友藤 一隆君       防衛施設庁長官  佐々 淳行君       外務大臣官房審       議官       松浦晃一郎君       運輸省航空事故       調査委員会事務       局長       藤冨 久司君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調  査並びに国防衛に関する調査  (一般職職員給与についての報告及びその  改定についての勧告並びに一般職職員休暇  についての報告及び休暇制度改定についての  勧告に関する件)  (内閣総理大臣その他の国務大臣靖国神社公  式参拝に関する件)  (防衛費に関する件)     ―――――――――――――
  2. 亀長友義

    委員長亀長友義君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調査並びに国防衛に関する調査議題といたします。  まず、一般職職員給与についての報告及びその改定についての勧告並びに一般職職員休暇についての報告及び休暇制度改定についての勧告に関し、人事院から説明を聴取いたします。内海人事院総裁
  3. 内海倫

    説明員内海倫君) 人事院におきましては、去る七日、公務員給与に関する報告及び勧告並びに休暇に関する報告及び勧告国会及び内閣に提出いたしました。本日、早速勧告内容につきまして聴取いただく機会をお与えくださいましたことに感謝いたしております。以下、二つ勧告内容概要を御説明いたします。  まず初めに、給与に関する勧告内容について御説明いたします。  本年も、従来と同様の方式により、四月時点における官民給与を厳密に比較いたしました。その結果、官民給与較差金額で一万四千三百十二円、率で五・七四%であることが判明いたしましたので、公務員給与についてこの較差を解消することといたしました。この較差は、昨年の一万五千五百四十一円、六・四四%の改定勧告が八千百三十八円、三・三七%の実施にとどまったこと及び本年の春闘による民間給与の上昇を反映したものとなっております。  改善に当たりましては、民間企業における年齢別地域別給与配分状況公務員在職実態及び生活面等を詳細に検討し、一万四千三百十二円の較差配分として、俸給に一万一千九百七円、四・七八%、手当に千六百八十四円、〇・六七%、この改善定率手当へのはね返り七百二十一円、〇・二九%といたしました。  まず、俸給表については、初任給、三十ないし四十歳代、管理職員層に重点を置きつつ、全俸給表にわたって金額改定を行っております。特に本年は、職務責任に応ずる給与原則をさらに推進するため、現行俸給表等級構成を、例えば行政職俸給表(一)につきましては、現行の八等級制を十一級制に改めるなど再編整備するとともに、航空管制官特許審査官審判官等を対象とします専門行政職俸給表の新設、定年制度実施を踏まえた号俸構成整備等を行うことを内容とした俸給制度の大幅な改正についても勧告いたしております。また指定職俸給表につきましては、諸般の事情を勘案し、行政職と同程度の改善としております。  次に、手当につきましては、まず給与地域別配分を適正化し、大都市における人材確保等を図るため、東京大阪等大都市に勤務する職員等に対する調整手当支給割合を九%から一〇%に改めることといたしました。これとの均衡上、筑波研究学園都市移転手当等支給割合についても同様の措置を講ずることとしております。その他扶養手当通勤手当住居手当、医師の初任給調整手当についても、民間における給与実態等を考慮して所要改善を行っております。  特別給につきましては、公務員の期末・勤勉手当年間平均支給月分民間のボーナスの年間支給月分とがほぼ均衡しておるので据え置いております。  実施時期につきましては、当然のことではありますが、本年四月一日からといたしております。  勧告をいたすに当たり、報告の中で申し述べている骨子について御説明申し上げます。  まず、人事院勧告制度意義について、これが労働基本権制約に伴う代償措置であるという趣旨に照らしましても、この制度が尊重され実施さるべきものであって、それによってこの制度が適正に機能することが重要であることを申し述べますとともに、人事院給与勧告が、職員にとってほとんど唯一の給与改善のための機会となっておることについて御理解を求めております。  次に、職員現状を見ると、職員給与は連年にわたり抑制されてきておる実情にあり、このことが職員勤務意欲及び生活面公務における労使関係の安定に影響を及ぼすことを懸念し、また公務への人材確保の面からも、将来にわたる国の行政のあり方に与える影響を憂慮する声の大きいことを指摘しております。  本院としましては、このような給与勧告取り扱い公務運営影響を及ぼすことのないよう、速やかに異例の事態が解消され、勧告どおり給与改善実施される必要があることを痛感しておる旨を述べております。  さらに、国会及び内閣におかれては、労働基本権制約代償措置である人事院勧告制度意義並びに職員行政の各分野において真摯に職務に精励している実情及び給与をめぐる現状に深い理解を示されるとともに、本年の勧告官民給与較差を埋め合わせるのみならず、職務責任に応じた給与原則をさらに推進するための給与制度改定についても措置しているものであることに御留意をいただき、この勧告を速やかに実施されますよう強く要請いたしております。  次に、休暇勧告について御説明いたします。  一般職職員休暇につきましては、国家公務員法規定が適用されるまでの官吏の任免等に関する法律により、太政官布告第二号等の「従前の例による」こととされているため、これを法制的に整備し、あわせてその内容についても現在の社会情勢に適応したものとする必要があると認められますので、今般、給与法第二条第五号の規定に基づく勧告を行いました。  今回の休暇制度改定の主要な点を申し上げれば、第一に休暇に関する基礎事項給与法で定めることとしたこと、第二に休暇内容につきまして、民間実情等を考慮して結婚休暇等を新設する一方、親族の死亡等を事由とする休暇等について期間の縮減等を行うこととしたことであります。  なお、このほか国民の祝日に関する法律による休日における勤務義務の免除の取り扱いを整備する等、所要体系整備を行うこととしております。  休暇制度改定実施時期については、昭和六十一年一月一日からといたしております。  最後に、給与報告の中で言及しております職員週休二日制につきまして御説明いたします。  週休二日制につきましては、民間における情勢等を考慮いたしますと、公務においても近い将来四週六休制へ移行させる必要があるものと認められます。このため、当面、四週五休制の枠内で現行の運用を弾力化し、四週間のうちの二回の土曜日について四分の一ずつの交代で休む方式を導入するなど、所要対応策検討する必要があるものと申し述べております。  以上、給与及び休暇についての二つ勧告内容及び報告概要を御説明申し上げましたが、国会及び内閣におかれましては、人事院勧告意義を御理解賜るとともに、行政のさまざまな分野において誠実にその職務を遂行しております公務員及びその給与休暇をめぐる現状につきまして深い御理解を賜り、何とぞこの勧告をぜひとも早急に実施していただくようお願いを申し上げて説明を終わります。
  4. 亀長友義

    委員長亀長友義君) 次に、内閣総理大臣その他の国務大臣靖国神社公式参拝について藤波内閣官房長官から発言を求められております。これを許します。藤波内閣官房長官
  5. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) お許しをいただきまして、内閣総理大臣その他の国務大臣靖国神社公式参拝について発言をさせていただきます。  去る八月十五月は、「戦没者を追悼し平和を祈念する日」であり、戦後四十年目に当たる記念すべき日でもございましたが、内閣総理大臣は、気持ちを同じくする閣僚とともに、靖国神社内閣総理大臣としての資格での参拝、いわゆる公式参拝実施いたしました。  この公式参拝趣旨目的、配慮すべき事項等につきましては、その前日、あらかじめ私の定例記者会見において内閣官房長官談話の形で発表を行い、明らかにいたしております。詳しいことはその談話をお手元に差し上げてございますのでごらんになっていただきたいと存じますが、要点のみ申し上げますと、この公式参拝は、国民や遺族の方々多数の強い要望にこたえたもので、戦没者を追悼し、あわせて我が国と世界の平和への決意を新たにするためのものでございます。  憲法政教分離原則規定との関係につきましては、その方式等の面で十分配慮しておりますが、また戦前の国家神道軍国主義復活に結びつくのではないかとの懸念につきましても配慮をいたしておりまして、今後も十分その努力をいたしてまいります。さらに国際関係の面でも、我が国が従来と同様平和国家としての道を歩んでいるものである旨、諸外国の理解を得るよう十分努力をいたしております。  なお、靖国神社参拝問題に関しましては、お手元に差し上げてございますように、昭和五十五年十一月十七日の政府統一見解がございましたが、閣僚靖国神社参拝問題に関する懇談会報告書参考として検討いたしました結果、今回のような公式参拝憲法が禁止する宗教的活動に該当しないものと判断したわけでございまして、その限りにおいてこの統一見解変更したものでございます。  昭和五十五年十一月十七日の政府統一見解変更に関する政府見解を申し上げます。   政府は、従来、内閣総理大臣その他の国務大臣国務大臣としての資格靖国神社参拝することについては、憲法第二十条第三項の規定との関係で違憲ではないかとの疑いをなお否定できないため、差し控えることとしていた。   今般「閣僚靖国神社参拝問題に関する懇談会」から報告書が提出されたので、政府としては、これを参考として鋭意検討した結果、内閣総理大臣その他の国務大臣国務大臣としての資格で、戦没者に対する追悼を目的として、靖国神社の本殿又は社頭において一礼する方式参拝することは、同項の規定に違反する疑いはないとの判断に至ったので、このような参拝は、差し控える必要がないという結論を得て、昭和五十五年十一月十七日の政府統一見解をその限りにおいて変更した。 以上が政府統一見解変更に関する政府見解でございます。  これらのことにつきましては、政府がその責任において行ったところではございますが、なお国会に対しましても、去る八月十九日開催衆議院参議院議院運営委員会理事会及び二十日の衆議院内閣委員会におきまして、それぞれ私から御報告、御説明をさせていただいたところでございます。きょうは幸いに参議院内閣委員会開催の運びにしていただきましたので、この機会をおかりいたしまして、以上御報告を申し上げる次第でございます。  ありがとうございます。
  6. 亀長友義

    委員長亀長友義君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 野田哲

    野田哲君 まず、この機会中曽根総理補佐役である藤波官房長官に対して、中曽根総理政治手法、これは国会軽視も甚だしいのではないか、こういう点で苦言を呈しておきたいと思うわけです。いずれまた正式に国会が開かれればこの点は大きな議論になると思うわけです。どういう点が問題であるかといえば、国家としての重要な基本政策で、国会でもこれまでに長い間何回も議論されてきた国政の基本的な政策国会が開かれていないときに大きく変更する、その変更口実私的諮問機関という公的でない機関を勝手に官房長官総理がつくって、自分の都合のいいような答申を出して、これを得たりや応と、そのことを口実にして国政の重要な基本政策変更していく、これは許せない行動だと思うわけです。その典型的な例が今回の靖国問題に対する政府態度変更、あるいはまた昨年の総理私的諮問機関である平和問題の研究会である。そこで防衛費GNPの一%以内という枠外しの答申を山さして、今それに向かって動こうとしている。このようなやり方は、国会論議を全く軽視どころではない、無視するやり方で、私は許すことはできないと思う。この点でいずれまた次の国会が始まれば大きな議論になると思いますが、この機会にこれらの問題にきょうは触れる審議を行いますので、冒頭に私の見解苦言を申し上げておきたいと思います。  ところで、まず最初にお聞きしたいのは、先ほど人事院総裁説明のありました公務員給与に関する勧告政府並びに国会に提出をされております。いろいろ報道されるところによると、藤波官房長官を中心にして次の国会召集の問題が与党の方とも協議をされている、こういうふうな報道があるわけであります。人事院勧告の問題を議論するにいたしましても、それがいつどういう形で決定され、いつの国会給与法が提出されてくるのか、そういうことも念頭に置いて審議を進めていくために、あるいはまた今日の防衛費扱いが非常に大きな議論になっている、そういうふうな重要な政治情勢でもありますので、次の国会は一体いつどういう形で召集されることに協議されているのか。まず官房長官から現在の考え方協議状況について伺いたいと思います。
  8. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 秋以降の政治日程をどんなふうに持っていくかということにつきましては、政府としてはなお白紙の状態でございます。  ただ、前国会が終わりました時点から政府として希望いたしてきておりますことは、国民年金厚生年金関係基礎年金を導入いたしまして新しい仕組みを出発させていくということを来年の四月一日からと既に決定させていただいておるところでございまして、そちらの法案は成立している。共済年金関係につきましても、基礎年金を導入いたしまして、これと軌を一にして、来年四月一日からぜひ実施に移してまいりたい。それでありませんというといろんな問題が出てくる。こうういふうに考えておりますので、来年の四月一日から共済年金法改正実施されていくということを考えますと、閉会中の御審査などぜひお願いしたいと申し上げてきておりますが、これをなるべく早く成立にこぎつけていくということが大事か、こういうふうに考えておりまして、そのことを頭に置いておるという事実はございます。  それから最高裁の判決が出まして、衆議院議員定数につきまして一日も早い是正をということが司法当局からの指示になっており、それを受けて、政府国会が協力して一日も早くこれの是正を図っていかなければならぬというどころに追い込まれておるという客観的な事実はあろうかと思うのでございまして、それへの取り組みが必要か、こう思うのでございます。閉会中も各党間でいろいろ御協議が進んでいくことを期待いたしておりますし、政府といたしましてもそのためのいろんな努力をしておるわけでございますけれども、これも早く解決しなきゃいかぬ、そういう政治課題として認識をいたしておるところでございます。  したがいまして、これが通常行われております十二月末から始まる通常国会という時期でいいのかどうかというふうなことを念頭に置きまして、必要があれば臨時国会召集ということの手続をとる必要があろうか。また臨時国会をやるということになれば、どういうことを議題にするかといったようなことについてもいろいろ御協議願わなきゃいかぬというふうに考えまして、政府といたしましては、政治日程についてはまだ白紙でございますけれども、そういった点について、与党でございます自由民主党の幹事長国会対策委員長から各党皆様方あるいは参議院皆様方にもいろいろ意見交換をしていただきたいということをお願いしておるというのが実情でございまして、それらのいろいろなお話し合いが進んでまいりますれば、政府といたしましても態度決定していくという必要がある時期に迫ってこようか。こんなふうに考えておる次第でございまして、それらのお話が、意見交換がなお進んでおるところでございますので、いつ臨時国会を開くことになるかということについて、私からこの席で申し上げることはお許しをいただきたいと思うのでございます。  なお、今お触れになりました人事院勧告の問題につきましては、八月七日に勧告が行われましたので、その日に給与関係閣僚会議を開きましていろいろと協議いたしたところでございます。人事院勧告制度を尊重し、完全実施に向けて最善の努力をしていかなければならぬ。こんなふうに政府全体として考えておりますが、なおそれぞれ担当いたしておりますところによりましてはいろんな意見もあることでございますので、これらの意見調整をいたしまして政府としての考え方をまとめていくようにしなければならぬ、こういうふうに考えておるところでございます。  以上申し上げましてぜひ御理解をいただきたいと思う次第でございます。
  9. 野田哲

    野田哲君 もう一つ急な問題で官房長官見解を伺っておきたいと思うんですが、けさの各紙に報道されておりますが、きのう東京高裁台湾国籍の元日本人の軍人の補償の問題について判決が行われておりまして、その判決の中で、政府国会において法律的にはともかくとしてよく考えろ、こういう意味の判決が出されているわけであります。この問題は衆参の内閣委員会でも何回か議論をされ、あるいは関係者から要請を受けてきている問題でありますが、この問題について官房長官としてはどういうふうに受けとめて、今後どういう扱いをされようとしているのか、この点を伺っておきたいと思います。
  10. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 昨日、台湾人日本兵等に対する補償を求める訴訟事件につきまして国勝訴判決があったところでございますが、詳しくなお検討を今いたしておる最中でございますので、ここで具体的な所見を申し上げることは差し控えたいと存じますが、国の主張が認められた一方で、いわゆる付言されておりまして、予測される外交上、財政上、法技術上の困難を乗り越えて、早急にこの台湾人日本兵等の不利益を払拭し、国際信用を高めるよう尽力することが国政関係者に対する期待であるということが付言されているということも、そのまま受けとめさせていただいておるところでございます。  この問題につきましては、長い間国会でもいろいろ御意見もお寄せいただいてきており、政府としても大きな関心を持ってきておるところでございますが、いろいろな理由から今日になお結論を見ないまま至っておるわけでございます。昨日も関係者の代表の方々がお見えになりました節にも、長い間かけていろいろ検討してきておるけれども今日結論に至っていないことはまことに申しわけないと思う、お立場につきましては十分御同情申し上げておるということを申し上げたところでございますが、さらに国会等での御論議を受けて、政府といたしまして、五月二十四日に台湾人日本兵問題関係省庁連絡会議というものを置くことが申し合わせられまして、その連絡会議及び幹事会におきましてこの問題についての検討を進めているところでございます。今回の判決の中にもそういったことが付言されているという事実にかんがみまして、さらに誠意を持ってこの問題を結論に導くように検討を進めてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  11. 野田哲

    野田哲君 もう一つ、具体論に入る前に、三大臣がちょうどそろっておられる機会に、GNPの一%とするという防衛費の枠外しの問題と人事院勧告の問題、これはえらくこじつけて政府の方でときどきコメントされるものですから、この問題点について私の方から指摘しながら見解を伺いたいと思うんです。  加藤防衛庁長官は日曜の政治討論会でも、冒頭に、一%が困難な理由として、人事院勧告が出されたからとても一%にはおさまらない、こういう趣旨で、人事院勧告が出たことが、それによって公務員給与を上げることが一%の枠外しの要因であるかのような発言冒頭にされている。総理も事あるごとにそういう発言をされているわけなんです。これは私は国民に対する大変な欺瞞だと思うんです。人事院がことしの公務員給与引き上げについて五%台、六%前後の勧告を行われるだろうということは、これは昨年の秋、去年の人事院勧告を削減して三・〇七%積み残しをしたあの決定のときに当然予測されたことなんです。そういう要因があるにもかかわらず、一%しか公務員給与引き上げ費を組まなかった。そして防衛費については、ことし五%ないし六%の勧告があることは当然予測されておりながら、GNPの一%目いっぱいの予算を組んでいった。しかも最終的には総理の裁断によって五百二十億ものつかみ金のような復活をして〇・九九七%までせり上げていった。こういう予算の組み方にこそ問題があるのであって、たまたま時間的に人事院勧告が年度の途中で出たからそれが要因だと、こういう言い方は、これは防衛庁長官、これからは慎んでもらわなければ困ると思うんです。  もともと、数年前までは公務員給与改善費については五%当初予算に組んでいたわけです。それを途中から二%にし一%にして、そういう形で当初予算に予想される給与改善費を計上しない、そういうやり方をしたことに一番の問題があるんだと思うんです。  ことしの場合考えてみますと、去年の十月三十一日に、藤波官房長官、あなたは官房長官談話を出しておられます、給与決定の際。そして、ILO等に対しては、積み残し分については六十一年度までに段階実施で解決をいたします、こういう報告書を出しているわけです。そうだとするならば、ことしの当初予算は、私どもはそういう段階実施というのは容認するわけではありませんけれども、政府がそういう決定をしている以上は、ことしの当初予算の組み方についてはそれが前提になっていなければならないはずなんです。一%というのはおかしいんです。積み残しが三・〇七%あるわけでありますから、それを仮に六十年、六十一年に分けて積み残しを実施するというのであれば、単純に割れば一・五%にいつものやっている一%、これを加えた二・五%ぐらいは組んでおかなければ、去年の政府官房長官談話すらつじつまが合わないことになっているんじゃないでしょうか。そういう政府が決めた措置すらも予算に計上しないでおいて、片一方、防衛費だけは目いっぱい一%の枠、八十九億ですかいそれしか残らないような予算の組み方をしている。そして人勧が出たから超えるんだ。これでは国民に対しては私は欺瞞だと思うんですよ。これからはそういう世間に向けての発言の仕方については慎んでもらいたいと思うんですが、官房長官防衛庁長官どうお考えでしょうか。
  12. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 政府といたしましては、今委員が御指摘になりました幾つかの問題、今から後ろを振り返ってみると、そしてその間の整合性がどうだ、こういう御指摘を受けると、いろいろ御批判をいただかなければならぬこともあろうかと思います。ただ、一つ一つの問題につきましては、政府は全力を挙げて最善の努力をしてきているということをぜひ御理解いただきたいと思うのでございます。  昨年、官房長官談話を出しました際にも、これは当委員会で何回も御説明申し上げてきておりますように、いわゆる積み残し、表現がよろしくありませんけれども、その解消はどうなるんだという公務員の皆さんの大変御心配があって、総務庁長官を中心にいたしまして、いろいろ公務員の士気等にも影響するといったようなこともございましたので、六十一年度までに解消していくということを示唆する談話を出したところでございました。これはこれなりに一生懸命やらなければいかぬなと思って取り組んだところでございます。財政が非常に厳しい中で、当然自衛官につきましても給与改善措置を講じなければいかぬということで、常識的に財政上非常に厳しい中で一%計上をいたしまして、給与改善への構えをつくったところでございまして、これはこれなりに予算編成の際に最善の努力をした結果、これは防衛庁長官の大変な御努力もありまして計上させていただいた、こういうことになって今日に至っているところでございます。  私は、当委員会におきましても、いわゆる一%問題と、それから人勧が出た際に政府態度決定するというその態度とは別のものだ、ただ、それぞれ別仕立てのもので、どういう時期にどういうふうになってくるかということは非常に心配だけれども、全然別仕立てで判断しなければならぬものだというふうにお答えも申し上げてきておるところでございまして、そういう意味では、人事院勧告実施するということの中身について、例えば一%との距離が八十九億しかない、天井との距離がもう非常にすき間が少なくなってきているということの影響を受けて、人事院勧告実施ということの態度決定が左右されるということがあってはならぬということはきちっと考えておるつもりでございます。これは何回もこの委員会でも申し上げてきたところでございます。  ただ、片やGNPと一%との関係というもの、歴代内閣はその考え方を非常に大事にしてきて、中曽根内閣でも非常に大事にしてきて取り組んできた。それが今日に至っておりますが、客観的に八十九億しかすき間がないというところに来ておる。そこに八月七日に人事院勧告が出た。  こういう時期に、それじゃこの問題どうするか。先ほど来委員からは、一%外しというお言葉がございますが、これは適切な言葉ではないと私は思うんです。それは決して外そうと思って意図してやっていることではなくて、八十九億しかなくなってきた、だからどうするかということで今政府も非常に苦慮していろんな協議を重ねておる、こういうことになっておりまして、くどいようでございますけれども、振り返って全体を見てその整合性がどうだと、こういうふうに言われますと、いろいろ御指摘をいただくようなこともあろうかと思いますが、一つ一つ最善の努力をしてやってきておるということをぜひ御理解いただきたい。  何かお答えになりませんけれども、私どもの立場だけ御説明申し上げまして、御理解を得たいと、こう考える次第でございます。
  13. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 確かに先日、日曜日のNHK国会討論会で私は委員御指摘のような発言をいたしました。私たちもできれば防衛費一%の枠を守ってまいりたいということで、先国会等から総理初め御答弁申し上げていることは事実でございますし、まだ私たちもそう思っております。ただ、その際に、事実として、なかなかその一%の問題を守り切れない要因が出てきたのではないかということを申しておるわけでございます。  そこに二つございまして、一つは六十年度の防衛関係予算につきまして、仮にその中である程度のベースアップがありますと、御承知のように八十九億のすき間しかありませんので超えてしまうことが十分考えられるのではないか。特に従来までは人事院勧告が出ておりませんでしたけれども、しかし人事院勧告が八月七日ああいうふうな形で出た段階では、ますますその可能性が強まってきたなということが一つの私たちの悩みでございます。それからもう一つの要因として今後の五カ年計画とGNP関係がございます。  この二つを申し上げたわけですが、その際に人件費のアップというものが一つの枠外しの口実に使われているのではないか、そういうような表現は今後しないようにという今の委員の御指摘ではございますけれども、事実といたしまして御理解いただきたいのは、我が国防衛関係費の中で人件・糧食費、そのほとんど中核は人件費でございますが、それが占める割合は四五・一%でございます。防衛費というものがある意味では、F15だとかレーダーだとかミサイルであるとか、そういうものがほとんどであるように世上思われておりますけれども、実はそのパーセンテージは二十数%であって、それの倍近い四五・一%は人件費になっておるということでございます。  そういう中である程度のベースアップが行われますと、当然防衛費の総額に大きな比重を占めるものとして影響してくるということは事実でございますので、委員の御指摘ではございますけれども、その一つの人件費とGNP関係につきましては今後とも御理解をいただかなければならない点ではないかな、こう思っております。
  14. 野田哲

    野田哲君 この問題はまた別の時間にやりたいと思いますのでこれ以上繰り返しませんが、私の言いたいのは、当然この程度の勧告が出るということは想定されているにもかかわらず、当初予算にすき間をつくっていないという、一%との間にすき間をつくっていないという予算の組み方に問題があるんであって、人事院勧告がその一%を超える犯人ではない、こういう点を重ねて指摘しておきたいと思うんです。  ところで、靖国の問題について伺いたいと思うんですが、冒頭にも中曽根内閣政治手法問題ありということで、私的諮問機関をよく使われるということに非常に問題があると私は思うわけです。八月七日の日に私、藤波長官にお会いしましたね。公務員給与の問題で会ったわけですが、何回もお会いするのもいろいろお互い忙しいので一遍に事を済まそうということで、靖国問題についてもこのようなことを想定しながら官房長官見解を聞いたわけです。中曽根内閣はこの私的諮問機関をつくって、その報告書があったからといって、それによって国会政府が表明している公式見解変更するというのはおかしいじゃないか、こういう指摘をそのときにもしたんです。そのときに官房長官は、いや靖国問題懇談会は私が意見を求めるだけであって、決めるのは政府が主体的に決めるんです、こういうふうに言われていたわけです。その後の総理のあっちこっちでしゃべっておられるのをテレビ等で見ると、きのうも、これは録画であろうと思うんですが、軽井沢のプリンスホテルでNHKの磯村さんのインタビューに答えて、やっぱり靖国懇談会意見をもとにしてやったという意味のことをコメントされていたわけです。  そこで、その問題の前に、靖国問題の懇談会報告書を出している。その一番末尾を見ると、「政府は、以上の懇談会意見検討の上、閣僚靖国神社公式参拝について適切な措置を取られたい」と。官房長官私的諮問機関であって、あなた自身もただ参考意見を聞くだけだ、こう言っていたこの私的諮問機関政府に対して、「政府は、以上の懇談会意見検討の上、閣僚靖国神社公式参拝について適切な措置を取られたい」と。これは僭越至極じゃないですか。こんなことを官房長官、この懇談会に求めたわけですか。政府に物を言う機関じゃないでしょう、私的諮問機関は。これはどうなんでしょうか。
  15. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 靖国神社参拝問題につきましては、長い間にわたりまして国民の多くの方々や御遺族の方々などから非常に強いお話がございまして、それを受けて政府としていろいろ検討してきたところでございます。昨年の夏に自由民主党から、靖国神社公式参拝は違憲ではない、政府としても直ちにこれを実施するようにという非常に強い御指摘がございました。  しかし、そんな中で政府としては、この問題は従来も歴代内閣もいろいろ考えてきたことであるし、また特に従来の歴代内閣が考えてきたことの非常に大事な柱の一つに憲法問題というのがあるということを頭に置きまして慎重に検討しようということで、そのためには、行政を進めるものがいろんな判断をいたします際に独断になってはいかぬ、各界の代表的な方々に御参集を願っていろいろな角度からこの問題についての意見を寄せていただこう、こういうことで官房長官名でお願いをいたしまして、私的諮問機関としての懇談会が出発したわけでございます。約一年、二十一回に及ぶ会合を重ねていただいて報告書をいただきました。  その報告書をいただきましたのを受けて十分、この懇談会で出ました意見はいろいろ併記されておりますし、あるいは新しい提案などがあったわけですが、そういうことも十分頭に置いて参考にさせていただいて政府として検討いたしたところでございます。  懇談会運営につきましては、そんなことから、政府の方あるいは官房長官の方からいろいろ懇談会運営上のことについて申し上げて自主的な態度というものを阻害してはいかぬというふうに思いまして、日赤の社長であります林敬三さん、元法制局長官であります林修三さん、このお二人に座長、座長代理をお願いいたしまして、お任せをいたしたところでございました。お任せをいたしました林座長を中心にいたしましていろいろ意見交換が行われてきた。それを政府態度決定する際に参考にしやすいように意見をまとめよう、こういうことで懇談会報告書をまとめていただいたところでございます。併記すべきものはきちっと併記していただいておりますし、いろんな意見があったことを報告書は示しておりますが、大体こういう流れであったというところもあわせて書かれておるというのが報告書になっておるかと思うのでございます。  したがいまして、この懇談会政府に対して何か差し出がましいことを書いたというよりも、懇談会の大勢というのはこういうことであるが、政府としてよく検討するようにというような意味であったかというふうに私どもとしては受けとめさせていただいておりますが、いずれにいたしましても、冒頭に申し上げましたように、この懇談会報告書参考にしつつその間に政府はいろんな検討もしてまいりまして、外国での国のために亡くなった方々への追悼の仕方であるとか、あるいは靖国神社の経緯、歴史などでございますとか、いろんな団体等の御意見であるとか、国会におけるいろんな御討議でございますとかといったようなことを十分参考にさせていただいて政府として決定をした。こういうことでございますので、私的諮問機関がその機関としての役割を逸脱しておるのではないかということにつきましては、それはいろんな意見を述べられて、それが報告をする形でまとめられた、こういうふうに理解をいたしておりますわけでございます。
  16. 野田哲

    野田哲君 従来、政府は、後藤田長官もいらっしゃるわけですが、中曽根内閣私的諮問機関を少し使い過ぎるのじゃないか。行政改革でいろんな審議会をできるだけ簡素に削減をしていこう、こういう方向の中で私的諮問機関だけがどんどんふえていって、むしろ現に法律によって設けられている公的な審議会を開店休業にしておいて、私的諮問機関の方の答申を尊重して法律を出してくるというような例も幾つか私はこの委員会で指摘したことがあるんです。その際に政府がいつも答弁されていたことは、私的諮問機関というのは大臣が委嘱した委員にいろんな思い思いの向山な意見を出してもらってそれを参考にするだけであって、まとまった意見政府に対して答申したり報告したりするものではない、こういうふうに私的諮問機関の性格を説明しておられたと思うんです。今度のこの靖国懇のこういう形での決めつけ方は、明らかにこれは私的諮問機関としての機能を越えたものだ、私はこういうふうに指摘せざるを得ないと思うんで、今の官房長官説明にはどうしても納得できません。しかし、それは繰り返してやっていますと時間がかかりますから、そういう指摘をして次に進めてまいりたいと思うんです。  何か報道などにより、あるいはまた官房長官談話によりますと、公式参拝をするに当たって参拝形式を変えれば宗教性を抜きにしたんだからこれで憲法には抵触しないのだ、こんなふうに言っておられるようですが、私はこれはいかにも、言葉は悪いが、三百代言的な詭弁ではないかと思うんです。神社側の方もあるいはまた遺族会の方も、それでは本当に納得されているかどうかわからないと私は思うんです。私どもとしては、どういう形式であろうと、あの鳥居の下をくぐって、そしてあの中でどういう形式であろうと参拝をされたということは、これは憲法違反である、こういうふうに考えているわけです。  そこで、それは別として、一体どういう拝礼の仕方をされたんですか、総理は。
  17. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 今お話がございましたように、政府といたしましては、靖国懇の報告書参考としながら鋭意検討いたしました結果、国民や遺族の方々の多くが靖国神社我が国戦没者追悼の中心的施設であるというふうに考えておるというふうに受けとめさせていただきまして、その中でその中心的施設である靖国神社戦没者を追悼すべきである、しかも国のために、同胞のために、国民、家族のために命をささげて亡くなった方々に対し、公人として戦没者を追悼するということがあっていいではないかという非常に強い御要請がございました。また全国の三十七県議会におきましても、さらに千六百の市町村議会におきましても、このことの要請の決議が行われるといったようなことも踏まえまして、いろいろ検討いたしました結果、政府主催の追悼式典が終わりました後、八月十五日の午後、内閣総理大臣靖国神社に赴きまして、そして本殿まで進みまして、本殿で一拝をして戦没者を追悼し、そして心の底から平和を祈念するという、そういう一拝をいたしまして帰ってきたというのが具体的な姿でございます。  普通でございますと、いわゆる神社形式の参拝はおはらいをしたり、あるいは玉ぐしをささげたり、二洋二拍手一拝で拝礼するという形になっておりますが、靖国神社にもお願いいたしまして、こういう形で戦没者を追悼したいというお願いをして、一礼をして帰ってきたというのが具体的な事実でございます。
  18. 野田哲

    野田哲君 私は形式によってそれがいいとか悪いとか、形式にこだわるつもりはないんです。ここに「中外日報」という宗教界で発行されている専門紙があるんですが、この「中外日報」という宗教問題についての専門紙、八月十九日付で発行している新聞によりますと、「神社外」という欄があります。「拍手をポンポンと」こうあって、総理のこの間の八月十五日の靖国参拝の状態をずっと克明に記述しているんです。  どういうふうに言っているかといいますと、「十五日、公式参拝が決まった中曽根首相は、午後一時四十五分靖国神社第二鳥居の前に降り立った。前日十四日に藤波官房長官靖国神社を訪ね、公式参拝についての参拝方式を伝えたが、それによると、本殿に昇殿し一礼して下りる形式をとり、神式の「はらい、玉串奉てん、二社二拍手一礼」は宗教色を排する意味から遠慮したい旨を伝えていた。また玉串料公費支出については、憲法上問題になりかねないとして、参拝した際に献花する花輪の実費を公費から出す方式を決めた。これは新聞等の報道で周知の通りであった。さて当日、中曽根首相は拝殿前で署名をしたが、その最中に神職による修祓が行なわれた」。署名しているときに神職の方はこういうふうにおはらいをやっていた、こういうわけです。「神社側としては祓いをしない人を昇殿させるわけにはいかない。本殿では総理が拝礼するため案の前に立つ」――案というのは神社用語によると物を置く台ということなんです。この「案の前に立つが、その際、荒木田禰宜が」、神職ですね、荒木田神職が「玉串を奉てんした」。総理はやらなかったけれども、別に用意しであったものを神職が奉てんした。「案の前に立った総理は、パンパンと二回(外には聞えないようだった)」、外には聞こえないような「柏手を打ち、深々と拝礼した。何のことはない、神式通りの拝礼をしたのだが、まあ、これはオフレコである。総理退出後、大蔵大臣閣僚参拝が行なわれたが、同様の形式で終わった。」こういうふうに克明に詳しく「神社界」という欄で報道されている。  これはもうまさに国民に対する欺瞞じゃないですか。署名しているときにおはらいが行われていた、こういうわけです。拍手を二回やったが音がしないようにした。これは一体総理のおやりになることなんですか。これは欺瞞ではないですか。どうでしょうか。
  19. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 今申し上げましたように、私は事実関係を申し上げたわけであります。  前日に靖国神社に私、出向きまして、宮司さんにお目にかかりました際に、従来いろいろ検討してきて憲法上の問題もあり、宗教的活動と誤解されかねまじき行為については厳に慎まなければならぬと思うので、非常に申し上げにくいけれども、靖国神社に赴いて戦没者を追悼する一礼をするということにさせていただきますということを申し上げました。宮司さんは、非常に困惑した表情でそれは困ります、靖国神社には靖国神社参拝形式があります、もちろん靖国神社は神社本庁に所属していない一つの宗教法人であるけれども、全国の神社会がその様子を見ておるということを考えても、自分自身のところの靖国神社ということを考えてみても、あるいは神社会ということを考えてみても、そういう形は困りますというお話をなさいました。しかし、こういうふうにして国民の大多数の方々や遺族の方々が非常に熱心にお話になっておられることなんで公人として公式に参拝するということにしたいのでということをほとんど言い切るような形で私、帰ってまいりました。それ以外の話は全くそこで出ておりません。これは政治家が申し上げております以上、政治家としての責任において私は申し上げておるつもりですが、宮司さんと一切のほかの対話はありません。  ただ、供花をお願いいたしました。総理大臣が自分で手に花を持ってきて置くということもいかがかと思うので、靖国神社の方で、恐縮でありますけれども、供花を花屋さんにお願いして配置してもらいたい、これは靖国神社の境内のことでございますから、ぜひお願いをいたします。大体幾らでしょうか。一対で三万円程度かと思いますというお話でございました。常識的に見てそういうことで結構でございますから、後でお払いをいたしますから、それじゃそのお花の配置をお願いしますということだけはお話をいたしてお願いしてまいりました。そのことは、当日総理の秘書官が持参をいたしまして、ちゃんと領収書をもらって供花料を払ってきたということで、事実関係としてはっきりいたしておるわけでございます。  そういう新聞に記事が出ておりますことは私、初耳でございますが、私もそばに総理のお供をして公式参拝をいたしましたが、かしわ手を打ったという事実はありません。今申し上げたように一礼をして帰ってきた。一礼をする前にしばらく総理は立っておりました。それが時間にして、はかったわけではありませんが、一分か一分三十秒経過したかと思います。それは戦没者に対して非常に追悼しておられるなという感じでございました。非常に厳粛な一瞬であった、こういうふうに思っております。そして一礼をして帰ってきた。こういうのが事実関係でございまして、今御指摘のようなことは全くないということを申し上げておきたいと思います。
  20. 野田哲

    野田哲君 形式の是非を私はこれ以上問題にはしませんが、そういう神社専門紙がそういうふうな報道をしているということについては、私は注目すべきことだと思います。官房長官は否定されたわけです。もしここに報道されているような形でやっておられるとすれば、これは音のしないような拍手をするとか、記帳している間にかわりの者によって玉ぐしが奉てんされた、これで形の上では神社形式によらない参拝だから憲法にはもとらない、こういう説明をされている。ここに書いてあることがもし事実なら、これは国民に対しては大変な侮辱ですよ。  さてもう一つ、形式のことで指摘したいんですが、一礼だけでかしわ手を打たない、玉ぐしを奉てんしないことについて、今度の総理参拝の形について「神社新報」ではこう言っているんです。この論説の中で解説をしておりますが、この参拝の仕方について靖国神社にはそれと別系の、いわゆる一般神社の参拝形式とは別系の創建以来の特殊の祭儀伝統がある。士官の抜刀式、兵士の捧げ銃儀礼、最敬礼方式、こういう陸海軍が所定した方式があって、そういう最敬礼方式という一般神社の方式とは違う方式をとっている場合もあるんだ、だから一般神社の方式を唯一の原則基準としての批判は必ずしも穏当ではないということ、あれも靖国神社への参拝方式としては宗教儀式としてあり得るんだ、こういうふうに「神社新報」は報道しているんです。  これでは政府が幾ら神社の方式によらない参拝だと言っても、ああいう方式靖国神社の場合には神社の参拝方式としてあるんだ、こう言っている。確かに考えてみると、自衛隊が参拝したときなんかはそういう方式をやるんだろうかな、こう思うわけですね。そうすると、これは政府が勝手に言っていることだけで、神社側はそうは受けとめていない。ちゃんと方式にのっとって参拝してくれた、こういうふうに言っている。この点はどうなんですか。
  21. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) まあ、いろいろな言い方があるなと思って今聞かせていただいておったところでございますが、考える人、書く人によってそのお立場でいろいろな書き方があるのでしょうけれども、この問題については、私どもはどういうふうにして公式参拝実施するかということについて襟を正して真摯な検討をしたつもりでございます。そして従来の内閣もいろいろ心配して検討してきたように、憲法との問題もあるというようなことも十分頭に置いて、懇談会の中でも法律学者の方々からもいろんな御意見をお寄せいただきましたから、そんなことも頭に置いて検討させていただいたのでございます。  靖国神社にはいろいろな拝礼の仕方があり、それはそのまま宗教色を持って、形はいろいろあるというようなことについては、余り私ども靖国神社がどういうおはらいの仕方があるかということまでは研究しませんでしたけれども、神社一般というものはこういうふうな神社形式の参拝の仕方があるな、それが基本だな、普通だなというふうに頭に置いて検討をいたしたところでございまして、これは野田先生よく御理解をいただいているところと思いますけれども、事柄が戦没者を追悼するというような非常に厳粛な問題についてのことでございますし、全国民方々が今はもうテレビでごらんになっている時代でございますし、そして国会でもいろいろこの問題について慎重に検討するようにという御意見をお寄せいただいてきたところでございますから、こそくなことで通るとは思っていないというのが、この問題を検討したときの総理や私どもの気持ちでございました、隣に法制局長官もおりますけれども。  法律上はいろいろあるけれども、すべてを乗り越えてこの際国のために亡くなった方々に公の立場で戦没者を追悼するということが非常に大事で、それを真摯にやらなきゃいかぬなというふうに考えてきたところでございましたので、今のようなそういう新聞記事でいろいろ何かわかったようなふうに解説されますと、かえって困ってしまうわけでございまして、そういう御指摘につきましては、今後もよく注意してまいらなければならぬかと思います。  今回、靖国神社に赴いて戦没者に対して追悼し平和を祈念する一礼をしたということの中には、いろいろ検討いたしました結果、宗教色をまさに排除する、この問題についていろんなところからいろんなお電話などもちょうだいいたしまして、その御説明をしましたときに、宗教団体の方が、いろんな宗教団体がございますから、その方のある人が、宗教法人靖国神社の宗教性を排除するということはできないから、宗教法人がそれは持っていることであって、政府がそれに干渉することもできなければ、だれもそのことを干渉することはできない、当然のことでございます。宗教性を排除することができないから、行く方がそのことを頭に置いて宗教色を排除してお参りしたわけだな、こういうふうに神社関係でない別の宗教団体の幹部の方がおっしゃった。私どもは、そういうふうに聞いてみると、なるほど非常にわかりやすい、そういう見方になるわけだな、そういうふうにそのとき思ったことを今記憶いたしておりますが、あくまでも宗教的な活動ということの誤解を各方面にお与えすることのないように、形式も考えて、しかもその形式にのっとって心の底から戦没者を追悼する、平和を祈念するということで総理が一拝をされた。こういうふうに考えておりますので、どうかそのように御理解をいただきたい、こう思う次第でございます。
  22. 野田哲

    野田哲君 これは理解できないんですよ。  率直に伺いますが、ことしの八月十五日以前までは、内閣総理大臣その他の国務大臣国務大臣としての資格靖国神社参拝することは、憲法二十条三項との関係で問題があり違憲ではないかとの疑いを否定できない、これが生きていたわけですね、この公式見解が。それが、ことしの八月十五日になって、同じ憲法のもとでの内閣がどうしてこういうふうに、ある日を境にして憲法解釈が変わるんですか。そこのところがどうしても納得できないんです。参拝形式を変えれば憲法違反ではないという論拠は私はどこにもないと思うんですよ。東京九段の靖国神社のところへ遊びに行ったわけじゃないんでしょう。参拝に行ったわけでしょう。ちゃんと本殿の前で最敬礼をしたわけですから、どういう形式をとろうと参拝参拝なんですよ。  五十五年十一月十七日の政府見解というのは形式を論じているんじゃなかったと思うんです。籍法の解釈を論じていた。そうして憲法二十条三項との関係で問題があり、違憲ではないかとの疑いを否定できない、こういう見解を出したと思うんです。それがある日突然どうしてこの憲法解釈が変わるんですか。これを納得ができるように説明してください。
  23. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) さきの政府統一見解におきまして、これは当時の宮澤官房長官国会において述べておられるところでございますが、その中で閣僚公式参拝を差し控えるべきであるというふうにせられましたのは、この問題は国民意識と深くかかわるものである、それが憲法の禁止する宗教的活動に該当するか否かを的確に判断いたしますためには、社会通念がどうであるかということを見定める必要がある、これを把握するになお至っていないというところが非常に違憲の疑いなしとしないというふうにとらえられた中心の部分ではなかったかというふうに思うのでございます。  今回、我が国各界で御活躍の有識者の皆さん方によっていろいろ意見が述べられたわけでありますが、その靖国懇におきましてお手元に差し上げておるような報告書が出ている。そういうことも十分参考にいたしまして、また政府責任におきましていろいろな角度から検討いたしましたところ、今回のような方式参拝するということにいたしますれば、これを公的資格で行っても憲法が禁止する宗教的活動に該当しない、こういう判断に至りましたので、これを八月十五日に実施するということにした次第でございまして、当時宮澤官房長官時代にもいろいろな角度から御検討をいただいた結果、政府統一見解というものが示されたわけでございますけれども、その後もずっと検討してきて、懇談会意見なども参考にしながら政府検討した結果、そういう結論を出すに至った。これが今日公式参拝を行った理由でございます。
  24. 野田哲

    野田哲君 どうも説明が、私が頑固なのか、全く理解ができない。  重ねて伺いますが、昭和五十五年九月三十日に、衆議院議員の稲葉誠一さんが質問主意書を靖国神社問題で提出しています。これに対して政府は、鈴木善幸総理大臣名で、昭和五十五年十月二十八日に答弁書を出しております。  質問は、靖国神社への公式参拝とは、具体的にどのような事実関係をもって示されるのか、その定義は。こういう質問に対して政府の答弁書は、靖国神社への公式参拝とは公務員が公的な資格参拝することを指す、こういう答弁書が出ているわけです。そして、さらに公式参拝はなぜ禁止されているのか、こういう質問に対して答弁書は、これらの行為が問題となるのは、憲法二十条及び八十九条との関係である、こういうふうに極めて端的に答えておられるわけです。  この政府が答弁書で示されたことは、それではこれは違うと言われるわけですか。
  25. 茂串俊

    説明員(茂串俊君) 御答弁申し上げます。  ただいま野田委員御指摘の、稲葉誠一衆議院議員提出にかかわる靖国神社問題に関する質問に対する答弁書におきまして、ただいま御指摘がありましたような御答弁を申し上げていることは、そのとおりでございます。  当時、この答弁書を出しました五十五年十月二十八日だと思いますが、ちょうど宮澤官房長官がお読み上げになりました政府統一見解とほぼ同一の時期でございます。むしろこれの方が若干早い時期でございます。当時、統一見解を出しましたときには、既に津の地鎮祭に関する最高裁の判決が出ておりました。これは五十二年七月十三日だと思います。そういう意味で私ども、私どもと申しますか、政府として統一見解を出します場合には、当然に津の地鎮祭に関する最高裁の判決念頭に置いて、そして検討した結果お出し申し上げたのでございます。  そのときには、実はこの津の地鎮祭に関する最高裁判決におきましては、御承知のとおり、憲法二十条三項の禁ずる国の宗教的活動とはどういうものであるかということにつきまして、非常に克明な、かつまた一般的な判断基準を述べておるわけでございまして、これも委員御承知のとおり、その行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進または圧迫、干渉等になるような行為を言うものとされ、またある行為がこの宗教的活動に該当するかどうか検討するに当たっては、その行為の外形的側面のみにとらわれることなく、諸般の事情を考慮し、社会通念に従って客観的に判断すべきものであるというふうに述べておるわけでございます。  そこで、この判断基準を靖国神社参拝問題に当てはめた場合にどうなるかということでございます。いずれにしましても、問題自身が非常に国民の意識にかかわる問題でございまして、前からも申し上げておりますが、法理の一点だけで結論が出るような問題ではない、あくまでも、この判決で述べておりますように、諸般の事情を十分に考慮した上で社会通念に従って客観的に判断すべきだということでございますが、ここで述べております目的効果論を当てはめる場合の社会通念をどういうふうに把握したらいいかという点につきましては、非常にデリケートな難しい問題でございまして、当時としましては、これはどうも先ほど申し上げたような事情からしまして簡単に結論が出るような問題ではないなというようなことでございまして、そして靖国神社公式参拝全体をグローバルにとらえまして、それでこの統一見解にあるような意見を述べ、またそれにのっとって差し控えるというような見解となっておった次第でございます。そういう意味で、昭和五十五年の十一月十七日当時におきましては、ここで言うところの、端的に言えば、目的効果論を当てはめる場合の社会通念というものが把握できていなかったということでございます。その意味で先ほどの統一見解が出たわけでございます。  その後、今回の段階におきましては、靖国神社懇談会が、先ほども官房長官が申されましたように、一年余りの間二十数回にわたりまして意見を交換した結果を記しまして報告書を提出してまいったわけでございますが、それによりますと、国民や遺族の多くは靖国神社我が国における戦没者追悼の中心的施設であるとしております上に、「最高裁判決に言う目的及び効果の面で種々配意することにより、政教分離原則に抵触しない何らかの方式による公式参拝の途があり得ると考える」といたしまして、靖国神社公式参拝憲法二十条三項の宗教的活動に該当しないと認められるものがあり得ることを示しておるわけでございます。  そこで、政府といたしましては、この報告書に示された意見参考といたしまして、そのような参拝方式を慎重に検討いたしました結果、今回実施いたしましたような総理その他の閣僚参拝の態様、この態様によりますれば、先ほど申し上げましたいわゆる目的効果論に当てはめましても、社会通念上参拝目的が宗教的意義を有することなく靖国神社を援助、助長するというような効果も生じないという判断に立ち至ったわけでございまして、その結果、先般の公式参拝実施されたというのが今までの経過でございます。
  26. 野田哲

    野田哲君 法制局長官、あなたは政治家と違うんですから、もっと厳密に法律的な解釈を行ってもらわなければ私は困ると思うんです。今度の靖国懇の報告は津市の、官房長官の郷里ですが、津市の体育館の地鎮祭の判決のつまみ食いをしているんですよ、都合のいいところだけをね。昭和五十五年の今申し上げた稲葉誠一衆議院議員に対する鈴木総理名の答弁書も、それから昭和五十五年十一月十七日の宮澤長官の見解も、これが出されたときは何も洋の地鎮祭の判決がなかったわけじゃないんです、沖の地鎮祭の判決は五十二年なんですから。今まで出された政府見解や答弁書は全部津の地鎮祭の判決のあった後に出されているんです。それを今さら津の地鎮祭の都合のいいところだけ判決文の中からつまみ食いして見解を変える、あるいは憲法解釈を変える、これはあるべきことじゃない、許されない、こういうふうに思うわけです。  さらに、今までの国会での議論でも、その点はこういうふうに触れているわけですよ、津の地鎮祭に関して。昭和五十九年四月十八日衆議院法務委員会で村議員の質問に対して前田政府委員はこういうふうに答えておられるわけです。「ただいま津の地鎮祭に対します最高裁判決につきまして御引用がありました分はそのとおりだろうと思います。私どもも津の地鎮祭に関する最高裁判決を前提といたしましてただいまの政府見解を出しております」。つまり靖国神社の問題、護国神社の問題について。「津の地鎮祭に関する最高裁判決を前提といたしましてただいまの政府見解を出しております。」、「内閣総理大臣その他の国務大臣国務大臣としての資格靖国神社参拝することは、憲法第二十条第三項との関係で問題があるとの立場で一貫してきている。」、こういうふうに政府見解を述べて、「こういうものでございますが、この統一見解はただいま御引用になりました最高裁の判決を前提にして出しているものでございます」。国会でこういうふうにして、津の最高裁判決を前提にして今までの政府見解は出されたんですと明快に述べておられる。  さらに、本委員会でもそういう見解が出ております、この内閣委員会で。昭和五十七年三月三十一日参議院内閣委員会において板垣議員の質問に対して味村政府委員答弁。   靖国神社に対します公的参拝の問題につきましては、もう国会でたびたび御議論がございまして、政府の立場ももうたびたび申し上げたとおりでございます。政府といたしましては、従来からこういう公式参拝と申しますか、公務員が公の資格靖国神社参拝するということは、憲法二十条三項との関係で問題があるという立場で一貫しているわけでございます。   それで、御指摘の最高裁判決につきましても、私どもとしては十分に検討をいたしたわけでございますが、この最高裁判決に照らしましても、これが違憲とも合憲ともなかなか断定することがむずかしいというように私どもは考えているわけでございまして、まだ靖国神社に対する参拝が違憲じゃないかという疑いは否定できないところでございます。 こういうふうに述べておられる。  今までの政府見解はすべて津の判決を前提にして出したものだ、こういうふうに明快に答えておられるわけです。それがなぜこの際政府態度変更するに当たって津の判決の都合のいいところだけが引用されるんですか。前の国会答弁とこれは全然違うじゃないですか。どうですか。
  27. 茂串俊

    説明員(茂串俊君) 先ほども申し上げましたが、昭和五十五年十一月十七日付の政府統一見解は、ただいま委員御指摘のとおり、昭和五十二年七月の津の地鎮祭に関する最高裁判決を踏まえてこれを検討した上で出したことは、これはもう事実でございます。ただ、その場合に、今の法制局の政府委員の答弁にも若干あったと思うのでございますけれども、この地鎮祭判決内容といいますものが、先ほども申し上げましたように、いわゆる目的効果論と申しますか、目的において宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助、助長等になるような行為をいうものとするというこの行為に当たるかどうかということを判断する場合には、諸般の事情を考慮して社会通念に従って客観的に判断すべきだと、こう言っているわけでございます。  そこで、この諸般の事情を考慮した上での社会通念に従った客観的な判断というものがその当時できたかどうかという点でございますけれども、この点につきましては、先ほども官房長官も申し上げ、また私も申し上げたと思いますが、この問題が宗教にかかわる問題でもありますし、また国民意識に深くかかわる問題でありまして、その辺を十分に検討した上で結論を出しませんと、ただ法律的な解釈だけではとても結論が出るような問題ではないということでございまして、当時はそのような見地から靖国神社参拝問題全体をとらえまして、そうしてこれは合憲ととてもなかなか断定はできないなというようなことで政府統一見解が出ておるわけでございます。  したがいまして、当時としては、一体その方式をどうしたらいいかとか、あるいはどういう態様でやったらどうなるかというところまで当時としては子細な細々とした検討を加えておりませんで、公式参拝全体をつかまえて、そうしてこれはなかなか合憲とは断定できないなという見地から、これは差し控えた方がよろしいという政府態度を、方針を決定している。こういうことでございまして、あくまでもこの政府統一見解の一番のねらいと申しますか、これは公式参拝を差し控えるという政府の方針を確認的に述べたものであるというふうに御理解を賜りたいと思うのでございます。
  28. 野田哲

    野田哲君 これは官房長官の答弁も法制局長官の答弁も全く私どもは納得できない。しかし後の予定もありますので、これはまた機会を改めてさらにやりたいと思います。  この問題の最後に、あなた方が引用している津の最高裁判決の一番最後のところにこういうふうに藤林裁判長は付記をされている。「国家又は地方公共団体は、信教や良心に関するような事柄で、社会的対立ないしは世論の対立を生ずるようなことを避けるべきものであって、ここに政教分離原則の真の意義が存するのである。」、こういうふうに述べておられる。ここのところもしっかり受けとめてもらいたい。こういうことで、この問題はさらに機会を改めて議論していきたいと思います。  人事院勧告の問題について人事院政府見解を求めていきたいと思います。  まず内海総裁に伺いたいのですが、ここ数年来毎回毎回、あるときには見送りであったり、あるいは削減、こういう措置が続いているわけであります。そのことについて今回の報告の中で触れて完全実施の気持ちを表明されているわけでありますけれども、もうちょっと人事院総裁としては強いアクセントで、この点について政府に対してあるいは国会に対して意思表明をすべきではなかったのかなと、こう思います。これから政府協議があるのだろうと思うんです。引き続いて、報告の七項でちょっと書いたからそれで終わったということではないと思うので、総裁としてはもっと継続して強く政府態度を求めていく、こういう措置をとるべきではないかと思うんですが、総裁としてのお気持ちを伺ってみたいと思うんです。
  29. 内海倫

    説明員内海倫君) 今回の勧告に際しまして私どものいたしました報告を克明に御検討いただいたものとは思いますけれども、私どもとしましては、お話しのようにここ五十七年以来連年の凍結あるいは抑制という事態がいかなる影響公務員に与えておるか、これに対して私どもの本当の気持ち、国会及び内閣に対してどうしても要望し、かつまた受け入れていただかなければならない真情というものと実態というものを報告の中で私は訴えたつもりでおります、しかしこの問題は、現実に給与を期待しておる公務員の立場に立ちますれば、どのように厳しく申しても、それはあるいは受け取る向きによればまだ緩慢であるということかもしれません。しかしながら、私ども厳正公平な立場に立つ中立機関としての立場から言えば、私はあの報告において申し述べておる点はそれなりに私どもの真情を吐露しておるつもりでおります。  非常にくどいようでございますけれども、政府におきましてもいろいろ財政事情ということで御苦心はあるようでございます。その点につきましては私どもも認識はしておりますけれども、しかしそれ以上に、あるいはそれを超えて、公務員に対する必要な給与上の処遇というものは、これは政府の従業員のことでございますから、ぜひやっていただかなければならない。とりわけ私どもは、この勧告に際しまして、私自身もごく一部ではございますけれども公務員の勤務の実態も見てまいりました。また各省の人事当路者からの厳しい意見も聞いております。また職員団体からもいろいろな要望も聞いております。それらを考え合わせますと、政府あるいは国会におかれましては、どうか私どもの勧告というものをぜひ私どもの報告に述べたような考え方を御理解いただいて実現を期していただきたい。政府におかれましても、委員会におきましてその実現のために全力を尽くすということはしばしば承っておるわけでございますので、私どももそれへの期待もいたしております。国会におかれましてもそういうふうな気持ちをお酌み取りいただいてぜひこれの実現を期していただきたい。私どもは勧告に伴う報告におきましてそういうふうな真情を吐露したつもりでおります。今後もそういう報告に述べておるような問題につきまして、政府国会皆様方にも今後ともそういう実情を訴えてまいりたい、こういう気持ちでおります。
  30. 野田哲

    野田哲君 後藤田長官、この勧告をどういうふうに扱われるつもりですか。
  31. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 八月七日に人事院から本年度の給与改善についての勧告をちょうだいしたわけでございますが、その際の人事院総裁談話、それからまた総理に対する勧告を出された際に私も出席しておりましたが、昨年の勧告の際とは違いまして、人事院総裁からは特に厳しく完全実施についての御要請がございました。私は、本年度の給与改善に当たってはこの人事院総裁のお考えということを十分配慮しなければならぬと、かように考えておるわけでございます。  そして同時に、政府公務員に対する雇用主としての責任があるわけでございますから、公務員諸君の家計に与える影響あるいは士気の問題、これら全般的に目配りをしなければならぬ、こういうことも十分配慮したいと思っております。ただしかし、一方で御案内のような厳しい財政事情も続いておりますし、行革審からは昨年度と同じような勧告が出されておるわけでございます。これは国民世論を受けての行革審の御意見であろうと、こういう点も政府としては配慮しなければなりません。  なお、こういったことをあれこれ配慮しながら、私たちとしては、完全実施に向けて国政全般との関連のもとで最大限の努力をやってまいりたい、かように考えておりますが、何せ八月七日に第一回の給与関係閣僚会議が開かれまして、それぞれの閣僚のお立場でいろんな御意見の開陳がございましたけれども、結論を得るに至っておりませんが、ただいまお答えしたような気持ちで、あと何回閣僚会議が開かれるかわかりませんけれども、できるだけ努力して早く結論を出したい、かように考えておるわけでございます。
  32. 野田哲

    野田哲君 完全実施を目指すことがまず大前提だと思うんですが、そう受けとめてよろしゅうございますか。
  33. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) ただいま申しましたように、国政全般との絡みの中で最大限の努力を尽くしたい、これは当然そういう建前でなければなりませんし、しかし同時に、客観情勢がどうしても許さないという場合も、これは一応想定はしておかなければならぬと思います。しかしながら、そういった場合にも公務員諸君に不安感を与えるというわけにはまいりません。そういうことで、昨年に官房長官談話の形で政府の基本的な対処方針といいますか、考え方を発表しておるわけでございますから、これはいずれにしろ、最低限の政府としての考え方を述べておると、こう思いますから、そこらも踏まえながら最大の努力をいたしたい、かように考えております。
  34. 野田哲

    野田哲君 官房長官、これからの政府閣僚会議開催が何回かあるんだろうと思うんですが、臨時国会との関係も出てくると思うんです。いつごろこれは政府としては決めるような段取りを考えておられるわけですか。
  35. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 臨時国会が開かれることになれば、御存じのように臨時国会とのいろんな絡みも出てこようかと思いますが、まだ一回意見交換したばかりでございますので、さらに回を重ねて検討を進めなければなりますまい、こう考えております。具体的にいつごろかというのはなかなか今申し上げる段階に至っておりませんが、事柄からまいりますと、なるべく早く決定するということが大事かというふうに思います。そういう意味では、精力的に回を重ねるようにいたしまして、政府態度決定への合意が得られるように努力してまいりたい、誠心誠意努力してまいりたい、このように考えます。
  36. 野田哲

    野田哲君 八月二十日の新聞報道によりますと、自由民主党の労働問題調査会と労働、内閣、地方行政各部会、三部会合同の会議が開かれた、人事院勧告の問題について、こういう報道があります。ここの自民党の皆さんの中にも参加された方がいらっしゃるだろうと思うんですが、ここで四・二%程度という決定をしたんだと、こういう報道があるわけですが、これは官房長官なり総務庁長官は相談を受けたんですか。
  37. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 自民党の労働問題調査会でそういう御意見があったということは新聞紙では私も承知をいたしておりますが、私は事前に連絡は受けておりませんし、その後も党の労調から正式のこういったことでやったという報告、御意見は聞いておりません。しかし、私の方の事務当局は呼はれておったようでございまして、事務当局から報告は聞いております。つまり党の労調としては、完全実施は当然であるが、次善の策として現実的な解決の方法として、いわゆる積み残しがございますから、四・二%程度が適当であるというような話の内容であったという事務的な報告を聞いておるだけでございます。
  38. 野田哲

    野田哲君 官房長官は何か。
  39. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 総務庁長官と同じでございます。事前に相談があったということではなくて、党として会合を開かれて御協議になったということ、それを後から聞かせていただいたという事実関係でございます。
  40. 野田哲

    野田哲君 新任の手塚人事婦長、あなたはここへ出席されたそうですが、どういう説明をされたんですか。
  41. 手塚康夫

    説明員(手塚康夫君) 当日、先ほどの労調初め内閣、地行等の合同部会が開かれまして、私も出席を求められました。  それで、冒頭人事院総裁の方から御説明があった後、政府としてどういうふうにこれは処置していくんだというお話がございましたので、政府としては勧告を受けまして当日第一回の給与関係閣僚会議開催いたしました、ただし、そこではいろいろ議論もございまして結論を得るに至らなかったために引き続き検討してまいることになりましたと、そういう御報告を申し上げたところでございます。
  42. 野田哲

    野田哲君 具体的な事柄について二、三お聞きしておきたいと思うんですが、まず今度の勧告の一つの特徴は、俸給表の構造を大きく変更されている、この点が一つの特徴だと思うんです。  そこで、これは後藤田長官なり藤波官房長官にも、御承知だと思うんですが、重ねて私から指摘しておきたいと思うのは、昨年、率を削減して、人事院勧告とは別の俸給表給与法国会へ提出されましたね。国家公務員の場合にはそこでいや応なしに、賛成反対は別にして、法律案が出て決定されればそこでそのまま俸給表も決まってしまうわけですが、地方自治体はそうはいかないんですね。人事院勧告完全実施されるときには、八月に出された勧告によって示された俸給表をもとにして国家公務員俸給表が決まるまでの間、地方自治体でももとがあるわけですから、それによって労使の交渉も行われる、あるいは議会にも内示して了解を得るような手順もとれるわけです。ところが、去年、おととしの場合、特に去年の場合ですが、十二月の一日から召集された通常国会で、十二月のもうぎりぎりの段階で政府が独自の俸給表に基づく給与法を出してくる。地方自治体はもう大変な混乱をしているわけです。もし、それがことし、またああいうやり方をとられると、地方自治体はなおさらもう去年以上に輪をかけた混乱が起きると思うんです。今度、人事院勧告で示されたあの新しい俸給表の構造に地方自治体にある俸給表をつくりかえるだけでも、これは地方自治体としては大変な手間のかかる仕事をしなきゃいけない。それが政府の手によってまた別のものがある日突然示される。こういうことになると、もうこれは大変なことです。  だから、完全実施されるかどうかという議論が続いておるときに、なぜこういう俸給表の大幅な変更勧告人事院が出されたのか。完全実施という政府態度が定着したのを見きわめてからやっても、これは遅くはないんじゃないかと思うんです。六十一年には少なくとも政府完全実施をいたしますと、こう言っているんだったら、その見きわめがついたときに出されても、こういう俸給表の構造の変更は決して遅くはなかったんじゃないか、こういうふうに思うんです。ことし、こういうふうな大幅な変更をされた俸給表勧告で出されたということは、これはもう完全実施が前提でなければ、これはもう事務的に手がつけられないんじゃないか、こういうふうに思うんで、まずそこら辺、今回こういう完全実施かどうかという議論がずっと続いている中であえてこういうふうに大幅な俸給表変更をされた真意というものを伺いたいんです。
  43. 鹿兒島重治

    説明員鹿兒島重治君) 今回の勧告におきましては、新しい俸給表の新設、等級の若干の増設、あるいは号俸の延長といった、かなり制度に立ち入った内容改定を加えているわけでございます。  御承知のように、本年三月から定年制が実施されまして、職員の在職期間が一般に長期化するということがございます。したがいまして、この定年制を前提といたしました号俸の増設ということをやらなければいけない。また在職期間の長期化に関連いたしまして、職員の生涯設計と申しますか、    〔委員長退席、理事曽根田郁夫君着席〕 最終的な生涯設計に基づきます俸給構成も考えなきゃいけないということで、その他五十五年以来さまざまな現行制度におきますひずみと申しますか、そういうものを検討して、成案を得た結果を今回の勧告に盛り込んだわけでございます。そういう事情で、制度内容と申しますか、あるいは質と申しますか、質の面の改定も、現在の給与制度、非常に多面にわたって用いております関係もございまして、ぜひこの際これを改善していただきたいということが私どもの願いでございまして、先ほどのお話、給与の水準の問題につきましての完全実施ももちろんでございますが、制度内容につきましても、現在の給与現状にかんがみまして、ぜひこの改正を実現していただきたいというのが私どもの気持ちでございます。
  44. 野田哲

    野田哲君 もう一つ、具体的な勧告内容週休二日制の問題ですが、この勧告を読んでみても、今総裁のお話、説明を聞いても、一体人事院は何を言わんとしているのか、具体的にどうやろうとされているのか、よく意味がのみ込めないんですよ。これはもっと明確に言えないものか。  けさの新聞に各紙皆出ておりますね。郵便局と金融機関が来年八月からは    〔理事曽根田郁夫君退席、委員長着席〕 週休二日制を拡大し第三土曜日も休みにする、第二、第三とふやしていく、こうして四週六休ということになるわけですね。これを来年八月から実施する、こういう方針を決めたと、こういうことがきょう報道されております。農水省に聞きますと、農協の金融機関の窓口もそういう指導を農水省はやる、こういう意向のように聞いているわけです。そうすると、金融機関の窓口がそうなってくると、もっともっと普及してくると思うんですが、その辺は念頭に置かれているんですか、人事院としてはどうなんですか。
  45. 内海倫

    説明員内海倫君) まず、今回の勧告に伴う報告の中で申し述べております週休二日制に対する私どもの見解でございますが、まず第一点は、できるだけいい時期を見て四週六休にする必要がある、近い将来四週六休にする必要があるということをまず大前提として申し上げておるつもりでおります。  それからそのための一つのプロセスとして、ようやく現在四週五休というものが国家公務員の中において定着してまいったわけでございますから、その中において四週六休に進む場合に、恐らくは土曜をいわば勤務者の二分の一が勤務することによって四週六休というものが将来実施されることになろうと思いますから、四週五休の枠内においてまず土曜を半分の人員、要するに二分の一の人員でこれを実施してどういう状態になるか、これを見たい。と申しますのは、先刻御存じのように、国家公務員の場合あるいは公務員の場合、国民に対する行政上のサービスというものが極めて大事でございますから、もしそれに大きな支障が出るというふうなことがあれば、これは安易に取り上げるわけにもいけない。しかし、大勢は既に、今おっしゃいましたように、民間におきましても、とりわけ金融機関におきましてもそういう実情が進んでおりますから、ぜひそういうふうな方向に持っていきたい。しかし同時に今申しましたような事情もありますので、そういうふうな間に検討を進めて、近い将来なるたけ早く四週六休の実現を期していくということを報告の中において申し述べたつもりでおります。
  46. 野田哲

    野田哲君 もう一つ、給与局長に伺っておきたいんですが、調整手当の最高額のところ九%を一〇%に勧告されておりをする。調整手当の問題は、大都市の九%のところを一〇%にするだけでは制度としての根本的な解決になっていないと思うんです。この制度ができて以来、全国的に都市構造もかなり変わってきている。もともと産炭地なんかが優遇されていた制度なんでありますけれども、石炭産業の構造も変わって産炭地の都市形態も変わってきている。こういう状態の中で、例えば広島、私のところで言いにくいんですけれども、広島なんかですと、町村合併をずっとやって広島に合併したんですが、ところが住民の意思で合併は嫌だというところがあって、広島の市街地区域の中に独立した府中町とか海田町とかいうのが市街地の町続きであるわけです。そういうふうな地域的な矛盾が全国いっぱいあるわけです。これを一遍抜本的な整理をしなければ、この九%を一〇%にするだけで終わってしまったのでは、調整手当の地域間較差というものを広げただけに終わってしまうと思うんです。この点どうですか。
  47. 鹿兒島重治

    説明員鹿兒島重治君) 今回の勧告におきまして、甲地のうち九%地域を一〇%に引き上げるという勧告につきましては、私どもが例年調査をいたしております大都市地域のうち特に三大都市圏につきましては、民間企業におきます地域差関連手当というものがおおむねこのところ一〇%程度で推移しているということに基づいて勧告をいたしたわけでございます。したがいまして、これは専ら大都市地域におきますいわゆる水準の問題でございまして、お話しの地域区分の問題でございますが、地域区分の問題につきまして種々問題が出てきておることはお話しのとおりでございます。現在の地域区分につきましては、昭和四十二年に現行調整手当制度というものができまして、そのときの当委員会を初めといたします各委員会の附帯決議によりまして、さしあたり現状のままということがございまして、そういうこともございましたためにほぼ二十年近くの間凍結といった状態が続いてきております。その間若干の地域につきましては官署指定という方法で微調整はやってまいりました。  今お話しの広島の周辺について申し上げますならば、広島市の中に取り残されております府中町でありますとか、あるいは今回合併いたしました旧五日市町につきましては官署指定という方法で調整を行ってきたところでございます。  広島に限らず全国の都市部分につきまして、その後の市街地の開発の状況あるいは地域のスプロール、そういった状況がございましてさまざまな問題が生じていることは事実でございますが、何分にも各地域のその後の町村合併等の状況によりまして非常に広範な地域を包含するようになりました市もございますし、どのような形で調整手当を見直すかということにつきましては、さらにデータの集積が必要だというぐあいに我々考えております。したがいまして、問題につきましては重重認識しているつもりでございますが、今回の九%を一〇%にするだけで問題が終わったというぐあいには私ども考えておりませんので、さらにデータの集積に努めながら地域区分の問題に対処してまいりたい、かように考えております。
  48. 野田哲

    野田哲君 加藤防衛庁長官、実は一%問題を中心にしていろいろただしたいと思って資料を用意してきたんですが、靖国神社の問題がありまして時間がなくなりましたので大変お待たせをして申しわけありませんでした。  最後に、もう時間がなくなりましたので、今いろいろ報道されている、あるいは総理もいろいろインタビューなどで触れておられる、あなた自身もこの間の日曜に政治討論会に出席をされて話された防衛費扱いの問題、五九中業の問題を政府の新しい防衛五カ年計画としてこれを政府決定に格上げして、そうすることによって新たな歯どめにするとかいうような検討政府並びに与党の間でなされているということについて、現状どういう議論をされているのか長官から御説明いただきたいと思います。
  49. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) この防衛力整備のあり方につきましては、従来から一%との関係で大分御議論をいただいているわけでございます。そして前国会から私たちは一%をできるだけ守ってまいりたい、そして仮にその一%が守り切れないというような状況が出てきた場合には、従来からの国会の御議論、それからこれまでの経緯等を踏まえて慎重に討論してまいりたい、こう申してまいりました。今回、先生の御指摘もございますけれども、八月七日に出てまいりました人事院勧告というものは、六十年度につきましてこの一%の枠を守り切れない恐れがあるものという事態に至ったものだと私たちは感得いたしておるわけでございます。  そこで、八月七日に私たちの方からその事実を客観的な事実として見通しを述べさして。いただき、また同時に、私たちが作業を進めております五九中業につきましても、一%の中でおさめることは難しいというような見通しを述べました。いろいろな方から御指摘をいただいておりますけれども、私たちは初めに一%突破ありきというような態度はとるべきではないし、そう思ってもおりません。ただ、現実に給料も支払わなければならない、それから現実に従来から公約としておりました防衛計画大綱の水準の達成も今回の五九中業でなさなければならない、この二つの問題の中でどう解決していくべきかという悩みがあるわけでございます。繰り返しますけれども、決して最初から一%の撤廃を任務として考えているというものではございません。  そこで、この二つのどうしても避けられない難しい問題をめぐりまして、八月七日の国防会議をきっかけに正式に御議論をいただこうではないかというのが私たちの立場でございます。従来から、ともすれば若干奥歯に物の挟まったような禅問答的なところがあったと思いますけれども、事実としてそういう段階に来たのかな、正確に率直に、すっきりと御議論いただきたいというのが現状でございます。  仮に一%の枠の問題を守ることが困難であるとするならばどういうのが新しい枠としてあるかにつきましては、従来から、この問題を正式に御議論いただく前からいろんな方から幾つかの案が提出されております。例えば専守防衛、非核三原則、近隣諸国に脅威を与えない、また海外派兵を一切しないとかいうような、こういった従来我が国がとっておりました基本政策を文言として明確に書いて枠とする方法とか、それから一%程度というふうにする案とか、それからまた一%の枠が五十一年度に設定せられたわけですけれども、その前に行われておりました国会におけるシビリアンコントロールの方法、すなわち五カ年の総額を明示してやる方法とか、それからまた例えば総合安全保障費として防衛費及び対外経済協力費ないしエネルギー対策費というようなものを全体まとめてGNPの何%とする方法とか、その他二つ三つ、幾つかの有力な御議論もございます。そういうものを踏まえながら今慎重に政府部内でどの案がいいのか、その利害得失を議論いたしている状況でございますけれども、それぞれにつきましては時間が長くなりますので申しませんが、いろんなことを議論いたしますと、一%の閣議決定がありましたその五十一年の前に行われていた国会における防衛論議の資料となっておりました五カ年方式がいいのではないかという議論が強いことも事実でございます。  そういうような状況に今ありますことを手短に御報告させていただきました。
  50. 亀長友義

    委員長亀長友義君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時半より再開いたします。    午後零時三十九分休憩      ――――◇―――――    午後一時三十三分開会
  51. 亀長友義

    委員長亀長友義君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国家行政組織及び国家公務員制度に関する調査並びに国防衛に関する調査議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  52. 穐山篤

    ○穐山篤君 午前中、一%問題について答弁がありましたが、要領を得ない部分もありますので再度お伺いをしたいと思います。  けさもお話がありましたが、新しい歯どめを考えたい、もちろん一%枠を破ることありきという立場ではないというふうには言われましたが、流れとしては逐次崩れかかっている感じでありますね。そこで、けさも政府与党の間で本問題についての打ち合わせが行われ、なお閣議がその後開かれているわけでありますが、今、支配的な考え方、あるいはその大宗をなしております支配的な考え方の背景、こういうものについて改めて明確にしてもらいたいというふうに思います。
  53. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 繰り返しますけれども、私たち最初に一%突破ありきではございません。しかし、けさ野田委員に申しましたように二つ問題点、つまり六十年度でベアをやった場合に現実に超えるかもしれないという問題点と、新しい五カ年計画をつくった場合にはその間の平均で超えることになるのではないかという問題点を整理して、そして、ここで新しい歯どめを考えなければならないとしたならばどういうことがあるか、どういう案が考えられるか、現在議論していることは事実でございます。きょうの関係大臣会議でも私たち議論したわけでございますが、それにつきまして体系的にちょっと御説明させていただきたいと思います。  新しい歯どめのアイデアとしては、十幾つもあるぐらい多くの御議論をいただいており、またいろんな方から提案をいただいておりますが、その中で支配的なものとして、第一番目に定性的な歯どめを示す案というのがあると思います。例えば専守防衛だとか、それから非核三原則とか、そういった防衛政策上絶対に守っていかなければならない原則を書き上げて、これを歯どめとするものでございます。これに対しましては、賛成論としては、防衛についての論議は、本来保有すべき防衛力はいかにあるべきか、その性格により論議さるべきであるので、そういう趣旨に合致するという意見がございます。しかし同時に、欠点といたしましては、これだけでは防衛関係費についての歯どめがなくなってしまうではないか、具体的な歯どめがなくなってしまうのではないかという批判があります。  二番目に、GNP一%程度または一・何%以下とする案があろうと思います。これは現行の閣議決定との間に継続性がありますので説明は容易であろうと思います。しかしこの欠点といたしましては、防衛に関する論議がどうしても数字中心になってしまいまして、例えば一・四九九は程度なのかとか、一・七はどうなのかとか、一・二三程度であるべきなのかとかいう論議になりまして、どうしても中身の議論に入らないで終わってしまう可能性がある。現に、前国会でも防衛の中身についての議論は大分されたと思いますが、報道の面は、特に一・〇を守れるか守れないかについての部分だけが報道されて、国民の目には、なかなか防衛論議の中身にまでいかなかったおそれがあるような感じがいたす。その辺が問題点ではなかろうかと思います。また、あらかじめ設定された経費枠だけで国の防衛を考えるのはおかしいという批判も一方ではあろうかと思います。  三番目に、新五カ年計画を政府計画に格上げし、その中で期間内の総所要経費を明示する案というものがあろうと思います。これは利点としては、政府責任において中期的な防衛力整備の方向を内容と経費の両面にわたって国民に提示することが可能であるという利点がありますが、一方、一定の期間の経費を積み上げて示すだけでは歯どめにならないじゃないかという批判もあり得ようかと思います。  この三つが私たちには有力な案であろうかなと考えておりますが、それ以外に、四番目として、総合安全保障費を算定して、その対GNPを示すという案があります。これは総合安保と申しますと、防衛関係費、エネルギー費、それから重要なものとして経済協力費、ODAでございますね、それとか科学技術振興費、こういうものを積み重ねて一定の枠以内としたらどうかという案でございます。現在、それを全部足しますと四兆七千億になりまして、GNP比は一・五%程度になります。しかし、これはより幅広い国家的な資源配分目標を明示できるという利点があると同時に、一体その一定の枠といった場合に何%とすべきか、またその根拠は何かというところの説明が困難ではなかろうか。また総合安全保障費全体の中で防衛関係費についてどの程度であるべきか。ある意味じゃ、逆に防衛についての歯どめがなくなってしまうのでないかという御議論もあります。  それから五番目の案として、防衛関係費の歳出費を一定率以下とする案があります。例えば一般会計の中で何ぼにするとか、一般歳出の中で何ぼにするかという案ですけれども、これは防衛関係費についての歯どめが数値で明示できるという利点はありますが、それぞれ幾らにすべきかの数値の根拠の説明がなかなか困難でなかろうか。特に一般歳出費ということでとってみた場合は、国の借金の国債費なんかがかなり分きく変動いたしております現状から見て、どうもこの比率が乱高下し過ぎるのではないかという批判があろうかと思います。  その他、参考として耳に入ってまいります議論としては、現在の防衛関係費の中から防衛施設庁関係費等を控除し、これは約一〇%ですが、引き続きGNP一%を維持する案というのがあります。防衛施設庁関係賢一〇%をカットいたしますと、当然のことながら一%の維持はできますしかし、そういう意味で現行閣議決定を維持できるという利点はありますけれども、欠点として、長期にわたって定着してきた防衛関係費の定義、内容変更する合理的な説明がちゃんとできるのかという難点があろうかなと、こんなふうに思っております。  全体的に、この種の案を中心に今議論いたしておりますし、先ほど申しましたように、当初の三つの案が有力であろうかなと思っておりますが、その中でも三番目の総額所要経費を明示する案というのは、実は三次防、四次防でもおわかりになりますように、その当時とられていた案であります。そして、GNP一%基準の前にとられていた案でありまして、国民防衛庁、安保、それから自衛隊に対する世論がより厳しかった昭和三十年代、四十年代にとられていた案でありますので、原点に帰るという意味で私たちは評価してもいいのではないか。なおかつ防衛の中身についての御議論が非常に高密なものになるのではないか。そして、それを通じて国会の我々に対するシビリアンコントロールがきいてくるゆえんになるのではないかというふうに思っておりまして、政府の内部では有力な案というふうに現在なっております。  長くなりましたが、以上でございます。
  54. 穐山篤

    ○穐山篤君 議論は別の機会にしたいと思いますけれども、昭和六十年度予算を明示する際に示されましたGNPというのは三百十四兆六千億円、これがスタンスになりまして計算をされたわけです。多分この十月ぐらいには今年度のGNPの修正の数字が出ると思いますね。大きく見積もりましても三百十五兆五千億程度を見れば最高ではないかなと、こういう感じがしますね。今までの一%とのすき間は八十九億であります。私が申し上げました三百十五兆四、五千億円で計算しますと、すき間風は百七十億円ですね。この計算をしましても多分一%を突破する、こういう計算にならざるを得ぬと思うんですね。  さて、昭和五十一年に決まりました一%枠というのは、いろいろな意味を含めて歯どめ一%、これは国内の事情もそうでありますし、国際的な関係を見ても、一%という歯どめによって日本が戦前回帰をするようなことはない、あるいは海外に脅威を与えることにはならぬと、そういう意味で一%というものが歯どめの数字であったわけですね。一たんこれを崩しますと、今幾つかいろいろな案がありましたが、結果的にどんどんどんどんその壁が崩れていくという要素を持っているわけです。ですから、新しい歯どめというのは歯どめにならないというのが私どもの意見でありまして、きょうは議論するつもりはありませんけれども、そういうふうに申し上げておきたいと思います。  次の問題に移ります。  最初に、きょうを含めて航空自衛隊、それから今後を含めて陸上自衛隊と米軍との間に共同訓練、実動訓練が行われると聞いているわけですが、とりあえず今後のものについてその大要を説明いただきたいと思います。
  55. 大高時男

    説明員(大高時男君) 日米共同訓練、今後の予定でございます。本年の秋以降でございますけれども海兵隊との共同実動訓練、それからさらに十一月の上旬から中旬ぐらいというふうに考えておりますけれども共同実動訓練、それからさらに共同指揮所演習、それからさらには海兵隊との共同実動訓練、それからさらにこれは米陸軍でございますが共同実動訓練、これを行うということにいたしております。  それからなお航空自衛隊でございますが、航空自衛隊の関係につきましては、今後いわゆる戦闘機戦闘訓練でございますが、これを二カ月に一度程度のペースで行ってまいりますし、それからさらに共同指揮所演習あるいは共同救難訓練、こういったものを各一回行ってまいりたいというふうに考えております。
  56. 穐山篤

    ○穐山篤君 長官ね、最近、特にことしの印象が非常に強いんですけれども、米軍との共同実動訓練というものが大がかりになってきた感がするわけですよね。表向きは、外に向かいましては非核であるとか、軍縮というそういう話を総理はしばしばやりますけれども、国内的に言いますと、緊張を高めるような訓練が非常に行われているわけです。防衛白書を読んでみますと、去年とことしの防衛白書の違いがそのまま実際の面にあらわれているというふうに思うわけです。去年までは日米安保体制のもとに、仮想敵国はつくらないけれども侵略に備える、そういうものが防衛白書では前面に出ているわけです。ところが、ことしの白書をよく読んで見ますと、侵略ありきという前提条件を設けて、それに対応する防衛力の整備あるいは増強を図ろうとする考え方が非常に濃厚になっているわけです。戦後四十年を経た今日、特にことしは広島、長崎に代表されますように、国際的にも平和が非常に叫ばれているところでありますね。ところが、今もお話がありましたように、侵略ありきということで自衛隊の防衛力の整備あるいは共同訓練というものの頻度が高まる、あるいはそれが大がかりになっているというのが特徴です。まことに遺憾であるということを申し上げて具体的にお伺いをしたいと思います。  ことしの秋、東富士と北富士の両方を使いまして陸上の共同訓練が行われるというふうに私どもは聞き、私ども日本社会党といたしましても、あるいは地元といたしましても、中止を要請したわけです。その中止の要請の理由は幾つかあったわけですが、この席では省略します。なかんずく県民を代表して知事が二度にわたりまして中止を要請したわけですが、結果として防衛庁側はお断りをしたわけです。これはどういう理由あるいは背景で断られたのか、その点をまず明確にしてもらいたい。
  57. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 日米共同訓練は、有事におきまして日米双方が共同対処行動を行うわけでありまして、その対処が円滑に行われるためにもぜひ私たちは必要であると考えております。そして、そのことによって日米安全保障体制の信頼性の確保が維持されますし、またより強いものになると思いますし、それによって我が国防衛についての抑止力がますます高まるという効果が強まると思っております。そういう意味で山梨県の地元の皆様の間に大変な御議論があるということは私たちも承知いたしておりますし、現にそういう形で私も望月知事さんに二度ほど防衛庁でお会いいたしたわけですけれども、何とかこの点は国の立場を御理解いただきたいと申し上げた次第でございます。
  58. 穐山篤

    ○穐山篤君 東にしろあるいは北富士演習場にしましても、我々党も、あるいは県もそうでありますが、全面返還、平和利用、これを目標にしているわけなんです。なかんずく富士のすそ野、富士山の周りといいますのは、御案内のように霊峰富士と言われますように侵しがたいところでもありますし、地域でいいますと観光地でもあるし、あるいは精密機械工場が非常に最近は定着してきているところであります。そういうことを考えますと、素朴な気持ちとしては中止をしてほしい、また中止が当たり前じゃないか、こういう意見になるのは当然であります。  私ども非常に心配をしますのは、今回の計画を見ますと、三千人規模の軍隊といいますか、兵隊さんの共同訓練であります。最近にしてみては非常に例を見ない演習ですね。それから二つ目には、一たん東と北の演習場を使いますとそれが恒久化してしまう、その懸念を持つのも当然であります。あるいは典型的な演習場として日米の共同訓練はここがいい、ここでやりましょうというふうに恒常化すると同時に日米の共同演習場化する可能性も秘めているのではないか、そのことを非常に懸念するわけであります。それが一つ。   それから二つ目の問題としては、既に北富士演習場の問題について国と地元の間に幾つかの協定をし、申し合わせができ上がっているわけですね。それが積極的に国側が問題の処理を図らない前に演習だけが先に先行する、そういうことについての県民感情というのは非常に厳しいものを持っているわけであります。したがいまして、具体的にはこれから地元と十分に相談することになるだろうと思いますが、私が今指摘したような問題について防衛庁あるいは施設庁としてどういう考え方を持っておられるのか、この際はっきりしてもらいたいと思います。
  59. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) お答えいたします。  まず第一点の恒常化、固定化するのではないかという御懸念でございますが、この点につきましては、二十一日の日に望月知事が施設庁においでになりましたときもこの御懸念の表明がございましたし、その後二十三日、二十六日、防衛庁長官のところにお見えになりましたときも同様の御懸念の表明がございました。これに対しまして私どもは、私ども実際に行っております過去の実績に照らしましても、この北、東演習場に今後の共同訓練が固定されることはない、部隊の規模、演習の態様その他によりましてその都度適切な場所を選んで実動訓練を行うのでございますので、その点は御懸念のございませんようにということを申し上げ相互に確認をし合ったところでございます。  ちなみに、ほかのところで行った例を申し上げますと、五十九年には例えば北海道の千歳演習場あるいは王城寺原、岩手山演習場等で行い、あるいは北海道の矢臼別というようなところで行っている実例がございまして、今回ここで行われたからといってここに固定化し恒常的に行うということはない、仮にまた将来ここで行う場合には、また事前に十分御相談し、地元の御納得をいただいてやるということを確約申し上げました。  第二にいろいろこれまで二次、三次の北富士協定のことを御指摘かと存じます。これにつきましては、確かに御指摘のように例えば民公有地の返還の問題、入会権の問題等諸懸案事項が残っておることは事実でございます。私どもといたしましては、この今回の知事さんのお申し入れ、あるいは演対協のお申し入れに従いまして誠意を持ってこの懸案事項をなるべく早い時期に解決すべく努力いたしたい、こう考えております。  また、民生の安定とこの共同訓練という二つの問題を調和させるのが私ども施設庁の任務でございまして、周辺整備事業五カ年計画、総額約百九十億円の予定をいたしておりますが、この既定事業の促進及び新規事業の採択につきましては最大限配慮をいたしたい、かように考えております。ちなみに、この総額百九十億円のうち昭和六十年度計画を含めましで約八十二億円、四三%の事業を既に実施しておるところでございますが、今後ともこの努力を継続いたしたいと存じ、また先般知事さんとお会いしたときもこの点をお約束申し上げた次第でございます。
  60. 穐山篤

    ○穐山篤君 時間がもう来ておりますので最後に。   東富士の演習場で行いました際に、鉄砲玉が演習場外に飛んで問題を起こしたという例がつい最近起こっているわけですね。静岡県側の県民感情としてもやりきれないものがあるわけです。それから北富士演習場側にしてみますと、ようやく有料道路の建設に着工した。来年はかいじ国体が行われるという意味でこの共同訓練について非常に注目しているわけです。もちろんまだ具体的な細部の計画も明らかになっておりませんが、先ほどからもお話がありますようにたくさんの要望、注文があるわけです。したがって、米軍との間に細部の話を詰める前に地元の意見を十分に聞いてもらってその実現を図ってもらうということに積極的な誠意を示してもらいたい、そのことを申し上げて私の質問を終わりたいと思います。
  61. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) この実動訓練につきまして山梨県側といろいろ詰めておるわけでございますけれども、お互いの理解を得られますように十分注意して行いたいと思います。
  62. 板垣正

    ○板垣正君 私は靖国神社問題に絞りまして御質問をさしていただきたいと思いますが、まず靖国神社公式参拝が戦後四十年にして実現を見たことについて心から感謝申し上げている次第であります。去る八月十五日には中曽根総理初め閣僚靖国神社公式参拝が実現を見ました。戦没者遺族初め国民多数の長年にわたる熱願であり、この実現はまことに感謝にたえないところであります。中曽根総理初め政府当局の英断に対し高く評価し、我が党の立場から、また多くの遺族、多くの関係者にかわりまして、厚く謝意を表するところであります。官房長官、どうもありがとうございました。  靖国神社公式参拝は、官房長官談話にもございますとおり、まさに遺族初め多くの国民の多年にわたる念願であります。また靖国神社戦没者追悼のまさに中心的施設であります。私はこうしたことについてもう少し具体的に触れさしていただきたい。  戦後、二十年の十二月十五日の神道指令によりまして、靖国神社初め国とのかかわり合いが一切断絶されるに至ったわけであります。そして二十一年の十一月一日、内務、文部次官から地方長官あての公葬等の通達によって、公葬、慰霊祭等に公務員とのかかわり合いが禁絶された。ただ、ここで非常に注目されることは、旧軍人戦没者の慰霊祭、そうしたものに公職の者が参列してはならない、公的かかわりを持ってはならないということであって、いわゆる文民の立場における殉難者の慰霊祭であるとか、その他の葬儀であるとか、そうしたものについてはあの占領下神道指令のもとにおいても容認をされておったということであります。つまり占領下に禁絶され、それを背景にしてこの通達が出された。日本国憲法はまさにこの二日後に、二十一年十一月三日に公布されるわけでございます。当時のこの通達から見るところ、占領政策のもとにおいても、これを政教分離の立場からかかわりを絶ったというよりは、まさに旧軍人あるいはその遺族に対するある意味の懲罰的な立場、そういう立場において公的なかかわりを絶ったというふうに言えると思うのであります。  そして、二十六年九月十日に、文部次官、引揚援護局次長の「戦没者の葬祭等について」の通達が出されました。この通達によって戦没者の慰霊祭等についても知事さん等が公職の立場で参列して差し支えないということになったわけでありまして、これは現在も有効である、現在も根拠とされて地方自治体においては実行されている通達でありますが、この通達はまさに今まで差別されておった文民と旧軍人、その遺族、その差別をなくす、平等に扱う、こういうことにあったということは注目されなければならない。しかし遺憾ながら、憲法の政教分離との兼ね合いにおいて、戦没者の慰霊祭そのものに、靖国神社そのものに公的なかかわり合いを持つことが許されないという憲法解釈が一つの有権解釈として長く影響力を持ってきたという点に一つの大きな今日の問題もあったと今にして思うわけであります。  いずれにしましても、全国戦没者遺族で結成される遺族会では、昭和二十七年の独立回復以来、靖国の問題について絶えず取り上げ、絶えず熱心に戦没者に対する公的な立場において、その慰霊あるいは靖国神社国家護持等々、いろいろないきさつがあったことは御承知のとおりであります。そしてまたその挫折の中で、新たに昭和五十年以来、靖国神社公式参拝の実現を目指し、ひとり戦没者遺族会のみならず、幅広く英霊にこたえる会、国民的な運動として展開されてきたわけであります。この英霊にこたえる会の参加団体は現在四十三団体、この延べ会員数は一千万名を超えております。そして全国各都道府県にまた各市町村にその組織を持ち、まさに国民的な基盤に立っておる。公式参拝実現のための賛成署名運動が展開されましたが、本年三月末までに集められた署名は一千三十八万二百五十名に及んでいるわけであります。まさにそこに国民の幅広い声があると言わなければなりません。そしてまた地方議会の決議、県議会において三十七の県において決議がされ、市町村においては千六百を超える市町村議会が、公式参拝は当然である、政府において処理すべきであると決議されているわけであります。  昨年来、英霊にこたえる会、遺族会を中心に、ぜひとも終戦四十年の八月十五日にはこの問題に決着をつけてもらいたいと、大変な熱心な運動が全国的に展開されてまいりました。大会あるいは地方大会、全国で四十数カ所において開かれ、広報活動が展開され、関係方面に対する四十九万七千通のはがき陳情が行われておる。さらに昨年の八月十三、十四、十五と三日間、日本遺族会青壮年部、つまり戦没者の遺児の方々でありますが、四十七都道府県から集まりました百三十二名、文字どおり三日間五十時間食を断って、亡き父の遺影を胸に、ひたすらに公式参拝の実現、政府の決断を迫る、こうした姿はまさに私どもにこれ以上の心の痛みをもたらすものはなかったのであります。特に本年に至りましてからは全国決起大会に続いて、五月下旬から七月の末まで四十七都道府県によるいわゆるリレー陳情、代表の方々が毎日毎日はるばる上京し、政府、我が党執行部に対して熱心な陳情を繰り返された。こうしたことは到底いいかげんな気持ちではできない。本当にひたむきな国民的な熱意のあらわれと言うべきだと思うのであります。  さらに、靖国神社はまさに戦没者追悼の中心的な施設であります。創建以来まさに百十七年、戦没者二百四十六万余柱を祭り、今日も国民多くの英霊祭られし神鎮まるところとして敬仰を集めていることは申すまでもございません。靖国神社年間参拝者は約五百五十万人ということであります。そして最近のここ数年来の傾向としては特に若い人の参拝がふえておる、あるいは子供連れ、孫を連れて、そういう形でございますけれども、社頭は極めてにぎわっておるということでございます。そして、あの靖国神社において遺族会なり戦友会が亡き戦友をしのび、肉親をしのんでの慰霊祭がよく行われますが、五十九年においては二百七十七回、ほとんど毎日これが行われているという実態であります。あるいは七月のみたま祭りがございますが、これには毎年多くの献灯がなされます。この献灯はもう五十八年には一万四千、五十九年には一万四千二百八十二、ことしは一万六千三百二十二、大きなちょうちん、小さいちょうちん、これが皆神社に奉納されているわけでございます。靖国神社の桜は有名でございますけれども、四季欠かさず花の奉納展が行われている。四月には盆栽展があり、さらにさくら草展があり、あるいは六月にはさっき展、また六月花菖蒲展が、七月にはあさがお展が、十月には菊花展が、そしてまた他に常に献花として拝殿前の華席には各流派交代で生花の奉納が行われている。  英霊にこたえる会では、毎年靖国神社のカレンダーを頒布いたしております。これは従来靖国神社が出しておりましたが、負担に耐えなくて、この英霊にこたえる会が昭和五十一年から引き継いておりますが、これは靖国神社の四季のカラー写真、戦没者の遺書を掲載したカレンダーであります。五十一年から五十九年まで、有償頒布でありますが、二百五十八万部が頒布されております。昨年五十九年には三十九万三千九百十三部。一つのカレンダーで、有償で、これだけのカレンダーが頒布されるということは、まさに靖国神社が多くの国民にとって、遺族にとって戦没者慰霊の中心施設であるがゆえでございましょう。このカレンダーの頒布金からは毎年英霊にこたえる会から二千万円が靖国神社に奉納されているわけであります。  靖国神社の収入状況でございますけれども、奉納金が昨年の場合五億五百八十一万。最近目立つのは、特に年とった遺族の方が参拝されて、もうこれが自分の参拝の最後だという形で五十万なり百万なり神社にお納めをして、これでみたまを祭っていただきたいという姿が非常に多いということであります。社頭のさい銭は、昨年は七千七百九十一万円であります。そのほかに奉賛会がございます。昨年の奉賛金一億一千三百十万円、各企業あるいは団体、個人会員等をもちまして七千七百七の件数でございますが、こうした形で靖国神社は長い歴史の中、曲折を経、また痛果な思いでいろいろなものを経ながら、民族のまさに魂のこもるところ他をもってかえがたい、こうしたまさに一宗教、宗派、思想、信条、そうしたものを超えた国家にとってのまさにみたまを祭るところ、国民戦没者追悼の中心施設である、こう言えると思うわけでございます。  したがいまして、我が党は国民政党として、政権政党として、常に国民とともにある政権政党として、公式参拝実現についても、五十五年以来党公約として掲げ、党を挙げて推進してきたわけであります。五十六年春以来、春秋の例大祭あるいは八月十五日の総理閣僚国会議員の参拝は既に定着を見ております。本年の八月十五日も閣僚、衆参議員百九十三名が参拝をいたしました。五十六年の春以来既に十四回の参拝が行われております。延べ二千二百三十五人。こうした形で定着し、参拝が行われておる。五十七年には「戦没者を追悼し平和を祈念する日」が定められたことも御承知のとおりでございます。さらに五十八年の秋には、我が党の政調内閣部会靖国問題小委員会において改めて、公式参拝問題と憲法との関連において各方面の識者の意見を聴取し、真剣な検討を重ね、これについて合憲であるという見解をまとめ、昨年四月には党総務会において全会一致をもって党の見解としてこれが確認をされ、直ちに政府に対し、中曽根総理に対し、速やかに従来の政府見解を見直してもらいたい、ことしの夏までに見直してもらいたい。これが昨年四月の時点であったわけであります。  私も、この委員会においても再三この問題について政府見解をただし、また従来の見解の見直しについて発言も重ねてきたわけでございますが、さてこれに対する政府の対応は極めて慎重であった。行政の立場における判断にとどめることにできないということで靖国懇談会を設け、十五名の識者に託して諮問をされ、率直に言って、私どもはむしろじりじりして、そうした気持ちでこの一年を過ごしてきたわけでございますが、この懇談会答申参考とし、重ねて政府においてはいろいろな角度から慎重に検討をされ、しかも従来のいろいろな見解意見等を踏まえた節度ある見解をまとめられて八月十五日に公式参拝に踏み切られ、実行されたわけであります。決してこれは唐突にできたことでもない。決して今までの国会論議を無視したことでもない。また憲法の立場においても十分以上の配慮を加えて今日の決断を下されたということに対して、私は重ねて敬意を表するところでございます。  さて、そこで質問でございますが、第一点は、国民の世論の反応であります。私の接する範囲におきましては、遺族を初め国民の喜びはまことに大きなものがございます。あの八月十五日当日、靖国社頭において総理閣僚をお迎えした千名を超すあの遺族のおのずから発する万歳、拍手、ありがとうございましたという叫び、まさに四十年の苦節に耐えて初めて英霊が報われた。やっと英霊が浮かばれた。総理が来てくれただけでもうれしい。これがもう英霊に対する何よりの供養である。戦後四十年を振り返って戦没者とともに万歳を叫び、喜びましたという便りももらっております。むだ死にでなかった、長年の念願がやっとかなって安心した。  あるいはある遺児でございます。戦死した父を尊敬し、また誇りに思っています。この私たちの気持ちもわからず、一部の政党また教員たちがいろいろな理屈をつけて反対しています、非常に情けないと思います。あるいは軍国主義とか憲法違反とか言われる人がいますが、そういう人こそ時代錯誤のような気がします。もっと素直に国のために殉じた人に敬意を表し、広い気持ちで平和を論じてもらいたい。こうした気持ちが次々と訴えられておる。  靖国神社の歴史、存在。極めて厳しい試練の中で今日を築き上げてきたその遺族こそ最も平和を願うものであります。それほど切実に平和を願う者はない。靖国神社公式参拝が平和に逆行するんだというような立場に対して私どもは絶対に認めることができない、理解することができないわけであります。  さて、そういうことで新聞等にもいろいろな投書が出ておりますけれども、現時点において政府としてこれに対する反応をどういうふうに受けとめて認識しておられるか、その点についてまずお伺いいたしたいと思います。
  63. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 今般、内閣総理大臣及び内閣総理大臣考え方を同じくする各閣僚靖国神社公式参拝を行ったところでございますが、ただいま委員から御指摘がございましたように、国民の多くの方々や遺族の方々靖国神社我が国における戦没者追悼の中心的な施設だと、こういうふうに考えておられて、ぜひ靖国神社において戦没者追悼をしてもらいたい、こういう御要望があった事情を踏まえましていろいろ検討をいたしまして、靖国神社において戦没者の追悼という、宗教とは関係のない目的のもとに参拝を行うものであるということをあらかじめ内外に明らかにいたしまして、いわゆる神社の参拝形式を廃しまして、追悼行為にふさわしいと認められる方式により実施したものでございます。  政府といたしましては、ただいま委員が御指摘になられましたように、地方の議会などでも随分多くのこれを要望する決議が行われ、多くの方々が望んでおられる。いろいろな内々調査なども検討をいたしまして、しかもそれらも十分頭に置いて検討を重ねた結果、こういう形で公式参拝するということにいたしたところでございまして、具体的にその後調査をいたしておりませんけれども、多くの国民方々には御理解を得て、今度靖国神社で戦没社の追悼を行ってよかった、公人として内閣総理大臣閣僚が行ってよかったというふうに考えておっていただくのではないかと、そんなふうに考えておるところでございます。
  64. 板垣正

    ○板垣正君 その点について世論を現時点でよりはっきりと把握する方法でありますが、民間の手によってでも結構であります。私の手元にも、昭和五十六年四月十八、十九にわたって読売新聞が行った世論調査がございます。靖国神社国家護持について、賛成六三・一%、反対二三・七%、答えない一三・一%。それから公式参拝について、賛成五三%。それから参拝について、個人ととしては自由である三一・二%、個人であろうが公人であろうが参拝には反対だという意見は八%にとどまっておる。これは五十六年の読売の結果でございますが、こうした形で新聞で行っていただければ結構だと思いますけれども、私はできれば政府として世論調査実施検討していただけないかということ、いかがでしょうか。
  65. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 従来行われました調査なども十分念頭に置いて検討してきたということは今申し上げたところでございます。国民の皆さん方が政治の動き、いろいろな政治の判断についてどのようにお考えになっておられるかということは、政治を進めていく立場の者といたしまして非常に気になるところでございますし、またそのことを非常に大事に考えていかなきゃいかぬというふうに考えておるところでございます。  今、国民の皆さん方がどう考えておられるかということを調査するかどうかと。これは新聞社とかいろんなテレビ、ラジオ、通信社などでも定期的にいろいろな項目につきましていろいろな調査をする機会などを持っておられます。そういう機会には十分参考にさせていただきながら、従来も政治に取り組んできておるところでございますが、それらの動きなどもよく見きわめながら、必要があれば調査をするということもあろうかと思いますが、当面そういったいろんな定期的に行われていく調査などもよく検討してみたい、その上に立ちまして政府がやる必要があるかどうかということを判断したい、こういうふうに考えております。
  66. 板垣正

    ○板垣正君 次は海外の反応でございますが、新聞報道等によりますと、アジア諸国など諸外国は公式参拝に専ら批判的である、そういうものが多いというふうに紹介されておりますけれども、各国の実情について政府としてはどのように認識しておられるか、外務省の方へお伺いいたしておきます。
  67. 松浦晃一郎

    説明員松浦晃一郎君) 今の先生の御指摘のように、各国でいろいろの新聞報道がございます。この新聞報道を見ておりますと、単に日本の閣僚靖国神社公式参拝したということを報道したにとどまったもの、あるいはそれをめぐって日本国内にいろいろ議論がありたということを報道したものなどもございますが、これはアジアの国国、特に中国、韓国、香港等が中心でございますけれども、かなり批判的な報道も行われております。したがいまして、私どもはその点を十分念頭に置きまして、八月十四日に発表になりました官房長官談話にございます二点を特にこれらの国におきましては関係者説明を行ってきております。  その二点と申し上げますのは、第一点は、先ほど官房長官もお触れになりましたけれども、国民や遺族の方々の多くが靖国神社我が国戦没者追悼の中心的施設であると考えておられて、今回の目的はあくまでもその戦没者の追悼を行うということであるということ、これが第一点でございます。それから第二点は、これは官房長官談話にある点でございますけれども、我が国は、過去においてアジアの国々を中心とする多数の人々に多大の苦痛と損害を与えたことを深く自覚し、このようなことを二度と繰り返してはならないとの反省と決意の上に立って、平和国家としての道を歩んできている、この姿勢はいささかの変化もないという点、これは第二点でございますが、この二点を特に強調しておりますし、今後もこういう説明を行いまして関係国の理解を得ていきたい、こういうふうに考えております。
  68. 板垣正

    ○板垣正君 ただいまお話があったとおりに、まさにひたすらに戦没者を追悼し平和を祈念する、靖国神社はまさに国民挙げて戦没者を追悼し平和を祈念する、もうそこに私は尽きると思うんです。そうしたことについてぜひこの上とも外交的にも御努力いただいて誤解を解いていただき、必ず御理解いただけるはずでありますが、そういう形で御努力を願いたい。  さらにお伺いしたいわけですが、総理閣僚公式参拝実現を契機に、国際的な儀礼として、外国から国公賓がお見えの節に靖国神社表敬訪問、こういう問題も当然出てくると思うわけであります。日本の代表が海外に行かれた際、当然外地における戦没者の慰霊、表敬を行っておる。過去におきましても、エリザベス女王が来日された際に、先年天皇陛下が行かれてイギリスの戦没者に表敬をされておる答礼として、戦没者の慰霊について日程に入れてもらいたい、こうしたことがございましたけれども、結局、国内的な事情によってこれが見送られたという経緯があります。そういう意味からも、今般政府が明確な答申のもとに踏み切った、そしてまさに戦没者追悼の場として、平和を祈念する場としての靖国神社参拝の問題についてどういう対処される御方針でおられるか承ります。
  69. 松浦晃一郎

    説明員松浦晃一郎君) 私ども外務省におきましては、従来からの外国からの国公賓の日程の作成に当たりましては、国公賓の方々の御意向を尊重して作成しております。したがいまして、今後も先方から靖国神社参拝したいとの希望表明がございます場合には、私どもといたしましては、これを検討していきたいと考えております。今、板垣先生がちょっと過去の例をお触れになりましたけれども、私どもが承知しておりますのでも、ちょっとさかのぼりますけれども、昭和三十六年にアルゼンチンの大統領が靖国神社においでになったという例もございます。
  70. 板垣正

    ○板垣正君 最後に官房長官にお伺いしますが、公式参拝を実現していただいたわけでございまして、したがいまして、今後もふさわしい時期、つまり靖国の春秋の例大祭、また来年も八月十五日はめぐってくるわけでございます。私どもは当然、総理閣僚靖国神社公式参拝を今後も長く続けていただけるというふうに信じております。この点について長官の御見解を承りたい。
  71. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 委員の御趣旨はよく承ったところでございます。これから十分検討を行いまして、適切な形で対処していくようにいたしたいと、こう考えております。
  72. 原田立

    ○原田立君 私は、人事院勧告に関する問題点防衛費の一%枠撤廃に関する問題、それから今問題になっております靖国神社公式参拝の問題、以上三点にわたって、余り時間がございませんけれども、御質問したいと思います。  まず最初に、人事院は去る八月七日、内閣及び国会に対して昭和六十年度の国家公務員給与について勧告を行ったわけでございますが、今回の勧告の特徴は、中堅管理職層の改善に重点が置かれておるというふうに固いておりますが、その点はいかがですか。
  73. 鹿兒島重治

    説明員鹿兒島重治君) 今回の五・七四%という引き上げ配分につきましては、今お話がございました中堅層、三十歳代から四十歳代というところに重点を置きましたほか、民間企業との対比がございますので、初任給についてそれぞれ重点的に配分をいたしたわけでございまして、なお給料哀別に申し上げますと、例えば公安職の(一)表でありますとか、あるいは研究職、特に若手の研究職につきまして重点的に配分を行ったところでございます。
  74. 原田立

    ○原田立君 今回の勧告は、国会及び政府に対してなされたものと承っておりますが、国会としての我々の意見はありますけれども、それを受けた政府の方の姿勢としてはいかがですか。
  75. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 私からお答えいたしたいと思います。  人事院勧告制度政府としては今日の建前の上から見ても最大限尊重しなければなりません。また雇い主としての立場の上からも最大限尊重して実施に向けて努力をすべきものでございます。ただ、厳しい客観情勢もございますし、行革審等からの御意見等、行革審は恐らくや世論というものを背景にしての御答申であろうと思いますが、そういった御答申もございます。あれこれ幅広く私どもとしては配慮しながら、ともかく閣僚協議会で、まだ今日結論出ておりませんけれども、何とかひとつ国政全般との関連の中で実施に向けて最大限の努力をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  76. 原田立

    ○原田立君 私は、人事院の今回の五・七四%のベースアップについては完全履行をすべきである、こういうふうにかたく信じてやみません。また長官も、過去の凍結あるいは抑制、見送りというものに対しては三年間でもってその解消を図りたい、こういうふうなことを当委員会でも申しておりました。今回の答申に対してももし仮に財政的理由というようなことでまた見送り、抑制されるようなことがあったならば、国実公務員方々の仕事に対すると気、そういうものが非常に憂慮されるのではないか。そのことは人事院内海総裁の方からも答申として出ております。また長官もそういうようなことを前の委員会でもお述べになったことを私は承知しております。ですから完全実施をすべきである。今のお話では、給与関係閣僚会議を開いてないからまだ決まってないけれどもというクエスチョンマークつきの御返事でありますけれども、完全実施ということをなさるお気持ちはおありですか。
  77. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 午前中の野田さんの御質疑にお答えいたしましたように、私といたしましては、完全実施に向けて国政全般との関連の中で最大限の努力をしてまいりたい、こういうつもりでございます。万々一それが各般の状況で困難であるというようなことになりましても、これは昨年の官房長官談話の線というものがございますから、何といったってこれは最小限守らなければならないと、かように考えているわけでございます。C原田立君 総裁、御苦労願って勧告を出してもらったわけでありますけれども、もちろん答申を出したあなたの立場でいえば、完全実施をぜひすべきである、こういう強い御信念であろうと思いますが、いかがですか。
  78. 内海倫

    説明員内海倫君) けさほどもお答えを申し上げておりますし、またこういうふうな発言機会をいただいておるごとに私は、私どもの勧告というものが、単にこれは調べた数字を言っておるだけでなく、公務員現状というものに対応してぜひ改善しなければならない、それが労働基本椎を制約されておる公務員の立場における唯一の給与改善機会でございますから、これをぜひ実現していただきたいということを国会及び内閣にお願いを申し上げておるわけでございますから、私といたしましては、いついかなる場合にもただひたすらにその完全実施ということを言い続けるわけでございます。今後もまたそういうことのための努力を、とりわけ内閣の方にもお願いし、また国会においてもぜひそういうふうな意味で審議をしていただくようにお願いをしたい、これが私の気持ちでございます。
  79. 原田立

    ○原田立君 官房長官、総裁と総務庁長官見解が今出たわけでありますけれども、あなたも給与関係閣僚会議のメンバーであると思いますが、あなたの御所見はいかがですか。
  80. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 総務庁長官からお答えをいたしましたことと全く同じでございますが、人事院勧告を受けましたので、この人事院勧告制度趣旨を尊重いたしまして、制度を尊重するという建前で完全実施に向けて最善の努力をしていかなきゃいかぬ、こういうふうに考えております。総務庁長官からお答え申し上げましたように、人事院勧告を受けました八月七日に第一回の給与関係閣僚会議を開いておりますが、さらに各出席者の日程の調整などもいたしまして、第二回以降の会議を開きまして政府態度を決めていくように努力を重ねてまいりたい、このように考えております。
  81. 原田立

    ○原田立君 では総務庁長官並びに官房長官に今回のベアについての勧告完全実施を強く要望します。  余り時間がありませんので、次に移りたいと思いますが、防衛費の一%枠撤廃の問題であります。  今も穐山委員からもいろいろ質問があったところでありますけれども、現実に人事院から五・七四%の勧告が出された今日、政府の経済見通し三百十四兆六千億円に沿ってみれば、勧告完全実施した場合、五百四十一億九千万円の突破となり、対GNP比率は一・〇一七と、こういうふうになって、〇・〇一七%オーバーすることになるわけであります。一方、一%枠を守ろうとすると実施率は一・六七%、二百二十一億五千二百万円というわずかなものしかならないわけであります。予想されているように完全実施を何か手当てするようなことを聞いておりますが、というのは、完全実施はしなくて四・二%ぐらいの値上げでもやもやとしちゃうんじゃないかということがもう既に新聞に出ておる。それは非常に遺憾なことだと思うんですけれども、仮に四・二%ベアの場合でも約三百三十八億円オーバーする。このような実態を防衛庁長官は一体どういうふうに受けとめますか。
  82. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 人事院勧告が出ましてそれに対して政府側がどう対処するかは、私たち所管でございませんので特に申し上げられる立場にはございません。しかし現在GNPとのすき間が八十九億にしかなっておりません。そういう中でどの程度の実施がされるにしても、かなり常識的な推測をするならば、人件費として考えられ得る部分が先生御指摘のように既に用意されております一%分と、それから八十九億でございますので、それを通常程度の常識的な実施をいたしましたならば、GNP一%の枠をどうしても超えてしまうという状態はかなり予想され得ることではないかなと、こう思っております。  一方、現在策定しております五カ年計画の対GNP比もその期間内で一%を超えそうでございますので、その二つの問題がありまして、今、その処理にどういたしますか、政府部内で議論いたしているところでございます。したがいまして、私たちはこのベア問題は私たちの防衛政策を考える際の重要な要因でなかろうかなと、こう考えております。
  83. 原田立

    ○原田立君 防衛庁は対GNP一%枠を守るんですか、それとも突破やむなしと考えているんですか。
  84. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) GNP一%につきましてはいろいろな御議論がございます。しかし、私たちとしては、前国会から総理も申しておられますように、また私たちも累次答弁申し上げたように、GNP一%の枠を守りたいと、こう考えております。しかし、今申しましたような二つ問題点がありまして、なかなかその枠の中におさまり切れない状況が予想される。その中で私たちは苦慮いたしているわけでございまして、守りたいけれども守り切れそうもない要因が出てきたというところでございます。最初から一%というものを突破したい、そういうような最初に一%突破の旗印ありきというようなものではなく、現実の事実関係として問題点について苦慮いたしているところでございます。
  85. 原田立

    ○原田立君 そうすると、一%枠は守りたい、この気持ちは今も変わりないけれども現実には突破しそうだ、だから苦慮しているんだと。ということは、じゃ一%枠は突破してもやむを得ないんだと、こういうふうに今防衛庁は考えているわけですか。
  86. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 事実関係として、通常のベアがこの人事院勧告に基づいてなされた場合には突破しそうであると、そういうことで今後その対処をどうするか、防衛力整備計画のあり方をどうすべきかにつきまして今議論をやっているところでございます。
  87. 原田立

    ○原田立君 そうすると、検討しているが、じゃ一%枠におさめるような努力も十分しておると、こういうことですか。
  88. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 従来から一%を守ってまいりましたし、守りたいという気持ちで政府としてはおりましたから、その努力はいろんな形でやってまいりましたし、また防衛力整備の分野行政改革だとか、より効率的な経費使用のために努力する分野のらち外であるとは決して思っておりません。努力いたしてまいりましたけれども、事実問題としてなかなかおさまり切れない段階に来たのではないかなという認識でございます。
  89. 原田立

    ○原田立君 ほんのわずかなやりとりのお答えですけれども、結局政府は、防衛庁長官は詭弁を弄して国民をだましているんじゃないですか。というのは、一%枠は守りたいとか、あるいは仮定の問題としても一%を超えた状況でいかなる措置をとるかは決めていないとか、あるいは国民各党各派の考え方も十分勘案するとか、あるいは国会論議や過去の政府答弁等を踏まえて慎重に対処するとか、何となく一%枠を守るようなそういう姿勢を示しながら、だんだん引っ張ってきて、それでやむを得ない、一%枠を突破する、こういうふうなことを言っているように思えてならない。これは欺瞞じゃないですか。詭弁じゃないですか。今回ベースアップ答申で五・七四%出る、そこら辺のところのことについてはそれはもうあなた方は十分御承知のはずであったんです、概算要求する段階で。そのときになぜそのことも考慮に入れてのことをなさらなかったのですか。そこら辺の努力をしないでおいて、ほかの各項目についてはゼロシーリングに抑えられたりしながらも、防衛費だけは枠をぐっと張り出したような予算を概算要求ではあってもとって、それで結局片方では一%枠を守ると言いながらそれをなし崩しに崩そうとしている。これは断じて許しがたいと思うんです。いかがですか。
  90. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 昨年末、政府予算案の原案が定められましたときに、例えば本年八月に予想されますベースアップがいかなる金額に、率になるかということは予想できなかったことであろうと思います。そういう時点におきまして防衛庁としても、人件費につきましては他の省庁と同じように人件費の一%というものを予算の中に組んであるわけでございます。そういう中で本年度の審議が行われたわけですけれども、その時点でも相変わらずベースアップ、人事院勧告の帰趨は不明確でございました。私たちは累次、現時点では仮定の問題としても、一%を超えた時点でいかなる措置をとるかは決めてないと申しましたけれども、そのとおりであったと思います。その後私たちの答弁は、そのような状況になった場合には国会における各般の論議、過去の政府の答弁等を踏まえて慎重に対処したい、こう申したわけでございますが、今度の人事院勧告がこのように五・七四%が出て、そしてその取り扱いは今後政府の中で決まることではございますけれども、この数字から見ましたならば、そう簡単な数字、つまり一・六八%の中でおさまる状況になってはいませんので、この間国防会議で正式に、六十年度防衛関係費についてはベアを実施した場合には超えそうである、また五カ年についても今後超えそうである、そこで正式に議論を願いたい、こう私は提起いたしました。そういう超えそうになった状況になってきたので、正式にすっきりとした御議論をいただくように問題提起をしたわけでございます。
  91. 原田立

    ○原田立君 最近、防衛庁長官あるいは官房長官は、二人そろって与党の要人のところに一%枠を外すための打診のために動き回っていることが新聞で報道されておりますが、一方、国防会議においても一%枠突破についての検討が行われているやに聞きますが、このような状況を見ると、一%枠撤廃の既成事実化をねらっているとしか受け取れない。国民の大多数は一%枠を守ることを適当と認めていると同時に切なる願望でもあります。防衛庁長官は、この一%枠について今後どのようにしていくのか。長官は戦後派の長官と言われて、かつてハト派の議員であるとまで言われておったんです。それが今やまさしくタカ派、超タカ派になっている。藤波官房長官、あなたも笑っているけれども、あなたもそうなんです。閣内の実力者と言われる総務庁長官もおいでですから、お三方の御意見を承りたい。
  92. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 繰り返して申しますけれども、私たち一%突破先にありきというふうに思っておりません。しかし現実にそういう数字であり、またベースアップをちゃんとそれなりに実施しなければならないことが当然のことながら予想されますので、そのときには今後防衛力の整備のためにいかなる方法であるべきかを現在議論いたしております。そしてそれはシビリアンコントロールがしっかりとした形で行われるべきものであり、そのシビリアンコントロールがいかなる形の方式によって一番守り切れるのか、それからまた日本が置かれております国際環境の中でいかなる防衛力整備の方式をとったならばいいのだろうか、そういうことを今寄り寄り議論いたしておるところでございます。  しかし、その議論をいたすときに私たち一番心の中に置かなければならないのは、確かに一%という枠は、その閣議決定された前後は、当面のめどであり、ある種の防衛計画大綱を実施する各年度のめどというものであって、一つの基本政策としてスタートしたものではなかったとしても、過去数年の間におきましては、これが国民防衛力に対する安心感をもたらすものとしての効果を示してきたことは私は事実だと思っております。したがって、だからこそ多くの議論がされると思いますし、だからこそ私たちはこの一%枠の問題については多くの国民の感心が集中していることも認識いたしておりまして、慎重な審議をしなければならない、慎重な検討をしなければならないと思っております。  で、先ほど穐山委員に申しました幾つかの新しい枠としての案もいろんな方から提起されております。また、これは単に政府部内で議論するだけではなく、民間の研究所また新聞などにあらわれている意見等も私たち全部見ております。いろんな案を、数を数えれば十幾つになるでしょうか、その中から、先ほど約六つほど、より検討に値すると私たち思っている案を御紹介いたし、そして私たちなりのコメントも先ほどさせていただいたわけですけれども、委員の皆さんからもこの場で、どういった枠というものがよりシビリアンコントロール上いいかについて、忌憚のない御質疑と御意見をいただければありがたいと考えております。
  93. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) ハトとかタカとか言われるとつらいなといって笑っておりまして、事柄が決して楽しいことだから笑っているわけではないんですが、私どもは今日の一%問題についての取り組みに非常に重い気持ちで取り組ませていただいておるところでございます。防衛庁長官からお答えをいたしましたとおりでございまして、私ども全く同じ思いでございます。従来のこのGNP一%との関係で、防衛力の整備につきましては、大綱の水準に達するように年々努力してきている。一方、GNPが思うように伸びないということになりますと、当然このGNPの大きさと防衛費の大きさとのすき間、一%とのすき間ということが非常に小さくなってくる、八十九億という天井との距離になってきている。人事院勧告を受けてこれを給与改定していくという態度決定という段階で、普通、予測しがたいいろいろ条件はまだございますけれども、GNPは大体考えられておるような見込みのものと考える、そして常識的に人事院勧告態度決定をしていくということになると、そこで一%を超えるという事態が起こり得る。この事態にどう対処したらいいか。  三木内閣以来歴代内閣が非常に大事に守ってきた一つの非常に大事な原則でございますし、中曽根内閣になりましてからも、国会でお答えをしてきておりますように、GNP一%問題というのは非常に大事に考えて取り組んできておるところでございます。今防衛庁長官からお話もございましたように、そのことを国民の皆さん方も、どんどんどんどんと防衛力あるいは防衛費が拡大していくということにはならないように、こういう御心配もありまして、一%というのが非常に大事な歯どめになって従来きているという経緯がございます。内閣としてはそのことを非常に重々しく受けとめて、また努力して今日に至っておるところでございます。  そういう事態でありますだけに、それじゃどうするか。一%というのは歯どめとして考えてきたというふうに常識的には思われているわけでございますから、一%を超えるという事態になれば、一%ときちっと構える、そういう歯どめにかわる歯どめというようなものはどんなふうなものが考えられるだろうか。午後の冒頭質疑の中で防衛庁長官からお答えになったかと思いますが、こういうような定性的なものならどうだろうか、一%内外というようなことならどうだろうかとか、いろいろなことを検討してきており、その中の一つの提案として、新しく五九中業の作業が進められてきておるその作業を政府が閣議決定して五カ年計画に世に言う格上げして、そして五カ年間でこれだけの防衛費をかける、それは目標であると同時に歯どめにもなるという性格を持った総額を明示して進むということにすれば、これは一つの歯どめになるのではないかといったようなことで、今政府部内の意見交換をいたしておるところでございます。  いろいろ党内最高顧問の方々などにも御心配もかけておるところでございますので、いろいろお知恵をかりたいということで歴訪して、党内の意見交換を行ってきているというのが私どもの立場でございまして、さらにその努力を重ねてまいりまして、国民の皆さん方にも広く御理解もいただき、また従来の国会各党からいろいろお寄せをいただいておりますこの問題についてのお考え方なども十分参考にさせていただいて、適切な対応ができればいいがと、こう考えておるのが今日の状況でございまして、今防衛庁長官からお話がございましたように、この問題についての各党の御意見などもぜひお聞かせもいただいて、一緒にひとつどうしたらいいかということについてぜひ知恵をかしていただきたい、一緒にひとつ相談に乗っていただけませんでしょうか、こういうふうに考えておるのが私どもの気持ちでございまして、一%突破させようと思って起こった話ではなくて、現実に一%を超えるという事態が来ておる、この事態をどういうふうにして考えていったらいいかということについて、ぜひ知恵をかしてほしい、こういうふうに苦慮いたしておりますのが今の私どもの気持ちでございます。
  94. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 防衛庁の予算の中を見れば、人件費、糧食費がたしか四五%程度占めておると思います。そうなりますと、現在のすき間は八十九億でございますから、一%で百三十三億になるわけでございますから、人事院勧告の五・七四%ということになると、一%は計上しておりましても四・七四%ということになると、到底そのすき間ではおさまり切らない。しかも同時に、しばしば政府は言明しておりますように、防衛計画の大綱の達成ということも当然やらなければならない。こういったようなはざまに立って、現実の問題としてこのGNP比一%の問題をどう扱えば国民理解が得られるのか、文民統制の実はどうするんだといったようなことで、私は現実の前で、今防衛庁長官なり官房長官がお答えしたように、大変関係閣僚が苦慮なさっておるというのが今日の姿であろうと、こう考えておるわけでございます。しかし、政府はしばしば一%は守りたいということを国会等でも言明しておりますから、そこらの問題もあるということで、大変苦しんでおるんだということはぜひ御理解をしていただきたい。  ただ、ここで明らかにしておきたいことは、一方、人事院勧告、これは今日の建前上、政府としては最大限尊重して、全般に目配りをしながら実施に向けて最大限の努力をするということ、これは当たり前のことでございますし、防衛費GNP一%の問題とこの人事院勧告取り扱いは区別する、原理原則が違う。人勧の処理は人勧の処理として、国政全般との中でやっていきたいと、かように考えているわけでございます。
  95. 原田立

    ○原田立君 それでは次に靖国神社公式参拝問題についてお伺いします。  靖国神社参拝の件では、去る八月十五日午後、総理並びに一部閣僚を除き靖国神社に公式な立場で参拝したことに対して、私どもは断じて許すことのできない暴挙である、到底認め得ないこととまず申し上げておきたい。参拝方式を変えたとはいえ、靖国神社が一宗教法人であることは間違いない話であります。また信教の自由を定めた憲法に抵触することも明らかであります。先ほど来の議論を通じますと、官房長官私的諮問機関であるところの靖国懇からの報告によって今までの方針を変えたんだということでありますけれども、こんな重大なことをいともやすやすと変えるということは、もう私どもはこれを断じて容認するわけにはいかない。先ほど同僚委員の方から靖国神社に対する公式参拝歓迎のお話がありましたけれども、私はもってのほかであるという考えを持っております。私人として、私人という立場で行かれるならば決してそれは問題ではないと思うのであります。だけれども、いやしくも公人という立場で、内閣総理大臣あるいは国務大臣、こういう立場で行くときには明らかに憲法に抵触する問題であります。これはどういうふうに御答弁なさっても理解しがたい問題であります。また内閣は現在の決められた憲法を遵守して、そうして立法、行政、司法等を行うというのが役目であります。その頂点に立つ人が公式参拝憲法違反のような行為を行うことは、これはもう重大な憲法を侮辱する行為である、こういうふうに私は思うのであります。  そこで、それらはこれからまたいろいろ議論するとして、こういうふうに憲法に抵触、違憲に相当するようなことを一体どうして今回実施したのか。その理由、根拠をお聞かせ願いたい。
  96. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 長い間にわたりまして、国民や遺族の多くの方々がぜひ靖国神社公式参拝をしてもらいたい、国のために命をささげて亡くなった方々に対し、公人か私人がわからない、あるいは私人でというような形で歴代内閣は大変御苦労いただいて、憲法との関係も十分検討してこられたところでありまして、その上に立ってそういう参拝の形式でこられた。各方面から、ぜひ戦没者追悼の中心的な施設である靖国神社公式参拝をしてもらいたい、こういう強い御要望のあったところでございます。それを受けとめさせていただきました。  さらに、今御指摘のように、憲法との問題がございますので、特にそこも十分念頭に置いて約一年間にわたりまして靖国懇の御討議をいただいてきたところでございます。二十回を超える会合を開いていただきまして、中にはいろいろな御意見がございました。報告書の中に併記されておりますように、法律学者の方々の御意見でございますとか、中にはクリスチャンであられる委員方々から、新しい施設をつくってはどうかといったような御提案などもこの懇談会意見の中には出てきております。それらも報告書の中に書かれておるところでございます。  いろいろな御意見がございました。そういう御意見をいただいた上で、この懇談会報告書参考にいたしまして、さらに政府自身でもいろんな角度から検討もしてきており、そして報告書を受け取った後も種々検討をいたしまして、そして先般行いましたような方式公式参拝をいたしますれば、公式参拝を行っても憲法が禁止する宗教的活動に該当しない、こういう判断をするに至りましたので、時間をかけて検討いたしました結果、八月十五日午後のような形での公式参拝にさせていただいたところでございます。十分検討いたしました結果、そういう結論に導いたことでございますので、ぜひ深い御理解を賜りますようにお願いを申し上げたいと思う次第でございます。
  97. 原田立

    ○原田立君 あなた、そう幾ら言われても理解なんかしませんよ。八月九日に閣僚靖国神社参拝問題に関する懇談会から官房長官あてに報告書が出された。一体この懇談会の性格は法律なり政令等に基づいているものなのか、それとも法律等には全く関係のないものなのか、ただ単なる長官の私的諮問機関なのか。その点はいかがですか。
  98. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 靖国懇は内閣官房長官決定により開催したものでございまして、その性格は行政運営上の会合、懇談会でございます。
  99. 原田立

    ○原田立君 国家行政組織法第八条には「第三条の各行政機関には、法律の定める所掌事務の範囲内で、法律又は政令の定めるところにより、重要事項に関する調査審議、不服審査その他学識経験を有する者等の合議により処理することが適当な事務をつかさどらせるための合議制の機関を置くことができる。」、こういうのがありますけれども、これに該当するということですか。
  100. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) いわゆる八条機関ではなく、私的諮問機関として懇談会を設けたものでございます。
  101. 原田立

    ○原田立君 そこが問題なんですよ。毎々言われております昭和五十五年の宮澤官房長官の時代に発表になった、違憲の疑いがあるから現在ではそういう行為はしないんだと、そういう政府統一見解がございましたね。それは予算委員会あるいは当委員会、いろいろな衆参の委員会においてそれが公式に鮮明にされたのでそれが定着化しているわけです。今回の場合あなたが私的諮問機関という立場での報告書で従来築き上げてきたそういう重要なものをいとも簡単に直すことができるんですか。そんなに物すごい力があるんですか、その報告書は。
  102. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 広く各界の御意見を伺って行政運営上の参考にさせていただかなきゃいかぬ、こういうふうに考えまして、この問題について慎重に検討いたしますために懇談会をお願いして報告書を出していただき、それを参考にして政府責任においていろいろ検討いたしました結果、態度を決めさせていただいたところでございます。  なお、宮澤官房長官時代に国会で申し上げております政府統一見解というものが今度変更になったということの中身につきましては、これは事柄上、法制局長官からお答えを申し上げたいと思います。
  103. 原田立

    ○原田立君 官房長官私的諮問機関の性格はいかなるものであるかということ、昨年四月十日の参議院予算委員会の席上で明確に私的諮問機関の性格について官房長官総務庁長官はちゃんと仰せになっていますよね。これは御記憶だと思うんですけれども、いかがですか。
  104. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) いわゆる懇談会など行政運営上の会合のあり方等につきましては、先生御指摘のように昨年、五十九年四月十日、本院予算委員会におきまして後藤田長官及び私から答弁申し上げたところでございます。そのことはよく心得ておるつもりでございます。その見解につきましては今日においても変更はありません。いわゆる行政組織法八条機関審議会と私的懇談会のあり方については十分厳格に区別して、活用と申し上げるとどうかと思いますが、それぞれに臨まなければいかぬ、政府考え方をお話を申し上げたところでございます。その考え方は今日も変わっておりません。
  105. 原田立

    ○原田立君 まず総務庁長官の答弁、去年の四月十日の参議院予算委員会の我が党の峯山議員に対する答弁です。前後をちょっと省きますけれども、要点だけ言いますと、「単なる行政運営上の意見交換懇談会等の場にとどめるべきものであります」と、こういう御答弁をなさっていますね。それから藤波官房長官は、いろんなことの話があって、「ただいま行政管理庁長官からお答えを申し上げました趣旨に沿いまして政府全体をよく指導してまいりたい、このように考える次第でございます。」、こういう御答弁をなさっている。  それで、資料がなかったのでちょっと先ほど省きましたけれども、五十五年十一月十七日、衆議院の議院運営委員会において宮澤官房長官が示された政府統一見解。   政府としては、従来から、内閣総理大臣その他の国務大臣国務大臣としての資格靖国神社参拝することは、憲法第二十条第三項との関係で問題があるとの立場で一貫してきている。   右の問題があるということの意味は、このような参拝が合憲か違憲かということについては、いろいろな考え方があり、政府としては違憲とも合憲とも断定していないが、このような参拝が違憲ではないかとの疑いをなお否定できないということである。   そこで政府としては、従来から事柄の性質上慎重な立場をとり、国務大臣としての資格靖国神社参拝することは差し控えることを一貫した方針としてきたところである。 これが五十五年の十一月十七日の宮澤官房長官政府統一見解。  こういう一連の動きから見て、今回あなたがおとりになった処置は、従来の方式を全部ぶち壊すような、そういうやり方だと僕は思うんです。いかがですか。
  106. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 今回の公式参拝につきましては、各方面からの非常に強い御要望がございまして、それを受けていろいろ時間をかけて慎重に検討してきたところでございます。従来の政府態度といたしましては、今御指摘のように宮澤官房長官時代の政府統一見解があって今日に至っておる。したがいまして、その統一見解を十分念頭に置きまして、各方面の御要望にこたえるということにするとすればどんなふうに対応すればいいかといろいろ検討いたしまして、憲法との関係を特に頭に置きまして、いわゆる公式参拝の様式に非常に深い思いをいたしていろいろ検討してきたところでございます。  先ほど来お答えを申し上げておりますように、宗教活動といった誤解を招かないというような形、あるいは信教の自由を侵さないというようなあり方、そういった憲法とのかかわり合いを十分念頭に置きまして、そして今回のような様式で公式参拝するということであれば憲法の違反にはならない。また個々の閣僚の信教の自由を確保するという意味でも、内閣総理大臣はこういうふうな形で公式参拝を行うことにいたしますということを各閣僚に御連絡を申し上げまして、考え方を同じゅうする閣僚は一定時間靖国神社の方にお願いをして、そういう形で公式参拝――それは八月十五日でございますから、ずっと一日じゅういろんな団体が拝殿の中でいわゆる宗教行事をやっておられますが、その中をずっと通って閣僚が本殿まで行って一礼するという形のものや、あるいは社殿で一礼するという方式や、いろんなことも頭に置きまして、さらにまた従来のような参拝様式で、そして私的な参拝をするというふうにお考えになる方はそういう方法も当然あるわけだし、といったことをそれぞれの閣僚の自由な御判断にゆだねまして、内閣総理大臣はこんなふうな形で公式参拝をいたします、こういうことにいたしたところでございます。各方面、特に憲法とのかかわり合いを十分頭に置いて政府において検討をいたしました結果、こういう形になった次第でございます。  なお、統一見解としてお示しをいたしてまいりました宮澤官房長官当時のものと今回とりました態度との関係につきましては、多分に法律的な問題でございますので、先ほど申し上げますように、法制局長官からお答えを申し上げたいと思いますけれども、これで全部ぶち壊しにするという意味ではなくて、従来の統一見解を十分念頭に置いて検討をさせていただいた、こういうことをぜひ御理解をいただきたいと思うのでございます。
  107. 茂串俊

    説明員(茂串俊君) あらまし官房長官から御答弁を申し上げたわけでございますが、私それに若干補足をいたしまして御説明を申し上げたいと思います。  御指摘の昭和五十五年十一月十七日の政府統一見解におきまして、公式参拝につきましては「違憲ではないかとの疑いをなお否定できない」ということを述べておるわけでございますが、これは先ほど官房長官からも御答弁申し上げましたように、この閣僚靖国神社公式参拝の問題というものは国民意識と深くかかわるものでございまして、それが憲法の禁止する宗教的活動に該当するか否かを的確に判断するためには、これに関する社会通念がどうであるかということを見定める必要があるわけでございますが、何分にも法理の一点だけではなかなか結論が出ない問題であるということでございまして、いわば公式参拝全体をグローバルにとらえまして合憲とは断定できないといったような見解を申し述べてきたわけでございます。  今回、先ほども官房長官からお話がありましたように、いわゆる靖国懇から報告書が出まして、この報告書参考にいたしましていろいろと検討をいたしました結果、この公式参拝の合憲、違憲を判定する一番基本的な解釈の基準と申しますのは、津の地鎮祭最高裁判決のいわゆる目的効果論でございます。目的効果論に当てはめまして合憲にたえるということでなければ、これは実施がもとよりできないわけでございますので、その点を十分に検討いたしました結果、今回の参拝は確かに靖国神社が宗教施設である以上、宗教とのかかわり合いがあることは否定できないにしても、第一に国民や遺族の多くが靖国神社戦没者追悼の中心的施設であるとし、同神社において総理閣僚戦没者の追悼を行うことを望んでいるという事情を踏まえまして、専ら戦没者の追悼という宗教とは関係のない目的で行われるものでありまして、しかも神道儀式によることなく、かつ追悼の行為としてふさわしい方式によって追悼の意を表するということにかんがみてみますると、客観的に見て今回の参拝が宗教的意義を有するとか、あるいは靖国神社に対する援助、助長の効果を有するとか判断されることはないという結論になりまして、そうして先ほど申し上げた判決に照らしましても、今回の参拝が違憲ということにはならないという確信を得ましたので公式参拝に踏み切ったというのが、いわば我々の立場からする見解でございます。
  108. 原田立

    ○原田立君 法制局長官、あなたの今の話の中に追悼というのがありましたね。追悼と公式参拝とはどう違うんですか。
  109. 茂串俊

    説明員(茂串俊君) 追悼と申しますのは、これは国語辞典的に申しますと、死者をしのび、悼み、悲しむという行為でございまして、これ自体が宗教的な意義を有するということではないと我々は考えております。
  110. 原田立

    ○原田立君 法制局長官は憲法を守る番人である、ちょっと言葉はおかしいけれども、憲法を守る重要な立場にある人だと、こういうふうに私は認識するけれども、間違いありませんね。
  111. 茂串俊

    説明員(茂串俊君) 大変おこがましい、自分のことでございますから言いにくいことでございますけれども、私の所掌は、内閣にありまして法律的な解釈とかあるいは見解というものにつきまして、内閣に対しいろいろと御意見を申し上げるという立場でございます。
  112. 原田立

    ○原田立君 おこがましいですからなんて、そんな遠慮する必要はないんですよ。あなたの立場は、憲法に照らしてどうあるべきかということを厳正な立場で判断して、内閣に言うべきでしょう。おこがましいですからなんてそんなへっぴり腰の態度はおやめになった方がいいですね。  それでお聞きするんですけれども、前の角田法制局長官のお話のときは、はっきりと違憲の疑いがあるということをもう五十五年のときに言っています。それから宮澤官房長官談話が出てきている。今回茂串法制局長官は、これは合憲であるというふうな判断をなさっている。一体、政府統一見解というふうな非常に重要な事柄を私的諮問機関報告書を得て、それを見て判断して、それで合憲である。人間がかわったらば、報告書がそういうふうに出てきたらばいともやすやすと変えるということは、行政上そういうことは許されるんですか。
  113. 茂串俊

    説明員(茂串俊君) いともやすやすと変えたわけでは決してございませんで、前々からこの点につきましては、我々といたしましても内々いろいろと検討いたし、またどのような形であれば公式参拝ができるかということも内々としては検討しておったわけでございますけれども、いずれにしても、先ほどから申しますように、国民意識に深くかかわる問題でありますだけに、我々だけの立場でその前提となる与件と申しますか、そういったものについての判断を下すわけにはまいらないということで、先ほどから申しましたように、なお合憲であると断定はできないという立場を維持しておったわけでございます。
  114. 原田立

    ○原田立君 ちんぷんかんぷんでよくわかりませんね。要するに私の言いたいのは、十月十四日の官房長官談話で述べている、従来の統一見解変更するものであるとの意味でありますけれども、その限りにおいては、政府憲法二十条の解釈を変更したと受け取ってよいのか、あるいは社会通念、国民意識に対する政府判断を変更したのみで、憲法二十条の解釈を変更したものではないと、こう言うのか、一体どっちなのか。また、法制局は政府法律解釈の番人として憲法解釈の元締めであるはずであります。それが政治的判断に左右されては務めを果たし得ない。  しかし過去、法制局がたしか昭和二十七年ごろ政府憲法解釈を変更した事例が何かあったように問いておりますが、皆その時の政府の政治的判断、政治的決定が優先して、それに伴って法律的解釈が後から追認してきたと思う。今回のそれも社会通念に対する判断の変更政府自身が行っている。かかる判断の変更は総選挙の結果があるいは国会に判断を求むべきで、一内閣が、しかも私的諮問機関意見を取り入れて行うなどというのは越権行為である。こういうふうに思いますけれども、法制局長官いかがですか。
  115. 茂串俊

    説明員(茂串俊君) 今回の総理等の靖国神社公式参拝の問題の処理につきましては、政府はこれまで公式参拝をいわばグロー・バルにとらえまして、違憲とも合憲とも断定していないが、違憲ではないかとの疑いを否定できないということで、断定的な結論を出していなかったのでございますが、今回のような公式参拝につきましては、靖国懇等の報告参考といたしまして、そして鋭意検討した結果、社会通念に従って判断すれば憲法二十条三項に抵触することにはならないという結論を得るに至ったということでございまして、憲法二十条三項の解釈そのものを変更したものではございません。
  116. 原田立

    ○原田立君 官房長官総務庁長官にも聞くんですけれども、先ほど両大臣が去年の参議院予算委員会でこういう私的諮問機関においては意見の開陳等はあってもそれ以上のものではない、そういう御答弁をなさっている。藤波官房長官は管理庁長官の言うとおりである、それを十分徹底します、こういうふうに御答弁なさっている。今回のこの報告書は、午前中野田委員からも指摘があったけれども、この第八の「終わりに」「政府は、以上の懇談会意見検討の上、閣僚靖国神社公式参拝について適切な措置を取られたい。」、ここまで踏み込んだものが出たらば、それはちょっとおかしいんじゃないかと思うんですけれども、いかがですか。まずこれは総務庁長官に聞きましょう。そして後、官房長官
  117. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 国家行政組織法の第八条機関、それといわゆる私的懇談会、これの違いの件でございますが、これは私が予算委員会でお答えをしたとおりでございます。一方は国の機関として合議制の意思決定があって、公の権威を持って答申をせられるものでございますから、政府としてはそれを最大限に尊重するという立場に置かれるわけでございます。一方いわゆる懇談会の方は、これは行政運営上の必要があって内閣あるいは各省庁で何らかの方針を決めたいというときに、役所の中だけでなしに広く国民各層の専門的な立場の方の意見を聞いてそれを参考にして政府が意思の決定をするということも当然あってしかるべきであろう。そしてむしろ、私はあのときの答弁でも申し上げているように、今日のような時代には広く各方面の意見を聞くという、懇談会というものは一概に否定してはいけないんだ、これはあっても差し支えないんだ、こう申し上げておるんですが、ただ問題は、いわゆる八条機関といわゆる懇談会とがややともすれば混同せられておる、これだけははっきりとして区別をしていかなければならぬ。そういうことで、既に昭和三十六年に行政管理庁から各省にこの点については注意を喚起し、閣議等でも発言をし、さらにまた五十七年には当時の行管庁長官からも、国会等でいろんな御意見があった結果だと思いますが、改めて各省に注意を喚起したわけでございます。そこで、今回この問題について官房長官がこの会議を開かれた、いわゆる懇談会はこの基本線に沿って十分配慮しながらやっていただいたものと、かように私は考えておるわけでございます。  そこで、御質問の重要な憲法の解釈等にわたる問題をこういう懇談会でやるのはけしからぬじゃないか、これは私は御意見としては承らしていただきたいと思いますが、しかし私も閣僚として公式参拝をいたしました。しかし、私はその際に、何といいますか、お国のために命をささげられた方々に追悼の誠をささげ、そして平和を祈念する、こういう立場で参拝をしたわけでございます。私は率直に言って、それによって憲法二十条三項に定める特定の宗教なりあるいは国家神道なりを鼓舞激励する、こういったような考え方は私には当たっておりません。私は今回のようなやり方でやるならば、これは憲法二十条の違反にはならない。なぜならばと言えば、私は憲法の解釈というものはすぐれて憲法学者等の意見を十分参考にしながら政府としては考えなきゃならぬ、これは基本であることは間違いありませんけれども、日本のような硬憲法の解釈というものは、その文言の解釈の範囲の許される限度内であることは当然でございますが、その限度内における解釈は、社会通念あるいは国民意識の変化、こういうものを踏まえながらいわば社会学的な立場、これも加味してフレキシブルな解釈で差し支えない、私はさように考えておるんです。しかし、今回のようなやり方であるならば、まさにこの靖国神社というものは、国民の大部分の人あるいはまた遺族会の方々は追悼の場として靖国神社というものを中心的な施設であるとお考えになっているのが、これは今日の社会通念ではないのか。ならば、今回のようなやり方目的、効果といったようなことを考えて参拝するならば、公式参拝といえどもこれは憲法違反にはならない、私はさような考え方でございます。
  118. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 先ほど申し上げましたように、いわゆる八条機関答申と、私的な懇談会でいろいろ意見が述べられる、そのことを参考にするということとは明らかに区別していかなきゃいかぬということを昨年も国会で申し上げておるところでございます。その考え方は変わっておりませんということも先ほど申し上げたとおりでございます。一年にわたりまして靖国懇が行われてまいりまして、林座長あるいは林座長代理のところで、そろそろこの懇談会の終わる時期が来ている、ついては、なるべく私どももこの二十一回にわたる会合にはできるだけ出席するようにいたしてまいりましたので、いろいろ御意見は耳で聞いてきたところでございますけれども、政府がこの問題を判断する際に判断しやすいように二十一回にわたる懇談会意見が出されたところをひとつまとめよう、こういう御相談ができまして、そこで報告書がつくられるということになった次第でございます。  最後のところで、かくかくしかじか政府として公式参拝の方途を探ることがいいと思うというような表現になっておりますことは、いろいろ事柄によっては中身が併記せられておりますけれども、こういうことについては懇談会の大勢がそういうところに赴いだということを報告書の中で意思表示せられたもの、こういうふうに受けとめておるところでございます。しかし、これは八条機関審議会と違いまして、政府としてはいただく意見政府行政運営参考にしていくということでございますから、だからということではなくて、この報告書のそれぞれ書かれております併記された部分なども十分参考にして政府態度を決めるということにいたしたところでございます。懇談会報告書はあくまでも参考にさせていただいて、そして政府責任において検討決定したということにいたしておるところでございますので、懇談会報告書の書かれました事柄が越権であるというふうには考えていないところでございまして、これは受け取る政府の方がどう考えるかというところと十分関係のある話だと思いますので、そのようには理解していないというふうに申し上げたいと思うところでございます。
  119. 原田立

    ○原田立君 総務庁長官ね、憲法二十条には「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」、これが一項ですよね。二項には「何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。」。第三項が「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。」、「国及びその機関は」と。  あなたも、国務大臣として、国の機関の一つでしょう。それだったら公式参拝するというのはこれに違反するんじゃないですか。先ほどは全然そんなことは違反しないんだという結論のようにお聞きしたけれども、明らかにそれはおかしいんじゃないかというふうに私は指摘したいんですが、いかがですか。
  120. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 今御指摘のように、憲法二十条の第一項は信仰の、自由を保障しておる。第二項は宗教行事への参加はだれにも強制せられない、こう書いてあります。私はだれにも強制せられておるつもりはございません。第三項は、宗教活動はいけないと書いてある。したがって私は、先ほど申したように、今回のようなやり方であるならば、それは特定の宗教なりあるいは国家神道を鼓吹するということは毛頭ない。したがって宗教活動には該当しないんだ、したがって私は憲法違反には該当しない、かようにお答えしておるわけでございます。
  121. 原田立

    ○原田立君 もう時間ですからこれでやめますけれども、後藤田長官の意見も、ちょっと言葉は悪いけど、詭弁みたいなことで受け入れがたい、これだけ申し上げて終わります。
  122. 内藤功

    ○内藤功君 私は、まず最初に、去る八月十二日に起きました日本航空のジャンボ機の墜落事故に関して官房長官にお伺いしたいと思います。  今回の事故は世界最大の悲惨な事故であります。そこで、この事故の真の原因を追求することが非常に重要なことであると思いますが、政府としてのこの事故に対する基本的な原因究明のお立場をまず表明していただきたいと思います。
  123. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 委員御指摘のように、前代未聞の世界最大の航空機墜落事故が起きましたことはまことに遺憾のきわみでございまして、航空行政を進めておる立場の政府といたしましても、関係者方々に深い御同情を申し上げ、またお亡くなりになりました方々に対しましては心から御冥福をお祈りしたい、こういう気持ちでいっぱいでございます。  航空事故調査委員会は、八月十二日、事故発生の通報を受けまして、直ちに委員長及び首席調査官等十三名を現地に派遣いたしますとともに、現場調査団を編成いたしまして、海と山にまたがる広範囲の現場調査に当たっておりますが、政府といたしましても、日航機事故対策本部を設置いたしまして独力な支援態勢をとっているところでございます。  現在までに、関係機関と連携して主要な機体残骸調査を終え、機体を搬出する段階に至っておるところでございます。これとあわせまして、事故解明に重要な役割を果たす飛行記録装置及び操縦室内音声記録装置の記録読み取りを急いでいるところでございます。  政府といたしましては、このたびの航空事故の原因の徹底的な究明を図り、ひいては再発防止に資していくようにしなければいかぬ。こういった非常に残念な事故が二度と起こらないようにあらゆる対策を講じ、航空行政を進めていかなければならぬと思いますが、そのためにも原因の解明を急がなければならぬ、こういうふうに決意をいたしておる次第でございます。
  124. 内藤功

    ○内藤功君 その事故調査委員会の実情でございますが、現在の委員及び事務局職員の人員はどのくらいか、また年間予算はどのくらいか。それから、それに関連をして年間の航空事故件数は、最近数年間で結構ですが、どのくらいか。長官おわかりでございましょうか。
  125. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 航空事故調査委員会は、委員長委員四人、うち非常勤が二人でございます。及び事務局職員二十三人、計二十八人をもって構成されておりまして、六十年度予算額は二千七百万円でございます。委員会の発足以来逐次人員の充実を図るとともに、調査機器の購入、整備を行ってきております。  航空事故原因の究明は、航空事故の再発防止に重要な役割を果たすものでございますので、今後とも業務の遂行には万全を期する所存でございますが、なるべくならば、こういうことでございますから多い方がいいということではなくて、少ないことを願うわけでございますけれども、これが人員が不足をしておってなかなか事故の原因が解明されないとか、あるいは予算が少ないのでなかなか思うようにいい結論が出ないというようなことのないように、必要があればそれらの努力を重ねまして所期の目的が達成されるようにしていかなければならぬ、こういうふうに考える次第でございます。
  126. 内藤功

    ○内藤功君 今、私は年間の事故件数を聞きましたので、それもあわせてお答えいただきたい。  今、官房長官は、いわゆる事故調の予算年間二千七百万円と言われた。この二千七百万円というのはいかに少ないかをちょっと説明してみましょう。  アメリカの連邦航空局、私の調べでは、このFAAはそれ自体で独自に八十機ほど飛行機を持っております。ボーイング707を使って無人の墜落実験をやっている。我が因の事故調査委員会は所有機ゼロであります。運輸省航空局には七機ありますけれども、これは無線の機能をチェックするための検査機であります。このアメリカの航空事故調査体制とは比べものにならない。二千七百万円でどんなことができるかといいますと、実際は年間約四、五十件ある大中小の航空機事故の現地調査費ですね、それから書類の作成費、これでもうなくなっちゃうんですよ。航空機の材質検査だとか実験、それからエンジン等のオーバーホール、こういう費用は出てこない。どうやってこれでお客さんの命が守れますかね。こういう予算をしかも年々減らしておるんです。  実際どうしているかというと、今度の場合、いゆわるボイスレコーダーの分析は羽田の日航の中でやっています。事故調査委員会には独自の機材がないという理由で日航、つまり過失の当事者ですよ、加害者ですよ、そのところでやっているんです。しかも金も出さしているんです。こういう実態なんです。  私はこういう実態をぜひ認識していただきたい。今度も日本航空やボーイングに費用を出させてやるということになりかねないんですね。どうしたら一体いいのか。これはもう思い切ったスタッフの増員、人間の増員と予算の増額を思い切ってやらないと、あなたは冒頭に立派なことを言われたが、それが裏づけられないですね。政治はそれをやらなくちゃいけない。航空労働者あるいは航空評論家の人たちもみんなこれを指摘しておるわけです。いかがでございましょうか、私の指摘に対して。
  127. 藤冨久司

    説明員藤冨久司君) 航空事故調査委員会の事務局長でございますが、先生ただいまおっしゃいましたように、最近の事故件数を見てみますと平均的には年間約四十件でございます。予算年間、六十年度が二千七百万ということでございますが、過去の大きな事故がありましたときには、政府全体としての予備費を出していただいた実績もございます。  ただ、先ほどおっしゃいましたいろいろと検査等につきまして日航の機械を使うというケースもないではございませんが、その場合にも航空事故調査委員会におきます調査官が出向いて実際にその操作をいたしているということで、公正さを疑われるようなことは過去全くございません。
  128. 内藤功

    ○内藤功君 予備費を使ったことがあるんですか。予備費を使ったことがないという答弁を衆議院の運輸委員会では航空局はやっていますよ。どうなんですか。
  129. 藤冨久司

    説明員藤冨久司君) 実績はございます。近いところでは四十六年の雫石の事件の際に予備費を……
  130. 内藤功

    ○内藤功君 四十六年でしょう。
  131. 藤冨久司

    説明員藤冨久司君) はい。
  132. 内藤功

    ○内藤功君 もう十四年前だね。  官房長官、最後にこの点についての御所見を伺いたい。
  133. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 事故調査委員会では全力を挙げて事故調査の究明に当たっておると思いますし、非常に人員が少ないとか予算が不足するというような事態があれば、これは事柄の性格上そのことによって事故調査の究明というのがどうでもいいということにはならないわけでございますから、これは今委員が御指摘になられましたように、二度とこういう事故が起こらないようにということの意味、お客さんの生命の安全を期するという非常に重要な意味合いを考えまして、所期のこの委員会の目的が達成されるようにしていかなければならぬというふうに考えておるところでございます。  どのような状態になっておるかということに十分私ども気をつけまして、もし人員、予算が不足だというようなことで所期の仕事に支障を来すというようなことがあれば、そのようなことのないように配慮していきたいと思いますが、委員会としても精いっぱいやっておる、こういうことでございますから、今のところそれで十分機能は果たしておるのではないかというふうに考えておりますが、念のために申し上げますが、そのことで所期の目的が達成し得ないというようなことであれば、十分配慮してまいりますということを私からお答えを申し上げておきたいと思います。
  134. 内藤功

    ○内藤功君 日本航空の事故で、その事故を起こした日本航空の中でその機材、施設、電源を使ってボイスレコーダーの分析をやっている。これ自体が私は委員会の公正を疑わせることだと思うんですね。今の御答弁をしっかり実行していただくことを要望しまして、次の質問に入ります。  そこで靖国問題なんですが、それに入る前に防衛庁長官にお伺いをしたいんです。先般NHKの政治討論会を私も拝聴させていただきました。そこでも問題になりましたが、アメリカの議会がここのところ次々と上院、下院あるいは合同会議を開きまして我が国防衛力の増強に関する決議をやっておる。最近の決議では、米大統領に対して来年の三月末日までに報告書の提出を求めている。これはもう私は、我が国の主権及び内政に属する事項、財政に関する事項についての重大な干渉だと言わざるを得ないと思うんですよ。長官の御認識とこれに対する姿勢をまず伺いたいと思います。
  135. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 今月初め米議会で国務省の予算権限法が成立いたしまして、この中で米議会といたしまして、我が国に対して一層の防衛努力の期待が述べられたことは御指摘のとおりであります。米議会は従来からも種々の形で我が国防衛努力に対する期待の表明を明らかにしておりますけれども、今回のもその一つであろうと思っております。  安全保障条約上、アメリカは我が国を有事の場合に我が国とともに共同対処することの業務がありまして、その義務、コミットメントを累次表明している国でございますので、その国の議会が我が国防衛力整備につきましていろいろな形で関心を持ち、そしてまた期待を表明したりすることは極めて当然の成り行きではないだろうかなと、こう思っております。しかし、私たちとしましては、我が国防衛力整備というものはそういうアメリカ・サイドの期待とか、いろいろな関心は念頭には置きますけれども、あくまでも我が国防衛の話でございますので、我が国の自主的な判断で当然やるべきものであり、従来もそういたしてまいりました。またアメリカの議会はいろいろなことを表明されますけれども、アメリカの政府の、行政府の方はこの私たちの態度につきましては十分御理解いただいておりまして、前回私たちが訪米いたしましてワインバーガー長官以下政府関係者と会談いたしましたときも、私たちの意見表明、つまり我が国防衛というのは我が国が自主的に決定するものであるからという点につきましては向こう側も十分に理解いたしておるところでございます。
  136. 内藤功

    ○内藤功君 ついに内政干渉、主権侵害という感覚をこればっかりも持っていらっしゃらないということがわかりまして私は非常に残念な気がするんですね。これは単に希望じゃないですよ、関心だけじゃないですよ。シーレーン防衛を中心にどのように日本が防衛力増強をやっているか、その状況報告しろと、そこまで言っているんですからね。私は、この点は、あなたのお言葉にもかかわらず、明確な内政干渉の一つであると思う。この報告書が出た後は、今度はこうしろ、ああしろという細かい議論がどんどん出てきます。そういう点で今までの日本に対する防衛力増強の発言とは非常に違った質を持ったものだと私は思います。日本の軍備は日本が決めるということを言いますけれども、それは口で言うのは簡単ですけれども、こういうもの一つ一つに対して厳しく対処していくということが私は必要だろうと思うんですよ。  さて、私はもう一点お伺いしたいのは、きょうは靖国神社のいろんな御議論を私も拝聴しておりました。防衛庁長官は自衛隊の指揮監督をされる地位にあられるわけですが、我が国の自衛隊と靖国神社関係をお伺いしたい。  我が国の自衛隊は、靖国神社に対する部隊としての参拝を今までしたことがあるのか、計画をしていることがあるのか。  またもう一つは、関連をして、我が国の自衛隊の内部の教育、特に精神面の教育において靖国神社はどのように取り扱いをされておるのか、これからはどうなのか。この点をまず伺っておきたいと思うんです。
  137. 友藤一隆

    説明員友藤一隆君) 靖国神社への公式参拝ということでございますが、自衛隊の部隊としましては、今まで参拝したことはございませんし、またそのような予定もございません。
  138. 大高時男

    説明員(大高時男君) 自衛隊におきます靖国神社に関する教育でございますが、体系的な教育というのは一切行っておりません。  ただ、精神教育の一環といたしまして、数次の戦争において一命をささげられた戦没者に対しまして人間の自然な心情として遺徳をしのぶとか、あるいはまた追悼の念を抱いて平和の重みをかみしめるとか、こういったものを配慮させる、例えば終戦記念日の黙祷というようなことでございますが、こういったことについては話をするという状況でございます。
  139. 内藤功

    ○内藤功君 そこで、法制局長官に伺いますが、先ほど来の御議論で、昭和五十五年十一月十七日の政府見解というものは、公式参拝憲法違反の疑いを禁じ得ない、法律家の言葉で違憲の疑いを禁じ得ないというのは違憲だということに私は非常に近いと思うんですね。違憲かどうかわからないというんじゃないんですよ、これは。違憲の疑いというのは違憲ということに近いと思うんですね。これはあなたもおわかりだろうと思うんです。  もう一つは、その見解をことしの八月十四日の官房長官談話なるものでは、このような方式、つまり一礼をするという方式であれば憲法に違反しない。これは変わった。どうして変わったのか。同じ法制局です、茂串さんも五十五年のときおられたはずですね。あなたが反対したということは聞きません。同じ人なんです。どうして変わったのか。憲法の解釈を通じて、政府に対して役に立っているお役所としてこんなふうにくるくる変わるんじゃ、こんなふうに大事な問題で百八十度変わるんじゃ権威にかかわりますよ。これは率直に言ってどうして変わったんですか。法律家の法律解釈、しかも憲法解釈がくるっと百八十度変わるにはだれをも納得させる、憲法学者を含めただれをも納得させる根拠がなきゃなりませんよ。それは一体何なんですか。道理なんですか、数なんですか。道理が間違っていたので直したというんですか。じゃどこの道理が間違っていたのか。それとも数なのか。数なら、数はしょっちゅう変わりますからね。きょうの多数はあしたは少数になります。数なのか、どっちなんですか。そういう問題。一体どこで変わったのか、懇談会、靖国懇の意見が出たから変わったのか。そんなに権威のあるものなのか。それともかしわ手をぱんぱんと二回やるのをやめたから、それで違憲なものが合憲に変わったのか。私は一番最後のことだと思うんですよ。かしわ手が二回鳴ったときは憲法違反だったが、それをやめて玉ぐしの奉てんも自分でやらない、おじぎだけにした、深々と頭を下げられた、それで合憲になる。結局、突き詰めてくるとそこになるんじゃないか。私はこの見解が出てからずっといろいろ考え、また何回も読んでみたけれども、結局そこしかないんじゃないかと思うんですね。だれにでもわかるようにどうして変わったのか、先ほどからいろんな質問があったけれども、どうして変わったのか、そこのところをわかりやすく、しかも法律家らしく御説明願いたいと思います。
  140. 茂串俊

    説明員(茂串俊君) これは委員に申し上げるまでもなく、憲法二十条三項の宗教的活動に該当するかどうかということの判断基準は、津の地鎮祭に関する最高裁判決におきましてその基準が明示されておりまして、いわゆる目的効果論でございますが、行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助、助長等になるような行為が、これが国の宗教的活動として禁止されるものである。それからまた、ある行為がこの宗教的活動に該当するかどうかを検討するに当たっては、その行為の外形的側面のみにとらわれることなく、諸般の事情を考慮し、社会通念に従って客観的に判断すべきものであるとされておるわけでございます。  そこで、先ほど御指摘のありました昭和五十五年の十一月十七日当時における政府統一見解の当時におきましては、この津の地鎮祭に関する最高裁判決が既に出ておったわけでございます。そこで今申し上げましたようないわゆる目的効果論に照らす場合の社会通念に従って客観的に判断すべき必要があるわけでございますが、事柄が国民意識に深くかかわるものであるだけに、法理の一点だけで判断をするというわけにはまいらない問題であるというような観点からあのような統一見解を維持しておったわけでございますしかるに、今回いわゆる靖国懇の報告書が出てまいりまして、そうしていろいろなことを言っております。そこにはいわゆる社会通念を反映している点もいろいろとございまして、そういった点も参考とし、そうして我々また独自に考えました結果、今回行われましたような公式参拝であれば、今申し上げたいわゆる憲法二十条三項の解釈基準であるところの目的効果論に当てはめても、いわゆる宗教的意義を有することもないだろうし、また援助、助長的な効果もないであろうという、そういう判断を下しまして、そうして今回の参拝が違憲でないという結論を出したわけでございます。
  141. 内藤功

    ○内藤功君 そうするとやっぱり私の言うとおりじゃないですか。最高裁の判例をもとにしておる。最高裁の判例は助長とか援助とかいう目的効果があったかどうか、そこにあなたは着目している。それでこの前は、五十五年のときはそれは憲法違反であった。今度の場合は憲法違反でない。どこが違うかというと結局、私はかしわ手のことを言いましたが、かしわ手を打たないで社前で、または本殿ですか、本殿において一礼をした、そこの違いだけじゃないですか。そうですね。そこの違いだけでしょう。それでもって合憲か違憲かが違ったということなんじゃないですか。そう承っていいですか。
  142. 茂串俊

    説明員(茂串俊君) 先ほど申し上げましたが、「違憲ではないかとの疑いをなお否定できない」という昭和五十五年十一月当時の見解でございますが、これは公式参拝というものをグローバルにとらえまして、そうして断定的な結論を出すことはできない、あるいはしないというような見解のもとで、そして政府としては公式参拝を差し控えるというところにいわばポイントがあるような、そういった統一見解であったわけでございます。  今回、先ほども申し上げましたようにいろいろと検討しました結果、これは先ほどからほかの委員の御質問に対しても申し上げておりますように、今回の参拝は、靖国神社が宗教施設である以上、宗教とかかわり合いがあることは否定できないけれども、国民や遺族の多くが靖国神社戦没者追悼の中心的施設であるとして、また同神社において総理閣僚戦没者の追悼を行うことを望んでいるという事情を踏まえまして、そうして専ら戦没者の追悼という宗教とは関係のない目的で行われるものであり、しかも方式としましては、神道儀式によることなく、かつ追悼の行為としてふさわしい方式によって追悼の意を表するというようなやり方、態様の参拝方式でございますが、こういったやり方であれば、先ほど申し上げましたように、目的効果論に照らしましても、目的が宗教的意義を有するとか、あるいは効果が宗教に対する援助、助長等になるといったような行為には当たらないという判断をいたしたわけでございまして、決して、ただかしわ手を打たなければ合憲になるというその一点だけでそういった判断を下したわけでは毛頭ないわけでございます。
  143. 内藤功

    ○内藤功君 いや、やはりかしわ手を打たないから合憲になったんですよ。そのほかのこともと言うけれども、そのほかのことはいわゆる理屈なんですね。あぶくみたいなものなんです。その本当の理屈は一つだけなんです。かしわ手を一打たない。そのことをいろんな装飾をつけて言っているだけの話だと私は思いますよ。  それで、総理資格公式参拝をして一礼したということが宗教的活動になる、ここのところが問題なんです。かしわ手があったかなかったかということはどっちでも同じことなんです。  靖国神社というのは、昭和十六年に当時の靖国神社宮司の鈴木孝雄陸軍大将が、信行社という陸軍の将校団の機関誌があるらしいですが、それにこう言っておりますよ。だれを祭ってあるのかという問題について、「遺族の方は、其のことを考えませんと、何時まで自分の息子という考えがあっては不可ない。自分の息子じゃない、神様だというような考えを持って戴かなければならぬのですが、人霊も神霊も余り区別しないというような考え方が、いろいろの精神方面に間違った現われ方をしてくるのではないかと思うのです。」「自分の一族が神になっている。」「という考えは勿論もっておられるに相違ありませんが、一方に親しみという方の点が加わるものですから」「お祭をしている間に平気で話をしているというようなのもあります。」、遺族がですね。「確かに、自分の一族の方が神様になっておられるんだという頭があるからだと思います。そうでなく、一旦此処に祀られた以上は、これは国の神様であるという点に、もう一層の気をつけて貰ったらいいんじゃないかと思います。」、こういうふうに言っておりますね。「九段の母」という歌がありますが、あれは実際に合わない。自分の息子じゃない、国の神様だと。  私はこれ以上引用しませんが、本当にこれがこの靖国神社の宮司を務められた方の言っていることです。戦後四十年たったけれども、この考え方は変わっていないと私は思うんですよ。宗教施設でしょう。宗教施設の前に行っていわゆるかしわ手を打って拝んだか、あるいは最敬礼あるいは深深とおじぎをなさったかということにかかわりなく、この靖国神社の前で頭を下げたということ自体で宗教的活動と見るのが私は、法制局長官あなたの任務じゃないですか。さっき質問ありましたけれども、あなたは一体、内閣からぜひこれを合憲にしてもらいたいんだけれどもその理屈をつくってくれ、こう言われて仕事をするんじゃないでしょう、失礼だけれども。そうじゃなくて、内閣の気に入らなくてもこれは憲法の筋道からいって、憲法の条文と解釈からいって、こうでございますと言うのが法制局長官でしょう。おかしくないですか、自分で。法律の専門家としてこれ矛盾を感じないですか、率直に聞きたいんです。
  144. 茂串俊

    説明員(茂串俊君) いろいろとお話がございましたが、私は私の立場で十分に検討いたしまして、そして私の信念に基づく結論内閣にもまた官房長官にも申し上げたわけでございまして、決して政治的に内閣から要請を受けて無理に法律構成をつくるとかいうことは一切しておらないつもりでございます。
  145. 内藤功

    ○内藤功君 官房長官に伺いますが、この憲法関係が一番大事だと、あなたはそういうように思ったから一年間かかって何十回ですか、懇談会を開いてそれでやったと、こう言いましたね。その中の憲法学者は反対したんでしょう、憲法違反の疑いがあるということで佐藤功さんですか、それから芦部さん反対。それから八月十四日には例えば三十六人の憲法学者、靖国神社公式参拝問題についての憲法研究者の見解、この中には上智大学の相沢久さん、立教大学の池田政章さん以下名前を見れば、今各大学の憲法の講座を持っている一流の先生ですよ。皆で三十六名。その方がサインしてこの見解官房長官のところに秘書官を通して提出しているわけですね。  社会通念とか国民感情とか言うけれども、それは憲法解釈の問題なんだ、これはすぐれて憲法解釈の問題なんだ。それについて憲法学者のこれだけ多くの人が反対しておる。むしろこの方が道理なんですよ。この方が社会的通念なんですね、憲法学者の言っている方が。社会通念とは道理だと書いてあります。法律学辞典を見ると、社会通念というところには常識と書いてある。常識というのは、さっき私が聞いたように、多数の人が靖国神社公式参拝を求めている、それだけで常識になるんじゃないんですね。それが常識になるかならないかはもう一つ道理が必要だと思うんですね。この憲法学界の多数の反対、これをどう見るか。  それから宗教界ですね。国家神道以外のキリスト教にしても、あるいは戦前では大本教ですか、ひとのみち、これが大変な弾圧を受けました、刑法と治安維持法で。それから創価教育学会というのもあるでしょう。たくさんこういう宗教団体がやられたですね。そういうところから、苦い経験から今の宗教団体は非常にこれに厳しい批判を持っていますよ。どうしてこういう強力な憲法学界、宗教界に反対があるのにかかわらず、公式参拝実現が社会通念だ、国民の意識だと、こう言えるんですか。国民の意識をもって横暴にもこの反対意見を圧殺していると言わざるを得ないと私は思うんですね。にもかかわらず、これを社会通念だと称してやった。どうしてそんなに急ぐのか。ここらあたりの点について官房長官どうお考えになるんですか。
  146. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) ここ数年来、国民の皆さん方の中のいろいろな団体やあるいは遺族の方方などを中心としたいろいろな関係団体などから、ぜひ公人としての立場で戦没者に対して追悼の誠をささげるべきだという強い御要請がございました。先ほど来もお答えを申し上げておりますように、全国の県、市町村の議会などでも随分この問題が取り上げられまして、非常にたくさんの議会から決議が行われて、政府にもその旨が寄せられてきておるところでございます。随分多くの方々がこの問題について非常に熱心に御要望になっておられるという事実を把握いたしてきたところでございます。  一方、今委員御指摘のように、特に、わけても憲法問題という認識を私ども持ってきておりまして、したがいまして、歴代内閣といたしましても、いろいろ憲法との関係に苦慮しながらきたことであろうと、歴代官房長官のお気持ちなどもよく推察できるところでありまして、頭にあったのは憲法との関係だろうというふうに思うのでございます。  懇談会の中でも、今お話がございましたように、どなたがどういう意見を述べたかという固有名詞を出さないことにいたしておりますので、佐藤教授がどうおっしゃった、芦部教授がどうおっしゃったということをここで申し上げることを控えますが、私もできる限り出席をいたしまして、法律論としてのお立場からの御意見も拝聴をいたしてきたところでございます。また非常に参考にさせていただきました懇談会報告書の中にも、できる限り併記するという工夫をしていただいておりますので、そういう意味でも報告書参考にするということは、併記されたいろいろな問題認識あるいは御意見について十分慎重にこれを参考にさせていただいたということを申し上げておきたいと思うのでございます。  懇談会報告書をちょうだいいたしまして、これを参考にして、しかも政府自身がいろいろな調査をいたしましたり、いろんな検討をしてきたという従来の経緯もございますので、それらも十分踏み台にいたしまして、いろんな角度から慎重に検討をいたしました結果、御報告を申し上げたようなことで八月十五日に公式参拝に至ったところでございます。  法律学者の意見憲法学者の意見を無視するのかということにつきましては、十分参考にさせていただきましたし、そして従来最高裁での判決としては、これを判断するのに津の地鎮祭判決というのが一番参考になるというようなこともいろいろお聞きもいたしましたので、それらもよく検討させていただいたところでございます。  問題は、今度の参拝の形式とかかわるところが多分にあろうかと思うのでございます。専ら戦没者の追悼という宗教とは関係のない目的で行われるものであり、しかも神道儀式によることなく、かつ追悼の行為としてふさわしい方式により追悼の意を表するというのであるから、客観的に見て今回の参拝が宗教的意義を有するとか、靖国神社に対する援助、助長の効果を有するとか判断されることはないと考えるというのが、大体私どもが今回判断をいたしました考え方でございます。  宗教的な非常にそういったたずまいの場所ではないかという御指摘につきましては、宗教法人靖国神社という場所が極めて宗教に関係の深い場所であるということはよく認識いたしておるところでございます。ただ、その場所を、国民、御遺族の非常に多くの方々戦没者を追悼する中心的な施設であるというふうに考えておられるというこの背景を受けて、その場所に赴いて一礼をするということによりまして戦没者を追悼し、そこで心から平和を祈念するという一礼をしたということでございまして、憲法とのかかわり合いについても、違憲の疑いなしとしないとされてきたことについて、そういう形で公式参拝を行うということであれば、いろいろ現在の国民の見ておられる社会通念とにらみ合わせて憲法に抵触しない、こういう判断に立ち、しかもこの判断したことは、内閣総理大臣がそういう形で公式参拝をするけれどもほかの閣僚に強制するものでもないということについても十分の配慮を行い、そして官房長官談話の中に触れましたように、諸外国に対しましては、誤解を与えるようなことのないように、外務省を中心にいたしましていろいろ御説明も申し上げ、そして今後とも憲法に抵触するようなことのないように、かつての国家神道の時代に逆戻りするのではないか、靖国神社に対して特に政府がいわゆる肩入れをするのではないかというような誤解を与えるようなことのないように十分注意いたしまして、憲法との関係について厳格な態度で進んでいくようにしなければならぬ、こういうふうに考えてきたところでございまして、私どもが慎重に検討してまいりました経緯につきましてぜひ深い御理解をいただきますようにお願いを申し上げたいと思うのでございます。
  147. 内藤功

    ○内藤功君 ちょっと最後に一問。  納得できませんね。  私は、次に、外国の国公賓の参拝をという声が出ていますので、これについてちょっと質問しておきたい。  外国の国公賓ということになると、例えばアメリカ大統領を含む各国の首脳が、東京でサミットがある、近くあるようですけれども、そのときに来たときに参拝させる、これも一つの外国の国公賓の参拝になると思うんですね。靖国神社には、あの戦争を始めてそうして負けて、原爆も落ち三百十万人の人の命が亡くなった戦争の政治の最高責任者であった人が神様になって祭られているんです。そこに外国の元首を参拝させるということになると、その戦争、過去の日本の起こした戦争について免罪符を与えるという政治的な意味を持つことにならないか。ここらあたりは、今盛んにあなたのところにも国公賓を参拝させるという意見が行っているように私はいろいろ問いておりますけれども、一体これをどういうふうにお考えになっているのか、こういう意見についてですね。これは総理公式参拝以上の重大な国際的な意味を持った問題です。官房長官のお考えを聞きたいです。
  148. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 私は外務省に籍を置いたことがないものですから、向こうからどういう話があってどういう対応をしておるのかというような詳しいことはわかりませんけれども、少なくとも、日本の総理大臣が外国へ出かけていきます場合に、総理がどういうふうな日程を組むか、相手の国でどういうふうな行動をするかということについては、こちらがどういうふうに考えるかというのが一つあって、そしてそのことが非常に適しておるかどうかとか、正しいかどうかというようなことを現地の日本の大使館にいろいろ研究もしてもらいまして、そして日本の内閣総理大臣が出かけていって最も適切な日程ということになるように努力する、こういうようなことにいたしておるわけでございます。それは国によっていろいろありますから、相手国のいろんな研究をし、そして特に現地の大使館などのいろんな意見参考にするというようなことで決めておるわけでございます。  そういうことから考えましても、日本に来られた外国の国公賓がどういうふうな日程を組まれるかということは、非常に多くの部分はその相手国、来られる個々の国がどういうふうにお考えになるか、そして特に現地という東京にあります大使館、大部分が東京にありますから、この日本にあります。その国の大使館あるいは領事館、公使館が日本でのそのことをどうとらえていて、そして本国の大統領や総理大臣が日本で行動するのに一番いいのはどういうふうにするだろうかということをいろいろ討議して決める事柄だろうというふうに思うんです。ただ、相談は外務省にあろうと思います。しかし外務省からこうしたらどうですかとか、あるいはこういうことにするのがいいと思いますというような押しつけがましい話をするということには、まず外交の普通の例からいってないことだろうというふうに思います。そのことをぜひ御理解をいただきたいと思うのでございます。
  149. 内藤功

    ○内藤功君 納得できませんが、時間が来ましたので、人婚院総裁と総務庁長官には勧告問題を聞きたかったんですが、既に他の委員との論争の中で出ておりますので、質問はこれで終わります。
  150. 柄谷道一

    柄谷道一君 まず、人事院勧告につきまして人事院総裁にお伺いいたします。  本年度の人事院勧告は、例年の勧告と異なりまして幾つかの特徴があると思います。私なりにその特徴を拾い上げてみますと、第一に公務員の基本的な俸給表である行政職俸給表(一)について、八等級制を十一級制にし、    〔委係員長退席、理事大島友治君着席〕 これに伴って幾つかの俸給表についても新等級を挿入していることであります。第二には、専門行政職俸給表を新設していることであります。そして第三には、東京を初め大都会に勤務している人人に支給されている調整手当引き上げを図っていること、これが主たる特色ではないかと私は思考いたします。  このような特色を持つ人事院勧告が行われるようになりましたのは、かねて人事院は、人事総合施策検討の一環としてこれらを検討してきた結果こういう特色ある勧告が行われた、このように思うのでございますが、人事院勧告がなお完全に実施されていない現段階において、あえて従来とは異なった内容勧告を行ったということに対する真意について端的にお述べいただきたいと思います。
  151. 内海倫

    説明員内海倫君) ただいま御質問でおっしゃいましたように、今回の勧告につきましては、昨年以前に比較しますと、かなり多様なものを内容とした勧告をいたしております。もとより、給与改善というものが最も大事なものでございますから、これについて私どもは最も大きな重点を置いておりますが、先刻御存じのように、俸給表につきましても、昭和三十二年に大改正が行われましてから今日まで、若干の改正は行っておりますけれども、基本的にはその考え方を維持いたしております。しかし、公務員が仕事をいたします対象としての行政内容あるいは客観的な諸条件というものはかなり大幅に、変化というよりも、高度化し難しくなっております。したがって、そういうものに従事していく公務員のあり方といいますか、あるいは職責といいますか、あるいは職務内容といいますか、これがかなり変化してまいっております。こういうものに対応してきちっとした俸給体系というものをつくり上げるということは極めて必要なことであり、そのことを昭和五十五年の報告のときに申し上げて、自来六十年を目標に検討を続けてきたわけでございます。六十年を目標ということは、定年制が実施されるという、公務員にとってはある意味では画期的な一つの制度の変化でございますから、これに対応させることも考えてこの俸給表改正というふうなものをぜひ実現していきたいと、そういうことで私どもとしましては今回これの勧告を申し上げたわけでございます。  一方において、お話しのように、いまだ給与改善完全実施されておらないのになおそういうことをと、こういうことでございますが、これは私は総合的に考えて、公務員の処遇の改善というものはぜひ人事院としては行うべき、あるいはそれを勧告すべき責務があると、こういうふうに考えておりまして、    〔理事大島友治君退席、委員長着席〕 もちろん改善につきましても、政府においても最大限の努力をして、完全実施への努力をするということも言われておるところでございますので、私どもはそういうことをも期待しつつ総合的に公務員の待遇、処遇改善というものが実現しますよう勧告を申し上げておるところでございますので、私どもの意図するところを十分御酌量を願いたいと思います。
  152. 柄谷道一

    柄谷道一君 官房長官にお伺いしますが、人事院勧告につきましては、当委員会でもしばしば問題になっておりますように、五十七年は凍結、五十八年、五十九年は抑制されております。本年度の勧告取り扱いにつきましては、既に給与関係閣僚会議が一回開かれておりますけれども、一体いつごろまでにこの結論を出すおつもりで閣僚会議を進めていかれるのかお伺いします。
  153. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 年々、いつごろ決めるのか、従来の記録はあるわけですけれども、それはその年の事情によっておのずから決まってくるものというふうに考えておりまして、どの時点で決めれば早いか遅いかというのはその年によるというふうに言わざるを得ないのですが、その年によるということは、気持ちの上ではなるべく早く決めようということで取り組んでいくわけでございます。そのために給与関係閣僚会議の日程を調整して会議を重ねていくということかと思うんですが、どの時点になれば政府態度というのは絞り込めるのか。あるときにぐっとまとめて決めなきゃいかぬわけでございますから、意見がなお並列しているというような段階で無理に決めるというよりも、絞り込んでいく時期というのは、十分それぞれ意見を述べ合って、そしてその年の態度決定についてもう決めるべき時期が来たというふうに判断して取りまとめるということになろうかと思いますので、気持ちはなるべく早くというふうに思っておりますけれども、この席でなおいつごろになったら決まるだろうというふうに申し上げることは控えさしていただきたいと思いますが、精力的に話を詰めていくようにいたしたい、このように考えておる次第でございます。
  154. 柄谷道一

    柄谷道一君 端的に伺いますが、臨時国会への法案上程を一応の目標としておられますか。
  155. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 臨時国会をどうするかという議論は与野党間でもいろいろ意見交換がなされておるという今状態でございまして、臨時国会がどうなるかということについては、まだ政府としては白紙でございますので何とも言いかねますが、なるべく早くひとつ態度を決めるということにいたしたいと思いますし、決めれば、当然国会が開かれていれば、法案として上程するということになるのが運びであろうというふうに思いますが、いつの時点政府態度決定できるかということは、くどいようでございますが、なお定かにできる状態にありませんのでその努力をしていくようにいたしたい、こう考えております。
  156. 柄谷道一

    柄谷道一君 総務庁長官にお伺いしますが、五十八年、五十九年の抑制の場合、政府俸給表をつくったわけでございますが、その手法は、人事院勧告による引き上げ率に一定率、すなわち実施率を勧告率で除した数を乗じて俸給表を作成してきた。そして我々委員会に対しては、そうであるから人事院勧告趣旨は曲げてないと、こういう答弁を一貫してこられたわけですね。ところが本年の勧告は、ただいま人事院総裁も申されましたように、新しい等級を設けまして昭和五十五年以来の給与体系の抜本的な一つの改革を目指しているわけでございますから、人事院勧告による引き上げ率というものを操作するにしても、それに対応するもとの等給が存在しないわけですね。したがって、従来のような手法では政府人事院勧告俸給表をいらえないということになってくるのではないかと、こう思うのでございます。私は、人事院勧告というものの抜本改革の趣旨を生かすためには完全実施しか残された道はないと、こう思うのでございますが、長官の御認識はいかがですか。
  157. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) しばしばお答えをいたしておりますように、私どもとしては、完全実施に向けて最大限の努力をすると、こういうことでございます。仮に諸般の厳しい状況のもとでそれが不可能になっても、昨年の官房長官の線は最低限でございますから、その線でやるというのが私の基本的な考え方でございます。  ところで、その具体的なやり方の中身をどうするかと、こういうことでございますが、いずれにいたしましても、今度は俸給表の中身の立て方が変わっておりますね。したがって、それらも頭に置いて、仮に抑制するという場合にどういう抑制の仕方をやるかということは当然給与閣僚会議のこれからの課題であろう。いろいろなお立場でいろいろな御意見があろうと思いますが、いずれにいたしましても、今日の段階では完全実施に向けて最大限の努力をしたい、そしてその上で一定の結論を出してやると、こういうことにならざるを得ぬと思います。  ところで、これをいつやるんだと、こういう先ほど来の御質問でございますが、官房長官おっしゃるように、これから先どういう予定になるかわかりませんが、俸給表の立て方が変わったということは一応頭に置きませんと、具体的なそれぞれの当てはめの問題が各省庁にはあるわけですね。それからまた午前中の御質問の中に、野田さんの御意見の中に、地方公共団体は国家公務員に準じてやってもらう、要請するということは、これは当然従来からの方針でございますから、そうならざるを得ないわけですけれども、そうしますと、地方団体の作業の日数、これらも頭の中に置かなければなりませんから、私の気持ちとしては、まだ今何とも言えませんけれども、できる限り早く結論を出すような段取りにぜひお願いをいたしたいと、これは私の気持ちでございます。
  158. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は完全実施を前提として言っておるわけですから、仮にという議論はここではしたくありませんけれども、今回の勧告内容が違いますよ、従来の手法でけちるということは人事院勧告の精神そのものをゆがめることになりますよという点だけは強く指摘いたしておきたいと思います。  さらに、調整手当ですが、これも定額方式でなく定率方式でございます。したがって、これを抑制することは給与体系を著しく乱すことになります。五十八年勧告の場合も八%を九%にすることにしたわけでございますが、これもパーセンテージはいらえなかったんですね。これはまことに残念なことでございますけれども、実施時期をおくらせるということによって問題の糊塗を図ったわけでございます。さほど定率方式というものはいらいにくい、この問題も完全実施以外に道はないと、こう思うことを意見として指摘いたしておきます。  次に、人事院総裁にお伺いしますが、本年三月三十一日から定年制が導入されました。この定年制実施による職員の在職期間の長期化あるいは職員構成の変化等から給与制度については適正なあり方を検討すると、こう再々この委員会で述べてこられました。今回の勧告と定年制との関連はどの面で配慮されていますか。
  159. 鹿兒島重治

    説明員鹿兒島重治君) 本年三月三十一日より原則として六十歳定年というものが実施されたわけであります。一方、給与制度におきましては、御承知のように、現在昇給停止年齢がございまして、五十八歳以降につきましては昇給停止ということになっております。したがいまして、両方勘案いたしますと、五十七歳までは普通昇給で昇給できるようにということが給与の設計としてはぜひ必要なことになってまいります。したがいまして、特別昇給を除きまして、普通昇給で到達年齢五十七歳までの号俸数を用意するということが必要になってまいりますので、例えば行政職の(一)表の場合で申しますならば、現在の例えば五等級につきましては新しく三号俸をつけ加える、それから四等級につきましては二号俸をつけ加えるというぐあいに、それぞれの等級、必ずしも必要でない等級もございますけれども、必要等級につきましては号俸数をそれぞれ延長するという勧告をいたしております。
  160. 柄谷道一

    柄谷道一君 非常に専門的になりますけれども、俸給表の等級をふやせば当然職務給的な色彩が強くなります。職員にはそれだけ人事考課が強化されるという結果に相なることは当然でございます。このように多段階になりますと、上位の級に到達するまでには現在以上の時間がかかるということを危惧する面があるわけでございます。この点について人事院は現在の等級の価値は変えないから変わらないと終始述べておられますけれども、基準は変わらないにしても実際の運用は各省庁が行うわけでございます。どのような方法で等級がふえたことによる価値の変化、いわゆる条件低下というものを防止していかれますか。
  161. 鹿兒島重治

    説明員鹿兒島重治君) 行政職(一)表の例えば五等級を例にして申し上げますと、五等級の上に新しく新五等級に相当する級が設けられるわけでございます。現在五等級から四等級に昇格いたしますためには、現在の昇格の基準によりますと、在級年数四年が必要だということになっております。その中間に新しい新五等級というものができ上がるわけでございまして、その中間等級に昇格いたします必要在級年級を二年ということにいたしまして、また新しい等級から現在の四等級に昇格しますのは二年ということで、ちょうど中間で在級年数を刻むという形にいたしております。したがいまして、理論的には現在の昇格の基本的なスピードというもの、制度値については変わらないということになります。  ただ、お話しのように、新しい級を設けますと、当然のことながら標準職務表を新しく設定いたしまして、標準職務に該当しない限りは昇格できないということになってまいります。したがいまして、標準職務をどうとらえるか、そしてまた、さらに私どもがやっております等級別定数の評定をどのようにするかということがこれからの昇格のスピードにこれはまた関係してくるということでございますので、そういった点を総合的に見ながら、基本的には現在の昇格スピードというものがそう大きくは変わらないようにということでこれからも配慮してまいりたいというぐあいに考えております。
  162. 柄谷道一

    柄谷道一君 総務庁長官、そのような配慮の勧告が出るんですね。運用は各省庁ですね。今言われました趣旨を踏まえて総務庁長官としては運用面において昇格のスピードがおくれないようにというように十分御配慮願えますね。
  163. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 私が承知している範囲では、実態は従来と変わらない。今、俸給の基本は職務内容とその責任度合い、いわば職務給ということになっていますから、それがやや等級が少ないがためにふぐあいを来している、そこらを合理化する、その合理化する際に今までのような一から八を一から十一、こういうことになると、級がふえますと、これは下がるという印象を与えますから、それで今度は逆に十一から一の方にいく、そういうようなやり方にも変えておりますから、そこらも頭に置きながら、いずれにせよ、先ほど言いましたように、具体的な当てはめ方で作業が多少時間を要する、だからそこらの作業の時間的な関係も考えて、できれば早目に結論を出さないと一線が混乱をする、混乱をしないように我々としてはやっていきたい、かように申しておるわけでございます。実態は変わらないつもりでございます。
  164. 柄谷道一

    柄谷道一君 きょうは時間が規制されておりますので、改めて法案提出の際にその内容を見ながら詳しい御質問をいたしたい。ただ、ここで私は一点前もって指摘いたしておきたいわけでございますが、当委員会で人事院勧告取り扱いはもう何回となく取り上げられてまいりました。私なりに私の主張を要約いたしますと、第一は、労働基本権制限の代償性という問題でございます。多くを語る必要はございませんけれども、国家公務員労働基本権は、昭和二十三年の国家公務員法改正によりまして大幅に制限、禁止されました。そのために給与問題等の経済要求につきましても、職員発言権が大幅に制限される結果を招いたわけでございます。国公法ではこのような職員を保護するために、第一条第一項括弧書きで「職員の福祉及び利益を保護するための適切な措置を含む。」と明記いたしました。この規定人事院に投影され、人事院をして国家公務員の保護機関たる性格を浮き上がらせ、加えて四十年の国公法第三条第二項の改正もあわせ考慮するならば、労働基本権制限の代償性というのはまさに明確化されていると、私はそう思うのでございます。  第二は人事院の独立性でございます。人事院は国公法を実施するための中央人事行政機関として設置されまして、人事行政の統一的機能を果たしております。人事院はその職責から強度の独立性を保障されているという事実を銘記しなければならないと思います。  第三は人事院勧告の拘束力でございます。国公法二十八条は情勢適応の原則について規定しておりまして、この勧告労働基本権制限の代償措置として最も重要な内容となっております。現在その勧告の効力について明文規定がないというゆえをもちましていろいろ抑制措置をとる口実ともなっているわけでございますけれども、従来組合と政府との団体交渉によって定められていた給与について、その弊害があるという立場から国公法の改正を行った、この経緯からするならば、当然政府としては完全実施に対する拘束力を実質的に持っていると私は理解するものでございます。  このような視点から、あえて私はこの際政府において完全実施を図るべく、給与関係閣僚会議運営されるように強く希望いたしますとともに、この趣旨が仮にもゆがめられるということであるとするならば、私は法案審議の際にさらにその内客を指摘しつつ政府責任を追及してまいりたい、こういう決意をあらかじめ申し上げておきます。  次に防衛庁にお伺いいたしますが、長官、一般公務員の等級増加という勧告がなされたわけでございます。自衛官の処遇改善につきまして私はたびたびこの委員会で取り上げてまいりましたが、我が党の粟村議員が五十七年三月の予算委員会において質問いたしております。そこで当時の伊藤防衛庁長官は、「ただいま人事院におきまして昭和六十年を目途に給与制度全般の見直しを検討中であるということでもございますので、防衛庁におきましても六十年を目途にそういう流れの中で十分検討いたして改善努力をいたす所存でございます」と。従来再々国会で取り上げられてまいりました自衛官の給与改善はこの六十年の改善ということを一つのめどとして、まあ、それまではいろいろあるけれども、我慢してくれというのが、平たい言葉で言えば、歴代長官の答弁の姿勢ではなかったかと私は思うのでございます。今回その六十年がやってまいりました。かっての国会答弁を踏まえた改善策を当然防衛庁は検討されていると思うのでございますが、その基本的なお考えはどこにあるのかお伺いいたします。
  165. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 自衛官の給与は、御案内のとおり、職務の類似する他の国家公務員、主として公安関係職員でございますが、その給与と相互に均衡がとれるように定められているところでございます。そして今回の人事院勧告、それから制度改正勧告等があるわけですが、これが今後どう決定されていきますかはわかりませんが、仮に等級増設など人事院勧告に即した制度改正が行われることとなりますならば、自衛官の俸給もこれに準じた改定を行う必要がありまして、一般職給与制度改正趣旨考え方に準じまして、自衛官の職務または階級に応ずる給与の一層の適正化を図る方向で従来から私たち検討しているところを最大限の努力を重ねてまいりたい、こう思っております。
  166. 柄谷道一

    柄谷道一君 防衛庁は従来の国会答弁の中で、例えば陸将、海将等の将について指定職である者と指定職でない者の二本立てになっているけれども、これらを是正して、例えば原則は将はすべて指定職にしたい、また昭和三十年代では内局課長と一佐は同じ等級であったが、現在内局課長は一等級で、この処遇の較差是正にも問題があり、努めなければならない。さらには中堅幹部の曹長、准尉と警察官との較差を指摘いたしましたところ、問題があると承知している旨の答弁がございました。私は人事局長に対して、この前詳細に一般職、公安職と現在の自衛官の給与上の待遇について大きな差があるのではないかと、こういうことを指摘したわけでございますけれども、私の指摘は細かなことは言いません。今回、ただいまの長官御答弁のように相当程度の改善が行われるんでしょうね。
  167. 友藤一隆

    説明員友藤一隆君) ただいま大臣から御答弁ございましたように、人事院勧告取り扱いがまだ未定の段階でございますので、若干その辺については仮定の問題になるかと思いますけれども、その取り扱いが決まりますれば、先ほど来人事院の方から御説明のございましたような一般職給与制度改定といったそういった趣旨にのっとりまして、自衛官の職務または階級に応ずる給与の適正化を図る。この中には先ほど来お話のございました将の問題あるいは一佐の問題、下の方では曹長、准尉の問題、こういった問題もいろいろ御摘があったわけでございますが、できる限りこういったものについても改善を図り得るよう関係省庁とも協議をして検討してまいりたいというふうに考えております。
  168. 柄谷道一

    柄谷道一君 長官、人事院勧告趣旨が決まりましたらと今言われたんですけれども、私の聞いておるところでは、九月中には大体防衛庁としての考えはまとまるとも聞いておるわけです。これはきょう突きますまい。意見として申し上げますけれども、自衛官は憲法で保障されている団体交渉権すらもその職務の特殊性から禁じられているわけです。そのような自衛官の処遇が他の一般公務員よりも低い現状があるとすれば、これは自衛官の士気にも影響を与えかねないと私は思うわけでございます。同じ防衛庁でも内局の職員は団交権のある一般公務員の処遇改善の延長線で処遇されております。しかし自衛官の場合はそのようには必ずしもなっていない。自衛官の処遇改善につきましては私は再々これを取り上げてまいりました。防衛庁でも五十三年以来、内局人事局長のもとに学識経験者の参加を得て研究調査を進める、こういうことを聞いておりますけれども、いまだその内容は明らかにされていません。非公開の密室の中での処遇改善策は団交権のない自衛官にとって苦情を言う機会も与えないということになりはしないかとも思うのでございます。私は第三者を加えた改善委員会としての、防衛庁長官の正式な諮問機関としてその答申内容国会にも報告し、広く国民の納得のいくという運用が考えられてしかるべきではなかろうか。防衛庁と大蔵省が折衝して、その銭この問題で給与が決まっていくという現在のあり方について大きな疑問を抱いておることをこの際指摘いたしておきたいと思います。  政府は口を開けば防衛力の整備を重要施策とすると言っておられますけれども、防衛力はしょせんは精強な自衛官の育成にかかってくるものでございまして、正面装備の強化を幾ら図りましても自衛官の士気が低ければ、それはその目的を果たし得ないと私は考えるものでございます。多くの事例を時間の関係で言うのは省きますけれども、このような私の趣旨を体して従来の矛盾、欠陥が六十年度改正に対して生かされるように期待いたしますとともに、私としてはこの問題に重大な関心を持っておりまして、法案の内容いかんによりましては、再び国会論議する用意があることを申し述べておきたいと思います。  そこで、あと二問ぐらいしかできませんが、防衛庁長官は、この給与改善について初めに一%突破の考えありきということではない、一%枠を守るために努力してきた。しかし一%を守ることは人事院勧告現状から見て困難な情勢になっていると、こうお答えされたのが要点だろうと思うんですね。また総務庁長官は、一%枠と人事院勧告取り扱いは別の次元である、いわゆる一%枠を守るために、それを目標、目的として人事院勧告なり防衛職員の給料を抑えることはない、こういう趣旨だろうと思うんですね。この二つと本年政府が発表するであろうGNPの推定と相対比した場合に、一%突破することはもう確実ですね、苦慮しているじゃないんですよね。今新たな歯どめを検討しているということは突破するということを前提として新たな歯どめを検討しているんだと、こう理解していいんですか。
  169. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 人勧がどのような取り扱い決定になりますか、まだ不明でございますが、通常の形で言えば、現在の人事院勧告の数値から見まして、GNP一%を超えてしまうのはかなり明確な形に今なってきたのではないかということであろうと思います。したがいまして、もう一つの要因、つまり新しい五カ年計画の中で考えられます防衛力整備もまた、今後のGNP見通し等から見まして一%以内におさめ切ることはなかなか難しい状況にありますので、そういう中で一%をどうするか、新しい枠をどうするか、現在討議いたしておるところでございます。
  170. 柄谷道一

    柄谷道一君 さらに防衛問題につきましても幾つかの通告をしておきました。行革審答申関係につきましても、これは重要な問題でございますので、質問を用意いたしておりましたが、時間がございません。追っての機会に譲ることとして、靖国問題について一問だけ私、官房長官に御質問したいと思います。  私も太平洋戦争に参加した者の一人でございまして、多くの友人を失っております。その戦没者を追悼するということは自然の情であろうと思います。しかし、それは憲法上の疑義を招かず国民合意が得られる形で追悼するというのが戦没者に対する我々のとるべき道ではないかと思うのでございます。憲法論議の点は改めて議論したいと思います。  一点御質問したいことは、ことしも政府主催で天皇陛下御臨席のもとに戦没者追悼式典が武道館で開催されております。こうした式典があるにもかかわらず、これとは別になお憲法上多くの批判があるという中であえて公式参拝をされたということの理由は那辺にあったのか。政府主催の式典と靖国神社公式参拝との関係はどのように理解すればいいのか。率直な国民の疑問でございますので、これの答弁を求めまして私の質問を終わります。
  171. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 例年、八月十五日に政府が主催いたします戦没者追悼の式典が非常に盛大に厳粛に、今お話のように天皇陛下御臨席のもとに行われてきておる。ことしも各界の代表、各党の代表の方々などにも御参列をいただいて厳粛に行われたところでございます。そのことと靖国神社への公式参拝との関係でございますが、例年のように本年も政府主催で厳粛に追悼式典を行った。靖国神社につきましては、先ほど来申し上げてきておりますように、国民の多くの方々、特に御遺族の非常に多くの方々などから強い御要望がありました根拠は、靖国神社戦没者を追悼する中心的な施設であるというふうに考えておられて、ぜひ靖国神社に赴いて戦没者追悼の誠をささげてほしい、こういうお話がございましたので、これを受けて行ったものでございます。重複をしておるようでございますけれども、政府主催の追悼式典は厳粛にこれを行った、そして国民、御遺族の方々の多数の御要望にこたえて戦没者追悼の中心的施設と目されております靖国神社に赴いて一礼をした、こういうことになっておりますことを御理解いただきたいと思います。
  172. 柄谷道一

    柄谷道一君 終わります。
  173. 亀長友義

    委員長亀長友義君) 本日の調査はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後五時散会