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1985-09-19 第102回国会 参議院 決算委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年九月十九日(木曜日)    午前十時一分開会    委員異動  八月十六日     辞任         補欠選任      曽根田郁夫君     藤田 正明君  八月十七日     辞任         補欠選任      藤田 正明君     曽根田郁夫君  九月五日     辞任         補欠選任      下村  泰君     喜屋武眞榮君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。    委員長          丸谷 金保君    理 事                 倉田 寛之君                 出口 廣光君                 林  ゆう君                 松尾 官平君                目黒朝次郎君                 服部 信吾君    委 員                 石井 道子君                 後藤 正夫君                 斎藤栄三郎君                 杉元 恒雄君                 曽根田郁夫君                 仲川 幸男君                 福田 宏一君                 星  長治君                 矢野俊比古君                 菅野 久光君                 本岡 昭次君                 刈田 貞子君                 田代富士男君                 佐藤 昭夫君                 安武 洋子君                 井上  計君                 三治 重信君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  松永  光君        通商産業大臣   村田敬次郎君        運 輸 大 臣  山下 徳夫君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 藤波 孝生君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  後藤田正晴君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  加藤 紘一君         ―――――        会計検査院長   鎌田 英夫君         ―――――    事務局側        常任委員会専門        員        小島 和夫君    説明員        内閣法制局長官  茂串  俊君        公正取引委員会        委員長      高橋  元君        警察庁刑事局長  金澤 昭雄君        警察庁刑事局捜        査第二課長    国松 孝次君        防衛庁防衛局長  西廣 整輝君        防衛庁経理局長  池田 久克君        防衛施設庁長官  佐々 淳行君        科学技術庁原子        力安全局長    辻  栄一君        外務省アジア局        長        後藤 利雄君        大蔵省主計局次        長        角谷 正彦君        大蔵省主税局長  水野  勝君        大蔵省理財局次        長        中田 一男君        厚生大臣官房審        議官       木戸  脩君        厚生大臣官房審        議官       代田久米雄君        厚生省保健医療        局長       仲村 英一君        厚生省生活衛生        局長       北川 定謙君        厚生省保険局長  幸田 正孝君        通商産業省立地        公害局長     黒田 明雄君        運輸省地域交通        局長       服部 経治君        運輸省航空局長  西村 康雄君        自治大臣官房審        議官       小林  実君        自治省行政局選        挙部長      小笠原臣也君        会計検査院事務        総局次長     西川 和行君        会計検査院事務        総局第一局長   竹尾  勉君        会計検査院事務        総局第二局長   天野 基巳君        会計検査院事務        総局第三局長   小川 一哉君        会計検査院事務        総局第四課長   磯田  晋君        会計検査院事務        総局第五局長   秋本 勝彦君        日本国有鉄道総        裁        杉浦 喬也君        日本国有鉄道常        務理事      岡田  宏君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和五十八年度一般会計歳入歳出決算昭和五  十八年度特別会計歳入歳出決算昭和五十八年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十八  年度政府関係機関決算書内閣提出) ○昭和五十八年度国有財産増減及び現在額総計算  書(内閣提出) ○昭和五十八年度国有財産無償貸付状況計算書  (内閣提出)     ―――――――――――――
  2. 丸谷金保

    委員長丸谷金保君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る九月五日、下村泰君が委員辞任され、その補欠として喜屋武眞榮君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 丸谷金保

    委員長丸谷金保君) 昭和五十八年度決算外二件を議題といたします。  本日は、前回に引き続き全般的質疑第二回を行います。  これより藤波官房長官に対し質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 官房長官にお伺いしますが、五十七年度の決算総括質問の際も、あるいは参議院改革という段階でも、衆議院は予算重視参議院決算重視ということを再三表明されて、総理審議には協力すると再三表明しているんですが、本日の委員会は相当前から日時を設定して、自民党の理事さん方に大変御苦労をかけて折衝してもらったんですが、政治的に考えると、防衛費の一%問題なり、定数是正の問題なり、国鉄再建の問題なり、相当大きな政治課題を抱えておる今日的な決算委員会総括質問だ、こう私たちは判断いたしまして、ぜひ短い時間でもいいから出てもらいたい、そして今言ったような三つ課題について、やはり総理からきちっと表明してもらいたいということを期待しておったんですが、あなたで役不足とは言いませんが、こういう問題について決算委員会総理はどの時点で表明する考えを持っているのか、一切出てくる気はないのか、あるいは明日は内閣関係やりますから、内閣防衛関係でありますから、そのときに総理が出てきて防衛費一%問題について我々の質問に答えるとか、そういう考えを持っているのか、一切出てくる気がないのかどうか、まず番頭役であるあなたの基本的な決算委員会に対する総理出席問題について、その考え方なり姿勢を表明してもらいたい。それによっては我々野党も、決算委員会いかに法案がないとはいいながら、我々も対応をそれなりに腹を固めないと、決算委員会はばかにされて、いつも、はあそうですかと引っ込んでいるわけにはまいらぬ、こう思うんですが、きょうは出てこれなかったけれども、防衛費の問題をやるなら防衛段階で、あるいは定数是正なら定数是正の問題で、国鉄問題であれば運輸省関係総理最大限出てきて、その都度総理見解を表明しますということをやっぱりきょうはあなたに約束をしてもらいたい、そういうことでありますが、総理決算委員会出席についてあなたはどういう考えをお持ちか、今後どういうふうに対応されようとしているのか、お考えをまず冒頭聞かせてもらいたい、こう思うんです。
  5. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 政府国会を最も重視をいたしておりまして、国会の御審議に積極的に対応させていただかなきゃいかぬ、このように考えておるところでございます。  内閣総理大臣もその考え方を持っておることは言うまでもありませんで、特に閉会中などの御審議をいただきますことに対しましては大変敬意を表しておるところでございます。  ただ、御存じのように総理大臣の職務が非常に国政万般にわたりまして多忙をきわめております。また、最近は随分外交日程が入ってくる場合が多うございまして、外交日程調整をして一たん決定をしてしまいますと、なかなか途中で向こうへ行って断りを言ったり変更したりというのが難しいというような事情もございまして、国会委員会への出席につきましてそれぞれ御心配をいただき、御要請ちょうだいをいたしますのに、意のままにならぬところも多うございまして、まことに申しわけのないことである、このように考えておる次第でございます。  特に決算委員会の御審査国政上非常に重要な意味を持っておるということは、申し上げるまでもないところでございまして、いろいろと政府全体で対応させていただかなければならぬ、このように存じておるところでございます。もちろん、機会を得て総理大臣自身決算委員会にも出席をさせていただきましていろいろ考えておることを申し述べたり、また御質問にお答えをするというのは当然のことである、こういうふうに考えておるところでございますが、いつどういうふうにして出席をするかということ等につきましては、また委員長さん初め理事各位皆様方のいろいろ御連絡ちょうだいをいたしまして、調整をしながら進めていかなければならぬ、このように考えておりますが、当面御要請に対しましてお伺いできなかったことに対しまして、心からおわびを申し上げたいと思う次第でございます。
  6. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 外交日程外交日程といって、歴代総理大臣の中で外交で点数を上げている。それはその人の考えですから否定いたしませんが、以下同文で、きょうは農林大臣厚生大臣労働大臣、いわゆる外交日程が決まりましたからお願いいたしますと、政府委員の皆さん大変御苦労だと思うのですが、各党理事さんに頭を下げて歩いている。外交日程も結構ですけれども、やはり国政全般日程、特に閉会中は我々決算委員閉会中でも出てくるのですよ。何もだてや楽しみで出てくるわけじゃない。それは国会議員として皆同等ですよ。ですからやはり外交日程も必要だけれども、国政を重点に委員会日程をまず優先して、その間に外交日程とかその他の日程を決める。そういう番頭さんは番頭さんらしくきちっとしてもらわないと、ここで何ぼ約束したってこの次防衛問題で出てこいと言ったって、いや諸般情勢外交日程がありますのでと、またさらりさらりと何だかナマズみたいに逃げられちゃう。ですから逆に言いますが、総理大臣日程に合わせて、我々は例えば防衛問題なら防衛問題については総理が出てくる日程に合わせて防衛の分を設定する。そういうふうに我々は総理日程に合わせますから、この国鉄問題と定数問題と防衛問題、これは当面の政治課題ですから、ぜひ総理日程にも我々合わせますから、野党側要請した場合は原則として総理が出てくる、きょう出てこなかった、こういうものについては原則的に約束できませんか。そうしないと決算委員会は進みませんぞ。あなたの日程に合わせますから、当面この三つの問題、やはり大事な政治課題だと思いますから、その点について御配慮の方はどうですか。どうしても出てきませんか。
  7. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 総理国会出席につきましては、いろいろ議院運営委員会各党国会対策委員会等とも連絡もとらせていただき、当然委員長さん初め理事さん各位とよく御指導ちょうだいをしながら調整を従来もしてきたところでございます。今後とも委員会への出席ということにつきましては、国政審査、非常に重要な御審査の場であるということを頭に置きまして、いろいろ調整もさせていただきたい、そのように考えておる次第でございます。
  8. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 何遍言っても堂々めぐりでしょうから、それだけはきちっと言っておきます。あとは理事会なり議運と相談します。  それから次にJAL墜落事故で、相当たっている。運輸省航空事故調査委員会が今調査をしておる、あるいはボーイング社からいろいろな問題が来ている。けさの読売新聞を見ますと、やはりしりもち事故の後遺症でないかということも大分読売新聞に大々的に取り上げられておりますし、いろいろあります。きょうは、したがって事故調査委員会なりあるいは高木社長出席を求めていろいろ聞こうと思ったんですが、諸般情勢でまだ十分でない、こう思います。  それで官房長官にお伺いしますが、何はともあれやはりJAL日本政府が三〇%近くの出資をしている政府出資の会社であります。山下運輸大臣の言をかりれば、親方日の丸けしからぬと言って勝手なことを吹いていますが、航空行政責任者として私は不穏当だとこう思うんですが、今回の事故について高木社長だけ責任をとらせて、町田社長以下責任がないとか、あるいは政府には一切責任がないとかと、こういうことでは私は国民は納得しない、日航を監督しているのは日本政府でありますから。三〇%の出資をしている。したがって今回の五百名にも及ぶ死亡事故について中曽根さんから一回も聞いたことない。サッチャーさんはすぐ現場に飛んでいく。中曽根さんは官邸に入ってからもだれも耳打ちしないというのがある新聞が報じていますが、この日航事故について一体日本中曽根内閣はどういう責任国民に果たそうとしているんですか。一切関係ないといって逃げの一手なんですか。これがもし国鉄事故であったらどんなにこれはいじめられたのか、新幹線でも脱線しちゃって百名も死んじゃったら、世の中ひっくり返って運輸大臣も首だ、こういう大騒ぎになると思うんですが、若干体質は違うけれども、日本航空に大株主の出資をしている、監督行政をしている、国際線を独占させる、そういう航空憲法の立場からいっても政府にはやっぱり私はそれなり責任があるとこう思うんですが、官房長官いかがですか。
  9. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 今般日本航空委員御指摘のように五百名を超える犠牲者を出すという非常に悲惨な大事故を起こしまして、乗客並びに乗客の御遺族、そして国民の多くの皆様方に御心配をかけ御迷惑をかけたという事件発生をいたしましたことはまことに遺憾、残念なことである、このように考えております。中曽根総理大臣事故発生をいたしました瞬間から非常に深刻にこの事故の実態というものをいろいろ聴取もいたしまして、二度とこのような事故の起こらないように万全の措置を講じていくようにしなきゃいかぬ、事故そのものの救援なりあるいはその後の措置なりを万全を期すのは当然のことでございますが、非常に大事なことは二度とこのような悲惨な事故が起こらないように万全の措置を講ずることである、こういう態度で運輸省にも強くそのことを指示してきておるところでございます。  日本航空責任の問題につきましては、高木社長がしかるべき時期にということで辞意を表明しておるというふうに聞いておりまして、事故原因がどのような形のものになるかということのその調査が進んでおるわけでございますから、それらとも相まっていろいろな責任が明らかにされるものと、このように考えておるところでございます。当然我が国のそういった運輸事業指導監督すべき政府といたしまして、従来指導の任に当たるべきところが非常に至らざるところがあって今回の事故が起こったということにつきまして、とにかく事故が起こっておるわけでありますから、政府といたしましてもこのことについて大きな責任を痛感をいたしておるところでありまして、亡くなられた方々の御冥福を祈り、その御家族に対しても心から御弔意を表したい、こう考えておるところでございます。  今後とも今申し上げてまいりましたように、二度とこういうような事故の起こらないように厳格に指導監督の仕事を進めていかなければならぬ、このように存じておる次第でございます。
  10. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 まだ事故調査中でありますから、責任問題については全貌が明らかになった際に申し上げますが、我々の見解としては、少なくとも日航社長、副社長、それから伝えられておるような隔壁の問題があるとすれば整備担当取締役、少なくともこれくらいはやっぱり引責辞職すべきだ。この際に高木さんを追放して運輸省出身町田さんが社長として乗っ取ろうなんという意図があったとすれば不純きわまりない。少なくとも社長、副社長、それから整備担当取締役、これは最低限責任をとるべきだ。同時に直轄である運輸行政を預かる運輸省も、大臣航空局長を含めて私はやっぱり何らかの責任をとるべきだ。こういうことを我々は思っている、考えているということだけ表明いたしまして、答弁は要りません。  それから次は、時間がありませんから一つだけ。亀井委員長もきょう出てこいと言ったら出てこないですな。どこかこれも逃げて歩いている。口を開けば絶対大事な戦後最大課題だと言っていながら、国会には逃げて歩く。それも大臣国鉄総裁もそれを当然のようにバックアップしているということを聞いております。  それで官房長官にお伺いしますが、私は時間がありませんから一つだけ。国鉄国民共通財産ですから、今大きな変革をしようとしている、その際に、亀井委員会がいろいろ使ったデータ、それから国鉄の土地問題、これは少なくとも私は国会に赤裸々にやっぱり出してもらう。いろいろ運営上困るなら非公開もやむを得なかろう。そういう委員会運営考えるとしても、亀井委員会が使った全データ国会のしかるべき委員会、特に財産とか土地問題については決算委員会、こういうところに出さないと、何をデータ亀井委員会がやったのかさっぱりわからない。わからないわからないで何を審議するのか、これまたわからないでは困るんで、あなたの責任でやっぱり亀井委員会が使った全データ原則として国会に出す、特に決算委員会には。運輸省国鉄をいろいろ責めてもなかなか無理な点があるんですよ。少なくとも土地に関する、財産に関する、資産に関する問題については決算委員会全貌を明らかにする。場合によっては非公開でもやむを得ない、そのくらいは私は妥協します。少なくともデータを全部国会に出してもらうということについてお約束できますか。ぜひしてください。
  11. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 国鉄問題は非常に大きな政治課題でございまして、特に今次行政改革の中での目玉の事業であるというふうに考えてこの問題に取り組んできておるところでございます。当然国会におきましてもいろいろな御審議をいただいてきておりますし、今後ともこの国鉄改革について、いずれは御厄介になります法案審査中心にいたしまして、いろいろと国会の御意見も伺うということになろうかと思います。その際に当然いろいろな資料が大切であるというふうに考えておりまして、どのような資料が現に亀井委員会にあり、どのように活用されたかということを詳しく私も存じておりませんが、国会の御審議に対しまして御要請に応じてできる限りいろんな資料を御提供申し上げて、そして国会における国鉄問題の御審査がスムーズに進むようにしてまいらなければならぬ、そういうふうに考えておりまして、具体的には今後また国会内各委員会委員長さんなどともよく御相談を申し上げて、できる限りその考え方で対処するようにいたしたい、こう考えておる次第でございます。
  12. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 一点だけ大臣ね、大蔵運輸国鉄いますから、やっぱり我々決算委員会国有財産を直接審査する機能を持っているわけですよ。だから国鉄の土地問題については、国会にいろんな委員会ありますけれども、決算委員会最大国有用地その他の問題については機能を持っている。したがって、決算委員会に土地問題を出さないというばかな話はないです、国有財産ですから。ですから、これだけはほかの委員会に出さなくても、少なくとも土地問題を議論しなくては国鉄の問題はできないです、議論が。ですから、ぜひこれは重ねて要請しておきますが、内閣で十分に対応してほしい、こう思うんですが、いかがですか。
  13. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 国会の御要請に対しまして、運輸大臣国鉄総裁あるいは亀井委員会事務局等ともよく連絡をとりまして、できる限りその考え方で対処するようにいたしたい、こう考えております。    〔委員長退席理事目黒朝次郎君着席〕
  14. 丸谷金保

    丸谷金保君 総理がおられませんので、やむなく質問の通告したのを変更いたしまして、今までに質問したような問題を中心に、それのその後の推移等はっきりさせなきゃならぬことについて御質問いたします。時間の都合もありますので三問一遍に質問しますから、よく聞いて整理をして御答弁を願いたいと思います。  まず第一問。昭和五十九年の増税の際に私は、こんな増税をしたら酒の税金は落ち込んで予定どおり入らないと申し上げましたが、結局、結果はそういうことになりました。特にウイスキー類の落ち込みがひどくて、五十九年当初予算の六千百八十億に対して四千八十九億と、二千九十一億も落ち込んだ。また量においても特級酒が三三・四%も落ち込む。特級酒、高い酒が落ち込めば税収はこれは減るんです。ですから、むしろこの際需要をふやして税収を上げるためにも酒の税金の負担を軽減する、この方がむしろ財政状況もよくなるのではないかと思いますが、大蔵大臣、いかがでしょうか、これが第一問。  それから第二問。これも実はしばしば取り上げているんだけれども、ついに進まなくて今回のワイン問題、国産ワイン問題に発展しました有毒ワイン事件です。もともとこれはマンズワイン事件であって、企業の倫理性が問われるというものであるにもかかわらず、有毒ブレンドイコール悪というようにマスコミが簡単な図式に直して、そのため全国のまじめなワインメーカーが大変困惑しております。不凍液混入ブレンドは異質の問題であるということを、やはり私たちは今までの論議を踏まえて国民に明らかにしなきゃならない、こう思います。  そこで、この問題は厚生省マンズワインのやったことは許されることではありませんが、有毒と言われる不凍液混入ワインを飲んで、例えば農薬入りジュース死亡事故はどの、それほどのことはなくても吐き気とか下痢というふうな何らかの被害の報告が全国でどれくらいあったか、またそういうことの調査もしたか、この点をお答え願いたい。  さらに、この問題では大蔵省公取委員会に、ブレンド即悪という今のマスコミ論調というのは、結局はワイン表示規制がないことから起こってきております。私は、五十三年四月の酒税法改正のときに、大蔵委員会で酒の表示をもっと厳しくすべきだと、その後再三にわたって主張してまいりましたけれども、ワインについては各国の例を挙げて表示基準規約等を具体的に要求したのに、いまだに実現しておりません。まことに残念です。もともとワインブレンドするということは世界じゅうで認められていることでありまして、法律違反ではないわけなんです。外国の場合は、ただ産地とかあるいは品種名等表示するためには厳しい法律規制があって消費者が守られています。ところが、日本ではそうした取り締まり規則がないところから、外国ワインを自社のブランドで売ることは何ら差し支えのないことになっている、ここに問題があります。そしてワイン信用失墜、そういうことにつながったわけでありますが、昨日の新聞等を見ましても、公取は依然として業界の自主規制を求めて、業界を呼んで早く基準、規約をつくれというふうなことを言っております。しかし、これはなかなかできません。  例えば、私がこの問題を強く今まで主張してきたのに対して、業界ではこう言っているんです。丸谷先生、何でワインだけいじめるんだ。アルコールを輸入してクリアしただけで、水で薄めた甲類しょうちゅうがどうして国産なんだ。輸入アルコールで三倍に延ばした日本酒に何で日本酒という名前をつけて問題にならないで、ワインだけそんなことを言うんだ、こういうふうに私が強く言えば言うほど業界は反発してくるんです。だから、なかなか、公取が言うように、自主的な規制というふうなことを言っていても、こういう底流がありますからそう簡単ではない。しかも醸造用品種、いいワインになる品種の少ない日本で一〇〇%国産といっても、食べるブドウの余りもので醸造したワインブレンドワインよりそんなにいいものにならないというようなことは業界もよく知っているんです。ですから、なかなか今まで進まなかった。業界に任せておくと、結局今度も適当なところでお互いのまあまあが出てきてしまいますよ。外国ワインブレンドの問題だけでなくて、濃縮果汁の問題だってあるんです。そういうところを避けて通った基準なり規約をつくってしまうと、もう一遍またそういう問題が出てきます。ですから、ひとつそういう点について大蔵省公取でしっかり厳しい行政指導をしていかなければ、本当にワイン業界を育てることにならぬ。あなたたちが、私が再三言ったにかかわらずちっとも進めなかったことが、今日の事件の背景に根づいている。表示の規定、これは今度はしっかりやってくださいよ、業界の自主規制なんと言っていては困ります。  それから第三問。これもことしの六月に私が大蔵委員会で取り上げた平和相互銀行の問題です。  これにつきましても、大蔵がいち早く対応して検査に入ったということについては評価をいたします。しかし、常識的に言うと、大体一カ月で検査が終わるというのが常識です。しかし、なかなか私は今回はそういうことではいかないんでないかというふうに思うんです。というのは、私のところに、今手元にあるのでも百社以上の関連企業の会社がずっと融資対象になっております。後でこれは銀行局の方にもお届けしてもいいんですが、こういうのを見ましてもそう簡単に検査が進むわけがない。  その中の一例を挙げましても、例えばいわゆる巷間伝えられるところの四天王とかそういう人たちの会社の中で、正和恒産、この中で福栄産業とか東海地所とか、新代田駅ビル、国際興発、東京住研、これらで約五十億以上の借入金が平和相互から行われています。これがいわゆるぺーパーカンパニーと言われる疑いがあるんです。事実、住所のところへ行ってもそこに会社が所在していない。名前だけかしてくれと言ったからかしてあげましたなんていう言な返事が返ってくる。これはしかし氷山の一角です。こういうことがこの百何十社という中にはまだたくさんあるんでないか。そうしますと、一カ月たったからいわゆる常識的にもう検査をやめてもいいなんということにならないんで、多少時間かかっても、ひとつ今回は積年のうみを出して、本当のところはどうなんだということをしっかり大蔵省はつかんでいただきたい。そうしないと本当の解決ができません。  特にこの機会に大蔵省にお願いしたいんですが、そういうしっかりした検査をきちっとやってもらうと同時に、預金者の保護についてだけは大蔵責任を持つというくらいの態度で臨んでいただかなきゃならぬと思うんですが、以上三点、それぞれ御答弁を要求いたします。
  15. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 三つでございますが、まず第一番目の、要するに税率の高い酒が売れなくて、そして二千九十一億円の減収をもたらしたと。このことは五十九年税制改正のときに丸谷さんが指摘されたことであります。減収をもたらしたという意味におきましては参ったと、まあこう率直にお認めいたします。  ただ内容が、税率が高いから売れなかったというだけであるかどうか。確かに御案内のとおり、この税を見てみましても、しょうちゅうということになりますと、実際問題、税金が、小売価格が千円のもので九十一円とか、あるいは小売価格が九百八十円のもので百四十円とか、そのほかで見ますと三千円のもので千五百円とか、こういう税率の問題はございますので、しょうちゅう様の方へ移行したと見るか、国民の嗜好の変化というものもあるではないかなと、こういう感じがいたします。ただ、あのときにも申し上げましたように、五十八年の税制調査会の中期答申で、大体非常に均一化してきたと。だから税率を考えると、こういうふうな指摘を受けたことも事実でございますが、そのおっしゃった限りにおいては全くそのとおりでありましたと。私どもの見込みが違っておりましたと。当時指摘された丸谷さんの意見の方向に税収はございました。ただ、それは税率だけで言えるかどうか。これにはまだこれから見定める必要がございます。そして、税率を下げるからそれで需要がふえるかということも必ずしも言えないんじゃないか。あんまりまた、税収上はたくさん入ることが必要でございますが、健康以上に酒を飲まれることもまた必ずしもそこに限界があるでございましょう。したがって、再三の御指摘は十分踏まえまして、税制調査会等でも引き続き議論をしていただこうというふうに考えておりますし、きょうの御意見も正確にやっぱり、明日税調の総会を開きますので、御報告すべき課題だというふうに理解しております。  それから、次は酒の表示問題でございますが、この問題もたびたび御指摘をいただいた問題であります。第一義的には公正取引委員会の所管でありますが、酒類業を所管する大蔵省でございますから、消費者の商品選択に役立つばかりでなく、業界の公正な競争秩序の維持確保のためにも必要なことと考えております。そして業界にもそういう声が上がってきておりますので、これからワインメーカーの団体であります日本ワイナリー協会、山梨県果実酒酒造組合、山形県果実酒酒造組合、道産ワイン懇談会等に対して協力して表示問題の検討を進めるよう、これは大蔵省として指導をいたしてまいります。  それから、三番目は平和相互の問題でございますが、先月二十月から検査を開始して目下続行中であります。これは全力を傾注して調べることは十分調べることとしております。御指摘のとおり、厳正かつ適切な検査を行ってその実態内容の把握に努めていくという考え方であります。目下続行中でございますので中身に対してのお答えは差し控えさしていただきますが、何はさておいて、御指摘がありましたように、預金者保護については万全を期しますという考え方を前提に置いて引き続き検査を行いまして、そして今御指摘のありましたいろんな問題につきましてもその御趣旨を体して検査に対応していきたいと、このよう考えております。  以上、私は三つの問題についてお答えを終わります。
  16. 北川定謙

    説明員(北川定謙君) 丸谷先生御指摘のジエチレングリコール混入ワインの問題につきましては、七月十日、オーストリア及び西ドイツ産のワインにこのような物質が混入をしておるという情報を得て、直ちに私どもといたしましては港の検疫所それから都道府県の協力を得て、この混入の事実の確認とそれから混入をされたワインの販売の自粛等の措置をとってまいったところでございます。  先生御質問のこのワインを飲んだことによって健康に障害があったかどうかの点につきましては、現在のところ各都道府県の保健所等を通しまして情報の確保に努めておるところでございますが、現段階ではそういう健康被害が発生したという報告は受けておりません。なお、専門家の意見では、我が国で検出されたレベルのジエチレングリコールの濃度では、直ちに健康被害が発生をするというようなレベルではないのではないかというふうに言われております。
  17. 高橋元

    説明員(高橋元君) ワイン表示の問題でございますけれども、消費者の商品選択を適正に行う、またあわせて業界の公正な競争を確保すると、二つの観点から真剣に取り組んでまいらなければならない問題であるというふうに承知いたしております。当委員会ではそのために関係の業界の表示につきまして指導を開始しておりまして、昨日ワイナリー協会ほかの関係者を呼びまして、早急に公正競争規約の設定について検討してもらうように要請をしたわけでございます。今後とも、所管官庁であられる大蔵省とも十分連絡をとりまして、業界に対する指導に努めたいというふうに考えております。    〔理事目黒朝次郎君退席、委員長着席〕
  18. 服部信吾

    服部信吾君 まず初めに官房長官にお伺いしたいんですけれども、先般行われた毎日新聞の世論調査がございまして、今まで大変上昇気流であった中曽根内閣が四〇%を割ったと、こういうような世論調査が出ておりまして、大変厳しい調査であると思います。私は、なぜここで中曽根内閣に対する支持率が減ってきたかという理由なんですけれども、まあ大変総理が言う戦後政治の総決算、こういうことで靖国神社の公式参拝だとか、あるいは今問題になっておるGNP一%の枠の撤廃の問題だとか、まあスパイ防止法の制定等々、大変軍拡路線を走るんじゃないか、右翼化を進めていくんじゃないかという国民の危惧があって、私はこういうような世論結果が出たと思うんですけれども、官房長官の率直なる意見を述べてもらいたい。と同時に、総理はこの世論調査に対して、終わってから記者会見して、これは何かアップダウンクイズのようなものだとか、世論調査に対して、あるいはああいうものは医者のカルテと一緒で継続して見なくちゃわからないんだと、こういう非常に私は不謹慎だと思いますけれども、こんな態度でこの世論調査を見ていたら大変なことになると思いますけれども、官房長官のお考えをお伺いしたい。
  19. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 御指摘のように、先般の毎日新聞社が行いました世論調査では支持が減っているという数字が出ておりまして、非常に残念に思っております。いろいろな施策を進めていく上で、国民の皆さん方がどんなふうに一つ一つの政策を見ていられるか、あるいは今の内閣の施策をどう見ているか、姿勢をどう見ているかということにつきましてはやはり絶えず気にいたしまして、いろいろな調査などをよく分析をいたしましてそれに対処していくようにしなきゃいかぬ、あるいは説明不足のところはさらに努力をしなきゃいかぬ、そんな気持ちでおるところでございます。それは決してアップダウンクイズだと思っているわけではありませんで、一つ一つ丁寧に結果を見ているというのが私どもの気持ちでございます。  先般の調査を少し見てみますると、いろいろ防衛費の問題などになりますと、率直に申し上げて非常に敏感な反応が出てまいります。そういう意味で、やはりできるだけ防衛力の整備などについては気をつけていけという感じというのは確かにあるだろうというふうに一般的には考えておるところでございます。ただ、国民の御意思に沿っていかなければいけませんけれども、政府といたしまして、その責任におきまして防衛力を整備をしていかなきゃならぬといったような課題があり、これを解決して乗り越えていかなきゃいかな。ですから、そういう考え方というものをできるだけ国民の皆さん方に御理解をいただけるように努力をしていかなければならぬ、むしろそう私どもの立場ではとらねばならぬと考えておるところでございますが、政治の方向をどう持っていくかということと同時に、私どもにも努力をすべきところを教えていただいている、そんな感じを率直に受けておるところでございます。  少し自己弁解になりますけれども、不支持の数字がふえているわけではないというのもこれもまた妙な調査の結果になっておりまして、普通でございますと、支持が減ると不支持がふえるんですけれども、それは余りふえていないというようなところもどういうことか。それから、わからないとか、回答しないという感じの数字がふえているというのも今度の調査の特徴だろうと思うんです。そんなこともいろいろ総合的に分析をいたしまして、よく受けとめて進んでいきたい、こう思っております。
  20. 服部信吾

    服部信吾君 時間がありませんのでできるだけ簡明にひとつお願いします。  それから、靖国神社の公式参拝ということで、昨日中国において、日本は戦後の反省をしてない、こういうようなことで大変デモが起きておる。こういうことで、その中にいわゆる経済的な問題も含まれておる、こういうようなことが出ているわけでありますけれども、特にこれからの対アメリカ、EC等において大変経済摩擦で問題になる。我々のおひざもとである中国、アジア、こういうところからこういうものが出てきているのは大変なものじゃないかと思いますよ。そういうことで靖国神社の公式参拝、これに対して、今回政府決定としては公式参拝をするんだということを決めておりますけれども、これは私はやめるべきじゃないか、こう思いますけれども、中国のデモ、こういうものに関する考え方と、私は参拝をやめるべきじゃないかと、こう思いますけれども、簡単に官房長官の御意見をお伺いしておきます。
  21. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) ごく簡単にお答えをいたします。  いろいろな検討の結果、靖国神社に公式に追悼の意を表するという形をとったわけでございますが、そのときからずっと外務省を通じまして各国の理解を得られるように努力をしてきておるところでございます。デモがあったという情報も得ておりますが、これらにつきましてもさらによく説明をいたしまして、政府内閣総理大臣あるいは大臣の参拝の意図、趣旨をよく理解していただけるようにさらに努力をしていきたい、このように考えております。
  22. 服部信吾

    服部信吾君 これはまた後ほどいろいろと議論したいと思います。  次に防衛庁長官にお伺いしたいんですけれども、昨日、新防衛計画、こういうものが策定し、決定した、こういうことでありますけれども、私、よく総理防衛庁長官も、防衛施策としては国民の理解と協力が得られなければ達成できない、こういうことをいつも言うわけですね。先般の七月七日の総理府の世論調査においても、現在国民はこれ以上の軍拡、いわゆる防衛力の増大は望まないと、こういうことで七〇%以上の国民の方が言っているわけですね。そういう世論の考え方と今回のこの新防衛計画、これとちょっと世論と矛盾するんじゃないかと、こう思いますけれども、この点について防衛庁長官はどのようにお考えですか。
  23. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 昨日、中期防衛計画を決定し、それを政府計画レベルに格上げしていただいたわけでありますけれども、私たちとしては、防衛計画大綱の水準の達成という公約と、それから従来GNP一%という閣議決定を尊重するという方針、この二つの間の問題でいろいろ私たち問題点があって困っておったわけでございます。その中でこの問題を解決するためには、例えば新しい歯どめの論議等を政府部内でもいたしましたけれども、今回党を中心に党内員の世論、それから各野党の明らかにされております主張、そういうものの背後には国民世論が厳然としてあるわけですけれども、そういう中でGNP一%の閣議決定はできる限り尊重していくべきであるというふうな御決定をいただいたわけでございますので、今後ともその方針はできる限り守ってまいりたいと、こう思っております。  服部委員の御指摘の、では新しい計画との関連はどうなのかという問題点につきましては、GNP一%につきましての閣議決定は単年度のGNPと単年度の予算との問題であります。今度の五カ年計画は単年度の予算とは一〇〇%直接関係するものではございませんので、その大きな枠組みの。中で各年度につきましてできる限り守り得るように今後努力してまいりたいと、こう思っております。
  24. 服部信吾

    服部信吾君 次に、ちょっと防衛庁長官にお伺いしたいんですけれども、先般、六日ですか、中曽根総理と金丸幹事長との間で一応GNP一%の枠は守ると、こういう決定をしているわけですね。そして今回のこの新防衛計画によると、これは明らかにGNPの伸び等を計算しますと一%枠を突破すると、こういうことになっておりますけれども、これは本来ならば要するに一%枠を撤廃すると、こう決定して、そうして今度のこういう新防衛計画を出すならこれはある面からいけば整合性はありますけれども、要するに撤廃しないんだ、尊重するんだと、こう言いながら、なおかつ一%枠を撤廃するような新防衛計画を出しているということは、これは矛盾するんじゃないかと、こう思いますけど、防衛庁長官これ明確にお答えしてもらいたいと思います。
  25. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 私でございますか、官房長官でございますか。
  26. 服部信吾

    服部信吾君 じゃ、両方でやってください。
  27. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 五カ年計画というものが経済企画庁の「展望と指針」に基づく実質GNP予測というものと比べてみますと、その枠の中におさまり切れないという問題が一つのポイントとしてあったことは事実でございます。そして私たち防衛庁といたしましては、政府部内でこの整合性の問題をよりすっきりすべきでないかと、そういう意味では一%というものが一円でも超えてはいけないということであるならば、その点につきましてより問題点の解決をしておくべきではないかと主張したことは事実でございますし、私たち国会でそう申しました。しかし、党の決定ではその点につきましては、繰り返しますが、国民世論それから各党の動向、御意見等を踏まえて一%についてはできる限り守っていくようにという御決定がございました。政党政治でございますので、私たちはそれに従いまして、一方では防衛力整備についての計画を政府計画に格上げしていただきましたけれども、同時にこの問題は単年度におきましてできる限り守っていく努力をとことんまで追求していくべきではないかというふうに、今方針を決めて努力していくことにいたしたわけでございます。ある意味では完全に整合性の問題を突き詰めておったということは、私たち行政機関の部分としては当然かなと思っておりますけれども、同時に国民世論の中でできる限りその一%というものを、線を守るように最大の努力をすべきでないかと、これからGNPの改定の話もあるそうじゃないかと。それから経済企画庁の「展望と指針」に書いてはあるけれども、現実のGNPがこれからどう動いていくかもわからぬじゃないかと。そういう意味ではあなたたちの意見もわかるけれども、きまじめに考えるということもわかるんだけれども、国民世論というものを考えでできるだけ努力してみなさいということでございますので、その方針に従って今後努力してみたいと、こう思っております。
  28. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 簡単に補足をさせていただきます。  委員御指摘のように、中曽根・金丸会談におきまして一%決定をできるだけ守っていくということの確認が行われております。今回、防衛力整備五カ年計画を決定いたしました後の官房長官談話におきましても、この一%枠の五十一年の閣議決定、その趣旨を尊重していくと、こういうことを申し上げて内外に考え方を明らかにいたしたところでございます。  今、防衛庁長官から具体的にそれぞれ御説明をいただきましたので、重複を避けさせていただきたいと思いますが、年度年度の予算編成の中で、これは予算が単年度主義であり、その予算編成は当然財政事情その他各費目にわたってバランスをとって予算編成をしている、そういう中で防衛費をどういうふうにもっていくかという作業が御存じのとおり予算編成で行われるわけでございまして、そういった作業の中で一%閣議決定の趣旨を尊重して進んでいくということにいたしたいと思っている次第でございます。
  29. 服部信吾

    服部信吾君 次に大蔵大臣にちょっとお伺いしたいんですけれどもね。今回の新防衛計画を見てみますと、大変莫大なお金になっているわけでありますけれども、この十八兆四千億を見てみますと、大体年平均七・九%の増と、こういう先取りと至言えるあれになっているわけですけれども、これだけ厳しい行財政状況の中で、やはりこういう形で先取りをして、他の省庁のそういうあれとか、そういう面において大変いろんな問題が出てくるんじゃないかと思いますけれども、財政的に言って、大蔵大臣、どのようにお考えですか。
  30. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 今回の十八兆四千億円程度をめどと、これは言ってみれば限度でございます。これは先ほど来お答えがありましたように、この大綱を達成するためのぎりぎりの調和点をここで妥結したということでございます。経過は論ずるべきではございません。結果に対して私どもは責任を負わなければならぬという立場に立っておりますが、この計画そのものも諸施策との調和のぎりぎりの結論でありますように、年度年度の、これは別に年度計画を決めたわけではございませんので、毎年毎年の予算編成はやはり大綱に示されておりますとおり、また昭和三十二年以来ずっと続けてきました諸施策との調和を求めながら、その時点で厳しく対応して決めていかなければならぬと、しかしあくまでもこの大綱達成を図るというところの今回の計画というものは、もとより尊重するという姿勢を貫きつつも、諸施策との調和の中でぎりぎりの接点を求めていくべきであろうというふうに考えております。
  31. 服部信吾

    服部信吾君 細かい議論はまた後ほどしたいと思いますけれども、最後に、こういう批判があるんですけれども、今回の政府決定、これが今大変日米間における経済摩擦、大変厳しいものがあると。外務大臣総理もまたこの秋に行かれるようでありますけれども、そういうものを配慮した決定じゃないかと、こういう批判がありますけれども、官房長官、これについてはどのようにお考えですか。
  32. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 我が国が国際社会でどのように国際的な責任を果たしていくかというのは非常に大きな問題でございます。また日本に課せられた大きな責任であると思います。そういう意味では、例えば今度防衛費と一緒に決定をいたしましたODAを七カ年で倍増していくという方針を決定いたしましたのと並びまして、防衛費につきましても全く日本だけの問題であるというふうに申し上げる気持ちはありません。これは国際的に見て独立国として日本がどのように自分の責任を果たしていくかということに大きな関係があるというふうに思っております。ただアメリカから要求があるとか、アメリカとの関係だけを考えて決定をしたということではなくて、あくまでも我が国が独立国として防衛力を専守防衛の政策で整備をしていくということについてどれだけの水準が必要なのか。五十一年の大綱の水準に早く到 達するようにしなきゃならぬ、こういうことをやっぱり主眼におきまして、今大蔵大臣からもお話がございましたように、ほんとの大綱水準を達成するためにはどれだけの金が要るか、その総額をひとつ話し合おうということで、夜を徹していろいろ協議をいたしまして五カ年計画を決めだというのが実態でございます。  なお、我が国にとりまして安全保障上アメリカとの関係は非常に大事でございますので、これはもう外交努力を中心にいたしまして、いろいろな面で日米関係を大事にしていかなきゃならぬということは当然のことであるということはつけ加えさせていただきたいと存じます。
  33. 服部信吾

    服部信吾君 まあ、きょうはこの程度にしておきますけれども、次に毒入りワインについて若干お伺いしたいと思いますけれども、まあ、この問題については大変国民の間でも心配をしておるところでございますけれども、マンズワイン社の社長を初め全役員が辞任したと、辞任したから済めばいい、こういうもんじゃないと思いますけれども、厚生省としても二回、この立入調査をしたと。しかし、二回とも何かだまされたと。安全宣言を。国民からするとこれはどうなっているんだと、国としてはどうなっているんだと、こういう行政的なものに対する不信というものもありますし、また企業に対するモラル、こういうものに対する不信もあると思いますけれども、今回のこの事件について官房長官としてはどのようにお考えですか。
  34. 北川定謙

    説明員(北川定謙君) ただいま先生御指摘のワイン事件につきましては、いろいろな経過があったわけでございますが、厚生省といたしましては、海空港検疫所並びに各都道府県の密接な協力をいただきまして、問題点の適切な把握とそれから危険性のあるワインの販売の自粛等の措置を比較的早くとらせていただいたと考えておるところ、でございます。マンズワインのいろいろな対応の問題もございましたが、現段階では大体問題点の全貌がわかってきておりまして、山梨県といたしましても食品の安全を確保するという観点から食品衛生法六条を発動いたしまして、営業の禁止を合しておるところでございまして、この間に問題点の整理を早急に詰めまして、今後さらにこの不安が広がらないように、またさらに安全が確保された食品が出回るような態勢をとってまいりたいと考えておるところでございます。
  35. 服部信吾

    服部信吾君 輸入食品のいろいろ検査の体制ですけれども、五十九年度の実績を見てみますと三十六万件あるわけですね。その中で十九カ所の六十七名でやっておる。これじゃちょっとできないんじゃないかと、非常に本当の意味でのきちっとした調査ができないんじゃないか。大体書類調査で終わっちゃうんじゃないか。こういうことで、何らかの対応を考えなくちゃいけないんじゃないか、これが一点。  それから、新聞報道によりますと、イタリア製のアイスクリームにいわゆるジエチレングリコール・モノエチルエーテル、こういうものが入っていると、アイスクリームに入ってたと。それを入ってくる前に検疫検査でとめたんだと、こういうような報道がなされておりますけれども、これはまたアイスクリームにあったわけですから、この問題についてどこまで今調査をしているのか、大変大きな問題になるんじゃないかと思いますけれども、この点についてお伺いします。
  36. 北川定謙

    説明員(北川定謙君) 先生御指摘のように、食生活の多様化に伴いまして食品の輸入件数は年々非常に増大をしておるところでございまして、これを全国の十九の海空港で検査をしておるところでございますが、確かにあらゆる食品について一〇〇%の安全が期せるかどうかという問題はなかなか難しいところではございますが、問題点のいろんな優先度、それから危険度というようなことを考慮をいたしまして、書類審査で済むところは書類審査で済ませ、非常に危険度の高いところにつきましては検疫所あるいは衛生試験所あるいは指定検査機関等の協力を得て必要な検査を行っておるところでございます。今回の事件一つの教訓といたしまして、今後の検査の体制のあり方等についてもさらに検討を加えていく必要があろうかというふうに考えておるところでございます。  それからアイスクリームの問題につきましては、この種のものは各国がそれぞれこういうものを使っていいかどうかというようなことにつきましては、国際機関等の情報をもとにしながら、できるだけ相互の情報をとりながらやっていくところでございますが、この物質につきましてはイタリアでは食品添加物として認められておるところであり、日本ではそれは認めてないというところでございます。しかし、いずれにしても日本ではこれは認めてないというところでございますので、検疫所におきましてこの種のものが入ってくることについては厳しい警戒態勢をとっていくということで、現在のところこれらのアイスクリームについては重点的な検査体制をとっておるところでございます。
  37. 服部信吾

    服部信吾君 最後に官房長官にお伺いしたいんですけれども、この貿易自由化の流れの中で我が国が基準・認証や輸入手続の改善、こういうものを迫られている。これは貿易摩擦の部分でありますけれども、食品についても規制緩和が求められていることもあるわけですね。そういうことで輸入食品が多く入ってくるようになると、食品の安全対策についての各国との情報の交換とかそういうものをやはりこれからどんどんやっていかなくちゃならない、こう思うわけですけれども、共同研究あるいは国際化時代に対応した食品衛生対策が必要になると思いますけれども、輸入ワインも含めて今後の輸入食品の安全確保について官房長官にお考えをお伺いして終わります。
  38. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 委員御指摘のように、今日国際社会からは日本の市場の自由化ということが迫られておりまして、いろいろ基準・認証の緩和等について各省庁と相談をしながら進んできたところでございます。そのことからいきますと、今度の事件などは非常に残念な事件になっておりまして、一方ではどんどんと自己認証へ持っていって自分ところの、向こうの国のいろんな検査データなどでもうどんどん日本に入ってこれるというふうにしていきたいと一方では思っておるわけでございますけれども、もっとも厚生省はなかなか慎重でして、そんなにどんどん入れてきたら非常に食品などはもう問題が起こると、あるいは化粧品なんかでもいろいろ日本人の肌に問題が起こる、そんなことを盛んに申しまして、なかなかこの市場開放へは厳しい考え方も一方で持ちつつ来ておるわけでございますけれども、それらの調整をどうするかということは非常に大きな問題であると思います。特に人命、健康などに関係のある問題につきましては、今後とも御指摘のように各国といろんな共同研究であるとか情報の交換などをいたしまして、同時に国内の業界に対しましてもいろいろ検討すべきことは検討する、消費者にも情報を流すべきところは流すというようないろいろな幅の広い努力をして進まなければならぬと、こういうふうに考えておりまして、今後とも委員御指摘の御趣旨をよく踏まえまして、幅の広い立場から努力をしていくようにいたしたい、こう考える次第でございます。
  39. 安武洋子

    ○安武洋子君 昨日、中期防衛力整備計画が閣議決定されております。六十一年度から五年間の軍事費総額十八兆四千億、これをめどとしております。この期間中のGNP比は一・〇三八%、こういうことになりまして、五十一年に閣議決定いたしておりますけれども、この一%枠を閣議決定の形で今度は破る、事実上突破するということになります。  それで、官房長官が先ほど御答弁なさっておられまして、一%をできるだけ尊重したいんだとかその趣旨を尊重したいんだとかというふうな御答弁でございましたが、私はそうはならないと。まあ、御答弁求めましても同じことであろうと思いますので、防衛庁長官にお伺いをいたします。  防衛庁長官は単年度ごとに一%以内に抑えられる、必ず抑えられる、こうお考えなのか、あるいは単年度で一%を守れないようになるということもあり得るというふうにお考えなのか、御答弁願います。
  40. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 私たち防衛計画大綱の水準の到達という従来からの公約がございまして、これにつきまして今度五カ年計画を作成し、その内容を中期防衛計画として政府レベルの正式のものにしていただいたわけでございます。そして、これを実際に各年度の予算で実行していきます場合に具体的にどのようになるかにつきましては、現在GNPの改定の問題もございますし、また予算につきましては各単年度につきましての予算額とそのときのGNPの関係を定めたものが三木内閣当当時の閣議決定であろうと思いますので、その点につきましては流動的な側面があろうかと思います。したがって、今後のことは各年度でやってみなければかなりわからない流動的なところがありますが、私たちとしては閣議決定の趣旨をできる限り尊重してまいりたい、こう思っております。
  41. 安武洋子

    ○安武洋子君 防衛庁長官として私はどう思っておられるのかということを確認したわけなんです。しかし、いずれにしましても現在の試算といいながら五年計画で一%を超える、確実に超えているわけですから、そういうものを閣議決定をするというふうなことは一%枠突破ということを政府として事実上認めるというふうな態度変更につながるわけです。  そこで、聞きます。この中期防衛整備計画というのは五年間の計画となっております。この計画の見直しの項、これを見てみますと、「この計画は、随時必要に応じ見直しを行い、三年後には、その時点における経済財政事情、国際情勢、技術的水準の動向等を踏まえ、新たに作成し画すことについて検討するものとする。」、こういうふうになっております。それで伺いますけれども、これは「随時必要に応じ」ということは、一、二年でも見直しをするということ、それからあるいは今までの中期業務見積もりと同様に三年後には新たな中期防衛整備計画を作成していくということで、これは私が八〇年の十一月二十五日の内閣委員会質問をいたしまして防衛庁もお認めになりましたけれども、今までの中業と同じような三年ごとに新たに見直しをするというこのローリングシステム、この仕組みと同じでございますか。
  42. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) お答えいたします。  今回の計画の方針につきましては三年後に必ず新たな中期計画をつくるということまでは決めておりませんけれども、おっしゃるとおりこの種の防衛計画のように装備品をつくるにしても四、五年かかる、あるいは実際にそれが防衛力として役立つようになるには十年ぐらいかかるという計画には、常に中期的を見通しを持ちつつ、かつ継続性が必要でございますので、おっしゃるようなローリングというものを念頭に置いた計画として考えております。
  43. 安武洋子

    ○安武洋子君 官房長官、よく聞いていただきたい。今、ローリングシステムであるということで、私はこれ中期業務見積もりのときにも追及をさせていただきました。五年間十八兆四千億というのは、これは五年でこの額にとどまるという保証はどこにもありません。ということは、これは十八兆四千億というのはとりあえず三年間を拘束するだけであると。三年間で五年の計画を前倒ししてそのほとんどを使ってしまって、三年後には新しい今度は業務計画を発足させる、そしてまた新しい五年計画を立てて、またそれを前倒しにしてほとんどを消化して、そしてここからまた新しい三年計画、ローリングとして発足させる、こういう仕組みでございます。仕組みそのものは、これは防衛庁がもう過去にお認めになったことでございます。ということであれば、それは十八兆四千億、あくまでも三年間は拘束するけれども、三年たてば随時見直しというのもありますけれども、三年たてば新たに見直しをして五カ年計画を立てる。その間に、今までの中業がもう事実で示しているように、既に前倒しをしてきている、そして新しく計画を立てて膨張させていく、これじゃもう幾らでも雪だるま式に膨れ上がっていくではありませんか。  そのときに私の追及に対して、一%の枠内でやるんだから、それはそういう雷だるま式にならないとおっしゃる。しかしその一%の枠は確実にもう超えるという五カ年計画を立ててなさって、そして三年ごとのローリングの見直しであれば、確実にこの十八兆四千億というのは何の歯どめにもならない、三年を拘束するだけと、こうなるではありませんか。いかがですか。
  44. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 少し、どんどんと防衛費というのは拡大していくと思い込んでおられ過ぎる節があるのではないかと、こういうふうに思いますが、政府のこの防衛力整備は、五十一年の閣議決定で大綱というのが決めてあって、御存じのとおりです。それでその水準があるわけです。その水準に向かって早く到達をしたいと思って従来も努力をしてきておりますが、なかなかそこまでいかない。ぜひ今度の五カ年計画ではその大綱の水準に達するようにしたい。防衛庁も当然そう当事者として思いますし、政府全体もそういうふうな考え方の上に立って、それじゃそれが幾らかけたらそれだけの到達ができるのかということをいろいろ検討をいたしまして、そしてこの十八兆四千億をおおむねめどとして、そしてその水準の達成に向かって努力を進める、こういうことを今度決めたわけでございます。これは五カ年間の総額、それを限度として整備していくということも明らかにいたしておりまして、大綱の水準に向かって努力をしていくという大きな、何といいますか一つの枠組みがある。その枠組みの中で努力していくのであるということを明らかにいたしておるところでございます。  先ほどから申し上げてきておりますように、年々、年度年度、その年の財政事情のもとでいろいろと厳しい査定を行いまして予算編成が進められていくわけでありまして、それらを通じまして五十一年の一%枠内というその趣旨を尊重して進んでまいりたいと、こういうふうに考えておりまして、三年間で見直しをするというのはあくまでも、いろいろな変化をしていく情勢がございますから、それらの中で見直しをするという意味で、決して五カ年間のものをもっと前倒ししてきて三年間でやってしまうというようなことでは全くない、考え方はそういうことではないということを申し上げておきたいと存じます。
  45. 安武洋子

    ○安武洋子君 ローリングシステムを認められたというのは、三年で、またここに見直し規定にもちゃんとあるように、三年で見直しをするということも含まっているわけです。ローリングシステムを取り入れるということです。  そして、今までの中業を見てみると、明らかに三年間、五年で立てて、それを前倒しして進めてきて、そして三年になればまた新しい中業を発足させて、また前倒しで、そして新しく三年になるとこの中業を発足させる。だから今まで大軍拡が進んできたということです。  そこで伺います。十八兆四千億、これで防衛計画の大綱、これが確実に達成できるということなんですか。
  46. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 私たちは、今回の計画でそのとおり実施できれば防衛計画の大綱の水準に到達する可能性がある、そういうことができると、こう思っております。  ただその際、一言申し上げておきますが、先ほど御質問には事実関係に、ちょっと事実と違うところがございます。例えば中業で五カ年をやって、それで三年以内にそれを到達して、また新たな軍拡とおっしゃられましたけれども、ここは累次この委員会でも申し上げておるように、私たち最大の悩みは、その計画で立てたものがそのとおり実施できないことなんでありまして、例えば常識的に言いますと五カ年計画を立てて、そして三年目となりますと大抵の場合は六〇%はいくだろうなとお思いでしょうけれども、実際は四六%でございます。したがって逆でございまして、先生の御指摘よりそのとおりいっていないという、この事実関係だけはしっかり申し上げさせていただきたいと思います。
  47. 安武洋子

    ○安武洋子君 一つしっかり確認しておきたいんですが、「水準の達成」と。確実に達成できるということですか。この目的のところには「防衛力の水準の達成を図る」ということになっておりますけれども、これは防衛計画の大綱が確実に達成できるというふうに読んでよろしいんですか。
  48. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 達成が可能である計画だと思っております。
  49. 安武洋子

    ○安武洋子君 では私は、先ほどローリングシステム、仕組みですからね、これがなぜ五年間を歯どめにされる――歯どめになるんですか。明らかに三年で見直しすると。あなたは今、それは少なかったんだとおっしゃいますけれども、それにしても三年で見直しをしていくということになれば、十八兆四千億というのは五年を拘束するものでないということだけははっきりしているわけですよ。今までだってそうですよ。前倒しをしてきておりますよ。その点は私、時間ありませんし、今具体的な資料を持っておりませんけれども、そうじゃないということを申し上げておきます。  そして私は、ローリングシステムがあるからこそ、十八兆四千億というのが五年間の何の歯どめにもならないということを申し上げて、そしてこういうふうに五年間で一%を突破するというものを決めておいて、そして三年間で見直しというローリングシステムを取り入れて一%をもう突破していくというふうな新しいあなたたちは軍拡に進んでおられる。そして私が軍備を大拡張していくんだというふうに思い過ぎだとおっしゃるけれども、アメリカはもっと要求しているではありませんか。  そこで聞きます。OTH、アメリカのAEGIS艦のような新型ミサイル艦、それから空中給油機、AWACS、こういうものは今回の計画に入っているのかどうか、それから六十年度の予算調査費などの形で入れるのかどうかということ、これをお伺いいたします。
  50. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) お尋ねの個々の件についてでございますが、まずOTHについて申し上げますと、我々は専守防衛という立場でございますから、常に事態は受け身で起きるということですから、平時からできるだけの情報なり監視能力を持つ必要がある。そういう点、あるいは最近における各国の航空機なり、航空機に積む武器の進歩ということを考えますと、洋上における防空ということも考えなくちゃいけない。そういうことになるとOTHのようなレンジの長いレーダーというものがあるいは有効ではないかなという着意がございまして、これについて今後研究をいたしまして、これが非常に有効なものであるということであれば、その整備に着手したいということで若干の経費を計上いたしております。  それからAWACSあるいはAEGISということにつきましては、AEGISでございますが、これはAEGISということを必ずしも念頭に置いているわけではございませんけれども、艦艇の防空能力、これの近代化を図るための施策というものは必要であろうと考えておりますが、それがどういう形でやるべきかということについてはなお検討の余地があるということで、これも検討課題として計画の中に組み込んでおるということでございます。  それからAWACSにつきましては、現在AWACSというものは念頭にございませんけれども、E2Cを念頭に置いて、さらに一個隊の、一個哨戒をできるだけのものをこの計画に計上いたしております。
  51. 池田久克

    説明員(池田久克君) 六十年度予算に、今お挙げになりました予算調査費等で入っているかという御質問でございますが、計上されておりません。
  52. 安武洋子

    ○安武洋子君 私は改めてこの問題を追及いたしますけれども、しかし一%枠を突破して、改定大綱、これに道を開く。さらに雪だるま式の大軍拡、これに一歩を踏み出しているということは申し上げておきます。  そして、ちょっと議題を変えますけれども、この七月にナイロビで世界婦人会議が開かれまして、私も出席をいたしました。この中で将来戦略が採択をされております。政府はこれを一体どのように評価されているのかということです。  それと、過去十年、法制面での一定の前進はございますけれども、臨調行革路線ということで保育行政などが切り捨てられる、あるいは労基法の改悪などというふうなことで、労働面の後退もあるというふうなことなんですが、この将来戦略に沿いまして、五年なり十年なりの期限を定めて行動計画とか実現計画、これを立てる必要があるのではないかということです。さらにそのための推進本部とか婦人問題対策室、こういう推進体制をとるべきでないかと、以上三点を御質問いたしまして私の質問を終わります。
  53. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) ナイロビにおける会議が非常に盛会に終わりましたことを大変喜んでおります。同時に、その席で二千年に向けての新しい戦略というものが採択をされた、しかも百五十七カ国が全員一致でこの決定をしたということの意義は非常に大きなものがあると思います。同時に、やはり各国にまだ婦人の地位についてのいろんな問題がある。それらを解決して進んでいかなきゃならぬということも、これもこの会議で非常に明らかになったところであります。我が国においても今後も努力をしていかなきゃいかぬというふうに考えております。  今後どういうふうに持っていくかということにつきましては、ひとまずナイロビの会議までということでずっと十カ年間努力をしてきておって、我が国の婦人の地位を確立するためのいろんな施策は随分進んできたというふうに考えておりますが、今後さらにどのように持っていくかということにつきましては、この会議が終了したということもありまして、いろいろ婦人問題の推進会議、藤田議長さんを中心とするそういった会議もありますし、いろんなそういう御意見なども伺いまして、今後どう持っていくかということをよく検討していくようにいたしたい、こう思います。  ただ、我が国の政府の施策の中で、婦人問題というのは非常に大きな問題であり、重要な問題であるという認識を持っておりますので、その観点からこれらの作業の検討を進めていくようにいたしたい、こう考えておる次第でございます。
  54. 井上計

    ○井上計君 質問の前に委員長に要望しておきます。  理事会におきましては我々委員質問時間をおおよそと申し上げていいかと思いますが、決めるわけであります。やむを得ないとき、一、二分のオーバー、これはいたし方がないと考えますけれども、大幅にオーバーしたときには、委員長の権限で適当な処置をされるように強く要望しておきます。  限られた時間でありますから、問題を一点に絞って官房長官にお尋ねをいたします。  戦後政治の総決算中曽根総理は唱えておられます。そのために各種の問題を積極的に処理しておられることについては私は敬意を表します。  しかし、戦後処理の問題としてまだいろいろと残っておりますが、その重要な問題の一つとして、台湾人の元日本兵への補償の問題等について一、二お伺いをいたしたい、こう思います。  去る八月二十六日、東京高裁での控訴審の判決が行われました。詳しく申し上げる必要はなかろうと思いますけれども、判決では、戦争被害に対しいかなる補償を行うかは国の立法政策の問題、複雑な国際情勢を考慮すれば憲法違反とは言えないという判決ではありますけれども、しかし同時に裁判長は、国の道義上の責任が明らかにある、これらの原告の受けている不利益を早急に取り除き、国際信用を高めるよう努力することを期待すると、このような救済策を政府並びに国会に求める異例の勧告と申し上げてよろしいと思いますが、これを述べておられるわけであります。  三年半前の一審判決においても同じような趣旨の判決並びに勧告が一審の裁判長から述べられておるわけでありますが、その後三年半、一向に進展をしていない。ただ、進展しておるといたしますと、本年度予算において五百万円の調査費が計上されておるということだけでありますが、なぜ三年半もかかって現状そのままであるのか、また五百万円の調査費が計上された本年度においてどのような進捗状況にあるのか、これらの点をひとつ長官にお伺いいたします。
  55. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 御指摘の台湾人元日本兵の問題につきましては、政府は大きな関心を持って従来もこの問題と取り組んできたところでございます。  国会におきましても再三御意見を伺いまして、国会での御関心の深さということについても政府は重大な認識をいたしておるところでございます。  今度、判決の中で国の主張は認められたとは申しながら、国政を進めていくものに対してこの問題の解決をという付言がなされたことにつきましても、非常に大きな責任を感じておるところでございます。  従来も検討してまいりましたが、この五月二十四日に関係省庁連絡会議というものを設置をいたしまして、本年度の予算に計上いたしております五百万円の調査費を充当いたしまして、いろんな角度からこの問題の検討を進めておるところでございます。従来の経緯でございますとか、あるいは各国とのいろいろな関係でございますとか、当然従来の経緯の中に該当する方々の様子などについても、いろいろ調査もいたしまして検討をいたしておるところでございます。まだこの席でその検討の結果を御報告申し上げるような段階に至っておりませんことを大変申しわけなく思いますが、国会でもいろいろ取り上げられてこられた経緯、また今回の裁判所の判決を重々しく受けとめまして、さらにその検討を前向きに進めていくようにいたしたい、こう考えておる次第でございます。
  56. 井上計

    ○井上計君 私は、今の時点で官房長官の御答弁、不満だとは言いませんけれども、連絡会議が五月に設けられてその後検討はされておるようでありますが、事実上は一向に進展をしていない、このように感じまして大変に実は残念に思うわけであります。  靖国神社問題を初めとして、中曽根内閣の積極的な姿勢については賛否両論があります。私個人の考えを申し上げることはきょうは省略いたしますけれども、しかしこの問題については、新聞論調も、珍しくと言っていいと思いますが各社とも全部、これは早急に救済策を講ずべきであるということを新聞論調も全部言っているわけですね。だからほとんどこれは、国民世論としてもぜひ早く補償することが必要だ、またこれが、我が国が戦争によって各方面にいろんな迷惑をかけた、その中で順次処理しておる問題として、大きな問題として残された、これはただ単に経済的な問題だけではなくて、むしろこれは日本の、いわば諸外国に対する道義的な責任、むしろこれを補償しないことが逆に日本に対して、近隣諸国が日本のいわば道義心というものについて疑いを持っておる、こういう新聞論調もあるし、事実またそうであろう、こう考えるんです。  ですから私は、その進まない理由が何であるかということ、私自身が感じます、また新聞にも若干出ておりますけれども、中国に対する遠慮であるとか、あるいは北鮮との未解決の問題であるとかというふうなものがもしそれにあるとすると、私は何らそんなことについて遠慮する必要は全くない、こういうふうにも感じるわけですね。中国との問題、いろいろあります。しかし中国が、最近これは私自身としては非常に遺憾に思う問題は、靖国神社問題等についての中国の高官の発言は大変な実は内政干渉だ、こう思うんですね。これを遠慮して放置しておるというふうな、いわば中曽根内閣の何か必要以上に遠慮心というふうなものが、こういうふうな台湾人の元日本兵の補償の問題についてもあるんではないのかなと、こんなふうな実は気がするわけでありますけれども、そんなふうな遠慮がなければ結構でありますけれども、ぜひこの問題を早急に解決できるように、せっかく計上されておる調査費が今年度有効に使われて、来年度はぜひこの補償が実現できるように格段の御努力を願いたいと思いますが、いかがでありますか。
  57. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 御指摘のように、この問題を解決していくにはいろいろ困難な事情もございます。一つは、日台間の全般的な請求権問題が未解決であるということ、それから台湾以外の分離地域との公平、波及の問題があるということ、それから国は随分経済が大きくなって豊かになっておりますが政府は非常に貧乏で財政事情が非常に厳しいというようなこと、いろいろな観点から総合的に検討していかなければならぬと思います。  ある段階が参りましたならば、いろんな国とのこの問題についての協議も必要かというふうに思っておりまして、必要以上に遠慮をしておるというわけではございませんけれども、この問題をぜひ解決したいとする人道上の立場と、現実に外交問題としてどう処理していくかということとの確かに調整の問題はあるというふうに思うわけでございまして、それらは非常に苦慮している問題でございます。先生御指摘のように、こういう問題というのは、大蔵大臣そばにおられますが、確かに財政上は厳しゅうございますけれども、こういうことだということについて我が国がどうしても解決しなきゃいかぬという考え方に立ては、これはもうお金の問題は言うべきではないというふうに私どもは思いますが、いろいろな角度から検討してまいらなければなりませんので、さらに国会の御指導もいただきながら前向きにひとつ検討を進めるようにいたしたい、こう考えておりますので、どうか深い御理解を賜りますようにお願いをいたします。
  58. 井上計

    ○井上計君 いろいろと検討の結果、金の問題云々すべきでないというふうなことになれば当然と、こういうお答えがありました。全くそのとおりであろう、こう思います。したがって、金の問題よりもやはりもっと重要な問題として早く結論を出していただくように、積極的な今後のひとつお進めを要望しておきます。  そこで、今官房長官から金の問題になると大蔵大臣の問題だと、こういうお話がありました。特に大蔵大臣質問通告しておりませんけれども御同席でありますから、大蔵大臣、この問題についていわば予算上の問題として今後どのように取り組んでいただくのか、積極的に取り組んでいただくことを要望してお答えをいただきたい、こう思います。  私の質問時間、若干残っておりますが、これで終わります。
  59. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 官房長官からもお答えがありましたが、五百万円の予算、この五百万円という金は大変大きな予算の中から小さい金でございますが、これは審議会の経費でございますので審議会の中でも御議論をいただいておりますし、さてそれをどのような形で具体的にするか、私も今官房長官お答えになりました諸般の問題はよく承知をいたしておりますが、その結論等を得ましたならば、それに対しては私どもとしても、これはいわゆる別枠とかそういう観点の議論じゃございません、したがって正面から取り組むべきであると思っております。――失礼しました。審議会ではなく検討費でございました。
  60. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 短い時間を二つにちょん切られて戸惑っておりますが、午後の質問の関連がございますので、ただいまは官房長官に二つの点についてお尋ねいたしたいと思います。  まず第一点は、今、日本国民の中でなぜ今という言葉で疑問の声が沸き起こりつつあるのが日の丸と君が代の問題であると思います。国旗掲揚や国歌斉唱というのは、国民が心から誇りを持って掲揚しそして歌うべきものであると私は思っております。決して強制すべきものではないと思っております。ところで文部省の調査によりますと沖縄県の小中高校の調査結果は全国でも非常に低い、下位にある、それにはそれなりの理由があると思われます。官房長官はその理由をどのように考えておられるか、率直な御見解をお聞きしたい というのが第一点。  まとめて申し上げます。次にもう一点は、米軍用地使用特別措置法について申し上げます。  日本における米軍駐留の根拠をなしておるものは申し上げるまでもなく日米安保条約であるわけですが、その日米安保条約の有効期間でさえも一応十年に限っておった、ところが現在では一年前に通告すれば破棄できる状態になっておるわけなんですね。にもかかわらず、しかるに米軍用地使用措置法は日米安保条約と地位協定を実施するための法律によって軍用地を二十年強制使用するため延長しようとするという、こういう動きに対してはまことにこれは矛盾するのではないか、こう思われてなりません。  以上の点から、一体二十年にしようとする根拠は何であるのかその点、以上二つの点について官房長官の率直な御見解をお聞きしたい。
  61. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 先般の文部省の調査で君が代、日の丸の問題が沖縄では非常に低い数字になっているという調査の結果が出ているということにつきまして、非常に残念に思っておるところでございます。  昭和四十七年の本土復帰が実現をする以前におきましては、日の丸の掲揚運動などが非常に大きな高まりを見せたというようなことも聞いてきておるところでございますが、実態として沖縄で今非常に基地などのいろいろな問題があり県民のいろいろな御意見がある、そしてそんな中でよく御上京になられまして私どももいろいろな沖縄県の県民の悩みなどを伺ってきておるところでございます。そういう中でぜひひとつ将来国際社会、日本の国あるいは日本人が正しく理解をされ尊敬をされるような国民として発展を遂げていくということのためには、やはり児童生徒に国歌あるいは国旗に対する正しい認識も持ってもらい、そういった環境の中で心身ともに健全ないい子供が育っていくというようなことになればいいがと心から念願をいたしておる次第でございまして、なぜ低いと思うかという御質問に対して、私どももお答えしにくい感じを率直に言って私持っておりますが、沖縄県民の方々が学校の卒業式などでみんな日の丸の旗を掲げ、君が代を歌って子供たちを卒業させるとか、あるいはいろんな式典などでそういうふうな気持ちで県民の皆さん方も一緒になってひとつ子供を成長させていこうというような、そういう環境、雰囲気になることにぜひひとつ一層の各方面の御指導をお願いしたい、むしろそういうお願いを申し上げたい気持ちでいっぱいでございます。  今御指摘がございましたもう一点の問題でございますが、安保体制は我が国防衛の基本であるのみならず、極東の平和と安全に寄与をいたしておりまして、日米両国においてその意義が高く評価をされ、その地位が揺るぎないものになっている、こんなふうに考えておるところでございます。安保条約は昭和三十五年の条約締結後既に二十五年経過をいたしておりまして、現在の国際情勢、日米友好関係等から見て日米両国とも安保条約を終了させるというふうには考えておらない、そういうふうなことからも御指摘の点は懸念はないのではないかというふうに考えておりまして、条約の確固たる立場というものを私どもとしてはそのように考えておる次第でございます。
  62. 丸谷金保

    委員長丸谷金保君) 以上で内閣官房長官に対する質疑は終了いたしました。  藤波内閣官房長官は御退席いただいて結構でございます。  それでは引き続き全般的質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  63. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 持ち時間がわずかでございますので、きょうは端的に国際人権B規約の選択議定書への我が国の加入の件と、アジアに対する我が国の人権活動強化のあかしとしてアジア人権センターの設立問題の二点について、まず外務大臣見解を伺っておきたいと思います。  それに先立ちまして、先月私ども日本社会党人権調査団の訪米、訪欧に関しまして、関係在外公館の大使、館員の皆さんに大変にお世話をいただきまして、この機会に感謝の意を表しておきたいと思います。本当にありがとうございました。  それで、ジュネーブでいろいろ私ども勉強してきたんでありますが、そのことにかかわって質問いたします。  私も先月アメリカからジュネーブに入りまして、お手元に差し上げました社会党の五項目提案をもとに、チョードリ国連人権委員会議長、ヘルンデル国連人権センター所長、ダエス国連人権小委員会議長や国際法律家委員会、国際人権連盟、身体障害者インターナショナルなど各NGOの皆さんと意見交換をしてまいりまして、社会党のこの五項目提案、大筋において賛同をいただけたものと考えております。これらの皆さんと話してみまして感じましたことは、日本の問題に関する関心が大きく非常に強いことであります。この人権問題は、皆さんがデモクラシーの土台として人権をとらえていることがよく私たちはわかりました。したがって、人権問題で日本が今後指導的立場に立ってくれることについての期待も大変大きいと感じてまいりました。  そこで、我が国の外交責任者である外務大臣に再確認の意味も含めまして伺いますが、国際人権B揮約選択議定書加入の決意と、できればいつごろまでにこの加入をしていくのかといった点について聞かしていただければ非常にありがたいと思いますが、ひとつよろしくお願いします。
  64. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まず、本岡さんを初めとする社会党の人権調査団が大変活躍されましたことに対して敬意を表したいと思います。  そこで、B規約選択議定書についてでございますが、これは個人の通報に基づく国際的な検討制度が国際的にも普遍性を有する実効的な制度として有効に機能するか否か、必ずしも疑問なしとしないわけでございますが、現在までの本制度の運用状況はおおむね問題はない、こういうふうに判断をしております。国会の附帯決議も踏まえまして、今後締結に向けまして積極的に検討をしてまいりたいと考えております。
  65. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 大臣の決意として聞かしていただいたんですが、できれば大臣として今後こういうふうにやっていきたいというふうな、一歩踏み込んだ具体的なものを聞かしていただくわけにはまいりませんか。
  66. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今申しましたように、積極的な意欲は持っておるわけでございますが、今ちょうど検討いたしておる段階でございまして、いつどうするというふうな具体的な時期等についてはここで申し上げる段階にはないわけでございます。しかし、全体として積極的な姿勢で取り組んでまいりたい、こういうふうに思っております。
  67. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 大臣もこの国際人権規約締結国の一覧表は見ていただいていると思います。一九八五年一月二十五日現在で見ますと、アジア四十カ国あります。その中で、この人権B規約選択議定書に加入しているのはゼロであり、世界では三十五カ国あります。また、A規約加入は十四カ国、B規約加入は十二カ国という状態であります。したがいまして、アジアにおいてまず我が国がこのB規約選択議定書に加入をしてほしい、指導的な立場をとってほしいということはジュネーブにおけるこの人権小委員会にかかわっている皆さんの強い願望であり、それに対して非常に大きな期待を持っているということをここでひとつ強く申し上げ、ぜひともその加入問題についてはできるだけ早い時期に確定をしていただいて、アジアの皆さん、世界の皆さん、日本に注目している皆さんに対して日本政府の積極的な立場というものをひとつ示していただきたい、このように思います。  そこで、同じような問題で、アジア人権センター設立問題というのも非常に強い関心を持たれているわけでありまして、アジア地域の人権活動を国連という立場で支えていくために日本がどういう役割を果たすのか、我が国はこれは国際化という問題をこれから強く進めていかなければならぬ、中曽根総理も国際国家というようなことをおっしゃっておられるわけであります。そういう意味で人権問題というのは、初め言いましたように、これはヒューマニズムの土台となるべき問題で、これに対して我が国がどう活動するのかということは、日本が世界の中でこれから尊敬と信頼を集めていくという上にも極めて重要な課題だと私は思っております。そういう意味で、国連の活動の一つの舞台としてアジア人権センターというものを日本に設立していこうとする、この私たちの決意というんですか、政府のそういう考え方というものが表明されることは、そういう意味においても極めて重要な意味を持つ、こう考えておりますが、外務大臣のお考えをひとつ聞かしていただきたい、このように思います。
  68. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 人権の尊重擁護を重視をいたしております我が国としまして、国際社会に貢献するという立場から本分野におきましてもできる限り積極的な役割を果たしてまいりたいと考えております。  一方、今御指摘がございましたアジア人権センター設立の御提案につきましては、当地域の非常に複雑かつ多様な諸情勢からして、その実現のためにはまだ条件が整ってないというふうにも見ておるわけでございまして、本提案につきましては貴重な御示唆として承っておるわけでございますが、そうしたアジア全体の状況というものをこれからも見ながら、ひとつ本提案についての研究もさしていただきたい、こういうように考えます。
  69. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 最後に、私どものつたない人権委員会に対する五項目提案というものを外務大臣の方にもお渡しをさしていただいたんですが、これは先ほども言いましたようにダエス国連人権小委員会議長からは全面的に賛意を表しますというふうなお考えも示していただきました。私どもはこれに従ってこれから人権問題にかかわっていきたい、こう思います。外務大臣としまして、この私どもの五項目提案についてどのようなお考えをお持ちいただいておるか、それをお聞きしまして質問を終わりたいと思います。
  70. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 社会党の調査団がダエス小委員会議長に対しまして提案されました五項目につきましては、ダエス議長も全面的な賛意を表する、こういうことであったと承っておりますし、またその内容につきましては既に我々も承知をいたしております。  政府としましては、やはり基本的人権というものは極めて大事である、これを尊重、擁護しなければならぬという立場を今後とも貫いてまいりたい、こういうふうに思っております。そういう立場において五項目の提案はまさに貴重な御示唆として承っておきたい、こういうふうに思うわけであります。
  71. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 次に、厚生省に伺います。  八月二十一日、ジュネーブで国連の差別防止及び少数者保護小委員会が開かれました。厚生省の小林精神保健課長は、その場で発言をいたしましたが、その内容について確認をしたいと思います。小林課長は、日本の精神障害者の「人権擁護をさらに推進するという観点から、精神衛生法の改正に着手することを最近決定いたしました。」と発言いたしました。厚生省として正式な法改正についての態度をここで明らかにしていただきたいと思います。
  72. 仲村英一

    説明員(仲村英一君) 精神衛生の問題は、もちろん私どもの行政の範囲でも非常に大事な分野でございますが、厚生省といたしましては、当面は現行の精神衛生法の適正な運用に努めてまいりたいと考えておりますけれども、我が国の精神衛生制度のあり方について各方面の意見をいろいろちょうだいいたしまして精神衛生法の改正を行うという考えを持っております。精神保健課長がジュネーブでいたしました発言もこの厚生省考え方を踏まえてのものでございます。
  73. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それではいつ改正をするというふうに今厚生省内部では考えておられますか。
  74. 仲村英一

    説明員(仲村英一君) ただいまも少し申し上げましたが、広く関係方面の意見をお聞きいたしたいと考えておる次第でございまして、そういうお考えをいただいた上で法改正を行っていくという予定にしておりますので、現在のところ具体的な時日についてはお示しする段階ではないと考えております。
  75. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 あなたのその答弁は、国際的にやっぱり日本政府が欺瞞したということになります。私は、ここに小林課長の発言の、厚生省日本文に訳したものを持っております。そこで厚生省は明確に言っていますね。  「厚生省は精神病患者の人権擁護をさらに推進するという観点から、精神衛生法の改正に着手することを最近決定いたしました。」、あなたのおっしゃるのと随分違うでしょう。あなたは、当面は現在の法律を適正に運用していきながら、いつかの時点でそれをやりますということで、ここで断定をしておっしゃっている、しかも一番最後に「専門家の意見をさらに詳細に検討することとしており、患者の人権を強化する方向で法改正を行いたいと考えております。」、こういうふうに明確にそこで断言をしておられるんです。それで、国連の人権小委員会に参加しているメンバーは、ああなるほど厚生省はいよいよ着手することになった、これで私たちもいろいろかかわってきたことについてよかったとみんな喜んでいるんですよ。それで私たちは、絶対そうじゃないぞと、厚生省やる気はありませんよと言って国連の場で言ってきたんですよ。しかし、本当かどうかは国会で私は確かめできますと言いましたが、あなたの言葉をそのまま伝えれば、恐らく国連人権小委員会は、日本政府の――去年もそうでしたが、ことしも課長がわざわざ来て、いつのことやらわからぬ問題について、あたかもすぐそのことの改正が行われて、国際的に批判を浴びている日本の障害者問題が解決に向けて大きく前進するというその期待をあなた方は見事に裏切ることになるんですよ。こんな二重三重の裏切りを僕はすべきでないと思いますね、さっきも外務大臣がいろいろおっしゃっておりましたけれども。もっと明確にこの小林課長の国連における発言に相応したものをあなたは国会でやらなければいけないでしょう。今は当面やっていくと、当面やっていくって、当面って、政府のやること二十年、三十年でも当面ということはたくさんあるじゃないですか。当面なんというような言葉信じませんよ。少なくとも一年かかって検討して来年どうするとかということでなければ国連の場を侮辱したことになるでしょう。また外務省恥かきますよ、これ。
  76. 仲村英一

    説明員(仲村英一君) 先ほどお答えいたしましたけれども、精神衛生法の改正を行うということで申し上げたつもりでございますが、その間に各方面の御意見をお聞きするということで少々時間がかかるという観点から、時期を明示できないということでお答えしたわけでございます。改正するということにつきましてのお答えはしたつもりでございます。
  77. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 いや、そういうことじゃなしに、はっきりとあなたの言葉では、当面は現在の精神衛生法を適用していきながらというのがついて、それで関係者の意見を聞いて改正する。そんな先の話じゃないんですよ。改正するというのなら、改正に着手していろんなら、今検討していつごろやるようにしています、こういうふうにおっしゃればいいんで、その前段が要らぬ。当面、現在の法を運用するって、それを抜きにして、厚生省としては精神衛生法の改正を決定いたしております、それが前へ出て、そして、今は関係者の意見をこれこれ聞いて、大体めどとしていつごろ、こうなって初めて国際的にも信用が得られるんじゃないですか。もう一理言い直してください。
  78. 仲村英一

    説明員(仲村英一君) その精神衛生法の改正までに時間がかかるということもございますので、その間は現行の精神衛生法の適正な運用には努めますけれども、法改正についてはそれを行うということで考えております。
  79. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 考えていますじゃないんだ。考えていますなんてここで言ったら大変なことになりますよ、あなた方。ここで先ほど何遍も言っているでしょう、「決定いたしました。」と、考えていますなんて言ってないじゃないですか。「法の改 正に着手することを最近決定いたしました。」、こう言い切っているものに対して、あなたが考えていますとか、検討していますとか言ったら大変なことになりますよ。一体何やっているんですか、厚生省は。
  80. 仲村英一

    説明員(仲村英一君) 御指摘のとおり、「患者の人権を強化する方向で法改正を行いたいと考えております。」という発言は、小林課長がジュネーブでしたとおりでございまして、私どもといたしましても法律を改正するということに決定しておるということを申し上げておるわけでございます。
  81. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 時間が来ましたので終わります。
  82. 石井道子

    ○石井道子君 自民党の石井道子でございます。  きょうは医薬の問題につきまして質問をさせていただきたいと存じます。  まず、医薬分業の問題でございますが、昭和五十八年の決算報告によりますと、国民医療費は十四兆五千四百三十八億円余でございます。そのうち外来診療の一般医療費は六兆五千六百九十三億円、薬局調剤医療費は二千五百九十三億円でございまして、国民医療費に占める割合は二%にすぎないのでございます。分業率は地域によりましてかなりの差がございますけれども、一〇%前後というような進行状況でございまして、まだまだ十分とは言えないわけでございます。世界各国では医薬分業が大変定着をしておりまして、我が国は先進国と言われておりますけれども、医薬分業に限ってはまず後進国であります。  最近とみに加速の度を加えております医療費抑制対策の影響を受けまして、医薬分業も高いとか安いとか、経済面のサイドでとらえられがちでございます。医薬分業の基本理念は、医師による診療と薬剤師による調剤に分離し、処方せんを公開することによって責任を明確化し、専門性と独自性を確立し、患者さんに対しても医薬品を安全で適正な供給を行い、医療の公正と質の向上を図ることを目的とするものであると思います。  医薬品の持つ特殊性、それは大変どんな薬でも副作用がありますし、よく効く葉ほどそのリスクも高いわけでございまして、また個人差によるきめ細かな経過観察と服薬指導が必要でございます。また最近は一人の患者さんが複数の医療機関で投薬を受けた場合もございまして、そのときの重複をチェックすることでありますとか、あるいは二種類以上の病気を持っている方が投薬を受けた場合の、生体内におきます医薬品の相互作用を未然に防止するための薬歴管理というような仕事も、大変重要な仕事になっているわけでございます。  例えば、高血圧でラシックス(降圧利尿剤)を投与されまして、また胃の薬で重曹などを投与された場合の副作用とか、あるいは糖尿病でトルブダマイドを投与され、脳血栓などでジクマロールを投与されましての副作用でありますとか、そんなようなこともありまして、非常にそのような仕事の重要性も関係をしてまいるわけでございます。  現行の出来高払い制度や病院経営を薬価差益に依存をさせなければならないという現在の診療報酬制度の中では、医薬品の品質や安全を考えるよりも薬価差を重視しなければならないというような問題があるわけでございまして、この医薬分業によって物と技術が分離されることによって医療の健全化と医療費の適正化に役立つことができると思うわけでございます。  今までも分業推進対策を進めていただいておりますけれども、特に昭和六十年度はモデル事業についても御配慮をいただいているところでございます。先日行いました医薬分業に関する医療機関の実態調査の結果を踏まえまして、医薬分業の推進対策について今後どのように取り組まれるお考えがお伺いをしたいと思うわけでございます。
  83. 代田久米雄

    説明員代田久米雄君) 医薬分業の問題につきましては、ただいま先生から御指摘がございましたように、昭和四十九年の十月の診療報酬改定を契機にいたしまして、医薬分業の推進の機運が医療関係者の間に高まり、処方せんの発行枚数も漸次増加をしております。  ちなみに、昭和五十八年度の処方せん発行枚数は九千四百九十九万枚でございます。五十九年度につきましては未確定でございますが、一億枚を超すという状態まで進んでまいりました。しかしながら、医薬分業の実施状況は地域により一様ではございませんで、全体として見ればなお十分とは言えないという状態にあると思います。  それから、今後の医薬分業の推進でございますが、国といたしましては、いわゆる調剤センターあるいは検査センター、そういうものを薬剤師会に設置をするという補助、あるいは医薬分業推進の指導者の講習、あるいは国民に対する広報活動、こういうものを引き続き実施いたしまして、昨年の健康保険法の一部改正の際の衆参両議院の附帯決議も十分踏まえまして、本年度からさらに医薬分業推進モデル地区事業も実施をいたしているわけでございます。  今後とも実施されました医薬分業に関する医療機関の実態調査等も踏まえまして、また医薬分業推進懇談会に図りながら関係者の御理解と御協力を得て処方せん受け入れ体制の強化などその基盤整備を図り、推進に努力を傾注していきたいというように考えております。
  84. 石井道子

    ○石井道子君 医薬分業の推進のためにはドクターとの了解が必要でもございますけれども、一方、国民の理解というものも必要でございます。長年の習慣から脱するための国民に対します広報活動、啓発対策につきましてはどのようにお考えでございましょうか。
  85. 代田久米雄

    説明員代田久米雄君) 医薬分業に対する広報活動をもっと強化すべきでないかと、こういう御意見かと思いますが、国におきましては関係団体の協力を得ましてテレビ、ラジオなどによる広報を行うということのほか、いわゆる壁新聞とかリーフレットそういったものを薬と健康の週間というような広報活動期間を設けまして周知徹底をしておるということでございます。  また、都道府県に対しましても種々の機会をとらえまして医薬分業の広報に努めるように指導をしてまいっております。  それから、医薬分業に関する広報活動をさらに強化いたしますように、今後さらに関係政府機関等の各方面に働きかけてまいりたいというふうに考えております。
  86. 石井道子

    ○石井道子君 次に、国公立の大病院とかあるいは大学病院におきます患者は大変な待ち時間で苦労していると伺っております。三時間の待ち時間で三分診療などとも言われているわけでございますが、投薬窓口におきます混雑とか待ち時間の長いことを解消するためにも、また服薬指導とか窓口でのサービス面に大きな支障を来している現状を考えますと、この大きな病院での院外処方せんの問題があると思うわけでございます。特に国立病院の薬剤師一人当たりの調剤数とか患者数が大変多いと言われているわけでございますけれども、経営合理化の面から人員を増加することは余り望めないと思います。そういう意味で院外処方せんを発行することが得策かと思うわけでございますので、この院外処方せん発行を促進するお考えがありますかどうか。また、現在の処方せん発行状況についてもお伺いをしたいと思います。
  87. 木戸脩

    説明員(木戸脩君) 国立病院の関係について御指摘がございましたが、国立病院におきます院外処方せんの発行枚数、五十五年度は二十七万六千枚ということで、その後毎年ふえておりまして、五十八年度では四十七万九千枚ということで、五十五年と五十八年を比べますと一七四%の伸びになっているわけでございます。  今後も、先生御指摘のように患者サービスの向上、それとともに業務の省力化という点を考えますれば、国立病院としては院外処方せんの発行については重点施策として推進してまいりたいと、こういうふうに考えております。
  88. 石井道子

    ○石井道子君 また、国立病院療養所の統廃合が先日実施されるということになったわけでございますけれども、その診療内容を充実強化するということ、専門化をすること、高度化するというような計画があるわけでございます。そういう中で、新しい医療体制を進める中で薬剤部門の業務の見直しあるいは充実強化についてお考えがありますでしょうか。その点をお伺いをしたいと思います。
  89. 木戸脩

    説明員(木戸脩君) これは国立病院に限らず、病院内の薬剤業務でございますが、医薬品の有効性、安全性の確保ということ、それから医薬品の情報管理というようなこと以外に、最近非常に臨床薬学的な業務というのが非常に重要性を増しているわけでございます。御指摘の国立病院・療養所の再編成は、いわば量から質への強化というのを目指しているわけでございます。その中でも薬剤業務についてもどうするかという点、今いろいろ検討してございますが、機械化の推進、省力化の推進あるいは院外処方せんの発行等とともに、業務処理体制もやはり強化をしていかなければならないと、こういうふうに考えておるわけでございまして、御指摘の線に沿いまして、私どもも新しい再編成の中で薬剤業務部門の充実強化を目指してまいりたいというふうに考えております。
  90. 石井道子

    ○石井道子君 次に、病院薬剤師の問題についてお伺いをしたいと存じます。  医学の進歩、多様化、高度化によりまして、またそれに伴った医薬品の数も大変多くなっております。現在流通しております医薬品が約四万というふうに言われておりますし、薬価基準に収載をされておりますものが一万三千四百七十一品目にもなっているわけでございますから、この多くの医薬品の安全管理対策というものも大変重要なことでございます。それと同時に、病院薬剤師の新しい業務も大変多岐にわたっているわけでございます。単なる医薬品の調合のみではなくて、医薬品の品質管理あるいは医薬品の情報の提供、特別製剤の製造、薬物血中濃度の測定や解析、また高カロリー輸液の配合調製などを行ったり、薬品の重複や相互作用を防止するための薬歴管理業務なども行っているわけでございます。この業務内容に比べまして、現在の診療報酬制度の中におきます薬剤師の技術料というものが大変に低いわけでございまして、その技術と実績というものが正当に評価をされていないというふうに考えられるわけでございます。調剤に携わる薬剤師の人件費の数分の一にも当たらないそのような水準でございますから、非常に現場の薬剤師の仕事というものは過重になっているというそんな実情がございます。例えば診療報酬の甲表におきましては入院費にすべてを含まれてしまいまして、調剤料とか調剤基本料というものは設定をされておりません。むしろこれからは病院薬剤師におきます業務というものは、入院において重点的に仕事をするべきでありまして、その点の評価をしていただきたいと思うわけでございます。このような薬剤業務の報酬というものが大変低過ぎるというふうなことにつきましての御見解をお伺いをしたいと思います。
  91. 幸田正孝

    説明員(幸田正孝君) 社会保険診療報酬の問題でございますけれども、私どもできる限り薬価差に頼らない技術料重視の診療報酬体系を目指して合理化、適正化を図っているわけでございます。その中には医師、歯科医師の技術料重視はもちろんでございますが、薬剤師の技術料重視ということも私どもの考え方の基本に入っているわけでございます。  そういった意味合いで従来から調剤関係の診療報酬につきましては、甲表外来における調剤料、それから乙表の入院、外来における調剤料のほかに薬剤師の技術料といたしまして、常勤薬剤師が保険医療機関で患者に対しまして調剤をした場合に算定することができます調剤技術基本料を、甲乙両表において設定をしているところでございます。このほかにも院内製剤の実態等に応じまして必要な点数の算定を認めているところでございますけれども、御指摘のとおり、調剤関係の診療報酬につきましてなお十分な技術料評価がなされていないという点につきましては、今後ともそういった方向で適正な医療が確保される、こういう観点から努力をしてまいりたいと考えております。
  92. 石井道子

    ○石井道子君 昭和六十年三月に診療報酬の改定が行われたわけでございますけれども、そのときの病院薬剤師について具体的にどのような改定が行われましたかお伺いをしたいと思います。
  93. 幸田正孝

    説明員(幸田正孝君) 本年三月の改定におきましては、薬剤師の技術料重視という観点から入院患者に投薬を行いました場合の調剤技術基本料を、従来五点でございましたものを十点に倍額に引き上げたわけでございます。また、院内調剤を評価をいたしますために、中心静脈栄養法におきまして完全栄養の無菌製剤処理を行った場合の加算につきまして一日につき十点を加算をする、こういう新設を行うなど、できる限り薬剤師の技術料の適正評価に努めたつもりでございます。
  94. 石井道子

    ○石井道子君 今後も診療報酬の改定がまだ行われるわけでございますが、そのようなときにどのような方針で臨まれますか、御所見をお伺いをしたいと思います。
  95. 幸田正孝

    説明員(幸田正孝君) 診療報酬の問題につきましては、中医協におきましてかねがね合理化項目を定めましていろいろ御審議が行われているところでございます。調剤関係につきましても先ほど来申し上げております技術料重視、こういう考え方が検討項目に含まれておりますほかに、先ほど御指摘のございました甲表入院の調剤料をどうするかという問題は、中医協の継続審議事項の一つに挙げられております。  こういった問題を含めまして、病院における薬剤師の技術料の適正評価につきまして中医協での結論を待ちまして、厚生省としましても適切に対処をしてまいりたいと考えておるわけでございます。
  96. 石井道子

    ○石井道子君 病院に勤務をいたします薬剤師の医療に対する貢献というものを適正に評価できるような診療報酬体系の確立を強く希望をいたします。  次に、薬価基準制度についてお伺いをいたします。  我が国の保険医療制度の中ですぐれた医療を支えてきた一つの制度ではあります。最近はこの制度の持つ問題点もいろいろと指摘をされているところでございます。財政再建と高齢化社会における医療費抑制対策の一つといたしまして、薬剤費をカットすることが大変早道でありますし、薬価基準の引き下げを行うことも理解できないわけではないわけでございますけれども、昭和五十六年の六月の一八・六%、また昭和五十九年三月の一六・六%の大幅な引き下げがございまして、この西年間に実に四〇%の引き下げが行われたわけでございます。その結果、医療界あるいは薬業界というものが大変混乱をいたしまして、さまざまな影響を与えているわけでございます。すなわち、医療機関におきましては現在の診療報酬における技術料が大変低くて薬価差益に頼らざるを得ないために経営が大変圧迫をされ、医薬品の買いたたきとか支払いの遅延を来しております。  また、卸業におきましては引き下げのたびごとに病院への納入価格の決定に時間がかかり、中には価格未決定のまま医薬品納入を続けざるを得ないという卸業者もあるわけでございます。昭和六十年五月の調査ではございますけれども、約五百の自治体病院関係のうち約五〇%がまだその価格が決定されていないと伺っておりますし、日赤では八〇%以上、また、共済組合立ては九〇%が決定をしていないようでございます。また、大学病院でも七〇から八〇%が決定をしていないというふうに聞いているわけでございます。  人命にかかる非常に重要な医療とか医薬品というものの特殊性、公共性を考えますと、価格が決定をされないままでも納入しなければならないというような意味もあるわけでございますけれども、医療機関の優越的地位の乱用行為とも思えますし、公正な取引の観点からも好ましくないのではないかと思うわけでございます。また、製薬企業におきましても医薬品生産高が大変著しく低下をいたしまして経営が悪化し、外国企業に合併をされたり、また、倒産の危機にさらされたりするといういわゆるアリ地獄現象が露呈されているわけでございます。  このような現状の中で、厚生省はこの問題の多い現行の薬価基準算定方式を見直すお考えはないでしょうか、お伺いをいたします。
  97. 幸田正孝

    説明員(幸田正孝君) 御指摘のとおり、近年薬価基準が年々引き下げられておりますために、製薬企業の間におきまして、例えば開発経費が非常に出ないとか、あるいは国際競争力を失ってしまうのではないかという声が生じているということは私どもも承知をいたしております。  しかしながら、製薬業界のこういった現況につきましては必ずしも薬価制度だけによるものではございませんで、それ以外の幾つかの要因があると思いますけれども、薬価基準のあり方につきましては中医協――中央社会保険医療協議会に柱きましても、本年の四月と六月にわたりまして製薬業界、医薬品の卸業界から意見聴取を行いましたほか、本年六月には製薬メーカーの研究所の視察なども行っていただいているなど、精力的な審議が行われているところでございます。  薬価基準の基本的な考え方は、薬価算定につきまして買い手、売り手の市場の中で形成されました実勢価格をできる限り迅速的確に反映をさせるという考え方でございますけれども、薬価基準をどういった考え方で算定をしていくかという、現行の薬価基準の考え方をどうするかという問題につきましては、やはり中期的に考えていかなければならない問題だと私どもは考えております。  影響するところが非常に広範囲でございますし、また、人の生命にかかわる問題でございますから、私どもは中医協の審議の推移を見守りながらこの問題について検討してまいりたいとこう考えておるわけでございます。
  98. 石井道子

    ○石井道子君 現在行われております薬価算定方式である九〇%バルクライン方式については問題がないでしょうか。
  99. 幸田正孝

    説明員(幸田正孝君) 現在の薬価算定方式は戦後からずっととられております算定方式でございまして、三十年間以上にわたっているわけでございますが、近年かなりいろいろな問題点が出てきているということを私どもも感じております。例えば、価格のばらつきの問題でございますとか医薬品の販売姿勢の問題、そういったところで幾つか大きな問題点が出てきていると、こういうことは認めざるを得ないと思いますが、しかしながらこの問題につきましては五十七年の中医協の答申をいただきまして、ばらつきの多い品目につきましては八一%バルクラインで、またそれ以外のものにつきましては原則として九〇%バルクラインで薬価基準を決めると、こういう御答申にのっとって現在行っているものでございますから、先ほど来申し上げておりますような中医協のお考えを十分承りましてこの問題に対処してまいりたいと思っておりますが、私どもやはり中期的な検討課題と、こう考えているわけでございます。
  100. 石井道子

    ○石井道子君 薬価算定の方法につきましてオンコスト方式を提唱されているところもございますけれども、これについて厚生省はどうお考えでございましょうか。
  101. 幸田正孝

    説明員(幸田正孝君) 薬価算定方式につきましては、現在のバルクライン方式のほかにいろいろな方式がございます。今御指摘のオンコスト方式もその一つでございますが、それぞれ長所があると同時に問題点もあるわけでございますが、私どもオンコスト方式につきましては、関係業界の主張でもございますから、真壁に耳を傾けまして、幅広く検討を進めてまいりたいという気持ちでございます。オンコスト方式につきましても有力な提案の一つであると、こう考えて、検討いたしたいと考えております。
  102. 石井道子

    ○石井道子君 次に、自治体病院のことでお伺いしたいのでございますけれども、昭和五十八年度決算では一般会計の繰入額が二千百四十九億円余りに及んでおります。僻地医療などの不採算部門もあるとは思いますけれども、人件費が約五五%以上にもなっておりますし、赤字経営を強いられている状況であります。一方、薬剤費は二五・六%で、薬剤費を経営合理化の手段として利用する余り、現金問屋との取引とか、そのような形でにせ薬をつかまされたような経過も起こっているわけでございます。医薬品の安全性と安定供給が妨げられ、医療の健全な発展が阻害されるのではないかと大変危惧をするわけでございますけれども、地域におきまして地域医療の重要な役割を果たされております自治体病院経営の健全化の立場から、診療報酬と薬価基準の問題についての御所見をお伺いをしたいと思います。
  103. 小林実

    説明員(小林実君) 自治体病院の経営は、お話がございましたように、事業数で五十八年度の場合半分を超える団体が赤字を出しておりまして、非常に厳しい状況にございます。多額の赤字を出している一つの原因といたしましては、自治体病院から見まして適切な診療報酬改定がなされなかったこと等が考えられると思います。特に、近年におきましては診療報酬の改定に合わせまして薬価基準の引き下げが行われまして、これが自治体病院経営に大きな影響を及ぼしていることは事実でございます。したがいまして、今後におきましては薬価基準の適正化も必要でございますが、さらに自治体病院が行っております高度特殊医療のコストに見合う診療報酬体系の設定のために、技術重視の適正化、看護料、手術料あるいは入院時医学管理料などのような技術料等の適正化を図ることが必要であるというふうに考えておりまして、自治省といたしましても、今後ともこのような方向での医療診療報酬体系の設定をお願いしてまいりたいというふうに考えております。
  104. 石井道子

    ○石井道子君 ことしの薬価基準の改正に備えまして薬価調査が行われると思うわけでございますけれども、現在卸業組合の方で協力をしないというふうにも聞いております。薬価調査の対策につきましてお伺いをしたいと思います。
  105. 代田久米雄

    説明員代田久米雄君) 薬価調査につきましては、医薬品の市場価格を適正に把握するというために、中医協の答申に基づきまして毎年これを実施するということとされておりまして、現在関係の業界にその実施につきまして協力を要請しておるところでございます。現在の段階では最終的な合意にはまだ至っておりませんけれども、薬価調査の実施のためには卸の協力は不可欠でございますので、この調査の趣旨を十分理解され、協力を得られますように引き続き努力をする考えでございます。
  106. 石井道子

    ○石井道子君 医療制度をつかさどっております厚生省が、より適正な薬価基準制度を確立し、安定した医療機関の経営を確保することに十分に注意をしていただきますことを要望をいたします。  次に、医薬品産業の問題についてでございます。  医薬品の進歩発展によりまして、死亡率も低下いたしましたし、また平均寿命も延びまして、我が国は世界一の長寿国になったわけでございます。そのために医薬品が大きく貢献をしているわけでございますが、我が国の医薬品の研究開発と、いうものは、かつては相当おくれておりましたけれども、ほとんどが海外からの導入でございました。しかし近年は、国内の自主技術によりましてすぐれた医薬品の開発が行われるようになったわけでございます。が、まだまだ国際水準には達しておりません。約三万に及ぶ疾病のうち、薬物療法の対象になっているのはわずかに三分の一にすぎないわけでございますから、新薬開発をすることによって疾病の早期治療と根絶に貢献をしなければなりませんし、また国民の健康保持とともに効率的な医療費の削減にも役立てる必要があるのではないかと思うわけでございます。現在バイオテクノロジーなどの先端技術の研究開発とともに、日米貿易摩擦解消のための医薬品の市場開放における製薬産業の国際化への脱皮も求められているときでございます。医薬品産業は、省資源で技術知識集約度が高く、日本のように天然資源が乏しく、またすぐれた人的資源に恵まれている国では、国際的比較優位産業といたしましては大変適切なものではないかと思われるわけでございます。しかし、医薬品の研究開発には十年から二十年の非常に長い歳月と、また百億円にも及ぶ多額 の費用を必要とされておりますから、経営上非常に極めてリスキーなものでございます。一方、最近の薬価基準の大幅な引き下げによりまして、製薬企業は非常に経営を圧迫されております。また、研究開発の後退が心配されるゆえんでもあるわけでございますが、国民の命と健康を守るための医薬品の質的向上を目指して、医薬品の研究開発が促進できるように厚生省として製薬産業を育成するお考えがないでしょうか、お伺いをいたします。
  107. 代田久米雄

    説明員代田久米雄君) 医薬品産業の健全な発展につきましては、新薬の開発が最も重要な条件の一つであるということにつきましては、これは先生の御指摘のとおりだと思います。新薬の研究開発につきましては、本来は民間の企業であります医薬品産業があくまで主体的な役割を担っていくべきであるというふうに考えますけれども、国といたしましても、新薬の研究開発が国民の生命、健康を守る上で非常に重要であるということは当然考えておりまして、今後もその充実に向けて必要な役割を果たしていくという考え方でございます。国の果たすべき役割につきましては、昨年十月に医薬品産業政策懇談会の最終報告におきましても具体的に提言がなされておりますので、バイオテクノロジーなどの先端技術の振興、あるいは研究開発に対する税制上の措置など、今後とも必要な施策を講じていく考えでございます。
  108. 石井道子

    ○石井道子君 製薬産業の健全な発展に十分留意をしていただきますように要望をいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  109. 倉田寛之

    ○倉田寛之君 初めに、外地における日本人の戦没者の墓地の問題についていささかお伺いをさしていただきたいというふうに思うわけであります。  私は時折外国に旅行をいたしまして、時間が許す限り外国に存在をする戦没者の墓地を参ることがございます。時間の関係もございますから端的にお尋ねをいたしますが、アジア諸国、豪州、ソ連が不法に占拠をしている北方領土等々におきましても、日本人の戦没者の墓地というのが存在をしているわけですが、過日、シンガポールで日本人墓地を実は参りました。後藤局長も行かれたことがあるのではないかと思うんですが、橋本大使がすばらしい実は揮毫をされて、碑をお建てになられた。ところが、御案内のようにシーガポールというのは大変きれいな町であります。しかし、一たび日本人の戦没者の墓地に参りますと草は繁茂している、線香を手向けようとしても線香立ても既に老朽化して手向けようがない、花を供えようとしても、そのこともかなわない。まあ我が国の今日の繁栄の歴史の過程で、事由はいろいろあろうかと思うけれども、とうとい命を異国の果てで終えられたそういう人たちをやはり思うときに、そぞろ背筋が寒くなりました。お調べ申し上げますと、アジアには五十三そういった墓地があるようでありますけれども、それらはそれぞれ管理の仕方が違っているようですが、厚生省関係をして遺骨収集であるとか碑を建立するとかというところは比較的きれいになっている。が、厚生省が余り関与していない、遺骨収集も終わってしまったというようなところは荒れ果てている。しかも、五十三あると言われるけれども、年間の予算五百三十万円しか使われていない。このことを思うときに、当局としてこれらの外国における戦没者の墓地の管理というものを、もう一度節目の昭和六十年という年度に当たって考えるべきではないか、こういうふうに思うわけでありますが、御所見を賜りたいと思います。
  110. 後藤利雄

    説明員後藤利雄君) ただいま倉田先生から御指摘のありました日本人墓地あるいは日本人戦没者墓地、特に私の担当しておりますアジア諸国が一番多いわけでございます。ほかに豪州とかソ連、北方領土にあります。それから、アジア諸国の中では今御指摘のように日本人墓地が五十三ございまして、その中でいわゆる日本人戦没者墓地というのは慰霊碑を含めまして二十四ございます。ただいま具体的にシンガポールの御指摘をいただきまして、私どもも実際どうであろうかということも調べたわけでございますが一私どもとしては、この墓地というのは先生御案内のように、所によりまして墓地所在国の政府が管理するものあるいは赤十字が管理するもの、現地日本人会が管理するもの等がございまして、外務省が管理謝金とか補修費を出しておるのはそのうちで特に日本人会を通ずるものが多うございます。シンガポールにつきましては、日本人会を通じまして現に管理人をそこに持っているということでございます。  遺憾ながらああいう暑いところでございますので、一年じゅうを通して日本のいわゆる墓地と同じようなきれいな状態に置くというのが理想的でございますけれども、時として雑草が早く茂るということがありまして、ちょうど先生の伺っていただいたときには、その悪い状態であったように聞いておりまして、はなはだ遺憾に思うわけでございますが、しかしそれはそれといたしまして、先生の御指摘のように、常時いい状態に置いておくということは当然でございますので、今の御注意も踏まえまして、限られた予算ではございます。その中で最大可能な管理につきまして現地のまた日本人会あるいは大使館を通じての注意を喚起してまいりたい、さように考えておりますので、御理解いただきたいと思います。
  111. 倉田寛之

    ○倉田寛之君 時間の関係がございますから、この点だけはどうぞ局長の御答弁いただきましたように、せっかくひとつお調べをいただきまして、周りがきれい過ぎるところに、まさに目立つという感じでありますから、日本から行かれる観光客あるいはオフィシャルで行かれる方々がやはりそこに足を向けられるような、そういうやはり管理体制というものを節目の年に当たってお考えをいただきたい、かように思います。結構でございます。  次に、去る七月の十一日に運輸政策審議会が「東京圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画」というものを、答申を実はされたわけでございます。御案内のように、首都圏がいろいろな意味で変化を来してまいりまして、昭和四十一年、四十七年であったかと思いますが、都市交通審議会が答申をしたその将来像というものに大変狂いが生じてきた。そこで、運政審の長い時間をかけた答申を待つに至ったのは私が言うまでもありません。  東京近郊の、特に千葉県の北西部であるとか埼玉県の東部であるとか茨城県の南部であるとか、恐らく昭和五十五年から昭和七十五年の間にどの程度ふえるだろうといえば、三百万余の人口が増加をする。今でも常磐線等々の主要通勤、通学交通機関というものは二五〇を超えるという大混雑を呈していることは、既に昨年御質問申し上げたので御案内のとおりであります。そういう観点から、千葉県の北西部の市であるとか町であるとかのそれぞれの県民の方々は国鉄当局あるいは運輸当局、さらには関係当局に対して早く通勤、通学の交通体系を整備をして、混雑緩和をしてほしいという署名の陳情をいたしました。恐らくこれは百万人を超えたでありましょう。私の調査によりますと、各市、町の有権者総数とほぼ匹敵する、まさに超党派的に御陳情申し上げたわけであります。  そこで、運政審が答申をいたしましたから、ああこれで何とかなるな、ほっとするのは人の常でありますけれども、目標が昭和七十五年でありますから、とてもとても今の混雑緩和解消を、すぐ目の前で解消になるかというと、そんなことにはならない。そこで問題になるのは、運政審の答申にもありますように、既存線のいわゆる整備を促進をすることによってまずは混雑緩和をしなきゃならぬ。そうすると、常磐線の快速十五両化という問題があります。これは昨年御質問申し上げましたときに、既に調査は終わりました、三河島、南千住、天王台の駅も改良します、松戸、我孫子の基地も十五両に備えてまいります、こういうことを実はおっしゃっておられたわけですが、果たしてその対応は現時点でどうなっておられるのか、簡単にお答えをいただきたい。
  112. 岡田宏

    説明員(岡田宏君) 常磐線の問題につきましては、先生御指摘になりましたように、非常に輸送力が逼迫をいたしている状況にございます。そういったことで、本年の三月のダイヤ改正におきましても、中距離電車をまず十五両化をいたしますとともに、千代田線直通の緩行電車をラッシュ時間帯に一本だけ増発をするという施策をとりまして、おかげさまで現在、市電あるいは快速の乗車混雑率は二八〇%近くございましたものが二四〇%台に、緩行電車につきましても二五〇%を若干下回る程度の乗車混雑率ということになっているわけでございます。しかしながら、さらに沿線人口の増加も予想されますので、今、先生からも御指摘ございましたように、次のステップといたしまして快速電車の十五両化の工事の計画を進めておりまして、三駅のホームの有効長延伸、あるいは二つの、松戸、我孫子の車両基地の増強、変電設備の増強、信号設備の改良という計画を立てでございます。これらに要する工事費といたしましては四十億円をちょっと超す程度というふうに考えておりまして、さらに車両の増備のために八十億円ぐらいの車両費を要するわけでございますが、いずれにいたしましても、六十二年の経営形態の変更を目前にいたしまして大変厳しい状況の中でございますが、本問題につきましての重要性は十分認識をいたしておりますので、なるべく早い時期に工事に取りかかることにいたしたいというふうに考えているところでございます。
  113. 倉田寛之

    ○倉田寛之君 大変くどいようでございますけれども、なるべく早い時期というのはどういう時期を指すのですか。
  114. 岡田宏

    説明員(岡田宏君) 御承知のとおり、先ほど申し上げましたけれども、六十二年度の経営形態の変更という問題もございますので、予算上は大変厳しいわけでございますけれども、その中におきましても、できれば来年度にでも工事に取りかかることができるようにいたしたいということで、いろいろ財政状況も勘案しつつ検討をしているところでございます。
  115. 倉田寛之

    ○倉田寛之君 これは、快速十五両にいたしますと、ちょうどラッシュ時に十電走っていますから五十両ふえることになるんです。五十両ふえると総体の混雑度は二割減るんです。しかも、柏という駅舎は飽和状態になっている。これをふやすことによって大変な混雑緩和になるので、今、常務理事の御答弁のように、来年度にもひとつこれは着手したいとおっしゃっておられるので、鋭意ひとつその方向で努力をしていただきたい、かように思います。  次に、時間の関係で、常磐新線の問題でありますけれども、常磐新線の問題は、特に運政審では特段の別項を設けて、この新線建設についてはいろいろと答申内容の中に網羅をしているわけでありますけれども、常磐新線については今どういうような対応で取り組んでおられますか。何か検討委員会をつくって、どういう事業主体でやるかというようなことは相談をされておられますか。
  116. 服部経治

    説明員服部経治君) 常磐新線の整備につきましては、これはただいま先生がおっしゃられたとおりでございまして、私ども、数ある東京圏の新線整備の中でも最も緊急性の高い重大なプロジェクトだというふうに認識いたしておりまして、運政審の答申をいただきましたことがもちろん終わりではなくて、これが出発点だという認識のもとに、関係事業者及び関係の地方公共団体の方々から現在いろいろとヒアリングを行っております段階でございまして、ごく近い時期にこういった関係者から成ります検討の場を設けまして、そこにおきましてこの常磐新線の整備の主体をどうするか、あるいは運営の主体をどうするか、あるいは非常に巨額に上ります建設資金の調達をどういうふうに考えていくかといったような問題につきまして、密度の高い検討を精力的に行っていきたいというふうに考えております。
  117. 倉田寛之

    ○倉田寛之君 時間がありませんから、次に、営団地下鉄八号線、十一号線の問題、恐らく蠣殻町まででき上がった後にこれが常磐線の松戸方面の延伸計画が検討されると思いますが、それについて、当局としては積極的に営団等々に対して早目に計画をきちっとつくられるように督励をしてもらいたい、こういうように思うんですが、いかがですか。
  118. 服部経治

    説明員服部経治君) 十一号線の延伸の問題及び八号線の延伸の問題についてお尋ねがございましたが、中でも、特に十一号線につきましては、常磐新線の建設と並びまして現在の常磐線の混雑緩和に資する大変有要な路線でございますし、それへの対応が急がれるという認識は私どもはもとより営団も当然持っておるところでございまして、現在それへの対応について勉強を始めておるところでございます。  また、八号線につきましては、今回の運政審の答申では亀有以北の延伸につきましては、今後その整備について検討を要する路線というふうに続けられておる関係もございまして、優先度からいきますと、緊急度からいきますと十一号線よりは後の時期になろうかと思いますが、いずれにいたしましても、地域の御希望、御要望の大変強い路線でもございますので、引き続き私どもこれにつきましても勉強を続けてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  119. 倉田寛之

    ○倉田寛之君 もう時間がありませんので一点だけ御要望を申し上げます。せっかく山下運輸大臣おいででございますので。  細田運輸大臣の当時も、ぜひ、首都圏の中で最も問題のある路線なんです。そこで、運輸大臣というお立場ではなかなか難しかろうけれども、一度でいいから体験乗車をしてもらえないですか、こういうことを申し上げたことがあるのです。それから仁杉総裁は体験乗車をされました。新たなる総裁もラッシュ時に体験乗車をされるように、岡田常務理事から特段ひとつお話をしていただきたい、かように思います。  以上で質問を終わります。
  120. 丸谷金保

    委員長丸谷金保君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時四十分まで休憩いたします。    午後零時四十六分休憩      ―――――・―――――    午後一時四十一分開会
  121. 丸谷金保

    委員長丸谷金保君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和五十八年度決算外二件を議題とし全般的質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  122. 菅野久光

    ○菅野久光君 最初に、日航機の問題につきましてお伺いをいたしたいと思います。  五百二十人という航空史上最大事故ということで、亡くなられた方々については心から御冥福をお祈りいたしたいというふうに思います。  今までこの問題につきましては、両院の運輸委員会あるいは衆議院の交通対策特別委員会ですか、そういうところでもいろいろ論議をされてまいりましたので、なるべく私は重複を避けてお伺いいたしたいというふうに思います。  去る八月十二日に日本航空のボーイング式747SR100型、JA八一一九機、二一三便が群馬県、長野県境の三国山付近に墜落をした、死者五百二十人、重傷者四人を出した、こういうことでございます。まず、この事故に対する自衛隊の対応でありますけれども、墜落は八月十二日の午後七時少し前なのに、実際救助隊の現場到着は翌朝の九時ごろだということで、なぜ事故発生から十四時間もかかったのか、現場は山岳地帯で日没直前の事故という悪条件を考えても何か対応が遅過ぎたのではないかという、そういう国民の声も非常に強くありますし、やはりそういう声については否めないのではないかというふうに私は思います。報道によりますと、この日航機の機影が自衛隊のレーダーから消えたわずか四分後の午後七時一分に百里基地の第三〇五飛行隊のF4EJ二機、迎撃機ですね、これが緊急出動して、七時二十一分に山中で炎上している日航機の物体を発見しているということが報じられております。ここまでの出動は非常に素早かった。現場に自衛隊が着いたのは事故発生から十四時間たってからで、これは陸上自衛隊第一空挺団のV107からロープを使って懸垂降下した七十三人、こういうことになっておりますね。  そこで、このように救助活動が大幅におくれたことに対しては、先ほども申し上げましたけれども、自衛隊のこういう救助活動に対する期待が大きいからこそいろんな批判があるなというふうに私は思うんですよ。これは国民の自衛隊に対するいろんなアンケートなどを含めても、非常に救助活動あるいは民生協力ということに対する期待が大きいということがうかがわれる。だからこそこういう批判があるな、自衛隊がいろいろ努力してやったことについての批判ということではなくて、まあそれもあるかもしれませんけれども、もっとなぜ素早くやらなかったんだ、そこのところだと思うんです。自衛官や警察官それから地元消防団等の連日の救助活動には私は心から敬意を表したいというふうに思いますが、今回のこの救助活動の態勢には多くの問題があったのではないか、その問題点と反省点についてもう既にそれぞれの段階でなされているのではないかというふうに思いますので、まず防衛庁としてどのような反省をなさって、あるいは問題点をどのようにお感じになっておられるのか、その後ひとつ運輸省の方からお願いをいたしたい、このように思います。
  123. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) ただいま先生御指摘のように、今回の事故というのは暗夜に非常に高地の峻険な地域に墜落事故が起きたというような、いまだかつて例のない事故であったということでございますので、それなりに私は現状、現在の自衛隊の装備なり隊員の技能その他含めて精いっぱいのことはやったと思っておりますけれども、何せ初めてのことでありますから、そういった条件下で、なおかつそういう暗夜にもかかわらず、何らかの方法がなかったかということになりますと、さらに装備その他について改善する点もあろうし、それ以後の救助活動につきましても、そういう山岳地域における空からの降下とかそういったものについて、さらにいろいろな装備面あるいは訓練面について改善する点はないかどうかという点に今現在検討中でございますが、今回の体験というものは非常に貴重なものでありまして、そういったものを十分に精査いたしまして今後の対応を、私どもはもちろんでございますが、政府全体として考えていったらいいんじゃないかと思っております。
  124. 山下徳夫

    国務大臣山下徳夫君) 今回の事故に関する救助に際しましては、救難調整本部から時を移さず自衛隊、警察、消防あるいは海上保安庁等あらゆる関係機関と緊密なる連絡をとって適切なる手を打ったと私は思っております。  ただ、瞬間的にごくわずかな時間に決断を迫られるという点については、やはり意見の違いも若干あったかもしれません。しかし、何分一分一秒を争う瞬間的な判断、決断ですから、そういう面からするというと、まずまずとにかく適切なる手を打たれたというふうに、全体的に私はそのように評価をいたしております。  現に私も現地に翌日参りまして、あの折重なる山、ヘリで現場に到達するまでに随分と私どもヘリ自体が迷うくらい奥深いところでございますし、やはり上から発見した場合とそれから今度は革の終点から三時間半かかるというふうな、この林の中を模索していく場合と全く感覚が違うと思いますし、現にその地点は長野ということで当初は長野の方からたくさん登られたようでございます。そんないろんな判断をしますというと、あの時点においてまず適切なる手が打たれたと私は思っております。今防衛庁からお話がございましたように、何分前例のないことでございますから、先ほど申し上げたように、振り返ってみると、全く百点満点の満点という点にはいかない面も若干あったかもしれませんけれども、あのとっさの判断というものは私はそういう意味において御了解いただきたいと思いますし、今後はいかなる前例のない場合といえども、いろんなことを想定しながらさらにベストを尽くすように日ごろの訓練を怠りなくやってまいりたいと思っております。
  125. 菅野久光

    ○菅野久光君 この関係については、いろいろ新聞とかあるいは週刊誌簿でもっと夜間の暗視装置をヘリコプターにやったらどうだとか、あるいは戦闘機じゃなくてRF4Eという偵察型のやつをやっぱり飛ばしてやるべきだ、いわゆる国籍不明機が来たスクランブルとはやっぱり違うような問題だ、だからすぐ飛び立ったんだというふうに思うわけでありますが、そんなようなことなども提言としてはあります。特に位置確認などということになれば、やっぱり戦闘機じゃなくてRF4Eという偵察機ですね、それをやっぱり飛ばすべきではなかったかという判断、そういうものがなされなかったのかという意見などもこれはあるわけです。  そこで、ごく問題点、反省点ということで言ったわけでありますけれども、よくやったという運輸大臣のお話ありますけれども、お話を聞きますと運輸省から自衛隊に対する要請も、何か自衛隊から逆に運輸省要請が行って、そうして運輸省が出した。そんなようなことも何か出ているんですけれども、その辺の事実関係はどうなのか。私は今ここでそれを確かめようとは思いませんけれども、しかし少なくともそういうことが何かに書かれるということは、やっぱりまさに緊急な事態だとはいいながら、こんなことがあっちゃならぬことなんですけれども、やはりふだんのそういう心構えというものが私はきちっとできていなかったんじゃないかなというふうに思うわけであります。話では、消防庁にヘリがあって、そのヘリが待機していたんだけれども、そういうものがあるとは知らなかったなんというような話もあるわけですね。そういうことをいろいろ考えていきますと、先ほど言われましたが、救難調整本部ですか、これはどこにあるのか私はわかりませんけれども、そこの体制が本当にしっかりしているのかどうか。今回の場合には飛行機です。しかし、例えばインドのボパールのようなああいう事故が起きたときに、すぐそれに対応するようなそういう体制というのは政府自体であるのかどうか。官房長官、きょうは総括ですから出てくると私は思っておったのですが、その辺は政府全体としてはどこがどういうふうにやるのか。航空機の場合には例えば運輸省が直接総括をするとか、あるいは先ほどの救難調整本部、そこでやるのか。例えば毒ガス、そういったようなもので事故が起きたときには、それじゃどこがやるんだ、そういうことについての政府の緊急的な事故に対する対応、こういったようなものはどこがどういうふうにやるのか、私はちょっとわからないんですが、それぞれの関係大臣の方で御答弁いただければありがたいと思います。
  126. 西村康雄

    説明員(西村康雄君) 航空機の捜索救難に関しましては国際的な協定がございます。これは国際民間航空条約に基づくものでございまして、これによりまして日本では日本の航空救難調整本部を組織しているわけでございまして、これは警察庁、海上保安庁、それから私ども航空局と防衛庁、こういうところが航空機の捜索救難に関する互いに連絡調整をするということで羽田に救難調整本部を設けております。今回の場合も救難調整本部から各関係省庁へすぐ情報を伝達いたしまして、捜索の要請がここの所定の手続に従って入っているということでございます。  これが航空機似一般的な問題でございますが、今回の場合も連絡は十分しておりますが、先ほどお話がありましたように、東京消防庁でございますが、ここの装備についてどうだったか、そういうような問題も、連絡をより広範にする必要があるかどうかというような問題も含めまして、これから関係の機関の装備、能力というものをより十分にお互いに確認しておくというようなこと、あるいはこれからいろいろな意味での情報の蓄積、検索をするシステムをつくっておくというようなことを考えております。  そのほか、実際にいろいろなシミュレーションで、どういう場合にどういう対応をするかということのプログラム等の検討もさらにしておくということが考えられるわけでございます。
  127. 菅野久光

    ○菅野久光君 航空機の場合はわかりましたが、その地先ほど言いましたインドのボパールのようなああいうような事故があったときの対応というのはどこがなさるのか、おわかりでしょうか。わかればどなたかひとつ答弁いただきたいと思います。――今おいでの大臣の方々はちょっと答弁ができないということだというふうに思いますが、私はその辺がやっぱり大変じゃないかと思うんですね。いつ起きないとも限らないそういうことにどう対応するかというのは、やはり政治を扱う者として極めて私は大事な問題だと思うんです。ひとり航空事故だけではなくて、そのほかこれだけ化学物質がいろいろ散乱している、いろんな工場でも使われている、そういう中で何が起きてくるかわからない。起きたときに慌てふためくんじゃなくて、いつでもそういうことに対応できる体制というものを政府の機関のどこかでやっぱりきちっと私はやってもらいたい、そのことを申し上げておきたいというふうに思います。本当は官房長官いないのが大変残念なんですが、内閣全体の問題として私はやってもらいたい、そのように思います。  私は今回の事故の後の救助体制の問題を含めて先ほど申し上げましたけれども、自衛隊、それから警察、消防団、本当に大変な御苦労をいただきましたが、自衛隊、警察、消防、みんなそれぞれ装備が違うんですね。やっぱり一番いいのは何といっても自衛隊、これは金もある、いろんな装備ができている。あの夏の暑いときにあれだけの大惨事、それはもう大変なにおいですね。そういう中で自衛隊はちゃんとマスクをかぶってやっている。装備はいいわけです。しかし警察の方々は、聞くところによればただ単なる手ぬぐいを顔に巻いてやっている。足だって登山靴とか、そういうものの用意はない、普通の靴だ。そういうふうに同じ大変大事な仕事をなさっていてそれだけの違いがあるわけですよ。ですから、防毒マスクだとか、そういう救難にいざというときに必要な物がそれぞれ国内の何カ所かに、すぐいつでも一時間以内なら一時間以内ぐらいに対応できるようなところにやっぱりきちっと装備をしておく、そういうことが私は大事ではないかというふうに思うんですよ。その点ひとつ装備の問題については、本当に大変な仕事をされていながら片方ではちゃんとした装備、片方は全く装備がない、そういう中で大変な苦労をされている、そういうことについてやっぱりきちっとした装備をすべきだというふうに思うんですが、苦しい財政ではありますが、やっぱりお金を握っているのは大蔵大臣でありますから、大臣いかがでしょうか。
  128. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 御説ごもっともでございますので、私は具体的な装備の内容等を詳しく知っておりませんが、今後とも何よりも重要なことはそういう時期の、有事という言葉、別の角度からおとらえになるかもしれませんが、そういうときに対応するものについては十分勘案さしていただくべきものだと考えております。
  129. 菅野久光

    ○菅野久光君 それから、きのう新防衛計画ができたんですけれども、いろんな装備の問題について、救難体制の問題についていろいろ今回やっぱり反省点があると思うんですけれども、これが防衛計画の中に入るかどうかは別にして、防衛庁長官としてこの辺のところもお考えでしょうか、そこをまずお伺いしておきたいと思います。
  130. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 災害救助、国民の人命に関することは、私たちの任務の中で非常に重要な部分であると思っております。決してこれが第二次的なものではなくて、ほかの任務と同様に重要なものだと考えております。  今回のJAL事故に関しましてもいろいろ御批判も私たちも耳にはいたしておりますけれども、私たちとしては精いっぱいやったつもりでございます。先ほどもありましたように、機影が消えたのが六時五十七分でございまして、それから四分以内にスクランブルの指示をして三分半ほどで百里基地をファントムが飛び立って約二十分で見つけております。そういった意味で私たちの救難につきましての出動の権限は、私のところからずっと各駐屯地の司令に落としてありまして、それぞれの自治体、行政機関等からの要請には即時、決裁や中央の指示を待つまでもなくできるような体制をとってあります。先ほどありましたように、ボパールのああいった特殊な事故のような場合でも、それぞれの関係機関から要請があれば即時に出られるような体制をつくり、また日ごろからそれぞれの駐屯地司令にはそれだけの心構えをし、みずから決断をするだけの力量を備えた人間を配置しておるつもりでございます。  そこで装備の件でございますが、いろんな意味で今度の事故に出動いたしましてあああれもあったらな、これもあったらなというふうに思いました。ただ、それを私たちがこれを機会に余り強く申し上げることはいろいろ問題もございますので余り外には申しませんが、ぜひこういうものが欲しいなというようなことが幾つかあることは事実でございます。また、今度の中期計画の中でもそういう面におきまして例えば海上で事故が起きたような場合に、水陸両用航空機なんかを出したりして、かなりの出動回数になっておりますけれども、そういった問題の充実も考えていることは事実でございます。また、そういう面で、そういう側面からも我々の新中期計画の内容につきましていろいろ御精査いただければありがたいと思います。
  131. 菅野久光

    ○菅野久光君 ヘリコプターなんかも聞くところによれば、随分北海道に何か集中されているみたいな話も聞いたりするわけですけれども、その辺は、今回のような事故があってはならぬことなんですけれども、いつでもやっぱり対応できるというような、そういうことでひとつやっていただきたいと思います。  次に、時間もございませんので、今回の事故について日航は、五十七年の二月の羽田沖の墜落事故、そして今回の事故ということでもう大惨事が続いている。しかも今回の事故をきっかけに不良整備機が続発していることが露呈しております。言うまでもなくこの一連の事故は、同業他社と比較しても際立っているのが私は日航の特徴だというふうに思います。このことは、いろんなことが言われておりますが、日航の体質に何か大きな原因があるんじゃないかというふうに思うんですね。いわば安全性無視のコスト主義といいますか、定時に出なきゃ減点だとか、整備の問題もちょっとしたものは時間がないから次に回すだとか、何かいろんなことがあるということが新聞やあるいは週刊誌等で出されております。  そこで、営業費に占める整備費の割合ですね。これを航空統計要覧ですか、これの中でちょっと拾ってみましたら、アメリカの定期航空の会社では一九八三年度だけで言いますと九・二%、日本航空は三・七%、全日本空輸は七・九%、東亜国内航空は六・一%、こういうような数字が出ているわけです。営業費中の飛行機整備費より人件費を控除した、それがこういう率になっているということですね。この率だけでは判断できないのかもしれませんが、しかし同じ営業の中でこれだけの差があるということは、何かやっぱり問題があるんじゃないかと常識的にやっぱり考えられると思うんですが、その辺今まで運輸省としてどのような指導をなさってきたのか。特に航空業界にとって最も重要なことは安全性の確保、この安全を確保するためには、何といっても整備体制の充実ということが必要なんでありまして、この資料から見てもどうも私もこれではなと、こういうような思いをするんですけれども、その辺は運輸省いかがでしょうか。
  132. 山下徳夫

    国務大臣山下徳夫君) 国際的な比較は別といたしまして、国内三社を比較いたしまして、確かに一応有価証券の報告書にあらわれている整備費は日航が最低であることは間違いございません。ただ問題は、その整備費のとらえ万と申しましょうか、範疇と申しましょうか、それが違うんですね。日本航空の場合が一番狭囲、整備費に入るものの範囲が一番狭いということで、日本航空で整備費に入っていないものが他の社においては入っているというふうな、とらえ方が違うということが第一点でございます。  それから、この三社の中でやっぱりこれは飛行機の型が大きいほど整備費は単価としては安くなっていくわけでございますね。日本航空の方がジャンボも一番多いし、特に小さな飛行機は持たないというような面もこれやはりかなり結果においては違った数字が出てくると思います。あるいはまた航続距離、これもやはり国際線等、一回の航続のキロ数等からしますというと、一番長いというようないろんな要素を取り上げてみますと、さほど差はないということは言えると思うんです。
  133. 菅野久光

    ○菅野久光君 しかし、アメリカのATAの定期航空の会社のやつでもやっぱり九・二%。それはとらえ方が違うのかもしれませんけれども、そんなに大きなとらえ方の違いはないと思うんですが、その辺私にも納得できるようにひとつ資料を後から出していただきたいというふうに思います。  時間がございませんので次に移らせていただきますが、日航の体質は事故直後の落合証言に見る証拠隠滅的な行為にも私は見られるのではないかというふうに思います。日航本社の取締役の方二人が、墜落直後に無事救出されて藤岡市内の病院に収容されていたアシスタントパーサー落合由美さんの集中治療室に、見舞いだと言って重体の落合さんから墜落直後の状況を聞き、しかもそれの記者発表まで行っているということが報ぜられております。  そこでまず警察庁にお尋ねしたいのですが、こういったようなことが事実としてあったのかどうか、その辺を明らかにしていただきたいと思います。
  134. 金澤昭雄

    説明員(金澤昭雄君) お尋ねの件でございますが、事実は八月十四日に救出をされましたアシスタントパーサーの落合由美さん、この人が入院しております多野総合病院に日航の幹部二人が面会のため訪れまして、集中治療室に入っております落合さんに約十分間面会をして事情を聞いた、それを羽田の記者会見で公表した、こういうことが事実であります。  警察といたしましては医者の要請もありまして、事情聴取は早くしたかったわけでありますけれども、それを差し控えておったわけでありますが、その間日航側が事情聴取をした、こういう状況でございます。
  135. 菅野久光

    ○菅野久光君 全く日航は五十七年二月の羽田沖の墜落事故でも一時期機長を日航側で連れ去ったというようなことがありました。本当にその都度その都度問題のある行動が行われているということは私は極めて本当に問題があると思います。  今のお話のように、警察当局は今回の事故原因を究明する上で何といっても生存されている落合証言は極めて重要だということで、墜落直後のショックだとかあるいは病院側の要請もあって人道上の見地から警察さえも事情聴取を見合わせていた、にもかかわらず日航側の行動は私はやっぱり常軌を逸しているんじゃないかというふうに思って、極めて遺憾に思っております。それで警察当局としてもこういったようなことから警察庁刑事局の幹部がこの二人に対して、あるいは日航側に対してということになるんでしょうか、厳重警告したというふうに言われております。伝え聞くところでは、このことが契機になって病院側でも断り切れずにその後警察庁、運輸省事故調査委員会が十六日、十九日にはテープコーダーでマスコミ質問事項をまとめて病院職員がインタビューをしたというようなこともあって、この日を境にして落合さんの熱が上がってしまった、後の治療、手術等にも影響があったということであります。  そこで警察庁当局としては、今後日航側の刑事責任を追及していくことになるというふうに思うのですが、日航取締役二人の悪質など言ってもいいと思うのですが、こういったような行為は捜査妨害とともに証拠隠滅罪の疑いもあるのではないかというふうに思うのですが、今後この取締役の二人の行為をただ厳重警告だけで済ますおつもりなのか、あるいは今申し上げましたような証拠隠滅か何かちょっと罪状は別にしましても、そういったようなことで捜査をして送検する方針なのか、その辺現在の時点でのお考えをお聞きしたいというふうに思います。
  136. 金澤昭雄

    説明員(金澤昭雄君) 状況はただいまお答えをしたとおりでございますが、この日航側の幹部の事情聴取につきましては、私どもの方といたしましては直接事情を聞いた幹部二名に対しまして、どういう理由で事情聴取を早急に行ったかというようなことにつきまして、詳しく私どもの方で日航の幹部について事情聴取を行っております。それと同時に、非常に状況からして遺憾な行為であるということで、警察庁も日航の本社に対しまして直接厳重な警告をしております。  状況を詳しく調べてまいりますと、遺憾な行為ではありますけれども、直ちに証拠隠滅であるとか刑法の責任問題になる、こういったようなことはないようでありますので、厳重警告ということに現在とどめて事態をおさめております。  以上でございます。
  137. 菅野久光

    ○菅野久光君 刑事局長どうもお忙しいところありがとうございました。  また今回墜落炎上した日航ジャンボ機の尾翼には、バランスをとるために劣化ウランが積み込まれていたということですが、この劣化ウランについてお尋ねをしたいと思います。  この劣化ウランは、尾翼部分で上部方向舵、それから水平尾翼に十二個が取りつけられているということでありますが、今日現在、この問題の劣化ウランは回収されているのかどうか、そのことをまずもって報告していただきたいと思います。
  138. 辻栄一

    説明員(辻栄一君) 事故機には、左右水平尾翼の外側の昇降舵にそれぞれ四個、計八個、百二十四・七キログラム、及び重直尾翼の上部方向舵に十二個、合計百二十三・五キログラム、合計二十個の劣化ウランがバランスウエートとして装着されていたという報告を受けております。このうち、左の水平尾翼に装着されておりました劣化ウランのバランスウエート一個は墜落現場において回収いたしまして、現在日本航空の羽田整理工場で保管中でございます。それから、右側の水平尾翼はほぼ完全な姿で現地にまだございますので、この中におさまっている劣化ウランのバランスウエート四個、これは水平尾翼を現地から搬出します際に回収する予定になっております。  なお、未発見の劣化ウランの回収作業につきましては、水平尾翼部分が墜落現場の密集した山林の中にある、また、垂直尾翼部分は相模灘の海中に没していると考えられますので、今後とも関係当局の機体部品の捜索回収活動の際には、私どもとしましてもできる限り協力してまいる、こういう考え方でございます。
  139. 菅野久光

    ○菅野久光君 また、放射性物質でいろいろなアイソトープも積載していたというふうに言われておりますが、それは事実か。事実だとしたら、その回収状況はどうなっているのかお答えいただきたい。
  140. 辻栄一

    説明員(辻栄一君) 事実、医療用等のアイソトープが当該機には搭載されておりまして、いずれも輸送物ごとの収納量が少量でございます。しかも、医療機関で使用されまする半減期の短い核種が多うございますので、長時間身体に密着保持しない限り人体への影響等の危険性が問題となるようなものではございませんでした。  積み荷として搭載されておりましたアイソトープの総量は約百六十二ミリキュリーという報告でございますが、これまでに約百二ミリキュリー分が、中身が健全な状態で発見され、回収されております。これは、いろんな核種の中で、例えばトリチウムであるとか沃素等であるとか、現場で揮発して空気中に拡散してしまう、こういったようなものを除きました量の約八割弱の分が既に回収されておるという状況でございまして、このほかになお未回収の部分もあるわけでございますが、これらにつきましては、たとえ瓶等が破損して中身が漏えいしておりましたとしても、放射能が急速に減衰するような短半減期の核種が多うございますし、さらに現場での揮発あるいは拡散といったようなものを考慮いたしますと、現時点ではごく微量になっているのではないか、かように思っております。
  141. 菅野久光

    ○菅野久光君 安全性の問題も実はお聞きしたいのですが、時間がございませんのでちょっとはしょって申し上げますが、この劣化ウランだとか、あるいはアイソトープなどの放射性物質その他人体に有害な物質が輸送される場合の取り扱いはどのようになっているのか。それから、また今回のような事故があり、救助のため出動するという事態が起きた場合の通報体制ですね、それはどのようになっているのか、その辺をお尋ねしたいと思います。
  142. 辻栄一

    説明員(辻栄一君) 放射性物質の輸送につきましては、IAEA(国際原子力機関)というところで、これらの物質を輸送する場合の各種の安全基準が定められておりまして、これに基づいて国際的な輸送が行。われておるわけでございます。  これは、包装の仕方、あるいは包装容器の規格、試験方法あるいは輸送する場合の荷物の積み方等について細かく規定したものでございまして、これらの規定につきましては関係の法令によりまして、例えばラジオアイソトープにつきましては放射線障害防止法その他の関連法令によりまして国内に取り入れられておりまして、これらによって安全規制が行われているわけでございます。  これらの事故発生しました場合には、やはりそれぞれの法規に従いまして輸送者あるいは荷物の所有者等から関係の機関に対して速やかな通報を行う、かような規定が設けられております。
  143. 菅野久光

    ○菅野久光君 このような放射性物質があるということで出動がおくれたとかというような報道も一部にあるものですから、こういったようなものの通報体制、それから、そういったものの取り扱いなどについても、やはりきちっとしておかなければいけないのではないかということで、実はお尋ねをしたわけであります。  時間もございませんので、日航関係については以上で質問を終わらせていただきます。  次に、今度の新防衛計画の問題についてお尋ねをいたしたいというふうに思いますが、その防衛計画の問題に入る前に、対GNP比一%枠問題がいろいろ出ている中で、自民党の金丸幹事長が、今月の八日京都市内のホテルで記者会見して、防衛費の対GNP比一%枠との関係で、今年度の国家公務員給与引き上げの人事院勧告の取り扱いについて、今年度はGNPの算定基準が改定されるので、一%枠以内におさめようと考えれば、人勧の実施決定を少し後にすべきではないかというふうに述べて、取り扱いの決定時期をGNPの六十年度の見通しができる年末まで先送りすることを示唆するような発言をされました。  この発言は、八月二十七日の参議院内閣委員会藤波官房長官が「事柄からまいりますと、なるべく早く決定するということが大事かというふうに思います。」という答弁と非常に矛盾するというふうに思います。金丸幹事長の発言は九月八日、その前に参議院内閣委員会官房長官が「事柄からまいりますと、なるべく早く決定するということが大事かというふうに思います。」という答弁と全く矛盾するというふうに思いますが、この関係について担当の総務庁長官からひとつお答えいただきたいというふうに思います。
  144. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 金丸幹事長が御質問のような趣旨の発言をしたということは私も新聞記事では承知いたしました。しかし、別段、このことは政府としてそういった内容を事前に相談を受けたこともございませんし、また、その後二回ばかり、給与関係閣僚会議をやって、その席にも幹事長は出席しておりましたけれども、そういうことは一切私どもには発言はございません。この人事院勧告の取り扱いと防衛関係の費用の対GNP一%の問題ですが、人件費というのは、やはり防衛予算の中に入っておりますから、したがってその面においては防衛庁の予算の積算をする際に当然加味せられるわけでございますけれども、もともとこの問題は、しばしぱお答えしておりますように、基本的には別の問題だと私どもは理解をいたしております。  したがって、GNP一%の問題と関連なしに、私どもとしては現在の人事院勧告制度というものの基本の上に立って、別個の観点で国政全般との関連を考えながらできる限り早く決めたいと。殊に今度の勧告は御承知のように給与制度そのものの改正案が入っておりますから、事務的にも従来よりは多少繰り上げて方針を決めないと間に合わないということで、私どもはともかく年末に支給できないといったようなことにならないように、それを頭に置きながらできるだけ早目に解決をしたい、かように考えているわけでございます。
  145. 菅野久光

    ○菅野久光君 なるべく早目に決定をされるように私からも特段要望しておきたいと思います。  そこで、防衛費との関係でありますが、中曽根内閣が発足以来毎年防衛費の突出、聖域扱いをしてきた結果が、国家公務員の人勧の完全実施の足かせの役割を果たして犠牲を強いているといっても私は過言でないというふうに思います。本年八月二十日の衆議院内閣委員会で池田防衛庁経理局長は、六十年度の人勧の完全実施をした場合約六百三十億円、一%分として既に百三十三億円計上してありますが、これが新たに財源として必要である、GNP比とのすき間である八十九億円を差し引くとこれはGNP比は一・〇一七%となるというふうに答弁をしております。政府・自民党内には防衛費の対GNP比一%枠の撤廃には大変慎重な意見があって、当面一%枠内で防衛費の膨張に歯どめをかけることが決定されたというふうに聞いております。そうだとするなら、経費がかさむ正面装備関係予算を今年度において減額修正をしてまでも防衛費の対GNP比一%枠内にとどめて、人勧財源を調達して自衛隊の人勧を完全に実施するということが必要だ、そうすべきだというふうに思うんですが、これは防衛庁長官、いかがでしょう。
  146. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 御指摘のとおり、現在GNP一%との差は八十九億になっております。そういう意味で、六十年度ベースアップの実施がある一定以上の額になりますと、仮に昨年並みの実施率みたいなことになりますとそれを超えてしまうということは、たびたび申し上げているとおりであります。  それからもう一つ、五カ年計画の実施を考えた場合に、やはり若干そこに問題が出てくるのではないかということで、今度の新しい枠という問題になってきたわけでございます。しかし、単年度の問題につきましては、今後GNPの改定の問題もあるということがその後出てまいりましたので、そのときどきの情勢に応じてこれは判断してまいりたい、こんなふうに思っております。  いわゆる人件費が出なければその分だけ正面装備を削ったらどうかという御指摘でございましたけれども、私たち防衛力の整備は重要なことと考えておりまして、そして従来から簡単に削っていいというような種類の装備をいたしているつもりはございません。  また、私たちが今後計画でお願いしているのも、それなりに厳しいシビリアンコントロールのもとで部内でも討議に討議を重ねてやってきているものでありまして、御指摘のように簡単にそれを削ってしまえというような装備を私たちしているつもりはございません。
  147. 菅野久光

    ○菅野久光君 それじゃ、人勧をどのような形でなさるつもりかはまだ決定してないわけですからわかりませんが、仮に政府で人勧実施を決めた、そのときに一%枠を突破するような事態になったときに、防衛庁としてはどのように対応されますか。
  148. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 昨日の新しい中期防衛力整備計画の決定に際しましても、政府・与党の首脳会議及びその後の官房長官談話等でもおわかりいただけると思いますが、私たちとしてはGNP一%の閣議決定の趣旨はできる限り尊重してまいりたいと思います。今後どの程度の人勧が本年 政府において決定されるのか、またGNPの動向が今後どう決定されるのか、その点につきましては不確定な要素がございますので、その段階考えてまいりたいと、こう思っております。
  149. 菅野久光

    ○菅野久光君 その段階考えるということじゃなくて、初めから一%という枠があるということで考えなければ、そのときに突出する、それは〇・〇何%かわかりませんが、突出をしたら、それはやむを得ないんだということでお済ましになるつもりなのか、その辺、その時点で考えるということではやっぱり問題が起こるんじゃないですか。
  150. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 先ほど申しましたように、現在のところ八月七日の人事院勧告を受けて、内閣全体でどのような給与改定をするのか、その辺は不確定でございます。一方、現在経企庁を中心に進められております五年に一回の定期的な国民所得統計の基準改定の問題があるように聞いておりますので、私たちは現在その問題は不確定なことであろう、全体として分母も分子も不確定なことだと思っております。
  151. 菅野久光

    ○菅野久光君 分母も分子も不確定だということはわかっているんですよ。わかっているけれども、一%以内におさめるのかどうかというそこのところだけなんですよ。余りあれこれ言う必要がないと思うんです、私は。一%以内におさめていくということをやっぱりはっきり言わなければ、一%突破するということと同じことになるんじゃないですか。  それと、最大限尊重するということをよく言われます。これは国語的に解釈するのと政治家の発言として解釈する場合と非常に違うんですね。国民にとれば、最大限尊重するという、最大限ですからもうこれ以上ないぐらい尊重するというふうに思っていたら、何とふたをあけてみたら口ではそう言ったけれども、やることは全く違う。これじゃ国民の政治不信というのはますます強まるんじゃないでしょうか。だから、今防衛庁長官も言われましたけれども、最大限尊重するというその最大限というのは、いわゆる政治家的な発言での最大限なんですか、それとも一般国民考えているような国語的な意味での最大限なんでしょうか。その辺はいかがでしょうか。
  152. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 政治家も一般国民と同じ国語を使っていると思っております。したがって、できる限りということはできる限りというふうに御理解いただきたいと思います。  そこで繰り返しますけれども、どのようなベアの決定になるのかわかりませんし、それから経企庁の基準改定の動向もちょっと見ていきたいと思っております。本年度につきましても守ってまいりたいと、こう思っております。
  153. 菅野久光

    ○菅野久光君 先ほども言いましたようにGNPの見直しの問題はどうでもいいんですよ、極端に言えば。一%以内でおさまるんであれば、最大限努力しなくても自然にそうなると。しかし政府で決めた人勧が、それを一%突破するということになれば、その段階でどうしなきゃならぬかということがおのずから出てくるんで、そのときの心構えといいますか、私はそれを聞いているんですが、そこのところはっきり言うといろいろまた問題があるということで、何か同じようなのらりくらりというような答弁になっているのではないかというふうに思うんですよ。ですから新防衛計画、それで総額十八兆四千億円ということで決めたけれども、これも政府のGNPの計画のあれでいきますと、「一九八〇年代経済社会の展望と指針」、それでいくと明らかに突破しているわけですね。しかし、それはことしの暮れに見直しをするから、その以内でおさまるかどうかということはいろいろある。  それはそれとして、きょう午前中の質疑の中で十八兆四千億円ということで一応お決めになった。それで大綱の水準については到達できるものというふうに考えているというふうに答弁されましたが、それはそのとおり受けとめてよろしゅうございますか。
  154. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) そのとおりでございます。
  155. 菅野久光

    ○菅野久光君 それでは、これが十八兆四千億円に至るまでの間にいろんなことがありました。防衛庁としては十九兆三千億円ということをかなり御主張なさったというふうに報道関係で出ております。それじゃ、この十八兆四千億円でおよそ大綱の水準を達成する、じゃ十九兆三千億円というのは何だったんでしょうか。
  156. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) この計画を決定する際に我々防衛庁の原案を大蔵財政当局に提出したことは事実でございますが、それが幾らの金額であったかということは、政府部内の一つの交渉の、査定のそういう過程でございますので、それを詳細に申し上げることは遠慮させていただきたいと思います。
  157. 菅野久光

    ○菅野久光君 詳細に報告することは遠慮させてもらいたいということですが、もうそのことは広く報道されているわけですね。それで十八兆四千億で大綱の水準が達成できるということになれば、何としてもこの九千億の差というのが一般的にはやっぱり理解ができないのじゃないでしょうか。まだこれでは不十分だ、まだ大綱の水準は達成できないんだというのだったら、やっぱり十九兆三千億だったのかなと、こう思いますけれども、それで達成できるというと、じゃ十九兆三千億は一体何だったのかと、こういうことになるのではないかと思うんですよ。だから、要求は大きく、そして財政当局は低く、そこでだんだん攻め合って、そして足して二で割るかどうするかは別にして、そこでちょんと手を打つと、こういうようなことで今回の十八兆四千億というのは決められたというふうに理解せざるを得ないんです。これはそういうことで、そうだとは答弁しないと思いますからあえて私は答弁は要りませんけれども、非常にそこのところは、私は今回の十八兆四千億という金額を決めるに当たっても、やっぱり問題のあるところではないかなというふうに思っております。  それで、今度の五カ年計画で継戦能力というのはどのくらいになるのでしょうか、お伺いいたしたいと思います。
  158. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 継戦能力につきましてはいろいろな要素がございまして、一概に幾ら幾らということは申し上げられないわけであります。それは装備そのものの予備がどうなっておるか、あるいは弾薬等の備蓄量がどうなるか、さらには侵攻してくる相手方の態様ということで千差万別でございますので、何日分とかあるいは何カ月分とかということは申しにくいんですが、一般的には継戦能力をはかるときに最もよく用いられるのは弾薬の備蓄量というものがあろうかと思います。弾薬の備蓄量がこの計画でどの程度のものを具体的に考えておるかということについては、事柄の性質上数量的には差し控えさしていただきますが、基本的には、我々かねがね申し上げております小規模限定的な侵略に対して、これは二次防以来の目標でございますけれども、一カ月ぐらいの持久力というものは持ちたいということを念頭に整備を進めておりますが、今回の計画におきましても同様の目標について努力するということで、これは物によって、例えばどんどん装備がふえつつあるというものについては弾の備蓄が追いつかないとか、いろいろなことがございますので一概にすべてが一律にどうなるというようには申し上げられませんけれども、一カ月分の戦闘ができることを目標に計画が組まれておるというようにお考えいただきたいと思います。
  159. 菅野久光

    ○菅野久光君 さようは総括ということで時間もございませんので、防衛費の一%の問題についてはこの程度で終わらせていただきたいと思います。防衛関係、よろしゅうございます。  では次に靖国の問題についてちょっとお尋ねをいたします。  時間もございませんのではしょって申し上げますが、非常に内政干渉とか何かといういろいろな御意見もありますけれども、しかしこの問題はいろいろやっぱり大きな問題を含んでいるということで、歴代の内閣が公式参拝を憲法違反の疑いがあるとして政府統一見解としていた。したがって今回の公式参拝の強行は従来の政府見解を実質的に変更するものだというふうに思います。このような重大な変更をただ単なる私的諮問機関の報告で行うということは、非常に問題があるというふうに思うんです。これは閣僚の靖国神社参拝問題に関する懇談会の報告苦という形で出ておりますね。  それで総務庁長官にお伺いしたいわけでありますが、昭和五十九年四月十日の参議院予算委員会でこの私的諮問機関である懇談会等と国家行政組織法第八条の審議会等との区別について答弁をしておられます。その際に後藤田長官は、「懇談会等行政運営上の会合にありましては、合議機関としましての意思が公の権威を持って表明されるものではなく、単なる行政運営上の意見交換、懇談会等の場にとどめるべきものであります。」「特に聴取しました意見を合議機関の意思決定と紛らわしい形で取りまとめることなどのないよう留意すべきものでございます。」、このように答弁されております。また、このことにかかわって藤波官房長官も同様趣旨の答弁をしておりますし、中曽根総理も、「各省に徹底しまして、八条機関と紛らわしいことのないように努力いたします。」、このように答弁しております。  今回の場合、肝心の御自分で答弁なさった官房長官が、この懇談会の報告書をてこに公式参拝を強行しているということは、この答弁と矛盾しているのではないか。いろいろ国会で、そういうことについて努力いたしますという総理答弁、あるいは総務庁長官答弁官房長官答弁、そういったようなもの等からいって、極めてこの私的諮問機関の取り扱いというものは徹底を欠いている。国会答弁したことが一つも守られていないと言ってもいいぐらいのものではないかというふうに思うんですが、これでは何のために論議しているのかということにやっぱりなるわけで、その辺について総務庁長官の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  160. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) この国家行政組織法八条のいわゆる審議機関は、ただいまお読みになったような性格のものである。いわゆる懇談会、この方は、各省がそれぞれ重要な行政運営上の問題について方針を決めたいというときには、いろんな各方面のそれぞれの有識者の意見を聞くということはしょっちゅう行われることだし、また役所の中だけの意見でなくてそういうやり方は私は合理的な理由のあるものだと、かように考えておるわけですが、    〔委員長退席理事目黒朝次郎君着席〕 時々混同をするということもなきにしもあらずと。だから国会でもいろいろ議論があって、昭和三十六年でございましたか各省に通達を出し、その後もしばしば閣議等の際に行政管理庁の長官の立場で、いわゆる隠れみのにしてみたりあるいは八条機関と混同しては相ならぬというようなことで注意を喚起しておるのが実情でございます。  今度の靖国懇の問題については、これはやはり官房長官が御自身でお考えを決めるに当たって、各方面の意見を広く聞く必要があるということで御意見を聞いて、そして御自身のお考えを決められた、つまりは政府責任において決めたと、こういう問題であって、まあ報告書の内容が機関意思の決定のような形になっておるのはおかしいと、こういう御質問だろうと思うんですけれども、多くの委員さん方の中でおおむね意見の一致、どなたの意見を聞いても同じだというものを私は一まとめにした点はあるのじゃないかと思いますが、これはしかし考えてみれば個々の意見の集約であって機関意思の決定ではない、そして同時に、それなるがゆえにこそ、あの問題についてのいろんな違った意見の方もあるわけでございますから、違った意見もちゃんとその中に私は意見として出ているんじゃないかと。したがって、官房長官はいわゆる懇談会と八条機関の区別ということをきちんと峻別をせられて私は対処しておられるものだと、かように考えておるわけでございます。
  161. 菅野久光

    ○菅野久光君 私的諮問機関がいろんな場合の隠れみのあるいは世論形成のためにいろいろ使われているということが、今までのいろんな場面で出てきておって、そのことでこの私的諮問機関のことが非常に大きな問題になっているということでありますから、今の総務庁長官が御答弁になったようなことを、上は総理大臣から下はみんな大臣いるんですから、そういうことでしっかり徹底をしてもらいたい。このことについては国民が非常にやっぱり不信感を持っているということを、この機会に率直に申し上げておきたいというふうに思います。  それから宗教色を抜くということで、参拝の形式でありますが、今回なさったようなことであれば宗教活動の一端には当たらないといいますか、そういったようなことだというふうに見解をとられたようでありますが、この点については法制局長官はいかがでしょうか。
  162. 茂串俊

    説明員(茂串俊君) 今回の公式参拝につきまして、宗教色を除いた上でやっておるのかどうかというような御質問と伺いましたが、靖国神社が宗教的施設である以上、総理、閣僚の靖国神社参拝が宗教とのかかわり合いのある行為であるということ、これは否定できないと思うのでございます。これは否定できませんが、ただ、宗教とかかわり合いのある国の行為がおよそ憲法との関係で一切許されないということにはならないわけでございまして、先ほどもちょっとお触れになりましたように、主として憲法上の問題としましては、憲法二十条三項が禁止しておりますところの国の宗教的活動に当たるかどうかというところでその判断が決まるように私考えておるのでございますが、この宗教的活動に該当するかどうかということにつきましては、委員御承知のとおり、津の地鎮祭に関する最高裁判決におきまして、これを判断する場合の一般的な基準が掲げられておるわけでございまして、今回の公式参拝の形をとった場合に果たしてこれが宗教的活動に当たるかどうかということを十分念査、検討いたしました結果、我々といたしましては、これは憲法上問題がないという判断に立ち至りましたので、先般の公式参拝を実施するというような運びになった次第でございます。
  163. 菅野久光

    ○菅野久光君 きょうは時間がないので余りこのことについて申し上げられませんが、何か二拝二拍手一拝という形ではなくて、一拝であればいいのではないかというようなことで今回はそうなさったようでありますが、私が調査したところによりますと、戦前の天皇とかそれから首相、陸・海軍大臣などの靖国神社への参拝は、宮中祭式に倣って一拝だけだったと。そうだとするなら、今風の中曽根参拝は形式的には戦前の正式参拝を復元したということになるわけですよ。ですから、一拝でどうのこうのということではないんですね。その辺もいろいろお調べになった上でやられたんだと思いますけれども、私はその辺の事実認識がどうだったのかということは非常に問題だと思います。  それで、時間がございませんので外務大臣にちょっとお尋ねをいたしますが、八月十四日、我が国が太平洋戦争中被害を与えた諸外国の在外公館に対して、相手国に中曽根首相の靖国神社公式参拝の真意を説明、理解を求めるよう訓令したというふうに言われております。そこで、この訓令に基づいてどのような説明をしたのか、またその外務省が把握している諸外国の反応、そういったようなことについてひとつ簡潔に御説明いただきたいと思います。
  164. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) おっしゃるように、諸外国に対しまして、靖国へのいわゆる公式参拝につきましてその趣旨を十分説明をして、誤解のないように説明をするように私から訓令をいたしたわけです。必要に応じまして、特にアジアの諸国を中心関係国に対して説明をしたわけですが、今回の参拝の趣旨、すなわち戦没者に対して追悼を行うものであるとの趣旨を十分説明をするとともに、我が国が過去においてアジアの国々を中心とする多数の人々に多大の苦痛と損害を与え たことを深く自覚をして、このようなことを二度と繰り返してはならないとの決意と反省の上に立って平和国家としての道を歩んできており、かかる反省と決意にはいささかも変化のないことを改めて強調をするように、我が方の在外公館に対しまして訓令をいたしたような次第です。  これに対しまして、中国側よりは、靖国神社を公式に参拝することは、中国人民のみならずアジア諸国人民の感情を害するのではないかとの趣旨の懸念が表明をされました。また、他の国々については格別の反応はなかったと聞いております。    〔理事目黒朝次郎君退席、委員長着席〕
  165. 菅野久光

    ○菅野久光君 今中国の問題をお話しになりましたが、中曽根首相が七月二十七日の自民党の軽井沢セミナーで、国のために倒れた人に感謝をささげる場所がなければ、だれが国に命をささげるかと、このように言われた。そうすると、また日本が戦争を起こして、そこで死んだ人をまた靖国神社のようなところがなければ、どうしておまえたち戦えと言えるのかと、こういうことに、これは短絡的かもしれないけれども、しかしそういうことを思い起こさせるに十分な私は発言ではないかというふうに思うんですよ。  田辺書記長を団長とする訪中団が行きまして、中国の姚依林副首相やあるいは鄧小平顧問委員会主任、それから胡邦総書記にもお会いする機会がありました。そのときにいろんなお話がありましたけれども、我々は国民党の戦士の祭られておる墓にはお参りに行く。これは抗日戦争でやったということですね。しかし、汪兆銘、汪精衛が葬られている墓地にはお参りに行かないと、そういうことを言われました。  それから、ことしの春にレーガン大統領がドイツでナチの親衛隊の人が葬られている墓地に行く行かないで大変な問題になった。非常にそういうところは厳しくあるわけです。しかも靖国神社には、昭和五十三年ですか、A級戦犯とされた東条英機初め十四人の方がひそかに祭られた、現在祭られているわけですね。ですから、ここにお参りに行くということは、確かに戦争で亡くなった方々に対する慰霊の心は私も人に負けないぐらいあるつもりでありますが、ここに行くということは、そのA級戦犯の方々が犯した私は罪といってもいいんですが、それは人によって考え方は違うでしょうが、その人を免罪するということに中国の人たちは受け取るのではないでしょうか。中国だけじゃありません、日本の侵略を受けた韓国や朝鮮民主主義人民共和国やそれから東南アジアの国々の人たちはそういう思いをしているわけです。だから、日本は戦争においてある意味では被害者であり、原爆では被害者であり、しかし、あの十五年戦争で見れば加害者なわけですね。よく言われますが、殴った人間は忘れても、殴られた人間はいつまでも忘れないという言葉がありますが、まさにそういうことだと思うんですよ。ですから、この靖国参拝の問題については、新聞の論説などでも何回も参拝を強行するなということを言われているわけです。しかもこの問題と先ほどから言っている一%枠の問題、そして日の丸、君が代の強制の問題、こういうこととがみんな一体になって、それは大変だと、日本もいよいよまたもとに戻っていくのかという思いをすることは、私はある意味では当然ではないかというふうに思うんです。そういう意味では、本当に外務大臣も大変つらい思いをされながらいろいろお話をされても、なかなか先ほどのお話のようなことでは私は納得できない問題だというふうに思うんです。この問題についてまた別な機会にいろいろ論議をしたいというふうに思っております。  時間がもういよいよなくなりましたので、厚生省関係ちょっとお願いしたんですが、次の機会にひとつ厚生省の方はやらせていただきたいと思いますので、大変申しわけございません。  文部大臣にお尋ねをいたします。  共通テストの問題でありますが、臨教審が第一次答申をやったすぐその後で、官房長官、それから総理があの共通テストの問題を六十二年からやれと、こう言いました。そのことについて発言するということを大臣は事前に知っておられたのかどうか。  それから、本当にやる場合には、十分な準備が要るわけですね。そういうことを含めて、本当にこのテストをやるのは、今の大学入試のあり方を変えるのはいつから変えるのか。これはもう受験生にとっても親にとっても大変な問題でありますから、そのことについてお答えをいただいて私の質問を終わりたいというふうに思います。
  166. 松永光

    国務大臣(松永光君) 先生もよく御承知のとおり、第一次答申の中の具体的な提案として大学入学者選抜制度の改善、これが大きな問題として取り上げられておるわけであります。その趣旨とするところは、いわゆる偏差値偏重の受験競争の弊害の是正、そのためには各大学がそれぞれ自由にして個性的な入学者選抜を行うように入試制度の改善をしなさい、することを要請する、そしてその一つの手段として新たなテストの提言、こうなっておるわけでありますが、この新たなテストがいつから実施できるかという問題でございますが、我々としては直ちにこの大学入試改革協議会というのをスタートさせまして、これも臨教審の提案の中にそういう新たな検討会をスタートさせて、そこで具体的な検討をするようにと、こういう要請でもございますので、それを受けまして大学入試改革協議会というのをスタートさせたわけであります。その大学入試改革協議会の検討がいつごろまでかかるかということで、いつから実施できるかが決まるわけでありますが、おおよそ一年ぐらいはかかるんじゃなかろうか、新しいテストのあり方についての検討が終わるのが。そして、それが終わった段階で、これは国立、公立、私立の大学に強制するわけじゃありませんから、国公私立の大学が利用できるようなすばらしい新しいテストを提案して、そしてその上に立ってじゃどの程度の大学がこれを利用されるのか、それを見きわめた上で具体的な実施と、こういうふうになってくると思われます。したがいまして、まだその時期がいつになるかは明言できる時期ではございません。この大学入試改革協議会の検討がスムーズに進むことをひたすら期待しておると、こういう状況であります。そして、それが最終的に決まった場合にはどうなるかというと、もう一つは高校二年生の前半に通知をするということが今までの慣例でありますし、それが入学試験を受ける人に対する親切な対応であろうと、こういうふうに思いますので、そういうことを考えますと、まだいつだということは言いにくい環境でございます。ただはっきりいたしておりますことは、国立大学に関しましては、昭和六十二年度はいわゆる五教科五科目で実施する、共通一次試験を。それはもう決まっておることでありまして、その旨通知をしておるところであります。したがいまして、新しいテストは早くとも六十三年度以降ということになるわけでございます。  なお、この答申が出された直後に、総理官房長官の方からいろいろな発言があったわけでありますが、早く偏差値偏重の受験競争の弊害を是正してもらいたいという願望からなるだけ急げと、早いことを希望すると、こういう趣旨の発言だと私は受けとめております。その事前には別に私ども相談は受けておりませんでした。  以上でございます。
  167. 服部信吾

    服部信吾君 まず初めに外務大臣に一点だけお伺いいたしますけれども、昨日決定いたしました新防衛計画ですけれども、明らかにこの五カ年でGNP一%を超えておる、こういう積算になっておりますけれども、この新防衛計画について外務大臣としてどのようにお考えになるのか。  また、あすからですか、また国連の方へ行かれて、その後日米首脳会談が開かれる、こういうように言われておりますけれども、この新防衛計画と日米首脳会談との関係といいますか、ある人は日米首脳会談、この経済摩擦の問題が大変なためにこの新防衛計画を決めだというような批判もあるわけですけれども、この点について外務大臣のお考えをお伺いしておきます。
  168. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 我が国の防衛につきましては、今さら申し上げるまでもなく、自分の国は自分で守るという立場から、我が国の憲法のもとに最小限のものでなければならぬと思います。同時にまた、今我が国の安全保障は米国とのいわゆる安保条約に依存しております。したがってこの安保条約との信頼性というものが確保されるものでなければならないと、こういうふうに考えておるわけでございます。そうした立場において、今回の新防衛計画は我が国の現在進めておるところのいわゆる防衛計画の大綱を五年間に達成するということをめどに進められておるものでございますし、同時に、このことは日米の安全保障条約というものの信頼性を確保するゆえんのものであろうと、こういうふうに考えております。財政との絡み合いで諸施策との調和を踏まえながら最終的にああいう形で決定をされたわけでございます。私も閣僚の一人といたしまして、この閣議決定に参加をし、その限りにおいては責任を持つわけでございます。これによりまして、我が国のこれからの防衛計画が進められていくわけでございます。私はこの決定は我が国自身の問題として決められたわけでございますし、これは別にアメリカと相談をすべきものではございません。しかし、アメリカは我が国の防衛のあり方というものに対して、安保条約を結んでおるという立場から非常に重大な関心を持っておるわけでございますし、そういう意味におきまして、今回私が訪米するに当たりまして、アメリカの当局との間に抽きましても、求められれば、日本の立場を、特に防衛についての日本の決定についての立場を説明をして、アメリカの理解を求めたいと、こういうふうに考えております。
  169. 服部信吾

    服部信吾君 次に、南アフリカのアパルトヘイト政策についてちょっとお伺いしたいんですけれども、このアパルトヘイト政策、これはもう非常に国際的に批判されておると、こういうところでありますけれども、これらに対してアメリカ、ECあるいはカナダ、それぞれ制裁措置をとっているわけでありますけれども、我が国政府としてこのアパルトヘイト政策、南アフリカに対して何らかの経済あるいは制裁措置をとらないと、また諸外国からいろいろな非難が出てくるんじゃないかと思うわけですけれども、この点について外務大臣並びに通産大臣のお考えをお伺いしたい。
  170. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 我が国はこれまでも南ア政府が一日も早くアパルトヘイト政策を撤廃することを強く求めるとともに、すべての関係者が平和的手段によるところの問題解決に向けて全力を結集するよう訴えてきたところでございますが、こうした事態を前にして、南ア政府がアパルトヘイト撤廃に向け、早急に具体的措置をとっていくことを今後とも強く訴えてまいりたいと思います。これまでも南アのアパルトヘイトに強く反対するという立場から、米国を含む他の西側主要国に比べまして、南アとの関係をより制限的なものとしてきておるわけでございます。例えば日本はこの南アとの間に外交関係を持っておらないし、あるいは政府のかかわる点については厳しくこれは規制しておるわけでございます。他の南アの追加措置問題、南ア政府が行っておるところのああした状況、処置に対する抗議的な意味を兼ねて追加措置をとるかどうかということにつきましては、他の西側の主要国の動きを見きわめながら、我が国としてさらにできることがあるかどうかにつきまして今検討をしておるという状況でございます。
  171. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 南アとの御質問でございますが、経済関係について申し上げたいと思います。  南アとの経済関係を通常貿易の枠内にとどめておりまして、政府ベースの経済協力、贈与、借款、技術協力は行っておらない。また通商協定も締結しておりません。また本邦企業による現地法人設立等の対南ア直接投資も認めておりません。国連諸決議を尊重して日本の外為銀行あるいはその海外支店が南アに融資を行うことを自粛するよう指導してきております。それからまた国連の武器禁輸決議を厳守しておる。そうした諸般措置を講じておりますし、さらに国連決議の趣旨を踏まえてスポーツ、教育、文化の分野における日本・南ア閥の交流も制限するというような諸般措置をとっておるところでございます。
  172. 服部信吾

    服部信吾君 このアパルトヘイト問題、これは非常に我が国にとっても難しい面があると思います。アパルトヘイト、これはもう人道的な問題ですから、きちっと態度を決めてやはり政策をしなきゃいけないと思いますし、ある面からいえば非常に経済的な問題もある。こういうことで、しかしこれは明らかにはっきりと分けてやらなくちゃいけないと思うんです。ところがどうも政府のとる態度がはっきりしない。今国連決議にのっとってというお話がありましたけれども、今まで有名なプロゴルファーが行ったり、あるいは外務省の役人の奥さんがテニスをしたり、いろいろやっているわけですね。その中で特に日本・南アフリカ共和国友好議員連盟、こういうものがありますね。その発起人の中には副総裁も入っておられる。そうして四十五名ぐらいの方たちがこれに入会しておる。ことしの八月にはその中の三名ぐらいの方たちが南アフリカヘ行って、そうして向こうのボタ外相とも会っていろいろな話をしておる。  ちょっとお伺いしたいんですけれども、要するにこの日本・南アフリカ共和国友好議員連盟の活動方針としては、南アフリカ共和国と日本の議員との交流、両国相互の航空機の乗り入れ、大使館の交換、文化交流、情報交換などいろいろあるわけです。これは今言われた国連決議に反しますね。
  173. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今挙げられたような点は、これは国連決議には反するものであろうと思います。日本としては政府としてこうしたアパルトヘイトに対しては毅然として反対の姿勢を貫いておりますし、今後ともこれは貫く考えてあります。
  174. 服部信吾

    服部信吾君 そういうことでしょうけれども、やっぱりここに副総裁も入っておりますし、またこの八月に三名の議員連盟の方が南アフリカに行っておるわけですね。そういうことになりますと、口では要するに反アパルトヘイト、こう言いながら、実際やっていることは全く反対のことをやっているんじゃないか、こう思いますが、これは外務大臣に言ってもちょっと筋が、話が違うよというふうになるかもしれませんけれども、やはり外務大臣としてこれに対して何かやらなければ、日本政府の態度がそれこそ疑われるんじゃないか、こう思いますけれども、大臣どうでしょう。
  175. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日本政府としては外交関係も持っておりませんし、これまで毅然とした筋を正した姿勢を貫いておるわけでございますが、個人の交流であるとか民間の経済の交流は、これは今も通産大臣からも御説明がありましたように行われておるわけでございます。これはあくまでも個人の認識あるいはまた自由の問題であろうと思います。これはそういう意味において我々が、政府が議員の行動にまで介入するということはできないと思います。議員の諸着が南アに行かれるということもあるようでございますが、これは南アに行ってその実態というものをやはり議員として十分見て帰りたいということであろうと思いますし、そこまで政府が口出しをすべきではないだろうと思います。  しかし政府としてはやはり国連の場におきましても、あるいはまたあらゆる国際的な場におきましても日本政府の姿勢というものは、これはもうはっきり明白に打ち出しておりますし、また、政府としての行動はこれまではっきりしておりますから、これはやっぱり貫いていくということは、もちろんこれは大事なことであろうと、こういうふうに思っておるわけであります。
  176. 服部信吾

    服部信吾君 ひとつ毅然たる態度で臨んでもらわないと、これはもう何も言えなくなっちゃうんじゃないか、実際に自民党の副総裁が入って、そしてこういうようなことを平気でやっているということは、完全に国連の決議に反するわけですから、ひとつ毅然たる態度でやってもらいたいと思います。  と同時に、非常に興味ある一つのアンケート調査があります。これは英国のサンデータイムズが行った世論調査なんです。直接これは南アフリカヘ行かれて、そしていろいろ調査をした。その中で、南アフリカの白人の方たちがこのアパルトヘイト政策はもうこれは十年続かないだろう、こういうような回答もしております。と同時に、これに対して黒人の方たちは三〇%が徹底的に内乱までやるんだと、非常に強い決意で臨んでいるわけです。そうなりますと、先ほど通産大臣お話がありましたけれども、日本といわゆる南アフリカとの経済交流、特に御承知のとおり南アフリカには大変なレアメタルがある。ほとんど世界の重要なレアメタルの中ではマンガンにしても六八%、クロム四六・五%、バナジウム四七%、白金八一%、アンチモン七・二%など、世界の埋蔵量に占めるシェアはほとんど世界で一位、二位です。二位がほとんどソ連、こういうことであります。  これは私はちょっと簡単にある面からいうと、いやすぐにある非常事態宣言を発してある部分でやっているんだと、この間お役人の方に聞きまして大したことはないと、こう思っておりますけれども、このアンケート調査を見たときに、これは徹底的にこのアパルトヘイト政策に対しては黒人がやるという、これがこのアンケート調査に出ているわけです。  そういうふうになったときに通産大臣、これは第二の石油じゃありませんけれども大変な問題になると思うんですけれども、これに対して、たとえもしこれがだんだんエスカレートして内乱なり無政府状態になったときに我が国経済は大丈夫ですか、これ、この点についてお伺いしたい。
  177. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 服部先生の御指摘になりましたレアメタルの関係では、まさに非常に南アというのはバナジウムである土かマンガンであるとかクロムであるとか、いろいろ包蔵しておりまして、御承知のようにニッケル、クロム、コバルト等のレアメタルについては我が国の主要産業あるいは国民経済に必須の重要資源でありますので、我が国は経済安全保障の観点から国内消費量の六十日分を目標として五十八年度から備蓄を実施しておるわけでございます。現在は二十一・六日分の備蓄をことしの末までに実施することになっておりますが、南ア連邦に供給を仰いでおるところがいろいろあるわけでございまして、そういった問題については他の供給国その他との関連でよく検討し、レアメタルの備蓄を増していくという方向で検討いたしておるところでございます。
  178. 服部信吾

    服部信吾君 時間がありませんので最後に要望しておきますけれども、いずれにいたしましても大変我が国にとっても対応の仕方が非常に難しいと思います。そういうことで、しかしながらやはりこのアパルトヘイト、これに対してはもっと毅然たる態度で臨んでもらいたい。と同時に経済問題、これも大変だと思いますけれども、やはりきちっとした態度で臨んでもらいたい、このことを要望して質問を終わります。
  179. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 質問をさしていただきます。  決算の総括でたくさんの大臣をお呼びしてお話し合いができる中、あえて大蔵大臣とだけ懇ろに話をさせていただきたいと思うのは、税の問題が大変気になるからであります。明日から政府の税制調査会が始まります。  そこで、この税制調査会に対して何を諮問なさったのか、まずこれからお伺いをいたします。
  180. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 明日の二時に総理官邸で総会をお願いしまして、総理大臣から諮問をされると、こういうことになっております。したがいまして、現時点でちょっと諮問文を読み上げることは差し控えさしていただきたいと思います。が、大体税制調査会というのは三年に一度改編がありますときに、初めに国。税、地方税のあり方についてと、こういう非常に大きな諮問を申し上げるという性格のものでございます。ただ、今度は各方面の税に対するいろんな関心の非常に高いところで、総理も公平、公正、簡素、選択、活力ということに基づいてシャウプ以来の抜本改正をお願いすると、こう申しておりますので、おのずからそうした趣旨のごあいさつを申し上げた後、やはりあるべき税制全般に対する御審議をお願いしますと、こういう形で諮問をするということになろうかと思われます。
  181. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 大体の答申の目安とか手はずはどんなふうになっているのかということが一つと、全般についてと今おっしゃっておられるわけですが、しかし、その中で中心的柱というかおありになるのではないかと思うのでございますが、さらにお伺いいたします。
  182. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これもちょっと懇ろな答弁にあるいはならないかもしれませんけれども、あしたから始まるものでございますから。で、元来税制調査会には政府側の予見を与えることはしないで、国会等で議論されたものを正確にお伝えして議論してもらうと、こういう性格になっております。が、今のお尋ねございましたように、やはり公平、公正、簡素、選択、活力というような立場から、いろいろ戦後シャウプ税制以来三十五年たっておりますから、いろんなひずみなどができております。そういうものを踏まえ、国民の税に対する重圧感と申しますか、そうしたものをも念頭に置きながらこの御審議をいただきたいと。そして期間につきましては、これも明日までちょっとはばかりますが、非常に短い期間で御審議くださいというようなことではなく、ある程度中長期の御議論いただくわけでございますから、時間を終えて、それを念頭に置いて御審議をしていただきたいと、こういうふうな考え方でお願いするであろうというふうに思っております。
  183. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 このたびの税制調査会に通常の政府税調委員三十人、そしてこれまで特別委員と申しましょうか、専門委員と申しましょうか、十八人おられますね。それに加えて十人の特別委員が増員され、加えられたわけでございますけれども、私はこの問題についていろいろ意見を持っているわけでございます。で、税制調査会令一条二項、「調査会に、特別の事項を調査審議させるため必要があるときは、特別委員若干人置くことができる。」ということがございます。で、お伺いをするわけですが、この特別委員、このたび十人ですね、を置かれるということについて、この十人に特別の事項を調査審議させるために必要というこの二項にうたったからには、それにのっとってこの十人が私は人選されたのではないかというふうに理解をするわけですが、この新しい特別委員に付託された特別の事項とは何でしょうか。
  184. 水野勝

    説明員(水野勝君) この第一条二項の文言に即して申し上げれば、今回シャウプ以来三十五年、その間におきますところの社会経済情勢の変化に対応いたしまして、税制の抜本的な見直しに関して審議に御参画いただくということが、特別の調査審議事項ということに相なろうかと思います。
  185. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 そうですね、抜本的な改革ということは、これまでの三十人の委員及び十八人の特別委員では間に合わないということで、新たに十人を選ばれたという理解の仕方になるのだろうと思うのですが、決算的な物の考え方からいいましても、新聞等で税調の強化というような使われ方、補強強化というような使われ方がして報道されているわけですよね。でも私は、あれ、補強強化だと、じゃ、今まで弱かったのかなと、こういうことになるわけで、決算的な考え方からいきますと、あれ、いいのかなというふうに思います。暴れ馬の民間人に暴れていただくために十人を入れたという式のことであっては私はならないと思うんですが、一この点もう一度確認さしてください。
  186. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは先ほどもお答えいたしましたが、特別委員若干置くことができて、その特別委員の先生方は、もうこれは委員と同じように学識経験のある者のうちから内閣総理大臣が任命すると。それで、新聞で補強強化とか、あるいは暴れ馬発言というのがありまして、今までの人はおとなしかったのかとか、いろんなおもしろおかしい評価もいただいておりますが、いずれも学識経験者として立派でありますし、言ってみれば今までずっと税調が続いておりますので、今度まさにシャウプ勧告以来の大改革ということになりますと、新しい角度からまた特別委員の先生方、もう委員の先生方は定員いっぱいでございますからお願いしようと、こういうことでお願いしたわけでございますので、いずれも学識経験者であるという意味においては共通項の中へお入りいただけるんじゃないかというふうに考えております。どの人が暴れ馬であってどの人が暴れ馬でないかというようなことは、これは客観的評価でございますが、いずれも暴れ馬ではなく、まことに懇ろなお人柄であるというふうに思っております。
  187. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 大変にこの税調のこれからの行く先が、やはり注目されるであろうということを私は申し上げておきます。  この問題だけこだわっているわけにはまいりませんので先に進みますが、ここに八月十一日の総理府の発表のアンケート調査国民生活に関する世論調査、五月の末から六月にかけての調査ですね、これで政府に対する要望事項が何であるかという問いに対して、「税の問題」が三七・七%と一番多かった。これは例年物価対策というのが一位にあったのが税対策ということに逆転している。前年度を四・六%も上回って税に関する関心が高まっているということのあらわれであろうと思います。  それから五月二十日の読売新聞、これは読売の調査を読ませていただきました。政府に特にやってもらいたいこと、これは一番多いのはやっぱり税金です。四八・二%、これは複数回答ですが。そして八〇%弱、七九・何がしかの人が税に対する重税感を訴えているということ。  少し古いデータですが、日経のアンケートもあります。二月の末です。八八%の主婦が私どもの家計は税金が圧迫していると、このように訴えています。  国民のこの税に関する認識というか、意識というか、問題意識というか、これが非常に高まっているということ、その中で開かれる税調であります。したがって、私はこれまでの密室で開かれるような税制調査会であっていいのだろうかという一つの疑問を持っている者ですが、これはどんなものでしょうか。中曽根総理もさきの国会予算委員会等で、国民の皆様の声を踏まえた税制改革というような御発言を何回かしておられますし、この国民の声を踏まえた税論議をしていくという方法を、このたび十人もの特別委員を招集して、そして大がかりな税制調査会を開催していこうという意気込みの中で、私は国民に対する一つの向きというか、国民の声を取り込むという姿勢、こういうものも今までと変えていいんじゃないかと思うんですけれども、これいかがでしょうか。密室審議はいかがですかということです。
  188. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 今のお考えでございますが、国民の声がどこで代表されておるか、やっぱり一義的には国会だろうと思うんです。今の先生と私の問答が国民のやっぱり意見を一番反映させて、しかもそれは速記にとられ、官報に掲載されていくべきものであります。したがって、税調の先生方にもまず国会審議でどのような議論がされたかということを正確に報告する、そこから始まる。これは国会が終わりましていち早く、特別委員の先生まだ入っていなかったときでございますけれども、一応報告して、夏休みの宿題というとちょっと非礼に当たりますが、しっぽりと勉強をしてもらった、ここから出発すべきじゃないか。ただ、先生がおっしゃっていますのが、いわば公開しろということになりますと、これに対しては私どもはいささか、速記をとって国会の問答のように公開するという考え方はいたしておりません。答申を出すのは当然結果としてこれはお出しするわけですが、毎度の税調のたびごとにあらましのいわゆる記者会見をしてこれを公表したり、それから中間報告等はまとめてこれを公表しましたり、そういうことをやっておりますので、審議そのものの中身につきまして速記をとってそれを公開するということは、国民的立場からいろんな議論を行っていただくわけでございますので、いわば特定の業界でございますとか、団体でございますとか、そういう立場からでなく、国民的立場から行っていただくということになれば一それをいわゆる会議そのものを公開にする、そういう考え方にはなじまないというふうに考えております。
  189. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 今までやってこなかったからなじまないのでありまして、やっぱりそういう一つの策も考えていって私はいいんじゃないかなと思います。イギリスのグリーンブックとかアメリカの財務省の基本的税制改革報告書みたいなもの、これは大変に論議の対象になっていたというふうに聞いておりますし、私は答申となって、結果となって出てくるものよりも、その審議過程がいかがあったかということを知らせることは、逆に大変に国民に理解を求める一つの方策にもなると思うんですよ。こういうことも取り扱われたけれども、集約したら結果としてはこういう結果になったというふうなことだって言えるわけですから、やはり審議過程の公開というのは私は非常に大切だと思っております。そして、しかも先ほど申し上げたように、税に関する認識、そして問題意識がこれほど高い時期になっているというときに、今までどおりの審議であっていいかどうかはやはりもう一度お考えいただきたくここで要望しておきますので、いろいろな方法で考えてみていただきたい。政府広報というのもありますよね、公聴会というものもありますよね、いろいろやろうと思えばあると思うんですよ。なじまないといって工夫をしないから中間過程についての報告がいつもできない。過程でどういうことが論議されているかがわからないというだけのことで。私は、これもまた私ども何しろ情報は新聞で読むより仕方がないんでございますけれども、新聞では六十一年末に結論を出すのではないかというようなことを書いておる新聞が幾つかあります。そうすると、六十一年末まで何が審議されているかわからないうちに事が決まってしまったということでは国民としては非常に困る。そういうことでぜひこの論議の過程を何らかの方法で国民に知らせるということは、これは今シャウプ税制以来の大改革をしていこうとする政府にしてみれば、私は当然やるべきことではないかというふうに思うので、再度申し上げます。  ところで、話がちょっと違うんですが、さきの国会の与野党幹事長・書記長会談で合意をされました政策減税三つ、これは次期国会冒頭処理という政治決着がついておりますが、まさかこれまで税調にお預けになるのではないでしょうね。お伺いします。
  190. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 今秋を取り巻く三つの環境があると思います。一つ政府税調に抜本審議をお願いする。それも今先生おっしゃった、長くかかればその間、そのことをついでにこの機会に答弁さしていただきますが、国民に何にもわからぬ、税調は税調の独自の判断でいろいろ運営されますが、したがって今お吐きになりました意見等も正確に伝えますが、公聴会とか参考人とかあるいは中間報告とか、そういうことは今後はお考えになっているではないかなんと言うと余り予測していけませんけれども、そんなことは考えられることではないかなというふうに思うわけでございます。これは運営は自主的にお願いしますが、そういうことは期待できるかなというふうにも考えておるところでございます。  それからただいまの問題でございますが、三つの環境があると申しましたのは、税調の問題とそれから今の与野党の合意、それからもう一つは経済摩擦に関しての諮問委員会の報告というのが一つございます。それぞれ別個にあるわけでございますけれども、抜本改正はこれは税調へお預けするということでございましょう。あとの二つはどっちかといえば当面の問題、こういうことであります。  この問題については当然各党の最高責任者の方のお話し合い、政調、政審段階で幾たびかお会いになったということは私どもも承知しております。が、これはやっぱり党と党のことでございますから、私が仮に私見がありましても、それはいつどうなるでありましょうとか、税調とは関係ないでございましょうとか言うことはちょっとやっぱり今、党の役員も何回もしておりますが、今大蔵大臣でございますから、党の問題に対しての評価を与えるというわけにはいかぬ立場にあるんじゃないかな、窮屈なようでございますが、それも一つの政治家としての節度がなと思っております。
  191. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 大蔵大臣は大変お苦しいお立場で、そこまでは答弁できないお立場も私はわからなくはないんですけれども、非常に格好いい発言ばかりたくさん続いて、この夏各派の皆様の研修会等で減税必要の必要論がたくさん出て、そして貿易摩擦解消のため、内需拡大のために減税は大いに必要というようなことをぶち上げているわけですよね。だけれども、その財源の問題なんかについては触れられておらぬというのが実情でございますよね。今の政治決着がついているはずの政策減税だって、まさに私はそのことだと思うんです。だから結局これだって税調にお預けして、そしていかがいたしたらよろしいかということを問わなければ、財源がないわけでしょう。だから、私はその分までも預けるべきではないけれども、結局これすらも税調にお預けになっているのではないかなというふうに思うので伺っているわけです。  そこでお伺いいたしますけれども、時間が余りないんですが、新総合政策研究会、よく御存じの会ですね。そこで長期的視野で抜本的な税制改革というあの提言をなさいました。私はこの中で一つだけ褒められるのは、財源についてとてもわかりやすくおっしゃっていることなんです、そうですね、大臣。非常にわかりやすくおっしゃっておられます。他の方々の発言というのは財源について触れておられない。もちろんこの提案そのものについての是々非々は別です。マル優廃止の利子課税の問題と、それから大型間接税二%、これ入っているわけですね。これは大いに問題があります。ただ、このように財源について触れていることは、やっぱり評価に値すると思う。これからは、減税必要説ばかり言ってないで、その財源がどこにあるかの問題もあわせてやっぱり論じていかなければならないと思うんですが、それも税調待ちというわけですよね。私は大蔵大臣をいじめるつもりは全然ございませんので、そういうことも含めまして、ぜひ堅実な、外向きのポーズをつくるための減税諭や、それから選挙戦に向けての減税論のようなことをおっしゃるのではなくて、現実味のある減税諭をおっしゃっていただきたい。こういうことを希望しておきまして、四十六分までだそうなので、まだまだ大変大事な課題持ってますから、ちょっと先に進ましていただきます。  先ほどから公平、公正、簡素、選択、活力ということをおっしゃっておられまして、私もよくこの順序まで覚えました。この問題でございますけれども、この公平、公正、簡素、選択、活力という問題を考えるに当たって、国民負担率の問題を私は大変に大きなウエートのある問題として考えます。これはヨーロッパの主要国の話でございますが、租税負担率プラス社会保障負担率、これを合わせた国民負担率が、一九八二年英国で五四・四%、西独で五四・一%、フランス六一・一%という負担率になっております。この一九八二年当時我が国は三四・三、現在は三六・Oですね。この国民負担率の問題ですけれども、これからいわゆる財政需要はいやが上にも膨れ上がっていく中で、国民負担率をどの線で考えるかという問題はこれからの大事な政治的テーマでなかろうかというふうに思いますが、大蔵大臣のまず御所見を伺いたいと思います。
  192. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いわゆる租税負担率、なかんずく社会保険料等を含めた国民負担率、これは大変興味のある問題でありますが、究極的には、政府部門、民間部門に資源をどう配分するか、それが適当かということと、いわゆる国民が必要とする公共支出の水準、受けるサービスに対応して結果として決まってくる、こういうことになるわけであります。したがって、いわゆる国民負担の水準というのは今までどうなっておるかといえば、結果として、毎年毎年の予算編成の中で、受けるサービスとそれに対応するものとして決まってきておって、あらかじめ固定的に決めるというのは非常に難しい問題じゃないか。ただ、臨調答申におきましても、これから高齢化社会もやってくる、だからいずれは若干は上がりましょう、しかしヨーロッパ諸国の水準よりはかなり低いところで――これは何ほどは言っていらっしゃらないわけです。  私も税制論議をいわゆる国際会議の大蔵大臣会議でやりますけれども、簡単に言いますと、国民負担率というのでヨーロッパが今余りにも上がり過ぎた、そこで結局勤労意欲を阻害した、それが日本に追いつかれてしまったゆえんのものではないか、基本的なそういう認識の中で議論されておりますと、あの水準というのは、結果的に見ますと、これだけかけているならば早目に元を取らなきゃいかぬという心境になってしまうという限界を越しておるなということはつくづくと感じます。それで今あれだけ、今最初おっしゃいましたように、世論調査をごらんになりますと、税の問題が――物価は世界で一落ちついておりますからでもございましょうけれども、税の問題がこれだけ議論されておるさなかでありますだけに、それらを正確に報告して税調で議論してもらって、そこで税体系が出てくる。そして、今度は国会の問答というのは、いわゆる公共支出に対するいろんな要求というのはあるわけですから、それの調和をとったものが後から国民負担率として結果で出てくるから、初めから国民負担率これということをリジッドな数字で決めるというのは難しい問題じゃないかな、こんな考え方を常日ごろ吐いております。
  193. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 私はまた逆に、先ほども言いましたように、財政需要というのは、黙っていてもこれから先、高齢社会到来を控えて進むわけですね。だから、それに合わせてエスカレートしていったのでは際限なく伸びていくということの関係からいけば、逆にここまでが上限だというものがあって悪くはないのではないかという考え方も持っているわけです。また、そうしていただかなければ国民もまた大変であろうということを思うわけです。ヨーロッパなんかでは、確かに租税負担率の高い国は経済の活力を失い、失業率が高い、インフレが進んでいる、こういう実情があるわけですから、やはりそういう轍を踏まない形のものを考えるに当たっても、それは私はやはり上限をきちっと考えておくことは必要ではないかというふうに思いますけれども、答弁結構です、時間がございません。  先ほど大臣が言われていた臨調の答申の中の、かなり低い水準にとどめる、これは「展望と指針」にもありますね、「かなり低い水準にとどめる」、ここのところをやっぱりお互いにしっかりと見定めてみたいというふうに思うのが今の私の心境です。これはぜひお願いしておきたいと思います。それでないと大変な社会がやってくるというふうに思うんです。  それで、先ほどの新総合政策研究会の中の後半の部分にある例の大型間接税の二%税率導入の問題についていささか私は申し上げてみたいのですが、これも時間がございませんので、フランスの例、これは大臣も自民党の研修会でヨーロッパの例等をお引きになっていろいろ勉強の講師をなされたということを伺いましたけれども、フランスの税制審議会が試算をしているものの中で、付加価値税の税率を引き上げるとどんな影響になるかということで、仮に税率を一律二%アップしただけで、以後四年間物価が三・二%ずつ上昇する、同時に家庭消費は毎年一%ずつ減少し、購買力は三・五落ち込み、雇用は年間八万三千人減少するというふうな例を挙げておられます。私は、やはりこういうふうなこともぜひ試算をしていただきたいと思います。税率二%だから大丈夫だというわけにはまいりませんので、この点をやはり試算をしなければならないことと、基本的には大型間接税導入は私ども公明党は大反対でございます。それはたとえ二%といえども一度この仕組みをつくってしまえば税率を上げるぐらいなことは簡単なことになります。ですから、大臣もどこかの場所でおっしゃっておられたように、間接税導入は慎重にということをおっしゃっておられますが、私も全くその意見に同感でございます。ここに今フランス政府が試算しているデータの中で余りにも逆進性の強い状況について数字で挙げてありますので、ちょっと時間内で御披露してみたいと思うんですが、御存じのとおり、フランスは税率が複数税率の四段階になっておりますね。それでやっていて軽減税率が七%、それから標準が二八。六、それから最高税率が三三・三ですよね、その前にゼロがあるわけですね。この四段階でやっておいてなおかつ年収の最も低い二万四千フラン以下の低所得、この人たちの消費支出に八・九%の率をもたらしてウエートを持つということ、それて最も収入の多い十八万フラン、この人たちの負担が一〇・穴なの。そうすると給料の差が七・五倍もあるのに税率の差はたった一・七%の差しかない。これは四段階に分けてつくってあるような、つまり生活必需品はのくような間接税の方法をとっておいてなおかつ、この逆進性は間接税の宿命ですけれども避けることができないと、こういうデータがあるわけです。  それからまた、もう一つは職業別負担率の計算があります。これを見ますと、最も低い農民が九・二%の負担、そして最も高い負担が中級幹部職員と、こうなっているわけですね。ただこの人たちの負担は一〇・四%で、その差はわずか一・二、そこで気がつかなければならないことは、失業者とか年金生活者等の非就労者といえども九・五%の負担率をしょっているということ、これはやはり考えなければいけない大きな数字であろうと私は思います。そして大実業家、この方たちがわずかに一〇・二%の負担でしかないということで、非就労者との差が〇・七しかない。大実業家と失業している人との間接税の負担率というのはたった〇・七の差しかないという、このやはり間接税の驚くべき逆進性をお互いの立場で私は認識をし合わなければならないというふうに思います。これはフランスの例ですが。  ここに消費者団体の皆さんが計算をなさった我が国の例があります。生協連の方たちがなさった試算でございます。この方たちは家計簿の中で、現行個別間接税ですよ、今まだ、個別商品ですよね、その現行の間接税のあり方の中でなおかつ逆進性がこんなにあらわれているという、大変とうといデータを民間のお立場でおつくりになっておられますので、これもう新聞でお読みになったと思いますけれども、御披露いたしますとね、月収二十万以下の世帯、これが最低の線の月収二十万以下の世帯の人が五・四%負担している。それに対して月収六十万以上、六十万を超える世帯はわずかに二・四七%しか負担していない。こんな見事な逆進性が出てきてしまうわけです。だから、今まだ個別商品にしかかかってない間接税ですよ、これでなおかつ恐るべき数字が出てきているんです。こういう数字を見ますと、どんなことがあっても私はこの逆進性を避けることのできない間接税は導入すべきではないと、国民の総意を尽くしてこれでない形で今の財源を考える方法をみんなで考えてみようじゃないかと、私はこういうふうに思っているんですけれども、大臣いかがでしょうか。
  194. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 今の間接税の議論、私はフランスの問題もこの間の消費者団体からの統計も私はこれ全く否定するものじゃございません。ただ一つ税の、なかんずく間接税の持つ逆進性というのは、この間の調査でもだれしも感ずるのは、日本の間接税の大部分を非常に大きな部分を酒とたばこが持っております。松下幸之助先生がお吸いになりましょうとも浮浪者の方がお吸いになりましょうとも同じ値段でございますから、そういうものが間接税の大宗を占めておるからというのも一つの理由でございますが、今度は財政全体を考えるときには、いわゆるサービスがどのような形でその人にわたっているかということを総合的に考えて、間接税の持つ逆進性のみでもって議論するのはいかがな問題か、こういう議論もありまして、あるいは各党の方ともいろいろ話しますと、福祉目的税とかいう場合にはむしろ調和がとれるではないか、こういう議論の方も我が党にもそして学者の方の中にも一各党の中にいらっしゃいますとは申し上げませんがいろいろいらっしゃいます。そういうやっぱり全体の負担するのも国民、サービスを受ける国民、それが福祉なら福祉の面でサービスを受ける。だから、その間接税の持つ逆進性だけで議論をすべきものではない。しかし、今おっしゃいましたひとつの間接税の宿命としては、おっしゃいますような税調におきましてもある程度逆進的な傾向を有することは否定しない。だから、今議論の中にも出ておりました食料品なんかはやめなさいよとか、そんなような意見もかつてあったところであります。  ただきょう御議論をいただきましてありがたいと思いましたのは、間々だれしも演説なんかいたしますと減税しますと言いがちでございますが、さて財源というと限界がまあ不公平税制の是正、それはどれが不公平でございますかということになると、結局各論になるとまたいろいろ意見がまとまらなくて、こういう方針でやるからあとは政府の方で財源は考えるという傾向が全くなかったとは言えないんじゃないか、少し古い話から見ますと。だから昨年来――一昨年来といっていいかもしれませんけれども、税の議論が国会において大変な議論がされてきて、それがどの政党の方も堂々とやっぱり財源のことも議論されるようになってきておると思っております。そういう議論を正確に税調に伝えて、それでそこで国民のコンセンサスが那辺にあるかということをまとめてまた御審議をお願いして国民の選択をそこで決めてもらうという方向で、いささか長工場になると思いますけれども、気負い込んでおるわけでもございませんが、税調の審議に期待をしておるし、その審議が行われる限りにおきましても絶えず国会の議論を正確に伝えますので、国会における税制の議論に対しても私どもも勉強しますし、活発な議論が行われること、今のような具体的な議論が行われることを一般論としての我々は答えしかできないある程度の限界はあるかもしれませんけれども、好ましいことであるというふうに考えております。
  195. 安武洋子

    ○安武洋子君 民活第一号と言われております東京新宿西戸山の再開発の計画について御質問いたします。  これは私が五十九年三月二十八日の予算委員会の中で追及いたしましたけれども、極めて疑惑に包まれた重大な問題だと思っております。新宿区の百人町の公務員宿舎跡地を民間マンション用地に払い下げよというものでございますが、一昨年の六月に中曽根総理の直接の指示、これは私の質問で認められております。こういう指示がありまして、大蔵省の理財局長の私的諮問機関がつくられておりまして、非常な短期間です、非常な短期間で国有地の民間払い下げの答申が打ち出されております。しかも、その答申を出した私的諮問機関のメンバー、これが中心になりましてその受け皿会社をつくるわけです。これが新宿西戸山開発株式会社ですけれども、その中枢に総理と非常に密接な関係のある企業が占める、そして、その企業が総理に多額の政治献金を行っているというふうなことでございます。結局、みずから答申を出し、そしてみずからが受け皿をつくる、そしてその中枢が総理に政治献金をしている会社であるということでございますが、その後、私が追及しました後のこの計画の推進というのは非常に常識外れの強引さで異例ずくめでございます。  第一点、これは、まだ事業内容も明確化なっていない昨年五月の段階で東京都と新宿区の間で都市計画事業にするということがひそかに合意をされております。第二点目といたしましては、昨年の十二月の三日、総理宮邸で開かれております国有地等有効活用推進本部企画小委員会でございますが、ここで山崎官房副長官が、新宿西戸山については都市計画決定を急ぐことが必要であると、出席をされている大蔵、建設両省の方に暗にこの関係自治体に圧力をかけるように強調をされておられます。それから第三点といたしましては、大蔵省は、事業主体に決まってもいないこの受け皿の新宿西戸山開発株式会社でございますが、ここと連名でアセスメントをやるという一方で、建設省は東京都に、ことしの五月中には都市計画決定を終わるようにと圧力をかけておられます。第四点目でございますが、それを受けまして、六月に東京都と新宿区が都市計画決定を急ぐ覚書を交わしております。さらに五点目ですが、八月に行われました新宿区の都市計画案の公告縦覧、ここでは、意見書で計画反対の意思表示をした人が七百五十人、賛成はわずか六十人、一割にも満ちておりません。それなのに、一昨日、新宿区の都計審、ここで強引に計画決定がされております。  民間マンションの計画的なのに自治体がお墨つきを与える都市計画決定をすることが異例でございますし、それから、反対住民に対しまして、新宿区の都市計画審議会長が会われたときに、この都市計画というのは国の施策から来ているので本来区の問題でないと言われたと聞いておりますけれども、こういうふうな、私が今挙げました五点の問題を見ましてもまことに明確なように、住民無視です。その上に、自治体の責任で行われるべき都市計画のはずでございますが、政府がもう異例な強引さで介入して圧力をかけております。  私は、こんなことまでして一国有地というのは国民の共有財産です、その国有地を特定の企業に払い下げるというふうなやり方、これはまことに問題だと思いますが、いかがでしょうか。
  196. 中田一男

    説明員(中田一男君) 新宿西戸山地区の開発計画につきましては、ただいま御指摘がございましたように――大体公務員宿舎というのが、都内でもたくさんございますけれども、通常五階建てぐらいで建っております。容積率にすると一〇〇%ぐらいで建っておるわけですけれども、本当はもっと、便利のいいところは高層にして有効に土地を利用できないかという問題意識からスタートいたしまして、理財局長の研究会で、ケーススタディーとして西戸山地区を挙げて議論をしたわけでございます。その結果、大体三分の一程度のところに公務員宿舎を集約して、残りの三分の二程度のところは住宅を建てる、それも地域の実情にふさわしいような住宅を都市計画にかけてやっていったらいいんではないかというふうな中間報告をいただいて、その報告を受けて、その後国や地方公共団体、関係者が協議をしてまいったわけでございますが、その結果、地域の町づくりにも寄与しながら良好な住宅の供給を行うということで、一団地の住宅施設及び特定街区という二つの都市計画事業をここにかぶせまして、この土地を有効に活用して良好な住宅を供給しようというふうなことで進んでおるわけでございます。  御指摘のように、現在、東京都及び新宿区において都市計画決定のための作業が進められているというのが現状でございまして、特に私どもといたしまして、何か、御指摘のようないろんな問題があると言われますが、これは、基本的に、土地を有効に使いたい、公務員宿舎用地であってもそれは有効に使っていこう、そして、その有効に使っていく対象として、この地域はこういった良好な住宅を提供することがいいんだというふうな考え方に沿って進んでおるところでございまして、関係の方々がその線に沿って努力をしておられるのが今日の実情であろうかと承知しております。
  197. 安武洋子

    ○安武洋子君 私がこういろいろと申し上げたことの御答弁にちっともなっておりませんです。  私的諮問機関から中間報告をもらったからと。そこは、自分が答申を出しておいて、自分が受け皿会社をつくったではないかというふうにいろいろ申し上げましたし、国、地方公共団体が相談云々とおっしゃっておりますけれども、国がいかにおっしゃろうとも、何が何でも、受け皿の会社に西戸山の国有地が早く払い下げられるようにと、事業ができるようにと圧力を政府がかけ回っているというふうにしか考えられない事態が客観的に出てまいっております。  さらに、疑惑を感ぜざるを得ないというのは、この東京興産株式会社の社長の野島吉朗氏でございますけれども、これは中曽根総理と懇意であって、総理も私の質問の中でそのことを認められましたけれども、この東京興産は、受け皿会社の中枢に専務を送り込んでおります。それで、中曽根総理の政治団体にこの会社は政治献金をしております。これは昨年私指摘をいたしましたけれども、東京興産は、新宿西戸山開発計画が総理の直接の指示によって始まる直前の昭和五十七年の十一月、ちょうど自民党の総裁選挙の最中でございますけれども、中曽根総理系の政治団体に対しまして、近代政治研究会に百五十万円、それから昭和文化協会に百五十万円、創造文化研究会に百五十万円、山王経済研究会に百四十万円、合計五百九十万の献金を行い、さらに、小会社の東興管理名義でも三百万の政治献金を行っております。ところが、一年四カ月たちました昨年の五十九年になりまして、このうち、近代政治研究会の百五十万と、それから昭和文化協会の六十五万の献金が東京興産に返還されております。そして、山王経済研究会に百二十万の献金が行われております。  この点を確認いたしとうございますが、この経過は、自治省、間違いございませんでしょうか。
  198. 小笠原臣也

    説明員小笠原臣也君) 政治団体名、金額を挙げての御質問でございましたけれども、正確を期する意味で私の方から申し上げますと、自治大臣に提出されました昭和五十七年の収支報告書には、東京興産株式会社がした寄附につきまして次のように記載をしてございます。  近代政治研究会百五十万、昭和文化協会百五十万、創造文化研究会百五十万、山王経済研究会百四十万、それからまた、昭和五十九年分の近代政治研究会の収支報告書には百五十万円、昭和文化協会の収支報告書には六十五万円の東京興産株式会社に対する寄附金の返還金の記載がございます。さらに、昭和五十九年分の山王経済研究会の収支報告書には、東京興産株式会社がしました百二十万円の寄附の記載がされております。
  199. 安武洋子

    ○安武洋子君 私が申し上げたとおりであるわけです。  では、自治省にさらにお伺いいたします。  東京興産は、政治献金をした当時でございますが、当時は資本金は一億二千万円の企業であったはずでございます。それで、政治資金規正法第二十二条によりますと、資本金十億未満の企業の各年中の政治活動に関する寄附というのは七百五十万円に制限されて、さらに附則の第五条二項の暫定措置によりまして、その二分の一、三百七十五万円に制限をされております。したがって、東京興産の昭和五十七年中の中曽根総理系の政治団体に対する献金合計五百九十万というのは、これは違反であろうと思いますが、いかがでしょうか。
  200. 小笠原臣也

    説明員小笠原臣也君) まず、政治資金規正法第二十二条及び昭和五十年改正法の附則第五条によりまして、資本金十億円未満の会社は、政党及び政治資金団体以外の政治団体に対しましては年間三百七十五万円を超えては寄附ができないということになっておるのは御指摘のとおりでございます。したがいまして、仮に御指摘の会社の資本金が一億二千万円ということでございますれば、この規定に該当するということになるわけでございます。
  201. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、罰則はどのようになっておりましょうか。
  202. 小笠原臣也

    説明員小笠原臣也君) ただいまの規定に違反をいたしまして寄附をした者に対しましては、団体におきましては、その役職員または構成員としてそういう違反行為をした者ということになっておりますけれども、これは政治資金規正法第二十六条の規定によりまして、二十万円以下の罰金に処するということになっております。
  203. 安武洋子

    ○安武洋子君 警察庁にお伺いをいたします。  今、お聞きいただきましたらおわかりのように、明らかに政治資金規正法に違反した違法な献金が行われていたわけでございます。警察庁として、私は調査をしていただきたい、こういうふうに思いますけれども、いかがでございますか。
  204. 国松孝次

    説明員(国松孝次君) お答えをいたします。  御指摘の件につきましては、今後事実関係を把握した上で、適切に私どもとしては対処いたしたいと思っております。
  205. 安武洋子

    ○安武洋子君 適切に対処したいということで、私は厳重に調査をしていただいて、厳正な処置をお願いしたいと思いますけれども、さらに自治省に重ねてお伺いをいたします。  今のような場合でございますね、総理の政治団体側、ここも違法を承知で受け取っているというふうになりますと、同法の二十二条四項違反になると思いますけれども、法的にいかがなんでしょうか。
  206. 小笠原臣也

    説明員小笠原臣也君) お答えを申し上げます。  お尋ねの具体的な案件がこれに該当するかどうかということは、私どもとしてはわからないわけでございますけれども、政治資金規正法第二十二条第四項におきましては、いわゆる総枠の制限に違反をいたしましてなされる寄附ということを知りながらこれを受けてはならないということを規定いたしておりまして、これに違反をして、すなわち知りながら寄附を受けた場合には、同法二十六条の規定によりまして二十万円以下の罰金に処するということになっておるわけでございます。
  207. 安武洋子

    ○安武洋子君 警察庁、お伺いをいたしますけれども、今お聞きのように、違法な献金が行われていたと。そして、総理の政治団体側もこの違法を承知で受け取った場合には、今のように同法二十二条四項違反になるということになるわけでございます。私はこの点につきましても、やはり調査をしていただきたい。調査をすべきであると思いますが、いかがでございましょうか。
  208. 国松孝次

    説明員(国松孝次君) 先生ただいま御指摘の件につきましても、今後事実関係を把握した上で適切に対処いたしたいと思っております。
  209. 安武洋子

    ○安武洋子君 私、適切な処置の中に厳正に調査をしていただくということが含まれていると、そういうふうに受け取らせていただいて、重ねて厳正に調査をして、厳正なる処置をお願いしておきたいと思います。  そこで、この件なんですけれども、実は昨年の三月の二十八日に私が新宿西戸山再開発に絡んで献金の問題を追及いたしております。今私が申し上げました政治献金が返還されたのは、私がこの問題を参議院予算委員会で取り上げました翌々日の三月の三十日でございます。制限額の三百七十五万円に帳じりを合わせるというふうなことで、五百九十万のうち二百十五万を返還しております。これから見ましても、この政治献金というのが新宿西戸山再開発と深く絡んでいると言われても私は仕方がないというふうに思います。私はこのような違法な献金まで行うような業者、これが中枢を占める会社に国民の共有財産である国有地をしかも随契で必ずここに落ちるようにというふうなことで払い下げるというふうなことは、これはあってはならないことであるというふうに思いますが、この点いかがですか。
  210. 中田一男

    説明員(中田一男君) 新宿西戸山会社と申しますのは業界挙げておつくりになりました会社でありまして、特定の企業が中枢に座っておるというふうな認識は必ずしも持ってはおりませんですけれども、それはそれといたしまして、新宿西戸山公務員住宅跡地につきましては、現在、先ほど御答弁申し上げましたように、都市計画事業ということで関係者が努力しておるわけでございます。国有財産、土地の払い下げにつきまして、御指摘のように私ども原則は競争入札というような手法で売っておりますけれども、公共性、公益性の強い事業の場合にはこれを随契で売るというふうなことがございまして、都市計画事業の施行者に国有地を売却する場合は関係法令等の規定により随意契約が認められるということになっておるわけでございます。新宿西戸山のこの住宅跡地については、今後都市計画決定がなされ、都市計画事業の施行者として認可を受けた者に対して払い下げ処分がされ、そこに新しい住宅が建っていくということに相なろうかと思いますが、その処分に当たってはもとより関係法令等に照らし、公正、適正に行ってまいりたいというふうに考えております。
  211. 安武洋子

    ○安武洋子君 何を言ってるんですか。業界挙げてとおっしゃいますけれども、総理の指示で始まったと。そして、私的諮問機関、これが答申を出したけれども、その私的諮問機関の業者たちが自分で受け皿をつくって、その中枢になっていると。その中枢の会社の一つが今私が言ったように違法献金までしていると。そんなところにどうして、競争入札が原則であるのに、それをねじ曲げて、随契はすることができるというふうな規定になっているにもかかわらず、随契でそこの会社に国民の共有財産の国有地を無理やり払い下げていこうという、そういうことをするんですか。それだけじゃないんですよ。東京興産と総理関係だけにとどまらないんです。八四年の政治資金収支報告書、これを見てみますとね、受け皿会社として設立されております新宿西戸山開発株式会社、ここの出資会社の五社、この五社から中曽根総理の政治団体の山王経済研究会、一年間に計六百万円の政治献金が行われております。内訳を申しますと、東京興産百二十万円、これは除きまして、ほかに東洋不動産の百二十万、大和団地の百二十万、丸紅の百二十万、三井不動産の百二十万など計六百万円。いずれ童言い合わせたように百二十万ずつ、こういうふうに政治献金をいたしております。この数字、自治省、間違いございませんか。
  212. 小笠原臣也

    説明員小笠原臣也君) ただいまのお尋ねの団体、会社ですね、会社の献金についてはちょっと手元に資料を持っておりませんので、早急に調べてみます。
  213. 安武洋子

    ○安武洋子君 レクチャーしてあるのに、それは困ります。しかし、これはちゃんと八四年の政治資金収支報告書に出ておりますので、これは間違いない数字を申し上げております。  そこで、私は大蔵大臣、聞いていただきたい。  この計画は民活第一号ということで中曽根総理みずからのイニシアチブで始まっております。これは総理が私の質問でもちゃんと認められております。今また全国的にますます民活を進めるんだと、こういう中でこの問題を私は問題にいたしておりますけれども、総理が自分の指示で始めて、そして大蔵理財局長の私的諮問機関、それがつくられて答申を短期間に出す、その答申を出したメンバーが中心になってその中枢に座っているのが中曽根総理系の団体に対して政治献金、違法献金をしているようなところであるというふうなこと、全く自分で答申を出して自分で会社をつくってそして中曽根総理に政治献金をしていくというふうなことを聞いた場合に、国民が一体どう思うか。私はこういう先ほどのいろんな経緯を申し上げました。非常に強引に国がこの都市計画を決定するにしても、地方自治体が決定するにもかかわらずそれに圧力をかけ介入をしている、そしてこういうことが行われている、これはまさに民活でなくて中曽根活力だと言われても全く仕方がないと私は思います。大蔵省はこんな疑惑に包まれた国有地、これを無理やりに随契で払い下げるということになれば、国民の今わき起こっている疑惑に一体どうおこたえになるのか。今民活が進められていくときにこれはもう癒着だ、こういうふうに、利権絡みだというふうに思われたって仕方がないわけでしょう。私はこういうのはみんなが、住民のほとんどが反対をしている、そういう声にも耳を傾けてやはりここで中止をすべきだ、地域住民の声に耳を傾けて跡地利用を見直すべきだ、こう思います。大臣の御所見を伺います。
  214. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 民活第一号、なるほど民間活力というものをいかにして導入していくか、これは大きな世界的課題でもございます。それで、国内の民活としてのいわば諸手続が進んでそれが第一号と仮に命名されたとしますならば、私はやっと民活が地についたという意味において大変喜ぶべきことであると思っております。  そこで今、もろもろの客観的に見た疑惑とおっしゃいましたが、客観というものも主観の積み重ねの中に客観性が出てくるということもございますので、私と先生とは客観性において考え方を異にいたしております。このことだけは明瞭に申し上げておこうと思います。したがって、今先生の積み上げられた主観の積み上げの中における客観の疑惑性の中において、行政措置の進行を中止するという考えは現在持っておりません。
  215. 安武洋子

    ○安武洋子君 だから私は国民が、民活を進めるんだ、国有地を払い下げるんだ、それには利権が絡むんだ、大企業だけが得をしていくんだと、そういう人たちが政治家に政治献金をしていくんだ、こう思っても仕方がない、その一例であろうかというふうに思います。しかし、今大臣のそういう御答弁ですから、私はもう時間が限られておりますから、これはまたさらに追及を続けていくということを申し上げて国保の問題に移ります。  退職者医療制度の対象者の数の見込み違いの問題ですが、これで国保財政が大変圧迫されております。その額は厚生省調査で五十九年度分の影響額六百七十億、それから六十年度推計で千四百十億、国保中央会の調査では健保改悪による影響、これが五十九年度で九百二億、六十年度はその倍の約千八百億、こういうふうに達すると見ております用地方自治体に私も訪ねてまいりますけれども、大変なピンチで重大事態に陥っております。国保料の、あるいは国保税の値上げ、これが相次いております用地方自治体からも国へ強い要望が出ているはずでございます。これは厚生省、私が四月に質問した時点、この時点ではなかなか見込み違いをお認めになりませんでした。しかし五十九年度、六十年度両年度で二千億を超える負担、これを地方自治体に与えることを認められたわけでございますけれども、一体この分について厚生省はどう措置をされるんでしょう。それと大蔵省にも同時に聞きますけれども、もともと国庫負担を過大に削減し過ぎたということから生じた問題でございます。責任を持って補てんをすべきであると思いますが、両省の御見解を伺います。
  216. 幸田正孝

    説明員(幸田正孝君) 退職者医療制度の創設等に伴います市町村国民健康保険財政への影響につきましては、本年七月、私どもの調査結果を発表いたしたわけでございますが、私どもといたしましては、この実態調査の結果を踏まえまして各市町村の財政状況やあるいは影響額の大きさなどを見きわめつつ、今後国保事業が健全に運営をされますよう所要の財政措置を講ずるように財政当局に要望をいたしているところでございます。  同時に国民健康保険につきましては、各市町村の財政を調整いたしますための財政調整交付金、これが昭和六十年度で三千五百六十億円の額に上りますので、こういった財政調整交付金の有効な活用、あるいは医療費の適正化の推進といったような国民健康保険自体におきまして、さらに制度の運営面におきまして種々工夫努力を重ねる必要があると、こういうことを考えまして、各市町村に対しましてもそういった面でのいま一段の改善工夫のために最善の努力を尽くすようにお願いをいたしているところであります。
  217. 角谷正彦

    説明員(角谷正彦君) 厚生省が行いました実態調査の結果につきましては、財政当局としても承っておるわけでございます。  ごく概括的に申し上げますと、今先生がおっしゃいましたように、退職者医療制度のいわば対象として退職者数を見込んでいたその数が見込みを下回ったことに伴いまして、被用者保険等が負担することを予定しておりましたいわゆる退職者医療交付金の対象額が減りまして、逆に国民健康保険の保険料負担の対象になる部分などがふえた、こういったことによるものであると、その結果国保財政に影響が出てきていると、こういうことのように承っております。  ただ、財政当局といたしましては、やはり個別個別の市町村の国保の実態等につきまして、その運営とかあるいは財政の実態についてまず十分に把握していく必要があるんではないかというふうに考えております。その上で先ほど厚生省からも御答弁がございましたように、財政調整交付金を本当に財政難に陥っております市町村に優先的に配分するとか、あるいは医療費の適正化とか保険料設定の方法の改善とか、そういった市町村国保の運営面におきましても格段の工夫をお願いしていくというようなことで対処していくのがまず先決ではないだろうかというふうに考えておる次第でございます。
  218. 安武洋子

    ○安武洋子君 これは厚生省調査で五十九年度分の影響額六百七十億、それから六十年度推計で千四百十億という数字がもう出ているわけです。厚生省の方では地方自治体に改善努力を一段とお願いしたい、これは全く私は筋が違うと思います。これは明らかに厚生省の見込み違い、そこから生じた問題でございます。ですから私は厚生省でも、それから大蔵省でも、これはもう理屈も何もありません、政府が見込み違いをして地方自治体に大きな損害を与え、そして今重大事態に地方自治体が陥っているわけですから。しかもそれを住民に転嫁をする、国保税を上げるとか、あるいは国保料を上げるとかということで今どこでももう軒並みにこういう事態に陥っているということになっているわけです。ですから私は、もともとが政府責任なんですから、これは政府責任で補てんをいたしますと、こうおっしゃるのが当然であろうと思いますが、もう一度お答えいただきます。
  219. 幸田正孝

    説明員(幸田正孝君) 国保の財政影響、今御指摘の問題につきましては、六十年度分につきましてはまだ年度の途中でございます。私どもの発表いたしました数字はあくまでも推計値でございますから、今後の医療費の動向いかんによってかなり違ってくる可能性があり得る数字でございます。そういう意味で各市町村に努力をお願いいたしておりますのと同時に、国民健康保険、三千三百に上る市町村でございますから基金を相当保有をされている市町村もございますし、あるいは国民健康保険財政自体がかなり総体的に見まして富裕な団体もあるわけでございますから、そういったまちまちな市町村の国保財政につきましてその財政状況をもう少し精査をいたしてみたい、こういうことでございます。さらには財政調整交付金の有効活用という問題等もございますので、そういった問題を念頭に置きつつ、先ほど来申し上げておりますように国民健康保険事業が健全に運営が図られますように、先般の実態調査の結果を踏まえまして所要の財政措置を講ずるように今後財政当局とも協議をしてまいりたいと思っています。
  220. 安武洋子

    ○安武洋子君 これは国庫負担を是正しない限り、六十一年度以降も見込み違いによる差額というのは出続けるわけなんです。ところが、六十一年以降の地方自治体の負担分、先ほどの御答弁の中にも医療費の適正化云々というふうにおっしゃっておりますけれども、これは老人医療制度の改悪すなわち医療費の引き上げとか老人保健の拠出金の負担割合の変更、これで賄おう、そういうことでございましょう。こういう過大な国庫負担削減によって生じた負担というのを老人と被用者保険にしわ寄せをして穴埋めをするなどというのはこれは全くもってのほかなんです。筋違いも甚だしいと申し上げなければならないと思います。実施後わずか一年で二千億も見込み違いが出るというふうなことは前代未聞なんですね。原因というのは対象者数の狂いというのが四割、それから一人当たりの国保料、当初二万八千九百円と見込んでいたのが五万三千五百円という金額の見込み違い、これが六割なんでしょう。こういうふうな金額の見込み違いというのは市町村で抽出の調査をすればこういうふうな大きな狂いが出るというふうなことはないわけですよ。いかに事前の調査がずさんであったかということなんです。そのずさんな調査のしわ寄せを地方自治体化民が受けるというふうなこと、それと老人が受けるというふう なことは全くおかしい、そんなことは許せるものではないわけです。だから、これは国庫負担を是正すべきであります。私は国庫負担削減を大幅にやってこういうふうなところにしわ寄せをもっていくんではなくて、国庫負担を是正して市町村や住民に負担を押しつけることなくて解決をすべきだ、こう思います。大臣の御答弁を求めます。
  221. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) この問題につきましては、今両省からそれぞれお答えがあったとおりでございまして、まずはいわゆる財政調盛交付金で対応すべき問題であるというふうに今日時点で考えております。それから、その次の制度改正の問題等につきましては、それぞれ今答弁のあったとおりのお答えが現在における私どものお答え似限界でございます。
  222. 安武洋子

    ○安武洋子君 異議がありますけれども次にいたします。
  223. 井上計

    ○井上計君 通産大臣にお伺いをいたします。  新聞報道等によりますと、建設省が流水占用料の拡大あるいは引き上げと言っていいかと思いますが企図しておると、こう伝えられております。また、農林水産省においても新しく水源税という。増税考えている、こう伝えられておりますけれども、もしこのようなことが実施をされるとすると、現在政府がいろいろ行っている諸政策と著しく矛盾するわけであります。そればかりじゃありませんで、産業界の受ける影響はまことに甚大であろう、このように考えます。民間活力の増大、促進云々ということが盛んに言われておりますそれによって、内需の拡大であるとかあるいは景気の振興であるとかという大きな政策課題を抱えておりますそれと逆行するということになろうと思いますが、この建設省が考えておる流水占用料の問題、また農水省が考えている水源税の問題等々につきまして通産大臣の御所見を取りたい。
  224. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 井上委員にお答えを申し上げます。  流水占用料構想は、ダムの建設でございますとか河川改修などのための財源確保を目的として考えられておりますし、また水源税構想の方は森林資源整備のための財源確保を目的として工業用水、水力発電等に公租公課を賦課増徴しようという考え方が基本になっております。これらの構想は地下水のくみ上げによる地盤沈下の防止ということを目的に展開をしてまいりました工業用水政策に矛盾をするばかりでなく、我が国産業界に御指摘になりましたように過重の負担を強いることになる。それとともに増税なき財政再建という政府の基本方針の趣旨に反するなど、多くの問題点を内蔵している、このように認識をいたしておるところでございます。私どもは、基本的には治山とか治水事業は国の基礎的な施策でありまして、本来一般財源によりこれを手当てするべきものであるという考えをとっておりまして、通商産業省としては基本的にこの構想に反対でございます。
  225. 井上計

    ○井上計君 大臣の御見解当然であろうと思いますし、またぜひその御見解を持って今後とも強いひとつ行動をお続けをいただきたい、まずこれ期待をいたします。  そこで、通産省伺いますけれども、今両省で考えているようなことが仮にもし実現をした場合に、産業界が受ける具体的な影響、これについてひとつお聞かせをいただきたい、こう思います。
  226. 黒田明雄

    説明員(黒田明雄君) 建設省の流水占用料構想でございますが、私どもいろいろ今質問を出しておりましてそれについての御回答を得ていない段階でございますので、私どもなりに建設省がお示しになられております骨子に基づいて影響を推測するということしかできない段階でございます。したがいましてそういう前提でお聞きいただきたいのでございますが、大まかに申しますと、流水占用料としまして工業用水から三百億円ほど取る、それから水力発電は現在百九十億ぐらい取られておりますが、その上に百十億の流水占用料を課するということでございますので、全体としては四百十億の負担になるわけでございます。これとは別でございますけれども、農林水産省で水源税という構想を持っておられまして、出すというふうに言われているわけでございますが、これもまた農林省としては構想の段階であって、具体化は少し先になるので今説明できないということでございますが、伝えられるところでは数百億のオーダーになるということでございますので、仮にこの両者を足すとなりますと大変な金額になるということで、私ども産業界に対する非常に大きい影響を憂慮をしているわけでございます。  どの程度かということを産業界全体でお話し申し上げてもちょっとおわかりにくい点もあろうかと思いますので、一番工業用水をたくさん使っている紙パルプ業界について考えてみますと、水を使っている量で流水占用料三百億というのを割り掛けてみますと、大体百億円ぐらい紙パルプ業界全体としては負担しなければならなくなろうかと思います。別途この紙パルプ業界の税引き後利益というものを推計してみますと三百億円前後でございますので、税引き後利益の三分の一が流水占用料としての負担になる。さらにその上に水源税の負担が来る、こういうことになりますので、中小企業を大勢抱えております業界でもあり、また特定産業構造改善臨時措置法の特定業種でもありまして、そういう構造改善に取り組んでいる業界でもございますので影響は相当に大きいかというふうに考えております。
  227. 井上計

    ○井上計君 お聞きすればするほど大変重大な問題だというふうに考えます。特に今具体的な例として引かれましたけれども、建設省の流水占用料だけで約四百億円のアップになるということであります。特にまた、大きく水を使う業界が、紙パルプもそうでありますが、また石油化学あるいは鉄鋼等々であろうと思いますけれども、全部とは言いませんけれども非常に不況で今立て画しに困っておるというふうな業界であります。まあ表現が悪いかもしれませんけれども、首つりの足を引っ張るような、こういうふうな施策ということも言ってよろしいかと思いますが、ぜひ通産省はこれについてはあらゆるやはり問題として取り組んでいただきまして、このようなことが絶対に実施されないように特に重ねて強く要望しておきます。  そこで、大蔵大臣、今のこの問題でありますが、どうも建設省の流水占用料の引き上げにしても、あるいは農水省の水源税構想にしても、現在のやっぱり財源問題からして農水省は農水省なりに、建設省は建設省なりにこれらのところ、要するにどこかに財源をということでうの目タカの目で探して、取れるところから何でもかんでもむしり取ってというふうな考え方があるやに実は考えられます。それも私は見方が違っておるかもしれませんけれども、どうも大蔵省が背後に強い影響を持っておられるのではないかと、こんなふうにもいささか邪推でありますが、考えざるを得ないんですけれども、大蔵大臣、大きな問題でありますし、特に増税なき財政再建という大きな公約を掲げておられる以上は、絶対にこういうことのないようにひとつ大蔵大臣にぜひお考えいただきたいと思いますが、この点についての大蔵大臣のひとつお考えをお聞かせをいただきたいと思います。
  228. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 今あえて邪推というようなお言葉をお使いになりましたが、大蔵省の方から建設省なり農水省なりに対してこういう財源を求められたらどうですかというような指導あるいは教唆扇動というようなことをするような考えはございません。強いてこの井上さんのお言葉をかりて、私も聞きながら思いましたのは、負担するのも国民、受益者また国民、したがってなかなか財源のない今日でございますと、財源の方で概算要求枠などというものをつくりますので、結果としてやっぱり国民のために一生懸命サービスしたいとお考えになる側でいろんな知恵を絞ってお考えになったとすれば、やっぱり財源、そして概算要求基準等を厳しく決めだということが影響を与えたということにはなろうかと思うのでございます。しかし、この問題は建設省から概算要求が提出されたばかりでございますので、大蔵省としての見解を申し上げるというような段階には至っておりません。  現行河川法で流水占用料等の収入が都道府県に入っておる。しかし、一級河川については管理主体と収入の帰属主体が異なっており、これをどう考えるかと、こういうような議論もございましょう。また、治水特別会計の運営を今後どうするかと。今通産大臣からもお答えがありましたように、現在一般会計からの繰り入れのみでございますが、これこそまさに一般会計ですべきだと、こういう議論もございましょう。しかし、一般会計が不自由な場合はまたいろんなことを考える必要もあろうという議論もございましょう。それから、発電工業用水、上水道等のいわゆる利水者の方々の負担水準というようなものはどういうふうに考えるかという基本的な議論も少なくございません。したがって、今日の段階では概算要求をなさっております建設省、そして今おっしゃいました農林水産省からは水源税構想があるようでございますので、それらの調整、そういうことがいずれはそういう議論がなされるでありましょうが、現段階においてこの概算要求として持ってこられたものに対して大蔵省はかく思うというようなことを申し上げる段階にないということを申し上げるしか、今日の時点ではございません。
  229. 井上計

    ○井上計君 まあ大蔵大臣のお立場では、現時点ではそれ以上のお答えをいただくことは困難であろうということはわかります。  ただ、もう一つ通産省に伺いますけれども、それでちょっと大臣のお答えの中にもありましたが、仮にこのようなことが実施をされると中小企業があらゆる面で大きな影響を、またさらに大きな負担をこうむるわけですけれども、例の地下水のくみ上げがかなり規制されておりますけれども、幸いにして最近は地下水のくみ上げが規制されて地盤沈下問題がやや薄らいでおりますが、またこれが大きくなってくると国土計画の問題等からしてまたゆゆしき重大問題にも波及すると、このようなことも考えられると思うんですが、いかがでしょうか。
  230. 黒田明雄

    説明員(黒田明雄君) 御承知のように工業用水政策は、各所で地盤沈下が起こってきたのに対応してとられたというのがそもそもの始まりでございます。産業にとってはどうしても水が必要でございますが、水の水源といたしましては大きく申し上げますと河川水か地下水でございます。この地下水を集中的に大量にくみ上げますと、地盤構造の質にもよるわけでございますが、沈下を起こすことがございまして、この地盤沈下を何とか抑制しなければならないというので工業用水法を制定し、地盤沈下のある地域での地下水のくみ上げを制限いたしますとともに、どうしても必要な工業用水を工業用水道によって提供するということで河川水を工業用水に利用する、そういう事業を行っているわけでございます。先行的に工業用水道を布設することも今は非常に大きく行われておりますが、これも先行的ないわば地盤沈下防止対策でございます。これまでの地下水のくみ上げ制限と工業用水道事業によりまして、この地盤沈下が大幅に改善してきたというふうに考えております。実は工業用水の地下水への依存率は昭和四十年には四〇・四%もあったのでございますが、おかげをもちまして五十八年度には三一・二%まで低下してまいりました。工業用水道によります工業用水あるいは私設の工業用水によってここまで地下水への依存度を引き下げることができたわけでございますが、これと強い相当因果関係があると思いますけれども、年間二センチ以上地盤沈下した地域の面積で申し上げますと、五十三年度には千九百四十六平方キロメートルございましたが、五十八年度は五百九十四平方キロメートルに減っております。約三分の一になっているわけでございますが、こういったことでようやく成果を上げてきておりますので、工業用水に対する負担が強化されまして、大勢として地下水への依存度が高まっていくようなことがあれば、これはゆゆしき問題ではないかというふうに考えます。
  231. 井上計

    ○井上計君 もう大蔵大臣、十二分におわかりでありましょうからこれ以上申し上げませんけれども、いずれにしても治山治水、それから国土保全というのはやはり国の要するに行うべき重要な柱であることはもう言うまでもありませんので、ぜひその点をひとつ一層御銘記をいただきまして、通産大臣先ほどお話もいただきましたけれども、大蔵大臣もぜひ通産省に御協力をいただくように格段にひとつお願いをしておきます。  この問題は以上にいたしまして、大蔵大臣に次にお伺いいたしますけれども、財投金利の問題であります。  もうこれも詳しく申し上げる必要なかろうと思いますけれども、政府系各金融機関、さらには日本商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会等から中小企業対策として非常に強くこの財投金利の引き下げが要望をされておるわけであります。何しろ最近やや民間金融機関は資金需要が停滞をしているといいますか、非常に金融緩和の中で長期プライムレートの引き下げに連動して相当民間金融機関の金利は下がっております。よく私ども耳にするのでありますけれども、政府系金融機関の方が高い、民間金融機関の方が安いというふうなことをよく聞きます。事実そういうふうなこともあるようでありますが、ただ、民間金融機関は金が余っておるとはいいながら、ますます選別融資が非常に強くなっておりますから、やはり多くの中小企業というのはなかなか金利が安い民間の金融機関に頼るわけにまいらぬ。当然やはり政府系金融機関に依存度が高いという、これはもう当然のことでありますが、ところがそのために現在の財投金利ではますます逆ざやがふえてきておる。これはもう大蔵大臣十二分に御承知のとおりでありますが、六十一年度の予算編成の中でこの財投金利の引き下げについてはどういうふうなお考えをお持ちでありますかお伺いいたします。
  232. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 御案内のように、この財投金利を引き下げますためには、預託金利を引き下げないことにはますます逆ざやが出ると。現在の預託金利は七・一%で、これは去年の二月決めたものでございますが、その後貯金金利は動かないまま長期金利が大幅に低下して、その結果が政府関係機関の金利体系、そうしてその収支、いわゆる利子補給等がございますので、財政負担の増高と、こういう問題を起こしております。このような最近の金融情勢の急激な変化を踏まえまして、預託金利を引き下げようという考え方関係省と今協議がされておる段階ということでございます。  申すまでもなく、今のところ貯蓄超過でございましょうかあるいは投資不足でございましょうか、それは議論のあるところといたしましても、確かに今、井上さんおっしゃいましたように金融は比較的緩んでおると、こういう状態。でも、やっぱり政府関係金融機関に対するニーズは強いと、こういうことでございますから、私どもといたしましては関係省との協議ということを急いで推進していかなきゃいかぬと、こういう問題がございます。幾らかいろんな議論が絡まってまいりますのは、ああして金融の国際化、自由化、それからいずれはやってくる小口の自由化というようなものも念頭に置きながら議論になりますと大議論が起こって、そのホットな今の問題だけの議論の外へ議論が飛びがちでございますから、それらの点を勘案しながらできるだけ問題点を煮詰める作業は急がなきゃならぬというふうに思っております。
  233. 井上計

    ○井上計君 私は、大蔵大臣のお話もよくわかります。ただ、現在の財投金利のままでまいりますと中小企業政策に大きな支障が起きるというふうなこと、中小企業政策にどのような支障が起きるかということももう大臣は十二分に御承知でありますけれども、中小企業庁の六十一年度予算の概算要求、二千八十一億円だと承知をしております。これは前年度比三・七%減。中小企業関係予算が毎年前年度比減っておるということについては、これまた中小企業にとっては大きな不満の材料であります。三・七%減っておりますけれども、さらにこの概算要求二千八十一億円の中には中小企業金融公庫並びに国民金融公庫に対する赤字補給金が四百億円含まれておるわけでありますから、これを差っ引くと事実上は前年度比八・二%の減である。これはこの実態がわかったら中小企業から大変な不満が起きること、これはまた火を見るより明らかであります。しかも四百億円の赤字補給というのは、ことしの九月ごろから財投金利が下がるということを前提にして組んでの四百億の赤字補給でありますから、もし現状のままで下がらなかったら大変な赤字ということになってまいりますから、これはますます大変なことだというふうに思います。だから私はここで、財投金利引き下げの問題については、預託金利との問題、特に郵政省との問題、大蔵大臣いろいろと御苦労があると思いますけれども、ぜひこれは、事実上中小公庫あるいは国民金融公庫その他の政府系金融機関が逆ざやによって赤字を発生し、それがために中小企業に対するいろんな施策が後退をするということのないように、格段にひとつ御努力をこれはもう特に要請をするということでお願いをしておきたいと、こう思います。  あと、大蔵大臣から若干のまたこれについてのお答えをいただければ結構でありますが、以上で私の質問は終わります。
  234. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 問題意識は等しくしておると思っております。今、具体的な言葉として郵政省という言葉をお使いいただきました。今、その方面との折衝を継続中でございます。
  235. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 文部大臣にお尋ねします。  教育の場における指導助言ということは、あくまでも被教育者の自主性、主体性、自発性を育てていくという、このことは今さら申し上げるまでもありません。  そこで私がお聞きしたいことは、八月二十八日に文部省から各都道府県の教育長あてに出されたあの文書は、日の丸と君が代に関する通知でありますが、明らかに教育の場において自主性、主体性を育てる指導助言の心を逸脱して、強制的な内容であり、文面であることを私は断定いたしたいのであります。  したがって、その上に立って話を進めるんですが、あの調査の結果、午前も官房長官に尋ねたんですが、沖縄が非常にその調査の結果、好ましからざる状態にあると。それなりの理由が当然あるわけですが、大臣はそれをどのように受けとめておられるか、まずそのことを聞きたいと思います。
  236. 松永光

    国務大臣(松永光君) 八月二十八日付の文部省初市局長が出しました各都道府県の教育長等にあてた指導通知のことについてでございますが、全体の流れとしてちょっと誤解があるように思われますので申し上げておきたいわけでありますが、文部省としては毎年のように教育課程の実施状況について調査をしておるわけであります。五十六年度、五十七年度は小中学校の各教科について、五十八年度が小中学校の道徳について調査をしたわけでありますが、今回は小中学校及び高等学校の特別活動についての教育課程が実施をされておるかどうかという点についての調査をしたわけであります。その特別活動というのは、御承知のとおり、クラブ活動あるいは生徒会、児童会の活動、そして学校行事、その学校行事の中に今先生御指摘の、学校における入学式、卒業式等において国旗の掲揚や国歌の斉唱が行われているかどうかという点が調査の対象になったわけでありますが、さようなわけで、国旗、国歌についてのみの調査じゃなくして、特別活動それ全体についての調査だったわけでありまして、そのうちの一つとして国旗及び国歌についての調査もなされた、こういうことでございます。その調査の結果に基づきまして、教育課程が実施されるようにという趣旨で指導通知を出した、こういう流れになっておるわけであります。  そして、今先生直接の御指摘の点でございますが、すなわち沖縄県が国旗、国歌の実施の比率が他の都道府県に比べて非常に低いということになっておった理由についてどう見るかという直接の御質問でございますが、御指摘のように、沖縄県において卒業式あるいは入学式で国旗掲揚、国歌斉唱が余りというよりか、ほとんど行われていないということが調査の結果明らかになりました。  実は、私の聞いているところでは、昭和四十七年の本土復帰が実現する以前には、国旗の掲揚運動が大きな高まりを見せたという時期もあったということでありますけれども、今回の調査では右申し上げたような結果となっておるわけでありまして、我々としては理解しかねておる点も実はあるわけであります。  そうでありましても、我々の考え方としては、国際化がますます進む、したがいまして児童生徒の時代から国旗や国歌についての世界的な常識といいましょうか、それぞれ国旗や国歌を大事にし、そして学校の行事等の場合には国旗を掲げる、あるいは国歌を歌う、そういったことが世界的な常識でもあることでもありますから、児童生徒の時代からそういう国旗や国歌についての常識的なことを身につけさせるということが大切なことであるというふうに考えておりますので、沖縄県において各学校に対して適切な取り扱いがなされるように指導を願いたいということで通知を出した、こういうことが八月二十八日の指導通知を出したいきさつと、そして私どもの考え方でございます。
  237. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私がこの際言いたいことは、時間の関係で十分真意を述べられないことを非常に遺憾に思っておりますが、戦争というものは人間を悪魔にする。戦後四十年になっておりますけれども、その物質的な後遺症さえもまだ戦後処理ができておらない状態、ましてや精神的な後遺症というものは、これはますます簡単に消えるものではない。早い話が、三月にフィリピンに参りましたら、フィリピンにおける日本軍人が向こうの住民にやらかした行為の数々を述べて、我々は今日許すことはあっても忘れることはできないと言っておるんです。これなんです。そのような、戦争に駆り出された悪魔の兵隊が――これは人間ではありませんよ、その戦争という環境の中にぶち込まれた人間が悪魔になる。沖縄における日本軍人がどのようなことをやったかということを、私も生き残りの一人でありますからよくわかっております。そういった状況の中で、沖縄県民の生命、財産、人権を侵し、あまつさえ侵してはならないいろいろの無道なことを沖縄でもやっておるんです。そういった精神的な後遺症が積み重なっておるというこのことだけではございません。  戦後二十七年、異民族支配のもとでいろいろな抑圧を受けてきた。そして復帰して今日に至る前に、復帰の時点まで私も復帰協の会長として大衆の先頭に立って日の丸も掲げてやった。ところがそれはどういう心であったか、今時間がありませんから申し上げません。何の心であったか申し上げませんが、そのような身をもって外した私は、自信を持って、確信を持って述べることのできることは何であるかといいますと、復帰はかち取った。即時無条件全面返還という目標で大衆とともに闘い抜いた。ところが返った沖縄はそのとおりではなかった。そして国土の〇・六%しかない狭い土地に、沖縄の基地じゃなく、基地の中の沖縄と言っておる。しかも米軍基地機能の七五%は今沖縄に現存しておる。そして事件事故は頻発している。毎日毎日本安と危険におびえておるこの現状の中で明け暮れておる県民であるんですね。  そういうことを思うときに、私は痛いほどこの調査の結果がわかるんです。このことが私が言いたいことなんです。それを形式的にどうだこうだと弁解される必要は、また聞く必要もありませんが、国家権力の強制的なこういった手段では決して自発心は育たないでしょう。そのことを私は申し上げたい。今からでも遅くはない、このような強制的な通知は私は撤回してもらいたいと言いたいんです。  まあ、言ってしまいましたが、そういう気持ちで、本当の人間形成をしていくにはどうすればいいのか、このことを大事にしてもらわなければ、形式論で幾らまくし立ててみたところで、それは逆作用が起こるだけであるということを強く申し上げまして、さらに、このことと無縁ではありません、申し上げたいことは、米軍用地使用特別措置法に関係した防衛施設庁に申し上げたいんですが、これも午前にも申し上げたんですけれども、はしょってかいつまんで申し上げますと、沖縄の基地というのは、日米安保のかなめ基地としてあるわけですが、他県にはない状態が沖縄にはある。例えば他県では、適用例では、基地の接収も最長期間が四年である。適用面積も小規模である。対象地主も少数である。沖縄の場合は五年が今まで最低である。他県では四年。しかも二、三年で返されておる。ところが今回一挙にその四倍の二十年に引き延ばしておる。全く踏んだりけったり、めちゃくちゃと言いたいわけでありますが、他県にも例のない沖縄へのこれは差別ではないか。もっと言葉をかえれば憲法違反ではないか。こういうことを私は根拠にして、時間があれば尋ねたいんですが、時間がありませんのでとめたいんですが、それじゃ一体二十年にする根拠はどこにあるか、そのことをまずお聞きしたい。
  238. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) お答えいたします。  ただいま御指摘のように、特措法という名前で呼ばせていただきますが、特措法によりまして、一般の賃貸借契約にどうしても応じていただけなかった地主の方々の土地の使用につきまして、使用期限、民法の賃貸借契約の最長期限である二十年で収用委員会に申請をいたしたことは事実でございます。その根拠は何かというお尋ねでございますが、我が国の防衛政策の基本は、自衛力の整備とともに、大きな柱として日米安保条約がございます。この安保条約は成立後二十五年、長期にわたって続いてまいり、また、日米両国の間においてこの条約は高く評価をされ、重要な意義を持っておりますので、両国政府ともこれを早期に撤廃をするという意思はなく、相当期間続くものと思われております。その意味で、基地の安定的使用は我が国の防衛政策上非常に重要な問題であろうかと考えております。  御指摘の二十年の長期使用の対象になりますのは、実は沖縄の復帰時には二千九百名おられました未契約者のうち百三十六名まで減ってきておるわけでございます。多数の方々が御理解をいただきまして、民法上の賃貸借契約でお願いをしておるわけでございますが、この特措法の前のいわゆる公用地暫定使用法によりまして、沖縄復帰後当初五年間、さらに五年延長しまして合計十年、さらにこの特措法によりまして五年ということで、十五年間公用使用をさせていただいております土地の地主の方々のうちのお一人、嘉手納に飛行場の土地を有します未契約者、三筆約二千平方メートルにつきまして近年千八百四十三名の共有登記がなされ、非常に多くのいわゆる一坪地主が出てきたという現状にございます。これらの方々に対しましては私どもは、この公用使用をしております間、十五年間何とか任意の契約でお願いするように説得をしてきたわけでございますけれども、これに応じていただくのが非常に困難である、こういう状況から、土地収用法のいわゆる特別法であるところの特措法によりましてこの二十年間使わせていただきたい、こういう裁決申請をしたわけでございます。公共の福祉のためには憲法上も個人の財産権が制約をされるということは、土地収用法にもございますし、憲法違反であるとは私どもは考えておりません。
  239. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 もう一言言わせてください。  時間もございませんので一言言って結びたいと思いますが、非常に私はせつない思いで今立っておるんです。といいますのは、根幹であるところの安保条約さえも十年が区切りで、一方が破棄すれば一年後には破棄できる、こう言っておる。そして、沖縄振興開発計画も十年が単位である、これは県民の権利の側、利益の側から。ところが、義務の側はそのように、不当にも、納得できないままに二十年もぐっと延ばしておるという、このことについても論議を進めたいんですが、これも控えます。  最後に言いたいことは、前例のないものを二十年に持っていくことは、これはどうしても納得できない。納得できない理由は、これは民法の最長年二十年を適用したともよく言っておるんですがね、私法と公法を混同させてまで強引に押し出したのは何としても納得できない。ここに矛盾があります。そのことを私は追及し、そして最後に、沖縄開発の第二次振の目標にも示されておるとおり、平和で明るい活力ある豊かな沖縄をつくり上げていくという目標がある。そして基地の整理縮小という大前提がありますよ。基地の整理縮小を前提にして、平和の方向へ沖縄は、そのことによって明るい活力のある沖縄が開発できるんだ。ところが、皆さんがやっておられることは、政府がやっておることは、基地の整理縮小どころか基地の固定、強化そのものをねらって着々とやっておられること、火を見るよりも明らかである。このことを私は、もう許されない、我慢ならない、こう言うんです。安保のためにアメリカに顔を向けて、一体沖縄百十七万県民をどうするつもりなのか、このことを私は厳しく訴えて、大変せつない気持ちで終わります。
  240. 丸谷金保

    委員長丸谷金保君) 以上で昭和五十八年度決算外二件の全般的質疑は終了いたしました。  次回の委員会は明二十日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五分散会