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1984-12-12 第102回国会 参議院 決算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年十二月十二日(水曜日)    午前十時二分開会     ─────────────   委員氏名     委員長         佐藤 三吾君     理 事         岩崎 純三君     理 事         後藤 正夫君     理 事         福田 宏一君     理 事         松尾 官平君     理 事        目黒朝次郎君     理 事         服部 信吾君                 石井 道子君                 大浜 方栄君                 倉田 寛之君                 斎藤栄三郎君                 杉元 恒雄君                 曽根田郁夫君                 出口 廣光君                 仲川 幸男君                 夏目 忠雄君                 原 文兵衛君                 平井 卓志君                 星  長治君                 矢野俊比古君                 久保田真苗君                 菅野 久光君                 本岡 昭次君                 太田 淳夫君                 刈田 貞子君                 佐藤 昭夫君                 安武 洋子君                 井上  計君                 三治 重信君                 木本平八郎君     ─────────────    委員異動  十二月一日     辞任         補欠選任      木本平八郎君     下村  泰君  十二月四日     辞任         補欠選任      久保田真苗君     丸谷 金保君      本岡 昭次君     梶原 敬義君  十二月七日     辞任         補欠選任      下村  泰君     喜屋武眞榮君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         佐藤 三吾君     理 事                 岩崎 純三君                 後藤 正夫君                 福田 宏一君                 松尾 官平君                目黒朝次郎君     委 員                 石井 道子君                 大浜 方栄君                 倉田 寛之君                 斎藤栄三郎君                 杉元 恒雄君                 曽根田郁夫君                 出口 廣光君                 仲川 幸男君                 夏目 忠雄君                 原 文兵衛君                 矢野俊比古君                 梶原 敬義君                 菅野 久光君                 丸谷 金保君                 太田 淳夫君                 刈田 貞子君                 安武 洋子君                 井上  計君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        文 部 大 臣  松永  光君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       竹内 黎一君    政府委員        科学技術庁長官        官房長      宇賀 道郎君        科学技術庁長官        官房会計課長   窪田  富君        科学技術庁計画        局長       堀内 昭雄君        文部大臣官房長  西崎 清久君        文部大臣官房会        計課長      坂元 弘直君        文部省初等中等        教育局長     高石 邦男君        文部省教育助成        局長       阿部 充夫君        文部省高等教育        局長       宮地 貫一君        文部省学術国際        局長       大崎  仁君        文部省体育局長  古村 澄一君    事務局側        常任委員会専門        員        小島 和夫君    説明員        総理府臨時教育        審議会事務局次        長        齋藤 諦淳君        外務省国際連合        局婦人差別撤廃        条約批准準備室        長        高木南海雄君        大蔵省主計局主        計官       武藤 敏郎君        国税庁直税部法        人税課長     加藤 泰彦君        文部大臣官房文        教施設部長    佐藤  讓君        建設省道路局高        速国道課長    布施 洋一君        会計検査院事務        総局第二局長   竹尾  勉君     ─────────────   本日の会議に付した案件調査承認要求に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十七年度一般会計歳入歳出決算昭和五十七年度特別会計歳入歳出決算昭和五十七年度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十七年度政府関係機関決算書(第百一回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十七年度国有財産増減及び現在額総計算書(第百一回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十七年度国有財産無償貸付状況計算書(第百一回国会内閣提出)(継続案件)     ─────────────
  2. 佐藤三吾

    委員長佐藤三吾君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十一月二十八日、栗林卓司君が委員辞任され、その補欠として井上計君が選任されました。  また、去る十二月一日、木本平八郎君が委員辞任され、その補欠として下村泰君が選任されました。  また、去る十二月四日、久保田真苗君及び本岡昭次君が委員辞任され、その補欠として丸谷金保君及び梶原敬義君が選任されました。  また、去る十二月七日、下村泰君が委員辞任され、その補欠として喜屋武眞榮君が選任されました。     ─────────────
  3. 佐藤三吾

    委員長佐藤三吾君) 調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  本委員会は、今期国会におきましても、国家財政経理及び国有財産管理に関する調査を行うこととし、この旨の調査承認要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 佐藤三吾

    委員長佐藤三吾君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 佐藤三吾

    委員長佐藤三吾君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  6. 佐藤三吾

    委員長佐藤三吾君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和五十七年度決算外二件の審査並びに国家財政経理及び国有財産管理に関する調査のため、必要に応じ、政府関係機関等役職員参考人として出席を求めることとし、日時及び人選等につきましては、これをあらかじめ委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 佐藤三吾

    委員長佐藤三吾君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  8. 佐藤三吾

    委員長佐藤三吾君) 昭和五十七年度決算外二件を議題といたします。  本日は、文部省及び科学技術庁決算について審査を行います。     ─────────────
  9. 佐藤三吾

    委員長佐藤三吾君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 佐藤三吾

    委員長佐藤三吾君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  11. 佐藤三吾

    委員長佐藤三吾君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 私は、短時間でありますが、私学助成の問題がいろいろ問題になっておる時期でありますので、具体的に、日大生産工学部テネシー州立大学研修の問題について具体的にお尋ねしたいと存じます。  この件については私は一定の資料を収集いたしまして、文部省関係者を呼び、並びに日大関係者を呼んで、具体的な中身について委員会で取り上げるまでもないことであるから事情説明について協力してほしいということを、良心的ではありますが、いろいろ十一月の六日、十一月の十六日、二回にわたって文部省並びに日本大学生産工学部皆さん接触をしたわけでありますが、なかなか私が納得するような説明もないし資料の提供もされない。やむにやまれずこの委員会で公式の場でひとつ改めてお聞きしたいと思っております。  ここにこのテネシー州立大学研修一般募集要項があります。私は小学校しか出ておりませんから英語に弱うございますから、うちの秘書を通じて全部和訳をしてここに訳文の原本があります。これはもう文部省側に提示をしてありますが、ここでまた議事の取り扱い上これは確認いたしますが、これは間違いありませんか。
  13. 宮地貫一

    政府委員宮地貫一君) 従来先生から御指摘のありましたことについては、私ども対応してきたわけでございますが、御指摘募集要項についてはそのとおりでございます。
  14. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 間違いないと。それから私たちが収集をした五十八年度の、これも十一月の六日文部省側に提示しましたが、これもこの資料は間違いありませんね。
  15. 宮地貫一

    政府委員宮地貫一君) 先ほどお答えしましたように、かねて先生文部省側で御説明に伺っていることについては御指摘のとおりでございます。
  16. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 間違いないと、そういうことを確認いたしますと、日本大学のこの昭和五十八年百二十一名の学生を送っておるわけでありますが、この間違いないという二つのデータを計算いたしますと、我々の計算では、この留学生には下から上まであるわけでありますが、日本人は豊かでありますから最高条件最高条件計算いたしますと、一人当たり四千百九十五ドル、一ドル二百三十八円に換算いたしまして九十九万八千四百十円、このようにこちらの方の募集要項計算しますとそうなるわけであります。しかし、我我が入手した、このおたくの方で持っておった資料、この資料で見ますと、予算決算、これは二百五十円で計算しておりますが、これで計算しますと、一人当たり百九十九万三千二十円、こちらの方が九十九万八千四百十円、おたく決算で入手した資料から算出しますと百九十九万三千二十円、一体こんなに格差があるのはどういうことなんですかということをいろいろ文部省を通じて日大の方に聞いているんですが、今日になっても中身は解明されていない、これはどういうことなんですか。私の数字が正しいとすれば一億二千百万円どこかでポケットしていると、こういう格好になるわけでありますが、この問題はもう私の方からおたくにも提示しておるわけでありますから、その答えは要りません。  それで、文部省にお伺いいたしますが、これだけのこの百二十余名のプロジェクト、三年契約、となりますと、これは当然日大総長などを含めた最高幹部承認を得た事業だと思うんでありますが、その点はいかがですか。
  17. 宮地貫一

    政府委員宮地貫一君) 日大生産工学部テネシー州立大学留学実施当たりまして、生産工学部日大本部の承諾を得たものであるかという趣旨のお尋ねかと思いますけれども、私ども大学側を呼びまして事情を聞いたところによりますと、生産工学部では五十七年六月二十四日の教授会で五十八年度に長期留学を行うことを決定いたしまして、その細部についてはそれぞれ学生派遣実施計画委員会検討されたというぐあいに聞いております。そしてまた同時に、この計画について日大本部にも相談をいたし、本部においても学生海外派遣教育検討委員会を設けて検討をし、原案については再検討の点もございましたが、慎重に審議をして五十八年五月三十一日に本部としての結論としては実施することについて本部から生産工学部長に通知がされているというぐあいに聞いております。
  18. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 我々の議事録とそっくりでありますから、その議事録は今の答弁のとおり、我我が入手した議事録、そのとおり五月三十一日承認を得た、それは確認いたします。  そうしますと、私はここに日大テネシー大学合意文書があります、合意文書。この合意文書をずっと点検していきますと、いわゆる契約金支払いの項がありまして、契約金支払い昭和五十八年五月十五日以前に支払えと、こういう契約書になっているんです、この契約書は。あなたは、今この最終承認を受けたのは五月三十一日と。十六日間も最終承認を受ける前に金を払うという格好になっているんですが、この時間的なずれはどういう事情があったんでしょうか。合意文書では五月十五日、最高幹部の了解を得たのは五月三十一日、この十六日間のずれをどういうふうは解釈するんですか。
  19. 宮地貫一

    政府委員宮地貫一君) その間の具体的な事情については、必ずしも細部にわたって私どもまだ承知をしていない点もございますけれども、このテネシー州立大学留学研修について事前に前年度等で短期の研修実施をした、それを受けて長期のこういう研修生産工学部検討をして、計画を進めてきたといういきさつがあるようでございます。恐らく本部承認は、御指摘のように五月三十一日の承認でございますので、慎重な手続から申せば、それ以後において事柄が計画されるべきことというぐあいな御指摘かと思いますが、事実上は生産工学部でそのような計画がある程度先行的に行われていたというような事情がその間にあるのではないかと、かように考えます。
  20. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 水面下の交渉をやって事前にある程度了解して、若干のずれがあったと。それでこの確たる事実関係は後ほどきちっと調べて返答してください。  それでこの合意書の中を見ますと、日本より大学へ支払うべき総支払い額は七十九万七千二百八ドル、この合意書の三ページ、七十九万七千二百八ドルと、こうなっているんですが、私はどうも大学側が出したこの日本大学という用紙がありまして、日本大学側が私の秘書を通じて出せと言ったこの五十八年度の支払いの項を見てみますと、契約金九十六万七千九百八ドル、本契約の方で七十九万七千二百八ドルだと、こういう契約書サインつきですよ、これはにせものじゃありませんよ、これは。ちゃんと日大学校側が全部サインしているコピーですよ。このコピーで七十九万ときちっと契約していながら、支払いが九十六万七千九百八ドルと。その差額が十七万七百ドル、四千万以上。この関係はどうなんですか。契約でこうやっているのに、支払いがこういうふうに銀行に振り込んでいると。これはさっきの一億の一環なんですよ、差額一億の。これはどう説明されるんですか、学生とか社会に対して。本契約支払いがもう四千万も違うと、四千万もオーバーに振り込んでいるということは一体どういうことなんですか。
  21. 宮地貫一

    政府委員宮地貫一君) 御指摘の七十九万七千二百八ドルの計算でございますけれども、それは留学生百名当たり計算として算出をされたものでございます。五十八年度に実際に参加をいたしました者は留学生が百二十二名でございましたので、百二十二名、百名を上回りました者に相当する金額が御指摘差額として算出をされたものと私どもは考えております。
  22. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 小学校計算じゃありませんがね、これに二十一名分足してみてください。七十九万七千二百八割る百掛ける二十一、それでその差額が十七万もなりますか。小学校四年生の計算ですぐわかりますよ。あなたばかにした答弁しなさんな。計算してみてください。もう時間がありませんから後で事務官計算してください。あなたの七十九万七千二百八ドルが百名だというならば、百二十一名で支払い契約は幾らになるか後で計算してください。それでこれは保留して質問続行します。  それでこの問題についてあなたの方の説明では、会計検査院から三回にわたって御照会があったと、こういう私に対する説明です。これはおたくが書いた、日大側が書いた私への説明ですね。九月十八日、九月二十六日、九月二十七日、三回会計検査院接触していると。その会計検査院を呼んで、これは会計検査院吉住副長並びに文部関係の第一課長の土居さん二人を呼んでこの関係を聞いたら、会計検査院接触していないと。ところが、日大の方は会計検査院から三回にわたって接触を受けたと。これはどっちが本当なのかね。検査院は知らないと言うし、日大の方は三回事情聴取受けたと言う。どちらが本当なんですか、これは。両方とも。
  23. 宮地貫一

    政府委員宮地貫一君) 会計検査院側問い合わせ云々のことにつきましては、私どもその点については承知をいたしておりません。
  24. 竹尾勉

    説明員竹尾勉君) 最近の日本大学検査につきましては、五十八年の八月二十九日から九月二日までの五日間、三十一人日をもちまして本部並びに六学部を検査いたしましたわけでございます。生産工学部につきましても五月一日及び二日の両日、四人をもって八人日で検査をいたしました。同大学生産工学部にこのような制度があるということにつきましては承知いたしておりましたが、これにつきましては職員の中には関心を持っている者があるかもしれませんが、実地検査の際、特に取り上げたりあるいは検査調査を施行したということはございません。以上でございます。
  25. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 会計検査院の方は私にもそういう説明をしていますから、それは私も存じております。しかし、日本大学生産工学部学生派遣計画の直接の責任者でありまする藤井さんは、私に対するメモで、今言ったとおり九月十八日、九月二十六日、九月二十七日、三回指導を受けたと、本人が私に説明しているんですから、藤井さんが。だからこれはここの場でやってもしようがありませんから、相手は藤井さん、だから藤井さんに聞いて、会計検査院のだれが接触したか確認をしてもらいたい。それから文部省側にもこの前も十一月の六日にちゃんと言っているのに、私は知りませんなんてことは文部省責任だね、あなた。これは初めてやるんでないんだから。十一月六日と十一月十六日、二回私の部屋に来てやっているんですよ。おまえさんところの課長局長に報告しないんでしょう。どこかでパイプが詰まっている。知りませんなんてのはもってのほかだ。  それで会計検査院よく聞いておいてくださいよ、あと大学側も。会計検査院接触では、私が先ほど一億円の差額があると、こういう問題については会計検査院某氏大学正規契約書正規契約書水増し分――水増し分というか、まあプラスアルファだね。プラスアルファを分離してきちっと整理しておかないといろいろ問題になりますよと、私学助成の問題も絡めてという御指導をしているんですよ、これは。個人的か公的かわかりませんが、会計検査院某氏がやっぱり痛いところを突いているんですよ。これに基づく正規の金とプラスアルファを分離してきちっと整理しないと大変なことになりますという御指摘を受けて、藤井さんの方はありがとうございましたと。授業料が二重取りになるわけですね。こちらでも授業料を払っている、テネシーの方にも授業料を払っていると、約五十万程度、一人当たり。そういうのは向こうから帰ってくれば本人に返しますと、そういう親切な答弁藤井さんがやっているんですよ。藤井さんが会計検査院皆さんに。それはいいことだと言って会計検査院はこれを了解しているんですよ。大学側はそういう会計検査院某氏指導があったにかかわらず、全然その指摘については処理をしないで、このようにどんぶり勘定でやっている。このどんぶり勘定の生態がこれですよ。これは先ほど局長も認めたとおり、これは私が提示したんですが、この予算書決算書は認めますというのですから、この関係ではどんぶり勘定を整理していない、そこに問題があるんですよ。ですから、私は会計検査院に要請しますが、これは私学助成にも関係することですから、あなた方は公式に接触してないというのであれば私のきょうの質問をきっかけに公式に接触をして、こういう公的な金とどんぶり勘定関係を一度洗ってもらいたい。約一億二千万の差額ですから、これは大きいですよ。それをひとつ検査院に要請しますが、いかがですか。
  26. 竹尾勉

    説明員竹尾勉君) 先生の御指摘いきさつにつきましては十分調査いたしたいと思っております。私ども実地検査当たりまして、生産工学部につきましては学校法人会計基準あるいは補助金にかかる諸規定に違背しているものは特に認められたわけではございませんが、ただいま御指摘の事態につきましては当然大学管理運営上掲示を適正に行うべきであると私どもも考えております。何分制度運営海外のことでございますので非常に困難を伴うものと考えられますけれども、御趣旨を体しまして十分留意いたしまして鋭意事情調査いたしたいとこのように考えております。
  27. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 ではそれは要請しておきます。  それからもう一つ、この一億円のプラスアルファの金の関連があると思うんでありますが、具体的に日大の講座を担当している堺教授は五十八年度実施期間中に二回にわたって海外出張をしている、テネシー大学等関係で。ここに大学出張報告書があります。この出張報告書を我々は入手しました。この出張報告書を見ますと、五十八年八月十日から五十八年八月二十日まで、これが第一回、第二回は五十八年十二月三十日から五十九年の一月六日、二回にわたって海外に行っています。目的は留学生関係の問題だと、こういうふうに言われていますが、そこで、これはある関係者から聞きますと、この出張期間中に本人パリで奥さんと買い物をしていると、アメリカに行った本人パリ買い物をしていると、それが確認されているということが一件。それから、この人の旅費は一週間足らずで毎回五百万円以上出ていると。一週間で五百万というのは一日百万だね、これは。こういうべらぼうな出張旅費本人はこの期間中にはアメリカにもちょっと寄ったんだろうけれども、空路パリに飛んで、パリ買い物をしている、この二つの事実について、堺教授の行動について大学側責任を持って調べて後ほど回答をしてほしいと、こう思うんですがいかがですか。
  28. 宮地貫一

    政府委員宮地貫一君) 私ども現在までに把握している点では、出張した期間先生指摘のとおりでございます。  なお、五十八年八月の出張の際には堺学部長西川助教授鈴木庶務課長の三名が出張いたしまして、大学経費処理をしておりますものはその三名の経費として合計で三百三十万余り、それから五十八年十二月から一月初めにかけての出張に際しては、同じく堺学部長西川助教授鈴木庶務課長の三名で出張いたしておりまして、その経費は約二百五十万余というような事情については伺っておるわけでございます。  なお、それらの出張に際して夫人が同行したことも一応大学側からは伺っておりまして、その経費は後援会から支出をされたというぐあいに伺っております。  なお、そのほかのことについて御指摘の点がございましたら、よくその点は調査をさしていただきたいと、かように思います。
  29. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 現認者がおるんですから、パリ買い物をしておるという現認者がおるんですから、必要なら現認者を出しますから調べてください。  正規旅費がこれで、あとはプラスアルファ、合計で五百万円以上と、こういうことを受けておりますから調べてください。  それで、国税庁にもお願いしますが、こういう正規旅費で行くならば問題がありませんが、正規旅費以外にプラスアルファという形で相当程度の金が流れている、こうなりますと、これは個人の所得あるいは法人の乱費といいますか、法人、個人両面から今文部省側調査と並行して国税庁でも堺教授の問題についてぜひ調べてほしいと思いますが、いかがですか。
  30. 加藤泰彦

    説明員(加藤泰彦君) お尋ねの件につきましては個別にわたる事柄でございますので、その辺御了承いただきたいと思いますけれども、一般論として申し上げますならば、税務当局におきましては新聞等で報道された事柄についても貴重な情報として関心を持っております。これらの情報や税務部内での収集した資料等を参考にいたしまして課税上問題があるものにつきましては税務調査実施するなど、課税の適正化に努めているというところでございますので、よろしく御了承いただきたいと思います。
  31. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 ではそれは要請します。  それから、このプログラムの費用が学生生徒納付金として学校会計に入れられて、学校会計の教育研究費から支出する、こういう形をとっているということを聞いたんですが、そうしますと、このことは補助金の対象科目になると、こう考えるんですが、その辺はいかがでしょうか。
  32. 宮地貫一

    政府委員宮地貫一君) 現在まで大学側から聞いたところでは、御指摘の留学制度はついては大学の教育活動の一環として実施をされ、経理面でも収入は学生納付金として歳入に入れ、支出については教育研究経費として学校法人会計で適切に処理をされているというぐあいに私ども理解をしておる点でございます。  なお、五十八年度の決算については、公認会計士の監査報告も適正ということでつけられているわけでございます。  なお、御指摘の点は、それらの点が教育研究経費ということで全額計上されていることについて問題があるのではないかという御指摘かと思いますけれども、それらの点については、私ども従来事情を聞きましたところでは、以上のように経理上の処理としてはそれぞれ歳入歳出に計上されているというぐあいに聞いておる点でございますが、なおお尋ねのありました点については、さらに十分精査をいたしたいと、かように考えます。
  33. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 そうすると、私学助成の補助対象の科目に入っているということですな。
  34. 宮地貫一

    政府委員宮地貫一君) そのとおりでございます。
  35. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 そうしますとね、子供たちから金を取って、大学には適当に納めて、その利ざやが一億円も持っておると。一億円も利ざやを稼いでおる大学が国民の税金の私学助成の対象だなんていうことは一体許されるべきものではないと、こう思うんですが、これは大臣いかがですか。一億円も利ざやがあると、私の調査では、それが私学助成の対象になっておると、そんなぶざまな大学経営がありますか。大臣、いかがですか。
  36. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 先生指摘のとおり、我が国の私立学校は大変学校教育の上で重要な役割を果たしておるわけでありまして、その重要な役割にかんがみまして、私立学校振興助成法の趣旨にのっとって私学助成をいたしておるわけであります。しかし、実際の助成事項を遂行するに当たりましては、学校法人に対して適正かつ効率的な学校経営に努めるよう指導してきたところでありますが、一般論として申し上げますと、今先生の御指摘があるような疑惑を生むようなことがあっては断じてならぬわけでありまして、今後ともそうした事態が起こらぬように、学校法人が適正な運営をしてくれるように厳しく指導してまいりたいと、こういうふうに考えております。
  37. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 私はもう一つ疑問点は、この生徒募集に当たって非常に特殊な取り扱いをしているんですね。語学が割合に悪いとか、英語が悪いとか、あるいは成績が余り芳しくないとか、そういういろんな諸条件を親、子供の弱みにつけ込んで補欠入学させて、そしてアメリカにありますよと。しかし、その際は二百万程度金がかかりますよと。日大がかつて裏口入学で大分話題になったことがあります、ここに新聞がありますが、それと似たような手口をこの方々に使っておると。私は、うそじゃない、ここにもうあなた方くれませんから、五十七年度アメリカへ行った名簿一覧表、全部私持ってます。五十八年度の名簿一覧表全部持っておる。全部。この方々から事情聴取すると、入学の際にやっぱり別枠として二百万程度取られたと。これは大学が取ったのか、あるいは堺その他が取ったのか知りませんが、いわゆる手数料という形で二百万程度いわゆる特別寄付金という名目で取り上げられていると。この名簿の何人か証言しています。ですから、私はそういう親と生徒の弱みにつけ込んで、そういう金を出しながら、二百万なんという金を出しながら、この入学前にテネシーにありますよと。テネシーにはテネシーで先ほど言った私の計算では一億の利ざやがあると。これを扱っているのが二の方事務所、このアメリカさんと日大の仲介をしているのが二の方事務所、ここが仲介をしていると、こういう文書もあります。なかなかいいことですねと、いいことというのは、金もうけていいことなのか、勉強でいいことなのかわかりませんが、なかなかいいことですねという文書もあります。  ですから、私はそういう問題を含めて、時間が来ましたから文部省側に要求します、大臣に要求します。  一つは、当方が納得できる、こういうものについて納得できる五十六年、五十七年、五十八年、五十九年の項目別、これは二十一項目あります、大学は、二十一項目の合理的な納得のいく説明をしてほしい、それが第一点。  第二点は、この参加者の住所をきちっと教えてほしい。それで大学側は生徒から何人か摘出をして具体的な事情について私の提案したことがうそか本当か、これをきちっと直接何人かから年度別に事情聴取をして、それを報告してほしい。  それから三つ目、今申し上げた二の方事務所というのは、この決算によりますと、二〇%の管理雑費というものを取っている、一人当たり約三十三万。この三十三万の金を運営しているのはどうもこの二の方事務所を仲介してやっていると。この二〇%の管理雑費自体が私はおかしいんですがね、これは全然大学側も、文部省説明できない。したがって、この二〇%の管理費を含めて、この二の方事務所というのは一体どういう役割をしている事務所なのか調査をしてほしい。  それから、もしも私の言うことが本当であったならば、やはりプラスアルファは生徒に還元すべきである。プラスアルファは一人当たり約百万近く。これは五十六年、五十七年、五十八年、五十九年でやっぱり明らかになれば生徒に還元すべきだと、こう思います。この問題がきちっと解明されるまでは、やっぱり六十年度の日本大学私学助成金、大体何ぼいっているのですかね、相当銭いっているのですが、この日大私学助成金については、この問題が解明されるまでやはり留保すべきだと、こういう点について大臣の答弁を求めて私の質問を終わります。
  38. 宮地貫一

    政府委員宮地貫一君) 調査の項目についてただいま御指摘があったわけでございますが、大学の教育研究活動の一環として行われている事柄でございますので、私ども事柄としては大学当局を通じて事情解明に当たらなければならない事柄ではないかと、かように考えております。私どもの及ぶ限りの調査をいたしまして、先生の方にも御報告させていただきたいと、かように考えております。
  39. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) ただいま局長が申し上げましたように、大学を通じて及ぶ限りの調査をして、そして先生の方に御報告できるように努力してまいりたいと考えております。
  40. 菅野久光

    菅野久光君 私、初めに文部省に設置されております各審議会等の運営経費の会計についてちょっとお伺いをいたしたいというふうに思います。  運営経費については、当然のことながら委員の数、あるいは開催予定等含めた予算というものを策定をして、これは大蔵省の査定の段階ではそういうものはやっぱりきちっと出しておられるというふうに思うんですけれども、そのように確認をしてよろしいですね。
  41. 坂元弘直

    政府委員(坂元弘直君) 文部省に置かれております中央教育審議会など、文部省設置法等法律に基づく審議会等を含めまして各種の審議会、調査会の予算の編成を行う場合に、一応の目安として開催日数、それから委員の数等を積算の根拠といたしまして所要額を算定いたしております。
  42. 菅野久光

    菅野久光君 予算決算との差、これは当然きちっといかないわけでありますが、常識的にどの程度であれば許容されるのか、あるいはどの程度が一般的に限界だと考えられるのか、その辺はどのようにお考えでしょうか。
  43. 坂元弘直

    政府委員(坂元弘直君) 常識的にどの程度が許容されるのかという御質問でございますが、大変難しい問題でございまして、御承知のとおりに行政需要が大変流動的で変化をしておる今日におきまして、一応予算の編成時期におきましてはある程度定量的な予想を立てて編成をいたしておるわけでございますが、ただ審議会の抱えておる問題の案件によりましては急に審議会の回数がふえざるを得なかった、あるいはその所要案件もふえたというようなこともございまして、最終的に決算としては予算との整合性をなるべく保つのが最も望ましいわけでございますけれども決算予算額とは大分離れてしまうという結果になっております。  ただ、その場合、私ども文部省で計上されております委員等手当あるいは委員旅費等所要の予算額の中で優先順位を定めまして、各種の委員会の足りない部分に充当いたしておるわけでございますが、現実にどの程度の差ならば許容されるのかというのはなかなか一概にはお答えしにくい問題ではなかろうかというふうに考えております。
  44. 菅野久光

    菅野久光君 一般的には何か一〇%程度の差であればまあまあ予算決算という関係では許容されるといいますか、一般的にはその程度のところが妥当なところではないだろうかということが言われているわけでありますが、私は運営経費予算額及び決算額について調査をしたわけでありますけれども、およそ予算額という名にふさわしくない決算額だというふうに指摘せざるを得ないわけであります。これは金額は何百何十万あるいは千何百万という金額でありますから、国の何兆という予算から見ればあるいは小さい問題かもしれませんけれども、しかしこの種のものが積み重なっていけば相当大きな額になるわけであります。例えば中央教育審議会、これを五十五年度から見ますと予算額に対する決算額が三・四倍、五十六年度は二・六倍、五十七年度は四・八倍、約五倍ということになるわけであります。しかもこれは委員の数が同じですね、どうして毎年こんなに予算額に対して決算額がふえるのか、これは予算の積算の仕方がおかしいのかどうか。これは教育審議会だけではありません。文化功労者選考審査会、これも五十五年度、五十六年度、五十七年度を見ればいずれ予算額に比して決算額は四倍という支出になっております。各年度がそうなんですね。一年だけであれば積算の誤りということは言えるかもしれません。しかし毎年こういう状況だということ、それは一体どのようにお考えになりますか。
  45. 坂元弘直

    政府委員(坂元弘直君) 先ほども申し上げましたとおりに、確かにそれぞれの年度において抱えておる案件等に応じて回数がふえるというようなこともございますけれども、過去三年にわたってこういうような傾向にあるということになれば当然予算増を行ってもしかるべきではないかという御指摘かと思いますけれども文部省全体の委員手当、諸謝金等の枠の中で足りない部分は補っているわけでございます。一般的にこの種の経費につきましては一般行政経費として取り扱われておりまして、委員等手当につきましては人事院勧告に準じまして手当の増額が行われてはおりますけれども委員に対する諸謝金、委員旅費、庁費の事務的経費につきましてはどうしてもこういう財政状況が厳しいということもあって、対前年度と同額の範囲内で、各省これ横並びでございますが、対前年度と同額の範囲内で予算を編成するという方針をここ数年ずっととられてきておりますので、どうしてもこの種の委員会経費について増額を図るというのが大変難しい状況にあるというのも御理解いただきたいと思います。ただ、全体としましては文部省全体の既定予算の中で遺憾のないように対処はしてきているつもりでございます。
  46. 菅野久光

    菅野久光君 言われていることについてわからぬわけではないんですが、予算があって決算があるということからいけば、四倍以上という決算額というのはどうも私も納得ができない。例えば平均出席数は割合よくて五十五年度が七九%、五十六年度が七八%、五十七年度は七六%、平均の出席者数ですね。開催回数は五十五年度が二十六回、五十六年度が十三回、五十七年度が三十二回ということですね。それで五十六年度は十三回しかやってなくてもそれでもやっぱり予算に対する決算が二・六倍、こういうことになっているわけですね。総体の中でやるからいいといっても、これも各種審議会運営経費等の中で審議会、法で設置されている審議会の総計でいきますと、これもやっぱり予算に対する決算が一・五倍ということになっておるわけです。これは役所というところはどうもそうなんでありますけれども、一たん予算をなくせば新しくつけるということが極めて難しいというようなそういう仕組になっている。だから本来はこのことよりもこちらの方に余計予算をつけたいんだけれども、それがなかなかできないという非常に硬直した状況にあるのはどこのお役所も大体同じようなことですね。そういうところをやはり行政改革というので私は改革していかなきゃならないことだと思うんですよ。例えば教育課程審議会は一回も開かない、五十五年度、五十六年度、五十七年度一回も開かなくても予算はきちっと持っているわけでありますね。こういうところを、やはり何というんですか、こういうことが総体で見れば結果的には帳じりがやや合うような形にはなっているのかもしれませんが、個々のそういうことで見ればまことに実態にそぐわないような状況になっている。こういうことはやはり改善していくべきではないかというふうに思うんですけれども、この点について大臣どうでしょうか。
  47. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 今政府委員が答えたような事情もあって、個々の審議会ごとの予算決算関係予算に比べて決算が数倍というのがあったり、先生指摘のように予算はあるが実際上審議会が開かれないのでゼロになっておったりすることがたくさんあるということは、必ずしも適当とは思いません。ただ、課長が申しましたとおり、いろいろな審議会でそのときそのときの需要に大きな変化もあり等とのこともあって、予算決算との大きな開きが出てきておる、こう思うんでありますが、問題は予算編成上の技術上の問題ではなかろうか、こういうように思われる点もありますので、これは先生指摘のように本来ならば予算決算とがそう開かないというのが望ましい姿だと思いますので、よく勉強してみたいと、こういうふうに考えます。
  48. 菅野久光

    菅野久光君 では、その件はそういうことで、言えば国民に納得できるような予算決算の状況であってほしいという願いを込めて今後のひとつ対処をお願いいたしたいと思います。  次に臨教審の問題でありますが、去年の暮れからことしにかけての教育改革の流れを見てみますと、中曽根総理の総選挙での教育改革の七つの構想、一月に入ってから、中教審による改革の方向から教育臨調方式への変更、そういう流れの結果として臨教審を設置すると。また、その間で総理の私的諮問機関である文教懇の報告などがあったりしまして、一連の動きとしまして総理主導型として進められてまいりました。総理の考え方の根底には、戦後教育の見直し、こういうことがあるわけでありますが、まず、文部大臣の戦後教育というものに対する率直な評価、感想をお伺いいたしたい、このように思います。
  49. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 戦後の我が国の教育は、教育の機会均等という理念のもとに、いわゆる六三制の学校制度を中心に著しく普及をし、発展を遂げてまいったと見ております。そして、そのことによって国民の教育水準を向上させ、今日の我が国の発展と繁栄の原動力となったというふうに私は評価をいたしております。
  50. 菅野久光

    菅野久光君 中曽根総理が臨教審のような教育臨調形式での教育改革について考えられていたのは総理になる以前からでありまして、それは、時期的には八〇年以降の八一年から八二年ごろに盛んにいろいろな機会をとらえて教育改革について述べておられました。それがどのような文脈の中で語られていたかというと、憲法を改正すると、そのための土壌づくりのための手続としての教育改革、そのような発想での教育臨調構想であったわけでありますが、今回臨教審が設置されたことに対しては、そういった総理のかつてから抱いていた構想が一歩前進したと言ってもよいというふうに私は思うんです。そういう総理主導のもとでの教育改革に対しては国民の間に大きな危惧の念があるわけであります。今回、このような総理直属の臨教審での教育改革の推進の方向に至ったことに対する大臣の所見をお伺いいたしたいというふうに思います。
  51. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 今回の教育改革についての総理の考え方は、臨教審がスタートしたときの総理大臣のあいさつの中に詳しく述べられておるわけでありまして、憲法改正の土壌づくり、そのための教育改革などということは全くないというふうに私は考えております。また、総理の臨教審におけるあいさつの中にもそういうことは全く出ておりません。  私どもの考え方といたしましては、先ほど申したとおり、戦後の教育は我が国の発展と繁栄の上で大きな役割を果たしておるというふうに評価をいたしております。高く評価しておるわけでありますが、しかし他方、先生もよく御承知のとおり、近年における社会の急激な変化あるいは教育の量的な拡大、さらにはまた最近における校内暴力や青少年の非行の増加、学歴社会という状況、それからもう一つは、一部の識者が指摘しているところでありますが、我が国の学校制度は画一的過ぎるのではないかという指摘、さらにはまた、現在もそうでありますけれども、これからますます日本は国際化をしていかにゃならぬわけでありまして、そういった必要性等々の問題があるわけでありまして、それらに適切に対応していくためにいかなる教育制度をつくり上げるべきか、こういう考え方で今回の臨教審設置となったものと私は考えておるわけであります。  言うまでもないことでありますが、教育というのは極めて国政の中で重要な課題でありますし、また国家百年の大計というふうにだれしもが承知しているところでありますので、そういった前提の上で、この機会に我が国の教育の全体を見直しをし、適切な改革を進めることが国民の期待にこたえるゆえんである、こういうふうに私は考えております。そして、そうした改革を通じて、将来に向けて我が国が活力ある文化国家として安定した発展を続けていくような、そういう仕組みをつくり上げたい、また、そういう改革を進めていきたいというふうに考えておるわけであります。
  52. 菅野久光

    菅野久光君 私が中曽根首相に憲法を改正する意図があると言ったのは、根拠がなくて言っているのではなくて、総理の発言、「教育臨調みたいなものをつくって、オーバーホールをやるときが大事で、それが事実上、憲法問題を処理することにもなる」、これは八一年の八月二十七日付の週刊現代、その後、「この大きな行事」――これは行革でありますが、「行事が失敗したならば、教育の改革もできなくなるが、防衛の問題もダメになります。いわんや憲法を作る力はダメになってしまうのであります。したがって行政改革で大そうじをしてお座敷をきれいにして、そして立派な憲法を安置する。これがわれわれのコースであると考えておる」と、これは八二年の五月三日、生長の家での講演であります。こういうような発言をかつてされておったということがありますので私は先ほど申し上げたわけで、そういうあれがないということにはならないというふうに私の方から申し上げておきたいと思います。  中曽根総理は、この臨教審問題が出てくる前に、みずからの私的諮問機関として文化と教育に関する懇談会、略して文教懇を昭和五十八年の六月に設置して、一年くらいかけて報告を出させる予定であったらしいのでありますが、教育臨調すなわち臨教審構想が出てきたら、急遽文教懇の報告の提出時期を早めて、ことしの三月に報告書を提出をさせたという経緯がありました。総理の意向としては、この報告書を臨教審でのたたき台にしてほしい、そのようにも発言をされました。総理の発言であり、臨教審の人選も、その任命権が総理にあるわけで、実際文教懇のメンバーの中から臨教審委員に任命された人もいるわけですね。この報告書も臨教審の審議の中に取り入れられていくのではないかと思うわけでありますけれども、どうでしょうか。
  53. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 先生指摘の文化と教育に関する懇談会は、お話しのとおり五十八年の六月に総理の私的な懇談会として設置されまして、五十九年三月に意見の取りまとめを行っております。  その内容といたしましては、教育の現状、教育問題発生の根本原因、教育改革の基本的視点、教育改革の方向と主な課題等について書いております。この点につきましては、総理、文部大臣等の従来からのお答えは、臨教審のたたき台としてと申しますよりは、貴重な参考資料として臨教審でもいろいろと御調論の参考になるのではないかと、こういうふうなお答えをしておる経緯がございまして、内容につきましては、今後臨教審の審議においていろいろと参考になるであろうというふうに私どもは考えておる次第でございます。
  54. 菅野久光

    菅野久光君 そこのところが私は非常に問題だというふうに思うわけであります。よく予算委員会ども含めてこれはもう論議になるところでありますけれども、公的な機関ではなくて私的な諮問機関の報告、こういうものが公的な機関の論議の土台になるということになればこれは一体どういうものだろうか。法令の根拠もなくて、人選も選ぶ人の恣意に偏りがちな私的諮問機関であります。本来私的諮問機関はそういう報告などというものは出さないということになっているわけですけれども、どういうものか総理は非常に私的諮問機関がお好きで、これは何か聞くところによると、自民党の中でもいろいろ問題があるというふうに指摘されているやに聞いているわけでありますけれども、ましてや国民全体に影響する教育改革を進めるに当たって公平、中立性が確保されるのか、非常に危惧をするわけでありますけれども、文部大臣として一般的に私的諮問機関が公的機関、行政に大きく影響を与えることをどのように思われるでしょうか、ちょっとお伺いいたしたいと思います。
  55. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 公的諮問機関でいろんな問題について審議をしていただき、あるいは論議をしていただく場合には、私的諮問機関の意見等に拘束されることなく、しかしながら有識者がいろんな議論を積み重ねて論議をされたその経過と結果というものは、やはり参考にすべきものがあるならばそれは参考にすると、こういう立場で公的諮問機関は審議を進めていくべきものだというふうに私は考えます。
  56. 菅野久光

    菅野久光君 先ほどのお話のように、文教懇の報告が臨教審の今後の審議のたたき台になると、たたき台になるといいますか、参考になるといいますか、参考にすると官房長おっしゃいましたか。そういうことは今大臣の方からも十分参考にできるものは参考佐して審議をしていくのがいいんじゃないかというような趣旨の発言をされましたが、私はやっぱりその辺にも問題があるということをこの際指摘をしておきたいというふうに思います。  教育改革に対する必要性というものは、新聞等の報道でも八割以上の国民がその必要性を感じているところであります。その点で国民の教育改革に対するコンセンサスは得られているというふうに私も思います。しかし、いざどのような点が問題であってどういった改革が必要か、こういう点になりますと、千差万別という感があるのでありますけれども、まず最初に現在どのような点について国民は改革を望んでいるのか、その点のひとつ基本認識をお伺いいたしたいというふうに思います。
  57. 齋藤諦淳

    説明員(齋藤諦淳君) 臨時教育審議会ではいろんな各種の審議会の意見でありますとか、あるいは団体の意見でありますとか、そういうものも分析し、あるいは学者そのほかの学識経験者を講師として招いていろいろ勉強をしておられるところでございますが、そういうようないろんな考え方を吸収しながら、四つの部会に分けてこれからいろいろな検討課題を審議をしたいと、こういうようにしているところでございます。そこでは戦前、戦後教育の評価と、あるいは教育の目標でありますとか、あるいは高度科学技術化とか情報化とか、そういう世の中の動きに対してどういうようにするかとか、あるいは学歴偏重社会の是正をどうするかとか、そういうようないろんな問題点、検討課題を指摘されておるわけでございますけれども、そういう指摘を十分整理してこれから諸般の改革について検討を重ねたいという、こういうことでございます。そういう意味では二十一世紀社会を展望した教育、それから学歴社会をどうするか、社会のいろんな教育機能をどうするか、初等中等教育の改革はどうあるべきか、高等教育の改革をどうするか、あるいは学制とか入試問題をどうするかとか、万々にわたっての問題意識を目下整理をしているという、こういう段階でございます。
  58. 菅野久光

    菅野久光君 教育改革は憲法、教育基本法に基づいて行わなければいけない、これは第一条の趣旨にもそういうことで確認をされているわけでありますが、現在いろいろ言われている教育上の問題というのは、いわば経済の高度成長等による社会変化あるいは文化の発展という状況変化に対して、文教行政が対応できなかったという点にあるというふうに思うのでありますが、教育基本法に問題があるというような発言をされている方々もいらっしゃるわけでありますが、これは全く私は当たっていないというふうに思うんでありますが、この点の大臣の見解についてお伺いをいたしたいと思います。
  59. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 今回の教育改革を実施するための審議をしていただく臨教審につきましては、先生よく御承知のとおり教育基本法の精神にのっとって教育改革に取り組んでいく、そのためのいろんな意見をちょうだいするために臨時教育審議会は設置されたものであります。したがって、政府としてはあくまでも教育改革は教育基本法の精神にのっとって進めていく。また、改革に関連する論議も教育基本法の精神にのっとってやっていただきたいと期待をいたしておりますが、しかし実際の審議の場において個々の委員先生方がいろいろな議論をなさることを私どもの立場で制約などするわけにはまいりません。また制約を加えることも考えておりませんが、政府の立場はあくまでも教育改革は教育基本法の精神にのっとって行う、また臨教審における審議並びに結論としての答申も、教育基本法の精神にのっとってやっていただきたいというふうに期待をいたしておるわけであります。
  60. 菅野久光

    菅野久光君 臨教審設置法の第一条に、「教育基本法の精神にのっとり、その実現を期して」改革を図りと、こういうふうにあるわけで、臨教審での教育改革の枠をここで示したというふうに思うわけでありますが、中曽根総理、森前文部大臣も教育基本法は変えないし、その精神にのっとって改革を行っていきたいと再三再四答弁しておられました。松永文部大臣の考えも今同じように全く同じ考えだというふうに思います。そこで、教育基本法の精神というのは一体何なのか、そこのところを現職文部大臣としての考えをひとつお聞かせいただきたいというふうに思います。
  61. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 教育基本法の第一条にありますように、教育は個々人の人格の完成を目指すというのが教育の目標として掲げられておるわけでありまして、これは日本国憲法の精神に従って具体的な教育の目標を指し示したものと私は理解をいたしております。
  62. 菅野久光

    菅野久光君 教育基本法はもう申し上げるまでもなく憲法に従ってできたものでありますから、基本的人権の確立だとか、民主教育あるいは平和教育、教育の機会均等等にあって無償性の義務教育を初めとする公教育の本格的な拡充、条件整備の拡充充実を要請している、これが教育基本法の大筋といいますか、大事なところだというふうに思うわけであります。教育基本法の精神にのっとり、その実現を期して改革していくための審議を行うということは、教育改革をその線で構想していくというふうに思うわけでありますが、この点の認識として大臣は同意をされるでしょうかどうか、その辺をお伺いいたしたいというふうに思います。また、教育基本法が制定されて以来三十七年を経た現在において、教育基本法の精神は国民の間にどのように浸透し、不徹底なところがあるとすればどういったところだと考えておられるか、その辺大臣のお考えがあればお伺いいたしたいと思います。
  63. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) たびたびお答えいたしておりますように、新憲法が制定され、その新憲法の精神に基づいて教育基本法が制定をされ、その教育基本法で我が国の教育の目的が明示をされ、そしてそれに基づいて具体的な事柄の中の重要項目についても規定をしていただいておるわけでありますが、そうした教育基本法の精神にのっとり、これを踏まえて教育改革も進めてまいりたいと、またまいることになっておるわけであります。  教育基本法が、どの程度我が国にその精神が確立をしておるかというお尋ねでございますが、私どもとしては、今日まで教育基本法の定める原則、その精神の実現に向けてさまざまな努力をそれぞれの教育の場で積み重ねてきたわけでありますが、これからもそういう努力を積み重ねていきたいというふうに考えておるわけであります。
  64. 菅野久光

    菅野久光君 最近の新聞報道等によりますと、臨教審の委員の方が、ある教職員団体の教育改革シンポジウムの席上で教育基本法の見直し発言をしたことや、第一部会長が、二十一世紀を考えた場合教育基本法がそれにマッチするかどうか皆さんの意見を聞きたいと発言されたりしているわけでありますね。教育基本法自体をその俎上にのせるような発言をしているということ、この点に対して、設置法の第一条の趣旨からいって逸脱する発言ではないかと。自由濶達な論議はいいけれども、それはやはり設置法の第一条の枠の中での自由濶達な論議ということになるのではないかというふうに思うわけでありますが、その辺の見解をひとつお伺いいたしたいと思います。
  65. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 臨教審の委員先生方も教育基本法をよく御存じでありましょうし、また臨教審設置法もよく御存じであるわけでありまして、政府としては、先ほどお答え申し上げましたとおり、今回の教育改革は教育基本法の精神にのっとって行うということなのでありますから、委員先生方もそのことは十分わきまえて具体的な教育課題の審議はしていただけるものと期待いたしております。  ただ、先ほどもお答え申したとおり、各委員先生方がいろんな場で御発言なさる、あるいは御意見をお述べになる、そのことについて制約を加える立場にはありませんし、また臨教審の場における御意見というものは、私どもとしては教育基本法の精神を踏まえて発言をなさるものと期待はいたしておりますけれども、個々の委員先生方の発言を私どもの方から制限をしたりなどすることは、自由濶達な意見の開陳の妨げになるとは思いませんけれども、そうとられてもいけませんので、できる限り委員先生方の発言は自由濶達にやってもらいたいと、またやられることを私どもはとめるわけにはまいらぬと、こういうわけでございまして、個々の委員先生方のいろんな場での発言等について私どもの方で云々する立場にないと、こういうことなのでありますので、御理解を願いたいと思います。
  66. 菅野久光

    菅野久光君 その点については、まあ理解をしてくれと言われても私は理解ができないのであります。というのは、委員というのは委員会審議をするときだけが委員ではなくて、任命されている期間を通じて委員であるわけですね。それだけに一言一言その発言されることというのは非常に重要な意味を持っていると、このことはだれでもやっぱり理解をしていただけるのではないかというふうに私は思うんです。政府の従来からの答弁も、今大臣が御答弁になりましたように、臨教審の具体的審議の場での議論に対しては制約を加えないが、出される答申自体は教育基本法の精神にのっとって出されるものと期待していると、こういうふうに答弁されるわけでありますが、設置法の一条によって「教育基本法の精神にのつとり、」とうたわれていて、いわば基本法の堅持は論議の前提条件になっている。委員の口からこの基本法の見直し云々が起こるのは、その委員自体この設置法をよく理解されていないのではないか、理解されているというふうに大臣はおっしゃられましたが、私はよく理解していないのではないか、あるいはそうでなければ、発足時の人選を誤ったのではないかというふうに思うわけでありますが、基本法の理念に変更を加えるような意見を持つ者は、極端に言えば委員の資格はないというふうに思うわけですが、この辺の見解をひとつお伺いいたしたいと思います。
  67. 齋藤諦淳

    説明員(齋藤諦淳君) 臨時教育審議会におきましては今まで十回審議があったわけでございますが、そのうち八回までの審議については「経過の概要」として世の中に公表さしていただいたわけでございます。そこにも明らかになっておりますけれども委員の皆様方は、諮問理由にある「教育基本法の精神にのつとり、」というこれはどういう趣旨であろうかという、そういう質疑応答が行われたりしております。そういうことが教育基本法についていろいろ議論があった、こういうふうは一部言われておったりしておるわけでございますけれども、なおまた他方、教育行財政の各種の規制の見直し、あるいは教育分野への民間活力の導入の必要性という、そういうことを議論されたときもあるわけでございまして、このことについても「経過の概要」で公表されているところでございます。それから、「二十一世紀を展望した教育の在り方」という中には、従来の教育基本法がどのように実現されてきたのかという、そういう問題もいろいろ検討をするという、そういうことも含まれるのではないかという、こういうことも言われておるわけでございますけれども、例えば、「教育基本法の精神にのつとり、」ということにつきましては、政府としては、先ほど大臣がお答え申し上げました趣旨説明がなされておるわけでございますし、それから義務教育とか、そういう規制の見直しにつきましてはまだ、それに対するいろんな慎重な議論も同時になされておるわけでございます。  そういうような意味におきまして、全体として、教育基本法の規定するその対象事項に触れることが間々あるわけでございますけれども、そのところは全体として、政府が「教育基本法の精神にのつとり、」と、そのことを期待しているということを踏まえて議論がなされているものと、こういうように理解しているところでございます。
  68. 菅野久光

    菅野久光君 「概要」の問題についてはまた後からやらさせていただきますけれども。  先ほど申し上げましたように、今国民の間から、教育改革については八〇%の国民がやらなきゃだめだということでコンセンサスを得ている。しかし、その中でやっぱり心配なことは、先ほど言いましたように、教育基本法の見直し論、これに対して大きな危惧が国民の中にやっぱりある。そのことをしっかりひとつ事務局の方も把握をして、国会でそのことが論議になっているということも含めてこれからやっていってもらいたいというふうに思うわけです。  教育基本法のことについては、「教育法」という本の中に次のようなことがありますから、これは参考までに私は読み上げてみますので、後から感想があれば感想をお聞かせ願いたいと思います。   臨時教育審議会は、「教育基本法の精神にのつとり」、「その実現を期して」改革を図ることにより「同法は規定する教育の達成に資する」ことが目的とされている。   審議会の目的の中に、このように教育基本法の精神にそった方策の実現が二重三重に強調されているものは他に例を見ない。きわめて異例なかたちでこのような規定がなされたのは、いうまでもなく、臨時教育審議会が審議を通じて教育基本法の実現を大前提としていることを示している。この点では、一九五五年末の国会に提出された臨時教育制度審議会設置法案が、教育基本法の改正をはじめとした教育制度の再検討を目的としていたのとくらべてみると、まさに対照的である。   教育基本法の精神にのっとり、その実現を期する方向で審議を行うということは、同法の定めを日本の教育制度の目的として再確認したことを意味する。したがってこの審議会の基本的な課題は、戦前の帝国憲法のもとで教育勅語を中心に構築された教育体制を否定し、民主主義と平和、人権の尊重を基本とする憲法=教育基本法の精神に立って、その一層の実現をはかることである。公教育、義務教育の無償、教育の平等化と個性化、行政の条件整備義務などを前提として、そのいっそうの実現をはかる方向で教育改革が追求されなければならない。   このことについて一、二具体例をあげれば、現代学校の病理現象から公教育不用論や義務教育解体論を導いたり、公教育費が多すぎるから大幅削減、効率的使用をすべきであるといったり、あるいは、人間の能力や適性は多様であるから学校教育を種別化、階層化した方がよいと主張するなどのことは、教育基本法の実現とはまったくかけ離れたものなのである。   審議会の大前提の中身にもし委員の一致がみられないなら、いくら具体的な提案が出されても無意味である。そんなことにならないように、臨時教育審議会ではまず、この大前提の中身を共通に確認するために、十分時間をかけて論議し、世論を聴かなければならない。  これはある学者の論文でありますけれども、このことは、私は多くの国民が今度の教育改革に当たって、やはりこういったような考え方でおられる方が大勢いらっしゃるのではないかというふうに思うわけですが、今のことについて何か御感想があればお伺いいたしたいと思います。
  69. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 後で先生からその本を見せていただくとありがたいんですが、今先生がお読みになった事項につきましては、大いに参考にさしていただきたいと考えました。
  70. 菅野久光

    菅野久光君 本そのものは、コピーで持ってきましたので、後ほどお届けしたいというふうに思います。  次に、教育基本法の精神と条文の関連についてお伺いをいたしたいと思います。  森前文部大臣は、教育基本法の精神と教育基本法に九年と定められている義務教育の年限について質問を受けたときに、現行の九年間を短くするなら基本法の精神に触れるが、長くするというのなら基本法の精神に反しない旨の答弁委員会の席上で行っているのでありますが、このような答弁の裏には、あるいは勘ぐるようなことになるかもしれませんが、一つの条文の変更からなし崩し的に全体を変えていくようなことをあるいは考えていらっしゃるのではないかというふうに警戒の念を強めるわけでありますが、この点、現大臣としてどのように考えておられるか。そして、基本法の精神にのっとることと基本法の条文堅持はイコールと考えているか、それとも基本法の精神にのっとった上での条文の変更追加等可能と考えておられるのか。その点をお伺いいたしたいと思います。
  71. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 今次の教育改革を目指す基本的な立場は、先ほど来申し上げておりますように、教育基本法の精神にのっとり、その実現を期して改革をしていくわけでありまして、それが政府の基本的な方針であります。  今御指摘の教育基本法の第四条、義務教育の年限に関する規定の問題でありますが、前森文部大臣は、日本の教育の水準をより一層向上さしていきたい、そういう精神で今御指摘のような御発言をなさったものと思います。これはすばらしい見識だと思います。この教育基本法の第四条の定め方は、国民に九年の義務教育を受けさせる、その義務を国民は課しておる、表面的な規定の仕方は。しかし、国の側はこの四条の規定を受けて、義務教育をぴちっとなされるように、きっちりなされるように国の側ではやはり義務があるんじゃないかと、こういうふうにも反面とれるわけであります。その国の義務が短くなるようなことは、先ほど森大臣も申したとおり、教育基本法の精神にもとることになりはせぬか。長くしていくことならば日本の教育水準を向上させることでもありますし、あるいは国の義務が軽減されるんじゃなくして、むしろ大きくなること、国の責任が大きくなることでもありますから、その意味で教育基本法の精神には反しないと、こういった御答弁があったものと理解をいたします。  私は教育基本法は、一番大事なのは前文とそれから第一条の「教育の目的」であろう。臨教審設置法の「教育基本法の精神にのつとり、」というのはまさにそこらに重点を置いた規定ではなかろうかと、こういうふうに思うわけでありまして、その精神にのっとって改革を進めていくというのが私どもの考え方であります。
  72. 菅野久光

    菅野久光君 時間がございませんので、必ずしも十分な答弁をいただくということにちょっとならないのは残念でありますが、また別な機会にやらさせていただきたいと思います。  大臣は就任直後の新聞のインタビューで、来春の三月か四月にも第一次答申を得たい旨の発言をされているわけでありますが、その意図するところをまずお伺いをいたしたいというふうに思います。  新聞によりますと、行革の第二臨調が発足から約半年で第一次答申をまとめたことで、国民のムードが盛り上がり非常にうまくいったとして、臨教審についても発足後半年をめどにしてほしいと述べて、大学入試に対する答申をまとめてほしいとの考えを示したというふうに書かれてあるわけですが、この点も確認をしたいというふうに思います。
  73. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 先生が今申されたようなことに近い発言をしたことは事実であります。それはどういうことであったかと申し上げますと、先生よく御承知のとおり、私が就任する前に既に臨教審ではいろいろな議論をしていただいた上で、答申は最後にまとめてするんじゃなくして、大体議論が尽くされてまとまったものが出たならば、逐次答申をするという方針を臨教審の方で自主的に取りまとめていただいた。その後に私は時間的に言えば就任をしたわけであります。先生も先ほどからおっしゃっておりますように、今次の教育改革につきましては国民も非常に大きな関心を持っておりますし、また大きな期待も持っておるわけでありまして、そうした国民の関心と期待とにこたえる意味では、一つには大変御苦労なことでありますけれども、臨教審の先生方に極力精力的に御審議をしていただきたい、そして御審議の上結論が出たといいましょうか、意見がまとまったものがあれば、その方針は決めてあるわけでありますから、逐次答申という。その答申を出していただきたい、そのことが国民の期待にこたえるゆえんであるというふうに私考えましたんで、私の考え方を申し上げたわけであります。  そしてまた、そのときもちょっと申し上げたわけでありますが、国民の一番関心の高いのは入試制度の改善ではなかろうかなあ、この入試制度の問題につきましても臨教審で論議をしていただくその論議の対象にしていただいているものですから、そこらあたりのことはなるたけ早く出していただいた方が国民の期待にこたえるゆえんである、望ましいという私の言うなれば願望を申し上げたわけであります。新聞記者の質問に質問されるまま自分の願望を率直にその新聞記者にお答えしたというのが事実でございます。
  74. 菅野久光

    菅野久光君 いろいろなかかわりを含めて早期答申というようなことがいろいろ出されているようでありますけれども、国家百年の大計、まさにこれからの日本の教育の方向を決めるというような、そういうことの中でやっぱり拙速はぜひ避けてもらいたいというふうにこれは思うわけで、何か一部にはですね、一部かどうかはわかりませんが、中曽根政権のうちにある程度の答申を得て、そして教育改革の方向についての政策的なものをやっていかなきゃならぬというようなことで、答申を急がせているというようなふうに考える向きもあるわけでありますが、先ほど申し上げましたように、これからのやはり教育の方向を決めるという段階ではやっぱり拙速主義は避ける、避けなければならないというふうに思いますし、審議会の独自の意思でということはそれなりにいいわけでありますが、特に総理や関係の文部大臣がいろいろ発言をされると、そのことが非常にやっぱり大きな影響があると、審議会それ自体の運営にもかかわってくるようなことにもなるのではないかというふうに思うわけでありますから、ひとつ発言については、慎重になさっているとは思いますけれども、特に答申の時期等の問題については慎重にひとつやってもらいたい、このように思います。  それから、事務局にちょっとお尋ねいたしますけれども、この臨教審の法案を審議するときに、国会で審議をした事柄についてはこれはもう臨教審の委員の方々に十分参考にしていただいてと、こういうふうなことを森前文部大臣が答弁されていたわけでありますが、委員の方々には国会での臨教審に関する審議の状況の会議録、こういったようなものについてはお配りしてありますかどうか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  75. 齋藤諦淳

    説明員(齋藤諦淳君) 全文ではございませんけれども、主要な事項を抜粋いたしまして御配付さしていただいております。
  76. 菅野久光

    菅野久光君 主要な事項というそこが問題だと思うんですよ。さっき概要の問題も、これは後から言いますけれども、極めて評判が悪い。主要なものというのは事務当局の恣意的なものだけをコピーをして持っていったということにとられてもこれは仕方がないわけでありますが、どうして全文を配らないんですか。
  77. 齋藤諦淳

    説明員(齋藤諦淳君) 全文は事務局にございまして、絶えず先生方の目に触れるようにしております。ただし、先生方のお手持ちとしてはその中から、いろんな問題点があるので重要なものについては、委員として知っておくべき重要なものについては抜粋をつくってくれというこういう御要望がありましたので、そういうようにして配付さしていただいた次第であります。
  78. 菅野久光

    菅野久光君 これは納得できませんね、委員会で前の森文部大臣が約束をしているわけですから。また、国民の期待を担って審議をされる委員としては当然国会でどんなことが論議されたか、このことを踏まえて言ってもらわなければ、国会で何のために長い時間をかけて論議したのかわからないではないですか。その点極めて私は不満ですし、そんなことであっては困る、国会としても困る、そのことを事務局の方に申し上げておきます。  大臣は就任直後のインタビューで、またその問題ちょっとお伺いいたしますが、廃案になった教職員免許法等改正案の今後の取り扱いについて聞かれて、これは臨教審でいろんな議論がされる重要な分野の一つだと答えられております。そうなると臨教審答申が出るまで免許法改正案の再提出は見合わせるのかとの引き続きの問いに対して、大臣になったばかりでその点は頭になかった、これからは事務当局とよく相談してみるとつけ加えた、そういうふうな記事が出ていたのでありますが、これは文部行政と臨教審の審議という並列的な行き方に対する困難の表明にも受け取れるわけですけれども、実際この免許法の扱いはどのように取り扱っていくか、既に文部省としての意思決定ができているのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  79. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 今先生指摘のように、私が就任して翌日かなんかの記者会見でございますから、事務当局からほとんどと言っていいですが、説明等を聞かないまだ白紙の段階のときの記者会見なんでありまして、その意味で率直に、わからぬ点はそれはまだよくわからぬから事務当局から話をよく聞いてそしてお答えしますと言った点もありますし、それはわからぬから答えられぬと言った点もあるわけで、就任した翌日ないしは翌々日に新聞記者と会ったときの私の発言なんでありますが、率直に何といいましょうか、もう何も隠さずに自分を丸出しした形の実は記者会見であったわけであります。  今の御質問でございますが、文部省としては、前回出した教員免許法の改正法案でございますが、あの法案に盛られている内容につきましては実は早期に実現することを希望しておるわけであります。しかし、その当時はまだ臨教審がスタートしてないときであったわけでありますが、その後臨教審がスタートをし、そして教員の資質向上、そして教員の養成、これが重要な検討事項の一つとして取り上げられているところでもありますので、法案の取り扱いについては臨教審の審議状況をも見ながら現在慎重な検討をいたしておる、これが実際のところでございます。
  80. 菅野久光

    菅野久光君 教育改革という今最も国民注視の問題をこれから推進していくということでありますから臨教審と文部行政とのかかわり合い、こういうものを明確に示していってもらいたいというふうに思うわけであります。  きょうは時間の関係で後からやれるかどうかわかりませんが、共通一次の大学入試の問題も前の大臣はこれは文部省固有の行政の問題だというようなことを言われて、臨教審でやることではない旨の発言をされているわけですが、そういったようなことなどは後から時間があればひとつお聞をいたしたいというふうに思います。  次に、教育改革は国民にとって今最も関心のある問題であるだけに、この臨教審の審議というものをできるだけ国民に開かれたものにしていくべきだとの観点に立って、この審議会の公開を法案の審査段階より求めていたのでありますが、政府の意向どおりと申しましょうか、公開にならなかったのは非常に残念だと思うのであります。結局会合の都度その概況を公表し、審議経過の概要を取りまとめ適宜公表するとのことのようでありますが、こういった手段をとる場合、できるだけ審議の様子を忠実に伝えることが必要だと思っているわけであります。  そこで、十一月十四日に最初の審議経過の概要が出されているわけでありますが、このできばえについての大臣のひとつ評価をお聞かせいただきたいと思います。
  81. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 先生の御指摘になりました「審議経過の概要(その一)」につきましては、抽象的ではないかというようなことで余り評判はよくないような面もあるやに見受けられますけれども、ただ第一回から第八回までの審議経過の報告が審議経過の概要の公表の第一回目なんでありますけれども、その中身は第一回から第八回までであったわけです。この第一回から第八回までは何といいましょうか、問題点の指摘あるいは検討課題の指摘、それから審議会の運営の原則、こういったものが中心となっておった関係もありまして、それでどうも抽象的だなあと、こういった批判が出たのじゃないかと思います。しかし、これからの分は審議が深まってまいるわけでありますから今までのような無味乾燥といいましょうか、そういったものじゃなくしてもっとわかりやすい、そしてまた具体的なものとして公表がなされるのじゃなかろうかというふうに期待いたしておるわけであります。
  82. 菅野久光

    菅野久光君 大臣が率直な評価をされているようでありますが、本当に箇条書き的に何か、私も見たわけでありますけれども、羅列しているだけで委員の生のやりとりの様子などが全くわからないまま無味乾燥なものになっている、こういう評価が一般的になっていて、これも事務局が案文をつくったということではさもありなんというような言葉さえ聞かれるわけであります、非常に残念なことでありますけれども。特に外部に出たら論議になりそうな重要な発言を削ってしまっているのではないかというふうに思うわけでありまして、新聞等の報道では委員の間でもかような審議経過の概要はおかしいと批判続出ということであったということであります。例えば先ほどから言いましたような教育基本法の見直しのような発言があったにもかかわらず、そういうものを削ってしまっているのではないかという気がしているのであります。審議運営については、これ委員の中からも国民の面前で正々堂々自由濶達な論議を闘わせる中から、教育改革のための合意形成を目指すという基本を片時も崩してはならない、そういう意見も出されているんですね。この点についてはどのように思いますか。
  83. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 審議経過の概要の報告の関連でございますが、率直なことを申し上げまして、今までの審議会は大体事務当局で概要の報告などは書いてそのとおり外には出るというふうなのが通例でございました。しかし今度の場合は、今先生の御指摘もありましたように、委員先生方がむしろ自主的に取りまとめられたといいましょうか、事務当局側で概要報告のたたき台みたいなものを用意していったら大変しかられて、ほとんど大部分書き直されたみたいな形があるわけでありまして、そういう意味では審議会の方で、臨教審の委員先生方の方で自主的に概要報告の取りまとめもなされると、こういったような非常に何といいましょうか自主的な運営がなされておると、こういうことなんでありまして、今までの審議会とはやや趣を異にして、本当に自主的にかつ自由濶達な論議がなされ、かつ概要の報告等もこれからはもう少し中身の濃いものになるものと私は期待をしておるわけでありまして、この次の概要報告をひとつ期待しておいていただきたいと、こういうふうに思うわけであります。
  84. 菅野久光

    菅野久光君 臨教審の会議の公開の問題については、随分委員会の中でも論議をいたしましたし、また参考人、それから公聴会、これをやった中でも、教育にやっぱり秘密はない、公開にすべきだというそういう御意見がほとんどで、秘密会でやるべきだという意見は一つもない。そういったようなことなどを踏まえてやはりやっていかないと、国民的なコンセンサスを得た臨教審の答申ということになっていかない、そのように私は思います。特にこの概要の報告の問題については非常に大きな問題があるんで、会議も公開しない、議事録をつくっても外に出さないということでは、外部の人間にとっては臨教審での審議状況を知るには審議経過の概要を頼りにせざるを得ないわけでありますが、今後出てくる概要が今回のようであっては、臨教審には霧がかかって中身が見えにくいというふうに言わざるを得ないわけで、工夫をしたいというような、あるいは工夫をされるようなことが委員の中でもいろいろ論議をされているというお話でありますが、何とかここのところは工夫をして、もう少し具体的な国民にわかるようなそういう概要といいますか、そういうものにしてもらいたいというふうに思うんですけれども、その辺はいかがでしょうか。
  85. 齋藤諦淳

    説明員(齋藤諦淳君) 「(その一)」については先ほど大臣から説明ありましたような経過でございましたけれども、臨教審の委員の中にもさらに一層の工夫をしたいという気持ちが非常に強いようでございまして、事務局といたしましてはその意向を最大限に生かすように努力をさしていただきたいと、こう思っているところでございます。
  86. 菅野久光

    菅野久光君 そういうことでひとつ努力をしていただきたいと思います。  また、議事録はつくられるわけでありますが、この議事録は絶対外部に出さないのかどうか、その点をひとつ確認をしたいというふうに思います。
  87. 齋藤諦淳

    説明員(齋藤諦淳君) 総会におきまして、議事をまとめたものについてはそれは外に出さないことにして、ただし会長が毎回総会の後記者会見をして十分その内容を伝えるということで合意がなされておるわけでございます。
  88. 菅野久光

    菅野久光君 会長が記者発表をするということで、議事録そのものは絶対外部に出さないということで確認してよろしゅうございますね。
  89. 齋藤諦淳

    説明員(齋藤諦淳君) 審議会ではそのように確認をされております。
  90. 菅野久光

    菅野久光君 ではその点は確認をしておきます。  ジュリストのこれは十一月十五日号でありますが、毎日新聞論説委員の原田さんという方の書いた「臨教審のねらいとその将来」というところに、「臨教審は自由な議論を妨げられるからという理由で議事録すら非公開とする方向にある。その一方で、自民党の「教育改革に関する特別調査会」には議事録を渡すという。臨教審は国民の合意というより、”自民党の合意”のうえに立った教育改革をめざしていると言わざるを得ないではないか。」という文がありますが、これは実態と違うんだということで私の方で確認をしておきます。よろしいですね。
  91. 齋藤諦淳

    説明員(齋藤諦淳君) 自民党の特別調査会におきまして「臨時教育審議会の審議状況について」という資料を配付さしていただいたことがございますけれども、それはこの審議経過の概要よりもさらに簡単なものでございましたけれども、そういう資料は配付さしていただいたことはございます。そのほかはございません。
  92. 菅野久光

    菅野久光君 じゃそのことは確認をしておきます。  合意を得るということ、国民的な合意を得るということが教育改革の場合には非常に大事であります。そこで合意を得るために臨教審でいろいろ論議されたことがストレートに答申ということで出されるのではなくて、臨教審で素案的なものをつくってそれを国民に投げかけて、国民の間からまたいろいろそのことについての意見を吸い上げてそしてさらに案を練っていく、そういうことが国民的なコンセンサスを得るための教育改革としては必要ではないか。そのことなしに国民的な合意を得る教育改革はできないのではないかということを私は内閣委員会の臨教審の審議のときに言っています、議事録にも載っていますから。これは森文部大臣も案をフィードバックして、そしてさらにそれを返してもらって案を練るということを言われております。これは内閣委員会会議録第十九号昭和五十九年七月三十一日の二十六ページから二十七ページにかけてそのことが出ているわけでありますが、このことも含めて、どうも国会で論議されたことが本当に審議会の中に生かされていないのではないかというふうに私は思わざるを得ないわけです。その点もう少し事務局も含めて国会での審議の状況というものをしっかり把握をして、この審議会の運営というものに当たってもらいたいというふうに思います。特に今回の臨教審のメンバーは言えば教育の専門家的な方はほとんどいないといってもいい状況でありますが、こういったようなことでは本当の教育改革ということが難しいのではないかということになるわけですが、しかしこの審議会で専門委員を任命することができるわけでありますから、教育専門家の意見を専門委員という形で反映させることはできるわけであります。この教育専門家の意見をいかに反映させるかということも、国民のコンセンサスを得る上で非常に大事なポイントだというふうに思うわけであります。最近アメリカでも教育改革のための審議会的なものをつくっておりますが、それはほとんどメンバーがすぐれた教育の実践家でつくられているというようなことも聞いているわけであります。教育専門家の少ない臨教審を補うとすれば各部会の専門委員の充実ということ、このことが非常に大事になってくるというふうに思うのですけれども、専門委員の選考基準だとか選考作業、これがどうなっているのかお伺いをいたします。
  93. 齋藤諦淳

    説明員(齋藤諦淳君) 審議会に置かれる専門委員につきましては、臨教審の設置法によりまして総理大臣が文部大臣の意見を聞いて任命されることとされておりますけれども、その前に臨教審の会長にあらかじめ意見を聞いておきたいということが文部大臣よりお申し出がございました。この依頼を受けて会長は今意見を取りまとめておられまして、文部大臣に申し上げることになるものと了解しております。  専門委員の選任につきましては、それぞれの専門的事項について学識経験のある者からより専門的に審議が深められるように審議される、そういう基準で選ばれるもの、こういうように考えているところでございます。
  94. 菅野久光

    菅野久光君 臨教審の委員の選任のときでもそうでありましたけれども、特に教育の専門家についてはいろいろな考え方を持っていらっしゃる専門的は造詣の深い方をということで、これは偏らない人選ということは非常に難しいわけでありますけれども、しかし今度は専門委員の任命の仕方によってこれはやっぱり臨教審がどんな性格を持っているものかということを国民は判断せざるを得ない、そのように思うわけで、この委員の選任に当たってはぜひ慎重に、そしていろいろな角度からひとつ検討してやっていただきたいということを私は特に要望をしておきたいと思います。  時間があれですから、次に義務教育費の国庫負担法改正を取り巻く問題についてお伺いいたしたいというふうに思います。  一九八五年度の政府予算案の決定期を前にした十一月の十二日というふうに聞いておりますが、大蔵省は文部省所管の概算要求より一千億円程度削減する査定方針を固めて、義務教育費国庫負担制度の削減のメスを入れる方向を明らかにしてきた。その内容はこの制度の中より学校事務職員及び学校栄養職員の人件費の二分の一国庫負担を廃止することを中心に、共済費、旅費、恩給費、教材費等の廃止等、財政上余裕のある地方交付税不交付団体についてはこの負担金を一〇%削減する、私学助成金は前年度以下とする、こういったようなものであったというふうに聞いておりますが、このことについては間違いはございませんか。
  95. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 義務教育費の国庫負担制度につきまして、十一月の中旬以降であったかと思いますけれども財政当局の方からある改革を考えてはどうかという御提案をいただいたことは事実でございます。その他のことにつきましては、直接そこまでのやりとりはまだこれまで行われていないと、こう存じております。
  96. 菅野久光

    菅野久光君 この提案を得て文部省としてはどのように対応されたのか、その辺をお伺いいたしたいと思います。
  97. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 義務教育費国庫負担制度の問題でございますが、先生承知のとおり義務教育というものは全国どこに行ってもその水準が平準化するように、部会のど真ん中もずっと田舎の方であっても義務教育は一定水準が維持されておる、こういうことが義務教育の本旨からいって非常に大事なことなんでありまして、そういうことのために義務教育費国庫負担制度ができておるものでありまして、今まで非常に大きな役割を果たしてきたというふうに私は考えております。その意味で、財政が厳しいからということでこの義務教育費国庫負担制度の基本を崩すようなことがあってはならぬ、あくまでも義務教育費国庫負担制度のその基本は堅持していかなければならぬというふうに私は考えておりまして、そういう方針でこれから対処していきたいと、こう考えておるわけであります。
  98. 菅野久光

    菅野久光君 これについての何か意見書を出した、十一月の十八日の毎日で「義務教育の国庫負担削減 文部省”真っ向”反論 意見書」というような記事が出ておりますが、これは間違いございませんね。
  99. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 財政当局からのサゼスチョンに関しまして種々部内で検討等をいたし、その段階で幾つかのメモ等をつくったことはございますけれども文部省として最終的な見解としてまとめたとかそれを外部に示したとか、そういうことはございません。
  100. 菅野久光

    菅野久光君 そうするとこれはまだいわば省内での何というのですか、意見の取りまとめといいますかそういう段階で、それを外部に出すということはないということで理解をしてよろしゅうございますね。
  101. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) おっしゃるとおり部内でいろいろ検討しております段階のメモがどこかへ流れたということでございまして、文部省として何かを公式に決めたとかいう段階のものではないわけでございます。
  102. 菅野久光

    菅野久光君 今のところはそういう話があったということで、このことについての何か具体的な最近の動きというようなことはないというふうに思ってよろしゅうございますか。
  103. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) もちろん内部で十分検討し対応策を練っておるところでございますけれども、具体にこれについてこう対応をするという具体の方策を決めたというようなところに至っておりません。これから暮れの予算編成にかけまして論議の一つの大きな問題になってくるだろうということは覚悟し、そのための対応策を練っておるところでございます。
  104. 菅野久光

    菅野久光君 これは今の国の財政状況から見れば、このことは大蔵省として当然文部省に対して強い要求となってあらわれてくるというふうに想定される問題だというふうにとらえなければならないと思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。
  105. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 財政事情から考えましてかなり真剣な御提案であるというふうには理解をしておるわけでございますが、それだけに私どもの方も慎重に、それから先ほど大臣からお答え申し上げましたように義務教育費国庫負担制度の重要性というものにかんがみまして、その基本を揺るがすことがないようにという姿勢を中心に慎重な検討をしておるところでございます。
  106. 菅野久光

    菅野久光君 間もなく予算編成が本当に大詰めを迎えてくるこういう段階で、いわば義務教育費国庫負担法の根幹に触れるこの問題は何といってもやっぱり大事な、しかも今臨教審で教育の問題をやっているときに、こういったような問題が同じ政府部内の大蔵当局でいろいろ論議されている。なんか見ますと教壇に立つ立たないということが一つのめどだなんていうようなことでやられる。そういうことについては私は何としてもこれは納得できないわけでありますから、これはただ単に一文部省の問題ということではなくて、まさに何といいますか、よくこの予算折衝でやるようないろいろな立場、いろいろな角度からの義務教育の国庫負担制度を守る、そういう運動といいますか、そういう働きかけというものをしなければならないというふうに思うんですけれども、その辺は文部省としてどのようにお考えでしょうか。
  107. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 既にこの問題に関しましてはいろいろな団体等からこれを心配しての御意見等も承っております。私どもとしましてはそういった御意見等も十分拝聴しながら最後の対応を考えていきたいと、かように思っているところでございます。
  108. 菅野久光

    菅野久光君 学校事務職員だとかあるいは栄養職員の学校教育上あるいは学校運営上の位置というものを、文部省はどのようにお考えか、ただ単に教壇に立つ立たないということで大蔵省はいろいろ言っているやに聞いているわけですけれども、その辺のやっぱり文部省としての位置づけというものをきちっとしていかないとならないというふうに思うんですけれども、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
  109. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 学校教育の場で直接教壇に立つ先生も、それから事務職員や学校栄養職員も、学校の基幹的職員でありまして、教壇に立つ先生とともに極めて重要な役割を果たしておるものと考えております。
  110. 菅野久光

    菅野久光君 大蔵省おいでですね。大蔵省にお尋ねいたしますけれども、特に来年度予算案では学校事務職員と学校栄養職員の国庫負担の廃止等、財政力に余裕のある地方交付税不交付団体の負担率の一〇%削減の方針を財政制度審議会第一特別部会に説明し、この第一特別部会は十一月二十一日に開会し、小委員会を設置して集中的に審議を行い、十二月上旬までに報告書をまとめることを決めたやに聞いておりますけれども、この辺はどのようになっておるのでしょうか。
  111. 武藤敏郎

    説明員(武藤敏郎君) 文教予算につきましては現在検討作業を行っておるわけでございまして、その一環といたしまして、財政制度審議会におきましてもこの問題、義務教育国庫負担金のあり方等についての御議論がございます。私どもの方からも、事務局からその審議会の委員の皆様方に現状等につきまして御説明をさしていただいたわけでございます。財政制度審議会といたしましては予算編成の大詰めを迎える直前に例年どおり建議等を出す手はずになっておるわけでございまして、その中で具体的に今後どのように扱われるかにつきましては、まだ確かなことは申し上げられる段階にございませんが、現在財政制度審議会におきまして鋭意検討を行っておるというのは事実でございます。
  112. 菅野久光

    菅野久光君 十二月上旬までに報告書をまとめるということは、まだまとまってないということで確認をしたいというふうに思いますが、よろしゅうございますね。
  113. 武藤敏郎

    説明員(武藤敏郎君) 報告書をまとめるべく作業中でございますが、まだ報告書まとまっておる段階ではございません。
  114. 菅野久光

    菅野久光君 大蔵省としてこれは財政制度審議会に説明をした、その国が負担するかしないかを決めた基準または根拠、こういったようなものはどのようなことになっているのか御説明いただきたいと思います。
  115. 武藤敏郎

    説明員(武藤敏郎君) この問題につきましては、義務教育国庫負担金が文教予算の約半分程度を占めておるというまず状況がございまして、大変厳しいこの国の財政事情のもとでこの経費についても何らかの見直しを行わざるを得ない状況に今あるわけでございます。  この点につきまして臨調答申で、人件費補助の見直しの一環といたしまして義務教育国庫負担金についても検討を行うべきであるという御指摘がございまして、これを踏まえましていろいろな角度からいろいろな経費につきましていわば網羅的にこういうことは考えられないかということで一つ一つ検討をしておるということでございます。  非常に沿革のある制度でございまして、御承知のとおり現行制度昭和二十八年はできておるわけでございますが、大正時代から既に義務教育国庫負担制度というものがございまして、その後時代の変遷とともに内容も変わってきておるということでございます。その後昭和二十八年に現行制度ができましてから三十年以上の社会経済情勢の変化があるわけでございまして、そういうものを踏まえまして現時点のこの厳しい財政状況のもとでどういうふうにあるべきかということを検討しておるということでございます。
  116. 菅野久光

    菅野久光君 教員と事務職員あるいは栄養職員等は学校教育の言えば両翼を担う教育職員であります。したがって、別系統になっているこの給与制度を一緒にする努力をかつては日教組もそれから文部省も続けてきたというふうに思います。  ちょっと古い話になりますけれども、教員と事務職員の初任給が教育職給料表と行政職給料表とに分かれることによって一号の格差が生じてきた時点で、昭和三十年七月、第二十二回特別国会衆議院文教委員会で、学校事務職員の身分給与等に関する件という決議を採択し、学校事務職員の教員並み待遇の方向を定めたのである。その決議は、   およそ、学校における教員と事務職員とは、ともに学校教育の両翼をなしており、学校教育の円滑を図り、教育効果を最大限に発揮させるためには、不可欠、かつ不可分の関係にあるものと思われる。このために、従来教員と事務職員とは待遇官吏として、同一の身分、給与体系を与えられてきた経過がある。   しかるに、現在は、教員と事務職員とは、それぞれ、任免、分限、懲戒、服務、研修、給与、等画然と区分されており、同一の職場に勤務する職員が異なった身分規定を受けているため、種々の弊害が生じており、このことは急速に解決されなければならないことである。事務職員は、学校という教育の場において、成長、発達の段階にある児童ならびに生徒の、教育の上にも及ぼす影響が多いので、その身分ならびに給与に関する規定について、教員のそれと同様のものを適用すべきである。   よつて政府は、すみやかに、事務職員の身分、給与の制度を教員と同様なものとするよう、所要の法律改正をするよう要望することを決議する。   右決議する。  こういうことがなされておったわけであります。この決議の精神に従って文部省もこれを奨励する行政努力を一時行ってきていたのでありますが、その後人確法の成立によって教員との賃金の格差が非常に大きくなってきました。職場においてはこのことが重要な問題となっているのであります。今回このようなことが提案されるということは、ある意味で言えば事務職員等の給与、教員以外の織員に対する給与の問題に対してやっぱり文部省がどの程度の努力をしたのか、その辺にもまたかかわってきているのではないかというふうに推測するわけでありますが、文部省はあの国会の決議、給与制度を一緒にするというこういったようなことについてその姿勢を変えたのかどうなのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  117. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 三十年前の話でございますので、私が役所へ入った一年生のときのころでございまして、私も当時の事情を具体に直接知っているわけではございませんけれども、当時の事情をいろいろ関係者等から伺ったことによって御説明させていただきたいと思いますが、昭和三十年に御指摘のような決議が行われたことは私ども承知をいたしているわけでございます。これは当時、学校事務職員に関しまして、例えば教育公務員特例法を教員と同じように適用すべきではないかとか、あるいは事務教諭というような制度にしたらどうかとかいろいろの御提案、御要望があり、それらを背景としてこのような決議になってきたと理解をしておるわけでございます。  当時文部省といたしましては、この決議を踏まえまして種々検討いたしたわけでございますけれども、しかしながらやはり教員と事務職員というのは職務の内容あるいは態様にかなりの差があるという点もございます。あるいは事務職員について免許制度を設けるのは難しいのではないか。さらには国立学校の事務職員との関連等もございますし、あるいは県庁、知事部局、教育委員会等の事務職員とのバランスの問題とか、いろいろな問題がございますために、これについてはやはり難しい点がある。したがって、事務職員は事務職員として、しかも待遇、処遇の改善を努めていきたいというような方向をとったわけでございまして、その結果、給与改善のために各県に対して文書で指導をするとか、あるいは時間外勤務手当平均六%を新たに計上するとか、あるいは教員と同様に結核休職中の給与全額支給期間を三年とするというような単独立法を国会にお願いしてやっていただくとか、いろんな措置を講じてまいりました。その後も特に昭和四十九年以降国会の数回の御決議が事務職員の待遇改善についてございまして、それを受けまして、例えば四等級わたりの問題につきまして、四十九年当時十九県であったものを、文部省として積極的に指導いたしました結果、五十六年までには全県、四十七県が全部四等級わたりを措置をするというような一定の成果も上がってきたわけでございます。しかしなおさらに改善をする必要があるんではないかと、こういう御意見等もございますので、文部省といたしましてもその今後のあり方について種々検討もいたしているところでございますし、また人事院に対しましても学校事務職員の待遇の改善について検討してほしいというようなことを公文でお願いをするというようなことを含めまして、現在検討している最中であるというようなことでございまして、御指摘のような教員と同じにするということはやはり無理であると今でも私ども思っておりますけれども、しかしそれとは別に、待遇の改善の問題については今後とも検討をし努力も重ねてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  118. 菅野久光

    菅野久光君 なお、今お話しのように、今後一層のひとつ努力を私の方からも要望しておきます。  この問題について最後、今回の提案は先ほど来から言われておりますように、義務教育国庫負担制度の根幹にかかわる重大な問題で、これは絶対に許してはならないというふうに私は思います。文教行政の責任者である文部大臣の、言えばまさに政治力量を問われる重大な問題であるというふうにも私は思います。大蔵もいらっしゃっていますけれども、大蔵省の攻撃に負けずにしっかり守り抜く、そういう文相のひとつ決意をここでお聞かせいただきたいと思います。
  119. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 先ほどからお答え申し上げておりますように、義務教育というものは全国津々浦々に至るまで一定の水準が確保されなければならぬわけでありまして、そのことを財政的に裏づけてくれているものが義務教育費国庫負担制度であると考えます。そこで、義務教育の本旨に従って、この制度の基本はあくまでも堅持されなければならないとそう考えておりますので、そうなりますように最大限の努力をする決意でございます。
  120. 菅野久光

    菅野久光君 大蔵省、どうもありがとうございました。  時間があと十分ほどですが、主任制度と主任手当の問題についてちょっとお伺いをいたしますが、これは五十二年から手当が支給されて、調べたところでは支給人員が約十六万二千人、支給総額が約八十一億円、国庫負担金が二分の一でありますから国は半分、予算では四十億三千万と、こういうことになっております。この主任手当の問題については教育上非常に問題があるということで、それぞれの地域で返還だとかあるいは拠出ということで、もらったものを戻すだとか、あるいは一定の戻したお金を集めて、教育関係あるいは教育施設に使うだとか、そういうことがなされているわけでありますが、そういったような状況をどのように把握しておられるかお伺いしたいと思います。
  121. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 先ほど来お話がございましたように、現在主任制度に基づく教育業務連絡指導手当、いわゆる主任手当でございますけれども、支給対象の人員が十六万二千人、支給総額にして約八十一億というような状況にございます。  これに関しまして、日教組におきまして、いわゆる主任手当拠出運動というような動きがございまして、もちろんその主任手当そのものは主任の手に公式に給与として支給をされるわけでございますので、支給された後のお金の使い道ということになりますので、私どもも的確に把握することは困難でございますけれども、日教組の発表しております数字で申し上げますれば、拠出額が二〇%程度というようなことで理解をいたしておるところでございます。もちろん、この制度は学校運営の複雑化に応じまして、あるいは地域や学校の実態に応じて現実に各学校に設置されてきて、そして、それが学校が有機的な一体性をもって運営されるという面で大変効果を上げてきたということを踏まえてそれを制度化をし、より一層主任の御努力に手当ということでおこたえをするというようなことで、より一層学校教育の成果を上げていきたいという念願でつくったものでございますので、この制度趣旨どおり運営されていくことを私どもといたしましては期待をし、また、関係の都道府県等に対しても、そういう意味で主任制度趣旨等の徹底に努めてほしいという指導等を行っているところでございます。
  122. 菅野久光

    菅野久光君 なぜ返還だとかあるいは拠出というような状況が続いているのか、その辺の文部省としての把握、それから、今いろいろお話がありましたが、こんな返還だとか手当の拠出が続いているというような状況下で、主任制度及びこの主任手当の趣旨が生かされているというふうに文部省としては思っているのかどうか、その辺をお伺いしたいと思います。
  123. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 私は、学校教育というものは整々たる秩序の中で、かつ効果的に行われなければならないものだと考えております。主任さん方はそうした学校の秩序をきちっと維持する、あるいは教育活動が円滑かつ効果的に行われることのための大事なお仕事をしていらっしゃるわけでありまして、そのお仕事を給与上評価して、職員給与の優遇措置の一環として主任等の手当が支給されておるわけであります。しかも、この制度は既に全国的に実施されておりまして、ほぼ、と言いますか、この制度自体が既に学校において定着をし、学校運営上重要な役割を果たしておるというふうに理解をいたしておるわけであります。したがって、この主任手当の拠出というのは、主任制度趣旨あるいは主任手当支給の趣旨に反するものでありまして、これは遺憾なことであると、こういうふうに私は考えておりまして、主任制度並びに主任等の手当支給の本旨にかんがみまして、それがきちっとなされるように都道府県教育委員会に対して指導を行っておるわけでありますが、これからもそういう指導を引き続き行いまして、そして学校教育の効果がより一層上がるように努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  124. 菅野久光

    菅野久光君 法案が出されたときからのそういう趣旨について私もわかるわけですけれども、私は教育の現場というものは役所の仕組みとは違うんだということがどうもわかっていらっしゃらない。役所は、局長だとか部長だとか課長だとか課長補佐、係長、そういう縦の系列がきちっとしているわけですね。それぞれに責任分担というのはきちっとなっています。学校現場というのは、一人一人の先生方が受け持ちの子供たち一人一人に責任を持たなければならない、そういう仕事をしている職場なんですね。例えば、次の週のいろいろ教科の進度だとか、あるいは学校行事だとか、そういうものを一週間に一回打ち合わせを学年でします。まあ多学級の場合ですね、打ち合わせをします。打ち合わせをして、そしてそれを家庭に知らせる、そういったようなものを書く、そういうのも、かつてこの主任制度なんていうものができる前は、自然発生的に中心になる人がこれは当然いるわけであります、自然発生的にですね。そして、その人が中心になりながら、そして今週はそれじゃだれが書こう、じゃあ来週はだれが書こうと、それぞれ当番を決めてこれはお互いにやっていくわけですよ。これは手当も当たらないから、だれでもみんな平等に、しかもそれぞれの学年で一人、それぞれの学級に対してみんながそれぞれ責任を持っているわけです。そういう中ではまさに協力共同の体制というのが学校の中にでき上がっている。ところが、この主任手当というお金をもらう主任が出てくれば、その人が責任を持てばいいんだと、そういう空気が出てくるのはこれは当然ではないでしょうか。その辺が役所の機構と学校の現場というものとが全く違う、そういうことで、その辺の認識はどうもなくて、大変な仕事をしてるんだから――一日二百円ですね、一日二百円。その一日二百円がやっぱり現場にとって大きな問題になっている。今、教育の荒廃がいろいろ叫ばれている中で、まさに学校というあの職場の中にいる教育職員ですね、教職員の人たちの協力共同、そういった和というものが、みんなで力を合わせていくということが極めて今の教育荒廃を断ち切っていくためには大事なことなわけですが、そういうものを何か分断するような、そういう役割しか果たしていない。これを喜んでもらっているという人は、いないとは言いませんけれども、数少ない。これは「内外教育」の鹿児島県高教組の「主任白書」の中でもそういうことですね。主任は生徒の教育に専念する上でプラスになると肯定的に評価したのはわずか八・七%、マイナスになるが一六・六%、わからないが三四・四%という結果だったと、こんなことも出ているわけです。しかも、八十一億円というお金は年収三百万円の教員とすれば二千七百人分です。四百万の教員であれば二千二十五人、五百万の教員であれば千六百二十人の給与分になります。この八十一億円を今生徒指導などを含めたそういうところに使うべきではないかというふうにも考えるわけであります。たまたまけさの朝日新聞に「小の無駄と大の無駄」という社説が出ておりまして、「財政赤字も、悪いことばかりではない。省庁が支出の無駄を削り、あるいは効果の薄い事業を切り捨てる絶好の機会である。」、こう述べられているが、まさに私はそのとおりだというふうに思うんです。現場の先生方が要らないと言っているわけでありますから、もっと要る方に使ってはいかがか、そのように私は思うわけであります。特に財政が厳しい中で、要るというところにやらないで要らないというところへ何でつけるんでしょうか。私はどうもそこのところがわからない。一言お答えいただいて私の質問を終わります。
  125. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 主任等の手当というものは、私どもはいわゆる主任等を中間管理職として位置づけておるわけではありません。ただ、先ほどから申し上げておりますように学校教育というものは、その学校教育の現場が教育の場にふさわしいような秩序が保たれ、かつ、教育活動というものが円滑になされるような条件づくり、雰囲気づくりというものが大事だろうと、こういうふうに思います。  そして、さらに最近における現象でありますが、例えば校内暴力等の問題を取り上げてみましても、一教員、そのクラス担当の先生だけでは対応できないで、やはりほかの先生の協力も得にゃならぬ、あるいは連絡も密にせにゃならぬ等々のこともあるわけでありまして、最近のいろんな学校における問題等の発生ぐあい等見ますと、むしろ主任等の人たちが学校内の先生方の連絡調整、あるいは学校暴力等遺憾な事態の発生を未然に防止する措置とか、あるいはそれに関連する、それを含む教育活動を効果的に実行するための連絡、指導、こういった役割はますます大切になってきておるというふうに思うわけでありまして、財政が厳しいんだから主任手当はやめたらという御提言でございますけれども、私どもとしては、むしろ大切になってきておるというふうに考えておりますので、主任手当をやめるという考え方には到底ならないわけであります。これからも主任さんたち大いにひとつ活躍をしていただいて、そして学校教育が効果的になされるようにやってもらいたいものだというふうに考えておるわけであります。
  126. 佐藤三吾

    委員長佐藤三吾君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時二十分まで休憩いたします。    午後零時二十三分休憩      ─────・─────    午後一時二十一分開会
  127. 佐藤三吾

    委員長佐藤三吾君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和五十七年度決算外二件を議題とし、文部省及び科学技術庁決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  128. 刈田貞子

    刈田貞子君 質問をさせていただきます。  午前中、六十年度文教予算等の話が出ておるわけでございますが、義務教育費国庫負担金等がいろいろ論議されたようでございますが、私はまず教科書の無償駈付の問題についてお伺いをいたします。    〔委員長退席、理事目黒朝次郎君着席〕  この教科書の無償配付は私ども公明党が早くから提唱し実現をさせていただき、そして既に定着をしておるものでございますけれども予算編成時になると絶えずこのカットの問題が出てくるわけでございますが、これはどうしても無償継続をお願いしたい、当然そうあるべきであるというふうに私は思いますし、予算があればつけるけれどもなければカットという性格のものではないのではなかろうかというふうにも思うわけでございますが、新大臣の御見解からお伺いをいたします。
  129. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 教科書無償の問題でございますが、先生も御承知と思いますが、六十年度の予算の概算要求につきましては教科書無償制度を継続するという前提に立ちまして予算要求をしたところであります。  今後の取り扱いについてでありますが、臨教審で教科書に関する制度はいかにあるべきかということも審議の対象に実はなるわけでありますけれども、過去のいきさつ、歴史等々のこともありますし、さらに各界の意見に耳を傾けながら教科書の制度につきましては対処してまいりたい、こういうふうに考えておるわけであります。私どもの属する自由民主党におきましてはことしの八月七日教科書無償制度の取り扱いに関する決議というものがなされておりまして、教科書無償制度のあり方については臨時教育審議会における教育改革に関する審議の動向に留意し、改めて検討することとし、教科書無償に係る予算は引き続きこれを計上するという決議をしていただきまして、それを受けまして教科書無償に要する経費を六十年度概算要求において要求しておるところでございます。
  130. 刈田貞子

    刈田貞子君 しかし、大蔵省あたりの切り込み等も厳しいのではないかと思いますが、ひとつ大臣に頑張ってこの予算をしっかりと継続していただきたいと思いますけれども、再度御決意をどうぞ。
  131. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 概算要求をいたしたわけでありますから、六十年度におきまして必要な予算が確保できるように全力を挙げて努力をする決意でございます。
  132. 刈田貞子

    刈田貞子君 よろしくお願いをいたします。  私は次に学校の教育環境の問題についてお尋ねをいたします。  この学校の教育環境というのは大変漠としたものでございますけれども、実は委員の諸氏にもこの物件に関する地図等をお配りすればよかったかというふうに思うんですが、その手はずをいたしませんでしたので、いささか説明をさせていただきますと、中央高速道の高井戸インターがいまだもって未開通のまま置かれているという問題の背後にそこのもとにあります富士見丘小学校の児童の学校環境という問題が一つあろうかというふうに思うわけでございます。この中央高速道は四十一年以降でしたか、ずっと事業が進められてもはや完成を見ているものでございますけれども、当初の予定、計画にありましたこの高井戸インターだけが上り下りともに目をあげてないという事実がございますわけで、そのところにありますところの富士見丘小学校及びその周辺の地域の方々の反対と申しましょうか、大いなる意見があるわけでございますが、むしろこの状況についてはきょうは建設省からお見えいただいていると思いますので、御説明をしていただけたらと思います。
  133. 布施洋一

    説明員(布施洋一君) 御質問の中央自動車道でございますが、富士吉田線でございます。昭和三十七年五月に整備計画が策定されまして、同日日本道路公団に施行命令が下されたものでございます。この路線のうち高井戸から調布の間につきましては昭和四十四年度から建設に着手いたしまして、昭和五十一年五月に首都高速四号線と直結して開通をいたしました。高井戸インターチェンジは杉並区の高井戸におきまして放射五号に接続するインターチェンジでございまして、放射五号を通しまして環状八号線との交通を主として処理し、交通の円滑化を図るということで計画されているものでございます。この計画に基づきまして工事を着手したわけでございますが、道路周辺の環境が悪化するということから反対運動が展開されまして、今日まで地元の住民の方々といろいろ御協議を重ねてきたわけでございますが、現在まで御理解を得るに至りませんで、その結果現在インターチェンジの建設供用がなされないまま今日に至っているというのが実情でございます。
  134. 刈田貞子

    刈田貞子君 ここには二者協議ないしは五者協議というようなシステムもつくられて、暫時話し合いも進められているように聞いておるわけですけれども、私はどう考えても何度現場に参りましてもやはりあそこにインターができるということ、上下線のインターができるということは考えられないわけでございまして、いろいろ会議録あるいは計画案等をひもといてみたんですけれども、なぜあそこに立ち上がりからあの場所にインターが計画されたのか、これはもうおよそ考えも及ばない。片や小学校があり、向い側には浴風園ですか、少し離れておりますけれども、老人ホームが大きな規模をもって存在しているわけですね。環境は非常に杉並区の大変よろしい環境にあるということの中で、私は計画が当初どういう意図であそこにインターをつくるように進められたのかよくわからないわけですけれども、今計画のことを申し上げても、いや、もはや仕方がないというふうに思うわけで、あそこ、ことしの五月三十日、都道放射五号を突如強行して開通させたということによりまして、富士見丘小学校前の自動車台数がそれだけで三千台あるいは四千台というふうにふえたというような事実もお母様方の手によって調べられているわけでございます。その上にあそこはインターができた場合には、今委員の皆様に御説明がなかなかできないんですが、中央高速道は富士見丘小学校の三階から見るとまだ見えないのですよね、屋上から見ると高速道が見えますね。あれはフェンスが立ててある関係がありますけれども、高速道の高さはちょうど学校の三階を走る感じですね。しかし、フェンスが立っているので高速道を見るには屋上に上がってなおかつ自動車の頭が見えるというような感じのところを、つまり学校の面をすれすれに高く走っているという感じになるわけですね。あそこの自動車数量が一日八万台ですか、というような御報告もいただいております。その上に環状八号線につながる放射五号を通して、そしてインターのふたをあけたときには、あそこからの上がりおりの台数をどのくらいというふうに読んでいらっしゃるのか、ちょっと伺いたいんですが。
  135. 布施洋一

    説明員(布施洋一君) 今御指摘の交通量八万台というのは、実は昭和六十五年に想定している交通量でございまして、現在は約六万台でございます。  それから、出入りする交通量はどうかという御質問でございますが、昭和六十五年時点八万台の段階において、現在想定をいたしております交通量は、インターチェンジの乗りおりの場所が若干離れておりますので差異はございますが、二万台ないし三万台というふうにおりる量を考えております。したがいまして残る量が六万台ないし五万台、合計八万台、こういうことで考えております。
  136. 刈田貞子

    刈田貞子君 しかしいずれにいたしましても、学校の学童の通学路にそのような数量の自動車が走るというようなことは、私どもとしては学校環境として考えられないわけですけれども、今後の解決というのはどんな方向をお考えですか。
  137. 布施洋一

    説明員(布施洋一君) ただいまの御質問は、今の場所の解決の方向という意味でございましょうか。  今の場所に関しましては、先ほど申し上げましたような経過で現在まで供用を見ていないわけでございますが、このインターチェンジにつきましては高速道路の利用者の方々あるいは周辺地域からの早期は供用してほしいというような要望もございますので、その建設、供用については地元の方々の御理解をいただきますように、先ほど御指摘のございました三者協議会、五者協議会といったような場を通じまして、地元の住民の方々あるいは関係者の方々と十分お話しをさせていただきたい、このように考えている次第でございます。
  138. 刈田貞子

    刈田貞子君 話し合いの方向は開通をさせるという方向でお話し合いを進めるわけですね。
  139. 布施洋一

    説明員(布施洋一君) 私どもは道路網としての計画上、このインターチェンジは必要だと基本的には認識をいたしておりますので、御理解を得ながら開設させたい、このように考えております。
  140. 刈田貞子

    刈田貞子君 そこで、文部省の方にお伺いをいたしますわけですが、私は何回あの場所を見ても学校環境としては恐ろしい場所だというふうにちょっと考えているわけでございまして、東海大の公衆衛生学研究室の方々の御調査等もございますけれども、現在時点では子供たちの健康に関する、つまり排ガス等にかかわっての健康被害というようなものは顕著にはあらわれていないというふうに、私も資料を読ませていただいて感じてはおります。しかしお母さんたちが自分たちの手によって調査したNO2の数値等は、はるかに基準値を上回っているものが出てきておりますし、現時点での五十七年の東海大の調査ですけれども、これはまだ高速道が上を走っているという段階の条件の中で調査されているものでありまして、そこのインターが口をあくというようなことになれば条件は全く違ってくるわけでございまして、私は子供たちの健康被害及び道路上の安全性の問題について大変に憂慮をする条件があるというふうに思うわけですけれども文部省は学校環境というものに対して、この種の問題をどんなふうにチェックなさる機関があるんでしょうか、お伺いします。
  141. 佐藤讓

    説明員佐藤讓君) まず、ただいま先生の御質問になりました富士見丘小学校の学校環境の、実際はどのようになっているかということでございますけれども昭和五十一年に中央高速道路が開通いたしまして、それから学校環境に対する問題が起きました。それは、以前と比べまして大変問題があるということで、このために昭和五十一年以降杉並区におきまして継続的に環境測定というのを行っております。  その結果を私どもも聞いておりますので、その調査によりますと、交通量数万台によります騒音が、現在学校で測定しておりますポイントが二カ所ございまして、それの平均値が六十一ないし六十二ホン、それからその他排気ガス、いろいろなガス類の調査もございますけれども、主といたしまして一酸化炭素が一・三ppm、それからNO2が〇・〇二ppmから三ppm、SO2が〇・〇〇六から七ppm、こういう実態になっておりまして、これは昭和五十一年に開通いたしました当時と余り変化はございません。ただ、騒音につきましては数ホン五十一年度から高くなってきております。  それで、学校の室内環境をやはり守る必要がございますので、昭和五十二年に窓を二重にいたしますとか、それから空調をいたしましてガス類から防備するとか、そういう手段を講じました。昭和五十九年五月、先生先ほどおっしゃいました放射五号線、これの影響というのは私どもも大変心配しておりまして、これによってどう変わるか、これが大変関心を持っているところでございまして、これにつきましても報告をいただいておりますが、先ほど申し上げましたように、やはり騒音といたしましては数ホン上がっている、こういう実態になっております。
  142. 刈田貞子

    刈田貞子君 昨日、農林水産委員会で道路公団の方に対して、この中央高速道の延長線上で道路の凍結防止剤を、塩化ナトリウムをまく、このことがリンゴの枝先を枯らしている現象を各所に導き出しているということで、かなりの論議がございました。その因果関係がはっきりしたらば、その補償については道路公団も考えるというふうな御発言まであったわけでございますけれども、相手は植物です。この高井戸のインターの場合は子供たちの健康に関する被害の問題です。私はかなりインターが開通した場合には厳しいものがあろうかというふうに現場を見て思っている者の一人でございます。  今後道路公団は、あそこを是が非でも開通させたい、そうすることによって中央道の機能がより有効になる、このことは道路行政上私もわかるんですけれども、いかにせよ二捨択一を迫られるときには私は子供の健康と安全の方をとりたいというふうに思うわけでございますけれども、大臣、こんなときはどんなことを考えたらよろしいんでしょうか、お尋ねいたします。
  143. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 学校の環境は、そこに通う児童生徒が心身ともに健やかに成長できるような環境を確保することが望ましいわけであります。文部省としては従来からそういう環境が確保されるように努力をしてきたところでありますが、道路建設等で学校の環境が損なわれたような場合には、損なわれるおそれがあるような場合には、先ほど政府委員が答えましたように、窓を二重窓にするとか、あるいは空調施設を備えつけるとか等々の方法によって学校環境の良好な環境が保全されるように努めてまいりたいと、こう考えておるわけであります。
  144. 刈田貞子

    刈田貞子君 通学路の話なんですよね。教室内はそういう形でカバーできると思うんですけれども、通学路の問題もありますし、地域の子供の生活環境ということもありますから、空調あるいは二重窓、鉄筋化したということだけで解決できる問題では私はないと思うんですけれども、もはやこれは長々と計画が進み既にでき上がってしまっている事実ですので、私は今このことをどうこうということはもう言えないというふうに思っています。ただ、今後一般論としてこういうふうな学校環境については、ぜひ子供の教育環境という立場でお考えをいただきたいということでございます。  例えば、こんな子供の学校教育環境を侵すような話というのは実はございまして、近くに団地ができて、そしてたくさんの住民が周辺に住むようになったら、その地域の学校は団地の自治会の申し入れによって運動会のときに音楽をかけられなくなった。学校とは騒音の発生源であるというふうな話が出てきていて、学校教育の中で子供たちは地域社会に遠慮しながら教育を受けているというような現実が実はあります。あるいは防球ネットを三十メーターに高くせいとか、あるいは学校の周辺に植えてある樹木の落ち葉を一週間に一度ずつ掃除に来いとか、非常に学校というものは今大変に地域社会にあるいは社会に対して遠慮をしながらその施設を管理し、あるいは教育を行っているというような事実があるわけなんですけれども、大臣、こういうこといかがお考えですか。
  145. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 運動会のときに周辺の人がうるさいから音楽がかけられないなどということは到底想像がつきません。もし、運動会で音楽をかけてやかましくないような場所でなきゃならぬというならば、ずうっと遠いところに、人が住んでないところにしか学校はできないみたいな形になりまして、これは通学する児童生徒にとってとてもじゃないけれども耐えられることではありません。やはり、その周辺の人が通う学校でありますから、運動会のときの音楽などというものは、はあ、やっているなあ、というわけで、音楽を聞いて周辺の人が喜ぶというのが私は普通じゃなかろうかなあと、こういうふうに思うわけであります。
  146. 刈田貞子

    刈田貞子君 大臣のような御理解のある住民ばっかりおりますと大変よろしいんでございますけれども、実は現実はそうではございませんで、運動会の練習が始まる夏休みを過ぎた秋ごろから、学校長はあちこち周辺のお宅にごあいさつに回るというのが現実でございますので、これはぜひお聞きになりましてお確めをいただければいいと思います。現に幼稚園から入ってきた新学年のお母さんが、死の行進であるというふうに音楽のない運動会を表現しているような作文もできておりますので、およろしかったらお見せをいたしますが、学校とはいわゆる騒音の発生源だみたいな認識が地域社会にありまして、道路の橋げたを一つぐらい渡ったってそんなに問題にならないという社会的認識が出てきたのではないかという学校環境の問題を実は理解していただいて、文部省あたりがぜひ地元の教育委員会等の御指導をしていただきたいと思うのですけれども、これ事務局の方いかがですか。
  147. 佐藤讓

    説明員佐藤讓君) ぜひ先生のおっしゃるように進めていきたいとこう思います。
  148. 刈田貞子

    刈田貞子君 びっくりするようなお話をいたしますのですが、こちらに現場の先生もいらっしゃいますのでよく御存じかと思いますが、この時期になりますと中学では文化祭の時期、それから小学校では運動会の時期、この時期は本当に学校長及び管理職は頭を痛めているというのが現実でございましてね、それはぜひ御認識をいただきたいと思いますし、私は、伸び伸びした学校教育環境を子供たちにつくってやるにはどうしたらいいだろうかということは、教育委員をいたしておりました時期、大変に頭を悩ました現実でございますので、ぜひ御認識をいただきたいというふうに思います。この話、子供の学校教育環境ということで、ひとつ高井戸インターの開通いかんという問題をテーマにお考えいただくこととして提起しておきましたので、ぜひ御検討いただきたいというふうに思います。  話を次に進めます。建設省の方結構でございます。ありがとうございました。  それから、先ほど午前中から予算の削減の問題等いろいろ出ていたわけでございますが、先ほどの義務教育費国庫負担法の問題が論議されましたが、この義務教育費国庫負担法の規定に基づいて、都道府県に対する教職員給与費等の経費の問題でございますが、実際支出の二分の一を国が負担するというこの問題ですね。この問題、先ほど同僚の委員からもお話が出ていたわけですが、むだ遣いがあるということが会計検査院の方から指摘がございました。児童生徒の学校基本調査で、生徒数を水増しすることによって学級数をふやし、これに基づいて教職員の標準定数を算定するという方法をもって教職員の人数の不正を行ったというふうな問題でございますけれども、この問題を文部省ではどのようにお考えでございますか。
  149. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 会計検査院の御指摘のような不祥事態、これはもう大部分の都道府県ではそんなことはないと思っておりますけれども、しかし指摘されたという事実を知りまして実は私はびっくりしたわけであります。実際におる生徒数を故意に多く報告をして、そして都道府県に交付される国庫負担額を余分に受け取るなどという結果を生じたわけでありますが、まことに遺憾千万なことであると思っておりますし、過大交付額を返還させるなど厳正に対処してまいりたいとこういうふうに考えております。そして、今後このような事例が絶対生じないように、各都道府県教育委員会及び都道府県教育委員会を通じて各市町村の教育委員会及び学校に対して、十分な指導を徹底して図りたいというふうに考えております。
  150. 刈田貞子

    刈田貞子君 大臣ね、こういう事実が起きるという背景、土壌、それは何があるとお思いでしょうか。
  151. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) ただいま大臣からお答えいたしましたように、このような事態が起こりましたことをまことに遺憾に存じておるところでございますが、先生御案内のように、それから先ほどのお話にも出てまいりましたように、学級編成の基準を四十五人、それから既に一部は四十人学級が実施されておりますので四十人。そういう基準で運用しておりますと、その前後のところで一名二名の児童数の変化が学級数の変化に影響してくるということでございまして、それが学級を減らすと残りの学級の子供の数がふえるということから、教育条件としては残念ながら悪くなるということになるわけでございますけれども、それをできるだけ避けたいということであるとか、あるいは同じようにそういう状況になりますと、既に配属されている教員の中に基準以上に余分の教員が出てくるわけでございますので、これを他の学校へ転出させなければならない、こういう人事が大変やりにくいというような問題等がございまして、できるだけ学級数をある規模のものを温存しておきたいというような校長先生のお気持ちがこういうところにあらわれたんだろうと思います。そういう意味でそのこと自体が全く気持ちがわからないということではございませんけれども、しかしながらやはり全国の学校が全部同じ基準で同じ水準で公平に行われているのに対して、こういったような自分のところだけ有利になろうというような方式でというのは、そしてまた現実に転出してしまっていない子供をいるように全部しておくというようなことは、やはり学校教育の場としても許されるべきことではないと思っておるわけでございまして、そういう意味で大臣からお答えを申し上げましたように、負担金超過額の返還等厳しい措置を今後講ずると同時に、今後このような事態が起こらないように一層の努力をしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  152. 刈田貞子

    刈田貞子君 五十七年度、東京都の実情では小学校が五十一校、中学校が十二校、それで支払われた、過大に交付された金額二億二千六百九十三万五千二百九十七円、これが私が所属する東京都の不正ということになるわけですけれども、私は今のお話の中で学級環境を少しでもよくしていこうという不正だというふうにおっしゃられたんで、まさに名言だというふうに思います。しかし、不正は確かは不正でありますので、これはやはり正していかなければならないというふうに思うわけです。  そこで、私の中で出てくるのが四十人学級の問題でございますけれども、児童数は漸次減っていっている、空き教室は出てくる、先生がいればもう一つクラスが余計できるのに、一つクラスがふえれば学校の規模も違って、今度は専科も一人余計もらえるのにというふうな形になってまいりますと、本当に今まさにお気持ちはわかるとおっしゃったのは私も同感でございます。この四十人学級の問題でございますけれども、概算要求たしか出ておりましたが、千八百三十五人分の概算要求をお出しになられましたね、たしか。この四十人学級の六十年度予算編成に向けての取り組みということからまずちょっと御説明いただきたいと思います。
  153. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 四十人学級の問題でございますけれども先生既に御案内のように昭和五十五年度に今後十二年間、昭和六十六年度までを計画期間といたしまして、この四十人学級の実現を含む第五次の教職員の定数の改善計画を立てましてスタートしたわけでございますが、その後御案内のように行政改革の問題等が出てまいりまして、現在特例法によりましてその推進がいわば抑制をされているという状況にあるわけでございます。しかしながら、今日の時点で将来の動向等を見てまいりますと、児童生徒数の自然減等もあるわけでございますし、それに伴いまして教職員の減というようなことも自然減として出てまいりますので、そういったこととあわせ考えていけば、今後この四十人学級をさらに進めていくということも不可能ではないのではないかと考えます。  また、申し落としましたけれども、行革特例法によって一定の抑制措置がかけられておりますが、昭和六十六年度を目標にこの既に立てられております約八万人の計画を達成するんだということは、既に法律上明記されておるところでございまして、その大原則は変わっておらないわけでございますので、それに向けて今後、あと七年あるわけでございますけれども、その間に適切に対応して当初の目標を達成いたしたい、このような気持ちで、まずは来年度について、先ほど先生おっしゃいました千八百人、四十人学級分でございますけれども、の要求をしたというようなことでございまして、財政事情厳しい折から、いろいろ財政当局とのやりとりはもちろん難航いたしておりますけれども、私どもといたしましてはそういう方向に沿ってさらに今後引き続き努力を重ねてまいりたい、かように思っておるところでございます。
  154. 刈田貞子

    刈田貞子君 先ほどおっしゃられたように、二クラス編制でいくよりは三学級編制になった方がより学級環境がよくなるんだというお話でしたから、四十人学級編制というのはやはり現場の非常に必要欠くべからざる条件として私はこれからあるというふうに思いますので、この四十人学級への取り組みを、あちこちからの切り込みにめげずぜひ実現をしていただきたいというふうに思うわけでございますけれども、大臣、四十人学級の実現、この概算要求、満額取れますでしょうか。
  155. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 私としては概算要求をいたしました予算額につきましては満額確保できるように最大限の努力をしていきたい、こう考えておるわけであります。ただ、先ほどちょっと言い落としましたけれども、そのことと、それから学校で児童生徒数を過大に報告をして、そして自分のところだけは学級数を減らさないで、あるいは一学級当たりの生徒数を少なくして多くの先生の割り当てを受けて、そして自分のところだけはいい環境をつくり上げるなどというのが許されていいものとは思わないわけでありまして、そういう誤解を与えることは私どもとしてはどうしてもできないわけであります。やはり義務教育というものは法律に基づきまして全国の水準が平準化するようにすべてやっておるわけなんでありまして、自分のところだけよければいいんだなどということで虚偽の申告などが許されてはならぬというふうに思っておるわけであります。
  156. 刈田貞子

    刈田貞子君 ぜひお取り組みをよろしくお願いしたいと思います。  次にお伺いしたいのは、同じく予算が絡んでまいりますところの学校給食の問題でございますが、我が国の学校教育では学校給食は教育活動の一部として位置づけられてまいりまして、これまで三十数年間子供たちの健康あるいは食生活の改善、食事のマナー、あるいは教育そのものにかかわって大きな役割を果たしてきたというふうに私は思っております。むしろ、今後における学校給食はより一層充実強化をしていくべきであるというふうに私は思っておりますんですが、大臣は学校給食に対してどんな御認識あるいは意義をお認めになっていらっしゃいますか。
  157. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 学校給食は我が国の学校に定着しておる仕組みでありまして、教育的な効果も相当に上げておるというふうに認識をいたしております。そしてまた、行革審が学校給食の運営についていろいろな合理化措置などの指摘をしたわけなんでありますが、その行革審におきましても学校給食の我が国学校教育に果たしておる役割につきましては十分な評価をした上で、ただ具体的な運営につきまして合理化を図るべきである、こういう指摘であったわけでありまして、そのことに基づきまして学校給食の運営につきましては適切な方法で合理化を推進するよう、近く体育局長通知をもって指導する予定になっております。
  158. 刈田貞子

    刈田貞子君 ことしの九月、総務庁から出た「学校給食及び学校安全に関する行政監察結果」に基づく勧告ですね、これを受けて恐らく通達をお出しになるというふうに思うんですけれども、この中身の問題、私何回か検討させていただいて、やっぱりいろいろと心配な節がありますものですから、一つ一つお伺いをしてみたいというふうに思います。  ところで、新しい学校給食に関する通達をお出しになるというふうに今おっしゃられたかと思いますが、その中身はやっぱり合理化、効率化についてでございますか。
  159. 古村澄一

    政府委員(古村澄一君) 御指摘のとおり、九月に総務庁からの勧告があり、その前には第二次臨調からの答申、それから行政改革審議会の答申というふうに続いて御指摘されておりますのは、学校給食業務の運営の合理化を図れということでございますので、その方向に沿って検討いたしておる次第でございます。
  160. 刈田貞子

    刈田貞子君 四十六年の体育局長の通知ありますね。あの条件がどんなふうに変わったというふうに考えればよろしいんでしょうか。
  161. 古村澄一

    政府委員(古村澄一君) 四十六年の通知は、学校の中で調理が行われることということ、その事項だと思いますが、それでよろしゅうございますか。
  162. 刈田貞子

    刈田貞子君 あれでしょう、製パン加工など外部委託が適当と認められる場合を除いては、学校または学校設置者の設置管理する調理施設内で調理をするということでしょう。
  163. 古村澄一

    政府委員(古村澄一君) ここに書いてありますのは、学校給食の調理の原則的なことを示したというふうに思っておりますが、例えば昭和五十一年に米飯給食を導入いたしましたときにも、米飯の炊飯を業者に委託するということが行われつつあり、全体的に学校給食のそういった民間との協力を得てやっていくというふうな全国的な動きというのはずっと続いてきておるというふうに思っているわけでございます。
  164. 刈田貞子

    刈田貞子君 そこで、そのいわゆる外部委託という問題のことでございますけれども、御存じのとおり、この外部委託の問題についてはたくさんの世論があることは御存じだと思うんですけれども、これちょうだいした資料では、調理業務とそれから物資購入、管理ですね、この分についての委託化が一番多く進んでいるように私思うんですけれども、この調理業務というものの委託の実態というか実情というのか、これはどういうことになっているんでしょうか。
  165. 古村澄一

    政府委員(古村澄一君) 調理業務の実態は区々でございますが、多くのところは学校に調理場がございます。そこへ調理をやります業者の人が来て学校で調理をしていくということがかなりの比率を占めておるというふうに考えております。
  166. 刈田貞子

    刈田貞子君 調理場を他に求めてやるということ、つまり業者の調理場で調理をするという委託の方法は認められないんですか。
  167. 古村澄一

    政府委員(古村澄一君) そこのところは私の方は別にどこで調理を委託、どういう形での調理をしてはいけないということを指導はいたしておりませんが、外での調理をする場合には、それぞれの例えば衛生の面を気をつけるとか、そういった配慮すべき点を十分配慮した上で調理を委託するということは考えられると思います。
  168. 刈田貞子

    刈田貞子君 衛生の面を気をつけるというような考え方じゃなくて、例えば調理場を業者の調理場を使ってやるようなときには、学校給食実施基準の中の施設及び設備というようなこの五条とか六条とかが該当していくんでしょうか。
  169. 古村澄一

    政府委員(古村澄一君) 今おっしゃられたのは学校給食法の規定かと思いますが、学校給食法の五条、六条の関係は、施設、設備については設置者で経費負担をしなさいということでございますので、その施設、設備費についてかかるものについて設置者が負担をするということであれば、法律の違反にはならないというふうに考えます。
  170. 刈田貞子

    刈田貞子君 実施基準の方、実施基準の五条、六条は施設の問題とそれから設備の問題について言っていますね。読みましょうか。調理室とかパン置き場とかいうような施設、こういうものもきちっと衛生上、管理上適切であるということを確認しなさいということですね。それから今度は、なべかまに至る、かまとか流しとか調理台とかいう、いわゆる今度は設備の方、これについてもきちっと管理をしなさいという言い分ですね。そうすると業者の台所を使ったものについてはやっぱりその旨この条項が及ぶんでしょうか。
  171. 古村澄一

    政府委員(古村澄一君) この学校給食実施基準そのものは、学校の調理場あるいは共同調理場の調理場というものについての基準であるというふうに考えますが、精神そのものは、業者委託する場合においてもそういったきちっとしたものをしなければならぬという精神そのものは及ぼして適用していかなきゃならぬというふうに思っております。
  172. 刈田貞子

    刈田貞子君 そうすると、かつて埼玉県で民間委託の給食から事故が起きた例があったかというふうに思いますけれども、この状況、私結末については聞いておりませんが、例えば事故が起きたときの責任なんかはどこがとることになるんですか。
  173. 古村澄一

    政府委員(古村澄一君) 学校給食を実施いたしますのは市町村でございます。したがって市町村が責任を負うということになります。
  174. 刈田貞子

    刈田貞子君 そうしますと、今私がここで申し上げました調理業務だけを委託しているところがありますね。例えばセンター方式でいくと、二十二人なら二十二人の労力だけを委託して来てもらってやるというふうな形をとりますときに、この方たちに対する労務管理は教育委員会がやることになるんですか。
  175. 古村澄一

    政府委員(古村澄一君) 具体的な労務管理そのものはその雇っている人がやるということに相なります。
  176. 刈田貞子

    刈田貞子君 非衛生的な行為とかいうようなものがあるときに、その人の行為に対して注意をするのはだれですか。
  177. 古村澄一

    政府委員(古村澄一君) そこのところは業者とそれから設置者であります市町村との間において契約の中できちっと決めておいて、その契約の履行という形で業者は求める。したがって、業者の方がしっかりそこのところを管理をすることになりますが、それが契約を履行しているかどうかという観点からは市町村が絶えず目を配るというふうに相なります。
  178. 刈田貞子

    刈田貞子君 それから、物資購入及び管理についてこれを委託するということ、私これも非常に心配な節があるわけでございますけれども、この実情はどうなっているんでしょう。
  179. 古村澄一

    政府委員(古村澄一君) 実情としては、大体委託しておりますところは物資の購入等についても業者の方が購入しているというのが多いというふうに理解いたしております。
  180. 刈田貞子

    刈田貞子君 その場合の栄養計算とかカロリー計算とか、それは要するに学校が主体になってそういうものを持ってそして購入させるわけですか。
  181. 古村澄一

    政府委員(古村澄一君) 学校給食を実施するには学校栄養士というのがいまして、その人が大体カロリー計算とかそれに使います物資の基本的な考え方というものを栄養士の方でつくります。大体は献立を栄養士の方でつくって、それに合ったものをつくってもらうというふうに相なると思っております。
  182. 刈田貞子

    刈田貞子君 この間日比谷の公会堂で、学校給食の危機に瀕するということで緊急集会が開かれたわけですけれども、私も声をかけられましたが、こういうところでの心配というのは実はそういうところにあるんですよね、細かい、ささいなところにあるわけです。そういうところを明確にしないと、例えば物資の購入を業者委託しておいたら、業者はより安くていい物ということにはなろうかと思いますけれども、安さだけを追求して購入してくる、その中には何が入っているのかというふうなことにまで、この集会では大変細かく話が及んでいるわけですね。お母さんたちの心配というのはそういうところにありますので、その辺のところをもっとはっきりさせていただかなければならないのではないかということと、この民間委託のそもそもの発想というのは、やはり先ほど冒頭おっしゃられたように、効率化、合理化の追求であるわけでありますから、これがエスカレートしていった場合に、どんな給食の実態が出てくるかわからないという心配はあるんだと思います。こういうのいかがでしょうか。
  183. 古村澄一

    政府委員(古村澄一君) 総務庁なりあるいは行革審等が合理化の方法として示しておりますのは三つあるわけでございまして、一つは調理員のパートタイム化の活用、それから二番目として、共同調理場の拡大、拡充といいますか、それから三番目として民間委託の推進、この三つあるわけであります。したがって私たちといたしましては、それぞれ行われる場合には、やはり御父兄の方が御心配がないような形での物資の管理体制等についてはしっかりした指導をしてまいらなければならぬというふうに考えております。
  184. 刈田貞子

    刈田貞子君 それからこの総務庁の勧告の中に、これも合理化追求の中で出てくることになるんだと思うんですが、物資の購入に関するいわゆる承認物資と指定物資の問題ね、それでこれを一切廃止をする、これは私はよろしいかと思います。  二番目の検定経費の削減、これはいかがなものでしょうか。
  185. 古村澄一

    政府委員(古村澄一君) 小麦粉の品質管理経費にかかる御指摘だと思いますが、これは小麦粉の品質を的確に保全していくということで私たち年間六千万円ぐらいの経費がかかるわけでございますけれども、やっております。ただ、総務庁の言い方は、もう少し節減を図れるところがあるんではないかということでございますので、品質管理に支障のない範囲で、節減が図れるところがあれば検討してまいりたいというふうに考えております。
  186. 刈田貞子

    刈田貞子君 それから物資の助成についての問題ですが、助成事業の縮減で牛乳とそれからジュースと米でしたね、三つの物資ね、この農水省による補助、これが「食料政策上の配慮をしつつ」縮減せよと、こう書いてあるわけでございます。大変身勝手な言い方であろうかというふうに私は思うわけですが、この食料政策上の配慮をしつつというのはどういう意味でしょうか。
  187. 古村澄一

    政府委員(古村澄一君) これは総務庁の勧告の解釈でございますので私の方からなかなか申し上げるわけにまいりませんが、今米が六〇%引きでございます。それから牛乳が二百㏄五円引き、ジュースが百二十五㏄五円引きというふうなことでやっておりますが、この補助金の置きました趣旨は、米につきましては米飯給食を推進するという一つのテーマがございまして、それを推進させるにはやはり誘導策が必要だろうということで割引米という制度は打ち出されたわけでございます。現在、一週間一・八回という米飯給食の実施状況でございますが、私たちはなるべく早い時期に三回までもっていきたいということで指導をいたしております途上でございますから、ことしも農水省としては従来の姿勢でもって概算要求を組み上げ、今予算折衝中であるというふうに聞いております。
  188. 刈田貞子

    刈田貞子君 ところが、お米の六〇%の補助は農水省の予算だと米の消費拡大事業の中に入っているんですよ。学校給食の現場を使って米の消費拡大をするための予算であることには間違いないわけで、誘導策とか何とかきれいな言葉ではございませんで、あくまでも学校現場を使って米の消費拡大を図るという事業かというふうに思うので、私はこの「食料政策上の配慮」というのはそんな読み込みもしてみたわけでございますが、しかしこの補助は大変重要でございまして、文部省予算としては大事なものだと思うんですね。これ、農水省とお話し合いをしっかりしていただいて、現状維持でいける見通しございますでしょうか。
  189. 古村澄一

    政府委員(古村澄一君) おっしゃるとおり、これは農水省が大蔵省とメーンになって予算折衝する事柄でございますが、私たちとしては農水省に対していろんなデータを提供しながらひとつ現状維持をお願いしたいということを強く申し入れている現状でございます。
  190. 刈田貞子

    刈田貞子君 学校給食の問題というのは自分もかかわってまいりましたし、それから日常生活の中で大変普遍化されている話のものですから、話をいたしますと幾らでもお伺いしたいことがたくさんございますんですが、テーマをもう一つ用意している関係上、また場を改めてさせていただきたいというふうに思いますが、今、今回のこの総務庁の勧告等を含め、そして文部省が年内じゅうにはお出しになる通達等を受けて、私どもの間で大変心配されるのが、今の合理化追求の余り、子供たちの食生活にどんな現実が出てくるのかわからないという不安があるわけでございますので、ぜひそういう栄養面あるいは安全面、こうしたものを配慮していただいて給食の目的の基本から外れないものとしてしていっていただきたいというふうに要望をいたしておきます。  次に、私は家庭科共修問題についてお伺いをいたしますわけでございますが、「国連婦人の十年」の最終年を明年に控えまして、婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約、この批准をめぐって今最重要なものが機会均等法であり、そしていま一つ教育問題では、焦点は高等学校における家庭科一般、これをいかにするかという問題があろうかというふうに思いますが、大臣、引き継ぎの中でこのお話を引き継がれましたでしょうか。
  191. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 引き継いだ引き継がぬという問題じゃなくして、この家庭科の男女共修問題についてどういうふうに考えておるかの質問だという意味でお答えさしていただきますが、高等学校における家庭科、特に家庭一般という教科は我が国の女子教育に大きな役割を果たしてきたことは事実であります。そしてまた、この点に留意して今後とも家庭科一般の教育を推進していかなきゃならぬと思っておりますが、しかし同時にまた、家庭というものは男女が協力してその堅実な家庭づくりができるわけなんでありまして、その意味からは男子の方も家庭一般については相当の理解と知識を持つことは大切なことだというふうに思うわけでありまして、そこで、男女がともに学べる内容に家庭教育を改善するということも大事なことであろうと思いますが、いずれにせよ条約批准の妨げにならないように、高等学校における家庭一般の今後のあり方については現在審議会で審議をしていただいているわけでありますけれども、その審議の結果をまって対処をしていきたい、こう考えておるわけであります。
  192. 刈田貞子

    刈田貞子君 ことし六月に発足いたしました家庭科教育に関する検討会議でございますが、この検討会議が年内を目途に高校家庭一般の今後のあり方についての基本的な考え方を明示するというようなことを伺っておりますが、この検討会議、今どんな状況になっているのか、これはもう全然私たちやみの中の話でございまして一向わかりませんが、ぜひ御説明いただきたいと思います。
  193. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) この検討会議、六月に発足いたしまして、大変精力的に審議を重ねていただいております。そしてこの審議会の方々はいろんな方々の意見をお伺いするヒアリングをやるとか、それから現に教育を実施している学校の現場を視察するとかそういうことを行い、そして委員相互に条約の批准の妨げにならない形で今後の取り扱いをどうしたらいいかということを真剣に討議を重ねていただいて、今大詰めを迎えておりまして、今月の十九日に最終の総会を開いてその報告を取りまとめようという段階に来ているわけでございます。したがいまして、十九日の段階になりますと、座長からこの報告の内容が出されてまいると思います。そして今まで審議してきた経緯等についての説明も公表されるであろうと思っております。
  194. 刈田貞子

    刈田貞子君 七月の衆議院文教委員会では、政府答弁の中で、この討議の内容を公開していくということの御要求、御意見があったのに対して、その旨を検討会議に伝えてみるというふうなことがあって以降、この検討会議中身というのは依然オープンにされないままその結論が出る段階まで来ているわけですね。これがいわゆる公開の中でなされなかったことに関しては、多くの婦人団体が大変不満を持っておると同時に不安を感じておるわけでございまして、出てくる結論よりはどんな質疑がなされているかという過程の方が知りたいし、問題であるんではなかろうかということが言われているわけでございますが、この会議が公開されなかった理由は何でしょうか。
  195. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) この検討会議委員十数名いらっしゃるわけでございますが、その際にどういう形で会議を進めていくかということを論議される際に、率直な委員の意見を相互に述べ合って、そしていい結論を得るように努力していきたい。そのためには公開という形式でだれがどういう発言をしたということを一々言うことはかえって率直な意見交換の場として適当でないという判断をされて、大方の委員として、一々ヒアリングをしている状況であるとか、視察をしている状況を公開していくというのは適当でないというような判断もあったかと思うんですが、そういう意味で特別に厳重に秘密主義でやったというよりも、そういうフリーな討議、そしてよりよき結論を導き出すというような形で審議が行われておりますので、一般の方に公開されなかった。もちろん婦人団体の方々でそういうものに関心のある方方の出席をいただいて、ヒアリングをしたり、そしてその方々と意見交換をしたというようなこともございますので、余りそこはそう公開、非公開を意識されないで今申し上げたような経緯で審議が重ねられているという状況でございます。
  196. 刈田貞子

    刈田貞子君 今度検討会議の結論ですね、取りまとめたものでございますが、それを今後どう取り扱い、どういう作業でこれを来年の批准に向けて持ち込もうというふうに、作業の。
  197. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) この検討会議の報告書が出ますと、従来から文部省は申し上げてきておりますように、その方向を尊重していきたい。  その中身を具体的に修正、改正していくという作業は次の教育課程全体を見直す作業の中で処理しないと現実的に処理できない。したがって次期教育課程の改定の際にその報告書の精神、報告書の方針を尊重してそういう方向での改正をしていくということにしたい。したがいまして態度といたしましては、文部省としてこの検討会議の方向を尊重して今後作業を進めていくというような態度を明らかにするということになろうかと思います。
  198. 刈田貞子

    刈田貞子君 外務省にお伺いいたします。  今の文部省の御答弁で具体的ないわゆる教育課程の改定というものは現時点ではできないのだと。だけれども、その精神は盛り込んだということを今おっしゃっておられるわけですが、こういう状況の中で批准に持ち込むということは技術的に可能なんでしょうか。
  199. 高木南海雄

    説明員高木南海雄君) お答えいたします。  本条約上は批准との関連で問題となる点についてはすべて本条約批准前に改められていることが望ましいわけですけれども、条約としては条約上の義務を漸進的に実施していくことも認めている、そういうふうに考えております。したがって条約批准との関連におきましては、その国の状況下でとり得る最大限の措置として、合理的一定期間の経過後には条約の要請を満たすということが判断できるような措置がとられれば、条約上は留保を付すことなくこれを批准できる、そういうふうに考えております。  それで家庭科につきましては、教育課程の改定のサイクルというものを動かすことはできないとの前提に立ちます以上は、このような合理的一定期間の後に教育課程の改定が実際に行われると判断できるような措置がとられている必要はありますけれども、この検討会議においても条約の批准の妨げとならないような結論が得られている、そういうふうに得られるものと我々は承知しております。
  200. 刈田貞子

    刈田貞子君 外務省でそのようにお認めになられるのならば仕方がございませんが、手形だけが先に走ってという感じも私婦人の立場になりますと考えられますので、大変いささか不安が残るわけでございます。それで、さっきちょっと口走ったんでございますが、局長、あれですか、家庭科一般は方向として十二月末でしょうか、その御報告書が出るときにはわかるわけですが、方向としては男女共修の必修という方向で話が進んだのでしょうか、いかがでしょうか。
  201. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) 非常に微妙な問題で、私が今の段階で、まだ総会での承認の手続もとられていない段階で言うのは僣越であると思いますので、月末には明らかになりますので、ここでの答弁は御勘弁いただきたいと思います。
  202. 刈田貞子

    刈田貞子君 残念でございます。それで、局長に大変申しわけないんですが、少しもとに戻ってこれを確かめさせていただくことによって、もしやするとその方向が私にも読めるのではないかというふうに思いますものですから、ちょっと復習をさせていただきます。  私は、一月の二十五日にこの問題についてお伺いをいたしているわけでございますが、そのときの話は、実はこの高等学校家庭科一般の前段の分の中学の、つまり技術・家庭の問題をちょっとしつこくたしかお伺いしたというふうに思うんですが、このときに私は中学の技術・家庭の問題も相乗りの領域指定ではこれも一部抵触するのではないかというふうに申し上げました。そしたらそのとき局長はいろいろおっしゃっておられるんですが、「結局教育というのが、男にとっても女にとってもどのような形で教育を与え、教育を受けることが、その社会に生きていく場合に一番いいかということの背景で論議されていくわけでございます。したがいまして、従来家庭科の問題については日本の学校教育は、本来これは家庭に任しておけばいい分野についても、あえて積極的は明治以来公教育の中で分担してきたと、そしてそれはそれなりの大きな成果をおさめてきたという長い一つの歴史の重みがあるわけでございます。」これから先です、「そういうことで、中学校における教科の構成に当たって、やはり女子に現在の時点で身につけておいてもらうことが最も適当であろうと、望ましいであろうということの結果出されたのが五十二年度の改正の方向であり、相互乗り入れの内容であるわけでございます。」というわけなんですね。「この内容の方式がなお条約との関係で問題になるとすれば、再度また論議をしていかなきゃならない」と思うということをおっしゃっておるわけです。    〔理事目黒朝次郎君退席、委員長着席〕  問題が二つありまして、やっぱり女子に現在の時点で身につけておいてもらうという、相互乗り入れの内容はいかがなものであろうかという視点が一つと、それからこの形で条約との関係がどうだったのかという問題と、二点伺いたい。
  203. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) 非常に技術的な内容につきましては、今後教育課程審議会という教科全体を見直す審議会をつくってやるんで、そこでいろいろ論議されていくと思います。したがいまして、検討会議では主として高等学校における家庭一般の取り扱いをメーンに論議をいたされているわけでございます。そこで、それとの関連において中学校の技術・家庭科の問題についてもあわせて検討が及んでいるという状況でございます。したがいまして、当然、高等学校家庭一般という限定を越えて、中学校における技術・家庭科のあり方、構成についても基本的に条約との関係を配慮しながら対応していくべきであろうというような方向での議論が行われているという状況でございます。
  204. 刈田貞子

    刈田貞子君 私が今このことを申し上げたのは、結局履修のあり方がどうだ、こうだという問題よりも、やっぱりその基本的な考え方がどこにあるかという問題を一つ押さえておけば、中学の問題も高校の問題も自然に解決していくわけですよ。だから、基本の考え方がこの検討会議ではどんな状況にあったのかということを、基本なら言えるでしょう。
  205. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) まず家庭科一般というよりも、むしろ家庭科が担当している分野の教育というふうに申し上げた方がいいと思うんです。こういう教育について、男女全く同じ内容を画一的に教える方がいいかどうかという問題が一つあります。  もう一つは、やっぱり家庭を構成していくのには男女のそれぞれの分担と申しますか、役割というのが存在しているし、現に幅広い観点で幾つかのメニューをつくっていく際に、やっぱり女子に少しウエートを置いて教育しておいた方がいいような分野であるとか、それから男子に分担していった方がいいような分野であるとか、全く同一の内容を同一条件で男女とも教える方が妥当かどうかというところが非常なポイントになるところでございます。そこには教科全体についても教育内容の多様化、弾力化を一般的に考えるべきである、学校教育の場で、そういう基本的に家庭科問題だけではなくして、そういうような流れがありますので、家庭科問題を考えるのにも、そこは若干の弾力性、多様性、そういうものを持ちながら考えていく必要があろう、そういうような論議がいろいろ行われているというふうに承知しております。
  206. 刈田貞子

    刈田貞子君 こういう論議はいつまでやっても尽きないような気もいたしますけれども、後ろから声をかけようと思って手を出したら、すてきな長い髪をしている男性だったりして、世の中大分変わってきているんですよね。だから、やっぱり文部省も余り固定的な物の考え方ではなくて、主婦の婦の字が夫という字が出てきたりしても決して不思議でない時代にもなっておりますし、私はどうもやっぱり女性の方がという、そういう局長の話は、さっきここを私がもう一度読み返して、言いたいところの部分に話が戻るわけで、その辺のところはぜひお考えをいただきまして、先進国日本の条約批准に向けて恥ずかしくない方向性が出てまいりますように、私はどうしても祈りたいような気持ちになるわけでございますけれども、憲法二十六条一項、すべての国民は、能力に応じてひとしく教育を受ける権利を保障するということになっております。この二十六条及び国民の平等をうたった十四条、それを受けて、教育基本法三条の一項では、すべての国民にひとしく教育を受ける機会を保障し、性別等により教育上の差別を禁止しているということがございます。ここで言う問題は、男女生徒同一の教育課程を保障することが含まれているというふうに私は思うんでございますけれども、この点いかがでしょうか。
  207. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) そのとおりだと思います。
  208. 刈田貞子

    刈田貞子君 教育基本法五条でしたか、共学。男女共学は私は家庭科においてこそ不可欠な条件であろうかというふうに思っておりますので、ぜひこの点を、こういう願望を持っている者たちの意も体していい方向を出していただきたいというふうに思います。  最後に、大臣にお伺いいたしますけれども、家庭科というのは、掃除、洗濯、炊事というふうなものを教える教科であるというふうな認識に立っている男性が、家庭科などを高校の息子に教えてもらっては困るというふうな言い分も持つわけでございまして、さっき大臣のお話の中に、教科の中身の問題に一部触れたような御発言があったかというふうに私は思うんですけれども、家庭科というものも、やっぱり今の掃除、洗濯、炊事を基本にしたようなかつての主婦像をつくる教科というようなものであってはならないというふうに思うんですが、この家庭科共修の問題は、家庭科の教育課程の中身の問題にも実はかかわってくるというふうに私は思っておりますが、この点、いかがでしょうか。
  209. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 私は、顔つきは非常に古い男みたいな顔つきをしておりますが、男女平等という問題については相当進んだ考え方を私は持っているつもりでございます。その意味で、先生の今までの御議論を拝聴してきたわけでありますけれども、ただ私考えますのに、結局、学校における教育というものは、その人が社会に出て幸せな暮らしができるようにすることがやはり目標だろうと思うのでありまして、そういう点を考えますと、先ほど局長が言いましたけれども、家庭科の中でやはり女子の方が重点的に勉強しておったがいい分野と、あるいは一緒にやっておった分野と実際にはあるんじゃなかろうかと。家庭科といえば衣食住、それに保育という問題もあると思いますが、そういった事柄に関する勉強をし、そして家庭を合理的にかつ立派に営むための基礎的な学習をする、それが私は家庭科だと思いますけれども、その中で、先ほど申し上げましたけれども、保育の中で、これは子供を育てるのは二人で協力して育てるわけなのでありますけれども、しかし何といいましょうか、人工栄養の場合には両方同じようにできますけれども、そうでない場合には母親だけが母乳は飲ませるという立場にもなるわけでありまして、多少のウエートの違いは出てくるのが現実の社会ではなかろうかと、こういうふうに私は思います。  いずれにせよ、家庭科という教科は家庭をしっかり整える、立派な家庭をつくり上げる上で非常に大事な部門だと、こういうふうに思っておりますので、この教科については今後とも充実した教育がなされるようにしていかなきゃならぬと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  210. 刈田貞子

    刈田貞子君 私は、大変私ごとで申しわけないんですけれども、消費者教育学会という学会に籍を置いている者なんですが、その消費者教育学会で言う家庭科というのは、生活者として自立のできる人間を育てるという教科だというふうに位置づけているわけでございまして、私はこれは大変に力を入れて自分自身精力的に動いているものでございますので、また機会がありましたら大臣にもいろいろ聞いていただきたいと思います。  いずれにいたしましても、時間が参りましたので、差別撤廃条約の十条の(b)項、(c)項、この精神に外れることのない形で解決されていくことを希望いたします。  終わります。ありがとうございました。
  211. 安武洋子

    安武洋子君 私は、けさほどから論議になっております臨教審とそれから教育基本法の問題についてお伺いをしてまいります。  臨教審の設置に当たりましては、総理並びに当時の森文部大臣が、教育基本法を守っていく、こういうふうに述べておられます。そういう立場に立ちますと、臨教審の論議というのは教育基本法に基づく教育の内容の充実、そしてその発展ということになろうと思います。  文部大臣にお伺いいたしますけれども、臨教審における教育改革の論議と、それから教育基本法のかかわりについてまずお伺いをいたしとうございます。
  212. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 臨教審設置法第一条に明らかに書いてありますように、政府は「教育基本法の精神にのっとり、その実現を期して」必要な改革を図っていくわけであります。そのための意見をしっかり出してもらうために、総理府に臨時教育審議会を設置すると、こういう臨教審設置法第一条の規定になっておるわけでありまして、政府はあくまでも教育基本法の精神にのっとってその実現を期して改革をしていく、その改革を立派にやり遂げるために総理府に臨時教育審議会を置くと、こうなっておるわけであります。したがって、政府の立場からすれば、臨時教育審議会の審議におきましても、その政府の目的というものははっきりしておるわけでありますから、それを踏まえて臨教審でも審議をしていただけるものと期待をしておるわけであります。
  213. 安武洋子

    安武洋子君 ところが、臨教審の委員の一部の方の発言でございますけれども、教育基本法の見直しにかかわる意見があちらこちらで展開をされております。十月の七日に全日本教職員連盟主催の教育改革シンポジウムの席上で有田委員が、教育基本法につけ加えるべきものがある、こういうことで宗教心の涵養、国を愛する心、伝統文化の尊重、こういうことを挙げておられます。また金杉委員は、ソビエト体制や共産主義体制の国を民主的な国家とするような教育を内容としているような教員組織は問題だとして基本法の見直しを論じておられます。さらに、第一部会長の天谷委員でございますけれども、部会長就任の抱負の中でおっしゃっていることですが、これは基本法の運用状況についての意見や基本法が時代の要請に合っているかの意見を聞きたいということで、これは平然と基本法の理念の見直し、これに通じる論議を提唱なさっていらっしゃるわけです。こういうふうな発言というのは、教育基本法の精神にのっとり、その実現を期すというこの臨教審の先ほど大臣がおっしゃった設置目的、これからも大きく私は逸脱するというふうに思いますけれども、この基本法の尊重という見解と大いに食い違っているという意見についてどういう御見解をお持ちでございましょうか。
  214. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 先ほど申したとおり、政府は教育基本法の精神にのっとって教育改革を進めるわけであります。その教育改革を進める上で各界各層の方々の意見を集約する、改革意見を出していただく、そのことのための審議をする機関として臨時教育審議会を設置し委員をお願いをしたわけであります。したがって、政府としては、臨教審の審議の場におきましても、教育基本法の精神にのっとって審議をしていただけるものと期待をいたしております。しかし、だからといって委員の各先生方の発言等について我々の側で制約を加えたり、あるいは自由な論議を拘束するなどということはできないわけなんでありまして、あくまでも委員先生方の審議会における御意見の開陳あるいは議論というものは自由濶達にやっていただきたいと、こういうふうに考えておるわけであります。
  215. 安武洋子

    安武洋子君 自由濶達に意見を述べていただいて結構だということは、こういう意見も野放しにするということで、私はこの設置法の第一条の「教育基本法の精神にのつとり、」ということから大いに逸脱しているということを私は野放しにするものであると思うわけです。大臣は教育基本法これを守られる先頭に立たなければいけないお方でございます。この天谷委員の抱負発言といいますのは、この教育基本法が二十一世紀にマッチしているのか、時代の要請に合っているのかどうかという基本法の理念、精神にかかわる問題、これを審議の対象とするというものでございまして、およそ基本法の精神にのっとってその実現を期するというふうなものではございません。教育基本法の理念の実施という上での論議、これでなければいけないという大枠があるにもかかわらず、ここから外れた教育基本法を見直すということを問題にしているということについて、大臣はこういう御発言を野放しにされたままでもいいのか。私は、こういうことにたがをはめることはできないというふうなことをおっしゃいますけれども、論議を活発にしてほしいということはこれを野放しにすること、しかしこういうことは大変好ましくない。教育基本法を守られる大臣としてそういう毅然たる立場をとられるということがこういう発言を抑制することになると、こういうふうに思いますが、いかがでございますか。
  216. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 教育基本法の精神とは何ぞやということでありますけれども、それは教育基本法の前文並びに第一条等で明記をされておるわけでありまして、「教育は、人格の完成をめざし、」云々という以下に教育基本法の精神が明記されているというふうに考えております。先ほど先生の話の中で国を愛する心を育てる教育もすべきであるという委員先生の発言があったやに先生から御指摘がありましたけれども、私は人格の完成を目指すということの中には、国を愛する心を育てる教育も中には入っておるというふうに思うわけでありまして、国を愛する心を育てる教育をすべきだというある委員の発言があったといたしましても、それは教育基本法の精神から逸脱するものではないというふうに考えます。
  217. 安武洋子

    安武洋子君 大臣、つまみ食いしていただいたら困るんです。この方の発言というのは宗教心の涵養ということ、こういうこともつけ加わっておりますし、それからほかの委員には、共産主義体制の国を民主的な国家とするような教育、これを内容云々というふうなこともありますし、私が問題にいたしておりますのはこの天谷委員の就任の抱負、これは公式的なものだと思います。ここのところについて基本法の運用の見直しということを言っておられますけれども、それでいいんですかということを申し上げて、それを御質問申し上げているわけでございます。  そこでさらに伺いますが、香山健一委員が臨教審委員として九月の十四日、二十七日に審議会の議題への意見やそれから基本方向に対する提案を行っておられます。報道されております文書を見てみますと、香山委員はこの中で教育基本法の精神そのものの論議を求めたり、あるいは「教育の自由化」ということで、これは原文を読んでみますが、「教育行政分野における許認可、各種規制、補助金等の全面的な見直し、教育分野への民間活力の積極的導入、教育行財政改革の断行等。例えば、教育基本法の第四条、第六条(「法律に定める学校は、公の性質をもつものであって、国又は地方公共団体の外、法律に定める法人のみが、これを設置することができる」等)の改正をも含む、学校の民営化、塾の合法化、選択の自由の拡大と競争メカニズムの導入が不可欠。」、こういうふうに書いておられるわけです。こういうふうに基本法四条、六条の改正も含めて教育改革の基本課題とすべきだということを言っておられまして、今後もより具体的に提案すると、こう述べておられるんです。ですから、このような内容の論議が臨教審で行われるということについて、大臣は妥当であるというふうにお考えでございましょうか。御所見を伺います。
  218. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 臨教審の審議というものは、今までの審議会ではない、委員先生方が自主的に課題を設定し、そして運営も自主的になさるという、大変民主的といえば民主的な審議方式をとり、かつそれぞれの課題について自由濶達な意見が交わされると、こういう形で進められておるわけであります。今の天谷先生の発言でございますが、新聞によりますというと、二十一世紀を考えた場合それにマッチしているかどうか、皆さん方の意見をよく聞きたいと、こういう発言でありまして、直接的に教育基本法の精神を変えるとか、精神をこれはある方向に持っていかにゃならぬとか、そういう発言ではないのでありまして、教育基本法の精神を逸脱したものとは私は考えないわけであります。  なお、今先生のおっしゃいました四条とか六条という関係でございますが、例えば教育の自由化といったことを強く主張していらっしゃる先生方もいらっしゃるわけでありますが、その場合に義務教育九年とするというふうに明記されておるわけでありまして、これをいじること自身が教育基本法の精神に直ちに反するのか。前の国会におきまして森文部大臣は、九年の期間を延ばすことは教育基本法の精神に反するものではない、短くするものは教育基本法の精神に反するおそれもあると、こういった趣旨の発言が国会でなされたようでありますが、結局は精神の問題として義務教育をさらに一層充実をしたい。国民の教育水準を高めたい。その場合に九年というこの数字が入っておるわけでありまして、これを十年にする、十一年にするという議論をすることは、これは教育基本法の精神に反するものではないというふうに私も実は考えるわけであります。
  219. 安武洋子

    安武洋子君 重大な御発言でございます。教育基本法の四条、六条、私が先ほど申し上げましたけれども、こういう学校教育これがどういう性格を持つかというふうな――六条ですね、先ほど読み上げたというふうなこと、それから四条はこれ義務教育でございます。こういう義務教育の問題あるいは六条の問題、そしてこの中ではっきりとこれを改正すると言っている問題。しかも、先ほど天谷委員の発言を擁護なさいましたけれども、この中でははっきりと基本法は何も見直す論議をせよと言ってはいないわけでございます。基本法のこの精神にのっとってその実現を期して、そしてそれを充実して必要な改革を図るんだと、着実な前進を求めているんです。  設置法の目的にも違うような、この第一条をないがしろにするというふうな、こういう基本法の評価とか内容全般の見直しとかと、こういう論議、これが平然と行われる、そのことを野放しになさるということは、基本法を守る守るとおっしゃっておりますけれども、本当に基本法を守ることになるんですか。こういうことを野放しにされるということは、結果的には基本法にのっとった答申が出てくるんだと、それを期待しているんだとこうおっしゃいます。しかし、このままでいくと基本法を改正するんだというふうな答申が出てくるということだって十分に私は考えられると、こういう結果を招かないように私は文部大臣としてこの段階で適切な見解をお述べになると、こういう必要があろうと思いますけれども、いかがなんでしょうか。
  220. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 再々申し上げておりますように、政府がこれから行わんとする教育改革は、教育基本法の精神にのっとりその実現を期して改革を進めていくわけでありまして、そのための審議をしていただくための機関として臨時教育審議会が設けられたわけであります。そしてその審議会の委員に各界各層の代表的な方々に就任をしていただいた、こういう実は関係でございます。したがって、政府が求めておるのは、教育基本法の精神にのっとりその実現を期しての改革意見を実は求めておるわけでありますから、委員先生方も政府の改革の目的に適合する、すなわち教育基本法の精神にのっとった改革意見を出していただけるものと期待いたしております。  なお、念のために申し上げておきますけれども、政府としては教育基本法を改正する意思はございません。ただ、繰り返し申し上げますが、審議会における委員先生方の発言を一々私の方からチェックしたり、あるいは枠を設けたりすることは、自由濶達な論議を展開していただくことの妨げにもなりかねませんので、私は、委員先生方が自由濶達な意見を述べ合われることはとめる意思はございません。
  221. 安武洋子

    安武洋子君 だれも一般的に自由濶達な意見を開陳することが悪い、それをとめろと、そういう論議は全くいたしておりません。大臣もおっしゃ るように、基本法の精神にのっとってそれを着実に前進させていく、そういう教育改革をするためのこれは審議会でございます。これは設置法にもはっきりと目的がうたわれております。その目的から外れた意見が開陳されるということについて、そのことに対して文部省が毅然とした態度をおとりになれないというふうなことになれば、そういう意見が幾らでも野放しになって、そして幾ら期待をなさっても、教育基本法にのっとったそういう答申が出てこないと、逆に幾ら政府が教育基本法を変えないと言っても、変えるべしというふうな答申になりかねないという危険を十分に感じているわけです。そして、いろいろと弁護なさいますけれども、私どもは小さい子供たちに対して、どこの国とも仲良くせよと、そして一定のイデオロギーを持ち込むというふうな教育というのはまかりならないと。私の子供のときの教育もそうでございます。私どもは戦争中でございますから、朝鮮国をべっ視するとか、あるいは中国をべっ視するとかということを学校の中で教えられてきましたけれども、それがどんなに災いを持つものかということははっきりといたしております。それにもかかわらず一つの体制の国を敵視するようなことを盛り込む、これに対してこういう基本法というのは問題だと、こういう一つの社会体制ですね、社会体制が違う国を敵視するような、民主国家とみなすような基本法は問題だと、敵視せよと言わんばかりの発言、こういうものが御擁護になれるんでしょうか。やっぱりそういう細かいことではなくて、こういう委員たちが本当に大きな枠から外れてこういう発言をどんどんなさるというところを、私は基本法を本当に守ろうとする、その先頭にお立ちになる大臣ならこういうものは野放しにしないで、文部省としてはそういうことではないんだという態度をはっきりなさるべきだというふうに思います。もう一度お伺いいたします。
  222. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 繰り返し申し上げますが、臨時教育審議会設置法第一条に今回の教育改革の目的がきちっと明記されておりまして、そのための審議会として設置されたのが臨時教育審議会であります。また、委員先生方それぞれ良識のある先生方でありますから、政府の目的である教育基本法の精神にのっとってその実現を期しての改革、それに関する意見を求めておるということをよく御承知のはずでございますので、先生はえらい御心配でありますけども、教育基本法の精神に反するようなそういう答申が出るとは私どもは考えていないわけでありまして、政府の考えておる教育基本法の精神にのっとった改革意見が出てくるものとかたく信じております。
  223. 安武洋子

    安武洋子君 大臣がお信じになるのはそれは御勝手でございましょうけれども、これほど基本法を、まあ承知しているとおっしゃっておられますが、承知していながらこんな無謀な発言が続くというふうなことは大問題でございます。私はやっぱりそういうふうにこんなに基本法を逸脱した発言に対して毅然とした態度がおとりになれないということは、文部省の中にもこの基本法を否定するというふうな御見解をお持ちであろうというふうに思うわけなんですが、これちょっと確認しておきます。そういうお考えあるんでしょうか。
  224. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 全くございません。
  225. 安武洋子

    安武洋子君 では、ここで文書を配付させていただきます。    〔資料配付〕
  226. 安武洋子

    安武洋子君 きょう臨教審の事務局から説明員として出席をなさっております齋藤諦淳事務局次長にお伺いをいたします。  あなたは文部省大学審議官であったはずでございますけれども、一九八三年の七月の二十日、「高等教育の将来と私立大学の立場」、こういうことで日本私立大学連盟教務事務研修会で講師として講演されたことがおありだと思いますが、いかがでございましょうか。
  227. 齋藤諦淳

    説明員(齋藤諦淳君) ございます。
  228. 安武洋子

    安武洋子君 私はここにあなたの講演の全文を持ってきております。この中に重大な発言がございます。読み上げさせていただきます。   これはぜいたくな悩みかもしれませんが、私はよく言うのです。裏口入学だ何だと新聞社あたりから責められるが、裏口入学と言わないで、堂々と表口から五百万円なり一千万円なり、私立大学授業料を取るようにすればいいではないかと。これはまじめに言っているのでして、例えば普通の学生なら五十万円しか授業料を取らない、ところが成績の悪い子には五百万円の授業料を取るということをはっきり決めればいいではないか。その代わり、五百万円の授業料を取った子供には、普通一単位十五時間のところを百時間ぐらい教える、そういうサービスをきちっと提供するようにすればいいではないか。だから言い換えれば、高い授業料を取ってそれだけのペイができる、そういう自由があるということで、これは私立大学が一種の特殊性を発揮できる仕組みになっているわけです。国立大学でそれをやろうと思っても、なかなかそういう仕組みにはなれない。これは文部省も冗談で言っているのでなしに、まじめに言っているわけです。私学では学生ごとに授業料を変えても一向に構わないと思っているわけです。   いま問題なのは、補欠募集でとったのに授業料を高くして、それに対する対応策を何も講じない、そこが問題です。もう一つの問題は、教学サイドとは関係なしに、理事者サイドだけで学生を入れてしまうとすれば、そこに別の問題があるわけです。教授会なり学長がはっきり責任を持って、これは五十万円の学生、これは百万円の学生、これは一千万円の学生と決めておいて、一千万円の学生には徹底的に教育をする、そういう仕組みにすれば、これは文部省もそういう授業料を認めざるを得ないと言っているわけです。そういう特殊性の発揮のしようもあるのではないかということです。  文部省に聞きます。授業料の内容で教育の内容を変える、お金さえたくさん出せば成績が悪くても大学にはいれる、そして立派な行き届いた教育が受けられる、一方お金のない者は粗末な月並みな教育で当然だと、まあこういうことでございますが、これが文部省の公式な見解でございますか。
  229. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 私立学校にかかわります教育につきましては、学校の設置者として当該学校が提供する教育につきましてその対価として児童、生徒、学生から授業料を徴収するわけでございますが、それぞれの私立学校の特色に応じ、それぞれの建学の精神に基づき、あるいは教育にかかわるいろいろな目的に応じ当該学校法人において授業料を取り決めるわけでございます。したがいまして、当該私立学校において授業料が異なるところではございますが、できればできるだけ安くということで低廉な授業料にするということは、それぞれの設置者が心がけているところであるというふうに私どもは理解をしておる次第でございます。
  230. 安武洋子

    安武洋子君 そんなことを聞いてはおりません。私が今聞いておりますのは、今綿々と読み上げましたけれども授業料中身で教育の内容を変えると、こういうことを言っておられます。五十万円なら五十万円の教育をせよ、そして一千万円のお金のある人は成績が悪くても入れて一千万円なりの教育をせよと、それもまじめに言ってなさるわけですが、これが文部省の公式な見解なのかということをお伺いいたしております。
  231. 宮地貫一

    政府委員宮地貫一君) ただいま御指摘のありました発言については、研修会の講師として招かれた立場からの個人的見解を述べたものというぐあいに私ども聞いておるわけでございまして、文部省の公式見解かというお尋ねであれば、公式見解ではございません。  ただ、一般的に申しまして、私立大学授業料は学校の利用者でございます学生等が学校施設及び教職員によって提供される教育という役務に対して支払う対価たる性質を持つというぐあいに解されているわけでございまして、具体的な私立大学授業料については私学自身の自主的判断と責任において決定されるものというぐあいに理解をいたしております。
  232. 安武洋子

    安武洋子君 個人的な見解だというふうにおっしゃいますけれども、ここの中には「ちょうどいま来年度の概算要求の編成作業中でありまして、せっかくの機会だから、皆さん方の話も聞かせていただきたいと思っていたのですが、またすぐ帰らなければなりません。」、こういうことで抜け出ておられますし、この中で「せっかく来たのに、文部省審議官が何を話していたか、帰ってから報告されるはめになってもいけませんので、いまから結論だけを言っておきます。」というふうに冒頭でもおっしゃっている。勤務時間内に抜けて行かれて、そして文部省審議官が話したことが報告されるという前提にも立っておられます。しかも、今読み上げましたのは、この中に歴然と「文部省も冗談で言っているのでなしに」と、文部省という言葉ではっきりと言っておられます。「文部省もそういう授業料を認めざるを得ない」と、これは私見でない、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。御本人もおられますから、どうぞ。
  233. 齋藤諦淳

    説明員(齋藤諦淳君) これは研修会は講師として招かれまして、いろいろな考え方の一つとして述べたわけでございます。ちょうどこの研修会の直前に「アメリカ高等教育機関の学生募集と経営」という本が出されたのでありますけれども、ここで授業料の単一価格というものはいろいろ考えてみてはどうかという、そういう提案がたまたまあったわけでございまして、そういう考え方を参考にしながら私の考えとして述べたわけでございます。  なお、文部省も言っておりますということは、文部省の内部でいろいろな意見の一つとして言っておるということをこういう形で申し上げたかと、こう記憶しているところでございます。
  234. 安武洋子

    安武洋子君 これは文部省の本音ですか、じゃ。「文部省も冗談で言っているのでなしに、まじめに言っている」ということですし、「私学では学生ごとに授業料を変えても一向に構わない」んだと、こういう見解を一体文部省は本音として持っておられるのかと。これは五十万円の学生、これは百万円の学生、これは一千万円の学生、それで「一千万円の学生には徹底的に教育をする、そういう仕組みにすれば、これは文部省もそういう授業料を認めざるを得ない」ということですから、明らかに文部省の見解として述べられておりますし、今言えば文部省の中にあるそういう意見を言ったんだということですから、これは文部省の私は本音なのか、もう一度念を押してお伺いいたします。
  235. 宮地貫一

    政府委員宮地貫一君) その点は先ほどお答えしたことに尽きるわけでございます。具体的に私立大学授業料をどう決めるかということについては、私学自身の自主的判断と責任において決定されるべきものというぐあいに考えるわけでございます。  御指摘の点をさらに踏み込んで申せば、学生の個々の成績等と対応する教育指導のサービスとの関係ということは、実際上はその相関をどう考えるかということはなかなか難しいことではないかと私ども思います。したがって、そういうことについては慎重な判断が必要であらうと思いますが、そこで指摘されている点を純理論的に考えてみれば、そういう考え方も成り立ち得るのかなというぐあいに考えるわけでございまして、私ども基本的には文部省の公式見解としてどうかと言われれば、その点は個人的見解として述べたものでありまして、文部省の公式見解ではないということは先ほど申し上げたとおりでございます。
  236. 安武洋子

    安武洋子君 重大発言が続きます。  教育基本法の三条、どういう内容か言ってみてください。
  237. 齋藤諦淳

    説明員(齋藤諦淳君) 教育基本法の三条は教育の機会均等について述べているところでありまして、「国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならない」云々という規定でございます。
  238. 安武洋子

    安武洋子君 この第三条は「すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであって、」ということで、「経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。」こう書いてあります。これは明らかに経済的な地位によって教育の中身を差別するそのものじゃありませんか。これは明らかに第三条違反ではございませんか。
  239. 齋藤諦淳

    説明員(齋藤諦淳君) 私がこの講演で述べました際には、これは経済的地位という、そういうようには考えてはいないわけでございまして、それぞれの能力に応じて教育を受けるというそういう機会が十分付与されなきゃならない、そういう考えで述べているところでございます。
  240. 安武洋子

    安武洋子君 何が能力ですか。成績の悪い子は一千万円取ればよいと、こういうことを言っているわけです。そうして一千万円には一千万円なりの教育をするんだと、五十万円は五十万円の教育だと。明らかにお金のある者は立派な教育を受けられるし、成績が悪くても大学に入れると。お金が出せない者は大学進学をあきらめなければならないと。明らかに経済的理由によって差別をされる、これはもう明らかにだれがどう考えたって第三条の教育の機会均等、これに反するじゃありませんか。  大臣、御所見いかがでしょうか。
  241. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 今初めて齋藤さんが講師として招かれて個人的な発言をされたその中身を見たわけでありますが、この意味するところは私は次のように理解をいたしました。というのは、これは私立大学の話でございますが、私立大学の教育内容、そして学生に与える教育サービス、これは努力をして極めて高い水準を維持しなきゃなりません。それはそうなんでありますが、しかし何といいましょうか、特別に長時間をかけてそうして教育をしてあげるというルートといいますか、組織をつくってもいいじゃないかと、その場合には大変な出費がかかるだろう。そういう場合にはそれなりの負担をその学生にしてもらうということも考えられるという意味のことを、ややオーバーにこれに書いてあるというふうに見たわけでありまして、私立学校においてはそういうことも考えられても一つの考え方としては成り立つのかなという感じでございます。したがいまして、教育基本法第三条に言う「すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を」云々とは抵触するものではないというふうに私は理解をし、解釈をいたしました。
  242. 安武洋子

    安武洋子君 金のない者は教育を受けられない、能力でなくって。  私は、文部省に聞きますが、お金の収受額によって入学者の選抜の公正、それが害されてはいけないということで、寄附金の納入を条件とした入学許可、これをしてはならないと私学に指導なさっていらっしゃるんじゃありませんか。
  243. 宮地貫一

    政府委員宮地貫一君) 御指摘の寄附金の問題の点につきましては、そのような指導をいたしております。
  244. 安武洋子

    安武洋子君 その指導と違うじゃありませんか。  入学のときも裏口入学だなんだと言わないで、お金がたくさんある者は成績が悪くても入れろと。そして一千万円持ってきた者には一千万円の教育をせよと、もう入るときから、お金がなかったら入れないじゃありませんか、成績が悪くたって入学はできるじゃありませんか。それでいいんですか、大臣。
  245. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 私は齋藤さんの発言をそういうふうには理解しないんです。  入学試験をして合格をした人、それは平等な負担をし、入学金にしろ授業料にしろ。しかしそうじゃなくして、特別に経費のかかるコースをつくって、そしてそれには特別の措置をするというコースをつくってもいいんじゃないのかと。その場合には経費がかかるからそれ相応の負担をと、こういうことなんでありまして、決して平等に反するものではないというふうに理解をし、解釈をいたします。
  246. 安武洋子

    安武洋子君 大臣、どこをお読みなんでしょう。「裏口入学だ何だと新聞社あたりから責められるが、裏口入学と言わないで、堂々と表口から」金を取れと、こう言っているんですよ。そして「成績の悪い子には五百万円の授業料を取る」というふうなことをはっきり決めるというふうなことですから、成績の悪い者はここから、表口からお金を持っていけばとろうと、こういうことなんですよ。こういうふうにお金で、そして中でも教育は機会均等でなければいけないのに、お金によっていろいろのコースをつくるんですか。こちら五十万円の生徒、こちら百万円の生徒、ここに五百万円の生徒、ここで一千万円の生徒、学校の同じ中で、生徒にお金を出す能力のある者については手の込んだ教育を与えると、そういうことを堂堂とおやりになって、それが機会均等に反しないと、文部大臣がそういうふうな御見解なんですか。
  247. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 私はそういうことを言っているわけじゃないんですよ。齋藤さんの講演内容を読んで私なりに理解するのは、先ほど申したとおり、特別な講義をし、特別に手をかけて、そして教育をするルートが私学においては考えられてもいいのではないかという個人的な発言だな、これはと。その場合にはそれなりの経費がかかるから、その経費の負担という問題になってくるのではないか。一般的なコースといいますか、普通の場合にはあくまでも試験をしていただいて、その試験に合格した人がその大学に入る。その人の場合には平等な負担でなければならぬ、これは当たり前のことであります。私は、齋藤さんのこの発言を今申したように理解をするわけであります。一つの考え方としてそういうことも成り立ち得るのかなという感じでございます。
  248. 安武洋子

    安武洋子君 では、当たり前でないコースがあってもいい、お金持ちの子供、お金をたくさん出す者は入れて特別の教育をする、こういうことを認めると。大臣、これをお認めになるんですか、今、文部省は。
  249. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 私としては認める気持ちはありません。私立大学においてそういう考え方も成り立ち得るのかなという疑問符をつけながらの私の実は批評なんでございます。
  250. 安武洋子

    安武洋子君 私は、教育基本法を守るんだとこういうふうな大臣の御発言にしては、私はこういうふうな特別なコースを設けると、特別なコースを設けるんじゃないんですよ、中身は。全部子供をお金によって仕分けをしろと、教育の中身をお金によって分類せよと、どう読んだってそうなんですよ。「これは五十万円の学生、これは百万円の学生、これは一千万円の学生」。で、「一千万円の学生には徹底的に」ということですからね。五百万円の授業料を取った子供には一単位十五時間のところを百時間ぐらい教えると。学校の中でこういうことが行われるということが教育の機会均等とか、こういうことに反しないんですか。これはお金ですからね、能力があなたは足らないから特別にいろいろと百時間やりましょうというんではないんですよ。お金をたくさん出したからこの子には百時間教える。そのお金がないので、この子にはたったの十五時間しか一単位について教えないと。能力で差別をされるんではなくて、能力に応ずる教育ではなくて、明らかに経済的な問題で教育上差別をされてはならないと書いてあるのに差別をされるということを容認されるんですか。
  251. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) くどいようでありますけれども文部省として、あるいは文部大臣として、今先生のおっしゃるように金によって教育の内容が違う、差別があるということを認める気持ちは毛頭ありませんし、認めるものではありません。  ただ、先ほど申したとおり、齋藤さんのこの講演を私なりに理解をいたしますというと、五行目にありますように、成績の悪い子を何としても大学に入れて、そして何とか大学の課程が終わるような、そういうふうにしたいという希望者があれば、そういう特別のコースも考えられるのかなというふうに私はこれを読むわけであります。
  252. 安武洋子

    安武洋子君 私は大臣のその御所見に対しては、全くもう本当にあきれるということを申し上げておきます。  しかも、これは一般の人を相手に講演しているのではないんです。私学の教務事務研修会で、しかも文部省大学局の審議官として、この職務の最高ポストの人ですよ。ですから、与える影響がどんなに大きいのかと。しかも、文部省の見解でもないものを文部省の見解だと、こう述べているわけです。私は重大責任であろうというふうに思うんです。こういうふうな発言というのは、私学経営者の中にはまじめに本当に私財を投じていい教育をしたい、こういう考えに立っておられる方、まじめに教育に取り組んでこられた方も少なくないと思います。こういうのは私学の教育を私は破壊するものであるというふうに思います。  それから、こういう私は教育基本法の精神に真っ向から違反するような発言、これを関係者の前で、しかも文部省の方針でもないものを方針だと発言する人を、大臣が何だか奥歯に物の挟まったような言い方で、そこにおられるからそうかもしれませんけれども、そういうお立場をとっていただいては困る。これは教育基本法をやっぱり守るというしっかりした立場に立っていただいて、この責任を感じていただいて――しかもこういう方が実質的な臨教審の事務局の責任をとっておられるわけでしょう。私はこのポストにふさわしくない、こういう人は変更すべきだ、こう思います。いかがでしょうか。
  253. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 私は教育基本法の精神にのっとって、これからも文教施策を進めてまいる、かたい決意を持っております。
  254. 安武洋子

    安武洋子君 大臣の御決意を聞いたんじゃないんです。こんな人をなぜこんなポストに据えておくのか。それで文部省の公式見解でもないものを文部省の方針だと発言する。しかも関係者の前で。  まだこの発言、重大性があるのですよ。この問題発言としましては、「いずれにしましても、それぞれの段階なり特色に応じて教育の本来の在り方というものを考える。特殊教育を始め、教育というものは、入ってきた学生にいかにして付加価値を与えていくか、そこに本来の意味があるのです。いま、得てして大学は選別機関であるというように勘違いされているわけですが、大学を企業としてみた場合にはそうではなしに、いかにして入ってきた学生に価値を付加して、どれだけ立派な人間として育て上げて出していくか、そこに本来の大学の機能があるわけです。」と。教育を付加価値ととらまえている。付加価値をつけるのが大学の本来の機能だと。これは第一条の教育の目的、こんなものを全くないがしろにしております。教育の公共性、社会性をないがしろにして、教育を単なる個人の投資としてしかつかまえていないということで、学生を私は商品と見ているという立場だろうと思います。公費教育主義に逆行する受益者負担主義、こういうものが出てくる、こういう考え方がこの根底にあるんだというふうに私は思うんです。  通称国際人権規約ですけれども、これでは高等教育も含めまして「高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。」というふうになっているんです。教育の無償の方向も示されて、国際的な流れにもなっているわけですね。ところが、先ほどのこういう齋藤氏の発言、「付加価値」、こういうふうな教育の目的などなげうったというふうな、こういう問題もあるわけです。  ですから私は、こういう臨教審のいろいろ問題になっている中で、こういう人を事務局次長に据えていくということは全くふさわしくない。これはかえていただかなければなりませんけれども、今私が申し上げた、こういう国際的な流れという方向から見まして、今現実に多くの私立大学が来年度の学費値上げ、これで大変いろいろと動いているということなんですね。値上げを検討中とか、こういうことが言われております。私は、この実態をお伺いする前に重ねて大臣に先ほどの齋藤発言、これもうこういう責任を本当に感じられないのかということでさらに念押しをして、この学費の値上げの問題に移っていきたいと、こう思います。
  255. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 入ってきた学生にいかにして価値を付加して云々というくだりでございますけれども、「価値を付加し」という表現が適当であるかどうか、いろいろ議論はあろうかと思いますが、その言わんとするところは、入ってきたその学生の全人格的な、価値という表現がいいかどうか、能力を発揮させて向上させて、教育基本法に言う人格の向上をさせていくところが大学であるというふうに私は理解をする、そういう意味での発言だというふうに理解をするわけであります。
  256. 安武洋子

    安武洋子君 大臣、色めがねかけてなさるんじゃないですか。何でも大臣がそう考えるんだというふうに方向を合わせてこういうものをお読み取りになる。少し頭を冷やして、この発言の中身がどんなものであるかということを、最初の発言、それから今度の発言、もっとよくお考えください。そして大臣も言われたように、価値なんというのは不適当な発言です。そして第一条の教育の目的というものがなげうたれております。その点をしっかりと踏まえていただかないと、いかに大臣が、臨教審の今審議が始まっている中で、教育基本法を守っていきますと言いましても、国民は本当に守ってもらえるのかと、さっきからの発言を聞いておりましてそう思うのが当然なんです。ですから私は、しっかりと本当に教育基本法を守るんだという厳然たる姿勢にお立ち願いたい。私は大臣の御答弁に不満です。  時間がありませんので、私は学費の値上げに移ってまいります。  全学連の調査によりますと、三百の私立大学を調べたところ、約七割が来年度の学費の値上げをしているというふうに言われております。大臣御出身の早稲田大学ですけれども、中でも特徴的ですが、定額スライド制の値上げ方式というふうなものが考えられておりまして、学年が上がるたびに授業料が高くなっていくということで、また入学年度ごとに授業料が上積みされて上がっていくというふうな二重値上げ方式なんです。例えば来年度の文科系の一年生、これを例にとってみますと、現行の授業料に比べまして三万円アップ、二年生になると六万円アップ、三年生で八万円アップ、四年生で十万円アップ、合計四年間で二十七万円、そして現行授業料に比べて二割もアップをするわけでございます。このほかに入学金一万円、それから施設費二万円とそれぞれアップ。それから再来年の入学者の場合は四年間で三十九万円、約三割も現行より引き上げられてしまう。理工科系はさらにもっと値上げになります。これでは他校に比べまして授業料が高いと言われている二部の学生にとっては、学業を放棄しなければならないという事態に追い込まれかねないわけです。数年先の授業料まで決めるというふうなこのような値上げを、文部省は好ましいと思っていらっしゃるんでしょうか。  この値上げラッシュと、それから値上げの傾向がどうなのかということと、私は今の問題についてお答えをいただきます。
  257. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 私立大学授業料につきましても、できる限り値上げがなされないのが望ましいというふうに考えております。  しかし、大学におきましてより充実した教育をしていきたい、それから教授その他の人たちにいい人材を確保するためにはそれなりの処遇の改善もしなければならぬでしょう。そういったことがありまして値上げという問題が出てくるものと思いますけれども、できる限り最低限で値上げが抑えられるようにしてもらいたいという希望を持っております。  なお、早稲田大学の今先生の申されました事柄につきましては、細かい点にもわたりますので政府委員をして答弁をさせます。
  258. 宮地貫一

    政府委員宮地貫一君) 六十年度の私立大学の入学者にかかわります学生納付金の状況、全体のことでございますけれども文部省としてもただいま調査中でございます。したがって、まだ具体的な数字については発表できる段階にはないわけでございますけれども、先ほど大臣からお答えのございましたように、各学校法人に対しまして自己努力と申しますか、経営努力によりまして授業料等の納付金の値上げを極力抑制するように、指導を従来からもしておりますし、今後ともそういう方向で対応してまいりたい、かように考えておるわけでございます。  それから、御指摘の早稲田大学授業料の改定の問題でございますが、先ほどもお答えしましたように、私立大学授業料等につきましては私学自身の自主的な判断と責任において決定をされるわけでございます。現状については先ほど申し上げたわけでございますが、早稲田大学についても現在の財政状況、あるいは大臣からもお答えもございましたように将来の収支予測、そういうようなことも十分検討されまして具体的に決定をされているものと思います。早稲田大学については五十四年度以降学費改定を行ってなかったというようなことがございますが、今回の早稲田大学授業料の値上げにつきましては、第一点として入学初年度の学費改定額をできる限り低額に抑えるということと、したがって増額分を各年度に分散をして負担の時点をできる限り後年度にシフトをすると申しますか、そういうような考え方でいわゆる定額スライド制というような形で対応をしているわけでございます。第二点として、全学生に各年度における経費増や教学の面での質の向上ということを考え、それをそれぞれ平等に負担してもらうということも考えて、先ほども申しましたいわゆる定額スライド制を導入したものと考えておるわけでございます。  したがって、御指摘の点はトータルで議論をいたしますと、値上げ幅が高くなるではないかというような御指摘でございますが、それらの点は、今申しましたような大学側の配慮というようなことで対応をしているものと私ども理解をしておりますが、先ほど来も申しておりますように、私学自身がみずから自主的な判断と責任において決定をされるものというぐあいに私どもは理解をしておるわけでございまして、早稲田大学においても、したがって六十年度、六十一年度の新入生の学費改定については、十分内容を説明するような資料等も十分整えて父兄にも理解をいただくような手だてを十分講じているものというぐあいに私ども承っております。
  259. 安武洋子

    安武洋子君 私学への助成というのは、これは単年度で行われるはずです。ですから、まだどういうふうに推移するかもわからないという中で、授業料だけは数年先まで決めていくというふうなそんなやり方が、私は文部省として好ましいと思っているのかということを聞いているんです。何だか大学の弁解ばかりで大学の立場で物をおっしゃっている。そうではなくてどうなんだと、こういう値上げ方式はいいのかと、好ましいと思うのかと、文部省としてと、その点を一言でお答えください。
  260. 宮地貫一

    政府委員宮地貫一君) その点は先ほどお答えしましたとおり、私学自身が自主的な判断と責任において決めるべき事柄というぐあいに理解をしております。
  261. 安武洋子

    安武洋子君 いかにそうであろうと、大学の決め方そのものに、私学の助成は単年度主義なんでしょう。まだ何も推移がわかっていない中で、その何年先のことを見込んで値上げを決めるということは好ましいんですか。
  262. 宮地貫一

    政府委員宮地貫一君) 確かに、私学助成はそれぞれ予算としては単年度で決定をされている事柄でございます。
  263. 安武洋子

    安武洋子君 だからおかしいわけでしょう。そして学費の値上げの背景というのは、これは一部の私学の営利主義的な大学運営というものもあります。しかし同時に、私学経営を苦境に追い込んでいるという重要な原因、これは私学への助成金を圧縮してきた政府の私学政策だというふうに私は思います。一九七〇年から行われてきました私立大学の経常費補助金、この伸び率というのは一九七五年の五七・四%、これをピークにしまして年々頭打ちから一昨年はゼロ、昨年はマイナス、今年度は二けたのマイナス予算と、こういうことになっております。その結果どうなったか、五〇%を目指すというこの参議院の決議もありますし、こういうことになっているのに私立大学の経常費総額に対する補助金の割合、これは一時は三〇%近くまでいっておりましたけれども今では逆に二〇%強まで低下してしまっております。  こういう政府の私学政策の背景には、私は先ほど齋藤氏の発言を取り上げましたけれども、教育の社会性、公共性、こういうことを否定した受益者負担主義の考え方、これがあるからだというふうに思います。今の高学費政策、これが続けられますと経済的な理由で高等教育を受けられないということになるわけで、教育の機会均等がもう一層損なわれていくということです。先ほどの齋藤氏の発言を引用いたしますけれども、齋藤氏ですら、高度成長のころは授業料は少々高くなってもそれを支える経済的余力があったが、今日の低成長下では高等教育機関へ子供をやる、そういう経済的余力というものはほとんどなくなってきている、こういう経済上の理由もこれからは加わると認めておられます。教育の国際化を言うなら、私は高等教育への公費負担の増大という国際的な流れに逆行するのではなくて、私学の助成を増額するということで私立大学の学費値上げの動き、これを抑制すべきだと、このことを質問いたしまして、残念ながら時間ですので終わらせていただきます。
  264. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 政府としては先生よく御承知のとおり、私学の我が国学校教育の中で果たしている重要な役割にかんがみまして、私立学校振興助成法という法律を議員立法で制定をしていただきまして、それに基づいて私学の助成の努力をしてきたところでありますが、ここ数年、国の財政事情が厳しいがために、伸びるどころかマイナスになっておるということ、甚だ残念だと思っております。しかし、六十年度の予算につきましては少しでも増額できるように最大限の努力をしてまいりまして、私学教育の充実を図ると同時に父兄負担の増額がなされないように努力をしていきたいと、こう考えているところでございます。
  265. 井上計

    井上計君 二十一世紀がいよいよ近づいてまいりました。二十一世紀にふさわしい新しい文化と文明を求めて、人類は平和と繁栄に向かって安定したそしてさらに充実した未来を創造していくためにはどのようにすべきか、当然、我が国はどのような道を歩むべきかということが真剣に検討されております。我々は、次の世代を担う、すなわち二十一世紀の子孫に何を残すべきか、二十一世紀の世界を担う現在の青少年に対して我々が果たす役割は何であるのか等々考えますと、今我々はさらに真剣にこれらの問題等について考えていかなければいけないときだというふうに私は考えております。申すまでもなく政治のすべてが、行政も、あるいは財政も教育も、あるいは産業も福祉も現在の改善はもちろん急務でありますけれども、現状の改善と同時に二十一世紀への方向を目指して前進をすることでなければ本当の政治とは言えないと、このように考えます。  こういう観点から、きょうは二十一世紀への前進に向かって特に重要な教育と科学技術の問題等について質問を行いますが、竹内大臣はもう最初から、朝からずっとそこへお座りでありましてさぞお疲れだと思いますが、心から敬服をしております。また松永大臣はもうずうっと朝から真剣な御答弁でお疲れでありましょうから少し御休息をいただいて、科学技術庁長官である竹内大臣の方にまずお尋ねをしてまいりたい、こう思います。  最近国際的にもあるいは国内的にも経済社会の新たな展開に向けた科学技術に対する期待が非常に強まっております。特に我が国では唯一の資源が人的あるいは知的創造、これでなければ我が国の未来はないわけでありますから、創造性豊かな科学技術の振興を積極的に推進をしていかなくてはいけないというのはもう論をまたないわけであります。  そこで、先月十一月の二十七日でありますか、科学技術会議が十一号答申として我が国における科学技術の長期的な基本的な指針を取りまとめたと報道されておりますけれども、その概要について、時間が余りありませんから簡単で結構でありますけれども、要旨ひとつ大臣からお聞かせをいただきたい、こう思います。
  266. 竹内黎一

    ○国務大臣(竹内黎一君) 二十一世紀を展望した場合に、我が国日本にとって科学技術の振興が欠かせない重要命題であるという先生の御指摘には全く同感でございます。また、今御質問の第十一号答申も、先生指摘のような認識を背景といたしまして二十一世紀を目指して長期的かつ基本的な科学技術政策のあり方を示したところに私は大きな特徴があろうかと理解をしております。  その内容をごくかいつまんで申し上げますと、十一号答申は三本の柱を立てていると理解をいたします。  そのまず第一は、世界の科学技術を先導すべき国として導入技術の改良や発展の域を超えたいわば日本の土壌に深く根差した独創的な科学技術の展開を図ることを力説しております。そしてそのため基礎的研究の推進、技術基盤の強化、創造的な人材の育成等を進める必要があることを指摘しておるわけでございます。  第二は、科学技術のみがひとり歩きするのではなくて、人間及び社会のための科学技術という、こういう原点に立って、人間そのものへの理解を深めながら人間及び社会と調和のある科学技術の発展を図ることを力説されております。  第三は、今後ますます日本に対する国際的な期待が大きくなる、そういう国際社会の中において日本がその技術力を国際社会の発展、例えば世界経済の活性化であるとか人類全体の福祉の向上であるとか、そういうのに活用していくためにも国際化の進展に即した対応力を強化する必要がある、こういう第三の柱を立てております。  私はまことにごもっともな指摘である、こう感銘しておりまして、今後科学技術振興のためのよるべき施策の基本理念を私はここに求めて、その実現に努力してまいらねばならぬと感じておるところでございます。  なお、十一号答申におきましては、今申し上げたような目標実現のために国全体の研究開発投資につきましても、昭和五十七年度が対国民所得比二・七八%でございますが、これを当面三・〇%、長期的には三・五%にすることを目標に官民の一層の努力を求めております。  以上、ごくかいつまんで十一号答申の内容を御説明申し上げました。
  267. 井上計

    井上計君 よくわかりました。全く同感であります。  そこで、今若干御答弁の中に触れてありましたけれども、科学技術の基本戦略といいますか、それも大変結構でありますけれども、しかし問題は果たしてそれが実行可能かどうかという、これが特に大切であろう、こう思います。そのポイントは何といっても政府の研究開発投資の充実いかんであろうと、こう考えるわけでありますが、本日は会計検査院科学技術庁に対する検査の報告が出ております。五十七年度でありますけれども科学技術庁決算検査結果は適切妥当だという報告で大変結構であります。しかし逆に、いささか皮相な変な言い方でありますけれども予算が少ないから実は指摘されるような、そういうふうな支出がなかったんだと、そういう決算ではないんだと、こういう見方も他から比較すると実は考えられないことはない、こう思うんですが、欧米先進国では現在我が国以上に厳しい財政状態でありますけれども、政府が主体になって総合安全保障条約あるいは国際競争力の強化等に向かって科学技術の振興に大変な力を注いでいると、こう聞いております。  先ほど大臣の御答弁の中に三%程度の技術投資というふうなことについてちょっとお触れありましたけれども、聞くところによりますとアメリカで既にもうおととしあたり四六%ぐらい、西ドイツで四四%、イギリスは五〇%、さらにフランスはもう五八%という非常に高い割合のいわば政府が科学技術の研究費の中に投資をしておるということですから、それに比べると我が国は、五十七年度は二三%ぐらいですか。したがって、よほどこれらのものを考えていかないと、いわば目標は大変結構であります。しかし、これらの答申にあるような展望に向かってこれを実現をするためには、さていかがであろうかというふうな懸念がするわけでありますけれども、財政状態の非常に厳しい中でありますから、大臣あるいはまた政府委員等も大変御苦労であろうと思いますけれども、ぜひひとつ大いに頑張っていただきたい、これは要望であります。  まあ、とかく我々が考えますときに、確かに財政状態厳しいときでありますけれども、何もかも全部画一的に切っていくと、こういう考え方が大蔵省にあるやに、このように感じますけれども、いわば将来に向かって金の卵を産む施策については積極的に投資すべきである、こういうことをひとつ考えておりますし、また文字どおり、けさあたりからしばしば同僚議員の質問の中に出ておりますし、また政府側の答弁にありますけれども、国家百年の大計、これを考えるときには、ぜひひとつ明年度、これらの予算等については大臣が格別のひとつ御努力をいただきたい、これをひとつ要望いたしますが、いかがでありますか。
  268. 竹内黎一

    ○国務大臣(竹内黎一君) ただいま先生が科学技術予算の獲得についてもっと頑張れという、こういう激励の意味を込めた御質問をいただきまして大変恐縮しております。六十年度概算要求におきましても、私どもは四・一%の伸びの概算要求を実は大蔵省に提示をしておりまして、私といたしましては私のベストを尽くしてぜひこの概算要求額は確保したいものだと、懸命の努力をいたしたいと、こう考えております。
  269. 井上計

    井上計君 まあ懸命の御努力をひとつ願いたいと思いますが、四・一%程度の伸びでは伸びと言えないというふうな感じもしますけれども、せめてその程度でもぜひひとつ大いにひとつ御努力をいただきたいと、こう思います。  きょうは大蔵省には答弁求めておりませんが、大蔵省おられるわけでありますな、ぜひひとつよくこのことを耳に入れていただきまして、また省へお帰りになったら、科学技術庁予算要求に対しましては格段の御理解をいただくようにひとつ要望しておきます。  次に、科学技術立国を目指すためには、国民に対する啓蒙あるいは理解を求めるための努力が重要だというふうに思います。科学技術と簡単に言いましても実はなかなか国民全部には理解が乏しいと、こういう実情にあるわけでありますが、そういう意味からしても来年三月、あと百日足らずになりましたけれども、国際科学技術博覧会が開催をされます。その果たす役割は私は非常に大きいと、このように考えておりますが、そのためにはこの博覧会をぜひともひとつ成功さす、そのためにいろんなことで御努力をいただきたいと、こう思います。  ところが、大変残念なことには、一昨日でありますか、新聞報道によりますと、科学万博についてのいろんな世論調査が出ておりますが、「科学万博わかぬ熱気」であるとか、あるいはまた別の新聞ですけれども、行きたい人が二人に一人、科学博依然関心いまひとつ、このような総理府の調査結果が新聞に報道されております。  さて、これでは事実上大変残念でありますが、科学技術庁はどのようにこれから、あと百日足らずに迫った科学万博の開催に向けて啓蒙等についてどういうふうな御努力をされるのか。  また、もう一つは、約二千万人の見学者というのが予定されておるようでありますが、これまたいろんな新聞報道等によりますと、現在の交通あるいは宿泊等では二千万人の果たして受け入れができるかどうか非常に大きな心配があると、このように言われておりますが、準備状況等、開催に向けての科学技術庁の決意あるいは現在おやりになっている努力の方法等々につきましてひとつお伺いをし、科技庁長官に対する質問は終わりたいと思います。
  270. 堀内昭雄

    政府委員(堀内昭雄君) 博覧会の準備につきましては、来年三月十七日の開会に向けまして、地元茨城県を初め関係方面の協力を得つつ鋭意準備を進めておりますが、これまで順調に推移しているというふうに考えております。  会場におきましては、既に五十七年十月から各パビリオンというものの建物の柳成が達成されておりまして、その中に陳列しますいろんな展示物の工事が順調に進んでおります。  それから政府出展につきましては、主催国として、テーマに即したテーマ館、歴史館、子供広場、エキスポプラザ等々の施設を設置いたしまして、現在建物の内装を進めており、また展示物についても据えつけ工事が始まっております。  それから外国出展でございますが、既にこれまでに四十七の国、三十七の国際機関が参加を表明しております。本年十月には四十九カ国、五国際機関の出席を得まして第二回の参加国政府代表会議を開催しております。外国館の建物も順調に完成しつつございます。  それから国内出展では二十八の企業、団体の参加が決定済みでありまして、これも順調に準備を進めております。  それから祭典といたしましていろんな催し事がございますけれども、これまでのいろんな計画等を進めておりまして、今月中には第一次のプログラムの作成を行う予定になっております。開会式、閉会式、ナショナルデー、スペシャルデー等の行事や博覧会協会の企画による催し物、その他広く一般から持ち込み企画が行われるというような予定にしております。  それから観客の輸送の問題、先ほどの御指摘の問題でありますけれども、大体二千万人という観客を受け入れるということで検討しておりまして、道路によるもの及び鉄道によるもの、それぞれ一千万人ずつというふうに考えております。  道路輸送につきましては、来年二月までに供用開始を目途といたしまして、常磐自動車道ですとかあるいは首都高速道路、それから会場周辺の道路等の道路網の整備を進めております。駐車場等の整備もあわせて進行中でございます。  それから特に自動車の関係で、これをうまく誘導するという必要がございまして、科学万博放送局というものを会場のそばに設置いたしまして、これで道路の交通の情報でありますとかあるいは博覧会の関係の情報を提供するというようなことも考えております。  それから鉄道輸送につきましては、中距離電車、常磐線の中距離電車でございますけれども、現在十二両でございますが、それを長くいたしましたり、あるいは本数をふやすというようなことで常磐線の輸送力を大幅に増強しようということでございます。また、牛久―荒川沖間に万博中央駅というものをつくりまして、この会場を中心に連節バスというものを運行いたしまして、相当効率よく観客をさばこうという予定でございます。  それから観客の宿泊につきましても、現在いろんな関係筋の協力でもって順調に進行しておりまして、全体で大体一万八千人相当分の宿泊施設を用意するということでございます。  先ほど御指摘の広報につきましても、博覧会の開催、それからその意義を周知するためにマスコミを通じましての広報、各種記念行事、それから巡航船ですとか巡行列車というようなものを動員いたしましていろいろこれまでPRに努めてまいった次第でございまして、先ほど御指摘のとおり、総理府の世論調査では周知度が七七%に向上しております。今後とも一層の努力を続けたいと、こういうふうに考えております。
  271. 井上計

    井上計君 わかりました。御努力をいただいておることもわかりますし、また開会に向けていろんな準備を着実にお進めいただいておることもわかりますけれども、この調査によるとまだ科学万博が開かれることを知らないという人が二三%ある、こうなっています。やはりまだまだそういう意味ではPRが不足をしておるんではなかろうか、こう思います。予算関係あるかと思いますけれども、マスコミ等を通じてのPR、特に小中学校の子供を通じてのPR、ぜひお考えをいただいたらどうか、こう思います。これ要望して科技庁に対する質問を終わります。  次に文部大臣また文部省に伺いたいと思います。  もうけさほどからのいろんな教育問題、教育行政についての質問で出ておりますように、何といっても教育は国家百年の大計であります。先ほど申し上げましたように、二十一世紀に向かって我我が何をなすべきか、これを考えるときに、まず何といっても青少年の教育をもっともっとやはり重要視をした、もっと青少年の教育が健全であるというふうな方向にこれを持っていかなくてはいけない、このように痛感をしておるわけでありますが、そこで、その教育のこれまた中心でありますところの教科書の問題についてお伺いをいたしたい、こう思います。  昭和六十年度から使用される予定の高等学校の社会科の教科書の検定作業が既に終わって、現在では発行への準備がなされているように伺います。それに対し、先般マスコミが文部省の検定が一段と厳しくなって固定色あるいは統制色が強まっている、こういうふうな報道がありました。昨年やはり中学校の教科書の検定が終了したときにもマスコミは同じようにそのような報道をした、こう記憶しておりますけれども、実際に中学校の教科書がこのような国定色が強まった、あるいは統制色が強まったと言われるようなのとは逆に、一段と反国家的な色彩が強くなって、偏向の度合いがますます激しくなっておる、こういうことを指摘をする人が非常に多いわけであります。私も全くそのとおり同感でありますが、今度の高校の社会科の教科書もそのような懸念が多分にあるのではなかろうかということが憂慮されておりますけれども、いかがでありますか。言うまでもなく教科書に記述されることは特定のイデオロギーや、あるいはその人の主観、偏見に左右されたものであっては絶対なりませんし、史実には忠実で公正な見解と、均衡がとれて、すなわち教育的な配慮が十二分になされなければならないのは、これはもう当たり前でありますが、どうも通説や一方的な偏見で記述されるというふうなことが多々あるんではなかろうかというふうに考えます。まして、我々日本国民の名誉を傷つけたり、あるいは祖国の歴史に泥を塗るような教育の材料となるような教科書がもし発行されているとすると、これはもう大変なことでありまして、国家百年の大計を誤る、そうして二十一世紀への我々の努力に水を差すようなことになるであろう、こう憂慮するわけでありますが、私は現在の小学校、中学校あるいは高校、特に社会科等々の教科書の中にこのような懸念すべき点が多々ある、こういう認識をしておりますけれども、まあ文部大臣、就任されましてまだ日が浅いわけでありますが、失礼でありますけれども、十分なるまだ教科書等についての検討がなされていないかもわかりませんが、どういうふうな御見解でおられますか、お伺いをいたします。
  272. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 先生指摘のように、今青少年の教育を重視して、そして、二十一世紀の日本を支え得るたくましい、そして心身ともに健全な青少年を育成していくということが極めて大事なことであると認識いたしております。そして、学校教育の中で教科書の果たす役割、影響は極めて大きい、こういうふうに認識いたしておりますので、学校で使用される教科書が適正なものでありますように最大限の努力をしなければならぬと考えております。  御承知のように、文部省としては従来から、教科書の検定というものについては客観的かつ公正に行われ、これによって教科書の記述が適切な教育的配慮が施されたものになるようにするために、教科用図書検定基準に基づきまして教科用図書検定調査審議会の議を経て教科書の検定を行っておるわけでありますが、これからも教科書というものが偏向しているとか、あるいは日本人の誇りを傷つけるようなことがないように、偏向があるとすれば、それは速やかに改め、そしてまた先生の御指摘のような日本人の誇りを傷つけるような記述があるとすればそれを改め、客観的に公正な、そして適切な教育的な配慮がなされたものになるように今後とも努力をしていきたい、こう考えておるわけでございます。
  273. 井上計

    井上計君 大臣から御見解を承って意を強ういたしました。しかし、私はこれらの質問等につきましては既に過去何回か当院で行っております。最初は昨年の三月、予算委員会で代表質問で行ったわけでありますけれども、当時瀬戸山文部大臣、それから当決算委員会におきましても、前の森文部大臣にもこれらの点について要望し、あるいは提起をしたことがあるわけであります。ところが、一向に率直に言って改善されていない、こういうふうに考えざるを得ないわけであります。  私の質問だけではありませんで、衆議院におきましても我が党の議員が再三にわたってこういう質問をしております。また、御承知かと思いますけれども、教科書正常化国民会議というのがございます。これは各大学の教授、先生方が非常に献身的に国の将来を憂えてこれらの問題等についての研究をしておられる機関でありますけれども、その正常化国民会議も既に今まで数回にわたって文部省に申し入れがなされておる、このように伺っておるわけであります。  特に、我が党の衆議院の滝沢幸助議員が去る八月七日、教科書検定問題に関する質問主意書を政府に提出をいたしました。これに対しまして、八月二十一日付をもって政府から衆議院議長に対しましての答弁書が送付をされておるわけであります。私はこれらの点をいま一度復習という意味で具体的にひとつお伺いをしたい、こう考えておるわけでありますけれども、率直に言ってこの政府から出されました滝沢議員に対する答弁書、まことに抽象的であいまいである、このように実は強く感じられるわけでありまして、ましてもう大切な点はことさらに避けておられるんではなかろうか、こんなふうにさえ思える点があるわけであります。恐らくこれは答弁書をおつくりになった文部省の本音ではなくて、どうも建前でこういう答弁書ができているんではなかろうかというふうにも失礼ですが考えられます。どこか何かに、あるいはどこかの方面にどうも遠慮してできた答弁書というようなふうにも、これはあるいは違っておるかしれませんが、私は実はこの答弁書を見てそういう印象を受けておるわけであります。  そこで具体的な問題に入ります。北方四島の問題であります。北方四島の問題に対しまして滝沢議員は、私も従来同じようなことを質問をいたしておりますが、この滝沢質問で北方領土問題についてはかなり具体的に、現在ある教科書の記述が事実と違うということをずっと列記をされておるわけでありまして、終戦後におけるソ連の日本に対する侵略によって北方領土が奪われたという事実が明記されていない、あるいは我が国の関与しない、したがって責任が全くないヤルタ秘密協定によるソ連の参戦と北方領土の占有が、あたかも合法的であるかのような記述をされておるという点がある、さらには、ソ連はサンフランシスコ平和条約をボイコットしたのであるから、同条約によって北方領土に関し何らの梅利、権限を有しないということが明らかでありますけれども、これらの点が明記をされていないということもあります。また、サンフランシスコ条約はアメリカ日本に一方的に押しつけたものであるというこういう記述もあるわけであります。  以下、時間がありません。例を挙げると切りがありませんけれども、特にまた沖縄において、あるいは原子爆弾を投下したアメリカの暴挙、大変大々的に記述がされておりますが、反面北方領土におけるソ連の暴挙については全く記述がされてないんですね。このようなこと、あるいは終戦当時日本の領土――南樺太は植民地ではありません。行政上の本土でありましたから領土でありましたが、これが植民地というふうに記載をされている。このように事実と違う誤りの記述がたくさんあると思うんですね。  これに対して、答弁書を見ますと、まことに簡単であります。「教科書検定制度は、教科書の著作を民間にゆだねることにより、著作者の創意工夫を期待するとともに、検定を行うことにより、適切な教科書を確保することを趣旨とするものである。したがつて、北方領土等について、教科書にどの程度、どのような表現で記述するかは、教科用図書検定基準に違反しない限り、教科書の著作者の判断にゆだねられているところである。」、こういう答弁書が出ております。とすると、私は、検定基準に違反をしていないから適切な教科書だ、こういうふうな考え方であるのか。事実と違ってもそれは検定基準に違反していない、この答弁書から見るとこういうふうな理解しかできないわけでありますが、どうでありますか、ひとつお伺いをいたします。
  274. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) 先ほど大臣からも御答弁申し上げたとおりに、教科書の記述は客観的でなければならない、そして公正な記述でなければならない、そして子供たちがそれぞれの発達段階に応じて理解できるような教育的な配慮がなければならない、こういう基準でやっているわけでございます。  したがいまして、客観的に明らかに事実に反するような記述が教科書になされておれば、当然検定の場合にチェックされていって修正を求める、こういう態度できているわけでございます。
  275. 井上計

    井上計君 わかりました。  ちょっと若干質問の内容が変わりますけれども、外務省及び北海道庁が全額補助をして今年度北海道の小学校五年生、中学校二年生を対象に副読本が配付されていることは、これは御承知だと思います。現在、これがどのように北海道で副読本が活用されているのか、あるいはその副読本採用によってどういうふうな北方四島問題に対する理解が深まっておるのか等々、ひとつ文部省調査をされておりましたらお聞かせをいただきたいと思います。調査されていなければぜひひとつこれらについて調査をお願いをいたしたい、こう思います。  ただ、配付されたものは約四万部、小学校五年生が二万部、それから中学校二年生が二万部、合計四方部、四万人対象。ところが、北海道では小学校は現在千七百九十八校あって九万四千人、生徒が。中学校は八百十一校あって八万六千人。したがって、四分の一に満たない程度しか渡っていないわけでありますけれども、それでも私はこれが本当に活用されているとすればまあまだしもという感じがしますが、ひとつこれについてどうかお答えをいただきたい。  そこで、次いでこれについて申し上げますけれども、この小学校五年生に配付されておる副読本「ほっぽうりょうど」ということでありますが、この中に書いてありますのは、「戦後の北方領土占領された島々」、そしてポツダム宣言を受け入れて、昭和二十年八月十五日に終戦となった。ところが、「それよりさき、連合国では、日本に戦争をやめさせるために、『カイロ宣言』をだしました。それによると、「日本が暴力や欲望で他の国から取った領土は返させるが、もとからの領土はそのままにして、日本の領土とする。」」というカイロ宣言がはっきり書かれておる。「これとは別に、日本とソ連との間には、『日ソ中立条約』が結ばれていました。これは、「日本とソ連のどららかが、他の国と戦争状態になった場合、他の一方の国は、戦争の全期間中立を守る」ということで、一九四六年(昭和二十一年)四月までの有効期間が定められていました。」、しかるに、ソ連はその期間中の間アメリカ、イギリスとの間でヤルタ協定を結んで、終戦後千島列島をソ連に引き渡すという約束をした。そのために参戦の約束をした。こういうことがずっとあるわけですね。  特に、そこで北方領土、ソ連の占領のあり方は、八月十五日に第二次世界大戦は終わったが、二日後の十七日午後、ソ連軍はカムチャッカ半島の突端からずっと上陸をして、「千島列島ぞいにウルップ島まで南下し、一度は引きかえしましたが択捉島などにアメリカ軍が入っていないことを知って、ふたたび行動をはじめ択捉島・国後島・色丹島・歯舞群島を占領し、九月三日までに北方領土の占領をすべて終わりました。」、こういう小学校五年用の副読本ですね。  それから、中学校二年用の副読本、大体同じ趣旨でありますが、ただソ連がいかに国際法に違反をして武力で我が国の固有領土を占領したかということが書いてあるんですね。  私は、これは事実だと思う、事実だね、あらゆる資料から見て。間違ったことが書いてあるはずないんです。事実であるからこそ、外務省と北海道庁が実は予算を出して副読本として配付してあるわけですね。これと、要するに検定済みの教科書と全くとは言いませんけれども、違う。今、副読本にあるようなことは全く教科書に記載をされていない、記述されていないということはどういう理由でしょうか。これちょっとお伺いいたします。
  276. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) 若干誤解があるようでございまして、例えば、中学校の社会科の中で教える場合に、一応の教える便宜の観点から地理的分野、歴史的分野、公民的分野、こういう分け方で教えるわけでございます。  したがいまして、例えば地理的分野について大部分の教科書は次のような記述をしております。  「北海道本島の東にある歯舞諸島と色丹・国後・択捉の島々は日本固有の領土であるが、ソ連は、第二次世界大戦後にこれらをソ連領だとして占領しつづけている。」というような記述で、明らかに日本本来の固有の土地であり、ソ連が占領しているというようなことを地理的分野のところでは詳しく述べているわけでございます。  ただ、それがじゃ歴史的分野のところでも全く同じような表現になっていないと、そういう御指摘はよくされますけれども、教える場合にはこれらのものを総合的に教えていくわけでございますから、少なくとも中学生、高校生が北方領土について日本本来の土地であるし、そしてソ連が不当に占領をしているし、それについて返還を日本政府が求めている、日本国民が求めているということがわかるような教科書の記述になっているというふうに我々は理解しているわけでございまして、個々の教科書をごらんいただきますと、今申し上げたような中身をずっと私たちの方も検討してまいりましたけれども、そういうような誤解の受けるような教科書にはなっていないというふうに思っている次第でございます。
  277. 井上計

    井上計君 局長ね、私、今局長答弁はさっきも申し上げましたけれども政府委員としての答弁とすれば、現在この席ではその程度しか仕方かないのかなという気はするんです。しかし、今おっしゃったように誤解を招くような点があるかしらぬけれども、しかし、事実はちゃんと正確に記述してあると、こう言われますけれども、それは違いますよね。時間があればもっと私は具体的にいろんな、これはこうという資料はありますけれども、改めてまた、じゃ私専門家等々の指導を受けながら、これはこうという全部細かい資料局長のところへ出しますから、御検討いただきたいと思いますが、まず、八月十五日のポツダム宣言を受諾した終戦以降、ソ連が武力をもって南樺太から千島列島を南下をしてきて、我が国の特に固有の領土である北方四島を武力占領した。あるいは千島列島も実は日露交換条約によっての領土でありますから、何もソ連に占領される理由は全くないわけでありますけれども、それらのこと等について、しかも八月十七日以降九月の三日の間にソ連が武力占領したという事実を北海道の人はほとんど知りませんよ。だから、局長がそう言われるけれども、それはそのような今の現在の教科書ではそういうふうな理解は全くされないということ。それともう一つ、後で申し上げようと思っておりましたが、現在の日教組の運動方針からすると、今の教科書に基づいて今私が申し上げているような事実を教育をするはずがありませんよ。問題はそこだと思うんですね。時間も余りありませんしまた十分おわかりのことだと思いますし、また大臣はおわかりだと思いますから、私はこれらについて検定方法を含めてもっとお考えをいただきたい。  先ほど臨教審の問題等については同僚委員から臨教審の委員がいろんな発言をしているのはけしからぬという発言が随分ありました。私はやはり発言は自由だと思います。どんな発言をしてもそれがそのまま間違っている発言が通るというふうな日本の国情ではありませんから自由だと思いますけれども、しかし、少なくとも特に義務教育の教科書に事実と明らかに違うと思われるようなあるいは誤解されるような記述が堂々とまかり通っているということは、それこそ国家百年の大計からしてゆゆしき重大事である、こういう気持ちが痛切にするわけであります。  そこで、やはり滝沢議員の質問の中に、もし違った記述等々があった場合には検定制度の見直しとその記述の是正についてどうかという質問に対してこういうふうな答弁書がされております。 「1 現在使用されている教科書は、教科用図書検定基準に照らし、適切なものであると考えている。 2 教科書制度の整備については、昭和五十八年六月三十日の中央教育審議会の答申の趣旨を尊重して適切に対処してまいりたいと考えている。」修正権のあり方等についても「教科書の記述に誤記、誤植等がないよう、教科書の検定において努力しているところであるが、検定を経た教科書に誤記、誤植等があることを発見したときには、教科用図書検定規則第十六条の規定により、教科書の発行者は、文部大臣の承認を受け、必要な訂正を行わなければならないこととされている。」と答弁書にこうあるわけですね。そうすると、この答弁書で見ると、教科書の発行者からの間違っておりましたから直したいと思いますという申請を、文部大臣の承認を受ければ直せるけれども、いや外部から指摘をして明らかに間違いであるということがはっきりしても、発行者が直すという意思がなかったら直せぬと、こういう意味に受け取れるんですが、そうなんですか。
  278. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) それはそういうことでございませんでして、明らかに事実に反しておれば検定の際に修正をしてもらう。それから、特に社会科の教科書は非常にそういう点で検定する際に、いろんな物の見方、考え方の著者がいらっしゃるわけでございます。そうしますと、その記述の仕方が客観的な事実に反する場合には明確にこれは間違っているから修正してほしいという意見を検定意見で述べるわけでございます。間違ってはいないけれどもどうも十分なる表現になっていないという場合には、こういうふうに修正した方がいいんじゃなかろうかという希望意見、これを述べるわけでございます。  そういう二つの仕掛けで検定の制度は運用しているわけでございまして、明らかに間違っているのをそのまま放任するということは、これは検定を何のためにやっているかということになりますので、そういうことは少なくとも基本的な態度としてはとっていないわけでございます。
  279. 井上計

    井上計君 客観的に見てという今御答弁ですけれども、じゃ私が申し上げた、しかも先ほど読み上げた副読本に盛られている事実が客観的であるかどうかという前に、私はこれは事実だと思うんですね。事実が記載されていない教科書が客観的に見て間違っていなければこれは検定合格してまかり通っておると、こういうことだと思うんですね。そこに私は、検定の方法等についてやはり問題が大きい、これはぜひお考えをいただかなくちゃいかぬと、こう思います。  まあ大臣、難しい御答弁でありますから特に答弁を今要求しませんけれども、ぜひともひとつお考えをいただいて、特に明らかに間違いである、あるいは明らかにこの程度では後世の子孫に対して正しい歴史を伝えることができないというふうに判断されるものについては、私は発行済み教科書についてもこれを訂正をするというふうなことはこれは当然考えるべきだとこう思います。これは特に御答弁要りませんが、ひとつ要望をしておきます。  そこで私は、教科書の問題とやはり重大な関連がありますけれども、日教組の運動方針等についていささかお伺いをいたしたいと、こう思います。  その前に、教科書の中には、日露戦争が侵略戦争であるとか、あるいはマルクス主義をまことに礼賛するような、マルクスの説明に非常に多くのページを割いておるという教科書もあるわけであります。それが現在の我が国のいわば国情と照らして果たして必要であるのかどうかという疑問を実は常に持っておるわけであります。これは教科書の内容でありますから先ほど申し上げたことと関連します。  そこで、日教組の運動方針、大臣ごらんになっているかどうか知りませんが、私の手元に実は残念ながらことしのものがまだ手に入っておりません。昨年度の、昨年の七月の二十三日でありますけれども、日教組の運動方針、これは毎年変わりませんが、大会スローガン、これを見ると、日本の、しかも大切な教育を担う学校の教員の労働組合の大会スローガンとするならばこれは大変なことだなと、こういう気がするんですね。事実、昨年の三月、先ほど申し上げましたが、当院の予算委員会で、私、党を代表しての質問の中で当時の瀬戸山文部大臣に実はお伺いしました。日教組の運動方針を何と考えるかと、こう申し上げましたら、瀬戸山文部大臣は、明らかに社会主義革命を企図しておると、こう考えざるを得ないという御答弁があったわけですね。社会主義革命を企図しておるという、そういう考え方が成り立つ日教組の運動方針、大会スローガン、こういうようなものを考えるときに、私は本当に国家百年の大計である大切な教育の立て直しができるんであろうかという大変な実は危惧を持つわけですね。  この大会スローガンの中にも教科書の問題等についてもいろんなことが具体的に書いてあります。「具体的たたかいのすすめ方」という中で、「教科書の採択にあたっては、採択区の細分化を目標に、当面、県選定の阻止や現行採択区を守るたたかいを強化します。」とか、「また、展示会には、全組合員が参加し、教科書の比較研究を自ら行い、一校一票投票など、教職員の意見によって採択を行わせるよう取りくみます。その際、日教組発行の「教科書白書」を活用します。」とか、いろんなこと、要するに日教組の運動方針に沿うような、考え方に基づくような教科書でなければ採用しませんよという、裏を返せばそういう意味ですよね。そういうことで本当は教科書の正常化ができるんであろうかという懸念を実は大変するわけであります。  同時に、この運動方針ずっと見ても感じますけれども、ソ連社会主義を非常に美化した運動方針です。そうして、アメリカを初めとする西欧自由主義国は経済的にもいろんな面で行き詰まっておると、要するに、はっきり言って自由主義はだめだと、社会主義がいいんだと、明らかにこういうふうな運動方針でしょう。そういう運動方針に基づいて、しかも私は、そういう率直に申し上げて、現在の教科書は多分に左偏向だと思いますが、偏向した教科書を使って大事な子供たちを教育をしておるという事実があるわけでしょう。  私は、文部大臣ぜひひとつ、けさほどから文部大臣の御答弁を承っておりますと、もうはっきりと明快にまた決然とお答えになっている点を拝聴して心強く思っておりますけれども、ぜひひとつ文部大臣、これらについて御留意を願いたいと思いますが、御答弁をいただければ大変ありがたいです。
  280. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 日教組という教育職員の団体、従来から教育の中立性を阻害するような行動があったり、あるいは青少年を心身ともに健全に育成するために行っておる国の文教施策に反対するための違法なストライキをしたり、大変困ったことだというふうに思っております。私どもとしては、そうした日教組の行動につきましては非常に遺憾なことだというふうに思っておるわけでありまして、特に学校教育に寄せる国民の期待に適切にこたえるためにも、日教組がこうした姿勢を改めて国民に信頼されるような行動をとってほしいというふうに私は考えております。
  281. 井上計

    井上計君 私は、いろんな資料等から見ても、また、昨日発表されました青少年白書から見ても、やはり我が国の青少年の意識というものが余りにも個人主義に行き過ぎて、自分たちの国をどのように評価をするか、どのようにひとつ愛していくか、そうして将来は向かって自分たちの国をさらにもっとよくして子孫に申し送りをしようかというふうな、そういう考え方がまことに欠如しておるというふうに、残念でありますが感じざるを得ないわけであります。  昨年の総理府の世界青年意識調査というのがありましたが、先進十一カ国で調査をしたところ、我が国の場合には、自分の国に誇りを持つ者は約七〇%で、十一の国のうち八番目であり、国のために役に立ちたいという意識は三九・五%、これまた八位であります。国を愛する、そのためには時として自己犠牲、何もこれは命を捨てるという意味じゃありませんが、自分を犠牲にしてもやはり社会のために、国のために役に立ちたいという意識は一六・三%という最低であります。私はこれらのものが全部とは言いませんけれども、やはり現在の我が国の教育あるいは教科書に起因するところ大であろうというふうに感じます。  それから、昨日の夕刊でありますが、昨日から東京で開かれておる日教組の国際シンポジウム。ここで日教組の田中委員長は、臨教審を憲法、教育基本法に違反すると、こう決めつけて、容認することはできないということを強調しておられます。いろいろとあいさつの中にあるようでありますけれども、この臨教審が憲法並びに教育基本法に違反をしておるのかどうか、大臣はどういう御見解をお持ちでありますか。
  282. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 臨教審というのは、先生承知のとおり、全国民を代表する国会で審議をされ、そして可決成立した法律に基づいて設置されておる審議会でありますから、文字どおり憲法その他の法令に合致をした大切な審議会であるというふうに考えております。
  283. 井上計

    井上計君 全く同感であります。とすると、大切な子供を預かる先生の集団である日教組の委員長が明らかに違うことを言っておるわけでありますから、私はむしろ文部大臣からこれらについては訂正を求める申し入れをひとつしていただきたい、これは要望しておきます。  日教組の問題等につきましてはいろいろと申し上げると切りがありませんけれども、やはり日教組の運動方針はすべて闘いなんですね。やはり私は、日教組は我々とは若干考え方が違う。すなわち労働者としての意識を持っておられますから、そのためにいろいろな表現等が字句が違うことはやむを得ぬと思いますけれども、やはり闘いを前面に押し出しておる考え方で、本当に大切な子供の教育、情操豊かな教育ができるかどうか疑わしいとこう思います。闘いを前面に打ち出しておるそのまた最たるものは、日教組にありますところの救援規程であろうとこう思います。年間百五十億円という膨大な金を日教組の全予算の八〇%近くのものを、いわば法律に違反をした、そしていろいろな行動をした先生たちに対する差し入れであるとか弁護士費用であるとか、あるいは罰金であるとか、あるいはまたそれらの者等についての補償をする、こういうふうな救援規程が堂々とまかり通っておったんでは本当の教育はできない、このように実は常々痛感をしております。  私は事あるたびごとにこれらのことを当委員会でも言っておりますけれども、率直に申し上げて、文部省はどこに遠慮しておられるか知りませんけれども、こういうふうなものが余り改善をされていない、改善をされる方向にいっていないという点を感じますので、格段のひとつ御努力をお願いをしたい、こう思います。御答弁特に必要といたしません。  以上で私の質問を終わります。
  284. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 限られた時間でありますが、あとわずかでありますので御辛抱をお願いいたします。  私は、東京工業大学等における予算外の経理の問題を中心にお尋ねをいたしたいと思いますが、その大前提に次のことを申し上げておきたいと思います。  まず大学の生命は、学問の自由、学園の自治ということが尊重されなければならないということが一点。それから第二点は、教育は愛情豊かに、そして育てるという心でなければいけないということが第二点。第三点は、教育の成果を実らせて花開かせるまでには長い長い時間と莫大な費用がかかるものである。第四点、ですから結論として、角を矯めて牛を殺すような愚かなことをしてはならない。  この四つの柱を大前提にこれから幾つかの質問を与えられた時間いたしたいと思うのであります。  東京工業大学等における予算外の経理の問題につきましては、去る七月新聞等で報じられて、そして当院の内閣、文教両委員会でもこの問題が取り上げられておるようであります。そこで、新聞によりますと、東京工業大学のほかに名古屋大学、京都大学、大阪大学等で同機の事実があったと、同じようなケースであったということを報じておりますが、文部省とされては当然すべての国立大学についてその実態の調査がなされたものと思いますが、その結果、経過のあらましをまず承りたいと思います。
  285. 大崎仁

    政府委員(大崎仁君) お答えを申し上げます。  まず名古屋大学、京都大学、大阪大学の三大学の工学部に関係の深い法人との研究上の関係につきまして調査をいたしましたが、いずれの場合も研究者がそれぞれの団体に協力をいたします際に、兼業という形で所定の手続をとっておりまして、全体として見ますと適正に行われたのではないかというふうに考えられます。ただ、個々の、個別の案件につきましては正式な受託研究として受け入れた方がいいものがあるというような点もございまして、それらの点については指導いたしたところでございます。  それから、全般的にも、工業関係の学部との関連を中心に調査をいたしましたところ、大体、法人が研究の実施を目的とする場合、あるいは研究の奨励を目的とする場合と二種類あるわけでございますが、両者を合わせまして約二十法人程度が特定大学の工学部と密接な関連を持って運営されておるというふうに認められるわけでございます。ただ、これらのそれぞれにつきましても必要な手続、方法等は踏んでおりますので、そのうちの個別の具体的案件について若干の問題がございましたが、それらにつきましてはその都度指導をいたしてきたということでございます。今後ともさらに実態の把握に努めたいと思っている次第でございます。
  286. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 これをお尋ねいたしましたのは、この問題について会計検査院におきましては昭和四十三年度決算検査報告で処置要求の形で指摘されておりますね。それ以来、文部省ではたびたび通達等で指導しておられると。ところが、現在においてもいまだにきちっと改善されておらないというこういう状態。時の流れはもう十五年も経過いたしておりますね。そのような長い経過の中で、どうも文部省の意図が事志と異ってなかなか反映しておらない。一体どこにその原因があるとお考えでしょうか、承りたいと思います。
  287. 大崎仁

    政府委員(大崎仁君) 御指摘のように、昭和四十三年度の決算報告におきまして、大学に受託すべき研究を教官が直接受託し、その費用を歳入に納入せずに予算外に経理しておるという御指摘がございまして、その御指摘を受けまして文部省といたしましては、昭和四十五年に歳入歳出予算を通して経理するよう指導し、以後その趣旨の徹底に努めてまいったところでございます。私どもといたしましては、これによりまして従前の状況がかなり改善をされたというふうに考えておるわけでございますが、なお改善の必要があるという点につきましても痛感をいたしておるところでございます。それで、私どもといたしましては、その努力の一つといたしまして、やはり受託研究あるいは奨学寄附金をいただきました場合の受け入れその他の手続あるいは扱い方というような点につきまして、それらがより一層円滑、適正に行われるようにする必要があるのではないかということで、現在その改善策を検討しておるという状況にございます。
  288. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 この問題は、私はこういうところに問題が、原因が潜んでおるのではないだろうかと、こう思うのは、一つには十五年という長い歳月の中で同じことを繰り返しておるという。それが一件ならず二件ならず、一校ならず二校ならずですね。まず第一には、何としてもこれは文部省指導の不足、指導力の不足を私指摘したいんです。今度受ける側からすると、二点には、各大学側においてその趣旨が徹底されていないという対応の鈍さといいますか、この両面から私はこのようなことが繰り返されておるのではないかと、こう思うんです。といいますのは、文部省とされては直接大学に奨学寄附金として受け入れた方がよいという、こういう指導を一応なしておられますね。そうですね。だからそういった手前からも、それがそれならばそれに沿うて目的を十二分に果たしていくような軌道をつくってもらわなければいけない。いつまでたってもその軌道ができないままにあいまいもことしてこのようなことを繰り返して会計検査院からも指摘をされておるということは、これはいけませんな。そのことを強く私も申し上げたいと思います。  そこで、最近、去る七月ですか、この問題に関して検討委員会検討会といいますか、検討委員会文部省として検討されて持っておられますね。その検討委員会検討の状況、一体何をどのように検討してそれがどういう今状況にあるのか、そういった問題点がどういう点であったのか、その概況をお聞きしたいんです。
  289. 大崎仁

    政府委員(大崎仁君) 先生指摘のように、本年の七月に省内に関係局課によります検討会議を設けまして、奨学寄附金あるいは受託研究費等のいわば民間研究資金の受け入れにつきましてのあり方について検討を進めてまいったところでございます。その結果、一応の改善案の中間的な考えを現在取りまとめた時点でございまして、その主な点を申し上げますと、奨学寄附金あるいは受託研究費いずれにつきましても申せることとしましては、やはり受け入れましてから実際に研究者がそれを使用できるまでの期間がもっと短縮ができないか、そのために文部省及び大学における諸手続を簡素化をし、敏速にやる必要があるのではないかという点でございますとか、あるいは、特に奨学寄附金の場合にはその使い道につきまして、これは寄附者の意向というのを体し、かつ教育研究にかかわりのある経費につきましてはできるだけ幅広い使用を認めるということが必要ではないかという、いわば使途の弾力的な運用の点、その他の事柄につきまして考えをまとめられたわけでございます。  私どもといたしましては、これらの中間的なまとめを先般行われました国立大学の学長会議あるいは事務局長会議で紹介をいたしまして、さらに関係者の御意見も伺いました上で手直しをし、できるだけ早い機会に正式にこれを通知をし、趣旨の徹底をさらに図りたいというふうに考えておる次第でございます。
  290. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 例えはどうかと思いながらも申し上げたいことは、この組織で洗いざらいいろいろと検討をされておると思いますが、私が言いたいことは、やっぱり最近の世相を見ましても、金が犯罪のもとであるということがあらゆるケースでそれが浮き彫りにされておる。だから、目的は立派だけれども、やっぱり人間というのは金に弱さを持っておる。例えて、お酒はあすの活力を養う百薬の長であると一応言うわけなんです。ところが、酒好きが酒を飲むと人、酒を飲み、二杯三杯になるというと酒、酒を飲み、さらにメーターが上がりますと酒、人を飲むと、こういうよく話を聞くわけですが、金と人間との関係におきましても人、金を飲むといいますか、そこは例えはちょっと適当でないかもしれませんが。ところが次の、接しておる間に金、金を飲み、そしてとどのつまりは金、人を飲むと、こういう境地になりかねないのが人間の持つ弱さであると。ならば君子危うきに近寄らずという言葉もありますが、そのようなことも配慮して、どうすればそういうことにならないように、しかも目的を最大限に達成していくことができるかということを、私も今名案は持ち合わしておりませんが、そういった配慮でいくということが大事じゃないかと、こう思うんです。  そこで、大体このケースの多い大学は理工学系統がほとんどのようでありますね。文科系統じゃなくて理工科系統であるようでありますが、それはともかくとしまして、国立大学と関連する法人との間で形式的に体裁を整える便法によって、外部資金の調達はその学校の教官と企業との癒着の土壌をつくりかねない。ここに一つの問題点がある。ところが、そのことが、冒頭に私が申し上げました学問の自由、大学の自治が損なわれる危険性があるのではないか。そこから醸すことにならないのかどうか。その点に関して文部省としてどう考えておられるか。そのあり方についてこれは大臣にお聞きしたいんですが、いかがでしょうか。
  291. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) 今、先生から人間の弱さについてのお話がございました。望ましいことは、どんな事態になっても金銭の問題で他から疑惑を持たれることのないようなそういう人間でありたいものだと、こういうふうに思いますが、聖人君子ならいざ知らず、今、先生のおっしゃいましたように、通常人の場合はややともすれば惰性に流れるおそれがなきにしもあらずであります。また、人間の弱さというものもある面では先生の御指摘のことがあるかとも思います。  そこで、先生承知のとおり、最近、産業界等から大学に対して研究協力の要請が多いわけでありますが、それに応じて協力をしていくということは大変結構なことだというふうに思うわけでありますけれども、しかし資金の寄附、そして寄附の使用方法等々、いずれも適切な手続、方法でなされなければならぬわけでありまして、今後ともそうした手続の適正化、しかし実際においては簡素化等も必要でしょう。いずれにせよ、疑惑を招く事態が起こらぬようにやっていかにゃならぬと。先ほど先生指摘のように、長い経過があるんだけれども、まだ改善が十分なされてないという御指摘がございましたが、これは甚だ残念なことでありますので、今後とも文部省としては各大学に、今申したように疑惑を招く事態が起こらぬように厳しく指導をし、かつ手続等の改善措置もしっかりやっていきたいと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  292. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 今の大臣の御答弁に関連するわけでありますが、大学の教官が企業からの受託研究に熱中するというその余り、今度は師弟の関係の教育面からの、学生に対する教育面がおろそかになるおそれはないのであるかどうか。その辺のチェック・アンド・バランスの節度といいますか、節度をどう保っていけばいいのか、このことが非常に大事であって、また難しいことであると思うんですがね。その辺のけじめをどうつければいいのであるかということについて、もう一遍大臣のお気持ちをお聞きしたいんですが、お考えをお聞きしたいんですが、どうでしょう。
  293. 松永光

    ○国務大臣(松永光君) もちろん民間企業からの研究協力依頼にこたえて、そして研究に専念するの余り、教育の使命を忘却してしまってはいかぬわけでありまして、大学本来の教育研究の使命を踏まえつつ、大学の主体性のもとに行わなければならないものであるというふうに考えておるわけです。
  294. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 じゃ、最後のお尋ねをいたしたいんですが、問題の所在を振り返ってみました場合に、結局国庫を通さない予算外の経理というところに一つの穴がありますね。今度、次には問題が起こった背景をもう一つ側面を考えた場合に、こういう点がそのことにつながらないかどうか。といいますのは、手続の問題で、例えば見積もりの請求書の事務手続が非常に煩雑であると、あるいは資金の使途に枠をはめ過ぎると、こういうところから学校側として、あるいはその教官としてうるさがって、文部省の意図に沿わない抜け穴を求めておるところはないかどうか。いわゆる手続上のもっとソフトな、弾力のあるつながりがそこにあるとするなら、うるさがる手続上の煩瑣とか窮屈、制限に対する一つの反発、こういうことがそれを可能ならしめる、その道を求める、追いやっておるということもある面では考えられるんじゃないかと思うんですが、今申し上げた意図おわかりでしょうか。受託研究費と奨学寄附金の利用の手続が煩瑣に過ぎるということはないだろうか。利用手続をもっと弾力的に運用して、利用しやすい方法は考えられないかどうか。具体的なその対策をされたことがあるならばお聞かせ願いたいし、また、まだないとするならばその面からのひとつ御検討をお願いいたしたいんですが、いかがでしょうか。
  295. 大崎仁

    政府委員(大崎仁君) 御指摘のとおり、この問題につきましては、一つは、やはり大学先生方に職務上の教育研究を行うに当たっての経費面での決まりはやはりしっかり守っていただくということがございますが、同時に、外部からの寄附金を受け入れた場合の使用の仕方あるいは受託研究を受け入れた場合の諸手続等につきまして、必要以上に煩瑣な面があるのではないかという反省を私どももいたしておりまして、先ほど御報告申し上げました検討委員会におきましても、その両面の観点から検討し、御報告申し上げましたような中間段階の案も得ておるわけでございますが、さらにそのような観点から検討を詰めまして改善措置を講じてまいりたいと思っておる次第でございます。
  296. 佐藤三吾

    委員長佐藤三吾君) 他に御発言もないようですから、文部省及び科学技術庁決算についての審査はこの程度といたします。  次回の委員会は明十三日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二分散会