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説明員(瀬崎克己君) 国連
局外務参事官瀬崎でございます。
本日、実は
局長がお伺いいたしまして御
説明さしていただくことになっていたわけでございますが、あいにくと衆議院の
予算委員会の方に出席を求められておりますので、私がかわって御
説明に上がったわけでございます。
本日、国連のことについてお話しするわけでございますが、国連というのは御承知のように非常に窓口の広い仕事をしておりますので、そのうちの幾つかに絞りましてお話をさしていただきたいと思います。項目といたしましては、まず国連の平和維持機能、それから軍縮、
経済社会
分野の活動、それから国連組織の中の
一つで今最大に荒れに荒れておりますユネスコの問題、このユネスコの問題につきましては若干詳しく御
説明さしていただきたい、こういうことで進めさしていただきたいと思います。
国連は、ことしちょうど創設以来四十年になりまして、四十にして惑わずと申しますか、本来であれば
それなりの成果を上げて評価さるべきでございますけれども、惑わずどころか非常に揺れておる、あるいは曲がり角に来ておるというのが残念ながら
実情でございます。国連につきましては評価が非常に分かれておりまして、例えば国連本部がございますニューヨークの市長さん、この人は国連というのは何か汚水のたまり場であるというようなことを言っておる。それから国連のアメリカの大使、もう引退された方でございますけれども、昨年、国連が日没時にニューヨークの波止場から船出をするのだったならば私は喜んでそれを送り出したい、こういうことを言ったということでございます。それから
日本でも数年前に、国連というのは田舎の信用組合程度のものだというような御
意見もあったわけでございます。こういった非常に酷評される御
意見はあるわけでございますが、やはり何と申しましてもこの四十年間世界の平和を支え、あるいは社会
経済分野で非常に大きな成果を上げてきたということは否めない事実でございまして、それが証拠に、現に世界の百五十九カ国が国連に加盟しております。それから毎年国連の総会になりますと各国の元首や外務
大臣あるいはその他の主要な閣僚が来られまして、その国の
外交政策についていろいろ
意見を開陳され、あるいはいろいろな決議を通して国際
協力を推進しているというのが
実情でございますので、私どもとしてはいろいろな酷評はございますけれども、国連のよい面をこれからも強力に育てていかなくちゃいかぬのかなというふうに
感じているわけでございます。
そこでまず、国連が最大の
目的としております平和の維持の面でございますが、戦後この四十年間に国連の
調査によりますと百三十余の武力紛争があったそうでございます。この百三十余の武力紛争によって二千百万人の方が亡くなり、千六百八十万人の人が行方不明になっているということでございますので、戦後四十年間非常に平和であったとはいうものの、やはり世界のいろいろな
地域において紛争があって、これだけ多数の人が死んできたということでございます。
そこで、国連の中では平和を維持するための最も有力な主要機関といたしまして安全保障理事会があるわけでございますが、この安全保障理事会というのは御承知のように五大国の拒否権によりまして事実上機能は麻痺しておるというのが
実情でございます。拒否権と申しますと我々の印象で何か
ソ連とすぐに直結するような
感じを持つわけでございます。もちろんこの四十年の歴史で
ソ連が拒否権を行使した数が一番多うございまして、百十五回今までに拒否権を行使しております。アメリカが三十九回、イギリスが二十回、フランスが十五回、中国が三回ということで各国千差万別ではございますけれども、とにかく
自分の国益に絡めまして非常にこれは好ましくないというような決議については全部この拒否権を行使いたしましてこれを葬ってきた。この拒否権があるために安保理というのは平和維持のための機能を完全には果たし得ないという
実情でございます。そしてまた、そういった拒否権を背景に、例えばベトナム戦争のような非常にアジアで大荒れに荒れた戦争は国連では全く取り上げられなかったというのが
実情でございますので、やはりこの国連の組織自体の中に国連を通じての平和維持というものを完全に果たし得ない弱点があるのではないかというふうに見ているわけでございます。
他方、それでは全然国連が無力かと申しますとそうではなくて、やはり国連の、平和のための統合決議、これはたまたま一九五〇年に朝鮮戦争が勃発した当初は
ソ連が中国の代表権問題で国連をボイコットしておりまして、その間隙を縫って朝鮮戦争の国連軍というのができたわけでございますが、その後、
ソ連はその愚を悟りましてすぐ安保理に帰ってきた。それ以降もう安保理というのは事実上大国の拒否権で機能し得ないことがはっきりいたしまして、すぐにアメリカその他西側主要国の音頭によりまして平和のための統合決議というのができているわけでございます。これは安保理で決議等が葬られたときに、すぐにその同じ
案件を国連総会に持ち出しまして武力行使を含む総会の勧告的な
意見を決議することができるという仕組みでございますが、最近では、例えばアフガニスタンに
ソ連が侵入した直後に国連の緊急安保理が開かれたわけでございますが、この緊急安保理の決議というのは
ソ連の拒否権によって葬られてしまった。その直後にすぐにこの同じ問題が国連の緊急特別総会にかけられまして百十カ国ぐらいの国が
ソ連の武力行使、侵入を非難する決議をしたわけでございます。
このように、大国のエゴというのがやはり国際社会の中で厳しく批判されるという面は国連の機能の中に残されているわけでございまして、私どもとしてはこういった国連の平和維持の面を今後もさらに強化するということを考えているわけでございます。
それから、平和維持の面では直接武力を行使したのはコンゴの平和維持軍のようなものがありますけれども、そのほかにも兵力の引し離しであるとかあるいは停戦の監視の面で現に国連の軍が活動しているわけでございます。例えばゴラン高原のシリアとイスラエルとの間に国連軍が現在千二百八十五名展開されております。またイスラエルとレバノンの国境地帯にはUNIFILという国連軍が六千二百八十六名展開されております。それからサイプラスでは二千三百四十八名の国連軍が展開されているというように、
地域地域で停戦を監視したりあるいは兵力の引き離しの面で機能しているわけでございまして、こういった非常に消極的ではございますけれども、国連の平和維持の面での活動というのは依然として続いているわけでございます。
この観点で、
日本では国連の平和維持機能につきましては資金面、財政面で
協力する、人的な面では自衛隊法等の
関係がございまして
協力できないというのが従来の立場でございます。この点につきましてはいろいろ
国内でも御議論があるわけでございますけれども、当面
政府統一見解で申しておりますように、自衛隊法の改正を図ってまで人的な
協力をしないのだというのが一応
政府の公式的な立場でございます。
ただ、この点について若干私見を申さしていただいて恐縮でございますけれども、例えばベトナムの難民のボートピープルが発生したときに、
日本は非常に大量の資金
協力をしたわけでございま
す。当時、ベトナムの難民のために大体その資金規模の五〇%ぐらいを
日本が出したわけでございますけれども、当時、その難民を愛け入れる枠を五百人定住枠を設けたところが、国際社会から、
日本の
協力というのは金だけ出して人的な面では全く
協力しないのか、あるいはその
協力の仕方が非常に消極的であるというような厳しい批判を受けたわけでございます。これと同列に論じることは必ずしも適切とは思いませんけれども、今日、たまたま大規模な国連平和維持軍を展開するような必要がないということで、既存の兵力を維持する財政面での
協力で
現状は事足りているということもございまして、
日本の
協力についてとやかく言う向きはないわけでございますけれども、例えば今後どこかの
地域で大規模な国連平和維持軍を展開するような必要が生じてきた場合に、
日本は再び資金だけを
協力して、それで国際社会の期待に十分こたえたということでとどまるのかどうかということについては、私どもとしては若干問題があるんではないかという気がしているわけでございます。
また、人的な面につきましては、一気に自衛隊での
協力ということは当面
国内の世論の動向等もございますし、例えば昨年一月の毎日
新聞の
調査によりますと、世論
調査の結果、七〇%が自衛隊を通じての国連平和維持軍への
協力には否定的であるというようなこともございますし、一気に自衛隊に直結する話は私ども必ずしもする必要はないと思いますが、例えば南アが不法に占拠しておりますナミビアの独立、これは現在停滞
状況にありますけれども、このナミビアの独立というような
状況が国連の管理下で行われた場合には選挙が行われるわけでございますが、その際に、その選挙の管理のために
民間人を派遣する。こういった面での人的な
協力ということは可能であろうかということで、この点につきましては現行法制の枠の中で人的
協力も検討するということで、さらに検討を進めていきたいというふうに考えているわけでございます。
それから、軍縮でございますが、最近の軍備競争というのは非常に憂うべき
状況であるというふうに
感じているわけでございます。一九六九年に国連は軍縮の十年ということを決議いたしまして、その軍縮の十年の終わりの一九七八年に軍縮第一特別総会というものを開催したわけでございます。この当時世界の軍事費、これは核兵器国あるいは非核兵器国すべてを含めました世界各国の軍事費の総計が四千四百七十億ドルであったわけでございます。ところが、現在、現
時点での世界での軍備費が九千七百億ということで、その当時から比べまして約倍増をしておるということで、これは単に核兵器国のみならず非核兵器国、その大部分は開発途上国で国の開発に最も資金を投入すべき国でありますけれども、そういった国を含めましてどうも軍拡というのがとどまっていないというのが世界の趨勢でございます。
軍縮につきましては、これは国連が取り上げております最も重要な課題の
一つでございますが、その実体的な
交渉はジュネーブにあります軍縮
委員会で、現在では改名いたしまして軍縮
会議となっておりますけれども、この軍縮
会議で取り上げているわけでございます。ところが、この軍縮
会議と申しますのは一九六〇年代、それから七〇年代につきましては、例えば部分的な核実験の禁止であるとか、核不拡散条約であるとか、生物兵器の禁止条約であるとか、宇宙天体条約と、このように着実に具体的な成果を上げたわけでございますが、ここ数年は非常に停滞
状況にありまして、特に軍縮
会議を通じまして何か具体的な話がまとまったということはなくて、専らその手続的な論争に終始しておるというような実に嘆かわしい
状況になっておるわけでございます。
今年、
日本の軍縮
会議の大使でおられます今井大使がある雑誌に寄稿しておられるわけでございますが、それを読みますと、
自分は軍縮大使としていろいろやっているけれども、実に挫折感との闘いであるということを書かれております。非常に高い理想を掲げて軍縮、軍縮ということをやっているけれども、非常に現在の東西間の厳しい対立あるいは各国のエゴというものを踏まえて、なかなか軍縮が進まないのは非常に困ったことであるということです。そういうような背景を踏まえまして、昨年は外務
大臣に軍縮
会議に御出席願いまして、
日本としては特に力を入れております核実験の禁止につきまして、従来は一挙に包括的な核実験の禁止ということを言っておりまして、これにつきましては検証問題でなかなか進まないということで、今後は段階的に、究極的には核実験を全面的に禁止するということを目標としつつ、ステップ・バイ・ステップと申しますか、段階的にこれを実現しようという提案をしていただいたわけでございます。今後も
日本としては核兵器問題、特に核実験の禁止につきましては
重点的に軍縮
委員会を通じまして努力していきたい、かように考えておる次第でございます。
それから、国連というのは先ほど申し上げましたように窓口が広うございまして、例えば
日本の卑近な例で申し上げますと、宇都宮の精神病院の問題が国連の人権
委員会で取り上げられると思いますと、次の日にはほかの
地域で
日本の輸入した象牙の問題につきましていろいろ問題があるということで、非常に多種多様な問題を取り上げているわけでございます。
国連の平和維持機能、軍縮につきましては私は先ほどから非常に悲観的な見方を申しておりまして、今後の長期的な課題として国連を通じての成果を上げる方向で努力すべきだということしか言えないわけでございますけれども、
経済社会
分野におきましては非常に目に見える成果が上がっておりまして、特に国連の専門機関を通じましていろいろな成果が上がっておるわけでございます。例えば人権規約であるとか、あるいは今年の
国会で御審議いただくことになっております女子差別条約、あるいは将来
日本が批准を考えております人種差別条約、こういった面では非常に成果がございますし、その他もろもろの専門機関におきまして具体的な人類の平和繁栄につながるような成果が上がっているわけでございます。
ただ、この
経済社会
分野におきましても特に六〇年代、七〇年代に国連の一番悪い面が出てきた。と申しますのは、多数の横暴と申しますか、多数の専制と申しますか、数を頼んでやたらと実行性のないような決議をどんどん通す。これが非常に先進国と開発途上国との間で対立を生みまして、先進国から見た国連に対する厳しい目、あるいは厳しい声ということが起きてきた背景にあるわけでございますけれども、ようやく七〇年代の終わりから八〇年代にかけましてこの実行性のない決議の乱造ということがほぼ下火になってきたということが言えるわけでございます。
それにはどういう背景があるかということでよく見てみますと、政治的に非常に開発途上国の中で分裂が見られる。これは開発途上国が基盤としております非同盟でございますけれども、例えばカンボジア事件ということで、ベトナムが隣国のカンボジアに侵入いたしますと、このベトナムの行為をめぐりまして非同盟が真っ二つに分かれる。あるいはアフガニスタン事件につきましても、非同盟諸国の中で過激派と穏健派の中で
意見が分かれてしまう。それからイラン・イラク紛争、あるいはキャンプ・デービッドをめぐりますイスラエルの問題につきましてもアラブの中で真っ向から対立が生じるということで、五〇年代、六〇年代に見られておりました非同盟の一枚岩的な基盤が緩んでしまったということが政治的に言えるわけでございます。
それから
経済面で見ましても、オイルショック以降南の間で格差が非常に出てきたということで、南の国の中でもNICSと申しますか、新興工業国といたしまして非常に高度
経済成長を遂げて高所得国になった国が生じてきたということで、
経済問題につきましてもなかなか非同盟百カ国が
一つになって決議案を通しにくい
状況になってきたということが言えるわけでございます。
それから、非同盟の中でもやはり現実主義論、現実的な見直し論というのがありまして、例えば
その代表的な例は、一九七四年に国連の世界人口
会議というのがブカレストで開かれたわけでございます。このときに西側諸国あるいはアジアの国は、人口抑制ということが開発途上国の開発にとって非常に重要であるという主張をしたわけでございますけれども、これにつきましては特にアフリカの国から、人口抑制、人口制限というのは先進国の陰謀である、要するにアメリカの人が食べているカロリー一人分のカロリーでアフリカ人八十人が養われるんだ、したがって人口抑制というようなことは開発の障害なんです、むしろ人口をふやす方が開発につながるんだ、こういうのが当時、七四年でのアフリカ諸国を
中心といたしました一部開発途上国の反応であったわけでございます。ところが、八四年に同じ世界人口
会議の第二回がメキシコで開かれたわけでございますが、この際には全く開発途上国の反応がさま変わりいたしておりまして、開発のためには人口抑制というのがいかに重要かということについては全く異論が見られなかったというように、開発途上国の中でも非常に現実的な議論が支配的になってきたということが言えるわけでございます。
それからいま
一つの例は、昨年、アフリカの飢饉ということで、
日本でも非常に反応があったわけでございますけれども、昨年の七月にこのアフリカ援助問題につきまして国連がジュネーブで
会議をやったわけでございます。このときにはアフリカの国は、自国の
経済政策に誤りはないのである、長年植民地主義の支配のもとにさらされた植民地諸国、いわゆる欧米諸国に責任があって、我々の責任じゃないというようなことを言ったわけでございますけれども、昨年の十二月、特に
日本が
調整国になりまして国連でのアフリカ緊急援助宣言を作成したときには、アフリカの国々は異口同音に、やはり自国の農業
政策、
経済政策に誤りがあったとその誤りを認めた上で、なおかつ西側の援助が必要だというようなことで
意見がまとまったわけでございます。こういった具体的事例に見られますように、従来の、とかく数を頼んで暴走していた
時代というのはどうやら幕を閉じたというふうに見ることができるかと思います。
ただ、それではこういった現実的な見直し論、あるいは政治的、
経済的な多様化を背景に非同盟あるいは開発途上国の態度が現実的になったということは言えるわけでございますけれども、国連の制度そのものの中にやはり非常に問題があるんではないか。特に、国連憲章が四十年たってもほとんど実質的には改正されないままに今日来ているわけでございます。
日本その他多数の国が国連憲章の見直しということを主張しているわけでございますけれども、この点につきましては特に五大国を
中心に強い反発を示しておりまして、国連憲章の改正ということは非常に困難であるという
状況でございます。
時間の
関係で、次にユネスコの話をさせていただきますが、御承知のように先般の二月十二日から十六日まで開催されました執行
委員会におきまして、
日本の代表が二日目に、
日本が提案しております改革が実現されない場合にはユネスコとの
関係を見直すことあり得べしという発言をいたしまして、この発言が
日本の一部の
新聞には、
日本はユネスコから脱退するのではないかという形で伝えられたわけでございます。この背景につきましては、実は御承知のように昨年末をもちましてアメリカがユネスコを脱退し、かつ昨年、イギリス、シンガポールが既に脱退を通告しておりまして、改革が実現されない場合にはイギリス、シンガポールは自動的にことしの末で加盟国としての身分を失うわけでございます。
私どもが常日ごろからユネスコで主張しておりますことは、ユネスコの現在の事業のやり方には非常にむだがあるんではないかと。特にほかの機関でやっております計画、例えば開発と人口であるとか環境、人権に関する研究、こういったものは国連の専門的な機関があるわけでございますので、そういった専門的な機関で十分時間をかけて専門家が議論すべき話である。ユネスコがこういった問題を取り上げるというのは、
予算が十分あって、なおかつ余裕があればこういうことを取り上げることに反対ではないけれども、今のような緊縮財政の
時代に、こういったほかの機関で取り上げているようなものをまたユネスコで取り上げることについては非常に反対であるということを言っているわけでございます。それから緊急性のない事業、例えば国際的な未来志向的研究、何のことかよくわからないわけでございますけれども、こういった表題で研究が営々として行われている。あるいは教育の民主化のあらゆる側面の研究、これにつきましても、今すぐにこういったものをやらなくちゃいかぬという必要はないわけでございます。
それから平和と軍縮、これは確かに非常に重要な研究課題ではありますけれども、これにつきましては国連総会で研究
委員会が幾つも幾つもつくられておりまして、いろいろな研究をやっている。それから実質的な軍縮問題につきましてはジュネーブの軍縮
会議でやっているわけでございますので、これについても、どちらかというと
ソ連がアメリカを意図的に困らせるためにユネスコでもまたこの問題を取り上げているということで、非常に従来から東西対立の
一つの火種になってきたわけでございますけれども、こういったものを好んで取り上げようとするユネスコの体質に非常に問題がある。
それから、人事の管理、人事の採用の面で不透明、不公正さがあるわけでございます。それから金の使途につきましても、私どもとしては必ずしも透明ではないというふうに
感じているわけでございます。特に一番問題になりましたのは、アメリカがユネスコ脱退を決定した後、八四年の四月にアメリカの会計検査院がユネスコの会計監査をちょっとしてみたい、見せてくださいということを言いまして、これについては非常に国際機関の会計検査をメンバー国が行うということは異例なことでございますけれども、とにかくユネスコの事務
局長はそれに応じたわけでございますが、アメリカの会計検査の
役人が到着する十日ぐらい前にユネスコ本部に火事がございまして書類が焼けてしまったというような事態で、これはだれに責任があったかということはわからないし、また本当に失火であったのか、放火であったのかということもわからないわけでございます。とにかくどうも常識的には理解できないような事態が起こったということであるとか、あるいは採用の面で非常に公正を欠く人事が行われているというような実態があるわけでございます。
例えば、今回アメリカが脱退したことに伴いまして、アメリカとしては当然分担金を払わないわけでございますけれども、この分担金を払わないということについてユネスコの法務部長が、それは正論であるという発言をしたところが、その後でこの法務部長は首になってしまった。なぜ首になったかと申しますと、ユネスコの事務
局長はセネガルの人でございますけれども、アメリカは脱退した後でも八五年の分担金を支払う義務があるということを言っているわけでございます。これはちょっとおかしな話でございますけれども、ユネスコの
予算というのは二年間
予算になっておりまして、八四年、八五年の
予算を既に決定しているわけでございます。したがいまして、事務
局長は、アメリカが脱退した後も八五年にアメリカは支払う義務があるんだということを言っておりまして、
自分の
意見に反した法務部長を首にしたというようなことでございます。彼はミスター・ムボウという人ですけれども、相当どうも
日本語でそのまま無謀であるというように
新聞に書かれているわけでございますけれども、かなり強引なところがあるということでございます。
私どもといたしましては、こういったアメリカが出たというような深刻な事態を踏まえまして、ユネスコのぜい肉をとる、あるいは運営を合理化し、公正に人事等を行うということが実現されない限りユネスコは壊滅状態に陥るんではないかということで、従来はとにかく中にとどまりまして改革をしようということでいったわけでございますが、どうも今回の執行
委員会の直前、あるいは
開会した後の運営の仕方等を見ておりまして全く反省の色が見られないということで、第二日目の最後の発言者といたしまして加川大使から、
日本としては将来改革が実現されないときには
関係を見直すというような発言をしていただいたわけでございますが、
日本としては、現
時点であくまでもそういった脱退というようなことを回避する方向で今後とも欧米諸国あるいは一部の非同盟諸国と一緒になりましてユネスコの体質改善を図っていきたいというふうに考えているわけでございます。従来、どちらかといいますと
お金は出すけれども口は挟まないというのが美徳とされていたわけでございますけれども、これからはやはり
お金を出すからにはきちんとその金が使われている、適正な
目的のために使われるということにつきましては厳格に対応していくことが必要ではないかというふうに
感じているわけでございます。
国際機関、特にユネスコが大荒れに荒れているわけでございますが、これは国際機関全般につきまして言えることでございますので、今後は
日本としては、厳しく
国内で行われているような行政改革、こういった
問題意識を持ちまして国連機関の運営につきましていろいろ注文をつけていくということを考えているわけでございます。
時間がございませんのでこの辺で終わりたいと思います。