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参考人(前田優君) まず、本題に入らせていただきます前に、現在の国際軍事情勢、それと海上
防衛の基本戦略的なことについて私の考えております認識を申し述べまして、それを踏まえて
海上自衛隊を中心としました
現状と
問題点を申し上げたいと思います。
国際軍事情勢はもう先生方御承知のように、米ソ二大国を中核としました東西の軍事構造、これは
見通し得る将来も含めまして私は変わらないと思う。
次に、米ソの核
戦力でございますけれども、これを中核としましたそれぞれの
戦力が大変最近均質化といいますか、同等化してまいりました。この同等化をしてまいりましたことを踏まえて在来ありました通常型の
戦力、これの世界の平和と安定に大きく寄与する面が
増大してきております。このバランスが大変世界の安定に影響するところが大きくなってきております。
三つ目は、一方このような状況の中で我が隣国でもありますソビエトのこの数年間特に
軍事力の増強が目覚ましいということであります。我が周辺におきますその
海軍力をとりましても増強は刮目すべきものがある。この結果、それぞれの国の繁栄と独立を海洋に大きく依存しております世界の中での自由陣営の諸国は大変これを気にしております。したがいまして、お互いに海洋の自由なる利用を図るために連携を密にし、共同して
対処しようという機運が出てきております。これらの結果、私は、
我が国としましては国内が安定し、しかも日米安保
体制が健全に維持され、有効に機能しております限り、
我が国だけを対象とした武力
侵攻はまず起こり得ないと思っております。
次いで、これらの状況の結果、我が海上
防衛戦略としましては、その基本を日米安保
体制を基本としまして我に課せられた我が周辺の、そして
国土の
防衛について機能的に欠落がなく、いかなる
事態にも対応し得る
防衛力を整備することがまず必要であろう。それはひいては
極東そして西
北太平洋の地域におきます軍事バランスに大きく寄与する、その寄与することが自由陣営への貢献に即つながる、このように考えております。
以上を踏まえまして
自衛隊の
現状と
問題点について申し述べるわけでありますが、まず物と人と運用という面に分けて話させていただきたいと思います。
これは今両
参考人からありましたように、いろいろな立場、表現は違え、問題としますところはほとんど同じかと思います。ただ、それぞれのコンポーネントの違いでその問題とする度合いとか質がかなり違ってくると私は思っております。
まず、物の面でございますが、装備でございます。
我が
海上自衛隊の装備の特徴を
一言で申しますと、通常の海軍国そして今までの海軍国というような概念で申し述べますその海上
防衛力には、旧海軍が持っておりました連合艦隊のような機動打撃力を欠いております。一切これは持っておりません。したがいまして、以後申し述べます部隊運用等もこの日米安保
体制を基準にして、そして私が申し上げました海上の基本戦略に基づいた観点からそれぞれの施策が行われておる、このように承知しますがゆえに、この機動打撃力を欠いておりますことは、本来国を
防衛する海上
防衛上からは
防衛上に致命的な欠陥を招来する性格のものであります。
申し述べますと、その欠落を我が方は日米安保
体制によって米軍に期待しております。したがいまして、御承知のように
我が国周辺の防勢
体制につきましては、防勢面は我が
海上自衛隊が、
攻勢面については、この打撃機動力についてはすべて米軍に依存しております。
防衛力の整備もすべてそのようになってきておりますから、この面の機能は
我が国としては欠いております。したがいまして、装備の面におきましても専守
防衛の中で特に
我が国周辺の防勢面についてのみ
防衛力は整備されております。
この
防衛力の
現状でございますが、今るる両
参考人から申し述べられました。海上装備の特徴としまして、計画、実行、そして実現までにはおよそ十年近く艦艇等はかかります。しかも、近時の軍事科学技術の進歩は瞠目すべきスピードで進展しております。このようなことから、現在鋭意整備を進められております装備も、次に申します諸点において早急に改善の対策を講じていく必要があろうかと思います。
まず、その第一点は対潜能力であります。
御承知のように、
潜水艦が大変性能がアップしました。それは原子力推進、静粛化、そして船体の機材の改善、ミサイル等の装備等、攻撃力、隠密力すべてにおいて大変な進歩をしてきております。幸い航空機は世界トップレベルのP3Cを装備していただいて、鋭意これによって
対処すべくやっておりますが、艦艇の方はその性格上からも、性格といいますのは整備に大変より多く時間がかかります上からも、取り上げて言いますならば、パッシブソーナーを装備していく等、隠密性と攻撃性を備えてきました
潜水艦に
対処する能力の点で早急に対策を講ずる必要があろうかと考えております。
次に、防空能力でございます。
これも先ほど竹田
参考人からいろいろ
ソ連の航空機についての話がありました。パックファイア一つ取り上げてみましても約一千海里の行動を実施するということが可能になりました。しかも、約二百海里遠方からいわゆるアウトレンジと称しますが、ミサイルを発射することが可能になっております。このように、我々が対象としなくてはならない海上
防衛上の目標につきましては性能が大変進んできております。したがいまして、これに
対処するためにも、より今ありましたE2C早期警戒機だとかレーダーサイトだとかこれらの探知能力、それから要撃
戦闘機等の要撃能力、そして洋上におきます防空能力をぜひ改善していく必要があろうかと思っております。
三つ目は、C3Iということで話されましたが、特に海上戦がミサイル等の出現によって大変スピードアップされました。と同時に、その海域が非常に
拡大するようになっております。しかも必要とする通信量等、指揮情報収集等も含めましてコンピューター化が進んでおります。非常に
増大しまして、量がふえました。これらに
対処するためにはどうしても衛星通信が必要でございます。早く確実に、しかも遠くまで届かせる、こういうふうなすべて指揮
コントロール等の根源になります通信手段の面につきましては、早急に世界の情勢におくれないようにお願いいたしたい、このように考えております。
次は、先ほどは継戦ということでお話がありましたが、継戦能力と申しますか、その中に含まれます抗堪力について申し述べたいと思います。
この継
戦力の点ではもう申し上げるまでもございませんが、物と人、これらの面で継戦といいますか、ある期間戦いを続けていきます能力が評価されようかと思います。いずれをとりましても問題はありますが、人の面は一応抜くといたしまして、物の面で申しますと、弾薬、主要装備の確保、そして施設の整備、これらが大変不足であり不備であります。特に弾薬の点を取り上げますと、弾薬そのものの不足もさることながら、これを収納すべき弾薬庫の不足が大変
海上自衛隊にとっては問題でございます。これは一つは都市周辺の開発が目覚ましく進みました。ところが、弾薬の火薬類等の取り扱い規則から、ある距離に一軒民家が出ますともうその弾薬収納をやる弾庫は量が大変大きく制約されます。このような観点から、弾庫の能力が非常に少なくなり制約されてまいっております。
次に、艦艇の係留施設が現在御承知のように大変近代化され、泊まっておりましても電力も常に要りますし、コンピューター等を使っての訓練も要ります。このような面から係留という形がブイでは、陸上と離れた形では大変日常の管理にも不便を感じますが、現在係留施設が大きく不足いたしております。
次に、燃料
関係の貯油所、貯油庫が不足いたしております。これらのすべての施設にいわゆる戦争を考えた防御面での
対処がなされていないと言っても過言ではないと思います。脆弱そのものでございます。しかも燃料庫は普通には地下に入れたい、洞窟の中にそれを設けたいが、そのようなことは御承知のようにこの種類の取り扱い上、地下に入れることが許されておりません。一般商業用と同じく陸上のタンクでなくてはならぬわけであります。これらすべてを含みまして、大変継戦能力上、有事
対処上被害の局限等も含めまして問題があろうかと考えております。
次に、人の問題でございます。これは足らないこととかいろいろな制約があることは今も両
参考人から申し述べられましたが、私はこれを違った表現で申し述べてまいります。
幾ら装備を立派にしましても、そして立派な隊舎等に住まわせてやりましても、これに従事する隊員の質が悪ければ
戦力たり得ません。
防衛力たり得ません。御承知のとおりです。しかも優秀なる隊員を確保し、そして精強なる
自衛隊にしますためにはこの人を抜いては考えられません。その際、隊員に精強たり得るための最も大きなものは私二つあろうかと思います。一つはやる気を起こさせること、一つは装備等も含めて
教育訓練等が行き至ること。今このやる気を起こさせる面で考えてみますと、私は一般社会から、社会風潮から隔絶して
自衛隊のみひとり精強たり得るなんて絶対にあり得ないと思っております。そういう面から考えますと、大変私は苦慮すべき
事態に直面してきておると思っております。後でも申し述べますが、隊員の確保等についてもそうでありますが、まずここでは隊員のやる気を起こさせる面での問題でございます。
それは、やる気とはどういうところから私は出てくるかと思いますと、自分たちが国のために役に立ち、一般
国民に大変信頼され期待されているのだということを実感としてとらえ得ることであります。それは、災害派遣で行った隊員が二日も三日もほとんど飲まず食わずでやっておる、そのようなときにも、帰ってきたときに慰労してやりまして、どうだったかと言うと、はい、もう大変喜ばれました、そしてありがとう、御苦労さん、こういう言葉を聞きましたと、それだけで満足しておるのです。私は、それは自分たちが災害派遣ということを通じてどのように一般
国民の人と一体になっておるか、信頼されておるか、期待されておるかということを身をもって体験しておるからだと思います。まずこのように、自分が
国民に信頼されておるのだ、期待されておるのだということを感じさせてほしい。
ところが現在、私が今まで経験しました中でも、非常にこれとは違う状態が出てまいっております。それは御承知のように、大学入学をしたいと言います隊員を拒否されます。それからスポーツを一緒にやらしてくれと言いますと、
自衛隊員でありますがゆえに拒否されます。隊員たちは、災害派遣のときはその反対しておる人たちも皆一生懸命働いておることを認めてくださる。ところが
自衛隊員であるがゆえに、
海上自衛隊員であるがゆえにそのような一般社会の人たちとの触れ合いを拒否されます。艦艇が入ろうとしますと入港を拒否されます。このようなことは隊員にとりましては本当に耐えがたい苦痛なのであります。まず彼たちは、自分たちは何か都合のいいときは普通に取り扱われる、しかし一たん都合が悪くなったときには、その悪くなった原因が自分たちによることでなくても、あるときは無視され、あるときは軽べつされ、あるときは非難される、このような思いを抱くときが私はないとは言えません。このようなことがもしあるとしますならば、私は非常に努力していただいておる大方の方たちの努力を水泡に帰するものだと恐れるわけであります。したがいまして、このような面についてどうか政治等の力によって隊員に、自分たちは本当に国のため社会のために役に立っておるのだという実感を味わわせていただきたい、このように思います。
第二番目は、隊員に対する処遇の問題でございます。自分たちは信頼され、いろいろとやる気を起こさしていただく。しかしこの処遇を考えますときに、身分上の問題と経済上の問題があろうかと思います。
海上自衛隊では、毎年練習艦隊を海外に派遣させていただいております。外に出ますとすべてこれはその国を代表する海軍として取り扱われます。ある国へ行きますと、事前に調整はしてありますが、大統領等元首への表敬訪問も当然オーケーです。人づてに聞いたところによりますと、新しく着任された
我が国の大使がなかなか元首にお会いになれない。そういう時期にたまたま練習艦隊がその国に入りました。大使は後で、ありがとう、おかげでおれは元首にもゆっくりお会いできたと。これは
日本を代表する海軍が来たのだという認識を持つからであります。
ある国は、大変国の状況も我々とすると気になるし、向こうからの艦への訪問はお断りしたい、こういうことで、私の在職中にも、どう取り扱うべきか電報を打ってまいりました。ところが、現地の大使その他はそれは受けていただきたいということで、船に元首とかあるいは主要なる閣僚が答訪に来るわけであります。そのような取り扱いを受けますとき、隊員はよしと、こういう気を持つわけであります。
幸い
海上自衛隊は、練習航海に出ます前に総理にも司令官等が
現状報告についてお話をする機会を与えられます。これらも大いに士気を上げる因になっております。しかし国内の地位ということは、私は列国に比べまして隊員等にとっては必ずしも高いとは感ぜられないように思います。そのように感じておるかと思います。
次に、経済上の面をとりましてもそうでございます。私も国外に短期旅行をさしていただきましたとき、随行してくれました将補がおりました。私は航空機へ乗りますときはファーストクラスの旅費をいただいております。ところが随行の将補はエコノミークラスの旅費しかいただいておりません。制服で着きますと、向こうは総員、私につり合うような出迎えを受けます。ところが
日本の航空機からは一般乗客と同じようにおりるわけであります。そうしますと、エコノミーから将補がおりていくということは本当に言葉にはあらわし得ないマイナスの面がそこに出ます。
それに比べまして、その他の列国を訪問しますと、軍ということの位置づけが余りにも、もちろん
我が国におきましては
自衛隊でありまして軍隊ではありませんが、その位置づけが余りにも違い過ぎることを隊員はひしひしと身をもって感じてきておると思います。しかしそのような中で、
我が国の今までの
防衛力のあり方、
自衛隊の運用に隊員は徹して、今から申し上げますような点も踏まえ
任務達成に全力を挙げておりますが、このような点につきましてはぜひひとつ御理解ある御指導をいただきたい。
次に、練度でございますけれども、艦艇、航空機を持っておりますが、これらにいかに優秀な隊員をもらい、そしてこれを確保さしていただいても、訓練しなければ物の用に立ち得ません。そのための燃料、そして訓練用の機材、これらを潤沢とは申しませんが所要に応じ得るようにふやしていただきたい。
それと同時に、訓練海域等が大変漁業等の関連で現在制約を受けております。そしてその中でも、御理解によって海上
防衛力の練成を推進すべく、大変そのような状態をつくっていただいておりますが、日常の訓練等におきましてもこれら訓練海域の利用が必ずしも円滑にはまいっておりません。これらの点で練度を上げていきます上に大変問題を持っておるように考えております。
次に、隊員の確保でございますけれども、現在
海上自衛隊の定員は、先般確かめましたら約四万五千の定員をいただいており、そしてその充足率は九六%
予算上いただいておるということでございました。ところがこの九六%で、艦艇と航空機、陸上の司令部、学校その他に割り振りますと、艦艇では
潜水艦、掃海艇、それからシステム艦等近代化された船には一〇〇%配員をいたしませんと、
戦力を発揮する上からはもちろん、平生の訓練上も支障がございます。なぜならば、艦艇等
海上自衛隊の定員は積み上げ方式になっております。戦闘に従事するとき、ここにはどういう仕事をどのようにやるからどういう階級の人間が何名要るということを一々全部積み上げてやっております。ところが一〇〇%でありませんために、減らされたところは普通の、保安部署と称しますが、作業部署に通常はやっております。難しいところを通るときには航海保安部署をつけます。そのような格好で、火災が発生したときには火災部署で対応するわけであります。そのような面である程度減ってきますと一人三役というわけにはいきません。二役というわけにいきません。
ところが、システム艦だとか
潜水艦だとか掃海艇はその特性上一〇〇%の人員を充足してあります。また、陸上司令部等でも自衛艦隊その他はほとんど九〇%以上の充足率になっております。勢いそのしわ寄せは地方隊の各部署とかそういうところに参ります。平均しますと九六%になっておりますが、ある部隊におきましては七八%とか八〇%という状況になるわけであります。これが大変隊員の士気にも影響いたしますし、日常の業務遂行にも支障を来しますし、
戦力保持にも問題がございます。このような点で充足率をぜひ上げていただきたい。九六%といいますと、
陸上自衛隊からいったら本当に垂涎の的だと思いますが、海上
防衛力の特性からこれで現在各指揮官は大変苦労しておると私は承知いたしております。
次に、この近代化の例でちょっとだけ申し上げておきますと、なぜ、はつゆき型が一〇〇%なのかといいますと、これの積んでおりますコンピューターがございます。先般そのコンピューター等に
関係しております会社の技師からちょっと聞いたところでありますが、国鉄の新幹線が監視そして管理用に使っておりますコンピューターの能力の約十倍なのです。そのようなものを限られた隊員等でやっておるわけであります。したがいまして、
海上自衛隊の要員の中でこれら特技を持つには最小限五年以上の経験と
教育が必要でございます。この面からも大変現在
教育訓練に、
教育用の人員というのは別にいただいておりませんので、充足率の中でやりくりをして特技の
教育をやっております。こういう充足率を含めて隊員の確保、そして優秀なる隊員は一般民間の各会社、企業等との競合によりまして魅力がなければ確保することはなかなか難しゅうございます。この魅力の点におきましても施設の点でちょっと述べられたかと思いますけれども、現在までの歩みの上で私はやむを得なかったと思っております。
それは新しく小松島に航空隊ができるときでありました。私がある幕僚長に副官として随行しましたときに、それは三十九年でございます。大変隊舎はきれいなものができておるわけであります。ところが庁舎は全く旧軍のおんぼろでございます。司令室などというのも全くみすぼらしいところでありました。そのときに雑談として幕僚長から聞きましたのは、この庁舎の改築は正面部隊そして隊員の施設が全部更新された後でいいのだと、この指令機能だけが支障を来さないようにしておけば建物はどんなに古くてもよろしいと、このように言われたことを鮮烈に記憶しております。そのような点から限られた
予算の中で私は現在まで施設、後方
関係のものがおくれてきたのはやむを得なかったという点はありましょうが、現在のような一般社会風潮からしますと、優秀なる隊員確保上この点についての魅力化が喫緊事であろうかと思われます。
大変人事のことで長くなりましたが、部隊運用について申し述べます。
部隊運用は先ほどもちょっと触れましたが、日米安保
体制という中で
我が国は防勢面を担当しております。これを例えますならば、盾とやりの
関係になろうかとよく言われます。また車の両輪で、
攻勢面を担当するいわゆる
アメリカの攻撃力がなければ、あるいは
アメリカの安保による共同がなければ我が海上
防衛は全うし得ません。その面から私は
日本におきます
アメリカ海軍の運用について
一言触れさせていただきたいと思います。
その第一は、
アメリカ海軍の運用とも言いましたが、この両輪である
アメリカの一方の輪を期待あるものとするためには、信頼し得るものとするためには、彼らに安保
体制というものについて
日本を信頼させなくては私は画餅に帰すと思います。それが大前提だと思います。そうしますときに、
日本におきます海軍の運用、部隊の運用を考えました場合、最も端的にあらわれておりますのが厚木におきます航空機の夜間発着訓練でございます。NLPと称します。これは
アメリカがその必要性から、西
北太平洋及び前進配備として横須賀を
基地とする空母を配備しておると考えております。
この空母の特性から、私が申し上げるまでもなく、停泊中にしろ艦載機のパイロットの勘を養っておかなくてはならないと言われておるのです。これがもし彼たちの要望どおりできない場合には、もう随分前になりますが、私の現職中に航空機の事故を起こしております。パイロットが着艦するべくして海に落ちて死んでおりました。このようなことは指揮官にとっては耐えがたい問題でありますが、より以上に広い面から、私はNLPのこの問題は地域住民の方たちの苦労を思いますと本当に何とかしてあげたいという気持ちと、何とか関東エリアにこのNLPを実施し得る場所を早く見つけていただきたい、つくっていただきたい、これが一つの運用上の私は問題の第一かと思います。
第二は、我が方の隊員の士気のところでも申しましたが、地位協定によりまして
アメリカの海軍の艦艇は
日本のどこにでも私は入港し得ると考えております。ところが、
アメリカ艦艇は現在
日本のある港に入ろうとしますと拒否されております。そして、港に入って燃料の補給とか休養等の場合でも入港できないという状態が現出しております。これは日米安保
体制を強固たらしめる、信頼させるためからは私は大きくマイナスだと思いますので、ぜひこの点を改めていただきたい、このように考えます。
それから
最後に、いろいろございますが、兵力整備の点でございます。
現在なされておりますその基盤的
防衛力、常備すべき
防衛力と整備
防衛力の間には当然落差がございます。この落差によりますリスクは政治の責任と努力によって私は賄っていただくという理解のもとにこれがとられておると認識いたしております。
特にこの点に関連しまして、基盤的
防衛力を有事の際に効果あらしめるためには所要の準備が要ります。しかし、現在の軍事情勢から、
軍事力の特色から数カ月間等の短期間でこれを整備し得るものは極めて限られております。この点からも
防衛力のあり方について本質的にひとつ御検討をいただければと、このように考えております。
終わります。