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1985-04-10 第102回国会 参議院 外交・総合安全保障に関する調査特別委員会安全保障問題小委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年四月十日(水曜日)    午前十時八分開会     ───────────── 昭和六十年一月二十五日外交総合安全保障に関 する調査特別委員長において本小委員を左のとお り指名した。                 安孫子藤吉君                 源田  実君                 佐藤栄佐久君                 杉元 恒雄君                 中西 一郎君                 堀江 正夫君                 志苫  裕君                 黒柳  明君                 上田耕一郎君                 関  嘉彦君                 秦   豊君 同日外交総合安全保障に関する調査特別委員長 は左の者を小委員長に指名した。                 安孫子藤吉君     ─────────────   出席者は左のとおり。     小委員長        安孫子藤吉君     小委員                 源田  実君                 杉元 恒雄君                 中西 一郎君                 堀江 正夫君                 志苫  裕君                 黒柳  明君                 上田耕一郎君                 関  嘉彦君                 秦   豊君     外交総合安全保障に     関する調査特別委員長  植木 光教君     小委員外委員                 岩動 道行君                 高平 公友君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    参考人        軍事評論家    藤井 治夫君        日本平和委員会        理事長      福山 秀夫君        元統合幕僚会議        議長       竹田 五郎君        元陸上幕僚長   鈴木 敏通君        前海上幕僚長   前田  優君        日本電気株式会        社衛星通信シス        テム本部担当部        長        松尾 雅史君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○安全保障問題に関する調査  (自衛隊現状問題点に関する件)     ─────────────
  2. 安孫子藤吉

    ○小委員長安孫子藤吉君) ただいまから外交総合安全保障に関する調査特別委員会安全保障問題小委員会を開会いたします。  一言あいさつを申し上げます。  私、このたび安全保障問題小委員長に選任されました。小委員各位の御支援によりまして、公正かつ円満な小委員会運営に努め、責任を全ういたしたいと存じますので、何とぞよろしく御協力のほどお願い申し上げます。     ─────────────
  3. 安孫子藤吉

    ○小委員長安孫子藤吉君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  安全保障問題に関する調査のため、必要に応じ参考人から意見を聴取してまいりたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 安孫子藤吉

    ○小委員長安孫子藤吉君) 御異議ないと認めます。  なお、その人選等はこれを小委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 安孫子藤吉

    ○小委員長安孫子藤吉君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  6. 安孫子藤吉

    ○小委員長安孫子藤吉君) 安全保障問題に関する調査のうち、自衛隊現状問題点に関する件を議題とし、自衛隊現状問題点について参考人から意見を聴取いたします。  本日は、お手元に配付の参考人名簿のとおり、六名の方々に御出席いただきます。  午前中は、軍事評論家藤井治夫君及び日本平和委員会理事長福山秀夫君から意見を聴取いたします。  この際、参考人方々一言あいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本小委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。本日は、自衛隊現状問題点につきまして忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査参考にいたしたいと存じます。  これより参考人方々に御意見をお述べ願うのでございますが、議事の進め方といたしまして、まず最初に参考人方々から御意見をお述べいただき、その後小委員の質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  それでは、まず藤井参考人にお願いいたします。
  7. 藤井治夫

    参考人藤井治夫君) 藤井でございます。  自衛隊現状問題点について私の考えを申し上げたいと思います。  まず第一に、防衛関係費国民総生産、GNPの一%以内にとどめるといういわゆる一%の歯どめをめぐる問題点であります。私は、この一%の歯どめは日本国是とも言うべきものである、かように考えているわけであります。  今日までの経過を見てまいりますと、防衛関係費GNPの一%以下になったのは、GNP実績に対する防衛関係費補正予算比率について見てみますと一九六〇年以来であります。つまり、一九八四年まで実に二十五年間、四半世紀にわたってこの一%の歯どめが事実上守られてきたわけであります。GNPの当初見通し防衛関係費の当初予算比率について見てみましても、一九六六年、昭和四十一年から八四年まで十八年間それが守られてきているわけであります。つまり、このような歴史的経過からいたしますと、一%の歯どめというものはいわゆる防衛計画大綱の上にあるものであるというふうに言っていいわけであります。そして、それは国民の中にも定着しているわけでありまして、ある世論調査によりますと、この一%の枠を今までどおり守るべきであるとするのが五八%に達しているわけであります。つまり、今日までずっと事実上堅持されてきたし、また国民もそれを支持している、つまりこれは完全に定着しているわけであります。したがって、それは今後も堅持するのが当然である、これが第一点。  第二に、もしこの一%枠を仮にも撤廃するようなことがあったとすればどうなるかという問題がございます。大変なことになる、そういう危惧を私は抱いているわけでありますが、それは単に個人的な思い過ごしというふうなものではなく、既にその危険な兆候が数年前からあらわれてきている。これは八一年度以来いわゆる防衛費特別扱いが始まりましたし、とりわけ八二年からは防衛費の突出ということが行われました。そして、教育費福祉費よりも防衛費が優先されるということになりました。つまり、防衛に対しまして、防衛をふやすために福祉教育が切り捨てられつつあるわけであります。しかも、同時にそれはGNP伸び率以上に防衛予算が伸びるということになってきたわけでありまして、GNP当初見通しに対しまして、伸び率において防衛関係費が上回ることになりましたのは八一年度予算からであります。つまり、この五年間そういうことが行われているわけであります。  そこで、どういうことが起きるかと申しますと、言うまでもありませんが、当然にGNPに占める防衛関係費比率が上昇してくるわけであります。そしてついに今日一%枠の突破の問題が現実化しようとしているわけであります。中曽根総理が言われるように、この一%枠を守りたいのであれば当然に防衛費伸び率GNP伸び率以下に抑えるべきである、そうしない限りこれは必然的に突破することになるわけであります。しかも、そのような防衛予算を編成するに当たって最終的な決断を下しているのが総理自身である、これを一体どう理解すればいいのか、こういう問題がございます。  それから、これを外しますと今後防衛関係費増大コントロールすることは不可能になってくる。今までは歯どめがありましたから節約あるいは合理化の努力がなされた。また、コントロールも大蔵あるいは国会において可能だったわけであります。だが、防衛予算増大を求めるいわゆる圧力団体は極めて多いわけであります。それは陸海空のユニホーム、あるいは日本防衛産業、さらにアメリカ軍需産業の売り込み、そういうふうな圧力団体がたくさんあるわけでありまして、その圧力を抑えることは今後困難になる、今後はそのような圧力団体が足並みをそろえて軍事予算増大を求めるであろう、そうなりますと、もはやこれを抑制していくことは困難になるであろう、そう考えられるわけであります。  それから次の問題は、単なる予算の問題ではなく、やはり日本国民の安全をいかに守るかということであります。一%枠の突破の問題は、単に予算的な問題ではなく、むしろ本質的に国民安全保障に対して重大な危険をもたらすということであります。それは軍事的防衛が持っている本質的な問題点であると思います。  第一に、軍事的防衛というのはこれで十分であるということはありません。すき間をなくすということは不可能であります。どこかにすき間がある。そのすき間を埋めなきゃならない。これが絶えず出てくるわけであります。やってもやっても切りがない、こういうことになるだろうと思います。  一例として、例えば航空自衛隊スクランブルというのを見てみましても、これは初めのうちはほとんどやっていない。それを始めたときには午前十時から午後二時まで、土曜、日曜は休みであった。今は毎日毎日朝から晩までやっている。やっていないときとやっている今日とどういう差があるのか。やっていないからといって攻めてくるのか。昨年度は九百四十四件のスクランブル回数と発表されておりますが、その大部分は無害航行である、対処をされた相手ですね。その中には民間機あるいは魚群探知のためのそういう漁業用ソ連の航空機、こういうものもたくさん含まれているわけであります。  それから、そういうふうにスクランブルは一例ですが、こちら側の体制を強化いたしますと相手との間に対抗軍拡悪循環が生じてくるわけであります。そして悪循環相手軍拡をやれば、それがまた我が国にとっての脅威としてはね返ってくる、それに対抗するためにさらに防衛力整備を進めれば、さらにまた相手対抗軍拡を招く、こういうシーソーゲームがまさに今始まろうとしている。そういう点からいたしますと、やはりGNP一%の歯どめはあくまでも堅持すべきである、かように考えるわけであります。  それから第二の問題は、この防衛計画大綱とその別表が持つ問題点であります。  防衛計画大綱にはいろいろ問題がございますが、しかし、そこに示されております防衛構想一定の評価をすることができると思います。なぜなら、それは対処事態を限定しているということであります。そうして、そのような発想が出てきた根底には、軍事的防衛だけではなく、それ以外の要因によって脅威顕在化を抑えることが可能であるという視点が導入されている。このことは極めて当然のことでありまして、むしろ大綱考え方は不徹底であり、文化交流あるいは国民相互親善というふうなものも安全保障に役立つという発想に立つべきであり、いわゆる真空地帯論などというのは極めてナンセンスな理論である、かように考えます。それと同時に、いわゆる所要防衛力構想を放棄いたしまして、一定の抑制された防衛力を持つという、そういう考え方大綱は採用しておる。この基盤的防衛力構想というものも問題はございますが、しかし、ともかく軍事力の無制限の拡大を抑えるという発想は評価することができると思います。  まだ大綱の中には、いわゆるシーレーン防衛とか海峡封鎖などという危険な火遊びに似たようなそういう方向というものは出されていない。そういう意味では大綱というものが日本国是である平和主義最後残りかすを示したものか、あるいはそうではなく、今後の平和主義のあるべき芽生えというものを示したものか、考え方はいろいろあると思いますが、ともかくそのような一定積極性を持っている。つまりこれが将来への新たな芽生えとしてあるとすれば、それは時代を先取りしていく第一歩である。今日大綱が極めて時代おくれのものであるというふうに主張する向きもあるわけですが、それは全く間違いであって、時代おくれ論こそ時代おくれである、このように申し上げなくてはならないと思います。  次に、この大綱別表関係でありますが、最近では別表がひとり歩きをしているという傾向がございます。これは全くそういうことであってはならないわけであります。GNP一%、これが上にあって、その次に大綱があって、大綱の下に別表があると考えるべきである。そして、大綱にはこの大綱を実施していくに当たっての方針というものが最後の六のところに示されております。つまり、「そのときどきにおける経済財政事情等を勘案し、国の他の諸施策との調和を図りつつ、」進める、まさにそのために一%というものは閣議でも決定されているわけであります。  残念ながら、そうであるにもかかわらず、今日大綱の見直しが時代おくれの方向へのそういう形で行われる動きが出てきております。それは極めて危険なものであり、日本国憲法の根幹にかかわる転換が進められつつある、こういうふうに言わざるを得ないわけであります。そうして、その中で大綱の改定の方向、まだ具体的には出ておりませんが、考えられているものを分析してみますと、単に一%とか別表とか個々の問題ではなく、やはり日本防衛政策の全面的な極めて危険な方向への、また、憲法と全く対立する方向への転換が意図されつつある、このように考えられます。  それは第一に対処事態、どういう事態想定されるかという問題をめぐって出てくるわけであります。それは、大綱は限定的かつ小規模の侵略というものを想定しておりましたが、もはや限定的かつ小規模の侵略などに備えるのでは足りないのだという主張があらわれつつあります。例えば八一年の防衛白書我が国に対する武力攻撃の態様として全面侵攻事態を打ち出しております。非常に大規模な侵攻が起こるという想定をし始めたわけであります。そういう発言は、日本戦火が及ぶとすれば第三次世界大戦事態であろう、こういうふうな防衛当局発言としても出てきているわけであります。  こういうふうに世界大戦想定するというようなことになってまいりますと、これは途方もない防衛力を必要とするということになるのは明らかであります。つまり、そのような想定事態に対応するために自衛隊が果たすべき任務というものは非常に大きく拡大されてくるわけであります。それは現にいわゆる洋上撃破戦略という形であらわれてきております。つまり八三年の防衛白書から新たに登場した考え方であります。国土を守るためには戦火国土に及ばないようにその前で、遠方で対処しなきゃならない。一見もっともらしい考え方でありますが、これが全く今日のミサイル時代では不可能なことである。一たん有事になれば、お茶の間が戦場になるわけであります。これはもう火を見るよりも明らかである。だが、それにもかかわらず洋上撃破というようなことを唱えまして、そうしてその方向軍事力を増強しようとしているわけであります。海上自衛隊は、水上打撃力洋上防空力というものを強めようとしておる。航空自衛隊も足の長い戦闘機攻撃機をふやそうとしております。  こういうふうになってまいりますと、そのような能力が保有されることになった結果として、洋上撃破からさらに敵基地攻撃へと進んでいくことが可能になり、また事実そうなってくるであろうと思われるわけであります。そうして同時に、そのような自衛隊任務拡大は、日本有事以外のいわゆる他地域有事への対処という問題も新たに出てくるわけであります。  それはどういうことにあらわれているかといいますと、いわゆる極東有事研究あるいはシーレーン防衛さらに海峡封鎖というものに端的に出てきているわけであります。そうして、そのような問題に対処するために当然に必要になってまいりますのが集団的自衛権行使であります。公海上で日米防衛協力を進める、こういうことになると集団的自衛権問題を検討せざるを得なくなるであろう、このように昨年十二月平和問題研究会が発表した提言は述べているわけであります。不可避的に集団的自衛権行使へと踏み込まざるを得ない、こういう問題がございます。  その中のシーレーン防衛の問題について考えてみますと、これは初めは海上自衛隊が言っているだけである。三次防の文書にはそういう言葉は、海上交通路を守るというようなことは出てきておりますが、実際にはそれを防衛庁が本格的に取り上げていたわけではない。そんなことは言っても不可能である、こういうふうに防衛当局者は言っていたわけであります。だが、それが一千海里防衛に関する鈴木総理の対米公約として出てまいりました。さらに中曽根首相が、海峡の完全かつ全面的なコントロールという約束をアメリカでしてきたわけであります。こういうふうにシーレーン防衛がどんどん発展し、海峡封鎖にまで至る。これは軍事的に見ますと、一千海里のシーレーン潜水艦等対処するよりは、その潜水艦などが太平洋に出てこないように海峡で阻止する、こうした方がいいという、この方が合理的である、こういう考え方が成り立つかもしれません。  だがしかし、問題はそれだけじゃない。さらに進みまして海峡で封鎖しても、相手海軍力日本海に顕在している。これは一体どうするか。こうなってまいりまして、ではいっそそのソ連海軍力を徹底的に破壊し尽くせばいい、こういうふうになってくるわけでありまして、そういう考え方というものは八三年の防衛白書以降出てきているわけであります。日米共同対処による機動対決力を有するアメリカ任務部隊を使用することを含めてシーレーン防衛に当たるのだ、こういうふうに言い始めているわけであります。このシーレーン防衛あるいは海峡封鎖というものはそういうふうに攻勢的な意味合いを持つ、こうなってきております。しかも、海峡封鎖というのはそれ自体極めて攻勢的な作戦であります。  最近、中村陸幕長が「國防」という雑誌で発言されているのを読んでおりますと、北海道というのは極めて大切である、そのわけはこの北海道が「日本海オホーツク海、北太平洋の大きなシーレーンの要となっている」からであるというふうに発言しています。話はシーレーンといいましてもいろいろあるわけでして、ここで言われているシーレーンというのは明らかにソ連シーレーンである。つまり、ソ連はそのシーレーンを守るために北海道に攻めてくる、こういうふうに言っておるわけですが、北海道防衛を固めればソ連シーレーンを断つことができるという意味をもその背後には含んでいるわけであります。まさに海峡封鎖というものはこのソ連シーレーンを断つということである。  とりわけ、宗谷海峡においてそうであります。そして、海峡封鎖作戦の焦点は宗谷海峡であります。これはユニフォームの間では常識の話でありまして、大賀良平海幕長は「日米共同作戦」という本の中ではっきりそのことを言っている。この宗谷はソ連にとって死活的である、ここでソ連と互角に戦えるところまでいかなきゃならない、これが彼の主張であります。そして、そのために日米共同で北方四島や樺太の基地をたたく必要がある、したがって作戦的には攻勢である、こういうふうに彼は主張しているわけであります。  そして、今月初めに三沢に配備されましたF16、まさにその攻勢的作戦の先兵である。この三沢に配備されましたF16という核攻撃機はそこから択捉島の天寧飛行場まで七百キロメートル、バックファイア基地のあるアレクセイエフあるいはソビエツカヤガバニというソ連海軍基地、ここまでは九百三十キロ程度である。そして、ウラジオストクまでは三沢から八百四十キロメートルである。つまり、これはすべてがF16の攻撃範囲に入るわけであります。だから、そういうふうにこのF16、核のやりとしてのF16と、そして自衛隊との共同作戦というものが展開される。それによって南千島オホーツク海、宗谷海峡における航空優勢を獲得し、そして海峡封鎖、さらにはオホーツク海における制海権を確保するという方向を目指している。  したがいまして、そうなってまいりますと、これは初めに戻りますが、防衛費というものは幾らあっても足りないわけであります。あらゆるものをふやしていかなくちゃならない。そうしてそれが究極にはソ連に勝てるというところまでいかなければこれはもうとまらないわけであります。だが、一体ソ連に勝てるほどの巨大な戦力を持って、アメリカ協力しながらそのような巨大な強力な体制を構築して、そしてそれによって日本国民の安全が確保されるであろうか、まさに問題はそこにあるわけであります。  防衛関係費の問題につきましてはいろいろな対処の仕方が可能である。つまり、それをGNP伸び率以下に抑えるというやり方もございます。だがしかし、GNP伸び率以下に抑えましてもGNP自体は伸びていっているわけであります。来年度は名目六・一である。したがいましてそれでも軍拡になるわけであります。もし物価の上昇率以下に軍事費を抑えましたならば、それはその後も現状凍結です。絶対額を今日と同じようにすれば軍縮への転換、こういうふうになるわけであります。どういうふうな選択をするか、そのことを考えるに当たって大切なのは、やはり日本の安全がどのようにすれば確保できるかということであろうと思います。そして、その安全確保方向につきまして考えれば考えるほど、まさにそのためにこそ防衛予算は一%以下にとどめなくてはならないという結論になるのではないかと思われるわけであります。  今日計画されている防衛力整備計画というものは膨大なものでありまして、間もなく五九中業が策定される。だが、そこではたくさんのプロジェクトが新たに出されてくる。例えば師団の改編などというものもございます。今までは陸上自衛隊師団などというもの、あるいは陸上自衛隊戦力そのものは余りふやせない。むしろ海空優先であるという傾向がございましたが、歯どめが外れれば陸もふやせ、海空もふやせというふうになってまいります。そして、陸上自衛隊師団のふやす方向というものについての陸上自衛隊筋のいろいろな発言を読んでおりますと、アメリカ陸軍並みの強力なものを持つべきである、こういうことであります。戦車は多ければ多いほどいい、空中機動力も大きければ大きいほどいい、そういう方向を目指しつつある。  そもそも師団などというものは日本にとって必要なのか。不必要であるという意見かって防衛当局の中にもあったようでありますが、師団をつくり、さらにそれをどんどん強めていく。そういうことが陸だけではなく海空にわたって行われる。そういうふうになってまいりますと、単に防衛予算に限界がなくなるだけではなく、一層極東の緊張は激化することになる。だから、私は日本平和主義国是を堅持し、そして、かつて防衛庁自身も言っておりましたようにすべての国との友好協力関係を増進する。このためにこそ努力すべきである。このすべての国との友好協力という方向防衛白書から削除されましたのは七九年以来のことであります。そういうところから危険な逸脱が始まってきたということに私たちは注目すべきであろう、こういうふうに考えているわけであります。  以上で簡単ですが終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  8. 安孫子藤吉

    ○小委員長安孫子藤吉君) どうもありがとうございました。  次に、福山参考人にお願いいたします。
  9. 福山秀夫

    参考人福山秀夫君) 福山でございます。  自衛隊現状問題点というテーマをいただきまして意見を述べさせていただきますが、現状問題点と申しましても、これは現在だけ、自衛隊だけを切り離すということでは本質は明らかにならないわけで、米軍が日本を占領していた時代からの歴史だとか国際的な諸情勢だとか、これと深くかかわっている問題かと思います。私は端的に申しまして、自衛隊現状問題点は最初のボタンのかけ違いが今日も続いているというところにあると思うものでございます。言いかえれば、日本国憲法に違反して、占領下でまさに極東有事、朝鮮戦争の始まった当初に占領軍の命令によってつくられた、アメリカの戦略に組み込まれた、米軍を補完する従属的な軍隊だ、そういうところに根本的な問題点があると思うものです。  その点につきまして、これはフランク・コワルスキー大佐、今生きていれば八十二歳ぐらいになるかと思いますが、在日米軍の顧問団の初代の幕僚長であったコワルスキー大佐が「日本再軍備」という本の中ではっきり、ちょうどあの警察予備隊が発足する時点につきまして、「人類の政治史上、おそらく最大の成果ともいえる一国の憲法が、日米両国によって冒涜され、じゅうりんされようとしている」ということをはっきりと書いておりますけれども、まさに警察予備隊、保安隊、自衛隊と続いてまいります、その最初に占領軍の命令によりましてそれを分担した人がこういうことを言うということの中に端的にその特質、問題点が出ているというふうに思います。  あるいは、それは警察予備隊のことであって、三十五年もたった現在の自衛隊は全く違うという御意見もあるかもしれませんが、私は、ミリタリー・バランスの一番最新号、一九八四—八五年版に出ている数字を引用しながら、これは一番新しい数字でもございます。最近大体同じ傾向でございますので、この点に触れたいと思うのですが、今、在外、アメリカ以外にいるアメリカの軍隊、兵力ですが、五十一万三百人という数字が出ております。それが一体どういうふうに配備されているかと申しますと、西ドイツ、これが陸軍が二十万四千二百、西ベルリンに四千三百、それからアメリカの空軍は西ドイツに四万二百人、これを合計いたしますと二十四万八千七百人となりまして、大体在外米軍の半数が西ドイツに配備されております。伝えられるところによれば、六千発ほどの核兵器が西ドイツに置かれているとも言われております。  その次に、どこに集中しているかと申しますと、これが日本と西太平洋でございまして、陸の場合には今は二千百人程度とミリタリー・バランスに載っておりますが、海につきましては、第七艦隊が横須賀を母港としている船もたくさんございます。主として、インド洋は除きまして、西太平洋に配備されているのが四万七百人と海兵隊が二万五千百人、これは沖縄が主でありますが、空軍は日本に一万五千百人となっておりまして、合計が八万三千人であります。韓国は陸と空と合わせて三万九千六百人、約四万人でありますが、日本とその旧植民地であった韓国とそれから近海の米軍を合わせますと十二万二千六百人というわけでございます。両方合わせると実に三十七万千三百人、在外米軍の七二・七六%強と申しましょうか、約七三%が西ドイツと日本及びその旧植民地、その周辺に配備されている。これはまさに異常な集中と言ってよろしいかと思います。これは何を物語るか。まさに西ドイツは西で、日本と韓国は東でソ連と直接境を接し、あるいは海を挟んで直接対峙する最前線基地になっているということであると思います。  それでさらに、これは地理的にそういう場所にあるのだという見方もあろうかと思います。しかし、地理的に同じような、あるいはソ連にもっと近いところにありながら国是として中立主義をとっている国もいろいろとあるわけでありまして、例えば同じドイツ民族でもオーストリーの場合にははっきりそういう状況ではない、条約によりまして中立が保障されている、そういう状況かと思います。  したがいまして、問題点として私がいや応なしに考えましたのは、これは私、一九七八年、第一回の国連軍縮特別総会の開かれた年でありますが、あの年にワシントンの議会会館でしょうか、あそこで第一回の核戦争会議というのが開かれまして、これには例のラロック元海軍少将、それから映画俳優のポール・ニューマンだとか、あるいは法曹界の権威者、各界の方々が集まられ、高級軍人でも将官クラスがこのラロック氏を含めると五人参加していたわけであります。その中でミラー提督という人がアメリカの軍隊の中でありふれたことわざとして、「露営地に砲列を展開するな」という言葉を引用いたしまして、これは参加者からの質問で、アメリカの中に軍事力がたくさん集中しているとねらわれて危ないのじゃないかというのに対して、率直にミラー提督が答えておりますのは、露営地に砲列を展開するな、つまり、軍隊が露営しているところに砲列が、兵力が、大型兵器が並んでいるということは、そこが攻撃されれば一緒に直接関係のない兵隊まで死んでしまう、だから攻撃される目標はなるべく露営地からは切り離すのだということを申しまして、アメリカの核戦力をできるだけ海に配置する、アメリカの外側に配置するということを言っているわけであります。  私は、この異常なドイツ及び日本日本の旧植民地、日本周辺というところへの軍事力の集中というのは、先入感にとらわれないで見れば、単に地理的な位置というだけではなくて、やはりドイツと日本が、韓国も含めてですが、長く占領下にあったという事態とこれは切っても切り離せないのではないか。ミラー提督は、ソビエトの兵器の目標点をアメリカの外側に出してほかの場所に移す、そうすれば核兵器のやりとりをしても合衆国は命が助かるという言い方をしているわけでありますけれども、どこの国でも一般的に申しまして、外国の軍隊の駐屯というのは主権を侵害するということでこれは認めないか、あるいは極力小さく抑えようとしている。ところが、ドイツ、日本の場合、韓国も含めてですが、長く占領下にあったという事態で、これがしかも平和条約と安保条約をセットでやってきたというような事態もあり、枠組みとして今日も残っているという点で、これは極めて危険な事態ではないかというふうに思います。まさにそういう枠組みの中に自衛隊が置かれている。  そして、特に問題点としてガイドライン、日米防衛協力のための指針が閣議了承になりましたのが一九七八年の十一月の末であったと記憶いたしますが、あのガイドラインの制定以後現状はさらにいろいろ動いてきていると思いますけれども、大きく事態が変わってまいりまして重大な問題が生じてきていると思います。  三点ばかり挙げたいと思いますが、一つは、日本自衛隊がNATO型の日米統合軍化に向かって着実に動いているということだと思います。これは私の言葉というよりもウィリアム・ギン中将、在日米軍司令官であったあの人がそういうことを同じ言葉で、NATOタイプの日米統合軍への着実な動きが進んでいると証言しているわけでありまして、これは八〇年の一月十四日号のエビエーション・ウイーク・アンド・スペース・テクノロジーに出ているわけでありますけれども、まさにガイドライン以降、日米安保条約の実質改定に等しいガイドラインの制定によりまして自衛隊の性格というものが大きく変わってきていると思います。単に戦技訓練をやるというようなことではなくて、統合軍的に共同作戦をともに戦う、そういう性質に変化しつつあるということが言えると思います。  そういう点で、安保条約の条文によれば、日本の施政権下にある区域が攻められたときに共同で対処するということでありますけれども、そうではなくて、もっと大きな質的な転化が起こりつつある。それは第二と深くかかわるわけでありますが、日米共同作戦の範囲が大きく拡大してくる。これは六十年安保改定のときには、沖縄、小笠原を含めることについていろいろ論議がありまして、結局含めないということになったわけでありますが、沖縄、小笠原の返還とともに、施政権の返還によってこれは含まれるばかりではなくて、特に最近に至りましてシーレーン防衛の問題、あるいは四海峡封鎖という問題の登場によりまして共同作戦の範囲が著しく広がってきた。日米安保じゃなくてアジア安保に変質してきているというような声も出ているところであります。  さらに、三番目に大きな特徴というのは、核戦争の中に組み込まれるという体制が進んできているということだと思います。この七八年のガイドラインによりまして公式に米国の核戦力の前方展開が認められまして、その内容といたしましては、例えば核兵器の一時持ち込み、これはライシャワー発言などもあったわけでありますが、八一年の五月であったかと思いますけれども、領海、領空の中継通過だとか寄港、それから例のMWWUといったような核兵器の整備をやる部隊が沖縄にいたといったような問題。これは単なる一時持ち込みというよりは常時配備を思わせるようなそういう部隊が配備されていたということ。さらに、最近のトマホークの寄港というような事態を見ましても、一時持ち込みの問題というのが非常にエスカレートしてきているということが言えると思うのでありますが、そういう中で自衛隊の体質といたしましても基本的に核先制使用攻撃を承認する、核の傘を前提とした点というのがはっきり出てまいった。これは政府の米国の核抑止力への全面的な支持。  ことしの二月二十日に衆議院の予算委員会におきまして中曽根首相が答弁されてますが、自衛隊と共同行動する米艦が核兵器を使用してもこれは容認せざるを得ないというようなことを言われる。まさに核戦争の中に自衛隊が入っていくということまで承認する、そういう方向が出てまいったというのは非常に重大なことであると思います。また、C3Iと申しますか、指揮、管制、通信、情報といったことに関しましてこのガイドラインははっきり日米協力の線を打ち出したわけであります。既に電電公社の回線綱まで米軍によりまして点と点の通信網ではなくてネットワークをつくって、核攻撃を受けてずたずたになった場合でもいろいろなルートを結びつけてすぐ回復できる、そういう態勢が組まれていることがいろいろと調査の中で明らかになっておりますが、そういうC3Iの中に組み込まれていくという点につきましても危険な事態がずっと進んでまいっている。  また、自衛隊それ自体の核戦争能力ということにつきましては、護衛艦につきましては一九五五年計画の分以降が旧海軍の日本の軍艦とは違って、大体一つの艦にノズルが六十ないし百個ついていて、海水をシャワーのように噴出いたしましてハッチはみんな閉めて死の灰も洗い流す、そういう設備が整ってずっと今日に至っているわけでありますけれども、まさにこれは核戦争の中でも行動ができるという態勢がとられている。また戦車につきましても、シュノーケルを備えたそういう国産の戦車が今主力であって、これは外気をそのまま入れるわけではございませんので放射能の中でも行動ができる。特に強化された場合には、中性子爆弾のような場合はともかくとしまして、通常の核攻撃の中では戦闘ができる、そういうものがずっと装備されてきたということは経過としてもあるわけであります。  最近明らかになったように、昭和三十三年から三十八年、西暦で言えば五八年から六三年ということになりますが、陸上自衛隊の幹部学校の教科書三十二冊のうち十七冊が核戦争の教科書であったというような事例がございますし、あるいは八三年の十月、一年ちょっと前ですが、北海道で行われた日米合同の陸上の実動演習ヤマト83、これにコンタミネーテッドエリアということで、これは核あるいは化学物質による汚染ということだと思いますが、そういう地域が作戦地図にはっきり印がついている。そういう想定のもとに演習が行われているという事態を見ましても、自衛隊が米軍とともに核戦争を行うという能力を持ち、そういう体制が進められつつあるという点につきまして非常な危慎を覚えるものでございます。  最後に、私は、日米共同作戦計画が昨年十一月の二十一日中曽根首相に提出された。これもガイドラインに基づきまして、四年間でございますか、ずっと審議が重ねられてここで提出されたということにつきまして、いよいよことしの秋アメリカの四軍と日本の三自衛隊とが共同の指揮所演習を始める。米軍の方も中央指揮所が横田基地内に完成する、日本自衛隊の中央指揮所も防衛庁の中に完成する、両方がタイアップしながら共同作戦についてのまさに指揮をともにしていく、そういう演習がまず図上で行われようとしている。これは必ずいずれは実動演習にもつながっていくのではないかと危惧するものであります。  そういう事態のもとで、日米共同作戦シンポジウムというものにおきまして、これは参加者は、一九八〇年にあるいは八一年に自衛隊を退官したばかりで、いずれも陸海空のそれぞれの幕僚長を経験された方々で、中には竹田さんのように統幕議長もやった方が含まれている。海上自衛隊の方は大賀良平さん、それから竹田五郎さんが航空幕僚長と統暮議長ですか、永野茂門さんが陸上の幕僚長ということでありますけれども、退官後間もなく、そうたっていない一、二年後の時点でのシンポジウムの中でこういう発言をされておるわけです。  北方四島の問題につきまして、北方四島がソ連にとって「兵站的あるいは通信上の支援基地となることは間違いないですね。」と永野さんが申しますと、司会者から「米軍にその策源基地を叩くことをお願いする…。」という発言がございまして、大賀さんが続いて、「作戦の順序としては、当然、北方四島のようなところは、樺太を叩くのと同じで、真っ先に攻撃してもらう対象になります。」、それに対して永野さんは、「北方四島はまず徹底的に叩くんじゃないですかね。」、大賀さんは、「米軍に頼まなくても、日本で叩いてもいいんじゃないですか。」、それに対して永野さんは、「もともとあれは日本の領土ですからね。開戦と同時に奪還するのが常道じゃないですか。」、司会者は、「そうしたら国民の士気は上がりますね。」と申しましてこのくだりは終わっているわけであります。こうしたことが最高責任の地位にあった人々の間で事もなげに語られているという事態。  しかも、トマホークの配備が第七艦隊で現実に進められ、それに対抗してソ連の方でも、既に海洋発射の巡航ミサイルの実戦配備を進めているという報道もされているわけでありますが、こうしてアメリカの外側に出された核兵器が日本並びにその周辺に集積している。しかも、海上自衛隊の幹部の発言によりましても、海が一番核兵器を使いやすい場所だ、これはほかの人家や何かに対する配慮が一番少ない、非常に軍事力対象に使いやすいという意味のようです。海が一番使いやすくて、その次が砂漠だというような発言もあるようでありますけれども、まさに日本海が核戦争の海になる、朝鮮半島から沿海州、日本列島、そしてその近海は核戦場になる危険というのが深まってきているという事態に対して深く憂慮せざるを得ない。そしてその体制の中に自衛隊がますます深く組み込まれつつあるという現状問題点について、これは国民的な課題として党派の違いを超えて考え、解決しなければならない問題じゃないかと、僣越でありますが、つくづくそう感じているということを申し上げまして、私の発言を終わらせていただきます。
  10. 安孫子藤吉

    ○小委員長安孫子藤吉君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は、小委員長の許可を得て順次御発言を願います。
  11. 中西一郎

    中西一郎君 まずお二人に、常識的に言われる中立自衛とかあるいは非武装中立という話がありますが、そういった概念の中でお二人の立場を明らかにしていただきたい。これは第一点です。  それから第二点は、お二人の話を聞いていますと、国際情勢の認識、あるいは砲艦外交という歴史的な多年の流れといったものの中で、いじめられっ子になって、いじめられっ子のままでともかく耐え忍ぶということでいきなさいと言わんばかりのお話に実は聞こえるわけであります。釈迦族が滅亡いたしましたけれども、そういうふうにお考えなのかどうか。  それから第三点。これは一九八三年、「ジャーナル・オブ・ピース・リサーチ」の百九十三号でニューヨーク大学のディートリッヒ・フィッシャーというのが言っていますが、脅威を与えない非脆弱性ということを主張しておられるのです。要するに純粋防御兵器の開発の問題であります。いろいろ可能だとか不可能だとか議論がございますが、そういった純粋に防御するための兵器というものの開発ということについてどういう御見解をお持ちか。これは今申し上げましたジャーナル・オブ・ピース・リサーチの百九十三号、日本文は出ていませんが、きょうお答えなくても結構ですが、機会のあるときにまた御見解を伺いたいと思います。  それから第四点。これは、お茶の間が戦場になるというお話がございまして、渡辺茂さんという東大の工学部長をなさった方が、最近「誰があなたを守るか」という本をお書きになりました。結局、個人個人の立場でいえば、国任せだけでもいけませんよ、自分のことは自分で考えないと大変なことになるのではないかということも含めて、民間のコマーシャルベースでそういった対応をしていく技術開発、ベンチャービジネスといいますか、そういうものが必要な時代になってきたのではないかというような御指摘でもあるわけです。なぜそういうことを言うかといいますと、国際人道法という国際条約、一口に言われていますが、ジュネーブの一般議定書というのがありまして、その中で民間防衛という概念が確立されている。先ほど来のお話を伺っていますと、ともかく何もしないでおりなさいと言わんばかりなのですけれども、そういうことが国際的な場で発言された場合に、一体日本人は何を考えているのだというふうな批判といいますか、見方をされるのではないかというふうに思うのですが、そういった点についてどう思われるか。  四点申し上げましたが、わずかな時間で甚だ恐縮です。自民全体で往復十分でございますので、適当にお答えいただければ幸いです。
  12. 藤井治夫

    参考人藤井治夫君) まず第一のお尋ねですが、私はこういうふうに申しているわけであります。  三本柱がございまして、まず第一、積極平和、平和はつくり出すものである。何か、何もしないでというお話がございましたが、そうではない。平和をつくり出すという努力をするわけであります。これはなかなか大変なことでありまして、むしろこの努力によってこそ戦争を防いだりまた安全を守ることができる。それは、先ほどもちょっと申しましたが、文化から経済、そして戦争反対、反核の運動に至るまであらゆる努力をしなくてはならない、これが第一であります。  二本目の柱が非武装中立であります。つまり、軍事同盟と軍隊をなくしていく努力であります。これもなかなか容易ならぬ仕事であります。軍事同盟を結んでいない国は世界に約百カ国ぐらいはございます。しかし、軍隊をなくす努力に成功している国は極めてわずかであります。ですから、そのような努力をしなくてはならない。  第三番目は、今御質問の最後のところにもかかわってまいりますが、民衆自衛であります。民衆はみずからの力によってみずからの生活と権利と生命を守る。これが第三番目。  つまり、積極的平和、非武装中立、民衆自衛、これが私の考え方であります。  それを申し上げますと大体全部にお答えしたことになろうかと思いますが、次に第二の問題は、つまりどのような手段が安全保障にとっての主要な手段なのか。私どもは、軍事力ではない、むしろ有害、無益なものが軍事力であって、それ以外の非軍事力、非軍事的な手段による安全保障こそが基本であるべきである、こう考えているわけであります。またそれは、そのような手段によって安全を確保する、これが唯一有効であり、かつ非常に結果としてもそれによって安全の確保に成功するだろう。そのような条件は挙げれば幾らでもございますが、あると思います。つまり、そうであれば、安全保障の責任を担うべき者はだれか。それは国民であり、またひいては政治であります。軍人が安全保障の責任を担うべきではない。軍人の出番が来たときには、既に安全保障は失敗に終わったことを意味するわけであります。  次に第三点の、いわゆる純粋防御兵器なるもの、こういうものはあり得るか。これはあり得ないと考えるのが正解だろうと思います。現在、レーガン大統領のSDI構想という問題も出てまいりました。これは防御兵器である、核兵器を無力にするものである、そういうものであるからその研究に理解を示したというのが中曽根首相の立場であります。  だが、これはとんでもないことであります。もし仮に戦略防衛兵器なるものができてまいりまして、そして核ミサイル攻撃を無力にすることが可能になったといたしましても、そのことによって全くむだな存在になるのはソ連の核ミサイルであって、アメリカの核ミサイルがむだなものになるわけではない。したがいまして、そのときになって放棄されるのは、もしかするとソ連はもう捨ててしまうかもしれませんが、アメリカの核はなくならないはずである。いや、もちろんソ連はそういうことに甘んじるはずはないわけでありまして、したがいまして、ソ連自身もそのような宇宙兵器の開発に努力するであろう。  そして、そのような防御兵器なるものは攻撃兵器と不可分の関係にあるわけでありまして、防御兵器を持てば攻撃が可能になる、攻撃するためには防御が必要である、こういうまさに盾と矛の関係ということになるわけでありまして、これはミサイルやあるいはこの宇宙兵器だけではなくあらゆる兵器がそのような関係にあると考えていいと思います。  つまり、そのような方向自衛隊自身も今日までたどってきたわけでありまして、最初は専守防衛だと申しておりましたが、だんだん一千海里だ、海峡封鎖だ、そうして洋上撃破だというふうになってきているわけである。一たん兵器を持つということになってまいりますと、あれもこれも全部欲しくなる。こうなりますから、私はやはり、攻撃兵器をなくし防御兵器だけというふうに第一段階としてするというようなことはもちろんあってもいいと思いますが……
  13. 安孫子藤吉

    ○小委員長安孫子藤吉君) 藤井さん、ちょっと時間の関係があるものだから、ひとつ簡単に結論だけ。
  14. 藤井治夫

    参考人藤井治夫君) はい。  以上で、最初に全部のお答えを申しましたので。どうも失礼しました、終わります。
  15. 安孫子藤吉

    ○小委員長安孫子藤吉君) 福山さん、何か。
  16. 福山秀夫

    参考人福山秀夫君) 時間が余りないようですので端的に申したいと思いますが、中立自衛、非武装中立、どちらだという御質問につきましては、両方とも共通項に中立ということがありますが、日本の進むべき道としては私は中立の道を進むべきだというふうに思っております。  自衛か非武装かという点につきましては、やはり日本国憲法の立場を厳密に考えるならば、きょうのあしたというわけではありませんけれども、一定の手順を踏んでもやっぱり自衛隊というものは解散すべきものだ。あれははっきり戦力と言うべきものの、それも一流の戦力になっているということで、私は、治安というのか、市民の安全、国民の安全を維持するための警察の存在というのは、これは必要だと思いますけれども、例えば海賊が近海で暴れたりするというものに対する、それに対抗をできる程度の警察力というのは、これは必要だと思います。それに必要な最小限度のものは引き継ぐというようなこともあるかもしれませんが、一応やっぱり自衛隊というのはなくすべきものだろうと思います。  その上で、しかしその時点での国際情勢の中などで、国民の総意によってどういう進路を進むかということは考えるべきだと思いますし、軍事ですべてを見るということではなくて、みずから先頭に立って日本の国が核兵器の全面禁止、廃絶とか全般的な軍縮とか、そういう点のイニシアチブをとっていくということがあわせて必要であり、また、経済的な面その他の面におきまして周辺の国との友好政策をとることが必要だと思います。  そういう点で、耐え忍ぶということではなくて、積極的な政策をとるということが生き残るためにも必要なのじゃないか。軍備をふやせばふやすほど安全なのかといえば、決してそうは言えない。今人類が何十回も皆殺しになるような状況になってきている。ふやせばふやすほど、ソ連にしてもアメリカにしても、安全は脅かされてきているというのが現状だと思います。新しい局面を開くことが必要なのじゃないか。  三番目の問題につきましては、純粋な防御兵器はあり得ないと申しましょうか、攻撃兵器がある一方で防御兵器があるという、それが結びついて兵器体系をつくっているという状況のもとでは、それこそ矛盾という言葉がございます。相手の矛を防ぐ盾を持ち、こちらの矛は相手の盾を断ち割るような、そういうものを持つという、そういう競争がどこまでも続いていくということで、現在のような対峙状況の中で純粋な防御兵器というのは考えられないのじゃないかというのが、スターウオーズ計画の中に出てくる、飛んでくるミサイルを全部撃ち落とすということになれば、先制攻撃をやっても仕返しされる心配はないということの保障にもなるわけで、そういう結びつきの中でとらえるべき問題かと存じます。  それから、民間防衛につきましては、これは今核兵器に対して本当にどんな場合でも生命を守れるような、そういうシェルターというのはあり得ないというわけでありまして、横田基地の中にもシェルターがあるようですが、司令官はいざとなれば空に飛び上がって空中から指揮する。アメリカの大統領も同じ。そういう専用機をつくっているわけでありますし、私たちとしてはもう核軍拡競争の激化、核戦争の危機はもう避けられないということで、せめて僥幸を願って民間防衛に力を入れるというよりはやはりそのもとそのものをなくしていく。イギリスの平和運動の中では、政府が出した「プロテクト・アンド・サバイブ」、防衛して、防護して生き残れという本に対しまして「プロテスト・アンド・サバイブ」、そうした軍拡政策に対して抗議をして生き残れというパンフレットを出しまして、防衛力を強化し民間防衛を強めるというよりも今は平和運動を強めていく、諸国民の連帯を強めていくことが平和維持のために一番重要だということが強調されているわけであります。  諸先生は国のレベルでそうした国家間の問題の解決に御努力されていると思いますが、私どもはまた民間ベースでの諸国民の友好連帯、日本の立場を率直に各国の平和運動にもぶつける、申し入れていく、連帯、統一の行動をとるようにしておりますが、そういう面で打開していくことができるのじゃないか。大体国民四人に一人ですか、一軒に一丁ずつピストルがあるというのがアメリカの実態だそうですが、そこの犯罪の起こる率というのは日本の十倍、百倍というぐらいに多いという事態というのを、これは個人のベースの問題ではありますけれども、私どもは考慮に入れてよろしいのではないかと思っております。  以上でございます。
  17. 志苫裕

    志苫裕君 社会党の志苫です。何せ十分でやりとりしようというのですから、私も二問両先生に伺って終わります。  一つはGNP一%論なのですが、これを突破しようという諸君は、軍事的合理性がないと言うわけですが、言っている方にどれだけの軍事的合理性があるかはもちろん詰まっていないように思います。ところが防衛大綱のシナリオというのは、極端に言えば相手ソ連でありまして、ソ連が大規模に攻めてくることはない、小規模な単独の侵攻があり得るということを前提に組み立てておるのですが、世界の軍事専門家もそれぞれの当局者もさまざまな場所での発言で、そんなことはない、あるとすればどこぞで紛争があって米ソが首を突っ込んで世界的な紛争になる、それが飛び火をしてくる、それが中東であるか朝鮮半島であるかは別にしまして、それが常識とされておる。そうすると、大綱が持っておる有事のシナリオというのはまるっきり現実性がないという帰結になってくるわけで、その辺を最近における大綱見直し論というのは有事シナリオを変えようというのかどうかわからないのですが、その辺をどのようにお考えになるだろうかという点が一つ。  この大綱でちょっと私も矛盾を感ずるのは、日本が攻められた場合に、アメリカが助けに来るという意味での日米安保がその場合は役に立つという考え方なのですが、しかし、有事のシナリオが変わって波及型になった場合には日米安保はかえって邪魔になるという意味でのもろ刃の剣にもなってくるわけです。これもあわせてひとつ。  それから二つ目は、私どもが最大の安全保障というのは日本戦火をもたらさないことだ、突き詰めて言えばソ連と戦争しないことだというふうに考えるわけです。ところが、対ソ軍事力の増強というのはソ連相手にしているのですから、対ソ脅威を声高に叫んで軍事力を増強するということは逆にソ連脅威顕在化するということになって、安全保障につながらないという逆論になるのじゃないかと思うのですが、その辺について両先生からお話をいただければと思います。
  18. 藤井治夫

    参考人藤井治夫君) 第一の問題は、この防衛計画大綱が定められた当時、私も随分防衛当局方々と議論をしたところでありまして、そういうことはあり得ない、仮に日本がそのような事態対処し得るということになった場合、相手がその日本対処できる範囲内で日本侵攻してくる、そして当時は稚内あたりでソ連が二個師団か三個師団揚げてきて、そして自衛隊がそれを追い落とす、こういうふうなことがよく言われたのですが、そのようなことを軍事大国ソ連がやるであろうか、非常にありそうにない話である、こう考えました。確かにこれはおかしいわけであります。  だが同時に、今日言われている世界有事的な事態、あるいは他地域有事の波及事態、これは極めて危険な考え方である。やはり大綱考え方というのは脅威顕在化というものを避けていこうというふうな発想が根底にあったわけです。したがいまして、国際関係を規定している幾つかの主要な要因というものが維持されている限りこれでいけるというふうな判断があったわけです。それ自体は私は確かに矛盾は含まれておりますが、むしろそのような基本的な構造的な要因を強めていくということであれば、これは評価できると考えているわけであります。もちろん、この基盤的防衛力構想防衛計画大綱そのものの根底にはアメリカに助けてもらうという発想がありまして、当時から日米防衛協力の強化ということを進めてきたわけです。したがいまして、そういう点からいいますと考え方が全面的に再検討をされて、そして安保とかあるいは日本防衛政策のあり方そのものを、この委員会でも御審議されていることでありますが、これを全部洗い直してみる必要があるだろうと思われます。  それから第二の問題といたしましては、これは一例を申しますと、いわゆる北方領土にソ連は、一九四五年にこれを占領したときから一九六〇年まで地上軍二個師団を配置していたわけであります。だが、その後六〇年に撤退いたしまして、一九七八年までは地上戦闘兵力はゼロになっているわけです。その七八年に一個師団に近いものが入ってき始めた。そして同時にソ連脅威論というものが日本で声高く叫ばれるようになったわけであります。ずっと以前のことを申しますと、一九五七年にアメリカの地上戦闘兵力が日本の本土から撤退いたしております。これは五七年から六〇年、やはり雪解けの方向への相互循環が米ソ間で起きていたわけで、七八年以降はそうじゃなく、逆の方向へ、緊張激化の方向へ進み始めている。したがいまして、ソ連脅威対処するということは、ソ連脅威顕在化あるいは増大を招くという今の御質問はまさにそのとおりでありまして、むしろ雪解けの方向でどうするか、こちらが撤退すれば相手も撤退する、そういう方向での努力をすべきではないかということを今申しました一例が示しているのじゃないかと思います。
  19. 福山秀夫

    参考人福山秀夫君) 第一問につきましては、アメリカソ連の間のものが即波及してくるということですけれども、まさに先ほど申し上げましたように今NATO型の日米統合軍化が進んでいる。これは元在日米軍司令官すらも認めるように、着実にその方向に進んでいるということ自体が、自動的にどこかで起こったこともすぐ極東に波及してくる、日本が巻き込まれるという体制をこしらえつつある。日米安全保障安全保障するのじゃなくて戦争に巻き込まれるのを保障するという役割を安保条約がまさに果たそうとしている。非常にその点は危険なものであり、しかも、集団安全保障体制の中に組み込まれていくという方向がNATO型というと出てくるわけでありまして、ANZUSに加盟しているということで、オーストラリア、ニュージーランドはベトナム戦争のときも直接ベトナムから何か攻められたとかいうことはないわけですが、あそこに大規模ではないけれども兵力を送ったわけです。そういった事態ということが今後の進み方いかんでは起こりかねない、起こりかねないというよりは、まさに四海峡封鎖シーレーン防衛というのはそういう軍事的な意味を持っているという点で私は非常に危惧すべきものだと存じます。  それから二番目の点につきまして、対ソ軍事力増強がソ連軍事力顕在化するという御指摘につきまして、顕在化と申しましょうか、私は核軍備につきましても核軍拡競争が悪循環に陥っているという判断をいたすわけであります。大づかみに申しまして、ラロック提督が去年来たときの言葉をかりれば、アメリカが三万発、ソ連は二万発の核兵器を持っているということを彼は言っておりましたけれども、アメリカがつくればソ連がつくる、そういった悪循環がまさにきわまりつつあるというところかと思います。核軍拡競争が宇宙空間にまで今広がろうとしているわけでありまして、そういう悪循環を断ち切る、つまり核兵器の全面禁止、毒ガスと同じように禁止していくということ。そして一般的な軍備についても私どもがやはりイニシアチブを発揮しながら核兵器廃絶、一般軍備も縮小していく、全般的軍縮という方向に持っていくことこそ最大の安全保障だと思います。  以上でございます。
  20. 黒柳明

    黒柳明君 両先生に共通の質問をさせていただきたいと思います。  まず第一点は、最近の各種世論調査を見ますと、自衛隊現状を認知、肯定するのは大体七割から八割以上出ておりますが、この内容につきましてどのように分析あるいは認識をされるか、それが第一点。  第二点は、もう言うまでもなく人勧の勧告を受けましてベースアップしますと、GNP一%を夏は超えること必至でございますが、そのときに国会あるいは野党といってもよろしゅうございますか、何をすべきか、両先生のお話をお伺いしたい。  もう既に自民、社会両党で八分三十秒時間超過をしております。私が今使ったのは四十秒でありますので、残りの九分ぐらいを両先生でお分けいただければ、恐縮でございますが、よろしくお願いします。
  21. 藤井治夫

    参考人藤井治夫君) 第一の自衛隊に関する国民意識の問題でありますが、これはある防衛庁の幹部に言われて私もはっとしたことがあるわけですが、やはり国民というのは常に現状を肯定する。自衛隊防衛予算が千六百億円だった一九六○年においても、三兆円を超える今日でも常に現状は認めるのである。ただ、その国民の意識に極めて強いアレルギーを引き起こすような政策をとらない限りはこの状況で進んでいける、こういうふうなことを伺いましたが、そこから出てきておりますのが計画的に防衛力整備を進めるという方針だと思います。七%ずつ上げていく、十年すれば二倍になり、二十年すれば三・八倍ぐらいになるわけであります。そのやり方で積み上げていかなきゃならない。一挙に倍以上などということになると大変だ。それが国民意識に、ある意味ではそういう形で投影となってあらわれているのだと思うわけです。これをどう考えるかという問題が次に出てまいりますが、ともあれそういうことであります。  そのようなやり方が最後にどこへ連れていくか、私は常に最後の終着駅のことを考えるわけであります。つまり、未来を予見することがなくてはならないということを申し上げるわけであります。源田先生もいらっしゃいますが、一九三一年満州事変を始めたときに、十五年後に広島、長崎がやってくることを予見することはできなかった。そのような不明で国をリードしていってはならないわけであります。  それから第二に、一%突破の問題、これは避けがたい。この一%を突破したから一%の歯どめそのものが撤廃されるのか。いや、そうではなく、一%の歯どめに戻す努力をする、来年度は一%が守れるような方向に持っていく、あるいはまた、今年度につきましてもできるだけ節約をして結果的には実績において一%を守るような努力をする、こういうふうなことが可能性としてはあるだろうと思うのです。ただし、やはり大事なのは流れがどの方向へ向いているかということであって、どんどんふえていく方向か、あるいは現状維持か、少なくなるか、その選択肢のどれを選ぶかということがやはり根本問題ではないかと私は考えております。
  22. 福山秀夫

    参考人福山秀夫君) 各種世論調査の結果につきましては、私の手元にデータを持っておりませんけれども、従来災害派遣の問題だとか民生協力の点につきまして、例えば山崩れの現場での発掘作業だとか、豪雪地帯で除雪をする、水害の際の救助作業、あるいは離島で急病人が出たときに運ぶ、これは本当に地元に喜ばれていることは確かでございますし、世論調査などによりましても、内容を見ますと、こういう点での自衛隊の役割というものを認めるというのが大きいと存じます。また民生協力の点では、僻地に道路をつくるとか、学校のグラウンドをつくるとか、難しい河川に橋をかけるとか、架橋工事、そういったものが随分申し込まれ、非常に安いコストでこういったものが得られる。自衛隊のサイドとしては、これは戦場でもって橋をかけたり道路をつくったり、戦車が通れる道路をつくったりするという訓練としてやるわけでありますけれども、採算を度外視してやるわけでありますが、そうした点が自衛隊認知の大きな要素になっている。  実際にその支持率が高いと申しましても、その内容を詳しく見てまいりますと、今防衛力を増強していくことが重要だから、だから自衛隊が必要だという意見はむしろ非常に少ないというのが率直に言って実態であろうかと思います。日本は核兵器を持つべきではないという世論の方は常に七割、八割といったような高率を占めておりますし、あるいはNHKの調査などでも、どのように日本は安全を守っていくかという点については、軍事力に頼るべきだというのは非常に少ない、外交、経済の努力でいくべきだというのが圧倒的に多い。たしか八割ぐらいであったかと思いますけれども、そういった内容だということで、いろいろその中に矛盾もございますけれども、本質的に平和志向が日本国民の間には定着しているというふうに考えてしかるべきではないかと存じます。  それから、第二の御質問をいただきましたGNP一%の問題につきましては、本来私は先ほど申しましたように、自衛隊というのは憲法の規定どおりに戦力という要素を一切なくしていく、解散すべきである、その上で、警察力についてはしかるべき、戦力と認められないそういう限度においての存在というのは考えられるということを申したわけでありますが、一%を超えようとしているという点についての危慎は国民の中にみなぎっているわけでございますし、国会の皆様方にぜひこの点についてはこうした国民の世論に深く耳を傾けていただきまして、ここで米国の要求するままにとめどなく軍拡に進んでいくというような方向は何としても防いでいただきたい。私どもは国会の外におきまして、こうした世論を大きく盛り上げていくために努力したいと考えておるということを申し上げたいと思います。
  23. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 お二人に一問ずつお伺いしたいと思うのですが、藤井参考人は将来非武装中立を主張されて、非軍事的な措置で積極的に日本の安全と平和を守ろうと述べられたのですが、最初の発言で今の御見解とちょっと矛盾しているのではないかということを感じたのは、防衛計画大綱、その中の防衛構想一定の評価をされる、特に所要防衛力構想ではなく基盤的防衛力構想をとった点等々は、火遊びがないということを言われただけでなく時代を先取りする第一歩の芽生えではないか、そう評価されまして、私もそういいところがあるのかなと思って、白書の中で防衛計画大綱のところを読んでみたのです。しかし、侵略の未然の防止はやっぱり安保体制の強化ということですし、万一侵略があった場合、限定的小規模な侵略については独力で排除し、それが困難な場合はアメリカからの協力で排除するという建前なので、どうもここの部分はやや矛盾しているのではないかというように感じたのです。  その点と関連して、第九条違反の自衛隊憲法違反問題ですね、これについてどういう御見解を持っておられるのか、そのことを藤井参考人にはお聞きしたいと思います。  それから福山参考人には、ガイドライン以後の問題点をずっと指摘されましたが、ガイドライン以後日米の共同演習が非常に強化されてきておりますが、その中でこの防衛白書も、また政府も集団自衛権は持っていないのだと言っている点が、かなり集団自衛権を持っていることを前提とした演習に踏み込みつつあるのじゃないか。これは新聞でもまた国会でもかなり問題になりました。リムパック演習でハワイに対する米海兵隊の上陸演習に日本の護衛艦が援護射撃をした問題なども問題になりましたし、それから我々も国会で問題にしたことがあるのですけれども、例えばアメリカに対する情報提供、C3Iの問題で非常に問題になったのです。  数年前は、P3Cのソ連潜水艦についての情報は平時には提供しないという答弁だったのに、最近はそれについては答えを控えるという態度になってきているのです。そうしますと平時にも、有事のときだけでなくいつも提供しているということになりますと、日本は平時でも米ソ間は有事だというときに、日本はどんどんアメリカソ連の情報を提供し続けることになる。そうすると、これはやはり米ソ間の軍事対決に対して日本アメリカ側に軍事的にかかわる、ソ連に対して軍事的な敵対行動を行うということになるので、これは集団自衛権に当然踏み込むことになっていると思うのですが、そういう日米共同演習の激化と集団自衛権問題との関係ですね、この問題を福山参考人にはお伺いしたいと思います。
  24. 藤井治夫

    参考人藤井治夫君) いろいろ御心配をいただいたようでありますが、私の考えを申し上げておきます。  実は、先ほども申し上げたとおり、防衛計画大綱の中に含まれている考え方の中で私が一定の評価をすることができると申しました。しかし、それは憲法に基づく平和主義残りかす、残影なのか、あるいはまたこれから新しい時代を先取りしていく芽生えなのか、見方はいろいろであろう、こういう趣旨のことをそのときに申し上げたはずであります。どうも残念ながらこの残影のようなものでだんだん消えていくのじゃないか、こういう感じが最近の動きの中ではするわけであります。大綱時代おくれ論というのは、むしろそうではなく、その時代おくれ論そのものが時代おくれである。  なぜそういうふうに申し上げるかといいますと、この基盤的防衛力構想、その前の平和時防衛力というような考え方を打ち出した方々というのは大変な苦労をされていた。私はよくお話ししましてそのことはよくわかっております。やはり何とか無制限の拡大に歯どめをかけなきゃならない、そういうような悲壮は危機感のようなものでこういう作業をされていたわけでありまして、まさに刀折れ矢尽きて退陣ということに今なりつつあるのじゃないかと思うのです。そういう努力に対して一定の評価をするというのは私は当然だと思います。また、そのような努力がやはり一つの平和なり軍縮なりの方向で役割を果たすものであるということを考えませんで、何か少し変わったことを言うとあいつはけしからぬ、こういうふうな発想では平和は守れないように思います。  それから、自衛隊そのものは憲法に照らしてどうなのかという問題につきましては、これはもう明白であります。自衛隊というのは危険かつ違憲である、これが私の考え方でございます。  以上です。
  25. 福山秀夫

    参考人福山秀夫君) 私の方への御質問では、集団的な安全保障体制ということの問題が具体的にずっと進行しているのではないかということであったと思いますが、お話のございましたリムパック演習につきましても、上陸演習のその援護というようなこととともに、私の記憶では機動部隊の輪形陣の一角に日本の護衛艦が加わる。真ん中にアメリカの航空母艦を置きまして、その周りをぐるりと取り囲んで日米の部隊が、護衛艦などが護衛して航行をする、そういう演習もあったというふうに読んだ記憶がございますが、こうした事態というのは明らかに集団的な防衛体制ということであり、リムパック演習一つをとりましても、現在既にカナダだとかあるいはオーストラリア、ニュージーランドはさらに小さいわけですけれども、そうしたカナダやオーストラリアの海軍力に比べましても二倍を超えるようなそうした隻数を持つ、今やもっと上回っていると思いますが、日本海上自衛隊の力というのはウエートが大きくなってくる。  リムパックの演習につきましては、まさに主役はアメリカ日本というふうになってくる。一つの艦隊に等しい兵力が日本からも参加するようになってきているということ自体が今どういう方向、どういう傾向に進んでいるか、どういう傾向をたどっているかということを示すものだと存じますし、冒頭に申しました日米統合軍化ということと深くつながる問題で、集団安全保障体制ということによりまして、日本有事以外の極東有事、アジア有事、あるいは中東、インド洋の問題にまで日本が参加していくことを求める、そういうプレッシャーがかかり、そういう体制を強める方向に進んでいるということがまさに憂慮される事態かと存じます。  そして、シーレーン防衛につきましても、四海峡封鎖を含みますが、これは明らかに一緒になって行動する、米ソの有事で自動的に日本までもそれに巻き込んでいくという体制がまさに今つくられつつある。これは竹岡元防衛庁官房長が、四海峡封鎖といったらこれはもう戦争ですよ、たしか横須賀、佐世保は第二の広島や長崎になることだ、そういう警告を発したことがあったように記憶しておりますが、まさに米ソ間の戦い、世界の緊張、戦争の開始というのが即日本にも波及し巻き込まれる、そういう危険な方向を今進みつつあるというところかと思います。  以上でございます。
  26. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 民社党の関です。きょうは本当に御苦労さまでございました。  まず、藤井さんに三点お伺いいたします。  冒頭に、GNPの一%以内に抑えるために現状を凍結すべきだということをおっしゃいましたけれども、もし現状凍結した場合であれば、自衛隊を承認されるのか、その予算を承認されるのか、あるいはやはり非武装中立の立場から凍結した場合においてもなお反対されるのか、その点が第一点。  第二点は、民衆防衛ということを言われましたけれども、これは例えば侵略があった場合にゼネストをやるとか、あるいは手りゅう弾を投げるとか、あるいは竹やりを持つとか、そういうふうなことを意味しておられるのかどうか。  第三点、先ほども言われましたように、もし日本戦火が波及するのは、中近東あたりの米ソの対立が日本に波及してきた場合、私もそのとおりだと思います。しかし、単独に日本侵略されることはまず考えられない。しかし、それは日米安保条約があるからそういうことは考えられないのであって、もし安保条約がなければソ連が例えば北海道を占領するというようなことはあり得るのじゃないかと私は思いますけれども、その点いかがに考えられるかということ、それが第三点。  それから福山参考人に対しましては、自衛隊憲法違反であるということを余りに強調すると、いろいろな世論調査日本人の多くが自衛隊を肯定していると思うのですけれども、そのことは、余り憲法違反だということを強調することは、それでは憲法を改正しなくちゃいけないじゃないか、そういう意見を高めてくることになるのではないかということを私は恐れるのです。憲法第九条を改正しなくてはいけないのじゃないか、それを私は恐れるのですけれども、その点をどういうふうに考えられるか。  それから第二点は、仮に日本が非武装中立あるいは武装中立であっても、米ソが戦うようになった場合に日本が果たして中立を維持できるかどうか。これだけ重要な戦略的な地位を占めている日本を米ソどちらかが早く占領しようというふうに考えるのは、これは当然ではないかと思うのですけれども、その点についていかがお考えか、その二点を福山参考人に。
  27. 藤井治夫

    参考人藤井治夫君) 自衛隊が違憲であるか否かというのは、これは憲法第九条の規定とそして自衛隊の現実によって決まるわけでありまして、このことは一九五四年自衛隊のできましたとき、それ以来もうはっきりしているわけであります。戦力を持たないと書いてある、陸海軍は持たない、だが、自衛隊は事実上実質的な陸海空軍そのものであり戦力である。ですから、防衛費が一%凍結されたからといってその問題にかかわりが出てくるわけではございません。もちろん、これを最終的に判断するのは裁判所でありますから、裁判所がどう御判断なさるかはともかく、やはり既に三十年来自衛隊は違憲である、私はこう考えております。しかし、その自衛隊はどうだといいますと、現実にこれは存在するわけであります。だから存在そのものを目をつぶって見なくて済むわけではございませんので、そういう意味ではそこに存在しているということは認めて対応しなければならない、かように考えております。  それから、第二の民衆防衛、民衆自衛のやり方でありますが、手段はこれは民衆自身が判断して時と所に応じてやるわけであります。だがしかし、やはり大事なのは有事を招かないということでありますから、その努力を最後までまさに背水の陣でやっていくということでありまして、そしてその次に、いやそれにもかかわらず何か侵略事態が起きる、こういうときにはそのときにみんなが考えてゼネストでいくか、あるいは不服従でいくか、いろいろな方法はあろうかと思いますが、そういう手段を選択する。平和的、非平和的手段、これは主権者である民衆の選択による、こういうふうに思います。ただ、どれをとってはならないということはないだろうと私は思うわけです。  第三点は、安保があるからソ連が攻めてこないのであって、なくなれば日本だけが侵略されることもあり得るのじゃないか、これはもう先ほどからいろいろ申し上げていることに帰着するわけですが、私は安保がなくなれば攻められるというふうには考えておりません。そういうことは今日国際社会においては極めて困難になっており、かつ、日ソ間にはそのような紛争要因、いわば相手侵略の大義名分になるようなことはない。また、ソ連自体もこのような全く関係のない国に対しましてだしぬけに攻め込んでいくというふうなことはやらない、またしていない。そこから見ましても安保がないから攻められるということはあり得ないと思います。むしろ安保があるから攻められるというふうに考えるべきじゃないかと思っています。
  28. 福山秀夫

    参考人福山秀夫君) それでは、私への御質問二問につきましては、一つは、自衛隊憲法違反ということを強調すると、世論調査で現在自衛隊肯定の意見がかなり多い、その人たちが改憲をすべきだという世論を高めるおそれはないか、どう考えるかという点でございますけれども、先ほども申しましたが、自衛隊肯定ということの内容を見ますと、災害出動だとか民生のための作業だとか、そういうものを支持するというウエートが非常に大きいわけでございますし、それから別な調査によりましても、日本が米ソの戦争に巻き込まれる危険というのを恐れる率というのは非常に高い。また、安保条約があるために巻き込まれていくおそれというのを感じる、安保があってもアメリカが守ってくれないというのが、たしかあれは朝日新聞の去年の六月ごろの調査では五七%ぐらい、安保があるからアメリカ日本を守ってくれるというのが二九%ぐらいだったと記憶いたしておりますけれども、そういう世論の中で自衛隊憲法違反だということを強調することが、即改憲、憲法改正しまして大いにどんどん自衛隊を認知して増強すべきだという意見にはならないと私は考えるものでございます。  それから、二問目の米ソ戦うときに日本の重要な位置からいって中立を維持できるかという点につきましては、これは現在までのところでは幸いにも米ソが戦わなかったということもあるといえばそれまでかと思いますけれども、中立を保障する条約というのを米ソが結んでいる。これはオーストリアについてそうでございますし、それから中南米についてはこれは非核地帯とするという条約があるわけで、それを米ソともに確認している、認めている、そういう条約的な保障ということ。  また、国際世論を高めていくというようなことで私どもとしては米ソ戦うことがないようにしていくという点からいっても、これは中立地帯を間につくっていくということも、一つのそういう直接対決を防いでいくための非常に重要な方法であるというふうに考えるものでございますし、大きな流れから言うならば、非同盟中立ということで動く国が国連加盟国の四分の三に近い。そういうところまでふえてきておるという流れの中で、日本がそちらの陣営に加わって、陣営といっても軍事同盟ではない。軍事同盟に加わらないという流れを強めていくということによりまして世界の国際政治の流れを大きくさらに中立の方向、米ソが戦わない非同盟、軍事同盟をなくしていくという方向に一歩大きく前進させることができるのじゃないか、それが本当の安全保障方向ではないかというふうに思うものでございます。
  29. 秦豊

    ○秦豊君 案です。  お二人に一問ずつ伺いたいと思いますけれども、質問の前に、私の自己認識はシビリアンコントロールの最高機関が我々国会に存するということは自明のことなのですけれども、今言われているシビリアンコントロールの実態というのは果たして十全かと絶えず私はそういう視点をおのれに対しても向けているわけであります。  結論から言うと、日本の国会が本当にシビリアンコントロール機能を果たすという場合には、今ちょうどイギリスの議会が到達している水準、あり方、例えばNATO正面に幾ら、海峡防衛に幾ら、そしてグレートブリテンの防衛に幾ら、つまり国防予算の配分とシェアについても実に的確で緻密な論議を積み上げた末に議会がこれを軍にオーダーをする、こういう実績を多年持ってきているわけであって、その状態を日本に望もうとしてもなかなか望めない現状であることはわかり切った上で私はお二人に伺いたいのは、このシビリアンコントロールの機能が、つまり内局と制服とのバランス、力関係、最近内局が際立って押されぎみであるけれども、そうして自衛隊総体と国会との関係などを含めて、一体シビリアンコントロールというのは藤井さんと福山さん、つまりお二人の軍事専門家の視点から見た場合に、シビリアンコントロール日本における現状は果たして満足し得るものなのか、あるいはかなり重要な部分を欠落しているのではないかという疑いがおありなのかどうか、その点だけをお二人に一つずつ伺いたいと思います。
  30. 藤井治夫

    参考人藤井治夫君) 私は、やはりシビリアンコントロールそのものをどう理解するかという問題もございますし、今おっしゃるように国会がその最高機関であり、ひいてはまた主権者国民がシビリアンコントロールの主体でなきゃならぬと思いますが、そういう点からいたしますと、現状というのは非常に憂うべきものであると思います。  私は、防衛庁内部のこともございますが、やはり国民意識を見ておりまして非常な危機感を覚えるわけです。つまり、これは管理教育、管理社会というようなこととつながってくるのかもしれませんが、安全保障あるいはまた戦争と平和というふうな問題について主体的に考える人が非常に少なくなってきている。いわゆる戦争を知らない世代の人たちがふえていきまして、また再び過ちを繰り返すようなそういう嫌な兆候が広がってきていると感じます。いろいろ具体的には申しませんが、したがいましてそこからそれが必ず国権の最高機関である国会にも投映されてくる。余りはっきり申し上げてもどうかと思いますが、安全保障は票にならないというふうなこともございますので真剣に取り組まなくなっていくというふうなことになりますと、これはとんでもない結果が生じる。  それからさらに、それを行政機関としてやっております防衛庁内部におきましても、おっしゃるようにユニホームの発言力が非常に強まってきている。そうしてまさに基盤的防衛力構想を推進した人たちは本当に刀折れ矢尽きて引っ込んだというふうなことであります。やはり私はそういう点からいたしますと、まず何よりも実態をよくつかんでいただくということが必要であり、率直に申しまして国会に提出されてきている予算委員会提出資料等によって防衛の実態をつかむことができないわけです。それでいろいろ掘り起こして、十年、二十年前のデータで論議をするというふうなことになるわけです。それではやはり自衛隊を指導するといいますか、管理するということは不可能と思うのです。だから、まず国会は国政調査権によって実態をつかんでいただいて、そういう情報に基づいて国民が考えられるようにしていただくということをしていただかないと、シビリアンコントロールはまさに今危機に立っていると、かように思います。
  31. 福山秀夫

    参考人福山秀夫君) 私が思い出すのは、一九六二年十月の二十一、二日ごろでしたか、キューバ危機のときに、あれは防衛庁長官も首相も知らない間に日本航空自衛隊が高いレベルの戦闘配備に米軍と一緒についていて、長官が知らされたのは二時間後、首相が知らされたのは四時間後という話が伝わったことを思い出したわけでございます。また最近のところでは、十一月二十一日提出された日米共同作戦計画につきまして、各党に広く知らせ論議するというものではないということを首相が言明されたということを新聞で読んだ記憶がございますが、こういうことになってまいりますと、民族の死活にかかわる防衛の問題、安全保障の問題というのがごく限られたところで決められていく。まさにシビリアンコントロールの精神とは反する方向にどんどん進んでいくというおそれが非常に濃くなってきている。しかも一方では、軍事機密保護法を制定しろというような声も出てまいっておる。  現行法によりましても、秘密を漏らした役人は処罰されるわけでありますし、不法なことをやった外国人というのは国外に退去命令できるわけでありますけれども、それでは足りないということで軍事機密保護法がここで非常に強調されているというような事態も、シビリアンコントロールというものが脅かされているという事態と符節を合わせているというふうに思いますし、現在の状況が、お言葉を使うならば、重要部分が欠落しているという点もあると思いますし、今後そういう点でシビリアンコントロール自体自衛隊の存在を認めた上での考え方ということもあるかとは思いますが、非常に危険な方向がこの中にははらまれている。今、日本の本当の安全保障ということについて私どもが深く考えをいたさなければならない、そういう時点だというふうに存じます。
  32. 安孫子藤吉

    ○小委員長安孫子藤吉君) 以上で質疑は終わりました。  両参考人にお礼のごあいさつを申し上げます。  本日は大変お忙しい中を本小委員会に御出席をお願いをいたし、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。  ただいまお述べいただきました御意見等につきましては、今後の本小委員会調査参考にいたしたいと存じます。小委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  午前の審議はこの程度にとどめまして、午後一時再開することにいたし、休憩いたします。    午後零時九分休憩      ─────・─────    午後一時四分開会
  33. 安孫子藤吉

    ○小委員長安孫子藤吉君) ただいまから外交総合安全保障に関する調査特別委員会安全保障問題小委員会を再開いたします。  安全保障問題に関する調査のうち、自衛隊現状問題点に関する件を議題とし、自衛隊現状問題点について参考人から意見を聴取いたします。  元統合幕僚会議議長竹田五郎君、元陸上幕僚長鈴木敏通君、前海上幕僚長前田優君、日本電気株式会社衛星通信システム本部担当部長松尾雅史君、以上四名の方から意見を聴取いたします。  この際、参考人方々一言あいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本小委員会に御出席をいただきましてまことにありがとうございます。本日は、自衛隊現状問題点につきまして忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査参考にいたしたいと存じます。  これより参考人方々に御意見をお述べ願うのでございますが、議事の進め方といたしまして、まず最初に参考人方々から御意見をお述べいただき、その後、小委員の質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  それでは、まず竹田参考人にお願いいたします。
  34. 竹田五郎

    参考人(竹田五郎君) 竹田でございます。  私は国を守るためには次の四つのこと、これは軍事的に見ましても必要だと考えております。  その一つは、必要最小限の防衛力を持つことであります。二番目は、国としての自衛の体制を整えておくこと。三番目は、国民の強い防衛意欲。そして四番目は、信頼性のおける日米安保体制。この四つはどれ一つを欠いても日本の国は守れないと思っております。  本日は、この四つの項目について自衛隊という立場から、そして重点をこの必要最小限の防衛力というところに置き、かつ私は空の立場から空の抱えております問題点ということでお話をしてみたいと思います。  まず、必要最小限の防衛力でありますが、現在防衛庁は五十六年度中期業務見積もりを基準にして防衛力整備をしておることは御存じのとおりでございます。これは昭和五十八年から六十二年の五カ年間にわたる防衛力整備計画と言ってもよろしいかと思います。ところが、この五六中業は御存じのように、防衛計画の大綱は達成できないという見積もり計画であるわけです。一方、防衛計画大綱というのは、政府が従来言っておりますように、我が国を守るための必要最小限の防衛力であるわけです。その当否は別として、少なくとも必要最小限の防衛力と認めておるものがこの五十六年度中期業務見積もりでは完成しないということになっております。しかも、この五十六年度中期業務見積もりのことしは第三年度でございますけれども、当然三年目であればその六〇%が完成しておくべきものが、実態は四〇%達成できるかどうかという程度のものだというふうに聞いております。  こういうふうに見てみますと、昭和六十二年になりましてもこの五十六年度中期業務見積もりは達成できない可能性が強い。現在、五十九年度中期業務見積もりの検討を始めるというふうに聞いておりますので、それによってどう修正されるかは知りません。いずれにせよ、五六中業が達成されても昭和六十二年以降になり、しかも必要最小限の防衛力は持ち得ないというのが現状であります。  航空自衛隊の主兵器であります航空機、さらにはバッジ、新しいパトリオットという対空誘導弾、これらは予算がついて大体四年ないし五年後において出現してくるわけであります。しかも、それらの兵器を使って隊員の訓練をし、部隊を錬成訓練しますとさらに一年ないし二年はかかる。予算がついて六年ないし七年後になってやっと、戦力化という言葉は語弊があると思いますが、とにかく役に立つということになるわけでありますから、六十七年ごろにならないとこの五六中業の効果はあらわれない。しかもそれはおくれつつある。そしてそれができ上がっても計画大綱は満足し得ないということでありますと、要約しますと、今から十年間日本は必要最小限の防衛力すら持ち得ない。平和にかけをしながらいくのだということになるわけであります。航空自衛隊は、今防衛計画大綱別表で決められました作戦機、これは四百三十機と決められております。五六中業が達成されてもその数は四百機にとどまっておるというふうに承知をしております。いずれにしましても向こう十年間、日本は平和にかけをしていくことはこれは確実な事実であります。こういうことでは、自衛隊としても任務達成に支障があると言ってもよろしいかと思います。  さて、この五六中業でございますが、総体的に必要最小限の防衛力そのもの、これは、計画大綱はご存じのように主要な部隊と主要な装備品の数を決めておるわけであります。ただいままではこの数についての不足を申し上げました。実は、この内容についても問題があるわけであります。  その一つは、近代化のスピードを上げるべきだということであります。例えば最近の極東ソ連軍の特徴を申しますと、空の立場から言いますと、極東ソ連空軍機の数は二千二百ぐらいでそうふえてはおりません。しかし、内容的に中身が変わった。航空機そのものが近代化されてきて、しかもその近代化のスピードは速いというのが実態でございます。バックファイア等既に八十機は配備されておりますし、主力の戦闘機というのはミグ23、スホーイ24といったような戦闘機が約七〇%を占めるというようになってきております。従来のミグ21という戦闘機でありますと、せいぜい北海道と東北の一部くらいを攻撃できる範囲のものでしたけれども、今日のこのミグ23とかスホーイ24という戦闘機日本全土を攻撃できる。しかも、スホーイ24という戦闘機は爆弾は三トンぐらいは積むと思います。  三トンという数字は大変な数字でありまして、第二次大戦の末期、九七重あるいは一式陸攻、これが陸海軍が誇っておりました重爆撃機でありますけれども、その重爆撃機ですらせいぜい一トンぐらいしか積まなかったのですから、その三機分の爆弾を積んで日本全国を攻撃できるという能力を持つものが主力になってきた。しかも最近のソ連の空軍は、従来が守りの型の防空を主にした体質でありましたけれども、今日のソ連空軍は攻撃型の空軍に変貌しております。こういうような近代化のスピードの速さを見ますと、これに対応して航空自衛隊も数だけそろえるのでは対応できないと思うのです。もちろん数も少ないのですけれども、その近代化のスピードを上げるということが必要だと思います。これからの事態に備えて、現在航空自衛隊の備えておりますF4ファントムあるいはF1という支援戦闘機、こういう機種も当然これを強力化するとか、あるいは機種改変の手をつけるというようなことは急ぐべきだと思います。  さらに、これらの優秀な進んだ武器を使いこなすというためには、隊員の質というものを上げる必要があります。航空自衛隊は少数精鋭主義ということできておりますので、武器も近代化されたものになれば、隊員の質もいいものを集めなければなかなかこれからの進んだ兵器に対応できないというおそれもございます。この隊員の質の向上ということは空だけに限らず海も陸も同様だと思いますが、現在、隊員を獲得するということのためにはそれぞれ苦労をしております。したがいまして、この自衛隊員の処遇改善というようなことも、これは第一線兵備と並行して手を打っておく必要があると思います。  既にご存じと思いますが、例えば官舎をとりましても、ある基地のそばの官舎は余りにも古くて、こういう建物がこの地域にあることは美観を害するから、撤去してほしいというような地元の要望が出ておるというような官舎にすら、現在幹部が住んでおるというようなこともあるわけでございます。当然、隊員の営内の生活につきましても、一段ベッドにしたいのですけれども、いまだに二段ベッドがあるというような状況でございます。もちろん、隊員の処遇ということ以前に、処遇は悪くとも自衛隊の地位を上げる、その名誉を重んずるということが優先すべきだと思いますが、それは後に御説明したいと思います。  次に、この近代化を進めていきますときには、人員の不足というのが当然付随してまいります。現在の航空自衛隊の充足率というのは約九六%ぐらいだと思います。全隊員四万六千ぐらいの編成の定員に対して実員は四万四千ぐらいだったと思いましたが、九六ぐらいの充足率を持っております。ところが、近代化を進めていきますと、例えばE2C、これは低空の目標を発見する早期警戒機であります。E2Cとか、あるいは航空自衛隊は現在基地防衛のために対空部隊というものを新しくつくり上げようと努力しております。当然こういうものはもっと早くやるべきだったのですが、やっとこういうものに手をつけてきたわけであります。こういう新しい部隊をつくりますと当然人間が要るわけでありますけれども、現実はこれが定員化されないために、現在の四万四千の枠の中からこの新しい部隊の要員を引き抜いてこれに充当をしておるということでございます。そのしわ寄せは当然第一線部隊に及んでまいります。実質的に航空自衛隊の充足率は私は九一%か九二いつているかどうかぐらいじゃないかと思いますが、いずれにせよ第一線に人員不足、新編部隊のための要員を第一線部隊から抜くがゆえに、そのしわ寄せが第一線部隊に来ておるというのが実態でございます。  ところが、航空自衛隊は、御存じのように航空部隊は領空侵犯に対処するために、各基地五分待機とかあるいは一時間待機とか厳しい警戒態勢をとっております。ナイキの部隊もレーダー部隊も同じであります。この点、常に実任務というものを課せられておりますために、そのための人員というものはこれは張りつけをせざるを得ないわけであります。こういう任務を遂行しながら少ない人数で訓練や勤務をやっていくということは、それだけのしわ寄せが現地の部隊に行っておるのであります。去年一年間スクランブルした飛行機の数は、先般も防衛庁が発表しておりましたけれども、千八百八十機、一年間に延べ千八百八十機がスクランブルするわけであります。このスクランブルの回数は数年間ぐっとふえてきておりまして、十年前に比べますと三倍ぐらいになっております。それだけ第一線部隊の日々の苦労がふえておるということであります。そして、新編部隊のために人員を引き抜かれる、かつ訓練、勤務を続行するということで、十年前に比べますと大変なしわ寄せを第一線部隊は負いながら激しい訓練を続けておるということになります。  この五六中業の抱えております次の問題は、正面と後方のバランスをとるということであります。どうしても必要最小限の防衛力として主要な部隊と装備品の数が決められておりますので、少ない予算となりますと、ついつい正面に手当てすることに優先度が向いていきます。したがって、後方支援というのがややもすると、おろそかとは申しませんけれども、重点が向かなくなるということで、これまたここにしわ寄せが出ます。  航空自衛隊としての大きな問題を一、二挙げてみたいと思いますが、まず第一は抗堪性であります。この抗堪性というのは一般で使わない言葉ですけれども、敵の攻撃に対して息長く粘り強く戦いを続けていけるような機能を持つということでございます。例えて申しますと掩体がそうであります。鉄筋コンクリート製の小型格納庫と申しますか、シェルターと申しますか、こういうものが非常に少ない。端的な例だと思います。最近のどこの国の空軍を見ましても、掩体のない空軍というのはまずないのじゃないかと思うのです。数年前に、日本におります駐在武官を千歳の基地に連れていきました。彼が基地を視察した後で所見をと求めますと、日本は専守防衛政策をとっておる、相手が攻めてきて初めて立ち上がるという体制である、目の前にはたくさんの飛行場や飛行機があるじゃないか、それにこの千歳の基地に掩体が一つもないということは私は不思議ですと。航空自衛隊は近代空軍だけれども、現在掩体のない最後の空軍が航空自衛隊ですねと皮肉を言われたことがございます。  また、滑走路の修理能力、これらについても同様でありまして、現在航空自衛隊の持っておりますF15というのは、これは世界に冠たる戦闘機と言ってよろしいでしょう。しかし、いかに空中戦で勝っても、いざおりようとしたときに滑走路に穴があいておったというのでは全員落下傘降下ということになるわけであります。こういうふうな点について手を入れるべきだと思いますが、なかなかそこまでの財政的余裕がない。特に掩体の場合につきましては、掩体をつくる土地がないということも重要な問題点と言ってよろしいかと思います。  いま一つ、対空火器というものはこういう基地を守るためには非常に有効な武器でありますけれども、現在航空自衛隊の装備しております対空火器は陸上自衛隊が長年使ってきて性能も悪いし、整備も大変で部品もない、廃棄処分にしようというのを譲り受けてきて装備しておる程度のものでございますから、平素の訓練には役に立ちますけれども、これが果たして有事にたえ得るものかどうか非常に疑問に思います。現在航空自衛隊、五六中業でもこれらを何とか整備するように予算等をつけていただいて努力いたしておりますが、五六中業が完成しても、理想と申しますか、我々が考えております最小限必要だと思うものの半分もできないのではないかというのが今日の姿だと言ってよろしいかと思います。  次は、弾薬であります。  これはもう言い尽くされておりますけれども、航空自衛隊の弾薬は極めて少ない。ただ、航空自衛隊の弾薬、特にミサイルというのは大変高価でありまして、現在主として使っております9Lあるいはスパローといったようなものは大変な金額であります。たしか9Lが三千万ぐらいするのじゃないでしょうか。スパローであると六千万から七千万ぐらいするでしょう。しかも、こういうものもまた航空機と同じように日進月歩でありますので、これらのものを平時所要を全部そろえるとなりますと、それが十年後には非常に時代おくれになるというような悩みもあります。そういうことも考えて、一挙に必要なだけそろえるということは必ずしも効率的でないかもしれませんけれども、かといって、これを余りにも財政的な効率性だけから話を進めていきますと、いざというときに所要がないということになります。したがって、国としてはこういうものには多少不効率といいますか、ロスはある、保険であるというような考え方を抱かないと必要最小限の弾薬は備え得ないのではないかというふうに思います。  次は、現在問題になっておりますC3Iであります。  この中で特に戦略情報、例えばシベリアの奥地における情報はどうなっておるかといったような情報を自衛隊自身でとるというふうな処置は、専守防衛であればあるだけに持っておく必要があろうかと思います。当然これを知るためには偵察衛星という話になりますけれども、今、国会では、軍事面に使わないということでこの衛星利用が大変問題になっております。しかし、専守防衛であり日本を守るというのであれば、これは私は必要だと思います。  次は、保全措置でございます。  現在各幕僚長以下主要幹部と米軍と話をしようとしますと、秘話装置というのがこれはついておりません。すべて一般の電話を使っておるわけであります。今後情勢が厳しくなってくるようなときにいろいろな秘密の話等を行うことがあると思います。現在の電話機は一般電話と同じでありますので、保全の意味からもこういうところには手を打っておく必要があろうかと思います。これは例えば日米共同訓練をやる場合においても、やはり秘話装置がないとスムーズに進み得ない点が出てくるのではないかと心配をしております。  次は、訓練でございます。  航空自衛隊の訓練の中心になるのはやはりパイロットの飛行能力であります。また、この飛行能力を上げるためには常時訓練をしておく必要があります。また、ナイキやバッジ等の練度を上げるためにも、飛行機を飛ばさないとこれらの訓練は完璧を期し得ないわけであります。ところが、現在のパイロットの飛行時間というのは多分百四十三時間強ぐらいではないかと思います。百四十四いっていないと思いますけれども、諸外国のアメリカあるいはヨーロッパ等の国々では二百四十時間ぐらい飛んでいるわけであります。百四十時間というとこれは余りにも少な過ぎると思います。  では、百四十時間を飛ばすのには燃料だけふやせばいいかというと、そうではありません。もちろん燃料も要りますけれども、先ほど申し上げましたように、実任務を遂行しながら訓練をするということになりますと、飛行機の機数もふやさなければいけないし、一機飛ばせば飛ばしただけ部品は要る、修理はするということになりますので、維持費等も手当てをしなければいけないという問題はありますけれども、とにかく飛行時間は少な過ぎると言ってよろしいと思います。  次は、防衛計画の大綱日本の国を守る必要最小限の防衛力ということでございます。  この大綱作成当時の航空自衛隊は、シーレーン防衛ということについてはそれほど関心を持っていなかったというふうに私は思います。したがって、シーレーン防衛ということが任務として課せられるならば、ここにそれに応じただけの飛行機の増、さらには空中給油、早期警戒機と申しますか、空中から警戒管制する航空機といったようなものについても必要でありまして、今のままではシーレーンを空から守るだけの力は航空自衛隊にはないと言ってもいいと思います。  次は、国としての自衛体制の確立であります。  現在のままでは、自衛隊もまた日本を来援しに来た米軍もその機能を十分発揮できるような体制にはなっておりませんし、また、有事に国民の生活と生命を守るということは、自衛隊は直接侵略対処するので手いっぱいでございますから、これらは国民自身において自分の生活、生命を守るといういわゆる民間防衛というシステムをとるべきだと思うのですけれども、これらの国としての自衛体制を確立するためには、日本は法治国でございますから法の制定が前提となります。現在の体制ではそれはまず難しいだろうと思うのです。したがって、既に御審議等いただいております有事法制、さらには自衛隊法の改正が必要だと思います。  特に自衛隊法の改正において一つだけ申し上げたいのは、自衛隊に領域保全、領土、領海、領空を守るという任務を平時から与えると同時に、その任務が達成できるような権限を与えておくということが必要であると思います。かつて栗栖元統幕議長が提言したこともこのことを言ったと言ってよろしいと思います。  次は、国民防衛意欲でございます。  言うまでもなく、国民防衛意欲は必要でございますが、この意欲が高まるということは、現在の自衛隊の能力が倍加するということになると思うのです。自衛隊について実は私もそのときの責任のある者でございますけれども、徴兵制をとらない理由として、憲法十三条、十八条に抵触するから徴兵はやらないという政府の見解が示されました。私も徴兵には現在行うことは反対でございますけれども、だからといって、これが憲法に抵触する、しかもそれは公共の福祉の場合であるとか、あるいは苦役であり奴隷的待遇であるから、だから徴兵はいけないというような理論づけというのは、これは国民防衛意欲に少なくとも水を差すものであり、自衛隊の士気に影響すると言ってよろしいかと思います。どこの国の、どこの国と申しますか、ほとんどの国の憲法では、国を守るということは国民の崇高なる義務であるというふうに言っておるわけでありまして、徴兵をしないというのは憲法違反ではなくて政策の問題ではないかと私は思います。  忘れましたけれども、この法制の問題で統幕議長の権限について、統幕議長は少なくとも行動運用に関しては長官の指示を受けて部隊を指導し、監督し、査察するというような権限を持たせないと、現在のままでは、これは権限なき会長とよく皮肉を言われますけれども、まさにそういうもので権限が与えられていない。さらに強力なものをつけるべきだと思います。  次は、日米安保体制についてでございます。  一つだけ。日米共同作戦計画の案というものが十二月サインをされました。統幕議長と在日米軍司令官で行いましたけれども、この日米共同作戦計画は今のままの法体制、今のままの防衛力では絵にかいたもちにしかすぎないだろうという懸念を持っております。ガイドライン、防衛協力指針の前提条件として、この研究は国の予算あるいは法律等の制定には制約を加えないのだという前提がありますけれども、これはいわば我が国に対してアメリカがげたを預けたことでありまして、この計画を実のあるものにするためには、これらの前提条件に示したものを少しずつでもよくしないと機能しない、単なる計画のための計画になるおそれが多分にある、それはひいてはアメリカの信頼を失うことになるというふうに私は心配しております。  以上で終わります。
  35. 安孫子藤吉

    ○小委員長安孫子藤吉君) ありがとうございました。  次に、鈴木参考人にお願いいたします。
  36. 鈴木敏通

    参考人鈴木敏通君) 陸上自衛隊現状問題点について申し上げます。  既に触れられました共通部分につきましては省略をさせていただきますが、陸上自衛隊問題点として、時間の制約もございますので要点を絞りまして、第一項が対上着陸戦闘と申しますか、陸上自衛隊防衛戦略といった問題を一つ申し上げたいと思います。その次は、戦車について時々議論が出るようでございますので、戦車がどういうふうに陸上自衛隊防衛力に寄与しておるかというような観点を第二番目に申し上げたいと思います。第三番目に、装備が老朽をしておるということにつきまして御説明したいと思います。四番目は、人員充足が低充足でございますのでその問題。それから継戦能力と通常申しておりますが、これはただいまも出ました弾薬、予備自衛官の問題。一番最後に情報の問題というような項目について申し上げてみたいと思います。  第一の陸上防衛戦略の観点でございますが、しばしば北海道侵攻があるのかないのかというようなことが話題になるわけでございますが、私は、前提があって、前提をよく考えた上であるのかないのかということを考えるべきであろうと思うわけであります。現在は、日米安保のもとに自衛隊がそれなりの国の防衛をやっておる、またそのほかの経済、国際情勢というようないろいろな観点から考えますと、今すぐ侵攻があるというようなことは公算が少ないというふうな言い方になろうかと思うわけであります。  私どもの防衛研究の場合に、これは米軍等もやっておることでございますが、対象性能といいますか、侵攻部隊の可能行動というものをまず第一に考えます。どういうことができるのかということが一つであります。その侵攻部隊が物理的にこういうことができる、それのそういう侵攻を行う公算はどうであるかというような二つの側面から防衛研究を実施しております。そこで、侵攻能力というようなことから考えますと、北海道に例をとりますと、稚内から樺太の間は四十数キロ、それから東の方、国後、択捉の方は十数キロというような極めて近い距離にあります。現在ソ連の方はホバークラフト等も数十杯持っておるというような情報もございますが、ホバークラフトは時速百キロぐらいで水上を跳びますので、大きな部隊が来るというには容量が少のうございますけれども、いわゆる数千人ぐらいの部隊の侵攻ということが物理的にはできるというふうに見なければならないと思うわけであります。  そこで、侵攻部隊の侵攻する態様でございますけれども、これは既に前の大戦において非常にたくさんのケースに見られますように、大きな輸送船から上陸用舟艇あるいは水陸両用戦車等に乗りかえをいたしまして、そうして砂浜等の海岸に達着するというのが前大戦に行われた侵攻の主たる様相でございますが、非常に距離が近い場合におきましてはシップ・ツー・シップ、今申し上げましたのはシップ・ツー・ショア、船から岸へという上陸の要領でございますが、もう一つはショア・ツー・ショア、岸から岸へと大きな船を使わないで侵攻が行われるというような事態もあり得るのだということを考えておくべきだろうというふうに思っておるわけであります。  そこで、国の防衛を考えます場合になるべく水際で撃破をいたしたい。国内が戦場になるということは大変国民も迷惑いたしますし、そういう防衛のやり方は望ましくない。水際でやりたい。あるいはできれば洋上において撃破をいたしたい。船に乗っておるときに撃破するのが一番効率的である、これはまさにそのとおりでございます。また、対空防御、ただいまもお話がございましたが、空が制空権がとられたというふうなことになりますと、これは地上部隊はなかなか動けない。これも前大戦においてたくさんの経験があるわけでございます。  空と水際あるいは洋上に対する陸上自衛隊の機能といたしましては、まず空の方でございますが、これはホークという対空ミサイルを持っておりますし、そのほかL90、あるいは機関砲、対空機関銃というふうな各種の対空火器を持っております。  それから洋上につきましては、現在開発中でございますが、SSMと称しておりますが、百五十キロ程度の射程を持つ対艦船ミサイルの開発を現在進めつつあります。それから既に相当開発ができましたけれども、二、三千メートルの有効射程距離がございます対艦船、対戦車両用の兼用のミサイルは既にできております。  そういうことで、望ましいのは制空権を、しっかり空が守られて、そうして水際で撃滅するということを望むわけであります。またいろいろな装備とか研究もこれをやらなければならないと思うわけでありますが、反面、そういう装備があるいは防衛体制ができるのかということからもこれはよく考えてみなければならぬ問題であろうと思うわけであります。  北海道の北の方の正面、オホーツク海、日本海の北の方に絞った正面だけでそういう上陸をしやすい海岸の長さが約二百キロはございます。さらにオホーツク海全正面あるいは北海道の西北の日本海に面した全正面を考えますと、四百キロくらいのそういう上陸適地と称する正面があるわけでございます。陸上自衛隊の地上防衛といたしまして現在十三個師団所有しておるということになっておりますけれども、大体一個師団の防御正面はいいところ二十キロであります。うんと広い正面を持ちまして四十キロまで広げますと、これは相当広い正面を防御するというようなことに相なります。したがいまして、簡単に算術計算をいたしましても、四百キロを四十キロで割りますと十個師団正面に張りつけないとその防御というものは大変難しいということになるわけでございます。  そこで、洋上撃破あるいは対空装備というものもある程度の装備は持っておりますけれども、普通科いわゆる歩兵の機能、それから特科、工兵の機能、そういうものが総合されましてバランスよく持っておりませんと地上戦闘というものは非常にかたわになってしまう、水際で撃破できるミサイルだけをたくさん持っておってもこれは陸上防衛としてはかたわになってしまうというふうに考えておるわけであります。  その次は、陸上自衛隊定員が十八万人でございますけれども、この十八万人という数が多いのか少ないかという問題が一つあろうかと思うわけであります。  御承知のとおり、昭和二十八年池田・ロバートソン会談においては米側の提案は三十二万五千というような数字を持ち出したのでございますけれども、いろいろ折衝の結果十八万人ということに落ちついておるのでございます。ちなみに、西ドイツの陸軍の兵力は三十三万五千人ぐらいの陸軍兵力でございます。これは西ドイツと日本では、海がある、向こうは陸地が続きであるというような違いもございます。  なお、日本全土の防衛というような観点から考えますと、終戦のときにこの本州におりました総陸軍部隊が二百四十万人というふうに言われております。私も終戦のときは四国の高知におりまして、歩兵の中隊長を短期間やっておりまして、あそこに防御陣地をつくっておりましたが、この二百四十万人の人員が本州におりましても、私の中隊が担任しておった正面は二キロも三キロもございまして、こんな手薄な配備で米軍が上がってきたならばとてもこれは自信がないなというのが実感でございました。したがいまして、現在の陸上自衛隊十八万人でいかにして濃密な防御をやるかということは大変難しい問題でございます。よく言われますように、攻撃は最良の防御なりということが言われますが、そういう意味日本は狭い、小さいというようなことをよく言いますけれども、陸上防衛、陸上の防御戦略というようなことから考えますと大変に広過ぎて手に負えないという感じでございます。  その次は、戦車の機動性につきましてお手元に資料を参考のためにちょっとつくってみたのでございますが、北海道の地図の入った資料でございます。よく戦車は要らないじゃないか、戦車は日本では使えないのではないかというようなお話が出るようでございますが、これは地積の関係を主として比較をしたわけでございます。  左上の方をごらんいただきますと、硫黄島というのがちょうど稚内付近ですが、まさにケシ粒ほどの地積になるわけであります。この硫黄島におきまして戦車が二百両使われております。沖縄の戦場がその次にございますが、これは戦車六百五十両。あとは外国のエルアラメイン等もあります。それからシシリー島の島の大きさ、真ん中のレイテ島につきましては道南の地区と比較をしておりますが、これくらいの地積におきまして戦車五百両が使用されておる。一番右上の方は朝鮮戦争終了時の対峙の状況を長さだけであらわしておりますが、朝鮮戦争勃発当時におきましては北鮮がT34というソ連製戦車を百五十両つぎ込みまして一挙に南下をしたわけであります。このときに米軍も対戦車火器を持っていなかったということで、もちろん韓国軍も対戦車装備がないというので一気に攻められまして、慌てて日本におりました米軍部隊からロケットランチャー等を取り寄せて何とか持ちこたえたというような先例があるわけでございます。  以上で戦車の関係を終わらせていただきます。  次は、第三項の装備の老朽状況と申しますか、更新状況につきまして参考資料をもう一枚準備いたしましたので、これについて御説明いたします。  一番上は戦車でございますが、一番上のスケールはパーセンテージであります。戦車は約一千両持っておりますが、そのうちの半分が74式戦車になっております。そのほかの半分が61式戦車であります。61式戦車と申しますのは一九六一年に制式化したということであります。74は一九七四年に制式化した。したがって74は今八五年でございますので十年たっておる。61におきましてはもう二十何年たっておる、非常に時代おくれになっておるということでございます。大体兵器の更新は十年ないし十五年というのが一般の趨勢になっております。  次は、装甲車でございますが、約五百五十両ぐらい持っておりますけれども、このうちの73式が新しくて60式という古いのが七割余りあります。  野戦砲につきましては、10HSPと書いてありますのは十サンチりゅう弾砲自走式、セルフプロペルドの略でございます。15HSPというのは十五サンチの口径のりゅう弾砲で自走式、これは新しいものでございますが、これが約三〇%。そのほかは牽引をいたします古い火砲をまだ七割余り持っておる。  次は、対空火器でございます。これはホークを除いておりますが、この対空火器のうち短射程の対空ミサイル、これは国産開発のものでございますが、これが約一割。そのほかは大変古い75SSというのはスカイスイーパー、これは高射砲であります。七サンチ半です。L90というのは、これはそれほど古くはないのですけれども、それでももう十年ぐらいたっておりまして、これはスイス製のものでございます。これは割合新しかったやつがだんだん古くなった。それからAWSP(M15)というのは、これはまさに第二次大戦末期に使われたものでございます。  対空火器のホークでございますが、これは非常に力を入れまして、先ほど制空権の問題がございましたが、力を入れて努力をしております。一番左の改良ホーク一三%、PIPというのはプロダクツ・インプルーブド・プログラムの略でありますが、これは改良のさらに改良というので非常に新しくなっております。その次が改良のホーク、それから基本ホークということで、このような比率であります。  対戦車火器でありますが、HMATは重MATあるいは重対戦車ミサイルと言っております。射程は四キロほどでございまして、赤外線の半自動対戦車ミサイルであります。これは新しゅうございます。これが一五%程度。そのほかは64式の有線を引っ張って飛んでいくもので大分古くなっております。  一番下の対戦車火器でありますが、これは八十九ミリのロケットランチャー無反動砲、普通科連隊が持っておる分につきましては、一番左の枠内の84RRと申しますのはカール・グスタフと俗称いたします対戦車火器でございまして、これは新しいものであります。それから百六ミリの無反動、それから八十九ミリのロケットランチャーというのは、先ほど申し上げた朝鮮戦争でT34に対抗した対戦車ロケットでございます。  以上で装備の老朽状況の御説明を終わりまして、次は人員充足の面を申し上げたいと思います。  人員充足につきましては、陸上自衛隊は御承知のとおり二万五千人の欠員がございます。これが大変問題でございまして、何とかひとつ九〇%程度にはできたらしていただけるとありがたいと、こういつも思っておるわけでございます。しかし、その低充足の中でも北海道即応ということは十分配慮をすべき問題でございますので、二師団、五師団、七師団等は八〇%から九〇%の人員充足に高めておるように努力をいたしております。そのはね返りといたしまして、北海道の十一師団とか、あるいは本州におります各師団は充足が七〇%ちょっとというふうに大変充足が落ちております。師団の充足が七〇%少しというようなことでありますと、その下におります連隊の充足は六七%、またその下におります中隊の充足は五八%というような非常に少ない充足になるわけでございます。この人員充足が少ないと訓練をやります場合にもいろいろと支障がございます。低充足下の訓練ということでいろいろ工夫をしてやっておりますけれども、なかなか十分なる訓練にならない面がございます。もう一つはやはり士気に影響をいたします。人員が編成からうんと少ないということは非常に隊員の士気にも影響する問題でございます。  第五番目の問題点といたしまして、継戦能力、弾薬、予備自衛官でございますが、弾薬につきましては、少なくも一カ月分ぐらいは持ちこたえられるぐらいの弾薬が欲しいと思うわけでございます。しかし、なかなかそこまでにもいかないというような状態でございまして、これは鋭意努力をしており、だんだんによくなりつつありますけれども、これも少ないということは問題点であるというふうに思うわけでございます。  予備自衛官でございますが、これは陸上自衛隊の場合、現在四万三千人ということになっております。編成定員、総定員十八万人でございますが、十八万人に対する予備自衛官四万三千人というのは諸外国の状態から考えましても大変に少ないと言わざるを得ないと思うわけでございます。  ちなみにスウェーデンは陸海空総現役人員が六万五千人、そのうちの陸軍が四万七千人でございますが、動員をかけますと七十二時間以内に八十万人に増加できるという状態になっております。装備は、この八十万人の有事の編成に応ずる装備をふだんからちゃんと準備をいたしまして、それは民間会社に委託管理をしておるというようなスウェーデンの状況でございます。そのほかの国におきましても、予備戦力が大体現役人員と同じぐらいあるいはそれ以上というような状態でございます。このあたりに問題点がございますし、一番最初に申し上げた陸上防衛で、十八万で日本防衛をやるということに非常に難しさがあると申し上げましたが、それを補うためにもこの予備自衛官の充実というのが非常に大事であろうと思うわけであります。  一番最後に、情報について申し上げたいと思います。  温故知新と申しますか、古きをたずねて新しきを知るというような意味におきまして、既に前大戦終了後四十年を経過いたしておりますけれども、前の太平洋戦争の教訓というのは非常にたくさん教訓がございます。その中で私が特に強く感じますのがやはり情報と兵たんの軽視であった。情報、兵たんをないがしろにしては非常に問題があるということをつくづく感ずるわけであります。兵たん問題は既に触れましたが、情報につきまして、これは先ほど竹田さんの方から衛星の問題も出ましたが、まさに私なんかも衛星があったらいいと思うわけでございます。情報につきましては、これも前の大戦の反省でございますが、アメリカ、イギリスを知らずして日本は戦争に突入をしたという反省をつくづくと私もそう思うわけでございます。アメリカ、イギリスを知らないで戦ったのでは、孫子のあれではございませんが、敵を知りおのれを知らば百戦危うからずというのはもう既に言い古された言葉でございますが、私は敵視というのはよくないと思います。国の自衛力はばっちりとひとつ備えを揺るがせにせずにおいて、平和外交にうんと力を入れるということは大変これは結構なことであると思います。そういう意味におきましてソ連の実情あたりがもっとしっかりわかるようにしなきゃならない、これが必ずしも十分わかっていない、細かいところまでわかっていないというような感じがするわけでございます。  ちなみに、これも私の経験でございますが、米軍がカービンライフルという小銃を持っておりまして、自衛隊発足のときにこれを譲り受けたのでございますが、あの小銃が自動装てん式になっておるということを、私は歩兵の中隊長をやっておりまして全然知りませんで、それで日本防衛の戦をやろうと思っておった自分自身を非常に反省をしておるわけであります。そういう意味におきましてソ連のことについて十分知らなければならないということをつくづく思います。また、友好ムードもこれは大いに進めて結構であろうと私は思うわけでございます。中国と国交回復前は私どもも中国の侵攻というような問題を非常に気にしておりました。最近はそんなムードは全然ございません。ソ連が中国と同じような転換を見せたならば、これは世界平和に大変に私はいいことではなかろうかというふうな気がいたすわけでございます。  以上、取りとめのないことを申し上げましたが、終わります。
  37. 安孫子藤吉

    ○小委員長安孫子藤吉君) ありがとうございました。  次に、前田参考人にお願いいたします。
  38. 前田優

    参考人(前田優君) まず、本題に入らせていただきます前に、現在の国際軍事情勢、それと海上防衛の基本戦略的なことについて私の考えております認識を申し述べまして、それを踏まえて海上自衛隊を中心としました現状問題点を申し上げたいと思います。  国際軍事情勢はもう先生方御承知のように、米ソ二大国を中核としました東西の軍事構造、これは見通し得る将来も含めまして私は変わらないと思う。  次に、米ソの核戦力でございますけれども、これを中核としましたそれぞれの戦力が大変最近均質化といいますか、同等化してまいりました。この同等化をしてまいりましたことを踏まえて在来ありました通常型の戦力、これの世界の平和と安定に大きく寄与する面が増大してきております。このバランスが大変世界の安定に影響するところが大きくなってきております。  三つ目は、一方このような状況の中で我が隣国でもありますソビエトのこの数年間特に軍事力の増強が目覚ましいということであります。我が周辺におきますその海軍力をとりましても増強は刮目すべきものがある。この結果、それぞれの国の繁栄と独立を海洋に大きく依存しております世界の中での自由陣営の諸国は大変これを気にしております。したがいまして、お互いに海洋の自由なる利用を図るために連携を密にし、共同して対処しようという機運が出てきております。これらの結果、私は、我が国としましては国内が安定し、しかも日米安保体制が健全に維持され、有効に機能しております限り、我が国だけを対象とした武力侵攻はまず起こり得ないと思っております。  次いで、これらの状況の結果、我が海上防衛戦略としましては、その基本を日米安保体制を基本としまして我に課せられた我が周辺の、そして国土防衛について機能的に欠落がなく、いかなる事態にも対応し得る防衛力を整備することがまず必要であろう。それはひいては極東そして西北太平洋の地域におきます軍事バランスに大きく寄与する、その寄与することが自由陣営への貢献に即つながる、このように考えております。  以上を踏まえまして自衛隊現状問題点について申し述べるわけでありますが、まず物と人と運用という面に分けて話させていただきたいと思います。  これは今両参考人からありましたように、いろいろな立場、表現は違え、問題としますところはほとんど同じかと思います。ただ、それぞれのコンポーネントの違いでその問題とする度合いとか質がかなり違ってくると私は思っております。  まず、物の面でございますが、装備でございます。  我が海上自衛隊の装備の特徴を一言で申しますと、通常の海軍国そして今までの海軍国というような概念で申し述べますその海上防衛力には、旧海軍が持っておりました連合艦隊のような機動打撃力を欠いております。一切これは持っておりません。したがいまして、以後申し述べます部隊運用等もこの日米安保体制を基準にして、そして私が申し上げました海上の基本戦略に基づいた観点からそれぞれの施策が行われておる、このように承知しますがゆえに、この機動打撃力を欠いておりますことは、本来国を防衛する海上防衛上からは防衛上に致命的な欠陥を招来する性格のものであります。  申し述べますと、その欠落を我が方は日米安保体制によって米軍に期待しております。したがいまして、御承知のように我が国周辺の防勢体制につきましては、防勢面は我が海上自衛隊が、攻勢面については、この打撃機動力についてはすべて米軍に依存しております。防衛力の整備もすべてそのようになってきておりますから、この面の機能は我が国としては欠いております。したがいまして、装備の面におきましても専守防衛の中で特に我が国周辺の防勢面についてのみ防衛力は整備されております。  この防衛力現状でございますが、今るる両参考人から申し述べられました。海上装備の特徴としまして、計画、実行、そして実現までにはおよそ十年近く艦艇等はかかります。しかも、近時の軍事科学技術の進歩は瞠目すべきスピードで進展しております。このようなことから、現在鋭意整備を進められております装備も、次に申します諸点において早急に改善の対策を講じていく必要があろうかと思います。  まず、その第一点は対潜能力であります。  御承知のように、潜水艦が大変性能がアップしました。それは原子力推進、静粛化、そして船体の機材の改善、ミサイル等の装備等、攻撃力、隠密力すべてにおいて大変な進歩をしてきております。幸い航空機は世界トップレベルのP3Cを装備していただいて、鋭意これによって対処すべくやっておりますが、艦艇の方はその性格上からも、性格といいますのは整備に大変より多く時間がかかります上からも、取り上げて言いますならば、パッシブソーナーを装備していく等、隠密性と攻撃性を備えてきました潜水艦対処する能力の点で早急に対策を講ずる必要があろうかと考えております。  次に、防空能力でございます。  これも先ほど竹田参考人からいろいろソ連の航空機についての話がありました。パックファイア一つ取り上げてみましても約一千海里の行動を実施するということが可能になりました。しかも、約二百海里遠方からいわゆるアウトレンジと称しますが、ミサイルを発射することが可能になっております。このように、我々が対象としなくてはならない海上防衛上の目標につきましては性能が大変進んできております。したがいまして、これに対処するためにも、より今ありましたE2C早期警戒機だとかレーダーサイトだとかこれらの探知能力、それから要撃戦闘機等の要撃能力、そして洋上におきます防空能力をぜひ改善していく必要があろうかと思っております。  三つ目は、C3Iということで話されましたが、特に海上戦がミサイル等の出現によって大変スピードアップされました。と同時に、その海域が非常に拡大するようになっております。しかも必要とする通信量等、指揮情報収集等も含めましてコンピューター化が進んでおります。非常に増大しまして、量がふえました。これらに対処するためにはどうしても衛星通信が必要でございます。早く確実に、しかも遠くまで届かせる、こういうふうなすべて指揮コントロール等の根源になります通信手段の面につきましては、早急に世界の情勢におくれないようにお願いいたしたい、このように考えております。  次は、先ほどは継戦ということでお話がありましたが、継戦能力と申しますか、その中に含まれます抗堪力について申し述べたいと思います。  この継戦力の点ではもう申し上げるまでもございませんが、物と人、これらの面で継戦といいますか、ある期間戦いを続けていきます能力が評価されようかと思います。いずれをとりましても問題はありますが、人の面は一応抜くといたしまして、物の面で申しますと、弾薬、主要装備の確保、そして施設の整備、これらが大変不足であり不備であります。特に弾薬の点を取り上げますと、弾薬そのものの不足もさることながら、これを収納すべき弾薬庫の不足が大変海上自衛隊にとっては問題でございます。これは一つは都市周辺の開発が目覚ましく進みました。ところが、弾薬の火薬類等の取り扱い規則から、ある距離に一軒民家が出ますともうその弾薬収納をやる弾庫は量が大変大きく制約されます。このような観点から、弾庫の能力が非常に少なくなり制約されてまいっております。  次に、艦艇の係留施設が現在御承知のように大変近代化され、泊まっておりましても電力も常に要りますし、コンピューター等を使っての訓練も要ります。このような面から係留という形がブイでは、陸上と離れた形では大変日常の管理にも不便を感じますが、現在係留施設が大きく不足いたしております。  次に、燃料関係の貯油所、貯油庫が不足いたしております。これらのすべての施設にいわゆる戦争を考えた防御面での対処がなされていないと言っても過言ではないと思います。脆弱そのものでございます。しかも燃料庫は普通には地下に入れたい、洞窟の中にそれを設けたいが、そのようなことは御承知のようにこの種類の取り扱い上、地下に入れることが許されておりません。一般商業用と同じく陸上のタンクでなくてはならぬわけであります。これらすべてを含みまして、大変継戦能力上、有事対処上被害の局限等も含めまして問題があろうかと考えております。  次に、人の問題でございます。これは足らないこととかいろいろな制約があることは今も両参考人から申し述べられましたが、私はこれを違った表現で申し述べてまいります。  幾ら装備を立派にしましても、そして立派な隊舎等に住まわせてやりましても、これに従事する隊員の質が悪ければ戦力たり得ません。防衛力たり得ません。御承知のとおりです。しかも優秀なる隊員を確保し、そして精強なる自衛隊にしますためにはこの人を抜いては考えられません。その際、隊員に精強たり得るための最も大きなものは私二つあろうかと思います。一つはやる気を起こさせること、一つは装備等も含めて教育訓練等が行き至ること。今このやる気を起こさせる面で考えてみますと、私は一般社会から、社会風潮から隔絶して自衛隊のみひとり精強たり得るなんて絶対にあり得ないと思っております。そういう面から考えますと、大変私は苦慮すべき事態に直面してきておると思っております。後でも申し述べますが、隊員の確保等についてもそうでありますが、まずここでは隊員のやる気を起こさせる面での問題でございます。  それは、やる気とはどういうところから私は出てくるかと思いますと、自分たちが国のために役に立ち、一般国民に大変信頼され期待されているのだということを実感としてとらえ得ることであります。それは、災害派遣で行った隊員が二日も三日もほとんど飲まず食わずでやっておる、そのようなときにも、帰ってきたときに慰労してやりまして、どうだったかと言うと、はい、もう大変喜ばれました、そしてありがとう、御苦労さん、こういう言葉を聞きましたと、それだけで満足しておるのです。私は、それは自分たちが災害派遣ということを通じてどのように一般国民の人と一体になっておるか、信頼されておるか、期待されておるかということを身をもって体験しておるからだと思います。まずこのように、自分が国民に信頼されておるのだ、期待されておるのだということを感じさせてほしい。  ところが現在、私が今まで経験しました中でも、非常にこれとは違う状態が出てまいっております。それは御承知のように、大学入学をしたいと言います隊員を拒否されます。それからスポーツを一緒にやらしてくれと言いますと、自衛隊員でありますがゆえに拒否されます。隊員たちは、災害派遣のときはその反対しておる人たちも皆一生懸命働いておることを認めてくださる。ところが自衛隊員であるがゆえに、海上自衛隊員であるがゆえにそのような一般社会の人たちとの触れ合いを拒否されます。艦艇が入ろうとしますと入港を拒否されます。このようなことは隊員にとりましては本当に耐えがたい苦痛なのであります。まず彼たちは、自分たちは何か都合のいいときは普通に取り扱われる、しかし一たん都合が悪くなったときには、その悪くなった原因が自分たちによることでなくても、あるときは無視され、あるときは軽べつされ、あるときは非難される、このような思いを抱くときが私はないとは言えません。このようなことがもしあるとしますならば、私は非常に努力していただいておる大方の方たちの努力を水泡に帰するものだと恐れるわけであります。したがいまして、このような面についてどうか政治等の力によって隊員に、自分たちは本当に国のため社会のために役に立っておるのだという実感を味わわせていただきたい、このように思います。  第二番目は、隊員に対する処遇の問題でございます。自分たちは信頼され、いろいろとやる気を起こさしていただく。しかしこの処遇を考えますときに、身分上の問題と経済上の問題があろうかと思います。  海上自衛隊では、毎年練習艦隊を海外に派遣させていただいております。外に出ますとすべてこれはその国を代表する海軍として取り扱われます。ある国へ行きますと、事前に調整はしてありますが、大統領等元首への表敬訪問も当然オーケーです。人づてに聞いたところによりますと、新しく着任された我が国の大使がなかなか元首にお会いになれない。そういう時期にたまたま練習艦隊がその国に入りました。大使は後で、ありがとう、おかげでおれは元首にもゆっくりお会いできたと。これは日本を代表する海軍が来たのだという認識を持つからであります。  ある国は、大変国の状況も我々とすると気になるし、向こうからの艦への訪問はお断りしたい、こういうことで、私の在職中にも、どう取り扱うべきか電報を打ってまいりました。ところが、現地の大使その他はそれは受けていただきたいということで、船に元首とかあるいは主要なる閣僚が答訪に来るわけであります。そのような取り扱いを受けますとき、隊員はよしと、こういう気を持つわけであります。  幸い海上自衛隊は、練習航海に出ます前に総理にも司令官等が現状報告についてお話をする機会を与えられます。これらも大いに士気を上げる因になっております。しかし国内の地位ということは、私は列国に比べまして隊員等にとっては必ずしも高いとは感ぜられないように思います。そのように感じておるかと思います。  次に、経済上の面をとりましてもそうでございます。私も国外に短期旅行をさしていただきましたとき、随行してくれました将補がおりました。私は航空機へ乗りますときはファーストクラスの旅費をいただいております。ところが随行の将補はエコノミークラスの旅費しかいただいておりません。制服で着きますと、向こうは総員、私につり合うような出迎えを受けます。ところが日本の航空機からは一般乗客と同じようにおりるわけであります。そうしますと、エコノミーから将補がおりていくということは本当に言葉にはあらわし得ないマイナスの面がそこに出ます。  それに比べまして、その他の列国を訪問しますと、軍ということの位置づけが余りにも、もちろん我が国におきましては自衛隊でありまして軍隊ではありませんが、その位置づけが余りにも違い過ぎることを隊員はひしひしと身をもって感じてきておると思います。しかしそのような中で、我が国の今までの防衛力のあり方、自衛隊の運用に隊員は徹して、今から申し上げますような点も踏まえ任務達成に全力を挙げておりますが、このような点につきましてはぜひひとつ御理解ある御指導をいただきたい。  次に、練度でございますけれども、艦艇、航空機を持っておりますが、これらにいかに優秀な隊員をもらい、そしてこれを確保さしていただいても、訓練しなければ物の用に立ち得ません。そのための燃料、そして訓練用の機材、これらを潤沢とは申しませんが所要に応じ得るようにふやしていただきたい。  それと同時に、訓練海域等が大変漁業等の関連で現在制約を受けております。そしてその中でも、御理解によって海上防衛力の練成を推進すべく、大変そのような状態をつくっていただいておりますが、日常の訓練等におきましてもこれら訓練海域の利用が必ずしも円滑にはまいっておりません。これらの点で練度を上げていきます上に大変問題を持っておるように考えております。  次に、隊員の確保でございますけれども、現在海上自衛隊の定員は、先般確かめましたら約四万五千の定員をいただいており、そしてその充足率は九六%予算上いただいておるということでございました。ところがこの九六%で、艦艇と航空機、陸上の司令部、学校その他に割り振りますと、艦艇では潜水艦、掃海艇、それからシステム艦等近代化された船には一〇〇%配員をいたしませんと、戦力を発揮する上からはもちろん、平生の訓練上も支障がございます。なぜならば、艦艇等海上自衛隊の定員は積み上げ方式になっております。戦闘に従事するとき、ここにはどういう仕事をどのようにやるからどういう階級の人間が何名要るということを一々全部積み上げてやっております。ところが一〇〇%でありませんために、減らされたところは普通の、保安部署と称しますが、作業部署に通常はやっております。難しいところを通るときには航海保安部署をつけます。そのような格好で、火災が発生したときには火災部署で対応するわけであります。そのような面である程度減ってきますと一人三役というわけにはいきません。二役というわけにいきません。  ところが、システム艦だとか潜水艦だとか掃海艇はその特性上一〇〇%の人員を充足してあります。また、陸上司令部等でも自衛艦隊その他はほとんど九〇%以上の充足率になっております。勢いそのしわ寄せは地方隊の各部署とかそういうところに参ります。平均しますと九六%になっておりますが、ある部隊におきましては七八%とか八〇%という状況になるわけであります。これが大変隊員の士気にも影響いたしますし、日常の業務遂行にも支障を来しますし、戦力保持にも問題がございます。このような点で充足率をぜひ上げていただきたい。九六%といいますと、陸上自衛隊からいったら本当に垂涎の的だと思いますが、海上防衛力の特性からこれで現在各指揮官は大変苦労しておると私は承知いたしております。  次に、この近代化の例でちょっとだけ申し上げておきますと、なぜ、はつゆき型が一〇〇%なのかといいますと、これの積んでおりますコンピューターがございます。先般そのコンピューター等に関係しております会社の技師からちょっと聞いたところでありますが、国鉄の新幹線が監視そして管理用に使っておりますコンピューターの能力の約十倍なのです。そのようなものを限られた隊員等でやっておるわけであります。したがいまして、海上自衛隊の要員の中でこれら特技を持つには最小限五年以上の経験と教育が必要でございます。この面からも大変現在教育訓練に、教育用の人員というのは別にいただいておりませんので、充足率の中でやりくりをして特技の教育をやっております。こういう充足率を含めて隊員の確保、そして優秀なる隊員は一般民間の各会社、企業等との競合によりまして魅力がなければ確保することはなかなか難しゅうございます。この魅力の点におきましても施設の点でちょっと述べられたかと思いますけれども、現在までの歩みの上で私はやむを得なかったと思っております。  それは新しく小松島に航空隊ができるときでありました。私がある幕僚長に副官として随行しましたときに、それは三十九年でございます。大変隊舎はきれいなものができておるわけであります。ところが庁舎は全く旧軍のおんぼろでございます。司令室などというのも全くみすぼらしいところでありました。そのときに雑談として幕僚長から聞きましたのは、この庁舎の改築は正面部隊そして隊員の施設が全部更新された後でいいのだと、この指令機能だけが支障を来さないようにしておけば建物はどんなに古くてもよろしいと、このように言われたことを鮮烈に記憶しております。そのような点から限られた予算の中で私は現在まで施設、後方関係のものがおくれてきたのはやむを得なかったという点はありましょうが、現在のような一般社会風潮からしますと、優秀なる隊員確保上この点についての魅力化が喫緊事であろうかと思われます。  大変人事のことで長くなりましたが、部隊運用について申し述べます。  部隊運用は先ほどもちょっと触れましたが、日米安保体制という中で我が国は防勢面を担当しております。これを例えますならば、盾とやりの関係になろうかとよく言われます。また車の両輪で、攻勢面を担当するいわゆるアメリカの攻撃力がなければ、あるいはアメリカの安保による共同がなければ我が海上防衛は全うし得ません。その面から私は日本におきますアメリカ海軍の運用について一言触れさせていただきたいと思います。  その第一は、アメリカ海軍の運用とも言いましたが、この両輪であるアメリカの一方の輪を期待あるものとするためには、信頼し得るものとするためには、彼らに安保体制というものについて日本を信頼させなくては私は画餅に帰すと思います。それが大前提だと思います。そうしますときに、日本におきます海軍の運用、部隊の運用を考えました場合、最も端的にあらわれておりますのが厚木におきます航空機の夜間発着訓練でございます。NLPと称します。これはアメリカがその必要性から、西北太平洋及び前進配備として横須賀を基地とする空母を配備しておると考えております。  この空母の特性から、私が申し上げるまでもなく、停泊中にしろ艦載機のパイロットの勘を養っておかなくてはならないと言われておるのです。これがもし彼たちの要望どおりできない場合には、もう随分前になりますが、私の現職中に航空機の事故を起こしております。パイロットが着艦するべくして海に落ちて死んでおりました。このようなことは指揮官にとっては耐えがたい問題でありますが、より以上に広い面から、私はNLPのこの問題は地域住民の方たちの苦労を思いますと本当に何とかしてあげたいという気持ちと、何とか関東エリアにこのNLPを実施し得る場所を早く見つけていただきたい、つくっていただきたい、これが一つの運用上の私は問題の第一かと思います。  第二は、我が方の隊員の士気のところでも申しましたが、地位協定によりましてアメリカの海軍の艦艇は日本のどこにでも私は入港し得ると考えております。ところが、アメリカ艦艇は現在日本のある港に入ろうとしますと拒否されております。そして、港に入って燃料の補給とか休養等の場合でも入港できないという状態が現出しております。これは日米安保体制を強固たらしめる、信頼させるためからは私は大きくマイナスだと思いますので、ぜひこの点を改めていただきたい、このように考えます。  それから最後に、いろいろございますが、兵力整備の点でございます。  現在なされておりますその基盤的防衛力、常備すべき防衛力と整備防衛力の間には当然落差がございます。この落差によりますリスクは政治の責任と努力によって私は賄っていただくという理解のもとにこれがとられておると認識いたしております。  特にこの点に関連しまして、基盤的防衛力を有事の際に効果あらしめるためには所要の準備が要ります。しかし、現在の軍事情勢から、軍事力の特色から数カ月間等の短期間でこれを整備し得るものは極めて限られております。この点からも防衛力のあり方について本質的にひとつ御検討をいただければと、このように考えております。  終わります。
  39. 安孫子藤吉

    ○小委員長安孫子藤吉君) ありがとうございました。  最後に、松尾参考人にお願い申し上げます。
  40. 松尾雅史

    参考人(松尾雅史君) 松尾でございます。  我が国安全保障のあり方は、国民全体で考えて、合意の上で効果的に整備する必要があります。主権在民ということは総合安全保障、特に防衛について国民も積極的に参加する義務があることを意味しております。このような観点から以下意見を申し述べたいと思います。  国家総合安全保障を確立するには、政治、経済、外交防衛等の機能が多面的構造体としてバランスよく融合、調和する必要があります。  日本軍事力によって制圧できるという機会を外国に与えることは、世界じゅうが平和を求めている現実に背を向けることを意味しております。したがって、予想されるあらゆる形態の軍事侵略を確実に排除できる防衛構想を確立し、その実現に取り組むことが肝要であります。自衛隊現状は、現実に存在するさまざまな形の軍事脅威に効果的に対処できるとはとても言えないと思います。  我が国は専守防衛国是としております。軍事紛争回避のためのあらゆる努力が功を奏することなく外国から軍事侵略を受けるという最悪の事態である国土防衛戦は、国民が生活している場で展開されることになります。軍事紛争を回避するために、あるいは軍事侵略を排除するために、我が国を取り巻く国際環境を認識して、自由世界との協調を基盤にした国家戦略、防衛戦略を構築しなければなりません。現実の脅威の実態、対応策及び期待できる効果を具体的に分析することなく、単に防衛費GNP比を論じることは意味がないと思います。米国のプレゼンスが自由陣営及び我が国総合安全保障に大きく寄与していることを率直に評価する必要があります。軍事侵略が行われた場合は、国民はだれ一人として傍観者の立場には立ち得ません。望ましくないので考えない、あるいは検討しない、対策をとらないという評論家の立場をとることは不可能であります。効果が十分に確信できる防衛力を、世界最先端を行く電子技術等のハイテクノロジーを駆使して、最小限の経費で整備する、我が国独自の専守防衛構想を構築して実現していくことを提言したいと思います。  以下、具体的な方法論を申し述べます。  情報及び危機管理について。  専守防衛のために最も重要なことは、常に正確な情報を把握して、政治、経済、外交防衛の諸分野において常に毅然とした姿勢をとり得ることを国内外に正しく認識させることにあります。防衛に関する情報業務には、軍事脅威を的確に把握して軍事侵略を回避あるいは排除する分野があります。一方、同盟、友好国の立場を理解して信頼関係を増進することも重要であります。我が国は情報後進国であると言わざるを得ないと思います。情報業務は、目的を明確にして、資金と人材を投入しなければならないという認識が不十分なようであります。我が国の情報体制は抜本的に整備する必要があります。各種の公開または非公開の情報、査察衛星、通信電子情報等について本格的な情報機構の整備が待たれるところであります。  国家が難局に直面したときに、国民がそれぞれの立場で効果的に対処するには、信頼できる情報が提供され、明確な対応措置が示されなければなりません。国家的難局には、軍事侵略、大規模な擾乱、自然災害、食糧、経済等の恐慌等が考えられます。国民全体に重大な影響を及ぼす危機に対して、行政機能及び民間を一元的に統括して対処できる国家C3I体制を整備する必要があります。議会においても、国難に対処する超党派の危機管理委員会を設置することが考えられます。民間においても、民間防衛という概念を我が国の特性に合わせて確立し、具体的な対処要領を日ごろから整備する必要があります。  次に、宇宙防衛について。  専守防衛は、宇宙を経由して襲ってくるICBMのような核の脅威を考慮外にすることはできません。核攻撃を受けるという最悪の事態に対しても、国民の被害を最小限にとどめる備えが必要であります。積極的に自由圏諸国のハイテクノロジーによるSDI構想に参画する案があります。あるいは電子技術を駆使した脅威探知網とシェルター等による防護体制を整える消極的な案もあります。具体的な施策の決定と対策の推進を避けて通ることはできません。  防空体制について。  第二次大戦において切実に体験した空からの脅威を再び繰り返すおそれがあります。軍事侵略を受けた場合、緒戦から侵略が完全に排除されるまでの間、防空は完璧でなければなりません。我が国の地理的条件に合った防空部隊の継戦能力を、圧倒的に優勢な航空勢力と長距離ASM、巡航ミサイル等の脅威に対して緊急に整備する必要があります。超遠距離早期警戒能力、多機能を持った要撃機、長距離SAM等を最新の技術によって開発して、防空体制を構築する必要があります。なお、SDI構想は防空能力の有力な切り札に将来なることが予想されます。国民が受ける空からの脅威に対して、被害を回避する体制についての研究も早急に着手する必要があります。  海上防衛について。  海上における脅威は全世界的な広がりを持っております。まず、自由陣営にとって米国の存在の意義を正しく認識する必要があります。我が国は、海峡及びシーレーンを防護する体制を立体的に構築する必要があります。情報収集能力、対艦、対潜、洋上防空能力等をハイテクノロジーによって大幅に向上することが考えられます。本土及び離島を海上防衛作戦の有力な拠点と見る案は、艦船建造と比較して費用対効果の面から大いに興味があります。なお、商船等が危険を探知して回避する能力を備える方法の検討も必要であると思います。  上着陸阻止及び陸戦について。  軍事侵略の最終的な形態である地上軍の侵略を阻止する最も有力な防御線は海岸線であります。地上軍の侵略企図、侵略規模、侵略地点等を努めて早期に探知する情報網の構築がまず必要であります。地上軍の上着陸及び侵攻を阻止するための軽快に機動できる陸上兵力も不可欠であります。地上防衛作戦は、日ごろから勝手がわかっている国内で展開されます。長い海岸線、錯綜した地形、多数の住民がいる狭い国土という条件のもとで、圧倒的に大規模な地上軍の機動部隊の軍事侵略に対抗する必要があります。侵略軍を徹底的に翻弄して軍事占領の企図を放棄させるという、どちらかといえばソフトキルの戦略、戦術の研究が待たれるところであります。その切り札は、軽快に運用できる電子戦装備を持った陸上部隊と長距離SSMであると思います。したがって、我が国の特性に合った部隊の編成と、高度の技術を駆使した装備を体系的に構築する必要があります。加えて、国土防衛作戦に必要な備蓄は全国的に分散配備することを考えるべきでありましょう。  民間の防衛協力について。  民間防衛という概念は、まだ日本では確立されておりません。民間人を戦火から保護するといういわゆる国際人道法的な考え方があります。防衛備蓄、物資の輸送、警備等を民間で協力するという考え方もあります。民間人の核兵器、化学兵器等、CBRに対する対策、戦災からの逃難援助等も課題であります。積極的に予備軍に参加するというパターンも考えられます。具体的な民間防衛のあり方についての検討は、国土防衛戦を考えるに当たって重要なテーマであります。国土防衛戦に直接参加する必要がない分野について、民間に一部分を肩がわりすることを検討して、官民一体となった我が国防衛を整備するということを提言いたします。  以上述べてきました専守防衛構想の理念を、次の三点にまとめてみたいと思います。  総合安全保障防衛の基盤となる情報通信等の国家C3I体制の整備は急務であります。  次に、いかなる形態の軍事侵略にも対処できる態勢を自由陣営の一員として整備する必要があります。具体的な方策としては、軍事環境と技術の変化に追随するために、技術開発によりまして電子技術等のハイテクノロジーを駆使して、日本に最適な専守防衛体制を具現することが考えられます。  三番目に、防衛自衛隊のみではなく、民間の積極的な参加、協力によって本格的に整備する必要があります。  以上、述べてきました内容を総括する意味で、我が国総合安全保障防衛について研究し、具現するための政府関係省庁、議会関係者、民間有識者から構成される本格的な研究機関を法律によって設置されることを提言いたします。このような国家的な研究機関が十分に機能しまして、総合安全保障、特に防衛について、専守防衛の理念を確立して、具体的な施策を立案し、実行の確認を行うことによって、国内外から支持される我が国の今後の進路が確立されるものと信じております。  以上でございます。
  41. 安孫子藤吉

    ○小委員長安孫子藤吉君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。これより質疑に入ります。  質疑のある方は、小委員長の許可を得て順次御発言を願います。
  42. 中西一郎

    中西一郎君 三幕あるいは統裏議長御経験の皆さん方のお話を伺いまして、現職中にも大変御努力があったことだと思います。御苦労が多かったと思います。きょうもまたお話を聞かしていただきまして、心から感謝と敬意の念を表したいと思います。  また、松尾さんには私的懇談会で専門部会に入っていただいて、貴重な意見を伺いました。昨年末ですか、「日本の電子防衛戦略」という本をお書きになりまして、全部読ましていただきました。きょうのわずかな時間で全体のお話がなかったのは大変残念なのですけれども、今後ともよろしく御指導のほどを、皆さん方にお願いを申し上げておきます。  まず一つは、日本の技術水準ということを考えますと、これは国民的な意思の総結集が要ると思うのですけれども、ともかく専守防衛ということで完璧な防衛をやるための技術開発というものを何かが中心になって推進していく、そういうものが欲しいなというのが私の意見なのです。まだ党としても政府としても十分検討もされておりませんし、前進もしていませんが、そういったことが大きな柱として考えられるべきではないかと実は考えております。  そこで、一つは先ほどお話のあったミッドウェーその他の夜間の発着訓練にも関連するのですけれども、アメリカの東海岸あたりでは浮体物、浮いておる着艦訓練施設のようなものを置いて訓練をやっているというようなことも聞きます。  私が今端的にお聞きしたいことは、一%という枠もございますし、なかなか装備が十分進まない。そこで、そういった浮体構造物などをも含めて、あるいは掩体のお話しもございました。私は艦艇なんかでも、機密を要する装備は別としまして、そうでない一般船舶と共通するような部分、航空機なんかでも胴体と考えていいのでしょうか、そういったものを製造し所有して、それを自衛隊にリースする会社というものができないものだろうか。これは経団連にもまだ話していませんし、党の中でも、政府にも話していませんが、そういったようなことができるならば、先ほどの五六中業にいたしましても、これからの五九中業にいたしましても、当座の数年間の針路を進めるのに役に立つのではないかというふうに思うのです。まだ十分練れた意見ではございませんが、二、三の友人と実は相談をしています。そういったことについて御意見がございましたら、まず松尾さん、そして鈴木さんでございましたか、お話しいただければありがたいと思います。
  43. 松尾雅史

    参考人(松尾雅史君) ただいまリースという話をなさいましたが、御参考になるかどうかわかりませんが、私の知っております範囲で御説明いたしますと、アメリカで現在民間会社が通信衛星を打ち上げまして、アメリカの国防省、DODにリースしているという例がございます。  それから、先ほど私自身も提案申しましたけれども、偵察衛星という問題がございます。偵察衛星という問題は、言葉のとらえ方によりましていろいろな解釈ができると思いますが、要は衛星から映像を収集する、写真を収集するというようにお考えいただいてよろしいかと思います。その写真の中には資源探査ですとか、気象ですとか、防衛問題ですとか、農業問題ですとかさまざまな情報が入っております。現在フランスがことし打ち上げようとしておりますSPOTという資源探査衛星がございますが、これはやはり民間企業の衛星でございます。こういう点をとらえますと、偵察衛星、軍事衛星というとらえ方をしないで、もう少し広義に解釈しますと、査察衛星のようなものも民間でやれる分野ではないかというふうに考えます。
  44. 鈴木敏通

    参考人鈴木敏通君) 陸上自衛隊の観点から申し上げますと、今お話ございましたのは、非常に経費がかかるので、リースで進んだ方が当面そういう経費面からプラスになるじゃないかというような御意図もあったかと思うのでございますが、問題は、いろいろ自衛隊が持っております中身、装備もございますし、そのほか日常の業務運営に必要なものとかいろいろなものがございます。  それで、例えば電子計算機あたりは現在相当自衛隊の中に入りまして、ここらあたりは現にもうリース等をある程度やっております。それから、まだ余り具体化しておりませんが、衛星関係の機材は非常に進歩が速うございますので、これも買い取りよりはリースがいいじゃないかというような検討を過去に行ったこともございます。  ただ、装備につきましては、自衛隊の武器関係の装備についてはちょっとリースという考え方が成り立たないのではなかろうかというふうに思うわけでございます。というのは、使う対象が自衛隊だけでございますので、一般の民間と共用できるようなものであればリースで、数もたくさんつくり、あるいは時代の進歩に応じてどんどん変わっていくというようなことで、それをつくる会社自体もペイできるというようなものがつくれると思いますけれども、装備品につきましては、どうも自衛隊だけしか使い道がございませんので、ちょっと実行が難しいのじゃなかろうかなというふうに思うわけでございます。
  45. 堀江正夫

    堀江正夫君 堀江であります。  先ほど中西委員からもお話ございましたが、松尾参考人からは技術専門家としての立場からの極めて示唆に富んだ貴重な御提言をいただきまして、大変ありがとうございました。大いに参考になった次第でございます。また、そのほかの自衛隊出身の三人の参考人の皆さんからは自衛隊現状、そして抱えておる広範なしかも深刻な問題について、赤裸々に極めて具体的なお話を承りまして、改めて私は政治の責任というものを考えさせられた次第でございます。総理も今五九中業によって計画大綱の水準をまず達成するのだということを言っておられます。防衛庁もそういうような態度で臨んでおるわけでございまして、新しく開発された装備を十分に取り入れながら、今述べられたような装備上の問題だけじゃなくて、人にかかわる問題、国家規範にかかわる問題、有事体制、こういったような問題が近いうちに改善、解決をされて、そして本当に日本の国の安全が確保されることを心から望んでおる一人でございます。  そういうような状況下で、今一%突破がどうだとかいろいろな問題も論ぜられておるわけでありますが、私はこの際、国民に本当に防衛の問題を理解してもらうためには、持っていく順序その他がありますけれども、五十一年に決められた計画大綱そのものについてもよく国民に理解をしてもらう、これを見直す必要というものもやはりその一環として重要な問題じゃないか、こう思っておるわけであります。  そこで、竹田参考人にお聞きしますが、私は、現在の目標としております防衛計画の大綱については、基本的にやはり問題が幾つかあるのだというふうに認識をしております。  その第一は防衛期待度の問題でございまして、現在の大綱では、侵略を抑止する、そして極力早期に排除するといった漠然とした防衛期待度が示されておるわけでありますが、いかにもこれでは解釈の幅が大きくて具体的な防衛力整備の指針とは必ずしもなり得ないのではないか、その辺に防衛戦略の問題が論ぜられる一つの大きな要因もあるのではないかと思うのです。そこで、軍事環境を正当に評価をし、国力、国情を冷徹に認識をし、例えば侵略を努めて洋上に減殺するとともに、海岸地域にこれを撃破するといったような具体的な防衛期待度を政治がまず明示する責任があるのじゃないか。これが行われていないこの計画大綱というのは、本当は今よりはよくなるでしょう。けれども、いざというときにどれだけの有効性を発揮するかということについて疑念なきを得ません。  第二番目は、脅威の問題であります。  明確な脅威の設定なしに防衛力構想するということは、これは全く絵にかいたもちになるわけでございます。ところが、現大綱では、例えば予想される事態というのは小規模の限定的な侵略であると決めつけておるわけでございまして、脅威の見方がはなはだ一方的かつ具体性を欠いておると私は思います。現在のこの厳しい情勢下において、これに即して妥当かつ具体的な脅威を見積ってこれを明示して、そしてその上で防衛期待度をはっきりするということがやはり防衛力を持つからには必要じゃないか。  第三番目は論理性の問題でありまして、現在の大綱では基本的な防衛力と呼ばれておりますように、小さな基本的な防衛力を保持して情勢の変化に従ってこれを拡大する、先ほど前田参考人からのお話がございましたが、そういう論理に立って防衛力構想しておるわけであります。しかし、緊張時に必要とするところの所要防衛力の規模までどうして現下の基本的防衛力から拡大していくのかという方策は示されておらないわけであります。そして、緊張時には拡大するといっても我が国にはその国家規範が欠けております。また、侵略を受けて立つ我が戦略守勢態勢のもとでは増強に必要な時間的余裕もほとんど得られようとは思いません。要するに、事実を無視する机上の作文にすぎないのではないか。必要なのは、脅威に対抗する軍事通念に立って国家規範を踏まえた防衛の論理をはっきり確立をすることが必要じゃないかと私は思います。  もう一つは、日本防衛の日米の防衛分担の問題であります。  本来、同盟国からの支援というのは先ほどもお話がございましたが、確実な防衛努力を実行している与国への増援でありまして、与国の怠慢、あるいは崩壊を容認しながら与国の防衛を肩がわりするといった性質のものでないことは言うまでもございません。このため、我が国防衛に関するところの日米の防衛分担につきましては、国家レベル、防衛レベルでの協議に裏づけられたところの確固たる合意が必要となることは言うまでもないわけでありますが、現在の大綱、これでは具体的根拠のあいまいな我が国の期待が一方的に述べられておるのにすぎないことはもう周知のところでございます。まず第一に、これをつくったときにおいては日米共同作戦計画というものもありませんし、ガイドラインもなかったわけでございます。しかし、自来情勢が大きく変わるとともに日米共同計画の研究も進展をしてまいりました。したがって、これらに即した見直しが必要かつ可能となってきたのじゃないかと思うわけであります。  以上のような点から、やはりそういったようなことを本当に国民の皆さんにもよく理解をしてもらう、政治もそういうことを深刻に考えるというようなことが国の安全を守るために基本的な問題じゃないか、こう実は思いますので、ひとつこの点、時間があればもう少し具体的に陸海空の抱えている問題をお聞きするつもりでありましたが、もう自民党に与えられた時間はわずかしかございません。御回答をいただいて、私の質問を終わらせていただきます。
  46. 竹田五郎

    参考人(竹田五郎君) 提示されました四つの問題についての堀江先生の御意見は私も全く同感であります。  さらに私の考えをつけ加えさしていただきますと、現在の防衛計画大綱は論理性に欠けると思います。防衛力を決めるときには脅威をまず見まして、例えばソ連というものをとるといたしますと、極東ソ連軍がどのくらいの兵力があるかということを見て、そしてそれがその当時のあり得べきような事態の、あり得べきといいますか、もし不幸にも侵略を受けるというような事態において、国際情勢等を考えて、ではこの中の兵力が日本に向かってどのくらい来るだろうかという対日指向兵力というものを見積もるべきだと思うのです。そして次は、その対日指向兵力がどのような形で日本侵攻してくるかというこの侵略のシナリオというものを頭に描くべきだと思います。そして、その対日侵略のシナリオに応じて自衛隊はどうするのか、何をどの程度守るのかという防衛期待度というものがまず示されておかなければいけないと思うのです。  ただ日本の国を守れというようなものではだめであります。また、現在の計画大綱のように「限定的かつ小規模な侵略」といっても、この兵力がどのくらいのものかがはっきりしていなければ、またどの程度守るかということが決まっておらなければ、それに対する必要な兵力というものは導き出し得ないわけであります。こういう侵略のシナリオに対してどの程度日本は、例えば水際で全部やっつけてしまうのか、あるいは洋上遠く全部やっつけてしまうのか、また一部、例えば北海道のどこかを一時的に占領されることもこれは仕方がないとあきらめるのか、そこいらをはっきりすることによって戦い方も違うし、備えるべき兵力も変わってくると思います。したがって、防衛期待度というような考え方が実は過去においては余り論ぜられてはおりませんでしたけれども、この防衛期待度というものは要ると思います。そして、それに必要な兵力というものを算定する。  日本には日米安保体制というものがありますし、米軍は日本を支援するという意思は強いわけでありますから、ではアメリカは何日ぐらいかかってどのくらいの兵力が来るか、これは日米共同作戦計画が進められていけば当然そういう数字が出てくると思うのです。それとにらみ合わした上で、例えば一カ月日本は守らなければいけないとなれば一カ月守るだけの兵力はそこで出てくると思うのです。こういう思考過程を経て必要最小限の防衛力というものは導き出されるものだと思います。  当然、この防衛力を決めるときにも陸海空というものが統合的に戦力を発揮する。例えば防空の場面をとれば、航空は何をするか、陸は何をするかというふうに統合的に考えた上で三幕の持つべき防衛力というものは決められるべきだと私は思います。そして日本自衛隊に対して防衛期待度というものを、強いて私の考えを申しますならば、米軍が本格的な来援をする日まで日本周辺の空海優勢を保持しながら、万やむを得ず侵略、着上陸が行われても長期間ある地域を占領するというような事態にならないような体制をつくり上げる。と同時に、短期戦ではありませんのでシーレーン防衛というものについてもこれは確保しなければいけない、このくらいは最小限必要ではないかというふうに思っております。
  47. 堀江正夫

    堀江正夫君 ありがとうございました。
  48. 志苫裕

    志苫裕君 率直に言って、御三人のもとの幕僚長の意見を伺って基盤防衛力構想防衛計画大綱を決めてから十年たつのですが、やっぱり今でもそのような所要防衛力論といいますか、脅威対応論といいますか、それに立っておられるのかなあという印象を受けました。皆さん実は制服を脱いでおられるわけですが、そこで制服を脱いで、軍人あるいは専門家とすれば軍事力の天井を高くしておくべきだ、持っても持ってもなかなか安心感が得られないというふうに考えるのが通常だと思うのです。しかし政治が選択をしたのは、天井を高くするよりもあるいは天井を低くしておくことができれば、それの方がよりベターであるという選択をしたのがあの大綱だと私は思うのです。その発想にはやっぱり立てないものかどうかということが三人の方にまず伺っておきたい点であります。  それから二つ目は、触れられた方もあるし、触れられない方もあるのですが、日本有事のシナリオとして単独侵攻という事態はそれも前提を置かなきゃならぬという御発言がありました。まずまずないのではないかという御発言がそれぞれございましたが、実際にこの自衛隊を運用しておるそのシナリオというものは何か特定されているのか、全天候型でどんな事態にでも対応という、そういう実際の運用を常日ごろ考えておられるものかどうかという点が二つ目です。これは共通して三人の方にお伺いをしたいわけです。  あと以下、私の時間が実は全体で二十分しかないので質問だけ全部並べ立てますが、簡潔にお答えいただければいいです。  竹田さんからシーレーン防衛というのは当時、空としては余り考えられていなかったといいますか、大綱では。それなりの役割を持てということになると大綱では不十分というニュアンス、長い足のものが要るとかというような御発言があったのですが、海自にシーレーン防衛の役割が課せられるとすれば大綱の枠は超えなければならぬものかどうか、この点が一つ。  それから、もう一つ竹田さんにお伺いしたいのは、実は栗栖発言なども引用されて興味を持たされているのですが、ずばりシビリアンコントロールの範囲はどこまでというふうにお考えになるかどうかです。  それから、鈴木さんにお願いしたいのですが、ホバークラフトで四千人程度の侵攻事態というのはあり得るのだということなのですが、先ほどの有事のシナリオとの絡みでいきまして、私は軍事的には素人ですが、しかしさまざまな国際情勢等から見ると、そういう侵攻事態というのはやっぱりあり得ないのではないかという感じがするのでお伺いをしたいわけです。  それから、前田さん、特に米軍との共同ということを考えなければ存在ができないような話でしたが、そもそもどうなのでしょう、専守防衛というのは軍事的には中立という意味じゃないのでしょうか。この辺の点で非常に私は矛盾を感じたのでお伺いをするわけなのです。そこで防勢は自衛隊攻勢は米軍ということになるわけですが、一体本当の有事の場合にこの攻守の区別というふうなものはあり得ないのではないか。もっと極端に言うと、自衛隊と米軍とを分ける垣根すら存在し得ないのではないかという感じがするので、その点をお伺いしておきたい。  松尾さんから広範な防衛体制の提起を伺いましたが、一体その場合の軍事力あるいは軍事費というようなものはどういうことになるのかということにお触れになりませんでしたけれども、お話を伺った限りでは、とても幾らあっても足りないみたいな話になる。あなたは軍事専門家かどうかわからぬけれども、実はお話を伺っていて、しばしば総合安保というお言葉を、概念をお使いになっておるのですが、あなたが提起をされたそのような軍事への傾斜というのが実は総合安保の概念からずれるのではないか。もっと平和外交のプッシュであるとかさまざまなものを含めて総合安保と我々は言っておるのであって、それこそずれるのではないか。何かお立場が民間の会社なものでどういうお立場なのか、ちょっと私も首をひねっておるのですけれども、その辺に奇異な感じがしましたのでお伺いした次第です。  以上です。
  49. 竹田五郎

    参考人(竹田五郎君) 天井を低くする、それはもう私もそうでございます。必要最小限であればよろしいわけでありまして、その天井を低くするというのは、立てなくてしょっちゅうはいつくばって暮らすのだというような天井の低さにするか、立ったら歩けるか、上に五メートルの余裕があるか、というようなところを防衛期待度として示すべきだと思うのです。  私が先ほど申し上げましたこの程度のことは、必要最小限の防衛力というのは、これほど立派な天井じゃなくても我々の家庭に住んでおるぐらいの天井にする、そのくらいではなかろうかと言ったわけでありまして、多々ますます弁ずというのは制服はみんな言うでしょう。しかし、それは国の財政その他の関係もありますから少ないにこしたことはありません。しかし、それが必要最小限を切って、しょっちゅうはいつくばって住まなきゃいかぬというようなものでは困る、まして生活ができないような天井では困るというのが私の趣旨でございます。  次は、単独侵攻、私もないと思うのです。これは自衛隊がしっかりして日米安保体制が確立しておれば、日本だけを対象にして攻めてくる国はまずないと言ってよろしかろうと思います。  では、どういうときにあるのかということになりますと、非常に誤解を招きやすい発言になるかもわかりませんけれども、やはり波及しかないと思うのです。どこかに紛争が起こる、そして第三次世界大戦というような様相になったときはいかなる国も洞が峠は決め込めない、必ずその惨禍をかぶるのは当然でございますから、第三次世界大戦的な戦闘が起こった場合だというふうに私は判断いたします。  では、それはどこかということになりますと、まず今心配なのはヨーロッパ、中東、極東だと思います。ヨーロッパではしかしあれだけの力関係であればまず起こり得ない。起こるとしてもまず低いと思うのです。次はやはり日本周辺でと言えば朝鮮半島だと思います。しかし、これも今の体制であればよほど何か突発的なことが起こらない限りは起こる可能性は非常に低いと思うのです。最も心配なのはやっぱり中東地域だと思います。この地域についてはいつ何どき何が起こるかわからない。しかも、米ソの力関係がそこでは非常にアメリカには不利なような形になっております。そこに事が起これば第三次世界大戦に発展する可能性は非常に強いと思いますので、そういうような事態がもしあれば日本もこれはらち外におるということはあり得ないだろうというふうに思います。一番心配なのは中東だというのが私の考えであります。  次の、シーレーン防衛は、五十一年ごろはそういう考え方は、航空自衛隊としてはあのような非常に自衛力の整備の難しい時代でありましたし、また、ソ連の航空兵力もバックファイア等はない時代でありました。そういうこともありまして、シーレーン防衛については航空自衛隊はそれほど関心を持っていなかったというのが事実でございます。もちろん、日本周辺の四百キロぐらいのところは守るべきだという考えでありましたけれども、一千マイルというような構想はございませんでしたと言ってよろしいかと思います。  次は、専守防衛とシビリアンコントロールの……
  50. 志苫裕

    志苫裕君 いや、その場合に今言われるような役割を課されるとすれば、大綱の範囲を超えなきゃいかぬかどうか。
  51. 竹田五郎

    参考人(竹田五郎君) 当然そう思います。それだけの必要があると思います。  次に、シビリアンコントロールはどこまでかという意味ですが、ちょっとこの趣旨がわかりかねるのですけれども、シビリアンコントロールは絶対に厳しくあるべきだというのが私の趣旨でございます。ただし、シビリアンコントロールは国会と大臣及び長官によってやられるわけですけれども、この統制をする方も軍事について理解をしていただいておる必要があると思います。軍事の理解なしにコントロールの力だけが強くなりますと、結果的には潤滑性を欠くといいますか、効率的ではないというようなことがあり得ると思うのです。しかし、今の自衛官は命があればこれには従うということは徹底しておりますから、私はシビリアンコントロールというのは厳しくあっていいと思います。軍事に理解のあるシビリアンコントロールであるべきだと思います。  最後は、専守防衛と中立との関係ですが、私は関係ないように思うのです。専守防衛をすれば中立的であるかもわかりませんけれども、専守防衛は中立の絶対条件とかそういう密接な関係は極端に言いますとないのじゃないかなというふうな気がします。専守防衛であっても中立でない場合もあるのじゃないかというような気もするわけですが、ちょっと確かな答えが出ません。関係はないというのが私の感じでございます。しかし、何か似通っておるような気もいたします。
  52. 鈴木敏通

    参考人鈴木敏通君) 余り重複したことを申し上げるのは恐縮でございますので、今のお話でも私は余り異存がございません。  そこで、二つばかりちょっと私の申し上げた中に関連しますが、特色のあるようなことを申し上げてみたいと思います。  防衛計画大綱防衛力が天井ではないかと、これはそのとおりだと思います。天井はなるべく低い方がいいというのもそのとおりであると思います。これは先ほどお話が出ましたように、やはり防衛計画大綱の中で問題は、脅威を度外視しておるという思想があの中にあるということが私も大変これは問題だと思います。防衛力の本質としてはどうしても脅威との対抗においてどれぐらいの防衛力にならなきゃいかぬというのは、これは何と言おうともそうならざるを得ないのでございまして、その観点において考えざるを得ない。そして、それが天井が低い方がいい、そうするとこれは相手のあることでございますので、相手の方もひとつ天井を下げていただく、その相手の天井が低いのか高いのかよくわからないというところに非常に問題があろうと思います。その意味におきまして、先ほど触れました周辺国、特にソ連でございますが、これが非常に秘密主義であるというところに私は大変問題があるなと。しかし最近、オガルコフ参謀総長が出て大韓航空機の説明をしたり、それから民間テレビがソ連の軍隊をインタビューしたり、そういうことが少し出てきておる。あるいはバム鉄道のNHKの取材が行われるというようなこともこれは大変結構なことであろうと私は思うわけであります。その辺ソ連がぜひ秘密主義を排してもらいたい、もっとオープンにしてもらえないか、そうすればお互いに疑心暗鬼で天井を高くしていくことはなくなるのではないかと思うわけでございます。  もう一点、私の発言で関連したお話でございますが、ホバークラフト数千人というような事態が考えられるのかということでございますが、これは今竹田参考人からお話がありましたように、米ソ戦があって中東を発火点にして世界戦争的なものになった場合に、これは時点が前になることもあれば後になることもあると思いますけれども、いわゆるよく言われます三海峡ソ連極東艦隊が通るためにその両側の必要な地積をしっかり押さえて、そして船が通るのに支障ないように侵攻するというようなことは、軍事常識上当然考えられることであろうと思うわけです。そういうような場合に、やり方としまして奇襲的に来る、なるべく相手方の備えの薄いところ、あるいは時期的にも予期しないときに進むというのが私は戦術であり戦略であると思いますので、そういうやり方で来る場合があり得る。これも先ほど申した前提のある問題だろうと思うわけでございます。  以上でございます。
  53. 前田優

    参考人(前田優君) 私の方は、まず天井は低くするという趣旨でつくられたことの防衛力、基盤的防衛力のそれは賛成かということですが、天井を低くするという趣旨についてはもう当然、当時私は第五幕僚室長でその事務を担当しておりましたので、その御趣旨はよく承知しております。ただ、私が申し述べましたのは、そのような趣旨のために平時持つべき防衛力、これを基盤防衛力と言われておるわけでありますが、それが有事の際にどのぐらい要るかということをやはり国家として決めていただかなくてはならぬ。その決めていただくのを所要防衛力と一応考えてみたら、そこまでエクスパンドする手段と具体的なる方法をよく詰めておかなくては、それは基盤と言うけれども、基盤ではなくなりますよということを申し上げたわけであります。したがいまして、御趣旨は全くよく了知しております。天井は低いほどよろしい、しかも、国民の一般の御理解を得るためにもそれはなるたけ低い方がよろしいということは先生の言われるとおりでございます。しかし、それを国家危急のときに必要とする防衛力までエクスパンドする具体策が、その差が大きければ大きいほど政治のリスクとして平素から考えておいていただく必要がありますという点でございます。  それから、シナリオは全天候か特定のものかという御質問でございますが、これは私たちが日常、教育、訓練すべてやっておりますのは、我が国侵略がありまして、あるいは有事と言われておりますが、ありましたときに、海上自衛隊として我が国土とその周辺海域の防衛をやる上にどのような作戦を実施する必要があるかということで教育、訓練をいたしております。それで、今までは主として米国との共同訓練を約百五十回ぐらいやっておりますが、それは戦術技能というときには、対潜戦はこういうふうにやる、あるいは海峡の通峡阻止はこのようにやるというふうな戦術面の技量向上を主としてねらってやってまいりました。しかしこれ以降は、今後はガイドラインができまして、日米共同作戦計画、今立案されつつあると承知しておりますが、その種の面で本当の部隊運用の面における研究をもとにしてやっていかなくてはならぬだろう、このような点で、全天候ともそれから特定のものということではございません、そのようないずれの事態でも必要とされるであろう防衛のために実施する作戦のことで教育、訓練をいたしております。  それから私への御質問で、米軍との共同が前提とおまえは言ったが、専守防衛という国家の政策である以上それは中立ではないか、こういうことでございますが、全く私は違いますと、このようにお答えしたい。それは専守防衛といいますのは、戦争をするときでも専守防衛はあっていいと思うのです。みずからは攻撃をしかけないという戦術場面と、それから国家戦略として中立という最も武力の行使をみずからはやらないという姿勢がございます。それから、どこへでも積極的にちょっとおかしいと思ったら武力介入していく、いずれも武力の解決をもっていろいろな問題を解決するというその両極端があろうかと思います。その間で、それぞれの国で国力に応じた国家の地政学的なものも含めて、それぞれに応じた軍隊、軍事力防衛力を持っておると思います。その防衛力の運用について我が方は専守防勢にこれを徹するのだということは兵力運用上の姿勢でありまして、中立とは全く異なると思います。  それから、いざ戦争になりました場合に、防勢面は自衛隊攻勢面は米国、こう言っておるが、おまえ、垣根はなくなるのじゃないか、そういうことでございますが、これは我が国周辺海域におきます海上諸作戦と、それから本土防衛のための諸作戦を考えました場合に、海上自衛隊はやり得るものは通峡の阻止、それから沿岸を含めました港湾等を含めての防備、それから防空の一部の艦隊防空、機雷掃海等を含めました海上交通に対する防護、このような面で限って見ますと、私の申しました攻撃的な攻勢的な能力は持っておりません。といいますのは、そういう事態でも垣根はあります。先生のおっしゃる言葉をそのまま使いますと、垣根は厳然と存しております。  私の申します攻勢といいますのは、あきらめて座して死を待つよりも、当然対象国が敵と変わった場合にはその策源地をたたいてもらわないと我が方は全く手も足も出なくなります。そういう場合の攻勢面は我が方では絶対に持っておりませんし、できるようになっておりません。したがいまして、洋上におきますシーレーン防衛をとってみましても、我が方で防空の傘が、もし航空自衛隊が今竹田参考人から言われましたように、本土防空の方に手をとられてしまってないというような場合には、アメリカの機動部隊にそれはある程度期待せざるを得ない場合も出てこようかと思います。そういうふうな攻撃面は、攻勢面は我が方は一切持っておりませんし、できません。そういう意味で垣根といいますか、攻勢面、防勢面は厳然として存在しております。  以上でございます。
  54. 松尾雅史

    参考人(松尾雅史君) 御質問いただきました点は二点かと存じます。  第一点の総合安保の問題でございますが、これは国際政治または内政、経済、外交防衛、それぞれの機能が多面体構造としてそれぞれ機能しなければならないと思います。すなわち、防衛だけが総合安保の中で特定して突出するものであるという考えではございません。  それからその次に、防衛の限界がわからなくなってしまうのではないかという御質問でございますが、やはり防衛力というものが脅威に対して全く同じ数量の軍事力を持って対抗するというのは非常に難しいと思います。特に日本の置かれている立場は難しいと思います。ただし、日本では日本の地理的な特性もございますし、日本の特性に合わせた科学技術を利用した兵器体系なり編成体系なりを考えまして日本防衛は考えるべきであろうと思います。その具体的な方法につきましては、先ほども話題が出ましたように、防衛の指針ですとか、脅威の実態の把握ですとか、論理性を持たせるとか、こういうふうなことでこれを研究する機関をまず発足してはいかがでしょうか。そこで研究しまして、努めて低いレベルの経費でこの防衛を全うするように答えを出す必要があるだろうと思います。
  55. 志苫裕

    志苫裕君 ちょっと一問だけ、本当に簡単でいいです。竹田さん、三人の方どなたでもいいのだけれども、竹田さんに代表して聞きましょう。  私は、専守防衛というのは軍事的中立を意味するのではないかということ言いましたのは、例えば安保条約がございまして、今皆さんのお話で有事のシナリオで想定できるものは波及型だと。その場合は波及型ですから直接日本が攻められたわけではないわけです。それは米ソがやるわけ、日本と相棒になっているアメリカはやるわけですね。それに自動的に巻き込まれていくということになりますと、そのときに私は専守防衛というのはいわば軍事的中立という意味合いが意味を持ってくるのではないかという意味で伺ったわけなのです。
  56. 竹田五郎

    参考人(竹田五郎君) そういう意味であれば、そうであると言ってもいいかと思います。巻き込まれて自動的にということは日本の場合はないだろうと思いますので、先生のおっしゃる意味であれば、専守防衛ということは米ソの軍事的枠外におるということはあり得るかとも思います。
  57. 黒柳明

    黒柳明君 まず竹田さん、鈴木さん、前田さん、三人に共通して質問したいと思います。時間が限られていますから、ひとつ私も短くやりますので、適当に配分していただきたいと思います。  しょせん限られた予算であります。すべて金がなきゃ何もできない、こういうことですが、その中におきまして国の財政も御存じのとおりであります。かといって皆さん方がおっしゃったように、いろいろな面で不足、不足、不足、だからバランスをとってやらざるを得ないと。これは国の予算の配置も同じです。私たちは別に自衛隊だけをいじめるわけじゃない。GNP一%論だけを批判するわけじゃありません。バランスのとれた税金の使い方、配分の仕方。そうしないで防衛費だけを重点に置くということはこれはうまくない。それと同じような論理はやっぱり皆さん方の自衛隊にも通ずるわけでありまして、いわゆる正面装備だけぴかぴかにして、それで格納庫は掩体がないとか、あるいは士気がどうだとか、処遇がどうだとか、兵舎がぼろぼろだとか、弾薬がないとか、それならバランスをとりなさい。私も相当基地を回って対話したつもりでありますし、今もこの小委員会では自衛隊の総点検をやろう、こういうようなことで具体的に今度は実態調査をやろうというような合意もできたわけであります。  しかしながら、六本木に行きまして幕僚の方と話しますと、どうしても事なかれ主義と言ってあるいは弊害があるかと思いますけれども、予算の配分というのは前に準じて先送り、こういうことでなかなか予算の組み方というものについて、これは政治というものは枠をかぶっていることは当然ですけれども、考えとしても、十年先を目指しての予算の配置の考え方というものをなかなか考えないという私は感じがいたします。ですから、もうちょっとどこをどうしろと私たちは言う資格もありませんし、皆さん方は専門家ですから、F15一機百億だからそれをなくせばこうなるだろうなどと、こんな幼稚な議論をするつもりじゃありませんけれども、専門家ならばそれなりにもうちょっとバランスとれた予算の配置の仕方を今やらなければ、十年後の後方抗堪性もできないし、後方のあるいは充足もできない、こういうことにもなるのであります。私はこれは十年前から、今やらなければ十年後はないぞ、バランスがとれないのだから今考えたらどうかと言っても、なかなかそういう発想というものは拒否をされてきた。こういうことでありまして、ひとつもっとバランスのとれた予算の使い方をやらなければ、いつまでたっても限られた中におきまして不足、不足、不足ということになるのじゃないのでしょうか。それが一点。  それから、もう一点は、これは制服を着られた立場として当然かと思うのですけれども、お三人方同様に一致してソ連ソ連ということが口に出ました。政治的に仮想敵国をつくらない、これは私たちもそんなことはもう承知しておりますが、皆さん方は当然あるものを想定して戦略を、戦術を組まなければ組めようがないのでありまして、それは充足されたところで組むならこれは好都合でありますが、足らない足らない中で組むわけでありますから、それはどこにも焦点を当てないで組むなどということは全くできないことかと思います。しかし、ソ連というものを当然一つの仮想敵国というのですか、対象として防衛戦略を組んでいることは間違いなかろうと思うのですが、ひとつそのあたりいかがなものでしょうか。  それから、今度は竹田さんにお伺いするのですが、最小限、私たちも防衛構想の中に最小限と、同じ言葉を使っているのです、最小限の戦力防衛力というものはこれは確保すべきだ、その中で領域保全の自衛隊というものは認めるべきだ、こういうようなことを言っているのです。先ほども自民党の先生にその最小限という中において竹田さんなりの考え方がありましたが、逐条的といいますか、一つこれ、一つこれ、一つこれ、こういうふうにもうちょっと具体的にこの最小限というものを言えないでしょうか。  ということは、この最小限ということがあいまいです。私も我が党の防衛構想をつくった一人として最小限は何かと言われたって、これはわからない。けれども、やっぱり公党としまして責任を持った防衛構想というものをつくらなきゃなりませんものですから、だから最小許容できるところで私たちなりのベストじゃなくてベターなものをつくった、しかもその最小限ということについて非常に私たちも疑問を持ちながらいるわけであります。ですから、先ほども申しましたように、五六中業ではシーレーン守るどころじゃない、達成されても。これはもう当然だと思います。相関関係がある防衛力ですからね。そうなりますと、ならこそ非常に漠然とした最小限から問題というものは全くわからないずくめで論議というものはかみ合わない、こういう嫌いがあるわけでありますので、そこらあたりをもうちょっと逐条的にいいますと、どういうことが最小限なのか。  それから鈴木さんでありますが、私、自衛隊の綱領の冒頭にも、災害国日本にあってはやっぱり平和時においては民生の安定をと、これは災害について当然心得べきだと。その中においては陸に一番数を持っている陸上自衛隊。これは先ほどもおっしゃいましたように伊豆の地震において非常にある町長は感謝されて、党のイデオロギーに縛られたのが縛られなくなった、こういうこと、これはもう当然ですね。泥まみれになって復旧対策に働いている自衛隊の姿を見て感激しない人はいない。しかし、困ったときの自衛隊の姿じゃいけないと思うのです。災害国でありますので、その予備も含めて、予備に対して自衛隊が感知能力があるわけじゃありません。そういうところまでも竹田さんがおっしゃったように、国民の強い支持がなきゃだめなわけだ。ところが、災害が起こった後の復旧に努力している自衛隊を見て感激する。これはもう非常に局部的、限定的に限られている人でありますが、ふだんまんべんなく自衛隊国民との接点をつくらなきゃいかぬ。  その接点というのは言うはやすくしてなかなか難しい。ということは災害対策。災害対策とはどういうことか。また、これは予算。ということは給水車も必要だろう、レッカー車も必要であろう、あるいは東京みたいなところじゃ、ふだんからゴムボートを持って、川越街道がだめだったら第一師団は荒川を使って下町に行かなきゃならない。  ところが、そういう話をしますと、おれたちは土木部隊じゃないのだと。別に土木部隊になれとは言わないけれども、自衛隊の綱領にもそういう趣旨のことが書いてあるのだから、ふだんからそういう災害については日本全体が政治も行政も考えているのだから、二十六万の自衛隊が、なかんずく十八万の陸上自衛隊がふだんからそういうことを国民の接点の中で、九月一日の防災の日だけどこかの河川敷でヘリコプターで人間をつり上げた、そんなものじゃなくて、考え方を変えないか。その一つは予算の五年後、十年後、やっぱり機動力が必要ですから、そういうものをいざとなったときは民間の車を借り上げりゃいいのだなどと、そんなものは全く仮想なことであります。そういうものについても考えていったらどうですかと言うのですが、六本木の幕僚あたりは、今しつこく言ったように、おまえらは土木部隊じゃないということで、これでちょんとなってしまうのです。ここらあたりの考え方を変えていかないと、国民との接点とかなんとか言ったってだめなのじゃなかろうかと思います。  ちょっと時間がないですから、ひとつ今のところでお答えいただけますか。
  58. 竹田五郎

    参考人(竹田五郎君) まず、バランスをとれということですが、数も足りない、正面、後方のアンバランスもある、隊員処遇も十分でないという状況、それがみんな縮まった形で悪いものですから、どこを今伸ばせというのはちょっと言えないように思います。私は、今のやり方を総体的に大きくすることになるのじゃないかと思いますが、その中でも我慢するとすれば、先ほど出ましたように、隊員処遇のことについては多少我慢するのも仕方がないという程度のことは持っております。
  59. 黒柳明

    黒柳明君 正面は我慢できませんか。
  60. 竹田五郎

    参考人(竹田五郎君) 正面は先ほど言いましたように我慢できないと思います。最小限を既に切っておりますし、さらにシーレーン防衛などということを考えますと、これにはさらにプラスする要素がある、むしろふやすべきだという感じであります。  それから次に、ソ連の話がちょっと……
  61. 黒柳明

    黒柳明君 ソ連のことね、皆さんみんなソ連ソ連ということを想定されてミグ24がどうだとかあるいは北海道がとか、こういうことをおっしゃったので、私たちは国会においては仮想敵国はつくらないと政府の答弁は絶えずある。ただ、防衛白書なんかはだんだん変わっています。ですけれども、皆さん方はもう制服を脱がれたわけでありますから、それをせざるを得ないじゃなかろうかという理解も含めて今尋ねているわけですけれども、戦略、戦術というものは。
  62. 竹田五郎

    参考人(竹田五郎君) 脅威となり得るのはゼロから百まであると思いますから、その中で一番大きいものはといえばやはりソ連だと思います。というのは、日本の周辺を見ますとソ連と韓国と中国と台湾とあるわけですけれども、それ以外の国が日本に直接脅威になるということはまずないと思いますので、そう見てまいりますと一番可能性の高いのがソ連ということです。しかも大きな兵力を持っておりますし、そういう意味から脅威と申し上げたわけでありまして、脅威イコールすぐ敵性国家というものではないわけであります。  次は、最小限の防衛力について具体的な数ということになりますと、これは相当な作業をしなきゃいけないと思います。実は、今の自衛隊でも、計画、大綱の見直しというのはやれないことになっておりまして、そういう大作業をやったことはないだろうと私は想像します。しかし今、じゃどのくらいかと言われますと、細かい数字は別としまして、感じとして申し上げますと、私は航空部ですから、例えば飛行機だっったら今の十八機の編成を二十五機ぐらいにして、そしてさらにシーレーンを守るためにもう一個飛行隊あるいは半分の飛行隊ぐらいは必要だと思います。また、シーレーン防衛をしようとすればあの方面に対して空中警戒管制機等が必要でしょうし、また、空中給油機もシーレーン防衛するためにはこれは不可欠な要件になってくるという感じですから、まあ目の子として三割ぐらいはやっぱりふやさなきゃいけないのじゃないか、とても二倍にというようなふうには考えておりません。空についてはそんな程度でございます。全くの感じでございますから、細かい作業で詰めるべきだと思います。
  63. 鈴木敏通

    参考人鈴木敏通君) では、陸の方から申し上げます。  バランスのある予算の使い方といいますか、どうも正面ぴかぴかで後方軽視という姿になっている、確かにそういう面が出ておると思います。これは、全般の予算案が非常に苦しくなってまいりますとどうしてもしわ寄せが施設整備あるいは被服とか、そういう面は何とか我慢しようということにならざるを得ないものですからそういうふうになってきておりますが、これがやはり限度を超えますと非常に問題があるというふうに思います。施設整備等も予算の苦しいときは非常にしわ寄せを受けまして、これはひいては先ほどお話も出ましたように隊員の士気に非常に影響しますので、このバランスの限界というものは常に考えなきゃならないと思います。
  64. 黒柳明

    黒柳明君 今は限度を超えていない、今くらいなら大丈夫ですか。
  65. 鈴木敏通

    参考人鈴木敏通君) ここ一、二年大分施設整備にしわが寄っていますと私は思います。それから、次のソ連対象の問題でございますが、これは確かに仮想敵国という考え方は余り私もいいとは思いません。言葉を注意しまして防衛対象国というふうに、現役のときも注意をして物を言っておりますけれども。ただ、やはりこれは本音を申しますと、そういうところを考えなきゃ、先生おっしゃいますように形ができませんのでやらざるを得ないというふうに思うわけであります。決して敵視をして毛嫌いをするという意味ではございません。  それから、特に私に対するお話でございます災害派遣、これは私も非常に大事な分野であろうと思うわけでございます。現に私が広島で十三師団長をやっておりましたときに、小豆島に局地豪雨がございまして、あそこが大変な水浸しになりまして約五日間私も現地に泊まり込みで、隊員千六百名を派遣いたしまして災害救助もいたしました。死者二十四名を出した大きな災害でございましたが、そのときにあそこの三つの町長さんが、もう自衛隊が来てくれると聞いただけで町民は本当に元気が出た、こんなうれしいことはないという話を私らあたりは町長さんから聞きまして、ああ、ありがたいなと、自衛隊というのはやっぱり国民に根が生えておりませんと、浮き上がった存在ではとても日本防衛はできないと思います。そういう意味におきまして、この災害派遣というのは大変大事な分野でありますし、これはできるだけ積極的にやった方がいいと思うわけでございます。今お話のございました土木部隊でないというような一部の幕僚がおるかもしれませんが、これはちょっと私どもの教育不十分だった面があろうかと反省いたしますけれども、そういう考え方ではなくて、国民と意思を通ずるということが防衛にも非常に大事だということを今後とも自衛隊教育をすべきだろうというふうに思うわけであります。  ただ、ちょっと一つ申し上げたいのは、災害出動しますと地元の方は、もう大変ありがたいからいつまでも残ってやってくれと、こう言われる面が出まして、余り長期にわたって、まあごみの処理までいろいろというわけには、自衛隊も訓練が主務でございますので、そういう面でちょっと調整を要する面がございます。私も小豆島へ災害派遣しましたときは、三、四日前に町長さんによく言いまして、自衛隊もあと三日ほどするとどうしても引き揚げなきゃなりませんので、どうぞ自衛隊にやってほしい仕事の優先順をつくってください、それは優先順の順番におやりいたしますので、それだけ終わりましたらひとつ引き揚げさしていただきますという調整をやりましたら、非常にスムーズに引き揚げができたということでございます。  以上でございます。
  66. 前田優

    参考人(前田優君) 二点ございます。  一つはバランス予算の問題でございますが、今両参考人が言われたとおりで全く同感でございますが、一言だけ。  今までこのような格好でずっと正面を重視した形で来ておりますのは、やはり自衛隊、特に海上自衛隊が警備隊として発足しましてからアメリカとの関係、それだけをずっととってみましても、世界情勢の変化とアメリカの世界情勢の中での位置づけの変化が大きく変わってきておることが我が防衛力の整備の上にも大きく影を落としている、こう思います。その点で、当初は何もありませんので、どうしても正面装備をやっていかざるを得ない。そうすると後方支援面は、隊舎とかそういうことは別としまして、大部分の弾薬その他についてもいざになったらアメリカに頼めばいいじゃないか、まだベトナム前はアメリカは世界の警察をもって任じておるぐらいな感じでおりましたので、いざになったら後方面については当然期待し得るであろうという一つの考え方がございました。  それともう一つは、今でも正面の整備には大変時間がかかります。そして、これはお金を幾ら積んでも期間的にできないときがあります。ただし、少なくとも先生方の御理解で国会の方で決意をしていただければ、施設そして隊舎等は我が国の能力をもってして、この正面装備と違って整備は自前で比較的できるのではないか、そういうふうな考え方が裏にあることは私は否めないと思います。したがいまして、乏しいパイの中からどうしてもやっておかなくちゃならぬところへ重点的にいかざるを得ない、それで大変苦労しておる、このように考えております。  それから仮想敵国の件でございますが、先ほど志苫先生のときも私ちょっと申し上げましたように、その対象が仮想敵となった場合には、敵となった場合にはと、こう申し上げましたように、我々としましてはいろいろ御指導いただいておる点はよく承知しております。ただ、脅威ということで、その脅威はどのような形でどのように現出してくるか、このようなときに潜在的な脅威、そして顕在した脅威、その顕在した脅威を少なくとも仮想敵国だとか、そして敵国と考えていく、このような考え方をとっておりますので、今おっしゃっていただいたとおりと変わりない、このように思っております。
  67. 黒柳明

    黒柳明君 委員長済みません、ちょっと一言。  松尾さん、SDIのことはもう漠然としていて何かわからないのですけれども、もし研究参加を呼びかけられたらどうなのですか、意欲満々で参加する意思はあるのですか。
  68. 松尾雅史

    参考人(松尾雅史君) 先ほど純粋防御兵器はないという話がございましたけれども、このSDIにつきまして、その機能と性能を限定すれば防御兵器として十分評価する価値があると思います。すなわち、その分野につきまして研究に参加する必要があると思います。
  69. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 共産党の上田です。  私どもはきょうの参考人方々と立場が対立しておりまして、例えば日本の安全にとっての最大の脅威ソ連ではなくてアメリカだ、日本の主権を奪って安保条約を押しつけて、きょう竹田参考人も明言されたように、米ソ対決が起きるとそれに巻き込まれる、日本に波及してくるというような状況がありますので、我々は、安保条約を条約第十条に基づいて破棄して、早くアメリカにいなくなってもらって、独立と主権を回復して非同盟中立の国にすべきだと思っているのですけれども、こういう問題できょうは皆さん方に質問をしようとは思っていない。  きょうは、皆さん方の発言をお伺いしていて、いろいろな軍人、まあ自衛官でしょうね、の立場からの要望とか、あるいはうめき声みたいなものまで聞かしていただいたように思うのです。それは、午前中からの参考人発言にもありましたけれども、日本軍事力というのは歴史からいっても非常に制約がある。憲法第九条があるにもかかわらず、当時占領していた米軍がつくり育ててきたものだし、今の政府の解釈によっても憲法上のさまざまな制約がある。専守防衛があるし、前田参考人は肝心の機動打撃力が持てないということまで触れられましたし、それから海外派兵もできない等々の制約がある特殊な軍事力なのですね。ところが今の状況の中で、日米安保体制のもとで日本を軍事的に防衛しようと皆さん方が本気でお考えになるとさまざまな問題が出てくるわけで、予算の問題とか人員の問題、装備の問題、あるいはきょうも出たような国民からの批判の問題等々そういう非常にたくさんの問題が出たわけです。  それで、まず鈴木参考人にお伺いしたいのですが、午前中のお二人の参考人とも、大賀元海幕長、それから永野元陸幕長、それから竹田さんのお出になった「シンポジウム 日米共同作戦」の中で北方四島の占領問題に永野元陸幕長が述べられたことについて触れたのです。御存じと思いますけれども、これは有事の場合ですけれども、永野元陸幕長が、「北方四島はまず徹底的に叩くんじゃないですかね。」、そうすると大賀元海幕長が、「米軍に頼まなくても、日本で叩いてもいいんじゃないですか。」、永野元陸幕長が、「もともとあれは日本の領土ですからね。開戦と同時に奪還するのが常道じゃないですか。」と、こう述べたのですね。竹田さんが自民党の安全保障制度調査会の第一回研究会、このガイドラインの共同作戦研究についてお出になったときに、竹田さんがこういうことを触れておられるのです。中佐、少佐レベルになると、例えば日本は専守防衛で敵地に攻撃に行けないのだと言いますと、戦争になったときおれたちが苦しい戦いをやるのに、なぜ日本の場合に出ていけないのだと執拗に聞く幕僚も中にはおるということを聞いておるということまで触れておられるのです。それで鈴木さん、本当に自衛官として軍事的に守ろうと考える幕僚の方が、永野元陸幕長のように、あるいは竹田さんが触れられているように、今の憲法上の制約、日本の自衛力が持っている制約、これは取っ払っていわば本来の軍事力になりたいという気持ちがやっぱりあるのじゃないですか。これはどうですか。鈴木さん御自身はどうですか。
  70. 鈴木敏通

    参考人鈴木敏通君) 気持ちの問題をおっしゃられますと大変お答えが難しいような気がしますけれども、やはり物の考え方といたしましては、憲法に従わなければならない、憲法の解釈を逸脱してはならない、これは当然のことであろうと思います。  それから今、北方四島という具体的な例がお話にございましたが、これは今非常にソ連との間で特に懸案の場所になっておりますので、今の永野元陸幕長の発言は、完全な純粋理論として述べた場合にはそういうことでありますという気持ちを、今お話ありました気持ちを述べたのだろうと私は想像するのでございます。しかし私の見解を申し上げますと、北方四島とか、前に尖閣列島も中国との間に大分問題になったことがございました。あるいは竹島とかいろいろ外交上の懸案になっておる場所がございます。これについてはやはり制服といいますか、自衛隊の実力部隊だけの武力的な観点だけじゃなくて、十分に外交的な要素を加え、しかも政治がよく御判断願って、そうして部隊に指示をされる、ぜひそうあらなければならないだろうと思うわけでございます。ちょっと意を尽くしませんが、そんな感じがいたします。
  71. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 その次に、やっぱり自衛隊と核戦争問題ですね、これをお伺いしたいのです。今の制約問題ともかかわっているのですが、非核三原則という制約ですね。これは二月号の「世界」が、「白書 核戦争と自衛隊」という特集をしていまして、今の八〇年代になってからの米ソ対決の様相等々の中から自衛隊の核戦争能力、自衛隊自身が持つということと別に、これがやはり問題になってきているのです。キッシンジャーが一九五八年に「核兵器と外交政策」という本を書いていますけれども、あの中でも、彼はNATO軍について触れて、NATO各国軍が核戦争能力を持たないと邪魔者になるのだということまで、あの時代に彼はずばりと述べているのですけれども、これがかなり問題になってきている。  私、御存じかと思いますが、今度の国会の予算委員会で、陸上自衛隊の幹部学校の核戦争教育の教科書、教材を追及しまして、これが現物です。これは三十四年六月のものですけれども、かなり本格的な教育を三十年代に幹部学校でやっていたのですね。私はこの質問をした後、少しいろいろ調査しまして、ある元陸幕長のお方は、三十年代いっぱいこういう教育をやっていたと、こうはっきり述べました。ただ、非核三原則を佐藤内閣が言ったとき、これでタブーになったと言うのですね。  調べましたら、佐藤首相が非核三原則を国会で堅持すると言われたのが昭和四十三年の二月五日でした。だから、どうもほぼ十年は第一段階、自衛隊アメリカの核戦争教科書を翻訳しまして、本気で核戦争、またみずから核使用の教育を幹部学校の最高課程ではやっていたと思うのです。それで非核三原則が出てしばらくどうもタブーになっていた。ところが、同じ元陸幕長の証言ですと、数年前から、自分で持ったり自分で使うということはもちろんタブーだけれども、今日核戦争について何らの知識も教育もない軍隊というのは国土防衛の任にたえないので、幹部学校では教育、特に研究ですね、これを始めていると。余り何年も前からじゃなくてここ数年来だというお話でね。だから私はガイドライン以後というか、やっぱりおやりになっていると思ったのです。  今度、防衛庁から陸海空の幹部学校で核問題で何を教えているかという教育状況の資料をいただいた。これを見ますと、核防護、これは前からやっているということはずっと国会でも答弁があるし周知のことなのですけれども、例えば陸上自衛隊の幹部学校では、核兵器の特性と性能、主要国の核兵器の現状教育というのがありますし、それから核戦略の概要というのも教えられている。海上自衛隊では、核爆発の効果、防護、核兵器技術の現状と将来等を教育するということになっておりますし、航空自衛隊では、指揮幕僚課程で、主要国の核戦略の概要、アメリカ、スイスなどの民間防衛などの教育、それから核兵器の種類、性能、効果などを教えているという資料なのです。主要国の核戦略の概要というとどういう程度になるのか、ここら辺がよくこれだけじゃわかりませんけれども、もう少し具体的に元幕僚長の方々に、お詳しいと思うので知っておられる範囲でお教えいただきたい。  特に前田参考人には、海上自衛隊の場合には、例えばシーレーン防衛ということになりますと公海上で日米共同対処をやるわけで、今度の国会でも中曽根首相が、公海上で日米共同対処を有事の際にやる場合に、アメリカの核使用を排除できないという答弁をされてかなり問題になったわけです。海上自衛隊の場合にシーレーン防衛などの教育研究をやる際に、アメリカが、日本がじゃないですよ、アメリカが核兵器を使用すると、現代の戦争の際ですね。先ほども第三次大戦というお話があったのだが、そういう際に、海上自衛隊としてどう共同対処するかということなどは研究教育をされているのじゃないかと思うのですが、そのことについても触れていただきたいと思います。これはお三人の方、竹田さん、鈴木さん、前田さん。
  72. 竹田五郎

    参考人(竹田五郎君) 本格的に教育をしているとおっしゃいましたけれども、そんな本格的にやっているとは思いません。私も昭和三十二、三年ごろ、その指揮幕僚:::
  73. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 教官だったのですね。
  74. 竹田五郎

    参考人(竹田五郎君) 入っておりました。その当時も確かに核の教育は受けましたけれども、あくまでそれは核というものはどういうものなのか、破壊力がどうであるとか、そのために守るためにはどうするというようなもので、せいぜい二、三時間ぐらいだったように思います。それほど熱心ではありませんでした。  現在の状況はと言われますと、私もちょっと知りませんが、私が幹部学校の教官をしておるころ、これはもう十年か十五年前だと思いますが、その当時は外国の核戦略といえば、例えば大量破壊報復攻撃の戦略から確証破壊戦略、あるいは柔軟反応戦略というような戦略があるよというぐらいのことを教えたという程度のものでございます。現在はどうだと言われますと、ちょっと私も詳しく知りません。
  75. 鈴木敏通

    参考人鈴木敏通君) 私の所見的なことを申し上げたいと思いますが、三十年代に御指摘の教育が行われておったということは私は実は余り知りませんでした。それで、感じとしてはそういうことを余り幹部学校ではやっておったということは記憶にございません。ただ、防護面については、これは従来から技術的な核爆発の場合の被害がどんなふうに及ぶかというようなことは続けておりました。  そこで、所見として申し上げますと、防護面あるいは核自体の物理的な威力というものはどういうふうになるのかということについては、これはちょっともっとしっかり勉強しなきゃいかぬのじゃないかというぐらいの感じを持っております。不十分じゃないかというような感じを持っております。もちろん、みずからが核を持つということは全く考えておりませんし、これは反対であります。そんなことをしたって何の役にも立たないと思っております。  以上で大体よろしゅうございますか。
  76. 前田優

    参考人(前田優君) 私の方、お問い合わせありました点をまとめて申し上げたいと思います。  実は私は、海上自衛隊創設期から走り使いを始めて、ずっと二等海尉に相当するところからおりました。そして海上の勤務もそれぞれの船の科長だとか副長だとか艦長もやらせていただきましたし、護衛隊の司令もやらせていただきましたし、護衛隊群司令、自衛艦隊司令官、第一術科学校長等ほとんどの陸上、海上の配置をやらせていただきましたが、私自身この種の核についての教育を受けたという記憶がないのであります。ただ、自分たちで大変今度の核というのが、ベータ線がどうだ、ガンマ線がどうだという、一般に出されてあるとおりであるとこれは大変なのだぞと、そしてまた一方、CBR戦ということでアメリカに留学した者が帰ってくると、応急という中でそういうふうなものに対する何かがあるぞということはありましたが、このようなものを組織立てて、そして教育を受けてきたという記憶はございません。それから、私が海上部隊の指揮官もやり、そして海上幕僚長をやっておりました中で、アメリカが核を使用する場合のことについて、訓練上とか教育上でそれを前提としたことは一切ありませんし、そういうものに触れたことはございません。  したがいまして、先般も先生が国会でなにされたときに、ああ、やはり知識として、その核というものが少なくとも兵器としてある以上、我が国がそれの攻撃を受けたときには、我が国の特性から、家屋その他いろいろ違いますから、そういう点からどのようになるのだろうか、どうだというようなことはもっとやはり知識としては教育する必要があるのじゃないかなということを個人的に考えたぐらいでございますので、今のような教育を受けた記憶も、そして現在アメリカとはそういうことをやった何もございません。
  77. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これも論争するつもりはございませんけれども、竹田さんは二、三時間と言われたけれども、私が手に入れた「教育課目表」ですと、準指揮幕僚課程で六十時間当時やっております。私のものは、これは高級課程で、一佐、二佐の師団長候補の二十名ぐらいに対する教育で、これは相当本格的なものだっただろうと思うわけです。ある元校長さんは、昔の先輩は勇気があったなという感想まで漏らされました。  竹田さんにもう一つ、午前中問題になった点でお伺いしたいのは、竹田さんが今度出された「危機管理なき国家」でキューバ危機問題を書かれていますけれども、キューバ危機のときに、午前中の参考人がシビリアンコントロールに関連して六二年九月、あのときに防衛庁長官も総理大臣も知らないうちに航空自衛隊がDEFCONのかなりの段階、3かどうかわかりませんけれども、に入ったという事実に触れられた。我々もその後三十八度線で何か起きたときに、航空自衛隊が米軍とともにかなりの警戒体制に入ったことが問題になった記憶があるのですけども、これはどうなのですか、DEFCON問題。やはり自民党の安保調査会のあなたの発言で、ガイドラインに基づく共同研究をやったときに一つ問題になったのは、アメリカではDEFCONについて部隊長権限でどんどんやれる、日本の場合にはそうなっていないので、これは非常にすり合わせが困難だったということに触れられておられるのです。かつて、本当にシビリアンコントロールとの関係で、防衛庁長官あるいは総理大臣が知らない間に日米共同対処ということで、キューバ危機のときなんかにDEFCON体制のグレードアップしてしまったという事実、そのほかのときでもやっぱりあるのですか。
  78. 竹田五郎

    参考人(竹田五郎君) 私は記憶ありません。DEFCONというのは、多分キューバ時期ならそういう規則もまだなかったのじゃないかと思うのです、防衛庁としてはなかったと思います。その後領空侵犯措置の体制が決められまして、私はこういう体制はあるべきだと思うわけです。そしてそれは本当は部隊長でもいいと思うのです。これは何も戦争するというわけじゃなくて、平素部隊長に与えられた権限の範囲で準備をするだけなのですから、私は部隊長レベルでもいいと思いますけれども、現在は防衛庁長官の許可を受けてやることになっております。ミグ25事件のああいうときこそ私は長官から命令が出るべきだったと今でも思っておるのですが、出ておりません。これは作戦準備とは違うのですね。広い意味で言えばそれは準備ですから、準備には間違いないのですけれども、あくまで部隊長に与えられた権限の範囲で隊員を非常呼集して飛行機を準備をして、そしてそれに弾を積むだけでありまして、行けという号令は上からの命令が出なければできないわけでありますから、いわば気をつけ、休めをするぐらいのことは当然やるべきだと思います。
  79. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 前田参考人にもう時間も余りありませんから二問お伺いしたいのですが、一つは、陸上自衛隊には野外令というのがあって、これは我々も要望すると見せてくれたりするのですけれども、海上自衛隊の場合には陸自の野外令に相当するものがないというふうに言われるのです。しかし、例えば対潜作戦のこともきょうお触れになったけれども、シーレーン防衛その他で対潜作戦あるいは海峡封鎖で機雷敷設等々の作戦の、そういう戦術面の大綱を詳しく書いた陸上自衛隊の野外令に当たるようなものは海上自衛隊もお持ちなのでしょう。あるいはお持ちでないのだったらなぜ持っていないのか、それが一問。  それから第二問は、これも今後日米共同対処で大問題に、これまでもなったし、今後もなると思うのですけれども、日米共同対処の際の統一した指揮の問題ですね。NATO軍の場合には統一司令部があるけれども、日本の場合にはそういうものでなくてガイドラインで調整ということになっているわけですね。今度中央指揮所もできて横田の司令部との調整ということも進むのだそうですが、これは建前として調整でやるのだ、主権を守ってということになっているのだが、例えばリムパックなどの共同演習の場合、リンク11という大変高度な装置を護衛艦に積み込んでアメリカとの間でデータ交換する。その際、リムパックのように日本が参加した場合、一つの円型陣なら円型陣、艦隊を組んで日米共同対処する際、やはり統一司令部から来るわけでしょう。そういう際、指揮を日本は受けて護衛艦は訓練をやっているのじゃないか。いや調整ですと答えるのだけれども、具体的にわからぬわけです。そういう演習の際の統一した指揮をいかにして一体調整しているのか。ここら辺の問題ですね。その二問お答えいただきたいと思います。
  80. 前田優

    参考人(前田優君) 私は、陸上自衛隊の野外令なるものを不敏にしてよく承知しておりませんが、今先生のおっしゃられますような対潜戦の実施要領とかそのときにどのようにやるかということについては、マニュアル的なものは機器の取り扱い等を含めまして当然あります。秘ではございません。それから対潜戦の原則は、相手潜水艦に対してはどのようなおとり戦術をやって、こっちで擬音を出しながら、こうせよああせよというようなことはいっぱいありますので、それは戦法としてありますが、秘です。はっきり言いましてそういう野外令のようなものはありません。したがいまして、対潜戦のやり方はそれこそ我が方の手の内を見せますので、装備しておる機器が全部各国によって違いますから、これはどこにでもそのようなものを、一般原則論としては潜水艦をやるのには対潜戦ではまず所在を確認しなさいと、そんなことはもう常識としては対潜戦の原則としては普通にやっておりますが、今野外令というのはどんなものか知りませんが、そういうものはございません。  それから、日本共同訓練のときにその指揮調整は当然連合の指揮をやっておるのじゃないか。これは一つの例を申し上げますと、私は第二護衛隊群司令のときに我が日米共同対潜訓練の指揮官をやらされたわけであります。そうしますと、私がやるというので、当初は向こう側の指揮官は、アメリカは五隻ぐらいでしたが、いわゆる指揮官は大佐の予定だったのです。ところが、私が将補で出るということがはっきりしたものですから、向こうも急遽フィリピンから少将を連れてまいりました。それは調整をやります場合に、階級が上だとどうしてもやられるからという配慮があったのだと思います。そのときに私が申し上げますのは、結論は調整でやっておるから大変不便なのです、しかし、これは国家の方針であり、我々の置かれております集団自衛権の範囲を絶対に出ちゃいかぬぞということから、非常に軍事的には困りますが、現在これを本当に守っております。それで困っております。
  81. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 困っている。
  82. 前田優

    参考人(前田優君) はい。それはそのときも私の方で、天候が非常に悪いときが一週間の中で四日も続きまして、収容できませんので、魚雷の発射ができなかったわけであります。それで、本当なら二人で話し合って、おい延ばそうじゃないか、延ばせと、こう言いたいのです。ところがそれは上からはっきりと期間と訓練項目を決められておりますから勝手にできません。したがいまして、向こうはおい延ばそうやとくるです、当然自分たちの権限ですから。ところが私はそれを自衛艦隊司令官に電報で打ちまして、自衛艦隊司令官はそれを海上幕僚長の方へ言いまして、内部部局に言って、米軍と向こうの在日米海軍との調整をやって、よろしいと、こうくるわけです。一日かかります。それで、向こうは何やっておるのだと、寒い二月の荒天の中でやっておるわけです。そのときに私たちが打った電報を自衛艦隊司令部、これは内幕ですが、自衛艦隊司令部の幕僚の処理が遅いといって当時の自衛艦隊司令が大変おしかりになられたということも聞いて、我々はもっとしっかりやってくれぬと困るなどと思ったこともありますが、やっぱり調整です。
  83. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 終わります。
  84. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 民社党の関でございます。  きょうは御苦労さまでございました。お三人とも制服を脱いでおられるので、率直に御意見をお伺いしたいと思います。  まず、竹田さんにシビリアンコントロールの問題をお伺いしたいと思うのですが、シビリアンコントロールというのは、まず第一に防衛庁長官であり、総理大臣であり、そしてまた国会だろうと思うのですけれども、現在、本来の意味のシビリアンコントロールが十分に行われているかどうか。つまり、軍事的な知識を持った人がやはりシビリアンとしてコントロールしなくちゃいけないだろうと思うのですけれども、今の日本では防衛庁長官というのは大体十カ月足らずで交代しております。この間予算委員会で中曽根さんにも、そんなことじゃ困るじゃないかと言ったら、一般論としてはそのとおりだけれども、やはりいろいろな人に閣僚の経験をやってもらうのもプラスの面があるからやむを得ないのだというふうな答弁がありました。こういう状況で、つまり軍事的な知識を余り持たない人が防衛庁長官なんかになれば、結局は内局が制服をコントロールするという形のシビリアンコントロールになってしまうのじゃないかと思うのですけれども、そういう現状をどういうふうに認識しておられるかということ。  それから、第二点は国防会議、これは私はもっと重要な問題を決めなくちゃならないのに、実際においては防衛庁予算をオーソライズするといいますか、回数も一年に一回か二回ぐらいしか開かれていないように思うのですけれども、この国防会議は現在のままの組織でもっと運用面を考えれば有効に機能し得るのか、それとも組織そのものを改める必要があるのか。例えば各省からの出向ですが、そういう組織そのものを改める必要があるというふうにお考えなのか。それが第二点。  それから第三点に、統幕議長の権限を、行動運用について部隊を統制する権限が必要だというふうに言われましたけれども、これは有事の際、統合部隊が編成されれば統幕議長が指揮するわけですけれども、そうじゃない場合に有事だけのことを言っておられるのか、あるいは平時においても教育訓練であるとか後方計画の作成であるとか、そういったものを含めてもっと統幕議長の権限を強化する必要があるのか。先ほど私、初めてお伺いしてびっくりしたのですけれども、対空火器なんかは、空の方は陸の廃棄処分になったものを使っているという話だったのです。こういうのはもっと融通して使ったらいいのじゃないかということを感ずるのですけれども、これは今の組織じゃできないのですかどうか、そのことが第三点の問題です。  それから鈴木さんと前田さんには、統幕議長の権限を強化することに対してそれぞれ陸あるいは海として賛成なのか反対なのか。竹田さんが意見を述べられるだろうと思いますけれども、それに対して賛成なのか反対なのか、そのことをお伺いしたいと思います。  それからお三人の方には、今ないない尽くし、あれもないこれもないという話を聞いたのですけれども、最小限それぞれ陸海空に割り当てられている予算の何%ふやせばまあまあ、それでも足りないと思うけれども、最小限充足することができるかどうか。それから、それほど伸びない場合においてどういう優先順位でその金を使っていったらいいか、現状より少しでも金がふえた場合にそれをどういう優先順位で、例えば後方施設にやるか、あるいは隊員の処遇の方に充てるか、あるいは正面装備の方に充てるか、その優先順位はどういうふうにそれぞれ考えておられるのか、陸海空として、それをお三人にお伺いしたいと思います。  それから松尾参考人には、私は最近の電子兵器のことなんか全然素人なのですけれども、お教えいただきたいという意味で質問するのです。SDIは一応ICBMなんかの戦略核兵器から守るのだということになっているのですけれども、SS20みたいな中距離核兵器、これも守れるようになるのかどうか。  それから二番目は、SDIの研究ソ連はどの程度やっているのか、もし情報をお持ちであればそのことをお尋ねしたいと思います。  それから三番目に、資源探査衛星と偵察衛星ですが、これは単に正確度の違いだけなのか、あるいは機能上の違いがあるのか、これは私も全然知りませんので、そのこともお教えいただきたいというふうに思っております。  以上です。
  85. 竹田五郎

    参考人(竹田五郎君) じゃ、私からお答えします。  現在のシビリアンコントロールですが、平時だから大きくこれは困るというようなことはないように思います。内局も十年前とは違いまして非常に勉強もされましたし、軍事常識もついてきておりますから、平時の状態において非常に困ったというような経験はないのですけれども、私の経験から言いますと、F4爆撃装置を外すとか空中給油装置を外すとかいうようなことが、あのときの答弁等を見まして、もしこれが軍事常識があればああいうことにはならなかっただろうという感じを持ちましたし、ミグ25の函館不法着陸のとき領空侵犯というものがどういうものであるか、またそのときにはどういう態勢をとるべきかという理解があったならば、二日間も防衛庁が蚊帳の外におったという国際的にも恥ずかしいようなことはなかっただろうというようなことを時々感じますけれども、平常において困るというようなことはないように思います。ただし、これが有事になりますといろいろな問題が起こってくるのじゃないかという懸念をいたします。  次は、国防会議でございますが、今のままでは私は機能しないと思うのです。それは組織というよりも、国防会議を使って訓練をして、そのためには通信等も整えた特別な施設をつくって、やっぱり訓練が必要だと思うのです。訓練というのは平素の仕事を通じての訓練もあると思います。当然、国防会議が開かれるべきときでも国防会議はもう別な場所でノータッチでございますから、今のままでいくならば役に立たないと思います。ではこれを組織を変えてということになると、まずは訓練してみて、使ってみての結果じゃないかというふうに思います。  次は、統幕議長の権限は、平時においては訓練ということについてタッチできるようにしておく必要があると思いますし、また、各自衛隊の能力を査察するというような権限は統幕議長が持っておくべきだという感じを持ちます。統幕議長の権限で一番困るのはやはり有事なのでございます。平時から予算の割り振りまで統幕議長がやるというのは、私はそこまでいかなくてもいいのじゃないかというふうに思います。  次は、ないない尽くしの中で:::
  86. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 ちょっとその点で、よろしゅうございますか。
  87. 安孫子藤吉

    ○小委員長安孫子藤吉君) どうぞ。
  88. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 有事のときですけれども、今陸海空幕僚長に対して防衛庁長官が指令するというふうになっていますね、それが問題だと言われるわけですか。
  89. 竹田五郎

    参考人(竹田五郎君) いや、それよりもむしろ、そういう手続の方はまだまだよろしいのですが、事務次官の関係。事務次官はすべて統括しますから、事務を総括することになっております。自衛隊では行動運用ということともう一つ行政的な事務と、大きく分けて二つあると思うのです。一般の官庁ですと行動運用というようなことはまず考えなくてもいいわけですけれども、平常の行政的な事務であればこれは時間をかけてゆっくりやってもいいわけです。しかし、行動運用となりますと、まして有事になりますと状況は刻々変わるし、適切な措置をするのに一々事務次官を通じて長官の補佐をするというような形は屋上屋を重ねます。しかもまた、隊員を使って敵と戦い死ねというようなことは、平素同じような訓練をし、同じ立場にある者を経ていくことでないとなかなかやはり人間でございますからまどろっこしいというような感じを持つのではないかと思います。要するに、事務次官が事務を統括するということで行動運用まで持つということが有事においては屋上屋になるのではないかという心配であります。幕僚長を通じてやるということは、私は現在のままならそれでも大きな支障にはならないと思うのです。しょっちゅう顔を合わせてそういう会議を持つわけですからまだいいと思います。  次は、ないない尽くしの中でどのくらいふやせばいいかということですが、金目で言うのも非常に言い過ぎだと思いますが、二倍にする必要はないと思うのです。五割内外のところじゃないかという、全くのヤマカンでございます。今のままでは足りない、しかし二倍は要らないだろうというふうに思います。  優先順位ということになりますと、陸海空の優先もあるでしょうけれども、これはやはり機能的に見まして、例えば各自衛隊の防空能力というものは、これは絶対に足りないというふうに思います。  それから、正面と後方はどうかということになりますと、弾などを正面の方に入れますと、今の形はだんだん是正されておりますから、今の流れの趨勢の中で全体的に膨らませばいいのじゃないかという感じを持つわけです、今防衛庁も後方重視の傾向が出ておりますから。  以上でございます。
  90. 鈴木敏通

    参考人鈴木敏通君) 内局が実際のシビリアンコントロールをやっているのじゃないかというようなお話につきましては、長官が早くおかわりになるということは、確かにこれは私ども問題であると思います。もうちょっと長くおやりになった方が、せっかく御説明をしていろいろ部隊視察もやられて、ある程度おわかりになって余り早くおかわりになるというのは、これはやっぱりちょっと適当な姿ではないなと思います。したがって、非常に御立派な長官ばかりおいでになられますけれども、非常に御努力をされないとどうしても難しい面があろう。そういう関係で内局が実際のシビリアンコントロールをやっているのじゃないかというお話につきましては、今竹田参考人からも話もありましたが、最近、特に内局の背広組と制服組が意思の疎通に十分注意をしまして、しばしばいろいろな懇談会もやっておりますし、お互いに意見もざっくばらんに交わして非常によくなっておると私は思っております。したがって、そういう感じにはなっておらないと思います。  それから、国際会議がどうあるべきかという問題でございますが、実はこれは私、余りよく内情を知りませんので、御意見を申し上げることはできない、こういうことでございます。  それから、統合指揮につきまして、これは有事だけかというようなお話でございますが、これは今竹田参考人から話がありましたように特に有事に十分注意をしなきゃならない、有事にどうあるべきかということはもっとよく検討をして、しっかり考えておかなければいかぬというふうに思います。特に軍令系統でございます。昔言った軍令系統というのは、軍政とは違って非常にスピードも要しますし、その辺の機能別の分配とか、そういうものもございますので、これはしっかりした組織がなきゃいかぬと思います。  それから、陸上幕僚長の立場から議長の権限強化に賛成かというお話でございますが、これは今申し上げましたようにふだんは余り問題はありません。統幕会議というのがありまして、私ども竹田さんとしょっちゅう顔を合わしておったのでございますが、あるいは前田さんとも合わしていましたが、ふだんはそれほど大きな問題はない。やはりこれは有事の場合に議長権限というのをどうするのかというところに、あるいはこれは長官の権限になるのかもしれません、機能別にどういうふうに配分するのかというようなところは相当問題になろうかと思いますので、そこはしっかり考えなければいかぬという気がいたします。  それから、最小限同%プラスが要るかということですが、これも私の感じでございますが、五割増しいただければ、何とかもう少しまとまった、小粒でもぴりっと辛いというような中身ができるのじゃないかという感じがいたします。  優先順位につきましては、今おっしゃられた対空は非常に重視しておる。ただ全般に、先ほど私が最初御説明申し上げたように、いろいろな機能がバランスを持っていませんと、ある特定のところだけやっても非常にこれはぐあいが悪うございますので、バランスよく細かく検討して、実態をよく認識をしてやっていく。よく質を重視する。もちろん質はよくなきゃいけませんが、これは量も絡むのでございまして、質量バランスを持って、機能がバランスを持ってということをやっぱり重視をするべきであると思います。
  91. 前田優

    参考人(前田優君) 二点御質問があったと思います。  一つは、統幕議長の権限を強化することについて賛成か反対か。この点につきましては、私は賛成か反対かということにつきましては、次の結果で決めるべきだというふうに思っております。といいますのは、現在の自衛隊法によりまして、私は創設期の統合幕僚会議事務局なるものに、三十二年から四年間ほど走り使いをやらしていただいておりました。そのときに、その統合幕僚会議事務局なるものはどういう生い立ちで出てきたのか、どのようなことをどうやるのか、内局との絡みはどうなのかというようなことが全く雲をつかむような形でその当時の方たちがやっておられたことを思い出します。  といいますのは、軍事力の独走をまず抑えようじゃないか、それとまず軍事力というか、防衛力というものがうまく、制服等だけで勝手に陸は陸、空は空、その他だけでやるようなことのないようにしようじゃないかというようなところから、いろいろ考えられた一環としてこの統合幕僚会議、そして各幕があるというようなことがやられたのじゃないかと思うのです。しかし、それからもう三十有余年たっております。その間に海上自衛隊だけではなくて防衛庁として当然いろいろな経験をしてきております。現在これがそのままでいいかどうかということはいっぱい問題が出ております、平素の維持管理の問題について、それから有事の指揮につきまして。こういう点を洗いざらい、行動の基本はだれが出すのか、それは内局の事務次官がやるのか、統幕議長がやるのがいいのかというようなことまで全部問題点をある程度ずうっとやってきております。  したがいまして、私が申し上げますのは、強化するにしろ今のままでいいにしろ、あるいは弱体化させる必要があるなら弱体化させるにしろ、現在までの問題点をもっと平時と有事とにおいてあらゆる面で洗い出すべきだ。そしてその際に、アメリカの統合参謀議長が指揮下に各太平洋軍、大西洋軍を持っておってこれこれやっておるからというのは、それは参考になってもそのまねはなりません。まず戦域が違います。日本の狭い国土の中でやりますときに、アメリカと同じ統合軍を北海道に置き、それぞれ置きましたら、それこそ結節だけでもう詰まってしまいます。そういうふうな点、いろいろな我が国特有のものが、国民性も含めてシビリアンコントロールと同じで我が国に最もマッチしたものをこの際やっていただくべきだ。ただしかし、もう三十年たっておりますから、確かに今のままでは不十分だということがもう出てきております。これでひとつ御勘弁をいただきたい。  それから、今の予算の件でございますけれども、私はちょうど二年前にやめさしていただきましたが、その際に、金額ではちょっともう自信がありません。情勢が、その前のものが大分出てきておりますし、それによってコンピューター化された作戦の後方支援が私のおった二年前とは大分違ってきております。そういう面も含めまして、ただ言えますことは、各幕が概算要求をします場合に、制服としてこれだけはぜひ六十年度の予算では獲得したいというものを内局に出します。そして事務的にいろいろやり合いします。その予算をいただければある程度各幕は自分の夢が描けるのではないか。ただし、それでも長官指示に盛るような形で一%を超えぬようにというようなことが最大限の枠で来ますから、そういうときにある程度、今先生から御質問いただいたようなことで各幕に作業さしていただければ、それはおのずから金額として出てこようかと思います。
  92. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 ちょっといいですか、その点で。  各幕僚長で出されるわけですね。それでまず内局の方と折衝し、大蔵省と折衝して実際削られるわけですね。現在削られたのが予算として議会の承認を得ているわけだけれども、出されるのはそれの何割増しぐらいですか、金額じゃなしに。
  93. 前田優

    参考人(前田優君) 何割増しはございません。といいますのは、この防衛計画大綱に従って、別表によって艦艇がいつまでに、六十一年までにはこれだけのものをというのがありますから、落とされたものについて、護衛艦でいいますとどうしてもここでやってもらわないと最終はできなくなるという格好で艦艇はまず要求します。それから航空機ですと、P3Cをこの関係で入れていただかないと現有兵力と大綱で決められた表とはこれだけ差が出てくる。今でも、御承知かと思いますが、完成時において、護衛艦において、それから飛行機において三十機のもうなにが足らないのが出てきますというのは、全部そういう形でそれを何とか防衛計画大綱別表まで持っていこうとしておりますから、何割増しはございません。もうそれでやっていって内局と話して、それは今回はここでというような格好でやり合っております。
  94. 松尾雅史

    参考人(松尾雅史君) 二点御説明申し上げます。一点はSDI、もう一点は資源探査衛星と偵察衛星の点について御回答申し上げます。  SDIにつきましては、一般にSDIすなわちスターウオーズというような言葉がよく使われますけれども、これは非常に一面をとらえているにすぎないという感じがいたします。従来、レーザー兵器なり電子ビーム兵器というものがだんだん兵器として形を整えてまいりまして、これがABMのかわりにICBM、IRBMに対抗して一つの兵器体系としてSDIという認識が出てきたと思います。もう一つのとらえ方は、これはICBM、IRBMだけではなくて、例えば将来レーザー兵器、電子ビーム兵器がパワーが、能力が上がってまいりますと航空機巡航ミサイルに対しても効果を持ってくるだろうと考えられます。すなわち、空気中の伝搬ロスに対していかに耐えるかという問題でございます。  SS20に対してこれは利用できるかという御質問でございますが、これは当然対象になると考えます。ただし、その探知網を整備する必要がございます。すなわち、探知した後にレーザー兵器また電子ビーム兵器で攻撃することになるわけでございます。  それから、ソ連でやっているかどうかという御質問、ちょっと私勉強不足でわかりませんが、技術雑誌で見ました範囲では、一九七〇年代からちらほら粒子兵器であるとかレーザー兵器の記事は出ております。  それから次に、資源探査衛星と偵察衛星の違いでございますが、衛星の高度で申しまして、資源探査衛星は大体五百キロから九百キロぐらいの高度を飛んでおります。例えばランドサットの例でございます。それから、偵察衛星と名のって飛んでおりますものは百六十キロから大体五百キロぐらいの高度のものが多うございます。これは写真による偵察衛星を対象としております。それで、この衛星の能力を評価します言葉にスペクトラムと分解能というものがございます。スペクトラムと申しますのは可視光線ですとか赤外線ですとか電波を使うというものです。それから分解能というのは二つの物体をどう区分して見るかというものでございますが、例えばランドサットの場合ですと三十メートル程度の分解能を持っています。一般に資源探査衛星と名のって、例えば森林資源ですとか、農業ですとか、工業資源ですとか、こういうものを対象にしていますものは十メートル以上の分解能を持っているような感じがいたします。それに対しまして偵察衛星というのはもう少し精度が上がっている。精度がちょっと違うだけであると思います。ただし、例えば数メートルの分解能のものを地震予知というふうな面で見ますと非常に分解能が高いものを要求されます。それでございますから、分解能が高いからすなわち偵察衛星ということでもございません。  以上でございます。
  95. 秦豊

    ○秦豊君 私の立場はインデペンデンツ、無所属ですからどの政党政派にも関係はありません。きょう皆さんをお招きしたのは、各党並びに無所属、我々会派の合意の産物でありまして、やはり私自身はこういう機会は多ければ多いほどよい、願わくばもっと早ければベターであったという見解を持っております。  質問は具体的にしますけれども、その前に、さっきから皆さんのお話を聞いていて、共感する部分もある。例えば、顧みてクールに自己解析をしてみて、一体我が国に国家戦略と呼ぶに値する総合的で欠落と盲点のない精緻なシステム、理論としてもシステムとしても完備したものが具備されているかと厳しく問われれば、肯定的な回答は出ない。それから、国防の基本方針があるじゃないか、これは作文にすぎない。  皆さんがやってきたことは何か。これはやっぱり三幕がそれぞれに見積もり、積み上げ、積算をし予算表にまとめ上げたものが内局というフィルターを通り、大蔵省主計局のややシビアに見えるあのフィルターを通り、我々国会の場にかかってくる。しかし、それは必ずしも一次防以来抜本的な改変を経たためしはかつてない。それは何か。政治に集中的な国家戦略がなかったためであると私はそう思っている。それはしかし、現在の国会の論議の現状を反映しているのであって、これほど多党化し、各政党間の防衛政策に懸隔がある以上モノクロ的な討議はとてもできない。したがってその現状を反映しているのだけれども、やはりこれからは国会論議に望まれるのは、真のチェック機能を果たすためには、イデオロギーやスローガンでなくて実態に切り込んだ防衛論議が今後いよいよ求められる、でなければ我々は任を全うできない、こういう見解を持っている一人です。  そこで、二十分もありますから一問一答でやった方がわかりやすいと思う。  竹田さん、あなたとはテレビの討論会では一緒になったことはあるけれども、こういう場では初めてなので、皆さんの頭の中には生涯守らねばならないマル秘、機密、いろいろ詰まっている、それは十分承知して聞いているのだけれども、防衛庁の局長とか外務省の局長に聞いても全然返ってこない問題がたくさんあるわけです。非常に率直に聞きますけれども、例えばシーレーンの防空についてはアメリカ側は何ら保障していませんね。これは日本の領域でしょう、日本の担務でしょう、シーレーン防空。
  96. 竹田五郎

    参考人(竹田五郎君) はい、そうであります。
  97. 秦豊

    ○秦豊君 そうですね。  それから、三海峡の封鎖については日米の役割はかなり精緻に分担が決まっていますか。
  98. 竹田五郎

    参考人(竹田五郎君) 私は決まっていないような感じを持ちますが、むしろこれは海上自衛隊の方が詳しいのではないかと思います。
  99. 秦豊

    ○秦豊君 後で聞いてみたいと思います。あなたが統幕議長時代にはなかったですか。
  100. 竹田五郎

    参考人(竹田五郎君) そういう日米間で細かく詰めたというのはありません。
  101. 秦豊

    ○秦豊君 しかし、詰める必要はあるでしょう。
  102. 竹田五郎

    参考人(竹田五郎君) あると思います。
  103. 秦豊

    ○秦豊君 それじゃ前田参考人、例えば常識ですね、平時から有事に一挙に移行する場合がある。その場合、海峡封鎖というのは重要な対ソ作戦の部分でしょう。その部分を担う場合の日米の役割分担が決まってない、これはむしろナンセンスです。現在では日米共同作戦で私は決まっていると思うのですよ。どうお考えですか。
  104. 前田優

    参考人(前田優君) 今、率直に申しますと、はっきり決まっております。海上自衛隊がやることになっております。我が方でやることになっております。といいますのは、今の日米共同作戦計画の内容は私は全然知りません。ただ、今竹田参考人が言われましたが、これははっきりと防勢作戦の中で我が方の国土防衛上とシーレーン防衛上最も必要な作戦の重要な部分をなしますので、米軍との、おまえこう来たらこうせい、ああせいというのは、私たちは海峡阻止とは言いませんが、通峡阻止と言っておりますが、通峡阻止という作戦分担は我が方の独自の作戦でございます。独自といいますのは、大きな中で共同はしてやりますし、戦況によってはその支援等は受けることはありましょうが、我が方が主として作戦をやるべき沿岸防備、港湾防備と同じ範疇でとらえております。
  105. 秦豊

    ○秦豊君 私なんか素人だからわからないが、例えばサハリンとかその他極東ソ連空軍を考えた場合に、そんなことをあなたはおっしゃるけれども、例えばチョークポイント宗谷に特定した場合に、航空優勢を堅持しながら何千個を超える機雷をまき、キャプター機雷を含めて、そして反撃を阻止しながら通峡阻止という準備と完了ができるかどうかというのは大変難しい作戦です。その場合に、単独でうちの任務ですとおっしゃったけれども、宗谷は日米共同の範囲に入っているのじゃありませんか。
  106. 前田優

    参考人(前田優君) その点につきましては、私先ほど申しましたように、今まではそのような日米共同作戦についてはっきりと向こうと話し合って作戦計画をつくることは一切やっておりません。したがいまして、現在まで宗谷の防備だけを例にとりまして、これについては北海道上着陸侵攻があった場合にアメリカが何個師団、いつどのようにどうだというようなことを一切私は承知してないと同じで、我が方があそこは独自で守ることはもう到底不可能に近いぞと、事態と様相によっては。それは航空自衛隊の航空優勢が確保されておるとき、あるいはパリティがあるときはこういうことができるし、こういうこともやれるし、やらなくちゃならぬという詰め方をしております。したがいまして、向こうと話し合って、こうやるから、このように必要だからおまえの方でこうということは私は承知しておりません。
  107. 秦豊

    ○秦豊君 皆さんはもう守るべきものを守ってください。頭に入った情報の中で。そんなものはちっとも期待していません。今度の共同作戦では海峡封鎖も確かに精緻に確定されたらしいと私は思います。  そこで、竹田さん、あなたは空の御出身ですから、この間トーネードに試乗されましたね。それで、次期対地支援戦闘機、私はこの問題を五、六年前から国会で追求しているのです、なぜなぜという観点で。このFSXは国産という方向が濃厚なのです、防衛庁の局長はっきり言いませんけれども。国産が最良の選択とお考えですか。
  108. 竹田五郎

    参考人(竹田五郎君) これは運用要求が決まりまして、その運用要求に応じて安いのがあればそれが一番いいと思うので、国産であるか輸入であるかは、これは私にはわかりません。それは航空幕僚官が査定すると思います。
  109. 秦豊

    ○秦豊君 竹田さん、技本の本部長がもう既に空幕にリポートを出したわけだ。それは国産化を前提にしているわけだ。国産化可能というリポートを出しているわけだ。国産化可能というリポートを技本本部長が出したということは、つまり運用それから要求性能等々、ある程度の機数まで、概数まで含めて一体これだけのエアパワーを国産化できるかどうかを諮問したわけです。それについて可能という答申をしているわけです。相当作業は進んでいるわけです。  私は、頭からこういう視野狭窄で決めてはならぬ、こういう問題は。これこそユニホームの問題じゃなくて政治の領域です。政治がそれこそあなた方の話で言えば防衛期待度ではないが、空についてはこうこうこういう防衛を完遂したまえというオーダーを下す、これは政治の領域ですよ。これは空幕の仕事は部分的な仕事にすぎないと思うのです。だけれども、今のところの動きは大変ピッチが速くて、何だか国産化、国産化のボリュームのみが強過ぎるからちょっと参考にあなたに聞いたのですけれども、気をつけないとこのまま国産化でつっ走りそうなのだ。つっ走りそうだが、私はそれは必ずしも国の安全保障施策にとって最良の選択ではないという私見を持っているのですが、その議論はきょうはもう時間がないからしません。  鈴木参考人、五九中業では師団の改編という言葉をちょっと使っているのですね。改編とは何かと、なかなか難しいのだけれども、今の十三個師団、一戦闘団を、私は北方重視なら重視でよろしい、皆さんが本当に精緻に練ったものならば。ならば、重点的に十三個師団のどこをどう引き抜いて新しい師団を作るのか。道内の二、四、七師団にプラスアルファして重師団を編成するかどうかは別として。重点化すればあとはどうしてもばらつきが出ますね。私は昔から、重点志向は結構だが、あとは空中機動を含めて機動性のある軽い旅団、戦闘団というふうなものを各地に置いて、それで北なり西なり二正面なりわからないが、重点とするところにはあなた方の軍事的合理性の中で国会が許す範囲で重点志向をしなさい、しかし、ビルド・アンド・ビルドは許されませんよ、スクラップ・アンド・ビルドでなきゃいけないという考えを持っているのですが、鈴木さん、どんなお考えですか。
  110. 鈴木敏通

    参考人鈴木敏通君) 五九中業で師団改編というその言葉がやや誤解を私は与えるのじゃないかという感じがするわけであります。北海道が一番距離的にも近いというようなこともあり、これの人員充足率を上げ、装備をしっかり充実をし、有事即応と我々はよく言いますけれども、そういう感じの師団にすべきであると、そういう意味で今まであった師団の幾分の手直しでございますが、それは必要だろう。そういうことを大体師団改編というような言葉であらわしておりますけれども、内容的にはそんなに大きな全然違う師団をつくるということではないというふうに私は認識をしております。  それで、今お話しのございました本州の方におる部隊をうんと軽くしてということになりますと、思想的にはあちこち機動容易な部隊にしておくという思想はその方がいいと私も思いますが、それも程度問題でございまして、余りに編成的にも北海道におる師団と本州におる師団が違うような形になるのは好ましくないというふうに私は考えます。これは随分昔にも内局でその種の意見が出たことがございまして、大分ディスカッションしたことがございますが、十三個師団の普段の訓練を考えましても、違う質の師団では訓練上もばらばらになって非常にぐあいが悪い。それから北海道防衛ということだけを考えても、有事の場合には極端に言えば十三個師団全部北海道へ行って闘わなきゃならない。それが違う形の師団がおったのではまことにどうも運用も難しい、そういうふうに思うわけであります。幾分のニューアンスの差をつけるということでいいと私は思っております。
  111. 秦豊

    ○秦豊君 前田さん、よく海自の皆さんがハイ・バリュー・ユニットという言葉を使っていますね。あれは対象はどんなもんなのですか。
  112. 前田優

    参考人(前田優君) 私が承知しておりますところは、アメリカが普通に使っておる言葉を我々はハイ・バリュー・ユニットというふうに、作戦を遂行する上に大変重要なる船、それを積んでおる船、そういうふうな場合にハイ・バリュー・ユニットというふうな形で使っております。したがって、具体的に、あるときは貨物船であるかもしれませんし、あるときはそれが我が方で言いますと指揮中枢であれば、それをあるところまで移動させようとすればその護衛艦がハイ・バリュー・ユニットになるかもしれませんし、そのときによって違いますが、一応今申し上げていましたように、作戦遂行上大変大事な艦船というふうな形で使っております。
  113. 秦豊

    ○秦豊君 ならば、海上自衛隊アメリカの七艦なり第二艦隊、何でもいいけれども、要するに、アメリカの艦艇と共同訓練している場合、ハイ・バリュー・ユニットというと、常識的には例えばそれがタスクフォース編成であった場合には空母ですね。
  114. 前田優

    参考人(前田優君) 一概にそのようには絶対なりません。といいますのは一緒に:::
  115. 秦豊

    ○秦豊君 いやタスクフォースの場合ですよ。
  116. 前田優

    参考人(前田優君) タスクフォースというのがどういうことをおっしゃっているのかわかりませんが、仮に:::
  117. 秦豊

    ○秦豊君 いや、空母を基幹にした艦隊です。
  118. 前田優

    参考人(前田優君) 空母を基幹とする艦隊の中に我が方がどのような形で入っていくかというのは、具体的に私ちょっと先生がおっしゃっておられることがよく浮かばないのですけれども、我が方が日本の周辺において防衛をやることで、そして防勢を我が方が主としてやっておるその海域等において、たまたまそこをアメリカ攻勢点で我が方がもう欠くことのできない空母がそこで作戦をしておる、仮に先生が言われたとおり。そのときに我が方としては、我が作戦エリアで、しかも対潜戦の主たる方は我が方がやっているというようなときには、それに対してハイ・バリュー・ユニットとしての作戦を実施することは我が方としてはあります。しかし、そのときのなにが向こうの戦術単位の中へ入って、そしてそれを護衛しておるその今の陣形等も、向こうのはっきりしたものをやっておることになるかどうかは一概に申されませんですね。
  119. 秦豊

    ○秦豊君 これは非常に古典的な論争になっているのだけれども、二年ちょっと前、夏目氏がまだ防衛局長のときの参議院の某委員会、秦・夏目論争というのがあったわけだ。その場合に、例えば日本有事を大前提にした場合に、沿海州攻撃に向かうアメリカのタスクフォースを日本の海上戦力が護衛するというケース、一種のイフ論争だけれども、これはあなた方によれば、個別的自衛権の範疇内かといったら範疇内だという答弁が返ってきてこんなになっちゃったわけですね。そこで法制局長官にさらにその同じ問題をやや時間を置いて聞くと、必ずしも個別的自衛権にはなじまないと思いますと、その人は今最高裁にいるけれども。こういう論争があったわけだ。ところが今国会では、より大胆に、さっきから同僚議員が言われているようなケースがどんどん前向きというか、政府によれば前向きだ、きているわけですね。  最近の海上自衛隊の訓練をずっと見ていると、ハイ・バリュー・ユニットというのが盛んに出てくるので参考のためにあなたに聞いてみたのです。ネービーにとっては常識なことは我々政治では厳しくチェックをしなきゃならぬことが多いわけですから、参考のために聞いたのです。
  120. 前田優

    参考人(前田優君) 今おっしゃる点はよくわかります。  ただ私は、何回も申しますが、我が方で米空母と今のタスクフォースをつくって云々という、その護衛をやるための作戦だけを課すというような形の訓練は一切今までやってきておりません。はっきり申しまして、我が方では対潜作戦を実施しておる、そしてその対潜作戦を実施しておるところに、今おっしゃったようなところへ行動する途中で向こうが通るならば、当然我が方はその間において、守るべきエリアなりで目標から対潜作戦の一環として実施します。ただし、それはあくまでもタスクフォースの中に組み入れられて、そしてやっておるということではございません。
  121. 秦豊

    ○秦豊君 それから、松尾参考人はそつじながら自衛隊の御出身ですね。自衛隊ではどんなお仕事が最後だったのですか。
  122. 松尾雅史

    参考人(松尾雅史君) 陸上自衛隊の高射学校におりまして、研究部におりました。
  123. 秦豊

    ○秦豊君 今のお仕事は衛星通信システム本部ですね、これからの領域ですが。日本の政府レベルに聞くとこれは絶対に肯定しないのだけれども、私たちの軍事常識では、例えばアメリカの世界戦略、グローバルな戦略システムがありますね、現に衛星をじゃんじゃん使った。略称WWMCCSなんて言っていますけれども、そういうものと日本のC3Iが連接をしなければ、例えばある状況を共有しなきゃいけない、情報を共有しなきゃいけない、そうでなければ判断が共通できないから、当たり前のことなのです。だから、ソフトの部分とハードの部分の総合体が作戦計画であるとすれば、その作戦を判断し、状況を判断し、オーダーを結びつけて共同作戦をする大前提の大前提が情報です。その場合に日本のC3IとアメリカのWWMCCSシステムが、どういう経路、プロセスかは別として、日常からドッキングをしておく、連接をしておくというふうなことは非常に初歩的な常識じゃないのだろうか。松尾さん、どう思いますか。
  124. 松尾雅史

    参考人(松尾雅史君) ちょっと今御質問いただきました分野ではまだ不勉強でございまして……。
  125. 秦豊

    ○秦豊君 さっきあなたのお話にいろいろ通信系統が出てきたからあえて伺っておるわけです。
  126. 松尾雅史

    参考人(松尾雅史君) これはあくまでも日本のことで考えましたので、外国と連接を持つという点についてはまだ勉強しておりません。
  127. 秦豊

    ○秦豊君 それから、あと二分もありますから。先ほどからあなた方のお話を聞いていると、偵察衛星ですか、偵察衛星、戦略情報、ソ連の奥深くと、こういうことなのですね。これはしかし、常識的に考えて打ち上げ技術は既に我が国は持っているでしょう。ただし、あなたの言った解析能力、解像能力、それを今外務省はちょうど研究していますが、地上の支援施設を含めて一個の衛星を打ち上げてもなかなか軍事的効果は出てこない。少なくとも二個の低軌道の近地点百二十キロから百五十キロ程度のものを打ち上げなければとても物の用に立ち得べしとも思われずという感じになるので、偵察衛星が非常にシンボリックになっていますけれども、そんなものを一個だけ打ち上げて、極東ソ連軍の戦略情報は我が手にありなどということは幻想にすぎないのではないか。かなり効果的な運用をするためには、竹田さん、一個の衛星ではとても無理じゃありませんか。
  128. 竹田五郎

    参考人(竹田五郎君) いや、私はそこまで勉強していないのです。ただ一般論としての意味を申し上げました。
  129. 秦豊

    ○秦豊君 あなたはどう思われますか。
  130. 鈴木敏通

    参考人鈴木敏通君) そう思います。一個ではだめだと思います。数個少なくとも要ると思います。私が承知しておる概略の情報でございますが、月に十個人工衛星が打ち上げられて、そのうちの七個が軍事衛星で、その七個のうち六個がソ連が上げておって一個がアメリカが上げておる。なぜソ連アメリカがそんなに衛星の数が違うかといいますと、アメリカの衛星は寿命が長い、ソ連のは非常に短いというようなことでそういう数の差が出ておりますが、たった一個じゃなくて、寿命もございますし、それは数個上げなければいかぬだろうと思います。
  131. 秦豊

    ○秦豊君 なるほど。では終わります。
  132. 安孫子藤吉

    ○小委員長安孫子藤吉君) 以上で質疑は終わりました。  参考人の皆様方にお礼のごあいさつを申し上げます。  本日はまことにお忙しい中を本小委員会に御出席をお願いし、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとう存じました。  ただいまお述べいただきました御意見等につきましては、今後の本小委員会調査参考にいたしたいと存じます。小委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十三分散会