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1985-06-21 第102回国会 参議院 外交・総合安全保障に関する調査特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年六月二十一日(金曜日)    午後二時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         植木 光教君     理 事                 大坪健一郎君                 佐藤栄佐久君                 杉元 恒雄君                 中西 一郎君                 大木 正吾君                 黒柳  明君                 上田耕一郎君                 関  嘉彦君     委 員                 岩動 道行君                 石井 一二君                 大木  浩君                 倉田 寛之君                 源田  実君                 曽根田郁夫君                 高平 公友君                 鳩山威一郎君                 堀江 正夫君                 宮澤  弘君                 久保田真苗君                 志苫  裕君                 松前 達郎君                 中西 珠子君                 和田 教美君                 立木  洋君                 柳澤 錬造君                 秦   豊君    国務大臣        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  加藤 紘一君    政府委員        防衛庁参事官   古川  清君        防衛庁参事官   筒井 良三君        防衛庁長官官房        長        西廣 整輝君        防衛庁防衛局長  矢崎 新二君        防衛庁教育訓練        局長       大高 時男君        防衛庁経理局長  宍倉 宗夫君        防衛庁装備局長  山田 勝久君        防衛施設庁長官  佐々 淳行君        防衛施設庁総務        部長       平   晃君        外務大臣官房審        議官       都甲 岳洋君        外務省北米局長  栗山 尚一君        外務省経済協力        局長       藤田 公郎君        外務省条約局長  小和田 恒君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○外交総合安全保障に関する調査調査報告書に関する件 ○中間報告に関する件 ○継続調査要求に関する件 ○委員派遣に関する件 ○理事の辞任及び補欠選任の件     ─────────────
  2. 植木光教

    委員長植木光教君) ただいまから外交総合安全保障に関する調査特別委員会を開会いたします。  外交総合安全保障に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 源田実

    源田実君 非常に難しい問題でございますが、まず外務大臣にお尋ねしたいと思います。  駆け引きなしに、現在の時局というものは全く容易ならざるものである。一歩誤ると、何事も元も子もなくするような状態になると私は考えております。ところが、その問題の一番危ない大きな問題は東西関係の問題であります。その東西関係について私は今外務大臣にお願いしたいのは、いわゆるその中心的なものは自由諸国ソ連との対立である。ただ、このソ連という国の過去をずっと調べてみても十分なことができないわけですが、これをお聞きしたいのです。それは何かというと、ロシア民族の平和に対する感覚とこれを指導しておるソ連共産党首脳部考え方思想的に一致しておるかどうか、食い違いがあるのかどうか、どうお考えになっておるか、ひとつお願いしたいと思います。
  4. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 大変難しい問題でございますし、私から明確にお答えをするだけの私も知識を持っておりませんけれど、ロシア民族ロシア民族としての長い伝統と歴史を持っておりますし、同時にソ連体制は、ロシア民族もその一環でありますけれど、いわゆる共産主義体制ということで、ソ連のいわゆる共産党の党是に従って世界戦略を進めておるというふうに私は思っております。
  5. 源田実

    源田実君 私のような頭でこれは判断するのも無理な話なのですが、ずっと調べてみまして、スラブというのは本来農耕民族である。この農耕民族というのは平和でなきゃやっていけないのです。したがって特にこれは平和を求める。しかしながら、侵略を受けた場合の抵抗は、この農耕民族は非常に強い抵抗をやるのです。しかし、これを外征に使うと大体うまくいかない。これが今までの経過を見て私の判断しておるところでございますが、要するに農耕民族というのは本来は平和的にできておる、これを外征に使うことは誤りであるというぐあいに考えるのですが、いかがですか。
  6. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) そういうやはり源田先生のお考えもあると思います。
  7. 源田実

    源田実君 それから、実はソ連共産党創始者というとこれはレーニンです。そのレーニンの言っておる言葉に、こういうことを言っておる。「戦争政治の続きである。したがって、戦争の前の政治のあり方を研究しなければならない。」、よく敵が侵略してきたからあれが悪い、敵が挑発したとか言うが、そうじゃないのだと。相手がどういう政治体制にあったのか、相手政治体制によって善悪が決まるというようなことを、これは中央公論社ですか、出しておる「世界の名著」の中に書いてあるのです。そういう要するに政治体制によって善悪が決まる、共産主義体制ならばよろしい、自由主義体制はとにかくもともと間違っておるという断定を初めから出しておるのです。これはいかがですか。
  8. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはやはりマルクス・レーニン主義のもちろん考え方ではないでしょうか。
  9. 源田実

    源田実君 それからもう一つ外務大臣、後からこの問題については防衛庁長官も、あなたの方に話が移ったときついでに言ってください。というのは、人類の長い歴史を見て、独裁者に人はあこがれるのですね。独裁者を見て、偉い英雄だなどと言うわけです。ところが、その独裁者のやることで一番悪いことは敵をつくることです。国内の敵を抑えるために外に敵をつくる。これはみんな例外なくほとんどやっております。これが実は独裁者が没落する原因にもなっておるのです。例えば日本で言えば、豊臣秀吉がどうして没落したか、朝鮮征伐なんて余計なことをやるからです。これは国内が危ないとなるとそういう外に手を出す。現在でもそういう傾向は多分にあると思いますが、外務大臣は、そういう傾向はあるかないか、どうお考えになっておるか。
  10. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはやはりそう簡単な議論で済む問題じゃないように思うのです。イデオロギーの問題を一つとってみても、あるいはまた長い間のソ連歴史を見ましても、あるいはロシア民族歴史を見ましても、やはりこれはそう片言隻語でもって議論をして簡単に結論を出せるような問題じゃないように思います。
  11. 源田実

    源田実君 それはそう思います。なかなかちょっとやそっと、二分や三分で片のつく問題じゃないと思いますから、これはもうやめます。  時間も余りないので次に移りますが、これは防衛庁長官です。  今SDIが非常に問題になっているのです。ところが、このSDI開発そのものにもソ連は反対しておるのです。ソ連がこれに反対しておるその腹の中はどういうところにあるとお考えになっておるか、それをひとつ。これは防衛庁長官
  12. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) SDIにつきましての我が政府立場というものは、本質的には外務省が御担当になっておりますので、私たちは有権的な解釈をここで申し上げられることではないと思います。ただ、それにつきましてはいろいろな考え方があって、例えばSDIというものが仮に十分に開発が進むならば、それによってソ連はみずからの攻撃的兵器というものが意味がなくなってくるかもしれないと恐れているからソ連は反対しているのだという説もあれば、それからSDI開発アメリカに優先されることによって反対されているのだという説もあれば、またかなりうがった見方としては、ソ連はもともと防御兵器開発はそれほど反対ではないのだ、しかしアメリカ政策がいろいろ変わるから、それに現在のところ反対しているのだという説もあれば、いろいろあると思うのですけれども、私たちとしてはまだその最終的な結論を得るまで情報を得ていないところでございます。
  13. 源田実

    源田実君 断片的にお話を伺うようになって、これはどうも失礼になると思いますが、今までこのSDIによる防衛構想が出る前はMADであった。MADというと、例の、そのまま読めば気違いですね。しかし、ミューチュアル・アシュアード・ディストラクション、あの思想米ソの核兵器のいわゆる軍縮協定ができたわけです。ところが、そのMAD思想の根本に私は大変な間違いがあると思うのです。  というのは、MAD思想においては、人質をつくってよろしい、防御を制限せい、防御するところは政府の所在地とあと一カ所かの核基地、これだけを防御する、あと防御してはいけない、国民は全部丸裸である、まさかの場合に報復攻撃で殺されるのは国民である、こういう脅威をもって戦争を防ごうとしておるのです。これは理屈がどうあろうが、大体民主国家においては主人公は国民なのです。どこの世界に、子供や細君を人質に出すところはあるけれども主人自体人質になるというところはどこにもないのです。人質意味がない。こういうことはアメリカも一緒になってそれをやったのです。こういう思想は大体我々日本民族考え方からしてのみ込むことができるかどうか、これは防衛庁長官に伺いたいと思います。どうですか。
  14. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) これも本来的には軍縮の問題でございますから外務省の御見解が有権的なものだと思いますけれども、私たちは唯一の核被爆国として今の主権者防衛政策の観点からのみならず、やはり感情的には特殊な核についての気持ちを持っておるわけで、MAD思想というものにつきましてもいろいろ考えはあろうかと思います。しかし、現在の東西両陣営のバランスが核の抑止力に基づいて行われていることは、そして、その根底にMAD的な考え方があることは否定できない現実なのではないかと思います。
  15. 源田実

    源田実君 これは主権者人質に出す。そうすると、もし君主専制国家ならば、その君主を出すのと思想的には同じなのです、国民人質にするということは。したがって、長官お話にもありましたが、このころからこの問題に対する取り組み方が大体間違っておると私は考えているのです。  ところで、もう時間も余りありませんが、私はこういうことを考えているのです。現在のこの情勢においては、根本的な問題をはっきりつかむ必要がある。というのは、核戦争をどうしても阻止しなきゃならないのだが、核戦争で勝つということは考えないことだ。負けないことを考える。これが、絶対に負けない、しかし勝たない。日本武道の昔からの名人の最後に到達した立場はみんなこれです。勝たない、しかし絶対に負けない。このSDI思想は、多分これはエドワード・テラー博士が言っておるのもそこなので、いつの間に日本武道のあれを読んだのかと最初は私は思ったのですが、どうも日本思想を読んでしたわけではないと思う。こういうことについて、日本はもっともっとこの問題を根本的に掘り下げて、人願運命に関する、人類だけではない、地球の運命なのですから、積極的に取っ組む必要があると考えます。  ところで、簡単に言いますとどういうことを言うかというと、実はいい例があるのです。これを現在の戦略に適用すれば一番いい。何かというと、昔、私が生まれるよりちょっと前だった。牛若丸というのがおった。源義経です。あれが鞍馬山で修行しておったけれども、夜出てきおった。そうして五条の橋の上で、いわゆる弁慶、これはテロリストですね、当時で言えば。それがやってきた。そのときの牛若丸のやり方は防御だけであった。かわすだけであった。ほっべた一つ殴らないのです。そうして最後にどうなったかというと、攻撃してきた弁慶が全くへとへとになって大地に手をついて謝った。家来にしてください、こういうふうに向こうから言い出した。あれを、もし牛若丸が、弁慶、おまえはどの手でやったか、落としてやるとこれを切って落とすとか、目をつぶすとか、こういうことをやったら、弁慶はこれを恨みに思う。それはいつまでも続くのです。  したがって、昔は必ずしもそんな深く考えていないけれども、今のこういう危機になって初めて私も気がついたのですが、防衛をやるにしても、絶対に我々の子孫に負担をかけるような形ではいけない。というのは、子孫恨みが残るような、こういう防衛構想は甚だよろしくない。自分らが苦しんで、子孫には苦しみは残さない、要するに恨みを残さない、こういうことが非常に重要なものだと思います。これは中国の殊に老子の思想、孔子もそうです。皆、非常に重点を置いてその点を言っておる。これは私の所見でありますから御答弁は要りません。  それだけ述べて、私はちょうど時間も来たようですから終わります。(拍手)
  16. 堀江正夫

    堀江正夫君 まず最初に、両大臣に、先日はそれぞれ御外遊されまして立派な成果を上げてこられましたことに対して、心から敬意を表したいと存じます。大変御苦労でございました。  外務大臣に一点だけお伺いいたしたいと思います。  それは、先日の訪欧でポーランド、東独両国等においでになったその目的の中には、グロムイコ外相訪日の地ならし、その機運の醸成ということもあったのだと報道されております。確かに、現在いろいろある外交懸案の中で、対ソ外交日本外交にとって大変重要な課題であって、その最大のポイントはグロムイコ外相訪日がいつごろ実現するかという点にあると私も認識しておるわけでございます。  報道によりますと、逐次その機運も醸成されている、このように言われておるわけでありますが、国民の非常に関心のある訪日の問題について、その現状と見通しを承りたいと思います。
  17. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 最近の米ソの、いわゆるジュネーブの軍縮会議再開といった一種の対話ムードといいますか、緊張緩和ムードが続いている中で、日ソ関係改善という空気が出ておることも事実であります。日ソ関係日本外交の中で一番冷たい関係にあるわけでありますけれども、今おっしゃいますように隣国関係であります。基本的には領土問題という対立点を持っておりますが、しかし隣国である以上は、そしてまた領土問題を解決して平和条約を結ぶ、それによって真の日ソ友好関係を樹立したいというのが日本外交目標でありますし、そうした目標に向かって進んでいく上においても、やはり日ソ間の対話をこうしたときに進めていくということは非常に私は大事だと思っております。  そういう意味で、我々としても積極的にソ連との間の対話を推進するということについてアプローチをいたしまして、また、ソ連側もそれに応ずるという形でいろいろな種類の対話が続いております。外務省関係対話であるとか、あるいはまた民間同士対話であるとか議会の対話であるとかいろいろ続いております。その中でいわば領土問題以外の懸案として現在残っております文化協定、あるいはまたその他租税協定といった問題についても何らかこれを打開していく。それが日ソ関係改善に大きく資することになるし、それがまたグロムイコ外相訪日にも一つの大きな要素となってくる。こういうことで、実は文化協定につきましても日本政府として非常に努力をいたしまして、案文をまとめましてソ連に提示をしたところでございます。ソ連側としては今これに対して何らの返事をよこしていません。  こういうことによって、グロムイコ外相は今度は自分日本に行く番だということを言っておるわけでございますし、日本に来ましたいろいろのソ連の要人の中から、今度はグロムイコ外相日本に行く一つ気持ちを持っておる、そういう空気が非常にソ連の中にも強いということでございますから、こうしたいろいろの対話が進む、その結果としてグロムイコ外相日本を訪問するということを我々は期待しておりますし、空気としては相当出てきておるというふうに思っておりますが、まだ何にも決まっていないわけでございます。  これから少しソ連側と相談してみたい。これをいつまでもほうっておくわけにはいかない。ソ連ソ連都合があるでしょうけれども日本日本都合がございますから、その辺のところは相談したいと思っております。
  18. 堀江正夫

    堀江正夫君 大変御苦心があると思いますが、早期実現に向かってさらに御努力を願いたい、このように希望を表明しておきます。  以下は防衛庁にお伺いをいたしますが、その第一は、米国との政策担当者交流の問題でございます。  私は、一般論としては大変結構な提案だ、このように評価をしておるわけでございますが、この時期に特に長官から提案をされたということになりますと、それはそれなりに今提案しなきゃならないような理由があったのかなと、このようにも思うわけでございます。そのような具体的な事態、必要性があったのかどうか、またそのねらいは何かということがその第一点でございます。  もう一つは、これはきのうの内閣委員会でも御答弁になっておりましたけれども、少なくとも一般論として提案されるということは、そういうこともあるかもしれませんけれども、何か腹案があってやはりやられたのじゃないかなと思うのが自然じゃないかと思います。そうなりますと、どのレベルで考えたのか、だれとだれとで、どのような方法で、いつごろから実施しようとしておられるのか。これについて、さらに折衝はいつごろからしてやろうとしておられるのか、こういった点について承りたいと思います。
  19. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 日米防衛協力は、過去十年間ガイドラインに基づきましていろいろなことを模索してまいりましたけれども、現在非常に良好な進展を見ておると思います。ガイドラインの精神に従って、また個々細かく書いてあることに従ってやることによって非常に着実な、間違いのない交流ができるということは自信を持っておるところでございますけれども、具体的に今後模索の時代から定着の時代に入って、ますます共同研究にいたしましても共同訓練にいたしましても、武器技術交流にいたしましても、進んでいく際に、その交流は、実務者同士交流が非常にふえてくると思います。それはサービス・ツー・サービスといいますか、我が方の各幕と向こう側の各サービスとの間の交流も具体的に非常に出てきてまいります。  そうなりますときに、制服組の方は、例えば課長クラス部長クラスが現に相談しなければなりませんので、すぐ出かけていくことが今後とも多くなると思うのですけれども、それに相呼応いたしますシビリアンの方の交流は、現在ハワイにおきますSSCというのがございまして、それが中核となっております。しかし、このSSCも最近かなりずうたいが大きくなりまして、日本側からも十人、アメリカ側もホワイトハウス、国務省、国防省ということで十人以上となりますと、双方が都合のいいタイミングを見つけるのが非常に難しくなってきた。国会もございます。そういうわけで、そのSSCの中で、その枠組みの中でもうちょっと機動的に動けないものか、そうしないと、現在は問題があるわけではありませんけれども、将来日米防衛協力についてのシビリアンコントロールが十分かという御批判も受ける可能性があるということで、将来に向けてSSC枠組みの中で、もっと機動的にというのが今回申し上げた発想でございます。  具体的には、事務次官国会政府委員となっておりませんので、比較的その辺は自由がきくと思いますので、事務次官課長補佐ないし係長一人連れて、簡単に飛んでいって二、三日で帰ってくる、向こうからもそのようにして来てもらう、時には外務省担当課長補佐さんでもついていってもらう、こんなことを考えておるような次第でございます。
  20. 堀江正夫

    堀江正夫君 次は、五九中業作成の時期、所要経費見積もりの問題をお尋ねいたします。  これについては内閣委員会でもきのういろいろと御質問があり、御論議がございました。防衛庁は、七月末ごろを作成目標としておる、ただ日程はまだ固まっていないのだ、そうは言っても夏までには何とかつくりたいのだと。また同時に、大蔵省防衛庁との間で防衛庁試案について折衝中だということも申しておられます。  一%の枠について新たな閣議決定が七月までに行われれば問題はないわけだと思いますが、現在の政治情勢考えますと、私もなかなかそうはいかないのじゃないかなと考えられます。  そうなりますと、問題は一%の枠の問題について最小限大蔵省理解をして、同じスタンスの上で五九中業考えるということにならないと作成のめどは立たぬのじゃないかなという心配もするわけでございます。仮に防衛庁が望む時期までにつくるというようなことになりますと、結局その所要額について大蔵省と妥協せざるを得ない、そうなると、結局達成を期すると言っていますけれども、実を伴わないものになってしまうのじゃないかな、あれやこれや私もとつおいつ思いながら懸念をしておる一人でございます。その辺の現状は現在どうなっているのだろうか。また、仮にこういう問題が現実にあるとするならば何によってこの点を打開すべきだとお考えなのか、その辺をまず承りたいと思います。
  21. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 五九中業堀江委員承知のとおり中期業務計画でございますので、これは防衛庁内部概算要求資料にいたすものという性格づけをいたしております。そうなりますと、当然のことながらことしのいつの日かまだ明らかにはされておりませんが、概算要求等防衛庁要求を固めて大蔵省に提出しなければならない時期とのかぬ合いで、当然のことながら夏までにこの処理をしていかなければならないということだと思います。  そうしますと、堀江委員問題点GNP一%との関係でどうなるのかということでございますが、GNP一 %は政府予算原案ないし決定された予算段階におきますGNP防衛費との関係を規定するものだと思っておりますので、私たち内部資料概算要求たる中業とは直接一〇〇%の関係ということではないと思っております。なおかつ、中業は御承知のように五年でございますし、単年度割りではございませんし、等々から私たち中期業務計画作業は大綱の水準達成を期するという、現在生きております長官指示方針に従って作業をさせる方針を改めて堅持いたしておる次第でございます。
  22. 堀江正夫

    堀江正夫君 今のお話を聞きますと、少なくともそういう基本的な考え方については大蔵省理解の上で相互調整が行われておるというふうに理解していいのかなと思うわけでございますが、それはそれでよろしゅうございますか。
  23. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 防衛庁としての考え方はただいま防衛庁長官からお答えを申し上げたとおりでございます。  この五九中業につきましては、五月の連休明けごろから逐次大蔵省とも意見の交換を始めているわけでございます。しかし、大蔵省には我々の考え方はこういうことでやっていきたいということをもちろん明確に申し上げて話をしているわけでございますけれども、現在大蔵省として公式に、大蔵省はこういう態度で処理をしたいということを私どもの方にはっきり言っているという段階ではございませんで、私ども考えている五九中業につきまして具体的な勉強を深めておるという状況でございます。
  24. 堀江正夫

    堀江正夫君 今の御答弁、現段階でそういうことしか言えないかなということも私は理解できるわけでございます。それで解決できればいいのです。私は心配しないのです。  それで、例えば防衛庁考えておられます七月末、遅くも夏ごろまでに一応これが国防会議でも報告をして了承されるということであれば、もう私は心配しないわけですが、大変今防衛庁はこう言って話している。それだけではこの問題は進まないかなとも思うものですから、あえて質問をしたということでございます。私どもも、自民党としてもやはりいろいろ考えなければいけないな、そのように私どもは深く認識をしておることもつけ加えて申し上げておきたいと思います。  これに関連しまして、本当に中業防衛庁が試案の中で達成を期するという場合に、どのくらいの所要額考えておられるのかという問題がございます。これについてはきのうも内閣委員会で論議がございまして、防衛庁の方ではいろいろの理由を挙げられまして、防衛庁はまだはっきり出せないと言っておられます。しかし、実際はこの達成を期するということになると、単なる個々のアイテム、質の問題だけじゃなくて量を踏まえた話でないと、これは大蔵省折衝して調整するにしても、調整にならないと思うわけです。したがって、非常に常識的に考えますと、総枠を考えながらいろいろと折衝しておられるのかなと思うわけであります。  いろいろの面から今出せないのだという面もあるでしょう。また出しにくいという面もあるでしょう。また、今出さない方がいいのだという面もあるだろうと思います。しかし、積極的に国民理解を求めるといったような姿勢は現在の情勢では最も大事な問題じゃないか、このようにも思うわけであります。新聞等では既に十九兆とか十九兆五千億だとかいろいろ言っております。そういうような観点で継戦能力の後方分を含んで正面、これは五六中業のときにはそういう格好で出されましたですね、について大体どの程度の額を見積もっておられるのか。この席では言っていただけませんか、一応お伺いをいたします。
  25. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 五九中業の所要経費につきましては、現在逐次いろいろな問題点を詰めつつ計算を進める段階に入っていることは事実でございますけれども、正直申し上げまして完全にそれが詰まり切っていく段階にまだ来ておりませんので、現在の時点では所要経費が五カ年間でどのくらいになるだろうということについて明確に申し上げられる段階ではございません。
  26. 堀江正夫

    堀江正夫君 それ以上聞いても言われないでしょうから、これはこれで終わります。  あと私は二分ほどございますので、二つの点を一緒に意見を交えながら御質問をいたします。  その第一点は、韓国との練習艦隊の相互訪問の問題でございます。  従来、両国ともにいろいろな国内事情から今日までこれが実現をしていなかった、このことは両国の関係考えました場合にちょっと信じられないような異常な事態でもあると思うわけでございます。実は、日韓の議連でもこれらの促進をたびたび私どもは話し合ってきたわけでございますが、新聞によりますと今年じゅうにはこれが実現するというようなことが伝えられておりまして、私は大変いいことだと喜んでおるわけでございます。この間の防衛、外務両省の努力に敬意を表するわけでありますが、具体的にこの点はどのような計画になっているのかということが一点でございます。  第二点は、これはやられるのかやられないのか知りませんが、防衛庁長官の中国訪問の問題でございます。  非常に率直に言いますと、先般突如として夏目次官が訪中をされました。新聞はこの次官の訪中を今秋の長官の訪中の地ならしである、このような伝え方もしておるわけであります。そして、この次官の訪中についても内外からいろいろな反響がございます。実は私のところにも国内だけじゃなくてASEANの友人からも懸念の手紙をもらっております。御承知のように、東南アジアの国々の対中国懸念というものには根強いものがあると私は何度か行きましてそのことを肌で感じておるわけであります。そういうようないろいろな問題があるわけでありますが、一般に言われておりますような長官の御訪中というものについて長官の御見解を承りたい。  以上申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
  27. 大高時男

    政府委員(大高時男君) 韓国との親善訪問の問題につきまして、私の方から先にお答えいたします。  現在、韓国と我が国との練習艦隊でございますが、これが相互に親善訪問を行うという具体的な計画はございません。しかしながら、防衛庁といたしましては、韓国を含めまして友好国と我が国との間に練習艦隊の相互訪問を行うということにつきましては、友好親善あるいは相互理解を目的とするものであるというふうに理解いたしておりまして、このような考えから、韓国との相互訪問の計画が具体化いたします場合におきましては、内外の諸情勢を勘案しながら前向きに検討をしてまいりたいというふうに考えております。
  28. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 中国と私たち友好関係にありますので、その間で防衛面におきましてもいろいろ意見交換し、人間の交流をすることは私は有益であろうと思っておりますし、それはまたアジア諸国にもいろいろな意味理解されることになるだろうと思っております。そういう観点から私は、夏目次官に中国からの招請が来たときに、これは前向きにやるべきであろうと思って訪中していただきました。日中双方の防衛政策担当者のレベルにおいてこのような会談が行われ、お互いに防衛面についてどういうような意見を持っているか知り合うことは私は非常に有益であったと思います。このように交流が深まることは結構だと思っておりますが、私自身の訪中を今後どうするかにつきましては、現在のところまだ具体的な計画を決定しているものではございません。
  29. 堀江正夫

    堀江正夫君 終わります。
  30. 志苫裕

    志苫裕君 五九中業の策定作業が、今もちょっと議論がありましたが大詰めに来ているようでありまして、可能な限り主要な点について内容の報告ができますか。
  31. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 現在の作成状況について御報告を申し上げます。  現在の段階は計上すべき主要な事業等について逐次内部で考え方を詰めているわけでございまして、連休明けの時点で基本的な正面を中心とする考え方をおおよそ煮詰めつつある段階であったわけでございますが、その後部内でも検討を重ね、さらに後方の関係につきましても、正面と後方のバランスを重視するという観点から、どういった考え方で五九中業の期間中に私ども考えていくかということを詰めつつあるのが現状でございます。  どういうふうな考え方で今やっているかと申しますと、正面につきましては、四面環海という我が国の地理的な特性あるいは科学技術の趨勢等を考慮いたしまして、防空能力でございますとかシーレーン防衛能力でございますとか、洋上、水際撃破能力等の着上陸阻止能力といったものの強化というものを重点に考えていきたいということでございます。  それから、後方の関係で申しますと、やはり真に有効な防衛力というものは正面と後方のバランスが大事でございますので、その点について十分配慮をいたしたい。それからC3I能力ですとか継戦能力、即応態勢、抗堪性の強化、それから後方支援あるいは教育訓練体制の充実といったようなことを図っていきたいと思っておるわけでございます。  それでは、陸、海、空別にどういった考え方を今とっているかという点について、若干ブレークダウンして申し上げたいと思います。  まず、陸上自衛隊については、一つは師団の近代化の問題でございます。これは北海道にあります師団とそれ以外の師団について若干その色合いを異にして考えていきたいというふうに考えておるわけでございまして、北海道にあります師団等については、戦車とか白走火砲を主体とする戦闘力の強化というものを考えたい。しかしながらそれ以外の師団の場合、つまり本土にあるような師団でございますが、そういったものについては機動力の向上というものを特に重視していきたい。例えば対戦車火器を増強するとか、あるいは老朽火砲の更新というようなことも考えながら、全体としては機動的に動けるような体制をつくっていきたい。  それから、師団の内容にいたしましても、対空能力とか電子戦能力等々の今まで比較的手薄だったものを強くしていきたいというふうに考えております。  それからさらに、北海道におきます初期の対処能力を強化するという観点から戦車部隊の一部の配置を見直しをしていきたい。北海道に少し手厚く配備することも考えたいというふうに考えております。  それから、師団の近代化と並びまして、師団以外のいわゆる方面隊の直轄部隊の分野になるかと思いますけれども、我が国の地理的特性等を考慮いたしましていろいろ考えたいと思っております施策といたしまして、洋上、水際撃破能力を強化するために地対艦誘導弾部隊、いわゆるSSMでございますが、そういった部隊の整備に着手をしたいと思っております。これは現在防衛庁開発中の新しい装備でございますが、それが六十二年度には開発が完了するというふうな見込みを持っておりますので、それをできるだけ早く具体化していきたいということでございます。  それから、空中機動力や打撃力を強化するという観点から、対戦車ヘリコプターAHISでございますが、そういうものとか、あるいは輸送ヘリコプターであるCH47、こういうものの増強を図りたいと思っておるわけであります。  次に、海上自衛隊につきましては、対潜水上艦艇の装備の近代化を図りながら、大綱水準約六十隻の達成を図っていきたいというのが基本でございます。  それから、作戦用航空機につきましても、大綱水準の約二百二十機の達成目標として、P3Cとか対港ヘリコプターの増強を考えていきたいというふうに考えているわけでございます。  それから、航空自衛隊につきましては、引き続き作戦用航空機の水準が最高水準に達しておりませんという状況を踏まえまして、引き続いてF15の増強等も図っていきたいと思っております。  それから、支援戦闘機、現在FIの部隊で編成をしておるわけでございますが、これの次期支援戦闘機の選定の問題がございます。いわゆるFSXの問題と言われておりますが、これにつきましては、今後、国内開発あるいは現用機の利用、外国機の導入といったようないろいろな選択肢を検討していった上で、その検討結果を踏まえ所要の整備を推進をしたいというふうに考えております。さらに地対空誘導弾、ペトリオットの整備とかあるいは早期警戒機の偵察機能等の充実ということも考えていきたいと思っております。  そのほか後方の事業といたしましては、情報警戒、指揮通信の分野の事業をできるだけ重視をしていきたいと考えております。例えば通信衛星の利用の拡大ができないかといったようなことも含まれるわけでございます。さらに、弾薬の備蓄等によりましての備蓄等の増強を図りまして、継戦能力の向上を図りたいと思っております。また、指揮所等の重要施設の地下化を図ったり、移動用のレーダーを整備したり、あるいは基地の防空火器の増強等の抗堪化施策を進めたいと思っております。また、研究開発についても充実を図っていきたい、こんなことを考えているわけでございます。  さらに、特に現在考えております問題として洋上防空の問題がございます。洋上防空の問題につきましてはかねてから、シーレーン防衛能力の向上ということが防衛庁としても一つの大きな問題であったわけでございますけれども、五九中業の中では、このシーレーン防衛能力を総合的な体系としてひとつ検討してみたいと思っておるわけでございます。その中に例えばOTHレーダーの問題でございますとか、あるいは早期警戒機あるいは要撃機、さらには艦艇の対空火器の能力の問題という問題が含まれますし、空中給油機の活用がどの程度可能であるかという点の検討の問題もございます。そういったいろいろな兵器の体系をどういうふうに組み合わせて洋上防空体制を効率的に構築できるかというような問題も現在検討をしておるという状況でございます。  以上でございます。
  32. 志苫裕

    志苫裕君 時間がないから内容にちょっと入れませんが、特に局長が後段で述べました、いろいろなものを組み合わせた総合的な洋上防空体制あるいは能力を整えたいと。さまざまな細み合わせの中には、今もお話しありましたようにOTHレーダーであるとか、あるいは軽空母まではありませんがAEGIS艦とか、いろいろなものを組み合わせてくるわけでありますが、実は洋上防空能力、シーレーン洋上防空というこの考え方は大綱の内か外かという議論、今までは空の方はなくて海の方が中心でした。これはいつの間にかシーレーンが線が面になって、今度は面が立体になるという段取りのようです。これは我々が承知をしておるところでは、はるかに大綱の枠組みを超えるものであるという理解なのですが、その点はどうですか。
  33. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 洋上防空の問題は、シーレーン防衛能力の一環として検討をしている問題でございます。シーレーン防衛能力と申しますのは、我が国の地理的特性が四面環海の国であるということからいいまして、有事において国民の生存を維持し、あるいは継戦能力を確保するという観点から、海上交通の安全の確保が非常に重要な問題だというところに由来をするわけでございます。  こういったシーレーン防衛能力を整備していく場合に、防衛力整備の目標といたしましては従来から我が国周辺数百海里、航路帯を設ける場合にはおおむね一千海里程度の海域における海上交通の安全を確保するということを目標として整備を進めてきたわけでございます。この考え方は、大綱以前の三次防、四次防当時からるる国会でも御説明を申し上げてまいりましたし、大綱におきましてもその考え方で進めていることは累次御説明を申し上げているわけでございます。そういった基本的な枠組みは全く変わりがないわけでございますが、ただ、そのシーレーン防衛能力のあり方の問題が大綱制定当時と若干変化をしている面があることは事実でございます。  それは、シーレーン防衛をやっていく場合には、一つには対潜水艦作戦もありますし、水上艦艇による作戦もありますが、さらに空からの脅威に対する防空能力というものも問題であるということは従来から認識をしていたわけでございまして、その意味で、大綱策定当時から艦対空ミサイルの整備を進めていたのもそういう発想に基づくものでございます。  ただ、大綱策定当時に比べますと、最近の科学技術の発達の結果といたしまして、遠距離からスタンドオフでミサイル攻撃をできるような航空機が出現してきているというような変化がございますので、そういう意味で空からの脅威が増大をしてきているというふうに私どもは認識をしておるわけでございます。そういう意味で、シーレーン防衛の問題の中でも、洋上防空機能の問題が重要性を増してきているという認識は持っておるわけでございます。しかしながら、この問題はあくまでも、先ほども申し上げましたようなシーレーン防衛の基本的枠組みの中の話でございますので、これは大綱に基づく防衛力整備の範囲内の問題としてあくまでも対処をしていきたいというふうに考えております。
  34. 志苫裕

    志苫裕君 それは認められないです、なし崩しの拡大でしてね。いずれ具体化をしてくれば議論をしなければならぬのですが……。  洋上防空、具体的にそれを意識するようになったのはバックファイアでしょう。大綱策定当時はそういう想定は入っていないわけであって、例えば我々の小委員会に竹田元統幕会議議長に来ていただいていろいろお話を聞いたときにも、そのような想定はない、航空自衛隊としてはそういう問題には関心はなかった、したがってそれをやれというのであれば大綱の外だというお話もあるところであって、この問題は非常にこれから国内においても防衛の基本の問題として論議をしなければならないのに、防衛庁長官は、国内でまだ未決の問題、しかも基本政策にかかわる問題を、のこのことアメリカへ行ってアメリカの当局者に説明をする、方針を述べる、発言したことは、約束を守る大人同士の対話だといういわば話し合いをしてきたわけで、事実上の対米公約と言っていいでしょう。いつでもそうなのです。  特に中業に至っては、我々の内部の内部資料をつくるのだから、周りの者は余計なことを言うなという形で論議を封じ込めておいて、そして事実上日米関係ではそれを公約の位置にのし上げる。だからアメリカのいろいろな要請は声高に聞こえるが、アメリカからすれば声高じゃないのであって、約束したことはどうなっていますかと言っているにすぎないかもしれないというようなことを繰り返すのですが、この点長官、どうですか。
  35. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 私たちは、日本国会で申していることをアメリカでも申してまいりました。私たち国会で申していることは一部始終、少なくとも報道はされなくても翻訳されてアメリカ政府当局には行っていることでございますし、私たち国会で言っていることとアメリカで言うことが違ってはこれまた日米関係からもおかしいし、国民の皆さんからも二枚舌と言われるのではないでしょうか。国会で申しているとおりのことを申し上げ、そして洋上防空等の問題につきましても、今矢崎局長が申したことは、ああいった考え方国会でも申して、そして私たちはそういった観点からOTHレーダーというものの有効性に興味があるので資料をいただけないかと申したのでございます。これに対して向こう側からは約束いたしましょうというふうに、向こうから約束をいただいたようなわけでございます。
  36. 志苫裕

    志苫裕君 いや、そうではないでしょう。それは、例えば今局長は私が指摘した洋上防空能力あるいは海上撃破能力という問題について、いや、それはシーレーン防衛という範囲の中のことであって、今まで空の方は余り見ていなかっただけであって、空の方がこれから大事な時期になったからといって見ても、それは従来のシーレーン防衛枠組みの中の話だ、こういう話をするわけだ。しかし、それでは大綱を策定するときに幾つかの前提条件を置き、そして別表を作成してきているわけですが、その概念の中にあったかというと、これはなかった、世の中変わったのだ、こういう論法にその部分になるとすりかえるわけです。  OTHレーダーの話が先ほど出ました。技術資料の提供まで求めたそうですが、これについて言えば、皆さんは否定をしておるけれども、例えば去年の日米防衛首脳協議におけるトーキングペーパーなるものによれば、日本防衛庁自身がOTHレーダーの導入や運用については日本の憲法、その他基本的な政策にかかわるというので懸念を表明しておるという事実もあるわけです。こういうこと等を考えれば、いずれにしても議論を大いにしなければならない。我々は踏み出ているという主張を持っているわけでありますが、そういう性格の問題について大分詳細をきわめて、いわば整備計画についての検討課題や方針を述べる。どうも今度の首脳協議は相手は聞き役で、もっぱら日本側が述べたというふうに報じられておりますが、あなたがそういう役割を演じたということは問題だと思う。国民的コンセンサスでもない、所定の手続もとられていない、もちろん日本政府も決めていない、国会もその論議に加わっていないという代物を米国の責任者に事実上の公約に近い形で説明をすること自体が問題だということを私は指摘をしておる。  今もるるお話しありましたように、それらの諸方針を見ると、およそ大綱の枠内におさまらない、あるいは憲法やその他の国是にかかわる懸念も十分にあるという論議がこうやって現に存在をしておるのでありますから。私は非常に不愉快に思いますのは、先ほども言いましたが、毎度のことだが、防衛庁中業内部資料だといって論議を封じ込めて、あるいはまた、先ほども言いましたが、財政上の歯どめとは次元の違うものだということを強弁をして、その内部資料を実は同盟関係にあるアメリカの責任者に事実上の約束として説明をする、その公約の実行を求めるアメリカの要請を逆に圧力として整備計画、予算編成を進める、こういう手法を今度もまたかというふうに感じ取れてしようがないわけであります。  それから、五九中業はそれの内容から見ても当然に、今現に一%枠という政府決定が厳として存在するわけでありますから、それの財政上の制約を受けます、見直し論議はともかくとしまして。にもかかわらず、事実上の対米公約に近い説明の中には水準の達成を期すということは説明をしても、それに伴う諸制約があるという事情について述べたり、一%枠その他について述べたという情報には接していない。この点はいかがなのですか。
  37. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 一%問題は我が国の国内問題でありましたので、もちろん私たちも申しておりませんし、向こう側からもいろいろ質問はございませんでした。
  38. 志苫裕

    志苫裕君 ですから、アメリカの時として声高な対日圧力を私は不愉快に思いますが、そこを百歩譲って善意に考えれば、あなたはこの間約束をしたじゃないのという言い分があるかもしれない。そういう観点に立ちますと、さまざまな防衛政策上の制約が日本には憲法を初めとしてあるわけだ。にもかかわらず、一%枠も含めてですが、そういうものを取っ払って、いわばそういう対米公約をするというこの首脳協議のありようが私は問題だと思う。  話を変えますが、今まで日米防衛協議や首脳協議というのは秋口だったのじゃないのですか。今度あなたが国会のさなかの六月に行ったのはどういうわけですか。
  39. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) お答え申し上げます。  日米防衛首脳会談はいわゆる間断なき対話を続けることによりまして、両国の信頼関係を深めていくということが基本的な目的でございます。  今回の場合は、ワインバーガー長官からも再三にわたっての御招待があったということが背景にあるわけでございまして、できるだけ早い時期にというふうに考え検討をしておりまして、国会及び内閣の御了承が得られましたところで約十日間の訪米をしたわけでございます。従来からの実績を見ましても、この訪米の時期というのは六月ないし九月ぐらいの間に行われているのが多いわけでございまして、この時期を選んだというのは先ほども申し上げましたような事情によるものでございます。
  40. 志苫裕

    志苫裕君 じゃ、のぞき込むようで悪いが、六月ないし九月と言うが、ことしは九月の訪米と六月の訪米では大いに意味が違うのです。五九中業作成がある、やりくり予算の編成もある、大綱見直し論議もある。まさに一%枠をめぐって重大な論議のシーズンを迎えるわけだ。その前にアメリカへ行ってそれなりの所見を述べるのと、そういう論議、方針が定まってから行って方針を述べるのとでは大分これは違うのです。そういう意味で六月の時期の選定を聞いたわけだ。これはワインバーガーさんがいらっしゃいと言ったら、都合が悪いと言えば九月でもいいわけであってね。長官、もう一度その点どうですか。
  41. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 私たちは、日米の間では防衛問題は非常に密接な関係がありますから、できるだけ間断なき対話が行われている方がよろしいかと思います。その意味でワインバーガー氏の方からできるだけ早く会いたい、話し合いたいということでございましたが、都合が、国会の状況もございますし、いろいろございまして延びてきたわけでございます。私が今回行ったとき、別に六日から九月という感じで過去十回の日米防衛首脳会談とは別に時期は違わないのじゃないか、ごく通常、毎年先輩の大臣の方もいらっしゃったのじゃないか、そんな感じのときになっているのじゃないかという気がして行っておりました。大体、年定期一回のはこんな時期だったのじゃないかと思います。
  42. 志苫裕

    志苫裕君 そんなことはないです、秋ですよ。  ともあれ、時間も大分過ぎていますが、繰り返しますけれども、あなたは自主的な防衛力の整備を大いに強調なさったようだ。しかし、先ほどありましたOTHの導入とかいわゆる洋上防空能力あるいは海上撃破、打撃力等々は、例えばアメリカの同盟国の貢献度報告等々、かねてからのアメリカの要望のある分であって、アメリカの要請あるいは意向を自主的な名のもとに具体化をしていこうというふうにしているにすぎないと思いますけれども、いずれにしても五九中業は、長官が強調するように大綱の積み残し分を始末するのだというニュアンスのものではない。そうではなくて、まさに発想の転換、防衛理念の転換を試みようとしているものだ、このように受けとらざるを得ません。  この点について最後に問いますが、五九中業はどのような戦略環境、あるいは侵略者の企図、侵略の規模、様相等を前提としていますか。
  43. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 私どもが現在、五九中業作成に当たりまして国際情勢をどう見ているかという御質問でございますが、国際情勢の全般として言いますと、米ソを中心とする東西関係対立を基調として推移をする、その中でソ連による軍事力増強は継続をするであろう。これに対して、アメリカを初めとする西側諸国による抑止力の信頼性の維持強化の努力によって、東西間の全面的軍事衝突やあるいはそれに至るような大規模な武力紛争の可能性は少ないだろうというふうに見ておるわけであります。しかしながら、ソ連の軍事力を背景とする勢力の拡張の努力とかあるいは各地域に特有ないろいろな対立要因がありますから、そういったようなことで国際情勢は不安定かつ流動的に推移をする面も否定はできないというふうに思っております。  我が国周辺の状況につきましては、これも先生よく御承知のとおりでございまして、中ソの対立関係、あるいは米国及び我が国と中国との友好関係ということがございます一方で、朝鮮半島では軍事的な対峙が続いておるというようなこともあります。そういうようなこともありますが、全体として大規模な軍事衝突が生起する可能性は少ないだろうというふうには見ておるわけでございます。  ただ、こういった中でやはり極東ソ連軍の戦力の増強、その行動の活発化といったようなことを見ますと、我が国に対する潜在的脅威は増大をしているというのが国際情勢現状ではないかというふうに見ておるわけでございます。そういったような状況を踏まえて、私どもは自衛のため必要最小限の防衛力を整備するということが極めて重要でございまして、それはまさに防衛計画の大綱に定める防衛力水準の達成を図るということが基本であろうということで五九中業作成に当たっている次第でございます。
  44. 志苫裕

    志苫裕君 加藤長官、六月十二日の夕刻というのですから、日本時間は十三日の午前になるのでしょうか、ニューヨークのジャパンソサエティー主催の夕食会でスピーチをいたされまして、これでは日本はグローバルな軍事パワーはおろか、地域的な軍事パワーになる意図さえない。ところが、十四日に米国防当局者は、あなたが説明をした、対米公約と私は思うのですが、五九中業達成されれば日本防衛力は戦略的な力を持つことになるという見解なり認識を示したと報ぜられている。米側が日本防衛力を戦略的戦力と位置づけたことは、あなたがスピーチで否定をした地域的なあるいはグローバルな軍事パワーと認めたということになるわけだ。日本防衛力がこれまでアメリカが求めていた対ソ戦略現実的に補完をし、役割を担うまでになったという認識を明確に示したということになるわけで、同じ対話をした者が、一方はグローバルパワーどころか地域的な軍事パワーにはならないと言い、一方はそうなったと、こういう見事な分かれを示した。しかし、あなたは演説のその続きに、しかし日本が自衛力を充実し、日米両国が同盟を効果的なものにする努力を行うことは必要であるというふうにつけ加えておるのですが、このアメリカ国防当局者の評価について長官はどう思っていますか。
  45. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 私がニューヨークで行いましたスピーチの内容は今志苫委員御指摘のとおりの内容でございます。  それから、米国防省筋で日本戦略的な力を持つようになったということについての報道があったわけでございますけれども、その戦略的な力を持つようになったという意味がどういうことなのかなかなかよくわかりません。そこで、私たちアメリカにいる間にその米国防省の方にどういう発言をしたのかと聞きましたら、日本は地理的に戦略的な、ストラテジックなポジションにあるという発言をしたのだという返答を得ました。そういうことであれば、私たちも地理的にはそれぞれそれ相応の意味のある、日本の地理的な位置はそういうところにあろうかと思っております。  それから、では私たちのこれから五九中業で行いますところの装備が戦略的なものを持っているのかどうかということは、国会の御議論でそれはだんだんおわかりいただけることなのではないか。そういうような力を持つつもりは日本はございません。あくまでも専守防衛に徹したものであるということは自信を持って申し上げられるのではないかと思います。
  46. 志苫裕

    志苫裕君 その専守防衛に徹しているかどうか。五九中業は少なくとも車守防衛という防衛戦略の転換を試みておるということは私も先ほど指摘したのですが、アメリカによる今あなたは日本の位置、位置づけ、地勢的な、地理的な、の戦略的なと言うのですが、そうではないのじゃないですか。  アメリカによる日本防衛力の位置づけについては、つい耳新しいところでは、ことしのあれは二月でしたか、アーミテージ国防次官補がハワイで、全地球的舞台での主要なパートナーだと言い、それからここに持ってきていますが、一九八〇年六月に出た米国防省の共同防衛の同盟国の貢献度報告によりますと日本の位置づけは詳しく出ているので、あなたの言うくだりであれば、「在日米軍は、米国ならびにその領土の前進防衛の一環である。」、「日本戦略的な位置を考慮すれば、われわれの前進防衛には必然的に日本が含まれる」が、「在日米軍は緊急展開能力を持っており、米国にとって重要な他の緊急事態支援のためにも、」利用できるというくだりがあります。これはその他理的なことを言っていることは間違いないですね。  しかし、主要な部分は、「日本の北西太平洋における防衛力は米国の攻撃機動力を補い、米軍がアジア太平洋/インド洋戦域で」、「これまで以上の柔軟性をもって行動することを可能にするであろう。」と。この見解はアメリカがつとに述べている点ですね。  それから次です。日本の「防衛庁は一九八六ー九〇年用の防衛計画大綱についての検討を開始する。」今のものです。「この計画期間中は継戦能力と空とシーレーンの防衛能力に力を入れたいと望んでいる」。もしこの計画が達成されれば「効果的な領土と空と一〇〇〇カイリまでのシーレーン防衛は、」達成できるだろう。この能力は「日本付近その他西太平洋とインド洋に展開した米軍の戦力を現実的に補完するものとなるであろう。」このようなアメリカの認識があるわけです。戦略的戦力という認識はそこから出ているのじゃないですか。そう思いませんか。
  47. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 私がニューヨークのスピーチで述べました部分を先ほど志苫委員から御引用いただきましたけれども、その際私が申したことは、確かに我が国がみずからの自衛のための専守防衛の原則に基づいた防衛力整備をするならば、その努力をした限度において米側が日本防衛のために割くそれぞれのキャパシティーを減少させることができるかもしれない、他に転じることができるかもしれない、その限界において日本防衛力整備がそういったアメリカ戦略意味を持つのかもしれないということは申しているとおりでございます。反射的利益としてそういう部分があって、そしてそれによってアメリカがよりインド洋等に展開する能力がふえるかもしれないということは私もスピーチで趣旨はそういうことを述べましたし、アーミテージ氏が述べた意見もそういう観点から述べられているものだと思っております。
  48. 志苫裕

    志苫裕君 いずれにしても、長官は少し気楽に考えているようだけれども、米当局者のいう戦略的戦力という日本防衛力の位置づけは、先ほど私は幾つか引用しましたが、そういう発言や、あるいは報告書等の文脈の中に流れておるわけでして、長官はその首脳協議において五九中業達成を通じて日本防衛力をこのような軍事パワーとして整備をするということを公約してきたことになる。だからアメリカは正直に受け取って、ああ、これで戦略的力となるだろうというふうに表現したにすぎないのだと私は思います。  さて、そのような戦力は使い方によっては当然に世界戦略にも大きな影響を及ぼす。そういう事態における制服の独走というものはとてつもないことになるわけで、あなたは恐らくシビリアンコントロールについて関心を表明したのだろうというふうに受けとめる。  私は先ほどちょっと聞いていましたが、このシビリアンコントロールの問題は単に防衛庁レベルの政策担当者の協議という狭いものじゃなくて、さまざまなレベルのもっと幅の広い概念でとらえるべきだろう。あなたの日米シビリアンの協議というのはどのような意味を持つのかはっきりしませんが、仮にそれが有効なものであると前提を置いてみましても、それらは防衛レベルというよりは外交チャネルで行うべき性格のものではないかという感じも一面でいたします。  外務大臣長官がシビリアンコントロールのあれをやろうというようなことをアメリカで言ったわけですが、私はもっと大きい外交レベルの問題じゃないかという感じもしますが、あなたは何か相談を受けたりしましたか、あるいはその発言についてどのように感じますか。
  49. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 先によろしいですか。  シビリアンコントロールというものは非常に大切なものだと思います。その第一歩は、私たち防衛庁部内で内局が各幕のいろいろな要望、活動というものをしっかりシビリアンの立場からコントロールする、これが第一歩だと思います。  それから第二歩は、政府部内で、単に防衛庁に限らず外務省もお入りいただき、また財政当局も入っていただき、またその他いろいろな総合安保的な考え方から広く政府部内でシビリアンコントロールをし、そしてその形が国防会議にあらわれてくる、これが第二歩だと思います。  それから閣議もあって、そして最終的にはこの国会の場におきます国民の意見を反映したシビリアンコントロールというものが最終的かつ最も権威のあるべきもの、こういう仕組みになっているのではないかと思います。私たちは、現在日米防衛協力についてシビリアンのコントロールに問題があるとは思っておりませんが、今後とも日米防衛協力が充実されるに従って、しっかりとシビリアンの面での交流も行っておかなければいけないと思っております。  現実を申しますと、シビリアンの方はなかなか忙しくて、そしてその具体的な例としてはハワイにおきますSSCという会議が行われますけれども、これは外務、防衛、それから関係者が参加し、アメリカの方もホワイトハウス、それから国務省、国防省も全部入ってやるものですからなかなか大所帯の会議になって、そう簡単においそれと会議が開けないような形になっております。  一方制服組の方は、担当者がすぐ一人か二人で二、三日会議に行くみたいな形で話を詰めますので、やはりSSC枠組みの中で私たちはよりもっと機動的に動けるもの、例えば防衛庁事務次官課長補佐一人を連れていくとか、時には外務省担当補佐の人も付き合ってもらうとかいう形で二、三日の旅行を簡単にするような形で交流をする、向こう側からも来てもらう、こういった面が重要なのではないかなと考えている次第でございます。
  50. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日米間で安保条約があるわけですし、日米の防衛当局間で意思の疎通を密にしておくということは非常に大事なことじゃないか、それはそれなりに有意義じゃないかと思います。  一方、シビリアンコントロールにつきましては、これは我が国にとっては極めて重大なことであろう。これまでの過去のわだちを踏んではならないという歴史上の反省から見ましても、これはきちっとしておかなきゃならぬと思っております。これはまさに防衛当局、さらにまた日米安保条約については外務省もその運用の責任を持っておりますから、そういう意味で広くこのシビリアンコントロールにつきましては協議もし、あるいはまたきちっとした体制を常時つくっておくということは非常に重要じゃないかというふうに認識しています。
  51. 志苫裕

    志苫裕君 シビリアンコントロールの日米緊密化も結構だけれども、もう少し国内においてシビリアンコントロールを確立する方が先決でありまして、制服も文民も一緒になって防衛費拡大に飛び回っている状況じゃ有効なコントロールができるわけかないじゃないかという意見を持っておることを申し上げておきましょう。  時間がなくなってきましたので、最後に、武器技術の供与についてアメリカ側から正式な要請があって、いろいろと衆議院等でも議論になったようであります。何でも防衛庁が技術研究本部で開発したミサイル追尾誘導装置だと報ぜられておりますし、一方ではそれはSDIにも応用できる技術のようだというふうなことも言われております。時間があれば、一体その防衛庁開発した技術を詳しく聞きたいのですが、少し飛ばしまして、そういうわけで日米武器技術協力という観点で技術供与に応ずることは、もう一方で外務大臣を初め大変慎重に対応しておられるSDIへの研究参加と結びつくという話にもなってしまう。一方の入り口は閉めているが、一方の入り口からは自由に出入りするというまことに矛盾をした形にもなるということで苦慮なさっているような報道もあるのですが、この相互関係はどうなります。そしてこれからどのような対応を行おうとしていますか。これは外務大臣の方ですか。
  52. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 今般アメリカから供与の要請がございました技術につきましては、これはSDIへの利用というものを前提としたものではないというふうに私ども考えておりますが、まだ要請を受けたばかりでございますので、これから関係省庁と十分中身を検討いたしまして、対米供与すべきか否かという基本問題も含めて今後政府の内部で検討したいというふうに考えております。  SDIの研究参加の問題については、これも従来から総理大臣から申し上げておりますように、研究参加の問題についてはまだ検討中でございまして結論が出ておらないということでございます。
  53. 志苫裕

    志苫裕君 いや、それはあなた焦点をぼかしちゃだめだよ。今度アメリカが供与を要請してきておるその技術、アメリカが公表するのは望ましくないと言っているのだというようなことを何か北米局長は言っておるようだけれども、しかし報道によれば、どうも防衛庁のこれのようだということもまた明らかになっておるわけで、それは同時にSDIにも応用されるものだと言われている。だとすると、これの技術供与の問題は即SDIへの研究参加と不可分なかかわりを持ってくるはずだが、その点はどのような対処をなさいますかと聞いているのです。
  54. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 先ほど申し上げたような前提でこざいますが、当該技術につきまして果たしてSDIと関連がそもそも可能性としてあり得るかどうかということにつきまして私どもまだ判断できる状況にございませんので、その点も含めまして今後検討したいというふうに考えております。
  55. 志苫裕

    志苫裕君 わかりました。
  56. 和田教美

    ○和田教美君 十分五九中業の問題で議論が出ておりますけれども、私も五九中業現状問題点というようなことを中心に防衛庁長官に主としてお尋ねしたいと思います。  この委員会は調査特別委員会でございますから、あまり揚げ足取りだとか重箱の隅をほじくるような質問はいたしませんから、警戒態勢は余りとらずにお答えを願いたいというふうに思います。  まず、先ほどから出ております、長官は、今度の訪米でワインバーガー・アメリカ国防長官との防衛首脳協議の席で、五九中業によって防衛計画大綱の水準の達成を期しているということを表明して、五九中業作成に当たっての基本的な考え方を説明したというふうに報道されております。特に、五九中業では、アメリカ側の要請の強いシーレーン防衛向上のため洋上防空能力の抜本的強化を図りたいというふうなことでいろいろな話をしたということが出ておるわけでございます。  先ほどの長官の話ですと、洋上防空能力の向上という問題についてOTHレーダーに関心を示しておるから、ひとつ資料をよこしてくれということを約束しただけだというふうに受け取れるような答弁がございましたけれども、どうも報道を見るとそんなことではなくて、今防衛局長がおっしゃったような、つまりOTHレーダーを初めとして早期警戒機だとかあるいは艦艇の防空システムだとか、あるいはまた迎撃戦闘機の増強だとか、そういういろいろな問題を総合した洋上防空構想というものを本格的に中業で検討している、だからこういうことだという説明をしたのではないかというふうに報道から受け取れるわけですが、その辺は一体どういうことであったのか、具体的に御説明を願いたいと思います。
  57. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 私がワインバーガー長官にOTHレーダーにつきまして申し述べたことはごく簡単な言葉でございまして、洋上防空体制をこれから総合的に研究していく際にOTHレーダーも有効かもしれない、その総合的な検討の中には早期警戒の問題もございますし、他のいろいろな仕組みもありますけれども、全体を研究していく際にOTHレーダーも有効かもしれないので五九中業の中で検討してみたい、ついてはその判断のもとになる技術的な資料を提供していただけないかと申したのが全部でございます。
  58. 和田教美

    ○和田教美君 先ほどの矢崎防衛局長の説明ですと、洋上防空能力の問題について主に五九中業で検討している項目がずらっと陸上、海上、それから航空というふうに説明がございまして、最後に洋上防空能力についてこういう組み合わせというふうな問題も検討するという説明だったと思うのです。特にOTHレーダーの問題などというのは今までの報道なんかを見ておると最近浮上してきたような感じで、どうも実態はアメリカ側要求が、要請が非常に強いからこれを取り入れるという構想がどこかから飛び出してきたのではないかという感じさえするわけなのですが、一体五九中業の中でこういう洋上防空の組み合わせというものを取り入れるということになるのですか、ならないのですか。
  59. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) この洋上防空体制の検討の趣旨は先ほど来申し上げておりますから、また繰り返して申し上げるのは差し控えさしていただきますが、このOTHレーダーと申しますのは大変遠方の距離にある航空機とか艦船等の目標を探知する、把握する能力のあるレーダーであるわけで、短波が電離層に反射をするという特性を利用してアメリカ開発をされたものでございます。私どもがシーレーン防衛考えます場合に、その一環として洋上防空が大事であるということは既に申し上げたとおりでございますけれども、その洋上防空を考える場合にあってもこのOTHレーダーというものが早期に端緒を把握するという意味で、我が方の対応体制をより効率的に実施し得る能力があるだろうというふうな評価をしているわけでございます。そういう意味でこれを今検討しているわけでございます。  ただ、先ほど来申し上げておりますように、これはアメリカ開発をしたものでありまして、日本にはそういった意味の技術はないわけでございますから、まずアメリカから技術的な資料等をもらって協力をしてもらう必要があるということから、今回の首脳会談でその要請をしたわけでございます。それに対してできる限り協力するよう努力をしましょうという回答をワインバーガー長官からいただいたわけでございます。したがって、これを踏まえてこれから事務的にいろいろなルートでそういった資料の提供を受けまして、早急にこの問題についての検討を進めていきたいと思っておるわけでございますが、まだ現在のところ具体的に取り上げられるかどうかの結論を得ているわけではありません。ただ、検討がうまく進みました場合には、具体的な事業として取り上げられる可能性がないわけではないというふうな感じは持っております。
  60. 和田教美

    ○和田教美君 空中給油機の問題、それから空中警戒管制機の問題、こういうふうな問題はどうなのですか、検討中というのですけれども。私がそういうことを質問するのは、OTHレーダーの問題にしても、今の答弁を聞いておりますと、七月には防衛庁中業を決めると言っているわけです。そうするともうあと一カ月しかないわけです。そんな重大な洋上防空のいろいろな組み合わせをあと一カ月足らずの間に検討して決定するかしないかということは、私は実際問題として事務的にできないと思う。事実上それは取り入れるという方針があって、ただ表面上言えないということにすぎないのではないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  61. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 洋上防空体制の全体の体系としては、先ほど来申し上げておりますようにOTHレーダーによる早期探知の機能でありますとか、それからそれで早期に端緒が把握できますと次の段階は早期警戒という、早期警戒機によって近づいてくるものをさらに詳細に把握をする。それに対する要撃の態勢を速やかにとる。その場合に要撃機が出動するに当たりましても空中給油機能がそれに伴っておりますと、やはり要撃活動が効果的にできるという面がありますので、空中給油機の問題もその一環として検討をされていくという位置づけになっていくのではないかというふうに思います。  その場合に、具体的に個々の事業がどういうふうに五九中業をまとめる時点で位置づけができるかということは、まだここで明確に申し上げられる状況ではございませんが、例えば空中警戒機、この場合は現在もE2Cというものを既に運用しておるわけでございますから、これを増強するという話は量的な問題でございまして、その体制の整備にそれほどの特に問題があるわけではないと思っております。それに比べますと空中給油機の問題は、これはこれまで余り自衛隊といたしまして研究成果の蓄積がほとんどないという状況がございますので、現時点ではこれを具体的に取り上げられるかどうかというところの見通しを得るまでには至っていないというのが現状でございます。
  62. 和田教美

    ○和田教美君 ともかく加藤長官がワインバーガー長官に対して、この洋上防空というものをとにかく積極的に説明したということに関連して、これも私が何回も予算委員会その他で指摘をしてきたことですけれども、シーレーン防衛を足がかりにしていわゆる防衛計画の大綱の防衛構想というものがだんだん変質してきているということを私は指摘してきたわけですけれども、まさにそういう印象を強めるわけでございます。  シーレーン防衛は、当初は船団護衛そのもののように説明されておったのですが、それが航路帯となって、線から帯、そして面というふうになってきました。そして最近では海峡防衛等も含めた総合作戦というふうに説明され、海上交通保護と言われていたわけですけれども、今回それに洋上防空を含めるということになってまいりますと、先ほども志苫委員から御指摘があったように、まさに洋上防空構想が立体化してきたというふうに言わざるを得ないと思うのです。そうなりますと当然装備も質、量ともに増大の一途をたどってくるということになるわけですが、これでも大綱の内容は、先ほどの防衛局長の説明のように、大綱が決まったときから今のような状態を全部見通しておって、内容はほとんど変わっていないのだというふうに言えるのか。私の言うように変質をしているというふうに見た方が常識的ではないか。防衛庁長官の見解をお尋ねしたいと思います。
  63. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 鈴木総理がシーレーン防衛アメリカで言われたときからもいろいろ御議論があったようでございますけれども、私といたしましてはそのシーレーン防衛の発想が大綱の中になかったものだとは思いません。明確に海上交通路の保護ということは書いてありましたし、そしてそのシーレーン防衛はずっと考えられてきたことだと思っております。そしてその後シーレーン防衛考える際に、その際それに対する脅威としては、いわゆる船からのものもありますし、それから潜水艦からの、つまり水中からのものもございますし、空からのものもあったと思います。そういう意味で我が方の護衛艦が、あるものはミサイルを持っているものもありますし、あるものはもっと単純な距離の短い空に向けての砲を持っているものもございます。これすなわち、やはり空に対する脅威というものを想定していたということではないかと思います。  ただ、最近の技術的な進歩によりまして、より経空脅威の質というものが大きくなった、それに対する対応は、先ほど局長が言いましたようにそれなりに対応していかなければならないという事態になってきたのではないかと思います。そうすると大綱との関係でどうなのかということになりますが、大綱の中に書いてありますように、諸外国の技術的進歩に対応した質的な弾力性を持った整備をすることが書かれておりますので、私たちは大綱の精神に反することを今やっているものだとは考えていないわけでございます。
  64. 和田教美

    ○和田教美君 今の説明を聞いていると、結局大綱というのは具体的な数字としては別表というのがあるわけですね。別表というのはしかし非常に抽象的に量を、航空機が幾らというふうな形で決めているにすぎないわけで、今まさに防衛庁長官がおっしゃったように、質の問題については全く触れていないわけです。そして防衛計画の大綱の中には、質的な強化ということはあるのだということが書いてある。そうすると実際には、大綱水準を達成すると、いかにもこれがにしきの御旗のように言いますけれども防衛庁は勝手に大綱の中身というものをどんどん質的に変えていくことが可能である、こういうことを今の答弁はそのまま物語っているのではないかというふうに私は思うのですけれども、その点はいかがですか。
  65. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 我が国の防衛力整備は、規模は小さいけれどもそれなりに有効なものを持たなければいけない。そして大綱で設定しているのは、数はその別表に書いてありますように規定してございますけれども、当初から質的な向上は十分に弾力性を持ってというのがその発想にあったと思っております。すなわち、いわゆる装備の数の面においては一〇〇%大綱にはなっておらないと思いますけれども、質の面においては諸外国の動向に適応したものということになっておると思います。私たちはやはり我が国の自衛力が小さいものであって、なおかつびりりと辛い、ちゃんと効率的なものであることが必要であろうと思います。これだけの国民のお金を使って、数も少ないし時代おくれで何の意味もないものを装備したならば、かえって国民の御批判を受けるのではないかと思います。
  66. 和田教美

    ○和田教美君 先ほど防衛庁長官は、シーレーン防衛という考え方は大綱が決まったとき、つまり五十一年のときから歴然とあったのだということを盛んに強調されましたけれども、先ほども志苫委員が指摘をされましたように、四月十日の当外交・総合安保調査特別委員会の安保問題小委員会、これは私は出ておりませんけれども、ここに速記録がありますが、そこに参考人として出席した竹田五郎元統幕議長はこういうふうに言っております。大綱作成当時の航空自衛隊は、シーレーン防衛についてはそれほど関心を持っていなかったと思う、したがって、シーレーン防衛が任務として課せられるならば、それに応じただけの飛行機の増、さらには空中給油機、空中警戒管制機も必要であり、今のままではシーレーンを空から守るだけの力は航空自衛隊にはないと述べて、さらに質疑の中で、五十一年ごろには、航空自衛隊は日本周辺の四百キロぐらいのところは守るが、一千マイルというふうな構想はなかったというふうに述べて、そのような能力を持つためには大綱の範囲を当然超えなければならないというふうな答えをしているわけです。これは非常に制服のOBとしてある意味で正直な答えだというふうに思うのです。  こういう証言から見ても、一千海里の洋上防空までやろうという考え方なのに、シーレーン防衛という最初なかったものが、とにかくほとんど内容的に変わっていないというふうなたぐいの説明は全く了解ができないというふうに思うのです。その竹田さんの五十一年当時は航空自衛隊はほとんどシーレーン防衛なんというのは考えていなかったという、こういうことについては防衛庁は一体どういうふうに考えるのですか、これはうそですか。
  67. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 竹田参考人の証言は私も議事録で拝見をいたしております。ただ、ここで御理解をいただきたいのは、現在私どもが進めております防衛力整備というのは、まず第一次的には防衛庁が責任を持ちまして、内部におきましては各幕僚監部と十分なる討議を重ねてそして一つのものをまとめていくということでやっておるわけでございます。五九中業作業につきましても全く同様でございまして、現在の時点におきます国際情勢の判断、あるいは軍事情勢についての判断、それから我々の力の評価というものを現在の時点において総合的に評価をして現在の五九中業の案をまとめておるということでございます。  そういうことで、先ほど来申し上げております私どもの洋上防空の問題についてのアプローチも、防衛庁内部におけるコンセンサスを踏まえてのお話を申し上げているわけでございます。具体的にはこれは防衛計画の大綱の枠の中でやっていこうということでございまして、例えば航空自衛隊の作戦用航空機につきましても、別表に定めております約四百三十機という枠の中でそういった能力をさらに充実をしたいという考え方に立っているわけでございます。  先ほど来申し上げておりますように、大綱作成当時において空からのシーレーン防衛についての脅威の度合いが現在に比べればそれほど大きくないように考えていたという事情があることは事実でございまして、竹田参考人の発言もそういうことを申されたにすぎないと思いますが、私どもは、その当時に比べればそういった経空脅威がかなり増大をしてきているという認識を持っておりますし、現在の防衛庁内部、航空幕僚監部も含めまして一致してそういうふうに見ておるわけでございます。したがって、大綱の範囲内においてそういった能力を高めるために知恵を出し合って工夫をしようという発想で現在作業をしているわけでございますので、我々が申し上げております洋上防空能力の向上の施策というものが大綱の枠をはみ出して行われるということでは全くないということを御理解いただきたいと思います。
  68. 和田教美

    ○和田教美君 その問題は、時間がなくなってきましたから、まだまだ議論をしたいのですけれども、先に進みます。  五九中業の現在進行している概要についてはいろいろ先ほどから説明がございました。具体的な経費の問題だとかそういう問題についてはまだ金額的には発表できないというふうなお話でございましたけれども、ただ一つ、この問題でもう一回確かめておきたいことは、GNP一%枠との関連性の問題です。  先ほど防衛庁長官は、このGNP一%枠という問題は政府予算案決定の際の判断の問題であって、五九中業の問題とは関係がないのだ、したがって、この問題は五九中業作成の過程では考慮していないのだというふうな意味のことをおっしゃったと思うのです。しかし、長官政治家であるし、そんなことはあるはずがないわけで、また事実今までの国会答弁で、一%枠で五九中業達成できますかというような質問に対して、長官はしばしば、一%の範囲内で計画を達成するのは非常に容易ではない、全体を考えると一%におさめるのはなかなか難しいという感じがするという趣旨のことをしばしば答えられておりますね。結局そうすると、一方においてはなかなか難しいというPRをすることによって一%枠を突破する一つのきっかけをつかもうとしながら、もう一つの方は、五九中業内部資料だから一%枠と直接は関係ないという言い方で逃げる、しかもそういう言い方でアメリカにも説明をしないでいいのだという理由づけにしている、こういうことじゃないですか。さっき、今度のワインバーガー長官との会談でも一%枠との関連については何ら説明をしなかったという答弁がございましたね。ですから使い分けているというふうに感じざるを得ないのですが、一体本心はどうなのですか。
  69. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) アメリカとの関係では、この一%の問題は我が国内の問題ですから、私たちも特に言及いたしませんでしたし、五九中業と一%の問題について向こうからの質問もございませんでした。  さて、純粋に我が国内での議論の問題でございますけれども、たびたび申しておりますように、この議論は、基本的には中期業務計画というものの性格づけについての御議論になろうかと思います。これは五六中業のときにもあったと思います。五六中業の数字も決定した段階ではある幅を持った数字として出てきたわけでございますが、そのときの上限、上の方の数字は当時の見通しから見てもGNP一%を超えるものでございました。下限は超えないものでございました。したがって、じゃその後どうなったかといいますと、GNP一%は守り切れておるわけでございます。これでもわかりますように、中期業務計画というのはあくまでも防衛庁内部予算概算要求資料になるものでありまして、単年度のものでなく五年間の期間を定めたものでございます。  それから、申し上げておきたいと思いますのは、中心は正面装備についての見積もりでございまして、この正面装備というものはいわゆる防衛費の中の二五%とか二六%でございます。ラフに申しますと四分の一でございます。残りの四分の三、例えばその一番大きいのは人件費、糧食費でございますけれども、そういうものにつきましては、過去の傾向値から推測するというようなものでございまして、そういった意味からも、しっかりと予算査定されて決定される予算原案の際に適用されるGNP一%の閣議決定の問題とは直接関連するものではないと考えております。
  70. 和田教美

    ○和田教美君 要するに、予算概算要求の単なる内部資料だという御説明でございますけれども、しかし、今度の中期業務計画をつくるに当たっての長官指示というのが前に出ましたね。これは国防会議防衛庁長官が報告をして国防会議の了承を得ているのではないですか。それから、この五九中業が決まった後にはまた国防会議に報告をして了承を得るという手続を踏むのではないのですか。そうすると、単なる防衛庁の業務、いわゆる概算要求の一資料にすぎないというふうな軽いものとは言えないのではないですか。  それともう一つは、少なくともアメリカ側はそういうふうにはとっていないということは、先ほどの志苫さんとの論議を聞いておりましても私にはそういうふうにとれるのです。例えばさっきも議論に出ましたように、アメリカの国防総省の当局者は、五九中業について、その達成によって日本防衛力は戦略的な力を持つことになるというふうなことを述べたということから見ても、少なくともアメリカ側はそういうふうには受け取っていないことは明確ではないかと思うのです。もしそうであれば、今長官のおっしゃるような非常にレベルの低いものであれば、これはこういう程度のものであって、今後予算折衝があって一%枠という非常に国是に近い一つ方針があるのだから、それによって幾らでも変更するかもしれませんよという説明をしておかなければ、アメリカ側の誤解を生むということになりませんか。ところが、実際には全然一%の関係は説明をしていなかったというお話なのですが、その辺も納得ができないわけでございます。
  71. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) アメリカ国防省を初めとします政府関係者の人々は、中期業務計画というものの性格をよく知っておりますので、その辺についての誤解はないものと思っております。
  72. 和田教美

    ○和田教美君 古い例を持ち出すわけではないのですけれども、一千海里防衛について鈴木総理が記者会見でぺらぺらとしゃべった、日本の庭先だから一千海里を守るのだというようなことを言ったことが、いつの間にかアメリカの議会筋あるいはマスコミというふうなところで対米公約というふうな形になってしまったのです。それで、国防報告の中でも対米公約だというふうに位置づけられておるわけです。防衛庁長官が今度ワインバーガーさんとの会談で、洋上防空その他について中期業務計画の見積もりを今言った一%の関連なんかを全然抜きにしてそういうことを言ったということによって、国防総省の一部の専門家はあるいはある程度正確に理解しているかもしれないけれどもアメリカ政府全体あるいは議会というふうなところは日本の対米公約だというふうに受け取るおそれがないかどうか、その辺はいかがですか。
  73. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) それぞれアメリカ議会の中でもいろいろな意見の人、いろいろな見方の人がおりますから、それはすべてが一〇〇%私たち防衛政策及び防衛予算決定の仕組みがわかっているということは私は断定いたしませんけれども、少なくとも政府の中において日米防衛協力等に関連している人々及び議会の中で防衛問題に精通している人たちの間には、この中期業務計画の性格は理解されていると思っております。
  74. 和田教美

    ○和田教美君 時間がなくなりましたから、先ほども出ておりましたアメリカの上院本会議の六月十一日の抜き打ち決議でございますね。これは日本に対して非常に大幅な防衛力の増強を要求してきたものであります。それに対しては、加藤防衛庁長官アメリカにおられるときに一種の反論をなさっておるわけで、その内容そのものは私はやっぱり当然反論すべきものであるというふうに評価するわけなのですけれども、しかし、決議そのものの内容は非常に我々の目から見ると内政干渉も甚だしいというふうに思われるわけです。この決議に対して長官はどういう感じを持っておられるか、その点をもう一度お伺いしたいと思います。
  75. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) ワインバーガー長官との会談でも私たちは申したのでございますけれども、過去数年、日米の防衛問題についての協力関係は、アメリカが声高に我が方に要求するという形が影を潜め、私たち自分たち防衛については自分たちのことと考え、自主的に判断し決定していくから、アメリカ側もそのような形で見ていてほしいということを申したわけです。この方向が今後とも続いていくことが望ましいし、またそれが建設的であると私たちは思うということを申したわけですが、その一日半後にあの決議がされたわけで、やはりそういう観点から、アメリカ政府行政部内の人たちにお互いに自主的な努力をする形の確認をしておいたことはよかったことだなと思っております。そういう意味であの決議を見ますと、日米防衛関係をより充実進展させるためにああいう形は建設的ではないと思っております。
  76. 和田教美

    ○和田教美君 今の上院の決議の問題ですけれども防衛庁長官の話によると、政府当局者との間は非常にうまく話は通じていたのだ、ところが、アメリカ議会の決議は違うのだというふうな意味に受け取れるわけですけれども、どうも政府はこの対米交渉という問題については、政府政府の問題を非常に重視する、しかし議会の問題ですね、これは貿易摩擦の問題一つをとっても議会の問題を軽視しているのではないかというふうに思わざるを得ない。ああいう決議が抜き打ち的に噴き出してくる、しかも今までの報道によると、少なくともアメリカ政府とぐるになって議会にアドバルーンを上げさしたというふうなものでもなさそうだということでございますから、そうなってくると、やっぱり議会に対する説得工作なり了解工作というものは今まで怠っておったのではないか。これは外務省の責任なのか防衛庁の責任なのかわかりませんけれども、その辺の件について、安倍外務大臣はこの決議の内容についてどうお考えになるか、また、今申したことについての対応をどうされておるか、この辺をお聞きしたいと思います。
  77. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) あの決議というのは随分荒っぽい決議だなと思います。あれは加藤長官が行っている間にやったということで、私の想像では、余り何か勉強もしないで出してきたという感じがするわけでございます。  アメリカの議会は、よくああした種類の決議等をやりまして日本なんかに突きつけておるわけですが、今度の場合はまず歳出権限法の修正議決ですか、まだ成立もしていない段階でございますので、今ここでこっちが正面から取り組んでいったって仕方がないと私は思っておるわけでございます。いずれにしても感じのいい決議じゃありませんし、日本政府としましても、これは大使館の方でアメリカの議員とはよく連絡もとっておりますけれどもアメリカの議員が、貿易摩擦でもそうですが、随分理解をしないで誤解に基づく発言とか、あるいは決議等も多いように思いますし、やはり大事な日米関係ですから、政府だけではなくてアメリカの議員の人にも日米関係というものについてもっと正確な理解を持ってもらいたい、認識を持ってもらいたいという立場からこれからもよく接触をして、そして日本立場も十分伝えるようにしたいというふうに思います。
  78. 和田教美

    ○和田教美君 時間が参りましたので、最後にもう一つ外務大臣に確認をしたいのですけれども、先ほど堀江委員の質問でグロムイコ来日の問題についてお答えがございました。しかし、どうも私の聞いているのでは、この間ソ連の副首相が科学万博に来て、その際に大分話が進んで、今や事務当局間で日程を詰める段階になっているのではないかという話を聞くわけですが、その点はどうか。もしそこまでいっているとすれば、大体いつごろというめどがついているだろうと思いますが、それが一つの点です。  それからもう一つは、貿易摩擦の問題について、市場開放のアクションプログラムの中の関税の引き下げについては、今月の二十五日に政府が決めるのだという大体スケジュールだったというふうに思うのですが、そのスケジュールには変わりないのか。そして関税が決まった後は大体どういうスケジュールでほかの問題を決めていって、いつごろに仕上げるということになるのか。  この二点についてお伺いしたいと思います。
  79. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) グロムイコ外相訪日についてはいい話もあるのです。今のお話のように、我々もソ連の要人とも接触した中で非常に期待を持たせる話もあります。また一面なかなか、例えば文化協定の草案を出しておりますけれどもソ連からまだ反応がないわけでありますし、まだそういう点で我々としても確たる自信を持って言える状況じゃありません。しかしいずれにしても、向こう都合もありましょうが、こちらの都合もありますから、大使館の方へ早急にこの問題について詰めるように指示をしたいというふうに思っていますし、国連総会のときは私もまた、できれば毎年のことですから、グロムイコさんにも会いますし、しかし、それまでの間には何とか年内ということなら話をもう少しきちっとしておかないといかぬというふうに思っております。  それから貿易摩擦、特にアクションプログラムにつきましては、きょうの政府・与党の首脳会議におきましても二十五日までには少なくとも関税についてはこれを決着しようという一応の合意はできております。ただ、政府・与党間の調整がまだ残っておりますし、関税についても合意がされたわけじゃありません。しかし、ここまでくればとにかく二十五日までには何としても決着をしなきゃならぬ、私は決着をすべきだというふうに思ってこれからも努力したいと思います。その他の基準認証の改善問題とか政府調達とか、いろいろとそのほかのアクションプログラムの残った課題については七月の末までには結論を出す、こういうことでこれから作業を進めてまいりたいというふうに思います。
  80. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 まず、先ほどから問題になっております洋上防空についてですが、一千海里シーレーンがどうやら一千海里のスカイレーンにエスカレーションしたという非常に重大な事態だと思うのです。先ほどの説明でも総合体系の中に早期警戒機それから要撃機が入っているわけですね。そうすると、早期警戒機、要撃機が本土から行くのじゃ間に合わぬ面もあるので、既にP2J、F4ファントムの訓練をやっている硫黄島、それからNLPで候補地と長官がワインバーガーさんに伝えた三宅島、こういうところを早期警戒機、要撃機の航空基地にするという構想はあり得るのですか。
  81. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 洋上防空体制の整備を考えていく場合に、先ほど来申し上げておりますように、OTHレーダーであるとかあるいは空中警戒機とか要撃機、艦艇の防空火器の組み合わせをどうするかということを検討する必要があることは既に申し上げたとおりでございます。その場合に、要撃機なり空中警戒機なりの運用をどう考えるかということを含めまして現在検討中でございますので、具体的にどういうふうに運用する予定かということをここで申し上げ得る状況ではございません。  ただ、先生御指摘の三宅島の問題と申しますのは、もともといわゆる夜間離着陸訓練の用地の問題として別途検討されている問題でございまして、私ども考えている洋上防空体制の検討の中で、これを特に今検討の対象にしているというようなことはございません。
  82. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私はここに、自衛隊OBの方々の先ほどから名前の出ております竹田さんやら永野さん、大賀さんの「戦略研究シリーズ(VOL・15)軍事的脅威とわが防衛戦略」、ことしの三月のものですけれども、これを持ってきていますが、この四十三ページの一千海里シーレーン防護というところに、「硫黄島と伊豆七島及び本土等に展開する要撃機を活用し、」ということで、もうその硫黄島、伊豆七島が書いてあるのです。どうも制服の方が正直でシビリアンの方が言葉をいろいろ取り繕うという傾向があるので、こういう状況じゃシビリアンコントロール自体も極めて危なっかしいということを指摘しておきたいのです。  長官、次の問題で、あなたは防衛庁長官として初めて最新鋭の弾道ミサイル原潜のトライデントを今度視察されたわけですね。これはシーレーン防衛関係あるのですか。日本南方の海域にトライデントが配備される、それとシーレーン防衛との関係があるのですか。
  83. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 我が国は非核三原則を厳格に守る方針は現在も過去も今後も変わりございません。今度の私たちが原潜の基地を見ましたのは、見ることについて私たちもいろいろ考えはございました。特に唯一の被爆国の一国民として、また一政治家としていろいろ思いもありましたけれども防衛政策担当者としては冷静な気持ち現実を見るということも今後の政策判断に必要かと思って見てまいりました。しかし、これとシーレーン防衛関係があるのかという御質問を受けるとは全然考えてはおりませんでした。
  84. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 あなたはシビリアンだから、案外そういう軍事知識がないのです。これは大分国会で問題になりました。戦略原潜が行動する場合、ロランC基地ですね、これで位置を確定し、それから作戦指揮もここで受けるのです。このロランCというのは、北太平洋チェーン、主局は硫黄島にある。あと従局が南鳥島、北海道十勝太、沖縄慶佐次、ヤップとこうあるわけです。この範囲内というのは戦略原潜の有力な作戦範囲の一つであって、もちろん秘密条項で秘密事項ですけれども、ポラリス、ポセイドンをここにやっぱり使っているわけです。そうなると、ここにトライデントが今八隻できて、四隻は太平洋側なのだが、将来置くかもしれぬのです。  そうしますと、あなたが一生懸命やろうとしておられるシーレーン防衛なるものは、空母機動部隊や輸送船団を防衛するだけでなく、客観的にはトライデントという最新鋭の戦略原潜、その戦略的な防衛の役割をも押しつけられるだろうということを、あなたは御存じないからもう聞きませんけれども、私は警告を発しておきたい。  さて、次に陸上自衛隊のかつての演習問題、これは考古学的発想ときょうは答えないでほしいのですけども、私は三月十二日に予算委員会で自衛隊幹部学校の核戦争教育を取り上げました。あのとき三十二冊教科書を持ち出しました。きょうはもう一つ今度は新しいものです。どうもこれは陸上自衛隊幹部学校の教育部じゃなくて研究部のものだろうと思うのですが、資料をお配りしたので見ていただきたい。これはその一年前の三十三年七月のものです。アメリカの翻訳です。「核兵器の用法」といってこれは詳細に核兵器のイロハから入っているけれども、普通あるニュークリア・ウェポンズなどの大きな本と違って核爆撃だとか核砲撃のやり方、放射能の調査のやり方、あるいは指揮官及び幕僚の責任等々本当に軍事的なアメリカの秘密事項が書いてある。これは部外秘となっている。自民党が国会に上程した国家機密法案など通るとこういうものはなかなか危ないという危険さえ生まれるような大変なものなのです。  さて、私が問題にしたいのは、この翻訳の中身じゃなくてお渡しした資料の二ページにあります注です。この注は幹部学校が書いた注です。これを見ますとこう書いてある。ずっと中身を書いて、一番下を見てください。「今次演習の参考資料とするため取敢えずほん訳し別個に印刷配布すること々した。」、「今次演習」と書いてあるのです。つまり、核兵器を使用した演習をどうやら計画して三十三年七月以降どうもやったのですな。私が取り上げた「国土防衛作戦」の中には東北地方の岩木山で八インチりゅう弾砲、これで原子砲として使うと注まであった。実際に行った演習の内容だろうと思うのです。(資料を示す)防衛庁長官、これも本物ですよ、この古さからして、中身を見て。これは読んだ人がいろいろ赤線を引っ張って勉強をしている。大高さん、あなたも見てください。また、そういうものを廃棄してありませんなどと言われるだろうけれども、後で返してください。  それで質問は、今初めてごらんになったのでまた教科書を調べるとかなんとか、見たことはないと言われるだろうけれども、私の質問は演習ですから、演習は廃棄できない、かつてやった。三十三年七月以降三十四年ぐらいまでの間に、当時やった陸上自衛隊の演習でこの教科書を参考資料として行われた核戦争用の演習です。こういうものがあったかどうか、これを調査してほしい。防衛庁長官、どうですか。
  85. 大高時男

    政府委員(大高時男君) お答えを申し上げます。  先般、三月十二日参議院の予算委員会におきまして上田先生の方からいろいろ御指摘がございまして、私どもの方で幹部学校その他いろいろ調査したわけでございますが、何分古い資料でございまして、対照すべき材料もない、あるいはまた、これが幹部学校等におきまして制作あるいは配付されたという裏づけも一切ないということでございまして、確認できなかったわけでございますけれども、御承知のように大体教案その他につきましては、通常当該一年ぐらいが大体当時の幹部高級課程あるいは指揮幕僚課程その他の課程でございますけれども、終わりますとおおむね教案というものはなくなる。あるいはまた……
  86. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ちょっと簡単にして。演習について調査するかどうかを聞いているのだから。
  87. 大高時男

    政府委員(大高時男君) そういった資料等もせいぜい現在におきましても五年程度の保存でございまして、こういったものについて果たして当方の資料であるかということは、これは裏づけをすることがまず困難であるというふうに考えております。また、当時の例えば教育実施計画等でございますが、こういうものは……
  88. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 演習、演習、教育じゃなくて自衛隊の演習。
  89. 大高時男

    政府委員(大高時男君) 仮に演習等がございましてもこれは教育の計画の中で考えられるわけでございまして、そういうものが現在のところ一切計画等は保存されておりませんので、裏づけあるいは検討することはできないというふうに考えております。
  90. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ちょっと長官、大高教育訓練局長じゃだめだ。研究部と教育部とあって、研究部というのは陸上自衛隊の最高のブレーンだったわけです。だから私が提起しているのは、教育実習の演習なんかじゃなくて、自衛隊そのものが、陸上自衛隊の、当時こういう核兵器使用の演習をやったのではないかという重大な疑念を私は出している。だからとにかく調べてほしいのです、重大問題ですから。調べていただきたい。これは大高さんじゃだめです、防衛庁長官です。
  91. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 前回のあの資料は昭和三十二年当時の資料でございまして……
  92. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 三十四年。
  93. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 三十二年とか四年で、私が高校時代のものと申しましたけれども、これは昭和三十三年で、私が大学を落ちて浪人中時代ぐらいの古いものだろうと思います。  そこで、この間も申しましたけれども、私たちは非核三原則を現在極めて厳格に遵守いたしておりまして、そして現在の教育面におきましてもすべてその精神を厳格に守らせているわけでございます。したがいまして、昭和三十三年のこの資料が本当に私たちのものか、これから調査するとしてもなかなかわかりにくいところがあるのではないかなと思いますが、いずれにいたしましても、ここに書いてありますのは、ページを見ますとフォールアウトの研究でございますね。
  94. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いや、全部です。
  95. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) これは目次を見たらほとんどそれがそうでございまして、あたかもかつて自衛隊が核攻撃の演習をしているかのごとき御質問は私たち若干心外でございまして、この中身は全部フォールアウトの、仮に攻撃を受けた場合には、核から落ちてくる灰から身を守るにはどうしたらいいかという演習をしたかもしれぬという御指摘の質問になるわけでございます。
  96. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 逃げないでね、もう時間もきょうありませんから。この教科書の目次がありますが、核兵器投射の体系から使い方から全部あるのですよ。それで、幕僚その他の責任まで書いてあるので、逃げ口上じゃなくて、私がとにかく国会で問題提起をしているのだから、調べるという返事がどうしてできませんか。調べてほしい。
  97. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 見せていただきました資料が……
  98. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 資料がじゃなくて演習ですよ、演習をやったかどうか。「今次演習の参考資料」とあるのだから、当時そういう演習があったはずなのです。演習があったかどうかを調べてもらいたい。
  99. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) まず資料がどういうものか調べることはいたします。しかし、ここで書いておりますように、今核兵器の定義だとかどうのこうのというのはたった十七ページでありまして、残りの百ページ、残余のもの、付録も全部どのようなフォールアウトが出るかの資料でございます。
  100. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 そうじゃない、核爆発、熱放射、全部ですよ。
  101. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 目次を見ますとそういうことになっておりまして、あたかも私たち自衛隊が核攻撃の演習をやっていたかのような御質問は心外でございます。
  102. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いや、逃げ口上やったらだめなのですよ。当時私が問題にした陸幕幹部学校の校長は、校長になる前にアメリカへ行って、自衛隊は核兵器を持つべきだということを言って国会で問題になったと言ったでしょう。その当時はまだ非核三原則も国是になっていないし、自衛隊も核兵器を使おうという構想があったのです。だからああいう教科書もある。演習をやった。「今次演習の参考資料とするため取敢えずほん訳し別個に印刷配布する」、今次演習の参考資料としてつくったのですよ、今次の演習。これからだから演習をやったに違いない。我々も事実は持っていないけれども、少なくともこういうものが出てきた以上恐らくやったのだろう。だからその演習を当時、演習というのは廃棄できないのだからやった事実の経過はあるでしょう、それについて調査をしてほしいということを言っているのだから。  この教科書の全部については、きょう私はその中で一部しかコピーしてありませんけれども、膨大なものです。フォールアウトなんというのは一部であります。使い方から八インチりゅう弾砲、原子砲のことまで入れてありますけれども、写真まで載っておる。だから、こういうものを印刷して、これを「演習の参考資料とする」、これを参考資料とする演習というと核兵器使用の演習だろうと思うので、演習について調査してほしい。これは今の問題にもかかわりあるのです。自衛隊の本質にもかかわる。調査すると何で答弁できないのですか。
  103. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) このページ数を見ますとわかりますように……
  104. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ページ数の問題じゃなくて……
  105. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 一ページから四十二ページまではどうやって敵は撃つかと、こう書いてあります。この問題の定義等でございます。それから六十一ページから百十三ページまではそのときにどうやって身を守るかというフォールアウトについての研究でございます。仮にここでの演習というのは、あったとするならば、恐らくどうやつて身を守るかという演習だろうと思います。私たちは昭和三十三年当時のそういった資料が現在どういう形であるかどうかわかりませんけれども、あたかもこれによって私たちが当時核攻撃の演習をやっているがことき御質問は心外でございます。
  106. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 あなたが浪人中にどういう演習をやったか、それはわからぬよ、あなたは全部知っているわけじゃないのだから。しかし私は資料を提出して、疑念があるから国会で正式に委員会として要求しているのです。第三部は「核兵器の用法」、全部あるのです。ちらちら見て、これが全部フォールアウトだと、とんでもないですよ。全部フォールアウトじゃないです。私はだから全部渡したじゃないですか。  委員長、この問題は彼とやり合ってもしようがないので、委員長として理事会でこの問題についての調査問題ですね、お取り計らいいただきたいと思います。——いやいや、いいです。もう時間がないから、私はこの問題で次にやりたい問題もあるので。
  107. 大高時男

    政府委員(大高時男君) お答え申し上げます。  ただいま先生からいろいろ御指摘があったわけでございますが、米軍の資料というのは三十年代いろいろな形で翻訳がなされておりますけれども、ただいま演習の参考資料というふうに話が出ておりまして、そもそもその演習なるものが幹部学校におきますセミナール的なものであるのか、あるいは現地研修的なものであるのか。それからまた参考資料というのは、これは一つの例えば研修等がございますと数多くの参考資料というものがあるわけでございまして、何もそれを使用するということじゃなしに、そういったものを念頭に置き、あるいはそういうものを予備知識としていろいろやっていくということでございます。  私が申し上げましたのは、この文書が仮に陸上自衛隊幹部学校の資料であるとしての話でございまして、先般の三月十二日のいろいろお示しになりました資料調査いたしました際に、当時の資料というものは一切保存されておりません。したがいまして、仮に対照いたしましてもこれがそういうものであるのかどうか、そういう裏づけは困難であるというふうに考えております。
  108. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 だから、問題を取り違えたらだめだ。ちょっと二ページを見てごらんなさい。ここにこう書いてあるのです。米国陸軍指揮幕僚大学校特殊兵器部発行のものの翻訳だと。「本書はDAパンフレットNo.39—1「アトミック・ウエポンズ・エンプロイメント」(原子兵器の用法)の補足教材で内容的に重複している点が多く、一貫した参考資料とするためには両者を取捨整理せねばならないが、今次演習の参考資料とするため取敢えずほん訳し別個に印刷配布すること々した。」と書いてあるのですね。  だから、私はきょう新しく見せたこの参考資料を調べろと言っているのじゃないのです。そうじゃなくて、この序文はここに幹部学校高級幹部現地研究演習準備室訳となっているのだもの、今度は教育部じゃないのです。現地研究演習準備室なのだ。この演習の準備をしたところで、「今次演習の参考資料」と言っているのだから、そういう演習が一体あったのか、なかったのか。その演習は幹部学校の教育的な演習か、あるいは陸上自衛隊の演習かもしれない。だから演習があったか、なかったか。演習についての資料ぐらいは残っているでしょう。  あなた方は言を左右にして私の要求に応じないので、委員長、この資料について調べろと言っているのじゃないのです。私はこの間十七冊をほとんど全部コピーさした、それでも廃棄して、ありませんと言う。詰めに詰めて、当時の教科書と似ておりますという返事を予算委員会でもらいましたが、実際上似ているということはあれが教科書だったということなのです。同じようなことを言うだろうから、私は今度の参考資料を調べろと言っているのじゃなくて、当時三十三年七月以降の陸上自衛隊幹部学校関係の演習、あるいは陸上自衛隊の演習で、こういう原子戦争、特に核兵器使用関係の演習があったのか、なかったのか。唯一の被爆国として非常に重大問題であり、今日の問題ともつながるので、その調査要求している。  委員長、もう彼らはだめですから、ひとつ委員長の理事会での協議のお取り計らいを要望したいと思います。
  109. 植木光教

    委員長植木光教君) 防衛庁当局に委員長から質問をいたしますが、演習があったか、なかったかの調査ができますか、できませんか。
  110. 大高時男

    政府委員(大高時男君) 先ほども申し上げましたように、非常に古いことでございまして、先般の調査の際にいろいろな形で当時の陸上自衛隊幹部学校におきます文書、それからあの資料の中にいろいろ東北方面において実地演習を行ったその他のものが出てまいりますので、そういった事実関係についても、そういった事実関係を証明するような資料がないかどうかということで調査をいたしましたけれども、古いものでございますので、何分そういった資料がすべてございません。したがいまして、今上田先生御指摘の点につきましても、仮に調査いたしましても、その古い分につきまして裏づけとなるような資料はまず発見できませんし、また、当時そういう核使用を前提としての訓練は、行ったというふうに私どもは聞いておりません。
  111. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 彼は全く思っていなくてもやったかもしれないのだから。彼は思っていないと、あなたはもうそういうことをやっていないと思う、甚だ心外だと言われるけれども、心外な事実があったかもしれぬということを私は指摘しているのだ。あなた方が主観的にないと思う、ないと思うと言うのじゃなくて、事実を調べてほしいと、当然の要求じゃないですか。何でやれると言えないのですか。
  112. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 今の御質問が、仮に我が自衛隊の幹部学校でやったものだとするならば、それはフォールアウトについてどのように対処するか、アメリカがやっているかについての研究でしょう。
  113. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 あなたのそういういいかげんな言い分を聞くのじゃなくて……
  114. 植木光教

    委員長植木光教君) ちょっとお待ちください。今、防衛庁長官答弁を求めます。
  115. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 するかどうかを聞いている。
  116. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) それで、これは幹部学校のものが仮に事実だとするとセミナーなわけでございます、高級幹部校における。そういったセミナーでフォールアウトについて翻訳物を見て勉強したかどうかの記録が現在まで昭和三十三年のものが私たちはあるとは思えません。セミナーでどういう勉強をしたか……
  117. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 セミナーではない、演習だと言っている。
  118. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 演習というのはセミナーだろうと思います。したがって、そのセミナーの記録がとっているとは思いませんので、調査してもなかなかわからないと思います。
  119. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 だめだ、そういういいかげんなことを言っては。演習があるか、ないかを調べられるのか、調べられないのか。私はそれだけ言っているのだから。全くもう話にならぬ。
  120. 植木光教

    委員長植木光教君) 速記をとめてください。    〔速記中止〕
  121. 植木光教

    委員長植木光教君) 速記を起こしてください。  ただいまの上田君と防衛庁との間の質疑の件につきましては、後日の理事会におきまして、この上田君の要求についての内容を含めまして協議をいたしたいと存じます。
  122. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 もう時間が大分過ぎたので加藤防衛庁長官に、理事会で協議することになりましたが、疑惑が出た以上とにかく調査する、当時の資料があるのかないのかも含めて、それをひとつ強く要望したい。  私は、きょう米軍の指揮権問題、日米統合軍問題を主にしようと思っておりましたけれども、残念ながらそれはできませんので、次の機会にしたいと思います。  以上で質問を終わります。
  123. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 防衛庁長官、これから長官にお聞きをしていきますから、聞いておいていただきたいと思うのです。  私は、この安全保障というのは国家の存立上極めて重要な問題だと思うのです。言うならば一億二千万の国民運命がかかっているそういう政策だと思うのです。したがいまして、きょうは時間もございませんからそういう基本的な立場に立ちまして基本的な問題について幾つかお聞きをしてまいりたいと思うのです。  一つは、現在の自衛隊法というのは不備がある、欠陥法だということは、これはだれもが認められているとおりなのです。今の自衛隊法を企画立案なさった方ですらこんな何十年ももつとは思わなかったと言われているわけです。それで有事法制の検討を進めるということをお決めになったのがあれは福田内閣のときだと思うわけなのです。あれからかれこれ十年近くたつわけですけれども、どういうふうになっているのですかということをまず第一にお聞きしたいわけです。——長官に聞いている。
  124. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 有事法制につきましては、現在第一分類及び第二分類につきましての作業がある程度終了いたしまして、これは既に御報告申し上げたところでございます。第三分類につきまして現在、これは問題提起のための作業を今実施しているところでございます。
  125. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 五六中業とか五九中業とかという正面装備の問題はかなり綿密にやって、そしてここにも出してくるわけなのです。今も言いましたように自衛隊法が欠陥法だということになって有事法制の検討もしなくちゃいけないといって内閣がお決めになった。それから十年近くたつと言うのです。それほど悠長なことでよろしいのですかどうですか。第一分類か第二分類かじゃなくて、十年近くたってもいまだに結論も出し得ない、そういうことでもって防衛庁として満足しておられるのかどうか、長官の御見解はいかがですか。
  126. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) まだ研究が終わっていないところがいわゆる第三分類に属するところでございますけれども、できるだけ早く検討結果を取りまとめてまいりたいと思っております。
  127. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 長官、こんなことを私が言うだけやぼだけれども戦争というものは予告してやってくるものでないことはおわかりだと思うのです。いつの場合でもどこの国の場合でもこれは予告なしで来るわけなのです。だから、そういう点からいくなら非常に緊急を要する問題だと思うのだけれども、今の状態ではそういう状態だということがわかりましたので、いつごろまでに結論をお出しになる見通しですか。
  128. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 今具体的にいつまでということは申し上げられる段階にございませんけれども、できるだけ早く第三分類の作業を完了できるように努力してまいりたいと思います。
  129. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 それ以上詰めても答えが出てこないと思いますから、次にお聞きしたいのは、今も申し上げましたように安全保障というのは国家の運命にかかわるものだと思うのです。そうしてきますと、そういう性質を持った安全保障に関係した法案というのは、それは統治権を持っている内閣がお出しになるものだと思うのです。議員立法でこれに関係したような法案を出すということは私はおかしいというか、むしろ防衛庁なり政府としては恥ずかしいことだと思うのですけれども、その点についての長官のお考えはいかがですか。
  130. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 防衛庁といたしましては、我が国の安全にかかわります防衛上の秘密の問題、こういった問題については極めて重要な問題であるという認識はもちろん持っているわけでございます。ただ、この秘密保護の問題につきまして新たな立法措置をどういうふうにするかということにつきましては、かねてから申し上げておりますように、防衛庁といたしましては国会を初めとする各界の御論議あるいは世論の動向を踏まえて慎重に対処していくべきであるというふうに考えてきたところでございます。  今回、このスパイ防止法案が自民党におきます長年にわたる準備、検討の上で提出されたものと承知をいたしている次第でございまして、こういった立法につきましては広く国民理解が得られることが望ましいということは言うまでもないことでございますので、国会において各般の観点から十分御審議をいただくことが必要ではないのだろうかというふうに考えている次第でございます。
  131. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 私が聞いているのはそういうことでないのです。長官、今局長は広く世論の支持を得るために云々と言っているのですけれども、私がお聞きしているのは、少なくとも国防上、言うならば国家の安全保障上の問題というものは極めて重要なことでしょう、当然統治権を持った内閣が、政府がそれらに関係した法律はここへ出して、それでここで御審議をしてくださいといって出したときに国民の世論のそういうことがここでも反映して原案どおり通るなり修正されるなりどうなりと。今私はスパイ防止法と言わなかったけれども局長がそういうふうに言うから、スパイ防止法の法案の内容がいいとか悪いとかでお聞きをしているわけじゃないのです。  安全保障といってこれほど国家にとって重要な政策はないはずだ。とするならば、当然それに関係した法案というものは内閣みずから出すべきことなのです。それを議員さんから議員立法でお出しをいただくというようなことは内閣として、このスパイ防止法で言うなら防衛庁としてそれは職務怠慢というそしりを免れないじゃないですか、お恥ずかしいことではないのですか、少なくとも安全保障に関係したものはみずから出すという、そういう姿勢を何でおとりにならないのでしょうか。長官の御見解をお聞きいたします。
  132. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 安全保障上の情報管理というものは非常に大切なことであり、特に私たち防衛庁としては強い関心を持つところでございます。また、この一方には国民の知る権利等種々の複雑な問題がありますので、この問題につきましては世論の動向、それから国会におきます各般の皆様の御意見の動向を見きわめながら慎重に決定するべきものであろうと思います。したがいまして、その際に私たち政府から問題提起するということも非常に重要であろうと思いますけれども、立法府においてみずからの判断で議員立法という形で御議論がされることも私は非常に有益なことであろうと思っております。
  133. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 その言葉の持つ意味というか、重さというものはもう少しまた時間があるときに予算委員会か何かでしたいと思いますので、それは宿題にしておきたいと思うのです。  次は、五十五年の八月に防衛庁が領空警戒の戦闘機には空対空ミサイルを装備する、艦艇には実弾の魚雷を装備するということをお決めになったはずですが、そのまま続けておられるのか、それを使用なさったことがあるのか。  それから、そういうことの装備をすることによってどういうメリットがあったのか。  それから、スクランブルをするときには、今のミサイルというものを積んで全部飛ばしているのですか。その辺はいかがです。
  134. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 御指摘のように、要撃機に対する空対空ミサイルの装備あるいは艦艇に実装魚雷を装備するという施策は五十五年以来着手をしているわけでございまして、これは現在も続いているわけでございます。要撃機へのミサイルの搭載もそうでございますし、艦艇の魚雷の場合は特に施設の調整をする仕事が非常に重要なポイントでございますので、五十五年度以来そういった実装化の整備をするための整備場の整備も進めておりまして、その辺は五十九年度までで一応完了したということでございます。そういうことでございますから、五十五年にとりました空対空ミサイルの実装化、実装魚雷の装備は現在も続いているというふうに御理解をいただきたいと思います。  今御指摘のありました、スクランブルの場合にどうしているかということでございますが、当然のことながらスクランブルに出ます要撃機には空対空ミサイルが装備をされた状態で飛び立っているわけでございます。  それから、この全体の趣旨と申しますのは、やはり即応態勢を強化しておくということをねらっているものでございます。
  135. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 即応態勢に応じてということで積んでいるということですから、したがって次にお聞きしたいのは、スクランブルをかけるのが昭和四十年代というのは三百回から四百回ですし、五十年代の前半に入って五百回から六百回。五十年代の後半になるともう九百回以上ずっとスクランブルをかけているわけなのです。この現実というものをどう判断をなさっているのか。  それから、領空侵犯がかなりされているはずなのですが、いつといつそういう領空侵犯が行われたのか。何回ぐらいされたかということをお聞きします。
  136. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) お答え申し上げます。  スクランブルの回数は、委員御指摘のとおり逐年増大の傾向にあるわけでございます。四十年代におきましては三百回から四百回のような回数であったのが、五十年代前半になりますと五百回から六百回台みたいなレベルになり、五十年代の後半になりますと九百回以上というような回数のスクランブルを実施しているわけでございます。  こういった長期的な増加の傾向がどういう実態によるものかということでございますが、ソ連は極東におきまして質、量両面にわたり一貫した軍事力の増強を行っているわけでありまして、それに伴いまして我が国周辺における活動も活発化しているのが実情でございます。近年のスクランブル回数の増大の傾向も、こういったソ連軍航空機の活動の活発化を反映したものであるわけでございます。  それから、次の領空侵犯でございますが、五十年度以降の侵犯回数はソ連機によりまして十五件発生をしているものでございます。最近でいいますと、五十九年には二回発生をしておるということでございます。
  137. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 局長、これの日にちを正確に教えてください、後でよろしいですから。  それで長官、領空侵犯されるということは主権を侵されたことだと思うのです。それにどう判断しているかと言ったら、今局長はああいうソ連が云々と言われたのだけれども、私がお聞きしたいのは、そういう主権が侵されていることについて、日本政府としてはどういう対処の仕方をしているのでしょうか。
  138. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 明確な領空侵犯で主権が侵されたと私たちが思っているときは、その旨は外務省に十分通告をいたしておりますし、外務省の方で外交チャネルで処理いたしてくれております。
  139. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 長官ソ連が明らかに領空侵犯をしたということを認めたときもあるはずなのです。それで今御答弁のように外務省を通じてと。私が聞いているのは、領空なり領海を侵犯されるというのは日本の国の主権を侵されたことでしょう、日本政府として日本の国の主権を侵されたという判断をしたときにどういう対処をなさるのですか。外務省を通じてと言うが、そんなことでよろしいのかということを聞いているわけなのです。
  140. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) もちろん、領空侵犯と私たちが判断した場合には、それなりに相手側にそういう状況になっているということを通知はいたしております。そして、その後のことにつきましては、私たちは現在は外交チャネルによる処理の方が適当であろうと思っております。
  141. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 今度は外務大臣、今のその点、今答弁があったように五十年代へ入って十五回、それからソ連政府が認めておるのもあるのです。  それで今、防衛庁長官外務省を通じて向こうに抗議をしているわけだけれども、それをそうやって繰り返している。繰り返してなにしておっても、またやってきて侵される。その繰り返しのその程度のことで済まされるのですか。
  142. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今、私自身がやっておりませんが、外務省当局からソ連の大使館に対しまして外交チャンネルで、いわゆる防衛庁から連絡があったときは厳重に抗議をしているということです。
  143. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 時間もございませんから、私はもっと突っ込んでお聞きしたいのですが、今度は外務大臣の方に続いてお聞きしたいのは、イランとイラクが戦争を始めましたとき、予算委員会で私が、せめてあれはアジアだから、アジアの中でもってああいう戦争が起きたときぐらい、日本政府として何とか調停をするというか、戦争を拡大しないような方法でやってみたらどうかと言って予算委員会で聞きましたときに、時の外務大臣は、とても私たちの手に負えるようなものではありませんと。それは宗教的なこともあってなわけですけれども、そういう答弁があったわけです。  それで最近、安倍外務大臣になって、イランとイラクの戦争についていろいろと両国に働きかけて、そして調停というか、戦争がおさまるように御努力をなさっている。その点は私も敬意も表し、それから感謝も申し上げたいと思うのです。  そういう上に立って外務大臣にお聞きするのですが、何といっても今の国際情勢の中では、これは私が言わなくてもおわかりのとおり、アメリカソ連がどうやって平和を築くかということが世界平和につながるわけなのです。そういう意味でもって米ソに向かって軍縮軍縮と言ったって、私はとてもじゃないけれども簡単にいくようなものではないと思うのです。だから、アメリカソ連が今の軍備の拡張をともかく現状でストップさせて、凍結することをお互いに両方の国が約束し合って、その凍結した上で軍縮のテーブルに着いて、じゃ現状からどれだけ減らすかということをバランスをとってお互いにやらせるということでないと、なかなか軍縮というものは進まないと思うのですが、そういう方向で日本外務大臣として御努力なさるお考えはないか。いい知恵はございませんか。
  144. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日本としては、国連とかあるいは軍縮会議等で常に軍縮問題について熱心に討議に参画しておりますし、あるいは核実験禁止等についての具体的な提案もしておるわけですが、今当面の米ソの核軍縮交渉、今第二ラウンドで相当開きがありますけれども、我々としてはとにかく建設的な方向にこれが進むことを期待もしておりますし、これはアメリカに対しましても日本の期待を述べております。あるいはまた、いわゆる自由主義国家群の会合の中でも我々はそれを主張しております。  アメリカも相当、レーガン大統領初め真剣になって取り組もうということでありますし、またいわゆる東側に対しましても、今回ポーランドとかあるいは東独に参りましたときに、ヤルゼルスキ首相だとかホーネッカー議長等に対しましても、米ソの核軍縮をお互いの陣営が積極的に進めるべきだということでいろいろと話をしました。特に米ソの首脳会議をどう思うか、これはやるべきじゃないかということを私も申し述べまして、東独あるいはポーランドの首脳も、これはぜひ自分たちソ連に勧めてやらせたいというふうな趣旨の発言をしておられました。そういう意味では、日本日本なりにいろいろな外交チャンネル等を通じまして、また私は私なりに努力をしているわけで、私はそういう意味で両方のサイドがやはり相当熱心でありますし、また両首脳とも私はそうした空気を持っていると思いますから、可能性は出てきておるのじゃないかというふうに判断しております。
  145. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 外務大臣、私たちの民社党は、言うなら世界の平和なくして日本の平和なしで、やはり世界的な平和戦略を持てというのが我が党の主張というか方針でずっと堅持をしているわけなんです。したがいまして、そういう点で細かいことを申し上げる時間もございませんけれども日本の国としてそういうふうなイラン、イラクの場合どうするというのもあると同時に、世界的な平和戦略というものをぜひともお立てになって、そしてそういう戦略をもって、じゃこれからどうするかということをぜひお取り組みをいただきたいと思います。  それから、防衛庁長官にもお願いしておきますが、もう時間がないので御答弁いただく間もございません。  先ほどから基本的なと言って申し上げましたのですが、五六中業が今どうなってきているとか、これから五九中業に取り組むわけだけれども、それをどうするとか、そういう正面装備のことも大事だけれども、先ほどから幾つかの点で私が質問したような、安全保障というもののどの基盤に立って日本の国の安全保障というものの政策を組み立てるかという、その基盤がないと言ったらこれは語弊があるかもわからぬけれども、ないと言っても過言でないほどに今の日本の安全保障というものはそういう面での政策がないわけなのです。したがって、そういう点についても改めてまた先ほど御答弁をなさったものを整理していただいて、それが日本防衛庁としての認識というか感覚でよろしいのかどうなのか、これはぜひとも防衛庁の内部でもってそういうことを御検討いただきたい。そしていかなる事態に遭ってでも緊急にすぐ対応できるような、そういう態勢のとれる安全保障政策を打ち立てていただきたいという乙とをそれぞれ要望申し上げまして、終わります。
  146. 秦豊

    ○秦豊君 最初加藤長官に伺っておきたいのですが、技本の例のミサイル追尾誘導技術の対米供与の問題。今度訪米されまして、アメリカ側はいつでろのタイミングを期待していますか、なるべく早期というのは常識的だけれども
  147. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 具体的にその個別技術の話は出ませんでした。
  148. 秦豊

    ○秦豊君 これは相当遠い将来の課題ですか、あるいはこの一年とか来年度とかいうふうなタイミングで考え得る問題でしょうか。
  149. 山田勝久

    政府委員(山田勝久君) 先般、外務省に米国側から供与の要請がございました。しかし、その内容につきましては米側との関係もございまして明らかにすることはできません。タイミングはこれからアメリカ側と協議に入るわけでございます。武器技術共同委員会というのがございまして、そこでの協議がこれから始まる。まだアメリカ側からその開催の要請が来ておりません。そういう段階でございます。
  150. 秦豊

    ○秦豊君 山田さんらしく、装備局長のシャープな感触ではどうなのですか。
  151. 山田勝久

    政府委員(山田勝久君) この案件が具体化されるためには二つのことがなされなければなりません。  一つは、五十八年十一月の交換公文に基づきまして実施細目取り決めというものが協議、締結される必要がございます。もう一方は、この案件につきましてアメリカ側の要請内容を聞き、日本側の委員部におきましてこれを協議、決定するというプロセスがございます。できるだけ早期に決まれば、内容いかんによりますけれども、手続はできるだけ円滑に行っていきたいと思っております。
  152. 秦豊

    ○秦豊君 向こうは実は分野は特定しているのです。ピンポイントなのです。協議が難航しないのですよ。そうすると、交換公文からこの委員会、常識的に考えて私は八五年度中にはある段階を超えるのじゃないかと思うが、装備局長、どうですか。
  153. 山田勝久

    政府委員(山田勝久君) 具体的に八五年度中でありますとか、あるいは秋でありますとか、今の段階で明確に申し上げることはできません。
  154. 秦豊

    ○秦豊君 そうでしょうね、今は。  洋上防空に関係しまして、これは一つのケースとして伺っておきたいことがあります。  洋上防空、シーレーン防空、これはシステムですからね、トータルですからね。一つのケースとして、我が国が洋上防空能力強化のために仮に小型空母を保有するということについては、我が国の現在の防衛政策上どのような妨げがあるでしょう。
  155. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 御承知のように、我が国が保有できる防衛力につきましては、憲法上、自衛のための必要最小限度の実力を保持することができるという制約がございます。それは、具体的にはそのときどきの国際情勢とかあるいは軍事技術の水準その他のいろいろな条件によって変わり得る相対的な面があることはこれは否定できない。しかしながら、専ら性能上他国の国土の壊滅的な破壊のためにのみ用いられる兵器というものは保持することができない、これが従来からの見解でございます。そういうことに照らして、従来からお答え申し上げておりますのは、攻撃型空母というたぐいのものはこれは持てないであろうということになろうかと思います。
  156. 秦豊

    ○秦豊君 矢崎さん、あなたは政府委員としてはどうやらきょうあたりがお別れ答弁じゃないかな、だからもう少しいい答弁を残してもらいたい。つまり、私は攻撃的、ミッドウェー的なそんな空母を想定しているのじゃない。インビンシブルよりもっと小さい、シーハリアーを搭載するような、まさに上空直衛の小型空母は保有対象外か、持てないのかと聞いているのです。そらさないでいい答弁をしなさい。
  157. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 現在私ども考えております防衛力整備の考え方の中には、そもそも空母というものは検討したことがございませんので、委員がおっしゃっておりますような空母なるものがいかなる機能を持って、いかなるオペレーションに有効であるかということが私どもも判定いたしかねますので、個々に具体的な例示としてその適否を申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思いますが、要するに攻撃型空母という概念に当たるものは持てないということで御園解を賜りたいと思います。
  158. 秦豊

    ○秦豊君 洋上防空の場合、これは軍事常識なのだけれども、単座だと運用上ちょっと無理がある。どうも複座機の方が私は対象機としてはいいと思うのだが、例えばF15の場合はE型、それからあとはトーネードもあるが、どんな機種を考えているのですか、洋上防空。
  159. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 洋上防空を一つの体系として私ども検討していきたいというものの中に、確かに先生の御指摘のございました要撃機の活用というものがもちろんあるわけでございますが、どういうふうな機種をどういうふうに活用するかという点については現在種々検討しているわけでございまして、具体的な機種としてどれが適当だというのを今ここで申し上げるのは適当ではないと思います。
  160. 秦豊

    ○秦豊君 そうすると矢崎さん、さっきユニホームの人の意見がちょっと引用されましたけれども、洋上防空の強化についてはランドベースを基本に考えていらっしゃるのですか。いわゆる基地航空隊それから空中給油機のコンビネーションですか。
  161. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 洋上防空体制考える場合には、まずできるだけ遠方から端緒情報を把握できれば非常に効果的であるということからOTHレーダーが活用できないかということを検討しているわけであります。仮にそれが可能であるとすれば、その次の段階は、空中警戒機によってさらに近接してくるものを……
  162. 秦豊

    ○秦豊君 その辺、省いてください。
  163. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 把握する、それを要撃機で迎え撃つということになるわけでありますが、その際に空中給油機がもしあればその要撃態勢がさらに効率的に行い得るであろう、そういう意味で空中給油機の問題も検討の対象にはなり得るわけで乙ざいますが、今ここで具体的な結論を申し上げる状況ではございません。
  164. 秦豊

    ○秦豊君 それから、純技術的にこれは答えてもらいたいのだが、筒井さんの顔も見えるけれども、六十度、四千キロ、OTHレーダー、これは純技術的に考えて受信基地というのはどのあたりが望ましいのか、逆に今度は送信基地はどの辺が望ましいのか。例えば俗に硫黄島とか小笠原諸島とか南西諸島とか、いろいろありますね。具体的にどうです、何も考えていらっしゃらないのですか。
  165. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) そういったような問題点を含めて現在検討しておるわけでございまして、その検討の参考とするために今回、首脳会談で米側にも技術資料等の提供を要請したわけでありますから、そういったようなものも参考にしつつこれから詰めてまいりたいということでございますので、御質問の点については今ここで具体的に申し上げるのは差し控えさしていただきたいと思います。
  166. 秦豊

    ○秦豊君 しかし局長、私が言った例えば小笠原諸島であれば父島とか、まあ南西諸島は島数が多いが、あながち考えられないということじゃないでしょう。含まれるでしょう、技術的に絞っていけば。
  167. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 具体的に結論が出ない段階で予測的なことを申し上げるのは私は必ずしも適当ではないのじゃないかというふうに思っておりますので、ただいまの御質問に対しましてはお答えを差し控えさしていただきたいと思います。
  168. 秦豊

    ○秦豊君 それから、こういう点も、ユニホームはどんどん考えているが、あなた方はやっぱり二歩、三歩おくれているような感じだ。私が在来よく聞いているのだが、個艦防空から艦隊防空、AEGIS艦の導入、私は一年半ぐらい前から聞いてもなかなかぼやかしておったが、どうやら浮かび上がってきた。その場合に、このAEGIS艦についてはどんがら、艦体は国産、上物の例えばスタンダードミサイルやレーダーシステム一切はアメリカから輸入、こういう基本構想なのですか、それも真っ白な紙ですか。
  169. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) このAEGIS艦の問題については、これもしばしばお答えを申し上げているわけでありますが、洋上防空体制の中で大きく分けて武器対策とそれから武器から発射されたミサイルに対する対応というのがありますが、そのミサイルに対応するための一つの方法としてAEGISシステムを導入することの可否を検討しているととは事実でございます。しかしながらまだ具体的な結論を得ているわけではございませんし、この問題は継続的に検討をする必要があるだろうというふうにしばしば申し上げているわけでございます。したがって、そういった結論が出ない段階でそれをどこを国産しどこを導入するというところまで申し上げ得る状況にはございません。
  170. 秦豊

    ○秦豊君 アメリカがそれを期待しているようだから、だんだんその方向に行くでしょうね。  大高さん、さっき堀江先生が聞いていらしたのだけれど、例の日韓の練習艦隊の交流、韓国の特殊な国民感情というのは根深いのですね。したがって、まず交流するとしても韓国の練習艦隊が佐世保なら佐世保と、おもむろに日本の練習艦隊というふうになるのではないかと思うが、これも二、三年も先のかなり長い先の問題としてとらえていらっしゃるのか、それともそんなに難しくありませんから、意外に訓練計画としてはもっと早くあり得ますというのか。それから次いで、日中間の練習艦隊交流というのは日韓が実現した後ではないかと私はそういう印象を持っておるのだが、その点について簡潔に答えていただきたい。
  171. 大高時男

    政府委員(大高時男君) 中国あるいは韓国等の練習艦隊の交流でこぎいますが、先ほど堀江先生にお答え申し上げましたように、現在のところ具体的な計画はございません。  いずれにいたしましても友好国との親善あるいは相互理解を図るという趣旨にのっとりまして、具体的な動きが出ましたところでそれぞれ個別に検討してまいりたいというふうに考えております。
  172. 秦豊

    ○秦豊君 それから、私はこれは三月ぐらいから聞いているのだが、次期対地支援戦闘機、FSXですね、これは矢崎さん、まだ結論が出ていない、勉強中、検討中、そこはもう答弁は要らないです。ただタイムリミットは一体いつごろと考えればいいのか、また五九中業にはどのように盛り込むのか、その辺だけは答えてください。
  173. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 対地支援戦闘機の後継機種の問題について検討をしなきゃいけないということはそのとおりでございます。したがって、五九中業におきましてもその問題について何らかの形で触れていくということにはなると思います。ただ、書き方として、具体的に一つ結論というところに最初からいけるかどうかという問題がございまして、今後の問題としては、国産の可能性あるいは現用機の転用の可能性あるいは外国機の導入の可能性といったものを広く検討をする必要があるわけで、それは公正な立場でやっていきたいというふうに思っておりますが、いつまでにという明確な結論を今ここで申し上げられる状況ではございません。
  174. 秦豊

    ○秦豊君 委員長最後に一間お許しをいただけますか。——では外務省に伺っておきたいのですが、今策定中の政府開発援助、ODA、これはもちろん八六年以降の中期目標なのですが、重点とそれからいつごろまでに仕上げられるか、その辺をぜひ伺っておいて終わらしていただきます。
  175. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 先般四月四日、先生御承知のとおり、関係大臣が集まられまして、八六年以降新たな中期目標を設定するということと、無償資金協力及び技術協力を拡充するとともに国際開発金融機関に対する出資等の要請に対し積極的に対応するという質の面での改善という定性的な御決定をいただきました。  具体的な内容の詰めにつきましては、現行目標達成状況及び明年以降の財政状況についてのある程度の見通し等を踏まえつつ検討を行うということで現在関係当局間で検討中という状況でございまして、まだ時期等は未定でございます。
  176. 秦豊

    ○秦豊君 重点も絞っていらっしゃらないのですか。
  177. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 重点は、ただいま申し上げましたように、先般の御決定の中にございますように、無償資金協力、技術協力の拡充それから国際開発金融機関に対する出資等の要請に対し積極的に対応する、これが一応今まで決定を見ました重点と申せるかと思います。
  178. 秦豊

    ○秦豊君 いつどろというのが抜けていますけれども
  179. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) はい、今まだ未定でございます。
  180. 植木光教

    委員長植木光教君) 以上で本日の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  181. 植木光教

    委員長植木光教君) 次に、本委員会は、安全保障問題小委員会、外交問題小委員会及び国際経済問題小委員会の三小委員会を設置し、それぞれ調査を進めてまいりましたが、先ほど各小委員長から委員長のもとに中間報告として調査報告書が提出されました。  この際、調査報告の概要につきまして、各小委員長から説明を聴取いたします。  まず、中西安全保障問題小委員長代理。
  182. 中西一郎

    中西一郎君 安全保障問題小委員会における調査の概要を御報告いたします。  本小委員会は、安全保障問題を調査するため、今国会において新たに設置され、その担当分野は「我が国の安全保障政策軍縮等」とされました。小委員会においては、各会派からの調査案に基づき協議の結果、「自衛隊の現状問題点」、「日米安全保障体制現状問題点」及び「軍縮問題と我が国の対応」の三つをテーマとすることとし、各テーマことに都合三回の参考人の意見聴取、質疑を行った後、最後に小委員の意見開陳を行いました。  まず、参考人の意見及びこれに対する小委員の質疑で述べられた論議の主なものは、これを本小委員会の報告書において主要論議として取りまとめ記述いたしましたが、これについて簡単に御紹介申し上げます。  「自衛隊の現状問題点」では、自衛隊の現状防衛計画の大綱、シーレーン防衛、シビリアンコントロール、災害派遣等について、次に「日米安全保障体制現状問題点」では、日米安保体制、「日米防衛協力のための指針」いわゆるガイドライン、非核三原則、日米間の貿易摩擦と防衛問題の関係等について、さらに、「軍縮問題と我が国の対応」では、軍縮問題の基本、検証、アジアにおける信頼醸成措置、SDI等について論議が行われました。  次に、小委員の意見開陳について申し上げますと、自由民主党・自由国民会議所属委員、日本社会党所属委員、公明党・国民会議所属委員、日本共産党所属委員、民社党・国民連合所属委員及び参議院の会所属委員から三テーマに関し意見が開陳されました。  以上が本小委員会における調査の概要であり、本日中間報告としてこれを委員長に提出した次第でありますが、時間の制約等もあり、必ずしも十分論議を尽くしたとは言いがたい面がありますので、本小委員会としては、安全保障問題の重要性にかんがみ、長期的総合的観点から今後さらに論議を深め、調査の充実を期する次第であります。
  183. 植木光教

    委員長植木光教君) 次に、大木外交問題小委員長
  184. 大木浩

    大木浩君 外交問題小委員会における調査の概要を御報告いたします。  本小委員会の担当分野は、「二国間外交、国連外交、経済技術協力、文化・人的交流等」とされましたが、小委員会においては、まず、審議の素材とするため、外務省当局から、我が国外交現状と今後の課題等につき、二回にわたり説明を聴取いたしました。  次いで、討議すべき主要な項目として、小委員長から、第一に、実効ある平和外交の展開、すなわち、非軍事大国日本はアジア・太平洋地域ないし世界の平和維持のためにいかなる活動をなし得るか、第二に、経済大国日本外交戦略、すなわち、経済的繁栄を維持するための努力及び経済大国としての国際的責任の実行、第三に、国連外交その他国際機関を通ずる外交の活発化、すなわち、国際機関の理想と現実及び国力増大に伴う日本の国連外交の充実強化、第四に、日本外交の基盤整備、すなわち、外交機能強化の方策及び国民理解される外交の展開の四項目を提示し、これらを中心に小委員がそれぞれ意見を開陳し、次いで参考人から意見を聴取し、最後に小委員間で自由討議を行いました。  自由討議は、小委員が順次答弁者となり、各自がさきに述べた意見をめぐって他の小委員の質疑に答える形式で行われましたが、まことに真摯かつ活発な論議が展開され、極めて有意義であったと考えます。  しかし、時間の制約もあり、本小委員会における審議は必ずしも十分であったとは申せません。本日委員長に提出いたしました報告書は、今国会における審議の状況を中間的に取りまとめたものでありまして、その際、意見に差がある場合には、複数の意見を併記いたしました。詳細は報告書をごらんいただきたいと存じます。  小委員会としては、今後一層論議を深め、国会における外交問題調査の充実と外交政策への寄与に努めてまいりたいと存じます。  以上、御報告いたします。
  185. 植木光教

    委員長植木光教君) 次に、大木正吾国際経済問題小委員長
  186. 大木正吾

    大木正吾君 国際経済問題小委員会における調査の概要を御報告いたします。  本小委員会は、その担当分野を「資源・エネルギー、食料、通商、科学技術問題等」とされておりますが、今国会は我が国にとって緊急の課題となっております「経済摩擦」をテーマとし調査を行ってまいりました。  まず、参考人から、経済摩擦の現状問題点、我が国の対応等についての意見のほか、今回の摩擦の主要な分野である通信機械貿易の実情等について意見を聴取し、さらに、米国、ASEAN、ECを代表する外国人参考人からは、我が国市場へのアクセス問題を中心とする率直な意見、要望等を聴取いたしました。次いで、これらの意見等も参考にしながら、政府当局に対し質疑を行いました。  これらの審議を通じて、米国経済の動向、米国のドル高・高金利問題、関税及び基準認証制度問題、製品輸入と流通機構の問題、内需拡大政策と税制問題、農林漁業対策、アクションプログラム策定の進捗状況等広範にわたる問題について論議が行われましたが、詳細は会議録により御承知いただきたいと存じます。  本小委員会といたしましては、今後なお検討すべき多くの問題を残しておりますが、会期終了に当たり、今国会における調査を取りまとめ、中間報告として本日これを委員長に提出した次第でございます。  以上、御報告いたします。
  187. 植木光教

    委員長植木光教君) 以上で三委員長の説明聴取は終わりました。  ただいま各小委員長から概要説明のありました調査報告書につきましては、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  188. 植木光教

    委員長植木光教君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  189. 植木光教

    委員長植木光教君) 次に、調査報告書についてお諮りいたします。  本委員会は、設置の際の経緯にかんがみ、調査の経過について年一回報告書を提出することになっております。理事会において協議いたしました結果、お手元に配付の「外交総合安全保障に関する調査報告書中間報告)(案)」がまとまりました。つきましては、本案を本委員会の中間報告として議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  190. 植木光教

    委員長植木光教君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  191. 植木光教

    委員長植木光教君) この際、お諮りいたします。  ただいま決定いたしました調査報告書につきましては、議院の会議におきましても中間報告の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  192. 植木光教

    委員長植木光教君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  193. 植木光教

    委員長植木光教君) 継続調査要求に関する件についてお諮りいたします。  外交総合安全保障に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  194. 植木光教

    委員長植木光教君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  195. 植木光教

    委員長植木光教君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  196. 植木光教

    委員長植木光教君) 委員派遣に関する件についてお諮りいたします。  閉会中の委員派遣につきましては、その取り扱い等を委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  197. 植木光教

    委員長植木光教君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  198. 植木光教

    委員長植木光教君) 次に、理事の辞任についてお諮りいたします。  大鷹淑子君、大坪健一郎君及び中西一郎君から、文書をもって、都合により理事を辞任したい旨の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  199. 植木光教

    委員長植木光教君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  この際、理事の補欠選任を行いたいと存じます。  現在、理事が三名欠員となっております。  理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  200. 植木光教

    委員長植木光教君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事に佐藤栄佐久君及び杉元恒雄君を指名いたします。  なお、あと一名の理事につきましては、都合により、後日これを指名いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十九分散会