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1985-04-16 第102回国会 参議院 運輸委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年四月十六日(火曜日)    午前十時五分開会     ─────────────    委員の異動  四月十六日     辞任         補欠選任      安恒 良一君     浜本 万三君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         鶴岡  洋君     理 事                 大木  浩君                 梶原  清君                 瀬谷 英行君                 矢原 秀男君     委 員                 江島  淳君                 高平 公友君                 藤田  栄君                 森田 重郎君                 安田 隆明君                 山崎 竜男君                 吉村 真事君                 小柳  勇君                目黒今朝次郎君                 小笠原貞子君                 伊藤 郁男君                 山田耕三郎君    委員以外の議員        議     員  安恒 良一君    政府委員        日本国有鉄道再        建監理委員会事        務局次長     林  淳司君    事務局側        常任委員会専門        員        多田  稔君    参考人        日本国有鉄道再        建監理委員会委        員長       亀井 正夫君        早稲田大学商学        部客員教授    角本 良平君        東京大学経済学        部教授      兵藤  釗君        明治大学政治経        済学部教授    吉田 忠雄君        信州大学経済学        部教授      高梨  昌君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○運輸事情等に関する調査  (国鉄問題に関する件)     ─────────────
  2. 鶴岡洋

    委員長鶴岡洋君) ただいまから運輸委員会を開会いたします。  議事に先立ち、本日の予定につきまして御報告いたします。  本日は、国鉄問題に関する件の調査のため、参考人として、午前は、日本国有鉄道再建監理委員会委員長亀井正夫君に、また午後は、早稲田大学商学部客員教授角本良平君、東京大学経済学部教授兵藤釗君明治大学政治経済学部教授吉田忠雄君及び信州大学経済学部教授高梨昌君の四君に出席を願い、御意見を承るとともに、質疑を行うことになっておりますので、委員の皆様にも御協力をお願いいたします。  それでは、運輸事情等に関する調査のうち、国鉄問題に関する件を議題といたします。  まず初めに、去る十一日の委員会におきまして、私より国鉄再建監理委員会に対し申し述べました質疑事項につきまして、亀井国鉄再建監理委員長から答弁を願います。
  3. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) 監理委員長亀井でございます。  御質問にお答えする前に、国鉄再建監理委員会作業状況について申し上げます。  当委員会は、一昨年の六月に発足して以来今日までおおむね週二回のペースで百五回にわたり委員会を開き、国鉄現状及び問題点について調査分析を行うとともに、効率的な経営形態あり方長期債務等処理余剰人員対策などについて検討を続けてまいりました。また、その間、国鉄当局を初め関係省庁関係労働組合私鉄経営者、それに各界の学識経験者から幅広く意見を聞くほか、ヨーロッパ及びアメリカの鉄道事情調査、さらには、前後十二回にわたり北海道から九州までの各地国鉄現場等調査も行ってまいりました。  そして、一昨年の八月及び昨年の八月には、当面緊急に措置すべき事項について内閣総理大臣提言を行ったところでございますが、特に昨年の第二次提言においては、それまでの約一年間の討議の結果を踏まえ、「国鉄事業再建を達成するためには、現在の公社制度及び全国一元的運営から脱却し、新しい効率的な経営形態へ移行することが必要であると考えており、基本的には分割民営化の方向を念頭において、今後その具体的な内容を十分検討したい」という委員会としての基本認識を明らかにしたところであります。  その後、この基本認識に基づいて具体案を策定するための作業に入り、目下、分割の仕方をどうするか、分割企業体経営基盤を確立するにはどうすればよいか、その法人の性格をどうするか、長期債務等処理仕組み及び方法をどうするか、余剰人員の問題をどう解決するかといった諸問題について、相互の関連を考慮しながら総合的な検討を続けているところでございまして、現在のところまだ結論を得るには至っていない次第でございます。  今後の予定といたしましては、本年七月ごろには最終的な案を取りまとめ、内閣総理大臣に提出したいと考えております。  それでは、あらかじめ七項目にわたる御質問をいただいておりますので、順次お答えをしてまいりたいと存じます。  まず第一番目の中間報告等についてでございますが、当委員会といたしましては、ただいま申し上げましたとおり、本年七月ごろには最終答申内閣総理大臣にお出ししたいと考えておりますが、それ以前に中間答申といった正式なものを提出することは考えておりません。  ただ、当委員会といたしましても、国鉄事業再建は極めて重要な課題でありますので、従来からも関係方面意見を幅広く聞いてきたところでございますが、案を固める過程において、どのような形かは別といたしましても、今後ともできるだけ関係方面の御意見を聞くよう努めてまいりたいと存じております。  第二番目の長期債務等についての御質問でございますが、新しい企業体が発足するときに処理しなければならない長期債務等の額はまだ確定しておりませんが、表面に出てくる債務として、長期債務が六十二年度発足時におおよそ二十五、六兆円程度になるものと思われます。このほか、潜在的な債務として、青函トンネル本四架橋資本費負担年金負担退職金支払い等に伴うものがあります。  これら長期債務等のうち、累積欠損に見合う長期債務発生原因は何かというお尋ねかと存じますが、これについては、さまざまな要因が複合して発生したものと考えざるを得ないのでございます。しかし、基本的には、国鉄が他の交通機関との競争関係激化等環境変化に弾力的に対応し得ず、業務運営全般にわたって効率化生産性向上が十分図られなかったことが挙げられると思われます。このほか、大規模設備投資等による資本費負担国鉄職員年齢構成のひずみに起因する退職手当年金負担増加等原因一つ考えられます。  国鉄事業再建のための効率的な経営形態を確立するに際しては、新しい分割企業体が将来にわたって鉄道事業を健全に運営していけるような体制をとる必要があります。  このためには、長期債務等のうち分割企業体による最大限効率的経営前提としても、なお事業の遂行上過重な負担となるものについては、適切な方法によって処理をする必要がありますが、その処理に当たっては、国鉄所有地最大限債務等処理財源に充てるなど可能な限りの手だてを尽くした上で、最終的には何らかの形で国民負担を求めざるを得ないと考えております。  特に、国鉄所有地については、将来の事業の姿を見通した上で、最小限必要となる事業用用地以外の用地は、原則として債務等処理財源に充てるため将来にわたっての売却対象とすることが適当であると考えております。このような観点から、現在事業用用地として区分されているものであっても、現在及び将来の業務量、周辺の状況等から見て必ずしも最適利用が行われていない、いわゆる利用度の低い用地中心に、当該用地における現行機能の廃止または他地区への統合のほか、用地内における施設の集約、上空の活用等利用高度化を図ることなどによって、売却対象等の非事業用用地をできるだけ多く生み出す必要があると考えております。  以上のような考え方のもとに諸般検討を行っておりますが、分割企業体が承継する債務の額、用地売却等によって充当する額、国民負担処理する額がどの程度になるか、それから国民にどのような形で負担を求めるかといった点については、目下詳細な検討を行っている最中であります。  第三番目の分割民営化に関する御質問でございますが、今日国鉄経営が破局的な状況に立ち至った基本的な背景といたしましては、昭和三十年代以降の高度成長期を通じ、産業構造変化国民所得水準向上に伴って、マイカー、バス、トラック、航空機等他交通機関が急速に発達し、国鉄中心のそれまでの輸送構造に大きな変化が生じたことが挙げられます。そして、このような鉄道事業を取り巻く環境変化にもかかわらず、これに即応した経営重点化生産性向上が立ちおくれるなど、国鉄が時代の変化に的確に対応できなかったことが今日の国鉄経営の破綻をもたらした主たる原因であると考えられます。  国鉄がこのような輸送構造変化に的確に対応できなかった理由としては、現行経営形態そのものに内在する構造的な問題、すなわち、公社制度のもとで巨大組織による全国一元的運営を行ってきたこと、そしてそのことが経営の自由を制約するなどの問題を生ぜしめる一方、赤字に対する感覚を希薄にするなど、いわゆる親方日の丸意識を生み、無責任経営を招いたことであると考えられます。  さらに詳細に申し上げますと、第一に、公社制度に伴う問題点としては、国の厳しい監督規制を受けることなどにより外部干渉を避けがたい体質を持っていること、経営上の重要事項についての裁量の余地が少ないことなどにより経営責任が不明確になっていること、経営側当事者能力が十分与えられていないこともあって正常な団体交渉が行えず、その結果労使関係が不正常なものとなりがちであること、事業範囲に制約があり、多角的、弾力的な事業活動が困難であることなどが考えられます。  第二に、全国一元的運営による問題点といたしましては、組織規模巨大化により管理能力の限界を超えたものとなっており、経営者による現場機関業務実態の的確な把握と、末端の職員に至るまでの経営意思の徹底が極めて困難な状態になるなどの組織巨大化そのものによる弊害地域交通事情に応じた列車ダイヤ駅設置等のサービスの提供ができにくいなど全国画一的運営による弊害、合理的な範囲を超えた内部補助による弊害などが考えられます。  このように現行組織体制にはさまざまな問題が内在しております。このことは、現行公社形態のもとにおいて、昭和四十四年以降数次にわたって政府国鉄再建対策に取り組んできたにもかかわらず、いずれも中途で挫折していることからも明らかでございまして、国鉄事業を再生し、できる限り多くの路線維持していくためには、分割民営化により効率的で活力ある企業体を形成し、あわせて長期債務余剰人員等について抜本的な対策を請じる必要があると判断したものであります。  現在、当委員会は、分割の仕方について、どうすれば旅客の流動に適合させられるのか、適正な管理規模をどう考えるのか、収益性の確保をどうするのか等の観点から総合的に検討をしておりまして、まだ具体的な分割案につきましては結論を得ておりません。  分割企業体収支見通しについてでありますが、今述べましたように、当委員会としても、各分割企業体収益性をどのように確保するかという視点は極めて重要であると考えておりまして、民鉄並み経営を行ってもなお赤字が見込まれる分割企業体については、何らかの形で財政基盤を是正し、健全経営が行われるような仕組みをつくることが必要であるという認識のもとに、目下その具体的な方法検討中であります。  青函トンネル本四架橋につきましては、その膨大な資本費分割企業体負担することは困難であると考えられますので、その資本費負担方法について検討中でありますが、仮にその資本費負担を除いた運営費ベースでも、将来の輸送需要から見て、これら大規模プロジェクト採算性を図るのは容易ではないものと考えられます。しかしながら、青函トンネル本四架橋は完成に近づきつつある国家的大プロジェクトであり、国民の貴重な財産であることも考慮すれば、できるだけその有効活用が図れる運用方法検討する必要があると考えております。このような事情を総合的に勘案しながら、その運営等あり方について目下検討中であります。  分割後の運賃制度につきましては、特に、分割により乗り継ぎとなる利用者初乗り運賃遠距離運賃などの運賃負担が増大しないこと、運賃計算が簡明なこと、他の輸送との運賃競争力を失わないこと、取り扱いができるだけ容易であることなどを勘案しながら、目下適切な制度内容について詰めを行っているところでありますが、現在のところ、運賃制度の問題が分割にとって特段の支障となることはないものと考えております。  第四番目の貨物等についての御質問でありますが、鉄道貨物については、現在国鉄が行っている貨物輸送は、旅客輸送と比較した場合、同じ鉄道事業ではあっても、事業運営実態営業活動面はもちろんのこと、経営理念の面においても、基本的には経済合理性にのっとり市場原理に基づいて行動しなければならないという側面がより強いという点において大きな差異が見受けられるところであります。  今後、鉄道貨物輸送が激烈な競争を繰り広げている物流市場の中で将来にわたって存続していくためには、まず要員、経費についてできる限りその低減を図り、他の輸送機関競争可能な低コストのものとするとともに、さらに輸送システムについても直行化を徹底させる等、最大限効率的な輸送体制を確立することが不可欠であると考えております。  また、国鉄貨物輸送現状を見た場合、ダイヤ等において必ずしも荷主が望むとおりのものとなっておらず、積載効率が低い列車も多く見受けられるところであります。今後鉄道貨物輸送利用を一層促進するためには、ダイヤ自体の高品質化にも努め、昨今のような競争の激しい買い手市場においても十分に売れるものを提供することが重要であると考えております。  以上のように、効率的な輸送体制を確立し、その商品価値を高めていくためには、従来のような発想から脱し、企業の存亡をかけた真剣な取り組みが求められているのであります。しかし、現在のように公社経営で、かつ旅客輸送と一体的に運営されていては、経営責任が不明確なままで、旅客輸送への依存体質を払拭できず、主体的な企業経営は到底期待することはできません。したがって、現行経営組織を抜本的に改め、市場原理が有効に機能し、経営責任も明確となるような体制を確立し、経営者従業員もともに企業意識が高められるような体制を確立することが急務であると考えられます。  このような観点から、当委員会といたしましては、貨物輸送部門旅客輸送部門から分離独立させることを一応の前提として、運行面販売面等問題点について詰めを行い、最終的な結論を得たいと考えております。  国鉄バス事業についてその営業収支を見ますと、人件費についての特殊事情を考慮したとしても、公営バスを含む民営乗り合いバス事業の平均と比べて五割程度悪くなっております。路線条件については民営バスと大差がなく、さらに運賃についても近傍の民営バス事業者と同額に調整が図られていること等から見ても、このように国鉄バス民営バスに比し極端に経営収支が悪くなっているのは、結局のところ職員数物件費等の面で民営バスとの間に大きな隔たりがあるのが最大の理由考えられます。したがって、国鉄バスについて今後どのような経営形態を選択するにせよ、自立して事業を行っていくためには、職員生産性を高めるとともに、物件費等の削減を行い、効率的な運営体制を確立することが必要であると考えております。  また、バス輸送は、一般日常生活に密着した地域性の強い輸送機関であること、労働集約型で規模の利益が発揮しにくい事業であること等の特性を有している上に、バス事業区域地域的に偏在しているという実態から見て、国鉄が現在行っているような形で全国一元的にバス事業を運営していく必要性はほとんど見受けられません。  以上を踏まえますと、国鉄バスをより効率的に経営するためには、基本的には、鉄道輸送から分離独立し、適正規模事業体を設立するのが望ましいのではないかと考えております。この問題については今後なお詳細な検討を行い、最終的な結論を得たいと考えております。  工場、病院等のその他の部門につきましては、それぞれの部門性格機能収支見通し等分析を踏まえ、分離すべきか否か、分離しないとした場合いかなる分割会社に所属させるのか、分離するとした場合どういう運営方法をとるのか等について総合的に検討中であります。  なお、当委員会としては、国鉄分割民営化されても、鉄道事業競争の激しい交通市場において今後も維持、発展させていくためには、技術開発を怠ることは許されないと考えており、リニアモーターカーの研究開発部門鉄道技術研究所等技術開発部門についても、現在の研究水準が損なわれることのないように十分配慮しつつ、最も適切な移行措置検討中であります。  第五番目の地方交通線に関する御質問でございますが、当委員会は、特定地方交通線のように著しく非効率のものは別として、経営組織活性化効率化させることにより、できるだけ多くの路線鉄道として維持していきたいと考えております。その場合、地方交通線一定基準により当初から分離独立させるのも一つ方法でありましょうが、分割民営化の時点においてそのような画一的な処理をするよりは、まず分割企業体の徹底した経営努力によってその維持を図ることにした方がより妥当ではないかと考えたものであります。  地方交通線維持していくためには、国鉄事業について抜本的な再建策を講じて効率的かつ健全な事業体のもとで運営されることになったとしても、今後とも厳しい交通市場競争にさらされていくことを考慮すれば、民鉄並み要員配置により、民鉄並みの徹底した合理化を進めていく必要があると考えております。  次に整備新幹線の問題でありますが、当委員会は、一昨年八月、内閣総理大臣に提出した第一次緊急提言において、「整備新幹線計画は、当面見合わせる。」と述べております。これは、現在危機的な状況にある国鉄経営においては、その再建を図ることがまず先決であるという認識に基づいたものであります。先般の予算委員会における私の答弁は、当委員会としては、現在の国鉄事業をどのように再建するかに重点を置いて審議しており、整備新幹線の問題は一応問題の枠外に置いて考えていきたいという趣旨であります。  第六番目に、民鉄並み経営についての御質問でありますが、今後分割企業体競争の激しい交通市場において経営を行っていくためには、経営条件民間並み、すなわち同業である民鉄経営条件参考にすべきものであると考えております。民鉄並みとは、効率性という点からのみではなく、関連事業範囲等の点からも民鉄並み考えております。もっとも、効率性については、民鉄国鉄とでは事情が異なる面もあり、すべてを同一に論ずることはできないので、同じような事項については民鉄並みにすべきであるということであります。  なお、分割企業体要員数については、輸送密度違い等を考慮しつつ各職種別に詳細な積み上げを行っているところでございますが、まだ具体的な数値は確定しておりません。  分割民営化された新しい企業体労働関係は、基本的には、現在の国鉄のような公共企業体等労働関係法体系によるのではなく、労働組合法及び労働関係調整法体系によるべきものと考えております。  最後に、第七番目の雇用問題に関する御質問でありますが、当委員会といたしましては、分割企業体競争の激しい交通市場において経営を行っていくためには、職員についても効率的な要員配置にすることが不可決であると考えており、昨年八月の第二次緊急提言におきましても、適正な要員配置にした場合には、現在顕在化している二万四千五百人に数倍する余剰人員が発生するものと思われると指摘したところでございます。  余剰人員の問題は、国鉄事業再建するに当たっての最も重要な問題の一つであると考えておりますが、この問題を解決するためには雇用の場を確保することが極めて重要であると認識をしております。このため、当委員会は第二次緊急提言において、まず国鉄関連企業最大限協力を求める必要があることを指摘するとともに、また、要調整人員が膨大であることにかんがみ、政府の各機関はもとより、地方公共団体、さらには一般産業界においても、国鉄の置かれた深刻な状況を理解され、国民的課題としてできる限りの協力を要請したところであります。  また、以上のような対策を実施するに際しては、まず国鉄自身経営上の最重点事項一つとして責任を持って取り組む必要があること、また政府においても、国鉄最大限努力前提として、これらの対策の円滑な推進を図るため、政府部内一体となった強力な支援体制を整える必要があると指摘したところであります。  当委員会としては、引き続き、余剰人員問題を解決するためにとるべき基本的な施策について、過去の事例等参考にしながら検討を進めているところでございますが、その際、国鉄職員に対しては現在雇用保険が適用されていないこともあり、何らかの立法措置を講ずることも含め、諸般措置をとる必要があると認識しているところであります。  以上でございます。
  4. 鶴岡洋

    委員長鶴岡洋君) それでは、これより亀井参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 小柳勇

    小柳勇君 亀井委員長質問をいたします。  その前に、我々があらかじめ出しました七項目の問題に対しまして、現時点における監理委員会の態度なり考えを率直簡明にお述べいただきましたことに敬意を表するところであります。  その中で、例えば地方ローカル線の扱いなり、労使労働関係労働法の適用なり、我々が国鉄再建の方策として考えております点に合致する点もございます。したがいまして、そういう点につきましては今後とも私ども監理委員会意見を申し上げ、あるいは今後のお知恵をかりながら国鉄再建努力してまいりたいと思うところであります。  本日は、私ども考えとうんと違う点を私は特に質問したいと思います。時間が少のうございますから三点について質問をいたします。  第一は、第一問のところで、答申に当たってはできるだけ多くの関係方面意見を聞くという今答弁がございました。監理委員会権限は非常に重大であります。しかもほかの委員会にない権限を持っておられる。この答申が出ますと内閣はこれを聞かなければならぬとなっています。したがいまして、例えば国権の最高機関と言われる国会で審議する以前に、それを越えて内閣に直接答申されますと、内閣がこれを聞いてすぐ法制化に入るという仕組みであります。非常にこれは国民として大問題であります。  したがいまして、今本答申に当たってはできるだけ多くの関係方面意見を聞くと。どういう方法で聞かれるか、またいつごろお聞きになるのか、これを御答弁を願いたいと思います。
  6. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) ただいま私ども委員会の任務が非常に重大であるという御指摘がございましたが、全くそのとおりでございまして、私ども大変責任の重要さを痛感しておるわけでございます。  そういう意味におきまして、この問題に軽々な判断をすべきではない、あらゆる意見を聞き、総合していきたいということで考えておりまして、先ほど申し上げましたように、当面の国鉄当局あるいは労働組合、あるいはこういう交通問題を研究しておる学者の方、あるいは私鉄経営の方々、あるいは全国を経めぐりまして各地区の現場で働いておる国鉄の労働者の方々、いろいろ聞いてまいりました。これからもそういう態度は努めて持っていきたいと思っております。  また、聞く以上に、非常にたくさん私どもの方に投書が来ております。この中身は千差万別でございまして、分割はやるべきでない、民営化もやるべきでない、今のままでやれという意見もございますし、思い切ってやれという意見、非常に無数にございまして、そういう中から特に参考になるという御意見があれば、そういう方ともお目にかかってお話をしていく。時間の許す限りあらゆる努力をしたい、こういうふうに考えておりまして、いつどこでと、それは、これから七月までの残った期間で、審議の方も時間がございますが、私の大部分の時間は、いろいろな方に会うたびに国鉄に対する反響もいろんな各界の方に聞いておるわけで、あらゆる機会、あらゆる時期にできるだけの努力をして意見を集めていきたい。しかし、それが非常に広がっている、これはもう先生御承知のとおりだと思います。その中のどれを選択するかということに私どもは非常に苦慮しておるということをひとつ御理解いただきたいと思います。
  7. 小柳勇

    小柳勇君 一つ参考ですけれども、去る四月一日の日に、国鉄再建問題を考える会というのが主宰いたしました専門家会議というのがございます。これは各大学の教授、ほとんど交通、経済関係、国鉄再建に造詣の深い学者に集まっていただいて討論したものでございます。ここに私はその経過を持っておりますが、都留重人さんが司会しておられまして、報告者が、学者が十六名、それからコメンテーターが十九名、計三十五名の学者の意見をここに私は持っております。この中で、分割やむを得ないという人が約三名、あとはほとんど、今のこの全国ネットワークの鉄道分割しては用をなさない、そういう意見もございます。  したがいまして、今これからいろいろ意見を聞くとおっしゃいましたが、もうこれは亀井委員長が御存じの学者ばかりです。しかも、これ決して偏っておりませんですね。加藤寛さんも入っています。したがって、こういう学者の意見、私は学者だけでなくて、私の方に、社会党は私が再建対策委員長でありますが、手紙がたくさん参ります。先般一つの案を出しまして、否定的な手紙は参りませんが、賛成の手紙がたくさん参ります。その一つの例で、東京の方ですが、六十五歳の国鉄利用する方だといってきておりまして、その人がこういうことを書いているんですよ。  「政府再建委員会委員長がテレビにて、分割の目的の理由として、職員の数が多いから命令系統云々と言っていましたが、それでしたら電電もたばこもそう大して変わりはないでしょう。地球の隅々まで社員を派遣している会社ではどうなりますか。自衛官を抱える防衛庁は一体どうなりますか。とにかくそんな頭と考え再建委員長をしている人に再建策を任している政府の頭もおかしいのです。中曽根その人もどうかしています。こういうことを、これはお手紙ですけれども、失礼ですけれども、私は非常に私の考えそっくりなものですから持ってまいりました。  まだほかにもございますけれども、このような国民各層で、今のこの一生懸命走っている全国ネットワークを分割して一体どうなるか、我々一体どんな方法で旅行したらいいかという不安があるわけ。こういう方々の意見をもっと、学者の意見もそうであります、国民意見もそうでありますが、うんとお聞き願いたいと思います。そして、この答申をお書きになりましても、それをそのまま総理が採用するというようなことがあってはならぬと思いますけれども、それはまた今後国会でやりまするが、もう一回委員長の見解を聞いておきたいんです。
  8. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) ただいまどうも再建監理委員長の頭がどうかしておるという御批判をいただいて、まことに恐縮に存じておる次第でございますが、私どもといたしましても、軽々に分割をするかどうかというのは随分一年間悩んで検討したわけです。分割反対の意見もあることは十分承知をしております。しかし、分割する場合としない場合のいろいろな考量をやってぎりぎりの判断がここに至ったわけで、先ほどの投書のような御意見もたくさん来ております。  しかし、問題は、例えば電電とかたばこと比べて国鉄というものの仕事の性格が違うという点なんですね。労働集約型産業であり、そうして現在航空機が発達しますと、近距離とか中距離までの地域密着型の鉄道になっている。そして、それを最もサービスのよい効率的な運営をやるというためには、私ども検討の結果、やはり分割をした方がベターだ、それによって別に一般国民の交通の利便ということが害されることはないという判断に基づいて分割を出したわけでございます。したがいまして、ただいま反対の御意見たくさんある、もっと思い切って分割をやれという意見も非常にたくさん私どもにもきておるということもひとつ御理解をいただきたいと思います。
  9. 小柳勇

    小柳勇君 さっき御答弁の中で、巨大過ぎるという、大き過ぎるという御意見がありました。そして末端の職員を把握できないという御意見もございました。  そこのところをひとつ聞きたいんですけれども、一体どういうところが巨大過ぎるのであろうか。今この情報、通信が発達いたしました時代。かつて、百年前から国鉄は、九州鉄道もありました、北海道鉄道もありましたのを、論争しながらこれは今の一本の全国ネットワークができ上がった。もう御存じのとおりです。私鉄でやろうという意見もあったんですけれども、公共性を重んじて国鉄でなきゃならぬと。そしてこの百年間で日本の経済が発展してまいりました。言うなら日本の動脈と静脈でありますね、国鉄は。それで巨大とは一体どういうことであろうか。  百年前で言わぬでもいいですけれども、例えば、終戦直後この日本国土を復興するために働いてきたこの国鉄が、しかも今情報、通信が非常に立派になりまして、コンピューターでやりますから、新幹線などはもうコンピューターで運転できるような時代ですから。五十年前に地方鉄道を統合しなきゃならぬとして識者が、先輩が、まとまってまいりましたこの全国一社体制国鉄が、このように情報社会になりましてコンピューターで列車が動くようになった時代に、これをずたずたに分割するというのは一体どういうことであろうか。  私はこの前の委員会で林さんにも言いましたけれども、例えば国鉄の信号詰所というのがあります、信号を扱う。そこには朝九時出まして翌朝の九時まで一人でおります。そして完全に列車を動かしている、一人で、責任持って。名前だけは駅長の管理下にありますけれども、何も駅長が一緒におるんじゃありません。一人で信号を朝から晩まで扱って、完全に列車が動いている。機関士も運転士も何も機関区長が一緒に乗っているんじゃないんです、一人です。もう駅を発車しましたら、一人で運転して一人で到着する。  それから保線作業員もそうです。線路をずっと見て歩きます。一人です。保線区長がついて指導するんじゃないですね。出札も改札も皆一人ですよ。職場を全部一人で管理して、そしてそれがまとまる。だから駅長さんというのは、朝点呼しましたら後はもう外に言ってお客さんの誘致やったり、あるいは外交的にやっておったら仕事は進んでいく。列車がA駅を定時に出てB駅に完全に定時に着いたら、もう運転とか保線とかそういう人の仕事は百点なんです。しかもそれは一人が自分を管理しているんですよ。大きいから、巨大過ざるから管理できないというようなことは一体どういうことであろうか。ただ、営業マンとかその他の者は考えなきゃなりません。  あなたも会社を持っておられますが、私もたくさんの大手企業を知っています。例えば何々建設の何々支社というのがあります、支社長が一切権限を持ってやっております。しかしそれは本社がありますね。全国ネットワークの本社の中の支社ですね。権限を持たせればできないことないんですね、支社に。  したがって、私は、今これだけでき上がりました全国ネットワークの鉄道網というもの、日本の動脈と静脈をずたずたに切るということについては絶対もう承服できないのでありますが、もう一回それについての、ここに巨大ということがあります、それから末端職員の掌握、管理というのがありますから、この点について御意見を聞いておきたい。
  10. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) 巨大過ぎるという、実に巨大であります。北は北海道から南は鹿児島の端まで。私は巨大であるということは事実であるということを申し上げておるのでございますが、ただ、鉄道というものが交通の唯一の手段でなくなった。交通体系というものが、近距離はモータリゼーション、遠距離は航空機、そして中距離あるいは都市間輸送、あるいは都市における通勤通学、通院というものにだんだん特性化されてくる傾向というのは一つの大きな傾向である。  そうすると、そういう旅客流動という実態に合う形というのが私どもは適切ではないかというふうに考えておりまして、現在巨大組織であり、運営が実にスローモーションなんです。今の国鉄の動きというのは実にスローモーションでございます。これは一々例を挙げませんけれども、先生よく御承知だと思います。やはりこれからは特性に合った、地域流動に合った、そうして小回りのきく経営効率の高いというものでいうと、やはり一人の社長あるいはトップが掌握する範囲を適正管理規模というものに持っていく必要があるんではないか。こういう意味におきまして、私どもは、それは分割をせずに済めば結構でありますが、した方がベターであるという判断を下したのでございます。
  11. 小柳勇

    小柳勇君 この問題については後でまた同僚議員も質問するでしょうから、次の問題に入りまするが、分割反対は、今こういうお手紙を読ましてもらいましたが、その人だけじゃございませんで、例えば自民党の元運輸大臣をやりました方とも話してみました。今は分割は無理だ、時間が必要であるということ。恐らく自民党の中でも半数以上は分割反対じゃないでしょうかね。  と同時に、私が今申し上げたいのは、監理委員会から求められて国鉄から答申が出ました。基本方策なるものが一月に出されましたね。それに対して監理委員会が大変厳しい批判をされた。そのことについて、私もこの成城大学の岡田先生と大体同じ考えですから、この論文をかりまして言います。私の個人の見解も亀井委員長は尊重してもらえると思うから言いますが、国鉄監理委員会意見を求めて、国鉄が全国ネットワークを維持してやりますと出したら、これをこてんこてんにたたいた。なぜそれじゃ国鉄意見を求めるのか。これが第一です。もう求める気がないではないか。しかも、出したやつを一応調整努力をするのが当たり前だけれども、こてんこてんにたたいて、もう自分の、監理委員会の民営分割だけが唯我独尊。そして、国鉄専門屋である、これから経営する国鉄経営者が出した、大変なそれはもう気苦労して出したんであろうが、その基本方策をこてんぱんにたたいた。これはもう納得できないとその教授も言っておられる。  したがって私は、一般国民国鉄を使うこの人は、この手紙を書いた人は、貧乏人は飛行機は使えないから私は国鉄使うんだと書いてある。そういう一般国民が使う国鉄を動かして、国民の熱望とか国鉄経営している国鉄の専門屋の意見を頭からたたいて、いやもう分割以外ないと、これは余りにも行き過ぎた独善ではないかと思いますけれども、もう一回委員長から意見を聞いておきたい。
  12. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) 国鉄から意見が出まして、こてんこてんにたたいたと言いますが、私どもはこれに対しておかしい、納得がいかないという点を指摘をしたんです。別にたたいたというふうには思ってはいないわけです。基本的な姿勢として、私はあのとき委員長談話で発表いたしましたように、昭和四十四年以降数次にわたって国鉄は改革案を出して、これでいけるんだ、これでいけるんだと。最後が昭和五十年の再建特別措置法です、これによって六十年にはよくなりますというのがどうにもいかない。またもう五年くれ。しかしその五年が待てるかというところに基本的な認識の違いがあったわけでございます。  それから、民営化と言っておられるけれども、年々二兆円の政府補助を受けるという形、あるいは労働基本権については従来どおりでいきたいという考え、これで経営責任というものが新しい体制は明確であろうか。そういう点から批判をしたのでございまして、国鉄の案も分割案であります。北海道、四国は分ける、条件が許せば分ける、地方交通線は七十線は分離して分ける、七十数分割という案になっておるのでございまして、そういう点で、私どもは別に、国鉄のこの案では我々は物足らないという批判を加えて、私どもは私どもで独自の案をつくろう、こういうことで現在努力をしておるということで御認識をいただきたいと思います。
  13. 小柳勇

    小柳勇君 今国鉄経営責任をおっしゃいましたけれども、これは日本国有鉄道法の矛盾です。これが悪いんですよ。だから、公共企業体が悪いとおっしゃる、同感する点がございます。それは国鉄幹部の例えば人事の選考制度などありまして、矛盾がありますから、これは直さなきゃなりません。それは我々も賛成です。それとこの分割とは直結しないのです。私はこの間、林さんにこれ五冊、これは私の論文でありますけれども、「月刊社会党」の。委員長も読んでおいていただきたいと。  今おっしゃいました赤字原因などは、直接国鉄幹部の責任、もちろんそれは怠けて、これを断固として政府や国会に迫ればいいのに、迫らなかった責任はありますけれども政府責任、運輸省の責任です、これは。監督官庁の責任ですよ。しかもそれができないように法律で締め上げている。極端にいいますと、今の国鉄総裁の権限は、民間の会社の秘書課長ぐらいの権限しかないと言われている。そうなんです。その当事者能力のないことは法律改正しなきゃならぬ。それと民営分割とは全然直結しないのです。  もちろん民営的手法については我々もやらなきゃならぬと思っています。今のままでは何ともなりません。特に公労法が一番矛盾ですね。それから公企体法の矛盾でありますから。したがいまして、それは矛盾としてやりますけれども、ただ、それを直結して、今おっしゃった赤字、これを解消するためには分割だと。これは全然つながりませんので、その点はもう一回監理委員の皆さんと論議し直してもらいたい、いかがでしょうか。
  14. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) これまた長期債務との関連もありますが、膨大な長期債務をやはりこの際処理をして、そして、前から申し上げておるように、会社更生法的に、新しい経営体は問題を残さずにちゃんとやっていけるんですと、こういう形をとるということが必要ではないかというふうに考えました場合に、先生がおっしゃるように、株式会社にして、電電公社とは全く私は鉄道というのは性格が違うように思っておるのでございます。電電公社の場合ですと、結局北海道の人は鹿児島の人と電話で通話をする。ところが今鉄道で、恐らく鹿児島の人が北海道まで鉄道利用してずっと行こうという人は非常にレアではないか。むしろ地域一つの流動体の中で鉄道が生きていくということがいいんではないか。  それから、私も会社の経営者でございますが、やはり人数が多くなればなるほどトップの経営方針なり考え方というのが末端には非常に通りにくい。でありますから、鉄道事業が全国をつながなきゃいかぬという積極的根拠がない限りは、適正規模において、その集団で、ある地区の鉄道会社として、共通目標でその地域の人に愛され信頼される事業として一体になって働き、自分たちも働きがい、生きがいを感ずるようになろうじゃないかという目標の設定は非常にしやすいと思うんです。大きい場合には、鹿児島でいかに働いても、北海道の赤字につぎ込むんじゃしようがない。いろいろそういう弊害が今まで出てきておる。これがいわゆる合理的範囲を超えた内部補助、こういうものがやはり全体に、やったってしょうがないじゃないか、こういう気分が出てくる芽があったんではないか。そういう意味からいきまして、私は分割という方法が現在選び得る、選択できる一番ベストの方法ではないかということに私どもは確信を持っておるのでございます。
  15. 小柳勇

    小柳勇君 時間が参りましたから質問をできませんが、意見だけ。  一つは、やっぱり亀井委員長は資本家的、経営者観点からだけこの国鉄を見ておられる。私どもは、国民が旅行する側に立って、地域の人が旅行する、あるいは北海道から東京へ来るとか、九州から東京へ来る、旅行する側に立って国民の足をどう守るかということと、それから荷物を、六十億トンの荷物が動かなきゃ今日本の一億二千万の人間は生活できません。その荷物をあの混雑する道路をトラックだけに任せないで、将来は今よりも倍ぐらいの貨物を鉄道で運ぶような、言うなら、国民生活を中心にしてもう一回国鉄検討してもらいたいと思います。これが一つ。  それから、時間がありませんが、もう一つは最後の余剰人員対策です。ここで非常に苦労、政府にもやらせるし、特別立法でやるとおっしゃいますが、願わくは、現在の国鉄をもう一回分析をして、関連企業ともよく連携をしながら、現在の職員がそのまま横にばらばらにならぬでも、大部分が国鉄職員であるという誇りを持って仕事ができるようなことももう一回ひとつ検討していただきたい。  ずっと流れるものについては、亀井委員長のさっきの御答弁は私どもは温かいものを感じましたもう少し国民の側に立って国鉄をどう再建するかを検討していただくように希望いたしまして、質問を終わります。
  16. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 私は、何回か亀井委員長に運輸、決算でやっておりますから、それなりに尊敬はしておるわけですが、ただいまの説明を聞きますと、四十四年以降の再建の問題、いろいろ話がありました。社会党の我々議員に向かって、今委員長がお話しした四十四年以降の問題を話しするんではなくて、当時の運輸大臣、鉄監局長、運輸政務次官、その方々にぜひ私は、社会党の議員に言うんではなくて、回れ右してその責任者に言ってもらいたい。なぜならば、四十四年以降私も動労の委員長やっていました。四十九年以来国会に世話になっています。あなたが今申し上げたことを、私は再建案に対する目黒議員の意見として、社会党の意見として、そういうことをしないと大変なことになってしまいますよということを再三再四言ったにもかかわらず、この委員会で自民党の多数決ということで葬り去られてきたわけであります。  社会党とか労働組合の人間だけに言う委員長ではないと思うんでありますが、四十四年以降の国鉄再建対策特別立法などに対する院内の議論、参議院の国鉄問題小委員会の中で我々がどういうことを言っておったかということをもう一回かみしめて、ぜひ四十四年以降の現在に導いた原因と背景、問題点というものをぜひ、もうお読みになっていると思うんでありますが、国会の議事録なども含めて、四十四年以降の社会党の主張について十分把握された上で御見解を述べておられるかどうか。基本的な問題ですから、その経過について大ざっぱにお考えを聞かせてもらいたい、こう思うんです。
  17. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) お答えする前に、先ほど小柳先生から、国民の足を確保すること、それから貨物輸送というものを活性化すること、そして余剰人員について血の通った対策考えること、これは十分私どもは配慮をして、行く道は違うと思いますけれども登る目標は同じである、先生と共通の認識を持っておるということを御理解いただきたいと思います。  それから、ただいま目黒先生から、四十四年以来の再建の過程において国会においていろんな議論もあり、そして出た結論がこういうことであったということを私どもも十分要点は今まで勉強してきたつもりでございます。しかしそのときに、やはり国会の賢明な先生方が事悪かしと思って決断を出されたんではないと思うんです。そのときそのときにはこうやったらいけるぞということであったからいける。例えば早い話が、昭和五十五年にやりました国鉄再建特別措置法ですか、ああいうことで、前の二兆何千億と合わせると合計五兆三千億からの棚上げをやって、そして減量、効率化をもってやれば今のような悲惨はなかったと思うんですね。その間においてとにかく旅客需要というものはどんどんと低減をしていった、貨物輸送も減っていった。そこに効率化という努力がなかった。こういうような点は、やはり国鉄当局あるいは労使で共通の目標で燃え上がって国鉄を生かそうという雰囲気もなかった。  そういうことも私どもは踏まえまして、これを抜本的にどう直したらいいかということについて目下検討しておる最中でございます。
  18. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 よくお読みになったというんですから信頼しましょう。お読みになってどう選択するかはあなたの自由で、あなたの持ってきたやつをどう判断するかも我々の自由。これは大いに論議しましょう。  それから、できれば適当な機会に素案でもいいですから、私は、今先輩が言った一月十日の国鉄案について随分委員会質問しました、後藤田総務庁長官も含めて。答えは、監理委員会がだめだと言うからだめなんだという単純な後藤田総務庁長官の答えでした。ですから私は、これだけ問題になるならば、あなたが今、こういう少なくとも委員長名であなたに出したのでありますから、やっぱり書面で、メモできちっと答えるのが私は親切じゃないか。この中には我々の意見も入っていないんですよ。意見も入っていませんが、まあ委員長がまとめたものだからいいと。ですから、この意見に対する回答も、まあ議事録に載りますから結構でしょう。  ただ、私は、やっぱり国鉄が苦労してやった問題ですから、一項目から九項目まであるわけですよ。この問題について、ここはいい、ここは悪い、ここはもう少し再検討すべきだということを項目別にきちっと文書で示して、国民の前なり我々委員会に議論しやすいように具体的に示すべきじゃないか。抽象論ではなくて具体的に、一月十日の国鉄の問題について、ここはこうだ、ここはこうだというものをぜひ出してほしい。きょうでなくても結構ですから後日早急に、我々が今後審議をするために、国鉄はこういう案、監理委員会はこれに対してこういう考えを持っている、その結果監理委員会はこういう案になったということを、歴史的に分析する意味からも、せっかく国鉄が出した案でありますから、項目別に文書で御回答願いたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  19. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) 国鉄の案について先生が高く評価しておられるのか、どういうふうな御批判を持っておられるのか、私どもも十分存じていない次第でございますが、私どもは、先ほども申し上げたように、あの案ではとても再建は無理ではないだろうか、国民の支持も得られないのではないだろうかという率直な感想を委員長談話という形で申し上げたわけです。  個々についての検討はもちろんやっております。しかし、そういうせっかく苦労した案に欠点みたいなものをいろいろつけるよりは、私どもはこういう案がいいと思うということを出して国民の御判断を仰ぐのが率直ではないか。別に私ども国鉄当局と論争するつもりもございません。私どもは、ベストの国鉄を、現在の国民の貴重な財産である鉄道事業というものを再建をし、活性化し、国民が喜んで使える、そういうものにしたいという悲願でやっておるわけでございまして、そういう一々の批判というのはその文章で尽きておるというふうにひとつ御理解をいただきたいと思います。
  20. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 あなたが何ぼしてほしいと言ったって、天下の国務大臣の後藤田さんといえば自民党きっての実力者ですね。この人と何ぼ決算委員会で論争したって、亀井委員長がこう言っているんだと、その一言なんですよ。それじゃ、国民が判断し、我々国政の場で議論する場がないじゃありませんか。あなたが答申を出してしまったら中曽根さんのところに行っちゃうんだから、我々議論する暇がないですよ。いわゆる法案で徹底的に抵抗するほかないですから。やっぱり抵抗なんていう前に話し合いの場を持つならば、具体的にこの点についてはこう思う、九兆円の土地の売却なんて甘いと。この前の公明党の先生じゃありませんが、やっぱり十五兆円ぐらいは土地を売らないとだめだというなら、そうならそう言えば私は非常にやりやすいんじゃないかなと思うんですが、出す気がありませんから言ってもしようがありません。  それからもう一つ、私は、言いにくいことですが、今、週刊誌、新聞紙に国鉄の仁杉総裁の辞任の茶番劇という点で、私もきのう仙台に帰ったらうちのローカル新聞にも、おもしろおかしく、この仁杉総裁の辞任劇が描く問題点、こう言っています。結局は亀井委員会が水面下で圧力をかけたとか、あるいは住田委員は、かつて私が国会で論争したんですが、国鉄貨物安楽死論者があなたと一緒にやっている住田さん、あの方は、どんな方法やったって地方ローカル線の再生の方法はないとこの委員会で私の質問に言われているんだから。その張本人が一体亀井委員会の一員で何をやっているんだかわかりませんね。非常に私は不信感を持っています。住田委員さんがたとえ選任されても、自分が鉄監局長をやり事務次官をやったんですから辞退するのが人間の常識じゃありませんか、官僚としても。それをぬけぬけと入ってあなたの知恵袋でやっているというから非常に遺憾であります。  その国鉄の茶番劇の背景にいわゆる政治的圧力がある。これは私は遺憾だと思うんです。介入しない、介入しないと言っていながら陰で圧力をかけている。これらの問題はいろいろありますが、私はこう思うんです。  いわゆる国鉄の持っている現在の土地あるいは膨大な資産、これをあなた方は分割民営されるという。分割民営で一番もうかるのでだれか、これは政治家ですよ。国有鉄道では政治献金できませんね。ところが、民営分割になると北海道から九州までのその会社が、何ぼになるか知りませんが相当の利益が上がりますから政治献金ができます。きょうは私鉄の問題は言いませんが、私鉄大手十四社でも自民党に相当の政治献金をしております。これが国鉄が民営分割されたら、これは政治献金の財源になってしまう。そのためには何といっても現在の土地、福島のヤード、私は仙台ですから、長町のヤード、宮城野原のヤード、これはもう仙台では特等地ですよ。あれを民間に払い下げれば、私も決算で随分土地転がし、関西新空港の土地転がしじゃありませんけれども、この利益は膨大なものでしょう。  ですから、私はそういう目で見ると、あなたが民営分割と言っておっても、結局はしょせん自民党の政治資金あさりと、莫大な国鉄用地を売却してそれで財界の方向に一翼を担う、そういう疑念ですね、疑問を私は持って見ております。  ですからここで委員長にお願いしたいのは、そういうふうに国鉄の持つ、民営分割、土地というものを政治に悪用されてはならない、また悪用すべきではないと私は思います。したがって、亀井委員長はそんなことはないと思うんですが、少なくとも国鉄の再生がどんな形になろうとも、あなたが言う格好になるか、社会党の言う格好になるか、あるいはその中間になるかわかりませんが、国鉄の再生がいかなる形になろうとも、少なくともこれに携わった、亀井委員長以下他の委員の先生がいらっしゃいます、立派な先生方、住田さんも含めて。そういう亀井委員長以下全員の方々、それから、言いにくうございますが、昭和三十九年以降国鉄経営赤字に追い込んだ国鉄役員――総裁、副総裁、常務理事、監査委員、それから運輸省幹部、もちろん歴代大臣、次官それから鉄監局長、こういう方々はやはり再生の国鉄にいかなる形でも役員に就任すべきではない。  今天下り論がありますが、そういうものを防ぐためにやはり本当に皆さんがその責任をとる。同時に、皆さんがフリーでどこにも拘束されないで国鉄再建考えたんだということを、どんな理屈よりも実行面で示すには私はこれしかない。これが国鉄を政治家とか利権屋にたぶらかされるということを防ぐ道だと思うんですが、委員長の決意と見解をぜひ聞かしてもらいたいなと、こう思うんです。
  21. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) ただいま土地処分の問題に関連しまして、それが利権とかいろいろ利用されてはならぬというお話はまことにもっともでございます。これは先ほども説明申し上げましたように、国鉄の膨大な債務処理ですね、どうしてもやはりこれを処分することによって穴埋めをするということをやって国民負担を軽減するということが非常に必要でございますので、これが公正に行われることを我々は期待をしておるのでございます。また、特にこの問題はクローズアップされておりますから、国民の目あるいはマスコミの監視も非常に厳しいので適正に行われると思います。  それから、新しい企業経営形態の人事問題でございますが、私どもは結局、効率的な経営形態をどういう新体系にするかという、債務処理をどうするかという、それから余剰人員対策、その他大型プロジェクト処理等について私ども意見を出しまして、それに基づいて政府が今度は決心をされ、そうして具体化した段階において恐らく新しい会社に対する設立準備会というふうなものができて、そこで公正なる人事判断というものが行われるわけでございまして、私どもはそういう人事問題についてまで話をする職責も権限もないわけであります。  ただ、個人としては、そういうものが公正に、しかも国民の信頼の置ける形の人事が行われるということを期待しておるということを申し上げたいと思います。
  22. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 人事というのはなかなかけったいなもので、関西新空港の問題のときも、いろんな関西財閥と運輸省のOBが話しにいって、我々がきちっとつかんでおるのに、趣輸大臣にどうですかと言ったら、あなたと同じように公正、厳正と言った。ところが二日後にふたをあけてみると元港湾局長が我々の予想どおりぽこっと座っておった。こういう我々も経験がありますから、委員長にはそれ以上要求するのは無理と思いますから、そういうことを期待します。  それから、最後に労働問題で言ったんですが、先ほど国鉄の批判がありました。そうすると、国鉄の批判で、あれだけ国鉄が言うならば、やっぱり一月十日の国鉄案は、いわゆる労働組合に労働三権を認めるというふうに書けば少しは経営者になったかな、こういうお考えであったのか。前の方は民間だと言っていながら、けつに来るとスト権は現状どおり、労使関係がまた悪くなっちゃう、そういうお考えで、亀井委員長としてはあの国鉄のことについてはやはり労働三権は保障すべきだというふうに割り切るべきであった、こういう御理解なのか。  それからもう一つは、スト権の問題は、例えば特殊法人になっても、現在労働三法が適用になるわけでありますが、国鉄一つの特殊法人となった場合でも、この労働三権を保障した上で労使対等で経営再建に当たる、こういうお考えが正しいのかどうか。これと、電電は一時保留しますね、スト権は。電電のやり方は、政府のやり方はおかしい、こういう考えなのか。いわゆる労働問題について、国鉄の問題、あなた方の考え、電電の考えに対する政府考え、それらについていかようにお考えかお聞かせ願いたい。
  23. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) 労働基本権の問題でございますが、これは民営化という、いわゆる公社という仕組みから離れた場合に経営責任を明確にするということがやはり一番の柱になると思うんですね。その場合に、経営権の中で、やはり労働問題というのは、特に労使関係というものを、経営者と組合がぎりぎりまで話し合いをしてやっていくというところにおのずから労使責任意識あるいは組合の社会的責任意識というものが燃えてくると思うのです。  それが現在は公共企業体等労働委員会という別のところで決められる。自分たちの権限外で決められたらこれは責任感が希薄になるわけですね。そういう体制をとるということが初めから何か逃げの姿勢ではないか、こういう考え方を持ったのでございまして、そういう意味におきましては、新しい経営形態民営化という以上は労働基本権は与える。しかし、新生のその会社における労働組合は恐らく新しい目標に燃え、そして社会責任を感ずれば、スト権というものを持っても、これは前に小柳先生も御指摘のように軽々にこんなものは振るうものではないと思います。そこに国民の信頼もおのずから私は出てくるんではないだろうか、こういう観点でございまして、基本的には与える。  しかし、国鉄、今の鉄道というのは私鉄と比べて非常に、今度は恐らくどういう分割になりますか、ある程度の長距離輸送、数百キロという輸送もあるだろうということでのいわゆる国民生活に与える影響もいろいろ大きいわけでございますから、そういう辺についてどの程度のそういう公益性というものがそのスト権についてなるのか。電力事業というふうなものは純民間企業であっても、国民生活への影響が大きいということである合理的な制約というものは受ける。これはやはりそれぞれの持っておる事業の適性あるいはその仕事の国民的影響、これは公社とか民営とかにかかわらずそういうものが本質的にはあるのではないか。しかし基本は、やはり基本的人権に相当する労働権は持って、責任を感じて仕事をするという体制に立てることが非常に大切ではないかということが私どもの基本的な視点でございます。
  24. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 まずお伺いしたいのは、分割民営というけれども分割民営のサンプルがいまだにできないということなんですね。どういうふうに分割するのかということです、問題は。七月に答申を出すというふうに言われますが、もう臨調の答申以来随分長い年月かかっている。にもかかわらず、ではどういうふうに分割をすればよくなるのかというサンプルが全然出てこないじゃないですか。例えば三塚さんの本にも、これ以外にないと書いてある、分割以外にないと。ところが、例えば本州の分割についてはまだ結論を得ていないと書いてあるんです。  そこで、やはり試案を提示をして国民を納得をさせるということが行われなきゃいかぬと思うんです。例えば北海道と九州、四国、それから本州を四分割あるいは五分割にするというような具体案があるのならば、ちらちらとマスコミに流すのじゃなくて、ちゃんとこういう試案が今検討されているということが提示されてしかるべきだと思うんです。そして、北海道を分割しても赤字にはならない、運賃も上げない、政府の補助ももらわない、万事めでたしだと、こういう処方せんを出してみなきゃいかぬと思う。そういう処方せんが全然出ていないんですね、いまだに。これじゃ審議しようとしても皆目見当がつかないんです。その点は一体どういうことなのか。試案というものを出さずに、ぎりぎりまでいって結論を出してから、あとは弁明だけをされる、こういうスタイルを今考えているのかどうか。その点をお伺いしたいと思うんです。
  25. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) 試案を出して、前には運輸委員会でございましたか、できれば早い機会に、ある案が固まればいろいろ聞きたいということも申し上げたと思うんですが、検討すれば検討するほど非常に難しい問題でございます。  それから、分割案の試案を出せとおっしゃいますけれども、出して国民の世論を聞くという場合に、今までのようにやはり大別すると、分割絶対反対という方はどんな案を出したって聞く耳は持たぬという方もおる。それから分割をしろというのにいろいろ私にいろんな意見をおっしゃる方がございます。これは東西二分論から始まりまして、鉄道管理局は二十八あるから二十八に割ったらどうか、あるいは幹線が七十あれば七十に割ったらどうか、あるいは国鉄案のように北海道、四国は条件が許せば分離をして、そして七十地方交通線は分離する、いろんな案があるわけでございます。そういうものを勘案しながら、我々はベストのものはこれかというのにぎりぎり詰めておるわけです。  マスコミにちょろちょろ漏らしておると言われますけれども、私は絶対に漏らしていないわけです。しかし、先生も御承知のように、日本のマスコミは非常に優秀であります。取材能力も非常によい。答えをしなくても、イエスですかノーですか、十ですか二十ですかと聞いて、その顔色を読んで、そして確かなる情報筋とかなんとか書いてやられるのでございまして、ああいう報道については、私ども現実何も責任を負えない。むしろ文責記者にありということで御判断をいただく。しかし、そういうものからいろいろ流れてきて、何新聞にこういう記事があったが、あれはここがおかしいぞとか、あるいは、あれはなかなかいい意見だから君取り入れたらどうかと、いろいろなりまして、間接的には大変勉強をさせていただいておるというふうにひとつ御理解をいただきたいと思います。
  26. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 巨大な機構だということをしきりに言われますけれども、電電が三十二万で発足をしている。国鉄がそれより少ない人間でも多過ぎるということは、これは理屈が通らぬと思うんです。  しかし、一番の問題点は累積債務内容だと思うんですね。この累積債務処理というのは非常に大きな問題になっています。累積債務内容が、単年度でもって赤字処理が行われてこなかった。これはもう十年も二十年も前から私ども委員会で指摘をしてきたんですよ、こんなことをやっていたんではにっちもさっちもいかなくなるじゃないかと。にもかかわらず政府は何もしなかったわけです。根本的な処理をしなかったんです、今日まで。したがって、今借金の利息だけでもって、今まで払っている利息だけで七兆円だ、営業収入の過半数が利子と元金の支払いに充てられる、こんなところはないですよ。民間企業民間企業と言われるけれども、民間企業が採算に合わない設備投資を借金でやるなんてばかなことをやるところはないですね。ところが国鉄当事者能力がなくて、総裁も拒否権も発動できない。ずるずると押しつけられてきた。そんなことを押しつけてきた人間に責任があるというふうに私は思うんです。  だから、この累積債務のように、ことしの国鉄の予算でもそうでしょう、収入の方は三兆円だ、しかしその三兆円のうち半分ぐらいは元利合計の支払いに充てられる。普通の企業がそんな状態だったら従業員はばかばかしくて働く気を失いますよ。だから、こういう根本を正さないで再建策を練るというのはおよそ枝葉末節にわたって空理空論を展開するだけにとどまると思うんです。したがって、この一番重要な問題をどうするのか。  それから、先般のお話で、地方交通線については存続をさせたいと。これは内部補助をやっぱり続けるという意味じゃないかと私は思うんです。内部補助の存続は必要だということをお認めになっているんでしょう。しかし、それならば整備新幹線についてはどうするのか。これは国民が求めるならば枠外の問題として考えたいということですけれども、これは分割をすれば整備新幹線なんかは今までのやり方では絶対にできっこないというふうに思うんです。これでけじめをつけるためにはっきりさせてもらいたいと思うんですけれども整備新幹線などということはもはや今後一切考えないということなのか。それから、赤字地方交通線についての内部補助は、これはそれぞれの分割をされたところで、たとえどうあろうともやっていくんだ、内部補助でやっていくんだということなのか。その政府の補助はどうするのか。求めるのか求めないのか。その辺をはっきりさせていただきたいというふうに思います。
  27. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) 幾つか御質問がございましたが、電電公社が一社なのに国鉄分割するのはわけがわからぬというお話でございますけれども、電電公社の仕事と国鉄の仕事というのは性格的に全く違うという点を御認識をいただきたい。  電電は、これからの情報化社会に向けてずっと成長していく産業です。鉄道事業というものは、残念ながらやはり現在需要がだんだん低減していくという斜陽産業にある。そして、電電の仕事は高度の技術集約産業で国鉄労働集約産業。いろいろ挙げると切りがございませんけれども、そういう意味からいいまして、そして電電の仕事というのはやはり北海道から鹿児島、東京からどこと、一遍に通ずるという一つの体系を維持している。ところが国鉄の場合は、そういう理念よりは分割をして活性化した方がいいということで、そこに認識は同一に論じられないということを御認識をいただきたいと思います。  次に、累積債務の問題でございますが、これはいろいろな原因がありいろいろの責任があろうかと思いますけれども、現実それを論じても始まらぬ。これをそのまま新しいところが背負ってはどうにもできない。国鉄案でも十五兆六千億というものはやはり政府処理してもらいたいということが出ております。そういうことで処理する。しかし、過去を見てみると、そういう処理をするにしましても、たしか五十年と五十五年でございますか、合計五兆何千億を棚上げしてきれいになって、それから数年で現在のような赤字が出てきている。ここに需要構造なりあるいは体質なりの基本的な問題がある。これをメスを入れなきゃ棚上げをしてくれということも言えないんじゃないかというふうに私ども考えて現在作業をしております。  それから、地交線を、まあ国鉄は七十切り離す、そしてそれは国家助成でやってくれという案でございますが、私どもは、地交線九十線ですね、特定地方交通線を除いた九十線は可能な限り残したいという建前に立っております。これはできるだけ民鉄並み生産性を上げ、活性化し、そして地域の人が喜んで使うような格好に持っていく、需要も上げるし生産性も上げるということで何とか残せるような手だてをやりたい。しかし、それでも赤字があるところはあると思うんです。  しかし、内部補助というのを言いましたが、合理的な範囲を超えた内部補助というのが今までの弊害であった。線がつながっており、フィーダーの役を果たすようなところはやはりこれはある程度内部補助があっても、これは企業経営においても経営学の学説でも許されるところでございまして、そういうことを総合して、悪いところも引き上げ、そしてそれがまた黒字になり得るということもあるということで考えていきたいということで、初めからこれは責任を負えませんと切り離すのじゃなくて、せっかく先輩が苦労して築き上げられた鉄道というものを昭和の初めに返すというようなことがあってはならぬというのが私ども考え方であります。昭和の初めのキロ数に縮めてしまうということを初めから前提にするような経営計画はいけない。できるだけそれは、先輩が、これは目黒先生なんかも苦労してつくられたものをやはり後輩がそれを守っていくという態度を持つということが基本ではないかという立場から申し上げておるわけでございます。  それから、整備新幹線の問題については、私どもが当面見合わせるとしましたのは、現在は、当面ある姿のままの国鉄をどう再建活性化するかということです。もう船が沈没しかかっているんですから、新しいものをどうするかという余裕はない。しかし、整備新幹線というものもこれは全国民的なやはり希望の星であろう、二十一世紀に向けて、だからそれを我々が、そんなものは将来にわたってやるべきでないというようなことをとやかく言う立場にはない。これはむしろ国民の希望といいますか、選択。そして、これをやるのに現在の国鉄体系では到底しょい切れませんから、どういう負担をするか。選択と負担、こういう問題は政府の決断事項であり、また賢明なる先生方の判断事項であるということで、我々国鉄再建監理委員会では枠外の問題として考えたい、こういうふうに申し上げている。これを御理解いただきたいと思います。
  28. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 どうも御苦労様でございます。  では数点にわたって質問をしたいと思います。  まず一問は、重複すると思いますけれども中間答申の件についてでございます。この問題は、国民的な課題で非常に重要であることは既に周知のとおりでございます。そういう中で私も、国民の各層の代表である当該委員会中間答申というものがやはり論議をされるかなという期待性を持っておりました。今もお話を伺いながら、いろいろの問題もあるなと思いながら、亀井委員長が五十九年の六月二十八日の当該委員会においては、各階層の意見を聞きたい。そして、それは今御報告がございましたように、労使、学者、そしてまた内外の視察をされながら報告をされた。これは発言のとおりにきちっとやっていらっしゃるなと非常に意を強くいたしているところでございます。  ところが、五十九年の七月二十五日の衆議院の運輸委員会では、準備が整えばやはりいろいろとさらに御意見等も聞きたいということが、参議院の十月二十三日、ここでははっきりと、準備が整えば、問題点をとらえてくれば、地方に出かけて公聴会等もやはりやっていきたいと、こういう御意見を述べていらっしゃるわけでございます。このときには同僚の議員からも質問がございまして、考えがまとまればその都度世論を聞き修正すべきは修正していくと。この世論というのは、各階層の今まで聞かれた御意見、そうしてまた各階層の代表でございます当該委員会においてもやはり問題を出していただいて、いろいろと質疑をしていたわけです。  こういう問題が私の判断では絡んでいるわけでございますけれども、六十年の二月二十三日の衆議院、それからきょうの亀井委員長のお話を聞いておりますと、まあいろいろ賛成、反対がひどいので、いきなり七月答申、総理大臣に提案をしたいという意味のお話があったわけでございます。  ここで私が申し上げたいことは、委員会亀井発言というものは非常にこれは重大な発言でございまして、それが数カ月において大きく方向転換をされたのは、中曽根総理大臣から、例えば、もういろんなところへ出さなくても、よくあなた方がやっているじゃないか、直接七月の答申を出しなさいとか、周辺のいろんな御事情があって、六十年二月二十三日の衆議院の予算委員会の発言、そしてきょうの亀井委員長の、もうこのまま中間答申はやめて七月総理大臣に提案いたしますと、こういう過程になったのか。私は、やはり大きな問題ですから賛成、反対があるのは国民の世論の中で当然でございます。そういう中で練りに練られてそうして出していくものが一番ベターではないかなと思って質問しているわけでございます。  僕はもう亀井委員長さんの発言というのはずっと信頼してきておりますが、いきなり大きく回転をいたしておりますので、何か巨大な圧力が亀井委員長にあったのではないかと思うんですけれども、その点いかがでございますか。
  29. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) ただいま矢原先生から御懇篤な御質問をいただきましてありがたく存じます。  実は、昨年はまあ何とか早くまとめる、私は性格がせっかちなものですから、七月といわずに本当はもっと早く出せるものならやりたいというぐらいにやって進めておりまして、でありますから、国民の世論を聞くと、ある試案ができればですね。まあ公聴会という形にはとらわれずに、いろいろ方法もあろうかと思いますが、そう思っておったんです。ところが、だんだん詰めていきますと、やはり金の問題、法制上の問題あるいは地域の利害の問題、いろんなものが出てきまして、それを詰めるのに本当にもう時間が足らないぐらい苦労しておるわけでございまして、格別中曽根総理初め政府筋から我々に圧力は全然かかっておりません。自由にやって思い切った案を、ひとつ理想的な案を出してくれ、こう要望だけを受けております。  理想的な案というのは、これは人事を尽くしてできるかどうかは存じませんが、我々としてはベストを尽くして練りに練りたいということで、だんだん、実はもう答案を出す納期が迫ってきまして気が気でないわけなんですけれども、何とかまあ我々として最後の努力を振り絞ってやりたい。良心的なものをやりたい。しかし、そういう間で、表立ったあれはできませんけれども、私ども委員あるいは事務局の人がいろいろ手分けして各階層接触し、あるいはマスコミの方からもいろんな情報が来る、またその中で有力な人には紹介し合って会うということで、我々としては可能な限りの手だてを尽くしながら、いろんな方の意見を聞いております。まあ労働組合の方にも、表立った形ではなくて、個人的に会っていろいろ聞くとか、十分そういう配慮はしておるということでひとつお含みを願いたい。  重ねて申し上げますけれども政府から私どもに何も格別に圧力は皆無でございます。その点ひとつ御理解いただきたいと思います。
  30. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 よく各階層の御意見をさらに伺いながら努力をしていただきたいと思います。  質問の二でございますけれども長期債務処理内容についてでございます。  いろいろとお話が出ておりますけれども、きょうの御報告を伺っておりますと、三十五兆円の内訳について、例えば六十二年の長期債務は二十五、六兆円である、それに潜在債務として本四、青函の資本費年金負担、退職負担金、こういうふうなことを絡めて三十五兆円の内訳、こういうふうな形の中で、発生原因責任の所在についてのお話がございました。  こういう中で一点だけ伺いたいわけでございますけれども国民の立場から見て、政府負担すべきとするもの、まあ十兆円か十五兆円の間と思うんですけれども、この具体的な負担方法でございますけれども、これは今までいろいろと巷間流れてきておりますことは、新会社の引き継ぎ分、そして資産の売却、国民負担、すなわち政府関係、こうなるわけでございますけれども、今私が申し上げております、政府国民のというふうに解釈をしていいと思いますけれども、その負担方法というものが鉄道国債にするのか、それとも特別税を設けていくのか、そういうふうな、どの程度まで具体的に深くきょう現在議論がまとまっているのか、この点を少しお伺いをしたいと思います。
  31. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) 長期債務の問題も最も苦慮しておる問題でございまして、ただいま矢原先生が御指摘のように、三十五、六兆というものになろうかと思います。これはこのまま、それじゃ大変だからゼロにしようといったって簡単にゼロにできない。これの常識的な線といいますか、やはり発生原因である国鉄で資産売却ということによって埋めるというのがまず第一の手だてではなかろうか。  それから第二には、新しい分割体が企業体として設備投資を承継するわけでありますから、それに見合う借金というものは背負ってもいいんじゃないか。これは国鉄案では九兆六千億ということになっていますが、それで残りの分ということになると、まあどのぐらいになりますか、十数兆ということになります。これはやはり政府負担にせざるを得ないといいますけれども政府は残念ながら現在でも財政が大変であってどうにもならない。ここに何とか知恵を絞らなきゃいかぬということでございまして、一遍に処理することは不可能である。相当の歳月をかけていろいろな手だてによってやる。それに、ただいま先生御質問のような国鉄再建債のアイデアであるとか、あるいは国鉄再建税がどうだろう、しかし取れるとしても大したものじゃないだろうとか、まあいろんな案が今議論しておりまして、なかなか今のところまだ名案までたどり着かないわけです。  しかし、少なくとも現在の鉄道というものを再建活性化するためには、適正規模の借金しか新しい経営形態負担できない。それは別途の方法処理しなきゃいかぬということと、それから、政府負担即といいますか、間接には国民負担というものについては、可能な限りこれの負担を小さく狭めていく努力もしなきゃいかぬ。こういう面で鋭意現在検討中であるということに御理解いただきたいと思います。
  32. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 これに関連するわけでございますが、資産売却の中に、今もお話が交互に出たんですが、資産の売却、まあ用地処分、こういうことになるんですけれども国鉄考えている一月十日発表した「経営改革のための基本方策」では、用地処分は、大体三兆円というのが売却によって処理をしたい用地売却ですね。監理委員会考えていらっしゃるのはその三倍強というのが大体お考えのように見受けるわけでございますけれども、こういうような問題は、新経営体移行後の関連事業への進出、また地域関係のいろいろの問題、そういうことを考えておりますと、やみくもに土地売却をするわけにはいかないということも、これは御承知のとおりだと思うわけでございます。  ですから、今後は、やはり売ってしまう資産と残すべき資産というもののルールというのか調整、そういうふうなことも先般もいろいろと考えたということには伺っているわけでございますけれども、そういうふうな作業というのはどの程度まで進んでおるのでしょうか。
  33. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) これは昨年の第二次緊急答申においても、国鉄に対しまして、将来の国鉄用地として事業達成上どうしても必要な土地と、それからそうではない土地とを完全に仕分けて、先ほども答弁で申し上げましたように、活用するかしないか、どちらが活用したらいいのか、そういう仕分けをして報告をもらいたいということで、昨年の暮れでございました、国鉄からは三兆円程度のものを出してきたわけです。  しかし、その程度のものでは国民負担は非常に大きくなりますから、やはりもっと、それの二、三倍のものは出せないか。しかも、やはりこれは人情で、あるところをやっぱり抱えたいという気持ちもあるわけですね、現在。しかしそれだって、見方を変えれば、ほかへ集約するというようなことで浮かせることもできるじゃないか。やはり当面は国民といいますか、政府負担を小さくするという努力から、思い切ったものをもう一遍出してくれということで、国鉄にまた作業をお願いをしておるという段階でございます。
  34. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 もう一つ関連いたしますけれども、先ほどもお話が出ておりましたけれども用地利用計画の、例えば日本の国民の衣食住というものは政治におきましても基本的な一つのものでございますけれども、やはり国鉄の土地を利用する場合は、土地の整備であるとか宅地の開発、住宅整備、こういうふうな国民生活に関連する要望も非常に大きいわけでございます。ですから、やはり用地が売却利用される場合も、今までもこれは公有地については非常に公正で厳格でございますけれども、こういう面もきちっとされまして、やはり用途別に優先順位を設けるとか、そういうふうないろんな価格面の検討というものも必要であろうかと思うんですけれども、この点はどの程度まで検討されていらっしゃいますか。
  35. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) ざっくばらんに申し上げまして、長期債務処理関連して考えておりますので、私どもの立場は、やはりでき得るだけ高く売れて、債務ができるだけ小さいということが望ましいという基本になっております。しかし、これで暴利をむさぼるというようなことがあってはなりません。やはり時価というものを標準にして、そして公正な入札方式その他によって処理をしていくということがいいのではないか、こういうふうに考えております。
  36. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 次は、まず分割の原側についてでございます。    〔委員長退席、理事瀬谷英行君着席〕  二月二十三日の衆議院の予算委員会では、分割のパターンについてはいろいろあるけれども、五つの原則を明示されていらっしゃいますね。一つは適正管理規模、二番目には鉄道特性の発揮できる体制、それから三番目には地域流動性の重視、四番目には競争意識の向上、五番目には収益性の確保という五つの原則を明示されていらっしゃいます。きょうはこのうち二点が、鉄道の特性、競争意識の向上というものが外された三点がまず原則として述べられたわけですけれども、この五原則と三原則の、衆議院の予算委員会以後きょうまで何かまたいろいろの状況分析、判断等があったのかどうか、お伺いしたいと思います。
  37. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) 予算委員会で申し上げました分割に対する基本的な考え方の五原則は全然変わっておりません。ただ、分割されれば当然競争意識が出るわけでございまして、この点は当然のことであろう。  それから、難題は収益性の確保ということですね。分割のいろいろパターンで今一番苦労しておるのはここでございます。これを何とか、あのときにも申し上げたと思いますが、いろいろな手だてを尽くしまして、ハンディをつけてそしてネットでパーがねらえるようなという体制に形を持っていきたい。したがいまして、新生なところはみんなが一生懸命になれば必ず黒字が出てくる、配当もできる、そういう格好にしたい。この原則はちっとも変わっておりませんので、きょう申し上げたのは、むしろ重点的に分割というものについての考え方で申し上げたので、ここは外したので、意図があってやったわけでないということを御理解いただきたいと思います。
  38. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 私も委員会での委員長の発言を読ましていただく以外にいろいろこういう機会ございませんので、そういう意味でいろいろ質問させていただいております。  まず、この五原則のうちの適正な管理規模の中で、委員長が言われておりますのは、要員としては三万人から四万人程度、こういうところが妥当であるということをおっしゃっていらっしゃるわけでございます。これはどういうふうな意味があるのか。いろいろとこの前も伺っておりますけれども、もう一度きょうは改めてお願いしたいと思います。
  39. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) この管理規模というのは、少な過ぎてもいけませんし、多過ぎてもいけない。これは常識的にあるわけです。  それから、鉄道という、ずっと地域的につながっておるというようなことからいいまして、私どもはやはり、今私鉄ですと大体一万数千人というのが大きな規模の限界でありますから、そういうことが望ましいとは思うんですけれども、そうなると数をたくさんつくり過ぎるということはまた非常に問題である。そうすると、許容できる、望ましいのは、やっぱり二十万、三十万という単位よりは万という単位で、しかも四捨五入できないような範囲内ぐらいが、一つの一家意識といいますか、燃えるあれが持てるということからは適正ではないか。電力会社あたりの規模というふうなことも参考にしながら、その程度というものは一人のトップマネジメントによるスパン・オブ・コントロールの範囲というのが二、三万、幾ら多くても四万までではないかというのが私ども観点でございます。
  40. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 六十二年度には大体二十八万人体制と言われておられましたですね。その点どうですか。六十二年度には、要員の場合ですね。
  41. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) 現実の数字がそれぐらいになるだろう、しかしそれは多過ぎると。これは国鉄の今度出した基本方策の数字でもそれぐらいになっていると思うんですね。六十二年の初めですか、それで二十八万ぐらいでしょうけれども、適正人員はやっぱりもっと低い方がいい、こういう考えでおります。
  42. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 そうなりますと、これは分割関連してくるわけでございますけれども、大体三万から四万というふうな人員計画にいたしますと、この経営形態分割というものは、やはり七分割かそれとも六分割ぐらいかなという想定も私判断をするわけですけれども、だから亀井委員長、この人数からいきますと、監理委員会で想定をされていらっしゃるのは、北海道、四国、九州、そして本州を三分割か四分割、どうしてもこういうふうな数字しか私どもには出てこないんですけれども、七分割なら七分割の案であるとか、六分割なら六分割の案であると、もうそろそろはっきり明示をされてもいいんではないかと思うんですけれども、その点いかがでございますか。
  43. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) 数は、先ほど申し上げたように、私どもとしましては、余り多過ぎても困る、少な過ぎるのもいけない、適正規模という範囲でどれぐらいがいいかということでだんだんと煮詰まらしておるのでございますけれども、まだ最終的にこれがいいという確信にまで今のところ至っておりません。  いろんなことでうわさも出ておるようでございますが、そういうことで真剣にぎりぎりまで詰めて、ある数に確定を持っていきたいというふうに考えておりまして、今幾らだと言われても、これは有能な新聞記者諸君は顔色を読んで、あのときどうだといってやられるんですけれども、きょうはそういうことでなしに、本当に今のところぎりぎりどこまで持っていったらいいか。    〔理事瀬谷英行君退席、委員長着席〕  我々はしかも三島分離を前提考えておるのではございません。全国を、先ほど申し上げたように、適正規模といいますか、管理範囲に属すること、そして地域流動性といいますか、そういうことも重視し、列島特性がどうしたら発揮できるかというような考え方で考えておりまして、分ければおのずからここに競争意識が出る。そしてしかも、収益性というものが地域的に旅客分布とかで非常に違うわけですね。それをどう調整していくかというところに非常に苦慮しておりまして、軽々にここで幾つだと言って、あれで言ったのに書いてない、けしからぬとやられたらどうにもなりませんので、きょうのところは数の問題はひとつ御勘弁いただきたいと思います。
  44. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 この五つの原則の中で、これは委員長も今おっしゃいましたが、確かに収益性の確保ということは、これはもし分割民営化されますと関連事業への進出というものが非常に考えられるわけです。そういうわけで地域経済に大きなプラス・マイナスの影響があろうかと思いますけれども、ここで他の民業の圧迫というものもまた周辺ではいろいろと懸念される問題だと思うわけですね。そういう場合、関連事業への進出、そしてまた逆に制約、そういう面はどういうふうに考えていらっしゃるんですか。
  45. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) これは関連事業は、経営面からとそれから余剰人員対策面と両方の意味があると思っております。これについては、鉄労さんが出された案では六十幾つの附帯事業というものまで明示されておりますし、これは社会党さんにおいても御検討しておられるように聞いておりますけれども、これが新しくそういうものが出てくるという場合に民業圧迫ということになろうと思いますけれども、今度は鉄道も民業になるわけですね。そこで過当競争が行われてはいけない。適正な競争が行われるということがむしろ望ましいのではないか。  そういうことでよくなっていくということで、そこは割り切っていって、巨大資本進出という格好に私はならない。むしろ、国鉄の方々がそういう事業に従事すれば、今までは地域におった方が多いわけですね、そういう人が仕事をやるんだから助けてやろうじゃないかという機運も出てくるであろう。そういうことでそこはそう大きな問題にはならないのではないかというふうに思っております。
  46. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 まず最初に、三十五兆以上の債務処理の問題について伺いたいと思います。  私も、マスコミのベテラン記者さんほどにはいきませんけれども、今までの委員長の発言や先ほどからの表情などをずっと拝見をいたしまして、その三十五兆の中身というのは、棚上げが五兆、それから国民負担が十兆、そして土地処分で十兆、そして新会社に割り当てる負担が十兆、大体そういうふうな配分になりそうだなと分析していたんです、お顔も拝見しながら。この数字、細かいところまではいきませんけれども、当たらないかもしれないけれども遠くは離れていないというふうに私は思うのでございますけれども、その配分いかがでございましょうか、私の分析
  47. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) お教えいただいてありがとうございました、賢明な小笠原先生からの。  常識的に言うとそういうふうなところだと思うんですね。ところが突っ込んでみますと、部分的にそういう一つ前提を置いていろいろ検討してみましても、土地の処分という場合に、国鉄は三兆しか売れませんと今言っているわけですね。それでは困るじゃないかと。そうするとそれを幾らまでやっていくか。やはりあの土地も線路を外して貨物用地をこっちへ持っていったらそれは浮くじゃないかとか、いろいろな調査もやっていただいておりまして、だからそれが十兆になるという確信はございません。足らぬときには、やはり今度は新会社がもうかって配当ができれば株価が上がります。そうすると、一般に買っていただくということでそういうものの処分もあるんじゃないだろうか、こういう方法もとっていきたい。  それから、新会社が負担する分というものは、これは九兆六千億というのは国鉄の案ですが、マイナス三兆円ですね。しかしこれも六兆ではぐあいが悪いんじゃないか、もう少し広げたらどうか。そういういろいろな詰めをやりまして、しかし今度は五兆は棚上げであと十兆プラスアルファというようなものを政府に言ったら、とても今の財政ではあきませんよ、名案を考えてくれないとそんなものはキャッチできませんというような意見も財政筋ではございまして、それをどういうふうに組み立てるかということで非常に苦慮をしておるので、常識の線ではそうであるけれども、専門的に一つの案とするのには非常に難しいところがあるということをひとつ御理解いただきたいと思います。
  48. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 時間もございませんし、お忙しくていらっしゃるので、なかなかお目にかかる機会もございませんので、きょうはひとつめったな機会じゃないので具体的にお伺いしたいと思いますのは、大変お忙しいとおっしゃるのは、亀井委員長は住友電気工業株式会社の今会長さんをしていらっしゃいますね。それから日本電気の取締役もしていらっしゃいますか。
  49. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) それはもうやめました。
  50. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それはもうおやめになりましたか。いつまで。
  51. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) おととしの六月まででございます。
  52. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それで大変お忙しいのもそういう要職にいらっしゃるからだなというのを十分にわかったわけですけれども、そこで、今申しました住友電気、それから、おやめになったけれどもこの間までやっていらしたという日本電気と国鉄との受注の額というようなものも大ざっぱに覚えていらっしゃいますか。急なことだからおわかりかどうかわかりませんけれども
  53. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) 日本電気の方は存じませんけれども、私の会社では、年によって違いますけれども、大体年間数億ぐらいの受注をいただいておると思います。
  54. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 実は私、その問題で国鉄から資料をいただきまして、そして見て物すごく多いというのでびっくりしたわけなんです。住友電気の場合、五十四年が年間の受注十五億、五十五年が二十億、五十六年が十億、五十七年が十五億、五十八年が十億と、この五カ年間で七十億の国鉄からの受注になっておりました。それから、日本電気の方もこの五年間合わせますと百八十億という大変な受注が国鉄から出されているということで、私はびっくりしちゃったわけなんですよね。  びっくりしたと申します中身は何かと申しますと、国鉄法というのがございまして、国鉄の役員の資格としてこんなのは役員にできないという欠格条項というのがあるのを御承知だと思います。二十条にございまして、その中に、「物品の製造若しくは販売若しくは工事の請負を業とする者であつて日本国有鉄道と取引上密接な利害関係を有するもの」は役員になれないと、こういうのが国鉄法の中にございます。監理委員長でいらっしゃいますよね。今や国鉄総裁、役員以上に実体的にもう絶対権力をお持ちになっていらっしゃる。大臣に聞いても総裁に聞いても、亀井委員長に聞かなきゃわからないというようなまさにオールマイティーの存在でいらっしゃる。また、法律的にいいましても、国鉄再建のため経営形態の確立や長期債務処理、そして緊急措置の実施方針などすべてのことに関して企画し、審議し、決定して総理大臣に意見を述べる。意見をお述べになるだけではなくて、調査し、勧告する権限も持たれているわけですね、法律で申しますと。それからそれじゃ政府の方はどうだといいますと、政府はそれに基づいて、尊重し、実行しなければならないと、こういうわけです。  つまり、明らかに、現在ある国鉄の監査委員会は、国鉄の中を監査して、そしてこれについて報告をする相手は運輸大臣でございます。監理委員長の方はもう絶対権力があって、そして報告するところは総理大臣。こういうことで、内容を見て私は、冒頭亀井委員長は、任務は重大である、責任を感じていらっしゃると、こういうお言葉がございましたけれども国鉄の監査委員会よりももっと重みがある、権限がある。その監査委員会委員長ですら、この国鉄法によると国鉄の役員と同様欠格事項の対象となっているわけですね、国鉄の監査委員長でも。そうしますと、亀井さんの監理委員長というのは物すごい力を持っていらっしゃるということをまず考えていただきたい。そして、先ほどもおっしゃったように、住友電気、そしてまた、日本電気というのは住友電気が大株主になっている会社でございますね。そこのところで大変な額の受注、つまり国鉄と取引上密接な利害関係を有する立場にあられる方だということを私はこれ見てびっくりしたわけなんですね。  こういうふうに考えますと、監査委員長でさえも企業との関係があるものはこれは欠格だと言われているんだから、まして監理委員長ともなって、こういう大きな取引をしているというお立場にあられれば、私は、この間衆議院で何か問題になっていました、仁杉さんが御親類の会社に三千万だかの受注したなんというよりもけたが物すごく違いますしね。だから、私は率直に申し上げたいことは、亀井委員長、道義的にも当然監理委員長の席はおやめになるべきではないか、もし国鉄再建に命をかけるとおっしゃるならば、住友グループの役員をおやめになるか、というふうに私は思うんでございますけれども、その辺の御自身のお考えはいかがでいらっしゃいますか。――私、委員長の御見解。ちょっと私の時間がないのよね、八分までなので御協力をお願いしたいと思いますが、簡単に。
  55. 林淳司

    政府委員(林淳司君) 監理委員会は、御承知のとおり総理に対する提言機関でございますが、それを受けましてあと政府の方がそれを実施をする、こういうことでございまして、監理委員会はいわゆる行政執行権限を持っておりません。そういうことから、監理委員会の設置の根拠となります法律におきましても、監理委員については、いわゆる国鉄法のようないわゆる権限を持った者に対する欠格条項というものは規定がないということでございます。  先ほどの御質問でございますけれども委員長の会社につきましては年間〇・数%という程度のごくわずかな取引でございまして、これは実質的に影響が及ぶというようなものではないというふうに考えております。
  56. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) その取引があることは事実でございますけれども、私は、ですから、監理委員長に就任を求められたときに、最初、もうできませんというお答えをしたわけです。そうしたら政府から、いやその程度のことは職責上全然不都合ないから引き受けてくれということでやむを得ず引き受けたということであって、御理解、恐らくこの難しい問題についてなかなか、私もいろいろな人も御推薦申し上げたがだれも受けなくて、結局土光さんから君やれと言われて引き受けたということが事実でございまして、そういうふうなことも全然ケアレスにやったことではないということを御認識いただきたいと思います。
  57. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 林事務局長どういう立場で弁解なすったか、あなたそんな弁解する必要ないんですよ。取引の中で利潤がどうとかこうとかおっしゃったけれども、先ほど言ったように、住友電気で五年間に七十億の取引でしょう。そして大株主である日本電気で五年間で百八十億の取引ですよ。そういうことがわかっていて、私は頼んだ方も頼んだ方だ。  それは私はまた別の問題にしたいと思いますけれども、やっぱり先ほど言いましたように、国鉄の中の監査委員長に対してもこういう規定をして欠格条項といっているのはなぜなのか。これはやっぱり企業と疑惑が生じる、関係が、ということからこういうふうに書かれていると言われているのであると。道義的なその趣旨を考えたら私は、私が言ったようにどっちかにけじめをはっきりおつけになるべきであるということを重ねて私は申し上げたいと思うんですよね。やっぱりそれが問題でしょう、今。いろいろと疑惑があるということになったら大変なことですからね。だから、やっぱり当然私は監理委員長の席をお下がりになる、それから住友電気の方をおやめになるとか、そういうふうに道を進めていただくべきではないか。最後にまた重ねてそれをお伺いしたいと思います。
  58. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) 小笠原先生がそういう御意見をお持ちであるということを十分胸に畳んで善処したいと思います。
  59. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 亀井委員長、大変我々の質問に対しまして的確な御答弁をいただきまして大変ありがとうこざいます。  時間が十三分しかありませんので、まとめて御質問申し上げますので、的確に御答弁をいただきたいと思うんですが、一つ監理委員会発足後二回にわたりまして緊急提言がなされました。この緊急提言がどの程度一体実ったのか、その進捗状況につきましてどういうように委員長としては今の時点で判断されておりますか。これが第一点です。  第二点は、国民各層の意見をさらに聞くということでございますが、御承知のように、鉄道労働組合は地域本社制という案を提言をいたしまして、これは分割民営に近い案でございますけれども、この案につきまして今後機会を見てこの意見を聞いていただけるかどうか。これが第二点でございます。  それから第三点は、現時点での国鉄労使の姿勢についてどういうようにお考えになっておるのか。特に国鉄当局の姿勢につきましては、週刊誌、新聞などいろいろなことが報道されております。どうせ民営分割なんて到底できっこないというような意見を持っておられる方もあるようですし、さらにまた、再建監理委員会への抵抗姿勢を内部で非常に強めておるのではないか。こういうようなさまざまな憶測を含めた報道がなされておるわけでありますが、これは国鉄再建にとりまして大変大きな問題だと私は思っておるんでございますが、その点についての監理委員長としての御見解をお伺いをしておきたいと思います。  それから第四点ですけれども、これは長期債務関連をいたしまして、六十二年新形態への移行後、何らかの債務期間というものを設ける必要が私はあると思うんでありますが、その点については監理委員会としてはどのような御見解を持っておられるのか。  それから、どうしてもわかりませんが、先ほどの議論もございましたけれども国鉄の一体資産というものがどの程度あるのか。当局は、三兆円しか売却によって捻出できない、監理委員会としては、約十兆円のものを売却によって生み出すべきではないかという御見解でもあるようでございますが、一体国鉄が持っている資産というもの、これはなかなか難しいと思うんですが、国鉄当局から監理委員会に対してそういう資料が提出されておると私は思うんですが、一体どの程度のものになっておるのか、その辺のところ。  それから、事業用地以外で、さらに売却できる範囲を広げていくように努力をしていきたい、先ほどお話しございました。どのぐらい一体それが見込めるのか、その点をお伺いしておきたいと思います。  それから、新しい経営体に移行する時点の要員規模の問題ですが、これもはっきりしないんですが、国鉄の基本方策によると、六十五年で十八万八千人でできるんだと、こう言っている。私は、そういう考えがあるとするならば、現時点で考えると、六十二年の新経営形態移行の時点で十八万八千程度規模でできるのではないかということにもつながると思うんですが、これについてのお考え。そしてさらに、その十八万八千人でいけるということになりますと、私の計算によると、六十二年の時点で余剰人員が九万一千人ぐらいに上ると思うわけでございます。  この余剰人員対策でございますけれども監理委員長は、国鉄当局の自主努力前提にしながら政府その他さらに御努力を願う、こういうことでございますが、現在の国鉄自身の自主努力というものが限界に来ておるのか、あるいは自主努力によって余剰人員対策をさらに一層進めることができるのかどうか、この点についてのお考えがありましたら御答弁をいただきたい。  私は、国鉄当局、そして管理局単位に余剰人員対策というものをさらに真剣にやれば、もっとこの余剰人員対策が進むのではないかと思うんですが、現在既に二万人の余剰人員が発生しているわけでございまして、働く者にとっては、これは大変なことであると思うわけでありますが、この点についてのお考えをお聞きして終わります。
  60. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) まず、緊急提言一次、二次出しまして、これに対して国鉄当局も非常にまじめに取り上げて努力をしておられるわけでございます。例えば先ほどの御指摘の用地の問題の処理のいろいろ進捗状況とか、貨物に対する合理化対策とか、やはり非常に努力はしておられるけれども、これがスローモーションでなかなか効果が上がらない、こういうふうな感じを持っておるわけでございます。  それから、鉄労さんが改革に対する基本意見を出されまして、これについて、現在の国鉄現状及び将来についての御認識というものは私どもと全く見解が一致しておりまして、非常に高く評価をしております。あらゆる角度からの努力をしようという大枠も全く一致でございまして、地域本社制という制度と我々の分割という考え方とも紙一重あるいは看板の違いというだけの程度というふうな認識を持っておる次第でございます。  それから、現在の国鉄労使の姿勢いかんということでございますけれども、両方とも非常な危機感を持っておられるということ、そして何とか先に光明を見出し活性化しなきゃいかぬという観点は一致されてきておるのではないか。各国鉄の労働組合の意見をいろいろ聞いても、いろいろそれは組合の立場はおありになるけれども、何とか組合員に先に光明を見せ、努力すれば報いられるという体制をこしらえてほしいということは一致しております。しかしもう一段、何といいましても、我々民間から見れば、民間経営の厳しさというものはやはりまだ希薄ではないのか、こういう感じを持っております。  それから、長期債務処理につきましては、やはりこれについては、会社更生法によると、清算法人と新会社というふうに分かれますから、そういうふうな意味の何か清算法人的な機関というのは当然要るというふうに考えております。  それから、国鉄の資産幾ばくということでございますが、土地だけをとって、そのほかのことはこれは非常に計算が難しいので、土地だけとりますと、二億坪、そして国鉄のあれでも一億坪が大体遊休であるということが言われております。国鉄でそれをどう評価するかというと、確信はありませんがということで、いろいろ大蔵省の何か税務基準ですか、そういうものでサンプル的に当てはめたら二十兆ぐらいになりますという報告を受けたことはございます。  それから、要員規模の問題でございますけれども、これは現在進めておりまして、我々の感覚は、現在の余剰人員の二万四千五百人に数倍するものという表現をとっておりまして、それを目下詰めておるわけですが、国鉄の案では、先生御指摘のように、昭和六十五年に十八万八千、その前の昭和六十二年には二十二万九千という数字が出ております。ですから、その辺のところをもっと民鉄並み詰めればある数字というものは浮かび上がってくるのではないだろうか、こういうふうに思っております。  それから、国鉄だけの努力でできるのかということですが、やはり自分が抱えておった従業員の行く先というものは経営者が真っ先に責任を持って、体を張ってやるということがまず第一。それでないと国民的な共感も政府協力もできない。国鉄当局も現在非常に努力をしておられます。また、これは労使関係のいろいろトラブルがあってなかなか進まなかったこともありますけれども、やっとエンジンがかかってきたというふうに私ども認識しておりまして、この路線がさらに進展することを非常に期待しておる次第でございます。  以上、簡単でございますがお答え申し上げます。
  61. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 本委員会監理委員長よりお答えをいただきましたことを中心としてお尋ねをいたします。  まず第一点は、監理委員長は先ほど、監理委員会における論議の基本として、分割民営である。その理由一つは、公社制度というものが、当事者能力を欠くがために無責任体制になってしまった、さらにもう一つは、今日の国鉄は余りにも組織、機構が膨大になり過ぎて、これでは管理能力の限界を越えてしまっておる、こういうように申されました。片や、国鉄はこの十年来、今度こそはといって策定した再建策もすべて失敗でありました。そういう結果を見る限りは、彼らは、すなわち国鉄の皆さんは、いつでもびほう策で切り抜けようとするといった忌まわしい印象が監理委員会の皆様方の脳裏に定着をしておるのではないか。そういうことからして、ますます分割論は動かしがたいものとして成長をしてきたように思います。それでも民営分割は絶対だとは申されませんでした。ベターだと思うと、こういうことでした。  しかし、今日の社会的背景を見てみますと、やっぱり学問の場におきましても根強い分割反対の意見があります。  すなわち、その意見を若干申し述べてみますと、一つは、国鉄の商品のよさは全国主要都市がつながっておるというところにあります。乗りかえをしなければ仕方がないから乗りかえをするけれども、乗りかえなしに行けたら、少々料金が高くてもこんな便利なものはない。いわゆる乗りかえの不便をさえ解消をしていけば、旅客輸送の強みはまだまだあるという意見もあります。  さらにもう一つは、そういうような要望にこたえていこうとしますと、分割をされましても結果的には相互乗り入れをしなければ商品としては完結をいたしません。その場合に、分割された各社が合議体を持って共同で商品開発の協議をするということになりますが、その光景を考えてみましても、これで果たして効率的な運営ができるのだろうか、こういう意見も出ております。さらには、分割の結果は当然のことながら賃金体系にも運賃体系にも差異がだんだんと出てまいることになりますけれども、これらは国民生活に対して不公平感を与えることになりはしないか、こういうようないろいろの意見がございます。それ以外にももっとたくさん問題がございますが、やっぱりそれらを乗り越えても分割民営でなければ再生の道はない、このようにお考えだと思いますけれども、最後にその辺のところをもう一度お答えをいただきたいと思います。
  62. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) 分割論の是非について山田先生からの御質問でございますけれども分割をしても、相互乗り入れとかいろいろな方法によりまして決して今より旅客サービスが落ちることはないという確信を持っております。これはコンピューターも発達をいたしておりますし、運賃の連絡とかいろいろなことも容易でございますし、そういうことで、分割をしたから乗りかえ回数が多くなるというようなことは絶対ないということは技術的にも詰めまして私どもは確信を持っております。  それから運賃につきましては、分割をされた場合にやはりこれからは競争体系に入っていきますから、私鉄との競争あるいは今までの鉄道分割体同士の競争ということでありますし、それから運賃につきましては、これは運輸省の厳重なる監督下に置かれておるということでありまして、そう不適正になるということはないと思います。  それから給与はどうなるんだ、これはそれぞれの企業において決めますが、おのずからその事業に携わっている者についての一つの世間標準というものがありますから、そういうことからかけ離れて差がつくことはないということで、私は、分割による御心配よりも、分割をしてみんながやる気を起こして本当に地域密着型の国民サービスをしようという方向でいく方がベターだ、こういう判断をしておる次第でございます。
  63. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 先ほども申し上げましたように、今日まですべての再建計画が失敗をいたしております。そういう実績の上に立ってか、最近に提出をされました再建計画も監理委員会の認知を得るところに至っておりませんのは、先ほど申されましたとおりであります。やっぱりこれは今日の国鉄経営に対する監理委員会の皆様方の信頼関係が一つはあるのではないか、このように思っております。特に、その原因は、国鉄経営の衝に当たられますスタッフの皆さんが育ってこられました環境に問題があるのではないか。そうだとすれば、これは当然のこととして発想の転換が必要になってまいります。それがなければ期待をすることができません。分割をいたしましてもそのメリットが期待ができないとすれば、それは単なる形式の変更にしかすぎません。逆に、分割のメリットを享受をすることができるとすれば現在の全国一社制でもできるのではないか、このような考えもいたさないではございません。  そういうことから考えてみますと、一番大切なのはやはり人の問題だと思います。そういうことからいたしまして、長年公社制度の中でなじんでこられました、そういったことをも含めて新しい組織に移行した場合にどのように対応していったらよろしいのか。企業経営責任者として経験をしてこられました監理委員長の立場からの御意見をお願いいたします。
  64. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) 現在、公営企業といいますか、公社制度というのはその一つでございますが、世界的に見まして、英国においてもフランスにおいても日本においても、結局公社とか国有、国営という体系が時流に合わない体質になってきたということで、自由化ということが日本も電電公社、専売公社が行われたわけでありますが、そういう意味でやはり国鉄民営化、いわゆる自由化でありますが、変えるべきではないかと私ども考えておるのでございます。  その理由の一番大きなところは、独立採算制の事業というのを経営するのに、官僚体質ではだめだということが私は基本にあろうかと思うんですね。それを変えるのに、発想の転換といいますけれども、やはりその仕組みというものを変えないことには人間は変わらない。やはり人間というものは環境に左右される動物でありますから、環境というものを変える、これがまず大事ではないか。環境を変えて、しかもその努力が、メリットがはっきり出る形というものは大きいずうたいよりは小さい方がなるべく適正である。そういう意味で私どもは、民営化すると同時にやはり分割ということをしないと、はっきりとしたそこに勤める人々の燃え上がる意思、やる気というものがなかなか出にくい、こういう確信からこういう結論に達したというふうに御理解いただきたいと思います。
  65. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 さきに出されました緊急提言にも、国鉄の所有をしております土地は長期債務返済のためにも充てていかなければならないから、事業に使用をする土地と使用をしない土地とを明確に仕分けをしておいてほしい、こういうようなことが言われておりました。私は、国鉄の今日のこの破局を迎えてこられました方々で、将来を見通しました経営への対応を的確に判断をされるのに、やっぱり発想の転換はされてもまだまだ時間が必要なのではないか。  資本財というものは売ってしまえばそれまでのことでありますし、売るだけの技術でしたらそう大して変わりはないのではないか。やはりこの資本財を経済的に最も有効に活用をしていくことによって国民負託にこたえる、これが国鉄経営者のただいまの責任だと私は思っております。だから今のままで、私はあえて売り急ぐという言葉を使いますのですけれども、それはもっと慎重にしていただかなければならないのではないか。  けれども、私がこう言いましても、新会社に移行をするためには、先ほどの御答弁にもありましたように、国民の皆さま方にも忍んでもらわなければならないという一つの問題があります。さらにはまた、新しい経営体に移行した場合に、長期債務のために経営が大変な重圧を受けるということであっては生々とした発展も期待することはできません。だから、それは程度にはよりますけれども、持っております資産のうちの幾らかはやっぱり売却をしていかなければならぬ、こういう御意見も承っておりました。けれども、土地のことでございます、資産として減っていくはずはありません。だから、今日の経営を支えるためにはさらなる方法考えることによっても対応していただいて、土地の売却処分は慎重になさるべきと思いますけれども、その辺はいかがお考えですか、再度お願いします。
  66. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) 土地の処分は慎重にということはまことにごもっともでございます。  昨年の私ども答申にも、決して現在金が足らないからと穴埋めに売り急いではいかぬ、必要な資金だけを賄う程度にとどめる。そして先は、新しい事業形態が必要とする土地と、それから残った土地とはっきり仕分けてもらってこれをやる。それから、何分土地が何万坪単位の大きいところでございますから、売り急ぐといったってやはり相当の時間がかかるわけですね、単位が非常に大きいわけですから。百坪、二百坪の土地を処分するようにはいかぬと思います。大体適正なところで、先ほど申し上げたように、長期債務処理にも充てて国民負担を軽減をするということと、それから新しい企業体では必要な土地はやはり持っていくようにするとか、十分な仕分けはこれは国鉄当局にも現在いろいろ検討を願っておるところでございます。
  67. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 終わります。
  68. 鶴岡洋

    委員長鶴岡洋君) 以上をもちまして、亀井参考人に対する質疑は終了いたしました。  亀井参考人におかれましては、お忙しい中を本委員会に御出席くださいましてありがとうございました。御礼申し上げます。  午後一時三十分に再開することとし、休憩いたします。    午後零時三十一分休憩      ─────・─────    午後一時三十二分開会
  69. 鶴岡洋

    委員長鶴岡洋君) ただいまから運輸委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、運輸事情等に関する調査のうち、国鉄問題に関する件を議題といたします。  この際、参考人の皆様に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。  各参考人におかれましては、国鉄問題に関する件につきまして、それぞれ忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。どうかよろしくお願いいたします。  次に、議事の進め方について申し上げます。  まず、角本参考人兵藤参考人吉田参考人高梨参考人の順で、お一人二十分以内で御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、各委員質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔にお願いいたします。  それでは、角本参考人からお願いいたします。角本参考人
  70. 角本良平

    参考人角本良平君) 角本でございます。  実は私、一カ月留守にしておりまして昨夜帰ってまいりましたので、最近の一カ月間の事情については十分存じておりません。その前提のもとにお聞きいただきたいと思います。  今、委員長から忌憚のないというお話がございまして、私も忌憚なく申し上げます。  話は三つに分けて申し上げます。第一点は、分割民営化を主張してまいりました理由でございます。第二番目は、その案に対しましていろいろ御批判がありますので、それへのお答えでございます。第三番目は、分割民営化方法についての私の若干の意見でございます。  まず第一点でございますが、組織は、自己責任を与えられ、かつ自己管理のできる規模でなければ必ず非能率あるいは腐敗いたします。士気が低下する。最近十年間の国鉄の経過はまさにそのことを示しております。  第一に、従業員の数でございますが、勤続十年未満という方が五十九年四月一日現在で十万四千人という数字が公表されております。現在、大変たくさんの過剰人員がいると言われておりますが、その直前にこれだけの人員を採用しているということは、いかに経営管理が我々の常識と反しているかということを示しております。  第二番目は、十年前、昭和五十年が負債の累積額がざっと六兆八千億、八年後の五十八年度末では二十兆円、三倍になっている。八年間に三倍も、しかもこの間に国民国鉄再建を求めていたはずでございます。それにもかかわらずこのような状態を生じている。  第三番目は、投資計画についての硬直性がひどい。最もよい例は三月十日にトンネルが貫通した青函トンネルです。かつては、たしか新聞で出たところでは千七百万人年間需要がある、しかし最近では二百万人しか需要がない。このような計画が何らの反省なしにずっと続けられてきているということから考えまして、現在の組織は、例えその内部あるいは外部の者がいかに善意で努力したとしましても、組織自体に問題があるということしか考えられない。私、たまたま先週ヨーロッパの欧州運輸大臣会議の事務総長と二回にわたりましてこれらの問題について意見交換をいたしました。彼は、ヨーロッパの国鉄も百五十年の歴史、あかがたまっているとは言いませんでしたけれども、歴史の後にビューロクラシーが支配してしまって動きがとれないということを言っておりました。  そこで、国鉄が公共企業体になりましてから随分年数がたっておりますけれども、独占時代におきましてはこのビューロクラシーが余り目立ちませんでした。また、全国一律経営というものもある程度は必要であったかもしれません。他の手段が未発達でありました。しかし、競争時代に入りましてから、我が国だけではございませんけれども従業員にとりましても、利用者にとりましても、納税者にとりましても大変不幸な制度である。特に私はこの席で、これが従業員にとって大変不幸な制度である、彼らの仕事量が年々減っていく大変不幸な制度であるということを申し上げておきたいと思います。十年前にはこのことが既にはっきりしておりまして、私が今のような意見を持ちましたのは、あるいは公表しましたのは実は十一年前からでございます。先ほど申し上げたように、その後十年間に事情がさらに悪くなっているというのが、私がこの案を主張する理由でございます。  そこで第二番目の項目に入りまして、その中幾つかポイントを分けて申し上げます。  一つ目は、分割すると利用者に不便ではないか。ヨーロッパでもそういう質問がありました。しかしながら、現在我々は非常な不便を生じているんじゃないか。むしろ地方の実態に合ったように列車ダイヤが組まれていない。そのことの方にもっと大きな困難、国民が困っている事情があるということであります。国鉄といいますと、何か北海道から九州へたくさんの人が動いているように思いやすいんですけれども、大部分の旅客は非常に狭い範囲旅客であります。貨物はまた今日におきましては列車単位で動くような特定の区間の貨物であります。これらを前提にいたしますと、どのような分割をしたとしましても、境界線をまたぐという形のものはそれほど多くはありませんし、また現在形が決まっております。  二つ目の問題点は、分割しますと、地方への投資、サービス、価格引き上げ、そういった面で地方が不利益を受けるというふうに言われます。しかしながら、国鉄を一番最初に見捨てたのはこれらの地方の方々でございます。最後まで国鉄利用しなければどうにも動きがとれないのは、私のように東京に住んでいる人間でございます。  競争時代に入りまして他の交通手段が発達した段階では、住宅とか交通とかいうものは、それぞれの地域のコストを反映して、それぞれの地域の条件に適した手段を選ぶのは私は当然だと思います。二万キロのうちの一万キロは地方交通線と言われております。そこで運ばれている旅客輸送量というのは全体の五%以下でしかないわけであります。大事なのは、九五%の旅客を運んでいる地域におきましていかにして仕事量を拡大していくか。そのような組織をつくらなかったならば労使双方の職員にとりまして大変気の毒なことになるではないか。  私が申し上げていることは、自分が二十八年間働いてきました国鉄の友達のために申し上げているということをぜひ皆さん御理解願いたいと思います。きょうは私は早稲田大学の資格で参っておりますけれども、個人としては、私の目の前にかつて一緒に働いてきた人たちの顔が浮かぶわけであります。  三つ目は、分割民営化しなくても合理化努力をすればよいというような意見の方がまだおられます。しかし、これはもう第一の項目で、過去十年間、特に前総裁の時代に何がなされてきたかということをお考えくださればお答えする必要はもうないと思います。あるいはこれに付随いたしまして、分権化ということで解決するように言われる方もおられます。しかしながら、仮に特殊会社になりまして分権化したとしても、我が国の習慣から見れば、必ず東京の本社の方へ地方の方々が皆陳情を集めるに違いない。分権化ということは有名無実に終わるということは明らかであります。  四つ目は、将来に対して一体新幹線の整備などが分割しますと不可能になるのではないかという御意見でございます。私はそれは反対だと思っております。現在のままで浪費が続きましたならば、国民負担能力はいよいよ小さくなります。国民はとても整備新幹線負担できない。むしろ、現在我々が持っております路線をできるだけ安く経営し、お客をふやす努力をするというような体制をいたしますれば、納税者の負担が軽くなりますから、その上で整備新幹線をもし政治が必要とするならば、その方向に進む可能性が生まれてくる。現在の体制ではまさにその可能性を封じていると私は考えます。  五つ目は、技術開発を困難にするではないかという御意見が常に言われます。しかしながら、一体我が国の先端技術を開発しているのはだれであるか、これは民間でございます。民間企業が大小の規模にかかわらず努力して今日の我が国の技術水準をつくっている。たまたま国鉄は新幹線、私もその計画者の一人でありましたけれども、新幹線の栄光のもとに国鉄は技術を持っていると言われます。それは確かでありますけれども国鉄が私鉄ほど適切に技術を使っているかということになりますと、私鉄の方が実態に合った安いコストの技術をうまく組み合わせて使っている。あるいは今日宅配便に見られますように、道路運送の方がはるかにうまく最近の技術を使っている。この実態をどうごらんになるか。  私は、技術開発を困難にする心配は全くない。むしろ使い道のないマグレブといいますか、磁気浮上の技術などの開発は早くおやめになった方がよいと考えております。  そこで項目の第三は方法論でございます。この問題は、残念ながら私たちには監査報告書で公表されている程度の資料しか与えられておりません。したがって、具体論を今皆様に申し上げる能力は私にはございません。しかしながら、一言だけ申し上げておきたいのは、お釈迦様の話でございます。お釈迦様は毒矢の例えというお経を書いておる。あるいは書いておるというか伝えられております。それは毒矢に撃たれた人がここにいたときに、その毒矢についてせんさくをしているうちに撃たれた人は死んでしまう。大事なことは早く手当てをすることである。無益なせんさくで時間をつぶしてはいけないということでございます。  私は、国鉄赤字が、あるいは累積の負債がこんなにたまっていくという状況を見ますと、急がねばいけないというのが第一の点であります。  そこで分割につきましては、地域別、普通民間企業が、あるいは電力あるいはトラック会社でもよくあらわれているような地域ごとに分ける方法、これは昔の鉄道局流であります。  もう一つは、路線の系統別に分けるという考え方があり得ると思います。数も七つがいいか十がよいか。例えば私の生まれました北陸地方は富山、石川、福井、この三つの県を主体に一つにしてもよい。あるいは、私が住んでおります千葉県は千葉鉄道管理局管内を浅草橋から向こうを一つにしてもよいというくらいに私は考えております。  要するに大事なことは、自主責任を感ずるような体制にするということでありまして、この面では民間の幾つかの企業が私は大変よい参考になるのではなかろうかと考えております。  それから、私が主張してまいりましたのは、特殊な企業体にするという考え方でございまして、民営化ということは実は私は申し上げなかったわけであります。ただ、民営化という言葉の意味を、地方鉄道法に従って経営する企業体、これは東京都交通局も地方鉄道法のもとでありますから、そのような意味で考えるならば、それで民営化と申し上げてもよいかと思います。  そこで、あと二つだけポイントでありますが、この第三の項目の中の残った二つは、一つは負債をどうするかということであります。二十何兆円の負債を新しい組織にどう移すか。考え方といたしまして、資産に見合う負債はこれは収益力に応じまして分担させるべきであると考えております。それから、欠損処理のために、給料を払うために借金をした負債はこれはもう負わせることが無理である。過去において利用者も安く国鉄利用したということがありますから、補償の意味、コンペンセーションの意味も兼ねまして、納税者が長期にわたってなし崩しに返していくということでしかないと思います。そこで過渡的には若干の助成が要りましても、将来はそれぞれが自立採算できるように考えております。  最後に残りましたのは過剰人員の処理の問題でございますが、これは分割民営化しようとしまいと、しなければいけない問題でありますから、本日の論点とは別にそれぞれ政府においてお考えになるべきことであると思います。ただ、石炭産業の始末をしました段階と違います点は、国の経済が非常に発展しているということと、炭労の場合は産炭地に従業員が固まっておりましたけれども国鉄の場合は全国に分散している、また地方自治体の、全国の協力も得られるのではないかと考えております。  以上が私の意見でございます。御清聴ありがとうございました。
  71. 鶴岡洋

    委員長鶴岡洋君) ありがとうございました。  次に兵藤参考人にお願いいたします。
  72. 兵藤釗

    参考人兵藤釗君) 東京大学の兵藤でございます。  私は、時間もございませんので、昨年八月に国鉄再建監理委員会から出されました国鉄再建の方向、いわゆる分割民営化の方向での国鉄再建というふうな問題に関して、どういうふうなクライテリアンと申しましょうか、判断基準を再建問題を考える際に我々が念頭に置かなければならないか、そういうふうなことについてさしあたって私の考え方を申し上げたいと思います。  御承知のように、再建監理委員会緊急提言は、国鉄が今日のような財政危機に陥っております原因は、大きくいって、一つ公社制度という経営形態そのものにある、それからまた、それが巨大な組織である、そういうことに原因があるのだというふうなことを述べているわけでありますが、私もまたそのうちの幾つかについては見解を同じにする点もあるわけでありますけれども、しかし、そこで提起されております再建の方向というふうなものについては、なお慎重に考えなければならない問題といいましょうか、論点が幾つかあるのではないかと思っておるわけであります。  一つ民営化ということにかかわる問題でございますが、確かに現行公社制度というふうなものをとってみますと、それが住民の鉄道に対する、あるいは国鉄に対する過大な期待というふうなものを背景にしながらしばしば政治的な介入が行われる、そのことによって国鉄経営に対して過大な負担が課されてきたとか、あるいはそういう公社制度というふうな形態が国鉄経営に対する経営者層の責任の所在というふうなものを不明確にする、そのことによって安易な経営態度を生んできたのではないかというふうなことについては、恐らく我々も慎重にそのことを考慮しなければならない問題ではなかろうかと思っているわけであります。そういう意味では、今日の現行の公社形態というふうなものが将来の国鉄経営にとって望ましいものであるかどうかということは大いに再検討の要があるといいましょうか、あるいはその経営形態というものの変更を追求していくことが必要ではないかというふうに思っております。  しかしながら、再建監理委員会によって提起されているような方向での民営化というふうなことによって、果たして国鉄に課されておるといいましょうか、あるいはひいては国に課されておる公共交通に対する責任というふうなものを果たし得るものかどうかというふうな点は慎重に検討しなければならぬのではないかと思うわけであります。第二臨調の報告でもそうでございましたが、再建監理委員会緊急提言におきましても、何よりも現在の国鉄が公共性を果たし得ていないのは企業性が欠けているからだといいましょうか、あるいは採算原理に基づいた行動がなされていないところにある、こういうふうに言われているわけでありますが、しかし、それじゃ国鉄再建の方向をそういう意味での企業性の回復ということに求めるということでまいりますと、そこにはかなり問題があると申しましょうか、かえって国鉄に求められておる公共性というものを損なうおそれがあるのではないかというふうに私は思います。  例えば、本日も午前中に論議になっておりましたような地方交通線の問題というふうなものを取り上げてみれば明らかではないかと思うわけであります。地方交通線というものが我が国鉄経営にとって大きな赤字原因一つであったことは間違いがないわけでありますけれども、もしこの採算原理にのっとった経営形態というふうなものを我々が追求しようということであれば、それは将来的には、今日地方交通線と呼ばれておるような輸送密度の低い路線というふうなものの切り捨てを招くか、あるいはそれを地域住民の高い負担のもとにおいて維持しなければならぬ。例えば第三セクターによるのであれ、あるいは民鉄によるのであれ、かなり高い負担を税金なり料金というふうな形で特定の地域に課すおそれがあるのではないかというふうに私は思うわけであります。  国鉄のような公共交通にとってどういうことが求められているか、こういうふうに考えてみれば、そこにはやはりそれぞれの時点において何がミニマムな水準であるかということは、変化はあると思いますが、それぞれの地域に住む住民の交通に対するいわば最低のニーズというふうなものを満たしていかなければならぬということは、これは恐らく社会に課せられた責任ではないかというふうに私は思うわけであります。そういういわばシビルミニマムといいましょうか、あるいはナショナルミニマムといいましょうか、そういうふうなニーズを民営化ということは損なうおそれがあるのではないかというふうに私は思うわけでありまして、そういう地域のニーズというふうなものを充足し得るような形での新しい公企業形態というふうなものが追求されなければならないのではないかと思うわけであります。  念のために一言だけ申し上げておきますが、私は、地方交通線というものをすべて現在のままに維持しろというふうなことを申し上げるつもりはありませんが、ともかくも社会として、これは社会的に必須だとみなされるような住民のニーズというふうなものを充足していくような方向において国鉄再建あり方というふうなものを考え、それにふさわしい形態を選んでいかなければならないのではないかというふうに思うわけであります。  それから、民営化にかかわる問題としていま一つ申し上げておきたいと思います点は、国鉄というふうな公共交通の手段は、言うまでもなく社会資本として国の経済の発展なりに大きな寄上をなしてきたことは疑いがないことではないかと思うわけであります。もちろん今日環境条件の変化の中でその意味合いは異なってはきておりますけれども、なおそういうふうな手段としての意味を持っておりますが、もしそういうふうな社会資本としての国鉄というふうなものを採算原理にのっとった経営の手にゆだねるというふうなことでありますと、それは恐らく地域の均衡ある経済発展というふうなものにとって障害をもたらすことになるおそれがあるのではないかと思うわけであります。不動産事業等々が私鉄経営によってどういうふうな形で行われてきたかというふうなことを考えてみますと、そこにはそういう地域間の不均衡を生み出していく。それもまたある意味ではシビルミニマムというふうなものを侵すことになっていくのではないか。  そういうふうな点からいたしましても、経営形態の変更の方向についてはより慎重に検討すべき問題がはらまれておるのではないかというふうに私は思います。  第一が今申し上げておりましたような民営化にかかわる問題でありますが、第二に申し上げたいと思いますのは、分割にかかわる問題でありまして、この国鉄経営分割を我々がどういうふうに考えたらいいかというふうな点でありまするが、御承知のように、この再建監理委員会提言の中におきましては、今日は飛行機であるとかあるいは自動車であるとかマイカーであるとか、そういうふうな各種の交通機関というふうなものが発達をし、国民の間に選択可能性が広がっておる、そういうふうな状況考えれば、鉄道による全国ネットワークというふうなものを国が保持する必要は今やないといいましょうか、あるいは非常に意味が薄れてきたのではないか、こういうふうに申されているわけであります。そういうふうな考え方に従って御承知のように分割が提案されておるということであります。  これはくどくどと申すまでもないことでありますけれども、例えば自動車というふうなものはだれでも運転できるわけではございませんし、今日、交通渋滞やら交通公害等によっていろいろな人が迷惑をこうむっておるというふうな点も御承知のとおりであるわけであります。さらに飛行機について申せば、空港へのアクセスについていろいろな時間的な限界があって、それでもってすべて鉄道を代替し得るというわけではありませんし、また料金もかなり安くはなってまいったということでありましても、すべての国民がそれを通常の交通手段としてそう簡単に利用できるわけではない。もちろんかなり長距離の旅行であればやむを得ずそういうことを選択をするということはあり得るかと思いますが、中長距離の交通手段として考えてみますとなおそこに限界があるということも明らかではないかというふうに思うわけであります。  そういうふうな観点からいたしますと、やはり鉄道、特にその基軸交通手段としての国鉄の全国ネットワークというふうなものを保持していくことはなお今日も必要とされておるのではないか。もしそれを分割をするとすれば、例えばダイヤ編成というふうなことにいたしましても、それぞれの分割された民営形態の会社がそれぞれの、何というんでしょうか、利潤計算に従っていろいろな利害の対立が起こってくるというふうな結果としてそうしたネットワークの持つ利便さというふうなものが失われてくるというふうなおそれがあるのではないかと思うわけでありまして、軽々にこの全国ネットワックを分割をするというふうなことに走るべきではないのではないかというふうに私は思います。  もっとも、監理委員会も主張されておりますように、今日の国鉄がその巨大な組織のゆえに、そしてまたその画一的な運営のゆえに、地域の住民のニーズに見合った交通サービスというふうなものを供給し得ていないのではないかというふうなことがございます。確かにその点は今日の国鉄というふうなものをとってみればそういうふうな弊害が存在をしておるということは明らかであろうかと私も思います。  それをどのようにして解決するかということでありますが、今角本参考人から、分権化というふうな方向はもはやそれは余り有効ではないのではないかというふうな御意見がございましたが、私はやはり、そういう先ほど申し上げましたような全国ネットワークの持つ意味というふうなことを考えました場合に、もう少し分権化の方向によって、つまりそれは将来的には支社であるか管理局であるかはともかくといたしまして、地域の管理に当たる国鉄の中の下部機構にかなり大幅な権限を委譲することによって、地域のニーズに見合った鉄道の運営というふうなことを行う道はなお残されておるのではないか。それは追求するに値する道ではないかというふうに思っているわけでありまして、そういう意味では、一社体制のもとで分権化を図るというふうな方向で地域ニーズに見合った国鉄の運営をするということが恐らく国民の期待にこたえる道ではないかと思います。  そういう一社体制のもとでの運営というふうなものは、地方交通線の問題に関しましても一定のメリットを与えるといいましょうか、内部補助をどういうふうな形で行うかということは国鉄にとってかなり重要な問題でありますが、確かに一面ではそれが内部補助のために幹線の整備がかえっておくれるというふうな問題も指摘されておるわけでありますけれども内部補助をどういうふうにするかというふうな点についてのルールのあり方というふうなものは、分権化をしていった場合に当然に検討されなければならない問題であろうかと思います。しかしなお、そういう一社体制のもとでの運営というふうなものが、内部補助を通じてシビルミニマムとしての地方交通線というふうなものを維持していくための一つの有力な手段たり得るのではないかというふうにも思っているわけであります。  総体として、私は今日の国鉄再建の方向というふうなものを考えた場合に、確かに現行公社制度というふうなものからは脱却する必要がある。しかしながら、それは全国一社体制のもとで分権化を伴った新しい形の公企業として国鉄経営の自立性、責任性が持ち得るような形を追求すべきではないか。しかもなおそれでも恐らく、何といいましょうか、国鉄経営が全くみずからの責任において運営できるという保障はない部分があろうかと思います。  国鉄地方交通線に代表されるようなシビルミニマムとしてのサービスの供給というふうなものは、社会としてその責任を負わなければならない部分であって、そういうふうな部分は国からの補助、外部補助によって賄われる必要があるのではないか。そのルールがどうあるべきかということは難しい問題でありますけれども考え方としてはそういう外部補助をもなしながら、しかも自立、責任持てる経営というふうなものを追求をするというふうなことが今日なお必要ではないかというふうに私は思っております。  これで私の陳述を終わります。
  73. 鶴岡洋

    委員長鶴岡洋君) ありがとうございました。  次に、吉田参考人にお願いいたします。
  74. 吉田忠雄

    参考人吉田忠雄君) 吉田でございます。  国鉄にはすばらしい人材が実にたくさんいらっしゃいまして、私は日本の企業の中で最もすばらしい人材を抱えている職場だと信じております。私の友人、知人にも生まじめなほどまじめに誠実な方々が多いのであります。国鉄の技術は世界のトップ水準であります。現場で働く人々も本当に信頼の置けるすばらしい方々が多いのであります。けれども、集団になりますと、あのようなすぐれた人々がなぜこのようにひどい状況になるのかと、こう思うほど、最低と言っては失礼でありますが、集団としては最もひどい状況を呈するのであります。それらについては枚挙にいとまのないほどでありますが、私の親しい、国鉄の中にいらっしゃる友人から聞きました話を一、二ここでお話しさせていただきたいと思うのであります。  誤りであってほしいと、こう祈るような思いでありますが、その第一は、国鉄の職場で働いている人々がクーラーを要求しまして、クーラーが届いたそうであります。取りつけるときに、国鉄出入りの業者に頼むということで見積もったら三十万円だそうであります。クーラーは恐らく二十万円くらいのもの、それが三十万円の工事費だということで、余りにもこれはひどいんじゃないかということで、町の業者に見積もってもらったら約五万円。それで五万円で頼もうと上に諮りましたらそれはいけないということで、では自分たちでやりたいと、こう言ったところそれもだめ。結局はクーラーは今ほうりっ放しだという事実の話を私は承りました。  ほかにもありますが、いま一つは、昨年の三月横浜診療所が完成したはずであります。約三億円かけたそうであります。これを近々ぶっ壊すそうであります。現在国鉄が危機の状況にあるときになぜ三億円ものむだ遣いをするのか。私は、人間ですからいろいろな見込み違いがあろうかと思いますが、せめて何らかの形で活用する方法はないものかどうか。なぜ懐さなきゃならないのか。その最大の原因は、いろいろありましょうが、一つには国鉄組織が縦割りになっているということではないかと思うのであります。このような点で、国鉄個人としてはすぐれていながら組織として非常に多くの問題を抱えているということを私は聞いてまいりました。  私は、大きな組織、例えば原始時代に恐竜がいたわけでありますが、恐竜はいつの間にか滅んでしまいました。末端の方でネズミにかじられて、それに対応できることができなかった。余りにもずうたいが大き過ぎてこのような結果になったと、こう聞いているのでありますが、国鉄は余りにも巨大な組織になり過ぎて、みずからの病根を断ち切るだけの組織力を持っていないと思わざるるを得ません。個々人としてはすぐれている国鉄人が組織としてなぜそのすばらしい能力を発揮できないのか。私自身も国鉄問題に関心を持ち、研究をし共同研究も進めてまいりました。そうした中で、国鉄組織にメスを加え処方せんとして出された、これが私は臨調の基本方針だと思います。  既に御承知でありましょうが、臨調は分割民営化を打ち出し、そしてさらに、労働関係は労働三法によると答申しているのであります。労働者を信ずる、労働者にかけた私は臨調の方針がうかがえるような思いであります。さらにまた、昨年の八月十日、国鉄再建監理委員会は第二次緊急提言をいたしましてその問題にメスを入れて答申をいたしました。私はすばらしい答申だと思い全面的に支持いたします。私の能力、私たちの研究努力で及ばないすばらしい内容を提示した。ぜひこの案を現実の政策に生かして国鉄を蘇生させていただきたいと思うのであります。このように私は臨調並びに監理委員会の案につきまして全面的に賛成であります。  ところが、そうした中でこれまでの国鉄の悪化の原因についていろいろ議論されておりますが、私はここでとやかく問うべきではない極めて緊急な状況であろうと思うのであります。にもかかわらず、そうした中で極めてこれらの緊急提言、馬耳東風とは申しませんけれども、ほとんど痛痒を感じない組織一つだけある。私はそれは国鉄の首脳ではないかと思うのであります。国鉄の首脳陣を見ておりますと、例えばことしになりまして答申を出しました。「経営改革のための基本政策」であります。私はこれを読んで本当にびっくりしたのでありますが、例えば私の感じと似ている一つのマスコミ、日経新聞が、経営層の意識を変革することが急務であると、あの基本政策についてコメントを加えております。私もまさしくそうだと思いまして、甘えの構造であり、そして世間の批判あるいは再建監理委員会の批判を馬耳東風に流しているのではないかと思うのであります。  聞けば、あの印刷物を三万部印刷して配ったそうでありまして、大変もったいないことをしたものだと思うのであります。あの案、出だしはなかなかすばらしいことを書いてあります。例えば、「職場規律の乱れにみられるような危機意識の欠如」、そのとおりであります。「自助努力に欠ける」、これもそのとおりであります。このように述べながらも、民営化を従来と同じような方法で、民営化という名前を用いておりますが、実態は従来の延長線にあるような形で、行財政の支援を待ちつつ、そして昭和六十五年までに収支が整うと、こう書いてあるのであります。  昭和六十五年まで、例えば現在二兆円の赤字を出しておりますが、五年間十兆円であります。十兆円は我が国の全財政の約五分の一であります。五分の一の国家財政を用いて国鉄の一部首脳による実験をやる試みであります。しかも採算はほとんどないと思います。このようなことを国鉄首脳が考えているということは全くの驚きであります。もっとも、私は国鉄の別な首脳からかつてこんな話を聞きました。国鉄は消防と同じなんだ、公共性ならばコストは考えることはない。コストを考えることも私は公共性だと思います。  このような状況の中で、しかもこの国鉄の案は労働者を本当に信じていない。例えば労働基本権については当面どおりとする、このように書いているのであります。民営化するならば、私は労働者を信じて、臨調が述べましたとおり労働三権を労働者に与えるべきだと思います。信じて与えるべきである。それを国鉄当局は、そうではないことを明記しているのであります。国鉄内部の労働組合は怒りをぶつけていただきたいという思いであります。  さて、分割民営化は臨調の基本方針であり、また臨調の答申あるいは再建監理委員会の基本方針について、政府はこれを尊重するとしばしば言明してまいりました。私はこの方針について反対する自由は、例えば労働組合なりある団体なり、私はこのような自由はこの自由社会においてはあると思うし、この反対に耐えるような立派な中身に、臨調、再建監理委員会の中身が育っていってほしいと思うのであります。反対する自由はありますが、国鉄首脳陣にあるのかどうか、私はないと思います。政府で決めたもの、それに従うべきである。その政府は今日の日本では議会制民主主義のもとで責任内閣制であります。この責任内閣制ということは、御承知のとおり国会内で多数を得た政党が内閣を構成するわけであります。いわば政府に刃向かうということは国会を軽視することになろうと思います。現在の国鉄首脳陣がとっている態度は、私は国会軽視に通ずるのではないかと、こう思うものであります。  ことしの二月六日、衆議院の予算委員会でありますが、中曽根首相は次のように言明しております。臨調答申考えに背く人がいればけじめをつけなければならない、こう言ったのであります。私は首相の発言は極めて重要な意味を持つと思います。決断すべきときに決断しないということは組織の悪だと思います。首相に私は決断をしていただきたい、こういう願いであります。国会内でも、この首相の決断、どのようにけじめがつけられたのかどうか、私はぜひこれを問うていただきたい思いでいっぱいであります。  しかし、臨調答申再建監理委員会答申について反抗するとでも申しましょうか、極めて不穏当な動きは既にかなり以前から見られたのであります。  御承知と思いますが、昨年の六月二十一日、日本記者クラブにおいて仁杉総裁は、職員の処遇や採算性など難しい問題もあるが、国鉄の今の規模はコントロールの限界を超えており、その意味ではコントロール可能な規模分割した方がいいと、初めて分割民営化を支持する発言をいたしました。私は当然過ぎるほど当然な発言だと思います。むしろ遅きに失する発言だと思うのであります。それに対して、これは昨年のサンケイ新聞七月十四日号の報道によりますと、事実かどうか、私はサンケイ新聞の記述を信じたいのでありますが、国会内で繩田副総裁と太田理事は次のように述べたというのであります。総裁発言は国鉄の真意ではないんです。適当な時期に修正させることを約束します。副総裁、理事が総裁を修正させると、このような下克上のような発言をしているのであります。このような状況では、国鉄が規律を守り、職場を再建することは不可能になろうと思うのであります。  それだけではありません。ことしの一月国鉄から監理委員会へ報告が出ました。その後二月一日、国鉄では秋山資材局長をキャップとする経営改革推進チームを発足させようとしたのであります。従来、経営計画は経営計画室が担当しておりましたが、再建監理委員会の窓口になっているという理由国鉄首脳は別の組織を企画したのであります。つまり、それは反臨調、反監理委員会であろうと思います。政府首脳、例えば山下運輸大臣も激怒したと私は聞いているのであります。そして、経営計画室の責任者の一人は北海道に転勤させられ、本社内の分割民営派の課長クラスを降格させる人事が行われたということも伝えられているのであります。  国鉄は、分割民営化に背を向け、あるいは反対する行動をとってきたと、こう思わざるを得ないのであります。むしろ、それは国鉄よりも国鉄の一部の首脳と、こう申し上げた方が正確だと思うのであります。  さて、このような状況の中で、国鉄を生かす道、私は分割民営化以外に道はないと思うのであります。事実、悪名高いあの国鉄がつくりました基本方策でも分権化を唱えております。今のままではだめだというのであります。分権化ということで認識した点では一歩前進かと思いますが、分権化という名前で私はごまかしてしまうのではないかと思うのであります。分権化を名実ともに実行するならば、それは分割であります。分権化というあいまいな言葉ではなしに、分割という名称をなぜ明確に出し得ないのか。そうならば私は初めて国鉄は蘇生するのではないかと思うのであります。分割民営化の長所を生かせますし、民営化を成功させるためにも適正な規模にすることが必要であります。  さて、私自身は民間企業につきましてもいろいろ研究調査をやってきたのであります。民間企業で一番今利益を上げている企業はトヨタ自動車であります。私はトヨタ自動車と国鉄をいろいろ比較対象することをやり、また発表してまいりました。大きく違う点はいろいろありましょうが、私は二つあるように思うのであります。一つは多能職、いま一つは提案制度であります。  トヨタ自動車の場合には、一人が幾つかの仕事をやりこなせ、忙しいところに人が回って仕事をする。もし規模が小さければこのような多能職制度国鉄でも採用できるはずであります。けれども、縦割り制度であるために多能職がなかなかなし得ないのであります。もし多能職制度を採用することができるならば、私は国鉄の方々の雇用はかなり大きく確保されていくものだと思います。  第二の提案制度でありますけれども、トヨタ自動車では約五万人の従業員のうち、職場のいろいろな改革提案は約二百万件であります。正確に申しますと、去年、おととしは件数が少し下がっております。しかし従来は約百八十万件くらい、二百万件弱であります。そして採用率はかなり高いのであります。八〇%、九〇%採用されているのであります。もしもこのような提案制度が行われているならば、最初申し上げましたクーラーのむだな取りつけの問題、あるいは横浜の診療所の問題は事前に防ぎ得た、あるいは失敗しても何らかの蘇生の方法があり得たと思うのであります。  私は、国鉄が民間の長所を取り入れるためにこの二つの制度を速やかに採用する必要があろうかと思うのであります。多能職制度がなかなか困難であり、提案制度は、むしろいろいろ職場の改善計画を出すと、時には当局に迎合したというふうに見られて内部で抹殺されるということを聞いています。そうでないことを祈るし、国鉄再生のために、国鉄の職場を生かすためにも、提案制度を生かしていってほしいと思うのであります。  このように国鉄問題を見てまいりますと、私は、国鉄国民の負託にこたえて再生してほしいと思うのであります。できたら自立してほしい。例外は北海道であります。私は、北海道は国鉄の場合にどのように考えても自立は不可能だと思います。これだけは、例えば年間三千億なら三千億円北海道に援助し、国鉄、別な名称でも結構ですが、守っていっていただきたい。しかし、他のところでは国鉄内部で一致協力し、提案制度を採用し、あるいは多能職制度を設けたならば、私は再生できるのではなかろうか。そのためには、国鉄人の、あのすばらしい国鉄人の自発的な協力が必要であります。もしも、今国鉄に援助している二兆円のお金、仮にどうしても必要なものが五千億必要だといたしましょう。一兆五千億円年間浮いたとするならば、十年間で十五兆円以上。もしそのお金を福祉に回すならば、間もなく近づきつつある日本の高齢化に対応して、病院の整備その他さまざまなすばらしい福祉社会をつくることが可能だと思うのであります。そのような福祉社会を国鉄再建のきっかけにしてつくっていっていただきたいと思うのであります。  さて、以上総括いたしまして、分割民営化を進めてほしいわけでありますが、私は分割民営化によって次の五つのメリットが生み出されると思うのであります。  まず、民営化によって、私鉄並みの民営化によって雇用を拡大し、国鉄人の雇用を確保するという方法であります。知恵を絞って努力して、これはできると思うのであります。  第二は、現在労働条件は全国一律であります。もちろん、地域手当がわずかありますけれども、全国一律。これはやはり地域によって、とりわけ大都会のような忙しい、大変な労働密度の高い、そして生活費の高いところでは、一律ではなしにこちらの方に労働条件を引き上げることが私は可能になってくると思うのであります。  第三に、国鉄ほどエリートを特別優遇しているところはないと思うのであります。恐らく全官庁の中で国鉄が最もすごいと思います。二十歳代で責任ある地位に立つほど、異常なほど私はエリートを登用し過ぎる。いわば学士制度であります。この人々が自分の地元で骨を埋める。大体二、三年で重要な個所をどんどん移っていくということではなしに、ある職場で生涯骨を埋めるようにするためにも、この渡り鳥的な異動をなくするためにも、分割民営化はエリートを地元に骨を埋めさせる契機になろうと思うのであります。  第四点は、管理者もまたその地元で骨を埋める、その地元で主となって国鉄再建の原動力になってほしい。これが、管理が十分行き届く、管理者としての自覚ができることによって私はできるのではなかろうかと思うのであります。  そして五番目に、労働者が職場規律を守り、多能職制度をこなし、提案制度をどんどん行って、自発的に国鉄再建協力してほしい。そのような契機になるのではないかと思うのであります。  二十分でございますので、以上で終わります。
  75. 鶴岡洋

    委員長鶴岡洋君) ありがとうございました。  次に、高梨参考人にお願いいたします。
  76. 高梨昌

    参考人高梨昌君) 高梨でございます。  私は、実は昨年、国鉄労働組合の書記長の諮問機関であります国鉄研究会の座長としまして、国鉄労働組合に「国鉄経営再建に関する提言」という文書を提出いたしました。この国鉄研究会は国労の委託でございますけれども、私ども専門研究者は、国鉄労働組合の運動方針にこだわらずに、専門家の立場から国鉄経営再建のための提言をまとめる、こういうような契約で設けられた研究会でございます。当初は、不幸なことに国鉄労働組合の受け入れることにならずに、全面的に反対という文書が提出されましたけれども、その後次第に私どもの研究会の提言が国労の経営再建プランの中にも取り入れられつつあることは私として努力のしがいがあったと思っているところでございます。もちろん、私どもの研究会の提言をどのように受けとめるかは国鉄労働組合の主体的、自主的判断でお決めいただいて結構ですということが契約の中身でございましたから、そのそんたくは国労のあくまで自主的な判断にお任せした次第でございます。  そういうようなことをまず前もって申し上げまして、私ども国鉄研究会をどういうような考え方で国鉄経営再建プランを考えたかという基本的な視点をまず初めに申し上げたいと思います。  まず、第二臨調初め国鉄再建監理委員会の方々もそうでありますし、国鉄当局もそうでありますけれども、いわゆる不採算路線からの撤退その他の減量経営をかなり強く推し進めつつありますけれども、私はこれだけでは国鉄経営再建は到底不可能ではないかと考えます。むしろ鉄道だからこそ生かせる鉄道特性を十分に発揮できる積極的な経営戦略を立てて、これの実現を図れる経営形態、また経営管理機構に改組する、これが肝要であるということが第一点でございます。  それから第二点は、国鉄の行っています輸送サービス、これは従来は国鉄事業がそれぞれ独占的事業として営まれてきましたけれども、この国鉄事業独占を前提とした経営再建策が役に立たないということであります。今日では航空とか道路とか海運とか、それぞれ鉄道に対する競争輸送手段が急速に発達してまいりましたので、こういうような競争交通市場前提として国鉄競争力を回復させる、こういうような経営戦略を立てることが必要である。これが第二点でございます。  それから第三点は、国鉄の行う輸送サービス、これは日鉄法で定められます公共性と企業性、こういう二重の目的がありますけれども、この国鉄輸送サービスというのは、経済学者であります私から見ますと、これは公共財とは到底言えないということであります。国鉄の行う輸送サービスは経済財である、こういうことを経営の基本ベースに据えて再建策を構想する必要がある。公共財といいますと、立法とか行政とか司法とか消防、警察、軍隊でございますが、これの維持のためには一定の費用が必要でありますが、一定の費用を投下してもどれだけの経済的成果が上がったかは測定できない事業分野が公共財でございます。それから経済財というのは、一定の費用の投下に対してどれだけの経済的成果が上がったかを少なくとも測定可能な事業でございます。当然、経済的成果はそれがマイナスに出る場合もあります。プラスに出る場合もあります。それが損失を出すか収益を上げるかを少なくとも経済的に測定できる内部装置を持つ事業である。これが第三点でございます。  第四点は、鉄道事業というのは、これも経済学の用語を使って恐縮でございますけれども、自然独占的産業だということでございます。自然独占的産業は、通俗的には公益事業とされるものの多くがそうであります。例えば、電力、ガス、水道、電信電話、鉄道、道路輸送、航空機輸送、いずれもこれは自然独占的産業であります。  例えばガス事業に例をとりますと、ある地域にガス会社があれば、このガス会社が先行形態にある場合に後発のガス会社がそこに進出することは困難でありますし、またそこの同じ地域にガス会社が二社あれば大変な資源のむだな投資になります。結果的にその地域でのガスの供給サービスを特定のガス会社に地域独占を認める、そのかわりそこでの料金の決定、また事業の新設もしくは廃止についてはそれぞれ行政官庁の許認可を必要とする、こういうような行政的規制を加える産業がこれであります。労使関係法でも、労働関係調整法でそれぞれストライキについてのクーリングタイムが置かれている。こういうような規制の加わる産業が自然独占的産業でありますが、国鉄事業もこういうような自然独占的産業としての性格を持っている。このことを基本に据えて経営形態なり経営管理機構を構想しなければならない。  以上四点でございます。  さて、それならば、今お三方の参考人からも意見が述べられ、また私どもの、それぞれ国鉄経営再建に関しますさまざまな専門家の方々、また国民の世論、またそれぞれの労使、各団体の方々がさまざまな意見を申し述べているところでございますけれども、少なくとも私の見たところ、国鉄経営再建問題というのは、既に抽象的、理論的次元の論争の段階は終わった、こう私は判断をいたします。むしろ具体的にどういうように実行計画を作成し、これを実行に移すかという段階に入ったと思います。それならば、今までのさまざまな御意見を整理してみて、これも私の判断でございますけれども、大勢としてはほぼ合意ができつつある課題が幾つかございます。  一つは、現行の公社という経営形態、これは維持しがたいという点でございます。維持しがたい後の、公社の経営形態を変えた後、民間資本参加をどの程度認めるかどうかについては若干の幅はございますけれども、少なくとも公社形態は維持しがたいという点ではほぼ大勢は意見は一致しているのではないか、これが第一点でございます。  第二点は、先ほど申しました、鉄道として持っている特殊な性格というのでしょうか、鉄道でこそ発揮できるメリット、これを十分に生かせる経営に転換すること、これも大体意見が一致していると思います。  鉄道特性といいますとさまざまな特性がございます。例えばエネルギー効率は他の輸送手段に比べて大変効率がようございます。それからまた、騒音公害は別でありますけれども、少なくとも排気ガス公害は電車の場合にはほとんどございませんので、低公害型の輸送手段だということであります。また専用軌道を走りますから大変安全性が高い。また、日本の国鉄に代表されますように、正確にダイヤどおりに運行されるという、こういう性質を持っております。それからまた、もう一つ日本の国鉄のすぐれた特徴点でありますけれども鉄道網が全国鉄道網として今現に完成されているということであります。この鉄道網があるということは、日本の長い将来を見た場合に緊急時の輸送手段として最適だということであります。  ヨーロッパの鉄道というのはいわば軍事上の必要から鉄道が残されておりますけれども、日本の場合でも、日本がみずから戦争しないにしても、しないことが望ましいことでありますけれども、仮に周辺海域で戦争が起きれば少なくとも原油の輸入は途絶されます。石油の備蓄も限界がありますから、国内での国民の日常最低必要な生活物資を輸送し、人を輸送するためには、少なくとも水力と原子力発電を活用しまして緊急時の輸送に当たらせる。そのためには電車が非常に有効に役に立つ。こういうような緊急時の輸送手段として最適な輸送手段だということであります。また、鉄道というのはそれぞれ敷設されればその地域に何がしかの利益をもたらします。普通開発利益でありますけれども、この開発利益によって国土の均衡ある発展をこれで図ることができるということであります。  こういうような鉄道特性をどういうように発揮させるかが最大のポイントで、こういうような鉄道特性を発揮できるような経営に脱却すること、これについてもほぼ意見は私は一致しつつあると思います。  それから第三番目は、今申しましたことと関係しますけれども、現在ある鉄道を可能な限り残すこと、これについても大勢としては意見は一致しつつあると思います。この中には当然地方交通線も含まれますけれども。  大体以上が、現在のさまざまな御意見の中から大勢として合意のある論点でございます。  それに対しまして、全く合意が得られていない、また具体的な再建プランが考えられていない論点が幾つかございます。  私がきょう申し上げたいのは三点でございますけれども一つ国鉄企業分割問題でございます。これにつきましては、第二臨調が申しましたような地域別に企業分割するということ、また、再建監理委員会地域別に企業分割する方向で具体案考える、こういうことであります。これに対しまして、全国一社体制を保持すべきだ、その際にはある程度分権管理が必要だと。ここでは企業分割か分権管理かという点で大きく議論が分かれている論点であります。  それから第二番目の議論が分かれている論点というのが、膨大な長期的な累積債務処理の問題でございます。これをいかに処理するか。一部には、全部国庫負担、つまり国民の租税負担で賄うべきだという説から、新会社の方に全部負担をかぶせるべきだ、こういうようなかなり幅のある意見がございます。この処理方策が具体的に提示されておりません。  それから第三番目が、国鉄経営再建過程で発生いたします余剰人員対策でございます。この余剰人員をどのように雇用機会を提供するか、また、不幸にして離職者が出た場合にはどのような政府が援助措置を講ずるのかについては全く意見が出されておらないのが現状であります。  以上の点を踏まえまして、私なりの意見を以上の三点について申し上げたいと思います。  まず、国鉄企業分割問題でありますけれども、しばしば民営分割と一言で言われますが、民営化するかどうかということと、企業分割するかどうかということは理論上も全く別の問題でございます。私は、国鉄経営地域別に企業分割すること並びに地域別支社制による分権管理を図ることについては反対でございます。これは鉄道事業にとってそれほど適切な改革案ではないということを申し上げたい。  このことは、先ほど申しましたけれども鉄道事業というのは自然独占的産業であるということであります。もともと、民間企業でもそうでありますけれども、いわゆる規模の利益、スケールメリットというのは、規模が大きくなるほどコストが逓減していく、こういうことでありますけれども、ところが自然独占的産業の場合には、例えば電信電話でも電気でもガスでもそうでありますけれども、そこでの事業分割することが困難だということ、これを事業の非分割性と私ども呼んでいますが、だから、事業の非分割性とスケールメリット、このバランスがとれればいいわけですけれども、この両者のバランスが失敗する場合がしばしば起きます。これも経済学の言葉で恐縮ですが、普通これは市場の失敗と言っています。つまり、ここで費用が逓増し収益が悪化する。国鉄現状がそうでありますけれども、そういうような問題が自然独占的産業の場合には市場の失敗をもたらす事態がしばしば発生いたします。  ただ、その際、それならば事業分割、これがどうできるかとなりますと、自然独占的産業であります公益事業の中にも二つのタイプがあります。  一つは、ある程度地域別に企業分割が可能な事業であります。それは電力とかガスとか水道事業がそうであります。電力会社が九電力に分割されるのは、これは技術的に可能であります。というのは、電力の供給と電力を受けるユーザーの場合が特定の地域に居住しています。ガスに至れば大体都市地域だけですから、水道もそうでありますけれども、これはある程度狭い地域での企業分割が可能であります。  ところが、同じ公益事業であっても地域別に企業分割が不適切な事業があります。これが電信電話、それから航空路ですね、飛行機、それから道路輸送、それから鉄道であります。それぞれ航空路にしましても道路にしましても電信電話でも全国ネットワークで結ばれております。国鉄の特徴はまさに全国ネットワークで鉄道がつながっているところに意味があります。それぞれ競争的な交通手段というのが航空路なり道路輸送でありますから、これと対等の競争をするためには全国ネットワークを国鉄も保持しなければ競争力を到底回復できない、こういうことであります。  そういうような問題をまず前提にしまして、それならば国鉄経営管理ですね。企業分割というのは経営管理の適正規模の問題で出されているわけですけれども、この適正な規模ということを地域別に分割することは私は不適切だと考えるのですが、現状で見る限り、国鉄は一社体制で大変な中央集権的管理であります。そのためにしばしば官僚制的な管理に基づく弊害がさまざまなされてきております。そこで私ども国鉄研究会といたしましては、こういうような国鉄経営管理の合理化についてこういう提案をいたしました。  一つは、事業分野別の事業部制を採用したらどうかということであります。この事業分野別事業部といいますのは、今鉄道線路は少なくとも全国ネットワークでつながっているところに意味があるんです。例えば常磐線にしても中央線にいたしましても、線路を地域別にずたずたに切っては意味がないんですね。だからそれぞれ路線ごとに事業部を置く。この路線事業部の範囲は、それぞれの今の幹線ですね、何々本線と呼ばれるところを一つ路線事業部に考える。またそれと並行するところを複数考えてもいいですけれども、それぞれの路線事業部が、業務としてはダイヤを編成する、それから列車編成を考える、そういうような商品サービス、これを考え事業部として路線事業部を置く。これは相当数になると思いますけれども。それによって、少なくともそこでお客さんなり貨物なり、この路線事業部を中心にして商品開発を考えていく事業部であります。  それからもう一つ地域事業部であります。地域という概念は、都道府県もそうでありますし、国鉄の地方鉄道管理局もそうでありますけれども、もともと人為的に線引きしない限り成立しない概念であります。実際には地方鉄道管理局にそれぞれ運転とか保守とか、それから駅務とか、こういう方々がそれぞれの地域に居住されております。その居住地域範囲内でそれぞれ運転業務や駅務業務に従事しているわけですから、この地域事業部はそれぞれの地方鉄道管理局ごとに原則置くということになるかと思います。ここでは運転業務、今言った出改札、駅務等の客扱い業務、それから保線業務、これを地域事業部が分担する。地域事業部は路線事業部に、例えばあるダイヤで列車が走る場合には運転士、車掌をそこに提供する。こういうような路線地域のそれぞれの相互分業でもって経営を営んでいく、こういうことでございます。これを全国幹線について路線地域に分けていくということを私どもは提案いたしました。こういうような分権管理であります。  それ以外に、なじまない分野が一つございます。それは路線地域と総合した部門を私は置いてもいいと思います。例えば新幹線鉄道であります。新幹線事業部というものを、これは新幹線が別の線路を日本は走っております。これはフランスとは違う点であります。新幹線事業部としてそれぞれ独立の事業部を置く。ただし、新幹線事業部には、それに並行する在来幹線をその事業部に繰り入れる。私は、並行在来幹線は線路をずたずたに切ってそれぞれ新幹線の駅ごとのアクセス鉄道に組みかえるべきだと考えておりますけれども。それからもう一つは、首都圏なり関西、これの国電の事業部であります。それ以外の事業部として関連事業部。  大体以上のような事業分野別事業部制を置いて分権管理を図っていけば、先ほど言いました自然独占的産業による事業の非分割性、これの産業の特性にも私はこたえられる、こういうことでございます。  それから第二番目は、膨大な長期累積債務処理でありますけれども、これは私どもの提案では、民営の公益事業に限りなく近い特殊株式会社にすべきだということを提案いたしました。この民営に限りなく近い特殊株式会社というのは、結局民間資本参加を求めるわけですが、その際、旧社である国鉄がそれぞれ債務をしょい込むわけですが、その際、現物分は新社に現物出資し、ただし、その固定資本の価格換算額を資本として所有し、将来新会社の経営業績に応じてその株式を民間に放出売却して累積債務の弁済に充てる、こういうことでございます。それによればある程度債務処理が可能であろう。ただし、特定年金や特定退職金等の特定人件費については、既に旧日鉄、日本製鉄で前例がありますように、これは国庫負担で埋めざるを得ないのではないか、こう考えるところであります。  それから第三番目の余剰人員対策でありますけれども、現実には定年退職、自発退職等の自然減耗策によるべきだと考えますけれども、いかにどう考えても、国鉄が発生する余剰人員の吸収先として関連事業活動の拡大、これは時間的にどうも間に合わないのではないか。当然人材の養成もそこでは十年ぐらいの時間がかかります。そのタイミングがどうしてもずれる。したがって、余剰人員の発生はどうしても避けられないんじゃないかと考えます。  それならそれらの方々の離職者対策をどうするかということで、私は先ほどの長期累積債務処理もあわせて提案したいことですけれども、この際総合交通対策特別会計というものをつくって、これは石炭特会、今石油代替エネルギー特別会計というのがございますけれども、これに準じた総合交通対策特別会計を設置して、その中に国鉄勘定を設けて、特定人件費の返済、それから長期累積債務の弁済、それから離職者対策、この費用に充当すべきじゃないかと考えます。  その財源措置としましては、道路建設のための道路特定財源がありますし、飛行場建設のための空港特定財源がございます。これはそれぞれ石油ガス税、それから自動車重量税等を財源にするわけですけれども、この財源と、もう一つは軽油引取税、この税率をもっと大幅にアップしてこれをこの財源に充てる。要するに、トラックのために大変な排ガス公害が起きています、それから交通事故も交通災害も発生しています、こういうような公害対策、安全対策、こういう面からも可能な限り鉄道に貨物を戻す、また人を戻す、こういうようなことでそういうような財源措置をこの際講じられないか、これによって以上のような対策の費用に充てる、こういうことでございます。  なお、それ以外にも、それだけでもまだ離職者対策はうまくいかないと思いますので、私はあえて、先ほどの参考人からも御意見がございましたように、国鉄の職場は全国に散在しておりますから、石炭離職者のように集中的に産炭地に発生するのとは違いますので、できるだけ地方の自治体がこれらの余剰人員を引き受けてもらえるような、こういう工夫をしていただけないか。石炭離職者では国が五千人ほど転職先で引き受けましたけれども、これは地方自治体が責任を持って地方公務員、また農協の職員でも経済団体連合会でもいいですけれども、そこでも引き受けていただけたらと、こう考える次第でございます。  以上でございます。
  77. 鶴岡洋

    委員長鶴岡洋君) ありがとうございました。  以上で参考人からの御意見の開陳は終わりました。  それでは、これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。  この際、お諮りいたします。  委員外議員安恒良一君から、国鉄問題に関する件についての質疑のため発言を求められておりますので、これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 鶴岡洋

    委員長鶴岡洋君) 御異議ないと認めます。  それでは、安恒君に発言を許します。安恒良一君。
  79. 安恒良一

    委員以外の議員(安恒良一君) ちょっと社労へ行っておりましたものですから……。  私は吉田先生に少し具体的にお聞きをしたいと思いますが、きょうは私どもは、国鉄をどう再建をすればいいかということの再建の具体策について各先生から御意見をぜひ聞きたいものだなと思っておりまして、具体的な提案をされた方もございますが、そうでありませんので、まず吉田先生にちょっとお聞きをしたいんです。  交通産業と自動車産業の例を挙げて、トヨタの再建をすばらしいものだということで御指摘されましたが、私は、交通産業と生産産業の違いが基本的にあるんじゃないか。というのは、自動車産業というのは、御承知のように、生産それから消費が同時に行われるわけではないんです。これは生産をし、必要な場合は滞貨をします、それから消費と。ところが交通産業というのは、残念ながら生産と消費というのはどうしても同時に行われる。滞貨というのはあり得ないんです。それからまた、経済の事情に応じて生産調整というのもこれは交通産業はできないわけです。そのやっぱり基本的な違いのところについてどうお考えなのか。でないと、どうもトヨタにおける提案制であるとか、いま一つは多能職とおっしゃいましたが、そういう点が、私も民間出身ですからわからぬわけじゃないんですが、交通産業の特殊性についてどうお考えかということが一つであります。  それから第二点目には、私は私鉄の出身なんですが、皆さん簡単に分割民営、私鉄並みと、こういうことをおっしゃられるわけですね。そして、本当にその分割民営、私鉄並みということについて正確な御理解をいただいた上でお使いくださっているかどうか、こんなことを先生方に申し上げて失礼ですけれども、大変心配をするわけです。  というのは、例えば、吉田先生にひとつお聞きをしたいんですが、吉田先生は五つのメリットがあるということで挙げられた中で、いわゆる分割民営をすれば大都会の労働者、国鉄労働者は今よりも賃金、労働条件が上げられるんじゃないか、こうおっしゃったんですね。じゃ、それだけで済むんだろうか。というのは、私鉄の場合を見ていただきますとわかりますように、大都会の私鉄と田舎の中小私鉄、バスとでは賃金、労働条件はもう残念ながら歴然たる格差があるわけですね。例えば、ことしでも一万二千五百円で大手が解決したとき、今もってストライキをしながら、低賃金でせざるを得ないんです。  ところが、御承知のように、国鉄というのは今全国一律の賃金条件、労働条件ですからね。これを、あなたがおっしゃったように、大都会で上げることはできても下げることが簡単にできるだろうか。しかし、じゃ下げなくて果たしてやっていけるんだろうかということなんです。例えば北海道だけ特殊だとおっしゃいましたが、四国をもしも分割する、九州を分割したときに、今の国鉄の賃金、労働条件は維持をしておく、そして東京や関西は国鉄の労働者の賃金や労働条件は大幅に上げていくということで本当に経営がやっていけるのかどうか。私は何も下げることを求めているわけじゃないんですよ。ですから、どうも先生が引かれた例が、東京なんかぐっと賃金が、労働条件が上がるからいいじゃないかとおっしゃっていますが、この点がわからない。  それから三つ目にわからないのは、私鉄並みの生産性ということを本当に先生方は計算なりされたんだろうかどうか、私鉄並みの生産性ということをですね。これも非常に違いがあるわけです。例えば東京周辺の大手私鉄、それから関西の京都、大阪、神戸、こういう関西圏をつないでいる私鉄と北海道のローカル私鉄やローカルバス、九州や四国のローカルバスではもう全然生産性が違うんですよ。しかも、今申し上げたように生産と消費を同時にやっている産業なんですね。そういう状況の中で本当にこの分割民営して私鉄並みにやっていけば、それで経営がうまくいって国民のニーズにこたえられるとは残念ながらどうも考えられない。この点が一つ。  それからいま一つ私鉄並みでお聞きしておきたいのは、私鉄の場合には、率直なことを申し上げて、これは葬式屋を除きましてありとあらゆる産業に手を出している。洗濯屋からありとあらゆるものに手を出して多角経営をやっている。ところが多角経営ができる地域というのはやっぱり大都会周辺なんです、これはやっぱり人がいないとできませんから。そうすると田舎の方はなかなかできない。そこで中小バスなんかになりますと、今国から年間約百億、地方自治体から百億、二百億の補助金を得て中小私鉄、バス路線をやっと維持している。しかも非常な低賃金、合理化で大変な経営をやっている。  こういう実情にあるわけですから、そこらのことが十分御理解をいただいた上で民営、私鉄並み私鉄並みとおっしゃっているのかどうか。そこらの点をちょっと吉田先生にお伺いをしたいと思います。
  80. 吉田忠雄

    参考人吉田忠雄君) 幾つかの点で御質問いただきまして、まず国鉄とトヨタとの比較でございます。  安恒先生おっしゃっているとおり、トヨタの場合にはメーカーであり、同時に販売もやっておりますが、基本的にはメーカーであり、設備投資型の産業、そして国鉄の場合にはむしろ労働集約的な面が大変強いものであって、そのとおり私は適用できないと思います。ただ、トヨタ自動車が今日ありますのも、私は内部の並み並みならぬ努力によってあそこまで行ったものだと調査結果理解しているのであります。そして、そのポイントはどこかということを突き詰めてまいりますと、私は二つの点で感じたのであります。  そこで多能職制度、あるいは一般には多能工制度と言っておりますが、一人が幾つかの仕事をやりこなすことによって繁閑の差をなくするような、こういう方法でございます。それを採用し、国鉄の場合にはほとんどないというその差に気づいたのであります。これをいかにして違った産業間でどのようにして進めていくのか。  私は、例えば一例を挙げますと、国電の中央線、運転手と車掌とで動かしているわけでありますが、中央線の東京駅に入ってまいりますと、掲示板をどこへ出すのか、あれを押すためにかつて専門の人がわざわざいた。私鉄の場合には運転手でも車掌でもできる人がやっていく、このことによって人員を浮かし、そして従来のその仕事をやってきた人をやりがいのある職場に回してきたと思います。このようなことを考えますと、人員の配置その他についても工夫する余地がたくさんある。その意味で、トヨタのやり方全部ではないにしても、私は少なくともこの二点は国鉄にとって模範となるのではないか、こういう実例で申し上げたわけであります。  したがって、異なった産業で、ある特色を生かします場合でも、その条件その他を生かしながらやっていく必要があろうかと思いますが、提案制度といっても国鉄内部の提案制度でありますので、決してトヨタの提案制度ではありません。制度自体を、例えば国鉄をこのようにすれば改革できるという全員の総意に基づいて改善していくならば、私はできるかと思うのであります。例えば切符を買う場合でも、こちらでずっと並んでいる、こちらの方ではほとんど何もしないでいる、こういう状況を見ますと、何とかこれらをお互いに助け合って国民に利便を図る方法はないか、こういうことを思うのであります。これが第一でございます。  第二に、私鉄並みということでございます。  確かに、私鉄については私余り勉強しておりませんので、むしろ安恒先生の方がはるかに詳しいと存じますので、むしろ私申し上げる資格はないようでございますが、ただ、私鉄でできていることを国鉄でもできないかどうか。例えば私鉄と国鉄の一番大きな違いは、距離が国鉄の場合非常に大きいので、それをそのまま適用できない点が私はあろうと思うのであります。しかし国鉄のローカル線の場合には私鉄の長所を取り入れることができる。ですから私鉄に学んでいただく点があろうかと思うのであります。この点、私は先ほど申し上げましたとおり、余り詳しくやっておりませんので、この程度にしていただきたいと思うのでありますが。  労働条件であります。  私は、たとえわずかでも、自分の額に汗して工夫したものが報酬として、あるいは手当となって返ってくるような職場、これが国鉄で必要だと思うのであります。余りにも大き過ぎまして、いろいろなものが全部全国一律になっているのであります。これを私は、地方の方を引き下げよとは申し上げずに、今後生産性が高まる、あるいはまたいろいろな収益が上がった場合に、いろいろな収益を上げている地域にそれを回すような工夫で、その間をどうするのかということでありますが、私は一遍に国の補助をなくせよということではなしに、段階的になくしていってやがて自立していく、この時期を願っているものであります。ですから、そうした点で、自分で工夫したものが戻ってくるような、そのような労働条件、とりわけ労働密度の高いところではそれが望ましいということでございます。  それから、具体的に私鉄並みの生産性をどう進めていくのかということでございますが、私は、国鉄でもまだいろいろ工夫すれば職域を広げ得るところがあるんじゃないかと思うのであります。ただ、どうしてもできない場合には、私自身も、地方公共団体協力を仰ぐ、こうしたことが必要かと思うのであります。今国鉄でもいろいろな試みがなされておりますので、もしそうしたことが成功するならば、そうしたものにどんどん進出し雇用の確保ということでできないかどうか、こうしたことで申し上げたわけでございます。  以上でございます。
  81. 安恒良一

    委員以外の議員(安恒良一君) 私は決して提案制度のことは否定しているわけじゃありませんが、一番やはり問題になるのは、今の賃金、労働条件はあなたの御主張は下げないと。私も下げない方がいい。分割をして、しかも生産性を高く上げたところはそれに報いた賃金や労働条件を払いながらやっていけるというふうには、少し今の私鉄の現状分析されますとなかなかできないんですよ。それがもう非常に私たちの一番悩みなんです。  例えば、恥ずかしい話ですが、三重交通が非常な大きな事故を起こした。申しわけないと。超過勤務が多かったということなんです。ところが、超過勤務が多いことを労働組合は決して望まないんです。望まないんですが、中小私鉄、バスの場合には超過勤務を含めた賃金でないと世間並みの賃金にならないんですよ、どうしても。そこでややもすれば超過勤務が多くなる。しかし安全性は守らなければならぬ。歯を食いしばりながらやっているのが現状なんです。  ですから、私は国鉄の今の賃金、労働条件は、先生がおっしゃるようにそのままにして、大都会はさらに上積みをしながら、しかも分割民営でやればうまくいくということは、もう全くそれは頭の中で言えることであって、現実をもう少し、本当に交通産業の置かれている実態ということをひとつあれしていただきたいなということを申し上げて、もう時間がありませんから。
  82. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 角本参考人にお伺いしたいと思うんですが、青函トンネルはあれは失敗だったというふうな意味のお話なんですが、あの青函トンネル国鉄責任というふうに決めつけてしまうことができるかどうかということです。これは総理大臣がボタンを押して貫通を祝う、政府自身が祝うというようなことをやっておりました。この青函トンネルがいまだに使い道が決まっていないという状態です。でき上がれば、国鉄は現在の状態では年間約九百億の使用料を払わなきゃいかぬ。まさに国鉄問題の象徴的な姿ではないかという気がするんでありますが、この青函トンネルのような大プロジェクトは、果たして独立採算制をもとにしている企業負担すべきものなのかどうかということです。  それから、リニアモーターカーはやめた方がいい、こういうお話がございました。見込みがないからやめた方がいい、こういうことであろうと思うんでありますけれども、この種の問題はなかなかこれは将来実現性があるかないかは我々素人にはわからぬわけですよ。したがって、研究しておけばよかったのか悪かったのか。これは今のところは役に立たない、こういうふうに断言できるかもしれませんけれども、まあ月の世界だって、人間が飛んでいくなんてことを我々は考えてもいなかったんですから、先のことはわからないんですけれども、このリニアモーターカーのようなものは思い切ってやめた方がよろしいというふうにお考えになるならば、この新幹線の問題はどのようにお考えになるか。  東北・上越新幹線、これも現在の仕組みでは、例えば上越新幹線は年間一千億からの金を鉄建公団に払わなければならないようになっております。こういう方法で、利息のつくお金を借りて膨大な設備投資をするというやり方は、いや応なしに累積債務を膨らましていくということにならざるを得ない。このようなやり方が果たして妥当かどうかということですね。この辺に問題があるんじゃないかという気もいたしますが、その点についての御意見をお伺いしたいと思います。
  83. 角本良平

    参考人角本良平君) 私が補足で申し上げたいと思っておりましたことをまさにお尋ねくださったので、大変ありがたいと思います。  実は私、ドーバー海峡の海峡トンネルについて、英仏政府がどんな態度をとっているかということを実地に関係の人たちに聞きたいと思って今度ヨーロッパへ参りました。青函トンネルが彼らに刺激になっていることは私は間違いないと思いますけれども、青函について私が失敗だと申し上げているのは、トンネル技術の失敗ではなくて、経営計画が狂った、見込みが狂ったという意味の失敗、それからまた、そのように初めから見込むのが無理であった数字を見込んでいた責任、そういったことを申し上げたいわけであります。  ドーバー海峡の場合には、七〇年代の初めに掘りかけまして、五百メートル掘ってやめているという現実がございます。それからまた、最近、この十月までに民間がコンペの形で、このような案ならできるという案を出して、政府は一切お金を出さない、両国政府ともに出さないということで政府間の合意ができたというふうに聞かされました。このことが私はぜひきょう申し上げたかったことであります。  どのような計画を進めるかはこれは政治がお決めになることであります。しかし、政治がお決めになるときには経済合理性を持たなければいけない。無理に需要を大きく見込んで、計画を決めるときには自立採算できるかのごとくに言って、後で建設費を膨らませ、需要は減ってしまう、大赤字が出る、このような計画では納税者として耐えられないわけであります。したがって、私は、いまだに使い道が決まらないようなトンネル工事を過去十五年間以上なぜ続けてきたのかということを申し上げたい。途中で修正する機会が十分にあったはずなのに修正をしなかった。このような計画を独立採算でしろと言われれば、私は事業責任者としてはそれはできませんということを言うべきであった。過去において国鉄総裁は何回もその機会があったはずであります。その機会があったのにもかかわらず一度も言わないで、直前になって、採算が合わない、どう使ったらよいか、これは大変不見識なことで経営者として資格はないと考えております。  同じことは、今後の新幹線あるいは東北・上越新幹線についても言えるわけであります。東海道と東北・上越とでは沿線の人口規模が違います。そのことははっきりした事実でありまして、東海道よりもはるかに大きな建設費をかけて、はるかに少ない需要に対して採算がとれるはずはない。したがって、もしもこれを政治がつくれと言われるならば、あらかじめ十分な補償措置を講じた上でその契約のもとに行うべきである。この点につきまして、私が今度訪ねましたカナダ国鉄の場合は非常にはっきりした態度をとっております。パブリックインタレスト、公益性のため、公共性のためにつくるものは、これはすべて欠損は国が責任を持つ、そのようなルールのもとに我々はしているということをはっきり言っております。過去の国鉄の失敗の最大の原因一つは、このルールが明確でなかった。他の参考人も今公共性のお話、そして我が国では企業性と言われている、経済合理性と私は置きかえてよいと思いますが、その点の明確な決断がなかったということであります。  そこで、残されたマグレブ、磁気浮上の問題でございます。フランスでは民間企業がかつて空気浮上列車技術開発に成功いたしました。十年以上前の話でありますが、私もそれに乗りました。しかしながら、フランスではそれは使う場所がなくて、ついにさたやみになりました。今行って確かめましたところ、もはや復活する見込みはないということでございます。  空気浮上列車が使い道がないように、我が国におきまして磁気浮上列車を使う場所は私はないと思います。ないと申し上げる根拠は、東海道新幹線におきまして皆さんは運賃と料金を高くし過ぎてしまったわけであります。航空機に対しまして恐らく新幹線の一等運賃料金はもはや競争力ゼロであります。普通の座席でありましても航空機の七割ぐらいになっておる。これではお客が昭和五十年の八割に今減っておるわけです。最近若干ふえる傾向がありますけれども、もとへ戻るにしましても、せいぜいもとへ戻るという程度でしかない。私が一人の計画者として昭和三十五年ごろに予測しましたときには、昭和五十年代におきまして東海道新幹線の旅客はさらに伸び続ける、ただしその前提としては航空機の半分以下の運賃料金というふうに考えておりました。  東海道新幹線は現在恐らく経費の二倍以上の収入を上げております。それにもかかわらず、皆さんはそれを非常に高くして国民利用しないようになさったわけです。東海道においてさえお客が減るわけですから、まして磁気浮上の線路をつくるだけの需要はない。東海道で使えなければ、あと我が国でこの技術を使う場所はございません。そのように今後私は二十一世紀初めまで予想しても間違いないと過去の経験から考えております。  以上で、御質問にお答えできたかどうかわかりませんが、不足でございましたら、またお尋ねくだされば幸いでございます。
  84. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 監理委員長が午前中に、分割によって競争原理を発揮できる、こういうふうに言われたんですが、今角本参考人がおっしゃったけれども、これは地域によって人口密度の希薄なところと濃密なところでは競争にならぬわけです。こういう違った場所の分割競争原理の発揮に役に立つのかどうかということに対する疑問が一つあります。  それからもう一つ、上野―東京間に新幹線の延長計画があって、これがちょうど半分でもって工事がやめになっています。秋葉原まででき上がって、五百億金かけたけれどもあとの五百億残っておる。こういうのは残しておいてみたところで役には立たないし、初めから上野どまりにするつもりならば、あんなところに新幹線を東京へつなぐという計画を立てなかったらよかったんじゃないか、こういう気がするんですが、これもどうも中途半端な措置のような感じがするのでありますが、このような監理委員会措置に対してどのようにお考えになりますか。
  85. 角本良平

    参考人角本良平君) 第一点のサービス競争につきましては、先ほど私鉄、民鉄の議論がございましたけれども、関東の私鉄にとりましては、私は関西のサービスがいつもよい刺激になっておるというふうに考えております。仮に地域的に分割しました場合に、その地域に特定の利用者を相手にしての競争はもちろん行われません。しかしながら、ある地域経営者、労働組合がよいサービスを提供するということは他の地域にとって非常によい刺激になると私は思います。  今私が身近に経験しました一つの例を申し上げますと、新幹線の三島の駅で我々は修善寺へ行くのに私鉄に乗りかえます。残念ながら国鉄のサービスよりもこの私鉄のサービスの方がはるかによいわけです。その接続駅の三島の駅の国鉄のサービスは東京付近の他の駅のサービスよりもはるかによい、こういう結果が出ております。したがいまして、地域分割して、あるいは路線ごとに旅客を分けたとしましても、競争原理はサービスの面では私は十分働くと思います。それからまたコストの面でも十分働くと思います。我々は、先ほどの議論がございました実例といたしまして、きょうは、余りにも知られておりますから申し上げなかったんですけれども、大井川鉄道の例がいやというほど引き合いに出されます。そして大井川鉄道の社長さんはかつて国鉄におられた方でございます。多能職といいますか、一人の例えば経理課の女の人が日曜日になりますとお弁当を売っている、これが私は経営実態ではなかろうか、そういうふうに考えております。  二番目の、上野―東京間はおやめになるべきだと私は思います。実は私は東京駅へ東海道新幹線を入れる計画に参加した一人でございます。そのとき、品川でとめるべきであるという考え方が一つございました。品川―東京間に無理に建設費をかけるよりも、お客の数は品川でとめても同じであろうからという意見でありました。確かにその意見は経費だけから見るともっともであります。しかしながら、東海道は十分に利益を生ずる、それであるならば旅客に便利な場所まで入れるべきである。その当時調べましたのでは、急行旅客地域分布は千代田区と中央区にかなりの程度に集中しておりました。したがって、品川で打ち切りにして乗りかえさせるよりも、東京駅まで入れますと多数の人が便利になる。しかも、それだけのコストを償うだけ払ってくださるということであれば東京駅と、こう考えました。  それからもう一つは、幸いに我々の先輩が東京―品川間に複線をつくるだけの余地を残しておいてくれました。これは戦災復興計画でそれだけの用地が残っていたわけであります。ですから、日劇の横をすれすれで通るという芸当も、ちゃんと用地をとってあったからできたわけであります。これに対しまして、上野―東京間というのは、私は調べたことがありませんけれども、戦災復興のそのような計画があったかどうか私は知りません。恐らくなかったのではなかろうか。あれば今のような苦労はないはずであります。  それからまた、東北・上越新幹線は既に大赤字を生じているわけであります。大赤字の上に上野―東京間の便利のために、確かに仙台市長や宮城県知事はそれを主張いたします。しかし、そのために上野―東京間にさらに納税者に負担をかけるということは、私は余り意味のないことではないか。これは政治がお決めになることですから、納税者に負担をかけると言われればそれまでのお話でございますけれども、私は一人の納税者としては反対でございます。
  86. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 角本先生は実際に国鉄なり運輸省の行政官として相当責任ある地位におられたし、我々の先輩としてはそれなりに尊敬をしておる。特に、私は国鉄の乗務員ですから、乗務員から見た安全問題などについては格段の論文を発表されておる。そういう点では敬意を表しておるわけでありますが、今いみじくも瀬谷先生の答弁に、総裁がノーならノー、イエスならイエスという態度表明がなかったから今日の国鉄になったんだ、こういう意味のことを言われたんですが、私が知っている総裁の中では、石田禮助さんは、政府が何を言おうと国鉄のためにはレールに寝るときは寝ると言って頑張った方であります。  そういう点から見ると、総裁に言うべきときに言うだけの機構と権限を与えなかったのが最も今日の国鉄にしてしまった最大の原因ではないか。それが歴代自民党政治の最大の私は欠陥じゃないか。この原点を忘れてしまうとどんな分割民営論もまた宙に浮いてしまう、こう思うんですが、あなたが行政官の一人として、あるいは現在の交通評論家の一人としてこの視点について、社会党の我々が言うことが誤りかどうか、ひとつ簡潔に御見解を聞かせてもらいたい、こう思うんです。
  87. 角本良平

    参考人角本良平君) 大変難しいお尋ねでございますけれども、私は石田禮助さんに直接使われました。また御家庭の様子もいろいろ伺っております。石田さんは我々が言ってほしいことをはっきり言ってくださった。これは昭和二十四年以来別に法律の改正も政令の改正もございません。石田さんが言えて他の総裁が言えない理由はございません。ですからこれは権限とか機構の問題ではなくて、人間の問題でございます。私は石田さん御夫婦の人間性がそこにはっきりあらわれている。奥様は先年なくなられました。石田さんはもっと先になくなられました。この立派な方々であったからあれだけの御発言ができたかと思いますけれども組織とか権限の問題とは全く別であります。  私は、歴代総裁が、例えば青函にしてもこのように赤字になるというような見通しをはっきり言われるべきであった。あるいはまた、石油危機があった直後に見通しは当然変わるべきであった。ところが、昭和四十五年ごろに立てた幾つかの事業計画について、石油危機があったにもかかわらず、しかも貨物輸送は四十五年をピークにして減少しております。石油危機の前から減少しているんです。それからまた、旅客昭和四十九年をピークにして減少しているんです。青函トンネルに対しまして、残念ながらドーバーの方はそのときに工事を中止したんです。そのようなことをなぜ歴代の総裁がしなかったのか、私は大変残念に思っております。  そこで言うべきことを言うような体制分割民営化いたしましても、今御質問がありましたような危険は、適切な人を選ばなければ私は当然起こる。安易に自分の任期だけ事なかれ主義に過ごすような人を任命されれば同じことは起こる。ただしかしながら、今度は従業員に給料を払えないという問題が必ず起こる。そういう体制にすればよいと思います。大井川鉄道にしろ、すぐれた私鉄経営の場合にも、その点が労使ともに自分の給料は自分で稼ぎ出しているという意識が私は非常に強いんじゃないか。  亡くなられた小田急の安藤楢六さん、私はあの方にたびたびお話を伺いました。新年には各現場へ社長と会長が手分けをしてあいさつに行く、従業員の労をねぎらいに行くと。そういうお話を聞きますと、そういう組織をつくるべきであり、それができるような責任者をぜひとも皆さんで任命していただきたい、こう考えます。
  88. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 今までの参考人などで、監理委員長も含めて分割論の問題で具体的に触れた方はなかったんですが、私はこの前亀井委員長に、例えば常磐線は監理委員会が言うにはどういうふうになるんですか、常磐線の運営と経営。  あなたはいみじくも、これは言葉の端かどうか知りませんが、あなたが住んでおる千葉鉄道管理局、これを分割分離を受理すれば経営が成り立つんじゃないか、こう具体的に触れました。あそこには成田新幹線の問題、京成との関係、成田空港のアクセスの問題、いろいろな問題がやられておるんですが、あなたが仮にあの会社を受けなさいと言われたら現在の従業員の何%程度人を切って、運賃はどうで、京成との競合関係についてトラブルが起きないようにきちっとやれる見通しなり試算があって例えば千葉管理局と、こういうふうに言われたのか。そういう一定の経営分析で触れられたのか。ただ頭の中で、例えば全国二十八管理局というのであればこうとか、こういうふうに触れられたのか、ちょっとお伺いしたい。  というのは、今回亀井委員会はいろいろ否定しておりますが、私は仙台です、仙台の東北新幹線と山手線と千葉と、それからこちらの盛岡、青森、秋田、これを含めて東北新幹線ブロックの民間会社にする、こういう発想の提言がありました。ありましたけれども、私は、山手線でもうかる金を仮に内部調整で秋田とか山形とか盛岡とか青森にぶち込んでも果たして東日本地区が民営分割でうまくいくんだろうか。そういうものについで私は私なりに自信がありません。  私鉄の話が出ましたが、今、名鉄は東北の私鉄に大分手を伸ばしております。伸ばしておりますが、伸ばされた宮城交通は、どんどん名鉄資本のために路線を切れ、あるいは人員を削減せいと、そういう名鉄の資本の命令で宮城交通は今じりじり絞られている。あるいは岩手、秋田、山形も有名な小佐野さんの会社が株主でありまして、東北の各バスはじゃんじゃん路線の廃止と首切りが強要される。そうやらなければ小佐野さんは東北の私鉄から撤退する、そういう、私鉄並み私鉄並みと言われながら非常に苦しい現状にあるわけですね。  そういう点から考えますと、あなたがいみじくも千葉は任せろと言ったことがどういう分析、根拠で、どういう見通しで触れられたのか、単なる思いつきか、その辺を聞かしてもらいたいな、こう思うんです。
  89. 角本良平

    参考人角本良平君) 今私は千葉県に住んでおりまして事情を眺めております。私が千葉管理局をと言いました意味は、実は常磐線は含まないで総武線から南の方を考えればこれは非常にまとまりのいい地域になっております。それから、常磐線でも仮に千葉管理局の管内だけであればこれは私は非常にいい地域だ、いいところです。ですから、その意味で私は、千葉管理局の中は今お認めのとおり非常にいいところであります。いいところですから当然できる。国鉄の営業係数でも総武線は一〇〇を割っておる。常磐線は水戸から北まで含みますから係数が悪いというだけであります。総武本線とそれから南の方へおりる線路は、これは総武本線ももちろん南の方へ回る線路も経営合理化はもちろん必要であります。しかしながら、今後需要の伸びがまだ見込めるかどうか。これは最近東京付近の国電はほとんど伸びておりません。しかしながら、現状旅客数は確保できるだろうという前提合理化を進めれば全体として十分自立採算できる、私はそう考えております。  それから、京成と総武との関連は、新しい湾岸鉄道がどのような影響をもたらすかという問題は京成にとって若干の悪影響は及ぶ。しかしながら、その部分を除きますと、本当は京成の沿線も私はもっと発達していいんじゃないか。そのためのただ一つの条件は、京成の高砂から東の方へ延びる新線を早くつくってやる。せっかく青砥―高砂間の複々線化ができてきているわけですからそれを生かすようにしてやる。これには国の若干の補助が必要でございます。しかしながら、それができますと、国鉄との競合というよりも、ネットワークが千葉県として整備されるという形でお互いに助け合う面も出てくるのではなかろうかというふうに考えております。もちろん私には資料が与えられませんので、詳細にこのような意味でということは申し上げられません。しかしながら、長年の経験から見まして、地域を眺め、旅客の混雑を見れば、私は成り立たなかったらおかしい地域だ、そう考えております。
  90. 小柳勇

    小柳勇君 私は、兵藤参考人高梨参考人質問いたします。時間がわずかしかございませんので、一緒に質問だけいたしますが、兵藤先生にはシビルミニマムで、ローカル線の問題で質問いたします。  それは、今ローカル線の廃止の方向にありますが、地域の皆さん、大変大きな騒動であります。特に九州、北海道、あるいは四国、あるいは山村など。したがいまして、我が党としては、一応知事でこれを凍結をして、五カ年ぐらいの時限立法で、自治体を中心にしてその地域の整備を見直そう、五カ年間時間をかしてくれないか、その上で、もう要らないものはそれはその地方の皆さんの意思でこれの廃止もやむを得ぬであろうということを一応提案をいたしています。そこで、我が党でも今お願いしておりますが、例えばそのローカル線があることによってその地域は一体どういう経済的な効果を受けているか。特に産炭地域などはかって石炭輸送列車でありました。だから石炭輸送をしないからこれを廃止せいという、そういう短絡の意見がありますが、その地域では、その線を中心に住宅団地をつくったりいろいろ計画があるわけですね。それらの市議会などは大きな落胆といいましょうか、そういうところであります。  したがいまして、角本さんは、利用者は五%ぐらいしかないからこの際もう切ってしまえという意見でありますが、私は、利用者の側に立ってもう少しある線を利用する方向で、例えば駅を余計つくるとか、あるいは昔のように市町村の一つの玄関口にするとか、知恵を出すべきである。今並行線でバスが走っているところでも四千名なり八千名以下の客が乗っているということは、それだけ必要なんで動いているわけでありますね。したがって、その線があることによってその地域の経済的な値打ち、ただ運賃収入だけで論議しないで、その値打ちを考えなきゃならぬということと、老若男女のマイカーを運転できないような人の足を守るためには、ただ資本的に、もうけ、損だけではなくて、そういう側からの論議が必要であろうと思います。それが兵藤先生への質問です。  以下、高梨先生に対しましては、経営形態の問題で、特殊会社に、こういう発言がございました。我が党としては、政府全額出資の特殊法人を提案しておりますが、特殊法人には大変幅が広うありまして、今九十九ぐらいございます。どういうところが一番いいか今迷っておりますから、長期債務の返還とも絡みまして、先生が考えておられる会社、特別な株式会社というものはどういうものであるか、お教え願いたいと思います。  以上です。
  91. 兵藤釗

    参考人兵藤釗君) 今小柳先生からお尋ねの件でありますが、先ほども申し上げたことでありますけれども、私は、いろいろな地域によってどれくらいのニーズがあるかということは当然に違うわけでありますが、先生もおっしゃいましたように、老人であるとか等々の交通弱者、それから通勤通学等で鉄道利用を必要としている人々というふうな方々が当然に存在するわけでありますから、そういう地域のニーズを充足していくような方向でこの問題を考えなければならぬのではないかというふうに思っているわけであります。  もちろんすべてが保障されれば一番いいにこしたことはありませんが、それは国全体として、赤字が仮にそういうところで出るとすれば、それに対してどういうふうな負担をしなければならぬかというふうなことがありますから、どういう線を残すべきかというふうなことについては議論の余地はあるわけでありますが、考え方の問題として、ある一定の社会として見た場合にこういうニーズは満たしていくことが必要ではないかというふうな部分については、国としてといいましょうか、あるいは社会としてそれを見ていくというふうな考え方の中で、地方交通線というふうなものをどういうふうにしていくかということを考えていかなければならぬのではないかと思うわけであります。  その際に、恐らく、地域からすれば、いやこういう鉄道は残してもらいたい、こういうふうなニーズがあるわけでありましょうが、地域によってニーズの高さというふうなものもいろいろであり得るというふうなこともあるわけでありますから、ある一定の社会的に見て必須だと思われた部分以上の部分については、それぞれの地域が第三セクターなりあるいは契約方式なり、何らかの形で地域としての負担というふうなものを導入するということもまた必要なことかと思いますが、第一前提の問題として、ナショナルに見て最低限これは保障しなければならぬということについては国として責任を持っていただきたい、こういうふうな考え方でおるわけであります。
  92. 高梨昌

    参考人高梨昌君) 私、先ほど国鉄経営形態の見直しについて簡単にしか申し上げませんでしたけれども、私が国鉄について、限りなく民営の公益事業に近い特殊株式会社、この中身は言ってみますれば半官半民形態でございます。従来のような政府直営事業形態、戦前からそうでありますが、戦後公社に変わってもそういうような経営体質経営され続けてきたことが最大の問題でありますけれども、その際、私が先ほど申しましたように、鉄道事業というのは経済財であって、そこに費用を投下した分でどれだけ収益が上がったか、もしくは損失を出したかを経済的に測定できるということでございます。  したがいまして、新会社については少なくとも独立採算制の原則を堅持する、それから、民営の私企業に見習った企業会計原則を採用する、こういう二つの点は経営原則にしなければならないということであります。その限りで私企業的だということであります。  しばしば、収益、利潤を上げるというと民間企業だけといいますけれども現行の公社形態の中でもそういうような利潤を上げることが至上命題になっております。例えば借入金に対する利子負担等々ございますように。そういうようなことで公社形態でも私企業的な原則が入っているわけですが、それが生かされてこなかったのが現実でございます。それを生かすためにはどうしても民間資本参加、とりわけ民間から経営人を送り込むことが最大必要だということであります。したがいまして、それぞれ新会社へ旧社の国鉄が持っている株式を売却した後には、当然民間資本参加になりますから、経営人の中に当然民間出身者が入るということが前提であります。  従来のキャリアシステム、これは全面的に解消させなければならない。ただし、この会社が純粋の民営の公益事業になることは私は望ましくないと考えます。といいますのは、先ほどから出されておりますように、地方交通線の問題にしましても、それからまた、それぞれの地域の均衡ある発展という国のまさに経済計画の基本にかかわることですけれども、これらの福祉政策なり地域開発政策なり社会政策、こういうことを政府が実行するための受け皿として国鉄経営は十分に活用できる余地があるということであります。  今まではそれらの政策の肩がわりを国鉄内部補助に求めてまいりましたけれども、それらの内部補助は今日では全く不可能であります。従来から、高収益を上げた事業分野から収益の上がらない事業分野に内部補助制度機能していたわけでありますけれども、今日、内部補助制度が行き詰まり、機能しなかったからこそ国鉄経営再建問題が大変重要な政治課題になったと私は思います。したがいまして、その内部補助に期待することができない。これについては、それぞれの負担を新会社に強制した場合にはその損失分を国なり地方自治体は補てんする義務を負う必要がある、この前提がない限り新会社は経営できない、こういうことであります。  それからもう一つ、新社についてもさまざまな設備投資その他についての必要が発生いたします。鉄道事業というのは大変膨大な固定資産投資を必要といたしますから、その結果膨大な長期借入金、これに伴う利子負担がございます。そのために政府は借入金に対する債務保証、それから若干の利子補給、これを政府は新会社にも同時にする必要があるのではないか。こういうような点を考えますと、民営の公益事業形態では不適切であります。それは特別に民間企業政府が助成することになりますから、それはむしろ半官半民的な経営だからこそこのような新会社に期待ができる。  こういうことで、政府所有と、それから民間所有と、このシェアについてはそれぞれ新会社の事業分野によって異なるでしょうけれども、一例を挙げますれば、日本航空の政府出資分は今日三〇%、発足当初はもっとシェアが高かったわけですが、大蔵大臣が株式を所有している。こういうようなことで国鉄についても政府出資分のシェアは事業分野によって変わるでしょうけれども、少なくとも出資金については民間資本参加の方をふやす必要があるのではないだろうか、こういうように考える次第でございます。
  93. 小柳勇

    小柳勇君 ありがとうございました。    〔委員長退席、理事矢原秀男君着席〕
  94. 高平公友

    ○高平公友君 実は私、議運の理事会がちょうど同じ時間に始まりまして、せっかく先生方の貴重な意見をぜひお聞きしてと思っておりましたが、まことに残念に思いますけれども、しかしこれは速記等で後で勉強させてもらいたいと思いますが、これから極めて素朴な質問でありますけれども、若干ひとつ先生方に教えていただきたいと思う次第であります。  まず第一に、角本先生と吉田先生にお願いしたいわけであります。これは二点実は御質問申し上げますので、さきの先生と同じようなことであれば同じで結構でありますが、お聞かせいただきたい。  まずその第一点は、国鉄経営が今日の厳しい局面、破綻と言われておりますけれども、その原因について、過大な設備投資を余儀なくされるなど、国民の甘えと政治の介入があって、国鉄責任ではないという意見があるわけでありますが、これはどのように両先生お考えになるかお聞かせいただきたい。  それから第二番目には、国鉄の今日に至った原因は、考えてみますと、効率的な経営形態を確立し、組織活性化を図ることが不可欠であるというふうに言われておるわけであります。一体そのためには具体的にどのような対策、抜本策を講ずべきであるか。これはなかなか厄介で難しい問題だと思いますが、我々にわかりやすい項目で簡単でいいわけでありますけれども、両先生の御意見をお聞き申し上げたいと思います。
  95. 角本良平

    参考人角本良平君) 第二番目の点が私ちょっとよく理解できませんでしたので、あるいは間違うかもしれません。  まず第一の、国鉄の破綻が政治だけの責任であるかということにつきましては、私はもちろん率直に申し上げて政治の責任は大きいと思います。しかし、それ以上に労使責任が大きいと思います。先ほど私鉄並みということについてもっと調べろという御意見がございました。まさにそのとおりでありますけれども、しかし、国鉄が、例えば列車に乗りまして、私鉄に乗った程度に車掌が親切であったならお客はもっと減らないで済んだであろうということも言えるでしょうし、これは実際に乗客として我々が日常経験していることでございます。もちろん御意見の違いはあると思いますけれども、私の意見を申し上げます。  政治の責任のほかに、国鉄が需要を過大に見込む間違いをしてきた、それからまた職場の管理を徹底できなかった、こういった責任が当然経営者の側にあったと思います。    〔理事矢原秀男君退席、委員長着席〕 少なくとも経営者は自分の見通しをはっきり言うべきであったし、また不可能なことを引き受けて可能であるかのごとくに言うということについての責任を負うべきであり、もっと事情を明確に国民に示すべきであったと私は考えております。  第二点につきましては、現在の予算制度のもとで、全国一律の管理の中ではとても組織活性化はできないと考えております。
  96. 吉田忠雄

    参考人吉田忠雄君) 第一の国鉄の今日に至った責任でありますが、私はとりわけ一つだけに要約することはいけないと思うのであります。いろいろな原因がふくそうしておりまして、私は、政治の責任も大きい、けれども人為的な労使双方の責任も極めて大きいと思います。特に、労使の双方の責任について、ではどちらにより多くの責任があるのか、こう言われた場合に、私は単純に言うこともできないと思います。手をたたいてどちらが音を発したかという質問と同じであります。労働組合は経営者の鏡であります。私は、経営者経営者として力量を発揮しなかったからこそそうしたすきでさまざまな労働組合側にも問題があった。  そして、額に汗して働くということが、私は国鉄人一人一人には立派な方が多かったと思いますが、働かないことが労働組合運動だとうそぶいた、そのような時代があった。このことは、私は、組合はもちろん問題でありますけれども、そうしたことを改めなかった、そして今日の事態に陥れられてしまった経営側責任はより大きなものがあろうと思います、少なくとも経営者には権限やその他がありましたので。そうした点で私はどちらが原因かということは申し上げたくないのであります。  このように、今日国鉄が至ったもの、国民総ざんげとは思いません。今、経営形態を直して政治の姿勢を直そうじゃないかという動きが国会で上程されております。ぜひ政治の姿勢を直して、そして同時に国鉄労使双方に、国鉄再建のため、そのことが働く人々の雇用を守るということで納得していただいて協力いただく、そうした方向へ導いていっていただきたい。私はそのきっかけになるものは政治だと思います。悪い原因が政治だけだとは申しませんが、よくなるきっかけは政治であります。そこで決断すべきときに決断をしていただきたい。これが私の第一の御質問に対する回答であります。  第二点、どのようにして抜本的な対策ができるかということでありますが、私はまず提案申し上げたい点は、国鉄内部で目安箱をやってみたらどうかと思うんです。どこを改めたら国鉄活性化するか具体的に案を出してほしい、どこに不満があるのかということであります。私はこれは比較的簡単に出ると思うんです。出てきて採用するもの、採用しないものあろうかと思いますが、大きな欠陥、案外国鉄人の中で、身の回りの改革を進めながら大きなものを持っていく、政治の場で同時にまたそれに協力していく、私は、そうした中で国鉄活性化するかなめは、まず、最初の陳述の中で多能職化ということ、多能効果と申し上げてもよろしいと思いますが、多能職化とそれから提案制度、この二つを申し上げたのであります。
  97. 高平公友

    ○高平公友君 引き続いて高梨先生に御質問申し上げますけれども、さきの一月に国鉄が公表しました再建案は、基本的に、分権管理のもとでの全国一体の特殊会社方式を選択しております。分権化すれば全国一本でもよいという意見があるが、分権化と分割との長所、短所、どのようにお考えになっておるか、お聞かせいただきたいと思います。  私は、分権管理方式の具体的内容は明らかにはされておりませんけれども運賃、賃金等の経営の基本事項が中央本社で決定されることが予想されまして、鉄道事業が本来地域性という側面を持っておることから見ましても、管理能力を超えることによる弊害全国画一的運営による弊害、合理的範囲を超えた内部補助による弊害をなかなか除去し得ない、そういうぐあいに考えるわけでありますけれども、申し上げましたことに対するお答えをいただきたいと思います。
  98. 高梨昌

    参考人高梨昌君) お答えいたします。  私は先ほど分権管理ということを申し上げましたが、企業地域分割については反対の意見を申し述べた次第でございますけれども地域企業分割は、先ほど言いましたように、国鉄事業というものは全国ネットワークで鉄道がつながっていることにこそまさにメリットがあるわけで、線路を地域別にずたずたに切ったのではその効率を発揮できないということです。  ですから、私が言いました路線事業部というのは、要するに線路は全国が一本につながっていることを前提にして、これは集権化でございます。それから地域事業部というのは、その路線に運転とか保守とかのサービスを提供するわけですから、これはそれぞれ地域ごとの分権管理、この両者のマトリックスで鉄道事業効率経営化を考える、こういう意見でございます。もちろん、管理の適正規模についてはさまざまな御意見がございますし、適正規模論も、経済学者の中で何が適正規模かといってもそううまい理屈があるわけじゃございません。それぞれの経営体ごとの試行錯誤で適正規模が選択されているのが実態だと私は考えます。  ただ、それにしましても、国鉄職員現在三十二万人体制ですけれども、これほどの巨大経営体を統一的また効率的に管理することは管理の適正規模を超えていることは間違いないわけであります。したがって、できるだけそれぞれの管理者が管理できる範囲規模まで縮小しなければならない、こういうことの必要性をもっとも私は否定しているわけではございません。それじゃその管理のスパンをどういうような仕組みで変えるかというときに、この地域事業部は今の鉄道管理局単位でありますから、かなり小規模単位になります。それぞれ鉄道地域サービスというのは、ガス会社や水道会社と同じようにそれぞれ地域に根っこを張って初めて経営が成り立つ、それと同じように鉄道もそういう側面を持っておりますから、それぞれ地域事業部ごとにそれなりの地域サービスもそこで考える、こういうことであります。そうすればそれなりの管理のスパンは小さくなる。  もう一方では、全国鉄道網を保持して、それを統一的、集権的に管理していく、これが路線事業部でありますが、もちろん路線事業部も幾つか複数存在することが私は望ましいと思います。その際、先ほどから強調していますように、今日日本の交通市場というのは大変競争的になりました。国鉄競争相手というのは飛行機とそれから自動車輸送、これは貨物と乗用車でありますけれども、これといかにして対等の競争条件をつくるか。現状は余りにも国鉄事業競争力は低過ぎるわけでありますから、これを回復するためには全国ネットワークを持たなければ回復できない。航空路にしても道路網にしても全国ネットワークでありますから、それと競争する土俵を同じにそろえる、そのための事業部が路線事業部だ、こういうことでございます。  それからまた、鉄道事業については鉄道斜陽化論がございますけれども、私は日本の国土に最も適した輸送手段は鉄道だと考えております。とりわけ新幹線鉄道というものは、先ほどからいろいろ御意見もございますけれども、これから高速鉄道の幕あけ時代でございますので、新幹線鉄道以外にも、在来幹線のスピードアップは避けられない鉄道に課せられた使命だと考えます。そういうことを通じながらかなり人なり物の移動範囲、また移動に要する時間を大きく短縮できる、こういうことであります。  経済学の言葉を使えば、その時間の持っている経済的価値というのは大変今高うございますから、これに十分こたえられるのが私は鉄道だろうと考えます。鉄道はとりわけ高速であり、大量輸送需要にたえ、しかも安全性が高く正確性が高い、こういう日本の鉄道の、とりわけ国鉄の特性がございます。これは国鉄職員がそれだけ有能で生まじめに働いている。一部には若干問題のある方々もおられるようでありますけれども、私は大勢はそうでないと思っております。これら有能な人材を活用できる経営システムになっていなかったことこそが最大の問題だと私は考えますので、以上のように申し上げたいと思います。
  99. 高平公友

    ○高平公友君 それでは引き続きまして角本参考人高梨参考人に御質問申し上げますけれども国鉄長期債務ですね、年金負担、それから大規模プロジェクト資本金負担など含めまして約三十五兆円といわれております。国鉄事業再建を図るためにはこれをやっぱり適切に処理しなければならない。これがありますと意欲もわかぬでしょうし、これは大きな障害になると思いますが、具体的にこれはどのように処理すべきであるか、このことについて両先生からひとつ考えておいでになることをこの際お聞かせいただきたいと思います。
  100. 角本良平

    参考人角本良平君) 今御質問の点は、私が最初に陳述しました最後の方で一言申し上げたことですが、長期債務が二十兆円を超えるという段階に来ておりまして、この長期債務を全額新しい組織に移しかえるということはこれは明らかに不可能である。それでは新しい組織が生きるところも生きなくなると考えます。  しかしながら、全額納税者に負担させるべきかということになりますと、過去において投資をしましてそのために借金をした、その投資が利益を上げておる、少なくとも金利は払えるというような部分もあると思います。そのような部分につきましてはと言いますか、一括して言えば、収益力のある施設に対する投資につきましては、その負債は当然新しい分割された企業に移すというふうに考え、そして残った分は、過去において国民が、あるいは利用者が安い運賃利用して赤字を生じたのだから将来の納税者が残念ながら負担をする、こういうふうに考えたらどうか。それが半々であるのか四分六であるのか、これは私たちに残念ながら資料がございませんので、これは専門の機関検討していただく。ただ、ルールはそのように考えたらどうか、年金の負担も含めてそのように考えたらどうか、こう考えております。
  101. 高梨昌

    参考人高梨昌君) 先ほどその問題について私申し上げましたが、また補足的に申し上げます。  詳しいことは実は、昨日発売になりました毎日新聞社のエコノミスト誌に今の累積債務処理の問題も触れておりますので、細かい点はこちらを御参考いただきたいのですが、私が先ほど申しました経営形態の見直しの中で、半官半民的な経営形態提言しました一つの根拠が、この長期累積債務処理の方策にかかわることであります。現在の長期累積債務は、新社にはそのまま移さずに旧社である国鉄が保有する、国鉄は現有の固定資産がございますから、固定資産を価格換算して株式で保有する、こういうことでございます。それで、それぞれ新会社の経営収益の回復に応じてその株式を放出して、いわゆる創業者利得をそこで得るということであります。  現在国鉄の固定資産は帳簿価格上十一兆円ございます。それを資産再評価しますと大体三十兆円と見込まれております。この資本規模をどのくらいに算定するかによって、株式売却に伴う創業者利得の金額は当然変動してきますけれども、ある程度の部分はこの株式の民間企業への放出によって累積債務の返還財源に充当することが可能でないか、こう考えるわけでございます。もちろんこれによっても全額が到底返済できるとは思いません。それ以外の長期累積債務の中にあります特定人件費につきましては、特に特定年金、特定退職金、これは退職者が六十年度をピークにそれ以後減りますから、特定退職金の分はそれほど負担がふえませんけれども、特定年金の部分はかなりふえてまいります。  ところが、これは前例がございまして、戦前の日本製鉄が戦後八幡、富士等に企業分割される際に、戦前からの日鉄職員の恩給年金負担分は新会社に移行していません。この超過負担分については国庫負担で充当したという前例があります。国鉄につきましては、公社形態に転換するに当たって、旧満鉄職員等の特定年金、特定退職金負担を新会社がしょい込むという全く人のいいことをやってしまったわけですが、このツケが今回っているわけですから、この分の超過負担分は私は政府の国庫負担で充当すべきだと考えます。ただ、その全額を埋めるにも問題がありますので、先ほど、余剰人員対策も含めて、総合交通対策特別会計をつくり、その中に国鉄長期債務の返済、それから余剰人員対策、それから特定人件費の充当、こういうことをこの財源の中から工面したらいかがかというのが私の考えでございます。
  102. 高平公友

    ○高平公友君 それでは引き続きまして吉田参考人兵藤参考人、両先生から御意見を承りたいわけでありますけれども国鉄余剰人員が将来六、七万に上ると言われております。私らの聞いておるのはそういうことでありますけれども、正確をあるいは失しておるかもしれません。しかし、いずれにしましても余剰人員対策というのは大変大切な大きな問題に相なっておるわけであります。現在国鉄が進めているいわゆる三本柱の余剰人員対策をどう評価しておいでになりますか。このことが一点であります。  二番目に、今後の余剰人員対策としてどのような方策が有効であるか、どのようなものが有効であるとお考えになりますか、このことについてお聞かせいただきたいと思います。
  103. 吉田忠雄

    参考人吉田忠雄君) 極めて重要な御質問でございまして、軽々に答えるのは大変難しいのでありますが、ただ、現在国鉄余剰人員対策としていろいろ苦心されておりますが、私は大変懸念していることがあるのであります。基本的には悪くないようでありますけれども、それはよい人が流れていって、悪い人というと残った人に大変失礼でありますが、そういう意味ではございませんけれども、非常にすぐれた人だけが出ていくという傾向が生まれがちであります。ですから、行く人も残る人も、すぐれた方々が多いのでありますけれども、特に国鉄で特別必要な人だけがよそへ行くようなことのないような配慮、つまり、国鉄に希望があればそうしたことはないのでありますので、簡単に頭数だけ整理することは大変危険だと思うのであります。この点が比較的安易になされていないかどうかということであります。  そうしますと、結局はどのような対策が今後望ましいかということであります。私は、国鉄余剰人員、自分が余剰だと言われるだけでも大変憤慨すると思うのであります。一生国鉄に勤めようと思って、今日の事態になりまして、私は本人たちの責任よりも、もしも、残念ながらしばらく交代せざるを得ないというときに、温かな気持ちで送っていく。そのために、私はこれ極めて重要だと思うのでありますが、例えば今まで考えられていないことの一つ、あるいはわずかながらいろいろ言われておりますが、地方公共団体職員を採用する場合に、国鉄の方々が少しでも採用される。幸い国鉄の場合には全国に網羅されておりますので、こうしたことに吸収されることも私は大変効果を上げるのではないかと思うのであります。もちろん、地方公共団体だけではなしに、国鉄の方々は有能な人々が多いのでありますので、そうした温かな配慮を進めていって、少なくとも路頭に迷うような人員対策をやってはならないと思います。  あるいは、炭鉱の場合にやりましたようないろいろな離職者対策、就職のあっせんだけではなしに、いろいろな、お金を出して生活を守るとか、こういう方法が必要だと思うのであります。  以上であります。
  104. 兵藤釗

    参考人兵藤釗君) 私が最初に申し上げたいことは、今後効率化を図っていく上で余剰人員が出るということは当然にあり得ると思っております。その際にどういうふうなことでいかなくちゃならぬかということを考えてみますと、民間企業の場合にも例えば鉄鋼会社などの事例を聞いてみますと、例えば高炉を落とすという場合に、自然退職者がどれくらいいるかとか、そういうことも踏まえながら設備合理化の柱の方向を考えるというふうなやり方をとっていらっしゃるところもかなりあるやに私は伺っておるわけであります。  国鉄の場合には、先ほど来御議論になっておりますように、国鉄経営というふうなことが政府の施策といいましょうか、国策の中でやられてきたというふうなことがある。それで今日非常に破局に陥る中で冗員が出るということでありますから、そういう処理の仕方について、私は心の通ったあり方が第一に望まれなければならぬのではないか、こういうふうに思っているわけであります。  現に問題になっております三項目について、私は余り細かなところまで存じませんが、例えば最近公労委から出ましたような退職に関する問題というふうなものについて言えば、当然にやはりそれは私はベースアップ分というふうなものが保障されるというふうな形でやられるべきであろうというふうに考えておりますが、一時帰休、出向というふうなものについて考えれば、基本的には、一つは本人の意向ということが尊重されるべきだというふうに思っておることと、いま一つは、先ほど申し上げたことにかかわるわけでありますが、一時帰休なり出向なりをした方々がそこになれなくて突然路頭に迷うというふうなことになるということは、やはりそこに働いている人々の権利ということも考えながら私は対処していただきたい、こういうふうに思っておるわけであります。  長期的に考えた場合に一つの問題は、先ほどもお触れになった方がございましたが、関連事業領域の拡大というふうな方向で対処し得る道があり得るかと思うわけであります。関連事業領域の問題は、単に冗員対策というよりも、国鉄が公共性を果たしていく上での一つの、何といいましょうか、経費の調達源というふうな意味もございますが、国鉄に働いている方々の生活の道を立てていくという意味でも非常に大きな意味があり得るのではないかというふうに思っております。
  105. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 どうも御苦労さまでございます。  ではまず角本先生にお伺いをしたいわけでございますが、きょうは午前中亀井国鉄再建監理委員長に来ていただきまして、質疑を重ねておったわけでございます。その中で、再建監理委員会としては分割民営化ということを頭に置いて進めておられるようでございます。新聞やいろいろの報道では、七分割にするのではないか、こういうことが多く流れているわけでございますけれども角本先生の場合、分割民営化の方向のお考えだと伺っているわけでございますけれども分割の場合、七つの分け方がいいのか六つの分け方がいいのか、まあいろいろあると思うんですけれども角本先生は、もし分割される場合であればいかような形態がいいのか、この点を伺いたいと思います。
  106. 角本良平

    参考人角本良平君) 今お尋ねの点は、基本の一番大事な事柄だと思います。  七分割がどういう根拠で出てきたのか私は知りませんけれども、臨調の段階でも七分割という話はあったと思います。三つの島と本州を四つに分ける。私がかつて国鉄におりまして、昔の鉄道局というような範囲考えますと、七つが適当であるかどうか、もう少し数をふやしても私は一つの案が成り立つであろう。私個人の考えからいきますと、もう少し小さく分けた地域もつくって、単位をふやしても規模を小さくした方がやりやすくないか、そう考えております。  これは東京とか九州に勤務した経験から、先ほども申しましたけれども、例えば北陸三県は別にしても成り立つまとまりではないか。ただ、その場合に、輸送の流れとして一つのまとまりを持つか、あるいは歴史的に一つ地域、風土が同じであるという意味でまとまりを持つか、いずれにしてもまとまりを持った、何らかの原理を持った分割でなければいけない、そう考えております。したがって、数につきましては少なくとも七つはなければいけませんし、それ以上でも、私はむしろその方がよいのではないかと考えております。
  107. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 先生は論文の中でも、自動車、航空機の現時代において、分割民営化という中で鉄道輸送のコストを安くし、サービスの質をよくすることが国鉄労使にとっても仕事量を最大に残していく道である、それが国民全体のためでもあるということでお話をされていらっしゃるところもあります。そういう中で、要員計画の中で余剰人員というものがどうなのかという論議が常に出てくるわけでございますけれども、仮に分割されたときに、最終的な理想的な人員というものは、トータルとしてどのぐらいの人数が最適なのか、こういうことを伺いたいと思います。
  108. 角本良平

    参考人角本良平君) 残念ながら、今の御質問に対しましては、十五年前でございましたら私これくらいの数字というお答えはできたと思いますけれども、現在私たちに与えられております資料は、ここに持ってまいりました監査報告書程度でございまして、どれくらいの数字が適当かは申し上げられません。残念ながら、申し上げるだけの研究が私たちにはできません。しかしながら、最近ローカル線が民間経営に移り、あるいは第三セクターに移りという実績を見ますと、かなり少ない人数でできるのではないか。それからまた、そのことは貨物輸送をどの程度整理するかということとも関連しております。  しかしながら、同時に私は、今全世界的に交通にとりまして最大の問題がセキュリティーの問題であります。実は、私先日ミラノで一等車に乗りましたときに、私たち夫婦が暴力すりに襲われました。で、もみ合ってるうちにだれかが通報してくれて助かったわけでありますけれども、東京あるいは大阪を中心にしまして、安全がだんだん脅かされてくるという問題もあわせて考慮しておかねばいけない。したがいまして、人員の問題は地域による特性、それから社会の世相、そうしたこともあわせて考えていただきたい、こう思っております。
  109. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 先生は、かつて「ジュリスト」の総合特集の論文の中で、X非効率の作用というものを非常に重要視されているわけでございます。その問題についての評価と、それからもう一点は外部条件の変化国鉄、私鉄の対応の差というものもデータを取り上げられて論評をされていらっしゃいます。この二点について先生のお考えを伺いたいと思います。
  110. 角本良平

    参考人角本良平君) まず、私の論文を見ていただいたことにお礼を申し上げます。  X非効率の問題は、全世界的に公共組織について指摘されていることだと思います。なぜそうなるのかと言えば、一言で言えば、自分が働かなくても給料がもらえる、我が国の言葉では要するに親方日の丸ということになろうかと思います。その親方日の丸というような中で、今最後の方で言われた国鉄、私鉄との比較の問題も出てくるかと思います。例えば私鉄が運賃値上げを必要とする。これは電力会社でもそうでございますが、従業員がその必要性を周りの人に説得する努力をするのが私は普通ではなかろうか。少なくとも反対をするということは、表立って反対をするということは普通はないはずであります。それは自分の給料は自分たちで稼ぎ出さなければいけないという意識がしっかり根づいているからでございます。  それから、同じような事例は、私鉄だけではなしに、例えばトラック会社においても非常にはっきりしていると思います。もちろん例外もあると思いますが、大きなあるトラック会社の場合、他のトラック会社と比べて給与水準が高くて、ある地域におきまして競争力がなくなった。そのときに、競争力がなくなって仕事が減って、結局職場の人数が減るよりも給料を下げてもよいから仕事量をふやそうと、これが労働組合の方からそういうふうな方向づけがなされたという話であります。私は、そこのところが今後の国鉄経営考えるときの勘どころになるのではなかろうかと考えております。  お答えになったかどうかわかりませんけれども、以上でございます。
  111. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 兵藤先生に質問をいたします。  兵藤先生は、「国鉄再建問題と民主的規制」という論文を出していただいているわけでございますが、一つは、スト権闘争と労使の正常化路線についてお伺いをしたいことが一つ。  それから、時間の関係がございますので御質問を一挙に申し上げますけれども、二番目には、臨調路線は、資本主義経済の活性化のため労使関係あり方を改変しようとするものだとも言われておりますけれども、この点はちょっと御説明をお願いしたいと思います。  三点目に、これ最後でございますが、先生は、人間らしい労働のあり方を追求する視点から、自分たちの労働のあり方、仕事の仕方を追求、点検をしていく運動が必要であると、こういうふうに国鉄のような公共部門における労働運動という観点から論及をされていらっしゃるようでございますけれども、三点ほどお伺いをしてみたいと思います。
  112. 兵藤釗

    参考人兵藤釗君) 国鉄のスト権問題というものはかなり難しい問題でありますが、今日、国鉄が公社形態のもとで破産状態に陥っておるというふうな問題を振り返りました場合に、国鉄の出発そのものが、公共交通というものをどういうふうにするかというふうな観点よりも、むしろ労使関係対策的に公社化をされ、企業経営としての自主性が奪われてきた、こういうふうなことの中で今日的な状態がもたらされておるというふうなことを我々はまず第一に考えておかなければならぬのではないかと思うわけであります。  私は国鉄のような公共的な企業の場合にスト権がどうあるべきかということについては、基本的には、それはやはり労働者がそこに雇われているわけでありますから、労働者としての基本権というふうなものが承認さるべきではないか、こういうふうに思っておるわけであります。私は民営化を主張してはおりませんから、先ほども申し上げましたように、新しい公企業形態というふうなものを追求すべきではないか、こういうふうに申し上げているわけでありますが、その場合にも、公企業であるからといってスト権というふうなものを付与しないというふうな考えでいくことはかえって労使関係を阻害することになるのではないか。今日、これまでも国鉄経営者当事者能力が付与されていないというふうなことが国鉄労使関係にとって大きなマイナスになってきたというふうなことは事実でありますから、そういうふうな点は今後改められることが国鉄の将来的な労使関係あり方にとって非常に重要ではないか、こういうふうに思っているわけであります。  もっとも、この公企業というふうなものは何がしかの政府からの補助というふうなものを必要とするわけで、ローカル線等に代表されるような部分を経営していくためにそういう外部補助が必要になるというふうな点で、完全に国鉄当事者能力を持ち得るというふうなことに関していいますと、私はなおそこにある種の限界はあるとは思いますが、今日よりもはるかに大きな当事者能力を付与する方向において新しい企業形態というふうなものを考えていかなければ労使関係の改善は望みがたいのではないかというふうに思っているわけであります。  それから第二点、臨調が提起しております行政改革、特に国鉄改革とのかかわりで労使関係上どういうふうな問題があるかというふうな点でございますが、私は、これまでの国鉄労使関係の中に改善さるべき点が幾つかあるというふうなことは認めておるわけでありまして、そのことはまず第一にお断りしておかなければなりませんが、私も、先年といいましょうか、昨年出しました私の編著になっております出版物の中でも指摘しておるところでございますが、国鉄労使慣行の中に改善さるべき点が幾つか存在をするというふうなことは事実であります。しかし、なお我々が今日考えておかなければならない問題は、第二臨調の中で提起されてきた行政改革、とりわけて国鉄改革のあり方が、労使関係の面から見た場合に果たしてすべて望ましいものとして考えられるべきものかどうかというふうな点についてはかなり問題がある、こういうふうに私は思っております。  その一つは、例えば、御存じのように現場協議制というふうなものがあって、その現場協議制というふうなものがやみ慣行あるいはやみ手当の発生の温床になっておるから、こういうふうなものについてはそれをなくすべきだ、あるいは形を変えていくべきだというふうなことが提起をされ、また現実にそういう方向で推進をされてまいったわけでありますが、私はやはり、労使が単に本社レベルといいましょうか、あるいは管理局レベルだけで意見交換をし、協議をし、交渉をするというだけではなしに、現実に人々が働いている場所のレベルにおいて協議をし得るような、そういう場というふうなものが保障されることがやはり産業における民主主義のあり方として望ましいのではないかと思うわけであります。  考え方、原則としてそうであるというだけでなしに、国鉄のように北は北海道から南は九州に至るようなかなり広域な地域において労働環境等々も違っておる、そういうふうな条件のもとに置かれたところでは、現場レベルにおいて労使が協議できるような場所というふうなものが保障さるべきではないかというふうに思っているわけでありまして、そういうふうな点では、臨調が提起し、そのもとでなされてきた国鉄における労使関係の改革のあり方はかなり問題を持っておるというふうに思っております。  それからいま一つの点は、例えばいろいろやみ手当等々で問題になってまいりましたが、その中にも、国鉄の予算制度のもとで、過重な労働がなされた場合に適切な報酬を与え得ないというふうな中で、事実はやみ手当というふうな形で、要するに残業手当とかというふうな形で発生をしてまいったわけでありますが、そういうふうな中には、当然に労働の負荷が増大をしたような場合にその報酬として支給さるべきような部分も入っておるというふうなことでありまして、そういうふうな点も労働慣行の改革のあり方の中には幾つか問題が存在をするのではないか、こういうふうに思っているわけであります。  第三の最後の点でございますが、これはこれからの国鉄労使関係あり方にかかわる問題であろうかと思いますが、私は、国鉄に働いている労働者、あるいはその労働組合の立場というふうなものを考えた場合に、一つは、そこで働いている労働者としてそれにふさわしい労働条件あるいは賃金が与えられておるかどうかというふうなことが問題でありますが、さらに、そこで自分たちが働いていくのに非常に働きやすい環境がつくられておるか、あるいはそこに意味のある、仕事に生きがいを感じ得るような仕事が与えられておるかというふうな点で問題とすべき点が幾つかあろうと思っております。  例えば、先ほども問題になっておりましたが、国鉄の中における昇進制度あり方なりあるいは多能工化というふうなことで言われたような問題等について見ますと、私は、国鉄労働者が将来に希望を持って生きる、あるいは仲間の間で助け合っていくというふうな点では、そういうふうなシステムというふうなものは望ましい面があろうかと思いますが、しかしまた、それは労働者としての考え方というふうなものも尊重をしながらやられなければならないわけでありますから、そのシステムのあり方については、そういうものを導入する際には労働組合との協議を通じて行っていくというふうな、そういうシステムのもとで運営さるべきではないかというふうに思っておるわけであります。  そういうふうな形の中で、国鉄労働者も現に私の見る限りはそういう方向に向かってきておると思いますが、自分たちが公共交通を担っておる、そういう意識の中で地域住民との関係を、あるいは利用者との関係というふうなものを改善していき得る道もまた開かれてくるのではないかと思っております。
  113. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 高梨先生にちょっとお伺いをしたいと思います。  私も、先生の鉄道特性を発揮するというこの論文を非常に注意深く読ましていただいたわけなんでございますが、これはいずれの形態になろうとも、今鉄道が持っている特性という立場から見て先生は五点にわたって明らかにされていらっしゃいますけれども、私、論文を読ましていただきながら、本当に感銘深く参考にさせていただいているわけでございます。  この五点の一つは、省エネルギー型輸送手段、二番目には低公害型輸送手段、三番目には専用軌道を走行する鉄道輸送の安全性、第四に緊急事態発生時の輸送機関、第五には開発利益という外部経済効果、この五つの問題、非常に僕は国民経済的な効率性の中から大事な問題だなと痛感をしておりますけれども、この点について高梨先生の御意見をさらに深く伺いたいと思いますけれども、よろしくお願いします。
  114. 高梨昌

    参考人高梨昌君) 私が冒頭にも申し上げましたけども鉄道という輸送手段というものが他の輸送手段に取ってかわられてきたのが日本の現実でございますし、世界もそういう趨勢でございますけれども、今鉄道というものをもう一遍再検討すべきでないか、その再検討する視点として私が鉄道特性、そして何に注目しなければならないか、こういうことで挙げたわけでございます。  まず、鉄道輸送というものは、もちろんある程度輸送密度がなければなりませんけれども、エネルギー消費効率は大変良好な輸送手段でございます。一番エネルギー消費効率の悪いのがマイカーであります。そういうようなことで、今エネルギー対策というのは日本の経済にとって大変基本的な課題でありまして、エネルギー消費効率をいかに高めてエネルギーを節約するか、こういうことでございますので、そのために役に立つ鉄道というものを大いに活用すべきでないか。  もう一つは、鉄道というものは、ディーゼルとかSLの場合には若干問題ありますけれども、それからまた騒音公害というのがありますけれども、少なくとも排気ガス公害においては電車は最も有効な輸送手段だということであります。貨物とかマイカーとか、それから航空機もそうでありますけれども、排ガス公害を伴いがちではございます。それに対して電車というのは大変低公害型の輸送手段だということ、このことも大いに公害対策上活用すべき輸送手段ではないか、こう考えるわけであります。  それから、安全性と正確性の問題でございますけれども、専用軌道を走りますから当然安全な輸送機関である。交通災害というのは大変な大きな社会問題でございます。だから、とりわけ道路輸送が問題でございまして、道路に流出した貨物と人の流動、これをできるだけ安全な輸送機関に呼び戻すべきだということ、そのためには、貨物輸送やマイカーも機動性があって大変快適な輸送手段でございますので、それ以上に快適かつ安全な鉄道輸送というものをもっと見直すべきでないか、こういうことでございます。  それから、緊急事態発生時の問題は、ヨーロッパは主として軍事上の要請でございまして、これは軍事上の要請の場合には電車はだめでございまして、むしろSLですね、蒸気機関車でなければ役立ちませんが、日本の場合にはむしろそういう軍事上の必要よりも、日本の資源というものは専ら海外依存でございますし、原油資源はほとんど依存しておりますから、海外の周辺海域で戦争が起きればこれは輸入が途絶せざるを得ません。国内での石油備蓄にしても限りがありますから、そうなれば自動車は全く輸送手段として役に立たなくなります。その際こそ水力発電と原子力発電を活用して電車を動かして、最低国民が生きていくために必要な生活諸物資の移動と輸送とそれから人の交流、これを電車に依存せざるを得ない。そのためには全国鉄道網のある国鉄というのは、私鉄というのは局地的な輸送市場を充足しているわけですから、国鉄の場合には全国輸送網ですのでそれを十分に私は生かすべきではないか。  それから、最後の開発利益、この外部利益を生むのは鉄道に限りません、道路もそうでございます。それから飛行場もそうでありますけれども、とりわけ鉄道の場合には外部利益というものを多くもたらしますけれども、従来は、それぞれの開発利益につきまして、国鉄関連事業制限が強く働いたために外部に利益が流出してしまう、外部の私的企業の利益に帰属するということが放任されてきたのが残念ながら現状でございます。私鉄経営は多角経営化してできるだけ外部に開発利益が流出しないように内部に留保しようと努めてきました。これが私鉄経営の多角経営化でございまして、ターミナルにはデパート、それからまたそれぞれ沿線各地域には住宅団地その他の住宅建設、不動産経営それからレジャーランド等々の多角経営を目指して、開発利益ができるだけ内部に留保できるように努力してきたところですけれども国鉄の場合にはそれが留保できてきませんでした。  したがって、関連事業活動を大いに活用して多角経営化を図るべきだというのは、できるだけ開発利益が外部に流出せずに鉄道の内部に入るようにすれば、鉄道の収益は、多角経営化して全体の総合収支バランスからいえば黒字になるに違いない、こういうことは十分に私は期待できる。  こういうことで、とりわけ鉄道特性を国鉄に即して申し上げたわけでありますが、なおそれ以外に、国鉄自体のメリットとして私が強調していますのは、全国ネットワークで鉄道がつながっているという、これは土地がつながっていることを意味しますから、今のように情報化革命、情報化社会が到来しつつあるわけですけれども、そこに光ファイバーケーブルを線路の沿線に敷設することは可能でございます。これはノイズと無縁でございますから、今の電電公社が行っているように、地下ケーブルをシールド工法で建設して埋設するよりもはるかに建設投資は安くて済みます。それだけ国の財政の節約にも大いに役に立ちます。そういうことで、国鉄もできるだけ新電電とタイアップしながら、それらの情報通信産業にも多角経営の一事業として進出する必要があるんじゃないか、こういうことをしても十分活用ができるということであります。  それから、国鉄の自主開発技術につきましては、角本参考人は否定的見解でございましたけれども、私は、発展途上国はいずれも今や鉄道建設時代を迎えておりますし、国鉄で開発された鉄道技術は大いに海外に輸出できます。日本も技術の輸出が国の経済の至上命題でございますから、ただし、今までは技術輸出しても政府はほとんど経費の面倒を見ずに、派遣する技術者の派遣人件費のみしか面倒を見ないで、そこでのノーハウ料を全く払っていませんでした。これが公社という国有企業であるための宿命であったわけですけれども、普通民間の商社であれば、技術輸出した場合には当然ノーハウ料を、かなり高額な収益が上がるはずでございますから、そういうような収益事業としても大いに活用できる余地を多分に持っているということであります。新幹線技術はアメリカにも輸出されているわけでございまして、発展途上国にもかなり輸出されております。ところが、ほとんどそれがただ同然で輸出されているというのは、国鉄に何にも還元されていないということでありますので、できるだけ還元できるように工夫していただきたい、こういうことでございます。  以上です。
  115. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 きょうは参考人の先生方から、お釈迦様の話から恐竜とネズミのお話などの率直な御意見をいただきましたので、私も率直に問題を指摘して御意見をいただきたいと思います。  私、国会に出まして十七年たちまして、このごろ一番考えますことは、何かがあったとき、それ大変だというのではなくて、なぜこういうことが起きたんだろうか、それを科学的にしっかりと分析しないと、これからどうしていいかわからなくなってしまうよということを申しているわけです。例えばお米が上がりました、今度また運賃が上がりました、さあ大変だ、朝、毎日おみおつけに豆腐と揚げを入れていたんだけれども、こう出費が多くなっちゃ大変だよ、今度揚げを減らしますと、こうなりますと本当の私たちの暮らしは守れない、そう思うんですね。  そういう立場から、私がきょうは四人の先生に一つの問題でお伺いしたいと思いますけれども国鉄がここまで至りました、大変な危機状態になったという原因はいろいろございます、複合的な関係があろうかと思いますけれども、私は、数字で目に見えて最も大きな原因であるというのは赤字の問題だ、大変な負債だ、こう思うわけなんです。  私の記憶では、国鉄昭和三十八年まで黒字でしたよね。三十九年から赤字が出てくるわけです。それで、三十九年、四十年と赤字が出てまいりまして、それで四十三年だったと思います、国鉄財政再建推進会議というのが意見書を出しましたですね。その意見書は、ずっと赤字が出てくるのを見まして、過大な設備投資というものに赤字原因があるから気をつけなければならない、そしてその設備投資の規模は十年間でほぼ三兆七千億に抑えなさいという意見書が出されていたわけです。これは政府としても閣議決定をしているわけですよね。ところが、田中角榮総理大臣になられて、それもたしか私の記憶では七カ月の後だったと思いますけれども、十年間で三兆七千億に抑えることを意見書で求められて、そして閣議決定もしたのに、この投資規模を三倍の十兆五千億、こういうふうに決めたわけでございますね。そういうので、どんどん、もう九割以上は借金政策による投資が行われたという事実だと思うんです。  例えば東北・上越新幹線、これも莫大な投資をされて、初めから赤字覚悟で出発をいたしました。五十八年度二千四百五十二億の赤字が、在来線を含めますと三千六百六十二億円、こういう数字に膨れ上がってくるわけでございますね。そして、成田新幹線というものを見ますと、八百八十億投資した、だけれども、これ開業のめども立たず野ざらし、京葉線もしかり、六百七十億の浪費になっている。こういうような結果、一九七〇年の長期債務は二兆六千億だったのに、現在は二十二兆という莫大な数になっております。実に十倍にふえているわけですね。これに対しては、何党じゃない、自民党の専門でいらっしゃる三塚氏もその中で、こうした帳じりが合わない設備投資を続けてきた国鉄経営陣も経営陣だが、すべて国鉄負担にしわ寄せしてきた政治も政治である、こういうふうに言われているわけなんです。  そういう中で、お伺いしたいのは、赤字の主たる原因をどこに見られるかという点ですね。その点ははっきり伺いたい。  例えば角本参考人は先ほど、こういう財政になってきた、いろいろ設備投資があったときに、経営者として見通しをはっきり言うべきときには言わなければならない、こうおっしゃいましたし、それから吉田参考人も、決断するときは決断することが必要だ、こうおっしゃった。私確かにそうだと思う。だけれども、今の経過で見まして、国鉄財政再建推進会議の意見書が出て閣議決定もやったのに、これを十兆五千億に変えてしまった、こういうふうに政府が決めてしまったときに、経営者として物が言えただろうかということが一つ問題だ。それをどうお考えになるかということですよね。決断しようと思っても、上から国家的プロジェクトみたいな形で押しつけられたときに、決断すべきときには決断すべきであったというのも、言うはやすいけれども、事実を見たらそういうことができなかったではないか。そこに大きな私は時の政府責任というものをはっきりさせていかなければ、本当の財政再建の軌道に乗りませんよということを申し上げたいと思うわけです。  吉田参考人には、また一つつけ加えてお考えを伺いたいんだけれども、先ほどトヨタの問題をおっしゃいました。トヨタの問題はたまたま私この間予算委員会でやったんですけれども、岡崎から新豊田まで、トヨタの自動車輸送のためにできました。そのトヨタの自動車の輸送量というものを見ますと、四十七年のピーク時には八十七万五千トンだった、トヨタの自動車が。貨物の九〇%を占めたんですね。ところが五十八年になりますと、二十三万三千トンになってしまった、こういう数字が出てまいります。だから、この線路はつまりトヨタの専用線だと、こう言われていた。そして、これに対してどれだけの出費が出されているかというのを見ますと、これは鉄建公団がつくって、国鉄が借り賃を払わなければなりません。五十八年度末の支払いが百五十八億あるんですね。そして、これから払わなければならない残り貸付料というのは四百三十億ありますよ。そうしますと、合計いたしますとここで約六百億の大変な負担なんですね。  トヨタは確かに利益を上げてきた。だけど、それをもっと私は具体的に分析する必要があるのではないか。労働者の賃金どうなんだ、労働条件どうなんだ。そして下請のかんばん方式と言われるあのトヨタの方式のこの具体的な問題を私は見る必要があるし、そして、特に国鉄との関係で言えば、専用線として五百八十八億という出費を国鉄に乗っけちゃって、そして今もうこれ要らないというんでしょう、撤退しますよと、こうなってくるわけですよね。そうするとこれどこに持っていくんですか。とすれば、私はこういうような見通しの甘さ、大きな設備投資、そしてそこで自分たちで都合のいいときはつくらせて、もう要らないよ、こうなってしまう。残されたものは何かといえば、この不況を乗り切るために国家予算をつぎ込んだりして、税金をつぎ込んで、そして公共事業をふやせふやせといって、そこで事業を受けて利益を得たというのが日本の大企業、財界の一つの姿ではないか。そうすると、ここにも責任をやっぱりはっきりさせなければならない。  そういう観点も踏まえまして、もうわずかな時間になりますけれども、簡単に四人の先生からお伺いしたいと思います。
  116. 角本良平

    参考人角本良平君) 今最初に、科学的分析と言われましたことは私大変大事だと思っております。しかしながら、同時にこの種の問題は社会的な価値判断という点がございますので、すべてを科学、特に物理学のような形で解明できるわけではないと私考えております。  ただ、経済学の言葉、先ほどたびたび出ますけれども、私たちが感じますことは、鉄道というのは、歩いていた、あるいは馬に乗っていた、それに対して上級財といいますか、よりすぐれた優等財というような解釈をいたします。しかしながら、自動車や航空機が出てまいりますとそれらが上級財、優等財になりまして、残念ながら鉄道というのは劣等財、下級財である。これが私たちの一つの基本の考えでございます。ですから、すべて鉄道がいかなる場合にも新しい技術に対して優先、国民が選ぶというわけではございません。  その一番よい例は、社会の指導者層がまずマイカーに乗るということでございます。社会の指導者層で満員電車で通う人はもちろんおられます。京浜急行の社長さんは通っていらっしゃる。しかし、そういう人は例外でございます。社会の指導者層がマイカーに移りますと、国民多数がマイカーに移っていく。これを防ぐことはできない。これは全世界の過去三十年間の経験でございます。
  117. 鶴岡洋

    委員長鶴岡洋君) 大変恐れ入りますが、簡単によろしくお願いします。
  118. 角本良平

    参考人角本良平君) はい、わかりました。もうすぐ終わります。  そのような事情の中で、それぞれの時期によりまして原因が違っていた。ある時期には運賃値上げをしておくべきであった。私鉄は二倍に上げた場合に、国鉄はローカル線におきましても運賃を固定している。ある時期には投資が原因、最近は特にそうであります。ある時期にはやめるべきものをやめなかった、これは私鉄との比較で明瞭でございます。  以上が私の主張でございます。
  119. 兵藤釗

    参考人兵藤釗君) 私は、もちろん国鉄経営危機というふうなものは、環境条件の変化に対応できなかったところにあるということはいろいろなところで指摘されているとおりだと思いますが、その環境条件の変化になぜ国鉄が対応できなかったかということは、もちろん国鉄労使あるいは特に経営者責任というふうなものがあることは当然だと思っておりますが、しかし、小笠原先生も御指摘になりましたように、現行公社制度あり方自体のうちにそういう状況を生む条件も存在をしたというふうなことがあるわけであって、単純に国鉄労使、あるいはとりわけて経営者だけに責任があるというふうな言い方はできないのではないか。先生も御指摘のように、この間における赤字は、かなり膨大な設備投資が借金政策のもとで進められてきたというふうなことにあるわけでありますから、それは政府責任であったというふうに考えなければならない部分が大きいのではないかというふうに思っているわけであります。  最近の再建監理委員会なり臨調などの御意見を読ませていただきますと、いかにも国鉄自体が環境条件の変化に対応できなかったところに問題があるから、そのあり方を変えなければならぬというふうにおっしゃっているわけでありますが、それは私は事実として認めますけれども、そういう状況を導いた政治の責任といいましょうか、政府責任というふうなものをより重視しなければならないのではないか。そのことは、恐らく今後の累積債務処理の仕方においても、あるいは新しい形で生まれ変わる国鉄経営あり方についても一つ教訓を残すことになるのではないかというふうに思います。
  120. 吉田忠雄

    参考人吉田忠雄君) 田中首相が就任しました昭和四十七年でございます、この前後国鉄内部激動がございました。私は、生産性運動を進めていったならば今日の悲劇は国鉄はなかったと信じておりますが、その問題さておきまして、ノーと言えないような総裁は、私は総裁につくべきではなかったと思います。しかし、ノーと言わない総裁が就任し、それも大変優遇されました。今でも優遇されております。これが第一の回答でございます。  トヨタの例でございますけれども、そのときはいろいろな投資を受け、しかしやがて車の輸送が衰えていったのであります。このことは事実でございます。私はトヨタ自動車とは直接関係ございませんので、責任を持ってお答えできる立場にはございませんけれども、ただ、それとなしに聞いている、あるいはそれとなしに調べた範囲内では、不安定輸送のゆえに車をなかなか利用できなかったということと、それからいま一つ、だんだんトラック輸送よりもコストが高くなったということ、これで次第に乗りかえていって、今日国鉄貨物輸送が、車を輸送する、それが衰えていったと、こう聞いております。  以上でございます。
  121. 高梨昌

    参考人高梨昌君) 私は、国鉄の過大な設備投資が今の債務原因であるということは、これは皆さん方お認めのとおりでございます。したがいまして、これらの赤字処理については、先ほど言いましたように、国庫負担、言ってみれば国民の税金による負担、それから新会社の負担、そういうようなことでそれぞれが応分の負担をせざるを得ない、こういうようなしりぬぐいをどうしてもせざるを得ないのが現実だと考えます。  なお、その際、過大な設備投資といいますけれども、最大の問題点は、国鉄経営自身が設備投資をする権限を持っていなかったということが最大の問題でございます。鉄道建設公団ができ、鉄道建設審議会ができて、これが政治家によって支配されたということに私は大変な問題がありまして、むしろ、やはり新会社になったらみずから設備投資権限を十分に保有しなければならない。実際に設備投資を将来する必要がないかというと、むしろする必要性は多分に私はあると判断しております。とりわけ、首都圏のような大変な過密地域については投資不足でございます。それに対しまして地方の方は過剰投資、こういうアンバランスがございますので、交通需要の高い地域についてはもっと設備投資をすべきでないか。それで満員電車、通勤地獄の解消ということは急がれる課題だ、こういうように考えますから、設備投資そのものがすべて望ましくないとは判断しておりません。
  122. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 最後に、国鉄労使問題について伺いたいと思うんですけれども、現在国鉄労使間は本当に正常などとは言いがたい状態でございまして、私もいろいろ実態を調べてまいりました。現場での労使の話し合いというのはもう完全に断たれております。職場のいわゆる民主主義が薄れつつあると言わざるを得ない。そして、労使で話し合いしましょうというふうなその慣行だとか、それから協定なんかも無視されて一方的な命令でやられてしまうというようなことがございます。  私どもは何でもかんでも当局が悪いとは言わない。規律を守るべきは守らなければならない。当然のことなんだけれども、余りにも一方的な、今の国鉄再建のためということで、退職勧奨なんかについても、先ほど先生方は、吉田参考人でしたか、路頭に迷わせるようなことがあってはいけないというふうにおっしゃったけれども、迷わせるどころか、障害者を抱えて私はもう今国鉄をやめるにやめられないとか、それから住宅ローンがございますとか、学費がかかる子供になりましたとか、いろんなことがあってもとにかくしつこくいびり出していくというような、労使間協定では強制、強要をしないという協定があるにもかかわらず、そういうやり方をされているということについては、やっぱり私は節度を持って本当に話し合うという態度にならなければならない。  それで、一方では余剰人員がいますね、先ほどから話があった。余剰人員をつくっておきながら、わざわざその仕事をとって外注で委託をしている。こっちは遊ばしておいて給料を払わなければならない。こっちはまた外注費を払わなければならない。これも本当にむだ遣いの最たるものではないかということで、私も何度もこれを取り上げてまいりました。  こういうことを考えてみますと、労使あり方はどうあるべきであるかという点について、兵藤先生なんかもいろいろ御研究なすっていらっしゃるようなので、そのこともお伺いしたいし、余剰人員をつくり出すためにわざわざ仕事を外注してむだ遣いをやっているという点については高梨参考人はどういうふうにごらんになっていらっしゃるだろうか。最後にそのことを伺わせていただいて、終わりたいと思います。
  123. 兵藤釗

    参考人兵藤釗君) 今御質問になりました件に関しては、先ほど若干申し上げましたが、私は現在の国鉄労使関係を見ておりますと、まず第一に、先ほども申し上げましたように、職場での労使の話し合いといいましょうか、協議のシステムが失われてきたということが一つの大きな問題であろうかと思っているわけであります。  これは繰り返しませんが、ただ一つだけそれに関連をして申し上げたいのは、あれができます際は、たしか一九六八年に公労委のあっせん等々を通じてできたはずだと思いますが、その際、公労委もまた、そういう現場レベルにおける労使の協議のシステムというふうなものが労使関係の改善にとって望ましいのでというふうな観点からそうしたものが設置をされてきたという経緯があるわけで、その点は今日もやはり尊重さるべき考え方ではないかというふうに私は思っております。  それからいま一つ、それにかかわって申し上げますと、ここ最近の行革問題が登場して以来の国鉄労使関係の中でかなり問題な一つは、単に職場レベルにおいて民主主義が失われてきたというだけの問題ではなしに、中央レベルにおける交渉においてもかなり問題があるのではないか。確かに形としては公労法上も団体交渉制度はあるわけでありますが、事実としてそれが団体交渉の実にふさわしいものになっておるかという点についてはかなり問題がある。この間における幾つかのこの懸案事項についての交渉を見ましても、当局の方は、これこれの提案をしてこれは絶対下がれない線である、いついつまでに交渉は終わりたいというふうな中で妥結を迫る、こういうふうな形でかなり行われてきたように見ておるわけでありますが、そこにはやはり団体交渉というふうなものが、当局の側によって、またそれをバックアップする政治勢力の中でそうした民主主義が失われておるというふうな事実があるのではないか。  こういうふうな点も早急に改善されない限り、国鉄の新しい再建の道を労使協力のもとで推進をするというふうなことは困難ではないかというふうに思います。
  124. 高梨昌

    参考人高梨昌君) 今御指摘ございましたように、国鉄の減量経営ということで外注下請化が進んでおりますけれども、私は、現状を見る限り、どうも画一的に進め過ぎているので、それぞれの地方の実情に合わせてできるだけ余剰人員が発生しないように計画的に進めるべきだ。国鉄は中央集権管理になっているためにどうしても画一的に地方に指示を流しがちでございますけれども、これをこの際改めて、地方の実情に合わせて、できるだけ自然退職、定年退職等の自然減も織り込んで余剰人員が可能な限り発生しないように私は外注下請化を進めなければならない、こういうように考えるところでございます。  それにしましても、どうしても先ほど申しましたように余剰人員の発生が避けられないのが実態でございます。その際には、関連事業への吸収、また関連事業活動のもっと活性化、それからまた、国鉄にさまざまな業者の方が設備工事その他で仕事をしていますから、そういうような関連会社、これなども余剰人員の吸収に大いに努力してもらいたいし、また、地方自治体もそれらの人たちの再就職先として受け入れてもらいたい。こういうような温かい目で見てもらわないと国鉄職員のやる気がだんだん失われてしまいます。人間のやる気を失ったら国鉄再建というのは到底望めませんから、やる気を起こさせるような、そういうような余剰人員対策を私は手厚くすべきだ、こう考えるところでございます。
  125. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 時間が余りありませんので、質問だけ先に四人の参考人の方々にいたしまして御答弁をいただきたいと思います。  まず、角本参考人にお伺いをしたいんですが、高梨参考人は、全国ネットワークでつながっているのが国鉄の特殊性だ、したがって国鉄を輪切りにするような分割にはメリットがないではないか、こういうことが言われておりますが、角本参考人は、できれば小さく分割した方がいいんだ、こういうことで、その点では大きく意見が食い違っておられるわけでありますが、全国ネットワークでつながっているものを分割することはメリットがないんだという御意見に対してどのようにお考えか。この点が第一点でございます。  それから、分割の場合に、まあ七つよりもたくさんの方がいいということですが、例えばこういうことは考えられないだろうか。国鉄輸送の歴史から考えて、例えば上野を起点とする会社、あるいは東京を起点とする会社、あるいは新宿を起点とする会社、関東地方で言えばそういうことになるわけでありますが、そういう起点別に分割民営という形というものはどうなんだろうか、こういう意見もありますが、この点についてのお考えをお聞かせをいただきたいと思います。  それから、細かく分割すれば分割するほど問題が起こってくると思いますのは、中長距離の旅客輸送だと思うわけでありますが、その場合にダイヤの編成とか運賃とか、あるいは車両の統一化、あるいは事故が起こったときどうするか、線路の保全をどうするかということで、各社別々のやり方ではなかなか技術的に問題が出てくるのではないかと思いますが、そういう問題についての解決策というものはあるのかどうか、これをお伺いをしておきたいと思います。  それから兵藤参考人にお伺いをいたしますが、先生の御意見によりますと、国鉄のような公共交通は採算原理だけで考えるべきではない、採算原理でいけば必然的に地方交通線は切り捨てられる、あるいは地域住民に高い負担を課すことになる、こういうように言われましたが、しかし、国鉄は現に年間二兆円の赤字長期債務、これは全部含めれば三十五兆円に達すると言われるわけでありますが、しかも今後の旅客需要がふえるという見通しもない、そうなるとますます現行のままでいけば赤字が増大をしていく、こういうことになるわけであります。しかも国の補助金というものはもう既に限界がある。こういうことになりますと、今抱えている国鉄長期債務をどういうように一体処理すればいいのか。この点のお考えがありましたらお伺いをしておきたいと思います。  それから、吉田先生にお伺いをいたしますが、先生は、国鉄は人材が大変豊富である、技術も世界一だ、こういうことを前提にされましたが、しかし、集団になるとどうもめちゃくちゃになってしまう、こういうことを言われました。しかも、それは縦割りの組織だからそういうことが起こるんだと言われますが、しかし私はそれだけではないと思いますね。人材がそれだけ豊富で、しかも技術陣も世界最高ならばそういうことは起こり得ないと思うわけでありまして、もっとほかに、今日の国鉄をこのような死に体といいますか、瀕死の状況に陥れた諸要因というものがほかにたくさんあると思う。  先ほども吉田先生が触れられましたが、かつてこれほど赤字が累積しなかった時点に生産性向上運動が展開をされまして、それが中断されてしまった。私自身も吉田先生と考えは同じですが、あの当時、生産性向上運動が本格的にそのまま続けられておったとすれば、今日のような国鉄の惨状といいますか、そういうものは起こり得なかった、こういうようにも思うわけであります。  今日迎えていることについてさまざまな原因というものが今までの御意見の中でたくさんうかがわれたわけでありますが、その点についての先生のお考えと、それからもう一つは、分割民営になっても、採算性を確保するために相当の努力とまた困難が伴うだろうと思うわけでありますが、しかし、国鉄の今日の誤りを二度と新しい会社が犯さないためにどういうような努力をすればいいのかどうか、その点についての、将来のことですけれども、お考えをお聞かせしていただきたい、こういうように思います。  それから高梨参考人にお伺いをしたいのですが、これは八三年三月十五日のエコノミストに載りました先生の「国鉄再建労使関係健全化への道」というのを読ませていただいたのですが、この中で、「国鉄経営を瀕死の重病人にまで追い込んだ責任は、もっぱら政府と国会、これを支持する国民にあるから、政府も与野党も国民も、国鉄再建に当たっては、再建監理委に対して、最大限の理解と協力が必要である。」こういうように書かれておるわけでありますが、その考えに変わりはないだろうか、こういうことが第一点。  それから第二点は、国鉄再建のためには「国鉄関係労組の支援と協力も不可欠である。」これもこの考え方にお変わりはないかということが第二点です。  第三点、「国鉄破産の主たる原因は労働組合にはない。」「にもかかわらず、労働組合に国鉄赤字責任があるかのように、何故労働組合がスケープゴートにされたかが問題である。国労、動労に代表される労働運動にも、その足元をすくわれるスキがあった。それは、かれらの運動路線が「ボタンの掛け違え」をしていたからである。」こういうように言われておりますね。「もちろん、これには、こうした運動路線に押し切られ、これを追認してきた国鉄経営陣の労使関係対策の無定見さと経営感覚の欠如が強く影響している。」このようにも述べられているわけでありますが、ボタンのかけ違えというのは一体どういうことなのか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。  それからもう一点、これは債務処理関連して先ほど意見を述べられたのですが、民間の資本参加を求める、こういうことでございますが、しかし、民間がもうからない会社に資本参加をするということも考えられないと思うのでありますが、何か見返りがなければ参加できない、こうことにも通ずると思うわけでありますが、この民間資本参加の問題について、もう少し具体的にお考えがありましたらお聞かせをいただきたい。  以上でございます。
  126. 鶴岡洋

    委員長鶴岡洋君) 参考人の方々に申し上げますが、十点ほど質問がございますので、簡潔によろしくお願いいたします。
  127. 角本良平

    参考人角本良平君) 簡潔に申し上げます。  まず第一点の全国ネットワークの問題でありますが、線路の管理を別にしましても、我が国では東京付近の地下鉄、郊外の国私鉄線、あるいは東海道線と伊東線、それから下田へ行く伊豆急行、こういうふうに相互乗り入れを多分に行っております。私はそのようにすればよいと考えております。  第二点は、輸送の歴史におきまして、確かに御指摘のとおりでございます。我が国がフランスやイギリスのようにパリとかロンドンだけが中心の国であれば、御指摘のような案が一番よいと思います。しかし、我が国は二眼レフでございまして、東京起点で割り切るわけにはいかない。それは大阪の問題が必ず残ります。したがいまして別途の考えもあわせて検討してみる必要があると思います。  第三点は、中長距離の列車が現在も鉄道管理局をまたがって動いておりまして、それぞれに上部機構で管理を調整しております。同じようなことを行えば、分割しましても、現在同じ作業仕組みを持っておりますものを分けまして、調整のために最小限のルールを現在と同じようにつくっていけばよい。特にこの面では電子工学、情報科学の進歩が役に立つと考えております。  以上でございます。
  128. 兵藤釗

    参考人兵藤釗君) 国の財政が困難な状況の中で、いかにして地交線を維持し得るような経営体制をつくり得るか、それに関連して、累積債務処理はどうなるのか、こういうお尋ねでございますが、本日参考人として出席された方々の中からも御意見が出ておりますが、要するに、非常に極端に言えば、一方に、全額棚上げ、長期的に償還をしていくというふうな方式もあり、他方にはまた、この国鉄の資産に見合うような分については、新会社がどういう形態であれ、新会社に移して、長期的にその部分は新会社から償還をしていくようなやり方があり得るのではないかというふうな御意見がございました。  確かにそれは二つの対極にある考え方だと私は思いますが、その前に私は思いますのは、かなり難しい問題は、やはり今日までの国鉄あり方というふうなものが国の施策のもとで行われてきたというふうなことを考えた場合に、例えば、それを資産分に見合う部分はすべて新会社が負担するような方向でやるべきかどうかというふうなことはかなり慎重に検討を要する問題ではないかと思うわけです。  地方交通線をできる限り維持しながら、なお採算可能な形態を追求するというのであれば、それは新会社がどういうふうな収支見通しを持ち得るかというふうなこともあるわけでしょうが、幹線投資部分というふうなものについて一定の割合で新会社が負担するというふうなことはあり得ると思いますが、その比率がどうあるべきかというふうなことは、全体としての国鉄経営維持というふうなこととの兼ね合いの中で決定さるべきことではないか。ただ、その水準が果たしてそれでは地交線もできる限り維持しながら行い得るものであるかどうかというふうなことになりますと、それはやはり国として、あるいは社会としてどれだけのサービスをナショナルミニマムとして維持するか、その合意のあり方にかかわるわけでありますから、議会その他適切な国民との協議の機関を通じてそうした水準というふうなものが決定されていく以外にはないのではないかというふうに思っております。
  129. 吉田忠雄

    参考人吉田忠雄君) まず第一に、国鉄が死に体になった主な要因ということでございますけれども、私は、さまざまな要因があって一つだけにすることはできない、政治もよくなかった、経営者もよくない、あるいは労働組合もよくないということを申し上げたのであります。ただ、ここで、ある組織、例えば労働組合だけは責任がなかったということ、それについては私は反対であります。労働組合にも責任があった、こう申し上げたい。それを自覚しなければ、死に体というものの解明はできないと思います。  第二点は、今後このようなことにならないためにどうしたらいいのか。結論は、日本の企業、民間企業は世界一であります。日本の製品もまた世界一であります。もちろん改めなければならない点がたくさんありますが、自動車でもあるいは電気製品でも本当に相手の国が困るほど大変歓迎されております。私は、国鉄は民間企業を見習っていただきたい。経営者はその場にいて最後まで責任をとる経営者であってほしい。そして、最も適切な経営者は東大法学部卒という学士だけとは限りません。たたき上げの方、すぐれた方がたくさんいらっしゃいますので、経営者にふさわしい人を登用していただく。そして管理者としてやるよう経営者はバックアップしてほしい。そして建設的な労使関係をつくること。民間企業はやっております。そうすれば、私は国鉄は蘇生すると思います。  以上でございます。
  130. 高梨昌

    参考人高梨昌君) 最初の二点の、国鉄赤字政府並びに国民と、私は国民という言葉を使った意味は、政府を構成した、選挙して選出したのは国民でございますから、国民もそのいわば責任の一半を負っているのではないか、こういう意味でそういう表現をとりました。これは今でも変わっておりません。  それからまた、国鉄の労働組合の協力が必要、これは言うまでもございません。経営再建のためにはそこの従業員集団の協力なくしては経営再建ができないことは明らかなことでありますから、この考え方も変わっておりません。  それから、三番目のボタンのかけ違えの問題でございますけれども、私は国鉄労働組合運動をずっと実戦過程を追っていまして、どうも昭和三十年代半ばに行われました三池争議、この教訓を、私はこれは反面教師で、この教訓を学ぶべきではないんで、これはまねするべきでないと、こういうように運動指導の整理で考えたところでございますけれども国鉄労働組合は少なくとも残念なことに三池闘争と同一の戦術でその運動を進めてきた。このことが裏目に出た、こういう意味で私は運動についてのボタンのかけ違えだと、こういう表現をとらせてもらいました。  それから、新会社への民間資本参加の件ですけれども、私は、国鉄経営というのは、とりわけ日本の地理的条件からいいましたら、鉄道経営というのは相当高収益事業になるに違いないと思っておりますから、新会社移行後徐々に収益は回復していくに違いない。それに応じて、そこでの保有株式の市場価格は高まるので、当然プレミアムも付して創業者利得が得られるに違いない、こういうような見通しを持っております。  以上であります。
  131. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 角本参考人高梨参考人のお二人の先生方に同じ問題でまずお尋ねをいたします。  ただいまも御論議の中にありましたように、ただいまの国鉄は死に体であります。ただでさえ公社という制度の中で当事者能力の問題が論議をされてまいりましたが、それどころか、今日は国鉄再建監理委員会の緊急の提案こそありますといたしましても、これらの審議の過程の中では手かせ足かせと言っても過言でない状態にあります。再建管理委員会においては、この間の非能率性に基づきます若干の経営上の損失は計算済みなのかと思いますけれども国民の立場に立てば、やっぱりより効率的に、少しでも損害が抑制されるように、このように願うのが当然のことだと思います。だといたしましたら、今日のそういう困難な状況のもとにあっても、どのように国鉄はやっていったらよろしいと思われますのか、またその国鉄経営を包みます関係者の中では何を考えたらよろしいのか、その辺に対するお考え方をお教えをいただきたいと思います。
  132. 角本良平

    参考人角本良平君) まことにお言葉を返すようで申しわけないのですけれども、実は現在の国鉄問題の本質は、国鉄企業が死に体にならない組織であるというところにございます。死に体であると普通民間企業で言う場合には、あした手形が落ちないとか、あした給料がもらえなくなる、従業員経営者もその心配をしている状態が普通死に体だと思います。ところが、国鉄総裁も従業員の全員も、給料がもらえなくなるという心配は全くしていない。ですから、その意味では死に体にならないように皆様が保障してくださっているわけです。そこに、国鉄問題が解決しないで、あるいは先ほどからお話しのように、政府の方針に反しても国鉄が違った案を出してくる理由がある。ですから私は、組織、機構全体を変えまして、国鉄が怠ければ死に体に陥って自分の給料がもらえないような組織に早くしなきゃいけない。それがお釈迦様の例を申し上げた理由でございます。  ぜひ御理解願いたいと思います。
  133. 高梨昌

    参考人高梨昌君) 今の点につきましては、角本参考人と私は意見を異にしません。現在は国鉄経営は事実上の倒産企業であります、債務超過でございますから。ところがそれが倒産できないというところに最大の問題があるわけで、それならばもっと健全経営にどうするかとなりますと、これはある程度政治的に解決しなければならない。だから政治家の諸先生方の責任は大変重いということを私申し上げたいと思います。
  134. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 吉田参考人にお尋ねをいたします。  先ほど、国鉄の幹部の皆さん方は、個人としては極めて優秀なお方ではありますけれども、集団になるとなぜあんなにひどくなるのか、事例を添えられまして御意見の開陳がございました。もしそうだといたしますと、やっぱりこれからの経営の中ではこれは直していかなければならない問題だと思います。分割民営化がその特効薬になるとは思われませんのですけれども、その問題とは引き離して、国鉄職員の皆さんが体質的にそういうものを持っておるとすればどうしたらよろしいか、何かの処方せんございましたら御開陳をいただきたいと思います。
  135. 吉田忠雄

    参考人吉田忠雄君) 国鉄の幹部というふうな御質問ございましたが、私は国鉄人が非常に優秀な方が多いということでありまして、幹部という意味をもしもトップ層と申し上げますと、優秀か優秀でないかということは、一、二存じ上げている方もおりますが、全部存じ上げておるわけではございませんので、何とも申し上げかねます。ただし、最初ここで申し上げましたとおり、大変問題の多い言動をする最高幹部に対しては私はけじめをつけていただきたい、こう思うのであります。ただし、管理者層は大変優秀であります。信頼できる方々であります。一般の方々も優秀であります。ところが集団になるとおかしい。  例えば、お金をもらって、ありがとうございましたと言える、私初めて言われたのは、これは新潟駅で初めて言われまして、こっちは大変戸惑いました。その教育、訓練、接客の訓練が全くこれまでなされていなかったということではないかと思うのであります。ですから、内部から自発的にやると同時に、私は教育、その教育がどのような形で、ただ、しばしば国鉄では誤解されてまいりました。それが一つのきっかけになるのではなかろうか。お客さんを大事にしようというふうなこと、これも一つのきっかけになるんじゃないかと思います。その場合に、私は、管理者も一般の方々も十分国民の期待にこたえてくださる資質は大部分あると信じます。
  136. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 最後に兵藤参考人にお尋ねをいたします。  国鉄の持っております立派な資産であります用地の処分でございます。これは今日の問題として、やはり若干の処分をしていかないと当年度予算が組めない、こういうような説明も承りました。さらにまた監理委員会は、これらは長期の莫大な債務を軽減するための資産として活用をしていかなければならない。当然のこととして、これらの資産のうち、これから事業に使う分と事業に使わないものとを区分けをしてやってほしいという要望も出ておりますし、国鉄から出ましたものについては、さらにもっとたくさんという御要請もございますようであります。私たちの俗な言葉で言えば、貧乏したときに財産を処分することは足元を見られると、こう言います。有利にそれは処分をすることができない、こういうことから言われておるのだと思いますけれども、今これらの問題について審議をしていただいておる過程であります。  当然、長期債務の重圧を避けるためにも資産は売却をせなければならぬことがあるかもしれません。けれども経営上、その資産というものは処分をしてしまったらその場限りであります。それらをさらに生かして、より大きく利潤を生むものとして活用していくことがさらに望ましい。そういうことが、残す資産であるか、処分する資産であるかを今の方々が決めるよりも、どのような組織に移行をしていくのか、しかも組織を運営をしていく責任者が決まった時点まで持ち越すことの方がより適当だと私は考えておりますのですけれども、経済学的にそういった考え方についての先生のお説をお願いをいたします。
  137. 兵藤釗

    参考人兵藤釗君) 私は、用地の処分の問題については、個々のケースについて調べたわけではありませんので、これはどうかというふうなことは申し上げられませんが、現在も売却をされたり等々のことがあると伺っておりますが、今も先生おっしゃいましたように、現在国鉄経営というふうなものをどうすべきかということを議論の最中であるわけでありまして、将来にどういう姿でもって国鉄を再生せしめていくかというふうなことがまだ未定の段階にある。  そういうふうな状況で問題を考えました場合に、確かに現在の用地の中にどう考えても何の役にも立たぬというふうな部分もあるのかもしれませんが、やはり事業あり方というふうな姿が見えてくる、そういう段階で処理をしていく、もし処理すべきものがあるとすれば処理をし、事業に活用していくべきものがあれば事業に活用する、そういうふうな考え方でいくことの方が望ましいのではないかというふうに思っております。  とりわけて、それは国鉄はともかく、いろいろな政治介入があるといいましても、国の機関の一端であるわけでありますから、都市の再開発等々を含めて、一定の国としての規制が及び得る範囲であって、将来の都市のあり方というふうなものを考えた場合にもそれは慎重に検討さるべき問題ではないかと思います。
  138. 鶴岡洋

    委員長鶴岡洋君) 以上をもちまして、参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の皆様に一言御礼のごあいさつを申し上げます。  本日は、お忙しい中を本委員会調査のため貴重な時間をお割きいただきまして、まことにありがとうございました。各参考人にお述べいただきました御意見等につきましては、今後の本委員会調査に十分に活用させていただく所存でございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  ありがとうございました。  本件に対する本日の調査はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十四分散会