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竹下国務大臣 まさにマクロの、
新村さんから
決算委
員会でも一度そういう趣旨のお話を承ったことを想起をいたしたわけでございますが、
一つの考え方として、要するに先進国というものの傾向としては、とにかく先進国全体の一人当たり所得とか、そうしたものと国家
財政とは反比例するということを言う人がございます。確かにそういう傾向で、いわば経済諸指標を見てみますと、今おっしゃいましたように実質四%程度でいけば、今二〇〇〇年ということをおっしゃれば、計算上そんなことになろうかと見通されると思います。でございますが、
財政はそういう状態にいっていないことも事実でございます。そこで、最近よく言われます経常収支の黒字を上回るものが資本流出となって出ておる、今おっしゃいましたこの問題は、ある意味においては在外資産を充実しておるということにもなろうかと思っております。
それで、よく言われますことの中に、私もその問題はいろいろ議論しておりまして、昨年でございましたか、貿易白書か何かの白書に出た文句があったものですから、それを私なりに今国際
会議等ではいつでも主張しておるところでございますけれ
ども、経常収支の大幅黒字、それから内外長期金利差、それから金融の自由化、国際化、こういうことから市場メカニズムに沿った自然な資産移動が起こっておる。ただ、私が申しておりますのは、この資本流出というのには、結果として国際
機関を通じたりしたものは経済
協力として、中進国には資本提供になり、開発途上国には大変な援助となって行っておるし、主としてアメリカへ流れておるものにいたしましても、これはアメリカを中心とする世界全体の高金利に歯どめをかけておる結果になるではないか、言ってみれば資本提供国としての立場を今日日本はとっておる、こういう
説明をいたしておるわけでございます。これに対して個別的ないろいろな議論はございますが、大筋は私の意見を大体先進国はそれぞれ是認しておる、こういう感じがしないでもございません。
しかし、一方、民活等の活用をして、こういうときこそ社会資本の充実をすべきだ、こういう御議論でございますが、もっともな議論でございまして、確実に壁に当たります
一つの論理は、どうせ貯蓄性向の最も強い国民である、そうなれば金を貸す先はどこか、いわゆる投資先はどこかと言えば、国か
地方か個人か企業か外国か、こういうことになる。そうすると、国内の資金需要が高いときには
政府は比較的安定した政策をとっておって、国内の資金需要が少なくて、むしろ外国へでも流出するような時期にこそこの
国債発行なんかを積極的にやって、それによって社会資本の充実を促進していくのが
一つの手ではないか、いわゆる貯蓄と投資のバランス論とかいう論理でございまして、
一つ壁に突き当たりますのは、では公共事業を一遍それだけ建設
国債なりを
発行してふやしたとする、そうすると今度は民間需要が高まったからそれを二割なり三割なりに落とすことができるか、これが今までの我々の体験からして、
年度ごとに波をつけて落としていくことは実際上困難な問題である、だからやはりそのときどきの
財政事情に応じて国民のニーズに対応していかなければならぬということに結論として、むしろペースを落とせなくなるとそれによってなおのことこの
公債の残高がふえて、そしてそれが後世代に
ツケを回すことになって、そのことがむしろスペキュレーションじゃないか、もう一遍引っ込めることができないだろう、こういうことが
一つ壁に突き当たるところでございます。
しかし、おっしゃいましたように、民間活力をこの際使うための手法としましては、私は制度金融のようなものも全くあり得ないとは思っておりません。が、まずはやはり規制緩和じゃないかなと。そして、規制緩和をして、あるいは乏しい
予算の中でも、都市再開発でございますとか、そのような環境整備の
予算というものを充実することによって民間活力を誘導していく環境をつくる。国公有地の利用もその
一つでございますけれ
ども。だから、せっかく今、
新村さんおっしゃったような民活というある種のムードが出たところでございますから、これを助長する環境をどうしてつくるかということに眼を向けるべきときではないかな。
少し長くなり過ぎましたが、素直に私の今の心境を申し述べたわけであります。