-
-
-
-
-
○
稲葉(誠)
分科員 この一審の判決を見ますと、これは
控訴をいたしまして
控訴を取り下げて確定しているわけですが、その中で
証拠カードがあるわけですが、
証拠カードの四に
写真十葉が提出されまして、検察官は異議を申し立てておりますが結局採用になっておるわけですね。この
写真十葉というのはどういうふうなものですか。
-
-
-
-
○
稲葉(誠)
分科員 取り調べ室というのは
小岩警察ですね。それで、いつごろのことですか。これは二種類あるわけですよね。
最初頭を伸ばしていたでしょう。それから、床屋へ行って頭を刈ったというので、二
種類写真があるわけですけれども、いつごろどういう経過からこの
写真を
捜査員が
撮影をしたのですか。
-
-
○
稲葉(誠)
分科員 預かって
保管したといったって、これは
押収捜索しておりますから、
押収ならば
押収目録があるし、
任意提出なら
領置証があるし、あるいは全然別なものならば、自分が持っていたものであるということならば、何らかの
記録が
警察になければならないわけでしょう。一体どういう性質のものなんですか。
-
○
金澤政府委員 これは正式に
保管をしておったわけですが、
調べの途中でその
写真をこの
被告に見せるという場面がありまして、それで、この
保管中の
写真を取り出して見せたわけですが、その後また確実に
保管をするという際に
紛失をした、
調べ室に置き忘れをしましてそれを誤って
紛失をした、こういう
事情がありまして、その
関係からいろいろと要求をされてこの二人並んだところの
写真を写した、こういうふうに
承知をしております。
-
○
稲葉(誠)
分科員 私の聞いているのは、
押収でもないし
領置でもない、こういうわけでしょう。そうすると、
本人が持っていたものならちゃんと
帳面についていなければいけないのじゃないですか。
帳面についていて
紛失したなら
紛失したということがなければいけないのだ、こう思うのです。
その
写真を撮ったのは
鑑識の人が
鑑識課の
カメラで、
ポラロイドで撮ったわけですか。二回撮っておりますね。
-
-
○
稲葉(誠)
分科員 それは
鑑識に使う
カメラ、こういう私の言う
意味ですが、そこで、その
写真を見ますといろいろなものが並んでいるわけですね。食べ物がいっぱい並んでいるじゃないですか。これはどういうわけでそんなに並んでいるんですか。
それともう一つ、そこに料理がいっぱい並んでおりますね。それから、小さなお
しょうゆの瓶があるんですよ。それは
警察の
留置場で使うものではありませんか。それから、その
食事はどうして出ているのですか。
-
○
金澤政府委員 これはそこに写っております
女性が、この
面会のときに
差し入れということで持ってきまして、それをこのテーブルの上に並べてある。それから、この
しょうゆの瓶ですが、これは今お話しのとおり看守の方で使っておったものをここでその
食事の際に使った、こういうふうに
承知をしております。
-
-
-
○
稲葉(誠)
分科員 それから、その女の人が
面会に来たのが一体何回ぐらい来たのか、ちゃんとついているんですか。何時から何時まで来たかという、それはどういうふうになっているんですか。
-
-
○
稲葉(誠)
分科員 ちゃんとそれは
帳面についていますか。それと、何時から何時まで
面会に来たというふうについていますか。
本人の言うところによると、朝早くから来て夜遅くまでいたときなんかもありますし、相当長い時間いますよ。これをちゃんと一々説明してください。
-
○
金澤政府委員 相当長時間おりましたこともありますけれども、朝から晩までというようなことはないというふうに
承知をしております。特に長い時間は二回というふうに
承知をしておりますが、その長く
面会をしておったという
理由については、この
面会に来た
女性がその直前に
交通事故の
被害に遭いまして、その
関係でいろいろと
相談をしたということでこの二回につきましては長くなった、こういうふうに聞いております。
-
○
稲葉(誠)
分科員 交通事故に遭ったというのはいつですか。五月一日、ころの話じゃないですか。
タクシーに乗っていてぶつけられたというんでしょう。それであなた、
警察の方から
事故を起こした二人の
運転手に連絡をとって
目黒署にやって、そして、その女の人と
タクシーの
事故係を
小岩警察に呼んで、そして
石毛と女の人と
事故係の三人で補償問題を話し合っているんじゃないですか。こういう事実があるんじゃないですか。それは五月一日以降の話ですよ、五月九日に
移監になっているわけですから。その前にずっと
調べがあるわけですから。
-
○
金澤政府委員 長時間の
面会がありましたのは五月七日と五月の八日でございました。
松戸署の方に
移監になりましたのは五月の九日でございます。
-
○
稲葉(誠)
分科員 だから、五月七日と八日というのは、
松戸署へ
移監になることが五月九日だということで、
検事の
移監指揮書が五月の六日付で来ているんじゃないですか。だから、
送別会か何か知らぬけれども、まあ
送別会というわけでもないでしょうけれども、そういうことで長くそこにいたんじゃないですか。そういうことでしょう。二日間も
交通事故のことでやっているわけじゃないでしょう。
移監指揮書を見てごらんなさい。だめですよ、それ。どうなっていますか。
-
-
○
稲葉(誠)
分科員 五月九日に
移監になったことは間違いないんですね。
被告人はちょっと日にちを間違えていまして、
手紙の中では五月八日と言っていますが、これは間違いですが、六日に
検事から
移監の
手紙が来ているんですよ、これは
移監指揮書がありますから。
それで、七日は朝から夜九時ごろまで、
本人に言わせればお
別れパーティーだと言うんだが、それは別として、相当長時間とにかく会っているわけですよ、二人が。こういう事実は認めるんでしょう。だめですよ、こんなことやってたんじゃ。
-
○
金澤政府委員 相当長時間であることは間違いございませんが、朝から晩までということでなしに、午後から、
記録によりますと、第一回目が午後一時四十分から、第二回目が一時からというふうに
記録されております。
-
○
稲葉(誠)
分科員 そうすると、
面会に来た女の人ですね、それとの
面会は
——一般の場合はどういうふうにしているんですか。
弁護士が
面会に行ったって、今は網ではない、あれは何というのか、
接見室があるわけで、なかなか声が聞きづらいのです。直接手を握るわけにもいかぬし、直接のあれじゃないでしょう。それをどうしてこの場合、
取り調べ室なんかでちゃんと会わしたり
食事なんかされているのですか。
食事をしたのは何回くらいあるのですか。
-
-
○
稲葉(誠)
分科員 この
調書のとり方も、
最初話を朝聞いていて、そうして女の人が
面会に来ることがわかっているでしょう。そうすると、ほかの
部屋へ行って
警察官が
調書をつくって、そうして後からその
本人を呼んで、この
調書、このとおりかというようなことを言う。そうすると、
調書が
内容が違う、殊にこれは、そういうのは違うというふうなことで、
恐喝の文言その他に違いがあったのでしょう。こういうようなことを言っておれば、
被害者もこう言っているし、この方が
検事の情がよくなるから、親分この方がいいんだということを言ってやったというようなことも
本人は言っているわけですね。だから、これはどうも
本人の目の前で
調書をつくったんじゃないようですよ。その後一
たん別の
部屋へ行ってつくっちゃって、それを女が帰った後に
本人に読み聞かせておるわけです。読み聞かせておって、
本人の
弁解は聞いておるけれども、
本人から聞いて、聞いたときにそこでつくっているのではなくて、今言ったような形で
調書をつくったんじゃないですか、これは。
-
-
○
稲葉(誠)
分科員 報告はそういうふうになっているかもわかりませんけれども、どうもこれ、
一般の場合と恐ろしく区別があるのは一体どういうわけなんですか。
警察側の
弁解というか何かとしては、どういうわけなんですか。普通の場合は、
面会に行ったときでもちゃんと
帳面につけて
留置事務室を通すとかする、そうして時間も制限する、
立会人もいる、こういう形でちゃんとやっていますね。
拘置所の場合は
内容を書きますけれども、
警察の方はどういうふうになっているのか、ちょっとそこら辺を説明していただきたい。本件の場合はどうしてそういう
特別扱いをしたわけですか。特別な
扱いをしたことは認めるのですか。で、
特別扱いした
理由、そのことについて
警察としてどういうふうな
反省をしているか、こういうことはどういうことですか。
-
○
金澤政府委員 原則的には
被疑者との
接見、
面会、
差し入れ、これにつきましては
原則が決まっておりまして、そのとおりにやっておるわけですが、今回はこの
取り調べの過程におきまして、
面会、
接見、
差し入れ等につきまして不適切な
事例であったというふうに
反省をいたしておるわけでございます。
こういうふうになりました
最初のきっかけは、これはある程度推定でございますけれども、やはり
最初に
保管をしておりました
写真を
捜査員のミスで
紛失をした、この辺のところからいろいろと特別な
扱いをするようになっていったんではないかというふうに考えられるわけであります。
-
-
-
○
稲葉(誠)
分科員 そうすると、
警察の
帳簿は、どういう
帳簿かは別として、だれが
面会に来たのか、そういうようなことはちゃんとできているというか、きちんと記帳をしてあるんじゃないんですか。どういうわけなんですか。これは考えられるのに俗に言う
本庁事件でしょう。
本庁が
所轄へ行ってやっているから、
所轄がやっているのと違うから、その点でちょっと、何といいますか、十分あれがとれなかったのかもわかりませんが、ちょっとおかしいんじゃないでしょうか。だれが来たのかもよくわからないし、さっき言った女の人が来たという時間なんかもちゃんと
帳簿に記載してあるのですか、何時に来て何時に帰ったかということを。本当ですか、それ。今の
事故係が来たことや何かも。そこまでどうしてしなければいかぬのです。
-
○
金澤政府委員 面会、
接見につきましては、何時から何時までだれだれということでの記載は
原則どおりやっております。ちょっと今
交通事故の方につきましては確認されておりませんが、
女性が十回にわたって
面会をしておりますが、その十回につきましては全部何時から何時ということでの記載がございます。
-
○
稲葉(誠)
分科員 じゃ、それ今わかりますか。わかったらちょっと説明してくれませんか。
事故係が来たのは書いてないのですか。
-
○
金澤政府委員 第一回目は四月八日の午後三時から四時、二回目は四月十四日午後一時から二時、三回目が四月十八日五時から六時半、四回目が四月二十日三時半から五時三十五分、五回目が四月二十三日午後三時半から四時四十五分、六回目が四月二十六日午後一時から二時半、七回目が四月二十八日午前十時から午後一時二十五分、八回目が五月三日午後一時から三時、九回目が先ほど言いました午後一時四十分から午後七時、十回目が五月八日午後一時から午後七時、こういう
記録でございます。
-
○
稲葉(誠)
分科員 警察の
代用監獄がいろんなことで今問題を起こしていることが問題になっていることは御存じのとおりでして、
一般の場合とそうでない場合、ことに
警察の場合は弱い市民に対しては非常に強いですね。強く出ていて、こういう力があると言っては語弊があるけれども、そういう人に対しては、今言ったような——あなたの方の説明は、何か
写真をなくしたとかいうことで弱みがあったのかということらしいのですけれども、それにしても、こういう持ってきた
差し入れのものを並べて
写真までとって、何か
警察の
しょうゆ入れまでサービスしてというか、持ってきてやったり、そういうようなことをしておって、
写真を
ポラロイドで八枚とったりなんかして、そんなことは常識で考えられないですね。こういうふうなやり方、これはよくないことはわかりきっていると思うのですが、こういうようなことは
代用監獄の運用ということについて非常な大きな問題を起こすわけですね。弱い人だとここでぎゅうぎゅうやられてそこで無理な自白が行われるというようなことになるわけです。
いずれにいたしましても、今言ったようなことから、あなたの方としてはこの
事件についてどういう最終的な結論を出したのですか。それは大臣でもいいですからお答え願えませんか。
-
○
金澤政府委員 先ほどもお答えいたしましたとおり、
接見の問題、
差し入れの問題につきましては、これは厳正公平に、その相手の立場とか相手の人物いかんによって差がつけられるべきものではないというふうに考えておりまして、平素からそのように
警察全体として教養徹底をしておるところでございます。
今回のケースにつきましては、先ほども申しましたようにいろいろな点で不適切な面が見受けられますので、これは
警視庁の方としましてもしかるべき措置をとりましたし、また私の方といたしましても今後十分に気をつけて、全国の方にもこういうことのないようによく通達をしていきたいと考えております。
-
○
稲葉(誠)
分科員 これは
本人から
弁護士さんのところへ来た
手紙なんかを見ますと、その他まだいろいろあるわけですね。本件に直接
関係ないと思われるようなことまでありますよ。あるけれども、私はそれはここでは、時間の
関係もありましてあえて省略しているわけですけれども。
そこで、公安委員長にお尋ねをいたしたいのは、今
局長が言われたようなことで今後進まれると思うのですけれども、その趣旨を徹底していただきたいということが一つ。それから、私考えますのに、この前も言ったように、刑事
警察の人は、いわゆる下積みの人というのは非常に気の毒なんですよ。警備
警察の方は割合に出世が早いというか時間的余裕もあるけれども、刑事の方は下積みの人ほど気の毒なんで、将来の就職問題とか何とか、そういう面についてももっと十分に考えてやらなきゃいけない、こういうふうに思うのですが、それの点を含めて。
それからもう一つ、グリコ・森永
事件について現在どういうふうになっておるのですか。この前は
局長は、似顔絵があれだからもう近々犯人は捕まるような印象を与える答弁をされたわけですけれども、印象としては私はそうとりましたが、その点についてはどういうふうになっているのかということについて、前の方は
国家公安委員長、後の方は刑事
局長。
-
○古屋国務大臣
稲葉先生の、
小岩署における
事件の取り
扱いにつきましては、先生はそういう方の専門でございますが、何といっても、
捜査というのは公共の福祉とそれから個人の人権の尊重というものを思惟しながら真相を解明していかなければならぬ問題でございます。そういうような間におきまして、ただいま御指摘のようなことがありましたことは
警察としても——先生は
本庁から行ったからそういうあれがあったんじゃないか、確かにそういうことも考えられる点もあるかと思いますけれども、ともあれこういうような疑惑を起こした、また、そういう疑義が出る、私は率直に申し上げまして、
警察の
捜査の本来のあれには背いていると思いまして、今後十分気をつけまして適切な措置をとってまいるつもりでございます。
なお、グリコ
事件につきましては、私も一応は
承知しておりますが、刑事
局長からその後の状況を御
報告申し上げます。
-
○
金澤政府委員 グリコ・森永
事件の
捜査の状況でございますが、この前も申し上げましたように、基礎
捜査と、それにあわせて現金受け渡しの現場における逮捕措置ということ、両面あわせていろいろとやっておるわけでございます。
似顔絵につきましては、九〇%の確度をもって信憑性を見ておりますので、非常にその
意味で自信を持っておりますし、また、それをもとにしまして現在全国から多数寄せられております情報を一つ一つつぶしておる、こういう状況でございます。したがって、似顔絵の
捜査につきましては
警察としては大いに自信を持って現在進めておる。
ただ、いつの時点でどうかということになりますと、これは非常に難しい問題で、一刻も早くというつもりで現在
捜査をやっておる、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
-
-
○
草川分科員 公明党・国民会議の
草川昭三でございます。きょうは私は主として高速道路上における
交通事故の問題点あるいはまた今後の教育ということについて
警察庁あるいは
総務庁、文部省、厚生省、消防庁、こういうところにお伺いをしていきたいと思います。
それで、
昭和四十五年に死亡者が一万六千名というのがピークであったと思うのでございますが、その後九年間連続して死亡者というのは減ってきておるわけでございますが、
昭和五十四年にはピーク時の半数に近い八千四百人台にまで減少した、こういうことが言われておるわけでございますけれども、しかしながら、その後
昭和五十五年を機に死亡者数はさらに増加に転じてきております。
昭和五十八年には九千五百人、あるいはまた
昭和五十九年には九千二百六十二人というように増加をしてきている。
その
理由はたくさんあると思うのでございますが、それぞれ問題点が指摘をされておるわけでございますが、その中で高速道路における
交通事故というのも多発をしてきておるのではないか、こういう点があると思うのでございますので、まず
最初に、高速自動車国道における
交通事故の発生状況をお伺いしたいと思います。
-
○
太田政府委員
昭和五十九年中高速自動車国道におきます
交通事故の発生状況でございますが、物損
事故も含めまして全体で一万五千八百二十九件出ております。その中で死者数は百八十九人、負傷者数は四千九百四十四人という状況でございまして、前年に比較いたしまして発生件数が千四百二十四件、九・九%、負傷者数が四百四十二人、八・九%増加いたしております。ただ、死者数は三人、一・六%でございますが、減少という結果になっております。
-
○
草川分科員 今のは高速自動車国道でございますが、その次に、じゃ指定自動車専用道路、これは首都高速道路だとか阪神高速道路、こういうところだと思うのでございますけれども、こういう自動車専用道路ではどのような状況になっているのか、お伺いしたいと思います。
-
○
太田政府委員 指定自動車専用道路におきます
事故の発生件数でございますが、こちらの方は物損
事故を除いてございますが千九百九件、死者数は七十二人、負傷者数は三千三百八十人ということでございまして、発生件数は百七十七件、死者数は十九人、負傷者数は三百七十九人と、いずれも若干でございますが、増加傾向にございます。
-
○
草川分科員 いずれにしても高速道路、あるいは公団道路というのですか、指定自動車専用道路における
事故が増加をしておるという御
報告でございますが、その中に、死亡
事故の件数でございますけれども、
事故発生から二十四時間を経過した死亡者というのは
交通事故数の中に含まれているのかいないのか、お伺いしたいと思います。
-
○
太田政府委員 ただいま申し上げました数字は、
交通事故が発生いたしまして二十四時間以内に死亡された件数を計上いたしております。
-
○
草川分科員 一般的に、二十四時間を経過して死亡した方も本来ならば死亡
事故の中に統計上は上げてその対策を立てていくことが非常に必要だと私は思うのです。厚生省の場合の統計上は、二十四時間以上を経過した人も統計に入るやに聞いておりますが、その点は厚生省に聞けばいいのですが担当者がいませんので、
警察庁にお伺いしたいと思います。
-
○
太田政府委員 厚生省の方で集計いたしておりますものは
交通事故が原因になりましてその年に死亡した方というもので、大体
警察統計の三十数%増という程度に
承知をいたしております。
-
○
草川分科員 そうしますと、やはり死亡
事故というのは非常に重要なことでございますし、私どもも死亡
事故というのは大切に統計を尊重しなければいかぬわけでございますが、やはり私は、
交通事故があり、それぞれ病院で手当てをする、二十四時間以内に亡くなったのは、即死という
意味ではそれは即死という重さを我々も考えなければいかぬわけでございますが、介護した努力にもかかわらず亡くなったという場合としても、やはり厚生省のような四十八時間、すなわち二日間とかあるいは三日間以内に亡くなった方もやはり
交通事故死として上げていく。今のお話ではございませんけれども三〇%近い差があるというお話でございますから、私はそういうように非常に重みを感じた統計を今後立てられることが
交通事故死に対する対応ではないかと思うのでございますが、その点はどのようにお考えになられるのか、お伺いをしたいと思います。
-
○
太田政府委員 ただいま申し上げましたように厚生省の方でとっておられます統計は、
交通事故が原因になりましてその年に、要するに一年以内に死亡された方ということに
承知いたしておりますが、今先生がお話しのように
交通事故を分析して、それにのっとって的確な対応策を立てるというためには、二十四時間以内はもちろんでございますが、それに関連した死亡
事故というものも十分考慮していかなければいけない、そういうことで、私どもの方といたしましては
警察がとっております二十四時間以内に死亡されたいわゆる死者の発生状況、それから重傷
事故とか軽傷
事故というものにつきましても
交通事故対策を立てる上で十分考慮に入れて対策を講じているという状況でございます。
-
○
草川分科員 これは今後の問題でございますし、きょうは
分科会でございますので、私は
交通事故に起因をして亡くなった方はやはり死亡
事故としてカウントされるように今後検討をぜひお願いをし——別にこれは隠したという
意味でもないと思うのでございますけれども、何なら即死なら即死、それから二十四時間なら二十四時間でもいいんでございますし、あるいは四十八時間なら四十八時間でもいいんですが、とにかく
交通事故を起因として亡くなった方々は
交通事故死として統計上把握をできるようにする、そのことが国民にとってもあるいはまた行政上の施策にとりましても非常に重要だと思いますので、その旨を指摘をしておきたい、こういうように思うわけでございます。
そこで、きょうの本来の趣旨でございますけれども、
交通事故に遭う、そうしますと目撃者が、あるいはまた加害者が一一九番に電話をする、そして救急車が来る、救急車は自治省の担当になるわけでありますね。それから、担ぎ込んで病院に入れる、ここからは厚生省の担当になるわけですね。ところが、私がきょう申し上げたいのは、救出作業の所管というもの、あるいは教育というんですか、対応というのが残念ながら今どの省庁にもかかわるところはないわけです。救出作業というのは最近
事故の原因等見てまいりますと、トラックでもそうです、乗用車でもそうですが、昔の乗用車と違いまして加工を容易にするために非常に薄い鉄板で自動車なんかはつくられておりますから、例えばダブル衝突をした場合でもそうでございますし、一方的な衝突でもそうでございますが、運転席が圧縮されていわゆる
交通事故を受けた方々の搬出、救出作業ができない
事故というのがかなり深刻化してきておるわけであります。
そうしますと、救急車は来たものの
事故者が運転席に挟まれて出ないとか足が何かに詰まって出ないとか、そういう
事故というのは間々新聞等にも報道されておるわけです。そこで、改めてレスキュー車というのですか工作車を呼ぶという二重手間になる。高速道路における
事故等を見てまいりますと、これは随分何回かの例があるようでございますけれども、渋滞しておる場合、救出車が
事故現場まで到達できない。本来ならば救急車が来るべき路肩も詰まってしまっておる。だから、
本人は挟まれておるので、例えばドクターがそこに駆けつけたとしてもレスキュー車というのですか工作車が到達するのに時間がかかりますから、その間にとうとい命を亡くしてしまうという例が随所にあるわけですね。でございますから、どこの省でも結構でございますけれども、救命救急ということをあわせて対策を立てていく必要があると私は思うのでございます。救出作業がおくれて亡くなってしまった
交通事故死の統計というものを持っておみえになるのか、これはどこになるのかわかりませんが、とりあえず
警察庁にお伺いしたいと思います。
-
○
太田政府委員 ただいま御指摘の、救出がおくれてそれが死亡に結びついたといいますか、その結果死亡
事故になったというような形での統計というものは
警察庁といたしましては実はとっておりません。
-
○
草川分科員 これはやはり今後の課題でもあると思いますので、正確な統計を一々またとるということになりますと大変な問題だと思いますけれども、いわゆる
事故現場のいろいろな対応なりレポートというのは
警察庁もつかんでおみえになるわけでございますから、救出作業が非常におくれてしまったその原因は、例えば今私が申し上げましたようにさまざまな原因があると思うのでございますが、そういうのがある程度
報告できるように、何も統計を求めるという
意味ではございませんけれども、今後原因を除去するためにも救出作業というものをいま少し重点を置いていただいて対応を立てていただきたい、こういうように思うわけでございます。
きょうは道路公団を呼んでおりませんが、道路公団からも本当は聞きたいところでございましたが、実は高速道路の沿線には多発外傷に対応できる救急救命の医療機関というのが設置をされていないのですね。道路公団の方はそれぞれ各市町村にある程度の分担金というのですか予算を渡しまして、各市町村に
交通事故があったときによろしく頼むという程度の連携よりございません。ですから、高速道路における
交通事故が今後も多発をするということが十分予想されるわけでございますから、救命救急センターあるいは救出システム、こういうものをトータルの対応として立てることが必要だと思っておるわけです。
特に二、三の
事故の例を見ておりますと、多発外傷というのが非常に多くなっておるわけでして、例えば脳、頭の挫傷あるいは骨折あるいは
運転手の目が損傷する、こういう単一の外傷ではなくて多発外傷というのが多いわけでございます。例えば従来の救命救急センターへ入ればいいのですけれども、救命救急センターというのはまだまだ全国的には各都道府県でも二カ所とか三カ所程度でございまして、そんなに多くございません。でございますから、救急医療を受ける医院ということになりますけれども、ここでは今申し上げましたように例えば頭の治療を続ける間に目の方が悪化をしてしまうというようなことでございまして非常に条件が悪いわけです。ですから、いいところに患者が搬送されたらその患者は助かるわけでございますけれども、そういう対応が不足をしておるとそれができません。そういう
意味で、救出システムと救命救急センター、そういうようなものをひとつトータルなシステムとして考えながら高速道路はどうするのか、あるいはまた公団道路はどのようにするのか、
一般の国道を中心とするところの
交通事故はどうするのかということを分けて考えていくことが必要ではないかと思うのです。
そういう
意味で、きょうは消防庁もお見えになっておりますので、消防庁の御意見を聞きたいと思うのでございますが、ひとつ現在の救急車の出動、救急車が出動するわけでございますけれども、工作車いわゆるレスキュー車というようなものが現在どの程度稼働しているのか。同時に、例えば目撃者からこれは非常に重大な
事故だから工作車も一緒に来てもらいたいというような出動要請があるのかないのか、おおよそで結構でございますが、お伺いしたいと思います。
-
○大屋説明員 現在全国で消防機関が保有しております救助工作車は四百九台でございます。通常救出困難なものが生じた場合、そういう連絡がございました場合には救助用の機械器具を積載した救助工作車等が救急車とともに出場するというのが実情でございます。
なお、どの程度そういった連絡通報があるのかということは、私どもデータとしては把握しておりません。
-
○
草川分科員 今おっしゃったとおりだと思うのです。私も全部の
事故をフォローしておるわけではございませんけれども、多くの場合は、これは高速道路で起きましても
一般道路でもそうでございますが、例えば工作車が必要とされるような
事故のときに工作車が必要だというので消防署に連絡をするということは非常に少ないと言われておるわけでありまして、白い救急車が出動する、ところが患者というか犠牲者を搬出することができない、そこで改めて工作車の出動を要請する、こういうことになるわけでございますが、工作車は消防庁の所属になると思うのでございますけれども、これは緊急車として取り扱われるのかどうか、あわせてお伺いしたいと思います。
-
○
太田政府委員 そういう消防署の救急活動に必要な車でございますので、申請があれば当然指定の対象になると思います。
-
○
草川分科員 それが通ればいいのですが、実は消防車は火災出動では緊急車として取り扱われるわけでございますけれども、それ以外のとき、例えば
交通事故現場への救助の場合はサイレンを鳴らしたら違反となるということが言われておるわけですが、その点はどうですか。
-
○
太田政府委員 そういう緊急の場合には当然そういうことでサイレンを鳴らして緊急車として出動し得ると思います。
-
○
草川分科員 私は、たまたま消防署の署員のお話を聞いたら、実は消防法の解釈になるのだけれども、我々はあくまでも火災出動ということでいろいろな仕事をしておるのだ。特に消防署の工作車というのは、どちらかといいますと火災出動に対する工作車の任務があるわけでして、
交通事故のための出動については
原則的には消防法のどこを探してもそういうことはないのだ、だから消防法の第一条を我々は拡大解釈をして、いわゆるドライバーの救急にも行動をしておるのだということを言っておるわけでございますので、これは別に消防庁の対応がどうのこうのと言っておるわけではございませんけれども、残念ながら今の消防工作車の出動というのは、何回か申し上げておりますように、火災出動が中心なので、工作車があわせて並行的に救出作業をするというような、実は今全国で四百九台だと言っておりますけれども、そういう対応になっていないのではないかと思うのですが、この点は消防庁、どうでしょうか。
-
○大屋説明員 先ほど申し上げましたように、
交通事故により救出困難なものが生じた場合には、救助工作車が救急車とともに出動するという実態はあるわけでございますが、必ずそうかと言われますと、すべての場合にそうだとまでは言い切る段階には至っておりません。
-
○
草川分科員 でございますから、いわゆる工作車の出動というものをぜひこれから、これは消防庁なり、高速道路の場合なら道路公団だとか、あるいは
一般的な場合でも、例えばJAFなんというのがありますね、日本自動車連盟、こういうところは工作車というよりは搬送車など持っておるわけでございますが、そういうものを含めて一体化して工作活動ができるような対応をぜひ、これは
総務庁がお考えになるのか、あるいは総理府がお考えになるのか
警察庁になるのか自治省になるのか、私わかりませんけれども、とにかくシステムとして対応を急ぐようにお考えを願いたい、こういうように私は指摘をしておきたいと思うのであります。
もう一つ、今度は工作車についてお伺いをいたしますけれども、いわゆる圧縮された
事故車を油圧によって押し開く逆はさみのようなもの、プレスですね、そういうものが非常に必要になりますし、時には切断をすることもあるわけでございますが、これはなかなか素人ではできないわけでございますし、それなりの訓練を受けなければなりません。現在消防庁ではどういうような指導をなされているのか、お伺いをします。
-
○大屋説明員 消防庁といたしましては、救助技術の向上を図るために消防救助操法の基準というものを定めております。これに基づきまして、救助用器具の取り
扱いあるいはその応用救助操法につきまして指導を行っておるところでございます。
救助隊員に対する教育につきましては、消防学校の教育の中で、今申し上げました救助操法の基準をもとにいたしまして初任教育それから救助専科教育等において教育訓練を実施しております。また、消防大学校におきましても救助科を設置いたしまして指導者の育成に努めているところでございます。さらに、各消防
本部等におきましては、これらの基本技術をもとにいたしまして職場教育を行い、救助技術の向上に努めております。
消防庁といたしましても、これら基本的な技術の習得によりまして現場における救助活動が適切に行われますように、教育訓練の充実等につきまして今後とも消防
本部に対して指導を行うとともに、消防大学校における教育についても万全を期してまいりたい、このように考えております。
-
○
草川分科員 いまおっしゃられましたように、消防救助操法の基準というのがあるわけでございますが、今工作車に装備をされているところの油圧救助器、つぶれた車を油圧によって押し開く逆はさみのような状温の工具でございますが、すべてこれが、すべてというかどうかはあれでございますが、私どもが聞いた範囲内では外国製になっておるわけでございまして、取り
扱いの説明書が横文字で書いてある、だから我々がなかなか細かいところまで読めないという事実があるのですが、その点については御
承知かどうか、お伺いしたいと思います。
-
○大屋説明員 和訳されたものがございまして、それが使えるようになっております。今申し上げました救助操法の中にもその使い方について説明してございます。
-
○
草川分科員 私ども、ある署の方々とお話をしていたらそういうような意見があるわけでございますので、外国製のものの取り
扱い等についても隊員なり、また隊員も工作車以外の方々が乗ったり、いろいろな手伝いをする場合もあると思うので、私が申し上げた点について十分な御配慮を得たいと思います。
最後になりますが、あと五分よりございませんので、二つ続けて質問をして、終わりたいと思います。
今申し上げましたように、いろいろと
交通事故の取り
扱いも、単なる昔のような衝突
事故というわけにはまいりません。見た瞬間にどういう対応をするのかということが極めて必要でございますので、文部省にも、学校教育の場で
交通事故の危険さということよりも、どのような救助をしたらいいのか、あるいは対応を立てたらいいのかということを教育するようにぜひ要望したいと思いますので、まず文部省から御答弁願いたい。
そして、ただいま社団法人日本交通福祉協会というのがございますが、これはたしか
総務庁関係だと思いますが、全国的にもいろいろな教材を出したり非常に努力をしておみえになりますが、どちらかといいますと、ボランティア活動になっておるわけでございますので、救急法の教本等をあらゆる団体あるいはまた自動車教習所、こういうところにも応用できるような対応を立てるように
総務庁としても努力を願いたい。これが二つ目。
それから、最後になりますが、厚生省、日本メディック・アラートというのがあるわけです。胸にマークをつけておくと、
交通事故のときにその番号で、
本人が日ごろどういう健康状態であるのかということがわかる、コンピューターでそのデータを引き出して、すぐ事後処理なり対応ができるという、これは国際的なメディック・アラートという一つのシステムというか協会があるわけでございますが、残念ながら日本ではこの協会の会員が非常に少ない。せっかく厚生省と総理府の共管でやっておみえになる財団でございますが、いま少し応援したらどうか。
以上三点を質問しまして、終わりたいと思います。
-
○下宮説明員 お答えいたします。
先生御指摘の、
交通事故に遭った場合の救急処置等の教育でございますが、現在中学校におきましては保健体育の授業で包帯法、止血法、人工呼吸法等の救急処置や急病、傷害の応急処置を取り上げ、実習を行うこととしております。また、高等学校におきましてもホームルームや学校行事などにおきまして
事故のときの応急処置あるいは救急体制につきまして取り扱うよう指導しているところでございます。
今後ともこれらの指導の徹底に努めてまいりたいと考えているところであります。
-
○小堺説明員 先生御指摘のとおり、日本交通福祉協会が実施しております救急法教育講習会などの業務は交通安全教育として効果を上げていると考えておりますので、今後さらに充実するよう指導助言等を行ってまいりたいと存じております。
また、
総務庁といたしましては応急手当ての普及を図るため、特に運転
関係者に対する普及を図るため、五十九年度に応急手当ての実際を図解で説明した小冊子を作成して、運行管理者に配布しております。また、六十年度には安全運転管理者に配布する予定にしております。
-
○谷説明員 メディック・アラート協会の件でございますが、メディック・アラートの日本の協会は五十八年の九月に設立をされておりまして、先ほど先生おっしゃいましたように、アメリカ等においては大変活発な活動をしているわけでございます。我が国におきましても、発足以来新聞ですとかテレビあるいはその他雑誌等に対しまして大変積極的なPRをし、また患者団体ですとかボランティアグループあるいはまたスポーツ団体等に対してもその普及、参加を呼びかけてきているわけでございますけれども、先ほどお話しございましたように、この発足以来必ずしもまだ会員がふえていないということを私ども
承知をいたしております。今後さらに積極的にPRをするように協会の方にも指導してまいりたいと考えております。
-
-
-
-
○五十嵐
分科員 高レベル放射性廃棄物の貯蔵工学センターの問題でありますが、今までこれらの問題では国会でずっと審議をさせていただいているのでありますが、それらを通じて歴代の
科学技術庁長官は、該当市町村であるとかあるいは周辺近隣の市町村であるとかあるいはそれを包括する都道府県だとか、こういういわゆる地元の理解と協力を得た上でこれは実施するんだ、こういうお話をずっといただいておるところでありますが、竹内長官も同じお考えであられるかどうか、まずお伺いを申し上げます。
-
○竹内国務大臣 お答えいたします。
御指摘の貯蔵工学センターの立地につきましては、いわゆる地元の理解と協力を得て進めるのが基本と心得ております。したがいまして、これまで歴代
科学技術庁長官が申し上げてきた方針と変わりはございません。
-
○五十嵐
分科員 去年の九月二十七日に中曽根総理が札幌で記者会見なされまして、原子力の平和利用は推進する必要があるが、安全性の確保が必須条件だ、動燃は安全性を確認した上で地元、知事、道議会などの意見を聞き、同意を得るべきだ、こういうぐあいに総理も御発言になっておられるわけであります。
去年の八月の十日に動燃事業団の吉田
理事長さんが北海道庁に横路知事を訪ねられて、その後記者会見をなさっているのでありますが、そこで、立地に当たっては知事の理解や周辺市町村の理解が前提である、今後予定している事前
調査も知事の理解が前提だというようなお話を述べておるのでありますが、もちろんそういうお言葉を忘れずに慎重に対処してほしいというふうに思いますが、吉田
理事長さん、よろしゅうございますね。
-
○吉田参考人 お答えいたします。
今御指摘ありましたように、私も昨年北海道に行きましたときにそういうことをお答えしておりますが、我々としましても地元の御理解を得ながら、たとえこの
調査でありましても進めていきたいというふうに考えておりますので、今後も理解が得られるように努力したいというふうに思っております。
-
○五十嵐
分科員 これは去年の十月二十九日の道議会のエネルギー問題
調査特別委員会の議事録なんでありますが、ここで動燃の渡辺
核燃料
部長さんも、六十年度予算の立地環境
調査費に関する質問に答えて「貯蔵工学センターの立地環境
調査ということでございますので、地元のご理解とご協力が得られたら実施したいと思っています」、こういうぐあいにお答えになっておられるわけであります。もちろん道議会でのお話でありますから、そういうお考えでお進みになるのだろうというふうに私ども考えているわけで、今の
理事長さんのお話のとおり慎重にひとつ対応してほしい、こういうぐあいに思うのであります。
そこでこの機会に、最近の、これは決まっているわけではありませんからあれですが、いわゆる有力候補地とされている幌延町のあの周辺の状況等について少し
報告をするといいますか、大臣もあるいは
理事長さんも意にとめておいてほしいと思うところであります。
幌延町の隣の、今度やるとすればそこの港を使うということになる天塩町でありますが、ここでは町民の反対署名は、有権者が四千三十一人のところでありますが、これに対して三千三十五人と、七五・三%に達しています。十二月一日に町議会に請願をいたしました。同時にまた、十四部落のうち十二部落が反対陳情しているようであります。議会では放射性廃棄物
調査特別委員会に十二月の十八日に付託をしているという現状になっています。
それから同じ隣の豊富町では、町民の反対署名は、有権者四千四百四十五人のうち三千四百三十六人、七七・三%に達しておりまして、十二月十日に町議会に請願をしている。町議会はこれを十二月の十八日、放射性廃棄物
調査特別委員会に付託して、既に去年の九月に出されている酪農家千四十人の署名の陳情もあわせて、この特別委員会に付託をしているということであります。また、この豊富町の酪農協同組合では、十二月の二十日に理事会で反対決議をしているようであります。
それから同じ隣接の中川町では、既にこれは九月の二十一日に町議会で正式な誘致反対決議をしているところでありますが、反対署名は有権者二千三百七十九人中千八百九十六人、七九・七%に及んでいるということであります。
さらにまた、やはり同じ隣の中頓別町、反対署名は有権者二千七百十四人中千八百一人、六六%であります。これは三月七日ですから、昨日出したようでありますが、町議会あてに請願を出している。三月二日には酪農振興会が総会で、これも反対決議をしている。
それからさらにもう一つの隣の町である浜頓別町では、これは低レベルが言われていた段階で既に町議会では反対決議をしたと思うのでありますが、今署名を進めているところであります。現在で有権者四千三百七十人中二千六百五十、さらに進めていって、今月の二十日過ぎに町議会に請願する見込みであります。既に町議会では、去年の十二月十九日に特別委員会を設置していろいろ勉強なさっているということであります。
隣ではありませんけれども、あそこの近くの比較的大きい町では稚内がありますが、稚内の反対署名は、今進めているところですが、現在一万九千八百五人の反対署名が集まっていて、これは有権者の五三・五%、稚内としては開市以来のこういう署名であるということであります。これは総務常任委員会に付託をいたしまして、十二月十九日以降いろいろ鋭意審議しているようであります。
そういう状況で、ざっと言ったところでありますが、さらにまた全道的なものもいろいろありますが、時間がありませんから省略いたしますが、そういう住民の反対の非常に広範な動きがあるということをひとつよく踏まえていただきたい、こういうふうに思うところであります。あるいはまた、道議会でも特別委員会で慎重に審議しているのは長官御存じのとおりであります。
さて、次に、使用済み燃料を再処理工場で再処理をして、そして高レベル廃棄物をガラス固化し、そして一次貯蔵、これは三十年ないし五十年、こう言われているわけですね。その後今度は、今の方針では深地層処分していこう、こういうことです。これはもう恐らく数千年はおろか数万年に及ぶ、いわば永久処分というようなことになっていくのであろうと思うのでありますが、この地層処分について、原子力委員会を中心にさまざまな御検討をお進めになっておられるということでありますが、その地層処分の処分システムに関連して、今問題になっている貯蔵工学センターの
関係というようなものを少し質問を申し上げたい、こういうぐあいに思います。
原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会の五十九年の中間
報告では、高レベル廃棄物の地層処分の開発スケジュールの第二段階で、いわば四つの
調査、試験を行うことにしているわけです。その四つの
調査の結果、総合評価を行うことによって処分予定地の選定をしよう、こういうことになっているわけであります。
その行う四つの
調査、試験というもののうち、まず
最初に出てまいりますのが、その先の段階、第一段階の有効な地層の
調査というところで選定をされたものの中から複数地点を選んで、概括的な広域
調査によって岩体規模などを
調査して候補地点を選定する、こういうふうになっているわけなんです。
そこでお伺いをしたいのでありますが、この広域
調査は既に行われたものか、行われたとすれば、その複数地点というのは一体どこどこなのか、その結果、候補地点を既に選んだのかということをお伺いしたいと思います。
-
○中村(守)政府委員 お答えいたします。
高レベル廃棄物の最終処分地の
調査につきましては、先生御指摘のように第一段階を終わったということで、いわゆるどういう地層だったらどういう問題があるかというようなことをいろいろ
調査をしてまいったわけでございます。具体的にどの地点がどうということまで
調査をしたわけではございませんで、これから第二段階としての広域
調査を行うということでございますが、現在までまだ、広域
調査でどの地点とどの地点とを
調査するかということまで、まだそこまでの段階にも至っておりません。そういう状況でございます。
-
○五十嵐
分科員 そこで、第二段階で言っていますのは、今私が申し上げました第一段階における——第一段階といいますか、四つの
調査のうちの一つ目の
調査によって候補地点を選定して、二つ目にその精密
調査を行い、三つ目にそこに深地層実験場を設けて、それから四つ目にその地上で環境工学試験施設を設けてさまざまな試験研究を行う、こうなっておる。さっき申しましたように、四つの
調査、試験の結果の総合評価によって処分予定地を決めていくということになるわけでありますから、したがって、これは
最初の広域
調査は非常に大事なことなんだろうというふうに思うのです。候補地点を選んで、そこをさらに精密
調査をし、そして実験場をつくり、環境工学センターをつくってやるというのですが、
最初の四つの
調査で一番基本になる広域
調査等についてまだ実は何もやっておらぬ、したがって当然地点も決まってない、こういうことの今
局長の御返事なわけでありますから、これはなかなか大変なことであります。それが決まらないで、環境工学センターの立地を決めるということにならないのではないですか。
この環境工学センターというのは、さまざまな計画を
内容として持つわけですが、その中の非常に大きな柱は、実は深地層実験場なんですね。さらにまた、この環境工学センターなわけですね。これは何かというと、さっき言いましたような地層処分の開発システムの中の第二段階における四つの
調査の重要な一つということに位置づけられているものが、この環境工学センターにおける深地層実験場と環境工学センターなんですから、これは前段の広域
調査によって複数地点でもそういうものも決まっておらぬというのに、どうしてこれが立地するということになるのですか。全くおかしいんじゃないかと思うのですが、どうですか。
-
○中村(守)政府委員 お答えいたします。
先生御指摘のように、これからの第二段階の進め方は、まず広域
調査を行いまして、それから順次候補地となり得るようなところを選定して精密
調査を行う。この
関係につきましては確かにシリーズでございまして、広域
調査を進めた後に精密
調査、こういう段階になるわけでございますが、最終的に候補地を決めるにつきましては、深地層におきます工学的な条件とかいろいろな勉強もしなければなりませんので、そういう
意味で別途深地層試験場を設けて、深い地層でのいろいろな問題を
調べようということでございます。
これはこの
報告書でも、そういう広域
調査、精密
調査を行うとともに、深地層試験場を設け云々と、こういうことになっておりまして、それら二つのものは並行して進めるようになってございます。若干文章上は非常にわかりにくい点がありまして、そう先生方御理解をされた点があろうかと思いますが、一緒に付随してつけてございます今後の進め方の線図ではそこら辺が明らかになっているかと思います。
それから、現在進めております貯蔵工学センター構想なるもの、これは何も深い地層の
調査をするということだけが目的ではございませんで、いわゆる高レベルの廃棄物の貯蔵に伴いますいろいろな問題点も勉強しようということでございまして、どちらかと申しますと、今東海にございます再処理工場から出てきます廃棄物を高レベルのガラス固化したものを移して、そこで貯蔵と同時にいろいろな実験も行うということ、こういったことの方の時間的な要請から現在いろいろ立地選定を急いでおるというような状況にあるわけでございます。
-
○五十嵐
分科員 違いますね、それは。後段の貯蔵工学センターというのが、何も深地層の
調査だけのことでないというのはそれはそのとおりですね。三十年ないし五十年の一次貯蔵というものが大きな柱だということはもう当然であります。しかし、同時に深地層実験場をつくる、約数百メートル以上の深さ、恐らく千メートル前後ですね、立て坑を掘って、そこに実験ルームをつくってやる。一本数十億円かけてやるわけでしょうけれども、これは重大な処分、高レベルを一体どういうぐあいに処分するか。何万年間も人間の生活圏から隔離していこうという、ここのところが一番今平和的な原子力利用というものの中の重要なポイントになっている部分で、これの一番大事なところ、ここの中に入っているわけですからね。だから、そこは軽く考えてはもちろんいないんでしょうが、僕らは極めて重視しているところなんですよ。しかもそれは、後で時間があれば触れますが、最終的な処分地につながる可能性が非常にある。少なくてもそういう可能性を否定するものではないということでありますだけに重視をしているわけです。
そこで、その前段の話でありますが、これはこの論文が適当でないというのでないですよ。非常に丁寧に解説をしていて、それは全然間違っていない、そのとおりだろうと思う論文で、これは池田
課長さんが出している論文の一部でありますが、「第二段階において処分予定地選定を行うための具体的作業としては、主に次のような四つの
調査・試験が予定されている。」その一つ目に「第一段階で選定された有効な地層のうちから複数地点を選び、概括的な「広域
調査」によって岩体規模等を
調査して候補地点を選定する。」いいですか、その次に「次に候補地点において、ボーリング等を行ってサンプルを採取するなどし、より詳細な「精密
調査」を行う。」そうですね。「あわせて、地下数百メートル以深の深地層に試験場を設け、第三段階以降の研究・開発に必要な項目・手法の開発、評価データの蓄積などを行うため、天然バリア、人工バリアに関する研究、試験を行う。」こういうことにもなっているわけですね。
だから、まず第一段階で選定された有効な地層のうちから複数地点を選んで、概括的な広域
調査によって岩体規模等を
調査して候補地点を選定するということが先に来るわけですね。その候補地点において、その次に書いてありますように、ボーリング等を行ってサンプルをとるなどの精密
調査を行う、そしてまた深地層実験場をつくる、こうなっているわけですからね。これはそのとおりなんです。何も間違っていないわけですね。ですから、
最初の広域
調査が行われて、複数地点を選んで概括的な広域
調査を行って、そして候補地点を選定するという作業が行われていないということになれば、これは貯蔵工学センターの立地ということは全然それはしようのないことだ。貯蔵というものだけやるなら別ですよ。しかし、その中で深地層実験場をつくるというこの部分に関しては、これはやるということにならぬということになるのじゃないですか。——ちょっと待ってください、もう余り時間がないから。
それともう一つ、これらをずっと通じて感じますことは、今申し上げたようなことでありますから、したがって言えることは、原子力委員会は今言った高レベル放射性廃棄物の地層処分システムの第二段階を「処分予定地の選定」段階、こういう呼び方で位置づけているわけですね。原子力委員会の専門部会の天沼会長も同じく論文で、これらの
調査の総合評価を行って「その試験地が条件に合えば将来の処分立地となり得る場所になる」だから「この段階を「処分予定地の選定」段階とした。」と述べておられるわけであります。
ですから、ここで明らかなように、深地層実験場や環境工学センターを含む貯蔵工学センターというのは、実は数万年に及んで核廃棄物を地下に抱いていくという永久処分地となり得る場所、天沼さんの表現によると、なり得る場所となるわけですね。今までもずっといろいろ審議の中で御質問を申し上げ、お答えを聞いてきた、そういう中でも、その処分場になるということは、これはあそこを
調査してみなきゃわからぬことで、なるともならぬとも言えませんというお答えをずっといただいてきているわけで、その可能性を全くは否定してきていないわけでありますから、僕も非常にその点について疑問を持っていたところでありますが、今度のこういう中間
報告や、それをめぐるいろいろな論文であるとかいろいろなことで、どうもそのことがかなり明確になったというふうに、実は私は理解をしているのであります。
時間が参ったようでありますが、
局長さん、お話がございましたらどうぞ。
-
○中村(守)政府委員 お答えいたします。
先生今御指摘の論文の点につきましては、実は、池田要が記述した文章につきましては、
本人に確認いたしましたが、あの文章の中ではあくまでも広域
調査それから精密
調査と、これは確かにシリーズでいくわけでございまして、言葉といたしましてその次に「あわせてこと書いてあるわけでございますが、この「あわせてこと書いてある御解釈を先生は、精密
調査を行って、それに付随してやる、こういう御解釈のようにも受け取られるわけでございますが、これはあくまでも並行してやるという、答申を、
報告をまとめる際にそこは非常に注意深く表現もしたわけでございまして、あくまでも精密
調査とシリーズになる性格のものではございませんで、広域
調査、精密
調査というものと並行して、深い地層におけるいろいろな実際的な試験を行ってみて、そのデータを最終的な候補地の選定に資するという、そういう趣旨でございます。
それから天沼先生の論文につきましても、先生に御見解をお聞きしたわけでございますが、自分は専門家の立場として書いた文章でもあり、一つの例として書いたものであるということでございます。少なくとも、私どもが現在貯蔵工学センターで進めようとしているそういう深い地層における試験につきましては、そこを処分地の候補地として、もう決定した上でそういう
調査をするということではございませんで、あくまでもその深い地層の中におけるいろいろな問題について
調べてみて、実際にこれは別の場所になるような処分地等につきましての選定の資料に供しようということでございまして、そういう方針で我々はこの工学センターの構想が進められておるというふうに理解をしておるわけでございます。
-
-
○伊藤主査 時間を過ぎているので、簡単にひとつお願いいたします。
-
○五十嵐
分科員 局長、つまり貯蔵工学センターの場所では処分地にするという考えはない、こういうことでよろしゅうございますか、今のお話では。
-
○伊藤主査 中村原子
力局長、簡潔に答えてください。
-
○中村(守)政府委員 はい。お答えいたします。
処分地につきましては、今後十年間にわたるもろもろの
調査を進めた上で候補地を決定するということでございまして、幌延を今処分地とするということで進めているわけではございません。
-
○五十嵐
分科員 いやいや、貯蔵工学センターのことですよ。
-
○中村(守)政府委員 貯蔵工学センターにつきましては、いろいろ候補地もございますが、幌延は幌延町自身からいろいろ御要望もございますし、有力な候補地の一つとして、現在立地についての可能性をいろいろお願いをしておるわけでございます。
-
-
○中村(守)政府委員 処分場とするという計画を持って進めているわけではございません。
-
○五十嵐
分科員 いや、しないのかということですよ。——まあ時間のようでありますから、いずれまた……。
-
-
○
玉城分科員 最初に長官にお伺いをいたしますが、我が国はこれからますます海底資源の
調査、開発ということが非常に重要なことになると思うわけです。ところが、我が国の場合、アメリカあるいはフランスとか、あるいはソ連かもしれません、これに比べて、非常に立ちおくれているというふうな指摘もあるわけですが、現状はどういうことになっているのでしょうか。長官からちょっとお答えいただきたいと思います。
-
○竹内国務大臣 お答えいたします。
海底資源の
調査につきましては、アメリカ、フランスに比較して我が国が立ちおくれているのではないかという先生の御指摘は、私もそのとおりだと思っております。御案内のように、私どもは「しんかい二〇〇〇」という二千メートル級の潜水
調査船を持っているわけでございますが、この船をもってしては日本をめぐる海域のすべてをカバーできないわけでございます。そういう
意味では、私どもとしては、もっと大きな能力を持つものとして、六千メートル級の潜水
調査船というものをぜひ持ちたいということで、六十年度予算におきましてその
最初の段階の設計費を認めていただいているところでございます。
-
○
玉城分科員 六十年度ではその設計
調査費ですね。いつこの「しんかい六〇〇〇」は建造され、実用化されるのでしょうか。
-
○内田政府委員 お答えいたします。
「しんかい六〇〇〇」と称しておりますが、六千メートル級の
調査船につきましては、日本で初めてのものでございますので、開発研究ということが重要でございまして、六十年度に設計研究及び所要の研究を行うということにいたしております。その研究を踏まえまして、できるだけ早期に建設に進みたいというふうに考えているところでございます。
-
○
玉城分科員 ですから、先ほど長官もおっしゃいましたように、立ちおくれているのでこの「しんかい六〇〇〇」というものが必要である、やはりこういう海底資源の
調査、開発ということを早急に、一日も早くしていくためには「しんかい六〇〇〇」級が必要だと思うわけでありますので、できるだけ早い機会に建造されるように要望いたすわけであります。
それで、昨年の九月にこの「しんかい二〇〇〇」で南西諸島、いわゆる沖縄周辺海域の海底
調査をされていらっしゃるわけですが、その
調査結果の概要について御
報告をいただきたいと思います。
-
○内田政府委員 お答えいたします。
沖縄周辺海域の
調査につきましては、昨年の九月に海洋科学技術センターが沖縄県の水産試験場、琉球大学及び東京大学の協力を得て実施し、水質、水産、地形、地質等の
調査のため、合計七回の潜航を行ったわけでございます。
水産
関係の潜航
調査では、水深六百四十メートルの海底におきまして、水産生物の観察、試料採取等を行っております。
それから地質、地形
関係の潜航
調査では、那覇の北北西約百七十キロメートルのいわゆる沖縄トラフの潜航
調査を行っておりまして、海底の地殻運動及び熱水活動の研究等に資するために、海底における海丘の観察を行い、溶岩の試料採取等を行ったところでございます。
研究の詳細につきましては、現在
関係の専門家の間で研究成果を取りまとめていただいておるところでございます。
-
○
玉城分科員 今の
報告で、私全くこういうのは素人で専門的なことはよくわかりませんが、やはり関心のあるのは、海底の熱水鉱床、いわゆる海底資源、有用な鉱物資源というものが非常に大事だ。したがいまして、昨年九月行われた、ただいま
報告のありましたそういう一応のデータからして、いわゆる熱水鉱床の存在の可能性が考えられるのか全く考えられないのか、その辺いかがでしょうか。
-
○内田政府委員 熱水鉱床は
一般に水深二千メーターから四千メーター程度の火山活動の活発な深海底に賦存しておるものでございまして、亜鉛、銅、鉛等を主要成分としているもので、このような熱水鉱床の
調査は、先生御指摘のように、非常に重要なものだというふうに考えております。
ただいまの西南諸島での結果でございますが、まだ二千メーター程度の
調査でございますので、十分な結果というものについて申し上げられる段階ではございませんが、
一般論といたしまして、日本周辺で熱水鉱床の可能性として地球科学的な研究から推測いたしますと、西南諸島というのは一つの可能性を持った場所であるというふうに考えております。
-
○
玉城分科員 その熱水鉱床というものがどれだけの有用な鉱物資源が含有されているのか、簡単で結構ですからちょっと説明いただけますか。
-
○内田政府委員 ただいまの御質問でございますが、今数量的なデータを持っておりませんが、熱水鉱床と申しますのは、亜鉛、銅、船といったものにつきまして非常に有望な成分を含んでおるということが言われておると理解しております。
-
○
玉城分科員 そういうことで、先ほど長官もおっしゃいました「しんかい六〇〇〇」をやはり早急に建造されるように、そしてそういう有用な鉱物海底資源が早く
調査、実態把握できるように、今
局長さんのお話にもありましたとおり、昨年九月の南西諸島海底において、これからの
調査にまつわけですけれども、熱水鉱床という存在も考えられるということでありますので、やはり「二〇〇〇」クラスではそれが限界じゃないかと思うわけですので、ひとつ御努力をよろしくお願いしたいのです。長官いかがでしょうか。
-
○竹内国務大臣 先ほど申し上げましたように、私は「しんかい六〇〇〇」の建造はできるだけ早くいたしたい、今後頑張るつもりでございます。
-
○
玉城分科員 そこで、昨年九月「しんかい二〇○○」で
調査をされた琉球大学の木村先生、この沖縄トラフ、その地殻のそういう
調査を踏まえて、沖縄周辺、大地震が起こる可能性があるということを、この間九州大学のシンポジウムで御発表していらっしゃるわけです。その先生の御見解を、報道での発表の
内容ですけれども、ちょっと読ませていただきますが、それについて
科学技術庁としての御見解を承りたいわけですね。
この木村先生のシンポジウムでの発表なんですが、一六〇〇年以来九州、奄美、沖縄、宮古、八重山とそれぞれほぼ百年置きに大地震が発生しておる。特に日向灘で五回大地震が起きており、その前後約三十年の幅で各地に次々大地震が発生している。だが、一九六八年の日向灘の地震のときには、既に他の地域は発生しているが、沖縄だけはまだ起きていない。一九八〇年に久米島沖で起きたマグニチュード六・七の地震がその大地震だと言われているが、決してそうではない。また、大地震や噴火の前には、無感、有感の微小地震が多発することがわかっているが、沖縄本島では数年前から同様な小さな地震が多発している。昨年八月から十一月にかけて海底地震計十二台を気象庁が設置して観測したが、その結果は噴火中の火山にでも置かなければ起きないような小さい地震が頻発しているとのデータが出ている。さらに沖縄本島から慶良間、久米島にかけての円形の地域は、ほとんど地震が発生しておらず、エネルギーがかなりたまっている。そのほか一七七一年の明和の大津波は海底の地すべりによるのではないかとの仮説のもとに、今後地すべりがあればあのような大津波が再び起こり得るとも指摘を、これは報道での発表
内容ですが、していらっしゃるわけです。
この学者のこういう指摘に対して、
科学技術庁としての御見解を承りたいわけです。
-
○内田政府委員 お答え申し上げます。
沖縄周辺における地震観測につきましては、現在気象庁が地震計七台、検潮計二台、
建設省国土地理院が検潮計一台を設置して観測を行っております用地震予知に関する研究は、大学及び
関係機関が実施しており、それらの研究に基づくデータは、建設省の国土地理院に設けられた地震予知連絡会に提供され、
関係各機関の専門家によります総合的な判断が下されるという体制になっております。沖縄周辺における観測データにつきましても、地震予知連絡会に
報告され、専門家による十分な検討のもとに判断されるというふうに考えております。
ただいま先生御指摘になりました問題も、この地震予知連絡会におきまして十分に検討されるというふうに理解しております。
-
○
玉城分科員 ただいまの
科学技術庁としての見解は、その地震予知連絡会で検討される、
科学技術庁としてはどうともこうとも言えないということですね、結論を簡単に言えば。科技庁としてはこういう学者の今の見解について、肯定も否定もできる立場ではない、あるいは能力を持っていないということかもしれませんね。そのおっしゃいました地震予知連絡会は建設省ですね。よろしく御見解を承ります。
-
○春山説明員 地震予知連絡会は、その連絡会を構成しております
関係各機関から全国にわたる観測研究の結果が
報告されております。その中には沖縄
関係のものも含まれておりますが、ただいま先生御指摘のような研究結果というのは、まだ
報告されてございません。で、この点に関する連絡会の見解は、まだ得られておりません。
ただ、連絡会浅田会長の御意見によりますと、こういった結論を得るに至った過程、例えばどういうデータを使ったとか、そのデータをどんなふうに解析したとか、そういった過程がわかりませんために、その説が当たっているのかどうかということは、にわかには断定できない。ただ、気象庁の地震観測結果では、この付近は余り異常とは思えないのではないか。また
一般的に申しまして、地震が発生した後で詳細な
調査をした結果、初めて空白域が見つかるということが多いものでございまして、空白域があると軽々に公表するのはいかがなものか、こういうことでございます。
-
○
玉城分科員 今あなた、まだ地震予知連絡会で、さっき申し上げました木村先生の見解について検討もしたこともないということをおっしゃりながら、今浅田会長の私見ということを、あたかもそういう学説がどうのこうの、そういうイメージを与えるようなことをおっしゃっておる。これはあなたこそ軽々ですよ。これから、そういう学者のこれまでの
調査を踏まえて、あるいはデータも踏まえて、こういうことが起こる可能性があるという指摘に対して、これはこれから十分検討されるというなら話はわかりますけれども、検討もしないうちにそういうふうに抑えつけるというのはとんでもないことです。いずれにしてもそういうことがあり得るわけです。そして浅田会長さんにしましても大地震が起こる可能性もあり得るということをおっしゃっているわけでしょう。これはいかがですか。
〔主査退席、
大内主査代理着席〕
-
○春山説明員 この付近の全般的なことにつきましては、これも浅田会長の御意見でございますけれども、沖縄周辺海域におきましては、
理由ははっきりいたしませんけれども、地震の再来期間というのはかなり長いように思います。それから那覇はかなり古い歴史を持っている町でございますけれども、その那覇において大
被害の
記録がない、こういったことから、これまで地震予知連絡会の関心がそれほど高くなかったということは確かなことでございます。しかし、沖縄は島弧でございますし、時期がいつかというふうなことは別といたしまして、大地震があり得るということは否定はできない、こういうことでございます。
-
○
玉城分科員 また今ごろ否定はできないとか、そういうことをおっしゃってはだめですよ。いずれにしてもそういう大地震が起こらないことを願うわけですから、これは当然ですね。こんなことが起こったら困る。ですから、そういう専門の学者の指摘が
調査を踏まえてあるということを、そんなことはあり得ないなんということでなくて、やはりちゃんと検討をしていただくのが当然筋だと私は思うわけであります。
それで気象庁の方にもお伺いしたいのですけれども、沖縄での地震観測業務の体制と申しますか、これをちょっと簡単におっしゃっていただくとともに、沖縄の気象
関係の方々から、地震観則業務陣容あるいは設備も貧弱であるという要望も強くありまして、そういうことも踏まえて、それとあわせて、時間もどんどん過ぎていきますから、地震の予知観測体制は沖縄はどうなっていますか。
-
○津村説明員 気象庁は、沖縄県におきましては、那覇の沖縄気象台を初め七地点において各種倍率の地震計を設置いたしまして地震観測を実施しております。具体的な場所は、沖縄気象台は那覇でございます。あと石垣島、与那国島、宮古島、南大東、名護、久米島、以上七地点において地震観測を実施しております。
気象庁は、地震予知計画の中では全国の大中小地震の常時監視を担当いたしておりまして、沖縄県もその一環として同じレベルの観測が展開されております。
-
○
玉城分科員 沖縄における地震の予知観測体制はどういうふうになっていますかということをお伺いしたいわけです。
-
○津村説明員 現在気象庁が直接地震予知を担当いたしておりますのは、地震予知の中でも短期直前でございますが、これは全国の中でも東海地域のみでございます。その他の地域に関しましては、今申し上げましたように、大中小地震の観測及び検潮の観測等を行っておりますが、そういう
意味で同じレベルの観測を行っているということでございます。
-
○
玉城分科員 ですから、その予知観測体制、今おっしゃいましたように東海のみであって、いわゆる沖縄についてはそういうことをしていないということですから、長官はその推進
本部長になっていらっしゃるわけですから、後でこれは長官に御見解を承りたい。
その前に、実はこの木村先生は、琉球大学に学術的な立場からそういう地震のデータ、地震計一つもないということをおっしゃっておられるわけです。文部省の方いらっしゃっておりますでしょうか。それではちょっとその現状を簡単にお答えをいただきたいと思うのです。
-
○重藤説明員 お答えいたします。
地震予知のためには観測、研究の充実ということが大事であることは申すまでもございません。大学も重要な部分を担当して実施をいたしておるわけでございますが、琉球大学につきましては、大学の中の教育研究の体制との関連もあると思いますが、今までこの地震の観測なり研究ということについて御計画や要望は承っておりません。多分地震計も大学自体においては設置されていないと思います。
なお、木村先生はもともと海底堆積地質の専門家でございますが、そういう
関係で海底の地震あるいは地殻変動というものの専門家としていろいろ観測をされておることは承っております。
なお、例えば琉球大学に地震計を設置して観測あるいは研究をするかどうかということにつきましては、琉球大学の計画なり要求なりを伺った上で検討いたしたいと考えております。
-
○
玉城分科員 琉球大学自体がそういう要求あるいは計画があれば検討したいということですから、木村先生のそういう研究の見解も発表されているわけですから、ぜひ地震計は、そんなに多額な金じゃないと私は思うのです、いろいろな種類があるとは思いますけれども。それだけ問題提起されて、この先生は昨年科技庁の「しんかい二〇〇〇」で海底、いわゆる沖縄トラフの
調査等を踏まえてそういうことをおっしゃっているわけですから、ぜひ文部省の方でも御考慮いただきたい、いかがでしょうか。
-
○重藤説明員 御要求を伺った上で検討してまいりたいと思います。
-
○
玉城分科員 それで、竹内長官は地震の推進
本部長でいらっしゃるわけですから、今お聞きになられましたとおり、日本列島いろいろな
意味で地震というものは、今沖縄付近についてもそういう問題提起があるわけですから、地震の観測体制を充実あるいは強化するということは、私たち素人が考えましても当然必要なことだと思うわけです。ですから長官、その推進
本部長でもいらっしゃる立場から
関係省庁を督励されて、ぜひそういう面の御努力をしていただきたいと私は要望するわけですが、長官の御所見をお伺いいたします。
-
○竹内国務大臣 先生御指摘の御趣旨も体して、さらに一層意を用いてまいりたいと思います。
-
○
玉城分科員 地震から質問をもう一つ変えるのですが、これは長官に
最初お伺いしたいのです。
最近よく国際種子戦争ということを言われておりますし、あるいはそういう
意味でも、我が国も先ほどの海底資源
調査、開発等の問題と同じように、諸外国に比べて立ちおくれているという指摘があるわけですが、長官いかがでしょうか。
-
○竹内国務大臣 これから二十一世紀までのいろいろな科学技術の潮流を予測いたしますと、特に大きな
意味合い、重要性を持ってくると考えられますのに、いわゆるライフサイエンスがあるわけでございます。そしてそのライフサイエンスの基礎になるものは、何と申しましても遺伝子資源の確保であろうかと思います。そういう
意味では、先生も御
承知かと思いますけれども、昨年六月に私どもの諮問機関である資源
調査会の方から「遺伝子資源としての生物の確保方策について」という大変貴重な、重要な提言をいただいておりまして、私といたしましては、私ども
科学技術庁でやるもののほかに、
関係省庁に対しましても答申の方向に沿った施策の推進をお願いもしておるし、これからも随時声をかけてまいりたいと思います。
-
○
玉城分科員 今長官おっしゃいましたとおり、遺伝子資源生物の確保、野生植物、これは当然重要な関連があるわけで、簡単に言えばそういうことだと思うのです。その必要性ということをどなたか
局長さんがおっしゃるのでしょうが、その必要性はわかるけれどもこれからそれをどうするのか、そういう保存するためのいろいろな体制が当然必要だと思うのです。それはいかがでしょうか。
-
○堀内政府委員 お答えいたします。
遺伝子資源の確保に関しましては、西欧諸国におきましては非常に古く十八世紀のごろからその戦略的な意義を重視いたしまして、国策として積極的に取り組みまして非常に大きな実績を上げてまいっております。我が国におきましては農作物の改良といったような部面で非常に着実な努力が続けられてきたわけでございますけれども、広く生物全体に着目するという観点で主要国に非常に大きなおくれをとっておるというのが実態でございます。
最近のライフサイエンスの非常な発展ということで、野生植物が、現在は用いられておりませんけれども将来非常に有効であろうという新しい生物の利用の可能性というのが強く示唆されております。どういうふうに具体的にやるかということにつきましては、これはいろいろ今後の検討課題かと思いますけれども、そういうことを含めまして今現在専門家を集めまして、具体的には遺伝子資源確保推進会議というものを科技庁に設置いたしましてそのもとで検討を進めておる、こういう状況でございます。
-
○
玉城分科員 それは先ほど長官もおっしゃいましたからよくわかるのですよ。それにはやはり施設というのが必要だと思う。
実は、昨年岩動前長官が、今おっしゃるような一環として沖縄の西表島にそういう野生植物種子保存センター的なものをつくるということで視察をされた経緯があるわけです。私は、長官が沖縄にいらっしゃったときにじかにお会いしまして、この沖縄というのは亜熱帯、熱帯の地域でそういう野生植物が非常に豊富だから適しているのではないかということを申し上げた経緯もあるわけです。簡単に言いますと、そういう施設をつくるということを当然我が地域に、我が村にという誘致要請が来ていると思うのです。その中で沖縄県からもそういうことで来ているのかどうか、それをお答えいただきたいのです。
-
○堀内政府委員 ただいま申しましたように、具体的にどういう植物を対象に集めたらいいかとか収集、保存、利用の方策について今検討しておりますが、具体的にどういう構想でどういう地点に建てる、そういったところまではまだ検討段階が進んでおりません。
先ほど御指摘のいろいろな県から陳情があるだろうということでございますが、これは幾つかからそういう施設をぜひとも誘致したいということがございまして、沖縄の方からもそういう申し出が参っております。
-
○
玉城分科員 時間が参りましたので、最後に長官、私はそういう
意味で、さっき申し上げましたとおり、そういう条件として候補地としては沖縄の西表島というのが私の立場からすれば、沖縄の立場からすれば最適だと思うのです。ですから、候補の一つとしては考えられると思うのですが、いかがでしょうか。
-
○竹内国務大臣 先ほど
局長から、現段階はまず青
写真をつくる段階だというぐあいに申し上げたわけでございます。したがいまして、現在の段階におきましてはどこの地点、あるいはどこの県が候補地だということはまだ申し上げられない段階でございますけれども、沖縄県の熱意は十分に念頭に置いてまいりたいと思います。
-
○
玉城分科員 長官御自身にもぜひ御視察をお願いしまして、質問を終わります。ありがとうございました。
-
-
○
日笠分科員 時間も余りありませんので、早速質問に入らせていただきたいと思います。
本年の一月、中曽根総理は大洋州諸国訪問をされました。一月二十九日の衆議院本会議におきまして、いわゆる低レベル放射性廃棄物の海洋投棄は現地の不安や了解を無視して独断で投棄することはないとはっきり申し上げ、現地の共感を得てまいりました、このように代表質問にお答えになっておられます。また、三月初めには北マリアナ連邦の代表団が来られまして、長官も同席をされて、海洋投棄を永久にやめようという陳情といいましょうか、要請の場に立ち会われていると思います。
こういういろいろな動きを勘案いたしますと、日本の海洋投棄計画は凍結されてしまってもう見込みがない、このように考えるべきか。と申しますのは、
関係諸国は日本は海洋投棄計画を断念した、このように報道しているところもあるわけであります。今後の海洋投棄計画というものはあくまでも了解を得て推進といいましょうか、了解を得ながらこの計画は堅持する、こういう方向なのか、あくまでも永久凍結だ、こういうお考えなのか、この辺の動きから勘案して、長官の現時点でのお考えをお聞きしたいと思います。
-
○竹内国務大臣 お答えいたします。
私も先般お越しになりました北マリアナ連邦の代表の皆さんとお会いいたしまして、その際、私からも総理が申し上げているようにいわゆる海洋処分につきましては
関係国の懸念を無視して独断的に強行するつもりはないということを申し上げましたが、先生御
承知かと思いますけれども、目下ロンドン条約の締約国協議会議におきまして進められている科学的検討という国際的なそういうコンセンサスの形成も一方進められておるわけでございまして、それらをにらみながら私としては慎重に対処してまいりたいと思っております。
-
○
日笠分科員 慎重ということは、この海洋投棄の計画はもうあきらめた、断念したというわけではないわけですね。もう一度。
-
○竹内国務大臣 率直に申し上げますと、陸地処分と海洋処分の二本立てで行うというのが基本の方針でございますけれども、これに対するいろいろな反対の動きというものも私どもは無視できないと思いますので、当面は事実上無理かと私は思っておりますが、しかし理論的な選択肢としては海洋処分も十分に検討されるべきだろうと思っております。
-
○
日笠分科員 当面というのは、二、三カ月でも当面ですし、十年、二十年も当面でありますけれども、
関係諸国の友好ということを考えましてもこういう国のお声を無視して一方的にできるというわけにはいかないと思いますし、慎重に対処していただきたい、このように思うわけであります。
続きまして、岡山県上斎原村に動燃の人形峠の濃縮ウラン工場がございます。これは新聞報道によるわけでございますけれども、人形峠のパイロットプラントを改修し、ここで使用済み
核燃料の回収ウランの濃縮計画を立てておる。今年度一千六百万円の
調査費、研究費と申しましょうか、計上されておるそうでございます。そこで地元の声は、もしこの使用済み
核燃料の回収ウランの濃縮ということになりますと、あわせて低レベルの放射性廃棄物も一緒にお願いしたい、こういうふうな突破口になりはしないか、こういう一部の声もあるわけでございますが、その点どうでしょうか。
-
○竹内国務大臣 先生御指摘のように、動燃におきまして人形峠のパイロットプラントで回収ウランの再濃縮を行いたいという計画のあることは私も
承知をしております。しかし、これはあくまでも回収ウランの濃縮に関するもののみでございまして、今御懸念の放射性廃棄物の処分とは無
関係でございます。ですから、これを契機に人形峠で放射性廃棄物の処分を行うという計画は、私どもは持っておりません。
-
○
日笠分科員 そして、今のところ岡山県における放射性廃棄物の貯蔵地なり処分地ということは考えてないということでよろしゅうございますか。
-
○竹内国務大臣 おっしゃるとおりでございます。
-
○
日笠分科員 こういう小さなニュースも、大変大きな衝撃を地元に与えるわけでございます。
と申しますのも、これは昨年の三月、総理府広報室が原子力ということで世論
調査をされておられます。これは、全国の二十歳以上の方々三千人の層化二段無作為抽出法ということでアンケート
調査をしておるわけでございます。
この
調査表を見ますと、これは原子力発電に対する不安感があるかどうかというアンケートでございますが、原子力発電イコール
核燃料ということでございますので、これは原子力発電ということでございますが、このデータを見ますと、「心配(不安)に思うことがある」が七〇%でございます。これは五十五年の十一月、五十六年の十一月、そして昨年の三月と三回の
調査結果が出ておりますが、五六%、五九%、七〇%と年々アップしておるわけであります。ということで、
一般国民の皆さん、大変不安、心配をしておる。こういう事実は、総理府がやられた
調査でございますから、間違いない事実だと思います。
どうして心配なのか、どうして不安なのか、こういう
理由を問いますと、「
事故や故障などで放射線(能)が漏れるから」というのが四六%、また、「放射線(能)が人体や子孫に影響を与えるから」というのが三五%、それから、「原子力発電所のしくみがよくわからないから」が一八%、「放射線(能)についてよく知らないから」が一八%。
こういうふうに見ますと、いわゆる
核燃料、原子力燃料というものの実態というものが広く国民に知られていない。いわゆる知識不足であるがゆえの不安、心配でなかろうか、このように総理府のやられた
調査から感ずるわけでございます。いわゆるPR、安全性の広報宣伝、こういうものが重要ではなかろうか、このように思うわけでございます。
この上斎原村の人形峠に附属展示館がございます。五十八年の十一月オープンされまして、六百三十七平米のいわゆる原子力燃料といいましょうか、
核燃料といいましょうか、濃縮の過程から原子力発電の仕組みだとか、こういうものを展示しておるわけでございます。岡山県の県北の過疎地域で、岡山市から車で三時間から三時間半ぐらいかかるような大変な過疎地でございますが、そういうところにもかかわりませず、一年間に四万八千九百人ぐらいの方が見学されておるわけでございます。
私は、全国の原子力発電所に附属するPR館等々のいろいろな資料を集めました。多いところは二十万というところもございますけれども、四万八千人のこの上斎原村の附属展示館、これは多い方の部類に入るわけでございます。ところが、先ほど申し上げました、スペースも狭いし、私も一度視察をさせていただきましたけれども、非常に
内容が、チャチと言っては何ですが、貧弱でございます。例えば九州の九電さんがやっておられますエネルギー館なんか見ましても、それはもう天地雲泥の差でございます。そういう
意味におきまして、ぜひひとつこの岡山県の人形峠、第二号館でも結構でございますし、どちらを第一にするか第二にするか、これはどちらでもいいわけでございますが、特に今後回収ウランの濃縮をするとか商業プラントという話も出ておりますし、先ほどの総理府のアンケート
調査を見ましても、もう少し幅広く、岡山県民、また鳥取であるとか兵庫県、隣接しておりますので、そういうところの皆さんの安全性ということをしっかりとPRする、そしてもって皆さん方の御協力も得ていく、こういう方向で、現在第二号館と申しましょうか考えておられる、このように聞いております。これから六十年度予算でございますけれども、現時点で御答弁できる範囲で結構でございますので、概要、予算規模、岡山県とどこまで協議が進んでいるか、こういうところをお願いしたいと思います。
-
○中村(守)政府委員 お答えいたします。
原子力
関係のPRにつきましては、政府におきましても各種の広報活動を通じまして鋭意努力しているわけでございます。
先生御指摘の上斎原村におきますPR館につきましては、これは動燃事業団の施設の附属として現在のものはできておるわけでございますが、近く岡山県の方でもこういう施設をつくりたいということでございまして、これにつきましては電源特別会計の臨時勘定の方で、原子力発電施設等を有する各県に対しまして、この施設整備費の一部または全部に充てるというようなことで、約一億九千万円を定額補助するという制度になっております。
そういう中で、今後県がつくります施設につきましては、私どもといたしましてもできる限りの指導助言、あるいはそのほかいろいろバックアップすることがございますればいろいろ応援してまいりたい、こう考えております。
-
○
日笠分科員 約一億九千万円、これは屋家、建物だけですか、それとも中の設備といいましょうか、展示品、これも入って一億九千万ですか。いかがでしょうか。
-
○中村(守)政府委員 中の展示物を含めましてのものでございます。
-
○
日笠分科員 中の展示物まで含めてこういう予算になりますと、今あります附属展示館と余り
内容の変わらないものになるおそれもあるわけでございます。先ほど申し上げました全国各地のPR館またエネルギー館等々、私も何カ所か視察させていただきましたけれども、これで見ますと、提供例えば三菱重工さんであるとか東芝さんであるとか、こういうようになっているのが多いようでございますが、そういう
関係の業界、業者の方にも御協力を求めるということは考えられるのでしょうか、どうでしょうか。
-
○中村(守)政府委員 お答えいたします。
現在構想されておりますのは、岡山県の施設ということでございますので、中への展示物その他につきましては、岡山県の御判断によりまして行うことでございますが、内部の展示物に
関係各団体等からいろいろ御後援いただくということは、十分可能なことであろうかと思います。
-
○
日笠分科員 続きまして、名称、ネーミングの問題でございます。
PRセンターであるとか、非常にいきな名前でビジターハウスとか、これは原発の隣にある展示館でございますけれども、サービスホールとかという名前のところとか、いろいろございますが、この上斎原村につくろうとされておられる第二展示館と称すべきもの、これは原子力広報研修施設が正確な名前だそうでございますが、この名前に固執されて、これでなくちゃだめだということでしょうか、それとも地元の皆さん、また岡山県の御意見をお聞きして、名称の方はいかようにでも弾力的に対応できる、こういう種のものでございましょうか。
-
○竹内国務大臣 今先生御指摘の原子力広報研修施設というのは、これは実は予算上の名称でございまして、私どもとしてはこれに固執はいたしません。岡山県におきまして、その館の目的、性格、そういったものがわかりやすい適当な名称があればそれを選んで結構でございます。
-
○
日笠分科員 大変ありがたい御意見だと思います。
私もある原子力に携わる専門家の方にお聞きした御意見でございますが、このPR館、展示館、名前は先ほど長官がおっしゃったように弾力的に使えるわけでございますけれども、この中に展示するもの、これが問題だということで、二十一世紀を担う青少年、こういう方々に安全性というものを知っていただく、これが将来日本の原子力産業と称するものへの大きな認識になっていくのだということで、何回も出しますが、九州のエネルギー館なんかに行きますと、子供さんが手で回せば今のあなたの運動量はキロワットにして何キロですと出ますし、ロボットもありますし、子供さんが行っても非常に楽しめる、そういうふうな展示物もあるわけでございます。岡山県がいろいろと考えて展示物をつくるということでございますが、できれば御指導いただきまして、またいろいろな御助言もいただきまして、青少年向けの非常に楽しい展示館にしていくべきではなかろうか。例えば今コンピューターゲームがはやっておりますが、このソフトの方のコンクールをやるとか、こういうようなものもしていく。これは岡山県がそういうふうに考えれば、そういう弾力的な施設の運用といいましょうか、展示物の運用といいましょうか、これはできるのでしょうか。
-
○中村(守)政府委員 お答えいたします。
予算は定額補助ということでございますが、これは岡山県の方でいろいろと資金をお足しいただいて立派な館をつくるということは結構なことでございまして、そういったところまでとやかく申し上げるわけでもございませんし、それから館の中の施設物につきましては、予算の使用目的からいいまして原子力のPRということはもちろんでございますが、それとの関連において十分御説明がつく限りにおいていろいろな応用動作は可能かと思います。
-
○
日笠分科員 続きまして、この津山圏域、上斎原村、それに隣接する町村、隣隣接の市町村、こういうものに電源三法による交付金八億円が計上されておるわけでございます。
〔
大内主査代理退席、主査着席〕
これは昨年でございますが、岩動前長官が人形峠を視察されました。竹内長官も、御多忙とは思いますがお時間があればぜひ御視察を賜りたいと思うわけでございますが、このときに、地元新聞ではこのように報道されております。「原型プラントはこれは今着工中でございますが、「電源三法に基づき
関係市町村に交付される電源立地促進対策交付金の対象外に置かれているが、この点について岩動長官は「政令改正など
関係省庁と協議を急ぎ、来年度予算に」すなわち六十年度でございますね、「計上できるよう前向きで検討したい」こうおっしゃっておられますが、その後いかがでしょうか。
-
○中村(守)政府委員 人形峠につきますウラン濃縮の原型プラントに伴います立地交付金につきましては、現在既に電源特会に、御審議をお願いしております来年度予算の中で予算的措置も講じておりまして、原型プラントを交付の対象にするということで、立地分、隣接市町村分を合わせまして四十二億という数字を既に決めております。
-
○
日笠分科員 ひとつ隣隣接の町村等々も、津山圏域ということで考えていただきたい、このように申しておられますし、お聞きしますと、この配分は県の配分のお考えを大体そのまま認める、このようになっておりますが、県の主体性にお任せできるわけでございますね。
-
○中村(守)政府委員 立地交付金の配分につきましては、県の周辺市町村分につきましては県がいろいろと御配慮をなされるということで、ある限度はございますが、その中で県と御
相談させていただきたいと思っております。
それから、先ほどちょっと誤解をされますとなんでございますので補足させていただきますが、四十二億と申し上げましたのは全体の総額でございまして、立地市町村二十一億、それから周辺市町村分二十一億ということでございまして、何年かに分けておりますが、来年度の予算につきましては八億円ということでございます。
-
○
日笠分科員 お時間もありませんが、これは通産省の管轄になるかと思います。通産省の方、来ていただいておると思いますが、先日の報道によりますと、福井県の運転中の原子力発電所のコンクリート建屋の外壁に四センチから六センチの深さによるひび割れが無数に起きておった、こういうことでございます。美浜、高浜等々合計七基の原発がそういう
被害に遭っておる、こういう報道が出ておりました。これはいわば潮風による塩害である、こういうふうなことでございますが、私も心配をいたしますのは、最近特に問題になっておりますコンクリートのアルカリ骨材反応ではないか、こういうふうに勘ぐる方もいらっしゃるわけでございます。この辺の現時点での御
調査、いかがなものでしょうか。
-
○谷口説明員 先生御指摘の関西電力の原子力発電所、若狭地区におきます発電所の外壁におけるひび割れにつきましては、これまで通産省から現地に常駐している専門家も含めまして外観の点検を行うとともに、主要骨材につきましては、米国の材料試験協会が作成しました所要の試験を実施しておりまして、新聞等でいろいろ騒がれておりますアルカリの骨材反応が生じないということを確認しております。
-
○
日笠分科員 先ほどの世論
調査を引用いたしましたように、こういうふうなことを聞きますと、何か放射能が漏れるのじゃないか、こういう心配をされる向きがある。先ほど申し上げましたようなことで、国民の方々のそれをしっかりと認識をいただかなければいけない、こういうように思うわけでございます。今後、原子力発電所ないしウラン工場、六ケ所村にもサイクルセンターができるわけでございますが、これに使うコンクリートのアルカリ骨材とか、いわゆる海砂による塩害だとか、こういうものを防止していくということ、これを明確にしてあげないとまた地元の方が大変心配をされるのではないか。その点、今後の対応はいかがなものでしょうか。
-
○辻政府委員 アルカリ骨材反応の件につきましては、原発
関係につきましては通産省の所管でございますが、私どもも通産省からいろいろ
事情の御説明も伺っておりますし、私どもも検討いたしまして、現段階で特別な対応をとる必要はないというふうに判断をいたしております。
御指摘のように六ケ所村等におきます将来の
核燃料サイクル施設の問題につきましても、この点につきましては十分留意して建設が行われるよう我々も検討してまいりたい、かように考えております。
-
○
日笠分科員 どうでしょうか。コンクリート配合
報告書とか骨材試験成績表とか、こういうものはゼネコンさんできちっと掌握された上でコンクリートを打つ、こういうふうなことも御指導されていくのでしょうか。
-
○谷口説明員 先生御指摘のアルカリ骨材反応あるいは骨材中の塩分による影響等につきまして、今後工事の施工の段階において、現在各方面で進められております検討、特に日本建築学会で検討を進めております「原子力発電所施設鉄筋コンクリート工事の指針」に基づきまして今後規制をしてまいりたいと考えておりまして、さらに通産省としましては、電力会社を指導してコンクリート表面の状況等の監視を定期的に行うとか、所要な補修を的確に行っていくということはきちっと指導してまいりたいと考えております。
-
○
日笠分科員 本来ならば、こういうことを契機に全国の、特に山陽新幹線、関西方面の高速道路はアルカリ骨材反応で大変大きな
被害が続々出るのではないかと心配されておられますので、できれば全国の各原発の安全点検ということでコンクリート抜き取り
調査等々、本来やられてもいいと思うのですけれども、その辺のところは今後の課題として、時間もありませんので申し上げておくだけにいたします。
最後に、いわゆる急速に到来しつつある高齢化社会、我が国の大変大きな今後の問題となってくるわけでございます。
科学技術庁におかれましても、鋭意いろいろな研究をされておられるところでございます。その中で、一つだけちょっとお聞きをしたいと思います。
それは、科学技術振興調整費の方で研究しておられます高齢者の健康管理手法に関する研究でございます。これについて、いろいろと四点ほど詳しく計画、研究をされておられるようでございますが、その計画の概要とどういう研究であるか、これについてお聞かせ願いたいと思います。
-
○内田政府委員 お答えいたします。
私ども、科学技術振興調整費におきまして、
昭和五十八年度から五カ年計画で高齢者社会に対応する科学技術の開発に関する研究を、産学官
関係研究機関連携のもとに実施をしておるところでございます。
具体的には、
内容は大きく分けまして三つに分かれておりまして、まず第一点が老化因子の探索技術及び改変技術の開発というテーマでございまして……(
日笠分科員「二番目の健康管理手法に関するものを」と呼ぶ)その二番目のテーマでございますが、高齢者の健康管理手法に関する研究開発、
内容は四つに分かれております。
第一点は、機能特性による老化度の測定技術に関する研究でございまして、脳波、姿勢制御機構解析等の各種機能特性の加齢に伴う変化を測定するための技術基盤の確立ということを実施しております。
第二点といたしまして、老化度測定、高齢期疾患診断のための画像診断機器の開発に関する研究でございまして、NMR—CT、ポジトロン—CT等新しい情報が得られる有用な方法でございますが、こういうものは開発されて間もないため、まだ解決しなければならない技術的問題がたくさん残されておるわけでございます。高齢期疾患等への応用のため、測定条件の設定、放射性医薬品等の技術基盤の確立を目的とした研究をいたしております。
第三番目が、高齢者の健康管理情報の活用、管理システム開発に関する研究でございます。高齢者の健康管理に必要なエックス線
写真、内視鏡などの多種多様な医療映像、検査データなどの医療情報を高密度、高鮮明度に永続的に一定の規格化した状態で
記録して、各個人が蓄積、
保管する方法に必要な出入力系等のハードウエア、利用に関するソフトウエアの開発をしております。
それから第四番目が、遠隔医療におけるバイタルセンサーシステム開発に関する研究でございまして、電気通信を用いて家庭と医療
関係を結び、老人が家庭にいながら緊急医療等が受けられるバイタルセンサーシステムに必要な技術の開発を行っております。
-
○
日笠分科員 科学技術庁におかれましても、ひとつ高齢化社会に対応する前向きな、真剣な御研究をお願いして終わりたいと思います。ありがとうございました。
-
-
○
山原分科員 最初に、総理府おいでいただいていると思いますが、戦後処理の問題について、従軍看護婦の問題は数年来ずっと問題になってまいりまして、今回、この問題で一定の改善がなされようとしておるというふうにお聞きしますが、そのことについて一言御説明をいただきたい、これが一つです。
それからもう一つは、これと関連しまして、シベリア抑留者の補償問題でございます。御
承知のように、この問題につきましても、明らかに長期にわたる抑留と苦役がシベリア抑留者に対して課せられましたことについては、ハーグ陸戦協定あるいはジュネーブ協定等にソ連側が違反しておるという事実は紛れもない。したがって、これに対する補償はソ連政府に対して請求するのが当然だと思いますが、三十一年の日ソ共同宣言によりまして日本政府は請求権を放棄しました。そうしますと、日本政府に戦後処理の問題としてこれを解決していく責任があるのじゃないかということまでは、大体今までの論議で一致しておると思うわけでございます。この問題について戦後処理問題の懇談会が私的諮問機関としてつくられておりまして、それが十二月に
報告書が出ております。その
報告書に基づいて、総理府としてはこれを一体どういうふうにするのか、その辺の検討をされておれば
最初に御説明をいただきたい。
-
○榊説明員
最初に、看護婦
関係の件でお答え申し上げます。
旧日本赤十字救護看護婦等につきましては五十四年度、あるいは陸海軍の看護婦につきましては五十六年度から慰労給付金というものを給付してまいったわけでございますが、政府としては従来から、この給付金の性格が所得の保障を図るという年金的な性格を有するものではないという認識に立ちまして、増額につきましては困難である、こういう形で対応させてきていただいたところであります。
しかしながら、この制度が発足しましてから旧日本赤十字社救護看護婦につきましては六年、旧陸海軍従軍看護婦につきましては四年経過してございます。この間消費者物価指数も上昇しておる、こういう点を考慮いたしまして、慰労給付金の実質価値を維持する必要がある、こういう判断をいたしまして、六十年度の予算におきまして所要の改善措置を講じた、こういう次第でございます。
-
○萩原説明員 シベリア抑留者の補償要求問題についてお答え申し上げます。
先生お話しになりましたとおり、昨年の十二月二十一日に戦後処理問題懇談会から官房長官に対しまして
報告をいただいておりまして、政府としましてはこれに基づきまして六十年度予算案に一億五千七百万円の検討経費を計上しておるわけでございます。
懇談会の
報告におきましては、戦後強制抑留者問題につきましては、戦争が終了したにもかかわらずシベリアに強制抑留された方々の労苦は我々の想像を超えるものがある、国際的な慣習に反して人道的な取り
扱いをされなかった、過酷な労働を強制された、そういう方々の心情は理解にかたくないということを言っております。
しかしながら、一方、国においても抑留加算の制度を設けるとか、あるいは援護法におきまして遺族の方々に対する補償措置を講じている、あるいは留守家族手当をお出しするというような措置を講じてきておるということで、抑留されたということについては真に同情すべきではあるけれども、それもまた国民のそれぞれがそれぞれの立場で受けとめていただかなければならなかった戦争損害の一種に属すると言わなければならないということを御
報告いただいております。
しかしながら、一方で戦争犠牲者の方々の心情には深く心をいたさなければいけないということで、特別な基金の創設を提唱されております。この
報告に沿いまして、六十年度予算要求案に現在御提案申し上げておるところでございます。
今後、これについてどのようにしていくかにつきましては、予算成立後総理府に検討の場が設けられることとなることを予定しておりますので、そこにおいて検討してまいりたいと考えております。
-
○
山原分科員 時間がありませんからまたいずれ日を改めてやりたいと思いますけれども、随分たくさんの人たちが組織もつくりまして、率直に言って自民党政府に対する期待を長年持ってきているわけですね。もちろん各党の議員もこの問題に触れておるわけです。ところが、これはもう全くこのままで打ち切るということになりますと、戦後処理はできないまま終わったということで、政府に対する不信が非常に強くなってくると思います。そういう
意味で、私は今後の成り行きを見定めていきたいということで本日はおきたいと思います。
次に、原子力船「むつ」の問題につきまして、特に今回、定係港の港湾建設費が今まで三百四十億であったものが二百四十五億に削減をしております。従来より若干の負担減、経費の減にはなっております。しかし同時に、その結果として果たして安全性が保たれるのかという心配があるわけでして、この点について少し説明をしながら質問をいたしたいのです。
関根浜港の建設の従来計画と縮小計画を比較してみますと、泊地の規模が直径三百九十メートルから三万メートルの円に縮小されておるわけです。港湾の施設の技術上の基準を定める省令では、泊地の規模については、ただし書きの例外規定はありますけれども、
原則として船体の長さに一・五を乗じて得た値を半径とする円を上回るものであることと規定されておりまして、直径にすれば船体の三倍です。したがって、「むつ」が百三十メートルですから、従来計画では一応三倍の三百九十メートルを確保する計画であったわけです。ところが、縮小計画では船体の二倍ちょっとの広さしか確保されておりません。港湾内における操船に支障を来すのではないかという心配が出てくるわけでございますが、これについてどういうお考えを持っておりますか。
-
○井上参考人 お答えいたします。
先生の御指摘のように、改定計画は従来計画より縮小されております。おおむね三分の二程度の大きさになっておるわけでございます。
原子力船の安全性につきましては、航行中はもちろんのこと、停泊中においても十分守っていくということが私たちの基本でございます。したがいまして、先生が御指摘のように泊まり地の直径といいましょうか、三百九十メートルが三百メートルになったといいましても、その安全性は全然損なわないということを前提にやっております。
その一つには、自航で回転ということでなくてタグボートで入出港を行うことになっておりますから、その点は改定計画であっても十分安全性は守れると考えております。
-
○
山原分科員 タグボートの問題が出ましたが、自力回頭の場合に三百九十メートルで、しかもその際には、従来計画にはタグボートのたまり場といいますか、停泊場が設計されているわけですね。ところが、今度はタグボートで旋回をするという、自力回頭ではなくてタグボートの支援を借りて回る、そういうふうになっておる御説明でございますけれども、今度の設計の中にはタグボート船のたまり場所はないわけですね。そうしますと、支援を当然の前提とする縮小計画でタグボート泊まり地もないということになりますと、一体これはどうなのか。
最初の自力回頭をする場合にでも、タグボートのたまり場までつくっているわけです。これはどういう説明をされるのでしょうか。
-
○福永参考人 原子力船事業団
専務理事福永でございます。
タグボートの船だまりがなくなったのにタグボートをどこに接岸し、あるいは係留するか、こういう御質問かと存じますが、本船は東側にあります岸壁に係留いたします。それで、係留します際は、当然のことながら出船の形と言うわけでございますが、船首が外側に向いている形でございます。その前方に五十メートルないし百メートルくらいの非常に静穏な部分がございます。そこに係留施設を設置いたしまして係留する予定にいたしております。
-
○
山原分科員 この地域、また尻尾崎沖はよく気象の激変のあるところだと言われております。港外への避難の必要も出てくるわけですね。風が強くうねりが高い、そういうときたまり場のない、今おっしゃったのは岸壁にくっつけているわけですからね、従来計画であればたまり場があるわけですけれども、今度は東側にくっつけるということでしょう。たまり場のないタグボートがこういう風雨あるいはうねりが高いときに思うような働きができるかという点も問題になると思います。そういう場合を想定しますと、いわゆる三L、三倍のスペースでさえタグボートの準備ができておるのに、今度はタグボートの支援を当然としておりながらタグボートのたまり場もないということになってまいりますと、この予算の削り取りというのは安全性の面から見まして非常に無謀なやり方だと思わざるを得ないわけです。
しかも、タグボートというのがどれほどのものであるかという点で、これは一例でございますけれども、田尻宗昭さん、海上保安庁の船長の経験もされており、現在東京都の職員研修所の教授をされている田尻さんが、こういうふうにシンポジウムで言っております。引き船というのは、岸壁と母船の間に挟まったときは自分が危険ですから逃げなければいけないんです、引き船なんていうのは当てになりはしないんです、こう述べておるわけでございますが、こういう不完全な状態でいいのかということについて、もう一度御答弁をいただきたいのです。
-
○福永参考人 タグボートは、本船の前方にスペースがあるのでそこに係留施設を設けて係留いたします、私こういうふうに申し上げました。その場所というのは、先ほどもちょっと申し上げましたが、港の中では一番静穏度の高いところでございます。したがいまして、タグボートの係留、操船等について遺漏があるとは考えておりません。
-
○
山原分科員 原船事業団が昨年十二月に出しました「むつの新定係港の港湾建設について」の文書がございますが、その十六ページに「港湾施設計画の考え方」という項がございまして、前提条件の一つとして、航路、回頭泊地の規模等は、港湾の施設の技術上の基準、同解説、これは日本港湾協会の出したものですが、及び操船者の意見によるものとするとございます。この点で、操船者の意見というのはどのようにお聞きになっておるか、具体的に伺いたいのです。
-
○福永参考人 操船者の意見と申しますのは、具体的に申しますと、私どもの本船「むつ」を操船いたします船長のことでございます。港湾の縮小をし、設計をするに際しましては、操船者である船長の意見を聞くということは当然のことと思っております。内部で打ち合わせします際に、十分船長の意見も踏まえて設計に反映させておる、こういうことでございます。
-
○
山原分科員 「むつ」はほとんど動いていないわけですからね。現在の船長さんの御意見を聞かれること、もちろんそれは当然のことだと思いますけれども、しかし率直に言って、「むつ」に関しては未経験な状態なんですね。そこで、「むつ」の初代船長の折原さんが、これは
昭和五十六年の二月十一日の読売新聞に発表しておりますが、その紙上にはこういうふうに出ているのです。外洋母港などあってはならないことだ。津軽沿いのような外洋母港では、第一に、冬の季節風とそして濃霧で視野が悪い。第二に、潮流も激しい。第三に、津波や台風などの対策も考慮しなければならないなど危険が多く、原子力船「むつ」には不適と判断すると、外洋港計画そのものに否定的考えを明らかにしております。
この折原さんの場合には、初代船長としての、操船者としての一人の意見聴取の資格者であると私は思います。その人が外洋港計画自体に対して否定的見解を持っておるわけでございまして、この点は本当に重要な安全性の意見聴取の場合に大事なことだと私は思うのです。
ついでに聞きますが、この縮小計画について原子力委員会は討議をし、何らかの結論を出しておられるのでしょうか。
-
○中村(守)政府委員 原子力委員会でこの縮小計画についてどう考えるかということでございますが、港湾の縮小につきましては原子力委員会の場でも御説明を申し上げ、原子力委員会としてもこの「むつ」の計画につきましては効率的に推進をするという、既にそういう原子力委員会の
報告もございますが、そういう中で合理的なものであるということで、この計画について特段原子力委員会として異議とかそういったことはございません。
-
○
山原分科員 原子力行政に関する重要な役割を持つ原子力委員会が正当な論議をして、それに対して結論を出していない、
報告をしたという程度のことでよろしいのでしょうか。
-
○中村(守)政府委員 この縮小計画は、政府といたしまして、科技庁といたしまして十分な各方面の御意見をもとに組み上げたものでございまして、
科学技術庁として、あるいは政府と言った方がよろしいのかもしれませんが、そういうことで、こういう計画で進めたいということで原子力委員会に御説明申し上げ御了承を得た、こういうことでございます。
-
○
山原分科員 結局、政治的判断。科学の問題ですからね。それが、もともと原子力船「むつ」ができましたときには、森山さんが、これを恐れる者は火を恐れる野獣だという論議まで出て大論議になって、そして動かしてみたら放射線漏れが起こった、そして十数年来「むつ」は動かないまま、こういう経過があるわけですね。だから、政治的判断で物事を進めるという姿勢ではなくて、やはり原子力行政の基本である科学的な検討が背後になければならぬと私は思っております。
ついでに、「むつ」の遠隔錨地は決まったでしょうか。
-
○福永参考人 遠隔錨地につきましては、原子力船運航指針というものがございまして、それに基づきまして、仮想
事故を評価いたしましてある範囲まで非居住地帯あるいは低人口地帯であるというようなことが求められていることは先生御案内のとおりだと存じます。私どもは、現在、関根浜ということで具体的な場所が決まったわけでございますので、そこの気象データ等をもとにいたしまして、検討を進めている段階でございます。
-
○
山原分科員 むつの方から、五十七年当時、地元からも事業団の
調査報告に対して幾つかの疑問点が出ておりますが、その一つが、遠隔錨地が決められていないということに対する疑念が出ております。そしてこれは、当然位置などについて事前に示すべきであるという要求が出ておりますが、これに対して、結局事業団の方も、たしか遠隔錨地の位置などについては事前に示すべきであるという要求に対して、新定係港の遠隔錨地については今後検討することとしているというふうに答えている。これは五十七年当時ですね。それがまた未定であるということ自体も、例えば原子力船運航指針でも確保することをみずから決めているにもかかわらず、この問題もほとんど進捗をしていないという状態でございますし、これでは私は本当に不十分ではないかと思います。また、原子力船運航指針、これは原子力委員会が出しておりますが、この中でも、この錨地の確保、そのことが示されているわけですが、みずから決めておることもほとんど実行されていないということです。
それからもう一つ伺っておきたいのですけれども、それは関根浜周辺の気象、海象の問題点でございますが、これについて事業団の方の評価は大変甘いのじゃないか。五十七年の三月に発表した「原子力船「むつ」の新定係港に関する立地
調査結果について」の中で、評価は「ほとんどが数十センチ以下の波である。」こういうふうに述べておりますね。それからさらに事業団が昨年の十二月に出されました内部資料だと言われておりますけれども、それを見ましても、船の傾斜一度以内におさまる日数は年間九五%で、高率で燃料の交換可能と結論をつけておるのでございます。
ところが、私が青森地方気象台にこの問題について問い合わせをしましたところ、関根浜や隣の大畑町の沿岸を含む海域の波浪注意報、警報及び濃霧注意報の発表回数と延べ日数について問い合わせましたところ、大変多いのです。
昭和五十六年で波浪注意報が八十五回、延べ二百五日、波浪警報が九回、十四日、濃霧注意報が十六回、七十三日、こういう数字が出ておるわけでございます。
そこで気象庁に伺いたいのですが、波浪注意報、波浪警報のそれぞれの発令基準は青森気象台の場合何メートルか、また濃霧注意報発令基準は視程何メートルか、このことを一言発表いただきたいのです。
-
○門脇説明員 ただいまの御質問に対しましてお答えいたします。
青森地方気象台の発表いたしております波浪注意報の基準は、波高が三メートル以上というふうになっております。また、警報につきましては六メートル以上というふうになっております。
次に、濃霧注意報の基準でございますが、これは陸上の場合は見通しが百メートル以下の場合、それから海上につきましては見通しが五百メートル以下の場合というふうになっております。
以上でございます。
-
○
山原分科員 そうしますと、例えば濃霧注意報五百メートルという海上視程でございますけれども、それが私の青森気象台で
調べた注意報は、何と七十三日間に及んでいるわけですね。そうしますと、この地元の方たちも指摘をしておりますように、原子力事業団の評価というものが非常に甘いのではないかというふうに考えざるを得ないわけです。
時間がございませんから、もう少し波浪と風の
関係について質問をしたいのですけれども、この点は今指摘をしておきたいと思います。そういう甘い状態でこれを進めていいのか。「むつ」の新定係港を外洋に持ってくること自体に対して、科学的見地から見ましても、大変私は無謀な計画ではないかというふうに思いますし、先ほど言いました折原氏の言葉でも、その点明白です。「むつ」の浪費に対する批判が高まり、国家財政も逼迫し、第二臨調も発足して、その中で当初の従来計画ができたわけですね。だから、あの従来計画そのものも、財政状況とのバランスを考えて、安全性という点で余裕を持った設計ではなかったわけです。言うならば、事業団にとっても
科学技術庁にとってもぎりぎりの設計であったはずですね。それを今度またさらに情勢の変化によりまして、そのぎりぎりの設計をまた削り込んでいくということになってくると、果たして安全性が保たれるのか。これは、先ほど言いました理事をしておりました初代船長の折原さんが外洋港など論外だという主張をしましたときに、当時の事業団の倉本
専務理事さんが、これは金と時間をかければできないことはないということを青森県の県政記者クラブで記者会見の席上発表しております。これは五十六年の二月十一日付の読売新聞その他にはっきり出ているわけでございます。金と時間があればやれると、こう言うのですけれども、ところが、金はない、時間はないでしょう。それで安全性が果たして確保できるのかということになってまいりますと、今度の縮小計画というのが、まさに安全性縮小計画ではないか。私はこういう点で、「むつ」の開発に固執すればますます矛盾が深まっていくと思います。そういう
意味での悪循環を断たなければ、もし今度仮に
事故でも発生をしましたならば、はかり知れない
被害を国民に与え、原子力行政に対する威信は完全に失墜することは目に見えております。
そういう
意味で、竹内長官も青森県の御出身でございまして、みずからもその点について御心配をされておると思いますが、「むつ」の問題についてもう既に与党の中からも廃船意見が出ておるわけでございますが、これらに対してこのような悪循環を断ち切るという決意が必要ではないかと思いますが、この点についての長官の御見解を伺いたいのであります。いかがでしょうか。
-
○竹内国務大臣 お答え申し上げます。
今御論議の「むつ」に限らず、原子力の研究開発におきましては安全の確保が大前提でございまして、今回の縮小改定計画も、安全の確保を第一の念頭に置いて策定されたものと私は理解をいたしております。もちろん今後ともその推進に当たって、安全性の確保に万全を期してまいるつもりでございますが、先生お話しの悪循環云々でございますけれども、私は、舶用炉の研究開発のため「むつ」の実験航海は必要なものだ、こう考えております。
-
○
山原分科員 時間が参りましたので、これでおきますけれども、あとの問題については、また場所を得て質問をいたしたいと思います。
-
-
○伊藤主査 次に、
沖縄開発庁について質疑の申し出がありますので、これを許します。
玉城栄一君。
-
○
玉城分科員 最初に、
局長さんで結構ですが、六十年度
沖縄開発庁予算案は例年の沖縄
関係予算に比べてどういう特徴があるのか、簡単で結構ですから御説明いただきたいと思います。
-
○小林(悦)政府委員
沖縄開発庁の六十年度の予算の特徴でございますけれども、概して言いまして、公共事業費もマイナスの要求基準という中で、また高率補助負担率の一律引き下げ、こういうことがなされる等非常に厳しい環境の中で編成されたわけでございますが、沖縄には依然として多くの問題が残されておりますし、また、六十年度は第二次振興開発計画を推進する上でも非常に重要な時期でございますので、
昭和六十二年度に開催される海邦国体の開催に関連する経費の確保、また農林水産振興の基盤条件の整備に要する経費、こういうものを確保することを重点的に努めたわけでございます。
この結果、
沖縄開発庁予算は二千百四十三億五千五百万円、こういうことでございまして、対前年度比九九・一%ということになっております。また、その大宗をなしますところの公共事業
関係費でございますが、千七百九十八億一千八百万円、対前年度比九八・八%ということでございます。全国が対前年度比九八・三%でございますので、これに比べますと、かなり配慮をいたされた
内容となっておるわけでございます。これによりまして、沖縄におきます公共事業費の全国に占めるシェアは、前年度の二・八八%から二・九〇%に上昇する、このようなことになっております。
これに加えまして、別途財政投融資計画におきまして、日本道路公団による沖縄自動車道建設費予算、また石川火力発電所の大幅な増額が見込まれますほか、補助負担率の引き下げによる事業量の拡大等の
事情もございまして、
昭和六十年度予算は全体といたしまして前年度をかなり上回る事業量が確保できたと考えておるところでございます。
以上でございます。
-
○
玉城分科員 大変厳しい財政の中で、長官初め開発庁の方々が御努力されたことに敬意を表する次第でございます。
それで、河本長官、この機会に沖縄に対する長官の基本的な御認識をお伺いしておきたいわけでありますが、我が国の二十一世紀に向けて国際化という時代の流れの中で、私は沖縄の占める位置というものはこれから非常に重要なものがあると思うわけであります。ASEAN諸国あるいは太平洋諸地域、沖縄の果たすべき役割ということはまたこれから非常に重要なものがあると思うわけでありますが、長官、どのように基本的にお考えになっていらっしゃるのか、お伺いをいたします。
-
○河本(敏)国務大臣
昭和五十年に沖縄海洋博がございまして、私は当時海洋博担当大臣をいたしておりました。そういうことで数回沖縄を訪問をいたしまして以来、特別の関心を持っておりましたが、昨年久しぶりに沖縄を訪問いたしまして、過去十年の間に相当な変化があったということを認識いたしました。例えば社会資本投資などもある程度進んではおります。
しかし、よく
調べてみますと、沖縄県民所得はやはり全国最低でございますし、それから第二次産業が依然として低い水準にあるということ、それから失業者も全国平均の約倍以上、こういう高い水準にございます。そういうことから、まだまだ沖縄の将来にとりましては大きな問題が幾つか残されておると思うのです。何としてもやはり沖縄の百十五万県民の方々の所得がもう少し上がらないことには、これはもうどうにもならぬ、こういう感じを受けます。
そこで、沖縄県民所得を拡大するために何が必要か、こういうことから問題を解きほぐしていかなけりゃならぬ、こういうように感じております。そのためには幾つかの課題の解決が必要であると思いますが、社会資本投資はある程度進んだとはいいながら、第二次五カ年計画から見ますとやはりおくれがちでございます。先ほど
局長から本年度の公共事業について説明がありましたが、これからは第二次計画の後半の計画をいかに軌道に乗せるか、こういう問題が一つあろうと思うのです。
それから、後半が終わりましても、やはり引き続いて相当長期間にわたって沖縄振興計画に特別な配慮というものが必要ではないか、現在のおくれを取り戻すのにはやはり若干の時間がかかる、このように感じております。そのおくれを取り戻すために、各般にわたってどういう具体的な対応が必要かということを、今県側と打ち合わせをしておる最中でございます。昨年末に訪問いたしましたときに各方面との懇談をいたしましたけれども、それをもとにいたしまして、目下今後の中期展望について調整中であるということを申し上げておきます。
-
○
玉城分科員 沖特委員会もこれからありますが、各論的なことについてはその機会にいろいろお伺いさせていただきますが、今長官いろいろ御説明いただきました。一つ、やはり沖縄の場合、基地の問題ですが、これは我が国在日米軍基地の約半分が集中的に沖縄に存在をして、日常的にそこから発生する
事故だとか
事件、あるいは地域住民に非常に不安あるいは恐怖さえ与えているということで、この基地問題はやはり振興開発の中でもあるいは長期的な展望の中でも現実の中においても非常に重要な問題だと思うのですが、長官御自身沖縄の基地問題についてどのような御認識を持っていらっしゃるのか、お伺いをいたします。
-
○河本(敏)国務大臣 沖縄が日米安保条約の
関係から非常に大きな役割を果たしておることは、私どもも認識をしております。それだけ今御指摘のように幾つかのトラブルが日常発生するわけでございますが、そういう諸問題につきましては、外務省あるいはまた防衛庁と十分打ち合わせをいたしまして、最善を尽くしたいというふうに考えております。
-
○
玉城分科員 一つまたこの機会にお伺いしておきたいのですが、長官もよく御案内のとおり、那覇飛行場ですね、那覇空港、この空港は沖縄が復帰する前、米軍が使用して、民側は使用させてもらっていた。復帰しまして民間空港になっていますけれども、自衛隊と共有ということで非常に危険性というのはたびたび指摘され、
事故も起きているわけですし、私も国会の中でもたびたびこの問題を取り上げているわけですが、私から申し上げるまでもなく、あの空港は本土と沖縄を結ぶ南の玄関口でもあるわけでして、年間約五百八十万ぐらいの人があの空港を出入りしておりますし、県内はもとよりであります。そういう中で、最近自衛隊が滑走路の近くにミサイル用の弾薬庫を設置したい、これは既設のものもあるのですが、さらにまた新しくそういうものをつくりたいということ、そういう危険な弾薬庫を滑走路近くにさらにつくるということは、これは沖縄の観光立県として、入り口にそういうものがあるのは非常に好ましくない、非常に反発があるわけです。私もそのとおりだと思うのですが、大臣、いかがでしょうか。
-
○関(通)政府委員 那覇空港の周辺に現在航空自衛隊の新しい弾薬庫が建設の計画であり、この設置の問題につきましては、防衛庁が市、県当局と諸般の御
相談をされておることは、私ども
承知をいたしております。
先生御心配の安全性の問題でございますが、御指摘のように、航空自衛隊の
事故等も発生いたしておりまして、平素から防衛庁も安全性の問題につきましては諸般の注意を払っておられることと理解いたしておりますし、今度の弾薬庫の設置につきましても、安全性の問題につきましても十分な配慮をされての計画であろうかというぐあいに理解いたしております。
-
○
玉城分科員 これはまた別の機会にいたしますが、ただ、そういう非常に大事な、那覇空港、那覇飛行場というものはもうこれは沖縄にとっての入り口でありますので、そういう危険なものがさらに増設されていくということは絶対あってはならないという考え方です。
それで、長官にお伺いいたしたいのですが、一昨日、この
予算委員会の
一般質問のときに、我が党の竹内議員の質問、長官の御答弁を私拝聴させていただきましたが、いわゆる我が国経済の民間活力の導入による活性化ということと、いわゆる国有地の払い下げの公的規制の緩和という問題に関連いたしまして、沖振法九条並びにその政令ですね、緩和ということのそういう
内容の御質問であったわけでありますが、そのとき長官の御答弁で、よく
調べて善処したいというお答えがあったわけであります。
沖振法九条による国有地の無償譲渡あるいは払い下げという問題は、学校
関係のそういうものにある程度枠が狭まっているわけですが、やはり第三セクター方式で国有地を、農業等についてもそういう基本的な民間活力の導入という考え方を導入しまして、今の沖振法九条という問題について、規制の緩和といいますか、その幅の緩和ということが、当然そういう建前からしてもされるべきではないか。ぜひ沖縄振興開発という地域の振興の立場からもやるべきではないかと思うのですが、長官、善処をしたいとおっしゃいましたので、どのようなお考えを持っていらっしゃるのか、お伺いをいたします。
-
○河本(敏)国務大臣 実は、民間活力導入といいますと、広い
意味で税制の抜本改正がそのすべての前提だと私は考えておるのですが、狭い
意味では二つあると思うのです。
その一つが、経済上の規制を緩和するということです。これは今政府部内で行革審それから私どもの特命室、それから自由民主党の中でも特別委員会等ができまして、三者並行して目下その作業をしております。経済上の規制を思い切って全廃にするという方向で、いろいろな問題点を検討しておるというのが現状でございます。
それから第二が、主として大都市にある国有地あるいはまた公有地で、それを払い下げた場合にそれが社会資本投資等に活用されて、そこに相当多額の民間資金が投入されまして、社会資本投資に限らず、民間活力の導入という
意味で新しい仕事が始まる、こういうことを中心に約二百カ所選定をいたしまして、それを候補地として、目下どういう順序で払い下げをしていったらよろしいかということについて検討中でございます。
この間のお話は、その問題に関連をして、大都会だけではなく、農村地帯にもそういうことを考えたらどうか、特に沖縄において、産業振興の
意味においてそういうことを考えられないか、こういう趣旨の御質問であったと思うのです。そこで、時間の
関係もございましたので、善処をするようによく
調査をいたします、こういうことをお答えしたわけでございますが、これは後で政府委員から詳細を答弁いたしますけれども、なるほど無償払い下げできるというなにはありますが、それは公共の用に供する、現在までは小学校、中学校建設の場合には無償で払い下げできる、こういうことになっておりまして、これを公共用以外に払い下げする、こういうことにはなっておりませんが、
局長から詳細を答弁させます。
-
○関(通)政府委員 先生御指摘の沖縄振興開発特別措置法の九条は、公共の用に供する施設をつくります場合、国有地を無償または時価より低い価格で譲渡または貸し付けができるという規定でございまして、貸し付けができる施設の範囲につきましては政令で定めるということになっておりまして、現在政令では小学校、中学校等の施設が規定されておるわけでございます。
この第九条は、国有地を無償または時価より低い価格で譲渡または貸し付けるという特別措置でございますために、やはり公共の用に供するものという限定はかかってくるものというぐあいに考えておりますが、ただ、公共の施設の範囲でございます。これは政令で小学校、中学校に限定いたしておりますが、小学校、中学校に限定いたしましたのは、復帰後具体的にそういう事案がございましてこういう政令で定めておるわけでございますので、法律の趣旨に沿った具体的な施設が出てまいりますれば、政令の改正につきましては、
沖縄開発庁としては
関係省庁と御
相談をしてまいりたいというぐあいに考えております。
-
○
玉城分科員 長官よく御案内のとおりでありますが、沖縄にも国有地がやはりあるわけであります。その国有地を、長官は担当でいらっしゃいますので、やはり民間活力を導入して国有地の有効活用ということを、これは必ずしも教育
関係に限らず、農業とかいろいろなことが考えられるわけです。これをぜひ御配慮、御
相談をしていただいて善処をしていただきたい、このように要望いたしてまいります。
それから次に国土庁の方に、来ていらっしゃると思うのですが、四全総の中における沖縄の——三全総についてよく勉強もさせていただいて、これまでの推移、いろいろ私たちなりに問題点あるいは批判すべき点もありますけれども、六十一年からいわゆる二十一世紀、
昭和七十五年までに向かっての四全総の策定作業を国土庁やっていらっしゃるわけでありますので、その四全総の中における沖縄の位置づけ、これをどういうふうに考えていらっしゃるのか、お答えいただきたいと思います。
-
○長瀬説明員 お答えいたします。
三全総におきましては、沖縄地域につきまして、いわば整備上特段の配慮を要する課題地域ということで取り上げまして、その振興整備の方向について方向づけをいたしたところでございます。三全総策定後の状況を見ますと、先ほど河本大臣からも御答弁がございましたが、公共投資につきましては全国平均を上回る伸びで推移をいたしておりますけれども、しかしながら、景気動向などについていいますと地域的にばらつきが見られるわけでありますし、あるいは国土基盤というような面におきましてもいまだ立ちおくれが見られるということは歪みがたい現実である、このように
承知をいたしております。
そこで、四全総の策定に当たりましては、このような沖縄地域の実情というものを十分踏まえ、そしてまた、離島性といった不利を克服いたしますとともに、亜熱帯地域に位置し、そしてまた広大な海域を擁しております条件というものを積極的に生かす、そういう方向で、沖縄地域の振興の
あり方なり位置づけという点につきまして、沖縄県当局あるいはまた
沖縄開発庁を初め
関係方面とも十分御
相談をしながら幅広く検討し、適切な位置づけについて検討してまいりたい、このように考えております。
-
○
玉城分科員 そういうことと関連しまして開発庁の方にお伺いしておきたいわけですが、離島集団で成り立っている県でありますから、架橋ですね、一月十三日ですか、瀬底
大橋が開通いたしました。大変喜んでおるわけですが、そういう架橋という問題は沖縄にとってこれから非常に大事な問題になると思うのです。そういう位置づけも当然四全総の中でされていかなければならないと思いますが、開発庁のお考えはいかがですか。
-
○小林(悦)政府委員 先生御
承知のように、第二次沖縄振興開発計画におきましては離島の振興というものを大きな柱にしておりまして、離島の生活環境の改善、また産業振興のために離島道路の整備を推進しているところでございます。
具体的には、離島の架橋につきましては、架橋することによって住民の生活、産業面に著しくその効果が期待でき、効率的に架橋が実施可能な離島については、先行的、先導的役割を果たすものとして架橋を進めるものとする、このようにされておるわけでございまして、ただいま先生例に挙げられましたように瀬底
大橋が本年完成をいたしましたし、また既に野甫
大橋、それから奥武橋、また伊計
大橋等が完成をしており、さらに現在継続中のものとして池間
大橋、また外地橋が建設中でございます。
そこで、
沖縄開発庁におきましても、第二次沖縄振興開発の後期展望作業、先ほど大臣が申し上げましたように後期作業を進めておるところでございますが、その後期プロジェクトについて現在その検討をしておるところでございまして、その中で離島架橋について十分検討してまいりたいと考えておるところでございます。
-
○
玉城分科員 大ざっぱに、今の問題に関連しまして、先ほど出ました空港なんですが、離島にそれぞれ相応の地方空港が整備強化されることがこれからまた必要だと思うわけです。運輸省の方でも、ことし第五次空港整備五カ年計画。ですから、タイミング的に言いましても、ことし、開発庁とされても沖縄の地方空港のそれぞれの整備拡充というものの真剣な取り組みをぜひしていただかなくてはならぬと思いますが、いかがでしょうか。
-
○小林(悦)政府委員 先生おっしゃるとおりでございまして、現在第四次空港整備に引き続きまして第五次空港整備計画というのが六十一年度から始まる予定になってございまして、それに対する作業が必要でございます。したがいまして、沖縄県内の離島空港の整備につきましては、今後とも地元及び沖縄県と十分調整をいたしまして第五次空整の中で処理をいたしたいと考えておるところでございます。
-
○
玉城分科員 長官、トライアスロンという、ちょっと聞きなれない言葉があるのです。これは競技の名前でありまして、私もどういうわけでトライアスロンと言うのかよくわからないのですが、実はこれは七年ほど前にハワイで、簡単に申しますと、一人の人間が泳いで、そして陸に上がって今度は自転車に乗る、そして今度はマラソンと、一人で三つの競技をやるということで、ハワイでは大成功して、ある人によると、二十一世紀のスポーツだ。ハードなスポーツではないかという感じもするのですが、実は、このトライアスロンという競技を沖縄県の宮古島で来月の二十八日に行うわけであります。それで、
局長さんの方で結構ですが、それをよく御存じですね。いかがですか。
-
○関(通)政府委員 開発庁も、大会の主催者の方から計画についてお話をお伺いいたしております。
-
○
玉城分科員 地元では大変な熱意で、本土の方からも
関係者の申し込みもどんどん殺到している。私は、これからそういう競技が持続されるということは非常に結構なことだと思いますし、沖縄の振興あるいは観光といういろいろな
意味でも、あるいは離島振興という
意味からも極めて有意義な競技だと思うのですが、長官ひとつこの機会にぜひ、これは非公認の競技でありますので何ですが、そういうものを成功させてあげたいというような気持ちでもちょっとここでおっしゃっていただければと思いますが。
-
○河本(敏)国務大臣 私も一、二月前に新聞でそういう競技が沖縄で行われるということは聞きました。珍しい競技でございますし、特に沖縄の中でも離島中の離島を中心に行われる、こういうことでありますが、この競技等を通じまして沖縄の観光の認識あるいは沖縄全体の認識、これが深まることを期待いたしまして、成功することを私どもも期待をしております。
-
○
玉城分科員 以上です。どうもありがとうございました。
-
○伊藤主査 これにて
玉城栄一君の質疑は終了いたしました。
以上をもちまして
沖縄開発庁についての質疑は終了いたしました。
午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。
午後零時三十二分休憩
————◇—————
午後一時
開議
-
○伊藤主査 休憩前に引き続き会議を開きます。
総理本府について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。
川俣健二郎君。
-
○川俣
分科員 官房長官を煩わしたいのですが、この戦後処理問題、私も社会労働委員会でいろいろとやってきたのですが、特にシベリア抑留の問題はどうも戦後処理は終わったということで片づけられない一つではないかなと思っているのが一つと、諸外国に比べてどうも片手落ちじゃないかなというのが一つ、それから、もう一つは官房長官も感じ取れる向きがあるだろうが、何か選挙の道具に利用されるというきらいがあるのかどうか、こういうような団体というのが三つも分かれているというところを非常に不思議に思っているので、そういうのはやはりとらわれないで処理すべきではないかと思います。
そういう
意味で、しつこいようですが、また取り上げさしてもらいましたが、昨年の十二月二十一日の戦後処理問題懇談会
報告というのを私ども配ってもらいましたが、この結論を政府としてはどういうように受けとめているんだろうかな、まずこれを聞きたいのです。
-
○藤波国務大臣 戦後処理問題につきまして各方面からいろいろな御意見が寄せられて、その中で戦後処理問題懇談会が出発をしていろいろな角度から御意見をお寄せをいただいてきたところでございます。回を重ねて随分時間をかけていろいろな御意見を出していただいてきたわけでございまして、今先生からお話のありました懇談会の
報告というものを受け取ったところでございます。中身につきましては「これ以上国において措置すべきものはない」、こういうふうに一つの結論は出されまして、しかし
関係者の心情をいろいろ考えてみると深く心をいたさねばならぬ、こういうふうに御同情を申し上げる、こういう角度から意見が出されておるわけでございます。その趣旨を踏まえて特別の基金を創設することを提唱しておられるところでございまして、政府といたしましては、この結論を受けてどういうふうに基金を構えていったらいいかということについて検討を進めていくようにいたしたい、こう考えておる次第でございます。
-
○川俣
分科員 この戦後処理問題懇談会というのは、読んでみると、全くありていに言えば、冷たいというよりも
事情がわかっているのかなというように疑ぐりたくなったんですが、しかし面々はかなり詳しい人方の面々のように見えるのですが、前書きにこういうことがあるんですね。「政府は、これまで、その段階段階に応じて戦後処理を行ってきたところであり、その結果、
昭和四十二年、在外財産問題の決着をもって戦後処理は一切終結したことを政府与党間において了解したところである。」そうですか。
-
○
吉居政府委員 お答え申し上げます。
ただいま先生がお読みになりました文章はまさに前文にあるわけでございますが、これは御
承知のとおり
昭和四十二年の引揚者等に対する特別交付金の支給に関する法律の制定をもちまして戦後処理に関する一切の措置は終了したことを政府・与党間で了解をした、こういう事実が四十二年にあるわけでございます。ただしかしながら、その後におきましても近年において一部に強い要望がございましたので、先生御
承知のとおり
昭和五十六年の十二月になりまして、今先生もごらんになっております懇談会を、民間有識者によって公正な検討の場としようということで設けまして、そしてまた戦後処理問題をどのように考えるべきかを検討してまいった、こういうような経緯でございます。
-
○川俣
分科員 そこに問題があるんだろうね。四十二年に終結した、政府・与党間において了解したというんだから。総理大臣は変わっても継続性で政府は続いているわけだから。それについて書いたものをいただけますか、後でいいですから。
それから、もう一つは、「しかしながら」というところで「要望があるため」「
昭和五十六年十二月の政府・党合意に基づき改めて公正に戦後処理の諸問題を検討してきた」、そうすると、どういうようにこの懇談会に提示したんですか。結論は見たが、しかし余り要望が強いものだからもう一回やってくれぬか、ただもう一回やってくれぬかという白紙の諮問なんですか。
-
○
吉居政府委員 先ほどお答えをいたしましたように、五十七年の六月三十日に新しく戦後処理問題についての懇談会が始まったわけでございますけれども、これは私的諮問機関でございますので、正式に諮問というような格好はもちろん持っておりません。ただ、ここでお願いすべき問題ということで恩給欠格者問題、それから戦後強制抑留者問題、在外財産問題の三問題を中心に戦後処理問題をどのように考えるべきかということについて御勉強をお願いしたような次第でございます。
-
○川俣
分科員 そうすると、それもある程度
記録などをいただけますか。
-
○
吉居政府委員 これは正式な
記録というよりもその第一回目の会合で、当時の総務長官がごあいさつなさった中でそのようなお願いを申し上げた、こういうものでございます。
-
-
○
吉居政府委員 最後の
報告をいただくまで合計三十五回でございます。
-
○川俣
分科員 室長は何回出たのですか。一回も出ないんですか。
-
○
吉居政府委員 実は私、途中から現在のポストになりましたので、現在のポストになってからは毎回出ておりますので、七、八回出ていると思います。
-
○川俣
分科員 それでいいですよ。いわゆる
室長の立場では、懇談会を開会するたびに出ているのでしょう。そういうことだね。——官房長官は
最初に、ひとつよろしく頼むというごあいさつで一回出るのはこれは通例だろうが、三十数回開かれるということは、これはやはり文字に書いたものは出せないというんなら、私もこれ以上問い詰めないんですが、しかし、常に
室長という立場の意見を聞きながら懇談するわけでしょう。
-
○
吉居政府委員 この懇談会は七人の先生でお願いしたわけでございますけれども、有識者の方々にこの懇談会の運営、それから、いろいろな議論の方法ということをお願いしておりますので、私の方からああしろ、こうしろということを申し上げているわけじゃございません。私どもはいわば庶務といいますか、おぜん立てをする、こういう立場にあるわけでございます。無論いろいろ資料を求められたり意見をという場合には、その都度申し上げますけれども、あくまでもこれは私的懇談会ということで、先生方のいろいろな御意見を承るという場でございます。
-
○川俣
分科員 しかし常識的に、ああしろ、こうしろは言えないだろうけれども、何もないところを論議するわけじゃないんで、やはり戦後処理三つの中で一つずつ片づけていったんだろうが、政府としてはこういうふうに思っております、こういうようにやってきました、こういうようなことを言って、それをたたき台にして論議するんじゃないんですかな、どうですか。
-
○
吉居政府委員 実は、全体で三十五回、回数があったわけでございますけれども、初めの方の、つまり約半分ぐらいは
関係各省や
関係団体等々からいろいろヒアリングを行って、そして、そういうヒアリングで伺ったような
内容についてまた議論を重ねる、こういうふうなことをしていって、だんだんと先生方もこの問題についての知識も深められ、そして論点をだんだん固めていった、こういうふうな方向でございました。
-
○川俣
分科員 三十数回の前半は、各官庁からヒアリングを受けてということなんだと思うのですよ。それが政府の、総合されてトップの方は内閣になるわけですから、したがって、こういう結論が出るというのは、うがって言うわけじゃないが、ヒアリングの段階からこういうような路線で説明したから、こういう結論になったんじゃないのかね。ヒアリングの段階で、やはりこのシベリア抑留ならシベリア抑留には余りやっていません、それから諸外国はこのようにやっていますがというような説明をやれば、こういう結論が出なかったんじゃないんだろうかなと思うだけに、
室長、その辺をもう少し親切に教えてくれませんかな。
-
○
吉居政府委員 より正確に申し上げますと、第一回目から第十四回までの間は、
関係各省庁を初め民間団体等からヒアリングを行ってきたわけでございます。いろいろな事実
関係等々につきましても、ここで十分にお話を承った、こういうわけでございます。それ以降は、それらのお話をもとにしまして、自由討議を重ねて、そして、この結論に至ったわけでございまして、この方向、この結論に対して、方向づけを何らかの格好で行うということは全くなくて、こういうふうな先生方の自由な御議論の中で、このような御
報告をいただいた、こういうわけでございます。
-
○川俣
分科員 私の言うのは、それはあなたが方向づけなんかできるわけはないけれども、幾ら有識経験者でも、こういう専門的なことですから、過去の措置、行政指導、手当、何らかの形でやってきたものの中に、やはりまだ不足だ、そんなものかというようなムードでは、こういう結論は出ないはずですよ。
それから、後で外務省に質問するけれども、フランスとかイタリア、ジュネーブ条約に調印した日本もそうですが、その同じ条約に調印したフランス、イタリアはこういうことですというようなことを説明すれば、ああそうか、日本はそんなものをやっていないのかという路線がおのずから敷かれてくるわけですよ。外務省、ちょっとその諸外国のものを披露してくれませんか。フランスとイタリアだけでもいいんですが。
〔主査退席、
上田(哲)主査代理着席〕
-
○服部説明員 お答え申し上げます。
先生御指摘のとおり、フランス及びイタリアにおきましては、それぞれ国内立法措置によりまして、戦争捕虜に対し、その戦争によってこうむった精神的あるいは身体的な損害についての補償の制度があるようでございます。例えばフランスにおきましては、その障害度に応じた廃疾年金というような形でもって支給をしておるようでございます。また、イタリアにおきましては、これは年金という形ではございませんけれども、それぞれ戦争によって損害をこうむった人たちに対する補償が行われているようでございます。
-
○川俣
分科員 やはりこれは官房長官、フランスとイタリアだけしか聞かなかったが、ジュネーブ条約で、捕虜の取り
扱い等を織り込んだ条約に調印した日本の国も、フランス、イタリアの方はこういうようにやっておりますということをヒアリングの段階で説明すれば、今のフランスの場合は障害度に応じて年金を支給されておるわけですから、ヒアリングの際にそういうような説明をすれば、この七人の大先生方がこういう結論には達しなかったに違いないと私は思うだけに、これはどうですか、そんなことを余りしなかったんだろう。
-
○
吉居政府委員 先ほど申し上げました十四回のヒアリング、
関係各省庁、各方面にわたっておりまして、この戦後処理に
関係するようないろいろな事実、それから問題点ということにつきましては、できる限り十分にヒアリングを行っておりますので、今のようなお話につきましても念頭に置きながら議論を重ねていっていただいた、つまり外国におけるいろいろな例ということにつきましても十分に念頭に置きながら自由討議を重ねてこの
報告に至った、こういうような経緯でございます。
-
○川俣
分科員 そうすると、今の外務省の服部
課長の説明をヒアリングの中でなされたことは事実なんですね。
-
○
吉居政府委員 第五回目だと思いますが、外務省からヒアリングを行った際に、
関係の
課長からヒアリングを行っております。
-
○川俣
分科員 このとおりやったという
記録はありますか。
-
○
吉居政府委員 そのヒアリングの際に、
関係省庁からはいろいろと内部資料をいただいておりまして、それをもとにしてお話も伺った、こういうことでございますので、ちょっとその第五回目にどのような資料が出たか存じませんけれども、十分にそういうお話も承ったところでございます。
-
○川俣
分科員 あなたは各回全部出ておると思います。前の
室長からの継続ですけれども。いわば議長ではないが、進行係というか、あなたは常についていると思います。だから、私が今承った服部
課長のようなヒアリングをそのとおりこの七人の皆さん方にしたかと言っているのです。
-
○
吉居政府委員 第五回目に私はいなかったのでございますけれども、外務省からのヒアリングの際にはそのような説明を懇談会の場で承っておる、こういうことでございます。
-
○川俣
分科員 外務省は、資料を出して言ったのですか、口頭で説明したのですか。
-
○服部説明員 お答え申し上げます。
私も実はそのとき現在のポストにおりませんでしたので……(川俣
分科員「
記録があるだろう、担当係長でもだれでもいいよ」と呼ぶ)口頭並びに若干の資料で御説明したというふうに
承知いたしております。
-
○川俣
分科員 その
記録、できるだけ見せてもらえますか。
-
○服部説明員 お答え申し上げます。
これは総理府に御説明したものでございまして、総理府とまた御
相談してお答えしたいと思います。
-
○川俣
分科員 総理府と御
相談の上に、こっそりでもいいから私に見せてください。
そこで官房長官、これは
予算委員会ですから、これから検討する、一億五千七百万。これはやがて総括質問にも出まして、党代表の我が党の書記長からもこの問題が出ただけに大変に大きな問題で、全国的にその対象者が五十万人、これはやがて減ることはすれ、ふえはしないという対象者の皆さん方です。そこで、さらにこの一億五千七百万について検討するということですか、あの答弁は。検討するというのはどういうことですか。
-
○
吉居政府委員 御指摘のように、六十年度予算案に特別基金の検討及び
調査に必要な経費ということで一億五千七百万円が計上されたわけでございます。この中には人件費や事務経費も含んでいるわけでございます。
先ほど来御説明申し上げておりますように、二年半かかって
報告をいただきました戦後処理問題懇談会の結論におきましては、これ以上国において措置するものはないとするとともに、
関係者の心情に深く心をいたすという趣旨から特別の基金を創設するということを提唱しているところでございます。
政府としましては、この趣旨を踏まえながら六十年度予算が成立した段階で具体的にどのような
内容、どのような方法で検討を進めていくのか、そういう検討、
調査の方法等につきまして
関係省庁等とも
相談をしながら具体的に詰めてまいりたい、かように考えている次第でございます。
-
○川俣
分科員 時間がないのだから、何を検討するのかということを聞いておるので、もう少し的確に答えてください。
その答えを打ち合わせている間に法務省に聞くのですが、五十万人の人力はいつまでも待っておれない、自分たちはほとんどもう七十歳になろうとしておるのですから。そうなると、どうしても裁判に訴えるしかないというので法廷闘争になったわけですが、その経過は大体どうなんですか。
-
○横山説明員 御説明いたします。
ただいま御質問のございましたシベリア訴訟と申しますが、これにつきましては、
昭和五十六年四月に第一次訴訟が提起され、また同年八月には第二次訴訟が、また
昭和五十七年一月には第三次訴訟が提起されまして、原告数は全部で五十八名、請求総額は二億四千万円余りとなっております。現在はこの三件が併合審理されている状況にあります。今日まで十九回の弁論あるいは証拠
調べの期日が開かれておりまして、現在なお証拠
調べが行われている段階にあります。
以上です。
-
○川俣
分科員 そうなると、片やそういう法廷闘争十九回、さらに政府の方は検討する。何を検討するのか、一億の方を検討するのか、人件費の方は五千七百万その他で当然経費だろうけれども、何を検討するのです。また、白紙で検討させるのですか。白紙の諮問というのは無理がある。すると、何を検討させるのですか。検討の機関を新たにつくるのですか。それともあなたのところで検討するのかね。
-
○
吉居政府委員 まず、検討の場でございますけれども、その
報告をいただきました戦後処理問題懇談会につきましては、既に長期間お願いいたしましたので、昨年十二月二十一日に官房長官に対して
報告をいただきまして、これで一応終了ということにいたした次第でございます。したがって、今後の検討でございますけれども、まず一億五千七百万円のうち人件費、事務費を除きますと約一億円、こうなっておりまして、これがいわば特別基金の検討及び
調査ということに回すべき予算の枠でございます。
そして、どのように検討するかという具体的な話でございますけれども、これは先生御
承知のとおり、シベリア抑留問題もあるし、恩給欠格者問題もあるし、また在外財産問題もあるわけでございます。こういうふうに広範多岐にわたる問題でございますので、したがって、そういうふうな各立場も念頭に置きながら特別基金の検討、
調査ということにつきまして、予算の成立を待って
関係省庁とも具体的に
相談しながら、どういうふうにしていけばいいか、どういう
内容にすればいいか、どういう対象にすればいいかといったようなことについて詰めてまいりたい、こういう状況でございますので、現在具体的な
内容を固めているというわけではございません。
-
○川俣
分科員 室長、もう少し、総括質問とか何とかを聞いていると思うが、官房長官は明確に答えていると思うのです。一億円ぐらいじゃないんだ。一億円なんだ。特別基金なんだ。官房長官がかなり具体的に答えているんだから、それを把握していなければだめだよ。これから検討するんじゃないんだよ、基金をやるということを官房長官が答えているんだから。
時間がないからあれですけれども、官房長官、基金を平和祈念基金、こういうことになった。これは多分に期待されるであろう個人補償なども含まれると考えていいものなんですか。
-
○藤波国務大臣 政府としては懇談会の
報告を受けて、具体的には個人に対することというものはもう終わっている。しかし、その
関係者の方々の心情を考えるときにまことに同情を禁じ得ないものがあって、その趣旨を踏まえて基金の創設を提案したい、こういうふうに懇談会は述べておるわけでございます。その考え方を受けてどのようにその基金を創設していったらいいのか、あるいは創設した基金をどのように活用していったらいいものだろうか、いろいろそういった点について検討を進めていく必要があるわけでございまして、具体的なことは懇談会の中には何も出てないわけでございますから、それらをどのように構えていくかということを中心にいたしまして検討していくことになろう、こう考えておるところでございます。しかし、それらにつきましても、どのような問題についてどのような手順で検討していくかということにつきましては、予算成立いたしました後、総理府に室を置いていきたい、こう思っておるところでございますが、そこが検討していくいわば中心になろうか、こう思いますけれども、
関係省庁などともいろいろ
相談をしながらそれらの手順についても検討をしていく、こういう構えで今おるところでございます。
-
○川俣
分科員 検討というのは大変な政治用語ですが、その検討でもあれですけれども、そうすると、個人補償も含めて検討すると期待していいものなんだろうか。
-
○藤波国務大臣 検討してまいります中心のテーマは、基金をどのように創設するか、どのようにその基金を活用していくかというところにやはり重点が置かれよう、こう思うのでございます。そして、それらの基金を活用するといいましても、従来いろいろな団体等、それぞれ最寄り最寄り実情についても、例えば対象の人員でございますとか当時の
事情などにつきましてもそれぞれの団体などでいろいろ
調査などもしていただいておる向きもございますけれども、いずれにいたしましても、どのような実情になっておるかということについて基礎資料が要るではないかといったような各方面の御指導などもございまして、これらも
調査をしていかなければなるまい。こういうことで検討並びに
調査ということで項目を掲げておるところでございますが、お話についての中心テーマは、何回も申し上げますけれども、基金の創設並びに活用について検討を進めるということになろうと思います。
-
○川俣
分科員 この要求が出て何年になりますか。戦後四十年。実情を
調査するなんと言ったら逆なでだよ、あなた。そうじゃなくて、平和祈念基金というものを置いて、それを検討するということなんでしょう、一億の使い方を。そういうことなんでしょう、今までずっとあなたが答えてきた問題は。
したがって、時間がありませんから、一つだけで終わりますから、委員長お許し願いたいと思います。
こういうはがきがあちらこちらに出されておるので大変に混乱しておるというか、期待感を持っておる人力だけに、はっきりしておかなければならぬと思う。しかもこれは自民党、いわゆる政権党の方が選挙区にはがきを出したのです。「さて、六十年度の予算編成にあたり、御高承のとおり戦後処理問題懇談会の答申は、大変遺憾な
内容でしたが、再三の折衝の結果、来年度予算において「平和祈念基金」の検討費の他に個人補償のための含みを持った実情
調査費(総計一億五千七百万円)を獲得することができました。個人補償実現のため議員立法等の手段も含め、今後とも全力を傾注する所存ですので、よろしくご指導をお願い致します。」これは要求じゃなく、立派な政権党の自民党の人のはがきである。あらかじめ官房長官のお目にかけたと思うのですが、これはちょっと行き過ぎじゃないだろうか、あなたの思っていることと。どうですか。
-
○
吉居政府委員 一億五千七百万円、まあ一億円の検討
調査費というものは、先ほど来官房長官がお答えになられたとおりの方向でこれから検討していくわけでございまして、要するに……(川俣
分科員「おれの質問に答えてくれよ、このはがきをどうだと言っているんだ」と呼ぶ)はい。政府といたしましては、懇談会の
報告の趣旨に沿ってこれから検討、
調査をしていく、こういうふうに考えておるところでございます。
-
○川俣
分科員 そんなこと聞いてないよ。じゃ、官房長官。
-
○藤波国務大臣 予算に計上いたしました一億五千七百万円は、基金の検討並びに
調査ということに使うということになっておりまして、どのようにその検討並びに
調査を進めるかは、予算が成立いたしました後、総理府を中心にいたしまして
関係省庁集まって検討を進めていくようにいたしたい、こう考える次第でございます。
-
○川俣
分科員 そうじゃなくて、個人補償というものをにおわしている文章は行き過ぎではないかと言っているんです。それをみんな聞いているんだ、五十万人が。適当じゃないでしょう。
-
○藤波国務大臣 何回も申し上げておりますが、政府といたしましては基金の検討並びに
調査ということに一億五千七百万を使う、こういうことになっておる次第でございます。
-
○川俣
分科員 それじゃ、個人補償も期待してもいいんですな、その検討の中に。
-
○藤波国務大臣 大変くどいようでございますけれども、懇談会の
報告を受けて、懇談会の
報告には基金の創設ということを御提案をいただいておるわけでございますので、それを受けて基金の創設あるいはそれの活用というものをどのように構えていくかということについて検討並びに
調査を進める、こういうことになっておる次第でございます。
-
○川俣
分科員 あなたの構えには個人補償は入っておりますか、念頭に入っておりますか。入っているかもしらぬならしらぬでいいよ。
-
○藤波国務大臣 懇談会の
報告を受けて政府としては対処をいたしておる次第でございまして、懇談会の
報告は基金の創設を提案をいたしておるわけでございます。その創設並びに活用についての検討及び
調査を予算計上いたしておる、こういうふうに申し上げておるところでございます。
-
○川俣
分科員 そうすると、個人補償費は当然考えられない懇談会ですね。
-
-
○藤波国務大臣 予算が成立をいたしました後、予算に計上いたしております人件費もあるわけでございますので、総理府にその検討のための室を設けましてそこで検討していく、こういうふうな予定で政府としては構えておる次第でございます。
-
○川俣
分科員 個人補償を考えていいんですかと言っているんだよ。五十万人としては期待していいんですかと言うんだよ。どうなんです。
-
○
上田(哲)主査代理 その一点だけひとつきちっとやってください。
-
○藤波国務大臣 御答弁を申し上げておりますお話の流れをぜひお酌み取りをいただきたいと思うのでございますが、個人に対する補償といったことも随分御論議がありまして、それを受けて懇談会が出発をして、そしてその懇議会は基金の創設を提案をしておられるところでございます。その懇談会の
報告を受けて、政府といたしましては検討並びに
調査を進めていくようにいたしたい、こう考えておる次第でございます。
-
○川俣
分科員 同僚議員に御迷惑をかける時間帯になりましたのでやめますが、これは、あしたの総括締めくくりもありますから……。
-
-
○
大橋分科員 きょう私がお尋ねしたいことは、実は去る二月十四日の衆議院の
予算委員会で社会党の佐藤観樹先生が取り上げられた問題でございますが、私はその問題をもう一歩掘り下げながらお尋ねをしたいと考えておるものでございます。
まず、戦後処理問題の一環といたしまして、道義的といいますか、人道的な立場から極めて重要な課題でありながら、意外といいますか、案外といいますか、取り残されている問題があったのだなと、私は初めてその重要な事柄に気づいたわけでございますが、きょう申し上げます問題の解決というものは、そのまま日本と韓国、いわゆる日韓、あるいはまた日朝両国の友好親善の促進に直結する重要な役割を果たす事柄だろう、このように確信しているものでございます。真剣に取り組みたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
そこで、簡単にその佐藤先生の質問を要約して申し上げてみたいと思うのですが、日本に強制連行された朝鮮半島の人々が炭鉱やトンネル、あるいはまたダム工事等に就労し、過酷な労働を強いられて、過労で死亡したりあるいは
事故死などで亡くなった人々が非常に多い、その遺骨がそのまままだ日本国内の各所に散在した形で葬られている、こういうのが一つの質問でございます。
もう一つは、現在東京の品川区に居住しておられます吉田清治という方、この方は元山口県の労務報国会の動員
部長を務めた方でございまして、現在は強制連行犠牲者遺骨祭祀送還協会の会長としまして、送還事業の第一線に立たれて苦労なさっている人である。また、この方は一昨年韓国に渡られまして、私費を投じて天安市に謝罪の碑というものをお建てになった。いかに任務とはいえ、自分の責任で当時約六千人という朝鮮半島の方々を強制連行して、おのれのこの戦争犯罪といいますか、そういう思いに対する自責の念から謝罪の碑を建てられた。さらに、在日本大韓民国婦人会中央
本部とも覚書を交わされまして、送還事業の協力を求めて、現在真剣に取り組んでおられる方だということであります。
いろいろずっと佐藤先生は述べられたわけでございますが、要するに質問の第一回目は、これほどの重要な問題、事業というものを一民間人にゆだねられているだけでよいのだろうか、政府として責任ある措置をとるべきではないのですか、これが質問の第一だったと思うわけであります。
これに対しまして中曽根総理大臣は、「朝鮮半島で日本が行ったことに対する日
本人自体の
反省につきましては、全く同感であります。 それから、吉田清治さんがおやりになっていることは非常にとうといことであると思います。今初めてお聞きいたしましたので、よく
調べてみたいと思います。」非常に吉田清治さんの行為を高く評価した上で、重大な関心を持たれたというのが
最初の御答弁であると思うのでありますが、この問題について官房長官はどのように受けとめられているか、初めにお尋ねしたいと思います。
-
○藤波国務大臣 お話を承りまして、
関係省庁でよく連絡をとり合って実情がどうなっておるか、また、この問題にどのように対処をしていったらいいかということにつきましてよく
相談することがまず大事である、こういうふうにお答えを申し上げてきたところでございます。
現在、事務当局に命じまして、
関係省庁にその旨を連絡をして、政府としてこの問題の実情の把握と、どう対処するかということの
相談を進めるということについて、
関係省庁でよく協議をして進まなければならぬ、このように指示をしてきておるところでございまして、現在、実情の把握なり、これにどう対処するかということについての
相談を進めておる、これが今の政府の実情でございます。
-
○
大橋分科員 この種の問題は、現在いずれの省庁が所管するものかは必ずしも明確でないと私は思うのですね。厚生省だろうか、あるいは労働省だろうか、あるいは外務省だろうかと、さまざまに関連があろうかと思うのでございますが、要するに現在のところどこという明確な省庁がない限りにおいては、全面的に官房長官の決断と申しますか、また、そういう
関係省庁に対する指示あるいは指導というものが最大のものだと思うわけですね。今の官房長官のお話を伺いまして非常にうれしく思ったものは、既に
関係省庁には今の趣旨を伝えて実情把握に乗り出している、このように伺いまして、うれしく思っております。
そこで次の問題に入るわけでございますが、佐藤先生が具体的問題として指摘されましたのが、実は私の地元であります福岡県の嘉穂郡桂川町にかかわる問題だったわけです。非常に具体的な問題でございました。私はこの問題をお聞きしまして非常に深刻に受けとめまして、これは一日も早く解決せねばならない問題だと深く決意をいたしまして、直ちに現地に秘書を走らせまして
調査をさせました。また、地元の桂川町長や
関係の役人さんからも詳しく
事情を聴取させまして、早速私のもとにその状況
報告が届いたわけであります。この状況
報告の
内容と佐藤先生が指摘なされた
内容は、確かにニュアンス的には多少の違いがあるところもありましたけれども、ほとんど一致いたしておるというのが事実でございました。
そこで、私どもの
報告と佐藤先生の発言というものを簡略にまとめ上げますれば、このようになります。
その一つは、この問題の地域でございますが、大正四年の七月十一日から麻生吉隈炭鉱の従業員の墓地として使われていたという事実。現在、この地域は桂川町が寄付を受けて桂川町有地となっているわけでございますが、
昭和三十四年から
昭和三十六年ごろ、墓地の周辺を整地作業をするということから発掘
調査が行われたわけです。ところが、人骨がたくさん出てきたわけでございます。町長さん等の話を伺いますと、五百四体分の遺骨、そのうち四百五十体分は身元もわからずに無縁仏とされたそうでございます。この無縁仏は
昭和三十六年の三月十一日に字飴氏というところに納骨堂が建てられまして、これは麻生さんが建てたわけでございますが、そこに大仏をいたしまして納骨したというわけです。その当時の新聞報道等の記事と
写真がございましたので、私ここに持ってまいりました。後でゆっくりと見ていただきたいのでございますが、当時の納骨堂、そして大仏式を行っているところでございます。
問題はここから始まるわけでございますが、納骨入仏式は今申しましたように三十六年の三月でございます。ところが、その後
昭和四十四年に、この墓地の跡に桜の木を植えようということになったわけです。そして土地を掘り起こしたところが、これまた多数の人骨が発掘された。大変な話題になったのであります。その桜の木が植わっている場所というのは、これも後で見てもらいたいのですが、現地の
写真を撮ってきております。
その後にまた発掘が行われるわけでございますが、これは
昭和五十七年ですから、わずか三年前の話ですね。弥栄地域に公民館や児童公園を建設することとなって整地作業が行われたわけでございますが、その整地作業の段階でまたたくさんの骨が出てきた、こういう事実なんですね。その公民館とか児童公園というのも、
写真をちゃんと撮ってきております。この辺の
事情については、佐藤先生の質問の中に詳しく述べられております。
そこで、実は私はここに一枚のビラをお持ちしておりますが、「第三回徳香追慕碑祭」という、これは協賛を求めるビラでございますけれども、ちょっと読ませていただきますと、これは昨年、五十九年八月五日の日曜日の午後五時三十分から行われた祭りでありますが、
まつり開催の主旨
石炭が近代日本の基幹産業として、戦中はもとより戦後の経済復興に貢献したことは、申すまでもありません。しかし、その採掘のかげには人命よりも石炭優先のファシズム体制下の犠牲者が、数百体もこの石炭跡地に尿となって埋没されていることを忘れてはなりません。身元、親族のわかる人々は大半引きとられ、手厚く葬られ供養されていますが、あの無暴な戦の中で、徴用強制就労を余儀なくされた韓国朝鮮の人々や中国人労働者は、身元も分らず名前も分らず、番号で葬られているにすぎず、無縁仏として放置され、今日に至っております。過去の日本のあやまち、過酷な労働の歴史を知り、しかもその跡地に住いするものの責務として、私たちは発起し「徳香追慕の碑」の供養実施して行くものであります。それは又ふたたびあやまちを起さない為の戦争への警鐘であり、平和なふるさとづくりを次代へ継承するためのものでもあります。地域住民の方々の協賛を心からお願い申し上げます。
ということで、弥栄区、それから笹尾一区、二区、三区の婦人会の皆様が共同しまして、自発的に行っているのですね。先ほど言いましたように、三年前に整地をしたときにたくさん骨が出てきたこと、やはり現地の人は非常に深刻にこの問題を受けとめまして、こういう碑を建てられたのですね。五十七年八月一日が落成式になっておりまして、それから毎年毎年こういう催しが自発的に実は行われているわけであります。
そこで、私はこれを見てまいりましたときに、もう一つ非常に印象深いものがあったのは、これは佐藤先生も質問なさっておりますけれども、遺体埋葬の見取り図があったわけです。これがそうなんですが、これは会社側がその当時の労働組合に、元朝鮮半島から来ている方々の遺体をここに埋めましたというのが番号でずっと記されて、印もついているわけですね。これがその写してございますが、今の婦人会等の方もこの事実をよく知っていらっしゃるのだなということを私は感ずるわけであります。
要するに、状況を判断してまいりますと、
昭和三十六年、五百四体分中無縁仏とされた四百五十体が納骨堂に大仏されたということになってはおりますけれども、これは全体の一部分にすぎなかったのではないかな、こう私は考えるわけですね。確かに現地に参りますと、あれは全体の四分の一程度じゃないのですかという話があるわけです。私はこの際、ぜひとも現地を、地域は限られておりますから、そこをちょっと掘っていただければすぐわかる問題だと思うのですね。ぜひこれを実行していただきたいと思うのでございますが、いかがでございましょうか。
-
○
吉居政府委員 先ほど官房長官からのお話にもありましたように、私どもは、官房長官からの御指示によりまして、総理府といたしましても、本問題に関するこれまでの経緯なども踏まえながら、厚生省、外務省、労働省、文部省等
関係省庁から成る連絡あるいは話し合いの場でいろいろ検討すべく現在
関係省庁といろいろ
相談しておるわけでございまして、今の先生のお話のような実態がどうなっているかという点につきましても、今後そういうふうな
関係省庁での話し合いの場においていろいろと検討してみたい、かように考えております。
-
○
大橋分科員 官房長官、検討される分にはありがたい話でございますが、今申し上げたのは、現地でいろいろ
調査した結果と佐藤先生のおっしゃったことがもうほとんど一致しておりますし、あとは実際に
調べる以外に方法はないと思うのです。というのは、ある人によれば、納骨されたのは遺体の重要な部分だけであって、あとはみんなほうったんだ、いわゆる残骨じゃないかと言う人もいるわけですよ。しかし、どちらが真実なのかは実際に掘ってみないとわからない話だと私は思うのです。
そこで、佐藤先生の質問に対して、中曽根総理が二回目にこうおっしゃっていますね。「非常に大切なことをお聞きいたしました。やはりそういうことが残っておるということは甚だ残念であり、申しわけないと思います。その実態をよく
調査させまして、厚生省なりあるいは労働省なりしかるべき役所に命じましてこれは今命じられているそのとおりです。その後が問題です。「そして発掘なりあるいは供養を行うとか、そういう措置に協力するようにしたいと思います。」総理は、その話を聞きながら、これは実際発掘してみなきゃわからぬな、こう判断なさったと思うのですよ。私も必ずしも朝鮮半島の方々の遺体、骨がまだたくさんあるんだと、それははっきり見てみなきゃわかりませんから、そういう
意味で、何カ所かでいいですから、ぜひ実際にやらしていただけませんかということを、これは官房長官にお願いするわけです。
-
○藤波国務大臣 先般の佐藤議員の御質問の際もそうでございますし、今また先生の御質問を聞かせていただいておりまして、実情はどういうことであったのかということはまだつまびらかにいたしませんけれども、お話の中で漂うてまいります感じからいたしまして、まことに胸の痛む、つらいことだ、こういう思いを禁じ得ないものがございます。
総理からお答えをいたしましたように、やはりよく霊を弔うということにしなければならぬと思うのでございますが、それにいたしましても、どのような地域でどのような実情になっておるのか、従来の経緯等も踏まえまして、各省庁でそれぞれ把握しておることもありましょうし、そういったことも総合してみて、どう対処するかということをいろいろ
相談して、そして適切に対応させていただくようにしなければならぬ。気持ちとしては持っておりますけれども、具体的にどうするかということにつきましてはもう少し
相談する時間をいただきたい、こう考える次第でございますが、御指摘もいただいておりますので、その
相談事に余り時間をかけないで、なるべく早く対応させていただくように事を急いでまいりたい、このように考える次第でございます。
-
○
大橋分科員 大変ありがたいと思います。というのは、この問題が国会で取り上げられて以来、地元の町長さんは非常に胸を痛めておられます。遺骨問題でありますし、やはり早急にこの問題は解決していかないと地元の皆さんに対しても申しわけない。ただ、地元の皆さんの声は、今ごろ何を言っているんだという、非常に怒りにも近い声が上がっております。一日も早く実態を明らかにしていただきたい。そして、もしそういう事実があれば早くそれなりの適切な措置を講じていただきたいということであります。
それから、日本の軍人軍属とか、あるいはそういう海外における戦没者等の遺骨については厚生省はそれなりに対処しているわけですが、韓国、朝鮮の方々と日
本人とは国籍は違いますけれども、これはやはり同じような遺族の心境ではないかと私は思うのです。ここで、厚生省の人、来ていますね。今私が申しましたように、日本の軍人軍属、その遺家族に対しては遺家族援護法というものがあって、それで対処され、海外における我が国のそういう方々の遺骨収集は毎年計画的に行われているわけでございますが、ひとつお尋ねしたいのは、ソ連抑留になった日本の軍人さん等々ですが、そこで死没された方は一体どのくらいいるのかということですね。それからもう一つは、その遺骨はどうなっているのだろうかということ。もう一つは、遺族の方々の例えば墓参等はどういうふうになっているのかということ。そして、厚生省の基本的な遺族に対する考え方はどうなのかということをお尋ねしたいと思います。
-
○
熊代説明員 お答えいたします。
ソ連抑留死没者の数でございますけれども、ソ連本土に抑留中に死没した者の数は約五万五千名と推定いたしております。これらの死没者の遺体につきましては、ソ連政府から二十六カ所の墓地に三千九百五十七名が埋葬されていると通報されているところでございます。
その他の死没者の墓地
関係の資料につきまして、もっとあるはずだということで外務省を通じまして問い合わせをしておるわけでございますが、それに関する資料はないという答えでございます。厚生省といたしましては大変残念に思いまして、毎年外務省を通じまして、さらに
調査をしてそれに関する資料をいただきたいというふうにお願いしているわけでございます。
それから遺族の墓参についてでございますが、申し上げました二十六カ所のうち二十一カ所につきましては、ソ連政府の許可を得ましてその墓地に埋葬されている死没者の遺族代表、政府が引率するものと遺族単独によるものとございますが、墓参を実施いたしましたが、残る五カ所の墓地につきましては外国人の立入禁止区域であるということで、ソ連政府の許可を得られないということでございます。
死没者に関する墓地の資料と、それからまだ実現してない五カ所の墓参の実現につきましては、引き続き粘り強く外務省を通しまして交渉しているところでございます。
〔
太田主査代理退席、主査着席〕
-
○
大橋分科員 今の御答弁では、死没なさった方が大体五万五千、そのうち遺骨として葬られている方が三千九百五十七ですか、やはり非常に問題ですね。日本の立場からは非常に残念でならぬ思いで、厚生省もさらに
調査を進めてもらいたいということを外務省を通してやっておるという話でございます。また、家族の墓参についてはまだまだ参詣できない地域があるやに今伺いましたけれども、いずれにしましても、日
本人の立場から、遺族の心境から、やはり遺骨は日本の方に持ってきてもらいたい、こういう思いがあるのじゃないかと思うのです。そういう話はどうなっておるのですか。
-
○
熊代説明員 お答えいたします。
他の地域の遺骨収集と同様、許されるものならばぜひ日本に遺骨収集をして持ってまいりたいということで申し入れをしているわけでございますが、残念ながら現在のところ許可を得られない、そういう状況でございます。
-
○
大橋分科員 最後になりますが、官房長官にぜひお願いしたいのですけれども、国籍は違っても遺族の心境は同じだと思うのです。日
本人の我々は海外で死没した遺骨をぜひ日本に持ってきてほしい。同じように韓国の皆さんは、日本に行ってそのまま死没してその遺骨がこちらにある、持ってきてもらいたい。吉田清治さんは、今その運動を民間の立場で一生懸命なさっているわけですね。我が国としまして、戦時中にそういうことで亡くなっていった方のために、やはり慰霊塔ぐらいは建てるべきじゃないかと思うのですね。私は福岡県で、朝鮮半島に非常に近いところでございますので、もしでき得ればこの福岡県のどこかに韓国のそういう方々のための慰霊塔を建てて、見つかった遺骨はそこに持ってきてでも供養する、こういう考え方で整理した方がいいような気がします。ソ連ですらもそういうものを、納骨堂を建てたりしているわけですから、それはいかがでしょうか。
-
○藤波国務大臣 国を離れておられた方々に対する追慕の情でありますとか、あるいはぜひ遺骨を収集してこれを弔いたいという気持ちを持ちますことは、先生御指摘のように国境、民族を超えてみんな同じ心情ではないか、御遺族の方々や
関係者の方々の気持ちをそのように拝察を申し上げるのでございます。
先ほど来申し上げておりますように、とにかく実情の
調査を急ぎまして、
関係省庁でよく協議をいたしましてどう対応していくかということの結論を出していかなければならぬ、こう思う次第でございますが、今御指摘がございましたような、あるいは御提案がございましたような、例えば慰霊の塔を建てるというようなことにつきましても、今後どう対応していくかということを考えます際に十分参考にさせていただきまして協議を進めていくようにいたしたい、こう考えますので、いずれにいたしましても少し時間をいただきますようにお願いを申し上げたいと思う次第でございます。
-
-
○伊藤主査 これにて
大橋敏雄君の質疑は終了いたしました。
次に、
上田哲君。
-
○
上田(哲)
分科員 官房長官、与野党合意の金丸幹
事長のお約束でありますが、昨日、官房長官は必ずしも一体ではない、政府としては五項目を一体として考えている、こういう御見解でありました。私どもは、幹
事長の職を賭してのお約束はこの六十年度予算中に少なくとも二百億円レベルの節減を人件費以外で行うということでなければならぬと理解しておりますから、そこが違うということになりますと、これは大変重大な問題だと思っております。
そこで、この五項目でありますが、この五項目の中の第五項、方針変更の必要が生じた場合は閣議や国防会議にかける、こう言われているわけであります。閣議や国防会議はいずれも政府専決の機関でありますから、政府が仮にきょうやろうと思ってもできないことではないわけであります。このGNP一%問題の政府公約、五十一年、これは政治道義として政府が一方的に破棄され得るものではない、当然私はその配慮をお持ちだと思うのですが、いかがですか。
-
○藤波国務大臣 幹
事長・書記長会談の結果につきまして昨日御質問をちょうだいをいたしまして、お答えをいたしたところでございます。昨日私がお答えをいたしましたのは、幹
事長が野党四党の書記長に対して発言をされました
内容はこれを尊重していくというふうに政府としては考えておるということが一つございます。それから防衛費の問題につきましては、
予算委員会で
内閣総理大臣を中心にいたしまして五つの事柄について申し上げてきております、そして幹
事長の御発言は、その中の一つであります、これからも守っていきたいと思いますということを特に力点を置かれて強調されたものであると受けとめておる次第でございます、こういう角度から申し上げてきておるところでございます。
一般論といたしまして、政府と党とは一体か、こういう御質問がございましたので、これは政府、党は一体になって進んできておりますけれども、政府の方針というのは、もう具体的に言えば閣議で決定をするということを中心にいたしまして政府としての態度がございますし、それから党の方は、やはり役員会とか総務会あるいは党大会といったようなことで少なくとも党としての考え方というのはあるわけでございますし、従来も往々にいたしまして、党では決まっておるけれども政府ではなお決定に至っていないという政策課題の事柄であるとか、いろいろ、そういうように政府と党とは一体とはいいながら同じ時期に同じ方向で決まるということでは必ずしもありませんという
一般論として申し上げたところでございますが、防衛費の問題につきましては、今申し上げてまいりましたように、特に幹
事長の御発言は今後も守りたいとするという政府のその部分について特に大きく強調されたものであるというふうに受けとめてこれを尊重してまいりたい、こういうふうに私は申し上げたところでございます。
その五つのうちの最後の、一%をもし超えることがあったとすればということですが、これは今後GNPとかあるいは人勧の中身とかなかなか不確定な要素がございますので、ことしは一%を途中で超えるぞ、超えるぞ、そういうお話が各方面からございますけれども、なお不確定な要素がたくさんにございます。ですから、軽々に一%を超える場合にはという議論を、仮定の質問等に対してでも明確にお答えすることは難しゅうございますけれども、しかしもしそういうふうな事態ということになりますれば、当然これはもう国防会議や閣議という議を経なければなりますまい、また、国民の皆様方によく説明を申し上げるという努力をしなければなりますまい、こういうふうに従来も申し上げてきておるところでございます。
ただいまの先生の御質問は、閣議、国防会議というのはそれは政府で勝手に決められることであるけれども、勝手に決めていいことだと思わぬだろうな、こういういわば念押しのような御発言であるか、こう思うのでございますが、
昭和五十一年三木内閣決定以来、GNPの一%枠内に防衛費をとどめるというふうに方針を立てて、これを守って歴代内閣も進んできたところでございますし、何とかこれを守りたいと思いまして、中曽根内閣といたしましても、
昭和六十年度の予算案編成の際にもそのことを十分頭に置いて、一%以内におさまるように防衛費については編成をいたしてきておるところでございますので、今後ともこの方針を守っていくように努力をしてまいりたいという政府の考え方というものをどうか御理解をいただきたい、こう考える次第でございます。
-
○
上田(哲)
分科員 そこの部分をもうちょっとしっかりお尋ねしますが、五十一年の閣議決定は、当然これは政府の公約ですね。
-
○藤波国務大臣 当時の三木内閣におきましてその方針を決定をして、その方針に基づいて歴代内閣はこれを守って今日に至っておる、こういう種類のものかと思う次第でございます。
-
○
上田(哲)
分科員 政府が閣議で決定して公表しているわけですから、私は国民に対し公約であるというふうに理解するのですが、公約ではないのですか。
-
○藤波国務大臣 国民に対してそのことを発表しておる、だからこれを守っていくというのは公約ではないかという御指摘でございますが、さらに厳密に申し上げますと、三木内閣でその方針を決定をして、そしてそれを内閣の方針として守って今日に至っておる、こういうふうに考えておる次第でございます。
先生のただいまの御発言は、国民の側から見れば、政府は方針を決めて、そしてやってきておるのであるから、これは国民は公約ととるよ、こういう御指摘であろうかと思うのでございますが、政府の側からいたしますと、方針を決定をしてこれを歴代内閣が守って今日に至っておる、こういうことが政府の立場からは正しい言い方ではないか、こう思うわけでございます。
-
○
上田(哲)
分科員 これが公約でないとおっしゃるのだったら、じゃ、公約というのはどういうものですか。政府が閣議で決定して公にしているのだ、それだけのものだとおっしゃる、それは公約だと思うのです。それが公約でないと言うのなら、公約というのはそのほか何をやることが公約になるのですか。
-
○藤波国務大臣 これは先生、それだけのものですと申し上げている気持ちでは全くありませんでして、政府が方針を決定をして、そしてもちろんそのことを国民にもよく御理解いただいて、その方針が国民の皆さんに十分知られてきておるところでございまして、また国民の側から見て、それは政府が公約しておることではないかというふうに、先生は今そういう立場から御質疑がなされたもの、こう思いますけれども、政府の側からいたしますと、客観的に言ってそれは公約ということになるのでございましょうが、しかし厳密には、これは政府が方針を決定をして、これを歴代内閣が守ってきた、こういうことでございまして、今までの政府の申し上げてきておるところも、これは政府の公約でございますと言って申し上げてきておるという国会答弁はないのではないか、私、よく研究しておりませんけれども、そのように思っておりまして、政府の方としてはその方針を守って今日に至っております、こういうふうに申し上げてきておるところでございます。決してそれだけであるというような、そういう軽々しい感じで申し上げておるのではなくて、非常に重々しい、やはり政府は方針を決めて、決めましたことについてはこれは守っていくというのはごく当然のことでございますから、そのことには大きな決意を持って今日まで歴代内閣は取り組んできておる、こういう姿勢をぜひ御理解をいただきたいと思うのでございます。
-
○
上田(哲)
分科員 的確に討論をしたいと思うのです。
国民がどう思うと今おっしゃったが、政府は公約と思ってきたのですか、思ってないのですか。的確にひとつ、どっちかを。
-
○藤波国務大臣 私は、厳密な、何といいますか、言葉の使い方とか、特に政府が使いますいわば公用語のような立場のものについて余り勉強いたしておりませんので、そこのところがどのように申し上げたらいいかと思うのでございますけれども、政府がこの方針を決定する、いろいろな方針を決定するわけですけれども、その中で特に防衛費についてはこういうことに留意してまいりますということの方針を決めて、それで歴代内閣がずっと来ておる、こういう立場でございます。
-
○
上田(哲)
分科員 それじゃ、政府はともかく、国民の側から見れば、これを公約と見ることは当然だ、これでいいのですね。
-
○藤波国務大臣 国民という非常に大勢の方の、しかもそれぞれ御意思があります方の一つの問題についての考え方というものを申し上げるのは非常に難しいと思いますけれども、今までの先生と私とのやりとりの中で、国民が政府がその方針を決めて守ってきておることは公約としてとらえておるよ、国民がそのようにおっしゃれば、これはやはりそのようにお受けとめいただいていい事柄ではないだろうか、私はそんなふうに思いますが、政府の側からは、これはこのように公約してまいります、公約いたしました、こういうふうに申し上げてきているという立場ではない。言葉の使い方の問題でございますけれども、この問題を非常に大事に考えているということについては、先生と私との間にそう違いはないというふうに思うのでございます。
-
○
上田(哲)
分科員 非常に重く受け取っている、そして国民の側からはこれが公約だというふうに受け取るであろうという点は一致いたしました。
その公約と国民が受け取る大きな重さのものを変更するのに、政府の専決行為としての閣議の決定、閣議で決めたのだからというだけで閣議で変えることができるとか、国防会議にかけさえすればいいのだということにはならないだろうということを先ほどから申し上げているわけで、特にこれほど国論を沸かせ、そして国会の議論がここまで来たということになれば、国民の代表である国会に向かってこれだけさまざまな意見を開陳された政府としては、そうした部分を抜いて、たまたまある日あるとき閣議で別な決定をし、国防会議にかければ済むということにはなりませんね。
-
○藤波国務大臣 総理がこれまでにお答えをいたしておりますところは、一%を超える事態が生ずればという仮定の上に立ちまして、形の上で当然これは国防会議なり閣議なりの議を経るという形式が要るわけでございますから、そのことを申し上げておるところでございます。歴代内閣が防衛費一%問題について取り組んでまいりました姿勢、この三木内閣の方針を守っていきたいとして取り組んでまいりました姿勢、これを現在の中曽根内閣でも非常に大事に考えて取り組んできておるところでございまして、そういう事態が生ずればという仮定の上でのことではございますけれども、その事態に至る前後、やはり非常に慎重な構えが必要であろう、こういうふうに考えるわけでございまして、頭の中で何回も何回も、防衛費は一%枠内だという方針が政府にはあるということを反すうをしながら進んでまいらなければならぬ、そのことの重みを大事に考えていかなければならぬ、こう考えておる次第でございます。
-
○
上田(哲)
分科員 形容詞のやりとりではないのです。これは官房長官がはっきりお答えになっている。五項目あって、政府としてはこの五つを一体のものと考えているのだ、この意思表明があるわけでありますから、この意思表明について具体的に聞いているのです。
私は少なくとも公約、政府はそういう言葉を使うか使わないかはあえて別としても、国民から見れば当然なものであり、しかも国会でこれだけの議論があった、しかも重く受けとめている幹
事長発言ということになれば、政府が言っておられる五番目の問題の実行に当たっては、これを政府の部内の決定機関である閣議とか国防会議、それは必要であるとおっしゃるのは部内のことでありましょうが、それだけで済ませてしまうというわけにはいかないだろう。当然これは国会の議に付する。それが決定権であるかどうかの問題は別としてですよ。この辺の細かい議論はいたしません。そういう議論の場があるべきであろうということになりますね。
-
○藤波国務大臣 政府が方針を決定をしてそれを歴代内閣が守ってきておるこの問題につきまして、一%を超える事態が生じますれば、今申し上げますように政府が決定をした方針を変更することになるわけでございますから、政府が閣議あるいは国防会議の議を経る、こういう形式が当然必要だということを申し上げておるところでございます。同時に、この問題について深い関心を持っておられる国民の皆様方にそのことをよく御説明をする必要があろう、このように考える次第でございます。
-
○
上田(哲)
分科員 ですから、閣議で決め直す、それを国防会議にかければいいということにはならぬでしょう。今国民の皆さんにわかっていただくというのは、政府の刊行物か何か出せばいいというものではない。まさに国民の代表である国会の議論の場が当然そこになければならない。あるいは、官房長官はなくてもいいとおっしゃるのですか。どっちかで答えてください。
-
○藤波国務大臣 これはなかなか、先生の御質問は非常に二者択一でどちらかに返事をしろ、こういうことでございますけれども、今申し上げておりますように、形式上は政府が閣議で決定をした方針を変更するという事態が生ずれば、これはあくまでも仮定の質問でございますので、くどいようではございますけれども、まだ今後不確定な要素がいろいろございます。しかし、それらを全部仮定のこととして一%を超えるという事態になったらどうするかということにつきましては、くどいようでございますけれども、既に申し上げてきておりますように政府が決めてきた方針の変更でございますので、国防会議、閣議の議を経て決定をする、そして、国民の皆さん方にそのことをよく御説明をするということになろうと思うのでございます。
-
○
上田(哲)
分科員 仮定の問題というのは、こっちが出した仮定じゃないのです。あなたの方が五つでやる、これが一体だと言っておられるのだから、あなたの側のパターンの中でお答えがなければこれは質疑にならないですね。そういう中で、もう一遍詰めますよ。おっしゃっているとおりなのなら、もしそういう事態が生じたならばとおっしゃる。その場合は閣議と国防会議にかけるとおっしゃるが、閣議と国防会議にかけるのは部内のことでありまして、それはそれだけでいいのか。国論に問う、国会の審議に付するということも何らかの形で必要だ、そこまでいきましょう。
私は何も白か黒か割り切って言えと言っているのじゃない。当たり前のことを聞いているのであります。だから、そうするのか。あるいは国論、国会にかける必要はない、つまり、もっと単純に言いましょうか、閣議と国防会議さえかければいいとお考えですか。
-
○藤波国務大臣 この問題をどう考えていくかということは、何回も申し上げておりますように、政府が方針を決定をして歴代内閣がこれを守ってきたという非常に大事な政策であるというふうに考えておりまして、これを守ってまいりますために従来も努力をしてまいりましたし、これからも守っていきたい、このように考えておる次第でございます。くどいようでございますけれども、これは念のために申し上げておきたいと思います。
そして、その上に立っての御質問で、こういう重大な政策であるから国会の議を経る必要があろう、こういう御質疑に対しましては、政府としては、政府は方針を決定をして今日に至っておるのでございまして、これを変更するという事態が生ずれば、形式上国防会議、閣議の議を経て決定をする、こういうことになるわけでございまして、当然国会ではいろいろな御論議があろうと思いますから、その御審議に対応するという機会が持たれようとは思いますけれども、国会の議を経なければ政府の方針が決定できないということではないという形式上の問題につきましては、そうお答えせざるを得ません。
ただ、本当にくどいようでございますけれども、この大事な政策については今後も守りたいとして努力をしてまいりたいと思う次第でございます。
-
○
上田(哲)
分科員 わかりました。閣議と国防会議を通すことが形式論としてはすべてである、議論する場があるかもしれぬがという最後の割り切りのようでありますから、私どもはそのような考え方は不当であると思います。国会でこれだけの議論があったものが一方的に閣議の、部内機関の決定によって変更が行われるということは断じて許せないということを強く申し上げて、この問題は後の大きな課題になるだろうと思います。非常に私は遺憾であるということをまず強く申し上げておきたいのです。
もう一つ、戦後処理の問題なんですが、時間が全くありませんから急ぎますけれども、官房長官、戦後処理も大いに頑張っていただきたい。
実は羽田空港の周辺の問題でありますので第七
分科会で所管省の運輸省とも十分話をしてまいりまして、結構だ、大いにやろうということになったのですが、これをちょっと見ながら——羽田空港が二十年の終戦直後にアメリカ軍に接収されまして、九月二十一日にアメリカ軍が参りまして、二つの町がありまして、穴守町と鈴木町、もう一つあるのですけれども、この千三百二十世帯二千八百九十四人がわずか四十八時間以内に全員立ち退きを命じられまして、全く背中に背負うだけでこちら側に追い出されたわけです。長官もあの羽田に行かれると駐車場に鳥居があるのがおわかりですね。あれは最後に残ったたった一つの鳥居でありまして、どんどん取り壊していったら、けが人が出るものだから駐留軍がついに一つだけ残してしまった。これだけの人が全部追い出されて、これが今羽田周辺の人口稠密な問題になっているわけです。その補償論とかその他、米軍は米軍なりにやったのでしょうが、占領下のことですから、そしてこれは今そういう請求権があるかどうかみたいなことは私はあえて問いませんが、いまだにその人たちがたくさんあそこにいるわけです。
今度、羽田空港が沖合に移転するのですね。あの部分がまたもとに戻るわけです。今さら空港を取り壊せとかコンクリートをはがせなんということを言っているわけではないし、何らかの請求権を行使しようと言っているのでもない。しかし、それを見ていただくとおわかりのように、本当にそのときの人々が、何屋さんがあった、かに屋さんがあったという名前をかなりの部分を復元しているわけですよ。戦後処理と言われるのであれば、法的な立場がどこにあるかは別にして、何とか気持ちに報いてやりたい。例えば記念碑を建ててくれたらどうかとか、年をとった人だちだから、孫子のためにこのあたりには病院がないから一つぐらい記念病院でもつくってくれないかとか、こういう意見がいっぱいあるわけです。そこで、あそこは運輸省の所管になりますから、ぜひそういう立場で努力する、その全体の所管省は長官の方になるわけですから、ここは政府統一をして一生懸命やるという答弁をいただいてまいりました。これを持ってこっちへ来たものですから、ぜひそれをじっくり見ていただいて、この人たちの意見をくみ上げて何らかの温かい処置をしていただくように御努力をいただきたい、御決意をいただきたいと思います。
-
○藤波国務大臣 跡地の問題につきましては、運輸省と地元である東京都との間でいろいろなお話し合いがあるというふうに承っております。どのようにその方針を決めていくかということにつきましては、羽田空港を今度改善をしていくということの目的とか経緯とか、いろいろな歴史もあるわけでございますが、それらも踏まえながらのことにはなろうかと思いますけれども、できる限りやはり地元の方々のいろいろな御意見を聞いて、そして運輸省と東京都とで話がまとまることになれば非常にいいが、こういうふうに考えておる次第でございまして、そんな線で意見がまとまっていくことを期待をいたしておる次第でございます。
-
○
上田(哲)
分科員 結構です。これは各論になりましょうから。ぜひひとつ温かく、地元の人たちが何かお金をよこせなんということを言っているんではない。何か気持ちにこたえてあげる措置をとっていただくことを重ねて申し上げておきます。
もう一つ、戦後処理ということで硫黄島の問題があるんです。硫黄島が作戦基地として重要になってきたという問題をとらえればまたきりがないのですが、私がここで申し上げたいことは、この硫黄島に先般の補正予算で五億六千二百万円の見舞い金を支給した。一人頭四十万円というようなことになっておるんですが、ここでもとにかくあの戦争の経緯の中で強制疎開をさせられた旧島民千二百五十六人がおります。現在生存が確認されておるのが五百五十八人。こういう状況でみんな島に帰りたい、こういうことになっているやさきにとんとんと話が進んで、これは島には住めそうもないぞみたいな答申が出て、すぐ予算化されて、小笠原にまで何か仮設住宅ができて、そこで急いでお金を配る、これはどうも大変私は、軍事基地強化のためというようなことであるとすれば、許しがたいことであると思います。
今その問題は切り離しますが、島に帰りたいという人々の気持ちに対して、まず一点確認したいのは、今回の見舞い金は、これをもって帰島の権利を捨てさせるとか帰島打ち切りをさせるという趣旨のお金ではないというふうに確認をしたいと思いますが、いかがですか。
-
○永田説明員 所管の特別地域振興
課長からお答えいたします。
ただいまの御質問でございますが、御指摘のように、このたび見舞い金の支給の事務が進んでおります。ここではあくまでも硫黄島の旧島民の方々が、硫黄島が我が国に施政権が返された以降、現在まで帰島できずに、今後も定住困難ということに対する特別の心情に対して支払うものでございまして、引き続きましてでき得ることならばこの方々を、硫黄島は非常に火山等で危険だというこの審議会の
報告をいただいておりますので、できるだけ郷里に近い父島、母島あたりに……(
上田(哲)
分科員「そんなこと聞いているんではないんだよ。帰さないということではないなということを言っているんだよ」と呼ぶ)土地等に権利をお持ちの方がお帰りになるということにつきましては、これをとどめる法的な手段はないと考えております。
-
○
上田(哲)
分科員 そうしますと、極めて具体的なんです。土地が隆起するとか地熱があるとか水がないとかというのは、百年も二百年も前からずっとそうなんです。これだけの人が住んでいたわけですね。この人たちが今も確認のように耕作権もあるんですね。そして帰島の意思は持つというわけですね。帰りたい、これは拒否できないわけです。一人頭四十万円配ったからもう帰っちゃいけないなんということはこれはできないわけだし、しかも耕作権というのは二十年あるわけで、四十三年まで占領のために中断されていますから、権利も立派に生きていることを確認されているんです。だから、この人たちが帰りたいと言ったら帰さないわけにはいかぬだろう。特に、民有地というのが三百二十三万平方メートルあるわけです。そこに耕作権を持つ人たちが自分で帰って、水がないよと言うけれども、水は自分で雨水でやりますよ、そして地熱がどうだ、土地の隆起がと言うけれども、先祖伝来やってきたのだから私はこれで結構だというので、すきくわで耕作を始めれば拒否できないでしょう。また、建築基準法でも十平米以下だったら危険区域でもいいわけです。
だから、そういう基準をちゃんと守って、自分のうちをそういう範囲で建てて、自分の耕作権で民有地で耕作をすると言ったらこれは拒否できないことになる、こういうことになると思うのですが、これでいいですか。
-
○永田説明員 法的にはそのとおりだと思います。
ただし、非常に危険な島でございますので、できるならば島民の方々に先ほど申しましたようにお話し申し上げまして、近い父島、母島あたりへの定住の計画に乗っていただくように、御理解いただくように努力したいと思います。
-
○
上田(哲)
分科員 危険か危険でないかは、これは
本人たちがずっと住んでいたんだから知っているんですよ。
官房長官、今の見解でいいですね。
-
○藤波国務大臣 委員御指摘のように、お一人お一人の住民の方にはそれなりの御心情があろう、お気持ちがあろう、こう思うのです。今申し上げているのは、たしか小笠原諸島振興審議会が専門的、科学的な
調査に基づいて非常に危険であるということを言っていることに対して、政府としてもこれはやはりお見舞い金が必要だというような方向へ結論が導かれていった、こういうふうに考えておる次第でございまして、今国土庁から答弁をいたしましたように、そこで権利が放棄されているとかということではないというふうに思います。
-
○
上田(哲)
分科員 よくわかりました。
危ない危ないとおっしゃるけれども、ずっと昔から同じ状況なので、急に今から危なくなったという証拠は何一つないのです。危ないというのが一つあるとすれば、軍事基地があるから危ないのじゃないか。
防衛庁に前にも二、三回確認をしているんですが、もう一遍確認しますが、防衛庁は民有地にこの形で入ってきたら、作戦基地としての機能上困る
理由があるかないか。
-
○宝珠山説明員 お答えいたします。
現在硫黄島で進めております整備は訓練基地としてのものでございまして、それ以上のことを考えているわけではございませんで、規模的には非常に小さなものでございます。
-
○
上田(哲)
分科員 いや、だから帰ることによって問題がないかどうかを聞いている。
-
-
○
上田(哲)
分科員 何だい。それじゃ時間がかかってしようがない。
関係ないことを答えに来て時間に困ったって、こっち側の責任ないよ。
-
○大原説明員 お答え申し上げます。
硫黄島の旧島民の方々の帰島問題につきましては当庁の所管事項ではございませんが、仮に帰島されるとすれば、どれだけの方々がどのような形でどのような期間生活を送ろうとなさるのかといった帰島の態様が明らかでない現段階におきましては、本件について答えることは困難じゃなかろうかと思います。
-
○
上田(哲)
分科員 何を言っているんだ。ちょっと待った。じゃ、例えば十人行ったらどうするんだ。
-
○大原説明員 十人お見えになったらという御質問でございますが、具体的な対応、そのときにそういつ事態が起こりましたら、そのときはそのときで判断をすることになろうかと存じます。
-
○
上田(哲)
分科員 何を言っているんだ、それは一体。官房長官、こんなばかな答弁がありますか。防衛庁が、権利を持っている島民が自分のところへ帰るのを判断する権利がありますか。こういうことを言っているから問題が起きる。何を言っているのですか。
-
○伊藤主査
上田君、時間が超過しておりますので……。
-
○
上田(哲)
分科員 これは、防衛庁の今の言い方というのは必ず後へ尾を引きますから質問を保留しますが、今の問題は官房長官に最後にきちっとしていただきたいが、帰ることに問題ないと言われる。権利を行使して旧島民が帰りますから、今百人も二百人も帰るということじゃないけれども、その人たちが帰るときには、ひとつ官房長官、今の防衛庁がいかにも自分の島のように、そのときになって判断してやるなんということは権利がない。これは当然もっと正しい立場に立って温かく迎えてやっていただきたい、こういうことをひとつお約束をいただければいいと思います。防衛庁にそんなものを判断する権限がどこにあるんだ。民有地じゃないか。
-
○伊藤主査 簡潔にお願いします。
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○藤波国務大臣 お一人お一人の旧島民の方にはいろいろな御心情があろう、そのように考えるわけでございます。今回のお見舞い金を出すということに至りました経緯をいろいろ考えてみますると、それぞれ今までの硫黄島にあった権利というものを持っておられるわけでございます。そのことは明確でございます。しかし、審議会等いろいろ科学的にも
調査をいたしました結果は、住民が生活していく、あるいは地域を形成をして社会活動をしていくというのは非常に危険だという結論が出ておる、したがって、できる限り行政的には、ここで生活していくことは非常に厳しい、条件が難しいよということを指導していかなければなるまいという立場に今置かれておることは事実でございます。そのあたりを総合的に御勘案をいただければありがたいと思うわけでございます。
-
○
上田(哲)
分科員 帰るときはよろしくお願いいたします。
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○伊藤主査 これにて
上田哲君の質疑は終了いたしました。
次に、
滝沢幸助君。
-
○
滝沢分科員 官房長官、日ごろ尊敬しております藤波先生と、政府と議員という立場は違いましても、日本の今日の幾多の課題、これに対しまして、ここに一緒に議論することができますることを光栄に存じます。
実は本日は建国記念日のこと、そして、かの過ぎ去りました戦争の呼称のこと等を中心としまして、長官並びに文部省の見解をただしたいと思いますが、私のこれからの論議は、決して政党政派の立場や左右のイデオロギーなどという単純な立場に立って申し上げるのではなくて、我々の祖先、先人が営々として今日まで築いて受け継いでこられましたこの我が日本の国、しかも今日、教育を中心としましていわばあらしの中に立たされておる、このことについて我々が、党がどうあれ、また政府であれ議会であれ、このときいかにあるべきか、それを通じて我が国百年の将来に道を開くべきであろうと存じまして、そのような
意味で、私もいわば大げさに言うならば国を思う一念に燃えて、短時間ではありますが質問を申し上げたいと思いますので、どうぞひとつその意を酌んでいただきまして、御答弁をちょうだいできればありがたい、このように存じます。
さて、実は先ほど建国記念日についてのお祝いの行事がありました。ところが、これはさかのぼって顧みますると、四十一年の六月二十五日、祝日のことが決まり、また十二月九日にこの日は二月十一日であるというふうに決定されたと聞いております。以来、実は黛敏郎さんを代表としましたところの祝日奉賛委員会というものが祝賀の式典等を持ってきましたけれども、このたび
内閣総理大臣出席の要請に対して、それにこたえる条件であるかどうかは的確にしませんけれども、五島昇さんを代表としまする祝う会というものに主催がかわり、しかもその条件としましては、何といいますか、建国記念日について祝うけれども、神武天皇のことを出さないように、そして天皇陛下万歳ということを叫ばぬようにということが条件になった、こう聞いておりまするけれども、この間の消息についてひとつ御説明をちょうだいしたいと思います。
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○藤田(康)政府委員 本年の建国記念の日の祝賀式典についてのお尋ねでございますが、本年は、先ほど先生からお話がございました五島昇氏を会長といたします建国記念の日を祝う会から建国記念の日祝賀式典に対する総理府後援名義の申請がございまして、これに対しまして、承認基準に従って
内容を審査をいたしましたところ、適当と考えられましたので、これを承認をいたしましたところでございます。
なお、先生からお話がございました建国記念の日奉祝運営委員会との
関係でございますが、後援名義の申請に当たりましては、先ほど申し上げました祝う会からその
関係について特に説明がございませんでしたので、その間の
関係につきまして、私どもといたしましては
承知いたさない、かような状況にございます。
-
○
滝沢分科員 この二つの条件等について政府が関知しないとおっしゃるならば、よもやこの席のお話ですから、うそはないでしょう。それはそれで結構です。
逆にお伺いいたします。このときに神武天皇建国のことを高らかにうたって、しかも天皇陛下万歳と叫ぶというそのスケジュールがはっきりしていたら、それでも中曽根総理大臣は御出席あそばしましたか。
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○藤田(康)政府委員 総理は従来この建国記念の日祝賀式典に対してどういうお考えであったかということでございますが、建国記念の日は国の誕生を祝う日であるから、それをお祝いするということは自然な感情である、むしろ奨励すべきである、こういうお考えでございまして、これを祝う建国記念の日の式典が、広く国民各界各層を代表する人々が参加するようなものであることが望ましいということを従来から表明されてきたところでございまして、今回の式典につきましては、その
内容等がこれに合致する、こういう判断で出られたものでございます。
先ほど先生から、例えば神武建国とか天皇陛下万歳と言った場合にどうかということでございますが、これは今回の式典について、そういう先ほど申しあげましたものに合致するということで判断して出られたと聞いておりますので、それはその段階での判断かと、こういうふうに考えております。
-
○
滝沢分科員 適当なことを言ってはだめです。その経過に間違いないならば、私は何千人という人がうそをついている場面に遭遇したと言わなければなりません。そして、ことしは条件に合っているから出たけれども、来年同じ条件もしくは変わった条件のときは来年の判断だなんということは、一国の政府として言うことじゃないんです。今ほどの議論でもそれはわかるとおり、その場その場の会議の席をうまく通ればいいという政府の姿勢は間違っている、私はこのように考えます。
伝え聞くところによりますれば、天皇陛下万歳を言わないでちょうだい、神武天皇の御名を出さないでちょうだいという条件がついたと民間団体は言っているわけです。民間団体と政府といずれが偽っているのか、後ほど明らかになるでしょう。試みに、来年スケジュールの中に天皇陛下万歳、神武天皇これを敬彰するというふうなスケジュールが出たときに、これは合致しない、去年はこれがなかったから合致するなどとおっしゃるならば、全く政府は偽りの組織と言わなければなりません。
建国記念日というものは、日本の国ができた非常なる困難の中に、神武天皇以来先人が苦労してきているわけです。その苦労は、皆さんが今日議会をいいくらかげんに言いくるめて乗り越えていくような苦難じゃありませんぞ。皆さんが今日耐えていらっしゃる苦難の幾百倍の苦難を命をかけて守ってこられた先人、先輩があればこそ今日の日本があるのです。ですから、私は先ほど官房長官に心を込めてその前提となるべき精神について申し上げているんじゃありませんか。以上を申し上げまして、次に具体的なことをお伺いいたします。
官房長官、国の創建を祝う建国記念日を、民間団体がするものに対して、総理大臣がお客様になっておいでになるというのは、よその国にはそうないことかと私は思うのです。どうして政府主催でできませんか。
-
○藤波国務大臣 どこの国でも建国を祝う日などが定められて、非常に盛大にお祝いをしてきておるところでございます。従来二月十一日の建国記念を祝う日につきましては、民間団体が大変な御努力をいただきまして、年々式典、お祝いの集いを持ってきていただいておったところでございます。その中で先ほどもお名前の出ました黛委員長から、ぜひ総理大臣が出席をすべきだという強い御要請がございまして、
内閣総理大臣が出席をするということになりますと、従来後援団体であります総理府などがいろいろと主催団体にお願いをしてきた、できる限り政治色、宗教色は排除して国民各界各層の御参加をいただいて、みんなが集まってお祝いをするというような形のものになるといいなという感じのことを申し上げてきておりました。黛委員長が中心になられましていろいろ御努力いただいて、五島会長を中心とした祝う会が新しく出発をいたしまして、さらにお集まりをいただく階層なども随分広げていただきまして、そして総理大臣ぜひ出席をするようにということでございましたので、総理も喜んでお伺いをするということで出席をさせていただきまして、非常に盛大な式典が持たれたところでございます。御主催をいただいてまいりました方々に心から敬意を表したい、こう考える次第でございます。
こういう式典はぜひ政府主催でやるべきではないかという御指摘につきましては、心情としては私も本当に国の建国を祝って、そしていい国をつくろうと国民みんなが考える、そういう機会としてもぜひそういう機会があっていいではないかということにつきましてはよく理解をするところでございますが、従来も政府といたしましては、いろいろな祝祭日などもたくさんございまして、これらにつきましては、国民の皆さん方がいわゆる旗日、旗日などと言っておりますこのお祝いの日は、一人一人の国民の皆さん方がお一人お一人の立場で心からお祝いをする、いろいろなお祝いの日がございますが、そういう立場で従来きておりますので、今日も建国記念の日につきましても政府はそういう態度をとっておるところでございます。
政府が主催をして官製のものをやるというよりも、むしろ本当に国民の皆さん方がこぞってこの日をお祝いするというような機運が醸成されることが非常に大事か、こんなふうに考えておりまして、ことし行われました盛大な式典が、来年からはさらに全国津々浦々で県知事さんも出席する、市町村長さんも出席する、みんなが集まってきて建国記念の日をお祝いするというふうな形になっていくとさらに盛り上がるが、こう考えておる次第でございまして、そんなことを念願いたしておる次第でございます。
-
○
滝沢分科員 いろいろと立場が苦しいのでありましょうけれども、くしくもおっしゃっていただきましたとおり、国が主催してこれらのお祝い、何も建国記念日に限りません、それは国民の祝日と言っておりますが、大体そこら辺は戦後の日本のふやけた立場を言っているわけでありまして、国家の祝日なればこそ国民もこれを祝うというのが本当でございましょう。そういう
意味では、どうかひとつ国が主催し、政府が主催して国民の祝日の数々の行事ができまするように努力をされるように要望しておきます。
次に文部省からお見えになっていただいているはずです。お伺いしますが、小中学校、高等学校等で、これら国民の祝日等に校長以下生徒も全部休みっ放しということであります。しかし、少なくとも戦前の教育におきましては、四大節といいましたけれども、こういうときには式典をいたしまして、校長先生がその日のお祝いの意義をきちんと生徒さんに訓示なさって、そして日の丸の旗を立てて祝ったものです。そのことが今日できない
理由は何ですか。
たびたび立っていただくのは御苦労でありますから、あわせてお伺いします。高等学校等を訪ねますると創立記念日というのがございまして、このときも校長先生以下全部すっと休んじゃうんですね。しかし私は、これのごときはまことに教育的見地ではない。学校創立記念日というならば校長先生以下全部出てきて、そして学校ができるときのいきさつ、先人の苦労、初代校長先生以下先生方、先輩の人々の御努力の跡をしのび、できるならば卒業生で成功なさった人の講演でも聞いたりする、そういうような日になって本当だろうと思う。どうも国民の祝日でも学校の創立記念日でも、いわば労働者がゆっくり休むため、子供も勉強しなくていいしというようなことで、その意義を本当に一人一人が祝福するというところに達していないことを私は憂えているわけでありまして、そういう見地からどうぞお答えを願いたいと思います。
-
○熱海説明員 お答え申し上げます。
建国記念の日を含めて国民の祝日について学校ではどういう取り
扱いをしているのかと申し上げますと、学習指導要領で小中高等学校の各学校段階においてその意義を子供たちに理解させるということが示されておりますので、各学校では、例えばその祝日の前の朝会やあるいは特別活動といった時間を利用いたしまして、祝日の意義を理解させるように指導している。また、祝日の当日に学校が何らかの祝賀行事を行っているかどうかということにつきましては、祝日が学校の休業日であるということに法令上なっておりますので、これは行われていないケースが多いように思います。しかし、例えば体育の日とかいった祝日の種類によっては、それにふさわしい地域行事なども行われますので、そういったところには子供たちにできるだけ参加するようにという指導をしている学校もあるようでございます。御指摘のように祝日の当日学校に祝賀行事を行うように指導するかどうかというようなことになりますと、今法令上休業日ということになっておりますのでこれを一律に指導することはなかなか難しいものと考えております。
また、創立記念日の問題でございますが、東京都のように学校の創立記念日をすべて休業日としているようなところもありますけれども、全国的に言えばそのような取り
扱いをしているところは必ずしも多くありません。むしろ創立記念日を通常の授業日として、先生がおっしゃるように児童生徒に建学の精神を説いているというような学校も多いように聞いております。学校の創立記念日に例えば祝賀的な行事を行うことは、児童生徒に学校の一員としての役割の自覚とか愛校心を育てるということからいえば極めて大きな意義がありますので、このことについては我々としてもいろいろ指導を通してやっているわけであります。ただ、文部省が全国一律にあるいはこういう行事を行えというような形の指導はまたいかがかと考えまして、それぞれの学校の創意と工夫によっていろいろな形で実施していただくように、こういう考え方を持っているわけでございます。
-
○
滝沢分科員 時間がありませんから次の課題に移りますが、後でこのことは文教委員会で議論させていただきます。ただ申し上げておきまするけれども、そのような軟弱な立場で教育を指導しておられるから今日の教育はだめなのです。労働者の休む立場に立って物を考えておるのか。それは校長先生以下、少なくとも校長が来て祝う、父兄もいらっしゃい、生徒さんもいらっしゃい。どうしても労働法規を盾にして出てこない教師がいるならば、それはそれでいいよというような不退転の決意をもって祝日を祝う校長も必要だし、そういうことをそうあらしめるための行政指導等がなければきちんとしてこないんです。しかし、これは文教委員会等できちんとさせていただきますので、どうぞひとつ今から研究しておいていただきたい、こう思います。
ところで官房長官、我々が経験しましたあの戦争は大東亜戦争でありますか、太平洋戦争でありますか、正式な呼称はどういうんでしょう。これは長官に聞いているんです。
-
○藤波国務大臣
昭和十六年十二月十二日の閣議におきまして、さきの大戦の呼称を大東亜戦争とするという旨が決定をされております。しかしながら、
昭和二十年十二月のいわゆる神道指令を踏まえまして、閣議を経て、戦争の呼称を今次の戦争などと変更して現在に至っておる、こういう経緯でございます。
-
○
滝沢分科員 くしくもおっしゃっていただきました。そのとおり、閣議決定をもって大東亜戦争と呼んでいるわけであります。しかるに、その後ポツダム宣言の受諾に伴いまして、連合軍がいわゆる神道指令と俗に呼ばれる覚書をもって、実は十二月の十五日に政府に、大東亜戦争と呼ぶことはけしからぬということを言って、公文書等から消えていくわけであります。そして、これによりまして、十二月の二十日に、文部省は、教育の場でも大東亜戦争と呼んではならぬということにしているわけであります。アメリカは、みずからが民主主義の大
原則であると言った言論の自由、新聞等の検閲の廃止、そういうことを言いながら、みずから厳しい検閲をもって、日本の言論を統制したことは皆さん御存じのとおりであります。
そうしましてきたのでありまするけれども、しかし我が国はここに、例のサンフランシスコ平和条約をもって、二十七年四月二十八日に独立を回復したわけであります。独立を回復したら、進駐車からとめられたものはそれで終わりなんだから、閣議決定し、そしてその名のもとに国民が一億火の玉となって戦い、そしてその名のもとに敗れてざんげをしたあの戦争の呼称をそのまま継承することが正しいと私は思うんだけれども、今日教科書におきまして見ますると、大東亜戦争というものをまともに呼称して書かれておる教科書は一冊もございません。このことはどのように評価さるべきものであるか。
時間がありませんので、一々の本の名前を申し上げませんけれども、ここに用意させていただいてきました。ただ、注のところで、この戦争を日本の方では大東亜戦争と呼んだというふうに書いている教科書も多々あります。しかし、そのことに一言も触れずに、太平洋戦争とだけ書いているものが四冊もあるわけです。こういうことでは独立国家の教育と言えないということで、私は教科書是正の問題に一生懸命これは頑張っておりまするけれども、この間のことにつきまして、文部省いかがですか。
-
○小埜寺説明員 お答え申し上げます。
歴史教科書における呼称の取り
扱いでございますけれども、ただいま先生のおっしゃった点と若干食い違いますけれども、現在、検定教科書の中で、大東亜戦争というふうに使われておるものは、確かに先生おっしゃいました脚注ではございますけれども、中学校の社会科の教科書では七冊全部に記述されてございます。それから、高等学校の教科書でございますけれども、これは十五冊のうち十一冊の教科書で記述されてございます。
その経緯でございますけれども、これは文教委員会等で何度も先生に御説明申し上げているとおり、検定はあくまでも著作者の創意工夫に基づいて、それを尊敬いたしまして、私ども教科書として適切かどうかという点からの判断で、明らかに誤りであるというものについては、欠陥是正ということで、意見をつけて直しているわけでございますけれども、大東亜戦争等の記述につきましては、現在そういう形で処理をしているところでございます。
-
○
滝沢分科員 時間がありませんから結論だけを申し上げるほかはありませんけれども、文部省はすぐに、教科書は著者が書くものに対して検定するだけだからといって逃げるわけですよ。しかし検定をするのは文部省でしょう。本文の方に大東亜戦争と書いて、注の方にこれをアメリカは太平洋戦争と呼んだ。そして、なおこれはイギリスは極東戦争と言っているわけですから、中国におきましては日中戦争と言っているわけですから——この日中戦争だって全部日本の教科書は日中戦争ですよ。日中戦争なんという戦争は日本の側にはなかったのです。世界の歴史を見ますると、同じ戦争だって向こうとこっちの呼び名が違うのは、もうたくさんあるわけです。どうしてこっちはこっちの呼び名で呼んで、お隣はこれをこう呼んでいるよということが言えないのですか。アメリカの立場に立って正規な文章を書いて、日本の立場に立ってその当時こういうふうに呼称したというようなことで、日本の教科書と言えますか。
官房長官もせっかくお見えであります。事実はこのようなことであります。このようなことで日本の今後が開けますか。それこそ神武天皇御即位以来今日までの我々の先輩、祖先たちが大変に血を流して今日の日本を築いてこられた、これを継承する段階において、今私たちが占めておる立場は非常に大事なものだと私は思うのです。総理大臣にも私はお
手紙等でも申し上げたことがありますが、どうぞひとつ勇を鼓して、命を賭して日本の過ちを正して、将来を期していただきまするように、総理大臣にも御伝言を願いたい。そして最後に一言長官の意のあるところをお答えいただきたいと思います。
-
○藤波国務大臣 きょう先生からかくかくしかじかの質疑をいただいたということは、
内閣総理大臣によく伝えることにいたします。
先ほど来のいわゆる今次の戦争などという表現になっておりますこと、これは今回私も勉強させていただきましたが、太平洋戦争であるとかあるいは大東亜戦争であるとかあるいは今次の戦争であるとかと、いろいろな呼称が使われてきておりまして、従来までの経緯からいたしますと、こういった多少いろいろ同義語になっていたり、あるいはこの戦争だろうなという見当が今はまだつきますから今次の戦争ということできておるけれども、これが百年、二百年たったときに、一体この戦争のことをどういうふうに呼称するのかななどという問題については、教科書での記述ということになりますと、今学界で
一般的に定説になっておるようなそういう表現で使われることになろうというのは、常識的には私どもわかるわけでございますけれども、これはどのように呼称していくかというような問題についても、やはりよく検討してみる必要がある問題であろう、このように考えておりまして、今はそれでよくても、ずっと将来になったときに、今次の戦争、今次の戦争と言っていけるわけのものではない、ちょっと考えてみてもそんな疑問を感ずるわけでございまして、この点についても今後よく勉強させていただきたい、このように考える次第でございます。
-
○
滝沢分科員 ありがとうございました。長官御苦労さまでした。今日のこの議論、国の将来を思っての議論であります。総理大臣にお伝えいただき、どうぞひとつ内閣全体でもしっかりと頑張っていただきますように要望しておきます。ありがとうございました。
-
-
○
武田分科員 最初に官房長官にお尋ねをいたします。
昨年の十二月二十一日、戦後処理問題懇談会が二年半にわたる結果を
報告書として官房長官に提出したわけであります。これは恩給欠格者の救済、それからシベリア強制抑留と在外財産の補償問題を検討して、その最終的な
報告であろう、私はこういうふうに思います。
この中で、懇談会の皆さん方の意見としまして、政府はこれ以上措置すべき何物もない、こういうことを記しているわけであります。これは個人補償を全面的に否定したんだというように官房長官はおとりでございますか、まずその点からひとつ。
-
○藤波国務大臣 時間をかけて回数を重ねて懇談会にいろいろな御検討をいただいてまいりまして、その懇談会からいただきました結論は、今先生御指摘になりましたような見地から、個人に対して政府としてなすべきことというのは終わっている、しかし、
関係者の方々の御心情に対しては心から御同情申し上げる、こういう趣旨から特別基金の創設を具体的に提案しておられる、このように懇談会の結論を受けとめておる次第でございます。
-
○
武田分科員 そうしますと、今後いろいろな動きがあったとしても、その会の
報告を尊重してその方向で進んでいく、そして会の皆さん方が提唱しているいわゆる平和事業等というような問題についてもいろいろ検討をこれからやっていく、そういうスケジュールで取り組んでいくということになりますか、その点。
-
○藤波国務大臣 今申し上げましたような懇談会の
報告を受けまして、これを受けて政府といたしましては基金をどのように創設していくか、どのようにこれを活用していくかといったことを中心にいたしまして、検討及び
調査のための一億五千七百万円の予算を計上して対処しよう、こういうふうに考えておる次第でございます。
予算が成立をいたしましたならば、総理府にそのための室を設けまして、その室が
関係各省庁と連絡をとり合いながら検討を進めてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
-
○
武田分科員 この問題につきましては、
昭和五十四年ごろから特に一つの非常に大きな社会問題として、
関係者の皆さん、その数は五百万とも六百万とも言われている方々が非常に注目されまして、特にそういう皆さん方は全国戦後強制抑留補償要求推進会議とか全国軍人・軍属恩給欠格者連盟とか引揚者団体全国連合会とかいうような組織までつくって、とにかく自分たちの個人補償の問題について政府のしっかりとした方向を示してほしい、要するに自分たちの要求はそこにあるんだ、戦争において大変苦労し、かつまた戦後においても塗炭の苦しみをした、こういう我々に対する国の責任をはっきりしろ、こう要望して、全国各地で大変活発な運動を展開してきた。
その運動は、自民党の皆さん方を中心とした先生方が大変な熱を入れまして、私の地域を初め、東北などは特に盛んでございましたが、会員から会費を集めたり、カンパをいただいたりして、時にはその皆さん方が大変な力を入れて選挙の応援をなさった。それで、そのたびごとにそういう方々、我々に任せておけば必ず所期の目的は達する、そういう確信のある答えを信頼して、特に多くお年寄りでございましたし、そのために心血を注いで頑張ってきた。その結果、二年半のこの懇談会の結果が自分たちの期待とは全く裏腹なものが出てしまった。命ずっと歩きますと、我々年寄りをだましたのか、ただでは済まさないぞ、そういう恨みの声さえ出ている。私は、戦争で苦労し、なお戦後さらに苦労しながら今日まで来られたお年寄りに、そういう惨めな、悲壮な、怒りさえもたらすような結果になったということに対してはまことに遺憾だと思う。そういうことで、私は恐らくこのままでおさまる問題ではないと思うのであります。
もし今後そういうことでこういった団体の方々が政府に対してこれではとてもだめだというときに、考える余地はどこか残しているのか。先ほど一億五千七百万ですか、そのお金を六十年度予算で計上して、これからどういうことをやるのかいろいろ検討するというのでありますが、その中にそういう方々の恐らく最後になるであろうとの切実な願いというのはしかと取り入れ、そういう皆さん方の心情に報いる、そして道義的責任、私は特に大事だと思うのでありますが、それをきちっと納得のいくように果たしていく決意があるかどうか、官房長官、もう一度お尋ねしたい。
-
○藤波国務大臣 懇談会からいただきました
報告の中では、国において措置すべきものはないと一方でしつつも、
関係者の心情に対してはまことに御同情申し上げる、こういう趣旨で基金の創設を御提案いただいているところでございます。
関係者のそれぞれのお気持ちを思いますときに、懇談会もそう申しておりますように、まことに御同情を禁じ得ないものがある、こういうふうに私ども理解をいたしておるところでございます。
基金の検討及び
調査ということで予算の計上をお願いしてきておるところでございまして、検討してまいります中でいろいろ
関係団体の御意見なども承っていく、それでないと、基金をどのように創設するか、どのように活用していくかということにいたしましても、なかなかいい成案を得られていくことにはなるまい、こんなふうに考えておる次第でございまして、いろいろな御意見も伺いながら検討を深めていくことになろう、こう考えておる次第でございます。
ただ、今回の検討並びに
調査費の中身につきましては、当
予算委員会が出発をいたしましてから何回もお答えをしてきておりますように、基金を中心にいたしまして検討していくことになろう、このように考えておる次第でございます。
-
○
武田分科員 その検討の問題でありますが、対象の皆さん方はもう高齢者でございますし、途中で多くの皆さん方、残念ながらお亡くなりになっているという経過を考えますと、せめて現在健在でその日を期待して頑張ってきた方々がその結果を十分に見届けるためには、そんなにゆっくり時間をかけるわけにはいかぬということで、その一つの期限もはっきりと明示しながら、中身の具体的な検討もしかと急がなければならぬと思うのでありますが、そのスケジュールについては今どういうふうに考えているのか、その点伺いたいと思います。
-
○藤波国務大臣 懇談会の
報告が昨年の年末でございましたので、先生御指摘のように、こういう問題は余りじんぜん日を過ごしていいという問題ではない、懇談会そのものには随分時間をかけて回数をかけて御厄介になってきておるところでございますけれども、早急に対処すべきである、このように考えまして検討及び
調査の費用を計上したところでございます。
どれくらいの時間をかけてどのような手順で検討を進めていくかということにつきましては、予算成立後に早速に
関係省庁集まりまして協議して検討を進めていくようにいたしたい、このように考えておりますので、ここでどれくらいの期間で検討するということにつきましてお答えを申し上げますことはお許しをいただきたいと思いますが、なるべく早くこの検討が進んでまいりますように、先生の御趣旨を踏まえて努力をいたしてまいりたい、このように考える次第でございます。
-
○
武田分科員 この問題はこのくらいにしておきますが、いずれにしましても大変な社会問題でございます。そういう
意味で、政府がしかとした善処の仕方をしないとこれは後世に残る大きな汚点になる。平和国家を愛する、こういう多くの国民の期待として、戦争は二度とやってはならぬという戒め、戦争の悲劇というのはどれほどこういうふうな後遺症としても残るものかということを我々は
反省しながら、そして二度と戦争のない、そういう世の中をつくるんだ、後々そういうために生きていく子孫のためにも、明確な方向をひとつ政府において善処されることを望んでやまないわけでございます。よろしくお願いします。
次にお尋ねいたしますが、日本科学技術情報センターというのがあるわけであります。地域産業経済の振興を図り、特に先端技術産業、知識集約型産業を中心とした工業改革を推進する必要がございます。立ちおくれている科学技術情報機能の拡充強化、これも急務であります。
我々の住む、私は宮城県でありますが、東北におきましては、これは全国で南九州あるいは四国等と並びまして、そういう面での機能が一番おくれているところ。ゆえに、定住圏構想、今度四全総が発足いたしますが、あるいは三全総においても、定住圏構想の大きな課題の中に、よりよき国土の開発と均衡ある国土の発展ということの中に、例えば企業誘致あるいは大学を誘致する、大学の地方分散ということを出されているわけでありますが、これはもう非常に進みが遅い。最近になってようやく、それでもほかの地域から比べますと企業誘致の面では少しは優位に立っていると言いながら、いまだに力は非常に弱い。
その原因は何かというと、優秀な企業が、大きな企業がないというだけではない。そういう一つの情報化時代に対応する情報が非常に遅い、また、その情報量が少ない、貧弱であるというようなことでございまして、これは産業界のみならず、あるいは各界の皆さん方の切実な要望として、これからのそういう地域の発展のために欠かせない重要な一つの機関であろうということで、私たちもこの問題については、東北に今まで一つもなかった、なぜなかったかわからぬけれども、とにかく東北というのはいつも最後の方に来る、そういうことで非常に残念に思いつつ要望してきたわけでありますが、この支所の設置ということは、これはどういうふうな状況になっておるのか。いつごろ、どこにこれを設置するということを検討しているか、このことを具体的に、わかればひとつ御説明をしていただきたい、こういうふうに思います。
-
○尾野説明員 御説明申し上げます。
先生御指摘のように、科学技術情報センターでございますが、私ども科学技術を進めておりまして、いろんな成果がいろんなどころで出てまいりますが、そのような情報を的確に利用していくということが非常に重要なことでございまして、科学技術情報センターにおきましては三十二年設立以来、情報の収集、整理、それから利用者の方々に対する提供ということを進めてまいりました。
それで順次支所を置きまして、現在八カ所を有しておりますが、
昭和六十年度の計画といたしましては、東北地方に支所を置く計画でございます。今まで東北地方に支所がなかったではないかという御指摘でございますが、これはブロックの分け方もいろいろな分け方があるんだと思いますが、私どもは東京の支所というところで東北地方もカバーして利用者の方々の便宜を図っておったところでございます。
-
○
武田分科員 今の答弁、そこが問題なんですよ。要するに東京を中心として東北を管轄するなんという考えはもう遅いんです。それだったら地方の時代とか、国で一つの方向性を出しているときにもう逆行しているんです。ですから、ようやく六十年に東北に置くということを決めていただいた。これは六十年にどこに置くことを決めたわけですか。そして、その中身、どういう中身でいくのか。何か聞くところによりますと、ほかの支所というのは余り中身が我々が希望するようなそういう高度なものではなさそうな気がする。その点で中身のことも簡潔に、時間がないものですから説明してください。
-
○尾野説明員
昭和六十年度でできるだけ早く支所を開設したいと思っております。
支所の仕事の
内容でございますが……(
武田分科員「場所をまず」と呼ぶ)場所は仙台を予定しております。仕事の
内容は、これはほかの支所と全く同様のことを考えておりまして、中央に大きなコンピューターを持っておりまして、そこにありとあらゆる情報を蓄えようということで、どんどんそこが蓄えております。それを各支所でオンラインで、ちょうど銀行の貯金通帳のようなそういうシステムでございますが、オンラインで直ちに利用者の方々が希望されている情報が出せるように、そういう端末機を置きましてサービスに努めたいと考えております。主な仕事はそういうことでございます。
-
○
武田分科員 それは結構。ただ、例えば国内の情報だけでなくて海外の情報ということあるでしょう。今回地震がありまして、チリ地震、あのときにも、ハワイの電報、いわゆるダミーという形で出てきた、訓練用だというのでちゅうちょした、そのために津波があるという情報がなかなか出せなかったというようなことを考えますと、何も東京だけでなく、それが仙台の支所にも直通に入ってくるようなそういうものをつくっておかないとだめなんです。東京からまた来ると、時間はそんなにかからぬといっても、そういう考えでいる限り、国際的にこれから東北が発展していく、国際化時代を迎えるというときに対応できないんですよ。だからそういう点は改めてほしい。そして、中央から何でもやるというような
関係を少し構造改善して、もう少し世界的な規模の情報になっても各支所も中央と同じくらいの早さでぱっと各地方に流せる、これがやはり大事なんです。それは十分に検討してお願いしたいと思うのです。答弁は要りません。
それからもう一つここでお尋ねしたいのですが、今度筑波研究学園都市でいよいよ科学万博、いわゆる国際科学技術博覧会が開催されます。随分お金をかけます。日本でも一千億くらいのお金を政府と民間でかけるわけです。非常に結構で、多くの皆さん期待もしているし、子供たちもそのことに関心を持って、もうきょうもこういうふうな特集も出ております。非常にこういうことはいいことでございます。特に、二十一世紀の姿を知り、科学技術の発展というものに目を向け、関心を向けながら二十一世紀を生き抜こうとするためには、重要な一つのエベントだと思います。
ただ、これは半年間で終わる。私はもったいないと思う。二千万くらいの人間をそこに呼ぶんだということでありますが、私は、子供たちの未来、将来を担う、二十一世紀を担う子供たちの想像力をたくましくし、そしてそれに接して感動を覚えて、そしてそこから科学に対する自分の命を開発させながら生き抜いて、そこからまた優秀な科学者や人材が出ていくということを考えるときに、可能ならば、この全部と言わないけれども何%かのものを地方の地域に持っていって、児童生徒等を中心とした方々、父兄を中心として、あるいは地域の方々にもっともっとお見せする、そういう効果的な対応をしてほしいものだと思うのでありますが、そういうようなことをする地方がもし出る場合には国もバックアップするとかいうようにして、東北だったら岩手県でも宮城県でもどこでもいいでしょう。土地はいっぱいありますし、心配要りません。多少輸送とかいろいろかかるかもしれませんが、教育的な見地から考えたときに私はこれはひとつ検討してもらいたいと思うのですが、官房長官、どうでしょうか、こういう点。
-
○沖村説明員 お答え申し上げます。
先生、おかげさまで科学技術博覧会は非常に順調に開幕を迎えつつありまして、その展示物につきましても、今御指摘いただいたとおり、非常にいいものがそろいつつあります。
それで、博覧会が終了しました後のこれらの展示物の利用でございますが、今先生にいろいろおっしゃっていただきましたとおり、科学技術の普及といいますか、そういう観点に沿った利用を考えたいと思っております。具体的には、博覧会が終了しました後いろんな各方面の御意見をお聞きしまして検討をしたいと思っておりますが、ただいま先生のおっしゃいました御意見はその際に十分に参考にさせていただきたいと思います。
-
○
武田分科員 ここで、官房長官、私はあちこち世界を回ったときに、ワシントンなんかにスミソニアンとかいうすごい博物館がありましたね。大変立派なもので、我々も関心を持って離れがたい感激で見てきたのであります。残念ながら日本には余りこういうのがないのですね。世界の日本としては、やはり一千億かかる、その一%でも一割でもそういう世界的な科学博物館ですか、というものをひとつ考えて、そこに子供たち、我々も含めまして世界の方々も本当に楽しみながら、未来を知り、知識をふやしというよつなものを考えるのがこれから大事なときじゃないか。それは今ではないか。二十一世紀というのはどういう時代だかわからぬけれども、しかしながら我々としては、二十一世紀がいい時代であってほしい、こう願いつつ、科学によって幸せが、平和が一層確実になるものということを願っているわけでありますから、そういう一つのよすがとしてどんなものでしょうか、提言したいのですが、御所見を聞かせていただきたい。
-
○藤波国務大臣 先生御指摘になられましたように、外国を訪ねますと、大きな、いわゆる科学博物館といいましょうか、しかもそれは昔の物を展示しているのじゃなしに、新しい夢を呼ぶような、そういう立場からの博物館などがよくございまして、その展示物や説明する事柄が特に青少年などにいろいろな知的な冒険というような
意味でも非常に興味深い博物館になっている例が多うございます。そういうことからいきますと、今も御指摘がございましたように、日本にはどこにどういうふうに気のきいたものがあるのかなという、確かにそういう思いがいたすわけであります。そういう
意味でも余り気のきいたものはなかったので、今度は思い切って科学万博をやって、ひとつ世界の総参加のもとに二十一世紀に向かってさらに雄々しい歩みを進めていく科学の姿というものを紹介をしよう、こういう意気込みでやっておるところでございます。
あと、日本に今申し上げましたような
意味での博物館というようなものが設けられるかどうか。大きな建物を建ててそこで展示していくというような構えのことになりますと、国がやるということになりますと今日の行財政改革路線の中でなかなか財政的にも厳しいものがございますけれども、先生が今御指摘になられましたようなことを踏まえまして、これは必ずしも国が大きな科学博物館を建てるというだけの先生の今の御指摘ではないというふうに思いますので、少し幅広くよく勉強させていただきたい、このように考える次第でございます。
-
○
武田分科員 それじゃ、最後に御質問いたしますが、ことしは国際青年年ということで、テーマは「参加、開発、平和」ということであります。政府としまして、この国際青年年に対してどのような目標を掲げまして、これからどういう行事を開催していくという日程になるのか、それをひとつお尋ねをいたします。
と同時に、もう時間もございませんから、私は平和という問題につきまして、その絶えざる実現のための努力が必要でありますが、青年の果たす役割というものはまことに大きいわけでありまして、青年の国際交流というものを通しての平和への貢献度というものは相当大きいものであろう。私は外交の中で文化外交、民間外交というのは特に重要だと考えておるわけでありますが、そういう面も、国際交流による、あるいはまた国際協力を通じた相互理解による平和実現への絶えざる努力、こういうものの重要性を考えるときに、青年の特に開発途上国との交流をもう一層深く進める必要がなかろうか。私は、農村青年などはもっともっとそういう地域に、国、県等々の協力を得て多くの青年を差し向けて、また向こうからも来ていただいて、その中で言語の違いを乗り越え、またそれを理解しながら、人間的なつき合いの中で平和を語り我が国を語る、そういうような運動を展開する、これがことしの青年年における一つの大きな課題ではないかというように思うのでありますが、この件についてのお考えというものをひとつお聞かせをいただきます。それで、答弁をいただきますとちょうど時間でございますから、終わらしていただきます。
-
○近藤説明員 御説明申し上げます。
我が国におきます国際青年年の取り組みにつきましては、
関係各省庁及び民間の有識者の方々から成ります国際青年年事業推進会議というものを設けまして、そこにおきまして御審議、御検討をいただいているところでございます。青年の社会参加活動の促進とか国際交流を通しました青年の国際的な相互理解の促進などを主な目標にいたしまして、今年の国際青年年を推進する予定でございます。
具体的な今年の事業でございますが、国際青年年につきましての全国的な関心を高め青年や青年団体等の活動を盛り上げるために、重点期間を設定いたしましてそれぞれにふさわしい事業を実施することにしてございます。既に一月の十五日には、国際青年年の幕あけと申しましょうか、国際青年年につきまして国民の皆様に御理解をいただくために国際青年年のオープニングというものを実施いたしました。今後の予定でございますが、四月の下旬から五月にかけましては、青年が青年に呼びかけるといったような形での国際青年年についての全国一斉キャンペーン活動、七月には多数の青年の参加によります中央記念式典、それから、あわせまして内外の青年が集います国際青年の村を実施することにしてございます。また、十一月には中央青年フォーラムを実施いたしまして、青年たちが取り組んでまいりました成果を持ち寄りましてこの一年の締めくくりにするということにしてございます。このほか、記念論文の募集なども計画をいたしているところでございます。
以上でございますが、国際交流につきましては別の
参事官がお答え申し上げます。
-
○大坪説明員 国際交流の問題につきまして御説明申し上げます。
現在
総務庁におきましては、農業等の専門分野に限定しませんで、
一般的に日本青年の健全育成を図るという観点から五つほどの事業を実施しておりますが、その交流対象国はいずれも開発途上国といたしております。日本青年がこのような事業を通じまして種々の困難な問題に取り組んでおります発展途上国の現状に接し、またその国の青年と交流しますことは、日本青年の社会的な関心を呼び起こし視野を広げる契機となるものと考えておるところでございまして、今後とも開発途上国との青年交流を積極的に推進してまいりたいというふうに考えております。
-
○
武田分科員 ちょうど時間でございますので、質問を終わります。どうもありがとうございました。
-
○伊藤主査 これにて
武田一夫君の質疑は終了いたしました。
次に、
米沢隆君。
-
○
米沢分科員 私は、台湾人元日本兵士の補償問題につきまして、この際、政府の決断とこれが早期解決の早からんことを願いつつ、政府の所信をただしてみたいと思います。
戦後四十年、既にあの苛烈だった戦争体験は日に日に風化しつつあると言われる今日でありますが、私はこの台湾人元日本兵士の補償問題がいまだ解決を見ない状況を見ますときに、戦後政治の総決算どころか、いまだ戦争の残滓そのものを見る思いがいたします。事この問題に関する限り、日
本人と日本政府の信義と道義が問われていると言っても過言ではありません。
御案内のとおり、明治二十八年に我が国が日清戦争による日清講和条約を盾に台湾を領有して以来、五十年の長い間、我が国は台湾におきまして、日本は万邦無比の国である、日本は信義を重んずる武士道の国、正義の国である、天皇は神の子であり台湾人も一視同仁である、この一視同仁の聖慮に感銘して陛下の赤子たるべし、出征した後は国家が一切面倒を見てやるという皇民教育を実施し、あるいは現地語の使用を禁じて日本語を強制する、名前も日本風に改めさせるなど、いわゆる皇民化政策を徹底的に行いました。そして、台湾人を聖戦遂行という名前のもとに戦争に駆り立てたのであります。ちょうど
昭和四十九年、インドネシアのモロタイ島で一人の日本兵士が発見されましたが、その人が日本風の名前を持つ台湾人日本兵士中村輝夫さんでありました。
その後、戦争が始まりますと、国のため強制的に徴用され、台湾では
昭和十七年から志願制、
昭和十九年には徴兵制も施行されました。すなわち、台湾人は名実ともに日本国民として第二次大戦を迎えたわけであります。そして、実に二十万七千余人の台湾人が日本軍の兵士、軍属として参戦し、厚生省の
昭和四十八年四月の
報告によっても、そのうち約三万人前後の人々が戦死をし、また戦傷者も、その数は定かではないと言われておりますが、おびただしい数に上ったと言われております。
しかしながら、戦死し、戦傷病者となった台湾人やその遺族の人々に対して日本政府は、戦後、現在まで四十年間、一文の補償もせず打ち捨ててまいりました。その上、戦争が終わってからは、かつての銃を向け合った敵軍蒋政権のもとに帰ったのでありますから、彼らは経済的、社会的に困窮を強いられるその中で、一段と身を潜めて、人目を忍んで悶々たる暮らしを余儀なくされたことは想像にかたくありません。その上、次第に年老い、この世を去り行く人も少なくない。にもかかわらず、日華条約が無効になってこの種問題について特別取り決めが不可能になったとか、サンフランシスコ条約の発効によって彼らは日本国籍を失いその権利は消滅しているとか、これは彼らには全然
関係ないことでありますが、そういう手前勝手なことを言いまして、日本政府からは戦後四十年間今日まで、たった一文の弔慰金も遺族扶助料も遺族年金も支給されず、放置されたまま今日に至っておるわけでありまして、まことに無情冷酷、日本は自分さえよければいいというエコノミックアニマル国家の典型であると言わねばならないと思うのであります。
この経緯につきましてはもう官房長官も既に御賢察いただいておると思いますが、私は、このような歴史的な経緯を顧みましたときに、今こそ日本政府は信義と道義と国家たる責任を持ってこの問題を解決すべきときに来ておると痛感いたしますが、政府の御見解はいかがでございましょうか。
-
○藤波国務大臣 戦死いたしました台湾人元日本兵の御遺族の問題あるいは戦傷された台湾人元日本兵に対する救済措置の問題は、日本の国として極めて重要な問題である、こういうふうにたびたび国会でも御指摘を受けまして、その事柄の重要性は十分政府といたしましても認識をしてきておるところでございます。ただ、日台間の全般的な請求権問題が未解決であること、台湾以外の分離地域との公平、波及、さらに厳しい財政
事情などの問題を考慮しながら進んでいかなければならぬという問題を含んでおりますので、今日まで解決するに至っていないということを御
報告申し上げなければならぬのはまことに残念なことだ、こう思うのでございます。
しかしながら、いわゆる台湾人元日本兵問題というのが国会でもさらに大きな問題として浮かび上がってき、各方面からも御指摘をいただいてきておるところでございますので、六十年度予算案におきまして総理府に五百万円が計上されることになった次第でございます。この問題につきましては、六十年度予算の成立後に検討の場を設けることにいたしたい、このように考えておる次第でございますが、検討の方法であるとかあるいは
内容等につきましては、予算成立後、
関係各省と十分
相談いたしまして詰めていくようにいたしたい、こう考えておる次第でございます。
-
○
米沢分科員 六十年度にこの台湾人元日本兵の問題を解決する方向で五百万円を計上していただいた。これは正式には政府が初めてこの種の問題に関与したことでありますから、
関係者の皆さん方にはまさに、どのように発展するかということを大きな眼を広げて注視されておると思います。
そのことはまた後で具体的にお尋ねをしたいと思うのでありますが、もう御
承知のとおり、国籍による差別を禁止した国連人権規約を見るまでもなく、国の名で徴用した以上は、その戦傷病者がどのような国籍であれ、徴用した国の名でちゃんと補償してさしあげるということは国際通念であり、道理ではないかと思います。欧米の例を見ましても、アメリカ合衆国軍として戦傷したフィリピン人、イタリア軍として参戦したエチオピア、ソマリア、エリトリア、リビア人など旧植民地の人々、フランス軍のために戦ったアルジェリア人、イギリスのために戦ったインドの人々、オランダのために戦ったインドネシア人。敗戦国のイタリアも西ドイツもすべて戦後これらの国々は、戦後の国籍のいかんを問わず、国家補償の精神で誠実にその補償を実施しておることはもう御案内のとおりであります。
今からいろいろと検討が始まるという議論でありますが、なぜ世界第二位の経済大国の日本だけがこのようなぶざまな格好で放置しておるんでしょうか。私は、今からの検討ではなくて、既に決断を示してこの国会で必ずやる、そういうお話を官房長官にはしていただきたいのでありますが、再度お答えいただきたいと思います。
-
○藤波国務大臣 欧米諸国におきましても、それぞれ自国の法律に基づきまして、第二次大戦中自国の軍隊において従軍中死亡した外国人の遺族あるいは戦傷を負った外国人に対して一定額の年金を支給しているといったような事実は
承知をいたしておるところでございます。しかしこの問題は、先ほども御答弁申し上げましたように、日台間の全般的な請求権問題が未解決であること、さらに台湾以外の分離地域との公平、波及そして厳しい財政
事情などいろいろな角度から検討しなければならぬ、こういう立場にございますので、今日なお解決に至っておりませんことはまことに申しわけのないことだ、このように考える次第でございます。また同時に、御
関係の特に御遺族や戦傷者の方々には心から御同情を申し上げておる次第でございます。
予算案の中に検討するための経費を計上したところでございますので、予算成立後なるべく早く検討を進めていくようにいたしたい、このように考えておる次第でございますが、その検討してまいります作業の中で、本日先生から御指摘をいただいておりますことを十分念頭に置いて取り組んでいくようにいたしたい、こう考える次第でございます。
-
○
米沢分科員 政府が補償に反対している
理由といいましょうか、やりたくてもできないという
理由や背景の問題点として、台湾の残置財産問題が未解決である、あるいは他の分離地域との公平及び波及の問題が非常に難しい、そして日本の財政
事情が難しい、異口同音に政府はこの問題を提起し、だからできないんだと言い続けてまいりました。私はこの際ぜひ聞かせてもらいたいのでありますが、いろいろとそれなりの
理由があったにせよ、この問題は、問題提起されてから既に二十年たちます。その間政府として本当にこの問題を解決するために、今羅列をされました三つの問題点等の解決のために汗をかいた経緯があるのでしょうか。その点いかがでしょうか。
-
○浅井説明員 お答え申し上げます。
ただいま先生御指摘の問題点に関しましては、私どもこれまで
関係各省間で連絡会議をたびたび開きまして、先生御指摘のような問題点を含めていろいろな検討を行ってまいりました。また、これも先ほど御指摘がございましたけれども、各国の年金に関する制度、そういうものも政府としてできる限りの
調査を行おうということで
調査してまいった経緯がございます。
-
○
米沢分科員 ただ各省庁間でたらい回しをし、できないことの
理由を探すためにやってきたような感じがしてなりません。そういう
意味では、今度五百万という検討費を計上されたわけでありますから、ぜひそれを有効にお使いになって、従来のようにできない議論をするのではなくて、できるためには、やっていくためには何をしたらいいか、そういう立場でまじめに御検討を賜りたいとお願いをしておきたいと思います。
さてそこで、今政府がどうしても難しいという問題として三つ挙げられました。しかし、この三つの問題は、今から申し上げますけれども全然話にならない
理由である、そう言わざるを得ないと私は思っておるのでございます。例えば、日台間の請求権の問題が未解決である、こういうことを言われておりますけれども、もう御案内のとおり、台湾人元日本兵は国の命令によって軍務に従事中戦死傷したものでありますから、当然に国が使用者としての補償の責任を負っていることにおいて、国民
一般の戦争
被害とは異なる問題であります。また、その
被害が生命、身体に対するものである点において、
一般の財産的損害とは区別して優先的に解決されるべき問題である。したがって、いわゆる残置財産の問題が未解決であることはこの戦死傷の補償を妨げる
理由にならないと私は考えますが、見解はいかがですか。これは次元が違う問題だ。
-
○浅井説明員 お答え申し上げます。
本件に関しましては、私ども平和条約との
関係ということも考えなければならないわけでございます。台湾住民の戦死、戦傷に関する補償要求を含め日台間の財産請求権問題に関しましては、サンフランシスコ平和条約の第四条におきまして、他の分離地域と同様に我が国が台湾の施政当局と特別取り決めを結ぶことによって処理するという規定がございます。また、それを受けまして、日華平和条約三条におきましても同様の規定がございます。したがいまして、補償の問題に関しましても、やはりほかの請求権問題と一緒に特別取り決めの主題となるべきであるということが決められておるわけでございます。
そして、先生先刻御
承知のとおり、四十七年九月に日中国交正常化が実現して、その結果日華平和条約は終了したわけでございますが、その結果、サンフランシスコ平和条約の第四条が予定しておりました特別取り決めということを我が国が台湾の施政当局との間に結ぶことができなくなったという
事情があることを御理解いただきたいと思います。
-
○
米沢分科員 もうその議論は何度も何度も議論されておる問題でありますから、我々は先刻
承知いたしております。このサンフランシスコ平和条約の第四条、日台条約の第三条でこれから先取り決めを行おう、その中身にこの補償の問題もその他の財産問題もあったかもしれません。しかし、現在の法律ではそれができないという状況の中で、わざわざ裁判まで訴えられて何とかしてくれとおっしゃっておるのでございます。それをまた特別に取り上げて何とかしようと言っておるのでございますから、今までの法律論の論争の上に立ては結局できないという結論しか出てこないその枠を超えて、何とかしてあげようということを今から検討してもらうのがあなた方の仕事じゃないですか。どうですか。お答えいただきたいのでありますが、時間がありませんので、その問題はまた次の機会に何とか議論の場を持って追及したいと思います。
それからもう一つ、他の分離地域、朝鮮との公平及び波及の問題をよく口にされるのでございますが、この問題も、確かに二十四万二千余人の徴用があり、二万二千人の朝鮮人元日本兵がおったという事実はよく知っております。しかしながらこの問題は、
昭和四十年のあの日韓条約、日韓協定第二条において少なくとも解決済みの問題でございます。確かに北朝鮮との問題は将来の問題として残されるものかもしれません。だからといって、この台湾人元日本兵の解決を妨げる
理由にはならないと思うのでございますが、いかがですか。
-
○浅井説明員 お答え申し上げます。
北朝鮮のケースにつきましては先生の御指摘のとおりであると私は了解しております。
それから韓国の場合でございますが、これも国と国との間の
関係といたしましては処理が済んでおるということは、先生御指摘のとおりだと思います。しかしながら、個々の韓国人の方々が我が国の国内法に何らかの根拠があるという場合に、その国内法に基づいて救済を求めるということは妨げられていない、そういう関連で波及という問題を考慮に入れざるを得ないという問題があることは説明申し上げたいと思います。
-
○
米沢分科員 その問題もちょっとおかしいのでございまして、日韓条約、日韓協定において韓国という国が責任を持って国民のすべての請求権も含めて一括処理をしたのでございますから、もしそういう個々人の要求、要請があるならば、それは韓国との議論であって日本との
関係ではない。条約をみんなが履行していこうというのは、すべて近代国家の当たり前の話じゃないですか。そんなのは
理由にはならないです。
-
○浅井説明員 ただいま私が御説明申し上げましたのは、国際法上そういうふうに観念されているということでございまして、また我が国としてもそういう国際法の考え方というものに従っておるということでございます。
-
○
米沢分科員 今の答弁も問題になりません。
それから次は、日本の財政
事情がよく云々されるのでございますが、これはもう頭から問題になりませんね。もしこの元日本兵である台湾人の皆さん方が補償をいただいているとするならば、日
本人並みにいただいているとするならば、
昭和六十年度予算の旧軍人遺族等恩給費は一兆五千七百八十六億円ですね。軍属
関係の援護法による援護措置費を見ましても、予算総額は一千四百二十四億円、膨大なお金を予算として組んでおる。もし
最初からもらう立場にあったならば、当然この中で処理されているものであって、今さら財政的に問題にならないとおっしゃっても、一兆五千億、一兆七千億前後のお金を出しておるこの日本の予算を見て、なぜおれたちだけ払えないのか、本当に金はないのか。もしこの経常経費が何もなかったらそれは問題ですよ。一千億くらいでヒーヒー言っておるならば別だ。二兆円近い金を計上しながらあなただけやるものはありませんなんという議論は、日本の財政
事情を云々する
理由がない。官房長官、どうですか。
-
○藤波国務大臣 先ほど私は、三つの問題を中心にいたしまして、非常に厳しい環境のもとで検討を進める、こういうことを申し上げたところでございます。
その一つは、今外務省からもそれぞれ御答弁を申し上げてまいりましたが、日台間の全般的な請求権問題が未解決であること、あるいは台湾以外の分離地域との公平や波及の問題などがどのように解決されていくかということが非常に難しい問題だというふうに考えておりまして、今日の日本の財政
事情が御高承のところでございますから、そのこともつけ加えておりますけれども、問題は一番どこにあるかということであれば、他の二つの問題の解決をどうするかというところが主眼であろう、こういうふうに思うわけであります。
そこで、きちっと払うべきだという結論が出るといたしますと、これは非常に厳しい財政
事情でありましても、この政府委員席には大蔵省もおりますけれども、どれだけ財政が厳しくてもここで一つの結論を出した、こういう措置を講じようということが決定をすれば政府としてはそれはそれなりに腹をくくらなければならぬ問題だというふうには思うわけでございます。しかし、今申し上げてまいりましたようなことをそれぞれどのように解決に導くかということにつきまして検討をしていく中で十分論議を深めていくようにいたしたい、特にきょう先生から御指摘をいただきました事柄などを十分検討の中で参考にさせていただきたい、このように考えておる次第でございます。
-
○
米沢分科員 それから、日中平和条約との関連で台湾に気兼ねしなければならないというようなことも時々承るのでございますが、これも問題になりませんね。中国の皆さんも、日中条約の精神に抵触しなければいい、中国側からは補償自体には反対はない、こういうことが明らかになっておるのでございます。しかし、外交的な配慮というものも要るでしょうから、もし物事が決まった後、補償金の支給等を云々するときにはいろいろと方法論を考えねばならない、そういう次元のものであると我々は理解するのですが、その点もいいですね。
-
○浅井説明員 基本的には先生の今おっしゃったとおりであると了解しております。
-
○
米沢分科員 さて問題は、この検討費がどのように有効に利用されて、そして最終的にはこのような要請に対して応じてあげられるか、その問題だろうと思います。もともと官房長官は、この検討費が計上されるに当たりましてどうも後ろ向きな見解であったというふうに聞いておりますが、そうだったのですか。
-
○藤波国務大臣 従来、国会でもいろいろな御論議をいただいてきたこの問題につきまして、政府といたしましては、今私から申し上げましたように、主として三つの
理由でこの問題の解決が非常に厳しい状況にあるということを繰り返し御説明を申し上げてきたところでございます。今回の予算案編成の中で、政府・与党の会議におきましてこの問題が提起されました際にも、私は従来政府がとってまいりましたその立場から御説明を申し上げてきたところでございまして、私個人がと言うよりも、政府として従来とってまいりましたことをそこで確認するような
意味でさらに説明を申し上げたところでございます。しかし、結論として五百万円の検討費が計上されることになりましたので、予算が成立をいたしました段階でこの検討を十分誠意を持って進めていくようにいたしたい、このように考えておる次第でございます。
-
○
米沢分科員 予算が成立してからの議論だというふうに今理解をいたしました。そしてまた極めてまじめに前向きに議論をされるような御答弁でございましたが、その場合、少なくとも体制を組んでいろいろ検討されるわけでありますから、今から各省庁の
関係者を集めてさあどうしようかというところから始まるんだと思いますが、私は、諮問機関みたいなものをつくって議論されるのには少なくとも過去の経緯からして反対です。なぜかというと、みんな先延ばし、先延ばし用にその諮問機関を利用するからでございます。もし諮問機関みたいなものを設置されて議論をされるならば、終期を明確にして議論してもらう、最終的な結論も終期を持って物事を決めてしまう、そういうことでないと、皆さん方のやってこられた過去の経緯からして信じることはできません。補償の問題にけりをつけるという終期を置いての検討でなければ、次から次にいつまでたっても、今までの議論の上に構築されるような議論であるならばしないという議論につながっていくわけでありますから、どうしても終期を持って議論する、そういうふうにこれから先の
あり方も考えてもらいたいと私は思うのですが、官房長官の御見解はいかがですか。
-
○藤波国務大臣 予算が成立をいたしました段階で、どのように検討を進めていくかということについても、総理府を中心にいたしまして外務省そのほか
関係省庁に集まっていただきまして、協議をしてまいりたいと考えておる次第でございます。例えば、懇談会あるいは審議会といったようなものをどうするのかといったこと等につきましても、今後の検討を進めていく中でどうするかという結論を出していかなければならぬと思う次第でございますが、ただ時間を遷延させるというだけではないのかといった御指摘につきましては、十分検討していくことの議論は深めなければいけませんけれども、ただ時間をとればいいということではないと思いますので、先生の御意見を参考にさせていただきまして、検討していく方法についても十分心してまいりたいと考える次第でございます。
-
○
米沢分科員 時間がなくて大変残念でありますけれども、結論的に言いますと、多くの台湾人の皆さん方が日本のために日
本人として戦い、命を落としたりけがをなさっておられるわけでありまして、これは紛れもない歴史的な事実でございます。そういう
意味で、国の補償義務、責任を改めて問われておるということを考えていただきまして、政府がどこまで踏み込んだ判断をするかというところにかかっておりますから、どうか検討の結果、この皆さん方がもろ手を上げて本当に喜んでいただけるような措置ができますように心から祈念申し上げ、同時にまた決断をお願いしたいと思います。
最後に、一言で結構ですから官房長官の決意のほどを伺いたいと思います。
-
○藤波国務大臣 誠意をもって検討を進めてまいりたいと存じます。
-
-
○伊藤主査 これにて
米沢隆君の質疑は終了いたしました。
次に、
横手文雄君。
-
○
横手分科員 私は、旧勲章叙賜者の名誉回復の件につき
関係者の皆さんに御質問を申し上げます。
それは、一刻も早く栄誉回復の政令公布をと訴えておられる日本金鵄連合会、すなわち金鵄勲章叙賜者の願望をかなえてあげなければならない、こういった立場に立って以下御質問を申し上げます。
御案内のとおり、本問題については
昭和五十六年、第九十四国会において請願採択されております。これに対しまして政府は、「旧金鵄勲章の叙賜者に対する措置としては、「旧勲章年金受給者に関する特別措置法」(
昭和四十二年法律」云々とありまして、最後に「政府としては、請願が採択されたという事実を踏まえ、今後誠意をもって検討してまいりたい。」という国会に対する
報告がなされておるわけでございますけれども、この誠意ある検討のその結果、現在はどうなっておりましょうか。
-
○海老原政府委員 お答えいたします。
旧勲章叙賜者の名誉回復問題につきましては、先生ただいまの御質問の中で御発言のとおり、国会で請願採択がございまして、これに対する内閣の処理意見といたしまして、大要次のようなことを申し上げているわけでございます。まず第一点は、旧金鵄勲章の叙賜者に対する措置として、従来一時金を出したこともございました、また銀杯を贈ったこともございました、これが第一点でございます。それから第二点は、御請願の旧金鵄勲章叙賜者の所持する旧勲章をその者の一代に限り有効なものとするよう措置するということにつきましては、関連する問題もあり、政府としては、請願が採択されたという事実を踏まえ、今後誠意を持って検討してまいりたい、これが第二点でございます。したがいまして、政府といたしましては、国会で請願採択があったということを非常に重く受けとめまして、今申しました処理意見に沿いまして、今日まで実施の可否につきましていろいろな角度から鋭意検討を続けているところでございます。
しかしながら、三万人の生存叙賜者と未伝達、未行賞の戦死者とのバランス等々いろいろの問題がございます。政令措置で対処することの可否という非常に難しい問題でございますので、いまだ結論を得るに至っていないのが現状でございます。
-
○
横手分科員 大変不満であります。
通常国会の請願は、金鵄会の皆さんの努力によりまして、その請願の数は三百六十八名に上っております。さらに、請願採択は通常全会一致が通例となっておりますが、本件は多数決によるものでありました。それは、反対に立たれる人たちにあっても、反対ではあるけれども、金鵄会の人たちの心情を思うとき絶対反対すべきではない、こういったことがあった。そして、現に反対をされた政党の会派の人たちからもこのような請願が集まってきておるという事実であります。一体これをどのように受けとめておられるのか。
さらに、今御答弁の中で、おさたのあった人たちに対してもこれあり、こういうことでございますけれども、金鵄会の皆さんあるいは我々から見ると、この請願採択に対して政令公布をしないために、このためにいろいろな理屈探しをしておる、こんなことにも受け取られるのでございます。つまり、本問題が内閣委員会における議論をされたときに、その会議録の中に、質問者が「生存者で、現に勲章の所持者に限り偏用を認めてほしいということになっておりますが、かつて金鵄勲章を授与すると約束した者のうちで現に渡っていない者も相当いると聞いておりますが、それに対して金鵄勲章を新たにつくって渡すということは含まれないと理解してよろしゅうございましょうか。」こういった質問に対しまして、ただいまの御指摘の問題ですが、新しくつくることを考える必要もありませんし、また新しくつくろうということも考えておりませんという紹介議員の稻村先生の答弁もあるわけであります。
国会の請願のいきさつ、そしてそのときのこの会議録、これらを踏まえて、これらの問題についてどう対処してこられたのか、この件はいかがでございますか。
-
○海老原政府委員 お答えいたします。
本件の請願の採択の際の委員会の状況につきましては、私ちょうどその委員会に出席しておりまして、十分存じております。この委員会における質疑によりまして、請願の
内容のうち先生の御指摘になったようなことが明らかにされたこともよく
承知しております。
例えば、かつての金鵄勲章制度のような特権を伴う、あるいは年金を支給するというようなことを求めているのではない、それから、かつて金鵄勲章を授与すると約束しながら未伝達となっている方々について新たに勲章の授与を求めるというようなものではないということが明らかになりました委員会の経過を、私、この目で見ておるわけでございます。
しかしながら、栄典事務の執行の義務を負う政府といたしましては、請願者の御意思は十分わかりました、しかし請願者以外の方々につきましても関連する問題を含めて検討していかなければ公平を期することはできない、そういったような
意味で、請願者の御趣旨を通す場合にいささかも公平を欠くことのないようにという角度も含めまして検討しております。
現在検討しております問題といたしましては、金鵄勲章を叙賜する旨の発令があったにもかかわらず、当時の事務の停滞あるいは制度の廃止といったことによりまして勲章功記が未伝達となっている者が約四十万人ございます。さらに第二次大戦の末期に戦死したけれども、金鵄勲章の論功行賞も受けていないというような方、こういった方も極めて多数に上っております。こういった方々と生存叙賜者三万人とのバランスをどういうふうに考えていくかということが最も難しい問題でございます。また賞勲局に対しましては、これらの遺族の方々から、勲章の授与をしてくれというようなお問い合わせもしばしば来ておるような状況でございます。そのほか、一たん廃止しました制度を、たとえ部分的であっても一部復活するというのは、これは大変容易ならざる問題でございますので、十分な検討を必要といたしますし、また政令で措置するということに関しての法理論上の問題もございます。いろいろ解決しなければならない問題、検討しなければならない問題がございまして、いまだ結論を出せないという状況でございます。
しかしながら、政府といたしましては、国会における請願が採択されたというこの重みを正面から受けとめまして、今後とも鋭意検討してまいる所存でございますので、御理解を賜りたいと思います。
-
○
横手分科員 それでは、おさたのあった人たち約四十万人とおっしゃいましたね。さらには終戦直前あたりではさたしなければならない人があったにもかかわらず、戦後それすら行われていなかった、こういう事実があると言われますが、仮にさたあった人たちに対してそれを行うということであれば、それは可能ですか。
-
○海老原政府委員 これをもし行うとなりますと、仮に四十万、七十万といたしまして、合わせて百十万人でございます。この百十万人に対して金鵄勲章を授与するとなると膨大な予算が必要でございますが、そういった方面の検討はまだ進めていない状況でございまして、可能か否かということについてはお答えいたしかねます。
-
○
横手分科員 私は、お金の問題を聞いているんじゃないのです。技術的に可能ですか、不可能ですか。
〔主査退席、
太田主査代理着席〕
-
○海老原政府委員 技術的な問題といたしましては、現在勲章を作製しておりますのは造幣局でございますけれども、造幣局の現在の能力からいえば、それだけの勲章をつくるのは大変なことで、ちょっとつくりかねると思います。
-
○
横手分科員 事務的にどうですか、簡単に言ってください。事務的にできますか、できませんか。
-
○海老原政府委員 直ちにこれをつくって配るということは、事務的には不可能でございます。
-
○
横手分科員 それですよ。これをやらなければ、皆さん方の言うことを聞くわけにはまいりません。これは可能かと言ったら、不可能であります。やらぬということではありませんか。うそじゃありませんか。誠意を持って努力しておりますとは一体何ですか。この山を越えていかなければできませんという山があります。その山を越えることは可能かと言ったら、不可能だ。ならば、やらないということではありませんか。誠意を持って努力するというのはうそですか、それは。どういうことになりますか。
そして、かつて本問題で法律論としてどうであろうかという議論がなされたときに、だれだれがおやりになったか定かでございませんけれども、しかし、私どもがこれは事実だということでお聞きをしておるのは、国会で請願が採択されればやりようがあると語られた、こういうぐあいに聞いているのであります。したがって、金鵄会の皆さん方も、ならば我々がということで、あのお体にむちうって、先ほど申し上げましたように全国の皆さん方が請願を集められた。そして国会で請願が採択されたときに、そのときの金鵄会の総会に私は打ってまいりました。涙ながらにありがとう。ございましたと言っておられた。それはなぜか。皆さん方これからですよという話の中にも、かつてこういうことがあった、国会で請願採択がなされればやりようがあると語られたということを御存じだからですよ。そして採択があった。ところが、誠意を持って努力いたします、これからもやりますということでございますが、なぜできませんかと言うと、こういう問題があります。ならば、その問題もまとめて解決するということについてどうですかと聞けば、その問題を解決することは不可能でございます。ならば、やらぬということじゃありませんか。それはごまかしですよ。
-
○海老原政府委員 先ほどの答弁についてちょっと誤解される向きもあるかと思いますので、もう一度申し上げます。
仮に四十万の未伝達者、あるいは七十万の未行賞者に対して今直ちに勲章を与えよというお話であれば、それは不可能でございます。しかし他の方法もあるのか。例えば先生先ほどから御指摘のように、その山を越えろということではないと御指摘でございます。その山を迂回していくという方法があるのか、あらゆる角度から検討を続けておる次第でございます。
なお、先ほど先生お話しのように、請願採択よりも随分前のことでございますが、部内検討があったというお話でございますけれども、そこら辺の経緯については必ずしも十分
承知していない面もございますが、いずれにしましても、国会において請願が採択されたという事実は非常に重いものでございますので、これを十分認識しながら、先ほど申し上げましたような難しいいろいろな問題をどうやって解決していくかということに真剣に努力して取り組んでまいりたいと思います。
-
○
横手分科員 何かむなしく聞こえるのでございますけれども、先国会、つまり百一国会の最終日、私はこの請願に賛成をされた各党の代表者並びに日本金鵄会の役員をしておられる諸先生方と一緒に総理にお会いをいたしました。そのとき総理から、これが解決したら、次は年金その他予算措置の必要なことがありはしないか、あるいはこれをごさたのあった人たちに対してまで広げていけ、こういう心配がありはしないか、こういうことをおっしゃいました。私はそのときに総理に申し上げました。私は福井県の金鵄会の総会に出席をし、そのとき会長のごあいさつを聞いてまいりました。会長のごあいさつの中では、我々はこれが佩用が認められたからといって、今さら年金を下さい、そんなことを望んでいるのではない。かつて我々は金鵄勲章の受章者として誇りがあった。その者が、今日の国家財政窮乏のときに、そのときのお金を下さいというようなことを言える、断じてそんな立場にはない。我々は、かってあったものを、そして私はいただいたんだ、そのことが欲しいんだというあいさつをされました。総理、私がお伝えを申し上げますと言った経緯がございます。
そのとき、さらにまたそれを裏づけるように、先ほども
局長の御答弁の中にございましたように、この会議録の中にも、年金その他の問題について我々は一切考えておりませんというやりとりが行われているのであります。この質問者は、もしそういうことがあるとするならば、我々はこれはここで賛成をするわけにはまいりません、こういう言葉できちっと念押しをされて、かくのごとき答弁がなされているのであります。この会議録の事実、あるいは総理が私どもにお話しになったその事実、最後に総理は、予算措置を全く伴わない、あるいは過去にごさたのあった方々にも拡大しないということであれば検討させましょうと言って、その総理に対する会談は終わったのでございますが、これに対して官房長官いかがでございますか。
-
○藤波国務大臣 金鵄勲章を持っているという大きな名誉を心に抱いて生きてこられた方々、名誉回復の機会がどうなっているのかという問題につきましては、政府としても非常に沈痛な面持ちでこのお話をいつも承って、深刻な気持ちで検討を進めてきておるところでございます。
関係者の方々も、先生御指摘のようにだんだん御高齢になられますし、まさに名誉回復の問題でございますので、そのお気持ちの上で非常に深刻なものがあろう、そんなふうに政府としても受けとめさせていただいておるところでございます。
総理のところにお見えになりましたときのいきさつも承っておりまして、年金などに波及をしないというようなお話等につきましても、
関係者の方々の御心情として私ども受けとめさせていただいておるところでございます。
ただ、この問題を解決をしてまいりますためには、先ほど来賞勲
局長からいろいろ御説明を申し上げましたように、やはり幾つかのバランス上その他で心配をしていかなければならぬという面はございまして、それらの問題をどう解決するか、その峠が乗り越えられるかというふうなところで非常に慎重な検討を要する、こういう立場で従来時間がかかってきておりますことをまことに申しわけなく思っておる次第でございます。しかし、何とか峠を越えよう、こういう気持ちで努力をしてきております誠意はぜひ御理解をいただきたいと思うのでございます。
先ほど来、国会請願がうまくいけばと、そういうお話の出たときもあったということでございますが、私どもといたしましては、検討してまいります中で、国会請願が採択されておるという事実は非常に重みを持って私どもに迫ってきておるところでございまして、それも十分念頭に置きましてさらに誠意を持って検討してまいりたい、このように考えておりますので、どうかひとついましばらく検討にお時間をいただきますようにお願いを申し上げたいと思う次第でございます。
-
○
横手分科員 御指摘のとおり、金鵄勲章の受章者の年齢もだんだん高くなり、そして亡くなっておられる方もたくさんございます。私の手元にあります資料を見ましても、十年前、
昭和五十年は四万二千七百二十八人、そして今日では二万六千八百九十四名、こういうことに相なっております。当然のこととして平均年齢もそのまま実際上がってまいりました。私が大変懇意にしておりましたしお世話になっておりました、福井県出身で東京で御活躍になり、県人会の役員あるいは金鵄会の役員をしておられた方が先日お亡くなりになりました。お葬式にも行ってまいりました。そして、私はお焼香の中で、北さん済みませんという謝りを言ってきたのであります。名誉回復を願いながらその日を待たずに他界していかれる方々、どんなにか残念でありましょう。自分の青春は一体何だったろうと、無念の情とむなしさの中でこの世を去っていかれることであろうと思います。このようなことを一日も早く終わらせるために、あとは政府の英断を期待するのみでございます。官房長官の決意をお聞かせいただきたいと存じます。
-
○藤波国務大臣 名誉回復を願いつつお亡くなりになっていかれます方のお話は、胸の詰まる思いで聞かせていただいたところでございます。この問題につきましては、総理も
内閣総理大臣に就任をいたしまして以来、国会議員の諸先生方からもあるいは
関係団体の方々からもいろいろ承ってきておりまして、先ほど来申し上げておりますように、いろいろなバランス上などで検討しなければならぬ問題もございますので、何とかそれらを乗り越えることはできないか、こういうことで検討を重ねてきておるところでございます。さらにお時間をいただくことをお願いをした次第でございますが、誠意を持って検討を進めてまいりたい、このように存じておりますので、いましばらくのお時間をいただくようにぜひお願いを申し上げたいと思う次第でございます。
-
○
横手分科員 私は、昨年のこの
分科会でこの問題についての質問の用意をいたしました。そのときのことを詳しく語る時間はございませんけれども、余り国会でさわらぬ方がいい、今何とか御期待に沿えるような方向でやっておるときだから、公式の場で言われると、それがまた公式答弁になると、かえって開こうとしておる口を閉じてしまうことになりはしないか、こんなこともございましたので、私は、ためにするのではない、金鵄会の皆さん方の御期待に沿う道であるとするならば、その質問も取りやめましょうといった経緯もあるのであります。そして、そのことも役員の皆さん方にも御
報告をさせていただきました。当然私も期待をしておりましたので、私の話を聞かれた皆さん方もまた期待をしておられたと思いますが、一年たった今日でも同じ答弁を聞かなければならないということを大変残念に思います。
しかし、きょうは官房長官の方から、そういった金鵄会の皆さん方の立場も胸が痛むほどよくわかる、これからも誠意を持って検討していくからいましばらく時間をかせ、こういうお話でございましたが、最後に念押しをさせていただきますが、官房長官、言葉は今までどおりと同じように誠意を持って対処する、こういうことでございます。会議録にも同じようなことが書かれるでございましょうけれども、しかしきょうのその言葉は、今までの誠意を持って対処するということよりも、同じ言葉であっても今までとはちょっと違う、前進させるという決意の込められた誠意を持って努力するという言葉に私は聞こえてまいりましたが、そのように受け取ってよろしゅうございますか。
-
○藤波国務大臣 決断をいたしますときには、思い切って温かい気持ちで大決断をしなければならぬものでございます。政治というものはそういうものだろうと思うのです。しかし、そこに至りますまでには、やはり冷静ないろいろな配慮や検討が要るだろうというふうに思います。それでなければ政治は恣意的になってしまうし、また独断的になってもいかぬ。そういう非常に厳しい剣が峰を政治というものはいつも通っていくものだろう、こういうふうに思うのであります。
先ほど申し上げましたように、賞勲
局長を中心にいたしましていろいろな角度からの検討を加えてきておるところでございまして、総理からもよく検討するようにということを受けて、時間をかけて検討してきておるところでございます。きょう
横手先生のこの問題についての御質問があるが十分心して御答弁申し上げるように、そういう電話を何人もの国会議員の方から、私はきょう朝からの間に受けておるところでございます。これがやはり国会請願が採択されたということの
意味合いであろうというふうに思うのでございまして、非常にそれぞれのお電話などを重い気持ちで受けとめさせていただいたところでございます。
なお、検討を進めておりますので、予断を申し上げて私からきょう御答弁申し上げるということはお許しをいただきたいと思いますが、同じ言葉になりますけれども、誠意を持って検討を進めてまいりたいと思いますので、いましばらくお時間をいただきますようにお願いを申し上げたいと思う次第でございます。
-
○
横手分科員 残念ながら持ち時間が参りましたけれども、これで終わりますが、先ほど来申し上げてきたとおりでございます。そして、きょうは全国の各地からこの国会での討論の模様を傍聴にたくさんの方々がおいでいただいております。中には体の悪い方もございます。しかし、そのまなざしは真剣であったろうと思います。おっしゃるように政治は英断であります。官房長官、英断のときでございますということを申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。
-
-
○
太田主査代理 次に、
総務庁について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。
和田貞夫君。
-
○
和田(貞)
分科員 総務長官、
昭和三十六年に当時の
内閣総理大臣から同和対策審議会に部落問題についての諮問をいたしまして、四十年に同対審答申が出たわけでございますが、それから、早いものでございまして、ことしで二十年を迎えるということになったわけであります。
同対審答申、「いうまでもなく同和問題は人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する問題であり、日本国憲法によって保障された基本的人権にかかわる課題である。したがって、審議会はこれを未解決に放置することは断じて許されないことであり、その早急な解決こそ国の責務であり、同時に国民的課題である」、こういう基本的な考え方で答申がされたわけであります。
それ以来、措置法が制定されて二回にわたって期限の延長がなされ、今新しい法律で、私たちは残念に思うわけでございますが、部落の字がなくなってしまう、地域整備という言葉に変わったわけであります。しかしそれにいたしましても、
内容は今日まで部落解放行政、この同対審答申の基本的な考え方に基づいてなされてまいったわけでありますが、その地対法も残り二年ということになりました。ここで、今日まで経過をした同対審答申が特に答申されて二十年を迎えることし、今日の部落の実態、今日の被差別部落住民がどういうような実態にあるかということをもう一度改めて政府がそれを把握する、こういう必要があるのでなかろうかと思うわけでございます。
聞くところによりますと、その予算措置もされておるわけでございますが、さきの
昭和五十年の実態
調査に比べますと、予算面におきましても非常に少ないわけてございまして、その
内容を私は心配するわけであります。
総務庁としてどのような実態
調査をおやりになろうとしておるのか、何を明らかにする必要があるための
調査なのか、この機会にひとつ長官の方からお聞かせ願いたいと思います。
-
○手塚政府委員 先生御指摘になりましたとおり、同対審答申が二十年を経まして、法律の施行後十六年間、いろんな物的事業については私どもいろいろやってきているつもりでございます。ただ、物的事業ばかりでなくてやはり意識の問題、心の問題があるのではないかというのは、昨年の地対協の意見具申でも指摘されたところでございます。そういった面では確かに把握が必ずしも十分ではないということで、意識面それから生活実態面、そういった面に着目して、今回、啓発等、実態把握を行いたいということで予算を計上しているところでございます。
-
○
和田(貞)
分科員 今の御答弁をお聞きいたしますと、建設省を中心とした事業面で、住宅の状況であるとか環境の状況であるとか、行政
調査が行われておりますし、またやらなくちゃならないわけですが、特に手塚さんの方からお話がございましたいわゆるソフト面の
調査、これは今日の部落の実態ということを把握するためにはぜひとも必要であるわけでございますが、部落解放同盟としては独自の
調査をやっておるわけです。今手塚
審議官がこれからやろうと思っておられるような
調査を、解放同盟が独自で実態
調査をやっております。
その実態
調査によりますと、時間がありませんので詳しく述べることができませんが、今日の健康状態あるいは被差別部落民の収入の状況あるいは今日における就労状況、就学状況というものはどういうような実態になっておるか、あるいは教育の面につきましてはどうか。特に就職の問題につきましては、いまだに被差別部落の人たちは大きな企業に勤めることができない、あるいは官庁等に就職するといたしましても現業職員が中心である、それがまた今日の実態であるわけです。二十年を経過いたしましたけれども、この面についても余り前進がない。教育面につきましても、
一般地域と比べますと、いまだに未就学者が六・一%ある。三十年前の部落の就学率と余り変わっておらない、こういう実態であるということが明らかになりましたし、あるいは年金の加入状況や生活保護家庭の状況につきましても、
一般地域と比べますと非常に年金の加入者も少ない、年金の未加入者が非常に多い、あるいは生活保護家庭が非常に多いという実態であります。
特に被差別体験の実態を把握いたしますと、いまだに結婚差別があり就職差別があり、就職いたしましても職場における差別があり、あるいは社会的につき合いをする社交の場における差別、あるいは部落周辺における落書き等々によるところの差別、あるいは特に学校においては最近は漸次落書きの横行がふえてきているという状況でありますし、あるいは中学校に至っては、中学生十人のうちの六人までが学校の内外で被差別の体験を受けておる、こういう実態を解放同盟として独自の
調査の中で把握をしておるわけであります。
そういうようなところにまで踏み込んだ今日の部落の実態というもの、あるいは部落住民が置かれておる実態というものを把握するための
調査というように受けとめてよろしいですか。
-
○佐藤説明員 先生御指摘の教育の状況であるとかあるいはその住居の状況であるとか、こういうものも含めて
調査をいたしたいということで今計画を練っておる段階でございます。
-
○
和田(貞)
分科員 そういうこともさることながら、先ほど手塚
審議官が言われたソフト面におけるところの
調査、私は、部落解放同盟が独自で実態
調査をやった、健康あるいは就職、被差別体験あるいは生活の実態、そういうようなソフト面の
調査をぜひともやるべきである。それを今日段階における、同対審答申が答申されて二十年を迎える年に当たって、その実態
調査の基本に置くという考え方に立たなくてはならないというように思うのですが、お答えになっておらないのです。お答え願いたい。
-
○手塚政府委員 この
調査の設計につきましては、具体的な検討は学識経験者等を集めまして、その委員会で御検討していただくことにしております。その際に、先生の御指摘も十分踏まえて御検討願おうかと思っております。
-
○
和田(貞)
分科員 今、実態
調査というのはそこに目を向けて、その点での実態を明らかにするということがぜひとも必要であるわけでございますので、どうぞ解放同盟独自が行いましたこの実態
調査を参考にしていただきまして、その面での
調査をやっていただきたいと思いますが、長官からひとつお答え願いたい。
-
○
後藤田国務大臣 先ほど来手塚君がお答えしておりますように、ことしの十一月ころに生活実態あるいは意識面、こういうことについて
調査をすることにいたしておりますが、その対象はまさにソフト面の
調査ということでやりたいと思っております。そこで、今、部落解放同盟で御
調査になったような資料は、私の方にちょうだいできれば参考にさせていただきたい、かように思います。
-
○
和田(貞)
分科員 解放同盟の方にも言いまして、独自の
調査を届けたいと思いますので、長官自身もぜひともそれに目を通してもらいたいと思うのです。
長官、昨年だったと思いますが、おととしだったですか、神戸の番町、
調査に行っていただいたわけですが、非常に敬意を表しておるわけです。部落問題の政府の最高責任者として、これが解決のためにひとつ先頭に立って頑張ってもらうという
意味で、一回限りということではなくていろいろな、都市型の部落もございますし農村型の部落もございますし、そこらあたりを
相談していただいて、ぜひとも足しげく、数多く歩いていただいて、長官自身が身をもって体験していただくように、この機会をおかりいたしましてお願いをしておきたいと思うわけでございます。
そういう実態
調査をやっていただくことを一つの問題としてぜひとも強く要請するわけでございますが、これまた今日に至りましても、先ほど申し上げましたように、いまだに差別落書きが学校、職場にある、あるいは部落の周辺にそのことが起きておる、あるいはいまだに——ちょうど私は、前に国会に籍を置いておったときに、いわゆる「地名総鑑」、差別を売り物にして商売をするという、こういうけしからぬことを初めて取り上げたわけであります。それ以来いまだにこの問題が解決しない。
大阪では、今ちょうど議会をやっておるわけでございますが、全国に先んじて今度条例をつくることになりました。こういう条例を大阪は先例としてつくったわけでございますから、大阪だけがつくってほかに及ぼさないというと、商売する者といったら頭がいいわけですから、大阪で厳しくなったらよそでしょうかということじゃ話にならぬので、この点についてもぜひとも大阪を参考にしていただきまして、全国的に波及するように、これは自治体のことでございますから強制はできませんが、機会あるごとに知事等に啓蒙方をお願いしたいと思うのであります。
そこで、それらを含めまして、啓発活動が今日的な段階として非常に大事な問題であろうと思うわけであります。従来からも啓発活動について全くやっておらないというようには言わないわけでございますが、たまさか昨年の六月十九日に地域改善対策協議会の方から、「今後における啓発活動の
あり方について」いわゆる意見具申がなされたわけでございます。この意見具申を政府としてどういうように受けとめて啓発活動をやっていこうとしているのか、お答え願いたいと思います。
-
○佐藤説明員 六月に御答申をいただきまして、
関係各省その対策について
課長会議などでいろいろ話し合いをいたしたわけでございますが、
総務庁におきましては、まず十月に私ども
地域改善対策室に啓発専門官を一名設置いたしまして、現在その活動をやっているところでございます。それから、答申の中で啓発指針の策定というお話が載っておりますが、これにつきましても、現在御審議いただいております予算の中で若干の勉強の費用をいただいておりますので、今後予算が上がりました段階におきましては、
内容等について種々御検討いただきまして、そういう形のものをまとめていきたいということでございます。
なお、その他
関係各省におきましても、いろいろ
調査の費用であるとかあるいは研修の充実拡充であるとか、そういうものを検討しておるように伺っております。
-
○
和田(貞)
分科員 啓発活動というのはこの答申に、具体的な意見具申の中にも述べられておるわけでございますが、これはあまねく国民各層を対象としてやっていかなくてはならない。そして、国民のあらゆる生活の場を通してこれをやっていかなくてはならないと思うわけでございますが、まず公務員、しかも国家公務員を最も優先的に対象とした啓発活動を行っていく必要があると思うのですが、それについてのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
-
○手塚政府委員 昨年六月の地対協の意見具申でも、すべての公務員が必ずしも理解していないというおしかりを受けているのはそのとおりでございまして、そういう
意味で、先生がおっしゃるように、まず国家公務員がそういう認識、理解を持たなければいけないというふうに私どもも思っております。それで、研修を所管する人事院、各省庁、それぞれ計画的に今までもやっていますが、今後も一層充実してやっていくようにということで、こちらも指導といいますかお話もしているところです。
私ども
総務庁の方におきましても、中央官庁に勤務する職員を集めまして、幹部職員、
一般職員、二つに分けておりますが、それを集めて講演と映画も組み合わせるという形で、なるべくわかりやすい形で認識、理解を深めるという努力をしておるところでございます。
-
○
和田(貞)
分科員 啓発活動については、積極面を具体化していく中で、その啓発活動の計画を立てる必要があると思うのです。
例えば「国の職員研修の実態」というのを見てみますと、一番悪いのは文部省ですよ。子供に教育をやらなくてはならない文部省がまだ二回しかやってないのですよ。しかも、文部省の研修の参加者が、同対審答申ができてからわずかに百六十九人。文部省の全職員は十三万六千四百五十二人おるのです。〇・一%しか研修を受けてない。大蔵省、これまた悪い。これもいまだに百四十七人。しかも大蔵省が独自にやらないで、総理府が主催する研修に参加をさせているだけです。〇・二%、極めて悪いわけです。なるほどと思いますが、通産省、労働省それに自治省、これは極めて研修の状況はいいんですね。そういうものがやはり行政の中ににじみ出ているんです。
例えば大阪の例をとってみますと、一九七七年から労働省が百人以上の事業所に対しまして企業内に同和問題研修推進委員というのを置くように指導しておる。これが一万五千事業所を対象として、今日では一万二千の事業所で実施しておる。だから、国家公務員に対して研修をまじめに取り組んでおるところは、行政面にこういうふうに出てきているわけですね。そういうところからいいますと、文部省、大蔵省というのは非常に悪いわけでございまして、これは他省のやっていることだからということで
総務庁逃げることなく、窓口はあなたのところでございますから督励をしてもらいたいと思います。ほかの省はいいとは言えないわけでございます。
まず国家公務員を対象に、もっと積極的に啓発活動に取り組んでいくということにしてもらいたいと思いますが、どうですか。
-
○手塚政府委員 基本的な認識は全く先生と同じでございます。ただ、先生もおっしゃいましたが、制度的には、研修は私どもの方として他省の研修について口を挟むことはできませんが、実態的には、
関係省の連絡
課長会議等もございますから、そういうときにそういった点についても意識していただくように、そういう慫慂はできると思います。そういう努力をしてまいりたいと思います。
-
○
和田(貞)
分科員 時間がありませんので長くしゃべれないわけでございますが、指摘しておきたいと思うのです。
同和対策全体の予算の中で、啓発
関係の占める予算というのは本当にわずかでございます。〇・二八%、一%にも満たない、昨年と余り変わらない。しかも、ことしの啓発予算の中に、先ほどやろうとしておる部落の実態把握の予算も組んでおる。こんなことでは、政府の国家公務員、まず国の職員に対するところの啓発活動の取り組みを私は非常に心配するわけであります。ひとつこのことを積極的にお願い申し上げたいと思います。
つけ加えて申し上げますと、単に本省の職員だけでなく、幸いにいたしましてそれぞれ各省は研修所を持っておるんです。研修の機会、研修の場というのがあるわけなんです。外務省は外務省の研修所を独自に持っておりますし、大蔵省も税関の研修所、財務の研修所、会計事務職員の研修所、税務大学というのがございますし、文部省も国立の社会教育研修所があり、それぞれ国立大学を持っておるわけでありますし、厚生省も社会保険大学、こういうように各省それぞれ職員の研修の場を持っておられるわけです。自治省もそのとおりでございますが、この自治大学については、先ほども自治省の職員は非常に研修の率が大きいと言いましたけれども、自治大学ではこの部落問題についての研修が既に位置づけられておるのです。そういう自治大学の取り組みのような姿勢を各省持って、各省がそれぞれ持っておる職員の研修の場にこの問題を位置づけていくようにぜひとも努力してもらいたいと思うわけでございますが、どうですか。
-
○手塚政府委員 先ほども申しましたように、各省の研修になりますと、正直言って、これは国家公務員法に研修は人事院の専管となっておりまして、私ども直接口は狭めませんが、実態的に各省にお話しする、あるいは人事院にそういった点をお伝えしておくということはできるかと思いますので、そういう方向でやりたいと思います。
-
○
和田(貞)
分科員 総務庁は、どうもおれのところは部落問題については調整機関だということで、しり込みをする。そういうことだから各省が協力しない。長官、
総務庁というのは各省の部落問題に取り組む調整機関であることは私はよく存じておりますけれども、それだけであってはいけないと思うのです。部落問題についての政府の窓口、部落解放行政を政府として取り組んでいくその先頭に立つという立場に立ってやってもらわないと、実態把握の
調査におきましても啓発活動につきましても同じことを繰り返してまた十年たつ、二十年たつというようなことになることを非常に懸念するわけであります。
ぜひともそういう姿勢を貫く
総務庁であってもらいたいと思いますし、先ほど長官の方にお願い申し上げたわけでございますが、ことしもまたどこかの被差別部落を対象にしていただいて、長官みずからが積極的に視察をやってほしいと思うわけでございます。そのことがまた
総務庁の姿勢を毅然とさせることにもなるし、ひいてはそのことが、各省が、同対審答申二十年を迎えることしを契機に、新しい姿勢で部落解放行政に積極的に取り組んでいただくということになるのではなかろうか、こういうように思いますので、最後に長官の方から視察の面を含めまして決意のほどを述べていただき、私の質問を終わりたいと思います。
-
○
後藤田国務大臣 この問題は、ハードの面の整備、それともう一つソフトの面と二つあるわけですけれども、私は一番粘り強くやらなければならないのはやはりソフトの面、意識の面だと思うのです。そういう
意味合いから、今御質問の中にありましたような研修の問題とか啓発の問題、これは本当に粘り強くやっていかなければならぬ仕事だと私は考えております。
今おっしゃるように公務員の研修は不十分だ、これは既に地域改善対策協議会からも指摘を受けている問題なんです。したがって、私どもとしては、なるほど調整の役所ではありますけれども、これはもう少し力を入れてやってもらいたいということは各省庁に私の方からもよく伝えて、やってもらうようにできるだけ努力をするという線でやらしていただきたいと思います。
なお、私の視察ですけれども、私は番町、あれは大規模の集落の改善
関係で、あれは二年しか期限がないものですから督励しなければいかぬという
意味で行ったのです。実は選挙区のことを申し上げて恐縮なんだけれども、私はしょっちゅう行っているのです。そして地域の中の人のお気持ちもわかるし、周辺の人の気持ちもみんな私は知っているのです。ただ、選挙区の中へ行くと、あいつ選挙運動をしていると言われるものだから、よそへ行かなければならぬわけです。そうしますと、どうしてもふだん私がああいう被差別部落へ行くように足しげく行けないわけですから、そこらはひとつ御理解をしておいていただきたいと思いますが、私は十分
承知をしておるつもりでございます。
-
-
-
○
坂井分科員 同和問題、差別をなくすという大変大事な課題で幾つかお尋ねをしたいのでございます。
ただいまも啓発活動のことについての議論がございました。昨年六月十九日の地域改善対策協議会の意見具申の中で、同和地区の環境改善はかなりの程度進展した、今後の課題として啓発運動の充実が重要である、こういう指摘ですね。したがって、政府も啓発活動、啓発予算は相当奮発したということのようでございまして、ちょっと確認させていただきたいと思いますけれども、昨年が総額で五億二千八百万、ことしは五億九千万、こういうことでしょうか。
-
○佐藤説明員 御指摘のとおりでございます。
-
○
坂井分科員 都道府県も随分熱心に啓発活動に取り組む、そのための予算、啓発予算ですね、相当お力を入れているようでございますが、都道府県の啓発事業予算、これは把握されておりますか。
-
○佐藤説明員 今ちょっと正確に数字を持っておりませんけれども、国に比べてかなりの額を計上しておるというような話を伺っております。
-
○
坂井分科員 ちょっとこれは詳しく都道府県の
関係も掌握された方がよろしいんじゃないかと思うのです。
例えば、これまた私のことを申し上げて恐縮なんですけれども、和歌山県も随分力を入れまして、約二億なんですね。言うなれば、国の啓発予算に対比すれば、県で三分の一、それとてなお十分じゃないんだというぐらいの意気込みで啓発活動をしっかりやろう。今長官おっしゃっておったように、確かにハードとソフト面、特にソフト面で今後方点を置いていかなければいかぬということから、随分予算面においてもそのように非常に力を入れておるわけでございます。
この問題、また後でこれに関連してお尋ねしたいと思いますが、その前に、環境改善もかなり進んだ、こういう指摘、意見具申なんですが、なおしかし、残念ながら環境面においてもまだやはり問題がある。
例えば、これまた和歌山での例になりますが、やはり都市部の大規模地域整備、都市計画、街路事業を中心にした事業というのは非常におくれておりますね。
理由はいろいろございます。ですから、これも今後どう挽回をし、この環境改善事業なるものを進めていくかという課題が一つ残っておる。
さらに、
昭和三十年代あるいは四十年代に建てられた公営住宅、随分傷みましたね。老朽化あるいはスラム化。これも公営住宅そのものの用地費に対する補助制度がないということもございますが、同時に、今の耐用年数との
関係で見ますと、建てかえ等をしたいと思ってもなかなか困難、がんじがらめにされておるということですね。ですから、こういう公営住宅の建てかえもうんと積極的にやらなければならぬ状況に今来ておるということ。
それから、あとは高校進学率等の問題、これはソフト面になりますが、今のような事業面でのおくれについてはどういう御認識、またどういう取り組みをされるお考えでしょうか。
-
○手塚政府委員 確かに一部大型地区などにおきましてはおくれているという実情にあるようでございます。ただ私の方は、あと二年間という期限内にできるだけやっていただくというのが現在の時点の問題でございまして、ことしの八月の概算要求、これが一つの分岐点といいますか、そこで全体の状況がはっきりしてくるかと思いますが、私の今の立場では、とにかく各省
関係者頑張っていただくということで慫慂しているところでございます。
-
○
坂井分科員 そこで期限内、今の地対法二年、その間、今の環境面あるいは教育啓発活動等ソフト面等々十二分にやっていきませんと、問題がなおたくさんある。同時に、最近の差別事象というのは非常に悪質化してきたという傾向ですね。大変恥ずかしい話かと思います、あるいは腹立たしいことかもわかりませんが、和歌山県においてもこのようなことで、後で一遍長官もちょっと目を通していただきたいと思うのですが、
内容を一覧一読しましても非常に悪いひと過ぎますね。しかも、こういう差別事象というものは、学校の先生とか議員だとか公務員だとか、社会の指導的立場にある人々が起こす極めて悪質な差別事象、
事件というものが続発をしておる、こういう傾向です。
ですから、勢いこれらに対して教育、啓発が非常に大事だぞということでの取り組みで和歌山県としても大いに力を入れなければいかぬということなんですが、今のことと関連して、この二年の地対法の後のことでどうだこうだという議論も一部にあるようですが、どうも少し認識が混乱しているんじゃないかと思いますのは、申し上げたいのは、例えば我が党も同和対策基本法なるものをつくったらどうだということを実は提案し、党の基本的な政策として用意しているわけでございますけれども、今あるこの地対法、その前の同対法、いずれもどうも環境面に重点が偏り過ぎた嫌いがあるんじゃないか。環境面、事業面というところに余りに力点を置いてきた法律であったがゆえに、もう一方において、むしろ雇用の問題とか教育、さらに産業、生活、健康、人権等々、そうした非常に総合的な取り組みが必要であったんだが、今言いましたように環境面に非常に力点が置かれ過ぎた嫌いがあった。そのことのために、あるいは最近の今言うような差別が非常に悪質化してきたということもそれが一因ではないか。
したがって、私どもが言う同和対策基本法なるものは、そうした環境面はもちろんのこと、教育なり今申しましたような産業、雇用、さまざまな問題を網羅した総合的な整合性のあるそういう基本法として取り組んでいく必要があるんじゃないか、こういう主張をしているわけでございますが、このことについてはどうお考えでしょうか。
同時に、このことは二年後の問題を私は言っているわけじゃなくて、今ある地対法そのものが、繰り返し申し上げて恐縮ですが、どうも事業面に偏る嫌いがある。したがって、むしろ差別を完全になくするその担保としての法律ということになりますと、基本法的なものがやはり必要ではないか、そう思うわけでございまして、お考えを伺いたいと思います。
-
○
後藤田国務大臣 この問題は仕事の、何といいますか、物事の順序として、やはり早急にやらなきゃならぬのは環境の整備ではないのかといったことで、物的な施設の改善、これにずっと力を注いできたわけですね。それはそれなりに私は相当進捗をしていると思いますけれども、ただ、その過程で、これが意識の面に逆にはね返っている面も、率直に言って私はあると思うのですね。だから、ここらをどう考えたらいいのか。やはり最後まで残る問題、しかも真剣に取り組まなきゃならぬのは先ほどから申し上げておるソフトの面ではなかろうか、こう思いますね。
さて、そのソフトの面を一体法律で取り扱うのがいいのかどうかということになると、これはまたよほど考えないと、それ以上のリアクションということも頭の中に置かなきゃいけませんから、この点については、私は今日の段階ではよほど慎重でなければならぬ、かように考えております。
いずれにせよ、やはりソフトの面は粘り強く、あらゆる職場なり学校なり、あらゆる面で粘り強くやっていくということが一番肝心であろう。そして、今日の時点においては、ともかく残事業を早く解消しませんといけないので、これについては、厳しい予算の中であっても、政府としては最大限の努力をしていく、こういう物事の順序ではなかろうかな、かように考えておるわけでございます。
-
○
坂井分科員 長官、確かに地対法の有効期間内に地域改善対策事業、これを貫徹させる、このことが今何よりも大事だということはよくわかるのです。よくわかるのですが、同時に、私今申し上げたことは、これは法律としてどうかという、いささかそういう面の懸念も長官はおありなようで、今伺っておったのですが、しかし、同時に私申し上げておるのは、繰り返し申し上げて恐縮ですが、やはり総合的な基本法のようなものがないと、どうも最近の悪質な差別事象というものの根を絶つことはできないんじゃないかなというような、非常に不安といいますか、気がかりでございまして、そうしたことでも、やはりこの際はそうしたソフト面もあわせ盛った法律ということの必要があるんじゃないかな、必要性が今の時期になお要請されているんじゃないかな、こう思っておりましてお尋ねをしているわけなんですが、この問題、なおこれから議論、いろいろと各方面からもございますので、さらに引き続いていろいろな
関係方面の意見等も伺いながら政府の考えをただしてまいりたい、こう思うのです。
これともう一つ、大きく関連しますものが例の人種差別撤廃条約、これは
昭和四十五年以来毎国会、随分議論がされてまいりまして、いずれにいたしましても
昭和四十五年以来、日本政府は時の総理大臣、
関係大臣、皆さんが口をそろえて人種差別撤廃条約、この締結、批准に向かつて我が国も前向きで検討を進めていかなきゃいかぬということでずっと来たわけですね。自来十五年ですな。ことしも中曽根総理も本会議で前向いて何とか早くということで答弁があったわけですが、いよいよ大詰めの段階に来たと私は思っておるのです。
〔
太田主査代理退席、主査着席〕
この問題は、国内法の整備をしなければならぬというこれまた非常に難しい問題なんです。人種差別撤廃条約第四条、この四条が例のとおり差別を扇動するということはまかりなりません、罰則をもって臨むということでございまして、そうなりますと、我が国憲法十九条、二十一条、言論の自由、表現の自由また結社の自由、これは正面から衝突するというようなことで、この辺を、一体それを受けての国内法との関連においてどう調整を図るか、どう整備をするか、非常に頭の痛いところで、随分御苦労いただきながら鋭意前向いて検討されてきたこと、私はこのことについては決して政府の怠慢とかどうとかと言うようなつもりはない。今申しますように随分難しい問題がある。
しかし、それもやるという意思があれば、やるんだ、人種差別撤廃条約は我が国も締結、批准するんだ。これはまさに国際的な人権擁護の大きな流れの中で、少なくとも国連加盟の四分の三以上の国がもう批准を終わった。日本がおくれておる。国連においても我が方の大使も、もう今にも今にもと言って演説をせざるを得ないというのか、これは積極的に言っているのか、せざるを得ないと言うと語弊があるかわかりませんが、何にしましても、国内法の整備ができればこの条約の締結、批准に至る、また締結、批准するためには国内法の整備をしなければならぬ。この相関
関係の中でいよいよ大詰めだろうと思うのですが、この条約の締結、批准は近いでしょうか。
-
○瀬崎説明員 お答え申し上げます。
ただいま先生まさに御指摘なさいましたように、この条約の第四条が、日本国内、日本国の憲法で保障されております基本的人権との
関係でどのように調整されるかという非常に難しい法律的な問題を含んでいるわけでございまして、このために、政府といたしましては、この条約の重要性というのを認識いたしまして、かねてから早期締結のために努力をするということを言い続けてきたわけでございますけれども、他方、非常に重要な基本的人権をどう制約するかという兼ね合いで、なかなか決断が下されないということでございます。今もって
関係省庁の間でいろいろ議論は進めているわけでございますけれども、今後とも引き続きこの基本的人権と条約第四条との
関係をどのように調整するかについて、さらに鋭意努力を続けていきたいということでございます。
-
○
坂井分科員 もう少しこの問題詰めましょうよ。
一番問題は第四条ですね、確かに。この第四条との
関係で言いますと、これは留保したいという国もあったようだけれども、これはちょっと留保はできませんね、基本的な部分ですからね。ですから、ここのところを解釈宣言というのですか、というようなことでもって何とかならぬかというようなことでいろいろと知恵を絞った国もあるようですね。これはやはり、だからといってこの条約をそういうあいまいな形にしますと、また将来においてさらに問題を派生させていくというその心配がある。したがって、条約の完全批准ということが一番好ましいわけです。完全批准ということになると、今言ったような国内法の整備の問題がまた非常に難しいだろうと思うのですが、少なくとも今言いましたような留保に近いようなものあるいは解釈宣言あるいは国内法、やはり法律をきちんと整備をする、言うなれば、大まかに言ってこの三つの方法かと思うのですが、どの辺で、外務省あるいは法務省、
関係省庁でいろいろ研究、勉強されているのでしょうが、今私が申し上げましなどの辺のところでこの調整を図ろうという作業をされておりますか。
-
○瀬崎説明員 条約第四条が日本国憲法で保障されております言論の自由あるいは集会、結社の自由と抵触する問題もあるわけでございますけれども、他方、この条約で言っております人種の優越または憎悪に基づくあらゆる思想あるいは人種差別活動、こういったものに対して何か侵害があったときに犯罪として処罰するということでございますので、これは憲法三十一条の罪刑法定主義との兼ね合いで、犯罪の構成要件をどのようにとらえるかという複雑な問題があるわけでございます。この署名あるいは加入に際しまして、一部、例えばイギリスとかフランスとかイタリアなどの例を見ますと、解釈宣言を行っている国があるわけでございます。他方また留保している国もあるということで、いろいろな加入の態様というのがあるわけでございますけれども、いずれにせよ我々
関係者といたしましては、これを解釈宣言を行うのか、留保するのか、あるいは国内法を整備することによりまして何ら留保を付さずに加入するのか、ここら辺を含めまして現在検討中でございます。
-
○
坂井分科員 それでは締結、批准の一応の、いつごろやるのか、めどを伺いたいのですね。長官、十五年間同じ議論をやってきたのですよ。それでまたこんなことを、次の国会でとか、あるいは来年も同じ議論を繰り返すというようなことになりますと、国際的な日本の信用の問題にもなりかねない。つまり、日本政府は前向いて検討します、これは大事な国際的な条約です、しかも人権に関することですから日本政府も、というわけで、先ほど申しましたように、例えば千葉大使なんかもあの時点では来年、この次は間違いないというようなことまであの国連の場で演説をしたというような経緯もございますね。また次に同じことを言わなければならぬということになりますと、一体日本は、ということになりかねないと思いますね。どうでしょうか。年内にもおやりになれますか。
-
○瀬崎説明員 先ほど来御説明しておりますように、国民の基本的な人権をどのように制約するかという非常に重要な問題を抱えているために、なかなか決断をできないということでございまして、かねてから国際会議の場で、先生御指摘のように千葉大使もいろいろ発言されておりますが、その際に日本政府として申し上げていることは、早期締結のためにできるだけ努力するということを言っているわけでございまして、この姿勢というのはやはり基本的人権の制約との
関係で簡単には結論が出ないということで、もちろん我々といたしましては、従来言い続けておりましたように、早期締結のためという一つの大きな目標に向かいまして今後も努力するということでございます。
-
○
坂井分科員 これはやはり
後藤田長官にお願いしなければなりませんな。これは外務大臣あるいは法務大臣もいろいろと非常に、差別をなくする、人が人を差別するということはこれはもう絶対あってはいかぬ、差別はなくしましょう、こういうことで、
総務庁において長官を先頭に先ほども御決意のほどを承りながら、まことに力強く私は思っておるのですが、
後藤田長官がひとつリードされまして、この批准は急げ、国内法の整備についても随分研究、勉強しながらずっと来ているわけです。十五年間勉強してきたんだ。十五年間勉強してきて、今日なおその結論が見出せないというのでは、まさに百年河清を待つがごとしで、国際的に努力努力努力と、まあ努力するということは、要するに努力した結果、所期の方向に日本も締結することになりましたというのが努力でありまして、十五年間もそういうことで来ておるわけですから、来年までなんというようなことはもう許されぬ、年内にもやはり締結しなければいかぬ、これは一大決意を固めていただきまして、長官がひとつ音頭を取っていただきたいものだなと思うわけですが、いかがでしょうか。
-
○
後藤田国務大臣 これは、人種差別がいけないことはわかり切ったことなんですね。だから、そういう建前の論議、これはもうわかり切った話なんでしょう。
ただ問題は、先ほど来外務当局からお答えのように、これは憲法で保障している他のいろんな人権、こういった問題とぶつかる面がある。というのは、規制条項か何かがあるはずなんですね。罰則で担保しなければならない、こういうことになると、これはなかなか容易でない仕事ではなかろうか、こう私は思います。といって、人種差別撤廃条約反対とは、これは言えないですね。そこらが非常に各国とも悩みのある問題であると私は思います。だから、これは本当に罰則があるがゆえに、なかなか
扱いの難しい問題ではなかろうか。しかし、これは千葉君がしばしば何か発言しているようですし、やはり公の発言とすれば、これは批准に向けて努力しますということは言わざるを得ないと思います。しかし、それなら四条の中にもいろいろな言葉があるようですね。ディセントとかいろいろな言葉がありますから、ここらはよほど慎重に対処しないと、国内法の整備、これは訓示規定なら何ということはない。そうじゃありませんから、そこらはもう少し慎重に検討させていただく以外、今ここでいつごろまでにということは、これはひとつお許しを願いたい、こう思います。
-
○
坂井分科員 いつごろまでにというのは難しいということであれば、これはまた長官、できるだけ急いで結論を見出すということでなければいかぬと思うのですね。慎重なということも大変結構です。また、そうでもなければいかぬ。しかし、実に十五年間慎重に来まして、ですから随分国内法との
関係についてはいろいろな研究、勉強もされたと思いますし、あるいは諸外国の例につきましても随分これまた熱心に詳しくいろいろと検討、勉強もされてきたと思います。我が日本においてこの人種差別撤廃条約を締結、批准する場合には、国内法の
関係において非常に慎重であり、それが後顧の憂いを、問題を残すようなことのないように、やはり言われるように、一方における言論、表現の自由、集会、結社の自由ということがあるわけですから、それらが不当に弾圧されるというようなことがあっては断じてなりませんし、かといって、一方において、先ほど申しましたような、極めて悪質な、皆殺しにしろとか、まあそれは大変なものですわ。そして、こんなことが最近さらに増加し、先鋭化し、悪質化していく。しかも冒頭申しましたように、指導的な立場の人々がこういう差別
事件を起こしておる、こういう差別は断固やはりなくすという強い姿勢がなければならぬとも思います。
したがって、そういうことをまたよく御検討いただきまして、早い時期に批准の締結ができるようになお一段とひとつ御努力をいただきたい。お願いをいたしまして、質問を終わります。
-
-
○
野間分科員 私も同和問題について長官にお尋ねしたいと思います。
同特法が十三年、それから地対法が五年のうち三年を経過して、合計十六年を経過したわけですね。私が住んでおります和歌山県におきましては、全国でも先進を切ったすぐれた成果を上げてきたということについては、県とか地方自治体あるいは議会、
関係運動団体、こういう方々の大変な努力の成果だと思うのです。残された期間は二年ということになるわけですけれども、所管の長官として、この二年間で総力を挙げて、基本的には物的需要については終結させるという決意のほどをまずお聞かせいただきたいと思います。
-
○
後藤田国務大臣 私は、あと二年しか残っておりませんから、いわゆる残事業といいますか、これはこの期間中に最大限の努力をして完全に実施したい、こう思っておりますが、全国的な状況を聞いてみますと、若干大規模なんかでおくれているのがありますね。これはやはり先生にもお願いしておかなければいかぬのは、その地域におけるいろんな土地の問題、権利の問題、これらで工事がおくれてしまうのですよ。ここらはぜひそれぞれの現地の方々にも御協力を願いたいな、こう思っておりますが、いずれにせよ、最大限の努力をして少なくとも物的施設は完成をさせたい、こう思っております。
-
○
野間分科員 今長官も若干触れましたけれども、最もうまくいっている和歌山におきましても、芦原を初め、いわゆる都市部落ですね、こういうところの物的事業が非常におくれておる。県が発行しました「十三年のあゆみ」、これを持ってまいりましたけれども、この中でも「都市部の一部大規模地区で事業実施が大幅に遅延している」という指摘を明確にしておるわけですね。
県は、この地対法ができまして、その中で、これは一昨年の八月ですが、最終年に向けて年次計画をつくりました。この環境整備を中心とする総事業費が八百五十六億円、こういう事業計画を発表したわけですね。しかし、今の財政
事情からすれば、なかなか期限内に達成は困難ということも実情でありまして、これは認めざるを得ないというふうに私は思うわけです。これは全国的にも、今言われたように特に都市部落とかあるいは同和人口の比率が多い、そういうところはかなりおくれがあると思うのですね。
同時に私申し上げたいのは、今残事業とよく言いますけれども、これは五十年
調査なんですね。五十年
調査の残事業をどうやって消化するかという消極的なものであってはならない、私はこう思うのですね。実際にこの二年の間に基本的に事業を終結させようとするならば、補助制度の改善等も含めまして、すべての地域で事業が終結できるということにふさわしい制度そのものの改善が必要ではなかろうかというように私は常々思っておるわけです。このままで二年がたちますと、地方自治体の財政力、このいかんによって差別の解消から取り残されるということも出てくると思うのですね。
ですから、こうしたことのないためにも、事業におくれを生じている地域の実態を十六年たった今日つぶさに分析して、それにふさわしく政策を改善する、そのためにも、今日の実態を正しく把握するために
調査をぜひする必要があるんじゃないか、私はこう思っておりますけれども、これについては、この和歌山県におきましても、県の同和対策市町村議会連絡協議会あるいは和歌山県、市長会、町村会、県議会それから同和委員会が五十九年の十二月に要望書を出しております。これは
総務庁に対しても「六十年度において全国同和地区実態
調査を実施されたい。」と言っておるわけですね。いずれも今申し上げたような点を踏まえて、ぜひ新たな時点での
調査が必要ではなかろうかというふうに思っておりますが、これについての見解をお聞かせいただきたいと思います。
-
○佐藤説明員 現状把握について、大きく分けて二つの
調査があろうかと思います。一つは、今先生御指摘をいただきました物的な事業の、主として事業量の
調査ということでございます。これにつきましては、一番もとになるのは五十年の
調査ということでございますが、前回、同和対策事業特別措置法が地域改善対策特別措置法にかわる五十六年におきましてもそれを再把握いたしまして、全体で約七千億円というような事業量を把握いたしたわけでございます。特に物的な、主として住宅であるとか道路であるとか、そういうものにつきましては、所管省はやや個別的な把握というのももうなされておりまして、また、予算編成の各段階におきまして市町村のヒヤリングあるいは県のヒヤリングということで、ほぼ概括的な把握はされておるように
承知いたしております。
なお、次回の
昭和六十一年度の予算編成が地対法の最終の段階になるということでございますので、その際には事業量、それから漏れというのでしょうか、そういうものも把握していく、そして、何と申しますか、最終の事業を完成させるという形かと思います。
-
○
野間分科員 五十年
調査のようなものは今のところ予定していない。ただ、それはもちろん各省庁は所管のあれについてはそれなりに握っておることは事実だろうと思いますけれども、しかし特に私指摘したいのは、大規模部落についての
調査であります。
この和歌山県の場合でも、大体地区の八八%がほぼ終結に近い状態でありますが、ここでは産業就労対策とかあるいは教育啓発活動、地区住民の自立ですね、そういう方向に運動が非常に発展しておるということは事実でありますけれども、この芦原などの都市部落については、芦原に限っていいますと進捗率が六〇%台なんですね、あと二年しかないにもかかわらず。和歌山市が芦原地区の整備構想というものを立てておりますが、それによりますと、市中心、南部の商業及び業務用地の確保、それから市内循環バスを主体としたバスセンターの設置、中高層の住宅地の確保、工場と住宅の分離、工場の整備確立、緑地公園の系統的配置、公共施設の整備改善、こういうものを挙げまして、幹線道路あるいは地区道路の配置、皮革産業の育成、工場の集約化、下水道の完備、面的整備を提起しておりますが、しかし同時に、構想、計画の中でも、計画実施に当たってはということで、住工混合や密集市街地のために膨大な金と年月がかかるため、線的整備によるほかはない、こういう指摘で、新しい町づくり構想の実現のめどがなかなか立たないというのが今の現状であります。しかも、この線的整備についてすら、これは
昭和四十五年から五十八年まで十四年間で百二十四億五千万円執行しておるわけですね。残事業か五十八億円、これだけありますが、こういう点から考えまして、期限内に終結できないことは明らかだと思うのです。非常に疑問があります。と同時に、私が申し上げたいのは、おくれた原因がどこにあるのかあるいは早期達成についてどのような方途が必要なのかというようなことも、こういうおくれたところ、大規模なところの実態
調査をして、そして計画の早期達成に向けて制度の改善も同時に図っていく必要があるんじゃないか。と同時に、二年後に向けまして法的な措置も含めて検討するという時期に来ておるのではないか、私はこう思っておりますが、それでもなおかつ物的な整備についての実態
調査の必要はもうないという見解なのかどうか、再度お聞かせいただきたいと思います。
-
○佐藤説明員 今御指摘の芦原の件でございますが、何か四十三年に事業認可がなされておる、こういう実情のように伺っております。
問題は、その事業量等の把握については、先ほどの繰り返しになりますけれども、所管省で把握をしておるようでございます。予算的な面あるいはその達成の期限の問題は確かに残るわけでございますけれども、事業量としては、もとが五十年でございますけれども、把握されておるという実情でございますので、少なくとも物的なものについての把握は、今のところ行政把握の中で対処していくことがいいのではないか、こう思っております。
-
○
野間分科員 そうしますと、繰り返しですが、必要性はもうないんだというお考えでしょうか。これで大丈夫だというお考えでしょうか。
-
○佐藤説明員 地域改善対策措置法が新しく五年間ということで、同和対策特別措置法をこのままにいたしまして、成立したわけでございます。五年の間に物的な実態的差別の解消、心理的差別の解消を目指すということでございますが、もともと新しくつくった措置というのは当時の価格で約七千億でございます。これを全部実施していくという目標でつくられたということでございますので、今の段階においては、そういう形で成立……(
野間分科員「必要性はないということですか」と呼ぶ)必要性いかんと申しますか、法の目的から見ては今のところそれで達成できるのではないかと考えております。
-
○
野間分科員 時間の
関係でこの点についてはこれ以上言えませんけれども、ただし、今申し上げた点を踏まえて、制度の改善も含めて十分検討する余地がある。と同時に、
室長も言われましたけれども、期限内に今の状況からすればできないところもあるわけですから、その際にどのような新しい措置をするのかということもぜひ今から検討していただきたい、私はこう思っておりますが、長官、その点いかがでしょう。一言だけで結構です。
-
○
後藤田国務大臣 五十年
調査、五十六年
調査を基礎にして今やっているわけですから、ともかくこれを完遂していくことが当面の大事な問題じゃないかと私は思うのです。その後残っておるのがあるじゃないか、こう
野間さんおっしゃるのだけれども、私は率直に言いまして、五十六年の
調査の前、私、自治大臣をやっておりましたから、たしかこの委員会でも随分質問がありましたよ。そのとき聞いていますと、不思議なのは、事業というのはやれば減るはずなんですよ。ところが、やればやるほどだんだんふえていくというところは、これはよほど真剣に再検討しませんと、これじゃさいの河原になっちゃうのですよ。そこらも
野間さんの方もひとつぜひお考えおきを願いたい、こう思います。
-
○
野間分科員 ふえるのは、いろいろな
調査をし、事業をすれば当然ふえてくる。この点については長官のおっしゃるのと私はちょっと見解が違いますので、保留しながら次に進めたいと思います。
六十年度の予算の中で、地域改善対策啓発活動等委託費等、こういう費目で三億八千五百七十万円余が組まれておりますね。このうちの庁費を入れますと約三千万弱が啓発活動等実態把握経費、こうなっていますね。この中には実態
調査費は含まれておるのかどうか。これは昨年六月の地対協の例の「今後の啓発活動について」というのを受けての予算かもわかりませんけれども、時間の
関係で簡単にお答えいただきたいと思いますが、せめてこういう機会に今私が指摘したようないろいろな問題についてぜひ
調査をするべきじゃないかと思いますけれども、時間がありませんので簡単に言ってください。
-
○佐藤説明員 主としてソフト面、教育とか雇用とか福祉の
関係で、それぞれ
関係各省ございますので、事業所管庁のプロパーのものは別といたしまして、またがる事項あるいはその両方ともに
関係する事項というものを含めて六十年度に
調査をいたしたい、こういうことで今プランを練っておるわけでございます。
-
○
野間分科員 六十年度から最終年の六十一年度に向けてもぜひたくさん予算をつけて住民の皆さんの要望にこたえていただきたい、こういうことを強く要望しまして、個別具体的な問題について若干お伺いしたいと思います。
まず文部省にお伺いしますが、和歌山市に芦原小学校というのがあります。これが同和地区の単一校区の小学校だという認識はおありだと思いますけれども、まずその点について。
-
○熱海説明員 お答えします。
そのとおりでございます。
-
○
野間分科員 そういう同和地区の単一校区の小学校あるいは中学校は全国でどのくらいありますか。
-
○熱海説明員 五十年度
調査をもとにして現在の時点で
調べましたところ、現在全国で七校でございます。小学校が六校、中学校が一校でございます。
-
○
野間分科員 長官、和歌山では一校あるのですよ。公教育の沿革を若干
調べてみますと、明治五年に公教育の制度が発足して、その当時は学校を建てることについての資金が地元の負担。
一般地区が学校を建てても同和地区の児童はそこから入学を拒否される。ところが、明治三十年代から統廃合がずっと進んでだんだん是正される。特に大正十一年の水平社運動、この中での差別解消ということの中でどんどん進んで、こういう同和地区単一校区というのは解消されて、今のお話でもこれが七校になったわけですね。こういう沿革があるわけです。ですから、部落の解放に向けて当然にそういう傾向に進んできたのですけれども、そういう経過については御存じでしょう。
-
○熱海説明員 はい、存じております。
-
○
野間分科員 ですから、同和地区単一校区というのは決して望ましいものではない。そうでしょう。今長官もうなずかれましたけれども。ところが、和歌山では残っておる。それから、今地区名は聞きませんでしたけれども、ほかにも幾つかあるわけですね。
そこで、どういう弊害があるかということで私もいろいろ勉強し、識者にも聞いたわけですけれども、一、二挙げますと、例えば閉鎖性から来る特有の言葉遣いとかあるいは生活慣習の違いを大事な幼少期、つまり十二歳までに克服できない。これは小学校の場合です。あるいは交際範囲が狭いので、社会性あるいは社交性に乏しい。特に芦原小学校というのは和歌山市の市街地の中心でありながら同和地区ということで、ほかは全部マンモス校ですが、ここでは二百十一名、小規模の学校なんです。弊害が随分と出ておって、ここでもそのことゆえに差別発言があるわけですね。ですから、同和地区単一校区というのはこういう弊害と申しますか、問題点があるということは文部省も御存じだと思いますが。
-
○熱海説明員 例えば同じ対象地域の子供だけが通学していることによっていろいろな問題があるかどうか、この面については我々としてまだ十分研究を深めておりませんので、ただいまここでどういう問題があるかについてはお答えしかねるところでございます。
-
○
野間分科員 最近でもかなり、神戸あるいは西宮、名古屋というところで同和地区単一校区が解消して、先ほど文部省が言われたように非常に数が少なくなったわけですけれども、今申し上げたような問題点が学識経験者の中から指摘されておるわけですね。
加えて言いますと、同級生というものは最も親密な校友
関係にあることは明らかでありますが、幼少期から同級生として進められている自然交流が同和地区と地区外の壁を取り除いていく上で非常に効果的、この子供の自然交流が親さらには家庭の交際に発展する、このことによって地区外の偏見除去あるいは地区内の弊風の改善、家庭の教育力の向上、ひいては通婚の機会の拡大等々、今までの同和地区単一校区の解消の中で経験としていろいろな
報告がなされております。長官、今申し上げたことは大体おわかりでしょう。
-
○
後藤田国務大臣 私は、そんな学校がいまだにあるのかということを初めてお伺いしたわけでございます。私は文部大臣じゃありませんから余り先走ったことは言えませんけれども、これはやはり何らかの打開策を講ずる方がいいんじゃないでしょうかね。私はそう思います。
-
○
野間分科員 まことに明快です。
それで、この地対法を見ましても、二条の二項で「周辺地域との一体性の確保」というのがございますね。同和対策室に聞きますが、次官通達でも施設の
一般市民への開放は指導されていますね。このことは、やはり自然交流を重視してこういう法律があり、しかも通達が生まれておるというように思います。だから、これと同じように、学校の場合も今申し上げたようにこういうことが非常に大事だと私は認識しておるのですね。
それで、地対法にそういう趣旨の規定あるいは通達があることはお認めでしょう。
-
○佐藤説明員 御指摘のとおりでございます。
-
○
野間分科員 ですから、今長官から明快なお答えをいただきましたけれども、ぜひそういう立場から、つまり部落を解放するという立場から、同和所管の長官から文部省に対してもきちっとそういう点で協議をして、ぜひそういうことがないようにそういう方向で御検討いただきたいと思いますが、いかがですか。
-
-
○
野間分科員 さて、建設省に対してお伺いしたいと思います。
芦原地区の事業の中で非常に重要なのは幹線道路の整備でありますが、砂山−手平線、大谷−嘉家作−和歌浦線、
大橋−島崎線、この三本の幹線が、周辺には幹線が随分ありながら、しかも今の三本の幹線の計画がありながら、これはなかなか進捗しない。砂山−手平線については六十年度に完成という予定でございますが、これはぜひ完成さしていただきたいということが一つ。それから、あとの二本についても早期に着工して期限内にぜひこれが実現するようにひとつよろしくお願いしたい。この見通しについてもお答えいただきたいと思います。
-
○依田説明員 お答えいたします。
都市計画街路砂山—手平線につきましては、
昭和六十年度末に全線の供用が図れる見通してございます。大谷−嘉家作−和歌浦線、それから
大橋−島崎線につきましては補償物件もかなり多うございまして、和歌山県あるいは事業主体であります和歌山市と十分
相談をしながら、早期完成を図るべく今後とも事業促進に最大の努力を図ってまいりたい、このように考えております。
-
○
野間分科員 ぜひこれは実現方強く要望しておきたいと思います。
次に、別の地区ですが、本渡という地区がございます。これは農水、建設両方にお聞きして後、長官にまたお尋ねしたいと思いますけれども、この本渡地区というのは和歌山市で最も同和事業の進捗率の遅いところ、五〇%であります。ここではちょっと強い雨が降ると田畑が浸水と申しますか、冠水し、そして住居地にも水がずっと入ってくる。これの改修が念願なんです。これについて言いますと、建設省は亀ノ川の改修をやっておられる。農水省もこの冠水対策として紀三井寺川の改修等もやってこられた。問題は、本渡地区の浸水するところは二本の川の間に挟まれまして、いずれにしても低地ですから、そこから水を排水する、そういう対策、施策がなければ、今建設や農水が進めておられる事業が仮に完成したとしても、決して解決にはならない。ところがこれはいろいろ複雑な
事情がありまして、市の管理あるいは県の管理、建設、厚生とか農水とか、所管が随分と分かれておりまして、なかなかうまくいかないわけです。しかし、地区の住民からすれば浸水によって大変困る、何とかしてほしい。ここに長官、やはり縦割り行政のいろいろな問題が出てきておるわけです。
そこで、私、まず建設、農水に一言ずつお伺いしたいのは、それぞれの所管の県や市と同時に協議して、そして遺漏のないような措置をぜひとっていただきたい、私はこういうふうにお願いしたいと思うのですけれども、時間がありませんので、両方一言ずつお伺いしたいと思います。
-
○斉藤説明員 お答えいたします。
先生御指摘の本渡地区につきましては、たびたび浸水
被害その他が出ております。その雨水の排水でございますけれども、まず農業用排水路から……(
野間分科員「簡単に、協議するかどうかだけ」と呼ぶ)最終のところは二級河川の紀三井寺川というところに入っております。我々聞いておりますのは、紀三井寺川というのは二級河川でございまして、和歌山県が管理しておられる。早急に改修するというふうに伺っております。
-
○
野間分科員 ちょっと時間がありませんので簡単に。
私が申し上げておるのは、それぞれ所管がいろいろ複雑で、県、市、建設、農水がございますから、縦割り行政はいろいろ問題がありますので、ぜひ
関係者が協議をして早期にその対策を立てられたい、こういうことなんです。
-
○斉藤説明員 先生御指摘のように、地元調整がうまくいきますように、河川管理者であります和歌山県を建設省としては指導していきたいというふうに考えております。
-
○藤野説明員 ただいまの御質問につきましては、農林水産省といたしましても水害等の災害が早く解消されるよう、どういう方法でやったらいいか等適切な解決策が講じられるよう、地方公共団体を十分指導してまいりたいと思っております。
-
○
野間分科員 長官、最後にお伺いしますけれども、今も建設省の方は県の建設筋に対して協議をする、これは縦割りになっておるから。それから地域の住民にすれば、これが所管が建設か農水があるいは厚生か、そんなことは
関係ないわけでしょう。ですから、これはやはり調整機関であります
総務庁においてぜひ協議をする、そういうまとめ役をぜひひとつやっていただきたいと思いますが、いかがですか。
-
○
後藤田国務大臣 私は調整役ですけれども、今のお話はここでもうはっきりしているのですから、
関係省庁来ておりますから、これが技術上の問題とか金の問題であればこれはまたいろいろあると思いますが、縦割り行政だけの問題であれば、これは話し合いをして当然やってしかるべきもの、かように思います。
-
○
野間分科員 それでは、時間が参りましたので、最後に長官に、二十一世紀には差別を持ち起さないという立場から、さまざまな運動団体、あるいは行政もいろんな努力をされてきた。物的な整備についてはかなり前進をした、あとまた心理的差別についてどうするかということは、これからのこれまた大きな問題になりますけれども、最後にお伺いしたいのは、二十一世紀に差別を持ち起さないという決意でぜひ長官としても御努力いただきたい、この決意だけをお伺いして、終わりたいと思います。
-
○
後藤田国務大臣 この問題、ゆるがせにできませんから、最大限の努力をしたい、かように思います。
-
-
-
○近江
分科員 きょうは、三十分という極めて短い時間でございます。そういうことでひとつ簡潔にお願いをしたいと思います。
まず
後藤田長官、長官は閣僚の中でも非常に重鎮の閣僚でございます。そういう点で実行力も非常にある人である、こう聞いておるわけでございます。行革のかなめとして非常に努力していただいておるわけでございますが、行革、いろいろなことを遂行していく上におきまして、閣議におきましていろんなことを了解、取り決めなさるわけでございますが、こういうことをやはり実行していくことが行草の根本ではないかと思うのですが、いかがでございますか。
-
○
後藤田国務大臣 行革は国民的課題でございますし、この内閣の内政の最大限目でございますから、全力を挙げてやっていきたいと思います。
-
○近江
分科員 先ほど差し上げました資料を大臣に、また政府委員の皆さんに上げてください。今私が差し上げましたこの資料でございます。行革は中曽根内閣の公約でもありますし、最大の柱ではないかと思います。その行革というのは、いろいろな
意味で私はその範疇に入ると思うのでございます。
そこで、今私が資料でお渡しいたしました問題は、一目瞭然でわかっていただけると思うのです。これは、
昭和五十二年十二月二十三日閣議決定されておりますね。五十四年十二月十八日閣議了解。これは御
承知のように公庫公団等特殊法人の役員の選考についてでございますが、「役員選考基準(
昭和五十二年十二月二十三日閣議決定)の運用については、次の方針によるものとする。全特殊法人の常勤役員については、国家公務員からの直接の就任者及びこれに準ずる者をその半数以内にとどめることを目標とする。この目標を達成するため、主管省庁及び各特殊法人においては、法人の業務
内容等に応じ、民間人等の起用について一層努力するものとする。」六年前ですよ、これは長官。
ところが、資料をお渡ししておりますが、国家公務員出身者が常勤役員ポストの全部を占めている法人名が十四あるわけです。これは一体どういうことなんですか。まず率直な感想をひとつお伺いしたいと思うのです。
-
○
後藤田国務大臣 これは前々から非常にやかましい問題でございまして、これは私の所管でないし、内閣でございますけれども、これは相当実際は力を入れてやっているのです。詳細な数字は後で係から答弁させますけれども、大体今半分ちょっとぐらいが公務員出身じゃないかなと思います。基本の方針は民間等、等というのは、内部登用ですね、これらを含めて大体半々、こうしているのです。これは総平均ですよ。ところが、今お挙げになった中にも、私が見まして、民間とか中からとっていい特殊法人があると思います。しかし、全体としては大体閣議の線で今行われていると御理解願って間違いないと思うのです。
一番厄介なのは給与なんですよ。民間からとりたいといいましても、公庫公団の今の処遇では来手がほとんどありません。そこが内閣がこういう特殊法人の役員任命のとき一番苦しいところである。といって、民間並みにしたら必ず皆さん方怒るに相違ない。ところが、役人と比べると少しいいではないかと言うとこれまたしかられるのです。ここらをどのような兼ね合いをとっていけばいいのか、私も官房長官を経験しましたから、大変難しい。そして同時に、特殊法人にもいろいろな種類がございますから、文字どおりの行政の延長みたいなものもありますし、そうでなしに、企業とほとんど同じような性格のものもありますから、やはりそこは全体としてお考えを願わなければならぬのではないか、かように思います。
-
○近江
分科員 総務庁長官として、また内閣の重鎮として、これに長官の責任が非常にかかってきておる問題でございます。官房長官の代理、だれだったかな。あなた、こういう実態を見てどう思いますか。
-
○荘司説明員 今長官からも御答弁がございましたように、閣議決定の趣旨といたしましては、全体といたしまして国家公務員を半分程度にとどめたいということでございまして、今お話がございましたように、ことしの一月一日現在で国家公務員ないしはこれに準ずる者から就任した数が五四・二%と各省から私どもの方で
報告を受けておるわけでございまして、おおむね半分という目標は達しているのではないかと思っております。今後ともこの目標を達成するように、さらに内閣として努力をしていきたいと考えております。
-
○近江
分科員 私が渡した資料のとおり、十四法人は民間から一人もおらないのですよ。あなた、全体として五四%くらいと言っていますけれども、十四法人については全部国家公務員出身です。閣議決定をして六年もなるのにこういう状況なんですよ。こういうことを守られずして、幾ら政府が方針を出したって、実行できなければ、行革をやりますといっても
意味がないと思うのです。閣議了解というのはこんなに軽いものですか。内閣の重鎮として、長官、お聞きしますが、閣議の了解というのはどういうことなんですか。
-
○
後藤田国務大臣 閣議というのは極めて重要なものですから、その線に沿って、先ほど言ったように、全体としての枠は達成しようということでやっている。ただ、お挙げになった中には、私さっき言ったように、これはもう少し民間の人を登用したらいいのじゃないか、こういう特殊法人もありますから、そこらはまた内閣の方にあなたの御意見はよく伝えまして、そういう方針でひとつ、逐次交代していくわけですから、やってもらうようにしたいと思いますけれども、全体としてはこれは本当によくなっているんだということだけは理解していただきたい、かように思います。
-
○近江
分科員 全体として努力されているという点につきましては、それは理解いたします。こういうように一人もない、こういうのが現実にあるわけですよ。この部分に絞って、長官、閣議の了解が実行されていないということについてはやはりそこに率直な
反省をしてもらわないと困ると思うのです。是は是、非は非としてきちっとした筋の通った長官であると思いますので私は聞いているのです。この部分に限って、どう思いますか。
-
○
後藤田国務大臣 それは、今近江さんに申し上げたとおり、中へ入れていいというのもあると私申し上げていますから、これは当然内閣において善処する、こういうことです。
-
○近江
分科員 では、ひとつその点は今後積極的に早急に努力していただきたい、こう思います。こういうことが何回も行われるということになってきますと、これはやはり閣議のかなえを問われる、このように思います。ですから、今長官もこれは早速是正させる、このようにおっしゃいましたので、見守っていきたいと思います。
次に、行革につきましては中曽根内閣の非常に重要なかなめの項目である、これはしばしば総理も
後藤田長官もおっしゃっておられるわけでございます。そこでお聞きしたいのですけれども、国民は非常にこういう感じを持っているのですよ。特にいわゆる防衛庁、その辺の問題につきまして、防衛
関係費というものにつきましては聖域じゃないか、これは枠外なんだ、そういう態度を政府はとっている、このように見ておるのです。長官も、こういう行革という点につきまして、防衛庁についてはそういう枠外にあるんだ、こういうようにお考えですか。
-
○
後藤田国務大臣 これはたしか総理もしばしば御答弁しているように思いますが、予算も聖域ではございません。ただ、防衛計画大綱を一日も早く達成したいということでやっているだけであって、やはり経費を節減するものは節減する、こうやっております。それから行政改革も、これは別段第二臨調は聖域とはいたしておりません。防衛庁に対しても、事務事業あるいは組織、これらについても見直すべき点は当然防衛庁もやってもらうということで遂行しておるわけですから、それは御理解しておいていただきたい、かように思います。
-
○近江
分科員 先般
予算委員会が中断いたしまして、再開をめぐりまして与野党幹
事長会談が行われ、その中で金丸幹
事長からも、特にGNP一%の問題についてはそれを守るために最大限の努力をするとおっしゃっているわけですね。そこで、長官もいわゆる防衛
関係についても行革はするんだというように今おっしゃっておるわけですが、そういう点からいきましても、当然防衛
関係におきましても積極的にそれを推進しなければいけない、このように思うわけでございます。
例えばこういう意見もあるのですね。現在の防衛施設庁、これなどは防衛庁の局にすればどうだ。これは一私案でありますけれども、そういう意見もあるわけですが、こういうことについてはどのようにお考えでございますか。
-
○
後藤田国務大臣 防衛施設庁は今防衛庁の外局という形になっておるので、これは内局にしたらどうだ、こういうことでしょうが、私は、あそこの組織、仕事の中身から見て、やはり今のような防衛庁の外局としておく方が適切じゃなかろうか、こう思います。というのは、今全国に幾つぐらいありますか、地方の施設局を置いておりますから、そこらを考えて私は現行の仕組みの方がよかろう、かように考えております。
-
○近江
分科員 防衛
関係につきましても決して聖域ではない、こういうお話があったわけでございまして、そういう点からいきますと、国民が防衛
関係だけは何か予算にしても行革にしても手をつけてない、こう見ておるのですね。ですから、書記長・幹
事長会談におきましてもそういう合意があるわけですし、一%を守るために最大限の努力をする、こういうことでございますから、防衛行革といいますか、それぐらいの決意で臨むということが大事じゃないかと思うのです。長官、いかがでございますか。
-
○
後藤田国務大臣 一%の問題は守らなければ、守る努力をしなければならぬということに総理も言っておりますから、といって、防衛行革というのは、近江さん、ちょっと無理ですよ。やはり防衛庁というのは特殊な役所ですから、防衛目的をどうして達成するかということを基本に考えていかなければいかぬのではないか、私はかように考えておるのです。しかし、さればといって、先ほど言ったように組織なり機構なり事業なりのやり方についてきちんとすべきところはきちんとしてもらうということはやっているわけで、たしか去年の十月一日じゃなかったですか、防衛
本庁の中はきちんとした組織改革をやってもらったという経緯もございますから、そこいらはひとつ理解をしておいていただきたい、こう思います。
-
○近江
分科員 次に、いわゆる戦後処理問題として置かれておる問題でございます。これをお聞きしたいと思うわけでございます。
御
承知のように先般
報告が出たわけでございますが、決して
関係者は戦後処理問題懇談会の
報告というものにつきましては皆納得してないわけです。この問題については長官もかねて真剣に取り組んでこられたと思うわけでございますが、特に軍人軍属、恩給のいわゆる未資格者、こういう方々の問題でございますが、十二年でいわゆる恩給が出る、こういうことで、私たちも多くの人から、私は十一年十一カ月になるのですけれどもこういう恩給が出ないということで、涙を流しておられるわけですね。それは線を引かなければならないということはわかるわけでございますけれども、その辺が、十二年という区切り、また、その十二年に達するためにはいわゆる戦時加算であるとかいろいろなことをやっているわけですから、十二年という線がどこまで科学的な納得できる線であるのか、こういうことなんです。
そういう点からいきますと、数字については御
承知のとおりでございまして、一時恩給者、一時金の人、これは合わせて百三十万人、その他いわゆる未資格者と言われておりますのが百六十五万人、計二百九十五万人、約三百万です。こういう人たちが歯ぎしりしておるわけですね。ですから、それは財源の問題とかいろいろあるかもわかりませんけれども、何段階に分けて十二年未満の人でも何十%、年数に応じてしてあげるとか、そういうことはできないのですか。いかがでございますか。
-
○
後藤田国務大臣 恩給の受給資格の年限というのは、これは一つの約束事なんですね。この約束事を変えるということは恩給制度の基本に関することで、私はこういった方々の御要望は痛いほどわかりますけれども、これを今変えるという考え方は私は持っておりません。
ただ、今の御質問で、どんな合理的根拠があるんだ、こういう御質問ですが、恩給制度は古い制度でございますから、私の記憶では過去の陸海軍省等でいろいろ御検討になって十二年、これはたしか兵の恩給資格がもともと十二年でなかったでしょうかね、私の記憶の間違いであれば取り消させていただきますが、そういったことが基本になって歴史的な沿革を踏まえたものである、かように御理解をしておいていただきたい、かように思います。
-
○近江
分科員 私は、それでは決して納得できないわけでございますが、これは押し問答になると思うのですね。そして、公務員の皆さん方はその間、いわゆる軍隊にとられておったときは共済年金、これに加算される。民間に就職した場合は、厚生年金も国民年金も加算にならない。余りにも官民格差じゃないかと言われておるわけでございますが、これについてはどうにもならぬわけですか。いかがですか。
-
○藤江政府委員 ただいま先生御質問の事柄に関しましては、これは厚生省所管でございますが、私ども聞いている限りにおきましては、厚生年金等に通算することは困難であるというふうに聞いております。
-
○近江
分科員 それは困難は困難かもしれませんけれども、その辺政府全体として、これは厚生省だからというそれだけじゃなくして、真剣な、やはり何とか救済をしてあげるという、そういう一ひねりも二ひねりもした悩んだ末の取り組みをやっているのですか、どうなんですか。
-
○藤江政府委員 その点につきましては、総理府に通算制度についての研究会を設置いたしまして、十分な検討を経た結果でございます。
-
○近江
分科員 それからまた、シベリア抑留者等の問題もあるのですけれども、この人たちも全く問題が放置されておるのですね。抑留者の方々につきましても、そういう加算の問題であるとか、非常に厳しいそういう当時のことをわかってくれてないという訴えが非常に強いのです。これについてはどうですか。
-
○
後藤田国務大臣 これも私がお答えするのはどうかなと思いますが、官房長官のところで学識経験者を集めた懇談会をつくって検討した結果、その御
報告を得ておるのではないかな。そこで、政府としては、この御
報告の線に沿って処理をしていく、こういうことになろうかと考えております。
-
○近江
分科員 この
報告というのは、今回もこれに基づいて予算を組んだわけでございます。しかし、予算を組んで、一応懇談会は解散ということになっておるんですね。この予算自体も、それじゃ実際にこうした恩欠者の皆さん方の訴えなり、シベリア抑留者の方々なり、在外資産をなくしてしまった人々の苦しみにこたえるだけの、そういう先につながるような、そういう予算措置であるのかどうか。そうじゃないわけですね。それでは本当に綱を切られたというように皆泣いているのですよ。ですから、今回おつけになっておりますこの予算の問題につきましても、今後そうした方々のいろいろな悩みや苦しみ、そうしたことの本当に将来に向かっての解決のあくまでも
調査費である、こうとらえていいわけですか、どうなんです。
-
○根本説明員 お答え申し上げます。
先生御
承知のとおり、戦後処理懇は昨年の十二月二十一日に
報告を出したわけでございます。その
報告の中におきまして、御
承知のとおり、
関係者に深く同情するという点から特別の基金を提唱しているわけでございます。それで、この基金を具体化するためにはどうしてもいろいろ検討あるいは
調査すべき点があるということでございまして、そういうことで、その
報告の中で、検討の場をまず設けましょうということを提唱しております。
それで、この
報告を受けまして、本年度の予算案におきまして総理府において、今お話しのとおりの一億五千七百万が計上されたところでございます。それで、この一億五千七百万を活用いたしまして、六十年度予算の成立を待ったところで、
報告書の趣旨を踏まえまして総理府に検討の場を設ける。それで、その検討の場で今後、今おっしゃったようないろいろな問題について検討していきたい、こう考えている次第でございます。
-
○近江
分科員 そうすると、もう一遍確認しておきますが、戦後処理は終わってない、まだ未解決の問題が残っている、したがって、その解決のための
調査である、こういうことですね。それだけはっきりしておいてくださいよ。今のところの答弁はそういうことだったから、もう一遍確認しておきます。
-
○根本説明員 今回設けます予定の検討の場というのは、あくまでも十二月二十一日に出された
報告の趣旨に沿ってやっていくということでございます。その趣旨に沿いながら、今の各
関係者の意向等伺いながらいろいろな問題について検討していきたい、こう考えている次第でございます。
-
○近江
分科員 その辺が、この
報告自体を見て皆ショックを受けているわけなんですよ。そうでしょう。だから、こういう予算をつけたのはいいわけですけれども、私が申し上げたように、こうした多くの陳情の声、それを今後解決するための
調査費ですな、これは。もう一遍はっきりしておいてくださいよ。ですから、そういう問題は終わってない。今後それを本当に皆さんの期待にこたえるための
調査費なんですね、これは。それだけはっきりしてください。
-
○根本説明員 今度の一億五千七百万は、基金の検討及び
調査のための経費ということで計上されているわけでございます。それで、今先生御指摘の恩給欠格者の軍歴通算の問題だとか、あるいはシベリア抑留に係る加算の問題だとか、その他これらに関連する問題等につきまして、
関係省庁の協力を得ながら検討していく、そのための経費であるということでございます。
-
○近江
分科員 それじゃ将来に向かって、今回のこの予算をもとに十分ひとつ期待にこたえられるようなそういう対策を今後早く練っていただきたい。そうでないと、もうかなりの年配に達して、亡くなっておられる方が毎年たくさん出るわけです。そういうことは本当に見るに忍びない状況でございますので、それをよろしくお願いしたいと思います。
また、この予算に基づいていわゆる委員会をおつくりになるわけでございますが、その委員会の中には少なくとも恩給欠格者の方、シベリア抑留者の方、在外財産を失った方々、こういう人を必ず入れるべきである、このように思うわけです。そのように考えていただいていますか。
-
○根本説明員 今お話しのとおり、六十年度予算の成立を待ちまして、総理府に検討の場を設けるわけでございますけれども、具体的なメンバーあるいは体制だとか検討対象だとか、あるいは期間等につきましては、今の先生の御意見も十分参考にしながら、また
関係省庁の協力を得ながら、今後適正に対処してまいりたい、こう考えております。
-
○近江
分科員 もう大分時間もないようでございますから、長官、いわゆる代表を、ぜひともこの人たちをその委員会の中に入れていただきたい。そうでないと、本当の苦しんで実情を知っている人でなければ反映できませんよ。それをひとつ努力していただきたい、そのことを強く申し上げ、お約束をいただいて私の質問を終わりたいと思います。
-
-
-
-
○
田中(慶)
分科員 私は、
最初に、
総務庁関係の行革関連について質問をさせていただきたいと存じます。
行政改革は、今国の重要な柱であり、また高齢化社会等々考えてまいりますと、今懸命にこれらの問題について努力をしなければいけない、あるいはまた財政
事情から考えて、これらの問題について積極的な取り組みを行なわなければいけない、こういうことを言われながら、今日、国においても地方においても行政改革というものが政治課題として進められていることでありますが、これらについて、私は、少なくても今政府がそれぞれの作業を進め、あるいはまた懸命に努力をされておりますけれども、行革そのものが基本的に大きなスケジュールとして将来ともされていくことはわかりますけれども、この辺について、まず冒頭に考え方を聞かしていただきたいと思います。
-
○
後藤田国務大臣 その点は、昨年の秋、行革審から御提言がございまして、五合目ぐらいまで行っておるんじゃないかという御意見でしたけれども、私はそう思っておりません。まさにこれからが正念場である、こういうような決意で、第二臨調の答申の実施に向かって全力を挙げていきたい、かように思います。
-
○
田中(慶)
分科員 その第二臨調が本当に実施をされることが、これからの日本の国のあらゆる問題について活力やあるいはまたそれぞれの国民のニーズにこたえていく、私はこういうことだと思います。
そこで、実はこの行革の中の一つには、二重行政やダブり行政の見直し、こういうことも言われているわけでありますけれども、その中で私は一つ、行政改革という形の中ですべて画一的にやることが行政改革がどうかということを考えたときに、いささかの疑問があるわけであります。
例えば、地方事務官制度というものがございますけれども、この地方事務官制度、先般それぞれの閣議決定をされて、運輸
関係についてはもうスタートされたわけでありますけれども、これからの問題で、労働
関係の問題で今検討されていると思います。
私は、そういう中で、実際に地方事務官という形の中で、労働行政がそれぞれの府県から取り上げられたらどんなことが生じるだろう、こんなことを含めて
調査をさせていただいたわけであります。むしろ地方自治体から労働行政を地方事務官として吸い上げた場合、私はそこに二重、三重の行政というものが、県、国との行政が行われるであろう、こんな懸念を持っているわけであります。
例えば、労働行政はそれぞれの県が一つの大きな目玉の施策として行っているわけであります。一つとってみれば、高齢者の問題、心身障害者の問題あるいはまた福祉施策として、それぞれこの問題について県単の費用を導入しながら行っていることは御理解いただけると思います。例えば、今一つの例として、私は神奈川だから神奈川の例を申し上げますと、神奈川県の労働行政の中で、雇用保険課に十人、あるいはまた労働職業
相談センターに二十一人、これ単独で投入しております。そのほかに
相談員として百十人も使っているわけであります。それはどういうことかというと、きめの細かい労働行政という形の中でそれぞれの地場産業やあるいはまたそれぞれの中小企業対策、あるいは企業訪問をしながら職業のあっせん等々を行っているわけであります。
こういうことを考えたときに、今長官がそれぞれこの地方事務官制度を含めながら労働行政を一つ取り上げてもこういう問題があるということを御認識されていると思いますけれども、その辺の考え方、いかがでございましょう。
-
○古橋政府委員 労働省の職安行政でございますけれども、これについては職業安定と職業紹介というものにつきましてはある程度広域的な観点からそういうものを見ていく必要があるという観点から、その業務形態、仕事の
内容等に着目いたしまして、政府といたしましてはそれを国家公務員にしていくというふうに決めたわけでございます。もちろん先生のおっしゃいましたように、その地域に密着いたしましたそういう職業紹介というものはあると思います。そういう問題につきましては、臨調答申にもございますけれども、また今後国家公務員になった後におきましても地方の意見というものをよく伺って、よく相互に連絡調整をとっていくというようなことによって対処していくべきである、こういうふうに考えておるわけでございます。
-
○
田中(慶)
分科員 その辺は理解できないわけじゃありませんけれども、私は、少なくとも職安行政に一つとっても、労働行政の中で例えば全国画一的にネットワークとして機械化が進んでいるから全国的な登録制と言ったところで、高齢者の人が東京にいて札幌に行くわけじゃありませんし、身障者の人たちが現実には本当に身近なところでこういうことを考えたときにやはりそこに無理があるのじゃないか、こんなふうに思うのです。ですから、そういうことを含めて、私は、今の地方事務官制度を含めながらこの辺を画一的にやられるということは大きな問題があると思います。
例えば、神奈川県の中においても、高齢者の皆さんが新たな職業の場を求めて職業訓練制度、訓練校というものを十四カ所つくっているわけです。これは国からの助成もいただいておりますよ。しかし、きめの細かい指導員とかいろいろなことを含めて考えてまいりますと、ほとんど県費が多いわけですし、それぞれの地域の人たちがそれぞれの地場に合った形の中での訓練もされております。今申し上げたような高校を卒業された人の職業あっせんにしても、各企業の訪問をされて、それに合うような形でやられているわけであります。
こんなことを考えたときに、私は、少なくともこの事務官制度というものがこんな形で中央に集結されることは大きな問題がある、こんなふうに思うのですけれども、いかがでしょう。
-
○古橋政府委員 職業訓練のお話になりますと、これは今も県でやっております。それから、先ほどおっしゃいました高齢者の職業紹介あるいは身体障害者の職業紹介、こういう問題も現在国家公務員でございます公共職業安定所、これは現在も国家公務員でございますから、そういうところで一生懸命やっておるわけでございまして、そういうところが今後県のそういう知事部局の方からいろいろな御意見を伺いながら連絡を密にして、今後ともそういう方向でそういう方々の雇用措置が図られるように努力していく、こういう方向でやっていくのがその方々に対する一番のいい方向ではないか、こういうふうに私どもは考えておるわけでございます。
-
○
田中(慶)
分科員 それはあなたの考え方かもわかりませんけれども、現実問題としてその人たちは職安でそれぞれすべて処理されているかというとそうではありません。はっきり申し上げて、先ほど申し上げたように、職業
相談センターとかあるいは指導員を百十人も一つの県で配置をしながら現実に
相談を受けてやっているわけです。そして、訓練校を出た人たちが企業を訪問して、それぞれ御紹介する。職安、そこまでやりますか。やりませんよ。そんなことを考えたときに、私は、そういうことに大きな無理がある。むしろこれが今度は画一的に中央にいったときに、じゃ、この県の労働部の人たちが企業を訪問して、そしてまた、それぞれに紹介したら、まさしく違反行為になってしまいます。こんなことを考えたときに、私はそれぞれの大きな問題や矛盾があると思う。
ですから、この今申し上げた労働行政等については、それぞれの府県が目玉商品として、今言ったような福祉の問題とか高齢者の問題とか身障者の問題とか含めておやりになっているわけですから、これを画一的に地方事務官制度、職安と同時にこんな形の中で中央に持っていかれるということ自体はやはり大きな問題があるだろう、こんなふうに思うのです。その辺はまさしく行革の一番推進役として、責任者として、長官がいろんなことを御経験されていると思いますけれども、長官の見解、いかがでしょう。
-
○
後藤田国務大臣
田中さんの御意見は都道府県における実態を踏まえての御意見で、私は傾聴しなければならぬお考えだと思っております。そういった御意見も、第二臨調でこの問題を論議する際には、なかなか、そういう議論もあり、いや、そうじゃないという議論もあり、甲論乙駁の結果、やはりこの際は、先ほど古橋
局長が言ったような線で、国家公務員にした方がよかろう、こういう結論に達し、それを政府としては閣議決定をしているわけですから、そこで先国会にああいった御提案を申し上げて、廃案になりましたが、今国会もそれでお願いしたい、こう考えておるわけです。
そこで一番の問題は、今現実を踏まえての御意見でございましたが、これを国家公務員にした場合に、やはり当該都道府県、地方団体との緊密な連絡がなければ、これは私は大きなすきができるであろう、その点は私どもも十分心してやっていきたい、かように考えておるんです。
実はこの問題は、お答えするのがいいかどうかわからぬけれども、あの条文を書いたのは
昭和二十二年、私なんです、あれは。地方自治法附則の八条、それで、二十六、七年ごろまでに半分なくなったんです。あと三つ残ってたんだ。これは何とか解決をしなければならぬ。一番悪いのは今の制度なんです。どっちに責任があるかさっぱりわからない。予算の使い方と人事権は中央の役所が握っておる、仕事の責任は知事におる。こんなべらぼうな組織があるわけないんです。あれは実は、今のような問題で置いたんではないんです。これを置いたのは、当時は身分に対する非常な愛着があったんです。官吏というものは県の職員、吏員よりは一等上になっておった。それが一挙に吏員になるというところで、非常な抵抗が出まして、何とかしてくれということであれを置いたんです。本当のねらいはそれだった。しかし、今日になればそんなものはなくなっていますから、これは一番合理的な線で解決すべきが本筋なんです。そこで、いろんな御議論が甲論乙駁ありまして、ともかく今の制度だけは何とか直したいということで、第二臨調でもああいったような結論が出たわけですから、それに沿ってぜひやらしていただきたい。あとは今お答えしたように、両者の間に欠陥が、穴ができないように十分注意をしてやる、こういうことであろう、かように考えておるわけです。
-
○
田中(慶)
分科員 長官も御苦労されて、それぞれの生い立ちも今お話を聞かしていただきました。しかし、それぞれの府県が、地方自治体が、例えば神奈川だけでも八億五千万もかけて、一つの目玉商品としてこういう労働政策をやっているわけです。そんなことを考えたときに、それぞれ府県も全く同じことをやられている、そういう点では、今何とかという形でありますけれども、これはむしろ逆に何とか地方自治体にお任せいただいた方がきめの細かい——私は、行政改革というのはその人、国民に対してよりきめの細かい、親切でかつ安上がりの政治が行政改革だと思う。その持論はこれからも曲げるつもりはありませんし、そしてまた、この問題が今国会に入っても、これは本当に体を張ってでも何とかしなければいけない問題だろう、こんなふうに思っております。
全国の知事会が、あるいは国に対して、これはやはり地方に残すべきだ、こんなことを主張していることも事実でありますし、それぞれの担当部局からもそういう要請をいただいていることは事実だと思います。そういう点で、ぜひそんなことを含めて、余り無理しないようにやっていただきたい。本当に困るのはその地域の人たちだ、私はこんなふうに思います。労働行政なんて、もっともっときめが細かいわけであります。そんなことで、この問題はただ画一的にやるべき問題ではない、私はこんなふうに考えておりますけれども、恐らく長官も同じような考え方を持たれていると思いますが、ぜひこの辺は、無理してやれば——別にこんなところで例を出したくないわけですけれども、今度の設置法の問題だって、無理しちゃうとああいう結果が、また何とか戻すような形になるわけでありますから、そういう点でいろいろな問題が余り無理をしないように、私ははっきり申し上げて、第二臨調のそのメンバーの中に、もっとそういう形で労働行政を地域でやられていた人たちが出たら、こんな答申は出ないと思っております。私たち日常生活の中で、極端なことを言えば、それぞれの就職の問題とかいろいろなことを依頼されております。職安に行くよりもむしろセンターに行ってその実情を訴えて、その人たちが逆に企業との連携を踏まえてやっているわけですから、これはもう本当に身近な現実の問題として申し上げて御理解をぜひいただきたいと思います。
長官、もう一度この辺でぜひやっておきたいということを、私は絶対長官に申し上げておきますから、この辺だけはちゃんとしておいてください。
また、こんな問題もあるのです。ぜひ長官、耳にしておいていただきたい。同じ地方事務官制度の中で、厚生
関係ありますでしょう。あるいは例えば現在医療機関なりあるいは療養機関というのは一体でやっているわけです。地方自治体が一体となっております。ところが、これが分けられますと、医療と療養というものがまたここで二重行政、はっきり申し上げてばらばらになります。こういう問題もあるわけです。
ですから、私はそういう一連の問題で、行政改革というのは大変大切であります。しかし、ときによっては、今言ったように、権限の移譲とともに役割分担を明確にする、私はそれが行革だと思うのです。地方の時代と言われたりいろいろなことをしてきました。まさしく今の労働行政とかこういう問題を考えてみますと、そういう大きな問題点があると思います。
今度の運輸省の問題等は、それはそれなりに成果が上がっておると思いますけれども、労働行政やこういう問題については本当に大きなこれからの社会問題になることが大変懸念されますので、その辺を踏まえて、長官、ぜひこの込もう一回答弁してください。
局長でいいです。
-
○古橋政府委員 政府といたしましては、先ほど長官からも申し上げましたように、閣議決定をしておるところでございまして、この方向に従って再度法律案を国会へ御提案申し上げるということでございます。しかしながら、その法案が成立いたしまして、その後の実行の段階におきまして、都道府県と国の機関との間によく連絡を密にいたしまして、先生のおっしゃいましたようなことのないように、今後その運用面において努力する、こういう方向でやってまいりたいと思います。
-
○
田中(慶)
分科員 これからの問題でありますから、私どもはこれ以上詰めませんけれども、しかし、全国知事会で嫌だというものまで何もやる必要はないと思うのです。そんなことを含めて、やはり正しいものは正しく、そして今申し上げたような形の中で、住民サービスなりあるいは国民のサービスが低下をするような問題については避けるべきだろう、こんなふうに思っておりますので、ぜひそういうことを含めてこの問題には対処していただきたい、こんなふうに思う次第であります。
そこで、実は私は、交通安全の問題で
予算委員会でも質問させていただきましたけれども、あのときは時間の
関係で最後の詰めができませんでした。こんなことを踏まえながら、再度交通安全対策問題に入らせていただきたいと存じます。
御案内のように、五十七、五十八、五十九年という形で三年間連続九千人以上も死亡
事故を出されたことは、御案内のとおりだと思います。国も、例えば自賠責保険の問題一つをとっても、
交通事故あるいは死亡
事故が多いからという形で、それぞれ見直しをされました。しかし、現実問題として九千人以上亡くなっている割りには、それぞれの施策や、あるいはまた私たち自身も、少しマンネリ化になっているような気がいたします。そんな点で、実は交通安全対策、これは
総務庁の
関係で予算が一部減らされている問題、私は本当に残念で仕方がありません。それは、行革とかいろいろな形で財政
事情というのはわかりますけれども、人の命にはかえられないということを私は先般も申し上げましたけれども、この辺についてもう一度考え方を明確にしていただきたい。
-
○波多政府委員
交通事故につきましては、先生御指摘のように死者の数が三年連続して九千人を超えておるところでございまして、私どもといたしまして、交通安全対策の重要性かつ緊急な課題であるということにつきましては、十分認識をいたしておるところでございます。
総務庁の
昭和六十年度の交通安全対策経費につきましては、先生御指摘のように前年度に比べまして千八百万円ほどの減少をいたしております。しかしながら、これは先般大臣からも御答弁いたしましたように、地方公共団体に対する
交通事故相談所の補助金が減額されたということによるものでございます。
交通事故相談所の補助金の削減は、政府全体で進めております補助金の整理合理化の一環としていたしたものでございます。しかし、それによりまして
被害者救済に支障が生ずることのないよう、都道府県等に対する指導に万全を期してまいりたいと思います。
具体的に申し上げますと、都道府県の設置いたします
相談所につきまして、市区町村の
交通事故相談窓口に対する指導的な役割を果たしてもらう、いわば指導センター的な役割を果たしてもらうよう十分都道府県の
交通事故相談所を指導してまいりたい、また
交通事故相談のための執務資料を国で作成いたしまして、全市町村にまで配布するよういたしまして、十分質的な向上も図ってまいりたいということを考えておるところでございます。
-
○
田中(慶)
分科員 それぞれのやろうとすることはわかりますけれども、それははっきり申し上げて過去にも言い尽くされた言葉であろうと思いますし、今日までもやられてきていると思います。しかし、現実に
事故は減らないということを見て、やはり市町村を含めて——市町村そのものが、地方自治体は財政
事情がもっと厳しくなってきているわけでしょう、それぞれ一割カットされたり、いろいろなことを含めながら。そういうところを含めて、もっと交通安全というか、人の命というものを大切にするような施策であってほしい、こんなふうに私は思うのですね。それは市町村に任せたから補助金をカットするんだとか、こういうことではないと思います。
それだけではありませんよ。例えば、交通安全施設を含めても、第三次五カ年計画というものは全体で今六九%です。この五カ年計画で三割も落ちているわけです。それは財政
事情は確かに厳しいかもわかりませんけれども、使うべきところは使わなければいかぬだろう、私はそんなふうに思うのです。ですから、私は一例としてこんなふうに以前にも申し上げたことがあるのです。例えば、四十八年のオイルショックのときに、財政が厳しかったために道路のセンターラインとかはみ禁というものを、それぞれ今は年に大体二回から三回引き直しているのが一回しかできなかったときがある。そうしたら、
交通事故というのは非常に大きくふえましたし、あるいはまた死亡
事故もふえた。そういう経過があるわけです。そういう点で、ハードな面での予算とか、そういう施設の面で
交通事故というものが大きく影響するわけですから、ぜひそういうことを含めてこれからもやっていただきたい。四次計画もやると思いますが、そのときにこんなことのないように、マンネリになっている死亡
事故をもう少しちゃんとしていただきたい。
例えば、先般申し上げました
交通事故、死亡
事故あるいはまたひき逃げ、暴走族等についての
捜査費、これはみんな地方自治体で持っているのですよ。国はほとんど持っておりません。それは施行令で云々というわけですけれども、私は、そういう問題は凶悪
事件と同じような形の中で、これだけの
被害が出ているわけですから、国で持って補助金として出してもいいと思います。そういうことを含めて、これからこの辺はぜひ——この前、最後を詰めませんでしたが、法律がこうなっているからぜひその見直しをする、でなければ来年度でその予算化をする、私はそういうことがあっていいと思います。現場は本当に苦しんでいるわけですから、ぜひその辺を含めて御検討をいただきたい。
これらに対する考え方をお述べいただきたいと思います。
-
○
後藤田国務大臣
交通事故の最近の現状から見まして、一部事務的には実際差し支えないと私は考えているのですけれども、姿勢として、二十一の市の
相談所の経費が増加をしておるという
意味合いで、廃止になって千八百万ばかり減ったというこの事実、これはやはり御説のように政府としては十分考えなければならない、こう思います。
事故の状況は最近油断ができませんから、第四次の基本計画策定、これは
関係省庁と十分協議をしまして、何とかこれに歯どめをかけるという
意味合いで全力を挙げてまいりたい、かように考えております。
-
○
田中(慶)
分科員 捜査費等の問題についてはお答えいただけなかったわけですけれども。
-
○山崎説明員 お答え申し上げます。
ひき逃げ等の広域にわたる
捜査に要する経費の問題でございますが、
警察の予算は、御
承知のとおり、都道府県
警察制度のもとで
原則として都道府県が支弁をすることになっておりまして、これに対して国が補助をするという仕組みになっておるわけでございます。ただ、国家的な事案とか複数の都道府県にまたがる等の場合には国費による支弁をするという仕組みをとっております。
したがいまして、ただいま御指摘のような場合も、通常は都道府県が支弁をして、そして国の補助対象になるというものであろうかというぐあいに考えます。
-
○
田中(慶)
分科員 ですから、私は、そういうことではいけないでしょうということで申し上げてきたわけです、はっきり申し上げて。例えば、車社会がこうなってきて、複数にわたるひき逃げ、そういう
捜査の問題、暴走族の問題だってそうです。そういうことを含めて地方自治体は大変困っているし、苦しんでいるんだから、そういうことは少なくとも補助対象として中央がもっと積極的に持つべきだということを指摘して、お願いといいますか、そういうことをやってきたわけです。ですから、その辺を明確にちゃんとしなければいけないと思います。
これは前にも主張されて、私は、その辺が明確にならなかったからきょう改めてさせていただいているわけですから、その辺をちゃんと答えてください。あなたがおっしゃることはわかっているのです。だけれども、それでは現実に合わないからちゃんとしてもらいたいということを申し上げてきたわけですから。
-
○山崎説明員 お答え申し上げます。
先ほどもお答えをいたしましたけれども、
原則は都道府県
警察でございますので都道府県
警察が支弁をするわけでございますが、それを国で補助をするという制度がございます。したがって、今補助金とおっしゃるのは、そういう制度があるわけでございます。ただ、そのほかに国費で支弁するものとして国家的事案あるいは複数の都道府県にまたがる事案、そういうものがある。二本立てになっておるわけでございます。私ども、この制度を活用しまして、今後とも所要な経費を確保するように努力をしてまいりたいと思います。
-
○
田中(慶)
分科員 いずれにしても、時間がありませんので、ただ現実問題として、はっきり申し上げて大きな矛盾はあります。例えば、
警察官だってそうなんです。県単で持っているところはまだあるわけです。それはなぜか。やはりそういう問題を含めてなんです。しかし、現実問題としてそういう問題があります。
私はもう一つ、最後になりますけれども、例えば
警察官の政令定数の問題を見直すべきだと思うのです。ことしゼロでしょう。いろいろな形で、例えばグリコ・森永
事件が起きても、すぐにそこで養成して使えるわけじゃありません。いろいろなことを含めて、いろいろな実態あるいはそれぞれの府県に応じて、これらの現場の
警察官というのは、本当に過重労働と言っても過言ではないと思います。交通取り締まりにしても夜間もやっています。いろいろなことを含めて、これだけ
事故がふえてまいりますと、必ずそういうことで人海戦術なんです。ですから、ハード的な面とソフト的な面を明確にして、増員等についてもぜひこれは図るべきであろう、こんなふうに私は思っておりますけれども、その辺の見解を、政令だからできません、こんなのだったらだれでも答弁できるわけですから、明確に答えていただきたいと思います。
-
○
後藤田国務大臣
警察の対象はだんだんふえておりますから、
警察官の勤務体制も二十四時間勤務で大変ハードな仕事をお願いしておって、今御質問のように人をふやしてもらいたいという気持ちはよくわかります。
ただ、私も長い間
警察におりまして、
警察庁の長官までやったわけでございますが、
昭和三十一年から私が一番長く
警察の増員は担当をしてきました。今
警察がやるべきことは、内部における効率化、そして内部における近代化、機械化、装備、施設、こういうものを、犯罪の対象は変化してきているのですから、それに合わしてやるべきであって、今直ちに人海作戦という昔ながらのやり方は、これは私は大いに
警察庁としては勉強してもらいたい、かように考えております。
-
○
田中(慶)
分科員 時間が参りましたので終わりますけれども、いずれにしても今すぐに対応できるもの、人海戦術の問題もそうでありましょう、装備の問題もそうでありましょう、そういうことを含めて私はそれぞれの対応を流れの中で調整をしていかなければいけないと思います。内部の努力、訓練、いろいろなことを含めて早急にできる問題ではありませんから、その間においての充足とかいろいろなことを含めて私は申し上げているわけでございますので、先般は装備の問題を指摘しました。大変古い装備である、そんなことを申し上げて、それぞれの対応というものはやはりやるべきだろう、こんなふうにひとつ要望を申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
-
○伊藤主査 これにて
田中慶秋君の質疑は終了いたしました。
次に、
天野等君。
-
○
天野(等)
分科員 私はひとつ具体的な問題を提示しながら、給与の公平さというものについて問題を提起してみたいというふうに考えておるわけでございます。
問題は、筑波研究学園都市建設法というのができました。それに基づいて
昭和五十五年の四月十五日以前に建設省の国土地理院、土木研究所あるいは建築研究所、この三機関に採用されて、その後学園都市に移転した職員について、筑波研究学園都市の移転手当、通称筑波移転手当というふうに呼んでいるようでございますけれども、この手当が本俸の九%ついております。
ところで、この移転手当でございますけれども、採用が
昭和五十五年四月十六日以降に採用された者には支給をされない。いわば採用年次でこの支給、未支給ということが区別をされております。したがって、現在同一機関で、例えば土木研究所で同じ仕事をし、同一の等級号俸の給与を支給されている者が、採用年次が違うというこの一点だけで、給与に大きな差が出てまいります。私どもの試算したところでいきますと、九%、これにいろいろ超過勤務手当その他も基準になってまいりますので、年間あらまし、ごく大ざっぱに言って一カ月近くの違いが出てまいります。これが採用年次での違いでございます。
また、もう一つ大変不思議な差別があるのでございますが、これは同じ五十五年の四月十六日以降の採用でありましても、行政職の五等級以上、研究職の三等級以上で採用された者については、この九%の手当がつけられております。いわば上級の者にはつけられて、下級の者にはつけられないという状態になってきております。したがって、これは単なる採用年次による差別ではなくて、採用資格による差別にもなっているというのが現状でございます。
この点について、これはまず具体的な機関をあずかっておられます現場の建設省にお尋ねをしたいのですが、この問題はどういうふうにお考えになっておられるか、この不公平ということ。いかがでございましょうか。
-
○田村説明員 先生御指摘のように、筑波研究学園都市移転手当は、試験研究機関等の筑波への移転を促進することを目的として設けられたものでございます。他の地域から移動した者でない現地採用者は、移転者とは
事情が異なって、支給対象外とされておるわけでございますが、私どもの方から見まして、人事管理の上からあるいは職員感情の面でも、すべての職員を対象として支給されることが適当ではないかというふうに考えております。しかし、この手当の問題につきましては、人事院等において検討されるものでございますので、建設省といたしましては、給与改善に関する要望事項の一つとして、
関係省庁と一緒に
関係機関に要望をしているところでございます。
-
○
天野(等)
分科員 関係機関というのは、具体的にはどこに要望をしておるのでございますか。
-
○田村説明員 人事院、それから大蔵省でございます。
-
○
天野(等)
分科員 これは直接建設省から人事院に対して要望を出すという形になっているものでございますか。
-
○田村説明員 これは昨年の夏でございますが、給与
関係事項についての要望事項を各省庁で取りまとめて人事院にお願いしたことがございますが、その一項目として入れておるわけでございます。そのほか事務的なレベルでいろいろ機会を見てお願いをしているわけでございます。
-
○
天野(等)
分科員 人事院の方では、それではどういうふうな返答を建設省に対してはするのでございますか。
-
○鹿兒島政府委員 筑波研究学園都市の移転手当につきましては従来からいろいろいきさつがございまして、私どもも検討を行い、あるいは部分的な改正を行ってきたわけでございますが、御
承知のとおりこの手当につきましては一応の時限的な期間が決められておりまして、
昭和六十一年の十二月三十一日でこの手当の支給期間が切れるという形になっております。したがいまして、先ほどもお話がございましたとおり、
関係各省庁から公式あるいは非公式にこの手当の存続あるいは
内容の改正についてのさまざまな意向が寄せられております。私どもとしましては、この六十一年十二月三十一日という日を頭に置きまして、目下検討をしているところでございます。
どういう点がいろいろ問題になるかということをあわせて申し上げさせていただきますと、この手当の性格は、よく御
承知のとおり、本来筑波研究学園都市に数多くの政府の研究機関が移転をする、移転に伴います激変を避けるという
意味で、移転に伴う手当ということでそもそも出発したものでございます。したがって、例えば東京なりあるいは他の地域から筑波研究学園に転任をする職員、それに対する手当をしようということが基本でございました。その後、人材の確保という見地もございまして、現地で採用が困難な職員につきましては、その手当に準じた形で手当を支給するということでやってきたわけでございます。
給与の性格といたしましては、果たしてこれが地域の給与なのか、あるいは人材確保の給与なのか、まあ両面持っているわけでございますが、そういう性格を踏まえながらこれからも検討しなければいけないわけでございますけれども、地域給ということになりますと、生活費その他の問題を検討する必要がございますし、人材確保ということになりますと、これはよそから持っていかざるを得ないのかどうか、あるいは現地で採用することが十分可能なのかどうかも検討する必要がございます。そういうさまざまな観点から現在検討を進めている段階でございます。
-
○
天野(等)
分科員 この手当のかなり特殊な性格といいますか、実はそういうところから来ているのだろうと思うのですが、不公平さは、私が冒頭に指摘しました採用年次によるものと採用資格によるものというこの二つだけではなくて、もっと複合的に、非常におかしな現象が起こってきておるのです。
これは建設省にお尋ねしてみたいと思いますが、例えば建設省の常陸工事事務所にこの期限以後の
昭和五十六年四月に採用をされたとします。常陸工事事務所は、御存じのとおり調整手当の未支給地域でございます。〇%地域でございます。ところが、ここに採用された方が土木研究所に転任といいますか、初級職で採用されますと任命権者が異なっております。そこで、別の採用の資格になるのかと思いますが、この場合にはいわゆる異動職員というのでしょうか、異動ということで九%の手当が逆につけられる。常陸工事事務所にそのまま勤めていれば実は九%の調整手当はないわけですけれども、この方が筑波の土木研究所に転任をされると調整手当がつく。ところが、同じ土木研究所の支所といいますか、本所ではないところから任命権者が同じで本所に移ってまいりますと、これは
昭和五十六年の採用ですと九%の手当はつかないということになっていると思うのですが、この点いかがでございますか。
-
○田村説明員 おっしゃるとおりでございます。
-
○
天野(等)
分科員 実際こんなばかな話はないと私は思うのですよ。同じ建設省でありますけれども、初級職の場合に、それぞれ任命権者は確かに違います、国家公務員という資格は当然持っております、それが従来調整手当を持っていたところからでも、同じ任命権者の中での転任ですと、筑波へ来るとなくなってしまう。ところが、別な任命権者の間ですと、逆に今までゼロだった者が筑波へ来ると九%つく。これはどう考えてもおかしなことなんじゃなかろうか。もちろん、私、前に申しました採用年次による差別ということ自体が非常な不公平じゃないかと考えます。この採用年次による不公平も、同時にまた採用資格による不公平と重なるわけでございますから、現地で新たに採用された初級職の方というのはほとんど九%の手当はつかない。しかし、同じ現地でも上級でといいますか、上の等級で採用をされますと、これはつく。こういうおかしなことがそのまま現に行われているということについて、これは給与の公平さというようなものはどうしても必要じゃなかろうか。それが公務員の士気を阻害することになってはいけないのではないか。そういう観点からも、これは何らかの是正措置をとっていただく必要があるのではないかと思うわけです。
ただ、その点でもう一つ、これは給与担当大臣としての総務長官にお尋ねをしてみたいのですけれども、こういう給与の不公正さについて、確かに所管は人事院であろうとは思いますけれども、そういう各機関の苦情処理を給与担当の
総務庁としても受けつけながら、それを人事院に申し伝える、あるいはそれの是正を求めていく、そういう姿勢はとれないものでございましょうか。いかがでございましょうか。
-
○
後藤田国務大臣 今公務員の給与は人事院でいろいろ制度をおつくりになって、その枠の中で各省庁がそれぞれの所管において運営をしておるわけでございますから、ただいまの御質問はこの手当の運用をめぐっての問題ですね。今聞いておると、この手当には移転のこともあるようだし、人材確保もあるようだし、いろいろな複雑な要素が絡み合っておりますから、各省庁ごとであるいは運営が違っておるのかな、これは私の推測でございますけれどもね。やはりきちんとすべきものはきちんとした方がいいだろう、こう思います。これは人事院御当局が
関係省庁と集まって一遍ここらの勉強したらどうだろうかな、私はそう思います。苦情処理の問題は、やはり第一義的にはそれぞれの各省庁に申し入れていただいて、是正できるのなら是正してもらうし、どうしても不服であるというのであれば不服制度がございますから、これはまた人事院がお
扱いになるので私の方はちょっと無理ではなかろうかなと思います。
-
○
天野(等)
分科員 それでは、人事院に重ねてお尋ねをしたいと思うのでございますが、人材確保という観点から行政職においては五等級以上、研究職においては三等級以上の者については九%の手当を出すという考え方ですけれども、これはやはり非常に不公平なものではないか。人材というのは、そういう高い給与をもらえる、等級の高い者についてだけ考えるべきものなのかどうか。人材確保というものをそういうところで線を引くべきものかどうかという点で私は非常に疑問に思うわけでございまして、こうなりますと、下位の等級号俸を受けている者については、おまえたちは人材じゃない、人材確保については考える必要がないと言われているように考えるのでございます。いかがでございますか。
-
○鹿兒島政府委員 お話しのように、給与の均衡ということは私どもといたしましても大変これを重視しているところでございまして、もちろん本俸についてはそういうことでございますし、手当につきましても、できる限り均衡がとれた形で運用いたしたいというぐあいに考えております。
ただ、筑波手当につきましては、先ほど御説明しましたとおり、その趣旨におきましてまず移転職員のための手当をするということがございまして、あわせて地域の人材確保という観点で現在のような形になっているわけであります。
そこで、少し細かいことを申し上げますと、典型的には行政職の(一)表で申しますと、八等級の職員を現地で採用しました場合には筑波手当がつかないということで、各機関ごとに八等級相当職員を現地で採用している実態が違いますために、各機関、ことに手当をもらっている職員とそうでない職員との区別が出てくる、こういうことかと思います。なぜ八等級にということでございますけれども、これにつきましては、ごく
一般的に申し上げますならば、八等級相当の職員につきましては標準職務表におきましても定型的な業務に従事するということが一応
原則として掲げてあるわけでございます。そしてまた、八等級相当の職員につきましては、例えば行政職(一)表の場合で申しますと、これは各地域ごとに試験を実施するという形をとっておりますので、現地で採用することが可能だという前提でそういう取り
扱いをしているということで御理解をいただきたいと思います。
-
○
天野(等)
分科員 人事院としての理屈はそうかもしれませんが、実態として果たしてそういう実態になっているかどうか。筑波地域だけで例え八等級にもせよ採用されているのかどうかということについて、実は職員組合の方で
調べた、県外出身者と県内出身者の採用年度による地域別の構成比があるのでございます。県外出身者の方が六〇%、大ざっぱに言いまして実際多いのですよ。筑波は私の茨城県でございますが、どういうところかはよくわかっております。あの地域でもって、例え初級職にもせよ、人材を採用しようと建設省がなさっているとは実は全く思いません。私はむしろそうしていただくことを望むのですけれども、決してそうはなっておりません。これはもうよくおわかりだと思うのですよ。これは単なる言い逃れにすぎないのじゃないか、現実とは全く合っていないのじゃないかと私は考えるわけでございます。
また、もう一つ考えまして、あの地域から採用されるんだったら安くてもいいじゃないかという考え方も、その地域の者としては大変納得のいかないことでございます。実は筑波研究学園都市周辺のいろいろな施設、特に民間の研究所等も最近は随分できてまいりました。それで、政府のいろいろ直轄で試験研究をしている機関の方たちが集まって、政府の直轄試験研究機関連絡会議というようなものをつくっておられて、そこで学園都市周辺の民間の研究機関の給与の水準というようなものを
調べておられたようでございます。この辺人事院としては
承知しておられるかどうか、これもお尋ねしたいと思うのですが、その研究成果でいきますと、給与水準においては東京の水準とほとんど変わらない。研究学園都市としてのそういう性格をあの地域が持っていることはかなり明らかになってきていると思うわけでございます。そういう状態を踏まえながら、手当というものについても本当に公平な、そしてまた職員の生活を守るに足るような形でお考えいただきたいと思うわけでございます。
もう一点、給与について、上の者に厚くという考え方はやはり今の考え方としてどうしても合わないのではなかろうかと思うわけです。これは私たち臨調行革に賛成をするわけではございませんけれども、行革というのもやはり上の者に厚く、下の者に薄くでは行革にも何にもなりやしない。やはり下の者に対しては生活の不安を与えないようにという配慮をしなければならないのは当然のことではなかろうか。そういう点で、私は、資格による手当の差別があることはどうしても納得できないのでございますが、この点についても再考していただけるかどうか、お尋ねしたいと思います。
-
○鹿兒島政府委員
最初の、地元の民間企業の給与の水準でございますけれども、これにつきましては、私どもが実施いたします民間企業の給与
調査と申しますのは、全国を一斉に実施いたしまして、これを全国的に集計いたしますので、地域ごとの民間企業の給与というものは把握いたしておりません。
それで、上に厚くというお話でございますけれども、私どもは、基本的な給与体系としては、全体の配分を考えながら全国公平にということでやっているわけでございますが、たまたま問題が手当の問題でございます。手当ということになりますとさまざまな要素が絡んでまいりまして、例えば、御
承知のとおり、医師の初任給調整手当等につきましては、まさにこれは人材確保のために極めて手厚い手当を出す形をとっておる。この筑波手当につきましては、
最初に申し上げたとおり、これは地域的な給与なのか、あるいはまた人材確保の給与なのか、激変緩和の給与なのか、さまざまな要素が絡んでおります。仮に地域の給与だと、こういう要望が実は組合の方から非常に強いわけでございますが、そうなりますと、現在出しております調整手当との
関係が出てまいります。例えば、先生よく御
承知でございますが、すぐ隣の土浦市あたりではまだ調整手当が出ていないということで、今度は周辺地域との均衡ということも問題になってまいります。
そういうことで、私どもとしても大変苦慮いたしておるわけでございますけれども、
最初に申し上げたとおり、これが人材確保のための手当という性格もございますし、また激変緩和という性格もございます。そしてまた、御案内のとおり、現在つくば博がこれから開かれようとしておるわけでございまして、それによって地域の社会情勢というものが変わることも予想されますので、そういった点も踏まえながら、これから慎重に検討させていただきたいと思っております。
-
○
天野(等)
分科員 もう一点、これは建設省にお尋ねしておきたいと思うのです。
建設省で上級職に採用された方の転任の問題でございますけれども、例えばこういう問題もあるわけですよ。上級職で採用され、まず国土地理院の本院に補せられるというのでございましょうか、そうしますと五十五年四月以降ですと、行政職の
関係でいきますと上級職でも調整手当がつかない。しかし、そこで地方測量部の方に一遍補職をいたします。これは九%地域の地方測量部に補職いたします。そうして、それから本院の方に持ってまいりますと、そうするとこの九%の手当がそのままついてくるという形で、実はそういう形の上級職の方の
扱いをしているのではないかというふうに、これは組合の中でもかなり見ております。これがそういうふうに上級職のための一種調整手当的に使われてくるとすれば、これはやはり非常に不公平なことなんじゃないかというふうに考えるわけですが、この点で建設省として、こういう実態、いかがお感じになりますか。
-
○田村説明員 私どもといたしましては、上級職の場合、技術系統は国土地理院に配属する者を含めて一括して、ほかにいろいろな職種もございますが、一括して本省で採用している、こういうことでございまして、必ずしも国土地理院だけというふうな限定した
意味で採用しているわけではございません。したがいまして、いろいろな形で全国的に採用した人間を配置する、こういうことが出てまいるわけでございます。たまたま先生御指摘のようなことでその手当の
関係での違いは出てくるかもしれませんけれども、私どもといたしましては、そういう有機的な人事配置ということで計画的に配置させていただいておるつもりでございます。
-
○
天野(等)
分科員 時間も参りましたのでこれで終わりにしたいと思いますが、先ほど
総務庁長官もおっしゃってくださいましたように、この問題について、筑波手当というようなものに限るという
意味じゃございませんけれども、各省庁間で不公平のない給与というようなものについて連絡調整をしたり、また研究をしたりということをぜひともやっていただきたいというふうにお願いをいたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
-
○伊藤主査 これにて
天野等君の質疑は終了いたしました。
以上をもちまして
総務庁についての質疑は終了いたしました。
これにて本
分科会の審査はすべて終了いたしました。
この際、一言ごあいさつを申し上げます。
分科員各位の御熱心な御審議と格別の御協力によりまして、本日ここに本
分科会の議事がすべて終了することになりましたことを深く感謝を申し上げます。
これにて散会いたします。
午後七時四十五分散会