運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1985-03-06 第102回国会 衆議院 予算委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年三月六日(水曜日)     午後二時四分開議 出席委員   委員長 天野 光晴君    理事 大西 正男君 理事 小泉純一郎君    理事 橋本龍太郎君 理事 原田昇左右君    理事 三原 朝雄君 理事 稲葉 誠一君    理事 岡田 利春君 理事 二見 伸明君    理事 吉田 之久君       相沢 英之君    伊藤宗一郎君       石原慎太郎君    宇野 宗佑君       上村千一郎君   小此木彦三郎君       小渕 恵三君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       工藤  巖君    熊川 次男君       倉成  正君    小杉  隆君       砂田 重民君    住  栄作君       田中 龍夫君    葉梨 信行君       原田  憲君    武藤 嘉文君       村山 達雄君    山下 元利君       井上 一成君    井上 普方君       上田  哲君    大出  俊君       大原  亨君    川俣健二郎君       佐藤 観樹君    清水  勇君       堀  昌雄君    松浦 利尚君       矢山 有作君    池田 克也君       近江巳記夫君    神崎 武法君       竹内 勝彦君    伊藤 昌弘君       木下敬之助君    小平  忠君       米沢  隆君    梅田  勝君       瀬崎 博義君    蓑輪 幸代君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 松永  光君         厚 生 大 臣 増岡 博之君         農林水産大臣  佐藤 守良君         通商産業大臣  村田敬次郎君         運 輸 大 臣 山下 徳夫君         郵 政 大 臣 左藤  恵君         労 働 大 臣 山口 敏夫君         建 設 大 臣 木部 佳昭君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     古屋  亨君         国 務 大 臣         (内閣官房長官藤波 孝生君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官) 河本嘉久蔵君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 加藤 紘一君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      金子 一平君         国 務 大 臣         (沖縄開発庁長          官)      河本 敏夫君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣         官房審議室長  吉居 時哉君         内閣審議官   海野 恒男君         人事院事務総局         給与局長    鹿兒島重治君         内閣総理大臣官         房審議官    田中 宏樹君         内閣総理大臣官         房参事官    松本 康子君         臨時教育審議会         事務局次長   齋藤 諦淳君         公正取引委員会         委員長     高橋  元君         公正取引委員会         事務局取引部長 利部 脩二君         警察庁刑事局保         安部長     中山 好雄君         総務庁人事局長 藤井 良二君         総務庁行政管理         局長      古橋源六郎君         総務庁行政監察         局長      竹村  晟君         防衛庁参事官  古川  清君         防衛庁参事官  古川 武温君         防衛庁参事官  池田 久克君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房         長       西廣 整輝君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛庁教育訓練         局長      大高 時男君         防衛庁人事局長 友藤 一隆君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         防衛庁装備局長 山田 勝久君         防衛施設庁総務         部長      梅岡  弘君         防衛施設庁施設         部長      宇都 信義君         経済企画庁調整         局長      赤羽 隆夫君         経済企画庁国民         生活部長    及川 昭伍君         経済企画庁総合         計画局長    大竹 宏繁君         経済企画庁調査         局長      横溝 雅夫君         国土庁計画・調         整局長     小谷善四郎君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         大蔵大臣官房審          議官      小田原 定君         大蔵大臣官房審         議官      大山 綱明君         大蔵大臣官房審         議官      角谷 正彦君         大蔵省主計局長 吉野 良彦君         大蔵省証券局長 岸田 俊輔君         大蔵省銀行局長 吉田 正輝君         文部大臣官房長 西崎 清久君         文部大臣官房審         議官      菱村 幸彦君         文部大臣官房会         計課長     坂元 弘直君         文部省初等中等         教育局長    高石 邦男君         文部省教育助成         局長      阿部 充夫君         文部省高等教育         局長      宮地 貫一君         文部省学術国際         局長      大崎  仁君         文部省社会教育         局長      齊藤 尚夫君         文化庁次長   加戸 守行君         厚生大臣官房総         務審議官    長門 保明君         厚生省健康政策         局長      吉崎 正義君         厚生省保健医療         局長      大池 眞澄君         厚生省生活衛生         局長      竹中 浩治君         厚生省薬務局長 小林 功典君         厚生省社会局長 正木  馨君         厚生省児童家庭         局長      小島 弘仲君         厚生省保険局長 幸田 正孝君         厚生省年金局長 吉原 健二君         厚生省援護局長 入江  慧君         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産省経済         局長      後藤 康夫君         林野庁長官   田中 恒寿君         通商産業省産業         政策局長    福川 伸次君         中小企業庁長官 石井 賢吾君         運輸大臣官房国         有鉄道再建総括         審議官     棚橋  泰君         運輸省国際運         輸・観光局長  仲田豊一郎君         運輸省航空局長 西村 康雄君         気象庁長官   末廣 重二君         郵政大臣官房人         事部長     中村 泰三君         郵政省貯金局長 奥田 量三君         郵政省電気通信         局長      澤田 茂生君         郵政省放送行政         局長      徳田 修造君         労働省労政局長 谷口 隆司君         労働省労働基準         局長      寺園 成章君         労働省婦人局長 赤松 良子君         労働省職業安定         局長      加藤  孝君         労働省職業能力         開発局長    宮川 知雄君         建設大臣官房総         務審議官    松原 青美君         建設大臣官房会         計課長     望月 薫雄君         建設省都市局長 梶原  拓君         建設省住宅局長 吉沢 奎介君         自治大臣官房審         議官      石山  努君         自治省財政局長 花岡 圭三君         自治省税務局長 矢野浩一郎君  委員外出席者         大蔵省造幣局東         京支局長    吉川 元信君         大蔵省印刷局長 岡上  泉君         日本国有鉄道総         裁       仁杉  巖君         日本国有鉄道常         務理事     太田 知行君         日本国有鉄道施         設局長     神谷 牧夫君         日本電信電話公         社総裁     真藤  恒君         日本電信電話公         社総務理事   岩下  健君         参  考  人         (日本放送協会         副会長)    田中 武志君         参  考  人         (日本放送協会         専務理事放送総         局長)     川口 幹夫君         予算委員会調査         室長      大内  宏君     ――――――――――――― 委員の異動 三月六日  辞任         補欠選任   太田 誠一君     砂田 重民君   工藤  巖君     海部 俊樹君   熊川 次男君     宇野 宗佑君   田名部匡省君     倉成  正君   谷垣 禎一君     石原慎太郎君   中島  衛君     原田  憲君   船田  元君     武藤 嘉文君   井上 普方君     清水  勇君   堀  昌雄君     大原  亨君   大内 啓伍君     伊藤 昌弘君   小平  忠君     米沢  隆君   東中 光雄君     簑輪 幸代君 同日  辞任         補欠選任   石原慎太郎君     谷垣 禎一君   宇野 宗佑君     熊川 次男君   海部 俊樹君     工藤  巖君   倉成  正君     田名部匡省君   砂田 重民君     太田 誠一君   原田  憲君     北口  博君   武藤 嘉文君     船田  元君   大原  亨君     堀  昌雄君   清水  勇君     井上 普方君   伊藤 昌弘君     大内 啓伍君   米沢  隆君     小平  忠君   簑輪 幸代君     東中 光雄君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和六十年度一般会計予算  昭和六十年度特別会計予算  昭和六十年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 天野光晴

    天野委員長 これより会議を開きます。  審議中断が長引きまして委員各位に御迷惑をおかけいたしましたこと、委員長よりおわび申し上げます。  昭和六十年度一般会計予算昭和六十年度特別会計予算昭和六十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  これより理事会協議による質疑を行います。  この際、松浦君の質疑に先立ち、仁杉国鉄総裁から発言を求められておりますので、これを許します。仁杉国鉄総裁
  3. 仁杉巖

    仁杉説明員 お許しを得て御答弁申し上げます。  国鉄の再建問題につきまして、さらに余剰人員問題等につきまして、各党からいろいろと御支援、御鞭撻をいただいておりますし、また御注意もいただいておりますが、これらをかみしめまして、私どもといたしましては、国鉄再建のために努力を重ねてまいりたいと存ずる次第でございますので、今後ともによろしく御指導、御鞭撻をお願いする次第でございます。  先日、予算委員会におきまして、就業規則の問題でいろいろ御討議がございましたが、私から一括してお話し申し上げます。  就業規則の手続上の問題につきまして、労働基準法違反する行為のあったことはまことに遺憾でございます。国鉄といたしましては、運輸省の御指導に基づき、誠意を持って交渉をし、その解決を図るよう努めます。  なお、その間、労働基準法違反の点につきましては、是正措置をとります。  以上でございます。
  4. 天野光晴

  5. 松浦利尚

    松浦委員 今の国鉄総裁答弁があれば、この前あのようにもめる必要はなかったのですが、言葉だけじゃなくて、ぜひ形で誠意で今言った答弁をあらわしてください。我々は、その意味で国会として監視を続けていくことを総裁に申し上げておきます。  それで総裁お尋ねをいたしますが、イワオ工業というのがありますね。これは仁杉総裁の私邸と同じところにありますね。場所は、東京都杉並区永福三丁目十九番の五号、ここにイワオ工業というのがあることを、今うなずいておられますから確認しておられると思うのですが、かつてあなたはここの代表取締でありましたね。そして五十二年に奥さんの仁杉とよさんが代表取締に御就任になっておられます。そして五十三年の七月一日に仁杉組という名称仁杉巖というあなたの名前であるイワオ工業名称変更しておられます。そして、その後あなたの娘婿さんに代表取締を譲って現在に至っておりますが、このイワオ工業というのは、あなたの自宅と同一敷地内にあり、電話番号国鉄職員録に記載されておる電話番号と全く同一であるかどうか、そのことをお答えいただきたいと思います。
  6. 仁杉巖

    仁杉説明員 今先生の御指摘のような経過でございますが、この会社は私の父がやっておりました会社でございますが、私が民間に出ましたときにしばらく代表をいたしたことがございますが、それ以後、娘婿仕事を実際にやっているということでございます。  電話につきましては今御指摘のとおりでございますが、これは、実は私のところは私宅を今変えてございます。変えてございますが、名簿等の変更がおくれておりまして、そのまま残っているというので、時にイワオ工業の方にかかってくる場合があるということでございます。
  7. 松浦利尚

    松浦委員 イワオ工業電話番号を調べてみましても、三二一-二五七一、あなたの職員録に登載されておる連絡場所を見ましても、国鉄職員録に三二一-二五七一が登載されておるわけです。そして、これは国鉄当局から、事務局で結構ですが、ユニオン土木というのが国鉄工事請負にありますが、このユニオン土木年間、五十八年、五十九年、総額にして幾ら契約高がありますか。
  8. 神谷牧夫

    神谷説明員 五十八年度の実績が六十八億になっております。それから五十九年度については、年度途中ということでまだ調査ができておりません。
  9. 松浦利尚

    松浦委員 そのユニオン土木から現在のこのイワオ工業孫請をしておる事実は把握しておられますか。
  10. 神谷牧夫

    神谷説明員 下請問題につきましては、私どもでは実態を把握しておりません。
  11. 松浦利尚

    松浦委員 日本国有鉄道法の第二十条の第三号「いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。」こういう条項があることは、二十条第三号は知っておられますね。
  12. 仁杉巖

    仁杉説明員 よく存じております。
  13. 松浦利尚

    松浦委員 それでは、運輸大臣お尋ねをいたしますが、今の国鉄総裁が現に代表取締役をしておられた、今はお婿さんが代表取締役をしておられますが、同一敷地内に事務所がある、電話番号も一緒、しかも、ユニオン土木からこのイワオ工業は、今国鉄から話がありましたように、年間、五十八年度で六十八億の発注があるのですが、そのうちこのユニオン土木からイワオ工業孫請をしておるのです。  最近、五十九年の十二月、去年の十二月でありますが、我々が調査をした範囲内で、相模線倉見駅前タクシー乗り場舗装工事を、国鉄発注として孫請国鉄総裁のお婿さんがやっておる会社工事をしておるのです。これは明らかにこの国有鉄道法の第二十条第三号に違反をする問題じゃありませんか。事実なんですよ、これは。そういうことが許されますか。運輸大臣、どうです。
  14. 山下徳夫

    山下国務大臣 何分、ただいまお聞きしたばかりでございますので、若干の時間をいただきまして関係者より十分調査いたしました上で、妥当性を欠くかどうかの判断に立って適正に措置をしてまいりたいと思います。
  15. 松浦利尚

    松浦委員 今本人が認めておるのですから、調査をしてください。現に進行しておる、そういう状況が。しかも、これは既に国鉄の方は知っておるはずです。この事実は国鉄当局は知っておる。処置してください。  こういう事実を見過ごして国鉄再建などと言うこと自体がおかしいのじゃないですか。従業員に向かっては規律を正すとこう言っておるのですから、その事実があるのかないのか明確にしなければ、国鉄再建はできませんよ。はっきりしてください。
  16. 山下徳夫

    山下国務大臣 厳重なる措置をとるにつきましては、やっぱり証拠その他について適正であるかどうかということを私自身が十分納得のいく調査をしなきゃならぬと思いますから、その時間をしばらくおかしください。
  17. 松浦利尚

    松浦委員 総裁が認めておるのですよ。だから、はっきりしてもらわなければ困るのです。
  18. 仁杉巖

    仁杉説明員 私は今、これは適法であると思っておりますが、今後、そういう御批判がございますので、イワオ工業国鉄仕事をしないような指導をしてまいりたいと思っております。(発言する者あり)
  19. 天野光晴

    天野委員長 引き続き一般質疑を行います。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。(「ちょっと待って。取り扱いについて」と呼び、その他発言する者あり)予算委員会最終日答弁を、調査の結果を報告することで御了承願います。
  20. 松浦利尚

    松浦委員 それじゃ、質問を保留します。     ―――――――――――――
  21. 天野光晴

    天野委員長 引き続き一般質疑を行います。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。清水勇君。
  22. 清水勇

    清水委員 運輸大臣、まだ在席をされているようですから、一言つけ加えて申し上げておきますが、しっかりやってくださいよ。いやしくも、こういう言語道断とも言うべきことを、今の質疑のやりとりで本人も認めているんでしょう。これはよほど厳しく措置をしてもらわなければいけませんね。少なくとも本人が、自分のやっていることを適法であり、十分指導いたしますなどとは何事か、こういうことを言わざるを得ませんね。少なくとも、かつて石田総裁だとか十河総裁がどういう態度をとって臨んでいたかというようなことを本人にもよく言い聞かして、厳正な措置を行うように私からも希望しておきます。
  23. 山下徳夫

    山下国務大臣 就業規則の問題につきましては、国鉄総裁答弁申し上げたように……(清水委員「いや、就業規則じゃない」と呼ぶ)ああ、そちらの方じゃないのですか。(清水委員「今の件だよ」と呼ぶ)今の件は、先ほど委員長からお話がございましたように、何分突然のことでございますから、若干お時間をいただきまして、私の方で十分調査をいたしまして、そして、そんなに長いことではございません……(清水委員「厳正な措置をとると」と呼ぶ)この予算委員会の終了までには御報告を申し上げますから、それまでのお時間をいただきたいということでございます。
  24. 清水勇

    清水委員 厳正な措置をとることを要望しておきます。  さて、この際、官房長官お尋ねをしたいのですが、四野党の予算修正要求をめぐって、きょう与党幹事長から最終的な回答がございました。その内容について官房長官承知をされているかどうか、まずお聞かせをいただきたいと思います。
  25. 藤波孝生

    藤波国務大臣 自由民主党・新自由国民連合日本社会党護憲共同公明党国民会議、民社党・国民連合社会民主連合幹事長書記長会談におきまして「一、所得税減税問題については、」(清水委員「いやいや、中身はいいです。承知をしているかどうか」と呼ぶ)以下三項目についてお話し合いがあったということを存じております。
  26. 清水勇

    清水委員 あわせて、社会党公明党及び社民連、三党の申し入れについて回答のあったことを承知をされておりますか。
  27. 藤波孝生

    藤波国務大臣 今申し上げましたが、所得税減税問題、それから政策減税等について、並びに時間短縮並びに連休等休日の増加の問題、こういった三項目について自由民主党幹事長からお話があったということ、並びに口頭防衛費問題、政治倫理問題についてお話があったというふうに承っております。
  28. 清水勇

    清水委員 その中で、GNPの一%枠の問題について金丸幹事長は、総理発言より踏み込んだ発言になるが、幹事長の職を賭して申し上げる、こういう前置きのもとで、防衛費GNP一%枠を守ることに最善を尽くします、こういう回答をしておりますが、承知をされておりますか。
  29. 藤波孝生

    藤波国務大臣 口頭で、防衛費問題については幹事長は、防衛費GNP比一%枠を守ることに最善を尽くしますという発言があったと承知いたしております。
  30. 清水勇

    清水委員 少なくとも我が国は議院内閣制をとっておりますし、政党政治の建前がとられている。ことに与党機関責任者である幹事長金丸幹事長が、職を賭しても最善を尽くす、こういうことを公党間の約束として表明をしている、この重みは非常に大きいものがあると思わなければなりませんが、この点について長官はどういう認識をお持ちでしょうか。
  31. 藤波孝生

    藤波国務大臣 与野党間で幹事長書記長会談におきましてお話し合いがありましたこと、特にその中で自由民主党幹事長からお話のありました所得税減税問題その他の項目につきましては、これを承知いたしておりますし、与党幹事長の御発言政府としても尊重してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  32. 清水勇

    清水委員 ちょっと長官答弁が弱いのですけれども幹事長は、職を賭してでもGNP一%枠を守るために最善を尽くす。我々は、御承知のように田邊書記長質問以来、一貫して一%枠の厳守、こういうことを主張してきているわけでありますし、他の党の間でもそういう主張が強く出ているわけですが、そうした中で、あえて職を賭して一%枠に触れて、守るために最善を尽くす、こういうことを約束をされたということは、政府としてもその意を体して最善を尽くす、こういうことであってしかるべきだ、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  33. 藤波孝生

    藤波国務大臣 私は生来声が少し小さいものですから弱い感じを与えたかと思いますが、重ねて申し上げますけれども自由民主党幹事長が御発言になりましたことは、政府も尊重して進んでまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  34. 清水勇

    清水委員 それでは、その点はしっかり総理以下、内閣を挙げて尊重し、取り組んでいただく、こういうことを強く要望をいたしておきます。  あわせてこの際、政策減税についてお尋ねをしたいわけでありますが、回答の中で「いわゆる政策減税等については、実務者会談において検討する。」こういう中身になっているわけでありますが、このことに関してあえて口頭説明が加えられて、書記長幹事長会談責任で本年中に結論を得て実施をする、こういう内容が検討の内容として付加されております。この点については、これまた回答を尊重し、その方向で最善の努力を尽くす、こういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  35. 藤波孝生

    藤波国務大臣 公党間でお話し合いが行われたわけでございますので、自由民主党幹事長発言の趣旨に沿って作業が進められるものと存じますが、政府としてはその作業を見守ってまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  36. 清水勇

    清水委員 これ、見守るだけでは困るのでして、本年内に実施をするということですから、書記長幹事長会談でまとまって実施という状況になれば当然そういう方向で措置をする、こういう努力の目標もなければならぬと思うのですが、その点いかがでしょう。
  37. 藤波孝生

    藤波国務大臣 与野党間での協議が進んでまいりますのを当面見守ってまいりますが、しかるべき結論が出ましたならば政府も一体になってこの問題に取り組む、こういう姿勢でございます。
  38. 清水勇

    清水委員 それでは、そういうことでしっかり取り組んでいただきたい、こう思います。  さて、そこで本題に入りますが、時間が非常に少なくなっておりますので、いささか寸足らずの感になろうかと思いますが、主として大蔵大臣にただしてまいりたいと思うので、竹下さん一流の複雑な説明ではなしに、明快にひとつお答えをいただきたいと思います。  率直に申し上げて、歳出削減を柱とする中曽根内閣の再建計画、財政再建方式を見ておりますと、例えば将来の財政負担を完全に削減しちゃうというやり方と、それから、本来ならば当年度負担として計上すべきものを計上しないでこれを後送りをする、そういう手法がとられているわけですね。この繰り延べ、後送り分についていろいろ私も調べてみたわけですが、大変膨大な額に上っている。そこで、一部は六十年度の予算案審議の資料として予算委員会にも出ておりますが、その他の重要な資料について私要求しまして、やっと出してもらったわけなんでありますが、ちょっと資料を配ってください。――今資料を配ってもらいますが、大蔵省が提出をした資料に基づいて整理をして一覧表にわかりやすくまとめてみましたので、これを中心にちょっと私、質問をしてまいりたいと思います。  まず最初に、この一覧表について事実関係を確かめたいと思いますが、このとおりであるというふうにお認めをいただけますか。
  39. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 今お示しがございましたこの資料に書いてございます数字は、そのとおりでございます。
  40. 清水勇

    清水委員 このとおりだと確認をされましたので、引き続きお尋ねをしてまいりますが、この表で見ると六十年度の後送り分、真ん中にありますが九千四十四億円、これを足しますと、五十七年度から六十七年度までで後年度繰り延べ額というものが八兆八千九百四十四億円に達する。いかに財政運営が苦しいといっても、こうした後送り、繰り延べ方式というものは余りに安易な手法ではないのか。これは後で当然返さなければならない。そういう点からいうと、これは明らかに隠された赤字公債と言っても言い過ぎではないのではないか、財政の不健全化を増幅をする、こういう性質を持っているのではないか、私はそう見るのですが、大臣、いかがでしょう。
  41. 竹下登

    ○竹下国務大臣 余りにも多額にわたる言ってみれば後年度負担への繰り延べについては、私どもは今のお言葉の中で感じますことは、歳出の徹底した節減合理化を行うことを基本として、経費についてそれぞれの制度、施策の見直しを行って、また一方、限られた財源事情の中のぎりぎりの工夫、こういうふうに御理解をいただきたい、こう考えております。
  42. 清水勇

    清水委員 これはぎりぎりの工夫として理解をしろ、こう言われるわけですけれども、一面では財政再建のために、例えば五十八年度以降特例公債の発行額を一兆円ずつ削減をして六十五年度には特例公債依存をゼロにする、こういうことを約束をされている。  そこで、念のためにお聞きをいたしますが、五十八年、九年、六十年、この三年度についてどれだけ特例公債の発行は減額をされたのでしょうか。
  43. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 五十七年度からでございますが、五十七年度の当初予算におきましては特例公債の発行額を三兆九千二百四十億というふうに予定をしておりましたわけでございますが、御案内のように五十六年度にいわゆる世界的な同時不況というものに直面をいたしまして、五十六年度におきまして約三兆円の税収の欠陥を生じました。また、同じような理由におきまして、五十七年度予算編成後さっと六兆円程度の税収の見積もりに不足を来すというような状況に相なったわけでございます。そこで、五十七年度の補正予算におきましてやむを得ず特例公債を増発をいたすことにいたしました。その結果、五十七年度の補正後予算におきましては特例公債が七兆三千九十億円ということになったわけでございます。しかし、その後五十八年度の当初予算におきましては、この五十七年度の補正後予算に比べまして特例公債は三千二百九十億円減らす。さらにまた、五十九年度予算におきましては、ただいま申しました五十八年度当初予算に比べまして五千二百五十億円特例公債を減らした。それから、ただいま御審議をいただいております六十年度当初予算におきましては、五十九年度の予算に比べまして特例公債だけで七千二百五十億円減らしておるということでございます。
  44. 清水勇

    清水委員 事情はいろいろあるにしましても、毎年度一兆円規模の減額を達成をしていきたい、こういう公約があるにもかかわらず、現実に五十八年度、五十九年度そして今予算審議中の六十年度を合わせても、本来三兆円規模の減額がなされなければならないところを、わずかに一兆二千七百八十七億しか減額にならない。そして、その反面では、赤字公債の発行を減額をするんだということを言いながら、今指摘をしたように、総額で申し上げれば、実に八兆八千九百四十四億に達する繰り延べ額というものが六十年度末までに存在をする。こういうやり方では、歳出削減による財政再建を順調に推進をしているんだなどと幾ら宣伝をなすっても、これは実態から見て、やっていることはますます財政不健全化を加速をする、こういう一語に尽きるのではないかと思わざるを得ないのですが、その点はいかがですか。
  45. 竹下登

    ○竹下国務大臣 清水さんのその側面から見た議論は、私は議論としては成り立つ議論だと思っております。したがって、その都度のぎりぎりの工夫の中でいわば後年度負担等を考え、それが平準化していくための措置としての合理性を、ぎりぎりの工夫の中に求めてきておるということで御理解をいただきたいと思っております。
  46. 清水勇

    清水委員 私は、いささか理解をすることができないのです。そういう見方のあることはそのとおりだというふうに肯定をされているのでありますが、例えば六十年度の予算編成を見てもそうなんですけれども、歳出削減という手法による再建方式というものは事実上破綻をしつつあるのではないか。今六十年度予算編成のやり方というものを私なりに見てみると、例えば国債定率繰り入れを六十年度も停止をする、これをずっとこのところやってきているわけですね。しかし、今年度までは国債整理基金がある程度そういうやりくりというものを可能にしていたかもしれませんが、もう整理基金の底は見えてきている。恐らく一兆円台を割り込んでいる。ということになると、今まではまあそういうからくりというか手品というか予算技術というか、これが通用をし、賄い得たのかもしれませんけれども、恐らく六十一年度の予算編成からは、定率繰り入れの停止でカバーをするというようなことも事実上できがたくなる。そこで、全体として財源不足を覆うべくもなくなって、どうしても増税による財政再建という方向へ一歩踏み出さざるを得ない。こういうところへ今着目をして、戦後税制の見直しなどという耳ざわりがいいといいましょうか、オブラートにくるんだような表現をしながら、実は増税、増収の道を探ろうとしているのではないか、そういうねらいが財政当局にあるのではないか、こういうふうに思わざるを得ないわけですが、その点はいかがでしょう。
  47. 竹下登

    ○竹下国務大臣 確かに御指摘なさいましたとおり、六十年度の定率繰り入れは、これは停止をいたしました。これは、特例公債減額に最大限の努力を傾けようということを考慮して、やむを得ず停止したということであります。それから一方、電電株式及びたばこ株式のうちの売却可能な分を国債整理基金特別会計に帰属させて償還財源の充実に配慮するという二つの措置がとられたわけでありますが、後段の分はもちろんこれは将来の問題でございまして、六十年度の予算そのものには直接には関係のない問題でありましょう。  したがいまして、こういう措置を行い、そして六十一年度の問題を考えますと、これも御指摘のとおり空っぽにするわけにはまいりませんので、このような措置がいつまでもとれるとは私どもも考えません。そして財政制度審議会等の御意見を拝聴いたしてみましても、やっぱり減債制度の根幹は守るという考え方は捨ててはならぬ、こういう御指摘もいただいておるわけであります。そういう実態を踏まえながら、今直接的な関連の中で御質問のありました税制改正というものは、私は今年度の政府税調の答申等を玩味熟読させていただきますと、まず初めに増収措置ありきという考え方ではなしに、やはり戦後税制のゆがみとかひずみとか、まあいろいろと言葉を余り使いますとこの言葉の意味一つ一つの定義にも苦しみますが、そうして出てきたひずみというものをこの際根本的に見直すべきであるというこの御答申に素直に沿って、まず公正、公平、簡素、選択、こういう言葉を総理は使っておられますが、そういう線から国会の各方面の意見を聞きながら税制調査会に素直にこれを報告し、議論をしてもらう。やっぱりまず公正、公平、簡素、選択の見直しありきから始めて、増収措置ということがまずありきという考え方で臨んではならない。私どもは「増税なき財政再建」のかんぬきとか族とかをおろしたわけではございませんので、まず増収ありきという考え方で臨んではならないという基本的な認識の上に立ってこれからもいかなければならないと思います。
  48. 清水勇

    清水委員 そうしますと、増税による増収ということで財政再建というものを考えるべきではないんだ、こういうふうに今言われるわけでありますが、一面では後年度に負担をふやすようなやり方は避けなければならない、こういうこともしばしば言われているわけですね。  例えば、私「昭和六十年度予算の説明」というものを見たわけですけれども、第一の「総説」の中に「なお、後年度において財政負担の増加をもたらすような措置は、原則として採らないこととする。」と明記されている。念のために過去にさかのぼってみると、例えば五十九年度においても五十八年度においても五十七年度においても、同様趣旨のことが実はうたわれているわけですね。ところが、現実にやっていることは、年々後年度負担を増加をさせるような、後年度に財政負担を増加をさせるような一連の措置がとられている。これは紛れもない事実なんです。  そこで私、念のために承っておきますが、先ほど確認をしてもらった資料、これでは主計局長、六十年度までの歳出削減に伴う後年度への負担の繰り延べ額というのは幾らになっておりますか。
  49. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 六十年度までの累計で申し上げますが、一つのタイプは、いわゆる行革特例法でお願いをしているグループでございますが、これが五十七年度から六十年度までの四カ年間にわたりまして一兆四百九十億円の減額をいたしております。それから、委員指摘の住宅金融公庫の補給金でございますが、これは別の法律でお願いをしているわけでございますが、これは六十年度までで三千三百七十四億円。それから国民年金の特別会計への繰り入れの減額でございますが、これが八千九百五十七億円。それから交付税の問題がございます。これは、いわゆる地方財政対策の抜本改革ということで措置をいたしたものでございますが、この改革に伴いまして、当面の償還額が改正前に比べてどのくらい減ったかという観点でとらえますと、これが五十九、六十年度二年間にわたりまして合計三千九百二億円ということになるわけでございます。それから、自動車損害賠償責任再保険特別会計から一般会計が特にいただきましたもの、これが五十八年度単年度でございますが二千五百六十億円。それから、今度六十年度予算と御一緒にお願いをしてございますのは、厚生保険特別会計の健康勘定への繰り入れの特例でございますが、これが九百三十九億円。それから道路整備特別会計での借入金が千二百億円ということでございます。  したがいまして、ただいま申し上げました項目を全部足しますと、六十年度までで三兆一千四百二十二億円ということになるわけでございます。
  50. 清水勇

    清水委員 主計局長、私の出している資料のBを見てもらいたいのですが、これはあなたの方から提出をしてもらった資料なのですけれども、「五十九年度地財対策により振替整理された一般会計借入金の年度別償還額等内訳」という表ですが、いわゆる六十五年度末残高が五兆八千二百七十七億、こういう数字になっておりますが、間違いありませんか。
  51. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 そのとおりでございます。
  52. 清水勇

    清水委員 そうすると、今私が確認を求めたものをひっくるめて、トータルで幾らになりますか。
  53. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 ただいま御指摘のございました交付税特別会計の借入残高、これは五兆八千二百七十七億円でございますが、これを先ほど私が申し上げました数字に単純に足しますと八兆八千九百四十四億円になるわけでございますが、先ほど申し上げました交付税のところで元本の償還時期の変更に伴います償還負担の減額をカウントいたしておりますので、もしもこの五兆八千二百七十七億円を足します場合にはそれを差し引いて計算いたしませんと整合性がございません。そこでこれを差し引いて計算をいたしますと、八兆五千七百九十七億円ということになるわけでございます。
  54. 清水勇

    清水委員 まあいずれにしても、私の計算では八兆八千九百四十四億円、計算という言い方はおかしいが、カウントしたものを差し引いても八兆五千億を上回る、非常に巨額なものです。しかも、自賠責などについてはこれは利子がつきませんけれども、大部分のものは利子がつくわけでしょう。  そこで、私が計算をしてみたわけなんですが、六十年度末までの繰り延べ額を八兆八千九百四十四億円として、その利子が実に三兆九千七百二十億に達する。これを合わせると十二兆数千億という規模になるわけですね。国債残高百三十三兆円と言われておりますけれども、本来はこの隠れた赤字国債十二兆何がしというものも実質的に加味すべきであって、いわば実質的な残高というものは百三十三兆ではなく百四十五兆に達すると見るのが正当なのではないか、こういうふうに私は見ざるを得ないわけですが、この点大臣、いかがでしょうか。
  55. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは今私が最初、清水さんの一つの物の考え方もございましょうと申しましたが、その延長線上での御議論でございます。が、例えて申しますならば、今年度繰り延べ分を、この年度でいわば財源を仮にでございますが赤字公債をもって充てたとする、そうするとそのものは、言ってみれば後年度負担は金利を含めて三・七倍くらいなものになっていく。したがって、現在の各種会計間のいわば財源調整の措置というふうに考えていただくならば、それそのものがそのまま乗っかった公債残高とは異質なものではないか。  それから二番目には、いわば住宅金融公庫等の問題で見ますと、将来の会計から見ますと言ってみれば負担が平準化される、その平準化措置としてとったものであるというこの角度からのぎりぎりの工夫としてこれを見ていただきますならば、いわゆる単純なる特例公債の変形というものではないというふうに御理解をいただきたいと思っております。
  56. 清水勇

    清水委員 竹下さんは単純な特例公債の変形ではない、そうやって見られては困ると言われるんだが、しかし、見方によれば特例公債の変形である、こういう見方は紛れもなく行い得るという性質を持っていると思うのです。  そこでこの機会に、時間がありませんから一、二だけ確認をしておきたいと思いますが、例えば中曽根内閣が六十五年度までに年々一兆円ずつ特例公債の発行を減額して六十五年度には特例公債依存を脱却する、ゼロにする、こう約束をされているわけですが、三年間に三兆円減額すべきところを一兆二千何ぼしか減額になっていない。こういう実績を踏まえてみた場合に、果たして六十五年度に特例公債依存体質から脱却ができるというふうに大臣は言い切れますか。
  57. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは御案内のとおり、五十九年度までにいわゆる赤字財政依存体質から脱却する、それが先ほど来の御議論にもございましたように、五十六年、五十七年、二カ年にわたる世界同時不況の中で九兆円にも上るところのいわゆる歳入欠陥を生じた。したがって、五十八年一生懸命に検討してみましたものの五十九年脱却はギブアップせざるを得ない。そこで設定したのが六十五年、こうなるわけです。いわば今までの仮定計算等からいたしまして、一兆七百億円とかそういう均等な試算をお出しして今日まで議論をいただいておりますが、確かに均等試算を割っておることは事実であります。しかし今、五十八年は別といたしまして、五十九年から見ました場合逐年、五十九年から見れば逐年と言っても二年でございますが、その方向への努力が金額の上でも近づいておる。ことしも確かに私は一兆円というものは十分念頭にございました。しかし、これはもろもろのことを考えた場合に、結果として、いわゆる初めに公債の一兆円減額ありきということ、赤字公債の減額ありきということは、私も自信を持って予算編成に当たってそれを唱えることができなかったことは事実であります。したがって、ぎりぎりの努力で合わせたもので一兆円の減額。したがって、今後非常に困難な問題でございましょうけれども、この旗をおろすことなく、財政改革の進め方でも申しておりますように、第一期は六十五年までに赤字公債の依存体質から脱却することだ、第二期はその残高をいかに滅していくかということだという考え方に立っておりますだけに、この努力目標というものも私は放棄するわけにはいかぬ。つらい道でございますけれども、国会の議論等協力をいただきながらだれかがやらなければならぬ仕事だ、こんなふうに考えております。
  58. 清水勇

    清水委員 こういう場ですからそう言わざるを得ないという気持ちは理解できるのですが、さらばといって赤字公債の発行を極力減額をしたい、しかし一定の収入は確保しなければならない、財源の確保ということが求められる。そこで引き続き後年度に負担を残すような、先ほど来私が指摘している負担の繰り延べというような措置をさらに続けていくなどということになると、これは結局は財政の不健全化からちっとも脱却ができない、こういうことであることは間違いのないことだと思いますから、今後は予算の説明の中で明確に述べているように、後年度に財政負担を増加するようなことはやらない、こういうことで繰り延べ等についての措置もこれ限り、こういうような方向をとるべきが妥当ではないかと思うのでありますが、一言で結構です、明確に言ってください。
  59. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわゆる清水さん流におっしゃる後年度繰り延べ手法というもの、これは私はあくまでも各種特別会計等の財源調整あるいは一つの会計における平準化措置という見方で制度改正とともに考えるべきであって、単純ないわゆる変形した赤字公債というものの考え方でこれに対応してはいけないというふうに考えております。
  60. 清水勇

    清水委員 きょうは関連で大出先生も後やられるという時間割りになっています。残念ながら十分な論議が尽くせないので、また後日改めてこの点に触れてさらに細かく尽くしたいと思いますので、きょうはこの程度にとどめておきたいと思います。  さて、そこで次に中小企業対策について若干触れたいのでありますが、まず最初に最新の統計でお聞きをいたしますが、現在全国の事業所総数は何件であるか、その中に占める中小企業の割合、同様に従業員についてもこの際お聞かせいただきたいと思います。
  61. 石井賢吾

    ○石井政府委員 最新の総務庁の事業所統計によりますと、農林水産業を除きました分野で我が国の事業所の総数は六百二十七万でございます。そのうち九九・四%の六百二十三万、これがいわゆる中小事業所というふうに見ております。また従業員でございますが、同じ分野におきます作業従事者全体で四千五百七十二万でございます。そのうちの八一・四%、約三千七百二十一万、この方々がいわゆる中小事業所で従事しておられるということでございます。
  62. 清水勇

    清水委員 この数字は、私の記憶では五年ほど前と比べて、五年ほど前は多分五百七十一万事業所くらい、従業員数は中小企業の関係だけで言うと三千四百万くらいであったと思います。私の記憶に間違いがあれば後で訂正をしていただきますが、いずれにしても、年々実は中小企業のウエートというのは我が国の経済、社会において大きくなるばかりなんですね。事業所数も労働者数も年々ふえておるのですよ。にもかかわらず、実は今中小企業を取り巻く環境が非常に厳しい。この委員会でも既に論議がありましたから細かくは触れませんが、例えば暦年で去年一年を見てみましても、五十九年中に千八百件という危険ラインを突破した倒産件数を出した月が何回もあった。こういうような原因をどうとらえているのか、まずその点を通産大臣からお聞きをいたします。
  63. 石井賢吾

    ○石井政府委員 昨年一年間の中小企業の倒産件数、総数で二万七百七十三件でございます。これを原因別に分析いたしますと、これは民間信用調査機関の調査の結果でございますが、六〇%強がいわゆる不況型倒産と言われるものでございます。このほかに二〇%程度のいわゆる放漫経営による倒産もございますが、圧倒的に多いのはこの不況型倒産でございます。  この内容を見てみますと、当該企業の売り上げ不振ということの以外に業界全体の不振あるいは過去の負債の重圧、こういったような原因によりまして構成されておるわけでございます。そういう意味でまいりますと、例えば単純な循環的な売り上げ不振というのではなくて、いわば市場が成熟化いたしまして構造的に変わっているという側面も非常にあるんではなかろうか。それは裏返して見てみますと、例えば五十二、四年当時の倒産企業の中では、企業を始めましてから五年未満というのが圧倒的に多かったわけでございますが、その当時まだ二〇%程度でございました業歴十年超の企業というのは、現在では四三%になっております。ある意味でこういった企業というのは経営基盤が確固たるものになっておるわけでございますが、そういうものの倒産のウエートが高まったというのは、私が先ほど申し上げました市場構造の変化あるいは生産技術の変化、そういった構造的な要因も見過ごしてはいかぬのではなかろうかというふうに考えております。
  64. 清水勇

    清水委員 そこで、二、三まとめてお尋ねをいたしますが、倒産原因を分析をすると圧倒的多数が不況型である。さらにこれを突っ込んでみると、例えば五十九年度の我が国の実質経済成長、上位修正をして景気回復の軌道に乗ったというふうに政府は見ておられるけれども、実はその中身というのは外需主導型の景気なんですね。政府自身は昨年度当初において内需で景気を引っ張っていくんだと言いながら、実はふたをあけてみると内需は相変わらず冷え込んでいる、輸出でカバーをしている、これが実態。ところが、中小企業は外需に占めるシェアというものは多分一五、六%しかない。内需依存型なんです。個人消費が冷え込む、住宅投資が落ち込む、それが実は中小企業に冷厳な環境になっているわけですね。だから一つは、基本的にいって内需をどうやって拡大をするか、こういう施策との関係で中小企業の経営基盤を強めていかなければならない。あるいは自助努力のみにまつのではなく、政府として適切な中小企業の振興対策をとらなければならない、こういうことが実は求められると思うのですね。  労働大臣も見えているけれども、あの高成長時代にかなり格差が縮まってきていた賃金にしても労働諸条件にしても、今またここへ来てぐうっと開いている。例えば賃金水準で言えば、大企業を一〇〇とすれば中小は六〇%前後。格差が拡大をしている。労働時間も非常に長い。休日も少ない。非常に環境が劣悪になればなるほど、そこに働く労働者へのしわ寄せというものが深刻化をしている。  ですから、こういう点を踏まえてどう手だてをすべきかというときに、実は中小企業対策費というものはことしはひどいじゃないですか。全体の総予算のわずか〇・四一%。ピークの五十五年度が約二千五百億でしたけれども、それよりも三百四十億も減らす。今まではそれでも財投という形で政府系中小企業三金融機関に一定のカバーをするというやり方をしてきたが、ことしはその財投も二千四、五百億も削る。こういうやり方で中小企業の振興を図るとか育成をするとかと言ってみたって、これはまじめに受け取れない話ではないか。この点についてどういうふうに……。
  65. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 清水委員の御質問にお答えをいたします。  大変中小企業についての詳細な検討をしておられるわけでございまして、私の方でも調べてみますると、なるほどことしは予算はやや五十九年度に比べて微減でございますが、ただ実際の景況は、御指摘がございましたように、輸出だとかそれから設備投資が非常に増加をしておるというようなプラス要因がございまして拡大を続けておりますが、その中で中小企業も着実な回復をしております。そして内需に影響のある個人消費、住宅投資の伸びが今までは緩やかでございました。しかし回復のテンポは中小企業にもそれが及んでおるわけでございまして、六十年度のいろいろな経済指標について見ますと、今後は個人消費及び住宅投資が着実な伸びを示す見通しであるということから、中小企業の景気回復もさらに着実なものになるという期待を全般としてはしておるわけでございます。  そして予算の点でございますが、御指摘があったように六十年度は一般会計二千百六十二億でございますが、実際には商工組合中央金庫の投資であるとか中小企業金融公庫の投資であるとかいろいろプラス要因もございますし、また年度間のいろいろな事情がございまして、現在の行財政改革、そして非常に予算を締めておりますことからいえば、全体としては中小企業に配慮をしておるということでございまして、実際に予算を実行してまいります際にその予算の中でひとつ技術力の向上であるとか情報化への対応であるとか経営基盤の安定強化であるとか、そういった時代のニーズにぴったりと合致した費目についてめり張りのある予算の執行をしていきたい、そして中小企業について今後希望の持てるような総合的施策を講じてまいりたいと思っております。
  66. 清水勇

    清水委員 実は今大臣からお答えがありましたが、どうもそういう内容では私は満足できないんです。いろいろ提言もしたいし、また指摘もしたい。ただ、きょうこの後大出先生の関連という格好になりましたので、これは商工委員会なりの機会に改めてさせていただきます。  そして、せっかく公取の委員長にお出ましをいただきましたが、実はこの下請問題で非常に憂慮すべき事態がなお多発をしているわけです。下請取引の近代化ということが叫ばれながら、実は相変わらず優越的な地位を利用して親企業が下請いじめをやっている。これは労働大臣にも時間があればたっぷりと造詣の深い意見を聞かしてもらうつもりでいたんですけれども、そのあおりを受けて下請企業の労働環境が非常に悪化をしている。ですから、私はきょう個々の質問は時間の関係でできませんが、下請問題に関連をして何か御意見があったらちょっと聞かせていただきたい。まず公取の委員長、どうぞ。
  67. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 今お話のございますように、下請取引の公正化、下請中小企業の利益の保護は非常に大事なことでございます。そういう観点で、従来から大体親事業者が七万、関連の取引先が四十七万、こう言われておりますけれども、毎年三万ぐらいの企業を対象に書面調査を行っているわけでございます。本年は既に三万六千三百件ぐらい調査をいたしまして、年度内には六万四千件ぐらいになろうかと思っておりますが、三万六千件の中で大体違法が発見されましたのが千三百五十四でございます。年々要員の充実、予算面の配慮等をいただいて、下請問題について不当な事案に接しました際には是正をさせておるわけでございますし、さらにはこれが未然防止を図りますために、企業全体といたしまして例えばマニュアルをつくる、それから社内の研修をやるとか、そういう予防的な措置をとってまいる必要もあるというふうに思っておりまして、今後とも一層努力をしてまいりたいと考えております。
  68. 清水勇

    清水委員 あと一、二分しかありませんから、そのつもりでひとつお願いしたいのですが、あわせて例の退職金共済についての考え方もお聞かせください。
  69. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 労働経済の立場から労働条件の改善を進める上において、中小企業と大企業の厚生福祉面等の格差というものが労働条件の進展に大きな障害になっておるわけでございます。そういう意味で、そうした中小企業の環境醸成のために、先ほど通産大臣もいろいろ御発言ございましたが、労働省としても通産省と二省間協議をしながら、特に中小企業の企業の立場、今下請の問題等もございましたけれども、等についてもひとつともに取り組んでいきたい、こういうことで今施策を進めさしていただいておるところでございます。  また、中小企業退職金共済事業団の問題につきましては、来年度をめどに中身の検討に今入っておる、こういうことでございますので、またさらに別な御質問のときに詳しくお答えさしていただきたいなというふうに思います。
  70. 清水勇

    清水委員 終わります。
  71. 天野光晴

    天野委員長 この際、大出俊君より関連質疑申し出があります。清水君の持ち時間の範囲内でこれを許します。大出俊君。
  72. 大出俊

    ○大出委員 防衛庁長官の御出席をお願いしたのですが、ちょっと委員長、おいでにならぬから待ってください、防衛庁長官がいないから。いないんだから、質問相手が。――これから始めてください。  冒頭に、本題に入ります前に少し承っておきたいのでありますが、最近の新聞紙上によりますと、防衛庁長官、私は五九中業の目玉というのは結局FSX、次期対地支援戦闘機、F1の後継機ですね、これが大きな問題だと思っているのです。これは五六中業で二十四機の調達が予定されていましたが、F1の耐用年数の延期もありまして解決していませんね。これについて国産という問題が一つ出ていますね。そのことも、五九中業が決まるときには国産も含めてということになるんだろうと思うのであります。当然そうならなきゃおかしいわけでありますが、その場合にもう一つ問題があるのは、私がかつて質問をいたしまして大きな騒ぎになりましたF4ファントム、耐用年数を延ばす、改修工事ですね、これは過去の経過からすると、昨年これは試改修をやりまして、当初の計画でいけば百機改修、こうなっていましたですね。これもF1のある意味では代替。ここらのところは一体どういうことになるのかという点が一つ。  それからもう一つ、例の一%問題と絡むのですが、時間がありませんから五六中業については触れませんけれども、今回の皆さんの積算をずっと見ていきますというと、どうも総額二十兆を超えそうな感じなんですね。矢崎さんの新聞紙上に基づく御発言によれば、一%枠にこだわらずに五九中業というのは考えたいという発言が一つある。ところが、つい最近の新聞を見ると今度は逆に、加藤さんの発言ですかね、わかりませんが、GNP一%を突破するのは確実で、このため七月までに一%枠の閣議決定の変更がない場合、策定をおくらせる公算も大きい、こうあるんですが、長官、ひとつその真意を、今のFSXの国産、F4ファントムの関係、さてGNP一%の関係、ここのところをちょっと御説明願いたいのです。
  73. 加藤紘一

    加藤国務大臣 F1後継機の問題につきましては、国産の可能性も含めて、国産と決まったわけではないわけですけれども、従来そこの可能性が十分なかった部分を、可能になったのでそれも含めて考えてみるということは委員既に御承知のことだと思いますが、ファントムとの関係につきましては後ほど政府委員から簡単に御報告させます。  それから、五九中業に関しましては、現在作業が本当に実質的にかなりのスピードでやれるような状況になってきておりますので、それとGNPの関係につきましては、本来別個のものであるということで作業しております。それは累次中曽根総理から御答弁した部分と変わっておりませんので、新聞の報道は若干の誤解があるのではないかな、こう思っております。
  74. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のF4ファントムの試改修の問題でございますが、これはもう先生かねてからしばしば御指摘いただいている問題でございまして、私どもただいまはF4ファントムの延命とそれから能力向上についての試改修をやっている段階でございまして、ようやくそのテストをしつつあるというのが現状でございます。したがいまして、現在の段階ではこの成果がまだ出ておりません。その成果が出た場合に、F4を量産改修するかどうかということを改めて判断をしたいということを今考えているところでございまして、それから先のことにつきまして、まだ具体的に申し上げられる状況ではございません。
  75. 大出俊

    ○大出委員 これは分科会質問の予定などもございますから、引き続きそちらの方で少し詳しく承りたい、こう存じます。  あわせて、防衛庁に一つだけ注文をしておきまして、後で御回答をいただきたいのでありますが、一つは、いつか私が重ねて質問いたしました大韓機の航跡でございますが、三時十二分以前のもの、ないとおっしゃる。じゃビデオを出せと言った。これは公式には承っておりません。ところが、これはけさの新聞でございますが、毎日でございましたか、「米軍、レーダー記録を廃棄 米紙報道 大韓機事件裁判で証言」ワシントンUPI電、これはワシントン・ポストの記事でありますが、これはアメリカで裁判をやっているんですよ、日本の遺族も行っていましてね。大韓機事件、アメリカの責任を追及する裁判をやっている。ここでアメリカの軍の側からシェミアのレーダー、これが大韓機が大きくそれたのを追ったというわけです。しかし、そのレーダーに関する一切のものは廃棄して、ない、とこう言う。日本の場合には三時十二分以前のものはないとおっしゃる、あるはずのものが。これはしたがってビデオという話をしてあるんですが、あるのかないのかはっきり、アメリカにみんな連動して廃棄しちゃったかどうか知りませんけれども、これはひとつ次の私の質問までに御回答いただきたいのであります。  それからもう一つ注文をつけておきますが、皆さんがお出しになっている防衛白書、防衛白書の中に四百キロという覆域、この間申し上げました安定値、こんなに明確に描かれて発表されている。ところが、これは四百キロ映らないんですからね、皆さん。三百四キロしか映ってないんだ。これは間違いだと言って訂正してください。  それからもう一つ「防衛アンテナ」、「防衛アンテナ」の方も随分これは国民の皆さんが読めば明確に、これも防衛白書と同じように四百キロ。この中で、四百キロにレーダー画面に上がってくるものは全部これは探知している。探知された航空機の位置と速度、針路等を計算するとともに、以後この航空機を追尾する、このような計算作業は個々の防空監視所のコンピューターで行われ、このようにして得られた航跡情報は、航空機の位置、速度、針路等の情報は自動的に防空指令所に伝送される、識別してぱっと自動的伝送になっている。  しかも、このスクランブル一万回というおたくの出したこれによれば、これ書いてある、このレーダー画面に全部映ったものはすべてと、こうなっている。二カ所でキャッチして自動的に識別もできれば追尾もできる。三百四キロしかないとおっしゃるんだから。しかもここにありますのは、遠いからわからぬというようなことを言ったけれども、実はこの間私が出したのは気象状況は一部でございまして、サハリンの豊原でもラジオゾンデを揚げているんですよ。気象情報は日本に入っている。稚内の情報というのは南樺太を全部含んでいる。ここに細かい温度から、湿度から、湿数という数字から、全部ある。何ミリバール、何ミリバール、全部。レーダー障壁になるものなんかない。したがって、今私は釈明をして明確にする、こんな誤解を与えてはいけませんから。三百四キロきり映らないこともちょいちょいある、直していただきたいのです。今申し上げた、あるのかないのか、アメリカと同じように廃棄したのかどうかわかりませんが、そこらを全部出していただく、御回答をいただきたいのです。  それからもう一つ、これは運輸省にお願いをしておきたいのでありますが、これも次の質問までに出していただきたいのでありますけれども、大韓機の最後の通信、これは奇々怪々でございまして、ここにございます。九月一日の三時二十七分十秒から同二十五秒までの交信内容、最後の通信。一体、国際対空通信局のテープはあるかと言ったら、あると言う。あるのならそれはどこへ出したかと言ったら、出していません、こう言う。後になったら電話がかかってきて、間違いました、ICAOに出しましたと。ところがほかにも出ている。あなた方が慌てて電話をかけていた場所もある。出ている。ところが、その結果の分析が違う。ひとり歩きしているテープの方は、最後の通信は〇一〇あるいは〇一〇一デルタということ。運輸省が私にお出しになった中身は、一二一二デルタ。違う。その前も違う。運輸省が先に新聞発表したのと後のと全く違う。奇々怪々であります。したがって、これは皆さんがよく御存じの方が書いておる文書によれば、〇一〇一あるいは〇一〇デルタというのは軍事用の諜報上の記号であるとCIAも認めている。どこの民間機に、どこかの諜報機関との間で契約を結んでそういうものを流す民間機があるかというふうにお書きになっている方もいる。〇一〇デルタ。不思議なことでございます。出てないはずのものがまだ一本ひとり歩きしている。したがって、これは原テープをお出しいただきたい。次の私の質問の前までに御回答いただきたい、これだけ申し上げておきます。よろしゅうございますな。
  76. 西村康雄

    ○西村政府委員 国際対空通信局と大韓航空機〇〇七との交信記録のテープは現在保存してあります。それから、これを外部に出しましたのは、私どもが最初に運輸省で発表しましたような形で解析をする、この解析者との間ではテープの受け渡しがございます。そのほかには、ICAOの調査団に対しましてこれを渡しました。  それで、今先生のお話のような、私ども承知しておりますのは、運輸省から発表しました記録とICAOの発表しました解析との間に若干の相違があるということは事実でございます。しかし、この内容以外のものについては承知しておりません。  それから、テープのコピーを出せるかどうかということでございますが、テープはもともと事故調査のためにつくっております。したがいまして、それ以外のケースでは、司法警察との関係でこれが刑事訴訟法に基づいて出すということはございますが、それは出すのを私ども適当とはしておりません。  ただ、事故調査のために、この問題の解析をするためにどうしてもこれが必要だという場合であって、しかもそのような解析をすることに能力のある方、聞いてわかる方が適当な場でお聞きになる。一般にこれを流しましても、特に今回の場合は通常の状態では聞けない。したがいまして、最初の運輸省の発表の場合には、この部分につきましては全く意味不明、不能ということで出しまして、その後の時間のかかった解析によって出したわけでございます。したがいまして、適当な場があれば、それは検討いたしたいと思います。
  77. 大出俊

    ○大出委員 それでは後から相談します。  防衛庁にコピーの交信記録をいただきましたが、機関砲を連射するなんという場所は、ロシア語の専門家の方に聞いていただきましたら、今お出しいただいたテープのままで聞き取れる、こういう結論が出ております。もしそうだとすれば、テープをいただいたんですから、かけてわかっているんですから、聞き取れるものを何で聴取不能にしたか、不思議な話でありますが、これも今運輸省からそういうお話がございましたから、念のために申し上げておきます。高等技術に基づく解析なんか要らないのです、今のテープで言うと。ちゃんと聞き取れる。ダーユというところが入っているんだけれども、私も聞いてみたけれども聞き取れる。ですから、そうなると聞き取れるのに何で出さなかったかということになるのですけれども、後からこれは申し上げます。  次に四現業、国鉄も入りますけれども、ちょっと読んだ方がいいと思うのですが、「公企体職員の期末手当に関する六十年度予算案は、林野、印刷、造幣」、これが〇・三カ月、郵政、国鉄が〇・一カ月と「それぞれ従来より削減して計上されており、」国鉄も削減されているのですね。「関係職員の間に期末手当削減という不安を惹起しているが、これは昭和三十一年の賃金」、仲裁裁定が出ているのですよ、後から承りますが。公務員並みにしろというふうに裁定を出している。それによって公務員並みになってきている。これを今回思い切った削減をしたものだと私は思っているのです。  そこで、十二月の二十二日でございましたか、官房長官藤波さん、山口国対委員長と私、一緒にお伺いしまして官房長官に、期末手当は三月ですから、〇・五になっているのを何で〇・二に削ったんだ。全く知らない、あなたはこう言う。そんなことはあるか、そんなことはない。私が大蔵省を調べた限りで言えば、〇・五を〇・二に削った、〇・三削った。これは官房長官、あなたが中心になって、私はあのとき五大臣と言いましたが、どうも六大臣みたいですけれども、あなた方が集まって決めているじゃないか、何か書いたものをつくっているじゃないか。そうしたら、そんなことは全くないとこう言う。回答してくれと言ったら、いや、大出さん、あなたじゃ嫌だ、あなたはうるさいからだめだと言う。山口国対委員長回答する。私もそれじゃそれでいいということにしたら、確かに山口国対委員長回答してきたが、私があのときにあなたに何遍もそんなことはないと言っているとおり、五大臣か六大臣か知りませんが、集まって覚書をつくっておる。そうしたら山口氏がその覚書を持ってこいと言ったら、それっきり。この覚書を出してくださいよ。これは重大な団交権に関する介入でございまして、あなたは一生懸命私の言うことについてそんなことは全くないと否定されたんだが、回答は、覚書をつくりましたと言う。出してください、そのままになっている。出してください。いかがでございますか。
  78. 藤波孝生

    藤波国務大臣 昭和六十年度の予算編成に当たりまして、昭和六十年度以降の公企体職員等の期末・奨励手当の予算計上額及び業績手当支給の最高限度額につきまして、関係大臣間で一つの了解がそれぞれ交換されております。その一つは、期末・奨励手当の予算計上額は非現業国家公務員の期末・勤勉手当の合計額の年間支給率を〇・三カ月分下回るものとする、二つ目は、業績手当支給の最高限度額は〇・六カ月分とする、こういう了解がとり行われたところでございます。  そのような記録は残されておりますが、ただいま先生から御指摘のございましたように、その覚書を委員会へ提出せよというお話につきましては、今申し上げましたような内容を記録として残しておりますものでございまして、政府の部内の資料として残しておるものでございますので、委員会に提出をいたしますことは差し控えさせていただきたい、このように存じますが、どうか御理解をいただきたいと存じます。
  79. 大出俊

    ○大出委員 官房長官、それはあなたもあのときに口で話をされたじゃないですか。本来これは団体交渉でお決めになる筋合いでしょうと。だから、予算的にこういうことをしたけれども、そのときはそのときですと、あなたはそうおっしゃった。だけれども、書いたものがあるということになると、これは団交権に対する介入になりますよと言ったら、あなたはそういうものは断じてないと言った。ないと言ったが、あなたは今あるとおっしゃる、今度は。そうでしょう。何人の大臣が覚書に名を連ねておいでになるのですか。  それと、あなたがあれだけ否定をされた。しかし、結果的にやはり私の言うとおりであった。あなたにも責任がありますよ。お出しになってしかるべきだと思うのですが、いかがですか。そしておまけに、出さぬが、しかしそのときになれば団体交渉だから制約はしない、旧来そんなとんでもないことをする気は毛頭ないんだからという意味のことをあなたはおっしゃったけれども、給特法の関係に入れて、前から言われているからやったんで、実態は何も変わったことになるんじゃないというような意味のことをあなたはおっしゃったけれども、そこらのところをもう一遍、国対委員長と私とで承っているのですから、ここで答えてください。
  80. 藤波孝生

    藤波国務大臣 大臣は六大臣でございます。それから、六大臣で了解をいたしたものを記録として残してある、こういう関係でございます。(大出委員「大臣だれですか、六人は」と呼ぶ)政府委員から後から正確にお答えを申し上げます。したがいまして、記録としては残っておりますけれども内閣の中の資料でございますので、これを提出することはお許しをいただきたい、このように考える次第でございます。  なおもう一つ、今お話がございました労使交渉にかかわることではないかということにつきましては、公企体職員の給与は労使交渉によって決められるものと、このようになっておりますが、先生御高承のように、他方、予算上の給与の総額を超えないようにしなければならない、このように給与総額制度がございまして、政府は経営業績を給与に反映させるという臨調答申などの方針を受けて、すべての公企体等について業績手当制度を導入、弾力化するということにいたした次第でございまして、この制度は収入が予定よりも増加し、または経費を予定より節減した場合に、主務大臣等の承認を受けて特別の給与として支給することができるとしておるものでございまして、給与総額制度の特例である、このように考えておる次第でございます。一方で労使交渉、一方で給与総額制度というものに両方にまたがっておる、このように考えますので、政府が労使交渉に介入するものではない、このように考えておるところでございます。  先生と山口国会対策委員長がお見えになりましたときに少し混乱して私がお答えを申し上げましたことは、慎んで訂正し、おわびを申し上げたいと思いますが、今申し上げましたような趣旨でこの施策を進めてきておるところでございますので、深い御理解を賜りますようにお願いを申し上げる次第でございます。
  81. 大出俊

    ○大出委員 これは大きな論点ですが、まず過去の経過を申し上げておきますが、仲裁裁定が出ている。これは御存じでしょうね。仲裁裁定が当時出されまして、三十一年でございますが、ちょっと読んでおきましょうか。「国家公務員の期末手当は」、三月の手当ですね、「年間を通じて二・二五カ月分が予算化されているにもかかわらず」、公社で言えば公社職員の期末手当ですね、「二カ月分の予算しか講ぜられていない。したがって、一般公務員と同額の手当が支給できるよう予算措置を講ぜられたい。」これがのまれて公務員並みになっている。経過はそういうことです、仲裁裁定が生きているんですから。  その後で、さらにその上に、三十九年だと思いましたが――そうですね。今度は、業績が上がったら、あるいは節約財源が出たら上積みしろという裁定が出た。このときに各省庁の言い分はどういうことか。そんなこと言ったって、印刷なら印刷も、下の国会の印刷局が幾ら忙しくたって政府機関だからもうかるわけじゃないと言うのです。今のように新札で検査なんかでやたら忙しくても、これまた収入がふえるわけじゃない。造幣も同じことを言っている。そういうことだから業績なんて言われたってこれは困るというのが各当局の言い分で、林野もそうです。国有林野、これは片っ端から売っ払うわけにいかないんだから。したがって、その後の裁定が出て業績をと言うんだが、各当局がそれを業績でというのは無理だと言うので、ついにこれは実現していない。そうすると、今、給特法の中に入れて、総額で縛って二重に団交権を抑えて、そして予算を落とす。それじゃ過去の公務員並みにしろと言った仲裁はどうしてくれる。あるいはそれ以上に業績が上がったら払えと言ったのは、これは実施しないんだが、当時の当局の言い分は残っている。どうしてくれるんだ。  しかも、もっと大きな問題は、公務員法の適用を受けている、例えば郵政でいえば、郵政部内には公務員法の適用を受けている方々はたくさんいるのです。みんな机に座っている。本来ならこっちの方々は業績に関する責任を負わなければいかぬのだが、こちらは公務員法適用だから〇・五カ月分。片一方の汗流して郵便配達している方は、業績が上がらなければ〇・二カ月。現業というのは、現場で働いているから現業というんだ、みんな。汗流して一生懸命肉体で働いているところの職員は〇・二ですよ、〇・三カ月削りますよ。さて机に座っている方は国家公務員法適用だから、同じ屋根の下なんだけれども、こっちは〇・五カ月ですよ、汗かかぬ方は。しかも、経営の責任はこっちにある。そういうふざけた話が世の中をまかり通るかという問題がある。  そこで、当時、業績と言われても困ると御答弁をいただいているのだから、印刷、造幣、林野、郵政、国鉄、皆さんから――四・九カ月分ということで概算要求をなさった。途中でこれは〇・三カ月落とされる、こういう経過がある。私は、これは公務員並みにすべきであるというふうに思っているので、ひとつ皆さんからそれぞれ御答弁をいただきたいのです。幾ら財政事情がいろいろあっても、一生懸命汗かいて働いている諸君なんだから、机に座っている方の方は〇・五カ月だが、片一方は〇・二でいいということはない。それぞれお答えをいただきたいのですが、いかがでありますか。
  82. 太田知行

    太田説明員 期末手当の問題でございますが、御承知のように大変厳しい経営環境のもとにございます。一方また、私どもそれぞれ年度ごとに合理化目標を掲げ、経費節減目標を掲げ、また増収努力もいたしておりまして、それなりに懸命の努力をやり、また実績も上げているところでございますが、全体的な判断のもとに、ここ、特に五十六年度末以降でございますけれども、若干の手当の抑制をしてまいりました。これは大変残念なことでございますが、総合判断としてやっておることでございまして、今後につきましても、今申し上げましたように諸般の要素を勘案しながら判断をし、かつ、団体交渉で組合側の理解を得るように努力していかなければならない、かように存じておる次第でございます。
  83. 天野光晴

    天野委員長 時間がございませんから、簡単にお願いします。
  84. 吉川元信

    ○吉川説明員 御説明申し上げます。  造幣事業も企業性を持っているという点がございますので、大いに企業努力をいたしまして、業績手当の円滑な実施に努力したいと思っております。
  85. 左藤恵

    左藤国務大臣 いろいろ検討いたしまして、六十年度予算案では、期末・奨励手当の従来の年間支給枠を〇・一月分下回るということになって、業績賞与の支給率の限度枠を〇・六カ月にするということで、経営業績を給与へ反映させる枠組みを拡大するということにいたしたわけでございますが、今お話がございましたような点で確かにいろいろな問題点があるわけでございますので、従来の支給水準を確保するように今後とも最大限の努力をしていかなければならない、このように考えております。
  86. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 お話にございましたように、三十一年来は公務員に横並びするということで五十五年までやったと存じておりますけれども、その後、手当をめぐりましては大変情勢も変わってまいりまして、私どもの国有林野事業特別会計におきましても、一般公務員の人勧の抑制でありますとか、当方のいろいろ財務事情等ございまして、大変厳しいと申しますか、苦渋に満ちたいろいろな決定を労使双方せざるを得ない事情がございました。今後におきましても、給特法の趣旨に沿いまして労使双方で十分交渉を詰めまして、今後決定をしてまいりたいというふうに考えております。
  87. 岡上泉

    ○岡上説明員 先生御指摘のように、印刷事業につきましてはいろいろ公益性について問題がございますが、ただ一方におきまして、企業性を持っているということもまた事実でございまして、そういう点から考えますと当局の事業に業績の手当を導入するということが必ずしもなじまないというふうには判断できませんので、今回、全体と歩調を合わせて認めるということに踏み切ったわけでございますが、私ども局長以下一丸となって、現在の総ボーナスのレベルを引き下げることのないようにせいぜい努力していきたいと思っております。
  88. 大出俊

    ○大出委員 今、国鉄の皆さんの答弁が、総裁答弁がちょっと気になるので、ほかの方々は、こういう制度ができた、企業性もないわけではない、だから労使双方、局長以下が全力を挙げて努力して、旧来の水準を下回らないように、郵政大臣もそうでございましたが、一生懸命やりたい、実はこういうお話ですね。団交だから労使と、こういうふうに言っておられるわけですね。さっき取り消されたのか取り消さないのか、ちょっと中身がよくわからないんだけれども官房長官、謹んで何か取り消すというようなことをおっしゃったけれども、団交ですからね、取り消すも取り消さないもないんで、あなたがおっしゃったとおりで、団体交渉事項だ、これは。だから、こういう制度を考えたけれども、本来、団交なんですから、しゃくし定規に何もそういうことじゃないから、そのときの相談にしましょうというのがあなたの最後の答弁だった。皆さんに聞いてみると、こういう制度にされたんだから、反対だと言えないから、一生懸命努力して、企業努力もして、旧来の線を下回らぬようにひとつやっていきたいと皆さんはおっしゃっている。  国鉄さんがちょっと気になるんですけれども、それは幾ら財政上いろいろな苦しさがあっても、それなりにやはり最終的には組合の協力を得なければできないのですから、そういう意味で厳しければ厳しいほど働いている人は苦労しているのですから、そういう意味で、年度末、三月末なんだから、やはり旧来水準を下回らぬ、そういう努力はするという総裁のお考えがないというのは――高木さんも何遍かこういう場面においでいただいたが、だからこそ余計私どもとしては確保してあげたいという答弁をよくなさいましたけれども、そこらのところはもう一遍ひとつお考えをいただいて、御答弁をいただいておきたいのです。ほかの皆さんはまあ水準を下回らぬようにという方々が大多数ですから、そういうことでひとつお願いしたいのです。
  89. 仁杉巖

    仁杉説明員 私どもも団交の中で、今先生の御指摘がありましたような点につきまして十分努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  90. 大出俊

    ○大出委員 これは今私が例に挙げましたようにどこでもそうなんですが、印刷の方が今おっしゃっていましたが、私も印刷の現場というのはたくさん歩いておりますからよく知っております。新札なんてのは実に忙しい。皆さんに廃紙と言ったらわかるかもしれませんが、新しい新札だものですからなかなか乗らないのがあって、つまり使えないものが非常にふえる。ふえるとえらい苦労するのですね、現場の人は。国会の印刷局なんかだって、これはとめられたら困るでしょう。大変なものですよ。夜遅くなったり何かいろいろなことがあって、議員先生は早く議事録をとかなんとかと言うから。幾ら一生懸命働いたって、これは収入がふえるのじゃないのですよ。そういう性格を持っているのですよ、印刷も林野も造幣も。そこらはやはり皆さんがお考えをいただいて、机に座っている人は公務員法適用で、経営の責任というのは余計肩にかかっているんだけれども、そちらの方は公務員並みに〇・五でございますと涼しい顔をして左うちわ。汗をかいて、車がいっぱい走っている中、自転車で郵便を配達している人の立場になれば、ちょいちょい事故もありますが、こっちの方はえらいぶった切られる。こういうあり方は矛盾ですから、二重に制約をしないで、皆さんが努力をすると言っているんだから、なるべく皆さんに企業努力も含めて努力をしてもらって、何とか皆さんが納得する水準に、昨年の水準を維持したいという方が多いのですけれども、もう一言官房長官から、きょう総理がおりませんので、この間のいきさつもありますから、お答えいただきたい。
  91. 藤波孝生

    藤波国務大臣 それぞれ当局から今御答弁がありましたように、それぞれの公企体には公共性と同時に企業性ということも問われるという側面がある。そういう意味で業績手当という考え方が導入されていくということを、これは制度としてはやはり位置づけていかざるを得ないというふうに思うわけでございまして、その点については深い御理解をいただきたいと思うのでございます。  ただ、その中で、やはり基本的には労使の交渉によって決定されていくべきもの、このように考える次第でございまして、労使が力を合わせて企業性を発揮をして業績を上げる、そしてできる限り給与支給の水準が下がらないように努力をしていくということがやはり基本的には大事なことではなかろうか、このように考える次第でございます。それぞれの当局がそれぞれのお立場で労使交渉に臨んで、その交渉が結実をしていくようにそれを見守ってまいりたい、このように考える次第でございます。
  92. 大出俊

    ○大出委員 じゃ、最後に一言だけ。  幾ら一生懸命努力しても、働いても、その企業の性格、構造からして業績という形のものが生み出せない、本来的にそういう側面があることも事実で、だから仲裁裁定を受け入れなかったのは、みんなそういう理由なんですね。仲裁裁定が出て公務員並みの上に業績をというのに、三十九年でございますね、これをどうしても受け入れられなかった。つまり目に見えた形の業績が上げられるようになってないからですよ。だから、そこのところも十分お考えをいただいて、さっきの答弁の中にそういう意味のこともありましたから、時間がありませんから終わりますけれども、ひとつ不要な制約をしないで、御家族もいるんだから、労使双方の団交で下回らない、年度末の給与の水準にいくようにと、こういうことにしていただきたい。そのことを申し上げて終わります。
  93. 天野光晴

    天野委員長 これにて清水君、大出君の質疑は終了いたしました。  次に、大原亨君。
  94. 大原亨

    大原委員 久しぶりに質問するのですが、最近、私は教育臨調のいろいろな討議については、初めて質問することもありまして非常な新鮮な感覚で議論を聞いておるわけです。しかしながら、それを聞いておりまして、これは国民の合意を求め、国民の期待する教育改革についての方向づけをするような議論になっているんだろうか、こういう疑問を一つ持っておるわけです。これは委員の選任の仕方がよくないのか、あるいは総理大臣の、内閣の教育臨調に対する諮問の仕方に問題があるのか、こういうことを考えるわけです。  もちろん今の時点において教育改革というものは国民の大きな関心事であります。一つは教育荒廃の問題ですが、非行とか暴力とか自殺とか、そういう取り巻く問題がたくさん出ておるわけですから、これをどう解決をし、克服をしていくかという問題があります。もう一つは、社会経済の変動、つまり革命的な高齢化とか人口構造、就業構造の激変、または脱工業化と言われる先端技術を中心とする技術革新あるいは国際化、こういう二十一世紀を展望して、これから開拓しなければならぬ課題があるわけですから、そういう課題にこたえるような教育をどうするかという意味においては非常に国民的な関心事であり、また我々もこれについては責任ある討論をしなければいけない、こういうふうに思います。  申し上げましたように、ただ、自由化という問題をめぐって今非常に論争が起きておりまして、私もそれをフォローしておりました。天谷部会のメモが二月十一日に出たわけですが、その前には第三部会からの反論もありましたし、有田部会長からのグループの反論もありましたし、文部省も文書で反論をいたしました。そういう議論をすることはいいわけですが、その議論が結局、一定の議論をしておきながら、二月十一日の合宿による天谷メモによりますと、自由化という言葉を個性主義に変えたわけであります。個性主義に変えた。  官房長官の時間も制限されておるし、私の時間も制限されておるからはしょって言うのですが、個性主義ということのメモが出ました後、本委員会におきまして、二月十八日に、中曽根総理大臣がそれを振り返って見解を述べているわけです。中曽根総理大臣としては、自由化の問題についてはその主張を支持する、悪平等が一番いけない、こういうことであります。で、その言葉だけで私は問題をどうこうというわけではありませんけれども、しかしながら、自由化の議論とか自由化の中身について本当に理解をして答弁をされたのであろうかどうか。個性主義ということについて、ある一つの答弁でも支持されておりますが、個性主義とは何であるかということについて理解をして答弁をされたのであるかという点について、私は疑問を持つわけであります。で、この論争というものが、教育改革の理念を議論する第一部会を中心とする全体の審議会の中における議論としてこれは実りのある議論であろうかという点に非常に疑惑を持つわけであります。  この自由化から個性主義というものに教育改革の理念を変えていったという問題に対して、中曽根内閣としては、この問題を諮問した当時を振り返ってみて、あのような委員を選任した経過を振り返ってみて、適正な議論であるというふうに考えておるのかどうかという点をまず官房長官から、あなたは大体中曽根内閣、中曽根総理を後ろからかじを取っている人ですから、あなたの方から所見を聞かしてもらいたい。
  95. 藤波孝生

    藤波国務大臣 今度の臨時教育審議会をどのような角度から御審議をお願いしようと考えたか、こういうことにつきまして、今先生のいろいろな御所見を伺ったところでございます。内閣総理大臣臨時教育審議会の第一回の総会で申し上げましたあいさつの中で、教育改革は、我が国固有の伝統文化を維持発展させるとともに、日本人としての自覚に立って国際社会に貢献する国民の育成を期し、正しい生活規範を身につけながら、高い理想と強健な体力、豊かな個性と創造力をはぐくむことを目標として進められるべきものと考えている、こういうふうにあいさつの中で申しておりまして、こういった角度から教育はいかにあるべきか、どのように改革をすべきかということについて自由闊達な御論議をいただくということを中心にして臨時教育審議会の御審議をお願いをしてきておるところでございます。  その中で、特に先般来教育の理念を中心にいたしましていろいろな御論議が出ました中で、いわゆる自由化という今先生御指摘の角度からの御論議、さらに先般いわゆる審議会委員の方々に合宿をしていただきまして、三日間にわたっていろいろ論議を深めていただきました中で出てまいりました個性主義といったような考え方、いろいろな御論議が出ておるところでございます。  先般、御質問がございましたので、総理は自由化ということに対する意見も申し上げておるところでございますが、基本的にはこれは審議会が自由濶達にいろいろな角度から、ひとつ教育のあるべき姿を目指して御論議を深めていただきたい、そういうふうにお願いをしてきておるところでございますので、一つ一つ論議が出てきて、それに対して総理大臣がどのように考えるかというようなことでコメント申し上げていくよりも、これらの審議会の御論議が全体としてさらに深められていって、そして今日の教育を考えていく上でどのように教育を進めていくか、どのように改革をしていくか、そういうふうに御意見がまとめられていけば非常にありがたいが、むしろそのように今考えておる次第でございます。  一方、審議会でいろいろ御論議をいただいてまいりますことは、適切な方法でそれが国民の皆様方にも伝わって、そうしてそれに対して国民の皆様方がどうお考えになるかということについての反応と申しましょうか、国民総参加というような形でいろいろ御意見が出てきて、それらが審議会における御論議を深めていただくものの非常な参考になるということも非常に大事なことかというふうに考えるわけでございまして、そういう意味では今日自由化か個性主義がというようなことについて各方面でいろいろな御論議をいただいているところでございます。  自由化ということにつきましては必ずしも、審議会の中で御審議をいただいていることでございますので、意味をつかみ切れないところもございますけれども、例えば教育における画一性、硬直性を打破するためのインパクトとするために教育に競争原理を導入するといったことや、選択の自由を拡大するといったようなことを中心として自由化というものが論ぜられてきたのではないだろうか、このように理解をいたしておるところでございます。  また、個性主義とは、先般の第一部会の審議において、今次教育改革の方向についての一つの考え方として打ち出されてきたところでございますが、個人の尊厳、個性の尊重、自由あるいは自立、自己責任の原則の確立といったふうなとらえ方でこの個性主義という考え方が打ち出されてきておるというふうに理解をいたしておるところでございます。  いずれにいたしましても、なお御論議の中間の過程でございますので、審議会においてこれらの問題を中心にいたしましてさらに論議が深められていけば非常にありがたいが、このように考えておる次第でございます。
  96. 大原亨

    大原委員 論議をフォローしておりますと、つまり画一化、こういう問題をターゲットにしまして自由化の議論をずっとやっているのですね。そういう議論の仕方は実りのある議論であろうか、一定の教育改革についての理念を出し得る議論であろうかどうかという点に私は非常に疑惑を持つ、問題点を持つ。自由化という考えは、歴史の進歩の中では常に大きな論争を巻き起こしてきた。例えば日本の場合でも、これは明治時代の、だれもが引用しておりますが、自由民権運動、板垣退助あるいは福沢諭吉の問題等が議論されます。それから大正デモクラシーにおいては、個性教育の問題は既にそのとき非常に大きな議論になっております。これは二十世紀初頭のルソーの影響を受けた議論であります。その個性教育の議論というのはあるのですけれども、例えば個性主義という言葉は、東西の字引を引きましても、これはないわけですね。天谷メモでできた新造語だというふうに言われておるわけで、その中身は今あなたが言われたとおりであります。個性教育と変わりはないわけです。個性教育の議論の中で、字引を引っ張ってみましたら、最後の方に個性尊重の教育という中で、発展段階にある非常に小さい義務教育の段階等において多様化の議論を徹底的にするということは、これは職業選択にも関係する問題であるから、小さいときからそういうことをすべきではない、こういう文章が字引に出ているわけです。終わりの方に、たくさんな文章の中で、ある人の論争に対する引用文として結論的に出ておるわけですね。それから、第三の自由化の波は戦後軍国主義教育に対するいわゆる西側流の自由主義教育、民主主義教育の問題です。民主化の問題です。アメリカ教育使節団が戦争直後参りまして、報告書を出して、それを受けて教育基本法ができたわけです。六・三・三・四制をつくったわけです。これは自由化の波の中でできておるわけであります。それをずっと政府は進めてきたわけであります、一つの合意としまして。それがなぜ画一主義で、これが一つの攻撃のターゲットになるのかということについて、政府自体はどういうふうに考えておるのであろうか、私は非常に疑問を持つわけであります。自由化という意味を全然別の意味にとってやっているのかという問題もあります。というのは、例の授業料クーポン制とか、教育バウチャーの問題であります。フリードマンの考え方で、利用者側が教育を選択するという考え方で、そこにマーケットを成立させて、需要と供給の側の関係で競争原理を導入していくという考え方ですが、しかしそれはもう議論はかなり集中的に議論されて、経済の競争原理と教育の競争原理を混同してはいけないということは、かなり常識的に定着した議論だと私は思っています。この二つの議論からいいまして、今の議論というのは一体何をやっているのかということです。いかがでしょうか。  私は、きょうは岡本会長の御出席をいただきたいと委員長に申し上げておいたのですが、委員長は、これはもうやめろということになりました。そういう国民から見て問題となる事項は、一定の段階で国会においても、最高の機関において議論をしなければ、国会も文部省も政府も全部休んでしまって寝ておって、寝ておるのと同じことだ、それでここで勝手な議論をして、ターゲットを設けて自由化自由化と言っておるけれども、これは本当に実りのある議論であろうかということを私は疑問を持つわけです。  第二項で私が申し上げましたが、中曽根総理はどうやら第二項について教育バウチャーの理論を教育に対して適用しようという考えのようでもある。しかし、そのことを議論することはおもしろいです、私も好きですから。しかしこれは本当に日本の教育を改革する理念となる議論であろうかどうかということを、第一の六・三・三制の問題とか、四の問題とか、基本法の問題は、入ってきた経過を見まして、使節団の報告を受けて、教育刷新委員会というので、一流の学者が集まりまして、そして法三章的な、十何カ条の基本法をつくったわけですよ。自由の問題も、人格の問題も全部あるわけです。私はその議論の、臨教審の議論は非常に重要なところでやる、こういう議論でしょうが、総括的に。しかしあれが本当に適当な人がやっているのかどうかということです。それを諮問している側が本当に日本の教育のことを考えているのか。実りある教育改革の議論になり得るのかという点について、私はこの問題をフォローする中で、新鮮な感覚でそういう感じを持った。これは、非常に政治上結果としては何が出てくるかわからぬような、こういうことになって、いろいろな問題を取り上げておりますよ、しかし本当の教育改革につながるのかということについて私は疑問を持つわけですが、官房長官は今までの議論を聞いてどういう感じを持っておられますか。
  97. 藤波孝生

    藤波国務大臣 教育についての非常に有益な貴重な御意見を今勉強させていただいたところでございます。一つ一つの問題につきましてはきょうは所管の文部大臣がお見えでございまして、私は、総理大臣がどう考えていると思うかという御質問に対してお答えをしておるわけでございますが、いずれにいたしましても、政府としては、そして総理大臣としては、先ほど申し上げましたような教育の役割というものを頭に置いて、あるべき教育の姿、それにはどのように改革をしていったらいいかということを考えまして、審議会を設けて諮問を申し上げてきておるところでございまして、総理自身が具体的にこういうふうに持っていってもらいたいとかというような、恣意にわたってはいかぬ、こういうふうに考えまして、むしろ審議会の自主的ないろいろな御論議を大いにひとつ深めていただきたいということをお願いして、御論議を見守ってきておるところでございます。三年間という日時があるわけでございますので、今まだ出発して日もないことでございますので、この論議は、進め方につきましても、あるいはテーマの設定の仕方につきましても、まとめ方につきましても、運営に関して全部と言っていいぐらいに審議会御自身にお願いをして進めていただいておるところでございますので、これらの御論議が深まっていくことを総理大臣としては見守っている、こういうふうに考えております立場をぜひ御理解いただきたい、このように考える次第でございます。
  98. 大原亨

    大原委員 あらゆる政治課題についてそういう手法をとるということは私は基本的に間違いだと思うのです。私が今まで申し上げましたように、非常に問題の多い問題について、委員の選考問題から諮問の仕方の問題に至るまで、そして中曽根総理自体がどのようなイニシアチブをとるかという問題を含めて、私は、非常にたくさんの問題を含めている。これは、場合によると中曽根内閣の命取りになるのではないか。大ぶろしきを広げて宣伝いたしまして、そして中身というのは何ですか。私が第二に申し上げたことを頭に置いて教育の自由化を考えているのですか。教育バウチャーとか、授業料クーポン制とかいう利用者が選択できるそういう制度を制度化するということを考えて具体的にやっているのですか。あなたは側近ですからよく知っているでしょう。自由化の議論はどうなんですか。
  99. 藤波孝生

    藤波国務大臣 これらは全くその審議会の委員の方々の御意見の中から出てきたものでございまして、それぞれ審議会で部会が設けられて、そしてそれぞれの立場で御論議を深めていただいておるところでございます。むしろ、自由化とは一体具体的にどういうことを考えておるのかということになりますと、実際に部会の論議がどのように進んでおるのかということは審議会の事務局からでも御答弁を申し上げれば、こう思いますけれども、あくまでもこれは総理大臣が恣意的に何かを審議会に持ち込んでそこでお願いをして論議をしてもらっているということではなくて、あくまでも委員の方々の御論議を深めていただくことを御期待を申し上げる、こういう立場で見守っておるということをぜひ御理解をいただきたいと思うのでございます。
  100. 大原亨

    大原委員 二月十八日に、中曽根総理はここで自由化については賛成である、悪平等がいけないんだというふうなことの議論をかなりはっきり言っておられるわけです。意識的に言っておられる。私はそういう観点での議論というものはあってもいいと思うのですよ。いいと思うけれども、具体的に何を言っているのかということなんですね。そうして、そういう問題を系統的に背景を分析してみると公然と議論をしているわけです。教育クーポンの議論をしているわけですけれども、しかし実際に、例えば塾などの問題を含めて義務教育の段階でそういうことができるのかということは、もう歴史的に議論をし尽くされた問題なんですね。だから、経済のマーケットと教育のマーケットについての相違点を挙げた議論というものもあるわけでございますから、ですからそういう一つの意図を持ってずっと中曽根総理が追跡をしているように思われる。側近のスタッフがおって、限られたスタッフ数人がいるというふうに言われておりますね、一定の考えを持ってやっているというふうに言われているわけですよ。そういうことは非常に悪いことであるというふうに私は思っている。つまり、ただ一つ議論の経過を見まして取り上げていきたいと思うのは、取り上げていきたい、注意を私もいたしておるのは、例えば行政にいたしましても、教師にしましても、教師集団にしましても、学校にしましても、社会にしましても、親にしましても、やはりそれぞれの立場で教育荒廃については真剣に考えるということが必要だ。そして、それぞれのサイドが自己批判をすることも必要である。だから、日教組が、田中委員長などが出てきてちゃんと自己批判などをしている点は私はいいと思っている。さらにそれを具体的に深めるべきだと思っている。  しかし、私はこれは文部大臣に聞きたいわけですけれども、戦後の画期的な自由化というより民主化ですね。民主化なんですよ。民主化と言えばだれも議論はないわけですよ。民主化の中には、民主主義の中には自由もあれば平等もある、正義と三つくらい柱を挙げているわけですから。だから、自由化と教育の機会均等を混同して、教育の機会均等が教育の画一化だというふうな決めつけ方をして議論をしておる人がいますけれども、そういう議論は私は民主化の議論の中では起きてこないと思うのです。教育基本法の議論では起きてこないと思うのですよ。そこで、それぞれのサイドで自己批判、反省すべき点があるとするならば、文部省は自由化、民主化の原則に従って戦後進めてきたこの行政の中で、行政としてはどういう点を自己批判するのか、こういう点を大胆に出す。文部省自体が出せないから教育臨調で自由にやるんだという議論もあるでしょう。あなたはそういう議論ですか。  私は、昭和四十三年から、教育公務員特例法のときに、灘尾文部大臣、小川労働大臣のときに教師聖職論ということでやってその議事録を見ておりましたら、あなたもちゃんとメンバーに入っておられました。西岡理事それからあなた、それから松永さんいなかったな、それから河野洋平さんとかずっといました。二時間半くらい私がやっていますが、それ以来、文部省とそれに参加した人の中には教師聖職論などと言う者はいなくなってしまった、専門職ですから。聖職といったら、神職とか坊さんとか牧師とかいうことを言うのですからね。重要な仕事をしていることになれば政治家が教師以上に重要な仕事をしている、生殺与奪の権を握っているから政治家のことを聖職と言うのかと言いましたら、灘尾先生は紳士でありますから、政治家のことについては聖職とは言いません。しかし先生と言わなければ怒る人がおるじゃないかと言って質問いたしまして、聖職でなかったら何ですかと私が言ったら、汚職ですかと言ったら、そうしたら懲罰、懲罰という言葉をあなたたちが言ったような気がいたします。議論はいろいろするのですけれども、教育の民主主義の議論、民主化の議論というものは徹底してきたと思うのです。  そこでメリットとデメリットがあって、この点を克服しながらなんという議論ならいいけれども、戦後の自由化とか民主主義で議論したことを抹殺するようなそういう独断的な一定のターゲットを設けたような自由化の議論などというふうなのはいけないと私は思うのだけれども、ただとり得るとするならば、それぞれのサイドのものが、責任あるものが自己反省をして教育の荒廃に立ち向かうということは私は賛成である。だから、この問題で文部省は、文部大臣は、ずっと中央集権が問題になっておるわけですから、どういう反省をしておるのかということを私は文部大臣から聞きたい。
  101. 松永光

    ○松永国務大臣 先生も御指摘になりましたように、戦後日本の教育改革がなされたわけでありますが、そのときの基本的な考え方は、まさしく自由と平等、これが二つの柱となって新しい教育制度がスタートし、教育基本法もできたものと思います。  ところが、その後四十年近くたちまして、日本の社会経済が大変な変化を遂げてまいりましたし、あるいはまたいろいろな仕組みが新しくできてきたわけでありますが、いつの間にか日本の教育制度、教育のあり方というものが画一主義になってきた、硬直化してきたということは先生もよく御承知と思います。例えば高等学校にいたしましても九四%の者が高等学校に進学しておりますけれども、そのほとんどが同じ内容の教科を同じような状態で教育がなされておる。そして、どちらかというと大学、短大等に進学するためと思われるような画一的な教育がほとんど全国的に行われているという事実も実はあるわけであります。これから二十一世紀を展望いたしますと、そういった画一的な教育でいいんだろうか、こういった反省が私は出てこなければならぬというふうに思っておるわけであります。  先ほど先生御指摘の自由化の論議等は、私はもう教育クーポン制などという議論がなされておるとは承知いたしておりませんが、今申したように画一主義、硬直化、これを打破したいという考え方から自由化という論議が出てきたものと思っております。もちろん自由化を論議する人はたくさんいらっしゃるわけでありますけれども、何をどう自由にしようとしておるのか中身が不明確でありまして、相当自由を大きく言う人もあれば中には多少の弾力化あるいは多少の選択の幅を認めてもらいたいといった程度のこともあるようでありまして千差万別でありますが、いずれにしても現在の硬直した学校教育あるいは画一的な学校教育を改革したい、そういう考え方からこの自由化という論議は出てきているものと理解いたしております。
  102. 大原亨

    大原委員 私が文部大臣に質問しておりますのは、教育行政を進めてきた文部省としてどういう自己反省をしているのか。あなたがお話しのような画一化という問題が出たとするならばそういう自己反省を各サイドでして、教育をどうするかという国民的な合意が出るんじゃないか。議論をしておっただけではだめなんだから、文部省自体はそういう批判に対して文部省のサイドからどういう自己反省をしているのか、それがあってもしかるべきではないか。あらゆるサイドからそういう議論を出さないと具体的な提案にならないのではないか、私はそういうことを言っておるわけです。あなたの御答弁はそういう私の質問の真髄に触れてない御答弁ではないか、こう思います。一般的な御答弁であって月並みな御答弁、こういうことであります。いかがです。
  103. 松永光

    ○松永国務大臣 行政に携わる者は常にみずからのなしてきた行政について、これでよかったのかどうかという反省が必要であると思いますし、いろいろな仕組みにつきましても時の経過とともに時代に合わなくなるものも出てくるわけでありますから、常に反省をしながらよりよいものを求めていくという姿勢が必要であろうと思います。  文部省としても硬直化、画一性、こういったものがあることは事実として認めておるわけでありまして、実は、先生も御承知と思いますが、先般も大学設置基準を改正いたしまして、大学の教員、今までは博士が原則で、しかも相当の研究論文等を発表した人でなければ大学の教員にはなれない、こういった制度になっておったわけでありますが、そういったことでなくして、専門的な分野で相当の深い知識を持っている人ならば大学の教員に採用しでもよろしい、こういった大学の教員の資格要件を大幅に緩和する省令も実は出したわけであります。そういったことで、硬直性、画一化といったものは常に改革するように努力していかなければならぬ、こういうように思っております。  なお、臨時教育審議会の審議が深まってまいりまして、そして答申が出たならば、その中でやれるものは的確にやっていくように私どもは努めてまいりたいと考えておるわけであります。
  104. 大原亨

    大原委員 教育行政の制度とか、いろいろな問題もあるのですよ、六・三・三・四制の問題もあるのです。例えば一つの例を言いますと、それはイデオロギーにしてもいろいろな議論があるわけですが、しかしそれは相互批判できちっとするとしまして、例えば学習指導要領などの法的な規制、こういうことになってまいりますと、そうではなしに、やはり参考、データとして出すのならどこの国も出しているわけですから、もう少し自由な気持ちで、職場とか父兄その他が自発的に、自主的にそれがとらえ得るような、そういう仕組みにしていくことについての自己批判があってもいいと私は思うのですよ、ここの問題。一つの例を挙げましたが、そういう思い切った、やはり文部行政自体が画一化を進めてきた、全部の責任とは言いませんよ、それぞれあるから。言いませんけれども、そういう問題についてもやはり議論を思い切って深めるような自己反省が出てもいいのじゃないかと私は思いますが、いかがですか。
  105. 松永光

    ○松永国務大臣 日本の学校教育の中でも、先生御承知のとおり小学校、中学校、高等学校、大学とあるわけでありますが、いわゆる初等中等教育というものは国民に対して普通教育を施すということでありますので、しかも教育基本法の考え方として、日本全国どこに住んでおっても同一水準の普通教育が受けられるような、そういう教育の機会均等がなければならぬという立場でそういう制度になっております関係上、文部省としては、教育基本法を受けた学校教育法の定めに従いまして、初等中等教育につきましては、一定の教育課程を編成するに当たっての大枠の基準を定めたものが学習指導要領なんでありますが、これは今申したとおり初等中等教育が国民に対する普通教育であるということにかんがみまして、この学習指導要領で教育の内容等につきまして一定の基準を設けるということは、これは守っていかなければならぬことだというふうに考えておるわけであります。それを前提にして、学校の先生がその場その場に応じて創意工夫を凝らして教育をやっていただく、こういうことが正しいというふうに思っております。
  106. 大原亨

    大原委員 教育の機会均等という言葉が出たのですが、御承知のとおり、教育基本法の中にもあるとおりですね。これは今まで議論されたとおりです。  その教育の機会均等というのはどういうことから出ておるかというと、一つは人権思想から出ておるのです。というのは、貧しい者も富める者も、あるいは例えば部落解放とか同和教育というのも基本的な人権の問題ですよ。障害者の教育の問題も一つはそういう観点がある。そういう基本的な人権に対する考え方で、教育は機会が均等でなければならぬという議論が一つある。それからもう一つは、日本の制度で言うならば、義務教育費国庫負担法という制度を設けて、都市、農村全体を問わず、財政的に国が平等な裏づけをするという財政上の機会均等主義、こういうのが制度としてあるわけですね。  だから、教育の機会均等というのは、そうたくさんいろいろな問題に乱用されているのではないわけであって、そういう観点から言うならば、例えば教育クーポン制などのフリードマンの考え方を入れるということになれば、義務教育費国庫負担法は変えるのか。これは一人一人の教育バウチャーを決めるわけですから、それを基礎にして、子を持っている親が、教育の公共サービスを利用する者が選択しようという議論ですから、義務教育費国庫負担法は変えるということになりますね。教育の機会均等とか自由化というものの議論の中で、そういう議論を含んだ議論がなされておるわけですけれども、これは画一化の問題に対する非常に誤った議論からいろいろな議論が発展しておるというふうに私は理解をするわけです。  教育バウチャーの問題と義務教育費国庫負担法との関係について、あなたは考えて自分の意見を持ったことがおありですか。文部省はどういうふうに考えているのですか。中曽根さんはそういうことを考えているように私は思っているのですが、いかがでしょうか。
  107. 松永光

    ○松永国務大臣 私は、総理が教育バウチャー制を考えているとは到底思えません。随分長くつき合っておりますけれども、そういう考え方を総理から聞いたことは私はありません。  今の義務教育費国庫負担という制度は、先ほど私が申し上げましたとおり、全国どこに住んでいようと、貧しい県、貧しい町に住んでいようと、あるいは豊かな県、豊かな市に住んでいようと、とにかく義務教育に関する限りは同じ水準の教育が保障されるような状態にしなければならぬという考え方から、義務教育費国庫負担という制度ができたと考えております。この制度は私はぜひ守っていきたい、こう考えておるわけであります。
  108. 大原亨

    大原委員 中曽根さんはあなたの親分筋に当たると思うのですが、だからよく知っておられると思うのですが、しかし、あの人は人の話をちょっと聞いてはすぐ変わるし、非常に変わり身の早い人で、それで風見鶏と言われたり、またぐらこう薬と言われたりするわけですが、あっちにぺったん、こっちにぺったんというわけですが、そういう議論はおられぬところでやってもしようがないので、私は時間がないので前へ進んでまいります。  私は、教育改革はこういうことが目標ではないかというように思うのです。というのは、これから二、三十年のうちに日本はずっと高齢化社会に進んでまいります。世界のどことも違うわけですが、そうすると人口構造や雇用構造が変わりまして、高齢化社会になるということは何かといいますと、少産と少死なんですから。合いつも議論は少死だけの議論があるのです、そして年寄りがふえるという議論なんですが、実際は少産なんですよ、一つの側面は。そうすると、子供は戦争直後は二百四、五十万人ほどいたのが今は百四、五十万人ですから、それがある程度サイクルでこういっておりまして、昭和九十五年とか九十八年は大変なことになるということなんですね。そうすると雇用構造も変わってくるわけですからね。中高年齢者をどういうふうに活用するかとか、今までのような、学校へ入学して学校を卒業する、そして五十歳代の定年をする、後は隠居、こういうことではなしに、ワークシェアリングということ、労働大臣もきょう出席してもらっておりますが、ワークシェアリングということで仕事を分かち合って、労働時間短縮も政府の方針としてちゃんと持つ、週休二日制で四十時間単位というのは常識でしょう。それから、定年は延長する場合に年金を考えても何を考えても六十歳を六十五歳にしなければならぬ。六十歳から六十五歳までの雇用をどうするかといいましたら、今は経済界というのは、四十過ぎたらお払い箱になって窓際族がどんどん出ているのですよ。そういう考え方で教育の問題を考えていくと、あるいは雇用や産業の問題を考えると、それこそ日本は完全におだぶつになるわけですよ。  だから、労働時間を短縮して、働く、学ぶ、休む。余暇というものは権利だけでなしに義務だと通産省の元次官の佐橋さんは開発センターで言っているのですよ、発想転換。生涯学習、生涯労働、そして余暇の開発や余暇の活用、こういうものを組み合わせて、そして政治全体がどう取り組むかという問題の一つとして生涯学習がある。生涯学習ということは、有名大学へ入ったらそれで終わり、こういうことではなしに、一生涯を通じてやはり勉強できる、学習できるようなチャンスを与える。そうすると、大学生を受け入れる社会をどうするか、財界をどうするか、大学自体をどうするかということを考えて、学歴社会から学習歴社会へという転換をしないと、日本の本当のエネルギーというものは抹殺されてしまうのではないか。したがって、教育改革の目標、理念は、学歴社会から学習歴社会に転換することである。  そういうことのためにまず何をやるかということになれば、私は大学改革だと思っておる。大学を改革しなければ、高等学校、中学校、小学校が予備校化して、受験戦争で、偏差値で個人も学校も全部序列化して、そして受験戦争の中で学歴社会を追求する。大学へ入る十八歳の一日の試験が成功すれば一生が決まるというふうなばかげた社会では、これからの日本はやっていけない。そういう学歴社会から学習歴社会へどう転換するかということを政府全体がどう取り組むかということが、私は教育改革の基本的な目標であるというふうに思うわけです。そうすれば、受験戦争とか偏差値とか中高一貫教育とか、そういう問題はずっとそれぞれ整理ができるわけでしょう、義務教育がどうかという問題があるわけですから。義務教育の方で塾がどうのこうの言って自由化では、その方で、もうあとはだめだからここへ行けとか、クーポン出してやるから行けとか、そういう考え方で、経済のマーケットと同じような考え方でやるというのは、ここへ議論が集中しているというようなことは、議論の仕方としてはおかしいことだと思うのですよ。  私が申し上げる学歴社会から学習歴社会への転換、こういうものが脱工業化、先端技術、そういう未知数の分野に挑戦をし、高齢化社会において二十一世紀の将来を開いていくという上にとって基本的な教育改革の課題であるというふうに私は思うが、これは文部大臣、それから行政全体の交通整理をしておられる後藤田長官からひとつ、聞く一方では眠いでしょうから、順次答えてもらいましょうか。
  109. 松永光

    ○松永国務大臣 今、先生のおっしゃった学歴社会から学習歴社会へという貴重な御意見を拝聴いたしまして、私も非常に感銘深く聞かしていただきました。現在の学歴社会はぜひ打破しなければならぬというふうに私も考えておりますし、それから、先ほど先生御指摘のように、お互いが長生きをするようになってまいりましたから、二十数歳までの学校の勉強だけでは新しい時代には対応していけないわけでありまして、その後の学習、これがその人間が社会において活躍していく場合に非常に大事なことである。その意味で生涯教育というものが大事になってくるというふうに思っておりますが、繰り返し申し上げますが、学習歴社会という考え方、非常に貴重な御意見として拝聴いたしました。  そしてまた、今度の教育改革につきまして、大学改革を思い切ってやれという御指摘、私も全く同感でございます。今、臨時教育審議会では、言うなれば総論、二十一世紀を展望した教育のあり方、これを第一部会でやっておりまして、あと第二部会、第三部会、第四部会、そして第三部会と第四部会との合同問題の検討会、こういうように分かれておるわけでありますが、今の先生が御指摘のような大学の改革、学歴社会から学習歴社会へといったような改革の問題等につきましては、これから第四部会等を中心にして論議がなされるものと私は期待をいたしておるわけでありますが、先生の御意見、まことに貴重でありますので、拝聴さしていただきまして、今後の文部行政の参考にさせていただきたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
  110. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 私は、教育改革についての先ほど来の大原先生の御意見を承って非常に啓発をせられました。やはりこういった御議論が臨教審の中でも反映をしていくということが大変肝心なことではなかろうかな、私はこう思ったわけでございますが、お尋ねの生涯教育あるいは生涯学習、これはやはり人間の内面を充実するという意味においては、小さな子供のときから、小学、中学、高校、大学、それからさらに職場につけば職場における現任の教養、さらにはまた社会一般のいわゆる社会教育、生涯にわたって努めなければならぬことだろうと私は思います。  そういう意味合いで、私が担当しておりますのは公務員の問題でございますから、今回の教育改革の議論の中で、全体としての生涯教育、生涯学習についてのシステムをどう考えるかということは、私は当然臨教審から出てくるんじゃないかと思いますが、それらは私どもは真剣に受けとめて、現在は文字どおり何といいますか現任教育、現職教育をみんなそれぞれやっておりますけれども、そして同時に実績主義と、こう言っておりますけれども、果たして本当の意味で職場における教育、それが能率に反映しており、その反映した能率が適切に人事の上に反映しているかどうかといったような点は、私は政府としては真剣に検討すべき問題であろう、かように考えております。
  111. 大原亨

    大原委員 時間がありませんから、具体的な問題を順次言います。  直ちにできることで二つの点を挙げてみますが、大学卒業を受け入れる企業が有名校を指定する、こういうことなどは、政府がその腹になって、労働大臣も通産大臣も全部一緒になってこのことをやればできるはずなんですよ。そのことをやめることはできるのです。高齢化社会、生涯教育というのは、本当に実力と創造の社会ですから、そういうことはできるわけです。公務員制度についても、採用や昇進について、やはりきちっと学歴社会を構成しないような仕組みで、生涯学習、生涯教育を測定できるような測定の仕方があるはずですから、この二つの点について、ひとつまず改革しようと思えばできるのですよ。これは各方面から出ているのですけれども、これは政府がやるつもりでなければできない。わかっていることはやらなければならない。臨教審待ちだなんというような、官房長官が後へ砂をひっかけて帰っていくような、ああいう無責任なことはない。二つのことについて、労働大臣はどう考えられますか。通産大臣はいかがですか。総務長官はいかがですか。
  112. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 私は、文部大臣や総務長官と同じように、先生の生涯学習教育というお考えにつきまして大変共鳴をしたものでございますけれども、今御質問の指定校の問題につきまして、企業の方も、それから求職する側の学生の方も、非常に多様的な価値観の中で選択をしておりますので、既にこの指定校制で求職する人は九%ぐらいしかおらない。むしろ非常に幅広い選択幅の中で九〇%近くが指定校制度の枠を超えて就職企業を選んでいる、こういう実態もございますので、さらにそれを促進すべく労働省としても努力をしたいというふうに考えます。
  113. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 大原先生の御意見、まことに同感でございます。本来的に、指定校制度等の就職の問題につきましては、文部大臣あるいは労働大臣所管の問題でございますが、産業行政を広く所管をしております通産省といたしましても、学歴社会にならないように、広く人材を登用いたしまして、まさに自由主義経済が発展するということで対応してまいりたい。大原委員の御趣旨をよく体して私どもも努力をいたしたいと存じます。
  114. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 基本的には先ほどお答えをしたとおりでございますが、現在、公務員の教育の問題につきましては、人事管理の上から御指摘のような点を問題意識としてとらえまして、職員の資質の向上維持あるいは能力開発といったようなことに懸命の努力をしておるわけでございますが、今後とも、毎年度、人事管理の運営方針ということで重点事項を決めてやっておるわけでございますが、しかし、こういった点で、先ほどお答えしたように私は必ずしも十分とは思っておりません。これは人事院当局とも十分そういう点を考えながら、さらにまた臨教審において生涯教育についてのシステム、こういうような答申が出ると思いますから、その上でさらに改善すべき点はやっていきたい。何とかひとつ、職場における能力が開発せられたそれが人事の昇進昇給、こういうように反映をするように、そして同時に採用試験においても、やはり学歴偏重ということでなくて、その人間がどれだけの学習をした結果、能力があったのかという点を中心に採用すべきである、かように考えておりますので、今後とも私どもとしては検討してまいりたい、かように思います。
  115. 大原亨

    大原委員 あと中国孤児の教育問題をやらなきゃいかぬので、はしょって言いますが、大学改革の中で緊急に取り上げてやるべき問題は、かなりこれは議論が出ておるわけです。例えば有給教育休暇制度を設けてはどうか、有給教育休暇制度を設けるべきではないか、ILO百四十号条約で、ILOにおいてもこれは議論をされておるわけですから、やってはどうか。これは各省に影響いたしますよ。例えば、大学における中途退学は認めて、再入学についても制度として保障するとか、あるいは社会人がどんどん大学へ入っていける制度をつくる。社会人の大学入学、再入学、これはリカレント制、こう言われていますが、それから部分単位の修得の制度とか単位の互換制度とか、あるいは例えば今度の放送大学についていろんな議論があったのですが、問題点を持っておりますが、しかし、これを生涯学習の場に適用しようといたしますと、スクーリングが問題になります。スクーリングは四分の一ほど必要です。そうすると、二十日間の基準法上の有給休暇では足りません。ですから、企業も一般社会も、生涯学習についてそういう機会を保障するということを一つといたしまして、例えば、有給教育休暇制度というものを制度化するならば、このことは私は大学に対する考え方をがらっと変えてくるのではないか。高等学校を出る者が、自分の一生を通じてどういう勉強をしようという問題意識を持った高等学校の生徒になるのではないか。また中学生になるのではないか。大学は行かなくても、まだ行くという意思があり能力があれば行けるというふうなチャンスをつくることが、それが大学の開放というか生涯教育につながるのではないか。  有給教育休暇制度について、労働大臣あるいは文部大臣はどのように考えておられるかを聞いてみたい。
  116. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 先生の御指摘の有給教育休暇の問題は、ILOの百四十号、百四十八号の勧告もされているわけですけれども、そうした問題を、就職いたしましてから生涯を通じて、段階的に職業訓練あるいは能力開発というものを進めなきゃいけないということで一たまたま労働省も、そういう先生と同じようなお考えに基づいて、今度職業訓練法の一部を改正する法案をこの国会に提案をさしていただいておる、そういう趣旨を生かすべく今実行の段階に入らしていただいておる、こういうことでございます。  それからいま一つは、私が労働時間短縮の問題を提案しておりますのもそういう意味で、高齢化時代あるいは技術革新の時代において、やはり常に職業能力を教育訓練を通じて開発をしていきたい、こういう意味も含めまして、その両面から、労働省としては、今の先生の御指摘のような問題について取り組むことが大事なことではないかというふうに考えておるところでございます。
  117. 松永光

    ○松永国務大臣 有給教育休暇制度の問題でございますが、これはILOが提案しておることでありますけれども、先ほど労働大臣の方でお答えがありましたようなことで、各方面でいろいろな問題がありますので、そうした問題についてクリアできるならば私としては結構なことであるというふうに思いますが、文部省として考えることは、先生が先ほど御指摘になりました放送大学、生涯教育の場としてはまことにすばらしい大学が四月一日からスタートするわけであります。スクーリングのことについて御心配がございましたが、全科履修生の場合でも一週二時間で済むわけでありまして、科目履修生の場合には恐らくスクーリングはほとんどなくても履修ができる、こういう仕組みになっておりますので、できることならばこの放送大学、これを大いに活用して、そして生涯教育の場として活用していただきたい、こういうふうに思うわけであります。  今回の応募者あるいは入学者の中を見ますというと、三十代から四十代までの人が非常に多うございます。恐らく社会に出てこういったことをもう一回勉強したいということで、全科履修生あるいは科目履修生として放送大学に入学されたものと思うのでありまして、これが大いにひとつ活用されることを期待をしているような次第でございます。
  118. 大原亨

    大原委員 文部大臣としての答弁に対する期待は、例えば社会人の大学入学に対する機会を保障する、そういう制度の裏づけとして有給教育休暇制度等も活用すべきである、これが必要である。こういうことを含めて大学自体を生涯教育の場にしていくように開放していくということについてはだれも異議ないのですから、これを具体的に、一つ一つは非常に難しいですよ、難しいけれども、やはり断行して、大学を変えていかなければいかぬと思うのです。  もう一つ、各方面から議論として出ておる問題はコミュニティーカレッジの問題ですが、それは地域短期大学とも訳されます。その際に、地域短期大学の場合には三つのコースがあって、第一は、進学コースで二年が終わったならばどこの四年制へも入っていける。第二は、労働省関係の職場訓練の問題を含めて短大コースでやる。第三は、スポーツとか教養とかそういうコースで第三のコースをつくる。例えば広島県だったら、三次とか庄原のそういう北の方に地域短大をつくってくれ、そうしないと農村の地域が活性化しない、こういう要望がたくさんあるわけですから、地域コミュニティーの、コミュニティーカレッジとも言うわけですが、私は、そういう制度について、金はかなりかかると思うが、しかし、昭和六十五年、昭和六十八年は大学ですが、それをピークにずっと高等学校、大学は減っていくわけです。ですから、そういう地域に密着した大学で再教育しながら、教授の選任にも反映させることが私は可能であると思うし、私はそういう道は非常に希望のある道であると思うのです。社会人が学校に入るということは、例えば教員の場合、教師の場合を考えてみたって、これは私は試補制度などというふうな問題よりも、その方が、やはりそれで差をつけるということではなしに、実際に働いている者がもう一回そういう高等教育を受けるチャンスを与えるということがいいのではないか。  我々、実力とか創造とかいうそういうコースでそういう問題を考えておって、割合適用されているのは、政治家などはそういう生涯教育の考え方がある。東大を出ておるからといったってつまらぬやつはだめだしね。それから新聞記者もやはりそういったところがある。私もそういう体験がある。書けないとかしゃべれない者はだめですしね。そういう社会にだんだんあるわけですけれども、学歴社会を打破するためには、そういう地域に身近なところに大学をつくって、あらゆるチャンスを与えていくということが必要であると思います。文部大臣いかがです。
  119. 松永光

    ○松永国務大臣 先生御指摘のアメリカのコミュニティーカレッジでございますが、これは我が国の短期大学とは少し性質が違っているようでありまして、今先生の御指摘のように三種類ぐらいあるようでありまして、一般の教養を目的とするもの、職業教育的なもの、そして高等学校卒業の資格を与えるもの、こういった三種類があるようでありますが、いずれにしろ、地域の社会のニーズに応じた生涯学習の機関として、私は、今後の日本の短期大学のあり方等とも考え合わせながら参考にしなければならぬ問題だというふうに考えております。  なお、昭和六十一年度に学生を受け入れることになっておる高岡短期大学は、地域に開かれた短期大学のモデルとして社会人の受け入れを積極的に行う、それと同時に、短期大学開放センターが中心となって地域社会人を対象に公開講座等も実施するように構想されておるというものも実は文部省で進めておるところでございます。  いずれにせよ、短期大学を出た人でさらに大学に行きたいという人が大学に入れるような仕組み、これは相当入っているようでありますけれども、より進めていきたい、こう考えます。  それから、放送大学とほかの大学との間の単位の互換の問題、これも大いに積極的に進めていきたい、こういうように考えております。  いずれにせよ、社会人になった人が学習をしたい、こういうニーズにこたえるものとして今一生懸命になっておるのが先ほど来申し上げておる放送大学なんでありますが、それと同じような考え方で、今後とも社会人が学習をしたいというそのニーズにこたえることのできるような仕組みを研究し、できる限り実施に向けて努力をしていきたい、こう考えておるわけでございます。
  120. 大原亨

    大原委員 問題だけを挙げておきますが、この前、去年の予算委員会で三塚さんがここで質問をされた中にあるのですけれども、議事録を私は見ましたが、それは大学院大学の構想ですね。つまり、東大という有名校をトップにして偏差値で各大学が格付になっておる。それを受験する者も格付になっておる。高等学校も格付になっておる。そういう体制を崩すためには、やはり学術専門家を養成するという時代の要請を先取りをしながら、今でも修士課程とか博士課程というのは東大でも理工関係で、一橋でも、あるいは蔵前でも多くなっているわけですから、ですから大学院大学というものをつくって、従来の偏差値による大学の格付というものをこの際なくしてしまう。そういうことは三塚さんも一つの例として言って、中曽根総理も答えておりましたけれども、まあこれは非常に確信を持ったことではないわけですし、それでその後も議論があったようですが、そういう制度というものは、これは脱工業化社会、これから先端技術の時代を迎えて思い切った発想の転換が必要だし、それは社会経済も要請しておる問題であります。だから、大学院大学の問題は思い切ってやれば大学の形は変わってくる、こう私は思いますが、これについてはだれに答弁してもらいましょうか。じゃ、文部大臣にお聞きしておきますか。
  121. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 御指摘の大学院の問題でございますけれども、私どもこれからの高等教育の充実については、今後大変充実を要する大事な問題である、かように考えております。現在、大学設置審議会でもその点について議論をしていただいているところでございまして、制度としては、いわゆる大学院のみを置く大学の制度は設けられているわけでございますけれども、実際に学部組織に直接対応しない研究科、専攻の設置等を進めるということは、具体的には進めているわけでございます。先生御指摘のいわゆる大学院大学の設置の問題、先ほど来御議論がございますように、今後の高等教育、学術研究の推進のために大変重要な課題であると考えておるわけでございますが、私ども、設置審議会の検討等も経て、それらの施策については今後全体的な視野の中で具体的な対応を検討してまいりたい、かように考えております。
  122. 大原亨

    大原委員 せっかくですから厚生大臣、ひとつあなたにも質問しなければ、同じ広島県で、選挙区は違いますが失礼だからね。  高齢化社会というのは、申し上げたように出生率が低下することなんですよ。私どものときには、私は兄弟六人ですが、大体十人くらいのが多いわけですね。今は一人が多くなったわけで、合計特殊出生率は一・七ですから、一人とか二人の子供であったら家庭においても社会性がなくなるわけだ。それはなぜそういうふうになっているのかというと、教育費に金がかかる、住宅ローンに金がかかるから結局は子供は減していくわけですよ。それは共働きとか高学歴はあるですよ。だから、やはり児童福祉というもの、保育所というもの、こういうものを生涯教育でどう位置づけるかということについては日本の政治は非常におくれているのです。大蔵大臣なんかはこれは非常に不熱心です。児童手当とか児童扶養手当というのは、財界でもそうですが、片っ端から切れというふうな態度で臨んでいる。六十二カ国が第一子から児童手当を出しているのですよ。だから、児童福祉というものは、子供を生んで育てる条件を社会的につくっていくということが若い人口をふやしていって将来の民族の活力をつけるのですから、そういう問題と一緒に、六十歳から六十五歳までの雇用と年金をどうするか、特に年金をどうするかという問題については、今の改正案ではだめです。これは私にやらせれば何時間でもやるけれども、だめです。ですから、そういう問題でライフサイクルを、八十年を出しているわけですから、そういうポイントとなる重要な問題については厚生行政の中で十分配慮して、生涯学習、生涯労働、余暇の開発、ライフサイクル、この問題で人間が生き生きとして最後まで生きれるような条件をつくっていくことが必要である。厚生大臣の見解を聞きましょうか。簡単に言ってください。
  123. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 御指摘のように、将来は恐らく二十歳から六十歳までの働く方の人口が五〇%を割るという事態も出てくると思うわけでありますから、したがって、できるだけ元気な方は長く働きたいという個人個人のお気持ちもございます。御指摘のような生涯勉強しながら能力を蓄積してそれを社会に還元するということも十分考えていかなければなりませんけれども、特に子供、児童のニーズの問題でありますけれども、これも今日ただいまということだけではなくして、将来、世代の間でも次の時代を担う子供の問題をお互いに考える、そして社会全体として関与するという意味で、児童手当等の問題も大変大きな課題、重要な問題であると認識いたしております。
  124. 大原亨

    大原委員 その他制度の問題では、例えば中高一貫制の問題というのが最近出ております。しかし、これは非常にたくさんの問題を抱えている。私学で中学校へ入ったら高等学校、大学までぼんと行けるというのでそういったエリート教育を望んでいるのかというふうに思いますけれども、この適用は、どの方からも案が出ているのですが、具体的に考えてみると難しい問題があります。  それから共通一次のアラカルト方式を、飯島メモで出ておりますね。あれも私学に聞いてみますと、あの中に入っていくと結局私学の格付を認めることになって輪切りになっちゃう、金は入らぬし、あんなものはやるものはおらぬです、こう言っているようだな。だから、非常に力んで取り組んでおりますが、こういう問題等も私は国会で十分議論すべきだと思うのです。  天野委員長にも申し上げておきますが、岡本会長なども一定の段階では来て、中間報告なんかちゃんとしてみんな意見を聞かなかったら、つんぼ桟敷でどこへ行くかわからぬようなことでつまらぬ議論ばかりしよるということでは私はだめだと思います。厳重に私の意見を申し上げて、御注意するとは言いませんけれども、申し上げておきます。  それから最後に、中国の残留孤児の問題ですが、これは厚生大臣、それから文部大臣にお聞きするのですが、中国残留孤児の問題は、私はハルビンにおって土地カンもあるのですけれども、この問題は終戦の土壇場でソビエトの軍隊が入ってきたということが一つの契機です。しかし、それはヤルタ協定など日本の政府は情報を何も知らないで、瀬島さんも参謀をしておられたらしいのだが、関東軍はずっと南へ下ったのですよ。そして開拓団その他根こそぎ動員したわけですよ。根こそぎ動員したから、ばっとソビエトの軍隊が入ってきたときにはだれもいない。婦人と子供だけだ、年寄りだけだという状況であの混乱があったわけですね。それで関東軍の山田司令官などが、瀬島さんもその組だと思うのですが、しばらくしましたら軍刀を投げて、丸腰でソビエトの俘虜になるのにぞろぞろ組んで行ったわけですよ。それは新聞で報道されたわけだ、私は見ているけれども。それで、生きて虜囚の辱めを受けずというふうな戦陣訓なんかあるのにあいつら何だというふうにみんな思ったのですよ、一般の民衆から見たら何だと。関東軍は日本の国民を守るというようなことなんか全然しない。だから、根こそぎ動員で行ってみたら竹やりしかなかったというところですから、ざあっとみんな帰る。帰る途中で大混乱が生ずるということでしょう。そして四十年たっているわけですから、昭和二十八年の文部省の通達などは今これは生きていませんよ。二十八年当時でしたら八年ぐらいですから、日本語はみんなわかっているのですよ。今は四十年たっているのですから四十とか四十五とかいうような人でしょう。五十とかいう人でしょう。それが子供を抱えておるわけで、中国人の妻と一緒になっておる。  それで、厚生省が最近やった中でいいことは、結局引き受ける親元、親兄弟がなくても日本に帰国ができるということになった。そうすると、いろんな資料等にもありますけれども、二千人から五千人、七千人という人が帰ってくるのではないかというふうに言われているわけです。それにプラスいたしまして、日本人で子供を連れて中国人の妻になった人がたくさんおるわけだ。これは言えないから黙っておるわけです。しかし、それも年限がたっておって、ハーフですから子供は日本語がわからないのです。こういう問題もあるわけです。だから日本人孤児の問題については、今のような厚生省のへっぴり腰ではなしに――これは政府全体の責任です、大蔵大臣の責任ですけれども。そして文部省も日本語教育については徹底してやるというふうにしないと、所沢のセンターは四カ月の訓練ですけれども、これはいいんですが、しかし、これも年限を延ばして拡大をするということをやらないといけないのではないか。直接引き揚げの問題を扱っておられた厚生大臣として私は率直な感想を述べてもらいたいし、これからどういうふうにやりたい、こういうことについて所見をいただきたい。文部大臣は日本語教育についてお考えをはっきりお聞かせいただきたい。
  125. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 御指摘のように、四カ月のセンターの期間では日常生活の日本語を覚える程度でございますから、その後我が国に定着していろいろ職業の道につくとか社会生活をする上では、これから先いろいろな政府内の各機関にお願いをしてそういう教育をしていかなければならぬ、そういうふうに考えております。
  126. 松永光

    ○松永国務大臣 中国からお帰りになった人が、日本の社会で溶け込んで不自由なく生活を送っていただくために、日本語の習得が非常に大事であるということは先生御指摘のとおりでございます。今まで文部省としては日本語学習教材の作成、配付、あるいは日本語を教育する指導者に対する研修会を開催するなどの施策をやってきたわけでありますが、まだまだ十分ではありませんので、今後ともさらに日本語の教育指導方法の改善、さらに今申し上げましたような日本語の指導者の養成、研修、こういったことを通じて一層施策を充実をして、中国からお帰りになった人が日本語を早く習得をしていただいて、日本の社会で早く溶け込んで立派に生活がしていただけるように一生懸命努力をしていきたい、こういうふうに考えます。
  127. 大原亨

    大原委員 政府全体の取り組みというものが、所沢センターの設置以来厚生省の分野においてはかなりいい芽が出ているわけです。しかしながら、小学校、中学校、高等学校にそれぞれ子供が入る今段階でありますが、それを受け入れる体制がない、中国語がわからない者が受け入れてもしようがないということですから。そういう問題があるわけですから、例えば江戸川区とか江東区などで区として非常に努力をして、政府も若干援助しておりますが、日本語学級をつくってまいりますと、他の東京の地域から殺到する、あるいは全国からそれを聞いてそこへ集まる。そうすると、その区は手を上げてしまう。結局都とか国の段階で、この中国人孤児の特殊事情を十分理解した上において日本語教育を徹底してやらないと、親もわからないし子供もわからぬわけですから、就職の余地がないものですから、出て歩くこともできないし、家の中だけにじっとおって、出ればわからぬからいじめられる。そういうことで自殺者も出る。疎外をされるということで、生活保護からなかなか脱却できない。やはりこれからどんどん帰ってくる人がふえると私は思うのですよ。厚生省が、そういうふうな引き受けがなくても日本人であれば帰国を認めるということをやった。  厚生大臣、これに関連いたしまして、養父母に対する補償の問題、交渉中でございましょうが、いつごろを目標にしてこれを妥結されるのか。それから、所沢のセンターについてはさらに拡充強化をして、そういうものを、一カ所だけではなしに全国に拡大をされる意思はあるかないかということですね。  文部大臣は、昭和二十八年の通達があるわけですが、申し上げたように、それはもう古いわけです。中学校、高等学校、小学校については具体的な要望にこたえ得るような体制になっていないわけですが、これをさらに強化をして万全を期していただくということが絶対に必要ではないかというふうに私は思います。教育の機会均等の問題でもあるわけですから、その問題で厚生大臣、文部大臣から御答弁いただきたい。
  128. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 最初の、養父母の方々に対して、永住帰国する孤児が話し合いがついた場合の扶養費の問題だろうと思いますけれども、できるだけ早く結論を出したいということで今鋭意中国政府と折衝中でございますので、また一段と速度を速くするように配慮をいたしたいというふうに思います。  また、センターのことにつきましては、御指摘のように、今後帰国する孤児が相当ふえると思いますので、その様子を見ながら拡充強化を図ってまいりたいというふうに思います。
  129. 松永光

    ○松永国務大臣 中国からの引揚者子女教育につきましては、協力校を指定して、そして子女の積極的な受け入れをいたしておりますが、今先生御指摘のように日本語習得の問題がある、それから生活慣習というものの違いがある。こういったものを早く、日本語の習得、それから生活慣習について日本の一般の人との同化、こういったものをさらに一層進めていくように今後とも一生懸命努力をしていきますということを申し上げたいと思います。
  130. 大原亨

    大原委員 これは大切な問題ですから厚生大臣から聞いておきたいのですが、残留孤児と言われている四、五十歳の人、それと家族、これは今中国に二千名とも言われている。あるいは五千名、七千名と言う人もあるが、これはどのくらい残留しておられますか。
  131. 入江慧

    ○入江政府委員 私どもが肉親を捜してほしいという依頼を受けております孤児の数は、現在約千六百名でございますが、今お話しのように、中国側では日本の残留孤児は約二千名おるというふうな話が出ております。したがいまして、その二千名の内容といいますか、早急にその二千名の名簿をいただきまして、こちらの持っております千六百名との関係を究明してみたいというふうに考えております。
  132. 大原亨

    大原委員 それ以上にプラスアルファの残留日本婦人の問題があるわけです。これはもう一方名ともそれ以上とも言われます。  そこで文部大臣、一番問題は中国語の先生がいないということです。先生が学校にいなければ、小学校も中学校も高等学校も処置ないわけです。中国語がわかる先生を、定員をふやすということを考えなきゃならぬ、その人は国際教育も担当するわけですから、中国語がわかれば。残留孤児だけの問題ではなしに、そういうバックグラウンドをつくるような国際教育をやれば、帰ってきた人が学校に居つくし、あるいは社会に出ていきやすいのではないか。それでみんなが職場で協力をする、そして社会で協力をするという形ができ上がるのではないか。そういうのは協力校制度があるんですけれども、非常に財政的な裏づけが少なくて、そしてちょっと目先だけの問題だというふうな考え方の処置の仕方がなされておるのであります。だから中国語のわかる教師を確保していくということを小中学校の段階でやると一諸に、高等学校については帰国子女の一般的な問題もあるわけですから、特別に枠を設けて入れる、こういうふうに風通しをよくしておかないと、希望を持って日本に帰っても生きていくことができないということになります。これは非常に大きな社会問題になります。ぜひこの問題については新しい決意で臨んでもらいたいと思いますが、文部大臣、いかがですか。
  133. 松永光

    ○松永国務大臣 先生の御指摘、まことにごもっともであると思いますので、今後一生懸命検討をし、努力をしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  134. 大原亨

    大原委員 大蔵大臣、おられますか。――今の残留孤児の問題、これから増加していくであろうそういう問題を含めまして、まず教育、日本語を覚える、夫婦も四十五ぐらいから五十ぐらいですから、もう年をとっている。その子供が皆小中高等学校ですから、これの日本語教育を中心とする教育の受け入れ体制をとることが、これはそれほど大きな予算上の負担ではないのですけれども、しかし、必要なものは出す、こういう方針で大蔵大臣も将来関心を持って十分努力をしてもらいたいと思いますが、いかがですか。
  135. 竹下登

    ○竹下国務大臣 基本的には、これは文部省あるいは厚生省で十分お考えいただいて、それに対して適切に対応するということであろうと思っておりますが、私もお話を聞きながら、御意見の趣旨は私なりには十分理解をさせていただいたような気がいたしております。
  136. 大原亨

    大原委員 今一番問題になっておるのは、そういう該当者が多いんですが、高等学校に入る前です。文部大臣、高等学校に入る前。ですから、言葉にハンディがあるわけですから、内容的にも、僻地におった人が多いわけですから、いろんなコースや単位を履修していない場合が多いわけですね。ですから、そういうことについてやはり十分配慮しながら、小中学校は義務教育ですけれども、高等学校についての受け入れ体制については、通達はあるわけですけれども、しかし、これは古いときの条件でございますから、その通達を適用できないような条件があるということをお考えの上で、特に高等学校の受け入れ体制につきましては十分な特別の配慮をして、そして政府としても、あるいは都道府県や地方においても遺憾のないようにしてもらいたい、こういうことをこいねがうわけですが、お答えをいただきたいと思います。
  137. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 中国からの引き揚げ子女の高等学校への進学の問題でございますけれども、昨年これは中国からということに限らずに、帰国子女全般、中国問題まで含めまして、全般につきまして昨年初中局長名で通知を各都道府県に差し上げてございまして、こういった外国から引き揚げてきた人たちの進学について、特に入学定員に一定の枠を設けるとかあるいは選抜の時期とか選抜の方法、学力検査等について可能な限り弾力的な配慮をしてほしいということを通達をいたしたわけでございます。まあ昨年出したばかりでございますので、各県の対応も必ずしもその後直ちに出てきているというところにはまいっておらないかと思いますけれども、現に中国からの引揚者を相当数持っております県とは今後とも連絡をとりながら、できるだけそういう配慮をしていただくようにお願いをしてまいりたい、かように思っております。
  138. 大原亨

    大原委員 労働大臣、残留孤児、家族を含めての就職問題ですが、職業紹介の問題ですが、それぞれ第一線では努力をしておられます。おられますが、日本の政治の欠陥ですが、厚生省と文部省と雇用の労働省が関係を持って、歩調をそろえてやるというようなきめ細かい配慮が足らないわけです。ですから、それぞれ特技を持っているわけですから、それを生かして、言葉は習って、それで社会に出ていけるような、そういう部面における職業訓練の分野においても、私はここで改めて、新しい段階として十分第一線において徹底できる措置をとってもらいたい、そのことを労働大臣に申し上げますが、御所見を伺いたいと思います。
  139. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 所沢のセンターの充実ということと、また今、先生御指摘のように学校の問題、それから就職の問題につきましては一生懸命職業あっせんを労働省としてもさせていただく、日当の問題あるいはそうした中国からの帰国者の就業に対して給与補助制度等も取り入れながらやっているわけですけれども、さらに厚生省や文部省と、そういう縦割りではなくて、連係プレーをとりながら、そうした帰国した方々の生活の便宜に最大限御協力を申し上げなければならない、かように考えております。
  140. 大原亨

    大原委員 幼保一元化とかいろいろな問題がありますが、時間が参りましたので、教育問題についての私の質問は以上で終わります。
  141. 天野光晴

    天野委員長 これにて大原君の質疑は終了いたしました。  次に、竹内勝彦君。
  142. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 最初に民間活力の導入問題、この問題に関しまして官房長官にお伺いしておきますが、五十九年十一月十三日、特命事項担当室、これの設置につきまして閣議了解が行われております。まずその内容、どうなっておるのか、またどういう目的でつくったのか、御説明ください。     〔委員長退席、大西委員長代理着席〕
  143. 藤波孝生

    藤波国務大臣 河本国務大臣は、内閣総理大臣の特命事項として、対外経済問題の処理を円滑に推進するため及び国公有地などの有効活用、規制緩和など民間活力の導入を推進するために、行政各部の所管する事務の調整を担当するということとされておりまして、この特命事項の円滑な遂行に資するために内閣官房に特命事項担当室を設置することにした、これが設置の目的でございます。
  144. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そこで、この特命事項担当室はどういうように機能を果たしていくか。その前提といたしましては、この担当室の室長はどういう身分の人なのか。局長なのか次官なのか、あるいはどういうクラスの人なのか。あるいはその編成としてはどんなような人たちがついておるのか。まず、その中身を教えてください。
  145. 海野恒男

    ○海野政府委員 特命事項担当室長の身分でございますけれども、現在本務と申しますか、特命事項担当室長を拝命しておりますが、もとは経済企画庁の調整局の審議官をしておりまして、昨年の十一月十四日の特命事項担当室の発足とともに、兼務のまま室長を命ぜられて現在に至っております。それから、総勢二十七名で担当室を構成しておりますが、全体で十省庁から、課長クラスの審議官、それから課長補佐クラスの事務官、それから庶務担当を含めまして、総勢二十七名でこの担当室を構成しております。
  146. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 今官房長官から、河本大臣の果たす役割に関しまして御説明がございましたが、そもそも総理の特命事項そのものは一体何ですか、これは。
  147. 藤波孝生

    藤波国務大臣 先ほど申し上げましたので、重ねてということになりますが、特命事項といたしましては、対外経済問題の処理を円滑に推進するため及び国公有地等の有効活用、規制緩和など民間活力の導入を推進する、そのために行政各部の所管する事務の調整を担当する、河本大臣がそのように特命事項として御担当をいただいている、このように先ほどお答えしたとおりでございます。
  148. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そこで、この一月二十五日の総理の施政方針演説で、民間活力を最大限に活用する、それが緊要なんだ、それから公的規制について、公共性にも配慮しながら民間部門の自由な活動領域を一層広げるよう抜本的な見直しを行うんだ、こういうように述べておりますが、この公的規制の抜本的見直し、この中身に関してどういうように考えておりますか。
  149. 海野恒男

    ○海野政府委員 私どものところで、先ほど官房長官から御説明ありましたように民間活力の活用という特命を受けておるわけですが、その中で特に重要な規制の緩和という点につきまして、私ども今検討を重ねておるわけでございます。具体的には、実際戦後四十年にわたる経済発展の過程で、いろいろな法律あるいは制度、慣行等を含めまして、いろいろな規制がかかっておりますが、制定の時期には必要であったものが、現時点ではもう時代の流れとともに必要でなくなってきたものが随分ある、逆に自由な民間の活動を制約する、あるいは桎梏となっているというような部分もかなりあるということで、具体的には、私どもは現在経済団体等を主にいたしましてヒアリングを行いまして、いろいろな観点からの要望事項等をまとめて、それを行革審等で検討しておりますのと並行いたしまして、連絡を密にしながら、そういった要望を改めて各省に流しまして検討してもらおうという作業を今続けておるところでございます。
  150. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それでは、この二月十二日、臨時行政改革推進審議会から「民間活力の発揮推進のための行政改革の在り方」、こういったものに関しまして中間報告という形で出ております。公的規制の抜本的見直し、これに関してまた後ほど触れてまいりたいと思いますけれども、公的部門の役割を見直して民間部門の活力に影響していく、新しい社会経済システムを構築しよう、こういう位置づけになっております。この公的部門の役割見直し、これが行革審のいよいよ具体案として答申がどう出ていくのか、いつまでに出ていくのか、それからまた、行政の内部として総務庁がその立案の主体性の役割をするのかどうか、そういった面も含めて今後その具体案がどう出ていくのか、プロセスを教えてください。
  151. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 先般、行革審が民間活力についての、何といいますか、基本的な考え方、まあいわば一種の哲学みたいなものですが、総論を御発表になったわけでございます。  今後は、この総論を受けて、民間活力についての具体的な個別の審議をして、大体六月ないし七月ごろには最終の御答申が出るであろう、こういうスケジュールでございます。
  152. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 河本国務大臣にお伺いしておきますが、河本大臣、特命事項として今藤波官房長官からございましたように民間活力の導入問題に取り組んでいく、こういうことでその担当をなさっていくわけでございますけれども、そこで、前任者ですね、中西大臣が同じくこの民間活力導入問題には取り組んでおりました。そしてまた、国公有地の利活用の問題も含めて、今後、河本大臣が特命事項担当として取り組んでいくわけでございます。中西大臣が、十数件の国有地を検討して民間活力の導入のために利活用すべく努力してきた、そう解釈しておりますけれども、その結果はどうなりましたか。
  153. 海野恒男

    ○海野政府委員 一昨年の十月でしたか、国公有地の有効活用に関する推進本部を内閣に設けまして、その中に内閣官房副長官を長とします企画委員会というのが設置されまして、それ以来約九回ほど会議を重ねてきておりまして、国公有地の有効活用についての具体的な推進方について協議をしてございます。現在、御指摘のように東京都内等で約八・五ヘクタール程度の国公有地の具体的なリストアップ等、それ以外に幾つかの具体的な箇所等をリストアップいたしまして、その有効利用の方法等について具体的な検討を行っておりまして、昨日もその検討の会議が行われたという状況でございます。
  154. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 私聞いているのは、現在のことを聞いているんじゃないのですよ。中西大臣も十数件の国有地を検討して、何とか導入していきたい、こういうように努力をした、その具体的成果はどうなったかと聞いているのです。
  155. 海野恒男

    ○海野政府委員 先ほど御説明いたしましたように、中西国務大臣の担当によりまして、一昨年の十月以来推進本部がつくられまして、そうした国公有地の有効活用のできる地域のリストアップをいたしまして、それぞれの地域の有効活用がどういう方法でどういう内容のものを組み込んでいったらいいのかということを現在検討しておりまして、まだ最終的に一つ一つの地域についてどういうふうに処理し、それを有効活用していくかということについての結論には達していないというふうに聞いております。この推進本部は私どもの組織というよりも、内閣審議室に附属しております国公有地等推進本部というところで担当いたしておりますので、そういうふうに私どもは聞いております。
  156. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 官房長官、こういうように一年かかっても何も成果が出てこないのですよ。もちろん今後、後で河本さんにお伺いしますが、これは期待していかなければならない問題でございますし、またこれは急を要するものでございます。今行革、そしてまた、民間活力というものを導入して活性化を図っていく、そういうときに、検討はしておりますが今後頑張ります、こういうような答弁ではちょっと納得できないんですが、官房長官、これはどういうように考えていますか。
  157. 藤波孝生

    藤波国務大臣 民間活力の展開を進めていく、そのためにいろいろな公的規制を緩和をいたしましたり、あるいは国公有地を活用していくということを具体的に進めていく、このことを内閣としては非常に大事な施策と心得ておりまして、そのために今答弁を申し上げましたように、前大臣の中西大臣のころからいろんな候補のリストなどをたんたんと積み上げてまいりまして、それらを一つ一つ具体的に、どう処理していくかということについての検討を進めておる次第でございます。  まだ目に見えていないではないかという御指摘をちょうだいいたしましたが、これらの施策が急がれなければならぬということは十分心得ておりまして、会議を重ねて、一つ一つ具体的に前進をさせていくようにいたしたいと存じておりますので、いましばらく時間の御猶予をお願いをしたい、こう考える次第でございます。
  158. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そこで、では河本大臣、あなたは去る二月二十七日、都内の某ホテルにおきまして開かれた産業労働懇話会におきまして講演しておりますね。そこでは、新聞の記事でございますからはっきりしたものはわかりませんが、こういう趣旨のことを言っていますね。「リストに挙がっている土地を全部合わせても七十数ヘクタールであり、(有効に活用したとしても)日本経済にどれだけ影響が出てくるか、全体の中で評価しながら取り組む必要がある」、国内需要の拡大という面ではあまり効果は期待できないのではないかというような趣旨に私は受けとめたのですが、そういう発言をされております。私は、この国公有地に関しまして、公的規制が厳しくて民間の利活用にマッチしない、こういったものをどう克服していくか、こういった面が大事でございますし、この国公有地の問題を河本大臣としてはどうとらえて今後担当大臣として取り組んでいくのか、その決意を述べていただきたいと思います。
  159. 河本敏夫

    河本(敏)国務大臣 これまでリストアップされました国公有地は、全部で約二百件弱であります。それには国鉄用地も十カ所ばかり含まれておりますが、全部合わせまして国公有地が約七十ヘクタール強それから国鉄用地が約三十ヘクタール前後、合わせて百ヘクタールばかりになっております。若干処分したものもございますが、中には数年先になりませんと処分の対象になり得ない、こういうものもございますし、それから処分の方法等につきましても幾つかの問題がございます。  そこで、やはり今我が国の経済社会に影響があるということになりますと、ことし、来年にその土地が処分されて、その上に有効な社会資本投資またはそれに類するものがスタートする、こういうことが非常に大切でございます。そういうことを考えますと、この二百件の中でことしと来年の間にどれだけ処分し得るか、若干問題がございまして、数もそんなに多くないんではないか。ことしは二十数件処分を予定しておりますけれども、まあそういうことで、その程度のことですと日本経済を動かすほどの内容にはなり得ない。したがいまして、このことが軌道に乗った場合に日本経済全体に一体どのような影響が出てくるのか、そういうことを十分正確に認識しておりませんとかえって誤解を招く、こういうことにもなりますので、この事業の社会経済全体に及ぼす影響等について正確な認識が必要である、そういう趣旨のことを述べたわけでございます。
  160. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 総務庁長官にお伺いしておきます。この「民間活力の発揮推進のための行政改革の在り方」が中間報告ですか、こういう形で出されましたが、総理の方としてはこの「在り方」の内容を先取りして、民間活力の発揮のために公的規制を抜本的に見直しする、こう述べておりますね。この抜本的見直しの推進主体、私はちょっとここで整理していかなきゃならぬと思いましてお伺いするんですが、この行革の担当として総務庁が当たると思ってよいのかどうか、それを御答弁ください。
  161. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 行革を進める上でやはり一番大きな柱は民間活力ということだろうと思います。いろいろありますけれども、大きく言えば許認可の整理といいますか、でき得る限り民間が創意工夫を発揮することができるような体制に組み直すということ。それから御指摘にある国公有地の活用、これもその一つであろうと思います。それから同時に、民間のそういった力が発揮できるような仕組み、それがためにやはり今公社公団というもの、特殊法人がありますから、これらも役割を見直すというようなことが大きな柱がな、かように考えております。  御質疑の点は、例えば国公有地であれば今六百カ所ぐらい大蔵省が御調査になって、大蔵省としては非効率ではないか、こういう御指摘があるのですが、それぞれ持っている各省庁は、将来こういう利用計画があるとかいろいろなことでなかなか手放さないというのも実情でございます。そこで、それらを私の方で行革審に今一度見直していただきたい、こういうことをお願いしておるのですが、それが出てくれば、これはやはりそれぞれの業務によってどこそこに担当していただく、各省庁に担当していただく、それで総合的な調整で推進していただくのは、例えば国公有地であれば、これはやはり河本特命大臣のところにお願いをしなければなりませんし、そういったようにそれぞれの省庁にお願いをすると思います。調整はやはり河本大臣のところにお願いをする、こういうことになるかと、かように考えます。
  162. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そこで、また重ねてお伺いしておきますが、この「民間活力の発揮推進のための行政改革の在り方」の中で、例えば一つには「民間部門における私的利益の追求それ自体は「悪」というわけではない。」「公共の利益につながり得る」ものであって、そしてそれにより活力あるものにしていかなければならない。あるいは「公共の利益を目的とする活動も、公的部門の独占物ではなく、公益法人や公益信託といった形で、民間の発意に基づき公益目的が追求されたり、第三セクターのような形で公的部門と共同で事業を実施したり、公的部門の事業を受託して民間部門が私的な営利活動として行う形もある。」こういうように考え方を鮮明にしておりますけれども長官、この考え方は、長官としてはこれを中間報告として受けられて、どういうようなお考えを持っていますか。
  163. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 私は、基本的な考え方はこの中間報告の線で、これは尊重すべきものである、かように考えております。だから、例えば規制の緩和といいましても、これは一口に何でもかんでもレッセフェールに変えるわけではありませんので、やはり社会的な規制というものはいかなるものかというようなことも検討しなければなりませんし、経済規制はできる限り撤廃するのがよかろうとか、こういったようなことは慎重にやりませんと、やはり企業それ自身は何といっても利潤が美徳でございますから、しかしそれだけでは社会が安定をしない、かように考えておりますので、経済規制と社会規制はおのずから別の角度で切り込んでいくということでなければならぬのではなかろうかなと、私はさように考えておりますが、ただ社会規制といえども、今日いかにも各省庁の縦割り行政で重複しているものがあるし、また不合理なものがありますから、これらについてはメスを入れるべきであろう、かように考えております。
  164. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 今の後藤田さんと、それから河本大臣と官房長官とお伺いしておりまして、私は中西前大臣からの経緯もあり、また今河本さんの御答弁というものもお伺いしておって、これは相当与えられたものに向かって真剣に取り組んでいかないとなかなか難しいものがあるな、こう率直に感じます。  そこで、お二方の大臣並びに官房長官の三人にちょっと具体例を挙げてお伺いしておきたいのですが、例えば公的規制の緩和、こういったものが非常に重要になってくる。例えば国有財産関係法では、公共の利益となる事業とかあるいは公共の用に供する施設という法令用語、こういったものも抜本的見直しによって、民間活力発揮のためにはこの用語の概念自体、この内容が拡大解釈される可能性があるのではないか。例えば沖縄振興開発特別措置法、こういったものでは、国有財産を扱うにしてもすべて規制が非常に厳しいわけですね。したがいまして、それの緩和という面で、この民間活力の発揮推進の問題は、ことしの夏に具体化して答申として出てまいります。後藤田大臣が担当され、あるいはまた今話がありましたように国公有地の問題は河本大臣が御担当になる、ぜひ実行して具体化していただきたい。そういう意味で二つに絞って申し上げます。  一つは、民間活力の発揮といっても、これが大企業中心あるいは大都市中心の民間活力の発揮にならないようにしていただきたいということ、これが第一点。  それからもう一つは、国有地の公的規制の緩和、これの見直しに関して、今話をしました沖縄振興開発特別措置法の国有地の払い下げについての規制を抜本的に運用面で改めてもらいたい。沖縄の国有地は、旧軍の取得についていまだに紛争が残り、したがって利活用として地域の農業を含む産業の活性化を図るにも国有地がかえってがんになっている、こういう状況でございます。この民間活力の発揮推進の中間報告の方向でこの状況を再検討されて、そして今御答弁いただきました第三セクターによる農業等の利活用で地域の活性化が図れるよう、払い下げについて、公共の目的、この定義を拡大されて、公的規制を緩和されていく必要があるのじゃないか。  以上の二つについて二大臣から、そしてまた重ねて内閣官房長官の御見解を承りたいと思います。
  165. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 おっしゃるように民間活力のための規制緩和、これは先ほど言ったように、二つのカテゴリーはおのずから別の原理原則で緩和していくべきものであろう、かように考えておりますが、沖縄等の問題は私は詳細存じておりませんので、これはお答えを差し控えさせていただきます。
  166. 河本敏夫

    河本(敏)国務大臣 私は、民間活力を拡大するということのためには、広い意味と狭い意味とあると思うのです。広い意味では、税制の抜本改正をしませんと民間活力などは発揮できるものではない、私はこう思っております。狭い意味では、今議論をしております規制の緩和、それからあわせて国公有地の有効活用、こういう二つの問題があるわけでございますが、それは狭い意味になろうかと、このように思います。  今御指摘のございました沖縄等の問題につきましては、よく調べまして善処したいと思います。
  167. 藤波孝生

    藤波国務大臣 今先生から御指摘のございました、大企業、大都市中心にならないようにというお話でございます。一つ一つの物件についてどのように活用していくかということによるわけで、責任を持って仕事を短期間に完成をさせるということからいきますと、非常に力を持った企業というようなことになることは十分考えられると思いますし、また非常に民間活力を展開していくという意味で、大都市中心になるという傾向もこれは一概に否定できないものがあるかと思うのでございますけれども、先生の御指摘につきましては十分頭に置いて今後取り組んでいかなければならぬ、このように考える次第でございます。  沖縄の問題につきましては、よく勉強させていただきたいと存じております。
  168. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 では、ぜひその問題をよろしくお願いし、最後に、私は重ねて要望しておきますけれども、この公的規制を見直そうという総理の姿勢が示され、また行革の面でも、「公的部門の役割を見直して、民間部門の活力に依拠した新しい社会経済システムを構築しよう」、こうまで言っているこの時期に、ぜひ意欲的に取り組んでもらわなければならない。  一つの例ですが、今例えばタクシーの関係でございますけれども、軽貨物自動車の参入を、これはいろいろ調和を図っていかなければならない問題がございます。かといって、利用をしている方はかなり便利に利用しているとか、いろんな意見もございます。こういったものをどう調和を持った上で取り入れていくか、あるいはまたこういった面をどのように対処していくかということは非常にまた重要になってくる問題ではなかろうか、こう思います。ぜひひとつ今御答弁いただきましたように、この民間活力導入に関し、国公有地あるいはその公的規制の緩和、そういった面におきまして、全力で取り組んでもらいたい、このことを要望だけしておきまして、御答弁は結構でございます。  次の問題に移らせていただきますので、三人の大臣、どうもありがとうございました。  そこで、郵政省、来ていますか。――まず、郵政省にお伺いしておきます。  電電公社が、今まで百年にわたる電気通信事業、こういったものが大きく改革されていく、そして自由化、民営化、こういった形でいよいよ四月一日より発足してまいります。  そこで、今回のこの電電民営化にかかわる法案で特に議論を呼びました附帯業務は認可制から外されました。例えばそういう中で端末機器の売り渡し方式の導入、こういったものが必要な事項は政省令で定める、こういうことになってまいりますが、この売り渡し方式の導入、どのように考えておるのか、最初にお伺いしておきたいと思います。
  169. 左藤恵

    左藤国務大臣 御指摘のように、会社法案の国会での御審議の中におきまして、附帯業務に関し必要な事項は郵政省令で定めるということになりました。そして、認可の対象とはしないという旨の修正が行われたところでございますが、国会における修正の御趣旨は、附帯業務はその性格上、その範囲がおのずから限定されるものと考えられますことから、収支相償うなどの要件が担保されれば、会社自身の判断に基づいてこれを行うものといたしましても、特段の問題が生じないのじゃないか、そういう御判断によるもの、こういうふうにこの御趣旨を承知しておるところでございます。  そこで、端末機の売り渡し等の附帯業務に関します省令はこの御趣旨に沿って策定してまいるということで、ただいま準備をいたしておりますが、具体的には、一つ、新会社は国内電気通信事業に附帯する業務、すなわち附帯業務を営む場合においては、当該業務に係る収支を明確にした上で、収支相償うようにこれを営むものとする。二つ目に、新会社は附帯業務を営む場合においては、当該業務の概要を郵政大臣に届け出るものとする、こういうふうに規定をいたしております。
  170. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 同様に、この価格の設定方法に関して、公社の売り渡し方式の導入に関し、民間が最も問題にするところは、売り渡し価格の設定方法ですね。四月一日以前は政府調達に関する協定等、こういったものに基づいて算定されております。しかし、この四月一日以降、いよいよ民間として、株式会社として発足していきます。新電電になると、例えば大量購入による調達価格の有利性ですね、民間のような複雑な流通経路、こういったものを必要としない、あるいは巨大な販売組織力を持つ新電電、そういったところで、これは利用者の利益を長期的に展望しつつ、適正な競争原理に基づく市場の秩序の維持、こういったものが勘案されていかなければならない。この中で、新電電の売り渡し価格が設定される、そういう意味で、その秩序の維持というものをどうしても要望されるわけですね。したがいまして、新電電になったら、この点を、秩序の原理というものをどう考えておるのか、総裁は。郵政省だけでなく、総裁にも聞いておきたい。
  171. 澤田茂生

    ○澤田政府委員 公社の端末機器の料金につきましては、創設費について公開入札手続で購入した物品費、これをもとにいたしまして、取りつけ費とかその他の諸経費を加えて算出をいたしているところでございますけれども、公社の経営形態変更後も新電電を当分の間引き続き政府調達協定の対象機関にとどめるということにいたしております。したがいまして、四月一日以降も端末機器の価格の設定につきましては、協定の手続に基づく公開入札での購入価格というものをもとに定めることになるというふうに考えているところでございます。  新電電の役務として提供されます端末機器の料金につきましては、事業法第三十一条に基づきまして、適正な原価に照らしまして公正妥当なものであるということが必要でございまして、認可によって定めるということになっているわけでございます。  また売り渡しにつきましては、附帯業務といたしまして、認可の対象外ではございますけれども、収支相償うということが求められておりまして、個別価格についてもこの考え方にのっとりまして新電電の購入価格をもとに設定される、こういうふうに考えているところでございます。
  172. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それでは総裁にもう一度確認しておきたいと思うのです。  総裁、かつては公社の端末機器売り渡し方式の導入は民間業界に与える影響が大きい、こう考える中で、事前にスケジュールを公表し、民間業界に準備期間を与えることが望ましい、こういったこともございます。そういうものも含めて、今の市場の秩序、この件に関しまして総裁の御見解をお伺いしておきたいと思います。
  173. 岩下健

    ○岩下説明員 お答えいたします。  先生ただいま御指摘のとおり、四月一日から売り渡しという形での端末機器の販売ができることになるわけでございますし、またお客様の支払い方法の多様化の御要望にもお答えできるということもございまして、私どもとしてはこれをぜひ実施をしたいということで今準備を進めておる段階でございます。  その場合での基本的な考え方としましては、先生ただいまおっしゃいましたように、また郵政省御当局から御答弁がございましたように、やはり公正な形で競争するということが第一かと思っております。いわば既存の民間の業界の方々との協調、これをもとにしての競争ということかと思っておりまして、このための公正競争条件の確保ということにつきましては、機器の認定、その他法の枠組みもそういう方向が整えられておりますし、また私どもも実際に現場での販売に当たる者に対する指導としましても、例えばネットワーク事業者としての立場を不当に利用することのないようにといったような趣旨のことを常々通達あるいは会議等で指示をしておるわけでございます。私どもこういった製造部門を持っておりませんので、例えば物品の購入一つにしましても、やはり入札その他適正な方法で購入をするということがベースになるわけでございます。また既存の業界の方々と共栄という意味は、例えば双方お互いに特約店といいますか、代理店になり合ったり、あるいはまた一緒にPRをしたり、こういういわば共同作業によって市場全体の拡大によって、いわゆる共栄が図られるだろう、こういう気持ちで今後当たってまいりたいというふうに思っております。
  174. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そこで、この問題を取り扱いを間違えるとえらいことになるのですよ。その例としてまだ別に四月一日を迎えたわけではないのですが、もうそのはしりが出ているのですね。昨年の十二月二十四日に郵政省が認可したボタン電話ビジネスホンEについてでございます。電電公社としての認可申請であり、恐らく郵政省も政府調達に関する協定に基づき結論を出された、それは今話があったとおりですね。このボタン電話ビジネスホンEシリーズの価格設定は、簡単に言うと、自営ボタン電話と比べ、公社の今回の価格、これは一台五年レンタルで千二百円、自営の方は七年リースの千百円、こういった形になって、実勢価格でいきますと約二〇%割安、こういう形になって、売り渡し換算価格に直しても、ビジネスホンEの方は電話機五台としまして二十五万五千円、三〇八型を電話機五台、二十五万五千円になります。ところが、自営ボタン電話は上記のものと同程度のものにしますと三十一万六百円、やはり二〇%の割高。工事料に関しても、ビジネスホンE、これは一台当たり約八千五百八十円、ただし既設配線を利用する場合は五千八百八十円、自営のボタン電話は一台当たり一万一千円と、これは勝負になりません、今申し上げただけでも。  こうなってくると、これはまだ四月一日を迎える前からこういうようなことになって、民間の販売業者、こういったところ、あるいはメーカー、こういったところを脅かしていく、非常に不安を与えていくというような形になっては、これは大変なことです。例えば、販売業者としては死活問題でございますから、あるメーカーはこのような価格設定で攻勢をかけられたらメーカーとしてはもう利益を確保できない。また、あるメーカーは、電話機のメーカーですが、中のいきさつがあるわけでございますが、株が暴落したりあるいは大幅な減収であったり、また別のメーカーでも、どうしても、ユーザーとしては四月一日以降に買い控えよう、そういったものがございますね、それも手伝って、恐らく半期で三十五億円の売り上げ減だ、こういうような予想も立てております。こういう混乱が起きておるということ、これは郵政省としてどうとらえておりますか、御説明ください。
  175. 澤田茂生

    ○澤田政府委員 御指摘のボタン電話機ビジネスホンEにつきましては十二月二十四日に認可をいたしたところでございます。認可に当たりましては、申請の内容について料金設定が適正であるかどうかというようなことをいろいろ審査をいたしたわけでありますけれども、ビジネスホンEの料金がそのコストに基づいて一般の機器の料金算出方法と同じ方法によって算出を行っているということで認可をした次第でございます。  価格が民間の同種のものに比べて安いのではないかという御指摘でございますが、公社側におきましても社会一般の実勢価格というものを念頭に置きつつコストに基づく料金を算出をし認可申請をしてきたものであるというふうに私ども理解をいたしておるところでございますが、郵政省といたしましては、競争の中で低廉な料金で提供されるということは利用者の利益に資するということになるわけでありますけれども、それもあくまでも適正な競争が行われるということが前提でございまして、今後とも端末機の料金の認可に当たりましてはこういった点について十分留意をしてまいりたいと考えておるところでございます。
  176. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そこでまた重ねて郵政省にお伺いしておきますが、公社の民営化の後には、価格設定は原則的には自由になります。先ほどの端末機器のこの売り渡し方式導入は、本電話機あるいはビジネスホンの各種類、PBX、ファクシミリ、これに関して売り渡し方式という、まあ附帯業務の範囲は省令として、民間圧迫にならないように、また業界の混乱がないように、どのように考えていくかという意味に関してはぜひ共存共栄という面で進めていかなきゃならない。しかし、そもそもこの電電公社の民営化は電気通信事業の健全な発展、こういったものに重点が置かれるわけです。民間企業とのイコールフッティング、こういっても、これはその公共性、巨大性、それから独占性、そういった面から見ても特殊会社としての義務と制約がある、これはもう御承知のとおりでございます。  そこで、この電気通信事業の自由化、大いに発展していかなければなりませんが、そこに新電電と民間企業との協調があって、共存共栄というものがあって初めて新しい電気通信事業の発展というものがあるわけでございますから、したがいまして、安いものが出ればそれにこしたことはない、安ければそれでいいんだということで、例えば乱売で安かろう悪かろう、こういう形になってしまいますと、高度情報化の技術レベルというものが確保できなくなってしまいます。そこには一定のルールというものが必要でございます。民間企業とそれから新電電との間にここでトラブルが生じていったときには、この前も逓信委員会におきましても論議いたしましたが、その調整を図る窓口といたしまして郵政省は電気通信局電気通信事業部業務課においてその調整を図っていくんだ、こう御答弁がございました。実質的にはどういうように機能が行われておるのか。既に四月一日前からこういうようなトラブルというか混乱が起きてきておりますね。そういう意味で、どのような機能を発揮しておるのか。同時に、提案でございますが、郵政省も忙しい、そこで実質的な公平な判断を下すという意味で、これがいい、こう決めるわけではございませんが、例えば電気通信審議会、ございます。そういう中にそういうような公平な部門というものを設けて調整、検討するとか、あるいは意見をまとめる、そういったことも一方式ではないかと思いますし、また窓口も各地方の郵政局単位などに設けて地方で結論を出していく、こういうような形に持っていっていいのではないか、こういうように思いますが、郵政省の御見解をお伺いしておきたいと思います。
  177. 澤田茂生

    ○澤田政府委員 参議院の逓信委員会の附帯決議にもございますように、郵政省において、民間と新電電との間の共存共栄を願うという立場で郵政省が調整役を果たすようにというのがございます。こういう御指摘を受けまして、私ども調整の窓口というものにつきましては、その時点でもお答えを申し上げたわけでありますが、電気通信局の電気通信事業部というのを窓口にして対処をしてまいりたいということをお話しを申し上げた記憶がございます。また、ただいま先生からいろいろ有益な御指摘がございました。私どもも気持ちといたしましては共存共栄、そういう形のトラブルが起こらないようにという気持ちでいろいろ努力をしなければならないというふうに思っておるわけでございますが、今、御提案の一つといたしまして審議会による調整というようなお話もございましたけれども、これはいろいろ私どもも検討させていただきたいと思いますが、審議会の役割あるいは性格というようなことから見ましていかがかなと、とりあえずはいずれにいたしましても郵政省、私ども自身で事に当たってまいりたいと思っておるわけでございます。  なお、本年の四月から地方支分部局の改正を行いまして、そこにも電気通信事業を担当する部を設置してまいりたいというふうに思っているわけであります。それぞれの本省あるいは地方における業務分担等については今後いろいろ検討してまいりたいと思うわけでありますけれども、どういうような調整機能をどういうふうに発揮していくかというようなことにつきましては、なおいろいろ大局を踏まえながら、御指導を賜りながら努力してまいりたいと思っておるところでございます。
  178. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 この問題で最後に総裁に聞いておきますが、今のビジネスホンの販売の問題に関してもそうでございますが、そもそも、例えば郵政省にそういう調整の窓口を設けなければならないということがこの法案が成立する前からいろいろと論議されるということは、それだけやはり新電電と民間の既設の企業との間には大きな差がある。そういう意味で、やはり自由競争といってもそこには一定の秩序、ルールというものがなきゃならないし、また総裁も再三にわたって共存共栄ということを委員会におきましても答弁しておりますけれども、今の郵政省の御答弁も含めて総裁としてのお考えをもう一度お伺いしておきたいと思います。
  179. 真藤恒

    ○真藤説明員 今の御質問に対してお答えします。  これから民営の形になりますけれども、観念的には民営であってもそう急激に四月一日から変わるものではございません。その点よく心しながら持っていきたいと思っておりますが、私どもは現在できるだけ地域別に皆さんの、業者の方々といろいろな協調といい意味の競争という形のメカニズムが働くように四月になりましたら進めていきたいと思いますし、現在でもそういうふうな考えの方々が私どもの方に、自分たちはこういうふうにしたらいい、非常に秩序あるマーケットが維持できるのじゃないかと思うから電電の方と協力してやってもらえぬかなというお話も地域別にかなりいろいろなお考えが出てまいっておりますので、できるだけそういうお考えにこたえながら、私どもも従来どおりのような全国画一的な一律的なやり方ではなくて、地域社会に応じたやり方で柔軟に対応していきたいと思います。  例えば、今御指摘のございましたボタン電話でございますが、これは新しい技術開発で非常にコストダウンができる設計のものが新しくできましたので、ああいう値段に郵政の方で御認可いただいたわけでございますけれども、旧来の古い設計のものと比較しますと、おっしゃるようにかなり値段は下がりますけれども、私どもの利幅は従来の古いものよりもはるかに利幅は大きくなるという性質のものでございまして、私どものこの技術開発によって性能がよりよくてより安くなっていくものを、ほかのメーカーの、私どもの技術開発しやない技術でつくる製品とどう協調していくかということでございますが、余り業界の方の協調だけ考えますと、今度はエンドユーザーの方によりよい、より安いものを供給できるということをそこで遮断することにもなりますので、その辺のやり方をよく考えながらやっていかなければならぬと思いますので、業界の協調ばかり余り今度は強調しますと公取の方の問題にもなりましょうし、といって、私どもの技術の開発力の強いものをむき出しにやってもまたこれはいろいろな問題を起こそうと思いますので、その辺の調節をどうしていくかということはやはりこれからの問題だ。全国一律ということではいきたくないと思っています。できるだけ地域別に合わせて、地域の情勢に合わせてやっていきたいというふうに考えております。また、四月からの組織もそういうふうな柔軟性が持てるような組織にするということで今進めておりますので、しばらく様子を見ていただきたいと思います。
  180. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そこで、端末機の問題に関連しましてもう一点だけ郵政省にお伺いしておきます。  来日中のオルマー米商務次官との次官級の協議が、通信機器をめぐる日米の貿易摩擦、こういった面で三月五日からその協議が行われております。その焦点の一つに端末機の基準・認証の問題があるわけでございますが、報道によれば、日米双方の主張は平行線をたどっておるようだ、こういうようにも伺っておりますが、現状はどうなんでありますか。
  181. 澤田茂生

    ○澤田政府委員 電気通信に関する日米間の話し合いということでかねてからいろいろ折衝を重ねておりました。アメリカからも次官クラスが参り、また郵政省からも次官がアメリカへ行く。現在もアメリカから次官が来て折衝を行っている段階でございます。  その中で、一つの問題といたしまして技術基準の適合認定の問題というものがあるわけでございます。アメリカの方といたしましては、アメリカ自身に現在あります制度というものを起点にいたしまして、これから決めていこうという制度についていろいろ意見交換を行っているということでございます。やはりもとになります法律の仕組みというものが違います。また、今まで電電公社でむしろ主体として行っておりましたのを、今度は競争原理導入ということで行政的な観点から基準・認証を行っていこうという仕組みを法律でおつくりをいただいたわけであります。その運用に当たりましては、基本は私どもは今までやってきたものを基本に据えながらなお内外無差別、簡素、透明な制度に仕立てていきたいということでいろいろ努力もいたしておるわけであります。  また、関係の向きともいろいろ折衝をいたしているわけでありまして、その一環としてアメリカの方からもいろいろ御意見を伺っている。そういった中で、私どもはこれからの電気通信のネットワークというものの健全な発展ということと同時に、端末機器というものの自由化に伴う便益というようなものをどういうふうにしてかみ合わせていくかということでございまして、技術基準をつくる、それを認定するという仕組みの中でいろいろ議論を重ねているわけであります。随分対話も進んでまいりまして、なお若干の理解が得られない分野というものもございますけれども、当初に比べますればアメリカの方もかなり理解をしているのではないかというふうに考えているところでございます。  なお、政省令をこの四月一日に向けまして準備をしなければならないわけでありますので、なお鋭意私どもも努力をし、作業を進めてまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  182. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それじゃ郵政省、公社、結構でございます。ありがとうございました。  次の問題に移らせてもらいますが、まず、昨年は投資ジャーナル事件あるいは最近は三和投資協会とかあるいはアオイ関係ですね、あるいは東証代行等々、いわゆる投資ジャーナル事件に代表される同様の事件というものが全国的に起きておりますね。また、最近は地方にも分散されていっておる、こういうようにも言われておりますが、警視庁として、現在までの苦情や告発、いろいろなものがあると思いますけれども、概略状況をまず述べていただきたいと思います。
  183. 中山好雄

    ○中山政府委員 昨年、警察庁におきまして証券取引に係る相談等の実態について特別に調査を行いました。この調査期間は昨年一月から八月まででございますが、この間警察において相談等を受理したものは約千二百件でございます。内容的には、返金請求に応じてくれないといったような契約の履行に関するものが、そのうち六割近くを占めておりました。
  184. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 もうちょっと詳しく述べていただきたいのですが、例えば起訴されたものとかあるいは逮捕の状況、それから今私が名前を挙げたのは、これはもう公になっておるものでございますね、そういった面に関して、例えば被害額はどれぐらいなのか、あるいは被害人数はどれぐらいなのか、あるいは判決の出ているものなどはどういう形になったのか、そういった面まで含めて御答弁ください。
  185. 中山好雄

    ○中山政府委員 昨年以来検挙した法人といたしましては、株式会社三和投資協会、これは福岡でございます。東証代行、これも福岡でございます。東証株式会社、富山、アオイ・リサーチ・オフィス、東京などがございます。このほかに現在捜査中のものとして投資ジャーナルがございます。  被害の概要と申しますか、被害者数や被害額につきましては、現在捜査中のものもございまして正確には把握することが困難でございますが、昨年以来検挙あるいは捜査中の今申しました五件について現在まで把握されている取引者数は、一万人を超えるものと思われます。それから、実被害額というのは、捜査中のものもございまして確定的ではございませんが、これらの業者が受け入れた金額は、合わせて数百億円に上るものと見られます。
  186. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 このように悪質な手口で――いわゆる投資顧問業というのでしょうか、正式には法律でどうなっておるのか、その辺を御答弁いただきたいわけでございますけれども、この被害者がどのような手口で被害に遭うのか、巧妙に、例えばどういう株を買いますとか、それで元金を送りなさい、送ったところが、買えましたと言って、どんどん値上がりしていくからもっと投資しなさい、そしてまた、さらにそれに加えて、例えば自分の命までの退職金だとかいろいろためてきたものをどんどんそこに投資した、いよいよ金額としてもかなりのものになっておるから、じゃそれを売ってくれないかというようにお客さんが言う。ところが、今売れないとかあるいはどうだとかというふうに逃げる、そしてついに最後になると、実はそれは買えていなかったというようなことになって、結局、じゃその元金を返しなさいと言っても、それは返さない、そして逃げまくる、こういうような例が多いように伺っておりますが、こういうような形で、今御説明いただいたものだけでも相当なものですね、被害は。  そこで、全国には大体どれくらいこういう悪質なものがあるのか、もちろんまじめな、投資というものに本当にしっかりとアドバイスをしていくそういった業者もあるわけでございますので、そういう面も含めて、この悪質な業者というのはどこまで把握しておりますか、御答弁ください。
  187. 中山好雄

    ○中山政府委員 私どもが検挙した業者としましては、先ほど申し上げましたような業者がございます。  どの程度の悪質な業者があるかという点については十分把握しておりません。と申しますのは、悪質な業者は、つくっては消えということで大変短期的にできてつぶれる、そういった事情もございますものですから正確に把握しておりませんので、御了承いただきたいと思います。
  188. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 報道を見ても、あるいは私どもの方に相談事として訪れてくるものを考えてみても、そんな生易しいものじゃないのですよ。警察庁として相当真剣になって取り組んでもらわないと、こういう悪質なものが後を絶たない。例えば、これは報道ですが、二百社とか三百社とか、そういう悪いことをして会社をつぶして、そしてまたほかの会社をつくる、そこへまた純粋な人たちがそれにだまされて投資していく、みんな取られちゃう、こういうようなことが続いていくということを本当に直していかなければならない。そういう面でぜひ今後本当にしっかりと取り組んでもらいたい。  私はここで、これは後でまたよく調べていただきたいのですが、例えば富士証というのが富山にこの前できました。これは安喰諒という社長でございますけれども、これはそちらでももう御承知の大変な札つきなものでございます。ぜひ調べてください。それから日生、これが池袋にございます。あるいは三井信用代行、台東区にございます。あるいは昭和証券ファクタリング、これは永田良文という者でございますが、これがこの会社をつぶし、日証信販というものをまた兜町につくって、そして私どものところへ相談に来る人でも、みんな自分の命までの退職金だあるいはためたお金だというものを取られちゃっている。こういうものをいつまでも許しておってはなりませんので、ぜひそういった面におきまして今後取り組んでもらいたい意味からも、どのように今後の捜査なり今後の姿勢として取り組んでいくのか、御答弁いただきたいと思います。
  189. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 今の先生のお話にもありましたように、証券取引等をめぐりましていろいろな犯罪が各地に発生し、全国の警察がこれに対処しているところでありますが、警察としましては今後とも、投資家保護の見地から、違法行為があれば厳正に対処していく所存でございます。  なお、現在まだ捜査中のものもございまして、私どもは鋭意、外国に逃げておるような者もありますので、そういう者も国際的な手配等をいたしまして、できるだけ早く機会を得てこれを逮捕して、今のお話のような根源をついて、善良な投資家の保護に最善の努力をいたす決意でございます。
  190. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それでは大蔵省にお伺いしておきますが、いわゆる投資顧問業というのはどのような性格に位置づけられているのか。法的にはどうなのか。先ほど私が最初に申し上げたことでございますが、そのことと、投資顧問業について諸外国では法律はないのか、あれば具体的にはどのようになっているのか。さらに、投資顧問業務に関する特別委員会が設置されておりますけれども、その検討の進展状況というのはどうなっているのか、あわせて御答弁ください。
  191. 岸田俊輔

    ○岸田(俊)政府委員 投資顧問業でございますけれども、現在の我が国の法律では何ら規制がございませんので、自由にやれるというような状況でございます。  投資顧問業につきまして、諸外国でございますけれども、米国に投資助言業者法、それから英国でございますと証券業者の免許を定めた一九五八年の不正投資防止法、フランスもやはり投資顧問業者に関する法律というのがありまして、一応の規制をいたしておるわけでございます。  先生御指摘のように、今現在証券取引審議会に投資顧問業等に関しまする特別部会というものを設けまして、先ほど御指摘のようにいろいろな問題もございますし、また一方におきまして、最近の個人、法人の金融資産の蓄積やまた国際的な証券投資の活発化というようなことで、内外の有価証券の運用につきましての専門的な助言を行う投資顧問に対します非常な関心が高まってきているわけでございまして、ある意味では、一方で規制、一方で育成というような両面があるわけでございまして、この部会におきまして投資顧問業の実態の把握、それから投資顧問業のあり方について掘り下げた検討をいたしたいと考えております。  現在のところ、大体、最初に十二月に発足いたしまして、月一回のベースで議論をいたしております。現在大体二回を行ったわけでございますが、現在の審議状況でございますと秋口が一つのめどになるか、その結論を待ちまして業法があるべきかないか、そういう点も含めまして判断をいたしたいというふうに考えております。
  192. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それでは警察庁、国家公安委員長、ありがとうございました。それから大蔵省、結構でございます。  次の問題に移らせてもらいます。  まず、厚生省にお伺いしておきますが、医療保険制度の改革によりまして退職者医療制度が創設されたわけでございますが、同時に、療養給付費に対する国庫補助率が大幅に引き下げられました。ところが、退職者医療制度の対象者数は全国平均四百万人と政府は見込んでいたわけですが、実際は見込みの六五%くらい、二百六十万人であるとされておりますけれども、これは厚生省が当初考えていたものとは見込み違いではないのか、実態がなぜ少ないのか、御答弁ください。
  193. 幸田正孝

    ○幸田政府委員 御指摘のとおり、退職被保険者数当初見込み四百万人に対しまして、昨年末現在で二百五十九万人でございますが、この四百万人の積算につきましては、厚生年金、国民年金、共済組合といいました各種年金の年金受給者数をもとにいたしまして、厚生行政基礎調査で把握をしております。その年金受給者のうちでどの程度国民健康保険に加入をしているか、こういう率を用いて可能な限り正確な推計をいたしたつもりでございます。また、配偶者につきましても厚生年金の加給年金対象割合を用いたものでございまして、私どもといたしましては、決して過大な見積もりではないと考えているわけでございます。
  194. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 ところが、この当初の政府の試算では、退職者医療制度によるプラス要素、退職者医療費が多く出るだろう、退職者の所得が低いだろう、こういうプラス要素ですね。実際はこの退職者医療費が意外と伸びずに、高所得者が多かったためにこの補助率引き下げによるマイナス要素の方が大きいわけですね。したがいまして、大幅な赤字というものが各地方におきまして、市町村、そういったところで出てきておる。  例えば、私は京都の例を、全国そうでございますが、これは同じことでございますが、京都市の例で申し上げますと、退職者医療制度によるプラス要素といたしましては一億五千五百万、ところが補助率引き下げによるマイナス要素が五十九億七千六百万、差し引き五十八億二千万、こういうような形になってきて、どうしてもこれでは保険料というものを引き上げていかなきゃならない、あるいは財源をそれに充てていかなきゃならないという面で、非常にこの事態が大変な形になっておるわけです。  国民健康保険中央会ではもう緊急決議を行っておりますね。これは当初から国保の中の制度だとして国庫負担というものをつけないという固有の制度であるという、こういう観点であったが、この現状を考えると、何らかの形で国庫補助等を行わなければ、市や町村によってはもうこの国保の保険料の大幅な値上げになることが考えられます。地方の財政を圧迫することになるわけでございますので、何らかの財政上の措置というものをとる必要がある、そういう要望も出ておりますが、御見解をお伺いしたいと思います。
  195. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 御指摘のように、当初見込んだ対象者の把握につきまして、実はまだその作業中であるわけでございますけれども、今後も広報活動の強化を行いまして、市町村の認定事務の督励などの対策を講じてまいりたいと思いますけれども、また、今後一面市町村国保の財政状況の推移を注意深く見守りながら、それを踏まえて国保の安定的運営に支障が生じないような方法を検討してまいりたいと思います。
  196. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 ぜひよろしくお願いします。  そこで、化学物質等に関しての中毒の問題を若干取り上げさせてもらいます。  人間の生命というものを脅かす三大原因、これは一つには細菌等の微生物によるものでございます。二つには外的、物的条件によって、けがなど外的によるもの、それで三つ目がこの化学物質によるものだ、こういうように言われております。まあ、がんのほとんどが環境由来の化学物質、こういったものに原因すると考えられております。したがって、このがん対策の最重要課題は、我々の身の回りにある化学物質対策というものが大切ではないか。化学物質の生産量は急カーブに上昇しておりますね。中でも石油、石炭などの石化燃料あるいは各種金属、燐、アスベスト及びこれに伴ってつくられる有機化合物であるわけでございます。こういったものが大量な伸びですね。  化学物質に対する医学研究、医学教育は、生物を研究対象とする細菌学、微生物学、医動物学、医生物学等があるのに対して、ほとんど学問としては成り立っていないと承っておりますが、それはこの対応というものがおくれておる証拠ではないかと思います。病院での臨床検査部門は、体の中にもともとある物質の分析が中心であり、体の中に外から入った化学物質の分析については対応がなかなかできていない現状でございます。  そこでお伺いしたいのでございますが、最初に文部省にお伺いしますが、我が国の国立大学で化学物質の毒性を研究対象としているところはございますでしょうか。
  197. 大崎仁

    ○大崎政府委員 お答え申し上げます。  ただいまのお尋ねの分野の研究につきましては、一般的に申しまして、大学の医学部あるいは薬学部等の関連の講座の研究者によってある程度行われておるというふうに承知をしておりますが、特にその問題について取り組んでおります研究所が幾つかございます。例えば千葉大学の生物活性研究所というようなところでは毒性病理というような部門を設けまして、その面の研究を進めているというような状況にございます。なお、文部省といたしましては、科学研究費補助金の中で、環境科学等の枠あるいはがん関係の枠等で研究の助成というものにも努めておるところでございます。
  198. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 厚生省にお伺いします。  日本における化学物質による急性中毒で死亡する人は、死因統計によると年間六千人と伺っております。この化学物質による中毒対策はどのように処置しておりますか。
  199. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 化学物質によります急性中毒の発生に際しましては、何よりも迅速な処置が大事であると考えておるわけでありまして、救急医療体制の重要な部面であると存じます。そこで、休日夜間急患センターでございますとか、救命救急センターでございますとか、救急医療体制の充実に努めておるところでございますけれども、さらに努力をいたしたいと考えておるところであります。
  200. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 現在、化学物質の増加は物すごいですね。先ほど論じたとおりですが、そのうち中毒を起こすおそれがある物質を考えても、医薬、工業薬品に三万種、農薬五千、殺鼠剤二百など数十万種になるのじゃないか、こういうように言われております。さらになおふえ続け、内容も変化し続けております。そして、こうした事故防止のため、欧米では三十八カ国で中毒センターを設けて対応しておると聞いております。今努力すると御答弁ございましたけれども、日本にはそういう中毒センターというものはございますか。
  201. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 救急医療の重要な一環でございますから、それぞれ努力をしておるところでございますが、お話のございましたのは日本列島を覆うようなセンターであろうかと存じますが、それは今日のところ、筑波大学でかなりのことをやっておりますけれども、外国と比べましておくれておると存じます。
  202. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 筑波大学の話が今ございましたが、確かに現在無料報酬で関係者は中毒一一〇番、これを続けておりますね。筑波大学での中毒一一〇番で、過去二年間で何件の相談件数があり、そのうち一般家庭からは何件ぐらいございましたか。
  203. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 いわゆる中毒一一〇番ということで、筑波大学の臨床医学系の内藤教授が五十六年九月一日からボランティアとして行っているわけでございますが、内藤教授からの報告によりますと、問い合わせの件数でございますが、四万七百三十九件というぐあいに伺っております。そのうち急性中毒等緊急性の高いものの件数が三万六千九百十二件ということになっております。この三万六千九百十二件のうち、一般家庭からの問い合わせは二万八千七百五件というぐあいに伺っております。なおさらに、毒性が低くて中毒を起こすおそれが少なく、自宅での経過観察で十分と思われるものの件数は二万五千九百六十六件というぐあいに聞いております。
  204. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 今、自宅での経過観察で十分なその数も御答弁いただきましたが、もしこの中毒一一〇番というものがなければ、これらのほとんどの人が医療機関を訪れ、何らかの処置を受けたはずと思われます。事実、米国のピッツバーグにおきましては、一九七二年に中毒センターが発足する前、中毒事故の九〇%は医療機関で受診していたが、中毒センターができてからはこの数が一五%に減少しており、人口百五十万人をカバーするユタ州の中毒センターについては、ある保険会社が計算したところによると、一九八一年、一年間に中毒センターがあることによって五十七万八千ドル、約一億三千三百万円の医療費と医療要員一万二千人分並びに医療施設使用費が節減されたと言われております。  そこで、筑波大学の中毒一一〇番についての試算によると、現在の問い合わせ件数一日五十から六十件、こう言われております。年間二万件、こう言っておりますが、このうち少なく見て五〇%の患者が救急部を受診せずに済んでおり、直接の医療費だけで二億円が浮いていることになるんだと計算しております。また、東京消防庁などの試算によれば、救急車が一回出動すると五万円の経費がかかる。一万人が救急車を使わないで済んだこととすると、それだけでも五億円が浮いたことになる、こういうようにも言っております。  そこで、厚生省に伺いたいわけでございますが、このようなセンターをつくることは、化学物質のデータベースづくり、または中毒を起こす化学製品に対するためのデータベースづくりと対応して非常に重要であると思います。欧米諸国にはそのようなセンターができているのに、日本としてこれは積極的に進めなければならない、こう考えますが、お考えをお聞かせください。
  205. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 先ほど局長からお答え申し上げましたけれども、日本全土を覆い尽くすようなセンターというものは、今直ちに実施することはなかなか困難だろうと思うわけでございます。したがいまして、今救急医学会を初め関係者におかれまして、まず中毒の情報センターをつくろうというお話が進んでおるようでございます。その情報センターと救急病院あるいはお医者さんとオンラインで結ぶことによってかなりの手配ができようかと思うわけでございますので、その救急医学会その他の関係者の方々の検討の経過を見守りながら適切な対応をしてまいりたいというふうに考えております。
  206. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 終わります。
  207. 大西正男

    ○大西委員長代理 これにて竹内君の質疑は終了いたしました。  次に、米沢隆君。
  208. 米沢隆

    米沢委員 遅くまで大変御苦労さんでございます。私は、まず冒頭に国鉄の余剰人員対策につきまして当局の見解をただしておきたいと思います。  国鉄再建にとりまして、余剰人員対策が円滑に推進されるかどうかは大きなかぎを握っておると言っても過言ではないと思いますが、国鉄では昨年の七月十日、余剰人員の調整策として三つの制度、一つは退職制度の見直し、二つ目に休職制度、三つ目に派遣制度、この三つの制度につきまして各組合に提案をされ、このうち休職制度と派遣制度につきましては昨年の十月九日、鉄労など三組合と妥結されました。その際、国労、全勤労の皆さんは、これは首切りであると決めつけて妥結を拒否し今日に至っていると聞いております。この間、当局は各組合に対し、組合の所属別による区別を行わず、全職員を対象として休職、派遣の説明、募集を行うと言ってこられたと聞いておりますが、今日までその考え方で対処されたのかどうか、同時にこれからもそのような考え方で対処されるおつもりか、当局の基本姿勢を明らかにしてもらいたいと思います。
  209. 太田知行

    太田説明員 余剰人員問題についての認識及びその問題の経過、そしてそれに対処する基本的な考え方は今御指摘のとおりでございます。
  210. 米沢隆

    米沢委員 国鉄当局の提案されたこの調整策に反対されまして国労は三月一日に違法ストを計画しておりました。三月一日の朝になって当局の最終回答なるものを得たとしてストを中止することになり、そのときに当局から次のようなメモが引き出されております。  当局の最終回答として、諸懸案事項については円満に解決を図るよう誠意を持って交渉する。なおその間、いわゆる別紙一、三については強制、強要にわならないこととして、自粛して対処する。この中で、別紙一、三というのは休職、派遣のことを指すのだと思いますが、その間、強制、強要にわならないこととし、自粛し対処するとの表現は一体何を意味しているのか。この物の考え方は妥結に至らなかった国労のみを対象とする考え方なのか、それとも全組合員を対象とする考え方なのか、そのことをはっきりしていただきたいと思います。
  211. 太田知行

    太田説明員 先ほど御指摘がありましたように、この七月に提案しました三つの制度のうち最初の退職制度の見直しは今、すべての組合と妥結に至らず引き続き協議中でございますが、二番目、三番目のいわゆる休職、派遣の二点につきましては十月十日から通達を発しまして、全職員に対しましてこれを実施しているところでございます。  既に先行妥結しました三組合との間におきましては、これを実施する上に当たっての心構えとして強制、強要にわならないということも確認しているところでございます。また、そもそもの制度の本旨が本人の希望あるいは申し出というものを大原則としておりますので、やはり運用に当たりましてはこの強制、強要にわならないというのが大原則でございます。そこで、全職員を対象にしておりますから、未妥結の組合に所属する組合員もやはり職員という意味では全く同じでございますので、その原則をひとしく適用している次第でございます。
  212. 米沢隆

    米沢委員 今当局側が御説明なさったことが事実であり、今後もあらゆる現場でその姿勢が堅持をされて、実質的に実効のある募集が行われればそれはそれにこしたことはありません。しかし、この文書で使われております自粛するという言葉がひとり歩きするのではないかということを我々は大変危惧いたしております。なぜかなれば、例えば国労は当局による余剰人員対策が労基法違反であるとして全国で百カ所以上の告発を行ってきた経緯がありますが、このような動きの中で自粛してというような文言を回答されるということになりますと、当局からそういう言葉が引き出されたということになりますと、現場段階では休職、派遣の募集は完全にとまってしまうのではなかろうか、そういうことを危惧いたします。今日までの間にも、国労と妥結しないために、多くの現場では全職員への説明、募集が完全に行われていない。そういう意味ではこのメモで現場における作業は一層困難になるだろう、余剰人員対策は進まないことになってしまうのではないかということを我々は心配をいたします。  その理由は、第一に、強制、強要の事実関係はだれが認めるかという問題であります。強制、強要などは、これは極めて主観的な言葉でございまして、自分たちがこれは強制だ、そういうふうに言えば、すべて自粛せざるを得ないことになるのではなかろうか。また、現場では実効を上げるために、国労組合員に対しても十回以上も説得している現場長がおり、そして、国労はこれを強要だとして告発するという話も聞いております。そのような場合に自粛するというのは、これをやめるということになりますよね。上はそのように、今おっしゃったような気持ちでやれやれと言われても、下の方は、現場では全然動かない。自粛するというその言葉を盾にして、現場の上司が物を言うたならば、それは強要であり、強制に近いものだ、おれはそう理解していると言えば自粛しなければならぬわけですから、そのあたりを国鉄当局としてはどういうふうに御指導なさっていくのか、私は、これは非常に大きな問題ではないかと思います。そういうような意味で、このような混乱を招くような言葉そのものが非常に問題だ、私はこう思っておるのでございますが、この際、自粛するという意味をもっと明らかに公表すべきではないかと思います。いかがですか。     〔大西委員長代理退席、委員長着席〕
  213. 太田知行

    太田説明員 先ほどもお話ございましたように、余剰人員問題は国鉄再建の基本をなす重要なテーマでございます。国鉄の置かれた状況からいたしまして、これの制度の速やかな実施、運用が急務でございますのと、既に私どもは全職員を対象に通達を発し、その実施を推進している立場でございますので、これに対してその推進を阻むような、ブレーキをかけるような措置をするということは、まさに自己矛盾であり、再建を遅くするということにも通ずることでございます。私どもとしましては、これは絶対に推進しなければいけないというふうに覚悟を決めているところでございます。  それから、この文書につきましては、今言いましたように制度の本質そのものが本人の希望ないしは申し出ということを主眼にしておりますので、やはり強制、強要にわならない、あくまでも本人の気持ちあるいは希望というものを引き出しながら進めていくという事柄でございますので、当局としてその事柄を進めるにあたりまして、みずから強要にわならないように慎み、あるいはみずから戒める、これは基本でございますので、その当然の事柄を表現したものでございまして、地方において、現地において何かがいろいろあり得たとしても、それはどうしても進めなければいかぬという事柄でございます。
  214. 米沢隆

    米沢委員 この余剰人員対策はあくまでも本人の自主性を尊重する、したがって、強要とか強制などはまずあり得ないというような話をされますけれども、それならこんな文書に書く必要はないですね。この文書を書くことによって、自粛するという言葉が続いているところに問題があるのです。
  215. 太田知行

    太田説明員 実務的に申し上げればあるいは御理解いただけるかと存じますが、まず休職の方でございます。  私どもは、復職前提、休職していずれまた戻ってくるという制度でございますが、これが実施される、あるいは本人が希望するパターンとしましては、家事手伝いをするとかあるいは学校に行きますとか、つい最近では海外協力隊に数十人応募しまして、難しい試験の末に十人が合格したのでございます。これなんか一番いい応用例ではないかというふうに思うのでございますが、今のようなケースは、それぞれ個人の事情なり個人の希望に立脚するものでございますから、そういう気持ちを基本にしながら進めていくということに相なろうかと存じます。  それからまた出向、いわゆる派遣の方は二千五百名の受け皿を現在用意してございます。三月一日現在まだ四百しか実施しておりません。残り二千何がしか残っているのでございますが、これはやはり年度がわりの四月一日から実施されるというケースが多うございますので、現時点においては、その残りのかなりな数が、具体的にどういう出向先、どういう条件ということを明示いたしまして、それに対する応募をしている、こういう状況でございますので、中止するとかとめるとかという、いわば次元の問題ではないということが事実としてあるわけでございます。
  216. 米沢隆

    米沢委員 そういうことであれば強いて再度質問はいたしませんが、国鉄本社の中には、このメモはストライキのおり代だというようなことを言う人がおるやに聞いております。これは事実かどうか、僕は直接聞いたことはありません。しかし、こうけう姿勢そのものが大変問題だ、私はそんな気がしてなりません。ちょうど生産性運動が中止された経緯を見ましても、御案内のとおり、その当時国鉄当局は、生産性運動は正しいし中止しない、しかし教科書の見直しのために一時中断するだけだと国会では何回も答弁されながら現在に至っておるわけでございまして、そういう二の舞をまたしてほしくない、そんな気持ちで私は質問をしております。運輸大臣、どうかそういうことでぜひ国鉄の余剰人員対策がスムーズに進みますように、大臣としても大いなる指導性を発揮してもらいたいと思いますが、大臣、最後に御答弁いただきたい。
  217. 山下徳夫

    山下国務大臣 国鉄の余剰人員対策につきましては、国鉄の労使双方がお互いによく話し合って、そしてお互いによく協議をしながら実効の上がるようなことをひとつお考えいただく、協議をしていただくということが一番の理想でございますし、また、そのことをおわかりで今日までこの対策に取り組んでこられたと私は思っておる次第でございますから、もちろん私どもも監督の立場にありますけれども、おわかりの双方にとって、私どもから一々細かな問題まで申し上げるまでもなく、今後実効が上がるように双方お話し合いを進めていただけるものと私は確信をいたしております。
  218. 米沢隆

    米沢委員 どうぞお引きになって結構です。  先般、私は大蔵委員会におきまして、目下話題の税制改革問題、特に政府がやろうとしている税制の抜本的な見直しというものが、いわゆるシャウプ勧告以来の大改革だというような大義名分のもとで結果的には増税、増収対策の一環として行われる可能性が濃厚だというような観点から、税制改革と財政再建との関連を中心に質問させていただきましたが、当局の御答弁は、残念ながら相も変わらず玉虫色に徹し、国民に対して税制改革の理念と方向を示して国民の疑念を払拭するというものではありませんでした。そこで、今回、またこの予算委員会の場をかりまして、引き続き税制改革に関する疑問点について大蔵大臣の見解をただしておきたいと思います。  まず第一に、今回行われようといたしております税制改革と臨調との関係でございます。  先般、大蔵大臣は、財政、経済に関する集中審議の際に、税制抜本改革と、五十七年の臨調答申に言う、いわゆる「増税なき財政再建」という基本理念との関係につきまして、我が党の大内委員の、財政期間中は租税負担率を上昇させるような税制改革は行わないと確約してもらいたいという質問に対して、租税負担の公平化、適正化の観点からの税制見直しは臨調答申にも述べられており、検討の結果、租税負担率が上昇することになっても「増税なき財政再建」には反しないと述べられたと報道されておりますが、その真意は、自然増収と不公平税制是正や租税特別措置などのでこぼこ調整によって租税負担率の上昇につながったとしても臨調答申の範囲内である、こういう意味なのか。つまり現に今まで「増税なき財政再建」という看板を掲げながら、既存税制の税率や適用範囲拡大などで増収を図ってこられたことは事実でございまして、そういうものも臨調答申の基本理念には何ら抵触しない、そんなつもりで今まで対処されてきたというふうに理解をいたしておりますが、このときの御答弁、その真意をもう一回この場ではっきりしていただきたいと思います。
  219. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私が申しましたのは、臨調答申の「増税なき財政再建」とは、いわば当面の財政再建に当たっては何よりもまず歳出の徹底的節減によってこれを行うべきであって、全体としての租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たなる措置を基本的にはとらないということを意味しておるというこの答申に基づきまして、結局、今おっしゃいましたように、税制上の新たなる措置であるから、いわゆる税の自然増収というものは含まれない、したがって、税の自然増収によって租税負担率が上昇しても「増税なき財政再建」という定義には反しない、こういうふうに申したわけであります。  それからもう一つは、私のよく使う言葉でございますが、でこぼこ調整でございますけれども、税負担の公平化、適正化を推進する観点からの税制の見直しは臨調答申にも指摘されておるところであって、したがって、それによって租税負担率が上昇しても「増税なき財政再建」には反しないというふうに申し上げたわけであります。したがって、「増税なき財政再建」という基本理念におきましても、租税負担率の上昇が許容されると申しましょうか、そういうケースは十分あり得るということを申し上げたわけであります。
  220. 米沢隆

    米沢委員 ちょっと私は意味がわからないのでございますが、大蔵大臣がおっしゃるのは、先ほど申しましたように、自然増収といわゆる不公平税制の是正あるいは特別措置あたりを調整する、いわゆるでこぼこ調整と言われますが、そういうものをやることによって租税負担率が上がっても、それは臨調の言う「増税なき財政再建」の定義の範囲内である、それだけだったらいいのですね、それだけだったら。しかし、何か大蔵大臣の言によれば、臨調も税制改革みたいなものをやれと言っておる、したがって、税制改革をやることによって、その中には租税特別措置あたりをでこぼこ調整するということも含まれますし、新たな措置、いわゆる間接税あたりを導入するというのも含まれますが、そういうことを臨調も言っておるのだから、臨調の言うとおりにやったことによって租税負担率が上がることはこの定義に反しないというのはちょっと飛躍ではないか、そこをちょっとはっきりしてもらいたいと思います。
  221. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今、それは飛躍ではないかと、確かにその問題につきましては、私も慎重に対応すべきであるという考えを持っております。と申しますのは、臨調の答申を見ますと、それはずるっこく読めば今おっしゃったようなことが言えるかもしれません。それは税制については税負担の公平確保の観点を踏まえ、申告納税制度の適正な運営のための基盤の強化、租税特別措置の見直し等を推進するとともに、所得税制における課税最低限及び税率構造並びに直接税と間接税の比率等について検討する、こう述べられておりますから、それをやったら結果としては上がりましたということは、これだけ読めば言えるかもしれませんけれども、私はそうはとってはならぬなと思っております。現実、この臨調答申の場合はいわば「増税なき財政再建」というのをかんぬきとして、あるいはてことして歳出削減に何よりも真剣に取り組みなさいよというお謝し、お謝しも適当でありませんが、そういう言葉で我々にかんぬきをある意味においてかけてもらっておるわけでございますから、それが主題でありまして、この税の問題というのは精神的に今のようなことをお述べになっておりますが、例えば当時はまだ使われていない直接税、間接税の比率というようなことは必ずしも税制調査会等では余り使わない言葉をお使いになっておりますから、そういう意味においてそれを平たく文字だけを読んで今飛躍とおっしゃいましたが、ある意味において飛躍というような感じのする措置、考え方に立ってはいけないと私も思っております。
  222. 米沢隆

    米沢委員 今この予算委員会を通じた議論の中で、ことしの税制改革の見直し等は例えば大型間接税を導入するとか、あるいはそれによって直間比率の是正等を考えるというような議論がなされていますよね。とするならば、大蔵大臣流の解釈とすれば、例えば大型間接税を導入して直間比率の是正をしようというのは、これは単に不公平税制を是正するたぐいのものであって、こんなのは新たな措置とは言わない、こういうふうにとられるわけですか。
  223. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私は、租税負担率を変える新たなる措置というものに、いわゆる一般的に言われます、これも定義があるわけじゃございませんが、大型間接税というものは入るのじゃないかと思っております。  ただ、いわゆる不公平税制の是正の中でいろいろな項目が従来の税調の答申の中に書かれてありますが、そのほかに直接税と間接税の比率等が不公正ではないかという議論もあるということは承知しておかなければならない。そしてその議論を踏まえて、仮に国民のコンセンサスそこにありと見て変えるということになれば、それは一方では新税という問題になってくるであろう、だからそれも仮定の事実としてお答えすることにして、それをいわば予見を与えるような考え方では申し上げないように慎重に言葉を選んでおるわけであります。
  224. 米沢隆

    米沢委員 今の答弁では、国民的なコンセンサスが得られて大型間接税を入れるということになればそれは新たな措置である、ですね。しかし、臨調は、新たな措置によって租税負担率を上げるな、こう言っておるわけですから、もし大型間接税が導入されることになっても、その段階においては少なくとも租税負担率は上げない、少なくとも現行と同じような、とんとんくらいのところでセットする、こういうことが政府の方針であるというふうに考えていいですね。
  225. 竹下登

    ○竹下国務大臣 その議論をしますと、もういわゆる税制調査会の議論に対してある種の予見を差し挟むことになりはしないかな、だから、あくまでも仮定の事実としていろいろな場合が想定されますが、したがって、私の場合は過去の税調の答申の言葉を引用してのお答えの限界を出ないように、できるだけ注意してお答えをいたしておるということであります。
  226. 米沢隆

    米沢委員 余り突っ込んで言うと政府税調に予見を与えることになる、こういう解釈のようでございますが、しかし、例えば臨調を基本としては守るというのは政府のお約束なのでございまして、政府税調が直接に縛られるという問題ではない。逆に政府税調は、そういうように政府は縛られておるかもしれないけれども、もっと自由に議論する場であるかもしれませんね。そういう意味では、臨調を守るというのは中曽根内閣の公約であり、大蔵大臣も閣僚の一員でございますから、臨調を守るということはやはり皆さんにもかかってきておるはずですね。そういう方が、政府税調に予見を与えるから議論できない、ではなくて、今大型間接税の導入というのは新たな措置だとおっしゃった。それならば、臨調を守るという意味では、新たな措置をしたときに、租税負担率は上がらないとお約束するのは当たり前の話じゃないですか。
  227. 竹下登

    ○竹下国務大臣 そこのところが、要するに政府税調というのは、これは自由にとおっしゃいましたが、国税、地方税のあり方について、とこういう諮問を申し上げて、それに対して御議論をいただいておるわけでありますから、そのときにかくなるものはとるとかとらないとかいう予見を与えるのは差し控えるべきではないか。政府が「増税なき財政再建」というものを理念として堅持しておるということは、これは国会の問答を絶えずお伝えしているわけですから、政府税調等も十分御理解をされた上での御議論がなされるであろうというふうに思って、そこまでは推測できるところであろうと思っております。
  228. 米沢隆

    米沢委員 わけのわからぬ議論ばかりして時間がなくなってしまいますが、「全体としての租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらない」というのが五十七年の臨調ですね。大型間接税は新たな措置だとおっしゃったので、できれば政府としても、政府税調に諮問をされる場合に、このような趣旨を体して議論してくれと言うのは何も予見を挟むようなことじゃないんじゃないですか。
  229. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これはあくまでも、お答えしておりますように、そういう理念で今日の財政改革に当たっております。そして米沢さんから今のような意見があっておることも正確にお伝えするわけでありますから、これは米沢さんの意見も、そして私の答えも並列して報告して議論の土台にしていただこう、こう思っておるところであります。
  230. 米沢隆

    米沢委員 今までの議論の中で、例えば中曽根総理自身も、もし直間比率等の是正をしようとするときに、大型間接税を入れる、その場合は少なくとも出発点はとんとんだろうなどということをおっしゃっていましたね。大蔵大臣はそうじゃないんですか。中曽根さんはここで確実にそうおっしゃいましたね。直間比率是正等のために大型間接税の導入が必要であるならば、そのときには租税負担率はどんどんから出発でしょう、とこうおっしゃったよ。大蔵大臣、これじゃ違うのですか。
  231. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは、総理ならそこまで観測してもいいかもしれませんですが、私はそこまでの観測は避けるように努力をして、言葉を選んでおるわけです。  今の議論をやってまいりますと、これは仮定の議論になりまして、いわゆる大型間接税が入れば租税負担率をとんとんといいますか、おおむねその線において、結果としてそうなれば直接税の減税ということになってくる。そうなりますと、今度は、これもまた結果としてですが、性格上、直接税は毎年率は上がっていく性格でございますから、間接税はなかんずく従量税だった場合はその上がる度合いは少ないですから、その差ができたら、またいわゆるとんとんを念頭に置いての増減税を行えばいいじゃないかという議論は、これは学者の議論としてもまた町の議論としてもある議論でありますが、それもやはり私は税調の中で議論してもらうことではないか。と申しますのは、まず増税ありきでもなければ減税ありきでもなく、税制の見直しをしてくださいという諮問を、そういう考え方を御議論願います前に、初めから増減ありきということを前提に申し上げるのは差し控えた方がいいという、その一線を大事に守って見識なき答弁をしておるということであります。
  232. 米沢隆

    米沢委員 くどいようで大変恐縮でございますが、今までの議論の中で、大体税制改革において、大型間接税を入れる、直間比率も是正しなければならない。その場合、減税もされるというのですから、大型間接税を入れて増税すると同時に減税の原資にしていく。そういう議論をする場合に、結果的に租税負担率は出てくるものかもしれませんが、やはり減税の規模をどれぐらいにするのか、間接税の規模はどれぐらいのものを導入するのか、そんな議論をしながら、租税負担率は一体どうなるのだろうか、常に租税負担率の率の上昇あたりをにらみながら、直間比率の是正の度合い、減税の度合い、大型間接税の税率の問題等を議論されるのは当たり前でしょう。そうなれば、今大蔵大臣が租税負担率が余り上がらぬようにしたいというつもりでやりたいとおっしゃることがイコール政府税調の議論を物すごく狭めて、大蔵大臣のおっしゃるようなことになったら、全然政府税調の議論ができないなんということにならないと思うのですよね。具体的にやる場合には、確かに最初から租税負担率何%、それに従って何%ないかもしれません。しかし、間接税そのものはどういう格好でしょうか、税率何ぼにしたらどれぐらいになるだろうか、大体これは計算をする。そして減税の幅を計算する。その差し引きが増になるのか減になるのか、ここらが国民の一番の関心のあるところですよね。逆にそのあたりを念頭に置きながら税制改革を議論するのは当たり前であって、租税負担率を上げないように税制改革やってくれと我々が言うとるところに、そうやりますとかやらないと言うことが政府税調の議論を物すごく狭めていくということにならないと思うのですね。それはちょっと逃げじゃないか。もっとはっきりしてもらいたい、大蔵大臣としては。
  233. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これはできるだけはっきりしない方がいいんじゃないかなと私は思っております。あくまでも今政府税調が、いわゆる異例のことながらとして答申いただいたものは、中曽根総理の政治的表現をかりるならば、公平、公正、簡素、選択を旨として抜本改正に取り組んでくれ、だから私は素直に受ければそれでいいんであって、税制の仕組みの問題にまでさかのぼって議論されるわけでございますから、それによって今度増とか減とかをどう仕組んでいくかというのは、その先の議論ではなかろうか。いわば各党において、税制調査会でおおよその、あるいは政権政党として、あるいは政権にかわるべき政党として議論されるのは、現実の政治の国民のニーズに対する必要の度合いからおよそのめどを置いてなされるわけでございますが、今度の税調の答申からすれば、いわば純粋な税体系のあり方の議論からまずしていただく。総理も私も所得減税がしとうございますということを申し上げております。が、それはそれとして、やはり今度の政府税調でおやりいただくのは、それらの議論も税調の議論の中で出てくる議論であって、正確にあらゆる意見は伝えても、あらかじめ政府としてこのぐらいとか言うことは避けた方がいいんじゃないかな。それで活発な議論が起こって、また国会でも議論されて、国民全体がその議論に参加するようになって初めて、いかなる立派な政策も国民の理解と協力を得なければできないわけでございますから、そういう待ちの姿勢と言うといささか表現が適切でなかろうかとも思いますが、そういう姿勢の方がむしろ私は抜本改正の際にはあってしかるべき姿勢ではなかろうかな、こんな感じで対応しております。
  234. 米沢隆

    米沢委員 この問題について最後の質問になりますが、それならば、大蔵大臣にとってあるいは中曽根内閣にとって五十七年臨調に言う定義は、いわゆる五十七年臨調の答申を守るということは一体どういうことなんですか。
  235. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわゆる「増税なき財政再建」という理念はこれを堅持する、それを放棄した途端に歳出に対する切れ味は喪失してしまう、だから理念としていつまでも堅持していなければならぬというふうに考えております。
  236. 米沢隆

    米沢委員 次に入りますが、六十年度の「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」という大蔵省の出された文書の中に、「租税負担と社会保障負担とを合わせた全体としての国民の負担率は」「高齢化社会の進展等により、現状よりは上昇することとならざるを得ないが、徹底的な制度改革の推進により、ヨーロッパ諸国の水準よりはかなり低い水準にとどめる」ことが必要であろう、こういうふうに書いてあります。ここで、これからの予測はしてありますけれども、これは大体いつごろのことまでを想定しておるのですか。六十五年ぐらいのことですか、それともそれ以上に中長期的なことなんでしょうか。
  237. 竹下登

    ○竹下国務大臣 この問題は「八〇年代経済社会の展望と指針」、これは五十八年の八月でございますが、いわゆる五十八年三月の臨調の最終答申の趣旨を踏まえてこれがなされたわけであります。したがって、この点、私も勉強をしておりますのは、この「徹底的な制度改革の推進により、ヨーロッパ諸国の水準よりはかなり低い水準にとどめるよう努める。」これも定性的な考えが述べられておって定量的なものがない。臨調の、今行革審でございますが、四〇とか四五とか等を念頭に置いていろいろ議論をされたというところまでの国会答弁は存在しておりますが、その後また、この五十八年当時から見ますと、ヨーロッパの水準はどんどん上がってきておるということでございますので、判然とどこまでということを決めたわけではございません。しょせんはこれは受益者も国民、負担するのも国民、その国民の合意、コンセンサスがどこに得られるかというのを、こうした問答を通じながらいずれの日かそれを確定していかなければならぬ問題だろう、まさに今日こそ問答の段階じゃないかな、こういう感じで受けとめております。
  238. 米沢隆

    米沢委員 既にこれもこの席上でいろいろと議論になりましたけれども、六十年度の租税負担率は二五・二%、これは二十四年以来の最高だと言われますが、社会保険負担率は一〇・八%でトータル約三六%になっておる。さきに大蔵省は、我が党の吉田理事の要請に応じまして、財政再建の最終年度である六十五年までの租税負担率の仮定計算例を提示されました。しかし、これを見ますと、地方税の負担率が完全に横ばいになっておりますね。少なくとも六十年度予算で国税が一五・九%、地方税が九・三%で、これが六十五年に国税は毎年〇・一%程度ずつふえて一六・四%程度になる。こうしながら、地方税は相変わらず九・三%程度というのは一体どういう理由があるんだろうか。仮定計算にしては余りにもいいかげんだ、こう思うのでございますが、自治省の方、おられますか。地方税は一体どういうような伸びをしていくのでしょうか。国税を計算した仮定例を前提として、やはり九・三%そのままですか。地方税は伸びなくてもいいのかな、これは。
  239. 天野光晴

    天野委員長 自治省――自治省は呼んでない、米沢君。
  240. 米沢隆

    米沢委員 それでは、これはまた後でお尋ねしましょう。  問題は、今度は厚生省にお伺いしますけれども、社会保険負担率ですね。これについては同じような仮定計算はできないのでしょうか。数字があったらお示しいただきたいと思います。
  241. 長門保明

    ○長門政府委員 お答え申し上げます。  現在の社会保障負担率は、先生先ほど仰せのとおり一〇・八%でございますが、将来の数字につきましては、今後の経済情勢等不確定な要素が多くて予測することはなかなか難しいと存じます。  ただ、過去を振り返りまして、過去五年間の動きがどうなっているかということを申しますと、昭和五十五年の社会保障負担率が九・四、それから六十年度が一〇・八というふうに見込まれておりますので、この間五年間の伸び率が一・四ポイント上がっておりますので、過去五年とそれから今後の五年とを比較いたしますと、ここまでは上昇しないのではないか、こういうふうに考えております。
  242. 米沢隆

    米沢委員 確かに不確定要素がたくさんあるから仮定計算をしようというのですからね。  今、五年前の五十五年と六十年を比較されて大体一・四ポイントくらいふえておる、これから五年先にここまではふえないけれども大体一ポイント前後はふえるだろう、こう言ってもいいですね。よく厚生省の方は、健保法の改正とか年金法の改正になるとばあっと計算して、こうなります、こうなりますと、本当だろうかというような数字を出すにもかかわらず、こんな数字になると途端にトーンがダウンするのはどういうことなんですか。
  243. 長門保明

    ○長門政府委員 今後の見込みについてでございますが、先ほど申し上げました過去五年間につきましては、この間に厚生年金の保険料率の改定がございましたけれども、これから先は、来年の四月、現在御審議をお願いしております国民年金法等の一部改正案、これで財政再計算を行う期間がその後五年間から外れるのではないかというふうに見込まれますことと、それから医療費の関係につきましては、近年伸び率がダウンしておりますので、それで先ほどの過去五年の一・四ポイントよりは低くなるであろうというふうに見込むわけでございます。その辺の予測につきましては、なかなか予測困難な要素が多々ございますので、現在のところでは、その程度のことしか申し上げられないと思います。
  244. 米沢隆

    米沢委員 問題は、政府が国民の負担率は現状より上昇せざるを得ない、こういうことを言うだけで、どれくらいの水準を是とするかというめどが示されないところに増税論議が出てきたり社会保険料がかなりふえていくんじゃないかという不安が出てきたり、将来にわたって国民が全然わからない。幾ら判断しろ、増税も判断だ、間接税も判断だ、直間比率も判断だとおっしゃっても、判断する材料を何も与えずに考えろ考えろ、そんなばかげた話はないのでございまして、仮定計算であることはみんなわかった上で、少なくとも六十五年の時代では国民負担率は社会保険料と税負担を入れて大体これぐらいをめどにして、逆にそれをめどにしながら歳出削減に当たるよう行政努力をする、そういう議論の方が筋であって、そんなことは何も言わずに、どうなるかわかりませんよと言いながら、それじゃ何をするかまたわからない、こういうのは責任ある行政じゃないと思うのですね。大蔵大臣、いかがですか。
  245. 竹下登

    ○竹下国務大臣 そういう議論にこたえてぎりぎりというものが試算であり仮定計算である、その仮定計算も御案内のように、すべてのいわば仮定の前提に今立ったものでありますが、そういうものを、可能な限りのものを出すところで議論が徐々に詰まっていくものではなかろうかというふうに私は考えております。
  246. 米沢隆

    米沢委員 いろいろと今まで申し上げてきましたけれども、今までの御答弁でも、また今国会を通じての御答弁を新聞紙上等で伺う範囲におきましては、今から始まる税制改革というものが、確かに税制本来のあるべき姿を追求する改革を大蔵省としてもやりたいという部分もなしとはいえませんが、本音のところは、どうもこれからの税制改革で大型間接税を導入して増税、増収等を図りたいという考え方が色濃く出ておるような感じがしてならぬのでございます。  それで、五十四年の一般消費税の導入を断念した後、当面の財政再建に当たっては、まず歳出の徹底的な削減によって行うべきであり、租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たな措置をとらないということは、中曽根内閣にとっては公然たる一貫した看板であったはずでございます。もしここで、大蔵大臣もおっしゃっていただきますように、大型間接税を導入することによって増税路線に突入したとするならば、行革によるいわゆる歳出カットに歯どめを失うでありましょうし、また歳出膨張圧力が働いて増税が増税を呼ぶようなことになるのではないかということを我々は大変憂えておるわけでございます。そういう意味で、この積み残しの行革、それも手をつけないまま、中途半端なままに棚上げして、そして国民の懐をねらうというような官尊民卑的なやり方には、国民は大変怒りを持って見ているだろう、こういうふうに私は考えるわけでございます。  大臣は、これからの税制改革の中で下手をすれば増税の措置が入るかもしれないうまくいけば租税負担率を上げないような状況の中でやれるかもしれないというような右に左に気持ちは揺れ動いているかもしれませんけれども、大蔵大臣にここで最後にお尋ねしますけれども、今、行政改革というのはどういう段階に来ておるというふうに御理解いただいておりますか。
  247. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは政府全体としての考え方を申し述べる立場に私はございませんが、しかし、私自身の担当しておりましたいわば専売改革、民営化等の実績から見てみますならば、五十四年にいわゆる大平行革のありました当時いろいろなことを議論いたしましたが、電電が民営化され、そしてまた四月になりませんけれども専売が民営化される、そういうことはまさに大改革が緒についたと言えるのじゃないか。一方、国鉄問題になりますと、国権の最高機関たる国会の承認人事でありますいわゆる監理委員会で御審議中の問題でございますので、これこそ予見を挟むわけにはまいりませんが、これとて当時から見れば大変な変化があったものである、ただ、これがいわば改革によって財政上にいささかなりともメリットが出てくるというのにはいま少し時間がかかるのではなかろうか、私はこんな感じがいたしておるところでございます。
  248. 米沢隆

    米沢委員 先が込んでおるそうですから、これで失礼いたします。
  249. 天野光晴

    天野委員長 この際、伊藤昌弘君より関連質疑申し出があります。米沢君の持ち時間の範囲内でこれを許します。伊藤昌弘君。
  250. 伊藤昌弘

    伊藤(昌)委員 NHK科学映画「核戦争後の地球」の非科学性その他について質問をいたします。  質問通告は詳細に文書で出してありますから、国民にわからせる心でお答えをいただきたいのです。時間が少ないので、答弁は最後に一括お願いしたい。また朗読になりますが、ひとつお許しをいただきたいのであります。  この番組に政治的意図があったならば別ですが、ないなら良心上「核の冬」の番組などはつくれないはず。「核の冬」の言葉をつくったセーガン氏は、私の論文は必然的に不正確だ、あくまでも仮説としてと前置きした「核の冬」説と、これを否定する説があります。しかし、地球と海を凍らせる学説はないのです。それを科学上一〇〇%絶対に起きるのだと言って、砂漠のサボテンまで凍らせてしまいました。湿度のないところに雪は降りません。一体凍るのでしょうか。文化庁はこれに芸術賞まで与えてしまいました。これが質問第一点。  全米科学アカデミーその他が「核の冬」は予測できないと言っているものを、大気物理、化学、気象学と核爆発、核戦略の専門家のいないNHKがセーガン氏らの仮説をつまみ食いし、こんな間違った番組をだれの指示で、何の目的でつくったのか、会長、お調べいただきたい。公正な科学番組をつくるなら、左翼系学者のこの仮説と他の学説とを同時間放送するならまだしも、一方だけの話を聞いて日本を氷づけにしてしまいました。地球の凍結は一体だれの説が、会長にお尋ねの第二問。  核戦略専門家、大気物理学にも関心の深い筑波大学中川助教授は、NHK会長に公開質問状を、また文芸春秋十月号にある「反核の欺瞞」「荒唐無稽」とまで罵倒され、反論の紙面提供までされながらやらない。堂々と反論をするか、間違っていたら視聴者に謝罪をするかしなければいけません。これが質問三点。  公共放送が片方の意見しか出さないとは一党独裁共産国の放送と同じではありませんか。放送法は、一つ、政治的に公平、二つ、報道は事実を曲げないこと、三つ、意見対立問題は多くの角度から論点を明らかにすること。まさに全部に違反しているではありませんか。会長、郵政大臣のお考えをいただきたいのであります。  今、皆様方にお配りいたしましたが、八月一日、対日謀略モスクワ放送のすべてが八月五日、六日NHK番組のナレーションとはまさにうり二つ。ツーツーか偶然の一致か知りませんが、双方の目的が一致していることは否定できません。日本公共放送とモスクワ放送の連関を調査せねば危険であります。郵政大臣にただしたいのであります。これが質問第五。  こんな映画を振り回されて反核、反米を公共放送でやられたら、ソ連の思うつぼ。我々西側陣営は核廃絶運動はするが、反米親ソの反核運動は断固拒否をいたします。  ひとつパネルをごらんいただきたい。NHKの被害想定だけ何ゆえこのように超極端なのか。NHKは八五%死亡。WHOは二五%死亡。バーナビ・グループは一五%死亡。セーガン、アーリック・グループいずれも被害はNHKと比較をすると何分の一であります。よろしいですか、かてて加えてバーナビ博士の計算もインド、パキスタンの人口密集地に米ソが全力核投下したことにしてあり、かつ双方の核は敵に落とされないという非現実想定である。限りある爆弾を戦争目的に関係のないインドに投下するばかはないのです。そのように被害を極端に高くした、今述べたWHOやバーナビ博士らが赤面するくらい、その何倍もの被害をつくったのがNHKであります。NHKはみずからの一万発五千メガトンシナリオに基づく想定被害の計算根拠を国民に示すべきであります。これは文書で後日回答願いたいのです。質問第六。  日本が全面核戦争に巻き込まれると八割は死亡、二割は放射障害で死ぬ云々と、これもまことにおかしいです。およそソ連は米ソ核戦争中に日本にだけ大量の核を投下する余裕もなく、百歩譲って、この日本攻撃分の弾頭数、威力、対象都市を明らかにしてほしい。これも後日文書で。質問第七。  海が凍り、氷の上に魚が死んでいる。ぞおっとしました。海は表面から凍る。魚は水の中にいるから南極、北極でも魚は生きています。一体魚は氷の上で死ぬものでありましょうか。これが八番目。  海まで凍る学術論文を文書で提出をしていただきたい。これが質問第九。  「地球が凍結する」の絶叫が数回あったが、セーガン氏ら仮説には、地球の温度は二十八度Cから三十八度C下がるとあります。アフリカの熱帯のジャングルが凍りついている。アフリカは四十度Cですから最大の三十八度Cを引いても氷点下にはなりません。しかもセーガン氏らは、みずからの計算結果を不正確と断っているのであります。万一正しいとしてもNHKのシナリオは七月の昼であり、夏です。海洋沿岸の日本では十八度Cぐらいになるとセーガン氏は言っています。これは春です。春は凍りません。これもNHKはうそをついておるのじゃありませんか。質問第十。  生き残るのはゴキブリ。氷づけの中で寒さに弱いゴキブリが生き残るのでしょうか。ゴキブリは軍人と民間人の区別ができないのに、シェルター内の軍人の死骸を食って生き残るなど、この番組は反シェルター、反軍人の番組であり、核対策も国防も考えさせないようにする外国の謀略番組と思いたくなるのであります。ゴキブリは民間人と軍人の区別が一体づくのでありましょうか。これが第十一番目。  気象学は、学者が百年以上蓄積されたデータをもってしても難しい。それをわずか二年前から始まった「核の冬」説は科学の域にも達していないことは明瞭であります。気象庁は「核の冬」を研究しているのか、国際的にはこの問題はどうなっているのか、気象庁長官お尋ねをしたいのであります。十二番目。  次に、露骨な政治色について。第一に、この映画は、核戦争、地球凍結、生きる努力もむだ、そして核シェルター普及の芽までつぶす。映画の中で婦人の声は、子供の寝顔を見ながら涙でいっぱい、女子高校生は、勉強する意味がなくなったと。絶望感を国民に与えているのであります。  さて、今流行の反米、反核運動の源をモスクワ放送から探ってみようではありませんか。  私はモスクワ放送のテープをここに持ち合わせております。モスクワ放送は世界の反米、反戦団体に反核運動の指示を出しています。五十九年八月九日のモスクワ放送は、「ソ連の平和擁護委員会は、広島原爆投下四十周年に当たる来年八月六日までに、核兵器実験を停止させるための国際運動を始めようというアメリカその他の国の反戦団体のイニシアチブを指示しました。これについての電報はアメリカの反核運動者に送られました」と。案の定、その一カ月後、九月十二日モスクワ放送は、「日本の総評は広島原爆投下四十年を迎えるに当たり、反戦運動をすることを決めました」云々と。その次、十一月八日モスクワ放送は、赤旗が、日本原水協が「被爆四十周年向け提唱」「署名運動」という見出しで日本原水協は反核平和組織の賛同を得て云々と。偶然の一致かどうか知りませんが、モスクワ放送とのつながりを考え合わせると、今流行の反核運動はモスクワからの指示ととられてもいたし力なく、それではソ連の核に反対する反核運動にはなり得ない。専らアメリカの核、特にトマホーク反対に照準が合わされることは確実であります。日本の脅威はトマホークではなくSS20であります。ソ連のSS20を棚上げして、反米、日米安保破棄への大衆運動が展開される、これはモスクワのもくろみより明らかであります。  案の定、五十九年九月二日のラジオ日本「マスコミを斬る」によると、八月九日、長崎市長の宣言の中のSS20とトマホーク非難の一文において、NHK七時のニュースは、ソ連SS20をカットして、アメリカ・トマホークだけを非難しました。何でこんな操作をするのでしょうか。十三番目。  なお、シェルター内でも人は死ぬ。西ドイツでの放射能測定や救助訓練を指して、むだと説明している。核戦争後、飢餓のあらし、生き延びられるのは病原菌だけ、六億年前の地球に返る、こういうふざけた言い方であります。広島原爆投下のとき、内外の科学者は、百年間草木は一本も生えないとか、生まれる子は奇形児とか。しかし、爆心地の草の芽は三週間ごろで開き、奇形児は聞かない。英国チャーチルは、予言が禁物であることは私が多くの経験を通じて知った教訓であると。NHKは日本人に生きる努力と国防の意思を阻喪させているのであります。外国の謀略にかかってはなりません。NHKは反省をせねばならぬと思うのであります。  次に、某教授がNHK教育テレビ講座で、わずかマルクス批判に触れたが、NHKはこの箇所を無断カット。何でそんなことをするのでしょうか。これが質問第十四。  五十九年八月のNHKは反戦、反核番組の洪水、反戦、反核放送局に商売がえしたかのように。それは今皆様方にお配りをいたしております。  NHKの左翼偏向の仕組みは、一、番組の中に反戦、反核を入れる。例えば、「おしん」の中に戦時中でもなかった作り話。反戦アジ、憲兵の脱走兵射殺、息子に脱走の勧めほか。「山河燃ゆ」、日本軍の虐殺、山崎豊子著と似ても似つかぬ反米、反日のドラマに変更。「炎熱商人」、日本軍の虐殺。二、完全な反戦、反核番組。それは「核の冬」。また、今皆様方に差し上げているプリントを見ていただきとう存じます。三、建国記念日ニュースでの論旨明快な中曽根総理の話は、わかりにくく編集し直したのじゃありませんか。一方、飛鳥田氏、左翼の人の論は、中曽根出席は軍国主義復活と鮮明に印象づける編集をいたしておるではありませんか。新聞の偏向は活字だからすぐわかります。しかし一方、電波はぱっぱっと消えてしまうから偏向を指摘しにくいのであります。しかし、洗脳や謀略操作する側としてはすぐれた武器であると思います。  会長、郵政大臣、監督不十分として今後お気をつけいただき、このことについての大臣の所感をお尋ねしたいのです。これが十五。  文部大臣、今やこの「核の冬」のビデオを教師が子供たちに見せているのです。間違った反戦、反核を洗脳しているのであります。これからの子供の新しい教科書に「核の冬」が恐らく入れられるに相違ない。これからの子供の新しい教科書には「核の冬」を絶対に記載してはなりません。文部大臣の所見を伺いたいのであります。  最後に、NHKの「海外ウイークリー」は、マニラの運転手がチャーハンにコーヒーをかけているのを紹介をしました。それを見たフィリピン人たちが、そんな食べ方はまれである、だれが報道したのかと調べてみると、NHKのバンコクの特派員がマニラに出張していることがわかりました。今フィリピンには特派員は置いてないようですね。アメリカ上院レポートは、アキノ氏暗殺事件以後、フィリピンは特に政情、経済不安となり、共産ゲリラも活発化し、今後予断を許さないと言っております。大事件が発生したときにもマニラ発アメリカ経由の映像を日本がもらうのではいけません。専従特派員を置くべきであると考える次第であります。  以上、国民にわかるように、はぐらかすことなく簡明に御答弁をいただきたいのであります。
  251. 左藤恵

    左藤国務大臣 御指摘の、NHKが放映しました「核戦争後の地球」という問題につきまして、確かにこれは御趣旨のようなことがあるんじゃないかと思いますけれども、放送番組そのものにつきましては、今御指摘がありましたように、放送法の第三条によって放送事業者は放送番組の編集の自由が保障されておりまして、その編集は放送事業者の責任で自主的に行う。その場合に、今お話がありましたような放送法第四十四条の第三項の規定で、番組の編集について四つの点を指摘しておるわけであります。「公安及び善良な風俗を害しないこと。」「政治的に公平であること。」「報道は事実をまげないですること。」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」こういったことがあるわけであります。そういった意味におきまして、今御指摘のようなことがありましたならばこれはNHKの責任において十分配慮しなければならない、私はこのように思いますし、そういうことに反するということであれば放送事業者としての責任を果たしていない点でこれは遺憾だ、このように考えるわけであります。  それから、今お話のありましたモスクワ放送につきましては、私の方でその中身を聞いたわけでもございませんので、そういった点につきまして調べたというふうなことがございませんので、資料を持ち合わせておりませんので、比較するということができない、このように思います。
  252. 松永光

    ○松永国務大臣 ただいま御指摘にあったようなテレビに報道されたものがそのまま学校で教材として使用される例はめったにないことでありますが、仮に使用する場合には、教育委員会や学校であらかじめ慎重に検討した上で行われなければならないものでございます。  今先生の御指摘によりますと、科学的に妥当であるかどうか専門家の間で大変意見が分かれているような場合には、教材として使用する際には特に慎重に取り扱わなければならないものと考えております。  次に、これが教科書として使われるようなことがあってはならないという御指摘でございましたが、先生も御承知のとおり、教科書というものは客観的な事実に合い、かつ公正なものでなければならぬわけでありますから、そういう点で今後とも十分意を用いてまいりたい、こういうふうに考えております。
  253. 田中武志

    田中参考人 お答えします。  今御指摘のありました「核戦争後の地球」という番組につきましては、私ども、もし核戦争が起こったら地球と人類はどうなるのだろうというようなことをテーマにいたしまして、世界の科学者の科学的な研究あるいは立場というものをいろいろ取材をいたしまして、予見という形で番組化したものでございます。この科学者たちの数は、生物学者、核の専門家、いろいろ百人以上の権威のある先生方に直接、幅広く取材をいたしまして、その論文とかあるいは証言を中心にいたしまして多角的に映像化したというものでございます。  この番組の制作、編集に当たりましては、先ほども郵政大臣の方から御答弁がありましたように、私ども不偏不党の原則にのっとりまして客観的に研究成果を発表したものでございます。流動する国内、国際情勢の中で公正、的確な情報を提供するように努力をしたつもりでございます。  この番組につきましては、若干御紹介いたしますと、カナダ、フランスあるいはスウェーデン等々の放送機関とも一緒になりまして国際共同制作という形でつくったものでございます。企画、内容等につきましては事前に慎重に打ち合わせをいたしましたし、国際的な合意の上に立って制作したということでございます。  なお、この番組が昨年の夏放送以来反響を呼びまして、いろいろ賞をもらったことは御承知のとおりでございます。また、十五カ国以上の国々が既に放送し、この番組を紹介し……(伊藤(昌)委員「それは余分なことだよ、そんなことは」と呼ぶ)したがいまして、こういった中で、ただいま御質問のございました具体的な内容につきまして若干お答えしたいと思います。(伊藤(昌)委員「簡明に」と呼ぶ)  先生が御指摘の、湿度のない熱帯でサボテンが凍ったというような御指摘につきましては、私ども、あの番組の中で御紹介しましたように、「核の冬」というのは地球の大気の循環が、流れが変わりまして気候が激変するということを前提にいたしまして、これをいろいろ紹介したわけでございますので、この「核の冬」が起こりますと、こういった砂漠とか、そういったところの湿度、温度あるいは気温等々がいろいろ条件が変わりまして、ああいったようなことが起こり得るというような学者の証言等ももとにいたしまして、ああいうような映像表現にしたものでございます。  それから、この番組はもう一つ、先生が御指摘になりました凍結につきましては、今申し上げましたように大気の循環が変わることによりまして、北半球だけじゃなくて南半球の方も大幅な気象変化を起こしまして、そうして地球の凍結という形になるという表現をしたわけでございます。(伊藤(昌)委員「だれの説だ、その地球の凍結なんという説は」と呼ぶ)これはアメリカの学者のセーガン氏の学説でございまして、おととしこういったような論文が発表されております。これをもとに今月の一日にも、一部の新聞に報道されましたように、このセーガン氏の学説をその後アメリカの科学アカデミーがいろいろ検証いたしまして、そして、それの報告書をつくりまして国防総省が議会に提出しております。その中にも明らかに、核戦争が起こった場合の気象に及ぼす大きな影響というようなことでいろいろ具体的な表現をしておりまして、核戦争が起これば、こういった気象の変化による影響は直接的な核による被害と同等であるというような報告書の内容が既に提出されているわけでございます。(伊藤(昌)委員「朗読してくれ、時間がないから」と呼ぶ)  それから、そのほかいろいろ御質問がございましたけれども、モスクワ放送の問題につきましては、これは私ども、御質問のありましたこの番組につきましては昨年の七月二十六日、二十七日の両日、内外のジャーナリストを呼びまして、この番組を事前に見てもらいました。この試写会で、いろいろ英語版等の試写会を通じまして集まりました記者あるいは通信社等が世界各国に打電をいたしまして、これがニュースに取り上げられております。そういった中でモスクワの方にもこの私どもの番組の内容の話が行きまして、それをもとに恐らく八月一日、御指摘のようにモスクワ放送が放送したんだろうというふうに私ども推測をしておりますので、私ども中身を見た記者の電文が恐らくそういったところに使われたんじゃないかというふうな予測をしておるわけでございます。  いずれにいたしましても、それから……(伊藤(昌)委員「文春などに反論なさらぬのか」と呼ぶ)これにつきましては中川先生等からいろいろ文書による回答等の御要求がございましたけれども、たびたび私どもの番組担当者が先生にお会いしまして、そして詳しく一つ一つの御質問に直接お答えしたいということで現在お話し合いを継続しておるところでございます。今後ともその辺については誠実に対応していきたいというふうに思っております。  それから、文芸春秋につきましては、私どももああいった内容につきましては内部では一言一句十分いろいろ検討いたしましたけれども、今のところ反論をしないという内部決定をしております。  それから最後に、長崎の御質問がございましたけれども、あのニュースにつきましては、当日の朝、午前七時のニュースの中でSS20並びにトマホークの演説の内容につきまして十分御紹介しております。そして、正午のニュースの中で、今申し上げたようなSS20とトマホークのところについて十分内容をそのまま放送しております。そして、午後七時のところでは御指摘のようにこの辺のところを落としましたけれども、私どものニュースの編集といたしまして、正午のところでは午前中のニュースを詳しく放送する、それから午後七時のニュースには一日のニュースの要約をするというような編集方針でやっておりますので、そういった意味合いで、特に意図があってやったわけではございません。  そういったようなことで、私ども今後ともこういった番組につきましては、先ほども申し上げましたように、あくまで放送の公正、中立というものを堅持しながら番組制作に当たっていきたいというように思っております。NHKの番組に対しますいろいろの御批判につきましては、私ども、十分に中身を検討いたします。そして、今後番組を制作する上でいろいろ配慮をしながらよりよい番組をつくるべく努力をしていきたいつもりでございます。  以上でございます。
  254. 末廣重二

    ○末廣政府委員 お答え申し上げます。  いわゆる「核の冬」の問題につきましては、科学的に不明の要素が大変多うございますので、気象庁としては正式に研究はいたしておりません。それから、国際的には国連の専門機関である世界気象機関というのがございますが、この機関におきましても同様の理由で正式な研究は開始するに至っておりません。  以上です。
  255. 伊藤昌弘

    伊藤(昌)委員 NHKには大気物理科学者はいないんです。この説はセーガン氏らから出ておるわけですが、セーガン氏自身は、これは不正確だと前提を持って、仮説としてはこうだということを言っておるわけであります。  そこで、今NHKが百何名の学者に問うたと言いますが、その百何名の学者の名前を、後日でいいですから出していただきたいのであります。  放送法によりますると、今申し上げましたとおり、意見の違いがあったならば双方の意見を聞くということが放送法であるにもかかわらず、一方の意見だけを聞いて、かつまた、その結果、考え方の違ったものがそれに対して公開質問状、また文芸春秋あたりの意見に対して反論ができないということは、これは至って誤りであります。今NHKのお答えがありましたが、これは本当の答えになっておりません。それは副会長がおつくりになったんじゃないから、初めて私が質問したから内容をお調べになってお気の毒だとは思いまするけれども、しかしながら、私はNHKの方には文書で一つ一つ質問通告をしておるのであります。全部文書で質問通告をしているのです。何でそれに対してきちんとお答えができないのかということであります。  今気象庁長官が仰せられたが、WMO、世界気象機構、また百年もかけて気象を研究している専門家の方々でさえも「核の冬」ということについては研究のしようがないということまでおっしゃっておるのであります。いいですか、私はNHKはもっと本当に公正にしていただかぬといかぬと思います。これを機にひとつよく反省をしていただいて、何でこのような一方的な、そして世間を恐怖に陥れるような、またおかしな、今流行の間違った反核、反戦運動の先頭に立つようなことをなさるのか、その辺のところをひとつよく検討をしていただきたいのであります。  そこで、気象庁長官、どういう種類の、WMOに「核の冬」の研究の要請があったのか、ひとつお答えをいただきたいのであります。
  256. 末廣重二

    ○末廣政府委員 お答え申し上げます。  WMOの一昨年の総会と昨年の執行委員会におきまして、東側のある国から核戦争が起こった場合の気象、気候に対する影響の調査研究を開始したらどうかという提案がございました。これに対しまして、一度集まりまして検討いたしました結果、今申し上げたとおり、不明な要素が余りにも多くて研究することができないという結論で取り上げておりません。
  257. 伊藤昌弘

    伊藤(昌)委員 出どこは全部ソ連圏なんです。これの出どこはソ連圏なんであります。  委員長、この百何名の学者の名前を提出をしていただきたい。それから、私は先ほど申し上げましたが、一万発による被害の計算根拠、それから日本攻撃の計算根拠、それから海が凍る論文はだれの説が、これはやはり文書できちっと出していただかなければなりません。そして、真にこの問題についての検討をしなければならない最も重要な国益あるいはその反対に関する重要な問題であると思いまするので、委員長、ぜひお願い申し上げます。  それから、文部大臣、今教科書は公正でなければならぬとおっしゃっておるが、私はあさってまた分科会で申し上げるけれども、今の教科書は何一冊とっても公正なものはありません。いわゆるどこの国の国民をつくるのか全くわからない、権利の主張一点張り、そして、おわかりでしょうけれども、文部省の検定官は非常に困っているのです。非常に困っている。そのもとは何かといいますると、学習指導要領を改悪してしまったからであります。お手本がでたらめなものですから教科書がおかしくなってしまう。そして、かてて加えて不公正な番組などは見せることはいかぬと言われまするが、今の学校現場というものはそんな秩序のある公正なものではない。ですからこそ、このようなおかしな番組をビデオにして、そして子供たちに見せる。子供は何もわからないのですからね。何もわからない子供にこういう恐ろしい間違った番組によって教育をするということは、これは日本の将来にとってゆゆしき問題になると思うのであります。よって、ひとつ特に厳重にこのことについて御関心を持っていただきたいのであります。  先ほどNHKはラジオ日本の「マスコミを斬る」ということについてああいうことをおっしゃられましたけれども、ぜひこれは、重大な問題でありまするので、よく研究をして、そして一体どこに欠陥があるのか、何の目的でだれがこういうことをやるのかということを、よく真相を究明をしていただきたいことをお願いをいたしまして、私の質問を終わります。委員長、どうぞよろしくお願いします。
  258. 天野光晴

    天野委員長 ただいま伊藤君の発言の中にある資料要求につきましては、理事会で相談をいたしまして取り扱いを決めます。  これにて米沢君、伊藤君の質疑は終了いたしました。  次に、蓑輪幸代君。
  259. 簑輪幸代

    簑輪委員 最初に、本日の自民党金丸幹事長回答に関連してお伺いいたします。  三項目回答は、最大の焦点である軍事費の異常突出を初め、いわゆる補助金の一律カットなど、予算の具体的問題点について何の方向も示すものではありません。減税を約束したものでもありません。したがって、日本共産党・革新共同の組み替え要求に対する誠意ある回答とはおよそほど遠いものであります。しかし、同時に、我が党と自民党との間において、減税問題等について政策責任者間で引き続き協議することが確認されております。  そこで大蔵大臣、第一項目目の所得税減税問題について、これを政策責任会議で検討する際に、政府として、大型間接税論議と絡め、大型間接税導入を減税の条件とするようなことは一切しないと約束できますでしょうか。
  260. 竹下登

    ○竹下国務大臣 二つお答えしなければならぬと思います。  一つは、きょうのこの与野党の、除く共産党の野党の方々との幹事長書記長会談の減税問題と大型間接税との関連性、これは全く異質なものであるというふうに思っております。  いま一方は、基本的な直接税、間接税の問題の論議の中における所得税減税と大型間接税の導入問題という問題につきましては、あらゆる予見を与えることなく、税制全般の抜本的見直しの中で議論されるべき問題である。  二つに分けてお答えしておきます。
  261. 簑輪幸代

    簑輪委員 日本共産党の書記局長と自民党の幹事長との会談も行われておりますので、それを踏まえて質問しているわけでございます。
  262. 簑輪幸代

    簑輪委員 日本共産党の書記局長と自民党の幹事長との会談も行われておりますので、それを踏まえて質問しているわけでございます。  今の回答に対してさらに続けてお伺いするわけですけれども、所得税減税というオブラートに包んで大型間接税というような大変な事業を飲まされるということになっては、国民にとってたまったものではありません。政府と自民党とは一体であるということは国民の目にも明らかでございますし、大型間接税に財源を求めないということをこの際はっきりと約束していただきたいと思います。重ねての御答弁をお願いいたします。
  263. 竹下登

    ○竹下国務大臣 所得税減税をするための財源として間接税をもってこれに充てるというような、増あるいは減を前提に置いた御審議を税制調査会でお願いしようとは思っておりません。あくまでも、異例のことながら、戦後今日に至るまでの税制全体のひずみ、ゆがみ等に対して根本的な検討をする時期が来たという税調の御指摘に対して、そのままそうした問題を諮問し、答申をいただくようにお願いをする、こういうことになろうかと思われます。
  264. 簑輪幸代

    簑輪委員 私の質問したことに端的にお答えいただいていないんですね。すりかえては困るのです。この財源として大型間接税というものを当てにするということはないということを明言していただきたい。そのことをお願いしているわけですし、お尋ねしているわけです。税調で何が論議されるかどうかということを私がお尋ねしているわけではございません。
  265. 天野光晴

    天野委員長 わかりやすく答弁してください、大蔵大臣。
  266. 竹下登

    ○竹下国務大臣 すりかえないで、極めてまともにお答えをしておるつもりでございますが、このいわゆる与野党合意の減税問題と大型間接税問題というのはこれから協議されていく問題でございますので、今それを関係づけて考えてはおりませんという答えの方がより具体的かなと思います。
  267. 簑輪幸代

    簑輪委員 減税の財源として大型間接税に財源を求めることはしないということをなかなか明確に約束していただけないわけですが、今後の論議の中で、私は、国民の意思として、こういう大型間接税が導入されることは断固として反対であるということを明言しておきたいと思います。  続いて、第二項目目のいわゆる政策減税についてですけれども、我が党が主張してまいりましたように、単身赴任者、寝たきり老人それから教育費等に特別の控除制度を設けるべきであるということ、これは当然のことであります。  大蔵大臣、昨年とことし、私は二回にわたって大蔵委員会で、この単身赴任者減税問題に関して質問をさせていただきました。そのときに大臣の御答弁は、「税というのはやはりそれなりの税理論というものに立っていかなければいかぬ。」「税制上の位置づけからすると、特別な取り扱いというのは、理屈の上ではなかなか難しい問題であろう」そして「事実上税制で個別の事情のしんしゃくというのは、本当に一つ一つやってみますと容易に解決のつかない問題である」このような答弁をされております。でも、今回のこういう自民党の回答を見てみますと、結局政策減税、これはやる気になればできるということが非常に明らかになった、私はそう思います。そこで、各党間でこれが合意されれば、年内にもこれは実施に移すということになるはずですが、そのことをお約束いただけますでしょうか。
  268. 竹下登

    ○竹下国務大臣 箕輪さんに二回お答えしたことがございますが、これは今年度の六十年度税制改正のあり方についての政府税調の答申にもある言葉をそのまま申し上げた、結果としてそういう答えになったと今も思います。  それで、今度の場合は、いわゆる政策減税については、政調・政審会長会談において検討する、そして、口頭で、幹事長書記長責任で本年中に結論を得て実施するというお答えをしておるわけでございますから、それに対しましては、この結論に対しては最大限尊重すべきであるという原則は、政党政治の現状において私は持つべきであると考えております。
  269. 簑輪幸代

    簑輪委員 大蔵大臣、結構です。  さて、皆さん御承知のように、一九七五年の国際婦人年からさらに十年間を国連婦人十年と定めて世界各国の人々が平和と発展、平等そして婦人の地位向上のため努力を重ねてまいりました。ことしはこの十年の最終年に当たります。我が国においても、一九七五年には内閣総理大臣を本部長とする婦人問題企画推進本部を設置し、衆参両院で国政史上初めての婦人問題集中審議を行って、国会の意思として男女平等と婦人の社会的地位の向上を図る決議をいたしました。一九八〇年には、政府は婦人に対するあらゆる差別の撤廃に関する条約に署名し、国内法を整備して早期批准を行う意思を広く世界に明らかにいたしました。そして批准をするということしを迎えたわけです。で、この条約の国会承認のため手続が行われると思いますが、条約提出の閣議決定はこの三月十五日にされるというふうに伺っておりますけれども、間違いないでしょうか。
  270. 山田中正

    山田(中)政府委員 箕輪先生から外務大臣の出席の御要求がございましたが、ただいまシリア外務大臣との会談をいたしておりまして、大臣がどうしても出られません。失礼でございますが、私からお答えをさしていただきます。  先生御指摘ございましたように、私どもといたしましては、女子差別撤廃条約を本年七月の世界婦人会議までに批准したいということで準備をいたしております。御指摘の同条約の国会提出の日取りでございますが、外務省といたしましては、三月十五日に閣議に付議する予定で作業を進めております。
  271. 簑輪幸代

    簑輪委員 外務大臣の御出席がいただけないのはまことに残念でございますけれども、続けて質問さしていただきます。  この条約は特別留保される条項はなくて全文批准するのだというふうに伺っておりますが、これも間違いないことでしょうか。
  272. 山田中正

    山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  この条約につきましては、留保を付すことなく批准する所存でございます。
  273. 簑輪幸代

    簑輪委員 そこで、この差別撤廃条約が批准される運びになるわけですけれども、この差別撤廃条約の目的、精神、そういうものにかなった成果がこの十年間上がってきたのかどうか。今、婦人の地位向上、男女平等に取り組んできた結果はどうなっているのか、今後いかに散り組むべきなのか、そういうことを明らかにするのは、最終年に当たることし、本院での重大な責務であると私は考えております。そこで、いろんな問題点がございますけれども、時間の許す限りお尋ねをしていきたいと思います。  差別撤廃条約は、「すべての人間の奪い得ない権利としての労働の権利」を明確に規定し、さらに「効果的な婦人の労働の権利を確保するため、次のことを目的とする適当な措置をとる。」として「特に保育施設網の設置及び発展の促進を通じて、親が家庭の義務と労働の責任及び公的生活への参加とを両立させることを可能とするための必要な補助的社会的便益の提供を奨励すること」と規定しています。そしてさらに昭和五十六年の二月、内閣総理大臣の私的諮問機関である婦人問題企画推進会議が意見を出しました。この意見では、この保育所の問題について「保育施設の充実は、その需要に応じて一層の整備充実を図るべきであり、特に、要求の高い乳児保育施設を充実することが急務である。また、保育は営利の対象となるべきではなく、いわゆるベビーホテルなど」云々と。そして「その実情を把握し、法的措置も含む適切な指導が急がれねばならない。」というふうに指摘しております。このように、男女労働者が家族的責任と労働を両立させるために真にさらに人間らしい生活を営むために保育所は必要不可欠の施設だというふうに思います。  我が国の保育所は児童福祉法に基づいて児童の福祉施設として設置されておりますけれども、この児童福祉法の制定当時、保育所の役割について厚生省はこのように述べています。これが間違いがないのかどうか、厚生大臣に確認をしていただきたいというふうに思っております。「第一、保育所は、児童の環境を良くするために入所させるところであって、乳幼児を有する保護者が安心して働き、労働能率を高めることによって生計が補助され、子の生活と発育を保障することになります。第二は、乳幼児が共回生活することによって正しい社会性と心身の健康な育成をすることができます。第三は、いままで恵まれなかった勤労大衆の母が時間的に養育の任務より解放され、国家の経済、文化並びに政治活動に参加し、又は教養を受け、休養することによって家庭生活の向上改善を図り、その結果は乳幼児の福祉を増進させる基盤となります。」このように厚生省は保育所の役割を考えておられた。そして、今日もなおこの役割が重要であると厚生大臣はお考えだと思いますが、あわせてお尋ねをしたいと思います。
  274. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 御指摘の三点につきましてはそのとおりでございます。また、婦人の就労の機会がますますふえていくことでございますので、今後とも特に内容の充実に重点を置いて拡充しなければならぬと思います。
  275. 簑輪幸代

    簑輪委員 保育所の充実についてお答えいただきましたけれども、実はこの十年間保育所の充実というのを婦人は大変強く求めてきましたけれども、特に近年保育予算が削減されております。私は、この保育施設の充実ということとそれから保育予算が削減されているという事実は大変矛盾すると思いますし、条約の求める精神、条約の精神に逆行するのではないかと考えますが、いかがでしょうか、保育予算の削減について。
  276. 小島弘仲

    ○小島政府委員 近年保育予算が減ってきていることは事実でございます。これは五十六年度までに増加の傾向をたどっておりましたが、五十七年度から幾らかずつ減ってまいっております。これは出生数の減少に起因いたします対象児童数の減少によるものでございまして、質の向上、必要な施設の整備等は図っているところでございます。
  277. 簑輪幸代

    簑輪委員 出生率の減少と言いますけれども、よく調べてみますと確かに微減はしております。けれども、これは今後どんどん減っていくものではなく、人口問題研究所の統計を見ましても、二〇〇〇年に向けて出生率は今後また上がっていくという予測もされているわけです。  それと同時に、仮に出生率がいささか減ったといたしましても、実際に子供の保育を必要とする母親の就労というのは近年著しい伸びを示しています。働く婦人はこの十年で、五十年には一千百六十七万人でしたけれども、五十九年には一千五百十八万人に達しています。これは今後ますます増加する見込みなんですね。働いていない育児期の母親の多くも機会があれば働きたいというふうに考えておりまして、政府調査でも、末の子供が六歳未満の無職の母の過半数が働きたいというふうに述べているんです。このように保育需要そのものは現実に伸びています。政府が、保育の需要が減っている、子供が減っているというふうに言っているのは、これは非常に意図的に需要を抑え込んでいるその策略としか思えません。現にベビーホテルがどんどんと生まれて、そして無認可の共同保育所もお母さんたちが一生懸命お父さんたちと力を合わせて、どんどんとふえてくる子供たちをみんなで力を合わせて育てているわけです。公的保育というのが実際には働く婦人の保育要求に合致していない、それだからこういう事態が生まれているとしか言いようがありません。産休明け保育、長時間保育、病児保育、全く不十分です。満たされているとお思いでしょうか。  私は十五年前に長男を出産いたしましたけれども、当時私の住む岐阜市では、一歳未満児の保育は行われておりませんでした。そこで、私はやむなく赤ちゃんをおぶって、弁護士として法廷に立ちました。ねんねこ姿の私を見て裁判長は、何とかなりませんかと言いましたけれども、何ともなりませんでした。一歳になってから子供を保育所に預けて、引き続き働くという状態でした。すべての婦人労働者は、こういう状況のもとで、何としてももっともっとさまざまな要求にかなった公的保育をぜひ実現してほしいと願っています。これらの、今私が申し上げました要求はもう既に満たされているというふうにお考えでしょうか。
  278. 小島弘仲

    ○小島政府委員 確かに夜間保育等一部につきましては、いわゆるベビーホテル等のものがまだ残っていることは事実でございます。ただ、逐年、延長保育、夜間保育等の整備を果たしておるところでございまして、例えば五十九年の総理府の婦人に対する世論調査によりましても、要するに就労に必要な条件が整っていないという理由として「保育施設の不備・不足」を挙げている方は一八・九%でございます。ただこれは、前回の昭和五十四年調査の結果では三五・三%でございますから、この結果から見ても、保育所網の整備は逐年充実してまいっているものと考えております。
  279. 簑輪幸代

    簑輪委員 今の答弁は婦人の実感とはおよそかけ離れたものでありまして、そういう強弁の態度というのは許されないと私は思います。こういうさまざまな保育要求にかなった公的保育所が完備されてから後言っていただきたい言葉ですね。  それからさらに、この十年間保育料はウナギ登りです。五十九年の国の保育料徴収基準額は、最高三歳未満児で月額六万六千九百六十円、何と一カ月子供一人預けるのに六万六千九百六十円ということもあるのです。保育利用者の大半を占めるD階層では、世帯収入に占める保育料の割合が一割を超えるというような事態になってまいりました。保育所入所辞退者というのがありますけれども、その五人に一人が保育料が高いというのを理由に挙げていることは、行管庁の資料でも明らかになっております。  これまで地方自治体が住民の保育要求に合わせて、生活実態に合わせて、国の基準を下回る保育料を定めてまいりました。それでも保育料が高い、高い、何とかしてほしいという声が渦巻いているのです。ところが国は、この保育料徴収国基準というのは、従来は地方自治体との決済基準であるというふうに言っていたのですけれども、現在何と言っているでしょう。市町村長が保育料を徴収するに当たっての準拠すべき基準を示すもの、こういうふうに言って地方自治体に圧力をかけて、もっと高い保育料にしなさいとおどしをかけているのです。  保育所がこんな高い保育料で、子供を預けられるほんのわずかな子供たちの施設にしてしまうつもりなんでしょうか。保育需要が低下しているわけでもなく、保育要求はますます強まっているのに、こういった形であの手この手で保育需要を低下させている。厚生大臣、私はこういう実態をよく知っていただきたいと思います。そして子供たちがきちんと公的保育が受けられるように、さまざまな保育要求にかなった公的保育所の充実のために予算をきっちりととって、働く婦人の要求にこたえていくように全力を尽くしていただきたいと思いますが、大臣の御決意を伺います。
  280. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 先ほど局長からお話ししましたことは、全国的に総体的に見ればかなり保育所の数がふえてきたという意味合いだろうと思いますけれども、御指摘のように延長保育、夜間保育の問題あるいはまた人口急増地帯における問題もあろうかと思いますから、それらの点について特に力を入れてまいりたいと思います。
  281. 簑輪幸代

    簑輪委員 ちょっと関連して自治大臣にお伺いいたします。  二月十八日の日経新聞に保育所制度の縮小または廃止を検討しているという記事が発表されました。これによって浮いた財源を生活保護に充てる方針だというふうに言われておりますけれども、そして近く大蔵、厚生両省との調整に入るというふうにありますけれども、このような事実があるのでしょうか。その事実があるかないか、まず最初にお聞きしましょうか。
  282. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 先般私、予算委員会で、二十六日ですか七日ですか、公明党の先生に、この質問がありましてお答えいたしました。日経新聞に出ていることは間違いであります、自治省としては、そういうことは事実でありませんということを申し上げたところでございます。  それで、六十一年度につきましては、社会保障費をどうするかという全般の問題について大蔵、自治、厚生三省におきまして予算編成前に十分検討をいたしまして、それによって措置をするということになっております。私どもは保育所の重要性をよく知っておりますし、また私もこの前答弁しましたように、これを減らすとかそのようなことは自治省としては全然考えておりません。新聞には、これは自治省の考えではありませんということを申し上げておきました。
  283. 簑輪幸代

    簑輪委員 このような新聞報道があったために大変大きな不安が広がっておりまして、私どもとしても、こういうことは絶対にあってはならないことであるし、また自治大臣としては、特に差別撤廃条約の精神をも踏まえて、働く婦人が労働と家庭の責任を一層充実して果たせるように、保育要求にこたえるために自治省としても意を尽くしていただきたいというふうに思っているんですね。ただ、減らすつもりはないとかそういう消極的なことではなしに、公的保育の一層の充実、これは市町村が設置することになっておりますので、厚生省等いろいろな事情もありましょうけれども、自治省として、自治大臣として、この公的保育の一層の充実ということを御指導、そして努力をされる決意を重ねてお伺いしたいと思います。
  284. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 先ほど申し上げたとおりでありまして、私は、保育の重要性というのは、今お話しのような、または次代の日本国民のしっかりした人をつくるためには絶対必要だと考えております。したがいまして、自治省としてはその重要性は十分わかっておりますし、六十一年度の予算分につきましては、この三省におきまして十分検討いたしますが、今の御意見は十分尊重してまいります。
  285. 簑輪幸代

    簑輪委員 厚生大臣、ここに大蔵省の財政金融研究室から二月八日に発表された「ソフトノミックス・フォローアップ研究 財政支出の構造的変化」という報告書がございます。厚生大臣のお手元にありますでしょうか。-ここでは保育サービスを隠れた補助金の例として挙げ、経済効果を論じています。「隠れた補助金は保育サービスに対する過大な需要を誘発している。幼稚園代わりの保育所利用や共稼ぎの増加の一因ともなっていると思われる。仮に三~四万円を月々納入するとしたら、現在保育所を利用している者の少なからぬ部分が幼稚園や自宅保育への切りかえ、あるいは新たな民間保育手段を検討すると思われる。過大な需要は結果的に公費の乱用につながっていることを忘れるべきでない。」まさに公的保育を敵視する驚くべき露骨な指摘がされております。  さらに「仮に受益と負担の関係を強める方向を選択(利用者負担原則を採用)すれば、利用形態に制約が多く、かつコスト意識が必ずしも充分とは言えない(したがって経営努力をしないので、民間よりコスト高になる)公立の保育所は利用者の多くを失うことも考えられる。公的部門は保育サービスの直接生産から事実上撤退し、」云々、そして「ただし低所得者や特殊な保育需要を有する者には補助金を残すべきであろう。それは保育切符の配布で事足りると思われる。」というふうに述べております。本当にけしからぬことです。保育を単なる救貧事業にして経済効率だけを考えて、保育にかかるお金をむだ遣いというふうに考えるこういう考え方、そしてさらに保育を民間活力の対象として、営利の対象として保育産業化すべきであるとのこうした主張は、まさに私は言語道断であるというふうに思います。  ところで差別撤廃条約は、子の養育には男女間の及び社会全体の責任の分担が必要であるとしています。児童福祉法も保護者とともに国と自治体の責任を明記しています。次の世代を担う子供たちは、両親の宝であると同時に社会の宝であり、みんなで育てていくというのは当然のことではないでしょうか。社会保障そして福祉の専門家としての厚生大臣は、まさかこの報告書のような御意見ではないというふうに思います。昭和五十六年の三月、ベビーホテル問題で私は予算委員会質問させていただきましたけれども、その私の質問に対して当時の園田厚生大臣は、保育は営利の対象としてはならないということを明確に述べておられます。増岡厚生大臣はこうした大蔵省の報告書について一体どのように考え、どうなさるおつもりか、お聞きしたいと思います。
  286. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 御指摘のように私どもの考え方は、保育というものを単なる物理的な経済学的な原則で律すべきものではないというふうに考えております。したがいまして、この機関から出されました意見は一つの学問的分析にすぎないというふうに考えております。
  287. 簑輪幸代

    簑輪委員 学問的分析として価値あるものか価値のないものか、その価値判断をお伺いしているわけですから、保育の責任者として、福祉の最高責任者として厚生大臣は、この問題について明確に、そういう意見はとても採用できないとお答えいただきたいと思います。
  288. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 私はそのような意味合いで一つの分析にすぎないというふうに申したわけでございます。
  289. 簑輪幸代

    簑輪委員 だから採用できないと明確におっしゃってください。
  290. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 そのとおりでございます。(簑輪委員「できないとおっしゃってください」と呼ぶ)採用いたしません。
  291. 簑輪幸代

    簑輪委員 採用いたしませんという御答弁をいただきました。  臨調の最終答申は、補助金の整理合理化の方針で効率化を掲げて、保育所に関し地方自治体が行っている助成については過剰需要が生じないよう助成水準や受益者負担を適正化するというふうに指摘しております。日本型福祉社会、自立自助ということで国の責任を放棄することは絶対に許せないことだと思います。保育について補助金と言われるのは誤解を招く言葉でして、財政的には国庫支出金というふうに言われておりますように、本来的には憲法に基づき国が保育について基本的に責任を持っているというふうに位置づけるものであって、子供の養育の問題については社会全体の責任であることは明らかです。したがって、経済効率だけを考えて子供を考える、育てるという姿勢に立つことはもう明確に間違っているというふうに思いますし、公的保育の重要性はどれほど強調しても、し足りないほどです。社会が変化していく、してきた、それに対して保育所の役割はますます重要になってくるというふうに私は思います。  現在保育に欠けるという基準を一つの目安にしながらたくさんの子供たちが保育所から締め出されているわけですけれども、例えば自営業の子供たち、こういう子供たちも、働くお母さん方が子育てをしながらぜひ保育所に入れたいと思いながらも、自営業で自宅にいるから保育に欠けないということで締め出されているケースもございます。それからさらに、将来のことをも含めて考えてみますと、今若いお母さん方が子育てに悩む、どうしていいかわからないというような問題もたくさん相談事が寄せられています。地域における子供たちを健やかに育てていくために、集団保育という形で保育の専門家である保育所の保母さんたちに相談しながらやっているケースもありますけれども、集団保育を希望するすべての子供たちが保育所で育てられるというようなことこそ今後の時代にこたえる道であるというふうに考えます。  そういう将来の方向をも含めて保育所の充実ということは厚生大臣の重大な責務であると考えます。ただ単に抽象的に保育は大事でございますと言うだけではなく、保育予算の増額に向けて格段の努力をということで御決意を伺います。
  292. 小島弘仲

    ○小島政府委員 お話でございますが、自営業者の方々等につきましても、就労のため保育に欠けるという状態の者は保育所でお預りすることにいたしております。また、御指摘のように保育の質の多様化は今後ますます要求されると思いますので、必要な予算は十分獲得できるように努力してまいります。
  293. 簑輪幸代

    簑輪委員 現実に保育所に入れなくて困っているお母さん方、私もたくさん聞いているのですよ。形式的にしつこくあれこれ文句をつけて締め出しているというケースが山ほどあるのですよ。御答弁は納得できません。けれども、そういう事態をぜひしっかりと認識して、保育の充実のために大臣の一層の御決意を伺いたいと思います。
  294. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 私どもは、そのような締め出しをするというようなことはないと思いますけれども、しかし保育ということは先生御指摘のとおり大変大切なことでございますから、特にその内容についても格段の力を尽くしてまいりたいというふうに考えております。
  295. 簑輪幸代

    簑輪委員 私は、保育所の問題と同時に社会的あるいは公的に解決しなければ婦人が働き続けられない問題として、もう一つ老親の介護の問題を指摘したいと思います。  女は三度老後を体験する。最初は老親をみとり、次に夫の老後を、そして最後は自分自身の老後を生きるというふうに言われています。さまざまな差別を受けながら、それでも必死に子供を育てながら歯を食いしばって働き続けてきた女性たちが、老親が倒れてあるいはぼけて、だれも見る人がいなくなって、その介護のためにやむなく涙をのんで職場を去らなければならないときの無念さ悲しさは、到底言葉であらわせるものではありません。  婦人問題企画推進会議のこの意見書では、   女性が心身ともに充実した老後を送るためには、女性みずからが生涯にわたって生きがいを持ち、社会に寄与することの喜びを知ることが基本である。しかし、社会的な責任を果たしてきた高齢者に対する介護は、社会全体の責任であり、老人福祉に関する対策がより一層充実されなければならない。たとえば、特別養護老人ホームは、寝たきり老人に占める高齢の女性の割合の高さを考え合わせると今後も増設が必要である。また、在宅老人への福祉は、介護に当たる女性等の負担を軽減するという意義も併せ持つものであり、家庭奉仕員派遣制度の充実や、訪問看護制度の本格的実施が必要である。 と明確に述べています。  厚生省にお尋ねしますけれども、現在寝たきり老人及びいわゆる痴呆老人はどの程度に上っているのでしょうか。また、この十年間特別養護老人ホームがどのように増設されてきたのか、その経過もあわせてお答えいただきたいと思います。
  296. 正木馨

    ○正木政府委員 先生お尋ねの第一点の寝たきり老人でございますが、六十五歳以上の寝たきり老人が、昭和五十九年、昨年の厚生行政基礎調査によりますと、在宅の寝たきり老人が二十六万七千人、病院に入院しておられる方が九万九千人という数でございます。このほか特別養護老人ホームに現在入所されておられる方が約十一万人おられます。  それから痴呆性老人でございますが、大体六十五歳以上の老人に占める痴呆性の出現率は四・六%程度、こう言われておりますが、その数字によりますと、現在痴呆性老人は約五十万人ぐらいおられるのではないかというふうに推定をされております。  それから第三の、特別養護老人ホームでございますが、特別養護老人ホームは御案内のように常時介護を要する老人を収容しておる施設でございまして、昭和五十九年、現時点の数字で申しますと、施設数としまして千五百二十二、先ほど申しましたように収容人員で十一万強でございます。この数字の十年前を振り返ってみますと、昭和五十年度は施設数五百三十九ということで現在の約三分の一程度、それから定員数は四万一千人程度でございました。
  297. 簑輪幸代

    簑輪委員 大変たくさんの寝たきり老人の方あるいは痴呆性老人の方の存在することが明らかになっておりますけれども、こうした老人の介護は実際ほとんど婦人の肩にかかってきております。結局何だかんだ言いながら、そういう施策の怠慢によって女性が職場を去らなければならない、男女差別であると私は思うのですね。子供の世話や病人やお年寄りの世話を全部女に押しつけて、そしてこれを家族の愛情というようなことでごまかされてはたまりません。福祉の貧困を女性の負担で切り抜けるということはもう許されないと私は思います。特養ホームの増設、在宅福祉サービス、老人短期保護事業、デーサービス等々、国の重点施策としてきちんと位置づけ充実させるようにしなければなりません。諸外国と比較してみますと、この分野は特に特に見劣りがする分野だと私は思います。そこで、厚生大臣がぜひこの点についても需要に見合う十分な施策を一日も早く実現する、御決意を伺いたいと思います。
  298. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 私も、来るべき高齢化社会を迎えるに当たってまず解決しなければならないのは痴呆性老人、寝たきり老人の対策だろうと思っております。したがいまして、六十年度の予算におきましても厳しい財政の中でありますけれども重点的に力を入れてまいったつもりでおるわけでございますが、今後とも御趣旨に沿って力いっぱい頑張ってまいりたいと思います。
  299. 簑輪幸代

    簑輪委員 次に、男女がともに家庭の責任を果たしながら労働の権利を行使するという場合に、日本の場合は特に異常な長時間労働ということが世界的にも非難されておりますので、これをぜひ規制して労働時間の短縮を早急に図ることが不可欠だというふうに思います。男女ともに子育ての喜びを共同で担い、味わい、そして家族の団らんを味わうためには、例えば男女ともに保育園の送り迎えができるようになるとかあるいは夕食の準備までにはもう仕事を終えて家にいるといった状態でなければなりません。ところが、我が国の労働者は世界的に非難されるほどの超長時間労働です。これが貿易摩擦の大きな原因になっているということは労働大臣も御承知のことと思います。この十年、一体我が国の労働時間はどのように推移してきたのでしょうか。諸外国では労働時間というのは一体どんな水準なのか、比較してみてどうなんでしょうかり
  300. 寺園成章

    ○寺園政府委員 我が国の労働時間は、長期的には短縮が進んでおります。特に高度経済成長期には欧米主要国を上回る率で労働時間短縮は進んでまいってきたわけでございます。しかし近年、厳しい経済環境のもとで労働時間短縮のテンポは欧米主要国に比べて鈍化をいたしております。  労働時間の国際比較につきましては、いろいろ難しい制約要件がございますが、できる限りデータの基準をそろえまして、一九八二年の製造業の生産労働者につきまして推計、試算をしてみますと、日本の場合は年間の総実労働時間、一人当たりでございますが二千百三十六時間、所定内労働時間が千九百四十五時間でございます。アメリカは総労働時間が千八百五十一時間、西ドイツの場合は千六百八十二時間、イギリスでは千八百八十八時間などとなっております。
  301. 簑輪幸代

    簑輪委員 今も御報告いただきましたように、日本は二千百二十六時間ですか、とても顔向けのならない数字ということでございます。政府は既にこの問題について昭和六十年度までに労働時間の水準を西欧先進諸国並みにするというような公約、目標を掲げてやってこられたというふうに伺っております。労働省はこれを受けて推進計画なども策定しておられますけれども昭和六十年度末までに年間総実労働時間の水準が二千時間を割るというこの目標は、現在の水準から見て達成することができるものでしょうか。到底不可能ではないかと思われますけれども、またいつになったらこの欧米主要国並みの水準に到達できるのでしょうか。労働大臣、いかがでしょう。
  302. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 労働時間の短縮は、単に労働条件の改善、労働福祉の立場のみならず、今箕輪先生から御指摘のようないろんな家庭的な問題あるいは親子の教育の問題、また労働経済の問題を含んでおるわけでございまして、そういう意味で、目標といたしました労働時間短縮が、第一次、二次石油ショック等々の中で順調に進んできた労働時間短縮がややもすれば横ばい状態にある、こういう経過でございましたので、さらに諸外国との問題もこれあり、また高齢者時代を迎えてのワークシェアリング等の問題もあり、さらに労働時間短縮の問題に向けまして、例えば有給休暇の完全消化でございますとか、週休二日制への問題、さらには連続休暇等を含めまして、新しい展望の上に立って労働時間短縮の問題にひとつ鋭意取り組んでいこうということで、今パンフレットでございますとか、全国の労働基準局等を通じまして各中小企業団体、業種別団体等、労働時間の短縮が滞っているところに強く働きかけをいたしまして、いろいう呼びかけておるところでもございます。
  303. 簑輪幸代

    簑輪委員 六十年度末までに二千時間を割ることができるかどうかというのにお答えいただけませんでした。できないのですか。
  304. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 そういう目標に向かって今行政指導を進めておるところでございますけれども、何といいましても経済の持ついわば雇用の問題でありますとか賃金の問題等ございますので、労使双方にもよくその辺を御理解いただきながら、法制化で進めるというわけにもまいりませんものですから、行政指導で強くそういう労働時間短縮の問題につきましても呼びかけを続けておるということで、さらにそういう目標達成のために労働省としても最善の努力を今進めておるところでございます。
  305. 簑輪幸代

    簑輪委員 とにかく、お願いするとかPRするとかというようなことで、本気でこの二千時間を割るための具体的な実効性ある取り組みがされてないところに問題があるというふうに思うのですね。そうこうするうちに、欧米先進国並みに二千時間を目標にしていたところが、その欧米先進国が千九百、千八百、千七百とどんどん時間短縮しているわけです。このままでは永遠に追いつかない、こういう状態ではとても労働者は納得できないというふうに思うのですね。  労働省は、既に五十五年の時点でしたか、我が国経済は、既に見た所定内労働時間の短縮可能性、残業時間の改善及び労働生産性の成果配分における労働時間短縮への余地を勘案すると、この二千時間の目標、労働時間短縮を行う力を有していると、その当時もうちゃんと分析しているのですね。できるのだけれども本気で取り組んでこなかったということが、今日こういう事態を招いているとしか思えないわけです。  実際、諸外国の例を見てみますと、本当に驚いてしまうのですね。「欧米諸国では過所定労働時間が四〇時間を下回る労働者層が増加してきている。例えばフランスでは、ワークシェアリング政策の一環として一九八二年に法定過労働時間が三九時間制に移行したこと等から、これ以降、急速に時間短縮が進み八四年には四〇時間を下回る労働者が七五%強を占めるに至っている。また、西ドイツでは、週四〇時間の労働者が八三年にはほぼ一〇〇%に達したが八四年には金属産業と印刷業で週三八・五時間の新協約が締結されるなどの動きがみられた。」という状態に至っているわけです。日本の労働者は大変よく働く、まるで好きで働いているみたいに言われますけれども、そうではありませんね。実際は企業による拘束が非常に強いということに起因している、これは否定できないことなんです。  これは労働省が発行しておられる広報誌ですが、ここに労働大臣官房国際労働課長補佐野寺さんという人が書いておられるのがございますけれども、これを見ますと、  日本人の労働は、かなりの部分、〝支払われていない労働〟である。会社に対する忠誠心、残業や休日労働に対する大きな受容度、賃金に直接リンクしないQC活動の労働等々。これに対する伝統的言訳は、終身雇用制による保障の見返り論であろう。しかし、終身雇用制は、現実には、人生八〇年時代の今日、文字通り終身ではないし、自社用に訓練された労働力を保持しているという企業側の受益も大きいことを等閑視しているキライがある。  何よりも遺憾なことは、この世界一優秀な日本の労働者が、個人として、世界一恵まれた生活を保障されているとはとても言えない現実にあるということであろう。 というふうに書かれているわけですね。  我が国の労働時間、これはまあ三六協定さえあれば残業は青天井という現実です。歯どめのない残業が行われている。こういう恒常的残業というのは、そもそも労働基準法三十六条の趣旨に反しているということは当然のことですね。本気に残業規制に取り組むべきだというふうに思います。  昭和五十六年の十一月に、労働省の岡部労働基準監督課長、当時の課長が、昭和六十年まで欧米先進諸国並みの労働時間制度にしていくという考え方からすると、我が国の労働時間制度と諸外国のそれを比較すると、その違いは一つは残業の問題であるというふうに指摘しているのですね。例えばドイツでは、残業は一日二時間、年間三十回だけ法律で認めている。残業については非常に厳しい態度をとっている。フランスでは、週四十時間制を既に法律で決めている。そして四十時間から四十八時間の間は二割五分増しの割り増し賃金を規定している。ところが週四十八時間を超えると割り増し率は五割になる。そういう形で規制している。フランス型かドイツ型か、いずれにしても世界はいずれかであって、我が国の男性についてのように青天井というような規定は他国にはない、こういうふうに言っているのですね。  大臣は、こうした青天井のままでいいというふうに思っているのですか。残業を規制するとか、そのときに行政指導、広報、そういうようなことではもはや達成できないということは、これまでの経験から明らかになってきているというふうに思いますね。こうした男性の長時間労働は、一方で女性に大変な負担を押しつけているということにもなります。女性が男性と同様に働くことができにくい条件でもあると同時に、家庭での家事、育児の負担は一切女性の方に押しつけるという形にもなってきています。これは男女平等に反することなんです。有業の男性の一日の家事労働時間は何分だと思いますか。男性は一日七分なんですね。平均で七分ですから、それは全くさまざまですけれども、同時に女性は二時間三十六分なんです。こうした事態を考えてみましても、男性の長時間労働の規制、残業規制は政府が本気で取り組まなければならないというふうに思います。法律でするのはなんですし、というような答弁が先ほどありましたけれども、残業の法規制を諸外国でもやっているわけですから、日本でできないわけはありません。そしてILOの一号条約の批准さえできないというこの実態。もし山口労働大臣が今残業の法規制を実現されるならば、これはもうILO一号条約は即批准できるでしょうし、後世に名を残すことさえできるというふうに私は思うのですね。だから、山口労働大臣がこうした歴史的時期に重大な決意をもって残業規制に法規制を含めて取り組んでいく、このことをぜひ明らかにしていただきたいと思います。
  306. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 私も、箕輪先生の労働時間の問題と家庭のさまざまな諸問題、とにかくこういう時代における家庭内における男女の共通の責任分担等の問題にも労働時間の問題が非常にかかわりを持っているという部分までは全く同感なんですけれども、労働時間の問題を残業も含めて法制化するという問題は、今先生が御指摘のヨーロッパ等におきましても、その法制化が新たな雇用の不安や経済の活力をそいでいる、その結果として一〇%近い失業者を出している、これは事実でございますから、そういう意味で、例えばフランス政府なんかにおきましても、いわゆるワークシェアリングで労働時間を三十九時間にした後、さらに二%の失業が増加をしているということを見ますと、雇用の安定というものの立場から労使が十分その環境づくりのために話し合いをする、その土俵をつくることが我々のまずは一番大事な問題だという考え方に立たざるを得ないわけでございます。  したがって、労働時間短縮に真剣に取り組むということと、その法制化で網をかけるという問題につきましては、やはり職場の環境あるいは労使の就業規則、また多年の雇用の伝統というものを踏まえて取り組んでいきませんと、かえって国民の福祉、労働経済に支障を来すということでもございますし、また、この間の三重交通の事故等を見ましても、私は固定給が少ないためにああいう過酷労働に走っておるという判断を最初したわけでございますが、そうではなくて、むしろ組合に所属しておる労働者の方が、あえて路線バス・貸し切りバス、貸し切りバス・路線バスという形で、今ちょうどそれが先生の御指摘の時間外労働ということになるわけでございますが、そういう事故につながっておる。それから、先ほどやはり老人のぼけ対策の問題の御指摘もありましたけれども、労働省の産業医科大学等の調査によりましても、いわゆる定年ショックでぼけ老人になる方が非常に多い、こういう日本人の今日までの勤労における一つの伝統というものを考えますと、私は労働時間短縮の問題というものは、やはり十分議論を積み上げながら、その二千時間への達成に最大の努力を図っていくということを考える必要がある。  それからいま一つは、今の時間外労働の問題につきましては、法制化ということは検討しておりませんが、行政指導の立場において、今箕輪先生のおっしゃったような部分については、基準局を中心に厳しく、きつく行政指導を進めておるということは御報告申し上げられると思います。
  307. 簑輪幸代

    簑輪委員 やはり後世に名を残すわけにはまいりませんですね。  私が申し上げているのは、これまでの労働省の姿勢で、労働省自身が六十年度末までには二千時間を切ることができるだろうという見通しを持ってやってこられたにもかかわらず、現実にできなかったというその原因は、まさに行政指導をやってきただけではとても実現できないという日本の実態があった、そうじゃないのですか。もし行政指導だけでできるのだったら、できたはずなんですね。それでいて目標を今日到底六十年度までには達成できますとも断言もできずに、さらに一層努力を重ねてまいりますだけでは、私はとても納得できないのですね。
  308. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 私も政治家ですから後世に名を残したいとは思いますけれども、一将功成って万骨枯るというような雇用の不安定を生んではならないということが、先ほど来から法制化は労使の意見を十分尊重した上でということを申し上げているわけでございまして、ただ、今先生の御指摘の問題につきましては、労働基準法研究会で労働時間の問題を新たな視点において検討して、その結論がこの七月ごろに報告が出る予定になっております。それを踏まえて、基準法の改正を含めて労働時間の問題も検討していかなければならない、そういう段階に立ち至っておるというふうには考えております。
  309. 簑輪幸代

    簑輪委員 私は、大臣が一将功成って万骨枯るとおっしゃいましたけれども、残業の規制の問題というのは、労働者が賃下げなしにこれを実現したい、労働時間の短縮は賃下げなしに実現したいということで要求をしているところなんですね。それは同時に、企業にとっては利潤が減るというような問題もあるわけで、その点でどちらをより労働省として重点を置くかというときに、そもそも労働省というのは何であるのかということを、原点を考えていただかなければならぬと思うのですね。労働省の設置法がありますよね。労働者の福祉、労働条件の向上、このために取り組むのが労働省なわけですね。その長にあられるのが労働大臣。私は、そういう意味でこの大臣の答弁はその点での十分な労働者の期待とはおよそほど遠いというふうに、残念ながら言わざるを得ないわけです。  その点で、今労働基準法研究会ということで御指摘がありましたけれども、その中でまた、先日出された中間報告は実に驚くべきことを述べております。一日九時間労働制というようなものが出されて、私は唖然としてあいた口がふさがらない。ILO一号条約に違反しているのはもちろんのこと、歴史が、労働時間の短縮は一日の労働時間を含めて短縮してきた。そういう歴史に逆行して、とても世界に顔向けならないようなこの一日九時間労働制なるものは、よくもよくもこういうことが言えたものだというふうに腹の底から怒りが込み上げてまいります。  そもそもILOというのは、一号条約は六十余年も前に出されてまいりました。世界では今一日七時間労働、週三十五時間労働という時代を迎えようとしているわけで、たとえこれが週が四十八時間から四十五時間に減るのだからというようなことを言ってみても、それは到底通らないし、絶対に許せないところです。  大臣、人間は一日単位で生きております。一日二十四時間すべて平等にあるのですが、この一日を基本にして生活し、日々規則正しい生活、それが健康を守り、人間らしい生活、余暇も含めて生きがいのある人生を送ることにつながるのではないでしょうか。保育所だって一日単位で預かってもらっています。これが九時間労働制、こんなことになったら大変です。特に婦人は家事、育児、もろもろの負担を抱えながらこの一日九時間労働制-すべての婦人が大きな怒りの声を上げています。  大臣は所信表明で、我が国の労働事情に対する国際的理解の促進を図るため、欧米諸国に対する政労使三者構成ミッションを派遣する等、国際交流を積極的に展開することを述べて予算化しておられるわけです。しかし、実際男性労働者の残業青天井を全く規制しないまま、その上に一日九時間制をしいて、これで世界に通用すると思いますか。どのような説明をなさるのか知りませんが、そんなことで欧米諸国が納得するでしょうか。絶対に納得できないものであることはもう明らかだと思うのですね。  それで、日本の労働事情というのを特別なものとして、特にヨーロッパでは優等生などというような評価もされているようですけれども、ここで先ほどの野寺さんが述べておられるのですけれども、西欧諸国に日本をモデルにせよと説く。「しかしながら、西欧諸国は外交辞令は別として、日本に続くことを潔しとしない。その理由づけとして、たとえ成功しているとしても日本は特殊な例であり、陰でキタないことをやっているとするのが通常のパターンである。このキタないことの中身が経済の二重構造と、長時間労働に凝集されるわけである。」というふうに言われているわけですね。  大臣、ヨーロッパへ出かけたりあるいはアメリカへ出かけたりして物笑いの種になったり、一層の怒りを招くようなことになったりする、私はそうなるのじゃないかと思います。大臣の常識によって、こうした想像を絶する異常な九時間労働制というものは断固拒否するということを御答弁いただきたいと思うのです。先ほどの厚生大臣は明確に、大蔵省の意見は採用いたしませんと御答弁いただきました。今度は労働大臣が、これは到底採用できるものではございませんし、いたしませんと御答弁いただきたいと思います。
  310. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 これは基準法研究会の中間報告でございまして、もう箕輪先生御承知で御指摘いただいているわけですけれども、これは週休二日制への移行をもっと広く拡大したい、これを主流にしたいという一つの基本的な考え方の中で一日九時間、こういう一つの案も出たという経過でございまして、これは最終的に決定したわけでもございませんし、また、もう一日八時間が定着しておる今日の労働時間の中で、労使の現場においてこれがまた九時間に逆に引き上がるということは、常識的に見てもなかなか主流にはならないというふうに私考えております。いずれにしましても、この七月に最終報告を待ちまして、基準法改正を含めてそうした御指摘の労働時間問題につきましても一つの考えを国会に提出して、いろいろ御論議をいただきたいというふうに考えております。
  311. 簑輪幸代

    簑輪委員 今大臣御自身が、これは労使の常識にかなわないというふうにおっしゃったわけですから、労使の常識にかなわないというので大臣の常識にかなうわけはないので、私は明確にこの際――別にそう遠慮することもないのですね。答申が出るまで待つことなくて、こういう中間答申の段階だけれども、やはり常識を逸しているものについては健全な常識でそれを排除していくというのは当たり前のことですので、ぜひ明確にお答えいただきたい。
  312. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 私が明確に答弁することは簡単でございますけれども、これは労働大臣が大勢の先生方に幅広い立場から御論議をいただきたいということでそういう諮問をお願いしているわけでございますから、その最終答申が出る前に、労働大臣として是であるとか否であるという黒白はっきり申し上げるということは民主主義のルールにかなっておらないと思いますので、最終結論を待ちまして、一つの私どもの考え方もそれを踏まえて国会に提案できるようにひとつ検討していきたい、こういうふうに思います。
  313. 簑輪幸代

    簑輪委員 日本政府が賛成投票いたしましたILOの百五十六号条約、それから百六十五号勧告というのがございますけれども、ここでは男女ともに家族的責任と労働の権利を両立させる諸条件を明らかにしております。労働条件として掲げられている中で、18の(a)というところで「一日当たりの労働時間の漸進的短縮及び時間外労働の短縮」というのを掲げているわけですね。したがって、男女がともに役割を労働の面でも家庭の面でも果たす、そして人間らしい平等の生活を営むということでは、この一日当たりの労働時間をうんと短くしていくということが望まれているわけで、それが労使の常識にもかなっているというふうに大臣がおっしゃったわけですから、私は最終答申後の大臣の御判断は間違いなくこの九時間労働制は拒否していただけるものというふうに承っておきます。――うなずいておられますので。  ところで、労働時間の短縮の問題と同時に、婦人の地位の向上、これに関連して、男女平等が促進されたかどうかをはかるバロメーターとしては賃金の問題があるというふうに思います。この十年間、婦人の賃金は男性と比較してどう推移してきたのか、欧米先進諸国ではこの十年間どう変化してきたのか、お答えいただきたいと思います。
  314. 赤松良子

    ○赤松政府委員 お答え申し上げます。  この十年間、つまり国連婦人の十年に当たるわけでございますが、賃金がどういうふうに変わってきたかということでございますが、いろんな賃金調査がございますので、その中の一つでございます賃金構造基本統計調査というもので見てまいりますと、所定内給与額では、統計数字が持続するのは昭和五十一年以降でございますが、男女の賃金格差は五十一年は男子一〇〇として女子が五八・八、五十八年は五八・七と、ほぼ横ばいになっているというふうにこの調査では考えられます。
  315. 簑輪幸代

    簑輪委員 その調査は、ほぼ横ばいということで必死になって探してこられた調査のように私は思うのですね。実際、いろいろな統計を見てみますと、そういうのはむしろ少ないのですね。この十年間に、私が見た調査では七五年に五八・九%だったものが八三年には五二・二%というふうになって、これは格差が拡大してきているというのが日本の実情なわけです。そして、諸外国のケースについてはお答えいただけませんでしたけれども、私どもの調べたところによりますと、フランス、オーストラリア、デンマークなどは九〇%前後の水準にあります。賃金で見る限り、ほぼ平等に近いというふうに見えるわけです。ところが、日本の場合は五〇%台、これは世界的にも非常に珍しいケースと言えると思います。平等を実現していくこの十年間に、逆に賃金格差が開いてきたというのはまことに恥ずかしい限りではないかというふうに思います。  このような賃金格差が生まれてきたというのは一体なぜなのだろうかというふうに思います。これまでいろいろなところでさまざまな理由を挙げておられますけれども、いずれも理由としては私は当たらないと思います。それで、特に日本の場合、賃金水準の低い事業所で働いている割合が婦人は多いとか、あるいはそういう産業で働く場合が多いとか、女子の労働時間が短い、勤続年数が短いとか、あるいはパートが多いとか、さまざまな理由がありますけれども、これらについてはきょうは一々反論する時間もございません。  それで、例えばしばしば言われておりますように、パートタイマーが多いから低賃金だというような問題について少し立ち入ってみたいと思いますけれども、パートタイマーというのは一体どんな労働者がパートタイマーなのかというのは明確ではないのですね。労働省が昭和五十九年十月に発表したパートタイム対策要綱によれば、「その者の一日、一週又は一箇月の所定労働時間が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の所定労働時間よりも相当程度短い労働者」をいうものという言い方をされております。この定義によると、パートタイマー労働者というのは一体何人になるのでしょうか。
  316. 赤松良子

    ○赤松政府委員 パートタイムの定義は非常にいろいろございまして、これは調査によって変わりますので、先生の今御指摘の定義によっては、今までの調査ではまだ数が出ておりません。それで、別の調査での、つまり別の定義によりますれば、週三十五時間未満をパートタイムと定義した上での調査でございますれば数字を申し上げることができるわけでございますが……。
  317. 簑輪幸代

    簑輪委員 では、一言で言ってください。
  318. 赤松良子

    ○赤松政府委員 三十五時間未満、つまり短時間雇用者の推移というもので見ますと、昭和五十九年は総数四百六十四万人でございます。そして、そのうち女性が三百二十八万人でございます。
  319. 簑輪幸代

    簑輪委員 今お答えがありましたように、パートタイムという定義が明確でないために、パートタイマーというふうにいわれている人たちの労働条件というのは実にさまざまでございます。けれども、パートタイマーと呼ばれる人というのは特定しないけれども、三十五時間未満の労働者を短時間労働者ということで統計が今出されましたけれども、いわゆるパートタイマーと呼ばれる人というので調べてみますと、労働省や行管庁やあるいはまた新日本婦人の会の調査を見ましても、大体この三十五時間未満の労働者の倍はいるのではないかというふうに言えるわけです。同じくらいいるということですね。ほぼ同数いて、結局パートタイマーと呼ばれている人全体では三十五時間未満の倍くらいになるのではないかというふうに言われています。実質フルタイマーということにほとんどなっていながら、形はパートといった労働者も含めて適切なパート対策というのを立てるためには、実はパート労働者の全体の総合的な実態調査というのが必要だというふうに思います。こういう全面的な調査というのをぜひやっていただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  320. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 パート労働者に対するいろいろな調査は、雇用管理調査でございますとか雇用動向調査、これは毎年やっているわけでありますけれども、さらに賃金構造基本統計調査、これも毎年やっております。こういう調査を通じてパートタイム労働者の実態把握に努めているわけでありますけれども、さらにそうした細かい部分につきましても注意して、これらの調査とあわせて実態をさらに把握する必要があるというふうに考えます。
  321. 簑輪幸代

    簑輪委員 全面的、総合的パートの実態調査ということに取り組まれるというふうに伺ってよろしいのですね。何か今のところよく聞こえなかったのですけれども
  322. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 ですから、パートの独立した調査ということよりも、今申し上げましたように雇用動向調査でありますとか、また賃金構造基本統計調査というのは毎年やっているわけでありますから、その調査とあわせてパートの労働の実態をさらに把握すべく調査をしたいというふうに考えます。
  323. 簑輪幸代

    簑輪委員 全面的な調査と、それから、それを系統的に毎年行うということが必要だろうというふうに思います。強く要求をしておきます。  実は、パートタイマーという週三十五時間以上のパートタイム労働者というのは、労働省のパート対策の対象とならないんじゃないかという問題があります。私は、このパート要綱では、相当程度短いという場合に、例えば所定労働時間より一割程度から二割程度以上短いことが望ましいというようなことを言って、大体七時間未満をパートタイマーとして扱って、七時間以上は対策要綱適用外になってしまうということを非常に問題だというふうに思っております。パートと言われながら実際はワルタイマーと同視すべき労働者についてはきちんと労働基準法が全面適用されなければならないと思いますが、これを実際に行うのは労働省の監督官の仕事ではないかと思います。ところが、実際に監督官は非常に数も少なく、対象事業所が多く、監督率は非常に低いわけですね。私は、この実態では、結局今企業を一巡する、監督官が対象事業所を一巡するというのに二十年もかかるというふうに聞いているのですね。これでは労働基準法違反は野放しという状態であり、パートの権利も守られないというふうに思います。労働者の権利を守り、差別を解消して、働く人々を守るためには監督官の増員ということも努力していただかなければなりませんが、その点だけ簡単にお答えいただきたいと思います。
  324. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 厳しい行革の人員削減の中でありますけれども、基準監督官は六十年度三十名増員をしていただくことになりました。労働災害を初め疾病の問題、パートの問題、いろいろ労働条件を守るために必要な監督官でございますので、労働省としてはそうした整備にさらに努力をしたいというふうに考えます。
  325. 簑輪幸代

    簑輪委員 ぜひその点は重点的にお願いしたいと思います。  最後に、官房長官に伺いたいと思います。  婦人年から十年たって、日本における婦人の地位の向上、男女平等は一体どれほど前進したのかという点については、今まで保育所の問題、老人福祉の問題、そして労働時間短縮、さらにパートの問題等々を振り返って問題を明らかにしてきたつもりですが、これまでの質疑の中でも、極めて不十分な状態にあるということを認識していただけると思います。  さらにまた、これだけに限らず、課題はたくさんございまして、真の平等を実現していくための手だてあるいは課題は山ほどあるわけで、特に、国民生活や地域社会に重要な影響を持つ政策決定の過程に女性の積極的な参加が必要であるとして、政府自身が前半期の行動計画で、国の審議会等委員の女性の割合を一〇%にするとの計画を決めていながら、十年経た今、いまだ五・二%にしか達しておりません。これは、政策決定の場における女性の割合を高めるということは課題の一番最初のところに書いてあるわけで、一〇%という非常に控え目な数字ですから十年間たてば当然できるだろうというふうに思われたのでしょうが、現実はその半分というような状態です。  これはいろいろ理由があろうかと思いまして、例えば各委員の資格というのは職務にかからしめられているために、その職務に女性がいないということによって結局委員になれないという部分がございます。結局は職場における男女平等が実現していない。そして、すべての面で女性の地位向上ができていないということがこういう反映という形になっているわけです。この課題も一日も早く達成しなければなりません。一〇%なんていうのは本当に控え目ですので、それはもう半分くらいまで何とかしてやっていただかなければなりません。  それから続いて、例えば社会や家庭に根強く残っている男女差別意識、それから、固定的な性による役割分担意識を払拭するためにも、例えば男女の家庭科の共修が必要であるというふうに指摘されております。ところが、これもいまだ実現されておりません。労働省がとりわけ力を注いでこられた育児休業の普及率も、十年間たってみると今日わずか一四・三%という低い達成率なんですね。GNP世界第二位ということで胸を張るわけですけれども、母性給付を見てみましても先進諸国には到底及ばず、低い給付水準にあります。ILO百二号条約は今日もなお留保されたまま、全文批准の見通しが明らかになっておりません。それから、長時間労働や残業規制、有給休暇等の労働条件は、実は発展途上国以下の水準にあるというふうに言われております。平等を示すバロメーターの賃金は、男性との格差二分の一になっています。十年間賃金格差が拡大してきたのは日本だけという恥ずかしい状態です。  予算措置の面で見ましても、児童手当の問題、あるいは児童扶養手当の削減の問題も出されております。保育所の設置費、生活保護費、婦人保護事業費、老人保護費等々、国民生活に重大な影響を及ぼす補助金の一割カット、これが予算とともに法案も国会に出されているというような状態です。社会的にも経済的にも極めて不安定な婦人や子供やお年寄り、国民生活関連予算、まさに充実させなければならない分野が臨調ということで切り捨てられてきているという今日の実態です。  さらに目を向けてみますと、八四年度の内部留保額増加額というのは、大企業で七百八十四億円にも達している日立、四百十二億円もある東芝、二百八十二億円の三菱重工、さらに川崎重工、石川島播磨など、五社に対する通産省所管分の主な補助金は六十年度だけで二百三十三億円にも及んで、保育対策費の一割にも匹敵するというふうになってきております。軍事費の異常突出とあわせて大企業優先の予算措置ということになっておるわけですけれども、こうした予算の実態を見ますと、婦人の地位向上や男女平等の実現ということと相入れないと言わざるを得ません。家庭責任が一方的に婦人に押しつけられるというようなこと、そういう厳しい現実を無視して母性保護を切り捨てていく。恒常的な残業を厳しく規制する方向ではなくて、逆に婦人の残業、深夜業、休日出勤を緩和することによって男並みの労働に従事する、そういうことが平等だという姿勢。さらには、募集、採用、配置、昇進の差別には規制措置がとられず、企業側代表の意見が全面的に反映された、努力事項にとどめられた均等法。婦人の願いにも、地位向上、平等の実現にもまさに逆行して、労働者の最低労働基準をさらに劣悪なものに引き下げるというふうに思います。この十年、政府の施策、とりわけ中曽根内閣と臨調行革の目指すものは、差別撤廃条約の理念、目的、水準を踏みにじり、婦人の社会参加、仕事と家庭責任の両立を著しく困難にしてきています。地位向上、平等の実現に背を向けるものと言わなければなりません。  作家の住井すゑさんが、人類の母性は、人以上の人を産まず、人以下の人を産まないと言われております。すべての人々が生まれながらに平等である。人間の尊厳は何人も侵すことの許されないものである。条約を待たずとも憲法、憲法を待たずとも人間の良心、あらゆる差別をなくすことは政府の重大な課題であると思います。  ことしの夏ナイロビで世界会議が行なわれ、二〇〇〇年に向けての平等実現のための戦略が一つの議題になっております。政府としてはここに代表団も送られるわけですし、私は、内閣総理大臣を本部長とする婦人問題企画推進本部が今後も存続強化を図られることを含めて、この婦人問題に対する政府の一層の取り組み、男女平等を実現するための諸条件の整備を進められるよう強く求めたいと思います。官房長官の御答弁をいただきます。
  326. 藤波孝生

    藤波国務大臣 婦人問題は極めて重要な政策分野である、このように考えまして、従来も真剣に取り組んできておるところでございます。特に国連におきますいわゆる婦人年十年に当たりますので、国内におきましても、今御指摘がございましたように行動計画を策定いたしまして、国際的な婦人の地位向上のこの方向と大体軌を一にいたしまして、国内においてもあらゆる分野での努力を重ねてきたところでございます。  しかし、きょういろいろな角度から御指摘をいただきましたように、男女の平等の問題は、どれだけ努力してもまだまだいろいろな問題が残っているという認識には立っております。  これからどうするかということでございますけれども、国際的にはこの七月のナイロビの世界会議におきまして、過去十年間の実績と申しますか、行動の足跡を振り返っていろいろな検討をする、評価をする、そして二〇〇〇年に向けてのいろいろな検討を重ねよう、こういうことになっておりますので、我が国におきましてもこの世界会議に積極的に参加をして、そして各国のいろいろな情勢も勉強もし、日本の十年間に積み上げてまいりました努力の跡も振り返って、これからの婦人問題の取り組みをどうするかということをいろいろな角度から検討をしていきたい、このように考えておる次第でございます。  しかし、この十年間で随分前進をしたということをぜひ御理解をいただきたいと思うのでございます。
  327. 簑輪幸代

    簑輪委員 最後に、人類の平和と平等、発展を願うすべての婦人の願いにこたえて一層取り組みを強めていただきたいということをお願いして、終わります。
  328. 天野光晴

    天野委員長 これにて箕輪君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、一般質疑は終了いたしました。  明七日からは分科会の審査に入ります。  本日は、これにて散会いたします。     午後十時五分散会