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1985-02-22 第102回国会 衆議院 予算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年二月二十二日(金曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 天野 光晴君    理事 大西 正男君 理事 小泉純一郎君    理事 橋本龍太郎君 理事 原田昇左右君    理事 三原 朝雄君 理事 稲葉 誠一君    理事 岡田 利春君 理事 二見 伸明君    理事 吉田 之久君       相沢 英之君    伊藤宗一郎君       石原慎太郎君    宇野 宗佑君       上村千一郎君   小此木彦三郎君       小渕 恵三君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       小杉  隆君    砂田 重民君       住  栄作君    田中 龍夫君       月原 茂皓君    葉梨 信行君       原田  憲君    武藤 嘉文君       村山 達雄君    山下 元利君       井上 一成君    井上 普方君       上田 卓三君    上田  哲君       大出  俊君    川俣健二郎君       佐藤 観樹君    佐藤 徳雄君       松浦 利尚君    矢山 有作君       池田 克也君    神崎 武法君       武田 一夫君    大内 啓伍君       神田  厚君    木下敬之助君       経塚 幸夫君    瀬崎 博義君       松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 嶋崎  均君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 松永  光君         厚 生 大 臣 増岡 博之君         農林水産大臣  佐藤 守良君         通商産業大臣  村田敬次郎君         運 輸 大 臣 山下 徳夫君         郵 政 大 臣 左藤  恵君         労 働 大 臣 山口 敏夫君         建 設 大 臣 木部 佳昭君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     古屋  亨君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)藤波 孝生君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官) 河本嘉久蔵君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 加藤 紘一君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      金子 一平君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      竹内 黎一君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石本  茂君         国 務 大 臣         (沖縄開発庁長         官)      河本 敏夫君  出席政府委員         内閣審議官   高瀬 秀一君         内閣審議官   海野 恒男君         内閣法制局長官 茂串  俊君         内閣法制局第一         部長      前田 正道君         臨時教育審議会         事務局次長   齋藤 諦淳君         警察庁刑事局長 金澤 昭雄君         警察庁交通局長 太田 壽郎君         総務庁行政監察         局長      竹村  晟君         防衛庁参事官  古川  清君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房         長       西廣 整輝君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛庁教育訓練         局長      大高 時男君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         防衛施設庁総務         部長      梅岡  弘君         防衛施設庁建設         部長      大原 舜世君         経済企画庁調整         局長      赤羽 隆夫君         経済企画庁国民         生活局長    及川 昭伍君         経済企画庁総合         計画局長    大竹 宏繁君         環境庁大気保全         局長      林部  弘君         国土庁長官官房         会計課長    北島 照仁君         国土庁計画・調         整局長     小谷善四郎君         国土庁地方振興         局長      田中  暁君         法務省民事局長 枇杷田泰助君         法務省刑事局長 筧  榮一君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省経済局長 国広 道彦君         外務省経済協力         局長      藤田 公郎君         外務省条約局長 小和田 恒君         大蔵大臣官房審         議官      小田原 定君         大蔵大臣官房審         議官      大山 綱明君         大蔵省主計局長 吉野 良彦君         大蔵省理財局次         長       中田 一男君         大蔵省国際金融         局長      行天 豊雄君         国税庁調査査察         部長      村本 久夫君         文部大臣官房審         議官      菱村 幸彦君         文部省初等中等         教育局長    高石 邦男君         文部省教育助成         局長      阿部 充夫君         文部省高等教育         局長      宮地 貫一君         文部省高等教育         局私学部長   國分 正明君         文部省学術国際         局長      大崎  仁君         厚生省健康政策         局長      吉崎 正義君         厚生省保健医療         局長      大池 眞澄君         厚生省薬務局長 小林 功典君         厚生省保険局長 幸田 正孝君         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産大臣官         房予算課長   鶴岡 俊彦君         農林水産省構造         改善局長    井上 喜一君         農林水産省農蚕         園芸局長    関谷 俊作君         食糧庁長官   石川  弘君         林野庁長官   田中 恒寿君         水産庁長官   佐野 宏哉君         通商産業省通商         政策局長    黒田  真君         通商産業省貿易         局長      村岡 茂生君         通商産業省立地         公害局長    平河喜美男君         通商産業省生活         産業局長    篠島 義明君         工業技術院長  等々力 達君         工業技術院総務         部長      荒尾 保一君         資源エネルギー         庁長官     柴田 益男君         資源エネルギー         庁石油部長   畠山  襄君         中小企業庁次長 黒田 明雄君         運輸省地域交通         局長      服部 経治君         運輸省航空局長 西村 康雄君         労働大臣官房長 小粥 義朗君         労働省労政局長 谷口 隆志君         労働省労働基準         局長      寺園 成章君         労働省職業安定         局長      加藤  孝君         建設大臣官房総         務審議官    松原 青美君         建設大臣官房会         計課長     望月 薫雄君         建設省建設経済         局長      高橋  進君         建設省河川局長 井上 章平君         建設省道路局長 田中淳七郎君         建設省住宅局長 吉沢 奎介君         自治大臣官房審         議官      石山  努君         自治省行政局選         挙部長     小笠原臣也君         自治省税務局長 矢野浩一郎君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      大内  宏君     ————————————— 委員の異動 二月二十二日  辞任         補欠選任   倉成  正君     月原 茂皓君   井上 一成君     上田 卓三君   堀  昌雄君     佐藤 徳雄君   近江巳記夫君     武田 一夫君   小平  忠君     神田  厚君 同日  辞任         補欠選任   月原 茂皓君     倉成  正君   上田 卓三君     井上 一成君   佐藤 徳雄君     堀  昌雄君   武田 一夫君     近江巳記夫君   神田  厚君     小平  忠君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和六十年度一般会計予算  昭和六十年度特別会計予算  昭和六十年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 天野光晴

    天野委員長 これより会議を開きます。  昭和六十年度一般会計予算昭和六十年度特別会計予算昭和六十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  松浦利尚君。
  3. 松浦利尚

    松浦委員 先般の本委員会で要求をいたしました資料が本日提出されました。これから具体的に質問をさせていただきたいと思うのであります。  まず最初に、労働大臣お尋ねをしておきますが、この「一九八〇年代の展望指針」で完全失業率目標を二%程度と、こうしておるのですが、我が国完全雇用政策に伴う完全失業率というのは何%と予測しておられますか。
  4. 山口敏夫

    山口国務大臣 この二%という数字は、いわゆる勤労者とかパートの労働者とか、特に若い人の労働力なんかの離職とか転職に伴う微調整部分が、六千万規模の労働人口がおりますと瞬間的な職場から職場への転換における微調整といいますか、そういう部分がどうしてもゼロというわけにいかないという部分で、一応二%ということを一つの、先生が御指摘展望の中に、内に抑えるということを数字として提示しておる、こういうふうに御理解いただきたいと思うのです。
  5. 松浦利尚

    松浦委員 我が国完全雇用という場合の完全失業率一%、六十万というふうに理解をしておりますし、失業率統計表を見ますと一・一という時代があるのですよ。そうすると高度成長、景気が回復しておる今日の段階で六十五年度までには二%、この失業率があっても完全雇用だ、こういうふうに理解せよ、こういうことですか。簡単で結構です。
  6. 山口敏夫

    山口国務大臣 もとより労働省雇用の安定、完全雇用達成ということのための役所と言ってもいいわけでありますから、雇用政策に取り組んでいるわけですけれども、先生も御承知のとおり、若年労働者の……(松浦委員「いや、もういいです」と呼ぶ)ですから、そういう部分があって……(松浦委員「これでいいんですか」と呼ぶ)そう、二%ということを現在一つ目標値として考えておる、努力しておる、こういうことでございます。
  7. 松浦利尚

    松浦委員 今挙げられた二%という数字完全雇用に対応する完全失業率だという発想はちょっと問題があると思いますけれども、そのことが主題ではありませんから議論を進めてまいりたいと思うのです。  この「展望指針」の私が要求した資料は、五十八年八月にこの指針を提出したときのバックデータの一部なんです。全部とは申し上げませんが、一部であります。数字的な内容は、これは見ていただければおわかりになると思いますから省略をいたしますけれども、この中間型−1と2の中ほどを実は「展望指針」の中で数字的に拾っておられるようであります。  経済成長名目六ないし七%、実質成長四%程度、それから物価上昇三%程度失業率二%程度卸売物価一%程度としておるのですが、ここにはっきりした数字がありますから、大蔵大臣お尋ねをいたしますが、少なくともこの指針をつくる段階経済企画庁計算をした資料の中に租税負担率が二七・三という数字があるわけであります。一昨日大蔵大臣臨調答申と関連をして、臨調の五十八年三月の答申は、当面は全体としての租税負担率上昇をもたらすような税制への新たな措置はとらない、こういうふうな指摘があったわけですが、一昨日の発言によりますと、見直しによって租税負担率上昇しても「増税なき財政再建」の理念に反しない、だから負担率上昇許容されるケースはあり得るのだ、こう言っておられますが、ここに具体的な数字として挙がっておる二七・三というのは、一昨日お話のありました許容し得る租税負担率の範疇に入るのかどうか、お答えいただきたいと思います。具体的に数字がありますから。
  8. 竹下登

    竹下国務大臣 七カ年計画のときに二六カ二分の一というようなことをお出ししておりましたが、先ほど来いろいろの議論がありますように、このたびは租税負担率等も出していないわけでありますが、この率そのものを見てこれは許容限度範囲内かどうかということよりも、いわゆる自然増収、そしてまたでこぼこ調整というものからしますならば、私はこの二七・三とかいうものを確定して幾らまでが許容範囲かという議論はなじまないではないか、むしろやはりでこぼこ調整等による上昇許容されるべきものと、こういう考え方であります。
  9. 松浦利尚

    松浦委員 中曽根総理になられて、リボルビングスタイルというのですか、何かややこしい名前を使いまして、従来の定量型を定住型に変えていくというような発想なものですから、今言われたような言葉が通るのですよ。  これに書いてありますが、将来の租税負担社会保障負担と合わせて全体として国民負担率ヨーロッパ諸国水準よりもかなり低い水準にとどめます、こう書いてある。ところが国民は、税を納める側はわからない。ですから、ここに出てきておる一つ数値を根拠にお話をしておるのですが、社会保障負担費が五十八年度から毎年九%ずつ上がると仮定しまして大ざっぱに計算をしますと、大体一三から一四になるのですよ。そうすると、租税負担率二七・三に足しますと四〇を超えるのですね。それでは、この四〇を超えるという数字は、この「展望指針」で言っておる今言った言葉に該当する数字ですか、どうですか、その点はっきりしてください。
  10. 竹下登

    竹下国務大臣 やはり先ほど来の議論からして、今松浦さんもおっしゃいましたが、じゃ四〇が許容範囲内かどうかという議論はちょっと難しい議論だと思います。一遍だけ臨調の方の瀬島委員でございましたかの国会質疑の中では、いろいろな議論をするときに四〇とか四五とかというようなことを念頭に置いて議論された人もあったというにとどまっておりますので、経済審議会議論の中でもそんな、頭の底にはそれぞれの先生方にいろいろな数値があったと思いますが、私はやはり定量的に幾らまでかということは、ちょっと議論するのは非常に難しいのじゃないかな、こういう感じです。
  11. 松浦利尚

    松浦委員 私は、中曽根内閣になって非常に国民に戸惑いがあると思うのです。一体どこを向いてどっちに走っておるのかさっぱりわからないですよ。全然わからないです。言葉があって政策がないのですね。  ではお尋ねいたしますが、五十八年の三月に御承知のように土光臨調から行政改革に対する臨調答申がありました。行革大綱が出されましたね。その行革大綱の中に、あの答申の中の中心である「増税なき財政再建」という言葉はあの閣議決定した行革大綱の中に一字もないですよ。閣議決定していないのです、ただ答申を受けただけで。ほかの土光臨調行革にかかわるいろいろなものは全部記載されておるのです。そして、そのとおり政府は実行してきておられる。社会保障だろうが地方自治体にも手を触れる。何にでも手を触れておられる。しかし、「増税なき財政再建」という言葉が何にもない。しかも、この「展望指針」の中にもそれは全くない。それではなぜ抜いたのですか。もう一遍、簡単にひとつおっしゃってください。
  12. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 臨時行政調査会で言われました「増税なき財政再建」というのは、言葉をお読みになってもわかりますように、一つ理念であり、スローガンである、あるいは目標である。そういうスローガン的な、理念的な表現というものは、政府の正式な、行政的な効果のある、有権的な効果のある公式文書にはなじまない。しかし、国会の答弁とか演説の場合にはこれはなじんでくる。そういう意見で、ああいう官庁文書政府が決める有権的な文書には載せないのが今までの例になっておるわけであります。
  13. 松浦利尚

    松浦委員 総理、あなたは都合の悪いところは載せないのですよ。都合のいいところだけはやるんですよ。そして、あなたの言ったそのスローガンのために今まで国民は我慢してきた。行政改革を我々は反対したけれども、一部は賛成するところもありますが、反対してきたけれども許容した。あなたは、「増税なき財政再建」だ、「増税なき財政再建」だから、ひとつ国民皆さん協力してください、こう言ったはずですよ。だから今日まで国民はあなたに協力をしてきたのです。間違いないですか。
  14. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国民皆さんはよく御協力していただきまして、非常に感謝にたえないところでございます。
  15. 松浦利尚

    松浦委員 先ほどこの数字で非常に問題になりますところは、租税負担率社会保障負担費を合わせました国民所得に占める比率が四〇%を超えましても、なおかつ赤字体質からこの数字は脱出できないんです。  例えば中間型の1を見ますと、下から四行目の一般政府貯蓄投資差額というのが二兆三千億の黒になっていますけれども、この一般政府貯蓄投資差額というのは、国、地方社会保障基金全体が含まれてのプラス二兆三千億ですから、相当大幅な赤字国債に依存しておるということなんですよ。ですから、この指針なりあるいは土光臨調答申が出てきた段階で、「増税なき財政再建」と六十五年には赤字国債依存から脱出をするというこの二つのスローガンは、言葉では言えても経済的には、財政的にはやり得ない政策なんですよ、これは。そうじゃありませんか、大蔵大臣。これは両方一遍にやれる政策ですか。
  16. 竹下登

    竹下国務大臣 厳密な定義で申しますとなかなか難しいことになりますが、いわゆる増収措置というものも考えられるわけであります、自然増収も含めですね。そして一方、赤字国債六十五年脱却、これはなかなか困難な問題でありますが、そこに期限を設定しないと、それを少しでもイージーな対応を仮に私個人でもやった途端に、ずるずると歳出削減等に対する切れ味が鈍化していくのじゃないか。だから、やはりこれは相反するものではなく、どちらも理念として——いや、理念じゃございません、六十五年の努力目標としてこれも堅持していかないことには、直ちに鈍ってしまうというような感じです。
  17. 松浦利尚

    松浦委員 大蔵大臣、言われることは私は理解できますよ、政治家ですから。しかし、国民は理解できないんですよね。理念を持ってやられたら困るのですよ。「増税なき財政再建」というのがなぜ行革大綱にもこの「展望指針」にも載せられなかったかといいますと、政府人たちはわかっているのです、できないことは。できないことはわかっておるから、「増税なき財政再建」という言葉をここに出さないのですよ。ただ土光臨調土光臨調と言って抑え回るんですよ。ですから載せなかった。さあ今度は、そうやってみたけれども、大蔵省から試算をしていただきました要調整額というのがどんどん出てくる、お金は足らぬぞ、足らぬぞ、やってもやっても足らぬぞ、さあ国民皆さんどうしますか。今まで行革で我慢して我慢して我慢した国民に対して、今度はそれこそ「展望指針」を逆手にとって、六十五年に赤字国債依存から脱出しなければなりませんから、これを外してしまったら理念が、信念が崩れますから、その目標を掲げて、今度は増税でしょう。このリボルビングスタイルというのは極めて都合がいい。そのときどきによって事態の変化が起こったときに改めて考える、改めて経済運用を変える、財政政策を変えるという発想でありますから、極めて政府にとっては都合がいい。増税をせずに、「増税なき財政再建」でざっと国民に責任を転嫁して、私のところなんかは赤字ローカル線を全部取っ払うのです。残るのは日豊線だけ。そんな厳しいことを強制しておいて、そしてやはり財政再建不可能だ、今度は増税だ。しかし、増税という言葉を言うと国民になじまない、ですから多段階とか、投網とか端的だとか、いろいろなことは国民はさっぱりわからない。  結局、今あなた方がやろうとしておるものは、具体的にお聞きをすると、国民の側でですよ。国民が疑問に思うことを平易な言葉でお聞きをいたしますと、今大蔵大臣の頭にあるのは、六十五年の赤字公債依存から脱却するために今までは一生懸命歳出削減をしてきましたけれども、もうどうにもならなくなりました。公平、公正、何ですかもう一つは、総理。(中曽根内閣総理大臣「簡素」と呼ぶ)ああ簡素、選択と、何かわけのわからぬ言葉を使いながら、新しい税体系に移行するとする。そうすると、国民言葉でお聞きをいたしますと、これを導入したときには国民税金が軽くなるのか。ノーでしょう。国民税金が重くなるのか、変わらないのか、その点が国民は非常に心配です、今の国会議論を聞いておって。今竹下大蔵大臣の頭の中にあるのは、重くなるのですか、変わらないのですか。その点をひとつはっきり答えてください。そういう方向で税調を指導するのかどうか、はっきり教えてください。
  18. 竹下登

    竹下国務大臣 今お示ししておりますのは、要調整額というものは、いろいろな仮定を置いたものではあるが、こうなります、それを歳出カットでどこまでやるのかあるいは増収措置を講ずるのか、それの抱き合わせをやるのか、そこを国民皆さん方議論の中でだんだんと詰めていきましょう、こういう問いかけをしておるわけです。  そこで、今私なりに認識するのは、それをさらに赤字公債の増発によってやるのはいわば子孫に対するツケ回しが余りにも大きいなという感じは、だんだん問答のうちに出てきた。そうすると、それは一歩進んだところだな、こういうふうに考えておるわけであります。が、私は、少なくとも国民皆さん方が重いとか軽いとか、あるいは痛いとか痛くないとか、こういう感じよりも、なるほどこれなら普通だな、こういう感じの形の中で財政改革が行われるように模索していかなきゃならぬな、こう思っております。
  19. 松浦利尚

    松浦委員 竹下大蔵大臣もだんだん中曽根総理言葉に、言葉こそ違うが内容は似てきておるのですよね。やっぱりいろいろあるのでしょう。しかし、五十七年度に三四・三だったのです。中曽根内閣発足当時は、国民所得に占める租税負担率社会保障費の合計は三四・三だったのです。今度の六十年度予算で見ますと、これが三六になっておるのですよね。その差額は一・七なんですよ。租税負担率は一・三上がっているのですね。そうすると、国民所得を単純に国民の総人口で割りまして、一ポイント上がったときの金額に直したときの税負担は幾らかというと、二万円ですよ。そうすると、五十七年度から六十年度、粗っぽく言いまして、年度年度で国民所得が違いますが、しかし粗っぽく言うと、この中曽根内閣になって一・三ポイント上がったということは二万六千円上がったということなんです。しかもそれがさらに、さっき言いましたようにこの「展望指針」の二七・三になりますと、十万近く上がることになるのですよ。それでもなおかつ赤字体質からは逃れられないのですよ。そのことはおわかりになりますでしょう、数字的に。どうですか。
  20. 竹下登

    竹下国務大臣 これはやはり現行の制度、施策をそのままにおくという大ざっぱな背景の中では、今の松浦さんの立論は成り立つ立論だと思いますが、それを、サービスの低下というものをどこで受忍していただくのか、いやそれは受忍できなかった場合に負担するのも国民、サービスを受けるのも国民というところに選択を求めていくということになろうかと思います。
  21. 松浦利尚

    松浦委員 だからこれが必要なんですよ。これは六つのケースに書いてあるのですよ。支出抑制型、サービスを抑えますよ、サービスを抑えたときには黒字が十兆七千億になって、大体財政再建が可能だ。ずっと支出を抑える、現状の税負担の中で自然増収だけを組み込んでいった場合に、支出抑制型でいった場合はこういうふうに財政再建ができますよ。しかしそれはだめ、これもだめ、全部はじいて実は「展望指針」の数字があらわれてきておる。この数字を満たすためにいろいろ施策を講じていく場合、六十五年に赤字体質依存から逃れていく、脱出するということは、もう増税をしなければ不可能なんです、これは。  大蔵大臣、ですから私が今一番心配するのは、今までは、今まではですよ、あなた方は一%枠の方はすぐ突破しよう突破しようとするのですよ、防衛費の一%枠の方は。ところが、「増税なき財政再建」というのはもういつの間にか取っ払ってしまって、今度は六十五年赤字体質から抜け出るんだということだけを強調する、そのことをスローガンとして国民に訴える。結果的に増税以外に抜け出る道はないのですよ。どういう形にしようと、租税負担率を上げて増税する以外にないのですよ。それ以外に絶対にありませんよ、これは。断言をします。  そうすると、今度は税金を上げて、何か知らぬけれども、いろいろな形で不公平税制だとかいうことで税は変えてみたけれども、租税負担率はずっと上がる、にもかかわらず六十五年に赤字体質から出ることができなかった、さあ大変だ。今度は六十五年度の目標が七十年にずれるのですよ。そういう余地というのをこの「展望指針」は与えておるわけですよ。拘束しておらないのですよ、何も。見直しだから。そのときそのとき単年年で見直して、適当に言葉で解釈していけばどういうことでもやれるという発想でありますから、従来の経済運営、財政運営と違って厳しさがない。犠牲になるのは国民なんですよ。  委員長、今私が議論したとおりです。大蔵大臣にお願いをいたします。六十五年度に赤字体質を脱出する、六十五年に赤字依存体質から抜け出る手だて、政策を本予算委員会終了までに出してください。言葉でも結構です。そうしないと不安で不安でたまらないです。具体的に出してください。
  22. 竹下登

    竹下国務大臣 これは例えばの話ですが、名目成長率を仮に八%なら八%で見た試算を出してみると、こう言われればそれは出せますでしょう。が、では八%の名目成長を保つためにはどのような具体的な施策がということになると、これはなかなか難しい問題になります。したがって、やはりこれは松浦さんにお願いするのは、(松浦委員「私が聞けるように」と呼ぶ)いや、聞けると思って言っているわけじゃございませんが、要するにこの要調整額というものをどうしてやるかということは、いろいろな仮定計算は出せますが、あなたと私を初めとする国会の論議等の中でこれから徐々に詰めていこう、明らかにしていこう、こういうことでございますので、あらかじめ定量的な、そこへ施策によってその要調整額を埋めていくための手法というのを今日の時点で提出するということは、これは大変難しい問題だということを御理解をいただきたいと思います。
  23. 松浦利尚

    松浦委員 大蔵大臣、私は大変失礼なことを申し上げるようですが、一般会計だけがきれいになったってだめなんですよ。国の財政だけがきれいになったってだめなんですよ。やはり国の財政というのは大きな意味での国家経済にいかに働くかということを考えないと、あなたのようにマネタリスト的にこうだ、こうだ、こうだ、バランスのことだけ考えて六十五年に脱出するから、決めたんだから、それじゃ国会皆さんひとつ議論してください、そういうことならば初めから六十五年という枠をはめないでください。六十五年という枠をはめておいて国会皆さんこれどうしましょうか。それじゃ我々は経済の対案出せませんよ。六十五年までにどうするんじゃなくて、今、長期的に赤字財政を脱出するために与野党間で議論しましょうといったときに初めて我々は議論の俎上にのれるのですよ。  私は、さらにちょっと議論を詰めますけれども、この前もちょっと触れましたけれども、今経済摩擦が大変な問題です。我が国の内需を拡大をしなければどうにもならぬ状況に来ておることも事実です。端的に言って我が国は非常にいびつですね。アメリカが双子の赤字、財政二千億、経常収支一千億。日本は双子の不均衡、財政赤字で十二兆、経常収支は三百四十億。ですから我が国の場合も、雇用の均衡、完全雇用の実現、対外経済の均衡、政府部内の均衡、この三つを図っていくことが絶対必要ですよ、これからの経済、財政面で。その場合に何といったって我々がしなければならぬのは、赤字財政を解決することも大切だが、それと同時に、どうしてもやはり経済摩擦等の問題を解決するということも我々の重要課題。そうすると、この内需を拡大をするために財政がどのように貢献をするのか。そういうものについては六十五年という網がかかったら絶対やれぬじゃないですか。やれるはずがありませんよ、どんな人がやっても。民間活力という話がよくありますけれども、民間活力というのはほったらかしておって大蔵大臣、できるものでしょうか。おい民間やってくれ、やってくれ、やってくれと、できますか。
  24. 竹下登

    竹下国務大臣 先ほどの問題で一つだけ、いわゆる財政改革を進めるに当たっての基本的考え方というものはやはり議論の土台としてお使いいただきたいということで、提出を申し上げておるということになるわけであります。  そこで、今の議論でございますが、私も、国家財政あるいは単年度予算等が均衡すればそれでいいというものではない、いわゆる国家経済、いや国民経済、そういうもの全体がバランスして、しかも世界の先進国の中からあらゆる面で一等賞だと言われる今日のこの姿が少なくとも維持し続けていかれなければいかぬという考え方は、基本的に持っております。が、財政を扱っていますと、今おっしゃったようにマネタリスト的な答えになりがちなものです。私もみずからに反省をしながらいつも対応をしておるわけでありますが、そこで、民間活力の問題ということになりますと、これは御案内のように、皆さんは賢いからさあやってください、さあやってください、頭はいいし勤勉だし、それだけでやれるものではない。そうなると私、担当として、担当という意味ではございませんが、やはりいわゆる基本になるものは、一つはデレギュレーションかな。それから二つ目は、やはり環境整備の中に入るわけでございますけれども、いわば公共事業等を実施されるに当たって、ことしの予算で見れば都市再開発でございますか、たしか三〇%ぐらい増しの予算になっておると思いますが、そういうものが民間活力に関連した環境整備に役立つ、そういう財政上の知恵は働かしていかなければいかぬ、そのような考え方は私も一致しております。
  25. 松浦利尚

    松浦委員 それで、もう一つお尋ねをしておきますが、率直に言ってもう耳にたこができるほどお聞きしておるのですが、中曽根内閣になって内需振興策をとろうと一生懸命努力しておられることはわかりますが、問題は、内需を振興していく場合に、今言っておられるような付加価値税、そういったものを仮に増税措置としてとった場合、六十五年に赤字体質から抜け出るという網をかけておいて、内需が拡大をする、端的に言うと大部分を占めている個人消費、これが拡大すると思われますか。物価は当然上がるのですよ。ずっと消費者に転嫁されていきますから、当然最終的には消費者でありますから消費者物価は上がる。個人消費は拡大をするとお思いになりますか、大臣。
  26. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、間接税の持つ一般論としてのデメリットの中に、最終的には消費者に価格が転嫁されるという点がございます。しかしその前に、それぞれの物に対するコストダウンというものも努力の中へまた入るでありましょうが、原則的に、おっしゃる最終消費者への転嫁、これは原則としてあり得る。しかし、それにまさる所得と、そしてまた、あるいはこれは総理からお答えなさった方が適切かと思いますが、かねがね所得減税をやりたい、こういうことを総理は自分の口からおっしゃっている。そういうものとのいろいろな問題を考えてみた場合、一概に、付加価値税的なものを入れればそれによってことごとく最終消費者に価格が転嫁され、いわば消費支出を抑え込むものであるという断定は、諸般の関連した政策の中に、必ずしもそういうことなくして実行し得る施策もあるのではなかろうかというふうに考えます。
  27. 松浦利尚

    松浦委員 労働大臣、あなたは経済企画庁の調査局のこの文書を読まれましたでしょう、前もって言っておきましたから。ここに書いてあるのは、端的に春闘と言いますが、ことしの春闘はもっと上がるような条件があったのに上がらなかった、政府が期待しておったところまで上がらなかった、しかしそれはこうこうこういう理由だ、こういうふうに書いてあるのですよ。ですから我が国の所得というのは、上がるようであって上がらない。景気がよくなっておるのにかかわらず上がらない。逆に言うと、配当所得は六、七%の所得があるわけでしょう。物価が上がった分を差し引いたってあるわけですね。そうすると、ことしの春闘は五%程度しか上がらない。これはやはり社会的に見ても不公平ですよ、不公正ですよ。しかし、それは労使の力関係だと言ってしまえばそれまでだけれども。しかし個人消費が、個人所得が伸びなければならぬと大蔵大臣が言っておられるのだから、所得が全体的に伸びなければならぬ。その所得が伸びるはずのものが伸びずにダウンしておるということも、六十五年に赤字体質から脱却するという意味では問題があるんじゃないですか。簡単でいいですから、労働大臣どのようにお考えになりますか。
  28. 山口敏夫

    山口国務大臣 政府も内需喚起を経済政策一つの大きな柱にしているわけでありますから、当然勤労者の方々の所得の向上ということが大切なことだと思いますけれども、春闘等においては、どうしても労使の配分をどうするか、こういう形の中でやっていただかないと、こちらが賃上げを期待しておるとか、何パーセントぐらいがいいと言うことは僭越なことでございます。ただ、我々としては、そういう消費の問題とか労働条件の問題とか、いろいろな中で、ひとつ適切な労働配分というものを経営者の方にも十分御理解いただいて、円満な妥結点を求めていただきたいというふうに期待をしているところでございます。
  29. 松浦利尚

    松浦委員 結局、政府が言っておられるように、財政の方は、今の政策で行くと、六十五年に赤字体質から抜け出すというんだから健全化されるけれども、経済そのものは、逆に言うと活発にならない。しかも、むしろ財政の方が景気に対して足を引っ張るというような状況がある中で、どのようにして民間活力を強めるのか。しかも民間活力は後五カ年間にやらなければいかぬのですよ。大体民間活力というのを単年度、たった五年間でやろうと思ったって、どだい無理です、今までできなかったのですから。やろうと思ったって、なかなか難しかったのですから。その証拠には、五十七年八月に「政府規制制度及び独占禁止法適用除外制度の見直しについて」というのを公正取引委員会が勧告していますね。何遍も私は各種委員会でこれを取り上げたのですよ。各省庁別に取り上げたのですよ。全産業の四一・四%に網をかけておるのですよ。もちろん経済規制、社会的規制がありますよ。公害規制とか環境規制というのは国民の生活権にかかわる分野ですから、これは緩めてはならない。しかし、経済的な規制というのはある程度緩和していいはずだ。  後藤田さん、きょうの新聞を見ましたら、おれに質問がなくて退屈でいつも眠っておると言っておられたですから、活字になっておりましたので、どうですか、四一・四%が、これは五十七年八月に出されたのですが、五十八、五十九、六十ですよ、もう。四一・四がどのように変わりましたか。
  30. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 まことに申しわけありません。もう一遍ひとつ……。
  31. 松浦利尚

    松浦委員 五十七年八月に「政府規制制度及び独占禁止法適用除外制度の見直しについて」というのが出されているのです。これは、一九七九年九月にOECDで、要するに政府規制分野について再検討を行えという勧告が出たのです。それを受けて、日本の公正取引委員会が五十七年八月に各省庁にわたる経済的な規制を全部挙げまして、そして政府に対して公正取引委員会がこれを渡したわけです。それで、内需を拡大して、民間活力を活発にしなければならぬということは前から言われておった。あなた方は、民間活力やるやると言うんだから、もうやれておるはずです。今に始まったことではないのですから。その後、四一・四がどれくらいになったかと聞いている。
  32. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 内需の振興、これは経済政策として当然やらなければならぬわけでございますが、やり方はまあいろいろあると思いますが、その中の一つにやはり民間活力をできるだけ引き出していく。民間活力と言えば、現在の時点ではいろいろな人によって必ずしも一定していないように思いますが、一つはやはり企業、民間の持つエネルギーを最大限引っ張り出す、そして創意工夫が十分に発揮できるようにする、これが一つのやり方。もう一つは、地域あるいは近隣、これの相互連帯、これを強化するというのも民国活力であろうと思います。  それから、いろいろの立場があります。その中で今私どもが取り組んでおるのは、規制緩和という問題に取り組んでおるわけですね。当初はそれなりにこれが経済発展の原動力になったことも事実ですけれども、今日それが足かせになっておりますから、これの解除をできるだけやりたい。その場合に、先ほど松浦さんおっしゃったように、経済規制ともう一つは社会規制と二つあると思います。経済規制は、私は思い切ってできるだけ解き放つ。社会規制の方は、これは社会の安定というのは政治のあれですから、これはやはり考えなければならぬ。しかし、それでも今二重、三重に大変かかり過ぎておりますから、これは合理化する。こういう点について本格的にひとつ取り組もうということで、政府としては河本大臣が中心になっていらっしゃって、同時に、私どもの方の関連では行革審に真剣に検討してもらいたいということで、大体ことしの七月ぐらいに各論の答申があると思いますから、その答申を受けて、私どもとしてはできるだけこの方向に沿ってやっていきたい、こういうことでございます。従来だってやっているんですよ。従来だって、許可認可の整理なんて幾らでもやっていますから、そういうことでございますから。
  33. 松浦利尚

    松浦委員 総理言葉だけを言われるから、後藤田さんも言葉だけ言われる。だから、私は数字を出してくださいと言うのです。今やっておりますよと、こう言われましたから、この公正取引委員会から全産業の四一・四%、政府規制がですね。ですから、やっておられるそうですから、これに対応して今までに何%規制が緩和されたか、それを本委員会資料として、委員長出してください。言われておるんですから、やっておると。いいでしょう。委員長どうですか。
  34. 天野光晴

    天野委員長 後藤田君に、理事会で話し合いをしまして……。
  35. 松浦利尚

    松浦委員 民間活力をやる。先ほど、個人所得はあのように上がらない、労使に期待しなければいかぬ。人勧は値切っておるわけですからね、政府が労使関係にある人事院勧告は値切っておる。民間の賃金も上がらない。個人消費は伸びないのですよ。片一方では、六十五年の関係で税金が上がるかもしれない。内需を拡大をする道は設備投資減税しかない。予算の規模によって違いますけれども、我が国の設備減税というのはアメリカと比較してみたら問題にならない。所得税減税はない。財政は景気に対して消極的である。一体、従来の我が国の経済は外需中心の景気回復、今までの数字を挙げる必要はありませんけれども、従来の経済運営を見ますと当初は内需、内需と言っておる、五十八年も五十九年も。ところが、最終的に見てみたら全部外需に依存した景気回復だ。しかも、アメリカの景気が一ポイント上がったら日本の輸出は三%伸びる。今急激にアメリカの景気がどんと落ち込んだら、我が国の景気は三%輸出が停滞するのですよ。アメリカの景気が二ポイント落ちたら、日本の輸出は六%落ち込むのですよ。内需はないわ、外需は停滞をしたらまた不況ですよ。こんな縮小均衡型の財政経済運営をやっておっていいのですか。  私は、少なくともこの際本当に民間活力を活発にやるなら、民間が働いてくるように、日経連という言葉は余り好きじゃないけれども、この経団連月報の中にもちゃんと書いてあるのです。大体、民間資金の導入は利潤の見通しが必要である、民間資金のみで公共事業を推進することは難しい、政府、公共体の資金配分がトリガー的措置として必要である、こう言っておるのです。まさに建設大臣の出番ですよ。そしたら、その建設投資はどうか。下水道についても三三%しかいっておらない。五カ年計画はみんな金がないからだめだ。今大蔵大臣は、ただ単に赤字財政をなくすということだけが財政の中心にきておる、経済は自由、ですから動きがきかない。片一方では、経済摩擦を解決しなければならぬ、内需を活発にしなければならぬという命題がある。もう矛盾がきてどうにもならない。その矛盾がきてどうにもならない最大の原因というのは、五十八年八月の「展望指針」をつくるときに、初めから大きな誤りをしておるのですよ。  「増税なき財政再建」を図るなら、私は個人的な意見になりますが、六十五年にというよりももう少し繰り延べればいい。赤字体質から出ていくのを、七十年ぐらいに五年間ぐらい延ばせばいい。緩やかに赤字体質から脱出する方法を考えればいい。赤字国債を減額する分を投資に回す。マネタリストは利子の問題や何かといろいろ言われるけれども、一昨日竹下大蔵大臣が稲葉委員に答えておられましたけれども、そうじゃない。GNPが大きくなる、国民総生産が大きくなる、その比率に占める公債費の比率が下がっていく、日本の景気がよくなっていくということであれば、経済摩擦が解決するということであれば、「増税なき財政再建」というのをもう中曽根さんは今やまさに放棄しようとしておるんだから、これについても基本的に見直して私たちに諮ってもらいたい。そうすれば、我々も土俵の中で真剣になって議論できるのですよ。一方的なんです。「増税なき財政再建」についても、ただ土光臨調土光臨調でやりっ放し。それがだんだん行き詰まってきた、取れるところから金を取ったらもうだめだ。今まで河本さんがつらい思いされたと思うのですが、特命大臣。あの方は早くから直間比率の見直しとかなんとかということを盛んに言っておられた。しかし、頑としてその政策政府政策にはなり切らなかった。今矛盾してきておる。だから「増税なき財政再建」、これが優先するなら、六十五年という枠組みをもっと先に延ばす、そういう方法というのをどうしても考えなければ、我々はここで財政再建について提起しよう、そういったことを幾ら言ってみても、六十五年という網がかかったら言えないですよ。(「財政再建なき増税だ」と呼ぶ者あり)だから、極端に言うと、今言われたように財政再建なき増税ですよ。必ずまた、赤字国債依存体質から出る六十五年はだめでした、七十年にしてください、政府はこう言うはずですよ。総理大臣、どうですか。
  36. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 六十五年に赤字国債依存体質から脱却するというこの大目標は、あくまで貫徹するように努力してまいります。また、今のいろいろな経済政策やら、あるいは民需活用とかあるいは電電そのほかの株式の売却とか、あらゆるものを組み合わせてやりまして、そして目標を達成しようと思います。この旗をおろすというと、これは相当な財政需要の増大がまた大きな圧力になって出てまいりまして、国家財政はますます悪くなる危険性が出てくるのであります。
  37. 松浦利尚

    松浦委員 大蔵大臣、今総理大臣が言われたことをインプットして、六十五年から赤字体質から脱出できるというのを出してください。今言われたのですから、それをインプットして本委員会が終わるまでに出してください。(中曽根内閣総理大臣数字的には無理です」と呼ぶ)いや、数字的じゃなくてもいいです。どうするのか言葉で。
  38. 竹下登

    竹下国務大臣 これは去年まで要調整額、さあこれで問答しましょう、それでことしその中へ少しでも具体性のあるものが出せないか。それで、なるほど新しい問題として、これもこれからでございますが、税制論議が出てきた。いま一つは、先ほどもお話があったように、電電株、専売株等の売却を国債整理基金へ直入する、これは法律でお願いをしておる。ところが、どっちにいたしましても、それを定量的な数字として、要調整額に対応するための数値としてそこに延べていくということは困難である。したがって、先生、もう一年これで問答してみようじゃないですか、こういう構えで対応しておるわけであります。  ただ私は、いわゆる六十五年度という目標年次を先に延ばすことになりますれば、財政改革の進展は緩やかなものとなりますが、それはきのう申しましたように一層の特例公債の累積、累増を招くことになりますので、長期的には子孫に対する負担はやはりツケを余計回すことになる。したがって、私は歳出削減、今それを言った途端から節減合理化の努力が水泡に帰してしまうのではないか、こんな感じをいつも持っておりますが、ただ一つだけ言えることは、たとえ六十五年に今おっしゃいますように赤字公債の脱却をしたといたしましても、百六十五兆の残高を抱えた財政ですから。昭和三十九年までは残高のない財政、戦前の公債は若干ありましたにしても。だから、そういう公債残高を抱え込んだ財政というものに対しての六十五年度以降のまた物の考え方というのが、こうした問答の中でこれから詰まっていくのではないか、あと五年のうちに詰めていかなければならぬな、こう思っております。
  39. 松浦利尚

    松浦委員 問答は簡単なんですよ、ここで毎日幾らでもやっていればいいのだから。しかし、経済は動いておるわけでしょう。経済摩擦が起こっておるわけでしょう。アメリカから今度はどういう注文が来るかわからないですよ。内需を拡大しなければならぬということは当面の急務でしょう。今私たちが議論しておるのは、財政がきれいになるかどうかだけなんです。それ以外は何もないのですよ。  私は、佐藤委員とこの前も話したのですが、大平大臣が特例債を戦後二番目に発行するときに、ちょうど大蔵委員でした。あのときに今日あるのを予測して、午前零時がちょうど期限切れの時刻でしたが、十一時過ぎまでぎりぎり四時間ぐらいここに粘ったのです、座って議論して、座って議論して。しかし、とうとう反対をしたけれども通ってしまった。通ったらどうです、今言われたように、こういう硬直した財政になってしまったでしょう。私が予測したとおりなんですよ。そうしたら今度は、それを急激に変えようとする。急激に変えようとするから方向のかじが非常に重たくて切れないのですよ。ですから、財政をきれいにするだけの発想では困ると私は思う。  この際、総理大臣、もう少し全体をカバーするような、ゆとりのある、しかも国民にわかりやすい、そういう経済運営、財政運営をやってもらいたい。ひとつ簡単明快におっしゃってください。それから、減税の問題も含めてですね。
  40. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 経済の運用につきまして、いわゆるソフトランディングの手法をとれというお考えは、私もよく理解できるところであります。それから、やはりあらゆるものを総合的に考えて、そして有機的にこれを動かして活力を強めていくという点も、我々も大事な点であるだろうと思います。ただ、ある程度目標をつくってやりませんと、どう見ても財政需要増大という圧力が非常にかかってきているわけでございますから、お互いこういうような環境の中にあって、切り詰めていくということはなかなか難しいわけなんです。したがいまして、そういう目標を掲げつつも、やり方、手法におきましては、おっしゃるようにゆとりとか有機性ということを考えながらやっていく必要があると思います。  減税は、もうぜひやりたいと、所得税、法人税についてはかねがね念願しておるところでございます。ただ、具体的にどういうふうにやるかという点については、いろいろまた皆さんの御意見も承ってやりたいと思います。
  41. 松浦利尚

    松浦委員 今国会でも野党はそろって減税要求をしますので、担務者の方でぜひ真剣に議論をしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  時間がありませんから、不満ですが、まだ議論が足らない点もありますが、一応改めてまた議論をさせていただくつもりです。  そこで、ちょっと話が変わりますけれども、これは外務大臣と通産大臣にお尋ねすることになります。  これは、外務大臣は一遍議論をましたが、要するに我が国の石油備蓄政策ですね。イラン・イラク戦争でホルムズ海峡が封鎖された場合の日本の対応の可能日数、追加供給がない場合が二百十五日、一〇%節約し備蓄で対応する場合が二百七十二日、それから五百万バレル・パー・デーの追加供給がある場合には六百日対応できるというような試算がありますね。これは今でも変わっておりませんね。
  42. 国広道彦

    ○国広政府委員 御質問の資料は約二年前に外務省の方で試算した計算だと思いますが、備蓄の重要性については、認識は全く同じでございますけれども、その数字は若干古くなっておりまして、その点は御了解いただきたいと思います。
  43. 松浦利尚

    松浦委員 ぜひこの数字も外務省の方で再度チェックをして、どうなっておるのか、簡単にできると思いますからぜひ資料を本委員会の方に出していただきたいということを希望しておきますが、委員長、いいですね。
  44. 天野光晴

    天野委員長 はい、結構です。
  45. 松浦利尚

    松浦委員 それでは、通産大臣にお尋ねをいたします。  備蓄の関係ですが、五十九年十一月のデータで恐縮ですが、現在、民間備蓄は既に九十八日備蓄を終わっております。そうすると、国家備蓄は法律で三十日分とこう決まっておりますが、既に五十九年十一月で三十一日分備蓄を終わっておりますが、その点は変わっておりませんか。
  46. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 松浦委員指摘のとおりでございまして、私の方で持っております資料では、民間備蓄九十六日、国家備蓄三十一日、百二十七日の石油備蓄量、こういうことになっております。
  47. 松浦利尚

    松浦委員 それで大臣、民間備蓄は歴年、一日当たりの内需量によって備蓄を決めておりますね。そうすると、国家備蓄の場合は、当初この法律ができたときに、予想備蓄を一日当たり百万キロリットルと計算しましたね。ところが今日では、もう既に一日当たり五十七万キロリットルしか使っておらない。非常に需給が緩んでおるわけですよ。にもかかわらず、今年度の予算を見ましても依然として百万キロリットルの備蓄計画になっておるのですね。その金に二千億予算措置してあるのです。しかもややこしい会計で、一般会計に繰り入れて、そして特会に二千億出しておるのですね。こういう手だてをしてまで百万キロリットルに対しての石油備蓄をする、このことについて、もう需給も緩んでおるし、逆に言うと、IEAあたりでは、どうも日本が備蓄を積み増ししていくから原油価格が上がるんじゃないかといううわささえ出ておる。しかもOPECが、国際カルテルが世界を支配する時代は終わったのですね。今アメリカのガソリンの値段と原油の価格は一緒だからですね。そういう状況の中で百万キロリットルの備蓄を続けることの問題点は、アメリカにおいては、御承知のように十億万バレルの備蓄計画、あそこは国家備蓄がありませんから民間備蓄ですが、備蓄を行ってきたのですが、今四億九千万バレルの備蓄、それで今度の一般教書を見ますと、米国大統領は備蓄やめと備蓄政策を中止しましたね。どうでしょうか。
  48. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 松浦委員の御意見は拝聴いたしました。ただ、基礎的な条件というものをよく考えてみますと、例えば、この間イランの事件があったわけでございますが、我が国では全エネルギーの六割を石油に依存をしておる、そしてその石油はほぼ一〇〇%輸入であります。そしてホルムズ海峡依存度が六五%ということでございまして、非常に石油というものの備蓄についての我が国のエネルギー供給構造の脆弱性ということが言われるわけでございます。  今いろいろ非常に貴重な数値をお挙げいただきましたが、アメリカでは石油備蓄水準が三百十日であります。そしてIEAの資料によれば、IEAの平均備蓄日数、国際エネルギー機関で言う平均日数は百六十八日でありまして、日本の百十日というのはこれに比べればはるかに低いわけでございます。したがって、現在のようなホルムズ海峡依存度の高い、しかも石油そのものの供給が我が国ではほとんどないという状況からいえば、松浦委員の御指摘はわかりますけれども、私は国で立てておりますところの石油備蓄、将来は三千万キロリットルを目標として国家備蓄をするんだということについてはぜひ必要だ、こういうふうに認識をいたしております。
  49. 天野光晴

    天野委員長 松浦君、簡単に。
  50. 松浦利尚

    松浦委員 法律では三十日分というふうに規定されておるんですよ、三十日分。しかし、もう百万キロリットルで計算しても三十日分あるんですよ。しかも現在は需要量が減っておるんですよ、五十七万キロリットルに。ですから、従来から言うと、一日で二日分の需要があるんですね。しかもこれはだんだん低下傾向にあるんですよ。  総理大臣にお尋ねします。  こういうふうに非常に国民に犠牲を強いて、非常に厳しい環境下です。財政も厳しい。そういう中でこういう備蓄政策というのは、全部やめろとは言いません、ある程度緩める、二千億の備蓄をある程度緩める、そういった政策の転換というものも必要じゃないか。国民にこれだけ犠牲をしわ寄せしておって、現実にはこういうデータがあるにかかわらず、旧来のごとく法律が通った段階のデータでずっと備蓄を続け、金を使うという部面もあるんですから、そういう点について総理大臣の見解を承って、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  51. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政策に弾力性を持たせるという御趣旨は理解することはできますが、しかし、食糧とかあるいは石油というような国家存立上基礎的な重要物資については、やはりある程度安全度を持った考えで備蓄というものも考慮しておく必要はあると思っております。食糧につきましては、食管制度のもとにいろいろ弾力的に努力もしておるところでありますが、石油につきましてもやはり同じであって、OECDのガイドラインというようなものは、日本のようなこういう資源を持たない脆弱性のある国におきましては、やはり当初の目的どおり確保しておく必要がある、そのように考えております。
  52. 松浦利尚

    松浦委員 質問を終わります。
  53. 天野光晴

    天野委員長 これにて松浦君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして総括質疑はすべて終了いたしました。     —————————————
  54. 天野光晴

    天野委員長 引き続き一般質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石原慎太郎君。
  55. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 まず文部大臣と文部省に、最近非常に問題になっておりますいわゆる情緒障害児についてお尋ねしたいと思います。  今からもう十五年以上前になります一九六七年に中央児童福祉審議会がその意見具申の中で、登校拒否、緘黙、つまり黙りこくって物を言わない、強度の引っ込み思案の非社会的問題を有する児童、反抗、怠学、金品持ち出し等の反社会的問題行動を有する児童たちを情緒障害児と規定して、これに対する独特な治療、対処が行われるべきだ、こう報告していますが、その後随分時間がたちましたけれども、文部省がこれに対して非常に基本的、有効な対処をしたという実績がどうも上がってないように思われます。一部には、登校はしてくるけれども学校で暴力を働いてしょうがない子供は出てこないでいい、単位だけやるから卒業させてやるというふうな、本当につけ焼き刃の処置はとっておるようですけれども、基本的に何かこれに対して文部省は対策をされましたでしょうか。——時間がないから早く。     〔委員長退席、大西委員長代理着席〕
  56. 高石邦男

    ○高石政府委員 ここ二、三年来校内暴力、非行問題が大変な問題になりまして、文部省としてはそれに対応するための施策を短期、長期の観点で協力会議を開きまして、種々検討を加えてきたわけでございます。  まず第一に、非行問題の原因につきましては、学校、家庭、地域社会、いろいろなところの要因がありまして、学校教育だけではないということで、基本的には学校、家庭、地域社会を含めた態勢づくりが必要であるとまず考えるわけでございます。  学校につきましては、やはり教職員が一丸となりましてそれに対する対応策を積極的に講じていく必要がある。こういう問題の起きている学校は、どちらかといいますと非常にそういう態勢づくりがおくれて、ばらばらの対応をしているということが一つあります。それからもう一つは、やはり子供に対して愛情を持って接していくということが非常に大切でございまして、ただそういう問題の子供を学校からはじき出すというだけで問題は解決しない。そのためのいろいろな相談事業、そしてそれに対応する家庭との連携、そういうことを進めていく必要があろうという対応を講じているわけでございます。
  57. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 最近文部省からいただきましたデータでは、情緒障害児の一種であります長期欠席児童、この生徒の数、つまり年間五十日以上欠席する子供が小学生では千人に二人、中学生で千人に七人という数にふえているわけですね。それから高等学校の中途退学者が五十七年には十万人を超している。その他、校内暴力は九・四校に一校の割で起こっている。それから少年の犯罪、刑法犯罪は全国で検挙、補導を受けている刑事犯罪の四四・九%を占めているというのが現況で、つまり、文部省は十数年前にこの審議会から答申を受けていて、実質的には何もしてないということだと思うのです。  今、先生がもうちょっと愛情を持って対処すれば云々と言われましたけれども、その愛情という言葉は、非常に使うはやすいけれども内容が非常にわけがわからぬで、世の中で愛と言えばすべて済んでしまう傾向があるんですけれども、非常に危険な言葉だと私は思うのです。例えば、文部大臣にお聞きしますけれども、体罰という問題がありますが、体罰は好ましくない。しからば懲罰と体罰とをどこら辺が限界かということを法務省に高知県で伺いを立てたら、法務省の見解があるわけですけれども、とにかく子供に苦痛を感じさせちゃいかぬ。だから、その子供を罰として立たせるのはいいけれども、長い間立たして子供がかったるくなったら、これは要するに体罰になるから子供を立たせるなということになるので、これでは学校における子供のしつけというのは一体どうしてできるんですか。私はまずこういう基本的な問題について文部大臣の、お役人が書いたペーパーじゃなくて、松永さん御自身のひとつ見解を聞きたいと思うのです。
  58. 松永光

    ○松永国務大臣 最近における小中学校、高等学校等における極めて遺憾な事態が多いという問題でありますが、これは学校教育でも非常に大きな責任もありますけれども、私はその前に、乳幼児期における家庭のしつけあるいは情操教育、こういったものが非常に大きな影響を及ぼしておるというふうに考えております。したがいまして、学校側があるいは文部省側が決して責任を転嫁するわけじゃありませんが、一番大事なのは家庭における乳幼児期の教育である、これが一つ。  したがって、家庭の側でもすべて学校に任せる、あるいは子供を育てることを学校に言うなれば下請させるような感じじゃなくて、自分自身の責任においてしっかり乳幼児期においては子育てをしていただく、これがまず第一に必要であろうと私は思います。その上に立っての小学校、中学校におけるしつけの問題、あるいは思いやり、いたわり、こういった心の教育の問題が大事であると思いますが、同時に、そういった教育をしていく上では家庭との間の連携を強化していくということも大事であろう、こういうふうに思います。     〔大西委員長代理退席、委員長着席〕  最後の体罰の問題でありますが、先生指摘のように、学校教育法で懲戒はよろしい、しかし体罰はいかぬ。その境界線はどこにあるのかという問題でございますが、結局、教師の側にその子供に対する愛情がどれだけあるか、愛情じゃなくして感情的な問題になってくればいわゆる体罰というふうに当たるような感じがするわけでありまして、これは場合場合、いろいろな条件を冷静に判断をして決める問題ではなかろうか、こういうふうに思います。要は教師の教え子に対する教育愛の問題であろう、こういうふうに思います。
  59. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 先ほど披瀝いたしました文部省からいただいた情緒障害児のこのデータですけれども、これは後で結構ですから、世界のデータと比べて日本が大体どれくらいのところにあるか。日本はいろいろいい意味でも悪い意味でも世界一をたくさん持っておりますけれども、恐らくこの数は児童の人口比率からいって世界一ではないかと私は思うのです。それはつまり言いかえれば、今文部大臣も言われたけれども、家庭における過保護というものが世界一である。言ってみると、文明全体が非常に過度の安逸におぼれ切っているということが、こういう情緒障害児を恐らく人口比率世界一をつくり出して、そして社会全体がこれにどう対処もできずにほったらかしにしている。臨時教育審議会が何かやっているようですけれども、ここで積極的にこの問題が取り上げられる様子はない。大体あんなものはつくらなくて、あの戦争前の国家の最高指導者は要するに天皇陛下だったのだから、日本の近代化というものを国是としたときには天皇陛下は自分の責任で教育勅語を発布されたので、中曽根さんもステーツマンだったら、本当は臨時教育審議会なんかに新しい教育の理念なんか任さずに、自分が総理大臣として自分の責任で言えばいい。どういうわけだか臨時教育審議会の会長が出てきて、あんな会長が新しい教育の理念についてまで考えられたんじゃ、ちょっと国民としては私はかなわぬような気がするのです。しかもその中で情緒障害児の問題もどうも余り大きな比重を受けていない。  ノーベル賞をもらった動物学者のローレンツという人が非常にいいことを言っているのですけれども、教育というのは何も人間が考え出した文明的な方法論じゃない、これはあくまでも人間も動物の一つとして、自分の種族というものをきちんと保存するためのいわば動物の本能にのっとった方法である。だから早い話が、例え話じゃありませんけれども、獅子は三日にして自分の子供を谷にけ落とす云々とありますけれども、子供に物のとらえ方、食物のあさり方というものを教えるときに動物の親は非常に厳しいですよ。しかし、このごろの日本の若いお母さんを見ていると、哺乳瓶の乳腺も実は実際の乳腺と同じように赤ん坊が一生懸命努力しなければ吸えないようにできているものを、子供がむずかると面倒くさいものだから自分ではさみで切っちゃって、逆さにしたらみんな出ちゃうみたいにしちゃう。こういう傾向がだんだん学校にも及んで、今日ではもう小学生、中学生、高校生だけではなくて、登校拒否だけじゃなしに就業拒否、それから別に倒錯した性の嗜好者じゃないのにまともな男が結婚できない、そういう兆候まであるんですね。  私は、この問題に関連して、今係争中の事件でありますから裁判そのものには付言いたしませんけれども、例の問題を起こした戸塚ヨットスクールの戸塚君が、戸塚ヨットスクールをやっている間じゅう自分で不思議なくらい子供が治る、どうしてこんなに子供が治るのだろうかということを、彼は名古屋大学の理科の出身だから非常に論理的に考えていったけれども、なかなかわからなかった。需要が多くて次から次へ情緒障害児が送り込まれてくるから、それを治すことに一生懸命でなかなか自分のやっている試みの論理立てというものができずにいたんだけれども、幸か不幸か事件が起こって収監されまして、これも随分長い間ほうり込まれているのですけれども、その間、大脳生理学とかいろいろ新しい資料、知見というものを読むことで彼は非常に新しい発見をしたというか、私たちを納得させてくれる一つの仮説というよりも、仮説が正しかったということを中から書いてきているのですね。恐らく裁判がもっと積極的に行われるとこれが公にされて、大きな問題をみんなで反省する大きなよすがになると思うのですけれども、例えば彼はこう言っているのです。  ニンジンを食べたがらない子供にどうやってニンジンを食べさせますか。そうしたら、大概世の中の教育者は、さっきの文部省の局長さんと同じように愛だと言う。愛だと言ったってどうやってニンジンを食わせるのか。少し気のきいた人は、ニンジンのにおいとか色が嫌だったら、何かにまぜて味とかにおいがわからないようにして食べさせるが、そんなものはだめだ。戸塚君は中で勉強して、お釈迦様が説かれた開示悟入という言葉を引いて、つまり教えというものはそういう段階で人間の体の中にしまわれていくんだということをお釈迦様が言われているそうですけれども、要するにニンジンに向かって子供をまず開かせなくてはいけない。それでどうするかというと、何も食べさせないで普通の仕事を二日でも三日でもさせるんだ、そうするとおなかがすいて子供が食べ物を見る目つきが変わってくる、そのときに塩でもつけて食べさせれば、かんでかみしめて食べればこんなにニンジンというのはおいしいものかということを悟って、一生その子供はニンジンというものを食べるようになる、それがすなわち開示悟入だということを彼は言っているわけですけれども、恐らく今の学校の教育の概念だと、愛というような非常に中途半端な來雑物が入ってきますと、そういう場合、好き嫌いの多い子供にそれなら一切物を食べさせないで、その子供が仕方なしにそれを食べるまで、飢えさせてでも、つまり食べ物を禁じるということはやはり体罰になるんでしょうね。——いや、それは聞きません。別に答えていただかなくても結構ですけれども、恐らく体罰になると思うのですね。そこら辺に今の教育のあり方が要するにちょっと狂っているところがあると私は思うのです。  それで、非常に専門的なことを私もある雑誌に書きましたので、後でお送りしますから、ひとつ臨教審の方にも読んでいただきたいんだけれども、戸塚君が獄中で発見した新しい大脳生理学、分子生物学の知見というのは、人間というのは非常に高等な生物で、独特の情意であるとか意欲とか知性というものを持っていると思ったけれども、それは実は全くほかの動物と同じ作用で、脳幹といういわば動物の一番中枢にあるどの動物も持っている脳から出てくる小型たんぱく質、一種のホルモンによって刺激を受けて、そしてそれが大脳に共鳴されて、人間独特の感情や意欲になって出てくるということが京都大学とか信州大学の研究でわかったのですね。果たせるかな、それで自分のやっていたことの意味がわかったと彼は納得したわけですけれども、私は、やはりこれは非常に大きなドグマであり、これがもっと社会的に立証されれば、私たちが非常に困っている情緒障害児の問題というのは一つの突破口を見つけることができると思うのです。これをひとつ大臣、銘記しておいていただきたいのです。  ところが、お時間がないようですけれども、この戸塚裁判なるものが非常にゆがめられた形で行われていっている。先ほども野党のある先生と話していて、あれはちょっとひどいなという話をその方からも聞きましたけれども、大体世間の人に聞いて、まだ戸塚君がほうり込まれたままでいると言うと、まだあんなところにいるのですかとだれでも言いますね。後で法務省にもお聞きしたいんだけれども、不当に長い勾留というものは一体何をもって不当とするのか、私よくわからないのですが、私から言えば非常に不当に長い勾留の中にある。裁判がなかなか進まない。そして大事なことは、私は検事でも判事でもありませんけれども、友人の検事、判事、裁判官に聞いてみますと、ちょっと無理な起訴の仕方をしている。業務上傷害致死というのならわかるけれども、監禁、傷害致死でやっているものですから、つまり周りの証言で固めていかないと事件が成立しにくいのですね。  それで一番困ることは、これから国家公安委員長なり警察庁の方にお伺いしたいのだけれども、戸塚君の学校に子供を預けて治って感謝している子弟、親子がたくさんいるわけです。そういう人たちに、これはそもそもこの起訴を見てもわかるように監禁、傷害致死でやったんだ、だから、おまえは、自分の子供といえどもこういうサディストの集まりの学校に自分の子供を送ったのは、親も同罪になるんだぞと言われれば、これはやっぱり素人の親はびっくりしますよ。そして戸塚に対する感謝なんか口にするなど言われれば、これはやっぱり黙らざるを得ない。そうすると、こういう日本が抱えている情緒障害児の問題の大きな解決のめどになるかもしれない問題をはらんでいる裁判が、非常に偏った形でしか行われないという教育上大きな損失が見込まれるので、私はあえてこれをここで文部大臣にも聞いていただいて、法務省なり国家公安委員長の御意見をお聞きしたいんですけれども、これはおもしろいんですね、そういう言い分の中で、親だって自分の子供といえどもああいうところへ送り込んだんだから、要するに子供を監禁したんで幇助罪で同罪になるんだぞと言っている。  ところが、戸塚ヨットスクール盛んなときに、どうにも手に負えない子供がうちにいる、戸塚ヨットスクールに入れると言ったら絶対嫌だ、中で暴れる、ここはもうおたくに預ける以外しか手がないから、何とかお願いします、警察に何とか子供をヨットスクールに送りたいんだ、わかったといってパトカーが二台でやってきて、子供に手錠をかけて押さえておいて、戸塚ヨットスクールに電話をかけて、ヨットスクールのスクールバスが迎えに来るまでその子供を警察官が、要するに警察官の何というんでしょうか、どういう力を振るったか知りませんけれども、責任でそこへ閉じ込めておいて戸塚ヨットスクールのバスに渡した。これはもうはっきりした例がある。  それから、戸塚君が逮捕された後も、神奈川県のある有名な警察の高官のところへどうにもならない子供を抱えた親から相談があった。その高官がわざわざ自分で電話をかけられて、ヨットスクールの校長が逮捕された後だけれども、残っているコーチに、ぜひこの子供をおたくに入れてやっていただきたいという電話がかかってきている。それから、途中から脱走した子供が、もううちへ帰りたいからとにかく保護してくれ、わかった、保護してやろう、交番にいなさい。そして交番のお巡りさんは、うちじゃなしに戸塚ヨットスクールに電話して、おたくから脱走した子供を預かっているから迎えに来い。みんなその子供、更生しましたよ。  私は、その限りにおいては警察は好意でやっていると思いますよ。学校ももてあましてどうしようもない子供を、だれだって、コーチだろうと何だろうと、寒い冬の海に子供と一緒にびしょびしょになってぬれて出ていきたいと思わないのに、よくやっているということでともかく戸塚ヨットスクールをある時点では警察も評価していた。ところが、これが事件になって逮捕ということになると、検察というのはどういうところか知りませんけれども、私も検事の友達たくさんいますが、文部大臣も前、検事してらしたけれども、つまり今度は検察の意向で同じ警察が動いて、うちの子供を戸塚ヨットスクールに入れて助かったということ言うなと言っている事実がある。あるとしたら、これはちょっと開かれた裁判というものを検察の意向で警察が手をかして、ゆがめるということになりませんか。これはやはり絶対にあるべからざる事態だと思いますけれども、公安委員長、いかがでしょうか。
  60. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 石原先生お話は、それだけを伺いますと、私も訓練の方法として、やはり子供のしつけあるいは訓練というものは大事である。そのために、具体的な問題としまして、そういう加えた体罰といいますか、いわゆるそういう行為が社会通念上許されるものであるかどうか、許される枠内なら警察はタッチすることはないと思うのです。許されない部分について、法秩序の維持ということから関与することがあると思いますが、ただ、今、先生のいろいろな事例を聞きますと、私もそういう事例は余り知らないほど、ちょっと驚いておりますから、ひとつその事実関係についてわかったところを政府委員からお答えいたします。
  61. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 ちょっとその前に、文部大臣退席されるようですけれども、最後にお願いしておきますが、せっかくつくられた臨時教育審議会ですから、こういう問題も、やはり戸塚君は今獄中におりますけれども、もっと多岐にわたるそういう専門家というのでしょうか、試みをしている人たちあるいはそこに子供を預けて救ってもらった親、そういった者もやはり参考人に呼ばれて、多角的にこの問題をひとつ研究していただきたい。私はここに大きな問題の解決のかぎがあると思いますので、ひとつ御研究願いたいと思います。
  62. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほどから石原先生の貴重な御意見を聞かせていただきましてありがとうございました。  私は、どうして最近情緒障害児あるいは自閉症の子供がふえているんだろうか。昔の親は学問はなかったあるいは学問的な子育ては知らなかったかもしれぬけれども、こんなに情緒障害児とか自閉症の子供が日本におったとは思えないです。やはり我々の先祖から受け継いだ伝統的な子育てのあり方というものは、案外正しかったのじゃなかろうか。そういう子育ての仕方を今の親が、家庭の変化等によりまして案外知らぬのじゃなかろうか。そういったことが非常に影響していると思いますので、私自身も大いに勉強したいと思いますが、ただいまの石原先生の御意見、非常に貴重な御意見でありますので、事務当局と相談してしかるべく研究がなされるように努力をしたい、こういうふうに考えます。
  63. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 お答えをいたします。  戸塚ヨットスクールの教育的な見地の問題につきましては、警察としては特に申し上げることはないと思います。ただ申し上げておきたいのは、違法行為、刑事罰に触れるような行為があれば、警察としてはこれは取り締まるという点が警察の立場でございます。  それと、今お話がありました幾つかの点について事実関係について申し上げますと、親の口封じを警察がやったんではないかというようなお話でございますが、警察といたしましては、捜査を進める過程におきまして、広く関係者からのこの施設内での訓練の状況について事情を伺う、こういうことは当然必要なわけでございまして、これはあくまでも事案の真相を解明する、こういう意味で関係者から事情を聞いておるということはございます。  それと、いろいろ交番、駐在所に逃げ込んできた子供についてヨットスクールの方へ連絡したというようなことでございますが、確かにお尋ねのようなケースがございます。ただ、逃げ込んできた後の子供に対する取り扱いの事情は大分違っておりまして、逃げ込んできた子供を保護いたしまして直接ヨットスクールに引き渡したというケースは、これは後からまたありますけれども、最初のお話のあれは、これは本署の方で直接父親に連絡をしまして、父親に引き渡しておるというケースが二件ばかりございます。  それと、あと車の中に押し込めて送り返したというケースでございますが、これはこの少年の自宅の方に少年が帰りまして、そこヘヨットスクールの方で迎えに行ったということで、ヨットスクールに帰るのを嫌がって騒いでおった。隣近所の人が一一〇番をいたしまして、それで警察官が臨場したわけですが、そこでまたいろいろ暴れておりますので、少年を一たん制止をした。あと、ヨットスクールへ帰るのかどうかということについて確かめましたところ、両親がぜひともヨットスクールの方へ帰してほしい、こういうことで迎えに来ておったヨットスタールの職員と一緒にその車に乗せた、こういう事実はございます。  以上です。
  64. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 いろいろお立場があるでしょうし、私も何も警察がすべてけしからぬと言っているわけじゃない。  要するに、事件が起こる前は、警察は非常に共感を持ってヨットスクールのいい意味でのしごきというものに間接的にも手をかしていたと思うし、私はそれであってしかるべきだと思うのですよ。ただ事件が起こった後、名前を挙げてもいいけれども、幾つかあります。要するに、おかげさまで治ったと言っている親が、被告側の証人として私は喜んで出廷して証言しますとか、新聞記者が聞きに行って、どうも新聞は戸塚さんのおかげで子供が治っだということは書かないみたいだけれども、そういうことを言うと、警察が来て、余計なことを言わぬ方がいいよ、あなたの子供は本当に治ったわけじゃないんだから、もうヨットスクールもないので、この次は少年鑑別所へ入れるかもしらぬよというようなことを言われれば、これはやはり中立の立場で、実際おたくのお子さんどういう体験をしましたか、親はどう思っていますかという意見の開陳ができないでしょう。そうしたら裁判は検察の思うとおりにゆがめられてしまって、今も田中総理のロッキード裁判がいろんな形で俎上に上っておるけれども、私は、やはり案外いろんなことがあるんだなということを本当に今度改めて感じました。ですから、親に頼まれたり泣き込んできた子供を、またとにかく家へ帰したらえらいことになるから戸塚ヨットスクールに渡した、それを私はとがめているんじゃないのです。ただしかし、その後、要するにここでこれをどういうふうに論理づけられるか、これから先のことでしょうけれども、ともかくも奇跡的に治った子供たちが何十人もいる。それを評価し、感謝し、その感謝をもとにし、私たちはこれを科学的に解明していこうとしているのに、つまり実際にあった例証というものまでを社会的に隠ぺいするような、そういう幇助だけは絶対に警察にしていただきたくない、その監督だけはしかとしていただきたいということを私お願いする次第でございます。それでは、ひとつそれを公安委員長
  65. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 今の先生のような御指摘があれば、これは私もちょっとびっくりしておるくらいでございまして、そういうような、警察が何といいますか、一方の立場に立ってこれを応援するような格好は、警察の中立性ということからして大変まずいと私は思いますから、事実関係についてはよくまた調査をいたします。
  66. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 それでは次に、昨今、これまた非常に問題になっております日本の対外経済援助についてお伺いをいたします。  きのうですか、おとといの新聞にも、アメリカの上院の外交委員会でマルコス政権というものはもう限界に来たという認識というものが公表されたようですし、先般のマニラのホテルの火事も、日本とアメリカの観光客というものをボイコットするためにエンジェルスとかいう過激派がやったという声明があったようですけれども、私は、フィリピンの国民の現政権に対する反感というものは非常に強いと思いますし、またこれを有形無形、とにかく助けている外国政権に対する、これは特にアメリカと日本ですけれども、反感というものも日増しに強くなっていると思うのです。外務大臣もいなくなっちゃった……。  去年、実はこの予算委員会でこの問題が出ました。残念ながら、与党は質問の機会がなかったので社会党の井上一成君がやりましたけれども、実は私にも、この閣僚の席の中から四人の方々がどこか立つふりして寄ってきて、君はアキノの親友だったんだろう、殺されたんだろう、あんな予算を、あんな援助を何で許すんだ、やれやれと言われた。名前を挙げるわけにはいかないけれども、恐らく外務大臣も、要するにこの円借款に関しては、あえて英語で言いますけれどもリラクタントだったと思います。一人張り切っていたのは総理大臣で、レーガンから頼まれた頼まれたと言われたそうだけれども、果たしてレーガンが頼んだのかどうか。そのレーガンは、事情も変わってきたし、貴意に沿いがたいという手紙をわざわざ書いて、これを公開して、アメリカはフィリピンに対する援助を去年打ち切った。日本だけがあの選挙の前にやりました。この選挙だって、戒厳令が限界に来てもうどうにもならなくなっているものだから、体裁をつけるためにやったんだ。そして、そのために使う金だろうというので、私も何人かのフィリピンの議員の訪問も受けましたけれども、せめて選挙が終わってからにしてもらえないかというのを、いや、フィリピンの経済はもう土壇場まで来て、とにかくあすが大変だからやっちゃうんだということで、商品借款という名前と裏腹に、実際は現金を送ってやって、そのお金で原材料を買わせて、その分のペソを、余り国際性に信用のないペソを向こうのセントラルバンクに政府が積み立てるという、要するに経済援助をやった。  私は外務委員会で、これは非常に問題があるから、せめて商品借款で向こうに渡した円の使い道だけははっきり監督してもらいたいということを申しました。そうしたら、アジア局長でしたか、それとも経済協力局長でしたか、今度の場合には特別のノートもつけまして、これを厳に監督いたしますということを言われましたが、それがどのように行われたか、私は報告も受けておりませんけれども、聞くところによりますと、あれだけ急いで、大変だ大変だ、焦眉の急だといって、私たちこの行革、財革の時代につめに火をともしてつくった五百億のうち、過半を商品借款として送ったお金が今の時点で三〇%ぐらいしか消化されてないんでしょう。どうですか。
  67. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 お答え申し上げます。  今までの商品借款の消化状況でございますけれども、ただいま御指摘のように昨年の四月二十八日に交換公文を締結いたしまして、五月七日に借款契約の調印を行った次第でございます。一月末までの消化状況を見ますと、全体の供与額が三百五十二億円でございますが、そのうち百五億円、今御指摘のように約三〇%が消化をされているという状況でございます。  まだ三〇%しか消化されてないじゃないかという御指摘でございますが、この商品借款の使用期限は二年間ということになっておりまして、大体各国の例などを見ましても、最初の一年間で四割ないし六割というものが消化されるという形になっておりますので、非常に速いということは申せませんけれども、非常に遅いというわけでもないんではないかと思います。  理由として申せますのは、もう先生も御高承のとおり、IMFとフィリピンが非常に精力的な交渉をいたしまして、大変な引き締め政策をとっておりますものですから、経済が非常に沈滞といいますか停滞しているということが、消化をどちらかというとおくらせている一つの原因かと思います。  もう一つの理由は、フィリピン側がこの商品借款の使用につきまして割と厳しい手続を付しておりまして、ペソの価値が御承知のように非常に上下するものでございますから、フィリピン側の需要者が商品借款の申請をしますときに一二〇%ぐらいのペソ積み立てを要求するという規則を本年の一月までとっておりまして、そういう積立義務などがあるものですから、この商品借款の使用をする、どちらかというとインセンティブが少なくなってきているというのも一つの原因として挙げられるのじゃないかと思います。  以上でございます。
  68. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 あとは大臣がいないと話になりません。
  69. 天野光晴

    天野委員長 今、来ますから。
  70. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 じゃ、資料を配ってください。
  71. 天野光晴

    天野委員長 外務大臣が参りましたから、石原君、質問を続行してください。
  72. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 今、委員各位の皆さんにお配りした書類ですけれども、一、二、三、四と番号が振ってありますが、これはフィリピン政府の中で、例えば開発庁長官を兼ねているビラタ首相とマルコス大統領であるとかその他の政府高官と、日本の円借款に関して、マラカニアン宮殿と役所の間を往復したペーパーです。  訳文を添えていませんけれども、概略を申しますと、ともかく最初、第十二次円借款に十六項目のプロジェクトを頼むつもりである。三番目の資料は、簡単な英語ですからお読みになればわかると思いますが、フィリピン政府を代表して、私は第十二次円借款に融資を受けるために下記の事柄を日本の政府の検討に供する光栄を有しますということで、現地の大川大使あてに出されている。四番目の資料の中に非常に興味深い記述がある。それは一ページ目のナンバーツーのところの行に、要するに日本側から集められた非公式な情報では、下記の諸事業は今回、つまり第十二次円借款の対象としては採用される見込みはないという報告をマルコス大統領あてにビセンテ・バルデペーニアスという大臣がしております。  資料はそれだけでありますけれども、その後、日本とフィリピンとの間に幾つかの要するに行き来がありました。そして、結果としてだめであろうとフィリピン政府の担当大臣が大統領に報告をしていたプロジェクトのうちの三つがどういう事情でか認められて、外務省もこれを援助することを決めた。それはそれで結構なんですけれども、そのうちの二つが、要するに額が原案と比べて異常にふえているんですね。例えばEPZA、輸出加工地域事業第二期工事、これは減った方だ。郵便車両の調達計画は、原案が十一億円だったものが十四億になっている。それからマニラのポンプ場の再セット、補修、これは十九億円だったものが三十億円になっているんですね。これは、例えば台数がふえたとかいろいろ理由があるんでしょうけれども、どういう理由でこれだけ数字がふえたんですか。
  73. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 ただいま御提示の資料のうち、フィリピン側の内部資料と思われますものにつきましては、私どもはそれを承知しておりませんので、ここで今いただきましたものですからコメントさせていただく状況にございません。  それから、最終的に、この第十二次円借款のうち、商品借款を除きますプロジェクト借款につきまして、メトロ・マニラ排水ポンプ施設、それからバターン輸出加工区、郵便処理、この三件につきましては、今御指摘のとおり、我が方で合意いたしました額は、第一が三十億一千二百万円、バターンの方が二十九億五百万円、郵便処理が十三億八千百万円ということでございます。  当初の要請額がどうであったかという御質問でございますけれども、当初の要請額はフィリピン側が我が方に積み上げで要請をしてまいりまして、その後、我が方の政府と、それからフィリピン側の政府との交渉によりまして、また政府使節調査団及び基金の調査団が参りまして、言うなれば、交渉によりまして我が方の許容限度額というものを決定いたしますので、その金額が最終的に向こう側の要請額より上回る場合、下回る場合というのはともにございます。このプロジェクトについての先方の当初の要請額が幾らだったかというのは、内容としては、私どもとしては申し上げるのは適当でないんじゃないかと思います。
  74. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 それは、向こうの原案とこちらの分析が食い違って、額がふえたり減ったりすることはあると思うんですが、私がこれをあえてお聞きした理由は、外務省がほとんど窓口になって、一兆円に近い膨大な、とにかく予算の中では突出していると言われる海外経済援助をやっているわけですが、ほかの国に比べてこういうお金が果たして有効に使われているのかどうか、このプロジェクトが果たして妥当なのかどうか、そういったものをどの機関が調べているのかさっぱりわからない。  そして世界では、幾つか日本がお金を出してやったプロジェクトが物笑いの種になっている。これは挙げれば枚挙にいとまがないですな。例えば使いもしない地域に大型のダンプカーを持ち込んで、これをくれてやって、結局さびだらけになってほったらかしになっているとか、それからモブツ大統領の名前をつけた、何という国でしたか(「ザイール」と呼ぶ者あり)ザイールですか、あそこの橋も、橘だけかけたけれども、両側の道路ができていないから、あの橋の上に人が住んでいたり、六百メートルか七百メートルの長い橋を一日にせいぜい百台の自動車が往復するぐらいのものでしかなくて、あとは原住民がそこで夕涼みしている。こんなプロジェクトを我々血税の中からつめに火をともして割いて対外援助したということで満足するわけにもいかないし、世界にも誇れないんじゃないかと思うのです。  かつて佐藤内閣時代に、亡くなった永野重雄さんが対外援助については別の省をつくれということを言われて、外務省は強硬に反対された、これは二元外交になるから困るということで。それは反対の理由もわかりますけれども、それから後、それならば要するに、それに反対した建前もあって、外務省がどれだけ努力をしてきたかということを聞きたいんだけれども、さっきの橋のような例が本当にたくさんあるわけですね。これは私は何も外務大臣に文句を言っているわけじゃないのです。ただ、せっかく三期もやっていらっしゃる外務大臣ですから、この間にこういったずさんな対外援助というものの仕組みというものをやはり変える努力をしていただきたい。  例えばあえて申し上げますけれども、私は名前は挙げられませんが、自分がフィリピンの、要するに円借款の問題について、有名なロドリゲスというインプリメンティングオフィス、これはもう日比賠償のときからずっと数人のスタッフでやっている、しかも当人は建設道路開発事業省か何かの次官もしている男で、この男が対外援助の窓口を一手に仕切っている。この人と話をして、十二次借款のある部門について、これ君ひとつ一〇%の水増しでやってくれといって、私がつくったんですと言っている人間に私は会っているのですよ。その人間が、自分がつくったそのいいかげんな資料が、原案がどこでどういうふうに通っておるか気になるものだから、近い国ですから、日本に帰ってきたついでに外務省をのぞいてみた。聞いてみたら、若いお役人が、キャリアでしょうけれども、英語はできるんだろうけれども、その自分のつくった書類をたまたま見ているのを見ていた。それで終わりです。  要するに、会計検査の能力が外務省にあるのですか。それから、そのプロジェクトが施行される前に、実際にその現地にとって本当に必要かどうか。国というのは相手の政府じゃないんだから、マルコス政権が何を要求しようと、本当にフィリピンの国民なら国民が、ザイールの国民なら国民が何を望んでいるかということをどれだけ時間と手間暇かけてどういう専門家が調査しているかということを考えてみると、本当に一兆円近いお金がざるで水をすくうみたいにして捨てられている。私は、やはりアメリカの開発庁のように、USAIDのような、せめてああいう機構をつくらないと、これから先日本の防衛のためにも、これは海外協力というのは絶対に必要だと思います、日本は資源もありませんし、外地との紛争が非常に大きく響いてきて、精巧なガラス細工みたいな国ですから、ほかの国なら耐えられる事態が日本の場合には致命的なことになるかもしれないけれども、そういう体質というものをカバーするためには対外援助が必要ですが、それが有効に生きてくるための措置を制度の上でもしなければだめだと思うし、一兆円に近い、やがては超すであろう政府予算というものを、つまり何らかの委員会国会議員が与党、野党一緒になって審議するというのが私は妥当なことだと思うのです。そういったアメリカの制度等々も御存じだと思いますけれども、外務大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  75. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 おっしゃる点につきまして、やはり政府としてもいろいろな角度から検討しなければならぬ点も私は率直に言ってあるんじゃないかと思います。  日本の経済援助は、人道主義あるいはまた相互依存という基本原則に従ってやっておりますし、無償援助につきましては外務省が中心でやっておりおります。それから、円借というのは四省共管とかいうことで外務省が窓口になってやっておるわけですし、また、技術援助はJICAが中心になってやっておるわけですが、基本は何といいましても、今おっしゃるように国民の貴重な血税が中心ですから、そうした援助が本当にそれぞれの国の民生、福祉の安定のために効果的に使われるということでなければならぬわけでありますし、それにつきまして、日本としてもプロジェクト主義でやっておりますから、プロジェクトを相手の国と合意する中には詳細に話し合いもし、日本も注文をつけてやっていることは事実であります。私は、大半の経済援助については適正に、向こうも大変喜ぶ形で行われておる。特に日本の援助は、アジアが七割ということですけれども、特にASEAN関係のプロジェクトでも、私自身、昔政治家としていろいろと向こうに行ったときは不平不満等も聞いたことがありますが、最近行きましたときは、日本の援助というのが非常にASEANの発展あるいは国民の民生の向上に大きく直接的に寄与しておる、こういう評価もいただいて、これがASEANと日本との力強い結びつきにもつながっておる。  フィリピンの問題は、確かにフィリピンの政情が不安である。ああしたアキノ事件が起きたということで大統領自体の権威にもいろいろと問題が出てきた。また、経済がそれでもってある程度混乱をしたということもありまして、いろいろとフィリピンの援助については問題もあったわけですが、日本としてはASEANとの関係がある。それから、IMFがフィリピンの経済再建に協力しそうだ、こういうことを背景にしまして、フィリピンの援助というのは、あくまでもフィリピンの政権を助けるとかなんとかいうことではなくて、ここでもって援助しないとフィリピン経済自体が崩壊をして、フィリピンの経済の混乱が非常に大きくなる可能性があるということで政府として決断をしたわけなんですが、全体的に見ると、最近ではいろいろな面で改善をされているし、またフォローアップの体制も外務省で設けましてやっておることは事実です。  しかし、おっしゃるように相手の国とせっかくうまくセットされた事業もプロジェクトも、相手の国の経済の情勢とか社会の情勢でそれがうまく機能しないという点もあると思うのです。確かにさっきお話があったザイールなんかも、これは下を汽車が通るというような形になっているのですが、今彼らが大変喜んでいることは事実なんですね。しかし、問題はないことはないと思うわけですから、今おっしゃるような点は十分反省しながら、いかにしてフォローアップ体制をつくっていくか、あるいはまた完成した後までの、あるいはまたそれまでの間の相手の国とのしっかりした約束というものをきちっとするということが大事じゃないか。ですから、外務省でもそうした体制をつくると同時に、民間の有識者等に集まってもらって、経済援助全体についてもう一回根本的に見直す懇談会をつくろうと、こういうことで今準備をしているところです。
  76. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 ぜひそれをやっていただきたいと思うのです。日本の対外経済協力というのは現地の要請主義というのでしょうか、ほとんどそれが主体になっているわけですけれども、現地でこういうプロジェクトを招聘したいと言っている人たちが必ずしも向こうの国民大衆を代表してないといううらみがあるわけで、結局私たちの行為が生きてこないという結果になるわけです。アメリカなどはODAの資金のうちのたしか一二、三%は民間のNGOに、民間の活力というのでしょうか知恵というのでしょうか分析力というのでしょうか、そういう情報を生かすためにシェアするように行っていますし、ほかの先進国も一〇%近い分割をしているようですけれども、日本の場合にはこれはまだ一%にも満ちておりません。こういう数値をこれから先積極的に、役所が全部抱えていないで民間のそういう体制に回すという意向はおありになりませんか。
  77. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 こうした民間の海外協力、海外援助といいますか、そういう面における役割は最近非常に重大になってきた、増大した。  特にアフリカで、例えば今度アフリカ協会にお願いして、毛布百万枚集める運動を展開しました。百五十万枚ぐらい集まるようなそういう国民的な協力を得ているわけですが、この毛布をアフリカの諸国に送る場合には、これに一緒についていっていただく人はボランティアの人に行ってもらいます。それから、よく新聞なんかで毛布とか食糧等が本当に現地の被災者に渡らぬのじゃないかというような批判もありまして、政府の職員だけでは到底これはカバーできませんから、やはり毛布を現地まで運ぶにもモニター的な役割をやってもらっていまして、これは大変大きな効果を上げておることを私は痛感しましたし、それからアフリカ援助等においても、日本政府の役割は微々たるもので、やはり民間の力が非常に大きいわけですから、こうしたNGOといいますか、そうしたもっと国民的な盛り上がった力というものに大きな活力を与えるといいますか、そのために政府がある程度の援助をしていくということは、私はこれから相当力をつけていかなければならぬと思っています。去年よりはことし、ことしよりは来年というふうに、その辺のところに重点を置いていきたいと思っております。
  78. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 政府委員お尋ねしますけれども、ちなみにフィリピン、マニラでいわゆる日本のデベロッパーと組んで、実質的にはこれは向こう側のプロジェクトの原案をつくってやっている、そういう仕事までやっているわけですけれども、数は限られていると思いますけれども、どんな日本のコンサルタント会社が操業しているか教えていただきたい。
  79. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 お答え申し上げます。  コンサルタントがどういうようなものが活動しているかという名前まではちょっと今持ち合わせておりませんけれども、一般的に申しますと、先生の御質問の御趣旨はコンサルタントをどういうふうに活用しているかということかと思いますが、日本は御承知のように、ほかの欧米諸国と比べましてコンサルタントは割と発展がおくれているということなんですが、政府の開発、要するにプロジェクトの初期の段階で開発調査というのを行いますが、開発調査ですとか、それから無償資金協力の前の基本設計調査というものには、政府の職員とともにコンサルタントの御協力を得てやっているという状況にございます。
  80. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 要するに、外務省は出先の公館もあるのですしスタッフもあるのですから、そこで大事な日本の民間の出先機関としてコンサルタントが支社を置いていろいろな活動をしている、その中にどんな会社があるかぐらいはやはり大使館としても掌握しているでしょう。今ここでわからなくても、後で教えていただけますか。
  81. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 フィリピンに事務所等を置いているコンサルタントの名前、後刻調べましてお届けいたします。
  82. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 最後に外務大臣にお願いいたしますけれども、これはフィリピンに限らずどこでも非常に、何というのかな、日本はおおらかと言えばおおらかで、ずさんと言えばずさんきわまりなくて、大概向こうででっち上げた予算が通ってしまうのですね。それで、つくった人間が、自分の会社のためになる、日本に金が戻ってくるのだからいいじゃないかと言ってはいるけれども、例のアキノ事件の後、さすがに気がとがめて、こんなものはやはり国会で相当問題になってチェックされるだろうと思ったら、全然されずに通ってしまったので、あきれ果てて、どういうふうに書類が流れていくのかというのを、マニラから帰ってきて、フォローしておこうと見たという。私は本当に情けないような話だと思うのですよ。国民がこれを聞いて怒らないわけはないですよ。ですから、向こうから出てくる要求の原案なるものが、何も一々大蔵省を煩わせることはないでしょうけれども、ともかくきちっと、何というのでしょうか、予算書として妥当であるかどうか、そういった分析、調査を厳密にする努力というものを、外務省で人が足りないのなら民間の識者を入れるとか新しい組織をつくるなりして……(「国会でやれ」と呼ぶ者あり)それは国会でやるべきなんだ、もともと本当は。とにかく、一兆円近いものが全然審議の対象にならずに右から左に流れていって、ざるで水をすくって捨てるみたいなことをされているのだから。これはやはりぜひ大臣の在任中に、予算で計上して日本はこれだけ世界のために使っているからいいだろうと済むものじゃないので、それが本当に一〇〇%に近い、実質役に立つような努力を審議の上でするようにひとつ御努力願いたいと思います。  終わります。
  83. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 経済援助はほとんど有効に使われておると我々確信していますが、確かにいろいろと問題のある国等については厳しくチェックする。フィリピンも、そういう意味では私もさらにフォローアップをきちっとしろということを言っておりまして、ですからプロジェクトについても精選して話し合いをきちっとやったと思いますし、商品借款なんかの施行もまだ三割ぐらいしかできていない。それは日本がいろいろチェックしているという点もあると思いますが、十分これは気をつけてやろうと思っています。
  84. 天野光晴

    天野委員長 これにて石原君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  85. 天野光晴

    天野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。川俣健二郎
  86. 川俣健二郎

    ○川俣委員 予算審議のあり方というように書いてありますけれども、それほど麗々しい問題じゃありません。それほど難しいあれではないのですが、大蔵大臣、今回の予算委員会は、大臣も二回も座られて大分長い担当大臣ですが、例年に比べてどうですか、進行状況はおくれていると思いますか。
  87. 竹下登

    竹下国務大臣 政府側から論評すべき問題ではない。謹んで静かに見守らせていただいております。
  88. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それにしても大変に日程が気になるところでしょうから、予算提案者として。例年とどうです。
  89. 竹下登

    竹下国務大臣 順調に進むことを期待いたしております。
  90. 川俣健二郎

    ○川俣委員 随分あなたはきょうは口が何というのですか、もう少し……。毎年の日程というのは当然ながら頭に入っておると思いますが、私も何年間か出先をやらしてもらったり、予算委員に座らせてもらったりしておりますが、委員長、ここに色刷りの、十年間のを持っておるのですけれども、これは去年は解散、総選挙後ですから、提出も遅かったし、あれですけれども、例年より比較的早い。委員長は非常に心配して、何か聞くところによると、理事会等で日程の貯金がなくなるとかと言って騒ぐようだが、地方紙の一面に「大幅な遅れ」と、そこからでも見えるでしょう、こう見出しに、一面に書いて、それを各自治体の長が、予算がおくれたんじゃ四月いっぱい大変だ、予算が遅く来るんじゃ、また暫定でもということで、野党の予算委員に電話させておる。これはどういうことかなと思って私も不思議に思いまして、いろいろとやっておるのですが、極めて順調であるとここの理事皆さん方も認めておる。  そこで、私はもう一つ聞きたいのは、今参議院の改革協議会で国会の一月召集という問題云々を中心にいろいろとやっておるのですが、これは当然ながら憲法五十二条ですか、国会の常会は毎年一回ということと、国会法二条の方の、常会は十二月中に召集するのを常例とする、それからもう一つは、財政法二十七条ですか、忘れましたから済みません。予算案を十二月に提出する。この三つを絡めて考えると、この予算の審議をしてもらう担当大臣としては、一月の方がいいだろうか、十二月召集でなるべく早く提出を急いだ方がいいだろうか。  それはなぜかというと、四月一日からの会計年度ということが大きく日本の国にある。入学が五月という話があるが、これは日本の国には必ずしもなじまない問題がある。まあその話は別として、四月—三月という会計年度を非常に長い慣例とする日本の国としては、どうしても四月一日からの新予算。ところが一方、参議院が一カ月で自然成立ということがあって、この審議権を確保してあげるということから見ると、私は、財政法があるということだけではなくて、むしろなるべく早く財政法に従って十二月中に提出するなりして、早く予算審議に入った方がいいのではないかと思っておるだけに、この辺はどう考えるだろうかなと、法制局、ちょっとお願いしたのですが、来ていませんか。——それで、法制局、聞くところによると、今の三つの問題が絡んでおるが、今参議院の改革協議会でやろうとしておる問題は、必ずしも憲法改正なり国会法改正をせぬでも、運用の妙味で通常国会を開けるんだ。というのは、今は十二月ですから、しかも年一度ですから、したがって、年一回というのは何年繰り返してもダブっては開けないし、初年度はあいちゃうわけです。したがって、その辺はどういうように考えていますか。
  91. 前田正道

    ○前田政府委員 ただいま委員からお話がございましたように、憲法五十二条が「国会の常会は、毎年一回これを召集する。」と定めているのを受けまして、現行の国会法第二条は「常会は、毎年十二月中に召集するのを常例とする。」と定めているところでございます。  お尋ねに関連いたしまして、国会法を改正いたしまして常会の召集時期を現行の毎年十二月中から毎年一月中といたしました場合、改正の最初の年に限って申し上げますと常会の召集がないということになりますので、先ほど申し上げました憲法五十二条の規定との関係から申しまして疑義があるとする見解がないわけではございません。しかしながら、憲法五十二条があのような規定を置いたにつきましては、国会予算、法律案の審議、議決その他の機能を行使されますために定期的に毎年相当の期間活動することのできる状態に置かれていることが望ましいわけでございますので、建前といたしまして常会を毎年一回召集することというのを定めたものと考えております。  しかも、憲法五十二条は、常会の召集につきまして特定の時期までは明示しているわけではございません。そのような点からいたしまして、仮に国会法を改正されました結果、その最初の年につきまして常会の召集がないこととなりましても、そのことは国会法の改正に伴います経過的な措置ということで、憲法の趣旨に反するものではないというふうに考えております。
  92. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それはまあ、論議を深めると時間がなくなるので……。  そうすると、実際の問題として、現実の問題として、予算担当大臣、十二月召集ということで気持ちもはやるが、どうしても促進は、財政法によって早く出そうではないかという雰囲気になる。一月召集ということになると、どうしてものんびり型になる。しかし、四月一日からの新予算、そして一カ月間の参議院の審議権を確保する、こういうことからすると、大蔵大臣としてはこの考え方をどう思われますかね。
  93. 竹下登

    竹下国務大臣 これは本委員会でも議論されたことがございますが、議論されたポイントは、まず財政法違反を毎年犯しておるではないか、こういう角度から御議論をいただいたことがございます。そうすると、十二月中に提出するを常例とすると書かれながら明治以来提出したことがないということになると、財政法違反というものをつかれる限りにおいてはやはりこの提出時期を一月とした方が——現実一月でございますから。今まで御提案申し上げているのが、十二月の終わりに編成作業を終えて概算閣議を終える、それで提出閣議までには印刷の期間が十三・五日かかりまして、計数整理の日が何日、こういうのがありまして、そうするとどうしても一月にならざるを得ないということになると、財政法の改正をしていただいた方がいいかなと何度か思いました。が、それは今、川俣さんがおっしゃったとおりで、今度は国会法の百五十日と十二月召集、それから憲法の年一回。今、法制局の意見を聞いてなるほどなと思いましたが、当時は、一年限りではあるが憲法違反を犯さなければならぬというところをどうするか、そうすると、たまたま解散があったときの特別国会をもって常会にかえる場合にやればいいじゃないかとか、あるいは、どうでございましたかちょっと記憶定かではございませんが、十二月召集は行っておいて、そしてその国会でもって国会法の改正をして一月にしておいて、その法律の中で、一月召集される前日に会期を終わるものとするという法律をつくればできるじゃないかとか、そういう議論をしたことがございますが、あるいは財政法よりもそっちの方が詳しかった時代の話でございます。
  94. 川俣健二郎

    ○川俣委員 結局結論何だろうと思うのでございますけれども、この論争を、内閣の意見を聞くのはまだ時期尚早かもしらぬけれども、今かなり急いで参議院の方でやっておられるのですが、せっかく官房長官おられるから、これについて考え方はどうですか。
  95. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 参議院の方でもいろいろな御議論がこの問題について出ておるということを承知いたしておるところでございます。ただ、通常国会一月召集の問題は国会法を中心として動いていく問題でございますので、あくまでも国会での御論議でこの問題をどのように発展をさせていくかということを見守らせていただきたいというのが今の政府の気持ちでございます。国会の方でそういう御判断になって国会法を改正という方向にまいりますれば、ただいま大蔵大臣もいろいろお答えをしておりますように、財政法の問題につきましても政府としてもこれに適切に対応しなければならぬ、こういうふうに考えておりますが、いずれにいたしましても国会法の改正問題がどのように議論されていくかということがまず先決の問題ではないか、こういうふうに思って、いろいろな御論議を見守らせていただいておるところでございます。
  96. 川俣健二郎

    ○川俣委員 論議を見守っておるということじゃ、ちょっとこれ一生かみ合わぬだろうからやめます。  本論に入ります。林業問題を先に順々に取り上げさせてもらいます。  前回の予算委員会で時間切れになりましたときに、総理大臣から時間切れすれすれで意見を伺っておるのです。ちょうど議事録ができ上がったばかりでありますが、総理はこういうようにしゃべっておる。「木材の需給関係という面あるいは林産関係の、産業関係の面もございますが、災害対策とか水源の涵養とか環境の保全とか、そういうようなあらゆる面から見まして、森林資源を本当に大事にしなければならぬというときに立ち至ってきておると思います。そのためにはやはり林政それ自体を充実させる、あるいは森林組合そのほかの関係者が生産性を向上させて、そして海外にも対抗し得る力を培養していく、あるいはさらに、森林の適切なる開発政策と申しますか、林道その他、あらゆる面につきましても考慮をする、経営面におきましても、民間の経営が成り立つようにいろいろな面において政府としても面倒を見させていただく、総合的な政策をもちまして森林政策というものを充実していかなければならぬ」、しかも、国際森林年というものを意識されていろいろと発言されておって、時間切れになりました。  ところが、総理はがん対策のときもたしかそうだったと思うのですが、言うことは非常に立派なんですよ。さっきもスローガンの話が出ていましたけれども、スローガンを掲げただけでは事足りない、大変に山荒らしの時代に入ってきた。私たちもこの足で、この目で六カ所、全国を見て、歩いてみました。これは金丸幹事長がいみじくも言いましたが、山は荒れほうだいだ、だれが何と言おうともこれに木材を輸入なんかさせて関税引き下げなんか到底応じられぬという談話を出しておったのでございますが、問題は、具体的にこの予算にどの程度入っているかということに入りまして、昨年の林政審答申に基づく四つの項目、時間がありませんから一々言いませんが、四つの一つ——三つはなるほど予算に計上されております。退職金の問題、林道の問題等載っておりますが、問題は、木を切って、売って、それでは到底暮らせない、採算の合わないという面が公益的機能ということで出ておるわけなんで、どうやってそこに、非採算部門に力を入れるかというのが政治であると思うのですが、それじゃ一体そういうものがどのように予算化されているかなと思いまして、次の五つを挙げてちょっと論議をしてみたいと思います。余り時間がありませんが。  一つは、何回もここに出ましたが、間伐の促進、いわゆる間引き伐採です。それからもう一つは担い手の確保、労働力がだんだん山からおりてきちゃった、いなくなった。それから三つ目は我我が高く掲げておる、そして共同修正案の予算にも載せておるのですが、教育森林、子供のときから森林に親しませる、こういう政治が必要なんだ。四つ目は木材製品の市場開放、関税問題そして需要の喚起そして国有林事業、こういうように五つあるわけです。  まず間伐の促進ですが、一体当局は今までとは違った、総理がこのようにアドバルーンを揚げる具体策として、林政審の答申に対してどのようにこれを画期的に具体化しようとしておるか、ちょっと説明してくれませんか。
  97. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 お話のございました間伐につきましては、これからの国産材時代を現実のものたらしめるためにも、また森林の公益的機能の維持向上のためにも本当に大切なことでございます。間伐はかねてから推進しておったところでございますけれども、特に本年におきましてはこれまでの施策を充実させまして、まず計画的、集団的に実施することを中心に据えまして、さらに間伐材の加工、流通でありますとか、新しい需要開発の促進に至ります総合的な間伐促進施策を実施することといたしておりまして、林政の最重点といたしましてこれを推進いたしたいと考えておるところでございます。
  98. 川俣健二郎

    ○川俣委員 さらに具体的に言いますと、一千万ヘクタールの人工林を立派に育て上げました。皆さんの力で育て上げました。問題は、これをこのままにしておったら豆もやしになっちゃうので、どのように間伐をやるかという問題ですが、私がこの予算内容をよく見てみますと、何年この調子でかかるのだろうか、一千万ヘクタール。その具体的な計画はありますか。
  99. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 間伐につきましては、対象となる適齢級が一千万ヘクタールの人工林の約半分近くございます。そういう中で、どうしても緊急にここ五年くらいの間に間伐をしなければならないと考えられます要間伐林分は百九十万ヘクタールでございます。したがいまして、五で割りますと約四十万ヘクタール、とまではなりませんけれども、そのくらいでございますが、最近、間伐の実施面積もだんだんと向上いたしてまいっておりまして、約二十五万ヘクタールぐらいはできるようになってまいりました。さらに、これを中核といたしまして計画的にできるように力を注ぎたいと思っておりますが、需要がいまだ十分でございませんために七割程度にとどまっておりますが、さらにこれを実行比率を上げるべく努力をしてまいりたいと思っております。
  100. 川俣健二郎

    ○川俣委員 五カ年でやるような計画もあるが、一体あなたの言うような計画であると何年かかると思いますか。例えば治山治水なんかは五カ年でやるように書いてある。このように、やはり何年でやるかということをお示ししないと、財務当局も計画が立たない。財務当局に対する要求が、これだけ必要なんだということの計画を示さないといかぬと思う。今のテンポだと何年かかるかね。
  101. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 現在七割程度の実行率と申し上げましたけれども、現在の造林地の齢級配置から考えますと、大体次から次に要間伐林分が出てまいりますので、百数十万ヘクタールの要間伐林分というのはよほど集中的な手を講じなければ一挙の解決ということはないかと思いますが、いろいろ基盤整備の公共事業等によります林道の整備、それから間伐関係の促進事業、そういうのを総合的に配慮をいたしまして、極力これを短く、早急に解決できるように計画をいたしてまいりたいと考えております。
  102. 川俣健二郎

    ○川俣委員 大臣、今事務当局が言うように、なるべく早くやりたいという気持ちがあるが、私らの調べによると、百九十万ヘクタールが要間伐面積、これですと、今のテンポですと、とてもじゃないけれども、金丸幹事長じゃありませんが、もう山を荒れほうだいにしておる、こういうことになる。大臣、これを理解していますか。
  103. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 川俣先生にお答えいたします。  今長官が言ったとおりでございますが、生育期間のうち、大体樹齢十六年から三十五年というのが約半分でございまして、これが一番今間伐の適齢期に来ておる。そのうちの百九十万ヘクタールということでございますが、恐らく大変時間がかかる、こう思っております。
  104. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうしますと、林政審の答申、それから昨年の予算委員会の総括の確認、それから先ほど総理大臣が言ったこの前の予算委員会等、政府挙げてやるということになると、問題は金なんですよ、問題は金なんだ。何カ年でこれだけのものをやるということを財政当局に言っていますか。
  105. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 間伐関係の予算につきましては、今の財政事情のもとにおきましても五十億の大台を超す伸びを見たわけでございまして、間伐の計画的な実行のためにはやはり最も需要が安定開発されることが非常に大事だ、そういう補助によりまして促進される面もございますけれども、大方どうしても基本的な需要を開発してまいりたい、そういうことで、新しい需要の開発に向けまして細い間伐材でもむけるような、機械によりましてむきましてそれを重ね合わせる方法とか、あるいは粉にいたしまして飼料とか燃料に使う方法等に重点を置きまして、そういう経済の中に組み込まれて進みますように、これも重点を置いているところでございます。そういうものと両両相まちまして間伐が促進されるようにいたしたいと考えております。
  106. 川俣健二郎

    ○川俣委員 いや、私の聞いているのは、丸太小屋をつくるとかいろいろと宣伝もされているけれども、それでは財務当局の事務局に聞きますからこれは大臣でなくたっていいが、こういうような計画で、こういうような面積があるので、何年くらいでやりたいからという要求がおりますか、大蔵省。要求する方はいいよ、されているかどうかです。
  107. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 一応林野庁の方からは、いわば長期的な見通しのようなものは伺っております。
  108. 川俣健二郎

    ○川俣委員 何か遠慮したような低い声で歯切れが悪いのだが、わかるようでわからない、そういうところなんです。大蔵の大臣も農水の大臣も政治家同士の論議だからよく聞いておいてもらいたい。  さらに今度は、こういう普通の新聞ですけれども、別に労働組合の機関紙じゃありません。「造林杉の冬山伐採盛ん」今、一月、二月は盛んなんです。「危険と隣り合わせ」坂道で吹雪ですから。見出しは「吹雪突き、掛け声響く」危ないから。「神経張り詰めて」こういうものです。私偽って言っているのじゃないのだが、問題は政府側の資料でも書いてあるが、二十九歳以下の林業労働力は三ないし五%だ、そうなってしまった。林業への新たな参入というのは皆無に等しい。そして高齢化、女子化が増大しておる今日である。労働力確保というのはもう少し真剣にやらなければならぬと思うが、当局はやっているのか、林野庁はやっていますかね。労働省なりなんかで、いわゆるこんなに労働力が足りなくなったということをアピールしているかね、これは。
  109. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 林業労働者と申しますか従事者はここ数年来は十八万人程度で推移しておりますけれども、御指摘ありましたように新規参入がほとんどなく、高齢化が進んでおるということで、そういう問題意識は私ども持っておるところでございます。  このような状況にかんがみまして、反面、我が国の森林資源はますます日ごとに成熟化しているわけでもございますし、将来この林業を担う担い手を確保することは大変重要な問題というふうに考えております。このために、私ども担い手の確保のためには就労条件を改善するあるいは後継者の育成を図るということを重点といたしまして、各方面の御理解を得るべく努力をしておるところでございまして、特に本年いろいろと新しい施策なども充実させることといたしております。  ちょっと申し上げますと、こういう担い手確保のための必要な計画の策定でありますとか、就労条件の改善等を指導する担い生育成対策事業、さらに後継者のグループ活動を活性化するための事業でございますとか、地域の中核となる基幹林業作業上、これは若年の林業労働者の確保対策になるわけでございますが、こういうものを県に登録いたしまして地域活動に従事してもらうとか、そういうふうな各般の施策を各方面の協力を得ながら充実強化を図っておるところでございます。
  110. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これは本当に政府を挙げて国を挙げて——悪循環なんですね。山を荒らしておるから、荒れるところにはどうしても労働力が向かわない、すると我々の働き場がないなというので山からおりる、そうすると、山が荒れる、そうして水不足騒ぎをやる、そうして地すべりをやる、こういうような悪循環をどうしてもやはり、国際森林年だからというわけじゃないんですが、やるべきだと私は思うんですよ。  そこで、さっき申し上げました教育森林というものを我々は強く主張しておるのは、やはり子供のころからなじませる。学校の木造化というのもいろいろと今までやってきたんですけれども、やはり子供が勉強していった机を自分でふき掃除してさよならするというように、これが何となく、コンクリート、石材の建屋で教育するよりは、木材でもう少しなじませるという方がいいのではないかということも言われております。それだけに、教育森林というのはもう少し一歩踏み出た考え方がないのか。国際森林年と同時に青年年でもあるんですね、ことしは。そうすると、二つともやはり未来なんです、将来なんです。将来のいわゆる働き手になるものなんです。そういうところを林野庁はどういうふうにきめ細かく予算化しておるんだろうかね。
  111. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 森林につきましては、いろいろな公益的機能の中に、お話しございました青少年の健全な心身の育成でありますとか、そういう潤いのある生活等に果たす役割が大変大きいと考えられます。  このためのとっております施策といたしましては、小中高等学校の児童生徒を参加させまして、心身の健全な育成を図るために植林の体験あるいは自然の観察等を行う、これは二十一世紀の森と言っておりますが、この造成整備、これは昭和五十年ごろから相当数、四十数カ所既にやっておるところでございます。さらに、最近では、分収林制度を活用いたしまして都市と山村が共同して青少年、都市住民等幅広い国民に緑の触れ合いを深める、これは触れ合いの森づくりと言っております。これはまだ四、五カ所でございますが、さらに、広大な国有林におきまして、全国にございます自然休養林で行われます森林レクリエーション事業などの諸対策をそのような青少年の教育の場として活用する事業を推進しているところでございます。  今後も、この点につきましてはさらに推進をしてまいりたいと考えております。
  112. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これはやはり、予算を見ると問題は、その気持ちはわかるんですけれども、裏づけになるものがなければどうにもならないんですよ。特にこういうように、内部じゃなくて国民一般に触れさせるという森をつくろうというのですからね。したがって、この予算じゃ到底足りない。そこで、我々はやはり予算修正に共同部に出さざるを得ない、こういうことなんです。これはわかると思う。  さらに、さっきから長官が言うのですが、木材製品をいわゆる市場に開放する。一体どういう手だてをしているんだろうかな。その辺を農林大臣でも長官でもどっちでもいいですが、聞かしてくれませんか。
  113. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 川俣先生にお答えします。  実は基本的な問題が、森林業が抱えておる問題があるわけです。私も昨年十一月一日に大臣に就任しまして、農林水産業、特に林業はよくないということで、各地の人とお目にかかったり話を聞きましたが、例えば、現在山を経営しておる人は、過去先祖伝来山を持っておる人が中心でございます。それで、新規投資した場合、ではどのくらいの利回りになるかといいますと、一番いいのが二%と言っていました。しかも人件費は最低です。こういう姿では実は森林はよくならぬわけです。  そういう形の中に、率直に言いますと森林の果たすべき役割、公益的機能がたくさんございます。水資源の涵養とかあるいは国土保全、たくさんございます。また、今先生もおっしゃるような教育の森等あるわけですが、そういう形の中に、やはり財政投資もかなり厳しい条件になるというようなことでございます。これはもう先生御存じのとおりでございますが、木材価格の低迷とかあるいは需要が伸びていないとかあるいはそういう形の中で経費が増高ということで、一体これをどうするかというようなことでございまして、それには一番大切なことは、とにかく木材を売ることだと思います。  そのために、実は私は、一番問題は、やっぱり木材の需要につきまして五つの大変な誤解というのがございます。これはもう御存じと思いますが、日本住宅木材技術センターの上村理事長が主張しているような木材に関する五つの誤解ですが、第一番に地震に弱い、それから火災に弱い、それから長もちしない、居住性が悪い、建築費が高くつく、この五つの誤解を解いて、木材のよさのPRをしながらじっくりと売っていきたい。そうすれば、売れれば価格も高くなる、こんなことで、これを中心に、あと三つの点を中心に売ることを努力したいと思います。  その一つは、公共施設、補助事業施設等の木造化の推進、第二番目には、建築物の床とか壁、天井等の内装材としての木材利用の促進、あるいは間伐材等そうですが、LVLとか幅はぎ板など木材の新製品の開発普及、あるいはハイテクでいわゆる飼料用穀物の一部に入れるとか、あるいは固形燃料の一部に使う、こんなことを含めて新製品の開発普及に努めてまいりたいと思います。  そういう形の中で、木材の価格安定として、その販路の一層の拡大を図る観点から、例えば林業生産基盤の整備、木材流通の改善あるいはプレカットの推進による住宅建設の工期短縮とか、そういう新技術の開発に務めながら国産材を中心とする木材の需要拡大を図ってまいりたい、このように考えております。
  114. 川俣健二郎

    ○川俣委員 問題は、閣議なりでそれをアピールする必要があるんだろうと思うのですよ。農林大臣と私と幾ら意気投合したって、五つは誤解だよと言ったっていかぬのだよ。やっぱり木曽地震で見せられたように、コンクリートの方の学校が傷んで、これから文部大臣もちょっと論議に参加してもらいたいんだが、木造の方は割合に危険がなかった、火災だけはどうにもならないが。したがって、いろいろと学校の木造化というのを一歩踏み込むというような必要があると思うのでございます。  そこで私は、この間ちょっとこういうのが目にとまったんですが、これは朝日新聞ですかね。「街」という、一番最後の社会面に出ていますね、毎日のように。これはなかなかいろいろと、いわゆるこぼれ話というか、いつかこういうのがあったんです、「ママ、手が凍るんだよ」。「息子は、手すりがないと、段階の上り下りが不可能です。」身障者ですね。「手すりは、命綱です。でも、スチールの手すりに変わってからは、握るのをとても嫌がります。「ママ、手が凍るんだよ」」このあれを非常に大きく取り上げて、非常に方々の反応があって、私にもこういう手紙が来ています。そこで、金属製品ばかりが非常に目立つようになった。木製に比べれば長もちするし、デザインや色もいい。だがそれは、この人は粟田行康君という小学校六年生の児童でございます。脳性麻痺で手と足に重い障害がある、こういうことでありますが、「「木の手すりがいいなあ。あれは、冬暖かく、夏は気持ちいいんだよ」。行康君は、記者に、そう言った。「でも僕の願いは、ぜいたくなのかな」 帰りがけ、通学路の地下道で手すりを握ってみた。冷たかった。」こういうことなんです。  ところが、その翌日にまた続編がありまして、これが非常に反響があったようで、「がんばってね、行康君」という、非常に方々から手紙が来た。いろいろとある中で、この手袋をやったらどうかと、「毛糸の手袋なら、確かに滑りますね。でも、うちの子が使っているサッカーのキーパー用グローブのようなものなら、滑らないし、どうでしょうか」あるいは「大工をしている夫が、冷たい鉄骨を運ぶ時に使う職人用の軍手があります。子供に軍手というのもなんですけど」、こういうような手紙が来たりいろいろとあるのですが、これに対して、「ぼく、これから毎日、しっかり歩かないと、笑われちゃうね」。こういうようにいろいろと電話なり手紙なり来るが、やはりこういうのを我々大人、そして政治の面から——非常に一般の社会、いわゆる町から何とまあ木材というのは疎外されてしまった。そしてこういうのがある。このあれを文部大臣、目にとまりましたか。どうです。
  115. 松永光

    ○松永国務大臣 私は、小学校のときも中学校のときも廊下は全部板でした。だれが見ても、廊下とか壁とかそういったところが木材である方が感覚的にも潤いがあるし、ぬくもりがあるし、望ましい、私はこういうふうに思っておりまして、また、文部省もかねがねそれがいいんだということで、建築基準法の関係がありますから、大きな建物の場合には鉄骨、鉄筋であるとしても、内装材については木材を使うことは結構なことであるということで、補助する場合に一〇%を限度として補助金の加算をしておる、こういうことをやっておるわけでありますけれども、非常に大事なことだから、今後ともそういう施策を推進してまいりたい、こう思っているわけでございます。
  116. 川俣健二郎

    ○川俣委員 この新聞記事は目に入らなかったのですか。
  117. 松永光

    ○松永国務大臣 私自身はそれを読んでおりませんけれども、あなたから見せてもらってなるほどと、川俣委員がおっしゃったことを聞きましてなるほどというふうに思いました。
  118. 川俣健二郎

    ○川俣委員 農林大臣、あなた、名刺の木製のものを持っていますか。どうですか、農林大臣、持っていますか。私のものを見せますよ。——これはまだ高いのです。需要が少ないから高いのです。これは秋田杉で、宣伝するようですが、しかも、ちゃんと「イに木と書いて休むと読む。」とどなたか書いてくれている。やはりこういうように、挙げて、農林大臣、農林省、林野庁の中だけで木材を使ってくれと言うんじゃなくて、何か方法はないのかね。閣議で騒ぐというのはどうか知らぬが、もう少しPRというか、俳優さんを使うなり。どうです、そういうことを考えるのはいかがですか。
  119. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 川俣先生にお答えいたします。  基本的に、閣僚の皆さん方に御理解いただいて御後援賜っております。例えば、過疎地帯におきまして、つい最近は講堂なども鉄筋じゃなくして木造をつくっていただくとか、あるいは公営住宅も四、五年前に比べて数倍の木造をつくっておるということになっております。  ただ、問題は、五つの誤解というのをどう解決するかによりまして非常に違ってくる。例えば、先生御存じのとおり高層住宅なども、木材は焼けやすいということで、ある一定の高さ以外は木材を使ってはいかぬというのがあるわけで、その辺を解決しながら、よく各閣僚の皆さんにお願いして各省庁で使っていただく、このように考えているわけでございます。  それから先ほどの名刺ですが、私も持っておりますが、高過ぎます。ちょっと使えませんね。とにかく見ておりますと、高いのは一枚三十五円ぐらいにつきますね。安いので十円では、一枚の名刺が今二円か二円五十銭ですから、ちょっと皆さんには勧めにくい、こう思っておるわけでございます。
  120. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私は社会党の代議士で、さほど高いものをつくっているわけじゃないのだがね。これはつくり方なんだ。やはりみんなでやってみて、やるというそういう工夫が必要なんだ。しかもこれは、この香りをかいでくださいよ、ちょっと違うでしょうが、こういうのは結局、木材というのは金属には出ないそういうものが出るというんだな、人間に対して。これがやはり校内暴力などにつながるんじゃないか、木材以外のものは。そういうところまである。そしてだんだんに教育問題に入るけれども、それはまだ最後ですから……。  それで、最後に大蔵大臣に聞きたいのですが、この前、大臣に、こんな国有林の予算でどうするか、簡単に言うと、国有林の予算が五千二百億、ところが、国有林の予算は五千二百億だが、半分近い二千三百億は借金、その借金を利子をつけて返すのにきゅうきゅうだ、こんな予算で、とてもじゃないけれども山を守れるのだろうかな、こう言ったら大蔵大臣は、単年度だけで見ないで中長期の視点に立って改善しなければならないのだよ、こういうように言ったのですが、これは待ってくださいよ、中長期で見ていったらどういうことになるか。この調子で借金返し借金返し、借金返しのために一般会計から金を投入する、そして財政投融資から金を借りる、これをやっていくと、六十二、三年ごろはとてもじゃないけれどもこの国有林の財政がもたなくなるんじゃないですか。それとも、大船に乗ったつもりでいれ、長期的な展望に立ては私が何とかしてやる、こういうことですか。その辺どうですか。
  121. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに、独立採算制の中で運営されておった時代もそれはございましょう。しかし、それが大変な社会経済上の変化の中で今日のような状態をもたらしております。それだけが理由ではないかもしれません、いろいろなことが言われてきたわけでありますが。  したがって、私どもといたしましても、予算編成に当たって、林野庁からのいわゆる重点施策等等を十分配意しながらそれに対応しておるわけでありますが、大体林野庁長官からお話のあっておりました、あれは何と言いましたかな、育林——触れ合いの森とか、ああいうのが大変ロマンがあっていいな、こう思っております。
  122. 川俣健二郎

    ○川俣委員 やはり農林水産大臣はすらすらと触れ合いの森なんて出るけれども、肝心の担当の大蔵大臣が、何だったっけなあれは、これではだめなんです。むしろ、お金を出す大臣がもっと閣議なり何かでわあわあ言わなければだめですよ、あなた。いいですか、その辺、最後ですからあなた、もう少し使命感を持って答弁してくださいよ。
  123. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 川俣先生に御答弁いたします。  実は先生、森林のことについて一番詳しいのは竹下大蔵大臣中曽根総理なんです。ということでございまして、だから竹下大蔵大臣は、ちょっと今触れ合いの森はこれは専門外で出ませんでしたが、一番詳しいので、御理解いただいておりますことを、それでいつも感謝しておることを申し添えて、お答えといたします。
  124. 川俣健二郎

    ○川俣委員 いずれにしても大変大事な話だと思いますので、これはどうせ総括締めくくりあたりで岡田理事でもしかと総理大臣に言うだろうと思いますが、何回もこの林業問題を取り上げて、農林大臣が言うように、問題はやはり需要の拡大の喚起なんだよ。ここに非常に国を挙げて、政治を挙げてやる、こういう気構えがなければ、関税に入りたいけれども、とてもじゃないがだめだと思う。ぜひそれを要求しておく。  それから、前回の予算委員会で、韓国籍をお持ちの方が教員採用試験に合格して内定をもらった。ヤン・ホンジャさんというのですか、向こうの言葉で。梁弘子さん。この問題をめぐっていろいろと論議しておったが、この方は一たんは採用通知をもらった、手にした。ところが、一カ月もたたぬうちにその取り消しの通知があった。そのショックを受けたことから、にわかにいろいろと社会問題になった。これはどういうわけなんだと、これを皆さんに聞いてもらったのですが、その文部大臣と私のやりとりで、一体そういう実績がないか。いや、ないと。しかし、これは天野委員長の裁量で過去の実績なり資料を出してごらんなさい、こういうことで理事会に諮ってもらいました。それで私も見せてもらいました。それを後で事務当局に——今、簡単だからちょっと読んでもらえますかね。いわゆる使用者別、いわゆる県別というか、市でとっているのもあるのだろうと思うが、それから国籍別、学校種類別。なかったと文部大臣は一回は答弁したが、それを資料でちょっと説明してくれませんか。
  125. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 お答えいたします。  前回、突然の御質問でございましたので、お答えがちぐはぐになりまして、まことに申しわけございませんでした。  御指摘の件でございますけれども、全体の人数にいたしまして、外国人を公立学校の教諭として任用しております状況でございますが、現実に全国で三十一人ございます。  内訳を申し上げますと、三つの都府県、二つの市にまたがっておりますが、東京都、大阪府、三重県、名古屋市、大阪市ということでございます。  それから国籍の関係でございますけれども、韓国籍をお持ちの方が二十三人、朝鮮籍が三人、中国が三人、台湾が一人、アメリカが一人、計三十一人。  学校種別で申しますと、小学校が十五人、中学校六人、高等学校九人、養護学校が一人、計三十一人、こういう数字になっております。
  126. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私のところへ来ている資料に、よると、その数字でいいと思うのですが、さらに兵庫、京都、これは現存しておりますので、これが確かなものかは後で資料を差し上げますので、この予算委員会の後で確認したいと思います。  それはそれとして、論議に入る前にまず文部大臣に申し上げますが、前回の答弁がそのままになっている。議事録にはそのままになっている。いないと。外国籍を持った者は日本の国の義務教育に携わっている者は一人もいない、こうおっしゃったのがそのままになっておるが、これをこの機会に訂正しておいた方がいいんじゃないだろうか。
  127. 松永光

    ○松永国務大臣 前回、教諭としては外国籍の者はいないものと承知しているという言い方をしたと思いますが、この席で、ただいまの事務当局の答弁のとおりであるということを私も承知いたしましたので、そのように訂正をいたします。
  128. 川俣健二郎

    ○川俣委員 韓国籍を持っている者は一人もいないと承知しておるというのは訂正しておくのですね。もう一遍。
  129. 松永光

    ○松永国務大臣 そのとおりであります。訂正をいたします。
  130. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこで、あれからいまだにいろいろと報道されたり、あなたのところにも相談に持ち込んだり、あるいは抗議運動も広がったようでございますが、五団体、これは長野県の地元だけではないようですが、やがて、その方の見識ある大学の先生方の今回の問題等いろいろある。そして日弁連、弁護士の皆さん方もこれはおかしいということになった。それはあなたは十分承知だと思う。  そこで、まずあなたに聞きたいのですが、この件でちょっと考え方が変わったんじゃないですか、どうですか。変わりませんか。
  131. 松永光

    ○松永国務大臣 川俣先生のいろいろ御意見等があった場合には比較的同調する傾向が私にはあるのでございますけれども、この問題につきましては、前回申し上げたとおり、小学校、中学校、高等学校等の教諭につきましては日本国民をもってこれに充てるという当然の法理を私は認めているわけでありまして、それと違う考え方に立つことはできないわけでございます。
  132. 川俣健二郎

    ○川俣委員 当然の法理ということでは片づかない。一人のこんなに真剣に考えている方の手記というか報告書を今読んでみますけれども、私はあなたと同じ学び舎で学んだが、あなたは勉強家で、私は政治学部で騒いではかりいたようだが、和田小次郎の法哲学を教わったあたりまではよかった。あなたは斉藤金作とか後家とけんかして、片や因果応報系、罰する方、片一方は教育して何とかならないかということで大論争をやった。あなたともあのころちょっと論議したんだけれども。何かあなた、この問題になると目のかたきになるようだが、あるいは福岡の検事でもやっておるころにこの問題で恨みでもあるのかなと思ったりする。  いいですか。もう一遍事実関係を確認する意味で、本当はこんなに、涙で書いたというような手記ですけれども、発言のいい人に読んでもらうといいと思うんだが。   私は、一九五六年(昭和三十一年)四月八日、東大阪市に生まれ、三歳から中学三年九月末まで大阪で育ちました。   父は、戦時中の一九四二年、満十四歳のとき、韓国から、生活のため兄を頼って日本にやってきました。十六歳から徴用で終戦まで、大阪市で魚雷の部品をつくる軍事工場(極東製作所)で働いていました。というところからこの手記が始まる。やがて、   私は、三十七年に始まる幼稚園入学(私立中川幼稚園)から、日本人の中での教育を一貫して受けてまいりました。昭和三十八年四月に大阪市立東中川小学校に入学、四十四年三月同校卒業、同年四月大阪市立東生野中学校入学、四十六年九月家庭の事情で長野市に転居、長野市立櫻ケ岡中学校に転校、四十七年三月同校卒業、同年四月長野県長野西高等学校入学、五十年同校卒業、同年四月信州大学教育学部社会科入学、五十四年三月同学卒業のときに、小学校一級、中学校社会科一級、高等学校社会科二級、幼稚園一級の教員免許状を取得しました。   以上のように、幼稚園から大学まで一貫して、日本で日本人と同じ教育を受けてまいりました。家庭においてももちろん日本語を使用しており、韓国語は書けません。ほとんど話せません。   そこで、やがて五十四年度の卒業と同時に、教員採用試験の願書を出す時期になりました。私は、日本国籍ではない者は採用してくれないということであったが、当時の大学の就職担当の事務の方に、長野県には国籍条項がないので、とにかく受験するだけ受験してみなさい、こういうふうに言われた。その際、二次の面接のときにも、国籍のことは一言も触れられることがありませんでした。結果は、合格通知を受けることができ、大変喜んでおりました。   ところが、大学卒業を控えた三月になって、ほかの合格者が次々と採用が決まっても、私には何の連絡もありませんでした。やっと四月になって県教育委員会から、「採用が少しおくれるが、六月ごろには話があると思うから」との連絡をもらい、ずっと六月まで待っておりました。しかし、なかなか来ませんでした。   県教育委員会は、私が韓国籍だったことから判断に困って、文部省に問い合わせした。文部省から、さらに内閣法制局に照会が行き、結局は「外国籍の者は正規の公務員には採用できない。」との内閣法制局の返事が文部省を通じて県教育委員会に返ってきた。そのため、県教育委員会では採用を見送った、ということでした。これが前のいきさつでございます。  そこで、途方に暮れておった。ところが、その間にこの先生は、臨時ではずっと教えておる、臨時採用で教えておる、こういうことであったのですが、これはいつまでも臨時採用というのはおかしいではないかという問題から、特殊学校の子供の教室を受け持ちました。受け持たせられたと思いますが、受け持ちました。こういうような経過を経て、産休なり育児休暇の補完をずっとやってきたわけでございます。ところが、この方は、この同じ小学校の採用試験の二回目に当たって、今度は大丈夫であるようだ、だからもう一回受けてごらんなさい、こういうように言われた。それで受けた。今回は、県の教育委員会も私が韓国籍であることを前もって了解しており、私は「韓国だからだめでしょう」、こういうふうに言った。ところが、八月の時点で、国籍にはこだわらないと明言しておりましたので、これでやっと正式に教諭として採用されると喜び、今までのこの六年間の臨時採用生活もむだではなかったなと、心の底からうれしさが込み上げてきました。そして、正式に教諭となったら、今まで以上に、いつも子供の心を見詰めて謙虚な気持ちでと、自分に言い聞かせたということであった。  ところが、この県の教育委員会から、ちょっと喫茶店に来てくれないかということになった。何だろうな、こういうことだった。そしたら、一たんは、後でお見せしてもいいんだが、あなたの目に入ったと思うけれども、この内定の通知が、いわゆる登録ですね、登録なんだ、登録されたという通知が、ナンバーもちゃんと入って来ております。ごらんになったですか、あなた。見た。立派な内定通知書です。それこそ小躍りした。当然だと思います。ところが、あなたはやはり韓国籍だからだめだと言われた。そこで、その教育委員会の担当が何回も文部省に通ったのです。そうだと思いますね。そうしたら、どうしてもあきません、だめだ、こういう一点張りだった。  そうするといろいろ問題が出てくる。教員試験を受けるときから韓国籍であるということは知っておる。知っておるはずだ。それを受けさせたときから問題なのかな、こういうことにもなる。そうして、一回は合格通知を出した。それが取り消しということになった。ところが、任用権というのは県の教育委員会にある。その任用権を持っている県の教育委員会が何回もあなたのところへ通ってきた。それは何とかしてくれ、今までにも通っておる、と。  しかも——これをちょっと配って。簡単なものですけれども、あなたの方の文部省で五十八年の九月でしたか、いわゆる外国籍云々という通達を出した。それによって各県は県の条例を直した。県の条例をだんだん直していったが、しかし、あなたからすれば非常にしゃくにさわることだろう、これは。何で文部省の通達どおり直さない県がこんなにあるか。十七県。今は十六県ですね、八三年度で十六県ですから。この資料です。ごらんのとおりです。そうなると、県の教育委員会が任用権を持っている、その人を採用すると出した。ところがあなたは——法律でも何でもない、任用権は県にある。本人にとってはやはりこの手記は涙で書いたという以外にないでしょう。それでもあなたは法律と言うのですか。大臣、これどうですか。何か大臣が不思議に思っているから確認してください。
  133. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 ただいまの国籍条項の資料、ちょうだいいたしたものでございますけれども、今、子細に調べておりますが、私ども手元に持っております私どもの資料と若干違いがあるようでございます。少し調べた上で改めて御連絡をさせていただきたいと思います。
  134. 川俣健二郎

    ○川俣委員 いや、そんなの簡単だろう、きょうこの質問を専門にやると言ったのだから。だめだよ。ちょっと、あるだろう、その四角い大きな箱に。だめだよ。
  135. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 ただいまいただきました資料、五十九年度のものとして正しいそうでございます。六十年度、若干変わっているようでございます。
  136. 川俣健二郎

    ○川俣委員 何を言うんだ、あなた。ちょっと、何を言うんだ、あなた。八〇年、八一年、八二年、八三年とわざわざ書いているじゃないですか。この資料の信憑性を文部大臣が聞きたがっているんだよ。何を言うんだ、あなた。だれも六十年なんか聞いてないよ。そんな態度で教育指導するのかね。
  137. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 どうも言葉が足りなくて恐縮でございました。五十九年度採用の関係の国籍条項ということでございます。で、いただいたものはそのとおりでございます。
  138. 川俣健二郎

    ○川俣委員 大臣、正確だそうです。了解したかい。これに対してどう思うんだい。大臣、どう、所見をちょっと。これを見せられてどう思うんだ。
  139. 松永光

    ○松永国務大臣 今、局長が申したとおり、五十九年度で教員の採用試験の受験資格に国籍条項を設けておる県及び市の数字でございますが、私の手元にあるのは五十八年度は三十県三市、五十九年度は三十一県三市になっておるわけです。これと合わないものですから、もう一回詳しく調べる、こういうふうに今言ったわけなんでありまして、この食い違いについてはもうしばし時間をかしてください。
  140. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それじゃ専門のあなたからひとつ紹介してくださいよ、五十九年度の正しいものを。これは皆さん書くだろうから。合計だけでもいいよ。
  141. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 恐縮でございます。資料の組み立てが少し違っておりますものですから大変失礼をいたしましたが、五十九年度の採用分ということで三十一県三市が国籍条項を設けているものでございます。  なお、先ほど申し上げましたように、六十年度採用ということで今任用が進んでおりますものはさらに一県ふえておりまして、三十二県三市が国籍条項を設けている、こういう状況でございます。
  142. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると大臣、あなたの文部省の指導か通達が、どういう気持ちか知らぬが、その問題は後で触れるが、こういう県の状態を文部大臣としてどう思うのですか。
  143. 松永光

    ○松永国務大臣 川俣委員も御承知と思いますが、大学に関して、大学の教員につきまして特別法をつくりましたね。その直後に、大学について外国人の任用も、一定の条件のもとではありますけれども許されるという法律になった。(川俣委員「なったんじゃない、したんだよ」と呼ぶ)法律ができましたからそういうことになったわけでありますが、そこで大学について一定の条件のもとに任用ができるということであれば、小学校、中学校、高等学校でもできるんだろうというふうに誤解をされてはいかぬということもございまして、念のためにこの特別法ができてから、文部省の方で各都道府県教育委員会に通知を出したわけであります。そして、その通知を出したわけでありますが、その通知に基づいて親切に、採用試験に受験する場合の受験資格に国籍条項をきちっと設けて、そしてあらかじめ受験者にお知らせする県と、それは別段お知らせしていない県、この二つがあるわけでありまして、その数字が先ほど言ったように五十九年度については三十一県三市、六十年度については三十二県三市、こういうふうになっておるわけであります。
  144. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私の質問をゆっくり言うと、いいですか、あなたが強い指導かどうか知らぬけれども、国籍条項を挙げてない県がこれほどあるのだ、それをあなたはどう思うのだという質問だよ。
  145. 松永光

    ○松永国務大臣 私どもの考え方としては、各県の教育委員会が小中高等学校の教員を、教諭を採用する場合の資格条件というものは、先ほども申したとおり、教員については日本国民の中から採用するという当然の法理があるものですから、それを改めて採用試験に応ずる人に対して、国籍条項というのをわざわざ書き込んでそしてお知らせする県もあれば、それをしないでおる県もあるということなんでありますが、これは親切かどうかという問題にかかってくるのだと思うのです。全国四十七都道府県の中で三十二県はやっておるということなんでありまして、文部省の国籍に関する通知というものが大体わかっていただいているというふうに私は思っておるのです。
  146. 川俣健二郎

    ○川俣委員 三十一県もある、大体わかっているといったって、採用試験に応ずるいわゆる試験を受ける者からすれば、特に外国籍を持っている者からすれば、その県の条項に国籍条項があるかないかがこれは致命傷だろう。あなた、評論的な言い方をするなよ。あなたの方で通達を出しておるにもかかわらず、長野県だけじゃなくてこれだけの県が国籍条項をうたってないじゃないか。これに対して、あなたどう思うのだということだよ。
  147. 松永光

    ○松永国務大臣 都道府県の教育委員会でどういうふうな条項を書くかというのは、これはそこまで細かくは通達してないのですよ。ただ、念のために教育委員会に対して、大学の教員についての特別立法をいたしましたが、これは原則が日本人に限るということであった、大学の教員については特別法をつくったわけ。そのことが誤解をされてはいかぬということで、国籍の問題は前と同じですよということを通知したわけでありまして、採用試験における国籍条項をわざわざ明確にしておきなさいよという通知を出したというわけじゃないのですよ。その意味で、国籍条項について出ている県と出ていない県が少しあることは、これは各都道府県の対応の仕方だろうというふうに私は思います。
  148. 川俣健二郎

    ○川俣委員 この論争をやると時間を空費するだけだけれども、それじゃ、任用権は都道府県にありますね。それは認めますね。
  149. 松永光

    ○松永国務大臣 任命権は都道府県教育委員会にあるわけでありますが、必ず法令、法理に基づいて任用なさるものと私は期待いたしております。
  150. 川俣健二郎

    ○川俣委員 期待はしているけれども、期待どおりになってないから資料を出したんだよ。そうだろう。しかも、任用権は県教育委員会にあるのでしょう。その県教育委員会が、この場合は韓国籍を知っておって試験を受けさせて、しかも、あなたは韓国籍だが、一回目はだめだったが、今度は二回目で国籍条項もないから受けなさいといって受けさせて、承知の上で実力で入ったのでしょう。それをあなた、認めますかな。認めるでしょう。そうしたら、任用の権限が県教委にあるんだから、任用権がある県教委に任せるべきではないか。ただし、文部省としては、こういう考え方もあるという参考の通達はわからないでもない。だけれども、任用権は県教委にあるのでしょう。どうです。
  151. 松永光

    ○松永国務大臣 任用権は、先ほど言ったとおり県教育委員会にありますが、あくまでも法令に基づいてその措置はなされるものと期待しておるわけでありまして、そこで文部省には、地方教育行政の組織及び運営に関する法律によりまして、都道府県の教育委員会の事務が法令に基づいてなされるよう指導し助言をする責務が我々の方にはあるわけであります。
  152. 川俣健二郎

    ○川俣委員 任用権は県教委にあるかという次が、あなたは期待だけなんです。期待だけだけれども、任用された通知をもらった本人からすれば、任用権がある県教委からもらったものが、これは一番の権限じゃないの。だから、あなたの方は今後はこういうようにして指導しなさいよということは、文部行政としてこれはあなたの機能ですよ、範囲です、範疇です。だけれども、その任用権の最終的な結論は県教育委員会に任せていいんでしょうと言うんだよ。どうなんです。
  153. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほども申し上げましたように、法令に基づいて正しく任用権が行使されるように私どもは期待するわけです。それをするのが私どもの方の責務なんですから。(川俣委員「さっきの論議じゃだめだよ。それはわかっている。時間が過ぎればいいと思っているのだ」と呼ぶ)  先ほどもちょっと経過で申し上げましたが、大学について特例法をつくった後、通知を出しましたね。その後はうっかり一回あっただけで、そのほかはないのですよ。その意味で、通知というものは行われておるというふうに思っておるわけであります。
  154. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それじゃ、この人をどうしてくれる。取り消させるか、どこまでも。法廷闘争でもやるっていうの。
  155. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほども申したとおり、文部省では長野県で任用の候補者名簿に登載されたということがわかりましたので、そこで前に通知をしたことでもありますから、念のために指導助言をした。その指導助言に基づきまして、長野県の教育委員会が自主的に判断をして措置されたことであります。
  156. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これじゃどんなに論議したって時間の空費だから、それじゃちょっとあなた一呼吸しなさい。肩に少し力が入り過ぎている。(「お互いに」と呼ぶ者あり)お互いにそうかな。  外務大臣、日韓条約二十周年で共同声明も向こうの全斗煥とおやりになったようですが、これは非常に外交問題にも波及するおそれがあるのです。これは例をずっと並べてもいいんだけれども、今まであったものを、韓国籍を持っている人を電通の職員にしたり弁護士に登場したり、いろいろとだんだんに積み重ねていって二十周年を喜び合って、これは日本そのものの問題でもあるのですよ、韓国そのものに対する恩恵的にじゃなくて。人権問題になると思うけれども。これは今までの二人の論議を聞いてどう思いますか。
  157. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 この問題は今文部大臣がお話しのように、文部省のいわゆる所管に係る問題だろうと思いますが、しかし在日韓国人について言えば、その法的地位を全く日本人と同じものに持っていこうと今まで政府が努力してきたわけで、社会福祉の問題もそうですし、いろいろと今日までそういう努力を全体的に各省で進めておることは御承知のとおりです。これに対しては、韓国側も日本の努力というものを評価もしておりますが、さらに先般、全斗煥大統領がお見えになったときも日本における在日韓国人の法的地位につきまして、日本側に対してもさらに一層の努力を要請されまして、中曽根総理も日韓親善を永久的に進めていくためにも努力しましょう、こういうことを言っておるわけであります。  同時にまた、今の問題につきましては、韓国側から照会があって、日本政府としては一応の説明はした、こういうふうに承っております。
  158. 川俣健二郎

    ○川俣委員 あなた、中曽根総理がせっかく向こうの大統領と交歓したことも知らないわけじゃないでしょう。今も外務大臣がおっしゃったように、だんだんに同じ人権を確保してあげようという方向づけに——あなたは本当に歴史的に汚名をしょうよ、こんなことしたら。あなた何回立ったって、まだ公権力と言いますか。どうです、公権力と言いますか。なぜ、これがだめですか。もう一遍言ってみなさい。教育と関係あるんだから論争するよ。
  159. 松永光

    ○松永国務大臣 前にも申し上げましたけれども、日本もアメリカもドイツもフランスも韓国も、先ほど私が申し上げたような法規定になっておるわけなんです。小中高等学校、その国の国民を育成する公立あるいは国立の学校の教諭につきましては、その国の国民をもって充てるというのが原則になっておるわけでありまして、個人的には先ほど話がありましたように……(川俣委員「大学はどうなんだ」と呼ぶ)先ほど言ったように、特例法をつくったわけです。先ほども言ったように、それぞれの国でそういう措置をしておるわけでありまして、個人的に言えば、日本国内で永住権を持っている人については同情心を私は持っております。しかし、政治でも、御承知のとおり日本の政治は日本人が行うということで、国会議員の選挙も地方会議員の選挙も日本人だけが選挙権、被選挙権を持つ。行政についても同じようでありまして、日本の国立、公立の小中高等学校、二十一世紀の日本を担う青少年を育成するという仕事でありますから、これは日本人が当たるという原則になっておるわけでありまして、この原則は曲げるわけにはいかぬというふうに私は思っておるわけであります。
  160. 川俣健二郎

    ○川俣委員 さっき外務大臣が非常に大事な微妙な段階の問題でもあるし、しかもこれは韓国からもこういう新聞が出ております。韓国語で私は読むことはできないのですが、現地では非難の雨だ、これは差別そのもの以外にないということで弘子さんの写真入りで出ているのですが、あなた、どうも法廷闘争に持っていこうという魂胆ですか、どうですか。簡単に言いなさい。
  161. 松永光

    ○松永国務大臣 私の方から法廷闘争に持っていく気持ちはありませんし、その必要もないと思っております。
  162. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それなら、任用権のある教育委員会に任せるべきだと思います。どうです、それだったら。
  163. 松永光

    ○松永国務大臣 繰り返し申し上げますが、文部省としては、都道府県教育委員会の教育行政の執行が法令に基づいてなされるよう指導助言する責務があるわけでありますから、前もってその責務を放棄するような答弁をするわけにはまいらぬわけでございます。
  164. 川俣健二郎

    ○川俣委員 法廷闘争に持っていく意思はない。それじゃ、これは任用権のある長野県の教育委員会にやはりゆだねるべきだと思います、最終的には。どうですか。これはわからぬですか、どうですか。委員長だってわかっている。
  165. 天野光晴

    天野委員長 担当局長、阿部教育助成局長、至急答弁しなさいよ、事務的に扱っているんだから。
  166. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 先ほど来大臣からお答えしておりますように、任用するかしないかという権限は、法律上都道府県の教育委員会が持っておるわけでございます。文部省は別途指導助言をする権限がございますので、それによって指導助言をしている、こういうことでございます。
  167. 川俣健二郎

    ○川俣委員 任用してはいけないという法律はないでしょう。
  168. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほども何回も申し上げますように、当然の法理として存在しておるわけでありまして、これは法制局の意見も再三聞き合わした上間違いないということでありますので、当然の法理を踏まえた上での処置をしていただくことを期待しておるわけであります。
  169. 川俣健二郎

    ○川俣委員 法理問題だったら、これは大変な、それこそ法廷闘争でかなりあなたは不利ですよ。まず、教員に対する、教育に対する公権力云々というのは、全部最高裁は否定しているんだよ。全部否定しておる、それを論議する時間がないけれども。私の聞くのは、いろいろと論争を皆さんも聞いていると思うが、最終的の任用権は県の教育委員会にあるんだから、行政指導はいろいろやるとしても、最終的には教育委員会に任せるしかないんでしょうと言うんだ。そうじゃないですか。
  170. 松永光

    ○松永国務大臣 法律論を展開していけば、先ほど言ったとおりに私は言わざるを得ないわけです。(発言する者あり)
  171. 川俣健二郎

    ○川俣委員 時間がたてば済むというんだったら……。じゃ、委員長に一任するよ。
  172. 天野光晴

    天野委員長 文部大臣と川俣君との食い違いについてはきちっと……(松永国務大臣「もう一回答えますから」と呼ぶ)  文部大臣。
  173. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほど申し上げたと思いますが、任用権は県の教育委員会にあることはそのとおりでございます。
  174. 川俣健二郎

    ○川俣委員 やはり最終的に、論議するといろいろとあると思うが、最終的な任用権は長野県の教育委員会にあると文部大臣が言う以上は、時間もないので、これで終わります。
  175. 天野光晴

    天野委員長 これにて川俣君の質疑は終了いたしました。  次に、武田一夫君。
  176. 武田一夫

    武田委員 私は、農林水産業の問題、それから四全総と東北開発に関する問題、さらにこれは局地的な問題でありますが、脱スパイク禍、スパイクタイヤの問題、この三点について質問します。  大臣がいろいろと御予定があるようなので、大変やりにくい質問なんですが、質問が終わったらどうぞ御自由にしていただきたい、こう思います。  外務大臣がお急ぎのようでございますから、外務大臣の方にまず最初にお尋ねします。  日ソ漁業交渉の産物としましていわゆる日本の港への寄港の問題、これは大きな課題であったということで、交渉の難航の一つの大きな理由になりました。ところが、それが突然宮城県の塩釜港に決まったという通知がありまして、私の住む宮城県、そして当事者である塩釜市、大変びっくりした、というよりも国の独断的なやり方に憤慨している。当然寄港は拒否であります。それで、今その問題をめぐって地元では、その話があってからあの元気のいい皆さん方が毎日のようにがなり立てている、こういう状況でございます。  そこで、一つまずお尋ねしたいのは、いろいろ問題ありますが、万が一塩釜あるいは宮城県が絶対受け入れられないと拒否をした場合、外務省としてはどういうふうに対応されるか、また、農林水産省としてはどういうふうにこれに対応するか、この点について、まず外務大臣から。
  177. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今回の日ソ漁業交渉は難航に難航を重ねまして、日本側としても相当大きく譲歩をいたした結果、ああした結果になったわけでございますが、日ソ漁業というのは日本の水産の安定のためにも非常に重大な分野でございます。その交渉の中で、寄港地の問題が去年以来取り上げられてきておるわけですが、今回もこうした漁業交渉を行う中にあって、お互いに相互主義で、サハリンからの一港、そして日本から一港ということを決めたわけでございます。外務省は農林水産省と相談をした上で、大局的な見地で、やはり漁業交渉を円満に妥結するためには塩釜にお願いをせざるを得ない、こういうことで塩釜にお願いをするということに決めたわけで、塩釜の市長さんだとかあるいは議会の中で相当大きな反対のあることもよく承知をいたしておりますが、日本の漁業の振興といいますか、日ソ漁業の安定操業といいますか、そういう立場からもぜひともひとつ、農林水産省も地元の説得等につきまして大変努力をしておりますし、これからもすると思いますが、何とかひとつ地元の御理解を得まして円満に妥結することをただひたすら願っておるわけであります。
  178. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 武田先生にお答えいたします。  今外務大臣が申したとおりなんでございますが、今度の日ソ漁業交渉は、与野党の御理解のもとに、実は私は中曽根総理からの向こうの総理あての親書をお預かりし、また、安倍外務大臣の御尽力等によりまして、佐野水産庁長官と代表が非常に粘り強くやった。そういう中に私がソ連へ行って片づいたということでございますが、実は今度は、先ほど外務大臣が言ったようなことで、二百海里経済水域の問題、あるいはソ連のいわゆるたんぱく質、動物資源の問題等を含め、また、ソ連がECとかあるいはカナダ、アメリカ等において二百海里で受けている措置、そういう点の背景がございまして、非常に厳しい状況であったわけですが、塩釜にお願いしたわけです。今外務大臣が言われたとおりでございますが、これはいろんな点あると思いますが、ひたすらに誠意を持ってお願いしたいということでございます。
  179. 武田一夫

    武田委員 それは当然のことですね。だけれども、万が一いわき市の小名浜のような大変な迷惑をこうむるということは、調べて知っておるわけです。  こうなって、しかも、皆さん方はあの塩釜という地形は御存じだと思うのですが、隣の町は松島です。これから観光シーズンです。狭い町です。その中にああいう右翼団体の車が十台、二十台と入ってこられて、商売もそうですが、私は相当な混乱があるのじゃないかという気がしてならない。現に、私はかつて福島での日教組の大会に党代表であいさつに行ったときの、あの福島の町の中での混乱というのをこの目で見てきました。あの福島でさえもそうなんですから、その三分の一も小さな町に来られたときに、お願いをされただけでこれはうんと言えるはずはないのです。商売は上がったりですよ。ですから、この点については恐らくこれから説得、お願いに行くんでしょうけれども、万が一それが拒否された場合のことは考えておいてもらいたい。と同時に、あるいはひょっとすると万が一受け入れるかもわからないという可能性もある。  では、その場合に、市や県がいろいろとそのための手当て等の要求をあるいはお願いするでしょう。万全を期して、あらゆる面で市民の生活やあるいは県や市のいろんな機構の面に差し支えのないような誠心誠意の手当てはしてあげようと思っているのかどうか、この点どうでしょうか。これは大臣の方。
  180. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 武田先生にお答えします。  実は、これは何としてもお願いしたいのは、漁船乗組員約六万人、加工業者が七万人、合わせて十数万人、家族を入れて百万人の生活の問題ということで何とかお願いいたしたい、こう思っております。  そんなことでございまして、今万が一ということでございますが、いろんなことがございます。治安の問題あるいはその他いろんな問題につきましては、いろんな条件につきましては誠心誠意検討いたしまして報いるつもりでございます。
  181. 武田一夫

    武田委員 そこで、これは今後の一つの方向性をやはりはっきりしないと、もう一年限りで小名浜が断ったから塩釜だと、突然やられる、えらい迷惑、問題が起こって騒ぐ、こういう繰り返しをこれからもやっていくのか。あるいはまた、今後きちっと一つのルールを決めて、そういう混乱やそういう突然の決定に不満を持たすことをしないような方向をきちっと決めるのか。それを明らかにしておかないと、来年また釜石があるいは八戸、まあ向こうさんは北海道と横浜にぜひと、こういうふうに言ってきた。それは外務省は断ったわけだ。スパイ行為があるとかなんとかということで断っているらしい。そうなると、そういう魚を向こうからちょうだいしているというか、とってきている塩釜のような立場は確かに弱い、仕事に携わっている人がいるわけですから。そういうところの弱点をねらってまたやってくるというような考えてあれば、これはとんでもないことになるのじゃないですか。ですから、きちっとした方向を考えて来年度の交渉に臨むということを、ここではっきりと明言してほしいのです。
  182. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 武田先生にお答えします。  実は、今の問題は大変に重大な問題でございます。昨年は小名浜に決めて、一年限りで決めました。ことしは塩釜に一年限りで決めたわけでございます。これは外交上の問題でございまして、ことし一年限りというふうに考えております。
  183. 武田一夫

    武田委員 そうすると、この次はどこにするのかというそういう一つの決定について、今回のように事前になって急に突然、相手に何の通告もなしに決めるのか、あるいは、既に次は、一年後はほかの地域にしなくちゃならないのだから、何がしかの候補地の中から、話し合いをするなりいろいろお願いをするという粘り強い対応をしながらやっていくのかということの方向を、やはりきちっとしておかぬと困るんじゃないか、こう思うので、その点はどうなんだということです。
  184. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 今武田先生に申したとおりでございまして、これは外交上の問題でございまして、実はなかなか話し得ない点もございますが、とにかく寄港の問題は、ことし一年限りということでソ連側に了解を得たわけでございます。
  185. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 実はこの日ソ漁業交渉は、なかなか先行きが決して楽観できないような状況にあると思います。ソ連がますます厳しい条件を押しつけてくるであろうということは予測されるわけでありますが、寄港地の問題については、今農水大臣が申し上げましたように、ことし限り、そして去年と同じ条件ということで約束しておりますので、来年どうなるかというのは、来年の時点になってこの交渉を始めるそのとき、その時点でないとソ連側の意図というのはわかってこないわけですから、そのときでないとまた日本の対応というのは決まらないということであります。
  186. 武田一夫

    武田委員 それでは、そういうことであったとしても、今回のように抜き打ち的にやるような方向だけは私は改めていただきたいと思うのです。これがやっぱり一番頭にきている原因です。その点はひとつしかとお願いしておきます。  それじゃ、この問題はそのくらいにしまして、二番目に、水産業界が非常に深刻なんです。これは特に遠洋漁業というのが非常に厳しい。こういう危機に陥っているということを考えまして、今やはり水産業界の再編というものが大きな課題になってくるのではないか。今水産庁としては、二十一世紀を展望するという意味から、水産、海洋開発の方向性としての基本的構想、いわゆるマリノベーション構想というのを考えているようでございますが、その内容、そしてその実現のめどというものを要約して御説明いただきたい。
  187. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  二百海里体制の定着に伴いまして、我が国周辺水域の漁場としての重要性がますます高まっておりますことは先生指摘のとおりでございまして、我が省といたしましても、二十一世紀に向けて長期的に水産業のあるべき姿を描き、我が国の二百海里内の水産資源の積極的な活用を図るための方策を研究していく必要があるというふうに考えておるわけでございまして、この点について現在水産庁内で研究を進めているところでございますが、水産業の果たすべき基本的な役割を踏まえて、国民の海に対するニーズの変化と水産業の直面する諸課題に対応しつつ、水産業を核として沿岸域あるいは沖合域の総合的な整備開発の新たな展開方向を見出すということで、検討を進めておるところでございます。
  188. 武田一夫

    武田委員 これは一つの構想として私は非常にいいものだと思っておりますが、このためには、いろいろと今後厳しい財政事情の中でもやらなければならない点がたくさんある。一つは漁港の整備、あるいはまた沿岸の増養殖の問題、それから沖合水域の開発、こういうものに非常なてこ入れをしなくてはいけない、こういうふうに思うわけでありますが、これまでそういう事業計画というのはまことに残念ながらおくれている。しかも、今度の予算を見てみても相当厳しいということを考えますと、今水産業界の大変な危機を乗り越えていくための対応としては、早急なる構想を打ち上げた中での各種の手当てを十分にしてほしい。そうじゃないと、病人があちこち痛みを覚えてどうしようもなくなったときに出てきたのではどうしようもないです。やはり注射をきちっと効果的にやらぬといかぬ。薬もきちっと与えなければ回復は早くならない。こういうタイミングをひとつしかと心得て手を打ってほしいと思うのです。この点、大臣どうですか。
  189. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  先生の御指摘まことにごもっとも、そのとおりでございまして、現下の財政事情にかんがみましてそういう制約は免れませんが、先生指摘のお考えを念頭に置いて対処してまいる所存でおります。
  190. 武田一夫

    武田委員 この点は、これからの日本の重要なたんぱく源の確保という問題において非常に重要な問題でございます。ひとつ十分なる対応をしてほしい、このように思います。  それでは、次に移ります。  防衛問題が大変にぎやかに論じられました。しかしながら、一国の安全保障という面で食糧問題、農業問題が非常になおざりにされているのではないかという気がしてならない。そこで、私は、きょうは大蔵大臣も外務大臣もおりますし、官房長官にも来ていただいておりますから、この問題でちょっと政府の考え、対応についてお尋ねをしたいと思います。  農林大臣、その前に、一九八四年九月の日米諮問委員会の報告書、これはレーガン大統領と中曽根総理への提言という形で報告書が出されています。その中で、我が国の食糧安全保障また農業のあり方について言及されているわけでありますが、これをごらんになって、どういう感想をお持ちでございますか。率直にひとつ聞かせていただきたい。
  191. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 武田先生にお答えいたします。  日米諮問委員会の報告でございますが、農業とか林産物貿易に関する提言につきましては見解を異にする面が非常に多いと考えております。  それで、御指摘の食糧安全保障に関する提言につきましても、自給自足のみに焦点を当てた政策であるとの指摘がありますが、私としては、我が国の食糧安全保障対策については、生産性の向上を図りつつ国内で生産可能なものについては極力国内の生産で賄うこと、また輸入に依存せざるを得ないものについては安定的な輸入の確保を図ること等、総合的な自給力をつける努力をしたいと思っております。そういうことの中に、短期的な不測の事態に備えて備蓄を行うことを基本として対処していく考えでございます。
  192. 武田一夫

    武田委員 これは非常に残念なことだけれども、大体この委員会構成を見たとき、農林関係の専門の方は入っていませんわね。だれが人選したのかわからぬけれども、恐らく官房長官がその周辺で学識経験者を選んだんでしょう。ですから、その方々がよく理解をされた方々であればいいのですが、どうもそういうものが全くないような気がしてならない。  例えば、これは恥ずかしい話ですが、日本では余り牛なんか飼ってはいかぬ、小さな動物を飼って我慢しなさいとか、花の栽培程度でいいんじゃないか、そういうことをここで言っている。日本側の方々もそれをOKとして入れたわけですわ。だから、レーガン大統領にもこの報告書が行っている。中曽根総理もこれを見ているわけね。それから、米は高過ぎるから、米なんかやめちゃってうちの方に任せなさい、アメリカにと、裏にはそういう意味の内容のことも書いてありますね。こういうようなものを世の中に出して、それで中曽根総理もそれを見たんでしょう。この方法でどうなんだという話があったのじゃないですか。どうなんでしょう、これ。だから、そういう提言をもとにして、中曽根総理、特に総理になってからずっと流れを見ていますと、一段と農林水産業に対する取り組みが軽視されておる気がしてなりません。  私は、鈴木内閣、福田内閣、大平内閣と、いろいろ所信表明、各種の話を聞いてみましたが、皆さん方大変一生懸命農業問題については力を入れています。今からお尋ねしますが、まず最初に三木さんのときに、国民食糧会議というものを設けまして、約七十名くらいの各界の方々、もちろんこれは農業専門家、現場の方々も含めまして、幅広く我が国の食糧の問題、そして農業の問題についての話し合いをする場を設けまして、そこからの提言を受けて、そういう問題に取り組む姿勢を示している。それから、一九八〇年十二月には、鈴木総理のときですが、総合安全保障閣僚会議というものを設けまして、この中でも、いろいろなことを言っている中で、食糧の重要性というものを、食糧問題を安全保障の重要な要因として掲げている。そして、亡くなられた大平総理も、田園都市構想ということを打ち上げて、農業、農村の持つ重要な機能というものをしかとその政治のポイントに据えてきた。  しかしながら、過去四、五回やった中曽根総理の所信表明の中で、どれだけ農業、漁業、林業という重要な問題について触れているか。私は全部議事録等を調べて原稿用紙に書かせてみた。ほかの総理は五枚、六枚という膨大なものがあった。中曽根さんは一枚の中に軽くおさまっている。私は、言葉が少ないから云々というのではないと言うかもしらぬけれども、心に思っていることは言葉に出さなければわからぬ。大事な場所での一国の今後の政治の方向性を打ち出す中に、今度の所信表明ではわずか十五字、一行半じゃないですか。教育問題には確かに三十行、防衛には大変な長い多弁、駄弁を弄している方が、こういう状況では私は本当に心配だと思う。これは総理がただ一人そうなのかどうか、閣僚の皆さん方もそうなのか、こういうことについて私は疑問を持たざるを得ない。  そこで、きょうは代表して大蔵大臣と外務大臣にお尋ねしたい。いずれ将来、日本の政界をしょって、一国の中心になろうといううわさをされているお二人でございます。日本の一国の興亡というのは、農林水産業をしかとその根底に明確なる哲学と理念を持った方でなければ、私はいい政治はできないというふうに思っている。そういう意味で所見、個人的な見解として結構でございますから、日本の安全保障、食糧問題についていかが御見解をお持ちか、大蔵大臣からまずお聞かせいただきたいと思います。
  193. 竹下登

    竹下国務大臣 農は国のもとでございますとか、その詞は、私も農村出身でございますのでよく幼少のころから自分の体全体で感じております。が、総合安全保障の立場から、農業問題というものは食糧安全保障という意味において最も重要なところであります。したがって、農業政策そのものに対しましては、あえて個人的見解をお求めになったわけでございますから、食糧の安定供給を確保するということがまず国政の重要な課題であるという前提におきまして、総合的食糧自給力の維持向上、そして規模拡大と生産性の向上、こういうことが一般的に言われるではないか。さらに、本委員会でよく議論されておりますところの「八〇年代の展望指針」等を見てみますと、それにさらに、いわゆる国土保全とか、また環境の維持とか、田園とか森林の持つロマン、そういうものを大切にしなければならぬというふうに私も理解をいたしております。
  194. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私もかつて農林大臣をやった経験から、やはり農林漁業というのが国の基本であるというふうに信じておるわけであります。特に食糧問題は、やはり国の総合安全保障の重要な一環を担っております。エネルギー問題とともにこの問題が場合によっては国の安危を決すると言ってもいいのじゃないかと思うわけでございますが、そういう中にあって、我が国の農業は非常に狭い地域の中で集約的に行われておるわけでございます。生産性は非常に高いわけですが、それだけにコストもかかっておるという面もあるわけで、同時に、自給率という点につきましては、一部の米等については自給力を持っておりますが、飼料穀物等についてはほとんどないと言っても過言でないわけでありまして、すべてについての自給力を持つということは私は困難であろうと思いますし、また消費者という立場も考えていかなければなりませんから、そうした生産と消費という面をどういうふうに調整していくかということが大きな課題であろうと思うわけですが、いずれにしても、やはり農林漁業の振興発展には国が力を注いでいく、これはどこの国でもやっておるわけであります。  私は今、貿易問題、貿易摩擦等で各国の政治家といろいろと話す機会があるわけですが、EC等は農業に対して大変な保護をしております。高い補助金をつけて輸出をしているという現状でありますし、また、アメリカ自体でも農業に対しては保護をいたしておるわけでございますから、やはり農業というのはどこの国でも保護主義というもの、保護政策というものによって維持されておる。これはやはり人類が生きていくための基盤ですから、それなりに当然のことであろうと思います。したがって、そういう中で、貿易摩擦等の点につきましても、農業問題というのはやはりほかの鉱工業製品とは違った形の取り組み方がお互いにあっていいことじゃないか、こういうふうに私は思って、そういう話もしておるわけでございます。特に、最近のアフリカのああした飢餓の状況を目の前に見まして、アフリカにおいて全く農政が行われてないといいますか、農業が壊滅してしまっておるということを身をもって感じました。これがあの膨大な飢餓状況を生んだわけで、まさに戦争に匹敵する悲劇といいますか、不幸であるということを感ずるわけで、それだけに食糧というものが、今は需給が安定しておるといっても、長い将来の人類のこと、日本のことを考えるときに、やはり食糧問題は大事にしていかなければならない、こういうふうに感じております。
  195. 武田一夫

    武田委員 御意見ちょうだいしました。  農林大臣、今お二人の個人的な見解を聞いたと思うのです。どうでしょうか、これで大丈夫だと……。
  196. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 武田先生にお答えいたします。  実は竹下大蔵大臣、安倍外務大臣ともに我が農林水産省のことを大変御理解いただきまして、絶えず応援いただいております。ただ、農業の自由化の問題についても本当に御後援いただいておるということで感謝しているわけでございます。
  197. 武田一夫

    武田委員 それじゃ官房長官に尋ねます。  総合安全保障閣僚会議が設置されました。その中身の、要するに課題となったものはどういう内容か。それからこの会議というのは現在どういうふうな動きをしているか、ちょっと聞かしていただきたいと思います。
  198. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 国の安全保障を考えてまいります場合に、直接防衛力の整備を図ってまいりますことや、あるいは力強く外交活動を展開をしてまいりますことや、そして安定した経済の運営を図ってまいりますことや、先ほど来お話のございますように食糧の観点から安全保障を考えていくことや、いろいろな観点があるわけでございます。問題は、やはりそれらが総合性と整合性を持って安全保障全体を広い角度からとらえていくという考え方が大事である、そういう意味で総合安全保障に関する閣僚会議を開催をしてきておりまして、その都度外務大臣の御報告であるとか、あるいは防衛力の観点からの考え方であるとか、いろいろな角度から論議が交わされて、今申し上げたように総合性と整合性を図るという観点で会議が重ねられてきておるところでございます。  御指摘会議は、五十五年十二月二日に発足をいたしましてから十三回会合が開かれてきておりまして、外交、経済協力、エネルギー、食糧、科学技術、防衛など非常に広い見地からいろいろな議論が闘わされてきておるところでございます。そこで議論されましたことを政府としては非常に大事に考えまして、それぞれの各省庁の行政の中にそれを反映をさせていく、こういうことで取り組んできておるところでございます。
  199. 武田一夫

    武田委員 その中では平和外交が第一項目、それから国際経済協力、それから食糧安保、それからさっき外務大臣が言われたエネルギー安保、この四つの議題を通していろいろと話し合いがされてきた。十三回。中曽根総理誕生以降は何回開いているわけですか。
  200. 高瀬秀一

    ○高瀬政府委員 お答え申し上げます。  中曽根内閣が発足いたしましてからは六回開催されております。
  201. 武田一夫

    武田委員 そうすると、何年の月に何回、何年何回と言ったら大体知れたものですな。まあ二回程度ですわ。私は一連のこの動きをずっと見ていますと、どうもそういうふうな一つの事実を通しても、さっき農林大臣は、非常に人柄がいいものだから、感謝感激、いろいろ協力していただいていると。本当にいい人ですね。ただ、こういう事実と、もう一つ、そんなに農林水産業に対して理解があるとすれば、昭和五十七年からちょっと農林予算というものを見てみますと、六十年までの間に何と四千億くらいが削られて、そしてその四千億がどこへ行ったかというと、丸々防衛予算に約五千五百億が回っている。防衛大切、国内の重要な食糧をつくる農業大切とは言えないですな、これは。  大臣、それでもいろいろと御協力いただいてありがとうと言えますか、これで。まして予算の中を見ますと、先日も問題にした一番の目玉である構造政策の中にどんどん予算の切り込みがあるじゃないですか。これから農業をしかと足腰の強いものにしていくための潜在生産力という大事な土地の問題、人の問題、いろいろな技術の問題、この三つの中で、肝心の土地は、農地はどんどん切り込まれている。人はどんどんいなくなっている。予算はどんどん削られ、削られた分は飛行機になったり何かになっているのじゃないですか。それでもいいですか、満足ですか、農林大臣。どうですか。
  202. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 武田先生にお答えいたします。  実は農林予算につきまして、先生指摘のとおり、大変厳しい財政事情のもとでございまして、減額になってこれはやむを得ない、こう考えております。例えば先ほどの構造改善事業でも、実は一般公共事業の比率からいきますと、あの厳しい状況の中で、大蔵大臣等の御配慮によりまして〇・四%伸びたわけです。そんなこともございます。  そういうことで、実は我が省にとりまして一番大切なことは、食糧の安定供給に係る重要な事項、この点につきましては十分達し得ると考えております。  また、予算面におきましては、先般ちょっと申し上げましたが、質的な上昇を図りまして、生産性が高く、土台のしっかりした農林水産業の実現とか、あるいは活力ある村づくりとか、しっかりした農林水産業の実現とか、そんな中で、限られた財源でございますが、質的に何分配慮し、また効率的に配慮したと考えております。
  203. 武田一夫

    武田委員 もうどこまでも非常に人柄のいい農林大臣でございます。〇・四というのは、これ伸びてないのです。物価は上がる。もう一年たったら、土地改良なんというのは一年ごとにどんどん上がっていくのですわ。それは伸びてないの。その伸びだと言うところにまた大臣のいいところがあるのでしょうけれども、それは事業が落ち込んでいるので、わかります。計画の進捗率を見ればわかるでしょう。これで生産性を上げよ、ちょっと無理じゃないですか。土地の集積のための高度利用の促進事業をやれと言ったって、とてもやれるはずはないというのが現場の市町村の農家の皆さん方の声ですよ。それはわかっているのです。先ほど外務大臣も大蔵大臣も、農業、そして食糧問題というのは大事なんだとこう言ったら、そのしるしとして、こんな予算を、はい、そうですかと言って受け取ることはできないと思うのです。  また、大蔵大臣に申し上げますが、大蔵大臣も一度農林水産大臣になられたらどうかなあ、そうしないと総理への道は遠いのじゃないかという気がちょっと私はするのでございます。というのは、やはりいろいろとそういう厳しいことを御承知なんですが、なぜにこういう切り込みが、肝心かなめの重要なそういう土地の問題や人の問題について、毎年のように、昭和五十七年が三兆七千億ですか、それが、五十八年が三兆六千億、五十九年が三兆四千億、六十年はとうとう三兆三千億、防衛予算の三兆一千億ともう変わりがない。これはいずれあと一、二年したら、どうです、一%なんて言っている暇はなく逆転ですわな。今農林省の心ある中堅の方々は、来年、再来年は私たちは農林省の中におけるだけでなく日本の農業問題として大変な事態にぶつかると、この予算であるならば。仕事は何にもできない、こういうことで非常に悩まれている。そういう方々がおりますよ。  今世界各国で、六千万、七千万以上の人口で自給率が五〇%や三〇%なんという国はないのですよ。日本だけでしょう。これからの世界は、食糧がきちっと安定して農業がしっかりと守られないような国とはおつき合いはできないんだ、危なくてしょうがない、こういうところが出ているようです。こういうことを思うとき、防衛、そして食糧安保という問題の比重の重さを取り違えてはいかぬと思うのです。そこにきちっと予算の上でもそれなりの対応をするのが、やはりこの閣僚会議等を開いていろいろと食糧問題を重要な一つの項目として入れて、閣僚の皆さん方がいろいろと知恵を寄せ集めて方向性を考えるための会議を開いたわけじゃないんですか。恐らく竹下大蔵大臣もいたんじゃないでしょうか。外務大臣もいたんじゃないでしょうか。そういう配慮がない、すべて行革だ、あるいは財界の言う臨調だと。そういう財政論を振りかざしておるということだけで来たということに対しては、まことに今後の農業の方向性について寒々とした思いをするわけです。大蔵大臣、この点を十分に考えて、農業が二十一世紀の国を支える、日本の平和を支える大事な産業の基本であるということを認識をした手当てを私は強く要望したいのですが、いかがでしょうか。
  204. 竹下登

    竹下国務大臣 国家予算というものはそのときどきの経済情勢の中で所要額を極めて調査をいたしまして計上する、その結果が各省予算になるわけでありますので、増減の率のみを見て単純に論ずるということは平素我々も可能な限り避けるようにしております。が、特に今年度農林予算農林水産大臣からもお話がありましたように、質的充実、これがまず第一であるという意味から、補助から融資へという観点を踏まえまして、農業改良資金制度の再編でございますとか、農用地経営規模拡大資金、これの創設でありますとか、そうしたことのほか、農林漁業金融全体を充実していくという物の考え方に立って、補助から融資へ、そういう観点で進めてまいったのが一つあります。それから後継者あるいはロマン、そうしたものを念頭に置いて農林水産省でお進めになっておる活力ある村づくり推進とか国産材主産地形成とか沿岸地域活性化緊急対策とか、そういうものに加えて、いわゆるバイオテクノロジーの先端技術の開発などに、質的充実と、補助から融資へと、そういう方向が見出されるのではなかろうか、このように私なりに評価をいたしておるところであります。
  205. 武田一夫

    武田委員 ですから、それは私は否定はしない。しかしながら、一つ申し上げましょうか。例えば、日本で今一番心配されるのは優良農地がどんどんどんどん壊廃しているという事実ですよ。「土壌生産力可能性等級別面積」というのがあるのです。一等、二等、三等、四等級とありまして、三等級あたりからになると、これは農地としてはまあ使えない。四等級になったら不良で全くだめ。四等級などは、水田と畑、合計しまして十万七千ぐらい。大変ですね、これは。農地がつぶされている面積は年平均大体四万二千ヘクタール。それから耕地の利用率はもう今一〇二%ちょっと。かつては一三四%ぐらいあった。利用率もぐっと落ちている。こういう事実。  さらに、それでもなおかつ要するに、特に東北などの例を申し上げますと、工場誘致する、企業誘致のために農地がどんどんどんどんつぶされている。それで売れ余っているのがたくさんある。売れ余っていながら、それでもまだ別なところにつくっていく、そういうものが出ている。これは四全総のときにまた詳しくお話をしますが、こうなりますと、土地というものはもう返ってこないのです、特に水田は。なぜかというと、やはりそういう一つの農業予算の中におけるしっかりとした基盤整備の問題とか、あるいは担い手の問題とかに対する対応が十分でなかったという証左なんです、これは。ですから、いろいろなことを言われたとしてもこの事実を否定することはできない。これは、そういう予算の中で歯どめがかけられるという自信があるかというと、農林水産大臣、恐らくないでしょう。私はそういうことを考えるときに、もっとこの事実をしかとやはり閣僚の皆さんで、日本の全体の命運を担う農業問題ですから、よく話し合いをしながら、万全を期すのが私は当然だと思うのです。どうですか、その点、大蔵大臣
  206. 竹下登

    竹下国務大臣 武田委員の農業問題やあるいは国土全体の問題からする食糧安全保障、そういう御意見というものは私も謹んで拝聴をいたしました。
  207. 武田一夫

    武田委員 最近、自給率が穀物で一%また落ち込みましたね。それで、六十五年見通していくと三〇%立てているわけですね。大体これがもうおかしいのです。三三%が十年もたつと三〇%に落ちつくというそういう見通しをつくったのが、どだいこれはおかしいと思うのですよ。ですから、土地も六百万ヘクタールぐらいあったのが今五百万そこそこですか、恐らくそうでしょう。五百四十万ぐらい。だから、二十年ぐらいの間にもう六十万ヘクタールぐらいがなくなっている。こういうようないろいろな事実を踏まえると、もう私はここで——二十一世紀ということを中曽根総理はよく言う。農林水産大臣もその方向への農業というものをもう一回しかと見直さなければいけないなと私は思っている。  そこで尋ねますが、五十五年策定した農産物の長期需給見通し、それからこれは昭和五十五年に閣議決定された「八〇年代の農政の基本方向」、これもやはり相当中身が問題のところが出てきましたね。まして六十二年からは三期以降の問題、いわゆる減反対策、そしてその間に今度四全総というのが策定されて始まる、こういうようになりますね。そうすると、ここで相当腰を据えてしかとその中身の検討をしながら、長期見通し、中期見通しですか、そういうものをつくらなければならないときが今じゃないかと思うのです。この二つの再検討の方向性というのは大臣の頭の中にあるかどうか、そのスケジュールを聞かしていただきたい。
  208. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 武田先生にお答えいたします。  今先生の御指摘は、現行の昭和六十五年度を目標年次とする「農産物の需要と生産の長期見通し」についてだと思いますが、ミカンとか生糸とイチゴを除き、総じて長期見通しの方向に沿ったものとなっております。  また「八〇年代の農政の基本方向」につきましても、その基本的課題は現在も変わっていないことから、現時点においてはこれを訂正、改定することは考えておりません。  今後、こういう問題につきましては、農産物の需給の方向とか、農業構造や農村社会の変化などを十分見きわめるとともに、四全総についての検討状況等を踏まえながら慎重な判断をいたしたい、こう考えております。
  209. 武田一夫

    武田委員 ポスト第三期、これはそんなのんびりしているわけにはいかぬのですよ。その中身には、やはり減反面積をどうするか、私は、もう現状維持、このままいくということを希望する、それから、備蓄制度というのは、これははっきりさせなくてはいけない。世界でどの国でも備蓄制度というのはきちっと明確な方針がありますが、日本はない。それから、昨年問題になったいわゆる他用途米の問題、これもきちっとした方向性を立てていかなくちゃいけない。その他いっぱいあるけれども、当面この三つの問題などは、その三期対策以降の重要な課題じゃないかと思うのです。  この一つ一つ、減反の問題についてどうするか、それから備蓄制度をどういうふうにしていくか、他用途米制度の方向性、この三点について、ひとつ御答弁いただきたい。
  210. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 武田先生にお答えします。  米というのは、主食で、我が国内で生産して安定供給するという大きな役割を持っておるわけでございますが、実は、減反政策は、第三期水田利用再編対策におきましては、ゆとりある備蓄と三たび過剰を招かない、この方針でやっておるわけでございます。その意味におきましては、実は、今後とも日本人の食生活の変化等がございまして消費が減退するのは間違いない。そういうことで、今後もこの減反政策を続けたい、こう思っております。  それから、備蓄政策の考え方でございますが、もちろん、お米はたくさんあればあるほど国民は安心しますが、財政負担の問題もございます。例えばかつて二度の過剰で財政負担が一兆九千五百億円かかっております。そんなことをしたくない、そんなことでございますゆえ、現在、昨年は米の作況が一〇八という三十年来の大豊作でございまして、実は約六十から七十万トンの備蓄ができておるわけですが、平年作で大体四十五万トンぐらいの備蓄ができていると思います。そんなことで、やはり百四、五十万トンの回転備蓄、このぐらいがちょうどいいのではないだろうか。それからまたもう一つは、備蓄で余り過ぎますと、つい最近——国民の皆様方はより新しい良質のお米を望んでおられる。そんな点もございまして、私は、現在食管会計等で策定されておりますいわゆる備蓄、大体百四、五十万トンの備蓄、これが望ましいのではないか、このように考えております。  それから、他用途利用米の問題につきましては、これは昨年はちょっといろいろな問題がありましたけれども、これはみそ、しょうゆ、加工用、せんべいということで、できるだけ他用途利用米の定着を図りたい、こんな考え方で進みたい、こう思っております。
  211. 武田一夫

    武田委員 減反というのがどれほど農業の荒廃につながっているか、農家の、いわゆる人の精神的な荒廃につながっているか、これはもう大臣も随分ごらんのとおりだと思うのです。ですから、まして昨年、韓国米を輸入するような大変な需給の厳しさを経験した。もう日本全国で大騒ぎしました。もう私の宮城県の農協の青年などは、一生懸命農業をやっている青年は、そのために減反した田んぼに田植えをして抗議までした。法を犯してまでやった。総理もそのことで、やはり米というのは、食糧というのはゆとりのある需給というものがなければならぬということで減反緩和に応じる姿勢を示した。ところが、昨年大量にとれたら、今度はそれがトーンダウンしてしまった。余るから困る。金がかかる。すぐ金です。財政的なこと、これは重要な問題だが、むだ遣いしろというのではないけれども、一国の重要な食糧の備蓄というものについての方向性というのがないと、国民は不安です。アンケートのいろいろな調査を見ますと、少々高くても自分の国のものを十分に確保するような農業政策をしてほしいんだ、そういう方々が七割もいる。食糧安保というのは大事だ、自給率の向上というのはもう非常に重要だというのがいつでも、最近特にその要求は高まっている。  そのときにちょっと一年豊作だからといって、もう当初の決意もどこへやら、ほんの微々たる緩和に終わってしまった。大蔵大臣がいなくなってしまったので残念なんだけれども、昨年の減反面積を決めるときだって、農林省と大蔵省では意見が食い違って合わない。平行線。とうとう涙をのんだのが農林省。これではやはり主体的に生きる農林水産省としまして、日本の食糧をしかと守るという、その最高の責任者として存在まします農林大臣の姿勢と見識が疑われる、私はそう思います。  各地の例えば備蓄体制を見ますと、イギリスにしたって、オランダにしたって、スウェーデンにしたって、西ドイツ、フィンランド、ノルウェーと、例えば西ドイツは、小麦三・八カ月分、ライ麦五・九カ月分、飼料穀物〇・五カ月分、脱粉乳等々、きちっと備蓄の中身を示しまして、そして国民皆さん方に、いかなる事態にも安心して対応できます、こう訴えている。やはり食糧というものはそういう性格のものだと思うのです。  先ほど外務大臣からアフリカの例が出ました。アメリカだって今大変な農地の、土地の荒れぐあいで、これからの輸出力というのは疑問視されている。小麦や大豆やえさというのは全部向こうからほとんど来ているという、そういうことがいつまで可能なのかということも考えなくてはいけない。まして、開発途上国等々の後進国が食生活が改善されてくるに従って多くなってくるのは、要するに肉を食べるあるいは小麦を必要とする、えさを必要とすることになる。日本が金があるからといって買いあさるというようなことは、これはもう国際的な問題として大きく非難を浴びてくるのは当たり前だ。経済協力を一生懸命やる傍らで、そういう金に任せた買いあさりのようなことをやるということは許されなくなってくるわけです。  ですから、極力自国の中で自給率を高めていって、そして万全の体制とするためには、もう私たちは最低でも六〇や七〇%の自給率は必要だ、こう言っているが、三三%が三二%におっこった。これでは消費者の皆さんだってもう心配でしょうがない、こういうふうに思うのは当然でございます。こういうような不安を払拭するのが、これが政治の原点です。安心して、安全で安定的な供給のできる、こういう農業政策をしかと今後のポスト第三期の中で十分に検討しながら確立をしていただきたい。大臣の決意をひとつ聞かしていただきます。
  212. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 武田先生にお答えします。  大変温かい御激励等を賜り、ありがとうございます。ただ、二つの点について申し上げたいと思いますが、昨年の転作緩和につきましては、私の方が涙をのんだのではなくして、大蔵省が涙をのんだわけでございます。約二万六千ヘクタール、よくできた、こう思っております。  それからもう一つ、実は自給力の問題でございますが、基体的にやはり私は第三期水田利用再編対策に掲げてございますゆとりある備蓄、それから三たび過剰を招かない、こういう姿の方が現下の厳しい財政状況では正しいのではないか、こう思っております。そんなことで、実は総合的自給力は、国内での生産性を高め、国土を利用して、そして国内で生産できるものはぜひ国内で生産するという形の中で、また、どうしても輸入に頼らなければいかぬ問題は安定的輸入を図るというふうなことでございます。先生も御存じでございますが、お米等は一〇〇%、果樹、野菜は八〇から九〇ということで、特に飼料用穀物等につきましては非常に不足ですが、これも大体二カ月か二・半カ月備蓄しておるということでございまして、いろいろな点がございます。もちろんたくさん備蓄すれば越したことはございませんが、この程度ならば国民皆さん方はもう安心してもらえるのではないか、このように考えております。
  213. 武田一夫

    武田委員 大蔵省泣いたと言うと、それを聞いたら大蔵大臣、涙を流して喜ぶでしょう。私はそう思わない。みんなそう思っていないのです。要するに、国家の一大事である食糧問題について閣内で、財政だあるいは輸入で賄え云々という意見の不統一があるわけなんです。だから、まとまらないから力の関係で強い方に負けちゃうという、そういう論理が働いているのです。食糧問題にはそういうことがあってはならない。財政の問題にしたって、弱いところにしわ寄せさせる。福祉や教育、産業の面では農業。こういう姿勢を払拭しない限り、私はいつまでたったって活力のある福祉社会、農村の形成というのは無理だと思うのです。この点はひとつ腹を据えて、大臣は新しい決意で所信表明も述べたばかりですから、私、ことし一年、その決意の方向が具体的にどういうふうにあらわれるかしかと見させていただいて、また委員会等で丁重なる御質問を通してお尋ねしたい、こう思います。  時間の都合で、第四次全国総合開発計画、いわゆる四全総と東北開発の問題について、通産大臣と文部大臣に伺います。本当は通産大臣にも食糧問題を聞こうと思ったのです。一番関心のあるのは通産大臣の発言なんですが、これはこの次に譲ります。  四全総が策定中で、いよいよ日の目を見てくるわけであります。東北の果たす役割というのは——きょうは国土庁長官もおいででございますね、まずは長官からひとつお尋ねをいたしますが、この四全総の策定に当たりまして、三全総で東北の果たす役割、使命というか、そういうものをいろいろと評価されているわけでありますが、この点につきまして、この四全総にさらに強烈なる規定といいますか、そういうものはなさっていただけるものかという問題が一つであります。  それからもう一つ、最近、人口の伸びぐあいが非常に少ない、微増だというものですから、ある中央の一部の方々の中には、そのくらいの人口の増くらいは私たちの地域で吸収できるわ、だから余り地方に心配かけない方がいいんじゃないか、こういう意見が聞こえてくるのですが、そういうようなことを踏まえて、定住圏構想、いわゆるモデル定住圏構想に対する支障がないものかという心配を、特に東北の定住圏構想を抱えている地域では心配されている。この点についてひとつ御答弁いただきたい。
  214. 河本嘉久蔵

    河本(嘉)国務大臣 四全総の策定につきましては現在、来年度、六十一年度を目指して鋭意研究しております。三全総を振り返りまして、三全総も思うようにはなっていない、絵にかいたもちがあるというような指摘を受けておるわけでございますが、現在、各地区の御意見をよく拝聴して完璧に近いものをつくりたいという考えてあります。  先生も東北地区の特別委員に入っていただいておりますし、特に配慮しなければならぬことは、地域格差といいますか、過密過疎の問題の是正ということに重点を置かなければいかぬと思っております。東北地方につきましても、過疎地帯でございましたが、最近は、高速道路であるとか新幹線であるとかというのが引けまして、やや活気を取り戻してきつつあるようでございます。そういうことから、地域格差といいますか、非常に難しい問題でございますが、自然の流れといいますか、自然に過密過疎の問題は必然起こってくる問題でございますので、よく配慮して万全を期したいと考えております。
  215. 武田一夫

    武田委員 通産大臣、定住圏構想推進の大きなかぎは企業誘致。東北はほかから比べると非常に活気があって結構でございまして、大変お世話になっているわけでございます。  しかしながら、もともと東北というのは、五十年代前半というのは公共事業を含めた投資が、行政の投資余力が非常に弱かった。だから、生活基盤なんというのは、全国的に見ると、北海道と並んでいまだ最低です。ですから、おくれを取り返さなくてはいけないという点では、同じような投資では私はいかぬというふうにいつも思って、いつも国土審議会に行けば傾斜配分をすべきだと主張しているのですが、なかなか思うようにいっていない。最近、企業の中でも、厳しいものですから、土地がなかなか売れない。残っているのが各県に結構あるのです。それで、そのために金利がかさんでくるので苦労している。売るときには、この金利分も土地に上乗せして売るから高くなる。ところが、企業が入ってくる条件は、土地が安い、広い土地があるということが誘致条件の第一番。それからいい人材、安い賃金と言うと語弊があるけれども、そういう人材なんです、労働力。それからあとは交通の便。その一番の条件である用地が遊んでいる。これを何とか処理しないと、各地方自治体も苦労なさいます。  そこで、その対応をどうするかということを聞きたいのですが、私はこの際、ちょっと見ましたら外資導入の企業というのは東北、北海道に全くと言っていいくらいないのです。全部関東から西の方向に集中しております。そういうことも含めて、企業誘致をする際の土地を取得する方向として、いわゆる購入方式でなくリース方式ではどうか。やはり土地を買うというのは大変だというので、苦労もあるでしょうし、その他設備投資にもうんと金がかかる、そういうことがある。ですからリース。外資導入なんかをする場合はリースがもう当たり前のことになってくる。そして便宜を図りながら、しかし、これは借りて払っていくわけですから、買ったのとリースでやったのとでは、大体十五年か二十年たちますと同じくらいの条件になってしまうということも聞いているわけですから、そういう方向での手当をするということはどんなものか。  それから、もう一つ心配なことが最近ありまして、要するに最近、埼玉県の例がちょっと新聞に出たのですが、自分の地域から企業を逃さないというので必死になってきているわけです、不景気だから。これはおわかりですな。知事や市長さんは当たり前のことなんです。それで埼玉では初めて、流出防止のための手当てとして融資額四十億の金でもって工場流出防止が始まるわけです。これをどうしますか。こういうことが四全総の中にまねする県が出てきたらおしまいだと思うのですね。この問題、やはりしかとやって、やはり定住圏構想の中における企業誘致に万全を期してもらいたいと思うのです。この点についての御答弁をいただきたいと思います。
  216. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 武田委員の企業立地の御指摘は、非常に重要な問題であると思います。  全国的に傾向が最近は非常に変わってきているのですね。例えば昭和四十年代、高度成長期には大都市周辺への人口集中ということが非常に盛んであって、むしろ東北とか九州などは過疎地域で人口流出を非常に憂えたわけです。しかし、昭和五十年代、安定成長期になってまいりますと、いわゆる日本四十七都道府県の中で人口の減る県というのはほとんどなくなってしまいました。強いて言えば、東京都の二十三区がドーナツ現象で人口が減るんだという非常に今までと違った傾向が出てまいりまして、例えば東北などにおいては、企業立地について非常に有望な条件が整ってきたということが逆に言えると思うのです。高度成長期には、例えば臨海地域で大規模装置工業でというようなことでございましたから、あの当時の企業立地をされた地域というのは非常に限られた時代があったわけでございますが、今のような低成長期になってまいりますと、むしろ港は、空港の方がかえって技術などの集積には都合がいいんじゃないか、臨海地域でなくて臨空地域がいいんだというような新しい概念が出てきたことは御承知のとおりでございます。  現在通産省では、技術革新や情報化の進展など、近年の産業立地をめぐる経済社会環境の変化を踏まえまして、新工業再配置計画の策定に取り組んでおるところでございます。この検討を踏まえてまいりますと、例えば東北地方などはいわゆる工業誘導地域でございまして、工業分散促進策の強化をしっかり図っていかなきゃならぬ。したがって、武田委員指摘になったような技術面での配慮、リース方式での配慮、そういったいろいろな点もいろいろ配慮を加えることができると思います。三全総のいわゆる定住圏構想から四全総という二十一世紀への橋渡しということになれば、東北地方はまさにフロンティアとして重要な役割を持つようになるであろうと私は期待しております。  現実に南東北におきましては、高速交通施設の整備の進捗等によって先端技術産業を中心に企業立地が好調であります。数字を申し上げますと、この間全国の立地件数千八百五十六件中南東北に二百二十三件、一二%が五十八年度の立地動向調査では示されておる。それから今後、テクノポリスの建設であるとか高速交通施設の一層の充実をするとかということになってまいりますと、南東北だけでなしに北東北も含め、東北地方全体として企業立地が旺盛になるということを期待されると思うのでございます。例えばテクノポリス構想の推進であれば、秋田テクノポリスが五十八年の十一月二十一日に申請をし、昭和五十九年の五月二十一日に承認をしておりますし、青森のテクノポリスは申請が昭和六十年二月二十日、申請されたばかりであります。こういったことにもひとつぜひ真剣に通産省としては対応してまいりますし、高速交通施設の充実ということであれば、東北縦貫自動車道の全面開通が遅くも昭和六十二年度には期待をされます。それから空港の面では青森空港のジェット化が昭和六十二年度ということがありますし、新幹線の面では東北新幹線の青森までの延長構想といったようなものがある。こういうものをいろいろ踏まえてまいりますと、東北六県のそれぞれの発展というのはひとつしっかりと地図をかいて四全総に対応できるという、私自身も大きな期待を持っておるところでございます。
  217. 武田一夫

    武田委員 通産大臣、これから大事なのは、意見として申し上げますけれども、女性方よりも男性方、特に若い大学出、これは文部大臣にも関係してくるのですが、それが非常に重要だということがデータでわかるわけです。人口減、若い者の移動というのがいまだに中央に行っているのです。とまりません。人口の微増はあっても、そういう若い連中の、高校、大学の連中の中央志向は依然として続いている。こういうことで、企業の中身をひとつやはり検討して、各県、市町村の指導とあわせて対応してほしい、こう思います。  そこで、文部大臣、大学の地方分散もやはり一つの大きな課題だったわけですが、余り進まないというより残念ながら東北に来手がないですな、いいところなんですが。筑波ばかりでなく、やはり岩手県のような広いところに国際学園都市でもつくってほしい。活力が出てきます、これで。そして、やはり私立の皆さん方も出てきたいのですが、地方自治体が大変苦労するんですな、このために。例えば一例申し上げますと、用地十五万坪ただ提供しろとか、それから九万坪提供しろ、それから建設費の三分の一は補助せよ、それから教員の職員住宅は建設せよ、これはとてもとてもこういう過疎地域におけるあるいはまたその周辺の町村などにこういうことで来られても、来てほしいという望み、土地はたくさんあるから提供はするけれども大変だ。ですから、そういうような大学と市町村があった場合に、もっとやはり文部省として強烈なるバックアップ、要するに予算措置をお願いしたい。特に生活基盤の整備等々についてはやはりこれは優先的に対応していただきたい。そうすれば、今にでもすぐ飛んで来るという大学もあります、受け入れる地域もある。この点、ひとつお願いしたい。  それからもう一つは、さっき言ったように、高度先端技術、テクノポリス等々のいわゆるそういう世界に対応するための工学部、理学部系統の学校が少ないわけです、東北全体的に。東北大学を中心として何校かありますが、それだけではとてもこれからの先端技術の時代に対応し切る人材は育成できない。しかも、その東北大学にしたって、工学部、理学部にしたって、多くはこっちの方に出ているという状況を考えますと、先ほどの企業誘致と同時に、並行してそういう専門的な機関の充実はやはり早急に、優先的にモデル定住圏構想を特に実施している地域に対しては私はしてほしい、こう思います。  かつてこのモデル定住圏構想の地域指定をしたときに特別の財政措置をしてほしいという要望がございまして、これは各関係省庁の局長間の申し合わせで優先的に対応するということを決めているようでありますが、私は局長レベルから大臣レベルまで持っていきまして、そういう対処の仕方でやはり東北を含めた三全総以降の、今後四全総にかかる定住圏の実りあるそういう成果を期待したいと思うのですが、簡潔にひとつ御答弁いただきたいと思います。
  218. 松永光

    ○松永国務大臣 国土の均衡ある発展のために大学等の高等教育機関を地方に適正に配置するというのは、非常に大事なことであるというふうに認識いたしております。そういう考え方で文部省としては、適正配置の施策を進めてきたわけでありまして、簡単に言えば、大都市における大学等の新設、増設は抑制する、地方における整備を促進する、こういう施策を進めてまいりまして、その結果、相当程度の改善をなされたと思っております。例えば、東北地方の対十八歳人口収容力指数ですね、これは昭和五十年は一三・三%でした。それが五十九年は一八・三%と改善をされておるわけであります。これに反して私どもの関東地区はぐっと下がってきておる、こういうこともあるわけでありまして、ある程度進んできたわけでありますが、これからもそういう施策を進めていくよう努力をしてまいりたい、こう考えております。  次は、理工系の話が出ましたが、東北地方は、東北大学の理学部、工学部、弘前大学の理学部、岩手大学の工学部、秋田大学鉱山学部がございますし、それに、五十九年度から東北大学工学部情報工学科を設置しましたし、また私立大学では、八戸工業大学、東北学院大学工学部、東北工業大学等が設置されておりまして、全国的に見れば理工系の分野別構成は、全国平均は二〇%でありますけれども、東北は実は二九・四%になっておるわけなんでありますが、しかし大事なことでありますので、これからも努力はしていきたい、こう思います。  それに、私立大学を誘致する場合の問題でございますが、御承知のとおり、国及び地方公共団体も財政が厳しくなってまいりましたから、国立大学あるいは公立大学の新設等は大変難しくなってまいりました。そこで、私立大学を誘致するという地方公共団体が出てきたわけでありますが、御指摘のように土地の応援とかその他があることは事実でありますが、事柄の性質上、やはり私立大学と地方公共団体の当事者同士の話し合いで、協議で決めていただくことになるわけでありますが、文部省としては、その協議が円滑に進むようにいろいろ協力をしていきたい、そういうふうにして地方にいい私立大学が設置されるように努力はしていきたい、こう考えているわけであります。
  219. 武田一夫

    武田委員 それじゃ、四全総の問題は終わらしていただきまして、最後にスパイクタイヤの問題についてですが、これは新しい形の公害として地域的にも非常に広く発生するようになりました。これは一つの自治体だけで対応し切れない問題がたくさんございます。そこで、時間も限られておりますので、各関係省庁の皆さん方には簡潔な御答弁をお願いしたいと思うのであります。  昭和五十八年、一昨年の三月四日、五日、二十二日と当委員会あるいはまた環境委員会、建設委員会で我が党の議員がこの問題に触れました。私も、私の住む仙台市がその代表的な公害の一大拠点でございますから、この問題を問いただしたわけでありまして、それ以降各省庁も一生懸命対応していただくようになりまして、五十九年の一月には環境庁、運輸省、通産省、それぞれ予算の取りつけまでしていただきまして対応していただきまして、地方自治体の皆さん方大変に感謝をしているわけであります。しかし、もう一歩踏み込んでいろいろとお尋ねをしたい、こういうふうに思います。  何せこれは二月、今の季節、仙台などは最大の粉じん公害でございます。一度来てごらんになりますと、地上からでなくて地下からふぶいてくるような粉じんで目もあけられず、前は見えない。雨が降ればそれがコンクリートの塊になる。しかもタールが含まれているので体に対する影響が非常に悪いと言われている。道路は削られる。道路の補修費あるいは粉じんの処理だけでも北海道では百億と聞いています。仙台では二十億くらい。これはとてもとても予算のないときにそういうところに金をとるということは大変なこと、等々の問題がございまして、また、それを外せというとどうなるのかということで警察の方も心配している。いろいろございます。  そこで、まず最初に警察庁にちょっとお尋ねしたいのですが、道路交通法の目的の中に交通安全と同時に交通にかかわる公害の防止という項目がございます。これは騒音とか大気汚染で、粉じん公害というのは入ってないのかという問題ですが、私は入っていて当然だと思うのですが、この点どうですか。
  220. 太田壽郎

    ○太田政府委員 粉じんも入るというふうに解釈いたしております。
  221. 武田一夫

    武田委員 それで、粉じんが入っているということですから、警察としましては、各都道府県の担当の県警本部等々を通しまして、やはりもっと、仙台だけで一生懸命脱スパイク運動をやっても、隣の県から入ってきてそのまますっと町の中やられるものですから、行ったり来たり、もう県庁の所在地の周辺とか一番町のいわゆる人がたくさん集まる地帯に一番苦労がある。ですから、これは各都道府県等の協力をいただいてそういうものの対応を積極的にしてほしい。特に必要でないのに、はいているのが結構いるんですな、外すの面倒だと。そういうのは厳しい取り締まりをしていってほしい、こういうふうに思うのですが、これはどうですか。これをやらぬと、一つは道路の掘削、穴をあけてしまうということは一向に減らぬ。それがまた次の年には、いろいろと線も消えやすいですからね、人的被害、いわゆる交通安全の面でも問題があるということになりますので、これはひとつしかとした指示をしてほしいと思うのですが、いかがですか。
  222. 太田壽郎

    ○太田政府委員 今スパイクタイヤの公害の面のお話がございましたけれども、交通安全という面につきましては、それなりの相当の効果があるというのも事実でございます。そこで、私どもといたしましては、不必要な場合にはスパイクタイヤをはかないようにということで、街頭取り締まりとかいろいろなところでその趣旨を徹底さしているところでございます。しかしながら、この問題は、関係官庁も非常に多うございまして、除雪の問題とかいろいろな問題が関連してくるわけでございます。そういう問題をよく考え合わせながら、広域的に適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
  223. 武田一夫

    武田委員 次に、建設省と自治省。この補修それから粉じんの処理、これは経費はべらぼうだ、これからまたふえていく。市町村でも全国で二十三くらいの市がそういう問題で苦労している。こうなると、これは一つの自治体だけでの対応というのはいかがなものか。例えば豪雪地帯などは雪をおろして運ぶ、そのために交付税みたいなのをちょうだいしてかなり助かっているということですから、建設省、自治省としまして、こういう地域に対する予算的な補助、助成というのが必要ではないか、これは御検討いただきたいと私は思うのですが、二つの省の大臣にひとつ簡潔に御答弁いただきます。
  224. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 私は国家公安委員長も兼ねておりますので、両方の立場でございますが、先ほど交通局長から言いましたように、問題は、交通安全上からいいますと、雪のある時期は半分ぐらいこれで交通事故が減っているという状況でございますが、しかし、取り締まりその他を通じて必要のないときはもっとこれを外すように指導していかなければならぬと思いますが、今のお話の自治省としての費用の問題にちょっとお答えいたします。  道路の維持管理に要する経費につきましては、自治省においては標準的な経費ということで普通交付税、道路橋梁の費用、その単位費用に算入しているところでありまして、積雪地帯における路面補修等維持に係る増加経費につきましては、従来から普通交付税におきまして寒冷補正を適用して、年々需要額算入の充実を図っております。ただ、自治省だけではできませんので、関係省にもそういうような措置が必要だということを考えております。
  225. 田中淳七郎

    田中(淳)政府委員 スパイクタイヤによります粉じん、道路損傷につきまして、現在建設省ではいわゆる維持管理に要する費用は、本来は当該道路の道路管理者が負担することを原則としておりますが、補助の国道及び県道の舗装補修につきまして大規模なものがございますので、一定の基準以上のものに限りまして国の国庫補助の対象としております。もちろんその中には、スパイクタイヤによります道路損傷についてもこのような場合には同様の取り扱いをしております。逆に言いますと、小規模なものは対象にしておらないということでございます。  以上でございます。
  226. 武田一夫

    武田委員 時間があとなくなったのですが、通産省と運輸省、環境庁おいでですから、ちょっとお時間をいただいて簡潔にお願いしたいと思います。  要するに、スパイクタイヤにかわる新しいタイヤの研究開発、これはどうなっているか、状況、これは通産、運輸の方に。それから環境庁長官には、人体に対する影響について、厚生省から研究官が行っていろいろと研究されているようでありますが、その状況はどうなっているのか。仙台市でもいろいろとそういう研究はやっているようでありますけれども、国としてもしっかりとやはり検討していただきたいと思いますので、この二点について各大臣にお願いして質問を終わらせていただきます。
  227. 等々力達

    ○等々力政府委員 通産省の工業技術院では、スノースパイクタイヤによる粉じん公害の防止に貢献するために、昭和五十九年度から四年計画で低公害化の技術の研究を進めているところでございます。その内容は、形状記憶合金という、これはある一定温度になりますと特別の形状を保つ、そういう材料でございますが、こういう材料を使いまして凍結路面上においてだけスパイクピンが出てくる、そういうような低公害性のスパイクタイヤの研究開発を現在行っております。
  228. 服部経治

    ○服部政府委員 お答えいたします。  申し上げるまでもないことでございますけれども、この問題というのは、一つは公害の防止、いま一つは安全の確保という二つの極めて重要な社会的な要請のいわばはざまにある問題でございまして、私どもといたしましては、このいわば二律背反的な二つの要請の間にしかるべき調和点を見出すということを目的といたしております。そういう考え方に基づきまして先般来、各種のスパイクタイヤにつきまして、その粉じんあるいは騒音の発生状況あるいはまた走行性能等につきまして基礎的な調査をただいま実施しているところでございまして、今後それらの調査の結果を踏まえまして、しかるべき対策を講じてまいるように努めたいというふうに考えておるところでございます。
  229. 林部弘

    ○林部政府委員 生体影響の問題についてお答えいたします。  五十九年度から小動物を使いまして実験を開始いたしております。六十年度の新予算におきましても所要の経費を計上いたしております。
  230. 武田一夫

    武田委員 それでは、時間が来ましたので終わります。
  231. 天野光晴

    天野委員長 これにて武田君の質疑は終了いたしました  次に、佐藤観樹君。
  232. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 大臣のいろいろな時間があるようでございますので、私は、まず最初にガソリンの輸入問題と今後の石油行政あるいはその政策についてお伺いをしておきたいと思います。  御存じのように、昨年ライオンズ石油社長が、私と同じ名前の、佐藤太治と読むのでしょうか、この方がシンガポールからガソリンを輸入をしたいということで申請が出たようでございます。それに対して通産省の方では、五十九年度の石油輸入計画について石油業法第十二条第三項で準用する同法第十条第二項の規定に基づき、石油輸入計画の変更勧告を行うこととし、昨年の十二月の二十四日に石油審議会の石油部会に対して諮問を行ったところ、「現下の石油需給事情等にかんがみ、昭和五十九〜六十三年度石油供給計画の実施に重大な支障を生ずるおそれがあると認められるため、石油業法に基づき、石油輸入計画を変更すべきことを勧告することが妥当である」との答申を得た。したがいまして、このため、石油審議会の答申を踏まえて十二月の二十七日に通産大臣から同社ライオンズ石油株式会社に対して石油輸入計画の変更勧告を行うこととしたということが経緯のようでございます。一企業のために大臣の諮問機関でございます石油審議会をわざわざ開くということも異例ならば、大臣が輸入を中止をするように勧告するということも、これも極めて異例なことであります。あわせて、手続的には、一度輸入業者という格好にしておきながら、輸入はいけませんよという結果になっているということも、これもまた珍しいケースであるわけであります。  しかも、石油の輸入というのは届け出制になっている。これは昭和三十六年、国会で審議のときに、通産省が出した案は許可制だったものが、国会で届け出制に直したという格好に法律上なっておって、輸入してから一カ月以内に届け出をすればいいというふうに法律の建前はなっているわけでありますけれども、今冒頭お話をしましたようなことで、結果的には、表面上、言葉上は会社が大臣の勧告を受け入れたということで、輸入はしないことになったということで終わったようであります。  私は、このてんまつと申しましょうか、それ自体は一つの行政措置としていいと思うのでありますが、幾つかの視点から非常に重要なことだと思いますので、今後の問題について主にお伺いをしていきたいと思うのでありますが、一つは、この佐藤社長というのは法律違反でも何でもないわけですね。だから、第二の佐藤、第三の佐藤が出て同じような手続をするということがないとは限らない。今度はたまたまこの取引銀行が城南信用金庫という、長いこと信用金庫組合の会長をやっていらっしゃる小原さんのところだったというようなことがあって、金融的に締められたということがあって撤退をした格好になっているわけでありますが、同じようなことが起こり得る可能性を持っているということ。それから、何分扱っているものが石油と申しましょうかガソリンと申しましょうか、生活にとりましても産業にとりましても大変重要な物資であるという観点。それから、きょういらっしゃる方々、皆さん全部が自動車に乗られるわけでありますが、安いガソリンを欲しいという消費者のニーズに対して、今後一体どういうふうな対応ができるだろうか。また、サウジアラビアとかクウェートとか産油国の方でも、なるべく付加価値をつけて売りたいという希望が出てきたときに、向こうで精製したガソリンと石油、原油との抱き合わせ、向こうからいえば輸出、日本でいえば輸入ということがこれから一体起こってこないのかどうなのか。あるいは、自由貿易体制の中で生きている日本の産業というものが、ガットを中心とする、自由貿易主義を中心的に扱っているところの精神から一体これが外れないのかどうなのか。あるいは、日本は残存輸入品目を残しているのじゃないかというような世界的な批判が今後も起こってこないのだろうかというようなこと。それから、もし今後この輸入が許されるということになってまいりますと、これは国内の精製業者はどうするのだろうかという問題が起こってくるわけでありまして、そういうような観点からこの佐藤社長の、このてんまつのことはいわば奇貨とするような今後の行政をどうやっていくか、その基本的な考えをお伺いしたいと思うのであります。  この話のてんまつは大体今のようなことでありますので、その点は結構でございますが、話の順序として、簡単で結構でございますので、これは形上石油審議会がやめるように勧告した方がいいよと大臣に言ったという格好になっているわけでありますが、今の事情からいって、通産省としては、ガソリンを輸入されると日本経済あるいは石油行政上どういう混乱が起こるということでこういうことに、つまり輸入を中止をするように勧告するということになったのか。大体事情はわかっていますので、話の順序としてでございますので簡単に、箇条的で結構でございますから。
  233. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 佐藤委員にお答え申し上げます。  この問題は、実は非常に新聞紙上等でも話題になったことでございまして、非常に重要でございます。客観的な事実は御指摘になったとおりでございまして、昨年の十二月三日に石油輸入業開始等の関係書類を持参してライオンズ石油株式会社の佐藤太治社長が通産省においでになった。これを、国内の石油製品の安定的かつ低廉な供給に重大な支障を生ずるおそれがあるということで、十二月二十四日に石油審議会に諮問をいたしまして、二十七日に通産大臣の勧告を行って、同社の輸入計画の中止を求めたわけでございます。これはスポット契約でありまして、この通産省の勧告、通産大臣の勧告に佐藤社長が従われまして、六十年一月八日通産省に対して、勧告を受諾し、ガソリンの輸入を中止する旨の連絡があった。同社から買い取り先のあっせんについての要請がありましたので、例外的な措置としてこのあっせんも通産省でしたというのが一連の経緯でございます。したがって、ライオンズ石油の佐藤社長とは円満に話し合いの上でそういうことを決定した、こういう経緯になっております。  佐藤委員の御質問にありました石油製品の輸入のあり方というのが一体こういうことでいいのか、今後、同じような第二のライオンズ石油、第三のライオンズ石油というものが出てきた場合はどうするのか。非常にこれはごもっともな御疑問でございます。石油製品の輸入のあり方というのは、昨年の石油審議会の石油部会小委員会報告において、今後とも消費地精製主義を基本としながらも、中長期的には必要な条件の整備を図りながら漸進的に極力国際化の方向を目指していくべきであるということが指摘をされておるわけであります。したがって、石油製品の輸入全般の問題について、早ければ年度内にも、通産省としての動向は昨年の夏からそういう方向がついておるわけでありますから、石油審議会に特別の小委員会を設けて検討を開始してもらう、こういう考え方でございます。これは検討するわけでありますから、その結果どういうふうになるかということはまだもちろん現在予測することは困難でありますが、ガソリンの輸入問題についても今後の小委員会議論を踏まえて判断していきたい、こういうことであります。  我が国では、生活必需物資である灯油の価格というものがガソリンなどに比べて相対的に低位になっております。その分をガソリン価格で回収しているというシステムになっておりますので、ガソリン輸入が行われた場合、生活必需物資である灯油の値上げを招くおそれがある。したがって、こうした観点からもガソリンの輸入については極めて慎重にならざるを得ないというところで今日本政府がとっております方式、いわゆる消費地精製方式というものと、もう一つは、石油は連産品でありまして、御承知のように揮発油、ナフサ、灯油、軽油、重油、まあ重油もA、B、Cというふうにいろんな種類が出てくるわけでありますが、連産品として処理をしなければならないので、単発的にあるものだけが安いからそれを仕入れてくるということでは国内の石油業界全体に大きな問題があるわけであります。したがって、これは御参考まででありますが、私は一月十七、八日のころにオーストラリアの帰りにシンガポールに立ち寄ったわけで、そのときにリチャード・フーという商工大臣といろいろな貿易問題で相談をいたしましたが、この問題についてのコメント等は一切リチャード・フー大臣からなかったのです。そういったいろいろな経緯もございまして、日本の石油の安定供給、そういったことを眼目に置きまして、消費者側もそして生産者側も本当に納得のいく方向をこれから考えていきたいというのが大方向でございます。
  234. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いわば、少し結論と申しましょうか、今後いろいろな意味で検討に入るということも言われているわけでありますが、少し確認をしておきたいのであります。  これは外務省にお伺いした方がいいかと思いますが、実態を見ますと、実際には、石油の供給計画というのがあって精製会社は供給をしなければいかぬ義務がある一方、年度当初にうちはどれだけつくりますよという生産計画を通産省に出さしているわけですね。それに基づいてやっているということでありますから、先ほど触れましたように、法律の建前は届け出制ですよ、輸入してから一カ月以内に届ければいいという建前にはなっておりますけれども、しかし実際には、通産省のきちっとした枠の中で精製をしている。それはそれなりに混乱を招かないということなのでありましょうが、一体このことが国際的な自由貿易という中で、あるいは残存輸入品目をなるべく減らしていこうという中で、建前上は輸入は禁止はしていません、しかし実態は一〇〇%禁止ですという格好になっている今の石油業法あるいはその運用の仕方、これはガットの方で、今回は余り問題にならなかったように聞いておるわけでありますけれども、今後このままいけるのだろうかという心配を私はするのでございます。外務大臣でも事務当局でも結構でございますが、どういうふうな反応と申しましょうか、このことについて一体何か言ってきたことがあったのか、あるいは今後これはこのままこういうことでいけるのだろうか、その点についてお伺いします。
  235. 国広道彦

    ○国広政府委員 石油製品輸入の問題につきましてガットで問題提起があったかという御質問につきましては、さような事実はございません。
  236. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それでもう一つの問題は、ガットの場合には、今申しましたように、建前としては法律をつくって輸入してはいけませんよとする、あるいは、かなり行政権限と申しましょうか、威力業務妨害というような言い方をしておりましたけれども、こういうようなやり方によって行政が事実上禁止をするというようなことをやらなければガットでは問題にならないのだというようなことも聞いたのであります。今私が触れましたように、今度はないにしても事実上、こういったような法律の建前は届け出ということになっておりますけれども、実態的には世界的に有名なMITI——MITIの行政指導というのは英語になっているのですね。私もアメリカの商務省でいろいろな話をしてまいりましたが、行政指導というのはもう世界的な言葉になっている。それに裏打ちをされた今のやり方というのは、今後もガット内で耐え得るのだろうか。今後の問題はどうでございましょう。
  237. 国広道彦

    ○国広政府委員 先生御存じのとおり、ガットは普通の裁判所ないし検察的なところではございませんで、世界貿易を自由貿易の原理に基づいていかに円滑に運用していくかということをお互いに努力していく場でございます。ガットの規定上いかなる問題があり得るかということにつきましては、実際に起きる形態は利害関係者がガットに問題を提起してから起きることでございまして、私どもの今の考え方としましては、本件を含めまして、なるべく製品輸入の貿易は拡大するという方向、自由貿易を維持するという方向であらゆる努力をしてまいるということに目下の努力を集中しているわけでございます。
  238. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 もう一つ、産油国からの、圧力という言葉は余り正確じゃありませんが、動向の問題ですね。何か聞くところによりますと、サウジアラビアとかクウェート、こういったところで、自国で精製をして、ガソリンあるいはナフサにいたしましてもその他の連産品を自分の国で精製をして売っていきたい。もうサウジは東京に事務所をつくって対日輸出を前提として活動を始めているというような話も聞いているのでございますけれども、ガソリンと原油とを抱き合わせでひとつ取ってくれということが今後大分強まるのじゃないかという懸念もあるのであります。そのあたりは通産省はどういうふうにつかんでいらっしゃいますか。
  239. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 ガットの問題、今外務省からお答えがあったわけでございますが、ガット協定その他の国際法上の義務はこれを誠実に遵守しなければならぬということで、実は石油業法に基づく勧告は罰則の適用がございません。あくまで相手側の理解と協力ということが前提でありまして、そして今回のケースの場合は、昨年の十二月に石油業法に基づく勧告を行ったところですけれども、相手側が自主的に判断して輸入を見合わせていただいたから、ガット上は全く問題がない、こういうふうに思っておりますし、また、安倍外務大臣とも私いろいろ御相談を申し上げておるところでございます。それならば、OPEC諸国等からのいろいろな圧力はないかということでございますが、現在のところそれは全くないと理解をしております。私どもとしては、当然のことながら生産業界そしてまた消費者のお立場、十分全国民的な視野でこの問題を判断して今後に対応していく、こういう基本的方針でございます。
  240. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 もう一つ、大臣も冒頭に触れられましたけれども、この石油業法自体三十六年の九月にできた法律ですね。かなり古い。まだ自動車もこんなに皆さんのところに行き渡るような時代ではなかった。当時は高度成長の当初でありますから、むしろ日本の産業としては大変重油が欲しいときでもありました。今は、むしろハイオクタン価、オクタン価の高いものが欲しいということで、石油産業の構造自体あるいは日本の産業界の構造自体が昭和三十六年とは随分変わってきているわけですね。そういった観点から、石油産業の構造改善という観点からも見直しが迫られる時代になってきているのじゃないか。あるいは、先ほど大臣も言われましたように、石油審議会の石油部会の小委員会の報告にあるように、いわば国際化に向けて石油製品というものをなるべく輸入を漸進的に拡大をしなさいという報告が出ているわけであります。それは国民経済上の要請、いわば安いガソリンが欲しいという国民的な要望、そしてもう一つは世界の石油製品貿易の動向から見た供給安定性という観点、両方から考えて「二つの視点から適切と認められるものについて漸進的に輸入の拡大、又は、価格のさや寄せが図られていくことが必要である。」という報告が出ておるわけですね。それに対して、先ほど大臣いろいろな意味でこれから検討していかなければいかぬということでございましたが、この石油審議会の小委員会の報告自体、まだガソリンの輸入まで、ナフサその他の輸入のことはありましても、ガソリンの輸入まではどうもこの中身としては言っていないというふうに聞いておるのではございますが、先ほど冒頭答弁されました大臣の答弁というのは、ガソリンの輸入も含めて今後検討に入らざるを得ないのではないか、こういう意味にとっておいてよろしゅうございますか。
  241. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 佐藤委員の御指摘は非常によくわかるわけでございます。委員も御指摘になりましたように、昨年の石油審議会の石油部会小委員会報告で、今後とも消費地精製方式を基本としつつも「中・長期的には、必要な条件の整備を図りつつ、漸進的に極力国際化の方向を目指していくべきである。」旨を指摘しておるわけでございまして、この日本の石油製品についての対応は、これは欧米方式もよく勉強してやっておるところでございまして、私は、現在非常にそれが誠実に履行され進んでおるというふうに考えております。ただ、国際化に当たっていろいろな点を注意しなければならぬ、委員指摘のいろいろな問題がございまして、国際化という方向で、これは欧米のいろいろな業界の動き等も対応をしながら、国民的サイドで今後の問題を中長期的に検討していくのだということで、まだ何もこういうふうに決めたということがあるわけではないのでございまして、今後の石油審議会の動向を御注目いただきたいと思っております。私どもとしては、それに誠実に対応してまいるつもりでございます。
  242. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 次の問題に移りたいと思いますが、それは債務国の累積債務の返済の問題なのであります。特に、五月にボンでサミットがあるわけでございますので、恐らく大蔵大臣も外務大臣も行かれることになると思いますので、私がかねてから御提起をしたい問題について、通産大臣も含めまして、ぜひひとつ考えていただきたいという問題であります。  それは、話は簡単なのでありますが、我が党の岡田委員からも過日政府の経済協力について御質問があり、またそのあり方についてきょう石原委員の方からもお話がございましたが、少し私は、民間も含めた全体的な経済協力のあり方について、かねてから思っている問題について御所見を伺っておきたいと思うのであります。  それは、八四年の累積債務が八千何億ドルに達するだろう、まだその次の八五年は推計値でございますけれども、世界銀行の数字を見ますと、九千億ドルぐらいまでいくのじゃないだろうかという数字が出ているわけであります。問題は、ただお金が返済できなくなったからリスケジュールと言って、ちょっと債務返済を待ってくださいということは、これは根本的な解決にならないだろう。私は非常に重視をしなければならぬと思っておりますのは、この金利の問題でございます。それは、八千百億ドル、この中にはもちろん公的機関もあるわけでありますけれども、民間の金利等を入れると恐らく六百億ドルぐらいにこの金利はなるのじゃないだろうか。八五年の九千億ドルというのは、いろいろな条件がございますけれども、恐らく七百億ドルに達するのじゃないだろうか。これは大体日本の貿易の片道の半分ぐらいあるということでございまして、過日、これは昨年の九月二十四日の第三十九回の国連総会におきますアルフォンシン・アルゼンチン大統領の言葉が、非常に端的にこのことを言っていると私は思うのでありますけれども、「発展途上国の後退を確認するのは悲しいことである。数年前までの、われわれ」——「われわれ」というのはアルゼンチンあるいは発展途上国という意味ですね。「われわれの先進国に対する要求は、北との格差を縮めるための交易条件の改善と、技術協力の強化にあった。今日、われわれの要請は、南の発展途上国が、北に対する資金輸出国であることだけは勘弁していただきたいということ」である。南の発展途上国が北に対する資金輸出国である、つまり、借りたお金の金利を膨大に払わなければいかぬところまできているという状況になっている。これが非常に私は重要なことだと思うわけであります。  そこで、一つ外務大臣にお伺いをしていきたいのでありますけれども、今までは金融不安、国際金融不安という言葉で、こういった累積債務の返済問題というのはいわば金融問題として論じられてきたわけであります。しかし、これは確かに金融問題ではありますが、実は本質的には南北問題の、いわば全身経済がうまくいかない全身病にかかった南の国の方の、その全身病からあらわれてきているところの金融的な側面と申しましょうか、金融的な表現という一部なのではないだろうかということを私たちは考えなければいかぬのではないだろうか。そういう観点に立ってこの問題を考えるべきではないだろうか。とりわけ日本の場合には、大変南に対する依存度が、四〇%から五〇%輸入は南に頼っている。アメリカの場合にはそれが三〇%から四〇%、ECの場合には二〇%と、日本ほどその率は高くないわけであります。そういった意味では、まさに日本としても大変重大な関心を払っていかなければならぬのじゃないだろうか。  特に、私は非常に重要だと思いますのは、確かに北の方は、今アメリカの経済が大変いい。あわせて日本もそうでございますし、アジアもそうですし、ECもそうだし、あるいはメキシコにいたしましても、大変アメリカに輸出をするということで経済は拡大をしている。ところが、南の方の国でもアルゼンチンに至りましては、一九八〇年から経済がマイナスになっている。あるいはブラジルにいたしましても、一九八二年から、これも経済がマイナスになっている。いわば南北の格差というのは経済的にますます開いている中にこういった問題が起こっているということであります。  そこで、こういった南の国の貧困の問題というのは大変政治不安がつきまとってくる。政治不安がつきまとうと、この貧困というものはますます貧困を呼んで、そして経済が不安になればますます不平等が拡大をしていくという悪循環に南の国がなっていく。しかし、これは南の国だけの問題じゃないので、こういうことになっていくことが、国内の紛争が、ひいては国際的ないろいろな紛争が東西間の緊張というものに火をつけていくことになっていくわけでございまして、そういった意味で、北側にとりましても南の側のこういった予測しがたい経済的な不安というのは大変な緊張をもたらすことになる。しかもそれは今拡大をしつつあるし、実は力のないところと言っては失礼でありますが、経済がまだテークオフしてないところから大変な金額が金利という格好で北側に支払われているという状況、これについて私は基本的に、これは単なる一九六四年のUNCTADの第一回の総会で世界が決めましたように、GNPの一%を北側は援助に回せばいいんだという経済的な側面だけではなくて、政治的にも、また日本のようにいわば南側の原材料に頼らざるを得ないようなそういった国からいいましても、政治的な課題としても国際緊張を緩めるという面におきましても大変重要な課題である。このことを五月のボン・サミットでかなり突っ込んで話し合う必要があるんじゃないだろうかという気がするわけでございますけれども、ひとつ安倍外務大臣、そして竹下大蔵大臣の若干の見解をお聞かせいただきたいと思うわけであります。
  243. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 開発途上国が抱えておる債務累積問題に対する認識は、私も佐藤さんと全く同じであります。最近の国際金利の高騰によりまして大変な危機に陥りましたが、しかし、IMF等の関係者の努力によりまして危機は一応脱却したかに見えますけれども、問題は今残っておりますし、そして依然として借りた金ですから金利はふえていくわけでございます。こうした債務累積問題は、単なる累積国の金融問題というよりは、今おっしゃいましたようにやはり南北問題としてとらえていかなければならぬ。これは金融問題で済まないで、場合によっては国際的な政治問題に大きくなっていく可能性は十分あるわけでございます。この債務累積問題については先進国も努力をしまして、IMFを中心にした債務の繰り延べであるとか、基本的には債務国の自助努力というのが基本にあるわけでしょうが、ケース・バイ・ケースでいろいろと努力を重ねてきておるわけでありますが、やはり日本もかつては開発途上国であったわけですから、そして南の国も日本に期待するところが非常に大きいわけですし、また日本も中曽根総理が南の発展なくして北の発展はないということを国際的にも公言しているわけですから、この南の立場というものを十分踏まえて、これから持てる国としていろいろの面で協力をしていかなければならぬのじゃないか。  全体的には今、少しは景気は上向いておりますが、先進国のインフレなき持続的経済成長というものを維持して購買力がそれによってふえれば開発途上国の第一次産品等の輸入が伸びてくるわけでありますし、そうしたことも債務累積国の再建につながっていくわけでありますから、そうした先進国の経済の発展と同時に債務累積国、開発途上国からの第一次産品等を初めとする製品輸入と いうものを拡大をしていく、そういう側面の努力を重ねていく必要があるんじゃないか。全体をそういう意味でただ単に金融問題としてとらえないで、南北問題としてとらえてあらゆる面から論議をしていく、特に先進国内で、今おっしゃるように当然これは今度のボン・サミットでも、去年もロンドンで問題になりましたが、問題になると思っております。日本はその中でやはり積極的な議論を展開をして、南との調和を図っていく、そういう役割を果たすべきじゃないか、こういうふうに思っております。
  244. 竹下登

    竹下国務大臣 今佐藤さんおっしゃる意味は私もよく理解できます。どちらかといいますと、あなたが危惧されておったと申しましょうか金融問題としての側面からとらえたアプローチを私の方が担当で今日までやってきたわけです。それで、確かに今リスケジュールをしてみても、言ってみれば手形のジャンプみたいなもので根本解決には至らないじゃないか、そのとおりの面がございます。だが今の場合、結局ケース・バイ・ケースでやらなければいかぬなと思いましたのは、これは特に金融の側面からとってみますと、いわば南北対話というのが大事でございますけれども、それがIMFなんかでいわゆる南北の団体交渉みたいになりますと、それぞれの国柄がみんな違うものでございますから、それは現実的解決策にはならない。最近の例で言えばメキシコ問題、IMFのコンディショナリティー、条件をつけるわけですから、その条件がかえって国内政情不安を起こしはせぬだろうかというぐらい、つらいといいますか厳しい条件でございます。この間、五カ国蔵相会議の前に、私も議長であったという建前がありますのでメキシコヘ行ってみましたが、あそこの場合はかなり厳しいコンディショナリティーにも対応して、国民経済はここのところ数年マイナスになってもきちんとやっていこうという構えで、そう大きな政情不安というようなものは感じられませんでした。だが、そのメキシコのようにどこにもいくかと言うと、必ずしもそうもまいりません。したがって、やはりケース・バイ・ケースで一つ一つ解決していこう、金融の側面から見ればそれが今とるべき姿だろうなと思います。なかんずく、おっしゃいますように民間の問題がございますから、これはやはり結果としてはIMFという公的機関が仲介と申しますか媒体活動みたいな役割を果たしますが、パリ・クラブ等で先進国の中央銀行の総裁さんなんかあるいは現実の幹事銀行などが集まってケース・バイ・ケースで解決をしていくしか金融の側面から見るとないではないか、こういう感じがします。  したがって、今安倍大臣からも言われましたように、今度は、日本の場合は油を買っておりますから、いわゆる非産油開発途上国、これがまた確かに問題が多いと私も思っております。そこからは可能な限り製品輸入等、買ってあげる努力をしなければならぬということは私どもも痛感をいたしておるところでございます。ですから私、当然サミットでも議論が出ると思いますが、先進国の中でも若干ニュアンスの違いはございます。日本はどちらかといえばアジア中心になりがちでございますし、それからフランス、イギリス等はかつての宗主国でございますから自分の守備範囲というところへどうしても指向されがちな点もあるのでございましょうが、先進国が集まって、一つ一つ具体的な問題と同時に、サブサハラみたいな特別なアフリカの問題とはまた別の角度から、これは人道的な問題も当然入ってまいりましょうし、そういうところで議論がなされてコンセンサスができていくのではないか。そうすると最終的にはもとへ返りまして、いや、おのがじし、そのところに従い、インフレなき持続的成長をやればいいじゃないか、こういうことになりますと、それは、少し迂回しますとそれが一番いいことでございますけれどもトタの解決策にはなりませんし、その辺ケース・バイ・ケースと、そういう中長期の分と両方かみ合わせた議論を続けていかなければならぬ課題だなというふうに私も思っております。
  245. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 安倍外務大臣からもお話が出ましたように、尽きるところは、やはり発展途上国側の金融財政の健全化、あるいはなるべく投資をしやすいようないろいろな環境を、自助努力をしてもらうというのが基礎にあると思うのでありますが、あわせて、何といったって基本的には経済がテークオフするような状況をつくらなければいかぬ。まさに竹下大蔵大臣言われたように、なるべくそういうところの品物をこちら側が買いやすいようにしてあげるということが一番重要なところだと思うのであります。  例えば、今話に出ましたアルゼンチンの累積債務が四百三十億ドル、これは単純に計算してみますと年平均五十億ドル金利を返さなければいかぬというのですね。四百三十億ドル借金を持っておると金利を五十億ドル返さなければいかぬ。そうしますと、アルゼンチンの貿易収支黒字分が三十億ドルから四十億ドルというのでありますから、とても貿易の黒字だけでは金利ももたぬというような状況でありますので、当面のことは、大蔵大臣言われましたように、とにかくリスケも必要でありますし、いろいろな意味で話し合いも必要でありますが、最も重要なことは、やはりその国の経済をちゃんと回っていくようにしていく、そのために先進国として何ができるかということで、私はそこで通産大臣の出番だと思っているわけであります。  それは、もちろん累積債務の返済のリスケジューリングの原則を確立しなければならないとか、あるいはリファイナンス期間あるいは金利等のそういった条件、こういったものについては相手の経済力を見てよくやるとか、ある程度いろいろなことはできると思うのであります。三番目に、なるべく債務国の輸出拡大を何とかさせてあげるようにする、またこちらも受け入れやすいようにする、そういった意味での保護貿易的な障害というものをできる限り取り除いていく、これも今まで私はある程度やってきたのではないかと思っているのであります。四番目に、これだけ金利負担が大きくなってくる、そして向こうは何か、できれば金はないけれども品物は欲しい。それからもう一つは、政府の経済協力ということもございますが、民間ベースでも向こうに信用がないがために少し日本が信用をつけてあげる、いわば経営保証協会じゃございませんが、世界的な保証協会のようなものをしてあげる。そのためには輸出保険制度というものも、全く返ってくる当てがないものはそのベースに乗りませんけれども、何かひとつそういった特別な長期の輸出保険制度というものを考えて、それは何も通産省だけの予算という意味ではなくて、経済協力の枠の中で、しかも向こうが持っている債務のうちの金利分ぐらいの枠は見てあげるというようなことをやって、日本の製品と申しましょうか、向こうが発展するために必要なものは、向こうに信用力がなければ信用力は我が国で見てあげましょうというような、そういう何か輸出保険制度をもう少し弾力的に、かなり通産省の方でも弾力的にやっていらっしゃるようでありますが、そのもう一つ周りですな、もう一つ難しいものについて、これは何か経済協力の枠の中で、物を上げるというのではなくて、うまくいってコマーシャルベースに乗ればそれはそれで輸出保険を使う必要はないわけでありますからいいわけでありますが、スムーズにするためにひとつそういった制度も、私は一つ挙げただけでありますけれども、そういったことも真剣になお一層考えていく必要があるのではないかと思うのでございますが、通産大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  246. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 大変的確な御指摘だと思います。貿易問題は先進国との貿易インバランス問題、そしてまた開発途上国とのこういった債務累積問題、この二つに尽きると言っていいわけでございますが、後者の債務累積問題について非常に的確な御指摘をいただきましたし、また、ただいま外務大臣、大蔵大臣から非常に全般的なお答えがございましたので、実は特におつけ加えすることがないなと思いながら承っておりました。  ただ、具体的に申し上げますと、政府開発援助の拡充だとか、それから日本の市場を一層開放するとか、それから発展途上国の輸出拡大へのいろいろな協力をする、それから投資の促進等に努力をする、そういったようないろいろな面がございますし、また御指摘の輸出保険についても、収支相償うという原則に立脚をいたしまして、的確なカントリーリスク評価に努めるということで、機動的、弾力的な引き受けを行ってまいりたい、こういうふうに思っておりまして、これは佐藤委員が御指摘のように、私はまさに債務累積問題は南北問題そのものであると認識をしておりますので、外務大臣や大蔵大臣の御指導のもとにひとつしっかりと対応していきたいと思っております。
  247. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 今、通産大臣最後に言われましたように、これは三大臣非常に重要な仕事だと思いますし、また五月まで、ボン・サミットまでは少し時間がありますので、具体的に何か少し前進をしていくような格好でひとつ御協議を願いたいと思います。では、外務大臣、通産大臣、ありがとうございました。  次に、税制の問題について大蔵大臣にお伺いをしておきたいと思うのであります。私も長いこと大蔵委員会で税制問題をやってきたのでありますが、どうも本年におきます税制論議というのは何か少し雰囲気が違うのであります。これはどうも我々が総理大臣の言葉の戦術に乗せられてしまっているのじゃないかという気がしているわけでありますけれども、もう既に何かEC型の付加価値税導入というのが前提として入ってきているような気がしてならぬわけであります。それには、いろいろな議論の中には、まさに例えば税の公平を求めるためにEC型の付加価値税をという話でも、大変な前提があるわけであります。  そこで少し全体的なお話をお伺いしていきたいのでありますけれども、私もこの前総括質問で言いましたように、税の不公平を直す、これは税というのはそこが最大のポイントだと思っておるわけでありまして、公平なものをみんなが負担をしなければならぬのだったら、それが防衛費に余計使われるとかいうことがない限りみんなで支えようというのは国民の納得するところだと思うのでありますけれども、その前提として、きょうも中曽根総理は、所得税の減税それから法人税の減税、これはぜひやりたいですねという答弁をされているわけであります。個々についてはお伺いをしますけれども、しかし、中曽根総理の任期というのは常識的には来年の十一月までが任期であるわけでありまして、所得税減税、法人税減税をやりたいということは、あるとすれば六十一年度予算にそれを出してくるということしか原則的にあり得ないのだと思うのであります。総理があれだけ、ぜひやりたいという言葉をきょう言われているというところを見ますと、この問題は、いわば総理が言われました所得税の減税、法人税の減税、あるいは私の質問に対しての答弁といたしましては、金額的には所得税の減税、法人税の減税等、EC型がその他の付加価値税になるのか消費税になるのかわかりませんが、それとは金額はとんとんであるというようなことも言われているわけでありまして、そういった前提に立ってみますと、この付加価値税問題あるいは消費税問題というのは来年の六十一年度予算に、総理の任期はとにかく来年の十一月までしかないのでありますから、来年の予算に入れてくるという結論にならざるを得ぬと思うのでありますが、大蔵大臣、いかがでございますか。
  248. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに総理は所得税減税をやりたい、が、現在は赤字公債をもって財源に充てるわけにはまいらない、したがって税制全体の見直しの中でそういう方向を模索する、こういう趣旨でございますね。ただ、そこで総理の構えが一つ出てきておりますのは、佐藤さん御案内のとおり、従来は税制調査会というのは、まず三年に一遍かわりますが、その最初かわったときに国税、地方税のあり方についてというぼんとした諮問をしまして、個々の問題については年度年度は、あうんの呼吸といいますか、そんな形でやってもらっておる。それを総理は、今度は自分から改めて正式な諮問をする。これも税調自身が答申の中で、異例のことながら、見直す時期が来た、こうおっしゃっておりますから、それは別に不自然じゃないだろうと思います。しかし、気構えとしてははっきり出てきたなと思います。可能な限り急いでと、ここまでは来ておりますが、それから先の問題は結局、六十一年度税制に間に合うようにということまでは今の段階では、税制調査会の自主的な審議にゆだねるという従来からのスタンスから考えると、そこまではちょっと言い切れないのじゃないか、できるだけお急ぎいただきたいということは言えるにいたしましても。だから、恐らく国会においてもあるいは各党においてもいろいろ議論がなされていく、それで国会の模様を正確に税調にお伝えして審議が始まっていくわけでございますから、その手法もまだはっきりしておりませんので、できるだけ急いでということ以上に今申し上げることはやや予見、予断のうちに入るのかなと思って、私も慎重にいま少し国会の論議等の推移を踏まえなければいかぬなと思っておるところであります。
  249. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしますと、総理がきょうかなり強い言葉で、ぜひ所得税の減税をやりたい、法人税もやりたいですねと、ばかに自信を持ったことを言われたので、ははあ、そうすると六十一年度、来年度の中でやっていく、所得税の減税、法人税の減税というのは単独で言っている話じゃないので全体的に、今大臣からお話があったように赤字国債によるのじゃなくて、それは何かまさに投網発言にあるような投網的でない税制によってやっていこう、こういうことでありますから、それは一対のものであるわけですね。そうなってきますと、総理の言われた、所得税減税はぜひやりたい、法人税減税はぜひやりたいというのは、つまり来年じゃないかもしれない、税調のスケジュールによっては六十二年度、そのときは竹下内閣かどうかは知りませんけれども、かもしれないということでございましょうが、いわばそれは税調の今後の審議のスケジュールによって六十一年になるのか六十二年になるのかということでございますということに理解しておいてよろしいですか。
  250. 竹下登

    竹下国務大臣 やはり税調に期限を付すといいますか、それは現時点では難しいのじゃないかなと私は思う。そうすると、税調の推移と国会の論議、そういうことからおのずからいま少し議論を積み重ねてみないと、出てくる方向というものがまだ、予測してはいかぬわけですけれども、ちょっと判断ができないという感じがいたします。すべてきょうの段階で、きょうまでの議論を伝えて、さあやってくださいと言うのじゃございませんから、いま少し、あるいは本委員会でもあるいは大蔵委員会でもいろいろな議論をされた後のことになりますので、その辺で見定めなければ、今からちょっと見定めるのは——一遍、新聞記者会見で三つのケース、先例を言いまして、それも誤解を生じた向きもありました。先例というのは、佐藤さん御存じのとおり、毎年度毎年度の税制改正の中へ中間答申的なものが入る場合とか、三年に一遍まさにちゃんとした答申をもらうものとか、いろいろなケースがあるというようなことを言ってみたわけですが、それは過去の例を言っただけでありますので、もう少し議論の推移を見てから総理も判断されるのではないか、こういう感じです。
  251. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 もう一つ、スケジュールの問題についてお伺いしておきたいのでありますが、総理が言われるようにシャウプ勧告以来のいろいろな意味での税のゆがみ、これを直していこうという発想自体は私は的確なものだと思っております、だれが知恵を授けたのか知りませんけれども。それ自体は非常に重要なことだと思っているわけであります。しかし、それが従来のタイプと違う、いわば投網的でない付加価値税あるいは消費税ということになりますと、これは戦後、二十四年のシャウプ勧告以来の税制を抜本的に変えるものになってくるわけであります。私は、大蔵大臣もそうだと思いますが、税というのは国民の理解なくしてこれは取るべきものではないし、またいろいろな意味でうまくいくものではないと思うわけでありまして、そういった意味では財政論議、税制論議というのは国民に開かれたいろいろな形でやるべきだと思うのであります。  そういうことを考えてみますと、来年の六月には参議院選挙があるわけであります。私は、こういう国民に非常に関係の深い問題というのは、そういう国政選挙の場で民意を問う、国民皆さん方の御判断を仰ぐということが大変重要なことではないかと思うのであります。     〔委員長退席、大西委員長代理着席〕 税制というのは、いわばベストはなくてベターだ、絶えずそういう選択の問題でございますから、そういった意味では、私は来年六月の参議院選挙に、もし皆さん方がこの付加価値税を条件づきであれ、それは所得税、法人税の減税との抱き合わせとか福祉目的税に限りますとかいうような条件をつけるにいたしましても、税制の抜本的な改正をやるというならば、やはり国政選挙レベルのときに大きな課題にすべきではないか、これが民主主義のあり方ではないかと思うのでございますが、いかがでございますか。
  252. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる選挙の争点に税を置くという問題は、政策全般の今までの実績評価、特に参議院選挙ということになりますと解散もございませんから、まさに実績評価という傾向が強かろうと思います、原則的に言えば。だが、税というもののみを、いわば選挙の争点として国民の前に提示すべきものであるか、やはり政策全般の中で国民皆さんに審判を受けるということではなかろうか。だから税だけで、前にも議論したことがございますが、選挙のテーマとするにはなじまないような気がいたします。これは私だけが決める話でもございませんけれども、特に参議院通常選挙というのは、いわゆる実績評価と期待度というようなもので、実績評価の方へ重点が置かれるのかなという感じがしております。
  253. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私は別に税だけでやれと言うのじゃなくて、その間にいろいろなテーマがもちろんあるわけでありますが、我が国の経済にとりましても政治にとりましても財政再建という問題、その裏腹であります税制の改革というのは、それは国民にとりましても大変大きな課題でありますし、いわば後年度に負担をなるべく軽くしようという意味での世代間戦争をなるべくなくしていこうという観点からいいますと重要な課題だと思うわけでありまして、それで私はスケジュールの話をお伺いしたわけであります。先ほど大蔵大臣から、あえて六十一年度に合わせるためにしゃにむにやるということではないような御発言がございましたので、私は参議院選挙という国政選挙のレベルで国民政府・与党としては問うべきではないかということを申し上げたわけであります。  もう一つお伺いしておきたいのは、財政論議をいろいろしてきたわけでありますけれども、どうも新聞の論調と申しましょうか社説等においても、初めに増税ありき、あるいは初めにEC型付加価値税ありきのようなことで、総理が言う投網をかけるようなじゃない、段階的、網羅的、包括的、普遍的じゃない、こういった税をどうするんだという話ばかり先に打っちゃって、いわば理念とそれから結論との間がないではないかということがよく言われているわけであります。私も冒頭、ことしの税制論議は少しおかしいということを申し上げたのは、そういう感じがするからでございます。  そこでお伺いしておきたいのでありますが、これで大蔵大臣も三年ですね、連続して大蔵大臣をやられて大変御苦労されて、一番お金がないときの大蔵大臣をやられている感がするわけでありますが、この三年間の経験を踏まえて、かなり行政改革の名のもとにいろいろな批評、評価があるわけでありますけれども、いろいろな意味で支出を切って、一般歳出はほとんどゼロで続けてきたわけであります。この三年間の貴重な経験を踏まえて、一体、来年度も一般歳出ゼロということで抑えられる、経験を踏まえてできるという御自信はおありでございましょうか。
  254. 竹下登

    竹下国務大臣 昨年の十二月の暮れに予算の概算閣議をやりました後、ほっとしたときに感じたのは、一体これ以上歳出削減ができるかな、こういう気がいたしました。しかし、その途端に、それじゃもうおれ自身だめになるとみずからに言い聞かせて、さらに厳しい歳出削減を制度、施策の根本にまでさかのぼってやらなければいかぬな、いわゆる国と地方の役割分担等々、まだまだやらなければいかぬところがあるなという気持ちになったわけであります。  そこで、これ以上一般歳出を前年度同額以下でやるということは非常に難しい問題でありますが、まだされば何%伸びとかそういうことを考える余裕もありませんし、気持ちの上ではまだ一般歳出ゼロというような気持ちを失ったら途端に歳出削減の切れ味が鈍ってしまうというような、自問自答をしておるところであります。
  255. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 言語明快、意味不明的な御発言ですが、財政論議がどうも話がつまらないのではないかという中に、予算自体単年度主義でやっているものですから、今六十年度予算を審議しながら、絶えず我々は六十一年度の話をしている。そしてきょう松浦委員から御指摘があったように、計数表だけは出てくるけれども、一体それを実現させるためにどうしなければいかぬというようなことも何もなしにやるものですから、一体これから六十五年度までにどうしていくんだ。一般歳出ゼロということは、政治的には別としても、原則的に続けようと思えば、六十五年までにゼロとすれば、それは要調整額はむしろプラスになるということは原理原則としては可能でありますが、政治的にできるかどうかという問題も加わってくるわけでありますね。そういうことから申しますと、また、そういうふうに実現をした六十五年度の経済というものが、財政が一〇%を切るようなそんな小さな心臓で一体財政としての役目を果たせるだろうかという別の問題も起こってくるわけでありまして、そういった意味ではなかなかコンニャク問答をやっているような部分があって、私自身も残念なんであります。  そこで、少し話を前に進めさせていただきまして、総理がきょう力強く、所得税減税もやりたいというお話。私たち野党もぜひ、野党全部こぞって一兆円余の減税をひとつやってもらいたいということを申し上げているわけでありますけれども、それは言うまでもなく、給与所得者に対する源泉所得税収の伸びを見ますと、サラリーマンばっかりがとにかく苛斂誅求に一〇〇%ガラスの中で税金を取られているという感じ、これは何とかしなければならぬということが大変強いからだと私思うわけであります。  ちなみに、一体自然増収幾らあったか。五十一年が六千三百四十九億円、五十二年が八百四十四億円、五十三年が六千五十九億円、五十四年は九千四百二十九億円、約一兆円近くあったわけであります。五十五年が八千五百二十九億円、五十六年度が七千十四億円、五十七年度が七千十六億円、五十八年度が五千四百四十六億円、五十九年度が千四百十六億円でありますが、六十年度の予算では一兆五十億円ですね。いわばサラリーマンから、ベースアップがあってその分だけ、ベースアップの伸び率よりも税収の伸び率というのが多い。  これはもう少し正確に言いますと、一体ベースアップがどのくらいあって、それがゆえにどのくらい自然増収になったかということをちゃんと言わなければいけませんが、もうこのことの議論は大体尽きていると思っておりますので、その意味では今所得税減税を、財源の問題はちょっとわきにしますれば、やらなければいかぬということは総理の頭にもあったからああいう発言になっていると私は思うのであります。ただ、その財源をどうするか。それは総理は、いわば投網的でない財源によろう、こういうことのようであります。  そこで、今回の一兆円余の所得税減税というのは、時間がありませんからそこまで詰めてないわけでありますが、所得税減税のあり方というのは、これは、今所得税の構造的な問題に欠陥があるのではないか。つまり、十五段階あるこのバケット、これがあるがゆえに、ちょっと所得がふえるとすぐより重い率の所得税が課税されるという、この十五段階に上りますバケットに問題があるんだということは大蔵省の方もほぼお認めになっているということを確認した上で、前へちょっと進みたいと思うのであります。その点はいかがでございますか。簡単で結構でございます。
  256. 竹下登

    竹下国務大臣 これは私どもとして言い得ることは、中期答申に書かれてあります「所得水準の平準化の動向等にかんがみ、中堅所得階層の負担の緩和にも配慮しつつ、全体として、若干なだらかな累進構造とする方向で見直しを行うことが適当である。」というのがきちんとなされております。  そういたしますと、いわゆるその前段にも書いてあります「税率適用所得階級が細かく刻まれているという際立った特色を持っている。」かつてのことでございますけれども、それが十五になったというところで、総理の発言を聞いておりますと、リーガン前財務長官の提案は魅力的だ、こういう表現を使っておられますが、確かにそういう刻みの問題、これもまた刻みを減してくださいという諮問もできませんが、従来の税調の答申からも読み取られるから、そのような考え方は我々も是認していいんじゃないかなと思います。
  257. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そういう意味で、来るべき今度の政治課題に上っておりますこの一兆円余の減税は別といたしましても、所得税の正しいあり方から押せば、この十五段階を、アメリカは十四段階を三段階にしようということを財務省は考えているようでありますけれども、この刻みをどのくらいにすればいいかという課題は大変難しい課題でありますし、しかも、課税最低限も上げて所得の少ない人も減税の恩恵を受ける。なおかつ、これは刻みのバケットの幅、つまり何百万円から何百万円の人を一番緩やかにしなければいかぬかとか、あるいはそれに従って最高税率をどのくらいにしていくかということも絡んでくる、大変ややっこしい問題であります。  もう一つだけお伺いしておきたいのは、今、独身貴族、熟年こじき、余りいい言葉じゃありません、こじきというのはぐあいがよくありませんが、貧乏と申しましょうか、熟年貧乏というような言葉が言われておりますように、いろいろな統計を見ましても、四十代から原則定年までの五十五歳までが一番負担が重いのですね。  ここに総務庁の家計調査、五十八年度でありますけれども、あるわけでありますけれども、自動車関係、これは若い方が多いので、だんだん年をとるに従って減っていくのであります。それから一般外食費、これも若い人は外で食べるけれども、だんだんこれも減っていく。逆に年齢が上になるに従ってふえていくものが、一つは交際費であります。それから旅行に出る、こういう旅行費というもの。それともう一つ、一番重要なのは教育費であります。これが四十歳から、一番高いのが四十五歳から四十九歳ぐらいのところ、ここが一番教育費というのががくっとかかってくるわけであります。そして五十五ぐらいまでのところ。したがって、四十から五十五ぐらいまでのところが一番教育費がかかってくるわけであります。今申しましたように、自動車関係費が下がっていく分と交際費が上がっていく分でこれは大体いわばツーペイになるわけでありまして、その意味では年をとるに従ってふえてくるのは教育関係費と旅行費、旅行費は大した伸びじゃないので、やはり一番重要なのは教育関係費の伸びが大変重くなってくるということであります。  これを今度は総務庁の家計調査、五十八年のものを見てみますと、年齢別に見る教育関係費の支出割合というのを見ますと、三十五歳から三十九歳というのが一万三千二百円であります。それから四十歳から四十四歳が二万一千百三十八円、それから四十五歳から四十九歳というのが三万五千九百二円、それから五十歳から五十四歳というのが三万三百三十一円というように、四十五歳から五十四歳ぐらいまでが三万円台と大変重くなっておるわけであります。  こういった家計の実態を考えてみますと、私は所得税の、いわば日本の社会を支えている中堅層、このあたりというのを、しかも家計の中で教育関係費が一番重い負担になっているこの四十歳から五十五歳ぐらいまでというのでしょうか、そのあたりにいわば焦点を当てて、この累進税率というものをもう少しカーブを緩くするという視点に立って今後の所得税減税というのは考えるべきではないかというふうに思いますが、いかがでございましょうか。
  258. 竹下登

    竹下国務大臣 今の佐藤さんの御意見というものがやはり中期答申などの議論の大宗をなしたものではないか、私はそのように理解をしております。  ただ、一般論で申しますと、課税最低限を構成します諸控除と税率というのはまさに負担水準、累進構造を決める所得税制の基本的な点でございますので、その辺を予断を持って申し上げるわけにも、私が意見を吐くわけにもいかないのでございましょうが、今の意見、そして今までいただいておる答申、そういうものと今資料をもとにして御発言がありましたのが国民生活の状況だろうと思います。そういう広い観点から総合的に判断される事柄であるというふうな事実認識は私も持っております。  いつも私どもも悩みますのは、個別案件に着目する各種の控除措置というものに対する、ある意味においてまた悪平等が生じてくる。だから、相対的に今おっしゃったような指摘される層が教育費等が一番かかるときでございますから、その辺が結果として手厚くなるというようなことはだれしも好ましいと考えておるではなかろうかというふうに私も思います。
  259. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それを今度は年齢を、税制でありますから所得階層に引き直す作業というのは実はなかなかいいデータがありませんで、なかなか難しいのでありますが、総理は二百万円から六百万円ぐらいの方々を軽減をしたい、こういうことを言われているわけですね。これは大変ありがたい話でございまして、今、所得税納入人員を所得階層別に見てみますと、百万から二百万の所得でございますけれども、この方々が七百万人、これが二二%、それから二百万円から三百万円が八百四十万人、これが二六・四%、ざっと四分の一が二百万円から三百万円の所得の方であります。それから三百万円から四百万円の所得の方が六百三十四万人、二〇%、それから四百万円から五百万円が四百十三万人と一三%いらっしゃるわけでありまして、これは合計しますと、六百万という刻みがないものですから、これは平均をしてみますと、ざっと五九%ぐらいの方が、総理の言う二百万円から六百万円ぐらいの方をひとつ軽減をしましょうということになりますと該当する。これは、そういう意味ではまことにありがたい。  ただ、先ほど申しました生活実態からいきますと、所得二百万円から六百万円というのはちょっとカバーし過ぎじゃないか。財源との兼ね合いもございますが、カバーし過ぎじゃないかという感じがするのであります。それは大蔵省が知恵をつけたんだと思いますが、総理の言われております二百万円から六百万円の所得の方を対象にして所得税減税をやりたいというのは、一体どこから出た話でございましょうか。
  260. 竹下登

    竹下国務大臣 私も聞いておりまして、二百万から六百万というと相当なものだな、今、独身でございますと九十六万七千円までは所得税がかからないわけでございます。そこで、二百万円といいますと、少し今円安でございますけれども大体一万ドル、日本の一人当たり平均所得ぐらいになるのかなと思って私も聞いておりました。それでまた、これはちょうど学卒初任給四・九のボーナスを入れれば大体そんなものかな。そうしますと、少しインクルードする範囲が大きいなという印象を受けながら聞いておりました。だから、総理の言った趣旨は、いわば中堅というふうな意味で言われたのではないかな、家族構成の問題等も念頭にあるのかな、これは一遍聞いてみようと思っておりますが、大体中堅所得階層というような意味で言われたんじゃないかな、そういう感じがしました。  私も、この間、我が方の自衛隊と米軍関係の比較をしてみますと、昔の軍曹でございますが、軍曹ぐらいまでは日本が高くて、それから曹長あたりで抜かれまして、今度はずっと上へいきますと累進税率でまた逆に余計影響を受けますので、大将ぐらいになると名目で倍、実質では三倍ぐらいに向こうがなるのかな、こういうふうな感じで見ておりまして、どの辺に焦点を当てるかというのもまさに税調で議論なされる課題だな、こんな感じがしております。
  261. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 二百万から六百万と言っても、一体十五段階の刻みを何段階ぐらいにするのか、それから累進税率をどのぐらいにするのかによっていろいろなことが変わってくるわけでありますけれども、いろいろな意味で生活実態から見てどこの層に焦点を当ててやらなければいかぬかというのは、なお一層研究する必要があると私は思うのであります。  まだいろいろ課題があるのでありますけれども、時間がなくなってまいりましたので、もう一つだけ、企業課税の問題についてお伺いしていきたいのであります。  総理は、法人税を減税しようという話はこの場では余りなかったのでありますけれども、恐らく自民党さんの方では、いろいろと財界の関係もあるでしょうし、昨年、二年限りという暫定で法人税率を上げたという経緯もあったので、それが頭にあって法人税の減税ということを言われたのじゃないかと思うのであります。これは投網的でない消費税を入れたという前提でのお話のようでございますけれども、この企業課税についても従来いろいろ実は問題があったわけでありまして、例えば配当軽課税率の問題とか受取配当益金不算入の問題とか、あるいは準備金、引当金の問題とか租税特別措置の問題とか、今までたくさん議論があったわけであります。  そこで、私は今後非常に重要になってくるだろうなと思いますのは、この二年間の暫定ということにした法人税率の引き上げを来年はどうするんですかということをお伺いしたい。というのは、一体その場合に法人税率というのは、国際的に見て日本の法人税率というのは財界が言うようにそんなに高いのかね。どうも私の見たところでは特別な企業の特別な、特別措置を使って実質負担率というのを出して、いやアメリカのGMなりGEはこんなに安いんだということを出しているようでありまして、どうもこれは実態に合わないんじゃないかという感じがしますので、これは私は来年のこの法人税率、暫定税率になっているものをどうするかというときに、国際比較の問題というのは非常に重要な課題になってくると思います。しかも税率というのは、これは釈迦に説法でありますが、だんだんこれは国際化してくるのですね。どこの国だけが特別法人税率が高いなんといったら、その国から企業は逃げちゃうわけでありますから、だんだん国際化してくるということになりますと、この国際比較というのはそれはそれなりに私は非常に重要な要素になってくると思うのでありますが、財界とどうしてそんなに違うのかということが一点。  それからあわせて、この暫定税率に、なぜ暫定ということにしたのかということを一緒にお答え願いたいと思うのであります。  それからあわせてお伺いしておきますが、時間がありませんので、欠損法人、俗に言う赤字法人ですね、これについても随分かねてから大蔵委員会でも議論がありました。赤字法人は国の税金は一銭も払わなくてもいいのかねということはいろいろ議論があったわけであります。前の二つの質問の前に、ちょっとこれについてお伺いしたいと思いますが、きょうは自治省から来ていただいていると思いますが、地方には欠損法人、赤字法人でも税金を払うようになっているわけでありますが、それはどういう思想、どういう考え方に基づいて地方には赤字法人でも税金を払うようになっているのか、税の思想と申しましょうか、考え方と申しましょうか、それだけ、簡単で結構でございますから、ちょっとお答えを願いたいと思うのであります。
  262. 矢野浩一郎

    ○矢野政府委員 お答え申し上げます。  お尋ねのことは恐らく法人住民税の均等割、こういったものを指しておられるかと思うのでございますが、地方税は、もとより限られた地域社会の中におきまして地方公共団体の財政需要をそれぞれ負担をし合うという負担分任の考え方、これはやはり重視するということに相なっておるわけでございます。それから同時に、やはりそういった地方税の特徴から、行政サービスとの対応関係、これを重視するということになっておるわけでございます。そういう観点から、例えば法人住民税均等割につきましては、資本の金額によって段階差を設けておりますけれども、一定の定額で所得の有無にかかわりなく御負担をいただく、こういうことにしておるところでございます。
  263. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 事業所税の方は。
  264. 矢野浩一郎

    ○矢野政府委員 もう一つ、事業所税という税がございますが、この事業所税は昭和五十年度に設けられた税でございますが、これは先ほど申し上げました地方税において重視をしておる原理原則の中で特に受益、応益関係、これをやはり重視した観点に立った税でございまして、人口や企業が集中する一定規模以上の都市、これにつきましてはやはりそれなりの行政需要があるわけでございます。そういったものに対して。これを定額あるいは定率で、これもまた所得の有無のいかんにかかわりなく御負担をいただく、こういう考え方に基づいておるものでございます。
  265. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 局長、書類があれだったらとっていただいていいのですが、事業所税というのは、これは使う目的が決まっていますね。ちょっと例示をしてみてください。
  266. 矢野浩一郎

    ○矢野政府委員 事業所税でございますが、これは目的税でございまして、御指摘のように使途が定められておるわけでございます。事業所税の使途は、道路、都市高速鉄道、駐車場その他の交通施設の整備事業であるとか、あるいは公園、緑地その他の公共空地の整備事業、あるいは水道、下水道、廃棄物処理施設その他の供給施設等の整備事業、あるいは河川その他の水路の整備、学校、図書館その他の教育文化施設の整備、あるいは公害防止に関する事業、防災に関する事業などでございます。
  267. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 今大臣お聞きになりましたように、地方では応益負担と申しましょうか、事業が赤字であっても今局長から言っていただきましたような道路とかあるいは公園とか水道とか河川とか学校とかを使うわけでありますので、その行政サービスの対価として一定の規模を、法人住民税の均等割であれ事業所税であれ、その所得の有無あるいは大小にかかわらずその行政サービスの対価としての税金を払うことになっているわけですね。今や百六十万と言われております企業のうちのざっと半分、六割近くと言った方がいいと思いますが、六割近くがこれは欠損法人になっているわけであります。その資本がほとんど一億円以下の中小企業であるということは私も存じているわけでありますが、法人税の減税をするという際には、総理が言われたように公平、公正ということを、直したいというならば、これは地方でも応益的に行政サービスに対して払っていただきますということで税金を取っているなら、国もこれはやはり今局長に挙げてもらったような国の道路だってあるいは港湾だって、国鉄だって公園だって上下水道だって、あるいは河川だって、法人というのは国の機関も施設も使っているわけでありますから、これは私はやはり国の法人税の体系の中に応益的な負担を求めてもいいのではないか、いや求めるのが、これの方が私は公平ではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  268. 竹下登

    竹下国務大臣 御案内のとおり、赤字法人といえども租税によって賄われております公共サービスの恩恵を受けますし、また、今御指摘なさったほかにもいわゆる防衛費などというものもこれはあるわけでございますから、とにかくその国の中に存在する限りにおいては恩恵を受けておる、全法人の今おっしゃったとおり約五〇%が赤字申告を行っておる、だから何らかの応益的負担も地方税と同じようにやるべきではないか、この意見は絶えずある意見であります。  問題は、現行の法人税が法人の企業活動によって稼得した所得に課税する所得課税を建前としておる、したがって所得のない赤字法人に所得以外の指標に基づいて外形標準課税のような直接的な課税を行うことは、法人税がいわば所得税であるという、その基本の問題にかかわるという問題であるわけであります。  そこで、この赤字法人課税のあり方については、税調等でも所得課税である法人税の性格、企業に対する他の租税との関係等幅広い角度から検討をしていくべき課題だというふうな考え方になっておるということでございます。だから、まさに国税は応能主義であって、地方税は応益主義、そこのところのきちんとした今までのけじめに対してどういうふうな論理を展開していくかということが問題であろうと思っております。  それから、今の御質問がありました……。
  269. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ちょっと大臣、それは後に……。  地方税は応益主義、国税の方は応能主義というわけでもないのですよね、御承知のように。地方だって法人住民税の均等割じゃないのを取っているわけでありますから、必ずしも峻別されているわけじゃない。  それから、大臣言われますように、所得課税である法人税の体系の中に、法人税という中に一項を設けてこういった地方税におきます法人住民税の均等割のようなものを法人税の体系の中に入れるのは、私はちょっとこれは無理だと思うのです、対比は。ただし、別の項を起こしても、これは前提として私が申し上げているのは、総理が法人税も減税をしたいと言われるから、それならやはり公平、公正を期すという面からいって、赤字法人だからといって全く国の機関を使ってない、施設を使ってないわけじゃないのだから、やはりこれは入れるべきじゃないか、それは体系として別に法人税のような所得課税の体系ではなくても私は結構なんですが、やはりこれはこれをすることが私は公平、公正という総理の言われる理念からいって当然なのではないかと思うわけであります。この問題は、第九十四回の昭和五十六年三月二十五日に、当時の鈴木内閣総理大臣に我が党の堀委員からもお話があって、鈴木総理は、何か少し勘違いしているような気がするのですが、固定資産税との問題との関連をちょっと言われているので、これは固定資産税とは少し違う問題だと思うのでありますが、いずれにしろかねてからの懸案になっている話でございまして、総理が言われますように、シャウプ勧告なり以来の税制のゆがみをやはり直すという中で重要な課題として私は考えていかなければならぬことじゃないだろうかと思いますので、なお一層ひとつ検討をお願いをしたいと思うのであります。  それで最後に、これから法人税の負担の高さの問題、重さの問題というのが大変大きな課題になってくると思いますので、先ほどちょっと質問させていただきました、日本の法人税率というのは、実効税率なりあるいは実負担の率からいって、そんなに財界が言うほど日本の法人税率というのは一体重いんだろうかということについて、なぜこんなに財界の言うのと大蔵省の御説明とが違うのか、これは非常に今後重要な私は課題になってくると思いますので、その辺をつまびらかにしていただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  270. 竹下登

    竹下国務大臣 今の問題で、最初の問題の締めくくりとして申し上げておかなきゃならぬかなというのが一つございましたのは、税調答申でも、この法人税、赤字法人についての問題で、最後のところをちょっと落としましたが、答申の中でも今おっしゃったような意見がある。「当面、法人の申告状況の実態等を踏まえ、新たに実質的に大きな負担を求めることとならないよう配慮しつつ、所要の措置を講ずることも検討されてよいものと考えられる。」だから非常に複雑な心境での答申だったな、こういうふうに理解しております。  それから、企業課税の財界の言っているのと大蔵省の言っているのと、いわゆる実効税率と実質税負担率でいつも議論しておりますが、私は、基本的にはお互い勉強はしなさい、だが、いかにもとらえる前提を異にして意見が対立しておるような印象は双方のためによくありませんよ、こう申しておるところでありますが、ちょうど大山審議官が来ておりますので、御説明申し上げます。
  271. 大山綱明

    ○大山政府委員 お答え申し上げます。  財界が申しております法人税の負担、これは実質税負担率と申しておりますが、これは私ども大蔵省あるいは税制調査会において従来からとっております実効税負担率、これは現在日本の場合に五二・九二%で、西ドイツよりも低い、しかしフランス、アメリカ、イギリスより若干高い水準でございます。それに政策税制、つまり日本でいいますと租税特別措置、これを単純に修正をいたしまして出しているものでございます。  私どもの基本的な考え方は、こういったような政策税制、いろいろな要請に基づいて行われます政策税制を直接的にこういう税負担、税率というものにはね返してそこで比較をするというのは、政策税制というのが企業ごとに差別的にも働きますことでもありますし、事業ごと、年度ごとにも違ってまいりますので、必ずしも適当ではない。また政策税制といいますものは、これはその国その国のいろんな事情に基づいてできているものでございますので、それを反映させた実質税負担率で比較するよりは私どもがかねて申しております実効税率で比較をいたすのが適切だ、かように私ども考えている次第でございます。
  272. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 終わります。
  273. 大西正男

    ○大西委員長代理 これにて佐藤君の質疑は終了いたしました。  次に、神田厚君。
  274. 神田厚

    神田委員 大臣の時間の関係もあるようでありますので、最初に厚生大臣から二、三当面の問題につきましてお答えをいただきたいと思います。  大臣はこれから、今いろいろと御尽力をいただいておりますところの中国の残留孤児の肉親捜しの関係でお出かけになるということでありますが、非常な関係者の努力にもかかわらず、なかなか成果がもう一つというような状況でありますけれども、厚生大臣といたしまして今後この問題につきましてどういうふうな対策を立てていくのか、新たな展開をどういうふうに考えているのか、その点をお聞かせをいただきたいと思います。
  275. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 御指摘のように、終戦後かなり時間がたっておりますので、だんだん身元判明のパーセンテージが悪くなっておるわけでありますけれども、私どもといたしましては、孤児の訪日前に厚生省みずから中国へ渡って調査もいたしたいと思っておりますし、これまで行いましたのは身元判明をした孤児について帰国を図っておったところでありますけれども、身元が判明しない孤児につきましてもできるだけ日本国籍が取れ、日本に永住できるようにしたい、そういう方向で努力をいたしているところでございます。
  276. 神田厚

    神田委員 私どももちょうど肉親捜しに訪れておりますところの人たちと同じような年代でありまして、人ごとに思えないこともたくさんあるわけでありますので、ひとつ施策の面におきまして一層の御尽力をお願いをいたしたいと思っております。  さて、次に、過日起こりましたにせ制がん剤の問題でありますが、この問題に関しまして厚生省としてはどのような対応をなさったのか、まず御報告をいただきたいと思うのであります。
  277. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 今御指摘がございましたにせクレスチン事件でございますが、この事件は大変遺憾なことでございますけれども、本件につきましては、事件が発覚しましてから直ちに各都道府県を通じまして関係業者に対して正規品とにせの薬の判別方法を周知徹底させるとともに、それによりまして、にせの医薬品の流通の防止を図る、それから、警察当局とも連絡をとりまして、正規品の販売業者であります三共株式会社を通しましてにせ制がん剤を購入したおそれの強い医療機関等に情報提供を行わせまして、使用の防止とその回収に当たらせたわけでございます。  この結果、今回の事件にかかわりますにせクレスチンにつきましては、回収が非常に速く進みまして、事件が判明した後一カ月足らずの間に回収がすべて終わりまして、その時点におきましてそのほかに使用、流通しているものはないという確認をとったところでございます。
  278. 神田厚

    神田委員 お聞きいたしますけれども、そうしますと、現実に使用した病院はなかったのでありますか。その実害といいますか、使用状況、対象の病院等についてはどういうふうな調査結果をお持ちでありますか。
  279. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 全部でにせの医薬品として製造しましたのが二百四十箱でございます。これは製造した本人もそう言っております。その中で警察当局が押収いたしましたものが百十五箱、それから三共株式会社で回収いたしましたものが七十五箱、それから病院等で使用しましたものが約五十箱ということになっています。ただ、病院の分はどこの病院がというのは、今ちょっとリストを調べますので、後ほどお答えします。
  280. 神田厚

    神田委員 前に同じように肝臓薬のにせ医薬品問題がございまして、私も委員会で取り上げたことがあるのでありますが、同じような現金問屋を通じて同じような問題が再発をしているというところに薬の流通等をめぐる厚生省の指導に問題がある、こういうように思いますが、その辺のところはどうでありますか。
  281. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 今もお話がございましたグルタチオン事件というのが五十一、二年にかけまして発生しております。このときは、先生十分御案内のように、販売業者等からの通報がかなりおくれましたものですから、大きな問題になったわけでありますが、その際に、そういう経験も踏まえまして、厚生省といたしましては、関係業者に対しまして、偽造の医薬品の疑いのあるものを発見した場合には速やかに関係行政課に通報するようにという指導通達を出しております。それによって指導しております。  今回のにせクレスチン事件でございますが、まことに遺憾な事件であることは間違いございませんけれども、前の事件と違いまして、非常に早い時期にその品質等に疑問を抱きました販売業者から通報がございました。先ほど申しましたように、厚生省はそれを受けまして直ちに関係業者あるいは医療機関を指導いたしまして、また、警察の御協力も得まして、にせ薬が大量に使用されることは一応回避できた、こういうことでございます。  しからば、今後の対策はどうかということだと思いますけれども、このような事件にかんがみまして、これからの対応といたしましては、例えば取引価格等から見てその品質に疑問を抱かせるようなそういった医薬品を取り扱う業者に対しましては、薬事監視というものを重点的にやってみるというようなことも考えております。もちろん医薬品の品質のチェックあるいは先ほど申し上げました異常を発見した場合の早期通報といった点につきましても、念を入れて引き続き努力をしてまいりたい、このように考えております。
  282. 神田厚

    神田委員 そうすると、さらにお聞きいたしますが、この問題については、にせクレスチンは実害はなかったということでありますか、使用された病院において現実使用がなかったということでありますか。
  283. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 正規のクレスチンは、サルノコシカケ科のカワラタケというのを原料にしております。これに対しまして偽造の方は、同じサルノコシカケ科でございますが、マンネンタケというのを原料にしております。これは学問的に人体に消化、吸収いたしませんので、直接的な保健、衛生上の危害はなかったということを確認しております。
  284. 神田厚

    神田委員 ちょっと説明があいまいですが、現実に使用されたのですか、病院において使用されたのですか。
  285. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 先ほどお答えしましたように、二百四十箱の中で五十箱は使われております。それは保健、衛生上の直接の危害を及ぼすようなものではないということでございます。
  286. 神田厚

    神田委員 これはちょっと問題ですね。薬効のない薬を使わせていて、しかし問題がないというのは、答弁おかしいじゃないですか、それは。
  287. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 説明が不十分だったかもしれませんが、もちろんこのにせ薬が使われたという事態は甚だ遺憾であるということは先ほど申し上げたとおりでございます。ただ、もちろん効果はないのでございますが、直接的に人体に危害を生ずるという点はなかったという趣旨を申し上げたわけでございます。
  288. 神田厚

    神田委員 そうじゃなくて、クレスチンというのは制がん剤でしょう。がんの進行を予防するという積極的な薬効を持っているわけですね。ところが、にせのものは、結局何にも人体には害はないけれども、制がんの効果は持たないわけだから、そういう何かわけのわからない答弁じゃ困りますね。  それともう一つ、使われた病院に厚生省の管轄の病院があるわけでしょう。その辺のところはどうなっているのですか。
  289. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 にせのクレスチンが有効性がなかったということは、そのとおりでございます。ただ、直接的に害があるようなものではなかったということで、もちろん、薬としてはにせでございますから、効果はなかったわけでございます。
  290. 神田厚

    神田委員 制がん剤は、その期間制がんの効果があって制がん剤であるのだから、その期間違うにせの薬を飲まされたということは、いわゆるがんの進行を防止できなかったという意味があるわけでしょう、それは。
  291. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 効果がなかったということを申し上げておるので、そこはそのとおりでございます。  それから、病院の件でございますが、たくさんありますので、ちょっと後でお渡ししてもよろしいのでございますが、この中では県立病院がございますが、厚生省の管轄の病院はございません。
  292. 神田厚

    神田委員 それでは、これで使われた、にせで使われた薬においても、患者さんはお金を払うことになるのですか。
  293. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 診療報酬のお話なので、これは保険局の所管になりまして、私、担当ではございませんが、私の承知している限りを申し上げますと、いろいろ現実的問題としては難しい面があるようでございます。例えばにせと本物が両方が入りまして、どの患者さんがにせものを飲んだかという確認はなかなか難しいという問題が一つあると思います。  もう一つは、この薬独特の話でありますが、制がん剤でございますから、例えば患者さんに返すというと、がんであることがわかってしまうというような難しい問題があるようでございますが、今の保険局の考え方は、それは当然返還させるべきものだということを私は聞いております。
  294. 神田厚

    神田委員 大臣にお聞きしますが、今のような答弁でありますね、大変遺憾なことでありまして、これは厚生省の行政指導等にも問題がたくさんあることであります。しかし、それはそういう意味で、できたこの問題についてどういうふうな最終的な処置をとるのか、大臣としてひとつお答えをいただきたいと思います。
  295. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 ただいままでの対策を聞いてみますと、メーカー並びに流通段階に対してはかなりチェックをしておったようでありますけれども、直接、医療機関がもう一遍本物であるか、にせものであるかということを購入の時点で確認をするということに欠けておった面があるのではないかと思いますので、その面においてこれから指導してまいりたいと思います。
  296. 神田厚

    神田委員 さらに、このにせ医薬品を使用された患者の診療報酬の問題については、大臣、どういうふうにお考えでありますか。
  297. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 事務的なことでよくわかりませんけれども、ただいま業務局長が申しましたようないろいろな実態調査をしながら、医療機関と協議をしなければならぬと思います。
  298. 神田厚

    神田委員 ちょっと、はっきり答えてもらわないと、これは道徳的に考えても、いろいろな意味に考えても、にせの薬を飲まされて金を払わせられるなんて、こんなばかな話が通ったら脳がおかしくなっちゃうじゃないのですか。もう一度、大臣。
  299. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 法的に言いますと、全くだまされておった、これは流通段階の話でありますけれども、持ち込んだ人に本当にだまされたということで、今回、警察に起訴されていないというようなこともございますので、そういうこともあわせて考えて厳正な処置をとりたいと思います。
  300. 神田厚

    神田委員 やはりこれはにせ医薬品を飲まされた患者の気持ちにもなって、きちんとした処置をとっていただかなければならないと思っております。  さて、次に、脳死問題でありますが、国会におきましても、先ごろ超党派の生命倫理研究議員連盟が結成をされました。また、厚生省におきましても、脳死の判定の全国統一基準づくりを進めているというふうに伺っておりますが、まず世界各国におきますところの、脳死を死と認めているのかどうか、その辺のところの問題はどういうふうになっておりますか。
  301. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 三つに分けまして、一つは法律で決めておるところでございます。もう一つは、法律では決めておりませんけれども、事実上それでやっている、それから三番目は、認めておらない、こういうところでありますが、初めの範疇に属する国といたしましては、アメリカの多くの州、カナダ、フランス等がございます。二番目の範疇に属する国といたしましては、西ドイツ、イギリス等がございます。三番目は、スウェーデン等でありますが、三番目は、今日少数派であると承知をいたしております。
  302. 神田厚

    神田委員 この問題につきましては、過日、日本で初めての膵臓移植を行いました筑波大学の岩崎洋治教授ら三人が殺人罪などで東京地検に告発をされておる事件が起こりました。この問題について厚生大臣はどういう御感想をお持ちでありますか。
  303. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 本件に関しましては既に告発がされておりますので、その事件そのものについてコメントすることはお許しをいただきたいと思うわけでありますけれども、しかしながら脳死状態から臓器を摘出する、このことについてもいろいろ議論のあるところでございますけれども、この問題が国民の間に広く議論が行われ、一定の結論が出ることを期待いたしておるわけでございます。
  304. 神田厚

    神田委員 前に日本で心臓移植があって問題になりましたが、この事件と今回の事件との違いはどういうふうなところにありますか。
  305. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 今回は特に脳死と判定をする人が手術するグループとは全く別の医師団によってなされたというところに違いがあると思います。
  306. 神田厚

    神田委員 これまでには、世界で約千例近い心臓移植等が行われておりますけれども、日本におきますところの臓器移植の希望者も年々非常にふえているというふうに聞いておりますが、例えば日本におきまして腎臓移植が行われた例とか、あるいは臓器移植の希望者というものがどのぐらいあるかについて、厚生省はどういうふうな把握をしておりますか。
  307. 大池眞澄

    ○大池政府委員 お答え申し上げます。  日本におきます腎臓移植の状況について全国的に掌握しておりますのは、日本移植学会において調査が行われているわけでございまして、そちらの資料によりますと、腎臓移植数が昭和三十年から五十八年十二月末までで二千八百四十回というふうに報告をされております。  なお、腎臓移植の希望者という点についてのお尋ねでございますが、これも同様に移植学会で掌握している数といたしましては約五千名ほどあるということでございます。
  308. 神田厚

    神田委員 この問題は大変デリケートな問題でありますけれども、移植希望者が大変多い。さらに、臓器移植を申し出ている人もかなり出てきているというような状況で、ひとつ厚生省といたしましていろいろと御検討をいただきたい、このように思っております。  大臣、個人的な感想で結構でございますが、大臣といたしましては、脳死を死とするという、先進諸国においては大体そういう傾向があるようでありますが、そこのところについては、どういうふうにお考えでありますか。
  309. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 これは私の個人的な見解でありますけれども、やはり国民性というものも考えてみなければなりませんし、死というものに対する倫理観というものの差があるのかないのか。実は厚生省でもそういう意味で医学の方の勉強と生命倫理に関する諸問題についての懇談会でいろいろ論議をしておられるところでございまして、それらを踏まえまして、幅広い分野からの国民的な合意が得られるまで待ちたいというふうに思っております。
  310. 神田厚

    神田委員 この問題は、同時に人工臓器の研究の推進とあわせて考えていかなければならない問題であることは十分承知しておりますが、厚生省として、以上いろいろ研究をしているその取りまとめはいつごろなさって、いつごろその研究成果の発表をしていただけますか。
  311. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 先ほど申し上げましたように、医学的な結論は私は恐らく一年のうちに出るものと思っておりますけれども、それとは別な倫理的な問題で国民的な合意ができるかどうかということは予測しかねることであろうと思いますけれども、しかし、こういう議論がたびたび行われるということがそういう面でのコンセンサスを得る方法の一つでもあろうと思いますので、今後とも十分研究をしてまいりたいと思います。
  312. 神田厚

    神田委員 具体的に厚生省が今、その基準を探っているでしょう。それの結論というのはいつごろ出すのですか。
  313. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 脳死についての医学的な判定基準に関する研究でございますが、五十八年度から始めておりまして、五十九年度中には何とか結果を取りまとめていただけるように、今研究班では努力をしていただいておりますけれども、三月末よりか若干おくれることもあるように伺っております。
  314. 神田厚

    神田委員 大切な問題でありますので、ひとつ前向きに御検討をお願いしたいと思います。  それでは防衛庁長官に、防衛問題についていろいろ御質問を申し上げます。  最初に、GNP一%と五九中業の関係でございますが、昨年、四月十日の参議院の予算委員会におきまして、我が党の伊藤議員の質問に対し、粟原前防衛庁長官は、GNP一%枠は当初予算でも補正予算でも守り、決算段階でも尊重していきたい、こういうふうに答弁をしておりますが、加藤長官はどういうふうにお考えでありますか。
  315. 加藤紘一

    加藤国務大臣 御指摘のとおり、粟原長官がGNP一%に関する閣議決定の方針については補正予算及び決算についてもその趣旨は尊重されるべき旨の答弁をしていることは事実でございます。私たちも、六十年度の当初予算につきましては、GNP一%の枠を守ったところでございますけれども、今後の動向につきましては、いろいろ不確定な要素もありまして、現在、確定的なことを言える段階ではないと思っております。     〔大西委員長代理退席、委員長着席〕
  316. 神田厚

    神田委員 それは加藤長官の答弁でありますが、昨年四月の段階で、前防衛庁長官が補正予算でも決算の段階でも、補正予算でも守るし、決算でも守ると言っているわけです。ですから、六十年度においても、当初は守ったけれども、そうすると、補正では守れないということですか。決算ではそのことについて尊重できない、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  317. 加藤紘一

    加藤国務大臣 当初予算では一%の枠を守りましたけれども、今後につきましては、GNPの動向、それからベアの動向、それに対する政府全体としての方針の決定等ございまして、現在のところ、確定的なところは申し上げられる段階ではございません。(「総理は守りたいと言っている」と呼ぶ者あり)
  318. 神田厚

    神田委員 総理大臣は守りたいと育っていますね。それから、その守りたいということが一つの合意になっていたわけですが、防衛庁長官は今の答弁を聞くと、これはやはり補正では無理だということのニュアンスが非常に強いですね。
  319. 加藤紘一

    加藤国務大臣 総理大臣と私たちも同様に一%の枠は守りたいと思っております。
  320. 神田厚

    神田委員 それでは、GNP一%の中身の問題でちょっと数字をあれしてひとつ大臣の見解を聞きたいと思うのでありますが、五十九年度の防衛費は、結局、補正段階におきまして二兆九千六百十五億円、その中で問題として私ども考えますのは、節約額が四十九億円、不用額が三十五億円、この合計八十四億円というものがあったために、GNP一%の中におさまった、こういうことです。これは間違いないことですからね。  ところが、六十年度の防衛費は三兆一千三百七十一億円。それで、これをずっと考えていきますと、六十年度のGNPと一%の相当額は、GNPが六・一%増加したとして三百十四兆六千億円、一%の相当額が三兆一千四百六十億円。そうしますと、この一%を守るということになりますと、防衛費との差額では八十九億円であります。ところが、六十年度予算の中で既に給与改善費が百三十三億円あるわけでありまして、こういうものをずっと計算をしていきますと、到底補正後の防衛費はこの一%の枠の中におさまり切れない。よほど節約をするかあるいは不用額をたくさん出すか、そういうことでなければおさまらない。また、仮にGNPの枠をさらに上げまして六・五%というふうに見ましても、それでもなお我々の考え方ではこの枠の中に入らない、こういう試算がありますが、どうですか。
  321. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 お答えいたします。  今、委員のおっしゃいました前半の五十九年度補正予算の話でございますが、これは節約が四十九億円、それから不用で出しましたのが三十五億円、おっしゃるとおりでございますが、この両方が仮になくて節約だけでございましても、GNP一%の中には入っているかと思います。  それから、後段の六十年の計算でございますが、委員の今おっしゃいました計算はある前提に基づいておっしゃった計算だろうと思いますが、おおむね私ども今申し上げておりますのは、計算の結果と申しますのは前提の置き方次第だと思っておりますが、GNPが現在の政府見通しのとおりとし、それから人事院勧告の実施が仮に昨年どおりということであれば、お話のようなことになろうかと思います。
  322. 神田厚

    神田委員 ですから、この問題は、防衛庁長官が補正で一%を守るということをはっきり言えない根拠になっているわけですね。これは、長官正直だから、補正ではこれは守れない。急に大変な六・七%なりそういうようなGNPの成長があれば別だけれども、そうでなければ、六・五%、一番上をとってみても守り切れないというように経理局長が答弁している、どうですか。
  323. 加藤紘一

    加藤国務大臣 ただいま経理局長が申しましたように、仮にGNPが現在の政府見通しのとおり推移し——これは六・一%でございますけれども、そして仮に昨年並みのベースアップが政府によって、閣議によって決定されるというようなことがあれば、それは補正になるわけですから、そのベースアップ分はですね。そうしますと、数字上は一%の枠を超えるということは、数字的にはそのとおりだと思います。
  324. 神田厚

    神田委員 数字的にはそのとおりだということは、一%を超えるということを認めたことですね。
  325. 加藤紘一

    加藤国務大臣 たびたび申して申しわけありませんが、GNPの見通しと、それからベアにつきどういう人勧が出るか、それを政府がどう対処方針を決めるか、そこが不確定でございますが、ということを前提の上で、なおかつ先ほど言いましたようなGNPの今後の見通し、それからベアの数字と仮定すればということでございます。
  326. 神田厚

    神田委員 これは大変、防衛庁長官、大事なことを今言っておりますね。補正でそういう状況になれば守れないということを明確に言っております。  それでは、ひとつそのことについて角度を変えてちょっといろいろなことについて質問をいたします。  まず私は、昨年四月十二日の衆議院の決算委員会におきまして、この質問の中で、防衛庁は、補正予算段階の防衛費に対応するGNPは、その時点における経済の実績見込みの数字と答弁をしているわけでありますか、これは間違いありませんか。
  327. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 GNP対比の比率を出すときのGNPは何か、こういうことかと思いますが、それはその時点におきます一番新しいところのGNPの見通しということになろうかと思います。したがいまして、補正予算のときには、通常でございますと企画庁が当初の見通しの数字を改定したものを閣議に御提出なさるわけでございます。したがいまして、その数字が分母としてのGNPとなるものと思います。
  328. 神田厚

    神田委員 この時期と分子と分母の関係でありますが、まず、この補正の問題も含めまして、衆議院の本会議あるいはこの委員会におきます矢野議員に対する答弁等におきまして、仮に一%を突破するような状況になった場合は、その時点において対応したいと言っておりますが、この時点というのはどういう時点なのか。  まず考えられますことは、補正予算後の防衛費の額が確定するについては、一つ政府が人勧の扱いを閣議決定したとき、二つには政府が国家公務員給与法の改正案を国会に提出したとき、さらに同法が国会で成立したとき、この三つのケースが考えられますけれども、その時点というのはどの項目に該当いたしますか。
  329. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 補正予算後の防衛費が確定するということを一般的に申しますれば、当然のことではございますが、政府が補正予算案を国会に御提出申し上げ、国会の御審議をいただいて議決されたときということになろうかと思いますが、しかし、今委員のおっしゃっておりますのは、「当面の防衛力整備について」というあの五十一年の閣議決定との関係で、分子として考えられるべき防衛関係費の補正予算の額はどう考えるのか、こういうことかと存じます。  あの閣議決定は、政府政府の意思決定をするに当たりまして一つの方針として出しているものでございますから、今委員のおっしゃいました幾つかのときというよりは、むしろ政府が補正予算の閣議決定をいたしたとき、こう考えるのが自然ではなかろうかと思います。
  330. 神田厚

    神田委員 政府が補正予算の閣議決定をしたときということですか。そうすると、時期的に補正予算の閣議決定というのは夏ごろですね。
  331. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 五十九年の例で申し上げますと、今委員のおっしゃいました人勧との関係で申しますと、人勧のございましたのは八月十日でございますが、人勧の取り扱いにつきまして閣議決定をいたしましたのは十月三十一日でございます。それから国家公務員給与法を同会に提出をしたというときは、これは防衛庁の場合は防衛庁職員給与法になりますが、これを国会に提出いたしましたのは十二月十二日でございます。それから同法が成立したのは十二月二十一日でございます。私が今申し上げました五十九年度の補正予算につきまして閣議決定をいたしたというのは十二月二十四日でございます。十二月二十四日ではなかろうか、こういうことを申し上げたわけでございます。
  332. 神田厚

    神田委員 かなりやはり後ろの方にずっと引っ張っていったような感じでございますがね。  その形で、その時点におきますところのGNPの問題、いろいろありますが、いずれにいたしましても、ただいま論議になったような形で考えていきますと、ことしの暮れまでには明らかにGNP一%を突破するというような形でありまして、防衛庁長官もこういう形で進めば突破をするということを言っているわけでありますから、これは大変重要な問題になってまいります。そういうことで一つの時期が明らかになったという点において次に移ってまいります。  五九中業の問題でありますが、昨年五月、防衛庁長官指示によりまして五九中業の策定が始まったわけでありますが、大体ことしの春ごろを目途に策定作業が完了するというふうに当初言われておりました。どういうふうなことになっておりますか。
  333. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  防衛庁の中業、すなわち中期業務見積もりは、防衛庁の部内の参考資料としてつくるものでございますが、五九中業の場合は、六十一年度から六十五年度までの五年間を対象にいたしております。六十一年度の概算要求の参考資料にするという必要がございますので、現在私どもといたしましては、この夏ごろまでにこれをまとめたいというような考え方をもって鋭意努力をしているところでございます。
  334. 神田厚

    神田委員 五九中業の策定に当たっては、一月二十三日の参議院決算委員会における答弁がありますが、一%枠とは関係なく策定する、こういう方針に変わりありませんか。
  335. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  この点はしばしば申し上げているところでございますが、中業つまり中期業務見積もりの性格の問題でございまして、防衛庁が概算要求等を行う際の内部参考資料であるということ、それから期間も五年間を対象としているといったような性格のものでございます。他方、御指摘の一%の閣議決定と申しますのは、年度年度の予算におきます政府としての判断のめどを示しているという性格のものでございます。  したがいまして、両者はもともと直接関連するものではございませんので、五九中業の作成作業を開始するに当たりましても、あらかじめ一定の枠を示すということはしておりませんで、長官の指示にもございますように、大綱水準の防衛力の達成を期するという方針で現在作業中でございます。  いずれにいたしましても、最終的に五九中業をどのように取りまとめるかということは、その時点で慎重に判断をいたしたいというふうに考えております。
  336. 神田厚

    神田委員 作業の中身でありますが、五九中業においても、五六中業で作成したように、防衛庁の参考資料として中業期間中の防衛費の総額とその年割り額を試算する、こういうやり方をするのか。  さらに、これは五六中業で内部資料という形で出ておりますが、この資料では既に上限下限がありますけれども、GNPの問題からしますと、〇・九七%から一・〇二%、既にGNPが昭和六十二年度までに一・〇二%まで膨らむ可能性があるということで試算がされております。こういう中で、五六中業で作成した試算には期間中の防衛費とGNPとの関係も試算されてきたわけでありますが、五九中業についての試算の結果、仮に防衛費がGNP一%を上回ることとしても、それは先ほど防衛局長から答弁がありましたけれども、現在の防衛費の一%の論議とは関係がない、こういうふうに防衛庁長官はお考えでありますか。
  337. 加藤紘一

    加藤国務大臣 先ほど防衛局長が申しましたように、一%の閣議決定とそれから五九中業の策定の作業はそれぞれ本来直接関連するものではない、こう思っております。  私たちとしては、「防衛計画の大綱」に定める防衛力の整備をできるだけ早くやってまいりたいという従来の方針どおり、それに基づいて五九中業の作業を進めてまいりたい、こんなふうに思っております。
  338. 神田厚

    神田委員 大変苦しい答弁で、防衛費の一%は守りたい、しかし五九中業なり五六中業なりの中身は既にGNP一%を突破するのは明らかだというふうなことでは、答弁自体が矛盾をしていて、ちょっと問題でありますね。それはやはりどちらかに合わせた形できちんと答弁してもらわないとちょっと困ります。
  339. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいま御指摘の問題はしばしば申し上げているとおりでございまして、中業の基本的な性格ということからただいま申し上げたようなことになるわけでございまして、私どもは五九中業につきましては、大綱水準の達成を期するという長官指示の方針に従って現在作業を実施しております。  最終的にどういう形で取りまとめるかということは、その取りまとめの時点で慎重に判断をいたしたいということでございます。
  340. 神田厚

    神田委員 それでは、時間の関係もありますので、次にシーレーン防衛と空中給油機の問題で御質問を申し上げます。  シーレーン防衛に万全を期すということにつきましては、洋上防空が不可欠であるわけでありますが、現在、その大半を航空自衛隊のF15、F4に頼らざるを得ない状況であります。F15の航続距離は四千六百三十キロメートル、F4の航続距離は二千九百六十キロメートルとされておりますが、行動半径は、それぞれ八百二十海里及び四面五十海里程度でありまして、実際に防空戦闘を行えばさらに短くなるわけであります。これで千海里の洋上防空を十分に行えるというふうにお考えでありますか。
  341. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  海上交通の安全確保を図っていく場合の脅威として考えられますのは、一般的に申し上げまして相手の潜水艦、水上艦艇、航空機等いろいろあるわけでございます。  近年、それぞれいろいろな技術水準が向上してきているわけでございますが、それに加えまして、高速で航続距離が長くて、それから射程の長い対艦ミサイルを搭載した爆撃機が出現しているという状況は確かにあるわけで、そういう意味で経空脅威が増大をしてきているということは御指摘のとおりでございまして、その意味で、私どもも防空能力の向上という点が重要であるというふうに考えております。したがいまして、私どもとしては、艦艇部隊への対空ミサイル、例えばターターですとか短SAMとか、そういったようなものを装備するとかあるいはCIWS等の高性能の機関砲、これを装備するとか、あるいはそれに五インチ砲、三インチ砲等を加えまして、幾重にも備えた防御体制を組むということで対処をしてきているわけでございまして、鋭意その整備に努力をいたしております。  それからまた、有事におきまして航空自衛隊の戦闘機が我が国周辺の空域で可能な範囲で防空戦闘を行うことはもとよりあり得ることで、これもしばしば申し上げているところでございます。さらに共同対処行動をとっております米軍の支援、これも期待ができるわけでございます。  そういったようないろいろなことを考えてやっていくわけでございますが、実際にどの程度できるかというのは、なかなかそれは一概には言いにくいという面があろうかと思います。  いずれにいたしましても、こういった能力の向上のために私どもは今後とも努力を続けていきたい、こう考えております。
  342. 神田厚

    神田委員 現在F4の給油装置が取り外されて、八十八セット分が岐阜の第二補給処に保管をされている。F4の給油装置を保管をしているという理由はどういうことですか。
  343. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 これは過去の長い経緯がございまして、F4からは空中給油のための装置を取り外しているわけでございます。ただ、これもしばしば申し上げていることでございますが、航空軍事技術の進歩の趨勢にかんがみまして、将来の空中給油機能の利用の問題について、そういう可能性というものを排除してないということは従来から申し上げておりますが、ただ、現在このF4を含めまして、航空自衛隊の戦闘機に対しまして空中給油を行うこととかあるいは空中給油機を保有するといったような具体的な計画を持っているわけではございません。かつて取り外しましたF4の空中給油装置と申しますのは、御指摘のように現在岐阜の第二補給処に保管してございますが、これはまだ新しいものでございまして、不用決定するまでの事態に至っていないということで保管をしているという経緯がございます。
  344. 神田厚

    神田委員 防衛庁では、五九中業を達成すれば相当のシーレーン防衛能力がつく、こういうふうに言っておりますが、現在策定中の五九中業では、空中給油機の購入問題はどういうふうに考えておりますか、導入問題。
  345. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  この空中給油機能の問題につきましては、先般来しばしばお答えしておりますように、研究はしているわけでございますけれども、現在具体的な計画を持つには至っていないということでございます。  なお、今御指摘の五九中業の問題につきましては、現在まだいろいろと検討をしている作業の途中の段階でございまして、具体的に申し上げられる段階にはございません。
  346. 神田厚

    神田委員 この空中給油機の問題でありますが、仮の問題でありますけれども、防衛計画の枠内でも、空中給油機を持つということになれば、これは可能なんですか。
  347. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいまの御指摘の点は、昨年も御質問がございましてお答えをした経緯がございますが、現在そういったことで空中給油機の問題について具体的な計画を持っている段階ではございませんので、まだそういった大綱との関係がどうかというふうなことを詰めているということはございませんので、全くその点については検討をいたしておらないわけでございます。
  348. 神田厚

    神田委員 それでは、五九中業を達成すれば相当のシーレーン防衛能力がつくというのは、どこにその根拠があるのですか。
  349. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 現在の自衛隊の勢力、これをごらんいただきますと、大綱の水準と比べまして、特に海空の作戦用航空機、これがかなり落ち込んできております。それに対しまして私どもは、五九中業におきまして大綱水準の達成を期するということで、防空能力とかあるいはシーレーン防衛能力の強化という観点からこの大綱水準の実現を期すべく努力をしているわけでございまして、そういったことを含めたもろもろの努力が五九中業によって実現できれば、シーレーン防衛能力が相当向上するということは事実だと思います。
  350. 神田厚

    神田委員 ちょっとお聞きしますが、それでは、五九中業では空中給油機の問題は全然考えない、こういうことですか。
  351. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 先ほども申し上げましたように、五九中業の中の個別の問題については、まだ何ら申し上げ得る具体的な問題はないということでございまして、そういうことで御理解を賜りたいと思います。
  352. 神田厚

    神田委員 大臣にお聞きしますが、やはり千海里防衛ということを約束をして、やらなければならないという段階の中で、現在のこういう状況で果たしてその責任が持てるのかどうか、五九中業あたりでもう少し新たな考え方を進めなければいけないんじゃないか、この辺はどうですか。
  353. 加藤紘一

    加藤国務大臣 五九中業は「防衛計画の大綱」の水準の達成を期するということでやっておりまして、これが達成されますと、累次防衛局長が答弁しておりますように、シーレーン防衛の能力はかなりの程度、相当の程度向上するものだと思っております。そういう気持ちで現在精いっぱい五九中業の作成のために努力いたしておりまして、この際に、また総理がこの委員会でも答弁いたしましたように、最近のいろいろな質的な向上等も含めたことを考えていくわけですけれども、具体的に何をどうするかというようなことは、現在作成の過程中でございますので、確定的に申し上げられる段階ではございません。
  354. 神田厚

    神田委員 そうしますと、非常に足の短いところでシーレーン防衛をするわけでありますが、硫黄島の基地の問題が、現在これは訓練基地ということで整備をされているわけでありますが、この硫黄島の基地の性格を変えるというようなことについてお考えはありますか。
  355. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  硫黄島の基地は、現在、海上自衛隊及び航空自衛隊の航空機の移動訓練用の訓練基地として整備を進めているわけでございまして、現在そういった、先生指摘のような作戦用の基地として整備をしていくという考えは持っておりません。
  356. 神田厚

    神田委員 そのことについては将来的にも考えないということでありますか。
  357. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 これも先般もお答え申し上げたところでございますが、現在整備をしておるのは訓練用の基地でございまして、作戦用の基地としての計画を現在持っているわけではございません。ただ、この硫黄島の地理的位置が、有事におきまして我が国のシーレーン防衛にとって重要な地理的地位にあるというふうに認識を持っておることはしばしば申し上げているとおりでございます。
  358. 神田厚

    神田委員 次に、最近の軍事情勢について二、三御質問申し上げます。  まず最初に、報道によりますと、アメリカ国防総省のケリー副次官補が、ソ連がベトナムで展開している航空機に関しまして、一つ、TU16バジャー、TU95ベアがそれぞれ二十機程度まで増加した、二つに、ミグ23フロッガーが一飛行中隊配備されたと述べておりますが、ウォルフォウィツ米国務次官補も、ソ連がベトナムにミグ23を配備をしていることを確認をしているが、事実関係について防衛庁の方から御答弁をいただきます。
  359. 加藤紘一

    加藤国務大臣 ソ連はベトナムのカムラン湾にベア四機を常駐させておりますほか、TU16バジャー計十六機を配備していると承知いたしております。また、ミグ23フロッガーについては、現在十四機がカムラン湾に展開していると見ております。
  360. 神田厚

    神田委員 カムラン湾におきましてこのようにソ連の戦闘航空機が配備をされているということは、インドシナ情勢を含めまして大変問題があると思っておりますが、その点についての認識はどういうふうにお考えになりますか。
  361. 古川清

    ○古川(清)政府委員 お答え申し上げます。  御承知のとおり、ソ連がカムラン湾の、海の設備もございますし飛行場の設備もあるわけでございますけれども、こういった海空軍の施設を利用いたしまして東南アジア地域全域におけるプレゼンスの強化に努めておるということは、先生既に御案内のとおりでございます。  より具体的に申し上げますと、ソ連は、ただいま御答弁申し上げましたこのベアという偵察機、あるいはその中には対潜哨戒機もございますけれども、これで南シナ海を中心として偵察活動並びに対潜哨戒活動を実施しているわけでございます。ところが、最近におきましては、南シナ海からさらには東シナ海の方まで飛行範囲を拡大するというふうな現象も私ども確認をしておるわけでございます。さらに、このベアと申します長距離の偵察機に加えましてバジャーという爆撃機、対地、対艦、船に対しましても地上に対しましても爆撃攻撃能力があるわけでございますが、この爆撃機が配備されたということで、対艦、対地攻撃能力が強化されたという点もまた注目しなければならないと思っております。さらにまた、カムラン湾並びにダナンにも港があるわけでございますが、こういった港湾を利用いたしまして南シナ海に常時二十数隻の軍艦のプレゼンスが保たれておるということもまた私ども承知しておる次第でございます。  結論的に申し上げますと、こういったソ連軍の動向と申しますのは、この方面の海上交通の安全に対しまして影響力を行使する能力を向上させるもの、こういうふうに私どもは認識をしておる次第でございます。
  362. 神田厚

    神田委員 カムラン湾の軍事基地化の強化が報道されておったわけでありますが、ミグ戦闘機までそこに多数配備をされていることは我が国民にとりまして初めての防衛庁の発表でありますが、防衛庁長官はこういう現況についてどういう御認識をお持ちでありますか。
  363. 古川清

    ○古川(清)政府委員 当然のことでございますけれども、私どもとしては大変気がかりになる現象でございまして、今後とも十分その推移については注視して情報を収集してまいろうと考えております。
  364. 神田厚

    神田委員 これは非常に大事な問題でありますから、防衛庁長官、責任持ってひとつお答えいただきたいと思います。
  365. 加藤紘一

    加藤国務大臣 参事官が申しましたように、今後私たちもいろいろな形での情報収集等を強めてまいりたいと思います。
  366. 神田厚

    神田委員 次に、航空問題に移りたいと思います。運輸大臣にお伺いをいたしますが、余り時間もありませんのでまとめて二、三お伺い申し上げます。  我が国の航空問題の中で、一つは自由化の問題が出ているわけでありますが、この中で例えば国内運賃の自由化等々の問題もありますし、あるいは路線の独占問題等々の改善を望むこともあります。現在国内線百六十四路線のうち独占路線が百四十二路線もあるわけでありまして、国内全路線の九割が一社独占の状況であります。こういう中で、例えば需要の小さい地域や離島路線はやむを得ないものがありますけれども、そうでない路線につきましては二社運航、三社運航をふやすべきではないかというように考えますが、どういうお考え方をお持ちでありますか。  さらに、運輸省も現在国内三社から意見を聞くなど航空路線のあり方について研究を始めているようでありますけれども、世論にも規制緩和をもっと進めて混乱の生じない範囲で自由競争させるべきだという意見もあります。二社、三社運航が可能となる時期は一体いつごろなのか。つまり、羽田の工事の終了あるいは関西新空港の完成というようなことが一つのめどになるのかどうか、その点につきましてお答えをいただきたいと思います。
  367. 西村康雄

    ○西村政府委員 航空事業の運営体制につきましては、今お話しのように、これからできるだけ航空事業の創意工夫を生かして活性化に向けて進むというのが基本的な方向でございます。  最初の運賃の自由化という問題でございますが、この点につきましては、今の状況で運賃の自由化ということに相なりますと、競争の非常に多い路線につきましては運賃の引き下げという傾向が出ますが、逆に離島とかそういう路線におきましては、独占でこれはだれもやり手がないというところで、こういうところでは非常な運賃の高騰という結果が招かれるわけでございます。路線間の非常なアンバランスということも生じますし、また競争の多い路線では運賃の非常な不安定ということを招くおそれもございますので、現在のような航空市場の状況でございますと、やはり基本的には運賃の認可制というものを維持していかざるを得ないだろうというふうに考えるわけでございます。  ただ、先ほど申し上げましたように、できるだけの企業の活性化ということを考えますと営業割引等の分野ではいろいろとまだ工夫する余地があるということで、今研究している次第でございます。  それから、国内の各路線のダブルトラック化という点でございますが、お話のようにまだまだ非常に多くの路線が一社だけが運航しているということでございます。ただ、現在ダブルトラックが行われています路線は、いずれもと申しますかほとんどが東京あるいは大阪を一方としている路線でございます。結局、こういうところが輸送需要が非常に多いということで二社以上の運航が可能になっているわけですが、御承知のように、東京、大阪両空港は非常な制約がございます。これ以上増便ができないという状況になっておりまして、各地方からの乗り入れの数はふやせないということでございますので、このような状況でございますと複数化というのは、現在行われております羽田の沖合展開というものが進みまして二期工事が終わる、これが大体昭和六十八年の夏と目しておるわけでございますが、それからまた関西につきましては関西国際空港の一期工事、これができませんとめどがつきません。これが大体六十七年度末までにということで、できるだけこれも急がしております。そういった状況でございますので、このような空港のキャパシティーが東京、大阪でふえました段階では今お話しのようなダブルトラックを大いに進めていくということが可能になろうかと思うわけでございます。  そういう意味で、事業の運営体制も全般といたしましてかなりのゆとりがある状況になりますのは今言った時期でございますので、その時期を目指しまして事業の運営体制の活性化を図っていきたいというように考えておるわけでございます。
  368. 神田厚

    神田委員 大臣にちょっとお聞きしますが、ただいま局長の答弁でありますが、やはり一社独占が九割もあるという事態は異常でありますね。そういう中でひとつ大臣のお考えはどうでありますか。
  369. 山下徳夫

    山下国務大臣 規制の緩和は、航空業界におきましても時代の推移の中における一つの当然の問題だと私は思っております。アメリカにおきましても、カーター大統領のときにデレギュレーションということでその措置をとったわけでございますけれども、その結果はわずか二、三年のうちに三社がギブアップしたという例もございますし、我が国におきまして規制緩和するについては、やはり秩序を保ちながら徐々にやるということが必要であろうかと思います。同時にまた、国内航空三社において一時過当競争が行われたというような事実にかんがみ、いわゆる航空憲法という一つの協定が行われたわけでございますから、やはりそこらあたりを踏まえながら、これは慎重にやるべきだと考えております。
  370. 神田厚

    神田委員 さらに、フィル・アップ・ライトの問題がございまして、現在香港−鹿児島−成田あるいはソウル−小松−新潟等々の国際線を利用しまして鹿児島−成田、小松−新潟間の国内貨客を輸送するというようなことについて、地元の地方の人々の利益の増進を図っていくべきである。たまたま筑波科学博の年でもございますので、このフィル・アップ・ライトの問題について運輸省はどういうふうにお考えでございますか。
  371. 西村康雄

    ○西村政府委員 フィル・アップ・ライトの問題につきましてはいろいろな問題点がありまして、現在日本航空が希望しているような形ができていないわけです。  その一つの大きなポイントは、フィル・アップ・ライトと申しますのは、国際線の便が成田から例えば鹿児島に寄ってさらに海外に出ていくというような路線の場合に、この成田−鹿児島間につきまして国内の客を乗せるということでございますが、このような路線を輸送させようといたしますと、そこでは国内の旅客に対しまして通関その他の手続をどういうふうに適用するかという問題があるわけでございます。これは国内の客にも通関をさせる、あるいは国際客に二回通関をさせるというような問題が生じやすいわけでございまして、そこら辺の問題をどうやって技術的にやるかということでございます。そのようなやり方についてまだ具体的にいい提案がないということで、フィルアップというのは、考えますとあいているところをひとつ使ったらどうだということで非常にいい提案なんですが、そういう点がまず難しいということ。  さらに、こういったことが可能ならば成田から大阪、成田から福岡という幹線部分についてまずやっていただくといいわけですが、現在は成田−鹿児島というようなところにだけフィル・アップ・ライトをやりたいというようなお話なんで、成田—鹿児島というような路線はローカルの路線でございまして、現在の国内の航空事業の運営体制の中では日本航空以外の会社がやるという建前で現在まで来ております。非常にデリケートな問題を含んでおりますので、まずフィル・アップ・ライトにつきましては、そういったローカルな部分ではなくて、幹線の部分についてやれるかやれないかということをひとつ研究してみるのが第一歩ではないかと考えているわけでございます。  また、成田につきましては、科学技術博覧会等の時期に当たりまして非常に成田を利用しようという動きもございますが、こういう点につきましては成田というものもひとつ千葉の空港として大いに活用していただくということで、各社から臨時便その他の希望があればこれは十分増便を検討していきたい、そんなふうに考えております。
  372. 神田厚

    神田委員 局長の答弁がありましたが、せっかく大臣お見えでありますから、この問題についてどうですか、一言。
  373. 山下徳夫

    山下国務大臣 フィルアップの問題につきましては局長が申し上げたとおりでございますが、あえて補足させていただくならば、ちょっと私聞き漏らしましたが、局長が触れたかもしれません。もし二重の答弁であればお許しいただきたいと思いますが、やはり新たにCIQ、つまり税関であるとか検疫でございますとか、あるいはまた出入国管理等も設けなければなりません。したがって、それに対する要員、国家財政の苦しい折からそれだけ財政の支出がふえるわけでございますし、そこらあたりも一つは問題でございます。  同時に、今局長が申し上げましたように一番問題は、例えば鹿児島−東京の問題をとってみますと、従来これはローカル線として一つの権利を持っている会社があるということでございますから、そこらあたりの調整がこれから行われなければならぬと思っておりますし、やはりフィルアップの問題は今申し上げたように福岡とか大阪、たくさんあるわけでございますから、つまみ食い的にやるということではなくて、体系的に、基本的にこれをどうするかということを詰めていかなければならぬ、かように思っております。
  374. 神田厚

    神田委員 ひとつ前向きに御検討をお願いしたいと思います。  次に、通商問題で、通産大臣お見えでございますので、二、三御質問申し上げます。  きょうのアメリカからのニュースによりましても、レーガン大統領が記者会見で、日本車の輸出規制の問題に関連しまして、日本に対しまして通商摩擦の解消に努力してもらわなければいけないというようなことで、大変強い調子で話があったわけでありますが、これらについて大臣としてどういうようにお考えでありますか。
  375. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 日米貿易問題につきまして、きょうレーガン大統領の記者会見があったことは承知をいたしております。  一番大きな関心を集めましたのは自動車、日本からの対米輸出自主規制の問題でございますが、この問題につきましては、実は昨年十一月に自動車業界と私ども懇談をいたしました。その際に、対米自動車輸出の自主規制は来年三月限りでぜひ廃止をしてもらいたいという強い御要望が業界から出たところでございます。この業界の御要望はよく承知しておりますが、この問題は極めて重要な問題でございまして、実は通産省といたしましてもあるいは日本といたしましても、この自動車輸出規制に対しての結論はまだ出しておりません。また、レーガン大統領のこれに対する対応も非常に慎重であると承知をいたしておりまして、したがって、まだ三月末までに期間もございますので、今後とも慎重に対応してまいる決意でございます。  それから鉄鋼の自主規制でございますが、これは昨年の十二月に、御承知のようにアメリカ鉄鋼業界のために五・八%というシェアを日本は守るということで原則的に一致をいたしました。そしてその後サブカテゴリーでございますとか、あるいは鉄鋼輸出規制についての期間の始期あるいはその長さ等についてはまだ話が決着をしておりませんで、現在アメリカに通産省から担当官を派遣いたしまして真剣な詰めを行っておるところでございますが、これは来週に持ち越される見通してございます。  なお、中曽根総理とレーガン大統領とが一月早早の会談で指摘をされました電気通信、エレクトロニクス、木材製品、医療機器、医薬品の四分野につきましては、御承知のように一月末にそれぞれ次官級の会合を設置することで合意し、これまで電気通信とエレクトロニクス分野について第一回会合が開かれたところでございますが、通産省といたしましては、米側の考え方をよく聞きながら関係省庁とも十分協議をしつつ適切に対応するというようなことで、自動車、鉄鋼、それから四品目その他、今当面しております状況を御説明申し上げた次第でございます。
  376. 神田厚

    神田委員 通商摩擦解消問題は大変大事な問題になってきておりますので、通産省といたしまして慎重にお進めをいただきたいと思っております。  それで次に、日本とアメリカ、カナダ、欧州、これらの閣僚によりますところの三極通商会議におきまして、八六年に新ラウンドを開始するということで合意をされました。この問題は、例えば途上国をどういうふうに参加さしていくのか、かなり消極的な国もございますし、そういう意味で日本といたしまして今後この作業をどういうふうに進めていくのか、時間の関係もありますので、簡単で結構でございますからお答え願いたい。
  377. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 御指摘の四極通商大臣会議は二月九日から十一日まで三日間、日本の京都において開催されまして、アメリカからはブロック通商代表、それからカナダ、ECそれぞれ代表が出てまいりまして、日本側がいわばホスト国でございますので、私が議長役を務めさしていただきました。そして、結論的に申し上げますと、一九八六年新ラウンドの交渉開始を目指して一九八五年、ことしのうちに高級事務レベル会議をできるだけ早く開くということで合意をいたしました。これは非常に大きな決定でありまして、保護主義を排し、新ラウンドをひとつ進めていこうという決定であります。つきましては、もちろん四極、これはもう当然のことでございますが、例えばASEANでございますとかあるいは南米各国でございますとか、ガット加盟の国々にできるだけ広く呼びかけて、そして新ラウンドの交渉が有効に広がっていくように配慮してまいりたいと思っております。
  378. 神田厚

    神田委員 時間がありませんが、農林水産問題で二、三御質問申し上げます。  最初に農業後継者問題でありますが、まず学卒の後継者の問題であります。農業高校を卒業しても農家に残るという人が一割強しかいない、こういうふうな状況であります。まず、文部大臣にお聞きしたいのでありますが、どうも農業高校に農業を習得するという気持ちで入ってこない、一割強しか就業しない、しかも教育の内容は農業教育をされているというところで、いろいろ問題があるようでありますが、大臣は教育自由化の持論者でもありますけれども、こういう中で、どうでしょうか、普通学級の併設とかそんなふうなことも少し積極的に指導するお考えがありますかどうか、一言で結構でございます。
  379. 松永光

    ○松永国務大臣 先生指摘の問題は、実は二月十九日に文部省の理科教育及び産業教育審議会の答申をいただいたわけでありますが、その中に、時代の進展に応じてバイオテクノロジー、そういったものに対応したような教育内容の改善などをすべきであるという御指摘もいただきました。まことにごもっともであると思います。農業のほかに商業に関する科目なども入れて履修させる農業経済科の設置、あるいは農業に関する学科で簿記やマーケティングなどに関する科目も取り入れるなどということの答申をいただいておりますので、その答申を参考にいたしまして、時代に即応した農業高校の教育が行われるように努力をしていきたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  380. 神田厚

    神田委員 それから、農林大臣には農業後継者の嫁さん不足の問題。これは非常に社会問題化しております。御案内のように、過日、週刊文春に、茨城県の鉾田町でフィリピンなど東南アジアからお嫁さんをもらっているというようなことがありまして、大変に深刻なんですね。この問題について農林水産省として、いろいろ人権問題等もありますけれども、地域を回っておりますと非常に深刻であります。ぶらぶらしてオートバイを乗り回している人が嫁さんをもらって、一生懸命田んぼの仕事をしているまじめな青年が四十になっても嫁さんをもらえないというように、これはもう社会問題化しかかっている。これについてもう少し農林水産省は知恵を絞ってもらわないといけないと思うのですが、簡単で結構ですから、ひとつ。
  381. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 神田先生にお答えいたします。  御指摘のとおりでございまして、農業後継者の嫁不足の問題というのは大変な問題が生じております。配偶者の有無とか本人の希望等についてはプライバシーの問題があるので、我が省では余り実態を把握しておりませんが、嫁不足の原因として一番大きな問題というのは、やはり農業に魅力がない、生産性が低いとか農業労働の厳しさ等があるかと思いますが、そういう中に実は立派な家庭を築いている青年も多くあるのを見ておるわけでございます。特に農家の方の意識の中にも、これは先生も御高承だと思いますが、自分の娘は農家にやりたくない、自分の息子には嫁をもらいたい、実はこんな矛盾した意識もあるわけで、その辺も意識を改めていただきたいと思っているわけです。  そんなことで、実は我が省とすれば、農業後継者地域実践活動推進事業等を中心にして、とにかくお互いに交流の場をつくるとかあるいは情報活動、相談活動を実施するということで努力をしております。また、各県市町村におきましても、いろいろ創意工夫を凝らして努力されておるのを聞いております。
  382. 神田厚

    神田委員 いや、各県なんかは大した指導をしてないのですよ。いろいろなことをやっていない。町村は多少一生懸命やっていますよ、身近な問題だから。そういうことでもうちょっと。これは本当に深刻なんですよ。だから、鉾田町の人が、どうしてもなくて行ったということでもないのですけれども、そういうふうなことで結局東南アジアの人に来てもらっているというようなこともあるわけで、これはやはり農林省が、農村近代化を進めることと同時に、各県や何かが一生懸命やっているなんという認識ではなくて、農林省自体がもう少し熱意を持ってやってもらいたい、要望しておきます。これは大変な社会問題になります。ひとつお願いいたします。  最後に、農林水産関係の水産業の問題で二、三御質問を申し上げます。  一つは、日ソ地先沖合漁業協定の問題でありますが、大臣、大変御苦労なさって行っていただきましたが、この問題につきまして、沿海州漁場の縮小に伴いまして沖合底びき網漁船の現有隻数の出漁が極めて厳しい状況にあります。政府はこれについてどういうふうに対応するのか、その点についてまずお願いいたします。
  383. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  今回の日ソ漁業交渉の結果、沿海州における沖合底びき網漁業の操業区域といたしましては、ベルキナ岬以南の従来の海域が閉鎖されまして、そのかわりベルキナ以北が操業水域として認められたわけでございますが、漁獲割り当て量が、この沿海州水域で前年の五万四千四百トンから一万四千八百トンということで、大幅に削減をされました。したがいまして、沿海州水域について見ますと、従来この水域で操業を行っておりました北海道船九十隻というのは恐らく縮小せざるを得ないのではないかというふうに考えております。  しかしながら、一九八五年の沖合底びき網漁業全体の割り当てを見てみますと、ソ連海域全体では二十七万三千五百トンのクォータがありまして、これは従来の平均的な漁獲実績が二十二万トンということでございますから、全体として見ればトン数はこなせるトン数であるわけでございまして、あと、沿海州で従来操業を行っておりました船が許可上は他のソ連海域でも操業できるということになっておりますので、出漁隻数の再配分をうまく行えば、これらの漁場を代替漁場として使用して実質的な影響は少なくなるということも考えられるわけでございます。水産庁といたしましては、北海道庁及び関係業界がこの再配分問題についてどういうふうに処理をなさるか、これをよく検討しながら対処していきたいというふうに思っておるところでございます。
  384. 神田厚

    神田委員 北洋漁業関係者は減船減船で大変な目に遭っておりますが、その中で現有隻数が出漁できないということは非常に問題でありますから、ひとつよろしく指導の方をお願いをしたい、こういうふうに思っております。  さらに、今度の日ソ協議の中で、ソ連漁船の日本寄港についていろいろ不満が表明されたというふうに聞いております。今回、塩釜港寄港が決定をされておりますけれども、この問題につきまして、農林省としてはどういうふうに対応するのか、お聞かせ願いたい。
  385. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 神田先生にお答えいたします。  今度の寄港の問題というのは、難航する日ソ漁業委員会における協議の局面打開の重要な問題として、やむを得ざる措置であったわけでございます。地元とは今後も引き続き誠意を持って話し合いを行う所存でございます。また、いろいろな面につきましてできるだけ関係省庁と相談しまして、最大限の努力をいたしたい、このように考えております。
  386. 神田厚

    神田委員 次に、日米の漁業協定問題について二、三御質問申し上げます。  米国の対日漁業政策については、特に海洋法に定める余剰原則、実績国の尊重を無視した対日姿勢を強化しておりますけれども、これに対して日本はどういうふうに対応するのか。  さらに米国は、一九九〇年には外国漁船を自国二百海里から締め出す法案を準備していると伝えられておりますが、これに対して政府はどういうふうに対応するのか。  米国は、自国水産業振興を図るために、法律をもって対日漁業規制を強化し、日本漁船の排除姿勢を強めているが、これに対して日本としては対抗措置を講ずるような国内法をあるいはつくるとかというような考え方があるのかどうか。例えば、水産物の輸入規制とかあるいは加工技術の移転禁止等々の問題について触れていくお気持ちがあるのかどうか。通商摩擦の解消の問題でも、これはアメリカの方から規制をされている問題でありまして、これらについてももう少し強腰で現況打開を図っていただきたい、このように思いますが、いかがでありますか。
  387. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  まず、アメリカの最近の漁業資源の管理のやり方につきまして、資源の最適利用とかあるいは伝統的漁獲実績とかということを無視した大変エゴイスティックな態度で臨んでおるということにつきましては、私どもも全く同感でございます。  ただ、これに対して何しろ先方の二百海里の中のことでございますので、なかなか有効な対抗手段が見出しがたいのでありますが、現実に我が国の漁船団が操業しながら同時にアメリカの漁業者から大量の水産物を買い付けておるわけでありまして、そういう意味では、アメリカの漁業の発展のためにも我が国の漁船団の操業というのは有益な存在であり、かつ日本という世界最大の水産物のマーケットを持っている国と敵対的な関係になるということは決してアメリカの水産業にとってもためになることではないということを、先方に条理を尽くして説得をしていくということ以外には適当な方法がないわけでございまして、私どもとしてはそういうラインで米側に条理を尽くして当たっておるところでございます。  それから、一九九〇年に外国漁船の操業をやめさせる、そういうアイデアを盛り込んだ法律案が一種のたたき台として下院の漁業小委員会の事務局の中で準備をされているということは事実でございます。私どもとしては、そういうアイデアが盛り込まれたものが法律案となって動き出すということが万が一にもないように、アメリカ側に対していろいろ働きかけておるわけでございますが、現に今月上旬対米漁業協議で先方と接触をいたしました際にもこの点は強く申し入れておいたところでございますし、また今月中に下院漁業小委員会に対してもそういう趣旨でコメントを提出する予定でおります。  それから最後に、このようなアメリカ側の動きに対して法律上対抗措置を講ずることにしてはどうかという御示唆でございますが、この点につきましては、ガット上の問題あるいは日米関係全体への影響というふうなことも懸念をされますので、私どもとしては慎重に考えるべきことであろうというふうに存じております。
  388. 神田厚

    神田委員 日本の漁業、水産業は非常に国際関係が厳しくなっておりますから、ひとつよろしくお願いしたいと思います。  最後に、昨年は減反政策をさせておきながら外米を輸入するという農政史上極めて大汚点があったわけでありますが、ことしも米の需給について心配をする向きがあります。その点について大臣、時間がありませんので一言で結構でありますが、自信を持ってちゃんとやっていただけますか。
  389. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 神田先生にお答えいたします。  昨年は作況一〇八という、三十年来の大豊作ということでございます。そんなことで、農産物は自然、天候に左右されるわけですが、来年は心配ございません、こういうことを申し上げます。
  390. 神田厚

    神田委員 終わります。
  391. 天野光晴

    天野委員長 これにて神田君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十三日午前九時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時五分散会