運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1985-02-21 第102回国会 衆議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年二月二十一日(木曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 天野 光晴君    理事 大西 正男君 理事 小泉純一郎君    理事 橋本龍太郎君 理事 原田昇左右君    理事 三原 朝雄君 理事 稲葉 誠一君    理事 岡田 利春君 理事 二見 伸明君    理事 吉田 之久君       相沢 英之君    伊藤宗一郎君       石原健太郎君    石原慎太郎君       宇野 宗佑君    上村千一郎君      小此木彦三郎君    小渕 恵三君       大村 襄治君    奥野 誠亮君       海部 俊樹君    小杉  隆君       椎名 素夫君    砂田 重民君       住  栄作君    田中 龍夫君       葉梨 信行君    原田  憲君       村山 達雄君    山下 元利君       井上 一成君    上田  哲君       大出  俊君    岡田 春夫君       川俣健二郎君    佐藤 観樹君       堀  昌雄君    松浦 利尚君       矢山 有作君    池田 克也君       近江巳記夫君    神崎 武法君       渡部 一郎君    大内 啓伍君       木下敬之助君    小平  忠君       永末 英一君    瀬崎 博義君       東中 光雄君    松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         農林水産大臣  佐藤 守良君         通商産業大臣  村田敬次郎君         運 輸 大 臣 山下 徳夫君         郵 政 大 臣 左藤  恵君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官) 河本嘉久蔵君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 加藤 紘一君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      金子 一平君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      竹内 黎一君         国 務 大 臣         (沖縄開発庁長         官)      河本 敏夫君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣         官房審議室長  吉居 時哉君         内閣審議官   海野 恒男君         内閣法制局長官 茂串  俊君         内閣法制局第一         部長      前田 正道君         国防会議事務局         長       塩田  章君         総務庁長官官房         審議官     佐々木晴夫君         総務庁人事局長 藤井 良二君         防衛庁参事官  古川  清君         防衛庁参事官  古川 武温君         防衛庁参事官  池田 久克君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房         長       西廣 整輝君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛庁教育訓練         局長      大高 時男君         防衛庁人事局長 友藤 一隆君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         防衛庁装備局長 山田 勝久君         防衛施設庁長官 佐々 淳行君         防衛施設庁総務         部長      梅岡  弘君         防衛施設庁施設         部長      宇都 信義君         防衛施設庁建設         部長      大原 舜世君         防衛施設庁労務         部長      大内 雄二君         経済企画庁調整         局長      赤羽 隆夫君         経済企画庁総合         計画局長    大竹 宏繁君         科学技術庁長官         官房長     宇賀 道郎君         科学技術庁研究         調整局長    内田 勇夫君         国土庁長官官房         長       永田 良雄君         国土庁長官官房         会計課長    北島 照仁君         国土庁地方振興         局長      田中  暁君         外務大臣官房領         事移住部長   谷田 正躬君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省北米局長 栗山 尚一君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省中近東ア         フリカ局長   三宅 和助君         外務省経済局長 国広 道彦君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         大蔵省主計局長 吉野 良彦君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省関税局長 矢澤富太郎君         大蔵省銀行局長 吉田 正輝君         大蔵省国際金融         局長      行天 豊雄君         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産大臣官         房予算課長   鶴岡 俊彦君         農林水産省経済         局長      後藤 康夫君         通商産業省通商         政策局長    黒田  真君         運輸省国際運         輸・観光局長  仲田豊一郎君         運輸省航空局長 西村 康雄君         気象庁長官   末廣 重二君         郵政省通信政策         局長      奥山 雄材君         郵政省電気通信         局長      澤田 茂生君         建設大臣官房会         計課長     望月 薫雄君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      大内  宏君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十一日  辞任         補欠選任   倉成  正君     椎名 素夫君   小杉  隆君     石原健太郎君   井上 普方君     岡田 春夫君   矢野 絢也君     渡部 一郎君   小平  忠君     永末 英一君   東中 光雄君     経塚 幸夫君 同日  辞任         補欠選任   石原健太郎君     小杉  隆君   椎名 素夫君     倉成  正君   岡田 春夫君     井上 普方君   渡部 一郎君     矢野 絢也君   永末 英一君     小平  忠君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和六十年度一般会計予算  昭和六十年度特別会計予算  昭和六十年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 天野光晴

    天野委員長 これより会議を開きます。  昭和六十年度一般会計予算昭和六十年度特別会計予算昭和六十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  本日は、外交防衛問題について集中審議を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。椎名素夫君。
  3. 椎名素夫

    椎名委員 私は、自民党を代表いたしまして、外交及び防衛の諸問題について、総理以下関係閣僚に質問をいたすものでございます。  最初に、昨年の六月八日付のロンドンサミットにおける民主主義の諸価値に関する宣言について言及をいたしたいと思います。  おととしのウィリアムズバーグサミットにおける政治宣言、それから昨年の東西関係に関する宣言と並んで、この民主主義の諸価値に関する宣言というのは出されたわけでありますが、この内容は、自由な選挙を通ずる真の選択、自由な意見表明を保証する民主主義体制の信奉、あるいは自由民主主義体制国相互間の緊密な協力世界全体の政治的安定及び経済成長を強化するという確信、あるいは自由と正義を伴う平和をうたいまして、これに自信を持って未来に臨むものであるということを言っているわけであります。  これはもう今さらながらというような批評も一部にはございまして、経済サミットであるのにこういうことをやる必要があるか。しかしながら、サミットのそもそもの経過を見てみますと、デタントの時代、一九七五年に経済サミットとして出発したわけですが、近年の政治あるいは軍事情勢が非常に厳しさを増してきた。こういう趨勢にあるときに、自由主義経済の抱える問題を処理していく。これもさることながら、自由主義経済を支える基盤そのものを守ることの必要性に目が向けられてきた。これが一つの大きな意義であり、また同時に戦後四十年を経過いたしまして、日本でも東京オリンピックのときに生まれた人が成人式を迎える、あるいは今NATOなどでも盛んに問題になっておりますけれども、なぜNATOは生まれなければいけなかったか、こういうようなことに対する、総理所信表明演説でも言われましたけれども、鮮烈な記憶というものが失われつつある。この時点において、もう一度この民主主義価値というものを確認するという意味において、非常に私は評価されるべきものであると考えておりますが、この宣言意義に関する総理の御所見を伺いたいと思います。
  4. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ウィリアムズバーグあるいはロンドン等におきまして、政治に関する声明が発出されましたが、その基礎は椎名委員御指摘のように、やはり民主主義の諸価値を守るという意味においては、その経済基盤が侵されては民主主義価値は守れなくなる、そういう文脈におきまして、政治的な意味声明というものが出てきたわけであります。特に自由を尊重して、自由あるいは平和あるいは基本的人権、このような民主主義根底的な価値を擁護する、そういうことを参加国が共同の意志として世界に鮮明にする、そういう意味があると同時に、それらの諸価値を守るために連帯して守らなければ守れない。一方においては全体主義的な勢力がブロックをつくってきておる。そういう情勢のもとに、自由民主主義を同じくする、政治信念を同じくする者たちが同じように連帯をしてそれらの諸価値を守る、そういう決意の表明というものを出すことが時宜に適しているという意味からそういうことになったのであると考えます。
  5. 椎名素夫

    椎名委員 ただいま総理からお話がございましたけれども、我々日本にとっても、戦後四十年の節目に立って振り返り、かつ、日本が今立っている地点というものを確認するいい機会ではないかと考えております。  考えてみますと、戦後大変な荒廃の中から立ち上がろうということで夢中で日本人は働いてきた、そして今やサミットの仲間入りをするというようなところまで繁栄を続けてきたわけでありますが、私は考えますけれども、日本は戦後非常な幸運に恵まれてきた。幾つか挙げますと、例えば本当の復興期最初に当たって朝鮮の特需があったり、ベトナムの特需があったり、あるいは石油ショックに至るまでは非常に安いエネルギーが自由に買えたというようなこともある。また同時に、世界第一のマーケットであります。アメリカへの経済進出というのが自由に行えた。いろいろな幸運に恵まれたと思うのであります。  しかし、その根底というのは何かと振り返って考えてみますと、我々が戦後占領時代を終えてサンフランシスコ講和条約を結んだ際に、いわゆる多数講和という道を選択いたしまして、そして自由民主主義陣営、いわゆる西側行動をともにするということを決めたことに、私はそもそもの根本、根底があったのじゃないかというふうに考えております。ここまで来たら、これだけのいわば得をしてきた、それなりの義務というものが生じているのではないか。先ほどの宣言にもありましたように、西側協力をして経済の賢明なマネージメントを通じまして繁栄を持続し、そして南に対しても手を差し伸べる。そして、この世界活性化を図っていく、経済活性化を図っていくという以外には、世界全体から考えましても道はないというようなことであり、我々は先進国一員としてあくまでも先へ進み続ける、そして後から来る中進国あるいは発展途上国に対して手を差し伸べながら、西、南一体になった経済繁栄を築くということが、一つの大きな日本役割であろうと思うのです。  しかし、それにしても、それには大前提がございまして、平和が維持されなければならない。何か紛争あるいは戦争というものが起こったら、そういう平和裏における繁栄の道というものはそこで中断をされてしまいます。見ておりますと、その間にあってソ連は着々として軍事力増大を続けてきた。振り返ってみると、これは決して指導者がかわったときに方針が変わるというような一過性のものではなくて、まさに趨勢として、トレンドとしてそういうことが進行していると私は思います。この趨勢危険性というのは、これが何かのきっかけでは軍事的冒険主義につながるということにあるのでありまして、まさにアフガニスタンの侵攻などにもこういうことはあらわれている。これを何とか抑止していくということがこれからの世界にとって非常に大事であるというふうに考えます。  すなわち、言ってみれば軍事面における東西我慢比べというのが一方にあり、そしてその中においてまた経済繁栄平和共存というものの我慢比べというようなものがある、この両方を達成していかなければいけない。その際に、日本は明確に西側一員としてこの役割を受け持っていく、これが私は今の国際情勢及びその中における日本立場だというふうに考えております。外交におきましては、対米外交であるとかあるいは対アジア外交であるとかあるいは太平洋構想であるとかいろいろな地域的な問題もありますけれども、世界全体を通じてのこういう大きな図柄というものをしっかり認識した上で我々は進んでいかなければならないと考えます。  総理は、御就任以来非常に積極的な、開かれた日本ということで、日本国際的役割、これに対して非常に重視をされましてやってこられたわけでございますが、ただいま私が申し上げましたような基本的視点についてのお考えを伺いたいと思います。また同時に、安倍外務大臣も新記録をつくるほど東奔西走しておられる。大臣からもあわせてこの点についての御所見を承りとう存じます。
  6. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今、椎名さんのおっしゃることにつきまして、私は全く同感であります。日本もやはり今日における国際的な責任というものに深く思いをいたして、幅広い外交を展開していかなければならない。私は海外をずっと回っておりまして非常に強く感ずるのは、やはり一面においては日本発言権といいますか発言力というのが大変強くなったということでございます。国際会議等におきましてもやはり日本の代表が出なければ会議すら成り立たないというほど、日本世界に重きをなしてきているということを痛感します。同時に、それは反面において、日本国際的責任が今まで以上に増大をしたのではないか、こういうふうに考えているわけでございます。  日本外交基調は、今さら申し上げるまでもなく、日米を中心とする紐帯をがっちりと不動のものにすると同時に、自由主義国家との連帯を深め、さらにまたアジアの一角としての原点を失ってはならない。同時にまた、東側の国々とも平和共存を進めていく。いわば平和外交に徹していくということが日本の今日の繁栄をもたらしたわけですし、これからもやはり基調でなければならない。そういう中でもこれからの日本の果たす役割というものはますます増大をしているわけでありまして、日本外交はこれからも、ただ単にアメリカあるいはソ連とともにというだけじゃなくて、アメリカにもできないあるいはソ連にもできないようなやはり平和的な役割を、外交というものを展開する時代になってきた。まさに積極的な、そうした創造的な外交を行っていくことが世界の平和と繁栄に寄与することであり、また同時に日本自身発展、平和に結びつくものであるという確信を持ってこれから努力していかなければならない、こういうことを強く感じておる次第であります。
  7. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、一個の政治家として、「四方の海みな同胞と思ふ世になど波風の立ちさわぐらむ」そういう御製が私の頭の中に深くしみついておりますし、万世のために太平を開くという言葉も戦後政治家として立ち上がったときの私の心の中に強く生きておる言葉であります。その後日本発展をいたしましたが、やはり戦前日本行動考えてみて、これらのお言葉というものは深く考えなければならぬ内容を持っておると思っております。  さらに、今日このように大きく発展しました日本は、世界で最も平和の利益を受けておる、恩恵を受けておる国であります。この平和というものは全世界協力して今できつつあるものであって、単に一国だけがつくっているものではありません。全世界協力しているこの平和と繁栄恩恵を最も受けている日本は、全世界にお返しもしなければなりませんし、相応責任も分担しなければなりません。これが日本の基本的なスタンスであると思います。  それを具体的に今度はどういうふうに現実的に実行していくかという段階になりますと、遺憾ながら現在の世界というものは東西関係に分かれたり南北関係対立が出てきている、これが現実でありまして、この現実に対処していくという日本の歩みを考えてみますと、世界の平和と繁栄を維持し分かち合っていくためには、やはり抑止均衡というやり方でそれをやらざるを得ないということでもありますし、南の立場というものも十分我々は考えて、一面において恩恵を受けている感謝を行わなければならない。それと同時に、東との関係におきましても粘り強く対話を行い、友好協力をつくり上げていくチャンスを常に営々として努力していくべきものである、そう考えておるのであります。しかし、基本的な立場は、平和、繁栄を維持するためには、現実的なやり方としてやはり西側陣営の連携のもとに抑止均衡というやり方世界平和を維持していくという現実的な方策を行わざるを得ないし、それ相応の仕事もやっていかなければならない。  それと同時に、今外務大臣も言いましたように、我々はアジアの一国であって、発展途上国から現在の経済大国にまで成長してきたという我々の過去を見ますというと、今発展途上国であるいはさまざまな困難に遭っている国々に対して、我々はそういう経過を経てきた人間として大きな同情とそれから努力に対する尊敬をお互いに持ち合っていくべきである、そう思っておるのであります。  そういう基本的考えに立ちまして、これからの政治外交をますます充実させていく、そういう考え方でやっております。
  8. 椎名素夫

    椎名委員 世界に恩返しをする、その精神、我々皆持つべきであると思いますが、今の総理お話で、しかしこの現実考えた場合には、一つにはいわゆる西側一員としてのスタンス、もう一つアジア一員としてのスタンス、こういうきちっとしたスタンスというものを持つということは、私、非常に重要だと考えます。  何としても、我々は何を考えるにしてもとにかく平和を維持しなければいかぬというのは根底でございますけれども、我々今までいわば成功をしてきた、これは先ほど申しましたようにサンフランシスコ平和条約で我々が自由民主主義陣営一員としての立場を明確にした。それと同時に、安全を守るために日米安保条約を締結し、これを基盤として安全を確保するという選択をその時点で行ったわけでございます。この選択は正しい選択であったということは、この過去四十年の歴史を見れば明らかである。この日米協力体制というのが我々の外交基盤となっておりますけれども、この枠組みというものは、我々の安全を守るということにももちろん貢献をしてまいりましたけれども、それと同時に、日本戦前のような軍国主義に戻るのではないかという危惧を抱く人々、あるいは近隣のそういう危惧を時として抱く諸国に対しても一つの大きな安心感を与えてきた、またこれが維持される限りはこの安心感というものは揺るぎのないものであるというふうに考えております。  しかも、我々振り返ってみると、一九七〇年の初頭までは少なくともこのアジア、我々の日本を囲む地域については非常にアメリカの優位が圧倒的であった、そこで我々は非常に得をした。考えてみると、例えば西欧の人たちは非常に気の毒でありまして、戦後すぐNATOというようなものをつくって、ソ連進出を阻止しなければならないというようなことが既に三十五年も続いてきたということに比べれば、我々は非常に幸運に恵まれていたと思います。しかし、一九七〇年代後半からは非常に様子が変わってまいりまして、この地域においてもあるいは全世界的にも軍事バランスが大きく動いたということはもう皆さん御承知のとおりであります。SS20という問題を契機として、ウィリアムズバーグ宣言にもありましたようなグローバルという問題が出てまいりましたけれども、もともとその自由民主主義体制を全体主義体制軍事的封建主義から守っていくという意味からいいますと、このSS20があらわれようとあらわれまいと、西側安全保障というのはもともと私はグローバルな性格を持っていたというふうに考えております。したがって、我々のこの日本をめぐる地域がその体制の中においてそこだけが弱いというような一環になってはならない、これは私どもの大きな責任ではないかと考えております。  実はよく昔から言われることですが、吉田ドクトリンという話がございまして、吉田ドクトリンというのはなるべく軽武装で経済的繁栄だけを追求していく、これが日本が一番得をする道であるし、この路線は余り変更すべきではないというようなことが世上よく言われております。  そこで、実は私発見をいたしましたのですが、昭和三十八年に吉田茂さんが本を書いておられます。「世界日本」という本でありまして、これは値段をつけて公刊されている本ですが、その中で、どうもいわゆる吉田ドクトリンというものとは大変に違ったことが書いてございます。  少し引用させていただきますが、その中に「日米安全保障条約について」という文章がございます。これは、世界は二度の世界大戦を経て、その反省の上に立って国際連合が生まれた。その中で、「国際平和の目的を達成するための国家行動準則も立派に定められ」た。しかしながらどうも現実はそううまくいかない。それはどうしてかというと、「平和の目的についても、」あるいは「行動準則についても、」世界じゅうの「みなが同じ考えで動いていないからである。」ということを書いてありまして、こういうことが書いてあります。「自由の世界では、個人の自由を尊重し、目的と共に手段も正しくなければならぬと考えられている。」「自由世界が団結して強くなり国際連合自由世界考えに立って動くようになったとき、世界は真に平和になる。」「申立論は、真の世界平和を念願する限り、日本のとるべき途でない。」また、講和の問題に触れまして、「この時、日本は」東西の「対立が解けて全面講和の可能となるまで待つか。」あるいは「自由陣営協力者となって世界の自由と平和のため共に寄与するか。」という「国際政治上の進路を選択する岐路に立」たされていたとした上で、  サンフランシスコ講和条約日本の運命を自由世界のそれと共同にさせたものである。   だから、講和条約の締結と同時に自由世界指導者たる米国と安保条約を結んで国の安全を図り、且つ自由世界の極東における防衛強化に貢献せんと決意するは、極わめて当然の成行きといわねばなるまい。 これが「私の信念である。」というふうに述べております。  次に再軍備の問題についても書いてございますが、「再軍備の問題については、私の内閣在職中」「故ダレス氏から要請を受けた際にも、」これに反対し、「且つその反対を貫いた」が、これは「当時において日本が再軍備に踏み出すことは、経済的にも、社会的にも、思想的にも不可能なことである」という理由によるものであった。しかし、  その後の事態にかんがみるに連れて、私は日本防衛の現状に対して、多くの疑問を抱くようになった。当時の私の考え方は、日本防衛は主として同盟国アメリカの武力に任せ、日本自体はもっぱら戦争で失われた国力を回復し、低下した民生の向上に力を注ぐべしとするにあった。黙るに今日では日本をめぐる内外の諸条件は、当時と比べて甚だしく異るものとなっている。経済の点においては、既に他国の援助に期待する域を脱し、進んで後進諸国への協力をなし得る状態に達している。防衛の面においていつまでも 自国の防衛を「他国の力に頼る段階は、もう過ぎようとしているのではないか。」と言っておりまして、  立派な独立国、しかも経済的にも技術的にも、はたまた学問的にも、世界の一流に伍するに至った独立国日本が、自己防衛の面において、いつまでも他国依存の改まらないことは、いわば国家として片輪の状態にあるといってよい。国際外交の面においても、決して尊重される所以ではない。 そして「今日は東西陣営の微妙な対立均衡時代である。そして、その均衡の上に、」「世界平和の保たれている時代である。日本はその間に処して、」  応分の貢献をしてこそ陣営の一員としての義務に忠実なる道理であろう。黙るに、同盟国の真剣な防衛努力に、水を差すに類する行為が責任当局によって行われている。一部世論に媚びるもの、自信を失いたるものといわねばなるまい。   東西対立が武力対立となり、その均衡の上に平和が保たれている事態は、決して喜ばしいことでも、望ましいことでもない。しかし、それは世界一つ現実である。その現実に直面する日本は、一方においては同盟友邦の努力を尊重し、他方においては自衛力の増強に努め、依って以って平和の確保、自由の防衛協力せねばならぬ。 というふうに書いてあるわけであります。これは昭和三十八年、東京オリンピックの前の年ですが、私はこれは今に至っても大変に示唆に富む、吉田ドクトリンという名前をつけられながら、これが本当の吉田ドクトリンではないかと考えておりますが、この吉田総理考え方につきましての総理の御所見を伺いたいと思います。
  9. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私も、吉田総理は晩年そういうお考えをはっきりお持ちであったと確信しております。吉田総理は占領中日本政治を担当されて幾多の功績を残されましたが、占領期間中においては、やはり日本のあの貧弱な経済力から見て防衛アメリカに任せて日本経済復興するのが当面の時務である、そういう考えに立っておやりになったことは間違いないし、それはまた当を得た政策であったと思います。しかし、朝鮮戦争が起こりまして、その前後からはやはり吉田総理もだんだんだんだん考えが変化しつつあったのではないかと思います。吉田総理がそのころ非常な御見識として、私、後で読んで敬意を表し、当時からもちょっとそういうことを聞いておりましたのは、中国につきまして、ソ連と中国がそのうちに必ずけんかするよ、そう言って、中国の国民性、歴史という深い洞察から今日の事態を予言しておった。そして、そのためにいろいろな国際関係の処理についてもそういう配慮のもとにさまざまなことを行っておられた。これは非常に大きな見識であったと思います。それと同時に、それだけの将来を見通す見識のあった方ですから、防衛問題についても棒をのんだようなものではなかったと私は思うのです。それだけの見識のある人ならば、国際情勢やその後の推移というものはおわかりになっていたと思うのです。  私が当時間いた話で、これは自由党に憲法調査会ができたときの話でありますが、その関係者から直接聞いた話ですが、たしか私の日記にもそれは書いてあると思いますが、憲法調査会ができて吉田総理のところにあいさつに行ったときに、実は占領の終わりごろマッカーサー元帥に、朝鮮戦争が終わった後憲法改正をやる必要があるんじゃないか、そう言ったら、マッカーサー元帥は、もう自分は任期が近く来て帰るのだから次の後任者に話してみたらどうだ、そう言われた。そこで、次にリッジウェー将軍が着任したので、リッジウェー将軍にその話をまたしたら、リッジウェー将軍は、いや、もう独立するのだからその問題は独立後考えてやった方がいいでしょう、そう言われてそのままになった。そういう話を私は聞いたのです。  それで、憲法調査会が自由党にできたことについては、そういう面も含めて検討してみたらいいという意味の示唆を与えられたという話を私は聞いたのです。それは表へ出ていない話です。しかし、吉田さんほどの人ですから、米ソ関係がどうなるか、あるいは世界の仕組みがどう動いているかというようなことはある程度洞察していたのじゃないだろうか。それで、日本の前途についても安全保障上の一つの定見をお持ちになっていたのではないか。憲法を改正する、いい、悪いは別ですよ。歴史的事実としてそういうことがあったのではないかと私も想像しておるのです。  そういうものを考えてみると、今言った文脈がよくわかってくるのでありまして、自由世界一員として相応責任も果たすし、自国の防衛努力もやるべき国力と国際的地位に日本は至った、いつまでも昔のような考えているのは間違いである、そして日米の友好や西方の結束に水を差すようなことをやることはよくない、そういう趣旨のことを今お読みになりましたけれども、私は吉田さんもそのとおりお思いになっていたのではないかと思うのです。  そういう意味で、いわゆる吉田ドクトリンというものが当初占領下ダレスと会ったときの話で終わりまで一貫していたというと、それはそうじゃない、歴史的事実に反する、私はそう思います。したがって、吉田さんが今生きておられれば、私のやっていることをよくやっていると言って褒めてくれるだろう、そう私は思っておるのであります。
  10. 椎名素夫

    椎名委員 防衛の話に入らせていただきますが、我が国の防衛力整備というのは、非核の原則というのがございますし、通常戦力をどうするかという問題だろうと思うのです。しかし、これを考えるにしても、その背景となるところを十分に考えた上でやらないと思わぬ落とし穴がある。一つの重大な例は、核の問題、核軍縮の問題だと思います。  この核軍縮の交渉の重大性ということは、せんだっての日米首脳会談でも確認をされたところでありますけれども、これに一つの過大な期待を持つことの危険性というものは私は指摘しておかなければならないと思います。もちろん、軍備に使われる金というのは本来まことにむだなことである。しかし、今まで申し述べてきましたようなことで、我々はこれを怠ることによってまたその先どれだけの真のむだが出てくるかということを考える場合に、やらざるを得ないところまではやらざるを得ない。  それから、核というものについて、とにかくこれは一度爆発すると大変な殺傷力、破壊力があるから、もう何でもいいから早くやめてしまえというような議論もある。しかし、今、仮に両方が、なかなかそういうことは起こりそうもありませんけれども、ソ連もやめた、それからアメリカもやめた、フランスもイギリスも、およそ核兵器と名のつくものは、戦場核から戦域核まで全部廃絶をしたということがある日突然起こりますと、恐らく西欧の我々の友達は大騒ぎになるだろうと思うのです。通常戦力の差ということを考えずに、核だけを別に取り扱っているということの危険ということは我々十分に考えなければいけない。ですから、それと同時に、ことしはいよいよ中断されていた核軍縮の話が始まった、平和軍縮の年である。その年にどうして防衛費をふやさなければいかぬのか。私はこれも非常に短絡した話であろうと思います。非常に微妙な均衡の上でありますけれども、何が現在の平和というものを保っているかということについて十分の検討をし、その知識を持ちながらやっていかなければいかぬ。我が国は、先ほども言いましたように、みずからの核は持たないということでありますが、これはアメリカの核の抑止力に依存をしているということである。このバランスというものが我々の安全にとって非常に大きな要素になっているということは争えない事実である。ですから、核軍縮におきましては、私は、核というものをほかの兵器から全く切り離して、それだけやめればいいという話ではなしに、通常戦力まで含めた全体のトータルなもの、この軍備管理ということを常に頭に置きながら核の交渉もやるというようなことは大変に大事だと思いますけれども、この均衡抑止ということについての総理のお考えを伺いたいと存じます。
  11. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 核につきましては、今さら申し上げるまでもなく、日本は広島原爆の惨禍を受けております。したがって、日本の究極的な核政策の目標はやはりあくまでも核の廃絶でなければならない、こういうことで一貫をしておりまして、国際連合であるとか、あるいはまた軍縮委員会等におきまして、核実験全面禁止等の決議案を次々と出してきておるわけですが、しかし、世界情勢を見ると、核の均衡ということを言われながらも、どうもだんだんと拡大の方向に動いておる情勢なきにしもあらずということでありまして、これは世界に対して大変危険である。日本の場合も、ただ理想論だけで核廃絶を叫んでもこれは実が伴わないわけですから、やはりもっと着実に、確実に、段階的に核の廃絶に向かって進む、そういう道を示すことが日本責任一つである、こういうふうに考えまして、日本としましても、昨年の核軍縮委員会で私から核実験禁止の段階的な方策を打ち出して、各国で協議をしていただいておるわけでございます。  米ソ両国が何といいましても核については主体的な役割りを持っておるわけですから、この米ソ両国におきましても、昨年まではどうにもならなかった交渉がようやく日の目を見てスタートということになってきたわけでありまして、我々としては、このSTARTであるとかあるいはまたINFであるとか、戦略核軍縮についてまず米ソが交渉をスタートして、そして何らかの成果を挙げていかなければ、これはもう現実的に平和とか軍縮とか言いながら軍縮への道はほど遠いものである、こういうふうに思います。ですから、私は、ことしの米ソの交渉というものは世界の今後の平和をトする大変大きな要素を持った会議ではないかと思いますし、日本もその会議の成功に向かって日本なりの外交努力というものを絶えず続けていかなければならない、こういうふうに考えております。  なお、これに関連して、中国も核問題についての新しい提案を出しておりますし、あるいはまた、きょうはサッチャー首相がアメリカの議会において、あくまでも米ソ交渉というものはヨーロッパを犠牲にして行われてはならないということを言っておりますが、日本立場からいえば、やはりこの米ソの核軍縮はアジアを犠牲にしてはならない、そういう面でグローバルな形でこの軍縮交渉が進むことを我々は念願し、そのために努力を惜しんではならない、こういうふうに考えております。
  12. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 均衡抑止というものは、核に依存するところも非常に大きいですけれども、単に核だけではない。東西関係にいたしてみましても、それは核兵器もありますし、通常戦力もありますし、あるいはその構成諸国間、ブロック内における結束力とか、あるいは食糧事情とか燃料事情とか、あるいはその国々の練度、忠誠心、そういうようなものにも深く依存しているものである、そう思います。したがって、核ばかりを考え均衡抑止考えることは、これは欠陥がある考え方になると私は思うのです。  現に、ヨーロッパにおきましても、SS20というものが非常に焦点になり、あるいはクルージングミサイルとかあるいはパーシングⅡがあっておりますが、その基礎にある通常戦力による均衡というものプラスこの核というものでそれができ上がっているということは否定できません。世界全体から見れば、それはもうすべて中東情勢とかあるいは北東アジアにおける米ソの軍事的接触とかそういうものまで実は入ってきておるし、極端に言えば、世界の天候がどうなるか、北の方が非常に寒いときになるか、小麦ができるかできないかという問題まで入ってくると私は思うのです。  そういうような非常に総合的な安全保障の日をもって見ないといけない。現に、核だけではないということは、SDIが出てきまして、SDIは非核兵器であると言われておる。今後科学の発達によってどういうものが出てくるかわかりません。そういう意味において、常に総合的な目でこれを見ていくということが大事です。しかし、最も殺傷力があり破壊力があり残虐的な結果をもたらすのは現実においては核兵器ですから、そういう一番物騒な残虐なものをできるだけ早く除去しようという人類の英知と努力というものは、これは尊重さるべきものである、そう思っております。
  13. 椎名素夫

    椎名委員 核の抑止力に関連して、最近問題になっているアメリカの核関係通信施設を含む指揮通信統制体系、我が国に設置されている問題でございますが、この点、我々の頼りにしている現状ではこれはもうやむを得ない。核抑止力というもの、これはもともと非常にグローバルなものでございますから、これに一カ所で穴をあけるというようなことはそもそもの前提が狂ってしまう、安保条約自身の意義もなくなってしまうと私は思うのですが、そういう意味で、私はこの問題というのは、決して言われますような、いや応なしにそういうものがあると核攻撃の対象にされる、これは抑止力が破れたときの話でありまして、我々にアメリカの核抑止力がなくなった場合それではどうなるかということを考えれば、私は非常に短絡した議論じゃないかというふうに考えております。  これはそういう意味で、私は、何ら事前協議の対象ともならないし、また、我々の非核三原則にも抵触しないと考えますけれども、外務大臣にその点確認をしておきたいと思います。
  14. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろん、核につきましては、申し上げるまでもなく日本の場合は非核三原則というのがありますし、安保条約における事前協議がこの核についての日米間の大きなけじめになっておるわけですが、しかし、日本を守っていくためには、日本の持っている自衛力とともに、やはり安保条約の持っておるところの抑止力、通弊兵器、核抑止力、そういうものを含めたものによって日本の平和と安全、極東の平和と安全が守られておる、こういうふうに我々は確信をいたしております。
  15. 椎名素夫

    椎名委員 SDIについても少し申したかったのでありますが、一点だけ指摘しておきますと、これは非常に長期なものでまだどうなるかわからない。しかし、そこで、最初あの構想が出たときに西欧の諸国の中でもさまざまな異論が出てまいりましたけれども、最近収れんをしてきている。つまり、一つには、これがあってこそ長らく中断しておった核軍縮の交渉が始まったという非常に大きな意味。それからまた、核軍縮交渉というのは、今まで一貫してそうでありますが、結局は攻撃核兵器の均衡という大枠の中でしかできなかったものに一つの新しい建設的な要素を持ち込む可能性があるということで、だんだんに西欧の議論も今収れんしつつある。私は総理がこの研究に理解を示されたということには賛成でございますが、向こうに念を押されましたように、各段階においてきちっとした情報をもらい、そして、我々の防衛という立場からいってどういう影響があるか、しっかりした検討がこれから必要であろうというふうに思いますので、その一点だけを申し上げておきます。  それから、一つ具体的な案件ですが、当委員会でも既に取り上げられている問題でございますフリートサット衛星使用の問題。我が国がとにかくみずからを守るために自衛隊がある。そして、その防衛の大きな枠組みとして安保条約がある。有事の際の共同対処ということもその中の非常に重要な一環である。言ってみれば、この際のこの衛星使用ということはまことに、むしろ使わないで――私、おやじが選挙に出たころを覚えていますが、東京から岩手県に電話を申し込むと夕方までつながらなかったということがあるのです。汽車で行った方が早かった。この二十年、三十年の進歩で、今はダイヤル回すとすぐつながる。日進月歩のものを、我々が非常に、いざというときには能率よくやってもらいたいという人たちに手を縛るというのはおよそばかげた話じゃないかと私は思います。自衛隊のこれからの問題としては、通信情報関係、これは非常に重頭であるということは総理も何週も、言われておる。  今と同じような問題ですが、これは非軍事、軍事というようなことに分けますと、自衛隊が災害出動するときには、これは非軍事ですからそのときは使っていい。だけど、そのほかのときは軍事だからその途端に今度スイッチ切らなければいかぬというようなことは、これは常識から考えてもまことに変な話である。ということを考えますと、単なる字句の解釈でこの問題について云々しているのは非常に不毛の議論であると私は考えており、また、あの国会決議もそういうような精神でできたものではないというふうに考えておりますが、いかがでございましょうか。
  16. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 椎名委員御指摘のとおり、日米安保条約に基づきまして、米軍は我が国を防衛する義務が有事のときございます。そういったときに、我が自衛隊とそれから例えば米海軍、それは完全に別々、それぞれの指揮に従って対処いたすわけですけれども、やはり常日ごろからコミュニケーションを十分とっておくことが重要であろうと思っております。また、そういう意味で時々共同訓練なんかも行われるわけですけれども、そのときの訓練のコミュニケーションの手段が、やはりなるたけ有効であった方がいいし、また通信が非常に敏速に行われるものであった方がいいということは論をまたないところだと思います。  そういう意味で、私たちは、今回のフリートサット衛星の問題につきましては、国会決議もございましたので大分考えたのでございますけれども、しかし、平和の目的の解釈をどうすべきか、これは立法府の決議ではございますけれども、立法府の方の中にも、従来の国会のいろいろな質疑の中でいろいろな御意見がございます。今椎名委員のおっしゃるように、技術進歩の中においてはそろそろ許されるべきなのではないだろうかという御議論の方もございます。そういったわけで、政府として行政を進め小際に一つのめどを立てて、解釈を今、より明確にした方がいいのではないかということで、先般私が当委員会で読み上げましたような統一見解を申し上げた次第でございます。  科学技術の進歩がここ十数年非常に大きくて、そして、一般の人もごく日常に使われているような機能というものは、仮にそれが衛星関係のものであっても、私たちが隊務ないしその他の面に使うことはお許しいただけるのではないか。私たちは、やはり科学技術の進歩によるその機能の利用の一般化という側面から物事を考えていきたい、こう思っております。
  17. 椎名素夫

    椎名委員 一%問題、少しお聞きしたいと思うのですが、今までのこの委員会における総理の御答弁、一%は守りたい、しかしこれと同時に、大綱というものはやはり早期に達成しなければいかぬ、こう言っておられるように思うのです。大綱というのは策定後十年が経過しようとしている。この達成期間について総理は何遍も答弁をされておられますけれども、お聞きしておりますと、大綱策定当時考えていた期間は五、六年であったともとれるし、あるいは十年程度であったというふうにもいろいろ受け取れるような感じがいたします。本当のところ、当時およそ何年ぐらいで大綱水準に到達することを考えていたのか、もう二度明確にしていただきたいと思います。
  18. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 もし四、五年という言葉で申したとすれば、それは一%のことで、私の舌足らずでありますから修正いたしますが、大体GNP一%というのは四、五年ぐらい、それから大綱というものは、できるだけ早くという言葉ですが、当時の立案者の考えでは十年ぐらいというのがめどにあったと私は考えているものです。それは、GNP一%については、ここにいらっしゃる三原さんや金丸長官が大体四、五年めどということを言っておりますし、その後また数年という言葉でも言い直しておりますが、大体四、五年というのをめどにしておった。それから、大綱水準については、当時あれを作業してつくってその後防衛事務次官になった久保君が、ある雑誌の座談会におきましても、その策定当時は大体十年ぐらいをめどにしている、そういうことを言明しております。そういういろいろなことからいたしまして、大体それぐらいをめどにしていた、そう考えておる次第であります。
  19. 椎名素夫

    椎名委員 たびたびの御答弁で、できるだけ一%を守っていきたいとおっしゃっているわけでございまして、こういう費用というのは安ければ安いほどそれは望ましいことである、それなりに意味のあることなどの御答弁だと思いますが、どうも私ども見ておりましてそろそろ危なくなってきた。そのときにはまた慎重にその時点に立ってお考えになる、これも結構でございますけれども、さあ一%突破した、すぐにその先考えなければいかぬということで、早々のうちに次のいわゆる歯どめというようなことがまた先にいって厄介の種になるというようなことがあっては私はいけないのではないか。あえて御答弁を求めませんけれども、この一%をなるべく守りたい、これは結構でございますが、そのときに、例えば今までもしばしばやってきたように、定年を延長して無理やりに一%以内に押し込むとか、あるいは練度の低下もある程度覚悟で一%に押し込むとか、そういうようなことが先行してはいけない。あくまでも、苦心に苦心は重ねられても、やはりこの今の情勢下において必要なものを我々の、国民の安全のためにどうするかということを優先させて考えていただきたいというふうに思うわけであります。  その際の歯どめの問題でございますけれども、私は自動的な歯どめというものは非常に危険であると思います。今では一%を超えるか超えないかという数の議論だけになってしまって、逆に言いますと、一%以内にとどまっている限り中で何をやっていても余り気にしない、そういうようなことになりかねない。しかし、やはりこれは戦後四十年間我々が苦労して、先輩あるいは我々も協力をして築き上げてきたこの日本民主主義体制というものに私は全幅の信頼をおく置くべきではないか。あくまでもそれとは離れた形で、自的にここまでやっておけば大丈夫というような態度の歯どめというものは、いわば定量的な歯どめというようなものはぜひ避けていただきたいということを、早過ぎるかもしれませんけれども御要望をしておきたいと存じます。  それから、もう一言つけ加えておきたいのですが、現在大綱を達成することがまず目標である、これはこれで、平和時の基盤防衛力すら達していないということですから、それなりに評価いたしますけれども、私はやはり大綱というもの自身も少し考え直さなければいけないような要素を持っているのではないかというふうに考えております。この大綱というのは、根底というのは一九七〇年初頭の軍事情勢というものを基礎にしてわる。デタントの時代である。そこで、あのときに四次防以後どうするかということでさまざまな議論があったように思っておりますけれども、一つは、ある程度の軍事的合理性を貫くけれども、それにはいわば政治的なリスクはなかなか大変だ、そういうのが一つ選択。もう一つの方は、ある程度軍事的な合理性というものを犠牲にしても平時の政治リスクというものを楽にするという、どっちにするかということで、当時はデタントでもあったし、あるいはさまざまな制約がございましたので後者を選んだということであります。しかしその後、日本をめぐる状態、あるいは世界をめぐる情勢というのは非常に変わってきていることは確かであった。当時の大綱はいわば建物の耐震設計ということで、例えを言いますと、まあ震度三・五か四・五ぐらいなら倒れないというようなことにしておくかということであったんじゃないかと私は思います。やはりある程度予想できるぐらいの地震が来ても倒れないようなものにしておかなければいかぬということでございまして、よく防衛費は保険というようなことを言いますが、私は保険じゃなくて耐震設計だと思う。この設計がこのままでいいかということは、状態が変わった、科学技術の進歩もあった、こういう中でもう一度この十年前の大綱というものが妥当であるかどうかというところから始めて、私どもは見直していかなければならないのではないかというふうに考えているわけでございます。このことを一言付言いたしまして、御答弁は要りませんので、私の質疑を終わらせていただきます。
  20. 天野光晴

    天野委員長 これにて椎名君の質疑は終了いたしました。  次に、大出俊君。
  21. 大出俊

    ○大出委員 冒頭に一つだけ緊急に承っておきたいことがございます。それは、昨日でございましたか、やはり質問が同僚委員からちょっと出ておりますけれども、ペルシャ湾内で、十八日の夜、イランの戦闘機だというふうに目されるF4ファントムでございましょうか、大阪商船三非船舶の労務提供によるコンテナ船アルマナク、これが四発ぐらいのようでありますがミサイル攻撃を受けまして、藤村憲一さんという方が亡くなっておられます。また、柴田さんという方は軽傷を負っておいでになるわけです。この方は、区が分かれる前の私のもとの選挙区の方でございます。マリンハイツという、横浜市中区錦町にございますが、ここの方はほとんど船員が住んでおいでになりますので、実は私の地元からたくさんの連絡がございまして、まず何で二十何名みんな日本人で船を動かしているというのに日の丸の旗を出しておけなかったんだ、そういうことをするから日本人が死んだんだ。私にはわかっておりますけれども、そう言われればこれは何とも弁明の余地がないのですね。私は、労務提供というのはどうなって行われておるか知り過ぎていますから。  そこで、もう一つ大きな問題は、新聞にも出ておりますけれども、イラン側でありますけれども、間接的にはみずからの航空機が、戦闘機がロケットを発射したことを認めているかのように見える答え方をしていますが、これは「この事件についてイランに責任があるという主張はすべて拒否する」、これはイラクがやったことに対する我がイランの報復だ。これは確かにクウェート船である限りは成り立たぬ主張ではないのですね。そうすると、ここでまた、このはざまにあって命を失った方、負傷した方の賠償の責任も一切ないというのだから、そういう交渉には応じないというのだから、やろうとすれば苦しい、何とか裁判でやるよりしようがなくなる。大韓機の場合もそうでありますが。これは外務大臣、きのうお答えになっておりますけれども、ここらのところを一体どうするおつもりなんですか。これはしようがないということになりますか。いかがでございますか。
  22. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 亡くなられた方々は大変お気の毒に存じます。今政府としましては、鋭意事情を聴取しておりますし、それから、早速イランに訓令を出しまして、野村駐イラン大使がイラン当局者に会って説明を求めております。その答えが今大出さんのおっしゃったように、イランがやったとは言わない、もちろん責任はとらない、こういうことでございますが、しかし、少なくとも日本人が二十五人も乗っておるわけでございますし、不法な状況の中で攻撃が加えられたということになれば、これは国際法的にも責任があるものである、こういうふうに私どもは考えております。もちろん、船籍はクウェート船ということであるようでありますけれども、日本人が二十五名も乗っておるわけですから、不法な攻撃が行われたとはっきりすれば、国際法的には責任は求めていかなければならないのじゃないか、私はこういうふうに存じておるわけでございます。
  23. 大出俊

    ○大出委員 そこがちょっと答弁になってないところが一つあるのです。二十五人とおっしゃるが、これは二十五人に違いないが、船を動かしている人たちは全員日本人なんですよ。その意味で確かに労務提供船です。だが、一体なぜ、日本人が乗って、日本人がやっているのだということを外から見て明らかにできないのかというわけですよ。クエート船だと思って攻撃をした、実際には全部日本人だった、この大きな矛盾を何でほっておくのか。つまり、このマリンハイツには、ほかに亡くなった方と同じこの船に乗っている方が、奥さんが住んでいるのです。ほかの方も乗っているのですよ。  私の言いたいのはこういうことだ。海運不況という今の状況の中で、外航関係の船に乗っている人は約四万人いるのだけれども、そのうちの約七%ですが三千人という方は、百四隻の外国籍の労務提供船に乗っているのですよ。ところが、この労務提供船というのはどうなっているかというと、動かしているのは全部日本の船員だけれども、だから労働環境は日本の船と全く変わらないのだけれども、積み荷も行き先も、全部外国の船会社が勝手に決める。全員日本人が乗って操船をする。そうすると、これは積み荷いかんによっては攻撃されたってしようがないのだ、行き失いかんによってはこれまた攻撃される可能性がある、そこがわかっていないわけじゃない。そうすると、そこのところを、日本政府があるのだから、船主もいれば、全日海という立派な組合もあるのだから、皆さんの方でやはりそこまでの用心をしなければ、こういう結果は起こる。その意味で、私は政府に大きな責任があると思っている。そこのところを一体どういうふうにお考えになるか。クウェート船だから日の丸を掲げられないということになるのか。  一番最初のイランの駐日大使の言っていることは、イランは日本の船は原則として攻撃しないことにしていると言うのです。わからなかった、こう言うのです。ここらのところを一体どうすればいいのですか、承りたいのです。
  24. 山下徳夫

    山下国務大臣 突然の御質問で、ちょっと政府委員を呼ぶのが間に合いませんが、私の認識に間違いなければ、国旗につきましては船籍国の国旗を掲げるのが国際条約の建前であって、したがいまして、全員日本人が乗っておりますけれども、日本の国旗が掲げられなかった理由はそこにあるかと存じております。
  25. 大出俊

    ○大出委員 そんなことわかり過ぎている、旗国主義となっているんだから。つまり船籍のある国の旗を掲げることになっている。だがしかし、全員が日本人だということになるとすれば、一体政府はそこをどうするのだと、今後もあることなのでそこを聞いている。そんなことわかっている。これからどうするのだと。
  26. 仲田豊一郎

    ○仲田政府委員 御指摘の点はごもっともな点が多いのでございますが、日本国籍であるということがはっきりしておれば、これは今まで攻撃されたことはございませんし、また、これからもないだろうという、大体そういう前提で考えてよろしいかと思いますが、今回の場合は、これは御指摘のように、日本人の乗組員が乗っていながら、船の籍はクウェートでございますから、クウェートの旗しか立っていない。また、これを運航している会社もクウェートの会社でございます。したがって、そのしかるべきところにはクウェートのサインしかない。こういうところで日本人乗組員の安全をいかに確保するかということは、今まで前提としておりました日本国籍の船に対してどうするかということからはかなり外れた、また別の観点からの特別の対策が必要ではなかろうかと私は考えているわけでございます。  しかしながら、もちろん船を運航する人が通常の場合運航の指揮権、どこからどこまで行きなさい、スピードを何マイルということを指示する権限は持っております。また、どういう積み荷をどこへということも、これも運航者の権限の中でございますが、あわせて、船長の権限と申しますのは、これは緊急の事態が発生した場合、また船、財産、人命に非常に危ないという状況に立ち至った場合、これは船長が、それを避けるための全面的な権限を持っているということが海上法規の原則でございます。  したがいまして、とりあえずはその船長の権限においてやれるべき一つの枠というものを船会社の専門家、それから実際に船に乗っておられる経験のあられる海員組合なり乗組員の方々、この方々が十分相談して、もう既に現在そういう措置を決めております。例えば五十四度以西にはこういう形の危ない船は入らないということをもう昨日決めております。それから、その中に入っております。そういう形の日本船はなるべく早く出るということも決めておられます。これが恒久的な措置になるかどうかということはまた別でございますが、とりあえずの安全対策としては、私は非常に結構な決め方ではなかったかと、私どももそれをサポートしている次第でございます。
  27. 大出俊

    ○大出委員 政府はどうするの、政府は。
  28. 仲田豊一郎

    ○仲田政府委員 政府といたしましては、今までやっておりましたことは、外務省、在外公館、それから関係の国際機関、こういうところとよく連絡をとりまして、安全確保のために必要な情報を得る、また、こちらから要請をする、こういうことを地道にやっておりまして、今、私どもと・・(大出委員「行政的な指導はしないのか」と呼ぶ)行政的な指導という意味では、私どもと、それから船会社のグループ、それから海運、海員関係の方々、こういうところと一緒になりまして、いろいろな工夫、細々とした、一つではございませんが、こういうことも役立つのじゃないかというような工夫を相談しているということでございます。
  29. 大出俊

    ○大出委員 時間がありませんから、また改めて時間を見て申し上げたいと思うのでありますが、ここでまた、この亡くなられた方、船長の権限と言うけれども、突然四発ミサイルを撃たれて、休憩室で寝ているところをミサイルが飛んできて、その破片が当たって即死というんじゃ、船長の権限も何もないでしょう。しかも、イランの経済局長は、一切これ責任を負わない、こんなばかな話、ないじゃないですか。そうでしょう。総理、ひとつこれ考えてみてくださいよ。一体これ、どういう責任を明らかにさせればいいのですか。
  30. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 きのうも外務大臣が答弁しましたように、まず国際関係で事実を究明してこれを明らかにする。そうして損害賠償その他の措置をできるだけ早くとるように我々としても積極的に努力をする。それから、運輸大臣が答弁しましたように、この安全航行の問題について、技術的に経営者及び海員組合の皆様方とも協議する。あるいは設備の改善、インマルサットの装置とか、そういう面についても今後努力してまいりたいと思います。
  31. 大出俊

    ○大出委員 改めて承ります。  さて、大韓機の問題でございますが、日本側が傍受をしたテープ、制服の方々は情報のひとり歩きと言う。こちら側が知らないうちに、いつの間にかアメリカで、ホワイトハウスで議会指導者を集めて放映をする。これはジム・ライト民主党下院議員、下院院内総務の方がこれを見て、RC135がいるということを少なくとも二回パイロットが言っていたと。これを記者クラブで話した。さあ記者クラブ、大騒ぎになりまして、早速報道官のところに聞きに行く。報道官、答え切れずに、NSA、国家安全保障局の側の方の方から、RC135が同地域にいたことを示唆をした。結果的にレーガン大統領が認める。これ、ずっとこの一連のつながりがございます。  また、東部時間五時ぐらいになるところでレーガン氏が演説をする。そしてテレビで流す。国連の安全保障理事会でも、ロシア語、英語の両方の字幕入りで流す。これ一体、何で日本で出さぬのだと言ったところが、いろいろやりとりをしている間に、アメリカ側の許可が要る、承認が要る、時間をかしていただきたい、こういう話。さっぱりわけがわからないですね。一体、これはいかなる手続で、いかなる法的根拠で日本の傍受した情報を米国へ渡したのですか。
  32. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  防衛庁といたしましては、今回の事件の異常性と重大性にかんがみまして、真相究明のために交信内容を米国と協力をいたしまして慎重に検討をする必要があるというふうに判断をいたしまして、アメリカに交信記録を提供したわけでございますが、この提供に当たりましては、慎重な対応を期するために、本件交信記録の処理について総理の御指示により行ったものでございます。  第二点の根拠につきましては、私ども、この電波情報の収集と申しますのは、防衛庁の設置法にあります必要な調査を行うということで調査業務の一環としてやっておるわけでございますが、この調査業務を円滑にかつ内容を充実させていくという観点から、必要に応じまして自主的な判断のもとに必要な情報の交換というものをアメリカと一般的に行っているわけでございまして、そのことが我が方の調査業務の充実向上にも資するというようなことから、従来から必要に応じて慎重に対処をしてやってきておるものでございます。そういう一般的な業務が流れておるわけでございますが、本件の資料提供もそういった枠組みの中での処理であるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  33. 大出俊

    ○大出委員 これは武器技術でもそうでありますが、MDAという明確な根拠がある。あって、事務的な取り決めがある。今のお話を聞いていると、これは日本国家主権にかかわる問題で、これは後藤田さんが官房長宵のときに大変うまいことをお考えになって、安保条約の効率的運用のためにというので枠を外したのです。とにかくあなたは頭がいいから手に負えぬですけれどもね。私はあなたと大変長いおつき合いで、ベトナム行きのM48戦車をとめたとき以来、あなたバッジのついていない官房副長官でしたからね。あなた窓口で、私は神奈川の窓口で苦労しましたが。CIA問題のときも、あなた警察庁長官でおいでになって、最後に副長官をよこして話をつけたいというのであなたに出てきていただいてお答えいただいた。長いおつき合いだからわからぬわけじゃないが、一体これは法的根拠がなくてやれますか。とった情報を、これは日本の情報機関ですからね、これは日本の情報ですから、何の根拠もない、ないけれども適当にやります、今のお話はそういうことだが、そういうことでやれますか、一体。どうですか。
  34. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいま申し上げましたように、防衛庁設置法の中に防衛庁の業務の遂行に必要な調査を行うということが書いてございます。で、電波情報の収集という問題もその一環でございます。その業務を充実させていくために、その情報を必要に応じまして情報交換をしてお互いの業務の充実を図るということもこの調査業務の一環であるというふうに従来から考えて処理をしてきている次第でございます。
  35. 大出俊

    ○大出委員 設置法は私も何遍も何遍も読んできましたが、設置法の中にアメリカに情報を提供すると書いてありますか。
  36. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  条文の根拠といたしましては、防衛庁設置法第六条の第十一号というところに「所掌事務の遂行に必要な調査及び研究を行うこと。」という条項がございまして、これに基づいて電波情報の収集等もやっておるわけでございまして、調査活動の充実をするためにそういった情報交換を必要に応じてやっていくということはこの根拠で実施し得るというふうに従来から解されておるわけでございます。
  37. 大出俊

    ○大出委員 そんな勝手な解釈できるのですか。安保条約ができて、設置法ができた。設置法ができるときにどんな有権解釈があるのですか。そのときに、それじゃ、アメリカに情報を渡すと書いてありますか。そういう議論をしたのですか。全くそれはあなたの勝手な解釈だ、そんなものは。そんなものは認められない。それで今度は、渡した情報を出せと言ったら、アメリカと折衝しなければならぬ。何で折衝するのだと言ったら、承認が要る。しまいには許可が要る。そんなことはどこに書いてある。調査研究のためにやったと言うのならば、アメリカの何で許可が要ったり承認が要ったりするのですか。それも設置法の十一号に書いてあるのですか。何にもないじゃないか、そんなものは。国家主権だ、問題は。日本は第五十幾つか目のアメリカの州じゃないのだ。そんなことで審議ができるか。
  38. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  私どもが従来から申し上げておりましたことは、我が国が収集いたしました交信テープを開示するということは我が国の情報能力を示すことにもなりますので、この性格上慎重を要することを御理解をいただきたいということを繰り返し申し上げていたわけでございます。(大出委員「答弁にならぬ」と呼ぶ)はい。まあしかし、基本的にはこのような考え方に立っておるわけでございますけれども、ただいまの先生のお話、私どもも従来から伺っております。  ただ、今申し上げましたような情報、資料の基本的な扱いというものについては御理解を賜りたいわけでございますが、さらにどのような措置が可能か、検討はしてみたいと思います。
  39. 大出俊

    ○大出委員 だめだ。私がそれじゃ答弁にならぬと言ったら、あなた、はいなんて答えたんじゃおしまいじゃないか。質問のしょうがないじゃないか。だめだ。
  40. 天野光晴

    天野委員長 もう一回防衛局長から答弁を一応させます。後、始末しますから。防衛局長
  41. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 先ほども申し上げたわけでございますが、設置法上の根拠は、先ほども申し上げたとおり、設置法第六条第十一号でございます。しかし、この権限に基づきましてあくまでも私どもがやっております情報の交換というのは自主的な判断に立ちましてやっておるわけでございます。基本的には、この情報能力というものはやはり専守防衛という見地からいって非常に重要なものでございますので、私どもは従来からその情報業務の充実という必要性考えまして、自主的に判断をして慎重にこれは処理をしておるということも御理解を賜りたいと思います。
  42. 大出俊

    ○大出委員 いいですか。十一号で情報というものをとって調査研究をすると、それしか書いてないのですよ。それで、勝手に調査研究だからというのでアメリカへやる。どこに根拠が、書いてないじゃないですか。だから、武器技術のときもそうでしょう。私があれだけ質問をして混乱をしたが、根拠は明確だったでしょう。MDAがある。確かに明確ですよ。安保条約を調印するときに調印したんだから。MDAがある。このMDAを根拠にして、設置法じゃないんだ、設置法の十一号じゃないんだ。MDAを根拠にして各種の事務レベルにおける取り決めをやってきた。これは条文の中にも秘密事項が入っていて、秘密になっている。P3CならP3Cのライセンス生産をする。ライセンス生産をするならするで、全部それなりの文書交換が行われている。そうでしょう。等々、それがわかって、三十幾つかあることがわかった。しかし私は、根拠があるかうその点は認めた。出していただければいい。表紙しか出してこなかったけれども。そうでしょう。そこから先、深追いをしなかった。根拠なしにそんなことをやられてはたまったものじゃないじゃないですか。認められぬ、そんなことは。
  43. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 このKALの事件のとき、私はもちろん防衛庁に直接いたわけではございませんが、ただいま防衛局長が申しましたように、私たちとアメリカとはお互いに安全保障の面に関し非常にお互いに理解し合う国柄の間でございます。そして常日ごろ、日米防衛協力に関するガイドラインにおきましてもいろいろな意味の、ハードのもの、ソフトのもの、情報交換をいたしておるわけでございます。それが一つ一つ設置法に合致するかどうかの議論に入るとなかなか難しいところはあるのかと思いますが、やはり防衛協力をお互いにやっている国々として、情報の交換はあり得ると思っております。そしてまたそれぞれの国が持っております情報というのは国の主権であって、それを出すか出さないかというのは国の最高判断でありますし、今度のような場合はそれほど機密に属する大変な情報であって、世界じゅうが注目した情報であったと思うので、それを出すか出さないかというのは重要な国家の自主的な判断だと思いますけれども、その点に関しては、当時の経緯をお聞きいたしてみますと、最終的には総理大臣の直接の御判断をいただいて渡すことを決定した、決心したというふうに御理解いただければありがたいと思うのです。(「明快だ」と呼ぶ者あり)
  44. 大出俊

    ○大出委員 明快じゃないんで、(「常識の問題だよ、そんなものは」と呼ぶ者あり)常識じゃないんで、これは国家主権にかかわる問題だから、きちっとそれなりの協定なり取り決めなりが行われていなければならぬ筋合いなんですよ。適当に常識で渡す、そんなことができる筋合いじゃないんだ。外務省がやっていることの中には秘密協定もたくさんあるが、長い年月それを一つずつ私ども当たってきたけれども、出してない。ないけれども、すべて根拠があっておやりになっている、ちゃんと協定もつくって。そんないいかげんなことで渡しているんじゃない、いずれの場合だって。そうでしょう。だから、根拠が明らかであればどうってことはない。設置法の十一号の解釈でそんなことはできない。防衛庁長官がいみじくも、一つ一つ言えば十一号に当てはまるかどうかわからぬとおっしゃる。だから、そこに協定がなければならぬ。だから、ブキャナンの寄港を拒否したニュージーランド--アメリカ、英国、ニュージーランド、オーストラリア、カナダ、五カ国、元英連邦の国でしょう、英語の国ですよ。五カ国でつくっておるウクサ協定というのも明確な根拠になっているんだ、これは、  ウクサ協定とは何か。皆さんいろいろなことを私に言ってきておいでになる。ウクサ協定のウクサというのは、ユナイテッド・キングダムですよ、一つは。英国ですよ。もう一つはUSAですよ。だからウクサなんだ。ユナイテッド・キングダムとUSAの情報の秘密協定ですよ、これがウクサ協定だ。今度のニュージーランドのブキャナン拒否の問題で報復措置を講ずる。どういう報復措置を講ずるか。この協定に基づいて情報交換がそれぞれ行われるようになっている。アメリカが第一当事国、第二当事国は英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、四カ国、これが第二当事国、こうなっている。だから交換をしてきているわけですよ。特にソビエトに対する秘密情報ですよ。それを、この条約はある、協定はあるけれども、アメリカ側は、ブキャナン入港を拒否したんだから提供しないと、報復に使っているわけですよ。そうでしょう。明確な根拠がある。あるから、今回の場合も向こうに渡したテープお出しくださいと言ったら、何と言った。時間かしてくれ、対米折衝が要る、承認が要る、許可が要るとこう言った。取り決めがなければそんなことはないじゃないですか。適当に渡せるものじゃないですよ。いかなる内閣ができたって一緒でしょう、それは。国家主権にかかわるんだから。明確な取り決めがあって、それが表に出せない秘密協定であってもいたし方ないところはたくさんある。学問的にもいろいろな意見はある。だが、根拠がないと言われて十一号だと言われたんでは、質問のしようがないじゃないですか。どうですか。
  45. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 当時官房長官でございましたので、その立場でお答えをいたします。  まさに、情報をどう取り扱うかということは、これは国家主権の範囲内の問題でございます。当時もこれはどうするかといったようなことで、事柄は極めて重要な問題であるし、物によっては日本側の情報の体制が暴露するといったようなこともございますから、扱いには大変苦渋をいたしたことは事実でございます。そこで、総理に御相談をし、総理の御指示もあって、国家主権の範囲内のこととして、やはり情報交換というのはしょっちゅうあり得ることでございますから、事柄の重要性にかんがみて、これは私はこの程度のものを相手方に渡そう、こういう決断をしたわけでございます。  今、ニュージーランドでございましたか、イギリスでございましたか、挙げておりましたね。こういったもののある国もあると思いますが、我が国としては事柄の重要性で情報の中身を検討して、そして自主的判断においてこれは行ったものである、かように御理解をしていただきたい、かように思うわけでございます。
  46. 大出俊

    ○大出委員 今官房長官じゃないのであなたに聞いてもしようがないでしょうけれども、外務大臣に承りたいのですが、渡したこの情報をアメリカであれだけ公表しているのだから公表してくれと言ったら、時間をかしてくれ、承認が要る、許可が要るというのはどういうわけですか。
  47. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはアメリカ日本から渡したものでしょうが、アメリカ自身がこれを編集をしておるわけですから、そしてアメリカの手によって発表しておるわけですから、やはり日米間においてアメリカの了承を得て入手するということは、これは筋から一言えば当然だろうと思いますし、またアメリカはそれを拒否するような立場にはない、日本から要求すれば必ずこれは入手できる、時間の問題である、こういうふうに思っております。
  48. 大出俊

    ○大出委員 そこで、外務大臣に続けて承りたいのですが、このウクサ協定というのは何ですか。
  49. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 先ほど委員お話しになりましたような種類の協定が、アメリカとイギリスの間、それからカナダ、豪州、ニュージーランドを含めて存在するということは、最近のアメリカのベストセラーの本の中に出ておるということで承知しておりますが、我が国に関する限り、これは全く無関係でございまして、私どもとしては、その協定の内容がいかなるものであるかというようなことについては一切承知しておりません。
  50. 大出俊

    ○大出委員 私が聞きもしないのに何で先に答えるのですか。私は日本が加盟しているかなんて一つも聞いていないですよ。それを称して語るに落ちると言うのです、日本語で言えば。  語るに落ちたから申し上げますが、これですよ、「パズルパレス」。ジェームズ・バンフォード氏が書いた。書いたのは三年前ですよ。大騒ぎになりまして、これは「パズルパレス」というとおり、なぞの宮殿式にいろいろ書いてますが、アメリカの情報機関のいろいろな中身を書いている。難解な専門語がたくさんありますから、大変難解。  だが、読んでいってみると、確かにここにある。これは三百十五ページにちゃんと載っていますね。これは一九四七年に結ばれたというのだ。今お話しのとおり、今北米局長お答えになったとおり、アメリカが第一当事国ですね。そして、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、四カ国が第二当事国だ。これは情報交換をする、アメリカ選択権がありますが。そして、後ろの方を読んでいきますと、まずNATOが出てまいります、「NATOネーションズ」。それから「アズ・ジャパン・アンド・コリア」つまり、日本と韓国が出てまいります。これは「レイターネーションズ」なんですね。後から加盟した、後からサインしたとちゃんと書いてありますよ。後からNATOの諸国、日本、韓国がこの協定にサインをした、こうなっている。  そして、私はこれを前からいろいろ気にしておりまして、ずっとここ二、三年調べてきた。書いている人もありますが、第三当事国に対してはデータ提供を語る、抑えるとの了解ができている。第一当事国はアメリカ、第二当事国は英連邦四国、そして後から入ったNATO日本、韓国というところに対しては制約がある。そういう了解がこの条文の中にサインしたときに書かれている。だから、許可も要れば承認も要る。当然だ。つまり、アメリカ側の情報提供を日本は受けている。サインしていればこれによって受けている、当然こういうことになる。当たり前、不思議ではない。不思議にしておりましたが、ブキャナン拒否の問題でようやくこれを新聞が取り上げるようになって、日本の新聞の中で日本経済の方々がずっと書いておりますけれども、明らかになってきた。  そうすると、ここで書いていることは本当なんだ、うそじゃない。あなた方は陰で――私はいろいろなお話がこの問題で前回の質問で要求しましたから耳に入る。そうしたら、秘密協定だから仮にあったとしても申し上げるわけにいかない、三人の方からそういうお話がございました。仮にあったとしてもそれは申し上げるわけにいかない、事務当局の方でございます。そうすると、今の語るに落ちるではありませんけれども、表街道で、そうですか、ありますとは言えぬと思うのですね。だけれども、さて私にここで引き下がれといったって、これは引き下がりようがない。何とか答弁してくださいよ。仮にあったとしたってこれは申し上げるわけにはいかないとかなんとか言わなければ、この場の幕がおりませんよ。いかがでございますか。
  51. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 外務省としましては、大出さんの質問がありますとそれにこたえて詳細に勉強しておるわけで、その中で恐らく今の問題が出るだろうということで、その原典はどこかということで外務省当局が全力を挙げて探し出したのがあの本だというふうに聞いております。確かにそれはアメリカでベストセラーにはなったというふうに承っておりますけれども、日本はその中でサインをしてないし、あるいは秘密協定という形のもので日本関係しておるということでは決してないということを私も事務当局からはっきりと、明快に承っておりますので、今の問題に関する限りは日本政府としては関知していない、こういうことであります。
  52. 大出俊

    ○大出委員 ここから先のものを出しますと、これは大韓機の質問にならなくなりますので、どうしますかな。それ以上の答弁は、大臣がしちゃいましたからほかの事務当局の方にはできませんな、非公式ないろいろな話がありますが。それじゃこの問題はいずれ時間を改めて承ることにいたしまして、先にこの間の引き続きで重要な問題がございますので、残り時間があればまたそこでこの問題を繰り返して、少し資料でも差し上げて質問をしたいと思っております。ないと言っても、なくはないのでございまして。  そこで、進行上先に進みます。少し時間がかかりますから、そのものずばりを申し上げるようにいたします。  この間、矢崎さんの御答弁の中に、防衛庁が発表したKAL、大韓機の航跡は三時十二分からしか出ていない。そこから先出していただけぬか、スクランブル機Bというのはもっと先にあるじゃないかと。この間図面を差し上げましたが、そこでオガルコフという方が言っている航跡がある。この航跡は極端に九十度ばかり右に曲がっている。これは、防衛庁が出した航跡につながらなければ成り立たない航跡であります。だから交信記録では左に八十度曲がったことになる。三時二分というところは三分三秒交信が全くない。実はあり得べからざることでございますから、私は三分三秒全く交信がなかったとは思っていない。いみじくも航跡図の方も三時十二分というところから先は切れている。なぜだと聞いたら、ないとおっしゃる。なぜないんだと聞いたら、一つは高度、一つは地形、一つは気象、これがレーダーの映りに関係があって、ここから先は振れてないとおっしゃる。  そこで承りたいのですが、矢崎さん、高度おおむね二万メートルですね、ぴったりではないが。つまり、副島空幕防衛部長の記者会見の発表によりますと、詳細な説明がございまして、KAL、これは三万フィート(一万メートル)、三万フィートが一万メートルになることを知りませんが、そういうことで発表なさっている。新聞にも載っております。一万といいますと、これは見えない高度ですか、レーダーが。どうですか。一万メートルといったらべらぼうに高いですから、これはレーダーが映す条件として非常にいいのですが、どうして映らないのですか。一万メートルは関係がありますか、ありませんか、お答えください。
  53. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  先般御説明いたしましたのは、レーダーの覆域についての実際に影響を及ぼす要素をいろいろと申し上げたわけでございます。その中に、高度とか地形とかあるいは天候状況等というものが影響を与えるということを申し上げたわけでございます。     〔委員長退席、大西委員長代理着席〕  それで、今回の大韓航空機の関係で申し上げますと、影響を及ぼしている要素は天候とか大気の状況とか海面の状況というようなことでございまして、私どもは三時十二分のところで、約三万二千フィートというところでKAL機らしき機影が後から発見をされた、こういうことでございます。
  54. 大出俊

    ○大出委員 答弁にならぬじゃないか。高度は、一万メートルという高度は高いんだから、見えないことに関係あるか。一万メートルのものが見えないというのはどういうわけなんですか。高度はどうなんだ、十分あったということになるのかと聞いている。
  55. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 高度の点は、一万メートルの場合ですとそれほど大きな要素ではないというふうに理解をしております。
  56. 大出俊

    ○大出委員 それでは地形というのはどうですか、矢崎さん。これは高度一万なんだから、南サハリンには一万メートルなんという山はないですよ。一万メートルの山なんてどこかにありますかね。地形、これは大きな要素じゃないでしょう。
  57. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 御指摘のように、本件のケースで言えばそれほど大きな影響のある要素ではないと思います。
  58. 大出俊

    ○大出委員 それでは海面といったって、一万メートルだから海面の反射はない。これも余り影響ない。  あなたは三つ言った。海面は今初めて言ったので、この間は高度、地形、気象、こう言った。矢崎さん、つまり主たる障害は気象だということになるのでしょう。ちょっと答えてください。ゆっくり相談してもいいよ。
  59. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  本件の場合で申しますと、主たる影響のあるのは気象の要素が大きいというふうに私どもは考えております。
  60. 大出俊

    ○大出委員 さて、主たる要素が気象だとおっしゃるのですが、オガルコフさんは、雲がたくさんあって雲の上をKALが飛んでいた、こういうふうに彼の発表の一番最後につけ加えておりますね。雲が影響がありますか。雨雲が影響がありますか。どうですか。
  61. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいまの御指摘は雲の問題でございますけれども、雲がありますと電波が減衰をするという要因があることは事実だと思います。     〔大西委員長代理退席、委員長着席〕
  62. 大出俊

    ○大出委員 どうもそこが違うので、もう一遍よく相談してください。雲があって映らないとなりますと、一万回のスクランブルと言っているのだけれども、これは天気の日ばかりやっていることになるのですよ。今のレーダーで、雲があったから映らないということになると、雲のある日はレーダーは役に立たないのですよ。そんなレーダーじゃ、これはちょっと国防の用に立たぬじゃないですか。つくったところ、三菱だって東芝だって日電だって、みんな怒りますよ、そんなことを言ったら。今、移動警戒管制群が持っているのだって、何年もかかって日電がつくったのじゃないですか。番号までみんなわかっているのですよ。そんなことを言ったら怒りますよ。どうなんですか、雲は。
  63. 天野光晴

    天野委員長 防衛局長、しっかり答弁しなさい。
  64. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  気象の条件、天候等の要因というのが幾つか複合することになるわけでございまして、天候状況で言えば、雲があれば電波が減衰をするという要因があるので、そこですぽんととまるということを申し上げておるわけではございませんが、そういう影響がある。それから大気の状況として、温度差あるいは空気の密度差があるところでは電波が散乱する影響もある。それから湿度が高ければ電波が減衰をするというような要因もあるわけでございます。それからまた、一般的に言って海面の状況というものが、波が高いところでは海面の反射が多少影響をいたすということがあるようでございます。こういうようなものがいろいろ複合しまして、実際の具体の問題については、個々にどの程度見えるかということがどうも決まってくるということでございます。
  65. 大出俊

    ○大出委員 見えない、三百四キロから先は見えない。だから航跡はない、こうおっしゃるのだが、見えないというのは何で見えないのですか、気象の中で。
  66. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  ただいま申し上げましたように、結局はそのときどきの具体的な状況によって左右をされるわけでございますから、今回の大韓航空機のものと思われる航跡について言えば、既にお示ししておりますように、三時十二分のあの時点から見えるようになったということでございます。
  67. 大出俊

    ○大出委員 それじゃ答弁にならないのですよ。あなた、気象とおっしゃるんだから、気象の中で見えないというのはどういう条件のときに見えないのかと聞いている。質問者を納得させてくれなければ困るじゃないですか。それは逆転層でもあればということになるかもしらぬけれども。答えてください。
  68. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 結局、どういうような条件が重なってそういう結果が出てきたかということの御説明を申し上げる以外にないと思うのでございますが、そのことは、先ほども申し上げましたように、天候あるいは大気の状況とか海面の状況とか、いろいろな要素が複合いたしまして影響をしてああいうふうな結果になったというふうに申し上げるしかないと思います。
  69. 大出俊

    ○大出委員 一万メートルに海面の反射が影響しますか。
  70. 筒井良三

    ○筒井政府委員 技術的な面から申しますと、先生がこの前御案内いただきましたレーダーの見通しの距離、一万メートルという距離ですと、恐らく見通しの距離に入っていると思います。要するに、見える角度に入ると思います。  しかし、見えるか見えないかといいますのは、先生のお示しくだすった式は、あれは見通しの距離といいまして、レーダーのパワーが極めて大きいときにどこまで見えるか、つまり途中で邪魔があるかないか、山があるかとか水平線の陰に隠れるとか、そういうことがありますので(大出委員「山はないですよ」と呼ぶ)もちろんございませんけれども、パワーが、レーダーの出力がそこまで十分ない場合には、つまりすれすれの限界のあたりに入りますと、先ほどから御説明申し上げておりますような気象関係とか湿度でありますとか、そのときのいろいろなことによって見えないこともございます。技術的な話だけでございますけれども。
  71. 大出俊

    ○大出委員 山があるとか水平線の向こうだとか、そんなところじゃないんだよ、一万メートル上と決まっているんだから。そうでしょう、三万二千フィートは一万メートルなんだから。  それで問題は、高度、地形は大した影響がないと言う。気象だけだ。気象の中で温度だ、こう言う。次が湿度だと言う。二つしか言ってない。気象の中の何なんですか。
  72. 筒井良三

    ○筒井政府委員 まず、レーダーの出力が一番だと思っております。レーダーの出力が十分あり、例えばレーダーが一千海里も見えるような大型のレーダーでありますればその範囲の多少の気象云々ということではないと思います。しかし、レーダーの本当のぎりぎりの線に近いような場合には、いろいろな気象条件その他によって見えないことも技術的に十分あります。
  73. 大出俊

    ○大出委員 そんなことはない。稚内レーダーと決まっているじゃないですか。しかも、スクランブル機Bというのは三百二十八キロでしょう。KALというのは三百四キロでしょう。三百二十八キロが見えて何で三百四キロが見えないんだと聞いたら、あなた方は答弁にならぬ。今の御答弁でも答弁にならぬじゃないですか。出力があったら、出力があったって、稚内レーダーというのはわかっているんじゃないですか。仮に移動警戒管制群のレーダーを使うとしたって、これだって明確にわかっているじゃないですか、出力も何も。特定されているところのレーダーなんだから。だから、気象だと言うんなら気象の何だと聞いているんだ。そんな一般論を言ったってだめだよ。
  74. 筒井良三

    ○筒井政府委員 稚内のレーダーがそれだけ十分な出力のないレーダーだということになりますけれども、どこの範囲が出力の一番の限界かというようなことは、これは公表できる性質のことではないのでお許しいただきたいと思います。
  75. 大出俊

    ○大出委員 そうじゃなくて、気象だと言うんだから、気象の何だと聞いているんじゃないか。はっきり答えてくださいよ、どういう場合に見えないんだと聞いているんだから。
  76. 筒井良三

    ○筒井政府委員 出力が限界の、つまり見えるか見えないかに近いような距離にありました場合にはもちろん高度という問題もございます。しかし、今の高度は見通しの距離に恐らく入るんだろうと思います。したがいまして、気象もいろいろあるかと思いますけれども、湿度も票も、そのときの流れによりましてどれが何%ということは言い切れないと思いますけれども、レーダーの電波を減少する影響は十分ございます。
  77. 大出俊

    ○大出委員 あなた方はそこまでごまかそうとなさる。私は専門家の皆さんにもたくさん聞いてみた。レーダーを扱っている人にも聞いてみた。扱っていた有名な軍事評論家の方にも聞いてみた。気象庁にも聞いてみた。気象庁も富士山頂レーダーから始まってたくさんレーダーを持っている。結論は何かというと、逆転層だけなんですよ。そんなにやたら見えなかったんじゃ、これはレーダー置いておく意味がないんですよ。そうでしょう。逆転届だけなんですよ。それは減衰はしても映るのですよ。で、気象庁のレーダーはどうなっているかというと、雲をいつも撮っているのですよ。水滴がないと映らない。雲があっていっぱいこうなっていてもレーダーは雲を適してしまいますから、図面見るというと飛行機が映ったりすると言う。到達距離はみんな似たようなものですよ。富士山頂の台風観測しているレーダーも僕はよく知っています。調べたこともあります。行ったこともある。そうすると、逆転層しか残らない、見えないというのは。  しかも、片っ方で八千メートルの高さにあるスクランブル機B、これがちゃんと三百二十八キロまで映っている。片っ方一万メートルの高さにあるKAL、これが三百四キロまでしか映ってない。何で高いところのやつが三百四キロで、しかも低いところのやつが三百二十八キロなのか。専門家どなたに聞いても首をかしげて、そんなことはないと言う。レーダーを今やっている方に聞いてもないと言う。皆さんの方が作為がなければ――どなたもそんなことはないと言い切っている中にあなた方だけが違うことを言うとすれば、そこに作為があることになるのですよ。  そこで、例えばスクランブル機Bが映っているがKALが映らない、そういう場合は突き詰めていくと何になりますかという質問をたくさんの方にいたしました。逆転層だけですと、こう言う。逆転層だけですと言う。逆転層というのは鏡のごとく反射をするから、レーダーが行くと――レーダー光線、レーダーというのは電波を出して飛行機にぶつかる、返ってくるから映るのですから、この電波が逆転層の鏡のごとくなっているところにぶつかると屈折してしまう。屈折してしまうから、逆転層の下にある飛行機は映るが、そこからはまさに減衰していくから、そこから向こうにある飛行機は映らない場合がある。これだけだ。ただ、逆転属にぶつかった電波がはね返った場合には、地球の丸いのを通り越すから、この稚内で言えば露領沿海州の山が映っちゃったりする。OTH・Bのレーダーを使わぬでもそういう現象が起こると言われている。  全部調べてみたんですよ。航空自衛隊でレーダーやってきた方で、今評論家で書いている方もいる。いろいろ聞いてみた。しかも、今のレーダーの出力というお話が出た。それも詳しく調べてみた。専門家の方に細かく聞いてみた。ところが、皆さんの方は大きさをまず一つ決めている。DC3型だというのですね。DC3型という飛行機の大きさ、これを一つの基準にしている。いいですか。そして、理論値と安定値というのがある。理論値の計算方式も全部ここにあります。この間私は光の方の到達の、ルートに入れた計算方式を御説明しましたが、この稚内レーダーの高さと、この間私が御説明したのでいうと理論値というのは幾らになるかと、ここに全部計算をしてもらった。計算をしてもらったら、理論値は四百十二・八〇キロメーター、端数まで言えば八〇四キロメーター。そして、光よりもレーダー波の方が遠くに行くという。だから、自衛隊の、防衛庁で使っているもの、つまり防衛研修所で使っている、教えている、それを見ると4.12×(ルートH+ルートh)、これが公式だ。教えているのですよ、皆さんは。これで計算をすると、高度一万メートル、そして稚内の二百十メートル、SSがあるところは海抜二百十メートルですから、それで計算をすると四百七十一・七〇になる。これは防衛研修所で教えているんだ、皆さん。これが理論値という。  さて、安定値というのがある、この次に。安定値とは何か。理論値をまず計算をして、そしてDC3型の大きさのものを基準にすると理論値は今私が申し上げたことになるけれども、基準をこう決めると四百キロが安定値になると、こう言う。安定値になる。ただし、逆転層があった場合は、私がさっき言ったようなことになると、こう言う。間違いない。至るところ調べている。出力もわかっている。あなた方は嫌うから言わぬでもいいけれども、出力も、レーダーナンバーも、どこで製造したかもわかっている。もし移動警戒管制群、のを使ったというならば、それもわかっている。移動警戒管制群のやつを使うとすると、二割ぐらい減りますから三百七十キロぐらいです。日本電気にいた者で、長年かけて研究して、皆さんつくったんだから。移動警戒管制群というのは、私の質問で、ソビエトはミサイル持っていて、レーダーからぽっと電波が出るとそこへ飛んでくるミサイルがあるじゃないか、どうするんだと言ったら、移動警戒管制群をつくると皆さんがおっしゃった。そうでしょう。そうすると、逆転層しか残らない。  さて、先ほどいろいろお話を聞いていますと、また、今までのいろんなやりとりの中で、皆さんの方は一生懸命私が要求しているものについて出そうと努力をされている。その努力を認める。そういう意味で、私の方から言いますが、逆転層というものははっきりしている。これしかない。――ちょっと配ってください、これ。そういういいかげんなことをおっしゃってもだめです。ここに数字が全部ある。委員長、いいですな。  これは、今お手元に参りますが、ごらんいただけば一目瞭然で、レーダーを動かしている方、気象庁の皆さん、いろいろ聞いてみた。気象庁だってちゃんと毎日予報を出しているのですから、ちゃんとしたレーダーを持っていますよ。レーダーが映らない条件というのは何か、よく知っていますよ、毎日やっているんだから。やっている人に私は来ていただいて聞いたんだから間違いない。いいですか。ラジオゾンデというものがありまして、ラジオゾンデに基づいて逆転層というものについて、そのほかのこともございます、今いろいろおっしゃった気象条件がございます、それを全部含めてデータをおとりになっている、気象庁は。今、お手元に差し上げましたのは、この大きな表の方でございますが、五十八年の八月三十一日の午後九時。ここでラジオゾンデと申しますものは風船です。私と一緒に小笹原へ行かれた方、おいでになりますけれども、あそこでもやっています。皆さん一緒に見ていた。ぴっぴっぴっと音がして、電波を出しながら気球が上がっていきます。どんどんどんどん上がっていきます。圏界面ぐらいまで上がっていきます。圏界面というのは、九月という時期ですとおおむね二万二千メーターでございますけれども、そこから下しか雲ができない、そこから上は雲ができない、それを圏界面と、こう言う。そうすると、何ミリバール、何ミリバールで信号を送ってくる。八百五十ミリバールが一番下で千五百メーター、七百ミリバールで三千メーター、五百ミリバールで五千メーターから六千メーター、四百ミリバールで七千メーター、三百ミリバールで九千六百メーター、二百五十ミリバールにいって一万を超えて一万五百メーター、そこから上は二百ミリバールなんだ。それを全部情報を送ってくる。だから、八月三十一日の夜の九時、九月一日の午前九時、ここでこれをアンテナで追っかけて、これをラジオゾンデと言うのですが、気象観測をしておいでになる。この気象観測はどうなっておるか、レーダーが映らぬ状況であったかどうか。逆転層の存在いかんによっては、この気象で映らぬ場合がある。  ところが、五十八年八月三十一日午後九時をごらんいただくと、一番下にAとBとございます。これが逆転層なんです。逆転層というのはどうしてできるか。温暖前線が来た場合。もう一つは沈降現象といいますが、高気圧が上に乗っかると下に押されます。この場合に温度が高くなる。これは当たり前でありますが、そして国際標準大気というのがございます。国際標準大気というのは、千メートル上がると六・五度温度が低くなる、ずっと。子メートルで六・五度ずつ低くなる。逆転層というのは、その六・五度ずつ低くなった計算が、その部分だけそれ以上に高い温度になっているというところが逆転層だ。逆転層というのは、鏡のごとく反射するから電波がはねてしまう、だから映らない。条件はこれだけであります。  さて、そこでこの日の逆転層は、三十一日の夜の九時、AとB、ここにだけしかない。千五百四、五十メートルのところにしかない。これはレーダーに影響があるかといったら、ない。だから、スクランブル機Bは三百二十八キロで映っている。もしスクランブル機Bが映っていてKALが映らぬとすれば、スクランブル機B、三百二十八キロのところと三百四キロのところ、ここに逆転層がなければならぬ。ここで電波がはねて向こうへ行った。下にあったからBは映った、上にあったから大韓機は映らぬ、この理屈しか残らない。  ところが、この季節の逆転層というのは、通常もそうでございますが、大体五千メーターから六千メーターぐらいのところまでしかできない。そして、逆転層というものは、十二時間、多少の変化はするけれども続いて消えていく、そういう性格を持っている。そうすると、三十一日の午後九時に逆転層がこんな低いところにあった。千五、六百メートルのところにあった。ところで、五十八年九月一日には逆転層は一切ない。どういうことを意味するかというと、三十一日の夜の九時から朝九時までの間に消えていった。そうすると、大韓機の問題は年前三時十二分。逆転層らしきものでなくなってきているところで、しかもこんな低いところは影響ない。なぜだ。すぐ上だから反射しない。そうすると、この送ってきている気象条件の中からは、レーダーが映らない条件は何一つない。  あなた方のさっき言っていることを聞いていると、一々つじつまが合わぬ。だんだんだんだんレーダーの出力とかなんとか、最初はレーダーの出力言ってないのですよ、矢崎さんは。高度、地形、気象しか言ってない。高度も影響ない、地形も影響ないになってきた。気象となったら何を言い出したのですか。湿度だとか、やれ温度が高くなった。温度が高くなると逆転層だ。そうでしょう。そうしたら、今度はほかの方が出てきて、矢崎さんじゃない、別なことを言う。出力だ。そういうふうにごまかしちゃいけません。はっきりしてください。話にならぬ、全然。こんなにごまかされたんじゃ、私はとてもじゃないが、質問にも何にもならぬ。あなた方の先輩に聞いてごらんなさいよ。そんなことを言ったら、レーダー扱った人に笑われる。(「航跡図を出したらいいんだ、その前のやつを。映っているんだよ」と呼ぶ者あり)映っている。どんな方に聞いたって、映らぬ条件はないと言う。
  78. 筒井良三

    ○筒井政府委員 気象レーダーと私どもが航空機を捜索するレーダーとが使う波が大分違っております。それのおのおのによって、こういった逆転層等の影響も多分に違うと存じますけれども、先ほど申しましたように、そのときの空気中の湿度であるとかその他の影響、それから高度とか、面接見える見えないとは関係なく、地形がありまして、その地形によっていろいろな地上のクラッター、海上のクラッターその他の影響が上に出るということもございます。この資料だけでそうなったということは、ちょっと私どもとしてはわかりかねます。
  79. 大出俊

    ○大出委員 これじゃ答弁にならぬじゃないですか。具体的に何にもおっしゃらぬで、抽象的に一般論でおっしゃられたって、事は決まっているんだ、稚内レーダーと、ちゃんと。レーダーどこでつくったか、皆さんちゃんとわかっているじゃないですか。質問にならぬ、とても。(「その前の航跡図を出せ。見えないはずはない」と呼ぶ者あり)ない。見えている。あなた方のところにいてレーダー長く扱って、今評論書いている人もたくさんいるじゃないですか。全部聞いてみたんだ。航跡図を出してくださいよ。(「航跡図を出せばいいんだろう」と呼ぶ者あり)そうです、航跡図を出してください。矛盾じゃないですか。スクランブル機B、高度が低いのに三百二十八キロ遠くが映っていて、三百四キロのKALが、一万メーターあるのに映らぬなんてばかな話がありますか。(発言する者あり)
  80. 天野光晴

    天野委員長 筒井参事官。わかるようにちゃんと答弁しなければいけませんよ。
  81. 筒井良三

    ○筒井政府委員 その大韓航空機の高度が、幾何学的に真っすぐ線を引いた場合に見えるか見えないかというようなことは、前回御指摘のございましたように、見える高度だったと思います。しかし、レーダーで見えるか見えないかといいますものは、それに対して気象レーダーと異なります、私どものレーダーの特殊の波を出しまして、その反射を受けて機械がそれをディスプレーするという仕組みにもちろんなっているわけでございますけれども、その距離が極めて近距離で確実に返ってくる場合と、レーダーの限界に近いような場合で、必ずしも反射を得られるか得られないかということがありますので、現実の問題として、物理的にそのときに反射を受けておりませんので、自衛隊としては見えなかった、こういうことは事実だと思います。
  82. 大出俊

    ○大出委員 皆さんのところの御出身で、有名な、どなたも知っている専門家もおいでになりますよ。レーダーのことについても非常に詳しくお書きになっている方もおいでになります。そこで、恐らく防衛庁は出せないから、そういうふうな逃げ方をするだろうとおっしゃっている。しかし、それは間違いだと言っている。一目瞭然わかるのはただ一つ、ビデオを出していただけば間違いなくわかる。気象がどうなっていてどういうふうな影響があったかということ、それ以上というならビデオをお出しください、これしかありませんと言っている。そうしてください。国会決議じゃないですか。
  83. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいまの御指摘につきましては、私どもは、このレーダーの能力の詳細というものはやはり私どもの非常に貴重な機密事項にも属する点ございますので、これを具体的に明らかにすることはお許しをいただきたいと思います。ただ、私どもが把握いたしましたレーダー航跡は、既に公表をしたものがすべてであるということを申し上げたいと思います。
  84. 大出俊

    ○大出委員 そのウクサ協定を承ったり、それから日本が向こうに渡したんだから、それをなぜ一体国会議員が要求して見せないのか。お出しください。三回もアメリカやっているんだから。おかしいじゃないか。そして地上からのも出してください、地上からの交信も。そうしたら、非公式な話だからお名前は申し上げませんけれども、あると思います、あると思うけれども日本にはないとこう言う、地上からのやつは。あると思うけれども、日本にはないというならアメリカにあるだろう、こうなるのですけれどもね。  とにかく、せっかく私がいろいろ要求しているのだが、そこらはみんなはっきりしない。特にレーダー航跡がはっきりしない。重大な問題だ、この間ここで説明したように。オガルコフ氏が出した航跡にシュルツさんも反論をしていない、日本の政府も反論をしていない。そうなると、そこにつながるに違いないのだから。つながったらどうかというと、人為ミス説というのはほとんど消えてなくなってしまうのだから。皆さんここに元気で生きておいでになるが、年じゅう飛行機に乗っているんだから。大型機の航空学の面の安全性を全面的に否定する、大変な軍事科学、シェミアにあるコブラデーンから始まって、RC135から始まって、情報収集船が三隻もいた。オホーツク海にもP3CもいればRC135もいる。日本の稚内の傍受施設もある。「象のおり」もある。東千歳にもある。レーダーだって、網走レーダーだって四百キロもカバーしているんだから、網走だって映っていなければおかしいんだ。そういう軍事科学全部を否定しなければ、人為ミス説は成り立たない。  ポイントの最大のものは今の航跡なんだ。だから交信記録も三分三十秒切っているじゃないですか。いみじくも大韓機、スクランブルをかけたBは三百二十八キロで映っていて、この気象条件で三百四キロしかないKALが何で映らないのですか。どなたに聞いたってそんなことはないと言う。反論する人は一人もいない。皆さんのところのレーダーを扱った出身の方に聞いても、そんなことありませんと言う。だから先生、最後はビデオを出してくれと言うよりしようがない、こう言う。出してください。
  85. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 自衛隊のレーダーの能力の詳細というものは、これはやはり我が方の防衛力の実体をあらわすということになる問題を含んでおりますので、これを詳細に公表することは差し控えさせていただきたいと思います。  私どもといたしましては、当時レーダー航跡を調べた結果、先ほどおっしゃいましたように、三時十二分からの航跡がすべてでございまして、それを私どもはそのまま、こういう航跡があったということを明らかにした経緯がございますので、ぜひ御理解を賜りたいと思います。(「出すまでだめだ」「休憩」と呼ぶ者あり)
  86. 天野光晴

    天野委員長 大出君の質問につきましては、時間をちょっといただきまして、午後の分の大出君の質問に回すことにしていただきたいと思います。その間、理事会において始末をいたします。(「出すのかね」と呼ぶ者あり)そこで始末します、私の方は政府じゃありませんから。(大出委員「後で語には乗るから、検討してください」と呼ぶ)検討いたしますから、それでよろしくお願いいたします。  それでは、ここで休憩いたします。午後一時三十分より再開することにいたします。  休憩いたします。     午後零時二十一分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十一分開議
  87. 天野光晴

    天野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上田哲君。
  88. 上田哲

    ○上田(哲)委員 前回は基本的な問題を尽くしたところであります。今回は集中審議でありますので、きちっと詰めていきたいと思います。  これまでの一%枠問題について総理の御答弁では、「守りたい」、それと「守れない」という二つの言葉が生きているようであります。これはしっかりしていただかなければなりません。守りたい、この一言で確認できますか。
  89. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この点については矢野書記長に御答弁をいたしましたし、それから大内さんにも御答弁いたしましたが、守りたいと思っております。
  90. 上田哲

    ○上田(哲)委員 その「守りたい」ということになりますと、今予算審議の中で行政最高責任者としてはその予算編成上、また実行上の努力を当然なものとしなければなりません。  そこで、極めて現実的な見通しとしてこの委員会で議論されましたのは、人勧、人件費によって年度中に一%枠を超えるのではないか、したがって「守りたい」ということであれば、端的に申し上げて、六十年度中に、例えば五十九年度と同じ三・四%のベアがあったとすれば概算で四百四十二億円要る。そこで八十九億と既に計上分の一%を差し引きますと二百二十億円余りになります。「守りたい」ということは、この二百二十億円オーバーの金額をぜひつくり出していくということになってくると思いますが、いかがですか。
  91. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これはその際の御答弁でも申し上げましたが、今までの国会における御論議あるいは政府が既になした御答弁等を踏まえてと申し上げておるので、その線で御了解願いたいと思います。
  92. 上田哲

    ○上田(哲)委員 その線というのは、具体的に今私の申し上げた二百億台余りの節約を目指して努力をすると受け取ってよろしいですか。
  93. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いろんな数字については言及しておらないわけです。
  94. 上田哲

    ○上田(哲)委員 努力の方向としてはそうしたものに向かってやるということでよろしいですか。
  95. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一%を守りたい、そういう願望を表明しておるわけなのであります。
  96. 上田哲

    ○上田(哲)委員 五十九年度予算でも、先般の補正予算の中で八十四億三千六百万円の節減がなされて、いわゆる一%のすき間を四十四億にされたのであります。結構なことだと思うのです。防衛庁長官、そういう努力を六十年度もなさるという決意、いかがですか。
  97. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 この問題につきましては、ただいま総理が申し上げましたとおりでございます。守りたいと思っております。
  98. 上田哲

    ○上田(哲)委員 いや、あなたは総理じゃないんだから具体的に聞いているのです。五十九年度補正では八十四億円の節減の努力をされた。結構ではないか。例えば航空機で二十六億あるいは武器、車両等の購入費で十一億、装備品等で十五億、研究開発費で三億等々、合わせてこれだけの節減をされた。そして一%とのすき間をつくった。こういう努力は、去年にできたならばことしも当然の目標にならないかと具体的に聞いているのです。
  99. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 昨年度そのような節約を行ったということは事実でございます。  ただ、現在私たちが提出しております政府の予算案というものは、この時点で私たちが絶対必要だと考えている最良の予算を、この現時点では節約ということではなくて必要な予算ということで御審議願っているわけでございますので、この段階で節約の問題等を言うことは、実は提出した予算案との関係から見れば若干問題がある、不謹慎なことなんではないか、私たちがそれについてお答えするのは、と思います。
  100. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そういう答弁の方がはるかに不謹慎であります、一%を守りたいということであれば。五十九年度だって不必要なものを計上したんじゃないでしょう。そういう中で、今総理も言われたように何がしかの努力をしなければならぬ。その努力というのは、この前の年度で行われたんだから、今度もやはり何らかの努力をする、そこまでは言えますね。
  101. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 それぞれがその予算の執行の段階でむだなことをしないということは当然のことのように思いますけれども、この現在の段階で私たちは、この予算は全額この年度において必要な金額ということで提出申し上げているわけでございます。
  102. 上田哲

    ○上田(哲)委員 押し問答してもどうもしようがないのですがね。節減の努力をするということがなければ一%を超えるんだという質疑もここで行われてきているのです。したがって、ぜひ一%を守りたい、それ一つなんだとおっしゃるのであれば、不十分なものがあると言えなくても何とかしてそこへ向かって努力をすると約束するのは当然なことではありませんか。  それでは田邊書記長が冒頭でお尋ねいたしましたけれども、各大臣がそれぞれそうした努力、一%枠内にとどめる努力をするんだということを鮮明にされております。この段階でもその努力に変わりがないかどうか、まず外務大臣から伺います。
  103. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 総理が答弁いたしましたように、一%以内に守りたい、こういうことであります。
  104. 上田哲

    ○上田(哲)委員 それを六十年度予算の中で一%を超えないように具体的な努力をなさるということとして私は受け取りたいのであります。  河本大臣、いかがですか。
  105. 河本敏夫

    河本(敏)国務大臣 私は、この一%問題は防衛政策の一つの大きな柱ですから、守るべきである、このように考えておりますが、ただいろんな議論が最近出ておりますので、あらゆる角度からもう一回この問題を勉強してみたい、このように考えております。
  106. 上田哲

    ○上田(哲)委員 河本大臣、「いろいろ勇ましい議論があるが、私は一%をどうしても守るべきだ」とあなたはおっしゃっている。前回それを確認をされた。そのお考えは変わったのですか。変わってないとすれば、このまま行ったら超えるかもしれないと言われている質疑のある中で、どうしても一%内におさめるような予算実行上、編成上の努力をする、こういう言葉として受け取っていいですか。
  107. 河本敏夫

    河本(敏)国務大臣 私があらゆる角度から研究をしてみたい、こういうことを言いましたのは、別に意見が変わったわけじゃありませんが、ただこれからのGNPは一体どのように動いていくのか、例えば今度アメリカ政府が発表いたしました見通しなどを見ますと、アメリカは名目八%の成長を続ける、こう言っておりますから、日本でも名目八%前後の成長が可能になればこの問題は自然に解消する問題でありますし、それから防衛大綱の内容は一体どういうものか、五九中業は一体どういう内容になるのか、それから最近の兵器の進歩は一体どういうものがあるのか、こういう幾つかの問題とか国際情勢とか、あらゆる問題をもう一回よく研究してみたい、こういうことでございます。
  108. 上田哲

    ○上田(哲)委員 大蔵大臣は一%を守るために具体的にどういう努力をされますか。
  109. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは今申し上げることは守りたいという一念であります。  それで、具体的な問題、いわゆる仮定の問題としていかなる措置をとるかということをお尋ねがあったといたしましても、それは決めていないという表現しかなかろうかと思います。
  110. 上田哲

    ○上田(哲)委員 何らかの努力はすると。
  111. 竹下登

    ○竹下国務大臣 もとより守りたいということは、努力ということは含まれておると理解していただいて結構だと思います。
  112. 上田哲

    ○上田(哲)委員 前向きに受け取ります。  後藤長官、いかがですか。
  113. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 政府の方針は、ただいま総理がお答えなさったとおりでございます。努力をしなければならない、こう思いますが、これは人勧問題に絡んで、超すじゃないか、こういう御質問のようですが、人事院勧告の実施は、これはまたおのずから別の原理原則、やはり公務員給与の改善、これについては政府のお約束もございますし、それに従って、人事院勧告がどうなるかわかりませんから、今の段階で分子分母の関係もあるし人事院勧告もありますから、あなたのおっしゃるように、必ず突破するというのを、今そのとおりだと言うわけにはいかない、いずれにせよ人事院勧告は人事院勧告として処理をしたい、かように考えております。
  114. 上田哲

    ○上田(哲)委員 総理、仮定の問題を仮定で語ることはできないと思いますけれども、極めて現実的な見通しの上に立っての議論でありますから、各閣僚がぜひ守りたい、何らかの努力をすると言われる。総理に私も幾つかの節減の提案をいたしましたけれども、私の提案としては受け取られてはおりませんが、総理責任者としてぜひ一%を守りたい、守るために何らかの努力をしてみる、こういうふうにお答えいただけますか。
  115. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 守りたいと申し上げているのですから、何らかの努力をして守りたいと思っております。
  116. 上田哲

    ○上田(哲)委員 それで、守りたいという努力を確認しておきます。  そこで総理が守りたいという努力をなさるとすると、もう一つ聞いておきたいのですが、総理が守りたいと言われる一%の意味ですね。一%を守る意味をどういうふうに把握されておられますか。
  117. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 昭和五十一年だったと思いますが、「防衛計画の大綱」ができまして、それが閣議で承認されて、それから一週間後に、あれは承認されたのは、たしか十月の二十九日(上田(哲)委員「十一月の五日」と呼ぶ)十月の二十九日で、その後一週間後に何らかのめどをつける必要がある、そういうことで一週間後にそれがまた閣議で決められた、そういうことであると思います。
  118. 上田哲

    ○上田(哲)委員 それは経過であります用意味です。一%をぜひ守りたいとおっしゃっているその意味は何ですか。
  119. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今まで守りたいと言ってきましたから、その後引き続いてそういう気持ちは持っておるわけであります。
  120. 上田哲

    ○上田(哲)委員 一%と大綱というのは全く表裏するものだということを、私は歴史的に経過的に、しかも内容的に文言的に立証してきたのですが、どうしてもここは総理は同じものではないとおっしゃる。ここはもう詰めようがありませんが、事実の問題として確認したいのです。五六中業までは伊藤防衛庁長官長官指示の中で一%を守ると言われた。これは事実であります。今、五六中業の期間内、六十年度は五六中業内であります。したがって、六十年度は政府の公約として一%を守るということになるのではありませんか。
  121. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 六十年度の当初予算編成については守ります、これは申し上げて、そのとおり実行したわけであります。それ以後につきましては、守りたいと申し上げておるわけです。
  122. 上田哲

    ○上田(哲)委員 非常にこれは危険な表現であります。  では、六十年度は五六中業の範囲なんであって、長官指示は一%内ということだから、六十年度までは守るべきなんだということは確認されたというふうに考えていいのですね。
  123. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 五六中業とかなんとかにかかわらず、昨年来、私は六十年度予算編成では守ります、秋以来申し上げてきておるのであります。それを実行したということであります。
  124. 上田哲

    ○上田(哲)委員 では、質問を変えましょう。  総理は、財政状態、経済状態の変化ということを言われる。私は意見を異にするのでありますが、大綱で書いてありますことは「そのときどきにおける経済財政事情等を勘案し、国の他の諸施策との調和を図りつつ、」こうなっているのです。「経済財政事情等を勘案し、国の他の諸施策との調和を図りつつ、」ということは、財政逼迫の中では突出せよと言っている意味ではないと思うのです。財政事情が逼迫しても突出せよなんということを言っているのではなくて、国全体が苦しいときにはやはりそのことも考えろというふうに理解すべきだと思いますが、大蔵大臣いかがですか。
  125. 竹下登

    ○竹下国務大臣 ちょっと意味、理解しかねたわけでございますが、もしできますならば、ポイントだけもう一遍。
  126. 上田哲

    ○上田(哲)委員 大綱の中にこういう文章がちゃんと書いてあるのです。「そのときどきにおける経済財政事情等を勘案し、国の他の諸施策との調和を図りつつ、」やりなさいと書いてあるのです。だから、経済財政事情等を勘案するということは、財政逼迫でも防衛費だけは突出しなさいという意味を持っているのではない、財政が苦しくなればやはりそれに見合った防衛予算というのがあるべきだというのが、当然の理解ではありませんか。
  127. 竹下登

    ○竹下国務大臣 したがいまして、いつもお答えするのは、現在の財政経済事情の中でぎりぎりの調和点を求めたのが、この御審議いただいている防衛費そのものでございますというのが、私のお答えでございます。
  128. 上田哲

    ○上田(哲)委員 ということは、「経済財政事情等を勘案し、」ということは、苦しくなっても突出せよという意味ではないということをお認めになるわけですね。
  129. 竹下登

    ○竹下国務大臣 この突出という言葉が、また言葉の問題になりますと複雑でございますが、やはりとにかくあるべき防衛の姿というものを、このぎりぎりの財政状態の中で調和点をどこに求めるか、こういうことであります。
  130. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そうしますと、抽象的ではなくて、五十七年度から緊縮財政になった、それを見ますと、五十七年度の一般会計から六十年度は五・六%伸びているわけです。この中で防衛費は二一・三%伸びているわけです。これは突出ではありませんか。
  131. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これはそういう比較の仕方からいえば、確かに経済協力それから防衛費というものは他の予算に比べれば、そういう評価もあろうかと思います。ただ、もう少し、例えば私が国会に初めて出ましたときの昭和三十四年度予算から比べれば、また別の議論もできるだろうというふうに考えます。
  132. 上田哲

    ○上田(哲)委員 大綱に書いてあります。「国の他の諸施策との調和を図りつつ、」一般会計は五・六%しか伸びてないのに、防衛費が二一・三%伸びているということは、他の施策との調和が図られているとお考えですか。
  133. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは国の他の施策とのぎりぎりの調和点ということが、その「防衛計画の大綱」に沿った結果がそうなっておるということであります。
  134. 上田哲

    ○上田(哲)委員 質問を変えます。  総理は大綱を、三原長官や金丸長官が四、五年で達成すると言っていた、こうおっしゃっているわけですね。どこを探してもそれがないわけです。先ほどそれを今度は十年でやると言われた、これもないのですが、どなたが十年で大綱を達成すると言われたのですか。
  135. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは当時、「防衛計画の大綱」の作成を中心になって策定した久保卓也君が、彼は事務次官でこの作成に努力してきたのでございますが、座談会で「防衛計画の大綱では、何年で目標を整備するのがその期間を示していません。防衛庁の関係者としてみれば、大体十年ぐらい後には整備を達成したいという考え方を持っているでしょう」そういうことを言っておるわけです。これは中心になってつくった人は、大体こういう考えを持っていたのであります。
  136. 上田哲

    ○上田(哲)委員 こんなものを出してくるというのは、総理、それはちょっと無理をしていますね。金丸長官や三原長官が四、五年でやると答弁していたのだとしきりに言われた。これがないのですよ。(中曽根内閣総理大臣「それは一%です」と呼ぶ)そうですか、一%。  では、一%については、三原長官はここにいらっしゃいますが、五十二年十一月十四日に「十年後でも一%以内で賄い得る」と答弁されている。これは座談会とは違いますよ。
  137. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 三原長官は幾つかのことを言っておられまして、四、五年と育っていることもあれば、それから金丸長官も四、五年と言っておる。それがまた数年というふうに変わったという答弁もあるのです。しかし、三原、金丸、ずっとこう流れを見ますと、今申し上げたようなラインで構成されていると思います。
  138. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そういうふうに言葉をぐるぐるやられちゃ困るのですが、それだけ当時からしっかりした考え方ではなかったということがはっきりするのです。十年もつんだと言うならまだ十年たっていませんよ。三原さんの隣で言うのは悪いからこれ以上言いませんけれども、五十二年に十年と言っているのですから、あと二年は十分守れるということになる。食言とは言いませんが、その辺の片々たる言葉のつなぎ合わせ、聞いてみたら総理、座談会の資料まで持ってきて無理やりこじつけを言うのはちょっと問題でしょう。こんなことはこれ以上追及しますまい。  そういう文脈に沿って総理がしきりに言われるのは、これは国会発言ですよ、国会答弁で一人当たりの国防費が少ないのだということをしきりに言われる。「一人当たりの国防費負担を見ますと、アメリカが約二十一万円、西独が十一万円、イギリスが十万円、フランスが十万円、日本は二万二千円であります」、こういうふうに言って、いかに少ないかということを言われるのです。総理、それは一つの資料だと思いますよ。しかし、それをもって説明されるというならほかの資料だってあり得るわけです。  国防というのは、国民も国土もありますね。国民も国土もあるわけですから、例えばストックホルムの平和戦略研究所で出している考え方、あるいは大蔵省もかつて使ったことがありますけれども、それぞれの国土、その面積で防衛費を割るということもあるのですよ。これをやってみますと、日本の面積は三十七万八千平方キロ、六十年度の防衛費が三兆一千三百七十一億円、一平方キロメーター当たりは八百二十九万九千二百円です。アメリカを同じようにしてやってみますと、八六会計年度が二千七百七十五億ドル、一平方キロメートル当たりが二万九千六百ドル、現在のレートで七百六十九万六千円であります。日本の方が一平方キロメートルで言えばアメリカよりは高い国防費を使っておるのですよ。私は、これでアメリカでグレン上院軍事小委員長とも議論しました。これで絶対だなんてことは言いません。ただ、そちらを言われるのなら国防とは国民、国土ということになるのだから、そちらばかりの数字を出されるというのはおかしい。こんなに人口稠密な日本列島の一億何千万で割れば小さくなるに決まっていますよ。だからその例だけを出されるというのは甚だ均衡を欠くのです。ついでに、ことしだけじゃないために五十九年度度言いますと、日本の場合は一平方キロメートル当たりは七百七十六万三千五百円、アメリカの場合は二千四百六十三億ドルだから二万六千三百ドルで六百八十三万八千円。毎年ずっととっていってもいつでも日本の方が高いのであります。私はこれだけで日本の方が多いとか少ないとかということは言いませんけれども、頭割りだけで防衛費を議論をするなんというのは非常に均衡を欠くものだと思います。いかがですか。
  139. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国民一人当たりの負担率という負担の割合を見てそういうことを申し上げたのであります。
  140. 上田哲

    ○上田(哲)委員 したがって、それだけで御説明なさるのは適当ではありませんね。
  141. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 もとよりその国の内外の情勢、客観情勢、いろいろな要素があると思いますが、負担率という点から見ればそういうことだと申し上げたのでございます。
  142. 上田哲

    ○上田(哲)委員 どうも強情に自説を曲げられないのは総理の特徴でありましょう。今計算いたしましたのは国連発行の統計年鑑一九七八年版、円換算率は一ドル二百六十円、安いところですよ。これが上がっていったらもっと日本防衛費の方が高くなるのだというところを頭に入れていただいて、こういう牽強付会な説明はひとつ慎んでいただくことを申し上げておきたいのです。特に、面積の問題は防衛面積という概念があるわけですから、このことを別にして人頭割りだけでやっているというのは甚だおかしい。特に強調しておきます。  また、別の問題ですが、人件費、人件費の圧迫ということを防衛庁は言われる、総理もそう言われる。人件費は金額は伸びているのだが、装備費がぐんぐん上がっているからパーセンテージは逆に下がっている、こういうことは前回も申し上げた。そこで、その装備の更新が問題なのであります。説明が複雑になるから紙に書いてお届けしておきましたけれども、現在の自衛隊ではほかの国に見られないような驚くべき速度で主要装備の廃棄が行われているのです。  海上自衛隊では、一九五三年以降に建造された「はるかぜ」型DD二隻、「あけぼの」型DE一隻、「いかづち」型DE二隻に続いて一九五八年度以降の建造である「あやなみ」型DD七隻のうち、既に四隻を除籍しています。残りの三隻も近く除籍の予定であります。同じく五九年建造の「むらさめ」型DDも三隻つくられたうち、現在残っているのはわずかに「はるさめ」一隻であります。航空自衛隊でも、今年度末にF104戦闘機の使用をすべて停止する、現用機は廃棄または無人標的機にするというわけですが、これらの機体も、すべて一九六〇年代に生産されたもので、西ドイツを初めカナダ、イタリア、オランダ、ギリシャ、台湾なんかでは、現在も第一線用機として使っているのは事実であります。  恐らく防衛庁は、私がこう言えば、これらの自衛艦や戦闘機は既に寿命が来た旧型のものだとおっしゃるでありましょうけれども、次のような問題にどう反論されるであろうか。  アメリカ海軍でも、現用のDD約八十隻のうち、フォートレス・シャーマン型の十五隻は一九五〇年代のものでありますし、クーニッツ型十隻は五〇年代末から六〇年代初めに建造されたものです。また、アメリカ空軍では、現用中の要撃戦闘機F106は、一九五六年から五九年にかけて製造されたものであります。またB52は、現用のG,H型のものでも一九五七年から六一年の製造であります。  ソ連海軍ではどうかというと、その持っているDD約六十隻のうち、キルデン級とコトリン級の二十四隻は五〇年代の建造でありますし、スコーリー級の九隻は、四〇年代末から五〇年代初期に建造されたのであります。現在もしばしば日本付近に姿を見せておりますソ連のTU16,TU95の爆撃・偵察機は、いずれも一九六〇年代に生産されております。亜音速でもあります。  こういう状況の中で、海上自衛隊の護衛艦や航空自衛隊のF104戦闘機を廃棄しなければならない理由というのは大変薄弱だと思います。「あやなみ」型とか「むらさめ」型のDDが、対潜ヘリコプターを搭載できないことはわかっておりますけれども、現在海上自衛隊がシーレーン防衛の方式として採用するという八八艦隊、この八八艦隊の形を八七艦隊、つまり護衛艦八隻とヘリコプター七機、こういう形になったからといってシーレーン防衛が大きく崩れるというふうには思えない、これは常識でありましょう。  私がこういうふうにデータを挙げて申し上げているのは、こういうふうに他国に比べても非常に速いスピードでまだ使える兵器をどんどん廃棄しているということは、総理が、実は財政逼迫で正面装備の方には回らなかったと言われた答弁は間違いであることを証明できるからです。こんなに他国に秀でて新兵器、装備をどんどん更新をされておられる。大綱水準に達しない、達しないと言われるけれども、達しないのは大綱水準ではなくて中業水準です。五六中業が今四三%なのでありまして、こうした廃棄の問題をきちっと見ていけば、実は当初五十一年につくられた大綱のレベルというのは、ほほ完成されているのです。それを、新兵器、新兵器という形でどんどん目標の水準を引き上げていって、中業でそれを押し上げていって、まだ足りない、足りないと言っている形になっている。  私が申し上げたいのは、第一に、正面装備がそのためにおくれたという事実は全くない。GNP一%に抑えられたとか財政逼迫とか経済情勢が悪化したとか、こういうことで正面装備がおくれたという事実は全くない。それどころか、第二に、大綱というものを、実は作成当時の大綱とは違ったものとしてぐんぐん水準を引き上げている。この二つの問題がこの資料の中で明らかになっていると思います。いかがですか。
  143. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 大綱が決定されたときから比べまして、現在のそれぞれの艦艇、航空機の数がどうかということでございますが、大綱設定当時の数よりも落ちているものが大分ございます。そうしますと、その除籍のスピードが速かったのではないかという今の上田委員の御指摘等がございますけれども、艦艇等の耐用年数といいますか実際に働いた年数は、アメリカ等に比べて私たちの方が短いということはないと承知いたしております。細かくは、重要なポイントでございますので、具体的に政府委員よりちょっと御説明させます。
  144. 上田哲

    ○上田(哲)委員 老朽艦であるか、既に寿命が切れたから云々という細かい議論をしますと時間を食うだけですから、その手には乗らないことにして、こうした大綱水準そのものが引き伸ばされてしまっている。中業という奇妙な内部資料によって、大綱という看板が全く違ったものになっているということを厳しく指摘して、兵器性能論は後の論議に譲りますが、どうしても問題となることは、その一%枠を五六中業途中で外して、五九中業からは別なものにするという長官指示のねらいです。何かと言えば一%枠を危なくするのは人件費だとおっしゃるけれども、実は人件費、人勧が出てきて問題になるのはことしの秋であります。ところが、前回の予算委員会で明らかに私が確認いたしましたように、五九中業ができるのは七月であります。国防会議にかける。この日程は変わりようがない。こういうことであると、六十年度予算の中で一%を超えるかもしれないとするならば、それは人勧ではなくて実は五九中業であります。本来ならば、五六中業でもあの数字、十五兆六千億から十六兆四千億という数字を五年で割れば一%を超えていくということは、そこでも計算上は見えているのですが、はっきり一%とは別だぞと宣明した五九中業というものが、実は人勧、人件費ではなくて、この一%を乗り越えていく最大の主因であるということにならざるを得ない。長官指示はそれを明らかにした。したがって、この予算を審議しているこの場で、策定中の五九中業はどれぐらいのものになるかということは当然出されてしかるべきだ。その総額ぐらいは提出していただいて、一%枠の議論にともにすべきだと思います。出してください。
  145. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 五九中業の作業は、六十年度の政府の予算案というものが決まりましてから具体的な作業が少し進むようになってきたわけでございますが、現在作業の段階でございまして、ここで現在具体的にどういう数字になるかということは、まだ申し上げるほど作業が進んでおりません。
  146. 上田哲

    ○上田(哲)委員 中曽根さんが防衛庁長官のころは四次防でありましたが、もう少しすっきりした話をされたものですよ。  では、ずばり大まかな枠を育っておきますが、五六中業からの推定でいけば、五九中業の総額は十八兆ないし二十兆の間にはまりますか。
  147. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  ただいま長官からもお答え申し上げましたように、現在まだ作業の途上でございますので、この席で具体的な数字を申し上げるような材料もまだございませんので、差し控えさせていただきたいと思います。
  148. 上田哲

    ○上田(哲)委員 だから、予算審議というのは全く一部分だけ、針の穴から天井をのぞかして議論させている。委員長、これは幾ら言っても水かけ論になりまして、時間をとるだけですから言いませんけれども、これは出すべきです。そうした問題がいっぱいあります。  そこで、今お配りしている資料をひとつ見ていただきたい。五百十四億の問題であります。  これは驚いた次第なのでありまして、資料を見ていただきたいが、資料一というこの一枚目は、先般私が質疑をいたしまして、復活予算の五百十四億円の内容は一体どうなっているんだと追及して、それではというのでやっと出てきた予算委員会提出資料であります。お読みになるには及ばない。文章だけで何が書いてあるのですか。何にもこれは資料と呼ぶべきものではありません。  二枚目をごらんいただいて、資料二というのは、この前私がここで提示した政府提出資料です。防衛庁が十日余りもかけて、五百十四億の内容だとやっと出してきたのがこの一、二、三、四、五、六項目、総計すれば三百五十一億。足し算すればわかるかもしれぬが、それすら書いてない。したがって、残り百六十億円というのが、どこでどう使われるのか何にも説明ができてない。こんなことはおかしいじゃないかと言ったら、防衛庁長官は、そんな不明確だと言われては心外だからちゃんと出すと言われた。それではと結局、合わせて一カ月ほどかかって出てきたのが資料三であります。百六十三億円とそこに書いてありますが、百六十三億円は左の欄に書いてあるようなこういう大ざっぱな、全く大ざっぱなものです。一体これで説明が十分だと思っていらっしゃるのかどうか。これが防衛庁の今日の姿勢、今も五九中業を出さない姿勢になるのです。だが、ここで少なくともこの中ではっきりしたことが何点があります。  その第一点は、五百十四億。復活しました五百十四億円の中には主要装備は含まれていないということであります。  第二点は、五百十四億円のうち百六十三億は、初めの説明では全く説明ができなかった。提出資料に欠けている。説明ができなかった。そして今ようやく総計五百十四億円になったが、五百十四億円の内容なるものは今もまことに不分明で、全体の細目は全くわからない。  第三点、私もいろいろ努力をいたしまして、わからないながらその五百十四億円の中身を掘ってみました。わかった分だけを見てみても、この中のそれぞれは緊急性、急迫性は極めて乏しいということであります。  したがって第四に、つまり鳴り物入りで防衛予算が積み上げられて、最終的に総理裁断で六・九%になったのだが、この六・九%はまさに初めに数字ありきであって、総理は中身の積み上げではなくパーセントだけを選んだ、こういうことが明確になりました。総理、いかがですか。
  149. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、継戦能力あるいは訓練あるいは施設あるいは人件費、そういうようなものをよく注意するように、そういうことで大体そういうものが載っていると思います。
  150. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そうはいかないのです。五百十四億円の復活は、大臣までが三百三億円、総理裁断が二百十一億円と内部資料に書いてあります。こういう形で復活をされたこの主要装備について伺いたいんだが、護衛艦、対戦車ヘリ、訓練支援機、F15,P3C,C130、T2、パトリオット、これだけに絞りますが、これはいずれも大蔵原案では査定がゼロであって、これが後に五百十四億の中で復活をした、こういうことになりますね。
  151. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 大臣等の復活折衝で出てまいりましたのは、御承知のように歳出予算というわけで、六十年度キャッシュのものと後年度負担の問題がございます。歳出の面につきましては、そちらの資料にもありますようなものが重点になっております。それからパトリオット、F15等につきましては、後年度負担に関する復活折衝の内容になりますけれども、その詳細につきましては経理局長より報告させます。
  152. 上田哲

    ○上田(哲)委員 長官、じゃ、あなたが復活折衝で、今私が伺った中のどれを復活してきましたか。
  153. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 F15などでございます。
  154. 上田哲

    ○上田(哲)委員 それは大変なことになるのですよ、F15とは。あなたは五百十四億のうちの三百三億なんだから、その三百三億の中であなたはF15を復活されたという。確かに今私が挙げた主要兵器の中でP3Cとパトリオットというのは全額後年度負担ですから、これは取ってきたといっても名目だけなんです。ところが、あなたが今言われたように、護衛艦、対戦車ヘリ、訓練支援機、F15,C130、T2というのは、これは後年度負担もあるが、ここで具体的に六十年度の歳出がついているのです。いいですか。この歳出は全部で、これ全部足しただけで九億二千四百万円。護衛艦一億八千万円、対戦車ヘリ九千八百万円、訓練支援機六千三百万円、あなたの言われたF15二億七千八百万円、C130一億三千百万円、T2八千五百万円、こうなっているのです。これが六十年度の主要装備歳出分なんです。これが大蔵原案のゼロ査定から復活されたということになっているのですが、実は五百十四億円の中にはないのです。あなた方からいただいたさまざまな資料の中で、五百十四億円には違うものが入っていて、五百十四億円にはその分がないのです。ところが予算書には載っているのです。これはどういうわけですか。
  155. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 予算折衝の編成過程の話ですから、詳しく申し上げるのもいかがかと存じますが、大臣折衝のときに主要装備品で復活になりました金額の歳出金額でございますが、DDとそれからF15の分で合わせまして四億六千万円弱の数字になります。その数字が今委員が御配付になりました資料の中にないではないか、こういうことでございますが、これは既定のといいますか、既に内示済みの金額のまだ未調整分がございました関係上、それをもって充当いたしたわけでございます。
  156. 上田哲

    ○上田(哲)委員 よくわかってきましたよ。ですから、全然違うじゃないですか。大臣も知らないのはお気の毒だが、国民がもっと困ることです。大蔵省原案は五・一%増で出された。そのときは主要装備は全部ゼロ査定だった。私たちはそういうふうに理解をさせられています。そして長官自身が言われたように、いろいろな装備は、特に例えばF15などが五・一%の上に復活で積み上げられたというのであります。あなたは、だからF15を二億七千八百万円復活をした、こういう形になっているのです。おっしゃるのはそのとおりです。ところがその五百十四億円にはそれはないのです。今の経理局長の御答弁のように、実はそのF15などは大蔵原案の中に初めから入っていた。五・一%の大蔵原案の中に初めから入っていたのにそれをゼロ査定だと称して、それから次官折衝、大臣折衝ということでどんどん復活したことにした。だから最終的には予算書にはそれは出てくるけれども、聞いてみたら、実はそれは大臣折衝で取ったのじゃなくて、大蔵原案の中に初めから潜り込まされていた。こんなばかなことがありますか。  我々は報道を見ます。新聞を読み、テレビを見ると、汗をかいて大蔵省へ次官や大臣が出かけていって、一生懸命になって復活折衝を行う、そしてきょうはこれが出た、P3Cが復活した、F15が復活した、護衛艦がこうなった、そういうふうに見せられている。ところが、それはもともと原案にあったのだ、もともとあったのだということになると、これは大変おかしなことになりませんか。どこに入っていたのですか、これは。
  157. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 予算を大蔵省から内示を受けました場合に、私どものところだけではございませんが、未調整の金額という部分がございまして、これは大蔵省と私どもとの間で、予算復活の過程におきまして順次御相談申し上げながらその使途を次々に決めていくわけでございます。したがいまして、今委員のおっしゃいましたように最初からそれが潜り込んでおったという性質のものではございませんで、その使途につきまして大蔵省と協議をしていき、そして大臣折衝の場におきましてその使途が決まった、こういうことでございます。
  158. 上田哲

    ○上田(哲)委員 それはどこにあったのかと聞いているのです。潜っていたのはどこに潜っていたのですか。それを聞いているのです。
  159. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 未調整額でございます。
  160. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そんなばかな説明がありますか。これは官房調整費ですよ。官房調整費という費目はないのです。官房調整費なんという費目はどこにもない。そういうものの中に潜り込ませていて、これは防衛庁が聞いても大蔵省のことはよくわからないのですよ。どこかにそれぞれ潜り込まされていて、潜り込ませているものを実はゼロ査定だと言って、そして国民に向かってはP3Cだ、F15だ、国を守るためにはどうしてもこれが必要なのだという形でがばっがばっと、実に復活財源八百億円のうち防衛庁だけで六四%、五百十億円をひとり占めにしていくという操作がここに行われている。  まさに世論操作じゃありませんか。こういう形で、何が必要最小限であり、国を守るものでありますか。国を守る防衛予算なるものが、国民に向かっては全くおかしな操作の中で進められているということは、私は納得できない。答弁できませんか。
  161. 天野光晴

    天野委員長 経理局長
  162. 上田哲

    ○上田(哲)委員 経理局長じゃなくて、これは大臣、あなたさっき飛び出したじゃないか。
  163. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 委員のおっしゃいますような世論操作というようなことであるものではございません。これは防衛庁のみならず、予算の最も効率的な計上ということで、大蔵省とそれから関係各省との間で協議をしながら決めていくシステムの中の一こまでございます。
  164. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 政府予算案の決定の段階のこのプロセスは、防衛費に限らず、社会福祉、農業、教育、すべての分野にわたりましてそれぞれの立場の政策を推進する人たちの利害のぶつけ合いになっております部分でありまして、特に与党とそれから政府側との激しいつばぜり合いが行われる過程でございます。そういう中で、私たちも防衛の分野として必死に私たちの主張を通すように頑張ったわけですけれども、そういう過程の中のドラマの過程にいろいろわからないところがあるとかいう御疑問もあろうかと思います。しかし、政府といたしましては、私は一番重要なのは、予算案に提出されております金額を国民に御判断いただく、そしてそれについては細かく出しておくということが筋ではないかと思います。
  165. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そんなことで審議ができるのですか。予算の途中のことは知るななどということが一体国会でどうして言えるのですか。初めだろうと途中だろうと終わりだろうと、全部国民の税金じゃありませんか。それを審議してはいけないとか、最後の姿、形を見せるまではドラマだとは何事ですか。  あなた方がつくるドラマ、毎日毎日とんでもない、とてつもない税金のドラマ。一機百二十億円もするような軍用機が何機も復活された、艦が復活された、きょうはこう上積みになったという話がどんどん出てくるじゃないですか。国民は、はあきょうもまたこんな高額の兵器が復活された、大臣が行くとこうなるのかと。そういうふうにしてつくられ、見せられているドラマこそ、国民から指弾さるべき、予算審議の中枢に据えらるべき議論ではありませんか。それが中身を知らせられぬドラマだなんていうことで細かいことは説明できないなどということは、私は納得できません。納得できません。  しかし、どうしても先へ進まなければならぬのなら申し上げるが、いいですか、さっき申し上げたように資料四を見てください、皆さん。  資料四は、こういうわからない中で、私の方でつくり上げたわかっているだけのものです。これ以上大きいものは何もありません。いいですか。細かく全部言うと切りがありませんからざっと説明いたしますと、例えば二番目の油購入費九十一億円。これくらいはもっともじゃないかというようなことをこの前総理が言われた。あるいは装備品等整備諸費八十九億円。ちょっと直しておかなければいけないのですが、その三の(二)装備品の修理部品というところで「チェーン」と書いてありますが、これは「チューブ」の間違いでありますから、御訂正ください。三の(二)の装備品の修理部品の「チェーン」と書いてあるところは「チューブ」であります。ここだけ私の方は間違えましたが、ついでにその隣にあるネジ。ネジなんというのは、何万個とも言えないネジなんですよ。スペアの在庫です。これが何万個であるかということは今もって防衛庁は把握できない。  例えば、今油の金額に触れましたから油のことを申しますと、これはランニングストックです。というのは、新しい年度で油をまたたくさん買うが、この油を買うのに、新年度からの商談を決めるのに、四月一日からでは新しい油が間に合わないといけないからストックを置くという。大蔵省は〇・七五カ月分、三週間だけストックを置いておくからそこで交渉しろと言った。何とこれが二カ月分になったのですよ。別に新年度から防衛庁がなくなるわけじゃなし、年度途中から次の交渉をするのは当たり前でしょう。それを新年度に入ってから三週間どころか二カ月分も前の年度の油を使って商談をする必要なんかありますか。そんなやり方が普通の民間のどこにありますか。  こういうようなやり方で、例えばその四番目の武器、車両のところは、小中大型トラックの充足七十台。七十台がどういう用途であるかについては分明できなくても、この七十台がなかったら全く困るという話にはどうしてもならない。あるいは教育訓練費、総理はこの前教育訓練費がぜひ必要だとおっしゃった。どんな必要な訓練が、この訓練費の二番目の恒常訓練経費の五%アップから八%アップのところに例の蚊取り線香が入っているわけです。  私が一生懸命になって調べてつくったのがこの資料四の程度ですが、全然こんなものでは全体を述べていない。なお何十万という項目がここに潜っていて、いまだに説明できない。防衛庁長官は見事に出してみせると言われた。この前だってここで言うとおっしゃったが、言えるわけがないから後に譲ってもらったが、実際には一月かかってこれまでしか、この資料の三までしか出ていない。  そこで伺うが、あと何カ月あったら我々が懸命に審議しなければならないこの資料、その細目が出るんですか。あと何カ月あったら責任持って出せるか、言ってごらんなさい。
  166. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 細目でございますが、細かなものまでの積み上げで予算というものができておるわけでございますから、もちろん私どものところには細目はあるわけでございますが、通常、今先生おっしゃいましたような細かな話までの資料を御提出するということでなくて、予算の目の明細というものを各省統一的につくりまして国会にお出しし、御審議を願っているところでございます。それで
  167. 上田哲

    ○上田(哲)委員 もういい。とんでもないことです。あるんなら出しなさい。ないから出せないので、ずっと一月かかってやっとここまで来たのでしょう。あるなら出しなさい。防衛庁長官、この前も今ここで説明すると言った。できないから私が後に譲った。これだけ待った。ほぼ一月だ。あるんなら出しなさい。これが一つ。  それから、ここで議論するものは一定の線から下は、してはいけないということがありますか、委員長。款項目節の目までを出すという義務はあるが、それ以下はないなどと吾えますか。国政調査権は款項目節すべてに及ぶんだ。議論ないでしょう、そんなことは。そこから先は議論させないなんてばかなことがありますか。そんなばかなことがありますか。数字が全部あるというなら出しなさい。出すまで待ちましょう。答弁は要りません。時間延ばしは困る。
  168. 天野光晴

    天野委員長 出せるなら出せる、出せないなら出せない、どこまでなら出せる、それをきちんとしなさいよ。――宍倉経理局長
  169. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 先ほども申し上げたわけでございますが、今先生の御指摘になっておられる部分といいますのは予算の過程の一こまでございまして、五百十四億というのは防衛庁の予算全体三兆一千三百七十一億の中の一部でございます。三兆一千三百七十一億円につきまして、私どもは予算の要求書、それから先ほど申し上げました目の明細、各目明細という形で明細をお出しをしているわけでございます。そして、今御審議をいただいておりますのは三兆一千三百七十一億全体でございますので、その一部分だけについては差し控えさせていただきたいと思います。
  170. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 細目については、いろいろ討議した結果、ちょっとお出しできないと思います。(上田(哲)委員「何で」と呼ぶ)それは、細かな一円までの予算、国民の税金を使っている予算でございますので、それにつきましては明確に各項目まで予算書を出すべきだと思いますし、それは当然のことながら現在予算書として膨大なものが今審議のテーブルの上に乗っているわけでございます。  ただ、その過程で自民党がどの段階で入ってどの段階で復活して、大臣が行ってどう、それについて各項目までのものについてはお出しするというのはちょっと控えさせていただきたいと思います。それは予算作成技術上の与党・自民党との問題もございますので、お許しいただきたいと思います。(上田(哲)委員「そんなことは聞いていないじゃないですか、そんなことは聞いていないのです、ここに出てきている内容を聞いているのです」と呼ぶ)
  171. 天野光晴

  172. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 この間の審議の際に、予算の復活のプロセスの中の五百十四億というものが説明十分ではないじゃないかと上田委員の御指摘がございました。  そこで、私たち、どのようなものが復活したか、当時大まかなものは私たちも聞いておりましたし、私たちもプロセスにかんでいたわけでございますので、それにつきましてはお答え申し上げたい、資料を提出すると申し上げて、そしてこの点につきましては、政府が出しました資料につきまして、当予算委員会の理事会で御審議いただいたと思っております。それが資料三になるものだと思っております。それ以上の細部にわたりましては、予算というものは款項目いろいろあるのでしょうけれども、その細部につきましては、膨大なこの予算書の中で御審議いただくというのが一番正確なことなんではないだろうかな、こう思います。
  173. 上田哲

    ○上田(哲)委員 同じじゃないですか。全然答弁変わってないのです。私は、こんな細かいことをやらなくても、おおよその解明ができればいいと思って来たのです。ところが、前回も出すと言い、今回もあると言うんだ、あるのなら出すべきではないのか。細かいことを言っていると言いますが、ここへ出ているのは、金額でいつでも億ですよ。億から先を言わないで、それは答えることができないというのはおかしいじゃありませんか。また途中、単なるプロセスを聞いているのではない。国民注視の中で当局がマスコミに発表し、報道された五百十四億円の内容をきちんと出してくれと言っているんだ。それがないと言うならないで、この質疑はほかの方角へ進めるんだが、あると言うのだから、あるのは出せと言ったら、それは出せないと言う、これでは質疑はできないじゃないですか。
  174. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 五百十四億と申しますのは、先ほど来申し上げておりますように、予算編成の過程におきます。ある期間からある期間までにおきます復活額でございます。私が先ほど申し上げましたように、当委員会に御提出申し上げております防衛関係費は三兆一千三百七十一億円でございまして、その全体につきまして御審議をいただいているわけでございますからして、その一過程におきます一部分だけにつきましての資料の提出というのはおのずから限界があるかと存じまして、先日からそういうふうにお話し申し上げているわけでございます。  そこで、全体の三兆一千三百七十一億につきましては、関係の予算書類を提出いたしておるわけでございまして、その明細は各目明細に計上してあるところでございます。
  175. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 前回の委員会で、上田委員の御質問に対して、私が資料がございますからお出し申し上げますと申しました。それで出されたものが先ほどのこの資料三なんでございますが、これで十分ではない、もっと細かいものがあるなら出せという御指摘であろうと思います。しかし、その点につきましては私からおわびさせていただきたいと思うのですけれども、やはりプロセスの段階で、予算編成のいろいろな技術上のこともあったりするようでございますすので、その詳細のものにつきましては何とかこの程度の資料で御勘弁いただければ、こう思う次第でございますので、よろしく御理解いただければと思います。(「まげてぐらい・・・・・」と呼ぶ者あり)まげて御理解いただければと思います。
  176. 上田哲

    ○上田(哲)委員 謝罪をするというおとりなしでしたから、謝ればいいというものじゃありませんが・・。私が言うのは総理裁断までもした五百十四億円の中身がこんなものなのだから、当然削減して一%枠を守れと要求するのです。また、ないものをあると言ったり、あるから出してみるなどと言って、しかもここから先は出せない、国会審議はそこまでのものでないなんという政府の態度は許せるものではありません。委員長からその旨を厳しく政府に申し伝え、今の謝罪はそのことでもあるということで私は先に行きますが、削減されるのでない限りは、この数字は後にゆっくり議論させていただくことを留保いたします。  そこで、私はまじめな立場で、総理、また大蔵大臣に申し上げておきます。  私は、プロセスだから、ドラマだからなどという思い上がった言い方は、国会審議のために断じて許せない。  同時に、大蔵省の予算編成の見識のために申し上げたいが、たとえ五%増であれ、もっと低い数字であれ、大蔵省が予算をつくるに当たっては、いかに寸足らずでも、腹八分目でも、それなりに一つの姿、形が整っていなければならないものです。そうだとすれば、防衛庁にとって大事なものが一番最後に残してあって、一番最後で主要兵器がどんどん復活されていって、いかにも総理裁断でどんといったというような、そんな形というのは、大蔵省の予算編成の見識としても私はおかしいと思う。国民が毎年おかしい、おかしいと思っている姿がここにあるのです。一%に届かないときはこういう議論になりにくいが、いよいよそれを超えるかどうかというときに総額だけではなく防衛予算のつくり方がおかしいという問題が出てきたと私は思います。したがって、大蔵大臣、もっと素直に、予算は幹からつくるので、枝からつくるのではない。主要装備が必要なら、底からきちんと積んで、枝葉を後に乗せていく。復活折衝というものは、幹ではなくて行うべきものだ。その姿で国民と国会の議に付すべきものだ、目玉兵器を前に出して、老人福祉や文教費などを横にとけ、防衛予算をとっていく手だてとするような予算編成は今後慎まるべきである、このことをしっかり申し上げます。
  177. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今、予算編成に対する御意見でございます。確かに私ども、予算原案の中で装備費というものをもとより念頭に置き、組んでおります。ただ、その中で優先順位をどれにするか、これはやはり次官折衝であり、大臣折衝として上がってくるわけであります。したがって、その中で優先順位がどういうふうにして詰まっていくか、こういうことになろうかと思われますので、それの発表の仕方が、いわゆるゼロのものがぼこっと出てくる、こういうふうになるべきものではない。(上田(哲)委員「そこはいいです。そこはもう済んだんだから。謝ったんだから。予算編成のあり方を正してください」と呼ぶ)だから、予算編成のあり方につきましては、今の御意見ももとより参考にさせていただきますが、枝葉からつくるという考えはございません。やはり幹からであります。ただ優先順位の問題については、次官折衝となり、そしてまた大臣折衝として上がってくるという過程は、それなりに意義をお認めいただきたいと思います。
  178. 上田哲

    ○上田(哲)委員 それを認めないなんて言っているんじゃないんです。それを認めないと言っているんじゃなくて、どんなに小さくても、どんなに額が少なくても、予算編成は本来一つの姿、形を持つべきでしょう。幹からつくっていくのであって、主要兵器を後からばかんとのせるというふうな、国民世論操作のような形をお改めになるべきだ。私はこれは正論だと思いますが、いかがですか。もう一言。
  179. 竹下登

    ○竹下国務大臣 主要兵器の中でも、ただ優先順位の問題がある。これだけはまた御理解をいただきたい。(上田(哲)委員「しかし、そのとおりでしょう。幹からつくるのは」と呼ぶ)幹からつくるということについては、私は毛頭異論を挟む考えはありません。
  180. 上田哲

    ○上田(哲)委員 総理、今お聞きいただきましたように、私は、例えば官房調整費とかあるいは費目にないもののどこかに予算が潜り込んでいたとか、こういうことが予算技術論として長くまかり通っているという慣行は正しくないと思う。そして、防衛予算が財政逼迫の中で非常に大きなウエートを占めることになるということは、金額的に防衛予算がふえるということだけではなくて、予算編成全体の姿をいびつにするものだ。ここをやはり考えるべきであることが一つ。  もう一つは、このようにして引き上げた六・九%というのは、やはり一%枠を守ろうという思想がない。私は、そこのところは反省さるべきであり、こういう部分についてこそ削減をさるべきだ、こういうふうに思うのです。いかがですか。
  181. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一%を守るという思想はあります。ただ、予算編成のいろいろな過程については、御意見の中で参考にすべきものがありますから、よく注意いたしたいと思います。
  182. 上田哲

    ○上田(哲)委員 日本防衛についてひとつ基本的に総理に伺っておきたい。素朴な問いをしたいのです。  これまで日本防衛というのはいわゆる二百マイル防衛識別圏、二百海里とも同じでありますが、これが、八一年五月の鈴木・レーガン共同声明、ここで周辺数百海里、シーレーン一千海里という北西太平洋に広がった。八三年一月の首相の訪米で日本列島によるバックファイアに対する海空の障壁づくりあるいは三海峡封鎖という言葉が出て、その後さらに確認された。  そこで素朴にぜひ伺いたいのですが、日本を守るということが防空識別圏の当時と比べて周辺数百海里、シーレーン一千海里という広いところにまで広がった。どうもわからないのは、日本を守ることが大事なのか、この大きな海域を守ることが大事なのか、国民にその辺がよくわからないと思います。いかがですか。
  183. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本列島を守る、日本人の生活を守るというのが中心で、そのために周辺数百海里というところにも目を注いでおるわけであります。
  184. 上田哲

    ○上田(哲)委員 つまり周辺数百海里というのは日本を守るために不可欠なかかわりのものですか。
  185. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いろいろ防衛の研究をしておりまするけれども、シーレーンということに関係いたしますと、要するに海上警備行動ということになりまして、そして港湾とか海峡とか、日本列島を守っていくために必要な海上の要所要所等々を考えて周辺数百海里というふうに言っているのでありまして、不可欠であると思います。
  186. 上田哲

    ○上田(哲)委員 日本列島を守るためには今の周辺数百海里、シーレーン一千海里は不可欠である、これははっきりいたしました。  そうすると、ここで「有事に航路帯を設ける場合は一千海里」と言われているわけですが、航路帯を設ける場合というのはどういう場合ですか。
  187. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  この航路帯の問題と申しますのは、海上交通の安全を確保するためのいろいろな作戦の一環でございまして、港湾、海峡の包囲でありますとか哨戒あるいは船団護衛等々組み合わせてやっていくわけでございまして、これは事態の様相によりまして有事において適宜判断をして設けていくということでございますので、これは固定的に考えているわけではございません。
  188. 上田哲

    ○上田(哲)委員 いや、そんなことは聞いていないです。一般的にというんじゃなくて、例えば、どういう場合に航路帯を設けるのですか。
  189. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  これは有事におきまして海上交通の安全を確保していくための手段の一つとして(上田(哲)委員「手段を聞いているんじゃない、目的を聞いているんだ」と呼ぶ)一千海里程度の範囲におきまして航路帯を設けていった方がいいというふうに判断をしたときに設けるということでございまして、確定的にいつどこでということを明確にあらかじめ決めているものではございません。
  190. 上田哲

    ○上田(哲)委員 だから、あらかじめ決めてないが、じゃ有事の際に判断して決める、こういうことにしかならないんですね。
  191. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答えいたします。  そのとおりでございます。
  192. 上田哲

    ○上田(哲)委員 この一千海里シーレーンは日本のものですか、アメリカのものですか。
  193. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  私どもが海上交通の安全確保のために考えているわけでございまして、今シーレーンと申されましたが、これはシーレーン防衛という意味で私ども言っておりますが、これはまさに我が国の有事におきまして国民の生存を維持し、あるいは継戦能力を確保するということを目的にしてやるものでございます。
  194. 上田哲

    ○上田(哲)委員 だから、日本が中心になるのですか。日本から一千海里というシーレーン、南西、南東ですね、これは日本のシーレーンですかひつまり、私はシーレーン防衛というのはそんな二本の線などと思っていませんよ。しかし、昨年来、当委員会で総理と確定した定義のようにシーレーンを設ける場合は一千海里というんだから、「設ける場合は」と聞いている。この設ける場合の一千海里は日本のものなんですか、アメリカのものなんですか。
  195. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 私どもが日本の海上交通の安全を確保する目的を持って設置をしていく場合のこの航路帯というものは、これは我が国の安全を確保し我が国を守っていく、武力攻撃から守っていくということを目的として設けるという性格のものでございます。
  196. 上田哲

    ○上田(哲)委員 日本中心のものですな。じゃ、日本の主体的なもの、日本中心のものということですね。
  197. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 おっしゃいますように、私どもが日本防衛のために設けるものでございます。
  198. 上田哲

    ○上田(哲)委員 じゃ、その航路帯を設けた場合に、ここで行動するのは当然日米共同対処ということになるわけですね。
  199. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 我が国の防衛に当たりましては、日本の自衛隊が単独で実施する場合もありますし、日米共同で対処をしていく場合もあるわけでございまして、両方のケースがあろうかと思います。
  200. 上田哲

    ○上田(哲)委員 よくわかりました。  そうすると、航路帯を設けた場合、これは有事です。日本のためにやります、そして、日米両方で共同対処をしています、こういう形が出てきます。これが今度調印された日米共同作戦計画の中で具体的に決められていることだと思うのですが、これで日本自衛隊は艦隊も航空自衛隊も領海、領空を越えて一千海里のところへ日米共同対処で出ていくという状態がかなり恒常化していく。有事となれば当然そういう形が出てくる。ここで、某国から攻撃が加えられたというときに、これまで総理は米艦護衛は集団自衛権の行使、発動ではない、許される、それから核トマホーク積載艦との共同行動も許されるとされた。そして、このほどは米艦の核兵器使用も認められる、こうなったわけです。で、今の場合、したがって頭に描いていくのは、日本のためにというので一千海里航路帯が設定された、そこで日米両軍が共同対処をしている、そこへ攻撃があった、そして米軍の核兵器が使用されたという場合に、日本自衛隊はそのとき一緒にやるのですか、離脱するのですか、総理。――そんなに長いことかからないでやってください。
  201. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 この点は一昨日も御議論があったところでございますが、私どもとしてはアメリカの核抑止力が機能しておるということから、現実にそういったような事態が起こるということは想定をしていないわけでございますが、ただ一昨日も総理からお話がございましたように、これは日米安保条約の解釈上の問題として理論的な問題として考えれば、そういった可能性を排除をするということは適当ではないんではないかというお話があったように・・
  202. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そんなおとといあったことを聞いているのじゃないのです。総理、ひとつお答えください。  そういう場合にあり得る。そのときに、米艦が核発射をしたというときに一緒にいるわけですから、一緒にいる日本自衛艦は離脱するんですか、一緒に共同対処するんですか。
  203. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それはそのときの状況によります。一緒におる場合もあるし、離れる場合もあります。
  204. 上田哲

    ○上田(哲)委員 これは非常に重大でありまして、米艦が核兵器を発射したときに離脱する場合もあるとは言われるが、一緒にいる場合もあると言われる。米艦が核兵器を発射するときに日本の自衛隊、これが海、空であろうと一緒に作戦をするということになれば、日本は核戦争そのものに踏み出すということになりますね。
  205. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それはそのときの情勢によるので、例えば日本のある船が潜水艦でやられるとかなんとかという場合に、両方で守っている、一緒に。その場合に、またいかなる事態が起きるかもしれませんが、どうしても他に手段がないというようなことで日本の輸送船なり、日本の自衛艦なりアメリカの船なりが生き延びていこう、そういうような場合が仮に想定されるという場合には、それは必要な行為は行う。その場合には一緒におるということもあり得ますし、また、離れている場合もあり得る、それはそのときの情勢によるのであって、今から単純なる想定をもってするわけにはいかない。
  206. 上田哲

    ○上田(哲)委員 非常にこれは重要ですからもう一遍確認しますが、私は、非核三原則やその他の取り決めからすると、日本の場合は、その場合も核兵器発射の段階では離脱をするべきだ、こういうふうに理解をしておりましたが、そうではなくて共同対処をするということがあるんだということですね。
  207. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それはもう前から申し上げておりますように、日本列島が侵略されて、そしてほかに手段がない、そういう緊急の事態というものを想定します場合、いろいろな対応があり得ると思うのです。
  208. 上田哲

    ○上田(哲)委員 これは、まさに巻き込まれ論というのがそのまま出てきたと思います。今のケースは、日本本土の有事でなく、一千海里の洋上で日米共同で核戦争に入ることになるのです。そういうことになりますと、もう自衛権発動の解釈は無限に拡大をしていくということになるわけで、極めて危険です。一%突破はそこへ踏み出すことです。  ひとつ問題をほかに展開しますが、例の衛星通信の問題です。  で、これまで国会決議でそれは平和の目的にということになっておりまして、非軍事的ということになっています。きょう午前の論議で防衛庁長官は、フリートサットを利用する場合に、これは訓練中であると言われたが、これは訓練中だけですか。有事の場合にはしないのですか。聞き間違いなら、それで結構です。――いや、防衛庁長官に聞いている。
  209. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 今回、お願いをいたしておりますフリートサット衛星からの受信装置でございますが、これはリムパック等派米訓練の際に使用するものでございます。
  210. 上田哲

    ○上田(哲)委員 訓練だけと言ったんですか。
  211. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 はい。訓練のために使用するものでございます。
  212. 上田哲

    ○上田(哲)委員 じゃ、有事にはやらないのですね。
  213. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 有事の際に共同対処いたします我が自衛隊と、この場合には米海軍ですけれども、その間に十分なるコミュニケーションの手段が必要だということは論をまたないと思います。それで、それをフリートサットの仕組みでやるのかどうか。それは、現在のフリートサットは今回の訓練のためだけでございますが、有事のときそれなりのコミュニケーション手段が必要だということは、それは当然のことだろうと思っております。
  214. 上田哲

    ○上田(哲)委員 二人の答弁が全然違うじゃないですか。でたらめ言っちゃ困る。訓練だけっていうんじゃ話にならないでしょう。  さて、そうなると、総理は「自衛隊は平和目的のためにある」とおっしゃって、衛星利用もすべていいんだというような話になってきたようなんだが、自衛隊には防衛出動がありますね。防衛出動というのは応射防戦をしますね。また、その前段階がありますね。これは非軍事活動ですか。
  215. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 質問の意味、ちょっとわからなかったのですけれども、もう一度お願いできますでしょうか。
  216. 上田哲

    ○上田(哲)委員 防衛出動というのは相手に対して応射応戦、防戦しますね。これは軍事行動ですね。これは非軍事行動ですか。当然軍事行動でしょう。解釈
  217. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 防衛局長から。(上田(哲)委員「時間がない。これはひどい。めちゃくちゃだ」と呼ぶ)
  218. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  これは先生に申し上げるまでもございませんが、自衛のための活動、実力の行使ということで考えております。
  219. 上田哲

    ○上田(哲)委員 だから、非軍事活動じゃないですね。そうですね。
  220. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 上田さんが言わんとするのは、この間の民社党の御質問に関連して平和と独立を守ると自衛隊法に書いてあるからそれは平和行為であるかという、端的に言えばそういうことでしょう。  我々は、今まで防衛については防衛としての定義をちゃんと持っております。したがって、それは一種の防衛出動とか、いろいろそういう名前を使っているとおり、日本防衛行為である、そういうふうに考えていいと思います。
  221. 上田哲

    ○上田(哲)委員 新説ですけれども、総理防衛活動というのは非軍事行動ですか。
  222. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 民社党の皆さんの考え方に私は必ずしも同調したわけではない、それは一つの御見識でありますから検討いたしましょう、そう申し上げておるわけであります。しかし、我々は日本の独立と平和を守るための防衛活動である、そういうふうに言っておるわけであります。
  223. 上田哲

    ○上田(哲)委員 ですから、今の言葉を聞いているのです、防衛活動というのは非軍事活動ですかと。総理がそう言われたから聞いているのです。これは総理に聞いているのですから。御自分がおっしゃったんだ。そんな自分の
  224. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 この軍事、非軍事の言葉の使い方、大変いろいろなニュアンスもあるようで難しいと思いますが、要するに私どもは我が国防衛のための実力を行使するということが防衛行動内容であるというふうに考えております。(「両方ある」と呼ぶ者あり)
  225. 上田哲

    ○上田(哲)委員 防衛活動は非軍事活動なんという言葉はめちゃくちゃですよ。仮に譲って、両方あると今不規則発言があったけれども、両方あるとしても半分は間違いないわけですね。とすれば、これは宇宙利用は非軍事活動に限るという国会決議に反するじゃありませんか。こんなことは大変おかしい。政府は統一見解というのを国会決議に先立って出される。政府が見解を持たれるのはいい。しかし、有権解釈にゆだねると総理はおっしゃった。有権解釈というのは一つです。その有権解釈は国会がするものです。それと相たがうものがあればその統一見解は取り下げなければならぬ。これは当たり前なことなんです。その統一見解で政府は、殺傷力、破壊力としての利用でないこと、汎用化していることであるということでさきの統一見解を持たれたが、今度は自衛隊の設置目的が平和活動ならば何をやってもよろしいんだということになる。これではさくら二号aからフリートサットの受信装置が送信装置にも変わり、さらに専用衛星の打ち上げということになっても、すべて平和活動だからいいということになる。これはいかに何でもめちゃくちゃです。この見解は御撤回になるのが正しいと思います。
  226. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府はここで統一見解を申し上げましたように、つまり自衛隊が直接殺傷力、破壊力として用いるのではなくして、それがインテルサットとかあるいはテレビのニューヨークからの放送とかそういう程度、ああいうような普遍化した、汎用性を持っている場合には、自衛隊はそれを使ってもそれは国会決議に反するものではない、そういうふうに政府は解釈をしているわけです。しかし、民社党は民社党としての独自の解釈を私に質問したので、私は、民社党の解釈というのは新しい解釈が出てきたものだとしてこれは研究に値すると思ったから研究いたしますと申し上げたので、政府は私が申し上げているようなことを思っている、これはあなたも十分御承知だと思うのです。
  227. 上田哲

    ○上田(哲)委員 確認しますが、民社党の見解は政府の統一見解とは違うのだ、同じではないということでいいんですね。
  228. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府は、今まで申し上げたとおりであります。しかし、民社党の考えも研究いたします。
  229. 上田哲

    ○上田(哲)委員 それでは政府の統一見解の中にはこれは入らないということを確認をいたしておぎます。そうであれば、当然に硫黄島のさくら二号a地上局の設置費、フリートサットの受信装置の経費などは、国会の有権解釈が出るまでは凍結されるべきだということを重ねて要求いたします。  最後に、こういう状況の中でシーレーン構想上の問題として硫黄島と三宅島の問題点が出てまいりました。あわせて伺っておきます。  硫黄島では、さきの五億六千二百万円の見舞い金が決まった。だが、本委員会の質疑によって硫黄島に帰島を希望している人たちの帰島をそれによって打ち切るものではない、このことははっきりいたしました。そこで、今何人かの方々が耕作権を現に保有している。この耕作権を保有している方々が自力で硫黄島へ行きまして、民有地で建築基準法にかかわらない範囲の十平米の家を建てて耕作をするということになったら、防衛庁は、防衛政策上困りますか、どうしますか。そこのところを明確に答えていただきたい。  それから、三宅島の米空港設置については、候補地として総理の重大発言がありましたけれども、これにはレーガン大統領との会談で一定の期限というものがあるのでしょうか。約束があるかないかということと、今村長及び村議会、村民が空港設置に完全に反対をいたしております。村を代表する村長と村議会が反対をしていれば強行しない、いわんや土地収用などということは全く考えない、あくまでも村長と村議会の意思を尊重していくという点についての御確認をいただきたい。  以上を最後に御答弁いただきたいと思います。
  230. 池田克也

    池田政府委員 前半の硫黄島に関する件について私から申し上げます。  自衛隊は硫黄島に関連いたしましていろいろな形で過去協力しております。例えば墓参だとかあるいはいろいろな調査団だとか、そういう協力をしております。我々の基本的な考え方は、隊務に支障がなくて、我々の運営に支障がなければいろいろな協力をしていたことは過去の実績が示しております。  今、御指摘の硫黄島の中に家を建ててどうこうという、当然これは我々が使用している土地以外の問題だろうと思います。それが困るか困らないか、どういうものをどこに建てるかによっていろいろ違ってくると思います。しかし、具体的にどういう場所にどういうものかということがなければ我々は判断できませんが、我々は現在使っている土地について隊務を運営しておりまして、これに支障がないということになれば、我々がとやかく申し上げることではないと思います。(上田(哲)委員「いいわけですな」と呼ぶ)それは我々が判断することではないと思います。(上田(哲)委員「行ってもいいわけですね、自衛隊が拒否しなければならぬことはないですね」と呼ぶ)それは先ほども申し上げましたように、どこにどういうものを建てるか、それが我々の隊務の運営に支障があるかどうか、そこで判断されることだと思います。(上田(哲)委員「無条件、拒否ではない」と呼ぶ)先ほども申し上げましたように、我々の協力すべきところは協力してまいりましたけれども、先生御承知のように、硫黄島で生活するということは大変難しいところでございまして、これは既に関係の省庁の審議会でも判断・・(上田(哲)委員「そんなこと聞いてない、無条件、拒否かどうかと言っているのです。拒否ではないね」と呼ぶ)我々の所管するところではないと思います。
  231. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 三宅島の件につきまして、レーガン大統領に期限について話したことはございません。  それから、住民の皆様、村長さんを初め議会の皆様を含めまして御理解を得るように、今後とも全力を尽くしてまいります。
  232. 上田哲

    ○上田(哲)委員 終わります。
  233. 天野光晴

    天野委員長 これにて上田君の質疑は終了いたしました。  次に、渡部一郎君。
  234. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は、まずフリートサットの問題から端的にお話を進めたいと存じます。  先ほどから論議が進んでおりますように、この問題に関して原則となっておりますのは、昭和四十四年五月八日提出されました国会における決議であります。わが国における宇宙の開発及び利用の基本に関する決議案でございまして、提出者は小宮山重四郎、石川次夫、佐々木良作、近江巳記夫氏でございまして、賛成者の筆頭には天野光晴氏が並んでいるわけでございまして、当予算委員会でこれを論議するのは非常に歴史的な意味があると存じます。  この文章を一回読み上げてから議論を進めたいと思います。     わが国における宇宙の開発及び利用の基本に関する決議   わが国における地球上の大気圏の主要部分を超える宇宙に打ち上げられる物体及びその打上げ用ロケツトの開発及び利用は、平和の目的に限り、学術の進歩、国民生活の向上及び人類社会の福祉をはかり、あわせて産業技術の発展に寄与するとともに、進んで国際協力に資するためこれを行なうものとする。   右決議する。こうなっているわけであります。これは非常に広範に宇宙の開発利用の基本を定めたものでございまして、言葉のすりかえ、その他を許さない厳格な点がございます。  今月、当予算委員会の質疑応答の中で、二月五日予算委員会における公明党矢野書記長の議論に触れて質疑応答が続けられました際に、この宇宙開発利用は平和目的に限るとあるにもかかわらず、米海軍が所管するフリートサット衛星について、フリートサットコムという一つのシステムでございますが、米国海軍が所管する軍事衛星ではないか、これに対して軍事衛星と名のるものを正面から非軍事であるとか平和の目的であるとかいうような用語を用いて議論するのはいかがなものかということがるる議論されたわけでございます。この意味で国会決議の無視であるという点については、まず避けがたい部分があるのではないかと私は考えているわけであります。  そこで、まず議論を進めていく前に、順々にいたしますが、今回のフリートサット衛星というものは一体どういうものか、担当局から簡単に概要を述べていただきたいと存じます。
  235. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 ただいま問題になっておりますフリートサット衛星は、先般の矢野書記長の御質問に対しましてお答え申し上げましたように、米国海軍が所管をいたしているものでございます。一九七八年から八〇年にかけまして四つの衛星が打ち上げられております。つまり東太平洋、西太平洋、インド洋、大西洋でございます。地球から三万六千キロ上空の静止衛星でございまして、重さ約九百キログラムのものでございます。  機能といたしましては、通常民間でも使われておりますCS2、インテルサットのような衛星と同じ機能を持っているものでございます。主として移動隊用と申しますか、アメリカ海軍が艦隊通信として用いているものでございます。  このほかに、アメリカ海軍はマリサット衛星という民間の所有しているものを一部共用いたしておりますし、昨年からヒューズ・エアクラフトが打ち上げ、管理いたしておりますリーサットという衛星をリースで借りております。いずれにしましても、アメリカ海軍の艦隊用の主力な衛星でございます。
  236. 渡部一郎

    渡部(一)委員 このフリートサット衛星を自衛隊としてはどういうふうに利用しようとしておられるのか、その運用に当たってのルールをどう決めようとしておられるのか、承っておきたいと思います。
  237. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 海上自衛隊が派米訓練をいたします際に、従来は短波放送を利用いたしましてアメリカの地上基地から流れできます気象情報、戦術情報、管理情報などを受けとめているわけでございます。しかし、電離層等の関係からいたしまして非常に不安定な受信でございます。一方、アメリカの艦隊あるいはリムパックでございますとカナダ、オーストラリアのような艦艇におきましては、ただいまのフリートサット衛星を経由いたしましたUHF放送でこれを受けておりますので、非常に明確な情報がテレタイプで入ってまいる次第でございます。したがいまして、訓練効果を上げるために、従来短波で受けておりますと全く同じ内容のものを明確にこの衛星を経由して受信をしたいということでございます。  やや具体的に、ではどんな情報が来るのかということを簡単に御説明させていただきますと、例えば気象情報でありますと、今、北緯あるいは東経何度のところに台風がどっちの方向に向かってどのくらいのスピードで行っているから注意せよとか、あるいはこれからの目標、艦艇、航空機などの目標というものはどのくらいの位置にあるぞよとか、あるいは十一時に予定していた訓練の内容を二十四時間延期するとか、そういったような一般的な情報が流れてきているものでございます。
  238. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理にちょっとここで割り込んで質問をまとめておきたいのですが、総理は、自衛隊法には平和に関する目的が自衛隊の目的として規定されているのであるからして、いかなる装備をしようと全部平和だというようなニュアンスの御答弁を民社党になさったと私は承って全部組んできたのですけれども、どうやら、先ほどの社会党同僚の議員の答弁に対しては、それは民社党の意見であって、私は私の意見があり、それは確として変わらない、検討すると言ったにとどまる、こういうふうに何か御自分の言われたことを民社党に全部かぶせたような感じがするわけでございますが、この自衛隊法の目的というのは全部平和だから、自衛隊は何を使ってもいいという議論ではないというふうに了承してよろしいのですか。ちょっとそこのところが私は聞いててわかりかねた。おまけに総理は早口で言われたので、メモを取り損なった記者さんまでおられる。これをもう一回きちっと言っていただきます。
  239. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 渡部さんの誤解であります。私は明確に申しておりましたが、政府は政府の従来の見解を持っております。しかし、大内さんから一つの御見解がここで表明なされた。これは一つの御見識であると思います。自衛隊法にも「わが国の平和と独立を守り、」とこう書いてあるので、それを御援用になったのだと思います。しかし、我々は我々の考えを持っておりますので、今、大内さんがおっしゃったことは一つの御見識として今後研究させていただきます、そう申し上げたのが正確です。
  240. 渡部一郎

    渡部(一)委員 では、そう信じて次へ進みます。  次に、宇宙開発利用に関する国会決議につきまして、先ほど政府は当委員会においてごたごたした後、政府見解を表明されました。それによりますと、「国会決議の「平和の目的に限り」とは、自衛隊が衛星を直接、殺傷力、破壊力として利用することを認めないことは言うまでもないといたしまして、その利用が一般化しない段階における自衛隊による衛星の利用を制約する趣旨のものと考えます。したがいまして、その利用が一般化している衛星及びそれと同様の機能を有する衛星につきましては、自衛隊による利用が認められるものと考えております。」こういう部分がございますが、まず「一般化している」という議論で、利用が一般化しているものについては自衛隊が認められる。私が想像いたしますと、ちょうど電話が初めて普及したときのようなことをお考えになっている御様子でございますが、電話が社会にとってもう通常当たり前のものになってきた以上は、自衛隊だけがその文明の発達に浴することができないというのは不合理だから、電話も自衛隊としては使いたい、だから平和の目的や非軍事と言っても認めてもらえるのじゃないか。つまり初めは許されなくても、もうすぐ衛星通信あるいは衛星利用によるところのあらゆる機能というものについて一般化するだろうということを見越して、自衛隊による利用というものを全面的に許容してもらおう、もらいたい、そうしてこの宇宙の開発及び利用の基本に関する国会決議というものをクリアしたい、こういうふうにお考えになっているのではないか。つまり時間をかけてみんな突破してしまおう、国会決議を事実上空洞化するというテクニックでおっしゃっているのですかと言いたくなるわけでありますが、まず防衛庁長官から承りたいと思います。
  241. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 衛星の利用につきまして決議があったわけでございますけれども、その後、衛星についての技術が非常に進みまして、また一般社会の中にも広く使われるようになってまいりました。御承知のように、外国におけるスポーツの番組などがリアルタイムで我が国に入ってきているような、ごくごくその衛星の機能を一般的に使われているときに、自衛隊だけが例えば通信面なんかでも使えないということがどうもなかなかいろんな面で不便であるという事態が生じてきたことも事実でございます。  そこで、国会決議にいいます「平和の目的に限り」ということがどういうことなのかということを政府部内で随分考えておったわけでございます。それで過去の答弁の中に非軍事であるという言葉を使ったということも私たちは承知いたしておりますけれども、例えばいろんな意見も国会議員の先生の中にもあり、また委員会でもいろいろ御質疑があります。その中には、例えば先ほど御提起がありましたような、自衛隊の利用はというようなものもございまして、いろいろ考えた末、先ほどのような政府行政部内での統一見解に達したことでございまして、国会決議を全部無にしてしまおうというような考えでスタートしたものではありません。国会決議についての政府の解釈をより明確にしてみたいということでスタートしたものとお受け取りいただければと思います。
  242. 渡部一郎

    渡部(一)委員 科学技術庁長官はかねてより私の敬慕する先輩でございますが、新聞報道によりますと、「十九日、閣議後の記者会見で、「国の守りをしっかりやるのには、最高のものを使ってもらうというのも一つの理屈」とする一方、自衛隊の存在は平和目的だから、自衛隊による利用は「宇宙利用は平和目的に限る」との国会決議に反しないのでないか、との議論には「個人的な意見だが、(そのような議論は解釈を)広げすぎ」との見解を示した。」と報道されております。恐らくは短い記事でございますから意の足らぬところもございますでしょうが、同じ内閣の中のかなりのニュアンスの差も感じられますので、議論を進める都合上、科学技術庁長官にこの問題に対する見解を述べていただきたいと存じます。
  243. 竹内黎一

    ○竹内国務大臣 御説明申し上げます。  私がその記者会見で申し上げた趣旨は、いわゆる自衛隊が我が国の独立と平和を守る存在である、自衛隊は平和目的である、したがって、自衛隊のやることは何でもいわばオーソライズされる、合法化されるという、もしそういう論があるとすれば、それは私は個人としては解釈として行き過ぎではなかろうか、こういうぐあいに述べたわけでございまして、別段その際に政府統一見解を念頭に置いたわけではございません。
  244. 渡部一郎

    渡部(一)委員 個人としてはなんて言わなければいい答弁だったと思うのだけれども、もう大臣になられた以上は、個人としての見解など存在しないということを、この際御注意しておきますよ。  確かに、自衛隊が平和目的であるから何でもかんでもオーソライズされるというような議論にくみしないという御表明は、先ほどの総理の答弁と相まって、中曽根内閣にはそういうニュアンスがあるなということについては、私は今の質疑からは理解するわけです。  さて、では利用が一般化しているような衛星については自衛隊による利用が認められていると言っているわけでございますが、この利用が一般化しているということについて、政府は、アメリカソ連が軍事用として使っているからもう一般化したんだというふうな議論で、自衛隊としても衛星の使用を認めようという方向に行こうとしておられるのかと聞きたいわけです。  つまり今、汎用品、つまり一般化という言葉で今論議の中で言われているけれども、一般化という定義は何なんだ、何かわからない。アメリカソ連が軍用に使っていればみんな一般化だと言おうとしておられるのですか。そのお気持ちをちゃんと述べていただきたい。
  245. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 衛星の一般化という際に私たちが考えておりますのは、衛星の機能が一般的に利用されているという意味であって、そしてその際申し上げたいのは、例えば特定の国の軍隊だけが使用しているということが一般化になるとは思っておりません。
  246. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そこで、今度は、一般的に使われているという言葉が、あの国でもう民間会社が使っておる、つまり一般的に使われておるからいいのだという議論にすぐなり得る。例えばランドサットであるとか気象衛星であるとか農業衛星であるとか、最近は委託を受けて人工衛星を地球上に上げるところは既にたくさんあるわけですね。だから、見ようによっては既に一般化しているではありませんか。だから、今のあなたの言い回しであると、国会決議の枠、穴をぼうっと広げちゃって、実際上は何にも制約を受けていないということになりはしませんか。  ですから、この一般化という用語でお話しをするということは、むしろいよいよ日本でも民間会社が打ち上げました、だからもう一般化しましたとか、今既に、他国の例を挙げれば、実際には民間で一般的に打ち上げられているわけですね。だから、運用を一般化と言うのか、打ち上げを一般化と言おうとされているのか、その辺立ち入って見解を述べていただきたい。
  247. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 繰り返しますけれども、打ち上げられた衛星の機能が一般的に、ごく特定の場所でなく一般的に広く使われるようになったら一般化という意味じゃないか、そういうことでございます。
  248. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それは何を言っているかよくわからない。では一般的というのは、あなたの今のは言葉としては、日本語としては聞こえるけれども、中身は何を育っているかさっぱりわからなくて、それはどういうことを意味しているかというと、今の御答弁を論理学的に解釈すると、要するに、防衛庁長官が一般化したと認めたときは一般化したのだ、防衛庁長官が一般化していないと認めたときは一般化していないのだ、そういうことはおれに任じておけ、こういう意味でしょう。
  249. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 例えばインテルサット、インマルサット、さくら二号、こういうように、それが電話にも使われます、それからテレビの送受信にも使われます、それから外国からの放送の受信、同時中継にも使われます、こういうような形になったら、その通信衛星の機能は一般的に使われているというようなことが言い得るのではないかと思います。その辺につきましてはケース・バイ・ケースなんですけれども、世の中の常識というものがあるんじゃないだろうかと思います。
  250. 渡部一郎

    渡部(一)委員 インテルサットやインマルサット等に人工衛星が使われるというのは、もう計画は既に存在します、申しわけないけれども。それは科学技術庁長官に御答弁いただいてもいいけれども、それはもうほんの数年、早くして計画段階で言えば一、二年、遅くても五年、まあ五年はかからないでしょう。つまり、そうするとあなたは、その間だけ軍事衛星を自衛隊は使わないと言っておられるわけですね。
  251. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ちょっといきさつを申し上げますと、原子力の平和利用につきまして、日本の原子力は平和利用に限る、そういう言葉が基本法をつくるときにありました。私は野党の皆さんと一緒に基本法をつくった一人で、その責任者として野党の皆さんとも、特にこれは社会党の松前重義さんでありましたが、相談をしまして、議会で答弁をする必要があるから解釈を確定しておこう、これは提案者としての法の解釈を確定したのです。  そのときに、その原子力推進という問題が出てくると思うのです。その場合に、原子力商船というものがある程度もう普通に使われるような段階になったら、自衛隊の潜水艦に原子力推進の潜水艦をつくってみても、それは軍事利用とは言わない、自衛隊も使ってよろしい、一般の民間がそういうふうに一般的に使い出したらそうだ。もしそうでなければ、潜水艦をつくっても商船に追いつかないのですから、そんなものをつくったって、それは防衛目的も達せられぬし、およそ時代錯誤のものになってしまう、そういう注意から、そういうことを国会でも説明してきておるのです。これを汎用性の理論、こう言っておるわけです。  そこで、このインテルサット、インマルサットあるいはさくら二号という、衛星がこんなに大量に出てきて、軍事、民間利用、両方とも相通しましてもう大体一般化してきた、現在を見れば。それは通信手段としてあるいは中継手段として。そこまで来ているのですから、原子力船の場合と同じように、政府側の解釈としては、これは使ってよろしいものとして解釈いたします、国会は国会で有権的解釈をなさる立場にございますが、政府としてはそういう解釈でやらせていただきます、そういうことでお願いしているわけなのであります。
  252. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理はもう少し後から答弁していただいた方が総理がしくじらなくて済むと私は思って答弁を避けていたのですけれども、今の言い方はちょっと行き過ぎです。オーバーエクスプレッションのたぐいです。なぜかというと、「利用が一般化しない段階における自衛隊による衛星の利用を制約する趣旨のものと考えます。」とここに決議についての政府見解がありますね。だから、まだ一般化していないことになっている。今あなたは、インテルサットやインマルサットが既に一般化した段階ではお願いできるのだと思いますというふうにすぱっと言われてしまった。そうすると、これはちょっとおかしなことになるのですね。
  253. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 例えばインテルサットを見ますと、もう民間が打ち上げて、そして朝晩我々がテレビで見ているように、ニューヨークの特派員の話とかパリの特派貝の話とか、普通に使っているというか、見ているわけですね。これぐらいもう民間利用で一般化して朝晩お世話になっているという状態を見れば、自衛隊が同じような道具を使わせてもらっても、これは軍事利用というような解釈で狭めて使わせないというのはちょっと狭過ぎるのじゃないか、そういうふうに申し上げているのです。
  254. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 今、総理が申し上げたのと同じでございますが、科学技術について、ちょっとそれは僕らは知識は余りないのですけれども、インテルサット、インマルサットということになると、通常何かもう使っているというふうに私たちは承知しておりますので、一般化しているんじゃないか、そんなふうに思っております。
  255. 渡部一郎

    渡部(一)委員 したがって、ここで述べられましたように、私どもは、この汎用化、ここで述べられますと、一般化しているという表明のもとに、この国会決議に穴をあけて自分で使おう、これから先もあらゆる技術について、あるいは宇宙開発利用についての平和の目的という制限についても一般化で突破しようとなさっているというふうに私は理解するわけですね。つまり予算委員長が厳然としてここにお座りになっておられますが、この委員長が賛成者となっておつくりになった宇宙の開発及び利用の基本に関する決議を、そういうテクニックでぶち壊した、ルールを破った、国会決議に穴をあけた、要するにこういうことなんですね。
  256. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 国会決議をないがしろにするとか穴をあけるとかいうようなことを、現在の議院内閣制の場合の私たち政府が思っていることはございません。ただ、どうも「平和の目的」という解釈が、いま一つ最近の情勢から見て明確でなかったり実情に合わなかったり感じるところがあるものですから、この国会決議の解釈については慎重に、また広くいろいろ議論しなければならないということで政府部内でやって、そして先ほどのような解釈に到達した。繰り返しますけれども、「平和の白的」というのはどういうことなのかということが、いま一つ立法府内での御議論も明確でないところがあるような気がしましたので、行政府限りにこの解釈をより明確にしたものと思っていただければありがたいと思います。
  257. 渡部一郎

    渡部(一)委員 今予算委員長が首をひねっておられましたように、ただいまの説明は非常にわかりがたい。  しからば、この解釈については、行政府の考え方は今述べられた、確かにそうですね。立法府としての解釈が述べられたわけではない。しかし、この予算案について言いますならば、こういう駄じゃれがあるのを御存じですか、フリートサットをするりとさっと通そうとして捕まったという説があるのを。もうまるっきり予算書の奥深くに沈めておいて、なるべく見えないようにたくさんの数字を載っけておいて、各委員にはほとんど説明しないでするりと通そうとした。だからスルリトサットと言うんだそうでありますが、そういうふうにごまかそうとしたのじゃないかと思われるような節がある。いや一生懸命努力して全部説明したと申されるのでしたら、少なくとも公明党の外交委員長の私のところには御説明がありませんでしたよ。私は安保特の理事でもありますけれども、一行も紙が参りませんです。私は、こういうふうに目の前を通り過ぎていくというやり方というのはよろしくないと思います。少なくとも、このような怪しい事例、国会決議に抵触したり問題になりそうな事例については、むしろ国会の判断を積極的に求めたい、こちらの考え方はこうですけれども、こういうふうにどうでしょうかと提出し、説明をしていくという姿勢が必要なのではないか、私はそう思いますが、この辺はいかがお考えですか。  今後これがちゃんとするという癖がつかない限り問題ですね。例えば有事法制化の問題です。当委員会でさんざんやったことがある。今、三種類に分けて、二種類がようやくでき上がったところですね。この二種類目の有事法制に対する説明も私のところに到着しませんでした。私どころではない、もっと野党には険悪な野党もおりますから、説明したくないと思ったのでしょう、全然説明しない。何があったって全然わからない。資料を要求すると、辛うじてその骨の部分だけ持ってくる。これでは民主社会における防衛庁として、あるいはそれを所管される大臣として不見識なのではないか。忘れたということはあり得ない、今度の大臣は頭がいいから。知っていてやっておられるに決まっている。これは甚だよろしくない。ひとつこの辺に対する決意を承りたい。
  258. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 予算案を突然、予算書の奥の奥まで隠して、今度するりと通そうとしたような気持ちは全くございませんで、これは国会の決議との関係で御議論のある部分であろうという意識はございましたので、政府部内でも去年の暮れから、予算要求、その政府案をつくる段階から何度もこの問題は討議いたしております。そういう意味で、その過程の中で渡部委員に十分な御説明等が抜けていたとすれば、それは本当に失礼いたしたと思っております。我々としては、政府予算が決まったものですから、それを予算書の中にこういうふうに提出して、今その解釈等につきまして、この予算委員会という一番重要な場所で、そして国民が一番注目しているこの委員会の御審議の中で国会の御意思等をお聞きしている、そういう過程に今あるのだと思っております。
  259. 渡部一郎

    渡部(一)委員 かつて法制局長官が、宇宙開発事業団というものはこの偵察衛星のようなものは打ち上げられないというような旨の御答弁をされたことがございます。今もその答弁は生きておられるのかいかがか。そして今、自衛隊としての利用とおっしゃいましたが、自衛隊として、もうこれだけインテルサットやインマルサットが汎用化しているときであるから使わしていただくのは当然だと言っているのか、それとも、もう近々打ち上げたいとおっしゃっておられるのか、そこのところはちゃんと明瞭にしていただきたい。     〔委員長退席、大西委員長代理着席〕
  260. 茂串俊

    ○茂串政府委員 今の御質問のうちの前段の部分を私、御答弁申し上げます。  御指摘のとおり、昭和五十八年五月十六日の参議院の安保特別委員会で当時の角田法制局長官が、宇宙開発事業団が偵察衛星を打ち上げることはできないという内容の答弁を行ったことは、そのとおりでございます。そのとおりでございますが、この答弁は当時、偵察衛星の利用というものが一般化している状況にはない、それを前提として、そういう認識のもとで当時の角田長官がお答えになったと私聞いております。
  261. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  第二点の方でございますが、専守防衛を旨といたします我が国にとりまして、情報能力を強化するということは極めて重要なことであるというふうに考えております。そういう意味におきまして、私どもはこの偵察衛星というものに非常に関心は持っております。ただ、具体的な計画を今持っているわけではございませんが、世界の各国の状況等については常時調査を進めているところでございます。
  262. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は法制局長官にこの問題をきょうは丁寧に詰めるだけの時間的余裕がございませんので、後の課題に譲りたいと思いますが、宇宙開発事業団に打ち上げられないと言っておられるのであるか、あるいは宇宙開発事業団以外の政府関係部局なら打ち上げられると言われているのか、あるいは自衛隊が直接打ち上げようと思っていると言おうとしておられるのか、しかもそれを、最近の宇宙開発の状況から見て、いいと言おうとしておられるのか、全くその辺のところはわからないところであります。  そして、少なくとも法制局長官の御答弁は、時代を超えて歴史的な変遷などは物の数ともせず、法的な整備された言い方でおっしゃったのだろうと思いますね。そうすると、この解釈はとても難しいことになろうと私は思っておるわけでありまして、防衛庁並びに法制局はその辺をよく協議された上、これに対する回答を述べていただきたいと私は思っております。本日は、あえてこれについては伺いません。というのは、両者でとても打ち合わせができている気配ではない。先ほどから見ていると、危なっかしい答弁が続いているわけでありますから、もっと精密に議論されたことを後ほど聞かせていただきたい。     〔大西委員長代理退席、委員長着席〕
  263. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 偵察衛星の問題につきましては先般、本委員会においても質問がございまして、私は同じ条理でございますと、そういうふうに答弁をした。つまり、汎用性の理論をもって偵察衛星についても適用ができる。もっとも、偵察衛星の内容、性能にもよります。一般化した場合、要するに、偵察あるいは調査というようなことがほかの衛星、民間用の衛星等を含めまして一般化したような場合には、これは自衛隊が使ってもいいものである。条理から言えば同じことであります。ただ現在、じゃ偵察衛星というようなものは、偵察というような、そういう調査というものは一般化しているかというと、まだその段階には来ておりませんと私は思います。ランドサットとかあるいは魚群探知であるとか衛星が利用されている場合もございます。そういう意味においては民間利用が始まっているとは思います。思っておりますけれども、いわゆる一般化という段階までにはまだ至っていないのではないかと、そういうふうにはっきり申し上げております。
  264. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は日本の政府として、この平和の目的のためという決議がある以上は、非常にいろいろな意味でこの衛星を使いにくいだろうと思います。したがって調整も要るのだろうと思います。今の御答弁でそのまま通じるとは私は思いません。ただし、私はこの際、世界的な安全保障の観点から言うならば、均衡抑止の理論によってバランスしているということについては残念ながら認めざるを得ない。残念ながらというのは、世界じゅうが信頼と友情に結ばれている段階ではないからして、相互の余りの均衡力の異常というようなものは戦争の引き金になるということは認めざるを得ない。しかしながら、現在の世界の軍備管理、軍縮を進める中において、日本はある意味の貢献ができるのではないか。つまり、日本としてその技術力あるいは経済力を発揮して、査察衛星あるいは艦視衛星、あるいは地球表面上においてさまざまな情報を収集して、これを国連等に提供して、そうしてそれを各国に対して広く開放することによって、世界の軍備管理能力、国連の軍備管理能力に寄与するということは考えられていいのではないか。  私はこの点、外務大臣に承っておきたいのでありますが、既に外務大臣は、昨年六月十二日国連において、日本の地震探知能力をもって世界の核実験というものを査察するというやり方において、世界の地下核実験あるいは一般的な核実験を抑制するための一つの能力というものを国連に提供しようではないかというような意味合いの御提案をなさり、この方式は話題になったと承っておるのでありますが、こうしたことは、今の国会決議にもかかわらず、あるいは日本国の非核三原則あるいはさまざまな平和諸原則に基づいても何ら抵触するところのないテーマではないのか。そういうことはできるのかどうか、そういった提案についてどう考えるか、まず外務大臣に承りたいと思います。
  265. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 国連におきましては、やはり軍縮を進めるための検証能力を高めるためのいわゆる査察衛星構想といったものが研究をされておるわけでございます。これはやはり我が国としても、軍縮を実行するためには検証がなければならない、あるいはまた査察が行われなければならないという基本的な考え方を持って軍縮を進めておるわけでございますから、その限りにおいては、国連におけるそうした検証のための宇宙衛星計画というものに対しては我々としても十分な理解を持って取り組んでいく、世界の平和のためにも取り組んでいくべきではないか、こういうふうに考えておりますが、しかしいろいろと問題を含んでおることは事実であります。そういう面等も十分考えながら、検討しながら、基本的には世界の軍縮、平和に一歩前進する道である、こういうふうに考えます。
  266. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理、いかがでございましょうか。私はただ総理のやったことをけなしているわけでは全くなくて、一つの提案を申し上げました。つまり、国連に対して日本の技術力、経済力で提供しよう、打ち上げよう、これはまさに軍事用じゃないわけでございますね、平和の目的なんですから。そして、その情報を軍事用として利用するかどうかは各国のあれにゆだねるわけでありまして、今ほんの少数の先進諸国にゆだねられている地球表面上の情報というものを公開する。それは少しの、戦争をさせたくない、戦争がしにくくなるという一つ抑止効果があるのではないかと私は考えるわけでございます。その意味で御検討される値打ちがあるかどうか、その辺をちょっと承りたいと思います。
  267. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そのお考えは、非常に積極的な平和への御見識であろうと私は思うのです。平和の保持ということは、消極的にだめだだめだというような否定的な立場だけではない。軍縮というものを前進させるというために一番今ひっかかっているのは、検証の問題であり査察の問題でございます。その検証や査察というものは米ソだけじゃなくして、国連とかあるいは第三国とかあるいは国際管理によるシステムとか、あるいは一国がやる場合にしてもそういうような担保を持ったやり方でやるとか、そういう形でそれが行われる場合には、あるいはやり方によっては大きく平和へ前進させ、あるいは軍縮を達成させる一つの手段になり得る可能性も秘めていると思うのです。したがって、一概にそれは軍事利用であるからといって拒否すべきものではない。よくその内容あるいは仕組みというものを検討して、十分に検討に値する問題であると思います。
  268. 渡部一郎

    渡部(一)委員 この問題を扱うときは、軍事利用でないというところを我が国としては非常に細かく配慮しながら、その点気を配りながらこの問題は進めなければならぬわけでありますが、非常に前向きの御答弁をいただきましたから、その点は今後の御検討にあずかりたいと思っておるわけであります。  ところで、もう一回フリートサットに戻ります。まだ続くのかという顔をされた方もありますが。  自衛隊が米海軍のフリートサット衛星から受け取る、訓練中なんだからいいじゃないか。自衛隊でミサイル部隊は米軍の基地に出かけていってもう練習をやっておる、その間に向こうの施設を利用しておるじゃないか。それは何も悪くないでしょう。それと同じじゃないですかという議論があるのは私も承知いたしておりますが、お話を伺いますと、このフリートサット衛星で向こう側の通信を一方的にこちらが聞く、受け取る、こういうことになっていると伺いまして、私は愕然としたわけであります。それは大蔵省が意地悪く、送信、受信のうち、送信は余り必要ないだろう、受信だけあればいいではないか。送信なんてのはほとんどしないんだろう。英語でしゃべるのは下手なんだから切ってしまえというふうにおっしゃったのかもしれないし、そうでないかもしれませんけれども、受信だけあるという状況というものはかなり異常なことである。それは、命令を受けたら必ず謹め、上官はこっちだ、お前は下士官だ、聞けと言わんばかりの態度をアメリカ側から示され、それを認めたことになるのではないか、システム的に言いますならば、これはこちらは何も言うことはできないのですから。そして先ほど承ると、気象情報を受け取るとおっしゃいましたね。それから会合の場所が十一時のものを十二時にするから会合の段取りは次のとおり。十二時からやるよというような命令がぱっと来るわけね。はい、わかりましたと受け取るわけだな。これはもうまさに命令ですよね。それから、作戦会議はどこどこからどこどこへというようなことが来るわけね。打ち合わせに類することは来るというのだからそういうのが来るわけでしょう。そうすると、これは米軍の指揮通信システムに一方的に組み込まれることになるのではないか。少しゆっくりしゃべっていますから、そっちでゆっくり打ち合わせておいてください。  これは問題ですよね。安保条約の規定というのは相互に、日本日本の意思で防衛のために何かするということを意味している。向こうは向こうの意思で物をやるということを意味しておる。これは訓練中のことだと笑ってはおられない。アメリカの意思、日本の意思というのが両方併存してなきゃならない。ところが一方的にアメリカ海軍から次はどこどこですよ、次はどれですよというのを全部衛星通信で聞いて、受け取って受け取って受け取っていくだけ、そしてその命令を聞いて直ちに移動するだけという癖がついてくる、これは安保条約違反であると私は言うのです。何と野党が安保条約違反だなどと言って議論するのも妙なものでありますけれども、安保条約の運用にはこんな運用はないじゃないですか。  それでおまけに、これは日本の領域内で行われる訓練ではありません。だからシーレーン防衛などということと同じように、我が国領域外での事態に対処するやり方と同じやり方でやっているわけですから、米軍の艦船を守るために、あるいは米軍の情報の指揮監督を受けて、あるいは米軍の情報を受けて自衛隊が行動するのに米海軍のフリートサットが援用されているということになれば、これはどうなります。安保条約で認めておるやり方とは全く違う。要するに、あなたの指揮されている海上自衛隊の出動艦隊は、あなたの命令ではなくて、現場では米海軍の言うなりに右へ行け、左へ行け、前へ行け、後ろへ行け、撃て、とまれという命令を受けるだけの存在になるではないか。そんな癖をつけるということが訓練なのか、甚だ不愉快である。この辺をどう考えておられますか。
  269. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 アメリカ海軍と我が海上自衛隊がこのような訓練をするときには、それぞれの指揮系統に従って訓練されております。そして、その際の日米双方の間の連絡は、今申しましたフリートサットによるこの通信以外に、通常の相互の連絡は別途の往復の通信仕組みがございまして、これは比較的近くでお互いにやり合っているものですから、それはいろんな種類の通信方法を電波でやり得るわけですけれども、今度お願いいたしておりますフリートサットによりますUHFというのは、例えば陸上からのいろんな情報とか、それを従来短波ラジオで聞いていましたようなものを、これをより明確なUHFで聞くという仕組みでございますので、それが短波ラジオを聞いていたような仕組みのものがUHFになったからといって、集団自衛権の問題に少しでも変動があるような機能の違いになるものだとは考えておりません。
  270. 渡部一郎

    渡部(一)委員 今集団自衛権と言われましたが、それはその次に私が聞こうと思っていた話で、あなたは頭の中が混乱し始めたのでしょう、きっと。  向こうの陸上から日本の海上自衛隊があれをもらうということは、この場合、陸上には主要機関部が存在しているのであって、そことの連絡にフリートサットを使うというのは、ますます組み込まれることを意味しているじゃありませんか。あなたの言う答弁は、今のはめちゃくちゃなんです。答弁にならない、それでは。だから、我が方が米軍との間で相互に訓練をするんだったら、相互にお互いの主張、意見というものが並列して存在できるような体系で訓練をするのでなければ意味がない。ところが、一方的に情報を受け取り、一方的にスケジュールの変更を伝えられるというようなやり方で受け取るとしたら、これは不見識の至りじゃないですか。  あなたは大蔵省との予算折衝のときに何を決められたのですか。一億六千万でほとんど半分にちぎられたのでしょう。そこだけ首をうなずいているというのは何事ですか、あなた。安くて済めばいいなんて考えているのは、そういう考えたから何ともかんとも言いようのない安保条約違反になる。問題じゃありませんか。そこはどうです。
  271. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点は、渡部さんのお考えが正しいと思っております。  私は、この問題の話を聞きましたときに、それは受信だけじゃないだろうな、本年は予算上受信だけにしておきます、それじゃ、予算がつけば送信もやれるんだろうな、そうであります、それならそれで結構だ、こういうことになっております。
  272. 渡部一郎

    渡部(一)委員 謹んで申し上げますが、僕は、むしろ総理の見識に敬意を表します。それは片一方方向の通信だけをとって、こんな疑わしいことはやめた方がいい、一億六千万は執行停止なさるべきです。
  273. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 このたびお願いいたしておりますのは受信装置だけでございますけれども、この送信の方も、これを買った場合、この次、送受信できるようにするためには、今度送信の方だけをお願いできればいいという仕組みではないようでございまして、今度は一種のラジオみたいなもので受信は受信、そして送受信の場合には今度別途に送受信も必要なそうでございますけれども、その辺は将来、総理のお言葉もございますので、十分に予算折衝のとき検討させていただきたいと思います。
  274. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それはあなたおかしいですよ。さっき時々しか着かないとおっしゃったじゃないですか。時々しか着かないラジオで大事な話し合いはして、命令を受けるときだけは確実に着くフリートサットで受けるというのは、これはますます変じゃないですか。つまり、日本の海上自衛隊側の意見は向こうにたまに着く、向こうの命令もたまに来る。しかし向こうの命令を受けるときだけは着実に受け取れるようにフリートサットで受け続ける。あなた、もう奴隷海軍と同じじゃないですか、それじゃ。
  275. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 ただいまお願いをいたしておりますのは、やや遠隔地にある陸上基地からの艦隊放送系でございます。それから、先生御指摘の送受信の方につきましては、比較的近距離にある艦隊と艦隊、船と船との連絡でございまして、現在も短波あるいは超短波、あるいは昔流になりますけれども、手旗等で行っております。したがいまして、緊急性という点からいいまして、今回受信装置をお願いした次第でございます。指揮系統その他独立しておりますので、艦と船との連絡は短波放送、手旗というとちょっと古くさくなりましたけれども、ごく近間のときには使っております。そういうことで、常時連絡を密にしている次第でございます。
  276. 渡部一郎

    渡部(一)委員 どう考えても先ほどからの答弁は、これはもう穴だらけで、この問題については余りよく考えられてなかったことを私は示しておると思います。この部分については、私は重大な疑義があると申し上げておきたい。そして、フリートサットの利用について、私は自衛隊がもしその機能を発揮しなければならぬとするならば、領域保全あるいは専守防衛に限って言うのでございますけれども、この通信情報能力というのが欠如するということは問題です。少なくともその向上に努めなければならぬ、そのための何らかの方法というのは考えなければならない。これは今までの議論と別に申し上げるわけですけれども、それについて全くどうも余り感心した結論が出ていない。私は、この米軍通信衛尿利用というのは、集団的自衛権の行使につながる可能性があるという点で一番問題が多いと思う。  というのは、憲法上も否定し、国会内答弁の数々の今までの討議の中で、集団的自衛権の行使というものは、国連憲章でもこれは認められているけれども、日本の憲法においては集団的自衛権の行使というのはこれは外したいきさつがある、これはやらないということになっておる。その答弁は、これまで戦後三十年、繰り返し述べられている。ところが今のは、お話を聞けば聞くほど、手旗で話をするぐらい顔と顔を突き合わせて、そして密接な連絡をとり、そして命令を受けるフリートサットまで持ち出して、ひたすら米軍の御意向のとおり物事をやっていくというニュアンスは、集団的自衛権の行使の実際的な態様を示すものであると私は考えるわけです。だって、日本側の意見は向こうへ通らない、向こうの意見は通ってくるだけの仕掛けを持ってしまおうとしているのだから、それが集団的自衛権でなくて何でしょうか。私はここはもう重大問題である、この問題はちょっとやそっとで済む問題ではない。これについてどう考えられますか。
  277. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、いずれ送受信機を装置させよう、これは総理大臣の意思であり、これをつくるときに、この相談を受けたときに私はそれを確認しておるのであります。私の言葉が正しいと思ってください。自衛隊の諸君は、どうしてもあなたみたいな猛者に会うとおろおろするところがありまして、答弁がひるむところがあると思うのですが、私は自分で確信を持って申し上げておるのです。こういうフリートサットを使って米海軍と送受信をする、連絡通信をするというようなことは、これは日本の訓練あるいは共同対処の場合にも必要な通信手段の確保でありまして、それが必ずしもすぐ集団的自衛権に結びつくものではないと思っております。
  278. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理、では申し上げますが、いよいよ最後のところですから。  集団的自衛権の行使と疑われてもやむを得ない部面があることについては今までの議論の中で御理解いただいたと思います。そして、これは運用に当たって、集団的自衛権の行使と思われるような態様、業容というものについて少なくとも指導なさる必要があるし、その決意を表明されることが必要なのではないか。フリートサット衛星の問題に関して、集団的自衛権の行使に当たるようなことは絶対しない、また、そう疑われるような業容については改める、また、その行使については行政指導を行う、この点を明快にしていただきたいと思いますが、いかがですか。
  279. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そのとおりにいたします。
  280. 渡部一郎

    渡部(一)委員 これは外務大臣に承りますよ。  アメリカに対して武器の技術輸出をするということについて、中曽根内閣は表明されたことがございまして、私は反対でありますけれども、それはこの国会決議に反しない、つまり、宇宙の平和利用ですね、この利用に反しないと考えておられるのかどうかです。つまり、何を言おうとしているかというと、宇宙開発に関する技術を日本が開発する、開発したものをアメリカに対して技術輸出する、そして、アメリカにおいてはそれを軍事用に使うということについては、日本側としてそれは何も問題ないと考えておられますか。
  281. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 武器技術につきましては、武器技術をアメリカとの間に輸出するということについては日米間で協定を結んでおるわけです。まだ何らアメリカから具体的な要請はないわけですが、この武器技術の輸出の協定あるいはまたMDA、さらに日本の憲法であるとか基本法、基本的考え方、そういうものの趣旨を踏まえて、これはケース・バイ・ケースで輸出をしていく、こういうことでございます。
  282. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうすると、日本国内においては、先ほどの決議で非軍事というふうに枠がかかっておるけれども、アメリカで軍事用に使う分については、日本としては宇宙開発の技術は全部、もうほとんど問題ない。向こうではブレーキをかけないで全部出すことができる。しかし、日本国内ではブレーキをかける場合があり得る、こういうふうに理解しておられるわけですか。
  283. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 あくまでも、輸出する技術につきましては日本が独自に自主的に判断をして決める、こういうことになっております。
  284. 渡部一郎

    渡部(一)委員 答えが半分ですね、それは。
  285. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 この問題につきましては、先般当委員会におきましても、SDIの関連で御質問がありましたときにお答え申し上げましたが、武器技術につきましては、官房長官談話、それからそれに基づきましてアメリカとの間に結ばれました交換公文、これに基づきまして、具体的事案が出てきたときに自主的に判断して決定をする、こういうことを御答弁申し上げました。これが政府の考え方でございます。
  286. 渡部一郎

    渡部(一)委員 では、このように、今述べたのは何を言おうとしているかというと、アメリカには宇宙開発の技術をどれだけ持ち出して軍事用に使おうとよろしいが、日本側の方では使うのに当たって抑制するというのはいかにもアンバランスだろうと私は思います。こうした問題全般について、先ほどから、奇妙な状況が続いていることについて詳しく申し上げたわけでありますが、政府としてもその辺の対応をもう少しきちんとしていただかなければならぬと私は思っております。  では、一%の問題にいきたいと思います。  私は、ここのところ、防衛費のGNP一%をめどとするという問題につきまして総理の御答弁を集めてみましたところ、余りにもたくさんありますので驚いたところであります。歴代の総理の中でこれだけいろいろおっしゃった方は珍しかろうと思っているわけでありますが、詰められたところ、今日までのところ、GNP一%をめどとして堅持する、こういう立場であると好意的に理解しているわけでありますが、それでよろしいですね。
  287. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは矢野書記長及び大内委員にお答えしたように、守りたいというふうに念願を持っておるわけであります。
  288. 渡部一郎

    渡部(一)委員 しからば、このGNPの一%を守るために何をしなきゃならぬか。少なくとも守りたい、守らなければならぬという立場で物を進められるのと、守りたいが守れないという立場でいかれるのと、守りたいけれども守れない状況が後から出たというのと、守りたいとは言うけれども、実際的には守れない状況をつくっておいていつの間にか守れなくして自分の手を汚さないというやり方と、いろいろなやり方が私はあると思う。  私は、この場合に、日本安全保障の基本的問題について短い時間で余りお話をするわけにはまいりませんけれども、少なくともそのGNP一%を越せば日本の安全が保障され、GNPの一%より下だったら安全が保障されないというような単純化した議論というものはおかしいのではないか。なぜかといえば、幼稚な、実情にそぐわない兵器、大軍を着々と準備して、おくれた戦略思想において防衛をしようと図れば、何ぼ費用があったって我が国の安全保障というものは適切でないところへ落ち込むからであります。また、防衛政策や戦略構想が見事であっても、外交政策が破綻をしたりあるいは外交的努力が全く当を得なかったり、あるいは国際場裏で孤立をしたり、国内で内紛を生じたりするような状況になれば、これまたまずいのではないかと思うわけですね。  そうすると、どんなことが必要なのか。私は逆算して申すわけでございますけれども、少なくとも対象勢力と申しますか、そうしたものに対して我が国に対する侵略の魅力を感じさせない。これ、なかなか難しいことですけれども、魅力を感じさせない、侵略の害意というか敵意を持たせない、あるいは侵略するだけの口実を与えない、そして逆にこちらから先方に対して、日本に戦争を売らなければ大変だと遣い諦めたり脅迫するようなことはしない。それと同時に、国内で内乱を生じない。また、諸外国との間で信頼醸成の外交努力を営々として続ける。  今、五項目、六項目にわたって申し上げたわけであります。こうしたことがむしろ非常に大きな総合的な安全保障の基礎であると考えるわけでありますが、まず総理の御見解を承りたい。
  289. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 全く同感でございます。防衛というものは軍事力、いわゆる防衛力のみに頼ってできるものではございません。国内の合意であるとか、あるいは客観情勢の整備であるとか、そういうさまざまな総合的な力によって全うできると思います。
  290. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いきなりちょっとここでアメリカの話へ移りたいと思いますが、我が国の防衛問題を考えるために、アメリカとの友好の関係というのは非常に大きなテーマの一つであります。ところが、最近アメリカとの関係が余り良好とは言いがたい。率直に言って三百七十億ドルの輸出超過、これは重大問題になっておるし、これはアメリカも民主国家として上下院議員の攻撃の標的になっておることはもう言うまでもないし、これについて適切な解明というか、努力をしないと、米国の民主主義という、民主的な討論というものは時に苛烈な反応を生ずることがあることを我々は見ているわけであります。特に心配なのは、レーガン大統領が日本に来られましたときに、新聞報道によれば、総理に対して直接金融の自由化の問題について特別に要請されたと承っておるわけでありますし、また、最近においては、自動車の台数につきましてその規制を外すか外さないか、あるいはある種の数量を決めるかは日本に課せられておるようでありますし、また逆に、先端技術の問題につきましては、先端技術、先端産業についてはアメリカは強烈な関心を持っておって、これに対してむしろ普通の要求ではない要求を突きつけられておられる様子でありまして、政府としても対策に苦慮されているところだろうと私は思うわけであります。私も大変心配しているわけです。  この問題は、日本安全保障のためにちょっとただごとでない対応が必要なのではないか、序列からいうと第一順位に据えて適切な解明が必要なのではないかと私は思っているわけであります。特に私は、米国との関係で、今幾ら日本側の立場を説明し過ぎても説明し過ぎないほど日本側は何かを言わなければならぬ時期である、我が国の外交陣も全力を挙げて対米的な折衝のために死力を挙げなければいけないときではないのかな、こう感ずるわけであります。そして、そのGNPの一%問題も、また防衛努力の問題も、それらの議論と無関係には議論することができないと私は思っておるわけでありまして、もし対等にアメリカと一%の問題を議論し、あるいは日米防衛協力の問題だけを、防衛に限ってのみ議論することができれば容易でありますけれども、それだけではないものが存在するということを認めざるを得ないと思います。  そうしますと、私は、最近刻一刻様相は悪化しておるな、答えがなかなか出てこないな、そして問題というか課題は大き過ぎるなという感じがするわけであります。情報も不足しております。国民に対してすべてを話せないというお立場なのかもしれませんけれども、むしろ積極的にこれらの問題についてどういうふうにお考えなのか総理に承り、あるいは農林水産大臣に承り、大蔵大臣に承り、その辺の見通しをまず論じてから次の話に進みたいと思います。よろしくお願いします。
  291. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今渡部委員御指摘になりました私の担当のところでは、いわゆる金融の自由化措置、特に日米円ドル委員会という名前をお使いになりましたが、その問題であろうと思っております。  今も御指摘がありましたように、五十八年の十一月の日米共同新聞発表で日米共同円・ドル・レート、金融・資本市場問題特別会合、俗称日米円ドル委員会と呼んでおります、これが設立されまして、その後、作業部会での検討を経ました後、去年の五月末に日米双方の合意事項が報告書に取りまとめられたところであります。  この報告書の内容は、これは委員御案内のとおりたくさんの項目にわたるものでございますが、この問題は今日の時点においては着実に合意事項の実施検討を進めておるところでございます。今後とも我が国の金融制度、金融慣行等を踏まえながら、この努力は引き続き続けていかなければならないというふうに考えております。  それから、いま一つ私の分野で申しますならば、いわゆる関税問題がございます。この問題は一連の市場開放対策を実施しております。去年は四月、そして十二月に対外経済対策を決定いたしました。その中にはワインとか紙製品等の米国関心品目の関税引き下げ等が含まれておりまして、六十年度関税改正におきまして、今、国会で御審議いただいております関税改正におきまして、これを通過させていただいて、そして実施していくという考え方であります。それから、今後ともいわゆる関税の面から見ます日米貿易、経済関係均衡のとれた発展のためには真剣な努力を続けていかなければならないという現状でございます。
  292. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 渡部委員にお答えいたします。  通商問題、非常に全般的にわたっておりまして、まさにこれは経済の対応ということが極めて重要であるという点では御指摘のとおりであると思います。御指摘になりました、例えば自動車問題にいたしましても、きのう、きょうの新聞に報じられておりますように、アメリカ関係閣僚会議が催されておる、それがまた恐らく日本にもどういった形で伝わってくるかというようなこともありますし、また、本年当初の中曽根・レーガン会談で指定されました四品目についてのいろいろな折衝も続いております。それから、現在も鉄鋼交渉等も進んでおりまして、これらの日米貿易問題が非常に重要な課題であるということは御指摘のとおりであります。  全般的に申しますと、いわゆる保護貿易主義的な動きというものを極力排しまして、今大蔵大臣も御指摘になりましたように、関税等による開放対策でございますとか、そういった保護貿易主義を排して自由開放体制をしいていく、そのためには新ラウンドの開始がぜひ必要であろうという、これは中曽根総理の大きな基本的な方針があるわけでございます。そういった各般の全般にわたっての通商問題を、委員御指摘のとおりに的確に対応いたしまして、そして貿易、経済問題から来る経済摩擦やいろいろな困難な問題に対応していかなければならない、これは極めて重要な課題であると認識をいたしております。
  293. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 渡部先生にお答えいたします。  実は説明する前に日米農産物の輸入、輸出について申し上げたいと思いますが、大体この三カ年間、五十六、五十七、五十八年の三カ年平均でございますが、輸入が農林水産物で平均が九十三億ドルでございます。輸出が約四億ドル、したがって八十九億ドルの輸入超過である、これをまず御理解願いたいと思います。  そんなことで、米国農業がドル高等による輸出不振等により不況下にあることは承知しておりますが、一方で我が国農業も消費の停滞とか生産調整の実施とか、あるいは生産物価格の低迷等により極めて厳しい状況にあります。  農産物の市場開放問題の対応に当たりましては、我が国農業を生かすとの観点に立ち、その健全な発展との調和を図ることを基本としつつ、関係国との友好関係にも配慮しながら対応していくことが大切であると考えております。そんなことで、今後は米国等諸外国に対しましては、かかる観点からこれまでの市場開放措置及び我が国農業の実情等を十分説明し、その理解を得ながら対処してまいる考えでございます。
  294. 河本敏夫

    河本(敏)国務大臣 今御指摘になりましたように、この問題は非常に大きな問題だと思いますが、やはり総合的に掌握することが何よりも肝心だ、こう思います。昨年一カ年の間にアメリカは一千億ドル以上の輸入が拡大をしておりますが、これはやはり景気回復が非常に大規模に進んだということと、それとドル高、こういう背景があろう、こう思うのです。そういうことで、アメリカの貿易相手国としまして日本が一番大きな黒字国にはなっておりますけれども、日本よりもはるかに規模の小さい国でも百億ドル、二百億ドルの黒字の国もたくさんございます。  そういう背景をまず正確に認識することが必要だと思いまするし、それから、特に最近注目すべきは、大統領の先ごろの教書などを見ますと、アメリカの赤字の最大の原因はドル高にある、こういうことを明確に認識しております。それから、先般アメリカから次官クラスの代表が数人やってまいりましたが、彼らが言うのには、やはりドル高のために七割方アメリカ責任があります、こういうことを言っておりました。私は、現在の円の水準ではあるいはまたドルの水準では七割ではきかない、もっと大幅な責任があるのではないか、こういうように思いますし、それから、四つの分野での市場開放が彼らの希望どおり進みますと、それで百億ドルの貿易の収支は改善される、こういうことも言っております。果たしてそういうことになるかどうかわかりませんけれども、いろいろな問題を総合的に掌握して適切な対応、判断をすることが必要だ、こう思っております。  それともう一つ、今通産大臣からも正確にお述べになりましたが、こういうことの交渉の背景にはやはり新ラウンドをできるだけ早く進めるという、自由貿易を守っていこうという世界的な雰囲気をまずつくり上げることが肝心だと思いますし、それから、この問題は市場開放だけではございませんで、やはり為替問題、各国の経済政策あるいは構造調整、こういう問題とも関連しますので、いわゆる多角的なアプローチ、総合アプローチ、こういう考え方が必要だと思います。  いずれにいたしましても、当面最大の問題になっておりますので、国全体の進路を考えまして、何とか自由貿易体制を守りながら拡大均衡の方向に貿易政策を進めたい、こういうことを考えながら目下作業をしておる最中でございます。
  295. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 渡部さんおっしゃいますように、日米間の貿易摩擦等は今私が最も重視しておる当面の最大の施策の一つでございます。  最近アメリカの国会の反応等を見ますと少しいら立ちが出てきておりまして、ダンフォース議員等が保護主義法案を次々に提出してくる危険性もあります。やはり先手を打ってそういう誤解を解き、安心感をお互いが持つということが非常に今日必要であると思います。私はロサンゼルスにおきまして、そういう事態を予想して、それを解決するメカニズムをまずつくっておく必要がある、日米間はかなり関係は成熟しております、したがいまして、そういう解決のためのメカニズムが一応できれば、あとは相互の努力の問題であります、そういう意味で次官レベルの会議を私自体が話しまして、そして農林、通産あるいは厚生あるいは郵政そのほかの大事な問題について事務次官レベルの交渉を始めたところで、そのフォーミュラはもうできている。昨年、竹下・リーガン、大場・スプリンケルのレベルで円ドル問題が討議されて、これは非常に大きな成果を上げて、アメリカも非常に高く評価しておるところです。日本の自由化率というものはもうドイツを超してきている、はるかに超しております。そういう意味において、今度リーガン財務長官がホワイトハウスのトップになりまして、彼はそういう意味もあって事務次官会議というもので大勢こっちへ寄せてきたのだろうと思います。そういうようなことも踏まえまして、この事務次官レベルの会議をぜひ成功に導く、あるいは安心感を与える解決の道を進む、これが第一に大事な仕事で、そして三月末ぐらいまでの間に成案を得るようにいたしたいと思います。  それから、やはり三百六十億ドルとか七十億ドルとかという大量の輸出超過が出ますと、数字がひとり歩きしまして、日本には日本の言い分がありますし、そのこと自体は日米間及び世界経済の仕組みの中に組み入れられて、また大事なファンクションをおのおのやっておるわけです。アメリカ繁栄とか失業防止とかインフレの防止とか、日本が非常に貢献しておるわけです、逆において。また、そのおかげで世界が非常に潤っておるわけでございます。そういうような面はあるけれども、アメリカの議員は感情的ですから、数字だけでこれはという気分になりかねないところがある。そういう意味において対策をやる必要があるのであります。理屈は別として、どうしても現実に対策をやる必要があるのであります。そういう意味において日本が輸出についてある程度の、集中豪雨をやめるとかあるいはいわゆるオーダリーマーケティングをやるとか、そういうような自制的な措置というものを考えていく必要はある。それは彼我の輸出の、輸入の状況とか国内情勢考えながら慎重にやる必要がありますが、考慮の中にそういうことも考えておく必要がある、そう思っております。
  296. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私はGNP一%の問題を論ずるときにいつも思うのですけれども、GNP一%で済むかどうかの前に、日米関係の安定というのがなければならぬ。そのときに非常に感じますのは、今総理のお打ちになった手、私はそれに何かつけ加えて言っているわけではないのですけれども、少なくとももう少し目立つ対策、アメリカ人の心情にこたえる対策があっていいんではないかなという気がするわけなんですね。それは、金額よりもむしろ心の問題であり、そしてアメリカ人の感情に生に働きかけるアクションというものをもっと考えなければいけないのではないかな。だから、対応としては事務次官会議をやっておられ、調整を続けられ、両方の担当者がじっくり打ち合わせをされていくにこしたことはないとは思いますけれども、私はその意味で幾つか感じる点があるわけなんです。  例えばアメリカの農民が今非常に困っております。この農民、農業の困り方というのは、明らかに、干ばつもありましたし、農業価格が世界的な需給緩和を目途として少し下がり始めたことがあるし、一番大きく効いているのはドル価格のそれこそ非常な上がり方というのだろうと思いますが、そのアメリカ農民の主力になって今まで稼いでいた人たちが、採算がとれなくて暴動を起こさんばかりの雰囲気で各地で騒いでいる。テレビで放送される、ネットされていく。その放送の中にどういうものが出てくるかというと、こういうふうにひどい目に遭っているのは結局は我が国に対する輸出が非常に激しいので全部こういうことになっておるんだという短絡した話しか出てこない。少なくとも、日本の商売人が穀物を少し高目に買ってあげたとか農業技術の援助をしたとか、あるいは農業立て直しのために何か手伝ったとか、それから農業技術とはいかなくても、その地域に一緒に行って労働奉仕をしたとかというハートに迫るものが向こうの農民にないようなんですね。私は、これは放置していい問題だとは思いません。日本国内でも農業がそういう形になったときは我々はみんな必死になって対応したし、それだからこそ日本のある種の安定というものがあったと思うからなんですね。そうすると、このアメリカ農業再建のために、出しゃばるようだけれども何らかのアクションが、日本の農協とかそうした形でできないものか。  と申しますのは、先日ロサンゼルスを通過いたしましたときに、あの地域一つ妙な話が起こったのです。それは、日本人の企業家であるけれども、資金として百億円の資金を用意した、アメリカの中小企業のどこでも助ける、言ってくださいというニュースがあそこに広がったのです。これは本物ではありませんでした。うそだったのです。ところが、その話がどういう響き方をしたかというと、カリフォルニア州全体に、またアメリカの中西部あたりまで広がりまして、さすが日本人だ、円を担いで救済にやってきてくれた、好ましいやつじゃ、前々からいいところあると思ったけれども、いよいよ来てくれたか、いいぞ、日本人というのは気に入ったぞと僕まで言われたのです。私はショックを受けました。しかし、私がもう一つショックを受けたのは、そのときの金額がたった百億円だったことです。百億円がこんなにショックを与えるとは、私はアメリカというのはもっと大きな国だと思っていたので、そのアメリカの中小企業者たちを選んで百億円を投入しようとしたその人のアイデアですね。アイデアというか、単なる思いつきか何か全然存じませんけれども、そんなショックを与えた。私は、これはむしろ誤報から出た話ではありますけれども、考えていいのではないかなと思うわけなんです。  それからもう一つ。実際の監督をなさる方が打ち合わせをすれば、こちらに言い分があります。日本のお役人は、我が国の国益を守ることを優先しなければなりませんから頑張るのは当然ですけれども、この場合はアメリカ国民をある意味で安堵させない限りは、論議も進まなければ結論に対する不満はなおかつ爆発するだろうということであります。したがって、交渉担当者にかなりの授権をしなければならない、権限を与えなければならぬ。予算措置もつけなければならない。交渉は手ぶらでやるのではなくて、その渡すものを渡してから交渉させない限りは無理なのではないか。その意味で、今回の対米交渉というのはまさにダウントップからトップダウンの両方の方式が利用されなければならぬと言われておりますが、私に言わせるとトップダウン・ウィズ・マネーと言わなければならぬだろうと思う。そうでないと、このトップダウンが、単なるお言葉が両方で応酬するだけであって、悪い感情が残り過ぎて逆効果、マイナスになるのではないか。総理は人の心をつかむことにかけてはかなりの名人とお見受けするので、アメリカ人のハートもまたたなごころにしていただきたいと私は思っておるわけでありますが、いかがですか。
  297. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 アメリカ人のかたきをよく洞察されまして、そういう機宜に必要な対策をやれということは私も今非常に感銘したところであります。ひとつお言葉をよくかみ砕きまして研究してみたいと思います。
  298. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私はここで、GNPの一%問題にいよいよ今度は触れていきたいと思いますが、時間があと二分ですか。GNPの一%を堅持するために、私は――これはちょっと時間がなさ過ぎましたので同僚議員に譲りまして、次回にこの論戦を続けていただきたいと思っておるわけであります。どうもありがとうございました。
  299. 天野光晴

    天野委員長 これにて渡部君の質疑は終了いたしました。  次に、永末英一君。
  300. 永末英一

    永末委員 防衛費をGNPの一%以内をめどにするということに関する問題は、これは政府の予算政策上の問題、しかし我が国の安全を守るためにどうするかといういわゆる防衛論議の本質的な問題ではないと我々は考えます。自民党政府が約束をした、決定した政策は守れということを要求してまいりましたが、経済通の大内君の質問で大体総理考え方はわかりました。しかし、我が国の安全を守るための本質的な論議がいわゆるGNP一%問題のためになおざりにされてはならない、こういう観点から中曽根防衛論の本質について聞いてみたいと思います。  問題は、我々の持っている自衛力が我が国の安全と平和を守るために十分であるかどうか、この点について中曽根内閣は国民に本当に安心感を与えているかどうか、ここに私は大きな疑問を持つのであります。その国民の不安を解消するためには、現在の我が国の置かれておる現状、安全に関する現状を率直に国民の安全を守る総責任者である総理が語らなければならない。四十年前の我々が参加いたしました戦争中、敗戦が重なりますと間違った応戦の対策をしながら、国民にそのときの軍部がいわばうそをついて、そして国民がこれらに対する信頼を失っていった過程は、総理はそのときにおられたんだから十分知っておられると思う。その意味合いで、真実を国民にこの場所で語っていただきたいという意味でこれから質問をいたしたいと思います。  国民は、一体我が国がどういうときに戦争状態になるのだろうと心配をいたしておる。いろいろな言葉や政策、方針等がございますが、一体我が国はどういうときにどういう形の戦争に直面するんだろうか、このことを国民に十分に説明するならば、国民はそれならば我々は一緒に生きていきたいから自分たちの税金の中からこれこれの金を使ってもらってもよろしい、こういう決心をしていただけるはずだと私は思う。総理は一体、我が国がどういうときにどういう形の戦争に巻き込まれるおそれがあると御判断されているか、お答え願いたい。
  301. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今の日本防衛外交戦略全般を見まして、国民の皆様方は総合的に見て、特に外交戦略等々を通じまして日本の安全についてはまあまあ安全でいけるというお考えを持っていただいているのではないかと思います。しかし、我々為政者の方といたしましては、防衛力の整備等につきましても客観的な情勢等を見ますとまだまだ足らざるものがありまして、とりあえず「防衛計画の大綱」水準に到達するという目標を立てて営々と努力してきておるところであります。だがしかし、防衛計画とか防衛力というものはそれだけで機能するものではないので、内にあっては国民の合意、支援、外にあっては総合的な外交戦略等々に支えられて初めてそれは有効に機能し得るものである。そういう意味において、総合的安全保障政策という形で推進していきたいと思っております。  それから、現在の情勢において、まず大体の予想として、ある国が突如日本に侵略して上陸してくるという可能性は非常に少ないと思っておるのです。もし日本が戦争に巻き込まれるようなことがあるとすれば、世界的にある重要な場所場所等において重大な紛争が起きて、それがだんだんに波及をして、そして次第次第に、ある国々あるいは国が日本に対してそういう軍事行動を起こす必要を感ずるとか誘惑を感ずるとか、そういうような形で波及的に次第に起きてくる、いわゆる同時多発とよく言われますが、同時多発ということはないので、ある一カ所に起きたことが次第次第に波及して広がっていく、そういう形の危険性が非常に多い。そういう意味において、ややもすればある国が突如日本に来るであろうというような想定あるいは考えが国民や当局者の中にあるとすれば、それは重大な間違いであって、むしろ総合戦略的にこれは考えていかなければならぬのじゃないか、立体的に、縦深的に物は出てくる、そういうふうに考えた方がいい、そう思っております。
  302. 永末英一

    永末委員 ある日突然我々が攻撃の対象になることはない、世界の我が国を除くどこかで重大な紛争が起こり、それがだんだん波及してくる、こういうことでございますが、波及をしてくるのは我が国のどの辺へ来るのですか。
  303. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それはどこへ上がるとかどうして来るとかということは、今直接は申し上げられない。それは必ずしもそういう確実性を持った話じゃありませんし、またそういうことを申し上げることは逆に不安を起こす原因にもなります。そういう不確実な話で、こういう国会などにおいて論議すべき問題ではありませんが、一般的想定として、状況判断としてそういう判断を持っているということを申し上げるわけであります。
  304. 永末英一

    永末委員 半世紀前の戦争も、どこから戦争を起こすかということは日米互いに自分のシナリオを持っておった。  今、我が国の国民が町の本屋へ行きますと、いろいろな予想戦記物なるものの本があります。これはつまりフィクションである。しかし、国民は肌で、どういう場合に我々が危険にさらされるか、その危険にさらされると予測せられる場所について、我が国の自衛隊のこの外敵に対する排除力は十分であるかということを心配しておる。しかも我々は核戦略下に生きておる。我が国は核兵器は持たないということをきちんと国民的合意の上に自衛隊を持っておるのでございまして、その意味合いで、言うことはできなくても、一体責任ある政府としては戦争のシナリオというものはお持ちになっておるはずである。シナリオはお持ちですか。
  305. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  自衛隊におきましては、何年毎年、年度の防衛計画というものを内部で検討をしておるということは事実でございます。しかしながら、これは非常に高度の機密を要するものでございますので、その内容を具体的に申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  306. 永末英一

    永末委員 国民に国を守る気概を持てと言われるのなら、やはり起こり得ることの様相は国民にも知らさなければならぬと私は思います。  ただ、一つ伺っておきたいのは、日本を離れたところで起こった事件、これが波及してきて我々が戦争に巻き込まれるおそれがあるとの御判断でございますが、それは我々の同盟国であるアメリカがその他国との戦闘の相手方であるはずでございまして、その場合にアメリカが、我々に波及してきた場合に、日米安保条約によって我々を助ける、我々の国とアメリカとの指針には、至るところでアメリカの援助を頼むと書いてございますが、そういう点についての援助力というものは十分頼めるのですか。
  307. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今の世界的な紛争という場合に、アメリカがすぐ当事者になるとは限りません。すぐアメリカが交戦国になるというようなことは速断であると私は思います。  それから、いざという場合に、ではアメリカ日本を救援するかということでありますが、アメリカはあらゆる手段をもって日本を救援すると確信しております。
  308. 永末英一

    永末委員 アメリカが関与しないような、地球上の我が国から遠いところの紛争が我々の国に波及することはありませんよ、そんなことは。ほかの経済的な物質、資源の運搬とか何とかで関係することはございましょうが、戦争というようなものが波及するのは、やはり我々の同盟国であるアメリカがその一方の当事者である場合に初めて波及してくると私は思います。  それから、援助してくれると決まっているように思われる、確信は結構でありますけれども、アメリカがそういう対応を予測地域にしている場合に我が国には来るか来ないかということは、自衛隊が自衛力を整備する上について極めて重要なことである。したがって、弾薬の備蓄であるとかあるいはまたアメリカの増援部隊が使うべき武器の集積であるとかということについては、事前にテーブルで相談するのだけではなくて、はっきりと実行行為としてやっておかねばならぬことであります。しかし、その点はNATOアメリカとの関係と我が国とアメリカとの関係を比べますと全くなされていない。それでも援助に来ますか。
  309. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それはアメリカ責任者、例えば国防長官にしても大統領にしても、有事の際には日本を全力をもって援助する、応援する、そう言明しておるし、それは実行すると確信しております。
  310. 永末英一

    永末委員 最近あるアメリカ責任者に会いましたときに、なぜあなた方は、西ドイツには事前武器集積の場所を五つも六つも、それからノルウェーにもちゃんと置いておる、我が国も皆があなた方が来援してくれることを望み、それまでは自衛隊は頑張る、こう言っておるのだけれども、どこにもその事前集積がないではないか、どうしてかと聞いたところ、それは日本政府がお望みにならないからである、こういう答弁でございました。御見解を承りたい。
  311. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  私どもといたしましては、アメリカ日本において事前集積の計画を持っているという話は聞いておりませんので、ただいまのお話につきましては、私どもがどうのこうのということではなくて、アメリカ政府の方針として現在NATOを中心にそれをやっておるというふうに理解をいたしておるわけでございます。
  312. 永末英一

    永末委員 大きな軍隊が援助してくれることを望むならば、援助しやすいように準備をしていくことが必要である。アメリカは聞いてないから何も言わないのだったら、何も起こりはしませんよ。我々が望むならば、そのことの我々の意思を伝え――ヨーロッパでなしておることをしなくても、アメリカはやってくれるでしょうか、自衛隊が交戦状態に入っているときにアメリカは船でゆっくり来れるのか、飛行機を持っていったときに飛行機だけでその大きな部隊が使える武器を持ってこれるのか、私がシナリオを示せというのはそのことなんです。口ではあなたは、自信がある、こうおっしゃっても、その準備をしていない。ヨーロッパの連中がその準備をなさしめているそのことすらしていなくて、いかに自信があっても実行できないではないかということを心配しておる。総理大臣、お答え願いたい。
  313. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 限定小規模の侵略に対応するそういう場合の彼我の協力、応援等については話し合いはもう済んでおりまして、いざというときにアメリカは即応し得る態勢にある、前から申し上げますように限定小規模の侵略に対するあり方であります。日本アメリカとの安保条約によりまして施設等提供しておりまして、そういうものは全部活用される、そういうことになるわけであります。
  314. 永末英一

    永末委員 アメリカに現在我々が貸与している施設には、そのような増援軍が十分に使用し得る装備が蓄積してあると私は聞いておりません。もしあればまた後で伺います。  さて、今二つの言葉が出ました。「防衛計画大綱」の水準に早く到達したいということと、そして我が自衛隊は限定かつ小規模の侵略に対抗するのだ。これは後で聞きますが、中曽根総理防衛庁長官のときに、専守防衛ということが我が自衛隊の本旨であるということをまとめて、それ以来専守防衛という原理が我が自衛隊が進んでいくいわば旗印となっております。我が党はそれに先んじて結党以来、自衛隊は一体なぜ持っているのかということが極めて不分明な時代に、自衛隊が保有せられている基本は専守防御であるということを主張してまいりました。あなたが防衛庁長官のときに専守防衛と言われた。私どもが専守防衛というのは、自衛隊の、あなたがあの防衛白書に書かれたとおりまさに本旨であって、これがいろいろなところへ動くものではないと考えております。しかし、この本旨に照らしつつ、例えば他国に攻撃を専らやるような兵器は持たない、ICBM、これは核兵器にも関係ございますがあるいは長距離爆撃機、長距離爆撃機は持たないということのゆえにF4導入のときに給油装置やあるいは爆撃装置を現実の政府の政策としてお外しになったことがあります。さらにはまた、専ら攻撃用の航空母艦、これはつくらない、こういう政策を歴代の自民党政府はやる、そういう意味合いで専守防衛は生きておると思います。しかし、これはあくまでもそういう政治概念であって、これが自衛隊運営の末端にまで使われたのではえらいことが起こる。  一つ例を申し上げますと、例えば稚内に対して空襲がかかってきた場合に、これを要撃するために我が方の要撃機が舞い上がる、相手方は、空中戦闘の性格もあって、もし相手方の領域内に態勢を立て直すために引き返していっても、相手の領空に専守防衛上入ることはできないと考えている指揮官がおるわけであります。これは空想でも何でもない。現実に指揮の責任をとった人、元空幕長、元統幕議長がそういうことを国民に言っておる。これを知った国民としては一体そんなものだろうか、専守防衛というのは。私はこの機会に専守防衛というのはどういうものだということを総理の口から国民にお伝え願いたいと思います。
  315. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 専守防衛というのは国防の基本原則の根底をなしておる大事な一つの原則でございまして、防衛に関する基本姿勢を意味します。したがって、現実のコンバットという場合には防衛を全うするためにはある程度の攻撃も必要である。もっとも、それは侵略的な、外国に対する先制的なそういうことを意味しているのではありません。防御を全うするためには攻撃の場合もあり得る、そういうことは当然あり得るわけです。しかし、今例を挙げての、土地の名前を挙げての攻撃、防御に関する想定をおやりになりましたが、これは日本の国策から見まして、その点に言及することは余り適当ではない。我々の防衛というものは専守防衛ということでありまして、したがって我が領域、領空、領海、領土、それと公海、この面において行うというのが原則であると思っております。それ以上のことは米軍に依存する。これがやりと盾の理論になって防衛一つの基本姿勢になっておるわけです。
  316. 永末英一

    永末委員 我が国の総理大臣が具体的な所の名前を前提にしての質問にはお答えにならぬということは、それはそれでよろしゅうございます。しかし、今まで領土、領空、公海、公海の上の公空、これでは我々は最小限の自衛行為をやるけれども、そこでしまいのように聞こえるわけだな。しかし、あなたが一般的な表現としてお使いになったように、自分の生存を全うするために、相手方を排除するために戦っているその戦闘がよその領空に及ぶときには戦闘を停止するのか。停止しなければならぬように専守防衛という言葉で国民に伝えられておるから、私は心配しておるのであります。今までは領空と公空、公海、領海どまり。そんなものはコンバットですか、戦闘ですか。そこのところだけ伺いたい。抽象的な言葉で結構。
  317. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 専守防衛という思想からいたしましても、我が国の領域及び公海、公空上において日本防衛を行う。それ以上のことは米軍に依存する。これが我が国の基本姿勢であります。
  318. 永末英一

    永末委員 今までの答弁はそのとおりで、それをあなたはお繰り返しになっておるわけです。私が言っているのは、我が自衛隊の航空機が侵略してきた相手方の航空機と戦闘をやっておる、それが専守防衛というあなたがつくられた言葉のゆえに戦闘途中で停止しなければならぬというようなことを本当に、航空自衛隊を指揮しあるいは航空機に乗って戦闘に従事する人が信じているとしたらとんでもないことだなと思いますね。もう一度お答え願いたい。
  319. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今申し上げたような原則を遵守するということであります。それ以上のことはそのときの情勢にもよりますけれども、やはり原則を遵守するという基本姿勢を持っておるべきであると思います。
  320. 永末英一

    永末委員 この点は先ほど申し上げましたように、防衛の問題というのは具体的なんですね。具体的な問題、各国それぞれ違う。我々は我々の具体的な問題を抱えておる。しかし、具体的な問題に足を踏み込めば国際的な紛糾を生ずるというので触れたくないという気持ちは十分わかりますよ。しかし、我が方の自衛隊の行動する基本にかかわる点はやはりきちんと整えてやっていかねばならぬ、国会の答弁ではなくて生き死にの問題がそこにかかってくるわけであって、日本防衛というものの性格がそこで示される、そういう意味合いで私は御検討願っておきたいと思います。  さて、昭和四十四年に我が衆議院は宇宙の開発利用に関する決議を行いました。この決議は先ほど同僚議員が触れましたが、その提案者の中には、現在我が党の委員長でございます佐々木良作議員もまた提案者でございます。そこで、この決議案が提出されました当時の提案者の気持ちというものをいろいろ伺ったわけでございまして、私もこれに賛成をした一員でございますが、そういう関係でフリートサットの問題を考えてまいりました。この前、大内君がこれについて質疑をしたのでございますが、十分な時間がとれないままに終わりました。首相はかつて科学技術庁長官であられたときに原子力利用に関する汎用論というのを示された。現在、日本の潜水艦は普通の電池エンジンでやっておる。ところが、相手方と言うとぐあいが悪いかどうか知りませんが、電気エンジンの潜水艦が原子力エンジンを備えた潜水艦に対応しなければならぬ。極めて能力が劣勢でございまして、待っておるところへ来れば対応できるかもしれぬが、追っかけるなんということは速度の関係で全く不可能であるということを知りつつ電気をエネルギーにするエンジンで働いておるわけでございまして、大体、兵器というものはそれが一般化してからそれぞれの国が兵器に採用するのではなくて、その性能が極めてすぐれておるならば一般化しないうちに兵器に採用せられる例の方が一般ですな。そういう意味合いで汎用論というのは無難でございましょう。しかし、汎用論の理論と称するなら、その背景には自衛隊の行動は全部軍事だという思想がありますな。あなたは自衛隊の行動を全部軍事行動だと思いますか。
  321. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは災害救助もありますしいろいろなこともありますから、必ずしも全部軍事とは限らないと思います。軍事という言葉が自衛隊に適用するかな、私は防衛行動、そういうことを言っております。
  322. 永末英一

    永末委員 いわゆる宇宙決議についてどう読むかということで質疑がございましたときに、質疑者の議員は、平和の目的というのは非脅威と非軍事の二つの意味が一般にある、自分は非軍事だと思うがどうだ、こう問いをしたところ、それに答えた当時の自民党の大臣が、さようでございます、非軍事でございますとやった。私はここに問題があるんじゃなかろうかと思う。あなたが注意深く言われたように、自衛隊の行動は全部軍事ではない。もし平和が非軍事だとする、それから自衛隊の行動が軍事だとすると、自衛隊のやっていることは全部非平和になりますね、反平和になる。そんなばかなことはない。何も自衛隊法三条があるから自衛隊の行動が全部平和目的というのは、まさに概念上はみ出す部分があろうと私は思います。だから防衛行動と言われておる。したがって、平和と非軍事に置いておるところにやはり概念上きちんといってないところが残っておるから、それをカバーするために汎用論と言われたが、防衛庁長官の今回の見解でも汎用性のない衛星の利用は制約される――制約なんというのは何がどうなっておるのですか、防衛庁長官
  323. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 制約されるというのは、一般的に自衛隊が自由にその機能を使うということは制約される、使用がより否定的にとらえられるべきであるという意味だと思っております。
  324. 永末英一

    永末委員 それはなぜですか。自衛隊がそういうものを使ったら、それは非平和的であるからですか。
  325. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 私たちは、一般的に使われている衛星の機能を自衛隊が使った場合もこれは平和の目的に反するというふうには言えないのではないか、そこは平和の目的という範囲内で許してもらえるのではないか、こう解釈いたしております。
  326. 永末英一

    永末委員 つまり、自衛隊が宇宙衛星を利用することは、そのこと自体平和の目的に反するとあなたは思っているからだ。たまたまその衛星が一般的に使われておる、つまり私人、民間、いわゆる民間も使っておるから許されると思う、こういうことです。  総理大臣、自衛隊はすべての行動が反平和的ですか。そんなことないでしょう。災害出動に出るからとか、だから軍事じゃないということではなくて、自衛隊は、あなたがつくられた言葉に従えば、専守防衛のためにおれたちは持っておるんだ、だから専守防衛のために自衛隊が行動することは、日本民族のために果たす高貴な任務を果たしておるんだ、その自信を与えなければいかぬじゃないですか。その意味合いで私は、あなたがせっかく使って、歴代政府もそれによっていろいろ判断しておる専守防衛という概念を、この我々国会がつくりました決議、これを読む場合にも照らし合わせてみたらどうです。専守防衛立場に立って自衛隊が衛星を使い、原子力エネルギーを使う場合に、専守防衛のまさに理念、本旨に反するかどうか、この辺で国民に説明をしていく、これの方が私は筋道だと思う。汎用論なんてなことをやっていたら、先ほど申し上げましたように、そんなおかしいものだから、私は許されるなんというようなことを言うべきことではないと思いますよね。堂々と使ったらいい。専守防衛の概念に立った場合に、専守防衛というのは、要するに憲法のもと自衛隊を認めている立場が専守防衛ですな。普通の軍隊ならそんなことは違いますね。我々がこの憲法のもとに自衛隊を持っておるということが、自衛隊の本旨として専守防衛という言葉をあなたが考え出した。その立場で、憲法のもとにおいて平和の目的に限り宇宙を開発利用しよう、こういうこの決議を見る、そういうことはできませんか。
  327. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 恐らく永末さんや大内さんの御議論は、日本防衛の趣旨、それからシビリアンコントロールとかあるいは攻撃的兵器を持たないとか、いわゆる専守防衛あるいは非核三原則、そういう日本の総合的防衛政策、特に今の憲法の枠内において行うというさまざまなチェック機能が働いて、そして攻撃性や侵略性を持たないような歯どめが十分できておる。またそういうものでなければならぬ。そういうもとにおける防衛行動というものは、必ずしも外国流の軍事行動あるいは軍という概念とは違う。したがって、それは防衛行動に徹しておって平和に反しない、そういう御所論であるだろうと思うのです。私は大内さんのお話をこの間聞いておって、これも一つの見識だな、したがってこれはよく勉強する必要がある、そういうことも申し上げたのでございます。永末さんもそういうお考えでおっしゃっているだろうと思うのでありますが、政府としては、今までのいろいろな解釈やら変遷やら国会における御論議等も踏まえまして今のような解釈をとっておる、そういうことであります。
  328. 永末英一

    永末委員 戦後政治の総決算というのが、あなたの首相としての大きな施策方針の中心にございますね。戦後政治の中で国会における防衛論議が、ある時代には条約の解釈論に終始したようなことがあります。それから、先ほど触れましたけれども、専守防衛などということを言ったために、アメリカから見ると、せっかく海軍の開発した攻撃機の給油装置を外したり爆撃装置を外したり、日本という国は変な国だなと思われたこともあります。したがって、内閣はずっと自民党内閣が続いておるんだから、今まで言うたことを変えるとえらいことだというので今のような議論ですが、かばい得ないところがあるから防衛庁長官が苦しいことを言っているんだな、許されると思いますと。許されると思いますじゃないですよ。堂々と使う。そういう国民にわかる素直な理論を考えるのが内閣の務めだと僕は思う。今の海軍の艦艇が距離を開いて走ったりするときに、宇宙衛星を使わなければ通信は十分にできない。できないから、それは使わざるを得ない。そういう実情をきちんと考えた場合に、我々のこの四十四年につくった宇宙決議との関係をどう読むか、素直にやはり自衛隊の本旨に照らして考えるべきだと思います。  私どもは、この宇宙決議をやりましたときには、我が国が宇宙開発のロケットをこれから開発していく場合、その開発利用については、宇宙を戦争の用に供したりあるいはまた宇宙の静ひつを混乱させたり、他国を侵略する拠点にするようなことはやめようではないか、我々の宇宙開発の基本はそんなことではないんだ、平和の目的だ、こういうことでつくったと、私は佐々木委員長に伺いました。現在問題となっているアメリカの海軍が開発した、また所有している衛星についての利用、そういう状況を考えたわけではない。したがって、この決議のカバーする範囲、読み方等は、各党で我々は相談をいたします。私は、政府は、先ほどのように国民に、なぜ必要なんだ、なぜこれが使われねばならないかということを率直に訴えられる必要がある、そのように考えます。  さてこのときに、戦後政治の決算に関連いたしまして、中曽根総理は若いときに、昭和十八年四月、高雄建築部から高雄施設部に約一年半ほど御勤務になりました。そのときに、施設部でございますので、台湾で生まれたいわゆる台湾人と称せられる方があなたの部下におり、あるいはまた、戦争の末期でございますので、これらの人々は何十万と南方の戦線に行って働き、そして命を失い、傷ついて帰ってまいりました。あなたの友人が書きましたある文章によりますと、この「台湾特別志願兵や高砂義勇隊のなかには無言の帰還をした者が何百人とあった。葬儀には、高雄海軍施設部長が葬儀管理官を務めた。全島から集まった遺族の宿舎に、施設部長中曽根康弘大尉が弔問に巡った。」云々と書いてございます。まさにあなたは現場におられて、台湾の人々がいかにあのときの我が国に対して命をささげて戦ったかということの実情をよく御存じでございます。  ところが、我が国が敗戦いたしまして以来、台湾の地位は変わりました。そして、どうなっているかといいますと、昭和五十年の外務委員会で政府が明らかにしたところでも、遺族がわかっておる者の中でも、三万以上おるのでありますが、遺骨埋葬料はその当時の金で千六百三十四万三千四十六円、そしてその件数は一万四千九十三件、東京法務局に供託しておる。死亡された人がその当時でも三万三百余名、現在は三万二千名を数えられております。したがって、これらの人々に対する遺族扶助料、埋葬料が未払いになっておる。当時の外務大臣宮澤喜一君は、これは政府の債務でございます、支払わなければならぬと考えておるものであります、こう言っておりますが、当時既に日本と中華人民共和国政府との国交が回復をいたしまして、そして中華民国政府との国交が絶たれたために支払い方法がないというので、今日に立ち至っている。ところが、ことしの予算でこの件に関する検討費として五百万円が組まれました。私はまことに、中曽根総理、竹下大蔵大臣、結構なことやと思っております。これはやはり実施するつもりで検討なさるんですね。
  329. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いわゆる台湾人元日本兵問題については、六十年度予算案において総理府に五百万円が計上されております。この問題については六十年度予算の成立後、検討の場を設けることとなろうと思いますが、検討の方法、内容等については関係各省に十分相談させて、詰めさせてまいる所存でおります。
  330. 永末英一

    永末委員 実施する方向で十分御検討なさいますね。内容等はわかりません、これから御検討になるんだから。
  331. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この内容等については十分検討させる、そういうことでございます。
  332. 永末英一

    永末委員 あなたが生き証人ですから、よろしく頼みます。  さて、先ほど中曽根総理は、この防衛計画大綱の水準に到達するのを一生懸命やっているんだ、こういうことでございますが、防衛計画大綱の水準というのは一体何ですか。
  333. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 「防衛計画の大綱」の水準と申しますのは、量的な面と質的な面と両面があろうかと思います。  まず第一の量的な面で申し上げれば、大綱の別表に掲げられているものがその水準でございますし、質的な面で申し上げますれば、これは大綱の本文の後の方に出てきておるわけでございますが、常に諸外国の科学技術の動向に配慮したものでなければならないということでございまして、この点についても従来から考えながら防衛力の整備を進めてきているところでございます。
  334. 永末英一

    永末委員 別表というのは、その下に量は書いてございますが、注がございまして、「この表は、この大綱策定時において現有し、又は取得を予定している装備体系を前提とする。」ものであると、明確に書いてあるわけですね。ところが先日、我が吉田之久君の質問に答えて総理は、大綱には弾力性がある、一つは質の弾力性、次は装備体系の弾力性、こういうことを言われたのです。そうすると、これを聞いておりますと、我々は水準というと、大体あるきちんとした量があると思う。例えば、何とか大学に対する合格水準というと、ああそうか、あそこは八十三点要るなと、こう皆思いますね。したがって、今までは水準というと、どこにあるかというと別表に書いてある、こういうことでございました。その別表というのは、昭和五十一年のときに、現に保有し、またはそのときに予定している装備体系。わかりますよ、これは。ところが、それから十年。どんどんと内容が変わってきておりますね。そうすると、この水準を達成しようと言うが、何が水準がわからない。お答え願いたい。
  335. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のように、大綱の別表の上のところに、「この表は、この大綱策定時において現有し、又は取得を予定している装備体系を前提とする。」というふうに書いてあるわけでございまして、その中に、陸海空の自衛隊についての定数でありますとか、基幹部隊あるいは主要装備の数というようなものを掲記をしておるわけでございます。先ほど申し上げましたように、こういった量的な規模という枠組みの中におきまして、質的な面で諸外国の軍事技術の動向等に配慮しながらやっていくということももちろん事実でございまして、そういう観点から、従来F15なりP3Cなりのそういった装備の質的な向上が進められてきたというふうに考えているわけでございます。  しからば、こういった注の意味が具体的にどういうことになるかということでございますが、そういった技術水準の大幅な上昇といいますか向上というようなことが出てまいりますと、これは現在の装備体系、ここに示されておりますような部隊の編成なり装備の数というもので、もし仮にそのままではやっていけないというようなことが将来出てきた場合には、そういう場合にはこういうものを弾力的に考えていくこともあり得るという可能性をここで注記をしていることでございまして、これは大綱をつくった当時からそういうふうな考え方でこの注をつけていた経緯があるわけでございます。  ただ、現在の時点において、しからばそういう大変急激な技術水準の向上に伴うこの別表の枠にはみ出すようなものを具体的に考えているかということになりますと、現在特にそれが今あるわけではございませんが、この別表の考え方の理論といたしましては、ただいま申し上げたようなことになっていると思います。
  336. 永末英一

    永末委員 この注を読んで、「大綱策定時において現有し、又は取得を予定している装備体系を前提とする。」という日本語を読んで、これは弾力的に幾らでも変えてよろしいと読めますか。そんなのを詭弁と言うのだ。防衛庁長官、そんなふうに読むの。何か響いてあっても、いやこれは何ぼ変えてもよろしいんだと読めますか、これが。
  337. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 その点、過去の経緯それから当時の立案者等の人たちお話を聞き、またその後の解釈運用の仕方について聞いてみますと、ずっとそれ以来、ただいま防衛局長が答弁いたしたような方向で考え、また運用してきていたということでございます。
  338. 永末英一

    永末委員 これは先ほどの汎用論と似たようなもので、基盤防衛力構想というのがおかしいんだ。そんなもの、構想なんだ。それを、四次防が最終まで達成できなかった、一割以上達成できなかったために、あのときの物価変動の激しさにおののいた防衛庁が、何かやらなくちゃならぬというので、その当時保有している、また予定している、現に計画に載っているものを見ながら数字をはじいて数量を出したんだ。だからこそ、あの計画大綱には、大体その水準に達していると思うかという一行があるではありませんか。ところが、やってみたら、消耗は来る、そして現有の数字すら下がってくる。航空機なんかどんどん下がってきていますね。そうなってきておる。十年たってしまった。これでは国民にわからない。だから、あなた方はGNP一%をめどとするということをつくらざるを得なかった。大綱はつくってみたけれども、よく見ると、これでは国民がわからなくなるだろう。もしこれをどんどん中身を変えていくとすると、国民は、一体自民党政府というのは防衛力のめどをこれでつけたと言うが、ついていないではないか。だから、GNPの一%というものを持ち出して、これがめどでございますということを示したのでしょう。その瞬間に、この大綱の水準というものはないんですよ。ないんです。だから、それを追求しつつやってきたが、いまだに達成できない。いつまでに達成するつもりですか。
  339. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 これは総理大臣もこの予算委員会でお答えになりましたように、歴代の内閣ずっと、できるだけ早く達成したいということでございまして、そして具体的には今度の五九中業で何とか達成を期したいということで努力いたしております。
  340. 永末英一

    永末委員 五九中業で、陸の自衛官定数十八万人を全部充員しますか。
  341. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 陸上自衛官の定数は法律的に十八万人でございますし、大綱の別表も十八万人ということになっておるわけでございますが、これの充足をどういうふうに考えるかという点は一つ問題がございます。  それは、有事におきましてはこれを充足をしていく必要がございますので、有事に備える平時においては、できるだけ高い充足を準備しておくことが望ましいことはもちろん当然でございます。しかしながら、平時におきまして、部隊の訓練なり運営に支障を生じない限度におきましてある程度充足を下げておくというようなことも、これは全体の経費のバランスということから見てあり得ることでございます。その辺は、どのくらいの充足率に設定をしていくかということは、今後さらに慎重に五九中業作成の過程で詰めてまいりたいと思っております。
  342. 永末英一

    永末委員 十八万人とは書いてあるけれども、そんなことは十分やらぬでもいいんだと考えているわけですな。そうすると、そのほかの数字も全部それに達しなくてもいい数字である、このように解釈してよろしいね。
  343. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 「防衛計画の大綱」の別表の規模の中で、特に現状と比べてみますと、海上自衛隊の作戦用航空機が約二百二十機の基準に対しまして、約百四十機ぐらいが六十年度の完成時の見込みでございますし、航空自衛隊の作戦用航空機も約四百三十機というのが、六十年度完成時には約三百六十機にしかまだなっていないということでございますので、私どもとしてはこういった水準を大綱の別表の水準に到達すべく努力をする必要があると思っております。具体的にどういうふうに全体をまとめるかというのは、これからの作業の過程の中で判断をいたすことになろうかと思います。
  344. 永末英一

    永末委員 防衛局長、もう出んといて。  防衛庁長官、つまり要するに、字は書いてあるがどうでもいいんだという答弁ですよ、これは。達したいと思っている。十八万人の方は達したくないと思っている。達したいと思っているものと達したくないものが一緒に書いてある。要するに、簡単なる日本語で表現すればどうでもいい、こういうことになる。だから、こういう大級というのは書き改められねばならぬときに来ているのと違いますか。国民はこれを見た場合に、ここに書いてある中身の、兵器はどういうものを持つのか、装備はどういうものを持つのかわからない。これを五十一年に決めて、すぐに五十二年にはP3C取得を閣議決定する、F15取得を閣議決定する、五十四年にはE2C取得を閣議決定する、CIWS、艦船に積むやつ、これも五十四年度から予算化する、短SAMは五十六年度予算化する、五十一年にわからないものがどんどん出てくるじゃないですか。これからもわからない。だから、したがってこれはめどにならない。国民が見た場合に、この計画大綱の別表を見てどういうような自衛隊を政府はつくろうとしているかわからぬのです。わかりますか。国民はわかりませんよ、これは。中身は今まで十年間変わってきたんだから、これからもどう変わるかはこの別表ではわからぬ。わからなければ、そういうものをあたかも計画のごとく国民に示しておることはうそではありませんか。うその紙を示しているんじゃありませんか。どうですか。
  345. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 五九中業の作業はこれからやります。それで、防衛局長が言いましたように、これからどのようにまとめていくか、幾つかの問題点があろうかと思いますが、水準の達成を期するという言葉は、あそこに書いてあります作戦用航空機にしましても艦艇にしましても、あの数字に達成することを期してやっていきたい、こう思っておりますので、その中の質的な向上等につきましてはまたいろいろ御議論もあろうかと思いますし、また、五十二年以来、質的ないろんな意味の努力をしてまいったものでございます。基準になるちゃんとした大綱であると私たちは思っております。
  346. 永末英一

    永末委員 内容の変わるものがちゃんとした基準なんて我々には思えませんね。もっとも、これをそろえて、どんどん変わるんですからね。ところが、この大綱は、総理大臣が先ほど言われた限定かつ小規模な面接の侵略に原則として独力でこれを排除しようとするものである。排除し得るということなんでしょうな。国民の立場から、例えばこっちの方の持つべき内容がちっともはっきりせぬのに、やってくる方の限定かつ小規模というのはわかりませんね。恐らくはこれだけ持っておれば、これに負けるやつが来る、こういう考えですか。
  347. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 この「防衛計画の大綱」に定められております考え方及びそれに附属しております別表に基づき、私たちは防衛力の整備を行って、そしてその完成のレベルに達しましたならば、例えば累次防衛局長が申しておりますように、シーレーン防衛につきましても相当の規模の能力を持つことになるだろうと思いますし、防空能力も持つことになるだろうと思っております。したがいまして、私たちは、この計画及びその別表に従って五九中業ではまずこの完成を目指すということが重要であろうと思っております。
  348. 永末英一

    永末委員 シーレーンなんというような発想は五十一年にはなかった。したがって、その大綱にあるわけないじゃないですか。一千海里なんて言ったのは鈴木総理大臣のときですよ。そんないいかげんなことを言ってはだめだ。  総理大臣、大体お聞き及びのとおり、これはもう亡きがらなんですよ。やはり国民にわかる計画をお立てになるときじゃないですか。どうですか。
  349. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 「防衛計画の大綱」は、当時、基盤防衛力という構想のもとに一つの枠が組み立てられまして、そして十三個師団とか、艦艇は幾つ、航空機は四百三十機とか、そういうふうに一応の枠がつくられたが、その中身のF4からF15にするか、それは時代の進展に応じ、世界の科学技術の進歩等に応じて弾力的に更改し得るものである。さらに、いつも古い兵器をそのまま持っていていいというものではないわけです。そういう意味において、その達成が十年なら十年の目標で仮にやったとしても、その間に兵器の進歩がどんどん出てくれば、それに応じて質的転換も行い得る。そういう発想のもとにそれはつくられておるわけで、それに従ってF15あるいはP3Cというものが逐次採用されてきておるのです。今後もそういう発想のもとにいきますし、あの枠内においてはさらに高度の科学技術性を持った、機動力を持ったものに整備していく、そういうことは可能であると考えております。
  350. 永末英一

    永末委員 基盤防衛力構想をなお持ってものを考えていくと、うそが出てくるんですね。例えばもっと重要な事態が起こると、円滑にこれに移行するようにするんだ。一遍もやったことないです、何にもしてないです。どないして移行するのか国民にわからない、長期間かかると書いてあるが。しかし、F4からF15になったのは、ソ連がミグ21から23になってきておる、またそれ以後の後継機もつくりつつある、装備も非常に発達してきておる、そういうような事情を勘案しておると私は思っております。具体的な国の名前を出すとあなた、ぐあい悪いそうでありますから。つまり、我々が対抗しなければならない相手方の対応を勘案し、これを排除しようとするならば、それに対抗し得る装備を持たざるを得ない、所要防衛力というものを考えざるを得ないのであって、基盤防衛力構想をしたときとは違って、経済のスピードは大蔵大臣が言っているようにある一定のスピードしかございませんよ。今や防衛計画をちゃんと立て得る、そういうときが来ておるんだ。なお、十年前の経済の動乱期に久保君が四苦八苦して考え基盤防衛構想なんて、どこの国もわからぬようなものにしがみつかぬで、もっと国民にわかりやすくつくってください。いかがですか。
  351. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 御意見として承っておきます。
  352. 永末英一

    永末委員 昭和五十三年に、当時の栗栖統幕議長が、いわゆる防衛出動下令前に侵略を受けたときにどう対処するかで、超法規的な行動をせざるを得ない、こう言ってその職をなげうった事件がございました。その後、防衛庁はこれに対して五十三年以来、この「防衛出動命令の下命前における自衛隊としての任務遂行のための応急的な対処行動のあり方につき、文民統制の原則と組織行動を本旨とする自衛隊の特性等を踏まえて、法的側面を含め、慎重に検討することとしたい。」という方針を出して、そして五十四年、五十五年、六年と三年間国防白書には登載しておりました。同時に問題となりました有事法制は、自今、大村防衛庁長官、その次の長官、二回にわたって中間報告を議会はいただきました。奇襲対処に対しては何にも報告がない。先ほど一番最初総理大臣お話では、ある日突然我が国が攻撃されることはないとおっしゃっている。だから、もう奇襲対処は考えなくていいという方針ですか。
  353. 天野光晴

  354. 永末英一

    永末委員 局長じゃないよ。長官、君の所管だよ。局長、時間ないねん。
  355. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいまの奇襲対処の問題でございますが、自衛隊法は、外部からの武力攻撃のおそれのある段階で防衛出動を命ずることができるということが規定されているなど、基本的には奇襲対処のための法制ができているというふうに私どもは考えておるわけでございます。したがいまして、何よりも実際に奇襲を起こさないというように、いろいろな情報面の強化とか、あるいは抗堪性の向上といったようなことを重点に今やっておるわけでございます。先生も御指摘になりましたように、やはりこれは文民統制の原則と組織行動を本旨といたします自衛隊の特性とを両立させるということの非常に困難な面のある問題でございますので、私どもも慎重に検討をしているところでございます。
  356. 永末英一

    永末委員 総理、これは自衛隊の指揮の問題なんだ。防衛局長の言うことと違いますよ、こんなものは。要するに、ないのが望ましい、奇襲などは。ある日突然来られてはたまらぬ。しかし、偵察衛星は汎用化しなければよう打ち上げぬような内閣じゃないか。情勢がわかりますかね。それから、偵察すら航空自衛隊は専守防衛のために遠慮しなければならぬ、こんなことを言っているのですよ。敵情なんかわかるわけないですよ。そして、我々も奇襲は望みませんが、来たときに、おそれのあるときは防衛出動を下命することができる。防衛出動不令というのは戦争ですよ。そんなことがさっとやれますか。  我々の心配しておるのは、もし我が国が何らかのことで侵略を受けた場合には、その周辺の部隊はこれに対処して対抗せいというぐらいの指揮ができなければ私はだめだと思う。この前ミグ25が来たとき、どうだったですか。自衛隊が行きましたか。一番最初に行ったのは警察ではありませんか。警察がミグ25を巻尺ではかっておるわけだ。何じゃあれは、一体。そういうことだから奇襲対処の必要を我々は言ってきたわけです。ないことを望みますよ。しかし、本当に何かあった場合に間髪を入れずその近辺の自衛隊がこれに対処するという、そういう構えを指揮官としての、総指揮官としてのあなたがそういう環境をつくって初めて国民は自衛隊に対して信任をします。信頼をします。今までだって正当防衛理論や正当行為論で自衛隊の行動を弁解しようとしているが、そうじゃない。どこの国の――よその国は軍隊ですからね、我々は防衛行動だが。自分の領土に外敵が侵入したならばストレートに対処していくのだ。国際法の原則に従って対処させているところもある。法律等をつくっているところもあります。我が自衛隊だけが、ないことを望む、そんなことはかり言ってきているじゃありませんか。それでは信頼しませんよ。総理にお答え願いたい。
  357. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国防の基本原則もあり、それから防衛庁の内部におきましては、防衛出動あるいは侵略のおそれのある場合に関する諸般の措置、あるいは内部の訓令、武器使用に関する一定の規則等々も整備してありまして、それらの既存の法令あるいは訓令の枠内において応用行動は十分できると考えております。
  358. 永末英一

    永末委員 満足いたしません。時間が参りましたが、もう一問お許しを願います。  民間防衛につきまして、ここ七、八年、国防白書は毎年報告をいたしております。その表現は、民間防衛というものは極めて重要な意義を持っておるのだ、だから諸外国はずっとやっておるのだ、それを紹介して、我が国においては民間防衛に関しては見るべきものがない、これを八年間防衛白書に書いてある。昭和四十五年、あなたが防衛庁長官のときにそれを聞いたのですね、私が。スイスの民間防衛のプリントを持って。あなたはこう言った。「まだ日本の周囲にはそれを必要とするほどの顕在的脅威は出ておりません。そういう顕在的脅威がないときに、いたずらにそのことをふれ回ることは無用な論議を起こすし、国民に混乱を起こしますから、自重しておるのであります。」我が国には民間防衛の部局も何も政府にありません。ところがNATO諸国は、一たん有事の場合には混乱が起こる、住民が被害を受ける、だからすべて政府は民間防衛の担当省庁をつくってこれに対処をいたしておる。なければよろしいよ。奇襲がなければよろしいし、戦争はなければよい。しかし、一たんそういう状態になったときの用意を、今、ない平和なときから準備をして、国民に協力を願うのがあなたの責務だと私は思う。お答え願いたい。
  359. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本防衛を全うする上において一番の基本は国民の合意であります。また、国民のみずから守る決意でもあります。そういう意味において、防衛体系の一環に民間防衛というものは非常に重要な役目を果たすべきものであると考えております。遺憾ながらそこまで十分まだ手が回っておりませんが、この間危機管理の問題に絡みましてそういう発言も、構想、発想もいろいろ出てまいっております。政府としても慎重に検討をしてまいりたいと思います。
  360. 天野光晴

    天野委員長 これにて永末君の質疑は終了いたしました。  次に、松本善明君。     〔委員長退席、大西委員長代理着席〕
  361. 松本善明

    ○松本委員 まず、前回の私の質問で留保をしておりましたミスティック・スターとコマンド・エスコートの存在と任務についての答弁を外務省に求めます。
  362. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 委員会の御指示がありましたのでアメリカ側に照会いたしましたところ、松本委員御質問の二つ、ミスティック・スター、コマンド・エスコート、それぞれの内容につきましてアメリカ側から得ました回答は次のとおりでございます。  まず、ミスティック・スターにつきましては、これは米軍の指揮統制システムの一部であり、大統領その他の政府、軍の高官の航空機が飛行する際に、電話、テレタイプによる通信を提供する能力を有するものである。  次に、コマンド・エスコートにつきましては、これは太平洋軍司令官及び太平洋空軍司令官が隷下部隊との間で指揮、統制、通信を行うことを可能にするとともに、太平洋軍の空中指揮所と地上の短波無線通信網とを連結する能力を有するものである。  第三点といたしまして、これらの通信システムは、横田基地内の指揮統制ステーション、英語でグローバル コマンド アンド コントロール システム ステーションという名前がついておるそうでございますが、この横田基地内の指揮統制ステーションによってもサポート、支援されている。  以上でございます。
  363. 松本善明

    ○松本委員 総理、伺いたいのですが、今の外務省北米局長の答弁で、私が前回指摘したとおり、大体そのとおりだということが明らかになったと思います。そして、これまたいわゆる非常に重視をされておりますC3Iシステムである、指揮、統制、通信機構というものであることも明らかだ。前回私が申しましたとおり、これらのシステムは、東京が原爆で壊滅をするというような状態になっても核戦争を空中から指揮をする、そういう機構であります。前回指摘しましたが、アメリカのダニエル・マーフィー国防次官補の証言でもこのことは明らかでありますし、核戦争時に優先的に攻撃されるものだ。こういう危険なものが日本の首都にあるということは、私は到底許さるべきことではないというふうに思います。  総理、まずこれらのシステムの撤去と、それからこれに対する協力を我が国としては拒否すべきであると思いますが、総理の見解を伺いたいと思います。
  364. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは世界的なアメリカの通信系統の一環でありまして、それらがまたある意味においては抑止力に貢献しているとも考えられるのでありまして、非核三原則と抵触するものではございません。したがいまして、今のように撤去を要求する考えはありません。
  365. 松本善明

    ○松本委員 これが抑止力だということになりますと、私は、総理が本委員会でずっと述べておられました抑止力というものの正体が極めて明らかになったというふうに言わざるを得ないと思います。アメリカ抑止が破れたときのことを考えて、そして空中指揮まで考えているわけであります。こういうことになると、日本の首都は崩壊をしてもこの核戦争を遂行する、それを抑止力だということになると、総理の言われている抑止力というものが一体国民の安全を守っているのかどうかという根本問題に触れるということになろうかと思います。  総理、これをそのままにしておいたら、日本の民族が破滅をしてもいい、破滅をして原爆で日本列島が崩壊をするという事態になっても空中で米軍は指揮をする、そういうようなことが日本の国民の安全を守るということをあなた言い切れますか。私は、再度総理の答弁をお聞きしたいと思います。
  366. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういうことを起こさせないためにやっておるのであります。
  367. 松本善明

    ○松本委員 起こさせないためにやっているといっても、アメリカはちゃんと抑止の破れたときを考えて空中指揮をやっているのです。この間、国防報告ではっきり申し上げたでしょう。私は、総理のそのような態度では絶対に国民の安全は守れない、抗議をすると同時に、あくまで撤去を要求して、私の質問は終わります。
  368. 大西正男

    ○大西委員長代理 次に、東中光雄君。
  369. 東中光雄

    東中委員 最初に、総理に、一昨日の岡崎君の質問に対する総理の答弁でありますが、日本列島が侵略されて敵が日本に上陸しているとか、日本が爆撃されているとか、そういう非常の事態という場合、日本列島がそういう状態にあるという場合には、他にどうしても手段がないというような場合に米軍が核を使うというようなことまで日本側が排除をする、そういう立場にはない、こう言われました。結局、爆撃され上陸される、これはいわゆる有事になったということですね。そういう有事のときに米軍が、日米共同作戦をやっている、そのうちの米軍が他にどうしても手段がないということになればもう核兵器を一方的に使う、それに対して日本側はそれを了承していく、こういう体制がこの安保条約の体制なんだということを言われたことになるのですが、自衛権の発動の三要件がございますね。侵略が現実にあること、そしてそれ以外に方法がないという状態で、そして最小限度の範囲にとどめる武力行使ができるんだということでありますけれども、この論でいきますと、安保条約の体制というのは日米共同作戦、そしてその中で米軍は核攻撃を一方的にやっていく。核を使用するという場合に、他にどうしても手段がないというわけですから、侵略しているという、戦場になっている敵に対する、要するに日本の領域内における敵に対する核攻撃、公海における核攻撃、そして相手国の根拠地に対する核攻撃、挙げればそういう三つしかないし、三つを全部日本は排除するという立場にない、全部認めていくということになってしまうのですが、総理はそういう見解を安保条約の解釈として論理的にそういうものだと今もなお言われるわけですか。
  370. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この前申し上げたとおりでありまして、日本が侵略されているという状態のもとに、例えば敵のミサイルが日本本土に降ってくるというような場合に、その基地をやるとか、あるいは爆撃機の基地をやるとか、あるいは砲撃をしている艦艇をやるとか、要するに害を与えているものについて必要最小限度のことをやる、そういう意味であります。
  371. 東中光雄

    東中委員 米軍の核使用の相手は、これは日本に上陸してきている敵の、攻撃してきているその部隊に対する使用も、それは米軍が勝手にやるということですね。
  372. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは、私はそのときの情勢で大局的に判断をすべきものがあります、そう言っているのであって、我が国の民衆に対して、あるいは我が国の都市に対して被害を及ぼすようなことは、これは避けるのは当たり前であって、そういう侵略をやっている基本的な主力をたたく、そういうような意味が込められておるわけであります。
  373. 東中光雄

    東中委員 それは、安保条約の解釈の論理としては、あなたは無制限に核兵器の使用を――米軍の核兵器の使用に対して排除するという立場にない、こう言われているのですから、その点は一つ。それから今言われた、この前も言われておりますけれども、大局的に見ていろいろ日米双方で考える。そうすると、核兵器使用については条約上の論理とは別に事前協議のようなものがあるわけですか。大局的にいろいろ考える、そういう両方で考える、協議をする、そういう場所があるということなんでしょうか。そういうふうにやるのだということですが、そういう協議をする機関なりあるいはそこで日本が主張することなり、そして、主張して、それで日本考えは向こうは受け入れなければいかぬということになるのかならないのか、そういう点についてはどうなんですか。
  374. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本が侵略されているような場合については、共同の作戦協定みたいなものあるいは相談、そういうことはもう当然行われるでしょう。
  375. 東中光雄

    東中委員 そうすると、核兵器の使用についても両方、双方が考えることだ、双方で決定をしていくことだということになるわけですか。そういう制度になっているのですか。
  376. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは、そういう日本が侵略されているというようなときに、共同対処ということが決められておりますから、それを排除する、そういう意味において、日本日本アメリカアメリカ行動する。そのときに連絡調整という問題も出てくる。おのおのの指揮系統に従ってそういう打ち合わせというものは行われることは十分あり得ることであります。
  377. 東中光雄

    東中委員 十分あり得るけれども、結局は米軍が核を使うというようなことまで日本側は排除するという立場にないのでしょう。使うと言うたら、それは使うなということを言うような立場にないのだ、あなたはそういうふうにこの間見解を言われたから、だからこれは大変なことだ。核安保体制アメリカが決定的に核戦争に入っていく、日本はそこへ巻き込まれていく、どういうことを言われたわけでありますから、非常に重要だと思っているのですが、米軍が核を使うというようなことまで日本側が排除する、そういう立場にはないのだと言われているのですから、それでまた協議をするのだ、協議をするといったって、そういう立場にないのだから、従うか従わないか全く米軍の自由、こういうことになるわけですね。
  378. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それはたしか公海における話であったと思いますね。そういう意味におきまして、日本が侵略されて共同対処しているという場において、その場における話のことでありまして、先ほど申し上げたとおりであります。
  379. 東中光雄

    東中委員 非常に危険な、まさに核安保体制のような、そういう体制になっているということを総理自身が認めた。これは大変なことだ。こういう危険な、日本を核戦争の戦場にしてしまう、核戦争に巻き込ませる、こういう体制だとすれば、安保条約の解釈上論理的にそうだというのですから、そういう安保条約はもう核戦争に日本を巻き込ませないために廃棄する以外にないということを私は特に強く言っておきたいと思うのです。  次に、フリートサット衛星の利用の問題について、先ほど来の論議を聞いておりまして、フリートサット衛星は米軍用の通信衛星だけれども、それはその利用が一般化している、一般化した通信中継機能を有するものだから、だからフリートサット衛星そのものを自衛隊が利用することは構わぬのだ、こういうふうに政府としては言われているように思うのですが、総理、そういうことでどうですか。
  380. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 フリートサット衛星の利用は一般的に使用されている衛星の機協の利用でございますので、平和の目的に合致するのではないか、許されるのではないか、こう思っております。
  381. 東中光雄

    東中委員 フリートサット衛星の利用は許される、こういうことなんですね。  フリートサット衛星自体は海軍の所管の軍事衛星だということは、あるいは通信衛星だと言われておるのですけれども、このフリートサット衛星を使っているのは、空軍も使っていますし、それから陸軍も使っていますし、それから国防総省も使っておるという関係があるのですね。一体これらは何にどういうふうに使っていますか。海軍だけじゃなくて。
  382. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 先般来御答弁申し上げておりますように、フリートサット衛星は米国海軍が所管をいたしております。米国海軍がその艦隊通信システムの主要な衛星として使っておりますけれども、そのほかに先生御指摘のように、空軍あるいは国防総省もフリートサット衛星の中のトランスポンダーを利用しております。
  383. 東中光雄

    東中委員 そういうちょっとこそくなことは防衛庁はやめた方がいいと思いますね。実際にフリートサット衛星については、一九七七年度のアメリカの国防報告によれば、これは単なる通信衛星じゃない。「フリートサットコム衛星は海軍艦隊通信、空軍の爆撃機と発射管制センター、すべての空中指揮所および若干の陸軍核能力部隊のために多角チャンネル超高周波(UHF)通信を提供するだろう。」これはもう七七年の国防報告で言っています。これは明白に――その次、ついでに読んでおきますが、「フリートサットコムシステムは、より能力の高い兵器システムが求める拡大された通信所要を満たし、すべてのレベルの戦闘を通じて、米軍の指揮統制を行う国家最高機関の能力を向上させるであろう。フリートサットコム宇宙機は、空軍爆撃機上のアフサットムターミナル、戦略偵察機、地上・機上指揮所、核能力をもつ陸軍戦闘部隊との、電波妨害に耐える通信のだめ、別個のトランスポンダーを積載することになろう。」こういうことを言っています。  そのほかに議会の証言で(発言する者あり)勉強しておらぬ人はさっぱりわからぬようですけれども、フリートサットが戦略核部隊との通信に使われておるということは、一九八一年の三月六日の米上院軍事委員会でバントリー国防次官補が証言をしています。ここで、フリートサットは戦略空軍の爆撃機、タンカー、大陸間弾道弾の指揮所、それからRC135戦略偵察機に対して空中指揮所、地上指揮所からの準地球規模の指揮通信を提供しているんだ、こういう証言をしていますね。これは会議録に載っていますよ。途中でいろいろ省略してある部分があって、必ずしも全部わかっていないわけですけれども。  だから、明白にこれは核戦争のための通信、指揮でもあるわけです。そういうものについて、その受信機を自衛隊がつけるということも、これも一般化されているものだというふうに言えるのですか。そういう問題についての受信機も持てるのですか、どうですか。     〔大西委員長代理退席、委員長着席〕
  384. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 この通信衛星フリートサットの機能と申しますのは、総理あるいは加藤防衛庁長官からお答えをいたしておりますように、インテルサット、インマルサットあるいはCS2という通信衛星の機能と同じでございます。  なお、米海軍が所管をいたしておりますが、そのほか空軍、国防総省も使っておりますけれども、私どもが利用するのは、普通の通信衛星の中継機能という面を使うわけでございます。  それから、これは昨年アメリカで通信シンポジウムというものが開かれた際に配られた資料でございますけれども、ちょうどこのフリートサット衛星というチャートのところに、実はコンベンショナル・ノンニュークリア・フォーセスという説明がついておりまして、私ども詳細は存じませんけれども、このデータから見る限り、フリートサット衛星は非核部隊というものに使用されているように思える次第でございます。
  385. 東中光雄

    東中委員 アメリカの議会での証言を具体的に挙げて言っているのですから、そのことについて触れないで、全く違うことを言ったって、それはだめですよ。  だから、僕が聞きたいのは、フリートサット衛星は自衛隊は利用できるんだ、こういうふうに言うたけれども、フリートサット衛星は戦略爆撃機や陸軍核部隊のための通信もやっている。そういう通信の受信機を自衛隊は持つことができるのか。あの統一見解で出されている、そういうフリートサットの利用ができると言っている以上は、その中へこういう核戦略通信というものの受信機も自衛隊は持てるということを言っていることになるでしょう。見解の中には入らぬじゃないか、そういうのは。だから、たまたま今その通信内容が海軍の訓練のというようなことを言っているけれども、しかし、あそこで出されている統一見解からいえば、フリートサット衛星はとにかく利用できるんだというのだから、核戦略通信、それを全部受信するように、受信して利用するということができるんだという、見解からいけばそうなってしまうのです。そういうことは許されぬじゃないかということを言っているのです。  総理、途中で出られたけれども、要するに、米議会での証言でそういうことははっきりしているから、そういうフリートサット衛星を利用することができるという、フリートサット衛星というその特定の衛星の名前を挙げて、自衛隊は利用することができるんだ、こう言っているけれども、それならば、核爆撃機や陸上核部隊のための受信装置もつけて利用することができるということになるが、それでいいのかどうかということを聞いているのです。
  386. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 通信手段、中継手段としてのものであって、そのもの自体は核兵器ではない。したがって、できると思います。
  387. 東中光雄

    東中委員 自衛隊は、だからアメリカの核戦略の中に組み込まれて、アメリカの核戦略のための通信を受けるそういう受信装置も自衛艦に載せることもできるんだ、そういう見解が今の政府の統一見解だ。私たちは、国会の決議というのは非核、非軍事、そういうものだというふうに考えています。非核どころか核通信網の中に組み込まれていく、そして軍事衛星を利用する、これはもう断じて許されないことだというふうに思いますので、その点を強く指摘をしておきたいと思います。  時間が余りないので急ぎますけれども、昨年暮れに日米共同作戦計画が総理にも報告されて、日米の政府のトップで署名されました。総理はこの予算委員会で、これは国家防衛に関する大事な問題だという答弁もされております。総理総理に就任されたあの年の、八三年の最初の国会で、あのワシントン・ポストで言われた防衛のいわゆる不沈空母構想と我々が言っている、要するにバックファイアなんかの侵攻航空機の阻止作戦、そこから三海峡封鎖、海峡コントロール作戦、そしてシーレーン防衛作戦、これは軍事三目標だというふうに使われて、国会でも日本防衛の基本的な方針だという答弁をされました。本会議でそういう答弁をされています。今回できた日米共同作戦計画というのは、結局日米の共同の海軍作戦、海上作戦、陸上作戦、それから空の作戦、これ全部を含んでいるんだと思うのですが、総理の言われたシーレーン防衛とかあるいは海峡封鎖とか航空機侵攻阻止作戦というふうなものは、この作戦計画の中には具体化されておるのだろうと思うのですけれども、その点はどうなんでしょうか。
  388. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘の日米共同作戦計画は、これはあくまでも研究でありまして、これは日本が有事の場合に、日本防衛のために、日米両国で、日本の自衛隊及び米軍がどういうふうな共同対処行動をとるかということの検討をするために研究をしているものでございます。  この内容につきましてのいろいろのお尋ねでございましたが、この研究の内容そのものは、やはり大変機微にわたる点が多いわけでございまして、これは日本を守るために必要ないろいろな作戦をそこで検討をしているということは申し上げられますけれども、具体的に今御指摘のありましたようなことについて申し上げられる性質のものではないということを御理解を賜りたいと思います。
  389. 東中光雄

    東中委員 作戦計画の中身を聞いているというのではないのです。作戦計画の立てておるその範囲のことを聞いておるのです。  例えば海上作戦と言ったら、いわゆるガイドラインでは、「自衛隊及び米海軍は、周辺海域の防衛のための海上作戦及び海上交通の保護のための海上作戦を共同して実施する。」そして「日本の重要な港湾及び海峡の防備のための作戦並びに周辺海域における対潜作戦、船舶の保護のための作戦」こういうものを実施するというように書いていますね。そして作戦計画はこういう作戦を実際に円滑に、効果的に行えるようなそういう研究をして、日米共同作戦計画をつくるんだ、そう書いていますね。それでやられたんだから、当然こういう作戦は含まれているのじゃないか。それがどういうふうに配置をされ、どうしているかということを聞いているのだったらあなた方の答弁でいいけれども、私の言っているのは、そういう内容のものを作戦計画ということで一つの設想のもとにつくられているのじゃないかということを聞いているのですから、それは防衛庁長官、どうですか。
  390. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 範囲そのものをお知らせすることがまた内容をお知らせすることになると思いますので、差し控えさせていただきたいと思います。
  391. 東中光雄

    東中委員 それでは、日米共同作戦計画をつくるについては、まず脅威の分析をやる。そして脅威の分析というのは要するに相手国、どこか知りませんけれども、他国が侵略をしてくるかもしれぬという、そういうことの情勢なり何なりの分析でしょう。それをやって、そして一定のシナリオをつくって、そして日米の投入兵力の見積もりを行って、そして共同作戦実施の要領を決めるんだ。これは何回も防衛庁は答弁してきましたね。そうすると、今度できたというのは、そういう日米共同作戦についての一つの脅威の分析とシナリオの設定をやって、そしてどういう部隊を投入するかということを決めて、そしてどういうふうに展開し、どういうふうに作戦するかということを決めた、こういうことじゃないですか。どうなんでしょう。
  392. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 昨年の暮れに担当者間でサインをいたしました日米共同作戦計画の研究におきましては、これは一つの設想に基づく研究というものを数年がかりでやってきたものが、一応の区切りがついたということでまとめたものでございます。ただいま長官からも申し上げましたように、内容そのものについては申し上げられませんが、基本的な作戦構想としては、先生御指摘のように、ガイドラインにございますような陸上作戦、海上作戦、航空作戦というものが基本の前提になっているわけでございますから、そういったようなものを日米で共同してどういうふうにやっていくのがいいかということを中身で検討をしておるわけでございます。
  393. 東中光雄

    東中委員 だからシーレーン防衛についても、どういうふうにやっていくのがいいかということで、兵力の見積もりから、そしてシナリオの設定をやって、そして作戦計画をつくったということを今率直に認めればいいのですよ、当たり前のことなんだから。  そこで、私がもう一つ聞きたいのは、そういうことで作戦計画ができた。ところが、もう一つありますね。シーレーン防衛に関する共同作戦計画の研究というのが、総理総理になられた最初の答弁でシーレーンについて研究をやるんだということを言われて、その年の八三年の三月からガイドラインの作戦計画の検討の場でやるということになって、今進んでいるはずですが、それはどうなっているんですか。できたのですか、できてないのですか。
  394. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいま御指摘のシーレーン防衛共同研究は、共同作戦計画の研究の中の一つで実施されておるわけでございます。御指摘のありましたように五十八年の三月からその研究を開始をしておるわけでございます。現在、統幕の事務局と在日米軍司令部が中心となりまして作業が進められている状況でございます。現在、脅威の分析、シナリオの設定等を終えまして日米の作戦能力の分析作業を実施しているという状況でございまして、まだ作業の途中でございます。
  395. 東中光雄

    東中委員 既に調印をされた日米共同作戦計画の中にもシーレーン防衛その他のことも入っておるということが先ほど言われた。それとは別に、同じシーレーン防衛について、今度は共同作戦計画のいわゆるシーレーン防衛研究というものが始まっておる。それは脅威の分析とシナリオの設定が終わったとおっしゃるのですから、このシーレーン防衛研究での脅威の分析、シナリオの設定というのは、既に調印をされた日米共同作戦計画の脅威の分析、シナリオの設定と一緒なんですか、違うんですか。違うとしたら、同じ時期に進められておるというのはわけがわからぬのですけれども、一体そこはどうなんですか。
  396. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 このシーレーン防衛に関する日米共同研究と申しますのは、シーレーン防衛の問題に重点を置いて、そこに焦点を当てて実施をしようということで始めた経緯があるわけでございまして、先ほども申し上げました日米共同作戦計画の研究というものは、これはもっと前から一般的な作戦計画の研究ということで実施をしていたものでございます。したがって、今御指摘のシーレーン防衛に関する日米共同研究と申しますのは、シーレーン防衛のところに焦点を当てて日米で共同にオペレーションプランの研究をやっておるというものでございます。
  397. 東中光雄

    東中委員 オペレーションプランの研究は結構なんだけれども、脅威の分析とシナリオの設定というのは同じものなんですか、違うのか、違うとしたら、なぜ違うのかということを聞きたいわけです。
  398. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいま申し上げましたように角度が違っておるわけでございます。ただ、それぞれがどういうシナリオでどういうふうなことをやっておるか、どういう分析をやっているかということを個別に比較をして申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  399. 東中光雄

    東中委員 そういうふうに言うだろうと思うたのですけれども、普通の常識からいえば、シーレーン防衛についての作戦計画が一方でそれも含めてできたら、あとはその部分を拡大するというだけだったら、別々の脅威分析やシナリオの設定というのは要らないわけです。それを別々のものをやるというのは、ここで言っているシーレーン防衛の共同作戦計画というのは、先ほども言われておりました鈴木内閣のときのシーレーン防衛一千海里、そして一千海里シーレーン防衛をやるのだということをアメリカから強く要求してきた、そういう中でその研究をやろうじゃないかということでうんと範囲を広げた。そのシーレーンの防衛をどういうふうにやっていくか。航路帯を設定する、一千海里やるんだ、そのことについて協議をするんだ、これは総理が答弁されていますね。いや、総理が答弁されているのですよ。それがあるので、だからここでは今非常に重要なそういう数百海里、そして一千海里のシーレーン防衛、これを日米共同でやっていく。日本のP3Cと――アメリカのP3Cの方がずっと少ないです。それでこの広範な地域の対潜作戦から洋上防空作戦全部含めてのものをやっていこう。硫黄島にどうするか、硫黄島を作戦基地にしよう、そういうことの日米の作戦能力の分析作業に今入っている。作戦能力の分析作業に入っているというのはそういう意味だと思うのです。だから、今非常に重要な段階へきていると思います。  ことしの国防報告でも、また、去年の国防報告でもそうですが、アメリカ側は日本に対して一千海里シーレーン防衛を含めた自己防衛を十分に遂行できる能力を八〇年代に達成するよう求め続けると言っていますね。あくまでも一千海里シーレーン防衛を我々は取り上げるのです。それができるような能力を八〇年代につくれと言っているのです。ここの共同作戦計画ではどうかと言えば、その研究では、今、日米のシーレーン防衛についての脅威の分析とシナリオの設定を終わって、作戦能力の分析に入っている、こういうのですから、恐らくハワイで事務レベルのときに要求したものを今ここで要求しているのだと思うのですね。国防報告でも要求している、こういう状態になっていると私は思うのです。  そこで、時間がないので話は次に行きますけれども、総理アメリカ側がシーレーン一千海里防衛を含めた自衛任務を十分遂行できる能力を八〇年代に達成するように求め続けると言っているこの防衛能力というのは、総理が盛んに大綱水準の達成をできるだけ早くやりたい、こういうふうに言われている大綱水準の防衛能力といいますか、それとはどういう関係になるのでしょう。
  400. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大綱水準の達成ができますと、ある程度のシーレーン防衛力も出てくると思っておりまして、大綱水準達成のために一生懸命努力してまいりたいと申し上げておるところであります。
  401. 東中光雄

    東中委員 その大綱水準というのは、アメリカから要求しているものよりは少し少ないけれども、相当の程度にいける、こういうことになるわけですよ。向こうは、八〇年代に達成するように要求し続ける、こう言っておるわけです、こっちは、なるべく早く大綱水準、こうおっしゃるのですから。そこらの点どうなんでしょう。
  402. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本防衛は、日本の主権のもとに日本の意思において行うものでありまして、今申し上げたとおりです。
  403. 東中光雄

    東中委員 要求し続けられているわけですね、同盟国から。だから、そういう状態で向こう側が何を要求してきているのかということは、これはわからぬはずがないわけですがね。その内容は私一々今聞いているわけじゃないけれども、総理の方ではわかっているはずなんですがね。そしてこっちで大綱水準と言われているのがある。その大綱水準を達成するということ、この大綱水準というのはどういうことなのかということ、これは全然わからないのですよ。この水準が、水準水準と言われておるけれども、それがどんどん上がっていけば、しかもその達成のピッチが上がれば、一%枠なんてどんどん飛んでしまうわけですね。水準は一体どういうことなんだろう。  私、この別表に書いてある大綱のことというのは、例えば別表で言えば、要撃戦闘機部隊十個飛行隊、作戦用航空機約四百三十機、陸上対潜機部隊十六個隊、こういうふうな抽象的なことですから、これは何のことかさっぱりわからない。問題は、結局は、例えばシーレーン防衛のための一番中心的な問題になるP3CあるいはF15、こういうものの増強計画があるわけでしょう。これは総理の言われる大綱水準というその水準でいけば、何機になれば大綱水準ということになるのでしょうか。それが全然わからぬものですから、それをお聞きしたい。
  404. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  大綱水準では、海上自衛隊の作戦用航空機が約二百二十機ということになっておりまして、その中で想定しておりますのは、大型の陸上対潜機というものが約百機程度ということは、当時から想定をしていた数字がございます。
  405. 東中光雄

    東中委員 これは五十七年の七月の国防会議で、F15は百五十五機、それからP3Cは七十五機ということを決めましたですね。それは達成はまだそこまでいっていないということですけれども、問題は、それなら百五十五機を達成すれば大綱水準ということになるのか、あるいはP3C七十五機を達成すれば大綱水準を達成したということになるのか。それとも、それをやってもまたさらにふえていく、大綱水準を達成するといっているそれがふえていくということになるのか。ここが全然わからぬわけです。そしてシーレーン防衛についての共同作戦計画の協議では、今度は戦力の見積もりについて日米の制服でやっている、こういうわけでしょう。  これはひとつ国防会議の議長として、内閣総理大臣として、大綱水準というのは一体どういうことになるんだ。P3C七十五機、F15百五十五機ということで、この部分についていえば達成ということになるのか、それともならないのか、その点を答えていただいて、もう時間ですので質問を終わります。
  406. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  大綱におきます航空自衛隊の場合の作戦用航空機は約四百三十機ということになっておりまして、まさに現在五九中業でその水準の達成を期するということで作業をしている途中でございますから、個別の具外的な機名をそこで申し上げる段階にまだなっておりません。五九中業の作業のまとまる段階で、その辺が個別にブレークダウンされていくというふうに御理解をいただきたいと思います。
  407. 東中光雄

    東中委員 私が言うのは、大綱水準を達成するということを総理は盛んに言うわけでしょう。そして国防会議では、P3CにしてもF15にしても決めているわけでしょう、百五十五機と。そしてそれを達成するかしないかということは、達成したらまたふえるのだったら、水準を達成したいと言っているその総理の答弁は全くの空言になっちゃうのです。
  408. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大綱水準の別表に枠ができております、今言った四百三十機とか二百二十機とか。その中身というものは、兵器の進歩やらあるいは予算の状況やら、そういうものでいろいろ組み合わせが変化してくる、そういうことで御了解願います。
  409. 天野光晴

    天野委員長 これにて東中君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  410. 天野光晴

    天野委員長 これより理事会協議による質疑を行います。  この際、外務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。安倍外務大臣
  411. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 二月十四日の衆議院予算委員会における岡田春夫委員の御質問につきましての政府の見解は、次のとおりでございます。  一、日米安保条約上の極東の範囲については、昭和三十五年二月二十六日に衆議院安保条約等特別委員会に提出された政府統一見解のとおりであります。  すなわち、一般的な用語として使われる「極東」は、別に地理学上正確に画定されたものではありません。しかし、日米両国が、条約に言うとおり共通の関心を持っているのは、極東における国際の平和及び安全の維持ということであります。この意味で実際問題として両国共通の関心の的となる極東の区域は、この条約に関する限り、在日米軍が日本の施設及び区域を使用して武力攻撃に対する防衛に寄与し得る区域であります。かかる区域は、大体において、フィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であって、韓国及び台湾地域もこれに含まれております。  安保条約の基本的な考え方は、右のとおりでありますが、この区域に対して武力攻撃が行われ、あるいは、この区域の安全が周辺地域に起こった事態のため脅威されるような場合、米国がこれに対処するためとることのある行動の範囲は、その攻撃または脅威の性質い、かんにかかるのであって、必ずしも前記の区域に局限されるわけではありません。  二、今申し上げました点から明らかなとおり、我が国に対する武力攻撃が発生した場合において、かかる武力攻撃を排除するために日米安保条約第五条に基づき我が国と共同対処に当たる米国の行動範囲は、いわゆるシーレーン防衛の場合であっても、統一見解に言う極東の範囲に限定されることはありません。  三、なお、シーレーン防衛については、我が国は、我が国に対する武力攻撃が発生した場合において、我が国周辺数百海里、航路帯を設ける場合はおおむね千海里程度の海域において、自衛の範囲内において海上交通の安全を確保し得ることを目標に、逐次海上防衛力の整備を行っているところであります。  我が国が自衛権の行使として我が国を防衛するため必要最小限度の実力を行使することのできる地理的範囲は、必ずしも我が国の領土、領海、領空に限られるものではないことについては、政府が従来から一貫して明らかにしているところでありますが、それが具体的にどこまで及ぶかは個々の状況に応じて異なるので一概には言えません。  以上でございます。
  412. 天野光晴

  413. 岡田利春

    岡田(春)委員 今統一見解が出たわけですが、この問題についてはいろいろ質問する点が多い。しかし、きょうは時間が極めて限られておりますので、ひとつ主として安倍外務大臣に伺ってまいりますが、端的にイエス、ノーを言っていただけば結構であります。  私が前回取り上げました第一の問題は、安保条約が最近乱用されている、拡大解釈をされている例として、極東の範囲の問題を取り上げたわけです。しかも、それを具体的に私は取り上げたわけであります。  これに対して、例えば一つ例を挙げてみますとグアム島を含むマリアナ群島は極東の中へ入っているかどうか、こういう点を具体的に聞いた。その意味するところは、先ほどあなたが読まれた岸総理のときの統一見解、あれは「一」の部分はそのまま同じです。その後に沖縄が日本に返還される、小笠原群島が返る、そういう状態の中で、グアム島、マリアナ群島、これが一体どうなんだ、しかも小笠原から非常に近いじゃないかという意味で私は聞いた。そこで、これに対してあなた並びに条約局長はこう答えている。これは速記録ができているから持っておりますけれども、グアム島を含むマリアナ群島は極東に含まれておりません。これは速記録にも出ている。そこで私もう一度念を押しますが、この含まれておらないという点はアメリカも認めているんですか、どうなんですか。
  414. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今グアム島の問題が出ましたけれども、これは別にアメリカとの間に特に合意を見た区域ではありませんけれども、安保条約の解釈上、政府としての見解としてこれを述べておるわけであります。
  415. 岡田利春

    岡田(春)委員 そうすると、日米間の合意はない。そうですね。話し合ったこともないんですか。どうなんです。
  416. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、極東の範囲というのは、概念的に、今もこのあれで申し上げましたように、地理的に画定をしておるわけではありませんので、政府がこれまでしばしば国会で述べました概念としての範囲として申し上げておるわけです。
  417. 岡田利春

    岡田(春)委員 これはもう極めて重大な問題です。というのは、条約の大前提になる、この条約を適用する範囲はどこからどこまでかということがこの条約を締結した両国間に合意がなければ話にならぬじゃないですか。どうです。外務大臣、それは考えたっておわかりでしょう。例えば、どうですか、日本はグアム島は入らないと思ったって、アメリカの方はグアム島は入ると思って行動している場合、その行動の範囲というのは両国がばらばらじゃありませんか。そんなことで安保条約が運用されているということが乱用されているということなんだ。しかもグアム島というのはアメリカにとって重大な戦略基地だ。このグアム島が入っているか入ってないかということが合意されないでこういうことをやっているとするならば、これは大変な問題です。あなたもよくおわかりのように、このような形で運用されているというのなら条約の意味をなさない。そうでしょう。アメリカアメリカでグアム島は入っていると思って行動している。日本日本で入ってないと思って行動している。どうやって統一するんですか。しかも私は、アメリカがグアム島を含めて極東の範囲としているというそれを裏づける幾つかの根拠を持っている。だから私は聞いている。食い違っておった場合にどうするんですか。この点は大臣、どうしますか。
  418. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは安保条約ができたときからの統一見解にあるわけですが、別に地理学上正確に画定をされたものではないということは政府が時たま答弁したわけです。極東という中にそういう意味日本の概念からいえばグアムは入らない、こういうのが日本政府のこれまでの見解であります。私はそれでいいのじゃないかと思います。
  419. 岡田利春

    岡田(春)委員 よくないですよ、あなた。日米間の安保条約でしょう。そしてアメリカがその条約に基づいて行動するんでしょう。その行動するときに、極東の範囲の中だと言って行動した場合に、日本の場合はどうするんですか、それ知らぬ顔しているの。  それじゃ具体的に伺いましょう。いいですか。現在日米間で研究をされている極東の有事研究、この場合の極東というのは一体これはどうなっているのですか。日米間でその範囲は合意されているのですか。合意されてない、それぞれまちまちでやっているのですか。その場合にグアム島は入っているのですか入ってないのですか、日米間のこの研究の極東という意味は。この点をひとつ具体的に伺いたい。
  420. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 ガイドラインで言っております極東というのは、日本以外の極東という意味で、安保条約の極東と同じでございます。
  421. 岡田利春

    岡田(春)委員 こういうナンセンスを言うからいけない。安保条約に基づく極東というのは、アメリカだって安保条約に基づく極東だよ。そんなばかな話を言っちゃだめです。問題になりません。具体的に私はさっきから聞いているじゃないですか。極東有事研究の場合の極東というのはこれはグアム島は入っているのか入ってないのか、研究は現在どういう形で進んでいるんだ、それを具体的に聞いている。入ってないという合意をしているのか、入っているという合意をしているのか。その合意はできていないと言うのだから、できていないでまちまちでやっているんじゃないのかと聞いている。
  422. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 安保条約の極東の範囲については、先ほど大臣がお読み上げになりました統一見解がございまして、これは委員御承知のように、アメリカの議会でもそういうことでアメリカの議会が認めておるものでございます。そういうものとして日米両国間に明確な極東の範囲というものについては了解がある。こういうことでございまして、グアム島について入っているか入っていないかということは、御質問がございましたので、これについては入ってないということが、従来から日本政府として申し上げておるところでございます。
  423. 岡田利春

    岡田(春)委員 私は、もうこれは実は質問できないのです。というのはですね、アメリカと合意してないのでしょう、日米間で。そして極東の有事研究というのをやっているのでしょう。有事研究は日米間でやっているのでしょう。どれを範囲にしてやっているんだというのをさっきから聞いているんだ。これははっきり答弁できない限り、私はやれません。冗談じゃないですよ。
  424. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 若干敷衍さして御説明さしていただきたいと思いますが、極東の範囲というものはそもそも何かということでございまして・・(岡田(春)委員「いや、そんなことはもうわかっている。この前から何度も答弁している」と呼ぶ)大変恐縮でございますが、私の答弁を御理解いただけなかったので、若干補足さしていただきたいという意味で申し上げておるわけでございますが、統一見解にございますように、極東の範囲というのは、そもそも日米両国が極東の平和と安全という文脈で共通の関心を持っておる区域、こういう意味でございまして、そういう意味から申し上げれば、本来アメリカ領ないしはアメリカの管轄下にあるそういう島は、安保条約で言うところの日米両国の共通の関心の区域であるところの極東の範囲には入らないであろう、こういうことで従来から御答弁申し上げておるわけでありまして、その点については、アメリカもこれは極めて自然なことであるというふうに恐らく考えておることだろうと思います。
  425. 岡田利春

    岡田(春)委員 アメリカとこの問題については話し合ってないの、どうなの。話し合っているの、話し合ってないの。イエスかノーか、はっきり言いなさい。
  426. 天野光晴

    天野委員長 簡単に答弁していいよ。
  427. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 先ほど申し上げましたようなことでございますので、極めて常識的なことだろうと思います。グアム、マリアナが入ってないということは従来から何度も政府が国会等で答弁していることでございまして、それに対してアメリカは従来から一度も、そういうことではおかしいというようなことは言ってきておりません。
  428. 岡田利春

    岡田(春)委員 昭和四十三年の予算委員会において私がこの問題を質問している。これに対して、その当時の三木外務大臣佐藤条約局長、これについてははっきり言っている。これは三木外務大臣ですが、「これは、小笠原の返還協定のときに、こういう岡田君の疑義にも明白に答えるように」いたします。それから佐藤正二政府委員「いずれにせよ、小笠原返還協定の際には当然話になると思います。」やっているじゃないか。話し合いやってるじゃないの。やってないで勝手に、あなたの方はやってるというのを隠して、そして合意をしない。なぜ話し合いをして合意をしないのですか。問題にならない。大臣、答えなさい。こんなその当時のことをわからぬ連中に聞いたって話にならぬ。
  429. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほどから政府委員が答弁しましたように、これまでの国会でグアム、マリアナは極東の範囲には入ってないということを政府がしばしば答弁をしてきたところであるし、それに対してアメリカとしても何ら疑義を唱えてないということはもう明白であります。同時にまた、この統一見解でも示しておるように、「この条約に関する限り、在日米軍が日本の施設及び区域を使用して武力攻撃に対する防衛に寄与し得る区域であります。かかる区域は、大体において、フィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であって、韓国及び台湾地域もこれに含まれております。」これが極東の範囲ということで統一見解として出しておるわけであります。したがって、これまでの安保条約に関する国会の審議、政府の答弁から見まして、グアム等が極東の範囲に入ってないということは明らかであるし、アメリカもこれを認めておると言っても過言でないと私は思います。
  430. 岡田利春

    岡田(春)委員 それじゃ合意してるんですね。極東有事研究もそういう線でやっているし、合意してるんでしょう。
  431. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカはこれまでの日本のしばしば公式的な見解に対して一切異議を唱えてないということは、間接的に合意しているということであると思います。
  432. 岡田利春

    岡田(春)委員 外交交渉というのは、間接的に異議を言わないから合意しているとかしてないとか、そういうことじゃありません。そういう点は、合意しているんなら、いつ合意しているか、はっきりそれをしてください。そうでなければ私は質問は、納得できません。
  433. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは事実の積み上げとして、アメリカは、これまでの安保の審議はもうずっと続いてきているわけですから、そうした日本政府の答弁の積み上げとしてアメリカ側としては何ら異議を持ってないということは、これまでの日米間のいろいろな問題を、極東問題について協議する場合においても何ら行われてないわけですから、アメリカもこれを認めておると言ってもいいんじゃないかと私は思います。
  434. 岡田利春

    岡田(春)委員 進められません、それでは。
  435. 小和田恒

    ○小和田政府委員 ただいまの岡田委員の御質問につきまして若干補足して状況を御説明したいと思いますが、先ほど岡田委員は、昭和四十三年の小笠原返還のときに三木外務大臣佐藤条約局長の答弁があるということをおっしゃいました。その後を受けまして、これはこの前、前回のときにも申し上げたことでございますが、昭和四十三年の四月十九日の小笠原返還の協定締結についての衆議院本会議におきまして、佐藤総理大臣がこのことについて答弁をしております。その点につきまして、そこで佐藤総理が・・(岡田(春)委員「それは知ってるよ。この前言ったじゃないか。それは政府の見解だと言ったじゃないか。合意いたしておりません、こう言ったじゃないか」と呼ぶ)恐縮でございますが、ちょっと正確を期するためにここの部分を読み上げさせていただきます。「安保条約で極東といっているのは、そこにおける国際の平和及び安全の維持について、日米両国が共通の関心を持っている地域であり、元来、明確な線で区画されるような性質のものではありません。したがいまして、」「その一つ一つについて、安保条約でいったところの極東に入るか入らないかということを答えることは、本来適当とは私は考えておりませんが、しいて申し上げるならば、グアム島を含むマリアナ群島は、安保条約にいう極東の一部とは考えておりません。これは、私が、この機会にはっきりこの具体的な問題を申し上げておきます。」こういう答弁があるわけでございます。先ほど来外務大臣が御答弁申し上げておりますように、この極東の範囲というのは、先ほど統一見解で申し上げたような概念でございますし、加えて北米局長が申し上げましたように、グアム島、マリアナというものはアメリカの管轄のもとにある地域でございますので、事柄の性格上、この極東の範囲に入らないという我が方の考え方については、アメリカも当然了承しておるというふうに私ども承知しておりますけれども、しかし委員から、明確な特別の合意があるのかというお尋ねでございましたので、そういうものはあるとは承知しておりませんということをお答えしたわけでございます。
  436. 岡田利春

    岡田(春)委員 私は今の答弁では納得できません。この前のあれと同じことを言っているので、合意をしてないのならばばらばらになっているじゃないか。日本アメリカが極東の範囲の中で行動する範囲は別々じゃないですか。グアム島が入ったということでアメリカ行動しているという証拠を私は持っていますよ。しかし、きょうこれからやっているのでは時間がなくなってしまっているから、私はこの問題は留保します。理事会その他においてこの扱い方について御検討いただきたいと思います。――次の問題に入っていいです。
  437. 天野光晴

    天野委員長 岡田さんにお諮りいたしますが、理事会でお預かりいたしまして、より明確に検討するようにいたします。それで御了承願います。
  438. 岡田利春

    岡田(春)委員 この問題は留保します。ですから、統一見解の中におけるシーレーンの問題を含めて、この点はもう時間がありませんから留保いたしておきます。  もう一つ私が伺っておきたいのは、特に私この点をきょう聞きたかったんだが、この前私が質問した米軍基地の核攻撃通信施設、この点についてきょうも安倍外務大臣ですか、非核三原則に抵触しないからいいんだ、こういうような意味の答弁を言っていますね。しかし、その前提としては、あなたがそうおっしゃるのならば、私が言うように、少なくとも五つの核攻撃の指令基地があるということを認めてそういうことをおっしゃっているんでしょう。しかも、これについては中曽根総理がこう言っている。我々の方もよく勉強してみたい、これはあり得ることだと思う、こういうことまで総理、答弁していますね。それなら勉強してみたいなら、その後二週間たっているから、勉強されましたと思うんだが、私の言っているとおりでしょう。在日米軍の通信体系はウイメックスの中に入っている。私の言ったとおりだと思う。もう一つは、横田、座間、上瀬谷、嘉手納、三沢の米軍基地は核攻撃の大統領指令を伝送する通信施設がある。この二つは勉強の結果お認めになるんだろうと思うが、総理、どうですか。――答えられない。
  439. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 委員が先般御質問になられたような意味で、核攻撃の基地が五つあるという御指摘でございましたが、私どもアメリカの公表資料で調べました限りにおいて、そのような意味で五つの核攻撃基地があるということは承知いたしておりません。  他方において、過日委員の方から御指摘のありましたウイメックスというアメリカの通信システムにつきましては、これは国防報告等にもございますが、アメリカのグローバルな米軍の指揮統制システムである。したがいまして、そういう意味におきまして、我が国に存在いたしますアメリカ軍の通信施設というものがそういうウイメックスの一部を構成しているであろうということは、これは容易に想像できるところでございます。  しかしながら、冒頭に戻りまして、先ほど委員がおっしゃいましたような意味で五つの核攻撃の基地があるということにつきましては、私どもは承知いたしておりません。
  440. 岡田利春

    岡田(春)委員 調べたの。ここにいなさい。調べたの。調べたのか調べないのか。
  441. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 私どもは、国防報告等に出ておりますアメリカの公表資料によって調べさせていただきました。
  442. 岡田利春

    岡田(春)委員 ウェザービーがこう言っているということまでこの前はっきり言ったでしょう、J6の責任者が。どうして聞かないの。在日米軍に聞いたらすぐわかるじゃないか。聞いたの聞かないの。
  443. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 ウェザービー云々ということは先般御指摘がありましたが、私どもは国防報告等に出ておりますアメリカの公式資料に当たってみたわけでございます。  しかしながら、もう一つつけ加えさせていただきますと、アメリカ軍は個々の米軍の通信施設の具体的な機能については公表しておりませんので、これを照会いたしましても、アメリカ側から説明を得ることはできません。  他方、核攻撃の基地というふうな性格で委員は御説明になられましたけれども、アメリカ側の資料によりますると、先ほど申し上げましたような意味で、ウイメックスの一環を構成しておる日本の国内にあるアメリカの通信施設が存在するということは、これは常識的に明らかであろうと思います。  ただ、そのウイメックスの一環であるからといって、それが核攻撃基地である、あるいは核攻撃司令部であるというような性格のものではなかろうということを申し上げた次第でございます。
  444. 岡田利春

    岡田(春)委員 委員長、時間をとりますからもうこれでやめますけれども、栗山君、君自身がこの間はっきり答えているじゃない。何言ってるの。「私、軍事技術あるいは軍事問題全般につきましての専門家でございませんので権威を持って御答弁申し上げる資格がございませんが、常識的に考えればそういうことは十分あり得ると思います。」こう言っているじゃない。何言ってるんだよ。冗談じゃないよ。問題じゃないです。私はもう時間に協力をいたしますが、委員長協力しますけれども、この問題も納得いたしません。したがってこれは留保をいたしますが、最後に私、見解を述べたい。  安倍外務大臣は、核攻撃の通信施設があっても非核三原則には抵触しないからいいんだ、こういう意味のことをきょう答弁している。しかし、非核三原則を国是化するということは、日本が重ねて核攻撃を受けないということのために国是化している。それなのに、核攻撃の通信基地があることは、日本が核攻撃の第一目標になることなんです。そのことは何も私が言っているのじゃない。アメリカの国防長官であるワインバーガーが去年の四月のアメリカの国会ではっきりとこれは証言している。核の傘になるんじゃない、核の目標になるんだ。中曽根総理は前回の答弁で、これは核の抑止力だと答えた。この抑止力でアメリカの国民は救われるかもしれない。しかし、一億の日本の国民は核の第一目標になって、矢面に立たされるのですから、犠牲になるということだ。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)そんなことはないことはない。総理ははっきり――履き違えてはいけないです。日本総理大臣として、一億の国民を核攻撃の矢面に立たせておいて、これで抑止力でございますなんて平然と言うなんというのは、断じて私は許さない。  今日の核兵器体系というものはどういうものか。核弾頭とそれを運ぶランチャー、それだけではない。攻撃をする通信施設、この三つが三位一体になって初めてこれは使われる。品物だけあっても、現実にこれを動かす指令施設がなければ役に立たないのだ。だから、通信施設が相手の核攻撃の第一目標になる。そういう意味で、通信施設の意味というのは非核三原則に統一をして考えなければならない。だから撤去しなければならないと私は言っている。
  445. 天野光晴

    天野委員長 岡田委員、結論を急いでください。
  446. 岡田利春

    岡田(春)委員 主義主張は違っていても、戦争直後以来長く国政をともにしてきたあなたと私は長い仲の友人である。総理に率直に私言いたいと思う。その場その場では口先だけで器用なことを言って言い逃れたりごまかしたとしても、その人の功罪は歴史がやがて厳粛に断定するであろうということを忘れてはいけない。  私はもうこれで質問はしませんが、総理大臣中曽根君にあえてこの一言を呈して、私は質問を終わります。
  447. 天野光晴

    天野委員長 これにて岡田君の――総理大臣
  448. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今岡田さんから発言がありましたけれども、私は見解を全く異にいたします。日本が安全を保障され、平和が維持されているというのは、日米安保条約に基づく総合的な仕組みの中に行われておるのであって、そのような独断論には賛成できません。(岡田(春)委員委員長、席にいないのに答弁しているなんて話にならない、問題にならない。速記に残してもらっては困る、委員席にいないんだから」と呼ぶ)
  449. 天野光晴

    天野委員長 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  次に、大出俊君。
  450. 大出俊

    ○大出委員 前二回の私の質問に対しまして四つばかり皆さんの御回答を求めておる問題がございますが、一体ソ連機と陸上基地との間の交信あるいは通信、陸上からのしたがって発信と考えられるものがあるはずである、これをお出していただきたい。  それから、きはう議論を重ねていたしました三時十二分というところのKAL機の航跡、これはそこから先があるはずだという議論をいたしましたが、この問題の答え。  それから、ある人が持っているということを私申し上げましたが、何人もの国会議員がこれは要求をいたしておりますが、ロシア語原文というものは出ていないようであります。私が提起をいたしましたのはローマ字タイプ、ローマ字表記のものでございます。原文をお出しいただきたいと申し上げておりますが、これが三つ目。  それから、交信記録は、情報のひとり歩きなどと言われておりますけれども、レーガン大統領の議会指導者を集めての公表、全国に放映をいたしました演説を交えての公表、国連安保理事会における各国の代表を集めての公表がございますが、これは中身は二つありますけれども、これらについてお出しをいただきたいと私議論をし、かつ要求をいたしてまいりましたが、お答えがもしできるというのであれば、この時間にまずいただきたいのであります。
  451. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 検討いたしました結果を申し上げたいと思います。  まず第一でございますが、ソ連機と陸上基地との間の交信につきましては、防衛庁が収集いたしました交信記録において陸上基地からの発信と断定できるものはございませんでした。これは電波特性に起因するものと考えられる次第でございます。  それから第二に、レーダーの覆域は目標の高度、地形、天候等によって異なっておりまして、自衛隊が把握しております大韓航空機のものと考えられますレーダー航跡は、公表したものがすべてでございます。  第三に、ロシア文字による交信記録につきましては御提出申し上げます。  第四に、交信記録テープを公表することは防衛庁の情報収集能力を明らかにすることになりますので、その取り扱いについて慎重を要することについて御理解を賜りたいと思う次第でございます。  なお、国連安保理事会で明らかにされました交信記録について同様の措置をとることについて検討はいたしたいというふうに考えております。
  452. 大出俊

    ○大出委員 これは答弁になっていないわけでありますが、まず地上からの交信あるいは通信の記録、この間申し上げましたように、一番最初にこの点が表に出てまいりましたのは、九月一日のシュルツ国務長官の記者会見でありました。大韓機がレーダー画面から消えた、その後、ソビエトの地上の管制基地から救難機に対して、救難に向かえという指示が出された。これがシュルツさんの言ったことであります。地上の基地からの交信記録がなければわからない問題が、基地の特定等を含めて幾つもございます。  今の答弁では納得いたしかねるわけでありますが、どうしてもこれは交信記録がない、つまり地上からの通信、交信の記録はないとおっしゃるのか、もう一遍御答弁をいただきたいのであります。シュルツさんが言っているのですから、それならば、ほかにあるということになるのですか。  それからもう一つ、一体このロシア文字の交信記録というのは提出する、これはローマ字表記のものではないと確認ができますか。今までローマ字表記しか出てないわけでありますが、全く出てないものが出てくると理解してよろしゅうございますか。二番目。  もう一つ、例の航跡でございますけれども、引き続きというならもうこれは質疑できないわけでありまして、KALの航跡を何らかの形であなた方お出しになる気持ちはございませんか。  もう一つ、例のアメリカ側が公表したパイロットの交信記録、さっき私三つ申し上げましたが、これは今のお話しによりますと、国連安保理事会で明らかにされた交信記録につき同様の措置をとることについて検討いたしたいという趣旨の今お話でありますが、ちょっとわかりません。この点を明らかにしていただきたい。  以上、四点ひとつお答えをいただきたいと思います。――なければ、このまま座っていますから、ひとつはっきりしてください。
  453. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  最初の、レーガン大統領が議会指導者に話されたときのこと、あるいはレーガンの会見の模様、この点については詳細私の方では承知をしておりません。これが第一点でございます。  それから第二点は、ロシア文字による交信記録と申しますのは、当初私どもがつくっておりましたローマ字タイプのものではなくて、ロシア文字ですね、ロシア文字でそれを表記したものを作成いたしまして、これを御提出をしたいということでございます。  第三点のレーダー航跡につきましては、これは繰り返しになりまして、大変恐縮でございますが、これは公表したものがすべてであるということに御理解を賜りたいと思います。  それから第四点で、ただいま国連安保理事会で明らかにされた交信記録につき同様の措置をとることについて検討いたしたいと申し上げたことをもう少し具体的にできないか、こういう御指摘でございます。この点は私どもも慎重に検討したわけでございますが、交信記録テープの公表につきましては、防衛庁の情報収集能力の保全と大韓航空機事件の真相究明にできる限り御協力を申し上げるということとのぎりぎりの接点を検討いたしました結果、二点を申し上げたいと思います。  一つは、国連の安全保障理事会で公表されましたビデオ、それからもう一つは、国連の安全保障理事会で必要があれば提供してもよいとされました交信記録、これはオーディオカセットでございます。この二点を、本委員会で決められましたしかるべき場においてお示しをいたしたいと存じております。
  454. 大出俊

    ○大出委員 今のお話は、国連の安全保障理事会で公表されたビデオ、こう言うものですね。何が写っているのですか、これは。私は、航跡問題をあれだけ皆さんと議論をしてまいりました。なぜかというと、真相解明のまさにそれが最大のポイントだからであります。したがいまして、国連の安全保障理事会で公表されたビデオ、つまり交信記録でないものとなりますと、これはKALに関して、私の大きな疑問に対して、何か皆さんの方でこれはこういうものだということがなければ、そうですかというわけにはいかない。これは、防衛庁長官であろうと局長であろうと私は答弁者は問いませんけれども、はっきりしてください。
  455. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいまのビデオでございますが、このビデオというのは、交信の一部を音声及びロシア語、英語で表示をしたものでございますが、その冒頭部分に大韓航空機の航跡図が示されているというふうに私どもは聞いております。
  456. 大出俊

    ○大出委員 私はあれだけ航跡は三時十二分以前にあるはずだと申し上げてまいりましたが、恐らくこれは国連でカークパトリック氏が説明をして出されたものということであるとすれば、シュルツ氏が発表した航跡であろうという気がするのであります。それにしてもそれをお出しになる。長官、大丈夫なんですか、これは。大丈夫ですか、お出しになりますか。
  457. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 局長の申したとおりでございます。
  458. 大出俊

    ○大出委員 それでは、この航跡の問題は一遍これを見させていただいて、これは、私実は日本のテレビに映りましたのをビデオに撮りましたが、極めて短時間でございますからよくわかりません。したがいまして、お出しをいただいて、ただ出されてちょっと見ただけではこれはわかりませんから、あるいはロシア語、あるいは英語の字幕があるのかもしれませんが、わかりませんから、やはり通称ダビングといいますか振らせていただいて、これは遺族会の皆さんが大変心配しているところでございますから、一部でいいわけでありますが、そこまでの手配をしていただかぬと、ただ公表するってぱっと見ただけで終わりではどうにもならぬわけでありますから、そこらのところはどうでございますか。
  459. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいまのダビングにつきましては私どももやむを得ないと存じておりますが、取り扱いにつきましては、理事会の御決定に従いたいというふうに思っております。
  460. 大出俊

    ○大出委員 そうすると、あわせて国連の安全保障理事会で必要があれば提供してもよいとされた交信記録、今オーディオカセットとこうおっしゃいましたが、こちらの方ももちろん理事会が必要でございますけれども、大臣これは本当にお出しになりますか。これもソビエトの言葉に通じた人、英語に達者な人が見ても――これは何分ぐらいあるのですか、あわせてお答えいただきたいのですが、さらっと見ただけではこれは何もわかりませんから、これもやはりあわせてひとつその場でコピーをとるなりしていただいて、一つあればいいのですから、これはまた遺族会の皆さんが大変心配しておるところでありますから、お出しをいただけますか。
  461. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  これもただいまのビデオと同様の扱いをさせていただければというふうに思います。(大出委員「何分ぐらいあるのですか」と呼ぶ)これは交信があった部分を全部つないでコンパクトにしてございますから、私が今聞いておりますのでは、約十二分ぐらいだというふうに聞いております。
  462. 大出俊

    ○大出委員 そうすると、出されている日本文のものは五十分ございますが、通信のないところも中にございます。そういうのを取って詰めたというわけですか、そう理解していいのですか。
  463. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 結局、交信がその中に詰まって全部入っているというものと御理解をいただいて結構でございます。つまり、交信と交信の間の交信のない空白時間がございますから、そういうものが圧縮されてつながって出てくるというものでございます。
  464. 大出俊

    ○大出委員 121という飛行機あるいは731という飛行機は交信記録には全く出ておりませんが、この中にコールサインか何かあってあなた方は特定したと考えていいのですか。
  465. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいまのお尋ねの点は、私どもが当初に日本文で発表させていただきました交信記録の中にも実は記載をしているつもりであったわけでございますが、様式を分けて、交信の本体の部分のところと、それから発信者のところというふうに分けて書いておったものですから、恐らくは本体の方にそういう数字があらわれていないという事実はあるのであろうと思います。ただ、発信者の欄にただいまお示しの機番号がそれぞれ出てきておりますので、それはテープの方で出てくるというふうに御理解いただいて結構だと思います。
  466. 大出俊

    ○大出委員 そうすると地上からの、管制基地からの交信、これだけが残るわけでありますが、矢崎さん、これはどこかになければディェプタートだとかトリコタージとかと特定できないですよ。また普通じゃシュルツさんがあんなこと言えないですよ、なければ。だから私はそこのところを、つまり、地上からの交信記録は日本にはない、こういう意味ですか。全くないというのならこれは特定できないんだから。どうですか、そこのところは。
  467. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 最初に、さっきの答弁の中でちょっと機番号と申し上げましたのはコールサインの間違いでございますので、これは訂正させていただきたいと思います。  それから、ただいまの地上からの交信につきましては、これは先ほども申し上げましたとおり、防衛庁が収集した交信記録には、地上からのものと断定できるものは入ってはいないわけでございます。そういうことで、地上からの発信記録というものは日本にはないというふうに御理解をいただきたいと思います。
  468. 大出俊

    ○大出委員 それなら、日本にはなければアメリカにあるということになるじゃないですか。私はこの点は、いろいろ理事会その他で御尽力をいただいておりますので、時間のこともございます。したがいまして、納得はもちろんいたしません。大韓機の三時十二分以前の航跡、あくまでも私は追及し続けたい。だからお出しいただいて、シュルツ航跡をよく分析をさせていただいて、その上でこれはさらに真相究明に努力をいたしたい。地上からの交信なるものも、なければ特定できない。明確なんですから、なければ。だから、日本にはございませんということになるとすると、これはアメリカにあるということになる。それも調べさせていただきまして、なお真相解明にひとつ努力をしたいと思うのでありますが、国会決議もございますからぜひこれは御協力を賜りたい、こう思う次第でございます。  その点長官、よろしゅうございますか。今の局長の御発言、先ほど私が聞いたとおりに承ってよろしゅうございますか。見えないテープを出されても困るし、聞こえるコピーでなければ困るわけでありますから、よろしゅうございますか。
  469. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 局長申したとおりにいたします。
  470. 大出俊

    ○大出委員 実は今申し上げたいろいろなこともございますから、多少の時間は残させていただきたいのでありますが、ここで二、三点、時間がありませんから箇条的に申し上げますので、お答えいただきたいのであります。  防衛庁がお出しになりました大韓機の航跡がございます。「防衛アンテナ」なんかにも載っております。この航跡の中には、大韓機K,Kという表示があります。スクランブルのAとBとがございます。したがいまして、まずスクランブル機のA,B,C、それとK,KALです、この高度は一体どのくらいのものであったのか。私のところに、大韓機の高度は三時十二分で九千七百メートルだ、Bもそのくらいだというお話は実はやりとりの中で非公式には出ておりますが、そこらはひとつはっきりお答えいただきたい。  それから、三時十二分から三時二十八分に至る、これは専門的に言うと非常に大事なところでございますから、三時十二分から三時二十八分に至る高度の変化はあったのかなかったのか。これはKAL機であります。ほかの方は要りません。A,B,Cは要りません。KAL機についてです。  さらに、KAL機について速度の変化はあったのかなかったのか。  四番目に、稚内の三次元レーダーSSR、二次元レーダーと言った方がいいのかもしれませんが、今は一体になっておりますから。つまり、このレーダーでとったものはどれとどれで、大韓機のATCトランスポンダーがございますが、これは高度と連動しておりますからいやでも自分の高度を知らしているわけでありますから、トランスポンダーでとったものか、あるいはレーダーでとったものか、二つあればこの二つがどうなっていたのか、そこをお知らせをいただきたい。つまり、三次元レーダーで高度、速度、トランスポンダーでも同じようにどうなっていたのか、そこを実はお知らせをいただきたい。とりあえずそれだけをひとつ。
  471. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいまKAL機の三時十二分の高度、それからスクランブル機のBの高度のことをいろいろ御指摘がございましたけれども、これは大体、おおむね同一であったというふうに報告を受けております。ほかのスクランブル機のもの、それから先ほどの高度、速度の変化がどうであったかという点、ちょっと今手元にございませんから・・。(大出委員「じゃ後でひとつ」と呼ぶ)はい。それから稚内の問題もどういうお答えが可能か、ちょっと今手元にございません。
  472. 大出俊

    ○大出委員 それでは今の点は、後でひとつ時間を残しておきたいと思っておりますから、そこで改めてお答えをいただきたいと存じます。  そこでもう一つ、交信記録。日本文のものあるいはまた英文のもの、みんなそうでありますが、三時十分の「了解、目標は航法灯を点滅して飛行している。航法灯を点滅して。」これも非常に大きなポイントでありますが、実はこの間申し上げましたように原文にない。つまり直訳すれば、目標は「閃光式信号灯をつけて進んでいる、閃光式信号灯をつけて」。アメリカの方はストロボライトとこう言っている。日本だけ航法灯。私はこれは明らかに間違いで、これは言葉に忠実にひとつ御訂正を願いたいというのが一点。  それから、三時十二分二十六秒「目標はIFFに応答しない。」どだい民間機にIFFはございません。ATCトランスポンダーであります。このザプロス、この間御説明いたしましたが、原語にはIFFという言葉は全くありません。システムイ・アパズナバニヤなんて言葉はない。したがいまして、これは随分迷った、各マスコミの皆さんも書いたのですからおかしな話でありまして、本来ならもう少しはっきり物を言いたいのでありますが、御訂正を願いたい。ICAOでは「ザ・コール」という表現をいたしております。そこまではお直しいただかなければ迷惑でありますから、そうしていただきたい。裁判をおやりになる方もあるのですから。  それから、「充分時間はある。」これを修正をいたしました。「相手が当方を見ていない。」というふうに直された。しかしこれも、私に説明をしておられる限りでは日本は間違っていないと思っていると言うのですから、間違いでないと思っている限りは、「充分時間はある。」という前にお出しになったもの、私のやつではそうなっていますから、そのとおりにしていただきたい。  それから聴取不能部分、これは大きな問題があります。聴取不能というのは、この間御説明いたしましたように直接ミサイルを撃った805機じゃない、下の方にいた163機だ。こんなところからとんでもないところへ機関砲を撃てるはずがない。聴取不能のところを機関砲を連射したと直すのなら、撃ち落とした棚じゃなくて後ろの方にいた163機が撃ったことになってしまう。そういうことになるのなら、モスコーで805機のパイロットの方が長い記者会見をしておりますが、私が四回、百二十何発撃ったと言っておいでになる。これは明らかな矛盾であります。これも私は防衛庁の方を当時呼んで聞いたら、いや、私の方はそういうわけじゃないのですけれども、アメリカの方でそう言うからと、こういうわけであります。ここのところも大きな矛盾でございますから明確に解明をしていただきませんと、真相解明をあらゆる方途をもってというので、しかし解明を国会の場で、政治の場でしないから、民事の訴訟をやろうというわけでやっている。そうすると、ここらのところは忠実にやはり物事を統一しておかないと、大変にこれはいろいろな迷惑をかけることになる。だから、この辺はひとつ明らかにしていただきたい。  以上を申し上げて、今即答が無理であるとすれば、残り時間保留をさしていただきまして、次の機会に御回答願いたい、こう思います。
  473. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答えさせていただきます。  まず、基本的な前提といたしまして、当時私ども、非常に短時間でございましたが、私どもなりに最善を尽くして作業をしたということを申し上げておきます。  それで、ただいま御指摘の航法灯の問題でございますが、これは原語がミガルカという言葉で、点滅するライトを指すロシア語であると承知をしておりますが、私どもとしては、この航法灯の種類が左舷灯とか右舷灯、尾灯とかあるいは衝突防止灯といろいろあるようでございまして、どれであるかがこれだけでは特定ができなかったわけでございます。そこで、これらの灯火の一般的総称でございます航法灯という用語をもって訳しまして、そして点滅するライトを示していたということでございますから、「点滅して」という説明をづけたという経緯がございます。  それから、次のザプロスという言葉の問題でございますけれども、これは御指摘のように一般的には公的質問の意味でございますが、ソ連空軍の慣用語としては、IFFによる敵味方の確認の意味であるというふうに理解をしておるわけでございます。向こうの軍事百科事典というのがございまして、それにもその種の記載があるようでございます。  それから、アメリカが発表を修正したことの問題でございます。この点は、九月十一日に発表されました国務省のステートメントは、交信記録を公表した後に、アメリカがその電子技術を駆使いたしまして何百回となく交信記録を聞いた結果、三カ所について補備修正する必要が生じたということを当時明らかにしております。日米双方が当初公表したものは発言が必ずしも鮮明でないこともございまして、聞き取りに困難がございまして、当時としては最初のような発表に聞き取っていたものでございますが、その後慎重に再確認を行ったところ、最終的には米国の行った新しい翻訳も可能であるというふうに当方も考えるようになったわけでございます。ただ、ここは、基本的には、電子技術を駆使したアメリカのそういった解析の結果というものがこの三つの修正に結びついたという事情を御理解いただきたいと思うわけでございます。
  474. 大出俊

    ○大出委員 ここで一々反論をいたしますと時間が長くなりますから、今私が申し上げました点、これは先ほど申し上げましたのとあわせまして、そういうお約束を私どもの理事さんを通じていたしておりますから、ちょうどあと二十分残っている時間でございますので、残り時間二十分を留保させていただきまして、先ほど御回答いただいてないものも幾つもございますから、その場面であわせてひとつ処理をさせていただこう、こう思います。  以上で終わらせていただきます。よろしゅうございますね。
  475. 天野光晴

    天野委員長 わかりました。大出君のお申し出につきましては、理事会で協議することにいたします。  これにて大出君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、外交防衛問題についての集中審議は終了いたしました。  次回は、明二十二日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時二十二分散会