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1985-02-19 第102回国会 衆議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年二月十九日(火曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 天野 光晴君    理事 大西 正男君 理事 小泉純一郎君    理事 橋本龍太郎君 理事 原田昇左右君    理事 三原 朝雄君 理事 稲葉 誠一君    理事 岡田 利春君 理事 二見 伸明君    理事 吉田 之久君       相沢 英之君    伊藤宗一郎君       石原健太郎君    石原慎太郎君       宇野 宗佑君    上村千一郎君      小此木彦三郎君    小渕 恵三君       大村 襄治君    奥野 誠亮君       海部 俊樹君    倉成  正君       小杉  隆君    砂田 重民君       住  栄作君    田中 龍夫君       葉梨 信行君    原田  憲君       武藤 嘉文君    村山 達雄君       山下 元利君    井上 一成君       井上 普方君    上田  哲君       大出  俊君    川俣健二郎君       佐藤 観樹君    堀  昌雄君       松浦 利尚君    矢山 有作君       池田 克也君    近江巳記夫君       神崎 武法君    大内 啓伍君       木下敬之助君    小平  忠君       岡崎万寿秀君    経塚 幸夫君       瀬崎 博義君    松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 嶋崎  均君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 松永  光君         厚 生 大 臣 増岡 博之君         農林水産大臣  佐藤 守良君         通商産業大臣  村田敬次郎君         運 輸 大 臣 山下 徳夫君         郵 政 大 臣 左藤  恵君         労 働 大 臣 山口 敏夫君         建 設 大 臣 木部 佳昭君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     古屋  亨君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)藤波 孝生君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)     河本嘉久蔵君         (国土庁長官)         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 加藤 紘一君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      金子 一平君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      竹内 黎一君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石本  茂君         国 務 大 臣         (沖縄開発庁長         官)      河本 敏夫君  出席政府委員         内閣審議官   高瀬 秀一君         内閣法制局長官 茂串  俊君         内閣法制局第一         部長      前田 正道君         国防会議事務局         長       塩田  章君         警察庁刑事局保         安部長     中山 好雄君         総務庁長官官房         長       門田 英郎君         総務庁長官官房         審議官     手塚 康夫君         総務庁行政監察         局長      竹村  晟君         防衛庁参事官  古川  清君         防衛庁参事官  池田 久克君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房         長       西廣 整輝君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛庁教育訓練         局長      大高 時男君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         防衛庁装備局長 山田 勝久君         防衛施設庁長官 佐々 淳行君         防衛施設庁総務         部長      梅岡  弘君         防衛施設庁施設         部長      宇都 信義君         防衛施設庁労務         部長      大内 雄二君         経済企画庁調整         局長      赤羽 隆夫君         経済企画庁国民         生活局長    及川 昭伍君         経済企画庁総合         計画局長    大竹 宏繁君         科学技術庁研究         調整局長    内田 勇夫君         環境庁長官官房         長       岡崎  洋君         国土庁長官官房         長       永田 良雄君         国土庁長官官房         会計課長    北島 照仁君         国土庁長官官房         水資源部長   和気 三郎君         国土庁地方振興         局長      田中  暁君         国土庁防災局長 杉岡  浩君         法務省民事局長 枇杷田泰助君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省北米局長 栗山 尚一君         外務省中南米局         長       堂ノ脇光朗君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省中近東ア         フリカ局長   三宅 和助君         外務省経済局長 国広 道彦君         外務省経済協力         局長      藤田 公郎君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         外務省情報調査         局長      渡辺 幸治君         大蔵省主計局長 吉野 良彦君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省理財局長 宮本 保孝君         大蔵省理財局次         長       中田 一男君         大蔵省証券局長 岸田 俊輔君         大蔵省銀行局長 吉田 正輝君         大蔵省国際金融         局長      行天 豊雄君         文部省教育助成         局長      阿部 充夫君         厚生省生活衛生         局長      竹中 浩治君         厚生省薬務局長 小林 功典君         厚生省社会局長 正木  馨君         厚生省援護局長 入江  慧君         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産大臣官         房予算課長   鶴岡 俊彦君         農林水産省経済         局長      後藤 康夫君         農林水産省農蚕         園芸局長    関谷 俊作君         林野庁長官   田中 恒寿君         通商産業大臣官         房審議官    矢橋 有彦君         通商産業省通商         政策局長    黒田  真君         通商産業省貿易         局長      村岡 茂生君         通商産業省立地         公害局長    平河喜美男君         通商産業省基礎         産業局長    野々内 隆君         通商産業省機械         情報産業局長  木下 博生君         資源エネルギー         庁長官     柴田 益男君         資源エネルギー         庁石油部長   畠山  襄君         中小企業庁長官 石井 賢吾君         運輸省地域交通         局長      服部 経治君         労働省労政局長 谷口 隆志君         労働省労働基準         局長      寺園 成章君         労働省職業安定         局長      加藤  孝君         建設大臣官房長 豊蔵  一君         建設大臣官房総         務審議官    松原 青美君         建設大臣官房会         計課長     望月 薫雄君         建設省都市局長 梶原  拓君         建設省河川局長 井上 章平君         建設省住宅局長 吉沢 奎介君         自治省財政局長 花岡 圭三君         消防庁長官   関根 則之君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      大内  宏君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十九日  辞任         補欠選任   小杉  隆君     石原健太郎君   経塚 幸夫君     正森 成二君   松本 善明君     岡崎万寿秀君 同日  辞任         補欠選任   石原健太郎君     小杉  隆君   岡崎万寿秀君     松本 善明君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和六十年度一般会計予算  昭和六十年度特別会計予算  昭和六十年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 天野光晴

    天野委員長 これより会議を開きます。  昭和六十年度一般会計予算昭和六十年度特別会計予算昭和六十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松浦利尚君。
  3. 松浦利尚

    松浦委員 私が今から質問をする中心は、経済、財政問題ですし、多くの委員の皆さんがもうほとんど出し尽くしておりますので、おさらいという格好になるかもしれませんが、できるだけ政府出しました資料データ中心にして質問させていただきたいというふうに思っております。  まず最初に、経済企画庁長官冒頭お尋ねをさせていただきたいと思うのですが、この昭和六十年度の経済見通しを一読させていただきまして、分析、検討させていただきました。確かにこういう経済指標というのは、バックグラウンド変化等が起こってきますから、当然正確を期すことは非常に難しい問題であることは知っておるわけですが、しかし、いずれにいたしましても、問題があるところは指摘をさせていただかなければならぬと思うのです。  その中で、一つだけどうも疑問に思いますのは、経常収支貿易収支の問題ですが、経常収支貿易収支とも昭和五十九年度とこう横並びにしておられるわけですね。これは、ここに内需中心経済政策に転換をするという指標は示されておるわけですけれども、しかし、実際にこういう横並びの情勢というのは、私が判断する限り難しいのじゃないか、むしろ今年度に比べて来年度はまだ黒字幅が伸びるのではないか、このように考えるのですが、その点について長官の御見解を承っておきたいと思います。
  4. 金子一平

    金子国務大臣 お答えいたします。  今の御指摘の点でございまするけれども、アメリカ景気が明年度、新年度におきましては三・九%にソフトランディングしそうだ、六・幾つから三・幾つ、四%台に落ちるということから、輸出世界的に縮小することは避けられない。特にアメリカへの輸出が最近落ちていることも事実でございますし、それから欧州通貨の方に対しましても円高で推移しておりますものですから、欧州への輸出も落ちておる。あるいはOPECの最近の石油値段等状況から中東向け輸出も落ちておるということで、輸出の方は全面的に足踏み状況減少状況であると申し上げて差し支えないと思うのであります。特に最近の数字を見ますと、十一月から十二月にかけて減少が目立っておるような状況でございます。一方輸入の方は、国内の景気回復から相当輸入がふえるという見通しを我々は立てておりました。ただ数字的に申しますと、十月から見ますと、十一、十二月はずっと減っておるような状況でございまするけれども、金額全体として見ますと、結局輸出から輸入を引くと、大体今のような貿易収支になるというふうに私どもは見ておるわけでございます。また、六十年度の貿易外移転収支は五十九年度と大体同じくらいの赤字が見込まれますので、六十年度の経常収支は五十九年度と大体同じくらいになるだろう、こういうふうに見ておる状況でございます。
  5. 松浦利尚

    松浦委員 経済企画庁の調査局が出しましたこの「昭和五十九年経済の回顧と課題」、これは長官も読んでおられると思うのですが、これに米国の対日輸入所得弾性値が書いてあるんですよね。アメリカ景気が一ポイント上がると、アメリカ側の対日輸入弾性値は三・八上がる。ですから、アメリカが一%上がると日本輸出は三・八上がるんですよ。アメリカは御承知のように、三%の経済見通しを修正して強気の来年度四%という主張をしていますね。レーガン大統領がそのように発表しておる。そうすると、この所得弾性値を掛けていきますと、これは単純計算ですけれども、我が国輸出というのは逆に一割近く六十年度は伸びるということになるでしょう。  そうすると、――これは外務省経済局ですね。いいですか、これは政府出し資料ですよ。外務省外務大臣、あなたのところですよ。ここに、これは五十九年三月に出しデータですが、仮に八五年で円が二百円になった場合、現状としてはこんなに強くなるとは想定できませんが、いずれにいたしましても、八五年に二百円という想定をした場合に貿易収支黒字は三百二十八億一千二百万ドル。二百円で換算してもこうなるというふうに外務省経済局は発表しているのですよ。いいですか。  まだありますよ。これは経済白書ですよ。これはどこでおつくりになったんですか。この経済白書はどこですか。昭和五十八年度で計算をしておられますが、経常収支は実績で二百四十二億ドル、そのうち我が国は、二百四十二億ドルのうち百三十三億の構造的な黒字を持っておるというふうにこれで分析をしておるのですよ。  大臣、あなたが言っておることは全く勘じゃないですか。どういう政策をやろうとかどういうことをしようという発想じゃないんですよ。言葉でしょう。確かにそれは、さっきから言っているように、経済というものは生き物だからいろいろな形で変わることがある。変わることがあるけれども、しかし、言葉ではなくて数字によって自信を持って経済運営をする。それが狂ったときには、こういう点が間違っておったから残念ながらこういう結果になりました、経済運用の失敗の問題があるし、バックグラウンド変化の問題もある、 こういう分析ができるでしょう。こういうあなた方が出しデータがあるにかかわらず経済見通しをこういう形でおさめた。貿易収支経常収支をこういう形に横並びにした。これは明らかにアメリカ経済摩擦を意識したただ単なる数字合わせじゃないですか。現にきのう吉田委員質問に答えて、あなたはGNPは上方修正されるかもしれぬとまで言っている、今予算審議しているさなかに。その点はこれから私が質問をする内容にとっては非常に重要だ、この経済見通しについては。もっと的確に答えてください。
  6. 金子一平

    金子国務大臣 数値的な問題につきましては政府委員をして答弁させまするけれども、例えて申しますと、今お話しのアメリカ成長率が一%伸びれば日本輸出が三%伸びるというような従来の経験値についてのお話がありました。(松浦委員「三・八」と呼ぶ)三・八ですか、それは八四年の経済成長が六・八でございましたのが恐らく三・八か九になるわけでございますので、逆に輸出の方は相当落ちることになるわけでございまするけれども、そこら辺の計算基礎につきましては政府委員から詳細答弁させます。
  7. 松浦利尚

    松浦委員 いや、計算数値はいいですよ。数値の問題じゃないのですよ。あなたがきのう吉田委員に御答弁になって、上方修正することもある、だからGNP一%の枠組みはふえるのです、そういうことまであなたはここで言っておられるのですよ。そうでしょう。私たち予算審議をしているさなかにそういうことをあなたぽっと言われたのだ、きのう。それは吉田さんの質問が上手だったのかもしれませんよ、ぽっと言われた。しかし、その言われたことと今私が言う経済見通しの中の経常収支貿易収支の問題について見てそごを来す。だからあなたに私は質問をしておるのですよ。私たち予算審議をしているのですよ。あなた、経済見通しがしょっちゅうこんなに変わって、いろいろな形でここで議論する過程で変わっていったら、今度出し予算そのもの全部やり直さなければいかぬですよ。総理大臣、どうされますか。
  8. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 きのう企画庁長官吉田さんにお答えしたところはGNP一%との絡みで、これは経済予測でありますから、したがって、経済成長率政府はこういうふうに決めておるけれども、吉田さんからたしか五%でしたか、幅がこういうふうにこの程度いくじゃないか、六・五%あるいは八ぐらいまでいくのじゃないか、いかなければだめじゃないかと、そういうような非常に論理的なうまい攻め方をしたものだから、そこでそれは数字としてはこういうふうに一応出しておりますけれども、経済生き物でありますからGNPも移動いたします、したがって一%の問題も、人勧とかあるいはGNPのぐあいとか、そういうものによってまだ不安定、不特定になっておりますと、そういう意味でお使いになったのであって、経済企画庁としては、政府が決定もし、また国会にも御提出したあの基礎数字というものを、やはり今日の段階におきましてはそれを堅持しておる。そういうことで、ただ、あの性格自体は見積もり、見通しという性格を持っておるということは御了知願いたいと思います。
  9. 松浦利尚

    松浦委員 それじゃ総理、これから恐らく野党減税要求統一要求出しますけれども、今言われたように、これは見通しですから変更がある。既に予算審議過程でもああいう答弁が出てくるようですから、そういうことを考慮してでも政府側は我々の減税要求に対しては話し合いに応じてくれますね。
  10. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 野党の皆様は独特の御見識で、経済成長率がどの程度になるか、それは野党の御見解でお出しになるでしょう。しかし、政府政府として今の線を堅持してやっておるのでございまして、どういう修正案をお出しにおなりになるか、出していただいてからよく検討したいと思います。
  11. 松浦利尚

    松浦委員 ただ、この経済見通しそのものが上方修正されるという答弁というのは非常に大切なことですから、それだけ昭和六十年度に黒字補正予算を組むだけの財源が既にあるということを長官が言っておるわけですから、国会委員会答弁しておられるのだから、その点はひとつ総理大臣も肝に銘じて野党要求をぜひ理解をしていただきたい、こういうふうに思います。  それでは、次にお尋ねをいたします。  実はこれもひとつ整理をしておかなければならぬと思うのですが、OECDで、経常収支の推移についてどうもおかしい、誤差脱漏が非常に多い。本当ですと、経常収支というのはバランスせぬといかぬですね。輸出した国と輸入した国で数字的にバランスしなければいけないのに、これでいきますと、八四年に一千百二十億ドルの赤という数値が実は出たんですよね。世界経済経常収支を調べてみたら一千百二十億ドルの赤。そうすると、その一千百二十億ドルの赤の中で、黒字になっておるのは、日本が三百十五億ドル、それから共産圏諸国が二十億ドル、あとは全部赤字なんだ。それでその黒字のところを差し引いて一千百二十億ドル。だから世界各国赤字の中で、日本だけがぽっと黒字の姿でOECD数字があらわれてきましたから、日本がおかしい、おかしいと言って集中的に貿易摩擦の攻撃を受けたわけでしょう。  ところが、アメリカモルガン銀行がこれはおかしいと言って調べてみた。どうもアメリカ経常収支というのはおかしい、アメリカ赤字はもっと少ないのじゃないか、こういう指摘アメリカモルガン調査データ出したわけですよね。そこで、日米間でこの誤差脱漏の問題について話し合う機会を安倍外務大臣のところでお持ちになった。ここに日米間の誤差国際収支統計改善に関する問題についていろいろ話をされた。その中で、外務省アメリカに対して、高金利の是正問題と同時に、アメリカは少し統計でおかしいところがあるのではないか、この誤差脱漏についてもう少しちゃんとした統計出してくれという要求をなさった。ところが、OECDやら日本がこういう動きを示した瞬間にアメリカの方の誤差脱漏というのはだあっと減ってしまった。また操作をしたのじゃないか、こういう批判がアメリカ内部に起こってきておる。  しかも、ある銀行によると、どうもアメリカ貿易収支には武器輸出が入っておらない。ですから、そういった武器輸出等を入れていくと、アメリカ赤字というのはもっと縮小するのではないか、こういう意見が言われておる。ある学者に言わせると、高金利で確かにドルが強いのだけれども、その背景にはこういう統計上の操作があるのじゃないか。本来なら黒字体質なのに赤字赤字と言っておるので、あのような形でドルが強いという姿になっておるのじゃないか、裏側の問題として。そういう指摘までされておるのですよ。  こういう問題について、ただ一方的に日本側に、おまえがけしからぬ、赤字赤字だ、おれの方が赤字じゃないか、貿易摩擦解消せよと言って盛んに圧力がかかってくる。しかし、こういう問題について、一体日本政府はどれだけアメリカに対して的確な圧力をかけたのか。もっともっとこういう問題については厳しく対処すべきじゃないか。そういう問題について担当である外務大臣からお答えいただきたいと思う。
  12. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 このOECD統計でいろいろ問題があると言いますが、確かに世界資本収支あるいは経常収支等についていろいろと御指摘のような問題があることは私も聞いております。しかし、これはどういうことでそういうことになっておるのか必ずしも定説はないわけですが、ちぐはぐな点が出ていることは事実であります。ただしかし、日米間で見ますと、日米間の統計についてはそうした大きな誤差はないわけですから、貿易収支にしても、あるいは経常収支にしても資本収支にしても、大体日米間の計算で両方がほとんど一致しているということでございますので、日本としても日本黒字について統計上の問題があるというふうなことでアメリカに対して言い張るということはできない。日米間については大体大きな誤差はないように私は思います。
  13. 松浦利尚

    松浦委員 日米間の問題はない、こう言っておられるけれども、それではトータル的にはどうですか。
  14. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 トータル的には、今おっしゃるように、OECD統計の上で誤差が出ているというか、そういうふつり合いな点が出ておるということは事実であろうと思います。これは世界のそうした資本収支だとか貿易収支だとかというものの計算の上において誤差が出てきている、それがどこに原因しているかということについては必ずしもはっきりした定説がないというふうに私は承知をいたしております。
  15. 松浦利尚

    松浦委員 それでは、私は総理大臣にお願いをしておきます。  今度ボン・サミットがありますね。そのときに、やはりこういう日米間の国際収支の問題を含めた世界貿易収支の問題ですね、こういう問題はもう少しお互いが誤差脱漏をなくすような接触をする、もっとチェックをしてみる、そういう原則を確立してもらわないと、何かこれでいったら日本だけが悪者にされてしまいますからね。その点について総理の御答弁をいただきたいと思います。
  16. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ちょっとその前に…(松浦委員「あなたはいいのよ」と呼ぶ)いいけれども、今私が言ったのにちょっと補足しますが、貿易上の、資本収支上の全世界的なものについては把握がなかなか困難である。日米間については、日本もあるいはアメリカ統計的に割合正確に把握しているわけですから、日米間の誤差というのは余りないわけですが、全世界的には把握が困難な点がそうした誤差となってあらわれておる、こういうことであります。
  17. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 世界経済基礎の判定をする統計基礎が不安定であるということは好ましいことではございません。OECDあるいはそのほかの機会を通じまして、これが是正に努めておるようでありますが、ボン・サミットにおきましても、よく検討してみた上で、大体どういう議題が出るかまだ決まっておりませんが、よく研究してみたいと思います。
  18. 松浦利尚

    松浦委員 それから、先ほど経済企画庁長官が内需の問題に触れられました。それから総理大臣もかねがね民間活力、内需拡大、こういう政策を打ってきておられるのですが、内需拡大をするためには、一体今年度の予算がどういう役割をするかというと、御承知のように、名目六・一、実質四・六、そうすると大蔵大臣、対前年度比で予算は三・七しか伸びておらぬわけですね。そうすると、これが国内景気を活性化する作用というのはないんじゃないですか。大体経済成長率よりも下回っておる予算というものが内需を拡大するなんというのはちょっとどう考えてみても考えられないですが、その予算の性格について簡単にお話しいただきたいと思うのですよ。
  19. 竹下登

    ○竹下国務大臣 我が国経済はいわゆる自由主義経済基盤に立っておるわけでありますので、政府はその中において最小限の国民全体のいわばサービスに対して寄与しておるというのが財政の立場であろうと思うのであります。ただ、著しく民間が不況の場合、いわば公共事業等財政の出動によってそれを補うケースは今日までにも間々あることであります。したがって、かつての高度経済成長の場合は別といたしまして、今日の時点で申しますならば、厳しい予算の中にありましても、とにもかくにも公共事業等の事業費の確保ということを行うことによって、いわば足を引っ張らないだけの役割を果たしておると思います。  なお、具体的な問題につきましては、いわゆる民間活力等を促進するための環境整備の予算等につきましては、これは厳しい財政の中でもこれを伸ばしておるということが作用するであろうというふうに考えられます。  なお、松浦さんに対して非常に失礼ですが、本当は誤差脱漏は私の担当でございますので、この際一言だけつけ加えさせていただくことをお許しいただきたいと思います。  誤差脱漏は、貿易外取引、また資本取引の計上漏れなどが指摘されておりますが、我々も毎年議論しますが、確かなことはわかっておりません。さきの日米ドル委員会におきましても、この発生原因等につきましてお互い議論をしまして、これは率直に申しますと、米国当局者は、現在米政府内で検討しておるが、現段階でどこにその原因があるかということはわかっていないという答えでありました、これは残念なことでございましたけれども。したがって、もう一つ別途、IMFでこの経常収支の不突合の原因究明を図ることが必要である、これは合意をいたしておりますので、作業部会を設置して検討に着手したところでございます。その作業部会には我が国からも担当者を派遣いたしておるところであります。共産圏はいわば推測値で出しますけれども、およそ自由主義圏におきましては、統計等が日本のように、よその国から言われれば、正確になることを私どもも期待して、盛んに作業を始めたところでございます。
  20. 松浦利尚

    松浦委員 私は今の総理大臣のお言葉で結構です。  ただ、今大蔵大臣が言われました。私はなぜ質問しなかったかというと、ここに外務省誤差脱漏の調査をもらったんです。大蔵省の誤差脱漏調査ももらったんです。合わせたら違うのです。だから言わなかったのですよ。その点は質問者の気持ちを配慮してください。  その次に、恐らくこの経済摩擦問題というのは、日米間のみならず、これからEC各国等も非常に大きな問題になると思う。そのためには外需依存体質から内需中心経済運営をこれから切りかえていかなければならぬ、そのことは私たちも一致するのですよ。  ただ、ここに、「国際情勢資料」というのをいただいたのです。これは政府の内閣調査室、内外情勢調査会の「週報」の二月七日号です。総理大臣、これは政府出し資料ですよ。今度ボンで開かれますサミットの前に、ディ・ウェルト紙のハンスユルゲン・マーンケという記者が書いた「世界貿易を妨げる日本」という記事をこれに載せておるのです。その最後のくだりに何と書いてあるかというと、「過去数年、日本は巧みに都合のよいところだけをみせてきた。重大会議の直前に自由化計画が発表されたり、関税がECや米国の水準以下に引き下げられた。おそらく今年も同じようなことが起こるだろう。」さらにいろいろ書かれて、「欧州にとって問題がさらに困難なのは、日本が政治的理由からまず第一に米国に配慮することである。テクノロジー分野での日米連携が欧州の負担となる危険性は小さくない。」こう書いておる。  今まで政府貿易摩擦の関係、中曽根総理になられてからのものを見ました。五十八年一月十三日に当面の経済政策の推進、五十九年四月二十七日に対外経済政策、五十九年十二月十四日には、六十年三月末までに大胆な市場開放政策をまとめる、いろいろ言ってこられたけれども、結果的に何らの効果もなかった。サミット直前になるとやはりこういうことを打ち上げて、終わり。やはり結果を調べてみたら、外需依存による我が国経済成長だったという姿が常に出てきておる、毎年毎年。もちろん内需も若干伸びておるけれども、外需に依存する部分が多い。設備投資についても、外需に依存する設備投資が非常に多い。そういう分析がちゃんと出ておる、政府統計資料に。  私は、河本特命相がえらい大変なお仕事をお引き受けになったと思うのですが、今一生懸命二十七人ぐらいのスタッフでやっておられますけれども、本当の意味で内需に転換をさせるような、経済摩擦を解消するような手だて、方法、そういった問題について三月までに、今度ボン・サミットに行って相手側を納得さして、次の機会にはこんなばかげた、ばかげたと言っては大変失礼だが、まあ事実だから。こういう外国からの指摘を受けないような状態に我が国はなる、そういう問題について、河本特命相の決意と、大変御苦労が多いと思うのですが、方策等についてお話しいただきたい。どうすればなくなるのか。
  21. 河本敏夫

    河本(敏)国務大臣 我が国の今一番大きな政治課題の一つは、自由貿易体制というものをどう守っていくかということにあると思います。日本黒字が非常に大きいものですから、我が国が引き金になりまして、世界全体に保護貿易的な傾向が出てまいりますと世界全体に迷惑をかけることになりますので、そういう意味からも政府としては真剣に取り組んでおるわけでありますが、そこで第一番に今取り上げておりますのは、市場開放という問題でございます。さしあたり、アメリカとの間に四つの分野に分かれまして専門的な交渉を今進めております。  それと、先般関税の前倒しもやりましたが、ただ、よく考えてみますと、やはりこの貿易問題の背景には私は為替問題があるんではないか、このように思います。先般のアメリカ大統領の教書などを読みましても、アメリカ赤字の原因はアメリカ側にその責任がある、こういうことを言っておりますし、先般アメリカから次官クラスが何人がやってまいりましたときも、アメリカ側赤字の責任、七割まではアメリカの責任だ、こういうことを言っておりました。私は、今のような為替の状態、非常に円安という状態では、七割では済まないんではないか、あるいは九割以上も日本以外のところに責任があるんではないか、こう思います。  そこで、この貿易問題をいろいろ整理いたしますと、一つは市場開放という問題もございますが、同時に、為替問題をもう少し国際的に調整しませんとなかなか本格的な解決はできない。それから今、第三の課題として御指摘になりましたのが内需の拡大だと思うのです。市場開放、為替問題等が解決いたしましても、国内の購買力がございませんと外国からの輸入ができないということでございますから、内需の問題と為替問題と市場開放と、この三つを並行的に進めていくことが必要だ、このように思います。最近、多角的アプローチとか総合的アプローチというようなとらえ方が出てまいりまして、総合的にやはりこの問題を解決しよう、こういう機運が出てまいったということは大変結構だ、こう思っておりますが、いずれにいたしましても、当面の大きな課題として今懸命に取り組んでおるところでございます。
  22. 松浦利尚

    松浦委員 抽象的な言葉で言われて、そのことを否定する何物もないのですが、問題は政策の後の決定だと思うのですよ。  これは総理大臣にぜひ聞いていただきたいのです。これは「経団連月報」です。この中のほとんどは自民党に政治献金をたくさんしておる人たちの集団ですよ。その雑誌ですね。その中にこういうことが書いてある。これは十二月号です。「日本政策風土の大きな欠陥は、政策目標(たとえば内需主導型成長の実現)を掲げることが政策だと理解する点にある。」内需拡大だと言えば、それが政策だと思っておる。「本来の政策とは、政策目標を明確にし、その実現を担保する政策手段がセットになっていなければならない。」こう言っておるのですよ。  ところが、言葉では確かに今言われたようなことだと思う。しかし、それはあくまでも政策であって、それに伴う政策手段というものが存在をしておらない。今度の予算の中に、今言ったような経済摩擦を解消する、内需を拡大をする、そういうための政策手段というのはないに等しいと私は思うのです。その最大の理由は何か。それは、六十五年に赤字依存体質から脱出をいたします、そういうことを中曽根さんは「一九八〇年代経済社会の展望と指針」の中で訴えられた。一方では、土光臨調から「増税なき財政再建」というこのテーマを与えられた。ところが、よくよく考えてみたら、六十五年に赤字依存体質から出るということと「増税なき財政再建」というのは、これはもともと絶対に両立しない政策なんです。  そこで私は、この「一九八〇年代経済社会の展望と指針」を読ましてもらいました。ところが、ここにある数字というのは、百国会で若干、百一特別国会で若干議論されましたけれども、まだまだこれはまともに議論されておらない、調べてみたら。百臨時国会でも議論されておりますよ。この中にある数字というのは、名目成長が七%から六%程度ですね、七から六程度、それから実質成長が四%程度、消費者物価が三%程度、完全失業率が二%程度、卸売物価が一%程度、これだけしか書いておらぬ。ですから、この「展望と指針」を指して、七、六、五抜けの四、三、二、一展望と指針、こう言うのですよ。五だけ抜けておる。ここにおられる大臣の中のだれかが言った。実際そうだと思いますよ。  ところが、ここにこの「展望と指針」をつくったときのバックデータがある。私のところには、本物がここにあるのです。いろいろな指標を書いたのをここに持っておるのです。しかし、これを出すとまたいろいろそごがありますので、これをこちらに書き写したのです。ところが、これを見ますと、いずれにいたしましても、環境改善型、環境停滞型、支出趨勢型、支出抑制型、そして中間型一、二と、こうしてある。きのう吉田委員のあれで、租税負担率が幾らかというような数字を大蔵省が単純計算をして出された。そんなのはみんなこれに載っておるのです。これを出していただかなければ、我々がいろいろこの予算を修正をしたりあるいは読み取る場合、あるいは本当に六十五年に赤字依存体質から抜け出すためにはどういう政策を我々野党はやるべきか、「増税なき財政再建」というのはどうすべきかということがわからないのですよ。  これでいきますと、昭和六十五年度にはいずれにしても、赤字国債発行額は、ケースⅠで十八兆三千億、ケースⅡで十五兆一千億、ケースⅢで二十三兆四千億。そして租税負担率は環境改善型で二七・五、環境停滞型で二七・二、中間型で二七・三、支出趨勢型で二八・○、支出抑制型で二七・七。その間の社会保障負担は毎年九%ずつ伸びる、社会保障移転は八%ずつ、そういうふうにしてずっといろんなデータを入れて、そして公共投資総額は二百四十三兆、支出趨勢型は二百六十一兆七千億、支出抑制型は二百二十四兆五千億、こういう計算をいたしまして、それじゃ六十五年度の租税負担率はどうかと言えば二七・三、それに社会保障負担の九%ずつ、こう国民所得比に計算をしてまいりますと、おおよそ一三%ぐらい、合わせて四〇%近くの負担になるというのがこのデータでも出ておるのですよ、このバックデータで。  ですから、どんなにしてもこの数字、七、六、五抜けの四、三、二、一という数字を実現するためのバックデータをあらゆるもので六つのケースにかけてやってみたが、結果的に全部赤字国債に依存せざるを得ない。ただ一つだけ支出抑制型、全く政府最終消費とかあるいは固定資本形成とかいうのをずっとゼロで抑える、そうすれば六十五年度で黒字が約十兆四千億になって、ほぼ財政改善ができるという数字なんですよ。これはどっちからどう見ても六十五年に赤字体質から脱出できる体質ではないという結論なんです。にもかかわらず、こちらでは六十五年に依存体質から脱出いたします、まさに言葉だけで、脱出するための政策、どうやって脱出するかというテーマが与えられておらない。テーマが与えられておらなければ、結局我々はこれを信用する以外にない。そうでしょう、政策なんだから。それをやめるとすれば、増税しなければもうどうにもならない。  ですから、ずっとこの予算委員会を通じて議論をしてきた過程では、もう増税するというレールが敷かれておるんだよ。そういう人を相手にして幾ら議論してみたってかみ合わないはずですよ。いろんな人が一生懸命質問するけれどもかみ合わないんだ。もう政府は初めから、これを見ても六十五年からは増税しなければやっていけぬとバックデータ出しておるんだから。だから、このバックデータというのは非常に大切なんですよ、国民にとっては。まじめに予算を議論すればするほど、このデータというものはここに出してもらわなければならぬ。  何遍お願いをしても出してくれない。予算審議するのに、正直にあなた方はいろいろなデータ出してきておるのです、さっき言ったように。だから今まで私はこれだけの議論ができた。これからいざ予算に入って具体的に議論をして、野党が予算修正をして、どういう点を修正するか。六十五年の赤字脱出はこれは難しいじゃないか、もっと緩やかに先に延ばしたらどうかとか、増税しなくてもそうやればやれるじゃないか、あるいはどうしても六十五年度こうするならこういう方法があるじゃないかという議論がかみ合うのですよ。データ出してください。このデータがなければ審議できないじゃないですか。委員長、そうでしょう。
  23. 大竹宏繁

    ○大竹政府委員 「展望と指針」を策定する過程におきましては、内部におきましていろいろ検討をいたしました。ただいま先生御指摘のような数字も、担当者のレベルであるいは勉強をするというようなこともあったと思います。  ただ、経済審議会で御議論をいただきまして、「展望と指針」として御客申があり、政府が決定をいたしました「一九八〇年代経済社会の展望と指針」、この中長期の政策運営の基本的な方針になるものの根拠といたしましては、そのような作業は行っておりません。御承知のように、中期的な基本的な経済の展望と政策の大まかな方向を示し、それに基づきまして基礎となる基本的な計数をお示しし、それを毎年の経済政策の運営あるいは予算審議の中で具体化していくというような方式をとっておるわけでございますので、「展望と指針」は、そのような計数的な資料をもとに作成したものではございません。
  24. 松浦利尚

    松浦委員 経済企画庁はあんなに言えと言われておるのだからしようがないですよ。これは政治的判断ですよ。  いいですか。言葉というのは修正がきくのですよ。例えば一%枠というのをいつの間にか言葉を変えるでしょう。そうじゃなかった。一般消費税(仮称)、国会決議があったけれども、解釈によってどうでもなるでしょう。宇宙の平和利用だって政府側が自由に解釈するでしょう。確かに言葉はさっきから私が言うように理解できますよ。しかし言葉は、数字じゃないから修正が可能なんですよ、言葉は変えればいいのだから。しかし、それで困るのは国民の側です。あら、増税しないと思っておったらいつの間にか増税になった、いや、あれはこの解釈ですわ、こう言われたのじゃ困る。  だから、私は冒頭いろいろな議論をしましたね。議論をして、数字というのは情勢が違う、環境が変わる、数字は変わるのですよ。だから結果が悪くても、結果が変わってもそれは許されるのです。なぜかといったら、経済というものは常に動いておるからです。だからそういう意味ではこの資料は私たちが予算を審議するためにはどうしても必要なんです、これからの大きな問題として。委員長、それだけは理解してくださいよ。(発言する者あり)  それでは要求します。この「経済社会の展望と指針」のバックデータになりました主要数値のシナリオ間比表、それからそれに伴う計量委員会計算をした財政収支の資料、この二つを要求します。
  25. 大竹宏繁

    ○大竹政府委員 先ほども御答弁申し上げましたように、「展望と指針」作成の過程におきましてさまざまな検討をいたしました。その数値、ただいまお示しの数値もあるいはそのときの過程の一つなのかもしれませんが、私は、そういう数値基礎になって「展望と指針」をつくったものではないということを先ほど申し上げました。従来、いろいろモデル等を使いまして計算をしたというのが経済計画ではございましたが、「展望と指針」におきましては、そうしたいわゆる数字を細かくお示しし、それが唯一の目標であるかのようないわゆる従来型の経済計画ではなくて、定性的な、基本的な数値をお示しし、毎年見直しをやっていく、そういう形で「展望と指針」という新しい経済計画というものをお示ししておるわけでございます。  したがいまして、現在の「展望と指針」の基礎になる数値ではございませんので、検討の過程におきましていろいろ勉強したもののあるいはその一つではあろうかとは存じますが、現在の計画の基礎資料ではございませんので…(発言する者あり)
  26. 天野光晴

    天野委員長 もうちょっと静かにして聞いてください。
  27. 大竹宏繁

    ○大竹政府委員 その数値をお出しすることは適切ではないというふうに考えております。(発言する者あり)
  28. 松浦利尚

    松浦委員 それでは、改めて再度資料要求をいたします。  最後にこの経済審議会に出された、経済審議のメンバーに出された主要数値のシナリオ間比表――間の比較表、それから経済企画庁経済企画庁において計算をした、これは審議会には出されておりません、六十五年度の財政収支の試算、これは最終的に経済企画庁の内部でされた資料、この二つを要求します。
  29. 天野光晴

    天野委員長 大竹局長。明快に答弁しなさい。
  30. 大竹宏繁

    ○大竹政府委員 シナリオとして経済審議会に数値をお出ししたことはございません。  それから、担当者が勉強をしたものは幾つかあるかと思います。先生がお示しになった数字もその一つではないかと思います。  それからもう一つ、「展望と指針」をつくるときのバックデータでございますが、従来の経済計画策定に当たってのさまざまな反省から、数字がひとり歩きするといったようなこともございましたので、政策の方向を示す定性的な計画をつくるということから、委員の皆様方の間でコンセンサスを形成するべくさまざまな議論を行って数字を決定するという手法をとりましたので、経済審議会において特定の数字あるいはシナリオを議論して「展望と指針」をおつくり願ったということではございません。(発言する者あり)
  31. 天野光晴

    天野委員長 松浦君の質問は全部を留保します。全部留保します。(「じゃ休憩だ」と呼ぶ者あり)休憩はいたしません。休憩はいたしません。留保いたします。(発言する者あり)理事会の申し合わせに文句を言ってもらっては困ります。(発言する者あり)  松浦君の質疑は留保することといたします。  本会議散会後再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時三十分休憩      ――――◇―――――     午後二時三十四分開議
  32. 天野光晴

    天野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。神崎武法君。
  33. 神崎武法

    ○神崎委員 公明党の神崎武法でございます。  初めに、防衛問題について質問をいたします。  総理は、二月四日の本委員会におきます小杉委員の、我が国の防衛は陸に重点を置く防衛よりも海空に重点を置くというふうに考え方を切りかえるべきである、こういった質問に対しまして、五九中業において海空を重視した、まあ洋上撃破、そういうものを中心にした思想で大いに五九中業を練るように防衛庁に指示してある、このように答弁をされているわけでございます。海空中心の防衛力策定を明確にされたのでありますけれども、これは防衛力整備の根幹にかかわる方針の重大な変更と考えるものであります。総理はこの海空重視の防衛力策定をいつ防衛庁に指示されたのか、伺いたい。  その後、我が党の二見委員質問に対しましては、これは指示というのは適切ではなかった、このように発言を修正されているのでありますけれども、真意はどうでありましょうか。
  34. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 海空重視という意味は、そのときも申し上げたと思いますが、海空からの侵略という意味であります。したがって、洋上撃破とかそういう言葉が出るわけであります。ですから、陸上自衛隊をないがしろにする、そういう意味ではない。海空からの侵略に対して重点を置くということ、陸上自衛隊についてもやることは幾らでもある、そういう意味で御解釈を願いたい。  それから指示という言葉でございますが、これは、私のところへ栗原君が五九中業をやるという場合にいろいろ相談に来ました。そういう際とか、あるいはそのほか私のところへよく寄ります、防衛庁長官等が。そういう際に、事に触れていろいろそういう問題について私の考えを述べて、そして参考にしてやってもらいたい、そう言ってきておる。したがって、正式文書による指示という性格のものではありませんが、最高指揮権者としての意見をよくかみ砕いでやってもらいたい、そういうことであります。
  35. 神崎武法

    ○神崎委員 総理は、昨日の本委員会での質疑につきましても、やはり海空防衛力の充実を優先する、そういう角度から御答弁をなさっているんじゃないでしょうか。
  36. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 海空からの侵略に対して対抗できるような防衛を考える必要がある、そういうことであります。
  37. 神崎武法

    ○神崎委員 また、防衛局長も本委員会におきまして、五九中業において我が国のシーレーン防衛体制がほぼ完成する、こういった見方を答弁されているわけでありますけれども、この海空重視という考え方、あるいはシーレーン防衛をどうするかという点、この点について、五九中業作成に際しての基本的な考え方にうたわれていないわけでありますが、その点はどういうことでしょうか。
  38. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  五九中業は、しばしば御説明申し上げておりますように、「防衛計画の大綱」に定める防衛力の水準の達成を期するということを方針といたしまして、作成を今作業をしておるところでございます。そういった大綱水準の達成というふうな観点から見ますと、現在の自衛隊の防衛力というものは、海空自衛隊の作戦用航空機などを中心といたしまして大綱の別表に定める規模からかなり落ち込んでおるという状況がございますから、そういう観点から見ますと、やはり大綱水準達成のためには、防空能力でございますとか、シーレーン防衛能力の向上ということに重点を置いていくことが当然に必要になってくるわけでございます。  それからまた、だからといって陸上防衛力を全然考えていかないということではございませんで、これについては、総理からもお話ございましたように、我が国が海空経由での侵略を受けるというふうな地理的特性を持っておりますから、そういう意味で、洋上ないし水際で敵を防ぐということの能力を向上する必要が陸上防衛力についてもあるわけでございます。そういう意味で、陸上自衛隊についても重点的、効率的な整備をしていかなければいけないというふうに考えております。  いずれにいたしましても、陸海空の三自衛隊を通じまして、我が国の地理的な特性あるいは防衛技術の動向等を踏まえまして重点的、効率的な整備をしていくというのが現在の五九中業の考え方でございます。
  39. 神崎武法

    ○神崎委員 総理は海空重視と言われ、防衛局長も、シーレーン防衛体制がほぼ完成する、こういうふうに言われておるわけでございますけれども、昨年の五月八日の国防会議におきまして、防衛庁において五九中業の作成に際しての基本的な考え方を報告しているわけであります。この基本的な考え方に従って防衛庁が五九中業の作成作業を行うということが国防会議で了承されているわけであります。その基本的な考え方の中に、今総理が申した海空重視、あるいは防衛局長が言うところのシーレーン防衛体制の完成あるいはほぼ完成、こういったことは一言も入ってないじゃないですか。
  40. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  ただいま申し上げましたように、その国防会議に報告をし、御了承をいただきました五九中業の作成の基本的な考え方と申しますのは、まず一つは、「「防衛計画の大綱」に定める防衛力の水準の達成を期する」ということでございますし、それからさらに、真に有効な防衛力の発揮に資しますように、特に正面と後方のバランスに配慮しなければいかぬとか、継戦能力等の向上に努めなければいかぬというふうな幾つかのことを御報告をして御了承をいただいているわけでございます。  その場合に、大綱水準の達成を期するということを具体的にかみ砕いて考えてみますと、先ほども申し上げましたように、現状を見ますと、海空の自衛隊におきます作戦用航空機等を中心にして、大綱の別表の水準からかなり勢力が落ち込んでいるという状況がございます。そうしますと、やはり大綱水準の達成を期するということになれば、防空能力あるいはシーレーン防衛能力の向上ということについて、私どもとしても重点的に配慮することがすなわち大綱水準の達成を期するということになるわけでございます。  それからまた、先ほど申し上げましたように、だからといって陸をないがしろにするということではもちろんないわけでありまして、そういったことで陸海空それぞれについて、我が国の地理的な特性なり防衛技術の動向を配慮していくということ自体が現在の五九中業作成の考え方でございますし、そういったことは当然のことであるというふうに考えておるわけであります。
  41. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、この基本的な考え方の中で言うところの、要するに大綱に定める防衛力の水準の達成、この中に総理の言われる海空重視あるいはシーレーン防衛のほぼ完成、こういったことも含まれる、こういう趣旨に理解してよろしいですね。
  42. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 そういうふうに御理解いただいて結構だと思います。
  43. 神崎武法

    ○神崎委員 防衛庁長官は我が党の二見委員質問に答えまして、五九中業において「防衛計画の大綱」に定める防衛力の水準の達成を期すると答弁をされているわけであります。この基本的な考え方については、ただいま申し上げました昨年五月八日の国防会議に報告して了承を得ているところであります。総理はこの点について明確な答弁をされていないわけでありますけれども、総理は国防会議議長として、五九中業において大綱の水準達成を期するというこの基本的な考え方を了承されていると思いますが、いかがでしょうか。
  44. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 もちろん了承しています。
  45. 神崎武法

    ○神崎委員 総理は、了承に当たりまして、防衛費GNP比一%のもとに五九中業で大綱の水準達成を期するということで了解されたのか、あるいは了解の時点でGNP比一%突破もやむを得ない、ともかく五九中業で大綱の水準達成を期することが大事だ、こういうお考えに立って了承されたのか、いずれでしょうか。
  46. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 GNP一%はできるだけ守るように努力をする、そして大綱の水準達成を大事に考えてこれを推進していくということです。
  47. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、総理としては大綱の水準達成を期するのを優先してお考えになっているのか、GNP比一%遵守を優先してお考えになっておられるのか。
  48. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは大綱ができたとき及びGNP一%の閣議決定が起きたときのいきさつを今まで申し上げているとおりで、それでお考え願えればわかると思います。
  49. 神崎武法

    ○神崎委員 私が総理お尋ねをしているのです。総理、お答えください。
  50. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 つまり、最初に大綱水準、大綱というものができまして、それから一週間たって一%という節度ある枠がつくられた、やはり大綱をやるというのが当時第一義的な考え方であったと思うのです。しかし、それにしても、やはり国民の皆様方に安心感を抱いていただくように節度ある防衛力をつくろう、進めよう、そういう考えに立って一%の枠というものが次に決められた、そういういきさつですから、やはり大綱の水準達成というのが先にまず整えられたということを注目しなければならぬと思います。
  51. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、今の総理答弁からいたしますと、大綱の水準達成のためには、五九中業においてGNP比一%の枠を超えてもやむを得ない、そういうふうにお考えになっておるのでしょうか。
  52. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この点は前からここで矢野委員の御質問にもお答えをいたしましたとおり、私は今一%の枠を守るように、守りたい、そう申し上げておるのであります。  ただ、その後、矢野さんの御答弁の中でも、国会の御論議あるいは政府答弁等踏まえて慎重に対処する、そういうことも申し上げておるわけであります。
  53. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、総理としては五九中業において大綱の水準が達成しなくてもやむを得ない、もっと延ばしてもいい、そういうお考えは全くお持ちになっていないということでしょうか。
  54. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 五九中業においては、大綱を達成することを期するという考え方でつくってもらおうと思っております。
  55. 神崎武法

    ○神崎委員 それは答弁になっていないのじゃないでしょうか。要するにGNP比一%遵守、要するに大綱の水準達成というのが二つとも可能であるというふうに総理はお考えになっているのかどうか、その点確認します。
  56. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点は、矢野先生にお答えしたように、いろいろなファクターがありますと、関数がありますと、その変化によってまだ不確実な要素がある、それは申し上げたとおりであります。
  57. 神崎武法

    ○神崎委員 いや、将来のことなら確かに総理がおっしゃられるように、不確定な要素があると思うのです。ただ、昨年の五月八日の国防会議において、五九中業において防衛大綱の水準達成を期するという方針を総理として御了承されたわけでありますから、その時点でどうお考えになっていたのか、どういうふうに見通しを考えていらっしゃったのか、それを今聞いているわけです。
  58. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 できるだけ一%を守るように努力する、そういう考えでおりました。
  59. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、GNP比一%を守る、そういう前提に立って五九中業の作業を考えたときに、このGNP比一%の枠でいくと、大綱の水準が五九中業において完成されないこともあり得る、そういうふうに伺ってよろしいでしょうか。
  60. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まだ五九中業というものをつくっている最中でございますから、そのできぐあい等を見ましてから、いろいろ正確なことは申し上げるべきであると思います。
  61. 神崎武法

    ○神崎委員 この点についてはまだ後ほど議論したいと思いますけれども、次に、対米武器技術供与とココムの規制の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  アメリカの軍事問題月刊誌インタナショナル・コンバット・アームズの最新号で、レーダーに機影がほとんど映らない、見えないジェット戦闘機二機が実用化されたこと、二機の機体にレーダー波を吸収する日本製塗料が塗られているということが明らかにされているのであります。この見えないジェット戦闘機はロッキード社が開発したものでF19、F21と命名され、現在カリフォルニア州エドワーズ空軍基地で試験飛行が行われている、そういうことが報道されているわけでありますが、その事実を承知されているかどうか。
  62. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 委員指摘の、米国インタナショナル・コンバット・アームズ誌にその記事が掲載されたという報道については承知をしておりますが、インタナショナル・コンバット・アームズ誌の当該記事については、記事の内容を確認しておりません。
  63. 神崎武法

    ○神崎委員 フェライト製の電波吸収塗料が、この見えないジェット戦闘機に使用されているものと思われるわけでありますけれども、この電波吸収塗料の特許、これは防衛庁がお持ちになっていると思いますが、いかがでしょうか。
  64. 筒井良三

    ○筒井政府委員 防衛庁ではここ十数年以来、レーダーの電波を吸収するための塗料でありますとか、材料でありますとか、研究しております。その一環といたしまして、マイクロ波帯電波吸収塗料に関する特許がございますが、これは先生の御案内の航空機でありますとか、ミサイルでありますとか、その用に使えるものではないと考えております。
  65. 神崎武法

    ○神崎委員 防衛庁の持っております特許技術、これは米国側に提供されているかどうか、お尋ねをいたします。
  66. 筒井良三

    ○筒井政府委員 本塗料に関します特許は、五十七年にTDK社にその実施権を許諾しております。米国に行っているかどうかということは、私存じません。特許は与えておりません。
  67. 神崎武法

    ○神崎委員 昭和五十八年の十月末から十一月にかけまして、米国防省の防衛技術審議会の国際産業協力部会のカリー元米国防次官を団長といたしますコミッションが来日いたしまして関心を示しました日本の武器技術は、日電の電波吸収フェライト、それから音声認識装置、それから三菱のIRCCDとか日立のCUC、炭化銅繊維であったということが言われているわけであります。この時点では電波吸収塗料というものに米国側の関心が強かったわけであります。  ところが、その半年後にこのカリー・ミッションの報告書が米国で発表されておりますけれども、その報告書の中には、米国側が我が国の防衛分野における技術として関心を持っているものとして十六項目を挙げているわけでありますが、その十六品目の中に電波吸収塗料は入っていないのであります。今までは一番関心のある四つのうちの一つに入っていたものが、半年後にはこの関心対象になくなっているわけであります。この事実からいたしますと、既にこの電波吸収塗料というものは米国に供与されているのじゃないか、そういう疑いが大変濃厚であるわけでありますが、いかがでしょうか。
  68. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 ただいま先生御指摘の、アメリカの国防省国防技術審議会のタスクフォースが一昨年の秋に来日いたしまして、約一週間関係企業及び防衛庁、通産省等を訪問いたしております。その際、先生御指摘日本電気に対するフェライトに関する技術につきまして具体的な要請、打診があったかということでございますけれども、私どもの承知している限りでは、その事実はございません。  また、先生御指摘のようにこの報告書というのは昨年八月に発表されておりまして、ガリウム砒素素子など十六の分野を可能な協力分野として明らかにいたしておりますけれども、これは民間の方々から構成されている調査団でございますけれども、調査団として関心を示したものでございます。したがいまして、その当時米国政府あるいは国防総省としての関心項目ではございません。  それから、十六の技術分野と申しましてもそれぞれが非常に広範囲な技術を総称しておりまして、日本に供与を希望する技術を特定しているものではございません。  いずれにいたしましても、我が国に対しましてアメリカ側から武器技術の供与につきまして具体的な要請がまだございません。まして御指摘のようなフェライトにつきまして、我が国から米国に対して従来武器技術供与というものがなされたという事実はないと私ども承知いたしております。
  69. 神崎武法

    ○神崎委員 米国側の関心を示したこの電波吸収塗料、これは武器技術でしょうか、汎用技術でしょうか。
  70. 野々内隆

    ○野々内政府委員 御指摘の塗料は電波を吸収するという目的に、例えば船舶のマスト等に使われております汎用品というふうに考えております。
  71. 神崎武法

    ○神崎委員 先ほど私が申し上げましたように、アメリカの軍事問題月刊誌に、この日本製の電波吸収塗料が既に見えないジェット戦闘機に使われているという報道がなされておりますし、さらにそのアメリカの防衛技術審議会のミッションが来日したときに関心を持っていた電波吸収塗料、それがその後正式の報告書の中では、米国として関心を持っている技術としてうたわれていないわけであります。私どもは、先ほど申し上げました既に米国に供与されているのではないか、そういう危惧というもの、それを確認する意味におきましても、この見えないジェット戦闘機に日本製の塗料が使われているかどうか、これについて政府として調査をしていただき、その結果を本委員会に報告をしていただきたいとお願いをする次第であります。山
  72. 筒井良三

    ○筒井政府委員 米国の航空機は、Fの18、Fの20といったものはございますけれども、Fの19、Fの21といった御指摘のような航空機はございません。イスラエルのクフィルという航空機に対しましてF19という名前を陰で言う向きがあるとかそういった話がある程度でございまして、御指摘の航空機はございません。  それから、航空機をレーダーで見えなくする技術をステルスと申しますけれども、その技術は、塗料を塗るというようなことは、まず私ども技術屋の間ではございません。したがいまして、その報道は、技術的観点から見ますと余り真実性のないものかと感じられるものでございます。
  73. 神崎武法

    ○神崎委員 念のために調査をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  74. 筒井良三

    ○筒井政府委員 調査をするような報道であるというぐあいに私どもとしては考えられません。
  75. 神崎武法

    ○神崎委員 私は調査をしていただきたいというふうにお願いしているわけであります。(発首する者あり)
  76. 天野光晴

    天野委員長 神崎君のただいまのお話ですが、真偽のほどを調査させます。
  77. 神崎武法

    ○神崎委員 昨年十一月六日、武器技術共同委員会、JMTCの第一回会合が開かれたわけでありますが、そこから、米国側から武器技術供与の具体的要請があったかどうかという点、お尋ねをいたします。
  78. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 昨年十一月六日の第一回会合は、構成メンバーの顔合わせ程度のものをいたしまして、今後必要があれば随時集まろうということにいたしましたが、その場でアメリカ側から、武器技術の具体的な提供要請があったということはございません。
  79. 神崎武法

    ○神崎委員 この対米武器技術供与の問題は、昭和五十六年六月の大村防衛庁長官とワインバーガー国防長官との会談で、米国側からの強い要請が出たのが発端で、昭和五十八年十一月八日の交換公文により対米武器技術供与の道が開かれたわけであります。米国側からの具体的必要性があった、こういう強い要請があったからこそ、こういう形で交換公文が交わされたわけでありますけれども、今日まで供与の具体的要請がないという点、どうも納得がいかないわけであります。要するに武器技術が汎用技術という形で米国に供与されている可能性はないのかどうか、政府として、武器技術が汎用技術の形をとって米国に供与されるのをチェックするためにどういう措置をとっているのか、この点についてお尋ねをいたします。
  80. 村岡茂生

    ○村岡政府委員 武器技術が汎用技術という形で対米供与されていることをチェックしているかという御質問と承りましたけれども、武器三原則等に準じまして武器技術の対外供与を規制しております私どもの立場といたしましては、その技術の内容を判断いたしまして、当該技術が専ら武器の設計、製造、使用にかかわる技術と客観的に判断できるかどうかというのがその判断の基準でございます。したがいまして、当該技術が汎用技術に化けるというようなことはないものと私どもは理解しております。
  81. 神崎武法

    ○神崎委員 私もこれまでの本委員会会議録も読ませていただいたわけでありますけれども、これまで対米武器技術供与の問題は、武器技術共同委員会を通じまして武器技術も汎用波術もともに米国に供与されるようになるのではないか、嫌がる企業から無理やり汎用技術を米国に供与させることがあってはならない、こういう角度からいろいろな論議がなされているわけであります。したがいまして、JMTCで取り扱うのはあくまでも武器技術であって、汎用戦術はJMTCとは関係がない、こういう観点から議論がされてきたわけでありますけれども、私自身はその後の状況を見てまいりますと、我が国の企業の方もハイテクの対米売り込みをむしろ図ろうとしている、そういう動きが活発になってまいっておりますし、米国側も本当に我が国の技術の中で欲しがっているもの、これは武器技術ではなくして汎用技術であるということが明らかになってきているわけであります。そういたしますと、昭和五十八年十一月八日の米国に対する武器技術供与の交換公文、これは武器技術を供与する道を開くというよりも、この交換公文前文後段の方、つまり「日本政府は、武器技術以外の防衛分野における技術の日本国からアメリカ合衆国に対する供与が、従来から、また、現在においても、原則として制限を課されていないことを確認し、関係当事者の発意に基づきかつ相互間の同意により実施される防衛分野における技術のアメリカ合衆国に対する供与を歓迎します。そのような供与は促進されることとなりましょう。」こちらの方に意味があるように思われるのであります。この交換公文の前文後段が汎用技術の対米供与を加速したのではないかと私は思うのであります。  また、たとえ汎用技術であっても、防衛分野における汎用技術、つまり兵器製造に汎用技術を使用する場合において今どういうふうなチェックがなされているか。ココムにおける規制があるわけでありますけれども、対米関係ではこれはチェックがないのだろうと思うわけであります。果たしてそれでいいのかどうか。このことは、単にアメリカに対してだけではなくてココムで規制されていない国に対しても、防衛分野の汎用技術の輸出のあり方、これについて我が国の国益という観点から、果たしてチェックしないでいいのか、こういう点が私は問題としてあろうかと思うわけであります。大変難しい問題を含んでおると承知しておりますけれども、この点について政府としてはどのようなお考えをお持ちになっているか、お尋ねをしたい。
  82. 村岡茂生

    ○村岡政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、武器技術であるか汎用技術であるか、技術の内容に照らして客観的に判断するわけでございます。ただいま委員指摘の点は極めて難しい問題をはらんでおると思いますが、私どもの基本的な考え方は、武器技術三原則等に準じて行っている武器技術の供与規制、これはあくまでも武器技術に限定すべきものと理解しております。  また同時に、それ以外の汎用的な技術、民生に幅広く用いられている技術、これについても規制すべきであるということになりますと、私どもといたしましてはこの技術の国際交流、これによりまして経済の活性化あるいは人類福祉の向上に寄与する面、非常に多大なものがございますので、一般論といたしましては、技術の国際交流を規制すべき立場に政府はない、このように理解しております。ただし、その点に関しまして、ココムの規制あるいは武器技術供与の規制というようなものは例外として政府が介入するもの、このように理解しております。
  83. 神崎武法

    ○神崎委員 先ほど私が申し上げました昨年八月に米国で発表されました防衛技術審議会のコミッションの報告書は、米国側が関心を持っている技術として十六品目を挙げていたわけでありますが、もう一つ重要な点を指摘しているわけであります。要するに「今後十年から二十年の間に我が国から第三国への汎用技術、機器の輸出増、非殺傷防衛機器の特定の第三国への輸出などが、我が国の武器禁輸三原則の枠組みの域を脱しないと解釈されて実施される。」これについて危惧の念を抱いているのであります。  要するにこの防衛技術審議会のコミッションの報告書の趣旨からいたしましても、米国が我が国に求めておりますことは、汎用技術を中心とするハイテク技術の対米供与、これが交換公文で道が開かれたわけでありますが、もう一つ、防衛システムに不可欠なハイテク技術が汎用技術としてココムの規制の網の目をくぐって共産圏に輸出あるいは流出することの阻止、この二つであろうかと考えられるのであります。この対米武器技術供与の問題というものは、ココムの規制強化、こういうものとリンクした形で米国側から出されてきたのではないかと思うわけであります。またその一環として米国側から我が国の特許制度に秘密条項を制定すべきである、こういった要望もなされているのではないでしょうか。その点と、我が国として対米武器技術供与の問題とココムの規制強化の問題というのをリンクして考えるのかどうか、二つの関係をどのように理解されるのか、この点についてお尋ねをいたします。
  84. 村岡茂生

    ○村岡政府委員 ココムの規制と対米武器技術供与というものをリンクして考えるかというお尋ねでございますが、私どもといたしましては、それぞれ異なる観点からそれぞれが行われておるものと理解しております。すなわち、対米武器技術供与を行う道を開くことといたしましたのは、防衛分野におきます我が国の米国との技術の相互交流を図るということが安保体制の効果的運用を確保する上で極めて重要である、このように判断したからでございます。他方、ココム規制は、自由主義諸国の一員といたしまして自由主義諸国の安全保障を確保する、こういう見地から国際協調の立場で実施しているものであります。したがいまして、その理念、よって立つところの目的が異なります関係から、やや異なった規制が行われているわけでございます。  いずれにいたしましても、我が国といたしましては、いろいろ幅広い国益という見地を十分踏まえまして、自主的に判断し、慎重に決定してまいりたいと思っておる次第でございます。
  85. 神崎武法

    ○神崎委員 実際問題といたしましては、本年一月に輸出貿易管理令の一部を改正して、全体として対共産圏輸出の規制を強化いたしておりますし、その他規制強化へのいろいろな動きが指摘されるのでありますけれども、その点についてはまた別の機会に論議いたしますとして、ことしの二月六日、七日にパリでココムの高級事務レベル会議が開かれたということが伝えられるのであります。これは米国政府が対中国向けのココムの規制を緩和するように非公式にココムの加盟国に求めてきた、これに基づいて行われたというのでありますが、ここでこの軍事目的に利用可能な西側諸国の民間高度技術の対ソ圏輸出規制をこれまでより頻繁かつ計画的に見直すことを決めるとともに、高度技術の中国向け輸出手続の簡素化を図ることで合意したと言われるわけでありますが、この協議結果はどうなのか、また、我が国として対中国向けココムの規制緩和について基本的にどのように考えておられるのか、お尋ねをいたします。
  86. 国広道彦

    ○国広政府委員 米国といたしまして、ソ連との貿易、経済関係につきまして、安全保障上の観点からこれをとらえることが重要であり、そのため西欧友好国との協調が重要であるという考え方を持っているというふうに我々は理解しております。ココムの運用に関しまして、米国はこの観点から種々意見を述べておりますが、我が国としましてはこれを慎重に検討し、他のココム参加国との十分な協議を図りつつ対処しているところでございます。  先生御質問のココム高級事務レベル協議でございますが、本年二月、パリにおきまして同協議が行われまして、これまでのココムの活動の評価を行うとともに今後の活動につきまして話し合いが行われました。しかしながら、具体的な内容につきましては参加国の申し合わせがございまして、言及することは差し控えさせていただきたいと思います。  最後に御質問の中国向けココム規制につきましての我が国の考え方につきましてでございますが、我が国としましては今後とも中国の近代化建設の努力にできる限り協力していくとの基本方針及び他のココム参加国との協調を勘案しつつ、円滑な対応が行われるよう努力してまいる所存でございます。
  87. 神崎武法

    ○神崎委員 次に、SDI、戦略防衛構想につきましてお尋ねをいたします。  私は、総理のこの問題についての認識のうち、後半の判断、要するに、SDIの見通しはよくわからない、したがって情報を収集してよく検討をする、随時協議をする、この総理の認識についてはまことに同感であるわけでありますけれども、前半の認識、このSDIは非核兵器であるあるいは防御兵器である、核兵器の究極的廃絶を目指すものであるという認識については多くの疑念を抱いているのであります。  時間の関係上、何点かについてお尋ねをいたしたいと思いますが、まずSDIが果たして非核兵器なのかどうかという点であります。  このSDI構想、これはABMシステム、ミサイルの最終段階を捕捉するABMシステムを、さらにミサイルの発射直後の段階まで広げて最初から最後まで多層的に防衛をしていこう、こういう構想でありますけれども、現にソ連のABMシステムでは核ミサイルが使われている、これが指摘されている点であります。したがいまして、アメリカのSDIにつきましても、この構想の中の最終段階では迎撃ミサイルあるいは弾帯などで攻撃するということが言われているわけでありまして、このミサイルに核ミサイルが使用される可能性があるのじゃないかという点が第一点であります。  もう一点は、この上昇中のミサイルをレーザー光線を宇宙中継反射鏡で反射して攻撃する、あるいは地上からあるいは衛星からの粒子ビームで攻撃すると言われているのでありますけれども、要するに、このレーザー光線あるいは粒子ビーム、こういった高エネルギーを生ずるには地上で核爆発を起こす、そのエネルギーをもってミサイルを攻撃する、それが強力な兵器になるのじゃないか。したがって、このSDI構想というものを強力なシステムにすればするほど、非核と核と、それを組み合わせたシステムとしてなっていくのじゃないか、私はこのような疑問を生ずるわけであります。したがいまして、これは非核兵器だからいいというようなそういう考えじゃなくて、そこは冷徹に、これは核と非核とを組み合わせた、そういうSDIとして、我が国としてどう対応するか、そういう問題提起が必要なのじゃないかと私は思うわけであります。その点について、総理、いかがでしょう。
  88. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 SDIにつきましては、ロサンゼルス会談でレーガン大統領から、非核防衛兵器で、そして核の廃絶を目指す、そういうことを私直接言われたもので、つまりアメリカの大統領がそう私に言う以上はそういうものだと一応受け取るのは当然のことであります。しかし、それがどういうふうに発展して、どういう体系になっているのかまだわかりませんから、したがいまして、留保を付しまして、そして理解を示すという程度にとどめておいた。憲法及び日本の今までの諸政策というものを踏まえてということまで留保しておいたのは、SDIが今度とういうふうに展開していくかよくわからない点もありますから、そういうときの用意に備えて注意深く留保もしておいた、そういうことであります。さまざまな構想あるいは内容等が読み物風に紹介されていますが、やはりこれはアメリカ当局の責任ある説明というものを対象にして議論するのが一番正しい、そう思っております。
  89. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、在日米国大使館のこのSDIにつきましてのオフィシャル・テキストというのがあります。これはSDIというのはどういうものかということで在日の米国大使館がつくったテキストでありますけれども、その中では、このSDIが非核兵器だという言い方はしていないのであります。「いくつかの非核技術は弾道ミサイルに効果的に対処するものとして有望である。」このようには言っております。ただ、「SDIは幅広い研究計画であり、効果的な防衛システムとはどのようなものかに関するいかなる単一の概念またはいかなる先入観にも基づくものではない。広範な技術を含むいくつかの異なる構想が現在検討されている。単一の構想や技術で、最善あるいは最適だと判定されたものはまだ一つもない。」こういうことが言われているのであります。まさに総理が今おっしゃられたように、アメリカのこの公式のオフイシャル・テキストの方が、要するにこれは非核兵器だ、こういう予断、偏見を持ってはいかぬということを言っているのじゃないでしょうか。
  90. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 アメリカの大統領がそう言うのですから、そういうものがアメリカの内部においては構想されているのかもしれません。一時、ソ連側がいろいろ研究しておったのは、小型核爆発をやって、その中性子ビームを取り出して、それを衛星にぶつけるとか、そういうような発想も前に私は聞いたこともあります。今そういうものと結びつけて体系ができているのかいないのか、その辺まだ全くわかりません。しかし、大統領が私に非核兵器、そういうことを言っている以上は、何かそういうものを構想しているとも考えられます。その辺は、出てきたものを見て判定する、そういうことが正しいと思います。
  91. 神崎武法

    ○神崎委員 総理は、このSDIがどういうふうに今後発展するかわからないということで留保をつけられた、そのように御答弁されているわけでございますが、私も先日の総理の御答弁を伺っておりまして、総理がなぜ、将来我が国に協力要請があったときに憲法、それから非核三原則の範囲内で我が国は協力します、そういう留保を、非核三原則をどうして出されたのかということを私は最初疑問に思ったわけであります。このSDIというものが非核兵器であれば、そんな非核三原則を持ち出して、その範囲内で協力をするなんということは要らないはずであります。要するに、総理としても、ただいま御答弁されたように、このSDIというものが今後の発展によっては核も含んだそういうシステムとして構成される可能性がある、その場合には我が国としては核の部分について技術協力はできない、非核の部分についてだけしか技術協力はできないんだ、そういう趣旨で言われたんじゃないかと承ったのですが、いかがでしょうか。
  92. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 非核三原則は、SDIとは直接は関係ないんです。非核三原則は、アメリカとの安保条約の運用について核兵器持ち込みを拒否するという趣旨でできておるので、日本アメリカ及び日本の領域、そういうものが対象になっておるわけです。SDIは、アウタースペースと言われておるように宇宙の方面でありまして、日本の領域とは関係ない問題であります。しかし、どういう体系になってくるかという点については、世界の平和や安全という面からもいろいろ注意深く見ておかなければいけない。そういう意味において憲法及び日本の国是、そういうことを言うたのであります。それは、注意深く先回りしてそういう留保をしておいた、そういうことなのであります。
  93. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、総理としては、将来このSDIというものが、非核兵器であればいいですけれども、核と非核兵器との統合したシステムということになった場合に、我が国として非核部分だからそれに対しては協力しましょう、そういうお考えなんでしょうか。その点はどうなんでしょうか。
  94. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 非核三原則は堅持します。しかし、SDIというものがどういう体系で出てくるかということは、総合的によく見て、その上でよく判定したい、そう思っておるのです。
  95. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、SDIについでこれが本当にレーガン大統領が言うとおりの非核兵器であるのかあるいは核も含めたそういう核、非核の兵器なのか、その点がわかるまでは我が国としてはこれに対して技術協力はしない、このように受け取ってよろしいでしょうか。
  96. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 技術協力というような場合でも、やはり我々が納得するということがなければやれっこないし、日米間の安保条約の枠組みという面につきましても、そういう点は我々として十分理解した上で判定をするということであります。
  97. 神崎武法

    ○神崎委員 このSDIへの我が国の対応ということで、既に我が国に対して技術協力要請が行われているというようなことも言われておりますけれども、事実関係はいかがでしょうか。
  98. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 アメリカのワインバーガー国防長官がロンドンで行いました記者会見でありますとかあるいは国防省の報道官の記者会見での発言等が新聞に報道されまして、あたかもそういう要請が我が国に対して行われておるというような報道がなされておりますが、そのような要請が今日まで行われたことはございません。
  99. 神崎武法

    ○神崎委員 米国防総省が昨年四月に発表いたしました「ソ連の軍事力」というものによりますと、ソ連は既にSDI構想を先んじているということで具体的に指摘があるわけであります。このソ連の方がSDI構想では先行している、こういうような説明をさきの日米首脳会談で総理レーガン大統領の方から受けていらっしゃるのかどうか、その点どうでしょうか。
  100. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういう話は記憶に余りありません。
  101. 神崎武法

    ○神崎委員 記憶にないというと、まだまだこれは大変大事な問題だろうと思うのですけれども、総理としては受けたのか受けないのか、もう一度はっきりお答えいただきたいと思います。
  102. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ソ連が先行しているという、そういう具体的発言はなかったように思います。  ただしかし、私はABMにおいてはソ連はかなり進んでおる。それから、衛星キラー衛星等についても相当進んでおる。衛星キラー衛星の場合には、核爆発による電子ビームあるいはレーザーによるビーム、そういうものを使ってやるというような情報も読み物で読んだことはありますから、そういう点であるいは進んでいるのかもしれません。
  103. 神崎武法

    ○神崎委員 総理としては、ソ連版のSDIについてどのように評価されるか、お尋ねしたいわけであります。  ソ連が先にSDIを配備したときに、総理が今日まで言われているように、これが防御的なものであって核廃絶につながるものだ、拍手を送りたい、こういうことを果たして言えるかどうかという点ですが、いかがでしょうか。
  104. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ともかく中身を見ないうちに、あらかじめああだこうだということは言えません。しかし、非核であって核廃絶を目的にするというものであるならば、それは趣旨において理解し得るところはありますね。
  105. 神崎武法

    ○神崎委員 このSDIの経済的側面、簡単にちょっと御質問をいたしたいと思うのですけれども、このSDIに要する予算というのは一兆五千億ドルから二兆ドルに達するだろうとも言われております。今世紀末までにも五千億ドルぐらいかかる可能性がある。これは米国防総省も見ているようでありますし、今後五年間に総計二百六十億ドルの経費をつぎ込む予定であるとも言われているのであります。ところが、米国は一方でSDI構想を進めながら、同時に戦略兵器、中距離核兵器、通常戦力の近代化政策、これも進めるということを言っているのであります。米国の現在の国防予算は約三千百三十七億ドル、二千三百億ドルの財政の赤字を抱えているわけであります。  私は、このSDI構想それから現在の核、通常兵器の近代化政策をこのまま米国が進めていくならば、大変巨額の予算というものを、このSDI、今の構想の中につき込む、必然的にこれはアメリカが現在海外で負担している軍事費用の負担というものを同盟国に肩がわりを求めてくるだろう、このように思うわけであります。要するに、この計画によって、将来にわたって、我が国に対する米国の我が国の防衛費増額の圧力というものが強くなると考えるのでありますけれども、総理がこのSDIの研究を理解されたということは、必然的に我が国の防衛費増額というものをアメリカに約束をした、こういうことにつながるのではないかと私は危惧をいたすわけでございますが、その点、いかがでしょう。
  106. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 随分恐るべき即断をなさる発言だと思いますね。
  107. 神崎武法

    ○神崎委員 ただいまの質問にお答えになっていらっしゃらない。
  108. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 直接結びつくものでは全くありません。
  109. 神崎武法

    ○神崎委員 次に、産業災害についてお尋ねをいたします。  我が国では昭和四十九年の水島の重油漏えい事故以後、大規模な産業災害が発生していないわけでありますけれども、世界的に見ますと、昨年後半に大規模な産業災害が発生しているのであります。  一つは、昨年十二月三日にインドのボパールの米ユニオン・カーバイド社殺虫剤製造工場で、地下タンクから液化イソシアン酸メチルの猛毒ガスが大量に漏出しまして、周辺住宅地約四十平方キロに広がりまして、死者二千六百人、中毒患者二十万人という世界化学産業史上最悪の災害事故が発生したのであります。  もう一つは、昨年十月に、米国のニュージャージー州のアメリカン・シアナミド殺虫剤工場からマラチオン剤のガスが煙状になって漏れ出しまして、ニューヨーク市スタテン・アイランドの大半を覆って百五十人が煙を吸って手当てを受けた、こういう事故が発生をいたしました。  さらにもう一つは、昨年十一月十九日、メキシコ市郊外住宅地の都市ガス供給センターで液化天然ガス貯蔵タンク三基が連続爆発して炎上、死者五百人以上、重軽傷者一万人に上る大惨事が発生した。  こういった大規模な海外の産業災害につきましては、事故原因、経過状況、その後の対応策ということは我が国にとっても大変貴重なものと考えるわけでありますけれども、海外でのこの種産業災害につきまして我が国の行政機構として統一的に把握しているところがあるのでしょうか。
  110. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま御指摘の三件でありますが、まず、インド・ボパールのユニオン・カーバイド社のガス漏れ事故でございます。通産省が把握しておる情報は以下のとおりであります。     〔委員長退席、大西委員長代理着席〕  まず昨年十二月三日未明、インドのボパールにあるユニオン・カーバイド社の農薬工場から有毒ガスが漏えい、約二千五百人、これは御指摘数字と若干違いますが、死亡いたしまして…
  111. 神崎武法

    ○神崎委員 私が質問したのは、行政機構として統一的に把握しているかどうかという点でございます。
  112. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 それもお答え申し上げます。  約十二万五千人が手当てを受けたものと理解をしております。  それから、事故原因等については、外務省を通じインド政府に照会中であり、現在インド政府により調査中と承知をしております。  なお、新聞報道等によれば、液状のイソシアン酸メチルを貯蔵した地下タンク内で何らかの化学反応が起きたためにタンク内の温度が上昇、気化した有毒ガスが漏出したものと伝えられております。  次に、米国ニュージャージー州のアメリカン・シアナミド社殺虫剤工場のガス漏れ事故でございますが、マラチオン剤貯蔵タンクに亀裂が生じ、マラチオン剤の蒸気が漏出、一部の労働者、住民等が吐き気、発疹等の被害を受けたと聞いておりますが、この事故は農水省所管に係る殺虫剤に関する事故でございますので、通産省としては、詳細について把握をしておりません。  それから三番目のメキシコのガスタンク爆発事故につきましては、在外公館、現地報道等により総合的にしんしゃくすれば、その概要は次のとおりであります。  まず、御指摘のように、事故発生日時は昭和五十九年十一月十九日、現地時間の午前五時四十五分。事故発生現場は、メキシコ市の北西部のサンファン・イスアテぺク地区にあるガス貯蔵充てんプラントにおいてLPガスが爆発した。  事故の原因につきましては、事故原因について現在もメキシコ検察庁が調査中であり、詳細は依然として明らかでございません。  まだ最終報告書は発表されておりません。  同検察庁の中間報告によれば、同地区にある貯蔵施設の一部において何らかの原因で小爆発が発生し、これが同地区内の貯蔵施設に次々に引火し、大規模な爆発を引き起こしたと推測をされておるわけでありまして、被害状況は、メキシコ現地報道によりますと、死者約四百五十人、負傷者約四千三百人と伝えられておりまして、当省所管の問題に関連いたしました件につきましては、引き続いていろいろ調査をしておるところでございます。  これは、日本で同種の災害等が起こった場合に対応する私どもとしての対応でございます。     〔大西委員長代理退席、委員長着席〕
  113. 神崎武法

    ○神崎委員 私は、何も事故の内容について聞いているわけではありません。  要するに、我が国として、海外でのこの種産業災害について行政機構として統一的に把握しているところがあるのかどうか、この一点をお聞きしているのですが、いかがですか。
  114. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 御質問に対してお答えをしたいと思いますが、海外におきます。そういう産業事故等につきましては、やはり在外公館を中心にしていろいろな情報を収集するということが基本的に大切でございますので、その情報をまず外務省を通じまして国内でキャッチをいたしまして、そして、それぞれの所管をいたします直接間接に関係する行政官庁に外務省から情報を伝達する、その情報を受けてそれぞれの省庁で対策を講じたり、あるいは国内の参考にしたり、こういう運びになるかと思います。
  115. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、外務省としてこれらの産業災害事故についてすべて承知をされている、こういうふうに伺ってよろしいでしょうか。
  116. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 大体新聞等で出ます大きな災害につきましては、外務省は現地の在外公館から詳細な電報が入ってきますので、その電報を分析して各省庁間に説明をし、通報するところは通報しておる、こういうことです。
  117. 神崎武法

    ○神崎委員 要するに、外務省としてはいろいろな情報を収集して、それをそれぞれ国内の所管庁に振り分けをする、それだけのことだろうと思うのですよね。外務省としてこれを分析して対策としてかくあるべきか、そこまでは私は外務省としておやりになってないと思うわけでありますけれども、国内の関係省庁としては、要するに今官房長官が御答弁されたように、国内官庁としては、統一的に行政機構としてこれを把握して調査研究しているものというのはないと思うのですね。ただ、これはそれぞれの所管庁で把握されていると思いますけれども、直接関係する省庁もあれば、この三件には全く関係がない、ただ一般的に関係の深い省庁等もあると思います。  ちょっとお尋ねをいたしますが、今通産省御答弁になりましたので、労働省、これは化学物質など危険物の労働環境における規制の所管庁でございますが、この事故についてどの程度の情報を入手しておられるのか、またどう考えておられるのか。
  118. 寺園成章

    ○寺園政府委員 先生仰せの三つの事故につきましては、新聞報道あるいは関係省の連絡によりまして、先ほど通産大臣がお述べになりましたような状況を把握しておる状況でございます。
  119. 神崎武法

    ○神崎委員 それから、特にこの三件には直接は関係ございませんが、毒物劇物の規制の所管庁であります厚生省。
  120. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 毒物劇物取締法の所管でございますので、常に諸外国の化学物質に起因する事故につきましても、従来から重大な関心を持っておるところでございます。  ただいま御指摘の事故につきましては、通産大臣からお話しのような内容につきまして、原因、化学的変化、その他のことも情報を収集いたしておるところでございます。  なお、この三件とも日本の国内法の毒物劇物の指定に該当しておりませんけれども、しかしやはり一般的な事故情報は常に集めて、これからの化学物質の事故あるいは毒物劇物の危険防止に役立てたいと思っております。
  121. 神崎武法

    ○神崎委員 主に農薬の規制の所管庁であります農林水産省。
  122. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 まず農薬関係のインドの事故でございますが、これにつきましては、この事故の発生しました報道に接しまして、直ちに、日本にございますユニオン・カーバイド日本株式会社というのがございまして、この会社から状況の説明を求めております。  なお、この原因になりましたイソシアン酸メチルというものは日本でどういう工場で使われているか、その実態につきましてもあわせて調査しておりますが、日本ではこのインドの事故と同様ないわばイソシアン酸メチルを大量に貯留する、こういう製造方法をとっている工場はございませんで、連続過程の中で使っておる工場が一社あるということで、これと同種の事故の発生の危険は日本の場合にはない、こういうふうに私ども考えております。  アメリカの関係でございますが、これはアメリカン・サイアナミッドという会社でございまして、これも日本サイアナミッドという会社がございまして、状況を聞いておりますが、原因になりましたのはマラソン剤の原体の製造過程でございまして、これも日本ではマラソン剤の原体を製造しておりませんで、原体の輸入をしているわけでございますので、同種の事故の発生の可能性はない、こういうふうに承知しております。
  123. 神崎武法

    ○神崎委員 消防法に係ることでの所管庁である自治省、いかがですか。
  124. 関根則之

    ○関根政府委員 インドのボパールにおきますイソシアン酸メチルの件につきましては、火災危険もございますので、現在消防法におきまして、危険物として指定をし規制をいたしております。  具体的には、百リットル以上のものにつきましては貯蔵所等の立地につきまして許可を要するということで、取り扱いその他につきまして規制をいたしております。なお、この該当工場が一つ、先ほど農林省からお話がありましたようにございますけれども、立入検査等も十分やっておりまして、まず危険はないというふうに考えておるところでございます。  それから、ニュージャージー州におきますマラチオン剤につきましても、危険物としての消防法上の規制をいたしておりまして、これにつきましては、二千リットル以上の貯蔵等につきまして許可制となっております。  ガスにつきましては、通産省の方で規制をいたしております。
  125. 神崎武法

    ○神崎委員 環境汚染の所管庁であります環境庁、いかがですか。
  126. 岡崎洋

    岡崎政府委員 先生御指摘のように、以上の三点は直接的には工場災害ということでございますが、それがどのように二次的に環境に影響を及ぼすかということは私ども関心を持っておりますが、本件の具体的な内容等につきましては、今のところ新聞等の報道で情報を得ている程度でございます。
  127. 神崎武法

    ○神崎委員 ただいまいろいろ御答弁がございましたように、大変こういう産業災害、直接関係しないところもございますけれども、多くの省庁が関与している、そしてそれぞれの法律で所掌しているわけでございます。我が国のように、地域住民が密集しているところに化学工場が隣接しているというところでは、特にガス等の急激な爆発、火災、漏えい事故の一次災害を防止することが要請されるのであります。また、一次災害が発生したときの地域住民の緊急避難の措置等も、常日ごろから十分検討を要すると思うわけであります。  我が国では、自然災害については災害対策基本法等が整備されてまいりましたけれども、人災につきましては、先ほど見たとおり各省庁が分掌をしておって、個々の法律で整備するという考え方に立っているわけであります。ところが、例えば化学工場を規制する保安法規を見ましても大変複雑でありまして、法規として公布される形態が、法律、政令、省令、訓令、通達、条例、または行政指導などの形で公布されているので、これらを通覧しないとわからない。また同時に、複数の所管官庁の違った保安法規が適用されることが多いため、その場合におけ各法規間の関係が明示されていないというところもあるわけであります。ですから専門家も、ともかくこの保安法規について疑問があれば必ず所管官庁に相談されることが望ましい、わざわざ専門書の中で書いているわけであります。  石油コンビナート等災害防止法はありますけれども、これは石油等の特定の物質を取り扱う事業所のある場合について適用対象としておるわけでございますし、私が申し上げました産業災害という枠組みからすると、これは十分でないわけであります。人災の中でも地域住民に多大の危険性を生ずる可能性のあります産業災害につきましては、やはり政府としても基本法を整備して総合的に対処すべきものと考えるのであります。まさに海外でこういう産業災害が起こっているからこそ、日本に最近ないからこそ、今そういう基本法の整備の必要性があるんじゃないかと思うわけでございますが、総理、いかがでございましょうか。
  128. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 事柄の重要性は非常にわかりますけれども、基本法というところまで一挙に進めるのかどうか、もう少しいろいろ実態の調査及び予備的な諸般の研究が必要であると思います。
  129. 神崎武法

    ○神崎委員 ただいま一次災害を中心に申し上げたわけでありますけれども、長い目で見て心配なのは、こういう土地や水、空気にゆっくりとした汚染をもたらします二次災害の問題であります。産業廃棄物につきましては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律、廃掃法で規制されておりまして、この厳格な運用が望まれるのでありますけれども、特に最後に環境庁にお尋ねいたしたいのでありますが、事故や産業災害に伴い、環境中に有害な化学物質が蓄積してこういう二次的な災害が引き起こされる可能性もあるわけでございます。また、事故等によらずしても、有害な物質が徐々に環境中に蓄積し、思わぬところで人の健康を害したり生活環境を悪化させたりすることも考えられるのであります。環境庁としては、有害化学物質による環境汚染実態などについてしっかりと調査、監視を行ってもらいたい、このように思いますけれども、いかがでしょうか。
  130. 石本茂

    ○石本国務大臣 ただいま先生申されましたように、有害化学物質の問題につきましてはかねてから関心を深めて取り組んでいるところでございます。このようなことから、環境庁といたしましては、有害化学物質による環境汚染の未然防止を図りますために環境調査などに全力を尽くしておるところでございますが、今後とも積極的に取り組んでまいる所存でございます。
  131. 神崎武法

    ○神崎委員 本年度の予算を見ましても、環境庁が大変有害化学物質対策に意欲的に取り組んでおられることに敬意を表するわけでございますけれども、事国民の健康、生活環境に直接関係する分野でございますので、もっともっとこの対策というものを強化していただきたいと思います。  続きまして、国際金融の問題についてお尋ねをいたします。  初めに、ワールドワイド・ユニタリー課税方式につきましてであります。  カリフォルニア州を初め米国の十数州では、企業に対する州法人税の課税につきまして、企業の所得に外国法人を含めます関連企業の所得を合算することなどを内容といたしますユニタリー課税方式というものを採用しているわけでございます。この方式は、国際約二重課税の問題とか赤字会社への課税の問題、頻繁な事務負担とか投資上の阻害要因になるといったいろいろな問題点が指摘されているわけでございますけれども、日米ドル委員会でもこの問題が取り上げられまして、米国側から、米国のユニタリー課税方式作業部会の勧告が近くレーガン大統領に提出され、その後各州に検討のため送付されるという発言がなされておるのであります。昨年の八月三十一日に、米国のユニタリー課税方式作業部会からレーガン大統領に報告書が提出されていると聞いておりますけれども、その内容はいかがでしょうか。
  132. 竹下登

    ○竹下国務大臣 米国ユニタリータックス作業部会報告書の主な内容は、関係州におけるユニタリー課税の適用対象をとにかく水際内の企業に限定し、原則として外国企業は対象外とするものであります。しかしながら、外国企業がまず米国内に課税対象となります存在、これを有し、かつ米国内の事業規模が一定水準を満たす場合には、当該外国企業に対し依然としてユニタリー課税が適用されることになろうというおそれといいますか、問題といいますか、それが存在をいたしておるところであります。
  133. 神崎武法

    ○神崎委員 私は、ただいま大蔵大臣指摘された点、その点が大変大きな問題点であろう、このままいきますと、ウォーターズエッジという水際原則というのが事実上形骸化するのではないか、このように思うわけでありますけれども、大蔵当局としてはどういうふうに評価されているわけでしょうか。
  134. 竹下登

    ○竹下国務大臣 水際アプローチの方向でまとめるように努力したことにつきましては、これは評価をいたしております。国際課税原則から見て、外国企業の所得は一切ユニタリー課税の合算対象にすべきでないという立場を従来から我々はとってきておりますので、作業部会報告書において依然として外国企業に対する課税適用の可能性が残されている点については懸念を有しておる、機会を見てそういうことを表現しておるということであります。  そこで、これからも懸念が解消されますように、米国側に働きかけをしていかなければならぬということでございます。ただ、これは中央政府のみでなく、州政府というようなことも我々の念頭には十分ございます。
  135. 神崎武法

    ○神崎委員 ただいま大蔵大臣が御答弁されましたように、現在大統領からこの報告書が各州に送付されまして、各州で検討がなされているわけであります。オレゴン州では、ユニタリー課税方式の撤廃が決定されていると聞きますけれども、注目されるカリフォルニア州では、この制度改善のための合同タックスフォース、特別作業班の設置が最近決まったと伝えられているわけでございます。  各州での検討状況見通し、及びこの問題につきましての大蔵当局の今後の対応についてお尋ねをいたしたい。
  136. 竹下登

    ○竹下国務大臣 米国ユニタリータックス作業部会報告書を受けまして、今神崎さん御指摘になりましたようにオレゴン州、これは去年の七月、またフロリダでは去年の十二月に、ワールドワイド・ユニタリータックスを廃止する法案が州議会で成立いたしました。依然として、いわゆるワールドワイド・ユニタリータックスを適用しております数州のうち、日本と関係の深い今おっしゃいましたカリフォルニア州におきましても、タックスの適用の廃止または制限を求める五本の法律が州議会に提案されておりまして、早ければ今月中にも審議は開始されるということでございますので、いろいろな働きかけはいたしますが、州議会のことでございますから現時点で確たる見通しは立ってはおりません。  それから、そのほかこの二月現在で、アラスカ、カリフォルニア、コロラド、アイダホ、マサチューセッツ、モンタナ、ニューハンプシャー、ノースダコタ、ユタの九州、これがまだ存続をいたしておるわけであります。  我が省といたしましては、国際課税原則から見まして外国企業の所得は一切ユニタリー課税の合算対象とすべきでない、そういう従来からの立場を、今後ともそういう立場に立って関係州政府それから州議会、その他世論関係もございますし、各方面へ働きかけていくつもりでございます。  その際、州レベルで実効ある措置を実現するためには、やはり連邦政府にお願いをして可能な限りの影響力を行使してもらう必要がありますので、折に臨み機に臨んで、まさに連邦政府に対しましても最大限の努力を求め続けておるということでございます。これは円ドル委員会等がありますので、私とリーガンさんとか、あらゆる段階で協力を要請しておるというところでございます。
  137. 神崎武法

    ○神崎委員 昨年六月五日の「金融の国際化の現状と今後の対応」、これは金融制度調査会小委員会の第二次中間報告でございますが、その中で「国際業務に関する行政のあり方」として七項目ほど指摘がなされております。  その中で、一、二点お尋ねをいたしたいのでありますけれども、円建てBA市場につきましては、本年六月ごろ創設されると聞いておりますけれども、取引対象手形の印紙税率を定額税率でなくて階級税率にしたということが言われております。これでは、印紙税負担が市場拡大の障害になるのではないかと懸念されるわけですが、この点、いかがお考えになりますか。  それからもう一点、いわゆる非居住者から資金を取り入れまして非居住者に貸し付けます外-外取引を行いますオフショア金融市場の問題でございますが、この点については、検討されているけれどもどのようになるのかわからないわけであります。私自身は、このオフショア市場創設の機はもはや熟しておる、創設すべきだと思うわけでありますけれども、創設をするならば債券の発行も行い得るようなロンドン型の方が望ましいと考えているわけでございます。果たして、この東京オフショア市場というものは登場するのかどうか、現在の検討状況見通しにつきましてあわせてお尋ねをいたしたいと思います。
  138. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今の御意見を交えての御質問でございますが、いささか専門にわたりますので、政府委員をして答弁さすことを許容していただきたいと思います。
  139. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 まず私から、印紙税の問題について御説明を申し上げます。  円建てBA市場が開設されますと、六十年度の税制改正におきましても関係各省庁ともいろいろ議論したわけでございますが、その場合に想定されます手形の種類といたしましては大体五つぐらいが想定される。一つは期限つきの貿易手形、それから表紙手形と言われるもの、それからいわゆるアコモ手形、直ハネ手形、それからリファイナンス手形、この五つを想定していろいろ議論したわけでございますが、一番最後のは外国で発行されるものですから、我が国の印紙課税には関係ないわけでございます。最初の二つにつきましては、現在でも貿易等の決済手形、それからインターバンク手形は定額課税になっております。  問題は、アコモ手形と直ハネ手形をどうするかということでございますが、この手形の実態から見まして、貿易、輸出業者や輸入業者の信用授受の手段として発行される手形でございますから、既存の各種の手形とのバランス上、やはり階級定額税率を適用すべきであろうという整理を行ったわけでございます。
  140. 行天豊雄

    行天政府委員 オフショア市場の問題についてお答えいたします。  御指摘のとおり、非居住者から資金を調達しまた非居住者に資金を運用する、俗に外-外取引と言われておりますが、こういう金融取引につきまして、金融上の規制であるとかあるいは税制上の規制であるとかいうものを緩和することによってこういう取引を円滑に活発にさせる、そういう市場と申しますか仕組みのことを通常オフショア市場と言っておると思います。  日本にもそういう市場をつくったらどうかという御意見があることは委員指摘のとおりでございますが、私どもも、確かにこういう仕組みをつくることによりまして、日本が国際金融センターとして発展する助けになるという点もございましょうし、それからまた、こういうふうに外-外取引が国内で行われることになりますと、いわば銀行にとってみますと、本店所在地でもってそういう取引ができるということになりますから、当然そこで日本の金融機関の競争力が発揮できる、またそれがひいては、日本の企業が資金を調達したり運用したりするのに非常に役に立つというようなこともございましょうし、こういうことで非居住者が円の取引になじんでまいりますと、当然円の国際化にも役に立つと思います。それからさらには、いわゆるユーロ円取引というものがいわば身近で行われることになりますので、そういったもののモニターに役に立つ等、いろいろと意義があるということが言われておるわけでございます。  実は、昨年の五月から円の国際化の問題、ユーロ円市場の問題について御審議を願っております外国為替等審議会におきましても、このオフショア市場の問題についても御議論が行われておりまして、近々御答申がいただけるのじゃないかと思っております。私ども、この御答申を得まして、それに基づきましてこの問題につきましても真剣に検討をする意味があるのかなというふうに考えております。具体的に、いつ、どういう形でするかということはまだ成案は得ておりませんが、そういうふうに考えておるわけでございます。  それから、委員の御指摘の、ロンドン型がいいかニューヨーク型がいいかという点でございます。  御承知のとおり、今世界にはロンドン、ニューヨーク、シンガポール、香港、バーレーン、バハマ、ケイマンと、いろいろとオフショアセンターと言われるところがあるわけでございますけれども、大ざっぱに申しますと、確かにロンドン型、ニューヨーク型とございまして、ロンドン型の方は、言うなれば国内市場そのものが非常に自由化された結果、そこでもって外-外取引が活発になってきている。事実上、中も外も一緒のオフショア市場みたいなものができておる。一方ニューヨーク型といいますのは、こういった外-外取引を行いますための特別の勘定をつくって、その勘定間の金融取引についてだけいろいろと規制緩和するということなんでございますが、日本の場合も、確かに御指摘のとおり、日本の国内の金融市場の自由化が非常に進んでまいりますと、ロンドン型のものができるという可能性はあると思います。ただ、率直に申しまして、今まで我が国でオフショア市場についていろいろ御議論があるわけでございますけれども、その御議論はどうも、日本ではニューヨーク型ではないか、そういう前提で御議論がなされておるような感じがいたします。ただ、私どもはまだ研究も本格的に始めておりませんので、その点につきましては、もちろんコンセンサスもございませんし、これから勉強させていただきたいというふうに考えておる次第でございます。
  141. 神崎武法

    ○神崎委員 「金融の自由化及び円の国際化についての現状と展望」によりますと、金利の自由化の問題でございますけれども、まずこれは大口預金金利の方から手がけて、最後に小口預金金利を検討するとされているわけでございます。大蔵当局としては、この大口預金、小口預金の線引きの問題でございますけれども、ラインをどこで引かれるおつもりなんでしょうか。
  142. 吉田正輝

    吉田(正)政府委員 大口預金と小口預金のラインの問題でございますけれども、確かに、私どもがあらわしました「現状と展望」におきましては、大口預金の規制緩和ないし撤廃を両二、三年のうちに行うという目標にいたしております。それで、その後で小口預金金利の自由化を検討するということになっておりますけれども、大口預金と小口預金についてのラインをあらかじめ明確に設定することはなかなか困難であるという認識でございます。ただ、抽象的に申しますと、大口預金と申しますのは、原則といたしましては、大口預金者というのは金融取引に関する情報を入手しやすいという点でコストが比較的低いということになります。それから、大口金利につきましては、金融市場がだんだん発展してまいりますると、金利裁定が活発になってまいりますので、そういう点でも、金利感応度と申しますか、大口預金の金利を裁定しやすいという環境にもございます。それから、自己責任原則に習熟しているという点もございます。小口は、それに対応いたしますると、乗りかえコストがございますとか、自己責任の原則にも限界がございますとか、一方、逆には、小口預金は金融振替サービス、公共料金の振替サービスとか、そういう利点もあって、必ずしも金利だけでは決まらないという要素がございます。  しかし、いずれにいたしましても、私ども大口預金金利の自由化を漸次やっていくつもりでございまして、CDにつきましては、今年四月一日、ただいま三億円のところを額面一億円にするとか、期間三ないし六カ月を六カ月ないし一カ月にするとか、それから、新たに市場連動型預金などを導入いたしまして、これは五千万円というようなことでございます。ただいまそのめどはどこかと申しますと、そこにただいまめどを絞っておるわけでございますけれども、そういう大口預金金利の自由化を漸次額面ないし期間等で小口に近づけていきながら、大切な問題でございますので積極的に検討してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  143. 神崎武法

    ○神崎委員 今後金融の自由化によりまして個人の自己責任が問われるようになる、大蔵大臣もおっしゃっておられるところでございますけれども。預金者としましては、そうなりますと、万が一に備えて保証の程度というものもよく知っておく、そして預金と株式、債券などと比べて選択をしなければならないということに相なるわけでございます。現在、金融機関が倒産した場合などにはかわって預金を払い戻してくれる機関といたしまして預金保険機構があるわけでありますが、この基金の残高がことしの三月末で二千億円程度だというふうに言われております。中規模の信用金庫が倒産すればもうお手上げになってしまうというような規模でございます。この日米ドル特別会合の報告などでも、この小口預金の金利自由化、これは三年以後の検討課題とされておりますけれども、その事前対策として、預金保険機構の拡充整備を進めるということが言われているわけでございますが、このたび日銀が同機構の強化案をまとめたということで、新聞で報道されております。大蔵省はこの考え方をどうお考えになっていらっしゃるか伺いたいと思います。
  144. 吉田正輝

    吉田(正)政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、今金利の自由化が非常に進行しておるわけでございます。私どもの関心といたしましては、こういう金利の自由化が進展いたしますと、その受け皿整備を図らねばならない。そういう意味では金融機関の健全性の確保ということが重要である。それからまた、最終的には、ただいままさに御指摘のとおり、預金者を保護する受け皿体制を整備しなければいけないということでございます。  そこで、金融制度調査会におきましても、ただいまその金融自由化の受け皿整備ということで、預金保険機構の充実、あり方等について各界の御意見をまとめ、あるいは御勉強いただいているところでございます。  その中では、確かに御指摘のとおり、この規模だけではなくて、巷間伝えられておりますように、機能の強化という問題があるわけでございます。これは金額だけではなくて、預金保険機構の機能自体、例えばアメリカにおきますと預金承継方式とかあるいは合併方式とかいろいろございます。そういう点を踏まえまして検討しておるわけでございますが、日本銀行からは新聞に伝えられたような正式な連絡は私ども受けておりません。ただ、そういう機能充実の問題も含めまして、近々できるだけ早く御結論をいただくという方向であることは事実でございます。
  145. 神崎武法

    ○神崎委員 預金金利の自由化におきます最も重要な問題は郵便貯金であろうと思うわけでございます。この「現状と展望」では、「預金金利の全面的自由化を行うためには、郵便貯金の金利決定方式について、自由化に整合的に対応できるよう見直す必要がある。」ということが言われているわけでありますが、本当にこういった対応が可能でありましょうか。今回の少額貯蓄の非課税制度の問題を見ておりましても、結局、税務当局は郵貯には踏み込めないで問題を残しているわけでございます。金利問題につきましても、金融制度調査会と郵政審議会、こういう別々の機関で検討をいたしておるのが実情であります。これで本当に整合性のある対応策というのがつくれるのか疑問に思うわけでございますが、今後の進め方につきまして具体的に示していただきたいと思います。
  146. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは私ども、今神崎さんおっしゃったような従来の経過からして、御疑念なりあるいは心配していただいておるということだと思うのであります。何分にも個人預貯金の三〇%を占めます郵便貯金金利と民間金利との整合性の問題がきちんとしないことには、大口はやっていけたにいたしましても、小口の終着点はそこであります。従来も三大臣合意でございますとか、いろいろございます。審議会も今おっしゃったように二つありますが、やはり基本的には今後いわゆる関係者間でまず議論を交わしてみよう、そして必要に応じて学識経験者の意見等を参考にして、それで望ましいあり方について研究していくというアプローチがいいのじゃないかな、こんな感じがしておるところでございます。
  147. 神崎武法

    ○神崎委員 時間の関係で、ほかのいろいろな金利の自由化の問題、もっと議論したいわけでございますが、最後の問題、大型間接税の問題につきまして二、三お伺いをしたいと思います。  いわゆる一般消費税(仮称)ですか、これが政府税調から答申されるまでの政府税調の審議の経過についてまず確認をいたしたいのでありますけれども、政府税調におきましては、EC型付加価値税、製造者消費税、大規模売上税、大規模取引税、この四項目につきまして便宜一般消費税として一括審議されたこと、これが一点です。  それから、もう一点は、政府税調におきまして、EC型付加価値税については円滑な納税協力が確保できるかどうか、また、精緻な前段階税額控除のため手数がかかるので小規模零細事業者がその負担にたえられるかどうか、こういった問題点が指摘されたという事実、それから政府税調としては、EC型付加価値税についても検討して問題点があるとして排斥した上で、我が国に適合した制度としていわゆる一般消費税(仮称)を答申した、こういう審議の経過について、これは歴史的経過として事実であると思いますが、いかがでしょうか。
  148. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 五十四年のいわゆる一般消費税(仮称)が政府の税制調査会の答申としてまとめられる過程におきまして、恐らく昭和五十二年当時からずっと議論があったわけでございますが、直前の足かけ二年ぐらいでいろいろな議論がございました。その際に、今委員から御指摘がありましたように、各税目について、これはどの税目でもそうでございますけれどもメリット、デメリットがあるわけでございますが、そういうメリット、デメリットの評価が行われて、当時の税制調査会の判断としては、五十四年の答申の一般消費税(仮称)が我が国経済取引に一番即した、かつ零細事業者にも余り負担をかけないというような観点から答申をされたという歴史的な事実は、おおむね委員の御指摘のとおりかと思います。
  149. 神崎武法

    ○神崎委員 この答申までの過程で、このEC型付加価値税につきましても、学者やあるいは実務家、大蔵省からも参加いたしまして、EC型付加価値税についてさまざまな観点から検討がなされた、そういう報告書も作成されている。この点はいかがでしょうか。
  150. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 当時の審議の過程といたしまして、ただいま委員が御指摘になりましたような点も含めまして、税制当局としていろいろな作業資料を税制調査会に御提出申し上げ、御審議をいただいております。
  151. 神崎武法

    ○神崎委員 いわゆる一般消費税(仮称)というものが国会決議で否決された後に、昭和五十五年に新たな観点から課税ベースの広い間接税について検討すべきであるという答申がなされていることは否定いたしませんけれども、現在審議いたしております政府税調におきましても、私が先ほど指摘いたしました歴史的経過というものは十分尊重されて、これを踏まえて論議がなされる、このように理解してよろしいでしょうか。
  152. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 これは税制調査会の今後の御審議の問題でございまして、私どもが一定の方向を予断を持ってお答え申し上げられる問題ではないかとは存じますけれども、これまでの税制調査会のこの問題に対する審議の経過を事実の問題として御報告申し上げますと、先ほど委員が御指摘になりましたように、五十四年に国会決議がございまして、その一年後の五十五年に中期答申というのが出ております。このくだりにつきましては先般の委員会でも大蔵大臣がお触れになっておりますけれども、その部分を読み上げますと、一般消費税(仮称)を実施すべきである旨の提言を行ったところである、しかしながら、同税につきましては国会の決議もあり、大方の御理解も得られていないという実情に即して、新たな観点から外国の制度、沿革等を踏まえて、将来の問題として検討すべきであるというふうに述べられております。その後五十八年、一昨年十一月に中期答申が出ておりますが、そのときにも五十五年のこのくだりを引きまして、今後の検討課題であるということでございますが、事実上五十四年の国会決議が出ました後、税制調査会におきましては、課税ベースの広い間接税についての具体的な審議は一切行われておりません。したがって、今後どういう方向で御審議になるのか、あるいは新しい間接税がそもそも議題になるのかどうかというような点も含めまして、私どもから予断を持って申し上げられないということでございます。
  153. 神崎武法

    ○神崎委員 大蔵大臣は、今月十五日の記者会見で、六十一年度予算編成に当たって政府税調から改革案が出される可能性がある、こういうふうに述べたということが伝えられているわけでございます。この発言は、大型間接税の導入を前提とする税制改革の六十一年度実施に含みを持たせたものと各方面に受け取られているわけでございますけれども、この各方面の反響が事実とすれば、政府は大型間接税導入を前提とするという、こういう予見、予断を持っているのではないかと私は言わざるを得ないと思うわけであります。そうだといたしますと、これは我が党の矢野質問に対する総理答弁、これまでの国会の審議を無視したことになるのではないかと私は言わざるを得ないと思うのですけれども、大蔵大臣、発言の真意をお尋ねいたしたいと思います。
  154. 竹下登

    ○竹下国務大臣 新聞報道は、あの段階で、今御意見を交えての御質問にありましたような記事がたくさん出たことも事実でございます。先ほども主税局長からお答え申し上げましたが、政府としては、税制全般にわたる見直しについては、今国会における予算、税法等の審議終了後、国会でなされた税制に関する御議論すべてを税制調査会に報告して、御審議、御検討をいただく考えてありますので、現段階では、直接税、間接税を含め、あらゆる予断を与えるような議論をすることは厳に慎まなければならなというのが私どもの原則でございます。したがって、それは経過からすればいろいろな推測はできますけれども、大体、間接税をやってください、直接税をやってくださいという性格のものでも厳密に言えばなかろう。我々はあくまでもその予断なり指図をするようなことをしてはならぬと思っております。ただ、税制調査会における税体系の見直し作業についてはできるだけ早く進めてもらいたいというような希望を持っておることは、これは税調の答申を受けた側としても、その辺までは、限界としても、希望の点まではできるだけ早くという非常に漠然とした言葉でございますが、その希望までは限界の中へ入るのではないか。しかし、相当大がかりな検討作業になると考えられますので、審議の見通しについては現段階で確たることは申し上げられません。  私としましても、言葉を選びながら質問に答えたわけでございますが、そもそも今度の税制改正でいわゆる新しい間接税導入を前提とするような予断を政府は持っていないということをまず申し上げまして、税制の見直しはできるだけ早く検討作業を進めてもらいたいという希望は持っておる。そこで、従来のことにつきまして、三年が任期でございますから、その任期の終わりには、まとめた中長期のものを出してもらったことがございます、そして、年度年度の税制のときに中間報告のようなものが入ったこともございます、そしてまた、年度税制の中にいろいろな意見が述べられたこともございますと、こういった私、非常に丁寧に述べたつもりでありましたが、余りにも丁寧でございましたのでありましょうか、今神崎さん御指摘のような記事が出たと思って、みずからも反省しておるところでございます。
  155. 神崎武法

    ○神崎委員 我が党は、大型間接税の導入に対しましては、多段階であれ単段階であれ、絶対に反対でございます。矢野質問に対します総理答弁も、EC型付加価値税と取引高税は多段階なので、私のかねてからの答弁から見ると否定される、こういう点が政府見解の柱である。その意味におきまして、EC型付加価値税も否定されているということを私も強調いたしまして、質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  156. 天野光晴

    天野委員長 これにて神崎君の質疑は終了いたしました。  次に、木下敬之助君。
  157. 木下敬之助

    木下委員 総理、早速質問いたします。  まず最初に、SDIに関して質問いたしますが、米国防総省のバーチ報道官は二月十四日の会見で、ワインバーガー国防長官が、既に日本に対してもSDIについての技術協力を要請したと思う、こう述べていますが、これは事実でありましょうか、お伺いいたします。
  158. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 そのような事実はございません。バーチ報道官の発言ぶりにつきましても、テキストを取り寄せてチェックいたしましたが、極めて漠然とした表現で、バーチ報道官自身も必ずしも事実関係についてつまびらかにしていないということが発言内容から読み取れるということでございます。
  159. 木下敬之助

    木下委員 総理に御確認いたしたいと思いますが、本年初めの日米首脳会談の際、総理は直接に要請を受けられたのではないでしょうか、お伺いいたします。
  160. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういうことは全くありません。
  161. 木下敬之助

    木下委員 いずれにしても、遠からず要請が来ると思われますが、もしアメリカから正式に技術協力の要請があった場合、政府としては原則としてこれに応じていく必要があるのではないか、どうお考えになっておられるか、お伺いいたします。
  162. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず、SDIというものがどういうふうに展開していくかわからないものですから、いろいろ留保しているわけでありまして、要請の内容、あるいはSDIがどういうふうに展開していくか、そういうところまでよく調べまして、その上で政府は独自の見解で判定すべきものである。それから、武器技術に関するいろんな制約もあります。特に日米の取り決め、安保条約の効果的運用のための枠組みの範囲内でやる、そういうことを言ってきておるわけでありまして、そういう点もまた考慮すべきものであります。
  163. 木下敬之助

    木下委員 では、確認させていただきますが、五十八年一月十四日に対米武器技術供与の方針を閣議了承し、その方針の中で、米国に武器技術を供与する道を開くとし、それはMDAの協定の関連規定に基づく枠組みのもとで実施する、こうしていたと思いますが、SDIはその例外にするということですか。
  164. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 武器技術に関します限り、今御質問の官房長官談話、それからそれに基づきましてアメリカとの間に締結されました武器技術供与に関します交換公文、これに基づいて対処する、こういうことでございます。
  165. 木下敬之助

    木下委員 総理、御確認いただけませんか。別にこのSDIだけがそういった協定で例外ではないということでございますね、ただいまの御答弁
  166. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今北米局長答弁したとおりです。
  167. 木下敬之助

    木下委員 総理は、SDIに理解を示した際、中身がわからないし、憲法や国是との関係もあり、態度を留保した、このようにされておりますが、その言われる国是とは非核三原則のことを言われておるのか、また、憲法のどういう点が関係があると考えておられるのか、憲法に基づく専守防衛の原則に関係があるとお考えになっておられるのか、お伺いいたします。
  168. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私の頭にありましたのは、平和国家の理想を持っておる日本の憲法の趣旨、精神ということが主であります。
  169. 木下敬之助

    木下委員 国是という言葉を使われたとお聞きしておりますが、その点はどうでしょうか。
  170. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは非核三原則というものが頭にありました。
  171. 木下敬之助

    木下委員 今非核三原則と言われましたが、総理は中身はわからないと言っていても、SDIは非核兵器であり防御兵器であると繰り返し強調表明されております。このSDIは非核兵器であるということと、非核三原則との関係もあり留保したというのは、矛盾して聞こえるのですが、これはどういうことでございましょうか。
  172. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 非核三原則とSDIというものは直接はまだ結びついていない。非核三原則というのは日本の領域に関係するもので、核搭載艦その他核兵器の持ち込みにノーと言うという事前協議を前提にした話であります。SDIは、日本の領域に関係なくして宇宙に関する問題あるいは外国の領土や公海等に関する問題でありますから、直接の結びつきはないのでありますけれども、将来万が一にもそういうものに関係してくることも絶無とは言えないから、念のために予防線を張って、そういう注意深い配慮をしておったのであります。
  173. 木下敬之助

    木下委員 理解を示して留保したということでございますが、その留保は、ではどういった点を留保したのですか。理解したが――その理解そのものを留保するというわけじゃないでしょう。理解をなさって、それから何を留保なさったのか、その留保点が核兵器であるかないか、こういうことでございますか。
  174. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 SDIがその後どういうふうに研究が進み、あるいは展開し、あるいは防衛戦略、世界的安全保障、人類の平和、安穏、そういうものにどういうふうに影響してくるか、全般をよく見きわめなければ、イエスとかノーとかはっきりそうすぐ言えるものじゃありません。そういうことで一般的に日本が最終態度を決めることを留保した、そういうことでございます。
  175. 木下敬之助

    木下委員 理解とか、支持とか、協力とか、いろいろありますが、その留保した最終態度というのはどういうことを言われるのですか。支持することを留保しておるのですか。それとも、最終的に一緒になって何かする、そういうことを留保されたのですか。
  176. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 現在言われていることについて、研究に対して理解を示した。それ以外の将来出てくることについてすべて留保はしてある。
  177. 木下敬之助

    木下委員 それではお聞きいたします。  このSDIが核エネルギーを使う兵器かどうかという論議はまたこれからだと思います。先ほど宇宙であれば、非核三原則、日本とは違うんだというふうな発言もございましたが、このSDIが仮に核エネルギーを使う兵器となった場合、その開発、配備を支持しないこともあり得るのか。わかりやすく確認させていただきますと、核兵器であれば支持できないのか、核兵器であっても支持できるのか、核兵器であるとわかった時点で考えるおつもりなのか、お伺いいたします。
  178. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ともかく、そういうものが具体的に我々の前に提示されて、そうしてこれこれのものであり、これこれの影響力というものがはっきりするまでは、今のところどうということは申し上げられにくい。例えば核という場合でも、それが直接殺傷に使われないで、ビームを生む、例えばレーザーというものを生むエネルギーのもととして使われるという場合もないとも限りませんね。その場合といえども、どこでそういうものが行われるのか、どういう影響を持ってくるのか、そういう問題もありますね。ですから、一概にまだ今の状態では断定できないものが余りにも多過ぎるのであります。
  179. 木下敬之助

    木下委員 この問題は、わからないということで言われておることが多いのですが、もう相当に一般書等も出回っておりまして、そういったことを踏まえた論議にしないと、これがアメリカとの話になっても、日本だけがそういう技術面の論議全くなしでの、理解するとかしないとか言っていても、向こうにも誤解を与えるでしょうから、できるだけ突っ込んだ話にのってこられることを期待いたします。  今総理言われましたが、レーザー兵器が、核爆発をさせてそれをビームとして使う、こういうこともあり得るように言われましたが、この核エネルギーを光線として利用する兵器は核兵器となるのでしょうか、ならないのでしょうか。
  180. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは国によって定義がみんな違うだろうと思いますね。日本の場合でも、我々が非核三原則というものを頭に置いて考える場合、あるいは外国が物をやるという場合、いろいろ態様が違うと思うのです。ですから、要するに、的確にどういうものであるかというものが出てきた場合に断定したい、それまでは、まだ全く情勢がわかりませんから、発言は慎んだ方がいいと思うのです。
  181. 木下敬之助

    木下委員 私のお聞きしたいのは、今現在の日本の非核三原則の対象となるかならないか、そんな難しいことを聞いておりません。先ほど言われたものができ上がった場合に、非核三原則の対象になるかならないかをお伺いしておるのです。  この際、核兵器の定義を出していただきたいと思うのです。
  182. 小和田恒

    ○小和田政府委員 非核三原則で言うところの核というのは核兵器でございますが、その核兵器というのは、原子核の分裂または核融合反応によって生ずる大量の放射エネルギーを破壊力または殺傷力として使用する兵器をいうという答弁政府は提出したことがございます。
  183. 木下敬之助

    木下委員 今放射エネルギーと申しましたが、どうですか、今言われるようなビームでされるものはその対象となるのですか、ならないのですか。核兵器ですか、そうじゃないのですか。
  184. 小和田恒

    ○小和田政府委員 先ほど総理から御答弁がありましたように、今の段階では実態が必ずしもはっきりいたしませんので、なかなか一般論として申し上げることは難しいかと思いますけれども、レーザーというのは、私どもが承知しておりますところでは電気的あるいは化学的、いろいろなエネルギーを使いまして、それをエネルギー源として使った兵器ということでございますので、今の段階において核を使っておるというふうには理解しておりません。
  185. 木下敬之助

    木下委員 それはまた大分先の話でしょうから、そのとき論議するとしまして、総理、一つ注文がございますのですが、総理、先ほどこういう核の定義は国で違うと申されましたが、総理は米レーガン大統領が非核であると言ったから非核なんだ、こう我が国民に説明されておりますが、レーガン大統領アメリカにおける核か非核かの判断で言われている。総理も言われたとおりで、国によって違う。それをそのまま国民に持ち込まれておるというのはどういうことでございますか。
  186. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私が一応常識的に解釈したのは、核兵器という場合には、それが直接殺傷や破壊力に使われる、そういうような意味で一般的に考えておりました。
  187. 木下敬之助

    木下委員 それでは、SDIのそのものが仮に核兵器である、こういうふうな兵器にでき上がって、そのものが核兵器である、こう仮定します。そのとき、アメリカが開発し、配備することそのこと自体が我が国の非核三原則のどこと抵触することになるのか、お伺いいたします。
  188. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 SDIに関しては、先ほど御答弁申し上げましたとおり、我が国の非核三原則というのは安保条約の運用上の問題で、我が国の領域に関係する問題で、持ち込みの問題、それが当面出てくる。つくらず、持たず、持ち込ませず、そういうものが非核三原則の内容になっております。ところがSDIの場合というものは、外国がやることで我が国の領域とは関係ない場合がまず大部分でしょう。しかも、ある場合には宇宙、アウタースペースというものが対象になるかもしれません。場合によっては公海がなるかもしれませんね。その辺はまだどういうものが出てくるかわからぬものですから、こっちとは関係が今のところはないと申し上げております。
  189. 木下敬之助

    木下委員 それではお伺いいたしたいと思います。  我が国がSDIに、これは核兵器として、その核兵器であるSDIに技術協力を行うことは我が国の非核三原則のつくらずに反することになるのかどうか、この解釈をお伺いいたしたいと思います。
  190. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 正確には政府委員答弁してもらいますが、我が国の非核三原則というのは、安保条約の運用上の問題及び我が国自体がつくらず、持たず、持ち込ませず、そういうつくらず、持たずというそういう部分で日本の主体的意思があるわけですね。しかしSDIの場合は、外国がやる問題について、日本がもし協力するという場合にどういう関連が出てくるかという問題で、局面が非常に違うと思います。
  191. 小和田恒

    ○小和田政府委員 非核三原則につきましては、委員承知のとおり、我が国の平和憲法のもとにおきまして、つくらず、持たず、持ち込ませずということを我が国の国是として宣明しているわけでございますが、そこで言っておりますつくらず、持たずというのは、したがいまして、我が国の憲法上許容されておるあるいは許容されていないような問題としての核の我が国自身の主体的な意思として核をつくったり持ったりはしないという趣旨でございますので、そういう問題として理解しております。
  192. 木下敬之助

    木下委員 そういうことで、それだから、じゃ技術協力を行うことはつくらずに反しないのか、反するのか、こう聞いておるのです。
  193. 小和田恒

    ○小和田政府委員 先ほども申し上げましたように、これは我が国の憲法からきている要請でございますので、技術協力それ自体としては今申し上げております非核三原則そのものから出てくるわけではないと思います。
  194. 木下敬之助

    木下委員 それでは、人材派遣はどうなりますか。人材を派遣して海外で協力してつくることはどうなりますか。
  195. 小和田恒

    ○小和田政府委員 我が国の国民が海外に参りまして研究に従事するということ自体は、この原則とは直接関係はないというふうに考えております。
  196. 木下敬之助

    木下委員 SDIがどんな形のものでどういうことかということをこれからいろいろとまた議論したいのですが、まず総理にお伺いいたします。  総理日米首脳会談で五つの理由を挙げてSDIの研究に理解を示した、こう聞いております。その第一の理由は、自由世界の安全を目指すもの、こうなっておりますが、SDIはどのような面で西側全体の安全に役立つと判断されたのか、お伺いいたします。
  197. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 総合的な抑止力の一端を担い得るものである、そう思います。
  198. 木下敬之助

    木下委員 その西側の一員である我が国はどのような恩恵を受けるとお考えでしょう。
  199. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 核兵器が廃絶されればこんないいことはないと思います。
  200. 木下敬之助

    木下委員 SDIというと随分先のもので、一遍にそういう理念だけが飛び上がってしまう。しかし、一つずつ積み重ねながら我々は論議しておるわけですから、もうちょっとちゃんと答えていただきたいという気持ちがいたします。  私具体的にお聞きいたします。仮に我が国に向けて、例えばソ連の核ミサイルが発射されたとする、そのミサイルの破壊をSDIがしてくれることを期待されておるのか、こうお聞きいたします。
  201. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ソ連という特定の名前を出してその国の兵器が日本に飛んでくるというようなことは非常に誤解を生むので、非友好的な表現にもなりますしね、ですから、そういうことは避けたほうがいいと私は思うのです。やはり総理大臣ともなると発言は影響力多いですからね。
  202. 木下敬之助

    木下委員 西側の安全全体にと総理は言われたのです。じゃ言い直しまして、東側から飛んできた核ミサイル、これならお答えいただけますか。
  203. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本に飛んでくるというのが物騒な話なんです。
  204. 木下敬之助

    木下委員 それでは、核廃絶と言われました。核廃絶、これは総理も御承知のとおりに、宇宙にしかるべき装置をつくって、そこからビームなり何なりで発射されたミサイルを撃ち落とす、破壊するということでございます。それによって無力化されて廃絶するということをおっしゃるのなら、同じようにそのアメリカの核ミサイルもどこかのものによって破壊される、そういうふうになって無力化されていくということを期待されておるわけですか。
  205. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 両方がそうやってあきらめれば一番いいですね。
  206. 木下敬之助

    木下委員 なかなか具体的な話にお述べにならないんでちょっとこの質問は難しいのですが、思い切って聞かせていただきます。  総理もしかし、今先ほど私が申しましたように、発射されたミサイルを撃ち落とすものであることはちゃんとお認めになっていると思います。その発射されたものが第一段階で上がっていくそのときが一番ねらいやすいという話もありますが、その後水平といいますか、横に飛んでいく、そのときの段階も、核弾頭が幾つも先に固まってある段階とそれが先でばらばらになって目的地に向かっていく段階、それから最後に目的地に向かって本当に落ちてくる終末的段階があって、それぞれに対応していくのがこのSDIの構想だと聞いております。そして大事なのは、一番最後に、本当に終末的段階にそれに対抗し得る兵器が地上の方にも設置されておる、こういったことがあってこの構想というのは本当に総理の言われる廃絶なら廃絶、それに向かって進めるSDIの構想であると考えます。そういう意味で、この終末の段階が効果を果たせないと思いますので、そういう事態になったときに、我が国としては、その終末の兵器が非核兵器であれば我が国の中に設置することも受け入れることが可能ですか、お伺いいたします。
  207. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 全く仮定のそういう質問でありますから、どういう兵器体系や、そのときの戦術戦略体系が出てくるか全く予断を許しません。したがって、そういう一つの抽象的概念だけでお答えするということは全く適当でないと思うのです。
  208. 木下敬之助

    木下委員 抽象的概念でしか論議ができないのは、政府の方でも持っておられる資料をすべて出されて、そしてできるだけ抽象的じゃないような状態に情報を全部出していただいたときに我々はちゃんと語ができるわけでございますので、どうぞ、この問題に関して今後アメリカからいろいろな情報提供を受け、随時協議すると思いますが、その協議が一体どこでなされるのか、そして、そこでなされた情報をどういう形で国民に教えていただけるのか、そういった点に関する政府の考え方をお伺いいたしたいと思います。
  209. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 できるだけ国民の皆さんに御理解願えるように努力いたします。
  210. 木下敬之助

    木下委員 その協議の場というのは考えられておるのですか、具体的なものが。既存の委員会とかでやられるのか、新しくつくられるのか、おわかりじゃないですか。
  211. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 現在、特に具体的な協議の場が考えられておるわけではございません。当面のところ、もしアメリカからそういう情報ないしいろいろな物の考え方の説明というものがあるとすれば、これは当然のことながら外交チャネルで行われることになるだろうというふうに考えます。
  212. 木下敬之助

    木下委員 このSDIの実現は二十年先のこととも言われておりますが、まことに重大な意義を持つ構想ですので、十分に情報を公開し、国民の理解を求めながら進まれることを望んで、このSDIに関する質問は終わります。  次に、財政、特に税制の見直しについてお伺いいたします。  総理は、一月二十五日の施政方針演説で述べられましたように、税制の根本的見直しを進めようとしておられますが、その詳しい具体的中身は税調での審議を待つとしまして、総理としては、どういった点に見直しの必要を感じておられるのか、どのような具体的検討課題を考えておられるのかお伺いいたしたいと思います。公平、公正、簡素、選択、こういった理念ではなくて、具体的なものをお伺いいたしたいと思います。
  213. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 シャウプ税制を実行して三十五年になりますが、その間におきまして税というものの所得分配機能というものはどういうふうに変移してきているか、あるいは所得の捕捉ということが税法上の考えているとおり行われているかどうか、その間に不公平はないかどうか、あるいは課税ベースに対するいろいろな浸食作用という問題もいろいろ考えられます、エロージョンと申しますか。それから、例えば直接税と間接税の比率というものが非常に変わってまいりました。今は七三対幾つかになっていると、この間、報告がありましたですね。少なくとも初めは五〇、五〇ぐらいであったのが、三十五年の間にこういうふうに変わってきたわけです。そういうような問題点はここでもう一回再点検する必要はありやなしや、そういういろいろな問題があります。最近の例でも、しょうちゅうが売れて酒が売れなくなった、その税というものが今でいいのかどうか。最近の例でも、もう我々の目の前であるわけですね。そういう意味で、時々刻々非常に変わりつつあるものですから、この辺でひとつ相関的に見直す必要がある、そう思っているわけです。
  214. 木下敬之助

    木下委員 問題点があるから見直す、そういうことだろうと思いますし、その問題点の一つに直間比率がそんなに差が開いているのは問題である、このように御発言になったように聞こえました。ほかの具体的なことが余り出てきませんので、私の方からも二、三、具体的に質問いたしたいと思います。  我が国では所得税の累進税率は、五十万円以下は一〇・五%、最高八千万円以上を七〇%という十五段階にわたる複雑なものでありますが、この累進税率の見直しは検討課題に入っておりますか、お伺いいたします。
  215. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは税の公平感という面から見まして、どうしてもやはり二百万から六百万ぐらいの中堅サラリーマンが非常に重圧感を受けている。特に、住宅ローンとか子供の塾とか、一番お金のかかるところですね。そして十五段階の刻みになっておるけれども、果たしてそういうものが適当なんであるかどうか。そういうことから、日本の税の刻みあるいはそのカーブの上昇率、上昇率がどうも急過ぎる、そういう形になりますと、もう少し平たんに、フラットに持っていったらどうだ、そうすれば七〇%という最高のものは高過ぎやしないかと。そこでレーガンさんの場合は思い切ってそれを下げておりますね。三五%に下げておる。そうなると、その平らにした場合に、それが公平の観点からどういう影響を持ってあろうかとか、いろいろな面があります。しかし、今の中堅サラリーマン等に対する重圧感というものは、これは解放してあげなきゃいけませんし、累進税率が急角度に高いという面も、外国から比べてみて日本は余りにも極端すぎるという、そういうこともありますね。そういう点もすべて見直してもらったらどうか、そう思っております。
  216. 木下敬之助

    木下委員 今、三点ほど言われまして、その中間の方に対して相当見直しに積極的な御発言に聞こえました。  諸外国に比べて高額所得者の累進税率が、今総理の言われたとおりに、まことに高いと思いますが、これの見直しと、もう一つ、十五段階で複雑であるという、そのこと自体も、アメリカは今度は三段階に変えるというし、英国は六段階、この複雑であることも変える必要があるのではないかとも思いますが、この点も検討課題となっておりますか。
  217. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは五十八年度答申で、いわゆるフラットにしろ、こういうことで、五十九年で十九段階を十五段階にしていただいた。アメリカが三段階になるかどうかは別といたしまして、やはりこれは一つの参考にすべき提言であります。したがって、そういう問題は、税調の今までの中期答申にもあるわけですから、そこへ税調にまた審議をお願いするわけですから、そういうのが検討の課題になるだろうというところは容易に想像がつくのではなかろうかと思います。
  218. 木下敬之助

    木下委員 米国の税制改革の方向は、レーガン大統領の一般教書によりますと、公正さと成長をもたらすことを目指し、必要な税制の簡素化を実行に移す、こうあります。この成長をもたらすということは、個人や企業の成長意欲を阻害している要因を取り除く、こういうことだと思います。例えば、私の友人で中小企業をやっているような人が、もう木下さん、これ以上働いてもしようがない、こんなに税金が高いのじゃ、あと働いたのは皆税金に持っていかれるようなものだ、これは高額所得のが余りにも高いことを言っているのだと思います。また、そういった業者が新しく投資をしたいと思うけれども、減税がないので金利の負担がひどいからできない、こういったことを、そういう成長を阻害している要因を取り除いてやれば、どっと成長するのじゃないか、こういうふうに成長させるということを視点に置いた税制改革というのは大事なことだと思いますが、総理は、この点どうお考えになりますか。
  219. 竹下登

    ○竹下国務大臣 一般教書で申します税制改正の具体的内容は、一般教書には触れられておりません。これは、具体的税制改革案の発表は、具体的にはおくれて三月以降になるということだそうでございます。私も、きょう知っただけの話でございます。去年の十一月の米財務省提案も、公正、簡素と述べ、それから経済成長を理念としておりますが、その考え方は、政策税制を極力整理して税制を経済に対し中立的なものとすることが経済成長に資する、こういう中身を読んでみますと、どちらかと言えば、従来はアメリカの税制はもろもろの優遇措置があった、それを簡素化してしまえ、そうして税は中立的なものとすることが経済成長にはむしろ資するんだ、そういうような考え方が述べられております。したがって、その意味では我が国において従来政策税制の整理合理化等に努めてきたということでございますので、法人税部分で見ますと、これは個人個人によっていろいろな差異がございますが、この租税特別措置を廃止していくという方向を私どもが述べておりましたそれに近い考え方ではないか、こういう感じすら私はいたしておるところでございます。
  220. 木下敬之助

    木下委員 アメリカは、先ほど申しましたように最高の税率を三五に下げる、こういったことが活力を生む、このように考えておるんだと私は解釈いたしております。  大蔵大臣は二月四日の答弁におきまして、現行税制は企業の活力を低下させるといった問題が起きている、このような認識をお述べになっておりますが、どうでしょうか、具体的に現行税制のどの点が企業の活力を低下させているとお考えになっておるのか、お伺いいたします。
  221. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは、私がいつでも述べておりますのは、実は法人税についていつも申しておりますのは、我が国の法人課税の負担水準が主要諸外国と比較して著しく高い水準となることは国際競争力の観点から見て好ましくない、これは基本的認識として一貫して今日まで来ておるということを平素申し上げておるわけでございます。しかし、現在高いかどうか、こういう議論になりますと、また他国との比較でいろいろな比較の方法がございますけれども、私が一貫して申し述べておりますのは、いわゆる著しく主要諸外国と比較して高い水準となることは避けなきゃならぬ、こういうことは税調答申にも言われておりますので、まあばかの一つ覚えのように言っておるということでございます。
  222. 木下敬之助

    木下委員 現在本当に高いかどうかは比較してみないとわからないと言うけれども、比較して高いという認識をお持ちなんではないですか。  私の方もちなみに申し上げてみますと、現在日米における企業税制を比較してみますと、六十年度の米国の法人税収は約十八兆四千三百億円、このうち加速投下資本回収制度によって約五兆七千五百億円、投資税額控除で約六兆三千八百億円、計十二兆一千三百億円も軽減されております。他方、日本では法人重課が繰り返されてまいりまして、五十九年度では法人税収十兆九千九百億円に対し、租税特別措置による法人税の減収額はわずかに三千六百四十億円にすぎません。その結果、実質的税負担率は日本が五〇・五〇%に対しアメリカは三七・六七%、これはちょっと別の数字で見ますと日本が五一・五七%でアメリカが三二・二八%、こういう数字もございますが、このように企業の税負担水準というのが差があるのですが、この企業の税負担水準を見直す気持ちがおありでしょうか。そして、経済活性化を図るためには、アメリカの企業税制をモデルに企業の税負担の軽減を図るべく思い切った投資減税を講ずる考えはないか、これをお伺いいたしたいと思います。  まず、この点に関しましては、河本国務大臣、この投資減税をどうお考えになっておるか、まずお聞かせをいただけませんか。
  223. 河本敏夫

    河本(敏)国務大臣 我が国の民間設備投資の動向をよく見ますと、昭和五十九年初めからだんだんとふえ出したと思います。アメリカはその前年の後半、五十八年の後半からふえておりますが、そこで私は、昨年の初めは日本でも大規模な投資減税が必要だ、このように考えておりましたが、しかし昨年から現在にかけまして相当大規模な設備投資が進んでおりますので、現在は必ずしもそれは必要はないと、このように考えております。
  224. 木下敬之助

    木下委員 大蔵大臣のお考えをお伺いいたします。
  225. 竹下登

    ○竹下国務大臣 法人課税の負担水準につきましては、これは国際比較を試みますことは種々難しい問題がございます。仕組みの難しさ等々でございます。で、税率水準に着目して我が国企業の法人税負担を大ざっぱに主要諸外国と比較いたしますと、これはアメリカ、イギリス、フランスよりは高くて西ドイツよりは低い、大ざっぱに言うとそういうことになろうかと思っております。  で、その中でいわゆる租税特別措置による減収額というものをどういうふうにカウントしていくかと、こういうことで部内でも議論をいたしますし、各種研究所の皆さん方とも議論をしたりしておりますが、定型はちょっとないという感じでございます。で、今おっしゃいましたそれが高いとか低いとかということよりも国際競争力を低下せしめるようなことはいけないということだけは税調も言っていらっしゃるわけですから、そういうことで広範な角度から検討をしてもらうべきで、今日本は高いと思うという先入観で私がお答えするのはまあ差し控えるべきではないかな、こう思います。  それから、投資減税の問題でございますが、河本大臣からも先ほどお答えがございました。いつでもこの投資減税の問題につきましては、一体その投資減税措置というものが、それが刺激を与えてなったものか、現実、企業家の将来の見通しの中で投資されたものか、なかなか費用と負担、見分けにくいところがございます。したがって、この特別償却とかあるいは投資減税そのものにいたしましても、これも実行に移されるかどうかは別としまして、今度のリーガン財務長官の提案というのは、どちらかと言えばその種のものはできるだけ排除して、ある効果が上がったからというあるいは認識もあるかもしれません、本来の姿に返るべきだと、こういう感じでございます。しかし、絶えずの御主張でございますので、昭和六十年度の税制改正におきましても、いわゆる基盤技術の研究開発の促進、中小企業の技術基盤の強化に資するための現行の増加試験研究費の税額控除制度と、こういうことは拡充をしてニーズにこたえようとして御審議をいただいておる、こういうことでございます。
  226. 木下敬之助

    木下委員 お伺いいたしますが、大蔵省のソフトノミックスを初め多くの論者が指摘されておりますように、これから経済のサービス化が進んでいく、このように思われますが、そのような産業構造の変化に対応し、サービス業に対する投資促進減税を講ずるべきではないかと思いますが、この点はどうでしょう。
  227. 竹下登

    ○竹下国務大臣 サービス業に係る設備投資につきましては、五十九年度に創設いたしました中小企業新技術体化促進税制におきましてサービス業も含む非製造業をその対象業種に含めることとしておりますほか、リースによる資産の取得にも一定の配慮を講ずるということで、まあ既に所要の措置の芽は講じたということになっておるわけであります。  新たにさらに投資減税をサービス業に対してやるかということになりますと、現在の財政状況におきまして、国内の民間需要を中心にそれなりに順調な拡大を続けておりますことと、特に設備投資はサービス業を含めまして大幅に拡大していること、そもそも投資減税措置につきましては先ほど申しました費用対効果の観点からなかなか難しい問題が多いということで、今日の段階で、五十九年度今歩いております税制にさらに上積みをするという考え方は持っておりません。
  228. 木下敬之助

    木下委員 サービス業等に、例えば建物なんかも減税の対象になるということになれば大いにいろいろな投資が進むと思いますので、ぜひとも今後ともの検討をお願いいたしたいと思います。  もう一点、企業活性化という観点からお伺いいたします。  近年、急速な技術革新が進展し、設備の老朽化という問題が素材産業を初め各産業で広がりつつあります。日本の製造業の設備年齢は、素材業種を中心に急速な高齢化傾向をたどっています。これは近年アメリカの設備年齢が着実に若返りを示しているのと極めて対照的であり、このまま推移するならば将来日米の製造業において設備年齢が逆転することを懸念いたしております。特に設備年齢において日米間の逆転が見込まれる素材業種について見ますと、欧米各国は、設備更新を助長する観点から法定耐用年数の短縮措置を講じています。中でもアメリカは、強力な設備投資促進税制をとっております。これは、建物十年、機械五年、自動車三年という、トーゴーサンというまことに簡明なものでありますが、そういうことで我が国も技術革新の進展、設備の老朽化を踏まえて、耐用年数の見直しに着手してはどうであろうかと思いますが、大蔵大臣、お考えをお伺いいたします。また、通産大臣のお考えもお伺いいたしたいと思います。
  229. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まず私からお答えいたしますが、いつも議論のあるところでございます。いわゆる減価償却資産の法定耐用年数というのは、資産の物理的寿命に経済的陳腐化というものを加味して客観的に定められているものであって、これまでも技術的な進歩による陳腐化の状況に配意しながら、資産の使用状態に応じた見直しを行って今日に至っておるわけであります。  いま一つ、減価償却制度の目的というのは、期間損益を適正に計算するため、固定資産の取得価額をその使用期間に応じて費用として配分することにあるわけであります。したがって、これも税制調査会の中期答申で述べられておりますように、資金の早期回収等の政策的観点から見直しを行うというのは法定耐用年数の考え方には税制上はなじまない、こう言われておるわけであります。そこで、実態の陳腐化とかいうことにいたしますと、六十年度税制におきましては、印刷設備等について使用実態に応じて所要の見直しを行うことといたしております。  もう一つ考えなければなりませんのは、我が国の企業は現行の法定耐用年数のもとでも強い国際競争力を保持しておって、GNPに比して民間設備投資の割合を見ますと、主要諸外国と比較して高い水準にあることにやはり留意しなければならないということであります。  さらに、最近議論がございますいわゆる日米製造業の設備の平均年齢の問題、これにつきましては、第一次石油危機後その格差が縮小しつつありまして、近い将来それが逆転し、我が国産業の国際競争力が脅かされるのではないかとの見方が一部にあることは私も承知しております。しかし、日米両国におけるそのビンテージ、いわゆる平均年齢でございますが、これにつきましては、推計方法が大きく異なっておりまして、単純にその絶対水準を国際比較することはできないという基本的な問題がございます。したがって、両国の産業構造や生産される財の構成が異なる場合には、平均年齢だけで設備の新鋭度を比較することはできないというような問題も言われておるわけでございます。  そこで、両国の平均年齢を比較いたしますと、いろいろな研究である程度まとめて言えることとしますならば、推計方法の差異を考慮すれば、我が国アメリカとの平均年齢は一、二年過大に計算されておるのかな、そういうように割に少ない。それから民間設備投資のGNPに対する割合は一貫して我が国の方がアメリカより相当高い。だから、いわゆる逆転する可能性は極めて少ないではないか、こういうことであります。  今御指摘のありました素材産業の平均年齢の上昇傾向は、エネルギーコストの上昇や需要の伸び悩みなど、石油危機後の投資環境の変化によるところが大きくて、これを日米の投資促進税制の差異等、現行税制の実態に結びつけて議論していくというのは非常に難しい問題であります。  このいわゆる投資促進税制については、その効果に疑問がありますが、税負担軽減効果が業種ごとに異なって不公平だ、例えばいろいろな基礎産業にはいいが、ハイテクには不利であるとか、昨年の十一月の米国財務省の税制改革提案においては、これはやめたがいい、こういう提案になっておりますので、その歴史的教訓も考えて対応していかなきゃならぬのだな、一時的には私もそういう声があることもわかりますが、研究してみますと、アメリカの方がやってみたが今度はやめよう、これは国会でどうなるかは別といたしまして、そういう提案をしておることにもやはり意を用いていかなきゃならぬな、こんな、今日現在における中間の勉強の段階の御報告にすぎません。
  230. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 木下委員にお答え申し上げます。  ただいま竹下大蔵大臣から非常に詳細なお答えがあったとおりでございまして、実は中小企業に対する設備投資減税、それからまた、今御指摘の法定耐用年数の関係等、常に大蔵省と相談をしてやっておるところでございますが、設備投資減税につきましては、非常に苦しい財政措置の中で相当の目をかけていただいた、こういうふうに思っております。  設備の法定耐用年数の方は、今一部御指摘がありましたが、印刷業関係の印刷設備が十一年から十年、それから製本設備が十一年から十年、写真製版業用設備が八年から七年というふうに、耐用年数の短縮を行っていただきました。  確かに、アメリカ日本では耐用年数の見方についてただいま大蔵大臣が申し上げましたような差があるわけでございますが、私どもも投資減税その他、中小企業発展のために非常に重要な点であると思いますので、今後とも大蔵省とよく相談をしてまいります。
  231. 木下敬之助

    木下委員 国際競争力の話が出ましたが、現在はドル高に助けられておる、このような感じを持っておりますので、どうか将来にわたって検討していただきたいと思います。  この問題の最後に、先ほどちょっとお話が出ましてやりました累進税率の見直し、幾つかありました。この点は大蔵大臣どうですか。いつごろにこの検討を考えられますか。十四日の答弁をされているときに、大型間接税問題については条件が許せば早くやってもいい、こういう感じの報道になって、早ければ六十一年度にも税制全般にわたる改革の行われる可能性を示唆されておられますが、このときに一緒にやられるおつもりですか。
  232. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今の木下さんのおっしゃったような意見、これは正確に税調に伝えるべきことだと思っておりますが、私があのとき申しましたのは、大体税制調査会には三年に一度総理大臣から、国税、地方税のあり方について、こういう諮問をするわけなものでございますから、これをどうしてくれ、あれをどうしてくれというのは指図できない立場にあることは事実でございます。だから、税制調査会でも答申をいろいろいただいておるのを見ますと、急いでいただきたいなという希望の表明まではできると思うのでございますが、六十一年度税制改正までに中間報告にしてもまとめてくださいとか、そのような条件をもって諮問するという性格にはございません。  したがって今の場合は、私どもとしては、国会の議論を正確に伝えたところからスタートして可能な限り急いでいただきたいという気持ちを持っておるというのがお答えのあるいは限界かなと思っております。
  233. 木下敬之助

    木下委員 その国会の論議というのは、私どもの話もそうですが、その中で大臣の御答弁になったことも国会の論議でございますから、大臣のお気持ちもどうぞお伝えになったらよろしいかと思います。  時間がありませんので、中小企業問題で二点ほどお伺いいたしたいと思います。  まず、大小会社区分立法が現在、法制審議会商法部会で問題点を整理して意見聴取を行い、それを踏まえての審議中であると聞いておりますが、この立法の目的、趣旨をお伺いいたしたいと思います。
  234. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 木下委員にお答え申し上げます。  法務省の法制審議会で検討しております大小会社区分法、これでは有限会社の資本金を一千万円以上、それから株式会社は二千万円以上ということで検討しておる由でございまして、この大小会社区分立法等についての審議の中で、株式会社及び有限会社への最低資本金の導入等について議論がなされておるというふうに承知をいたしております。  通産省といたしましては、中小企業が我が国経済の活力の源泉であり我が国社会の安定基盤としての役割を果たしていると認識をしておりまして、このためにこのような中小企業の事業活動に大きな影響が及ぶことのないよう、今後とも関係各界の意見を踏まえながら法制審議会の審議の動向を見守ってまいりたい、こういうふうに考えでおるところでございます。
  235. 木下敬之助

    木下委員 大問題でございます。有限会社の最低資本金額を例えば一千万にする、引き上げる、そして株式会社の最低資本金を二千万円にする、これは言葉にすれば簡単でございますが、まことに中小企業者にとって生死にかかわる重大な問題でございます。この法律を実行すれば、現在の株式会社のうち九十から九十五万社、これはつまり八二から八六%、このぐらいのものは株式会社でなくなり、百数万社あると言われる有限会社はそのほとんどが資本金は一千万円以下でございますから、会社でなくなるというわけです。まさにこれは中小企業者にとっては死活の大問題であり、今現在大混乱を招いておると、こう言えると思います。この問題に関してどのような意見が寄せられておるのか、お伺いいたしたいと思います。
  236. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 最低資本金の問題につきましては、現在のところ百を超える団体から御意見を寄せられておりますけれども、傾向といたしましては、ある程度の最低資本金制度というものを設けるのはやむを得ないのではないかというふうな御意見でございます。しかしながら、なおそんなことまでする必要はないのではないかという意見も相当あることは事実でございます。また、今後の問題といたしましては、新設の会社については今言ったような最低資本金制度をとるにしても、既設の会社についてはもう少し別な扱いをしてもいいのではないかというふうな意見も寄せられております。  そのようないろいろな意見がございますので、それを法制審議会において十分にそしゃくしながら今後の方向を検討されることになろうかと思います。
  237. 木下敬之助

    木下委員 百を超える団体と言われますが、この問題を一体どこに聞いてやろうとするのですか。数だけたくさん聞けば、国民の、みんなの声を聞いてこの中小企業問題に正しい結論が出る、そんなことないですよ。例えば商工会議所に聞いたとしても、そのトップの方々というのは相当大きな資本金の会社を持っておられる方が多いですよ。一体どこに聞こうというのですか。この百団体というのを全部挙げてください。きょうは無理ならこの次でいいです。その百団体にどんなことを聞いているか。答えますか、百みんな言う時間ありませんから、簡単にしてくださいよ。
  238. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 まず法曹関係で裁判所とか弁護士会、それから法学部のある各大学、そのほか中小企業関係といたしましては全国中小企業団体中央会であるとか全国商工団体連合会であるとか、それから各商工会とかに意見を伺っております。そのほかいろいろな業界の団体がございます。鉄鋼であるとかゴムであるとか電機であるとかもろもろございますが、そういうところに聞いておりまして、商工会議所でも三十数団体から御意見が寄せられております。
  239. 木下敬之助

    木下委員 ただいま私申し上げましたように、その聞いている団体は相当大きいところが対象なんです。そしてもう一点、これは一千万、二千万という最低資本金額に満たない会社をどのように扱うかをちゃんと決めた上で意見聴取してない。ですから、既存のものがもしかしたらそのまま別の扱いで残るのではないかとか、そういう可能性がある間の反対と、はっきりとそこはもう会社じゃなくなるんだ、一定期間たったらその後はもう抹消手続を国の方からもできるようにするんだ、こういったことがはっきり決まった上での意見聴取であれば、また全く違う意見もたくさんに集まろうかと思いますので、時間もございませんから、どうかこれはある程度考えがまとまったというか、案はきちっとその切り捨てられた人たちをどうするのかという方針も決めた上で、その二百万に上る切り捨てられる人たちの意見を十分に聴取する、このことを約束していただきたいと思います。
  240. 嶋崎均

    ○嶋崎国務大臣 お答えいたします。  お尋ねの大小会社区分立法の目的及び趣旨でございますけれども、御承知のように我が国には現在百万を超えるような株式会社があるというのが実態であるわけでございまして、しかもそれが非常に小規模な会社が多いということも御承知のとおりでございます。元来、株式会社の制度というのは大規模な会社にふさわしい制度であると一般に言われておるわけでございます。というのは、御承知のように有限責任制度をとっておるわけでございますし、物的責任を中心にして資本と経営が分離をしておるというような状態にあるわけですから、そういうことが言われておるわけでございます。したがって、そういうような考え方から考えてみますと、小会社には必ずしも適合しているかどうかというのは従来からたびたび議論があるところでありますし、その内容につきましても、実際の法の制度が形骸化しているのじゃないかというような議論が多いわけでございます。そういう観点から、実情をぜひ是正をして、法律を実態と一致させることが必要なのじゃないかということで、法制審議会において検討しておるわけでございます。  今御指摘の問題は、昨年、法制審議会の中で民事局の参事官名で今後いろいろな問題を取り扱っていく基礎についていろいろな意見を聴取したらいいじゃないかというようなことでお尋ねをしたわけでございます。そういう中で今御指摘の資本金の問題が非常に大きな問題になっておりますし、また会社の監査のやり方をどういうぐあいにやるか、その費用をどうするか、あるいはそれに対するところの取り扱いの強弱というものをどう考えていくか、あるいはそういう大小の区分と運用の妥当性というものをどう判断をしていくか、そういうことについて十分意見を聴取して、その中でまとめていきたいというような考え方でございますので、そういうことを御理解願いたいと思います。
  241. 木下敬之助

    木下委員 この問題は大変な問題でございますが、債権者を保護しなければいかぬ、簡単に会社をつくってやってもらってつぶれたのでは困る、有限責任では困ると言われますが、ほとんどの有限会社をつくっている社長はそんな無責任なことありませんですよ。自分の資産もみんな担保に入れて倒産しないように一生懸命頑張っている。そして、現在の会社の法律があるから、脱サラをして会社をつくってやった、それから、親方のところで一生懸命やって技術を覚えたら独立してやろう、こうして苦労してきた人がほとんどだと私思います。ですから、そういったことを考えるよりは中小企業の倒産防止のことを考えていただきたいと思います。  私もかつて中小企業を経験しておりましたので、その経験から倒産防止について一つ提言をいたしたいと思います。  それは、中小企業者というのは、資金繰りが少しでも悪くなれば自分の資産をみんな担保に入れて、会社の担保に自分の土地を提供して金を借りてやります。それでもその返済がなかなか難しい、そしてその金利が大変だ、このままいくと来月どうやって払おうか、友人、知人駆けずり回り、大変な苦労をしているわけですね。そしてその人たちがいよいよというときに土地を売って、そしてその金を返済して金利だけでも楽になろう、そして倒産を免れようとします。ところがその土地を売ると税金に半分ぐらい持っていかれて、担保にとっていた銀行なり個人なりの支払いにも満たないんですね。そのあげくに倒産してしまうと、それは担保にとっていた人のものになって従業員の給料には回っていかないんです。あのときに税金を取らずに国が買い上げてくれるとか減税措置があって支払いに回せたならば、そのままその会社は存続できて、従業員も家族も困らずに済んだ。ひどい人は最終的に首くくるような人も出るわけですね。この中小企業をどうやって倒産防止するかというのは、有限責任があるとかないとかじゃなくて、無限の責任でやっている人たちに対してどうやって倒産防止させるかというところに目を向けてこういった立法措置を考えてやっていただきたいと提言を申し上げます。ぜひ御意見を聞かせていただきたい。
  242. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 木下委員の御指摘は本当に中小企業のことをよく考えていただいておると思います。  事実、調べてみますと、企業の倒産件数、負債総額、皆史上最悪でございまして、その実態を調べると、なお非常に心が痛みますのは、必ずしも二年、三年の経験の浅い、いわゆる販売不振等による不況型倒産というものばかりではないわけでありまして、中には経験、業歴十年以上の企業が倒産をしておる。それが、五十二年には二七・四%であったのが五十九年には四三・一%になっておる。このことはまさに時代の進む方向に対してそれに対応し切れなくなったという中小企業の苦しみというものが大変如実に出ておるように思います。したがいまして、倒産防止についてのいわゆる四本柱というもの、それは金融、信用保証、共済貸し付け、相談指導、この四本柱でございまして、これについての施設あるいはいろいろな施策を拡充していくことはもちろんでありますけれども、何よりも今木下委員が御指摘になったような中小企業に対する大きな配慮、愛情というものが必要だと思います。そのために、技術力の向上あるいは情報化への対応、人材養成の強化といったような新しい面に対応する施策と同時に、心を込めて中小企業施策を尽くしてまいりたいと存じます。
  243. 木下敬之助

    木下委員 それでは次に、今日社会問題となっております車内暴力問題に関して御質問いたします。総理大臣、御質問いたしたいと思います。  この問題に関して我が党の佐々木委員長が本会議質問をいたしました。それに総理はまた答弁をされております。時間がありませんので細かく申し上げられませんが、総理はその中である程度よくなったようなことを言われ、「警察官あるいは鉄道公安官その他を配置いたしまして、万全を期するように努力してまいりたい」、こう答弁されたのでありますが、その後も毎日のように車内暴力事件は起こっており、新聞に報道されております。特に、佐々木委員長が心配されておりますように、こういった事件の目撃者の多くが傍観者的態度をとっている、こういう報道がなされており、まことに憂慮すべき状態であると思いますが、車内暴力の絶滅、問題解決には乗客の協力は不可欠であると考えますが、総理、どうですか。この際、総理が国民に対して、そういった車内暴力に出くわした場合勇気を持って立ち向かってほしい、こう呼びかけることは大変意義のあることだと思いますが、どうでしょう。
  244. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 車内暴力には乗客の皆さんあるいはジャーナリズムの御協力というものは不可欠でありまして、特に周囲にいる乗客が勇気を持ってその車内暴力の鎮圧に協力されんことを切に熱望いたします。
  245. 木下敬之助

    木下委員 その総理言葉は大変意義があると思います。この際、政府総理がみずからそうして呼びかけるとともに、勇気ある行動をとりやすいように環境の整備に努められる必要があると思います。  この環境の整備というのは、私、三つの点を申し上げます。  その一つは、警察や公安官への通報体制とすぐに駆けつけてこれる警備体制を完備し、仮に勇気を持って被害者を助けるために立ち上がった人が暴力犯人と格闘になったとしても、短時間で警察官や公安官の保護を受けられる、こういう信頼感が持てるようにすべきと考えますが、この点はどうでしょうか。
  246. 中山好雄

    ○中山政府委員 お答えいたします。  警察では、車内暴力を防止するため、鉄道関係の方と緊密な連絡をとりまして、事件の発生に際しましては、車内と駅、さらには警察へ一一〇番で連絡する体制といった連絡通報体制の強化を図っているところでございます。
  247. 木下敬之助

    木下委員 二点目は、勇気を出して助けに入った本人が暴力犯と格闘になったとき、結局その助けに出た本人はどのような扱いを受けるのかということが明確でないということでございます。  新聞報道によりますと、「これまではけんか両成敗を原則としてきたが、今後は正当防衛として刑事責任は問わないことも考える。」こういったことが警視庁幹部の発言として報道されておりました。一般の国民に十分な理解を得られているとは思えません。善意から助けに入り、犯人と格闘になった場合等の警察の考え方を明確にして、誤解のないように国民に広く知らせることを考えられてはどうかと考えますが、どうでしょう。
  248. 中山好雄

    ○中山政府委員 御指摘のような場合、自己または他人の身を防御するために必要かつ相当な限度で防衛行為に出ることは正当防衛として当然許されることと考えます。  ただ、御指摘のように、仲裁者というだけでどのような行為でも一律に不問にできるという問題ではないわけでございます。したがいまして、警察といたしましては、一つ一つの事件をケース・バイ・ケースでとらえまして、仲裁者なら仲裁者という立場を勘案しつつ、その実態を十分見きわめまして、社会通念上必要かつ相当な限度内のものであるかどうかを慎重に判断し、適切に対処してまいりたいと考えております。
  249. 木下敬之助

    木下委員 私、きょう時間がありませんから提言しておきますが、国民はどうなるかわからないから、自分が結局損するかもしれないというので、手を出して加勢することをしないということもある。だから、安心してどしどしやってくれと警察も言うかどうかというのは大変な問題なんでございますので、どうぞ国民に、こういうときはどうやってもけんか両成敗なんかで一生懸命やった人が罰されるというようなことはないんだということを広く理解を求めるようにされたらよかろうかと思います。  三点目には、そのように勇気を持って立ち上がった人が暴力犯により大けがをさせられたり、不幸にも命を落とすといった結果になった場合の国家の補償が十分か。また、そういった補償のあることを国民は周知しているか、ちゃんと国民に知らせているか、こういったことが環境づくりの三点だと思いますので、この点もどうぞよろしく御検討をお願いいたします。  時間がありませんので、そういうことで私の質問の最後の問題に入りたいと思います。  戦後四十年を経た今日、なお幾多の戦後処理問題が全面的に解消していないことはまことに遺憾であります。とりわけ中国残留孤児問題の早期全面解決は急を要する課題であります。政府においても努力されていることは認めますが、この際、孤児等の基本的人権を保障し、国際信義にのっとり、国の責任において早期かつ全面的解決の方途を講ずる時期が到来しています。この見地から、次の基本方策の実現を政府に強く求めるものであります。  一つ、肉親捜しについては昭和六十一年度までに全員訪日調査を完了すること。二つ、永住帰国希望者については昭和六十三年度までに全員集団計画帰国させること。三つ、帰国者が日本社会に適応し、自立、自活できるよう万全の施策に関する具体的な整備計画を策定すること。四つ、永住帰国しない者については別途援護の方途を講ずること。五つ、全養父母に対して感謝の措置を実施すること。六つ、残留婦人も施策対象者とすること。  以上の六項目について昭和六十三年度までに全面的に解決すべきでありますが、具体的施策について厚生大臣にお伺いいたします。
  250. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 御指摘の問題は、人道的な見地からも、政府として全力を挙げるべき課題であると考えております。  そこで、項目別にお答えいたしますが、現在判明しております残留孤児が訪日いたしまして調査をいたしますことは昭和六十一年度でほぼ全員終了させる方針で、六十年度は五十九年度に比べ、百八十人から四百人に増員しておるところでございます。  次に、集団帰国のことでありますけれども、これは帰国孤児がその里親に対していろいろ話し合いをして、それが成り立った後に帰国するわけでございますので、集団ということでなくして、希望者を希望するときに受け入れることが当然ではないかというふうに思いますし、そういう意味から、時間を切ることもなかなか困難ではなかろうかというふうに思っております。  三番目の、帰国者の自立、自活のための方策につきましては、従来から関係機関の御協力を得まして、今後とも施策の充実に努力をしてまいり、帰国孤児及びその家族の日本社会への定着化を図ってまいりたいと思います。  四番目の、永住帰国しない者に対しましての別途援護のお話でございますけれども、これは中国国民に対しまして我が国、いわば外国政府が援助をすることになるわけでございますので、多少の問題があろうかと思うわけでございます。  全養父母に対して感謝の措置をしろということでございますけれども、これは精神的には、機会あるごとに、総理が中国を訪問されたり前大臣が参りましたときにもそういう感謝の意を表明しておられます。けれども、やはり金銭的な援助ということになりますと、先ほどの帰国しない者に対する別途援護、これについても同様の意味合いが残ると思うわけでございます。  最後の残留婦人でございますけれども、戦争中あるいは戦前から向こうで結婚なさった方が帰国される場合も、同伴家族、未婚の方を含めて帰国の援護と定着の援護等の対象といたしておるところでございます。ただ、問題になっておりますのは、定着促進センターへ入所させるかどうかということが、今残留孤児の問題が片づいておりませんので、しばし時間をちょうだいいたしまして、今後とも御趣旨に沿うように検討してまいりたいと思います。
  251. 木下敬之助

    木下委員 国籍、戸籍に関して三点の実現を求めたいと思います。  一つ、孤児の戸籍就籍手続は原則として国が行うものとする。二つ、残留婦人について中国人との結婚によって当然国籍を失ったものとする現行取り扱いを改善する。三つ、同伴中国籍家族の帰化手続を簡素化する。  以上三点について政府の対処方針をお伺いし、時間が参りましたので、私の質問は終わります。
  252. 嶋崎均

    ○嶋崎国務大臣 お答えいたします。  戸籍は個人の戸籍及び身分関係を公にする、証明する制度でありますから、その処理は関係法規に従って適切に処理しなければなりませんけれども、中国の残留孤児の戸籍につきましては、その範囲内でできるだけ迅速に処理することができるよう配慮してまいりたいと思います。  また、国籍関係については、旧国籍法施行当時、昭和二十五年でございますが、それ以前に結婚された方につきましては国籍を失っておるというような事情があるわけでございます。というようなことで、先ほど御質問がありましたような、国籍を失っている方についての御質問が出たんだと思いますが、当時中国人と結婚しておられる中国の残留婦人の中には、日本国籍を法律上喪失している方もしたがって非常に多いわけでございます。このような方々及びその御家族、子孫の方々につきましては、できるだけ簡易な手続で国籍が取得できるように精いっぱい配慮をしてまいりたいと思っておる次第でございます。
  253. 天野光晴

    天野委員長 これにて木下君の質疑は終了いたしました。  次に、岡崎万寿秀君。
  254. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 私はまず、日本が国是としている非核三原則の問題について総理の認識をお聞きしたいと思います。  先ほどから総理は、非核三原則は安保条約の運用に関する問題であるというふうにおっしゃいました。私はむしろこれができたときの非核三原則のその精神を重視するものであります。  御承知のように、一九六七年にこの非核三原則が打ち出されたわけでございますが、当時は佐藤総理でございました。その佐藤総理が翌年の一月二十七日の施政方針演説の中で、次のような内容のことを述べています。「人類の理性が核兵器を支配する正常な国際環境を」つくるよう国際世論を喚起する、そのことを強調されながら、また、唯一の被爆国民の発言は「世界政治のあり方に重大な示唆を与え、大きな指標となるべき」だ、こう述べているわけですね。つまり非核三原則の精神というのは、日本のこの発言というのが世界政治のあり方の大きな指標になる、この抱負を佐藤総理は述べられたわけでありますが、中曽根総理、あなたはいかがでしょうか、抱負について。
  255. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本は独特の憲法を持っておる平和国家でございますから、その平和国家の理念のもとにすべての政治を実行してまいりたいと思っております。  非核三原則につきましては、先ほど木下委員にも申し上げましたように、日本の領域、日本の防衛に直接関係する背景の問題であり、SDIにつきましては、これが宇宙にまで拡大されて、日本と直接関係のない部分も非常に多々あるわけでございますから、今後よく検討してまいりたいと思いますが、いずれにせよ、この独特の憲法を持っておる平和国家の理念というものは貫いていきたいと思っております。
  256. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 平和国家の理念と言われているのですが、当時の佐藤総理は、はっきりと世界指標にしたいという抱負を述べられているわけですね。そういう姿勢が必要だと思います。  それに関連しまして、最近ニュージーランドでロンギ政権が核積載可能艦の寄港を拒否するという政策をとったわけですが、同じ太平洋国の一員であり、同じ核兵器の持ち込みにノーと言っている日本政府の態度が問われていると思うのです。先ほど言いましたように、非核三原則が打ち出された当時のこの精神に立つならば、ニュージーランドのとっているこの非核政策について、最小限でも総理は理解を示す必要があるんじゃないか、そう思いますけれども、いかがでしょうか。
  257. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ニュージーランドはニュージーランドの独特の政策をお持ちだと思いますが、日本日本独特の平和憲法のもとにおける非核政策というものを持っておるのでありまして、外国は外国、日本日本日本日本独自のものを貫いていく、そういう考えが正しいと思います。
  258. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 あなたはレーガン大統領と会ったときはSDIに理解を示したんじゃありませんか。アメリカアメリカ日本日本だったらそういうことを言う必要なかったのでしょうが、少なくとも太平洋国家の一員で、日本が念願としてきているその非核政策をとっているニュージーランドについては、理解ぐらいは示すのが当然じゃありませんか。私そう思いますけれども、もう一度お願いしたいのです。
  259. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 SDIは防御兵器、非核兵器で、核兵器を廃絶するという目的がある、そういう大きな理念、そういう体系という話でありますから私は理解を示したのであります。ニュージーランドはニュージーランドとしての、現在の労働党政権が、選挙の結果を踏まえ、国民に対する公約を実行して今のような政策をおとりになっておるので、ニュージーランドはニュージーランド、日本はちゃんとした安保条約のもとに事前協議という制度を制度的にも堅持してやっておるのでありまして、現在の日本政策は結構であると思っております。
  260. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 アメリカアメリカ、ニュージーランドはニュージーランド、いろいろおっしゃいますけれども、日本国会の決議、これは総理も御存じのように、八二年の五月ですが、「世界の各地域に非核武装地帯の設置が実現するよう国際的努力をする」ことを政府に強く求めているわけですね。そうしますと、非核政策をとる国がニュージーランドにできたということは、これは当然日本としては好意を持つべきであるというふうに思うのです。最近、ニュージーランドを初めギリシャやオランダやベルギー、カナダ等々、核兵器の持ち込みは御免だ、そういう政策をとる国がふえているわけですが、総理はこのような非核政策をとる国々がふえていることを望ましいとお考えになっているのか、そうじゃないのか、お答え願いたいと思うのです。
  261. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その国には皆その国の環境、条件、生存の環境というものがあるわけでありまして、日本日本のこういう環境のもとに、また歴史的因縁のもとに現在の政策をとっておるのでありまして、日本の非核三原則を堅持しているという政策世界でも知っておると思います。日本日本の独自の政策を堅持していけば結構である、そう思います。ほかの国がどうするかということを一々論評することは差し控えたいと思います。
  262. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 国会決議に、世界の各地に非核武装地帯ができるように努力せよと言っているのですよ。日本のことは日本のこと、世界のことは世界のことという姿勢じゃないわけですね。少なくともこういう決議を実行する立場に立つ政府であるからには、やはりニュージーランドの非核政策については理解を示す、あるいはそういう姿勢をとっている各国に対しては望ましいというふうに姿勢を示す、このことが必要だと思いますが、それさえも言えないわけですか。
  263. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一つの御意見として拝聴しておきます。
  264. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 つまり同じ太平洋地区であり、同じ核持ち込みノーという政策をとっている国について、理解も示すことができない、そのことを今はっきりおっしゃったと思うのですね。  では、ちょっと角度を変えてお聞きしますが、ニュージーランドに対してレーガン政権は盛んに圧力を加えているようですが、日本が一九六七年当時、非核三原則を打ち出したときに圧力はございましたか。どなたか…。
  265. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 我が国の非核三原則に対してアメリカから圧力が加えられたというようなことは承知しておりません。
  266. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 ニュージーランドのロンギ首相は、アメリカからあからさまなおどかしを受けているというふうに批判をしていますが、なぜこのように違うのか。同じような核持ち込みノーという政策をとっているニュージーランドと日本とではまるで百八十度違うわけですね。そこから、ニュージーランドの方が核持ち込みノーという政策では本物であって、日本は事前協議制があるという形で核持ち込みはないと言っているけれども、それは建前だけであって実際は抜け穴があるのじゃないか、こういう国民の疑惑が新たに広がっていると思うのです。総理、これについてどうお答えになりますか。
  267. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 アメリカとニュージーランドの間の問題は、先ほど総理が御答弁になりましたとおりでございまして、我が国としてとやかく言うべき問題ではないと思います。これはアメリカとニュージーランドの間で解決されるべき問題だというふうに私ども認識しております。  日本アメリカとの関係に関しましては、委員も御承知のとおり、安保条約に基づきます事前協議制度というものがありまして、これによって核の持ち込みについては対処するということに、これは条約上の仕組みとして、アメリカも合意をしてそういう仕組みが存在しておるということでございます。
  268. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 少しもお答えになっていない。国民は、なぜニュージーランドと日本に対してアメリカがこう態度の違った姿勢になっているのか、ここに疑問を持っているわけですね。今の説明では少しも国民は納得しないというふうに思うのです。  それで、アメリカはなぜ圧力を加えるのか。これはアメリカ自身がはっきり言っています。アメリカ国務省の声明の中には、これはANZUS条約の同盟関係を損なうものだというふうに警告しているわけです。また、レーガン政権の陰の政策立案機関だというふうに言われて影響力似あるヘリテージ財団の「ANZUSの危機」というレポートですが、これにははっきりと「ANZUSの存在そのものを脅かすものである」というふうに書いているわけです。つまり、核積載艦船の寄港を拒否するということがアメリカの核戦略、同盟政策の根幹にかかわる、そういう認識なんですね。  ニュージーランドに比べて日本はソ連にも近いし、より戦略的な拠点であると思うのですが、日本のとっている非核三原則、こういう非核政策というのはアメリカとの同盟関係を損なうことにならないのはなぜなのか、当然ここにも疑問が生まれてくるわけですが、それに対しては総理、どうお考えになりますか。
  269. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 日本の非核三原則につきましては、沖縄返還のときその他累次の機会に、アメリカ政府の責任ある立場の人から、日本国民のそういう感情については理解をしておる、他方におきまして、安保条約及びその関連取り決めについてはアメリカとしては今までも遵守をしてきているし、今後とも遵守をするつもりである、こういうことで累次確認を得ておるわけでございますので、我が国の非核三原則に対するアメリカの態度は、そういう経緯からも明瞭であろうというふうに存じます。
  270. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 どうも今のような説明で国民が納得するはずないのです。これは、同盟政策を損なうというアメリカの認識というのは、ニュージーランドについで強く圧力となっている。日本の場合は、ロン・ヤス関係で非常に親密な関係にある、だから、日本の非核三原則によって日本には核兵器は持ち込まれていない、事前協議制によって持ち込まれていないという、そういう政府答弁というのは、これはおかしいんじゃないかというのは当然起こってくるわけです。  最近一年間の新聞等の世論調査をとりましても、核が持ち込まれている、あるいは持ち込ませずという非核三原則のその条項については不信だ、全国新聞、それぞれ六五%あるわけです。ニュージーランドのロンギ政権は三分の二の国民の要求に従って、同盟関係は続けるけれども、しかし核兵器積載艦については断るという政策をとったわけですが、日本政府は、六五%の国民が不信を持っていることについて、それを確かめようとしない。私はここはおかしいと思います。  トマホーク積載艦が次々に入港しておりますし、さらにカール・ビンソン等の寄港が行われましたし、世界的な新たな動きが起こってきている、こういうときだからこそ、いつまでも灰色状態にするのではなくて、やはり私は非核であるという保障をはっきり求めるということが政府にとっては必要な段階に入ってきていると思うのです。いつまでもごまかすわけにいかないと思いますが、総理、今度はじかに答えてもらいたいと思います。どうでしょうか。
  271. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 安保条約の事前協議制度というのが非核の証拠です。
  272. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 そこに皆さん疑問を持っているわけですよ、六五%の人が。だから、そういうのはだめだと言っているわけです。総理はこれに答えることできませんか。
  273. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 外務大臣答弁したとおりです。
  274. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 それが国会かと思います。  先に進みましょう。  政府は、昨年秋の第三十九国連総会に西ドイツなどとともに「核時代における戦争防止」という表題の決議案を共同提案したのです。これは非同盟や中立諸国の非難を受けて撤回を余儀なくされたわけですが、そのとおりですね。
  275. 山田中正

    山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  政府は、国連におきます軍縮交渉の中の一番大きな目的といたしまして核廃絶ということを従来から唱えております。第二回国連軍縮総会にその作業文書を出したわけでございますが、それを進めるものといたしまして、昨年の総会におきまして核廃絶のための二つの道、一つは、核兵器の削減のための効果的具体的措置をとること、もう一つは、核兵器を使用を排除するためには紛争の防止が必要である、この二つの観点から、その趣旨を盛り込みました決議案を提出いたしました。  なお、この決議案を提出いたしました後、代表団との間に広範な協議を重ねましたが、特に非同盟の諸国の中におきまして我が方の案に共鳴する国が相当出でまいりましたが、他方、核のみに絞った決議案にしたいということを強調する非同盟の諸国がございまして、非同盟の中に意見の分裂が生じました。私どもといたしましては、非同盟というものは軍縮交渉を進めるに対して非常に大きな勢力でございます。非同盟の中の分裂を招くことは望ましくございませんので、昨年の総会では投票を求めることなく、さらに本件についての検討を進めるよう要請したわけでございます。
  276. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 もっと簡単でいいのですよ。要するに撤回したわけです。その前文は、「各国が自国を守るに必要な措置をとる固有の権利を想起し」とうたっています。主文の二では、「個別的集団的自衛という固有の権利の行使を除き、いかなる武器をも決して使用しない」、このように述べているわけですが、このような内容の決議案を国連に出したのは中曽根内閣が初めてですね。簡単に答えてもらいたいと思うのです。
  277. 山田中正

    山田(中)政府委員 決議案の形で提出いたしましたのは昨年が初めてでございますが、先ほども申しましたように、第二回軍縮特別総会の場合に、作業文書としてその考えを提出いたしております。
  278. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 作業文書と決議案は違います。決議案は中曽根内閣が初めて出した。この中身ははっきり、その裏を読むと、自衛権の行使の場合はいかなる武器も、つまり核兵器も使ってよいというふうになっているわけです。核兵器の使用権が保有国にある、このように読んでよろしいですね。
  279. 山田中正

    山田(中)政府委員 先生御指摘の主文の第二項でございますが、そこで私どもが主張いたしましたことは、各国が国連憲章に基づいて紛争を防止すること、したがいまして、各国は国際関係を核兵器、通常兵器を問わず武力行使で解決してはならない、ただし、自衛権の場合は別であるということでございます。
  280. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 自衛権の場合はいかなる兵器も使っていいということではありませんか。核兵器も使っていいということでしょう。  昨年、ロンドン・サミットの前に中曽根総理は党首会談で、核兵器を使うか使わないかというのは核保有国の勝手だというふうに述べられて、問題になったことを御記憶だと思うのです。核兵器の使用権を認めるということは、その際いろいろと発言をなさいましたけれども、結局のところは、核保有国は核兵器も使用することはできるというふうになりませんか。つまり、使うことは核保有国の権利、勝手だというふうになりませんか。これは総理自身のお言葉ですから、はっきりお願いします。
  281. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今戦争を防止している力はやはり抑止力に依存しておる、その抑止力の中には核兵器も含まれている、そういうふうに前から申し上げているとおりでありまして、そういう意味におきましては、戦争抑止力として核兵器もそういう効果を持っておるという現実はお互い見ておるとおりであります。そういう意味において、その文脈においてそういう考えを申し上げておるのであります。
  282. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 それが問題になったときに総理は、これは国際法の問題と政治は別だ、核保有国が核兵器を使ってよいという権利、これはあるけれども、使っていいとは思わないというふうに述べられていますが、いいとは思わないというのは、使うべきじゃない、使ってはいけないというふうになりませんか。
  283. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは、使うということは望ましくないに決まっています。
  284. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 望ましくないと使ってはならない、これは随分距離があると思うのです。望ましくないというだけなんですが、今度のこの国連への共同提案というのは、これまで核保有国は核兵器を使う権利があると言ってきた政府の見地を国連へはっきりと共同決議案で出したという点では、これは極めて重大であるというふうに思っているのです。これは先制使用の権利も含むのですか。端的にお答え願いたい。
  285. 山田中正

    山田(中)政府委員 先ほど申し上げましたように、国連憲章二条四項では、核、通常兵器にかかわらず、侵略に武力を行使することは禁じられております。
  286. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 わかったようなわからないようなことですが、先制使用は入っているかどうかということなんです。入っていますね。
  287. 山田中正

    山田(中)政府委員 もし先生のお尋ねが、通常兵器の攻撃に対する自衛権の行使としての反撃の場合の核の先制使用ということでございますれば、自衛権の行使であるとすれば、通常兵器、核兵器にかかわらず、現在の国際法上ではそれを禁じておるものがないということでございます。
  288. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 これは重大な発言です。自衛権、自衛権と言われますけれども、過去の戦争の場合いつも自衛権の名前で戦争が行われてきました。日本の場合でも、中国大陸への侵略戦争も自存自衛と言ったのじゃありませんか。ベトナム侵略戦争の場合でも、これは自衛権の行使だというふうに言ったのじゃありませんか。そうしてベトナム戦争のときやあるいはその前の朝鮮戦争のときに、アメリカ軍部が核を使用する計画を持っていたことは、これは歴史の証言にもあるとおりなんです。今、自衛権の行使の名目で核兵器が使われたらどうなるか、そのことを私たちは真剣に考えるべきときではないかと思います。  その核兵器というのは、わずかな使用だけで地球の凍結や人類絶滅につながる、そういう残虐兵器なんです。人類の存在と核兵器は両立しない、このことを私たちは、強く、広く訴えていく必要があるわけですが、いかなる名目であってもこの核兵器の使用は正当化されない、許されない、これが被爆国日本の姿勢ではありませんか。ところが、自衛権という名前で先制使用までも正当化する、これは許せないというふうに思います。この決議案は、大量破壊兵器である核兵器と、それから通常兵器とを同一視しているのですね。総理、これは誤りではありませんか。
  289. 山田中正

    山田(中)政府委員 我が方の決議案で主張いたしておりますところは、現在の情勢において通常兵器による紛争というものが核のエスカレーションに及ぶ危険がある、したがって、あらゆる紛争を防止する手だてを行わなければならない、そこに重点があるわけでございます。
  290. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 通常兵器と残虐兵器である核兵器とは同一視できないのじゃないか、そういう見方は誤りじゃないかということを聞いたわけです。そういう見方だということなんですね。総理、それでよろしゅうございますね。核兵器と通常兵器とを同じく見る見方は誤りであるというふうに思いますが総理、どう思いますか。
  291. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 理念としては、核兵器も通常兵器も使うべきではない、私は理念としてそう思っている。しかし、現実の国際社会というものを見れば、国連憲章というもので規制しておるので、我々は国連中心主義という考えを持っておるので、国連憲章の指示する方向において我が国は進退をする、そういう考えを持っておるわけです。
  292. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 これは答弁になっているわけではないです。  国連の場で日本の共同提案したこの決議案に対して、非同盟のインドのドウベイ氏はこう述べています。「起草者たちは、自分たちの自衛権の行使にあたって、核兵器を使用する資格があると総会全体が我々に信じさせ、総会にこれを承認させようとしている」「私たちはこれら少数の核大国およびその同盟国に、世界と人類全体を自分たちのいわゆる自衛の人質としておさえる権利をだれが与えたかと尋ねたい」。これは私は、非同盟インドのドウベイ氏の声だけではなくて、世界の多数の声であると思います。また、日本国会の声でもあったのです。  一九八二年五月の御承知国会決議、衆参両院で全会一致で採択した国会決議は、核兵器の全面禁止と使用禁止の実現のためにせいぜい努力するように政府に義務づけているわけなんですね。この国会決議から見て、中曽根内閣が初めて出した核兵器の使用を是認するような共同決議案は、違反じゃございませんか。総理、どうです。
  293. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 違反であるとは思いません。
  294. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 ここではっきり中曽根内閣の姿勢が、核兵器の先制使用も核保有国のそれは権利であるから当然だ、日本はそういう姿勢で国連でもどんどんやっていく、このことをみずからおっしゃった、こう理解してよろしゅうございますね。
  295. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、現実の世界というものを見ますと、我々は理念としては、核兵器というようなものは業の兵器であって地上から一日も早く抹殺すべきである、そう考えてはおりますけれども、この兵器というものによって均衡が成立され戦争が防止されている、こういう現実も否定できない、現に核兵器を持っている国があるという今日の状況から見れば。そういう現実に立脚して今後も戦争を起こさせない、そういうためには、そういう起こさせないだけの力あるいは恐怖心というものがやはり存在している、そういう状態で今の平和が維持されている、まことに残念ながらそういうことであります。そういう事実の上に目をつぶらないで我々はやはり平和を維持していかなければならぬ、そういうことなのです。
  296. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 事実の上に目をつぶるかつぶらないか、これは中曽根総理レーガン大統領のそういう目と、先ほど言いましたインドのドウベイ氏のような、そういう大多数の核兵器の使用を正当化することは許されない、こういう声とはっきり違いがあるというふうに思います。  そこで話を進めますが、政府は、六二年から核兵器の使用禁止決議については、これは一貫して棄権ないし反対の態度をとられてきておるわけです。昨年の三十九国連総会でこの決議に賛成した国は百二十八なんです。国連参加の圧倒的な国々が賛成している。しかし、日本政府はこれに棄権ないし反対。今、核兵器使用禁止の要求というのは、核戦争の不安や脅威にさらされている世界諸国民の念願であるというふうに私は思いますし、総理も「新しい保守の論理」の中にそのことをちょっと書いたと思うのです。  ところで、総理は核不使用決議に賛成しない理由を、これは実効性がないんだということをしばしば言われておりますが、昨年二月十五日の衆議院予算委員会で我が党の不破委員長質問に答えてこう言っているのです。「単に口先だけでそういうこと言うというのでは、これは抑止力が崩壊するという理論も出てくる」。ではここで聞きますが、核兵器をお互いに使わないということを禁止することがどうして抑止力の崩壊になるのか。総理にお聞きしたいのですが、そもそも核抑止力とはどういうことをお考えになっていますか。ぜひそのことをはっきりお答え願いたいと思います。
  297. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 要するに力と力の均衡、しかもそれが核という恐るべき兵器、そういうものの均衡によって、相手がお互い同士使えない、そういう状態を現出させておる、そういうことだと思います。
  298. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 使えない状態と言われましたけれども、しかしいつでも使っていいという権利を持っているそういう状態、まことにこれは危険な状態なんですね。しかし、核抑止力の立場に立つならばこの核使用の手を縛る不使用決議に賛成することはできないということになると思いますが、そのことで、一九八一年三月十四日の参議院の予算委員会で我が党の上田副委員長質問に対して、政府答弁はもっとずばりこのことを言っています。「核使用を一切の場合に禁止するということは、核抑止力とは両立いたさない概念」であり、「核を使わないということは核兵器の使用に対して一定の予断を与えるわけでございますから、核抑止力の見地からはこれに賛成することはできない」。ここにははっきりと、核抑止力の立場からは核の使用を禁止することはできないんだ、つまり核抑止力というのは核の使用と不可分だということを言っているわけです。  これは核抑止力というお考えの方々によく考えてもらう必要があると私は思いますが、核の使用というのは、抑止力と言いますけれどもいつかは使うとなれば、これは核戦争なんですよ。核の使用を前提として成り立つ論理というのがいかに危険であるかということを示していると思うのですが、そのように核抑止力を理解してよろしゅうございますね。
  299. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 核兵器を使用しないということは結構なことなんです。ただ、使用しないということが安心して任せられる状態をつくらなければ結構でない、何が起こるかわからぬという状態では。したがって検証であるとかあるいは実地検査であるとか、そういうことによって本当に安心してやれるという状態をつくることが先決だ。そういうことを考えないで演説だけやっているのは空想的廃絶論であって、やはりそういう現実的にどうしても使えない状態をつくり出しておいて、そうして安心してやるのが現実的な廃絶論である、科学的廃絶論である、こう申し上げておるのであって、何回も申し上げておるとおりです。
  300. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 どちらが科学的でどちらが空想的か、じっくりきょうはやってみましょう。ともかく核抑止力というのが、核の使用を前提に成り立っている論理だということは暗に認めざるを得ないと思うのです。  先に進みますが、総理は不破委員長質問に対して答えてない部分がある。それは、核抑止力論では西側陣営が核戦力で優位に立ては立つほど抑止力は強まるという考えかどうか、これを聞きましたが、答えてない。これは昭和四十一年三月十八日の衆議院外務委員会で、当時の椎名外務大臣も似たようなことを言っているのです。「いわゆる自衛のための報復力であるのでありますから、それが弱いよりも強いほうがいいと私は考えます。」総理もこのように抑止力というのは弱いよりも強い方がいい、大きければ大きいほどいいというふうにお考えですか。
  301. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ともかく有効に効いている状態というのは必要だと思うのです。
  302. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 有効に効くというのは、これは大きければ大きいほどいいということですね、相手よりか。優位に立つということですね。
  303. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 要するに抑止力として成立している状態を現出させておけばいいということです。
  304. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 抑止力として成立する状態というのは均衡だとおっしゃる。均衡といっても、これは極めて主観的なんですよ。おわかりのとおりなんです。どうしても相手より軍事的に優位に立とうとする、これが抑止力論なんですね。軍事的優位に立とうとするならば、これはどうしても軍拡になるのじゃありませんか。だから抑止力論というのは、安心できる状態といいながらかえってこれは核軍拡になっている。お認めになりませんか。
  305. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その論争はもう何回もやっているのであって、しからば今のようにやめさせる方法は何か。それは結局、検証とか実地検査とか、安心させる手だてがなければそういうことはできないのですよ。前から申し上げているとおりです。だから、そっちの方の研究とそっちの方の政策をもっと進めたらどうですかね。単に口でやめようやめようとか、どっちが強いとかどっちが少ないとかという問題よりも、現実にやめさせるために、じゃモスコーへ入るとか、あるいはバンデンバーグ基地へ行くとか、そういう具体的な方法で論議を進める方がもっと実りのある論議だと思うのです。
  306. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 それをやめさせるためにこそ、我が党の宮本議長を先頭にちゃんとモスクワに乗り込んだのですよ。その問題については、私はちゃんとやります。  それで、今の核抑止力論に立った核軍縮交渉というのは決して成功していない、このことははっきりしていると思うのです。核の保有を前提にして、そして抑止と均衡の立場から核兵器の削減とか軍備管理とか、これまで何回やってまいりましたか。幾つの条約ができ、幾つの協定ができましたか。しかしそれは決してレベルダウンになっていない。あなたは盛んに現実に安心できる状態をつくることの方が大事だ、検証が先だと盛んにおっしゃるけれども、成功した例はないじゃありませんか。一路拡大じゃございませんか。そこが問題なんですよ。  このことについて我が党の松本国対委員長質問したときに、よく議事録を読みますと、間接的ですけれども、あなたはこれを認めているような発言をされています。そういう軍備拡大、核軍拡になっているということについては、「業の兵器である、人間のさがである、悲しいけれどもそういうものはあるんだ、」というふうに言われたのですが、これは現に認めたような文脈になっています。昨年の六月の二十日でしたが、衆議院の外務委員会で、私の質問に国連局長が答えました。「結果といたしまして縮小が行われたかというと、残念ながら現状はそうでないと思います。」これは歴史の事実なんですね。事実問題ですから、総理、もう一度はっきりと確認してもらいたいと思います。
  307. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 なかなか進まぬということが現実ですね。しかしSDIというのが出てきて、ソ連の方もジュネーブで会おう、こういうことになってきたのは、やはり世界じゅうが喜んでいるんじゃないかと思います。
  308. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 進まないだけではなくて、縮小均衡じゃなくて拡大均衡になっていることは認めますか。
  309. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 第二次SALTにおいて千五十四発ですか、そういうような数字で、そういう数字からいうとその辺で今停滞している。ただ、性能においては前進しているかもしれませんね。その数については、今のように交渉中断という状態ですから、我々第三者が容喙すべからざるものだ、こう実際は思いますね。
  310. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 量も質も、とにかく拡大していることは事実なんです。質の点ではお認めになりましたが、安倍外相はもっとはっきり言っていますね。参議院の決算委員会、一月二十三日でございましたか、「この抑止と均衡も拡大均衡に至っては困るんだ、縮小均衡の方へいかないと世界の平和にとって脅威である」、脅威であるというふうに言われているのです。――総理いないのは、まことにこれは困るのですね。
  311. 天野光晴

    天野委員長 生理的現象だ。
  312. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 生理的現象ですか。  それから、朝日の一月一日のインタビューで、同じ安倍外相は次のように言われているのです。「一面では「抑止と均衡」によって軍拡が行われている。要するに均衡を保って拡大してきている。」総理は今質だけ言いましたけれども、安倍外相の場合は「均衡を保って拡大してきている。」ということをはっきり言われている。(発言する者あり)――失礼な話ですよね、休憩しますか。
  313. 天野光晴

    天野委員長 続けてください。
  314. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 「これは非常に危険なことだ。」というふうに言われているのです。「このへんで「抑止と均衡」も大事だが、縮小しながらでなければ意味がない。」これは安倍外相がはっきりとインタビューに答えて言われているわけです。つまりここでは安倍外相自身はっきりと、今までのやり方では縮小均衡に行ってないんだ、むしろ拡大均衡に行っている、これは非常に脅威であるし、非常に危険だということを外相は言われているわけですね。私はこれが実際だと思います。――総理はどこへ行ったのですか。  この問題について、やはりはっきりする必要があると思いますね。安倍さん。
  315. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 それは私の現状認識といいますか持論を申し述べただけでありまして、ジュネーブの軍縮会議でもそういうことを言いました。SALTだとか、いろいろと軍縮会議あるいは軍縮の協定を結ばれましたけれども、今のSS20の展開等を見てみますと、決して状況はよくなってないというのが認識。ですから米ソの核軍縮交渉が始まる、それに対して世界が非常な期待を持っているということでありまして、やはり核については拡大均衡じゃなくて縮小均衡の方へ持っていかなければならない、そして最終的には絶滅させなければならないというのが日本の理想であります。
  316. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 委員長総理質問なんで、ちょっとおきます。――今、大事なところを言っているところでした。安倍外相との別に矛盾をつくわけじゃございません。しかし、これは私は正直なところだというふうに思いますので読み上げたわけでございますけれども、安倍外相は、今のやり方では縮小均衡じゃなくて拡大の方へ向かっている、これは非常に脅威であるし、危険なことだというように言われているのですね。私は、これは正直な事実を述べられていると思うのです。  そこで、今、安倍外相の発言があったわけでございますけれども、従来の軍縮交渉では不毛であったということを安倍外相自身がお認めになっているわけなんですよ、従来のやり方では。つまり、盛んに言われましたその安心できる状態という形で、お互いが核軍備競争を制限するかのようにしながら、実際上は拡大している。抑止と均衡と言いながら、実際上、核保有を前提にしたような核軍縮交渉がどういう成果があったか。ここに安倍外相、言ったとおりなんですね。  それで安倍外相や総理にお聞きしたいのです。これまでのようなやり方では縮小均衡に向かわない、盛んに言われるレベルダウンにはならないということがはっきりしているわけですが、それではどういう方向で新しい転換をなさろうと考えておいでになるか、そのことについてお答え願いたいと思うのです。
  317. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これまで何回も軍縮交渉が行われてまいりましたし、また米ソ間でSTART等についてのお約束もできたわけで、あるいは核不拡散条約等も存在をしておるわけですから、それはそれなりに米ソもあるいは世界も軍縮には努力をしておると私は思うわけですが、しかし残念ながら、先ほどから私が言っておりますように、今日の状況は、例えばSS20の展開等を見てみますと、やはり大変な状況になってきておる。そういうことを見ると、やはり今の世界は核軍縮というよりはほっておいたら核軍拡の方向へ移っていってしまう、そういうところに今回米ソの核軍縮の交渉が再スタートを切るということは、世界のために大変好ましいことである、ぜひともこれを成功をさせて、そして核軍縮交渉が成果を上げ、さらにそれが最終的には核絶滅というところに向かっていくことを我々は心から念願をしておる、こういうことであります。
  318. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 ジュネーブの米ソ交渉に非常に期待するということは私たちも同じなんです。これは従来の交渉とどこが違うのかといいますと、三つのグループについて分けていろいろと折衝があるわけですが、あらゆる分野において核兵器の廃絶をこの交渉自体の目標にしているということ、ここが新しいと思うのです。ここに今度の交渉が従来と違った画期的な意義があると思いますが、これはそうお認めになりませんか。
  319. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはもう我々人類の目標だと思いますね、核の絶滅を図っていくというのは。しかし、そのために一挙に、ただ目標にしているからといってこれが実現するものじゃなくて、今の三つの分野に分けて、いわゆる戦略核あるいはまた中距離核、宇宙兵器、そういうものについて具体的に詰めていって、そういうところからやはり最終的には絶滅の方向へ持っていこう、これはやはり、米ソの今の世界に対する認識というものは私は正しいんじゃないか、こういうふうに思います。
  320. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 今の説明だけでは従来のやり方と変わらないのですよ。あなたが懸念されている拡大均衡に向かうばかりなんです。違う点というのは、転換というのは、核兵器全面禁止を今度の交渉の目標に掲げている、ここだと思うのですね。これが画期的だと思うのですが、総理はそうお思いになりませんか。
  321. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 よく核兵器全面禁止、核廃絶を目的にして初めてとおっしゃいますけれども、今までのNPT条約でも完全軍縮ということを言っておるので、完全軍縮というのは核兵器の廃絶まで含んでおる、我々はそう思っておる。だからNPT、核拡散防止ということを言っておるのであります。それからSALTの場合でもそういうことを、完全軍縮ということを目標にしているということはうたわれていたと思います。ですから、今度が何も初めてのことじゃない。
  322. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 全面完全軍縮と核兵器廃絶とは相当中身が違うのです。しかし、いずれにせよ、このような方向で新しい型の軍縮交渉が行われていくことは望ましいというふうに思うのです。  そういう機運の中で、私たち松本国対委員長総理質問しましたが、核兵器廃絶協定を促進するための決議について、総理はよく検討しますというふうにお答えになったわけですが、ことしは被爆四十年であります。その国際的な機運を促進するためにも、被爆国日本がイニシアチブをとってこの秋の第四十国連総会に提出することが望ましいと思いますが、総理いかがでしょうか。
  323. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 よく研究したいと思いますが、問題は、いかにそれを検証して安心のいくやり方で持っていくか、現実問題になるというと、それが一番の大事なポイントなんですね。ですから、そういう面も含めて研究いたします。
  324. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 今言ったのは、促進の決議をお出しになるかどうかということなんです。これは促進ですからね。完全禁止という問題の協定ができる場合は、当然検証問題ができてくるでしょう。しかし、促進決議は、これはそういう機運をつくるものでございますから進んでやるべきだと思いますが、今度の四十国連総会にお出しになりますか。
  325. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 促進にしても廃絶にしても、ともかく安心のいけるということがやっぱり大事なことなので、そういう点も含めて研究いたします。
  326. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 では、SDIの方に話を進めます。  この問題については、各委員から質問が多く出されましたので、私はちょっと角度を変えて述べたいと思いますが、総理は、SDIの研究に理解を示した理由の一つに、これが核兵器を究極的に廃絶することを目標にしているものであるからだというふうに言われました。SDIが果たして核兵器の廃絶につながるかどうか、それも論点になると思いますが、アメリカのワインバーガー国防長官が四日に議会に提出した国防報告では、この核兵器の廃絶の課題というのをSDIが成功することによってできると、全くSDI任せになっているわけです。これは、今緊急の課題である核兵器の廃絶という問題をSDIが成功する十年先まで事実上棚上げするようなものになるわけなんですね。私たちはそれは逆じゃなくちゃいけないと思います。ジュネーブでの米ソ交渉もあるわけだし、核兵器が廃絶されればSDIの使用は要らぬわけでございますから、やはりこの見地に立って核兵器の廃絶のための、それは検証問題も結構でございますよ、それを含めて大いに進めることが必要であって、決して、アメリカの国防報告のように、SDIによって核兵器が廃絶されるからそれを待てばいいんだということは言うべきじゃないというふうに思います。総理もよもやこの国防報告の見地にお立ちになっているのじゃないと思いますが、いかがでしょうか。
  327. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国防報告のそのところを私、正確に読んでおりませんから何ともコメントできませんが、今まで申し上げたとおりのことです。
  328. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 それでは国防報告のように、核兵器の廃絶というのは、それができればいいんだという見地じゃないというふうに理解してよろしゅうございますね。
  329. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今まで申し上げたとおりです。つまり検証とか安心のできる、そういうもので安心してやれるような状態ができなければ責任をしょった仕事ではないというのです。
  330. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 そこで、これは二月十一日のニューヨーク・タイムズに載っていましたが、レーガン政権のSDI研究というのが、これは単に弾道ミサイルを破壊する、そういう防御システムをつくるだけじゃなくて、もう一つの研究がある、それは相手方が同じようにSDIをつくった場合、それを突破するやりの研究もしているんだ、つまり、新しい盾と同時にやりの研究もしているということ、こういうことが書かれていましたし、現に八六年度の予算の中にも一億七千四百万ドルの重点配分が予算上なされているということが述べられているわけです。また、アメリカの空軍もこのことを確認したというふうに書いてありますが、この見地に立ちますと、これは単に防衛的なものだけじゃなくて、それとあわせてやりの部分、つまり、相手のSDIを破壊してさらに攻撃を加えるという、そういう非常に危険な攻撃的な内容も含んだものであるということ、こういう攻撃的な構想の一環だということがはっきりするわけですが、この点については総理レーガン大統領から説明を受けなかったでしょうか。
  331. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういう細かいところまでは話ししません。
  332. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 これは細かくないのです。つまり、片一方しか説明を受けていないわけですね。  実際のところ、これはホワイトハウスの「レーガン大統領の戦略防衛構想」という報告の中にもはっきり書いてあるわけですが、アメリカがSDIの研究を進める理由を三つ挙げています。その一つに、既にこの分野ではソ連が積極的に努力をしている、現にこういうふうに相手方がSDIの研究もやっているんだ、だから私たちやらなくちゃいけない。こういう見地からSDIの研究をしますと、これは当然、単にSDIだけじゃなくて、相手がSDI類似のシステムをつくった場合、これを突破するものをつくるのも、研究するのも、これも軍事常識だと思うのですね。  だから、SDIの説明を受けた場合は当然そこまで聞くべきであったと思いますし、それも聞かずに理解を示すというのは、私はこれは十分じゃないというふうに思うのです。今からでもこのことについてはっきりお確かめになったらどうでしょうか。これは総理がお答え願いたいと思います。
  333. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 ホワイトハウスが発表した文書の中で、アメリカがSDIの研究を進める理由として三つ挙げておりまして、その中で、委員指摘のように、ソ連が弾道ミサイルに対する防御システムについていろいろ研究をやっておるということを挙げておることは、そのとおりでございます。  ただ、先ほど委員指摘の、アメリカの空軍のポスチャーステートメントに出ております問題は、これはソ連のSDI云々と申しますよりは、ソ連が現在行っておりますいわゆるABM、ABM条約のもとで認められている範囲のものでございますが、そういうABMの近代化、さらには、場合によってはそういうABM条約で認められている範囲を超えてそういうソ連の能力の近代化を進めていくのにやむを得ず対応するためのものであるというふうに空軍態勢報告には書いてございますので、そういうものでございまして、ソ連のSDI云々というのとは、これはまた別の問題であろうというふうに理解しております。
  334. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 いずれにせよ、ニューヨーク・タイムズでもそうはっきり指摘していますし、予算措置もとられているわけですね。  そうしますと、中曽根総理は大変楽しそうにSDIについて説明なすっていますけれども、この面だけじゃない、危険な面があるということを言われているからには、確かめてみることは必要じゃございませんか。これは総理自身、盛んにあなた自身が言われているのですからね。やっぱり確かめるということをはっきり言ってもらいたいと思うのです。
  335. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ともかくSDIというものにつきましては、アメリカ大統領が私に直接、今まで申し上げたようなことを言ったのであって、政府の最高責任者が言ったということはそれなりに信じていいことである、そう思っております。
  336. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 言ったところはそのとおりかもしれませんよ。しかし、もう一面があるわけです。あなたには盾の面だけしか説明していない。あわせてやりの面の研究があるのですよ。それがすっぱ抜かれておるわけですね、予算措置もあるんだということを。だから、あなたは盛んにこの盾の面の説明をなさるのだったら、あわせてやりの面も軍事常識からいうとあり得るし、指摘されているんだったら、その面についても問い合わせてみましょうというのが当然じゃありませんか。両面で進むのが今の軍事の科学なんですね。あり得ることなんですよ。当然これは政府として責任を持って調べてもらいたいと思いますが、どうでしょう。
  337. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 SDIについては、それがいろいろ前進して勉強が進んだときには情報を供給してもらいたいと言って、向こうも承知しておりますから、それにつきましてはいずれ必要に応じてやってみ、研究もしてみたいと思います。
  338. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 SDIだけでなくて、SDIを破る方の研究も、つまり盾の面だけじゃなくてやりの面についても同時に情報を得るようにしてもらいたいと思うのです。  それで、時間も迫りましたので、自衛隊と日米共同作戦の問題を幾つか絞って質問したいと思います。  総理はロンドンサミットの際、イギリスの国際戦略研究所で講演をされたわけです。これは、総理自身が大変光栄だというふうにこの中で述べられていますが、また、よく練りに練った文章であったというふうにも聞いています。この中で、私たちが読むと非常に重大な中身があるように思います。それは、みずからの防衛力、つまり日本の自衛隊は従来「その目的と性格を自国の防衛のみに限る」としてきたが、その後、「防衛力を漸進的に建設していくことによって、我が国の安全保障を全うするとともに、極東の平和及び安定の維持に寄与すること」にした。  まず聞きますが、翻訳上の間違いはこれはございませんね。記者クラブに配ったのがこれなんです。これは「演説終了後使用のこと。」と書いてありますから、はっきりした記者クラブ用のものなんですね。総理自身は英語でおやりになったんですが、翻訳上の間違いがないということをお確かめ願いたいと思うんです。――早く願います。
  339. 西山健彦

    ○西山政府委員 日本語のテキストはそのとおりでございます。
  340. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 それは翻訳上の間違いがないということですね。時間がもったいないから、はっきり言ってください。
  341. 西山健彦

    ○西山政府委員 そのとおりでございます。
  342. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 そうしますと、これはかなり重大な問題を含んでいると思います。これまでの防衛白書によりますと、日本の防衛力の向上というのは、結果としてアジアの平和と安定に貢献するというふうに言われてきました。しかし今度の場合は、結果としてではないのです。従来は、日本の防衛のみに限られたけれども、その後、防衛力が漸増することによって、日本の安全保障とともに、もう一つは極東の安定にも寄与しているんだ。二つの任務を果たすようになった。つまり、自衛隊の位置、任務というのは極東の範囲にまで拡大したことになっているわけですが、これは実体的にそうなっているということでございますか。
  343. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは当たり前のことであって、前とちっとも変わっていないのです。日本の列島について、自衛隊がだんだん成長して、そして力を持ってきて侵略を阻止する、そういう力が培養されて戦争が起こっていないというこの現実自体は、極東全体の平和と安全に結果的には寄与しておるのです。ですから、今申し上げたとおりだと思います。
  344. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 今、結果的だとおっしゃいましたね。結果的になると言っているのはこれまでの防衛白書なんですよ。防衛白書の場合ははっきりと、その結果アジアの平和、安定に貢献するとなっているんです。しかし、あなたがロンドンで演説なすったのは、その結果じゃないんですよ。これはもうはっきりと、日本語で読むならば、日本の自衛隊が日本の安保だけではなくて、アジアの安定にも貢献するんだ、つまり、極東まで自衛隊の任務が拡大するように述べられているわけです。これは従来とは変わっているわけですよ。同じじゃありませんね。もう一回御答弁願いたいのです。
  345. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今読まれた日本語の文章を読んでみても、今私が言ったとおりのことを言っていると思いますよ。自衛隊というものが漸増されて、そして抑止力がある程度十分になってきた、そして日本への侵略は阻止され、アジアの平和と安定に寄与している、そういうことだろうと思います。
  346. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 そういうことを言われると思って私は現物を持ってきていますが、ここでははっきりとそういう文脈になっていないんです。(中曽根内閣総理大臣「なっているよ、読んでみなさい」と呼ぶ」)なっていませんよ。読んでみましょう。「自らの防衛力については、憲法の規定に従い他国に対し脅威となるような軍事力はこれを保有せず、その目的と性格を自国の防衛のみに限ることといたしました。」これは前のことなんですよ。この後なんです。「そして、その後、」なんです。「我が国は、日米間の相互信頼と提携を強化し、自らの節度ある防衛力を漸進的に建設していくことによって、」――「よって」なんですね。 「我が国の安全保障を全うするとともに、」――「よって」は「全うするとともに、」ともう一つ、「極東の平和及び安定の維持に寄与することとしたのであります。」この日本の防衛力の漸増ということが、日本の安保ともう一つは極東の安全、二つにかかっているんじゃありませんか。従来のは、日本を守ることが結果として極東の安定に寄与する、貢献すると言っていたんですよ。今度はそうじゃなくて、二つの役割を持っているんですね。これは従来の自衛隊の任務からいっても大きなエスカレートだと思うのですよ。これは中学生だって、読めばあなたと違う解釈になりますよ。どうでしょう。
  347. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本の防衛を全うするとともに、極東の安全維持云々、そういうことで、「とともに」ということでありますから、自衛隊の充実ということがまず出てきて、そしてそれと同時にこういうことになったというのでありますから、ちっとも変わっていない。
  348. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 あなたは俳句をおやりになるそうですから、日本語では正確なはずなんですよ。これは正確に読んでも、はっきり、日本の防衛力の漸増が、一つは日本の安全保障に役立ち、「とともに」ですから、同時に極東の安全にも役立つ。これははみ出しじゃありませんか。どんなに読んでもそうなるんですよ。国会の場で、やはりこれは正確にすべきだと思います。こういうことではちょっと困ると思いますね。これは中学生が読んでもそうなっているのですよ。権威あるロンドンの国際戦略研究所で言われたわけです。公式の発言ですから、これは非常に重大なんですね。  じゃ、あなたの場合は、これははっきりと結果としてということだというふうにおっしゃいますか。
  349. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 同時にという意味ですね。とともに、という意味です。
  350. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 これはどんなに読んでも、同時にと言ったって、同時にというのは二つあるでしょう。日本の防衛力が漸増することによって、日本自体の防衛と同時に極東の安定というわけでしょう。結果としてというのと違うのですよ。  あなたがこのように言ったのは、実はシーレーン防衛とかなんとかで、実際上は、実体としては日本が極東まで自衛隊の役割をエスカレートしてきている、そういう背景があるというふうに私たちは思いますが、これは憲法やあなた方の言われる専守防衛からも反するものだというふうに思うのですね。こういう誤解を招くようなことは、国際的な舞台での発言ですから、はっきり取り消す必要があると思いますが、そうなさいませんか。
  351. 天野光晴

    天野委員長 よく教えなさいよ。
  352. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 別に必要はないです。今申し上げたように、「とともに」ということであって、日本語を知っている人なら、みんな私の方の解釈だと思うでしょう。
  353. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 総理国会審議の中で日本語をそういうふうに不正確に、また昔の防衛白書に引き戻したような形で言うのはよくないと思うのです。やはりこれはあなたははっきりとシーレーン防衛などを意識し、極東の範囲まではみ出したということを世界の舞台でおっしゃってきている。しかし、そういうことを国会で追及されると、いや、実は昔言ったのと変わりないんだというふうにお逃げになる。これはよろしくないというふうに思います。この点についてはさらに後へ問題を残しておきたいというふうに思うのです。  それで、自衛隊の米軍との共同作戦についてお尋ねしたいのですが、この非核三原則というのは、自衛隊がどこに行っても、つまり公海上においても適用されるというふうに理解してよろしゅうございますね。簡単にお願いします。
  354. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  非核三原則というのは、我が国政策といたしまして、核兵器をつくらず、持たず、持ち込ませずということでございまして、持ち込ませずというのは我が国の領域に持ち込ませないということでございますので、ただいま御指摘のありました公海の問題は、また別の範疇ではないかというふうに思います。
  355. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 しかし、自衛艦には適用されるでしょう。――では、進みましょう。  総理はしばしば国会答弁の中で、核積載の米艦と日本の自衛艦との共同演習はあり得るのだ、公海上だったら、そういうふうに言われていますが、昨年の五月十八日の衆議院の外務委員会で私の質問に対して、核トマホークを積載した米艦船との自衛艦の共同対処はあり得るというふうに言明されたわけです。  そこでお聞きしたいのは、有事の際の共同作戦中にアメリカの艦船が核兵器を使用するということは、これは非核三原則を厳守するという日本の立場からいって容認できないと思いますけれども、総理、いかがでしょうか。
  356. 中曽根康弘

  357. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 我が国は、御承知のように、アメリカの核抑止力に依存をしているわけでありまして、したがって、我が国が有事の場合に、核装備をしているかもしれない米軍部隊と自衛隊が共同対処行動をとる、我が国に対する武力攻撃を排除するために公海において共同対処行動をとるということは、これは当然あり得ることだと思います。その場合でありましても、我が国は非核三原則を堅持するわけでございますから、我が国の領域内に核兵器を持ち込ませるということはあり得ないわけでございます。米国の核装備といいますのは、あくまでも核抑止力を確保するためのものでございますから、今日米国の核抑止力が十分に機能しているわけでございまして、核戦争は強く抑止されていると私どもは考えております。したがって、今御指摘のような事態については、私どもは想定をしていないわけでございます。
  358. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 想定していないというのは、そういう有事の際に核積載の米艦が使用しないということ、使用する場合は、我々としてははっきりとノーと言う立場かということについては、これは留保しているわけですか。  もう一つ聞きましょう。総理は私の質問に対して、核トマホークの積載艦と、公海上だったらいろいろと協力行為もあり得るというふうに言われたわけです。いろいろの協力行為といえば、場合によっては護衛もあるでしょう。そういう護衛その他の協力をやっているアメリカの艦船が核を使用するということになれば、それは核戦争の片棒を担ぐことになるというふうに私たち思うわけです。そうなると、文字どおりこれは、実戦面までアメリカの核戦争の中に巻き込まれて、そしてその片棒を担ぐような役割を日本が果たすことになるわけですから、非核三原則の精神に明らかに反するというふうに思うわけです。日米共同作戦では、米軍の核使用、これは一切断わる、そういう協力は一切しないと、ここでやはり言明してもらいたいと思いますが、総理、お願いします。
  359. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本列島が侵略されて敵が日本に上陸しているとか、日本が爆撃されているとか、そういう非常事態、侵略事態が起きているという場合に、日本救援に駆けつけてくるという米国の艦船について、日本の海上自衛隊がこれを守るとか、その米艦船の日本救援行動を十分ならしむるようにいろいろ協力するということはあり得ると前から申し上げておる。しかし、日本列島がそういう侵略状態にあるという場合に、ほかにどうしても手段がないというような場合に、米軍が核を使うというようなことまで日本側が排除する、そういう立場にはないと私は思います、安保条約の解釈からいたしましても。また、そういうこと自体が抑止力として動いておって、そして侵略を起こさせない、そういう力にも、背景にもなっておる、そういう事態であると私は思っておる。これはしかし条約の解釈の論理上の問題であって、そういう場合にどういうふうに対処するかということは、いろいろ大局的に見て、これは日米両方で考えることでありましょう。
  360. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 核抑止力というのがいかに危険なものであるかということが、今の総理答弁でもはっきりしたと思うのですよ。排除する立場にない、つまり使っていいということなんですよ。これに日本が協力しているということなんです。これは大変なことだというふうに思います。日本世界でただ一つの被爆国であるし、国是として非核三原則を持っているわけですね。その国が核積載の米艦と共同演習をやって、あるいは共同作戦をやって、そのときに米艦が核兵器を使うことは排除していない、使ってもいいんだ、それに協力するんだ、とんでもないことだと思うのです。これは取り消してもらいたいと思いますが、総理、どうですか。
  361. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本が侵略されて、生存が危ない、そういう状態のときに、それを排除するということまでは、それは我々は考えられないと思うのです。何しろ日本が生き残らなければ、日本民族はどうなりますか。滅びてもいいというお考えをまさか共産党はお持ちじゃないでしょう。
  362. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 核兵器が使われるというのは、通常兵器が使われるのと違うのですよ。それがわずか使われるだけでも人類死滅につながるわけなんですね。絶対使わしてはいけない、先制使用はよくないというのが我々の姿勢なんですよ。そういうときに、日本が危険だからということで米軍がトマホークを飛ばす、あるいは核爆弾を落とす、それに協力するというのはもってのほかだというふうに私は思います。  最後に、三宅島について一言聞いて、私の質問を終わりたいと思います。  この間総理レーガン大統領から直接、厚木基地が今使われていますミッドウェー艦載機の夜間離着陸訓練基地、早く別のところへつくってくれというふうに要請を受けて、努力しますということを言われてきたように聞いています。私が去年の十二月に質問主意書を出しましたその答弁書の中に、NLP基地というのはやはり三宅島が立地条件が適していると思うというふうに重ねて答えられていますし、三宅島がその本命になっていることははっきりしているというふうに思うのです。しかし、実際、村長選挙の結果を見ましても、この基地化を促進する人たちは立候補さえもできなかった。立った二人とも反対派なんです。そして、絶対反対の立場の人が当選をした。本来でしたらこの村民の意思に従って、もう三宅島につくることは断念してもいいはずなんです。  私が総理に聞きたいのは、これも外務委員会での質問のときに総理がお答えになった言葉ですけれども、「住民の皆さんの御協力がなければできない」、つまり、レーガン大統領からどういう要請があっても、住民の意思を尊重して、住民の皆さんの御協力がなければできないという立場を貫いてほしいと思いますが、そうなさいますか。
  363. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 住民の皆さんの御協力、御理解を得てつくっていきたい、そう思っておるのです。
  364. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 つくっていきたいというのは、三宅島ということですか。
  365. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 できたら三宅島にお願いしたい、そう思っております。
  366. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 それだけ住民が反対しているのを、御理解を得てつくりたいというのは、まさか強行される意思はないでしょうね。あくまでもそれは協力ですね。
  367. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  先ほど総理答弁のとおり、NLPの解決の第二の選択肢、新しい飛行場をつくって何とかならないだろうかという、そういう候補地の一つに三宅が挙がっていることは事実でございます。また、反対の意向が強いということも承知をいたしております。しかしながら、反対の理由についていろいろ伺いますと、誤解があるような感じがいたしまして、何とか私どもといたしましてはこの説明の機会を与えていただき、あるいは行政の責任者である村長さんあるいは村議会の皆様とも話し合いの機会を持ちたい、そういう実情をよく説明を聞いていただいた上で賛否を論じていただきたい、かように考えております。
  368. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 住民の意思は、絶対反対です。これは、やはり住民の意思を尊重するということは行政の責任者として必要だろうというふうに思っています。  関連質問に移ります。
  369. 天野光晴

    天野委員長 この際、経塚幸夫君から関連質疑の申し出があります。岡崎君の持ち時間の範囲内でこれを許します。経塚幸夫君。
  370. 経塚幸夫

    経塚委員 最初に、自治大臣お尋ねをいたしたいと思います。  国庫負担金補助金の国の負担率引き下げ問題につきましては、全国の都道府県すべてが反対をし、市町村の八割が反対の決議を出しておることは大臣よく御承知のとおりであります。たとえ一年限りであっても、その与える影響は極めて大きい。自治大臣としては、こういう削減を六十一年度以降も続けてよいとは恐らく考えておられないと思いますけれども、その点についてはいかがですか。
  371. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 経塚委員お尋ねの国庫補助負担率の引き下げの問題でございますが、国と地方団体の考え方に大きく食い違いがあったことは事実でございます。  しかし、極めて厳しい財政状況のもとにおきまして、第一に、今回の国庫補助負担率の引き下げは昭和六十年限りの暫定措置として行うものであること、第二に、社会保障に関する国庫補助負担率のあり方については、国と地方との間の役割分担、費用負担の見直し等とともに、政府部内において今後一年以内に結論を得ること、第三に、補助負担率の引き下げに伴う地方負担の増加については、万全の地方財政の措置を講ずることを前提としてこれを受け入れ協力することとした次第であります。
  372. 経塚幸夫

    経塚委員 私の尋ねたことにお答えいただきたい。六十一年度以降続けるつもりですか、それは困るということですか、どっちですか。
  373. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 今申し上げましたように、一年限りということでこれを認めたのでございます。
  374. 経塚幸夫

    経塚委員 そうすると、自治大臣の方は一年限りで認めたのであって、六十一年度以降はこれを続けてもらっちゃ困ると解釈いたします。  大蔵大臣お尋ねいたします。あなたは、一月三十日の委員会における御答弁で、「この問題についてはもう一年かけて議論をして恒久化した方がよかろうという判断の上に立ちましたので、一年ぽっきりという形でこの御審議をいただこう、こういうことにいたしました。」こうお答えになっていますね。そのとおりですね。間違いございませんね。
  375. 竹下登

    ○竹下国務大臣 一月三十日にそのとおり答えたかどうか、ちょっと記憶にございません。
  376. 経塚幸夫

    経塚委員 記憶にございませんで、ついこの問答えたことでしょう。こんな大事な問題、そうころころ変わってもらっちゃ困ると思うのです。そこで、私は今会議録を読み上げているのです、一月三十日の会議録を。「この問題についてはもう一年かけて議論をして恒久化した方がよかろうという判断の上に立ちましたので、一年ぽっきり」、一年かけて議論はするけれども、それは大臣のいつもよくお使いになる言葉、「ありき」ということで使えば、これは「初めに恒久化ありき」ですがな。  総理、ちょっとお尋ねいたしますが、自治大臣は、これは続けてもらっちゃ困る、一年ぽっきりだ、これは当然だと思うのです。しかし、大蔵大臣の御答弁は、もう一回読みますよ。「もう一年かけて議論をして恒久化した方がよかろうという判断の上に立ちましたので、一年ぽっきり」、何のことはない、恒久化するために一年論議するということですがな。「初めに恒久化ありき」でしょう、このとおり解釈をいたしますと。
  377. 竹下登

    ○竹下国務大臣 だんだん御説明いただきましてわかりまして、ありがとうございます。  とにかく、国と地方との役割分担、費用負担のあり方ということで、今回の措置は、当面六十年度における暫定措置とした、ここまでは明確でございますね。そこで、六十一年度以降の補助率のあり方につきましては、国、地方の役割分担、費用負担の見直し等とともに、十分検討を進めて結論を得るものとしておるところであります。したがって、結論を得たらもとへ戻した方がいいのか、あるいはさらに変化をした方がいいのか、その結論に基づいたものは可能な限り恒久的な措置としたい。ことしの措置を恒久化する、それならば初めから恒久化の法律を出せばいいわけでございますから、結論を得たものを恒久化する、その意味においてはまさによく言っていただきました、「初めに恒久化ありき」、こういうことでございましょう。
  378. 経塚幸夫

    経塚委員 ちょっと今の答弁は詭弁に過ぎはしませんか。私が読んでいるのはこう書いてあるのですよ。もう一回読みましょうか。「一年かけて議論をして恒久化した方がよかろうという判断」、「一年かけて議論をして恒久化した方がよかろう」、この三者の覚書どおり今年度限り、しかし後は議論いたしますよ。これは議論してどうなるかわかりませんよということなら話はわかりますよ。しかし、同じ恒久化するにしても、一年かけて議論をして恒久化した方がよかろうという判断に立った、こういうことですから、これは明らかに恒久化が前提にあるわけでしょうがな。
  379. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いや、一年かけて政府部内において検討を進め、今後一年以内に結論を得るものとする。したがって、一年以内に結論を得たものを恒久化したいというのは当然のことでございましょう。
  380. 経塚幸夫

    経塚委員 これは会議録を後でゆっくりごらんになってください、大蔵大臣。  そこで、総理お尋ねいたしますが、総理はどういうお考えなんですか。
  381. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは法律に決めておられますとおり、六十年度のこと、そういうふうに考えております。
  382. 経塚幸夫

    経塚委員 そうすると、総理の方は、これは六十一年度以降はもう恒久化しないとはお考えになっておらないわけですか。
  383. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 六十年度のことをぴしっと決めたわけで、六十一年度以降はまたそのときの情勢でそのときの判断があるでしょう。しかし、ことしに関する限りはこういうことです、そういうことです。
  384. 経塚幸夫

    経塚委員 どうも歯切れが悪いですね。もうこれは大体八月、九月には決めなきゃならぬわけでしょう。総理の御答弁を聞いておりますと、先のことは先のことだ。しかし、これほど重大な問題を六十年度一年限りということで決定される以上は、六十一年度以降についてはどうされるのか、これはもう当然論議されていることだと思うのですよ。しかし、恒久化しないという明確な御答弁をいただけないということであれば、これはどうも恒久化を六十一年度以降も考えておる、こう解釈せざるを得ません。  そこで、これも総理の御答弁に関連をいたしましてお尋ねしたいわけでありますが、本会議の我が党の不破委員長質問に対しましても、本委員会での松本委員質問に対しましても、総理はこうお答えになりましたね。これは国と地方の負担割合の調整に関することだ、役所と役所の話だ、したがって国民には直接影響がない、こうお答えになった。これはほかの党の御質問に対してもお答えになっております。  そこで私はお尋ねをいたしますが、今度の補助金の削減等に関する内容は、大きな柱二つありますね。一つはいわゆる五千八百億に上る国庫負担金補助金の国の負担割合の引き下げであります。もう一つは、地方の自主性などという名のもとに、国が負担しておったものを丸投げをする、地方で全額持ちなさい、これだと思います。こんなことをやられれば、私は大変だと思います。     〔委員長退席、大西委員長代理着席〕児童福祉あるいは老人福祉、いろいろございますが、時間がございませんので、一、二例を申し上げて総理見解をただしたいと思いますが、まず婦人保護の問題についてお尋ねをしておきたいと思います。  これは厚生省の報告によりますと随分相談件数がふえているんですね。五十八年度、何と十一万四千二百八十七人。直接相談所へ来所した方々が五万四千七百七十四人、しかもこの中で売春のおそれがあるというものが何と一万八千二百九十三人、三三%に上っております。  犯罪白書によりますと、売防法違反でもって五十八年に問われた人が二千五百二十八人で、ここ五年間の最高という数字が出ておるのですね。これはゆゆしき問題でございます。  ところが、今回はこの保護施設に対します国の負担率十分の八を十分の七に引き下げられる。二つ目は、相談所の職員の設置費について二分の一今まで国が持っておったのはもう持ちません、地方で全額持ちなさい。大変なことですよ、これは。  私は、生野学園という婦人の保護施設を訪ねてみました。驚きました。まず建物、昭和三年の建物、そこらじゅう突っかい棒です。台風が来ればひとたまりもないという状況です。部屋を見せていただきました。六畳、二人の御婦人がそれぞれ保護されております。ところが、夏は扇風機もない。冬はもちろん暖房機もない。豆炭あんか一つで、お互いの体温でもってこの寒さをしのいでおる。一体どうしてなんですかと聞きましたら、電気の容量が一部屋で四十ワットの容量しかない、つければヒューズが飛んでしまうのです。それじゃ、設備をしてあげたらどうですかと聞きましたら、設備するのに百七十万円かかりますけれども、その予算がないんですよ、こう言うのです。ある人は売春地獄をさまよい、ある人は交通事故で突然夫を失い、ある人はサラ金の暴力に追われて、命綱とやっと訪ねてきて保護された施設がこの状態なんです。ここへ補助金のカットでしょう。しかも相談所については先ほど申し上げましたように、地方に丸投げでしょう。これで一体国民に影響ないと言えますか。  これはある新聞に昨年の十二月十二日、全国婦人保護事業推進会議事務局長、婦人保護施設いずみ寮寮長、藤巻さんとおっしゃる方が投書された。「明治以来、八十余年もかけてできた「売春防止法」に基づく婦人保護事業が、いま実質的な終わりをむかえようとしている。理由は、国の財政赤字の結果、この事業が不要な仕事とみなされたためである。」ずっと書いておりまして、「その手はじめとして来年度は、婦人相談所の予算を交付税にまわすという。相談所あっての相談員であり、婦人保護施設」、そして結びとして、「来年は「国連婦人の一〇年」の最終年にあたる。その時に、日本の婦人保護事業が終わりをむかえるとしたら、一体、世界の婦人たち政府はどのような顔をして申し開きをするのか。婦人保護補助金の存続のためにご協力を切にお願いする」。これで結んでおられるのですよ。  国民に影響ないとおっしゃいますか。施設の直接関係者がこう言っているのですよ。総理答弁を求めます。     〔大西委員長代理退席、委員長着席〕
  385. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 前にも申し上げましたように、政府と地方公共団体との負担の割合は変化はありますけれども、それによって今まで受益されておったあるいは待遇を受けられておった皆様方に対する扱いというものは変わらない。負担が国から地方に移る。ただし、国はそのかわりいろいろまた交付税交付金とかあるいはその他のいろいろな措置で面倒を見る、そういうシステムにシステムが変わっただけの話です。
  386. 経塚幸夫

    経塚委員 システムが変わっただけと総理おっしゃいますけれども、現場のこの切実な生の声が聞こえないのですか、あなたの耳には。  私はこの施設へ参りまして、職員の八割が婦人なんですよ。一週間に一回の当直。代休も取れない。労働基準法も守れない。こういうつぶれかかった施設の中にもかかわらず、収容されておる婦人の方々が一日一日を生き延びるために頑張っておるのは、私は職員の献身の二文字だと、胸を打たれたんです。  言ってましたよ。予算がないからといって削るようなむごいことはしてもらいたくない。一人の婦人の命がどれほど重いかということを政府の方々はわかってほしい、こう言っているのですよ。これは、総理にはこの声が届かぬようでございます。そういう国の姿勢だから、売春事件が幾らでもふえてくるんですよ。  私は先ほど、売防法違反がこの五年間最高だということを申し上げました。ここに一つの例を申し上げましょう。これは、個室つき特殊浴場に対しまして、民間の金融機関が抵当権を設定して、巨額の融資を相次いで行っておる。既に大阪府警では、一昨年摘発をいたしました個室つき浴場業者に対しましてその責任を追及すると同時に、融資をしておりました民間金融機関に対しましても慎むようにという警告を発しております。私の手元にございます資料は、施設の関係者が、幾ら施設で頑張って売春防止法の精神に従って努力をしても、相次いで金融機関が個室つき浴場に対してどんどん融資をやっておるような状態ではたまったもんじゃない、発生源を押さえてもらいたい、こういうことで陳情に来られたんです。  例を申し上げますと、第一銀行二億三千万、ある個室つき浴場に融資しております。大阪興銀七億二千万、協和銀行一億七千万、私の手元にある資料だけでも二十一社。大阪の個室つき浴場はすべてで八十三ございます。五十八年四月から六十年二月までの間に府警に売防法違反の容疑で検挙され、取り調べを受けましたのは三十店、実に四割に達しております。  これは大蔵大臣、どうですか。サラ金の融資の問題では大蔵省も一定の姿勢を示しましたが、これは売防法にも資金を提供してはならないという条項があるんですよ。ここまで個室つき浴場が売春の温床地として問題になっておるのなら、これは民間金融機関の融資についても規制をするように指導すべきだと思いますが、その点いかがですか。
  387. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これはまず金融機関の業務運営に当たりましては、それは信用秩序の維持、預金者の保護及び金融の円滑化等、金融機関に対する国民経済的要請を踏まえることが必要でありまして、したがって大蔵省としては金融機関に対し、そのような観点に立っていわゆる与信業務を行うという建前、これはあくまでもそういう建前で指導していくということになります。  そこで、今個々の融資についての問題でございますが、本来金融機関が良識に従って判断すべきものであって、大蔵省が特定の業者に対する融資を規制すること、これは基本的には適当なことではございません。ただ、法律に違反するような行為を助長するおそれのある融資について、金融機関がこれを自粛すべきであるということは当然のことと考えられます。
  388. 経塚幸夫

    経塚委員 自粛するよう要請されますか。どうですか。
  389. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは大蔵大臣通達とか銀行局長通達に対応するものでは私はなかろう、勉強はしてみますけれども。(「良識で判断する」と呼ぶ者あり)あくまでも良識そのものの問題だと思います。
  390. 経塚幸夫

    経塚委員 指折り数えてちょっとぐらいしかないとかいうようなときならいざ知らず、私はちょっと大阪の例を申し上げましたけれども、八十三店舗の中で四割近くもこういうことをやっておるのですよ。それで、府警に警告を受けたところが、またこれをやっているのですよ。だから部分的な対策じゃだめなんです。まあ大蔵大臣、検討はしてみますけれどもということはございましたけれども、ぜひひとつ検討しておいていただきたいと思うのです。  それから、あわせてこれは総理にまたお尋ねをいたしますが、今度国が負担をしておりましたもので地方に一般財源化をする、地方が全額持ちなさいということの中に教材費が入っておりますね。これは教材費、恐らく総理も御存じだろうと思いますが、昭和五十三年に第二次十カ年計画というものを立てられた。そして、向こう十カ年間で父母負担を解消し、教材を充実いたしましょう、こういうことで発足を見た。五十九年度、七年目、達成率は幾らになっているかといいますと、まだ四八・三%ですよ。七カ年で四八・三%ということは、残る三カ年でもって一〇〇%到達をしようといたしますと倍以上の予算がかかるのですね。しかも、今まで国が二分の一持っておったのを全額地方で持ちなさいということになりますと、地方は倍では済まなくなる。つまり、四倍以上の予算を組まないと、地方が負担をしないと、文部省が立てた第二次教材十カ年計画を達成するには至らない、こうなるのです。  これは、地方に全額持ちなさいといって今度国会に法案を出しておりますが、地方に全額持たして第二次十カ年計画が達成できるのですか。こんなことを地方にやらしたら、地方はとる道はもう第二次十カ年計画、棚上げ、やれまへんといって、整えなければならぬ教材を整えずに五〇%、六〇%でとどめておくか、あるいはその負担を父母に転嫁するか、これ、二つに一つしかとる道はなくなるでしょう。責任持てるのですか、どうなんです。これでも影響与えないと断言できますか。
  391. 松永光

    ○松永国務大臣 教材費について国庫負担をやめまして一般財源化したわけでありますが、すなわち、今まで国が負担していた分に相当する額に若干上乗せした分を一般財源化したわけでありますから、学校の設置者である市町村は五十九年度よりも若干上回る支出ができるような財源措置がなされたわけであります。  一方、十五年、二十年前は別として、この十年以来、学校の教材費につきましては父兄の寄附等に頼ることなく市町村できちっと措置するという条項が定着いたしておりますので、一般財源化しても父兄負担がふえるなどということはない、こういうふうに考えておりますし、また、最初の十カ年計画で基本的な教材は整備されておりますし、その後の整備も、今申したような財源措置がなされておりますので、計画的になされるものと思います。
  392. 経塚幸夫

    経塚委員 私がお尋ねしたことにお答えになっておらぬじゃないですか。五十三年に文部省が十カ年計画を立てたのでしょう、それの受け皿として学習指導要領をつくって。そして、父母負担を解消する。こうおっしゃったのでしょう。それが七カ年たって四八%しか達成をしておらない、もう一回言いますけれども。余すところ三年しかないじゃおまへんか。これ、三年間でやろうと思ったら、私がさっき言ったようにちょっとやそっと予算をつけたかて間に合わしまへんがな。四倍負担がかかりまんねんで、四倍。どないしまんねん。地方がやられしまへんじゃないですか。  私の地元の東大阪市教育委員会に行って聞きましたら、これはお気の毒に三一%しか到達しておらぬのですよ。もうこんなこと、地方に丸投げをされて全額地方で持ちなはれと言われたら、たまったものじゃおまへんと悲鳴を上げておりますよ。そこを聞いているのです。だから、第二次十カ年計画はなかったものにしましょう、こういうことなのか。やるというのなら、これは今まで以上に国の予算を、国庫負担二分の一としても倍にしなければならぬ。ここ、わからぬのですか。わかり切った話ですがな、これは。やられしまへんがな。どないしまんねん。
  393. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 お答えいたします。  教材費に関する父兄負担のお話がございましたけれども、父兄負担の問題につきましては、教材費制度の始まりました当時、三〇%近くの父兄負担がございましたのは、今日では一・数%というところまで、ほとんど皆無に近いところまで、なくなっておるわけでございます。この教材費の、現在進行しております計画によって父兄負担をなくそうということではございません。既になくなっておるわけでございます。  なお、教材整備十カ年計画につきましては、国の財政事情の厳しさ等から予定どおりに進行しておらないわけでございますけれども、今後とも、交付税の方に一般財源化をいたしましても、なお地方財政当局とも御相談をしながら、できるだけ早い時期にこの実現に努めたい、かように考えております。
  394. 経塚幸夫

    経塚委員 文部省はこの資料はお持ちだろうと思うのですが、これは五十三年のときに文部省の方で、こういう台帳を整備しなさいということで市町村につけさせておる台帳でしょう。私はこれを逐一見せてもらったのですが、随分と教材が不足しているのですね。体育にしろ、特に図工などは粘土あるいは石こう一式、当然文部省の基準で備えつけなければならぬということなんですが、これは全然ない。ゼロなんですよ。裁縫用具一式もゼロ、体育のマットもゼロ。たった三〇%そこそこしか達成してなければゼロがたくさん出てくるのは当たり前です。そして、これは何で台帳についてないのか、そんなものがなければ教育できぬじゃないかと思ったら、みんな父母負担。だから台帳に載せられないのですよ、備品台帳ですから。そういう点をよく調査された上で発言をしなさいよ。地方はそんな生易しい状況じゃございませんよ。  それから、総理、財政上は万全の措置を講じたと何回もお答えになっておりますけれども、これはきょうの本会議総理もお答えになりましたね。地方には余裕のある状況じゃない、国と同様に地方も大変厳しい、きょうはこういう御答弁でございました。全くそのとおりですね。例えば地方の置かれている実態、地方債公債費負担比率、一五%以上は危険ラインと言われておりますが、五十八年度は幾らか、数字を御存じですか。随分ふえているのですよ。千七百八十八、五四%ですよ。国の公債費負担割合を超える団体は、五十七年度は五百四十五団体だったわけですが、これはもう既に八百団体を超えているのですよ。一五%を超える団体が四十九年にはたった五十団体だったのですね。だから十年間で三十五倍にふえているのですよ。地方はたった一千億の交付税の上積みで、あと四千八百億地方債で面倒を見てやります。借金を受け入れられるような状況じゃないじゃないですか。何でこれで万全の措置になるのですか。  現に昨年の十二月四日、総理の諮問機関であります地方制度調査会が答申を出しているでしょう。どんな答申を出しているのですか。読んでみましょうか。「地方債残高の累増は、公債費負担比率の急増をもたらし、個々の地方公共団体の財政運営を硬直化させ、特に多くの財政力の乏しい団体にとって危険な水準にまで達していると考えられるので、地方債依存をできる限り抑制すること」、こういう答申をされているのでしょう。これ以上の借金財政はたまったものじゃないですよ。  特に今回の国庫負担割合を引き下げられる最も大きな影響を受ける生活保護率の高いところ、どうですか。トップ福岡の山田市、地方債の残高は全国平均一人十四万六千円に対して二十六万一千円、一・七倍。北海道三笠、生活保護受給率第十位、全国平均先ほど申し上げましたように地方債残高一人十四万六千円に対して三十万八千円、実に二・一倍。高知の室戸などは二・四倍。こういうようなところへ地方債で面倒を見てますよと言ってもらったところで起債の償還の能力が、財源力がないじゃございませんか。何がこれは万全の措置ですか。どうしてこんなことで万全の措置をとったと言えますか。お答えいただきたい。
  395. 花岡圭三

    ○花岡政府委員 地方債の元利償還金につきましては全額交付税に算入いたしますし、その一部のものにつきましては後年度で国庫から交付税に加算するという形をとっております。
  396. 経塚幸夫

    経塚委員 これは田川市の例でありますが、これは保護率五・九六%で全国平均の五倍、全国第六位であります。市税は全国平均のわずか七〇%の収入しかない。民生費は全国平均に比べまして約倍でございます。公債費率は、五十七年度一五・四%だったのが、五十九年度二〇%突破。もうこれ負担に耐えられぬという状況ですね。これで万全の措置などと言えるものじゃございませんよ。  時間が参りましたので、私はこれで終わりますけれども、明らかに今回の国庫負担金補助金のカットあるいは地方一般財源化は、憲法二十五条に反する。地方財政に負担を転嫁してはならないにも反する。一年限りという何の保証もない。  しかも五十九本の法律を一括して国会に提案をして、法律が成り立ついきさつも違えば省庁も違う、扱う委員会も違うのに何事ですか、今回の提案は。こんなものなら省庁も一本にしてもろうたらどうですか。そういうようなことになりますよ。国会は一委員会でも事が足りるということになるじゃないですか。内容も極めて反国民的なら、提出の方法も極めて議会制民主主義じゅうりん、国民が主権者であるという憲法の趣旨に反する。こんなものは撤回しなさい。要求して、私の質問を終わります。
  397. 天野光晴

    天野委員長 これにて岡崎君、経塚君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十日午前十時より開会し、財政・経済一般問題について集中審議を行います。  本日は、これにて散会いたします。     午後七時二十二分散会