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1985-02-18 第102回国会 衆議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年二月十八日(月曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 天野 光晴君    理事 大西 正男君 理事 小泉純一郎君    理事 橋本龍太郎君 理事 原田昇左右君    理事 三原 朝雄君 理事 稲葉 誠一君    理事 岡田 利春君 理事 二見 伸明君    理事 吉田 之久君       相沢 英之君    伊藤宗一郎君       石原慎太郎君    宇野 宗佑君       上村千一郎君   小此木彦三郎君       小渕 恵三君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       倉成  正君    小杉  隆君       砂田 重民君    住  栄作君       田中 龍夫君    葉梨 信行君       原田  憲君    武藤 嘉文君       村山 達雄君    山下 元利君       井上 一成君    井上 普方君       上田  哲君    大出  俊君       川俣健二郎君    小林 恒人君       佐藤 観樹君    細谷 治嘉君       堀  昌雄君    松浦 利尚君       矢山 有作君    有島 重武君       池田 克也君    神崎 武法君       矢追 秀彦君    大内 啓伍君       木下敬之助君    小平  忠君       経塚 幸夫君    瀬崎 博義君       松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 嶋崎  均君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 松永  光君         厚 生 大 臣 増岡 博之君         農林水産大臣  佐藤 守良君         通商産業大臣  村田敬次郎君         運 輸 大 臣 山下 徳夫君         郵 政 大 臣 左藤  恵君         労 働 大 臣 山口 敏夫君         建 設 大 臣 木部 佳昭君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     古屋  亨君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)藤波 孝生君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官) 河本嘉久蔵君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 加藤 紘一君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      金子 一平君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      竹内 黎一君         国 務 大 臣 石本  茂君         国 務 大 臣         (沖縄開発庁長         官)      河本 敏夫君  出席政府委員         内閣法制局長官 茂串  俊君         内閣法制局第一         部長      前田 正道君         内閣総理大臣官         房管理室長   藤田 康夫君         臨時行政改革推         進審議会事務局         次長      山本 貞雄君         臨時教育審議会         事務局長次長  齋藤 諦淳君         公正取引委員会         委員長     高橋  元君         公生取引委員会         事務局取引部長 利部 脩二君         総務庁長官官房         審議官     佐々木晴夫君         総務庁行政管理         局長      古橋源六郎君         総務庁行政監察         局長      竹村  晟君         青少年対策本部         次長      瀧澤 博三君         北海道開発庁計         画監理官    滝沢  浩君         防衛庁参事官  古川  清君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房         長       西廣 整輝君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛庁教育訓練         局長      大高 時男君         防衛庁人事局長 友藤 一隆君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         防衛庁装備局長 山田 勝久君         防衛施設庁長官 佐々 淳行君         防衛施設庁総務         部長      梅岡  弘君         防衛施設庁施設         部長      宇都 信義君         防衛施設庁建設         部長      大原 舜世君         経済企画庁調整         局長      赤羽 隆夫君         科学技術庁研究         調整局長    内田 勇夫君         科学技術庁原子         力局長     中村 守孝君         科学技術庁原子         力安全局庁   辻  栄一君         環境庁自然保護         局長      加藤 陸美君         沖縄開発庁振興         局長      小林 悦夫君         国土庁長官官房         長       永田 良雄君         国土庁長官官房         会計課長    北島 照仁君         国土庁計画・調         整課長     小谷善四郎君         国土庁大都市圏         整備局長    佐藤 和男君         国土庁地方振興         局長      田中  暁君         国土庁防災局長 杉岡  浩君         法務省刑事局長 筧  榮一君         法務省入国管理         局長      小林 俊二君         外務大臣官房外         務報道官    波多野敬雄君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省北米局長 栗山 尚一君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省経済協力         局長      藤田 公郎君         外務省条約局長 小和田 恒君         大蔵省主計局長 吉野 良彦君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省理財局長 宮本 保孝君         文部大臣官房審         議官      菱村 幸彦君         文部省教育助成         局長      阿部 充夫君         文部省高等教育         局長      宮地 貫一君         文部省高等教育         局私学部長   國分 正明君         文部省学術国際         局長      大崎  仁君         文部省社会教育         局長      齊藤 尚夫君         文部省体育局長 古村 澄一君         文化庁次長   加戸 守行君         厚生大臣官房総         務審議官    長門 保明君         厚生大臣官房会         計課長     黒木 武弘君         厚生省生活衛生         局長      竹中 浩治君         厚生省社会局長 正木  馨君         厚生省児童家庭         局長      小島 弘仲君         社会保険庁年金         保険部長         兼内閣審議官  長尾 立子君         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産大臣官         房予算課長   鶴岡 俊彦君         農林水産省農蚕         園芸局長    関谷 俊作君         農林水産省食品         流通局長    塚田  実君         林野庁長官   田中 恒寿君         通商産業省通商         政策局長    黒田  真君         資源エネルギー         庁長官     柴田 益男君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       松田  泰君         運輸大臣官房長 永光 洋一君         運輸大臣官房国         有鉄道再建総括         審議官     棚橋  泰君         運輸省海上技術         安全局長    神津 信男君         郵政省通信政策         局長      奥山 雄材君         郵政省電気通信         局長      澤田 茂生君         労働大臣官房長 小粥 義朗君         労働省労政局長 谷口 隆志君         労働省労働基準         局長      寺園 成章君         労働省職業安定         局長      加藤  孝君         労働省職業安定         局高齢者対策部         長       小野 進一君         建設大臣官房長 豊蔵  一君         建設大臣官房会         計課長     望月 薫雄君         建設省河川局長 井上 章平君         建設省道路局長 田中淳七郎君         建設省住宅局長 吉沢 奎介君         自治省行政局長 大林 勝臣君         自治省行政局公         務員部長    中島 忠能君         自治省財政局長 花岡 圭三君         自治省税務局長 矢野浩一郎君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       仁杉  巖君         日本電信電話公         社総裁     真藤  恒君         日本電信電話公         社施設局長   岩崎 昇三君         予算委員会調査         室長      大内  宏君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十八日  辞任         補欠選任   井上 普方君     小林 恒人君   松浦 利尚君     細谷 治嘉君   正木 良明君     有島 重武君   矢野 絢也君     矢追 秀彦君   工藤  晃君     経塚 幸夫君 同日  辞任         補欠選任   小林 恒人君     井上 普方君   細谷 治嘉君     松浦 利尚君   有島 重武君     正木 良明君   矢追 秀彦君     矢野 絢也君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和六十年度一般会計予算  昭和六十年度特別会計予算  昭和六十年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 天野光晴

    天野委員長 これより会議を開きます。  昭和六十年度一般会計予算昭和六十年度特別会計予算昭和六十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉田之久君。
  3. 吉田之久

    吉田委員 予算審議もたけなわで、きょう月曜日、最初の質問に立ったことになりますが、さわやかな気持ち質問したいと思いますので、ひとつ総理初め各大臣もさわやかな御答弁をお願い申し上げる次第でございます。  きょうまでのこの委員会における各党の代表や幹部の方々の質問、その一番最大の関心事、重要なポイントは、大型間接税導入に関する総理自身のお考え方、姿勢、そういうところに絞られてきていると思うわけでございます。  そこで、さきに我が党の大内委員質問いたしまして、さき公用党矢野書記長に対してお示しになりました政府統一見解、その文言解釈をめぐりまして、いろいろと質問がありました。近く集中審議の際に改めて総理の方からその解釈統一見解が出される。いわば政府統一見解解釈をめぐる統一見解が出るということのようでございまして、したがって、私は総理が発言なさいました中身についての解釈を求めようとするわけではございませんけれども、少し角度を変えまして御質問を申し上げたいと思います。  総理さきに申されました多段階、包括的、網羅的、普遍的云々という字句、形容詞でございますが、これはその後の大型間接税ということに縦につながってかかっておる表現なのか、あるいは横並びに並んでおる表現なのか、その辺のところを確と承っておきたいと思うのです。言うならば、この文脈の構成と申しますか、ロジックと申しますか、その辺をはっきりしていただきませんと、読みようによっていろいろな解釈が成り立つ。現に私も理事の一人でございますけれども総理がお示しになりましたこの文章を与野党の理事相集まって眼光紙背に徹する思いで読むわけでございますが、与党の理事さんでさえ読めば読むほどよくわからないとおっしゃるわけでございまして、そういう点では非常に難解な問題を投げかけられたことになりますので、改めて総理の御説明をその限りにおいてお願いいたしたいと思います。
  4. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私の言わんとしているところは、重層的な流通の各段階、それは縦の関係もありますし、横の広がりもございますが、縦横の各重層的な関係におきまして、ほとんど例外なしにひっくるめて課税をかける、そういうことが頭の中にあるわけであります。
  5. 吉田之久

    吉田委員 依然としてはっきりしないわけでございますが、多段階、包括的、網羅的、普遍的と、言葉の使い方、それがほとんど大同小異である要素もあると思うわけでございました。その辺のところはちょっと横に置いておきまして、言うならば、こんなところで英語を使うのも余り愉快ではないわけでございますが、この四つの修飾語は、それぞれアンドで結ばれてあるのか、あるいはオアという形で並んでいるのかということなのでございます。今の御答弁では、それは縦にも横にも並んでいるとおっしゃいますと、いよいよ複雑怪奇な御答弁になるようになってくる。くどいようでございますけれども、これが全部一連のくし刺しになった形容詞として大型間接税にかかり、それを投網をかけるようなやり方ではとらないということになりますと、前代未聞の壮大な、超デラックスな大型間接税ということになると思うのです。そんなものはあり得ないわけですし、そんなものは総理がもとよりお考えになっていないことはわかります。しかし、その限りにおいては、総理は何もお答えになっていないということに、同じことにならないでしょうか。
  6. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、私の感じを申し上げたわけでございまして、それは私の岡田委員やそのほか皆様方に対する前からの御答弁を調べていただきますと、税制上あるいは学問上正確な表現として申し上げたのではなくして、自分感じを申し上げた、そう申し上げておるのであります。  そういう意味では、アンドオアか、オアアンドと使われるオアもあり得るわけです。しかし、一言で言えばみんなひっかかってくる。したがって、ほとんど完璧とおっしゃいましたけれども、壮大とおっしゃいましたけれども、そういうような類型が私の頭の中にはあったわけです。ですから、今申し上げましたように、上からずっと下へ流れてくる関係、横の広がりを持ってくる関係縦横について原則としてほとんど例外なしに全部をひっくるめるという感じを申し上げておったわけです。
  7. 吉田之久

    吉田委員 後の方で述べられております投網をかけるようなやり方、これは総理の念頭の中に、一網打尽と申しますか、そういう言葉の概念があって、それをやや野性的な表現説明されたというような気がするわけなのでございますが、それにしても、その上にかかってくる文章文言というもの、これが全部が大型間接税にかかり、その手法としてそういう一網打尽のとり方はしないのだ。今の御説明を聞きましても、いよいよそれは想像上あり得ない大型間接税表現なさっている。そういうものはとらないのだということは、私は何もお答えになったことにならないと思うわけなのでございます。  私どもが聞きたいのは、例えば多段階の大規模消費税はとらない。ただし、多段階にはわたるけれども、小規模なものはこの限りでない。どれが大規模でどれが小規模かということもいろいろ論議の尽きないところでありますけれども総理のお気持ちが大事だと思うのです。そういう気持ち表現の中には、そういう双方、多段階で大規模なものはやらない、しかし多段階にわたっても小規模なものはあるいは検討の余地がある、あるいは単段階でやや大規模なことを考えることもこの限りではないとか、こういうふうな部分的な順列、組み合わせで考えていけば、おぼろげながら総理のお考えになっていることも私どもはうかがえそうに思うわけなのでございますが、その辺が全然あり得ないものはやらないのだと言ったら、それはお答えになるのでございましょうか。お気持ちを表明されたことになるのでございましょうか。
  8. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 網羅的という言葉がよく象徴しておりますように、私の頭の中にあったのは、おっしゃるような一網打尽的と、そういうような印象を頭の中に持っておったわけです。
  9. 吉田之久

    吉田委員 なかなかどこまで行っても的確な御回答を得られないように私は思いますけれども、総じて大変語彙の豊富な総理が、こういう表現でありとあらゆる表現を並べられて御答弁になりますことは、かえって総理真意を表明なさるのに逆行した結果になりはしないだろうか。  この委員会審議を見ておりましても、大型間接税をどのような形でとるかとらないか、EC型の付加価値税を導入するのかしないのかというような問題から発端になったわけでありまして、総理政府側答弁の乱れ、陣営の乱れが明らかにございました。そこで、総理はそこに煙幕を張られた。大変大きな煙幕を張ってしまわれて、今度は野党側から見ても総理真意がよくわからなくなった。しかし、逆に今度は味方自身の判別もできなくなった。総理自身がどっちを向いて立っていらっしゃるのか、自分自身もおわかりにならなくなったのではないかというふうな気がするわけでございます。そういうことでは、この重大な国民関心事であります大型間接税に対する今後の審議の仕方の手がかりが出てこないわけでございまして、そういう点は特に総理自身も今後の御答弁の中で慎重に反省をしていただかなければならないんじゃないか。言うならば、上手の手から水が漏れるという言葉がありますけれども、いかにもそういう感じ答弁になっているような気がするわけでございますが、総理はそうお考えにならないでございましょうか。
  10. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私の印象感じを申し上げたわけでございますから、感じというものは本人でないとなかなか伝わりにくいものであるだろうと思います。しかし、私の感じとしては、いわゆる一般消費税(仮称)とかあるいは取引高税とか、そういう例示もしておるわけでございまして、そして今のような表現によりまして御想像願いたい、こういうことでございますので、できるだけ御了解いただきたいと思う次第でございます。
  11. 吉田之久

    吉田委員 では、この問題はまた後日我が党の委員が触れることにいたしまして、問題を次に移します。  去る二月の十四日に、我が党の大内委員租税負担率国民負担率目標値を示すように再三求めましたけれども政府とりわけ大蔵大臣は、目標値の提示はできないという考え方に終始されました。我が党はこの主張を変えるものではありませんが、しかし現時点においても、少なくとも六十五年度までの租税負担率の見通しを一定前提のもとで算出した数値ぐらいは予算審議手がかりとして示すべきではないかということを強く述べてまいったところでございます。「中期的な財政事情仮定計算例」に基づく六十五年度までの各年度における租税負担率についての仮定試算例示してもらいたいということを主張いたしてまいりましたけれども、幸い理事会委員長の同意を得まして、きょうまでに大蔵当局に対しましてその資料提出方をお願いしてきておるところでございます。どうやら準備できたように承っておりますので、この機会にその試算例を配付していただきまして、御説明をお願いいたしたいと思います。
  12. 竹下登

    竹下国務大臣 吉田委員から御要求のありました「中期的な財政事情仮定計算例」に基づく租税負担率試算値につきましては、事務当局に用意させてございますので、資料を配付し、それに基づきまして政府委員からお答えをいたさせます。
  13. 梅澤節男

    梅澤政府委員 ただいまお手元に提出申し上げました「租税負担率に関する仮定試算例」の資料に基づきまして御説明を申し上げます。  前提は、ここに書いてございますように、先般提出いたしました仮定計算例における国民所得なり国税一般会計税収弾性値前提にいたしております。  三のところに試算結果が掲げてございます。各年度ごとに掲げてございますが、まず国税につきましては、ただいま申し上げましたように一般会計税収につきましては仮定計算例前提に立っております。その他の国税収入、これは主として各種特会税収でございますが、これにつきましても一定前提推定をいたしております。地方税につきましては、自治省当局推計によるものでございますが、便宜まとめて私から御説明を申し上げます。  合計棚Eの欄でございますが、六十年度御案内のとおり二五・二%が推定租税負担率でございますが、以下六十一年度以降数字を読み上げますと、六十一年度は二五・三%程度、六十二年度は二五・四%程度、六十三年度は二五・五%程度、六十四年度は二五・六%程度、六十五年度は二五・七%程度、一応機械的にこのような推計と相なります。
  14. 吉田之久

    吉田委員 今仮定試算例というものをお示しいただいたわけでございますが、御説明にもありましたように平均名目成長率を六・五%と仮定いたしまして、したがって税収平均的弾性値を一・一とした場合に、このような形で租税負担率が徐徐にではあるけれども押し上がってくる、その年年の一般会計租税にかかる分は〇・一%ずつ上がってくるというような数値であろうと思います。  それはそれといたしまして、ならば今後一般歳出がどのような形で変化していくであろうか、これも歳出の伸びはいろいろ仮定論議でありますけれども、〇%のままでいくのかあるいは三%なのか五%なのか、そういう想定によりましていろいろと要調整額というものがかなり変わってくるはずでございます。そういうことを想定した場合の要調整額、その要調整額は当然増税によって六埋めされるしかないと思うわけでございますけれども、そういうものを想定した場合の試算値というものもあわせて御説明いただきたいと思います。
  15. 竹下登

    竹下国務大臣 各年度におきますところの要調整額増税によって穴埋めした場合、その租税負担率、これも政府委員から正確に答弁をいたさせます。
  16. 梅澤節男

    梅澤政府委員 仮定計算例では、一般歳出の毎年の増加率について三つのケースをお示ししてございますが、便宜一般歳出が毎年五%伸びるであろうという仮定計算に立った前提で申し上げますと、これは全く仮定の話でございますが、要調整額を全部税収で補てんするという機械的な仮定計算ということでお示しをいたしますと、六十一年度が先ほど申しました二五・三%程度プラス一・二ということでございますので二六・五%程度ということになります。途中の年次は省略させていただきまして、六十五年度は先ほど申し上げました二五・七%程度プラス二・三、二八・〇%程度。ただ、これは現在の地方交付税の対象になっておる税目を前提にいたしますと、税目いかんによりましては二八・〇プラスアルファということが正確かと思います。
  17. 吉田之久

    吉田委員 今御説明ございましたとおり、今後の一般歳出の伸びを仮に五%と仮定いたしまして、それにかかってまいります要調整額、それをたまたま増税という形で埋めていくとするならば、御説明のとおり、昭和六十五年度におきましては租税負担率はさらに二・三%上乗せされざるを得ないという数字になってまいると思います。だといたしますならば、先ほどのいわゆる平均的弾性値によって徐々に勾配が上がってまいります租税負担率、その上に今申しました赤字を埋めるべく、要調整額を埋めるべく増税がなされる数値二・三%が乗ってまいります。あるいは二・三%プラスアルファという場合もあり得ると思います。  だといたしますと、これは仮の計算でございますけれども、六十五年度におきましての租税負担率というものは二八%を超えることがあり得るということはほぼ明確になってきたと思うわけでございます。ちなみに、昭和五十一年度租税負担率は一八・三%でありました。したがって、約十五年間の間に一〇%の租税負担率が上がってくるということを国民は覚悟しなければならないというか、予想しなければならない時期に来ていることだけは事実だと思うわけでございます。それに加えて、社会保険料などが上積みされます。この時点における国民負担率というものはほぼどうなるであろうかというような点につきまして、大蔵大臣から御答弁いただきたいと思います。
  18. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに、今の五%という一般歳出の増を前提に置いて、そして要調整額すべてをこの租税負担において行うという場合は、今のような数値が出てくることは、これは事実でございます。  で、国民負担水準の目標数値ということになりますと、究極的には政府部門、民間部門にどのように資源を配分していくかということにかかる、それの裏腹になろうというふうに思います。したがって、国民が必要とする公共支出の水準に対応して結果としては決まっていくというものであろうと思います。で、このようなあるべき公共支出の水準とそれを裏づける国民負担の水準は、結局この毎年毎年の予算編成過程において国民考え方があるいは選択が那辺にあるかということを勘案しながら明らかにしていくべきものでありますので、固定的に初めから考えて行うということは必ずしも適当ではなかろうというふうに思っております。  国民負担率の水準の中期的な方向については「一九八〇年代経済社会の展望と指針」やまた臨調答申、この趣旨を踏まえまして、先般の「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」におきましても、「今後、高齢化社会の進展等により、現状よりは上昇することとならざるを得ないが、徹底的な制度改革の推進により、ヨーロッパ諸国の水準よりはかなり低い水準にとどめるよう努める。」というところまでが正確に国会等にお示ししておるところであります。  今日、いわゆる臨調答申が出ました段階は、ヨーロッパはおおむね五〇%という数値を使っておりましたが、現在はそれが上がりまして約五五%、こういうような状態になっておりますこともつけ加えてお話をしておきます。
  19. 吉田之久

    吉田委員 昭和六十年度における国民負担率が三六%である。そこへ先ほどいろいろ御説明ありました六十五年度までの徐々に上がってくる税負担、それは〇・五%プラス二・三%といたしまして、そういうものを足しますと三八・八という数字が出てまいります。いろいろ今大蔵大臣から御説明がありましたとおり、いろいろと他の諸要件が加わってまいりますし、なかなか将来の確たる数字は見通せない点はよくわかりますけれども、いずれにしても、このままで行けば四〇%にかなり近い数字まで国民負担率というものは昭和六十五年度には上がってくるのではないだろうかという想定だけはほぼできると思うのです。  そこで、今お話しありましたとおり、国民負担率というものはヨーロッパの例よりもかなり低い水準に抑えたい、これがただいまの日本におけるすべての国民の願望であり、また政府自身の姿勢であると私は信じております。しかし、かなり低い水準というのはどの程度の差なのかという点も今日までだれも判然とした答えを持ち合わせていないという現状であります。  私が懸念いたしますのは、この租税負担率ないしは国民負担率というものが次第に高まってくる。ということは、国民にとりましては重圧感、重税感というものが非常に強くなってくる。そういう社会になったときに日本人はどう対応するであろうかという問題を私どもはそろそろ予見しなければならないのじゃないかと思うのです。もはや日本人は、景気が悪くなれば倍も働く、税が苛斂誅求をきわむれば、それでも生きていくためには泣きながら夜も昼も働くというような国民ではなくなりつつあるのではないかというふうな気がしてならないわけでございます。景気が悪ければじっと手を組んで模様を眺める。働きがいと希望があってこそ一層働き出す習性を持ち始めているのではないか。それだけ日本人が経済活動に懸命になり、またある面で著しく自己中心的になってきている点を否定できないと思うのです。しかも一方におきまして、決して完全ではありませんけれども、社会保障はそれなりに形を整えてきております。また、労働運動は次第に近代化され、国際化されてきております。こういう傾向というものは、農林漁業の場合でも中小企業経営者の場合でも、また同じであると思います。だから、言をかえるならば、景気や税負担率に対して極めて敏感な国民になってしまったという事実であります。そういう中で、「増税なき財政再建」という言葉はありますけれども、しかし何らかの形でいろいろと増税が図られていくようだ。しかも、働いても働いても、しょせん余り自分の生活というものは将来展望が開けない。だとするならば、余り新しい投資をしないでおこう、余り無理な労働をしないでおこう、それよりも年金生活に頼った方がいいではないかと。こういう風潮が一般的に広がってきた場合に日本はどうなるか。この辺をよくお考えいただいて、租税負担率国民負担率の今後の動向に対して総理大蔵大臣は最大の配慮をなさらなければならないのではないか、こう思うわけでございますが、いかがお考えでございましょうか。
  20. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、ただいま貴重な御指摘だと思うわけであります。私も先般先進五カ国の蔵相会議に出かけました際も、その種の議論がございました。言ってみれば、自由主義経済社会においては努力と報酬というものはある種の一致点が見出されるべきものである。ところが、諸般の事情によってその一致点が見出せなくなった場合に、言ってみれば勤労意欲を失う。それが、使いようによっては余りいい言葉じゃございませんけれども、いわゆるヨーロッパ病とかあるいは近代国家病とかいう言葉にも象徴されることではないか。したがって、国民負担率というものは、やはり本当に国民がどこまでは公共支出に頼るか、あるいはあとはあくまでもこれは自助努力でやるべきものと判定するか、その辺のいわば選択というものが最も大事になり、その選択の中に国民負担率というものがおのずと決定してくる。まあ重大な問題としてこれは毎年、毎年の予算で苦心しながらも、国民世論なりあるいは日本国民に限らず、いわば人間の移っていく思考方向の推移とかそういうものに絶えず気をつけていなければならぬなということはしかと肝に銘じなければならぬと私も思っております。
  21. 吉田之久

    吉田委員 そういう観点から私どもでは、減税をやりなさい、断じて増税を食いとめなさい、そしてそういう経済の活性化の中で税の自然増収を図りながら、一方行革を真剣にやって財政再建をするべきでございます、こういう主張を絶えず堅持してきているわけでございます。言うならば拡大均衝型の予算を組みなさい。しかし、この昭和六十年度の予算を見る限りにおきましては、いわば縮小均衡型の予算に漸次形を整えつつあると言わざるを得ない現状でございます。  総理にお聞きするわけでございますけれども、我々が減税を言いあるいは我々が増税を拒む、それは何か野党の気楽さから言っているのではないか、あるいは一種の国民の甘え的な気持ちがあるのではないかというふうな気持ちをもしも政府・与党側でお持ちでありとするならば、それは重大な間違いだと思うのです。我々は、今も大臣自身がお認めになりましたとおり、この国において勤労意欲が失われた場合にこの国の将来はどうなるか、まして極端な資源小国であります。したがって、我々は絶えず国民が夢と希望を持って、働きがいのあるという条件を与えて、その中で活性化された経済を拡大していく、そのことによってしか今日の財政の窮状も救えないという考え方を堅持しているわけでございますが、この考え方につきまして総理はどうお考えでございましょうか。
  22. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本の経済がこれだけ繁栄して強靱になってきた一つの大きな理由は、諸外国との対比におきまして日本の租税負担率は割合低かった、そしていわゆる小さな政府ということがほかの国の状況から比べるとかなり成功していた、つまり、そのことは民間に力が蓄積されてきたということでありまして、これが一つの急所であると学者に指摘されておりますが、この点は行政官あるいは政治家としてもよく心すべきことでございまして、日本の持続的発展を図っていくためにできるだけ小さな政府というものを心がけていかなければならぬと思って、まさに同感でございます。
  23. 吉田之久

    吉田委員 今私が申し上げました重要な基本的路線、このことにつきまして総理の御答弁もありましたけれども、どうかその姿勢を断じて堅持していただく。いろいろ苦しい事情はわかりますけれども、風にそよぐアシのように、その都度増税を図ったり、あるいは国民の活力を奪うような政治の姿勢をとられました場合には一挙にして容易ならぬ事態にこの国は落ち込んでいくのではないか。この辺は篤と御留意いただきながら政治のかじ取りをなさらなければならないと思うわけでございます。  そこで、私は防衛費の問題に入りたいと思います。  総理は、節度ある防衛、非常に含蓄ある表現をお使いになっておるわけでございますけれども、じゃ節度あるというのはどういう意味なんだろうかと考えてみますと、これもまた各人各様の解釈でございまして、なかなかに判然としないと思うわけでございます。  そこで私は、今一番問題になっております防衛費の一%枠、GNPの一%を枠とするこの問題、それが今非常に押し詰められた状態、危機に瀕する一歩手前まで来ておるわけでございますが、この辺の現状点をもう一度整理し、数値の面でひとつ確かめていきたい、こう考えるわけでございます。  まず、我が党の方でいろいろと検討いたしました数値では、六十年度の防衛費は三兆一千三百七十一億円、前年対比六・九%増であります。そして六十年度のGNP一%の相当額、これはGNPが三百十四兆六千億円でございますので、これは伸び率を六・一とした場合の数字でありますけれども、それの一%相当額というものは三兆一千四百六十億円であることは、これはもう事実であります。そういたしますと、GNP一%と六十年度の防衛費の額の差額は八十九億円ということになります。一方、六十年度予算中の給与改善費は幾ら組まれているかといいますと、一%でございます。いかに世の中が不景気になりましても、人件費が一%だけしか上がらないというようなことは、これは想像できない低い数値でありますけれども、現に計上されております給与改善費はわずかに一%、その額にして百三十三億円でございます。しかも、五十九年度の防衛費の節約額は四十九億円と聞いております。ここで一%天井との差が八十九億円、それからその天井を突破してはならないということで苦労されて防衛費を五十九年度で節約された額が四十九億円、私はどちらも非常に皮肉な数字だと思うのですね。四苦八苦と申しますけれども、四十九億と八十九億、ごろ合わせで、防衛庁のよっぽど頭のいい人がこんな数字をつくったのかなと思われるほど苦しい数字であることを表現しておるわけでございます。  そういう状態の中で私たちが今一番問題といたしておりますのは、六十年度の給与改善がどうなるかということでございます。  いろいろと現在までの積み残しなどを処理するとして、当然予想される人事院勧告あるいはこれに伴って実施される給与改定、そのほぼ想定される数値は三・三七%ではないかというふうに私たちは予見いたしております。三・三七%であると仮定いたしましたら、現に組まれております給与改善費が一%でございますから二・三七%分だけふえてまいるわけでございまして、その額が三百十五億になるはずでございます。だといたしますと、給与改善後の補正をいたしました後の防衛費というものは三兆一千三百七十一億円プラス三百十五億、すなわち三兆一千六百八十六億円という形になるはずでございます。ことしも去年並みに仮に防衛費の節約がなされたとして、その額も四苦八苦の四十九億円だと仮定いたしまして、その分を引きましても補正後の防衛費というものは三兆一千六百三十七億円になるはずでございます。この三兆一千六百三十七億円、それはGNPと比較してどうなるかといいますと、GNPの一%が三兆一千四百六十億円でございますから、その比率は一・〇〇五六%となります。まことにわずかではありますけれども、一%を数字上越えることは事実であります。その超える額は百七十七億円になるはずでございます。  こういう事態の中で、総理はこの一%の枠を守りたいと存じますと言明されておるわけでございますけれども、一体どういう形で守っていけるとお考えでございましょうか。
  24. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一%の問題につきましては、さき矢野書記長にもお答えをいたしましたが、あの線で今後とも守ってまいりたいと思っておりますが、やはりいろいろ今後のGNPの動きであるとかあるいは人事院勧告であるとかそういう諸般の不確定要因がありまして、できるだけそういうものも考慮しつつ守っていきたい、そう思っておるところでございます。
  25. 吉田之久

    吉田委員 今の段階総理も大変お答えにくい状態にあることはよく承知いたしております。そこで、私ども考えでは、断じて一%以内にとどめるとするならば、いわゆるGNPの伸び率を再検討せざるを得ないのではないか、数字の面で追ってまいりますと。そこで、GNPの名目成長を六・一と見ていらっしゃいますけれども、先ほどもいろいろと試算例で示されましたとおり平均的なGNPの伸びが六・五になるかもしれない。仮に六・五と仮定いたしました場合のGNPの一%額、それは三兆一千五百八十八億円になるわけでございます。で、GNPが六・五伸びたと仮定いたしまして、そのGNPの一%と先ほど申しました三兆一千六百三十七億円とを比較いたしましても残念ながら一・〇〇一六%という数字が出てくるわけなんでございます。で、ここでも、この六・五%伸びると想定したGNPの一%額、それと先ほど申しましたいわゆる人事院勧告に応じて給与改善をやった額、その額の差がまた四十九億円出てくるのですね、まことに不吉な数字だと思うのでございますけれども。で、その四十九億円をさらに抑え込むためには数字上はどういう答えが見出されるかということになりますと、このGNPの伸び率を六・六七%と見た場合にはちょうどぴったり一%ということになるわけなんでございますが、今の情勢の中で六十年度の我が国のGNPの伸び率が六・五%をさらに上回る可能性ありやなしやという問題につきまして、これはどなた。大蔵大臣。企画庁長官。――ちょっと眠ってらっしゃったようでございますから。不謹慎でございますよ。  要するにいろいろな数字を申し上げましても、節約しても、またGNPの伸びが六・五であると仮定いたしましても四十九億円一%枠よりも上に上ってしまう。そこで、それを一%枠以上にしないためには逆にGNPのパイを広げるしかない。そうだとすれば数字の上では六・六七%GNPが伸びるとすればちょうどぴったり一%になる、一%の枠にはまる、そんな数字があり得るかどうかということなんです。
  26. 金子一平

    ○金子国務大臣 今の数字がどう動くかは、これは六・五は大体当初から幅を持たした数字でございまして、程度という見通しをつけておるような状況でございますから、今後の経済の動きによっては多少の幅はあることは事実でございますけれども、現在の状況で申しますると六・五とお考えいただいて結構だろうと思います。
  27. 吉田之久

    吉田委員 私は経済企画庁長官にその多少の幅を聞いたつもりなんですが、今のお答えでは多少の幅のまあ上限が六・五だというふうに受け取ってもいいような答弁だと思うのです。要するに六・六七というのは余りにも過大な希望的な観測にすぎない、現実性のない伸び率だと思わざるを得ません。一体総理は、こういう数字を仮にいろいろと並べて考えられた場合に、どういう手法で一%の枠内で抑え込もうとなさるのか。一%を超えると、あるいは超え方について御答弁なさいますと大変問題になりますが、一%の枠内でこういう形で頑張るということは総理は幾らお答えになってもいいと思うのでございますが、いかがでございますか。
  28. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 吉田さんは非常に精緻な試算をおつくりになって御回答を要求のようでありますが、これは一つの試算でありまして、そういう仮定質問に対してこちらが的確にお答えするということは、今のところ差し控えた方がいいと思うのでございます。ともかく一%以内にとどめたいとして努力していく、そういうことを申し上げているのでございまして、精いっぱい努力してみたいと思っておるところであります。
  29. 吉田之久

    吉田委員 ちょっと聞き捨てならぬ御答弁だと思うのですが、仮定質問に対してはお答えできない。大体私ども質問というのは全部仮定だと思うのです。仮定であるか想定であるか、もちろん現実的な問題もありますが。将来を予見し、いろいろと考えて、そしてどうなさるかということを質問しなければ質問にならないわけでありまして、まして、私の先ほど申しました数字は、ちょっと防衛庁長官、私の先ほど申し上げたこの数字、この数字に誤謬があるかどうかお答えいただきたい。
  30. 加藤紘一

    加藤国務大臣 先ほどの数字、かなりいろいろな前提と、それからいろいろな要素が入っておりますので、政府委員より正確にお答えさせたいと思いますけれども、ほぼ先生が御指摘なさっているとおり、仮にGNP見通しが現在の政府見通しの六・一%のままに推移し、そしてベースアップが昨年五十九年並みの数値になったと仮定するならば、GNP一%の枠内におさまり得なくなってしまう、数値的にはそうなるということは事実だと思います。  委員のおっしゃいました数字につきましては、詳細に政府委員から答弁させます。
  31. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 お答えいたします。  先生のおっしゃいました前提を置く限りにおきまして、先生の計算は間違っていないと思います。
  32. 吉田之久

    吉田委員 今お聞きのとおり、総理、いいかげんな数字を並べているつもりはございません。しかも、その想定されるいろいろな条件も極めて今までの例に即したもの、それを踏まえての数値でございます。したがって、私の論議仮定論議とは言えないと思います。かなり現実性と客観性を持った論議である。こういうものに対して総理が口をつぐんでお答えにならないのでは、国民は一体我が国の防衛費はどうなるんだろうかとますます疑惑を深めるばかりでございますけれども、それはそれとして、もう少し角度を変えてこの問題の御質問を続けてまいりたいと思います。  これはまず総理お答えにならないと思うのでございますけれども、今申しましたような情勢でございますから、もはや国民の中では、一%は守ってほしい、総理はどうなさるだろう、一面で期待しながら、しかしやはり早晩、ことし中か来年か、ともかくも近い時期に一%は超えざるを得ないだろう。私自身も、形式的にはこの予算は防衛費はGNPの一%を守っていることを認めます。しかし、実質的にはもはや一%を超えておる。それは我が党の塚本書記長がこの席で申し上げましたとおり、昨年退職すべき人たちの退職金を払うと一%を超えてしまうから退職させないで、そしてつじつまを合わせたということから申しましても、もはや実質的には一%を超えておる、こういうことは賢明な国民はほぼ察知いたしております。  そこで、一%を超えた場合に一%を超えれば次は歯どめは二%しかない、大変なことになるから断じてこの一%は守らなければならない、こういう説があります。そうすると国民の方は、それは今より倍も膨らむということは大変だ、断じて一%を守ってもらわなければならない、当然そういう意思の固まりが強くなってくることはこれは明らかなことだと思うのであります。  しかし一方におきまして、今申しましたように、この人件費の出方あるいはGNPの変化、装備費の若干の節約の仕方、そういうものによって、まあまあ一%ぎりぎりのところで走っておる。よしんばやむを得ず一%を超えたとしても、一%の次が二%だという、そういう数字の概念で走るべき防衛役の枠ではない、一%に可能なる近い数字で、どこかで新しい歯どめがなされるべきだ、こう考える説と二つに分かれてきていると思うのですね。このどちらの考え方が常識的だとお考えになりますか。
  33. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府は一%以内にとどめたいと思って努力しているところでございまして、それを超えた場合のことは想定しておりません。
  34. 吉田之久

    吉田委員 今の総理の苦しい立場ではそれしかお答えにならないと思うのでございますけれども、そういう考え方国民の中に広がっておるということは御承知だと思いますし、今お答えいただかなくて結構でございますけれども、いろいろとそういう国民の動向というものも十分配意しながら、いかにして一%内におさめるかということにまず専念していただきたいというふうに思います。  さて、私はこの一%の枠の中でこれからの防衛費を組み立てていくといたしまして、その中でこの人件費と食糧費、それと装備費、いずれも大事な防衛費であることは否定いたしませんけれども、かなり質的に違う二つの要件、それをそのまま込みにして、セットにして一%の枠の中で配分していくという防衛費の組み方というもの、それはそれでいいのだろうかという素朴な疑問を感ずる一人なのでございます。  そこで、五十一年あたりから今日までの我が国の防衛費の中の人件費、食糧費、これをセットにいたしまして、それといわゆる物件費、物件費の中には装備費も入りますけれども、この辺の流れと申しますか、構成と申しますか、伸び率というものはどうなっておるのか、ちょっと防衛庁の方から御答弁いただきたい。
  35. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 人件費と物件費の流れでございますが、昭和五十一年は人件費の割合が過去の防衛庁の歴史の中で一番高い年でございまして、五六%ございました。したがいまして、物件費は四四%でございましたが、その後、人件・糧食費の割合は低下傾向でございまして、昭和五十八年度に四四・五%まで下がりましたが、五十九年度、六十年度と今度は少し上がりぎみでございまして、昭和六十年度には四五・一%ということになっております。ちなみに申し上げますと、昭和三十年代の前半までは人件費の割合は三〇%台でございました。三十五年度以降四十九年度までが四〇%台でございまして、五〇%台になりましたのは昭和五十年代からでございます。
  36. 吉田之久

    吉田委員 今御説明がありましたとおり、人件費、食糧費もその時代によって一つの変化を起こしております。かつて三〇%台であったものがピークにおいて五五%ぐらいまで伸びて、そして今徐々に四五%あたりに落ちつこうとしておる。それと全く逆の数字が物件費、装備費になってくるわけでございます。  そこで、今後人件費、それから食糧費がこれ以上急速に減るということはまずあり得ないと思うのです。徐々にではありますけれども、やはり人件費というものは上がってくる傾向にあります。そうなりますと、その分だけ装備費を次第に圧迫していくということになります。  しかし一方におきまして、世界の異常な科学技術の進展に伴いまして、この防衛の方の装備というものも部分的にはやはり非常に金のかかる面が出てまいるはずでございまして、それが装備費を押し上げる傾向にある。それから何らかの事情でこの人件費が急に伸びること、それはインフレとかそういう事態がなければまずはないと思うのでございますけれども、しかし今「防衛計画の大綱」に基づいてちゃんと別表で自衛隊の定員が決められておるわけでございますが、その定員が充足されていない。言うならば、定員を充足しないことによって人件費をある程度抑え、そのことによって装備費というものを何とか調達しておるのではないかというふうな気がするわけなんでございます。  しかし、私はだんだん緊張状態が生じてくれば、この充足未達成の分はやはり充足されるのかどうか。そういう事態になれば、当然この人件費というものは急に伸びてまいります。伸びた分だけそういう緊張が高まる中で大事な装備費を落とさなければならないのかという問題で、私はこれは非常に悩ましい相関関係にあると思うわけなんでございます。この辺につきまして、長官いかがですか。
  37. 加藤紘一

    加藤国務大臣 吉田委員の御質問はかなり防衛力整備の各般にわたって幅広い御指摘が数点含まれておったように考えます。いわゆる人件費とそれから装備費との関係でございますけれども、私たちは今五十一年度に設定されました「防衛計画の大綱」をできるだけ早期に達成したい、こう思っておるものでございますので、現在の段階ではそこに到達していないすき間を埋めるために、どちらかと言えば、装備費の方が比率が高くなるような形にしないと防衛力計画の達成ができないという矛盾はございます。しかし、人件費というのは、御承知のように義務的経費なものでございますので、どうもその辺から実態的には人件費の比率が去年よりはことしがまた高くなっているという実態があることは、防衛力整備上の一つの悩みであろうと思います。  では、そうしますと、充足率というのがなかなかもう達成できないのだから、その将来をどう思うのかという最後の御指摘でございますが、この点につきましては「防衛計画の大綱」の中で十八万体制をしっかりと固めておりますので、できる限り高充足率であった方が当然のことながら望ましい、こう考えております。しかし、現時点で財政にも限りがありますし、それから防衛力全体の中のバランス等を考えてまいりますと、現在のところは、本来は望ましいけれども、限られた財源の配分としてはやむを得ず現在のような予算のバランスになっておって、充足率を高めることが後回しになっておるという事態であろうと思っております。したがって、その充足率を高めることは今後できるだけ努力してまいりたいし、希望でございますが、それが各年度でできるかどうかはそのときどきの財政事情、与えられます財源、それから他の政策とのバランス等の中でそのときどきで判断しなければならない問題ではないかと思っております。
  38. 吉田之久

    吉田委員 今防衛庁長官はかなり正確にお答えになっておると思います。  そこで総理に伺いたいのでございますが、今おっしゃるとおり定員というものがあり、そして建前からいえばその充足率は高い方がいい。しかし、一定の枠の中で配分していくとするならば、その辺で我慢をしながら装備費を補っていかなければならない。私はやはり、一%枠を厳守しながら、GNPの伸び縮みがどうなるのかは別といたしまして、大変限られた予算の中で防衛を全うしていくための費用をどう捻出するか。これからの考え方というものは、この人件費をどう抑えるか、したがって定員を、きょうまでの推移を見て、多いにこしたことはありませんけれども全体の枠が限られておる、だとするならば、この辺で一応カットしてしまう、いわゆる定員の見直しですね。その辺をきちんとなさらないと、この一%枠の中でこれからの装備をやっていこうとすると、大変な局面が絶えず出てくるのではないかと思わざるを得ないのでございますけれども総理のお考え方はいかがでございましょうか。
  39. 加藤紘一

    加藤国務大臣 今、定員の充足率、一番低いのが陸上自衛隊で八六・三三%になっておるわけでございますが、この充足率の向上は、繰り返しますけれども、私たちの希望でございます。何とかそういうことができる財政事情のところに来たい、こう思っております。そして、この体制は「防衛計画の大綱」の中で定められたものでございまして、そういう大きな枠組みの中で、我が国の地理的状況、それぞれのバランスのとれた配備という観点から定められておるものでございますので、十八万人の定員の定員そのもの自体を現在見直すということは私たち考えておりません。
  40. 吉田之久

    吉田委員 だとするならば、総理、整合性のあるバランスの上で走っている定員であり、人件費であり、また装備費だということになります。しかもそれが、ぎりぎり四苦八苦の状態にある。一体どうなさるのでございましょうか。私はやはり、この際思い切って陸海空のバランス、現在のバランスは原則として保持するけれども、しかし徐々にそのバランスというものをどのように変えていくということをそろそろ示されないと、これはもう一%を超えざるを得ない状態になってくる、あるいは超えないとするならば支離滅裂の防衛になってしまうというふうな気がするわけなんでございます。この際、陸海空のシェアというのでしょうか、予算の配分枠をどういうふうに設定するか、あるいは将来次第にどう変化させればいいのか、あるいは陸海空を統合運用する方策はないだろうか、そういうことによって費用対効果はどうなるかというようなことまで深く考えていかないと、ただ一%を守ります、守りたいと存じます、その辺適当にやりくりしておけということでいいのでございましょうか。
  41. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府は「防衛計画の大綱」の水準に到達するということが今当面の目標でございまして、その範囲内でいろいろ努力をしていきたい。いわゆる五九中業につきましても、「防衛計画の大綱」の水準達成を期す、そういう目標で次の中業も策定しておる、そういうことで作業が進んでおるわけなんでございます。  しかし、その作業の中におきましても、大綱の水準の枠内におきまして、いろいろ海空からの日本に対する侵入に対抗する力を重視していく必要があろうと思います。海空からの侵入に対する抵抗力という面から見ると、必ずしも陸上自衛隊はないがしろにするという意味ではない、むしろ洋上撃破とかあるいは水際撃破とか、そういうようなことも考え、陸海空の総力とその統合力を運用してやっていく。しかし、現在の大綱水準の達成の状況を見てみますと、やはり海空における作戦航空機の達成率が非常に低いです。それから艦艇の達成率がまた非常に低い。あるいは大綱の水準の枠内におきましても、陸における機動性の問題その他、さまざまな改革すべき点があると思うわけです。  そこで、「防衛計画の大綱」については弾力性があるのでありまして、「防衛計画の大綱」は大綱自体の中で次の三つの弾力性を持たしてあります。  一つは、質の弾力性であります。大綱は別表で保有すべき防衛力の規模示していますが、その内容については、「諸外国の技術的水準の動向に対応し得るよう、質的な充実向上に配意」することとしております。すなわち、別表の規模の範囲内で、整備する防衛力の質に弾力性を持たしております。  次は、装備体系の弾力性でありまして、大綱は別表で保有すべき防衛力の規模示しておりますが、その際「この表は、この大綱策定時において現有し、又は取得を予定している装備体系を前提とする」と注記してございます。したがって、大綱制定後の軍事技術の進歩等を勘案して、採用すべき装備体系に変更が生ずる余地を残しております。例えばF104からファントムに変わるとか、ファントムからF15に変わるとか、あるいは日本の自衛艦の中においても、ヘリコプターを搭載する自衛艦に変わっていくとか、あるいは艦対艦ミサイルのハープーンを装備するとか、そういうように科学的進歩に応じて改良する、そういう余地は十分残されておるので、そういう点は考慮していくべきであると思います。
  42. 吉田之久

    吉田委員 かなり時代の変化、現実への対応という点で防衛計画大綱の弾力性を認め、またそれに対する配意をなさっておる御答弁でございまして、それは大変結構だと思うのです。と申しますのは、私どもが一番案じてまいりましたのは、総理は絶えず、五十一年度に制定されました防衛計画大綱をまず実施したい、そしてその上で次のことを考えるとするならば考えなければならないであろう、こういうことの答弁に終始してこられたわけであります。  しかし、総理みずからがきょうまでの御答弁でも明らかにされてまいりましたように、当時のGNPの伸び率というものは非常に高かった。したがって、ここにいらっしゃる三原さんもあるいは当時の防衛庁長官の金丸さんも、それは四、五年で達成できると見ていらっしゃった。ところが、GNPの伸びの思わざる鈍化によりまして、それは今日依然として達成されていない。五九中業が実施された暁に達成されるのかどうかもまだ定かではない。だとするならば、予定より五年も十年もおくれて防衛計画大綱の水準ができ上がる。せっかくの国民の血税、これほど問題になっております一%の枠内の防衛費、それを使ってせっかくできた防衛計画というものは、その時点においてはもはや極めて旧式のものであったというようなことでは、国民も非常にやるせない思いでございますし、その辺をどうなさるのか。我々は、したがって防衛計画大綱自身徐々に見直すべき段階に来ているのではないかということを提言してきたわけでございますが、新しい防衛計画をつくらないまでも、現にある防衛計画のいろいろな弾力的な運用によって、時々刻々に対応する新しい防衛というものに対処しておる、対処していきたいと思うという御答弁は、それなりの重みがあると思うわけでございます。  そこで、私ども考えますのは、現にある防衛計画大綱と、それから後に、つくるつくらないは別として、想定されるいろいろな局面に対する我が国の防衛のあり方、これはいわゆる平家の上に二階をつくる、二階建てですね、平家の上に二階をつくるという構想ではなくして、同じ平家あるけれども、四囲の情勢、環境の変化あるいは気象条件の変化、そういうものに対応して別の平屋をつくっていく、その間の共通して重要な部分は大いに進めていく。持ちたいけれども、その時点ではやや旧式、不要な感なしとしないものは思い切ってカットしていく。その部分を新しい想定される局面に対応する新兵器体系に変えていく。その辺に絶えず的確に対応をなさらなければならない、しかもそれを有効にやることによってしか、一%の枠内で我が国の防衛を全うすることはできないのではないかというふうに考えているのでございますが、この考え方はどうお考えになりますか。
  43. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今申し上げましたように、大綱水準達成というのは平家だろうと思うのです。したがって、この平家の上に二階建てするという発想は今持ってないわけです。大体平家の中の模様変えとか質的強化とか、そういうことで五九中業をつくって達成してみたい、そう考えているところでございます。
  44. 吉田之久

    吉田委員 大分考え方の似た点も出てきておると思うわけでございますが、ともかく私は、陸上部隊の展開の仕方、これもそろそろ旧態依然たる考え方、発想の上に立つのではなしに、諸外国の例にも倣っていろいろと、限られた兵員の中で、隊員の数の中でどのように機動的に展開していくかということをやはりお考えにならなければならないと思うのです。北で緊張が起これば南の部隊もすぐに北に移動できる、しかし、その場合にはとても、海上輸送とか陸上輸送というのは、もはやこの高度に発達した国でそういう緊張事態が近づいてくれば、ほとんど不可能だと思います。また、相手側のいろいろな監視や攻撃態勢も完備されてくるはずでございます。だとするならば、ヘリによる空輸とかあるいは大型輸送機によって陸上部隊を運ぶとか、アメリカの緊急展開部隊のような、あるいはフランスでも最近陸上というのは非常に少数精鋭化した、極めて近代的なものに体質改善しようとする努力をしておるということを承っておりますけれども、限られた防衛費の中で、陸海空がそれぞれの任務分担を発揮するためには、その辺の多面的な検討が必要ではないか。  私の申し上げたいことは、我が国の防衛費の枠をGNPの一%内にとどめるという、当時としてはかなりのひらめきであったと思いますけれども、今から考えれば極めて単純な枠の設定、それはこれからの我が国の防衛を全うすることにはならないのではないか、もっと複雑な方程式、もっと複雑な関数というものによって組み込まれた一定の枠内での運用の仕方というものを本気で考えていただかないと、国民は不安を感ずるばかりではないかというふうに思うわけでございまして、今申しましたそういう陸上自衛隊の今後の近代的なあり方とか、そういうことにつきましても総理の念頭の中にお考えがあるだろうと思いますけれども、あればお示しいただきたいと思います。
  45. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 おっしゃるとおり、やはり非常に多元方程式で、複雑な関数が要る防衛戦略体系というものが要ると思います。やはりその中には、我々が考えておる総合安全保障という面から、外交も入ってまいりますし、資源の問題も入ってまいりますし、あるいは国際関係、国際連合の世論とかあらゆるそういうものまで含めたいろいろな諸元を持った、ソフトを重視した一つの戦略防衛体制というものがやはり必要であると考えて、そういう意味からも、総合安全保障閣僚会議等で逐次検討しつつあるところでございます。
  46. 吉田之久

    吉田委員 次に、核燃料廃棄物の処理についてお伺いをいたします。  去る一月二十九日の本会議におきまして、我が党の佐々木委員長総理質問をいたしました。その中で、低レベル放射性廃棄物の処理について、総理とパプアニューギニアのソマレ首相あるいはオーストラリアのホーク首相らと海洋投棄をめぐる話し合いをなさってこられたけれども、その経過についてお伺いしたいという質問をなさっております。ところが、委員長のお尋ねした真意は、海洋投棄を断念するならば今後我が国の廃棄物などをどのような形で処理しようとなさるのか、これは新しい状況の変化でありますので、その点もお聞きしたいという質問をしておったわけでございますけれども総理の回答はこの辺が全く欠落いたしております。  その点につきまして、改めてこの委員会で私からお伺いいたしたいのでございますけれども、そういう海洋投棄を断念せざるを得ない状態になった今後の我が国内での陸地処分あるいは陸地保管、そういうものの適地、施設の規模、用地面積、輸送の安全性、貯蔵の安全性あるいは環境監視の方法等いろいろな問題が必要となってくると思うわけでございます。その概要につきまして御答弁をいただきたいと思います。
  47. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 お答えさせていただきます。  低レベルの放射性廃棄物の処分につきましては、我が国の場合、海洋投棄と陸地処分、この二つの方法を基本的な方針としてまいったわけでございますが、海洋投棄につきましては、先生御指摘のように、海外諸国の御了解も得られないというような状況の中で、現在、こういった国々の了解なしにこれを強行するというようなことはしないという基本的な考え方のもとに、現在、ロンドン条約締約国会議のもとでいろいろ協議が進められております国際的な海洋投棄への安全評価についての検討、こういったようなものも踏まえまして、今後慎重に検討していくということにいたしておるわけでございます。  一方、陸上の処分につきましては、現在は発電所等の中で安全に貯蔵されておるわけでございますが、これを発電所等の敷地外に、長期間にわたって安全に管理できるような施設をつくりまして、そこに集中的に貯蔵する。それで、時間がたちますと放射能というのは低減してまいりますので、十分低減した後に安全評価をいたしましてこれを処分をする、こういう方針を当面進めておるわけでございます。  具体的には、このような施設外の長期的貯蔵施設ということで、青森県の六ケ所村に現在立地すべく、電気事業連合会を中心にいたしまして青森県にお願いをしているという状況にございます。そして、これらの廃棄物を発電所等から当該集中的貯蔵施設のところに運搬するにつきましては、これは海上輸送ということが基本でございまして、そういった廃棄物の運搬を十分配慮いたしました専用船で現地に近い港まで輸送する、そういうようなことで対応するということを現在考えておるところでございます。
  48. 吉田之久

    吉田委員 そこで、海上輸送の体制を確保できるのかどうか。特に六ケ所村に設置予定の低レベル廃棄物の貯蔵にいたしましても、二百リットル入りのドラム缶を三百万本、かなりの膨大な数字になると思うのですが、運輸大臣いかがですか。
  49. 山下徳夫

    山下国務大臣 放射性物質の船舶輸送につきましては、従来から、国際原子力機関輸送規則というもので国際的な基準は決められておるわけでございます。これに準拠しまして、我が国におきましても、従来、船舶安全法という法律の中で危険物船舶輸送貯蔵規則というものを決めて、細かに規定でちゃんと決めております。  そこで、今度の問題がありまして、当局といたしましても、特に輸送の容器、船の構造とかあるいは航行に関すること、さらに六ケ所村に入りますいわゆる港の出入りの問題、そして接岸、荷役、そういった問題につきまして完璧を期すという意味で、さらに基準を再点検いたしまして、万誤りのないように十分準備を進めておりますので、どうぞ御休心をいただきたいと思います。
  50. 吉田之久

    吉田委員 次に、北朝鮮の日本人妻の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  昭和三十四年以降、九万三千人の人たちが我が国から韓国や北朝鮮の方に帰っていかれました。そして、それに伴いまして六千人の日本人が、北朝鮮に帰る人たちの妻となり、家族となって同行しているわけでございます。しかし、人間の情といたしまして、当然嫁いだ者は、たとえ国境、国籍を異にいたしましても、時には自分の生まれ故郷に帰り、親子と会いたいというのが当然のことでありますけれども、それが全くなされないままにいたずらに歳月がたっております。  そこで、一方、外交問題も、我が国と北朝鮮の場合には非常にデリケートな状態にあることはよく承知いたしております。総理は、今次内閣の発足に当たって、今年一月一日、ラングーン事件に関する制裁措置の解除をなされましたけれども、このことは、政府が北朝鮮に対して何らかの新しい対応やプログラムを用意されてのことかどうか、まずその点からお伺い申し上げます。
  51. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 北朝鮮に対する制裁解除は、これはラングーン事件が発生をいたしまして、北朝鮮に反省を求めるという立場からこれまでの規制を厳しくしたわけで、いわばもとに返ったというところでございます。ですから、基本的には北朝鮮に対する基本政策は変わっておりませんが、いわゆる民間の交流の幅をもとに返した、こういうことになるわけです。
  52. 吉田之久

    吉田委員 そういうことで、外務大臣説明のとおり、一応もとの状態に戻った。したがって、環境は特段悪くなっていないはずでございます。だとするならば、この日本人妻問題もさらに一層促進されなければならない背景にあると思うわけでございます。  先ほど申し上げましたとおり、帰還事業始まって以来二十五年間たったわけでありますけれども、残念ながらまだ一人毛里帰りなさっていない現状にあります。このことは、人道的立場からいってもまことに残念であり、悲惨な思いを禁ずることができません。外国に嫁いだ娘を案じて、せめて一日会いたいとこいねがいながら、ついにその願いを果たし得ずして一人また一人世を去っていく親たちの心情を思うときに、耐えられないものがあります。異国に日を送る当事者、いわゆる日本人妻の方々の悲しむ思いも察せられる状態であります。国内の世論もマスコミもこの問題に一層深い関心を払い、また一日も早い解決を期待いたしております。  政府の対応の経過をこの際御説明いただきますと同時に、今後の展望につきまして安倍外務大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  53. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 お答えいたします。  ただいま先生が御指摘いただきましたように、戦後二十五年たっております。この中で、六千人という先生の御指摘もございましたけれども、私どもとしましては、特に日本人妻でございますか、日本人妻の消息、安否の調査ということを主眼として、これまで努力してきたわけでございます。  特にこの問題は、御指摘のように人道的観点という点がございますので、その点を踏まえまして、主として日赤ルートを通じて努力をしてきたわけでございますが、同時に、事柄の性格上、今先生が御指摘のように、日本におられます留守家族、あるいは関係者の御意向等をよく踏まえまして本件の調査に当たるというようなのが私どもの基本的態度でございます。  個々の具体的なケースにつきまして、今先生もお話がありましたし、従来国会においても何回となく、いろいろ悲しいあるいは留守家族の沈痛なるケースを伺ってまいりましたわけでございますが、これまでの具体的な経過を申し述べますと、主として日本赤十字のルートを通じまして、各家族の御希望を踏まえまして十数回、二百数十件の件数につきまして、安否を調査するということがまず何よりも大事であろうということで対応してきたわけでございます。  これに対しまして、北朝鮮の方からは、昭和五十七年に九名の方の安否がわかったということで調査を伺っております。ただし、この九名の中ではお一人の方が死亡されているということでございます。  次に、昨年の七月になりまして、新たに私どもが安否調査を依頼しておりました中で、十二通の安否に関する手紙を先方から届けられた。またそのほかに、また五名の方の安否も判明したということでございます。  なるほど人数、ただいま日本人妻というカテゴリーには、法務省の調べによりますと、昭和三十四年の第一次帰還船以降、千八百三十一人の方が日本人妻として先方に渡っているということを承知しております。そういう点では大変少ない数でございますけれども、いろいろ制約要因があることは御理解いただけると思いますので、今後とも留守家族の御希望を踏まえまして最大の努力をしていきたい、こういうことでございます。
  54. 吉田之久

    吉田委員 総理、お聞きのとおりこの問題は大変切なる国民の願い、家族の思いがかかっております。しかし、いろいろ国情の差あるいはデリケートな関係にあるとは申せ、今日まで、そうした願いにもかかわらず、全く遅々として進んでいないという現状であります。親も年老いてまいりますし、また嫁いだ日本人の妻も年々老いていくわけでございまして、早急に解決されなければならない問題だと思います。  挙げて外交努力によらなければならないと思うわけでございまして、特に、直接朝鮮民主主義人民共和国とお話しいただくなり、あるいは中国政府を通じていろいろと協力をお願いしていただくなり、そうした総理御自身の御決意と御努力にかかってくる要素が非常に大きいと思うわけでございますが、どのように対処していただけますか。
  55. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 御親族の御心情を拝察いたしまして、あらゆる機会を通じまして最大限の努力をしてまいりたいと思います。
  56. 吉田之久

    吉田委員 次に、離島、僻地における老人対策について少しお伺いをいたしたいと思う次第でございます。  現在施行されております老人ホーム、それは特別養護老人ホームを含めまして、その老人ボトムに対する国庫補助の収容基準は五十人以上となっております。しかし、離島、僻地等の過疎地域では、高齢化の進行と反比例して、世帯数が非常に極端に減少しつつある傾向にあります。したがって、到底厚生省の指示基準五十名に達し得ない現状なのでございます。あえて基準にかなう老人ホームを建設しても、過半数の入居者が地元で占められてしまうという状況にあります。  お年寄りの感情というのはなかなか複雑なものがあると思うのです。同じ条件で孤独の人たちが相集まって生活するのは、それはそれで大変望ましいわけでございますけれども、せっかく集まった老人ホームの中にいわば二つの集団ができてしまう。全く離れた集落から来ておられる老人と地元のお年寄りと、これは非常に、双方の情緒的満足感に大変な支障を来しておるようでございます。地元の老人は事あれば家へ帰る。そしてまた、そうでないときはホームヘやってくる。それを見ながら、なかなかに連絡船もない、村営バスも簡単に利用できない、そういう離れた土地から来ておる老人の方々の思いというものは、これはちょっと言葉にあらわせないものがあると思うわけでございます。  こういう実態を厚生省は御存じでございますか。あるいは御存じだとするならば、今後どのような対応をなさろうとなさっておりますか。
  57. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 御指摘のように、離島や過疎地域においてそういう小規模なものを建設したいという御要望があることはよく承知をいたしております。しかしながら、小規模な人数で現在の老人ホームと同じようなサービスを確保するためには、やはり各種専門職員等を配備する必要がございますので、非常に割高になることはやむを得ない、そういう点から、今まで小規模な老人ホームを単独設置することは困難であるという判断をしておるわけでございます。  特に特養の場合には、御承知のような養護に対する格別な介護が必要でございますので大変困難だと考えておるわけでございますけれども、しかしながら、そういう御要望をそのままにしておくということもいかがかと思いますから、何かの工夫をしながら今後の検討課題とさせていただきたい、そういうふうに考えております。
  58. 吉田之久

    吉田委員 いろいろ老人たちに対する看護の仕方でありますとか給食の仕方でありますとかいう問題で、ある程度一定規模でないとそのケアができないという困難な事情はよくわかります。しかし、今申しましたとおり、せっかくつくられた老人ホームというものがかえって心情的な反感を養う、そういうホームになってしまっては、これは事志と全く違うはずでございます。しかし、現状はどうしても老人が密集している場所ほど僻地であるということに考えをいたしていただかなければならないと思うのです。  ちなみに、私ども奈良県に十津川村という村がございます。この中で、大変小さい集落でありますけれども、例えば今西という大字におきましては、世帯数は十軒でありますけれども、何と六十五歳以上の人たちが四〇%いるという状態でございます。竹筒という村、世帯数三十七軒でありますけれども、三九・三六%は六十五歳以上の人たちだ、こういう現状が出てくるわけでございます。  こういう老人対策をどうするかというのはなかなか容易なことではございません。しかも、それが小さい僻地の集落に割拠しておる。したがって、次官通達を改めることによりまして、収容基準五十名を二十名ないし三十名に改めることはできるはずだ、そしてタコの足的な小規模施設を設置する、医師、看護婦、給食等はセンターを設けて集中管理するというふうなことで、いろいろ財政上の負担等の超過も創意工夫をしなければなりませんけれども、何かそういう特別配慮ある方法をとらないと、これはいわば絵にかいたもちに終わってしまうのではないか、むしろ年寄りの不幸を救うことに逆行するのではないかというふうな気が私はするわけでございますが、ちょっと総理、これから高齢化社会に入るに従いまして、こういうデリケートな問題が各地で出てくると思います。そういう点で本当に適合する対応を措置するべく、いろいろと新しい御指導をいただかなければならないのではないでしょうか。
  59. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 おっしゃるような現象は、出てくる可能性は各地で十分あると思います。したがいまして、厚生省、自治省あるいは地方公共団体等連絡をとりまして、そういうような場合に備える対策を今から準備して研究させたいと思っております。
  60. 吉田之久

    吉田委員 次に、治山治水の問題、水資源の涵養の問題、それと最も関係深い山林の問題につきまして御質問をいたしたいと思います。総理の御出身も材木屋さんと承っておりますので、木材問題や山の問題には大変お詳しいはずだと思うわけでございます。  戦争中は軍の公用材としてある程度乱伐を強いられた我が国の山林、しかも戦後は何としても焦土から立ち上がろうとする国民、その国民の要求にこたえてまず出てまいりましたものが住宅の復興でありまして、これに木材が大量に必要とされました。そういうことで瞬く間に木は減っていく、また次の新しい苗木を植えなければならないというので、林業経営者は懸命にその時代に次の世代に対する配慮と献身的な努力によって苗木を植えてきております。それが今一斉に間伐しなければならない時期に来ておるわけでございます。ところが、一方におきまして住宅復興の中でほとんど国内材は枯渇した。したがって、外材に頼らなければならないという要求が出てまいりました。こういうことで昭和三十五年あたりから一挙に外材が日本に入り込んでおります。  それから、その当時建築基準法ができまして、木は燃えやすいものだ、だからこの際、なるべく鉄筋や鉄骨あるいはセメントや石による建造物に変えることの方が望ましいのではないか、こういう時代の背景の中でそういう建築基準法がつくられておりまして、したがって、四百平米を超える建物などは木造で建ててはならないという基準になっているはずでございます。  こういう時代の変化の中で山を守ってきた人たち、しかも山を守り切れない現状、この問題を総理はどうおとらえになっているか、特にあなたが外材の関税率の問題でアメリカでお述べになりましたことが国内のこの関係者を非常に刺激している現状でありまして、その辺も御配慮いただいて、まず総括的な山に対するお考え方総理から伺っておきたいと思います。
  61. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 外材が低廉で大量に日本に入ってくるようになりましてから、日本の森林資源というものは、ややもすれば荒廃に帰する危険性が出てきておることは吉田委員御指摘のとおりでございます。  最近におきましては、また山村におきます労働力の不足等のことも加わりまして、間伐等をやってみても採算が合わないというので過熱林がふえてきているという状況でもあり、そういうことは治山治水、水資源涵養に対しても大きな影響を与えつつあることは非常に憂うべき現象でございます。したがって、森林政策の問題というものは、一つは木材関係の業者の生存の問題もございますが、やはり国土全体の保全という面からも、あるいはよき環境の保全という意味も考えまして総合的にやるべきであると思っております。  私はロサンゼルスにおきましてレーガン大統領とも会談し、その後ブロックさんが日本に来たりいろいろありますが、木材は非常に難しい、日本の森林資源の保護ということは環境上からも非常に大事なゆゆしい問題になってきておるのだということも伝えてきておるのでございます。ことしは国際連合の国際森林年にも当たりましてなおさら森林を愛護しなければならぬ。政府みずからまた花と緑で人の輪を、そういうことで木を植えることを非常に積極的に努力しておるところでもございます。そういう意味におきまして森林政策を適切に推進できるように、農水省等も中心になり、関係各省とも協力して進めてまいりたいと思っておるところでございます。詳細は農水大臣からお答えいたします。
  62. 佐藤観樹

    佐藤国務大臣 吉田先生にお答えします。  今総理がおっしゃったことに尽きるわけでございますが、木材界の不況につきましては先生御存じのとおりでございますが、内外ともに厳しい状況にございます。これは、例えば木材の需要が落ちており、昭和五十五年が木造住宅が七十五万戸ぐらいですが、現在はその約二割減。価格は昭和五十五年に比べて三割減。そういう一方で経費は、例えば造林手賃金で二割上がっておるという形で、実は大変厳しい状況を続けておるわけでございます。  そんなことでございますが、一番問題は木材のよさをどう見るかということで、実は先生御存じと思いますが、五つの誤解というのがあると思います。一つは、やっぱり木材は地震に弱い、次は火災に弱い、長もちしない、居住性が悪い、建築費が高くつく、この五つの国民的な誤解がございます。これをどうするかということで実は今いろいろしておりますが、結局木材というのは地震に弱いというけれどもそうではないのですね。強いし、しかも火災に弱いというけれども、これは御存じのとおり二つの点でございまして、三十分間で十八ミリメートルぐらい焼ける。それ以上厚みがあれば心配はない。また、木造住宅はつくり方で火災にも強いという点もございます。  また、そういうことの中に、長もちしないかといいますと、木造は腐らないように通風をよくし、雨漏りを防ぐことにより鉄筋コンクリートと同じように五十年、六十年もつ。これは東北地方において百年以上もっておる実例がたくさんあるのは事実でございます。そんなことで、居住性の点もそうです。また、実は、建築費が高くつくかといいますと、統計から見ても木造の方が鉄筋より安いという点がある。  こんなことを特に御理解をいただきながら、実は販路の拡大に努める、そういう形の中に先生先ほどおっしゃった間伐、これは率直に言いますと、終戦後造林、人工林の拡大というのが約一千万ヘクタールございます。そのうち樹齢が、十六年から三十五年のものが約五〇%ございます。これは間伐。これを早急にやりますとともに、間伐材の利用促進、これが一つの大きな問題になっております。間伐材は先生御存じのようなことでございまして、昔は例えば足場丸太とかあるいは坑木に使われましたが、これをより新しい方法で使うということで、実はいろんな角度から、例えばLVLとか、また実はバイオマスで使うということで飼料の一部に入れるとか、あるいは固形燃料に入れる、こんなことを工夫しながらやっておるというようなことでございます。そんなことで、また林道についてもそういう感じでやりたい、こう思っておるわけでございます。
  63. 吉田之久

    吉田委員 大分時間がなくなってまいりましたので、いろいろこの山林問題、森林問題につきまして伺いたい点もいっぱいあるわけでございますが、またの機会にいたします。  ただ、総理、先ほどの御答弁でかなり深く御理解をいただいておるようでございますが、原木市場杉中目一立方メートル当たりの相場を見ましても、ピークが昭和四十九年三万五千八百十円。それが今や五十九年では二万五千円に落ち込んでおります。一方、伐出費、トラック運賃等は、当時七千五百円程度のものが、最近は一万五千円まで上がってきております。相場が下がって、そして伐出費が上がっておる。したがって、その立木価格というものがぐんぐん下がっておる。それから育林賃金、木を育てるのに要する賃金、男子の場合、これは当然徐々に上がってまいります。そういうことで、今や木を切っても全然売れない。売ったって、売れば売るほど損になる。これではとても山は守れないと思います。しかも五十年たたなければ山が育たない、その間に相続税がごっそり取られる、これでは山は維持できないと思います。昔の山持ちは特権階級のように見られましたけれども、今や全く長期的な、しかも利潤を伴わない産業に従事せざるを得ない状態になってきておる。  この中で外材と対抗するためにはどうしても林道を展開していく以外にない。推し進めていく以外にない。そういう問題、あるいは日本の山の独自性といたしまして、いわゆる政府が指定する林道の幅員だけではなしに、もっと作業路的なものが必要ではないか。いろんな問題が出てまいります。あるいは建築基準法の改正等も必要ではないかというような問題があるわけでございます。  あと五分になりましたので、その辺はよくまた各省でお考えをいただいておくといたしまして、今問題の、労働者が心から待望、要求いたしております連休化法案を出そうという問題、ゴールデンウイークを法制化してもらおうという問題、あるいは週休二日制を必ず確保したいという問題、あるいは週の労働時間を四十時間に法制化しようとする問題、こういう一連の労働者の切なる願いが出ておるわけでございます。しかもそれは、単に労働者だけが時間の余裕をもらって、そして優雅に暮らしたいというような要求からではなくなってきておるということを、この機会に総理初め皆さん方は篤と御理解いただきたいと思うのです。  例えばこの間公聴会で、同盟の幸重さんがいろいろ陳述されたわけでございますが、私どもが太陽と緑の週制定を提唱する主な理由は次のようなことだ。かいつまんで申し上げます。一つは、労働を重んじる一方で、年に数回まとめて休暇をとり、十分な自由時間を利用して文化、スポーツ、社会福祉活動などを充実したい、社会福祉活動にも寄与したいという願いがこもっております。  四月末から五月初めにかけて我が国は輝く太陽のもと、新緑の美しい時期であります。この時期は森林を歩き、今問題になっております森林でありますけれども、そういう自然の中で山野を跋渉し、そして自然に親しむことによって、自然と人間の触れ合いをもっと積極的につくり出す必要が現にある。それから、社会問題で今非常に深刻な青少年の非行、家庭の崩壊、そういうものを防ぎ、家庭のきずなを深めるために必要な連休なんだ。  さらには、マイクロエレクトロニクスなど先端技術の進展は看視労働や高度な知的労働を増加させており、精神的にストレスの解消を図るためにも思い切った大型休暇が必要である、こういう観点から強く要望しているわけでございます。  もちろん諸外国から見ての我が国の労働時間に対する批判の高まりもあります。そういうことにこたえる一面もありますけれども、極めて人間的な、極めて日本的な、しかもこれから二十一世紀に向かって進もうとする日本の社会のあり方そのものを問いただす意味で、そして解決する意味で求めているゴールデンウイークの法制化の問題であると思うわけなんでございます。この辺につきまして労働大臣からお答えをいただきたい。
  64. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 吉田さんの御指摘の趣旨はもう十分承知をしているところでございますけれども、当面は行政指導で進めていきたいというふうに考えています。
  65. 吉田之久

    吉田委員 いろいろ労働大臣が御配慮いただいておることも承知いたしております。また行政指導を進める面でいろいろと対応をしていただいておることも承知いたしております。しかし、行政指導はしょせん行政指導でありまして、先ほど申しましたように、労働者が労使関係の中で休むこともそれは逐次できます。休日をふやすこともできます。しかしせっかくふえた休日、しかし子供は学校に行かなければならない、せっかくの機会に親子の触れ合いができない。そこでやはりきちんと休日を法的に定めて、そして働く者も子供たちも教師たちも休むというように制度化していかないとこれは現実のものにはならない。あるいは制度化していかないとますますアンバランスだけがひどくなっていく。そういう条件を享受できる労働者と、そういうこととは広く深くかけ離れた労働者とが、二つが存在するようになる。特に中小企業の問題は深刻であります。しかし、そういうことであるだけに政府が真剣な指導を行いまして、徐々にではあってもこういう労働者、国民の切なる共通の願いにどうこたえていくかということを考えられなければならないと思います。総理、この辺のことにつきましてお考えをお伺いいたしたいと思います。
  66. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 五月の初めは、芭蕉が「あらたふと青葉若葉の日の光り」と生命をたたえたときで、非常に日本でもすばらしい時期でありますから、国民皆様方があの時期に健康で文化的な家族生活をエンジョイするように我々も大いに期待しておるところで、望ましい方向に持っていきたいとは思いますが、何せ労働時間に関する問題は企業の運営にも関係することでございますから、できるだけ行政指導によって普及するように政府も努力をして、ある一定の水準に達し、また国民皆様方の合意形成がある段階まで達したときに初めて法制化することが適当であろう、私はそう思いまして、行政的な指導によりまして努力してまいりたいと思っております。
  67. 吉田之久

    吉田委員 時代の変化、国民の要望、そういうものをよく察知されまして適切な指導を行われながら、一刻も早くそうした大型の休日を家族ともども喜び、そして有効に暮らし得る、そういう社会をつくるために、政府の積極的な努力を進められることを強く要望いたしまして、時間が参りましたので、行政改革に関する質問はできませんでしたけれども、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。
  68. 天野光晴

    天野委員長 これにて吉田君の質疑は終了いたしました。  午後零時五十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十一分休憩      ――――◇―――――     午後零時五十一分開議
  69. 天野光晴

    天野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。矢山有作君。
  70. 矢山有作

    ○矢山委員 最初にお伺いしておきたいのですが、自民党の藏内修治参議院議員が詐欺事件の被疑者として送検をされたということでありますが、概要を、まあ捜査のことですからお話しのできる範囲で御説明いただきたいと思います。
  71. 筧榮一

    ○筧政府委員 お答え申し上げます。  お尋ねの藏内修治参議院議員に対します詐欺事件につきましては、本年の二月十二日、警視庁から東京地検に事件が送付され、東京地検でこれを受理したところでございます。  送付に係る被疑事実の概要は、藏内修治議員はほか四名と共謀の上、昭和五十八年二月五日ごろ、横須賀市内の土地約十六万平米の防衛庁による買収を希望している不動産業者に対し、同庁が同土地を買収する予定がないのに、これあるように偽るなどした上で、右買収のあっせん謝礼金等の名下に同人から額面合計二千万円の小切手を騙取したというのが被疑事実でございます。  現在、東京地検で、この事件について捜査を始めたところでございます。
  72. 矢山有作

    ○矢山委員 その詐欺事件の起こった場所はどこですか。
  73. 筧榮一

    ○筧政府委員 現在捜査を始めたところでございますので、事実のそれ以上の内容につきましては、現在答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  74. 矢山有作

    ○矢山委員 それじゃ私の方から言わにゃしようがないわ。新聞の報道によると、砂防会館に中曽根事務所というのがあるようであります。政策科学研究所というんだそうですが、そこでこの詐欺事件が行われたというふうに言われておりますが、違いますか。
  75. 筧榮一

    ○筧政府委員 先ほど申し上げましたように、今捜査を始めたところでございますので、その犯行といいますか被疑事実の内容については差し控えさせていただきたいと思います。(矢山委員「新聞にわかっておることが、あんた、言えないことはないだろう」と呼ぶ)私どもの口から申し上げることは差し控えさせていただきたいということでございます。
  76. 矢山有作

    ○矢山委員 新聞に出ておることか言えぬというんだから、これはしようのない話だが、私は、まあ新聞に報ぜられておることは事実だろうという前提に立って、ひとつこれから質問を申し上げたいと思います。  防衛施設庁の名前が出ておるのですが、防衛施設庁はこれはどういう関連があったのか、あるいは、例えば横須賀市周辺で土地が欲しいんだといって探しておる、そういうようなことでもあったのか、その点どうですか。
  77. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  防衛施設庁の方からそういう土地が欲しいといった事実はございません。
  78. 矢山有作

    ○矢山委員 藏内修治参議院議員というのは、前に衆議院におったときには内閣委員長をやっていましたね。事件当時は委員会はどこにおりましたか、わかりませんか。わからぬとすれば、まあ今、衆議院における元内閣委員長、そして、恐らくこのときも内閣委員ぐらいにおられたんじゃなかろうかというふうに承っておりますが、しかし、その点は未確定であるということを申し上げておきます。  ここで問題なのは、東京新聞あたりが詳しく藏内参議院議員のことを書いておるのですが、これを見ると、総理、藏内修治参議院議員というのはかつて中曽根さんの側近で相当な有力者だったというんですね。それからまた、藏内修治さんという人はどうも金銭をめぐるスキャンダルが多いようですね。いろいろと書かれております。四十六年にも藏内手形の異名をとるほど不渡り事件が起きておる。四十八年には藏内議員の自称私設秘書二人が六千万円の手形詐欺事件容疑で警視庁に調べられた。五十七年十一月には藏内議員の政経パーティーに某暴力団が姿を見せたところから、藏内議員がパーティー券を暴力団に多量に売りさばいておったといって騒がれた。それから、五十八年二月には藏内議員は申告漏れの所得税その他、税の滞納で東京国税局から議員歳費の差し押さえを受けた。こうして見ると、議員として全く金銭に絡む醜聞が多いですな。  それから、もう一つは、先ほど言いましたように、警察当局は言いませんけれども、この詐欺事件の起こった場所が中曽根事務所だということは、もう公知の事実だろうと思うのです。そうなると、中曽根総理、これはあなたの責任がないというわけにいかないですよね。自分の事務所ぐらいの管理はやっぱりきちっとやらなきゃいけませんよ。自分の事務所の管理もできないから、詐欺事件の場所に使われたりするんですね。しかも今言ったように藏内さんはあなたの側近だった。そしてかねてから金銭にまつわるスキャンダルの多い人だ。あなた、この責任をどうとりますか。
  79. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 藏内参議院議員がもし新聞に伝うるようなことがあったとすれば、甚だ遺憾でありまして、世間に対しても申しわけないと思う次第であります。
  80. 矢山有作

    ○矢山委員 遺憾だけじゃ甚だ遺憾ですね。これはやっぱりあなたに直接かかわってきているわけですよね。そうでなくても政治倫理の確立ということがやかましく言われておるときでしょう。だから、こういうときに自分で決然たる姿勢を示さなきゃいかぬじゃないですか。こういう事件が起きた、現職の参議院議員が起こした、しかもそれは自民党の方である、しかもそれは中曽根派閥の有力者であった、かねて金銭にまつわるスキャンダルの多い人だった、しかも中曽根事務所でそれをやったのだ、こうなれば、私はもうちょっと深刻な反省があってもいいと思うのですがね。
  81. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 新聞によりまして、我々の仲間も非常に心配をして、藏内君の特に友人であった者や秘書仲間であった諸君が藏内君にいろいろ実情も尋ね、真相を今究明しておりまして、それから、それに対する処理につきましても、友人としていろいろ心配し合っておるところであると思っております。
  82. 矢山有作

    ○矢山委員 今の御答弁は、あなたの責任のことはするっと逃げてしまっているわけですね。私は、あなたがどういうふうに責任をとるんですかと、こう言っているわけです。あなたの政治倫理観を疑われますよ、きちっとした姿勢をとらないと。いろいろ調査があって、いろいろ真相がわかってくるでしょうが、そのときにあなたは責任をとりますか、この伝えられておることが事実であったとしたら。
  83. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 我々の方は、私の事務所の者も含めて全く関知しない問題であります。新聞に伝うところによると、事務所は知らない間に利用された由でありますが、かりそめにもそういうところに使われたということは甚だ残念なことで、遺憾千万であります。
  84. 矢山有作

    ○矢山委員 時間の都合がありますし、これはまたそれぞれ同僚、関係の議員が言われるだろうと思いますから、最後に申し上げておきたいのですが、私はこういう事件が――政治倫理がそうでなくても強く主張されておるとき、そして国会として政治倫理の確立のためにどうしようかというので政治倫理の審査会の設置が議論されておるときです。  そこで私は総理にぜひこれはお願いしておきたいのです。総理は自民党の総裁なんですから、総裁としての指導力を発揮していただいて、一つは、与野党間でどうも意見が一致しない、自民党が極めて消極的な態度をとっておられる、審査の対象に職務に関する犯罪で有罪判決を受けた議員を含める、これが一つ。二つ、制裁措置について議員辞職勧告を織り込む。三つ目、審査会の権限について証人喚問を可能とする。こういう方向で結論を早急に出して、一日でも早く政治倫理審査会を発足させる。その指導力を発揮していただきたいのですが、どうですか。
  85. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政治倫理審査会は、できるだけ各党の合意を得て、できるだけ早く発足させるように努力いたしたいと思います。その過程においてどういうような内容でこれを成立せしむるかということは、各党間におきまして今折衝し討論しておるところでございまして、それらができるだけ合意に達するようにお互いに努力していきたいと思います。
  86. 矢山有作

    ○矢山委員 問題点は大体もう三つに絞られてきておるわけですからね、自民党の方に問題があるわけですから。自民党総裁として今度の藏内参議院議員の詐欺事件の責任を感ずるなら十分な指導力を発揮していただきたいということを重ねて申し上げておきます。  次の質問に移りますが、これは在日韓国人の政治犯の金炳柱さんの問題についてであります。  これは外務大臣の方に伺いたいのですが、金さんは三重県の松阪市に在住する在日韓国人であります。韓国居留民団の松阪支部議長を長年務めてきた人でもあります。ところが、その金さんが、八三年十一月二十八日、ソウルの空港で国家安全企画部によって国家保安法違反及び間諜罪で逮捕されて、翌八四年五月に地裁で死刑判決を受け、ことし一月には大法院で死刑が確定しております。本人は公判開始以来一貫して無実を主張しておりまして、日本には奥さんも息子さんも日本国籍を持って生活しておいでになります。  死刑の不安に駆られている金さんの問題について二、三お尋ねいたしたいと思うわけでありますが、第一は、金さんは日本から面会に来た息子さんに、自分は安全企画部の人間二十人ぐらいから死ぬほどの拷問を受け、無理に自供書を書かされた、日本に帰ったらこの事実を訴えてほしいと告げておるようであります。そして、外務省は既に家族からの訴えも聞いておられると思うのでありますが、この件についてどうお考えになり、どういう措置をとっておられるか。もし措置をとっておいでであったらお話しをいただきたいと思います。
  87. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 後で具体的な点につきましては局長から答弁させますが、私も金さんの事件は承知をしておりますし、家族の皆さんからのお訴えを受けております。これは韓国の国内法の問題ですから我が国としてこれに対してとやかく言う筋合いはないわけですが、しかし人道的な立場から韓国政府に対しましても、こうした在日韓国人の問題については人道的立場から配慮していただきたいということはしばしば申し入れをいたして今日に至っておるわけであります。
  88. 矢山有作

    ○矢山委員 ぜひ力を尽くしてほしいと思います。  さらに続いて申し上げておきますが、金さんは韓国当局によって実は北のスパイとされておるわけであります。その内容はどういうことなのかというと、日本に住んでおる丁という朝鮮籍の老人がおります。この老人が北の工作員であって、七五年以降八三年九月まで毎年のように金さんと接触をして金さんを抱き込んで、金さんはその指図で韓国に渡って軍の情報を北に通報した、こういうことになっておるわけであります。ところが、工作員だと名指しをされた当の丁さんは八一年の十一月からは脳梗塞のために都内の病院に入院しておりました。そして八二年の一月には引き続いて山梨県の病院にリハビリのために入院しており、さらに八二年四月から六月までは日本医大病院に入院というように、脳障害とその後述症の治療のために入院を続けていた人であります。ここにそれを証明する日本の病院の診断書等もあるわけであります。この一事から見ましても、丁という朝鮮籍の人の工作で抱き込まれて云々というようなことは全く事実無根であります。どうも韓国では在日韓国人をめぐってこういうようなでっち上げによる政治犯の例が多いようでありますが、いずれにしろ金さんの場合に死刑が確定しておるわけでありまして、処刑されてしまえばもう取り返しのつかぬ話であります。  なお、金さんは既に六十一歳、拷問の後遺症や劣悪な獄中の取り扱い、死刑の不安などもあってと思われますが、体の痛みや難聴に苦しんでいるといいます。それにもかかわらず金さんは獄中でも二十四時間手錠をはめられたままだというのです。これは二重三重の拷問と言うほかありません。  外務省は、この人道、人権上無視できない実情について、特に先ほど言いましたように彼は在日韓国人でありますし、夫人も息子さんも日本国民でありますので、積極的に死刑執行の中止を求めるとか釈放を求めるとか、まあいろいろ外交上の問題もあると思いますが、全力を尽くしてほしいというふうに思うわけであります。重ねて外務大臣からひとつお願いしたいと思います。前に孫裕炯さんという方の事件がありましたね。あのときには参議院の我が党の矢田部議員が問題を提起いたしまして、あなたの方で積極的に死刑執行中止を申し入れようという答弁もいただいたという経緯もありますから、今回の場合もぜひ格段の御尽力をお願いしたい、こう思うわけであります。
  89. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 金さんの事件につきましては、裁判の内容についてはこれはもう日本としてとやかく言う筋合いのものではないわけでございますが、いずれにしても在日韓国人であったということ、それから金さんの家族が日本にもおられるし、あるいはまた友人の方やあるいは各方面から助命嘆願というのが随分出ております。それは韓国の政府にも取り次いでおるわけでありますが、日本政府としましても在日韓国人であったということから、いずれにしても人道的な配慮は何とかしてほしいということは私も両国の外相会談でも、金さんの事件だけじゃないのですが、死刑確定しているのは金さんですから、何とか人道的な配慮はひとつ加えてもらいたい、これは両国の友好関係を深める意味においても大事じゃないかということを言ってきておりますし、国内におけるそうした今矢山さんのおっしゃるような助命運動といいますかそういう動きは十分韓国政府も承知しておると思います。したがって、我々としましても、今後さらに人道的な面からの韓国側への配慮、要請は行っていきたい、こういうふうに思います。
  90. 矢山有作

    ○矢山委員 それでは、まず硫黄島の通信衛星の問題で少しお伺いしておきたいのです。  防衛庁は一体いつ通信衛星を利用さしてくれという申し込みをやったのですか。
  91. 山田勝久

    ○山田(勝)政府委員 昨年の八月十日に電電公社に対しましてお願いをいたしました。つまり申し込みをさしていただきました。
  92. 矢山有作

    ○矢山委員 電電公社はいつ申し込みを受けたのですか。
  93. 真藤恒

    ○真藤説明員 八月十日でございます。
  94. 矢山有作

    ○矢山委員 ところが申し込みを受け付けしたのは十日かもしれませんが、どうもあそこの硫黄島に通信衛星を利用していくということはもうとっくに話し合いができて、工事の準備にかかっておったんじゃないんですか。「工事実施に必要な準備要求発出等の諸作業は防衛庁からの申込みを受付けた後、実施に移すこととする。」留意事項がこういう形でぴしっとついた内部資料が出ておりますよ。その内部資料、五十九年七月ですか、これから見ると、防衛庁からの正式申し込みがあるはるか以前から防衛庁と電電公社の間でどうも話をして、内々に工事の準備を進めていっておったという形跡があるのですが、これはどうなんですか。
  95. 岩崎昇三

    ○岩崎説明員 お答え申し上げます。  防衛庁さんが五十九年度の予算に硫黄島に関する通信の費用を計上されているわけでございますけれども、私ども防衛庁さんから当然のこととしてそういうことができるかというお話は事前に承っているわけでございます。したがいまして、私どもとしては、硫黄島に通信回線を作成するにはどういう方法があるかということをいろいろ調査いたしまして、考え方としては海底ケーブルを敷くやり方と、それから衛星通信をやるやり方とあるわけでございますけれども、海底ケーブルを敷設するにはとても技術的な困難性もありますし、多大のお金がかかるということでございます。それで衛星通信を利用するということがございますということで、防衛庁さんと内々といいますか、お話をしていたことは事実でございます。  しかし、国会等でいろいろ問題が出ましたので、私どもとしては全部それを、作業を中止していた。お申し込みを受けてから実作業に入っていったということでございます。
  96. 矢山有作

    ○矢山委員 ここへ「工程検討会資料」というのがありまして「衛星通信地球局(離島)衛星通信方式工事」、副題で「硫黄島への公衆電気通信サービス用回線の設定について」ということで、「回線構成」「工程及び設計・実施段階」「工事予定線表」それから「硫黄島への公衆電気通信サービスの提供にあたっての検討事項」、こういうようなものがちゃんと出ていますね。そうすると、もう事前から防衛庁との話し合いを内々に進めて準備をしておったという事実は認めますね。
  97. 岩崎昇三

    ○岩崎説明員 先ほどもお答え申し上げましたように、(矢山委員「事実かどうか言ってください」と呼ぶ)こういう事項につきましては、常々どのお客様からも事前にお申し込みを受けて、私どもお答えしているという状況でございます。
  98. 矢山有作

    ○矢山委員 それだったらそのように国会の場ではきちっと正確に本当のことを説明せぬといかぬのじゃないですか。表現は悪いけれども、魚をねらう猫が台所へ入るときに、抜き足差し足で入ってきて、魚を取っつかまえたらぱっと飛んで出る、ああいったやり方ですよ、事前にごそごそやっておいて、申し込みを受けたら一気がせいに三省庁見解とかいうようなものを出して進めるというのは。こういうやり方、極めて不都合、不明朗だということを指摘をしておきます。  それから、私どもがこの説明を聞いた段階では、使用される衛星はCS2a、こうだったというふうに私ども審議の場で聞いております。ところが、この検討文書で見ると、CS2bになっていますな、これは。これもあなた最初からCS2bを使うのに、ここの説明の場ではCS2aだといってしゃべっているわけです。どうしてこんなうそをつくのですか。
  99. 岩崎昇三

    ○岩崎説明員 お答え申し上げます。  私どもは、最初からCS2bを利用するというふうに計画したというふうに理解しているのでございますが、ただaもbも同じものでございまして、軌道上のポジションが違うということでございます。
  100. 矢山有作

    ○矢山委員 あなた方の方じゃ、そういうふうにやっていたかもしれぬが、ここで我々が説明を受けたときには、CS2aなんだ。CS2aを使うのもCS2bを使うのも同じことだとおっしゃったけれども、とんでもない話だ。  CS2aは、G1というのとG2という二つのトランスポンダーがあるわけでしょう。それを最初CS2aを使うときには、これはトランスポンダーのG1の方は父島に使っておる。G2を自衛隊に予定しておったのじゃないですか。G2を自衛隊に。ところが、それをどういうぐあいか知らぬがやめて、CS2bにした。CS2bにしてG2のトランスポンダーを使用するのでしょう。CS2bは、まさに自衛隊専用になるわけでしょう、これは。
  101. 岩崎昇三

    ○岩崎説明員 お答えいたします。  衛星通信方式では諸外国全部そうでございますけれども、現用と予備という形で、軌道上予備というものでaとbという名をつけることが多うございますが、常に二つ打ち上げるのが通常でございます。それでアメリカなどでもそうでございますけれども、片っ方を完全な予備にしておくのはもったいないということで、aとbを同時に使用するような利用方法がまた図られているところでございます。  それで私どもといたしましても、aとb両方ございまして、両方を利用するということでございまして、その中の一部が今、防衛庁からのお申し込みの回線に充てるということでございまして、防衛庁のために片方の衛星が使われるということでは決してございません。
  102. 矢山有作

    ○矢山委員 否定されるけれども結果的にはそうなっているわけだ。最初CS2aのG1の方は父島で利用、G2の方を、これを自衛隊に予定しておった。ところが緊急連絡用にいろいろ希望が多いというので、CS2aのG2を自衛隊に使わせるという予定を変更して、CS2bのG2に変えたんじゃないですか。この経過を考えたら、あなたいろんなことをおっしゃるけれども、結論的にはCS2bが自衛隊専用になるということが明らかじゃありませんか。我々が技術に暗いと思って、そんないいかげんなごまかししないでくださいよ。  それから硫黄島の問題ですが、硫黄島の現況はどうかということで、私どもが承知しておるのはこういうことなんですが、違っておったら言ってください。  海上自衛隊百八十人ぐらい、航空自衛隊が百人ぐらい、在日米軍通信所の在日米軍の軍人が三十人ぐらい、滑走路は二千六百五十メートル。海上自衛隊は対潜哨戒機P2Jの対潜訓練をやっておる。航空自衛隊はF4の慣熟飛行訓練をやっておる。四月からは本格的な移動訓練態勢に入る。やがてF15なりP3Cがこの基地を使っていろいろと訓練をやるんじゃなかろうかということも私ども思っております。さらに三次元レーダーがあり、米軍のロランCの基地になっておる。そして、矢崎防衛局長答弁によれば、有事におけるシーレーン防衛にとって重要な地理的位置にあると認識しておる、こういうことでありますから、将来単なる訓練基地にとどまらないで、洋上防空、対潜哨戒の作戦基地になるということも考えられる、これが硫黄島の現状ですね。
  103. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  硫黄島は現在海上自衛隊それから航空自衛隊の訓練基地として整備をいたしておるわけでございまして、その規模につきましては、人数、今ちょっと手元に正確な数字がございませんが、海空百数十人ずつがいると思います。それで、現在はF4、P3Cの移動訓練をやっておりますし、それからF4の慣熟訓練に入っています。これから先、本格的に訓練基地としての使用を始めていくわけでございます。  それから、先般御質問がございまして、硫黄島の地理的位置が我が国の有事におけるシーレーン防衛上重要な地理的な位置にあるということを申し上げたことがございます。ただ、現在のところ私どもは硫黄島は訓練基地としての整備を考えておりまして、それ以上のことは今考えていないということを申し上げておきたいと思います。
  104. 矢山有作

    ○矢山委員 おおむね私が言ったような状態だと思います。  したがって、だれが聞いてもこの硫黄島というのはもう全島が軍事基地だ、こういうふうに考えて差し支えない。それを前提にしながら質疑を続けさせていただきます。  もう既に、さくら二号との中継基地になる千葉県の館山市の電電公社犬石無線中継所では、ことしの四月の運用を目指して昨年の十一月十九日から関連機材が運び込まれて工事が進んでおります。これはもう御承知のとおりまた、硫黄島でも送受信装置などの建設工事が進んでいるようであります。これは、昭和四十四年の、宇宙開発、利用は平和目的に限るとして、平和の目的とは非核、非軍事であるという国会決議を明らかに無視した宇宙の軍事利用への第一歩だと私ども考えますが、御所見を承りたいのです。これは大臣です。
  105. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 申しわけありません。若干、先ほど一カ所だけ間違いがございましたので訂正させていただきますが、海上自衛隊の移動訓練の機種は、P3CではなくてP2Jでございますので、訂正させていただきます。
  106. 加藤紘一

    加藤国務大臣 硫黄島に対する通信体制がまだ不備なものでございますので、私たち防衛庁としまして電電公社の方に一般の公衆電気通信役務の提供をお願いして、それが先般の国会で、国会決議との関係で矢山委員等を初め大変御議論があったということは承知いたしております。そこで、私たちも行政部内でこの問題を大分考えたのでございますけれども、今度の電電公社の通信のサービスを受けるということは、言うなれば、電電公社が一般にサービスをするときには不平等な扱いをしてはいけない、一般の人たちと同じ公平な扱いをしていただきたい、そういうような、いわゆるサービスにおける公平の観点から電電公社にお願いし、この結果になったものでございます。  そこで、もちろんこれは国会決議との関係は本質的には国会で有権的な解釈をなさることでございますけれども、行政部内だけで考えてみまして、いろいろ考えてみたのですけれども、先般この国会で私たちが申し上げましたような平和の目的に関する私たちの見解からいっても、それはお許しいただけることではないだろうかな、そんなふうに考えておる次第でございます。
  107. 矢山有作

    ○矢山委員 お許しいただけませんのでね。国会の決議についてどういうふうに解釈するかというのは、総理自身も、これは国会がお決めになることだと言われた。国会では、御存じのように、まだ論議をして結論が出ていませんので、あなたの言うことをそのまま言うわけにはいかぬ。これは後の論議に回します。  ところが、あなたが言っておられるような、この硫黄島の通信衛星はそんなものじゃないということをこれから少し指摘をしていきたいと思うのです。今回の自衛隊のさくら二号の利用が、防衛庁が言っているように、最初防衛庁は、家族の通信用だとかいわゆる隊員の福利厚生だとか、こういうようなことを言っていたんですよ。ところが、とんでもない話だ。そんなことよりも高度な軍事利用を考えておるんだということをこれからの質疑で少し指摘しますから、よく聞いておいてください。  まず、そこでお聞きしたいのは、このさくら二号を使って硫黄島との間でどのような種類の回線を全部で何本引こうとしておるのか、建設費用は全部で幾らで、この負担はどういうふうになるのか、保守管理はどうなるのか、これをちょっと説明してください。
  108. 山田勝久

    ○山田(勝)政府委員 五十九年度予算におきまして、私ども、二億一千八百万円の費用を御審議いただいたわけでございます。  私ども、今電電公社にお願いをいたしております内容は、専用回線が十四回線、一般加入回線が四回線でございます。そのほかに、公衆電話、いわゆる赤電話でございますけれども、この三台の設置を希望いたしておる次第でございます。  先ほどの御答弁にありましたように、海上自衛隊、航空自衛隊が、分遣隊がおりますけれども、今回の公衆電気通信サービスによります、私どもが受ける役務の内容あるいはその目的というものは、一般管理業務、航空機の管制業務、それから航空救難あるいは気象データの送受信を行うものといたしておる次第でございます。
  109. 矢山有作

    ○矢山委員 今言ったその使用の目的というのは専用回線ですね、十四本の。そういうことですか。
  110. 山田勝久

    ○山田(勝)政府委員 矢山先生のおっしゃるとおり、専用回線で今のような業務を行います。  それから、先ほど先生の御質疑にございましたような隊員のいろいろの通信というものにつきましては、赤電話もございますし、その他、利用できると思います。
  111. 矢山有作

    ○矢山委員 保守管理はどうなるのですか。
  112. 岩崎昇三

    ○岩崎説明員 大体、故障いたしますときは、パネルと申しましてある一定のブロックがございます。そのブロックの簡単な取りかえ等は私どもが自衛隊の方に委託いたしまして実施する、重大な故障が起きて、ちょっと変な言い方でございますが、通信に関しての非常に高度な知識を必要とするような障害が起きれば、本土から飛んでいきたいというふうに思っております。
  113. 矢山有作

    ○矢山委員 そうすると、一般的な保守管理は自衛隊に任せるわけですね。
  114. 岩崎昇三

    ○岩崎説明員 委託をしたいと思っております。
  115. 矢山有作

    ○矢山委員 これは今聞いていただいておってわかると思うのですが、たった二百七、八十人ですよ、硫黄島におるこの軍人は。前の質疑のときに、多少作業をやる民間人がおるというようなことを言っておった記憶もありますが、いずれにしても、これだけの人しかおらぬ硫黄島へ、公衆電話が三本、加入電話が四本、そして専用電話が十四本、合わせて二十一回線ある。家族との連絡用だとか簡単な隊務だとか福利厚生だとかいうことでこんな回線が要るのですか。私は、これは不思議でかなわぬ。しかも、一地球局当たり六回線でしょう。それで、硫黄島には三つつくるんだ、地球局を。三、六、十八回線なんですよ。十八回線のに、自衛隊は今言ったように二十一回線使うことになる。これはどういうことなんですか。
  116. 岩崎昇三

    ○岩崎説明員 回線の容量が、今先生おっしゃいましたように十八回線ございます。これは電話回線に換算したものでございまして、公衆電話を一般加入電話七回線はそのとおりでございますが、あとの十四回線は私ちょっと中身を覚えてないので申しわけございませんけれども、非常に幅の狭い、要するに電報を送るような、電信と言っておりますけれども、そういうような幅の狭いのもございまして、合わせますと全部で、おっしゃいましたように十四と七の二十一でございますが、電話回線に換算すれば十八よりももっと少ない数になるわけでございます。これは中身を細かく、専用線の方を申し上げないと御理解いただけないと思うのでございますけれども、そういう状況でございます。
  117. 矢山有作

    ○矢山委員 これは要するに、一本の回線を分割して使うわけでしょう、簡単に言うなら。そういうふうに私は専門家を呼んできて、難しいのに一生懸命聞いたんだ。分割して使うんだよね。そうすると、コンピューターなんかに接続して、符号なんかばっと送れるわけだ。そういうふうに考えると、要するにこれは一般的な通信に使うというのではなしに、これだけ通信容量があれば、いわば現在運用中の中央指揮所のスクリーンに図形や文字を瞬時に送る、それだけの情報量だって可能なんですよ、こなせるのです。だから、私は思うのですよ。十四本もの専用線を引いたのは、三次元レーダーや周辺海域に展開しておる自衛艦のもたらす軍事情報、これらをコンピューターで処理して中央指揮所に送る、こういうことを目的とした極めて純軍事的なものなんじゃないですか。これは防衛庁に聞いた方がいいわ。そうでしょう。
  118. 山田勝久

    ○山田(勝)政府委員 ただいま電電公社でお申し込みをし、工事をさせていただいております回線は、必要最小限のものを申し込んだわけでございまして、今のところ、その程度のことで十分だということで考えて申し込みをしたわけでございます。
  119. 矢山有作

    ○矢山委員 これが必要最小限かね。そうすると、これはこのCS、さくら二号を使うと、たしか八局つくれるはずだ。地球局が八局つくれる。今利用しておるのは三局だよ。あとまだ五局つくれるんだ、つくろうと思えば。だから、このさくら二号を自衛隊の専属にして使わせるということは、将来自衛隊がこの利用範囲を幾らでも拡大できる余地が残っている。このことをはっきり申し上げておきますよ。そうじゃないんですか。  そこで私は、なかなかあなた方、軍事目的のための利用なんだということを言わぬから、一つ指摘して伺いたいのですが、硫黄島から本土に通信を送る送信方法、これは従来から電電公社が使用しておったTDMA方式、つまり時分割多元接続方式、これを使わないで、公社としては今回初めてSSMA、これはスペクトラム拡散多元接続方式という、SSMA方式を用いておるということが我々の調査ではわかっておりますが、その事実を認めますか、認めませんか。これは簡単にイエスかノーで答えてください。
  120. 岩崎昇三

    ○岩崎説明員 硫黄島から本土に対する送信につきましては、SSMA方式を使用しております。
  121. 矢山有作

    ○矢山委員 そうだね。そこで、公社が今度初めて硫黄島に使うこのSSMA方式というのは、いつごろ、どこの国が、どういう目的で開発をして、主にどういう特徴を持った送信技術なのか、簡単に説明してほしい。
  122. 岩崎昇三

    ○岩崎説明員 先生の御質問の中で、いつごろ、どういう目的でということについて私ちょっと、申しわけございません、後ほど正確に御報告をさせていただきたいと思いますが、日本でつくったものではございませんで、私の記憶ではアメリカで相当以前に開発された変調方式であるというふうに理解しております。
  123. 矢山有作

    ○矢山委員 これはあなたの方が知らなければ、私の方から言いますわ。これは「周波数拡散方式の原理とその適用について」というのにちゃんと書いてあるのですがね。この方式は一九四〇年代ごろからアメリカで電波妨害対策、傍受防止を目的として軍用通信等の特殊な分野で開発をされたものであります。それから今日まで実用化されておるのはほとんど軍事用です。これが使われておるのはアメリカ軍とNATO軍、そこで採用されております。  特徴は何かというと、選択呼び出しが可能であること、多元接続の実現のための符号分割多重が可能であること、電力スペクトラム密度が低いので、信号秘匿が可能であること、傍受を回避できること、高分解能測距が可能なこと、妨害を受けないこと、まさにこれは軍事利用にぴったりなんだ、SSMA方式というのは。それを御存じないですか。
  124. 岩崎昇三

    ○岩崎説明員 先生がおっしゃいました特徴は、そのとおりあると思います。ただ、私どもがなぜそういうものを採用したかということにつきましては、本土から硫黄島に関しましては従来方式といいますか、衛星で私どもが普通使いますTDMAを使っておるわけでございます。それで、硫黄島から本土へ向けての分にだけSSMAを使った。これは経済的にその方が安くできるということで、そのようにしたわけでございます。
  125. 矢山有作

    ○矢山委員 そんないいかげんなことを言ってもらっちゃ困るので、SSMA方式というものがどんなものか、もう一遍言っておきます。  特徴は、今言ったような特徴がある。さらにもう一つつけ加えると、この特徴は、艦船や航空機に搭載できるように機材が比較的小型で済むということ、これも一つの特徴。そして、そのSSMA方式というのはどういうのかといったら、あなたよく知っているでしょうね、専門家だから。音や信号を電波に乗せるときに第一次変調をかけるでしょう。さらにパルスで第二次変調をかけるわけだ。そうするとどういうことになるかといったら、信号電力は通常の百倍から千倍に拡散される。そして、送信側のコンピューターのプログラムを事前に入手をしておかない限り、これは傍受はできません。雑音が聞こえるだけ。こういうような軍事的に高度な秘密性を持ったものだ、SSMA方式は。舌をかみそうだ。しかも。使われておるのは専ら軍事専用、こういうことなんです。このSSMA方式を採用した。  しかも御丁寧に、硫黄島から本土に向かうときにSSMA方式で、本土から硫黄島へは一般の利用されておるTDMA方式だと言う。これは奇妙きてれつな話で、今まで電電公社はこんなことをやったことがない、今度初めて硫黄島でやった。これははっきり、そうでしょう。
  126. 岩崎昇三

    ○岩崎説明員 お答え申し上げます。  SSMA方式を実用に供しましたのは、おっしゃいましたとおり今回が初めてでございます。先生、先ほど私、経済性ということで申し上げたわけでございますけれども、もう少し詳しくその点述べさせていただきたいのでございますが、(矢山委員「いや、わかっておる、後から開く」と呼ぶ)そうですか。
  127. 矢山有作

    ○矢山委員 そこで私の方から、経済性の問題が出たからそれに反論しておきます。経済性だとあなたはおっしゃる。なるほどSSMA方式を使えば、アンテナは三メートル ファイ。そうでしょう。ところがTDMAだったら十一・五メートルファイのアンテナが要るんだね。だから、小型だから安くつく、こう言っている。ところがこの場合、硫黄島の場合は、三メートルファイの地球局三つつくるんですよ、三つ。これが経済的なんですか。  それともう一つは、あなた方が電電公社の通信方式としてTDMAを採用したときに説明しておる理由は、なぜTDMAを採用したかということで、あなたのところから発行した本にちゃんと書いてある。それを見ると、TDMAは一中継器で五百回線の収容が可能だ、SSMAでは十分の一の五十回線しかやれない、しかもさくら二号、これは一機でも三百四十億も五十億もかかるのだ、しかも寿命は五年しかないのだ、だから経済的な立場からTDMAを採用したのだ、こう言っているじゃありませんか。そんないいかげんなことを言っちゃいかぬですよ。
  128. 岩崎昇三

    ○岩崎説明員 お答え申し上げます。  「さくら」、要するにCSでございますけれども、CS2bにはマイクロ波のトランスポンダーと準ミリ波のトランスポンダーとございまして、電電公社の使用できるのは準ミリ波四台、それからマイクロ波二台でございます。先生おっしゃいましたように、そのうちのマイクロ波の一台を硫黄島に使うということでございます。したがいまして、CS2全体が自衛隊のためということではまずないわけであります。  経済性について申し上げますと、十一メーターのアンテナと申しますのは非常に、指向性ということでございますけれども、例えば光を鏡に当てて向こうに真っすぐ行くというようなそういうことでございますが、その度合いが非常に厳しい。厳しいということがまた技術的に要求されているわけですが、そのためにアンテナ全体を非常に細かい精度で常々コントロールしているという状況がございます。そのようなアンテナは、硫黄島につけますと、硫黄島は非常に風も強いところであるということで、アンテナ自身が故障してしまうということも考えられます。また、そのために特殊なアンテナをつけるということは、とてもそれだけのための回線ではちょっと開発することも難しいということでございますので、何とか小さなアンテナで、コントロールもしなくて、大体衛星の方向に向けておくということだけで通信のできるやり方はないかということになりますと、三メーターぐらいのアンテナを使うというのが限度でございます。  そのようにしますと、今度はどういうことが起きるかと申しますと、先生御承知のように、赤道上三万六千キロメーターのところに静止衛星というのは逐次配置されるわけでございますが、隣の衛星に悪い電波を、悪い電波といいますか、その隣の衛星から見れば妨害電波を与えてしまうということになりますので、その電波のレベルを非常に極端に下げる必要があるということで、先生がおっしゃったように、百倍なり、あるいは今回の場合に百倍になっているか千倍になっているかちょっと私はわかりませんが、少なくとも百倍程度のものに薄めることはできるわけでございまして、そういう薄めることによって隣の衛星に対する妨害を抑えた。しかも、硫黄島では小さなアンテナを使うことでそれが可能になった。ところが、防衛庁さんの方の御要望は、チャンネル数が一つのアンテナでは賄えませんので、アンテナを三基置いたということでございます。
  129. 矢山有作

    ○矢山委員 防衛庁さんの要求があるから、それはあなたのところはやったんだ。防衛庁の方の要求は、純軍事的な利用をこれからやらなきゃならぬから、それで要求していったわけでしょう。  それで、電波障害の問題ですけれども、あなたのところから出しておるこの技術関係の、これは「施設」という本だね、これを見るとちゃんと、TDMA方式でも電波障害の問題はCCIR勧告の低サイドローブ化を実現しておりますと書いておるじゃないですか。何を言っているんですか。電波障害も解決するといって書いてあるじゃないの。御丁寧に、ここにちゃんとこういうふうな説明書までついておるわ。それから、台風の話をあなた出されましたね。台風の話を出されたけれども、なるほど父島の場合は十一・五メートルファイのアンテナを使用しておる。ところが、この台風に対して、耐風速として一秒九十メートルを想定すると言っておりますね。あなた、硫黄島で秒速九十メートル以上の風が吹いたことがあるのですか、今まで。
  130. 岩崎昇三

    ○岩崎説明員 先生の御指摘になりました「施設」のものは、そのとおり間違いございません。十一メーターファイのアンテナを使えば、TDMA、その余分のエネルギーが隣の衛星に行かないということで可能なわけでございます。三メーター、私先ほどの御説明が不十分だったことをおわびしますが、三メーターにしますと、先ほどの指向性というのが非常にブロードになってしまいまして、横の方にもたくさんエネルギーが行くわけでございます。そのエネルギーを低めるために先ほどのように、今度は相対的な意味で、エネルギーが横に行くわけでございますから、絶対値をずっと下げるということによってその横の衛星に到達するエネルギーを下げたということでございますので、御理解いただきたいと思います。
  131. 矢山有作

    ○矢山委員 あなたと技術論議をやりよると、こっちの方がちょっとごまかされちゃうからもうこのくらいにしておきますが、いずれにしても、あなたのところから出てきた文書によると、三メートルファイのアンテナでも十分低サイドローブ化を実現して使えるんだとちゃんと書いてあるんだよ。しかも、硫黄島に持っていっているアンテナは、最初はパラボラアンテナだ、パラボラアンテナだといって我々に説明しているんだ、我が党から行った調査団にも。ところが、実際は楕円形のオフセットパラボラ三メートルファイを使っているんでしょう。これは物すごく指向性がいいんだよ。いいかげんなことを言っちゃだめですよ。僕だって幾ら素人だって、質問しようと思えばちっとは勉強してくるんだから。いいかげんなことをおっしゃっちゃいけませんよ。父島に、あなた九十メートルの耐風速のある十一・五をつくったというのでしょう。硫黄島でそれ以上の大風が吹いたことがあるのですか、そんな。いいかげんなことを言っちゃいけませんよ。今までの統計の中ではないのだ。(発言する者あり)だれかあると言っておるけれども、これはあると言っている方が勉強してないんだ。ないんですよ。  そこで、最後にもう一つ聞いておきたいのです。  SSMA方式の採用が軍事目的から採用された。その理由はなぜかというと、先ほども言ったように、SSMA方式が硫黄島から本土へ向けてやる場合にだけ使われておるということなんです。逆の場合は従来の方式でいっておる。こんなやり方をやったことは、電電公社は今までないのですよ。つまり、これは防衛庁の特注なんだ、特注。特別注文なんだ。特別注文を、電電公社がやったことのない、とったことのない方式の特別注文を防衛庁がやったというのは、防衛庁が腹に一物なしにやるものですか。軍事利用、将来の全面的な軍事利用を考えておるからやっているんですよ。  そこで、もう一つ聞いておきたいのですが、硫黄島からの犬石の無線中継所を経由して送られてくる回線を、今回に限ってわざわざ陸上自衛隊の基地のある立川の中継所に直結しておりますね。何でこんなことをするのですか。今までは、離島通信の中継所は大手町の中継所へ落としておったんです。何で今度に限って立川に持っていくのですか。
  132. 岩崎昇三

    ○岩崎説明員 硫黄島の回線を収容いたします交換機でございますが、これは現在立川に設置するということで工事をしております。これは電電公社の立川の局で、電電公社のネットワークに接続するわけでございます。それで、これは場所は、極端なことを言えばどこに置いてもよかったわけでございます。例えば犬石なら犬石に置いてもよかったし、大手町に置いてもよかったわけでございますけれども、その設置する場所をと考えまして、立川にたまさかいろいろ空き地もあるというようなことで可搬型の、これはよく日本の中でどこへ行っても、田舎に行くとごらんいただけると思いますが、可搬型の箱型の局を設置したということでございます。
  133. 矢山有作

    ○矢山委員 これもへ理屈なんです。離島の通信は大手町の中継所へ落としておる。そこまではその伝送路を使って、それから持っていったらいい。それをわざわざ立川へ持っていく。これは伝送の質を落とさぬためじゃないんですか。そうでしょうが。あなた、頭ひねりよるけれども、専門家でおってそんなこともわからないの。わかりませんか。あなたは正直でないのですか。総裁はどうですか、これは。立川に持っていったのは、アナログやディジタルの接続を何遍も何遍も繰り返して送りよると質が落ちるというのは知っているでしょう。だから、なるべくその接続の繰り返しを避けた方がいいわけだ。だから、大手町へおろして立川へまた引っ張っていくよりも、立川に直に持っていく方がいいというのでやったのでしょう。何言っているんですか。
  134. 岩崎昇三

    ○岩崎説明員 回線の流れで申しますと、先生おっしゃいました犬石の局に硫黄島から参ります。犬石の局から東京の中野という局を通りまして立川に行っているわけでございますが、中野というのは駅のそばに非常に大きな黒い茶色いビルディングがございまして、非常に大きな局でございます。したがいまして、その局で落としてもよかったわけでございますけれども、先ほどの可搬型と申しますか、そういう交換機を設置する場所がああいう場所では周りが全部それにふさわしくないので、立川の川は局内にスペースがあるということでそこまで持っていったということでございます。
  135. 矢山有作

    ○矢山委員 あなた、そんなすぐばれるようないいかげんなことを言いなさんな。私のところの調査団が犬石へ行ったのですよ。それでいろいろ聞いたときにあなた言っているじゃないの。あなたが言ったのか、あなたについていったのが言っているのか知らぬが、落とすところはどこでもよかったんだ。ところが、自衛隊基地のある立川に持っていったのはこれはまずかったかな、配慮が足りなかったかなと言っているじゃないの。あなた、そんなおかしなことを言っておいて、何で今さらスペースがどうの、あれがどうのなんて言うのですか。
  136. 岩崎昇三

    ○岩崎説明員 犬石に来られました調査団の方を御説明申し上げましたのは私でございます。ただ、先生の今のおっしゃいましたことは、私から見ますとちょっと誤解がおありになるのではないかと思いますので、訂正をさせていただきます。  どう申し上げたかと申しますと、今申し上げたように局を設置するのはどこでもよかったんだ、このときたしか、極端なことを言って九州でも北海道でもよかったんだというふうに申し上げたつもりでございますが、それで先生の方からなぜ立川だというような御質問を犬石でも受けました。したがいまして、確かに立川というのはいろいろな意味でそういう物議を醸す場所であったかなということであれば、私どもの計画が、立川に置かなくてほかにどこに置いてもよろしいわけでございますから、もっと何でもない場所といいますか、ほかの場所に置けばよかったなということで申し上げたわけでございます。
  137. 矢山有作

    ○矢山委員 それ、本心が出たじゃありませんか。立川に持っていったらいろいろとこれは言われるな、こう思っているからあなたは今のようなことを言ったのでしょう。物議を醸すかもしれぬという予感があなたの頭の中に浮かんだというのは、物議を醸すような問題を含んでおるからでしょう。  整理して言っておきますと、立川に今回持っていったのは、アナログやディジタルの接続を繰り返さないでコンピューターに直結をでき、しかも高品質のままで情報を送るために、ディジタル通信のまま立川に持っていきたい、そのことじゃないのですか。そこでSSMA方式という高度の秘匿性を持ち、しかも高品質のまま立川に送る通信ということでやっているわけでしょう。そんないいかげんなことを言っちゃいかぬですよ。要するにこのねらいは何かと言ったら、硫黄島周辺で集めた情報、特にソ連潜水艦に関する高度の軍事情報などをコンピューター処理をして本土に送る、それを目的としたものと思わざるを得ぬのですよ。そうでしょう、防衛庁長官。そうでしょうが。正直に言ったらいいじゃないですか。
  138. 山田勝久

    ○山田(勝)政府委員 先ほど私、先生にお答えいたしましたように、この回線は、一般管理業務、航空機の管制業務、航空救難、気象データという一般的なものの情報を受信、送信するものでございます。  それから、ただいま立川の話が出ておりますが、私どもといたしましては、この回線の結果を厚木、入間、所沢、府中、市谷、この五つのところにつないでくださいということを電電公社にお願いをいたしているわけでございまして、立川というものが私どもの要求として出てまいった選択肢ではございませんので、一応御説明さしていただきます。
  139. 矢山有作

    ○矢山委員 あなた方の方で立川に要求したんじゃないって、そうなんですか。
  140. 山田勝久

    ○山田(勝)政府委員 先ほど岩崎局長からもお答えがございましたように、電電公社の技術的、事務的な観点から、立川というものが選択されたように理解をいたしております。
  141. 矢山有作

    ○矢山委員 防衛庁としては、自分のところで立川へと言ったんじゃないというのですから、それはそうじゃないという裏づけまで実は私は持っておりませんので、その問題は水かけ論になるからそれでやめておきます。ところが、立川というのはどういうところか御存じでしょう。自衛隊が、やがて日本が打ち上げる地球資源衛星を使って情報を集めるために、当面アメリカの地球観測衛星ランドサットの画像情報をコンピューターで解析するという作業を始めますね、防衛庁が。そういう画像情報までランドサットからとって解析しようという、これはもう明らかに偵察ですよ。そういう立川へわざわざ硫黄島の通信を直接持っていく、そこに私どもは大きな疑問を持っているわけです。しかも硫黄島は、帰りたがっている島民を帰さぬというのでしょう。四十五万円の見舞い金ではじき出そうとしている。それで硫黄島におるのは、在日米軍の軍人が少し、三十人ばかりですかね、日本の航空自衛隊あるいは海上自衛隊でしょう。そういう本格的な軍事基地ですよ。ほかにはだれもおりゃせぬ。そこから送られてくる通信が、一般の通信だ、家族の交信用だ、福利厚生だ、そんなことにはならぬ。これは純然たる軍事情報がここから送られてくるということはわかり切った話です。  そこで私は、このような内実を持ったこの硫黄島の通信にさくら二号を使うという、これは国会決議上問題があるというのですよ。平和目的というのは、あのときあなたはちゃんと御存じでしょう。平和の目的とは非核、非軍事であるということを確認されておるのですよ。今言ったような硫黄島の現状、そしてまた、特別なSSMA方式というような通信方式、軍事以外には今まで使われたことのないようなものを、異例のやり方として今度電電公社が硫黄島にだけ使うという。そして、しかも、日本の自衛隊の基地である立川、そこに落としていく、こういうことを考えたら、明らかにこれは軍事利用じゃありませんか。私はこの工事はやめてもらいたい。国会決議の結論が出てないのです。やめてもらいたい。どうでしょう。
  142. 加藤紘一

    加藤国務大臣 自衛隊が現在使用しております通信システムといいますかコミュニケーションの手段は、いろいろなことがございますけれども、まだ相当の部分が電電公社さんの一般回線を一般電気通信役務の提供を受けてやっている現状でございます。そういう一環といたしまして、硫黄島とそれから本土、我々防衛庁、自衛隊との間をつなぐ一般公衆通信サービスとしていろいろ技術的に優秀なものをお願いしたいと私たち防衛庁が思うのは、ごく当然のことと御理解いただきたいと思います。それで、その中にはもちろん家族の福祉の問題とかもございますし、それからちゃんとした隊の仕事としてのそういう仕事もあることも事実だと思います。  そこで、そうした場合に電電公社さんが、先ほど御答弁ありましたように、海底ケーブルをお使いになるか、それからいわゆる衛星をお使いになるか、いろいろお考えになったけれども、衛星をお使いくださったということは、やはり私たちとしては、国会決議の問題というよりも、繰り返しになりますが、電電公社さんが一般国民、一般企業と同じようにすべての人を平等に扱わなければならぬというときに、私たち自衛隊、防衛庁も平等に扱っていただいたというふうに私たちは理解していただければというふうに思う次第でございます。  そこで、もう一つ、国会決議とそれから通信衛星の利用の問題でございますけれども、これは先般御議論ありましたフリートサット衛星と一般の衛星との問題の国会決議との観点は、この硫黄島の問題とはまた別個にあるのかと思いますけれども、その点につきましては、先ほど私たちが統一見解を申し上げたとおりでございます。
  143. 矢山有作

    ○矢山委員 自衛隊が一般の隊務の通信だとか家族の利用だとか、そういったものに電電公社の公衆電話回線を使うことを私はいいとも悪いとも、そんなことを言っているんじゃないですよ。硫黄島にさくら二号を使って通信回線を確保した、そのことの中身を私は指摘しながら、これはまさに高度の軍事利用じゃないかということを言っているんですよ。かみ合わないのですよ。一般的な利用で、自衛隊だってそれは家族の交信も要るだろうし、一般平常の隊務を連絡することもあるでしょう。この世の中で電話回線を全部使っちゃいかぬなんて、そんなばかなことは言いませんよ。ところが、硫黄島でさくら二号aを利用するのは、まさに純軍事利用じゃないか。だから、方式にしてもSSMA方式という純軍事的な利用目的に開発されてきて、今まで軍事利用以外には使われていないものをわざわざ使う。しかも、使う場合に、硫黄島から本土に向けて送信する場合だけに使う。これをもって純軍事利用だと言わずして何ですか、これは。それを私は言っているのですよ。  そこで、国会決議との関連が出ましたから、私はもう一つ申し上げておきます。  国会決議がある。それは、宇宙の利用は平和目的に限る。平和目的とは、非核、非軍事である。これがあるのに、これを無視してさくら二号が硫黄島の通信に使われる。これを皮切りにしてこれから本格的に宇宙を軍事利用するという道をたどっていくんじゃないのですか。私はそれを恐れるのです。  いいですか。今行われようとしておるのは、この間公明党の矢野書記長が御指摘になったように、海上自衛隊の護衛艦五隻に米軍の通信衛星を利用して受信装置をつける、これは予算化されておる。自衛隊の方では、受信装置だけでは困る、送信装置も要る。やがて受信、送信両装置をつけようという、そういう計画が進んでおるのでしょう。アメリカは今民間通信衛星のリーサットの利用に切りかえておりますわな。自衛隊もやはりそれに切りかえて双方向通信ができるようにしよう、こういう考え方が一つあるんじゃないですか。  それから、もう一つは、先ほど言いましたアメリカの地球観測衛星のランドサットの画像情報の解析を始めた。これは、やかで自衛隊が自前の偵察衛星を持って情報収集解析業務をやる、そのノーハウを蓄積しようという考え方で手始めにまずやるわけでしょう。こういったくらみが進んでおる。  さらに、自衛隊の中では、六十三年度に打ち上げを予定しておる大型実用通信衛星のCS3、つまりさくら三号、これに自衛隊専用の衛星通信回線を確保しようとしているんじゃありませんか。さらに、六十五年度打ち上げ予定の地球資源探査衛星の利用を考えておるんじゃありませんか。これはもう既にたびたびマスコミにのせられておる問題です。さらに、偵察衛星の保有を考えておるということも、この動きも出ておるんじゃありませんか。先般の総理の国会答弁を聞いておりましても、偵察衛星利用への道が徐々に開かれるような方向になるんじゃないのですか。特に、自民党の宇宙開発特別委員会、これは八二年六月に政府に提言をしております、偵察衛星の利用、この問題で。さらに、中西特命相の私的な危機管理問題懇談会、この報告の中にも同じようなことを言っております。さらに、総理の私的諮問機関だと言われる平和問題懇談会の報告書の中にも偵察衛星の利用に触れております。こういうように、国会決議を無視して硫黄島で衛星を利用した通信を始めるということは、こういう方向に今流れつつあるのでしょう。このままで行ったら、自衛隊は宇宙利用は何でもできるということになりますよ。  例えば、この宇宙利用の問題についての今までの変遷をたどってみましょうか。昭和四十四年、宇宙開発事業団法の審議の際の発言を参考のために、これはなかなかいい発言、質疑でありますから読み上げます。  「軍事目的の衛星がふえてきた場合、現在の日本の防衛に対する考え方も将来変わる可能性が出てくるのじゃないか。そういった場合、平和に限ると言っておっても、それを軍事目的に変えなければならぬような、もし環境になった場合、それでもなおかつ平和利用とされるか。それは、宇宙事業団はそれでいって、防衛庁としては別に軍事面のほうを考えていく、そういうふうになるのか。あくまで、衛星、ロケット、それに関しても、もう宇宙事業団が平和ということで、はっきり線を引いて、いかなる衛星も、たとえば防衛庁でも飛ばさせない、そこまで力があるのかどうか。」という質疑が行われております。それに対して、時の木内四郎国務大臣答弁。「「平和の目的に限り、」という字句を第一条にお入れになりまして、さらに衆議院の本会議の決議として、宇宙の開発利用に関する基本方針という決議によりまして、これはあくまで平和目的に限りという合意ができておりますので、それの存しておる限りにおいては、いま御心配のような問題は私は起こってこないと、かように考えております。」と言い、木内国務大臣は、「私どもは、これを防衛庁に使わせるということは全然考えておりません。」と、これが最初の出だしであります。  それからどうなってきたか。昭和五十八年の行革特別委員会審議の際に出てきた新解釈であります。さくら二号を使うのは、公衆電気通信法によって、防衛庁長官が言っていることですね、公平、平等に役務を提供するという義務があるんだから、したがって、さくら二号を利用して自衛隊が通信をやっても、これは平和目的に反することはありませんと、こう変わってきたわけだ。  今度どう変わったか。驚くなかれ、これはもうびっくりする話だ。今度政府統一見解なるものができた。これは一体何を言っているのですか。要点を言うと、自衛隊が衛星を直接、殺傷力、破壊力として利用しなければ、衛星の利用は自衛隊にも許されるということでしょう。また、利用が一般化しておる段階であるから、自衛隊が衛星を利用しても平和目的に反することはないと、こういうことでしょう。そこまで発展してきた。  ところが、もう一つ困ったことには、先日のこの委員会論議の場で総理が言っておることがあるでしょう。質問に答えて、自衛隊法では自衛隊が平和を守ることを明記しておる、平和目的であることが確立されておるんだ、だから自衛隊が平和を守るという目的であればこの利用をしたっていいんじゃなかろうか、そういうことをこれから検討しましょうと、こう言っているんだ。なるほど、こうなると、自衛隊法には確かに平和と安全を守る自衛衛の任務があるが、平和を守る自衛隊が平和を守るために宇宙を利用することは構わないんだ、こういうことになっていくと、衛星を直接、破壊力、殺傷力として使うも何もそんなものは吹っ飛んでしまって、自衛隊が平和を守るという目的で宇宙を何に使っても構わぬのだ、こういうことになる。こういうように歯どめのかからぬようになっているのですよ。  たった一度国会の決議を無視したことがついに突破口を開いて、歯どめがかからなくなっておる。宇宙の全面的な軍事利用が容認される方向になっておるのですよ。だから、私は、この国会決議を守らなきゃならぬのだ。この国会決議は最終的にどこが判断するのだ。国会の決議だから国会が解釈をしてそれに行政府は従わなければいかぬ。ところが、行政府の方は国会決議なんかほったらかしにして、自分たちの勝手な解釈でこれをどんどんどんどん進めていっておる。(発言する者あり)今やじが出ておるけれども、こういうことで、その国会決議というのは与野党の完全一致でやったのでしょう。その国会決議が行政府の一片の措置によって突き破られて何の役にも立たぬとするなら、国会の論議というものを国民はどう見るのですか。総理国民は国会の論議を信頼することができるのですか。国会の存在価値があるのですか。国会で何を論議しようと、どんな答弁が出ておろうと、そんなものは何の役にも立たぬ。国会でどんな決議をしておろうとそんなことは何の役にも立たぬ。国民は一体国会を何と見るのですか。国会は存在しても存在しなくても同じことだと思う、国会なんか信頼もくそもできないと思う、そうなるんじゃありませんか。だから、私は、国会決議との関係を明確にしてもらうまでは、この硫黄島の工事は中止する、護衛艦の受信装置は予算削除して、やらない、これは絶対に守ってもらいたい。総理、どうですか。
  144. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国会決議の有権的解釈は国会が行うべきものであると思います。国会は各党で構成されておるので、各党の考えがどういうふうになるか、各党でいろいろ相談もし、あるいは見解を述べ合い、そして国会法の手続等によってそれは決まっていくものであると思います。各党の中には、自民党もあれば社会党もあれば公明党もあれば民社党もあれば共産党もある。みんな各党おのおのの考え方をお持ちであると思います。  それから、この国会決議に関する解釈につきまして、国会が有権的におやりになるのですけれども政府は国会決議に対しましてこういうふうに考えております、こういうふうに解釈しております、これは政府解釈であります。政府の責任において、行政権の名において執行もし政策も運営しているわけであります。その政府解釈を先般申し上げた次第なのでありまして、大体これは一貫してその汎用性を持ってきているという場合には、それが直接、殺傷とか破壊に使われないというような場合には、それは平和目的というものを害しないものである、そういう解釈でずっとまとまってきておるということを申し上げた次第なのでございます。
  145. 矢山有作

    ○矢山委員 いずれにしても、政府は国会の決議を政府なりに勝手に解釈してやっておられる、事を進めておられる。ところが、社会党の方は、あるいは国会の方では、この決議に対してまだ論議も十分尽くされておらぬ。結論が出てないのですよ。結論が出てないのに、それをそのままほっぽらかしにしておいて、一方で行政府解釈だけで独断専行していいのですか。これが問題なんですよ。だから、私はこのけじめをつけてくれと言うのですよ。物事にはけじめが要るのです。けじめがなしに、国会で何をやっておろうと、そんなものはもうほっぽらかしにして事が進んでいくところに、国会に対する信頼性が問題になってくる、国会の存在価値が問題になってくるのですよ。けじめをつけるべきです。
  146. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは国会においてけじめをつけていただくのがしかるべきで、予算委員会でこの問題は今論議されておりますから、予算委員会において委員長以下理事あるいは委員皆様方の間でいろいろそれをお取り扱いなさるべきものであると思います。
  147. 矢山有作

    ○矢山委員 じゃ、ひとつ決着をつけてください。決着をつけてもらいたい。今決着つけるべきだと言うのだから、決着をつけてもらわないとこれは進まない。
  148. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今すぐにとは私は申し上げないので、予算委員会で御審議でございますから、予算委員会におきましてしかるべきと、そういうふうに申し上げておるわけなのであります。
  149. 矢山有作

    ○矢山委員 じゃ、この委員会なり国会で決着をつけにゃいかぬ。これはそこで決着をつけてもらわないと。休憩してもらって、決着つけてもらわにゃいかぬ。
  150. 天野光晴

    天野委員長 矢山さんの御質問の内容については理事会でお預かりいたしまして……。
  151. 矢山有作

    ○矢山委員 待ってください。総理は予算委員会なり国会で解決しろと言ったんだから、あなたに預けられたのですよ。(発言する者あり)総理の今の発言によると、予算委員会なり国会で結論を出すべき問題で、あなたがげたを預けられたのですよ。そうしたら、あなたなぜけじめをつけると言えないのよ。
  152. 天野光晴

    天野委員長 では、預かって帰ります。それで理事会で相談をいたします。
  153. 矢山有作

    ○矢山委員 それでは、こういうことです。(発言する者あり)
  154. 天野光晴

    天野委員長 いや、質疑は続行します。
  155. 矢山有作

    ○矢山委員 よろしいか。この硫黄島の通信衛星ができたら、新年度から運用に入るわけですからね。この運用の予算は予算化されておるのですよ護衛艦に対する米軍の通信衛星を使ってのこの予算もちゃんと組まれておるのですよ。したがって、これらをあわせて削除するのかせぬのかということですよ。
  156. 天野光晴

    天野委員長 いずれにしろ、衆議院の予算委員会開会中にこの始末は委員会でつけますから、理事会でつけますから、お預かりいたします。  どうぞ矢山委員には質問を続行してください。――続行してください。
  157. 矢山有作

    ○矢山委員 それじゃ、責任を持って、あなたは総理からわざわざげたを預けられたのだから、この国会決議のけじめをつけてくださいよ。よろしいか。そして、けじめをつけるまでは、公明党からも指摘された護衛艦の受信装置、この予算も削除しなければいけませんよ、いいという結論が出ぬのなら。それから硫黄島の通信衛星の運用費、これも同じですよ。それを腹へ入れてけじめをつけてくださいよ、国会決議。
  158. 天野光晴

    天野委員長 矢山委員のただいま総理と話し合いのあった問題につきましては、私、引き受けまして、これは理事会で諮りまして、委員会開会中に決着をつけます。
  159. 矢山有作

    ○矢山委員 それでは、理事会で預かっていただいて決着をつけるということでありますから、それを期待しながら、もう少し時間がありますので、次の質問に移っておきたいと思います。  実は、きょうお聞きしたいのは、日米共同作戦計画のことなんです。  先般の、といいますのは昨年の六月、ハワイの日米安保事務レベル協議で、ケリー国防次官補代理の方が特にインターオペラビリティーの問題について触れております。有事の際の日米共同作戦を有効に遂行していくためにインターオペラビリティーはぜひ必要だ、こういうふうに言っておるわけでありますが、このインターオペラビリティーというのは一体どういう意味なんでしょうか。
  160. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  このインターオペラビリティーという用語は、日本語で言いますと、相互運用性というように通常用いられているわけでございます。一般的な理解といたしましては、同盟国間におきまして、戦術、装備、後方支援面などに関しまして共通性あるいは両用性を確保することによりまして、共同対処の能力の向上を図るということを意味しているものと考えております。
  161. 矢山有作

    ○矢山委員 次に、このインターオペラビリティーを可能にするためには、どういうことをやらなきゃならぬのですか。
  162. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 今申し上げましたように、戦術、装備、後方支援面等で共通性あるいは両用性を向上させるというようなことが骨格でございますが、具体的にどういうふうな措置をとっていくべきかということは、私どもとしても今後の研究課題でございまして、現在、御承知のようにガイドラインに基づきますいろいろな研究をやっておるわけでございますけれども、その研究の中で、米側と日本側とでいろいろなケースを詰めていって、これからその検討を進めていこうじゃないかということでやっておるところでございまして、まだ具体的にこれはこう、これはこうというふうに申し上げられるものはございません。(発言する者あり)
  163. 矢山有作

    ○矢山委員 今ここで不規則発言が出よったけれども、インターオペラビリティーをやるためには標準化をやらなきゃいけないんじゃないですか。あなた方の、私は中身に入って聞こうと思っていろいろのことを言っているのだけれども、インターオペラビリティーのためには標準化が必要なんじゃないですか。装備その他の面もありましょうし、作戦逆用の面もありましょうし、そういった標準化が必要なんじゃないですか。
  164. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 おっしゃいますように、例えば装備などの面でいいますと、共通の装備を持っていれば非常に作戦運用の面で便利であるというふうな問題ももちろんございます。それから、あるいは通信機能なんかの場合で申しますと、通信系の中で相互の連接をよくするための別途の工夫がないかとか、やり方はいろいろあるのではないかなというふうに思っておりまして……(矢山委員「作戦運用の面でもいきますね」と呼ぶ)作戦運用の面でも、考え方でございますとか、作戦の技術の面でどういうふうな考え方をとるのがいいかとか、そういうふうにブレークダウンしていって詰めていく必要があるというふうに考えております。
  165. 矢山有作

    ○矢山委員 それじゃ、インターオペラビリティーのためには標準化が必要だということも出たのだが、標準化というのは具体的に言うと一体どういうことなんですか。
  166. 山田勝久

    ○山田(勝)政府委員 いろいろな装備品につきましては、普通の産業用と同じように、互換性でございますとか、一つの、一定のJISのようなものでございますとか、そういったように標準というものをいろいろの品物に共通してつくって、互換性ができるようなものでございます。
  167. 矢山有作

    ○矢山委員 部分的にはお答えいただきましたが、こういう定義がされておるのじゃないですか。アメリカの統合参謀本部の「国防総省軍事関連用語辞典」、こういうのがあるのですが、これは標準化ということについてこういう定義をしていますな。「研究、開発、生産資源を最も有効に利用するため、各同盟国が、それぞれの軍の間で、密接かつ実際的な協力関係を樹立し、更に、広範な実行可能な基礎の上に、次の事項を採用することに合意するプロセス。a、共通の(または一致した)作戦上、管理上及び兵站上の実施要領。b、共通の(または一致した)技術上の実施要領及び技術上の基準。c、共通の(一致した、または交換可能な)軍需品、構成部分、兵器、または器材。d、対応する組織上の適合性を伴う、共通の(または一致した)戦術原則。」これが標準化の定義だと言っていいのじゃないかと私は思う。  今簡単に御説明していただいたわけでありますが、そういうふうに私は思っておるわけであります。いずれにしても、インターオペラビリティーのためには標準化をある程度やっていかなきゃそれはできない。相互運用性を確保するのですから、それはできない。ところが、その標準化というものを、日米の間でどういうふうに進めていっておりますか。それとも全然やってないのかどうか、ちょっと聞いておきたいのです。
  168. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  先ほども申し上げましたように、この問題は、ガイドラインに基づきますいろいろな研究事項がございまして、その一環としての位置づけができるわけでございます。そういう意味で、このインターオペラビリティーということでどういう問題があるか、そういうことは、在日米軍と日本側は統合幕僚会議の事務局、この間で研究を始めている段階でございますけれども、まだそれほど進展は見ておりません。
  169. 矢山有作

    ○矢山委員 それで、標準化について話し合いをやって、一応合意すれば、それは協定につくられていくわけですね。
  170. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 このガイドラインに基づきます研究と申しますのは、あくまでも研究でございますから、具体的な、今先生がおっしゃいますような協定というようなものになる性格のものではございません。あくまでもそういった、どんな問題があるか、どういうふうな処理の仕方があるかということをお互いに知恵を出し合って研究しておこう、こういう性格のものでございます。
  171. 矢山有作

    ○矢山委員 ところが、あなたはそうおっしゃるけれども、この前ガイドラインがつくられたときに防衛庁の方が出した国会想定問答集というのがあるでしょう。私は読んでみたのですが、国会想定問答集、これの中に、多少話をして両方で合意して決まっておるものもあると言っているのですがね、想定問答で。(「出してもらおう」と呼ぶ者あり)この想定問答がまるでうそだというなら話になりませんが、どうなんですか、これは。想定問答集、全部出してもらおう。
  172. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘の書類がいかなるものであるか、私ちょっとよく存じ上げませんが、ガイドラインに基づく研究の性格は、先ほど申し上げたことで間違いはございません。
  173. 矢山有作

    ○矢山委員 これはあなたの方から提出してもらった資料でないから、これはあるだろう、あるだろうと言うわけにもいかぬが、しかし、こういうふうに御丁寧に「防衛問題国会想定問答集」と書いて出ているのですよ。私はこれを読んでみて、ははあ、あるんだなと。まあ、それはそうでしょうね。日米共同作戦をやるということで作戦計画をつくるのに、インターオペラビリティーの問題を全然考えないでやるなんというのはおよそ軍事常識のない話ですからね。だから、幾らかのものがあるというのは、これは常識だ。しかし、それを知らぬと言うなら、うそ言うなと言ってここで幾らやり合ってみたところでしょうがないから、そのままに聞いておきますがね。  そこで……(「想定問答案出してもらおう」と呼ぶ者あり)よろしいか。まあ、想定問答案出せと言ったって――あるのなら出してもらいたいね。しかし、あるかないかも、これはないと言えばそれまでの話だからね。(「あるんだろう」と呼ぶ者あり)あるか。あるんなら出してもらおう。  じゃあ、こういうやりとりをしておってもしようがないから、次に移ります。  アメリカの陸軍教範がいろいろあるのです、ここに。これは横文字で読みにくいのを一生懸命ひねくり回してみたのですが、米陸軍教範FM一〇〇-五「オペレーションズ」というのがある。これは「作戦」というのがここにあるのです。これをずっと見ていったら、共同作戦のための標準化ということで標準化協定というものを結んでおるということで、こういうようなことを言っているのですね。「米陸軍部隊は……ヨーロッパや韓国においては……平時から設定され、実行され、標準化された実施要領と原則の下に作戦を行う。」「NATOは火力支援調整技術について標準化を完了した。……二カ国語の解る連絡チーム、標準化協定、野外作戦規定及び多数国語で書かれた重要用語表が計画立案者の助けとなっている。」と言っておるわけです。だから、標準化協定というものがなければ共同作戦は成り立たぬ。だからNATOにおいては標準化協定というものをちゃんとつくっておりますよと、こういうことを言っているわけです。その標準化協定が一体何部あるのかというと、大分あるのですよ、これは。と言うのですがね、絶対ありませんか。
  174. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 先ほども申し上げましたように、インターオペラビリティーの向上は、私どもは必要だというふうに考えておりますけれども、実際問題としてまだそこまで作業の手がほとんど及んでなくて、ようやく始めたばかりの段階でございますので、先生御指摘のような協定があるというような状況ではございませんし、もともとガイドラインに基づく研究はあくまでも研究でございますから、おっしゃいますような協定が、この作業の中から協定がつくられるという性格のものでないことも申し添えておきたいと思います。
  175. 矢山有作

    ○矢山委員 これは、作戦計画については幾ら言っても政府の方が我々に全貌を明かさぬわけだから、したがって私は周辺から、作戦計画をつくるためにはこういうものになりますよということを言っているわけですからね。  例えばアメリカの陸軍教範のFM六一―一〇〇、これは「師団」です。これを見ると、一九六八年版に、NATOが結んでおるSTANAGとして陸軍の師団作戦に関するものだけで二十六が挙げられておる。それを見ると、1が毒物警告組織、それから作戦状況報告、情報報告、軍用道路交通規制、軍用車両標識、ずうっと挙がって二十六ぐらいある。それから一九八二年に制定されたFM一〇〇五「オペレーションズ」、先ほどちょっと言いましたね、「作戦」、これでは陸軍作戦に関係のある三十五のSTANAGが示されておるわけです。つまり標準化協定です、STANAGというのは。さらに、陸戦研究によると、この中には、アメリカは百五十以上の協定を結び、ほかに八十の協議を検討中だと言っておるわけです。それで、この陸軍教範の「作戦」に関係するSTANAGとして、巡察報告、敵爆撃・敵弾・敵迫撃砲火・敵位置報告等、ずうっとこれは三十五も並べられておるわけですね。  ですから、こういうように、共同作戦を遂行するためにはインターオペラビリティーが必要である、そのインターオペラビリティーの中で重要なことは標準化をできるだけやることなんだ、標準化をやったらそれを標準化協定として協定につくっておくんだ、こういうことをちゃんと言っておるわけですね。日米共同作戦計画ができたと言っておるときに、そういうようなその作戦計画が実際に生きていくためには、標準化について話し合いが行われ、標準化協定ができておるのが当たり前なんです、できておるのができておらないとすれば、協議もされておらないとすれば、そんなばかなことはない、私はそう思うのです。一体これはどうなんですか。本当のことを言ってくださいよ。
  176. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 現在の日米間で、日本が有事の場合に日米で共同対処する際の考え方につきましては、ガイドラインの中に基本的な作戦構想等は書いてございます。しかしながら、実際にどういうふうにやっていくかということになりますと、これは日米両国間でいろいろ研究をしていかないとそういうものが出てきませんので、そういう意味で、先生御指摘の日米共同作戦計画の研究というものを五十三年以来やっておるわけでございます。これはあくまでも計画でございまして、作戦そのものではございません。  そこで、そういったものの一つが御承知のように昨年の暮れに一つまとまったわけでございますけれども、そういう共同作戦計画の研究というのは、一種の、どういうふうな作戦をやっていくのかという大筋を考えているものでございますから、先生御指摘のように、後方部面、通信部面、補給部面等を含めまして、いろいろな面での研究をさらに重ねませんと、そういう共同作戦計画の研究自体が深まりを持ってこないという点は御指摘のとおりだと思います。したがって、私どもも、そういったいろいろな研究事項がガイドラインの中に書いてございますが、その中の一つとしてインターオペラビリティーに関する共同研究もやっていきたいということで、今ようやくそれを少しずつ始めたところでございまして、これから逐次そういうものは深めていきたいという段階でございまして、正直なところ、そういうことでございます。
  177. 矢山有作

    ○矢山委員 そうすると、もう一遍くどいようですが確認しておきますがね。  笑い事でなしに想定問答集などというものが出ておって、「「あらかじめ調整された作戦運用上の手続き」と「共通の実施要領」との相違いかん。」と聞かれた場合は、こういうようなことになって、いろいろ言われているわけですね。「「共通の実施要領」とは、自衛隊と米軍との間の緊密な連係を可能とするため、作戦面、情報面及び後方支援面について、日米間で標準化しておく必要のある」ものだ、こういうようなことを言って、そして、これについて「「共通の実施要領」は、既にあるのではないか。」と聞かれて、この想定で答えは「現在のところ、敵味方識別要領や交信要領のごとく、共通の実施要領が存在するものもあるが、このような例はごくわずかである。」こういうふうに言っているわけです。したがって、私は共同作戦を、今までもこれだけ高度の共同作戦をやっているわけですから、その中でその運用する上にインターオペラビリティーについて何らも考えない、そのインターオペラビリティーのための標準化の話し合いを何にもやっていないというようなことは、私はとてもじゃないが想像できないのです。しかしながら、ないと言われるならそれはやむを得ません。  そこで、もう一つ聞いておきたいのですが、この中で、ガイドラインで「共通の実施要領」、こう言っていますね。この「共通の実施要領」というのがどうも私、いろいろ読んでみて、STANAGのことじゃないかなというふうに思っておるのですが、これどうなんでしょうか。これはちょっと答えができないなら、時間をカットしておいてよ。(「想定問答集に載ってない」と呼ぶ者あり)想定問答集に載ってなかった。
  178. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  「日米防衛協力のための指針」、ガイドラインでございますが、その中で「侵略を未然に防止するための態勢」というものが最初の項目にございまして、その中に書いてあることで、おっしゃいますように、「共同作戦計画についての研究を行う。」ということと並びまして、共同演習や共同訓練もやっていこうということを書き、「更に、自衛隊及び米軍は、作戦を円滑に共同して実施するため作戦上必要と認める共通の実施要領をあらかじめ研究し、準備しておく。」ということでございまして、その下に「この実施要領には、」として「作戦、情報及び後方支援に関する事項が含まれる。また、通信電子活動は指揮及び連絡の実施に不可欠であるので、自衛隊及び米軍は、通信電子活動に関しても相互に必要な事項をあらかじめ定めておく。」こういうようなことを書いてございます。  つまり、したがって、こういうような諸分野についても研究をやっていかなければいけないというのがガイドラインの趣旨でございますので、私どもはその趣旨に従って作業を逐次進めていこうということで、今やっているところでございます。
  179. 矢山有作

    ○矢山委員 もう時間がないから、後の質問に引き継ぐからちょっとはっきりしておいてもらいたい。「共通の実施要領」と言っている、これがSTANAGかと言っているのです。だから、それだけ答えてください。
  180. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ガイドラインで考えておりますのは、そういったような実施要領をあらかじめ研究をして……
  181. 矢山有作

    ○矢山委員 いやいや、だから研究をするのはわかっているんだ、ないないと言っているのだから。だから、「共通の実施要領」というのがSTANAGですかとこう言っているのだから。(矢崎政府委員「STANAG」と呼ぶ)標準化協定。
  182. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 いや、私どもはこの「実施要領」というものが、今先生がおっしゃいますような標準化協定という言葉に当たるかどうかということは、そのとおりであるとは明確にはお答えできないと思います。これは具体的に個々には考えていく、項目によってどういう名前をつけるかは……(矢山委員「あなた、中身全然わからないの」と呼ぶ)それは各項目ごとにこれから取り上げて研究していくわけでございますから……(矢山委員「だから、中身を聞いているのじゃないの」と呼ぶ)どういう名前をつけるかというのは……
  183. 矢山有作

    ○矢山委員 だから名前はそれぞれついてくるけれども、「共通の実施要領」というのは、つまり標準化協定と言われるようなものではないのかと言っているわけですよ。これ、ちゃんと書いてあるでしょう。
  184. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 先生がおっしゃいますような標準化協定というものに、直ちに、当たるとは必ずしも言えないと思います。
  185. 矢山有作

    ○矢山委員 わからない。  それでは、「共通の実施要領」と「あらかじめ調整された作戦運用上の手続」というのは、これはどうなる、この関係は。どうなる。
  186. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 先ほどから申し上げておりますように、先生の御指摘の点も、これはあらかじめ研究をしていこう、しておこうというための作業の枠組みがこのガイドラインでございまして、先生がおっしゃいますような協定ということになりますと、これは政府間レベルの話になるかと思いますが、そういう性格のものをここで予定をしておるものではございません。
  187. 矢山有作

    ○矢山委員 これは防衛局長、さっぱり勉強していないわ。一体これでシビリアンコントロールなんて成り立つのか、ちょっと心配になってきた。常識なんですよ。共同作戦をやる、その共同作戦のためにはインターオペラビリティーがぜひ必要なんだというのは、ケリー国防次官補代理が言っている。そのとおりでしょう。インターオペラビリティーのためには何が必要なのか、標準化が必要なんですよ。できるだけ共通にしておかなければいかぬのだ。当たり前の話なんですよ。そしてその中で協定となるものもあろうし、協定とならぬものもある。しかしながら、アメリカのNATOの例に見られるように、たくさんの協定化されておるもの、また、協定化されておらなければ、これは役に立たぬわけですよ。これは当たり前の話なんです。そのことがわからない。しかも、ガイドラインの中で「共通の実施要領」とある。「あらかじめ調整された作戦運用上の手続」とある。これは一体何だと言ったら、これの関係もわからない。そんなことで、防衛局長、シビリアンコントロールできるのかね。これは問題にならぬ。これでは話にならぬよ。  それで、いずれにしても、もう時間が来ましたから、私は最後に申し上げておきます。  この問題をなぜ私が触れたかというと、繰り返します。あなた方は、共同作戦計画案を出せと言っても出さぬ。ところが、共同作戦計画案というものはそんなに生易しいものではないのだということですよ。共同作戦を遂行するためにつくるのですから、だからその背後にはというかその土台にはたくさんの標準化協定がある、あるいは標準化のための協定化されないものもある。そうして、その上にインターオペラビリティーを確保して成り立ってくるのですよ。したがって、実にこれは膨大なものになってくるのだ。それが全然国民の前に知らされないのです。何を聞いても、全部わからぬと言う。国会があなた方は最高のシビリアンコントロールの役割を果たすのだと言っている。その国会で何にも知らされない。どうしてシビリアンコントロールが果たせるのですか。  私は、この次に聞きます。総理に、共同計画案の内容を全部読まれたのかどうか、防衛庁長官は読んでおるのかどうか。これは大変な問題なんですよ。それを見逃しておくと軍独走で走ってしまう。それを私は心配しております。さらにそのSTANAGがつくられるということになると、そのSTANAGは、これはNATOの問題もある、米韓の問題もある、それらとの共通性を持ってくる、これはアメリカの考え方なんです、全体的な共通性を持たせようと。そうすれば、共同作戦だなんだと言っておるけれども、こちら側はアメリカのそうした戦略体系の中にがっぽり取り込まれていくわけですよ。それを私は指摘したかった。  しかしながら、質問の要領もまずかったし、時間が足りませんから、これできょうはとめておきます。しかしながら、この問題は極めて重要な問題でありますし、そして政府の方もこの共同作戦計画案についてどうするか。国会に提出しろという要求を受けて今検討しておられるだろうと思いますから、それが出てきた段階で改めてお聞かせを願いたいと思います。  それでは、これで私の質問を終わります。
  188. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 矢山さんからいろいろ御研究の結果の御発言がありましたが、いわゆる研究というものは、私は報告を受けてかなり詳細に聞いております。しかし、これは日米両方で共同研究した成果であって、我が国の安全保持のためにも外へ出すべき筋のものではない、そう私は考えてそのように指示しております。  それから、今の標準化等の問題、インターオペラビリティーの問題ですが、これらもそれらの一環としてその下部における共同研究の内容になってくるわけです。その中には標準の統一であるとかいろいろな問題があります。兵器からあるいは通信やその他あらゆる面についてあり得ると思うのです。私はその深いところまでは聞いておりませんが、大綱は聞いております。それらにつきましては、当然両方でいろいろ話し合って、そして共同研究をしてその結果についてはそれはこういうものであるとお互いが認識し合うというものはできていますけれども、しかし、あるいは今やらんとしておるものはございますけれども、いわゆる行政協定のような意味における協定とは別のものだ。(矢山委員「それはそうです」と呼ぶ)それは要するに、了解であるとか合意であるとかいうものでありまして、そういう行政協定的意味におけるいわゆる法律的意味における協定は、それはありっこない。しかし、今のガイドラインのもとにおけるお互いの話し合いとか理解、了解、そういうものは十分あり得る。しかし、それは表に出すわけにはまいりません。そのように御答弁いたします。
  189. 矢山有作

    ○矢山委員 私は標準化協定というのは行政協定だと言っているわけじゃないのですよ。これは双方の申し合わせ、合意したものを文書化してそれぞれの責任者が判こをついて署名をしておる、こういう意味ですから。いずれにしても、総理の方は多少作戦計画がどういうふうな基礎の上に立っておるかということを御理解をいただいておるようです。防衛局長はさっぱりわからぬ。ですから、この質疑はまた後日続けさせていただきます。
  190. 天野光晴

    天野委員長 これにて矢山君の質疑は終了いたしました。  次に、池田克也君。
  191. 池田克也

    ○池田(克)委員 公明党の池田克也でございます。よろしくお願いいたします。  私は、臨時教育審議会あるいは文教政策についてお伺いをしたいと思いますが、資料を持ってまいりましたのでお配りをいただきたいと思います。
  192. 天野光晴

    天野委員長 どうぞ。
  193. 池田克也

    ○池田(克)委員 資料を配っていただいている間に、わずかな時間でございますが、先ほどもこの委員会でテーマとして出ましたが、北朝鮮に渡られた日本婦人の自由往来の問題、この問題について関連して短い時間でお尋ねをしたいと思います。  先ほども指摘がございましたが、昭和三十四年から北朝鮮に数多くの方々が帰国をされました。これに伴って、恐らくはその北朝鮮の夫である方々に大変な協力をして戦後の暮らしをしてきた日本の婦人が約六千人以上御一緒に北朝鮮に帰られた。ところが、それ以後それらの方々と往来、音信、こういうものが全くできない状態である。  先日、その問題を特集いたしましたラジオの番組がございまして、「鳥になりたい 北朝鮮日本妻からの便り」という番組でございましたが、私もそれを聞きまして非常に感動いたしました。その中で、年老いた父母が、自分の娘さんたちが外国人と結婚をして海を渡っていった。賛成、反対、家族の中でも大変な議論があったろうと思います。幸せでいてくれればいいと切なる願いを持っているにもかかわらず、自分がだんだんと年老いて余命幾ばくもない。ぐあいが悪くなった。一日でも自分の娘に会いたいと願ってもそういう状況が伝えられない。赤十字を通じていろいろな要請を政府も若干はなさったと思います。中国政府もしてくれている。こういう状況の中でいまだにほんの数件しか安否がわからない。私は、この問題は人道上の問題として放置できないのではないか、こう考えて、あえてここでこの問題を取り上げたいと思っているわけでございます。  最初にお伺いしたいのは、二月三日付の新聞で、近く北朝鮮の要人の入国を許可する方針である。この新聞によりますと、朝鮮民主主義人民共和国労働党機関紙責任主筆の入国を許可する方針である、こう伝えられておりますが、外務省はこれを――法務省ですか、許可し、どういうような日程で活動がなされるのでしょうか、お伺いをしたいと思います。
  194. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 お答えいたします。  ただいま先生の御質問のございました北朝鮮からの要人の入国の件でございますが、まだきょう現在、具体的な入国の申請は法務省の方には届いてないと思っております。  そういう問題を一般論として申し上げれば、北朝鮮からの入国の問題につきましては、申請がありましたときにケース・バイ・ケースで考えさせていただくというのが、政府の従来からの方針でございます。
  195. 池田克也

    ○池田(克)委員 これらの方々が日本にやってきた場合に、これは仮の問題ですから――しかしながら、仮の問題としても御答弁いただきたいのであります。これらの方々に限りませんが、こうした政府の要人もしくはそうした機関が来日をした場合に、自由往来を願って運動している方々の代表をお会わせして、そして少しでもそうした家族の願いというものを伝えてあげてはどうか、こうした配慮を政府はおとりになるおつもりはないか、お伺いをしたいと思います。外務大臣、いかがでしょうか。
  196. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 お答えいたします。  従来より、今の日本人妻の問題につきましては、特に赤十字を通じまして私ども可能な限りの努力はしてきております。今後ともいろいろなルートで、可能なルートを通じまして、日本人妻の安否の調査、それから通信の確保、できれば里帰りという問題につきましても鋭意努力をいたしたいと思っております。
  197. 池田克也

    ○池田(克)委員 外務大臣に御答弁をいただきたいところでございますが、重ねてこの問題、最後になりますが、今度、日本におられる北朝鮮国籍の方々の往来について日本はかなり緩く、行ってまた帰ってこられる再人国の許可をしておられまして、年々この数はふえている、累積して二万数千人というふうに言われておりますけれども、日本の側がそうしたいろいろ配慮をしておるにもかかわらず、片方は安否の調査すら十分に反応しない、私はこれは大変遺憾なことだと思うわけでございます。これについて国会でもこうして一日に二回も取り上げられるということは、人々の願いが本当に相当なものであり、私どももその気持ちに共感を持ってこうして発言をしているゆゆしき問題であるというふうに受けとめていただいて、御答弁をいただきたいと思います。
  198. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 北朝鮮における日本人妻の安否の問題につきまして、我々も日本人として非常に気持ちの痛む思いをいたすわけでございます。ただ、残念ながら政府政府という立場では話し合いができないということで、今まで、日本の日赤を通じまして北朝鮮の赤十字と話し合いをさせていただいております。そういう中で、十数通の手紙等も寄せられまして、それに伴います安否についてもさらに確認をしている、あるいはまた、第三国を通じましてもいろいろと努力もいたしておるわけでございますが、日本と北朝鮮との関係は、政府間の外交関係はありませんけれども、ラングーン事件の制裁も解除したということで、また、民間の交流関係というものも従来のような状況になってきたわけでございますから、これから南北の対話が進むとか、あるいはまた朝鮮半島の緊張緩和という大きな動きが出てくれば、そういう中でこの問題も具体的にだんだんと明らかになってくるのではないか。これは人道的な問題ですから、我々としてもできるだけのことはしなければならぬ、こういうふうに考えております。
  199. 池田克也

    ○池田(克)委員 余り前進のない答弁で残念でございます。  法務大臣にお伺いしたいのですが、この六千余の日本婦人は日本国籍を有している、こう考えます。日本国籍を有している日本人については、世界のどこにあろうとも我が政府としてはそれを保護しなければならない、こういう責任を背負っているのではないか、こう考えますが、法務省としてのお考えと、最後に総理のこの件についてのお気持ちを伺いたいと思います。
  200. 嶋崎均

    ○嶋崎国務大臣 お答えいたします。  日本人妻ということで把握しているのは千八百三十一人でございますので、その点だけ御質問とちょっと違うと思います。  御質問の日本人妻の里帰りの問題につきましては、基本的には国外にいる日本人の問題でありまして、そういう意味合いから、主務官庁である外務省の方で現在まで可能な限りいろんな対策を講じられてきておるというのが現実であろうと思うのでございます。法務省といたしましても、一日も早くこれらの問題が実現することを期待をしておるというのが実情であります。また、里帰り実現の際には、これらの方々が現在も日本国籍を持っておられるかどうかというようなこととは関係なしに、できる限り努力をし、入国手続等につきまして最大限の努力を払っていきたいというふうに思っておる次第でございます。     〔委員長退席、原田(昇)委員長代理着席〕
  201. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本人妻の問題については心を痛めておるところでございます。従来も日本赤十字社等を通じましていろいろ努力をいたしましたが、今後とも日本赤十字社を初めいろいろな国際関係をたどりまして、最大限努力してまいるつもりでおります。
  202. 池田克也

    ○池田(克)委員 時間がありませんので、さっきの人数の問題等、若干認識のずれがございますが、また後日に譲らせていただきたいと思います。  問題を臨教審の問題に移したいと思います。先ほど資料を配らせていただきましたので、ぜひごらんをいただきたいと思います。  私は、臨時教育審議会が設置されてから精力的に討議をされていることに対して深く敬意を表するものでございます。我が党は、教育改革につきましては国民的な強い要請である、こう考えまして、国民的合意を確保することを条件にしてこの立法に賛成をした経緯があるわけでございます。毎日、新聞を開くごとに各部会での討議の内容や委員の個人メモ、部会長の報告等が大々的に報ぜられております。国会におきまして教育改革を論議してきた者にとりまして、重大な関心を持つ問題ばかりでございます。私ども、先般竹入委員長の代表質問でも表明をいたしましたが、この議事録の公開を要求しておりますが、今日それが実現をしていない状況の中で、わずかに新聞による報道でその討議の内容を知るしかすべがないわけでございます。したがって、私はこの表を、新聞報道を中心にしてあるいはその他の若干の資料を中心にして拾い集めまして、臨教審が何を検討課題としているかを整理してみたわけでございます。  御承知のとおり、臨教審第四部会はまず当面の共通一次対策をやっておりまして、他のテーマについてはまだ検討の具体的な段階に入っておりません。したがって、比較のしようがないわけでございますが、他の部会におきましてはかなり突っ込んだテーマが出てきておるように思うわけでございます。また、中央教育審議会の四六答申は、昭和四十六年に最終答申が出されて、ベストセラーとも言われるような立派なそうした報告書が既に出ております。これによりまして、なるべく具体例を一つ一つ拾いまして並べ上げてみたわけでございます。私個人のメモとして御参考に供したいと思うわけでございまして、至らない点も数々あろうと思います。なおまた、「注」としましたが、第二部会に当たります中教審の答申は具体的にはございません。つまり中教審は学校教育に限定をした諮問であったということで、臨時教育審議会の「社会の教育諸機能の活性化」、こうした分野は該当するものはないということでございます。こういう状況で若干この表を御説明したいと思います。  第三部会に当たる欄の中教審の答申をごらんいただきたいと思います。「画一化反対」、既に今から十四年前に、今日の臨教審が指摘しております画一化に反対をしております。管理化、画一化というものに反対をして、それに対応する具体的な方途をいろいろに研究をしております。例えば「六・三制の区切り方」とか「中高一貫」あるいは「飛び級」「学年制の弾力化」、これは単位制高校ということでしょうか、必ずしも学年制によらず所定の単位を集積して卒業を認める。あるいは「試補制」、教員の具体的な採用に当たって試補として一定の期間班場の研修をさせる。あるいは「零学年」、つまり幼稚園と小学校低学年を一貫して教育してはどうか。「専門分野高校大学連結教育」、これは大体専修学校に準ずるのかと思いますけれども、職業高校と大学の前期とを連結して教育できないか。「コース別・能力別(途中転換型)高校」、つまり最初工業高校に入られても途中から商業へあるいは商業から工業へ、その他の数多くの自分の職能に応じた、学校での勉強を子供の成長過程あるいは子供の途中のいろいろな意思に応じて変えていけるような高校をつくってはどうか。「社会人からの教員登用」「個性教育」等々、「小学校高学年教科担任制」、つまり小学校五、六年は今のような一人の先生が教室で全科を教えるのではなしに、中学以上でやっているような、専門科目を専門の先生がより細かく教える、こういうふうな問題をここで提起しているわけでございます。  私、この両者を比較いたしまして若干感想を申し上げたいと思います。  中教審の答申以来十四年を経まして、確かに新しいテーマを臨教審が取り上げている、これは非常に大事なことだと思います。国際化の時代において九月の入学問題あるいは留学生問題、激しい入試地獄を反映して共通一次問題、進学塾問題、学歴社会の是正、指定校制度、これらはどちらかといいますと中教審の四六答申には余り触れられていなかった新しい問題でございます。そうした点については、私、臨教審が生まれて、こうした分析がなされることは非常にいいことだと思っております。特に指摘をしたいのは、道徳教育についてこの表にはどこにも記載をされておりません。けさあるいは昨日の新聞では、臨教審の各部会長が道徳教育に触れております。大変難しいテーマですので、やはりここに触れにくいのではないかという印象でございます。また、教育費の家計負担、この問題についてもこうしたところには出てきていない。専門家の研究はなかなか子供を持つ親の実感というものまで反映していないのじゃないか、こういう印象をまず最初に持ったわけでございます。  それから第二番目に、これは私非常に大事なことだと思って見詰めたわけでございますが、十四年間一貫して取り上げられている、つまり未解決の問題があるということでございます。六・三制の区切り方、中高一貫教育、能力に応じた単位制高校、画一的を排した職業教育の問題、これら一貫しているものには黒い丸をつけて御参考に供したわけでございます。  これらの印象を通じまして、既に十四年前に画一化、硬直化は指摘されております。また、大学においては、学問の発展と教育要請の量的拡大、この矛盾が指摘をされておりまして、研究と教育の分離、両立しない、分離すべきだ、こういう指摘がなされております。私は、これを見ておりまして、既に分析や討論の時代ではなくて、なぜできなかったのか、この四六答申がなぜ実現できなかったのか、これを真剣に考えなければならない段階だ、こう考えるわけでございます。  そのほか中教審答申には、これらの改革を実施するために必要な経費の算定をしておりまして、その総額が六十九兆円という莫大な額が計算されているわけでございます。総理もこの点についてはよく御承知であろうと思っております。さらに、教育改革優先財政支出、これがどうしても必要だというふうにうたっております。ぜひ、後ほど大蔵大臣からもお考えを伺いたいと思いますが、こういう状況から見まして、今の臨教審が実りある活動をするために、教育改革が実効を上げるために何をすればよいか、政治の現在の体制はあるいは臨教審の体制はこれでいいか、私は、そういう問題を順を追って総理並びに大臣にお伺いをしたいと思っております。  最初に総理にお伺いしたいのですが、なぜこの中教審答申が十分な効果を上げなかったのか、今日臨教審をつくって改革に乗り出さなければならなかったのか、この点を総理はどんなふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  203. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 中教審は精力的にかなり立派な答申を出していただきました。特に四六答申、四九答申というようなものは画期的な内容を持っていると思います。しかし、それがなぜできなかったと言われますと、それは恐らく国民的関心というものが今ほど燃えていなかった、それから各政党側の関心や情熱も今ほど熾烈ではなかった。要するに、一番大事なのは国民の関心だろうと思います。そのほかに、当時は高度経済成長時代で、割合に繁栄の中にありましたから、そういう精神性を顧みる度合いが今ほど強くはなかった。その後、行革あるいは二度の石油危機等を経まして人間の精神性の本源にもう一回思弁をめぐらすという段階にも入ってきまして、その上にいわゆる偏差他であるとかあるいは共通一次をやってみまして、その弊害の大きさ、あるいは突っ張りとか暴力とかいうものがかなり出てきたのを見て、もうほっておけない、こういうような国民的関心あるいは政党間の情熱というものが非常に強まった結果ではないかと思います。
  204. 池田克也

    ○池田(克)委員 今の御答弁で理由はわかりましたが、結論として、どうでしょうか、中教審は十分にその効果を上げなかった、いろいろな議論もなされましたけれども、私は、臨教審の出発はそこからあるのじゃないか、こう思っておりますが、中教審答申が十分効果を上げなかったというふうに考えていいでしょうか。
  205. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それでも中教審答申は部分的にはかなり実施されていたと思います。しかし、環境が今ほど、それほど熟していなかった。それから、もっと広がりの大きい分野からこの問題を取り上げるという時代に今や入った。ですから、文部省レベルの審議会から内閣レベルの審議会に変わった。そして、対象も単に学校教育の体系だけではなくして、さらにその背景にある大きなヒンターランドまで審議の対象を広げた。例えば学版社会あるいはそのほかに至るまで視野を広げてきた。そういう点が大きく変わっていると思います。
  206. 池田克也

    ○池田(克)委員 かつて森文部大臣のときにも、私、この委員会でこの問題をお伺いしました。筑波大学ができたり、あるいは共通一次試験もこうした分析から出てきております。私学振興助成法、単位の互換制度等々、今総理がお話しされましたように、制度としては幾つか整備をされております。しかし、私は、所期の効果は上げ得なかった、こう申し上げると、せっかく議論された中教審の先生方には大変申しわけないような気がします。しかし、これは議論された中教審の先生方のせいではなくて、日本の社会状況もあると思います。政治状況もあると思います。私は、新しい改革を出発するに当たってその点の認識がやはりずれていると、また同じ道を繰り返すのじゃないかな、総理が総選挙のときから、次は教育改革だ、こう提言をされたのを、大変私はすばらしいことだ、教育はどうしても改革しなければならない、こういうふうに受けとめておりました。ですから、教育改革というテーマは私は賛成です。そして臨教審ということも今日までの段階では私は賛成してまいりました。ただ、その大前提に、やはりこの点とこの点がまずかったから次はこうするんだという今までの評価があいまいであっては、きちんとした前進ができないのじゃないか、こう思いますが、私の考えは間違っているでしょうか。
  207. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり過去になし得なかった理由をよく分析して、そしてその条件を整えるということは大事であると思います。
  208. 池田克也

    ○池田(克)委員 総理答弁の全体から見ますと、必ずしも満足な結果ではなかった、いろいろ分析をして次へ進まなければならない、こう受けとめてよろしいでしょうか。
  209. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 簡単に言えば、池田さんがおっしゃったようなことだと思います。
  210. 池田克也

    ○池田(克)委員 私はこう思うのです。やはり文部省一省の力に限界があった、だから今度は総理の直轄の機関をつくった。また、今の世論の問題もあったと思います。財政問題、財政がだんだんだんだん厳しくなりつつあった。非常に金のかかるようなプランがここに出されておりました。  私は、そういう問題も含めて大蔵大臣にお伺いしたいのですが、中教審答申、大蔵大臣もごらんになり、いろいろな議論があったことに参画をされておられたと思いますが、この中教審答申が思うようにいかなかった原因の中に、財政上とても負担し切れなかった。今総理には御質問いたしましたし、また、密室討議で国民の合意が得られなかったという批判もあったわけです。ですから、いろいろ激しい討論がある。今新聞に報ぜられている臨教審の話は、なかなか私は、いろいろ右、左とありますが、いいことだと思っております。大蔵大臣にお伺いしたいのですが、財政的にこの中教審は大変厳しかった、こういう印象は持っておられませんでしょうか。
  211. 竹下登

    竹下国務大臣 中教審の四六答申等々を土台にされまして文部当局でそれぞれ予算要求があったわけでありましょう。そうして、単年度主義の予算の中で毎年国政全般と調和のとれた予算、こういうものを編成して御審議をお願いしておるという立場でございますので、中教審の立場と財政という形で私が論評するのは必ずしも適当でないかとも思います。
  212. 池田克也

    ○池田(克)委員 文部大臣いかがでしょうか。所管をしていらっしゃって、臨教審と中教審は当然対比していらっしゃると思うのですが、特に財政需要の問題で、これから臨教審がいろいろ提案をする教育改革、これは大変お金のかかることだと私は思うのです。現に中教審もそういう数字を出しているわけですね。この点について、文部大臣いかがでしょうか。
  213. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えいたします。  中教審の四六答申の中で実現を見てない大きなものは、学校制度に係る先導的試行、その中では幼年学校などという構想もあったわけでありますが、その問題、あるいは幼稚園について市町村に設置義務を課する問題、それから公立と私立の学校に関する地方教育行政の一元化の問題等々あったわけでありますが、幼年学校の問題等は、財政問題が起こる前に関係者の合意が得られないということもあって今まで実現をしてないものだと思います。幼稚園の市町村設置義務の問題でありますが、これは保育所との関連がございまして、これまた関係省庁間の調整が整っていない、こういうことで実現をしなかったわけでありまして、そのかわり、文部省としては、幼稚園教育振興十カ年計画を立てまして、それを着実に実行してきたところであります。  でありますから、総じて、財政問題というよりは、先ほど総理からお答えがありましたように、文部省だけでは対応できない大きな問題がございまして、そこで各省庁間の調整あるいは教育関係者との間の話し合いがまとまらない、未調整のまま今日に至っている問題が多い、こういうふうに理解をいたしております。したがいまして、臨教審から答申が出た場合には、必要な予算は確保するように一生懸命努力したい、こう考えておるわけであります。
  214. 池田克也

    ○池田(克)委員 私は今の文部大臣の御答弁を伺っておりまして、理解できる面とそうじゃない面とあります。つまり文部省一省だけではいかんともしがたかったというのは何かと言えば、私は財政の問題であったろうと思うのですね。たしかあの幼稚園の問題も非常にお金のかかることでございます。  総理、この表でお気づきだと思いますが、かなり大学の改革は進んでいるのですね、中教審以来。筑波の問題、共通一次の問題あるいは単位の互換制の問題、あるいは大学院大学、大学院を独立しただけの大学を設置する。ところが、残されているのは、大体初中教育、つまり小学校、中学校、高校、この部分のいろんな弾力化、それから画一化を廃するということが残っているわけです。したがって、結局今日言われている非行、暴行あるいは偏差値、入試、こういう問題のほとんどが、言うならば高校までの段階にぎゅうっと集まってきちゃっている。私は非常に残念なんです。この四六答申がもっと具体化されていたら、今日これだけの教育荒廃と言われるような事態は生まれなかったんじゃないか。非常に私はここに一つの思いをいたすわけでございまして、この臨教審に課せられている課題もここにあるのじゃないかとこれを見て思っておりますが、総理のお考えはいかがでしょうか。
  215. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 確かに、大学教育におきましては若干の前進が行われたことは事実であります。しかし、大学教育でも大事な部分は看過されている点がある。例えば大学相互の窓を開く問題、単位の互換制の問題とか、あるいは大学教授に対する評価の問題であるとか、あるいは共同の大学院大学をつくるというような構想とか、こういう大事なことはまだできておりません。それから大学の国際性の問題もございますね。こういうような問題も残されていると思いますが、一言で言えば、国民的関心がやはり当時は今ほど強くなかった。国民の関心が強ければ大蔵省だって耳を傾けざるを得ないのでありまして、財政は今の方がなお苦しいわけであります。にもかかわらず、臨教審はやろうという志を政党も国民も持っているということは、財政にもかかわらずやろうという強い意思があるということであり、その方が国家に大事であるという意識が強まったからだと思うのです。そういう意味においては、家貧しゅうして孝子出づ、そういうような時代ではないかと思います。
  216. 池田克也

    ○池田(克)委員 国民の関心が高まってくれば大蔵省もお金を出さざるを得ない、こういうふうに総理答弁ですが、大蔵大臣、これから大変な財政が厳しい時代に差しかかるわけでございます。六十五年までに国債発行をゼロにする、大変な努力目標だと私、この委員会で伺いましたが、これから臨教審からいろんなプランが出てまいります。これは、教育についてそれなりの予算を確保して教育改革を進める、総理はそういうふうな御答弁ですので、大蔵大臣もぜひその辺について御決意のほどを、御所感を承りたいと思います。
  217. 竹下登

    竹下国務大臣 私は、中曽根内閣の大蔵大臣であります。中曽根総理のおっしゃったことを拳々服膺、みずから心に秘めていなければならぬと思っております。
  218. 池田克也

    ○池田(克)委員 ちょっと話を別にいたしますが、なぜその中教審答申が思うように動かなかったかというこの分析につきまして、今度、PR誌をおつくりになったわけです。この「臨教審だより」というのは大変立派なものができまして、この中に、当時この中教審答申に関与された西田亀久夫さん、当時の審議官文章があるのですが、要するにこういうことをおっしゃっているのですね。初中教育においては、「多様な教育課程と教育方法の個別化が提案されたが、時代の大きな転換に気づかない教育界の一部では、このことを昔ながらの差別と選別の教育と誤解して反対した。」高等教育への指摘も同様である、こんなふうに言っておりまして、一部には世論が十分に熟さなかったという総理の御指摘が当たっていると思うのですが、他面、こういうことも言っているのです。要するに、いろいろな提案をした、「しかし、教育関係者の中には、改革に伴う既得権の喪失、未経験の事態に対する不安等からこれらの先導的試行の実施等に消極的立場をとるものが多かったことは遺憾であった。」やはり、縄張り争いと申しましょうか、そうした認識がどうしても抜け切れなかった。私は、こういうふうな事態というものをこれからは打ち破っていかなければならない、相当な国民的な世論を巻き起こしていかないと、と思うのですね。  とりわけ、ここにこういう指摘があります。「教育経験の蓄積のある現場教員、理論中心の教育学者、行財政の実権をもつ行政官の三者が同じテーブルにつき、共同で責任を分担する先導的試行という方法を提言した。」これがなかなか受け入れられなかったというのですね。今総理が、国民的な盛り上がりがどうしても必要だという御意見、私はそのとおりだと思います。それをどういうふうにしていくのか、今置かれている臨教審の状況、これは国民的合意というものが次第次第に構成されていくだろうか、私はそこに一抹の不安を覚えてならないわけなんですね。ですから、「教育関係者」というふうに指摘をされております。臨教審の正委員の任命に当たって現場の経験者が少なかったという指摘がありまして、岡本会長もそういう感想を漏らしておられたというふうに報ぜられているのですが、この辺の岡本会長の感想というのは、総理、お聞きになったことがありますでしょうか。
  219. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今池田さんが御指摘になった中で西田君の言葉がありますが、私はその中で非常に大事な言葉が一つあると思っておるのです。  それはどういうことかというと「差別」という言葉であります。画一主義、平等主義、これが公平であって無差別である、そういうふうな間違った考え方があるわけです。要するに個性尊重、その子に向いたやり方をやっていくとか特色のある大学をつくるとか学科をつくるとか、そういうものが今までの平等、無差別主義に対して差別である、そういうことから、不公平な取り扱いである、そういう間違った観念に走っていって改革を阻んだ力が非常にあると思うのですね。この悪平等の観念を打破して、そしてその子たちの個性を十分に生かした個性味あふれる教育体系に直していく。あるいは高校、大学その他の連関にいたしましても、そういうことを十分注意した連関性を持たせるとか、それは非常に大事なことなのであります。私は、高校とかあるいは大学あたりの父兄に対してこのことは最も申し上げたい。あるいは中学の学生の父兄に対しても、何でも差別と考えちゃ間違いですよ、個性に合ったことをやることが一番とうといのですよ、だから、悪平等で何でも画一的にやるのが平等ではないのですよ、そういうことを、やはり父兄に対してあるいは先生に対して、もっと徹底させることがまず第一に大事である、そういうことをまず感ずるわけですね。  あといろいろ指摘した点もよく考慮すべき点であります。  それから、臨教審の人選の問題でございますが、私は、なかなか立派ないい人選だと実は思っております。なぜかといえば、中教審がなぜ殻を破り得なかったかという面を考えてみますと、やはり発想の放胆さ、大胆さというものがまだちょっと足りないし、答申を出した後のフォローアップをする力がなかったですね。何でも出し切ってしまえばそれでおしまいだというので、さっさと帰って静観するという態度であった。しかし、行革はそうじゃありませんね。答申を出しても行革審をつくるとか世論を喚起するとか、土光さんが目を光らせているとか、そういうことで飽くなき力を持ってフォローアップしているわけです。今度も、この臨教審から出てきた我々の教育の改革につきましては、そういうフォローアップの仕方というものが非常に大事であると思うのです。  そういう意味において、単に現場の専門的な方方だけを網羅するのがいいとは思わぬ。今までの文部省の既成の枠をどうしてぶち破るか、そして画一主義や硬直主義を排撃するかということが、今教育の大事なポイントに差しかかっているのです。それをやり得るような人選も必要である。現場の教師の声や専門家の声は参考に聞けば何ぼでも聞けるし、行ってまた聞けばいいわけであります。それ以上に、責任を持ってそういう行動力を発揮できる、また国民にアピールできる、国民に対して世論を喚起できる、そういう人たちも、そういう考慮が中教審のときにはほとんどなかったですね。それが失敗の一つの原因であると私は考えて、それを直したいという意欲に駆られておるわけです。
  220. 池田克也

    ○池田(克)委員 総理の御答弁を聞いていると、臨教審のこれからの議論は要らないみたいなんですね。総理に結論があると。  要するに、差別か選別かという問題は、確かに総理のおっしゃるような受けとめ方もあると私は思います。しかし、たくさんの財産があって、こういう部屋もある、こういうコースもある、どれかをおとりなさいというのなら、それはいろいろな道があると思います。しかし、限られたところで競争して、受かった者だけがそれぞれそういう学習の方途が与えられて、そうでない者は仕方がないということで、結局二つに分かれるのですね。これを分類というのか。分類とは言えません、やはり差別ということになると思うのですね。私は、国の行政の最高責任者として、悪平等はいけませんよ、やはり、差別と言わないで、これは新しい考え方として受け入れなさいと、国民全体にこれはよほど時間をかけて丁寧に説明をし、また、選挙を通じ私たち選挙民と数多く接しております、そこでこういうことなのだということを本当によくわかってもらわなければ、幾ら法律ができても、臨教審がこうだと言っても、国民は納得をしない。私は、そこに不平不満が生まれ、子供たちが開き直ったり、非行、暴行ができたり、どうせおれたちは面倒見てもらえないんだというふうなことができることは、逆に恐るべきことだし、私は、総理に対して前々から有能な先輩政治家だと敬意を表しておりますけれども、この部分に関しては、むしろ弱者を拾っていくという観点は総理の頭の中にはないのだろうか、こんなふうに今思うのですが、さらに今の問題についてお答えをいただきたいと思うのです。
  221. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 教育は普遍性を持たせる、特に義務教育の部面においてはこれは大事なことであります。しかし、それと、個性主義でおのおのの個性を引き出して、社会、国家に役立ち、またみずからも世の中に対して胸を張って歩く使命感を持てる人たちをつくっていくという点がやはり大事だと思うのです。そういう意味において中教審の失敗があった。私はこの点は失敗だと申し上げてもいい。しかし、それはまだ熟していなかったとも言える。そういう意味で環境整備が非常に大事だ。まず意識革命が大事だ、意識革命を保障するに値する制度や環境をつくってあげるということがまた大事だ、そういうふうに思っておる次第です。
  222. 池田克也

    ○池田(克)委員 先ほど総理答弁の中で、現場の声はいろいろ取材すればいい、出かけていって聞けばいい、来てもらってヒアリングをすればいい。これは確かに内容だけ聞く分にはいいと思うのです。しかし、教育改革は国民の三分の一ぐらいが関係があるわけです。子供たちが学校へ行っております、非常に多くの方々がいろんな角度から関係がありますので、私は、一筋縄ではいかない。だれかがつくって、これで行け、はいそうですかというふうになるには大変なことだと思うのですね。したがって、やはり若干時間かかかりいろいろ経過があろうとも、私は、そういう現場の声を、お客様扱いでゲストとして来ていただいてお伺いしましょうというのじゃなくて、自分たちもこの改革に参画したのだという、ここが非常に大事だと思う。  よく根回しという話があります。でき上がったのがぼんと来て、おれ聞いてないよと言って、なかなか話が進みません。これは政治の場でもあるいは日本の社会でも、有名な日本の根回しという言葉が外国では通じているようですが、やはり事前に相談をし、おれも参加したのだという、こういう状況でなければ物が動かないのですね。私は、そういう意味では現場の先生、父兄、こうした方々を率直に言って正委員に入れて、いろいろな議論はあったと思いますが、今総理のおっしゃるような差別ということじゃないのだという、これもやはり時間をかけてよく説得をして、わかればそういうことかと納得する。距離を置いてぼんと言えば誤解すると思うのです。私は、そこのところ、若干意見が分かれるようなのですけれども総理は、そういう参加させてそしてみんなが理解していくということについて絶望的なお考えを持っているように私見受けるのですが、いかがでしょうか。
  223. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それも大事だと思います。思いますけれども、これだけ大きい総合的な教育体系全面にわたる大改革をやるという場合には、全体に目を見張らせることのできる、そういう大局的判断力と総合的体系化のできる能力のある、見識の高い人が必要です。現場におられる方は、なるほど専門的な分野においては非常に深い御見識をお持ちでしょうけれども、しかし、全体を、大学から、社会から、職業の、会社の情勢まで見通して大きな改革案をたくましく大胆に推進し得る能力があるかといえば、それは別でしょう。小学校の教育については、これだけはもう専門家という方がいる、中学校の教育については、教室についてはこの先生に勝てる人はいないという先生もおられる。しかし、教育全般というようなものを見ますと、これはまた別の分野でもあります。  したがって、そういう専門分野分野のことについては専門家のお話をよく聞いて、そして全部ライトも当てて認識を深めるということも大事でもありましょう。しかし、といってそういう大局的見地の人ばかりで物ができるものでもない。そういう意味においては臨教審の委員においても専門委員においても、適当にそれは専門家も入っておるわけであります。現場の声もここには委員あるいは専門委員として入って、入れてあるわけでありまして、全然無視しているというわけではないのです。しかし、制度の改革の性格からかんがみて、そういうところへある程度思いをいたしてやったということを申し上げるのでございます。
  224. 池田克也

    ○池田(克)委員 まあ確かに総理は個性的な、強固な意思と、これは竹入委員長に対する答弁なんですけれども、強固な意思とある程度の個性を持った人があそこへ入らなければ、なかなか現在のかたい殻を破るわけにはいかない、こう答弁されていました。  しかし、週刊朝日なんかを見ますと、これはこのとおりお話しになったかどうかあれですけれども、「教育改革は文部省の垣根を取り払ってやらなきゃいけない。自分の残された任期は限られているが、やるだけやる。文部省と日教組が共同戦線を張っているようなものだから、専門委員には荒業師を入れた。批判は覚悟のうえですよ」、こういうことなんですね。ですから、声を聞くなんていう姿勢じゃなくて、ともかく壁を破るんだ、荒わざ師でまあ一つの大きな壁を破るんだという、こういうふうに私受けとめたのです。  この荒わざ師というのはちょっとひっかかるのですが、総理総理らしい発言かな、そして国民もそこを一番心配しているんじゃないかな、この辺を、私ここで取り上げましたので御説明いただきたい。荒わざ師とはどういうことですか。
  225. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大事なところについては蛮勇を振るえという意味であります。やはり蛮勇を振るわなければこの教育改革はできない要素もある。しかし、全般的に目を通して、一番深いところにはもう無限の愛情がなければいけませんね。無限の愛情をたたえながら、あるときは破邪顕正の剣を振るうということも必要です。前から申し上げておるように、仏様のわきには不動明王もおるのであるし、山門には仁王様もいるのであると申し上げましたけれども、やはりそういう両方のものが要るのではないかと思います。
  226. 池田克也

    ○池田(克)委員 これは議論の分かれるところだと思うのです。  私は総理答弁を聞いておりまして、分析とか立案については確かに大局的なそういう方々が必要だと思うんです。しかし、具体的にそれを進めていくという観点には、今申し上げたような根回しだとか参加意識だとかが必要だと思うのです。総理の今の段階の――今の段階だからそうだと仰せになるのかもしれません。これから、臨教審の正委員は二十五人というふうに法律で決めてありますのでこれ以上はふえませんが、これからいろいろ進めていく、そして決めたことをやらなきゃならぬ。私は、中教審ができなかった原因の中には、国民的な盛り上がりが欠けていたと思うのです。だれが説明に行ったのでしょうか。中教審はお上の決めたことだ、これについて承服できないという声があのときからあったのです。したがって、そういう点から考えるならば、お上がこれを決めたのではなくて我々が決めたのだという教育現場の人たちの参加意識というものを盛り上げて、そして広範な、こういう状況だからこう変えるんだという説明の体制をつくる必要があるんだ。  ですから、これから先また専門委員をおふやしになることもあろうかと私は思うのですが、私が指摘するのは、総理、間違っているでしょうか。分析については私、総理の御意見についてはそうだなという気もします。しかし、これから進んでいく実効ある教育改革という面については、私は、今の教育現場の人の体制では足りないんじゃないか。お母さん方もあんまり入っていません。PTAの連合会の偉い人は入っていますけれども、まちまちの声を代弁するようなところは入っていません。いかがでしょうか。
  227. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 限られた委員の中にそういう人を入れるということは非常に難しいことなんです。そういう意味において、公聴会を開くとか、北海道へ行っても九州へ行っても公聴会を開いて、現場の声を必要とするときには現場の方に集まっていただく、あるいはお母さん方を必要とするときにはお母さん方に集まっていただく、そういう場をうんとつくって、そしてその声を集めるというやり方が賢明だと思うのです。小学校の先生がどこかからいらっしゃった場合には、あれは関東地方の何県の先生であって我々現場の声を全部代表していないよという声が必ず出ますよね。そういうようなまた偏見も出ないとも限らない。できるだけ、ですから方々へ行って、公聴会を開いていただいてあまねく声を聞くという努力をしていただく。  そういう意味で、今臨教審は各地を回りまして御意見を直接聞いている。中教審では余りこういう努力はしていなかったと思いますよ、多少はおやりになったでしょうけれども。臨教審はそれが大事な仕事として今全国をお回りになっている。今度仮に成案を得たという場合に、これでいいでしょうかというわけで恐らくまたお聞きになるのではないでしょうか。あるいは、外国に行ってみて外国の制度も勉強してくるということをおやりになることもないとは言えないと思いますよ。そういう意味において手法が前とは違ってきている。そういうことも岡本さん以下はよく御自覚になってやっていただいておるのであります。
  228. 池田克也

    ○池田(克)委員 中教審ではそういう調査をしなかったということですが、そうじゃなかった、四年もかかっています。いろいろな角度の調査研究などがなされていると思いますが、ここではそれは余りこだわりません。  今総理の御答弁を問いておりますと、やはりつくって、それからみんなに見てもらう。参加というものがいかにこれだけ大規模な改革に大事か。これから国鉄の改革の問題なんかも議論されてくると思うのです。結局国民の協力、それが本当に得られなければ何事も進まないんじゃないかな、特にこれは財政の問題で私言えると思うのです。  これは私の感想なんですけれども、今国会を見ておりまして、歯どめ国会なんて自分で思っているのです。非常に歯どめ論が多いのですね。要するにGNPの一%の問題も、日本の国防というものをどの程度規模にするか、これ以上いけば果てしない、その分だけ民生の予算が削られて、福祉が削られて暮らしが苦しくなるんじゃないか、税金がふえるんじゃないか、景気が悪くなるんじゃないか、こういう問題で国民はやはり歯どめというものを期待をしている。  この教育基本法の問題も、私たちが教育基本法をどうしても守ってほしいというふうに言ってきたのは、これを一つ外せば確かに自由化問題が進みますけれども、そうなると、やはり行ける子と行けない子ができてくる。選べる権利は出てくるけれども、遠く引っ越した場合にそれに合うような学校がすぐそばにない、遠くから通わなければならない、お金もかかる、いろいろな点で不自由も出てくる。私は、やはりそういう点では本当に、どこへ行っても基本的な教育が用意されている今のような体制というものに対する国民の支持は多いと思うのですよ。そういう点から、教育基本法についてやはり守ろう、これは最大限守ろう、総理もこれは答弁されまして守りますとおっしゃった。私は大変な英断だと思っております。  GNP、教育基本法、あるいは今度は「増税なき財政再建」、これまた一つのこれからの経済運営として大きな歯どめで、この問題がここでも議論されている。この三つの歯どめをめぐって、これを変えなきゃならないか、あるいはこれで何とか努力できるか、非常に大きな議論がずっと続いてきているのですね。私は、今の総理の御意見を伺っておりますと、教育基本法すれすれじゃないかな、できる者はできる、あるいは親の選んだところにはやはり行ける、そういうかなり自由化というものについての意向が色濃く出ているな、こんなふうに伺っていたわけなんです。  ちょっと問題を変えまして、今の問題も後からお伺いをしたいところなんですけれども、これは文部大臣にお伺いしたいのですが、この間、第三部会が高等専修学校の大学受験資格授与を発表されましたが、こういうことを文部省は事前に承知していなかったのか。高等専修学校の大学受験資格を与えるというふうに発表したのですが、第三部会が発表したこの行き方、これは文部省は事前に御了解を持っておられたのでしょうか。
  229. 松永光

    ○松永国務大臣 臨教審の審議につきましては、臨教審の先生方が自主的に課題を決め、自由濶達に議論をしていただくということでありますので、私どもの方で事前に了解するとか知るとかということは問題にしておりません。  しかし、その問題につきましては、文部省自身も実は理科教育及び産業教育審議会で検討課題として検討をお願いしているところでありまして、近々その答申が出ることになっております。
  230. 池田克也

    ○池田(克)委員 今度は臨教審にお伺いしたいのですが、先日文部省が大学教員の社会人登用について発表したのですが、この件は臨教審としても関心は持っていたはずなんですが、事前に連絡があったでしょうか。
  231. 齋藤諦淳

    ○齋藤(諦)政府委員 特に事前に連絡を受けておりません。
  232. 池田克也

    ○池田(克)委員 私見ておりまして、臨教審と文部省の間に教育に関するテーマの一つの区分があるんだろうかという心配をしているわけです。今お話が出ましたように、臨教審でいろいろ言っていることについて文部省は建前として関与しない、別個に研究はしているけれども。別個に研究していない問題がもし出たらどうなるのか。関与しない。したがって、ぼんぼん新聞には部会長の、あるいは個人のメモが出てきます。今度は、大学はみんな共通一次試験は民間も入るのだ。新聞を見ているとそうなるかのような印象を受けるわけです。議論は結構だと思うのです。しかし、制度の問題のように国民は受け取りはしないかなという心配をするのですね。  ですから私は、今のように大学の教員の社会人登用について文部省が発表した。臨教審は関与していない。当然これも議論しなければならない分野の問題だと思う。先ほどの専修学校の大学受験資格の問題は、これは文部省がいろいろと、お話が出ましたけれども、臨教審が先にやった。文部省は一緒にやっているけれどもまだ発表の段階じゃなかった。やはりあちこちで、両方からいろいろな発表が出てくるのです。文部省が発表したものは通達として具体的にきちっと徹底をされていきますが。私は、議論がいろいろ百出するのは結構ですが、文部省と臨教審の間に一つの区分、これとこれはこういうふうにした方がいいという区分を総理が指示をなさっていかれるべきじゃないかな。もう既になさっているかもしれません。  法律を見ますと、文部大臣はこの臨教審にどういう形でかむのか、余り記述されてないのです。やはり総理の諮問機関であり、そして文部大臣は大事については相談にあずかるようになっていますが、途中の動きについては調整するような仕掛けになっていない。この辺について、毎日毎日教育は生きて動いているわけでありますから、私はそういった点では、短期的なものはこう、中長期にはこうというふうな分け方、あるいは具体的な問題があったときに相談する、こういう機能はあってしかるべきじゃないかと思いますが、総理、いかがですか。
  233. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 原則的に、また法律上、臨教審は文部省から独立した機関でありますから、臨教審独自の見解に沿って意見も述べ、また結論もまとめてしかるべきでありまして、一々文部省に相談する必要はない、そう思います。今後も、一々文部省に気兼ねしたり相談する必要はありません。  そのかわり、良識を持って、国民全体がなるほどと思うような答申をつくる責任はありますね。文部省はまた、設置法以下文部省の法律に基づきまして毎日毎日進行している行政を担当しているわけでございますから、行政は瞬時もゆるがせにできないことでありますから、改革すべきものは法律に従って改革し得るものである。その間における臨教審と文部省との間の調整という問題は、むしろ文部省側がこれはやるべきである。文部省側が行政の責任者として、そして自分が今やっている行政というものと臨教審の動向というものを踏まえながら、気を使って話をするとか相談するとかというのは文部省側がやるべきものである、そう私は思っております。
  234. 池田克也

    ○池田(克)委員 私の手元に文部省が資料をよこしまして、アンケート調査があるのです。これによりますと、五十九年の三月、割と新しいアンケート調査なんですが、新聞各社あるいは通信社も入っておりますが、非常に多くの共通項がありまして、まず教師の質の向上あるいは道徳教育の充実、大学の入試制度、偏差値による進路指導、塾通い、教員養成制度の改革、教育費の負担増、こういうふうな、ずらっと並べますと、共通しているのは道徳教育という指摘があるんです。  この道徳教育については、先ほどこの二つの資料をごらんいただきましたけれども、中教審も臨教審もなかなか文言として触れてないんですね。私はこの道徳教育、非常に大事だし、道徳、しつけ、これについて両者とも、大事なことはわかるけれども、具体的にじゃどうしたらいいかという方策はなかなかないんだ、こういう状況なんですが、これは教育改革をお進めになるお立場から、総理、どのように道徳教育をお考えになっておられますか。
  235. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 道徳教育は非常に大事でありまして、今度の臨教審におきましても必ず取り上げられると確信をしております。  私は、国会でも申し上げましたが、やはり人間として生きていく基本の型を小学校、中学校の時代には徹底的に教え込む必要がある、それが人間社会だ、動物と違うところだ、そういうことを申し上げておるので、人間として生きていくための基本の型というものをやはりどういうふうにして教えていくか、これはやり方はいろいろあると思いますが、そういう必要性は非常にあると思っております。
  236. 池田克也

    ○池田(克)委員 次に、教育改革のプログラムについてお伺いしたいのです。  六月に入試改革などを柱とした第一次答申が出るわけでございます。この答申後の処理はどんなふうにお考えでしょうか。
  237. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 答申が出ましたならばよく検討いたしまして、法律にも書いてありますように、これを尊重して、そして検討の上、実施すべきものは実施する、そういうことでございます。
  238. 池田克也

    ○池田(克)委員 必要な改革のための法律が出れば、秋の臨時国会ということも考えられますが、可及的速やかに総理としてはそれに手をつけていこう、あるいは三年後に答申がずっと完結していくわけですが、それまで待って、そこから動くか。こういう問題について、非常に重要な先ほどのようなかなり国民が何とかしてほしいという問題が山積しているわけですから、私としては、そういう問題から手をつけて、次々に法律を上程して解決を図るべきだ、こう思いますが、秋、ことしじゅうにも何か新しい一つの法律を用意して、それに手をつける、こういうふうに期待をしていいんでしょうか。
  239. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、前から随時答申を出していただいて結構です、急ぐものは中間答申を先にお出しいただいても結構です、出していただけば早速取り上げまして、これを検討して、そして早くやる必要があるものはなるたけ早くやるように努力したい、国民が待っているものは早くやった方がいい、そう思っております。
  240. 池田克也

    ○池田(克)委員 二月の十一日に臨教審の第一部会がメモを発表いたしました。二泊三日の大変精力的な集中審議で、今まで例のなかったようなことなんですけれども、その中にメモが掲げられておりまして、画一主義から個性主義への移行、こういう問題が出てまいりました。  個性主義という問題につきましては、きのうでしたか、第一部会長の天谷さんの新聞のインタビューがございまして、京都座会の提言とかあるいは香山健一第一部会長代理の主張を自由化だとするならば、個性主義と中身はかなり共通している。私はいわゆる自由化、塾も学校にしていい、学校へ行かなくても、親が教育してもそれを学校卒業と認めてもいい、あるいは社会人が教育者として初中教育の段階から関与してもいい、いろいろな提言がございます。びっくりするような自由化論でございますが、そういう京都座会の提言や香山健一第一部会長代理の主張を自由化とするならば個性主義と同じだ、こう天谷さんが言っているわけですね。  私は、このメモを見、新聞の報道を見る限りでは、一時さまざまに言われました自由化、しかし、これが反対論がやはりあった。第三部会などはかなり反対をしておられました。そういう点から、少し間をとって、妥協の産物として個性主義と出てきた。少しトーンが変わったかなと思いましたら、いや、一向に変わらない、やはり自由化は自由化なんだ。こういうことになってまいりますと、これはもう教育基本法の問題に触れてくる問題なんですね。  したがって、先ほど総理の果断に行うんだ。言葉は適切――マスコミが報道しているんですから、荒わざ師という、この荒わざ師はこの第一部会の面々なのかなという気も私は失礼ながらしたりして、確かに壁を破るこの御努力は私は感心しますが、反面、もっと慎重に構えていかなければならない部面もあるんじゃないか。  こういう点から、この教育基本法の第三条の「ひとしく」そして「能力に応じて」、この部分がやはりひっかかってくるわけなんです。これは私、非常に大事な文言であって、日本の教育をずっと今までこういう状態にしてきた一つの基本はこの教育基本法にあると思う。さっき総理がそれじゃだめなんだ、何とか殻を破ろうとおっしゃっていたゆえんもその辺にあるんじゃないかと思うのですね。したがって、最初に、総理がこの教育基本法の第三条をどういうふうに認識しておられるのか、それからお伺いをしたいと思うのです。     〔原田(昇)委員長代理退席、委員長着席〕
  241. 茂串俊

    ○茂串政府委員 総理お答えになります前に、教育基本法の一般的な解釈ということで私から若干御説明を申し上げたいと思います。  教育基本法の第三条一項は「すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならない」云々と規定しておるわけでございますが、ここで言う「ひとしく、」というのは、差別なくとかあるいは平等にという意味でありまして、この第三条二項におきましてはこれを敷衍して、人種、信条、性別等によって教育上差別されない旨を定めておるわけでございますが、これらは例示でありまして、教育を受ける能力は別として、これら以外の事由による差別であっても許されないものと考えております。そしてこの規定において「ひとしく」なければならないとされておりますのは教育を受ける機会についてでありまして、教育内容を画一、平等にすべきだということを意味するものではないと解しております。  それから次に、同じ三条一項の「能力に応ずる」という言葉がございますが、これは教育を受けるに適する能力に応ずるという意味でございまして、ここで言う「能力」とは、教育を受けるに足りる精神的、身体的能力を意味しておるわけでございます。そして「能力に応ずる教育」というのは、国民それぞれの教育を受けるに必要な能力に見合った内容、水準の教育という意味と私は解しております。  以上でございます。
  242. 池田克也

    ○池田(克)委員 私、今御答弁を伺いまして、最初に総理にこの問題の認識についてお伺いしたんですが、総理は教育基本法を守ると、ここでも何度も答弁しておられます。余り繰り返しになって恐縮なんですが、この場で、話の流れの中から教育基本法を守るというふうに私、理解してよろしいのか、再度確認をさしていただきたいと思います。
  243. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今、三条に対して法制局長官が御答弁申し上げましたが、私も同様のことを申し上げようと思っておったのです。  それで、教育基本法を守るということは、前から申し上げているとおり守ってまいりたいと思っております。
  244. 池田克也

    ○池田(克)委員 そうしますと、今の法制局長官の答弁を伺っておりますと、機会の均等というのは、場を与えればいいんだ、中身は必ずしもひとしくなくてもいいんだ、これは非常に重要な部分だと思うのです。  前に、たしかテレビだと思うのですけれども、教科書あるいは教科内容、これはもう断然ゆるがせにできないんだ、こう文部大臣はテレビでもってお答えになっているのを私拝見しまして、教科書というのは非常にきちっと守っていきたい、あるいは教科内容、カリキュラムですね、これを守っていきたい、こういうような御趣旨だったと思うのですが、今の法制局長官の答弁を伺っていますと、ちょっと食い違うのじゃないでしょうか。食い違いませんか、御答弁いただきたいと思います。
  245. 松永光

    ○松永国務大臣 法制局長官のただいまの答弁と私の考え方は全く一致しております。  私の申し上げたことは、初等中等教育、なかんずく義務教育というものは国がその責務において行う教育でありますから、しかも普通教育でありますから、日本国民である以上、その子供に対しては全国的に同一水準が保たれるようにしていくのが義務教育の本質である。でありますから、教科書あるいは教育課程の基準、こういったものは国が責任を持って定める必要がある、こういうふうに考えており、そのように申し上げたわけであります。
  246. 池田克也

    ○池田(克)委員 そうすると、今の法制局長官の教育内容は自由だというふうな受けとめ方、自由だというふうにたしかおっしゃったと思うのですが、これは、今の文部大臣のお話から伺いますと、教育課程というのは、責任を持って課程は決めてある、教育基準は平等にいくように決めてある。しかしながら、それを実際に教室でそのとおり教えなくても、ここははしょって、ここは詳しく、そういう状況の変化があっても構わない、こういうことですか。ちょっとその辺確認したい。
  247. 松永光

    ○松永国務大臣 教育課程の基準、これにつきましては文部省がその責任において決めるわけですね。その基準に基づきまして、具体的な子供にどういう手順でどういう――内容の難しいものもあれば易しいものもあるでしょう。相手が、子供が理解能力があればすっと理解させることができる。しかし、理解能力に達してない子供であるならば、繰り返し繰り返し教えてやらなければならぬでしょう。そういうやり方はその子供に応じてやってもらいたい、こういうことなんでございまして、どの子供も同じように教えなければならぬということはないはずだと私は思います。そういう意味で、法制局長官の意見と私の意見との間には食い違いはない、こういうことでございます。
  248. 池田克也

    ○池田(克)委員 これは今までの解釈、今までの文部省の指導と若干食い違っているのではないかと思うのですね。要するに、教育現場でいろいろと議論されてきたのは、やはり何年度においてどれとどれを何時間教えなさい、基準ですね。その中身は今度は教科書でかなり詳細に記述されている。教科書の検定が問題になるのは、もう本当にかなり詳細に、字句まで、二年前ですか問題になりましたけれども、かなり検定が細かくなされているのです。ですから今までの文部省の指導というのは、時間割りあるいは時間のとり方、教え方、かなり厳しく、しかもこれは法的拘束性があるというふうになってきたわけですね。これを文部省として、今の考え方に沿っていくならば、根本的に変えよう、こう考えていいんですか。
  249. 松永光

    ○松永国務大臣 教科書につきましては、文部省で責任を持った内容にしなければなりませんので、そこで検定という仕組みがありますし、それを採用するのは都道府県の教育委員会が採択をするわけでありますが、その教科書に基づいてどういう手順で、どういうやり方で教えていくかということは、各教師がその子供の学力の到達度に応じて教えていってもらう、こういうことでございます。
  250. 池田克也

    ○池田(克)委員 私は、この問題は非常に大事な部分だと思います。結局、教育の平等、これは非常に大小なことで、この教育基本法の第三条は今日までの教育を象徴してきたと私は思うのですね。ですから、「すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならない」。確かに機会は場であります。しかし、場だけではなしに、その教育内容も私は含んでいる。どこへ行っても、例えば引っ越しをしてどういう先生にぶつかっても、まあ等しい。私は、その先生を選ぶ権利が親にない。子供にもない。引っ越しをしていった、どういう先生だった、こういう先生だった、こういう先生につきたい、こういう先生、この先生は算数に詳しい、この先生は理科に詳しい、いろいろあろうと思います。この先生はもう怒って厳しいのだ、この先生は優しい。よく私たちも地元で言われます。当たり外れなんという言葉が父兄の間にあるのです。これは大臣も御存じでしょう。生徒の側は、そういう選ぶ状況にないのですね。その状況にない。だから、等しく能力に応ずる機会の場を与えるということは、学校の先生の教える内容にも、濃淡はあれども、基準を設け、これについて等しいという一つの状況の中である程度の指導、調整というものがなされるべきであって、今の法制局長官のおっしゃった内容は自由だという、これに無限性はない、有限性があるんじゃないか、こう私は思うのですが、大臣と法制局長官から順次お伺いをしたいと思います。
  251. 松永光

    ○松永国務大臣 私は、教育基本法第三条、この解釈は、先ほど法制局長官が申されましたようにその能力に応じて等しく教育の機会が与えられなければならない、この解釈の仕方は法制局長官の解釈と同じであります。  問題は教育水準についてでございますが、これは直接的に基本法第三条というよりは、教育基本法は全体として教育水準の維持向上というのを考えておるわけでありまして、しかもそれが国の責務において行われる義務教育の場合におきましては、民主的な国家として日本が発展していくためにも、一定水準の普通教育というものは国の責務において行わなければならない。となってきますと、教育の水準につきましても全国的な平準化がなされるように措置をしなければならない、こういうことで、教育基本法を受けた学校教育法におきまして、教科書の問題あるいは教育課程の大枠を決める指導要領等の問題がきちっと定められておるわけであります。それに基づいて水準の維持向上がなされるように現場の教師においては教育をしてもらいたい、こういうことなんであります。  ただし、その現場の先生が教育をする場合には、その基準に合う範囲内において、それぞれの子供の学力の到達度あるいは理解力、それはそれぞれでなければ実際には親切な教育にはなりません。同じ小学校の生徒であっても、うんと進んでいる子供もあれば、あるいはおくれている子供もあるかもしれません。それを先生が同じように教えたんでは実際は教育効果は上がりません。したがって、その基準の枠内でありますけれども、それぞれの子供の学力の到達度、理解の到達度に応じて親切に教えていくというのが望ましい教育ではなかろうか、私はこう思っておりまして、そう申したわけであります。
  252. 池田克也

    ○池田(克)委員 文部大臣のお話を聞いておりますと、やはり基準がある、そして基準の限度の中で一つの裁量があるというふうに受けとめるのですね。今の法制局長官は、内容は「ひとしく」というところに――内容は自由だというふうにおっしゃったんですか。私、その「ひとしく」というのが場の問題であって内容の問題とは違うのだというふうにここで答弁を承ったのですが、再度この問題について、無限の自由を持っているのか、この辺についてお伺いしたいと思うのです。  なぜかなれば、今問われているのは、学校へ行かなくて肉宅におっても親が教育をする自由というのもあるじゃないか、親がそういうふうな考え方を持っている家だったならばそれでも認めなさい、こういう提案まで既に出ているのですね。あるいは学校を親が選ぶ状況もあるんだ。そうなりますと、基準というものはもはやどこかへ行っちゃって、内容の自由ということが教育基本法第三条の解釈として認められるならばいろいろな事態が起きてくる、こう思うのですが、法制局長官、再度この問題について伺いたいのです。
  253. 茂串俊

    ○茂串政府委員 より実態的な御説明としましては今文部大臣がお話しになったとおりで、私も全く同感でございます。私は一般的な法律の解釈論として先ほど申し上げたわけでございまして、この「ひとしく」というのがどこにかかるかと申しますと、それは「教育を受ける機会を与えられなければならない」、そこにかかる言葉でございまして、今盛んに委員がおっしゃっております点はむしろ能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないということでございますから、したがいまして、合理的な範囲で能力に応ずる教育というものはいかなるものであるかということになりまして、そこは結局、実態的に文部大臣のおっしゃっているような、より実務的なと申しますか、具体的な制度論になろうかと思います。いずれにしましても、法律の解釈論といたしましては、「ひとしく」というのは「教育を受ける機会」にかかるということを私申し上げたいわけでございます。
  254. 池田克也

    ○池田(克)委員 後段の方に「差別されない。」とありますね。この「差別されない。」というのは、やはり機会の問題だけでしょうか。「すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであって、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。」これは場、機会の差別の問題だけでしょうか。内容にはかかわらないのでしょうか。
  255. 茂串俊

    ○茂串政府委員 ただいま御指摘の三条一項の部分につきましては、これはいわゆる憲法第十四条第一項の法のもとの平等の原則の、いわば教育の面にあらわれた一つの原理原則を規定したものであろうかと思います。  そういう意味で、先ほど申し上げたことに結局返るのでございますけれども、「差別されない。」ということは、あくまでも能力に応ずる教育を受ける機会の面で差別されない、こういう意味でございます。ただ単に形式的に機会を与えればよろしいというのではもとよりないわけでございまして、能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないということでございますから、そこに非常に内容的にも深みのある、意味のある、一つのいわば運用論と申しましょうか、そういったものが関係してくるのではないかと思います。
  256. 池田克也

    ○池田(克)委員 そうすると、水準の一定とか等しい機会とか、こういう問題からいきますと、例えば「学校にいかないと基本的な教育ができないのか。明治、大正時代ではそうかもしれないが、今は塾でも、親が教えても教育はできる。経済的にそうできる人まで、なぜ学校に行く必要があるのか。いろんな道があるはずなのに学区を決めて一つの道を強制している。米が余っているのに配給制を維持するようなものだ。」こういうふうに、発想というのは大変大胆です。大胆ですが、これが必ずしもそのまま答申に出てくるとは私は思いませんけれども、教育基本法に抵触する。私はこれはとても受け入れられない。「一番貧しい人、一番条件の悪い辺地に合わせることが機会均等といえるだろうか。」こういう記述もあるわけなんですね。  私は、今伺っておりまして、若干の幅というものはまだあろうかと思いますけれども、基準というものはきちっと置いて、それを自由だという表現はなかなかしにくい、こう考えますけれども、再度「差別されない。」という部分について、今指摘したこういうようなところは、これでも構わないのか、教育基本法に影響ないか、こうお伺いしたいのですが、いかがでしょうか。
  257. 松永光

    ○松永国務大臣 今先生の読み上げられましたのは、新聞とか雑誌に、いわゆる自由化論者と言われる方の発言の断片だと思います。しかし、私は、その具体的内容につきましては一々チェックする立場でありませんし、自由な論議を臨教審の中でしていただきたい、こういうふうに思います。  ただ、学校教育である以上、そしてまた教育基本法第四条に義務教育として九年ということが明記されている以上、全く小学校、中学校に行かないで、それで義務教育が終わったというふうにすることはできないことでありますし、またそういうことも臨教審の人が言っていらっしゃるとは私は思いません。ただ、先ほどから議論がありますように、現在の日本の学校教育には画一性、硬直性というものがあるわけでありまして、それを打破し、改革をしていくためにはよほどのエネルギーが要る。その硬直性、画一性を打破するための一つの考え方としての表現ではなかろうかな、こういうふうに思いますが、いずれにせよ、臨時教育審議会で自由濶達な議論をされ、審議を深めていただいて、そして臨教審設置法に書いてあるような形で答申が出てくることを私たちは期待をしておるわけであります。
  258. 池田克也

    ○池田(克)委員 大体お考えになっていることが出てまいったと思います。私は先ほどもちょっと触れました、総理、直接御答弁いただけなかったように思うのですが、苦しい生活の中からせめて子供に財産は残せなくても教育だけは財産として残してやろう、こういう涙ぐましい努力を続けている人たちが多いわけです。労働団体の調査でも、年収約三百七、八十万円の家庭で大学へ通っている子供の場合に百三十万円ぐらい教育費にかかっている。仕送りも随分大変なんです。苦しい家計の上から父母両方とも働きに出て、子供は家で勉強のわからないところを相談するすべもなく宿題を広げて眠りこけているという姿を私もしばしば見るわけです。だんだん兄弟が少なくなってきておりまして、母親も父親もなかなか勉強を見てやれない。塾へ行ければいいのですけれども、なかなか費用も大変だ、こういう状態になって、むなしい思いをしているわけです。  私は、そういう状況の中で、この自由化というものが進んでいく中でそういう子供は取り残されていくのじゃないだろうか。いろいろな華々しい競争の社会の中でさまざまなものが用意されていくのは結構です。結構ですが、財政にもそうゆとりがないわけですから、やはり限られたものしかつくられていかないと思うのですね。そういう点で、私は、今の問われている自由化論議というのは理解できる面もありますけれども、反面大変心配な、片方では本当にきちっとした今までの教育水準すら維持できない人たちが出てくるのじゃなかろうか、こういう心配を私は持つのですが、総理、この心配、大きな教育的な関心を背景にして国民の多くの方々が総理考え方を聞きたがっていると思うのです。どういうふうにしてこれを説明するか、御答弁をいただきたいと思います。
  259. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 義務教育は、憲法、法律によりまして国が責任を持ってやるということになっております。そして、学校教育法とかいろいろな法律もできております。学校の教育ということは何を意味するかというと、やはり教室とか校庭とか当番とか、社会性はそこで与えるとか、これも一つの教育であるし、ホームルームというようなやり方も教育の体系の中に入っていると思うのですね。だから、そういうものを全部捨ててしまって、家庭だけでお父さんやお母さんだけで果たしてやっていいものかどうか。学校教育という性格から、その機能から見て、そういうものは改めて判定さるべきものである。臨教審や文部省や、あるいは専門家、法制家等の判定によって、そういうものはみんなで相談したらいい。しかし、そういう議論が出てきたということは非常に硬直性を打破する意味において意味があるし、そういうものはできるだけ、取り入れられるだけは可能な限り取り入れてあげたいという気もしております。自由な空気を学校体系に入れるということもまた大事であることなんです。しかし大事なことは、やはり公教育、義務教育というものは国が責任を持つという基本を忘れてはいけない。それから学校の子供の教育というものは、単に読み書きを教えるだけじゃなくて、子供たち同士でコミュニティーをつくり、また勉強し合うということも一つの大きな要素をなしている、こういうこともまた忘れてならない一面だろうと思います。
  260. 池田克也

    ○池田(克)委員 今もう本当にその子供たち同士のコミュニティーがつくりにくいのです。これは都市だけの問題かと思いますけれども、非常に移動も激しく、そこで生まれてずっと育つという状況にないわけですね。したがって、子供の教育の場としては、昼間は学校、夜は塾というような状況になってきているわけです。ですから、遊び場があればそこで年がさの子供、小さい子供、いろいろと子供たち同士の教育の場もあると思うのですが、なかなかこれが十分に育たない。したがって、いろいろ学校で教わらなかったことを隣のうちの年かさの子供が、どれどれと見てやる、こういう状況にもなかなかない。非常に自然の調整機能というのがなくなっちゃってきていると思うのですね。だから何でも手を下せば、平等に手を下せばそれでいいかというと、私は必ずしもそうと思いません。やはり自由な雰囲気というものも必要だと思います。そこにいろいろ教育改革の悩みがあると思うのですが、今の総理の御答弁の中で、私は、子供たち同士のそういうコミュニティー等もあるという問題ですので、これまた施策として推進していくような方途を講じていかなければこの改革は十分にいかないんじゃないか、この点だけ私の考えを申し述べさせていただきたいと思うのです。  私は、一つのこの問題の結論なんですけれども、先日我が党の矢野書記長質問に文部大臣が答えておられまして、初中教育におきましては、義務教育九年間の区切り、これはもう動かせない、それ以外は、教育基本法上義務教育の再検討とか、自宅学習でも卒業認定できるとか、学校の設立を容易にする種類の多様化とか、私塾の学校化とか、学区制の緩和とか、教育内容の自由化とか、教科書の自由化とか、飛び級、みんなこれは基本法上無理だと、こう答弁をされておりますのですが、私、そばでノートしておりましたのですが、改めて確認をさせていただきたいと思います。いかがですか。
  261. 松永光

    ○松永国務大臣 今、池田先生早口で言われましたので、よくわからなかったわけですけれども……。
  262. 池田克也

    ○池田(克)委員 そうですか。もう一遍言います。  義務教育の九年間の区切り、これはどこで区切ろうとまあいい。これは教育基本法上九年間とうたわれておる、どこで区切ってもいい。それ以外の学校制度、義務教育の再検討、自宅学習でも卒業認定、学校の設立を容易にする種類の多様化、私塾の学校化、学区制の緩和、教育内容の自由化、教科書の自由化、飛び級、これらの問題なんですね。これはこの間、大臣、メモで答弁されたですよ、矢野書記長のときには。
  263. 松永光

    ○松永国務大臣 それじゃお答えいたしますが、義務教育は「九年」と書いてありますから、九年間は学校に行かないと、義務教育が終わったということにはならぬでしょう。ただ、例えば義務教育は九年ですね、その上に高校が三年という現在の制度ですが、合計十二年ですね。それを六・三・三と区切らずに、例えば六・穴と、こう区切りをつけた学校というものが教育基本法上認められるのかという問題でございますが、これは少なくとも九年間学校に行って所要の課程を終われば、義務教育は終わったというふうなことは教育基本法上は認められるというふうに私は思います。  それから、学区制の問題でございますが、これが父兄の側に学校を選ぶ自由がないということで硬直している、画一的だという議論のあるところでありますが、教育基本法上は学区制というのは書いてないわけでありまして、大幅緩和などとなってきますと実際上行政が対応できない。行政が対応できなければ義務教育の水準が低下するおそれがありますので、その意味で、大幅緩和は義務教育の混乱をもたらし教育内容の水準を低下させるというおそれがあるとするならば、これは教育基本法の精神に反することになりはせぬかな、行政が実際上対応できる、義務教育の水準の低下にもならないという考え方があれば、これは教育基本法には反しないというふうに思いますね。  それから教科書、これは先ほど申しましたように、教科書というのは初等、中等教育におきましては教育の水準を維持するために極めて大事なものでありますから、国が責務において行う初等、中等教育においてはきちっと検定をして、学校教育に基づいて決められた採択をして、そして現場の先生にそれをお渡しする、この仕組みは、私は、義務教育水準の維持向上という教育基本法の精神からいって、しかも国が責務において行うという意味からいって、自由にはできない。教育課程の基準をなす学習指導要領、これも教科書と同じような考え方であるべきだというふうに思うわけであります。その他は自由にできる面もありはせぬかな、こういうことでございます。
  264. 池田克也

    ○池田(克)委員 もう時間がなくなってまいりました。  私は、今ずっとお話を伺っていますと、まずやはり大学の自由化というのはかなり合意ができるのじゃないか。それから高校は、いろんな手続もありますけれども段階的にいろいろと工夫ができるのじゃないか。初中教育の場合は、今お話がありましたように、かなり基準もあり、義務教育の責任を国が負っておるわけですから、難しい。私は、大学は自由化賛成。高校は、これはいろいろ検討がありますが、やはり段階的にいろいろ工夫すべきだ。初中教育は、まず今の体制の中で何ができるか十分考えるべきだ、こんなふうに思いますけれども、これは私の考えです、今の自由化論に対して。文部大臣、いかがですか。
  265. 松永光

    ○松永国務大臣 学校教育の硬直性、画一性を打破するためにいろんな議論がなされているわけでありますから、私がここでしゃべったことが臨教審の審議に影響を及ぼすとは思いませんけれども、教育基本法の精神を解釈いたしますと、まあ国が責務を持って行わなければならない義務教育の段階においては自由化できる分野は非常に狭いんじゃなかろうかな、弾力化あるいは規制緩和で対応できる面があれば対応すべきであるというふうに思います。  高等学校、ある意味で大学につきましても、いわゆる自由化を主張される人の御意見もその大部分は規制の緩和や基準の緩和が多いと思うのです。そういうことであれば、この硬直化した、画一化した日本の大学などの改革のためには、思い切って画一性を打破することも望ましいというふうに私は考えておるわけでありまして、その意味ではあなたの御意見と似ておりはせぬかな、こういうふうに思いますが、いずれにせよ、臨教審の審議というものはあくまでも自由濶達にやっていただきたい、それが私の希望であります。
  266. 池田克也

    ○池田(克)委員 今のお話、総理お聞きになっていらしたと思うのですけれども、確かに大学は割と今でも自由化論議が出ておりまして、放送大学なんかはかなり自由化の一つの大きな口火を切るんじゃないかと思うのです。また、昭和六十七年に向けて、十八歳人口がすごくふえてまいりまして、大体平年百五十万なんですが、そのころは二百五万とか、五十万ぐらいふえていくんです。そういう状況をひとつ考えて、随分文部省の方も大学設置審議会等で基準を緩和しているようです。  私は、大学の問題はかなりいろいろ手をつけやすいんじゃないかと思うのですが、問題は、初中教育なんですね。今、文部大臣は、これについてかなり制約があるんじゃないか、こういうふうにおっしゃっておりました。総理のお立場から、先ほどの大胆な教育改革という一つの総理の構想がおありだろうと思いますが、いろいろ手続の問題はあるとして、一つの構想としては初中教育にどうしても改革の第一歩を進めたい、こんなふうなお気持ちじゃないかなという気が私はするのですけれども、その辺の今の段階でのお話を聞かせていただきたいんです。
  267. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 内容に余り立ち入ることは、臨教審を制肘しますから、私はなるだけ避けたいと思いますが、やはり今の硬直化と言われているような要素は思い切って改革する必要がある。それが今の偏差値であるとか、中学課程における偏差値であるとか、そのほかいろんな問題に出てきているわけですから、思い切った弾力化、規制解除、あるいは場合によっては自由化と表現される内容もあえて辞すべきでない場合もあり得る。しかしやはり義務教育の持っておる国の責任という面は、これは目を離してはいけない大事な要素である。  また、一面においては、こういう新しい時代が出てきておりますから、独創性のある、能力のある子はどんどん伸ばしていく、そういう面もやはり国を維持していくためには必要な面もあると思いますですよ。日本人はまねがうまいとばかり言われているので、やはり個性の強い、能力のある、独創性のある子供をどうして生んでいくかということは、日本文明をこれから大いに飛躍的に上昇させる大事なファクターにもなりますから、教育は国家百年の計ですから、二十年、三十年、五十年後をにらんでやはり学校教育というものも考えていかぬと間違うので、そういう点についても余り怯懦にならぬことが必要ではないかと思います。要するに悪平等というのが一番よくないですね。
  268. 池田克也

    ○池田(克)委員 先ほど放送大学の話が出ましたので、一問だけ放送大学についてお伺いしたいと思うのです。  それは放送大学が単位の互換をかなり進めておられます。その単位の互換の行き着くところなんですけれども、端的に申しますと、放送大学で他大学の授業を代替してできる。それがどんどん発展していった場合に、いわゆる大学の教養課程ですね、前期二年間やっておりますが、これをそっくり放送大学で代替する、こういう一つの案が放送大学の当初の構想にもあったと思うのです。  これは文部大臣にお伺いしたいのですが、放送大学、いよいよ四月から開校するわけで、本当はどのくらいの応募があったか、どういう内訳かも聞きたいのですが、ちょっと時間がありませんので、それははしょります。かなり順調だというふうに伺っております。また、大阪でも具体的にやろうかという話も、新聞で学長が言っておりました。このこともお伺いしたいのですが、はしょりまして、他大学と大きなスケールでそっくり教養課程などを放送大学が互換していく、そういう互換。あるいは放送大学で教養課程を受け持ち、あと学部だけ設置する、こういう新しい構想の大学。私、こういうものができれば、大学はかなりコンパクトになりますし、どんどん学生も進んでいけるし、内容が濃密になってくる、こういうふうに思って、これはいいことではないかなと思っておるわけですが、文部省、いかがでしょうか。
  269. 松永光

    ○松永国務大臣 放送大学とほかの大学との間の連携協力を推進していく、そして、その過程において放送大学と既存の大学とが単位をお互いに互換できるというのは結構なことだと思っておりまして、また、放送大学がつくられた一つの理由もそこにあるというふうに思います。ただ、教養課程全部を放送大学で受けてしまって、その大学では教養課程の授業はないんだというのは、大学教育制度そのものに非常に大きな影響を与えるということでありますので、これは慎重に検討しなければならぬ課題だというふうに思います。
  270. 池田克也

    ○池田(克)委員 公取の委員長においでいただいておるのですが、私は教育問題と関連して出版の問題にも関心を持っておる。教育というのは本の読み方、勉強の仕方を教えることであって、やはり基本的には学問の蓄積というものが木となって出版されて、そして、それが自由に供給されて初めていい教育が全うできると私は思うのです。  そういう点で、現在出版の世界でいろいろ言われていますのは活字離れということがございまして、なかなか良書、つまり教養書でかたいものが出ない、三割減だ、こう言われておるわけです。これは状況が非常に深刻になりまして、文庫とか、あるいは雑誌とかは売れ行きが割と順調なんですが、まじめなもの、そして長年かかった労作物、こうしたものは部数もなかなかはけませんし、また、出てもコピーされたりして、非常に難しい状況にある。ですから、出版社としてもなかなかこれを思うように商品化できない。本当に出したいなと思うものもなかなか商品化できない。ということは、結局学問の研究、学問の世界で一生懸命頑張った方々がそれを世に問えない。大変残念な流れというものが一つあると私は思うのです。  そういう点で、どこにどう手直しをする機能があるかといえば、余りないのですね。著作権の方で一つある。これは集中的処理機構などをつくって、コピー公害を防ぐという道が一つあるのです。  もう一つは、公正取引委員会が今まで指導してまいりました本の流通でして、この本の流通の中では、在庫した本は定価を外してもっと安くして、そして本屋、書店、出版社が持っている重い在庫負担を軽くしろ。そうすれば、また少し新しい本の意欲が出るのではないか。こういう若干段階的に値段を緩めるという案が、かつて橋口委員長のときに出たのです。しかし、それは今引っ込めているというふうに私は受けとめているのですが、それであるならば、その代替的措置として、そうした自由に定価をつけていける、そういう制度を自主的規制として公取と業界の間でつくってあるものですから、これについて一問だけ重ねて、二つの要素を申し上げたのですが、公取委員長からお伺いをしたいと思います。
  271. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 すべての出版物が出版と同時に再販契約の対象になる、いわゆる法定再販という言葉がございますけれども、独禁法上そういう取り扱いになっているんだという考え方が一時非常に強うございまして、それが今委員からお話のありましたような、出版物の流通を阻害する面もあったわけでございます。再販契約は、消費者の利益、つまり読者の利益を不当に害する場合とか、生産者、すなわち著作者または発行者の意に反して行われる場合にはいかぬということになっておるわけでございますから、現行の規定の逆用といたしましても、出版物をすべて再販契約の対象にするというのは行き過ぎである、そういうふうに考えます。  そこで、五十四年から五十五年にかけまして一カ年間、現行の出版業界における再販契約書の改正の指導を行ってまいりました。やりましたことは二つでございまして、一つは、今のお話に最も関連が深いわけでありますが、刊行後一定期間経過した本につきましては自由価格本にしてよろしい、つまり再販維持を外すということであります。もう一つは、部分再販、つまり当初から自由価格本として出してよろしい、こういうことであります。そういうふうに再販の契約書を改正をいたしまして、五十六年の九月に、出版物小売業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約というものをつくりまして、公正競争規約に基づいて自由価格本と申しますか、非再販本の流通が円滑に行われますように、出版社、それから版元、小売の書店、読者、これの理解を深めていくような指導を行ってまいったわけであります。  今まで何回かバーゲンブックフェアというものを行ってまいったのもその一環でございますけれども、非再販本の定価表示、価格表示をどうするかというような具体的な問題、それから非再販本のフェアの開催等の問題、これにつきましていろいろ苦心を重ねて――業界でも苦心を重ねてこられたし、私どもの方もいろいろ指導してまいりまして、昨年の十一月あたりから、そろそろバーゲンブックフェアというものが本格化してきたかというふうに思います。百貨店におきましては、ことしになってから非再販本のバーゲンというものが以前よりも盛んに行われておるというふうに思います。  こういうように、出版社、それから版元、取次、小売店、それぞれの理解を得てPRを進めてまいるということで、関係の業界を一層指導してまいりたいと考えております。
  272. 池田克也

    ○池田(克)委員 時間が参りました。きょうは留学生の問題、これはこれからの我が国の国際化に向かって非常に大事な問題で、ぜひお伺いしたかったのです。年々留学生をふやしていかなければならない、そのためにかなり予算もかかる、宿舎も用意し、民間の協力も得なければならない、こういう問題ですが、先般、代表質問で我が党の竹入委員長にも丁寧な御答弁をいただいております。アルバイトの問題等も、なるべく自由にして生活がしやすくなるように要望したいと思います。  また、私学の助成の問題も、だんだんと、さっき申し上げた六十七年に向かって十八歳人口がふえる状況にある中で、私学がそれを受け入れていく大きな任務を持っておるわけでございますので、私学の助成、とりわけいろいろと土地を借りたりして、そして校地をふやす、施設をふやすような場合にも、その税制上の処置などもぜひしていただきたい。こういう出題もぜひここで取り上げたかったのですが、きょうは時間の関係で省きまして、次回また文教委員会等でこの問題をお尋ねしていきたいと思います。  最後に、総理に一言だけお尋ねと確認をさせていただきたいのですが、教育基本法を守る、こういう状況の中で、自由そしてまた個性主義、こういう大変難しい一つの概念をこれから臨教審が議論されていくわけだと思うのです。私は、臨教審と私たち国会とがいろんな意味で議論をし、意見を調整する場があっていいんじゃないかな。本当は岡本会長にもここへ来ていただきたかったのです。答申前なので、今回は遠慮することにさせていただきました。しかし、忌憚のない意見ということで、この問題はうんと議論すべきだと思うのです。  先般、文部大臣の経験者の方がお集まりになりまして、いろいろな意見開陳があったそうですが、私どもも関心を持って法案を作成してきた一人として、野党の側でも、臨教審はお互いに政策を突き合わせて意見を聞くべきではないか。そして、そうした国会も、法案ができてからこうだというのではなしに、その前の段階からもいろいろと意見を述べ、議論していくべきだ、このように考えておりますが、その点についての御所見を最後に伺って、質問を終わりたいと思います。
  273. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 臨教審は、広く国民の皆さんの御意見をくみ上げて意見をまとめていかれると思います。特に国会におきまする議員の皆さん方の御意見は、国民を代表する貴重な意見でございますから、機会を得て両方でいろいろ御懇談をなさる機会をおつくりいただければ、臨教審の側でも喜ぶのではないかと思います。
  274. 天野光晴

    天野委員長 これにて池田君の質疑は終了いたしました。  次に、細谷治嘉君。
  275. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 私は、地方行政改革問題と、それから今度の予算の一つの焦点になっております補助金カットに関連する地方財政、こういう問題に絞って質問したいと思います。  まず最初に総理にお伺いしたいのですけれども、一月二十八日の本会議における我が党の石橋委員長の地方行革に関連した質問で、「政府におきましても、地方に対する国の関与あるいは必置規制等の整理合理化に続き、機関委任事務の見直し、地方への権限移譲等今後とも強力に推進する考えでおります。」こういうふうに答えております。  そこでお尋ねいたしたい点は、今度の政府提出の法律案の中に、まだ出ておらないようでありますけれども、地方公共団体の事務に対する国の関与等の整理合理化等に関する法律案、こういうものが予定されて、三月上旬には国会に提出する、こういうことになっているようであります。これと、今私が読みました、本会議における総理言葉、どういう関係になるか。言ってみますと、この法律案というのは国の関与等の整理合理化だ、もっと進んで、ひとつ今度は機関委任、権限移譲、こういうものに積極的に取り組むのだ、こういうふうに私は理解して、そう総理は答えたのじゃないかと思うのですけれども、その辺ひとつ明確にしていただきたい、こう思います。
  276. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 行革を実行していく上につきまして、国の仕事をできるだけ地方に、また国がやっておる仕事は民の方へ移行させる、そういう努力を今までしてまいりました。たしか昨年の国会におきましても、五十五項目にわたる仕事を整理いたしまして、地方の方へお回しするという法律をお願いをいたしまして成立をした記憶がございます。引き続いてそれを実行いたしたいと思いまして、今行革審におきまして機関委任事務の調査をやっております。そして、準備ができたら、しかるべき機会に国会の方でそれを処理していただく、そういう準備もいたしております。できるだけ国の関与を地方に移譲していくという方向で、あらゆる項目に向かいまして点検をいたしております。  今回も、先ほど細谷さん御指摘になりましたように、国の関与に関するものを地方へ移譲していく、それから、機関委任事務その他についても、いずれまた整理の上、地方へ移譲する、そういうような方向で進めてまいるつもりでおります。  具体的には総務庁の長官からお答え申し上げます。
  277. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 総務庁長官を指名したようでありますけれども、その前に、そうしますと、今私が申し上げました内閣委員会で予定しておるような法律案、これは国の関与あるいは必置規制、こういう今まで行革審から意見が出ておる、それに限るのであって、今後行革審から出されるであろう権限移譲、機関委任、そういうものについては改めてまた法律を出す、こういうことになるわけですね。
  278. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そのような二段構えの仕事になっていると思います。つまり、機関委任やあるいは権限移譲の問題は次の回に回される、そういうことになる予定であると思います。私は、それほど明確に強く勉強しておりませんので、そういうふうに覚えておりますが、総務庁長官から正確にお答え申し上げます。
  279. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 基本は、私どもは第二臨調の答申の線に沿って国、地方を通ずる行政改革、こういうことでございますから、御質問の中の機関委任事務につきましても、既に五十五件ばかり過去において立法措置をして整理をしたわけですね。それから許認可もどんどんやっている。ところが、この国会にできるだけ早く御審議をお願いしたい、こう考えておるのは、必置規制、国の関与、こういった面でもう少し地方自治の立場に立って改革すべきものがあるということでございますから、これは今国会にお願いをしたい、かように考えておるわけでございます。事項でたしか八十五項目ぐらいじゃないかなと思いますけれども、大変膨大な法律に関係をする改正案でございます。  しかし、それだけで終わったわけではないわけでございます。やはり許認可の事務等についても、これはもう少し対民間との関係で国、地方ともに整理をして、民間の活性化をやらなければならないという問題がありますね。その際に、中央から地方に移譲すべきものがあるのかないのか、こういうことも検討をしなければならないし、同時にまた、そういった許認可以外に大変厄介な問題は、機関委任事務をどう考えていくのかという問題がございます。これもこれから先の問題でございますから、行革審で十分御審議を願いたい、こういうことで今行革審の答申待ち。大体七月ごろにまとめていただくのではなかろうかな、こう考えておりますから、それらも、先ほど総理がおっしゃったように、すべて二段構えでやっていきたい、かように考えておるわけでございます。
  280. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 行革審の検討を始めた、大体六月くらい、こういうことであります。機関委任というのは、現在では大体五百三十件くらいあるということです。この前、その一割程度――臨調、臨調とおっしゃいますけれども、臨調も各省の抵抗があったのでしょう。その五百三十件ばかりあるうちの一割程度を二年間で対応しろ、こういう程度のことしか書いてないわけですね。中身を読んでみますと、極めてはあっとしておって具体性を欠いておる。これが現状であります。  そこで長官にお尋ねしますが、その行革審が検討しておる五百三十件の機関委任あるいは許認可の権限の問題等については、臨調が検討して結論の出なかったものを踏み越えて、ひとつ積極的に取り組んでいく、こういう基本的姿勢なのかどうか、これをまずお聞きしておきたい。
  281. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 地方自治というのは大変重要なことですから、地方自治の立場に立ってやはりこういった問題にも取り組む必要があるだろう、こう思いますけれども、今何分にも行革審で御審議願っておりますから、その結果を待って、私どもとしてはそれを最大限尊重してやる、こういうのが私どもの基本的立場で、行革審の言わぬことまで踏み込んで、おまえやれ、こう言われると、ちょっとそれは――もしそういう点があれば、事前に行革審の方に、こういうところもありはしませんかといったような御提言、意見を申し上げることはあるかと思いますが、行革審の結論以上、政府独自の判断でやれというのはちょっと無理ではないかな、かように考えます。
  282. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 総理にお尋ねいたしますが、今度の予算編成に当たってかなり機械的な一律補助金カット、こういう問題が起こった際に、これは行革に熱心なサンケイ新聞の記事でありますが、九月の十三日ぐらいですか、各省の次官を呼んで状況を聞いた。その際に自治省の石原次官を首相官邸に呼んで、来年度予算の焦点になっておる国庫補助金の地方負担転嫁の問題について、国と地方の財政負担割合の変更は事務事業の見直しや地方に対する国の許認可権限移譲とセットにして進めるべきなどの考え方示し、国の権限を地方に移譲するための特別立法の検討を進めるよう総理が指示した、こう書いてある。他の新聞にも同じように、かなり積極的に、権限を握る各省庁の抵抗を防ぐため、移譲は一括した特別立法で進めることを大蔵省、総務庁とともに検討するよう指示した、こういうふうに書いてあります。そのとおりですか。
  283. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大体そのとおりです。補助金カットという面が一面出てまいります。地方との間で調整で非常に苦労すると思いました。しかし一面においては、地方が要望しておる権限移譲、許認可事務の地方に対する移譲とか機関委任事務の地方に対する移譲とか、そういうような中央と地方との事務調整という問題も考慮してあげなければいけない。そういう意味で、片っ方ではお金の面、片っ方では事務の面、お金の面ばかりやってはいかぬ、事務の面もやはり同じように同行して行うように、そういう意味で石原君に相談したところであります。
  284. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 そのとおり、新聞に報道したとおり指示した、こういうことであります。  地方の六団体は今月の十五日に、検討しておりました機関委任事務、地方へ百八十件をひとつ移譲すべきだ、こういうふうに報告をしております。本来ならば地方自治の原則、そして行革というのは地方分権ということが大きな柱になっている以上は、機関委任事務というのを思い切って地方に移譲する、あるいは県の権限というものを許認可等も市町村に移譲する、こういう形でやるべきだ、これが地方分権じゃないか、地方自治の問題じゃないか、行革の柱じゃないか、こう言われております。地方の六団体はこういう意見を出しておるということを踏まえて、総理、かなり積極的に、各省の妨害があるだろうけれどもひとつ政府としてやるんだ、総理言葉を言いますと蛮勇を振るってやる、こういう決意のようでありますけれども、その辺いかがですか。
  285. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういう気持ちでおります。そのときも石原君にはそういう気持ちで言いましたし、今でもそういう気持ちでおります。
  286. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 私、今たくさんある許認可なり機関委任の問題を検討をしますと、大体において県にある三百数十件、市町村にある二百数十件、合計で五百三十件くらいですけれども、そのうちの一割五分から二割ぐらいは、当面ちょっと残しておかなければいかぬけれども、その他のものは全面的に地方に移してもいいじゃないか、こういうふうに思っております。そうしてその一五%か一割残すものも、残念なことには今日では機関委任でありまして、団体委任の形をとっておりませんから、その自治体の議会も手を触れることができない、それからさらに監査委員も手を触れることができない。金はかなり地方の団体が出していっておる。これもおかしな話だろうと思うんですよ。これは直さなければいかぬ。ですから、私は機関委任なり権限移譲というものに積極的に取り組んで地方分権の実を上げていく、そういうことが必要だろうと思うのです。行革審を飛び越えてはいかぬ、こうおっしゃっておりますけれども総理は飛び越えておりますよ、思い切ってやると言っているんですから。もう一度お答えいただきたい。
  287. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 機関委任事務についての地方六団体からの意見書は二月十四日に行革審に出ておりますから、行革審としても当然十分これを御審議願えるもの、こう思います。今細谷さんのおっしゃった数は、これは別ですよ。しかし、一般論としては、私はやはり地方自治という立場に立って、この際思い切って整理をする必要はあるだろう、こう考えておるわけでございます。ただ、今細谷さんおっしゃるように、これはなかなか容易でないということは十分私どももわかっておりますけれども、行革というのはやはり国、地方を通じてのことですから、思い切って地方行革というのは地方団体みずからもその気になってもらわなければいけませんけれども、問題は中央各省庁にあることも事実ですから、そこらを十分踏まえまして、機関委任事務、少なくとも地方団体の事務に同化しているようなもの、こんなものは思い切って地方に任じたらどうかというのは当たり前の話でございまして、御趣旨は私は賛成でございますから、その面に向かって努力をしたい、こう思います。
  288. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 そこで、この問題について最後に、ある新聞の一月十七日の社説にこういうことが書いてあります。これは私も全く同感であります。「地方行革の成功に欠かせぬもの」という題で、幾つか拾い読みしますと、「遅れている自治体の存在をとり上げて、地方全体が行革に不熱心だとする意見を耳にすることがあるが、そういう見方は建設的でない」こういうことを社説で指摘しております。そして、この行革を進める一つの柱、これは地方もやることが一つの柱だけれども、もう一つの柱というのは、権限の地方への移譲はどうか。国の権限は一つは関与、二は必置規制、三番目は機関委任、それから四番目は専管事項の四つに大別される。そういうことでありまして、この新聞を読んでいきますと、どうも国は本当にやる気がなくて、まあとにかく必置規制とそれから今行革審で出たものだけをちょっとやって、もう後はお茶を濁してしまうんじゃないか、本当に機関委任なりあるいは権限移譲に取り組まないでお茶を濁して逃げてしまうんじゃないか、こういうことを新聞の社説は憂慮しております。そんなことはないように、特に総理それから総務庁長官、ひとつ積極的に取り組んでいただきたい。これを要望しておきますが、総理いかがですか。
  289. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 御趣旨に沿って努力いたします。
  290. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 それでは次にひとつ進んでみたいと思いますが、政府が予定しております法律案の中に国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案、こういうものが既に一月二十五日に国会に出されております。この法律であります。この法律に含まれておる国のサイドから見た財政的な効果は幾らなのか、地方のサイドから見た財政的なマイナスは幾らなのか、ひとつ大蔵大臣と自治大臣から答えていただきたい。
  291. 竹下登

    竹下国務大臣 お答えいたします。  俗称補助金整理特例法案、これによりまして処理されます金額とのお尋ねでありますが、各措置による節減額等を申し上げます。  一、高率補助率引き下げによる節減額四千四百八十一億円、しかし政令等により措置するものを含めますと五千四百八十八億円。  二、一般財源化等による節減額三百七十八億円、政令等によるものを含めますと四百二十八億円。  なお、交付金化につきましては、従来の人件費、事業運営費ごとに補助金を交付する定率補助金方式を改めまして、標準定額により一括して交付する交付金方式とするものでありまして、交付の方式を変えるものでありますことから、これにより直ちに予算が節減されるというものではありませんが、御参考のため、今回の補助金整理特例法案で交付金化しているものの六十年度予算額を申し上げますと百九十七億円、政令等によるものを含めますと四百二十億円であります。  以上のほか、補助金整理特例法案による措置として、行革関連特例法の延長に係る節減額三千五百六十一億円、これも政令等を含めますと三千五百六十三億円がありまして、補助金整理特例法案全体としての節減額は八千四百二十億円、政令等により措置するものを含めますと九千四百七十九億円となります。
  292. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 お答えいたします。  私ども、こういうような厳しい財政下におきまして、一律カットの問題の処理についてはいろいろ工夫をいたしたのでありますが、結局それに必要な経費というのは国において負担すること、この数字は、とにかく補助金については一年限り、特に経常的経費の一番問題になっております社会保障等の経費につきましては、自治、大蔵、厚生三省におきましてこの問題を一年の間に協議をいたします、こういうことによって、大体その金額の補てんといたしましては、経常的経費について自治省サイドからいいますと二千六百億、それから投資的経費におきますと三千二百億、合わせて五千八百億。そのうちで経常的経費の二千六百億のうち、一千億は交付税の上積みをする、六百億は富裕団体の分である、残りの一千億はとりあえずは建設地方債で処理するが、この問題はこの一年間、先ほど申し上げました自治、厚生、大蔵の協議の結果によりまして、六十六年以後の交付税に加算するというように話し合いをしております。三千二百億の投資的経費、公共事業等につきましては、そのうち二千億と千二百億、両方とも建設地方債によるものでありますから、それを交付税でちゃんと元利償還については便宜を図っていく、こういうような話し合いでございまして、今大蔵大臣の言いました国全般の数字と私どもの方で見ておる数字は若干数字がいませんが、計算いたしますと大体一致いたしますので、私の方の立場からそれを申し上げておきます。
  293. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 内訳まで貴重な時間を費やして……。  今大蔵大臣、自治大臣が言ったように、世間では補助金カット法案、特例法案ということで大体二千六百億と三千二百億、五千八百億だ。そのほかに、今までは例えば文部省の教材費とか旅費というのは補助が出ておったのですけれども、今度は補助なしに地方の方で全部賄えということで一般財源化してしまいましたね。  もう一つは、今まで補助金が出ておったけれども、それはひとつ交付金という形で定額でいこうやということであり、毎年毎年予算案、伸び方は少ないにしても伸びていっているのですから、言ってみますと、年ごとに、定額交付金は定額でありますから値打ちは下がっていっています。年ごとに減額される、こういうことに通ずるわけです。  それから後でもちょっと時間があれば申し上げたいのですけれども。行革で五十七年、五十八年、五十九年と三カ年で、六十年になったら利子をつけてぴしゃんと返しますと約束した。しかも大蔵大臣は、十二月十二日の日に年金問題で私がこの場で大蔵大臣質問したらば、大変美辞麗句で御答弁いただいたのですよ。減らずとも言わぬ、後世の人から批判されないようにいたします、そういうふうに答えておって、二十五日に大蔵原案が出たら、今言ったように三千数百億をカットしているのですよ。これは全くけしからぬことだと思うのですよ。  これは大蔵大臣に、これははっきりと行政改革という形でやっておることを、そして三年したら利子をつけて返しますと公言しておったのを、ぱちんと今度は切る。十二月十二日に質問したときは、そんなそぶりも見せないかのごとくにしておって、ばさっと切った。これはけしからぬと思うのですよ。  それから自治大臣、あなたの答弁、落ちているのですよ、いやに詳細な内訳まで言いましたけれども。国がやっておる事業、直轄事業というのがあるでしょう。その直轄事業は補助金を減らすというので国の負担分、持ち分を減らして、自分のやる仕事ですよ、減らしておって、減らした分は地方が持てということで、幾ら地方に持たしておる、つけかえているか、六百億。これは入ってないのですよ、五千八百億の中には。こういうやりくりというのは、何のことはない、とにかく六十年度の予算さえつくればいいんだ、こういうやり方だと、こう言わざるを得ないのですが、何かありますか。
  294. 竹下登

    竹下国務大臣 細谷さんに、十二月の十二日でございましたか、あのころ大変私も悩んでおりましたので、言葉を選んだ上にも選んでお答えしたことを記憶をいたしております。大蔵原案内示までに二週間ぐらいしかなかったような感じがいたしますので、あらかじめそのような方向を示唆するほどまでの考え方を私自身まだ固めておりませんでしたので、大変言葉を選んで、美辞麗句というよりも選択した言葉を申し上げたような気がしております。  行革特例法を結論として一年延長する、こういうことになったわけでありますが、私も本委員会、当時の特別委員会委員の一人でありました。したがいまして、この問題につきましてはいろいろ経過を承知をいたしております。  当時は昭和五十九年度までに特例公債依存から脱却することを目標としておりました。したがって、すべての区切りとして昭和五十九年度まで、こういう考え方が基本に存在しておったことは事実でございます。この目標実現のために最大限の努力を傾注してきたところでございますが、それこそ第二次石油危機に伴います世界経済停滞の長期化、世界同時不況、そういう予期せざる事態に直面したこともありまして、租税収入の伸びが急激に鈍化したことなどからその実現が困難となったことにあらわれておりますように、大変な、いわゆる特例法制定後の特に二年間とでも申しましょうか、歳入欠陥をもたらしたような状態になったわけであります。  したがって、そういう状況から、財政収支の改善を図る見地から、やはり行革関連特例法による特例措置については一年間、すなわち昭和六十年度における所要の継続措置をお願いをしなきゃならぬようになった、こういうことが偽らざる実情でございます。これにつきましては、まさにぜひとも御理解を賜りたい、このように考えます。  それから、これもたしかあのときは森井忠良さんの質問に対しての政府統一見解等もございますが、その問題につきましても、いわば年金国庫負担金の減額分の積立金運用収入の減額分、このものにつきましても一年間今申しましたと同じ趣旨で継続する措置をとらせていただきたいということに、細谷さんとここで回答した二週間後に大蔵省として決断をしまして、そして各省との、それまでもやりましたが、最終的な詰めに入った、こういう実情であります。
  295. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 一国の大蔵大臣ともあろうものが、十二月の十二日には文学的な言葉表現して、やるのかやらぬのかわからぬ。しかし新聞はその翌日の記事には、大蔵大臣は大体行革特例法の六十年度の返済、これをもうやらない、延ばす、こういうふうに書いておりましたよ。新聞の記者さんはそう読んでいるのですよ。しかも、これもあなた、大蔵大臣としては見識を欠くと思わなければいかぬ。自分の方の出す補助金は削っておいて、自分の方がやる事業については地方の方から今度は逆に取るというのはどういうことですか。これもおかしいと思うのですよ。  自治大臣、これはオーケーしているのですか。
  296. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 先ほどお話しになりましたうちで公共事業六百億の問題、これは五千八百億に含んでおります。数字の問題だからひとつ事務当局からお答えします。  なお、先生の質問ございました旅費、教材費に係るそういう問題、五十九年度予算額三百五十三億の旅費、教材費に関する義務教育国庫負担金、こういうものにつきましては今回一般財源化することになったわけでありまして、これは、かねてから地方団体が要望しておりました地方団体の事務事業として定着している補助金等につきましては、地方団体の自主性という見地から一般財源化すべきであるという見地でしたわけでございます。  数字の点はひとつ局長から。
  297. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 詳しく詰めたいのですけれども、時間がありませんから。  大蔵大臣に。八月のシーリングによる概算要求をする際には、大体概算要求基準というのは五月か六月に決まっておるのですよ。そのとき示されたのは生活保護等、厚生省を中心とした補助金のカット。それは一割。例えば生活保護は八割の国庫負担でありますから七二%というのは世間の相場でしたよ。ところが、大蔵原案が出てみたら七〇%にさらに切り込んできたのですね。そして、当時は二千三百五十億くらいと言われておったのがその後にふえたのはどういうことかというと、義務教育国庫負担もカットいたしますよ。これは文部省が大分頑張ったんでしょう。文部省、頑張った。私は、文部省、大したものだと思っていますよ。それで教材費と旅費については地方が全部持てといって一般財源化しました。そして大蔵省がねらっておった、先生方の給与を含めた半分のことについては手をさわらせなかった。これはやはり大したものだ。  ところが、厚生省の方はどうかと申すと、一番カット額の多い厚生省、生活保護等社会保障関係、そういうものを削っておいて、それで公共事業費も削ったのです。言ってみますと厚生省を削る、これは最初発表したシーリングの中身。その次には文部省を削る、これは二番日の第二段。三段目は公共事業を削るといって建設省等に来た。  こういうめちゃくちゃな、三段階で攻めなければいけなかったのですか。それならシーリングのときに示しておいたらいいじゃないですか。どうしてそんなに、最初シーリングで概算要求さしておいて、後は大蔵原案が出る過程において、十月末から十一月ごろばさんばさんとやったんですか。これは予算さえつくれば他省のことは考えておらぬ、国民のことも考えておらぬ、地方のことも考えておらぬという姿勢にほかならない、こう言えますが、いかがですか大蔵大臣
  298. 竹下登

    竹下国務大臣 これは基本的に申しますと、結局地方といわゆる国との負担区分、そういうことになろうかと結論は思います。いずれも公経済を支えるいわば車の両輪であるという考え方に立って、結論を出したわけであります。  そこで、今おっしゃいました一割ということなら七二だ、こういう御議論でございますが、やはり補助率というのは〇・九を掛ける、引き下げの方法として、「現行の補助率体系をいたずらに複雑化させることのないよう極力配慮すべきである。」という財政審報告がございました。したがって、それを念頭に置きまして、結局十分の八は十分の七、四分の三は三分の二というふうに、おおむね一割程度低い率にスライドさせる方法をとったものでございます。したがって、物によりましては、一一・一%でございますとか一一・七%、一二・五%というようなものも、それぞれ丸くいたしますとそのような形が出てきたわけであります。
  299. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 ちょっと納得できない言葉であります。  厚生大臣にお尋ねしたい。  あなたの方が削られた――削られたという言葉を使います。削られた大きなものは、これはもう一千億を超しているのですね。生活保護ですよ、生活保護。ところが、第二臨調の五十六年の答申の中でも、第二、第三の答申、最終答申、それに基づく予算措置の閣議決定でも、すべて括弧して、生活保護費等は除くと書いてあるのですよ。ところが今度は、厚生省の方では、大蔵省もそうでしょうが、そうやって生活保護を削ってきた。臨調の精神の中では生活保護を全部外しておるのですよ。五十七年も五十八年も五十九年も、そうして六十年の予算編成のシーリングを決定するときの閣議でも、そのことを確認しているのですよ。どうしてそれを削ったのですか、おかしいですよ。
  300. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 昭和五十六年の答申につきましては、御指摘のとおり、生活保護費等については除外することとなっておるわけでございますけれども、その後、別の答申として、昭和五十八年につきましては、生活保護費等について具体的な整理合理化方策を示すとともに、高率補助の引き下げについても提言されておるわけでございます。  したがいまして、臨調第五次答申、すなわち、昭和五十八年及び行革審昭和五十九年の御意見を踏まえまして、各省が足並みをそろえて生活保護費を含め高率補助金全般の削減を行うこととなったわけでございます。これは国と地方との負担区分についての変更でありまして、私どもといたしましては、生活保護費全体の規模が縮小を来さないよう、今後とも被保護者に直接影響することのないよう努力してまいりたいと思います。
  301. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 答弁じゃないですよ、それは。昨年の七月三十一日の「昭和六十年度の概算要求について」の閣議了解の中でこう書いてあるのですよ。「補助金等については、別紙基準により、徹底的な見直しを行い、その整理合理化を引き続き積極的に推進するものとする。」こういうことです。別紙を読んでみますと、「その他の補助金等については、昭和五十六年八月二十五日閣議決定」、いわゆる臨調の第一次答申に基づいて「閣議決定「行財政改革に関する当面の基本方針」第一・一・(二)・イに準じ、原則としてその一割を削減することとし、各省庁ごとに総枠を設定する。」と書いてある。今申し上げました「当面の基本方針」第一の一の(二)のイという中には「生活保護費等を除き、」と書いてあるのですよ。読んでごらんなさい、五十六年度のときのやつを。六十年度予算編成のときも閣議決定しているのですよ。  それをどうして、六十年は知りません、ただ後で――大蔵省はずるいですよ。総枠はこれですよ、各省庁で検討して持ってきなさい、こうやっていますから、やむを得ず、大蔵省は総粋は余り厳しいものですから、どうにもならぬで、入り切らぬものですから、恐らく生活保護をやらざるを得ないということで切ったのでしょう。それが臨調の答申に反しているのですよ、確認したことを。どうなんですか、これは。
  302. 正木良明

    正木政府委員 臨調、行革審の御意見で、補助金の整理、効率化、合理化についての御指摘があるわけでございますが、先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、臨調の第一次答申、それから五十六年八月の閣議決定におきましては生活保護を除くとしておりますが、この生活保護を除くと申しますのは、この臨調答申等にも書いてございますように、補助金はいろいろな形態がございますが、個別的な施策を進めているもの、それから生活保護費等を初めとするいわゆる法律で義務的なもの、これについては除きまして、その他の補助金につきまして各省総枠を定めて一律削減をするということでございます。それを先生の今御指摘の、六十年度予算の編成に当たりまして、五十九年七月三十一日の閣議了解、イに準じという、それはまさにこれを指しておるわけでございますが、別途、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、こういう各省別の一割一律削減のほかに高率補助金についての見直しをすべきであるというのが五十八年の臨調答申にあり、さらに五十九年の七月の行革審意見がございまして、ただいま御指摘の五十九年七月三十一日の閣議了解におきましても、著しく高率補助の見直しについてもあわせて実施するという了解がなされておるわけでございます。
  303. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 そんなことはないですよ。私の手元に六十年度の概算要求のあれもあります。五十九年度の概算要求のことも書いてあります。それから五十七年度の概算要求の閣議了解の内容もあるのですよ。全部同じ文章で来ているのですよ。そして臨調の最終答申の中では生活保護費等の補助金についてどう書いてあるかといいますと、補助率をカットしろなんて言ってないですよ。正確にやりなさい、ごまかしに乗っちゃいかぬぞ、そういうことを臨調はきちんと指摘しているのであって、補助率を削れなんて最終答申にも書いてありませんよ。そして毎年毎年、五十七年、五十八年、五十九年、六十年と同じ閣議了解の中身の中で、一字一句変わらない中身の中でこれを削っていくというのはおかしいじゃないですか。納得できません。
  304. 竹下登

    竹下国務大臣 それじゃ、私の方からお答えいたします。  今おっしゃいましたように、臨時行政調査会の第一次答申、これは五十六年七月十日、これに「生活保護費等を除き、」と書いてあるのは事実であります。これは、先ほども厚生大臣からお答えがあっておりましたように、いわばああいう義務的なものを除いて、各省庁ごとにいろいろな補助金が出ておるのを総枠で縛って、それをいわば補助金の金額の一割を削減する、こういうことが五十七年度から実施したところの補助金の金額の一割削減、こういうことでございます。したがいまして、当時考えておりますのは、その生活保護費でございますとかその他ございましたが、そういう問題については義務的経費としてその際の金額の一律削減の中には入っていないわけであります。  このたびは率の問題でございます。したがって、今御指摘がありましたように、確かに、先ほどは第一次でございましたが、第五次答申を御引用なさいました「社会保障」の「生活保護費補助金」というところには、今おっしゃったように、不正受給を防止しろとか、それから真に困った困窮者に対して必要な保護を確保することを基本とせよとかこういうことが書かれておりますが、なお、補助金全体の問題といたしまして、「各種事業に対する補助率は、補助金創設の経緯等から区々に定められている。各種補助率間の整合性確保等のため、全棚補助や著しく高率の補助の引下げ、特例的補助率かさ上げの見直しを含め、補助率の総合的見直しを行う。」ということで第五次答申が締めくくられておるのでございます。  確かに第一次で示されておりますのは、いわば補助率ではなく、各省別の残余の補助金を総括した額で一割を削減しろ、こういうことでございましたので、その後第一次から第五次答申までの変化の中で、先ほど申し上げましたような地方と国との負担、分担等について結論を得たということであります。(「それじゃ、奥野さんだって何と」言うか」と呼ぶ者あり)
  305. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 どう言おうと、経過からいきますと、大蔵省は総枠は確かに示しました、その総枠の中で自分の省でつくって概算要求してきなさい。そして、恐らく厚生省としては手の打ちようがないものですから生活保護費を削らざるを得なかった。ところが、生活保護費はずっと五十六年以来、第一次臨調の答申以来、生活保護費等は除く、これはナショナルミニマムですよ、憲法が保障する。それだから臨調は括弧して、これは除くと書いてあったのですよ。それも手をつけざるを得なくなったから総枠の範囲内でやってきました。大蔵省はそれをやれとは言っていない。各省自由につくってきなさい。つくってきたらそれが入っておった、こういうことでお互いに何か責任のなすり合いでこういう問題を取り扱うなんということは言語道断だ、こう申さなければならぬですよ。  総理、そういう状況になっているんですよ。
  306. 竹下登

    竹下国務大臣 これは特に生活保護の問題は、今のような第一次臨調の際も、いわば額としては対象としないでおります。私は、今回の予算編成に当たりまして、生活保護の国庫負担率に関する論議というのは旧生活保護法制定、昭和二十一年であります。このことは先ほども不規則発言で出ておりましたので、私にこれを詳しく教えていただいたのは本委員会委員、奥野誠亮先生であります。その昭和二十一年の当時からの経緯をつまびらかに私どもは勉強をさしていただきました。したがって、これを確定するということになれば、やはりひとつ審議会等も必要であろう。したがって、ことしの場合は一年限りということにおいてお願いすることにしたのも、恒久化しませんでしたのも、昭和二十一年の「戦争被害者が多く、日本全体が絶対的窮乏の状況にあった。国、地方の財政はともに疲弊していたが、地方財政は特に窮していた」というところから、この安井誠一郎事務次官などがお手がけになったものを詳しく読ましていただいておりますので、この問題につきまして私どもは歴史的経過のあることは十分承知しております。  したがって、あくまでも国と地方との負担をどうするか、ことしの場合はこうしようという形において結論づけたわけでありまして、そして厚生省あるいは文部省、いろいろな省でいろいろな工夫をして予算概算要求に臨まれますのは、むしろこれこそ内なる改革の証左ではないかというふうに、私はそれなりに評価をいたしております。そして末端に対する生活保護費自身は、またことしも規則に基づきましてちゃんとベースアップはするわけでございますから、末端の人にそれなりのしわを寄せるということには結果としてなっておりません。
  307. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 歴史を随分古くたどったようですけれども、二十一年というのは戦争が済んで直後、混乱期ですよ。現在の生活保護法がきちんと軌道に乗ったのは二十六年です。二十一年じゃないですよ。二十六年に福祉事業法という法律ができたときに福祉事務所ができてやっているんですよ。それ以来の問題ですよ。そして現在のように県と市がやる。町村の方は県の福祉事務所に乗る、こういうことになったわけですよ。そんな間違った歴史をどこから習ってきたかわかりませんけれども、これじゃ困ります。しかし、時間が余りありませんから、私はこの問題は納得できません。留保しておきます。これは留保しておきます。こんなばかげたことないですよ。みずから都合が悪いと臨調をけ飛ばす、都合がいいと臨調、臨調と使う、そういうやり方では、これはとてもじゃないがだめだと思います。  そこでもう一つお尋ねいたしますが、これは私どもの田邊書記長がこの予算委員会でもかなり厳しくやりました。このカットについては一年という条件がついているんですよ。そこで条件がついておりますから、一年というのに対して、一年を確認したのは大蔵大臣と自治大臣と厚生大臣だけですよ。他の方の大臣にも関係があるはずでありますけれども、覚書に判を押したのは三人だけですよ、一年。ほかの方の、覚書に判を押していない各省の大臣は、もう一年限りじゃなくてずっといくということを了承しているようですね。  そうすると、もう一つは、この三省の大臣は検討して一年のうちに結論を出すというのです。私どもに対して自民党の政調会長は、一年ということは八月の概算要求があるまでに結論を出して、それによって概算要求してもらうということだ、こう言っております。もう目の前に来ておるのですよ。それは自民党の政調会長が約束しているのですから。これは約束どおりやれますか。その内容ということになりますと、これは後で、まあ時間がありませんけれども、大蔵省が出した「財政の中期試算」、こういうものを見ても、中期試算には、補助率はもとへ戻すという形で試算しているんでしょう、六十一年度は。戻すんですか。しかし、戻すとも答えてない。試算の方は戻すことになっているんですよ。しかし、〇%、三%、五%の場合に、〇%になればそれはなくなるわけですけれども、これは試算ですね、仮計算ですから。そういうことをやりながら、いろいろな、これ一年にも問題があります。これは大蔵大臣、どうなんですか。今言ったような約束は果たせますか。そして、六十一年の試算の中では補助金をカットしないという試算をしているんですから、そういう試算でやるおつもりなんでしょう。いかがですか。
  308. 竹下登

    竹下国務大臣 これは法律が暫定措置として一年と決めておる限りにおいては、後年度負担推計の場合も、これはそれを前提に置くわけにはまいりません。やはり戻った基礎の上に立った試算を出すというのが当然であろうと思っております。  しかしながら、私どもといたしましては、社会保障に係る高率の補助率の引き下げ措置を講ずるに当たりましては、確かに昨年十二月二十二日に、大蔵、厚生、自治の三大臣間で申し合わせを行ったことは事実であります。「この措置は、昭和六十年度における暫定措置とする。昭和六十一年度以降の補助率のあり方については、国と地方の間の役割分担・費用食祖の見直し等とともに、政府部内において検討を進め、今後一年以内に結論を得るものとする。」こういう申し合わせをしたことは事実であります。  そこで、何で社会保障についてこのような申し合わせを行ったか、こういうことになりますが、今回の補助率引き下げの経緯は特に重要な分野であるからであって、他の分野についても、もとより必要に応じ同様に協議し、検討を加えていくということはもちろんのことであります。  言ってみれば、今おっしゃいましたとおり昭和二十六年です。二十一年からこの歴史は始まるわけです。そうしてその長い歴史の中に、少なくとも二十六年からは法律がずっとそのまま動いてきておるわけです。他の施策になりますと、そのときどきの財政事情等に応じて、いわば補助率に変化が生じてきております。変化を生じた経験のあるものと全く変化をしたことのないものというような感じが私どもにあったことも、それは事実であります。したがってこの申し合わせを行ったわけでありますが、他の補助率につきましても当然のこととしてこれは一年限りになっておりますので、私どもとしては、これについてもきちんとした協議を行わなければならないというふうに、十分な検討を進めて結論を得なければならぬということを考えておるわけであります。したがって、一年かかったら戻るのか。一年かかって本来あるべきものを検討する、こういうことで一年間を暫定、こういうふうに決めて御審議をいただくことにしたというわけであります。
  309. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 少しもわからぬ。ただ中期試算では、間違いなくもとに戻す。しかももとに戻すというのは、大蔵省と自治省と厚生省の三人だけで相談すれば、ほかの省はつんぼ桟敷にするというのですよ。これもおかしな話ですよ、総理大臣。あなたの閣内のこれは不統一じゃないけれども、あとはつんぼ桟敷だ、これもおかしなやり方ですよ。  いろいろ問題点がありますけれども、時間がありませんのでもう一点聞きたいのですよ。自治大臣、あなたの部下がこういうようなことについて、――あなたは委員会ごとに断固反対、断固反対と、あなたの前任者である大臣が閣議でそれを認めたわけでしょうけれども、あなたは断固反対と言っておったけれども、最後にはころっとひっくり返っちゃった。反対、反対と言っておったのが一夜にしてひっくり返った。それは自治大臣、実際ですよ。そして本を見ますと、車の両輪論というのが出ましたけれども、この財政危機は車の両輪で国と地方が一体となってやらなければいかぬ、こういう観点であなたの部下の財政局長は、従来ならばかわり財源を必ず要求したんだけれども、今度はやらないであっさりとそれをのんだ、こういうことで自画自賛に近い文章をある雑誌の巻頭言に書いておりますよ。自治大臣、それほど余裕があるのですか、今度の地方財政は。
  310. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 これはもう細谷先生御承知のとおりに、地方債も既に五十数兆の地方債が残っております。また、交付税等につきましても五兆余でございますが、まだ返さなければならぬものが残っております。でございますので、地方財政は一つも緩んだとかそういうことは考えていない、ますます厳しくなってくるというふうに考えております。
  311. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 時間が来ましたから……。  自治大臣、あなたの所管のところの財政局で出している、例えば三千三百の自治体――国は一つですよ、背景は。地方は三千三百ですよ。三千三百の自治体のうち公債費負担比率、いわゆる毎年毎年借金を返していくのが、公債費負担比率が二〇%を超えると危険信号と言っているのですよ。その危険信号に当たるのが、もはや三千三百のうち半分近いのですよ。さっきも新聞に、行革の方では国の方は棚上げしておいて、地方はちょっと悪いといかにもそれが全部であるかのごとく言っておって本当のことをやらないということをある新聞の社説で議論しておったように、地方の平均は、国の借金百二十二兆円よりも地方の方は半分ぐらいだから地方財政裕福論というのがまかり通っている。しかし、子細に三千三百の中身を見てみますと、半分はもはや借金を返すのに二〇%以上一般財源を投入しなければならぬ、こう言っております。  もう一つ、地方公務員の給与は高いと言っている。ラスパイレスは二年前で一〇五・九です。五・九%高いというのでしょう。ところが、現実には国家公務員より低い一〇〇%以下のが、これは五一、二%あるのですよ、三千三百のうち。ですから、地方財政を議論するのは全くの平均論だけで律するのじゃなくて、国と同じ一個体としてずっと動いていっているわけですから、そして行政を進めなければならぬのでありますから、そういう認識をきちんと自治省も、あるいは総理なり大蔵大臣関係省庁持っていただかなければならぬ、この点を特に私は要求して、きょうのところはこれで終わっておきます。
  312. 天野光晴

    天野委員長 この際、小林恒人君より関連質疑の申し出があります。細谷君の持ち時間の範囲内でこれを許します。小林恒人君。
  313. 小林恒人

    小林(恒)委員 行政改革がテンポを進めて、どんどん方向がどちらに行くんだろうか、こんな心配をしながら、この数年間中曽根内閣が特に強調する財政再建、行政改革、こういったものを見詰めてきた者の一人として、まず最初に、総理にお尋ねをしたいと思うのであります。  総理は運輸大臣の経験もおありであり、目下臨調答申に沿って設置をされた国鉄再建監理委員会の中で作業が進行中である国鉄再建の基本認識として、過般打ち出されております臨調答申の分割・民営が軸となった議論が進められているようでありますけれども総理自身の基本認識として、国鉄がいかような形で再建をされることが望ましいとお考えでしょうか。
  314. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府は、臨調答申を最大限に尊重してこれを実施する、そういう基本的態度を決めております。その臨調答申におきましては、国鉄につきましては分割・民営化という方向を示していると思います。その臨調答申を踏まえてできました国鉄の再建監理委員会の方向も、この間出ました大体の方向を見ますと同じような方向を示唆していると思います。  私は、国鉄につきましては、今日に至った理由についてはいろいろ、国鉄の責めに帰すべからざる点もございましょう。しかし、一面においては画一的な公社側度というものが時代の大きなモータリゼーションというものに対応することができなかったというような点もあると思っております。そういう意味において、この膨大なる機構をできるだけ機動的に活性化させるという意味において分割・民営化ということは必然の流れであると考えております。
  315. 小林恒人

    小林(恒)委員 総理は、レーガン大統領との会見を終えて帰国後、一月の六日伊勢に赴いて、ここでいわゆる伊勢談話というのを発表いたしておりますね。特にこの中で、ことしの内政の中軸となるものは一つは物価の安定であり、行革を強調いたしました。行革の中でもとりわけ電電、専売改革に引き続いて国鉄の改革、これについては夏ごろの監理委係員会答申を踏まえて、「自民党や国民の皆さんの声を開き、改革の方向を示したい」、このように明らかにされました。  この真意についてお尋ねをしたいのでありますが、一つは自民党、与党の皆さんと相談をすることについて、政党政治をやっておられるわけですから、それはそれなりに理解をするとしても、国民の押さんの声をどのような形でどの時期に聞こうとしているのか、お尋ねをしたい。
  316. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国鉄監理委員会では、たしか七月ごろ中間答申を出すように承っております。それが出ましたら、恐らく新聞の社説であるとかあるいはテレビ、ラジオの評論であるとか、あるいは国民一般の反応というものが出てくると思います。それらをよく見据えてみたいと考えておるわけであります。
  317. 小林恒人

    小林(恒)委員 具体的に言うと、それでは監理委員会が答申を出す、そのときの反応だけが国民の声を聞く、こういうことになるわけですね。
  318. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一応はそういうことになるでしょう。いずれしかし、法案を作成して国会へ提出するという前には、政党間でいろいろ御相談することもあり得ましょう。それも国民の声を聞くという広義の中には入ってくるだろうと思います。
  319. 小林恒人

    小林(恒)委員 伊勢談話の中で一見、国民の皆さんの意見を聞くという言い方をしてございますけれども、いわゆる略称監理委員会法と呼ばれる法律の第五条の中では、「委員会は、次に掲げる事項に関し、企画し、審議し、及び決定し、その決定に基づいて内閣総理大臣に意見を述べる。」第六条は、その意見の尊重として、「内閣総理大臣は、委員会から前条第一項又は第二項の意見を受けたときは、これを尊重しなければならない。」このように明記をされておるわけなんです。だとすると、伊勢談話は、国民の声を聞くという行為が、今いみじくも言われたように、監理委員会が答申を出したならばその反応をもって国民の意見とするという、こういうことになるのかと思いますけれども、法律上は監理委員会の答申が出てから以降国民の意見を聞くという場がないと解釈をいたしますが、そういう解釈でよろしゅうございますか。
  320. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 監理委員会は国会の審議を経て成立した権威ある委員会でありますし、その委員の任命についても国会の御審議を賜っている、そういう同じように権威のある委員会で、国民代表の機関を経た民主的な手続における委員会であります。その委員会が提出してきた意見書というようなものは、やはりそれなりに重みのある意見書であると考えなければなりませんし、法律でも尊重義務を政府は負っておるわけであります。そういうことも踏まえ、さらに今度は受け取る政府側といたしましては、それに対する国民の反応、広義における国民の反応というものをよく見て、そして万遺憾なきを期すというのが行政の正しい態度であると考えております。
  321. 小林恒人

    小林(恒)委員 日ごろ言われていることと実際にとり行うことがここで明らかに食い違いがあることについてわかりましたので、この点については極めて遺憾な表現だなと、こういうことを特に申し添えておきたいと思うのです。  ただ、今日国鉄が大変大きな赤字を背負うことになりました。これはいろいろな要素を持っているわけですけれども、主として総理の頭の中で描かれる国鉄が赤字に転落をしていった大きな要素は何々だと思われますか。
  322. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり一番大きな要素は、この急速なモータリゼーションに対して国鉄が対応することができなかったということがあります。道路網の普及、自動車の普及、こういうものによりましてまず貨物の面で非常に侵食されましたし、今度は航空機の普及によって長距離のお客様がまた非常にとられてしまった、そういうようないろいろな面で高速度移動時代というものに対応できないという面もあると思います。そのほか、運賃の値上げというものが必ずしもタイムリーに行われなかったという面もありましょうし、あるいはさらに設備投資の問題について、AB線等について国鉄にかなりの負担が来ているという問題もございましょうし、年金の問題もございましょう。いろいろさまざまな要因があると思っております。
  323. 小林恒人

    小林(恒)委員 私は、そういった総理の御見解の基本的な部分というのはもっと奥深いものがあるように思えてなりません。特に、国土総合開発法というものが策定をされて一全総、新全総――新全総の策定が昭和四十四年、三全総が五十二年からという、こういう政府のいわゆる列島総合開発計画、こういったものの中で具体的には交通そのものについての位置づけというのは、社会資本の整備、国内経済の主要な部分を担うものという位置づけがあったはずです。したがって、道路が整備をされ、高速道路がどんどん建設をされていく、港湾も空港もまたそれに加わってくるという、こういった状況の中で鉄道の分野を見た場合、新幹線計画やあるいはこの予算委員会の中でも盛んに議論になっている整備新幹線の取り扱いなど法律までつくって議論を交わしてきたという経過があるわけです。  道路がよくなって車社会に世の中が変わっていくのはごく当たり前のことなんでありまして、その意味では、このモータリゼーションそのものを引き起こした原動力というのは、やはり国土総合開発法に基づく施策の一つ一つ、それに対する関係省庁の的確な対応姿勢、こういったものがなかったから結果として国鉄はモータリゼーションに食われていく、こういうことになるのではないだろうかという、こういう気がします。中でも四全総の策定をどのようにするのかという、こういう問題が一つありましょう。  しかし、一つの区切り点として反省をするとすれば、一つの区切り点をつけるとすれば、三全総の中での交通ネットワークの形成という、こういった分野で大規模プロジェクトが次から次へと企画をされていった、企画のしっ放しで、具体的に省庁に対する施策が後追いになっていったという、こういった経過を総理はお認めになりますか。
  324. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはりモータリゼーションというものが一番大きな致命的なものではないかと思います。これが長続きのする、幅の広い問題としてきていると思います。  そのほかに、やはり公社制度というものは労使関係の硬直化を生んで、そして機動力を失わせるという面もあったと思うのです。ですから、国鉄の改革あるいは公社制度の改革という面については、一面においては経営者側における責任制、そういうものをとらせる、また一面においては、労働者側におきましても今のような拘束力を解放して、そして自由な労使関係というものを回復しつつ両方責任を持ってもらって、そして進めていく、こういうようなことが活力を生む原因になるであろう、そういうふうにも考えているわけであります。
  325. 小林恒人

    小林(恒)委員 運輸大臣にちょっとお尋ねしておきますけれども、モータリゼーションの急激な進行、こういったことが総理の方から盛んに強調されております。道路交通の秩序は維持されているとお考えですか。
  326. 山下徳夫

    山下国務大臣 私も運輸大臣に就任して日も浅うございますけれども、陸海空の交通全般を預かる立場から見回してみた場合には、道路は道路なりのやはり一つの特性がある、あるいは鉄道もそのとおりであり、飛行機もそのとおりでありましょう。そういう意味におきましては、それぞれ特性を持って今日運航されておる、このように申し上げていいかと思います。
  327. 小林恒人

    小林(恒)委員 答弁にはなっていませんね。運輸大臣になって日が浅いからということでは、これはちょっと困るのですよ。説明員の方で結構です、正確に答えてください。
  328. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 先生の道路輸送の秩序が維持されているかという御質問の趣旨がちょっと正確につかみかねますけれども、道路輸送は道路輸送なりに、鉄道輸送は鉄道輸送なりにそれなりの利用者の選択という意味で特性を発揮して、それなりの対応で一応の秩序は保たれておるというのが大臣お答えだと思います。
  329. 小林恒人

    小林(恒)委員 それもでたらめなんだけれどもね。  それじゃ、具体的に質問しましょう。  昨日の朝日新聞の朝刊、「トラック運転手拘束時間 二十四時間以上が五割」というタイトルで新聞記事が出ております。これは運輸労連が常日ごろ改善要求を運輸省にも出し、トラックドライバーの労働時間、これは直接道路運送秩序というところに関連をする、こういったことから過般、昭和五十四年に少なくとも一日の運転時間は九時間以内、拘束時間は一日最高十六時間以内という通達を労働省は出しているのです。にもかかわらず、昨年十一月九日、全国九地区の主要道路沿いにあるトラックターミナルなどで行われた約一万一千二百人からの事情聴取によりますと、出勤と退勤の日時から割り出した事実上の拘束時間は、二十四時間以内がほぼ三分の一、五割強がそれ以上で、最高は九十六時間以上も拘束をされているというのが総体の一割以上にも上ったということが報道されているわけです。これは運輸労連がある日突如としてこういった数字を指し示したのではなく、過去九年間にわたって毎年この種の調査というのはやってきたわけです。その都度運輸省に対しても労働省に対しても、こういう状況だから交通事故は絶え間がないのだ、絶え間がないばかりではなしに――もっとも、こういうことをやれば荷主のニーズには十分にこたえられるのですね。こういったことが正常な商行為と言えるかどうか、また労務管理と言えるかどうかということが問題で、道路の輸送秩序というのは随分激論を闘わせてきた。総理は今いみじくも、国鉄が赤字になった最大の要素はモータリゼーションの進行にある、こう言うけれども、モータリゼーションの進行の実態というのは、私が今指摘をするこういうものなのではないですか。労働大臣、いかがですか。
  330. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 過剰勤務等を含めて労務管理をきちっとするというのが我々の方の責任の分野でございますけれども、国鉄の今日の現状という中に今先生が指摘されたような落差があるのではないかという点については、そのとおりだと思います。
  331. 小林恒人

    小林(恒)委員 運輸大臣も、ここまで言うと大体おわかりでしょう。このまま放置していいと思いますか。
  332. 山下徳夫

    山下国務大臣 実は担当の局長が参っておりませんけれども、いわゆる長距離とか、そういった一つのトラックの運転について過重労働、つまり労基法違反等を起こすようなことがあれば、これは厳重に運輸省の方でそういう問題については注意を喚起いたしておりますし、先般の三重交通の問題の後、担当の局長等を呼びまして慎重にその状況を聞いたりいたしまして、また特別監査もいたしたわけでございますけれども、都度都度そういう問題については厳しく通達をし、また指導をいたしておると理解いたしております。
  333. 小林恒人

    小林(恒)委員 政府各省の認識が大体そんなものなんです。論理的に机上プランを立てれば、三全総の中で道路網を整備しよう、高速道路を一メートルでもうんと延ばそう、こういう議論が出るのでしょう。空港も整備をしよう、全部うまくいっているように思われる。しかし、実態は、トラック業者の実態を見ただけでもこういった中身がある。そういうひずみの中でそれに正確に対応していくとすれば、国鉄職員というのは非常に甘い勤務体系だったことになりますね。しかし、これは少なくとも労働基準法の範囲内で働いていたことなんではないですか。法の範囲で働く者の企業は、旅客や荷主のニーズにこたえることができない。しかし、どんどん法を犯しながら二十四時間以上も五割以上もの人たちが必死になって働けば、荷主や旅客のニーズにこたえることができる。(「そのかわり事故がある」と呼ぶ者あり)事故があるのです。事故がつきものなんです。何ぼ警察庁が警察官を十倍にしたって、こんなものはなくなる代物ではないのです、交通事故は。  こういった実情を正確に見きわめながら、三全総の正確な締めくくりをしなくてはいけないのではないだろうか。だとすると、国鉄のとてつもない累積債務、二十四兆円とも言われる長期債務の残高をどのようにするのかという課題は、国鉄を始末をし、例えば道路輸送に輸送の大半をゆだねるという形になった場合に、またここも膨大な赤字の下敷きになって始末をしなければならない時期が早晩やってくるのではないかという気がします。その意味では正確に交通社会資本整備という立場に立った論文も実は発表されております。発表されておりますけれども、これは事実上机上の空論であって、目下財政再建の途上では、こういった高邁な議論というのはどこかに棚上げをされてしまう、こういうことになるのではないか。これがいわゆる国鉄の企業性と公共性の議論の出発点だと思いますけれども、この点に着目をして、特に総理の所見を求めておきたいと思います。
  334. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国鉄は公社という制度をとっておりますが、一面においてはこれは公共性を非常に重く見た結果であると思います。しかし、現代このような時代に入りまして、モータリゼーションというものによって国鉄が侵食されておるという状況を見ますと、このままではもう時代おくれになって、国民の負担がますます大きくなっていくという現状から見まして何らかの改革を必要とする、そういう意味で臨調もでき、また今監理委員会におきましていろいろ案を練っておるところで、時代の流れであるだろうと思います。したがって、国民の要望に沿って必要な改革はこの際思い切って行って、そして国鉄の皆様方も明るい思いで仕事に精が出せるようにしてあげることが政治の仕事ではないかと思っております。
  335. 小林恒人

    小林(恒)委員 委員長にひとつお願いがあります。私の質問の通告とあわせて参考人の要望をいたしておきました。実は国鉄再建監理委員長の出席を求めておったのでありますが、所用のためにきょうはどうしても出席ができないということで、監理委員会が取り来った正確な議論を推し進めることができません。総理自身が、認識としてことしの内政の主要な柱だという、こういったお考えであり、今後その議論が進んでいくという前提に立つならば、ぜひとも本委員会に国鉄再建監理委員長の御出席を求めて、集中的な議論をする場を求めたいと思うのでありますが、お願いできますか。
  336. 天野光晴

    天野委員長 小林君の御要望にこたえるよう善処いたします。
  337. 小林恒人

    小林(恒)委員 ありがとうございます。後日の議論に移すことにいたしますが、今申し上げたように、監理委員長がいらっしゃらないという状況の中で、大変議論がしづらいのでありますが、監理委員会を統括をする総務庁にまず一つお尋ねをしておきたいと思います。  国鉄再建監理委員会審議は、なぜ非公開でなければならないのでしょうか、お尋ねします。
  338. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 いわゆる八条機関による審議会はたくさんございますが、準司法的な機能を営んでおる審議会には二、三公開の規定がございます。それ以外はありません。それ以外は、やはり審議会の議事運営のあり方として審議会御自身で決定をしていただく、こういうことになっておるわけでございますが、今御質問の公開という意味合いがどういう意味合いか、いろいろございますから一口にはちょっと言いにくいと思いますが、いずれにせよ、会議それ自身の中をその都度公開しろというのは、自由濶達な論議をしなければなりませんから、それは少し無理ではないか、あとは審議会御自身の判断で、結論はもちろん公表されると思いますが、適当な区切り区切りでどうなさるか、これは審議会が御決定をすべき筋合いのものであろう、かように考えます。
  339. 小林恒人

    小林(恒)委員 私は最近大変心配をいたしておるのでありますけれども、例えば審議途上であるからといった理由が一つあるようでありまして、正確な意味で再建監理委員会の中で議論したい、こういう言い方をしつつも、一昨々日からNHKが七分割案、島別分割、本州は四つに分割をする、こういった特集を放映をいたしております。加えて、要員などについては現行要員から十三万人の縮減、こういった放映がなされてみたり、そうかと思うと過般日本経済新聞では、国鉄再建のための一兆円基金構想が一面トップ記事で取り上げられる。さらに、また朝日新聞は、長期債務十兆円は新会社が負担をすることにしたい、こういった報道がなされる。国会は新聞報道の後追いのような形になっておるわけですね。公開ではない、公開ではないと言いながら、過般国鉄が一月の十日に再建のための基本方策を監理委員会に提示した際には、御丁寧議事録まで公開をされる。ここまで議論をされ、さらに、法律によると、委員であるがゆえに「職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。」という条項が監理委員会法十条の五項の中に明記をされているにもかかわらず、監理委員会のメンバーである加藤寛さんはサンケイ新聞の質問に答えて次から次へと内容を発表する。秘密は何にも守られてないわけですね。  昨年、衆参両院の運輸委員会にそれぞれ一回ずつ監理委員長をお招きして議論をいたしましたけれども、ついぞ議事録を公表するということにはなりませんでした。一方では次から次へと腑抜けになってどんどん資料が流れでいっている。一体これはどういうことなんですか。
  340. 山下徳夫

    山下国務大臣 NHKの報道のことでございますけれども、国鉄再建の理想的な姿を模索しながら、日夜御論議をいただいておる監理委員会において、いろいろな御意見が出ることは当然私ども予想するにかたくありません。しかしながら、ああいったかなり具体的なものを、私もちょっとテレビで見たのでありますが、そういうことは私どもには全くまた報告がされておりませんので、これは単に一マスコミの報道としか私には受け取れないのでございます。  なお、加藤さんのことにつきましては、これまた全く私の関知しないことでございます。
  341. 小林恒人

    小林(恒)委員 なぜ関知しないのですか。関知しない理由を明らかにしてください。
  342. 山下徳夫

    山下国務大臣 守秘義務につきましては、監理委員会の監理委員各位がお守りいただくべきことであって、その監理委員会の問題につきまして私がどうだこうだと言うことはいかがなものかと思います。
  343. 小林恒人

    小林(恒)委員 総理、こういう実情というのは極めてゆゆしいことだと思うのですよ。ここまで来たら、少なくとも監理委員会審議過程、議事録は国会に提出してよいのではないですか。
  344. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 加藤さんが「時事放談」なんかで話しているのを私は見たことがあります。しかし、これは個人的発。言でありまして、言論の自由の日本の社会において、そういう個人的意見の表明を抑えるということは適当ではないと思うのであります。ただし、監理委員会の内部において監理委員会の取り決めに従ってやっておること等については、だれがどう言ったとか自分がどう言ったとかなんとかということは言ってないようであります。そういう意味におきまして、あれはやはり許容量の中にあるのじゃないでしょうか。自由社会においてはあの程度の言論の自由というものは私は認めるべきである、そう思います。  また、監理委員会がこの議事録を公表しないというのは、一人一人の、おのおのの委員の意見というものが公正に確保されるように、そういう配慮からやらないので、ある段階になればまとめて委員長なりしかるべき人から議事経過や議論の大要についてはいろいろ公表はされておると思うのです。大体そういう運営を今まで審議会はやってきておるようでありますから、私はそれはそれなりにいいのではないかと思っております。
  345. 小林恒人

    小林(恒)委員 総理自身は、この法律の中でも監理委員会から報告を受けるのですね。報告を受けるのだから、総理は知っていると思うのです。監理委員会審議内容を知っていると思うのです。  もう一つ、マスコミ各社が、七分割案、具体的に十三万人削減、一兆円基金構想、長期債務の十兆円は新会社が負担する、こういうことを盛んに流しているのです。これはだれかが流しているわけですね。守秘義務を守ってないわけですね。この程度のことなんだとすれば、議事録は国会に提出をしたって何の差しさわりもないのじゃないですか。私の質問はこのことを言っているのです。
  346. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは全く推測記事だろうと思うのです。私は全く知りません。運輸大臣も知らないと言っているのですから、ちゃんとした監督機関である我々が知らないのですから。新聞はたまたま、そういう推測記事等を出す場合が多いのでありまして、私は必ずしも新聞について責任を負うという立場にはないのであります。
  347. 小林恒人

    小林(恒)委員 マスコミの皆さんが今、いみじくもどやどやっと笑われた。火のないところに煙は出ないという言葉があるが、そのとおりなんです。それじゃマスコミの皆さんがでたらめを報道したのですか、こういうことになる。しかし、そんなことは言う必要はないでしょう。問題は、私ども会議員の口から監理委員会がどのような審議状況にあるかということは国民の皆さんに今のところ何にも話すことができないのです、わからないのですから。ところが、新聞で、マスコミで次から次へと報道されると、国民総体は、ああ監理委員会はそこまで議論をしているんだな、例えば野党が反対だと言ってみたところでこんなにも進んだではないか、こういうことになるのですよ。もう既に総理は、監理委員会答申が出たときに改めて国民の反応というのは出てくるだろう、こうおっしゃるけれども国民各層の中には、特に各地方自治体の首長さんなどを中心にし、あるいは商売をやられている企業主の皆さん方を中心にし、国鉄に働く労働者の皆さんも国鉄を利用する皆さん方も、一体どうなっていくんでしょうという心配の種というのは消えないのです。もう世論は大変大きく盛り上がってきている、どうなっていくのかという心配をしている、そういう状況の中でも、なおかつこの議事録を国会に提出することは不必要だと思いますか。総理が、私は聞いたことがないからということだけでこれは過ぎ去っていくことのできるような議論ではありませんよ。
  348. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 新聞は必ずしも正確に報道しない場合が間々ある、そういうことはお互い経験していることであります。したがいまして、新聞にいろんな記事が出ましても、我々が全く関知しない記事である以上は、私たちはそれは推測であると言わざるを得ません。一番の責任者は運輸大臣であり、また私でもあります。それがまるっきり知らないのでありますから、そういう責任のない記事であると私は思います。  しかし、議事録を云々という問題については、監理委員会の運営の基本に関する問題でありまして、この点については何回も本委員会あるいは議場におきまして御答弁申し上げているとおりでありまして、ある一定段階になったらその概要については報告があるでしょう、また、させる必要があると思っております。しかし、毎回の議事録を、そのとおりだれがどう言ったかということを公にするということは、これは監理委員会の性格から見て必ずしも適当でない、そのように監理委員会みずからが判断を下して、自主的にそういうふうに決めた問題でございます。我々がとやかく言わぬ方がいい、そう思っておるのであります。
  349. 小林恒人

    小林(恒)委員 同じことの空転ですからこれ以上の議論をしようとは思いません。次の機会に、監理委員長が御出席になった段階でさらにこれは引き続いて議論することにしたいと思っています。  今日盛んに監理委員会の中で議論をされている内容の中で、私はどうしても気がかりな事柄が三つあります。一つは、整備新幹線の取り扱いの問題。それから二つ目は、青函トンネルの問題。これは三月の十日には本坑が貫通をするという、こういったところまで来ております。それから三つ目は、本四架橋です。青函トンネルも新幹線規格で、途中から設計変更でトンネルが掘られてきた。本四架橋にも新幹線が乗る規格になっている。これはもちろん三全総の方針で具体的にそれぞれ大型プロジェクトとして組み立てられたものなわけです。  例えば青函トンネルの取り扱いについてちょっとお尋ねをしておきたいのでありますけれども、青函トンネルは完成の暁にどのようにお使いになろうとしているのか、方針は決まっているのですか。
  350. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 先生ただいま御指摘のように、青函トンネルは新幹線の列車が通れる規格で完成させるべく現在工事が行われておりますが、それの両端につなぎます新幹線の計画との関連もございまして、当面は在来線軌条を敷いて在来線としてとりあえずこれを利用するということで現在工事を進めておる段階でございます。  なお、最終的にこの大きな国民の資産でございます青函トンネルをどういうふうに有効に活用していくかという点につきましては、御承知のようにさきに青函トンネル問題懇談会というものを設けまして、その報告の御意見をもとに現在政府の中で連絡会議を設けて検討を行っているという段階でございます。当面は在来線の形で利用するということで行っています。
  351. 小林恒人

    小林(恒)委員 当面は在来線で使う。懇談会が出した答申の中ではカートレーン構想というのもあったわけですけれども、運輸大臣、これは御存じでしょうね。カートレーンについては、なくなったと判断してよろしゅうございますか。
  352. 山下徳夫

    山下国務大臣 カートレーンの構想も私、承知いたしております。ただ、カートレーンと一口に言いましても、これまた現在の案では三つぐらい、いろいろな案が練られているようでございまして、具体的には政府委員から御説明申し上げます。
  353. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 先ほど申し上げましたように、青函トンネル問題懇談会では、最も有効な活用の仕方は、先生おっしゃったように、カートレーンがいいのではないか、その場合には、今大臣が申し上げましたように、函館と青森の間を在来線の形でのカートレーンを運行する形、それから、基本計画区間でございます中小国-木古内間を幅の広い新幹線ゲージのカートレーンを運行する形、それから若干計画を変更して、函館-青森間に広い軌条、新幹線ゲージのカートレーンを利用する、三つの形が考えられる。そのいずれを選択するか、また、その際の収支、採算等についてはもう少し政府で検討するのが望ましい、こういうことでございまして、先ほど申し上げましたように、政府の中で各省が集まりました検討会を設けまして、ただいま細目について検討しておるところでございます。
  354. 小林恒人

    小林(恒)委員 時間がどんどんなくなっていくものですから十分な議論ができないのですけれども、その場合の借損料はどういう形になるのでしようね。私はちょっと心配するのでありますけれども、例えば整備新幹線盛岡以北の工事問題、盛んに議論をされております。知らない方々は、盛岡以北青森まで新幹線工事が進むというと、直ちに入っていかれるんだろう、まあせいぜい二、三年でもって青森までつながるのか、だとすれば、すぐトンネルにつないでという、こういう議論をされる方がいらっしゃるのです。残念ながら、あの巨大な八甲田トンネルをぶち抜くのに、専門家の言をかりますというと、七年ないし八年間かかると言われているのですね。だとすると、今日から計算をするとざっと十年間は青森までは新幹線は行かないわけですね、逆立ちしたって。加えて財政百姓です。こういった問題が一つあります。したがって、この将来構想を考える場合に、例えばカートレーンでも結構、あるいは在来線を使用すもことでも結構でございますけれども、年間の借損料約八百億円と呼ばれている、これは一体どなたがお支払いになるのでしょうか。  ある人に言わせると、じっと我慢をしていれば十年ぐらいだれかが払っていて、新幹線がやっと青森に来たころにはただであのトンネルを使えるのではないかという、極めてとぼけた議論があるのです。こんな議論にはならないでしょう、大変な大プロジェクトだったのだから。そこらをも含めてお答えをいただきたいと思います。
  355. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 青函トンネルの完成しました後の借料は、先生、ただいま八百億とお話がございましたが、実は完成年次が一年延びましたのでもう少しふえまして、八百九十億ぐらいでございます。これは新しい助成策が何らない場合の借料でございます。  それで、この借料を、例えば今カートレーンとの関連でどうなるかというお話でございますけれども、基本計画を変更しないで現在の工事のままで何らかの形で使います場合は、それに若干の追加投資というものを行えばいいわけでございますが、先ほど申し上げましたように、青森-函館間に直すということになりますと、また新たな投資が要るわけでございまして、その借料はもう少し大きくなるだろうというふうに考えております。  なお、青函トンネルは当面在来線で使用するわけでございますが、その場合も含めまして、青函トンネル完成後の借料の問題につきましては、御承知のように臨調答申におきまして、完成時において新しい経営形態である国鉄の経営を圧迫しないように政府において何らかの措置をすべきであるという御答申をいただいておりまして、その点については、現在、国鉄の長期債務の問題と含めて再建監理委員会において御検討が行われておるということでございます。その結論を待って対処するというのが方針でございます。
  356. 小林恒人

    小林(恒)委員 さらにふえて八百九十億円、これはちょっと民間企業では払えませんね。八百億で計算した場合、現在の旅客と貨物を割り算いたしますというと、例えば旅客一人当たりの片道運賃が借損料を払うことを前提にして運賃をはじき出すというと四万円、こういう計算が成り立つのです。こんな四万円も払って乗る人はいないんであって、一万少々出せば飛行機で東京まで飛んできてしまう、こういう時代なんです。で、八百億円というのは大変な金額なんですよ。今あそこを就航している青函連絡船一杯建造して百億円あればできるのです。約九杯の船を建造することができるのですよ。一時期地崎さんが運輸大臣のころ、三千トンの連絡船でいかがという構想を出して議論を醸し出したことがあります。三千トンで、少なくとも二十五ノットから二十七ノットぐらい出せる船であの津軽海峡を輸送するという計画を立てるとすれば、時間は今よりざっと一時間二十分短縮される。三時間五十分は十七ノットの計算なんです。三千トンクラスの客貨船をつくったって、せいぜい四十億か五十億でできるんじゃないですか。年間借損料八百九十億円で一体何隻の船ができるのですか。こんな計算をされたことがありますか、運輸大臣
  357. 山下徳夫

    山下国務大臣 どうも申しわけございませんが、何隻の船ができるか、ちょっと私は計算したことはございません。
  358. 小林恒人

    小林(恒)委員 監理委員会にお任せをすると、その答えが出てくるまでわかりませんと政府首脳は答える。トンネル問題懇談会に諮問をするというと、その答えの中身すら検討しようとはしていないというのが実態なんですよ。しかし、地元函館市民やあるいは北海道民にしてみれば、七千億の投資をしたトンネルが、石油の貯蔵庫にしてはどうかとか、あるいは防衛庁の倉庫にしてみてはどうかとか、キノコを栽培してはどうかという議論だって実はまじめにされたのです。まじめにされて、結果としてカートレーンという議論が出てきたのだとすれば、これはせっかく国家的なプロジェクトとして完成されようとしているものの有効活用というのは、この四年半の間、私は国会へ出てきてからずっと有効活用、トンネルの利用方針について随分議論してきたけれども、いまだに結論が出ていないと断ぜざるを得ないのです。  一体地域住民はどうなるのですか。こういう国家的プロジェクトというのはでたらめをしてはいけないのですよ、国は大変な銭を投入するのですから。こういったものの積み上げが国鉄の赤字をつくってきたんじゃないですか。私は長い間国鉄にいたから国鉄の弁護をするつもりなんかも頭ありません。毛頭ないけれども、しかし余りにもひどい借金の下敷きの中でうめいているのが実態ですね。国鉄総裁の総裁たるゆえんなんか何もないと言っても過言ではない。もう少し言わせていただくならば、国鉄には、労務管理をする管理者はいるけれども、経営手腕を持った経営者なんか一人もいないと言って過言ではないぐらい、でたらめ三昧な仕事をしてきたんじゃないでしょうか。だから私は、そういった意味で、ほんの小さい課題だけれども、最後に、昭和六十年度の予算の中で千五十億円に上る運賃値上げの考え方があることについて御質問申し上げたいと思うのです。  少なくとも千五十億円もの運賃値上げをして国民大衆からの公共料金の引き上げをしようという以前に考えるべきことがもっともっとあったのではないだろうか。少なくとも昭和五十二年十二月二十九日閣議了解、この中では「運賃上の割引制度を全般的に見直す」と称して、その後、関係閣僚協までつくられた。厚生省あるいは文部省、身障者の割引であるとか、あるいは学生割引であるとか、こういったものについて、これだけ赤字なんですから、年間これだって六百億近くなるのでしょう。これは貧乏している国鉄がただただ割引をしているだけなんですね。どの程度厚生省や文部省は検討されたんでしょう。少なくともことしの予算上は省からの要求が出ておらないという実態で運賃値上げに頼ろうとすること自体邪道なんではないですか。
  359. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 御指摘のように、国鉄の運賃上の公共負担の問題につきましては、政府で閣議了解をいたしまして、その後鋭意関係省庁で検討を重ねてきておるところでございます。しかし、省によりまして意見が分かれまして今日までなお解決に至っておりませんことはまことに申しわけのないことだと存じます。先般も参議院の予算委員会でもそのことが御指摘になられまして、それではいつまでにこの問題を解決するのかというお話がございましたので、遅くとも六十一年度以降に運賃改定をするという機会があれば、その機会をタイムリミットとして必ずこの問題の解決に当たるようにいたしますということをお答えを申し上げたところでございまして、大変時期が遷延してきておりますことは申しわけないと思いますけれども、さらに会議を重ねまして結論を見出すように努力をしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  360. 小林恒人

    小林(恒)委員 さらにさらにということで、ところが国鉄が再建のための基本方策を出すとまさに甘えの構造だと大変しかったわけですね、議事録を見ますというと。しかっておきながら省庁間の具体的な審議がなかなか尽くせない、こういった問題がある。  ちょっと視点は違うのでありますけれども、私ども会議員に対しても国鉄の無料パスというのは交付されているわけです。国会法三十七条に基づいて、これは交付されているのですけれども、こういう問題だって、いわゆる甘えの構造論、政府として、国会としてまず最初に姿勢を正すという立場からすると、これらを含めて取り扱い方というのは緊急に整理をされてしかるべきではないのかなという気がします。  これは、時間がなくなりましたから最後の質問になりますから、総理の御見解を伺って、私の質問を終えたいと思います。
  361. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国会法に関する問題でございますから、国会各党各派の御意見の一致が望ましいと思いまして、これは各党各派において御検討願いたいと思う次第であります。
  362. 小林恒人

    小林(恒)委員 終わります。
  363. 天野光晴

    天野委員長 これにて細谷君、小林君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十九日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十一分散会