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1985-02-09 第102回国会 衆議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年二月九日(土曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 天野 光晴君    理事 大西 正男君 理事 小泉純一郎君    理事 橋本龍太郎君 理事 原田昇左右君    理事 三原 朝雄君 理事 稲葉 誠一君    理事 岡田 利春君 理事 二見 仲明君    理事 吉田 之久君       相沢 英之君    伊藤 公介君       伊藤宗一郎君    石原慎太郎君       宇野 宗佑君    上村千一郎君      小此木彦三郎君    小渕 恵三君       大村 襄治君    奥野 誠亮君       海部 俊樹君    倉成  正君       砂田 重民君    住  栄作君       田中 龍夫君    葉梨 信行君       原田  憲君    武藤 嘉文君       村山 達雄君    山下 元利君       井上 一成君    井上 普方君       上田  哲君    大出  俊君       川俣健二郎君    佐藤 観樹君       堀  昌雄君    松浦 利尚君       矢山 有作君    池田 克也君       近江巳記夫君    草川 昭三君       坂口  力君    森本 晃司君       大内 啓伍君    木下敬之助君       小平  忠君    瀬崎 博義君       松本 善明君    山原健二郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 嶋崎  均君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 松永  光君         厚 生 大 臣 増岡 博之君         農林水産大臣  佐藤 守良君         通商産業大臣  村田敬次郎君         運 輸 大 臣 山下 徳夫君         郵 政 大 臣 左藤  恵君         労 働 大 臣 山口 敏夫君         建 設 大 臣 木部 佳昭君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     古屋  亨君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)藤波 孝生君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官) 河本嘉久蔵君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 加藤 紘一君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      金子 一平君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      竹内 黎一君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石本  茂君         国 務 大 臣         (沖縄開発庁長          官)      河本 敏夫君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣         官房審議室長  吉居 時哉君         内閣法制局長官 茂串  俊君         内閣法制局第一         部長      前田 正道君         人事院総裁   内海  倫君         人事院事務総局         給与局長    鹿兒島重治君         人事院事務総局         職員局長    叶野 七郎君         警察庁刑事局長 金澤 昭雄君         総務庁長官官房         審議官     佐々木晴夫君         総務庁人事局長 藤井 良二君         防衛庁参事官  古川  清君         防衛庁長官官房         長       西廣 整輝君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛庁人事局長 友藤 一隆君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         防衛施設庁長官 佐々 淳行君         防衛施設庁総務         部長      梅岡  弘君         防衛施設庁施設         部長      宇都 信義君         科学技術庁長官         官房長     宇賀 道郎君         環境庁長官官房         長       岡崎  洋君         国土庁長官官房         長       永田 良雄君         国土庁長官官房         会計課長    北島 照仁君         法務省刑事局長 筧  榮一君         法務省矯正局長 石山  陽君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省北米局長 栗山 尚一君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         大蔵大臣官房審         議官      小田原 定君         大蔵省主計局長 吉野 良彦君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省銀行局長 吉田 正輝君         国税庁徴収部長 緒賀 康宏君         文部大臣官房長 西崎 清久君         文部大臣官房審         議官      菱村 幸彦君         文部省初等中等         教育局長    高石 邦男君         文部省教育助成         局長      阿部 充夫君         厚生省保健医療         局長      大池 眞澄君         厚生省生活衛生         局長      竹中 浩治君         厚生省薬務局長 小林 功典君         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産省経済         局長      後藤 康夫君         農林水産省食品         流通局長    塚田  実君         林野庁長官   田中 恒寿君         中小企業庁長官 石井 賢吾君         郵政大臣官房人         事部長     中村 泰三君         郵政省貯金局長 奥田 量三君         労働省労政局長 谷口 隆志君         労働省労働基準         局長      寺園 成章君         建設大臣官房会         計課長     望月 薫雄君         自治大臣官房長 津田  正君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      大内  宏君     ————————————— 委員の異動 二月九日  辞任         補欠選任   小杉  隆君     伊藤 公介君   神崎 武法君     森本 晃司君   正木 良明君     坂口  力君   矢野 絢也君     草川 昭三君 同日  辞任         補欠選任   伊藤 公介君     小杉  隆君   草川 昭三君     矢野 絢也君   坂口  力君     正木 良明君   森本 晃司君     神崎 武法君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十九年度一般会計補正予算(第1号)  昭和五十九年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和五十九年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ————◇—————
  2. 天野光晴

    天野委員長 これより会議を開きます。  昭和五十九年度一般会計補正予算(第1号)、昭和五十九年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和五十九年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山原健二郎君。
  3. 山原健二郎

    山原委員 最初に、暴力団抗争問題について警察庁考え一言お聞きしたいのです。  二月の七日ですが、白昼、私の地元、高知高知市の市街地、特に周辺には小学校、中学校その他、市街の真ん中でありますけれども、銃撃戦が展開をされまして、市民に対する大変な恐怖を与えております。これは一部分ではなくして、全国的にそのような情勢があると言われておりますが、住民の安全を守るという意味警察庁としてはどういう対応をされておるか、最初一言お聞きしたいのです。
  4. 金澤昭雄

    金澤政府委員 お答えをいたします。  高知でも二月の七日に対立抗争事件発生をいたしました。その前に、一月二十六日に山口組と一和会対立から山口組の幹部、組長以下三人が射殺される、こういう事件が起きまして、この余波が、全国各地でその後十一件ばかり対立抗争事件発生をいたしておるわけでございます。この山口組組長射殺事件につきましては、被疑者四名を現在逮捕して取り調べ中でございます。  今お話のございました高知市内発生をいたしました対立抗争事件でございますが、二月七日に発生をいたしまして、この関係では豪友会中井組双方組員、合計十名を検挙いたしまして、けん銃七丁を現在押収しておるわけでございます。  付近の住民の心配がございますので、高知県警といたしましては、現在三百名体制で捜査本部を設置をいたしまして、地域住民安全確保、これを第一にいたしまして、現在警戒をしておるわけでございます。暴力団事務所等七カ所につきましての警戒、これを含めまして、パトカーによる市内警ら活動暴力団に対する職務質問けん銃の摘発、こういうことを主眼として現在やっておるわけでございますが、今後も対立抗争が予想されますので、全国警察厳重警戒組員大量検挙ということを指示をいたしてやっておるわけでございます。
  5. 山原健二郎

    山原委員 住民の安全を守るという立場で、今後の対応を強化していただくように要請をしまして、警察庁に対する質問は終わります。  今上程されている補正予算につきまして一言申し上げたいのですが、これは例えば人事院勧告の抑制であるとか、あるいは凍結であるとか値切りであるとかいうことが行われまして、そのために全国労働者影響を与え、また、これが消費不況の原因になっております。また、今度の補正を見ましても、例えば文部省予算を例にとってみますと、私学助成が十一億円、国立学校校費が四十二億円の削減となっております。また、福祉あるいは中小企業に対する予算削減、さらには軍事費の突出というようなことで、私はこの補正予算に賛成できない立場でございますが、そういう意味を込めまして、以下、数点にわたって御質問を申し上げたいと思います。  最初に、二月五日にアメリカABC放送テレビが、ニュージーランド政府ニュージーランドにおける米核艦船寄港拒否の問題について特集をいたしております。その中身は、米政府ニュージーランド事態の波及を懸念している、例えば日本は強力な反核運動によって核艦船寄港を認めないことを宣言している、しかし日本アメリカではこれについて質問をしないという未公表合意がある、日本はこれについて質問をせず、そのためアメリカは答える必要がないというものだ、ニュージーランド事態はこの合意を変更するかもしれないというのがABCテレビの放映の中身でございます。  まず総理にお伺いいたしますが、未公表合意というものがあるのでしょうか。
  6. 栗山尚一

    栗山政府委員 お答え申し上げます。  従来からたびたび政府から明瞭にはっきりと申し上げておりますように、そのような合意はございません。
  7. 山原健二郎

    山原委員 総理もその答弁と御一緒でしょうか。
  8. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 同様であります。
  9. 山原健二郎

    山原委員 そういう未公表合意というものがないとすれば、もし疑惑があった場合には、日本政府としてはアメリカに対してその疑惑を解明する質問をする権利を有すると思いますが、そのように解釈してよろしいでしょうか。
  10. 栗山尚一

    栗山政府委員 日米間の合意の問題でございまして、その一方の当事者である日本、すなわち政府がそういう合意は存在しないということを申し上げておるわけでございますので、非常に明確になっておると思います。
  11. 山原健二郎

    山原委員 日本質問をしない、アメリカは答える必要がないということですね。  そうしますと、それならば日本国民の間に例えばカール・ビンソンについての疑惑が生じた、核を積載しておるかもしれないという疑惑国民やあるいは国会あるいは政府が感じましたときに、アメリカに対して、そういう未公表合意がないとするならば、当然質問する権利を保有しておると思いますが、その点総理大臣の御意見を、これは重大な問題ですから、伺いたいのであります。
  12. 栗山尚一

    栗山政府委員 これも従来から申し上げておることでございますが、日米間におきましては安保条約に基づきまして事前協議制度がございまして、アメリカ日本の国内、領域内に核を持ち込もうという場合にはアメリカ事前協議をする義務がある、事前協議が行われた場合には、我が国としては常にこれを拒否する、核の持ち込み拒否するということになっておりますので、その必要はないと存じます。
  13. 山原健二郎

    山原委員 この未公表合意の問題については前々から問題になって、しかも絶えずそれが底流として流れ続けている、いつも問題になる。それに対して、今総理大臣はどうして北米局長答弁をさせて、この重大な問題についてお考えを述べることができないのでしょうか。
  14. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この問題は随分国会質問をいただいて歴代政府答弁してきたことでございまして、我が国の一貫した政策でございますので、今まで関係してきた北米局長から答弁させておるのであります。
  15. 山原健二郎

    山原委員 論点を変えまして、ロンギ首相はこう言っております。もし入港する艦船核搭載能力を持っていれば、ニュージーランドとしては核搭載有無を確認する手段がないので寄港拒否せざるを得ないと述べまして、寄港拒否する立場を非常に明確にしております。非核日本政府もこのニュージーランド非核政策と同じではないのか、あるいは違うのか、この点については総理の方から明確な御答弁をいただきたいのであります。
  16. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本では安保条約改定の際に、岸・ハーター交換公文、藤山・マッカーサー口頭了解等によりまして事前協議制度という制度がきちんと確立しております。ニュージーランドの方はそれがあるかないか、私よく存じませんが、新聞報道に関する限りはないように思っております。
  17. 山原健二郎

    山原委員 そうすると、非核政策につきましてニュージーランドロンギ氏は、有無を確認する手段がない、こういうことで拒否せざるを得ない。同じ非核立場をとっておる政府日本政府非核原則という国是を持っているわけでございますから、そういう点でどこが違うのでしょうか。同じ非核政府であってどこが違うのでしょうか。私は同じではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  18. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 それぞれの国の核政策というのは独自な核政策があるわけで、日本日本なり安保条約に基づき、総理から御答弁をされたように、事前協議条項というのが確固としてあるわけですから、それによって日本の場合は非核原則を貫いておる、こういうことでございます。
  19. 山原健二郎

    山原委員 私はこれでは国民が納得しないと思いますが、ニュージーランドに対しまして今回アメリカ演習中止、また昨日はレーガン大統領が非常に遺憾であるという表明、さらにはニュージーランド議員の訪米の中止などということが出ておりまして、これが制裁であるかどうかは別にしまして、こういうアメリカ政府ニュージーランド政府に対する態度というのは、私は内政干渉に等しいものだと思いますが、この措置について中曽根総理はどのようにお考えになっているでしょうか。
  20. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ニュージーランドアメリカANZUS条約を結んでおります。そういう中におけるニュージーランドアメリカとの関係でございます。そういう中で協議が行われ、あるいはまた議論が行われる、あるいはまたそれぞれの国の立場が主張されるということは、それはニュージーランドアメリカの問題ですし、またニュージーランドがやっていることはニュージーランドやり方でやっているわけですから、日本日本なりの独自な政策あるいはまた条約に基づいて日本の主張を進めておるわけですから、この限りにおいてはそれぞれの国のやり方があるわけです。
  21. 山原健二郎

    山原委員 今回、二月五日にワインバーガー国防長官が下院の軍事委員会におきまして次のように述べております。核の所在を否定も肯定もしないというアメリカ核政策不変である、ニュージーランド拒否は好ましくない試み、こう言っております。この発言について、総理ニュージーランドの今回の拒否態度というのは好ましい試みか好ましくない試みか、どのように御見解を持っておりますか。
  22. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 外国の政策につきまして批判がましいコメントは、私はしないことにしております。
  23. 山原健二郎

    山原委員 ワインバーガー国防長官がこのアメリカ政策世界に適用されていると述べておるのでございますが、世界に適用されているということは、日本はその例外ではないわけでございます。そうするならば、ほぼ永久アメリカは核の存否については公表しない、言わない、こういうことになりますと、政府が頼りとしております事前協議というのはほぼ永久にあり得ないのではないかと思いますが、その点については、このワインバーガー国防長官発言についてどのような解釈をいたしておりますか。
  24. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 核の存否を明らかにしないというのはアメリカ確固とした政策であります。これは日本だけに限らず、どこの国に対してもアメリカは、その政策を主張しておるわけであります、実行しているわけです。そういう中で日本との関係におきましては、よく御承知でありますが、安保条約に基づく事前協議制によりまして、核の持ち込みを行うときにはアメリカ義務として日本に対して協議をかけなければならぬわけでありますから、これは条約上の義務になっておるわけであります。その際、日本はこれに対してこれを認めないということは、しばしば国会で申し上げておるわけです。
  25. 山原健二郎

    山原委員 これも私は本当に納得できないと思うのです。今回、国防長官発言ですからね。核の有無は言わない、これは不変である、どこへも言わないんだ、全世界に通用するんだということになると、これは、事前協議そのものがあり得ないことになるのではないですか。もう一回お答えいただきたい。
  26. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 事前協議制度というのは、これは日米安保条約に基づく確立した制度であります。日米間で条約に基づいて約束したことでありますから、これはやはり事前協議制というのは日米両国で守る、しっかり守っていくというところに条約信頼性ということがあるわけですから、その事前協議制によって、アメリカは核の持ち込みを行う場合には事前協議にかけるということをはっきり約束しておりますから、これはその限りにおいては、日米間においてははっきりしている問題であります。
  27. 山原健二郎

    山原委員 これは全く矛盾する問題なんですね。アメリカ政府は、不変のものだ、核の存否は言わないんだ、しかもこれは全世界に通用する問題だ。言わないんだということと——事前協議を提起するということは、これは核を持ち込むがよろしいかということでしょう。言わないというこのアメリカ政府の重大な国政上の政策と、この事前協議というものが全く相矛盾するものとして出てくるわけでしょう。そうすると、これは国民も納得しないですね。全く納得のしようがないです。まさにごまかしとしか言いようがないということを私は本当に痛感するわけですが、あえてもう一度その点についての見解を伺っておきたいのです。
  28. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今私がるる申し上げたとおりでありまして、日米間の安保条約に基づきまして、アメリカが核の持ち込みを行う場合には事前協議にかけなければならない、これははっきりした条約上の義務として存在をいたしておるわけであります。
  29. 山原健二郎

    山原委員 核政策としてのアメリカ政府不変政策と、そしてそれを持ち込むときには事前協議にかけるんだという、これは全く矛盾するものを日本側が信頼しているにすぎないということになりまして、私はこの問題で時間をとる余裕が本日はございませんけれども、私は納得しませんし、また、国民も私は本当に納得しないと思いますね。  そして同時に、今度オーストラリアホーク首相が訪米しておりますけれども、その中で彼は、今度のSDIにつきましても、これは協力しない、支持しないという立場をとっております。ニュージーランド政府もきっぱりとノーだ。またオーストラリアホーク首相は、MX施設の使用についてもノーだ。私は、国の主権の問題と、重大な核問題についてノーと言える政府と、ノーとも言えない、何ともわからぬものを信用して国民を欺瞞する政府との間には雲泥相違がある、主権の問題で雲泥相違があるということを申し上げておきたいのです。  そして同時に、私は教育者の一人としまして、教育の問題についてもそうですが、例えば今回、ことしの四月から使われます高等学校の「現代社会」の中から、核兵器の問題について、非核原則国会で決議されており、国是として国民の間に定着しているということに対して、文部省検定が、これは国民の間に定着しておるかどうかということは解釈がいろいろあるということで指示が出されまして、教科書は、ここへ持ってきておりますけれども、この教科書の中からついに国是という言葉が消えているのです。国是という言葉は、昨年の予算委員会におきましてもう最後まで中曽根首相国是であるということを認めているわけですね。しかも、国会で五回決議している。それが国民の間に定着していないというようなことを一文部省検定官が言うなどということはもってのほかだ。こういう空気があるわけですね。  さらには、ミッドウェーの艦船横須賀母港化の問題につきましても、その説明に、核を積まれておる疑惑があっていろいろ論議を呼んでいるという言葉に対して、そういうことはない、非核原則があり、事前協議があるんだからこれは消しなさいということで、ついに核の疑惑というものが消えてしまうというような状態ですね。  さらには、広島記述にしましても、ここへオーストラリア教科書、すべでではありませんけれども、実に綿密に広島の悲惨な姿が記述をされまして、最後のところには、「これを読んで次の質問に答えよ。一、諸君自身のことばでキタヤマ・フタバ」、この方は被爆者の方です。この方の記録がずっと出るわけですが、この「キタヤマ・フタバが見たものを記述してみよ。二、諸君はこの目撃者記述を読んだあと、何を感じたか。三、シドニー、メルボルン、またニューカッスルなどの地図を調べて、同じような二十メガトンの爆弾がこれらの都市に落とされたときの被害の影響考えよ。」こういう演習課題まで出して核兵器の恐ろしさというものを子供たちに植えつけ、そして平和への志向を教育していく。  我が国教育基本法は、まさに平和的人間をつくる、また、それは教育によってつくると出ておるわけでございますが、我が国原子爆弾に対する記述というのは、これは欄外に書かれたりあるいは脚注で書かれたり、書かれても二、三行である、こういう状態なんです。それからさらに、最近新聞にも出ましたように、修学旅行で広島を見学する、長崎を見学する、これに対して各地教育委員会が注文をつけまして、長崎広島に行く必要はないというようなことで核の問題を国民の目からなるべく薄めよう、隠そうとする動きがあるわけでございますが、これは日本政府態度からも出てきておるというふうに思わざるを得ません。昨日テレビを見ておりますと、元文部大臣の永井道雄さんが、外国人も広島へ来たら変わるんだということをテレビでおっしゃっておられましたけれども、こういうことを許すようなことで本当にこの核問題について、核を廃絶するという全世界人民の今の動き、これに対して私は日本政府はこたえることはできないのではないかということを指摘して、この問題についての質問をまずおきたいと思います。  次に、教育基本法の問題について一言総理にお伺いをいたします。  教育基本法は変えないというのは、前第百一国会において総理はしばしば各党の議員に約束をされました。ところが、臨時教育審議会ができましてから、既に第一回総会から教育基本法を変えるという意見が出てまいりました。そうして、最近の動きを見てみますと、この教育基本法を変えよという問題も出てくるわけですが、ここではっきりお聞きしたいのですが、臨時教育審議会の答申の中に教育基本法の改正を含む、あるいは教育基本法の各条項を含む改正を求める答申が出ました場合でも、中曽根内閣としては教育基本法は変えませんと明言をしていただきたい、これが前国会国会に対するお約束であったと思いますが、このことを明確にしていただきたいのでございますが、いかがでしょうか。
  30. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 中曽根内閣は、教育基本法を変える考えは持っておりません。
  31. 山原健二郎

    山原委員 私はこれは仮定ではなくて、今現実に、例えば臨教審のメンバーの中でも、お名前はここでは挙げませんけれども、もう冒頭から教育基本法を変えるべきだという論陣が張られております。また、各所の集会においてもそのようなことが言われております。また、私持ってまいりました岸信介さんが会長をしております協和協会、これははっきりとその提言の中に教育基本法の改正運動を展開するといういわば運動体でございますけれども、この運動体の中に歴代の文部大臣が入っておられる、あるいは現在文部事務次官であり、さらに臨教審の事務局長という重大な役割をされております佐野文一郎さんも入っておられます。教育基本法を変えるという運動体にこういう重要な人物が入っておることに対して、文部大臣はどのようにお考えになりますか。
  32. 松永光

    ○松永国務大臣 今委員の指摘された団体に文部省関係者が入っておるかどうか、私はよく承知いたしておりません。しかし、先ほど総理からもお答えがありましたけれども、教育基本法につきましては、私も変える意思はありません。
  33. 山原健二郎

    山原委員 例えば学校の先生方の政治活動の問題について、文部省はいろいろ注意をされたり警告を発したりしておるわけでございますけれども、明らかに教育基本法を変えようという運動体に対して、現職の文部省の幹部、しかも臨教審の事務局長という重要なメンバーが入っておるということは、私は納得できません。これは名簿がありますからごらんになっていただいたらわかりますけれども、私は好ましくないと思います。これは、そういう事実があれば直ちにおかえになった方がいいと思います。やはり自分の業務に専念をする、これが文部官僚のお仕事ではないでしょうか。もう一回伺います。
  34. 松永光

    ○松永国務大臣 せっかくの委員の御指摘でございますから、今申された団体の性格その他をよく調べまして、そしてまた、それに文部省の主要幹部が入っておるのかどうかもよく調べまして、そして日本教育を立派に遂行していくための努力の一環としてこれから指導していきたい、こう考えております。
  35. 山原健二郎

    山原委員 こだわりませんが、私はそういうことは不適切だと思いますので、文部大臣の適切な処理をお願いしたいと思います。  次に、今浮上してまいりました教育の自由化の問題について、総理並びに文部大臣に伺いたいのでございますが、中曽根首相は自由化推進論者でございましょうか。  この間NHKを見ておりましたら、こういう図式が出てくるのです。臨教審の第一部会そして中曽根首相とのつながり、このグループ。グループといいますか、この系列といいますか、この一つの形ですね。それからもう一方では、第三部会と文部省、こういう図式が出てきておるのでございます。これは正しいかどうかわかりませんけれども、こういうのが一般的な報道関係の情報にも出ております。そういう意味中曽根首相は自由化論の推進者の一人と見られておりますが、その点はいかがでしょうか。
  36. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 どんな図式が出たか知りませんが、そういう図式は全く意味のない、ナンセンスな図式であると思っております。要するに、どういう制度がいいかという制度自体の内容が出てこないで、抽象的に、やれ自由化だ何だかんだと言ったって益のない話であります。一体学校教育の体系の個々の問題についてどっちがいいかという選択の問題が出てこなければ、自由化がいいとかそうでないとかという議論は空虚なものであると思っております。  私は、前から申し上げておるように、今の学校教育の中における閉鎖性あるいは硬直性、そういうものを打破しようという面においては自由化論者と言われるかもしれません。しかし、それも私個人が考えておるいろいろの問題がありますが、それは今ここで表明すべきものではない、臨教審がせっかく討議している問題について先入観を与えるべきものではない、そう考えております。
  37. 山原健二郎

    山原委員 私は、今問題になっておる自由化論についていろいろ自分なりに分析をしてみたのです。わからない部面もありますし、また、いろいろ流動的な発言が次々と出てきますが、その基礎になっておりますのは、まず総理発言から伺ってみますと、まず第一番に、昨年の二月六日に行われました第百一国会総理の所信表明演説の中で「教育を受ける側の選択の自由の拡大」という言葉が出てまいります。いわゆる選択の自由ですね。どの学校を選ぶか、どの先生を選ぶか、選択の自由。それから二つ目に、総理が昨年の八月二十一日でございましたか、NHKの「総理は語る」でおっしゃいましたその中身、これは実は私もびっくりしたのです。昨年の七月、八月の段階で我が党の質問に対して森文部大臣は、自由化論というのは少数の学者の発言にしかすぎませんということを言われておったのです。ところが、八月二十一日のNHKの「総理は語る」で、この中で中曽根総理がおっしゃったことは、学校体系の複線化の問題、それから自由化、弾力化、さらには公教育を幹線としながら、行革と同じように、何でも国が抱えるのではなく、民間に渡すべきものは渡すべしとの有力な意見もございます、また塾も学校にするというある代議士の発言もございますという言葉で、これを肯定的に発表されまして、ここで義務教育民営化論というのがクローズアップをしてまいりました。  それからその次に、昨年の夏、軽井沢におけるセミナーにおきまして「日本の課題と指針」という講演をされておりますが、このときに出てきましたのがもう一つのデレギュレーション、公的制約の緩和は教育も一種のそれです。六・三・三制という現在の制度をいかに自由化し、弾力化し、国際化していくかという問題もあります。教育はもちろん教育本来の精神的な問題という大事なものがありますが、また一面で、デレギュレーションというものがかかってくる要素があると私は思っています。ここに出てくるものが今の自由化論の中心ではなかろうかと思います。選択の自由、民営化論、公的規制の緩和、この三つですね。  そこで、これと、今臨教審の中で、すべての方ではございませんが、一部に出されております自由化論、その中で最も有力な香山健一氏の主張と対比してみたいと思います。  香山健一氏の自由化論の中に、香山さんの発言、論文は新聞にしばしば出ておりますが、いろいろ変化があります。例えば、教育基本法の四条、六条を改正すべきであるという理論が出まして、文部省見解との論争が行われ、また臨教審内部でも論争が行われ、また時には文部省を専門ばかだというふうな激しい論調でこの論議がされておりますが、この問題はもちろん未解決でありますけれども、一昨日になりますと、今度は、大学の私学化という問題が出てまいりますから、したがって振幅の度合いはありますけれども、したがって掌握は困難でありますけれども、この香山さんの理論は、昨年の九月二十七日の臨教審〇〇二号に発表されました「教育改革の基本方向についての提案」というのがございます。  これは、自由化についてこう述べております。教育行政の分野における許認可、各種規制、補助金等の全面的見直し。次に教育分野への民間活力の積極的な導入。三番目に教育行政、行財政改革の断行など、例えば教育基本法第四条、第六条の改正をも含む学校の民営化、塾の合法化、選択の自由の拡大と競争メカニズムの導入が不可欠でございます、こう述べております。  どうも、今まで自由化論の中でここが一つの中心になっておるのではないかと思いますが、この中心課題というのは、まさに中曽根首相と香山健一氏との考え方が、御発言がぴったり一致しておるのでございまして、その意味で、私は、中曽根首相は最も強烈な自由化論者として国民の目に映るのは当然ではないかと思いますが、この点についての見解を伺いたいのであります。
  38. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 香山教授が何をおっしゃっているか私、知りませんが、私は、先ほど来申し上げているように、今までの教育体系における硬直性、閉鎖性、これを打破する必要はある、そう考えております。  しかし、自由化、弾力化といっても、義務教育のレベルあるいは高校、大学のレベル、みんなこれはニュアンスが違います。義務教育は国家が責任をしょっておる。そういう意味において国家のやるべき範囲というのはかなり大きいと思いますね、高校や大学に比べて。高校になると公立の高校、私立の高校というのもあります。大学になれば公立も官立もございます。また私学もあります。有力な私立の大学があるわけであります。そういうわけで、さまざまな路線があるのでありまして、そういう各段階、各路線におけるそれぞれの特色を生かして、教育というものを多彩にしていく必要がある。また、受ける子供の立場を最大限に考える時代に入っている。突っ張りとかあるいはいじめとか暴力とかという根源等も、考えてみると、各自の適性に応ずる自由な伸び伸びした教育がないという面もあるのではないでしょうか。今の試験の硬直性というものも考え直す必要があるのではないでしょうか。そういう意味においては、母親や子供の立場を非常に考え教育制度の改革というものが今要請されていると私は思っております。  そういう意味において、よく実情を認識しながら、おのおののレベル、おのおのの路線における適切な改革が今要請されている。そういう意味において、私は、自由化論者であり弾力化論者であると言われても差し支えないと思っております。
  39. 山原健二郎

    山原委員 ある意味で率直に言われたわけですが、私は去年のこの予算委員会総理にお尋ねしまして、この教育改革とおっしゃるのはどういうものかということでここで論議になりまして、首相は、第二臨調を前提として行われる、こういうお話がございました。  それで、今私が指摘をしました中曽根首相と香山さんの自由化論というものがどこから来ておるかということで、行政改革論の中からずっとこれの流れを調べてみたわけですね。そうしますと、行政改革論のうちで小さな政府論あるいは民間活力論、その教育的側面としての教育の自由化論というのが出てまいります。これは公教育、公費教育体制の緩和あるいは解体、そして学校の設置の自由という問題が出てまいります。そして、学校選択の自由あるいは教育の民営化を拡大して市場競争原理の導入というのが行革の、行財政改革の理論的な基礎になっております。  これと相対して、世界考える京都座会、この京都座会のメンバーが今度の臨教審の委員または専門委員にたくさんお入りになっているのでございますけれども、ここでも「学校教育活性化のための七つの提言」、これが出てまいります。これが行政改革理論とまたつながっておるわけですね。今度も日本経済調査協議会、土光さんが代表で、中山素平さん、臨教審の会長代理でございますが、この代表している方たちの今回の理論も全く一緒なんですね。  したがって、私はここでお尋ねしておきたいのですが、中曽根総理のお考えになっている教育改革というのは、行政改革、行財政改革の一環、行政改革優位を持った教育改革ではないのかという点が疑念として残るわけですが、その点はいかがでしょうか。
  40. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういうことはありません。行政改革と教育改革とは質的に非常に違ったものがあると考えております。
  41. 山原健二郎

    山原委員 この臨教審のメンバーの中に入っておられる方々を見てみましても、これは一般の新聞その他も書いておりますけれども、自由化論者が率直に言って中曽根首相の意思によってメンバーとして送り込まれた、ある新聞は、おかしな人選とまで書きました。ところがそのメンバー、これは「内外教育」に分析が書かれておりますけれども、一様に教育予算削減論者である。自由化論者、これは一様に教育予算削減論者であるということが出ているのですね。  それからまた、今度専門委員に送り込まれました方に公文俊平氏がおられますが、この公文さんはどう言っておるかというと、教育改革を行政改革と別だと考えては困ります、非常に大きな部門でございますという発言をいたしております。香山さんにしましても、行革の中では最も不十分な分野が教育分野です、こう言って、行革と軌を一にした受益者負担強化による財政負担の解消ということが非常に強く出てまいります。  したがって、私はここははっきりさせておきたいのですが、教育というものは一体何なのか。行財政改革と教育改革とが両立できるのか。私はそうではないと思います。私は文教委員として長く務めてまいりました。また教育者でもありましたけれども、行政改革とそして教育改革、この点は私は両立しない。もちろん行政改革といっても、行政のむだを省いて国民生活を守るという行政改革なら別ですけれども、今の行政改革の理論というのは、先ほど言いましたような小さな政府諭ですね。それでは、文教予算など肥大化しているからこれを削りなさい、むしろ行政が直接責任を持たなければならない外交とか経済援助とか防衛の問題については見るけれども、教育問題などは行政の分野からもう一回見直して外す必要があるというこの理論と、教育改革とは絶対に一致しません。この点はもうはっきり言える。それをこういう形で論じられていきますと、やはり不毛の論理しか生まれてきません。したがって、教育改革というのは百年の大計、日本子供たち、未来の青年たちをこの国の主権者として育てていくという重大な仕事、それと行財政改革とは違う基盤の上に論じられなければならぬというふうに私は考えておりますが、その点いかがでしょうか。
  42. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点は私は前から非常に重大な問題として言っているところでありまして、行政改革と教育改革とは質的にまるきり違うものである、そういうことをはっきり申し上げておるのであります。  教育改革の場合には、主として人間の心、人間の品性、そういうものが中心であり、あるいは人間の教養という精神性が多いわけです。ところが行政改革の場合には、機構とか定員とかお金とか能率性とか、そういうものが中心的に出てくるのであります。そういう意味において、目標としているターゲットと申しますか、そういうようないろいろな面においても基本的に違うものがある。これは前から何回も申し上げておるところで、疑う余地はないと思っております。
  43. 山原健二郎

    山原委員 これは本当に冷静に考えますと、言葉としてはわかりますけれども、実際には、中曽根首相が臨教審に、あるいは専門委員として積極的に送り込まれたと言われております委員のメンバー、これはほとんど行政改革論を、今の私が言いました幾つかの問題を理論としている行政改革理論を背景にして、それで自由化論が出てまいります。そして、一様に教育予算削減論者であるとまで言われる、また現実にそういう言葉を言っておられる方が出ておられるものですから、中曽根首相としては行政改革というものと教育改革は違うのだと前から言っているのだと言うけれども、行為として行われている面から見ますならば、やはり行政改革優先、その中での教育改革という、両立し得ないものをここでいよいよ行政改革において教育改革をやろうとしているのではないか。だから、先ほど出ましたような民営化論あるいは選択の自由、それはもちろんそういう言葉だけで評価すべきではありませんけれども、これが出てくるのですよ。しかもそれは、香山さんたちの言っていることとぴったりと符節が合うということでございますから、私たちが心配するのも当然ではないでしょうか。  そして、今度は、この行革理論というものともう一つは、今父母たち、また学校の教師たち、国民が一番心配しておりますのは、非行の問題、暴力の問題、いじめの問題、落ちこぼれの問題、入試地獄、こういうものがあるわけですね。これを解決してもらいたいという国民の声、これには少なくともこたえなければなりません。したがって、教育改革は必要なんです、必要だけれども、そういうものにこたえると言いながら、あなた方がおっしゃっている自由化論とこの今の国民の願いにこたえる、これはつながらないのです。むしろ、あの子供たちを輪切りにする偏差値、もっと強化されるでしょうね、もっと激烈になるでしょう、もっと入試地獄はさまざまになってくるでしょう。子供たちに一番大事なのは、これは毎日新聞の一月の世論調査でもありますけれども、親たちもそうですけれども、できる子、できない子と区別しないで等しく取り扱ってもらいたいというのが圧倒的に多いのです、世論調査の結果。それはそうですよ。だから、その国民の要望にこたえて、憲法、教育基本法に基づいて行き届いた教育をする、あるいは高等学校に対する全員入学制あるいは希望者全員入学制をとる、あるいは私学の助成をして国公私間の格差をなくする、そして入試の問題についての改善をしていく。国民合意のもとに一つ一つ改善をしていく面がいっぱいあります。むしろこれを阻害をしてきたのが文部省。だから、そこから画一化が生まれ硬直化が生まれ、その文部省の行ってきた硬直化の原因あるいは画一化の原因、ここをえぐらずして、むしろ文部省のやってきたことを免罪をして、そして硬直化だ、画一化だということで、だから自由化だ、こういう論理の飛躍は教育世界では許されません。  この教育に対する自由化論、これは、ミルトン・フリードマン、御承知のようにいわば保守的な経済論者でございまして、今アメリカにおきましては多くの崇拝者を持っているミルトン・フリードマンの理論。この人の理論というのは商業世界における経済活性化の理論でございますけれども、彼がこれを教育世界に持ち込んでまいりましたね。そこで出てくるのが受益者負担、選択の自由、民営化、そして民間活力の導入、競争原理、これが全部口移しに今の日本の少壮といいますか、経済学者の一部に受けとめられまして、これが臨教審の中に入り、専門委員の中に入り、そこから出てきた自由化論、これなんです。  では、アメリカにおいてこのフリードマン理論というのがどのように教育界で行われているかといいますと、全部失敗しております。カリフォルニアで一部行われましたが、これはスペイン系の五五%、黒人一三%のアラムロックにおいて行われましたけれども、もう五年目から全部廃止です。コネチカット州で行われました場合は、校長先生方の支持を失い中止、ニューハンプシャーで試行されました場合は住民の反対。このときは、自由市場的競争によると教育費が安くなるという理論で展開をされましたが、これは逆に教育費が負担増になるということで住民の反対を受けまして、ついに国立教育研究所はいわゆるバウチャー制、証券制の計画試行を断念したのが現実の状態です。七八年にミシガン州で住民投票にかけましたけれども、三分の一で敗北して、実施に移っておりません。八〇年におきましてもカリフォルニアで請願署名運動が展開されましたが、請願は大きく不足をしてついに実施に至らず。これがフリードマン理論の教育界に持ち込まれたアメリカにおける実態です。世界じゅう、これはありません。イギリスのロンドンで行われていることがある新聞に報道されたことがありますが、これも事実無根でございました。  このように見てまいりますと、今行われております自由化論というものが本当に国民の願いに立っているのか、また、あるいは今まで文部省がやってきましたこの行政の反省の上に立っているのか、こういうようなことが本当に緻密に論議されないと、朝起きてみたら新聞に、大学の私立化、教育基本法四条、六条を変えろ、こんなことで国民が不安に置かれ、そして論議がどういっているのかわからぬなどという、こんなばかな教育改革理論というのはありません。本当に衆知を絞って、また教育学者も長年の経験を積んでおります、それらの者の衆知を絞って論議をして、そして日本教育子供たちの行方を見据えていく、こういう立場でなければこれは必ず失敗する。  しかも、私が申し上げたいのは、なぜこんな理論がぽかっぽかっと、私どもの見ることもできない、ときどき〇〇二とか〇〇三とかいう香山さんの論文が出てきたり、あるいはある委員の論文が出てきたり、それで知る以外にない、臨教審の中で何が討議され、どの委員がどんなことを話し合って、どのように論議が進んでおるかも皆目わかりません。だから議事録を出しなさい、議事録を。そうであればこそ初めて百花斉放といいますか、百家争鳴といいますか、国民教育の問題でみんな語り合うこともできるわけですね。議事録は出ないで、何とこんなPR誌が出る。こんなものは必要ありません。法律でつくった審議会がPRする必要が何がありますか。やっている議事録を見せたらいいんですよ。これは国民のもうみんなの願いなんです。それもしないで、何を論議されているかわからないというようなことで、教育改革が正常にいくはずがないのでございます。  私は、その意味で、本当に私の気持ちがわかっていただけると思いますが、中曽根総理大臣、本当に教育改革をやろうとするならば、国民の衆知を絞るようなあらゆる手だてを講じていただきたいのでございますが、あなたの御見解を伺います。
  44. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 教育改革は大事でございますから、国民の衆知を絞るようなあらゆる手当てを講じてやるべきものであり、そういう意味で臨教審もつくり、また、さまざまな国民の各層の意見を代表し得るような御意見の持ち主を選択して入れて、努力していただいておるところなのでございます。  今までのような教育の専門家だけではなくして、母親やあるいは子供の気持ちもわかるような、思い切って今までの旧套を墨守する壁を破れるような個性を持った人も実は入っていただいて、そして国民の要望に沿った改革をやっていただきたい。母親や子供の側に立って父兄の願いを実現できるような、必ずしも今までの文部官僚とか学校の先生ばかりの考えじゃなくして、むしろPTAとか子供たちの願いを込めてこれを実現できる人も考えて、今努力していただいておるのでありまして、そのように御理解願いたいと思います。
  45. 山原健二郎

    山原委員 今回もシンポジウムが行われましたね。小中学校の校長先生方、関係者は自由化論に賛成がないのですね、反対なんです。しかも私は、専門家というのも、専門ばかと呼ぶことはできないと思うのです、専門家も必要でございますね。それを、専門ばかと言って、全く国民の間に定着してもいない、しかもそれが、たこの糸の切れたようなのがぽかっと出てくるなどということで、教育改革ができるのでしょうか。個性の強い在人を送り込んだというお話を総理はされました。またそうでなければ改革はできないとおっしゃいましたけれども、思いつきやあるいは一定の固定した理論の押しつけや、そういうことで教育改革が行われるものではありません。今度の臨教審の中にも教育学者、率直に言ってほとんど入っておりませんし、そういう点から考えますと、しかもシンポジウムしかり、公聴会を開けばほとんど反対、これは文部省も疑念を持っておられるわけで、まあ文部省考え方と私は違いますけれども、しかし、こういうやり方で、ぽかっぽかっと何の脈絡もなしにいろんなことが出てまいりますと、これは人心を迷わす以外の何物でもないのですよ。もっと地についたもの、これが必要でございまして、しかもそれが国民の願いにどうこたえていくのか。じゃ、教育民営化、この中には小学校まで、当面は中学校を民営化する、義務教育は六年でよろしいんだというようなことがぽかっぽかっと出てきて、一体うちの子はどうなるんだろうというような心配がやはり出てくるわけですね。やはり教育には継続性というものもなければなりませんし、また、その中での偏向が出てきたりいたしました場合には、それを是正していく力。私は昨日、忠生中学校、前に先生が子供を刺すという事件が起こりましたが、そのテレビを見ました。もちろん問題は解決していないことはあのテレビを見てもわかります。私はむしろ管理的な側面も強いのではないかという、テレビだけ見たのですからわかりませんけれども、しかしあの子供たちを、一つは学校が分離されまして、前は千四百名のマンモス校であったのが今九百何十名、そして先生方の団結、そして商店街、父母の団結、この心の通い合った中で、あの忠生中学校の再建というのがなされているわけですね。  教育には復元力もあります。教師にも回復力があります。これを信用し、これを激励していく、そうしてこそ初めて教育の今日の苦難を解決していけるわけでございまして、それをばっと変えたからといって、民営化したからといって、これはもう商取引じゃありませんからね。競争原理を導入するというが、競争というのは何かというと、順位の競争と記録の競争でしょう。何メートル走って何分かかったかという記録と順位、これが競争原理です。これが教育へ持ち込まれたら大変な混乱ですよ。そんな乱暴な論理は余り軽々に発表されたくないのでありまして、そういう意味で、もしそういう論議が綿密になされておるとするならば、私は、議事録を少なくとも公開をすべきではないか、これは何の差しさわりもありません。また、最も教育にふさわしいやり方であるということを申し上げまして、この自由化論についての私の見解をここできょうは終わっておきたいと思います。  最後に、今問題になっている、やはり教育財政の問題ですが、四十名学級の問題です。  最初文部省にお伺いしますが、ことし四十名学級の凍結が解除されたということは喜ばしいことでございます。さて、それでは来年度から、六十六年にはもう四十人学級は小中学校において完成するというのが政府のお約束でございますが、これについての年次計画ですね。また、生徒の自然減、これがもう急速にふえておりまして大変な事態が現場では起こっておりますが、教職員の減を含めましてその計画を発表していただきたいのでございますが、いかがでしょうか。
  46. 松永光

    ○松永国務大臣 ただいまの質問にお答えする前にちょっと先生に申し上げておきますが、先ほど、協和協会という会に文部省の佐野次官が入っておるというふうに断定的に発言をされたわけでありますが、先生の方でどういう根拠でそういう御発言をなさったか知りませんけれども、先ほど私が事務当局を通じて本人に電話で確認をいたしましたら、入ってはおりません、会費を払ったこともありませんし、会員ではありませんという回答でございましたので、まずそのことを明らかにいたしておきたいと思います。  次に、四十人学級の問題についてこれからの計画を出しなさいという話でございますが、先生もよく御承知と思いますけれども、四十人学級を含む教職員の定数改善計画による毎年の改善措置というのはそれぞれの年度の予算の編成の中で決定をするものでありますが、六十年度は、御承知のとおり児童減少市町村のすべてについて小学校四十人を実施するということに決めたわけでありますけれども、六十一年度以降につきましては、これは毎年毎年具体的な措置はするわけでありますけれども、全体としての計画は、さようなわけで毎年することでありますからできておりませんが、あるのは、一定の条件を置いて試算を文部省ではいたしておるということであります。これは文部省の試算でございますから、こういう機会に公表するのはいかがなものかな、こういうふうに思いますので、その点はできれば差し控えさしていただきたいというふうに思います。  大ざっぱなことを言えば、私どもで考えておるのは、小学校につきましては、児童減少市町村が六十年度で終わる、六十一年度から六十六年度にかけてその他の市町村の小学校について四十人学級を実現をしたい、中学校につきましては、六十一、二、三で生徒減少市町村を行いたい、六十四、六十五、六十六でその他の市町村を行いたいというのが文部省の一応の試算でございます。
  47. 山原健二郎

    山原委員 試算を、私は実は試算があるだろうということでいただいておるわけでございますが、ここで読み上げる時間はございませんが、文部省が試算をつくられるということは当然のことでございますけれども、この試算については、まだ大蔵省の方も総理大臣の方も御承知ないわけですね。
  48. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 ただいま文部大臣からお答えがございました文部省の試算値、これは私どももそれなりの情報として承知をいたしております。
  49. 山原健二郎

    山原委員 じゃ、もう一回伺いますが、この試算、私はこの試算にも問題があると思いますけれども、とりあえず文部省としては当然だと思いますね、六十六年にやるという、これはもう政府のお約束でございますから。これは大蔵省としてはできるとお思いになりませんか。
  50. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 これも先ほど文部大臣からお答えがございましたとおり、あくまで今後毎年度予算編成の過程におきまして、文部省の御意見それから財政全体の状況、これらを総合的に判断をしてそれぞれ年度ごとに決めていくべきものだ、こういうふうに考えております。
  51. 山原健二郎

    山原委員 ちょっとこの試算の、今文部大臣一応概略をおっしゃいましたが、この生徒の自然減というのがもう最初の見込みよりも非常に多くなってきまして、いろんな事態発生しておりますが、昭和六十年から六十六年までに自然減によりまして教職員の定数が、これを見ますと七万六千三百人ですね、これは減るわけです。そして四十人学級を実現するための先生を配置する数が三万八千八百人、それから一般的な配置率の改善で三万二千六百人、こうなりますと、全国で先生が四十人学級をいたしましても四千九百名余ってしまいます。四十人学級が実現しなかったらもう大変な事態で、七万人という数字が余るわけでございますが、こういう計数になっているわけです。  ところで、ちょっと私は、東京近辺の市町村の実態を調べてみますと、例えば神奈川、千葉、埼玉を調べたわけですが、これまで三年間凍結をしましたために深刻な事態が生まれまして、神奈川県の相模原、ことし先生が百九名小学校で余ることになります。海老名市で二十七名、座間市で二十六名、先生が余ります。そうしますと、どうするかということで、この余った先生を中学校へ回す。相模原では、中学校はまだ生徒がふえておりますから、これも六十三年度からがあっと減るわけですが、六十名中学校に収容できる。海老名市においては十二名ないし十五名、座間市においては十九名、差し引き相模原で四十九名、海老名市で十五名ないし十二名、座間市で七人、こういう先生が余ってしまうんです。  そうすると、これをどうするかということで、退職を迫るかあるいは他県へ行ってもらうかあるいは他の市に行ってもらうか、まさに四苦八苦です。調べてみますと、教育長さんなんかは毎晩説得をするわけですね。でも中学校は教科担任ですから、今、小学校の先生、一番多いのは国語と社会の免許状を持っている方が多いんですが、体育や音楽になってくるとほとんどいないということで、英語もやろうとしても今さらおぼつかないということで、新しい先生を送るわけにはいかぬというようなことで、全く困り抜いた状態、中には、余り勧められてノイローゼになる方がおいでになるわけでございまして、こういう事態、私は初めてなんです。  これは千葉県の松戸、柏、我孫子、ここも調べてみましたが、東葛出張所の調査によりますと、余る先生、これは過員と呼んでおりますが、小学校で百六十三名、これを中学校で収容できるのは七十二名、完全に移っても九十一名の先生が余る。  これは埼玉県。埼玉県は、松永文部大臣いらっしゃいますけれども、三十一名以上の過員。小学校で余るところが川越、所沢、大宮、浦和、川口、越谷。したがって、教育委員会では過員マップという地図をつくっています。ここへ持ってきておりますけれども、これを見せていただいたんですが、この地図をつくって、そしてこれをどうするかということで、本当に四苦八苦しているんですね。  ところが、五十五年の試算で、あの当時生徒がまだふえておる段階のところが今度の四十人学級のあれへ入りませんから、したがって、一番今困っておるところに四十人学級ができない。生徒が減って、率直に言っても、余る先生もいないところに四十人学級が実現できる。九百四十四ですわね、九百四十四市町村、こういうことになっておるわけでございます。  したがって、私は要求したいことは、大蔵大臣それから総理大臣にお願いしたいのですけれども、四十人学級、よその国ではもう三十人から二十五人というところがございますから、先生の数はふやす必要はもうないんです。今度はこれから中学校も減りますから。そうしますと、先生の数をふやすという予算上の問題はありません。教室は空き教室でいっぱいです。大阪では空き教室がたくさんできまして、大阪の教育委員会に聞きますと、もう三十五人ができるという状態ですね。予算は要らないで四十人学級はできるわけです。したがって、六十六年までの年次計画でやるのではなくして、前倒しで早く四十人学級をやらないと、ますます現場における混迷は激しくなってまいります。そして、さらに三十五人学級へ移行するという措置をとらなければ大変な事態を迎えるというのが現場の実態でございます。こういう点を考えまして、どうか四十人学級の実現のために、今までのような凍結をしたりあるいは財政上の問題ということで年次計画いっぱい使うのではなくて、早く実現をしていくべきだと思いますが、最初に文部大臣、その点いかがでしょうか。
  52. 松永光

    ○松永国務大臣 児童生徒の急減に伴って小中学校の先生に過員が生ずるという御心配でございますが、その点につきましては、現在の標準法の施行令で最低保障という制度がありまして、それによって措置してまいりますので、過員は生じないようになるはずだ、そういうことで措置していくつもりであります。詳細は事務当局がよく承知しております。
  53. 山原健二郎

    山原委員 ちょっと誤解されておるようですが、現実に本当に困っているのですね。まあそのことをきょうお伝えしたわけですが、大蔵大臣どうでしょうか、確かに財政問題がありますけれども、先ほど言いましたように、せっかく教育改革をやろうとしている内閣でございますから、やっぱり子供には最高のものを用意するというのが大事なんですね。そういう意味で思い切った、行き届いた教育の実現のために、この点について検討の上、実現できればやるということを言明をしていただきたいのですが、いかがでしょうか。
  54. 竹下登

    ○竹下国務大臣 四十人学級を含みますいわゆる第五次教職員定数改善計画、これは昭和五十五年度予算を編成します際にいろいろ議論をして、六十六年度までの十二年で実施されることとこれはなったわけであります。  で、小学校の児童数が昭和五十六年度をピークとして減少に転じておりまして、こうしたこともあって小学校の先生の採用者数が近年減少しておるということは私も承知をしております。ただ、学級編制の基準を四十人とするということは、やっぱり教員対策ということではなく、まずは教育的観点ということから論ぜられるべきものであろうというふうに私は考えております。財政事情は依然として極めて厳しい状況が続いておりますので、前倒しできる環境にあるということを現状認識として持つわけにはまいらぬ、こういうふうに私は考えております。
  55. 山原健二郎

    山原委員 時間が来ましたからこれでおきますが、私は、教育改革をやるとおっしゃるならば、総理大臣、やはりこれらの、国会でも決議しました国民合意のあるものについては必ず実現をしていくという態度をとっていただきたいのですが、最後総理の御見解を伺いたいと思います。
  56. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 四十人学級につきましては、自民党も、また内閣も既定計画に従って六十六年までにこれを実現するように、今後とも努力してまいるつもりでございます。そのほかの諸般の教育改革につきましては、ただいま山原さんにお答え申し上げたような精神に沿って推進していく考え方でございます。
  57. 山原健二郎

    山原委員 終わります。
  58. 天野光晴

    天野委員長 これにて山原君の質疑は終了いたしました。  次に、大出俊君。
  59. 大出俊

    ○大出委員 四十五分という時間でございまして、質問通告申し上げでおりますように問題はたくさんございますので、御答弁の方もなるべく要点をお答えいただきたいのです。もっとも、私もどうも長くしゃべる方ではございますけれども。  冒頭に、ひとつ森永の事件に関しまして総理と通産大臣に折り入ってこれはお考えをいただき、お答えをいただきたい問題がございます。  と申しますのは、私の足元、横浜市に森永五工場のうちの最大の一番古い工場がございまして、工場長さん、和田さんとおっしゃいますが、私は長いおつき合いなんでありますが、見るに見かねております。かれこれ一年近くになりますのでね。昨年末お伺いをしていろいろお話をしておりましたが、年末手当などは一〇%カットですね。しかも十、十一、十二月というのはクリスマスもございますから、時間外労働、時間外労働で大変な繁忙期なんですけれども、一切これはゼロでございました。パートも全部解雇をしておりますから。しかも、奥さんを動員して監視部隊をつくる、しかも街頭販売をやる、しかも地区労や何かたくさんの組合団体の皆さんが横浜市、県に飛び込んでお願いをする、団体で千円パックを一生懸命販売をするわけでありまして、まあ非常に苦しい、時間外手当もらえず、一時金はカットされる年の瀬でございました。これは森永が悪いわけでもなければ従業員の皆さんが悪いわけでもない。しかも団体で今度千円パックを売りますというと、千円の中には千百円あるいは千百五十円分入っているわけでありまして、だから売れる。そこまで一生懸命今でもやっておるわけでありますが、私も随分一生懸命方々に声をかけてまいりました。それで森永自体は四割以上の操短でございまして、幸い自動販売機等の方は被害を受けておりませんから何とかもっておるというわけであります。だからけさも社長が記者会見をしておりますが、一日三千万の欠損である、こういうふうに言っております。  さて、問題は専業店のお菓子屋さん、横浜市内に七百軒ありまして、中曽根さんがよく御存じの林信太郎君が商務課長時代に、私が国の金を三千万ばかり借りましてボランタリーチェーン組織をつくってやりました。全国一カ所でありますが、ここも正月、店に寄りますと、やあ先生、もう菓子屋だめだと言うわけですね。うちの母ちゃんが、お父ちゃん菓子屋やめて私働きに行くと言う。そう言うな、待て、我慢しろと言っているんだが、売り上げは五割減だと言う。菓子屋というのは対面販売ですから、管理は行き届くから、森永製品置いてありますけれども、母ちゃん買っちゃいけないと言ったからといって、子供さん買わない。うちへ帰るとお父ちゃんが、千円パックを組織で販売していますから買ってきた。だからお小遣いやらないよ、これ食べなさいと言う。ダブルパンチですね。だから、売り上げが四割、五割減っているのはざらでありまして、お菓子の専業小売店、森永のみならずお菓子関係、グリコもそうでありますが、明治もそうでございますが、全般に売れない。どうにもならぬ。で、小売店対策というんで、千円パックを小売店でも売らせる、中間問屋が森永の商品持ってきて、パックを、袋をつけてきて、ティッシュペーパーを一つ乗せて、千円分入れて売ってくれと、こう言う。ところが、近所の奥さんに売るんですけれども、あけてみたら中身は千円分しかない。お父ちゃん買ってくる方は千百円か千百五十円入っている、こうだから、信用なくしますから、千円パックを小売店で売りますと売り上げの二割が利益、八掛けですから千円で二百円の利益、利益を吐き出して千百円、千五十円入れて売って、そうするとわずか五十円しか利益がないんですね。そうすると、ティッシュ一つ乗っけただけじゃ売れないんですね。そうすると、もうどうしようもなくて、その小売店対策もつぶれる。  これはだれの責任でもないんですね。一体この被害を受けている方々の方をどうしてくれるか。だれが一体責任を負うんだ。それは、警察が一生懸命やっていただいているのはわかっていますよ、何遍も私電話していますから。わかっていますが、この被害を受けた方々、倒産寸前の専業菓子の小売店などは一体どうしてくれるか。中間問屋も、これもどうにもならない。菓子屋というのは、本来森永製品で育ってきたんです、みんな。森永製品が売れるから小売の菓子は売れたんだから、いいときばっかりはないんだから、悪いときは森永売ってやろうとみんな思っているんだが、こういう心理状態だから売れない。対面販売をやっているのだから管理は行き届いている。そうすると、中小のスーパーだって管理が行き届けば売ったって心配はない。警察が寄ってくれてもいい。方法は全くないとは思えないのですよ、これは。  したがって、対策をひとつ御検討いただきたいのです。そして行政指導できるものはしていただいて、中小のスーパーや小売店対策を再建したいとけさ社長が発表していますけれども、それにどう協力ができるのか。そして小売店舗の今私が申し上げたような実情、母ちゃん、店をぶん投げて働きにいかなきゃならぬという。これはやっぱり政治というものがあるのですから、政府があるのですから。私ども政治に足を入れていると、これは答えようがないのです、どうします、どうしたらいいのですかと言われたって。だから、この被害をどのくらい受けているか。そして菓子が売れないから、日本製粉初め製粉関係、がたりときている。精糖関係、砂糖、これもがたんときている。食品関係のところの組織に行ってみると、みんな嘆いているわけでありますが、実際どのくらいの被害がこの一年近くの間に起こっているのかという点をお調べいただきたい。まず一つ。  そして、万全のことはできなくても、どうしたら救えるか、手伝えるか。中小のスーパーだって警察官の立ち寄り所にして、行ってみてくれればいいんだから。何かひとつそこで方策を考えていただけぬか。腕組んでいるだけでは政治は成り立たないと私は思うのでございまして、政党政派ではなくて、みんながよくなればこれは政治の意味があるのでありまして、そういう意味でぜひこれは総理と通産大臣にお答えをいただきたいわけでございます。
  60. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 大出委員にお答えを申し上げます。  実は、食品流通関係の所管は農林水産省でございまして、したがって、農林水産省の方からいろいろなデータのような問題は御提示があろうかと思いますが、けさの新聞に、森永が店頭販売再開を目指して中小店舗に要請をした、そして、パート二百人を再雇用したというような社長言明を見ておりまして、ぜひひとつ森永としても大いに頑張ってもらいたいという気持ちでいろいろ情報をとっているところでございます。  それからまた、先生の御指摘になった点について、通産省としての対応は一応いろいろやっております。例えば政府系の中小企業の金融三機関に対して、関連の中小企業向けの融資に対して積極的に対応せよ、それからまた、中小企業体質強化資金制度によって低利融資が受けられるのですね。そういう低利融資をひとつ措置をした。それからまた、年末金融でありますとか保険限度額の引き上げでありますとかあるいは下請取引のあっせんでありますとか、一応考えられる施策はいろいろ打っておるわけでございます。それからまた、農林水産省から要請のございました通産省関係の厚生施設等において販売の協力をしていく、これもすぐ措置をとりました。それから、森永事件に対する関係団体に対して協力を要請したということも四十九団体に対していたしておりまして、一応通産省として考え得る施策はいろいろ講じておりますが、先生御指摘のように大変痛ましい事件でございまして、私の友人にも実は森永の下請関係がおりまして、大変いろいろな相談を承っておりますので、一生懸命に対応してまいりたいと思います。
  61. 塚田実

    ○塚田政府委員 お答えいたします。  本件事件におきます影響でございますが、森永製菓につきましては昨年九月に脅迫を受けまして、その後シアン化ナトリウムの混入された菓子が京阪神等のスーパー店頭で発見されたことから、大手スーパー等が同社製品を店頭から撤去した、こういうことによりまして、十月には前年同月の約四〇%まで売り上げが減少したわけであります。しかしながら、官公庁その他における職域注文販売等の浸透によりまして、その後販売高は当初の想定よりもやや回復することとなりましたけれども、本年に入って前年の約五割から六割程度の販売高が見込まれております。  また本事件は菓子の安全性に対する消費者の不安感を高めたということから、菓子の売れ行きにも御指摘のとおり影響を及ぼしておりまして、昨年の末の私どもの調査では、十月、十二月のキャンデー類、チョコレート菓子及びビスケット類の生産は、前年に比べまして一割強の減少が見込まれております。  なお、本年に入りまして昨年来の出荷の動向の実績につきまして現在調査の取りまとめを行っているところでございます。     〔委員長退席、大西委員長代理着席〕
  62. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 内閣といたしましてもこの問題を重要視しまして、私も閣議で各閣僚に対しまして、いろいろな生産段階、販売段階における救援措置、援護措置を十分とるよう、内閣一体となって各省連絡をとってやるように指示しておるところでございまして、今後とも委員の御指示に従いまして全力を尽くしたいと思っております。
  63. 大出俊

    ○大出委員 これは幅が広くなりまして、食品部門全体が落ち込んでいるのと、丸大、ハウスなどもありますから、ハム部門まで影響が大きく出ておりまして、警察が一生懸命やるのは、これは一日も早く解決をというのでやっていただきたいのでありますが、対策の方もぜひひとつお進めをいただきますようにお願いを申し上げておきたいと思います。  次に、ILOから昨年十一月に勧告が出ております。もちろんこれは人事院勧告、公務員賃金勧告制度のあり方をめぐる問題にまで触れての結社の自由委員会の第二百三十六次報告、一九八四年十一月、こういうことでございますが、労働大臣に承りたいのでありますが、この問題は所管が労働省でございますから、そういう意味で私の認識と労働省の認識が一致するのかどうかという点を聞きたいのであります。時間がございませんから、私の専門の一つでございますので知り過ぎてはおりますが、要約して申し上げます。  二百七十五、「委員会の勧告」、勧告でございます。つまり結社の自由委員会の勧告でございます。「委員会は、理事会に対して、この報告、特に以下に述べる結論を承認するよう勧告する。」これはもう承認をされているわけでありますが、「委員会は、本件のように、不可欠な業務又は公務において団体交渉権又はストライキ権のような基本的権利が禁止され又は制限の対象となる場合には、その利益を守るための必須の手段をこのようにして奪われている労働者の利益を十分に保護するため、」ここが問題なんですが、「迅速かつ公平な調停及び仲裁の手続のような適切な保障が確保されるべきであり、」つまり人事院勧告というのは二十八条の情勢適応の原則しかないのでありますから、尊重義務しかない。だから「迅速かつ公平な調停及び仲裁の手続のような適切な保障が確保されるべきであり、」——もう前の方を見ますと、長過ぎるというわけですよ、日本人事院勧告をめぐる争いは。これはILOに提訴というのは、私が田中角榮さんに首にされた昭和三十三年からですから、私は三十三年に首になってILOに提訴しましたが、ここからですからね。私は代議士だけでも二十二年目なんですから、確かに長過ぎる。だからもういいかげんにこうしろというわけですよ、ILOの事務局に聞いてみると。「その手続においては、当事者があらゆる段階に参加することができ、かつ、裁定が一旦下されたときには完全かつ迅速に実施されるべきであるとの原則を想起する。」     〔大西委員長代理退席、委員長着席〕今までさんざん言っていることをここでまとめているわけですね。「人事院勧告が一九八一年度以降完全には実施されなかったことからすれば、委員会は、日本の公務における現在の雇用条件の決定の制度関係当事者の信頼を確保しているかどうかについての疑問を表明しなければならない。」疑問があるというわけですよ。政府は何とかしろということですよ、この中身は、と認識をするのですが、違いますか。
  64. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 大出先生の御指摘のように、ILOの報告は五十七年度の人勧、五十八年度の人勧の取り扱いの中でも述べられておるわけでございますが、我々としては、人事院勧告の完全実施ということの重要性を特に強調した、そのための努力を進めなければならないというふうに考えて、受けとめておるわけでございます。  特に、予算委員会等におきまして、総理を初め政府で再三お答えをしておりますように、とにかく労働基本権制約の代償措置として、どうしても人事院勧告制度というものを維持するためにも、何としても完全実施ということを最大の眼目としてこれを進めていきたい。特に公務員の生活権の問題あるいは労働条件の改善の問題等が国民サービスヘの利便を図るというためにも不可欠でございますので、我々としてはこうした勧告も踏まえて完全実施のためにひとつさらに努力をしたい、こういうふうに理解しております。
  65. 大出俊

    ○大出委員 これは労働大臣、あなたの師匠である石田博英さんが、私は長いおつき合いで仲がよ過ぎるのですけれどもね。あなたより大分大きいけれども、さんしょうは小粒でぴりりと辛いということもあるのだから。石田さんは歴史に残る労働大臣ですよ。ですからそういう意味で言えば、これはやはり山口さんも労働大臣をおやりになるのだから、私は歴史に残る大臣になっていただきたい。  そういう意味で、ここで言っているのは何かというと、いいかげんにちょっと長過ぎる。四・五八%実施しなかったじゃないか。六・四七%また実施すると深谷隆司さんが言って、総理と私はさんざんやりとりしたけれども、また実施しないじゃないか。またその翌年六・四七%も実施しないと思っていたら、また実施しない。こういうことじゃしようがないじゃないか、いいかげんにしなさいというわけですわ。だから調停、仲裁の制度にしなさい、早い話が。そして職員が平等に参加できる、そういう簡単に言えば公労法式な制度にしなさい、こう言っているのですよ。私はそう理解するのだが、違いますか。ここをはっきりしてください。
  66. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 人事院勧告が出る前におきましては、先生御承知のとおり、各労働界初めそれぞれ関係者の意見を十分踏まえながら、一つの勧告の手続がとられておる。また勧告から政府の実施に至る段階においても、労働界の方の意見も聞く機会もあるということでございますから、我々としてはやはりILOの勧告は、完全実施というものが滞れば制度そのものも再検討が必要ではないか、こういう点にポイントが置かれておる。そういう点で我々としては、何としても政府部内で完全実施ということの努力を続けた上で、それが最優先の課題であるというふうに考えておるわけです。
  67. 大出俊

    ○大出委員 ここに見解相違があるんなら、ILOの事務総長のブランシャールさんに電話でもしていただいて、何なら来ていただいて、それまで私は何日でもここに座っているから。これは解釈を一致させたいのですよ。かつて中曽根さんとやりとりしたときに、最大限努力するとおっしゃったときに、これはブランシャールさんと政府特使の深谷さんとのやりとりなんだから、行けないんなら聞いてくれと言ってよっぽど座っていようと思ったけれども、予算の総括の最終日でしょう。みんな切符なんか買っちゃっている人に悪いから我慢したんだけれども、きょうはまだ真ん中だから構わないのでね。見解を一致させたいんだ。完全実施されなければと言うんだが、三年も四年も続けてされないんじゃないの。そうでしょう。されないから仲裁、調停の手続をとるような、平等に職員が参加できるような制度にしなさい、すべきである、こう言っているんだ。そうでしょう。だから、信頼されてないようだと言っているんだ。そうでしょう。そういう意味じゃないのですか。違うというのなら、意見が一致しないというのならば、ILOに聞かなければしようがないでしょう。ブランシャールさんに聞いてください、ここに座っているから。
  68. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 私も、この六月にILO総会に出席させていただく予定になっていますし、この間ブランシャール事務総長が昨年の十二月に来日されたときも、労働大臣室にも表敬いただいたり、あるいは労働関係の団体の方との意見交換の場もございまして、その中で我々としてはまず完全実施の最大の努力、そしてその制度の根幹が維持されないような状況における再検討というふうに、まだその完全実施への努力というものを期待しているというふうに受けとめまして、そのための努力を政府部内で図りたいということで今努力しているところでございます。
  69. 大出俊

    ○大出委員 ここが明確に違うんで、図りたいと言って実施しないじゃないですか。しかも、後藤田さんもあなたも三年間で何とかすると、こう言うんだ。官房長官、あなたも国会で、三年間で解決、こう答えているんだけれども、つまり六・四七%のうち二・〇三%しか実施しなかったから、あのときに四・四四残った。人が入れかわるから多少の目減りはしますが、四・四四残った。これを三年で実施する。このことが、人事院に承りたいのだが、三年間実施しないということなんだ。積み残しがげたになって勧告するんだから、その積み残しの分を三年間でと言うんだから、これは明確にあと二年間完全実施しないんだ。違いますか、人事院総裁
  70. 内海倫

    ○内海政府委員 昨年の私どもの勧告につきまして政府が措置された際に、三年間で在来のいわゆる積み残しというものを処理して六十一年からは完全実施にしたい、こういう御意向があわせて示されたわけでございますが、もう先刻御存じのように、人事院勧告というものは労働基本権の制約の代償措置として行っておるわけで、単に一般企業における組合あるいは使用者側が提示するそういうものとは全く質を異にするものでございます。これをやはり政府としては厳しく守っていただかなければならないものである、こういうふうに私どもは理解し、またそういう意味で勧告を申し上げておるわけでございます。  ただ、そうはいいながら、政府においてはいろいろな御事情を考えられて官房長官のような御意見もお出しになったわけで、全くその前が見えないという状態に対しては、私は一つのめどをお示しになったということでそれなりの影響もあろうと思いますが、繰り返して申しますが、人事院の立場人事院総裁に意見を求められる限りこれはやはり尊重してもらわなければならないし、尊重するところに本当の意味の公務員の安定、制度の安定、生活の確保というものができるわけでございますから、私はそういうふうな理解をいたしておる次第でございます。
  71. 大出俊

    ○大出委員 これは総裁がお答えになっているとおりでございまして、何分割かして実施するというんなら、その年限の間は完全実施しないことになる。当たり前でしょう。積み残しは、四月の風速調査をやるときにげたになっているんだからはっきりしている。これは素人でない方はだれだってわかる。そうすると、凍結から始まって全く実施しない。その前から不完全実施なんだが、仏の顔も三度という言葉日本語にある。そうなると、ILOだってこう言わざるを得ないんですよ。逃げなさんな。歴史に残る労働大臣にならぬですよ。だから一致しないというんなら、ブランシャール象呼んでこいと言うんだ。お認めになりますか。制度改正が必要であるところへ来た、そういう認識をお持ちになりませんか。もう一遍答えてください。
  72. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 毎年完全実施に向けての、厳しい財政事情の中でございますけれども、最大の努力をするということには変わりないわけでございますが、残念ながら積み残し部分も含めましてこれは三年をめどにと言っていますけれども、仮に来年財政事情が考慮されれば来年実施されるということもこれは検討されているわけでございますし、我々としては、まず今までにおいても労働界やそれぞれ関係者の意見を聞く機会というものはあるわけでございますし、また国会の場においてもいろいろ御論議もいただいておるわけでございますから、その制度的な検討も大事ですけれども、要は人事院勧告の完全実施ということをまず最重点課題として取り組んで、ILO勧告にもこたえたいというふうに考えているわけです。
  73. 大出俊

    ○大出委員 これは労働大臣、大分苦しい答弁をしているんで、制度改正も大事だけれどもとあなたおっしゃっている。制度改正も大事なんだけれどもまず完全実施と。後藤田さん、まず完全実施、来年間違いなくできますか。あなたは国会で答えているのは、三年でとはっきり言っているんですよ。そうなんでしょう。
  74. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 この経緯を考えますと、本当に私は労働大臣には申しわけないと思っているんです。給与関係閣僚会議におきましても、毎年のように、労働大臣は当然労働者立場を守らなければなりませんから、完全実施すべしという強い御要望があるんですよ。しかし御案内のように、今日公務員の給与をめぐっての厳しい客観情勢がありますから、政府としては国政全般の立場に立ってやむを得ず抑制の措置を続けてきたわけですね。しかし、さればといって、それじゃいつまでも抑制、最大限努力すると言いながら、結果としては完全実施にいかぬわけですからね。これは職員の立場に立ては、一体おれたち先々どうなるんだ、うっかりすると財政の再建は六十五年までだから、そこまでこれでやられるんじゃないか。これは非常に公務員の士気にも影響するわけですね。  そこらを考えまして、そしてともかくいわゆる積み残しというものの解消はこれはどんな場合であっても、今年を含めて六十一年には完全実施にするんだ、したがって来年度の勧告の際にも、これは当然のことながら完全実施することが政府の重要な責任ですから、したがってそれに最大限の努力をいたします、しかし仮にそれができなくてもと、こういうことにしてやったわけでございますから、別段不完全実施を宣明したというつもりはないんですよ。そこらが官房長官談話を書く際にも、非常にデリケートなところなんですね、不完全実施なんというのはこれは言うわけにいきませんから。そこでああいうデリケートな表現で、いずれにしても、どんな場合でもともかく六十一年には完全実施いたします、こう言ったわけです。  それで、ILOの問題については、これは政府としてはILOの勧告というのはやはり尊重しなければなりませんから、そこらを頭に置いて、大変厳しい財政の事情の中でありますけれども、こういったところでおさめるのがいいんじゃないか。なるほど勧告の中の表現は、これはいろいろ違ってきておりますね。ことしのは相当厳しいと私は受けとめておるのです、これは。しかし、私は労働省の係官から、どういう状況だということも聞きましたが、やはりILOとしては、これは何といっても完全実施を強く日本政府に迫っているんだ、それが仮にできない場合なら、公務員の給与の決め方について何らかの改革措置をすべきである、こういう要請をしておるのですから、政府としては、これはもう従来から人事院の勧告制度は基本線として尊重していくということは決まっておりますから、ILOの期待しているようなことで、完全実施に向けて最大限の努力をするつもりでございますから、そこはぜひひとつ御理解をしていただきたいと思います。
  75. 大出俊

    ○大出委員 つまりこういうことですな。ILOは完全実施しろ、完全実施しないのなら制度を改正しろ、こう言っている、だから完全実施する、こう言うんですな。だから制度改正は待ってくれと、こう言うんですな。完全実施するから制度改正は待ってくれ、そうなるでしょう。どうですか、簡単に答えてください。
  76. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 私は、待ってくれとは考えておらぬ、待ってくれとは思ってないのです。要するに完全実施をする、最大限努力する、こう申し上げているのです。
  77. 大出俊

    ○大出委員 あなた方が完全実施をしないものだから、だからILOは制度を変えろとこう言う。仲裁、調停の制度にしろとこう言う。ここまで来たら待ち切れぬ、だから公務員共闘やなんかの当該の団体は制度改正をしろ、こういう方針を決めているわけです。明確にこれは対立しますが、本来ならここでILOと言いたいところなんだけれども、対立点、相違点が明確になりましたから、引き続いてこれは一般質問その他もございますから質問を続けたい、こう思います。  時間がありませんから次に移りますが、勤務時間の問題でございます。国際的に見て、労働省の一昨年の九月調査、昨年七月発表によりますと、余計なことは言いませんが、二千百三十六時間、これはべらぼうに長い。もちろん、これは時間外労働もあったり、年休のとり方もございますが、とにかく長過ぎる。労働省調査の国際比較をちょっとそこで述べていただきたいのです。
  78. 寺園成章

    ○寺園政府委員 製造業の生産労働者につきまして、一九八二年に推計も加えまして比較をいたしました数字でございますが、一人平均の年間総実労働時間、日本では二千百三十六時間、アメリカ千八百五十一時間、イギリス千八百八十八時間、西ドイツ千六百八十二時間ということでございます。
  79. 大出俊

    ○大出委員 西ドイツと日本の年間実労働時間、どれだけ違いますか。
  80. 寺園成章

    ○寺園政府委員 年間で四百時間余でございます。
  81. 大出俊

    ○大出委員 四百五十三時間ぐらい違いますね。とにかくべらぼうな差、四百五十四時間違う、ちょうど。四百五十四時間日本の方が長い、こういうことですね。  念のためにもう一遍申し上げておきますが、いろんな調査がございますけれども、日本が二千百三十六時間、アメリカが千八百五十一時間、イギリスが千八百八十八時間、フランスが千七百七時間、西ドイツが千六百八十二時間、かくて西ドイツと日本は四百五十四時間の開きがある、こういうわけですね。  そこで労働省は、時間がありませんから余計なことは申し上げませんが、いろんなものをお出しになっております。この「労働時間短縮の展望と指針」、中身はさっぱり私はわからぬけれども。それから五十五年十二月には、週休二日制等労働時間対策推進計画なんというのが出ておりますが、読んでおりますから中身は聞きません。  そこで、今やらなければならぬことは何か、時間外労働というものがある意味の生活給になっている、認めないわけじゃない。あるいは年次休暇をとらない、これもある意味では完全に強制ができないところもないとも言えない。その点も私は認めないわけでもない。だが、これは本来、筋を言えば、時間外労働は減らすべきであり、年次休暇は完全にとるべきであるということになる。  さてそこで、今一番手っ取り早い方法は、太陽と緑の週間どこう言っているわけですが、つまり四月二十九日の天皇誕生日から始めまして子供の日あたりまでの大型の連休を法制化したらどうか、正月三が日、これも流通関係いろいろ休みのところがありますから、法制化したらどうかという具体的な提起が四団体や全民労協等から行われています。この点は一体どうお考えになりますか。それが、いろんな理屈がありますが、一番入りいい時間短縮につながる、こう思いますが、簡単にお答えください。
  82. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 大出先生のおっしゃっているように、週休二日制の導入とか年休、休暇の完全消化というのが、労働時間短縮と労働者の健康、勤勉その他の持続からしても一番望ましいと思うわけですけれども、現状は、いろいろの社会的な問題や、また価値観等のこともございまして、なかなかそれが進んでおらない、こういう現状でございますから、どうしても連続休暇というものを普及する必要があるということで、一番具体的な問題としては、ゴールデンウイークの連続休暇ということを一つの案として、労働省としてはパンフレット等もつくりながら既に行政指導を全国的に進めて、特になかなか条件の厳しい中小企業や小規模企業、農業団体等とも意見交換をしながら進めているということでございます。  法制化が一番具体的な促進につながるわけですけれども、何といっても休暇の拡大と同時に雇用の安定確保、せっかく内需喚起で景気の問題もございますので、そういう点で経済の活力をそいだり雇用の不安定を生んでもいけないということで、まずは行政指導を徹底して理解を深めていく。既に労働経済動向調査等によりましても、行政指導じゃなまぬるいじゃないかという批判もございますが、去年が四六、七%ですけれども、五五%近い企業がこのゴールデンウイーク、連続休暇を採用する、こういう意思が明らかになっておりまして、まだ二月、三月、四月ございますので、その三カ月間を含めて、さらに六五%、七〇%段階のこの意識の普及徹底を図っていきたいというふうに努力しております。
  83. 大出俊

    ○大出委員 ILOの調査なんか見ましても、これは日本の休暇というのは、余りと言えば少な過ぎるのですね。これは休暇のILOの調査からいきますと、フィリピンと日本世界で一番少ない、こういう結論が出ていますね。お認めになりますか、一言、答えてください。
  84. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 特に、労働経済の立場からだけではなくて、日本ぐらい公平、平等な、学歴も財産も地位も関係なく、勤勉が大きな評価として社会的な人格にまで評価されている国ですから、そういう点で、なかなか休暇の拡大というのが難しいという点もございますので、非常に休暇、労働時間等についてはおくれておるということは、現状認めざるを得ないというふうに考えております。
  85. 大出俊

    ○大出委員 時間がありませんから残りはまだ一般質問でいたしますが、一言。法制化は御検討願えませんか。やるといったらなかなか時間がかかるのはわかっています。したがって、行政指導で進めていく、あわせて御検討いただく、いかがでございますか。
  86. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 雇用契約とか就業規則というものは、労使双方で十分理解とコンセンサスを得ませんと、すぐ法制化という綱をかけますと、フランスやなんかでもかえって、三十九時間の法制化が失業率を二%むしろ引き上げちゃったり、経済の停滞を逆に招いてしまっておる。こういうことで、やはりこういう問題は一つの行政的な指導の中からまず入っていかないと、かえって労働者の雇用問題、生活権を脅かすことになるというのが私どもの考えでして、非常に現状そういう労働時間短縮とか休暇の拡大自体が大変批判がございます。抵抗がありますけれども、何としても行政的な指導の立場で、まずは第一ラウンドを進めさせていただきたいということを考えているところです。
  87. 大出俊

    ○大出委員 第一ラウンドを進めていった先はどうするのですか、一言。今から検討を始めなければ間に合わぬ。行政指導をやりながら、一方で労使協議も必要だから、第二段階を考えていかなければいかぬでしょう。
  88. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 労働問題、労働経済の問題は、どうにも混乱して収拾がつかない問題についての法制化と、九割方のコンセンサスを積み上げた上でのその前進の意味での歯どめ措置といいますか、法的な一つの措置、そういう二つの考え方があると思うのですけれども、私はまずは、この問題は九割近い一つの合意を積み上げるということを一両年といいますか、三カ年計画のような形の中で進めていった上で、今大出先生の御指摘のような問題も検討されるという段階だと思います。
  89. 大出俊

    ○大出委員 これは明確に考え方が違いますが、時間の関係もありますから、改めてひとつ物を申し上げたいと存じます。  次に、週休二日制の問題ですが、きょうはCDが動いているわけですね。CDじゃない、郵政省だからATMですね、オートマチック・テラー・マシンですね。つまり預け入れる機械と払い出す機械が一緒になっているのですね。これは四省連絡会議等をつくって、金融機関の週休二日という問題、昨年八月に出発したわけでありますが、郵政省はどうしてもやるというのできょうCDを動かした。今聞いてみたら全国的にちゃんと動いている、午後二時ごろまで。これは農協あり、大蔵省所管の都市銀行あり、地方銀行あり、託銀があり、信金、信組があるという中で、何とか延ばしてくれないか、足並みをそろえたいということだったわけでありますけれども、あえて踏み切ったというわけでありますね。そうなるとこれは人が出てくる。千二百局の普通局には一人ずつ人が出てくる。その他のところは総合服務ということになるのですが、二千五百ぐらい動くのですが、これに農協がうっかり、郵便局が動くのならというので人が出てきて手足を動かすというと、これは四週五休制度の大きな後退につながる、こういうふうになる。  そこで、時間がありませんから承りたいのですが、四週六休に向けてまず大蔵省、大蔵省は六十一年の八月を目途に四週六休に向けて進めたいという意思表示を、私が先般おいでいただいて聞いたらそう言っておりますけれども、大蔵省の考え方をまず聞かせていただきたい。  次に、郵政省は公務員という身分を持っておいでになる。そういう意味で金融機関全体が動いたときに、つまり四週六休に向けて動いたときに一汗かいていただけるか。前回、大変後ろに引っ込みましたが、今回、前に出てきていただきたいと思うのでありますが、そこのところをどう考えているか。  さて、農協でございますが、農水は、機械の普及度合い等があるけれども、四週六休に向けてどういうふうにお考えか、農水のお考えを聞きたい。  そして人事院は、四週五休から四週六休に向けて私は本年の人勧に書くべきだと思っている。五十三年から試験実験を二回やって、五十六年から四週五休に踏み切っているわけでありますけれども、金融機関が動いたときに、郵政省が金融機関でございますだけに、その意味では人事院の所管でございますから、ここが動けずでは済まない。郵政省だけでも動かす気があるかどうか。これは法律的にはやってやれないことはないと私は思っているのですが、人事院に承りたいのであります。  最後に、今六十年というのは、金融の自由化、金利の自由化という山でございますね。国際的にある意味の銀行戦争が起こるという段階であります。世界的に見て金融機関の、銀行の週休二日をやってないというのは日本とオランダぐらいなんです。世界で九十五カ国が週休二日を、金融機関は全部完全な週休二日を実施している。OECDの加盟諸国のうちでも、日本とスペインの二国だけが完全週休二日をやっていないので、あとは全部やっている、こういう状況です。  そうすると、そのことを含めて前に進めるべきだと考えているわけですが、最後にひとつ総理に、全体をとらえて金融機関の週休二日というものをどうお考えになるか承っておきたいのです、時間がありませんから。
  90. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まず、私の方からお答えをいたします。  大蔵省の考え方としましては、週休二日制の拡大は時代の流れである、大蔵省としても週休二日制拡大についての民間金融機関内部での検討を積極的に支援していこう、これが基本的考え方です。  それから、今大出さんが御指摘なさいました全銀協案というものがございます。すなわち、六十一年八月ごろをめどに月二回に拡大する方針、これにつきましては、六十一年八月ごろという点については、中小金融機関とそれから農協さん、それは早過ぎるという方もございます。それから金融機関の労働組合等においては遅過ぎる、こういう議論もございますので、したがって、やっぱり私どもとしては、全銀協案にも示されておりますとおり、本年九月ごろまでに何とか関係者間で真剣な協議、調整が行われることを期待をいたしております。  労働行政の問題でありますが、民間は私どもの方、それから農協の農林水産省、それと郵政省、これは労働行政を中心としてお世話を願って意見、議論を詰めておりますから、私は全銀協案という方向で詰めていかれることになることを期待もしておりますし、そういう方向で私どもも協力してまいりたいということが基本的な認識であります。
  91. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大蔵大臣の御答弁のとおり、できるだけ早く合意を形成いたしまして、円満に御趣旨に沿う方向へ進みたいと思います。
  92. 左藤恵

    左藤国務大臣 郵政省といたしましては、郵便局が金融機関であると同時に公務員であるという点も確かに考慮いたしまして、きょうこうしたATMを始めたのは、やはり利用者、国民という立場考えたわけでございまして、そうした意味のコンセンサスが得られること、あるいはこれから先考えなければならないのは、官庁の閉庁状況とかあるいは週休二日制に対します人事院勧告だとかそういった点、社会全体の週休二日制の進展状況も考えまして、今後こういった問題について積極的に考えていかなければならない、このように考えております。
  93. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 大出先生にお答えをいたします。  農協は、御存じのように難しい問題というのが二つございます。その一つは、農協は土曜日も農作業をやったり農作物の出荷等をしているということ、それからもう一つは、大衆金融機関として組合員の利便を尊重するというようなことがございまして、土曜日の休業は難しい点がございますが、他方、総理が言いましたようなことで、週休二日制の推進が我が国全体の趨勢になっていること、それからもう一つは、農協も金融機関として円満な協調を図る必要がある、こんな観点から、今先生がおっしゃったような方向で、全国で四千三百農協組合がありますが、混乱を生じないような適切な指導を行っているところでございます。
  94. 内海倫

    ○内海政府委員 人事院としましても、四週六休ということはぜひ方向としては考えたいと思います。ただ、各省ともいろいろ打ち合わせもしなければいけませんし、難しい問題もございますので、ことしの勧告においてこれを勧告するということについては、なおまた私どもとして申し上げる段階ではございません。
  95. 大出俊

    ○大出委員 いずれにしても、休暇も世界で一番少ない、労働時間は一番長い、週休二日制というのも、銀行の中でオランダと日本だけがどんじり、これは困るわけですね。労働省の意見は、CD動かした、ATM動かした、郵政省のきょうの状況を見まして、改めてこれは引き続き一般質問等で承りたいと思っております。  以上で終わります。
  96. 天野光晴

    天野委員長 これにて大出君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、三案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  97. 天野光晴

    天野委員長 これより討論に入ります。三案を一括して討論に付します。  討論の通告がありますので、順次これを許します。原田昇左右君。
  98. 原田昇左右

    原田(昇)委員 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表して、ただいま議題となっております昭和五十九年度補正予算三案について、賛成の討論を行います。  我が国経済は、一昨年初めから、米国を初めとする先准諸国の景気が回復に転じたことを契機として、物価の安定と相まって、着実な上昇を続けております。その中でも、ハイテク関連産業を中心とした民間設備投資が活発化し、次第に内需、外需のバランスのとれた順調な景気拡大過程をたどっており、個人消費や住宅投資の伸びも、緩やかながら期待の持てる展開となってきております。  我が国がこのように比較的良好な経済状態にあることは、経済各部門において、官民それぞれの不断の努力に負うところ大でありますが、特に政府・自民党が、自由な経済体制を堅持して民間活力の助長に努めてきたこと及び経済の変化に応じ、機動的にきめ細かな経済運営を行ってきたこと等にほかなりません。  今回の補正予算は、当初予算における財政改革のための厳しい緊縮姿勢を堅持しつつも、予算成立後に生じたやむを得ざる事由に基づき、特に緊要となった事項等について、所要の措置を講じようとするもので、その規模は八千八百六十一億円となっております。  以下、本補正予算に賛成する理由を申し上げます。  その第一は、災害復旧費の追加と国庫債務負担行為の追加による公共事業の拡大措置が講じられていることであります。  昭和五十九年は、比較的災害が少ない年でありましたが、不幸にして、融雪、豪雨等の災害に遭われた方々はまことにお気の毒なことであります。  今回の補正予算では、初年度の災害復旧進度を前年より高め、早期復旧を図ることといたしております。これは被災地の方々の強い期待にこたえたものでありまして、高く評価いたします。  また、これとは別に、一般会計及び特別会計において、一般公共事業に係る国庫債務負担行為ニ千四十六億円を計上し、これにより事業費として三千億円を確保することとなっております。  これは、社会資本の整備を一層進め、景気の持続的拡大を六十年度にスムーズにつなげ、国民生活安定に資するものでありまして、一日も早い補正予算の成立が望まれるところであります。  理由の第二は、公務員の給与改善に必要な経費を計上していることであります。  政府は、昭和五十九年八月に行われた人事院勧告を受けて、官民給与の較差是正を図るため、公務員給与の平均三・三七%引き上げを決定し、これに伴う給与法の改正が既に、行われております。  今回の措置は、財政事情等が極めて厳しい情勢にもかかわらず、公務員の生活確保のためなし得る最大限の努力をした結果であり、人事院勧告の完全実施を目指して着実に第一歩を踏み出したものと高く評価いたします。  理由の第三は、歳出の追加を賄うための特例公債の発行は行わず、財政の健全化に努めていることであります。  すなわち、財源については、租税の増収、既定経費の節減、予備費の減額をもってこれに充てるほか、特例公債の増額を避けるため、やむを得ず前年度の純剰余金の二分の一を財源として受け入れております。その結果、赤字公債の追加発行が避けられ、同時に建設公債の追加発行についても、災害復旧に要する経費の範囲内にとどめることができましたことは、財政健全化を図ろうとする政府の強い姿勢を示すものとして高く評価するものであります。  以上、私は、本補正予算三案に賛成する理由を申し述べましたが、最後に、この際特に申し上げたいことは、今後の急速な高齢化社会の到来に備え、政府におかれましては、引き続き行財政改革を断行し、国民の期待にこたえるとともに、技術革新に即応し民間の創造的活力をフルに発揮させて、国民生活の一層の向上安定を図るため全力を尽くされることを強く要望して、私の賛成討論を終わります。(拍手)
  99. 天野光晴

    天野委員長 松浦利尚君。
  100. 松浦利尚

    ○松浦委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となっています昭和五十九年度補正予算三案に反対の討論を行います。  反対する第一の理由は、見え透いた黒字隠しが行われているからです。政府は租税二千三百九十億円プラス補正としていますが、これは酒税の減収を埋めてもなお余りある低い数字と言わなければなりません。  なぜならば、五十八年度は四千百三十億円マイナス補正であったのに、決算は逆に四千五百六十億円の黒字となっていました。これは五十八年二月を底として、三月以降は景気回復が順調になっているからです。五十九年は、五十八年度よりさらに景気回復が進んでいることを考え合わせますと、この補正額は見込み違いか、もしくは意図的な過小評価と言わざるを得ません。  景気の順調な回復はさまざまな経済指標によって証明できますが、例えば、大蔵省がことし一月に発表しました昨年四月から十一月までの法人税収の対前年比の伸びは順調に推移しており、今後とも二けたを持続するというのが常識的な見方ではないでしょうか。黒字隠しと言わざるを得ません。  反対理由の第二は、ただいま述べましたような黒字隠しをした結果、ダイナミックな内需振興策、拡大政策を著しく欠いているという点です。  我が党は、内需に依存する建設業、消費関連企業等を中心に、企業倒産が年間二万件以上にも上っている事態を深く憂えるものです。全般的な景気の回復と、これら内需関係の、特に中小企業の不況現象は、単に景気の光と影の関係として見過ごすことはできません。政府の経済政策によっては、こうした痛ましい犠牲を出さずに済むかもしれないのであります。  反対理由の第三は、貿易摩擦に対して政策対応がなきに等しいという点であります。  ことし一月末に米商務省が発表した貿易統計によりますと、米国から見た対日貿易赤字は、昨年一年間で実に三百六十八億ドルに達したということです。これは前年の一・七倍にもなります。日米間を主とする貿易摩擦が解消の方向になく増大の方向にあることは、日本政府にも大きな責任があると言わなければなりません。これも基本的には内需拡大に積極的に取り組もうとしなかった結果であります。  反対理由の第四は、人事院勧告を不当に値切ったということです。  人勧は単に国家公務員の給与をふやすという意味だけのものではありません。民間企業の賃金決定に前らかに影響を与え、ひいては勤労者世帯がより多く可処分所得を得て、内需拡大にも結びつくと思うのであります。  補正後の五十九年度決算で、恐らく大幅な黒字が出ることは明らかであります。このとき、こうした苦しみに耐えておる国民に対して政府はどのような釈明をするのか、我が党はそのことを聞きただす権利を留保いたしまして、反対討論を終わります。(拍手)
  101. 天野光晴

  102. 近江巳記夫

    ○近江委員 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました昭和五十九年度補正予算三案に対し、反対の討論を行うものであります。  今日の我が国経済は、国内需要の伸び悩みと、その結果もたらされた著しい対外不均衡への対応が迫られ、また、財政は危機状態が続き、「増税なき財政再建」の着実な推進が最大の政治課題となっていることは御存じのとおりであります。  我々は、五十九年度当初予算の審議に当たって、内需拡大に背を向け、所得税減税を上回る大衆増税を強行し、さらに財政再建の名のもとに国民に負担と犠牲を押しつける財政運営を厳しく追及し、その転換を強く求めたのであります。しかしながら、中曽根内閣は我々の要求を謙虚に受けとめず、今日のように事態をますます悪化させたのであります。  六十年度予算審議における中曽根総理の大型間接税の導入を示唆する発言こそ、中曽根内閣成立以来の財政運営の破綻をみずから認めたものと断ぜざるを得ません。  以下、本補正予算案に反対する主な理由を申し述べます。  第一は、依然として内需が伸び悩んでいるにもかかわらず、内需拡大のための具体策が欠如していることであります。  内需の伸び悩みは、特に個人消費の低迷が大きく影響を及ぼしておることは言うまでもありません。個人消費の低迷は、賃上げが抑制されたことと加えて、五十九年度当初予算における酒税、物品税の大幅引き上げ、公共料金の軒並み値上げ等による国民生活への負担の増大がその原因の多くを占めていることは明らかであります。国民生活を守るとともに、内需拡大のために我々が要求した減税の上乗せを拒否し、さらに公共事業の追加にも耳を傾けようとしなかったことが内需の伸び悩みをもたらし、失業、倒産を高水準のままに推移させ、また内外不均衡を拡大させていると言っても決して過言ではありません。  現在の我が国経済の課題は、内需主導の成長パターンへ転換し、我が国経済を安定成長軌道に乗せることであります。その意味で、これまでの財政運営を厳しく反省し、本補正予算案に内需拡大のための具体策を盛り込むべきであると考えるものであります。  反対する第二の理由は、「増税なき財政再建」に取り組む姿勢が極めてあいまいであるということであります。  政府は、五十九年度当初予算において、所得税減税の見返りに、それを上回る酒税、物品税等の大衆増税を強行し、今また、大型間接税導入を画策し、事実上、「増税なき財政再建」を棚上げしようとしているのであります。  中曽根総理は、「増税なき財政再建」を掲げ、その実現のためと称し、国民生活に多くの負担と犠牲を押しつけてきたのであります。それにもかかわらず、「増税なき財政再建」の実現に欠くことのできない行政改革は極めて不徹底であり、事実、本補正予算案における既定経費の節減額は、五十七、八年度を大幅に下回っているのであります。  私は、この際、政府に対し、大型間接税導入の画策をやめ、行政改革を徹底し、あくまでも「増税なき財政再建」を貫くよう強く要求するものであります。  反対理由の第三は、人事院勧告を無視し、国家公務員の給与引き上げを大幅に抑制していることであります。  本補正予算案では、六・四%の給与引き上げ勧告を三・四%に抑制しているのでありますが、人事院勧告の抑制は、国家公務員の労働基本権を制約する代償措置である人事院勧告制度の形骸化にも通ずるものと言わざるを得ません。  五十七年度以来、人事院勧告の凍結、もしくは大幅抑制が既成事実化され、公務員の生活水準の低下、勤労意欲を減退させ、しかも人事院勧告の抑制が国家公務員の給与の抑制にとどまらず、地方公務員、年金、恩給生活者等にも悪影響を及ぼしている事実も重大であります。  我が党は、かねてから国家公務員の純減数の拡大を図る一方で、人事院勧告の完全実施を要求してきましたが、人事院勧告を踏みにじる本補正予算案を認めることはできないのであります。  以上、補正予算三案に反対する主な理由を申し上げ、討論を終わります。(拍手)
  103. 天野光晴

  104. 木下敬之助

    ○木下委員 私は、民社党・国民連合を代表し、ただいま議題となっております昭和五十九年度補正予算三案に対し、反対の討論を行います。  今日、我が国は、二十一世紀に向けて活力ある福祉社会の基盤を築くため、「増税なき財政再建」の達成と、内需主導の適正な経済成長の確保という国民的課題の解決に迫られています。  しかるに、中曽根内閣における縮小均衡型の経済財政運営と、不徹底な行政改革によって、我が国財政は悪化の一途をたどっているのであります。「増税なき財政再建」を達成するためには、我が党が主張してきたように、行政改革の断行による構造的赤字の解消と、内需主導の積極的経済政策による自然増収の大幅確保という方策以外に道はありません。  しかるに、中曽根内閣の行政改革は、極めて不徹底であり、国民の期待を裏切る内容に終始しています。公務員の定数削減を見ても、五十九年度は三千九百五十三人の純減、全体のわずか〇・四%にすぎません。また、補助金の整理合理化は、その対象となる事務事業を抜本的に見直し、思い切った廃止、統合を行うべきであるにもかかわらず、政府は財政破綻のツケを地方自治体や国民に転嫁することに終始し、約十四兆円余の補助金には根本的なメスが入れられないままになっております。これでは、構造的赤字の縮減は不可能と言わざるを得ないのであります。  次に、中曽根内閣の経済財政運営であります。  我が党は、「増税なき財政再建」を目指す拡大均衝型予算を要求してきましたが、政府は、既にその破綻が立証された縮小均衡型経済運営をなおも踏襲し、その結果、国民生活の圧迫や貿易摩擦の激化を招いたことはまことに遺憾であります。税制改正においては、政府は、五十九年度において一兆千八百億円の所得減税を実施するためと称して、法人税、物品税、酒税、自動車関係諸税等、減税規模を上回る大増税を強行しました。また、パート減税を不十分なものにとどめ、教育費減税を無視するなど、我が国経済の現状と国民生活の実態に対する政府の無理解を露呈いたしました。  また、中小企業に対する思い切った投資減税の実施は、中小企業の経営基盤の強化、景気回復に不可欠の施策であるにもかかわらず、政府はこれを見送ったのであります。  さらに、減税と並んで積極経済政策の柱である公共事業費については、過去三年間にわたりその伸び率を横ばいとし、五十九年度においては二%の削減すら行いました。また、政府の単純一律の削減方式による財政の帳じり合わせのために、本人の給付率の削減など健保改正心を強行するなど、国民生活の圧迫をもたらしたことはとうてい容認できません。  政府の縮小均衡型経済運営のもとで、五十九年の中小企業の倒産件数は何と二万件を超える過去最高を記録し、雇用情勢の改善は依然として立ちおくれ、勤労者の生活水準は停滞を余儀なくされているのであります。また、農林漁業、素材産業の振興に関する抜本的な対策が欠如しているため、景気回復が立ちおくれた地域が全国に存在し、景気のまだら模様を形成している事実は看過し得ません。  このように、政府の経済財政運営は、景気の自律回復を阻害し、国民生活を圧迫し、ひいては税の大幅な自然増収の確保が困難となるという悪循環をたどり、早晩、大増税が余儀なくされることは必至と言わざるを得ません。  この補正予算案も、従来の縮小切衛型経済運営をなおも踏襲するものであります。  第一に、内需中心の経済成長の柱となるべき所得税減税、中小企業投資減税、さらに一兆円規模の公共事業費などの追加を見送ったことであります。このため、米国経済の後退に伴い、我が国の経済成長も鈍化傾向を示しており、今後、外需依存の景気回復が貿易摩擦をさらに深刻化させることは必至の状況であります。貿易摩擦解決のかぎとなる内需主導への積極的経済政策がどこにも見られないことはまことに遺憾であります。  第二に、公共事業費については、道路整備事業に本来充当されるべき今年度一般会計繰り入れ分が補正予算に計上されていないことは遺憾であります。  第三に、人事院勧告を無視し、これを一方的に抑制していることであります。こうした措置は、労働基本権制約の代償としての人事院勧告制度を根底から揺るがすものであり、我が党は全く容認できません。  このような縮小均衡型の経済運営を続ける限り、活力ある福祉社会の建設も「増税なき財政再建」も達成できないことは明白であります。政府は、早急に従来の縮小均衡型の経済運営を転換し、我が党が提唱する拡大均衡型の経済運営によって日本経済の潜在成長力を引き出し、内需主導の経済成長を目指すべきであります。  同時に、肥大化し、硬直化した行政機構を抜本的に簡素効率化する行政改革を断行することが不可欠であります。このため、官僚機構の抵抗に属することなく、公務員定数の大幅な計画的削減、補助金の整理合理化、地方行革の推進などを着実に実行していくべきであります。  以上、二点の重大な政策転換を強調し、縮小均衡型予算から一歩も踏み出していない補正予算に対する私の反対討論を終わります。(拍手)
  105. 天野光晴

    天野委員長 瀬崎博義君。
  106. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、政府提出の補正予算三案に対し、反対の討論を行います。  今、国民が切実に求めている予算補正とは、軍事費と大企業優遇予算を大幅に削減し、国民の暮らしに役立つ予算の拡充を図ることです。ところが、本補正予算案は、今、戦後最悪の中小企業倒産、失業の増大となってあらわれている五十九年度予算の反国民的性格をさらに補強するものとなっており、断じて容認できません。  具体的な反対理由の第一は、この補正予算案が軍拡のスピードをますます加速させ、また史上最高の利益を上げている大企業にはより一層の手厚い助成を追加するものとなっていることであります。  軍事費は二百六十九億円上積みされ、対GNP比〇・九九八%と、一%枠ぎりぎりに迫り、六十年度における一%突破は確実となっています。これはレーガン政権の核戦略に呼応した中曽根内閣の軍拡路線を露骨に示すものであります。  第二は、人事院勧告を大幅に値切り、国民の暮らしを守る予算を一段と削減していることであります。  公務員給与は、人事院が六・四四%の引き上げを勧告したにもかかわらず三・四%以内に抑えています。これは政府が不当にも国家公務員の労働基本権を制限し、その代償としてつくられた人事院勧告制度すら否定するものであります。また、これは公務員労働者の労働基本権と生活権を破壊するだけでなく、全労働者に低賃金、全国民に低い生活水準を押しつけるものであり、断じて許せません。  また、中小企業対策や農林漁業予算の増額が緊急に求められているのに、逆に中小企業対策費三十三億円を初め、農林漁業関係費においても減額措置がとられているのであります。大学や高校等私学に対する助成は十一億円の削減、身障者保護費は四十三億円の減額とするなど、徹頭徹尾国民の願いを裏切るものとなっています。  第三は、健康保険法等の改悪に伴うものであります。  国民健康保険助成費の追加がありますが、もともとこれは、労働者本人の一部負担の導入、国保への補助率削減など、国庫補助の制限を図った健保法改悪を前提として、当初予算では三千二百八億円が減額されていたのですが、国民の総反撃によって、健保法改悪案の成立が大幅におくれたために今回の補正となったものであります。私は、健保制度は十割給付に復活すべきことを強く主張するものであります。  第四に、硫黄島にいわゆるシーレーン防衛の作戦基地を建設するため、わずかな見舞い金を計上して帰島を断念させ、旧硫黄島住民に耐えがたい犠牲を強要していることであります。  政府のなすべきことは、基地を撤去して硫黄島を平和の島とすること、また旧硫黄島住民の切実な要求に誠実にこたえる措置を講ずることであります。  第五に、この補正予算案は、さらに国債を増発し、サラ金財政を強めていることであります。  すなわち、国債による資金調達は当初予算よりも千八百五十億円増額し、五十九年度の国債による歳入は赤字国債を含めて十二兆八千六百五十億円、国債依存率二五%、国債残高は本年度末には百二十二兆円を突破することが確実となっているのであります。  私は、以上述べた理由から、政府提出の昭和五十九年度補正予算三案に対し、強く反対の意を表明して討論を終わります。(拍手)
  107. 天野光晴

    天野委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  108. 天野光晴

    天野委員長 これより採決に入ります。  昭和五十九年度一般会計補正予算(第1号)、昭和五十九年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和五十九年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して採決いたします。  右三案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  109. 天野光晴

    天野委員長 起立多数。よって、三案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました三案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  110. 天野光晴

    天野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  111. 天野光晴

    天野委員長 次回は、来る十二日午前十時より昭和六十年度総予算について公聴会を開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後零時二十五分散会