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1985-02-08 第102回国会 衆議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年二月八日(金曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 天野 光晴君    理事 大西 正男君 理事 小泉純一郎君    理事 橋本龍太郎君 理事 原田昇左右君    理事 三原 朝雄君 理事 稲葉 誠一君    理事 岡田 利春君 理事 二見 伸明君    理事 吉田 之久君       相沢 英之君    伊藤 公介君       伊藤宗一郎君    宇野 宗佑君       上村千一郎君   小此木彦三郎君       小渕 恵三君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    加藤 卓二君       海部 俊樹君    熊川 次男君       倉成  正君    小杉  隆君       砂田 重民君    住  栄作君       田中 龍夫君    中川 昭一君       葉梨 信行君    原田  憲君       武藤 嘉文君    村山 達雄君       山下 元利君    井上 一成君       上田  哲君    大出  俊君       岡田 春夫君    川俣健二郎君       佐藤 観樹君    堀  昌雄君       松浦 利尚君    矢山 有作君       池田 克也君    近江巳記夫君       神崎 武法君    草川 昭三君       坂口  力君    大内 啓伍君       木下敬之助君    小平  忠君       中野 寛成君    梅田  勝君       佐藤 祐弘君    瀬崎 博義君       松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 嶋崎  均君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 松永  光君         厚 生 大 臣 増岡 博之君         農林水産大臣  佐藤 守良君         通商産業大臣  村田敬次郎君         運 輸 大 臣 山下 徳夫君         郵 政 大 臣 左藤  恵君         労 働 大 臣 山口 敏夫君         建 設 大 臣 木部 佳昭君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     古屋  亨君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)藤波 孝生君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官) 河本嘉久蔵君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 加藤 紘一君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      金子 一平君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      竹内 黎一君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石本  茂君         国 務 大 臣         (沖縄開発庁長         官)      河本 敏夫君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣         官房審議室長  吉居 時哉君         内閣審議官   海野 恒男君         内閣法制局長官 茂串  俊君         内閣法制局第一         部長      前田 正道君         内閣総理大臣官         房審議官    田中 宏樹君         日本国有鉄道再         建監理委員会事         務局次長    林  淳司君         臨時教育委員会         事務局次長   齋藤 諦淳君         警察庁刑事局保         安部長     中山 好雄君         総務庁長官官房         長       門田 英郎君         総務庁長官官房         審議官     手塚 康夫君         総務庁長官官房         審議官     佐々木晴夫君         総務庁行政管理         局長      古橋源六郎君         青少年対策本部         次長      瀧澤 博三君         北海道開発庁計         画管理官    滝沢  浩君         防衛庁参事官  古川  清君         防衛庁参事官  古川 武温君         防衛庁参事官  池田 久克君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房         長       西廣 整輝君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛庁教育訓練         局長      大高 時男君         防衛庁人事局長 友藤 一隆君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         防衛庁装備局長 山田 勝久君         防衛施設庁長官 佐々 淳行君         防衛施設庁総務         部長      梅岡  弘君         防衛施設庁施設         部長      宇都 信義君         防衛施設庁建設         部長      大原 舜世君         防衛施設庁労務         部長      大内 雄二君         経済企画庁調整         局長      赤羽 隆夫君         経済企画庁国民         生活局長    及川 昭伍君         経済企画庁物価         局長      斎藤 成雄君         経済企画庁総合         計画局長    大竹 宏繁君         科学技術庁長官         官防長     宇賀 道郎君         科学技術庁計画         局長      堀内 昭雄君         科学技術庁研究         調整局長    内田 勇夫君         環境庁長官官房         長       岡崎  洋君         国土庁長官官房         長       永田 良雄君         国土庁長官官房         会計課長    北島 照仁君         国土庁地方振興         局長      田中  暁君         国土庁防災局長 杉岡  浩君         法務省民事局長 枇杷田泰助君         法務省刑事局長 筧  榮一君         法務省入国管理         局長      小林 俊二君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省北米局長 栗山 尚一君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省中近東ア         フリカ局長   三宅 和助君         外務省経済局長 国広 道彦君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         外務省情報調査         局長      渡辺 幸治君         大蔵大臣官房審         議官         兼内閣審議官  門田  實君         大蔵大臣官房審         議官      関   要君         大蔵省主計局長 吉野 良彦君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省関税局長 矢澤富太郎君         大蔵省理財局長 宮本 保孝君         大蔵省理財局次         長       中田 一男君         大蔵省銀行局長 吉田 正輝君         大蔵省国際金融         局長      行天 豊雄君         国税庁税部長         兼国税庁次長心         得       冨尾 一郎君         国税庁調査査察         部長      村本 久夫君         文部大臣官房長 西崎 清久君         文部大臣官房審         議官      菱村 幸彦君         文部大臣官房会         計課長     坂元 弘直君         文部省初等中等         教育局長    高石 邦男君         文部省教育助成         局長      阿部 充夫君         文部省高等教育         局長      宮地 貫一君         文部省高等教育         局私学部長   國分 正明君         文部省学術国際         局長      大崎  仁君         文部省社会教育         局長      齊藤 尚夫君         厚生大臣官房総         務審議官    長門 保明君         厚生省健康政策         局長      吉崎 正義君         厚生省保健医療         局長      大池 真澄君         厚生省社会局長 正木  馨君         厚生省年金局長 吉原 健二君         社会保険庁年金         保険部長         兼内閣審議官  長尾 立子君         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産省経済         局長      後藤 康夫君         農林水産省構造         改善局長    井上 喜一君         農林水産省農蚕         園芸局長    関谷 俊作君         農林水産技術会         議事務局長   櫛渕 欽也君         食糧庁長官   石川  弘君         林野庁長官   田中 恒寿君         水産庁長官   佐野 宏哉君         通商産業大臣官         房審議官    矢橋 有彦君         通商産業省通商         政策局長    黒田  真君         通商産業省貿易         局長      村岡 茂生君         通商産業省基礎         産業局長    野々村 隆君         通商産業省機械         情報産業局長  木下 博生君         工業技術院長  等々力 達君         工業技術院総務         部長      荒尾 保一君         資源エネルギー         庁長官     柴田 益男君         特許庁長官   志賀  学君         特許庁総務部長 小川 邦夫君         運輸大臣官房長 永光 洋一君         運輸大臣官房国         有鉄道再建総括         審議官     棚橋  泰君         郵政省放送行政         局長      徳田 修造君         労働省労働基準         局長      寺園 成章君         労働省職業安定         局長      加藤  孝君         労働省職業安定         局高齢者対策部         長       小野 進一君         建設大臣官房長 豊蔵  一君         建設大臣官房会         計課長     望月 薫雄君         建設省住宅局長 吉沢 奎介君         消防庁長官   関根 則之君  委員外出席者         参  考  人 澄田  智君         (日本銀行総裁)         予算委員会調査         室長      大内  宏君     ――――――――――――― 委員の異動 二月八日  辞任         補欠選任   石原慎太郎君     加藤 卓二君   小杉  隆君     伊藤 公介君   武藤 嘉文君     熊川 次男君   井上 普方君     岡田 春夫君   正木 良明君     坂口  力君   矢野 絢也君     草川 昭三君   小平  忠君     中野 寛成君   野間 友一君     佐藤 祐弘君 同日  辞任         補欠選任   伊藤 公介君     小杉  隆君   加藤 卓二君     中川 昭一君   熊川 次男君     武藤 嘉文君   岡田 春夫君     井上 普方君   草川 昭三君     矢野 絢也君   坂口  力君     正木 良明君   中野 寛成君     小平  忠君   佐藤 祐弘君     梅田  勝君 同日  辞任         補欠選任   中川 昭一君     石原慎太郎君   梅田  勝君     山原健二郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十九年度一般会計補正予算(第1号)  昭和五十九年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和五十九年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ――――◇―――――
  2. 天野光晴

    天野委員長 これより会議を開きます。  昭和五十九年度一般会計補正予算(第1号)、昭和五十九年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和五十九年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川俣健二郎君。
  3. 川俣健二郎

    川俣委員 きょう、あす補正予算審議することになっているわけですが、補正予算は、災害復旧それから人件費を地方自治体が立てかえているような予算等で、これは急いでいるわけでしょうが、したがって会計の補てんというように考えていましたが、ただ、きのう同僚の上田議員最後質問の際に出た硫黄島のあれもこの補正予算に入っている。そうなると、ちょっとこれはそう簡単なものじゃないんだなと思ったのでございまして、ちょっとこの機会硫黄島のことだけ聞いておきたいのです。  ちょっとその前に、補正予算ですから大蔵大臣に伺いたいのでありますが、景気は回復、上昇ぎみであるということが言われておるのです。したがって成長率も当初の四・一%から五・三%に是正されたわけであります。そうすると、今後の最後四半期はどういう見通しなんだろうかなというようなことをせっかくだから後で河本さんに、昨年の関連もありましたから伺いたいと思います。  そこでまず大蔵大臣に、きょう一斉に税収見込みが出ましたが、割合に出ていない。これは酒税関係かな。酒税となると、これはなるほど政策が間違ったな。私は昨年の予算分科会で、こう酒税が高くなるとまたどぶろくに戻るよとどぶろく談議を聞いてもらったのですが、やはり案の定減った。特に日本酒は減った。これはしょうちゅうに逃げたのだというけれども、そうでもないのです。やはり税が高くなると、特に私の方のような農村地帯どぶろくに逃げる歴史的な実績が出ておるだけにその辺が非常に案じられるのでありますが、きょうの伸び率六・七%、これはもう見込みの七・七%を既に下回っておるのでありますが、今後その税収見込みというのはどういうことになるんだろうか。まず大蔵大臣に伺って、それから河本さんに四半期推移いかん、こういうように聞いていきたいと思うのです。
  4. 竹下登

    竹下国務大臣 今、川俣委員おっしゃいましたように、きのう発表しました五十九年十二月末税収、累計で六・七%の伸び補正予算伸び率七・七%となっております。また進捗割合は、補正予算額に対して五六・五%で、前年同月末は五七・〇%でございますから、それに比べますと〇・五%下回っております。しかしながら、五十九年度の年度を通しました税収につきましては、好調が見込まれます三月期決算法人申告などが全く残されておりますから、今御審議いただいておる補正予算額達成は可能であろうというふうな見通しを持っております。  それから酒税の問題は、確かに今回の補正予算でこれまでの課税実績業界ヒアリング等に基づきまして見直しを行って二千四百五十億円の減額補正を計上したわけでございますから、国民一人当たり二千円の減額補正ということでございますから、確かに減収を正直に補正の形で御審議をいただかなければならぬということになったわけであります。五十九年度の酒税収入につきましては、しょうちゅう等は好調に推移しておりますけれども、言ってみれば五五%を占めますビールとかあるいは二五、六%を占めますウイスキーとか、これが低調に推移しておりますので、予算額を下回ることは避けがたいと判断したわけでございます。  そこで、酒の問題でございますと、大宗を占めますビールウイスキーにつきましては、税率改定あるいは価格改定たびごとに見られます、いわゆる改定前には必ず仮需が出ます。まあ、買いだめとかいろいろな言葉もあるでございましょうが。したがって一時的な不振が含まれておるということもございます。ちょうど今後の見通しで見ますと、五十八年の十-十一月にかけてビール及びウイスキー類価格改定が行われますので、その仮需が五十八年にはあったわけですから、それのちょうど反動で低調に推移したというようなことでございます。したがって、その限りにおいては、対前年度の仮需を含んだ比較をいたしますと今後の酒税収入は高い伸び率を示すものと見込まれますので、もとより、補正した減額はもちろん基準に置かしていただいて、その補正予算額達成は可能であろうというふうに考えております。  それからどぶろく談義の分でございますが、これは確かに五十八年の秋ごろから加速化しましたのが、しょうちゅうブームとも言われ、またチューハイブームと言われておるものがございます。これがやはりビールとかウイスキー、とりわけウイスキーが少なからぬ影響を受けたではないか。それで嗜好が完全に変化したかどうかということになりますと、これはにわかに断定はできません。  酒税に関しての現状の認識はその程度で御理解をいただきたいと思います。
  5. 川俣健二郎

    川俣委員 これは河本先生に、経済企画庁ではないだろうが、去年のこともありますのでもう一遍伺いますと、非常に見通しの明るい、定見の深い人ですからあえて聞くのですが、残る四半期見通しはどういうものでしょうか。成長率をもう少し聞かしてもらいたいということです。  その前に大蔵大臣、そうすると、嗜好の動向はまだ一概には言えない、こう言うのはわかるが、仮需があった、買いだめがあった、だから上がった途端には下がるんだということで甘んじていられるほどでないものが確かにある。  そこで、特に東北あたりは何でも悲しみにつけ、お祝いにつけ酒だったんですが、そういうのが非常に酒税が高くなった機会に変わってきているなというような現象があるし、どぶろく談義もあったけれども。したがって、私は、まだ断定はできないが、酒税を上げる、大衆の嗜好を、晩酌を取り上げるというような場合にはかなり慎重に総合的にやるべきであって、これだけを上げる、こっちはそのままだということが税制でいいのかどうかというものも含めておるので、どうか今後そういうところを留意されて税収という政策を考えてもらいたい。  河本さん、ちょっと一言、経済見通しについて。
  6. 河本敏夫

    河本(敏)国務大臣 昨年から、昭和五十九年から数年ぶりで経済の状態はよくなっておるんですが、まだ全体としての力がそう強くないというのが現状だろうと思います。したがって、ばらつきがいろいろな分野で残っておりますが、ただアメリカの経済がどうやら軌道に乗ってまいりまして、昨年の後半はやや悪い時期もございましたが、順調に進んでおるようでございますから、大勢としては、私は、いい方向に行くのであろう、またしかし、全体としての力がそう強くないというのが現状だろうと思います。
  7. 川俣健二郎

    川俣委員 そこで、この補正に、きのうの質問関連もあるが、むしろこれは補正の方の問題ですが、一人四十五万ずつの見舞い金硫黄島旧島民に出す。これを聞いた場合に、これは単なる今までの見舞い金なのか、気の毒料なのか、帰りたいだろうからということで慰謝料なのか、ぼつぼつ解決方向での予算の使用かなと思っておったんですが、そうでもない。危ない。危ないというのは、沈没がひどいということなので、二、三十センチずつ沈没すれば十年たてばもうすっぽりなくなっちゃうじゃないか。そうでもない。危ないのはむしろシーレーンの弾の方が危ないのかな、こう思ったりするんだが、まずこれは事務当局でいいのですけれども、もう一遍聞かしてくれませんか。国土庁田中さんからもう一遍、どういうことなのか、もう解決のめどがついたので四十五万円出すのか、それとも単なる一時金なのか、島民はどう言っているのか。きのう上田さんは、島に帰ると言ったら拒否はできないと政府は言う。どういうことなのだろうかな、こうなんですけれども。
  8. 田中暁

    田中(暁)政府委員 今度お願いしております見舞い金の趣旨でございますが、用途につきましては、昨年の五月に小笠原諸島振興審議会から旧島民に報いるための措置とそれから集団移転事業に類する措置を講ずべきであるという意見書が出されたわけであります。今回の見舞い金はこのうちの旧島民に報いるための措置具体化として行おうとするものでございまして、硫黄島と北硫黄島の旧島民父島母島と異なった取り扱いを受け現在に至るまで帰島できなかったこと、それから、今後とも定住が困難であるということ等に伴います旧島民の特別の心情に報いようとするものでございます。
  9. 川俣健二郎

    川俣委員 今のは四十五万円を出したというそのものの理由だけ出しているから、そうすると、今後の見通しはどうなんですか。そうすると、父島とか母島の人力に対するバランス上出したのか、それとも、政府の方は帰ってもらいたくない、何にお使いになるか知りませんが。本当に危ないから気をつけなさいということの赤信号を掲げながら、気の毒だからという四十五万円なのか、そして今後どうするつもりなのかということが、帰りたいという集団交渉もあるだけに、その辺聞きたいのですよ。
  10. 田中暁

    田中(暁)政府委員 おっしゃるように、一つは、父島母島は四十三年の返還以来帰っておりまして、いろいろな振興事業を実施されている。これに対して硫黄島、北硫黄島の旧島民方々は帰られていないということもございます。それから、火山活動が非常に活発である、そして産業立地条件が非常に難しい、こういうような理由定住が不可能であるということでございますので、今後とも帰島ができない。その両方に対する特別の心情に報いようというものでございます。  これに対します旧島民方々の受けとめ方でございますが、ちょうどその答申が出ましたころ、各種の旧島民方々の団体の方々がお集まりになって大会を開かれたことがございます。そのときにはその結論は、さまざまな科学的な知見に基づく結論だから非常に残念なことではあるが受け入れよう、そして、そのかわりといってはおかしいのでございますが、その見舞い金というものの具体化とかあるいは今後、近い父島母島に帰っておられる方もおられるわけでございますが、そういったところの定住化事業をやってほしいとかあるいは墓参というようなものをもっと容易にできるようにしてほしいとか、いろいろな要望が出されております。ただ一部には、御指摘のように、この見舞い金は受け取るけれども、帰島をあきらめるということはしないのだと言っておられる方々もおられるわけでございます。  我々といたしましては、今シーレーン等のお話がございましたけれども、あくまでも科学的なさまざまな調査を行いまして定住不可能という結論を出したわけでございます。事は人命にかかわる問題でもございますので、そういう方々には十分御理解をいただきますとともに、硫黄島に一番近い父島母島における定住を希望される方々に対しましては、審議会も集団移転に類する措置を講ずべきだということも言っておられますので、早速引き続きその具体化について検討を始めたい、かように存じておる次第でございます。
  11. 川俣健二郎

    川俣委員 私がありていに思うには、やはり住みなれたところというのは帰りたい、住みたい、年とってくると特に帰りたいというのが、今の老人問題の論議をするときにそうなんです。息子夫婦が東京で暮らしているような、年寄りを連れてくるといったってなかなか行かないように。それはなぜかというと、そこの土地が、自分が非常に生い立ちかち合っている。そして、今の、危険なところかどうかというのを一番知っているのは、長くそこに住んでいた人が一番わかるだけに、今急に沈んできたのじゃないのだろうと思うので、何となくこの四十五万もらっちゃうと帰島の願いが閉ざされるのかなというふうに思うのは当然だろうと思うのですが、それは拒否はできないと政府は言うのだが、そうすると、きのうの論議から聞いてみて、私は、防衛とかあるいは防災とかという、そっちの方の土俵で質問しているのじゃなくて、防衛局長にそれじゃみんなの前で聞かしてもらいたいのですが、訓練基地なのか作戦基地なのかといろいろ出るのですが、一体ここを欲しいのですか。シーレーン上欲しいものなんですか。
  12. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  従来から御説明申し上げておりますように、現在進めております硫黄島の整備は訓練基地としてのものでございまして、現在それ以上のことは考えているわけではございません。  ただ、硫黄島が有事におきますシーレーン防衛にとりまして重要な地理的位置にあるということは認識をしている次第でございます。
  13. 川俣健二郎

    川俣委員 重要な線上にあるという、これはだれでも考えられるんですが、そうすると、当座は訓練基地だが、将来は作戦基地の計画もお持ちなんですね。
  14. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいま申し上げましたとおり、現在私どもは、この硫黄島を訓練基地として使うということで整備をしているわけでございまして、今、作戦基地として使うという考えを持っているわけではございません。
  15. 川俣健二郎

    川俣委員 そうすると、訓練基地という程度ですか。今住んでいるのは、二百五十人の自衛隊員とアメリカ兵が三十人ぐらい、そういうところでしょう。そうすると、ただ遊んでいる島ではないわけでしょう。そうすると、当然局長の計画、プランに入るものなんじゃないんですか、この島は。どうですか。それとも、あくまでも訓練基地だということで通すという計画ですか。
  16. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいま硫黄島でやっております整備の内容は、本土におきます作戦基地なんかと比べますと、非常にその規模も小さいわけでございまして、格納庫とか燃料タンクなどの施設も小規模でございますし、あるいは補給、整備機能等、限定的なものでございます。したがって、現在の基地としては訓練用のものとして活用をしていくという考えのものであることを御理解をいただきたいと思います。
  17. 川俣健二郎

    川俣委員 これ以上ということになると、専門の方とか、あるいは私の時間もなくなるんですが、これ非常に、やはり今回は補正予算に四十五万円入って、これがあした通ればすぐ払うということで、さっきの国土庁田中局長が言うた策でいくだろうが、さて、あの島を今後どうするかということになると、今の問題が陰に陽に絡んでくるんですね。陰に陽に絡んでくるような気がしますから、ぜひこの問題は、とてもじゃないが納得したということにはならないんだろうと思うので、この四十五万円の支給の点については、田中さんが言うように、これは父島母島等の考え方もある。それから、帰れば拒否するものではない、ただ、危ないですよという警告はしている、しかも帰りたいという願いを閉ざすものではない、こういうのは議事録にとってもらったからいいんですけれども、ぜひこれは論議していただきたいと思います。  そこで私は、自分の本題の食糧問題や林業問題に入る前に、五つばかりスポットで質問を、この機会に一問一答で聞いておきたいんですが、それは、一つは心臓移植、二つは年金積立金の運用、三つ目は外国籍を持った教員免許取り上げ、これは非常に大きく報道されたので、私らもこの機会に聞いておきたいと思います。四番目は何回かここで官房長官から伺った戦後処理の一般の受けとめ方ですね。それから、これは自分にも関係しておるんですが、定数是正の問題でございまして、こういう項目をこの順序で聞いていきたいのです。  まず心臓移植、これはどうしても死の判定、日本には死というものの定義が法律はないわけですが、三兆候でお医者さんが御臨終ですというところで、それが判定といえば判定なわけですが、さてこういうように、にわかに内臓移植の問題が出てまいりますと、まあきのうかおとといでしたか、筑波大学の三人のお医者さんが膵臓、腎臓の両方摘出して移植したことに対する告発問題が出ておるのです。それは片や東大の方の医師グループだと思ったのですが、まあ、どちらから見ても文部大臣の所管だろうけれども、そうなると、厚生省にちょっと聞いておきたいのですが、この予算に、今後、心臓移植ということで一億のっているのですが、単なる検討、研究ですか。そうして、将来やはり交通整理をするという意味において、国家法律をここにぼつぼつつくらないと大変なことになるなというように思うだけに、こういうところをちょっと厚生大臣に聞かせてもらえませんか。
  18. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 先生ただいま御指摘のとおり、死については法律上の定義がないわけでございます。したがいまして、現場の医療の実際の場において心臓・呼吸停止、瞳孔拡大によって判断されておりましたけれども、御指摘の心臓移植の場合には、脳死の段階で心臓を摘出することが望ましいという医学上の学説もあるわけでございます。しかし、この問題は、脳死をもって死と判断するかどうかというような包括的なことにつきましては、まだ厚生大臣といたしましては、学会の議論あるいはそれを取り巻く国民合意ができるかどうかということもございますので、即答いたしかねますけれども、まず学会の中でどういう意見が行われておるかということにつきましては政府委員からその範囲内で御答弁させていただきます。
  19. 川俣健二郎

    川俣委員 世界的には千件以上のあれがあるわけですが、日本の場合は例の和田教授からこれが始まってかなり久しい。そうすると、今まで一切検討しなかった検討費が一億円だということなのか、その辺を聞きたいのです。  そういうところを聞きたいのが一つと、それから何となく法務大臣にも聞いてみたいなと思うし、それから今回はどうしても国立病院の方から出てくると思うので、文部大臣にもその辺の所見を聞きたいのですが、そういう順序でどうかな。  厚生大臣に、まずその辺の一億円の問題を聞きたい。
  20. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 我が国の心臓移植の技術が外国に比べまして多少おくれておることは否めない事実だと思います。したがいまして、心臓移植を行います場合のいろいろな弊害がございます。免疫の問題でありますとか病理学の問題でありますとか、そういう面の研究と人工心臓そのものの勉強もしておきたいということで、その研究として一億円を計上しておる次第でございます。
  21. 嶋崎均

    ○嶋崎国務大臣 お答えいたします。  この脳死の問題は、基本的には医療のあり方等を含む医学の問題であるというふうに考えますけれども、国民感情なりあるいは生命観とも深くかかわる問題であるというふうに思う次第でございます。したがいまして、御指摘のような問題についても影響するところが非常に多方面にわたると思われますので、諸般の角度から十分に検討をすべきものであるというふうに考えておる次第でございます。したがいまして、法務省といたしましても、今後における各界の議論の動向というものを十分に踏まえまして、関係省庁とも意見を調整しつつ検討を続けてまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
  22. 松永光

    ○松永国務大臣 心臓移植の問題でございますが、先生先ほど御指摘のように、我が国では国公立の医科大学としては昭和四十三年に札幌医科大学附属病院の和田寿郎教授を中心としたチームで行った例が一件あるだけで、そのほかには国公立大学の附属病院等で心臓移植を行っておるという例は承知いたしておりません。
  23. 川俣健二郎

    川俣委員 これは担当委員会でも、また一般質問等でも私は考えておりますので、さらに論議をその際に深めたいと思います。  それから、項目を急ぐようですが、年金の積み立てに対する自主運用というのは、ここ十数年いろいろと担当委員会でも論議してきたわけですが、やがてこれが、厚生省所管の国民年金、厚生年金でトータル、六十年では五十二兆円になる。日本の一般会計と同じ金額になったわけですね。私たちが積み立ててきたものが五十二兆円もたまったのだということになるんだが、それを国民が受け取った場合に、年金改革等を審議している国会で、さらに保険料も高く上がるというようなときに、これは全部大蔵省に、一〇〇%資金運用部に管理されて、運用されているということを考えると、非常に感情が複雑に動いている声が多いようです。  そこで大蔵大臣、この資金運用について、社会保険審議会でも自主運用の一部を糸口をつけてみたらどうかという提言があった。大蔵省はそれを協議する用意がありますか。納めた側からの主張に対して、協議する用意がありますか。
  24. 竹下登

    竹下国務大臣 これは年金に限らず、あるいは簡保、郵政関係の資金等々についての自主運用の問題は、たびたび予算編成期に出てくる問題であります。私どもがこれについて統一しておりますことは、これは行政改革に関する第五次答申にも書かれてありますように、いわば「財投の原資となる郵便貯金や年金資金については、それぞれに有利運用の要請があるが、運用面では資源の適正な配分等公共性の要請が優先するものと考えられており、現在、これを原資から運用を通じた一つのシステムとして調和を図っているのが資金運用部である。」したがって、「公共的な性格を有する資金をできるだけ有効かつ整合的に配分するためには、統合運用の現状は維持されるべきである。」そして一方、「公共性の観点も重要であるが、原資の性格からくる要請にかんがみ、これまで以上に有利な運用にも配意する。」こういう答申があるわけであります。  基本的な考え方を申し上げますならば、国の制度、信用を通じて集められた公的資金は、資金運用部資金として統合されて、一元的に管理、運用されておるというのが、やはり筋として原則であろう。そして、この統合運用というのは、一つは政策的重要性に応じてバランスのとれた資金配分をしなければいかぬ、それから二つ目は、財政金融政策との整合性を確保しなければいかぬ、それから三つ目が、効率的、機動的な資金運用を行うために、合理的な運用をするために、まさにそれに適した仕組みである、こういう考え方に立っておるわけであります。  確かに今おっしゃいましたように、集めた側とでも申しましょうか、自分たちで集めたものは自分たちで運用したいという素朴なそういう問題点もあろうかと思いますし、あるいはもう一方には、年金財政等はもっともっと有利運用をすべきだという議論もあります。それから一方にはそれの年金を公共性のあるものに運用すべきである、こういう意見もあるわけでございますので、やはり公共性の観点は重要であるという認識をまず持った上で、これまで以上に有利運用に配慮していかなければならぬということで、一元的な管理、運用というものの筋を通していかなければならぬじゃないか。  ただ、毎年その都度、それらのお集めになった側とでも申しましょうか、国の制度と信用の中とはいえ、それぞれの担当の方からそういう要請が出ておって、その都度議論をしながら、結論的には一元運用ということで今日まで続いてきておるということであります。だから、これはもうすべて終わりで一切話し合いにも応じませんという姿勢を持っておるわけではございません。
  25. 川俣健二郎

    川俣委員 どうも優等生が書いたものを優等生が読むのだから、言うところがないように思えるのだけれども、そうじゃなくて、もう少し大所高所に立って、将来天下をしょって立つ人なんだから。せっかく社会保険審議会が、五十八年の七月でしたかな、ああいう強い提言をしておったものを、これは担当の官庁が黙っているわけがない。やっぱり物は言うた。ただ、それ以上強く言えばはねっ返りがほかの方にくるからおっかない、ただそれだけの話なんで、問題は、貯金と年金の積み立てと、どこが違うのだ。貯金は全部個人のひもがつくわけだが、年金はそのグループ、グループごとに積み立てて、それをどのような制度をつくってどのように運用していくかというところに違いがあるわけなんです。したがって、郵便貯金もみんなで積み立てた年金等も同じだという考え方で片づけられないものがあるなというように思う。  それからもう一つは、公共性、一元的に有効かつ云々と、こう言うんだが、素朴な気持ちはわかるがと言うが、それじゃ国鉄や公社の人力、共済年金を積み立てた大方は、素朴をどう思うのか、この違いはどう思うだろうかな、こういうように思わざるを得ないので、さらに一問一答ですが、もうちょっと、これはここで引き下がるわけにいかない。やっぱり資金運用部の預託を、総理にも聞いてもらいたいんだが、国家公務員共済組合の、いわゆる有効的に、一元的に運用するために運用部に預けているのは二七・七%、それから農林漁業団体職員共済組合は二二・四%、それから今私が提示しておる厚生年金、国民年金、いわゆる厚生大臣所管のものだけが一〇〇%運用部に有効的、一元的にと、こうおっしゃるわけだ。そうなってみると、これは何か言いたくなるね。それは優等生が書いたものじゃなくて、もう少し大蔵大臣、政治的もあるし、それから年金改革を今やっているわけですが、これも厚生年金、国民年金がもとになって改革案ができる。これができると手づる式に共済組合の年金が出てくる。これもあなた、わかっているはずなんだ。そうなると、この辺もある程度言いたくなろうというのは、これは素朴な気持ちだけじゃないな。政治家としてどうです。
  26. 竹下登

    竹下国務大臣 国共済の生い立ちですね、あるいは農林年金もそうでありますが、それらの日本の年金制度というのは、要するにその生い立ちが皆違う。違うからいろいろな問題が出て、一元化しようというので年金担当大臣を中心としていろいろなスケジュールに従って今日まで来ておるわけでありますから、その運用につきましては、確かに歴史的な相違はございます。したがって、共済という文字からきますところの性格のものについて、今おっしゃったような指摘の比率で今日来ておることも事実でありましょう。が、基本的には、国の制度、国の施策、国の信用をいわばもとにして集められたものはやはり一元運用が、全体の金融との調整もございましょうし、最も適切ではないか。社保審の答申のあることも私も承知しております。その角度から眺めた場合は、今、川俣委員おっしゃいましたように、そういう言いたくなる気持ちとでも申しましょうか、やはり自分らでより有利な運用をしてみたい、あるいは自分らでもっと公共性のあるところへ貸し付け等をしてみたいとか、そういう考え方は出てくると思います。が、その考え方は全く私はわからぬわけじゃございませんが、総合的に判断すると、やはり答申にもございますように、国の制度、信用に基づいて集められたものということになれば、これはやはり統一した運用というものが最も整合性がある、こういうことをお答えせざるを得ないのではなかろうか。  ただ、今おっしゃいましたように、私も気がつきましたが、まだ不勉強でございますけれども、今度は統合の段階で生い立ちの違うものが徐々に一緒になってくるときに、もう一遍あるいは出る議論かなという感じはお話を聞きながら私もしました。しかし、この点についてはお答えするだけの勉強を私まだしておりません。能力がないとでも申しましょう。そういうことにおきまして、今おっしゃった統合の段階で生い立ちの違ったものが一緒になってくるわけですから、その議論はもう一つ出てくる議論だなという問題意識は、今の質問に対して私がインプットさせていただいた、こういうことであります。
  27. 川俣健二郎

    川俣委員 今の最後のくだりはもっと勉強してください。これは統合問題になればいやが応でも出てくる問題だが、共済組合との違いというのはどうしても見当たらない。したがって、これを全部お預けする、任せるのじゃなくて、やはり素朴なだけじゃなくて、見てみたい、自分たちがためたものを見てみたい、さわってみたい、こういうものだけじゃなくて、あら共済組合がこういうような運用をやっているようだなということが如実に出ているものだから、七割も。こっちは一〇〇%全部押さえられている、そのかわりこういう還元もあるよということはわかるにしても、やはり大蔵大臣、歴史的な経過だからというのでかたくなにならないで、その当該官庁からひとつもみ手で元気を出している厚生大臣がいつ立つかどうか知らぬが、そういう場合にはやはりそういう協議に応ずるという、こういう気持ちがなければ年金という改革にはならない。今大きなメスを入れようとするときですから、それをぜひ注文しておきます。これ一つやっているとまたあれですから。  それから、外国籍を持っていたがために、それだけのために教師の免許を取ったのが取り消されたというのが、非常に全国に報道されたのでこれはだれしも皆さんの頭にあると思うのですが、ショッキングな話だったのですが、それだけに私はこの機会に聞いておきたいと思います。これは総理にも聞いてもらいたい。だからここに出したわけですが。  その方は、長野市立芹田小学校の臨時教員をやっておった梁弘子さんという人です。この梁弘子さんが臨時教員をやっておったのだが、児童並びに父兄の評価も非常によくて、いよいよ教員試験を受けたら受かった。これが年末なんだ。年末受かったが、この方に限ってということの方がいいかどうか知らぬが、非常に大々的に報道された。大々的にその人だけ報道された、それまでは報道されなかったが。  ところが、これを、文部省が梁さんの採用を知ったために、これまでとってきた一貫した、外国籍の者は公権力の行使という立場上採用は認められない、そして五十七年九月十三日及び同九月十八日付の事務次官、初中教育局の通知に反する、取り消すように指導した。このために長野県は、一たんは採用通知を出したが、即座に採用取り消しの緊急措置をとった、ここに問題があるわけです。ところが、その前にもかなりいた。この件の事実関係はどうですかね。文部省からまず大臣でもいいし、事務当局でもいいのですが。
  28. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えいたします。  先生御指摘のはうに、長野県の教育委員会でその外国人について採用試験をやったようでありまして、この採用試験に合格して採用するような報道がなされましたので、これは先ほど先生もおっしゃいましたけれども、公権力の行使、公の意思の形成にかかわる公務員については、自国の国民がこれに当たる。自国の国民であらざる者には、公権力の行使あるいは公の意思の形成にかかわる公務にはつかせないというのが公務員制度の基本的な原則あるいは法理なんでありまして、それに反するといいますか、それをお忘れになっておるような措置が長野県でなされようとしておったわけであります。  公務員の任用につきましては、そういう法理に反するあるいは法律に反するようなことがないようにということで、かねがね指導はしておったわけでありますが、長野県の教育委員会でその点をあるいはお忘れになっておったのかもしれぬということがわかりましたので、そこで文部省としては、先ほど申し上げましたような法理を御説明申し上げて、適切に措置するように指導したというのが経過でございます。
  29. 川俣健二郎

    川俣委員 国際化時代を知らない文部大臣じゃないだろうと思うのだが、これは大丈夫かな、そういうかたくなな気持ちで、これから教育の自由化をやるそうだが。  ちょっと私の聞きたいのは、この事実はそうだ。ところが、もし事実がそうだとすれば、五十七年の法律で公布されて施行されたのですが、これは九十六回国会において成立した資料をここに持っておるのですが、国立又は公立の大学における外国人教員の任用等に関する特別措置法、特措法を出しておるのですね。この特措法によると、いいのですよ。ところが違いは、これは大学だからいい、大学の先生ならいい、こういうことなんだと思うのですが、その点が一つ。  それからもう一つは、今の事実関係、この気の毒な梁弘子さんの事実関係が事実だとすれば、教育県の長野県に指導したと言うが、二十何人いるのでしょう、もう既に。外国籍の小中学校、全国に約三十人あり、韓国籍を持った者でも二十何人いる。そうすると、この大方はどうなるのだろう。
  30. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えいたします。  先ほど先生申されましたような大学の教員についての任用の特例法が成立し、公布されたことは事実でありますが、まさしく大学につきましては学問の研究そして教育という任務でありますので、大学の教員については特例として任用を認めるということにしたわけであります。その反対解釈として小中高等学校、要するに国家を構成する国民を育成する教育は自国の国民がこれに当たるという原則がありますので、したがって大学の場合は特例として認めた。しかし、なぜ特例として法律をつくったかというと、原則が、自国民を育成する教育については自国民がこれに当たるという原則がありますので、わざわざ特例として先ほど先生が指摘されたような特例法ができた、こういうことでございます。  なお、韓国籍を持っている者が小中学校等の教諭にいるのではないかという御指摘でございますが、教諭については私はいないものと承知いたしております。
  31. 川俣健二郎

    川俣委員 大臣は就任間もないのでしょうが、これはいるんじゃないの。事務当局、いるんでしょう。韓国だけじゃなくてほかの外国人いるんでしょう。それをちょっとしゃべってよ。
  32. 西崎清久

    ○西崎政府委員 現実の問題といたしまして、現在小中学校関係で全国的には韓国籍の教諭が三十名余存在していることは事実でございます。
  33. 川俣健二郎

    川俣委員 そうするとどういうことになる。どう思う。大臣と局長と違うんじゃこれはだめだ。どうするつもりなんだ。別に荒立てるわけじゃないが、ちょっと血が通ってないんじゃないか、この文部行政は。
  34. 西崎清久

    ○西崎政府委員 大臣の説明が不足しておりました点は私ども事務当局がおわびいたします。  それから、現実に韓国籍の教員が存在しておる点につきましては、任用行為といたしまして都道府県教育委員会が権限を持っておりまして、結果といたしまして任用されておるという現実においては適法な教諭として存在しておる、こういう現状でございます。
  35. 川俣健二郎

    川俣委員 これはちょっとおかしいでしょう。別に私は荒立てるわけじゃないんだ。おかしいでしょう、これは。これはどうするんですか。あるというんだよ。
  36. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほど申し上げましたように公権力の行使や公の意思の形成に携わる公務員については自国民をもってこれに当てるという当然の法理、これはお認め願いたいと思うのであります。ただし、実際の任用はそれぞれの都道府県の教育委員会ですることでありますから、今までにその法理を正しく理解をしないで誤って任用した者がいるということが先ほどの官房長の答弁でわかったわけでありますが、既に任用されている者をどうするかということはこれからの問題でありますが、新たな任用につきましては先ほど申し上げましたような法理に基づいて任用してもらいたい、こういうふうに考えておりますので、長野県の場合もそのように指導した、こういうことでございます。
  37. 川俣健二郎

    川俣委員 こういうもので時間をとると自分のやりたいのがね。そうすると、さっきの事実関係を認めたんだから、そうすると公権力云々ということになれば、これは専門的に文教委員会等でやってできた法律なんだから、私はあえてこれを深める時間もないしする気がないのですが、問題は、今局長からお話がありましたように全国に三十数人おって、その中でも同じ韓国人が二十人ちょっといて、そして今回の韓国人だけがだめですよということになると、これはちょっと問題でしょう。それとも文部大臣は、そこまで言ったんじゃない、公権力云々に抵触しないような問題なんだから気をつけてやれという意味なのか。それだったら教育県の長野県が取り消しはしないと思いますよ。取り消さなくたってよかったんだという意味なのか。
  38. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほど申し上げたような法理で私どもはこれからも全国の都道府県教育委員会については指導していくつもりでありますが、しかし実際の任用をなさるのは都道府県の教育委員会であります。今までの現に既に任用されてしまっている人につきましてどういういきさつで任用されたか、ただいまのところつまびらかじゃありませんが、実際に任用される前にその事実が明らかになった以上、文部省としては適切な指導をするのは文部省の責務であると心得ております。
  39. 川俣健二郎

    川俣委員 これはそう儀式張ったあれじゃなくて、委員長も首をかしげているところを見れば、これはどういうように理解していいのかわからないよ。長野県に全部具体的なあれはやっているというけれども、文部省がその新聞を見て、あらこれはだめよという指導だと思うんだよ。だから取り消したんだろう。どうなんです、事務当局。だめだよ。
  40. 西崎清久

    ○西崎政府委員 先生先ほど御指摘のとおり大学につきまして特別立法いたしました際に、通達で小中学校に関連いたしまして都道府県教育委員会に対し、その任用についてはこれは不可能であるという旨の指導通達を出しておるわけでございます。五十七年の指導通達以後は新たなる任用が行われていない、こういうことでございまして、先ほどお話し申し上げました三十数名の存在はそれ以前において任用が行われたものというふうに理解をいたしておるわけでございます。  なお、詳細につきましては主管局長が参りましたので、またお答えをいたしたい、こういうふうに思います。
  41. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 お答えいたします。  先ほど来申し上げております法理につきましては、既に戦後からずっとそういう方針で対応してきたわけでございますが、必ずしもその趣旨が徹底してなかった向きがあるいはあるのかもしれません。ただいま官房長からお答えいたしましたように、先年の大学に関する立法の際にその趣旨の徹底を図ったわけでございます。現在おります三十数名の外国人教員はほとんど全部がその前の段階で採用されたものでございますけれども、その後二年ほど前に一名採用されたケースがあると承知いたしております。
  42. 川俣健二郎

    川俣委員 私の聞きたいのは、最小限度そこだけは解明したい。その点だけは解明したいんだ。いわゆる方針が変わってからの人はこの梁さん一人なのか、それとも改正する前にもそういうことをやっておったのか、その辺の事実関係が私の手元にないものだから。今のお話ですと、ほぼじゃだめなんだよ。方針が変わってからの韓国籍を持った人を採用したのは染さん初めてだということであれば、それはそれなりに通っているんだ。ほぼじゃだめなんで、やはりその資料を。理事会、どうですか、これは。
  43. 天野光晴

    天野委員長 それじゃ、その資料を提供することを理事会において御相談申し上げます。  今すぐここで答弁できるなら答弁してもらいます。
  44. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほど申し上げました法理というものは従来からずっとある法理なのでありまして、ただ先ほど言ったように大学の教員についての特例法をつくったときになおさらそれが明らかになったわけであります。したがって、その機会にさらに改めて全国都道府県教育委員会に通知を出した、こういうことでございます。その前は法理が存在しておったわけでありますけれども、都道府県教育委員会でそのことについての御理解あるいは御注意が必ずしも十分でなかったということがあって、都道府県教育委員会が自主的に任用された方があるということなんであります。したがって、法理並びに法理の運用等について、法理自体は変わっておりません。ただ、それを都道府県教育委員会に通達をするなどの仕事が今までは非常に手ぬるかったといいましょうか、そういうことであったかと思いますが、先ほどの法律ができた機会にきちっとした通知を出した、こういうことでございます。  なお、先ほど局長に聞きましたら、その通達を出した後に名古屋、愛知県教育委員会で採用されている人が一人いるそうでありますが、先ほど来申し上げましたとおり、採用するかどうかの決定権は都道府県教育委員会にあるわけでありますから、任用されたこと自体は認めなければなりません。その任用されている者を今後どうするかということは別の問題であるわけでありまして、それはそれなりに研究をして対処していきたい、こういうふうに考えておるわけであります。  なお、先ほど来申し上げておりますように、都道府県教育委員会が適正な教育行政あるいは法律、法理に合った教育行政あるいは公務員の任用等をするように、指導をするあるいは助言をするというのは文部省の職務でありますから、その職務は今後とも万遺漏なきよう進めてまいりたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  45. 川俣健二郎

    川俣委員 あなた、法律に明るい人なんだけれども、随分おかしなことを言うな。法律の解釈をここまで幅広く、採用は独自性で任せるなんという法律あるかね。だから私は、もうこれ以上進めちゃあれだから、委員長にお願いなのは、はっきりした三十何名の資料を出してもらってみんなに見てもらって、それじゃこういうのがあるじゃないか、こことここの違いはどこにある、法律ができる前ができた後なのか、そこで違いを分けるか、あるいは韓国人とほかの外国人とは分けるのか、それはいろいろあると思うのです。その辺をはっきり資料を見せてもらってから論議を深めたいと思うので、保留にさせてもらいたいんだがな。
  46. 天野光晴

    天野委員長 それは結構です。資料の提出を求めますから、理事会で相談しまして。
  47. 川俣健二郎

    川俣委員 それでは、スポットに質問やっておったらもう半分使っちゃったので、戦後処理と定数是正は時間があったら後でやりますが、情報公開と国有地の処分というテーマで出したいのです。これは後ほど取り上げる林野庁その他のあれにも若干波及するのですが、必ずしもそれと直結しないのですが、総理もおられる委員会ですからぜひ。  総理大臣は施政方針で大変に結構なことをおっしゃっています。「我々は、ややもすれば民主主義の恩恵になれて、それに対する鮮烈な感激を失い、その何物にもかえがたい価値を忘れたりすることのないよう、常に、反復して、民主政治の正しいあり方を考え、」その民主政治の「大道を実践し、これを子孫に伝えていきたいと考えております。」大変に結構なことをおっしゃっておるが、この民主政治の「大道」というのはどういうことですかね。
  48. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 民主政治は、まず国民の信頼の上に成り立つ代議政治であると思います。そういう意味において、政治倫理を大切にしていくということが大事だと思います。それからさらに、国民の信頼という基盤に立脚しながら、政策を中心にして各党各派が行動していくということが大事であり、そのやり方はできる限り公開の場で国民にわかりやすいやり方で行われる、これが国民の理解と信頼を得るゆえんであろうと思います。  そういうような考えに立ちまして、各党各派がお互いによく政策的に話し合い、協調し合って国民の期待にこたえていくように協力していく、そう思っておる次第でございます。
  49. 川俣健二郎

    川俣委員 全く私も同感でございます。特に政治倫理、それから国民の信頼を受けるためには、どうしてもやはり公開の場というようなことも総理の念頭にあるようでございますので、それなら論議がかみ合うなと思いますのであえてここであれしたいと思うのですが、公開か非公開かという論争は各党の代表の質問に何回か出ました。特に臨教審にせよ国鉄再建監理委員会にせよ、それを改革に向けての国民的討論の場としたいなら、やはり公開というのが原則だと私は思います。今、みんなで大討論した上でやらなければならないと思うのです。  ところが、たまたまそのものによって非公開の場合があるので、ここに審議が出てくるわけですが、非公開の方が言いたいことを――非公開ということを希望しておる人が審議メンバーにいる。それは、どうも政府の方のメンバーの選定に若干問題があるのじゃないだろうか。やはりみんなの代表で選ばれたら、一般国民の前で自分の意見を堂々と言うという方がむしろみんなの代表じゃないかな、こういうふうに思う。  そうは言うけれども、いろいろな問題があるということであれば、一体公開すべきか非公開とすべきかという判断は、それぞれの官庁随分お持ちのようで、懇談会等も含めて諮問機関が多いようですが、それぞれの官庁が決めるのか、それともメンバーに公開か非公開か決めさせているのか、これはどっちなんでしょうかね。
  50. 後藤田正晴

    後藤国務大臣 審議会、数多くございますから、すべてが一律のものではございません。準司法的な審議会等は法令等で公開すべし、こう書いてあるものもございますけれども、多くのものはそういうことは書いてありません。そこで、やはり審議会の性格あるいは目的あるいは任務、こういうことによって、会議運営上のあり方として審議会御自身で公開すべきかどうかということを御決定を願っておるというのが実情でございます。
  51. 川俣健二郎

    川俣委員 わかりました。そうしますと、長官あれですね、決して政府が一律的にこれは公開しちゃいけない、これは公開せよというわけじゃないのだ。しかし、総理はやはり公開が原則で信頼を得るんだとおっしゃるが、それにしても、私も政治家ですから、やはり非公開もあるだろうから、しかし、自主的にその審議会がこれは非公開にしよう、これは自主運用させている、こうおっしゃる、それはわかるので、だとすれば、国会の審議の場には代表の方に出てきてもらって審議に入ってもらってもいいかな、意見を聞かしてもらってもいいかなと思うのだが、その辺はどうでしょうかね。
  52. 後藤田正晴

    後藤国務大臣 御質問の点は、これは国会御自身でお決めになっていただくことではなかろうか、私はさように考えるわけでございます。
  53. 川俣健二郎

    川俣委員 それは議運なり理事会に当然なるわけで、国会の場になるわけですが、しかし、その理事会の決めが、決して理事会と政府というのは離れたものではない。やはり与党は、議院内閣制ですから皆さんの意見に従う。そうしますと、理事会の場合は、これから非常に大事な臨教審なり国鉄再建監理委員会の経過なり、結論というのはなかなか出ないだろうが、それを踏まえて審議する場合に、ここに参考人なら参考人に呼びたいというときには、それはやぶさかでないわけですな。
  54. 後藤田正晴

    後藤国務大臣 国会の御意思でお決めになれば、これは政府として別段異論のあろうはずはございません。ただ、先ほどから審議会の公開の問題についての御議論ですが、やはり何といいますか、公開という意味が、これは審議会それ自身を毎回毎回会議の内容まで公開しろという意味なのか、それとも審議の結果を国民に公表するという意味なのか、そこらによっても多少私は考え方が違うんじゃないか。審議会の会議それ自身、これを公開しろということになると、これは先ほど言ったように性格なり目的なり、いろいろ審議会運営上の問題もありましょうから、それはたくさんのプレッシャー団体その他もあるし、やはり審議会議それ自身は各委員方々の自由濶達な御議論で結論を出すことがよかろう、こういうことです。  ただし、そういう場合に会議そのものを非公開にしても、それはやはり会議の運営として、当該審議会が会議が終わった後で適切な機会をとらえて審議の内容を新聞記者会見その他で発表するとか、こういったようなことは、これは私はできる限りは公開した方がいいと思いますから、そういうやり方もあるんではなかろうか。審議会の結果が出たものはこれはやはり公開すべきであろう、私はかように考えているわけでございます。
  55. 川俣健二郎

    川俣委員 これから、さっき言った二つの問題は非常に大事な問題であり、最高議決機関である国会審議とのかかわりが十分に関連がある内容であるだけに、最終結論が出ない限りはここには出てこないという考え方ですか、そうすると。
  56. 後藤田正晴

    後藤国務大臣 私はそういうことを言っているのではない。(川俣委員「必ずしも一概には言っていないけれども、途中でも来る場合がある」と呼ぶ)一概に言っておりません。これは国会御自身の御決定があればそれに従わざるを得ないのが政府の立場であろう、かように考えているわけでございます。
  57. 川俣健二郎

    川俣委員 その言質だけでもと思いまして。  原則公開、限定マル秘というのが今非常にはやっているんですが、具体的にこの行政情報の取り扱いについては五十八年三月の臨調の最終答申で、「国民の行政情報に対する関心と行政過程への参加意欲とが高まっているという状況変化が挙げられる。情報の公開については、このような情勢にこたえるために、まず、行政機関の有用な情報を国民に対して積極的に公開すべきであり、そのための方策を抜本的に拡充すべきである」云々と書いてあります。これはまず私は国民全体に、広っぱでやるわけじゃないから、この最高議決機関の国会にやはり最大限の情報というのは出さなければならないし、望まなければならない、参考人に来てほしいと言ったら来なければならないと自分では思っているだけに、今後の具体的な話をしますが、この行政情報ですが、文書管理規程というのを公表している官庁と文書管理規程を公表していない官庁とあるようだが、これは官房長官に聞けばいいのかな、そうですか、そういうでこぼこですか、これは。どうです。
  58. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 ごく大ざっぱな秘密文書の扱いということにつきましては、政府で一応統一した申し合わせのようなものを持っておりますが、今先生が御指摘のようなお話につきましては、やはり役所によりまして、ばらばらというとおかしゅうございますけれども、それぞれの役所の判断、どういうふうに情報を、どれを秘密とするかというようなことにつきましては、その省庁の持っております行政の中身によって皆違うものですから、扱いもそんなふうにならざるを得ないか、こう思っておるわけでございます。そういう意味ではそれぞれの省庁がそれぞれ考え方をまとめている、それを別の角度で言えばばらばらだ、こういうことになると思います。
  59. 川俣健二郎

    川俣委員 これは非常に尾を引く論議が出てくると思いますが、これはちょっと時間がないから飛ばします。  そこで、具体的に国有地の処分、これは当然むだなものはやっていかなければならないし、暮らしが苦しければ家屋敷を売るというのが相場なんで、ただ悪乗り等もありまして、国側の方ではこれはどうしても処分して一時をしのぎたいということの場面と、個人側というか企業側というか、そっちの方の要求側の方に応じて売られているという場面といろいろあるが、それは所有は国のものであり別に官庁のものじゃありません、ただ所管官庁が売るのをやるわけです。  そこで、さっきの情報公開に戻るのですが、去年の今ごろ、二月でしたか、大蔵省は、財務局でしょうね、民間活力導入検討対象財産、民間活力というのは大変に総理大臣がアドバルーンを揚げたものだから、よし、それじゃ民間に譲れば活力が出てくるだろう、民間活力導入検討対象財産、これが百六十三カ所、これは東京とか阪神とかという人口十万人以上の国有地ですが、百六十三カ所、六十五万平米、ヘクタールにすると六十五ヘクタールですか、これを国有地等有効活用推進本部に報告した。これは全部国会には出せるのでしょうね、どうですか、具体的に聞くのですけれども。
  60. 中田一男

    ○中田政府委員 お答え申し上げます。  昨年の二月三日、国有地等有効活用推進本部に、先生御指摘のように百六十三件、六十五ヘクタール、民間活力を利用していただければいいような土地が選定できたと御報告をいたしまして、その中で大きなものについて十四件は公表をいたしました。その中には小さなものも非常にたくさんございますし、また売却できる年次が五十九年度、六十年度、さらに六十一年度、六十二年度と、実際に売却に至りますまでにかなり時間のかかるものもたくさんございます。そして、百六十三件のうち百二十件弱は省庁別の宿舎でございまして、現にまだ人が入っておりますので、そういうところを具体的に公表いたしますと、入っておられる方がそれなりの不安を感じられますので、やはり転居先等がはっきりいたしまして具体的に売る直前になりませんと、公表するのはどうかなと思いまして、それ以外のものは関係省庁と話し合いながら調整がつき次第漸次公表していきたい、このように考えておる次第でございます。
  61. 川俣健二郎

    川俣委員 せっかく対象財産を全国百六十三カ所、六十五万平米と具体的に出してリストをつくったわけですが、これを十四のものは私も持っているのですが、これは別に十四だけくれと言ったわけじゃない。ただ、その態度、姿勢を聞きたいのでもう少し深入りしたいのですが、そうすると、これは何となく政治家の論議としては、せっかくみんなでフォローアップした百六十三カ所なんだから、今入っている人に迷惑がかかる、百六十三カ所の中ですからね。これはそういうものだろうか。どなたか、大臣、政治家、答えてくれませんか。これは入っている人が迷惑だろうか。
  62. 竹下登

    竹下国務大臣 今の議論も私どももいたしました、率直に言って。完全に調整が整ったものから順次公表しておるわけであります。お手元に差し上げました資料も、いわゆる百六十二件のうち十四件、これは関係省庁等と所要の調整が整っておりますということで公表したわけであります。やはり西戸山をやるときにいろいろ議論してみて、その方々が暫時どこへ移転しておるのか、そういうこと。子供さんの進学の計画とか通学の計画とかいろいろございますし、それで慎重にやって結論を出して、それは既にかかった。そういうことを考えてみますと、それから各省にそれなりの計画がございます、新たに宿舎とか庁舎をつくるのは大体何年度にしようという。そうすると、それまでに計画を立てていかなければならぬということになりますと、公表、これだけのものは、宿舎がそのうちの百十八件ですから、これだけの宿舎を検討しておりますと言うと、やはり今入っておる人がさてどうするかということに不安を感じられるから、およそのめどが、何年間でこうなるという話がついたものからやはり私は公表した方がいい。これは、法律で公表してはならぬという話ではございません。扱いとして、結論的に今のような扱いをしておるわけです。だから、部内でも議論したことでございますから、それの公表の仕方についてはいま一度議論もしてみます。今のような意見を踏まえて、議論は我々もしたわけですけれども、いま一度議論をすることには決してやぶさかではございませんが、そこのところどう判断するか。また、委員等のお考え方というのも聞かせていただければ幸いだというふうに思います。
  63. 川俣健二郎

    川俣委員 私も、政治家同士の論議になるでしょうが、百六十三カ所、国会議員に資料を配ったからというので、君は国有地に入っているそうだなという、こういうことにはならないと思うので、せっかく百六十三カ所というものをここにフォローアップしたのなら、やはり国会に資料要求されたら出すべきではないかなという方向質問していますが、大臣もさらに検討するにやぶさかでないとおっしゃったので、やめます。  それから、入札に当然なると思います。しかし、落札価格は公表するんでしょうな。競争入札参加者には公表しているようだけれども、落札価格の公表、これはいいんでしょうな。どうです。
  64. 中田一男

    ○中田政府委員 落札価格につきましては、入札のたびごと、どなたが落札したかということは皆さんに知れておるということでございます。
  65. 川俣健二郎

    川俣委員 知れているというのは参加者に知れているだけじゃなくて、国会の立場で要求した場合には公開してくれるんだね。
  66. 中田一男

    ○中田政府委員 具体的には財務局でやっておりますので、調べればわかるということでございます。大きなものにつきましては、私どもも常時把握しておりますけれども、実際に売却しております件数というのは、一般競争入札で民間活力の対象財産というのはそうございませんけれども、財務局が年々国有財産を処分しております件数は一万八千件とか九千件とか、こういう非常に多くのものでございますので、一々はフォローはしておらない。しかし、必要があれば調べて、お渡しできると思います。ただ、国有財産の売買というのはあくまで私契約上の問題でございますので、私どもも積極的に公表しようということではございませんけれども、問題があれば調べて、お話をするにはやぶさかでないと考えております。
  67. 川俣健二郎

    川俣委員 それまでのお話を承って、これも後ほどの審議に今の御発言を活用して審議したいと思います。  そこで、食糧問題に入るのですが、米の需給、これは残念ながら、私は今まで毎年毎年、米は足りなくなったぞと警告して質問しておるんだが、大丈夫です、心配ありません。特に去年山村農林大臣などは胸を張って、任せてください、こう言ったけれども、隣の韓国から輸入してきた、こういうことになったのですが、やはり残念ながら足りなくなった数字でございます。  その前に、日銀総裁に、ちょっと煩わしましたので、これは後で食糧の輸入問題、いろいろのあれが絡んでくるわけですが、関税の引き下げ、それからアメリカの財政赤字、これは日本の閉鎖的な保護政策のためじゃなくて、むしろドル高の影響だという向こうの方も認識し始めておるようです。ところが、今円安・ドル高の兆候が、きょう、あすはちょっとあれですが、二百六十円以上で低迷しておる。これに対して、きょうの新聞によると一斉に、こういう指導をしたいというのが出ておりますが、ひとつ講義調に我々に教えていただきたくて、これからどういう、たしか三年前にはあの手法をとって落ちついたと思うのですが、同じ手法でやるのか、その辺ちょっとお聞かせを願いたいのです。
  68. 澄田智

    ○澄田参考人 今のお尋ねは、日本銀行による短期金利の高目誘導のお尋ねであろうと思います。きょうの新聞にそういうふうに報ぜられておりますが、実はまだああいう高目誘導というような措置をとっているわけではございません。最近のドル高傾向は、これは御承知のように、元来ドル高の基調がありましたところへ、先週以来一層それが高まっているというようなことで、その原因は、先週発表になりましたアメリカのマネーサプライ、通貨の供給でございますが、これの伸びが意外に大きかったというようなこともございます。また寸アメリカの連銀当局者が慎重な態度を示した、こういうような報道がありまして、そういうようなところからアメリカにおきまして金利先高感が高まってきている、現実の金利の上昇というよりはむしろ先高感が高まってきている。やや、そこの状態が唐突な状態でもございます。そうして、市場がやや過敏に反応している、こういうような状況もありまして、地合いは不安定な状態であるというふうに考えられます。したがいまして、今後の状況、今後の為替相場あるいは国際金融情勢というようなものをなお十分慎重にウォッチをしていくということが必要である、こういう段階であると思っております。そうして、必要に応じましては、協調介入を含める為替市場に対する介入というようなことで対応してまいりたい、これは機敏に対応してまいりたい、こういうふうに思っているところでありまして、金利の高目誘導というところにまだ踏み切るという段階であるとは見ておりません。  ただ、年初来の資金の余剰期において、これは日本国内の資金の余剰期でございますが、そういうときにおきまして、ドル高・円安の状態であるということを念頭に置きまして、余り国内に金利の先安感が出てくるというようなことは避けたい。余剰期でありますのでとかく先行き金利が安くなる、こういうふうに見られがちでありますが、そういう状態はやはり避けた慎重な運用をしておいた方がいいのではないかというようなことで、資金の需給調節に当たってまいりました。格別、まだそれほど目立って金利が高まっているわけでもございませんし、先ほどおっしゃいました五十七年に行いました高目誘導、ああいうようなあのときの状態というような形には立ち至っておりませんし、金利もそういうふうに上がっておるわけではございません。ただ、余剰期にやや、そういう慎重な態度で臨んでおった、こういうことが若干そういうふうにとられる原因になっているのではないか、こういうふうに思っております。
  69. 川俣健二郎

    川俣委員 五十七年ほどのあれは出ていない、ただ兆しが何となく同じような感じがするのですが、でき得べくんば公定歩合の引き上げをしないで今のものを鎮静するように、高目誘導そのものしかないのかどうか、私ら専門でないのでわかりませんので、ぜひその辺をお願いしたいと思います。  大変にきょうはありがとうございました。  そこで農林大臣に、食糧と木材の論議にちょっと入らせてもらいたいのですが、その前に、この予算審議のさなかに例の日ソ漁業交渉、大変に御苦労さんだったわけですが、これは感想はどうですか。
  70. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 川俣先生にお答えいたします。  御承知のとおり、本年の日ソ双方の漁船の、相手国二百海里水域における操業条件を決めるための日ソ漁業委員会は、昨年末以来断続的に協議が進められて、非常に難航しておったわけでございますが、この局面を打開するために、与野党の御理解を得まして、私自身、総理のチーホノフ首相あての親書をお預かりして急選訪ソし、外務大臣からのパブロフ大使への働きかけや日本側代表団の粘り強い努力の上に、私とカメンツェフ漁業大臣との会談によりまして、二月一日に何とか妥結を見ることができたものでございます。関係各位の皆さんの御支援に心からお礼を申し上げる次第でございます。  妥結の内容は、率直に言いまして我が国にとりまして厳しいものでございますが、私としましては、全体として犠牲を最小限にとどめる形で妥結することができたと考えております。
  71. 川俣健二郎

    川俣委員 総理、これはやはり非常にいろいろな条件を言い出してきているわけです。後で水産庁かどこかに――例の塩釜の寄港が条件になってとうとう受け入れざるを得なかったのですが、今混乱しておる塩釜でございます、六、七万人足らずの人口ですが、右翼もそこへ非常に集まってきておるだけに、どういうことになるのだろうかと。やはり総理、これはソ連の二百海里水域の漁業については、対ソ外交に漁業以外、魚以外に目ぼしいパイプがないというところに、日本のやはり事務当局がこのとおり苦労するし、担当官庁が苦労しておるわけです。これは外務大臣まで聞きたいところですが、時間がないので総理に、やはり対ソ外交をもっと積極的に展開していくなりして、魚だけだということでいったって、向こうの条件が強くて大変だ、このように思うのですが、その辺はどうですか。
  72. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 日ソ両国には、領土問題という避けて通れない大きな問題がございますが、これを解決して平和条約を締結するというのは我々の基本線でございます。  しかしながら、漁業問題あるいは経済協力問題、文化協力問題、学術交流問題等さまざまな問題もまた、一面にあることも事実であります。したがいまして、その基本線を踏まえつつ、できるだけ対話を粘り強く、そしてそれを次第に広げて、友好協力の線を広げて、さらにこれを増進していく方向で今後とも努力してまいりたいと思っております。
  73. 川俣健二郎

    川俣委員 その気持ちは理解できても、やはり具体的にやっていかないと、これからどんどん、日本は魚は欲しい、向こうはこの機会にと、こうやってきますからね。  そこで、内海勇三塩釜市長さんが、農林水産大臣はこのように予算委員会に拘束されていますので、水産庁の佐野さんが応対したようですが、帰ってから、きょうの新聞ですが、「いきなり、バッサリ無礼討ちされた。不快感で、はらわたが煮え繰り返っている。」「寄港反対活動は今後も続ける。」こういうインタビューをしておるのです。これは自治省かもしれないが、やはり水産庁ですか、これは前もって何か打つ手がなかったのか、自治大臣を通じてなり。どなたでもいいですけれども、長官ひとつ。
  74. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  私自身、塩釜の市長がお越しくださいまして大変御立腹の心情を直接に伺ったわけでございますが、私どもといたしましては、今回の日ソ漁業委員会における大変難しい局面を打開するために、やむを得ざる措置として塩釜港への寄港を認めたわけでございまして、交渉上の機微にわたる問題でございますので、地元との御相談等につきまして必ずしも十分意を尽くしていない点がございました点は、私も大変遺憾に存じておりまして、市長にも、その点は、私どもの窮状を御説明をして御理解を求めようとしたところでございます。  私どもといたしましては、地元とは今後とも引き続き誠意を持って話し合いを進めてまいりたいというふうに思っておりますし、また、警備面あるいは地元負担に対する措置等につきましては、関係各省庁とも御相談の上、政府としてできる限りの措置をとるように努力してまいる、そういうことで誠意を尽くしてまいりたいと思っておる次第でございます。
  75. 川俣健二郎

    川俣委員 官房長官に聞いてみたいのですが、これはやはり内閣全体の問題につながる大きな問題に将来波及しますよ。縄張りをしてここから入ってきちゃいけないと言ったって、上陸したいという気持ちも我々わからぬでもないが、やはりこれは、政府全体で相手に返事しちゃったんだから、今ごろ寄港しちゃいけないとは返事できないだろうけれども、事後策はそれなりに考えているのですか。その辺、どう思ったのですか。
  76. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 当面、窓口であります農林水産省、水産庁を中心にいたしまして、関係市並びに県に対しまして接触をして、よく御理解をいただくようにお願いをいたしておるところでございますが、先生御指摘のように非常に大きな問題、しかも政府全体にかかわる問題でございますので、関係省庁と十分連携をとりまして、政府として誠心誠意対応させていただくようにいたしたい、このように考えております。
  77. 川俣健二郎

    川俣委員 さっきもちょっと言ったのですが、米だけが日本の食糧の自給の一〇〇%を維持してきた。ところが、その米も危なくなったぞと二、三年前から信号を出しておるのだけれども、そんなことはない、そんなことはないといって、とうとう韓国から持ってきたところから火がついて、せんだって米価闘争を迎えたわけですが、そして国会決議、本会議決議となってきた。  その前に、我々国会議員が知りたいのは、日本人は一体どのくらい生産して、どのくらい食って、どのくらい余っているのだろうか。六百五十万トンというどうにもならない米が五十三年までに倉庫に詰まって、それを倉庫に積んでいるための倉敷の金利、倉金、この経費だけでも千三百億、これを捨てれば捨て賃がかかるし、損失に落とさなければならない。ところが、とっておくよりはということで、あれから七年間になったわけですが、きれいになったそうですが、きれいになったどころか、六百五十万トン全部、海外に譲るなり工業製品に回すなりして消化する計画を見せてもらったが、実績を見たら四十五万トンは主食に回した。ということは不足をした。韓国から輸入するだけじゃなくて、実際日本人が食べる米が足りなかったということがはっきりここにあらわれたわけですが、そのことも事実関係を後で聞きたいということ。  それから、なかなか資料を出したがらない。どうして出したがらないのだろうか。今、どのぐらいつくって、どのくらい食って、どのくらい余っているかということをみんな知りたいところです、国会議員は。それの上に立って、減反の奨励金を出すべきかどうか、減反はどのぐらいにすべきか、こういうような論争になるのですが、どうしても事務当局が出したがらないので、私がつくってみた。  これを皆さんに配りましたのですが、まず第一番目に、五十三年からずっと書いておりますが、計画をしたこの計画に基づいて減反をしたわけですが、計画を実績の方がほとんど下回っている。下回っているから足りなくなったわけだ。減反が多過ぎた、あるいは不作が続いた、災害がひどかったということの理由では片づけられない問題がある。とうとう去年の米穀年度、五十九年の十月末で千トンの残だけしかなかった。私の計算はそうですが、これは違うということであれば論議にならないので、ちょっとその辺の事実関係を確認してみたいと思います。
  78. 石川弘

    ○石川政府委員 ただいまの資料でございますが、御承知のように五十三年、五十四年が豊作年でございまして、この二年に入ります前に六百五十万トンの過剰米があるわけでございますが、五十五年が作況八七という最近にない不作年でございました。それから五十六、五十七、五十八がいずれも作況九六という連年不作でございました。したがいまして、ここにございますように、計画に対しまして四年連続大幅に下回っているわけでございます。  それから消費量につきましては、若干ずつは下がっておりますが、大体千七、八十万トンの消費量で推移をいたしております。それから集荷あるいは政府買い入れは、いずれもこのような数字でございます。それから年度末の千トンということでございまして、まことに心細い持ち越してございますが、御承知のように八月から年度末にかけては新米が入ってくるということで、そういう操作をしてことしは乗り切ったというわけでございます。  数字全体としましてはこういうような経緯でございます。
  79. 川俣健二郎

    川俣委員 数字はこれは確認できるという御返事ですが、やっぱり数字というのは出してみるものだと思います。消費量がどんどん下がっている、こういう印象で、これは国会議員もそのような認識でおったのですが、決してこれは下がっていない。しかも去年の端境期にはわずか千トン。千トンだって残は残だと言う。  ところが、総理府ですか、官房広報室で「食料及び農業、農村に関する世論調査」というのを、こういう分厚いものをせっかく出してくれておるのですが、これによりますと、非常に不安だ、日本の食料は不安だ、日本の食料について不安を持っているというのが六四・一%なんです、この資料によると。これは一々確認すると時間がないから私の方から言いますが、いわば三人に二人が大変だ。それはどういうことかといえば、日本の自給率に対する認識でどうしても不安だ。こういうようなことであるだけに、私はこれは本当に大変な問題だと思います。  そこで確認したいのは、さっきちょっと触れましたが、去年の韓国米の輸入騒ぎと米価闘争のあおりでなったのかどうか知らぬけれども、とにかくこれは大変だ、農林省はひた謝りということではこれは不安がるのは無理がない。そこで、いろいろと各党派が考えまして、昨年の七月二十日に衆議院の本会議で特別決議をやった。米の需給安定に関する決議、それにこういうくだりがあります。「国内生産による自給の方針を堅持すること。」「国内生産による自給の方針を堅持すること。」ということですから、裏を言えば、もう輸入しないということを確認していいですか。
  80. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 お答えいたします。  国民の主食でありまして、しかも我が国農業の基幹作物でございます米につきましては、先生御指摘の国会における米の需給安定に関する決議、こういうものの趣旨を体しまして、国内産で自給するという方針は今後とも堅持してまいりたいと思っております。
  81. 川俣健二郎

    川俣委員 そこで、政治家同士でひとつここで確認したいのですが、農林大臣、もう韓国米は特別の特別でして、しかも相手に貸しておったものが向こうにあったからだ。その上に、四十五万トンは本当は配給してはいけないと私は法律解釈上思うのだが、その論争は別として、海外に売る、工業製品に回す、飼料に回すという三つの条件で回したはずの六百五十万トンが、いつの間にか四十五万トンがなくなった。どうしたと言ったら、足りなくて配給に回した、こういうことだった。そこで、去年はああいう場面で、せっかく国会議員同士全員が総理も含めてこういう決議をしたんだから、もう輸入しませんと。これはいいですか。
  82. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 川俣先生にお答えします。  おっしゃるとおりでございます。
  83. 川俣健二郎

    川俣委員 もう輸入しませんということであればいい。  そこで、十月末で千トンしか残らなかった。千三十七万トン食べる日本の国が千トンしか余らなかった。これは大変だと思います。いや、去年豊作だったから何とかなるでしょうでは、ことしも天候がいいんじゃないかと言ったけれども、暖冬暖冬と言ったら、途中で気象庁が気象訂正いたしますと、気象庁は訂正すれば気楽なものだろうけれども、そうなると、これは備蓄体制にはほど遠いのじゃないの。備蓄体制にはほど遠い。我が党は二百万トン、政府・与党は百五十万トンでしたかね。そうなると、どうやっていきますかね、千トンでは。
  84. 石川弘

    ○石川政府委員 五十九年産、御承知のように作況一〇八ということでございまして、加工原料用に回します二十万トンを除きまして、千百六十八万トンの収穫があるわけでございます。  先ほど御指摘のように、ことしの端境期が大変窮屈な操作をいたしておりますので、通常新米を食べます量が年度前に五十万トン程度でございますが、これを百万トン近い数字を使っておりますので、これも実は差し引かなきゃいかぬわけでございますが、それを差し引きましても、端境期には六十万トン前後のものは保有をして次年度に回るような予定を合いたしております。  しかし、御指摘のようにやはり豊凶差等ございますので、御承知のように三期の計画では一年間に四十五万トンずつの積み増しを計画しております。ことしは幸いそれを若干上回ったわけでございますが、御承知のようなゆとりある米管理ということ、それからもう一つは、やはり過剰というものをつくり出してはいけないという両方をにらみながら、六十年度の米作につきましては御承知のように二万六千ヘクタールというものを調整いたしておりますが、そういうものをもとにいたしまして逐次積み増しをしてまいりまして、ゆとりのある米管理ができるように、その場合、やはり良質な米を供給していくということから、低温倉庫等を活用いたしまして、極力安心をしていただいて、しかも量的にも奥行きのあるような管理をやってまいりたいと考えております。
  85. 川俣健二郎

    川俣委員 これは時間がなくなってほかの審議にあれですが、輸入はしない、しかも千トンしかない。端境期で食うとか食わないとかじゃないのだよ。十月末で千トンしかないのだから。端境期には出るよといったって、それはまた翌年の端境期に食っていくわけだから。とにかく、いずれにしてもある時点で切った場合には残りは千トンしかない。これは今のままではどうしても備蓄体制にはならない。そうするとどうするかということになると、今は三期対策ですからこれ以上言いませんが、この次の減反対策の際にはその辺を十分に検討しなければいけないよということを警告しながら、次の委員会等で審議していきます。したがって、この場ではこれでやめます。  時間の管理が悪くて間違ったのですが、一つだけ聞きたいのは林業です。総理大臣は、施政方針で、林業云々ということを三カ所でうたっているのですね。花と緑も含めて三カ所でうたっておる。国際森林年にも関連するし、だんだんに具体的に論議が深まってきましたので、きのうも話が出ましたが、木材の需要、それから関税の引き下げ等々もありますから、その辺も含めて、もう一遍この辺で総理大臣のお話を少し伺えませんか。
  86. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 我が国におきまする林業政策というものは、非常に重要性をますます増してきているように思います。これは一面において、木材の需給関係という面あるいは林産関係の、産業関係の面もございますが、災害対策とか水源の涵養とか環境の保全とか、そういうようなあらゆる面から見まして、森林資源を本当に大事にしなければならぬというときに立ち至ってきておると思います。そのためにはやはり林政それ自体を充実させる、あるいは森林組合そのほかの関係者が生産性を向上させて、そして海外にも対抗し得る力を培養していく、あるいはさらに、森林の適切なる開発政策と申しますか、林道その他、あらゆる面につきましても考慮をする、経営面におきましても、民間の経営が成り立つようにいろいろな面において政府としてもめんどうを見させていただく、総合的な政策をもちまして森林政策というものを充実していかなければならぬ、そういうふうに考えておるわけでございます。
  87. 川俣健二郎

    川俣委員 もう少し具体的に入りたいのですが、それは総理の出席しない一般質問に譲ります。  去年の総括締めくくりで、せっかく皆さんに論議してもらいまして、大蔵省にも論議してもらいまして、いわゆる林政審答申の四項目で、これは答弁していただく時間がありませんが、三項目だけは確かに予算に計上されております。問題は、間伐をやるとか保安林を育てるとか、こういったような採算に合わない分をどのようにするかということがなければ、今の総理のお話は中身のない話になるので、その辺はさらに一般質問で詰めたいのですが、一つの例を言うと、例えば国有林の予算をここで取り上げますと、五千二百億です。五千二百億から五千三百億。ところが、五千二百億の予算を国有林がとって、その大半の二千五百億は借金なんだ。その借金を、借りた二千五百億を、毎年のように二千百億ずつ返していくという予算なんだ。だから、言わしてもらえば、その返済の内容を見ると、利子が千二百億ぐらい返して、そして元金は九百億ぐらい返す。いわばサラ金の国有林の会計になっているわけだ。五千二百億というものをせっかく掲げているが、二千五百億を借りているために、その二千五百億は全部借金の返済と利子の返済にいく。そうすると、二千五百億の国有林の仕事しかできない。こういう会計は何としてでも変えてやらなければいかぬと思うが、大蔵大臣、こういうことでは、総理大臣の大所高所に立った大変高適な、国土を守る、水資源の涵養、こういうことには裏づけがないと思うのだが、あえて大蔵大臣にこれだけ質問して、次のあれにしたいと思うのです。  もう一遍言うと、五千二百億の大半は借金の金だ、その借金は返す金だ、こういう会計なんだ。大蔵大臣ひとつ。
  88. 竹下登

    竹下国務大臣 今おっしゃった指摘は、単年度で見たときはまさにそうだと思います。昨年の臨調答申とそれから林政審の答申を踏まえまして、改善特別措置法を改正し、そして新しい改善計画がつくられた。これに基づいての事業運営の能率化、経営管理の適正化、収入の確保、これを各般にわたって経営改善に努めていこうということで、今御指摘になりました林政審の御指摘のある中でも工夫をして、そして七十二年度でございましたか、それまでに収支均衡を回復するという経営の健全化の確立のためにということで、ぎりぎりの予算調整を行ったわけであります。  しかし、今、総理からも、今度の所信表明にもきちんと出ておる、そういう考え方というものは、私どももやっぱり基調に持ち続けていなきゃならぬ。ただ、それが、単年度主義の借入金の比率によって、これも一面の議論の進め方であろうとは思いますけれども、それだけで見ないで、中長期の角度から見ていただきたいというふうな、専門家ではございませんが、そういう印象を持っております。
  89. 川俣健二郎

    川俣委員 反論したいけれども、終わります。
  90. 天野光晴

    天野委員長 これにて川俣君の質疑は終了いたしました。  午後二時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ――――◇―――――     午後二時一分開議
  91. 天野光晴

    天野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。岡田春夫君。
  92. 岡田春夫

    岡田(春)委員 しばらく質問をいたしておりませんでしたが、きょうは、日米安保条約と核の問題を中心に質問を進めたいと思います。  まず第一の日米安保条約の問題につきましては、どうも最近、安保条約を乱用する傾向がふえている、この点について具体的に伺ってまいりたいと思います。  考えてみますと、安保条約が成立をいたしましてことしで四半世紀になります。当時のことを考えてみますと、あのときに安保特別委員会のメンバーであった人がこの予算委員会に三人おります。この席に座っておられるわけですが、まず第一は、尊敬する委員長天野光晴君がそのメンバーの一人です。もう一人は外務大臣をやっている安倍晋太郎君、そして私と三人であります。中曽根総理は残念ながら安保特別委員ではありませんでした。そこできょうは、この三人がいわば生き証人でありますから、最近の乱用の傾向について、主としてこの三人を中心にして質問を展開いたしたいと思います。やはりここで、あの当時の安保ではこのようであったということをはっきり、何度も繰り返すが、生き証人としての歴史的な証言を必要とする時代であると思うからです。  そこで、まず第一に質問をいたしますのは、外務省は、先般、本年度の「国際情勢の近況」なるものを、これは非公式発表でございますが、出しております。この中に「現在極東は米ソ両国にとって戦略上極めて重要な地域となっている。」このように書いてございます。私もその点では同感なんでありますが、米ソの核限定戦争は、重点がヨーロッパから極東に移りつつある。すなわち、オホーツク海、カムチャツカ半島、ウラジオストクをめぐるところの西北太平洋が米ソ対立の焦点となっている。  そこで、まず安倍外務大臣にお伺いをしたいことは、この「国際情勢の近況」に言っておられる「極東」というものと、安保条約で規定をいたしております「極東」という規定、これとは一致するかどうか、この点から伺ってまいりたいと思います。
  93. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは条約の解釈の問題にも絡んでおりますから、条約局長から答弁させます。
  94. 小和田恒

    ○小和田政府委員 お答えいたします。  「国際情勢の近況」で、委員御指摘になりましたように、確かに「現在極東は米ソ両国にとって戦略上極めて重要な地域となっている。」という表現がございますが、これは条約文書でもございませんので、極めて一般的な意味で使っておるというふうに考えております。
  95. 岡田春夫

    岡田(春)委員 余計なことを言わないで、一致するのかしないのかを聞いている。
  96. 小和田恒

    ○小和田政府委員 ただいま申し上げましたように、この「近況」の方では一般的な形で使っておりますので、厳密な意味で一致しているというわけではございません。
  97. 岡田春夫

    岡田(春)委員 六〇年安保の統一見解、極東の範囲について、当時の岸総理はこのように答えている。簡単に言いますと、極東の範囲とはフィリピン以北、日本の周辺、そしてその中には韓国、台湾の支配する地域を含む、このように言っています。このときに西北太平洋の地域については具体的な規定がありません。そこで、これほど緊迫いたしてまいりました西北太平洋の地域をどこまでを極東の範囲とするのか、この点についてお答えをいただきたい。
  98. 小和田恒

    ○小和田政府委員 お答えいたします。  安保条約で使われております「極東」というのは、御承知のとおり「極東における国際の平和及び安全」ということの関連で出てきている言葉でございます。したがいまして、今委員御指摘になりましたように、これが日米両国が条約に言うところの共通の関心を持つ対象としての地域という意味でございまして、その地域の範囲は、先ほど委員が御指摘になったような範囲であるという答弁があるわけでございます。したがいまして、日米両国が共通の関心を持って、その平和及び安全ということが日本の安全との関係において問題になるという地域を指しているわけで、北西太平洋という概念とダブる部分もございますし、必ずしもダブらない部分もあるであろうというふうに考えております。
  99. 岡田春夫

    岡田(春)委員 委員長から御注意いただきたいが、今条約局長は前置きが長くて聞いていることについてほとんど答えない。君、少し多弁過ぎるぞ。  必ずしも明確ではないというんだが、それでは、西北太平洋の地域は極東の範囲の中に全部入らない、こういう意味ですか。
  100. 小和田恒

    ○小和田政府委員 西北太平洋という言葉自体が非常に一般的な言葉でございますので、お答えを厳格な意味で申し上げるのは非常に難しいのですが、あくまでも日米安保条約の目的という見地から判断をして決めるということでございます。
  101. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは具体的に伺うが、千島列島、オホーツク海、カムチャツカ半島、これはどうなるんです。
  102. 小和田恒

    ○小和田政府委員 御承知のとおり、条約では日本国の施政のもとにある地域、それから極東における国際の平和と安全ということで対象になっておるわけでございます。ですからそういう意味で、日米両国が共通の関心を持ち得る地域という中には、例えばソ連であるとかあるいはそういう地域というものはこの対象になっていないということは委員御承知のとおりでございます。
  103. 岡田春夫

    岡田(春)委員 入ってないと確認していいのですか。
  104. 小和田恒

    ○小和田政府委員 岡田委員の御質問が、千島列島であるとかカムチャッカであるとかいうような具体的な陸の地域についての御質問であるといたしますれば、それは入っていないと思います。  ただ、先ほども申し上げましたけれども、これはあくまでも国際の平和と安全の維持に共通の関心を有する区域ということですから、元来、明確な線で区画するという性格のものではないということをもう一度申し上げておきます。
  105. 岡田春夫

    岡田(春)委員 今の答弁、間違っています。岸総理はそのときに、歯舞、色丹、択捉、国後は極東の範囲内であると答えた。そのようにあなたは訂正しますか。
  106. 小和田恒

    ○小和田政府委員 重ねてお答えいたしますが、先ほど申しましたように、岡田委員の御質問が、千島列島であるとかカムチャツカであるとかいうような具体的な陸地についての御質問であれば、それは入っていないというふうに申し上げたのでございまして、歯舞、色丹も、国後、択捉も、その意味で、私が挙げた地域の中には入っておりません。
  107. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、岸総理の答えた答弁は間違っているのですか。安倍外務大臣、条約局長じゃだめです。外務大臣、少しお答えください。私、そこを読んでみてもいいのです。どうも困ったね、こんなことでは。  愛知揆一氏の質問、六〇年の二月二十六日、これに対する岸総理の答弁、共産圏で実力をもって平和と安全を維持している地域は、我々の共通の関心を持っている地域には入らないので、これは極東の中に入らないと言っている。そこで、これに対して愛知揆一氏、現にソ連が支配している地域でも、歯舞、色丹は北海道の一部として、また南千島は固有の領土として、それぞれ領有権を保留している、歯舞と色丹とについては、現実の引き渡しが日ソ共同宣言で約束されているので、こういう関係からすれば、むしろ日本に入ると言いたいぐらいで、この地域は極東に入ると思うかどうか。岸総理、御意見のとおりである。  また、それに続いて横路君がその後四月の一日、横路節雄君です、横路君が、これに対して、これらの島々は、北方四島ですね、これはソ連が実力をもって平和と安全を維持しているので、極東の地域に入れることは前の答弁と矛盾しませんかと質問している。これに対して、これらの地域については、日本の固有領土として一貫して主張してきております、その解決がつくまでは現実にソ連が領有し、支配しているということであって、極東の範囲から除くことは適当でありません、はっきりこのように極東の中に北方四島を入れている。ところが、今、条約局長は入らない、こう答えている。はっきりしていますので、これは局長には答弁求めません。上の、生き証人である、あなた生き証人だから、安倍外務大臣、御答弁ください。
  108. 小和田恒

    ○小和田政府委員 私の表現が若干舌足らずで誤解を招いているといけませんので、もう一度繰り返して申し上げますが、私が最後に申し上げましたのは、岡田委員が問題にしておられるのが千島列島あるいはカムチャツカというような陸地のことであるならば、それは極東の範囲には入っておりませんという答弁を申し上げたわけでございます。  ただ、私が入っておりませんということを申し上げましたので、あるいは誤解を招いたかもしれませんが、私が申し上げておりますのは、千島列島、カムチャツカというような陸地が極東の範囲に入るかという御質問でありますならば、それは入っておりませんということを申し上げたわけであります。  他方、岡田委員が今問題にしておられますのは、歯舞、色丹、国後、択捉という我が国の固有の領土でございまして、政府といたしましては、それは千島列島、カムチャツカという岡田委員がおっしゃっておられる地域の中には入っていないと考えておりますので、これはこれでまた別な問題であるということで、私がお答えいたしましたのは、あくまでも千島列島、カムチャツカについて、それは極東の範囲に入っていないということを申し上げたわけでございます。
  109. 岡田春夫

    岡田(春)委員 条約局長は、歯舞、色丹、国後、択捉は千島列島でないと言っている。こんな、歴史、国民の通念に反することで強弁するよりも、正直に訂正いたしますと言った方がいいよ、君。条約局長だから何でも通用するなんと思っちゃいけませんよ。そんな、国民の常識に反すること言っちゃいけないよ。  ともかくも、私が言ったとおりに、歯舞、色丹、国後、択捉は極東、それ以外の千島列島は、彼の答弁によると極東に入らない、こういうことでいいのですね、外務大臣。
  110. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 当時の速記録、今お読みになりましたけれども、当時の条約解釈が今日も続いておる、こういうことだろうと思います。
  111. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いや、当時はいいけれども、現在はどうなんですか。
  112. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 ですから、現在も当時の条約の解釈で一貫しておる、こういうことであります。
  113. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、先ほどの答弁をあれすると、北方四島を除いた千島列島それからカムチャツカ半島、ウラジオストク、オホーツク海、これは極東の中に入らないのですね。いいですね。
  114. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 先ほど条約局長が答弁したとおりに、入ってない、入らない、こういうことでございます。
  115. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ、私は北海道ですから北海道のことから言うけれども、千歳、青森県の三沢、この基地を使って飛んでいるアメリカの飛行機は、オホーツク海へしょっちゅう行っていますよ。それからアメリカの原子力潜水艦、戦略潜水艦は、オホーツク海へ潜っていますよ。これは極東の範囲外ですから、安保条約の適用は受けないわけですね。もし安保条約を適用するとするならば、それを使うとするならば、条約違反になりますね。
  116. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これはオホーツク海といえども公海ですから、日本の周辺の公海ですから、そういう中でアメリカのそういう軍艦とかあるいは航空機等が自由に航行、航空するのは、これはそれなりの自由である、こういうことであります。
  117. 岡田春夫

    岡田(春)委員 だってあなた、公海であることは私も知っていますし、そのとおりです。だけれども、安保条約では第六条、第四条あるいは前文において、この安保条約を適用するのは極東という範囲、その中に適用するんだと言っているのですから、極東以外に出ているのですよ、極東以外に出ているのならば安保条約は適用されないわけでしょう。これはだれが考えたってわかり切ったことです。どうです。
  118. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 お答え申し上げます。  従来から、安保国会のときからたびたび政府として申し上げておると思いますが、極東の範囲というのは、別に日本の施設、区域を使用する米軍の行動範囲が極東の中でなければいけないということを申し上げておるわけではございませんで、あくまでも日本の施設、区域を使用する目的として極東の平和と安全に寄与する、こういうことでございまして、必要な限りにおいて米軍の行動が極東の外に、いわゆる統一見解で申し上げております極東の範囲の外に出ることはあり得るということは、これはしばしば従来から政府が申し上げているところでございます。
  119. 岡田春夫

    岡田(春)委員 この人はアメリカ局長ですか。――あなたに伺うが、それじゃ極東の周辺だというわけね。なぜならばあなたは、安保条約に基づいて基地を使うのは、極東または極東の周辺以外に出てもいいの。世界どこへでも行ってもいいの。それは、それこそあなた、極東という規定を設けた理由をなさないじゃないですか。あなたの答弁で言うならば、極東の周辺ということになる。それでいいんですね。
  120. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 私は、別に米軍が世界じゅうどこへ行ってもいいということを申し上げているわけではございません。委員の御質問が、極東の外で、統一見解で申し上げております極東の外で米軍が行動することがある、それは安保条約の適用を受けないのではないかという御質問でございましたので、日本の施設、区域を使用する米軍がたまたま極東の外に出るということがあってもそれは別に安保条約が禁ずるところではございません、これは従来から申し上げているところであるということを申し上げただけでございます。
  121. 岡田春夫

    岡田(春)委員 この問題を余り長くやっているとほかの主要な問題に入れないので、後でまたやりましょう。  それじゃ伺いますが、安倍外務大臣、日本の領土、小笠原諸島も入っていますね。小笠原諸島の近くにあるマリアナ群島あるいはグアム島、これは極東の範囲の中に入りますか、どうですか。
  122. 小和田恒

    ○小和田政府委員 一番最初にやはり、くどいようで恐縮でございますけれども、極東の範囲というのは、あくまでも先ほど申し上げました条約の目的に対して考えるので、明確な線を引くことは必ずしもできないということをお断りした上で申し上げますが、グアム島を含むマリアナ群島は極東に含まれないというのが従来の答弁でございます。
  123. 岡田春夫

    岡田(春)委員 含まれないという解釈はいつ決まったのですか。
  124. 小和田恒

    ○小和田政府委員 私が御答弁申し上げましたのは、昭和四十二年の南方諸島その他の諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるときの国会、昭和四十三年の衆議院本会議における佐藤総理大臣答弁でございます。
  125. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それは日米間の合意ですか。
  126. 小和田恒

    ○小和田政府委員 今申し上げた趣旨そのものが日米間の合意ではございませんが、これは先ほど申し上げました安保条約の内容として日本側がとっている政府の考え方でございます。
  127. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは、実は昭和四十三年の三月十六日に私が同じ質問しているのですよ。そのときに、当時の佐藤正二条約局長は「私はまだそこまではっきりアメリカ側と話しておりませんでございますから、御答弁を遠慮させていただきます。」と言っている。あなた、何月何日と言ってはっきり答えなさいよ。私にはこうはっきり予算委員会で答えている。あなた、それ、いつそんなことがあったのですか。
  128. 小和田恒

    ○小和田政府委員 先ほども申し上げましたように、私が申し上げておりますのは、昭和四十二年四月十九日の衆議院本会議でそういう趣旨の佐藤内閣総理大臣の答弁があるということを申し上げたわけでございます。
  129. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ、入っていないということは、そのときに日米間で合意されているということですね。  それじゃ伺いますが、マリアナ群島の一番北の端にウラカス島という島がある。それは東京から見て八百五十海里のところにある。ところが、あなた方が今やっているシーレーン防衛、東京から一千海里、この一千海里でシーレーンの防衛をやるというのは、そうすると、当然極東の範囲外でやるということですね。そうすると、極東の範囲外なら安保条約の適用を受けないところでやる、こういうことになりますね。
  130. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 詳細な条約の解釈について、一々私が全部マスターしているわけではございませんから、今突然の御質問でございますから、正確にお答えをすることは困難かもしれません。その際は条約局長その他がお答えをするわけですが、もちろん安保条約の領域の枠組みの中で実行されなければならないことは当然でありますし、周辺一千海里というのもおよそ一千海里というふうに私は聞いておるわけであります。
  131. 岡田春夫

    岡田(春)委員 およそ一千海里といったって、一千海里でもう線を引いてやっておりますよ。それより今言ったマリアナ群島は中にずっと入ってきているのです。そうすると、このマリアナ群島が極東の範囲外だというのでしょう。そうしたら極東の範囲外でシーレーン防衛をやるわけでしょう。そうすると、極東の範囲外でやるというのは、何か日米間に別に秘密条約でも結んでいるのですか。そうでもなかったらあなた、安保条約の範囲外でやるというのはどういうことになりますか。
  132. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 大変恐縮でございますが、先生の安保条約の適用があるかどうかという御質問を、私どうも理解いたしかねるわけでございますが、先生の御質問が、我が国の防衛との関連で、米軍がそういうような区域で行動できるかという御質問であるとすれば、これは当然行動できるということは、先ほど私、累次御答弁申し上げたわけでございまして、日本の防衛との関連で米軍が行動し得る区域というのは、別に統一見解で申し上げている極東の範囲に一致しなければならないということは毛頭ないわけでございます。極東の範囲というのは、別途安保条約六条との関連で、日本の施設、区域の使用目的に関連いたしまして、日米両国が国際の平和と安全に共通の関心を有する区域、これは先ほど来委員が累次おっしゃっておられるような区域ということで、政府の統一見解が出ているわけでございます。
  133. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなた、安保条約六条をもう一度見てごらんなさい。第六条「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」だからこういう形で、勢い極東の範囲というのが統一見解になるほど問題になったんじゃないですか。こういう六〇年安保のときのことを知らない人の今の解釈で適当にやるから条約が乱用されることになるのですよ。極東というところに線を引く必要がなくなるじゃないですか、こういう言い方をしていれば。そうでしょう。安倍外務大臣、はっきり言ってください。そして、しかも彼は、アメリカの軍隊が極東の範囲外で行動することはあり得る、それはあるでしょう。そうしたら、日本の自衛隊がシーレーンで、シーレーン防衛を一緒にやることは、これはどういうことなんですか、極東の範囲外。何か日米間の秘密の協定でも結んでやるのですか。その点、外務大臣、生き証人だからあなたはっきりやってください。もしおわかりでなければ、時間をかしますから、御殿場へ行ってお父さんの岸総理に聞いてきた方がいいよ。間違いないです。私の言っているのは間違いない。
  134. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 岡田さんの御質問の意味は私もわかりますけれども、私たちは、今北米局長が答弁したような意味でこの条約を解釈をいたしております。
  135. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ伺いますが、シーレーンは安保条約の規定する極東の範囲外でやるということになりますね、いいですね。
  136. 天野光晴

    天野委員長 北米局長、わかるように答弁しなさい。
  137. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 恐縮でございますが、答弁を明確にするために、極東に関します政府の統一見解の、今委員御指摘との関連で一番関係のある部分を、正確を期するために読み上げさせていただきたいと思います。  極東の範囲について、これは委員よく御承知のとおりでございますが、まず   一般的な用語としてつかわれる「極東」は、別に地理学上正確に画定されたものではない。しかし日米両国が、条約にいうとおり、共通の関心をもっているのは、極東における国際の平和及び安全の維持ということである。この意味で実際問題として両国共通の関心の的となる極東の区域は、この条約に関する限り、在日米軍が日本の施設及び区域を使用して武力攻撃に対する防衛に寄与しうる区域である。 こうしまして、フィリピン以北云々ということになりまして、その次に  新条約の基本的な考え方は、右のとおりであるが、この区域に対して武力攻撃が行なわれ、あるいは、この区域の安全が周辺地域に起こった事態のため脅威されるような場合、米国がここに対処するため執ることのある行動の範囲は、その攻撃又は脅威の性質いかんにかかるのであって、必ずしも前記の区域に局限されるわけではない。 これが統一見解の中に書いてあることでございます。
  138. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そんなことはさっきも私が読んでいるじゃない。そして、あなた、それはベトナムの問題で、椎名外務大臣がこの極東の周辺を使ったんじゃない。じゃ、あなたの言うのは、シーレーンは極東の中に入るのか入らないのかと言って聞いているのに、こんな答弁じゃ話になりませんよ。  安倍外務大臣、もう一度念を押して伺います。  シーレーン防衛の、これは安保条約の規定する極東の範囲の中に入るんですか入らないんですか、これを再度伺っておきます。どうですか、はっきりしてください。
  139. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いずれにいたしましても、安保条約の枠内におきまして日米における共同対処ができる、こういうふうに私は理解しております。
  140. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ、安保条約の枠内ということならば極東の中と、こういうわけですね。そうでなけりゃ話になりませんね。
  141. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 詳細な説明は今局長が答弁したとおりであります。
  142. 岡田春夫

    岡田(春)委員 さっきのああいう答弁では、私があれしたとおりですから、話になりません。これははっきりさしてください。
  143. 天野光晴

    天野委員長 納得できる答弁できないのですか、北米局長
  144. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 まことに恐縮でございますが、シーレーン防衛というものと安保条約で言う極東の範囲というものがあたかも何か一致しなければならないという御趣旨での御質問というふうに受け取られるわけでございますが、先ほどから申し上げておりますとおりに、両者は必ずしも関係がないわけでございますので、シーレーンが極東の範囲に入るかどうかという御質問は、安保条約との関係では今申し上げたようなことでございますので、それ以上私の方から御答弁申し上げることはできないわけでございます。(「答弁にならぬよ」と呼び、その他発言する者あり)
  145. 天野光晴

    天野委員長 外務省当局、明快にもう一回答弁してください。
  146. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 たびたびで恐縮でございますが、シーレーン防衛というのは、私の承知しておりますところでは、我が国が攻撃をされた場合にそれに対していかに対処するかということで出てきておる問題であろうと思います。我が国が攻撃された場合に、日米共同対処をいたしまして米軍が行動する、これは当然安保条約の適用があるわけでございます。そのときに、米軍が行動する区域が地理的に政府の統一見解で入っておる、申し上げておる極東の範囲の中であろうと外であろうと、これは一切関係がないということを先ほど申し上げたわけでございます。(発言する者あり)
  147. 天野光晴

    天野委員長 北米局長より答弁をさせます。
  148. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 もう一度御説明さしていただきますが、極東の範囲というのは、岡田先生、これは釈迦に説法でございますが、直接、日本の防衛以外に、日本にある米軍が日本の施設、区域を使ってどういうところの防衛に寄与し得るかという関連で極東の範囲というものが問題になっておるわけだろうと思います。  他方、委員御提起のシーレーン防衛云々の話は、これは当然の前提といたしまして、我が国自身が武力攻撃の対象になった場合に、我が自衛隊並びに共同対処をする米軍がどういう行動をとるかという問題であろうというふうに理解いたします。その場合に、米軍の行動する範囲が極東、統一見解で言います極東の中にとどまらなければいけないということはないわけでございまして、先ほど私が読み上げました統一見解にもございますように、これは当然米軍がその極東の範囲の外に出て行動するということは十分あり得る。これは統一見解の中にも入っておるということでございます。
  149. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ、はっきりしましょうよ。極東の範囲外でやっているんだということなんでしょう、範囲内か範囲外かという質問をしているんだもの。範囲外ですね。
  150. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 先ほど条約局長が御答弁申し上げましたように、極東の範囲というものが日本の周辺水域との関連で必ずしも明確に線が引けないということは、先ほど条約局長から御答弁申し上げたとおりでございます。したがいまして、千海里、いわゆるシーレーン千海里というものが航路帯という概念で用いられた場合に、その千海里全体が極東の中に入るか入らないかというのは必ずしも明確にお答えできないだろうと思います。しかし、そうであるからといって、先ほどからの答弁の繰り返してございますが、我が自衛隊あるいは米軍が、仮に極東の外であったといたしましても、そこで行動できないということは安保条約からは全く出てこない、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  151. 岡田春夫

    岡田(春)委員 問題は、極東の範囲外で行動できるんだと言うのなら、極端な話は、シーレーン防衛をパナマ運河の近くでもやれるということですよ。極東の範囲外でやるのならどこででもやれるわけでしょう。しかも、あなたはごまかしの答弁をしているのだが、いいですか、シーレーン防衛というのは、安保条約に基づいたガイドラインの決定に基づいてシーレーン防衛をやっているのですよ。それは安保条約の適用が当然なければならないじゃないですか。制限がないと言うのならば、さっき言ったように、パナマ運河の近くで、日本の船団が行く、それに対してアメリカの軍隊がやる、これも構わない、全然制限がないということになってしまう。それじゃ話にならぬでしょう、今の答弁では。安倍外務大臣、もっとはっきり答弁してください。安倍さん、あなたが外務省の大臣なんだから、あの人に答えさせないで、あなたがはっきりしなさい。これに余り時間をとりたくないのですよ。
  152. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私も、今条約局長が答弁しましたように、極東の範囲というのと、それから今のシーレーンに伴うところの直接日本が攻撃を受けた場合とは違うのじゃないか、こういうふうに思いますし、そういう解釈のもとに今の局長の答弁がなされた、こういうふうに思います。
  153. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ納得いたしません。しかし、問題を進める意味でもうちょっとやりますが、グアム島は極東の範囲の中に入らないのですね。もう一度念を押しましょう、さっき入らないと言ったのだが。いいですね。
  154. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 おっしゃるとおりです。
  155. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ、総理に伺いますが、おととしワシントン・ポストで、例の問題になった不沈空母のとき、一月の十八日だ。朝飯会であなたが不沈空母の問題を言われたときに、あなたはこういうように言っているのですよね。日本周辺一千海里の防衛について「航路帯を設ける場合は東京湾からグアム島まで(南東航路)と大阪湾から台湾周辺のバシー海峡まで(南西航路)それぞれ一千カイリの防衛を考えている」。とすると、この防衛というのは極東の範囲外まであなたはお考えになっているわけですね。安保条約の適用外のことをおやりになる、こういうことになりますね。
  156. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 ワシントン・ポストとの朝飯会でどう言ったかということは、これは必ずしも正確に出ておりません。第一、不沈空母なんて発言、私はしていないのです。それは後でもワシントン・ポストに出たとおりであります。  それで、私が言わんとしておったこと、恐らく言ったであろうと思うことは、もし航路帯を設ける場合にはおよそ一千海里だ、それは方向として一つは南東航路、これは大体グアム島方面、もう一つはフィリピン、バシー海峡方面、それも一千海里以内。そうなるとグアム島まで到達しないのです。あれはたしか三分の二ぐらいの距離であったと思います、一千海里の場合は。(岡田(春)委員「グアム島は千三百海里です」と呼ぶ)ですから、グアム島までは行かないのですよ。一千海里なんですから、我々がもし航路帯を設ける場合は。だから、グアム島以前で一千海里になってしまいますよ。それからバシー海峡の方も、あそこまでは到達しないのです。ですから御心配ないと思います。
  157. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなた、そういう言い方をするともっと私は詳しく言わなければなりません。大体一千海里はテニアンです。サイパン、テニアンの付近です。そうすると、さっき彼が言った、マリアナ群島は極東に入らないと言った、マリアナ群島以外でやるわけです。だから、私は、さっきからシーレーン防衛、それからもう一つ安倍外務大臣に伺っておきますよ、いいですか、あなたが答えてください。グアム島が入らないとすると、極東有事の共同研究、この場合にもグアム島の戦略空軍の問題は含まれないですね。そういうことにならざるを得ないでしょう、全部安保条約のガイドラインで決まっているのだから。そこから決められたことは、極東有事の研究もシーレーン防衛も、極東の範囲外のことまでやることになりますね。それは、いいですか、安保条約を拡張、乱用解釈をしていくという方向につながっていくし、自衛隊から見れば、極東の範囲外で共同行動をとるというのは、集団防衛、集団自衛権の行使の問題につながっていくわけです。だから、乱用しちゃいけないということを何度も申し上げている。どうです。
  158. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは、安保条約は、これまでもそうですが、今後とも、条約の解釈もずっとこれまで一貫してきておりますから、そういう中でこの条約が実施されておるし、施行されておるわけで、乱用ということはあり得ないと思います。あくまでも、またいろいろの問題をこれから行う場合には、日本の憲法あるいはまた日米関係においては安全保障の問題については日米安保条約、この枠内でやるわけですから、おっしゃるような心配はない、こういうふうに思っております。
  159. 岡田春夫

    岡田(春)委員 枠内でやると言ったって、枠を超えているじゃないですか、極東の範囲で。だから聞いているのですよ。極東の範囲の問題についてはやはりこの際統一見解をもう少し明確にしてもらわないと、先ほどの答弁では納得いたしません。(発言する者あり)
  160. 天野光晴

    天野委員長 岡田さんの今の統一見解について、理事会で預かりましてよく相談をいたしまして、統一見解を出すようにいたします。それでいいでしょう。(「統一見解を出さないとだめだよ」と呼ぶ者あり)出します。質問は続行してもらいます。理事会で預かりまして、理事会で相談いたしまして、政府の統一見解を出させます。質問は続行してください。
  161. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ、この問題に対する統一見解が出るまでこの問題は留保いたします。
  162. 天野光晴

    天野委員長 結構です。
  163. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それ以外を進めさせていただきます。
  164. 天野光晴

    天野委員長 結構です。
  165. 岡田春夫

    岡田(春)委員 よろしいですか。(「答弁、答弁」と呼ぶ者あり)
  166. 天野光晴

    天野委員長 進めてください。
  167. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、極東の範囲の問題以外もありますが、これは留保してほかの問題に入りますが、核の問題。今度は中曽根総理に大いに雄弁を振るっていただきたい。  政府は、再三、非核三原則は国是である、あくまでも堅持する、こういうように答えておられますが、これは平時のときは当たり前ですね。しかし、有事の際も堅持をするという意味ですか。
  168. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 同様、同じことであります。両方とも守るということであります。
  169. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、非核三原則の堅持ということについて、昭和五十年の二月に三木総理がこれは不変の原則であるということを明確に言い切っているのですが、それと変わりはない、こういうわけでございますね。
  170. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 ともかく国是として守っていきたいと前から申し上げておるとおり……(岡田(春)委員「有事の際」と呼ぶ)それは平常時並びに有事ともにそういう考えております。
  171. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そこら辺は大変明快に御答弁なすっておられますので、続いてまいりますが、今度は法制局長官にちょっと伺っておきたいのですけれども、安保条約で、第六条ですが、日本が貸与する米軍基地、これは治外法権ですか。そうじゃないでしょう。どうなんですか。
  172. 茂串俊

    ○茂串政府委員 ただいまの御質問につきましてお答え申し上げますが、いわゆる委員御指摘の治外法権としての地域には該当いたしません。
  173. 岡田春夫

    岡田(春)委員 しかし、一定の制限は受けますね。その制限というのは、施設地位協定に基づいて、例えば裁判権の問題とかそういう形の制限は主権の制限をするわけですが、しかし、その制限というのは、日本の主権を守るという立場から、列挙主義で施設地位協定に基づいてこれだけは制限します、これ以外はできません、これは主権をあくまでも守ります、こういうことになるのだと思いますが、それでよろしいですね。
  174. 茂串俊

    ○茂串政府委員 一般的な国際法のいわゆる慣習法といたしまして、外国の軍隊に対しましては一定の、何と申しますか、各国同士のいろいろな権限行使につきましての制約がございます。そのほかに、日米両国間におきましては、日本国内におけるいわゆる施設、区域につきましては地位協定によって規制がなされておる。その意味で、地位協定によって一定の自由な行動とかそういったものが米軍に認められているということになろうかと思います。
  175. 岡田春夫

    岡田(春)委員 施設地位協定によって主権の一定の制限をする、それ以外はあくまでも主権が行使できるのだ、そういうことになるわけですね。例えば、あなたの先輩であります林法制局長官、彼は安保条約のときこういうように答えております。施設、区域は決して日本の行政権の範囲外ではありません、範囲内です、こういうようにはっきり言っていますね。ですから、施設、区域、いわゆる米軍基地ですね。簡単に言った方がいい。米軍基地の中の実態というものを、今までいろいろ委員会の質問を聞いていると、余りにも外務省にしても防衛庁にしてもその主権を行使すべき内容について知らな過ぎる。知らないといって私は言い切ったけれども、それよりも知っていてごまかしている場合も非常にあると思う。こういう点ははっきりさせておかなければならないと思いますが、制限されるのは施設地位協定に基づいて列挙されている事項、それ以外は日本の主権の行使の範囲内でございますから、これは知っておらなければならないということですが、それでよろしいのですね。
  176. 茂串俊

    ○茂串政府委員 いわゆる米軍基地、厳密には施設、区域でございますが、これにつきましては、もう先生御承知のとおり、第三条にいわゆる施設、区域についての管理権の規定がございまして、一般的にはその米軍の管理権のもとに置かれるという制約がまずございます。そのほかに、これは区域という意味ではございませんけれども、いわゆる外国の軍隊としての立場において諸種の先ほど申し上げたような法律の適用の特例と申しますか、そういったいろいろな意味での特例的な法律の適用の仕方がございますが、そういうものがあろうかと思います。
  177. 岡田春夫

    岡田(春)委員 この点も余り触れませんが、今お話しのように、法律の特例ということならば、これは法律上やはり日本の国会の承認を必要とする問題であります、主権を制限することですから。  そこで、私はこの点をまず前置きにして話を進めます。  総理に伺いたいのですが、最近、C3I指揮、統制、通信の施設、こういう問題が非常に議論になっている。おとといも共産党の松本委員からこの問題で若干質問が出ましたが、この問題は非常に重大問題です。私もこの問題をひとつきょうは本格的に取り上げてまいりたいと思います。  この通信基地の問題は、略語が多いのですね、アメリカの場合ですから。この略語によってまずお伺いしますが、アメリカの基地にある通信施設であるウイメックス、WWMCCS、防衛庁でウイメックスというのは何か、これをお答えいただきたい。
  178. 古川清

    古川(清)政府委員 私どもが承知しておりますのは、必ずしもアメリカが全世界にまたがりますところのアメリカの国防の通信網というものについて詳細発表しておりませんので詳しくは存じていないわけでございますけれども、このWWMCCSと申しますのは、私どもが理解しておりますところでは、米軍を全世界にわたって指揮統制をする機能の一部であるというふうに了解をしております。
  179. 岡田春夫

    岡田(春)委員 日本語では、ウイメックスを何と言いますか。
  180. 古川清

    古川(清)政府委員 これは大変長い言葉でございまして、ワールド・ワイド・ミリタリー・コマンド・アンド・コントロール・システム、全世界的な軍事指揮統制システムというふうに翻訳できるかと存じます。
  181. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そのとおりです。全世界軍事指揮統制システム。  もう一つ伺うが、日本にいる在日米軍の通信体系はその一部になっているわけでしょう。
  182. 古川清

    古川(清)政府委員 この前もお答え申し上げたとおりでございますけれども、米軍自身が詳しいことを発表しておりませんので、私どもその詳細につきましてはよく存じてないということでございます。
  183. 岡田春夫

    岡田(春)委員 詳細については御存じないけれども一部は御存じなら、その一部になっているんでしょう。それじゃ、私の方で言いましょう。在日米軍のC3I担当の参謀長補佐、J6ですが、米空軍大佐ウェザービーははっきり言っている。「J6は、在日米軍司令部、これを構成する各軍司令部、その他、日本にある米軍機関に対して、全世界軍事指揮統制システムの支援をあたえる。」「J6は、日本全体にわたってWWMCCSのシステムを取得し、運用するための焦点になっている。」このとおりですね。
  184. 古川清

    古川(清)政府委員 御承知のとおり、アメリカは全世界的な規模でいろいろなレベルの通信網を持っておるわけでございまして、軍事面の通信網も幾つがその体系があるということは私どもも一般論として承知しているわけでございますが、今委員御指摘のこのWWMCCSと申しますのは、米軍を全世界にわたって指揮統制する機能の一部でございまして、各所に、いろいろなところにそのステーションを持っているのであろう、そういうふうに想定をしております。
  185. 岡田春夫

    岡田(春)委員 同じことを言わないで、あなた、ウェザービーという在日米軍の情報担当責任者が言っているのですから、これは間違いないですねと。私の質問しているのは、在日米軍の通信体系はウイメックスの中に入っているのでしょうと聞いているの。ウイメックスが在日米軍の通信体系の中に入っているのでしょう。どうなんですか。責任者が言っている。間違いないじゃないですか。
  186. 古川清

    古川(清)政府委員 在日米軍の中に御質問のございましたこのシステムというものがいかなる形で組み込まれておるかということの詳細は私ども承知しておりません。
  187. 岡田春夫

    岡田(春)委員 しかしあなた、在日米軍のその方面の担当責任者である、J6の責任者であるウェザービーがそう言っておるのを、あなた知らないのですか。それじゃあなた、さっき私が法制局長官に念を押したように、主権の行使に対して行政の行使は怠慢じゃないの。そんなことわからないの。行政の怠慢じゃないの。
  188. 古川清

    古川(清)政府委員 お答え申し上げます。  一般論として申し上げますと、当然米軍は全世界的な規模でいろいろなレベルの軍事的な通信システムというものを持っておるわけでございまして、委員御指摘のこのシステムが太平洋軍を加えました米軍の組織と当然のことにコネクトされておるということは一般論として推定できることであろうと存じます。
  189. 岡田春夫

    岡田(春)委員 在日米軍を聞いているの。だめだよ、答弁できていない。(発言する者あり)太平洋軍のことを言っていない。在日米軍のことだ。(発言する者あり)
  190. 天野光晴

    天野委員長 防衛庁当局に申し上げますが、質問に対してわかるように答弁をしてください。
  191. 古川清

    古川(清)政府委員 ウェザービー氏の御発言という点については、私、残念ながら承知しておりません。
  192. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私の聞いているのは、在日米軍の中にウイメックスというのはどういう関係になっておるのだ、全世界的な通信の組織としてウイメックスがあるのなら、在日米軍にも当然その通信体系が入っているのでしょう。一言で言うなら、その一部なんでしょうということを聞いたら、ウェザービーという人は何か……。答弁になっていない。
  193. 天野光晴

    天野委員長 しっかり答弁しなさい。
  194. 古川清

    古川(清)政府委員 重ねて御答弁申し上げます。  委員御指摘のこのシステムというものが在日米軍の通信システムの中に組み込まれているであろうということは一般論として私も推定をいたしますけれども、その詳細というものは私存じておりません。
  195. 岡田春夫

    岡田(春)委員 どうも大変不勉強ですね。不勉強というよりも、知っているけれどもごまかしているのでしょう。  それでは私もっと進めます。  横田のジャイアント・トークはウイメックスとの関係でどうなりますか。ウイメックスの一部のはずですが、どうですか。
  196. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 私からお答え申し上げます。  ジャイアント・トーク・ステーションにつきましては、従来から御説明しておりますが、アメリカの空軍の高周波通信施設ということで、先般、松本善明委員の御質問に対してもお答え申し上げたところでございますが、いわゆるアメリカのナショナル・コマンド・オーソリティーに対する一般的な支援、それからアメリカの戦略空軍司令官に対する送受信網の提供、こういう機能を持っておるということは従来御説明申し上げております。先ほど来御質問のウイメックスでございますか、それとの具体的な関連につきましては、私ども承知しておりません。
  197. 岡田春夫

    岡田(春)委員 もう少し外務省も防衛庁も勉強してもらわないと困りますね。これが一番中心の全世界的な通信組織なんですよ。これがウイメックスなんですよ。  それじゃちょっと伺っておくが、近いうちに、日米共同作戦のために、防衛庁の中央指揮所の中にウイメックスは入るんじゃないの。現在、入っているのじゃないの。
  198. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの御指摘の防衛庁の中央指揮所は、防衛庁長官が有事あるいはその他の緊急事態に際しまして、防衛庁長官といたしましてのいろいろな判断をする場合に、情報収集を一元的に行い、そこでまた会議等も迅速に処理できるということのためにつくっているものでございます。これは防衛庁のための施設でございます。したがって、ただいま委員御指摘のウイメックスとの連接というふうな機能は、持っていないわけでございます。
  199. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そんなことないでしょう。前の在日米軍司令官のドネリー中将は既に入れる準備を進めているという意味のことを書いていますよ。絶対入ってないですね。入ってないか、それから今後入れるつもりはないのか。例えば、ことしの秋に日米間でCPXをやるでしょう。そのときまでに間に合わすのではないのですか。
  200. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 重ねてお答え申し上げます。  アメリカのウイメックスシステムと中央指揮所と連接をするということにはなっておりませんし、現在そういう考え方は私どもは持っておりません。
  201. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それは事実が後になって証明すると思いますから、もう少し模様を見ましょう。これは留保しておきます。  ところで、さっきから言っているウイメックスというものの内容、これは核の指令の点で非常に重要な指令です。アメリカ大統領が核攻撃をやるときにはこのウイメックスを使ってやる、これがウイメックスの第一任務である、こういう点については防衛庁知っていますか、どうですか。
  202. 古川清

    古川(清)政府委員 ウイメックスといいますものが委員御指摘のような米国の汎世界的な防衛面の通信網であるということからいたしますれば、そういった場合の大統領の指令というものがこのコミュニケーションのシステムで伝達されるということは十分あり得るかと存じますけれども、詳細は私存じておりません。
  203. 岡田春夫

    岡田(春)委員 時間が予定より大分おくれているので、進めます。  資料を配付させてもらいたいのですが、御了解願います。――配付された資料を見てあれしましょう。ここで今議論をしておりますウイメックス、全世界軍事指揮統制システム、防衛庁が技術情報資料月報二百三十六号にこのように書いています。   WWMCCSは、大統領、NCA(国家軍事司令機構)、JCS(統合参謀本部)を支援するとともに、核攻撃部隊の指揮・統制に関し、責任を有する統合軍及び特定軍司令官(米大西洋軍司令官、米太平洋軍司令官、在欧米軍司令官、米戦略空軍司令官)相互の通信を確保する。  更に、WWMCCSは、偶発事態や非常事態に対処するための核攻撃計画、すなわち「単一統合作戦計画(SIOP)」の統制と実行に関しNCAを支援する。なお、SIOPには戦略及び戦術核攻撃の目標がすべて網羅されている。 このようにまさにウイメックスは、第一の任務というのは、大統領の核攻撃指令、これを全世界に伝達するということが第一任務である。このことがこれによって明らかになっている。この事実は、防衛庁が出している資料の中から私は引いたのですから間違いないと思うが、間違いありませんね。
  204. 古川清

    古川(清)政府委員 ただいま拝見した資料は防衛庁が出しております資料でございますけれども、これは公刊の公開されておりますところの資料からとったものでございまして、私が申し上げておりますのは、政府として責任のある情報に基づいた情報というものはない、そのためにそのようなお答えを申し上げた次第でございます。今御指摘の二つの任務というものは、十分あり得る任務でございます。
  205. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃこの事実は違うのですか、どうなんですか。違うのですか、正確なんですか。
  206. 古川清

    古川(清)政府委員 お答え申し上げます。  防衛庁が入手しております公開資料によりますと、ここに記載されているとおりでございます。
  207. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それから、続いて、資料を配付しましたから全部説明をいたしますが、先ほど今の人の答弁の中でウェザービーについては知らないと言っているが、参考の資料の二、米空軍大佐N・K・ウェザービー在日米軍C3I担当参謀長補佐(J6)、このようにこれははっきり「日本にある指揮、統制、通信システム」というのに言っています。あなた、さっきあいまいに答えたけれども、在日米軍の通信体系というのはこのウイメックスに全部直結している。下の方、読んでないところをもう一度読むが、   在日米軍司令官が利用するWWMCCSは、作戦上の通信機器や回路に依存している。  われわれの現在の構造は、横田航空基地にある小型コンピューターから成っている。これが在日米軍司令部、第五空軍司令部、第五空軍指揮担当部局のための多くの端末局を直接支援している。もうはっきりしているじゃないですか。日本にある在日米軍の通信体系というのはウイメックスの一部であるというのは間違いないですよ。在日米軍だけは除かれているなんということはあり得ません。ついでに申し上げますが、その上の一、アメリカ国防総省の指令を見てもはっきりしているじゃないか。  それで、次のページ、核攻撃の指令系統図をここへつくっておきました。「核攻撃指令系統図」。大統領から指令が出る。その次におりてくるのは国家軍事指令センター。これはペンタゴンにある。NMCCです。その指令が先ほど言った全世界軍事指揮統制システム、ウイメックスに来る。もう一つは、緊急の場合、MEECNを使う。MEECNも後で質問します。そして、それがアメリカ太平洋軍司令官、戦略空軍司令官、これを通じて在日米軍司令官に来る。そして、それぞれの機能がありますが、ここで私が少なくとも明らかにしておきたいのは、横田、座間、横須賀、これは全部このような形で指令がおりる。大統領から横田まで指令がどれくらいの時間で来るか、三十秒で来る。こういう指揮系統が全部でき上がっておる。時間がありませんから隣の絵の方は省略をいたします。  こういう状態になっているのですが、ウイメックスというのは大統領の核攻撃指令の伝送を第一任務とする、これはその名のとおり、全世界を結ぶ通信組織である、この点が第一点。第二点は、日本にある在日米軍の全機関は現在これを使っている。この二つの事実をお認めになりますか、どうですか。
  208. 古川清

    古川(清)政府委員 先ほど来お答え申し上げておるとおりでございますけれども、米軍の通信連絡網の内部の詳細については、私どもは詳細を承知しておりません。
  209. 岡田春夫

    岡田(春)委員 質問に答えてない。私は二つの点を質問したんじゃないか。さっきのをもう一度繰り返すが、ウイメックスというのは大統領の核攻撃指令の伝送を第一任務とする。あなたはその後だけ答えておる。これはその名のとおり、全世界を結ぶ通信組織である。その後の方だけあなたは今まで答えておる。この点ははっきりしてください。ウイメックスは核攻撃の指令を伝送することを第一任務としているのだ、しかも日本にはこの通信体系が、システムが在日米軍の通信体系として使われている、この二つの点を答えてくださ
  210. 古川清

    古川(清)政府委員 お答え申し上げます。  汎世界的な米軍の軍事通信網である以上、核攻撃の指令というものもこの通信網に乗せられて伝達されることは当然あり得るかと存じます。(岡田(春)委員「それから、日本の国内では」と呼ぶ)日本の国内にありますところの米軍の通信網というものが、このウイメックスの中に結びつけられているとするならば、当然そのネットワークを通じてそのような指令が伝達されることはあり得ると存じます。
  211. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなたは「ならば」と言うが、それでは、ウェザービーはそうだと言っているんだが、それは違うのですか。
  212. 古川清

    古川(清)政府委員 お答え申し上げます。  ウェザービー大佐がいかなるときにおいていかなる発言をしたかということの詳細を私存じておりません。したがいまして、私のお答えは今申し上げたとおりでございまして、そういうネットワークにそういう大統領の指令というものが伝達されることはあり得ることでございます。
  213. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは少し角度を変えてやりましょう。  政府は議員の文書質問に答えて、五十八年十一月二十五日文書回答を行っている。その文書回答は総理大臣中曽根康弘の名前で回答している。その文書を読むと「ジャイアント・トーク・ステーションとは、米空軍によって運用される一般的な指揮統制等の通信を行うための高周波通信施設であり、我が国では横田及び嘉手納飛行場内に設置されていると承知している。」こう言っております。  そこで伺いたいのは、ジャイアント・トーク・ステーション、これは公式名称は何というのですか。この部隊は一九五六通信群司令官の指揮下にある。公式名称をひとつ言っていただきたいのだが、防衛庁、わかりますか。
  214. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 お答え申し上げます。  先ほど委員御指摘の答弁書は私どもの方で出しましたものでございますので、お答えさせていただきますが、ジャイアント・トーク・ステーションの正式名につきましては、ちょっと私、今手元に資料を持ち合わせておりませんので、至急調べて……。
  215. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これはすぐ調べてください。私が調べている限りではこういうのです。SAC・HF/SSB戦術空-地無線システムというのです。ここではっきりしているのは、SACのものであるということが非常にはっきりしている。戦略空軍のもの。  そこで、政府はこういう文章を書くから外務省嫌らしいと私は言うんだが、なぜSACまで入っているのに「米空軍によって運用される」などと書くんですか。アメリカ戦略空軍によって運用されると書くのが正確じゃありませんか。もちろんアメリカ空軍の編成の中には戦略空軍も入っているのはわかり切っていますが、わざわざこうするというのは核の問題をごまかそうとしている意図です。戦略空軍の一般的な指揮統制の通信の任務というのは、核攻撃のための通信をやるということです。ここではっきりしているじゃないですか。どうです。
  216. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 お答え申し上げます。  別に隠すつもりはございませんで、答弁書の提出に際しましては、確かに米空軍によって運用されるということを申し上げております。その点は、米空軍によって運用されていることは御承知のとおりであろうと思います。  それから、戦略空軍との関係につきましては、SACすなわち米戦略空軍司令官に対する送受信網の提供、そういう機能をジャイアント・トーク・ステーションが持っておるということは先ほど御答弁申し上げたし、従来からも何回か御答弁申し上げておると思います。
  217. 岡田春夫

    岡田(春)委員 答弁、不十分ですけれども、進めます。  それじゃ、ジャイアント・トーク・ステーションは、さっき地図で私の資料をお見せしたように、大統領指令、核攻撃命令の指令を横田で三十秒で受けて、その指令をB52に伝送するという任務を持っているんでしょう。そうですね。
  218. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 私、軍事技術あるいは軍事問題全般につきましての専門家でございませんので権威を持って御答弁申し上げる資格がございませんが、常識的に考えればそういうことは十分あり得ると思います。(「だれか今の問題について答弁できるような政府委員はいないのか」と呼ぶ者あり)
  219. 天野光晴

    天野委員長 古川参事官。しっかり答弁しなさいよ。一回で済むのに。
  220. 古川清

    古川(清)政府委員 ジャイアント・トークにつきましては、公刊資料にSIPRIというスウェーデンの平和問題研究所の資料がございまして、これに基づきますと、世界じゅうに十四のステーションがある、このジャイアント・トークのシステムは爆撃部隊に対するコントロールシステムの主たる手段であるというふうに書いてあるわけでございまして、先生御指摘のそういった大統領の指令というものが今のルートを伝わって伝達されるということは十分あり得ることではないかと存じます。
  221. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あり得ることではないかというような言い方をしない方がいいですよ、はっきりしているのですから。少なくとも核攻撃の指令はジャイアント・トーク・ステーションを通じて行われる。ところが、これは横田だけではない、嘉手納においても行われる。核攻撃の指令というのは日本では二カ所だけではない、少なくとも日本全土で最低五カ所ある。  その五カ所ある点を具体的に明らかにしますが、一つは神奈川県の座間にある。もう一つは、同じく神奈川県の上瀬谷にある。それ以外に、青森県の三沢もそうである。ですから、南から北に向かって、日本全土にわたって最低五カ所の核攻撃指令の基地がある、こういうことになっているのが今日の状態である。日本全体が核攻撃指令基地になっているということです。非核三原則の問題、極めて重要です。しかし、攻撃指令をかけるこのような基地が五カ所もあるということは、これは重大な問題じゃありませんか。法制局長官がさっき言ったように、この実態を政府がほとんどわかりませんと言っているんじゃ問題にならぬじゃないか。国民にも知らせてないじゃないか。ごまかしているんでしょう、それ。  しかも、もうちょっと言いましょう。さっきもちょっと言ったが、MEECNというのがある。MEECNというのは通信施設である、ウイメックスの一部である。それは国防衛星通信を使う。国防衛星通信の最優先チャンネルがMEECNである。この事実、知っていますか。そこだけでもひとつ聞いておきましょう。
  222. 古川清

    古川(清)政府委員 このウイメックスには二つの手段があるようでございまして、一つが国防通信システム(DCS)、それからもう一つが最低限必要な緊急通信網としてのMEECNであるということは、公開資料から私どもも承知をしております。
  223. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それは認めたようですから、具体的に言いましょう。  キャンプ座間に一九八二年の四月、SHFパラボラアンテナが完成した。このパラボラアンテナは、今も話が出たDSCSⅢ型軍事衛星通信です。この地上ターミナルが国防通信中最優先のチャンネルMEECNを使って、そしてこれは西太平洋全域ただ一つの戦略核の通信基地である。有事の際はどうか。大統領の核攻撃指令をMEECNによって受信し、横田ジャイアント・トーク、神奈川県上瀬谷の海軍情報基地と緊密な連携の上、西太平洋、インド洋全域に展開するアメリカ三軍全部隊に対して核攻撃命令を伝達する通信基地である。キャンプ座間というものの役割はこういうものだ、これはお認めになりますか。
  224. 古川清

    古川(清)政府委員 ただいま申し上げたとおり、ウイメックスには二つの通信手段があるということは存じておりますけれども、その詳細な内容については、私ども承知しておりません。
  225. 岡田春夫

    岡田(春)委員 何にも御存じない防衛庁ですか。それで日本の国を守るとおっしゃるのですか。  もう一つ、神奈川県上瀬谷の基地に、FOSIF、日本語で言うと艦隊西太平洋監視情報施設、これはアメリカが全世界の海を四つに分けている、その一つとして、海を担当するアメリカ核戦略上のトップクラスの攻撃指令基地である。大統領の核攻撃指令が出た場合、直ちに上瀬谷がこれを受け取って、一つは、戸塚送信所から西太平洋、インド洋全域のカール・ビンソンを初め全海上の艦船に通報する。もう一つは、愛知県の依佐美送信所からVLF放送を使って海の中の戦略原潜及び全潜水艦に通報する。またそれ以外に嘉手納、三沢の基地もあるが、これはきょうの場合省略するけれども、少なくとも五カ所あるということは間違いない。この事実をお認めになりますか。
  226. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 私どもは、米軍が、今委員御指摘のような個所をも含めまして、各所に通信用の施設、区域を保持しておるということは存じておりますが、ただいま岡田委員御指摘のような、非常に専門的な詳細な仕組みについては私ども承知しておりません。
  227. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これはもう問題にならぬ。外務省も防衛庁も事実を知らないというのじゃ、これははっきりしてもらうまで質問できません。――どうも防衛庁も外務省も内容をほとんど知らない。こんな無責任な話はない。というのは、このような核攻撃指令の基地が日本に最低五つもあるという、日本の一億の国民の生命に関することだ。こういう問題を知らぬ顔して勉強しないというのは話になりません。私は、なぜこの問題を取り上げたかというのを、三つの理由で明らかにします。  第一点、核攻撃の指令基地がつくられているという今日の事実は、日本が完全にアメリカの核戦略の中に組み込まれているということを明らかにしている、これが第一点。  第二点、アメリカは全世界を四つに分けている。アメリカの本土以外に四つに分けている。そして、これで対ソ包囲の核攻撃体制をつくっている。この四つの中の一つが日本である。これが今日のアメリカの限定核戦争の実態である。この一つとして担っている日本全土は、西太平洋、インド洋を担当する最前線の核攻撃指令基地にさせられている。世界的にはそういう位置づけになっている。  第三点、こういうことを言うと、中曽根総理はきっとこう答えるだろう。いやそれは核抑止力でございまして、核の傘によって守るのでございますから、きっとこう答える。問題は、核の指令基地が日本全土の中に最低五カ所もあるということは、核の傘ではないんですよ。核の目標になることですよ。核の第一の目標になるということは、これはアメリカが証明している。  アメリカが証明しているというのは、去年の四月、国防長官のワインバーガーがアメリカの国会に「ソ連の軍事力」という報告書を提出している。この中に何と書いてあるか。ソ連の行う第一の目標は、西側核戦力関連の指揮、統制、通信を妨害、破壊することだと言って言い切っている。その資料、ここにありますよ。これは見せなくてもいいけれども、これだ。これの一番初めの方にそう書いてある。一番先に全世界に四カ所ある指令基地を攻撃することがソ連の第一の目標だという。核の傘ではないですよ。核の目標になるということです。我々は、こういう事実を国民の前に明らかにされてないということが非常に遺憾である。アメリカは守られるかもしれないが、日本はそのために犠牲になる。  私はここではっきり言っておく。日本の国内に少なくとも核の指令、核攻撃の指令基地が五カ所ある。これははっきり私の政治生命をかけて断定する。あなたがないとおっしゃるなら、総理、ないとおっしゃい。あるのなら撤去することをお考えなさい。最後に私、伺っておきますが、あなたはロン・ヤスの関係だなどと言われているから、そんな近しいのならばレーガンに会って、一億の国民が犠牲になる指令基地は撤去してくれ、その申し入れをしたらどうですか。あなたは現実的な方法で軍縮を考えるとおっしゃるのなら、そういう具体的な提案をしたらどうですか。そして、もちろんアメリカだけに要求するのじゃない。ソ連にも要求なさい。ソ連にはSS20を撤去しなさいと要求しなさい。そういう具体的な要求でなければ、あなたの言う軍縮を何とか具体的に云々なんといったって話になりませんよ。指令基地をまずやめなさいとレーガンになぜロン・ヤスの関係で言わないのか。そしてソ連にも要求したらいいじゃないか。そういう具体的な考え方をやってもらいたい。私はそういう点で、最低五カ所核攻撃指令基地がある、この現実をあなたがお認めになるのかどうか。私は政治生命にかけてはっきり言っておくが、この事実を認めるのかどうか。何か防衛庁や外務省に聞くと、あるかのごとく、ないかのごとく言っている。はっきり総理大臣、責任を持って答えてもらいたい。
  228. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 今おっしゃるような五つの基地があるかどうか、私は知りません。今あなたからそういう話を聞いて、それだけお調べになっているならば我々の方もよく勉強してみる必要がある、そう思った次第です。防衛庁、外務省にいたしましても、急にこういう質問をせられたから準備がなかったという点もあり、これは遺憾であります。遺憾でありますけれども、我々の方もよく勉強してみたいと思っております。  それから第二番目に、我々は非核三原則を国是として堅持しておるわけです。それは持たず、つくらず、持ち込ませず。自分ではつくらない、また自分では持たない、また持ち込まさせない、そういうことでこれは堅持して、今も厳然と守られていると思っております。  そこで、第三点でございますが、日本の列島防衛、日本の本土防衛等につきましては、安保条約を機能させまして、そして安保条約プラス自衛隊という形で守っていることは御存じのとおりです。その安保条約を機能させて日本を守ってもらう、あるいは日本が自分で守っているという機能の中には、アメリカの核抑止力に依存しているということもまた厳然たる事実で、これは前から言っているとおりであります。その核抑止力に依存しているということと、それから非核三原則を持っているということは私は矛盾していない、そう思っておる。前から申し上げているとおりです。日本の国内にあるアメリカの通信系統というものがそういうような核関係に使われるということも、これはあり得ると思っています。必ずしもないとは思いません、あり得ると思います。しかし、そのことは持ち込みを認めているということではないのであります。また、その機能があるということ自体が日本列島を守るための核抑止力として機能しているということも、私は厳然たる事実であると思うのです。  そういうような関係から、我々の防衛戦略体系からすれば、岡田さんのお考えとは違うところがあると思いますが、今まで申し上げた範囲内においてそれはおさまっていることである、このように思います。
  229. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これで終わりますが、あなたの話を聞いていると非常に幾つか問題がある。それは、非核三原則というのを、ハードウエアを日本に持ち込まないということです。いわゆる電波通信の組織というのはソフトウエアの問題です。非核三原則の中にソフトウエアも含まなければだめなのです。こういう点をはっきりすることが必要なのです。私はそういう点では今の御意見は納得をいたしません。  先ほどからの幾つかの答弁を私は了解いたしませんので、これ以上私は質問を続行できません。留保をいたします。
  230. 天野光晴

    天野委員長 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。(「終了じゃない」と呼ぶ者あり)  次に、坂口力君。
  231. 坂口力

    坂口委員 それでは、財投の問題から少し御質問をさせていただきたいと思いますが、国全体から見まして非常に財政的に厳しいときでもあり、赤字国債の額が百三十兆円を超えるという事態になってまいりました。また、一方におきましては、高齢化社会がだんだんと進んでまいりました。前門のトラ後門のオオカミという感じでございますが、こうした世界に類を見ない時代を乗り切らなければならないときでありますだけに、今や英知を結集をしなければならないときであるというふうに考える一人でございます。それだけに、現在厳しい財政運営をいかに効率的に切り抜けていくかということがより大事になってくるのではないか、そういう観点からきょうは御質問を申し上げたいと思います。  まず最初に、経済企画庁から「活力ある高齢社会を目指して」、こういう本が出ておりますが、まず総理に一番最初に一言だけお聞きをしておきたいと思います。活力ある高齢社会ということについて総理はどのようにお考えになっているのか、一言だけお聞きをして、質問に入らせていただきたいと思います。
  232. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 高齢化社会がもう目の前に来つつあるということは、皆様御存じのとおりでございます。大体六十五歳以上の人口は総人口の九・何%、約一〇%ぐらいにもうなりつつある、こういう状態でございます。  問題は、日本はそれで長寿国になりまして非常におめでたい現象であると思っておりますが、しかし長生きするというのは必ずしも能ではない。問題は、長さということと同時に、その人生というものが生きがいがあるものであるかどうかという内容の問題がこれからは非常に重要になってくる、そう思います。そういう意味において、生きがいのある高齢時代というものを迎えよう、そのためには、日本はもう急速な高齢化という現象が進んでおるものですから、なかなか用意がまだ十分できていないと思うのであります。  今まで、つい二十年ぐらい前までは人生五十年の設計書であったのですが、もう人生八十年の設計書に設計変更をあらゆる部面において急速にやらなければならぬ。そういう意味で、今その設計変更に一生懸命取りかかっておるわけです。年金問題にしてもそうでございますし、労働関係、雇用関係にしてもそうでございます。  そういう意味において、このいわゆる高齢時代に入った方々が生きがいのあるような諸般の政策を充実させてこれから懸命に努力していく、それが活力ある高齢時代を迎えようとする我々の考えの基礎にある考えでございます。
  233. 坂口力

    坂口委員 ありがとうございました。  この「活力ある高齢社会を目指して」という本の中にもございますが、創造的な技術開発、それから物価の安定、就業機会の確保、さらに高齢化社会に対応した社会資本の充実ということをこの本は挙げているわけでございます。  とりわけ公的部門、政治が受け持ちます部門といたしまして非常に大事なことは、年金の充実、物価の安定である。この本も述べているところでございまして、そうした観点から議論を進めていきたいと思います。  まず、経企庁長官にお聞きをしておきたいと思いますが、長期的な予測は非常に難しいと思いますけれども、今から十数年ございますが、この二十一世紀初頭に至りますまでの物価というのは大体どのくらいの程度で推移するのであろうか、あるいはもう少し、二十一世紀の二〇二〇年あるいは三〇年というその時代に向けてどういう状態で推移するのであろうか、これは非常に難しいことでございますが、どのようにしたいという強い願望をお持ちになっているか、このことをまず一つお聞きをしておきたいと思います。
  234. 金子一平

    ○金子国務大臣 大変難しい御質問でございまして、世界の経済はもちろん、日本の経済も大きく揺れ動いておる際ですから、今後、二十一世紀に当たってどうなるかということを今から予測することは大変難しいと思いますけれども、御承知の中期展望におきましては、一九九〇年まででございますが、消費者物価の年平均の上昇率を三%程度にすることを目安にして、今、その努力をしておる最中でございます。これは何とかやってのけたいと思っておるのですが、でき得べくんば、その後も大体ここら辺を目途にすることを努力目標にいたしております。
  235. 坂口力

    坂口委員 資料がございますので、済みませんがお願いいたします。  年金の内容につきましては、これは現在参議院の方で審議中でございますので、言いたいこともございますけれども、ここで立ち入ってその論議をすることはきょうは慎みたいと思います。ただ、国民の側からいたしますと、現在の年金に対しまして掛金が高い割に受け取りますところの年金額が比較的少ないのではないかという厳しい見方があるわけでございまして、国民の皆さん方の中には、今回のこの審議中でございますところの年金の改正案を見ましても、この内容であったらむしろ私的年金、生命保険等の個人年金に入った方がいいのではないかということをおっしゃる方もございますし、事実、国民年金を離れられまして、そして私的年金に入っておみえになる方もあるわけでございます。  そこで私は、公的年金と私的年金との間に積立方式そして修正積立方式、その大きな差があることを承知をいたしながら、国が現在進めておりますところのこの年金の内容に合わせまして、その掛金、そしてまたその期間に合わせまして、一体個人年金だったらどのくらいになるのであろうかということをある生命保険の方にお願いをいたしまして実は計算をして出していただいたのが、先ほどお手元にお配りをいたしました表でございます。  これをごらんをいただきますとおわかりいただきますように、その下にも書いてございますが、物価が今から先ずっと平均いたしまして三%上昇していく、あるいは五%上昇していく、七%上昇していくというふうに、三つの例に分けまして出したものでございます。  それをごらんいただきますとわかりますとおり、先ほど経企庁長官がご指摘になりましたように、物価の上昇が三%ぐらいにとどまっておりましたならば、その個人年金は公的年金と比較いたしましてかなりいい線にいくということではないかと思う。公的年金の場合には、五万円年金、そのときそのときのあれでございますが、そのときの価格で申しますと、六十五歳で受け取りますときに二百四十九万でございますが、これを三%物価上昇するとして現在の価格で見ますと、それは六十五万ということになるわけでありまして、公的年金の場合には六十万ということでございまして、その中で三分の一は国庫補助ということでございますから、純年金だけで申しますと四十二万ということになる、そういう見方はちょっと悪いですが、そういうことになるわけでございますので、三%ぐらいの物価上昇だったらかなりいいところへいく。しかし、五%、七%になりますとかなり悲劇的になってくる、こういう図ではないかと思います。  これをごらんいただきまして大蔵大臣、感想がございましたら一言お聞きをしたいと思います。
  236. 竹下登

    竹下国務大臣 私もかねて感じておりますのは、私の方で直接持っておりますのは、国家公務員等共済組合は大蔵省の所管でございますが、そこでその審議会等の議論を聞いておりますと、今坂口委員がおっしゃったような議論が確かに出てまいります。かつてはいわば、例えば運用の問題につきましても、いかにして還元融資して公共的、公用的なところへやるか、こういう議論の方が多かったと思います。それから最近に至って、今度は掛金が大変になるというある種の認識から、最近は、有利に運用しろ、有利に運用しろ、こういう議論の方が強くなってきておると思います、これは長い間の審議経過を見てみましても。したがって最近、今おっしゃいましたようにこの基礎年金は結構だが、その二階、三階部分等については、それは民間と、労働組合の方も随分勉強していらっしゃいまして、その方の有利性があるじゃないか、こういう議論もございます。  そこで、物価問題等について私は私なりに議論しておるわけでございますけれども、今のような感じで審議会等の議論にも出てくる認識じゃないかな、こういう感じは私もひとしくしております。
  237. 坂口力

    坂口委員 大蔵大臣の議論が私の質問の先を行っておりますので、私も質問を先に進めたいと思いますが、この年金の積立金は、けさも川俣議員の方から御議論がありましたとおり五十二兆円に達しておりまして、今までの最高に達してまいりました。しかし、これからはこの積立金の増加はさほど望めないということになってきたことも事実でございます。それだけに、現在の積み立てられてありますところの額というのは、これは一銭たりともむだにしてはならない。やはりこれから多くならないからこそ、これは真剣に対処をして、そうして国の責任を果たさなければならない、こういうことではないかと思います。  我々、戦中派以上の方というのは、戦後の激しいインフレの中をくぐり抜けてまいりまして、インフレの恐ろしさということをよく知っております。したがって、生命保険とこういうふうに言いますと当てにならないものの代名詞みたいに思われた時代もあるわけでございますが、平和なときが続きまして現在のような状態になってまいりますと、なかなか個人年金も見捨てたものではないじゃないかという議論が起こってまいります。  それは、この資産の運用におきまして、運用利回りが八・二五%で運用されているという、そこに基づいていると私は思うわけでございます。しかし、国の方は、いかに年金や郵便貯金のお金がたまりましても、それをサラ金に貸すのはもちろんのこと、株に手を出すわけにもいかないと思いますし、有利な運用と申しましても一般の企業が行いますほどのことはでき得ないであろう、これは私もそう考える一人でございます。しかしながら、現在のままで果たしていいであろうかという素朴な疑問もまた一方で持たざるを得ない一人でございます。  厚生大臣にお聞きをするわけでございますが、この基礎年金構想におきましては、運用利回りというのは七・〇%で試算をされているというふうにお聞きをいたしておりますが、これが七・正あるいは八・〇、こうしたパーセントになりましたときの試算はできているのかどうか。できておりましたらひとつここでお示しをいただきたいと思います。
  238. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 お答えいたします。  もし仮に、長年にわたって利率を〇・五%上げることが現実に可能であったと仮定いたしますと、厚生年金の場合に保険料を〇・四%、二八・九%から二八・五%へ軽減させることができます。国民年金につきましては、最高一万三千円を一万二千五百円に、五百円の削減ができることになります。  また、八%に、一%上乗せができるといたしますと、厚生年金の場合、二八・九%から二七・九%へ一%軽減することができます。また、国民年金におきましては、一%上乗せの場合には一万三千円から一万二千二百円に、八百円軽減できることになりますけれども、これはいずれも相当、数十年間にわたってそういうことが可能であるという仮定の上に立っておりますことを御承知おき願いたいと思います。
  239. 坂口力

    坂口委員 農林水産大臣にお聞きをいたしますが、農林漁業団体職員共済がございます。この自主運用の額並びにそのパーセント、これにつきましてひとつ示していただきたいと思います。     〔委員長退席、大西委員長代理着席〕
  240. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 坂口先生にお答えします。  通称農林年金と申しますが、積立金の運用については、毎年度積立金の増加額の三分の一に相当する額を政府保証債の取得に充て、それからその他の運用法については、年金給付に支障を来さない安全かつ確実なものとするよう指導しております。  そんなことで、昭和五十八年度における積立金は約九千八十六億円でございまして、その運用は、有価証券が七千三百五十一億円、八〇・九%でございます。組合員への還元融資等が一千三十二億円、これが一一・四%、そのほかに信託その他預貯金等がございます。  農林年金の運用利回りは、この五年間を見ておりますと、七・四%から七・八%の間で推移しております。
  241. 坂口力

    坂口委員 全体で何%ぐらいになりますか、自主運用は。
  242. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 七・四から七・八の間で運用しております。
  243. 坂口力

    坂口委員 全体の中で自主運用されております割合
  244. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 割合が、金利が七・四から七・八でございます。
  245. 坂口力

    坂口委員 金利ではなくてパーセント。全体の中で自主運用されておる……
  246. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 三分の二でございます。
  247. 坂口力

    坂口委員 個人年金の場合とそれから公的な年金の場合とは、先ほども申しましたように仕組みが違いますから、そう簡単に並行的に並べて議論をすることは差し控えたいと思いますけれども、しかし、かなり自主運用の効果というものが出ていることは紛れもない事実でございます。  そこで、大蔵大臣にこの自主運用の問題をお聞きをしたいわけでございますが、けさもお話がございましたように、大蔵大臣としては非常にかたい御返事、御答弁でございました。この新しい年金制度をこれから育てていくということもございますし、もう一つ、今直面しております大きな問題は、金融の自由化の問題でございます。  この金融の自由化が進み、金利の自由化が進んでまいりますと、民間金融機関は、預金をふやさなければなりませんから、そういたしますと預金金利を上げることになります。そういたしますと、郵便貯金の方も上げなければならない。こういうことになってまいりますと、資金運用部資金の方の預託金利というものもこれは上げなければならないということになってまいります。一方、お金を貸し出します方の貸出金利というものは、民間金融機関は優良企業に対しましてはより低くして競争をすることは当然でございます。そういたしますと、財投の方もより低くしてこれに対応しなければならないということになってくるわけでございます。そうなりますと、預託金利の方はより高く、貸し出しの方はより低くという時代が間もなくやってくることになるわけでありますから、そういたしますと、そのときに一体財投はどうするのであろうか、そういう心配を私は持つ一人でございまして、そのことを考えますと、どういたしましても現在この財投というものについてもう一度メスを入れる必要がある、今真剣に考え直す必要があるのではないかと考える一人でございます。  大蔵大臣に、こうしたことを十分に計算に入れた上でもう一度この年金の一部自主運用と私はあえて申し上げますが、この厳しいときでございますから、全額と申しましてもこれは当然難しいことでございましょう。まず、とりあえずその一部であっても自主運用を始めていくというその姿勢が現在の情勢の中で最も大事ではないかと考える一人でございますが、ひとつ御答弁をいただきます。
  248. 竹下登

    竹下国務大臣 きょう午前中も質問がございましたが、大体、先ほど、私が所管しております国家公務員共済等の審議会等の議論の経過を見ますと、確かに最初はいかに公用、公共的なものに還元融資という形の自主運用をよけい認めさせる、こういう傾向であったと思うのです。それで徐々に成熟してきますと、今度は、将来維持するためには掛金が大変なことになる、そうすると、やはりこれは自主運用という考え方がより有利運用のシェアを広げよう、こういうふうに移ってきておることは私も事実だと思います。  そこで、そういう議論の中で、臨調でお願いして第五次答申の中に入れておいていただきましたのは、原則的に一元化の運用の形態は、これはやはりちゃんと堅持しなさい。その理由は何かというと、大変なお金になってまいりますと金融全体に与える影響というものも出てくるから、一元化という基本は守りなさい、しかし、公共、公用もさることながら、有利の方へもっと力を注ぎなさい、こういうことになっているわけです。  そこで、それを原資といたします財政投融資計画ということになりますと、今坂口さんおっしゃったような傾向が部分的に出ておるものもございます。この間、本当にこれは冗談でございましたが、ある銀行の方が短期金利の問題について、財投へ預っていただけませんか、今財投の方が預託金利が高こうございます、こう言って冗談を言われたというお話も新聞紙上等にも出ておりましたが、金利の状態も坂口さんが指摘されたような傾向も将来出てくる可能性も私はあろうかと思うのです。  そうなると、今までの財投というものは、これは二十年代から三十年代はどっちかといえばいわば産業と申しましょうか、そういう方向に運用されておりまして、財投の歴史を見てみますと、それなりに工夫されて、二十年代から三十年代は基幹産業の振興というところに充てられ、それから三十年代から四十年代になりますと、道路、鉄道、中小企業と、こう充たってきて、それから五十年代になりますと、住宅、生活環境というふうに、それぞれ重点的に配分する傾向もやはり違ってきたわけですから、そういう意味においては、私は財投というものについて研究しなければいかぬ時期が来ておるということは十分承知しておりますし、また、後先になりましたが、年金の一元化の段階においては今度は、今歴史的経過の中でばらばらになっております運用問題についての議論もまたこれは当然出てくる議論だなという事実認識は、私も持っておるところであります。
  249. 坂口力

    坂口委員 臨調のお話が出まして、一部けさも発表になったわけでありますが、臨調の提言の中にも、運用面の見直しの問題がございまして、この運用面の見直し、合理化を進める上での具体的検討項目といたしまして、財投対象事業にスクラップ・アンド・ビルド及びサンセットの考え方の積極的導入、それから財投貸し付けの期間が極めて長いもの、政策金融機関の貸付金利の極めて低いものの見直し、収支の改善が困難な機関、国鉄等に対する融資の歯どめの設定、民間に任せてよい事業や融資の見直し、それから還元融資の見直し、こうしたものを実は挙げておみえになるわけでございます。  こういうふうな提言もある昨今でありますので、この際、全体的な財投の見直しの一環として、その中における年金の自主運用ということにつきましてもぜひひとつこれは取り上げていただきたいと思うわけでございます。先ほどの大蔵大臣の御答弁の中にはその辺のところは詳しくございませんでしたが、ぜひひとつこれは実現をしていただきたいと思いますが、再度簡単に、これはできるかできないか、もう一度お答えをいただきたいと思います。
  250. 竹下登

    竹下国務大臣 財投のあり方ということになりますと、環境の変化に対応いたしまして、今我が方では理財局として昨年秋以降、財投研究会、それで精力的に勉強をしております。  本来、財投のあり方を審議していただく公的な場としましては、いわゆる資金運用審議会というのがございます。財投のあり方に関して、これは随時御議論をいただいておりますが、今御指摘になりましたように、従来はどちらかといえば各年度ごとにどういうところへ重点を志向した方がいいか、こういう傾向であったと私も思います。したがって、これからは、せっかく総理府に所属する大審議会でございますから、その審議会でこの運営方法についても私は審議をお願いした方がいいなという考え方は実は持っておるわけであります。  そうなりますと、財投のあり方、臨調であのようにして議論していただいたわけでございますけれども、資金運用審議会という、まさに専門的な財投のあり方についての議論をする場所があるわけですから、ここで議論してもらったらいいのかな、おっしゃるとおり今までは毎年毎年こういう重点がいいかなという審議は非常に熱心にお願いをしておって、いわば今おっしゃいました総体的な運営方法についての検討というところまでは審議して――全くなかったわけではございませんが、審議していただく重点の方向が年度年度に限っておったということは言えると思いますので、そういう審議をしていただこうというふうに思っておるところであります。が、運用の問題のみということになりますと、運営全体の中の議論でありまして、運用の問題といえば、現在は臨調答申にありますいわば運用の一元化を堅持して、その中で金融との整合性とかいうことを図りながら、これの有利運用にも従来非常に力を入れてやりますという答弁が今日のところは限界ではないかと思っております。
  251. 坂口力

    坂口委員 総理府の中に資金運用審議会があって、これまでもいろいろの議論がされてきたようでございますが、ぜひひとつそこで積極的に御議論をいただきたいと思うわけであります。現在も大蔵省の理財局長さんのところで私的諮問機関として研究をされているようでありますけれども、しかし、これは一大蔵省、その中の一局の中で議論を進めていくべき性格のものではなくて、いろいろの省庁が非常に関係をした大きな問題でございますので、各省庁の全体の話し合いの場でひとつこの問題をこれから進めていただくことを重ねて要望をするわけでございます。  総理府の方には何ら問題の提起等はいたしておりませんけれども、こういうことでございますので、ひとつ総理府の方、資金運用審議会の方でぜひ積極的にお願いをしたいと思います。決意がございましたら一言だけ。
  252. 竹下登

    竹下国務大臣 今、総理本府は内閣官房へ移って、今ちょうど官房長官がおりませんので、これは私が今お話ししました責任におきまして、大体メンバーは今坂口委員おっしゃったような形のかなりのメンバーがございますので、そこで総合的な審議をしてもらうための検討を直ちに、それで庶務は大蔵省理財局でやっているものですから、直ちにどういうことをやってもらうかという検討には入らしていただくということをお約束いたします。
  253. 坂口力

    坂口委員 庶務は大蔵省だそうでございますが、余り大蔵省、自分たちの都合のいいようにばかりしないように、ひとつ注文をつけておきたいと思います。  このように財投の問題、いろいろの問題があるわけでございますが、政府系金融機関のあり方等につきましてもこれからひとつ積極的に取り組んでいただきたいと思うわけです。と申しますのは、一部運用の話を出しますと、必ずといっていいほど、厳しい財政の中で、そうして財源がないというお話になるわけでございますが、金融の自由化で長短金利の差が非常に縮まってくる、あるいはまた民間金融機関との競合が起こってくる、こういう状況の中でございますので、むしろ政府系金融機関は民間の補完をするということに徹するというような形でぜひひとついろいろの討議がされることを私は望む一人でございまして、そういうふうな意味でひとつ全体的な討議をしていただきたいということを申し上げておきたいと思うわけであります。  また、現在財投の対象にはなっていないものにつきましても、これから進みますところの高齢化社会の中で、これはぜひ今のうちに進めておかなければならないというものもあるわけでありまして、そうしたものにつきましては、ひとつ財投の対象の中に加えるということもまた考えていただきたいと思うわけでございます。  一例だけを挙げておきますと、例えば大学病院でございますとかあるいは国立病院でございますとか、こういったところに非常に高価な医療器具というものがたくさん購入されることがございますが、非常に数が少ないものですから価格が高いわけでございます。それに対しまして国の方は補助金なりあるいは全額そのままなりこれを購入をしているわけでありまして、このお金というのは非常にばかにならない。ところが、それならばそうした新しい機械を開発する方に対して援助がされているかといいますと、必ずしもそうではないわけでございます。  例えば、これは通産省関係になりますが、工業技術院の方では、将来につきまして医療機械あるいは福祉機械というものをいろいろ研究をしておみえになるわけでございます。中には、寝たきりの方を介護するロボットの作製などもやっておみえになるようでございますけれども、しかし、そうしたロボットの作製も、機械技術研究所で今までおやりになっていたそうでございますが、最近はそれに対する補助金等もとぎれて、中途で研究が中断をしておるというようなこともお聞きをいたしております。こうした問題につきましては積極的に取り組んでいただかなければならないわけでございますので、通産大臣にあえて御答弁は求めませんけれども、そうした面では積極的にひとつ、これは新しい角度から取り上げていただきたいということを要望をしておきたいと思います。  それでは、年金の運用の問題は資金運用審議会にゆだねるということにさせていただきたいと思いますが、最後に総理、この年金の資金運用につきましてひとつ御意見を賜って、次の問題に移りたいと思います。
  254. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 年金の資金運用につきましては、皆様方の大事な財産をある意味においては預かっておるものでございますから、時代に合うように日夜改善を加えつつ、しかも堅実な方法でこれを運用していくように努力していきたいと思っております。
  255. 坂口力

    坂口委員 最後にもう一言だけつけ加えておきたいと思いますが、この資金運用部特別会計法第四条、第九条に、運用資金が価額の減額を生じた場合または決算上赤字を生じた場合には、最終的には必ず一般会計から繰り入れによってこれを補てんすべきものである、こう書いてあるわけでありまして、これは、運用資金が価額の減額を生じた場合には国が責任を持ちます、こういうことを言っているわけでございまして、これはぜひひとつそうした面からも積極的にお取り組みをいただきたいと思います。  さて、その次に、これもけさ議論がございましたけれども、脳死の問題、ひとつ議論をさせていただきたいと思います。  脳死の問題は、今まで、心拍動の停止、それから呼吸の停止、瞳孔の散大、死の三兆候と申しておりましたが、これをもちまして死と、こうしてきたわけでございます。しかし、これで死だという法律があるわけではございませんで、一つの慣用法と申しますか、慣習に従いましてこれは死としてきたわけでございます。エドガー・アラン・ポーの小説に「早過ぎた埋葬」という短編がございますけれども、まれには埋葬されましてそれから二十四時間後に蘇生をした人もあるわけでございますから、余り学問的でないと言えば余り学問的でない面も実はございます。それからだんだんと時代が進みまして一九五九年に、モラレットと読むのでしょうか、フランスの医師によりまして生命維持装置というものがつくられました。この生命維持装置といいますのは現在の人工心肺ということなんだろうと思いますが、これによりまして壊死に陥りました脳の患者を人工呼吸器で数日間生存をさせることができた、こういうことがございまして、それからいよいよ様相を異にしてきたわけでございます。  死は間髪を入れずという言葉もございますけれども、死というのは瞬間的な出来事、イベントではなくて、これは過程、プロセスである、こういうふうに言われております。なぜなら、心臓が鼓動を停止をいたしましてから脳細胞は数分ないし十五分間で死んでしまう。それから腎臓は一時間、筋肉は数時間、そして髪の毛やつめなどは数日間生きているということでございますから、髪の毛やつめなどは死なないうちに焼かれてしまうことになるわけでございます。こういうふうな、一瞬にして決まるわけではなくて、ある程度の時間をもちましてその間で死というものが進行していく、そういう死というものの性格であるわけでございます。  それだけにいろいろの問題も起こるわけでございますが、今までございました慣習的な死の定義、死の三兆候と言われております心拍動の停止、呼吸の停止、そして瞳孔の散大、こうしたもののほかに、最近脳死という問題がクローズアップされてきたわけでございます。心臓は人工呼吸で動いておりますけれども、脳幹は死んでいる、これを一応脳死と呼んでおります。  そこで、一体これをどうしたらいいのかということにつきましていろいろの議論がございますけれども、文部大臣、厚生大臣からまずお聞きをしたい。  それぞれ文部省の管轄あるいは厚生省の管轄におきまして、各大学病院あるいはまた大きい国立病院等におきましては、脳死の判定がなされていると思います。昨年一年間でも千三百例以上の脳死の判定があったというふうに記載をされておりますので、それぞれの所管のところでその判定があったと思いますし、昨年一年間でも結構でございますが、大体どれぐらいされて、その中でいわゆる臓器移植というものに結びついたものがどれだけあるのか、もし資料がありましたらひとつお示しをいただきたいと思います。
  256. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 脳死の問題につきましては、先生御承知のとおり既に厚生省で医学的な研究班をつくり、倫理と医学と合わせた懇談会をつくっていろいろ協議をしている最中でございます。  ただいまお尋ねの国立病院におきましての実例につきましては、政府委員からお答えをさせていただきます。
  257. 大池真澄

    ○大池政府委員 お答えいたします。  国立病院の中で腎移植を行っている施設、その中でも死体腎の実績を持っている施設に私どもも照会したことがございますけれども、そういったところでみずから脳死を判定して腎移植を行ったというような実績はございません。  それから、一般的には医療の、特に末期医療におきまして、先生御指摘のような非常に微妙な問題の絡むようなケースはあるわけでございますが、一般的な医療といたしましては、従前のような延命にひたすら努めるということで対処しているというふうに理解しているわけでございまして、特に脳死の判定を積極的に行うというような場面につきましての資料、統計というものは私どもは掌握しておりません。
  258. 松永光

    ○松永国務大臣 人間の死の時期がいつかという問題は、関係者の権利関係にも非常に大きな影響を及ぼすので、大変重要な問題であると考えております。  今御指摘の脳死の判定のあり方についてでございますが、私どもの方としては、厚生省で研究班を設けて指針の作成等を進めておられると聞いておるわけでございます。  文部省所管の国立大学の大学病院において独自の脳死判定基準を定めておる例はありません。ただ、大阪大学附属病院で、昨年六月に脳死検討委員会が脳死判定についての一つの考え方を提示したことがあるわけでありますが、大学としてはこれをもって直ちに具体的な症例に適用することは考えておらない、今後さらに慎重な検討を進めていくということであると承知いたしております。
  259. 坂口力

    坂口委員 皆さんの方では余り把握をしておみえにならないようでございますが、去年後半で脳死の判定をされたものが大体千三百例を超えるということでございます。  厚生大臣から、けさの答弁におきましても、脳死をもって死とするかどうか、まだ明確にするに至っていないという趣旨の御答弁があったと思います。この明確にするに至っていないというのは、脳死そのものを死とするかどうかが明確でないのか、それとも脳死を判定する基準あるいは検査方法が明確でないので死とするかどうかがはっきりしないというのか、この辺はどちらなのか、これは一番大事なところでございますので、ひとつはっきりさしていただきたいと思います。
  260. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 私が申し上げておりますのは、脳死と判定をする基準がまだ学会で一定の学説なりすべてのお医者さんに共通な認識になるに至っていない面があるのではないか、そういうことでございますから、したがって国民的な合意が得られるかどうかという問題があるということと、もう一つ、生命の倫理に関する諸問題も私どもとしては考慮に入れておかなければならない、そういう面でもまだ結論を得るに至っておりませんので、総合的に脳死をもって死とするという判断を今直ちには下せない、そういうふうに申し上げておるわけでございます。
  261. 坂口力

    坂口委員 厚生大臣、もう一度私が申しますことをよくお聞きをいただきたいと思うのです。  現在脳死の判定というものをいろいろ研究されているということはよくわかるのですが、率直に国民のすべての皆さん方にこれが脳死だということを見た目でぱっとわかるというものは、今のところないわけですね。そこで、私が今申しましたのは、例えばそれがレントゲン線なのかレーザー光線なのか、あるいは超短波なのかよくわかりませんけれども、何か新しい機械ができまして、脳なら脳にそれを当てたら、例えばの話ですよ、例えば生きておりましたらそれが赤く映る、死んでおりましたら白く映る。例を挙げて申しわけございませんが、中曽根総理大臣が御病気になられて、中曽根総理大臣の頭にそれを当てた、そうしましたら全部白かった、優秀な脳であったけれども真っ白だ、こういうことがもしもわかりさえすれば脳死というものは認めるのかどうか、そうではなくて、わかるわからないは別にして、脳死そのものを認めないのか。心臓がとまって、呼吸がとまって、瞳孔が散大をしたら死と今までしてきたけれども、それ以外のものは死と認めないのか、それとも脳死ということが明確になりさえすればそれは死と認めるのか、それは判定基準ないし検査の方法に現在問題があるとされているのか、どちらですかということを今私はお尋ねをしているわけでございます。
  262. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 仮定の問題でありますけれども、そういうふうな判定の基準を検査する機械ができたといたしますと、それは、医学的にはそれが一般的に認められれば脳死ということも考えられようかと思いますけれども、もう一つ問題は、やはりそれを国民が広く認めるようなものでなければならないという前提がつくように考えております。  詳しくは政府委員の方から説明をいたさせます。
  263. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 ただいま大臣からお答えしたとおりでございますけれども、ほとんどの国におきまして死の判定は医師が総合的に判断をされておるわけでありまして、我が国でもそうでありますが、そのときに二つの要素があると思うわけでございます。一つは医学的の事実でございますし、もう一つは、そのことを社会、国民が納得しておるかどうか、こういうことであろうかと存じます。  そこで、脳死につきましては、先ほど先生からるる御説明がございましたように、もとに戻らない点に到達をしておるわけでございますので、私はこれは死であると考えます。ただ、社会的にこれを死と納得するかどうか、これにはもっと脳死というものの実態をよく各方面で議論をする必要があると考えておる次第でございます。
  264. 坂口力

    坂口委員 文部大臣にお聞きをしたいと思いますが、今のお話を聞きますと、脳死というものを個人的な見解として、今政府委員の方は、それは死じゃないか、こういうふうにおっしゃったわけでございますが、しかし、それならばこれが一般通念として認められているかということについては、これはちょっとペンディングだ、こういうふうに今お答えになったわけなんです。  文部省の関係は、全国に多くの大学病院を抱えておみえになるわけですが、各大学病院におきましては、一応この脳死の判定というものを大体基準をつくっておやりになっているのだろうと思うのです。そこで、中には臓器移植にそれが結びついているものもあると思うわけですが、この脳死そのものを文部省としては一応死と認めていいというふうにお考えになっているかどうかということと、それから、もしその辺がはっきりしていないんだということになれば、現在各大学においてはそうした最先端の医療技術が行われている、そのことをどうするかという二つの重要な問題がございますが、この二つについてひとつお答えをいただきたいと思います。
  265. 松永光

    ○松永国務大臣 医学に関する極めて難しい問題の質問でございますが、文部省の立場としては、脳死の判定基準については、関係学会での十分な議論が行われ、また厚生省にある研究班の研究が進んで、そして指針の作成が進んで、それをもとにしてこの問題に関する国民的合意が形成されることを期待しておるという状況であります。  なお、それ以上専門的なことでありましたならば、政府委員をしてお答えさせます。
  266. 坂口力

    坂口委員 すべて厚生省にお任せということでございますが、しかし、一方におきましては、毎日毎日医療の場で進行しておるわけでございます。ですから筑波大学のような話が出てくるわけでございまして、こうした問題が次々と出てまいりまして優秀な臨床医が次々と裁判の場に出なければならないというようなことになりましては、これは医学だけの問題ではなくて、政治もその責任の一端を――一端どころではない、大半をどうしても受け持たなければならない問題になるのではないかと思うわけです。  ひとつ法務大臣の見解をお聞きをしておきたいと思いますが、今厚生省並びに文部省からお話をお伺いをいたしますと、脳死そのものの判定基準といいますよりも、脳死がはっきりしてもその脳死そのものを完全に死と認めるかどうかということに対する見解がいま一つあいまいもことしたところがあるわけでございますが、法務省といたしましてはこの点をどのようにお考えになっているのか、ひとつお聞きをしたいと思います。
  267. 嶋崎均

    ○嶋崎国務大臣 お答えいたします。  死の判定は、従来、先生御指摘のように三兆候説が一般的な考え方でありまして、刑事法の分野における判例、通説も大体これに従っておるのが実情でございます。しかし、人の死の定義及び死の判定については、基本的には医療のあり方等を含む医学の問題であり、医学的な知見を基礎として国民感情やあるいは生命観をも踏まえて決定すべきものであると思われるわけでございます。  そこで、近時主張されているいわゆる脳死についてでございますけれども、医学界を初め国民各界の意見、動向を見守りながら、刑法上の死についてさらに検討を続けていくことが必要なのではないかというふうに考えております。
  268. 坂口力

    坂口委員 法務大臣、もう一つお聞きしたいと思いますので、そのままでひとつお願いします。  今お話しになりましたが、脳死そのものを死と明確に認めていないというのであるならば、そこから臓器を摘出するということは法的に現在はどうなのかという話もあるわけであります。大変微妙な問題でございますので、お答えいただける範囲内で結構でございますのでお答えをいただきた
  269. 筧榮一

    ○筧政府委員 私からお答えいたしたいと思います。  今御指摘の、脳死の状態にあったときにそこから臓器を摘出した場合の問題でございますが、一般論で申し上げますならば、まだ人間の死と認められる死亡以前に臓器を摘出した場合、それによりましてその人が死んだというような場合には――死んだといいますか、その前は死ではないということでございますが、殺人罪とか傷害致死あるいは業務上過失致死罪というものが問題になり得るわけでございます。その場合問題は、やはり摘出前の脳死の状態が法律上死と認められるかどうかということにかかってくることは当然のことであろうかと思います。その場合、脳死を認めるかどうかでございますが、今先生御指摘のように、現在では三兆候説、心臓死説というのがやはり刑事法の分野での判例、通説と申しますか、一般的な見解となっているわけでございます。  それで、具体的なことが起こりました場合にそれがどうなるかということは、具体的事件で、どういう条件でどういう場面で死、脳死なら脳死といいますか死が認定された、つまりその摘出前の状態での死の認定がどういう条件でなされたかということにかかわってくる問題でございますので、具体的な事実がなければ断定的なことは言えないかと思います。殊に脳死の検査方法あるいは判定基準というものがまだ世界的にも確立されておらず、我が国でも御議論のあるところでございますし、さらに、それを死と認めることについての社会的、国民的コンセンサスが得られない現在においては、その点やはり具体的な事案によって個々に判断するしかないと思います。  その場合、先ほど先生おっしゃいましたように、ある時点といいましても、生から死に至るというのは一つのプロセスで、その時点でどういう状況で判断したかということが非常に重要な問題になってこようかと思います。したがいまして、あくまで考え方としては従来の三兆候説が基本でございますけれども、問題が起こりました場合には、個々の事案についてどういう状況でどういう判定がなされたか、果たしてそれが現在の医学の技術上妥当なものであったかということを基本にして検討して、結論を出すべきものと考えております。
  270. 坂口力

    坂口委員 今の御発言は非常に重要だと思うわけでございます。と申しますのは、現在のところ法的に死と認められるのは今までの三兆候だけであって、それ以外のものはそれぞれのケース、ケースの事情によるということでございまして、そういたしますと脳死というものがいよいよややこしく、いよいよあいまいもことしてくるわけでございます。  先進国の中には既にもう法律をもちまして決めているところもあるわけでございます。いわゆる法律で死を国として認めておりますのが十一カ国、公的な機関でこれを決定しておりますのが十五カ国、そして医学界で認めております国が二十一カ国、そして認めていない国が七カ国ございまして、その中に全く基準のない国が三カ国ございますが、その三カ国の中の一つが日本でございます。  こういうふうな状態で、医療の技術の水準は世界的に見ましても日本はかなり進んできているわけでございます。しかし、法律的な処置というのは世界の中でも非常におくれたと申しますか、少ない部類の中に日本は入っているわけでございまして、考えてみればお互い死なない者はないわけでございまして、だれしも皆死ぬわけで、皆が死にますのに法的に死というものが何ら決められていないというのも、考え直してみると不思議な話でございますけれども、しかし、脳死という問題が出てまいりました以上、この問題をこのままに放置しておくことはできないのではないか。法律として位置づけていくべきかどうかということについての御意見を伺いたいわけでございますが、脳死を法律として位置づけていくかどうかということの意見をお聞きするのは、これは法務省、法務大臣ですか。――では法務大臣、お願いいたします。
  271. 嶋崎均

    ○嶋崎国務大臣 死の認定の問題というのは、基本的にはやはり医学の問題であると考えられるわけでございますが、国民の感情なりあるいは生命観とも深くかかわる問題であると思うわけでございます。また、各般の法分野にも影響するところが非常に大きいと考えられますので、法律で一義的に決定することが妥当であるかどうかという問題も含めまして、諸般の角度から慎重に今後検討を進めてまいりたいと思っておる次第でございます。
  272. 坂口力

    坂口委員 そういたしますと、これは法務省としては関係の省庁と連絡をとりながら今後この問題を早急に詰めていくというふうにおっしゃったと御理解をさせていただいてよろしゅうございますか。――うなずいていただきましたので、そういうふうに理解をさせていただきたいと思います。  最後に、総理から一言お聞きをしておきたいと思いますが、死の問題というのは我々人間にとりまして避けることのできない問題であるにもかかわらず、法律的には非常にあいまいな中に今日まで進んできたと言っても過言ではございません。しかし、医学の進歩によりましていろいろの問題が出てきておりますことは先ほどからお聞きをいただいたとおりでございまして、この問題を法律として位置づけていくか、それとも今までどおり慣習に従っていくかという問題もございますし、それから、現在医療先端技術の中で進んでおります問題をどう乗り越えていくかという問題もあるわけでございます。総理大臣の所信をお伺いをしたいと思います。
  273. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 脳死の問題は非常に重大性を帯びてきていると思います。現代社会におきましては、医学の進歩に応じましてDNAの組みかえの問題であるとか、あるいは脳死の問題であるとか、さまざまな新しい現象が出てきておりますが、やはり人間の生命の尊厳ということを第一義に考えて取り扱う必要があると思います。そういう意味で、医学界あるいは宗教家、そのほかの皆さんの御議論がどういうふうに落ちつくであろうか、政府としてはもうしばらく、その水準線がどの辺に落ちつくか、よく見きわめる必要があるのではないか。法律で決めるということにまだなじまない、そういう状態にあると思っております。
  274. 坂口力

    坂口委員 ぜひひとつ各省庁が早急にこの問題につきまして議論を進めていただきますことを心から期待をしておきたいと思います。  それでは最後の問題に移らせていただきます。  総理は施政方針演説の中におきましても緑の問題を取り上げられまして、森林の育成に大きな関心を示されたわけでございます。私も同感をする一人でございます。現在、木材の供給だけでなく、国土保全の面から見ましても非常に大きな問題になっているわけでございます。昨年は台風も余りございませんで非常に幸いであったわけでございますが、五十七年の集中豪雨というのがございましたが、このときなどは小さな村でございましても大変な被害がございまして、これもやはり山の荒れたのと非常に大きな関係があるということが言われました。一つの村に以後災害復旧費として三百億に及ぶ金が投入をされているというような例も実はあるわけでございます。こうしたことを考えますと、ただ木材の供給ということだけではなくて、この森林の問題が、林業の問題が非常に大きな我々の問題であるということは今さら申し上げるまでもないと思うのです。総理は、そういう意味をもって施政方針演説におきましてこの森林の問題、緑の問題を取り上げられたというふうに私は理解をいたしております。  そこで、これは建設省の関係になるわけでございますが、住宅金融公庫におきまして融資制度がございますけれども、この償還年限を見ますと、木造の場合には最高二十五年、鉄骨の場合には三十年、鉄筋の場合には三十五年というふうに償還年限に差があるわけでございます。木造の場合にももう少しこれを延長するというようなことはできる限り木造の家屋をつくることに貢献をするのではないかという議論が今までもなくさんございましたし、私もそう考える一人でございます。  これを建設省にお伺いをいたしますと、いつも税制の問題と大きな関係がある、所得税法の耐用年数の計算が二十四年になっているので、それに合わせて二十五年だという答弁が返ってきているわけでございます。建設大臣にもあと一つ御意見を伺いたいと思いますし、それから大蔵大臣にもぜひこれは申し上げたいわけでございますけれども、木造におきましても非常に優秀なものにつきましては耐用年数というのはかなり長いわけでございます。いろいろの条件つきでも結構でございますが、耐用年数の問題というものについてひとつ大蔵省でも一考をしてもらいたい。建設省におきましても、この問題について融資の限度額の引き上げ等もあわせてひとつ検討をしてもらいたい。双方にこれは申し上げたいと思いますので、ひとつ御答弁をお願いを申し上げます。
  275. 木部佳昭

    ○木部国務大臣 住宅金融公庫といたしましては、良質な木造住宅を建設するために融資制度の改善を図るための努力はいたしております。したがって、昭和六十年度も一律十万円の融資のかさ上げをいたしました。特に、木造地域の非常に多い内地域なんかは一律三十万円に融資制度を上げるというようなことを今お願いをいたしておるわけでございます。  償還期間の問題でございますが、これは財産の保全上の問題とか、それから今御指摘になりました耐用年数の問題とか、そういうことを勘案して二十五年ということに決めさせていただいておるわけであります。
  276. 竹下登

    竹下国務大臣 このいわゆる減価償却制度の目的というのは、これは期間損益を適正に計算するために固定資産の取得価格をその使用期間に応じて費用配分するわけでございます。したがって、法定耐用年数は資産の物理的寿命に経済的陳腐化というのが加味されまして客観的に定められるというので、いわゆる政策的観点から見直すということは税制上は適当でない。したがいまして、今のところ二十四、二十五でほぼ均衡はとれておりますが、いわゆる税制の上というよりも、これはやはり住宅金融公庫自身の住宅政策という点から本来は決められるべきものであろうと思います。耐用年数といわゆる政策税制としての住宅金融公庫の決め方とは必ずしも整合性はとれるべきものではむしろないじゃないか、私はこんな感じでございます。
  277. 坂口力

    坂口委員 建設大臣、今大蔵大臣の方から必ずしもパラレルにいかなくてもいいというお話があったわけでございますが、参議院におきます議論を読ませていただきますと、建設大臣の方からは、税制との絡みでこれはなかなか改善がしにくいという、これは大臣からの答弁じゃございませんけれども、政府委員の方の答弁があるわけでございます。ぜひ今の大蔵大臣の御答弁を踏まえていただいて、決してパラレルにいかなくてもいいということでございますので、ひとつ進めていただきたいと思います。  それから文部省の方にもお願いをしたいわけですが、文部省の方の学校建築等に対します補助金を見ましても、木造の場合には平米当たり七、八万、それから鉄骨の場合には十万あるいは鉄筋の場合には十二万、若干違いがあるかもわかりませんが、こういうふうな格差があるわけでございます。これも確かに木造の場合には火災等の問題もあるわけでありまして、そうした意味で戦後いろいろ問題になった時点もございますが、現在におきましてはいろいろな研究もされているわけでございます。山の中の本当に小さな中学校におきましても木造を建てたいと思いましても木造で建てられない、鉄筋でやらなければならないというようなことがあるわけであります。山林のど真ん中で木造が建てられないとはどういうわけか、こういう悩みもあるわけでございます。この辺もひとつ大いに改革をしていただきたいと思いますが、どうでしょうか。
  278. 松永光

    ○松永国務大臣 きのうも申し上げましたように、木というもの、あるいは木造の校舎あるいは学校の建物の中の木の廊下、木の壁、木の天井、こういったものがあるということが学校の中の雰囲気を非常に和らげる。同時にまた子供の健康にも非常によろしい。専門家の話によりますと、木には湿気の自動調節作用があって、六寸角の柱は、雨季には一升の水を含み、乾季にはそれが半分になる。そしてまた、はだしで板の廊下を走り回ることが非常に足を刺激をして、子供の足腰を強くすることに非常に大きないい影響を及ぼしておるということもありますので、木造建物、鉄筋建物であっても廊下、壁等は木造にするということは教育上望ましいことである、そういう考え方で私どもは臨んでおるわけでありますが、先ほどおっしゃった、山の中でも鉄筋建物が学校等あるじゃないかという話でございますけれども、二千平米以上は耐火構造でなければならぬというようなことがあって、そういう面も影響しているんじゃなかろうかと思います。  ただ、私どもとしては、右申し上げましたように木造校舎、あるいは鉄筋、鉄骨等の校舎であっても内装工事等はできる限り木造にすることが望ましい。木の廊下や木の壁を進めていくということを考えまして、内装について木を使った場合、それから木造建築物等については補助の場合に一〇%を限度とする加算をするということで、木造校舎あるいは内装に木を使うことを奨励しておるというか、そういうことをやっておるわけでありますけれども、これからなお一層そういう面には気をつけて進めてまいりたい、こういうふうに考えているわけであります。
  279. 坂口力

    坂口委員 非常に詳しく答えていただきましたが、その中で、二千平米のその問題はもうこれはなくなったというふうにお聞きをしましたけれども、どうですか、まだありますか。この二千平米以上のものは木造ではできないという……。
  280. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 お答えいたします。  現行の建築基準法上の規制といたしまして防火地域、準防火地域の場合には学校建築について木造というのはほとんど難しいという状況でございますが、その他の地域につきましては二千平米以下の、そしてまた三階建て以上はだめでございますが、二階建て以下ということであれば現行制度上これを木造でつくることは可能でございます。  なお、文部省といたしましては、この建築基準法の法令に違反しない限り、その木造か鉄筋かということの判断につきましては各設置者である市町村の判断に任せておりまして、その要望によって木造がいいということであればそれの補助をする、こういう対応で来ておるところでございます。
  281. 坂口力

    坂口委員 じゃ最後に、農林水産大臣にひとつお聞きをしておきたいと思いますが、確かに燃えやすいというそういう欠点もあるわけでございますけれども、しかし、材木も柱におきましてはそれほど燃えやすさということもないということもございますし、そうした意味でのPRも農林水産省としても不足をしているんではないだろうかというふうに思います。  また農林省そのものも、例えば林業の構造改善事業などがございますが、この林業の構造改善事業における建物におきましても、木造のものをつくっていないというような例もあるやに聞いておるわけでありまして、ひとつもう少し農林水産省が積極的に取り組んでもらう必要があるのではないかということを要望しておきたいと思います。この御意見を伺いたいと思います。
  282. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 坂口先生にお答えいたします。いろいろ御高配、大変ありがとうございます。  今の御質問は二つの点に尽きると思いますが、その一つは、我が省におきます。途拡大のための試験研究開発の状況はどうかという問題、それからもう一つは、我が省におきます補助事業等における木材の積極利用のための指導方針いかん、この二つだと思いますので、簡単にお答えしたいと思います。  試験研究開発の状況でございますが、木材の需要拡大、高度利用を図るためには、加工利用技術及び新たな用途の開発を促進することが大切であると思っております。このため、国公立の林業試験研究機関あるいは財団法人の日本住宅木材技術センター等の民間関係団体等におきまして研究開発を鋭意進めております。具体的に言いますと、加工利用技術の面では、単板積層材、LVLというものの開発をやっております。  また新たな用途開発の面では、いわゆる飼料に木材を食べさせる。あのポップコーンみたいに爆発して、大体二割ぐらい入れると非常にいいということで、飼料に粉状のものを入れるとかあるいはエネルギーの中に入れる。こんなことを含めて、今研究しております。昭和六十年度から特に間伐材等の高度利用を図るための新製品、新技術の開発をやっている状況でございます。  それから例の我が省におきます補助事業における木材の積極的な利用でございますが、これは先ほど先生から御指摘がありましたようなことでございまして、国産材を中心として木材需要の拡大を図っていくことは、我が国の林産業の振興のみならず、山村地域の発展のために非常に大切だと思っています。こんなことで、補助事業におきましても特に森林業構造改善事業等におきましては、昭和五十八年度におきましては研修、集会等の施設のうち八割、約九十棟を木造としており、逐年着実に成果を上げていると考えております。  また実は、先ほど文部省等から答弁ございましたが、関係省庁に対しても木材の利用促進について積極的なお願いを現在し、その理解を得ていろいろ御尽力を願っている状況でございます。  またさらに、民間の林業、林産業関係団体による需要拡大のための組織や運動を支援し、一体となって成果を上げるべく努力している状態でございます。
  283. 坂口力

    坂口委員 最後に、総理大臣に質問をさせていただきまして、私の質問を終わりたいと思いますが、いかに緑豊かな日本を築こうといたしましても、山間における生活が十分に成り立たなければこれは不可能ではないかと思います。現在山村において生活をしておみえになる皆さん方の間には、どうしても山で生計を立てることはでき得ないという状態に立ち至っております。間伐をいたしましても、それは売れない。そしてまた、山の手入れ等をするためには大変多くの費用がかかり、そしてまたその人手すら最近ではなくなってきている。こういう状況の中で、育林という問題は非常に大きな行き詰まりを見せているわけでございます。そのすべてではございませんが、その一端は非常に日本製の木材が使われなくなったということにも原因をしているわけでございまして、これは、ただ緑豊かな国というきれいな言葉を言うだけではなくて、国全体としてこの材木をもう少し積極的に取り上げていくように、そうした総合的な政策が必要ではないかということを痛切に感じる一人でございます。そうした意味で総理大臣の決意をひとつお聞きをして質問を終わりたいと思います。
  284. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 施政方針演説にも述べましたように、林政を充実させるということは非常に重要な、喫緊の要務であると思います。これは日本の国土保全のためにも、あるいは緑や環境整備のためにも、水資源確保のためにも必要でございます。今までいろいろ政策上の欠陥や社会経済上の変化がございまして、それに対応できないという要素もあって今のような状態に立ち至っておると思いますが、速やかに政策を充実せしめまして御期待にこたえるようにいたしたいと思います。
  285. 坂口力

    坂口委員 では、これで終わります。ありがとうございました。
  286. 大西正男

    ○大西委員長代理 この際、草川昭三君から関連質疑の申し出があります。坂口君の持ち時間の範囲内でこれを許します。草川昭三君。
  287. 草川昭三

    草川委員 公明党・国民会議草川昭三でございます。  まず最初に、外務大臣に中東問題についての見解を少しお伺いをしたい、こう思います。  実は私、最初にイラン・イラク紛争の問題を取り上げたいわけでございますが、私自身もイラクあるいはイラン、あるいはイランの場合はIJPCまで現地を訪問した経験がございまして非常に、それなりの関心を持っているわけでございますが、既にこの紛争は五年四カ月の長きにわたっておるわけでありますし、非常に長期化をしております。しかし、言うまでもございませんけれども、日本といたしましては原油の輸入量の三分の二をこのホルムズ海峡から輸入をしておるわけでございますから、イ・イ戦争がもし激化をし、湾岸地域における安全航行が脅かされるような状況が生まれますと日本の経済にとっては大変なことになるということは言うまでもございません。そういう意味では、一昨年の八月に安倍大臣がイラン、イラク両紛争当事国を訪問されたこと、あるいは両国の首脳といろいろな意味での懇談をされて拡大防止を訴えられたということは、私は日本にとってもこれは非常にすぐれた歴史的な足跡を残されておると思うわけですね。同時にまた外務省の局長もそれなりの、機会あるごとの訪問あるいはまた両国からも我が国へ首脳が訪れておみえになるわけでございますが、これは、私は野党ではございますけれども率直に評価をしてもいいことだと思うのです。私はぜひそういう努力を今後とも安倍外務大臣に続けていただきたいと思いますし、同時に、ひとつその後の見解を賜れれば幸いだと思います。  あわせて、ことしの一月、これも新聞等によりますと大変御苦労なすって三宅中近東アフリカ局長がイランを訪れられました。実は本音のことを本当はお伺いをしたいわけでございますが、なかなか難しい両国であることは私も十分承知をいたしております。だけれども、イ・イ紛争についていかなる姿勢を示されたのか、差し支えのない範囲でひとつお答えを願いたい。  以上です。
  288. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今、草川さんから我が国のイラン、イラク外交について御評価をいただきまして、ありがとうございました。  我が国としましても、世界の平和と安全に日本外交は寄与していかなければならぬ、こういう立場から、特にイラン・イラク戦争は五年余続いておりますし、あそこの戦争が拡大をするということになれば世界は危なくなってくるし、同時にまた、日本はホルムズ海峡を通じて六割の石油を輸入しておる。さらにまたイランとイラク両国とも日本は非常に友好的な関係にある。こういう立場から日本がそうしたイラク・イランの戦争の終結とまではいかなくても、平和的環境をつくるために何らか外交としてできるならやらなければならない、こういう決意のもとにイラン、イラク両国に対しまして積極的に取り組んでまいったわけでございます。  お話しのように私も訪問いたしたわけでございます。率直な話し合いを今日まで続けておりますが、残念ながらなかなかイラン・イラク戦争は、依然として一進一退といいますか、最近ではむしろ激化するという状況すらあることを大変残念に思っておるわけであります。その間に日本からも、いろいろな面でイラン、イラク両国に対しまして働きかけをいたしました。イラン、イラクとも日本のそうした努力、平和への強い日本のイニシアチブに対しましては率直に評価をしておることは、私自身も両国の外務大臣と会って強く感じておるわけでございますし、その努力を続けてほしいというのが両国の立場であろう、こういうふうに思っております。しかし、状況としてはなかなか困難が続いておるわけでございます。我々としては、しかしこれでへこたれることなしに、私よく言っておるのですが、執念を持ってこの問題にさらに取り組んでいきたい、必ずや日本のそうした平和外交が実るときが来るのではないか、こういうふうに思っております。特にイラン、イラク両国との間で政治的な外交的な、この一年の間にパイプを大きくしたということは、この問題に取り組んでいく上においては、今後とも大変大きな意味を持ったと私は思っておるわけでございまして、引き続いて努力を傾注してまいりたいと思っております。
  289. 三宅和助

    ○三宅政府委員 私のイラン訪問につきまして御質問ありましたので、そのときの模様を差し支えない範囲内で御説明したいと思います。  まずイランとの関係では、今後の和平環境づくりのためにはやはり二カ国の友好関係を増進するということがベースにはございます。したがいまして、イラン訪問に当たりましては、例えば技術協力の拡大とかあるいは文化交流、スポーツ交流、あるいは日本語、ペルシャ語のそれぞれの交流の問題を中心に話し合ったわけでございますが、その関連におきましてイラン側は従来の立場を繰り返しておりましたが、その間におきましてイラン側には戦争の終結に対する考え方、すなわち三条件については何らの変更も見られなかったわけでございます。また日本側といたしましては、日本側の従来からの立場というものを十分説明してまいったわけでございます。
  290. 草川昭三

    草川委員 まあ三条件の問題等非常に難しい問題があることは十分承知をしておりますが、三宅局長は和製キッシンジャーと言われた過去の高い評価があるわけでございますし、今これは本当に素直な意味で申し上げるわけでございますけれども、ぜひこの中東全体を望む対話を発展させていただきたいと思うわけであります。  そこで今外相も、パイプを大きくしたというようなことをおっしゃっておられますけれども、これはイ・イだけではなくてぜひ湾岸諸国、特に中近東諸国を訪問されることが次のステップではないか。特に従来は経済関係にとどまっておったわけでございますけれども、ひとつ政治的な対話の道を、例えばサウジだとかアルジェだとかシリア、こういったような周辺諸国の国々ともいま一歩深めるために、ぜひ外相は次のステップを踏み出すべきではないだろうか。中近東諸国の訪問を実現されることが大切ではないだろうか、こう思うのでございますが、その点についての見解を賜りたい、私はこう思います。
  291. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 国会の会期の都合もございますが、お許しを得られるならば、何としても私も、今お話しのような、やはりシリアであるとかアルジェリアあるいはまたサウジアラビアといったような国々は、イラン・イラク戦争あるいはまた中東和平との関係においても重要な国であります。また日本の平和努力というものに対して非常にそれらの諸国も評価をいたしておりまして、先般、三宅局長が訪問しました際も、シリアあるいはまたアルジェリア、サウジアラビア等の国の外務大臣みずからが会見をいたしております。これはかってそういうことは余りないわけで、いかに日本の外交の幅が広がったといいますか、中東和平、イラン・イラク和平に対しての日本の努力というものが、また日本の持っておる情報、そういうものがこれらの国々にとって非常に重く受けとめられるようになったかという証拠ではないかと思います。  それだけに大きな期待もあるわけですし、外交というのはやはり一朝一夕に成るものじゃありませんで、継続の中で成果が生まれてくるわけでございますから、私もぜひとも近くこれらの諸国を訪問をして、率直な話し合いをして、その中でこれらの諸国の、イラン・イラクあるいは中東の和平に何らかの手がかりといいますか、そういうものがつかめれば大変ありがたいと思っています。何としても行きたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  292. 草川昭三

    草川委員 ぜひ国益優先という立場から、外相の今おっしゃられたような努力をお願いをしたいわけであります。  第三番目の問題ですけれども、実は世論というのは熱しやすく冷めやすいというような動きもあるんじゃないかと思うのでございますけれども、今、中東和平問題ということについては余り深い関心が寄せられていないのではないかと思うのでございますが、私どもも、素人の立場ですけれども、いろいろと情報を聞いてまいりますと、アメリカのレーガン大統領の第二期の政権を目指して、中東の、例えば穏健派と言われるようなサウジのファハド国王だとかエジプトのムバラク大統領の訪米なんかが予定をされておるやに聞いております。さらにまた、パレスチナ民族評議会の開催だとか、アメリカとイラクの外交関係の再開、エジプト、ヨルダン等の国交回復、あるいは、非常に問題がございますがPLO、内部対立等はございますけれども、これもヨルダンとの間に対話が再開をされておる。あるいはレバノンのベイルート等からイスラエルの軍隊が撤退をするというような報道もなされておりますが、一つこれは今重要な動きが出ておるのではないかと思います。  こういうような動行の中から、イギリスだとかフランスあるいはイタリア等EC諸国においても、アラブ諸国の首脳との直接の接触あるいは連絡等があるやに聞いておりまして、中東和平問題について何らかの役割が向こうでは動いておると言われております。  そういう時期だけに、私は、日本の役割というのは非常に、かつて外務省が主張していたような状況というものが今、中東の中に生まれつつある、こう思うわけでございまして、特にPLOとイスラエルとの話し合い等については、言いにくいことでございますけれども、これはかって言っていたわけであります。特に、御存じのとおり、私どもはこの中東諸国に手を汚していないという、世界のどこの国にもない大変な役割があるわけなので、ここらあたりをぜひ進めていただきたいと思うのでございますが、その点はどうでしょうか。
  293. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 おっしゃるように、最近エジプトのムバラク大統領それからサウジのファハド国王等がアメリカを訪問するということを聞いております。これは中東の和平について一つの動きが始まったということではないかと思いますし、またアメリカ自体も、レーガン大統領の再選が確定をいたしまして、その結果として、大統領も選挙中とは違って積極的な姿勢でこの中東和平に打ち込むことができるんじゃないだろうか、客観的にはそういうふうに思っておるわけであります。  ですから、これから中東和平をめぐっての動きがいろいろと出てくると思っておりますし、日本といたしましても、イスラエルとの間にはもちろん外交関係を持っております。あるいはまたPLOに対しても日本の関係は続いておるわけでございますし、周辺の諸国は今申し上げましたように非常に友好関係で、むしろ日本に、今おっしゃいましたように、日本が手が汚れていないという立場で非常に期待感が高まっておるわけですから、これはイスラエルを納得させるといいますか説得させるにはアメリカの力が非常に大きいわけでございますが、また日本は日本なりの中東和平のために役割を果たすことができるのじゃないだろうか、こういうふうに思っております。イスラエルも政権がかわりまして、そしてレバノンからの撤退も徐々に始まっておる。ただ、レバノン自体はまだ依然として内戦状態が続いておるわけでございます。そういう中で、シリアとの問題をどうするか、あるいはまたPLOとの関係をどうするか、こういうことでございますが、今申し上げましたような立場から、アメリカも相当積極的に動くのじゃないか、そういう中で日本もそれなりの平和への役割を果たすことができる、そのためにひとつ努力を傾けなければならない、こういうふうに思います。
  294. 草川昭三

    草川委員 私は、中東の原点はパレスチナ問題にあるという立場から、いろいろと私ごとでもレバノンのベイルートへも二回行ってきた経験があるわけでございまして、生の肌で、あそこの平和以外にはないという、こういう感じでございます。ぜひこの問題については、今おっしゃられたことを国際的に進めていただきたいということをお願いをします。  外務大臣にはこれが最後質問になりますが、実はアフリカの今直面をいたしております大変深刻な干ばつ被害について、我々も同じ立場あるいは同時代の人間として座視しているわけにはまいりません。私もついせんだっての日曜日、これは公明党は全党を挙げて、あるいはまた支持団体の方もアフリカの難民救済の大衆カンパ運動を今やっておりますが、街頭で呼びかけますと、もう子供さんたちが本当に心から協力をしていただき、私どもも本当に感激をいたしておるわけであります。  外務省も「アフリカヘ毛布をおくる会」というのを展開されまして、これも新聞等では大変大きな成果を上げておるやに聞いております。これは国連の児童基金、ユニセフでございますか、この呼びかけもあって、これも安倍さんがこのリーダーになられて大変評価をするわけでございますけれども、これは本当に国民の皆さんが、日本の外務省というのですか、呼びかけというのですか、外交的な問題にこれほど密着した運動はないと思っておりますけれども、残念ながら、まあ一部の報道ではございますけれども、せっかく皆さんから寄せられたところの救援のカンパだとか毛布等がきちんと現地に着かないのではないかという報道もあるわけでありまして、私どももそういうことがないようにということを呼びかけながら街頭カンパをやっておるような次第でございます。その点は間違いがないとは思いますけれども、ひとつ国民の目の前で、その報道が違っておるなら違っておるとか、誤解を解くなら解く、こういうことをしていただきたい、こう思います。
  295. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 アフリカの飢饉といいますかアフリカの飢餓は、おっしゃるように極めて深刻であります。大体一億五千万人ぐらいが食糧不足といいますか栄養失調、そういう中で三千数百万人が飢餓状況にあるということで、私自身もエチオピアを訪れまして、その実態に触れまして、非常に慄然といたしたわけでございます。  このアフリカを救うために各国とも立ち上がっております。日本も先頭に立ちまして、政府自体といたしましても、昨年は一億五千万ドル以上の援助を行ったわけでございますが、政府だけでなくて今民間におきましても、まさにお話のように、燎原の火のごとくアフリカを救おうという運動が展開をされておりまして、外務省の外郭団体アフリカ協会が中心に行っております「アフリカヘ毛布をおくる会」も、これは各党の御支援等も得ましたし、各団体あるいはまた国民一人一人のとうとい温かい協力を得まして、初めは四、五十万枚集まればいいんじゃないかというふうな状況でありましたけれども、今は百万枚を優に突破するという状況になりまして、既にその大半をアフリカに送っておるわけでございます。  その中で、今おっしゃいますように、そうした毛布とかあるいは食糧、さらにとうとい募金等が確実に被災難民のところへ届くかどうかという点について、いろいろと報道もなされておりますが、この点につきましては、例えば毛布等につきましては、日本では最近は大変ボランティア運動等が活発になりまして、そのボランティアの諸君が毛布を送るに当たりまして、みんなついていってくれました。そして現地にまでそのボランティアの諸君が一緒に毛布とともに行って、難民の皆さんのところへ毛布を着実に届けるということを見届けていただいておるわけであります。最近もその写真を送ってきましたけれども、日本の民間のこの集めた毛布をボランティアの人たちが見ている中で渡したのですが、そのボランティアの人に対して難民の人が足にキスをするというふうな写真まで送ってきまして、大変感動したわけでございます。いろいろと届かないのじゃないかという議論も、あるいは報道等もありましたけれども、各国政府ともその点は相手国の政府やあるいはまた団体とも十分連絡をとり、そして日本は特にその点で意を用いまして、今のようなことで最後まで見届けるということを徹底しておりますから、そのようなことはあり得ない、完全に、特に日本国民の善意は難民の皆さんのところへ確実に届いておるということを、この席をかりましてはっきりと申し上げさせていただく次第であります。
  296. 草川昭三

    草川委員 わかりました。  では、二番目に移ります。総理、実はSDI構想ということについて、本会議でもいろいろと私どもの竹入委員長質問をされ、総理もそれなりに理解をするということで、理解をするということがいいかどうかという問題で随分議論になっておるわけでございますが、もしアメリカから日本にこのSDI構想について技術協力等を求められた場合の我が国の対応はどうか、このことについての議論が出ておりませんので、まず総理に見解を承ります。
  297. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 SDIは二十一世紀に至る息の長い長期的な研究計画でございまして、私はレーガン大統領にも申し上げましたが、研究については理解を示す、しかし、これが将来どういう方向にどういう内容で発展していくかわからないから、情報をぜひ与えてもらいたいし、協議してもらいたい、先方は承知したところでございます。そういうような状況にありまして、この研究がまだ長期的にかかるものであり、将来先方がどういうような協力を求めてくるかわからぬところでございます。先方の要求がどういうふうなもの、要請がどういうようなものが出てくるかということは、出てきた場合に、今までの我が国の諸般の政策と照らし合わせてみて合理的な判断をいたしたいと思っております。
  298. 草川昭三

    草川委員 合理的な判断をするということは含みが残るわけですよね。私どもが今非常に心配をいたしますのは、きょう私は任務ではございませんので、そのことのいいとか悪いとかという議論はいたしませんけれども、技術協力というようなことになりますと、紙一重の問題が随分出てまいりまして、私どもは、やはり宇宙開発については、技術協力を含めてきちっとした国会での議決というスタンスで対応をしていただきたいということを申し上げたいわけでございます。  実は、スペースシャトルというのは平和目的で開発をされたわけでございますが、最近では軍事目的に、その利用が軍事利用が本格化をしております。つい最近打ち上げたのは明らかに軍事目的で打ち上げたということが宣伝をされております。宇宙軍拡に拍車をかけるのではないかという心配がある。そういう立場から、私はこれからの二、三の質問をしたいわけでございます。  実は、シャトルの搭乗に対して、日本人にも搭乗科学技術者の募集というのがなされておるわけです。略称PSというものであります。これは宇宙開発事業団が募集をしたわけでございまして、現在十二名まで絞られておりますが、応募者総数は五百二十三名、その中に公務員が九十一名お見えになります。公務員のこの九十一名の中に防衛庁職員、いわゆる自衛隊の隊員がお見えになるわけでございますけれども、それは事実かどうかだけ、まず防衛庁にお伺いします。
  299. 友藤一隆

    友藤政府委員 お答えいたします。  隊員の中で何名かの者が応募をいたしております。
  300. 草川昭三

    草川委員 科学技術庁にお伺いをしますけれども、その何名かの内容は明らかにできますか。
  301. 竹内黎一

    ○竹内国務大臣 お答え申し上げます。  宇宙開発事業団の応募五百三十三名の中に自衛隊関係者は十二名あったというぐあいに聞いておりますが、その内訳は、自衛官が八名、教官、技官が四名と承知しております。
  302. 草川昭三

    草川委員 それだけの方がとにかく応募をされて、最終的に当選というのですか、合格をされるかどうかは、これはまた今後の問題でございますけれども、実はこの開発事業団の募集要項には、いわゆる「応募資格」に「所属機関(又はそれに代る機関)の推薦が得られること。」ということになっておるわけであります。  そうすると、どのように推薦をされたのか、防衛庁にお伺いをします。
  303. 友藤一隆

    友藤政府委員 お答えをいたします。  まず、募集要項によりますと、選抜された者は事業団の職員に採用になるということでございまして、隊員の場合、選抜されますと当然のことながら自衛隊を退職する、かような性格のものでございます。  それで、特に申し上げたいのは、事業団の方から私どもに何らの推薦依頼とか協力依頼というようなことはございませんで、隊員が応募いたしましたのは、あくまで個人的な意思で個人的に行ったものであるということでございます。  それで、推薦ということでございますが、宇宙開発事業団という公の機関の行います公開募集ということへの応募ということでございますので、また今申し上げましたように、合格した場合には自衛隊を退職するというものでもございますので、所属部隊の長の判断によりまして、業務に著しい支障がないというような者につきまして、本人の意向を尊重いたしまして応募することを了承したものでございまして、その際、必要とされる推薦書等は本人の求めに応じて上司において作成したというのが経緯でございます。
  304. 草川昭三

    草川委員 まず、防衛庁が認知をしたということの態度がいいかどうかということだと思います。確かに宇宙開発事業団の職員になりますけれども、せっかく宇宙へ行き、宇宙でいろいろな実験、材料実験に参加をされるわけですから、戻られたら、当然のことながら、その経験を生かして、防衛庁に復帰をされるのが当然だと思いますね。そういう立場から推薦をされたと思う。だから、それは個人が行きたいから認めたというのとはちょっと違うと思うのです。だから、その筋だけは明確にしていきませんと、この宇宙科学の問題は平和利用といわゆる軍事目的とが常に裏腹の問題なんです。だから私は、実はくどいようではございますけれども、お伺いをするわけでございますが、これは防衛庁長官、参加をしたことを長官は知っておみえになったわけですか、どうですか、お伺いします。長官からお答えを願います。
  305. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私のところまでは上がってきておりませんので存じておりませんでしたが、今回その件、いろいろなところから聞きましたので、ここ二、三日わかった次第でございます。  ただ、状況といたしましては、せっかく自衛隊で働いてくださっている方ですから、なるたけ隊にとどまって仕事をしていただきたいと私たち思っておりますけれども、当人が将来転職を前提に、採用を募集しております。そういう職業に当人が受けるといった場合に、私たち説得はいたしますけれども、そこは職業選択の自由ということでなかなか規制はできないところがあるのではないかなと思っております。草川委員御指摘の、もとに戻るのではないか、出向ではないかという形ではないようでございます。
  306. 草川昭三

    草川委員 それは教官四名、隊員八名という大量の方々が、しかもこの応募は、一々細かいことを言いませんけれども、非常にすぐれた方が応募されるわけです、条件としては。恐らく隊員としては最高のメンバーが応募されるわけでしょう。でございますから、そういう方々が応募するというような重大事件を少なくとも長官が知らないということ自身に一つ問題があるのではないでしょうか。  それで、私どもはこの国会の中でも昭和四十四年の五月に、いわゆる宇宙の問題等については「平和の目的に限り、学術の進歩、国民生活の向上」ということを言っておるわけでございます。防衛庁としては、この国会決議を知らないわけはないわけですから、優秀な隊員が例えば出たいと言っても、それはまた別に宇宙に対する研究をするなら研究をするという部署が現実に防衛庁の中にあるわけです。私はきょうはそのことについて触れる時間がございませんので、また別の機会があれば問題提起をしたいと思うのですが、このような重大なことを長官が知らないということについて、特に長官としては不満に思われておみえにならないわけですか。
  307. 加藤紘一

    加藤国務大臣 あくまでも個人が職業の転職を考えながら個人的な時間の中で個人的資格で応募したという事例でございまして、私たちのところで、そこの細部のところまでは上がってきてなかったことでございます。  それで、この問題は転職の自由の問題と私は考えますので、国会決議のいわゆる宇宙の平和利用、その問題とはちょっと別個の問題なのではないだろうかな。もちろん平和利用の問題は、この間から御議論いただいておりますように大変重大な問題でございますので、それはそれで別個に慎重に私たちは対処しなければならないと思っております。
  308. 草川昭三

    草川委員 私がなぜこのことを取り上げておるかといいますと、実は私は今から三年前になりますが、昭和五十七年の科学技術委員会で――実は科学技術庁が科学技術振興調整費という予算を持っておるわけであります。これは五十六年に三十三億五千、五十七年で六十億、五十八年で六十一億五千、五十九年で六十三億、六十年で七十一億ですね、今度の新しい予算で。科学技術振興調整費に対しまして、防衛庁がミサイルなどの姿勢制御に欠かせないところの光ファイバーのジャイロスコープの研究をしたいというので、二年続きで科学技術庁にこの振興調整費を欲しいという提案をしてきたわけです。私は、それは筋が通らないよ、それは違うよという問題を四月二十二日の委員会で提起をいたしまして、そのときに法制局の方から、この科学技術振興調整費というのは国民生活の向上、経済発展のための研究費なので、専ら防衛目的のためにこれを使うということはなじまないという答弁があったわけであります。この答弁があったから防衛庁はあきらめたわけです。ですから、今のいろいろなお話は個人だからいいとおっしゃっておりますけれども、私は行ってきたら防衛庁は再採用すると思うのですよ。またそれでなければ、それは防衛庁の今の考え方から言えば矛盾をするような結果になるわけですから、今、長官そういうことをおっしゃっていますけれども、そうなるに違いない。なるとするならば、私は最初のスタートをけじめをつけるべきだ、こういうことを言っておるわけです。  これは議論になりますから、時間がございませんので終わりますが、竹内長官にひとつ答弁を願いたいわけでございますが、科学技術振興調整費はどんどん予算がふえできます。防衛庁の方から防衛目的のための研究申し込みがあっても、今後ともきちっとした姿勢で、あくまでも平和目的のために科学技術振興調整費というのを使ってもらいたい。防衛庁の御研究をなされるならば、それは防衛庁の予算でやってもらいたい。今一%の議論が出ておりますけれども、下手なことをすると肩がわりになっていく。随分肩がわりになっていく問題が今後出てくるのではないかという心配がありますから、私はこういう指摘をしておるわけです。長官の意見を賜りたいと思います。
  309. 竹内黎一

    ○竹内国務大臣 簡単にお答え申し上げますが、専ら防衛目的のみの科学技術については、防衛庁独自に対応していただきたいと思います。
  310. 草川昭三

    草川委員 じゃ、次へ移ります。ぜひ長官、その姿勢を貫いていただきたい、こう思います。  そこで、第三番目の問題は、実は悪徳商法、これは余りいい表現ではございませんけれども、今ちまたには訪問販売、あるいは何というのでしょうか、インチキとは申し上げませんけれども、非常にさまざまな商法というのがまかり通ってきておるわけでございます。しかもそのやり方というのは、法すれすれというのですか非常にあくどい商法がやられておるわけでございますけれども、まず、きょうはその具体的な事例を申し上げるわけでございます。  その事例を申し上げる前に、これは特に大蔵大臣よく聞いておいていただきたいのですが、現在大蔵省の管轄下にあるところの銀行関係がそもそものスタートになっておるわけです。これは悪徳商法とは申し上げませんが、悪徳商法に利用されておるということをまず申し上げるのですが、実はカードローンというのが最近売り出されまして、これは非常に人気を呼んでおります。これはいわゆる都市銀行です。有名な都市銀行がほとんど手がけておりますが、これはまずいわゆる不動産だとか有価証券を担保にするわけです。担保に入れますと、上限を一千万なら一千万だけいつでも自由に金が借りられるというものです。預金引き出しのカードとは違います。あらかじめ担保を入れて、そしてカードでいつでもローンが組まれるというわけでございます。  例えばここに、これは住友さんの場合ですが、「キャッシュローン一〇〇〇型」というのですね。あるいは東海銀行の場合だと「〈東海〉の財産活用口座」、こういういろいろなパンフレットを出しておるわけですが、そのパンフレットの中に「不動産などが担保 担保となるものは不動産、有価証券、定期預金。ただし、有価証券の場合、」ここから問題なんですが、「当分の間、国債、政府保証債、地方債は担保としてお預りできません。」ということが書いてあるわけです。いいですか。私は実は悪徳商法をやっておる連中に文句を言ってけんかをやっていたら、草川さんよ、あんた、どうのこうの言うけれども、政府は今百三十三兆円の借金だよ、で、国債なんというのはもういずれはぼろきれになるんだよ、それが証拠に公の都市銀行が担保にとってないじゃないかと、こう言うわけです。だから、今から述べるのですが、金を買いなさい、預けなさい、あるいはゴルフの会員権を買って、またそれを預けなさい、いろいろな悪徳商法がそこから出てくる根源が、実はこのカードローンの担保について国債、政府保証債を認めないというところから来ておるわけです。これは大蔵省にお伺いをしますと、銀行界と証券界との意見の調整がつかなくて、いわゆる極度貸しというのですか、公共債を担保とすることについての双方の意見の調整ができなかったためにこうなったのだ、こうおっしゃっておるわけでございますけれども、一体こういう事実を知っておるのかどうか、お伺いしたいと思うのです。
  311. 吉田正輝

    吉田(正)政府委員 その事実について認識を申し上げる前に、ちょっと御説明させていただきたいわけでございますが、これは若干経緯めいたことになるわけでございますけれども、五十八年の四月、一昨年の四月から銀行に対しましても公共債、国債、地方債、政保債の窓販が認められることになりました。そのときに、この公共債を買う人たちについて、それを担保として貸し付けができるかどうかということでございますけれども、銀行は公共債を担保にして貸し付けができるわけでございます。そこで五十八年の六月に証券界につきましても、公共債を担保として資金を貸し付ける、買った人に資金を貸し付けるということは五十八年六月から両業界がやっておるわけでございます。ただ、この極度貸しと申しますのは、その中で、一定の基本条項を満たせば一々確認しないでも公共債を担保にしておけば借り入れもできるし弁済もできるという、公共債担保貸し付けにそういう新しい方式を導入するかどうかという問題でございます。  繰り返すようでございますが、公共債担保貸し付けは両業界やっておるわけでございますけれども、そういう極度貸しの方向については、確かに新しい方式をそこに導入することにつきまして、両業界のあり方、あるいはそういう極度貸しの考え方についての仕切りをどう考えるかということで実は調整がついていないので、当面これを実施していないことは事実でございます。     〔大西委員長代理退席、委員長着席〕
  312. 草川昭三

    草川委員 だから事実、実施されていないということが今証明されたわけですが、我々は経過は経過でいいのです。銀行と証券界がどうけんかをしようと知っちゃいないのです、そんなことは。ところが、この文章に当分の間担保にしないというわけですから、それはいかようにでも悪用されるわけですよ。国民の多くの方々は、百三十三兆円の借金があって大変だということはみんな知っておるわけです。将来インフレになるのかどうかという心配もみんな持っているわけですよ、素朴な意味で。そこヘセールスマンが、れっきとした銀行が当分の間担保として預からないから信用はだめですよ、だからこちらの方へという大変なイントロというのですか、導入口に利用されておるということを大蔵大臣、知っておみえになりますか。多分、大蔵大臣はそういうことを知っておみえにならぬと思うのですけれども、事実は事実ですから、これから私は具体的な例を申し上げますから、だとするならば、これは早急に是正すべきだと思うのですが、その点はどうでしょう。
  313. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる都市銀行がおやりになる制度でございますから、都市銀行は数も少のうございますし、そういう誤解を与えるような、第三者が悪徳商法をやっておるからその記載等についてはひとつ自粛と申しますか、そういう誤解をされないような記載等を考慮してもらいたい、これは指導の中でできると思います。  それからもう一つは、やはり草川委員は知っちゃいないとおっしゃいましたけれども、元来、いわゆる公社債の市場とそれから銀行がそれを窓販をする、しない、要するに両者のいわゆる垣根という問題がありまして、だんだん自由化、国際化の中でその垣根は低くなっておりますが、今のところおっしゃるとおりの、今銀行局長が説明した問題が残っておりますので、これは気持ちの上では、信用の度合いからいえば両方ともやってもいいという基本的考え方があるわけでありますから、その辺の垣根調整につきましては、きょうの御発言等を一つの契機としてさらに私どもとしては進んで調整を図るきっかけにしたい。きょうこういうところで御意見を交えて御批判がありましたのは、大変ありがたいことだと思います。これがひとつ知らす機会になった、私も知らしてもらいましたが、国民に対しても知らす機会になったのじゃないかな、こういう感じがいたしております。
  314. 草川昭三

    草川委員 ぜひ関係業界の方々もおみえになり、それぞれの歴史もあり、権益もあるわけでありますから、その調整を急いでいただいて、悪用されないようにしていただきたいと思うわけであります。  同じく類似商号というのがあるわけでございますが、実は名前を最近変えてきたのもあるのでございますけれども、例えばここに大阪債券という債券会社があるのですが、債券だと思うでしょう。しかも「大阪債券のビッグ」と書いてあるのです。ビッグというのは、これもれっきとした信託銀行が商品として売り出しておるわけですが、大阪債券という言い方で見てまいりますと、株屋さんが何かビッグというような品物を売っておるやに思うわけですが、これは実は金を買わせるわけです。ところが、その金の現物を置かなくて、一年間一割で私が預かりますよという預かり賃だけを置いて、例えば百万円ならば十万円だけ置いて持っていくというそういう商法なんですが、ビッグという名前を使っておりますと、ちょっと普通の銀行のように思ってしまうわけですね、庶民は。  しかももう一つ、三和信託というのがあるんです。三和信託といえば、これはやっぱり三和銀行関係の企業ではないかと思う、れっきとした信託とこう書いてあるわけですから。しかも三和信託すくすく契約証書というのがあるわけです。これも同じように金を使うわけです。いかがなものかと思うわけでございますが、現物ですが、これをちょっとテーブルの上に置いておきますと、三和銀行のものと同じように思ってしまうのですよ。三和銀行が信託をやっていて置くのかなと思って、ついついこんな話に乗ってしまうというような例があります。  そこで、これは信託業法違反ではないかというので、法務省の方も東京地裁に異例の審査通知を出しておみえになるようでございますけれども、こういうものの登記というのは抹消できないのかどうか、これをちょっと法務省にお伺いしたいと思います。
  315. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 ただいまお話がございましたような商号は、信託業法に反する不正使用の商号でございますが、職権で登記官がこれを抹消するということは商業登記法上認められておりません。しかしながら、そのような商号を使いますということは、他人の営業と紛らわしい名前を使うという面がございますので、商法の二十一条とかあるいは不正競争防止法の一条一項、二項とかという規定に当たる可能性が十分にあろうかと思いますので、そういう商号を使われたことによって損害を受けているものが裁判所に請求いたしますと、その商号の差しとめが認められる余地が十分にあろうかと思います。そのような裁判所の判決が出ますと、それによって登記簿上の商号は抹消するということができようかと思います。
  316. 草川昭三

    草川委員 ですから、これは大蔵大臣なり銀行局にお願いを申し上げますけれども、信託業界は信託業界で、紛らわしいことはやめなさいという広告は出しておるのですよ。ところがそんなものはとても、目に入る人はひっかからないわけですよ、目に入らない方々が現実に全国でたくさん被害者になってきておるわけであります。それで現在、悪徳商法対策委員会なんというものも東京にもございますし、大阪にも弁護士の方々がそういう組織をつくっておみえになりますが、東京の場合でも一年間で百九十六人でございますか、しかも三三%は六十五歳以上のお年寄り、ひとり暮らしの方々が被害者になっておるわけであります。ですから私は、大蔵省が類似の迷惑を受ける当該銀行を指導して、そして今のような手法をもって抹消するような、まあ行政指導と言えば大げさでございますけれども、サゼスチョンをぜひしていただきたいと思うのですが、この類似商号について一番迷惑を受けるのは大蔵省であると思うのです。監督官庁だと思うのです。その点、どうでしょう。
  317. 竹下登

    竹下国務大臣 三和信託にいたしましても、あるいは大阪債券、幸福相互銀行というのがありますから今度は幸福相互債券とか、新日本証券がありますから新日本債券とか、確かに紛らわしいものがございます。それが証券会社であると誤認されるおそれのある文字に、私は証取法でも該当するではないかという感じを持っております。また、信託につきましては、これは古い古い片仮名の法律でございますので、仮に違反しても一万円以下の過料、こういうようなことでございますので、それら今やられたような議論、きょうお話しになりましたそういう意見を、むしろこのような意見があったということを、だまされる人はとかく法的なことなどの見えない人でございますから、最も平たくこの国権の機関で論ぜられたこと等をPRするとか、行政指導のあるいは範疇に入っても結構だと思うのですが、それはやらせていただきたいものだと思います。
  318. 草川昭三

    草川委員 その次に、現物まがい商法ということで今、私は簡単に金の話をしましたが、どういうやり方で来るかということを特に偉い方々は、閣僚の方々は聞いておっていただきたいと思うのです。これは昭和五十六年当時から、四、五年前から始まったのでございますが、大体全国的にひとり暮らしの老人だとか、それからぼけと言うと言葉は悪いのでございますけれども、そういう非常に条件の悪い方々に集中的に被害が出ておるわけでございます。女性のテレホンガールという方々が時給八百円、今千円ぐらいになっておるのですが、大体朝十時から三時ぐらいの間に、パートの奥さんを集めまして、ずっと電話で勧誘をするわけです。その勧誘が、今申し上げたように、お国は百三十三兆円の借金ですよ、大変目減りをしますよ、あるいは年金を掛けていても年金は将来不安ですよ、今具体的に坂口先輩の方からいろんな御提起がありましたが、そういうことを非常にうまく言うわけですね。金を持っておるならば安心ですよ、預金をして財投資金がどうのこうのという高度な理論は言いませんけれども、とにかくわかりやすいことを言っていくわけです。  それで少し関心を示しますとセールスマンが来る。これは非常に強引なんです。セールスマンのマニュアルがありますけれども、まず恥ずかしいなんというのは全部捨てて、とにかく五時間か六時間粘って契約を取ってこい、こんなようなことで行って、お年寄りですからついついもうと言って話をつけますと、実は金をあなたに持ってもらっても、泥棒に遭うか火災に遭うかあれだから私に預けなさいよ、だったら一年なら一割、まずあなたに預かり賃を上げますよ、五年なら一二%の預かり賃を毎年渡しますよ、こういうわけで、結局どういうことになるかというと、金を買ったのか買っておらぬのかわからないのですが、純金ファミリー契約証券なんといって、あたかも本当の証券のようなものを置いていくわけです。それで、これを一回切りますと、この場合は一グラムに対して千八百円という契約をされたわけでございますが、一年で三十六万円ずつ渡すとか、あるいは三万六千円渡すとか、これは紙切れだけを置いていくわけです。結局、売買契約書と賃貸契約書だけが手元に残るわけですね。一〇〇とすれば、一〇〇渡して一〇だけ手元に残る、こういう感じになるわけです。  問題点は、本人にしてみれば、金の地金の現物を購入したかったのですけれども、結局賃貸契約だけの紙切れしか残らない。紙切れ商法になるわけです。この紙切れには担保だとか保証というのは一切ないわけです。それから会社は、この預かったお金の運用方法だとか運用実績についてはつまびらかにしないわけです。これは全国の弁護士も随分合騒いでまいりまして、各地でいろんな訴訟も起きておるわけでございますが、とにかくもし一斉にみんなが金地金の返済を求めた場合は、それに準ずる地金が用意をされていないことも事実なんです。しかも一年たったら解約に応じてこない、こういうわけでございますし、満期になりますと、何時間も粘って強引に契約を更新させるような努力をする。これの今一番代表的な企業が、実は名前を挙げることがいいかどうかあれでございますが、もう既に全国的に、私、昨年の予算分科会でも取り上げておりますし、物価問題特別委員会では名前がもう既に出ておりますから申し上げますけれども、一番大きいのは豊田商事であります。  この豊田商事は実は銀河計画という会社を上部に持っておりまして、関連企業六十四社あります。その上にさらに白道という個人会社があるわけでございまして、豊田商事、これが金の預け入れ、そして今度は、どうもこの金の預け入れについては問題があるやに考えたのでしょう、鹿島商事というのを昨年九月に設立をいたしました、八月ですか。これはゴルフの会員権をおじいちゃん、おばあちゃんに売って歩く、これはまた後で説明します。あるいは同様系列ではベルギーダイヤモンド等たくさんの系列があるわけでございますが、一体金というのは、では、そんなに今価値のあるものかどうか、これからまず少し解明をしていきたいと思うのでございますが、我が国の金の値段というのは、五十五年一月には一グラム当たり六千四百七十円であります。これは通産省の資料でございますけれども、これがことしの一月には二千五百三十三円に下がっておるわけです。到底金を預かっただけで一割の運用はできませんね、五年預かったって一割二分の運用はできませんね。こういう業界というものが、しかもどういうように運用しておるかわかりませんけれども、一体成り立つものかどうか、これはひとつ警察庁に聞いてみたいと思うのですが、どうでしょう。
  319. 中山好雄

    ○中山政府委員 お尋ねの件に関しまして、豊田商事問題でございますが、これまでも関心を持って調査しているところでございますが、今後とも調査していく所存でございます。  なお、私ども警察といたしましては、専門知識も持たない庶民の弱みにつけ込んだ商品取引や証券取引をめぐるいわゆる悪徳商法につきまして、重点的に取り締まりを全国の警察に繰り返し指示しているところでございます。この種の業者は、しばしば法すれすれの行為を行い、極めて巧妙に立ち回るため取り締まりも決して容易ではございませんが、警察といたしましては、弱い立場にある消費者を保護するという見地から、各省令を多角的かつ厳正に適用するという方針を今後とも一層強化していく所存でございます。
  320. 草川昭三

    草川委員 私の言いたいのは、こちらでお金を集めて金を買いますよ、あなたが持っていてもだめですから私が預かりますよ、それで一割配当する。ところが実際、金は今申し上げたように半分にも下がっておる、これは通産省おっしゃるとおりですね。どこかで行き詰まるわけですよ。だから、行き詰まる商法ではないだろうかと、私はこう思うのです。その点はどこの省で答えていただくか知りませんが、通産大臣、金の所管をしておるので、金は自由取引になっておりますけれども、これは非常に信頼を失墜すると思うのですが、どのようにお考えですか。
  321. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 草川委員にお答えを申し上げます。  金の現物まがい取引に係るトラブルが多く発生しておる。それからまた、昨年草川委員予算委員会の分科会での御質問その他いろいろ読ませていただきました。通産省としては、金の健全な流通を確保するための日本金地金流通協会による登録店制度を設けたところでございますけれども、今後とも本制度の拡充を図るとともに、一般消費者へのPRを進めていって、金取引をめぐるトラブルを未然に防止するように努力をしたいということで、これは最近の政策でございますが、「悪質海外商品取引業者―気をつけよう!こんな手口」というリーフレットをつくりまして、十万枚印刷して今盛んにPRを始めるところでございます。  例えばこのPRを見ていただきますと、無差別電話による勧誘、絶対もうかりますという甘い言葉には気をつけてくださいとか、あるいは粘り、自宅や職場への訪問では、自宅に上がり込んで長時間粘るとか、職場へ来て大きな声で契約を迫るとか、先ほど事例で挙げられました老人に対しては、取引の話などは一切しないで身の回りの世話とか世間話などをして契約を取りつけるとか、こういういろいろな悪質な手口があるものですから、したがって金、銀、プラチナなどの貴金属、石油などの通産物資については通産省本省、また各地方の地方通産局で、消費者相談室で御相談を受け付けます。また、農林水産関係のことについては農林水産省がおやりになるわけでございますが、こういったPRをしっかりやりまして、できるだけそういう悪徳商法、マルチ商法などにつけ込まれないように一般消費者にPRしてまいる所存でございます。
  322. 草川昭三

    草川委員 問題は、とにかく字の読めない方だとかひとり暮らしの方々に圧倒的な被害が多いということを申し上げるわけです。  ちょっと驚いていただくために、その会社の五十九年十月の確定分の売上高一覧表というのが内部から私どもの方に手に入りましたので、ざっと申し上げます。  豊田商事というのが昨年、五十九年の十月に一体幾ら売り上げをやったか。七十九億一千三百六十七万六千円です、一カ月の間。ベルギーダイヤモンドが三十一億七千七百万。ゴルフ会員権を売るという鹿島商事、鹿島建設の名前を使う、こういうのですが、鹿島商事が一カ月間に七億四千百六十万。七億ですよ、一カ月に。とにかくグループ全体でこの十月に百二十二億九百二十三万八千円という売り上げをやっておるわけです。これは売り上げかどうか。預かっただけなんです。預かっただけだけれども、本来は手数料を売り上げに計上しなきゃいけない。ところがこの会社の一覧表を見ると、売上高百二十二億、一カ月間ですよ。それでノルマを課せられて、ノルマの達成率が五割だとか六〇%だとか、いろいろな表があるわけです。こういうのを見ると、私どもそら恐ろしくなってまいります。  今申し上げたのは十月。十二月の場合は一日だけの表がございますけれども、これはことしの六十年一月十二日に作成した一日分の売り上げは、五億二千九百六十八万六千円です、一日に。だからセールスマンの方々にもバックが入るわけですよ。だから課長クラスは月給百万です。一年間で千三百万、千四百万の収入はざらなんですね。それぞれ内心じくじたる思いで一生懸命仕事をやっておるというのですが、その間にどれだけ私は日本の国の制度というものの信頼が失墜されていくのか、そら恐ろしい思いがあります。  国税の方にもお伺いをいたしますが、一体これだけの金が本当にどこへ流れていくのか、アングラの金が日本の中に一体どの程度あるのか、議論の分かれるところでございますけれども、非常に私は重要だと思うのですが、国税はこういうものに対してどうお考えになっておられるか、答弁を願いたいと思います。
  323. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 お答えいたします。  今先生の御質は、いわゆるアングラマネーということと、それから、そういうものを相手にして国税が一体どんな対応をやっているかという御質問だというふうに考えて答弁をさしていただきますが、ただ、アングラマネーにつきましては、これは一般的にいろいろと定義のしようがございまして、例えば麻薬の売買であるとか売春等の非合法なものをこれはアングラマネー、地下経と言う、そういう定義の仕方もございますが、それからそのほかに、税務当局の追及を免れたもの、それから国民所得の統計上漏れたもの、こういうものをいろいろ定義するものでございまして、これは見方によりまして大変いろいろなものがございまして、私どもとして、これがアングラの規模だということを申し上げるだけのデータは持ち合わせておりません。  それから私どもとしては、課税を免れた資金というものがあるということに対しましては、厳正な税務執行を通しましてこれを何とかなくすように努力をいたしたいということで税務調査をずっとやってきております。税務調査の結果は残念ながら、かなりのものにつきましていろいろと不正があり、所得の申告漏れがあることも事実でございますが、一方、総体として、それほど大きな申告漏れはないということもまた事実でございます。ただ、適正な申告をし、課税の公平を確保するというのは、私ども税務行政の一番の基本でございますので、今後とも適正な調査を通じまして、課税の公平ということには一層力を尽くしてまいりたいというふうに思っております。
  324. 草川昭三

    草川委員 時間がございませんので、あと、まだ十分あるそうですから、その間に聞きます。――では、はしょっていきますが、最後にもう一回、警察庁と法務省。特に法務省でございますが、豊田商事の社長に対する詐欺事件について現在、いろいろな告訴があると思うのでございますが、捜査をしておる事件があるかないか、これをお伺いします。簡単に言ってください。
  325. 筧榮一

    ○筧政府委員 豊田商事の社長に対しましては、金取引などをめぐる詐欺等の事実で、大阪地検に告訴が数件なされております。これにつきまして現在大阪地検で捜査を継続中でございます。
  326. 草川昭三

    草川委員 じゃ厚生大臣、それから総理大臣。  今一番犠牲者になっておるのは、ひとり暮らしのお年寄りです。文章も読めないような方々です。そういう方々が一番犠牲になっておるわけですから、厚生省としては、特に年金なんかに対する非常に強い不信感が前提になってセールスをかけられておるわけですが、厚生大臣としての見解。  そしてまた、総理。今、私が長々としゃべりましたけれども、全体的な、総括的な立場から、どのようなお考えがお伺いをしたい、こう思います。
  327. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 公的年金につきましていたずらに不安をかき立てるような宣伝が行われておるとすれば、大変遺憾なことでございます。従来から厚生省といたしましては、適切な広報活動を行っておったところでありますけれども、これからも特に一層充実を図ってまいりたいと思います。  また、この問題につきましては、ただいま参議院で年金法の改正をお願いいたしておるところでございます。これが早期に成立さしていただくことが、また一段と不安に対する解消措置になると思いますので、よろしくお願いいたします。
  328. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 高齢化時代を控えまして、年金システムにいささかも不信感や疑いを起こすことのないように、今後とも大いに努力してまいりたいと思います。
  329. 草川昭三

    草川委員 これで終わりですから、最後に一言だけ、要望だけ申し上げて終わりたいと思います。  外国人の教員のことですが、午前中川俣先生からいろいろとお話がありました。ところが実際、文部省の答弁はちょっと違っておるのですがね。各都道府県の教育委員会では、外国人の教員採用については国籍条項を外してきているのです。特に応募なされる方々は、日本の中で長い間過去の忌まわしい、特に日本と韓国、いろいろな関係がございまして、その古い不幸な歴史の上から各教育委員会は国籍条項を外してきているのです。ようやく外してきたところ、たまたま新聞に出て、文部省の方が公権力でがんときたわけです。だから、またもとへ戻ってしまったわけです。何も知らなくて国籍条項を外しておるわけではないということだけはひとつ承知をしていただいて、きょう午前中、盛んに公権力ということをおっしゃいましたが、きのうの稲葉先生の質問に対する中曽根総理の、教育に対する対応というのはもっと柔軟でなければいけない、こういうことを非常に強くおっしゃっておられるわけですから、その精神でいくならば私は、教員採用の問題はもう一度考え直すべきではないだろうか、これだけ要望して終わりたい、こういうように思います。どうもありがとうございました。
  330. 天野光晴

    天野委員長 これにて坂口君、草川君の質疑は終了いたしました。  次に、中野寛成君。
  331. 中野寛成

    中野(寛)委員 私は、教育問題を中心にしてお尋ねをいたしたいと思います。  最近の総理の演説等々を聞かせていただきますと、何かそこに人間性の復活といいましょうか、私流に評価をする意味での言葉で言いますと、中曽根流ルネッサンス論がよくちりばめられているような感じもいたします。また一方、日本人の心を取り戻すということについての御主張もにじみ出ている感じがいたします。しかしながら、これは聞く人によっては、人間性の復活といいますと、これは逆戻り、復古と解釈する人もおりましょうし、日本人の心を取り戻すといいますと、これはまた悪い意味でのナショナリズムを唱えているのではないか、タカ派的発言ではないか、こういうふうに解釈する人もいるわけであります。しかしながら、いずれにいたしましても、もう一度人間を、そして心を取り戻そうというお訴えは、よく出ていると思いますし、そういう意味でこれから一連の私のお尋ねは教育問題のみにとどまらず、その人間性の復活について、中心にお伺いをいたしたい、こう思うわけであります。  まず最初に、臨教審のことについてお伺いしますが、臨教審の審議はスムーズにスタートしたというふうにお考えでしょうか。現段階における臨教審に対する御感想を総理にお伺いしたいと思います。
  332. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 おかげさまでスムーズにスタートしたと思います。百花繚乱というような、いろいろな方の議論が自由に噴出してきまして、これはやはりみんな御熱心に自己の見解を披瀝して論じ合っておる。そういう意味におきまして、私はいい傾向であると思います。
  333. 中野寛成

    中野(寛)委員 大変活発に論議をされておられますし、私もそれはそれとして評価をいたしたいと思います。  ただ、そのことに関連をいたしまして、もう一つお尋ねをいたしますが、教育基本法との関係がよく論議をされます。総理は臨教審の審議及び答申は教育基本法の精神にのっとりというふうに今日までおっしゃられておると思います。これは臨教審の委員の皆さんはその総理のお気持ち、お言葉を十分確認しておられるのでしょうか。教育基本法の精神にのっとって論議をし、そして答申が出されるのでありましょうか。そのことについてお伺いをしたいわけであります。  とりわけ、教育制度の改革等も論議をされるわけでありますが、その前にやはり教育理念というものが明確にされなければいけないと思います。どのような理念を持つかによって、制度の適合性が決まってくるからであります。教育理念は、教育基本法にもう既に書いてあるからいいじゃないかという方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら教育基本法自体を論ずることは決して逆コースであるとかということではないと思います。それを論せずして間違いであるとか正しいとかというふうに言うことの方が、むしろ間違いではないだろうか、こう思いますし、また同時に基本法では、その前文を読みますと、民主的で文化的な国家の建設をうたい、第一条では、人格の完成を目指す教育と述べているわけであります。しかし、その民主的の意味は、日本では解釈がさまざまであります。この委員会の委員それぞれにこの民主的教育ということの解釈を問うたとすれば、恐らくさまざまな答えが返ってくるでしょう。また人格の完成を目指す、こうなっておりますが、それも何を意味するのかは具体的ではありません。まして教育基本法には国籍がないという批判をする方もいらっしゃいます。  そういう意味で、我々としてはこの教育基本法の解釈、その中身、そして教育基本法の精神にのっとって教育改革を進めるにいたしましても、それは基本理念を守るということであって、手法については、場合によっては教育基本法の改正も必要ということが想定をされているのかどうか、このことについてお伺いをしたいと思います。
  334. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 まず、委員方々は臨教審設置法を読んでおられますから、その趣旨をよく理解した上でやっていただいておると思います。  それから第二に、私はやはり前からこの国会におきましても教育基本法を守ります、そう言っておるのでありまして、そういう考えは一貫しております。ただ臨教審の皆さん方がいかなる御議論をなさるかということは、前から申し上げますように自由であります。皆様の御出身に従っていろいろ議論していただいて、最終的に皆さんの合意を形成する方向に収れんされてきたものを我々は最終的に受け取って、そしてその段階においてよく検討してみたい、そう思っております。
  335. 中野寛成

    中野(寛)委員 その場合に、例えば手法等の中で、または考え方の中で、教育基本法の精神、理念に反しはしないけれども、手法においては逐条的に、部分的に修正が必要だというふうなことがあったとすればどうなさいますか。
  336. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 教育基本法という法律を直すことは今考えておりません。
  337. 中野寛成

    中野(寛)委員 次に、教育の自由化論議が活発に行われております。自由化という言葉のみがひとり歩きしているような感じがいたしております。もちろんその中身につきましては、例えば小中学校の設立認可を緩やかにするとか、通学区域も限定しないで、親や子供の側で選べるようにするとか、いろいろ提唱がされているようであります。去年三月に「世界を考える京都座会」というのが学校教育活性化のための七つの提言をされて、その中から、それが何か一つのきっかけになってこの自由化論争が生まれてきたように思うのでありますが、私もこの提言を読んでおりますと、何か産業人が社会の立場から、または産業界の立場からおつくりになったような印象も持つわけであります。果たして子供の立場に立ってお考えになったのかどうかというふうなことを私なりに疑問に思ったりいたします。  しかしながら、いずれにせよ中身がはっきりしないわけでありますから、私どもとしてはこれを論じようがない、論評のしようがない、こういうのが私の今の実感であります。しかも、そういう状態の中で中身がはっきりしないまま臨教審と文部省が対決しているような報道がなされたり、これは報道もまた自由でありますけれども、しかし、私が聞いている範囲でも、一部やはり感情論が先に立っている向きが実際にあるわけであります。そういうことで教育改革を進めることが果たしてできるのか、むしろもっと冷静に、もっと教育の本質を踏まえた論議というものがなされるべきだ、こう思うのでありますが、このことについてはいかがお考えでしょうか。
  338. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 教育改革は情熱を持って、しかも冷静な判断力で、やり方も冷静におやりになる方がいいと思います。
  339. 中野寛成

    中野(寛)委員 それでは、文部大臣にこのことについてお聞きをいたしたいと思いますが、現在この教育の自由化論議について文部大臣はどうお考えでございましょうか。また文部省はよく教育の多様化、弾力化を主張されるわけでありますけれども、ある意味においてはそれもまた自由化の一つの方法であろう、こういうふうに思います。また私どもも、例えば大学で卒業証書を渡すのではなくて、例えばどの単位を、幾つの単位を取ったかというふうなことによって社会の評価がされるというふうに変えたらどうかというふうな提唱もしているわけでありますけれども、これもある意味では自由化の一つであります。この自由化論議と文部省の教育の多様化、弾力化に関するお考えとの違いはどこにあるのでしょうか、ないのでしょうか、大臣にお伺いします。
  340. 松永光

    ○松永国務大臣 今臨時教育審議会で議論がされておるという自由化論議、中野委員今御指摘のようにその中身がまだまだ定かでありません。また、議論する人で自由化の範囲その他も人によって違うわけでありまして、文部省としては臨時教育審議会における自由濶達な議論を見守っておるという状態でございます。  なお、先般臨時教育審議会の方から文部省に対して、初等中等教育それから大学教育等について説明を求められましたので、初中局長が現在の初等中等教育の制度それから歴史、大学局長がまた高等教育に関する制度とそのいきさつ等について説明をしてまいりましたが、いずれにせよ、文部省の立場は、臨時教育審議会の審議がより深められるように資料を提供したり、あるいは説明を求められれば文部省で承知している限りのことを御説明申し上げて、そして臨時教育審議会の審議がスムーズになされるように御協力申し上げるという立場であります。今先生は臨教審の方と文部省の方で対立があるとか、あるいは感情的なものもあるような御発言がございましたが、そういうことは全くございません。  ただ、先般初中局長が、初等中等教育についての自由化問題でありますが、臨教審の方でおっしゃる自由化の中には、先ほど言ったように内容が具体的でありませんけれども、その中では、例えばだれでも自由に学校が設立できるなどということは、これは教育基本法の精神からいってもできません。あるいは教科書の問題、教育課程の基準を定める問題、こういったものも教育基本法の精神からいってできかねる問題ですよという意見を申し上げてきたわけであります。  以上のようなわけでありまして、文部省の方では、臨教審の側との対立とかそういったものは全くございません。これから臨教審の審議がより実りあるものになるように御協力を申し上げていきたい、こう考えておるわけであります。
  341. 中野寛成

    中野(寛)委員 総理にもう一度お伺いいたしますが、今文部大臣は、最後に二つ三つの事例を挙げて、教育基本法の精神から考えてそれは行うことができない、いわゆる自由化論者が提唱している内容等について文部省の見解をお示しになりました。どちらかといえば文部省が自由化論に反対をして、そして総理は比較的自由化に対して積極的な考え方を持っているというふうによく言われていると思うのでありますが、今の文部大臣見解について総理は変わらないお考えでしょうか。
  342. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 私は変わらないと思います。ただ、自由化といっても中野さんおっしゃるようにまだ中身が出てこないのですね。だから、どれをどう変えるのが自由化なのか、より自由化でないのか、材料も出てこないのに抽象的な段階でああだこうだ言っても余り実りのない話じゃないか。それよりももっと実態をどういうふうに改めるかという論争の方へ進む方が効率的であると思っております。
  343. 中野寛成

    中野(寛)委員 私もそう思います。何か余りにも自由化論が先走って、そしてマスコミ等に取り上げられてわっとなる。その中で、先ほど文部大臣は臨教審と文部省との感情的対立はないとおっしゃいましたが、しかし私の耳には具体的なそういう声は入ってきておる。文部省はけしからぬ、だれそれはけしからぬ、こういう話がしょっちゅう入ってくるわけでありまして、大臣お答えは、そう答えざるを得ないかもしれませんし、お立場は理解いたしますが、しかし現実にはあるんだということを踏まえて、もっと本当に中身のある論議ができるように、総理いみじくもおっしゃいました、そういう方向にぜひとも持っていかれるよう努力をしていただきたい。これは要望をいたしておきます。  さて次に、ことしは国際青年年ということで、私どももある意味では大きな期待をいたしております。この青年論はいろいろあるのでありますが、先日ちょっと新聞を読んでおりましたらおもしろい評価が出てまいりました。昭和一けたを中心とする旧世代は働くことが何より好きなアリ世代、イソップのアリとキリギリスに例えての話だと思いますが、これに対して、新世代は遊ぶことがこの上もなく好きなキリギリス世代だ、その中間にいる団塊の世代、これはちょうど私どもかなと思うのですが、遊びも仕事も器用にこなすアリギリス世代なんだそうであります。そしてこのキリギリス世代の青年を押しなべて表現をすると、こうなるんだそうです。ひょうきんで、あっけらかんとしていて、軽くて、優しい。そういえばテレビを見ていますと、何かいわゆる今のヤングギャルの好きな男性像というのは、確かにこういう言葉が出てくると思います。楽しい人、優しい人、こういう感じで出てまいります。私もついつい考えておりまして、これを読んだときに、なるほど、そういえば中曽根総理が人気があるのも無理ないな、こういう感じもいたしまして、ひょうきんとか軽いとかというのは失礼な表現かもしれませんが、若者から見る総理のイメージは、ある意味ではそういう要素を含んでいると思います。  あわせて申し上げますと、竹下大蔵大臣も安倍外務大臣も、そういう若者にイメージを与える要素を大変持っておられて幸甚の至りだと思いますが、笑わぬ殿下と称せられる河本大臣は、その辺がちょっと損をしておられるのかなと思ったり、しかし、一番ひょうきんで、あっけらかんとしていて、軽くて、優しい典型的な人は山口労働大臣だな、こう思ったりもいたします。しかし、これは決して悪い意味で申し上げているのではないのであります。ついでに、きのう、おとといか、私が聞いた話では、天野委員長をテレビで見ていた若い女性が、あの赤いベストを着た委員長さん、かわいいね、こう言っておりまして、今の若い人たちが見るとそういうふうに見える、こういうことだと思うのであります。しかし私は、それはそれで、そういう若い人たちの表現、感性というものを大事にして、そうして、それをよりよい方向へ伸ばしていくということが大事だと思うのであります。  しかしながら、もう一つ、国際青年年というのですが、何のことだかわからぬというところもあるわけです。そこで、日本では果たして、国際青年年ですから、例えばお金も出してくれるだろう、日本は非常にいい意味でのリーダーシップも発揮してくれるのじゃないかというふうに国際社会でも期待されていると思うのでありますが、これは総務庁長官でございましょうか、お答えいただければと思います。
  344. 後藤田正晴

    後藤国務大臣 御承知のように、ことしは国連の提唱で国際青年年、各国それぞれの国情に合って、国連でお決めになった基本の考え方、これに沿ってことしいっぱいを青年の育成とでもいいますか、そういったような観点で行事が多彩に繰り広げられておるわけでございます。日本は今やはり豊かな社会の中で若い者が育っているわけですね。今御質問の中にあったような、これは一つ若者の特色だろうと思います。ところが、私のような老人、それから中野さんのような壮年の人、程度の差はあるけれども、やはり厳しい子供時代を過ごしてきているわけですから、そういった人たちから見ると、今の若者は一体何だといったような声を盛んに出される。ことしの国際青年年にいろいろなモットー等を決めてやっているのですけれども、一つは、こういう記念の年には、今の若者だって、豊かな中で自分たちが置かれておる立場、どんなものだろうか。例えば貧しい国々だってあるわけでしょう。それからまた、日本の国内だって大人がひんしゅくするような状況もありますけれども、しかし若者は若者なりに、これでいいのだろうか、自分たちはどういう課題を見つけて、そしてそれにみずから積極的に参加をして、そして次代を我々が担わにゃならぬのだからどうすべきであるということを考えている若者は私はたくさんおると思うのですね。それをやはり私どもの年齢層、中野さんのような年齢層は真剣に理解してやらないと、頼りない、だめだと言っただけでは話にならぬ、私はそう思っておるのです。  そこで、政府としては、今の若者が抱えておる課題を若者によく理解をしてもらって、そして何をなすべきか、自分はどういう活動に参加すべきか。そして同時に、今国際化の時代を迎えておるのですから、その日本の現状も外国に知ってもらうし、同時に、発展途上国の状況がどうなんだろうかということについて自分自身も目を開いてもらう、私はそういうような記念の年にしたい。こういうことで、民間団体その他の協力も得ながら何とかこの年を有意義にしたい、こう思っておるわけでございます。  御質問の中の予算になると、今の御質問は、豊かなんだから外国に援助でもしろという御意見だと、それはありませんけれども、それなりに厳しい財政の状況の中ではございますけれども、財政当局の御理解を得て予算に計上をいたしておるわけでございます。
  345. 中野寛成

    中野(寛)委員 長官のお答えはその国際青年年の意義についてお話しになられました。ただ、いつもこういう催し物、記念の年というのは、何かいろいろな催し物をやりまして、既に一月十五日におやりになりましたが、そして各地でそういう記念の行事をやれ、こういうことになりますが、何か行事倒れで、本当に青年のよいところを伸ばすための具体的な目に見えたものというものがなかなか生まれてこないのですね。で、別に外国との関係を無理やりにこじつけようとは思いませんけれども、しかし例えば海外青年協力隊の活躍なんというのはすごいものがあるわけです。そしてまた、諸外国の青年たちと日本の青年が交流をする、また具体的に日本の青年が何をこの社会で、または国際社会で発揮するか、そのことについてのもっと具体的な提案と行動というものがあってもいいのではないか、具体的なプログラム、しかもそれを青年につくらせるというふうなことがもっと積極的になされるべきなのではないか、こういうふうにも思うわけであります。これは本当は総理がこういうのは大変お得意というか興味をお持ちのようなので、むしろ総理に聞きたいのでありますが、それじゃもう一度長官にお伺いをしたいと思います。
  346. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 国際青年年に当たって国際的な面での、これから何が行われるか、何をやろうかということについて申し上げますが、ことしの秋の国連総会では国際青年年を期して青年問題についての集中審議をやるということでありますし、その際、日本も積極的にこの青年問題についての論議に参加をしたいと思いますし、同時にまた国連関係あるいはまた開発途上国のやはり青年に関するいろいろなプロジェクトがあります。そういう国際的なプロジェクトに対してもいろいろと日本も検討して、それに参加できるものは参加する。あるいはまた、ことしの予算で国際青年年の基金、国際青年信託基金ですか、これを今回の予算の中で十万ドル、日本は支出をする予定にいたしておりますし、さらに海外からの青年の招聘計画が、これは中国を初めとしてASEAN関係、アジア関係から積極的な青年の招聘を行う計画を持っておりまして、これは予算措置もついておりますから、これをひとつことしは積極的に進めていきたい、こういうふうに思っております。そういう意味で、対外的には、国連の活動を中心にしまして、行事を中心にしまして、日本もその中に積極的に参加をしてこの国際青年年を盛り上げていきたい。  国内における行事については今総務庁長官から申し上げられたとおりであります。
  347. 後藤田正晴

    後藤国務大臣 国外の関係、今外務大臣がお話ししたとおりでございますが、国内的にも今までも総務庁の所管で東南アジア青年の船とかあるいは青年の船とかいろいろな既定の計画があるのですが、それをことしは一層充実してやってみたい、こういうように考えております。  行事としては、テレビ等の協力を得て一月十五日にオープニングのセレモニーをやったわけですけれども、四月下旬から五月の上旬にかけては全国一斉のキャンペーン活動を開きたい。それから七月の下旬には中央での記念の式典、それから国際青年の村ということで日本の青少年、外国の子供たちというもので交流の場を設ける。あるいはまた十一月の下旬には、各地でそういったことをやった、何といいますか、総括といいますか、そういったことで青年フォーラムというものも催してみたい。ただ、今中野さんおっしゃるようになかなか具体的なあれになると行事倒れになって大変難しいことは、これは御理解願わなければなりませんけれども、それだけではいけませんから、何とか私はことし具体的な成果の上がるような方向に持っていきたいな、かように考えておるわけでございます。
  348. 中野寛成

    中野(寛)委員 私は最近よく学生の皆さんと話をしておって、そしてまた一緒に話をした我々の同じ世代の人といわゆる青年論を話をするときに、どうも男の子の目が死んでいる、寂しそうだ、女の子は何か変な方向に発展しちゃって、何か男の子が取り残されているのではないかというふうな話をよくいたします。結局生きがい喪失の時代ということも言えると思います。青年に目標を与えるということ、それがある意味ではこの年は一番大事だ、そういうふうにも考えます。ぜひともの御努力をお願いをしておきたいと思います。  次に、ユネスコの問題をお伺いいたしますが、ユネスコの現状、大変心配な状態になっております。ムボウ事務局長の個人的な問題やその運営方法、またマスメディア宣言、新世界情報秩序に関する考え方の違い、そういうふうなことからアメリカがまず脱退をし、イギリスや西ドイツもそれに従おう、またシンガポールも別の意味があるようですが、脱退しようかという話が出ている。そういう状態の中で、自由世界ではアメリカの二五%に次いで日本はその費用の一〇%を負担をしているわけでありますから、アメリカが抜けますと日本が一番自由世界の中でユネスコに対する金銭的貢献度が高いわけであります。  そういう状態の中で、ユネスコの果たす本来の役割から考えますと、これ、決しておろそかにしていいものではない、まして逃げ出して物事が解決するものではない。私はアメリカの行為は残念に思いますけれども、しかし、そういうときにこそ日本の果たす役割は極めて大きいのではないか、こうも思うわけでありますが、このことについてユネスコの現状をどう見るのか、日本はどうするのかということについてお尋ねをしたいと思います。
  349. 松永光

    ○松永国務大臣 先生御指摘のように、アメリカが去年の末をもって脱退をし、それから英国及びシンガポールも脱退する旨を通告をしてきておるということでありまして、まことに残念なことであると思います。私どもとしては、この際ユネスコが本来の使命に沿って一層有意義な活動を遂行できるよう、必要な改善あるいは改革を推進していく必要があると考えます。日本ユネスコ国内委員会総会におきましてもこの問題についていろいろ審議をしていただきまして、去る一月二十八日に日本ユネスコ国内委員会の基本的な見解が取りまとめられまして、私の方に申し入れがあったところであります。  そのユネスコ国内委員会の基本的な見解の趣旨でございますが、次のようになっております。ユネスコのこれまでの貢献を評価する一方、この際、ユネスコの改善改革を推進し、ユネスコが本来の使命に沿った活動を着実かつ効果的に遂行し得る体制を整えることが、ユネスコが世界の諸国民の期待にこたえ、かつ、米国が速やかに復帰し、英国やシンガポールが再考し得るようにするためにぜひとも必要であり、このため政府としてもさらに積極的な努力を希望する、こういう趣旨の申し入れを受けたわけでありまして、この趣旨には私も同感でありますので、今後ともユネスコ国内委員会の意見を尊重しながら外務省とも緊密に連絡、協力し、ユネスコの改善改革とその健全な発展に努力をしていきたい、こう考えておるわけであります。
  350. 中野寛成

    中野(寛)委員 政府の方針はわかりました。しかし、具体的にどうするのですか。それだけでは――このユネスコの現状をそれなりに私どももいろいろ読んだり聞いたりしてみますと、随分その体質たるやひどい状態になっておるということも聞きます。こういう状態の中で、単に日本方式と言ってはいけないのかもしれませんけれども、何か物事を決めた、申し入れた、それでおしまいということになったのではどうしようもないわけであります。具体的な行動を起こさなければなりません。現状認識というものがどれだけ深刻であるのか、その具体的な認識を実際に知りたいと思いますし、御答弁いただきたいと思いますし、それにどう対応しようとしているのか、お答えをいただきたいと思います。
  351. 山田中正

    山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘になりましたように、ユネスコの事業の中には、例えば文化財の保護でございますとか、学術交流の振興でございますとか、教育の普及でございますとか、非常に立派な事業がございます。私どもといたしましては、そういうものを守り立てると同時に、また先生も御指摘ございましたように、非常に政治的に問題になるようなプログラム、例えば民族解放団体への支持でございますとか、それから国連の他の機関で行っております事業と重なるようなプログラムも随分ございます。また、非常に抽象的なプログラムもございます。こういうものを現在洗い直しの作業をいたしておりまして、来週から日本も参加いたしております執行委員会で改革の議論が行われるわけでございますが、ユネスコの事業計画の精選、それから優先度を置くようにいたしまして、ユネスコ憲章で規定しておりますような本来のユネスコの姿に戻るよう我が国としてもできるだけの努力をいたしたい、このように思っております。
  352. 中野寛成

    中野(寛)委員 どうしてもここで論議をいたしますと今のようなお答えが返ってくるわけであります。しかし、それはしようがないかもしれません。それはそれで本当に真剣に取り組んでいただきたいと思います。ユネスコが果たしている役割がいかに大きいかということと、もう一つは、その中で日本の国民の税金が膨大に使われているわけですから、中途半端なことにならないようにしていただきたいと思うわけであります。  ちなみに、この報道で、USニューズ・アンド・ワールドリポートによればということで新聞に書かれておりましたが、「ムボウ事務局長は、パリの高級アパート(家賃不要)に住み、年俸十八万ドル(免税)をもらい、リムジン六台を乗りまわし、一年の三分の一は世界を公費旅行している。また、パリのユネスコ本部のトップ二階は、彼の家族のため改装され、終業後も週末も、全館冷暖房される。三千人のユネスコ職員のうち、七分の六はパリに住み、第一線の開発途上国に出て仕事をしている者は七分の一に過ぎない。従って、ユネスコ予算も、四分の三はパリで使われ、現地には四分の一しか届いていない。」こういう報道がされているわけですね。このとおりだとすればまさにけしからぬ話で、何がユネスコだと言いたい気持ちです。このことについて外務大臣。
  353. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 ユネスコの今のムボウ事務局長あるいはその家族がどういう実態なのか私もつまびらかにしませんが、しかし今おっしゃるように、アメリカ等が指摘する中には事務局が非常に乱脈になっておる、それからまたユネスコの決定事項等が相当政治的に行われておる、こういうことでアメリカなんかは非常に怒りまして脱退を宣告したわけであります。引き続いて去年の暮れはイギリス、それからシンガポールというふうになったわけでございますが、日本としては、今お話しのように大事な仕事をしているわけですから、何とかそういう間違いは改善してもらわなければならぬ。  実は、私もムボウ事務局長に会いまして、率直に、やはり日本としても国民の貴重な税金をユネスコの維持発展のために出しているんですから、いろいろと批判されないように十分気をつけてもらわないと日本も脱退せざるを得なくなるようなことになっては困るということをムボウ事務局長に言って反省を求めたわけでございますが、そうした大事な仕事ですから、日本は何とか残りまして今の事態を改善をして、イギリスもまた帰ってくる、アメリカも帰ってくる、こういう方向に持っていきたい。イギリスのハウ外相等ともそういう点について話し合っておりますが、何とか早く改善を、日本が相当積極的にユネスコの中で動いて、日本がトップの支出国であるわけですから責任を持って動いて、そして早く姿勢を正してイギリスその他の国の復帰に持っていかなければならない、こういうふうに思っておりまして、これからその点につきましてひとつ全力を傾ける考えであります。
  354. 中野寛成

    中野(寛)委員 期待をしておきたいと思います。  次にいきます。  最近日本経済が飛躍的に発展をいたしました。海外で教育を受ける子供たちの数もまたどんどん増加をして、昭和五十八年現在、義務教育年齢層で約三万六千人に達している、こう言われておりますし、帰国子女の数も、小学校、中学校、高等学校在学相当数で昭和五十七年一年間で約九千六百人に達している。これはどんどんふえていっているわけであります。  その海外における日本人学校の実態なんですが、結局その現地の正式の学校と同じ扱いをされていない。そしてまた日本も、逆に外国人学校を各種学校と同じ扱いにしているわけですね。こういう問題は大体外交的には相互主義でいきますから、日本の方がそういう扱いをしていれば向こうの日本人学校をちゃんと扱ってくれと言うわけにもいかない。そうすると、その日本人学校を出たってその国の上の学校に行けない、こういうことになってしまう。逆に日本でも同じことが言える、まあ私学の場合は別ですけれども。随分中途半端な状態があるわけであります。もちろん昭和四十二年に学校教育法の一部を改正をして外国人学校制度をつくろうという提案が国会になされた、しかしながら廃案になったという経緯があることは承知をいたしております。しかし、その当時と現在とではこういう問題に対する国民の認識も国会の考え方も随分違ってきているのではないだろうか、こう思うわけであります。そういう意味でぜひとも、外国における日本人学校それから日本における外国人学校、この制度を我々としてはもっと公的なものにしていかなければいけないのではないか、こういうふうに思うわけでありますが、この点についてどうお考えでしょうか。
  355. 松永光

    ○松永国務大臣 海外で活躍しておる日本人の子供の教育のためのいわゆる日本人学校でございますが、その日本人学校をあるいは小学校、中学校と出た者が、高等学校あるいは大学の段階になりますと日本に帰ってきて、そして日本の高等学校、大学に入らざるを得ないという状況。もし父親が引き続き外国で働いている場合には、その外国の高等学校、大学に行けるようになれば、それは非常に意義があることだというふうに思います。しかし、外国にある日本人学校の位置づけ、これは今先生御指摘のとおり、日本で言えば各種学校的な位置づけであるわけでありますが、どういう位置づけをするかということはまさしくその国の主権の問題でありますので、慎重な対応が必要になるわけであります。  しかし、先ほど来申し上げておるような関係で、外国で活躍している子供が進学のために日本に帰ってこなければ上級学校に行けないという状態、これはいろいろ問題がある、できることならば外国の上級学校の方に進学できるようになれば、これはすばらしいことでありますので、今後どう対応すべきか検討課題として研究をしていきたい、こう考えておるところでございます。
  356. 中野寛成

    中野(寛)委員 主権の問題であるのは当然ですけれども、日本の主権のまさにその最高機関である国会において論議をしているわけでありまして、この外国人学校の扱い等まず日本自身が改善をしなければ、諸外国に向かって日本人学校をちゃんとしろ、認めると主張できませんわね。やはりそういうみずからの努力というものが必要だと思うのです。一たん出された法案が廃案になった、それでもう首をすっ込めちゃってどうしようもないということでは困るわけで、もっと積極的に取り組みませんとこれはもう、ましてや今や人数が当時と比べて全然違うわけですから、大変な状態に既になっているということを御認識をいただきたいわけです。まして帰国子女の例えば大学、高校の受け入れ体制、これだって大変です。本当は日本の私学と姉妹校提携みたいなのを結んでおって、向こうからこっちへ帰ってきたら日本にある姉妹校に無条件で入学できるというふうなシステムをつくりましたり、それから入学時期だとか試験だとか中途での転校だとかいうふうなことがもっと弾力的に行われるようにならなければ本当に大変なことなんですよ。  ついことしの話です。この前もブラジルから帰ってくるという友人の子供が、書類を整えるのにたまたま締め切りの一日後になっちゃった、向こうから急に帰ってきたために。まして情報が不足しておったからわからない。一日おくれた。それだけで入学の願書も受け付けてもらえなかった。文部省にもお願いしましたけれどもだめでした。こういうふうな状態ではやはり問題は解決されたことにならないし、新しい時代、国際化の時代にあってこういう状態が放置されておって本当に国際化を唱える資格はないということになってしまいはしませんか。そういうことをもっと積極的に、今日まで所信表明その他代表質問に対する答弁等でも総理も随分このことは意識して御答弁なさっておられたと思います。この点について、積極的にお取り組みになる御意思をもう一度、むしろこれは総理にもお聞きしたいと思います。
  357. 松永光

    ○松永国務大臣 問題は二つあるわけでありまして、外国にある日本人学校、日本にある外国人学校、二つ問題があるわけであります。主権の問題だと申し上げたのは外国にある日本人学校、その学校をどう位置づけてもらうかということはまさしく外国の主権の問題です。  国内にある外国人学校の問題につきましては、先生もよく御承知と思いますが、日本には教育基本法という法律がございます。これをきちっと守っていかねばならぬわけであります。その教育基本法の中にはいろいろな原則があるわけでありまして、まず、法律に定める学校、すなわち学校教育法第一条に定める学校の意味でありますけれども、そういう学校は必ず公的な性格を持たねばいかぬぞ、あるいはその学校においては政治的な中立をしなければならぬよ、あるいは宗教教育をしてはいかぬよとか、いろいろな教育基本法に定める非常に厳しい原則というものがあります。その原則等を踏まえますというと、容易に日本にある外国人学校を普通の日本の公的な学校と同じように認めることは極めて難しい問題があるということを申し上げておきたいわけであります。  なお、具体的な上級学校への進学資格の問題につきましては、大学につきましては先ほど言ったようなわけで、日本の高等学校を卒業したものとしての資格は認めておりません。したがって、日本にある外国人学校は各種学校の取り扱いでありまして、その卒業者という形になるわけでありますけれども、直ちに日本にある外国人学校の大学入学資格を認めるわけにはまいりませんけれども、しかし、この大学入学資格の問題につきましては徐々に検討を加えて弾力化の方向で処理していきたい、こう考えておるわけでありまして、昭和五十四年度から国際バカロレア資格を取得した者に対しても大学入学資格を認めるなどの措置をしたわけでありますが、今後も専修学校、各種学校卒業者の取り扱いを含めて日本にある外国人学校につきましても将来の課題として検討してまいりたい、こういうふうに考えておるわけであります。  次に、外国にある日本人学校から、お父さんと一緒に、あるいは本人だけでもよろしゅうございますが、日本に帰ってきて高等学校に進学したいという場合のことでありますけれども、これは御承知と思いますけれども、帰国子女教育研究協力校、こういったものを指定いたしまして、そして積極的な受け入れ策をやってきておるわけでありますが、それに私立学校の協力もいただきましてその充実を図ってきておるところであります。さらに、あらかじめ入学定員に少し余裕を持っておってもらいまして、そして随時編入試験を受けられるような改善措置をやっていくということで外国から日本に帰ってこられる子供の高等学校進学については配慮をしておるということでありますが、今後ともそういう配慮をさらに一層進めてまいりたい、こう考えておるところであります。
  358. 中野寛成

    中野(寛)委員 文部大臣、前にお会いしたときに、この問題はむしろ御自身から大変なんですよねという話を大臣室で僕にされたことを御記憶かもしれません。だから私は、大臣はもっともっと積極的に理解を持ってこの問題に取り組む姿勢が出されるのだろうと期待をいたしておりましたが、今の状態ではまだまだその認識さえも残念ながら私は疑わざるを得ません。本当にこれは深刻な問題になっているし、人数にしたって大変急激に膨れ上がっているのです。そしてまた、日本自身が先に努力しないで外国に日本の要求またはお願いをするということはできないではありませんか。だから結局、せっかく総理も所信表明等の中でわざわざお触れになるぐらいならば、もっと中身のある具体的な検討と提唱が、または具体的な行動が進んでいなければおかしいのではないのでしょうか。ですから、私は先ほど文部大臣ではなくて総理にお聞きしようとしたわけです。例えば今各論的におっしゃいました、弾力的に運用とおっしゃいました。それは今は必要です。しかしながら、先ほど申し上げたように、文部省御自身が外国人学校制度の提唱を昭和四十二年になさっているのじゃありませんか。それを国会で通らなかったから困っているのだというぐらいに言ったっていいじゃないですか。ところが、今の御答弁は全くもうそのときの気持ちはどこかへ消え去ってしまったような御答弁に受けとめます。私は、そういう意味で総理のお気持ちをお聞きしたいと思います。
  359. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 私の身辺にやはりそういう外国から帰国した子供の教育の問題を抱えているケースが幾つかありまして、それでしみじみとあなたと同じ気持ちを持っておるわけです。ですから、こういう問題は、文部官僚や公務員に言わせると、法律だとかルールだとか、しち面倒くさいことばかり言いますけれども、これは常識の問題なんであって、常識的に大局的に解決すべきだ。それで、私は、臨教審でこの問題を徹底的にやってもらって、そして、できたら中間答申でもいいから早く出してもらって、民間の方が自由な目で見たやり方で案を出してもらって、それをいただいて解決したらどうかと実は期待しておるところでございます。
  360. 中野寛成

    中野(寛)委員 総理のその御答弁に期待をしたいと思います。また臨教審にも期待をし、中間答申等ぜひとも早く出されて、早く実行に移されることを期待するものであります。  あと、留学生の問題をお聞きしたいと思いましたが、ちょっと時間の関係もありますから、次の機会にいたします。  さて、次にマスコミと青少年、去年は自民党の三塚議員がおやりになりました。おととしは私がやりました。何か二人で連続して交代にやっているみたいになりますが、ただ雑誌の問題だけではなくて、いろいろな真剣な問題があると思います。  去年の八月、この国会で有害図書の自主規制の要望をしようということで国会決議をやろうということで、私も民社党を代表してその相談の一員でありました。各党の代表者の間ではまとまりましたけれども、残念ながら、持ち帰って相談したら、すべての政党がオーケーというわけじゃなかったということで何かつぶれてしまいましたけれども、しかし少なくとも大きな世論を喚起できたし、また業界の皆さんもそれなりに自主規制の努力をしておられるようであります。しかし、何かそういう我々の努力をあざ笑うかのごとく、例えばこういう雑誌が出ているわけです。これは去年の九月に発刊されたものです。国会で問題にして、国会が終わった九月には新しいのがもう出ているわけであります。出版業界の方にきょうも聞きましたら、これはアウトサイダーで困りましたな、こういう話であります。こういうことでは結局どうにもならぬのです。まあごらんください。  その最初の方のグラビアは、今中学生、高校生に人気のある少女隊という女の子三人の歌手のグループのものが載っているのです。これは大学生ぐらいになりますと、もう追っかけないです。私も中学二年と三年の娘がおりますので、その辺のことは詳しいのでありますが、これは中学生、高校生向けの編集です。ところがその内容は、実際そういう子供たちに果たして見せられるものかどうか。とてもじゃないけれども見せられない。はっきりいって、トルコと書いて消しましてソープランド、こういうものがある、お父さんに教えてあげましょうと書いていますよ。値段から場所から、そこのお店の特色に至るまで書いてあります。そこでの遊び方まで書いてあります。十五歳の女の子のセックスの初体験の体験談がずらっと並んでいます。その他ちょっとここでは言いにくいですから、内容は、具体的には省略いたしますが、しかしちょっとでも目を離すと、結局そういう状態なんです。これに対して今後どう対応をしていくかということはやはり真剣に考えなければいけないと思います。  もう一つ、もう時間が限られているのでまとめて申し上げます。テレビの問題です。ここに「日本民間放送連盟放送基準解説書」なるものがあります。去年の八月に日本民間放送連盟がお出しになった解説書であります。これを拝見いたしますと、まず前書きのところで、「民放連放送基準審議会では、五十九年度重点業務に「放送基準の順守徹底」を掲げ、従前にも増して真剣に放送倫理の向上に取り組んでおります。」こう書かれております。そして、その中で幾つか拾い読みをいたしますと、「児童および青少年の人格形成に貢献し、良い習慣、責任感、正しい勇気などの精神を尊重させるように配慮する。」「児童向け番組で、悪徳行為・残忍・陰惨などの場面を取り扱うときは、児童の気持を過度に刺激したり傷つけないように配慮する。」「武力や暴力を表現するときは、青少年に対する影響を考慮しなければならない。」「性に関する事柄は、視聴者に困惑・嫌悪の感じをいだかせないように注意する。性に関する事柄は、家族が揃って視聴した場合、露骨な表現描写をすることによって困惑・嫌悪の感じをいだかせないように注意する。」「性衛生や性病に関することがらは、医学上、衛生上必要な場合のほかは取り扱わない。」「一般作品はもちろんのこと、たとえ芸術作品でも、極度に官能的刺激を与えないように注意する。」「性的犯罪・変態性欲・性的倒錯などの取り扱いは特に注意する。」「全裸は原則として取り扱わない。肉体の一部を表現するときは、下品・卑わいの感を与えないように特に注意する。」等々が書かれてあります。書かれてあることは大変立派であります。  しかしながら、これは「フォーカス」のコピーです。あるテレビ番組です。完全に全裸であります。こういうのは今やざらであります。そして、去年十二月の新聞のテレビ欄、朝日、毎日、読売、いろいろありますが、別に新聞社は関係ないのであります。このテレビ欄を見ますと、大体夜の十一時台、随分すごいことが書いてあります。「TV海賊チャンネル 過激!絶賛ティッシュタイム」、「ティッシュタイム」ってわかりますか。ちょっと説明しにくいですから、後で。「ミッドナイト六本木 Dr荒井の性感マッサージ秘技全公開!!」これは普通の新聞ですよ。そして「女子大生もっといじめて」というような番組もありますね。クリスマスになりますと「NY情報興奮Xマス特集」とか「裸の報告書!衝撃!!性のコレクターたち 絶倫男と五人妻 夫婦交換千数百回」こんなことが大新聞に堂々と載っているわけです。これはすべての新聞に同じことが載っているわけですからね。  さあ、それが果たしてこの放送基準に合っているのでしょうか。恐らく、善意に解釈をいたしますと、放送局の幹部の皆さんは守りたいと思っているのだろうと思います。しかし、今やその放送局の中でもこれを守ってもらうということはできないのだろうと思います。放送局の中さえもどうしようもない。そしてその結果こういうのが誕生してくるわけです。女子大生を並べて裸にして喜んでいる。まあ大人が見て喜んでいる分には、それはそれで結構です。私はそこまでやぼなことは言おうとは思いませんけれど、しかし、果たして家族でテレビを見ているという前提でつくられた番組にそういうことがあっていいのでしょうか。  これは報知新聞でありますが「TVは露国会戦」、それでテレビ局側は強気で批判はゼロだと言っている。しかし一番最後には「世も末の感じ これでいいのか」と言って評論家が、こんなことでは困ったものだ、世も末じゃと書いてあります。しかしながら、この新聞にも大人が興味を引きそうな写真はきちっと載っているわけであります。おまけにここで「「いかせます」「桃色ショッキング」「ティッシュ・タイム」「顔も赤らむこの企画」とこうなっているわけであります。これはもう意図的にやっているわけです。そして、これはサンケイスポーツです。「オナニーのススメ三分間で一発」こうなっています。おまけに、そこでこれはよくテレビに出てくる映画監督ですが、中学、高校生はティッシュ仲間だと、こう書いてある。明らかに中学生、高校生が見ていることを意識し、それを対象にしてつくられているわけであります。  こういう状態に対してどう対応するのか。法律をつくれば、またこれは中曽根内閣が何か変な気持ちを起こして何でも統制しようとしているんじゃないか、規制しようとしているんじゃないか、こう言われるかもしれない。それは政治的な問題は困ります。しかし、こういう問題はやはりけじめが必要です。私なりのけじめというか基準を申し上げますと、見たい大人にはもっと見せてもよろしい。例えば刑法の規定だって外したっていい。欧米で見れるポルノ雑誌だって、日本だっていいじゃないか。見たい大人にはもっと自由にお見せしたらよろしい。しかし、それは表現の方法、公開の場所、販売の場所をきちっと制限しなければなりません。子供と見たくない大人には目に触れないようにするのが、この問題の要請だと思います。見たい大人にはもっと自由に公開したらよろしい、しかし、子供と見たくない大人の目には触れないようにする。そのけじめをいかにしてつけるかなんです。このことについてもう総理にも総務庁長官にも文部大臣にも郵政大臣にもみんな聞きたいのでありますけれども、まず郵政大臣からお聞きしたいと思います。
  361. 左藤恵

    左藤国務大臣 確かに最近の民間放送の番組の中には今お話しのような問題のあると思われるような番組が非常に多いわけでありますけれども、これは今お話がございましたように、茶の間にストレートに飛び込んでいくという点から見まして、放送事業者がもっと自主的に責任を持って、社会に対する責任としてやらなければならない。放送法の四十四条の三項に、今お話しのような公安それから善良な風俗に反してはならないという規定があるわけでありますから、そういった点で自主的にやってもらう以外にないのじゃないか、このように思います。  ただ、これから先ニューメディアの時代になってきますと、そうした民間放送だけじゃなくて、あるいはCATVとかそういった問題につきましても、我々、放送事業者の徹底的なそういった問題に対する自粛自戒を要望する以外にない、このように考えております。
  362. 中野寛成

    中野(寛)委員 総務庁長官
  363. 後藤田正晴

    後藤国務大臣 私は、昨年のこの委員会で三塚さんの御質疑の際、それからきょうまた中野さんの御質疑を聞きまして、全く同感でございます。世の中というものはもう少し節度を持ったらどうだということを私は痛切に感じるわけでございます。ただ、最近のような性風俗のはんらんというのは、その国の文化の程度、社会の常識、そういったものが投影しているわけですね。そして、青少年は立派になれよと、こう言う。それは大人に言う資格がない、私はそういうように考えていますね。だからやはり環境の浄化ということで真剣にやらなければならない。役所は、それは関係省庁が集まりまして、私の方の音頭で、非行防止のいろいろな環境浄化とかなんとかというような連絡協議会をつくっておりますけれども、これではだめですね。私が願わくは、こういう問題こそ超党派で皆さん方の国会で何とかひとつ御相談を願って、これは表現の自由との関連がありますから、いざとなったら大変難しい。難しいがやはり次代を背負うのは何といったって青少年なんですから、そこらをぜひお考えいただいて、各党でひとつお骨折りをいただければ大変ありがたい、かように思います。
  364. 中野寛成

    中野(寛)委員 総理に御感想をお聞きしたいと思います。
  365. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 今総務庁長官が申されたとおりだろうと思います。  まず当面は、郵政省が監督権を持っておるわけでございますから、郵政省の側においてよく民放の諸君とも話をしてもらって、そしていやが上にも自粛してもらうし、その実を上げてもらう。郵政省としてはそれをよくチェックして見て、そして繰り返さないようにこれに警告を発するなり、しかるべき措置をやらしたいと思います。  それからもう一つは、今の総務庁長官最後の話のように、国会の関心というものが世論喚起する上に非常に大きな力を持っておるわけです。そして超党派的にこういう問題について各党各派が御協力していただくことは非常に有意義でもあると思います。いわゆる官僚独善ではないという形を示すこともできると思います。そういう意味において、しかるべき委員会にそういう意味の調査の小委員会でもつくっていただいて、常時監視と監督の目をつくっていただけば効果もあるのではないかと考えまして、中野委員においてもお考えくださればありがたいと思います。
  366. 中野寛成

    中野(寛)委員 引き続いて与野党、もちろん国会としても努力すべきだと思いますし、私も引き続いて努力をしたい、こう思います。  次に、労働問題といいますか、単身赴任のことについてまずひとつお聞きしたいと思います。  五十九年一月十二日、去年の新聞に、「単身赴任留守宅で心中 三兄弟道連れ母重体」とか「単身赴任の悲劇 練炭で母子心中 〝仕事人間〟の夫に抗議の遺書」というふうな見出しが並びました。遺書には、「女なんてつまらない 男としてだけ生きるのなら一人で生きていくべきよ 家族は必要ない」という恨みの遺書が残されていたと報じられております。不在がちの夫は九カ月前から仙台市に単身赴任中だった。年齢は四十五歳。私もことし四十五歳になりますが、一流電機メーカーの第一線営業部長のポストにいたとも書かれておりました。私自身もある意味では半分以上単身赴任でありますから何となく実感を持って受けとめたわけであります。また日本じゅうのサラリーマンのうち管理職の肩書きを持つ者、そういう人たちはすべてこの危険性というか可能性を持っていると言ってもいいでしょう。世界に冠たる経済大国日本は、この単身赴任という家庭の犠牲の上に成り立っていると言っても過言ではないと思います。会社がその人物の配置転換を必要とするならば、当然に家族がその地に住み得るような住まいの環境をつくって移すべきだと思います。労働団体の全民労協、ここが単身赴任問題の現状と課題ということでいろいろ調査をいたしました。そういたしますと、単身赴任対策の中で、単身赴任の理由として第一位に挙げられたのが子弟の教育、進学、そして二番目に挙げられたのが住宅、こういうことになっているわけであります。こういうことを考えますと、これはやはり何としても対策を十分講じなければならないと思います。  例えば、私は大阪ですが、大阪の場合を言ったって、これは福チョンとか札チョンとかいろいろ言いますけれども、役所の人も多いですね。ここは夜の商工会議所ですわと言って苦笑いしておられますよ、役所の方々も。わびしいと思います。それが単に寂しいだけで済めばいいですが、多くの悲劇を生んでいるわけです。父親がいてこその家庭だ。教育改革は母と子のためにやっているようなものだと総理は一度答弁なさいました。別にそれは極言しておっしゃったんだろうとは思いますけれども。しかし、家庭暴力その他は、父親の果たす役割が果たせなかったときに起こっていることも現実の問題なんです。そこで、結局教育対策、それから、まして先般も当委員会で触れられておりましたけれども、この単身赴任のための企業が支給する出張旅費、赴任旅費、そして実費弁償その他、結局四十三万円で所得税増加分九万円、こういうことがあるわけであります。何ともはや血も涙もない日本の政治という感じがいたしますが、このことについて労働大臣、文部大臣。
  367. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 単身赴任の問題は大変今御指摘のように深刻な問題でございまして、特に我々としては家族ぐるみの赴任ということを進めておるところでもございますけれども、そういう立場から、例えば雇用促進住宅等もひとつ活用していただくというような施策も進めておるところでございますが、実際的には教育の問題とか家族の扶養、おじいちゃんとかおばあちゃんの寝たきり老人の扶養等もございまして、なかなか家族ぐるみでの赴任というのが実際難しい、こういう状況でもございますし、それからまた単身赴任者の数は十四万近い推計でございますけれども、人数もさることながら、まず大体そういう方が十万から十一万前後単身赴任によって二重生活を余儀なくされているということで負担がかかっている、それをボーナスとか今まで貯金していたものの取り崩し等で賄っている、こういう現状でございますので、ことしの予算のときも単身赴任減税というのは、労働省としては大蔵当局に随分要望したところでもございますけれども、税体系上の問題その他二、三ございまして、今年度は残念ながら継続、こういうような経過になってしまったわけでございまして、さらにその税制の面における勤労者の生活条件、経済条件の立場からも取り組んでいきたいというふうに考えております。
  368. 松永光

    ○松永国務大臣 親子が一緒に暮らすことが家族の幸せであると同時に、子供の健全な育成のためにも極めて大事なことであると思っております。単身赴任というのはどうして起こるのだろうか。今先生御指摘のように、子供の学校の問題が一番大きな原因のように思われます。そこで、これを解決するためには、子供の転入学、義務教育の場合はまだいいのでありますけれども、特に高等学校等の場合があるわけでありまして、昨年三月には転入学の試験回数をできるだけ多くしてもらいたい、それからあらかじめ特別の定員枠をつくっていてもらいたい、こういったことを都道府県教育委員会に通知をしたところであります。それに基づいた改善措置をしてもらうように、文部省としては各都道府県の教育委員会に通知をしてお願いをしたところでありますが、さらに七月には学校教育法施行規則の改正をいたしまして、今までは欠員がなければ転入学が認められないということであったわけでありますけれども、欠員がなくても転入学が認められるというふうに学校教育法の施行規則の改正を行い、その趣旨を都道府県教育委員会に通知をして徹底を図ったところであります。  今度の教育改革に関連をして弾力的な運用の一つとして、公立高等学校同士ならば、例えば東京都立の高等学校に在学する者が兵庫県なら兵庫県の県立高等学校に転入学することがほぼ自由にできるような状態にならぬものだろうか、そういう研究をしてもらいたいということを先般私は事務当局に指示をしたところでありますが、そういったことを通じて、子供の高等学校の転入学が難しいということの理由による単身赴任というものをできるだけ解消していくような方向で努力をしていきたい、こう考えております。
  369. 中野寛成

    中野(寛)委員 これらの問題は、結局単身赴任という極めて非人間的な日本独特の制度、質問の冒頭に申し上げましたが、人間性の復活、回復、そういうことから考えましても、言うならば日本人が本当に反省して一から考え直さなければいけない、こういう深刻な問題だというふうに思いますから、なお一層の御努力を要請をしておきたいと思います。  なお、労働問題はちょっとほかにもありますので、引き続いて申し上げますが、三重交通のバス転落事故は勤務時間の過密によって引き起こされた事故だと会社側が責任を問われているわけであります。似たようなケースがまだあるのではないかと憂慮をいたします。バス、タクシー従業員の年間労働時間は、労働省がお出しになられた毎月勤労統計調査によると二千二百五十五時間。どう見ても随分長いですね。他国と比較すればもちろん大変に長い、こういう状態なんです。そういう具体的な事件までも起こっているわけでありますが、ことし一月二十五日に全日本労働総同盟が労働時間に関する国際シンポジウムを開きましたときにも、日本の長時間労働への批判というものが相次いで出されたわけです。これは労働大臣も御存じだと思います。労働基準法、三十八年間、今日までほったらかしにしてきたわけです。四十八時間。まあ八時間を一日九時間にして五日間でというふうな案も出ているようですが、そんな中途半端ないいかげんなことはやめた方がいい。むしろ、はっきりと四十時間なら四十時間と目標を設定してやっていくということが必要だし、こういうものは労働基準法の問題ですから、やはり法律を抜きにして考えることは不可能だと思います。  もう一つ、太陽と緑の週ということでゴールデンウイーク、これを何とか連続した休暇にできないかということも提案をされているところであります。日本人はもともと働き好きで、もちろんキリギリス世代は別だという話になるかもしれませんが、しかしそれにしても、やはりまだまだ日本人は働き好きだとは思います。むしろそれはほかのいろいろな理由もあります。もちろん文化的な、また宗教的な考え方の違いもあります。しかし、こういう問題を解決していかなければ、本当の日本人の人間らしい生活というのは保障されないのではないか。また、諸外国からも非難の的を相変わらず向けられ続けるということになるのではないのか、このようにも思うわけであります。このことについてまとめてお答えいただきたいと思います。
  370. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 労働基準法研究会で週四十五時間、一日九時間という中間報告があったわけでございますが、その考えは週四十八時間を週四十五時間に短縮する、週休二日制への移行というのが基本的な考えにあったと思います。そういう中で、例えばフランスのように週三十九時間で一日十時間と決めている国もございますし、アメリカのように週四十時間だけれども一日の時間は決めておらない、労使に任しておる、こういう国もあるわけでございますけれども、いずれにしましても一日八時間というのが定着しておるわけでございますので、一日九時間というのは労使双方の現実主流にはならないというふうに私考えております。  いずれにしましても、その労働基準法研究会の最終報告がことしの八月ごろに出るわけでございますし、今中野さんから御指摘のように、労働時間短縮の問題は労働者の生活、福祉の向上の問題あるいは労働条件の改善の問題、またあるいは国際化への対応の問題、また技術革新でロボットと人間が会社、工場のみならず家の中でも同棲するような新しい時代への対応、そしてまた中長期的な雇用の拡大、維持確保の問題等からしても労働時間短縮というものは基本的に進めていかなければならない、労使双方の御理解を深めていかなければならない大事な問題だというふうに考えております。そこで、労働省としては研究会の最終報告が出た後、昭和六十一年春以降になると思いますが、審議会等にも諮問いたしまして、できるだけ、御指摘のようにもう三十七年間、昭和二十二年以降基準法の改正というものもないわけでございますから、そうした国会で論議いただくような段取りでもってひとつ進めていくということが大事なんじゃないか。私も来年まで労働大臣やっているわけじゃございませんけれども、その路線だけはきちっと示しておきたいというふうに考えております。  それからまたゴールデンウイークの問題は、いわばそういう労働時間短縮、働き好きの日本人、勤勉な日本国民、例えば三重交通のバスの運転手さんの問題も、定休がきちっとあって、労働時間もきちっと決まっておるけれども、まあいわば働いている人自身の意向もあってああした長時間労働、過労労働になったという経過も一面あるわけですね。そういう意味で、やはり労使双方の意識革命というのが非常に大事だ。よく働き、よく英気を養うという習慣を若い人にも引き継いでもらうためには、この週休二日制の問題とか有給休暇の完全消化という問題を一生懸命やっているのですけれども、なかなか現実の問題として進まないという側面もございます。  そこで我々は、我々というか労働省として、いわゆる正月とか春夏秋冬の国民的な価値観というものが定着しておるこのゴールデンウイークのいい時期を活用していただいて、連続休暇の拡大をしていただけないかということで今盛んにキャンペーンを進めておるところでございまして、法制化という要望もあるのですけれども、我々が時短の問題とか休暇の拡大を言っているのは雇用の確保、安定というものが一つの大きな前提にありますから、例えばフランスのように、時間短縮をしたけれども、逆に余り短兵急にやったために新たな雇用の不安や経済の活力をそいでしまった、停滞してしまったという面もありますので、何としても労使双方に御理解をいただくという、行政指導を通じて今盛んに進めておる。法制化じゃなければなかなか進まないんじゃないかという指摘もございますけれども、ことしの一月までの集計の労働経済動向調査によりますと、五十九年実績が四八%だったわけですね、ゴールデンウイークの休暇をとった企業が、製造業中心ですけれども。それで、六十年度あなたの会社は実施していただけますかということについて、既に一月段階で五四%から今五五%までその回答が来ているわけです。ですから、これからまだ二月、三月、四月ございますので、こうした国会の論議、あるいは新聞等でも時短の問題が大きく取り上げられておりますので、さらにこれを七〇%台まで関係企業の労使双方の御理解と御協力を求めて、ひとつこの意義を行政的に進めていきたいというふうに考えております。これは参考までに、こういうのも一応出しておきます。
  371. 中野寛成

    中野(寛)委員 どうぞ配ってください。実効が上がるようにせっかくの御努力をお願いをしたいと思います。時間がありませんから、先に進みますが、これは人間性回復のまさに努力そのものだというふうに思います。  さて、多分これが最後質問になるかもしれませんが、在日外国人の教員採用の問題を川俣先生おやりになったようです。別の観点からお尋ねをしたいと思いますが、やはりこれが大きくクローズアップされたのは、長野県の梁弘子さんの問題であります。現在臨時講師としての立場に置かれているようでありますけれども、私は大変残念なことだと思います。既に三十一名の方々が、私もその中から何人か、大阪は一番多いものですから知っておりますが、本当にまじめです、皆さん。真剣に努力をしておられます。そして日本人としての教育を日本人の子弟にちゃんと教えてくれております。自分の立場、国籍を考えれば考えるほど彼らは、彼女たちはそれだけ真剣です。それで何か問題を起こしたというわけでもない。そういう状態の中でどうして採用されないのだ、仕事ができないのだ、私はこれが大変残念でなりません。当然の法理だとかなんとかいろいろ理屈は立てられているようでありますけれども、問題は、これは政治選択の問題だと思います。法律は変えればいいのです。変えられないものではないわけです。この前だって既に国立又は公立の大学における外国人教員の任用等に関する特別措置法をつくったのですから、その気があるかないかの問題だというふうに思うのであります。  ですから、私はこれを一歩もし譲るとしても、これはもう解釈上私は今だってできると思っています、思っていますが、もし百歩譲ってそれが難しいとしても、例えば五年間も六年間も臨時講師として不安定な身分のままに置いておく、そしてやがて、あなたがどうしても教員となりたいならば帰化しなさいというふうなことを無神経にも言う。これが彼女をどんなに傷つける言葉であるかも知らない。そんな教育関係者がいる。こんなことでは私は大変残念だと思います。むしろそういう状態の中で何らかの安定した形でまず彼女を任用するという方法はないのかということが一つ。そしてできるだけこれは地方の自治にもゆだね、また教育の本旨にも照らして前向きに解決する努力を文部省を初め、もちろん場合によっては国会もしなければならないでしょう。私たちはもちろんもとより努力をしたいと思います。そういう意味での文部省の前向きの御答弁をお願いをしたいと思います。  もう一つ、きょう外国人登録法に基づく指紋押捺制度の不当性を訴えて指紋拒否の運動をさらに広げようということで、在日韓国青年会の皆さんが東海道人権行脚を行うということでスタートをしたようであります。同時に、大阪七名、京都八名、愛知、兵庫その他一名ずつ、十八名の皆さんが役所へ行ってこの外国人登録証の切りかえの手続を行い、その際指紋押捺を拒否した。それで指紋押捺をしないままで登録証が交付されたようであります。この問題、日本人、我々の世界では、何かなければ指紋押捺することはないわけであります。そういう状態の中でなぜ我々だけがという気持ちを持つのは当然です。しかも、例えば十七歳の少女が、私はそんなことをする必要がないんだ、そんなことは私はできないと言ってずっと自分の意思で拒否をしていた子供が、米国に留学をするためにやむを得ず無念の涙で指紋を押したという報道もこの前なされておりましたけれども、どれほど人間の心をこういうものが傷つけるかということを考えますと、法務省としては当然真剣に前向きに考えていただきたいと思います。テクニックの問題とかなんとかの問題ではなくて、これもまさに心の問題だと思います。中曽根総理も韓国の全斗換大統領とも今後とも在日韓国人の人権についてその向上に努力をしていくというお約束もされたわけでありますけれども、こういう一つ一つの人権にかかわる問題について真剣に取り組まれてこそ、日本の国際的評価も高まるわけであります。この指紋押捺の問題も、ある意味では法務省の役所だけで考えられる問題ではないかもしれません。むしろ政治的決断が必要だということかもしれません。そういうことを含めて単に役所の答弁ということではなくて、内閣としての政府としての政治的な御決断に基づく御答弁を期待をいたしたいと思います。  以上、二つまとめてお願いします。
  372. 松永光

    ○松永国務大臣 午前中、川俣先生の質問にお答えいたしましたとおり、また先生も先ほど御指摘がありましたように、公権力の行使あるいは公の意思の形成にかかわる公務員は自国の国民をもって充てる、これはもう、ある意味では近代国家の大部分が採用しておる基本的な法理であるわけでして、また教育基本法にも、教育というものは「心身ともに健康な国民の育成」、この場合に私は、日本の教育基本法でありますから、日本国民の育成、これを目指すことになっておると思うのです。法理からいっても、また、自分の国の国民の教育は自分の国の国民がこれに当たるというのが、私は現在の国家という制度がある以上、本筋ではないかというふうに思っております。しかし、先生の御指摘の大学の場合には、真理の探求とか学術の研究とか、国際的な広がりのある問題でありますから、特別に法律をつくって任用ができるようにしたわけであります。そういうことでありますので、先ほど来申し上げておる趣旨は御理解願いたいと思うわけであります。  ただ、今先生の御指摘のように当該の先生は非常に立派な先生だということでありますので、今申し上げた法理に抵触しない範囲で任用が可能かどうか、事務当局にしっかり検討させたい、こういうふうに考えております。
  373. 嶋崎均

    ○嶋崎国務大臣 お答えいたします。  御承知のように昭和五十七年の改正でこの更新期間が三年から五年に変更されておるということがあるわけでございまして、ことしはいわゆる大量の切りかえ年に当たるわけでございます。そういう意味で、本年は約三十七万人の外国人が指紋を押捺していただかなきゃならないというような状況になっておるわけでございます。しかし、外国人であっても我が国に居留する以上は我が国の法律に従わなければならないことは、これはもう当然でありまして、法に定めるところによりまして平穏に大量切りかえが実施されるように、在留外国人の良識ある行動を我々は期待をしておるわけでございます。  なお、現行の外国人の登録法は、先ほど申し上げましたように昭和五十七年に改正されたばかりでありますので、現在の段階でその改正を行うことが適当であるかということについては、相当問題があるように私は思っておるわけでございます。もちろん指紋制度につきましては、いろいろな御意見があることは承知をしておりますし、また昨年日韓の共同声明の中で引き続き努力をするというようなこともあるわけでございますから、そういう事態を踏まえまして、今後制度上、運用上、各般の問題点につきまして、関係省庁の中で鋭意検討を進めていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  374. 中野寛成

    中野(寛)委員 教員採用の問題については、私は当然の法理、まあ聞きますとイギリスなんかは採用されているようですからね。積極的に今、日本は、こういう国際社会の中での日本ということを考えれば、まして日本の位置づけを考えれば、もっと前向きに取り組んでいい問題だというふうに思います。むしろ今までが閉鎖的過ぎたのではありませんか。そういう意味で私は、基本的にはもっと前向きに文部省が考えてくださることを強く要望したいと思います。ただ、この梁弘子さんの個人的なことについては、御本人が納得されるかどうか私はわかりません。しかしながら、少なくとも彼女に、今日までの不安定な身分ではなくて、安定した生涯にわたる身分保障が、労働条件も含めてきちっとされるような配慮がなされることを強く要望したいと思いますし、大臣もそのことを前向きに検討したいということでありますから、その結果を待ちたいと思います。  また同時に、指紋押捺の問題は、実はことし三十五万ないし三十七万人の皆さんが切りかえの時期を迎えます。七月から八月がピークだと聞いております。これから何年か先の問題ではなくて、今まさに直面しているのです。そして多くの皆さんがこの問題について関心を持ち、かつ何とかしてほしいと思っているわけであります。言うならば、今法務大臣は検討をするとおっしゃいましたけれども、その検討は急がれているのです。むしろ、この教員の問題も指紋押捺の問題も、先ほど申し上げましたような高度な政治判断が今望まれている、私はこういうふうにも思うのであります。  時間がありませんから、最後に、総理にこのことを、高度な政治判断、決断が今必要ではないか、こう思いますし、総理御自身がこういう問題については大変前向きに積極的にお考えであることを今日まで表明されてこられているわけでありますから、そういう意味で、御見解をもう一度お尋ねをいたしたいと思います。
  375. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 この問題は、私と全斗換大統領との話し合いにも出た問題でもありまして、自来法務省を中心にして検討をさしておりますが、さらに幅広く各省庁で詰めを行うように努力していきたいと思っております。
  376. 中野寛成

    中野(寛)委員 時間がなくなりましたので、終わります。
  377. 天野光晴

    天野委員長 これにて中野君の質疑は終了いたしました。  次回は、明九日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時七分散会