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1985-02-06 第102回国会 衆議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年二月六日(水曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 天野 光晴君    理事 大西 正男君 理事 小泉純一郎君    理事 橋本龍太郎君 理事 原田昇左右君    理事 三原 朝雄君 理事 稲葉 誠一君    理事 岡田 利春君 理事 二見 伸明君    理事 吉田 之久君       相沢 英之君    伊藤 公介君       伊藤宗一郎君    石原慎太郎君       宇野 宗佑君    上村千一郎君      小此木彦三郎君    小渕 恵三君       大村 襄治君    奥野 誠亮君       海部 俊樹君    鍵田忠三郎君       熊川 次男君    倉成  正君       小杉  隆君    砂田 重民君       住  栄作君    田中 龍夫君       葉梨 信行君    原田  憲君       村山 達雄君    山岡 謙蔵君       山下 元利君    井上 一成君       上田  哲君    大出  俊君       川俣健二郎君    佐藤 観樹君       堀  昌雄君    松浦 利尚君       矢山 有作君    池田 克也君       近江巳記夫君    神崎 武法君       正木 良明君    矢野 絢也君       大内 啓伍君    木下敬之助君       小平  忠君    塚本 三郎君       瀬崎 博義君    藤木 洋子君       藤田 スミ君    松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 嶋崎  均君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 松永  光君         厚 生 大 臣 増岡 博之君         農林水産大臣  佐藤 守良君         通商産業大臣  村田敬次郎君         運 輸 大 臣 山下 徳夫君         郵 政 大 臣 左藤  恵君         労 働 大 臣 山口 敏夫君         建 設 大 臣 木部 佳昭君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     古屋  亨君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)藤波 孝生君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官) 河本嘉久蔵君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 加藤 紘一君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      金子 一平君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      竹内 黎一君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石本  茂君         国 務 大 臣         (沖縄開発庁長         魚)      河本 敏夫君  出席政府委員         内閣審議官   海野 恒男君         内閣法制局長官 茂串  俊君         内閣法制局第一         部長      前田 正道君         内閣総理大臣官         房審議官    田中 宏樹君         臨時教育審議会         事務局次長   齋藤 諦淳君         警察庁長官   鈴木 貞敏君         警察庁刑事局保         安部長     中山 好雄君         総務庁長官官房         審議官     手塚 康夫君         総務庁長官官房         交通安全対策室         長       波多 秀夫君         総務庁行政管理         局長      古橋源六郎君         総務庁行政監察         局長      竹村  晟君         青少年対策本部         次長      瀧沢 博三君         防衛庁参事官  古川  清君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房         長       西廣 整輝君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛庁教育訓練         局長      大高 時男君         防衛庁人事局長 友藤 一隆君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         防衛庁装備局長 山田 勝久君         防衛施設庁総務         部長      梅岡  弘君         防衛施設庁労務         部長      大内 雄二君         経済企画庁調整         局長      赤羽 隆夫君         経済企画庁国民         生活局長    及川 昭伍君         経済企画庁物価         局長      斎藤 成雄君         経済企画庁調査         局長      横溝 雅夫君         科学技術庁研究         調整局長    内田 勇夫君         国土庁長官官房         長       永田 良雄君         国土庁長官官房         会計課長    北島 照仁君         国土庁防災局長 杉岡  浩君         法務省刑事局長 筧  榮一君         法務省入国管理         局長      小林 俊二君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省北米局長 栗山 尚一君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省経済協力         局長      藤田 公郎君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         外務省情報調査         局長      渡辺 幸治君         大蔵大臣官房総         務審議官    北村 恭二君         大蔵大臣官房審         議官      小田原 定君         大蔵省主計局長 吉野 良彦君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省理財局長 宮本 保孝君         大蔵省理財局次         長       中田 一男君         大蔵省証券局長         心得      橋本 貞夫君         大蔵省銀行局長 吉田 正輝君         大蔵省銀行局保         険部長     加茂 文治君         国税庁調査査察         部長      村本 久夫君         文部大臣官房長 西崎 清久君         文部大臣官房審         議官      菱村 幸彦君         文部省初等中等         教育局長    高石 邦男君         文部省高等教育         局長      宮地 貫一君         文部省体育局長 古村 澄一君         文化庁次長   加戸 守行君         厚生大臣官房総         務審議官    長門 保明君         厚生大臣官房会         計課長     黒木 武弘君         厚生省健康政策         局長      吉崎 正義君         厚生省保健医療         局長      大池 眞澄君         厚生省生活衛生         局長      竹中 浩治君         厚生省社会局長 正木  馨君         厚生省児童家庭         局長      小島 弘仲君         厚生省年金局長 吉原 健二君         社会保険庁医療         保険部長    坂本 龍彦君         社会保険庁年金         保険部長         兼内閣審議官  長尾 立子君         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産省経済         局長      後藤 康夫君         食糧庁長官   石川  弘君         林野庁長官   田中 恒寿君         通商産業大臣官         房総務審議官  児玉 幸治君         通商産業大臣官         房審議官    矢橋 有彦君         通商産業省産業         政策局長    福川 伸次君         資源エネルギー         庁長官     柴田 益男君         資源エネルギー         庁石油部長   畠山  襄君         中小企業庁長官 石井 賢吾君         運輸大臣官房国         有鉄道再建総括         審議官     棚橋  泰君         運輸省国際運輸         ・観光局長   仲田豊一郎君         運輸省地域交通         局長      服部 経治君         郵政省貯金局長 奥田 量三君         郵政省簡易保険         局長      大友 昭雄君         郵政省通信政策         局長      奥山 雄材君         郵政省電気通信         局長      澤田 茂生君         労働大臣官房長 小粥 義朗君         労働省労働基準         局長      寺園 成章君         建設大臣官房長 豊蔵  一君         建設大臣官房総         務審議官    松原 青美君         建設大臣官房会         計課長     望月 薫雄君         建設省都市局長 梶原  拓君         建設省道路局長 田中淳七郎君         建設省住宅局長 吉沢 奎介君         自治省行政局長 大林 勝臣君         自治省行政局公         務員部長    中島 忠能君         自浄省行政局選         挙部長     小笠原臣也君         自治省財政局長 花岡 圭三君         自治省税務局長 矢野浩一郎君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       仁杉  巖君         予算委員会調査         室長      大内  宏君     ――――――――――――― 委員の異動 二月六日  辞任         補欠選任   宇野 宗佑君     熊川 次男君  小此木彦三郎君     鍵田忠三郎君   小杉  隆君     伊藤 公介君   武藤 嘉文君     山岡 謙蔵君   小平  忠君     塚本 三郎君   岡崎万寿秀君     藤木 洋子君 同日  辞任         補欠選任   伊藤 公介君     小杉  隆君   鍵田忠三郎君    小此木彦三郎君   熊川 次男君     宇野 宗佑君   山岡 謙蔵君     武藤 嘉文君   塚本 三郎君     小平  忠君   藤木 洋子君     藤田 スミ君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和六十年度一般会計予算  昭和六十年度特別会計予算  昭和六十年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 天野光晴

    天野委員長 これより会議を開きます。  昭和六十年度一般会計予算昭和六十年度特別会計予算昭和六十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  理事会の協議により、きのうに引き続き矢野君の質疑を続行いたします。  この際、中曽根内閣総理大臣から発言を求められておりますので、これを許します。内閣総理大臣
  3. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 矢野さんの昨日の税の問題に関する私の考えを改めて申し上げます。  私はかねてから、多段階、包括的、網羅的、普遍的で大規模消費税投網をかけるようなやり方でやることはしないと申し上げていることは御指摘のとおりであります。したがって、矢野委員が例示された課税ベースの広い間接税の五類型のうち、EC型付加価値税取引高税は、私のかねての答弁から見ますと多段階のものでありますので、その意味では否定されることになるのではないかとの御指摘は、多段階という点においてはそのとおりであります。しかしながら、EC型付加価値税といってもいろいろの態様考えられることも御理解願いたいと思います。  ところで、政府といたしましては税制調査会に対し、既に昨年六月、「社会経済の進展に即応しつつ、国、地方を通じて財政体質の改善に資するため、税制上とるべき方策」という包括的な諮問をいたしております。また、税制調査会検討の結果がどのようなものになるか、例えばEC型付加価値税とか取引高税とかになると現段階で予断することはできないわけであります。いずれにせよ、税制全般について広範にわたり検討していただくこととし、当面はその検討にゆだねているところであり、御理解願いたいと思います。  税制調査会答申について現段階で予見を持つべきではないと思います。ただ、私がただいま申し上げたとおり、EC型付加価値税といってもいろいろの態様考えられますが、多段階、包括的、網羅的、普遍的で大規模消費税投網をかけるようなやり方はとらないという立場でございますので、これに該当すると考えられるようなものは、中曽根内閣としてはとりたくないと考えております。
  4. 天野光晴

  5. 矢野絢也

    矢野委員 昨日来、委員会が中断いたしまして、委員長初め委員皆様方に御迷惑をおかけしたことをまずおわびを申し上げたいと思っております。なお、深夜まで総理並びに大蔵大臣関係皆さん方が私の主張に対しまして誠意のある打ち合わせをしたりということで御努力をいただきましたことにつきましても感謝申し上げたいと存じます。  今、総理の御発言を承りまして、まず、かねてからの多段階課税はしないという御発言については、EC型付加価値税あるいは取引高税、こういったものは多段階であるので今後の検討の対象としては否定される、こういう御発言であり、かつ、万が一そのような答申が税調から出ましても、中曽根内閣としてはそれに該当することはやりたくない、こういう意味の御発言であると理解をいたしておりますので、私としては若干のあいまいさが残る点については不満でございますが、大きな前進である、このように評価をいたしたいと存じます。  いずれにしても、多段階、つまり生産、流通、卸売小売、こういった各段階にまたがる多段階課税、この問題については御発言で一応の決着がついたわけでございますが、この大型間接税そのものにつきましては、メーカー、卸売商小売商あるいは消費者は、多大の関心、心配、どんなことになるのだろうかという心配がございます。また、各段階ごとに、例えば小売売上税がかかれば、小売商は力が弱い、したがって、お客さんから値切られた場合、その分だけ自分の利益を減らして小売商がかぶらなくちゃならぬ。あるいは卸売商も力が弱い、その分、税金分自分がかぶらなくちゃならぬという意味で、業界の各段階において、これが具体化されましたときには大変な利害関係、いずれにしても迷惑をかけることになるわけでございます。  そういう意味で、多段階課税方式はさておきまして、単段階、例えば蔵出しの段階でかけます、あるいは卸売段階でかけます、あるいは小売段階でかけます、単段階投網を打つような包括的な課税、これは今申し上げたように非常に負担が一部に偏るという意味において問題がございます、また消費者にも御迷惑をかけるわけでございますので、単段階についてもこれはやるべきではない、このように私ども考えておるわけでございますが、その辺についてのお考え大蔵大臣、お聞かせいただきたいと思います。
  6. 竹下登

    竹下国務大臣 今、矢野委員指摘のとおり、単段階のいわゆる間接税につきましては御指摘のような問題はそれぞれ存在をいたしております。したがって、多段階、単段階という場合には、多段階の方がむしろ合理性があるとかいう議論も確かに存在もしておりますが、いずれにいたしましても今のような議論国会で行われ、書記長から意見としてお述べになったわけでございますから、これらは整理し、正確に政府税制調査会へお伝えをして、そしてやはり税全体のあり方の中で御検討をいただくという姿勢で臨むべきではなかろうかというふうに私は考えております。
  7. 矢野絢也

    矢野委員 単段階における大型間接税導入につきましても、これは断固反対であるということを申し上げておきたいと思います。  委員長、昨日GNP一%の防衛費の問題、それから軍事衛星フリートサットの問題について政府統一見解をお願いいたしましたので、よろしくお願いいたします。
  8. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府GNP一%を超えないことをめどとする方針を今後も守りたいと考えておりますので、現時点では、たとえ仮定の問題としても一%を超えた状況でいかなる措置をとるかは決めておりません。仮にそのような状況になった場合には、その時点において矢野委員指摘考え方等国会における各般の御論議や過去の政府答弁等を踏まえて慎重に対処いたしたいと存じます。
  9. 加藤紘一

    加藤国務大臣 矢野委員の昨日の御質問に関し申し上げます。  昭和四十四年五月衆議院において宇宙開発利用に関し国会決議がなされ、そこにおいて、我が国における宇宙開発利用は平和の目的に限り行うこととされております。  この「平和の目的に限り」ということにつきましては、これまで国会で非軍事意味する等との御議論がなされてきたところでありますので、政府といたしましても、これらの御議論を踏まえ、慎重に対処しなければならないと考えてきたところであります。  今般、海上自衛隊派米訓練の際にフリートサット衛星を経由した放送により訓練に必要な情報受信するための装置を、昭和六十年度政府予算案に計上するに当たり、この国会決議趣旨について政府内において慎重に検討いたしました。  もとより、国会決議有権解釈国会でなされるものでありますが、政府といたしましては、この国会決議趣旨について、次のように理解をしているところでございますので、よろしく御理解いただきたいと存じます。  国会決議の「平和の目的に限り」とは、自衛隊衛星を直接、殺傷力破壊力として利用することを認めないことは言うまでもないといたしまして、その利用が一般化しない段階における自衛隊による衛星利用を制約する趣旨のものと考えます。  したがいまして、その利用が一般化している衛星及びそれと同様の機能を有する衛星につきましては、自衛隊による利用が認められるものと考えております。  御議論のありましたフリートサット衛星は、米軍用通信衛星ではありますが、既にその利用が一般化しているインテルサット(国際通信衛星)、インマルサット(国際海事通信衛星)、CS2(さくら二号)のような衛星と同様な通信中継機能を有するものでありまして、このようなフリートサット衛星自衛隊利用することは、国会決議の平和の目的趣旨に反しないものと考えております。
  10. 矢野絢也

    矢野委員 まず、防衛費問題につきまして総理から御答弁をいただきました。何が何でもあの一%枠をどんなことしてでも突破してみせるんだみたいな感じではなくして、一%枠を守るために努力をしたい、こういうお考えの表明があった。そしてまた、閣議決定を変更する、そのこと自体に大変な情熱を燃やしていらっしゃるという印象が先日まではございましたけれども、一%枠を突破しないように努力し、かつ、万が一突破しても、どうするかということについては閣議決定をどんなことしてでもやるんだ、こういう、非常に思い詰めた立場でなくなられた、非常にリラックスしたお考えになられたということにつきましては、日本の今後の平和路線にとりまして一応歯とめと申しましょうか、不満はたくさん残っておりますけれども、御答弁をその限りにおいては評価いたしたいと存じております。ともあれ私ども立場は、一%枠を六十年度予算におきましても、そしてまたその後におきましても断じて守っていただきたい。そしてこの閣議決定も変更することなく今後やっていっていただきたいことを申し上げておきたいと思います。同僚議員からも引き続きこの問題は御質問をすることと思いますので、私はこの問題はこの程度にしておきます。  それから、軍事衛星につきましての御答弁は納得がいたしかねます。こういうことを、そうかそうかということにいたしますと、今回は受信ということでございますが、次は送信の設備をつけましょうということに必ずなります。受信だけではどうも不便じゃということになるわけでございます。受信そして送信、こうなりますと、これはもう完全な軍事衛星利用ということになってしまいます。とともに、訓練のための情報の交換だと今言っておられましたが、今平時でございますから、どっちにしたってこれはもう訓練に決まっております。問題は、なぜ平時において訓練が必要なのか、あるいはまたその訓練のために軍事衛星を、国防総省所属のものを使わねばならないか。これは万が一有事があったときのための訓練ということになるわけでございまして、しかもそれは安保第五条日本の領域内での紛争ではなくして、公海上の出来事ということになるわけでございます。公海上において、これは有事があってはいけませんけれども、そういうことを想定した訓練アメリカ軍事衛星を使い、かつアメリカ軍軍事情報を得る、あるいは逆に言えばその軍事情報によって行動するということは、いわば日米公海上における共同行動意味することにもなります。したがいまして、国会決議の上からも重大な問題がありますし、あわせて憲法で否定されております集団的自衛権発動という立場からもこの問題は重大な疑惑を残しておるわけでございます。  したがいまして、この問題はさらに立ち入って論議をいたしたいところでございますが、またこれをやりますと、またこれというわけでございますので、私はそういうことは望みません。しかし、そういう問題が残っておるわけでございますので、ぜひ委員長、私は、そういう国会決議に違反し、あるいはまた憲法で禁じておる集団的自衛権発動可能性のあるこの受信装置につきましては、予算から削除するということを強くお願いを申し上げ、そのことを理事各位において御協議いただくことをお願い申し上げる次第でございます。
  11. 天野光晴

    天野委員長 理事会で適当にひとつ処置するようにいたします。――よく検討いたします。
  12. 矢野絢也

    矢野委員 こんなもの適当に処理されたらたまったものじゃないですよ、こんな重大な問題は。  総理、昨日から本当にがみがみとかみつきまして大変恐縮しておるわけでございますが、少し文化的な話もしたいと思いますけれども映画の問題なんです。  もう御承知のとおり、昨年の九月三日にフィルムセンターが出火いたしまして、まことに貴重な所蔵されておった外国映画フィルムが燃えてしまったわけでございます。本当に貴重な映画フィルムでございました。幸い日本映画フィルムは燃えなかった。関係者外国映画フィルムは燃えて大変悲しみながらも、一面では日本映画フィルムが燃えなかったということで喜んだとも伝えられておる。なぜか。それは外国のフィルムはそのオリジナルがまだ外国にある。ところが日本フィルムは、本当に残念なことでございますが、そのオリジナルがこのフィルムセンターにしかないというものがたくさんあるわけでございます。  これはぜひ今後考えなくちゃいかぬ問題だと思うわけでございますが、それはさておきまして、この外国のフィルム、洋画のフィルムが燃えてしまった。そこで各国から、例えばフランス、スウェーデン、アメリカその他大使館を通じて、このフィルムの復元のために、本当は著作権上いろいろな問題があるけれども、最大限の協力をいたしましょう、こういうお申し出がございました。せんだっては関係者の方々、芸能人、スポーツ関係あるいは映画を心から愛していらっしゃる皆さん方がチャリティーショーを開かれまして、この復元のためのお金を集めよう、こういう本当にまじめな熱心な動きがあったわけでございます。そのチャリティーショーにこの閣僚で出品された方おりませんわ、安倍外務大臣の奥さんだけが出品しました。あなたは出品していませんよ。奥様です。  それはどうでもいいことでございますけれども、私は、総理もそうだと思いますけれども映画というのはそれぞれ若いときいろいろな映画を見た、言ってみれば映画の思い出というのは人生の一こま一こまに各人各様結びついておるわけでございまして、例えば一九五〇年代、日本が戦争に負けました非常に苦しいときに、日本映画界は国際的に方丈の気を吐いたわけでございます。例えば「羅生門」でグランプリをもらった、あるいは「地獄門」でグランプリをもらった、「西鶴一代女」とかいろいろな映画で数多くの賞をもらった。最近もまた賞をもらっておられます。つまり、戦争した日本を何と野蛮な国だなんて外国の人は思ったが、この日本映画を通じて日本人のよさ、ある意味では自然の美しさ、人情の細やかさ、こういったものを、あの一九五〇年代の厳しい時代に日本映画は大変な貢献をしてくれておるわけでございます。ところが、こうやってこのフィルムセンターが燃えた。外国からも何とかひとつその復元のために応援しましょう、著作権の問題はもう棚上げにしてでも応援しましょう、こういうありがたいお話があるにもかかわらず、お金がないんです、お金が。予算を見ますと、まあお役人仕事と言うと失礼でございますけれども、概算要求の締め切りが八月の末であった、火事が九月の三日であった、概算要求に入っていない、ただそれだけの経過で、ことしのこの予算には、その映画復元のための予算は計上されておらないのです。防衛費のかさ上げだとか整備新幹線だったら、もう予算閣議決定の前日にでも無理やり押し込む、そのぐらいのえらい荒っぽいことをなさる割には、映画フィルム、これは何億という単位でございます、そんな何兆という話をしているわけじゃない。ですから、これはぜひひとつ総理、もう予算は決定しておりますけれども、本年度におきまして何とかこのフィルム復元のための予算の措置を特例として考えていただけないものであろうか、このことについて格段の御配慮をお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  13. 松永光

    ○松永国務大臣 昨年九月の国立近代美術館のフィルムセンターの火事で貴重な外国劇映画フィルムを焼失してしまったということはまことに遺憾なことでございました。これを復元をしたいわけでありますが、その関係でたくさんの民間の人たちが寄附をしていただいておる。その中には矢野先生も多額な寄附をしていただいておるわけでありまして、この席をかりまして厚くお礼を申し上げるわけであります。  これが復元をするための予算措置でございますが、文部省としてはできるだけ早く復元をしたい、順序としては緊急性の高いものから復元をしてまいりたい、こう考えておりまして、ただ、先ほど先生のおっしゃいましたようなことがございまして、六十年度の予算の中にはこのこと自体の項目としては予算はございませんが、既定のフィルム購入費等から経費は支出をいたしまして、民間で寄附していただきました分と含めまして、何とか復元をするように努力をしていきたい、こう考えております。  なお、予算措置といたしましては、さようなわけで、既定のフィルム購入費がございますので、やや不足気味でございますが何とかやれるという見通してございますので、ひとつよろしくお願いいたします。
  14. 矢野絢也

    矢野委員 フィルム購入費は計算しますと二千百五十万円、これは去年も二千百五十万、その前も二千百五十万、五十七年は二千百八十九万、非常に昔より減っているのですよ、この予算の金が。ましてや火事に遭わない前も二千百五十万、火事に遭ってからも二千百五十万でございますので、これは復元のために特別に手当てをした予算というわけではございません。常日ごろの予算でございます。ここから何とか火事で焼けたものを捻出するのは無理ですわ、正直申し上げまして。ですから、やはり特別の御配慮をいただく必要がある。  この問題と、もう一つは、私は余り映画に詳しいわけじゃないのですけれども、映像という問題は、これは二十世紀の技術によって芸術として成長してきた分野だと思うわけでございます。それ以外に絵とか踊りとか歌とかなんとか、いろいろな昔からの芸術がございますが、私は、映画というのはテレビも含めまして二十世紀の生んだ芸術である、こう思うわけでございます。ところが文化勲章受章者を見ますと、立派な方々が受章されておるわけでございますが映画監督さんは一人も受章していらっしゃいません。先ほど申し上げたような、戦後の日本、いろいろ誤解されている中を日本の女性の美しさあるいは男のたくましさあるいは深さ、そういったものを世界じゅうにPRしてくれたこれら映画界の巨匠と言われている方方、こういった方々は大部分の方々はもう逝去されておるわけでございます。しかしまだ健在で頑張っていらっしゃる方もいらっしゃいます。私はこの文化勲章、だれかに頼まれてこんなことを言っているわけじゃないのですが、やはりその選考に当たりましても、例えば去年なんか黒沢監督のところへ、フランスの文化大臣ジャック・ラングさんでしたか名前ははっきりしませんが、わざわざ勲章を持って日本までやってきてくださった。そして黒沢監督が仕事をしているセットまで行ってレジオン・ドヌールですかの勲章を届けに来てくださっておる。それに対して日本政府は知らぬ顔をして、勝手に持ってきておるんじゃみたいな顔をしているのですよ。そういうときには総理から電話の一つも、わざわざ持ってきていただいてありがとうとか言えば、随分と日本のいわゆる文化外交というものも見直されると思うのでございます。経済大国ではあっても文化小国であるという日本のイメージを回復する必要もあろうかと私は思うわけでございますけれども、この文化勲章、特別の人をどうせいと、そういう意味じゃございませんが、今後そういった日本映画の果たしてきた役割ということを評価されて、国を挙げてこれを顕彰するということが必要ではなかろうか。  もう一つ三つ目に、総理にあわせてお答えいただきたいのですが、文明の発達とともにいろいろな自然が破壊されておる、この自然を守ろうということもこれは大事です。とともに、いろんな伝承、言い伝えあるいは古文書、古い文書、こういったものも散逸してしまっております。日本の大学のアカデミーの世界では、古事記、日本書紀、記紀以前の歴史はこれはちょっとインチキだぜみたいなことで余り相手にされない傾向がございますけれども、私はそれを学問的にどうしよう、こうしようと言っておるわけじゃない。そういったたくさんの伝承あるいは古文書、郷土史家の方々が一生懸命、伝統を守ろうとしておる。あるいは私の住んでおる町におきましても、そこの有志の方々は町名を保存する、何かもう大正町、昭和町、これじゃいかにも個性がなさ過ぎる、それなりの地名のいわれがあるんだから地名を保存し、かつその地名のいわれを保存していこうという運動もしていらっしゃる。こういう伝承とか古文書とかあるいは地名の保存、いわれ、あるいは最近週刊雑誌等でも、これは私もおもしろ半分で言うわけじゃありませんが、何か日本にピラミッドがあったのかなかったかみたいな大特集をして、非常に関心を集めておる。こういう歴史学者が相手にしないような昔の考古遺跡、こういったものも国が何らかの援助措置をされ、あるいは郷土史家に対しても援助をして、これは何兆という話じゃないのです。文化庁の予算、これは文化庁の応援をしますけれども、ほんまにふえていませんがな。もうこれを見たら情けない。どう言ったらいいのでしょうか、文教予算が五兆一千億。その中で文化庁の予算がわずか〇・七一%。GNP一%突破する、しないと言うけれども、こっちこそ早く突破してもらいたい。文化庁の予算が〇・七一%、本当に涙がこぼれるようなお粗末な予算でございます。ましてや映画の復元については、前年同様何らの復元のための予算措置もしていらっしゃらない。  あれこれ並べ立てましたけれども、私は、経済大国日本あるいは私どもが申し上げるような軍事大国日本にならないような措置が必要でございますが、文化大国に日本がなる必要があるという意味で三点か四点申し上げましたけれども総理の所感を含めた御答弁をお願い申し上げたいと存じます。
  15. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まずフィルムセンターの問題につきましては、私はこれが焼けだということを聞いて一番がっかりした一人であるだろうと思っております。矢野さんと同じように、我々の学生時代見た映画の印象というものはやはり心にしみついているものがあります。フランス映画でジュリアン・デュビビエだとかウィリー・フォルストとか、「白き処女地」だとか、いろいろございましたね。ああいうような、あれがもう焼けてしまったのかというので、実はがっかりした一人であります。そういう意味で、ぜひあれを早く復元したい。外国で原版があるそうですから、おっしゃるとおりできるだけ早く手に入れて、もとどおりになるように我々も協力すべきであろうと思っています。  チャリティーの問題は全然知らなかったので、もし知っていれば私も協力さしていただいたと思うのであります。  しかし、これは非常に大事な問題でありまして、特に映画というものが国民の文化力に影響するところ極めて大であり、また終戦後、占領下あるいは三十年代にかけて日本人が非常に消沈しておったときにグランプリをもらった、あれがどれぐらい勇気づけたかわからない。そういういろいろな面を考えてみまして、一番大衆的で文化力を持っているのは映画であると思いますので、御趣旨に沿いまして、できるだけ早くあれを復元できるように文部省に検討させたいと思っています。  それから第二番目に、文化勲章の問題でございますが、これは矢野さん、政府がどうこうということはできない問題なのであります。やはり文化勲章の選考委員会というものができまして、その選考委員が自主的にお決めになることになっておって、ただ、今までいろいろ枠というものがあるようですね。歌舞伎から出たとか出ないとか、あるいは日本美術からどうだとか、洋画からどうだとか、そういうような一定の枠を見ておるので、映画というものの重要性について選考委員が果たして認識しておられるかどうかという問題は、おっしゃられるとおりあるようですな。そういうような問題について、矢野さんの今の御質問をよくわきまえまして、我々としては御趣旨には賛成でございますから、官の力をもってどうするということはできませんが、御趣旨は体してひとつ善処したい、そう思います。  それから、古文書の問題、伝承の問題は非常に大事な問題であると思います。確かに、地方へ行きますと、歴史家が相手にしないようなものでも案外貴重なものがあるように思います。そういう意味におきまして、やはり現代の稗田阿礼とか太安万侶が必要である、そういうような感じもいたします。そういう意味におきまして、これも文部省でひとつ検討させたいと思っております。
  16. 矢野絢也

    矢野委員 この問題、御要望申し上げましたところ前向きの御答弁をいただきましたので、これで終わっておきますが、文化勲章の問題につきましては、おっしゃるとおりだと思います。黒沢監督が文化功労賞を既に受けていらっしゃるわけでございますので、候補といえばこの方だけだろう、今の段階では。ほかにも立派な監督さんがいらっしゃいますので、文化功労賞をもらうようにしていただきたい。そしてまた、そういった中から文化勲章をいただけるようにして、世界に胸を張れるような文化政策をしいていただきたい、こうお願いを申し上げて、この問題を終わります。  それから総理、これは何かえらい総理を褒めるような質問になってしまって私もあれなんですけれども、交通遺児の問題です。  実は、交通遺児の今までの問題を調べますと、中曽根さんは随分熱心に取り組んでくださった事実がございます。防衛問題では私はあなたの考え方に賛成しませんけれども、この問題に関しては、私、立派だと申し上げたいと思うのです。数寄屋橋で街頭募金をやりましたときもあなたに来ていただいておった。交通遺児と母親の全国大会にもあなたに来ていただいておった。あるいは交通遺児の高校授業料免除のときには、あなたは幹事長として土壇場でこの予算を押し込んでくださった。また、交通遺児に総理になられてから会っていただいて、そして予算の増額もしていただきました。そのように、何か交通遺児に関して申し上げれば非常に立派な貢献をしていらっしゃる、こう思います。  ただ、まだ総体的に改善すべき点がたくさんございますので、引き続きこれはその御熱意を持ち続けていっていただきたいことをお願い申し上げたいと思うのです。交通遺児の育英会が四十四年に発足して、二万六千人の遺児に百十億円の奨学金を貸し付けて、たくさんの人が進学をしました。予算の増額、いろいろ問題もありますけれども、きょうはこの問題というよりも、交通遺児の諸君が、私たちはこうやって育英制度で学校へ行けるようになった、お父さん、お母さんが亡くなって苦しい立場の中でも、彼らは政治の力によって学校へ行けるようになったということに非常に感謝いたしまして、おれたちだけではない、交通事故以外で災害に遭った御家庭がたくさんある、この災害に遭って両親が亡くなってしまった遺児たちに対して何とかしよう。本当に私はけなげなことだと思っておるわけです。この諸君が一生懸命献血運動、恩返し献血、こういうことをやっておる。それから街頭で募金をやっておる。そして彼らがそういう諸君のために千二百万円もプールした。そして夕張炭鉱、秋田地震、三宅島の噴火、長崎水害、その他いろいろな被災者に対して彼らが自分たちが集めたお金を拠金しておる。こういうことを聞きまして、私は政治家として、交通事故以外の災害の遺児に対しても熱心に取り組む必要がある。従来の経過から申し上げて、中曽根総理なら熱心にやってくださるだろう、こういう希望も持っておるわけでございます。こういう諸君たちがけなげに寒い中を頑張っておる、このことを考え合わせて、ぜひひとつ前向きにやっていただきたい。そのためには、かつて私ども要求いたしまして交通遺児対策が必要だと言ったときに、実態がわからない。対策するにも実態がわからなければ手の打ちようがないということで、田中龍夫先生が総務会長のときに、交通遺児の実態調査を私どもの要望にこたえてやってくださいました。それに伴って世論も盛り上がり、そして交通遺児育英制度というものができたわけでございます。  したがいまして、まず最初にお願いしたいことは、災害遺児の実態というものを調査する必要がある。特に小学校六年、中学校三年、高校三年、この諸君は現在は進学するかしないか、もちろん小学校六年の方々は義務教育でございますから中学へ行くでしょうけれども、苦しい環境で悩んでおるわけでございます。ぜひひとつ、交通遺児、もちろんこの諸君のことも必要でございますが、災害遺児の実態調査、そしてその災害遺児の方々の原因別の内訳、生活状況の把握、特に進学をする諸君の家庭の状況、これを迅速に御調査を願いたい。その上で速やかにこれらの諸君について、特に学校へ進学しなくちゃならぬ諸君についての対策をとっていただきたい。総理にお答えをお願い申し上げたいと思います。
  17. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 交通遺児にいたしましても、災害遺児にいたしましても、ある日突然不幸が訪れて、そして翌日から学校へ行けなくなるということでは大変お気の毒なことになるわけでございますから、引き続いてみんなの力でそれらのかわいそうな遺児たちが、交通にせよ、災害にせよ、事故に遭った場合には学校に行けるようにしてあげたい、そういう気持ちで私も矢野書記長のお供をして日比谷の街頭へ立ったり、今まで努力してきたところでございます。この問題について公明党が非常に力を入れていられることについては、非常に敬意を表する次第です。矢野さんはいつも予算委員会でこの問題で御質問なさっておられる、これはもうたゆみなくこの問題に御関心を持っておられるということであり、本当に敬意を表する次第でございます。  育英資金の問題とか、あるいは授業料の減免の問題とか、そのほかいろいろな問題があるように思います。これらの問題につきましては、高速道路の事故については道路施設協会等の公益法人が就学資金の援助をしております。これらの資金の増額については、さらにふやすように今後とも努力してまいりたいと思っております。そのほかの交通事故による問題等につきましては、協会がございまして、それに対するいろいろな協力を我々は今後とも努力してまいりたいと思っております。  それから、災害遺児の問題につきましては、育英会の奨学資金付与の採用につきまして、災害に遭った方々については特別な配慮を今やらしております。また、在学中災害等によって家計が急変した場合には、特別に面倒を見るようにという趣旨努力しておるところでございます。  民間団体におきましても、今のところは警察育英会とか交通遺児育英会とか消防育英会とか犯罪被害救援基金とか、こういうような制度がございまして、それぞれの対策を講じておるところでございますが、今後とも御趣旨を体しまして、不意にそのようなはからざる環境に陥った子供たちが順調に学校へ行けるように努力してまいりたいと思っております。
  18. 矢野絢也

    矢野委員 さらに、実態調査…。
  19. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 特に災害遺児の実態調査につきましては、御趣旨を体しまして、関係団体等も協力していただいて努力したいと思います。
  20. 矢野絢也

    矢野委員 どうもありがとうございました。ぜひお願いしたいと思います。  今も総理お触れになりましたけれども、高速道路の上での交通事故によって亡くなられた方、その方の遺児についての育英制度、私はこの席でお願いをし、実現をしていただいた経過がございますが、もうぼちぼちこの制度も金額をふやすという時期が来たのではないか。あれから金額が変わっておりません。ぜひ金額をふやしていただきたい。それから、すべての高速道路にこの範囲を拡大するような御努力もお願いしたい。この二点について御答弁をお願い申し上げます。
  21. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 御趣旨を体しまして拡大してまいるように努力いたしたいと思いますし、金額についても、たしか今二十万でございましたか、これらについてもできるだけ改善するように努力いたしたいと思います。
  22. 矢野絢也

    矢野委員 指紋の問題でございます。  在日外国人の指紋の押捺制度、外国人を犯罪人視するということで外国人の人権を侵害するんじゃないか、反対が強いわけでございます。また、押捺拒否をする方がどんどんふえてきております。ことしは三十七万人の方が登録証の書きかえ、こういうことになっておりまして、押捺を拒否する人がまたふえるのではないか、こういう懸念があるわけでございます。これは私はやはり人権上の問題からも本当に考えなくちゃいかぬ問題だと思っておるわけでございますが、昨年の九月に韓国大統領、全斗煥大統領が来日されましたときに、指紋押捺の廃止を含めて、在日韓国人の法的地位及び待遇改善について総理と話し合いが行われました。これに対して総理は、引き続き誠意を持って検討したい。また共同声明にも「努力する旨述べた。」とあるわけでございますが、引き続き誠意を持って検討する、あるいは努力をする、このお約束、その後どう具体化しておるか、お知らせを願いたいと思います。
  23. 嶋崎均

    ○嶋崎国務大臣 お答えいたします。  お尋ねの指紋問題を含む在留外国人の法的な地位及び待遇についてどのような制度が最も適当であるかということにつきましては、いろいろな議論があるところでありますけれども、御承知のように、国内的な諸事情のほかに、外国におけるところのいろいろな制度の姿というものも勘案していかなければいけないというふうに思っております。そういう意味で、今後幅広くかつ慎重な研究、検討を続けていくことが必要であろうというふうに思っておる次第でございます。  御承知のように、外国人登録法につきましては、昭和五十七年に改正をされたばかりでございます。したがって、現段階において制度改正を行うことが適当であるかどうかということには相当問題があるというふうに思っておるわけでございます。しかし、先ほど御質問にありましたように、指紋制度につきましてはいろいろな御議論があるということは私たちも十二分に承知をしておるわけでございます。昨年の日韓共同声明におきまして、在日韓国人の法的な地位及び待遇につきまして引き続き検討する旨、総理も述べておられるという趣旨を十分踏まえまして、制度上及び運用上の諸問題につきまして、今後とも関係各省におきまして鋭意研究を進めてまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
  24. 矢野絢也

    矢野委員 国際的に見ましても、この押捺制度をとっておる国は二十二カ国、部分的に採用している国を加えましても三十カ国程度でございます。日本が開かれた国家としてこれからも国際的な地位を占めていかなくちゃならぬ、こういう立場考えますと、日本に来ていらっしゃる外国人、全部が全部と言いませんけれども、犯罪人視扱いをする、そういう受け取り方を外国人にされることは、日本にとって決してプラスではない。反面また、こういう制度ができたいきさつ、これは私は承知しているつもりでございます。しかし、外国人の人権を守るという立場から、また開かれた国際社会を目指すためにも、この押捺制度を廃止して、それにかわるもっと具体的な、もっと心理的抵抗のない制度をお考えなさった方がいいのじゃないか。例えばの話でございますが、代替措置が困難な運転免許証をもってかえるとか、そういうようなことをお考えなさったらどうか。これは私の提言として申し上げておきたい。答弁は結構でございますが、ぜひその方向で御努力をお願い申し上げます。  また数字の話になって恐縮でございますが、大蔵大臣、税金、租税負担率。あなた、あした創政会の出発で忙しいところでえらいこんなことを聞いたらあれだけれども、あれもやりこれもやるというのが大事なことでございますので、ちょっといじめる質問をいたしますけれども、御勘弁いただきたい。  まず、五十九年度の所得税の減税は、これは大蔵省から数字をお答えいただきたいのですけれども、その前に、課税最低限の引き上げを行いました五十二年度に比べまして五十九年度の所得税の減税、これは標準世帯の課税最低限を何%引き上げましたか。これが質問の第一です。  第二番目は、五十二年度を基準にして考えました場合、六十年度の消費者物価の水準は何%上昇いたしましたか。  三番目は、五十二年度予算に比べまして六十年度予算ではサラリーマン一人当たりの給料は何%伸びましたか。  四番目には、同じサラリーマン一人当たりの税金は、五十二年度に比べまして六十年度は何%ふえておりますか。  この四点について、数字を御報告願いたいと思います。
  25. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 まず第一点でございますが、五十二年度の所得税の標準四人世帯の課税最低限は二百一万五千円でございます。本年度の所得税の改正によりまして、課税最低限は現在二百三十五万七千円でございます。その間のアップ率は一七%になっております。  それから、この間のCPIの上昇率でございますが、これはあるいは企画庁の方から御説明申し上げるべき問題かと思いますが、およそ三四%でございます。  それから、サラリーマン一人頭のこの間におきます給与の引き上げ率でございますが、実績ベースで申し上げます。五十二年度に対しまして、六十年度の私どもの見込みでおよそ四三%でございます。一人頭の税額の伸びは、同じく予算の見積もりベースで八八%強でございます。
  26. 矢野絢也

    矢野委員 今の答えで申し上げますと、所得税の減税は、課税最低限が一七%よくなった。上がった。しかし、消費者物価は三三・四%その間に上がっておる。つまり、消費者物価上昇率の二分の一程度しか減税されておらぬということが言えると思います。また、サラリーマンの給与の伸び、今の答えでは四三%とおっしゃいましたが、私どもの数字では三五・九%。これはよろしい、四三%。しかし、税金の伸びは八八%。これでは、つまりサラリーマンの給与の伸びの倍の伸びで税金の伸びがあるということになるわけでございます。これは、非常にサラリーマンにとっては厳しい実態をこの数字は物語っておると言わざるを得ません。  もう一つ。これはもう御確認いただければいいかと思いますが、サラリーマンの給与の伸びは、夫婦子供二人の四人世帯で、これは仮定でございます。年収五百万円のケース、ことしのベースアップは五%、住民税は前年所得への課税でございますので、五十九年も五%ベースアップとこれは仮定しましょう。ことしも五%、こう仮定いたしますと、ことしの収入は五百二十五万円ということになります。二十五万円ふえます。税金は、所得税が二十二万五百円から二十四万八千五百円と、二万八千円ふえる。住民税も十四万六千五百三十円から十六万八千三百五十円と、二万一千八百二十円がふえる。収入のふえた二十五万円のうちの約二〇%に当たる四万九千八百二十円、これが税金で取られます。  こういうケースで申し上げた数字、まず正しいかどうか御確認をいただきたいと思います。
  27. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいまのお示しのケースでモデル計算をいたしますと、ただいま御指摘のような数字になると思います。
  28. 矢野絢也

    矢野委員 何を言いたいかはもう総理大蔵大臣もおわかりになっておると思います。つまり、いろんな税制度の中で、また国民の方々、いろんな御職業の中でサラリーマンの方々が一番税制上ひどい目に遭っておる。ここでクロヨンだとか、そんなことを言えば時間がかかりますから申し上げませんけれども、今総理お聞きいただいた数字から見ましても、年収の伸びの倍以上税金の方の伸びがある、こういう実態を考えますと、これはやはり何としてでも所得税の減税は考えていただく必要がある。ましてや、昨年たしか消費を四・一%伸びると見ていらっしゃったはずでございますが、昨年の実績見込みでは三・一%、一%ダウンしておりますね、消費が。昨年は減税があったのです。減税があったにもかかわらず、消費は四・一見込みながら三・一というふうにマイナス一%である。ことしもたしか消費の伸びを四・一と想定しておられるはずでございます。昨年は減税をやって四・一を見込んだ。しかし、三・一に落ち込んじゃった。しかも、残業の実績を見ますと、昨年の前半から比べますと、後半は残業時間はどんどんどんどん減ってきているのです。統計の上からこれは明らかでございます。残業時間が減ってきておる。この傾向はずっと続いております。そうすると、ことしは減税がない。そして、残業手当も統計の数値から見ると減少傾向にある。去年は減税があって残業はふえておった。それなのに消費は一%ダウンした。それでことしは同じように四・一%消費があるなんて言っていらっしゃるわけでございます。これは、私、ちょっとことしの経済成長を考える上でも、昨年との対比で今るる申し上げましたが、消費を四・一%確保することは難しいんじゃないか、こう思います。ですから、そういう内需拡大という政府の大方針の上からも、さらにまた今指摘いたしましたサラリーマン諸氏の厳しい税制の被害の受け方の実態からも、何としてでもことしは所得税の減税をやっていただきたい。  あわせて、もう一つ重要な問題になっておりますのが単身赴任。国会議員の諸君も単身赴任が多いわけでございますけれども、これはまあ別でございますから、済みません。やはりどうしても実家へ帰らにゃいかぬ、女房、子供のところへ帰らにゃいかぬ、教育上の問題がある、若い御夫婦ならお嫁さんの顔を見たいという事情もある。それから、単身赴任の場合はどうしても食事が偏ってしまいます。健康上非常にこれが問題になってきておる。それから、二重生活による経済負担が大きい。こんなわけでございますので、この単身赴任につきましては何らかの政治的措置が必要であると思います。  それで、企業は別居手当や帰宅旅費を払っておる。しかし、この別居手当、帰宅旅費、全部これは課税対象になっちゃっているのですよ。かわいそうに、本当に。えげつない話でございます。これはもう当然この別居手当、帰宅旅費は自分のポケットに残るんじゃない。払っているわけです。出ちゃっているわけです。それをもうこの課税対象にしてしまう。会社によりましては、この別居手当や帰宅旅費を出していらっしゃらない会社もある。これはぜひ出すように会社の方も考えてもらわにゃいかぬ、これはテレビを通じてその会社に頼んでおきますけれども。でございますから、別居手当、帰宅旅費を出している会社、あるいは出してない会社、いずれにしても単身赴任の場合はコストがかかっておる。ですから、単身赴任控除とでも申すべきものを実施していただければ、手当を出している、帰宅旅費を出している、あるいは出してない、関係なく公平に単身赴任者に対する政治的な優遇措置ということになるわけでございます。  先ほど申し上げました税の実態から見た、あるいは景気対策上必要な立場から所得税の減税をぜひやっていただきたい。あわせて、単身赴任者向きの減税措置をやっていただきたい。大蔵大臣並びに総理から御答弁をお願い申し上げます。
  29. 竹下登

    竹下国務大臣 所得減税をしろ、こういう御意見でございますが、確かに、いつも申し上げるようでございますけれども昭和五十九年度、すなわち今の年度で本格的な減税を行ったばかりであります。そして一方、現下の厳しい財政事情にかんがみますならば、政府税調答申にも結局は六十年度において所得税、住民税の減税を行う余地はないという指摘を受けておるわけであります。したがいまして、この問題につきましては、将来の問題については総理からのお答えもあろうかと思いますが、現段階ではそのことは困難であるということを御理解を願いたいという立場であります。  それから、次の単身赴任減税の問題でございますが、今矢野書記長指摘になりましたように、単身赴任手当とか帰宅旅費とか、そういうことに非課税措置を講じてほしいという要望があることは私どももよく承知しております。それから、今の矢野書記長の御指摘のような問題が存在することも承知しております。そこで、これを昨年もお約束いたしましたので、税制調査会へ正確に報告して、その答申を六十年度税制に関する答申としてちょうだいをしまして、その答申を簡単に読み上げますと、「単身赴任問題に対処するため、単身赴任手当及び帰宅旅費の非課税措置を講ずべきである等新規の特別控除等の創設についての要望があるが、そもそも様々な国民の生活態様の中から特定の条件や特定の家計支出を抜き出して、税制上しん酌するには限界があり、また、しん酌する場合の客観的基準を定めることは困難であること等を考慮すれば、新規の特別控除等を創設することは適当でないと考える。」こういう答申をちょうだいしました。  少し時間がかかるようですが、確かに私どもも調べてみますと、雇用問題としてこれをとらまえてみれば、寮、住宅等の提供があるとか、あるいは赴任地における住宅手当の優遇措置のあるなし、あるいは一時帰宅旅費の支給のあるなし、あるいは帰宅のための特別休暇のあるなし、あるいは家族が訪問する場合の旅費の支給があるなしとか、訪問した家族への宿泊施設の提供があるなし、別居手当の提供があるなし、いろいろさまざまな、これは労使間の雇用問題としてはそういう態様があるようでございます。そこで、やはり一番議論になりましたのは、例えば国家公務員の場合は扶養手当、調整手当、住居手当、通勤手当等等、期末手当、勤勉手当、また寒冷地手当、やはり手当といえどもこれは給与であるという意味からいえば、これを特別に控除するというのは、本当になかなかその基準というのは難しいだろう、私もそんな感じはいたします。  それでこの問題、どうお答えするかということになりますと、今の段階においては確かにこれは難しいという答申になっておる。そして支給のない企業の従業員と出稼ぎ労働者、もう一つ出稼ぎ労働者あるいは家族全部で転居する従業員とのバランスがどうなるかという議論もございました。したがって、これは確かに税制上個別にしんしゃくすることには限界があるということはよくわかります。そして、転勤に伴う負担の問題はやはり労使間で対応さるべき事柄であって、企業の組織効率の最適化等の見地から、被用者にとって雇用契約の内容として初めから受忍すべきだという議論もあるわけです。  したがって、私がここでお話しできることとすれば、今の意見等をもう一遍政府税調に正確にお伝えして、こういう議論がありますよということをお伝えして、それで税調の中で検討をしてもらう。ことしの答申では、まあ難しいという答申をちょうだいしたわけです。だから、もう一度私ども正確にお伝えをいたしまして…(矢野委員「やる方向でお伝えしてくださいよ。やるという方向で、前向きに。」と呼ぶ)税制調査会に対して、やろうと思うかどうかという、いわばそういう伝え方は、率直にいってある種の予見になりますから、ないわけです。やはり、こういう意見があったということを正確にお伝えするところから議論が高まってくる問題じゃないか。  少し時間をかけましたけれども、率直に現状をお話ししたわけであります。
  30. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 矢野委員の御質問でございますから、率直に申し上げてみたいと思いますが、私は、減税をやりたい、そういう気持ちを持っておるのです。ただし、ことしは残念ながらできません。これは、去年一兆一千八百億円の減税をやりまして、とても今、財源の手当てがつかないためであります。やはり減税をやるというについては、赤字公債でこれをやるというわけにはいきません。今、赤字公債を減らすのに懸命の努力をしておる最中でございますから、やはり適切な財源を見つけないと減税は難しいと思うのです。しかし、おっしゃいましたようなサラリーマンの源泉課税の問題とか、法人税にしてもそうですね。中小企業の法人税そのほかの問題。そういう意味で、私が戦後税制、シャウプ税制以来の税制の根本的な総括的な見直しをやろうという、これを課題として受けとめますということを申し上げたその中には、やはり減税という問題も課題として入っておるし、やりたい、そう思っておるのです。  そこで、私、国会でもちょっと申し上げたかと思いますが、そういうことを申し上げましたことは、前から考えていましたシャウプ税制以来のねじり、よじり、あるいはさまざまなひずみ、そういうものが出てきて、どうしてもこれは公平、公正、簡素、それから選択、そういうようなプリンシプルに基づいて総括的に見直しをやりたい、こう申し上げましたが、そういうことを実はいつ言い出そうかと思っておったわけです。しかし、もう課題として言い出していいなと思ったのは、アメリカのリーガン財務長官税制構想が出まして、これは非常におもしろいと、あれが非常に一つの触発した動機になったと思います。  あれを見ますと、所得税なんかは税率を、小刻みにうんとあったのを三段階にしてしまいまして、一五%、二五%、三五%にしてしまっておる。法人税は、五〇%ぐらいまでいろいろな刻みがあったのを三三%にしてしまう。ただし、法人税についてはいろいろな特例措置をやめてしまう。そういうような形で、非常に簡素というようなことにもなっておる。アメリカ人はさすがに思い切った発想をするな、我々の方もこれに負けないぐらいな発想で根本的な総括的な改革を心がけたらいいだろう、そういうような気持ちがしまして、課題として受けとめ、その中には所得税、法人税等の減税問題もやはり課題として解決していきたい、そう思っておるのであります。  現に、お示しのサラリーマンの問題等を見ますと、二百万円から六百万円ぐらいがカーブがきつくて重圧感が非常に多いのですね。これをもう少しなだらかにしてあげる。ちょうど子供が中学校から高校へ入るぐらいの段階になります。非常に学費も多いし塾のお金も私わにゃならぬ、ローンも払わにゃならぬという、そういうときであります。それをなだらかにすると自然的に、これは一番最後の高所得者が七〇%になっているからカーブがこうきつくなる、そういう意味で、なだらかにするとやはり最終のものもなだらかになっていかざるを得ない。これはこれでいいと思うのです。外国とやはり同じぐらいの水準に持っていくのが常識だろうと思います。要するに、ある程度の税収が確保できるという見通しがつけば、そういうふうな公平感を満足させるということは大事だろうとこう思っておる。そういうふうに持っていきたいと思いますが、しかし片方においてはどこかで財源を得なければならない。したがって、こっちでは安くなった、しかしどこかでは少しまた余計取られることになった、だけれども全体を見たらそういう不公平感とか重圧感とかというものがなくなって、前よりはよっぽどいいなと、そういうような気持ちになっていただく方法がありやなしや、そういうような観点から、総括的、包括的税改革の課題として投げ込んでみたいと思っておるわけです。(矢野委員多段階とは余り言わぬ方がよろしいで」と呼ぶ)しかし、その中身をどうするかということは、専門家が専門的に調べていただくことで、(矢野委員「所得税の減税はまじめに検討していただけると…」と呼ぶ)我々政治家としては、そういう課題を持って、そういう問題をいつ取り上げていくかということが我々の課題である、そう考えておるのです。  で、減税をやりたい、今言ったように所得税や法人税という問題はこのままではよくない、そう思っておることは事実で、できるだけその総括的、包括的改革の際に課題として解決していきたい。それには、今申し上げたように片方ではうんと減る、しかし片方では多少は我慢する、全般的に見て、ともかく公平感が出てきたし、まあまあこの辺がいいじゃないかとみんなが一致する線をどうしてつくるか、それを政府はいただいて実行する、そういうやり方が適切ではないかと思っているのです。  その際に大事なことは、今矢野さんがおっしゃいました多段階とか云々とかいうので、私は実は昭和二十二年に国会議員になりまして、もう最初に一番ショックを受けたのは取引高税であったわけです。あれで惨敗しましたね、選挙で。だから、やはりああいうようなていの税というものはよほど国民心理を読まないと間違う。失敗する、そういうふうに感じておるわけなのであります。結局、税金の問題というものは、公平感とか国民が受け付けるかどうかという心理問題であって、欧米人と日本人は心理は違いますからね、それから経済構造も違いますから。そういう意味で、いかになじむかなじまないか、みんながまあこの辺でという気分を持ってくれるかどうかということを読むのが政治家の仕事だ。専門家は、これがいいと、これが一番合理的だと机の上でつくると思うのです。これはグリーンカードと同じで、なるほど机の上じゃ合理的に見えるけれども、では、実際やってみたら国民が受け付けないという問題がある。これは税についてはかなりあるのです。  そういう意味において、今までの失敗をいろいろ反省してみまして、そして我々は今白紙の立場でやってもらいたいと思いますが、気持ちはそういうものがあるのだということを、矢野さんですから申し上げる次第であります。
  31. 矢野絢也

    矢野委員 矢野さんですからと二回も三回も言っていただいて、これはお喜び申し上げなくちゃいかぬのかどうか。――所得税の減税、法人税の減税を考えているんだというお話があった。その限りにおいては、これは大変ありがたいことだ、ぜひやっていただきたい。ところが、何か減らす分だけどこかで取るんやという話がついておるわけでございます。税制の抜本的見直しというプロセスを通じて法人税、所得税の減税は考えるけれども、一方ではいただくのはたくさんいただくのだ、これはちょっと私、受け付けるわけにはいかぬ。と申しますのは、そういう大層な抜本的な改革をお考えなさる前に、所得税の減税はやらねばならぬし、やれる。財政上の事情からやれぬとおっしゃるかもしれませんが、この所得税の流れを見ればやるべきであるということが言えます。  例えば五十九年度は、大蔵大臣、五十八年度に比べまして、五十九年度に私はやかましく言いまして、また総理にも決断をしていただいて、いわゆる一兆円減税をやっていただきました。この五十九年度にもし減税をしていなかったと仮定いたしますと、五十九年度の所得税は一兆四百億円ふえまして、減税しなかった場合ですね、十四兆八千四百五十億円になるはずでございました。しかし減税をしたから、結果的には五十九年度は十三兆九千八百五十億円にとどまったわけでございます。減税の結果、十四兆八千四百五十億円のものが十三兆九千八百五十億円になっちゃった。しかし、六十年度を見ますと、この減税分を簡単に取り戻しまして、十五兆三千九百五十億円所得税が見込まれておるわけでございます。つまり去年減税しなければ十四兆八千億であった。減税した結果十三兆九千億に減っちゃった。しかもことしには、去年減税しなかったら入るであろう十四兆八千億を突破しちゃって、十五兆三千九百五十億円所得税の税収が見込まれておる。いかにこの所得税の、所得がふえるに従って税金がふえるこの累進性の厳しさというものがこの数字からも明らかなんです。  ですから、一方で何か税金を取って、その分減税します、減税するという意味においてはそれは結構なんだけれども、一方で取るというのはこれはいかぬ。そうではなしに、この所得税のまことに異常というべき超累進性、これを是正するという立場から、去年減税した分をもう取り返しちゃっているのです。それを上回って五千五百億円、減税以前にもう収入がふえちゃっておる。この実態から、私は、そういう税制の抜本的改革以前に所得税の減税をなさるのが国民に対する礼儀である、筋であるということを申し上げたいのですが、大蔵大臣いかがですか。
  32. 竹下登

    竹下国務大臣 昭和六十年度の所得税収が昭和五十九年度に比べまして増加しておる、これは事実でございます。いわば経済成長の伸びというものが、普通の場合そのままで、いわゆる累進構造というものが、なしとすれば、大体六%名目成長が伸びれば六%税収は上がっていく。しかし、累進構造がございますから、したがって上のランクへ上がっていく人があるわけでございますので、それがいわゆる租税弾性値として十年間平均すれば一・一ということになっておるわけであります。したがって、その六十年度の所得税収が五十九年度に比べて増加しておるというのは、まさに雇用者の所得等の増加に伴うものであるということで…(矢野委員「それだけじゃない、やはり累進性がある」と呼ぶ)累進税構造はもちろんそれはございます、先ほど申し上げたとおりであります。それから、所得税は所得額に応じて課税されるものでありますから、所得の増加に伴う税額の増加というのは、これは累進を含めて今の構造の中ではやむを得ないものであるというふうに考えるわけでございます。  昭和六十年度の経済見通しによりますと、一人当たり、先ほども指摘ありました雇用者所得の伸びは大体五%だろうということを前提に置いておるわけでございます。そうしてもう一つ、所得税減税の影響のない利子配当、報酬、料金等の源泉徴収額の増加分が今の矢野書記長の御指摘では含まれておりますので、給与申告所得税額分だけのいわゆる自然増収というものは一兆百十億円という計算になるわけでありますが、雇用者所得の増加ということが税収増になっていくということはこれは自然の形でございますが、累進構造があるから、累進構造が厳しいから、その分が余計プラスされておるからその点をもっと勉強すべきじゃないかというのは、先ほどの総理矢野書記長に対するお答えで大体観念的には言われておる問題じゃないかな、こんな感じがいたします。
  33. 矢野絢也

    矢野委員 総理は、税制の抜本的改革をお考えなさる、一方で、できるだけ国民の理解を得られる方法で、何らかの形で税の、何というのでしょうか、その中には不公平是正ということもあるでしょう、その得た収入で一方の減税をやる。  そこで問題になりますのは、そのことについて私は反対なんですけれども、今の所得税のこういう異常な伸び方に対して減税を、行政改革とかそういうことを考える以前にまずやるべきだというのが私の立場でございますが、それは別にしまして、今の総理の御答弁あるいは大蔵大臣の御答弁から私が思いますことは、そうすると、いわゆるこの租税弾性値、分母が国民所得、分子が要するに国税並びに地方税、税金ですね。この租税弾性値が中曽根内閣になりまして異常にアップしているわけでございます。  私が今記憶しておる数字で申し上げますと、五十八年度の実績見込みではたしか二三・九、昨年つまり五十九年度当初予算の見通しては〇・三上がりまして、二四・二に租税負担率が上がりました。〇・三上がった。この〇・三上がったのは、昨年私がこの席で、法人税を四二%から一・三%上げて四三・三%にされた、この一・三。酒税の増税あるいは物品税の増税等で七千五百億昨年は増税をなさった。その分がちょうど〇・三に当たっておりますので、これは増税によって租税負担率が〇・三上がりましたね、こう御指摘申し上げたら、いや、そうじゃないんだ、これは自然増収によって租税負担率が上がっているんだから、臨調答申では自然増収による租税負担率のアップはおしかりがないんだという意味の御答弁をされました。ところが、一年たった今日、〇・三上がるはずであったものが、つまり二三・九から〇・三上がるというものが、それが今度はまた〇・六%上がってしまいまして、何ぼでしたか、二四・八でございますか、つまり五十八年度実績見込みと五十九年度実績見込み、この一年を比較しますと、〇・三どころじゃない、〇・九も租税負担率が上がってしまっているんですね。大蔵大臣、そうですね。私の数字、間違っておりませんね。そしてさらに、ことしはこの二四・八が二五・二、〇・四でございますか、また上がる。これは、自然増収によって租税負担率が上がることは、これは赤字の会社が黒字になって法人税がふえたのです、あるいは利益の少ない会社が利益がふえて法人税がふえたのです、これは自然増収。あるいは所得がふえましたので所得税がふえたのですだけではないのだ。つまり、昨年の法人税のアップあるいは所得税における累進性の影響といったものが租税負担率を上げておるのだということを私はここで主張したいわけでございます。  そこで総理、三つの類型が考えられます。  一つは、今申し上げたように、何の税制上の措置もとらないで自然増収によって租税負担率が上がるケース。これは第一のケース。これは臨調答申には違反しない、「増税なき財政再建」に違反しない、こういうお立場であった。私はそれだってその自然増収分は減税に回しなさい、こう申し上げたい。  それから、第二番目は後で申し上げます。  第三番目は、新たなる税制上の措置をとられて、その結果、租税負担率が上がることは臨調はお許しがない。それはだめだ。新たなる税制上の措置をとって租税負担率が上がることは、これは臨調答申では禁ぜられておる。これもこの考えで恐らく私とあなたと一致だと思います。そういう御答弁をなさっておる。  真ん中のケース、二番目のケース、新たなる税制上の措置はとらないけれども、しかし昨年のように法人税率四二%を四三・三%、一・三上げることによって得た増収、あるいは物品税の対象を拡大することによって得る増収、さらにまた、ことしのように貸倒引当金でございますか、これまた法人重課でございます。さらに公益法人に課税をする。言いたいことは、新たなる税制上の措置による増税ではないが、税率アップ、品目拡大によって増税が行われる、これは二番目のケースで申し上げたい。これは臨調答申に違反しているのじゃありませんか。  第一の自然増収による租税負担率のアップは、これは臨調答申はお許しがある。私はこれは減税で戻せと言いたい。第三の新たなる税制上の措置をとって租税負担率が上がる、これはだめですと臨調から禁止されておる。第二番目の税率アップ並びに課税対象の品目を拡大することによって増収、増税になる、つまり分子がふえる。この分子の中には、大蔵大臣が昨年言われたように自然増収分もあると思います。しかし全部が自然増収じゃない。そのプラスアルファの中には、自然増収と税率アップと対象品目拡大による増収、増益がある。この第二のケースの場合は、臨調答申ではだめだとおっしゃっているように私は理解しておりますが、大蔵大臣、いかがでございますか。
  34. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに今矢野書記長おっしゃいますように、「増税なき財政再建」の原則は、いわば「何よりもまず歳出の徹底的削減によってこれを行うべきであり、全体としての」今おっしゃいました「租税負担率(対国民所得比)の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらない、」ということが言われておることは事実であります。したがって、いわば所得の伸びによりますところの自然増収、これはまさに今御指摘なさったとおりです。  それから、絶えずいわば公正、公平の確保からのでこぼこ調整というものは、それが結果として租税負担率にいささかの影響があったといたしましても、いわゆる新たなる税制上の措置としては入らないというふうに私ども理解をいたしております。  それから、いま一つ御指摘なさいました法人税の税率アップ等、あるいは優遇措置を廃止しましたり、いろんな新たに、今度でも中小企業のハイテク減税とか俗に言っておりますが、そういうものをやったりしますのは、その年度年度の税制調査会答申に基づいて、いわばでこぼこを調整したり、そして政策税制としての廃止とかあるいは加えるとかいう問題は、それは現実問題として存在をいたしております。  それから、法人税アップの問題についての御議論は、これは昨年来申し上げておりますが、いわば所得税減税の見合いとして考えたものであります。  したがって、臨調答申に、既存税制の枠内において範囲を拡大しますとか、優遇措置をやめたり新たに設けたりしますとかいうことは、税制上の新たなる措置というものには入らない、したがって、臨調のお考え方に違反しておるとは私ども考えておりません。
  35. 矢野絢也

    矢野委員 つまり、片っ方で法人税の税率を上げても、去年は一兆円減税したから、でことぼこが平準化しておるからいいのだという御諭旨のように承りますが、その前に、四〇%から四二%に上げたときは、これはでこぼこのでこだけでございます。それから、ことしのいわゆる法人に対する増税、これはでこだけでございまして、ぼこ、どこにもあらへん。そうでしょう。  そうすると、先ほど引きましたように、所得税の方は減税しましても、それ自体が持っておる仕組みによってすぐ復元する。数字で申し上げました、減税する前に比べて五千五百億円ももうふえておる。だから、それとこれとを見合いする論理がおかしいのでありまして、私は、臨調さんは見合いなら法人税をふやしてもいいなんということをおっしゃっているはずがないと思いますよ。ですから、第二のタイプは、臨調答申から見てちょっと趣旨が違うのじゃないか。こんなことを黙って見ておりますと、この新たなる抜本的な税制上の改革をしなければ、税率アップ、品目拡大であったなら臨調さんのおしかりがないなんて、こうやって、それを、ああそうですかなんて私が言っておりますと、ことしの案を見ますと、いろいろな十項目ですか、増税の提案が税調から出ておりますが、ここでは一々申し上げません、あれ全部を認めることになってしまうのですよ。抜本的な税制上の拡大じゃない、税率アップとか品目拡大ということだから、それは「増税なき財政再建」には違反しない、こういう理屈がまかり通ってしまうわけでございまして、私は第二のタイプもこれは慎むべきであるという意見をここで申し上げて、この問題、この辺で置いておきます。あした創政会で大変やから、余り言うと気の妻や。これは本当は統一見解を求めたいところなんですよ。第一と第三は定義がはっきり、第二の場合ははっきりしていない。税率アップと品目拡大による増収、増税は構わないという理屈には、私はここでは納得し得ないということだけ申し上げておきたい。本当は臨調さんに問い合わせてもらって、矢野がこんなことを言っておるけれども、お許しいただけますか、いただけないかと。――統一見解を求めるので審議を中断、そんなことはやりません。  そこで、整備新幹線の問題でございます。  今度、東北と北陸、両整備新幹線に着工する、こういうことになったわけでございまして、これには財政上の問題、財源の裏づけの問題等々数多くの問題がある。しかし、地元の皆さん、一生懸命誘致運動をなさっておるわけでございまして、願わくは、財政上の問題その他、困難な問題を解決して、この整備新幹線が赤字のない格好で、住民の御要望にこたえる格好で完成することは、これは政治家の一人として私は望ましいことだと思います。しかし、これにはえらい難しい問題があるわけでございます。見方によっていろいろありますが、大体十兆とも二十兆とも言われておる、在来線廃止を含めれば二十兆くらいかかるのじゃないかという見方もある。私は整備新幹線、それがいいとか悪いとかを言うのじゃないのです。できたら問題が残らぬ形でこの新幹線ができ上がることがいいと思います。しかし問題は多い。  手続上のことを申し上げたい。これは五十七年の七月三十日、臨時行政調査会基本答申に「なお、整備新幹線計画は、当面見合わせる。」こういうことでございます。これを受けまして、五十七年の九月二十四日には「整備新幹線計画は、当面見合わせる。」これを閣議決定されました。また、五十八年八月二日の国鉄再建監理委員会の国鉄改革に関する緊急提言にも「整備新幹線計画は、当面見合わせる。」こういう提言がございます。これを受けまして、国鉄再建監理委員会の提言を最大限尊重すると閣議決定をされたわけでございます。  そして、六十年度予算編成に当たりまして、この閣議決定を尊重して概算要求にもこの新幹線の予算はついておりません。大蔵原案にもついておりません。そして土壇場に、自民党の五役の皆さん方が、何としても整備新幹線は六十年に着工を目指してやるべきであると強い御意見がありまして、自民党五役の合意メモがあったわけでございます。昭和六十年度から建設に着手する、こういう自民党の党議決定、これは自民党がお決めになることでございますから、私は自民党の党議決定に文句をつけるつもりはない。しかし、政府は、そのような当面見合わせる、凍結するという閣議決定がちゃんとあるにもかかわりませず、その自民党の党議決定をそのまま六十年度予算に採用されて、予算がついております。しかもそれは、建設費が東北で五十億、北陸で五十億、調査費が同様十四億円づつ。建設費が五十億、五十億で百億ついておるわけでございます。  総理閣議決定というのは内閣の最高方針であると私は理解しております。私はまだ大臣になっておりませんので閣議に参加したことございませんから、余り体験的に申し上げることはできません。しかし、私の理解する範囲では、閣議決定は各省に対して本年度の予算を要求する大きな政策方針である。だからこそ概算要求にも出てなければ大蔵原案にも出てなかった。  この凍結をするという二度にわたる閣議決定は、その後予算決定をなさる前に閣議で変更の決定をなさいましたか、官房長官
  36. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 変更の決定はいたしておりません。今回の予算編成の中で新幹線に関して予算づけが行われておりますが、これらにつきましては幾つかの条件がついておりまして、例えば国鉄監理委員会の亀井委員会答申などとの調整も図るといったようなことも御高承のところと思いますけれども、この予算を決定いたします段階でいろいろ政府と党と話し合った中で出てきた問題でございまして、そういうような条件をつけて予算化をいたしておるところでございます。それらも見ながらこの問題についての決定を進めていく、こういうふうになっておりますので、変更の決定をいたしておりません。
  37. 矢野絢也

    矢野委員 いろいろな条件がついておるとかおっしゃいましたが、確かに自民党のこの文面は私の手元にございます。どうあれ、当面見合わせる、凍結するという閣議決定があって、そして五十億、五十億、これは調査費じゃありません、建設費がついておる。これは百八十度の転換でございます。そうすると、今私が申し上げた閣議決定はもう無効になったのでございますか、官房長官
  38. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 予算を編成をいたしまして、予算案の決定をいたしておるわけであります。それを国会へ提出をするということも決定をいたしておるところでございます。したがいまして、予算の内容につきましては当然閣議決定がなされておる、こういうふうに私ども考えておるわけでございます。  ただ、書記長から御質問のとおり、従来これを凍結するということで閣議決定してきておるものを、今回、閣議決定したものを変更するという決定をしたかということにつきましては、変更するという決定はいたしていないということをお答えいたしておるわけでございます。
  39. 矢野絢也

    矢野委員 これは、私は内容論ではなくて手続論を申し上げておるわけでございますけれども、今のような論法でいきますと、凍結という閣議決定がありました、しかし、予算全体の閣議決定がございます、この個々の問題についての、凍結というこの問題の閣議決定の変更の閣議決定はしておりません、こういうことでございますので、GNP一%の防衛費を守らねばならぬという閣議決定、これも今の長官の論法でいきますと、あるとき予算決定で一%以上の予算を組んで、けしからぬじゃないか、これについての閣議決定したのか、それはしておりません、それは予算閣議決定で間に合うております、こういう論法になるわけでございます。  これは重大な手続上の手落ちである。これは内閣運営の上での重大な欠陥である。凍結してあるものがなぜ百億つくのですか――何か言いますか。言うたらまたおかしなことになりますよ。あなたの責任でとまりますよ。
  40. 天野光晴

    天野委員長 続けてください。  山下運輸大臣。
  41. 山下徳夫

    山下国務大臣 今、矢野書記長の御指摘のとおり、これは臨調でも「当面」という表現によって凍結されております。あるいはその後の監理委員会でもそのとおりでございますし、これを受けてその後閣議でも、当面これを凍結する、三機関ともそのようになっておることは御指摘のとおりであります。  ただ、その趣旨をそんたくしますに、やはりだんだん過疎化していく、これからの整備新幹線につきましては、これからの一つの、何と申しますか営業的な面から見て、果たして大丈夫かなという不安もございますし、したがって、国鉄の責任において、国鉄の予算の中からこういう出費をすることはどうかなという趣旨における当面凍結だというふうに私は理解いたしております。  したがいまして、この整備新幹線の実施計画をつくりましてから既にもう十二年経過いたしておりますので、これも書記長仰せのとおり、地域住民から非常に強い要望も出ておる。したがいまして、私どもは今回予算を要求いたしまして、これも御指摘のとおり、党とそれから政府の折衝におきまして幾つかの条件がついておりますので、この条件が満たされなければ、八月といっても実施できないのは当然でございますから、その条件を満たす段階において、あるいはまた、監理委員会がことしの中ごろには一応の答申をお出しになるので、これらと相まって、それらの答申を見ながら、その時点において閣議の決定を変更するということは可能である、私はかように考えております。
  42. 矢野絢也

    矢野委員 総理、これは臨調答申を尊重するという内閣の大方針という立場から見ましても、これは莫大なお金がかかる、十兆ないし二十兆、見方によっていろいろありますけれども、そういうものの突破口を開いた。これは調査費ではない、建設費なんです。事柄が余りにも大き過ぎます。この閣議決定、つまり「当面見合わせる。」というこの閣議決定は極めて重大な閣議決定、これを無視して組んだというこの本年度予算、これはまことにおかしな格好になっておる。  これは委員長、こういう重大な内閣運営の、予算決定の手続についての欠陥、これを見逃して、はい審議しますというわけにはいかない、申しわけないですけれども。このことについて御調整を願いたい。(発言する者あり)
  43. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 御指摘のように、五十七年九月の閣議決定に、おきましては「整備新幹線計画は、当面見合わせる。」こととされております。この閣議決定は現在でも変更されているとは考えていないというふうに思っております。  六十年度予算におきましては、事業費としてとりあえず国鉄及び鉄建公団に、今御指摘がございましたように五十億円ずつ計上いたしておりますが、着手に当たりましては並行在来線の扱い、あるいは国及び地域負担など、どのように事業を実施していくか、そういう方式のあり方、また、国鉄再建監理委員会が鋭意、今再建のための作業をしていただいておりますので、それらの答申との関連等につきまして調整を進めまして、その結論を待って本年八月を目途にこれを行うこととされておるところでございます。これは先ほど申し上げたとおりでございます。  政府といたしましては、着工に向けて、それまでの間前述の調整作業を進めまして、結論が得られますれば執行するという考え方から予算を計上したものでございます。したがいまして、その結論次第で建設に着手するということになりますれば、その時点で所要の手続、それは新たな閣議決定ということを意味いたしますが、その所要の手続をとる、必要になることは言うまでもない、このように考えておる次第でございます。(発言する者あり)
  44. 天野光晴

    天野委員長 矢野君、この問題、理事会で処置を協議します。それで御理解願いたいと思います。  直ちに理事会を開きまして結論を出したいと思います。  その間、休憩いたします。     午前十一時四十四分休憩      ――――◇―――――     午後一時二十五分開議
  45. 天野光晴

    天野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  矢野君の質疑に入るに先立ち、内閣官房長官から発言を求められておりますので、これを許します。藤波内閣官房長官
  46. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 午前中、矢野書記長から御指摘のございました整備新幹線の問題は、臨調の答申、再建監理委員会答申とも関連する極めて大切な問題でございます。  六十年度予算につきましては、再建監理委員会の御意見を聞くべきであったかとも存じますが、本問題の性格上、本年夏に再建監理委員会答申がある予定でございますので、それとの関連等につきまして調整した上で、その結論を待って着工することとしているところでございます。したがって、今後調整の上、着工するとの結論が出れば、その時点におきまして閣議決定につきましても所要の手続を講ずる所存でございます。  現段階におきましては、五十七年九月の閣議決定は生きております。  以上でございます。
  47. 天野光晴

  48. 矢野絢也

    矢野委員 手続上の問題で、閣議決定を修正なさらないで予算を決定された。このこと自体まことに重大な問題でございます。  とともに、行政改革をやっていかなくてはならぬ、財政再建をやらなくてはならぬ、そういう状況におきまして、自由民主党には自由民主党のお考えがこれはあるでしょうけれども、もう辛抱し切れないということでいろいろな圧力が政府にかかっていく。  しかし、今指摘申し上げた整備新幹線の問題、これは何分十兆、二十兆という問題でございます。それが手続なしに、将来の膨大なツケを残すという形でなだれ込んでしまう、そのことを私懸念いたしましたものでございますからお尋ねをしたわけでございます。ぜひ整備新幹線、これはおやりいただくことは党としても必要なことだと思っておりますが、財政上の問題その他、真剣に御勘案いただきまして対処していただきたいと思う次第でございます。  次に、教育問題についてお尋ねをいたしますが、教育費の負担が大変かさんできておる。これはもう統計的にも明らかになってきております。さらにまた、偏差値によって人間の値打ちを決めてしまう。特に高校入試あるいは大学入試に当たりましては偏差値がすべてのような扱いになってきておる。いろいろな人間の美質というものを単なる数字だけで決めてしまうというこの弊害、これは問題だと思います。あるいはまた校内暴力、最近の報告では、依然として校内暴力はあるようでございますが、少し低下傾向になって、そのかわりいじめの問題が深刻になってきておる、こういうことも承知しておるわけでございまして、子供を持つ父兄の方々、大変心を悩ましていらっしゃる。  そこで、総理が、いろいろな角度からのこの弊害を是正するために教育を抜本的に見直そう、こういうことで昨年臨教審が発足をいたしました。公明党も、教育の改革は必要であるという立場から、総理のその御趣旨に賛成を申し上げたわけでございます。  現在、非常に活発に臨教審内部におきまして検討が行われておるというわけでございまして、私は、論議は大いに自由闊達に、総理の言われるとおりやっていただきたい。中にはユニークな御意見もあるように存じております。これはもう論議ですから大いにやっていただいて結構だと思います。公明党も、今の教育のあり方がいいと思っているわけじゃございませんので、自由化という問題につきましても、着実に、確実に改革をしていくという立場から、自由化そのものには賛成でございます。今のままでいいとは思っておりません。ただ、どうも伝え聞く話あるいはマスコミの報道で見ますと、ちょっと首をかしげたくなるような御意見もあるわけでございます。私は、ここで、そういう御意見がいいとか悪いとかをお尋ねしようとは思っておりません。そのことよりも、この臨教審というのは法律に基づいて設置された審議会でございまして、この法律の第一条では、教育基本法の精神にのっとってという目的が明記されておる。そして、第三条には、内閣は、これを尊重しなければならないという尊重義務が明記されておる。論議は自由闊達で結構でございますが、答申ということになりますと、これは教育基本法の精神にのっとっておるかどうか、ここを吟味しなくちゃならぬ、こういうことになるわけでございまして、そういう立場から、私は文部大臣にお伺いをします。  時間ももうございませんので、全部申し上げてしまいますが、私が申し上げる各項目につきまして、教育基本法の精神にのっとったものか、のっとってないものか、あるいは教育基本法の改正が必要であるか、必要でないか、この二つの立場から、個々の問題についての御答弁をお願い申し上げます。  まず、学校体系の問題でございますが、一つは、学校制度、学制は学校設置者が自由に選択できるようにする。例えば、六・四制でも六・六制でも五・四制でも、設置者が自由に選択できるようにする。第二点は、義務教育の廃止または義務教育年限の再検討。三番目には、自宅で修学しても、所定の試験に合格すれば義務教育履修と認められるようにする。学校制度の問題については、以上三点。  次の問題、学校の設立という問題でございますが、学校の設立を容易にし、多様化する。だれでも自由に設立できるようにし、学校の種類を多様化する。二つ目には、私塾を学校として認める。それから、学区制につきまして、第一番は通学区域制限を大幅に緩和し、学校選択の自由を拡大する。義務教育段階でも親に学校選択権を認める。  その次は教育内容、方法の問題でございますが、学校設置者が自由に決定できるようにする。教科書の自由化。こういった問題、それから飛び級の問題。義務教育における留年制度。特定科目だけで進級できるという進級制度。こういった問題につきまして、この是非を論ずるつもりは時間がございませんのでありません。教育基本法の精神にのっとっておるか、おらないか、あるいは教育基本法を改正しなければならないか。この二点についてお答えを願いたいと思います。
  49. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えいたします。  先ほど先生もおっしゃいましたように、臨教審の審議につきましては論議はあくまでも自由闊達にしていただく、したがって、文部省の立場からすれば、自由闊達な論議にいささかでも制約を加えるような発言はすべきじゃないという立場でございます。したがいまして、今の先生の御質問は、具体的な臨教審の論議にかかわりなく一般論としてのお尋ねと、したがって、私も一般論としてお答え申し上げるわけでありますが、そのことをお断りした上でお答えいたしたいと思います。  まず第一の学制、すなわち学校段階の区切りの問題、これにつきましては教育基本法は何ら触れておりません。しかし、義務教育が九年ということはきちっと決めてあるわけであります。それを踏まえながら、例えば六・六制あるいは十二年制などということを教育の効果を高めるために考えるということは十分予想されることでありまして、そのことにつきましては教育基本法の精神に反するというようなことはないというふうに思います。(矢野委員「短縮はどうですか」と呼ぶ)義務教育の九年、これは絶対に短縮できません。  次は、学校設置の問題でございますが、これにつきましては、先生御承知のとおり、教育基本法にきちっと書いてあります。それは、学校教育というものは公的な性格を持つものである、したがって、学校設置者というものは公的な性格の確保できるようなそういう者でなければ、国または公共団体以外の者は設置することができない、こういう仕組みであるわけでございまして、その意味で、だれでも自由に学校が設置できるということは、これは教育基本法の精神にもとるのではないかというふうに考えております。もっとも、教育基本法には「法律に定める法人」、こうなっているわけでありまして、その法律の中身についてまでは触れておりません。しかしながら、教育基本法の精神からいって、公共性が担保される、あるいは継続性が担保される、そういったことが最低の基準になるわけでありまして、そういったものの担保のない、担保されないような設置者が設置するということは、これは教育基本法に反するというふうに思っておるわけであります。  それから私塾もそれと同じようなことなんでございまして、今申したことで私塾についてのお答えにもなっておろうかというふうに思うわけであります。  それから義務教育制度の廃止または義務教育年限の改定でございますが、この義務教育制度そのものの廃止などということは、これはだれが考えてもおかしいわけなんでありまして、これこそまさに教育基本法の精神に反する。それから義務教育年限の改定でございますが、これは御承知のとおり教育基本法に九年というふうに書いてあるわけでございまして、したがってこれを変更するということは教育基本法を改正ないし修正しなければできない話であります。ただ、義務教育年限を動かすことがよりよい教育をするためにプラスになるのかどうかという点を考えて精神にもとるかどうかは判断すべきものではなかろうかなというふうに思うわけであります。  それから学区を緩和し、学校選択の自由を拡大するという問題でありますが、これも一般論として申し上げるわけでありますけれども、このことは教育基本法には触れられておりません。しかしながら、教育の内容を重視する、水準を向上させるということが実は行政の責任でもあるわけでありまして、学区を無制限に緩和するなどということになってまいりますと、教育の現場に混乱が起こり、結果として義務教育水準の向上に反することにもなりかねませんので、教育基本法には書いてありませんけれども、慎重に対処すべき問題ではなかろうかというふうに思うわけであります。  教育内容でございますが、これは教育基本法第一条に教育の目的がはっきり書かれております。したがって、教育の内容等は少なくとも教育基本法の精神にのっとることが絶対的な条件でありまして、これを担保し得ないような場合には、これは教育基本法の精神から見て問題があるというふうに思うわけでございます。  それから教科書の話もございましたが、教科書も今申したことと同じことでございまして、教育基本法第一条に定める教育目的の達成を担保するための重要な施策として教科書につきましては検定等の制度があるわけでありまして、これを自由にするなどということは、教育基本法第一条に定める教育目的の達成が極めておかしくなるわけでございますので、この点も自由というわけにはまいらぬというふうに思っておるわけであります。  次は、学年制の弾力化の問題でございますが、これは先ほども申し上げました学制の問題ともかかわるわけでおりますけれども、義務教育の九年、これは教育基本法に明記されておりますが、その他の、すなわち高等学校あるいは大学のことにつきましては、別段教育基本法には書いてありません。したがって、学年制の弾力化というものは、教育基本法を改正しなくともできる問題ではあろうと思います。また、そのやり方によっては教育基本法の精神に反することもあるかもしれませんが、よりよい教育をするためのことであるならば、教育基本法の精神に反することもなかろうというふうに思っておるわけであります。  それから、自宅修学の話がございましたが、これは教育基本法で普通教育を受けさせる義務というものを親に課しております。その義務を免除する場合も実は、学校教育法第二十三条に書いてあるわけでありますが、それは真に「やむを得ない事由」に該当する場合だけでありまして、真に「やむを得ない事由」に該当しないのに学校に行かせる義務を免除するということは、これは教育基本法の精神からいっていかがなものであろうかというふうに考えるわけであります。  以上でお答えを終わります。
  50. 矢野絢也

    矢野委員 総理、私の時間はもうございませんので、最後に御答弁いただきたいと思いますが、学校教育の水準を維持するという立場からやりたくてもできない改革というのもあろうかと思います。これはしかし、何としても工夫してやっていかなくてはいかぬ。また、冒頭に申し上げたいじめの問題、偏差値の問題、入試の問題、教育費の問題、これも考えていかなくてはならぬ。ただ、私が御質問申し上げたように、今お答えがありましたが、これはあくまでも一般論としてお尋ねをし一般論としてお答えがありましたが、例えば義務教育の年数の問題、あるいは学校を設立する場合公の性質を持つという立場から、一人で塾をやっておる、校庭もありませんというような場合、あるいは、義務教育段階からもう英数国だけやるんじゃみたいな教育のやり方等々、やはり教育基本法の精神にのっとっていないという考え方もある。あるいはまた、教育基本法そのものを改正しなくてはならぬという考え方もある。したがいまして、総理、これは答申を見なくちゃわからぬことでございますが、この段階で自由闊達に御検討いただくことは結構でございますが、もし答申が教育基本法の精神にのっとらない場合、もっと極端に申し上げて、教育基本法を改正しなければその答申を生かすことができない、このような答申が出ましたときに、総理はその答申を、これは法律の趣旨から見てだめだからもう一遍やり直してくれというお立場をとるのか、あるいは教育基本法改正の方向をお選びになるのか、お答えをいただきたいと思います。
  51. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 教育改革は、最初に矢野さんが申されましたように、現在の学校教育の目につく欠陥、例えば偏差値であるとか突っ張りであるとかいじめであるとかそのほかの、目につくこれらの欠陥を直すということが、これは現象的にも必要であり、それを直すためにいろいろな制度の問題とか内容の問題に入っていかなければならぬ。そういう意味においては、教育改革は子供と母親のための教育改革である、簡単に言えばそうも言える。一番心配しているのは子供自体であると思うのです。したがって子供と母親のための教育改革をやりたいというのが我々の気持ちの中にある感情であります。  それで、では臨教審から答申が出てきた場合に、もし教育基本法に反するようなものが出てきた場合どうするか、こういう御質問でございますが、これはまず「教育基本法の精神にのっとり、」という言葉が何を意味するかと私考えますと、やはり教育基本法というものができているこの建前と申しますか、あるいは大枠と申しますか、あるいは基本的精神と申しますか、それを逸脱してはならぬ、そういうものであるだろうと考えます。したがって、教育基本法をよりよくするというような場合の改正は逸脱するものではない。しかし、よりよくとは何を意味するかと言えば、一条以下に書いてあるその趣旨に沿っているか、沿っていないか、そういうことによって判定されるものであろう。すべてさわってはいかぬというものではないと思うのです。教育基本法も法律でございますから、これはいつかも申しましたように、よりよきものにするために常時見直す、そういう対象ではあるだろうと思います。しかし、大事なことは、今つくられている教育基本法の建前あるいは枠、大枠あるいは基礎的精神、これを守りつつ必要なる措置を行う。出てきたものをひとつよく検討いたしまして、そしてこれがそれに合っているや否やということを政府は独自の考えから判定をして、そして対処いたしたい、そう思っております。
  52. 矢野絢也

    矢野委員 ちょっとこれは重大な御発言でございます。「教育基本法の精神にのっとり、」この精神、これは主観的に判断のできる問題でございます、精神とは何ぞやということになるわけでございますから。したがって、主観的にその答申は精神にのっとっておるという解釈も可能でございます。また、精神にのっとらないという解釈も可能でございます。  問題は、昨年、私ここで一時間かけて教育問題をお尋ねしたときに、教育基本法を変えないということをあなたはここで明言をされたわけでございます。その教育基本法を変えないという前提で臨教審設置法の審議を行い、そして教育基本法を変えないという前提において第一条、教育基本法の精神にのっとってという文章になっておるわけでございます。ところが、今の総理のお答えでは、精神さえ守られておれば法律の方は改正していい。精神が守られていればいいという言葉は、極めて主観的な判断でこれは決められてくる。つまり教育基本法は変えられることができるという御答弁をなさった。これは本当に、品の悪い言い方になりますけれども、昨年の国会審議あるいは臨教審設置法の審議で皆さん方は、特に総理答弁をごまかして審議会をつくったということになるわけでございます。基本法を変えないという前提で臨教審設置法のときに御答弁をなさり、そしてこの段階において、精神さえ守っておれば法律は変わってもいいんだ。これはまさに、失礼ですけれども、詐欺だと言われても仕方がございません。
  53. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 矢野さんの御質問が、もしそういうようなものが出てきたらという仮定の質問で出てきたから私は御答弁申し上げましたが、政府は教育基本法を変えるという考えはございません。これは確認しております。
  54. 矢野絢也

    矢野委員 時間も参りましたので、これで終わらしていただきます。  あと政治倫理、定数是正、民間活力の活用等、伺いたいことが残ってしまいましたが、同僚議員に任せたいと思います。  委員長並びに委員皆さん方、閣僚の皆さん方に大変いろいろと御面倒をおかけいたしました。心から御礼を申し上げます。ありがとうございました。
  55. 天野光晴

    天野委員長 これにて矢野君の質疑は終了いたしました。  次に、塚本三郎君。
  56. 塚本三郎

    塚本委員 私は、民社党を代表いたしまして、当面する内外諸情勢の問題について質問いたします。  まず最初に、民社党は中小企業者のためにあらゆる分野で政策の研修を重ね、業者とそのもとに働く店員さんや工員さんの立場を政治の場に反映させてまいりました。したがって、私どものところにいろいろの陳情が寄せられます。まずその点から、小さい問題だと思われるかもしれませんが、徐々にお尋ねをいたします。  まず最初に、昨年の国会で電電公社の民営化が決まりました。今までは官公庁の下請の仕事に対して、特に中小企業に不利益にならぬようにと、官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律が適用されていました。しかし、民営化されてもこの電電という巨大企業が営利一本で進まれるということになると、大きな混乱が生じます。ある程度の期間は、関連して育ってきた中小企業者にはこの法の精神を適用させることによって、一時的な混乱を招かぬように配慮をすべきだと思いますが、郵政大臣のお考えをただしたいと思います。
  57. 左藤恵

    左藤国務大臣 お答えを申し上げます。  今先生御指摘の点につきましては、「国等」というのが直接の対象にはなっておりますけれども、過去、今日までの経緯といったものにかんがみまして、特殊会社ではございますけれども、私はやはりそういった線を貫いていくべきである、したがってそういったことについて指導もいたしたいと思いますし、お話のような中小企業に対します発注の割合を下げることのないように十分配慮してまいりたい、このように考えております。
  58. 塚本三郎

    塚本委員 次に、昨年成立をした風俗営業法の施行に際し、小型の飲食店、とりわけ喫茶店などにおいては、ゲーム機を設置されているところが多い。この際、二、三台を設置してあれば、実はお茶を飲みに来た人がチョロンチョロンと百円玉を入れてくれる。だから二、三台あればそれだけで女子の給与ぐらいは出るというふうに彼らは楽しみにしています。ところが、それを撤去せよ、さもなければ風俗営業になるから許可を受けろということになりますと、零細企業者の店は困ってしまいます。よって、警察当局と相談をいたしました結果、中小零細企業の店には迷惑をかけるようなことはしない、そのため店の面積の、お客様のですね、一〇%までの広さの間には設置してもよろしい、それならば大体皆さんの心配はなくなるのではないかという回答を得ました。警察庁の長官、それに間違いありませんか。
  59. 鈴木貞敏

    ○鈴木(貞)政府委員 お答えいたします。  喫茶店等に設置されまするゲーム機につきましては、今言われたとおりの線で処置してまいりたい、こう思っております。
  60. 塚本三郎

    塚本委員 ちょっとその場におってください。  もう一つだけ、長官、その一〇%というのはぎりぎりの線で、一〇%を超えたらさらに一台いいとか、ちょっと足りなければそれはだめだとかということではなく、やっぱり小さい店だと一台ふやすかふやさないかということが、二、三台という限定の中ですから、大きな問題になります。したがって、そういうときにはぎりぎりの升にはかったようなことでなく、大体四捨五入ぐらいで、まあ半分以上ならば一台、足りなければ、ちょっとぐらい多くても、それは無理だよ、大体その基準は四捨五入という基準で適用する。というのは、警察はもう強い権力を持っていますから、業者が震えるんです、これは。ですから大体そういうときは四捨五入でいくというようなことでようございますか。それだけ確認をしておきたいと思います。
  61. 鈴木貞敏

    ○鈴木(貞)政府委員 基準の運用につきましては、一〇%という趣旨を十分踏まえまして、実情もまた十分踏まえまして、弾力的にひとつ運用していきたい、こう思っております。
  62. 塚本三郎

    塚本委員 大体四捨五入ということでいいですね。
  63. 鈴木貞敏

    ○鈴木(貞)政府委員 四捨五入という、そういう言葉を私は今使うのを遠慮させていただきますが、実情を踏まえて弾力的に…。
  64. 塚本三郎

    塚本委員 それが問題になるんだったら、何万、何十万とあるんですから。
  65. 鈴木貞敏

    ○鈴木(貞)政府委員 十分実情を踏まえまして弾力的に運用してまいります。
  66. 塚本三郎

    塚本委員 その弾力的というのは四捨五入を基準としてということでいいかということを聞いているんだ。
  67. 鈴木貞敏

    ○鈴木(貞)政府委員 今言われました趣旨を踏まえまして、実情を踏まえてやってまいります。
  68. 塚本三郎

    塚本委員 それでは、その実情というのはやはり四捨五入というふうに受け取って了承しておきたいと思います。この点、大臣ようございますね、公安委員長
  69. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 長官から答弁したとおりでございます。
  70. 塚本三郎

    塚本委員 やはりこの点は百軒や二百軒じゃないのです。少なくとも二十万軒ぐらいあるのです。その中でいわゆるそういうことにひっかかるのは、何万と適用されてまいりますから、その点は長官もわかったかわからないか、私がわからないぐらいだから国民はわからないと思うのです。しかし私はあくまで、まあ一般常識ということですから四捨五入ぐらいの程度というようなことに受け取って、これを了承してまいりたいと思います。  次に中小企業者、退職金を払うことができないという小さな業者に対しては、業者が集まって退職金に対するいわゆる共済制度というものが確立されております。その中小企業退職制度の中では、若干ですが、政府、大蔵省が助成金を出しておるのです。ところが、財政の問題等があったんでしょう、労働省などから実はその退職金の額をふやすとその割合で金を出していただける。ところが、五年間据え置かれておるのです。したがって、中小零細企業者だけは共済で退職金を払う段取りが実はスライドができていないということですから、もう五年間も据え置かれておりますから、これは大蔵大臣、担当大臣と御相談の上善処していただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  71. 竹下登

    竹下国務大臣 内容を正確に理解をいたしておりませんが、御趣旨の趣でございますので、担当大臣と十分協議をさせていただきたい、このように考えます。
  72. 塚本三郎

    塚本委員 次に、電気工事の業界における要請がございます。  労災保険の適用をいたしまするとき、実は既存の建物の中における工事の場合においてはその料率は千分の二十八、ところが新設の場合は建設業者が千分の三十三ということになっております。しかし、新設の場合でも屋内における工事だけは既設と同じように建物ができなければ中の工事はできないんだから、安全なんだから、千分の三十三ではなくして千分の二十八を適用してほしい、こういう要請があるわけです。これはやはり建設会社と一括してやられてしまいますから千分の三十三そのままだということになっております。これはやはりでき上がってからしか、むしろ新設の場合は頑丈な建物の中における工事であるから、既設と同様に扱うことは不合理ではないというふうに思いますので、基準の改定を要求いたします。これは労働大臣かな。
  73. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 よく検討したいと思います。
  74. 塚本三郎

    塚本委員 大臣、これは検討だけではだめなんですよ。常識で考えてそうだというんですから。
  75. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 新設工事の場合は、電気工事は、塚本先生御承知のとおり基礎工事、本体工事、設備工事など一体的に行われるため災害の度合いが高くなる、こういうことで過去三年間の災害実績等を踏まえて料率、その基準を決めておりますし、また見直し作業も行っておるわけでございますので、そういう点を踏まえて御趣旨に沿って検討したい、こういう趣旨で申し上げたわけでございます。
  76. 塚本三郎

    塚本委員 わかりました。大臣はちょっと勘違いしておいでなんだ。基礎工事からおっしゃいますが、建物ができてしまってからの屋内工事に限ってというふうに申し上げておきますから、それは異存ないと思いますが、検討してくださいということで御理解いただけると思いますから、御要望申し上げておきます。  もう一つ、やはり官公需などの受注に関しまして、中央官庁などにおきましては建設会社と中の工事とは分離発注がなされております。しかしながら、まだ地方、田舎におけるところの自治体などにおきましてはやはり一括して、そうしてそのまま建設会社に受注されてしまうと、こういう業者等はその下請としてやらされてしまいます。独自性がなくなるだけではなく、下請代金等も、支払いの関係で親会社がみんな取ってしまって、現金で官公需はいただいて、そして支払いは手形で、金利まで実は建設会社が稼ぐというような状態になっております。それを防ぐために実はこのようないわゆる秩序が政府として立てられたわけです。しかし地方自治体等、あるいは官公需でも地方におけるところの工事等は、大部分いまだ分離発注がなされておりません。したがって、中小企業者の育成の立場から、全く性質の違った仕事でありますから、分離発注するように指導していただきたい。このことは、建設大臣か通産大臣ですか、どちらでしょうか。
  77. 木部佳昭

    ○木部国務大臣 塚本先生御承知のとおり、建設業界の九〇%以上は中小企業でございます。特に、地方の建設業界の振興を図るために、官公需法に基づきまして中小企業者に関する国の契約の方針というものを閣議でいろいろ決定いたしておるわけでございます。今お話しのように、私ども地方を見ておりますと、分離発注の問題その他についていろいろな意見がございます。今日まで今申し上げましたような趣旨で、いろいろ工区を分けるとか、それから今申し上げる分離発注、そういう問題等につきましては、関係方面の機関とよく相談いたしましてそうした指導をいたしておりますが、今後とも鋭意努力をしてまいりたいと考えております。
  78. 塚本三郎

    塚本委員 ぜひ指導を徹底していただくように要望申し上げておきます。  次は農業問題。我が国の食糧自給率は総合で七一%、穀物がわずか三二%と、それぞれ前年度より低下しております。よって、将来の食糧事情に不安を持っている人の割合は六四%、不安なし三一・五%と、不安を持っておる人の方が倍になっております。そして国民の七五%が自給可能な食糧は自給すべきだと考えております。総理も本会議で自給率をふやす答弁をしておられますが、どのような方策をお考えか、お伺いしたいと思います。
  79. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 塚本先生にお答えいたします。  自給率をふやすことにつきましては、お米等主食につきましては、食糧を安定供給する役目を持っておるものですから、そういう意味におきまして実は国内でできるだけ自給するという建前をとって、いろいろ政策を現在やっておる段階でございます。
  80. 塚本三郎

    塚本委員 総理、これはちょっとよくわからないのですけれども、もう一遍確たる、総理みずからがおっしゃったのだから、例えばこういうことを考えておりますと、本会議でおっしゃったのだから、それの御見解を述べていただきたい。
  81. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私の記憶では、自給率は穀物については三二、三%でしたか、総合的に見ますと七〇%台であると思っております。やはり昨年以来の経験等から見まして、天候のぐあいによって国民の皆様方心配をかけることがないように政治は配慮すべきものであると思っております。水田稲作等につきましては、今までかなりの財政負担でありましたのでこれの調整をやってきたわけでありますが、一たん天候がうまくいかなくなると心配が出てくる。ああいう経験も踏まえまして、やはりある程度の安心できる安定供給ということを政治としても農政としても考えるべきである。ただ問題は、財政負担とかあるいは生産性の問題がある。対外競争力の問題もある。余り過保護的な政策をとり過ぎますと、かえってこれはまた生産性を阻害したり、あるいはみずから強健な体質になるという精神的な要素も阻害される危険もございます。そういう面も考えつつ、やはり基盤整備あるいは情報や技術の向上、そのほかいろいろな面におきまして考うべき施策を今後も実行していきたい。やはり基盤整備とか生産性の向上というのが一番大事ではないかと思います。
  82. 塚本三郎

    塚本委員 全く賛成ですから、それは強力に、今ここでは時間がございませんから具体的にお尋ねすることは避けますけれども、強く要望いたしておきます。  そうしますと、主要食糧の備蓄制度を法制化せよ、民社党は、財政の問題もありますけれども、いざといったときには大変な問題になるから主食に対する備蓄制度、スイスのごときは憲法で決めておるようですね。こういうことに対して総理はどうお考えでしょうか。
  83. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 塚本先生にお答えします。  先生御存じのことで、米は国民の主要食糧であり、不作その他の不測の事態に備えて、その安定供給を図っていくためにはある程度の水準の在庫を保有しておくことが必要であるのは、先生御高承のとおりでございます。このために、水田利用再編対策第三期対策の下で、ゆとりある米管理の確保と、三たびの過剰を招かない、この両面に留意しつつ、計画的な在庫積み増しをしていくことが大切だと思っております。そんなことで、この在庫の管理に当たっては、安全性の確保に十分配慮し、低温倉庫の活用を図る等により良質の米の供給を図ってまいりたいと考えております。  そんなことで、以上のような米の在庫保有についての基本的考え方等については、食管法に基づき毎年定めることとなっております米穀の管理に関する基本計画の中で明らかにすることにより、国会決議趣旨を踏まえながら、米の在庫管理体制の確立を図ってまいりたいと考えております。
  84. 塚本三郎

    塚本委員 それで、在庫管理ではなくて、備蓄を法制化せよという意見については、総理はいかがお考えでしょうか。
  85. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この点は、前に国会塚本さんかどなたかにお答えしたと思いますが、法制化という点にすぐ踏み切ることはややちゅうちょしておるものであります。これはやはり行政の弾力性と申しますか、要するに、天候その他の水準によって非常に移動していくものですから、政府はやはり自分で一定の水準を決めまして、百万トンとか百五十万トンとか一定の水準を決めて、それが維持できるように、毎年毎年弾力的、適切な施策を実行して、そして安定水準を維持していく、そういうことの方がより望ましいと考えております。
  86. 塚本三郎

    塚本委員 この問題は基本的な問題ですから、やはりもっと深くその担当委員会論議を深めてまいりたいと思います。  もう一つ農業問題で、ことしは、総理もおっしゃったように、国際森林年の年でございます。ところが木材は、御承知のとおり治山治水にも決定的な影響を与えますけれども、今の会計でいきますと、伐採して売ったそのお金で森林を保護するという状態ですから、需要が緩んでまいりますると採算がとれなくなるというような形になってきておることは御承知のとおりです。しかし、あの戦後たくさん植えたところの森林がもう育ってきております。でも、細いんです。これは間引きをして、そして間をあけてやらなければ太くなれないのです。かつては、間引きしたものが建築の足場丸太とかいろいろなことに利用できたが、今は鉄材にかわってしまっておるから売れないということで、間引きの労賃ができないから、木が茂らずにそのままおる。このことが治山治水にも大きな影響を与えております。だから、損得なしに言うわけにはいけないでしょうけれども、やはりこれは河川の金なんだ、あるいは都会の上水道の金なんだというふうに考えて、独立採算だけではないように検討していかないと、将来禍根を残すのではないか。  さらに、その間伐したものの小さいものは、例えば今学校などは全部コンクリートなんですね。雨が降れば汗をかいて、靴下を脱いで子供は歩かなければならない。せめて学校の廊下ぐらい板を敷いてやったらどうでしょうか。あるいは腰板ぐらいは板を張って、そして展示物を画びょうで押さえてやれる。木の上に住むことが人間にとっては一番大切なんです。子供のときからそれぐらいのこと、まず学校の廊下や教室にはそういう小さないわゆる切れっ端等は工夫して、木材需要を喚起するということと並行して検討していただきたいと思います。いかがでしょうか。
  87. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 塚本先生にお答えします。  二つございます。一つは間伐の促進、それからもう一つは間伐材の利用をもっと開発したらどうか、この二点だと思います。  それで、実は我が国では、先生御存じのことで、戦後営々として造成されました人工林の大半が間伐の必要な時期に来ておるということでございまして、特に先生御指摘のとおり、森林の持つ水資源涵養性あるいは国土保全等の機能を維持拡充するためには適正な間伐が必要だということは、御認識のとおりでございます。このため、かねてから間伐の促進を図っていたところでございますが、六十年度においては既往の施策を拡充して、地域の主体的な取り組みのもとに森林整備計画に沿った間伐の計画的あるいは集団的な実施から、間伐材の利用開発の促進に至る総合的な間伐促進を実施しております。  また、間伐材の利用でございますが、実はこれは先生御存じのことでございまして、かつては足場丸太とか坑木に使っておりましたが、非常に需要が減っております。そんなことで、LVL、幅はぎ板、こんなことを考えながら、新製品の開発普及あるいは建築物への間伐材利用の促進などに努力しているところでございます。また、六十年度からは、地域に適した間伐材の利用システムの開発普及等を行って需要の喚起をしてまいりたい、こう思っております。  ただ、問題は先生先ほどおっしゃったようなことでございまして、今林業というのは大変採算が悪うございまして、例えば新規に造林しても利回りが二%に満たないという試算もある、そんな苦しい状況にあります。そして、例えば住宅、昭和五十五年に比べまして約三割減でございます。あるいは価格も三割減、そういう形の中でどうするかということで、今全力を尽くしておりますので、何分の御後援をお願いしたいと思うわけでございます。
  88. 塚本三郎

    塚本委員 文部大臣、私の質問に答えてください。
  89. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えいたします。  先生御指摘のように、木というのは吸湿性がある、湿気を自動的に調節をしてくれる、また木の廊下の上を子供がはたして走り回るということは、非常に足を刺激をして足腰が強くなる、そういう意味で学校教育施設に木がたくさん使われることは望ましいことである、こういうふうに考えております。ただ問題は、火災に弱いという点があるわけでありますが、その点を考慮しながら学校施設等につきましては、床材、壁等々の内装材料として木材が使われるように私どもはできる限りの努力をしていきたい、こう考えておるわけであります。  そして、具体的には木材を床、壁、天井等に使用した場合には、補助単価の加算を行う、こういうことをやっておりまして、五十九年度では三百四十校さような措置をいたしましたが、これからもさらに推進してまいりたい、こう考えております。  さらにまた、「教育と施設」という雑誌があるわけでありますが、この「施設」の中にも「木肌の温もりに包まれた教室」ということなどもいたしまして、木材が学校教育施設の中で使われるように努力をしているところでございます。これからも、なお一層努力してまいります。
  90. 塚本三郎

    塚本委員 特に廊下等は、もうコンクリートの上でなくしてやはり床の上を生徒が走ることのできるようにということを強く要望して、施策の強力な推進を期待いたします。  次に、医師の問題でお尋ねをいたします。  大学教育の中でお医者様の数が今どんどんとふえつつあります。厚生省は、昭和四十年でしたか四十五年でしたか、六十年をめどに人口十万人に対して医師は百五十人、歯科医師は五十人という目標を立てて、そうして倍増してまいりました。ところが、昭和六十年に至る四、五年前にその目標は達成されました。私はその時点で、当時の厚生大臣園田さんに、もうどんどんと倍出てきているんだから、ぼつぼつ定員を減らしなさい、これは国費も随分かかるんですね。一人七、八百万ずつ補助金が出ておるはずです、国費に対しては。ですから、これは無理につくれば、どうしたってお医者さんの数が多くなれば健保の金も食わざるを得ない、結果として。だから、今から締めなさいと言ったが、大蔵省、文部省がなかなかそれを実行していただけなかった。そうして、やっと昨年森文部大臣が、文部省も権限縮小を嫌がっておったと私は見ますが、いたし力なくやりますと返事をなさった。一体実行がどうなっておるのか、文部省お答えをいただきたい。
  91. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えいたします。  医師が過剰ではないかという問題につきましては、先生御指摘のように、厚生省の中に医師の過剰問題についての中間答申が出されましたので、それを文部省所管の関係大学に送付をいたしまして関係大学の意見を聴取して、それに基づいて今後適切に対処していくということにいたしておりますが、前の国会で先生の御指摘になった具体の問題につきましては、六十年度におきまして愛媛大学医学部の定員の減、百二十人の定員を百人にするという措置はいたしました。今後、文部省の中に医学教育改善に関する検討会議を設けたわけでありますが、その検討会議で医学教育の望ましいあり方を検討すると同時に、定員問題につきましても検討してまいる、こういうことにいたしておるわけでございます。
  92. 塚本三郎

    塚本委員 これは検討委員会の、文部省が案をつくって出したのを見ますと、昭和七十年、まだ十年先。ですから、六年ですから六十四年からぼつぼつ減らそうではないか、こういう案です。ここで大臣が答えて、それから十年先に実行しよう。しかも文部省が答える五年前に、私は厚生大臣に約束を受けているのです。何もお医者さんを応援するわけじゃないけれども、どんどんとふえてしまっておる。我も我もとなって、しかも国費をどんどんとつぎ込んでおるという行き着く先がどうなるかわかり過ぎておるから、六年たたなければこれは出てこないのでしょう。ですから、このむだを省いて、その金があるならばもっと、国際協力などで病院をつくってあげても、日本の病院だけれどもお医者様はアメリカの研修をした人しか来ないのですよ。中国などそうでしょう。東南アジア、アフリカ、そうでしょう。何十億という金をかけて病院をつくってあげても、みんなアメリカで研修した人が来ておる。だから、器具も薬品も全部アメリカのものしか使えないということになるから、余ったら国際援助の金をそういうふうに回して、日本で国公立の病院で養成してあげれば、それは経済援助の金に振り向けることもできますし、日本の薬から器具まで使っていただくことができるのだから、文部省、やり方は幾らでもあるのです。  だから、こういう混乱を招かなくて、既に厚生大臣が、もう相当前にお亡くなりになった方だから大体おわかりになるでしょうが、それが実行されて文部省がやっとここでおっしゃって、今一つそれが実行されたということですから、特に歯科などの問題は、国公立は十年前に倍にしてしまったのです。だからわあっと来ていますから、住宅地へ行ったらどこへ行ってみても何々歯科建設予定地ばかりが全部出ているわけです。こういうことに今なっております。だから、国費を使うむだを省いて、もっと有効にそのことをやりなさいということを申し上げておるのです。  それで、この際特に私は、私立はやはり自分の金で施設をつくり教員を養成しているから、急激に減らせば採算の問題で経営が危なくなります。しかし、国公立の場合は急に倍にふやしたのだからもとに戻しなさい、そして、もし教員など、余った施設があるならば、経済援助等を兼ねてもっともっとこれから力を入れていかなければならない方に振り向けることができるから、削減するにしても国公立と私立のバランスをとりなさいというふうに期待しますが、その点だけ大臣お答えください。
  93. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほど先生もおっしゃいました、七十年度を目途に医師の一〇%、歯科医師の二〇%というのは厚生省の検討委員会の中間意見でございまして、文部省としてはその数字は一応受けましたが、医科大学あるいは歯科大学等の定員を扱う、それから教育を扱うのは文部省でありますので、それを参考にしながら先般文部省の中に検討委員会を設けたわけでありますけれども、その検討委員会では望ましい医科教育、歯学教育のあり方、それから国際化に対応する医学教育、歯学教育のあり方等々も検討対象でございますので、今先生のおっしゃったようなことも当然検討の対象になります。  それから、今御指摘の国公立対私立のことでございますが、先生のおっしゃったことも極めて合理性があるように思われますので、十分参考にしながら対処していきたい、こう考えております。
  94. 塚本三郎

    塚本委員 次は、年金客船について御質問いたします。  聞かれたことが余りない方も多いと思いますが、国民が拠出した各種年金や共済はたくさんお金が集まっております。その一部を使用して国が旅客船を建造して、広く国民の利用に供することで、国民に海洋国たる日本を再認識させ、未来への希望と展望を開くことを考えたらいかがであろうか。日本の国は海洋国なんです。ところが、連休になると海や山へは車で動けませんね。そして宿泊施設等はもう倍から何倍か取られてしまうということで、行くに困っておるというのが今日の状態です。  したがって、この際は海に出ることを考えたらどうだ。世界一の造船王国だけれども、客船はほとんどないでしょう。これからは海の時代だ。そこにはロマンがあるではないか。若者の希望があるではないか。お年寄りも、もういわゆる定年になったら時間の過ごしように困っておるということだから、この際は、年金と言ったけれども、年金じゃなくてもよろしい、共済も含めて、そういうことに対して、旅客船をつくってそういうものに乗り出そうということを提唱いたしますが、運輸大臣、いかがでしょう。
  95. 山下徳夫

    山下国務大臣 ただいまの御質問でございますが、私は、このことにつきましては運輸大臣というよりも、今御指摘のとおり、これはロマンがあり、若い者の夢がある、いわゆる政治家としての一つのアイデアとして大変結構だと思う次第でございます。  ただ、これは財源問題等につきましては厚生省の所管かと思いますけれども、でき上がりましたこの年金客船、恐らく相当のものを大体お考えではないかと思うのでございますけれども、そういった豪華と申しましょうか、大型の客船をでき上がった後に運航し、要するにその経費がどのように維持されていくかという点が一つ問題であろうかと思いますが、御趣旨は大変結構かと思います。
  96. 塚本三郎

    塚本委員 一つ想定をしなことでございますけれども、今厚生年金だけで四十七兆あります。七%の利息として三兆四、五千億、利息だけで出るのです、年に。その利息の三%だけをこれに活用すると一千億できるのです。したがってこの一千億を、実は豪華客船世界一周クィーン・メリー号というと大体二隻ぐらいですが、そうでなくて、香港、台湾あるいは北海道、韓国等ならば、豪華といった客船であっても超ではないが、大体五隻ぐらいできる、千二、三百人から。だから四十七兆のうちの利息が三兆四、五千億。その利息のわずか三%の一千億ぐらいをこれに充てたらどんなものであろうか。共済はまだほかに膨大な金額があるはずですね。  そうしてまず退職者に、御苦労さんであった、今船は高いから行かないのですが、おれたちの掛金の船なんだということになると相当安くなりますし、あるいは一挙にそういうふうにすれば造船業界が繁栄をしてくるし、船員の雇用ができるし、あるいはまたそこで勉強ができる。私たちもかつて洋上大学といって、船の上で、実は香港まで乗る中で、講師、大学の先生、飛行機で香港まで行って、帰りにそこで二日ばかりかかって講義していただいた。自民党さんも何度がおやりになったはずです。ところが、今は船がないのです。外国船をチャーターしなければならない。今、日本じゅうでわずかに二隻あるだけです。ですから、趣味も娯楽も教養もあらゆるものを備えて、この際はやはりそういうことを考えていただいたらどうであろうか。  アメリカの状態を調べてみますと、この十年間に実は旅客の人口が、クルージングといいますか船ですよ、五十万人が十年間で三倍の百五十万人にふえたそうです。しかもその八〇%はアメリカ人、よく調べてみると、やはり高齢者の時代が来たということ。時間ができてしまった。それから、お金があり教養の高い人がほとんど乗るのだそうです。日本は、そういう意味ではぴったんこだと言われております。やがてはそういう時代が来るから、政府がそれに実は手をつけたんだよ。中曽根総理のロマンというものをここに着手していただいたらいかがであろうか。  そういう意味で、まあ年金客船懇談会とでも名のつくようなものをつくって、つくった方がいいか悪いかということから検討し、そしてどの金でやるか、あるいは今の運輸大臣のようにどうして維持するか等も含めて検討するところの、いわゆるそういう懇談会のようなものを発足されることがいいのではないかと思いますが、総理、いかがでしょう。
  97. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 非常に明るい希望のあるお話をいただきました。採算ベースその他の問題もありますから、政府部内で、じゃ検討させていただきます。
  98. 塚本三郎

    塚本委員 政府部内じゃだめなんですよ。いつでもそうすると役人が、金が減って価値が下がってくると、こうおっしゃるのです。だから、もう少し年金の納めた代表者も、共済の納めた代表者も、あるいはできるなら造船界からも船乗りからもみんなが集まって、国民の中で、おれたちの金なんだよというふうにしなければだめなんですよ。お役人がやると、いいことはいいけれども、一つでも落ち度があったらバッテンだということになってしまう。エスカレーターなんだから、自分で歩く必要はない、黙っておっても上げられる、こういう発想はだめなんですから。総理、それは一番お嫌いなはずでしょう。  ですから、やはり総理が中心になって、そうしてあらゆる層を網羅して懇談会、きちっとしたものでなくていいです、そういうふうに御検討いただきたいと思います。もう一遍お答えいただけませんか。
  99. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 懇談会をつくるとすぐしかられまして、どうしたものかと思っておるわけでございますが、しかし、せっかくの御提案でございますから、そういう関係者の意見もよく聞くような手段を講じつつ、よく検討させていただきます。
  100. 塚本三郎

    塚本委員 ぜひこれは、できなければいたし方ないが、無理は言いません、国民の預かった金ですから。でも、やはりわずか、利息ですよ、これは。元金をつけるのじゃないですから。利息のわずか三%、百分の三ですから。しかも、なくするのじゃないんですから。これが国の手でできたならば、利用者も私の船なんだ、オーナー気分を養うことができるし、これもただじゃなくて、みんなも乗るときには安い料金を出していただくということになるのだから、私は、損がないし、むしろ造船界などのいわゆる発展によってそれぐらいの金は増収で出てくるのじゃないか、ちょっと大げさかもしれませんけれども。ぜひそのように希望いたします。  次は、自動車の損害賠償責任保険の加入が強制的に義務づけられております。  これは、いわば自動車の所有者にとっては税金と同じなんです。この保険金額がずっと高額値上げされてしまったわけなんです。税金と同じだという気分をドライバーは持っておるのです。五千万人のドライバー、バイクを含めて六千万台と言われるところのこの保有者に対しまして、大蔵省は五十九年の十月二十四日、審議会で料率の四九%の引上げ方を示しました。ところが、そういうことに対して、十二月十九日の答申において、四九%はこれはひどいぞというようなことで、二〇%下げて二九%の引き上げの答申をいたしました。そして一月の二十二日、大蔵大臣、あなたはその答申どおりに認可をしました。  ところが、その中の六〇%、二千数百億は運輸省の予算の中に計上するのだそうです。だから、これは予算で審議しておる最中に、上げるだけ先に決めてしまって、そうして増税だ増税だ、こう言われておるときに、二九%も上げて取ることを認可してしまって、後から運輸省の予算の中で審議をお願いしますという形は、これは逆じゃありませんかという意見が強いのですが、大蔵大臣、いかがですか。
  101. 加茂文治

    ○加茂政府委員 お答え申し上げます。  自賠責保険の保険料は昭和四十四年以来据え置かれておりますが、一方、賃金、物価の上昇等を背景に給付内容が大幅に改善をされてきたこと、また近年交通事故が増加傾向にあること等から、収支は年々悪化しておりまして、五十九契約年度までの累積赤字額は約四千八百億円に達する見込みでございます。  このような状況から、五十九年十月二十二日、自賠責審議会に対し保険料の改定等について諮問を行いましたところ、同審議会において八回にわたる審議の結果、十二月十九日、保険料については全車種平均で約二九%引き上げるのが適当であり、また、六十年四月十五日から実施すべきであるという旨の答申をいただいたわけでございます。これに基づきまして変更の認可を行ったところでございます。  今回の料率の改定に当たりましては、五十九年度末における自賠特会及び損保会社の累積運用益約六千五百七十億円の全額、この中には一般会計に繰り入れております二千五百億円も入ってございますが、全額を料率引き上げ幅の圧縮に活用すること等により契約者の負担増の抑制に努めておるところでございます。
  102. 塚本三郎

    塚本委員 部長が先に二千五百億円、一般会計へ借りたものは返して料率値上げ圧縮に充てるとおっしゃったから、その点は結構だと思います。  しかしながら、問題は、どうしてこんなに急に――実は今までもうかっておって、そして六千億からの余分の金があったから一般会計にお借りしたのでしょう。急にどうしてこうなったのか。それは給付率が高くなって、それはわかるのです。だから、事故被害者が受けるのは手厚くなったことは結構なことなんです。しかし、問題は、その支払いが、いわゆる二〇%の被害者は事故証明なしに受け取っておるということなんですよ。この支出がルーズだということが一つと、それから、どうしてかお医者様にかかるとき、普通は健康保険ですけれども、支払い側が国なものだから、相手は日の丸だということか、二・一倍の料金を計算すると受け取っておる自由診療になぜ行っているんだということなんです。それは、管理がいかにもずさんだから、それさえきちっと、二〇%の証明のない者を厳格に審査していただき、そしてお医者様の診療を保険並みにやっていただければ、ことしだって三百億の黒字になったと専門家は言っておるのですよ。にもかかわらず、そういうことはだだ漏れにしておいて、そうして二九%も上げましたということで平気でおられるというのは筋違いじゃないか、どうでしょう。
  103. 加茂文治

    ○加茂政府委員 まず第一に、人身事故証明書の問題でございます。  自賠責保険の請求がありました場合には、これが支払いの対象となるべきものであるかどうかにつきまして厳格なチェックをするよう従来から指導しておりますが、先生御指摘のとおり、人身事故証明書の添付なりのないものが約二割ございます。昨年の十二月十九日の自賠責審議会答申におきましても、交通事故証明書の添付の励行を要請しているところであります。したがいまして、道路以外での交通事故等、交通事故証明を入手できない特別な事情がある場合を除きまして、請求に当たりましては人身事故証明書が添付されるよう損害保険会社等を指導するとともに、保険請求者にその旨を周知させたいと考えております。  それから、二番目の問題でございますが、自賠責保険の医療費につきましては、健保によるものもございますが、御指摘のように大部分が自由診療によるものとなっております。これらのものにつきましても、診療報酬明細書の厳正なチェック等、その適正化に努めておるところでございますが、自賠責審議会の答申にございますように、日本医師会の協力を得ながら、医療費統計等を参考に診療報酬基準案を作成して、医療費の一層の適正化に努めてまいりたいと考えております。
  104. 塚本三郎

    塚本委員 大蔵大臣、この点はひとつきちっと、事故証明がない者に対しては厳重な――後からこういうふうにむち打ちだと言われても、これはなかなかもうしようがないんですよ。だから、そういうだだ漏れにいってしまっておるというのが一般的な見方なんです。お国があずかったものだからといって出されては困るのです。だから、その点はきちっと、証明のない者に対しては例外に限ってしか給付しないとかいうようなことをし、それから医師の診療についても、おっしゃったように厳重にするということでないと、国民は承知しないということですから、その点の決意を述べていただきたい。
  105. 竹下登

    竹下国務大臣 自賠責審議会、料率を上げますときに私が諮問をいたしました。その間、関係方面の方の議論は、今塚本書記長がおっしゃったような問題点が一番たくさん私どもの方へも指摘されておりました。それで、いわば行政指導ベースの中で解決つくもの、あるいはそれだけでは解決つかない医師会との協議とかそういうようなもの、いろいろそれを仕分けをいたしまして、それで、もとよりこれは運輸省さんともよく協議をしながら、今おっしゃったような疑念をいわゆる自賠責保険に対して一般ユーザーが持つことがないように、これからもこれは精いっぱい努力をしていかなければならぬと思っております。
  106. 塚本三郎

    塚本委員 この点は、私も追及いたしました限りは、来年度本当に実行されておるかどうか点検させていただきます。特に二千五百億円という一般会計に借用せられたのは利息がただなんです。運用ならば七%の利息が返るはずのものまで実は国のためだといってやっておりました。しかし、それを借りておきながら、金がなくなったからすぐ上げる、国民感情としてはこれは非常に憤りの念が強いから、そういうことがきちっとなされておるかどうか、私どもも責任を持って来年また党として追及をさせていただきますから、大蔵大臣は襟を正して管理運営に当たっていただくことを要望いたしておきます。  次に、日本の貨物航空について、アメリカ乗り入れが実は今ストップになっております。昔は船で運ばれた荷物が、比較的金額ののすものがどしどし空に持っていかれる、ために船会社は一番銭こになるお客がなくなっていく、それを防ぐために船会社が協力をして、せっかく私たちが集めたお客様だからということで航空貨物会社をつくりました。全日空を乗せて、そして日本貨物航空株式会社というものができたことは御承知のとおり。昭和五十八年に日米間の航空貨物の伸び率は対前年比三五%増と報道されております。  政府は、日本貨物航空株式会社に対して、定期運送事業免許を申請後五年も得たしてやっと免許し、運航開始をさらに一年半後の本年四月一日として大分おくれて許可をいたしました。それなのに、四月一日を目の前にしたこの土壇場になってまだアメリカ乗り入れ許可を取得していないと報道されております。こんなに時間をかけておきながら、四月一日運航ということを実は決めておる。四月一日運航しなさいよということを、これはまた条件になっておるから、一機一億ドル、一億ドルということは二百五十億円ですね、これを三機も買って、ところが四月一日お客をとりにも行かれないのですね。いわゆる免許がおりてもアメリカ乗り入れの許可を得てない、こういうような問題。だから、これは政府が運航できるようにしなさいよという命令をしていると同じことなんです。ところが、アメリカとの航空協定でいまだにストップかけられておる。政府の責任問題とまで関係者は言っております。一体この問題はどうするつもりなのか。運輸大臣ですか、これは。
  107. 山下徳夫

    山下国務大臣 ただいまのNCAの問題につきましては、運輸大臣たる私が率直に申し上げて、全くアメリカはけしからぬという気持ちでございます、これは正直に申し上げて。  この問題は、御指摘のとおり昨年の二月にアメリカ当局に対して申請を出しております。その後、八月と十一月に二回にわたって外交交渉を行っておりますし、さらに、それぞれより一月おくれて文書等によって、つまり今申し上げましたような経緯をたどって、あとう限り折衝を行ってきておるところでございますけれども、この現行の協定の上に見解の相違と申しましょうか、私ども当然だと思っておりますが、向こうは見解が違うよというふうな点があるわけでございます。私ども筋を通す、筋とは何かと申しますと、実はこの日米協定の第四条に、相手国が航空会社をある路線に指定した場合には遅滞なく免許を与えなければならぬという規定があるわけでございますから、私どもの要求は当然である、こういうことでさらに強力に交渉を進めてまいりたいと思っております。御指摘の四月一日、私も十分承知いたしておりますので、これ認可さえおりますというと、それに遅滞なく準備を進めさせまして、一日でも短期間にこれが実際に実行できるようにNCA当局に対してもそれは指導はいたしておりますが、なるたけ早い機会に決着をつけたい、かように思っておる次第でございます。
  108. 塚本三郎

    塚本委員 政府は免許条件として東京-サンフランシスコ-ニューヨーク週六便を本年四月一日より運航しろと免許しておるわけだから、免許どおり運航させることに会社は責任を持つ。しかし、政府の責任でこれが、相手方は、折衝は政府なんだから、できなかったときには月に十億ずつの損害が出ると言っておりますが、責任は政府が折衝してできなければ持ってくださるということが条件になっているんでしょうね。大臣、どうですか。
  109. 山下徳夫

    山下国務大臣 別にそういう条件は入っておりませんけれども、今御指摘の月に十億円ということは承知いたしておりますし、資本金わずか三十二億円でございますから、そこらあたりも勘案しながら、これは絶対四月一日でなければならぬという非常な使命感を私は持ってやっておりますことは御了解いただきたいと思います。
  110. 塚本三郎

    塚本委員 外務大臣も協力していただかなければならぬと思いますが、どうでしょうか。
  111. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 この問題は、運輸大臣がお話ししましたように、アメリカが全く筋が通らないと思います。したがって、私もロサンゼルスに中曽根総理と一緒に参りましたときに、シュルツ国務長官に対しまして、アメリカのやっていることはこういう筋の通らない話があるので、何としても四月一日から操業できるようにひとつアメリカ側の関係各省と協議をして調整をして、そういう方向で努力してもらいたいということを申し入れたわけであります。二月にはさらに日米航空交渉が行われるようでありますが、運輸省と十分連絡をとりながら、四月一日から何とか操業を開始できるように外務省としてもひとつ全力を傾けなければならない、そういうふうに思っております。
  112. 塚本三郎

    塚本委員 これは御承知でしょうけれどもアメリカがけしからぬ、そのとおりです。しかし、彼らの言い分もまた僕はなるほどなと思った。日本は日航一社なんです。向こうは六社来ているんですね。で、向こうはどんどんうちへも来たらいいじゃないか。それを新しくユナイテッドなどあるいはコンチネンタルが来るときに五年も得たしておいたから、こちらも一社ふやすときは五年待たしていただきましょう。世界じゅう航空なんてのは自由に乗り入れる。西ドイツは十九社が入っておるんだ、アメリカは。実際運航しておるのは八社か九社なんです。韓国だって十三社が入っているが、実際運航しているのは三社だけなんです。でも、やるかやらぬかは別にして、航空業界というのは拡大均衡でいくべきなんだ。そのときに日本が日航一社を守るためにやっているだけだからこういうことになるのでございます。だから、どんどんやればいいじゃありませんか。それを、こちらが一社ふやすときに五年間待たしたからこちらも五年間待たしていただきましょう、そう言っているんですね。だから、世界というものは、日本のように過保護の状態を続けておったら縮小均衡になりますよということも、なるほどと、しかし、一社と六社だから二社ぐらいにしたっていいじゃないか、しかも貨物だけだよというんだから、アメリカはけしからぬ。でも向こうの考え方はそうなんです。だから、やっぱり人によると、一社体制を守るために実はこういうことになっておるんだという日本の航空行政の閉鎖体質から縮小均衡に移ることを避ける突破口にしたいというのがアメリカ考え方なんだと。これはなるほどと思ったのです。私はアメリカの言うこと正しいとは思いませんよ。だから、いつまでもそれでけしからぬというならば、今大臣おっしゃったように、実は三カ月たったら会社の金は元金もパアになるのですから頑張ろうじゃないか。そのかわり損害は全部政府が責任持つから、国益だから頑張るというのは一つの方法なんですよ。だから、きちっとしていかないといけないと私は思うのです。何としてでもそういう摩擦を避けるためにアメリカを説得していただく。それでなければ一つの方法として、拡大均衡ならば政府の方針も検討することも一つの方法かもしれない。いずれにつきましても私は今ここで結論を出すことを言う気はありませんが、四月一日開始に向かって全力を尽くすということだけ総理から一言御回答いただきたいと思います。
  113. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この問題は、外務省でも非常な努力をしていただいて、先般のロサンゼルス会談でも外務大臣からシュルツ長官に改めて申し入れした線でございまして、我々も全力を尽くして努力いたします。
  114. 塚本三郎

    塚本委員 さて、防衛問題に移らさしていただきます。  防衛費GNP対比一%以内と設定してきたことは政府として一つの見識であり、また、この十年間防衛費の性格上歯どめとして役立ってきたことを民社党は認めております。  昭和五十一年、三木内閣による一%の閣議決定は、「当面」という表現と「めど」という二つの弾力性を持たせた言葉であった。それが、歴代内閣は国会対策上逃げの答弁に使い過ぎた。ついに政府の公約と姿勢であるかのごとくすりかえられてしまっております。これが自民党政権の防衛の重大な柱についになっちゃったんです。閣議だとかいろんなことを言ってなっちゃったんです。そして、今この重大な柱の変更を余儀なくされる土壇場に来ておるわけなんですね。それでいてなお見直しの党議決定ができないまま予算国会に臨まれてしまったわけです。  もともとGNPなる国民の総生産は、経済の内外の動向に左右されるものであり、防衛は別に国際情勢に対応するもので、双方が刻々と変わる問題であります。それを固定的一定のパーセントでくくることに無理があったからこそ重大な変更を余儀なくされたものでありましょう。その無理が、ここ二、三年防衛費の対GNP比一%の議論に論点が集中されちゃった。このことだけに中心が行ってしまった。したがって、もっと大切なこと、すなわち、国民の血税がどのように使われているかという防衛予算の中身とその使われ方に目が向けられなくなってしまったことを、民社党は大変残念に思っております。  さらに、政府は、一%枠を守るために要らざる無理を重ねて、真の防衛に欠陥を生じても、その枠さえ守ればよいとの方向に心が砕かれてしまって、十分に効果的な施策が行われているとは思われません。まして、この十年間刻々と変わる情勢の変化に対応すべき問題に手をつけていない。だから、ごっつんごっつんと古い問題を持ち出されてはストップばかりで、私なんか一週間も待たされてしまった。あまつさえ、国会における与野党の論点や――ここが大事です。国会決議の解釈についても新たな対応を怠ってきたと思うのですね。問題提起されてから暫時休憩なんでしょう。私は、これらの諸点について我が党の見解を加えつつ、政府に所信をただしてみたいと思います。  さて、加藤防衛庁長官、就任の抱負として記者団に、防衛費の対GNP比一%枠は厳守すると語られました。その後、六十年度予算編成では一%枠におさめたが、〇・九九七%になっており、今後はなかなか難しい情勢であると語っておられます。就任のときの言明とその後の変更について、今の決意を長官、お伺いしたい。
  115. 加藤紘一

    加藤国務大臣 防衛費の一%の枠につきましては、私たち歴代内閣がこの方針をできるだけ守るように努力してきたところでございますし、私も大臣就任の際に、それを守るように努力してまいりたいということを申しました。また、六十年度の予算では、その枠を予算内で一%の枠内で守ったことも委員御承知のとおりでございます。今後ともこの一%の枠は守りたいと考えております。
  116. 塚本三郎

    塚本委員 守りたいと言って、総理がここで田邊社会党書記長に御答弁をなさっておられた。テレビを見ておりましたら――ちょっと聞いてください、その次のテレビで、金丸幹事長以下自民党の四役がホテルに集まって、一%枠は変更せざるを得ない状態になった、変更するときには新たなる歯どめはどうするかについて経団連の御意見を伺うと言って、稲山さんが入っていかれるところが報道されておりました。政府は、経団連が本当なのか、国会が本当なのか。自民党と中曽根内閣は別でございましょうか。こういうときにこういう議論ばかりなさるな。守りたいでしょう。わかって、守れないから大騒動して、総理が本当のことをおっしゃったら、仕方がないからまた本当のことを残念ながら抑えてみえるのです。私は、守ってくださればそれにこしたことはない。だけれども、不可能な予算を組んでおいて、まだ守りたいと言って、国会が終わってから経団連などと相談をいたしましてでは、一体ここはどういう舞台になるんですか。私が言うと、民社党は突破せよと言っていると誤解をしておる人もあります。そうじゃないのです。本当のことをやらないと、意見の食い違いのすり合わせができませんよということじゃないでしょうか。  河本さんは、一%は基本だとおっしゃっておるが、どうお考えでしょうか。
  117. 河本敏夫

    河本(敏)国務大臣 一%という枠は我が国の防衛政策の一つの大きな基本でございますから、私は、あくまでこれを守っていくべきだ、こう思っております。
  118. 塚本三郎

    塚本委員 山口労働大臣、新自由クラブの幹事長であられるあなたは、過日私は新自由クラブの大会に来賓としてお伺いをいたしました。河野代表は、一%枠の厳守を強く政府に求める、こう心強くおっしゃいました。今、幹事長としての山口労働大臣の御所信はいかがでしょう。
  119. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 塚本先生の御議論の中にもございますように、特にここ数年の国際社会における我が国の地位の高まり、それに関しての役割分担、当然自由主義諸国の中におけるこの安全保障政策、日本自身の主権国家としての安全保障政策という形の中で非常に大きな一つの責任も自覚をしなければならない、こういう状況でございますが、中曽根内閣も一%厳守という問題に最大の努力を払ってきた、こういう経過もございますし、国会等の御努力もありまして、そういう諸情勢の中で、現状において特に三木内閣の閣議決定も守られておる、それから六十年度予算の中においても一応その一%内で予算を提出しておる、こういう経過でございますので、さてここで守れないから新たな歯どめが必要かという論議と、今河本先生からも御指摘ございました、一%内での最大、最善の防衛努力というものが可能かどうかということの論議を十分踏まえて、我々は一%を守るべく最善、最大の努力を、閣内においてもあるいは各党間の議論の中においてもいろいろ進めていきたいというふうに考えております。
  120. 塚本三郎

    塚本委員 尊敬する山口幹事長のお言葉ですが、今聞いておると、何が何だかわからない。それは心にもないことをおっしゃらなければいけないから、こういうことになるんです。聡明なあなたがこんな言葉を国民の前で述べられなければならぬということは、友人として残念でございます。  だって、総理、去年だって守ったとおっしゃるけれども、今だから申し上げますけれども、お金が足りなくて、二百五十億円の、六百人の自衛隊員の退職をさせずに、定年延長をして、その退職金を別に流用することによって辛うじて一%枠をお守りになったんでしょう。私は混乱させることを避けて昨年はこの点に触れなかったんです。自衛隊は若くて精強でなければなりません。退職金が枠を超えるからといって、その金を流用することによって、お年寄りを一年間囲って、それをきちっとやれば若手を倍にふやすことができた、そういういびつなことをしてまで心にもないことをおやりになっているんです。ことしもそういうことだから、私は、防衛がこんなことでいいのでしょうかということを真剣に申し上げるのです。  私たちは突破せよと言うように誤解を受けているかもしれませんが、本当に三兆円になんなんとするお金をお使いいただいて、こんな穴だらけの防衛をなさっておいても、一%から以下ならば結構です、上がったならば大変でございます、審議が一週間ストップするというようなばかな状態が、これが国会でしょうか。もう少し謙虚に、政府が正直におっしゃらなければ、我々だってはぐらかされてしまうじゃありませんか。自民党さん、わざわざ党議で決定なされようとしたら、今のような状態で党議決定ができなかったんでしょう。それなら、財界まで呼んで突破せざるを得ないときの歯どめの相談なんかなさいますな。  どうですか、皆さん。一億の国民の生命と安全でしょう。だからこそ私たちは、予算編成でも防衛が突出しておっても黙っておるのです。それだけ大切であり、二十数万の彼らは、いざとなったときに命を投げ出して頑張るじゃありませんか。そのときに、こんなふざけた派閥だけの議論でもって、閣議決定もできずに、それで総理総理大臣と言えましょうか。私はいかにも残念だと思います。この点をまず御反省いただいてから私は質疑を始めたいと思いますが、いかがですか。
  121. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず、一%の問題とか防衛問題について、経団連と相談をしたり経団連に伺いを立てたりしているようなことはありません。これは内閣の責任において、自由民主党と相談をしてこれを決めておるということをまず申し上げておきます。  それから、一%の問題につきましては、先ほど矢野書記長にお答え申し上げましたように、今まで守ってきた、また守りたい、もし将来これが新しい措置を必要とするという場合には、今までの国会論議、今まで我々がやりました国会論議とかあるいは各党の御意見等も踏まえてしかるべき処置をやりたい、そのように先ほど御答弁申し上げました。これが我々の考え方にあるものでございます。  防衛問題というものについて、私考えますことは、やはり一番大事なことは、日本の防衛について何が必要か、必要最小限何をしなければならぬかということが第一義だろうと思います。そして一%云々というものは、あの当時やはりある程度自制的な節度のある防衛力ということを考えまして、みずから課した一つの目標であったと思うのであります。それはそれなりに国政上においても効果を発揮してきたし、国民や周囲に安定感を与えてきたことも事実であったと思います。  しかし、その後、アフガニスタン事件とかあるいは極東におけるいろいろな環境の変化とかさまざまな変化が起こりまして、あの「防衛計画の大綱」をつくったときと情勢は大きく変わってきている、そう思います。また、内政の状況予算状況等も非常に厳しくなりつつある、これもやはり現実でありまして、これは正直に言わざるを得ない、事実は事実でありますから。そういう現状を踏まえまして、矢野書記長にお答えしましたような御答弁を申し上げている次第なのであります。
  122. 塚本三郎

    塚本委員 それでは総理、お帰りになったら、金丸幹事長以下つまらぬことをなさるな、NHKはにせの報道をしなさるなというふうにNHKの会長に注意しておいてください。私は見せられてしまったんです、テレビで。それから、今おっしゃったことを信用しましょう。そのかわり、閣内において河本先生や山口先生に政治生命にかけてきちっとそのことを認識していなだかないと、ばらばらに言われたら対応のしようがありません。どうぞ、そのことだけ希望いたしておきます。  こういうように、いわゆる防衛は国民世論を統一することが一番大事なんです。そのときにこの問題でばらばらになってしまっておるということが一番問題ではないかというふうに私は思っておるわけでございます。防衛費は、全体の総額に財政上の枠をかけるだけでは決して文民統制ではありません。一%の歯どめがあれば文民統制ができるとしても、どういう内容で予算を組むか、そのいわゆる中身が一番大切だと私たちは思っております。  しかし、もちろん財政事情を無視して防衛費が過当に突出することは許されないから、新たなる歯どめをどうするのか。突破がやむを得ないならば、財政上軍事大国への肥大化を防ぐ具体策をみずから設定して、そうしてこういうふうにしますから御理解くださいということを積極的になさらなければいけないんじゃないでしょうか。それを、こうやって守る守ると言っておいて、数字で守れなくなったら、ある日突然大騒動になったって国民は困りますよ。野党だって対応のしようがないじゃありませんか。反対と言うと、野党は防衛は無関心だと、こう言っておやりになるなどということはいけません。見通しがあるから総理は踏み切ろうとなさったんでしょう。それならもっと謙虚に、事態というものを真剣におやりになる必要があったと私は思います。やはり守れなくなったという状態のときには、あくまで謙虚にそのことを国民に説明することが必要じゃないでしょうか。それをやらずに逃げるものだから、そして表面的なことばかりなさるから、あちらこちらがいびつになってくる。  まず私は、この点、昨年、総理に北海道における陸上自衛隊の充足率についてお尋ねをいたしました。戦車ができても乗組員の数が充足していない、あるいは自走りゅう弾砲だとか迫撃砲だとか、一門三億円近くのものを何百と備えておっても、それを操縦する人が足りないということを指摘をいたしたことは、総理あるいは御記憶にあるのではないかと私は思います。  既に第七艦隊の司令官でありましたホルコム中将は、いざといったときにはウラジオにおるところとカムチャツカにおるソ連艦隊の状態からして、行き来するために宗谷海峡が唯一の航路なんだ、危なくなったときは北海道の北部を占領しなければこの救援には向かえないから、北海道北都上陸の可能性があるということを第七艦隊司令官は指摘しているでしょう。五十八年に初めて、百年の歴史を誇るところのアメリカ海軍のジェーンですか、海軍年鑑が、今までは一言も言わなかったけれども、五十八年六月に、ソ連は北海道の北部に上陸するの可能性ありと初めて踏み切りました。  こういう状態をいわゆる指摘されておるからこそ、長官だってわざわざ雪の中を北海道においでになったんでしょう。そのときに戦車はあります、乗組員はありません、これどうするんですか。一個中隊は四両編成です。一両に四人ずつ乗らなければ、操縦する人、指揮をする人、弾を込める人、そういうのが四人ずつの編成になっておるときに、十六人て一個中隊のところを十一人しかいないから一両遊んでおるんですよ。二両はまともに動きます、あとの一両は弾込めの人がいないから、一発撃ったらあと撃てない。数字が示しておるじゃありませんか。行政改革です、後藤田さんが怖いからだめです、こういう状態なんですよ。この三年間定員の充足ができなかったならば、機材なんかつくりなさるな。そうじゃありませんか。機材をつくって乗組員があって動くんですから。一体北海道における充足率どうなっていますか、長官
  123. 加藤紘一

    加藤国務大臣 陸上自衛隊の全体の充足率は(塚本委員「北海道だけでいい」と呼ぶ)現在八六・三三でございますが、北海道は若干高くなっております。具体的な数字は政府委員よりすぐお答えさせます。
  124. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  北海道の師団の充足率を申し上げますと、一番高いのが第七師団、機甲師団でございますが九二%でございます。それから第二師団、旭川にございますのが八四%、それから第五師団の帯広にございますのが七五%、真駒内にございます十一師団が七一%という状況でございます。
  125. 塚本三郎

    塚本委員 一番いいところだけあなた読んだはずなんです。それから全部七〇%ほとんどでしょう。だから、お聞きのとおりなんです。北海道というのは、もし想定するならば一時間という時間が広いんですよ。だっと来られたならば、飛行機なら一分ないんですよ。だから、現地におらなければ対応ができないんでしょう。だからこそ、全日本の陸上自衛隊の十五万何千の中で四万八千人を北海道に集結さしておるのは、慌ててやってきたって間に合わないからでしょう。にもかかわらず、機材だけ置いておいて、そして四台のところを二台しかまともに動きません。あるいはまた砲だって同じ状態、七〇%ですよ。こんな状態で置くならば、その機材の金を削れば、陸上だけで九億八千万円です。しかし戦車一台三億でしょう。自走りゅう弾砲や迫撃砲だって二億七千万でしょう。百何十台も遊ばせておくならば、三台削れば全部充足できるじゃありませんか。どっちかにすべきだというふうに私は思います。それでも陸はどうでもいいとおっしゃるんですか。総理、どうでしょう。
  126. 加藤紘一

    加藤国務大臣 お答え申し上げます。  御指摘のように陸上自衛隊の人員の充足率が図れないという事態があることは委員指摘のとおりでございまして、その装備に対する要員の充足がそういう意味で不足していることは事実でございます。しかし、実際の訓練に当たりましては、部隊内部の他の部門から要員を充当する、振りかえるなどいたしまして、訓練の内容に応じいろいろ工夫をして実施しておりますので、装備品が遊休化しているというようなことはございません。もちろん、陸上自衛隊が本来なるべく高充足であることが望ましいことは事実でございますけれども、限られた財源配分の問題の中で行っていることでございますので、現在八六・三三%という数字になっていることは先ほど申したとおりでございます。これは平時における教育訓練、部隊運営等に重大な支障を来さないという観点にも配慮しながら、やむを得ざる措置として実施しているものでございますので、御理解いただきたいと思います。(「訓練のための自衛隊だよ」と呼ぶ者あり)
  127. 塚本三郎

    塚本委員 今、後ろから御発言がありましたように、これは訓練だけが部隊なんじゃないでしょう。火事になってから、自宅に待機しておる――それは退役の予備兵を持ってくればいいという意見がありますけれども、火事になってから自宅待機の消防士を連れてきても間に合わぬから、消防士は常にいつでも制服を着て待機をなさってみえる。だから、せめて北海道ぐらいは危ないから、北だけはいつでも動けるようにということで最小限の措置をしておかなければならぬ。私たちは国家公務員等の削減をどの党よりも真剣にやっておりまするけれども、防衛だけは別だという考え方で、それは一億の生命財産を守るために、だからこそとうといところの税金を使って、そして機材の充実を図っておるときに、いざといったときに、ほかはいざ知らず北海道の北部ぐらいは、見てみましょうか、第五特科連隊が七〇%、第四普通科連隊が六七%、あるいはまた第一〇普通科連隊が六七%、一番北に近いところにおる第二六普通科連隊も七〇%、こういうような形でみんな六〇%か七〇%そこそこでしょう。こんなことで訓練は、それは入れかわり立ちかわりやれば、それは戦車も砲もそんなに悪くならないからいいのでございますで済みますけれども、少なくとも北の方の、北海道の北部ぐらいは四千数百名の欠員があったにしてもわずか千二百十三名、九億八千万円の要求でしょう。  私は去年ここで御指摘申し上げて、十分考えますとおっしゃっておいて、そのまま捨ててあるのです。これは行政改革と違いますから。ですから、もしお金がなければ戦車三台削るなり自走りゅう弾砲三台削ってそちらに回すことによって、遊んでおる――申し上げてみましょうか、何台遊んでいるか、本当に政府の信用をなくすような遊び方なんですよ。私が計算いたしてみますると、よろしゅうございますか、五百八十億円になるのです、三億ずつのものが。五百八十億円は使わずに遊んでおるのですよ。役に立てないのですよ。どうして陸の九億八千万円ぐらいのことでこんなばかなことをなさるのですか。長官だって現地を知らぬからそういうことをおっしゃってみえるのですよ。総理、こういうばかなことが、中身はこうなんですよ。  ついでに、海上も言ってみましょうか。三直交代でなければ八時間でやれないのを二直にしておる。しかし、ことし新しい一艦ができてくると古いの二隻は港に係留して動かしませんと言っていますよ、空を言ってみましょうか。E2Cといった北海道の空を守っておるところの、百二十三億円かけておるところのE2Cが四機そのままほこりをかぶっておるじゃありませんか。一人だって定員をつけた覚えがありますか。四機あそこで遊んでおるのですよ。まして、ことし二機来るのですよ。海空だけでわずか二十億円の金でこの充足ができるじゃありませんか。E2Cの百二十三億円の、その金額のうちのわずか五分の一を人員に割いてくださったならば全部動くじゃありませんか。これが実は陸海空の均斉のとれた練度の高いという総理の演説の中身でしょうか。  どうしてこんなばかなことをいつまでも――海幕長に聞いてみなさい、空幕長や陸幕長に聞いてみなさいよ。第一線の諸君が、おれたちの運命が大蔵省のいわゆる赤線によって消えるなんというようなことが許されますか。新長官、そんなことはまだ聞いておいでにならぬでしょうけれども、それは私はふやせと言うのじゃないのですよ。金はそれで結構なんだ。しかし、そんな金をなぜ行政改革に使わなければならぬ、いわゆる悪用しなければならぬか。行政改革はもっと能率よくするためにおやりになっておることである。これは直ちに改めていただかなければ承知できません。総理、いかがでしょう。
  128. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 自衛隊の充足率が必ずしも芳しくないということは、よく承知しております。それから出てくるひずみ等も若干はあるだろうと思います。しかし、今のような御指摘の点も踏まえまして、できるだけ充足率を高めまして、完全なる機能を発揮し得るように、今後とも努力してまいります。
  129. 塚本三郎

    塚本委員 私は、ここで本当ならばストップといきたいところでございましょうけれども、私はそういう勇気がございません。  しかし、この際は、十分に特に陸の諸君の、去年私が申し上げて、考えるとおっしゃって、気がつかなかったのか、お忙しかったのか知りませんけれども、十分その点は考えていただかないと、初めて北海道の北が危なくなったということをホルコム中将がわざわざ指摘をし、第七艦隊司令官ですよ、あるいはまたジェーン年鑑が、百年の歴史を誇っておるところの海軍年鑑がそのことを指摘しておる。だからぴりぴりして、みんなが命を張って頑張っているのでしょう。そのときに訓練のことだけしか考えないような、それは内庁の局長さんはいざ知らず、やっぱり総理、そんなことではいけませんね。だから金はふやさなくても結構、だが、機材とすりかえてでも陸における約十億、海空における二十億、三十億だけはどこかから持ってきていただいて、直ちにこれは訓練だけではない、即応態勢のできるように強く要望をいたしておきます。  次は、空中給油につきましても昨年指摘をいたしました。  F4ファントム、これは千六百キロしか足がございません。日本本土上空で訓練をいたしておりますると、総理、練度が高いと何度もよくお答えになりますけれども日本土空はもう民間航空が随分発達してまいりまして、危ない。まして騒音公害等、住民の非難も随分強い。したがって、はるか千二百キロの南における硫黄島を中心にして訓練なさると、行きにも訓練しつつ行かれるし、向こうならば安全だということで実施されようといたしております。ところが、千六百キロだと帰ってこれないのですね。だからスコールがあったら万事休すだから、万々間違いのないとき以外は訓練に行かれないという状態なんです。あるいはまた、一本しか滑走路がありませんから、車輪等が、前のものが一つ転がっていたらもうおりられないのです。あとどうするかと言えば、海の中へおりるより仕方がなくなってくるのです。隊員の訓練の人権問題にまでなっておるのです。  だから、この際、幸い空中給油装置というものを取り外しました。かつて二十年ほど前当委員会で、これをつけると長くなって中国本土まで届くから攻撃用になるかもしれぬということでお取りになったことはあります。だって、今はもはや長く空中待機しなければ、彼我がそういう時代になっちゃったのだから、新しく今発注され、できておりますF15は三千キロでございましょう。もう倍なんだから、その三千キロのF15がさらに伸びるように空中給油装置をつけているのです。わずか千六百キロのファントムがそのままで、空中給油装置をつけてはいけないなんという理屈はないはずだから検討いたしますと総理、おっしゃった。いまだに給油装置は各務原に捨てたままになっております。それはどうなったのでしょうか。
  130. 加藤紘一

    加藤国務大臣 F4の空中給油の問題につきましては、昨年の当委員会において塚本委員から、F4の硫黄島における訓練の際の長距離移動の安全対策の問題として検討すべきではないかという御指摘があり、それに対して中曽根総理大臣の方から、過去に種々の論議のあった問題でもあるので慎重な検討が必要であるが、問題の御提起があったので研究してみたいとの趣旨の御答弁を申し上げたことでございます。  また、最近の航空軍事技術の進歩というものは、塚本委員指摘のように、大変激しい、速いものがあります。そして、航空機の進入能力の向上に対応するため、将来空中警戒待機の態勢を強化する必要性が増大することも考えられますので、これとの関連で空中給油能力を利用しなければならないことも予想されておりますことは御指摘のとおりでございます。従来から、その点につきましては、国会等で明らかに私たちの立場を申し上げてきたところでございます。以上の諸経緯を踏まえまして、私たち防衛庁としては、硫黄島における訓練に関する安全対策に万全を期すとともに、空中給油機能利用の問題についても、内部において種々研究を行っているところでございます。  現在のところ、F4を含め航空自衛隊の戦闘機に対し、空中給油を行うことやF4に空中給油装置を取りつけるというような具体的な計画はまだ持っておりませんが、今後さらに訓練の際の利用の問題も含めまして、将来における空中給油機能利用につきまして研究を進めてまいりたい、こう思っております。
  131. 塚本三郎

    塚本委員 国会からしかられやしないかといってこうやって周囲の状態をきょろきょろ眺めながら反応を見つつ、恐る恐るつけようとなさってみえるのです。これが国防の責任者のなさることではない。あの当時、本委員会で野党がおっしゃったときには、そういう時代だったのです。でも、今はそういう時代から変わってきているのですから、やはりいつまでもそんなことじゃない。衛星の問題と同じようにやはり時というものが、一つ一つ時代とともに彼我の対応は変わってきてしかるべきだ。こういう問題等、国会に安全保障の特別委員会があるんだから、堂々とそういう舞台で日ごろから議論をなさる。本音の議論をするということがないから周囲の御機嫌ばかりうかがっておる、またとまりはしないか、こんなことになるのじゃありませんか。私たちはそういうことをもっともっと、安全保障ならば真剣に、政府から、かみつかれてもいい、こちらから申し出て、そうして与野党が真剣に議論をする。野党だって政府の邪魔をすることが目的じゃない。国民は、肥大化するところの防衛がかつての軍事大国になりはしないか、こういう心配をお持ちだから率直におっしゃっているんだから、いや、そうじゃないということを政府が堂々と自信を持って、おれたちは命を張って国を守っているんだ、そういう防衛庁の諸君の立場に立って議論をなさるべきじゃありませんか。だから、今こんなことで、いわゆる検討中だということでは不満でありまするが、早く勇気を出して、そして結論を出していただくことを期待いたしております。  次にもう一つ。防衛庁は、今回アメリカとの共同訓練に際し、アメリカ海軍の通信衛星フリートサットに対する受信を予定した予算を計上しております。本日、矢野質問に答えて、その衛星が汎用化されていること、すなわち一般社会でいわゆる日常化されている、だから非軍事などの見解であるが、それでは汎用化されていないものは反対だということになりますが、それでよろしゅうございますか。防衛というものは、日常使っておるからいいけれども、使われなければそれは使いませんというような歯どめをみずからして国防が成り立ちますか、それでようございますか。  防衛という特質からして、みずからの手足を縛るようなことで本当に安全保障の実を上げることができましょうか。今回の予算は、実はアメリカ軍事衛星を使うところに問題があったことは御承知のとおりです。したがって、これは日米安全保障条約に基づく日米共同訓練の一環として利用が許されておるのと違いましょうか。汎用ということでなくして、アメリカ日本とは安全保障条約が結ばれておる、その安全保障条約に基づいて共同の軍事訓練だから使うということになるのではないかと私は思いますが、長官、どうでしょうか。
  132. 加藤紘一

    加藤国務大臣 この国会決議の解釈の問題につきましては、累次御説明申し上げていますように、本質的、本来的には国会にその有権的解釈を行う機能がある、こう思っております。したがって、私たち政府としてもいろいろこれにつきましては慎重に議論いたしまして、行政を進めていく際の一つのめどとして政府考え方を取りまとめたところでございまして、その中にいろいろな角度からの議論もございましたけれども、先般私たちが取りまとめてお答え申し上げましたように、破壊力殺傷力あるものは自衛隊が使うことは許されないであろう、それから、一般的な汎用技術となっているものは自衛隊が使うことも許されるのではないか、一般化されてないものについては制約されるという基準を政府部内なりに定めたところでございます。  その一般化されてないものが制約されるというのはどういう意味がということでございますが、特段の理由がないとやはり制約されるということではないだろうか、こういうふうに思っております。
  133. 塚本三郎

    塚本委員 わからぬね。そうなると、一般化されていなくても特段のものがあるならいいということなんですか。そうじゃないんでしょう。きょうのお答えですと、一般化されておればいいが、されてなきゃだめだというんでしょう。特段のものということじゃないんでしょう。だから、そんなごまかしをいつまでもやってみえるとおかしいんです。大体今度の問題だって、受信装置がけしからぬ、しかし受信だけで逃げるが、この次は送信までやるでしょう、そのとおりなんですよ。大体、通信でアメリカと共同訓練をやったって、聞くことだけは聞きます、こちらからしゃべることは遠慮いたします、そんなばかな予算の仕方自身が常識でないことをやっているんでしょう。国会が怖いものだから、ちょっと出してみて、そしてしかられたらやめておこう、よかったらもう一つ送信にいこう、こうなんでしょう。こういうやり方をしておるから、フリートサットが一般の「さくら」や通信衛星と同じようなあれだけれども、しかしこれは米海軍が打ち上げたもので軍事そのものです、だけれど安保条約があって同盟軍なんだから、しかも共同訓練だから短波でやっておるよりも通信でやった方がそごを来さなくていいということなら、聞くこととしゃべることと一緒にやらなければおかしいじゃありませんか。当然のごとく、だから矢野委員はここで、次には送信があるんでしょうと言われるに決まっている。そういうことを片手落ちで、きちっとそういうことをなさらずにやるからこういうことになってきたというのが私の見解でございます。  それでは、昭和五十八年の五月十六日、参議院の質疑で偵察衛星というのは非軍事にあらざるものとして軍事的用途であると理解していいのかという野党の質問に、当時の内閣法制局長官は、そのとおりであると答弁しておられます。この政府答弁では偵察衛星軍事利用であり、平和利用に反することになり、自衛隊は検察衛星を持てないことになっております。ところが総理、かつてあなたがたしか防衛庁長官のときじゃなかったでしょうか。専守防衛の自衛隊はウサギの耳――あなたはなかなか表現が上手だから、ウサギの耳のように我が国周辺の脅威をいち早く察知するために偵察衛星利用は効果的であると発言されたことを私は記憶いたしております。殺傷力破壊力として利用しない限り自衛隊衛星利用は可能との一つの政府見解も一方に、あるようです。  今一般化されていないとすると、これから偵察衛星もだめになってしまう。ここまで持ち出すとまた紛糾するというので、私は紛糾させませんから正直に言っていただきたい、後から紛糾するあれがあるかもしれませんけれども。しかし、殺傷力破壊力を伴わなければ――もうあの当時は衛星と言えば軍事以外打ち上げられなかったが、電電公社も上げました、NHKも上げました。自衛隊も将来は上げたいでしょう。これは当然だと私は思います。そういうときに、さすが総理おっしゃったように、守るというのはウサギなんだ。こちらは全然がみつかないけれども耳だけは大まくなければすぐ逃げるわけにいかないし、防御態勢をすることができない。なるほどと思ったのです。そういうことを考えてみますると、法制局の答弁はだめだと言っておるんですが、その点いかがでしょう、総理
  134. 茂串俊

    ○茂串政府委員 私の前任者の法制局長官の答弁でございますので私に責任がございますので、私から答弁を申し述べます。  ただいま塚本委員の御指摘のとおり、一昨年の五月十六日の参議院の安保特別委員会で当時の角田前法制局長官が宇宙開発事業団が偵察衛星を打ち上げることはできないという答弁をしていることはそのとおりでございますが、この答弁は、当時偵察衛星利用がまだ一般化している状況にあるとは言えないという認識に立ってされたものであると理解しております。したがいまして、先ほど防衛庁長官のお読み上げになりました統一見解と軌を一にするものである、こういう理解でございます。
  135. 塚本三郎

    塚本委員 それでは、今の法制局長官――今は偵察衛星も一般化されているからいいということで、総理のウサギの耳ということで、それは可能だ。今やる意思があるとは思っておりませんよ、それは可能だという総理のお考えですか、総理、あなたに聞いている。
  136. 茂串俊

    ○茂串政府委員 現在の状況におきまして、いわゆる偵察衛星、これが一般化しているかどうかという御質問でございますが、私、もとより専門家ではございませんが、防衛庁の専門筋とか、そういうところから伺いますと、現在におきましてもまだそこまでは一般化しておらないという状況のようでございます。
  137. 塚本三郎

    塚本委員 それでは、防衛庁はやる意思がないから一般化されていない、やりたいと思ったときは一般化されておるというふうな使い分けになるというふうにすぐ受けとめるのです。もう総理、お答えになる時期ではありませんか。
  138. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 法制局長官が答えたとおりであります。  ここで思い出しますのは、原子力基本法をつくりましたときに、我が国の原子力は平和の目的に、そういうふうに書いてあるわけです。そのときに社会党の松前重義先生等とも相談をして、私は提案の責任者でありましたから、国会答弁をする、そのときに、もし原子力推進というものが一般化して、商船や運送船その他でどんどん使われるようになった場合に、自衛隊の潜水艦が原子力推進でない場合には、それよりスピードが遅くなってしまう。追いかけられない。それでは目的を達するわけにはいかぬ。したがって、原子力平和利用といっても、それがもし一般化した場合には、自衛隊の潜水艦に原子力推進を使ってもこれは平和の目的というものに反しない、そういうことに決めまして、そういう答弁を私は国会でしておるのであります。それ以来政府は何回かこういう答弁をしてきておりまして、この趣旨に沿って、したがって今回の衛星の問題につきましても、これが一般に使われてきた、インテルサットもそうであろうし、そのほかいろいろの打ち上げられている衛星によって、夜みんなテレビでニューヨークの特派員の話を聞き、パリの特派員の話を聞けるようになっているのですから、それは自衛隊においても、そういう一般の利用、通信手段として使うのであって、殺傷とか破壊の手段として直接的に使っているのではない、そういう考えに従ってやっているわけであります。  ところで、偵察衛星の問題でございますが、趣旨は同じである。この場合でも同じである。しかし、最近、じゃそれが一般化したかということになりますと、最近平和利用で使われているのはランドサットがありますね。これは地質の調査をやっておる、あるいは魚群の探知なんかでも衛星で使われ始めているようなこともあります。そういうような点で、ある程度は民間でも利用されてきているという面がございますが、一般の今のインテルサット程度ほど、普通の通信衛星ほどまだ普遍化はしていない、そういう考えに立って法制局長官はお答えしたのだろうと思います。
  139. 塚本三郎

    塚本委員 やはりこういう問題は、日ごろからもう少しきちっと、科学技術がどうなっているかということを国民に理解されないと、これはまた大騒動になりますよ。  総理は、本会議でもって、米ソにおける軍縮、核軍縮等を進めていくように強く期待しておる、そして最後には、本当にやると言いながらやっていなかったから今日こうなったんだ、だからお互いにきちっと、その交渉が、相互に信頼し得る、実効ある検証措置の合意の上に、できるだけ早く実質的な成果を上げるよう、我が国としても最大限の努力をしていきたいと考えておりますと、本会議であなたはそうおっしゃってみえる。アメリカ、ソ連が削減することを我々も検証して、お互いにやりなさいよ、その実を上げようと考えてみえるのじゃないでしょうか。  そうすると、本当に削減したかどうか、アメリカやソ連に、対してもこちらが検証の措置をとるとするならば、偵察衛星を使わなければ、それはソ連がどれだけ本当に減らしたのか、アメリカがどれだけ減らしたのかわからぬと思うのです。だから、やがては偵察衛星が、軍縮で日本が検証の措置をとるとするならば必要になってくる。総理はその腹を固めておっしゃったのではないかと私は思いますので、そういうようなことを考えてみますると、やはり逃げではなく、堂々と、一般と言ってみたって、殺傷力破壊力とは関係ないんだからということをきちっと早く取りつけていかないと、総理が本会議でわざわざおっしゃった、軍縮のいわゆる検証措置も空文になりますよ、こう思いますので、総理の御発言と、もう一遍、私の見解とで御答弁いただきたい。
  140. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私はただいまのお考えに賛成でございます。  そして、ただ自衛隊が具体的にどうするかという問題につきましては、政府としていろいろ検討すべき課題もあると思います。そういう点については慎重にやりたいと思いますが、考えの筋としては私も同感であります。
  141. 塚本三郎

    塚本委員 次に財政問題に移ります。  「増税なき財政再建」とうたってまいりました。しかし、既に大蔵大臣は本会議で何かえらい力説なさって、税制の見直しを御議論なさったのです。見直しというけれども、もとはといえば、結果として直間比率の見直しになることはあってもそれが目的ではないというふうに力説をなさったわけです。  私は、一般論として、やはりこの際はいわゆる直接税という個人の所得税及び法人税が高過ぎるということを直したいという気持ちもあります。しかし、それを直すということとともに、もうこの財政というものは、わずか三十五、六兆の収入に対して三倍半と言われる百三十三兆に至ろうとする国債の発行、いわば借金をいわゆる食いつぶしてしまったという借金財政の日本の国の財政を立て直すためには、どんなに増税しても無理だからどこかでごっぽりと大型の税金を余分にいただかなければやり切れたものじゃない、インフレを今あふるわけにはまいらぬ政府立場に立つと。こういう図式から、いわゆる大型間接税を言えば国民から不興を招くので、税制の見直しということで、そのことがきのうから本日にかけての矢野委員の御質問のような形になってきたと思います。  私は率直に申し上げまして、やはりこの際は「増税なき財政再建」は堅持すべきだ。それには、例えば企業に例えるならば、年収の三年半分を超える借金がある、もはやサラ金でもこんな企業には貸してくださらない、そういう状態です。そういうときには、まず企業は何をするか。保有資産を売って、そうして借金の引き当てをする、これは常道です。だからこそ後藤田さん、あなたが一生懸命行政改革をなさってみえるということだと思います。  それで、この際思い切って政府がまず持っておる土地の、銭こになるものといえばまず土地なんです。東京都内にあるところの土地を一度吐き出したらどうでしょうか。総理が御苦労なさって、民間活力委員会を私的におやりになった。そうして西戸山の開発等もおやりになった。私はなかなか先見の明がおありだと思います。やってみるならば、一つ出すだけで一兆円ぐらいの金になる土地がざくざくとあるじゃありませんか。一兆円にならなくたって三千億か五千億のものがいっぱいあるじゃありませんか。まず持っておるものを出していただければ、公共事業なんかしなくたって、日本の国はもうビルが建てたいのです、香港を初めとして、日本へ雪崩を打って事務所や貿易の拠点をつくろうとしている中ですから。ついこの間のニュージャパンだって、三百万円と言っておったのがもう三千万円と呼ばれておる。一坪ですよ。十倍にあっと言う間になっているのですよ。こういう時代なんです。それはもう世界じゅうから、日本が国際貿易の中心としてきておるからこういうことになってしまったのです。あっと言う間に十倍なんですよ。  だから、しめしめという気持ちはないけれども政府のお持ちになるところをこの際出せるだけお出しになったらどうでしょうか。そうするならば、五兆や十兆の金はすぐ出てくる。特に三大都市圏、こういうところのものがまず裸になれば、そこへ建設会社等やあるいはまた商社が、どんと自分の金で仕事をしてくださるのですから、あなたがおやりになった民間活力委員会、もう少し民間人の知恵を絞って、大臣などに任せておくものだから変なふうになってしまうのですよ。民間人が、きちっと出したら、あの土地欲しい、この土地欲しい、みんな彼らウの目タカの目になって欲しがっておるのですから、そういうのをお出しになったならば、幾らでも、それこそ気の遠くなるような金が東京都内だってごろごろと遊んでおるのです。まずそれを切り売りをなさることが第一。  第二は、次に、電電が幸い、もうこれは御承知のとおり民営化されたのですから、全部これは国債償還に充てるという政府の方針をお決めになった。三分の一は政府が持っても三分の二は売るのでしょう。あの電電に比べて小さいKDDでさえも、五百円の株が六十倍の三万円になっているでしょう、わずか一〇%の配当でありながら。一兆円と想定されておりまする電電なら、KDDと比べても六十兆円でしょう。少なくともこの倍はあると言われておるでしょう。三分の二取ってみたって五十兆や六十兆になるじゃありませんか、売り方さえ公平にきちっと考えるなら。毎年赤字国債の償還、六兆ないし七兆は、これだけずつ売っていっても五、六年は消していかれるじゃありませんか。  第二陣には、御承知のとおり専売公社が来るんでしょう。これは幾らになるかわかりませんが、世評では五兆か十兆にはなると言われておるでしょう、取りはぐれがないところの独占的たばこでございますから。  そのうちに国鉄の貨物駅全部売り払ったらどうでしょう。総裁、おいでになるから後からお聞きしようと思っていますが。借金なくなりますよ。その後で分割・民営にしてみたら、これだって五十兆や八十兆の金にはなるはずだと思いますよ。東京駅だって一兆くらいの資産はあるでしょう。新宿、いかがでしょうか。池袋、上野、新橋とこうやってみなさい、全部一兆円くらいの規模でしょう。これを売ってみたら、百三十兆の金は穴埋めできて、赤字国債だけではなく建設国債だって穴埋めできるじゃありませんか。  足りなければ住宅公団もついでにお売りになったらいかがでしょうか。民間住宅会社は邪魔になっておると言っておる。三十五万戸の建設に対してわずかに二万戸しかようつくらないじゃありませんか。そして、人が契約したら、自分たちは国土法に引っかからぬからと言って倍の値段で土地だけ横取りしていっている。ついでに住宅公団も払い下げいただけたら、百三十兆から百五十兆には全部申し上げただけでなるじゃありませんか。増税なんか必要がない、減税ができると私たちは踏んでおるのですよ。ちょっと大ざっぱですけれども、これは株価になるんだから売ってみないとわかりませんから。  ですけれども、そういう状態のときに、慌てて竹下大蔵大臣が言葉をごまかして一日国会をストップされて、そうして言い逃れをするなんというようなぶざまな形をするよりも、それだけ政府みずからが血を流し、肉を切って、なおかつ足りなかったときには、国民は増税を理解しますよ。我我は増税しようと言おうじゃありませんか。政府みずからがやることをやらずにおいて、官僚国家で国民だけ絞り取るなんというような形は断じて許さない。そんな態度だからこそ国民は増税を逃げるんでしょう。負担率の問題じゃないと私は思いますよ。  幸いにも当委員会におきまして、国会におきまして、電電が協力してくださった、専売が協力してくださった。総裁も後から協力したい、これは言明をしていただこうと思いますが、国鉄。三公社を払い下げてくださるだけだって百兆近く出るじゃありませんか。その前に、政府が国有地を、各省の事業用財産を大蔵省に持ち寄っていただいたらどうですか。あいているところだけでたくさんです。坪一千万円もするようなところに高級幹部が五千円の家賃で住まっているなんというようなばかなことはやめなさい。そういうことをやって、血を出して足りないところがあるならば、堂堂と増税と言ったって、野党も賛成すべきです。なさることをせずにそういうことをするからこういうことになったと思います。大ざっぱな議論ですから、この議論はやがて当該委員会において各種、議員さんたちに詰めていただこうと思います。  それをやった上でなお私は、銀行が預かっておりまする睡眠預金についてお尋ねしたい。預かった預かり主が…(「答弁要らないのか、答弁答弁」と呼ぶ者あり)それでは、その基本的なものだけ、総理も共感をしてみえるようですから、答弁していただきましょう。
  142. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 住宅公団の問題を除いては大体塚本さんと似たような考えを持ちまして鋭意努力しているところです。でありますから、今御指摘のように、電電、専売の処分可能な株式は、今回の予算措置等によりまして国債整理基金特別会計に繰り入れて国債償還に使う、そういうふうに今お願いをしておるところであります。  それから、国有地の処分につきましては、これが今塚本さんのお話を聞いてみると、とらぬタヌキの皮算用みたいなところがありまして、私もそう思って実はいろいろやらせてみましたが、実際、当たってみますとなかなかそんなうまくいかない要素があるのです。  東京都内におきましてどれぐらいあるかと調べさせまして、そして今十四ヘクタールでございますか、とりあえず今いろいろやらせておる。しかし、そのほかに、筑波に移転した跡が随分ある。工業試験所の跡であるとかいろいろなものがある。あれもどうだ、そうやってやってみますと、これは大体公共団体に、払い下げておるんですね。ですから、東京都が公園に使うとかそのほかに使うとかいうので、大体そういう公共団体に先に優先して払い下げておる、公共団体の方は、予算がつかぬものだからおっぽり出してある、そういう情勢でありました。そこで、東京都に促進しまして、今度四カ所の相当大きな広い、十万平米ぐらい以上の、大体そういうところについて、ことしじゅうに二カ所、来年二カ所、これはぜひ手をつけるように、そういうことで東京都の公債増発等によりましてやることにしたのであります。  それから、全国について調べてみますと、行政財産で、大蔵省から報告を聞きますと、大体四千カ所ぐらいある。これはいい話だと思っていろいろまた詰めてみますと、各省が、こういう条件ならこれはできますが、今はこの条件がないからできませんとかいろいろな話があって、大蔵省の検討で可能と見られるのは約五百件ぐらいあった。しかし、五百件でもよろしいというのでやってみましたら、いよいよやる段取りになりますと、移転先がないとか、具体的な、公務員宿舎や何かについては移転先を見つけてやらなければいかぬ、そういういろいろな問題がありまして、とりあえず手をつけられるのはぐっと下がってたしか四十カ所くらいでしたか、そういうふうに下がってしまっている。しかし、それでもいかぬというので、今総務長官に頼みまして、総務庁の監察の方でこのリストを渡すから調べてみてくれ、そのとおりかどうか、大蔵省から言ってきたとおりかどうか調べてみてくれ、そういうわけで、今行政の監察の方で実際に当たってみてもらっている、こういう状況でございまして、大体趣旨は似たようなことを考えるものです。一生懸命やっているのですけれども、まだ力足らずして十分成果を上げ得ないのは残念でございますが、大体その趣旨に沿ってやっておるということを申し上げる次第でございます。
  143. 塚本三郎

    塚本委員 住宅公団につきましては、追い出せというんじゃないのです。入っておる人をそのまま居住させて買ってもらうように、長期ローンでやれば、かえって欲しがっているのですから、だからそれは例外と言わずに考えてほしいと思います。  それから、総理おっしゃらずにおけばよかった、おっしゃったから言うんだけれども、中西国務相のもとでやるとだめだったのですよ。内部から言ってくるのですよ。大蔵省なんか出しゃせぬのですよ。これとこれとこれと言ってみたって、自分たちで悪くてどうしようもないもののときは出すのですよ。どうもこれは次の総理のときに、竹下さんの土産にしておいて、中曽根さんにそんなに花を持たせる必要がないという大蔵省の声まで聞こえてくる。言いたくないけれども、そんな状態になっているから、私は、おっしゃらずにおけばいいけれども、おっしゃったから言うのです。だから、役人にやらしたらだめです。総理が指名なさったブレーンがおるでしょう。ああいう方に民間活力委員会として、総理がいけなければ各党の代表も一緒になって、民間人に持ってこさせなさいよ、民間人に。各省に出させまするとそういうしがない声になっちゃうのですよ、口さがない声に。だから、中西国務相全然わからぬものだから、総理さえうまくごまかせばいいというようなことで、みんな大蔵省のもとで使いようのないものしか出さなかったのですよ。十四と言うけれども、最初は六十と言っていたのですよ。そうしたら、たった十四しかできなくなっちゃったのです。その中身さえも総理の耳に入りてないのです。だから、そういうお考えならば、直ちにもっと民間人をきちっと活用して、この財産はどうなっておる、この財産はどうなっておる、そういうふうにおっしゃれば、役人にそんなものやってみたってみんな共通しちゃってだめなんです。だからやはり、それは総理の発想どおりにきちっと、あなたの信頼するブレーンがおいでになったのでしょう。それでもう一遍点検をさせるということだけちょっと約束していただいたらどうでしょう。
  144. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり、資料を出させるのは責任者である大蔵省の国有財産を預かっておるところでございますから、大蔵省に命じてやらせるのが筋であるだろうと思います。しかし、隠しているというようなことがあったら、これは勘弁できない、そう思います。しかし、それが果たして隠しているのか隠してないのか、それはリストを出させてみて、それをチェックしてみる、そういう形でやる必要がありますし、また民間人の発想あるいは民間人のやるいろいろな企画力というものを活用することは私は同感でございます。そういう意味におきまして、大いに我々の機関の諮問的な存在として活用していきたいと思っております。
  145. 塚本三郎

    塚本委員 そのようにしてあらゆるものを財政再建の赤字の穴埋めにしていただいて、そうして増税を避けてほしい、増税しなくたってこういうもので赤字の穴埋めはできるじゃないかということを私は力説している。やるだけのことを政府みずからが先におやりなさいということです。  その上でなお、世間一般で聞きなれない言葉に、睡眠預金ということを専門家は言っております。預金者本人が死んでしまってそのままになっておったり、あるいは銀行に預けたまま通帳が紛失してわからなくなってしまっておる、こういうのが膨大な金がある。したがって、昨年私は委員会で一体それはどういうふうになっておりますかと言ったら、商法に基づいて、五年たったならば睡眠口座として雑益でもってそれは銀行の所得になってしまいます、時効にかかって銀行のものになりますというときにどうして本人に通知をなさらないのかどうことを言ったのですが、していないというとです。検討するということですが、大蔵大臣、その後どういうふうに検討なさったのですか。
  146. 竹下登

    竹下国務大臣 昨年本委員会で、いわゆる今おっしゃいました睡眠預金、これを、塚本書記長の一つの考え方は、むしろ時効が成立したらそれをいわゆる拾得物として考えて、それで国庫に納入する考えはないか、こういう趣旨でございました。  その後私どももいろいろ行政指導等をいたしておりますが、一定期間経過した睡眠預金につきまして預金者に郵便による通知を行って、その通知が返送されるなど預金者が確認できないものにつきましては、一定の期間を置いて商法上からいえば雑益としてそれを、したがって法人税の対象になるということになるわけです。したがって、これからさらに指導していかなければいかぬのは、各金融機関によりまして、あるいは五年あるいは十年間はじっと待っておるとか、それらは一応これから、その実態が大体わかりましたから、行政指導でもっておおむね統一した方法でそれに対応するようにしたらどうだ、こういうことを今指導しておるわけであります。したがって、また幸いに、いわゆる金融検査、また我が方で申しております税務調査の二つが可能であるわけでございますので、それ等によってさらにそれを確認できるように進めていこうということでございます。そして一定期間で例えば、信用機関でございますから、一定期間を過ぎてからその本人がわかった場合はこれは確かに支払いをしておりますが、その場合は、雑益と雑損とは雑損の方がはるかに恐らく小そうございますけれども、雑損で処理していくというのが商法上の手法からいえば適切であろう。  ただ、いわゆる睡眠預金というものについて、各金融機関におおむね一つの基準に合致するような形で指導をして措置をやれとおっしゃったことに対しましては、おおよその調査はできましたので、そういう方向でこれから指導してまいりたいというところまでは言えるのではないかというふうに思います。
  147. 塚本三郎

    塚本委員 私が昨年大蔵省に聞きましたら、実は相手方に通知もせずに、取引が五年以上なかったならば銀行のもうけになりますというところで、銀行の利益、雑益として入れております、どれだけあったでしょうかと聞きましたならば、銀行が四百億、それから相銀が百億、それから信金が百億の六百億でございました。こんな膨大な金を黙ってぽっぽへ入れるというのはこれは行き過ぎじゃありませんかということを申し上げたのです。そこで、実は調べてみたら、ほとんど一万円以下なんです。我々もパーティーやると、振り込んでいただきますと、一万円以下だとそのままにほっておくから、通帳が五冊も六冊もそのままになっている、こういうたぐいのものなんです。本当は匿名預金で家族にも知られずにあちらこちらの名前で入れであったもの、本人がぽっと死んでしまったらそれはそのままになる。こういうものが恐らくこの六百億に対して一けたは多くあるのではないかというのが専門家の意見です。それはそのまま銀行が預かり金として、取り手がないけれども、表面に出さずに運用しておる。だから、何千億という金があるのではないかというのが一方の意見であります。  したがって、この際はまず、先ほど大蔵大臣から御答弁いただいたように、時効の期限が来たら必ず相手方に通知をしていただく、これは約束していただきました。返事がなかったものについては、これは拾得物として一たんは国に納めていただく。銀行のものじゃない。拾ったものならば警察に届けるということだから、銀行が黙って自分のものにせずに、きちっとこの点を法律をつくって、そうしておけば、きちっとそういう通知がなされたかどうしたかということを国税が調査することができる。そうすれば、表へ出さずにそういうものをいつまでも運用して勝手にすることができなくなってくるから、だから一たんは法律をきちっとつくって、それは国に納めるということになれば、納めるか納めないかは、税務が調査に入ることができる。大蔵大臣がわずかな税金のためにあちらこちら今秋を取ろうとするときに、ちょっとサンプルで出しただけ、一万円以下が中心でも六百億、そういうふうに、匿名預金等でなされたところのものが恐らく一兆円を超えるのではないかと言われております。私は、税務調査と国税に協力をする意味できちっとそういう法律をつくるべきだと思いますが、大臣いかがでしょう。
  148. 竹下登

    竹下国務大臣 まず、塚本書記長の問題意識で、御提案のありました処理手順については、一定期間経過した睡眠預金について預金者に郵便による通知を行って、そしてその通知が返送されるなど預金者が確認できないものについては雑益に計上させるというルールを明確化するということで、これはやれると思うのです。  それから、今の一たん国が預かってその後金融機関に返す、拾得物なら手数料が少なくて済みますから国に余計入るという理屈になるわけでございますけれども、この問題は恐らく私は法律上困難であろう。結局は雑益として計上されて、そして法人税の対象になるわけでございますから、拾得物としてこれを処理するということに対しては、私は商法、あらゆる関係から勉強を、去年言われましたのでしましたが、それは法律をつくってそれを拾得物としてみなすということについてはまだかなり問題があるというふうに思います。  なお再度にわたっての御指摘でございますから、もう一遍それは勉強してみますが、拾得物として扱うということに対しては、今、おまえ自信があるかと言われるとちょっと自信がある。というふうには申せないというのが偽らざる心境であります。
  149. 塚本三郎

    塚本委員 私が言いたいのは、やはり税務調査を入れてきちっとしなければ、銀行監査だけではなあなあになってしまうのです。だから、実はもうよくわかる。窓口でだれだれ会社の社長さんはだれだれの係だとわかっているのです。だから、そういう人たちがぽっこり――その人の中でも、いわゆるあちらこちら匿名で家族にも知らすことができない、預金通帳までみんな銀行に預かっているのですよ。だから銀行の監査に来ますと、きょうは来ます、名古屋駅まで迎えに、私名古屋ですから。銀行局の人が来るときには、そのうちの預かったのを女の子が自宅へ通帳だけ持って帰る、こういうことが平然と行われておりました。もうこれはオンラインできちっとコンピューターを入れたからそういう操作は無理かなと私は思っておりますが、いずれにしても、そういうことで取りに来ないところのものが膨大に、きちっと雑益で出してくれれば、利益として本当に計上しているかどうかということは国税が調査をすることができますね、だけれど、それがやられないと、そのまま取りに来るかもしれぬでいつまでも内部運用で、これは銀行は運用することが商売ですから、私は銀行を憎むわけじゃないけれども、こんなに膨大な金が黙って自分の懐に入ることを見逃していいのか。それよりも、やはり庶民がわずかの三百万円のあのグリーンカードで大騒動するようなときに、預かる金融機関だけが自分の雑益になるのですというような形では済まされませんから、だからその点を厳格にきちっと、銀行の監査だけではなくして、やはり全く銀行とは別の立場から、私たちが税務調査を受け入れる立場に銀行がお立ちになってきちっとするためには、法の裏づけがなければできないのじゃありませんかということを聞いているのです。
  150. 竹下登

    竹下国務大臣 銀行に対する税務調査というもの、これは私は、新しい法律上の裏づけはなくても、今日もできると思っております。だから、いわゆる銀行の検査とそして税務調査と両方によりまして、おおむね統一的な制度化ができたら、私は塚本委員趣旨に沿うことになるであろうというふうに考えております。
  151. 塚本三郎

    塚本委員 おおむね銀行の監査と国税のいわゆる調査とを制度化してやれば法律がなくてもできるという話でしたが、私はどうしてそれができるのか、今、まあおぼろげにはわかりますが、確信はございません。私は、この際は立法をすることによって、きちっと堂々とやれるようにすべきだと思いますけれども、今ここで早急に言ってもあれですから、勉強したいという話ですから、なおこの問題は詰めてみたいというふうに思います。  要点は、やはり庶民大衆のわずかな金でも国税が苦労して集めておいでになるときに、金融機関がちょっとサンプルだけで、一万円以下であっても六百億の金がさっと出てきた。だから大きな、睡眠預金というのは、初めからあんなもの二千円や三千円だから取りにいかないという金ではなくして、本当にいろいろな名前でもって、好きな人たちの名前でやっておいたけれども、相手方に通帳を渡さないままころっと死んでしまったというような膨大な金があるというのが、国税が調査してつかんでおるのです。だからこそ、塚本先生六百億と言いましたけれども、一けた以上違うのじゃありませんか、こういうような議論が出てくるのでございます。  だから、やはりこれは、国がこんなに苦労しておるのだからきちっと国の中に、利息として銀行がお取りになることは当然ですが、預ったものをそのまま、いわゆる拾得物と同じような形で国に一たん納めるということが私は筋じゃないかというふうに思いますので、再度この点について検討を希望いたしておきます。  次は、生命保険です。  生命保険の事業については、御承知のとおり人生わずか五十年と言われたのに、既に七十から八十になろうといたしております。老齢化社会を迎えました。おかげで国は世界一の長寿国になりました。そのかわり、年金を初めとする老齢化社会に向けて社会保障費で政府は大変苦しんでおります。しかし保険会社は、早く亡くなればお金を全部満額払われなくても保険金を支払わなければなりません。死亡率が少なくなったから満額納めていただくというところまで大部分が来るようにな理真下。戦後の混乱でもってインフレがどんどんと進んでまいりました。おかげで保険会社だけはマンモス企業を支配することのできる日本一の資産の所有者になったことは御承知のとおりでございます。  その五十八年末における契約保有金額は、何と総理、七何五十八兆ですよ。純資産四十兆余、収入保険料十一兆余、単なる配当の利息収入だけで二・七兆円余に及んでおるという状態が今日の保険業界の姿でございます。私が調べてみましたら、もちろん造船から、鉄鋼から、電力から、電機から、私鉄から、日本における、東京株式上場におけるトップクラス、上位三つぐらいは、筆頭株主から三位ぐらいはこれことごとく銀行か生保が株主になっております。しかも、その銀行のほとんどが、また生保が株主に筆頭からなっておるというのが今日の日本経済の実態です。まさに日本経済における奥の院と言われておるわけです。  一体、先ほどの睡眠預金と同じように、掛金をして、そして契約をした受取人が本人で、受取人が死んでしまったらそのお金はどうなりますか。さっきの睡眠預金と同じなんですね。あるいはまた、私が契約して受取人がだれだれさんでした、その受取人が先に死んでしまって、契約人がそれを知らずに名義変更しないまま死んでしまいました。本人の請求によってですから、請求者がないのです。この金額は一体どうなんですか。聞いてみたら、ほんのわずかしか出してこないのです。銀行預金でさえも、金額がわずか一万円以下でさえも六百億出たのです。生保のそういう受取手のないところの保険金額はおおよそどれだけありましょうか。
  152. 加茂文治

    ○加茂政府委員 お答え申し上げます。  生命保険契約の保険金に関する消滅時効は、商法では二年でございますが、生命保険会社では三年になっておるわけでございます。死亡保険金は受取人等の支払い請求等により支払われますけれども、満期保険金については、事前に保険金受取人に対しまして満期通知を発しておるわけでございます。  これら保険金のうち時効となった保険金額は、五十八年度で約四千六百三十件、約七億三千万円でございます。これらの大部分は転居先不明もしくは受取人等の確認が困難であると聞いておりますけれども、時効完成に至る間、居所確認等についてきめ細かに対応するほか、時効完成前には改めて通知を出す等、できる限りの措置を講じております。  なお、時効完成後も請求等がありましたら保険金を支払うことどいたしておりまして、五十八年度約千七十件、約二億円が支払われております。さらに、結果として剰余金となったものにつきましては、契約者配当として還元をいたしております。
  153. 塚本三郎

    塚本委員 一件当たり幾らの金額になりますか。
  154. 加茂文治

    ○加茂政府委員 今の内訳を申しますと、死亡保険金が三億三千万円、満期保険金が四億でございます。  死亡保険金につきましては、一件当たり約百万円弱でございます。それから満期保険金につきましては、一件当たり九万三千円。平均しまして一件当たり十六万円ぐらいでございます。
  155. 塚本三郎

    塚本委員 死亡保険一件当たり九万円ですよ。こんなものは忘れてしまっておるか、受取人がわかっておっても取りにいかないような金なんですよ。大体死亡の場合は、今ならば少なくとも何百万円という金額になってしかるべきだと思うのです。だから、実際は調査ができてないのです、この問題は。今、銀行と比べてみて、私はそんなに大きな違いがないというふうに思いますけれども、こういう統計しか出てきてない。ほとんど保険のところは政府も手が入れられてないというのが実態だと思います。だから、わずか死亡で九万円ぐらいが平均だというのですよ。少なくとも保険の常識からするなら、死亡したときの保険なんというのはやはり何百万円というのが普通じゃないでしょうか。いかにもそんなのは実情にそぐわないというふうに私は思います。  しかし、今このことをやっておると時間を食いますので先に進みますが、五十八年の実績によると、新規契約は金額で八十九兆、そのうちで解約が二十三兆、失効が二十七兆で、実は八十九兆のうちで五十兆が解約になってしまうのです、一年間で。それは六割に及んでおるわけです。だから、無理やり入れて、そしてその入れた勧誘員さん、外務員さんがもう親戚その他行くところがなくなってやめると、義理でおつき合いしておった人もやめていく。長期安定の生命保険が実は一番最短なんです。これはやはり外務に問題があると思います。  しかしそれ以上に、過剰に訪問をし、無理に募集をし、義理に募集に応じ、あるいは不正にうまいこと話法でしゃべって、そして仕方なしに入ったのだけれども、その外務員さんが行くところがなくなってやめるのが、十六万人一年間に入って十五万人余はやめていくのですよ。ことし外務員になったのは十六万人、その年のうちに十五万余はやめていくのです。親戚や義理で頼むところがなくなったらもうこれで終わり、こういう状態になっている。そのために掛けられた保険金が約二兆、そのうちで一兆二千億は実は掛け捨てでやめていくのです。ですから一兆二千億は保険会社が丸々もうけになる。これは勧誘の費用がかかりますけれども、それにしても取り過ぎではありませんか。大体そういう形で最初一年間はゼロだということは、やはり解約をした人のもとにある程度戻すのが本当だと思いますが、いかがでしょう。
  156. 加茂文治

    ○加茂政府委員 生命保険の契約に当たりましては、募集のためのコストあるいは医的診査のための費用が必要でございます。また、契約が存続している期間につきましては死亡保障のコストがかかるわけでございます。したがいまして、保険契約が解約をされましても、払い込まれた保険料を全額払い戻すわけにはいかないものであることは御理解いただきたいと思っております。  しかしながら、解約返戻金の水準につきましては、生保会社の経営効率化の努力を反映いたしまして、戦後数次にわたり引き上げを行ってきておるところでございます。したがいまして、今後とも経営の効率化を通じましてこの解約返戻金の水準の充実にさらに努めるように指導いたしたいと思っております。
  157. 塚本三郎

    塚本委員 急激によくなってきておることは認めます、これは資産もよくなったからです。それにしても、ゼロということはないでしょうということを私は指摘しているのだが、うんと改善をしてほしいと思います。  次は、二年以内に亡くなった人については告知義務というのがありまして、それでいろいろと、死ぬと、何か病気があったのではないかと一生懸命お医者さんを通じて、前にかかっておった病院をあさって歩いて、そして、こういう病気でしたということをあなたは言わなかったから、だから保険金を受け取る資格はございませんよ、こういう形で言われると、そうすると、勧誘するときは何でも入ってください、入ってくださいとこう言って親戚のおばちゃんたちが来て義理で入れておいて、後から、あなたは以前に病院にこういうことで入っておったじゃありませんか、それを言わなかったから、掛金は上げるけれども満期の金額は上げません、こんなトラブルばかりなんです。  したがって、これは改善するために逆に、こういう点はありませんか、こういう点はありませんかと保険の会社の方がきちっとそのことを聞いて、そしてそれに答えるという形にしないと、そのかわり聞かれたらうそを言ってはいけませんという形にするということと、外務員がやったから、あの人は勧誘だけが仕事ですではなくして、使用者責任なんだから外務員のやったことは会社が責任を持つ、この二つを改善すべきだと思いますが、いかがです。
  158. 加茂文治

    ○加茂政府委員 告知義務の問題でございますが、生命保険におきましては、ほぼ同程度の健康状態の人々の中に病気進行中の人々が加入した場合には保険料率について契約者間の公平性が失われるという問題もございますので、医師の診査のみでは被保険者の危険率を調査し、すべてを知ることは不可能に近いということで、告知義務ができておることは先生御承知のとおりでございますが、この告知事項につきましては、従来は告知事項の範囲、様式が必ずしも十分に整備されていなかったためにトラブルも少なくなかったわけでございます。  このために、四十九年には各社の任意でありました告知事項を限定するなど、告知書記載内容の統一を図っております。次いで五十三年には、告知書の様式を平易な質問形式に統一をいたしております。さらに五十七年には、告知書の一層の平明化、具体化を図り、例えば病状を具体的な質問形式とするなど指導しておるところでございます。したがいまして、先生御指摘のような方向で改善がされておるというふうに考えております。
  159. 塚本三郎

    塚本委員 それから、特に住宅ローンなどいわゆる銀行からお金を借りますと、家を建てると、そのときに必ず火災保険に入りなさい、返す人は必ず生命保険を掛けなさい、もう今や保険は、住宅ローンをしておる、借りておるところのサラリーマンにとっては実は強制なんですよ。だから、みんな頭へくるわけなんです。  だからこの際は、住宅ローンを借りたところのサラリーマン、これは火災保険はもちろんだけれども、特に生命保険等は、一般じゃない、強制的にさせられるのだから、だから特別の措置を――これは生命保険というのは任意でやっているのでしょう。だが、もう住宅ローンは我が国では当然のことなんだから、それに入らなければ、いつ死んでしまうかわからないからと言われれば強制加入でしょう。銀行は、損保と生保をみんな一連の財閥系でこうやっているのでしょう。こんなばかなことで、住宅を建てるためにはもう二重、三重にがんじがらめにサラリーマンはさせられておるのだから、住宅ローンに対する生保だけでも特別の還元方式を指導すべきだと思うが、いかがでしょう。
  160. 加茂文治

    ○加茂政府委員 ちょっと恐れ入りますが、住宅ローンに関する還元と…
  161. 塚本三郎

    塚本委員 特別に安い料率にしなさいということです。
  162. 加茂文治

    ○加茂政府委員 はい。これにつきましては、一般的にその契約者集団の事故率と申しますか、そういうものが良好であるというふうに見込まれる場合には、そのような安い料率を適用してやっておるわけでございます。
  163. 塚本三郎

    塚本委員 大蔵大臣部長だけに事務的にやらしておっては私も納得がいきません。やはりこれは強制的な加入と同じなんだから、特別に還元を、今までのあれを還元するということを言っておるのだから、いたし方なく入らさせられるのだから、住宅ローンで金を借りたときには必ず生命保険に入らさせられておるのだから、それだけは強制加入と同じなんだから、だから特別の安い掛金に、いわゆる料率を変えることを再検討してほしいと思います。
  164. 竹下登

    竹下国務大臣 この問題につきましては、従来から住宅政策の側面から議論されたことは何度がございますが、これを保険の料率の面から議論されたのは、私にとってはきょうが初めてでございます。だから、住宅政策の点からの議論はたびたび行われておりますが、今おっしゃった角度での議論は私はしたことがございませんので、この問題は十分検討させていただきます。
  165. 塚本三郎

    塚本委員 強く希望しておきます。  それから、保険で最後に、私は先ほどから申し上げておりますように、膨大な資産がこの保険会社の中にはあるということです。  ところが、税金の納税額を見てみますると、五十八年度決算大法人申告所得上位五十社という中で、一社が十三位に入っておって千三百四十一億、トップのトヨタ四千百四十七億と比べてみて、とにかくわずかに十三位に一社、十九位に一社、こういう状態なんです。いかにも膨大な、一切のトップ企業のほとんど上位は、三位までは銀行か生保が大株主でございますよ。その銀行のすべてを生保が握っておるのですよ。東海銀行はトヨタさんが一位です、これは例外ですけれども。だから、それを除いてはもう全部生保が握っておる。にもかかわらず、納税額だけはわずかに十九位と十三位に位するのが二社あるだけでございます。筆頭株主をどっとやっているのが上に、たくさん税金を納めておってくださって、生保だけはこんな状態。  先ほど私が読み上げましたが、債券十二兆の中だって株式六兆あるでしょう。この六兆というのは五十円の額面です。今一番安い鉄や造船だって百五十円くらいでしょう。三倍じゃありませんか。平均三、四百円だから、この六兆円だけの値でも実は時価にしてみたなら三、四十兆になるでしょう。土地については、一兆余という土地でございますから大体百兆にはなるはずでございます。百兆にはなるのですよ。売る必要がないから売らずに都市近郊ででんと持っておるのです。だけれども、税法は土地の移動や金の移動がなければ税金を納める必要がないから、日本じゅうの経済のいわゆる大黒柱を支えておっても税の納入はこんな程度なんです。  どうしてこんなことができたかといいますと、実は最初、私が満期のとき、死ぬときにはこれこれの金がいただけるであろうと思ったけれども、インフレで十分の一以下になってしまった。だから、いまだに保険は義理でなければなかなか入っていただけないような状態になっている。おかげで払うべきものが膨大な資産となって残ったじゃありませんか。そうして、人生五十年が七、八十年になったおかげで満期まで払っていただける。国家の施策の恩恵を受けて日本経済の奥の院。国がこんなに法人税あるいはまた所得税で困っておるならば、税金の法律としては移動させなければ納める必要がないということでこのままにされておっていいでしょうか。私は、一部の資産を-全部をやれということになるならばそれは事業所の資産再評価につながりますが、預かった金でしょう、運用によって、国家施策に便乗できてやったのだから、見事です、悪いとは言いません。でも、おかげでそれだけの資産ができたのだから、この際ほんの少しだけでも、十兆ぐらい表に出していただければ五、六兆は国に税金を納めていただけるじゃありませんか。  だから、生保だけ再評価するということの法律をつくるか、あるいはそれが嫌ならば指導していただいて、株式で配当の悪いものか、あるいは土地自身の中で使ってないところで、使えば国の経済投資にもなるというところをこの際売るように指導させれば、それだけ、十兆ぐらい頭を出していただいたらどうでしょうか。さすれば、大蔵大臣がこんなにウの目タカの目になってわずかな税を取るために大騒動しなくて済むじゃありませんか。何らかの形でやらなければ、いかにも国民感情として不都合であり不合理じゃないかと思いますが、大蔵大臣、いかがでしょう。
  166. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる含み資産の問題になろうかと思うのであります。やはり保険理論というものは、要するに絶えず支払い準備資産というものを持っていなければいかぬというところに、より有利な対象を選んで、そこに投資をして、保険理論というものが成り立っていくというわけです。それがいわゆる戦前でございますと、これはまさに国債を中心に持っておりました。しかし、これは敗戦というようなことで大変な打撃を受けました。その後は確かに、それにいたしましてもインフレーションとオイルショック等でいささかこの資産運用等が当初の予定ほど運用できなかった時代もあろうかと思います。しかし、確かに生保会社というものはそういう経営努力というものを大変にやりまして、したがって、いわゆる長期的な保険給付の確保という使命感からくる問題としてそういう有利な資産に投資してきたということになりますので、したがって、含み資産も言うならば契約者のものであるということになりますと、この契約者に還元されるべきものという考え方に立って、いわゆる今おっしゃいましたキャピタルゲインの契約者への還元問題、これは私、勉強させていただきます。  一つの生保という企業をとって、資産再評価税と申しましょうか、かってそういう発想の議論があったことがございますが、これということになりますと、資産の含みというものは生保会社だけでなく、金融機関も、また事業会社も建設業者も者ありますから、資産再評価税というものにつながる発想というものは、じゃ、これは法人だけにするかあるいは個人もが、こういうことになりますと、これはなかなか現実問題として取り上げていくのは困難だ。  だから、やはり塚本書記長にお約束できますのは、いわゆる契約者への還元という問題の研究はさせてください、これであって、資産再評価税という角度からの勉強というのは現実問題として難しい問題ではないかというふうに思います。
  167. 塚本三郎

    塚本委員 理屈はよくわかるのです。私もきちっと頭が整理されて言うわけじゃないのです。でも、土地一兆円が、土地だけだって百兆にはなるでしょう。株は六兆円というのだって、毎日、新聞に出ているのですから、少なくとも四、五十兆にはなるでしょう。そのときに、税金だけは納めておるのがこんなちょっぴりでございますよ。だから表へ出せば、それは大変な信用力だから、加入者も今こそどんどん入ってください、銀行よりも保険の方が有利ですよというふうに、実は配当を還元していただきたい。私は保険は大事だと思います。でも、そんなに大きな資産があるのだから、売らなければ実は税金の対象になりませんといって、日本経済の奥にいつまでもでんと支配力を持っておられたのでは、いかにも不似合いじゃありませんか。  だから、本当ならばこれは今までの、加入者に還元すべきだけれども、今の加入者よりも亡くなった人に本当は還元してあげるべきものなんです。亡くなった人は実はインフレでもって予定の一割ももらっていないのでしょう。だからいまだになかなか加入しないから、先ほど申し上げた縁故募集でなければなかなか入ってくださらないということだから、亡くなった人に還元すべきものが還元されていないならば、国家の施策よろしきを得て長寿国になったのだから、国家は社会保障費や年金で困っているのだから、だからこの際、税にちょっぴり、十兆円ぐらい頭を出していただくことを、法律論としてできなかったならば、指導して何とか移動させて財政再建に協力していただこうじゃありませんか。  出てきたところのわずかの金だけでもって、そんな受取手のない金だって、銀行と比べてみて、全然そんな寝ぼけたようなことしか言えないような大蔵省では困ると思う。国民の感情としてやはり、ないなら別ですよ、こんなにすばらしくあるのです。だからこれからどんどん入りなさい、しかし本当は亡くなった人にもっと上げるべきであったが、それができないから国に納めてくださいというふうなことを考えるのが常識じゃありませんか。今日こんなに国民が税負担に困っておるのだから、そういうことをお考えになったらいかがでしょうか。再度御質問いたします。
  168. 竹下登

    竹下国務大臣 この問題につきましては、確かに免許事業であるということ、それから今、円ドル委員会等で国際化、自由化の問題がございますが、生保は世界のどの国の生保よりも掛金は低いし、あるいは内容もいいと言えるかもしれませんが、やはりそれは世の中の経済、社会の動きにもよりますけれども、企業努力も私はあったと思います。  したがって、これらの使途は、契約者に対する還元という問題については私も勉強さしていただきますが、資産再評価という形でもってそこに、あるいは塚本流の表現からいえば協力していただくとでも申しますか、そういうことになりますと、どの角度からアプローチしていいのかにわかには私も返答する自信がございませんので、これは勉強させてください。
  169. 塚本三郎

    塚本委員 この問題、総理おわかりのとおり、勉強させてほしいという、私はそれで結構だと思います。やはり不似合いなんです。企業努力、ありました。ある社長が言っていました。出すことをちびって、ためることだけ一生懸命やってまいりました、こう言っているのです。そうだと思う。だからその努力は認める。だから、おかげでそれだけ資産があるのだから、国に協力してもらう方法を勉強していただきたい。総理、どう思いますか。
  170. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 塚本さんの御議論をずっと拝聴しておりましたが、睡眠預金の問題といい、あるいは生命保険の、八十年の長寿の結果、会社は随分楽になったのじゃないかという御指摘といい、なかなか鋭い御指摘やあるだろうと思うのです。私は、なるほどそういう面でよくお調べになって、庶民が疑問に思っていることを国会予算委員会でよく御指摘なすったと、非常に敬意を表するものであります。  睡眠預金の問題その他について、大蔵大臣からそれぞれ御答弁がありましたが、なるほど大蔵省としてはそういう筋であり、自由経済の建前からいたしまして、企業の自主性、あるいはまた一面においては、いろいろな問題が起こった場合に企業は危険負担もやっておるわけでございますから、そういう自由経済の建前というものは政府は守っていくべきである。今の保険の問題にいたしましても、長寿になって、それで保険金その他でもうけるようになってくれば、保険数理に基づいて保険料を安くしていくとか、あるいはこれを還元して-保険会社というのは相互会社だろうと思うのです。したがって、得た益金というものは仲間に還元する。そういう意味で、保険を掛けている皆様方に還元をする、何らかの形によって相互扶助でいく、建前上はそういうシステムであると思うので、それによって得た益金というものをがばっと途中から資産再評価という形でいくことは自由経済の建前上どうかと思うのです。しかし、御指摘になったこの長寿というものは、国家社会全体の結果できたので、一保険会社でやってできたことではないのではないか、最大の受益者ではないかという御指摘は当たらぬこともない、そういう気もいたします。したがって、そういう点については御議論をよく拝聴いたしまして、政府としてはどういう政策が妥当であるか、一つの課題を与えられたものとして検討していきたいと思います。
  171. 塚本三郎

    塚本委員 時間が少なくなりました。私、本当は一兆円の減税あるいは投資減税、さらにまた労働時間の短縮、特に山口労働大臣が熱心に協力しておってくださるゴールデンウイークに対する太陽と緑の週間の実現等をお尋ねしたかったのでありますが、時間がわずかになりましたし、国鉄総裁をお呼びしてお待ちいただいておりますので、それらの質問等は次の委員に譲らせていただくことをお許しいただきたい。そして国鉄問題をお聞きしたいと思います。  総理は本会議の施政方針の中で、国鉄の再建について、「今年は、日本国有鉄道再建監理委員会の意見を得て、いよいよ国鉄の抜本的改革に取り組むときであります。」とおっしゃった。この国鉄再建監理委員会の意見を基本にしての抜本的改革というのは、言葉どおり受け取ってようございますか。
  172. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 本会議で申し上げましたとおり、誠実に、かつ断固としてやりたいと思います。
  173. 塚本三郎

    塚本委員 去る一月十日に「経営改革のための基本方策」を監理委員会に提出せられた、この国鉄当局の基本方策は、マスコミなどでは各関係方面からすさまじい批判を浴びております。監理委員会もこの国鉄当局の態度にあきれ果てておる。私の友人もそう言っておりました。だからこれは総理も御存じだと思います。やはり国鉄を民営化し、そうして分割をしてひとり立ちするようにすべきだというのが大勢になっておると思います。しかし、監理委員会に出されたところの基本方策では、名前は民営化だけれども、公社と同じようにこれからも年々二兆円ずつ政府は金を恵んでください、そうして、労働組合に対するスト権等もなくして、いわゆる仲裁裁定によらしてくださいなんというような、民間会社に行くということを言いながら実はそれとは違ったことを言ってみえるということで、私たちは、国鉄は一体何をふざけておるのだ、この期に及んでもというような意見が強いわけです。  しかし、仁杉総裁は既に昨年の夏か秋でしたか、国鉄も分割と民営は避けられないという御発言をなさったはずなんです。ところが内部からくちゃくちゃにされてしまったので、私は、総裁頑張れと言って電話をかけた覚えがあります。率直に言って、どうもあなたのところの内部がおかしいことをやっているという疑いが私にはあるのです。監理委員会の意見に素直に協力をするという意思を総裁はお持ちでしょうか。
  174. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 ただいま御指摘がございましたが、私ども、この国鉄の「経営改革のための基本方策」を発表と申しますか、監理委員会に表明いたしました際に、総裁談話というものを出してございますが、この中に、この基本方策は私どもとしては現実的かつ効果的な方法だと確信しております、しかし、これらについていろいろ御批判、御指摘等があるかと思いますが、これらについては謙虚に拝聴するとともに、今後、国鉄再建監理委員会が今最終的な案を御審議されておるわけでございますが、これらに対しましては御協力をする、誠心誠意御協力をするということを申し上げているわけでございます。今先生の御質問のとおりでございます。
  175. 塚本三郎

    塚本委員 御協力を申し上げます、総裁はその意思だと思います。国鉄監理委員会の勧告は国鉄立ち直りの天与のチャンスにしなければいけないと思います。ところが、当局者は何と言っておるか。蒙古襲来と受けとめて、監理委員会と運輸省の意見を阻止することをあの官僚ともは国体護持、こう言っておるのです。ようございますか。総裁だって聞いたことがあるでしょう。私はかつて、本委員会で国鉄問題を取り上げて、失礼だとは思いましたけれども、魚は頭から腐る、幹部が腐っておるから国鉄は腐っていったのだ、そう申し上げて、経営幹部の反省を促しました。最近、一部の幹部はその気になっておりますが、大部分は何とかして公社として生き残れないかという議論ばかりがあなたのいないところで行われておる。監理委員会を蒙古だとか、あるいは外敵だ、こういうようなことを言っておる。事務の担当責任者に対して、監理委員会が出すところの書類というものはおれたちの目を通すまでは出すな、こう言うのですよ。だれですか、そんなばかなことを言うのは。一度名前をここで言ってください。
  176. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 今先生からいろいろ御指摘がございましたが、先ほど私が御答弁いたしました総裁談話というものは、決して私が一人で書いたものではございませんで、役員会にかけましてきちっと出したものでございます。したがいまして、これは国鉄の意思というふうにお酌み取りを願いたいと思います。  今御指摘がございました国体護持というような言葉は、かつて二年ほど前に、監理委員会の成立というような時期に一時そういう言葉が出たというふうには聞いておりますが、現在は、先ほど申し上げましたように、監理委員会にも誠心誠意御協力するということを全面的に私の総裁談話で申しておるわけでございますので、そういうふうに御理解を願いたいと思うわけでございます。
  177. 塚本三郎

    塚本委員 本会議で自民党の三塚議員が熱心に総理に御質問をなさって、もうあきれ返っている。あれだけ熱心に国鉄改革をなさった方でも、自民党の議員先生でさえもあきれ返っておる。だからあのように激しい議論を本会議の壇上から過日なさったと私は受けとめております。私は、既に数年前に、七、八年前に、国鉄の職場は人民管理ではないかというふうに指摘をいたしました。ところが、あなたの前の二代の総裁はほとんどそのことを受け入れてくださらなかった。そして、やっと職場点検をとおっしゃった。あなたの出した中で、二年たってもいまだに職場規律の改善がこれから必要でございますからというようなことを言っておるのですよ。あのときにおやりになっておったらこんなばかな国鉄にならなかったというふうに思うべきでしょう。だから今ごろになって、職場総点検をこれからやらなければなりません、こういうような態度で――電電は既に民営化ができました。仁杉さん、御無礼だけれども、少しは真藤総裁を見習ってくださったらいかがでしょうか。よそから来た総裁でも雲泥の差だと言われること、あなたは悔しくありませんか。それは赤字だとおっしゃるけれども、やりようは幾らでもある。真藤さんはよそから来たんだが、あなたはかつては国鉄で育ったお方でしょう、全部おわかりなんですよ。頭から腐ったら、あなたの言うことを聞かないところの副総裁以下――最近は、国鉄は塚本書記長の言ったように頭から腐るだけではない、国鉄の中の血を入れかえなければならない、こういう議論が中堅の諸君の中にふつふつとして沸いてきておるのですよ。労働組合じゃないのですよ、学卒の諸君だって、おれたちの職場はどうなるのだ、もうトップにおけるところの血を入れかえてくれ、これだけ政府が真剣に再建策を講じておるときに、出す書類までチェックをするとかいうようなばかなことをやっておったら、今度こそ再建のチャンスがなくなるじゃないかというふうに言われておるのですよ。総裁はかわいそうだと言うけれども、総裁がようやらなかったら、あなたもろとも血を入れかえていただかなければならなくなりますよ。どうぞ本当にこの際は、民間経営の苦しさを経験した人、あなたが民間経営においでになったのと同じく、副総裁以下、一度民間の苦労した人と入れかえてからやり直したらどうでしょう。いかがですか。
  178. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 今先生の御指摘がございました。国鉄部内におきまして、真藤総裁も言っておられますが、閉鎖社会に生きているということがございまして、なかなか方向変換が難しいという面は確かにございます。しかし、私といたしましても、今度出しました案にいたしましても、決して分割をしないということを申し上げているわけではございません。今度の案の基本に、私ども考えました中にありますのは、要員を、ただいま三十二万前後おると思いますが、それを十八万八千人にするとか、二十五兆の借金をどうするか、それからさらに年金問題が非常に大きな問題として我我にのしかかってまいりますが、こういう問題を解決していくというためには六十二年という時はちょっと短過ぎるので、六十五年という時をかしていただきたいというようなことを裏に秘めているわけでございまして、最後にございますが、六十五年には分割その他を含めまして見直したいということをはっきり書いてあるわけでございまして、私どもといたしましては、できるだけの努力を今後も重ねてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  179. 塚本三郎

    塚本委員 六十五年なんてのんびりしたことを監理委員会は許してくれませんよ。もはやこの際は、二十三兆円の借金をまずなくしたらどうでしょうか。少なくともモータリゼーションの施策におくれた、これは政府に責任がある。しかしながら、政府がまた失敗をした土地政策によって、膨大な資産にしていただいたことも事実です。この際、借金を全部消したらどうでしょうか。  総裁、まず最初に国鉄本社、どうして東京駅の前におらなければなりませんか。日本一の借金会社が、日本一の丸の内一丁目一番地におらなければならない理由はありません。まず本社を売りなさい。間もなく完成するであろう大宮-赤羽間の通勤新線のガード下に入ると、ここで約束しなさい。それから国民は国鉄に対する再建の意思を見直していく。汐留だって一兆五千億で買い手があるじゃありませんか。旧東京鉄道局の新日鉄の前だって一兆円で来ておるじゃありませんか。新宿駅も売りなさい、貨物駅は。新鶴見も、大宮も、名古屋の笹島も、大阪の梅田も、挙げただけだってみんな五千億から一兆円あります。まあ名古屋は一千億ぐらいです。だから、こうやって見たならば、貨物はわずかにもう一・七%ですよ、貨物駅を売れば二十三兆ぐらい全部ゼロになるはずです。真藤さんと比べて借金だと言うけれども、資産があるからゼロにします、電電公社が五十兆、六十兆の株を国に返すならば、その後から分割・民営にして、関東国鉄株式会社も関西国鉄株式会社も三十兆や五十兆にはなりますぞと、あなた男だったら言ったらどうでしょうか。東京駅だって一兆にはなるでしょう。新宿や池袋、上野、一つ一つ見てください。一番小さなところだって、私鉄の五倍の土地と資産を持っているはずです。そういうことを考えたときに、まず本社を売ることから、国に世話にはなりませんということから始めたらどうです。いかがですか。
  180. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 先生の御指摘はよく理解するわけでございまして、実は私どもが出しました基本方策の中に、これは数字が非常に食い違うというおしかりはあるかと思いますが、三兆円の土地を出すということを言っております。これは五十九年度の価格でございますので、実際にはもう少し、四兆近いものを売らなければならないと思います。その中に、今先生が御指摘になった土地はかなり含まれております。具体的にはこの席では申し上げませんが、かなり含まれております。  そうしたときに、実は本社の問題でございますが、これはそれに含まれておりませんが、私も先生と同じような考え方で、やはり企業を再生するためには、丸の内のど真ん中にああいうオフィスを構えていることがいいかどうか、国民感情的にもいかがなものかということは、私も考えています。ただ、今度できます通勤新線の下に入るという問題につきましては、これは実務的にも検討したのでございますが、何しろ細長いので、会議をするのにあちこち飛んで歩かなければならないというような問題も起こりまして、いろいろ問題点はございます。しかし真剣に検討いたしておりまして、今後我々も、こういう席にも参りますし、いろいろ打ち合わせもございまして、やはり丸の内付近にオフィスを持っている必要は現実の問題としてはございますので、その辺を考えながら検討してまいりたいというふうに考える次第でございます。
  181. 塚本三郎

    塚本委員 勇気ある発言と受けとめます。本社を売り渡すことによって借金のしりぬぐいにします、この姿勢が大切です。私も四十年前は本社に勤めておりました国鉄の一サラリーマンです。あれがなくなることは寂しい。だけれども、立ち直ったならばもっと大きなところにつくったらいいじゃありませんか。  聞くところによりますと、東洋工業は住友さんに言われて、やはり東京の本社を売り渡させられた。しかし、立派に立ち直ったらもっと立派な本社をおつくりになった。国鉄だって、立派に立ち直ったときにはまた今の本社以上のものをつくればいいじゃありませんか。企業の経営者はそういう考え方がなければ再建することはできない。まあ汐留のような問題もあるでしょう。どうぞこの際はそうして、やれるだけの――三兆円という国鉄生き残りのためじゃない。少なくとも行政改革に対応するために、電電に負けないように、おれたちは立て直しのために総裁みずからこういうふうにするんだということをおっしゃって、まず本社を売り渡す、この経営姿勢を国民に鮮明になさるならば、これは政府も感動してくれるでしょう、国民も協力をしていかなければならない、そういう態勢になってくる。膨大な資産がみんな遊んでおって、そうして二兆円ずつ国にお金をください、こんな形は行政改革じゃありません。  私がこのことに言及いたしましたのは、政府が今ようやく行政改革の山場に迫った、そのときの天王山を迎えるんだということで、このことを指摘いたしたわけでございます。民社党は何でも切ってしまえというのではない、やはりむだなものは切りなさい、納税者の立場に立って身を清めて能率を上げなさい、こういう立場で主張いたしたわけでございます。その決意というものを私たちは素直に受けとめてまいりたいと思いますので、最後に後藤田総務庁長官総理の御所見を伺って、私の質問を終わります。
  182. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 お答えを申し上げます。  先般国鉄当局から国鉄の再建監理委員会にお出しになった案ですね。監理委員会としては、あれをやはり一つの参考として、そして改革意見を七、八月ごろには私は出していただくもの。実行するのはやはり国鉄でございますから、ああいった意見を国鉄当局がお出しになったということは、これは私は大変いいことではないかな。ただ、あの案を発表前に仁杉総裁から詳しく聞きました。そのときには私は、随分失礼だとは思いながら、厳しい私なりの意見は申し上げてございます。  そこで、やはり国鉄の総裁としては、先ほどのお答えにもありましたように、監理委員会の出される案については協力をいたします、こういうことでございますから、いろいろな各方面の御意見を聞きながら本当に国鉄が国民のためになる改革をやっていただけるもの、かように私は深く信じて、私も行政改革を担当する国務大臣としてできるだけの御協力は申し上げたい。  ただ、国鉄の改革というのは、先ほど来塚本書記長さんの御意見は随分厳しいですよ。しかし、それくらいでなければできない。同時にまた、総裁の御答弁も、あれはまさに国鉄が今置かれている苦しいお言葉だろうと私は思います。ここらを十分考えながら、皆さん方とも力を合わせて、何とかこれだけは、行政改革の天王山でございますからやり遂げていきたい、かように考えておるわけでございます。
  183. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 塚本書記長が今おっしゃいました、国鉄は本社を売って、そして国民の前に決意を示せというのは、やはり背水の陣をしいてやれというお示しで、非常に感銘したところであります。まさにそういう気持ちで、国鉄全職員、全構成員がその気持ちを体してやってもらいたい、そう思います。  この間出た国鉄の案というのは、私も拝見しましたけれども、まだ親方日の丸から改まっていない。これではああいう批判を受けるのは当たり前だと思って、国鉄の幹部の諸君も大分身にしみたところがあったのではないかと思います。世の中というものは甘いものではないし、我々が国鉄以下行政改革をやろうとしておるのはそんな生易しい気持ちでやっておるのじゃないですから、異常な決意でこの行革を我々はやろうとしておるのでありまするから、したがって総裁以下幹部の諸君あるいは職員に至るまで、その気持ちを体してやってもらいたい。特に幹部の諸君が全責任を持ってこれからやってもらうということでありますから、今塚本書記長がおっしゃったような線に沿って、およそ臨調答申の線に背くような考えを持っている人がいたらこれはけじめをつけなければならない、私はそう思っております。そういう考えで私たちも監督してまいりますから、よろしく御鞭撻をお願いいたします。
  184. 塚本三郎

    塚本委員 終わります。
  185. 天野光晴

    天野委員長 これにて塚本君の質疑は終了いたしました。  次に、松本善明君。     〔委員長退席、橋本(龍)委員長代理着席〕
  186. 松本善明

    ○松本委員 私は、日本共産党・革新共同を代表いたしまして、総理並びに関係閣僚に質問をしたいと思います。  ことしは被爆四十周年であります。「ちちをかえせ ははをかえせ」「にんげんをかえせ」「へいわをかえせ」、こういう詩をつくって有名で、その詩が刻まれた碑が広島にも建っているという、峠三吉という人の「八月六日」という詩の一節をまず読んで、質問に入りたいと思います。   あの閃光が忘れえようか瞬時に街頭の三万は消え圧しつぶされた暗闇の底で五万の悲鳴は絶えやがてボロ切れのような皮膚を垂れた両手を胸にくずれた脳漿を踏み焼け焦げた布を腰にまとって泣きながら群れ歩いた裸体の行列こういう気持ちを体して、私はこの問題について真剣に中曽根総理にお伺いしたいと思います。  原潜数隻分の原爆が使われただけで全人類が死滅をするかもしれない、こういうことを科学者が警告をしているときであります。核戦争を阻止し、そして核兵器の全面禁止をするということがすべての政治家の最も重要で緊急な課題だと私は確信をいたします。  そこで、私は総理にお聞きしたいのでありますが、参議院本会議で我が党の立木議員の質問に対してこう答えられました。均衡をレベルダウンしながら最終的にはやめるところまで持っていく、核兵器を実際やめさせる方法はこれ以外にない。抑止と均衡の力を下げていく以外にない。だんだん下げて、五万発を一万発にし、千発にし、二十発にし、三発にしていく、そして、なくしていく、こういう具体的方法以外に現実政治としてはあり得ないのだ。こういうふうに言われて、これが科学的廃絶論だ、共産党の言っているのは空想的な廃絶論だ、こういうふうに言われたわけであります。  そこでお聞きしたいのですが、そういう立場で米ソ間で何回も交渉が行われた。核兵器をふやそうということで交渉をする人はないはずです。そういう立場でやってきたけれども、何回も何回も無数にやられてきたけれども、過去二十年間に核弾頭は五倍、三十年間とってみますと二十五倍、三発から五万発になっている。これがもう歴然たる打ち消すことのできない歴史的な事実であります。総理に私が伺いたいのは、まずこの事実をお認めになるのかどうか。これについての評価はいろいろあるかもしれません。この事実をお認めになるかどうかということからまず出発したいと思うのでありますが、総理答弁を求めます。
  187. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 衆議院で不破委員長、参議院で立木議員にお答えしましたことは、正しいと思っております。
  188. 松本善明

    ○松本委員 私は、これは一問一答ですからそれは全部聞いておりますし、わかっております。私の聞いたことについてお答えをいただきたいと思うのであります。  そういう歴史的な事実はあるのかどうか。そして、それについての評価はいろいろおありになるでしょう、総理も。しかし、その事実をお認めになるかどうか、そこから出発をしなければならぬ。伺いたいと思います、その事実についてお認めになるかどうか。
  189. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その事実というのは何を示すのか、よくわからない。
  190. 松本善明

    ○松本委員 それは結局、今までずっと何回も何回も無数の交渉が行われてきたけれども、しかし核弾頭はふえたではないか、どんどんふえてきて、現在はそうなっているではないか、この事実であります。
  191. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そこが私が前から申し上げているように、核兵器というのは業の兵器であって、人間のさががしからしめておるところがある。というのは、一たんああいう超弩級の兵器、超性能の兵器というものをつかむというと、相手がつかんだということになればそれは負けてはならぬ、どうしてもそういう増殖の危険性を持っておる、それが人間の業である。その事実でずっと流れてきておるわけであります。だから業と言っておるのです。  じゃこれはなくすにどうしたらいいかという形になると、この業を持っている人間が安心できるような措置をしなければやめっこない。安心できるような措置とは何であるかと言えば、それは検証ということによってお互いがお互いを確かめ合って、そしてお互いがなくしたりあるいは減らしたり、そういう形で安心し合ってそれで減らすことができる。お互いが確かめ合えないで、ただ演説だけで、一片の電話程度で、確かめ合いもしないで、確認もしないでそう簡単に減らすものではない。  しかし、今度出てきたアメリカのSDIというようなものは、核兵器の廃絶を目指して、核兵器を無能力にしてしまう、そういうシステムをつくろうとしている。無能力になるということが確実になれば、これはもうつくっても意味がないから廃絶できる。そういう意味において、これはいろいろな条件もあるでしょうけれども、我々は、研究しようというならば、それは理解できる、そういうふうに申し上げたわけなのであります。
  192. 松本善明

    ○松本委員 総理、どうして私の質問をそらされるのか。あなたの持論はよくわかっております。だけれども、それについて、本当に廃絶をしていくことができるのかどうかということをやるために、こういう予算委員会が開かれておるわけであります。私は、あなたが抑止と均衡の立場でおられることもよく知っています。しかし、今までこの抑止と均衡という立場で交渉してきたけれども、それが結局は成功しないで、そしてふえてきているというこの歴史的事実を、やはり全世界の人は知っているわけですよ。なぜ率直に総理は、それはそうだ、しかし私はこう考えるというふうにお答えにならないのか。この私の聞いていることについてはお答えにならないのですか。答えられないのですか。私は、そのことをイエスかノーかだけで結構です、お答えいただきたいと思います。
  193. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 だから、もう何回も答えておるのです。業の兵器である、人間のさがである、悲しいけれどもそういうものはあるんだ、これを直すにはどうかといえば、安心できる体系を両方でつくり合って、そうして減らしていく以外にはないのだ、そういうことも申し上げておるわけであります。
  194. 松本善明

    ○松本委員 ということは、結局その事実は認めるけれども、これは業の兵器であるので何とかなくしていきたいんだ、こういうふうに伺ってよろしいですね。
  195. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今申し上げたとおりであります。
  196. 松本善明

    ○松本委員 そういうふうに伺う以外にないと思いますが、そのなくしていくというのでも、今までの歴史的な経験に立ってこの抑止と均衡の立場で交渉していくならば、私は、今までと同じことになると思います。あなたは業の兵器だと言われるけれども、業の兵器というのは、あなたの見解によれば、一たん握ったものは相手が黙っている間はもう放せられないのだ、相手がふやすのじゃないかと思っているからまたこっちもふやす、だから業の連続だ、これは断たなければならぬ、こういうことでしょう。だから、そうなったら、今までの抑止と均衡の理論では絶対に成功しないですよ。それで私はあなたに聞こうと思うのです。  まず、七八年の第一回国連軍縮特別総会の最終文書で、これは日本も含めて全会一致でありますが、ここでは「永続する国際の平和と安全は、」「不安定な抑止力の均衡又は戦略的優越の教義によって支えられるものでもない。」こう言っております。これは反対ですか、総理
  197. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは理念でありましょう。しかし現実は、今言ったような現実で動いておると私は思っております。
  198. 松本善明

    ○松本委員 理念としては認めるということですね。  もう一つ聞きましょう。八〇年にワルトハイム国連事務総長が「核兵器の包括的研究」という文書を発表いたしました。これは日本の、当時クウェートの特命全権大使の今井さんも入っている。今国連の軍縮大使であります。この人も入った文書でありますが、「恐怖の均衡を通じての相互抑止を約束することは放棄されなければならない。」抑止と均衡は放棄されなければならない。「抑止過程を通した世界平和、安定および均衡の維持という概念は、おそらく現存する最も危険な集団的誤謬である。」と、国連の事務総長がそう言っているんですよ。あなた、これは反対ですか。
  199. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは理念であると先ほど申し上げた。廃絶を目的とするための一つの理念である、そう思うのです。しかし、冷厳なる現実というものは、現に見ているとおり、ジュネーブでなぜグロムイコさんとシュルツさんが会うかといえば、減らしていこうという話のために来ておるので、いずれこれは問題になってくるでしょうが、ではどういうふうにして確かめ合うか、そういう話になるに決まっていると私は思いますよ。そういう点で、現実は抑止と均衡で動いている、そういうことが実証されると思うのです。
  200. 松本善明

    ○松本委員 総理、そう言われますけれども、今までもそうなんですよ。全部、減らしていこう、そして検証だと。今までのとおりやっていったら、成功するわけはないですよ。(中曽根内閣総理大臣「それはわからぬ」と呼ぶ)あなたは、わからぬかもしれぬと言っているが、そこが、我々すべての政治家がここで何を考えなければならぬかという問題なんですよ。私は、総理はそういうふうにこの問題を考えておられたら、これは大変だと思います。  非同盟諸国外相会議、これは百十カ国が参加をして、世界の人口の過半数を占める。これもやはり「抑止力競争は、差し迫った破局を避けるための信頼にたる手段」では決してないということを言っております。これは指摘だけしておきます。  ついでに、総理は本会議場で-総理は何でも均衡と抑止のために使おうということでやっておられます。中国もそうだ、こういうことを言っておられますが、それは間違っております。中国は国連の場で、核兵器全面禁止を公約をしています。これは中国の一貫した主張であって、あなたは抑止と均衡論だと言いましたけれども、呉学謙外交部長が昨年、三十九回の国連総会の演説で、核軍縮についての中国の主張の基本的内容の第一に「われわれの根本的立場は、すべての核兵器を全面的に禁止し、完全に廃絶することにある。」と言って、均衡論については、二つの核大国の軍拡競争を批判し、「あらゆる手段を講じて、「均衡の維持」とか「同等の安全」とかを口実になんとか優位を確保しようとしている。このように両国は相手が増やせばこちらもそれ以上に増やすということをくりかえしており、真に軍縮の誠意があるのかどうかを疑わずにはいられない。」こう均衡論を批判しているのです。八三年にも同様の主張をしております。あなたは参議院本会議で、抑止と均衡の理論に基づいているのではないかというふうに想像すると言われましたけれども、全く勝手な解釈で、まさに想像であります。これは間違いだとお認めになりますか。
  201. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今お読みになったことでもわかりますように、中国自体が米ソ関係をそういうふうに認識している。つまり、業の兵器の増殖関係である、これは冷厳なる現実をそういうふうに認識している、そういうことだと私は思って、私と同じではないかな。我々だって核兵器の廃絶を主張し、ソ連だってアメリカだって廃絶を主張しておるんですからね。それがなぜ一挙に行けないかといえば、今言ったような業の世界に住んで、まことに残念だけれども、そういう状態にあると申し上げたわけであります。
  202. 松本善明

    ○松本委員 総理、私が今言ったのは、あなたが中国を引用したのは間違いだということを言ったのです。どうして率直に、それは間違っていた、しかし私はこういうことだということが言えないんですかね。私は、本当にそういう態度が国会でとられるべきだということを思います。あなたが盛んに、業の兵器だということを言って、それをこれからなくすのだと言っていますから、それじゃそれで質問をいたしますけれども、私は、抑止と均衡の立場の交渉が破綻したことが、この四十年の歴史でもう明白になった、その出口として核兵器の廃絶ということが注目をされて、そうして、これを目標とした米ソ交渉が始まったのだと思います。  ことしの一月二十八日にニューデリーでインド、メキシコ、タンザニア、アルゼンチン、ギリシャ、スウェーデン、こういう非同盟中立六カ国の首脳会議が開かれました。そこで共同宣言が発表されまして、「一月八日ジュネーブでおこなわれた米ソ間の合意、つまり宇宙兵器、戦略、中距離核兵器のそれぞれの問題について考慮し解決すべく二国間交渉を開始するとの合意をわれわれは満足をもってみている。すべての地域からの核兵器廃絶の達成を目標に宇宙軍拡を予防し、地上の軍拡を終らせると宣言されたこの交渉の目標をわれわれはきわめて重視する。両核超大国が誠意をもってその約束をはたし、交渉が近い日に意義ある結果を生むよう期待する。」ということを声明をしておるのであります。  私が総理に伺いたいのは、米ソ外相会談が核兵器の廃絶を直接交渉の目的にした、目標にした、これは歴史上初めてだと思います。これは今までの四十年の核軍縮の歴史の結果生まれてきた初めてのことだと思います。あなたはそうだとは思いませんか。
  203. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 必ずしもそうだとは思いません。今までのSALTⅡにしても、ABM条約にいたしましても、完全軍縮ということをずっと言ってきておるので、完全軍縮というのは廃絶までを含んでいると私は思っております。
  204. 松本善明

    ○松本委員 それは大分違うのですよ。これは第一に、ABMとかその他今挙げられた条約は全部前文に入っているだけなんです。いわばうたい文句なんです。米ソ外相の共同声明は、核兵器の廃絶を直接的に交渉の目標にしたというところが重要なんです。あなたの勝手な解釈ではなくて、交渉の当事者でありましたグロムイコ外相はこう言っています。「交渉の主要な目的の一つは、武器庫から核兵器を完全になくすことだといわなければならない。これは非常に重要な合意であり、それが共同声明に織り込まれた。これは従来の米ソ共同声明ではなにもいわれていなかったことだ。」交渉の当事者がはっきり言っているのですよ。  そして、もう一つこの問題の重要な点は、全面完全軍縮というのが核廃絶だというふうに総理は言ったけれども、この全面完全軍縮というのは通常兵器を含めた軍備の撤廃ということであります。これを目標に交渉するなどというのはまさに空想ですよ。まさに非現実的ですよ。だから、みんな前文に理念としてうたっているのですよ。今までこういうことを目標にするというような交渉は一度もありませんでした。ここが非常に重要なところで、これは核兵器がもう本当にほんのわずか使われても人類が死滅をする危険が生まれているという核破局を目前にして、この核兵器の廃絶を目標にした会談が行われることになったのです。この重要な意味をあなたは理解をしているのかどうかということを聞きたいのですね。これがそうでないと、この米ソ外相会談について、これは本当に人類にとって貴重な機会だと思いますよ。この被爆国の総理がその問題についてどういう認識を持っているかということは、私は本当に重大なことだと思うんですよ。それで改めて聞くわけですよ。これは史上初めてではありませんか。
  205. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 全面完全軍縮の中には核兵器の廃絶も含むということで、今までもそういうことは言われてきたと私は思っております。  グロムイコ外相の言葉はいい言葉であると思いますが、それにさらにつけ加えて、武器庫から核兵器をなくすことをだれかが確認する、両方の代表あるいは第三者がそれを確かめ合うことが一番大事なことだ。そこまで入ると、私は一番上できたと思っています。
  206. 松本善明

    ○松本委員 あなたは、この米ソ外相会談が開かれておるということの意義について、やはり本当にお考えになっていないというふうに私は思わざるを得ないのです。  なぜそういうことを言うかというと、今までの立場で幾ら交渉しても同じことになる、それは四十年の歴史が示しておるじゃないか、このことを本当に総理に知ってもらいたいのですよ。あなたは、衆議院本会議で我が党の不破委員長に対する答弁で、宮本議長はクレムリンヘ行って核兵器を廃絶しろと言ったかどうか知らないが、先方は、じゃ私の方は一方的に廃絶するなどと言っただろうか。恐らくこの問題は棚上げにしようということになって、棚上げのままお帰りになったのじゃないかと言いました。私はこれを聞いて本当にびっくりしましたよ。本当にびっくりしました。総理が本当に初歩的な知識さえ持っていないのじゃないかと、失礼かもしれぬけれども、そう思ったぐらいです。  これはもうまさに正真正銘の空想的核兵器廃絶論ですよ。すべての核保有国が同時に核兵器を廃棄をするという方向以外に、核兵器の廃絶ができるわけないじゃないですか。だから、核兵器の全面禁止、廃絶というのは何か、核兵器の全面禁止協定の締結、廃絶協定の締結、これ以外にはないんです。それ以外の方法がありますか。これが目標にしている核兵器廃絶なんだ、核兵器の廃絶協定の締結以外にはないんだ、これは総理、お認めになりますか。
  207. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 宮本議長がチェルネンコさんとどういう話をしたか私知りませんが、恐らく我々の想像では、ともかくアメリカもソ連も両方責任があると思っている。核兵器を持っておって、両方が攻撃性を持っておって、そして向かい合っておる。これはアメリカだけの責任じゃない、ソ連も責任がある。それに対してソ連の方は、おれの方は責任がない、そういう長い論争がいろいろ今までにあったんではないかと思うんですね。そういう中に、それじゃどっちか一方やめたらどうだろうか、相手がやめないうちはおれの方もやめられない、そういう議論関係があるわけなんです。だから、その辺の問題があったのではないか。結局、そういう問題は棚上げして、ともかく核兵器廃絶というところで一致して帰ろう、そういうことで話をまとめてお帰りになったのではないかと想像申し上げている、そういうことで申し上げたのです。  核兵器廃絶ということは大賛成です。しかし、問題は、じゃどういうふうに廃絶に持っていくかという具体的な方法、安心できる方法を編み出し、つくり出すことが大事なんで、その方法について共産党の方は、じゃ具体的にこうやるという方法を私は余り聞いたことがない。私は検証が大事だ、はっきりそういうことを申し上げて、確かめ合う、お互いが安心し合ってやめることができる状態をつくり出す、そういうことが大事だと具体的に申し上げておる。だから私は、私の言うことが科学的廃絶論で、共産党の方は具体的な廃絶に持っていく手段、方法というもの、我々が納得できるようなそういうことはおっしゃいませんから、空想的廃絶論だ、そう申し上げておるわけです。
  208. 松本善明

    ○松本委員 総理ももう少し勉強してほしいと思うんですよ。本当にそう思います。確かにこういうふうになったことの原因が米ソにあるか、それともアメリカにあるかということについての議論はありました。確かに日ソ両党の予備会談で本当に長時間やりました。しかし、その意見の違いを超えて、今は本当に核破局を目前にして一歩進まなければならぬのじゃないかということで、日ソ両党の会談が行われたんです。あなたはそれについて、具体的な方法がないというふうに言っておられますけれども、私は山崎官房副長官を通じてあなたに共同声明もちゃんとお届けした。どうもお読みいただいてないんじゃないかというふうに私は思わざるを得ない。  日ソ両党首脳会談の共同声明では、核兵器を不法なものとして宣言する必要を確認をいたしました。そして、核戦争を阻止し、核兵器の全面禁止、廃絶を実現することを人類にとって死活的に重要な緊急の課題、世界政治全体における中心課題とみなすことを厳粛に声明をしたのであります。そして、これを国際連合でも二国間交渉でも一米ソ交渉もそうですね。二国間交渉でもその他の国際会議でも第一義的に提起し、その実現のために一貫して奮闘する決意を表明したのです。また「核兵器の開発・製造・実験・保有・配備・使用の全面禁止を内容とする核兵器全面禁止・廃絶協定の速やかな締結とその実現のため、可能なあらゆる努力を払うことを確認した。」のであります。これ以外道はないんですよ。これほど具体的に実効ある措置を明記したんです。  今まで総理、どこの政府が、どの政党が、核兵器保有国の政権党とのこういう共同声明を発表した例がありますか。ソ連の共産党は、アメリカと並ぶ核保有大国ソ連の政権党です。それがこの目標に向かって努力をするということをはっきり表明をしたんですよ。衆議院本会議であなたは、我が党代表団がソ連へ行って核兵器の廃絶問題を棚上げしたと言いました。宮本議長は出発前にちゃんといろいろなところで、社会主義国だけに一方的に核兵器を捨てよと言うのではなくて、核兵器を持っているすべての国がこれを放棄をすべきである、こういう立場を明らかにしてソ連へ出発をしています。これは廃絶棚上げですか。いかがですか。
  209. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いや、廃絶はもう両方とも一生懸命やろうと言っておるので、これはABM条約でもNPT条約でも、先ほど申し上げましたようにSALTでも、今まで言ってきているところなんです。それは今度もおっしゃっている。それはそれなりにいいことだと思っております。  ただ問題は、じゃどうして具体的にそこへ持っていくのか。あらゆる手段をもってと書いてありますが、そういう言葉は単純ですけれども、では具体的に何でやるのか。それは私は検証ではないか、お互いが、ないということを確かめ合うことで安心してやめるようにするということじゃないかと、もうくどいぐらい申し上げておるのです。  ジュネーブの会議が開かれたということ自体が、相当、両方とも核兵器に疲れてきて、もうこの辺で何とかしないといけないという気分にもなってきて、そしてその具体的な減らしていく話をしようというのじゃないでしょうか。SDIも出てきたことでもあるし、そういう大きな動きと変化をとらえながら、この機にお互いが減らしていく、そういう方法を模索するために集まったのじゃないのでしょうか。  私は、そういう意味で、今までの抑止と均衡というものからこういう問題は来ているし、またその延長線でこれは行われている、つまりレベルダウンをした抑止と均衡に持っていこう、そういう考えで動いているのではないか、そう思っているわけです。
  210. 松本善明

    ○松本委員 総理、検証、検証と言うけれども、この日本政府の態度は、あなたは本会議でも答えなかったけれども、使用禁止の問題は検証の問題じゃないんですね。去年の国連総会で日本が反対をしたのは、核兵器の先制不使用義務を含んだ国際文書の作成の検討、第四十回国連総会、ことしの国連総会に、核兵器の不使用と核戦争の防止という議題を入れる、これはもう検証でも何でもないじゃないか、この不使用の問題について意見があったら日本もいろいろ言ったらいいじゃないか、議題にすることに何で反対したんだといって本会議で不破委員長が聞いたら、あなたは何にも答えなかったじゃないですか。  そして、レーガン大統領もこの米ソ外相会談の後の記者会見で、核兵器を廃絶した方が、ゼロの方が検証しやすいということを言っている。ゼロへ向かうべきなんです。  私はあなたにもう一回聞きます。核兵器の廃絶というのはいろいろな経過があるでしょう。あなたの御意見あるでしょう。検証とかいろいろあるでしょう。しかし、核兵器の廃絶というのは結局何か、核兵器の廃絶協定を核保有国が結ぶということではありませんか、このことをさっきから聞いているのです。このことについてお答えいただきたい。
  211. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それはレーガン大統領が言った、検証しやすいということでもわかるように、検証というものが伴わなければ条約を結んでも安心できない、だから結べない、しかし結びたい、そういう文脈を言っているんだと思います。
  212. 松本善明

    ○松本委員 私が聞いているのは、核兵器の廃絶ということは核兵器の全面禁止協定を締結することではないかということを聞いておるのですけれども、それはもう当然のことだということですか。その過程についていろいろ議論をしているんだというのなら、そう言ってちゃんとお答えいただきたいと思うのです。
  213. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それはもう全人類が望んでいることであるし、アメリカもソ連も望んでいることです。
  214. 松本善明

    ○松本委員 それから私は、このことを実行していく上での米ソ外相会談が開かれたということの意味について、もっともっと総理に知ってもらいたいと思います。確かに、今までやってきて、いわば出口といいますか、やってきた結果が出口ということで、そういうふうな方向へ来ている。  そこで私は、あなたが、この予算委員会に至る過程の間で少しトーンダウンをしてきたけれども、これは抑止と均衡の立場からやったからこういうことになったんだと言われていましたけれども、これは非常に違うと思うのですね。パーシングⅡが配備をされて、その後決裂をして、それから世界的な反核・反戦運動が始まったわけですよ。アメリカの力の政策に対しても、同盟国から批判が始まったわけです。去年は三十六カ国の代表が参加して原水禁大会も開かれました。そして、核戦争の阻止、核兵器の全面禁止が全人類の死活にかかわる最も重要かつ緊急の課題だという東京宣言も発表されました。我が党もソ連へ行って共同声明を発表しました。こういう事態が背景にあるし、アメリカの世論もあるのですね。  ウォーンキという米ソ戦略兵器制限交渉、SALTの代表は、アメリカ側の対応には実効ある核軍縮交渉を求める広範な分野のアメリカ国民の世論の働きかけが影響していると言う。確かにそうです。  去年の九月に、アメリカのブラウン大学の外交政策研究センターと民間研究団体の公共問題財団が、いろいろと世論調査をいたしまして、アメリカ国民の核意識に関する調査結果を発表しました。その結論は、五〇年代初期には米国民の三分の二が、核兵器は平和に役立っていると信じていた。しかし今日では、米ソの核軍拡の結果、米国の平均的選挙民は安全が損なわれていると感じている。こういう結論を出しています。  最近でも、一月三十日付で発表されたロサンゼルス・タイムズでは、要するに世論調査で回答者の五七%が、既存の全核兵器の廃絶をするということに支持を表明したと言っているんですね。  それからキッシンジャー氏、これは今でもアメリカの政界にいろいろ影響があると思います。この人はこう言っています。「西ドイツやスカンジナビア、オランダ、ベルギー、はてはイギリスにおいてまで、「平和」運動によって、各国政府は彼らの主張に同意はしないものの、彼らの政策の全体的方向へと引っ張られている。」「これがあまりにも危険な状況をつくり出しており」「大西洋同盟は、葉的な、いや根本的な――文字通り根本にいたる――治療を必要としている」。キッシンジャー氏は立場は全く違うから、物の言い方は違います。しかし、全世界的な反核・反戦の運動をこのままほうっておったら大変なことだ、大西洋同盟は崩れてしまう、こういう認識で、それが影響して、この世界的な世論がああいう米ソ交渉になったんですよ。  私は、総理の認識は非常に偏っている、本当に世界情勢を真剣に見詰めていないというふうに思うんですね。その後米ソ交渉が行われるに至った経過について、総理、何とお考えになりますか。やはり抑止と均衡の結果、その方法でやったから引っ張り出したんだ、こういうふうに考えは変わりませんか。
  215. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 もちろん世界の世論もありましょうが、また一面においては、ソ連及びアメリカおのおのが財政的にくたびれてきて、何とか財政的に楽になりたい、そういうような内部情勢もないとは言えないでしょう。  それから、やはり大事なことは、ソ連がSS20を展開して、それに対してヨーロッパが危機感を感じて、そして七九年のダブルトラックディシジョンをやりまして、均衡を維持するためにはどうしてもパーシングⅡなりあるいはクルージングミサイルが必要である、そういう意味でこれを展開する。ただし一方、ソ連とは交渉しながら、ソ連がやめるとか数を少なくするというのなら、我々の方もやめるか数を少なくする。しかし、ソ連がそういう交渉に応じないならば展開せざるを得ない、そういう決定をして、それを妨害するために相当な平和運動をヨーロッパへぶち込んだ。しかしヨーロッパにおいては、ドイツにおいてもその他においても、いわゆるそういう傾向の平和運動というものは成功しなかった。そしてパーシングⅡは展開され、クルーズミサイルは現に展開された。ここである程度均衡が維持されてきた。  そこで私は、ソ連の方は一時テーブルから去って、話はやめた、そう言ったけれども、展開された現実の上に立ってみると、これはやっぱり話し合いをして、減らすような話をしなければいかぬというのでテーブルに帰ってきた。私は、パーシングⅡやあるいはクルーズミサイルがもし展開されないで、しかも西側同盟が分裂した状態であったらソ連が帰ってきたかどうかわかりませんよ。やはりそういう事態があったからジュネーブ会議というものが開かれたんだ、私はそう判断している。この方がよっぽど科学的じゃないかと思っておるのです。
  216. 松本善明

    ○松本委員 総理も世論の力を少し認めてきたから少し進歩したというふうに思いますけれども、やはり非常に偏っていると私は思います。パーシングⅡの配備に反対する世論がずっと起こったんですよ。それを平和運動へぶち込んだ、こういう認識ではとんでもないですよ。イギリスの反核運動の先頭に立っているのは牧師さんですよ。何も共産主義者でも何でもありませんよ。あなたは本当に偏っている。そういう点で私は、レーガン大統領は立場は違うけれども、やはりいろいろ見ていると思います。  それで私はお聞きしたいのですが、既に核兵器の全面禁止についてはソ連や中国の態度はもう言ったとおりです。アメリカの態度、レーガン大統領の態度等をどう見るかというのはこれは非常に重要な、核兵器廃絶の協定ができるかどうかということについて本当に大事だと思っている。だから、私たち共産党はレーガン大統領のいろいろな演説を全部調べました。それでレーガン大統領は何を考えているのかということを分析をしておるのです。私はレーガン大統領が核兵器の先制使用の可能性を否定をしないという核抑止論者であると、こうは見ています。見ていますけれどもアメリカの世論を考慮をしながら、昨年一月、一般教書ですよ、一般教書でソ連国民への呼びかけで、核戦争に勝利者はない、核兵器をすっかりなくした方がいい、こういうようなことを言う。たびたび核兵器の廃絶について語っているんですよ。  総理、なぜレーガン大統領がソ連の国民にこうしてこういう呼びかけをしたんだと思いますか。
  217. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ヨーロッパの平和運動について先ほど言及したことは舌足らずでありましたが、中には純粋な、純真な、立派なものもあったと思います。中には工作的なものもあったのではないかという情報が我々の方にも来ておるので、そう申し上げた次第です。  レーガン大統領は日本国会で、おととしの十一月に来たときに演説したのを松本さんもお聞きになったでしょう。あのときに核兵器に勝利者も敗者もない、勝利者はないとはっきり本会議の議場で言ったじゃないですか。だからそんな文書調べなくたって、我々は現に自分の耳でそれは聞いたところですよね。そういう考えはやはり一貫してあの人は持っておるのです。ですから、今さらとりたてて言うほどのことではないのです。
  218. 松本善明

    ○松本委員 総理もだんだん進歩されるようで結構な点もあるかと思いますが、アメリカの世論調査では、核戦争に勝利者はないというのについて世論調査の結果八九%ですよ。これをレーガン大統領は考えているのですよ。ソ連に呼びかけているのですよ。それは日本国会でも演説している。私も知っています。だけれども、ソ連国民に呼びかけているというところをあなたは同じように考えているというのは認識が、私はちょっと悲しくなるぐらい、本当にもうちょっと考えてもらえぬだろうかということを真剣に思います。  あなたは参議院本会議で、立木さんの質問に対してわけがわからぬというふうなことを言われましたけれども、レーガン大統領の立場の諸側面を私たちは知っているのですよ。同時にこのレーガン大統領の発言は公約だ、この公約を重視をしてその実現を求める、これが国際情勢を正確に分析をする科学的な立場なんですよ。あなたはこのレーガン大統領の発言は本音と思われますか、それとも九〇%近いアメリカの世論に向けたゼスチャー、単なるレトリックだというふうに思われますか。
  219. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 もとより本音だと思っています。
  220. 松本善明

    ○松本委員 もし本音だというふうに思われるのなら、米ソ交渉も核兵器の廃絶を目標としていることを本音と見るかどうか、あなた、それどう思います。
  221. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 本音と思います。
  222. 松本善明

    ○松本委員 それじゃ、米ソ両方がこの核兵器の廃絶ということを本当に本音と思って交渉するということは、まさに史上初めてじゃないですか。これはお認めになりませんか。
  223. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 前から本音で改善しようと思ってやっていたんです。それはABM条約のときだってSALTのときだっていいかげんな気持ちでやっているとは思いません。廃絶したいと思ってやっているんですよ。NPT条約自体がそうでしょう。もう核兵器はなくす方向へ持っていく、そういう方向であの文章も書いてあるのです。我々はそれでNPT条約なるものに入っていったわけです。そういうわけで本音で今までやってきたと思うのです。ただ、それを実際に実現する手だてがなかった。そこでジュネーブで集まって、今度はその手だてももう一回真剣に考えようじゃないか、それが今度変わってきたところだと思うのです。
  224. 松本善明

    ○松本委員 まだまだおわかりにならぬ。ABMをやりましたよね。やったけれども、結局ふえたでしょう。それが事実なんですよ。それはなぜかといえば、抑止と均衡論で少しずつ減らしていきましょう、それでは検証だということになるのです。しかし、廃絶ということをまずやりましょう、そのためにどういうことをやりましょうということになれば、レーガン大統領も言っているように検証の問題は非常に楽だ、わかりやすい、そういうことなんですよ。ソ連はそれをやりますということを既に声明したわけですね。レーガン大統領がアメリカが核兵器の廃絶協定を結ぶということについてイエスと言うならば、私は米ソ交渉はぐっと進むと思いますよ。今なかなか難しいと言われていますけれども、レーガン大統領がイエスと言えばできる条件です。だから私たちは、我が党の宮本議長は、レーガン大統領に、これまでの言明に沿って世界の諸国民の願いにこたえて積極的にこたえるようにという書面を送ったんですよ。  あなたは被爆国の首相でそして核兵器の廃絶について熱心だと言うのならば、核兵器の廃絶協定の締結を促進するようにということで、もっとレーガン大統領に働きかけるとかいろんな努力をすべきではありませんか。あなたはどう思われます。
  225. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それはもう一生懸命やっているところです。そこで問題は、安心して廃絶できる状況をどうしてつくり出すかということなんです。それが検証である。レーガンさんも言っているとおりなんです。松本さんももう少し検証問題に熱を入れたらどうですかね。
  226. 松本善明

    ○松本委員 検証問題は廃絶じゃなくて削減と抑止、こういう立場、残る立場考えているからそうなるんですよ。それであなたは一生懸命やっていると言うけれども日米首脳会談でプレスリマークスにも何にないですね、核兵器の廃絶は。むしろ逆にスターウォーズ構想に理解を示すというようなことを言って、ここでも何回も議論になりましたけれども、一生懸命弁明しておられる。聞いていると事実上支持しているようにさえ見えます。これは核兵器廃絶の軍縮の願いに逆行していると私は思います。アメリカの国内の世論調査でも五五%反対ですよ。ロサンゼルス・タイムズが一月三十日に発表したものです。スターウォーズ構想反対です。シュレシンジャー元国防長官もマクナマラ元国防長官もみんな反対です。アメリカの中で反対をしている人たちの名前を挙げたら大変時間がかかりますから言いませんけれども、有力者みんなうんと本当に反対しています。  御存じのように国際的に権威のあるスウェーデンのストックホルム国際平和研究所、これはもし一方の国がこうした核兵器を獲得をすれば、敵のICBMの攻撃から防衛できるとの考えから恐らく戦術核兵器を使って敵国を先制攻撃する誘惑に駆られるだろう。これは相手のミサイルを防ぐということなんですけれども、それじゃそういうものが相手にできたということになれば、先制攻撃を防ぐためにあらゆる対応をするということになって、軍拡競争が激化をするのは当然じゃないですか。これは何人も何人もの人が指摘しています。何よりも、このスターウォーズ構想の生みの親と言われる人がいるわけです。御存じのようにレーガン大統領のシンクタンク、ヘリテージ財団、このプロジェクトが八二年に出した「ハイフロンティア」という報告書があります。そこで生みの親と言われるのがダニエル・グラハムという元陸軍中将で、元国防情報局長、レーガン大統領の選挙運動のときの軍事顧問です。この人ははっきりとこの報告書の中で、確実生き残り戦略だ、核戦争をやったときにアメリカが生き残るのがこのスターウォーズ構想だ。これはもう文字どおりスターウォーズと言えば宇宙戦争でしょう。宇宙戦争をする準備、宇宙軍拡になるのは当たり前じゃないですか。言葉のとおりですよ。  私は総理が今まで答弁されたことはみんな知っております。知っておりますけれども、これをやっていけば軍拡競争が激しくなる、そういうことはいささかもお考えにならないですか。総理、いかがでしょう。
  227. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 SDIは戦略防衛構想という名前のものであります。それはあくまでもICBMとかIRBMとかという長距離弾道弾の原爆が飛んでくるのを途中で無力にしてしまおう。ある情報、その計画者の談話を読んでみると、最初、発射五分間ぐらいが一番スピードの遅いときで一番やりやすい、そう言っておりますが、何段階かの間にそれを無力にしてしまう、そういうようなやり方の新しい戦略体系であります。そういう意味で、長距離弾道弾持っておってもだめになるということになれば、これはもうやめるに決まっている、そういうことがやめさせる原因になっていくだろう、私はそういうものであると理解をして、したがって研究については理解を示した、そういうことなので、やはり廃絶するための一つの方法として、私はそういう願いを持っておるわけなんです。
  228. 松本善明

    ○松本委員 あなたは知ったようなことを言うけれども、ICBMとかSLBMだけが核兵器じゃないですよ。今もう戦術核兵器が発達をして、空母から核攻撃機が出ていくとか、それから戦術核は核魚雷もあるでしょう、核地雷もあるでしょう。そういう戦域核兵器、戦術核兵器いっぱいありますよ。それが何でなくなりますか。これはますますふえるだけじゃないですか。本当に初歩的な軍事的な知識を持っていたって、それはそんなものでは絶対ない。だから、アメリカの人たちが、アメリカの国防長官をやったような人たちが、これはだめだと言っているんですよ。私は、日本総理大臣、もうちょっと勉強してほしいということを痛切に思います。  では、ちょっと立場を変えて、角度を変えて聞きますけれども、私は総理がスターウォーズ構想に理解を示したのは、結局抑止と均衡論に立っているから、それは軍拡で抑止力を大きくすればするほど軍縮になるんだ、これは全く詭弁だけれども、そういうことで言っておられるのだと思いますけれども、角度を変えて聞きますが、核兵器の廃絶協定ができればスターウォーズ構想要らぬでしょう。
  229. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それが実効性のあるものであれば、つまり検証を伴って、お互いが安心のできる、実効性のあるものであれば、そういう条件つきですね。
  230. 松本善明

    ○松本委員 私は今国際世論をやはりそういう方向へ持っていくというために、あらゆる政治家、これは思想や信条を超えて、人類が生きるか死ぬかという問題ですから、私は中曽根総理の見解と本当にいろんな点で違いますけれども、これはそういう点ですべての政治家がそういう方向へ持っていけるように、それは検証問題やってもいいですよ、しかし核兵器の廃絶ということを目指してあらゆる努力をすべきじゃないかと思うのですよ。  それで、私は、そういう点で言えば、あなたはやはりスターウォーズ構想についての理解を撤回すべきだと思いますが、私はそこで、あなたは一生懸命核兵器の廃絶のためにやっていると言われるんだけれども、今まで日本政府は核兵器の廃絶協定の締結ということを国際舞台に持ち出したことがありますか。どうでしょう。
  231. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本が世界に向かってやっているという中には、国連における活動が大きいと思いますが、その中では、我々はNPT条約にも賛成をし、そういう意味で廃絶という問題に向かっては強く推進しているところであります。
  232. 松本善明

    ○松本委員 NPTは、核保有国は核を持っているという条約でしょう。そんなもの、それはだめですよ。それは本当に知らない人が聞いたらそうかと思うけれども、それはとんでもないですよ。核拡散防止条約でしょうが。  私はついでに言っておきますけれども、あなたは本会議場では核兵器の廃絶をいろいろ言っているということを言われました。レーガン大統領が来たときも、それからコール首相が来たときも言ったというけれども、レーガン大統領が来たときの新聞発表も、それからコール首相が来たときの東京声明も、これは皆例のウィリアムズバーグ・サミットの声明が基調になっています。欧州へ核配備の強行をする、西側結束ということをうたっている。これはあなたが主張したということで問題になりました。それであなたは否定したけれども、結局は欧州へ核配備を強行しろということに賛成をした、こういう立場でやられているわけですよ。ジョンズホプキンズ大学で演説をされたことも言われましたけれども、これも抑止の均衡の立場に立って西側結束論ということを言われただけなんですね。これではやはり出口はない。やはり今までやってきたことの失敗を反省して一歩踏み出してもらいたい、私はこう思うのです。  そういう意味で、総理がことしの国連総会に、こういう時期ですから、被爆国の首相として、核兵器の全面禁止協定の締結、核廃絶協定を結ぶ、そういうことを促進するという決議を提案するという考えはありませんか。
  233. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 核兵器の廃絶に向かっては今後とも一生懸命努力してまいりたいと思います。  過去におきましても、広島、長崎の惨害を受けた日本の全国民の願いがそこにあると思って努力をしてきておるところであります。それを具体的にどういうふうに前進させるかということについては外交上のいろいろな問題点もあるでしょうから、外務当局に検討させます。     〔橋本(龍)委員長代理退席、委員長着席〕
  234. 松本善明

    ○松本委員 核兵器の廃絶協定の促進についての決議を提案することを検討するということでありますか。
  235. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 よく検討させます。
  236. 松本善明

    ○松本委員 それでは、私は別の質問で、実際にアメリカの核戦略に日本が組み込まれているという問題について具体的な例を挙げてお聞きしたいと思うのですが、ちょっと資料を配付してください。――よろしいですね。  アメリカの核戦略の指揮、統制、通信網が日本に広く展開をされているという問題であります。かつて我が党の不破委員長がロランCについて本委員会質問したことを、総理、覚えておられるかと思いますが、これは非常に危険だということで、結局東京周辺には置けなくなりました。それと同様あるいはそれ以上に重要な問題なんです。核戦略体系の中には、御存じと思いますが、核弾頭とそれを運搬するミサイルとか爆撃機とか、B52のような爆撃機とか、それからこれを指揮する通信施設が必要なんですね。我が党はその核弾頭の持ち込み問題もやってきました。運搬手段の問題も重視をしてきました。ことしから三沢に配備をされるF16というのは核爆弾を積まなければ意味がないというようなものです。これはいずれ今国会でも他の同僚議員が追及すると思いますが、きょうはこの指揮通信施設について、この指揮通信施設は、これがなければ核戦争できないのです。だから、そういう意味では非常に重視をされている。レーガン大統領は八一年の十月二日に戦略核戦力増強計画を発表いたしました。外務省の訳によりますと、その計画の要旨は、その主眼を戦略核戦力の残存性、残存性というのは、要するに生き残りですね。核戦争になっても生き残る。残存性と耐久力の改善強化に置き、核攻撃を受けた後においても指揮、統制、通信、情報システムを確保し得るようその改善措置を講ずるというのを第一にやりまして、そして戦略核戦力近代化の第一にこのC3Iというふうに英語では言うのですけれども、指揮、統制、通信、情報システムの改善を挙げたんです。四日に、おととい発表されました八六年度のアメリカの国防報告でも、C3Ⅰ、指揮、管制、通信、情報システムについては戦略核戦力の節の冒頭に挙げまして、柔軟反応戦略上欠くべからざるものということで、その重要性を昨年にも増して強調をしておるわけです。毎年毎年の国防報告でこれを強調をしております。総理はこれは御存じでしょうね。
  237. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私はまだ国防報告を詳細に読んでおりませんから、その点は明確な御答弁は留保させていただきまして、防衛庁の責任者から答弁させます。
  238. 古川清

    ○古川(清)政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のとおりFY86についての国防報告の中で、指揮、統制、通信問題の重要性については例年どおりこれを強調しております。
  239. 松本善明

    ○松本委員 総理もそういう問題は非常に重要なんで少し勉強しておいてほしいと思います。  アメリカのこのC3Iシステム、指揮通信網、これはアジア、日本初め全世界に張りめぐらされております。これは添付の資料の四番目に書いてあります。これはお読みいただけばわかりますが、空中指揮所の役割がありますが、ワシントンにあります。アメリカの大統領及び国防長官の国家軍事指揮所、NCAといいます。これは核戦争時には空中に舞い上がるのです。空中に舞い上がって空中から全世界の米軍へ指揮を行う。この空中指揮所をかなめにしているわけです。この指揮所から、全世界に展開をしている米軍と同盟国軍を指揮するのであります。世界各地にそれと直結する指揮所及び通信基地が置かれている。これが戦略指揮、通信、統制網であります。これは公表された国防報告に全部すっと出ております。E4Bという航空機、これは大統領が乗ります。それから、EC135というのには太平洋軍の司令官その他が乗る、こういうようになっておるわけです。これは総理御存じですか。
  240. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、防衛庁長官のとき、アメリカに行ったときにその空中指揮所の話も聞きましたし、その飛行機が飛び立つ場所も行ってみて、よく知っております。
  241. 松本善明

    ○松本委員 オファットの基地に行かれて、そういうことだろうと私は思っております。  それで、大統領の指揮所とそれから世界各地の米軍とを結ぶ重要な指揮通信系統に三つの非常に重要な通信系があるのです。それは、ミスティック・スター・ネットワークというのとコマンド・エスコート・ネットワークというのとジャイアント・トーク・システム、この三つであります。  これは「シグナル」という雑誌でありますが、非常に権威のあるものでありまして、通信系統の人たちにとっては非常に権威があるものです。歴代のアメリカ大統領もこれにメッセージを寄せて、例えばジョンソン大統領なんかは、これの協会のメンバーは米軍通信に中心的貢献をしているというふうに言っているような、こういうものであります。この雑誌がありますが、この中でハワイのアメリカ太平洋軍司令部の通信参謀のラドウイッグという空軍大佐がこういうことを書いております。この、ミスティック・スターとコマンド・エスコートとジャイアント・トークというこの三つがあるということを書いております。  ミスティック・スターというのは、日本語に訳しますと神秘の星といいます。コマンド・エスコートというのは突撃隊護衛、ジャイアント・トークは巨人の声、まさにこういうちょっと奇怪なニックネームがついているわけですよ。この三つの体系があるということを、これはやや専門的ですから総理というわけにいきませんでしょう。外務省、御存じですか。
  242. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 ただいま資料を拝見したところでございますので、直ちに技術的なことについてお答えはできませんが、一般的に従来、ジャイアント・トーク・ステーションとの関連でもいろいろ御質問がありましたが、我が国におきましては、横田と嘉手納におきまして、先ほど松本委員指摘のナショナル・コマンド・オーソリティー、NCAに対する一般的な指揮、統制、通信の支援のための通信施設が存在するということは、従来から御答弁申し上げております。
  243. 松本善明

    ○松本委員 この三つがどういうものか、答弁をしてください。
  244. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 お答え申し上げます。  私、軍事専門家ではございませんので、この一つ一つにつきましてどういうものであるかということにつきましては専門的知識を持ち合わせておりませんので、この場でちょっとお答えすることはできません。
  245. 松本善明

    ○松本委員 それは、政府としては少し勉強しておかなければいかぬことではないかと私は思います。  では、説明いたしましょう。  ジャイアント・トークというのは、ラドウイッグの論文でいきますと、戦略空軍です。戦略空軍というのはSACです。これを支援する。これらの短波通信施設は、空飛ぶSAC飛行隊、これはB52戦略核爆撃機のことであります。これをポジティブリーにコントロールする手段を提供する。これが横田、嘉手納にあることは私たちも明らかにしましたが、今の答弁でも明らかになっていると思います。今回の我が党の調査によっても、これは今までは政府は一般的な指揮通信系統なんだというような答弁をしていたのですけれども、そうでない。資料を見ていただきますと、電話帳がありますね。これにはちゃんとジャイアント・トーク・ステーションというのはSACということになっておりまして、これははっきりと戦略空軍だということが明確になっております。戦略空軍ということは核部隊だということであります。このポジティブリーにコントロールするというのはB52に対して攻撃命令を下すということであります。そういうジャイアント・トーク・ステーション、そういうものだということを認めますか。外務省でも防衛庁でもいいですよ。
  246. 古川清

    ○古川(清)政府委員 アメリカが世界的な規模で防衛通信網を持っておるということは私ども承知しておるところでございますけれどもアメリカ自身が防衛通信網の具体的な内容については明らかにしておりません。したがいまして、私どもその詳細な内容については存じていない次第でございます。
  247. 松本善明

    ○松本委員 資料の三の一番左の電話帳の抜き出したところにちゃんとSACと書いてあるでしょう。戦略空軍と書いてあるでしょう。これはもう否定のできないことを政府の方は知りませんというようなことを言うとるというのでは、私は本当に困ると思うのですね。そういう政府に一体日本の国民の安全を任せておくことができるのかということを、本当に心配をいたします。  次に、コマンド・エスコートについて聞きます。これは、あるということは、先ほど外務省の答弁であったようでありますが、これについては、太平洋軍の先ほど言いました通信担当参謀の論文では、ハワイの太平洋軍司令官がEC田という飛行機に乗って、空中へ飛び上がって自分の安全を確保しておいて、横田や嘉手納や韓国などの米軍部隊に対して空中から核戦争を指揮するときに使うという通信施設なんです。  総理、これをごらんいただきたい。これがEC期という飛行機です。横田へ何回も飛んできています。これはなぜ大事かといいますと、これは二重になっております。この二重になっておるというのは、核爆発が起こったときに強力な電波が発生する、そしてすべての通信機器が全部だめになってしまうのです。それを防護するために二重構造になっているのです。この二重構造になっているということは、核戦争のときに指揮をする飛行機だということの証明なんです。二重構造になっておる。そういう飛行機が横田へやってきている。  それからもう一つ申し上げます。これはあるいは総理はオファットでごらんになったかどうかわかりませんが、この飛行機、真ん中に車輪みたいなものがついております。これが非常に大事なんです。車輪のようなものがついておる。これは空中からSLBM、潜っている原潜に通信をするというためにここから何キロという曳航アンテナが出るのですよ。その繰り出し、巻き上げ装置が車輪のような丸いものなんです。この丸いものはそういうものなんです。だから、この二つのことは間違いなくこれは核戦争のときに備えた空中指揮所だということの証明であります。これが横田にたびたび飛来をしてきている。  そのコマンド・エスコートは、この論文で横田と嘉手納にある。これはもう電話帳にもある。今外務省も認めたようですが、横田の場合には基地内に、これは電話帳のところを読んでいただけばわかりますが、横田の場合には七一四ビル、当直下士官、作戦運用の電話番号が入っています。それから、嘉手納の場合には一五九ビルというのにあるということが資料で明らかであります。  横田は、こういうことでありますけれども、このコマンド・エスコートがあるということはお認めになったと思うのですが、これは一体どういう任務を持っていますか。
  248. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 私は、コマンド・エスコートというものが横田あるいは嘉手納に存在するということを申し上げたわけではございませんで、先ほどの御答弁、あるいははっきりしなかったかもしれませんが、私が申し上げましたのは、過般、ジャイアント・トーク・ステーションの問題が提起されましたときに、政府答弁といたしまして、横田及び嘉手納にナショナル・コマンド・オーソリティーズ、すなわち、先ほど松本委員が御指摘になられましたアメリカの国家指揮、コマンド司令部でございますが、そういうものに対して一般的な指揮、統制、通信面での支援を与える施設が存在するということを申し上げた次第でございまして、コマンド・エスコートというその技術的な名前が付されておるものの存在については、私どもは承知しておりません。ただいま初めて松本委員から伺う次第です。
  249. 松本善明

    ○松本委員 こういうことも日本政府に知らされていないということは、私は重大なことだと思うのですけれども、ミスティック・スターのことを聞きましょう。これはもっと重大なんです。  さっきの通信参謀の論文は、ミスティック・スターについてはこう書いています。「ミスティック・スター・ネットワークは、国家緊急空中指揮所」、これは大統領なんかが乗りますE4Bという飛行機です。「緊急空中指揮所への指揮・統制・通信と、大統領の、及び他の外交軍事上の特別の航空任務にたいする、死活的な指揮・統制の通信の支援をおこなう。」というふうに書いているのです。「シグナル」の七八年二月号に、今度はフィリピンのクラーク基地の通信群司令官のドルーガンという大佐の論文が載っております。これは、ミスティック・スターの重要任務は、大統領が世界じゅうのどこにいようとも、全世界の米軍に対して即座に確実に絶え間なく指揮が行われるようにするんだということを言っておるわけです。  このドルーガンさんというのが、ミスティック・スターと、それから嘉手納のコマンド・エスコートが日本にあるということの論文を発表している。これは資料の一と二をごらんになればわかりますが、一は、横田からハワイのヒッカムヘ行って、アンドリュースヘ連絡が行く。アンドリュースは、御存じのように、ワシントンのそばの大統領がいつでも乗れるようにE4Bが待機をしている基地であります。それからコマンド・エスコートは、嘉手納、横田からハワイの太平洋軍司令官やそれから太平洋空軍司令官に連絡が行くということをドルーガン大佐の論文は明らかにしている。  これはみんな公表されていることですよ。外務省が知らぬというのは本当に不勉強で、日本の国民の安全について本当に考えていないということの証拠じゃないかというふうに私は思うのですけれども、これも知らないというなら、これは両方とも存在の有無を調査をして、その任務はどういうものかということを国会に報告すべきだと思うのですけれども総理、そういうふうに指示をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  250. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 私、一つ一つの専門用語がつきました組織についてはきょう初めて伺う次第でございますが、しかしながら、横田それから嘉手納に存在いたします施設が、アメリカの戦略空軍との関係におきましては世界的規模での送受信網、その中の一環としてアメリカの戦略空軍司令部ないしは司令官というものと非常に有機的な関係を持っておる、そういう施設が横田及び嘉手納に存在しておるということは私ども承知しておりますし、それから、従来国会でも御答弁申し上げておる次第だというふうに承知しております。  いずれにいたしましても、そういう高度の通信、指揮系統に関連する施設が日本の国内に米軍の施設の一部として存在するということ自体は、これは安保体制あるいは安保条約の有効な機能という面から当然あり得ることでございまして、そのこと自体が委員指摘のようなアメリカの核戦略云々というような問題に結びつくものであるというふうには認識しておりません。
  251. 松本善明

    ○松本委員 認識しておりませんと言うが、今言ったとおりちゃんとつながっていることは、国防報告だとかなんとかでみんなはっきりしているじゃないですか。私が聞いているのは、それを調査をして国会へ報告をしてほしいということであります。これは、ジャイアント・トーク・ステーションの方はちゃんと調査して報告したでしょう。それと同じですよ。
  252. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 そういう名前のついておるものが存在しておるかということについては、委員会の方の御指示があれば、これは米軍に照会いたします。
  253. 松本善明

    ○松本委員 委員会の指示があれば照会するということでありますが、これについてもうちょっと意義を述べておきたいと思うのですが、これはもう本当に重大なことなんですよ。これについて電電公社だとかKDDなんかの回線が利用されているんですね。そしてこれは、つくるころにアメリカ軍の依頼で電電公社に調査に来たアメリカのある大学教授が、こういうことを電電公社の人に言っているんです。雑誌でその聞かれた人が言っているんですけれども、東京全区が消滅しても首都圏の米軍基地との連絡は確保できるのかどうか、それから九州全島が孤立したら韓国との通信はどうやって確保するのだ、こういう恐るべき質問を電電公社の人にしながらしているんですよ。こういう形で日本の通信網が使われている。そういう恐るべきことなんです。  昨年、我が党の不破委員長はEWO核シェルター、東京が炎上しても地下で、核シェルターの中で指揮をするという問題を取り上げました。これと同様に、東京が炎上する、しかし空中に舞い上がって指揮をする、そういうものなんですよ。しかも、これは単なる日本人の一論文ではなくて、核戦争のときにこれが核攻撃目標になるということは、アメリカの高官がたくさん証言しているんです。ここの資料に出しておきました。  これは五のところをお読みいただけばわかりますが、全部読めませんからちょっと言っておきますが、ダニエル・マーフィーという国防次官補がアメリカの下院の歳出委員会で証言したことですが、我々はアメリカのびシステムが優先的な標的になることを十分予期している。「有事の際彼等は」、まあ相手国ですね。「彼等はアメリカと同盟国の」、同盟国ですよ。日本も含みますよ。「同盟国のびシステムの破壊もしくは分断を試みるだろう。」ここまで言われているのですよ。それから、「全世界空中指揮所と他のWWMCCS(全世界軍事指揮管制・システム)の移動部隊は高度の生きのこり性を提供している。」これから大事ですが、「これらの部隊は本来、核攻撃による破壊、分断もしくはそれらの戦略通信能力が滞らされるという脅威にさらされている。」この核通信網はそういうものだということをはっきり、アメリカは公然と言っているんです。そういうものが横田に置かれている。首都にこんなものが置かれている国がほかにありますか。私は、これは撤去すべきものだと思います。また、こういうものに日本の電信施設を利用させては絶対ならぬ。憲法の精神に反すると思います。  この問題について、今外務省の答弁がありましたように、この問題について調査をして本委員会に報告するように理事会で諮っていただきたいと思います。私は、それからこの問題についてまた質問をさせていただくということにしたいと思います。
  254. 天野光晴

    天野委員長 後で理事会で協議して…。
  255. 松本善明

    ○松本委員 それでは、ロッキード・田中問題をお聞きします。  これは我が国の民主主義にとっては本当に重大な問題だというふうに私は思います。国会が選んだ総理大臣が外国の企業から五億円という巨額のわいろをもらう。これはもう前代未聞の汚職事件です。まさに我が国の民主主義の根幹にかかわる問題だと私は思います。だからこそ国会は、御存じのように昭和五十一年の二月にロッキード問題に関する決議と、それから同年四月の衆参両院議長の裁定によって、真相の徹底的解明と本件にかかわる政治的道義的責任の究明を決定したのであります。これは国会の国民に対する責任で、もうどんなことがあっても私は国会で決着をつけなければならぬ問題だというふうに思います。この田中角榮議員の政治的道義的責任がいまだ究明されてないと私は思いますが、総理はどうお考えになりますか。これを認められますか。
  256. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 本件等に関する幾つかの委員会がつくられ、また新しい委員会がつくられ等々の経過を経まして、国会におきましていろいろ論議されておる問題であると考えております。
  257. 松本善明

    ○松本委員 私は、総理の本会議答弁も含めまして、いろいろな委員会がつくられているということについてのことをちょっと言っておきたいのですけれども、航空特が設置をされなかったということを本会議では答弁に挙げられました。これは鈴木内閣のときです。八〇年七月です。しかも、野党は全部設置を要求したのに自民党が反対して、そして設置されなかったのです。今でも、今国会でも、我が党のみならず、すべての野党がこの設置を要求しているのですよ。あなたはこれで済んだかのようなことを言っておられますけれども、とんでもないんですよ。この航空特が設置されなくなってから後あの総選挙で自民党は大敗をして、あなたは総裁声明を出されたでしょう、八三年の十二月二十四日。このこと自身が、航空特がなくなったからといって、自民党の反対で設置されなかったからといって、済んでないということの何よりの証明ですよ。  あなたはこの総裁声明で、「敗北の最も大きな原因は、いわゆる田中問題のけじめが明確でなかったこと、」と述べて、「ついては いわゆる田中氏の政治的影響を一切排除する。」ということを言われました。この声明は守られているでしょうか。
  258. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 守られていると思います。
  259. 松本善明

    ○松本委員 どういうふうに守られているのですか。
  260. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 よく守られていると思います。
  261. 松本善明

    ○松本委員 随分そっけない答弁ですね。総理は本会議場その他で、自民党は機関で運営しているんだ、影響を受けていることはないというような趣旨答弁をされたことがあります。機関で運営しているというのは、この総裁声明を出したときもそうでしょう。そのときは機関で運営してなかったのですか。機関で運営しているから影響を受けていないというなら、これはもう全然問題にならないですよ。自民党は、そのときは勝手に総理がやっていたんですか。やっぱり機関でやっていたんでしょう。それは答弁にならないのですよ。あのときも影響を受けているということを言ったんだ。じゃ、今はどうなっているんだ。影響を受けていないのかどうか、お答えいただきたい。
  262. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一貫して自民党は公党として機関で運営されておるものでありまして、党以外の方からいろんな政策の決定とかその他について影響を受けていることはありません。党員が自主的に決めていることであります。
  263. 松本善明

    ○松本委員 そうすると、あのとき総裁声明を出したのは何の意味があるんだ。あのときも機関で運営しているんでしょう。じゃ、国民をだますために出したんじゃないか、こう疑いたくなりますよ、そんなことを言うならば。  私は、あなたと押し問答してもしようがないから、事実について聞こうと思います。  この一年、いわゆる影響力排除声明を出してからの一年どうだったか。田中角榮議員は自民党総裁選について中曽根再選を打ち出しました。党外の人だと言いながら、自民党総裁の任期について発言もしました。解散についても発言しました。総理もたびたび田中氏と連絡をとっているということが報道をされております。  それでお聞きしたいんですけれども、例えば今回の議長人事、これもいろいろ問題がありました。金丸幹事長も陳謝の談話を会見で発表されたりいたしました。この議長大事についても電話で連絡したということが報道をされています。田中元首相も電話で話し合ったということ自身は認める報道もあります。朝日も毎日も読売も皆報道しています。これは事実、認められますか。
  264. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 自民党の議長候補というものは、党の役員会やあるいは総務会等を経て決められているのでありまして、党外の人々の指図を受けて決められているものではありません。
  265. 松本善明

    ○松本委員 私のお聞きしているのは、田中角榮議員とあなたはこの問題について話し合ったことがあるかどうかということをお聞きしているのです。
  266. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、私的な問題についてはお答えする限りではないと思いますが、そういう公的な問題について話したことはありません。
  267. 松本善明

    ○松本委員 そうすると結局、この問題について田中角榮議員とは話し合ったことがないということですね。  それではもう一つお聞きします。  昨年の総裁選挙前に、八月二十三日に田中元首相と軽井沢で会ったということが報道されている。これは一つや二つじゃありません。新聞、マスコミもいっぱい報道しています。これはどうでしょう。
  268. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私の個人的動静について一々松本さんに言明するという性格のものではないと思います。
  269. 松本善明

    ○松本委員 しかし、これはなかなか大事な問題なので、やはり聞かぬわけにいかぬのですよ。  田中六助前自民党幹事長が亡くなられました。亡くなる直前に、「保守本流の直言」、これは御存じのとおりですね、この本を出されました。総理は、この本は立派な遺言になっているということを亡くなられたとき言われましたね。それから、総理あての遺書が公表されないようでありますけれども、それを公表されないということについて語った中で、「人間が人生を終わろうとする時の言葉は厳粛なものだ」、こういうふうに言われております。  ところで、これはなかなか大変なことが書いてあるのですよ。二十ページに、今の八月二十三日のことで、「総理は、軽井沢で田中総理とひそかに会っていた。八月二十三日のことで、その時、角栄さんは「再選に協力しよう」と約束したのです。」これは私的なことでありますか。もう重大な問題でしょう。亡くなった田中六助幹事長が、立派な遺言だと、人生を終わろうとするときの言葉は厳粛だと、こうあなたが言われたこの本の中で、八月二十三日にあなたが会って、そして田中角榮元首相があなたの再選に協力しようと約束した、これまで否定をされますか。
  270. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その中に書いてあることが全部そのとおり事実であり、正確であったとは限りません。人間が書くものでありまするから、錯誤もあるし、間違った点もあります。
  271. 松本善明

    ○松本委員 というのは、これは違うということですか。
  272. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私の一身の動静に関することは、あなたに申し上げる必要はないと思う。私は、そういう公的な問題については話していないと申し上げている。
  273. 松本善明

    ○松本委員 私に話す必要はないというのは、総理、ちょっと考え違いじゃないでしょうか。それは私は個人的にあなたにお聞きしているわけではありません。ここは国会で、答弁義務というのが憲法から発生しているわけですよ。国会では、私は個人でありますけれども、やはり国民を代表して聞いておるわけですよ。それについて、しかも総裁再選についてどうかという話が、これはどの新聞だって書いていますよ。それで田中六助幹事長がこういうふうに言っていることを、私の個人的動静についてお答えする必要はない、それでは済まぬのじゃないですか。やはりそのときには会ったけれどもこういう話はなかったとかあったとか、こうこうこういうことであったとか、それはちゃんとやはり国会答弁しなければならぬ性質の問題ではないでしょうか。それが国会ではないでしょうか。
  274. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 公的な問題で話したなら、そういうことは御報告する、また御答弁する必要はあるかもしれませんが、公的な問題で話したことはないというようなことが事実である場合には、動静について話す限りではない、そう思っております。
  275. 松本善明

    ○松本委員 そうすると、この田中六助前幹事長が言われた再選問題の話はなかったということで否定をされる、こういうことでありますな。
  276. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 つまり、私の動静に関しては、この問題についてはあなたに申し上げる筋ではない、こういうことです。
  277. 松本善明

    ○松本委員 これはやはり言いたくないのでしょうね。十月二十日にも会ったという報道もあります。これは本当に幾つも幾つもありますよ。そんなことを全部否定していたら、私は、日本のマスコミ全部を中曽根内閣総理大臣、相手に回す、敵に回すということだと思いますね。それは、否定することは幾らでもできるでしょう。だれもそれは信用しないですよ。総理大臣ああ言っているけれどもどうなんだということになると思うのですよ。  私はさらにお聞きしますけれども、さらに重大なことは、政治倫理の問題をめぐって我が党以外の野党と自民党が政治倫理審査会を設置するということの合意で決着を図ろうとしたときに、総理はこの審査会の設置に関して田中元首相に電話で了解を求めた、これも報道は一つや二つではありません。しかも、そのときの状況も詳しく、また田中六助前幹事長が出てくるのですけれども田中六助前幹事長が、これはもう総理電話するよりしようがないよ、こう言って促して総理が電話した、そこまで報道されています。これも否定されますか。
  278. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういう事実はありません。
  279. 松本善明

    ○松本委員 総理のお言葉ですけれども、みんな否定ですよ。私はちょっと信用できないというふうに思いますけれども、この田中問題、政治倫理問題も全国民が注目をしておるですよ。それを一体あなたはどうやってけじめをつけようと考えておるのですか。
  280. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この問題はいろいろ、長い曲折がありまして、ロッキード調査特別委員会もあり、また航特委もあり、それらが終わったというそういう事実もあり、その後政治倫理の問題につきまして、解散があったりあるいはその後の審査会の設置に向けて各党の協議があり、こういうようにして一連の流れの中でこの問題は論及され、そして結末を得べく努力され、各党が商議しておるところでございます。今各党のその交渉の成り行きを見守っているというところであります。
  281. 松本善明

    ○松本委員 あなたが、否定されましたけれども、もし報道されているように田中元首相に電話で了解をとってこういうことになったら、そういうことが事実であったら、これは本当に私はめちゃくちゃだと思います。  問題は、あなたは政治倫理審査会のことを言われましたけれども、そこで職務行為規範をつくったりいろいろやっておりますけれども、やはり大もとの問題は、田中議員の問題について決着をつけて、そして問題を解決して、それから、では再発防止措置をとるというのが当たり前でしょう。これはもう外国みんなそうですよ。ウォーターゲート事件のときもニクソン大統領は辞任をする。そしてそれから再発防止のために職務行為規範をつくっているのですよ。西ドイツでもイギリスでも、こういう事件が起こったときには全部そうであります。それを抜きにして政治倫理審査会で百積み上げても、それは私はだめだと思いますよ。  我が党は田中議員辞職勧告決議案を出しておりますけれども、私は、そういうことを採決する、あるいはそういう具体的な問題について決着をつける、これが先だ、これがけじめをつけるということだと思いますけれども、そう思いませんか。
  282. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど来申し上げておりますように、国会の内部におきまして今各党が真剣に交渉している最中でございますので、その成り行きを見守りたいと思っております。
  283. 松本善明

    ○松本委員 総理、私はある新聞で投書を読みました。若いお母さんが投書をされておりまして、自分の小学生の子供が万引きをしたというのですよ。まあ万引きをして、それはわずか鉛筆一本だ。鉛筆一本ではあるけれども、これはやはりけじめをつけなければならぬということで万引きをした店へ返しに行かせたということです。そうしたら、その小学生が、田中角榮というのは悪いことをしても謝らないんだってねとぽつっと言ったというんですね。子供のことですから、もちろん敬称をつけていません。田中角榮議員のことであることは明白です。それでそのお母さんはびっくりして、これは大変だということで投書をされた。その投書を読んで、私は、これは本当にちゃんとしなければならぬ。日本の教育に対しても、それから公務員の綱紀粛正といったって、これは示しがつかぬじゃないですか。元総理大臣がこうして。だからそれはもう自衛隊の汚職から、それから文部省の中枢部の汚職から、警察官の犯罪も相次いで、もう本当にどうしようもないというところまで来ておるでしょう。それは個人として刑事事件で争うのはいいですよ。だけれども、それは個人としてやればいいことですよ。政治家として何で議員でいなければならぬのか。それは、もし総理大臣までやったという人が日本の社会のことを、そういう病理的現象を本当に考えるなら、私は辞職をするということが何よりも大事なことだと思うのですよ。総理は一緒に当選されて、ずっと関係があるわけでしょう。知っている仲なんだから、やはり君、辞職した方がいいよと言うのは当たり前じゃないですか。そしてそれもやらないというなら、国会で、やはりそれは元総理大臣をやった、それは自民党に影響力のある実力者かもしれぬけれども、この際身を引いてもらうのが当然じゃないかといって辞職を勧告をする。個人として争われるのは最高裁まで幾ら争われても結構です。それは保障されています。その刑事事件の問題と、政治的道義的責任の追及の問題とをはっきり区別をして、政治の分野では何も議員であることはない。やはり政治は国民のためにあるわけですからね。そういう立場をとるというのが当然ではないかと私は思いますけれども総理いかがでしょう。
  284. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 御意見として承っておきます。
  285. 松本善明

    ○松本委員 私は、やはり総理が本当に日本の社会を憂える気持ちがないんじゃないか。御意見として承っておくという答弁やり方もあるかもしれませんけれども、しかし、国民が見ている前で、一体この問題をどうするのかということについて、もうちょっと真剣で誠意のある態度を総理はとれないものだろうか。私は本当に遺憾に思います。  それでは経済と国民生活の問題についてお聞きをしたいと思います。特にその中での政治の役割ですね。経済と国民生活について政治は一体何をしなければならぬのかという問題に焦点を当てながら総理にお聞きをしたいと思うのです。  土光さんと中曽根さんがコンビで臨調路線を進めてこられました。四年たちました。中曽根内閣になってから二年たちました。経済と国民生活、一体どうなったんだろうか。軍事費は五年連続で超突出であります。四年で三一%の伸び率です。ついに軍事費は三兆円の大台に乗って、後年度負担を入れると五兆三千億であります。この本委員会でも軍事費のGNP一%問題、いろいろ議論になりました。しかし、結局総理は守るということははっきり言わない。私はむしろこれは新しい軍拡宣言だというふうに思います。大企業の方はどうか。大企業は、昨年下期の上場企業八百七十三社の経常利益は何と四七・二%増ですよ。二兆六千億の利益を上げている。史上最高です。ことし三月期のもうけはさらに膨らむということは確実です。  ところが一方国民生活の方はどうだ。勤労者は、賃上げが三年連続春闘史上最低水準です。収入が少ないですから、これは購買力が低下をするというのは当たり前です。だから中小企業に響きます。中小企業のお客さんというのはみんな一般国民ですからね、中小企業に響くのは当たり前ですよ。中小企業の倒産は昨年一年間で二万八百四十一件、二万件を超えているのですよ。件数にしても負債総額にしても史上最悪であります。完全失業者は毎月平均百六十一万人、去年の平均です。これも昭和二十八年に統計始まって以来の最悪の記録です。農業所得はどうだ。五年前に比べて実質二割五分も落ち込む。前例のない事態ですよ。総理が言っている戦後政治の総決算というのは、国民生活にとっては、数字を見ますと、戦後最悪記録を全部塗りかえるということじゃないですか。  これはどうしてこういうふうになったんだと思いますか。それは予算の変化を見たらもうはっきりしております。臨調開始の前の五十六年度に比べますと、来年度予算案は、今審議をしております予算は、社会保障関係費で八・三%増、文教費は二・一%増、いずれも、一般会計が一二・二%の伸びですから、これは下回っているわけですね。実質は減っている。中小企業関係に至ってはマイナス一三・四%ですよ。それから、農林省関係はマイナス一一・四%ですよ。軍事費は先ほど申しましたように約三一%、三〇・七%の伸び、大企業に金の行くエネルギー対策費は二六・四%の伸びであります。  この私が申しました五十六年度と比べて来年度予算がそういう伸び率を示しているということについては、そのとおりかどうか、大蔵省、御答弁をいただきたいと思います。
  286. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 ただいま御指摘のございました数字は御指摘のとおりでございます。
  287. 松本善明

    ○松本委員 これじゃ国民生活が苦しくなるのは当たり前なんですよ。総理は民間活力ということをいろいろ強調されますけれども、財界の総帥の経団連の稲山会長は昨年の経団連の総会でこういうことを言っておられます。行財政改革の断行を今なお最優先の政策課題と考えて、企業活力に支えられた生き生きとした経済社会の実現を念願している。その実現への障害となる独禁法の手直し、企業利益を重視する経済運営に全力を挙げる。稲山さんの言われるのによると、行財政改革の断行、民間活力というのは、結局やはり大企業の活力、財界の活力ということじゃないですか。今必要なのは財界の活力じゃなくて、国民すべてが生き生きと暮らせるような国民の活力、これが必要なんじゃないでしょうか。総理、いかがでしょう。
  288. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点は松本さんと一致して、初めからそのために一生懸命やっているわけです。
  289. 松本善明

    ○松本委員 ところが、なかなかそういうふうにいっていないのですよ。先ほど申しましたように、大企業はものすごくもうかっているけれども、国民はみんなだめでしょう。さっき数字を挙げたとおりでしょう。そういう二極構造になっているのですよ。私は、国の財政の、政治と言ってもいいでしょう、一番大きい役割はやはり所得の再配分機能ということだと思うのです。だから、大企業だとか富める人、富んでいる人を抑えて、そして国民生活を底辺から引き上げる、これが財政学のイロハでしょう。今の臨調路線、あなたのやり方でやっていかれれば、あなたは私と一致すると言われたけれども、私はあなたの考え方とやはり違うと思うのです。あなたのやり方でいくと、やはり富める者はますます富む、貧しい者はますます貧しくなるということになりはせぬかというふうに思うのですね。  私はちょっと角度を変えて聞きますけれども、一昨年総理は、総理就任後の最初の通常国会の施政方針でこういうふうに言っています。「障害者、母子家庭、寝たきり老人など社会的に弱い立場にある人々に対しては、できる限りの温かい配慮が払われていなければなりません。私は、このような分野に対しての施策の充実に特に意を用いてまいります。」と言われました。それが、故意がどうかわかりませんけれども、昨年の施政方針演説とことしの施政方針演説からは母子家庭が抜けておるのですね。実際に温かい配慮があったのだろうかと思います。一番弱いというお年寄り、これに対しては老人医療有料化でしょう。これがあなたの初仕事でした。それから年金の物価スライドの停止ないし抑制です。医者へは行くな、暮らしは自分でやれということです。それから史上最高の失業に対してはどうですか。失業手当の給付は二割もカットする。健保は大改悪でしょう。本人一割負担を導入して、これはもう大問題になりました。その結果どうなりましたか。お医者さんに行く人は一割減りました。私は本当に切実な話を方方で聞いています。お金、財布がないからやはり医者に行くのをやめておこうかという人もいるし、病気が治らなくても退院するという人が出ているのですよ。病気になっても我慢しろということですか。これがあなたの言う温かい配慮であり、自助なんですか。総理の見解を伺いたいと思います。
  290. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 財政事情が次第に厳しくなってまいりましたので、国民の皆様方にもいろいろ御協力を願って汗をかいていただいております。しかし、それらの中でも比較的に老人や弱い方のためにはいろいろ手当てを尽くしておるつもりでおります。
  291. 松本善明

    ○松本委員 あなたは結局我慢しろということになるわけですけれども、財政のいかんにかかわらず一番恵まれない人に手を差し伸べる、これをやらなくて何が政治なんですか。これをやらないというのならこれはもう私は政治の役割はないと思いますよ。何もしなくていい、弱肉強食でやるに任せると、そんな政治は絶対ないです。これから何をやろうとしているか。年金は大改悪でしょう。児童手当は改悪でしょう。母子家庭への児童扶養手当も大改悪を進めようとしておるということです。さっき母子家庭が抜けだということを言いましたけれども、母と子だけの家庭で何とか生活できるようにというのが児童扶養手当でしょう。ところが今度の改悪でどうなります。年間百五十一万円の収入があったら今まで三万二千七百円もらえた人が二万二千円になる。三百万円を超えたら一円ももらえないのですよ、三百万円超えたら。しかも今まで十八歳までもらえていた。それは義務教育が終わったら打ち切るというのです。総理、母子家庭の子供は高校に行かぬでいい、こういうことですか、お答えいただきたいと思います。
  292. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど来申し上げておりますように、非常に財政事情は厳しくなってまいっておりますので、国民の皆様方に御迷惑、御苦労をおかけして恐縮に存じておりますが、これは二十一世紀に向かって日本の財政基盤を充実させて対応力を増していくためにやむを得ざる措置であります。しかし、その中でも弱い方や御老人のためには努力しておるつもりです。寝たきり老人に対する対策、老人の憩いの家であるとか、あるいはホームヘルパーであるとか、そういう問題につきましては、やはり苦しい予算の中でもベストを尽くした措置を今までやってきております。特別児童扶養手当についてはいろいろ議論もありまして、昨年来法案を提出して御協力願っておるところでございますが、こういう状況のもとではやむを得ず、ある程度の所得を持っておる方については御協力を願いたい、そう思っておるわけなのでございます。
  293. 松本善明

    ○松本委員 やはり総理はそういう人たちとじかに話してみる必要があるのじゃないでしょうか。  昨年五月に発表されました全国母子世帯調査で、母子世帯の平均年収二百万です。これは離別母子世帯の四分の三が児童扶養手当に頼っております。  新聞にある母子世帯の方の状況が出ていましたけれども、年収二百四十万足らず。平均よりも高いです。ところが、その食費三万三千円、食べ盛りの育ち盛りの男の子を抱えて。だから、食べるものは鳥のひき肉中心。それで、お母さんどう言っているか。息子も牛肉なんてあきらめています、子供のおやつは小学生以来ずっとパンの耳を揚げたものだけだというのです。この人も児童扶養手当を削減されるのですよ。総理、一体何を削ったらいいと思っているのですか。このお母さんに何を削れと言えるのですか。答えてください。
  294. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは福祉政策の中でもいろいろ点検をいたしまして、そして、ある程度の所得を持っておる方につきましてはある程度の我慢も今回は願わざるを得ない、そういうことで我々としてはできるだけの努力をしてきておるつもりであります。
  295. 松本善明

    ○松本委員 何を削ったらいいか、教えてやってくれませんか。
  296. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 予算の細かい具体的な内容一つ一つ取り上げる、今そういう余裕はございません。私は総理大臣として、一番大事な基本について申し上げておるのであります。
  297. 松本善明

    ○松本委員 総理、それは違うのじゃないですか。やはり国民がこの予算の結果どうなるかということに、一つ一つの細かいことじゃないですよ、やはりそこに手が届かなければ政治は意味がないじゃないですか。私はそういう態度ではだめだと思います。  もう一つ大きい問題を聞きますが、自治体に対する高率補助金の問題です。特に生活保護費をばっさり切るという問題ですね。今まで国が八割出していて地方が二割。これまで受けたくても受けられない人がもういっぱいいたのです。ところが、今度は国が七割、地方が三割、地方の負担は一挙に五割増しになるのです。私たち共産党はこれは重大な問題だということで、これは地方自治体の反対は物すごいですね。もちろん自民党の議員もみんな反対して決議をしたでしょう。これは、私たち全国調査をやりました。私は総理のおひざ元の前橋に調査に行ったのです。そうすると、こういうことがあります。生活保護を受けている母子世帯で、別れた前の御主人や別居中の夫に市の当局が復縁する意思があるのかどうか、それを確かめているのです、生活保護を切ろうとして。それはとんでもないじゃないか、そんなプライバシーの侵害をやってけしからぬじゃないかということになって、これは中止になったのですけれどもね。北九州はどうか、調べました。福祉事務所ごとにどれだけ支給件数を減らすかという目標を設定する。ケースワーカーの仕事が、生活困窮者の生活をどう助けるかというのがケースワーカーの仕事でしょう。ところが、どれだけ打ち切るかということになってきた。それで、こういう話があるのですよ。生活保護を受けているひとり暮らしのお年寄りが死んだといってケースワーカーが報告した。上司から、いや御苦労さまでした、どうもありがとうございました、こんなことが起こっているのですよ。これがケースワーカーがやることですか。これが上司がケースワーカーに対してとる態度ですか。秋田はどうだろう。秋田市で調べましたら、妊娠した婦人に対して子供をおろせと、こういう指導をしている。ここまで来ているのですよ。  総理、これ、全国に推し広げようというつもりですか。そうなってもいいということですか。
  298. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 妊娠した人に子供をおろせなんて非常識なことを言うケースワーカーは私はないと思います。
  299. 松本善明

    ○松本委員 あるのですよ。あなた、私は全国調査をして、根拠を持ってあなたに言っているのですよ。あったら、そういうばかなことをしてはだめだと言ってやりますか。それやるなら、ちゃんとやると言ってください。
  300. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 もしそういうことがあるとすれば、また別の事情や何かがいろいろあったんではないかと私は想像いたします。
  301. 松本善明

    ○松本委員 別の事情があったかどうか想像しますと言って、とにもかくにも、要するに子供をおろせというようなことを言うのはこれはとんでもないと、あなたはなぜ言えないんですか。私は本当に、そう言っちゃ悪いけれども、本当にちょっと情けない気がしますよ。なぜ日本総理大臣がそのぐらいのことが言えぬのか、こう思いますね。  これは、憲法では、もう申し上げるまでもありませんけれども、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」ということになっておりますし、生活保護法第一条では、「国が生活に困窮するすべての国民に対し、」「その最低限度の生活を保障する」、これはいずれも国が主語なんですよ。国がやらなければならぬことであります。それを地方自治体に押しつける。地方財政法に何て書いてありますか。いっぱいありますけれども、二条には、「国は、地方財政の自主的な且つ健全な運営を助長することに努め、いやしくもその自律性をそこない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を打ってはならない。」ちゃんと書いてあるじゃないですか。総理のやろうとしていることは、憲法だとか、生活保護法だとか、地方財政法だとか、真っ正面に違反していると思いませんか。
  302. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いろいろおっしゃいましたけれども、生活保護の問題にいたしましても、受けていらっしゃる方々には直接は響いていないんです、今度は。中央と地方との負担区分調整はありました。これは中央と地方との役所の関係でそういう変化はありますけれども、生活保護を受けている方は直接は影響はない。そういう措置になっておる。しかも地方に対しましては、たしか五千八百億でありましたが、千億と四千八百億の交付金及び起債、そういう措置で財政的手当てもちゃんとしてあるのであります。
  303. 松本善明

    ○松本委員 総理ね、そんなことを言ったら素人はだまされるかと思ったら大間違いですよ。特例交付金は去年でも千七百六十億出しておるんですよ。ことしは一千億でしょう。結局七百六十億削っているということじゃないですか。何が手当てをしているのですか。あとは起債で、要するに倍金でやれということでしょう。めちゃくちゃじゃないですか。一年限りなんて言っているけれども、そんなものを信用する人はいませんよ。行革特例法、三年限りだ。またことし延長じゃないですか。私は、やはり総理はそういう追及されたときに、弁明するんじゃなくて、何も私は総理をいじめるためにやっているわけじゃない。国民の生活を何とかしたい、それについて総理が行政の責任者ですから、反省をしてもらわなければならぬということで質問をしているんですよ。それは事実を挙げて質問をしているのに、あなたは何も聞かぬという態度でありますか。私はそういう姿勢は変えてもらわなければならぬと思いますけれども、いかがでしょうか。
  304. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国民の生活をお守りし、何とかしたい、そういう気持ちは松本さんに劣るものではございません。
  305. 松本善明

    ○松本委員 私は言葉だけでは済まぬと思うのですよ。あなたは演説だけでは核兵器の廃絶はできぬと言ったけれども、私は本当にあなたにそのことを、そう思いますよ、演説だけではだめだ、本当にそう思うですね。  じゃ、中小企業のことを聞きましょう。  大企業は、先ほど言いましたように、史上最大のもうけをしている。これは国が面倒を見なくたってちゃんとやっていけるのですよ。ところが、中小企業は先ほど言ったように、史上最高の倒産でしょう。これにどう光を当てるかということが政治の責任なんです。それがなければ意味ないですよ、本当に。大企業補助金でいいますと、大企業への技術開発補助金、全部例を挙げられませんから――挙げてみますけれども、日立製作所、三菱重工業、東芝、川崎重工業、石川島播磨重工業、この五社分だけで六十年度予算で二百三十三億であります。日立製作所一社だけで七十億であります。ところが中小企業に対する技術向上対策補助金は、全部合わせて五十九億円にすぎません。日立一社分にも足りないのですよ。これで中小企業がよくなるわけがないじゃないですか。この大企業に対するのと中小企業に対するのとの力の入れ方を逆転をさせる、これが国の政治の仕事だと思うのですよ。  私は、予算を使わないでもできることについて聞きます。それは中小企業への国の仕事の発注の問題です。昭和四十七年度から五十一年度までの四年間にどうなっているかといいますと、中小企業への発注は二四・三%から三四%、一〇ポイントふえています。ところが、五十一年から五十八年、これは五十一年三四%、今言ったとおりですね。五十八年は三六・四%、七年間にわずかに二・四ポイントふえただけです。しかも中曽根内閣になってからどうか。それまではずっと一応ふえているのですよ。ところが、中曽根内閣になりましたら、五十六年は三七・一%でした。ところが、五十七年は三七%、五十八年は三六・四%だ。もう連続して二年間前年度より落ち込んでいます。これは予算をふやさなくても中小企業への発注を一〇%ふやすだけで一兆円仕事が出るのですよ。どれだけ中小企業の倒産が防げるかわからないですよ。これぐらいやったらどうですか。総理、いかがです。
  306. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 通産大臣から答弁いたします。
  307. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 松本委員にお答え申し上げます。  官公需の中小企業向けの発注の比率でございますが、今御指摘になりましたように、ふえ方が必ずしも多くはないということであろうかと思います。しかし、長期的に見てみますと、昭和四十一年では二五・九%、そして昭和六十年では三七・四%でありまして、その間約一二%もふえておるわけでございます。そして昭和五十九年度の国等の契約の方針においても中小企業向けの契約目標を金額で三兆七千億円、それから比率で三七・四%として、その確実な達成に努力をいたしております。  官公需の中には、私自身も県庁で建築部長等をしておりますからよく承知をしておりますが、大規模な工事でございますとか高性能の技術でございますとか、そういったものがあって、中小企業に対する発注が難しいものも相当含まれているわけでございます。しかし、中小企業向けの発注比率を一挙に大幅に引き上げることは困難でございますけれども、国としては年々それに努力をしておるということが長期的に見れば出ておるわけでありまして、中曽根総理からもそのことをつとに承っておりまして、これは建設大臣等と相談をしながらますます中小企業向けの発注をふやしていこう、こういうふうに努力してまいる決意でございます。
  308. 松本善明

    ○松本委員 今、通産大臣いろいろ弁明するけれども、なかなかそういっておらぬのですよ。優先的に発注をするということになっている特定品目だけ見ましても、これは全然だめです。  特定品目で、例えば織物ですね。こんなもの、中小企業へ出せるわけなんだ。ところが、八一年度五五・四%が八三年度四八・五%。下がっておるでしょう。それから外衣とか下着とか、こんなもの、中小企業へどんどん出したらいいですよ。それが四〇%ですよ。努力をしているなんて、こんなもの、すぐできることじゃないですか。  それから、これは各省別に見ますと、これはまた全然アンバランスです。法務省と厚生省は、これはまあまあ結構九〇%超しています。法務省、八三年度九八%、厚生省、九〇%ぐらい。外衣と下着についてですけれども。ところが、大蔵省は三一・八%、郵政省は三〇・四%。これはもう何にも努力していないということですよ。大蔵大臣と郵政大臣、どうです。これはちゃんと改善すると言えますか。
  309. 竹下登

    竹下国務大臣 我が方で外注するとすれば、恐らく税関職員の制服、そういうものであろうと思っております。で、これはまさに間接的には下請等々でお世話になっておるものがございますが、規格品でございますので、従来とも大体私の記憶ではそのような比率でずっと今日まで来ておるんじゃないかと思っております。
  310. 松本善明

    ○松本委員 大蔵大臣、それは今までそうだということをお認めになるのは結構ですよ。だけれども、それは改善するように努力するということを言えませんか。これはもうそれだけでも随分違うんですよ。あなたが一言言うだけで倒産しそうなところは助かるんですよ。改善すると一言答弁してほしいんですよ。
  311. 竹下登

    竹下国務大臣 私も勉強してみます。帽子がどうなるとか、きちんとした制服がどうなるとか、そういう分野調整ができるかどうか、こういうことになりますと、私がここで、言ってみれば松本さんの演説に対して格好よく答えたというだけじゃ、これは真心の政治じゃございませんので、本当によく実態を調べてからお答えするのが正しいあり方だと思います。
  312. 松本善明

    ○松本委員 それは即答というわけにはいかぬかもしれぬが、改善する方向で検討するということでございますかな。
  313. 竹下登

    竹下国務大臣 中小企業に見合うものがあるかないかというところからまず調べなければ、演説に対して感覚的にお答えするだけじゃ、これは政治家として慎むべきことであります。
  314. 松本善明

    ○松本委員 郵政大臣…。
  315. 左藤恵

    左藤国務大臣 お答え申し上げます。  郵政省といたしましても、大蔵省と同じような形で今まで推移してきたと思いますが、さらに中小企業の官公需、特定品目の発注の情報を徹底するとか、あるいは指名競争の契約におきます受注機会をふやす、あるいは分割発注の推進とか、そういったことでさらに努力をさしていきたい、このように考えております。
  316. 松本善明

    ○松本委員 今の答弁としては、それは竹下さん、それで済むかもしれませんけれども、私はもっと根本的に言えば、中小企業はこれだけ倒産しているわけでしょう。予算をできるだけつけようとか、予算がつかなくても、中小企業の発注についてどう改善しようかということは、大蔵大臣としては、ここで聞かれたら、これはこういうふうにしますぐらいのことを胸を張って答えられなきゃ、私は率直に言ってしようがないんじゃないかと思うのですが、総理大臣、大臣というのはそういうものと違いますか。やはりそれについて考えて、そして野党からどういう質問があっても、これはこうしますと言って胸を張って答えられるようでなきゃしようがないんじゃないですか。総理、どう思いますか。
  317. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 竹下大蔵大臣は非常に誠実で良心的な方だと思います。
  318. 松本善明

    ○松本委員 まあ、大変不用意で、中小企業のことを本当にまともにお考えになっておらぬという感じが非常にいたしますが、次へ参ります。  農業ですね。中小企業も大変だけれども、農業も大変です。さっき言いましたように、農林省関係予算は四年間、マイナス一一・四%でしょう。農産物の自由化がこれまたえらいことになってきた。総理は今度の日米首脳会談で、日米諮問委員会の報告を公式のものにされましたね。レーガン大統領のプレスリマークス、新聞発表にもありますし、総理のプレスリマークスにもあります。その報告によりますと、「農産物貿易の自由化に向けての顕著かつ着実な前進が必要」だとか、「両国の政府および農業関係者は、継続的な自由化プロセスを、この両産品」これは前からのつながりで、牛肉とオレンジのことでありますけれども、「に関する日本の農業政策の一環として受け入れるべきである。」この自由化プロセスを牛肉、オレンジについて受け入れるべきだ、「コメの国内価格と国際価格の格差を縮小」しろ、――いいですか。今、米の価格どうですか。日本は八三年度で、政府買い入れ価格で千二十三ドルです。アメリカは二百五十一ドル、約四分の一です。タイは約百四十三ドル、七分の一以下です。これを国際価格に近づけたら、私は米作農家は大変なことになると思いますよ。農林大臣、これでいいんですか。こういう立場で牛肉、オレンジの輸入を受け入れる。米価を国際価格に近づける。これでやっていくんですか。答えてください。
  319. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 松本先生にお答えしますが、今の問題、日米諮問委員会の報告だと思いますが、いろいろ問題が多いことと、このように考えております。
  320. 松本善明

    ○松本委員 問題が多いということは、このとおりにやれぬということもあるということですね。
  321. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 今の問題につきましては、先ほど先生がおっしゃったようなことが、日米間にいろいろな事情もございます。また農業というものは特異性もございまして、非常に難しい問題をたくさん抱えておる、こういうことを言っておるわけでございます。
  322. 松本善明

    ○松本委員 総理、これは承知の上で、この日米諮問委員会の報告、これを公式のものにしたのですか。
  323. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは委員の皆さんが一生懸命勉強して、委員の意見として私らのところへ持ち出してきたのであって、それがそのまま実行されるものではありません。我々は、我々独自の立場に立ちまして、かつまた、日本の市場の国際化や日米関係を考慮して、日本の独自の立場で決定する。米の自由化というものなんかも頭考えておりません。ただし、生産性を上げて国際価格に近づけていく努力はやはりしなければいかぬ、そう思っております。
  324. 松本善明

    ○松本委員 これを今後の指針にする、進路にするということを言うたでしょう。これはアメリカの方もそう思っている。これは拘束力ないのですか。これはどう対処するのです。
  325. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は閣議でこれを取り上げまして、閣僚の皆さんに、各省ごとによく検討して、そして私が申し上げた市場開放等々の精神に沿ってできるだけ調整してもらいたい、そういうことを申し上げました。
  326. 松本善明

    ○松本委員 いや、これは要するに拘束力ないのかというのですよ。
  327. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 拘束力という意味がよくわかりませんが、これで我々が全部縛られるものじゃありません。
  328. 松本善明

    ○松本委員 そうしたら、レーガン大統領にそう言ったらいいじゃないですか。これはあるけれども、これはそのとおりにはいかぬものもあるよと。(中曽根内閣総理大臣「そう言っている」と呼ぶ)そうしたら、何でプレスリマークスにああいうふうに書くのですか。ああいうふうにプレスリマークスで、新聞発表で言えば、アメリカの方はこれでやってきますよ。これから安倍さん、やるのでしょう、外務大臣、シュルツ国務長官と。これで具体化を話し合うのでしょう。どうするのですか。
  329. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今、日米間で話をこれからしようというのは、答申の問題とは関係なしに、先般アメリカから要望がありました四つの分野について日米間で話し合おう。しかし、日本も言いたいことはありますから、その際日本立場も申し述べなければならぬ。いずれにしても、日米間の、二国間の貿易のいろいろの摩擦の問題、市場開放の問題、そういう点について最終的には外交の面で私とシュルツ長官で話し合おう、こういうことになっておるわけです。
  330. 松本善明

    ○松本委員 そんな甘いもんじゃないですよ。アメリカは本当にしたたかで、それはもうこれでやってきますよ、これはあるじゃないですか、総理大臣認めたじゃないかと。私はこういうことは絶対やるべきでない。こんなことをやったら、それこそ本当に日本の農業滅亡ですよ。これを進路とする、日米諮問委員会の報告、今後の進路とすると言ったんだから、この進路とするという態度を改めるべきだったのです。いかがですか、総理
  331. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは確かに答申が出ているわけですから、その答申を尊重して、そしてできるものとできないものがありますから、できるものはやっていく、日米間にとって非常にいいものはやっていかなければならぬと思います。しかし、できない問題がありますから。今の農産物の問題なんかそう簡単にできることじゃありません。これは木材製品等についてもアメリカから強い要請がありますが、そう簡単にはできないということを我々もはっきり言っておるわけですから、できることとできないことがある、できない点については日本ははっきり物を言って、できないと言わざるを得ないわけですから、それが二国間の平等、対等の立場の交渉だと思います。
  332. 松本善明

    ○松本委員 総理はこれのやられたプレスリマークスを新聞発表された御当人でいらっしゃいますから、今後の進路とするという態度は改めるということじゃないのですか。そうさるべきじゃないですか、これはできないというものがあるというならば。これは進路にできないというものがあるというならば。いかがです。
  333. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今、安倍外務大臣が申されたとおりです。
  334. 松本善明

    ○松本委員 いろいろ議論しましたけれども、結局、軍事費は超突出、大企業補助金はばらまく、アメリカの経済要求は受け入れるという方向で、いろいろ弁明しておられますけれども、結局は、犠牲は国民に押しつけられるという方向にならざるを得ないと思います。総理は我慢しろということを言われたけれども、財政再建のためだと言うけれども、私は大蔵省に聞きたいのですが、五十六年度の国債発行額は幾らだったのか。五十九年度はどうだったのか。五十六年度は決算ベース、五十九年度は補正ベースでお答えいただきたい。
  335. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 五十六年度につきましては、決算ベースで十二兆八千九百九十九億円でございます。それから五十九年度は、今御審議いただいております五十九年度の補正予算ベースで十二兆八千六百五十億円でございます。
  336. 松本善明

    ○松本委員 それは結局、この三年間で国債発行額わずか三百四十九億しか減っていない、比率にしたら〇・二七%しか減っていないということですよ。これは財政再建なんと言っているけれども、一歩どころか半歩も前進していないですよ。全然やっていないというのと同じですね。国債残高は百二十二兆円、来年度は百三十三兆円。これに伴って利子である国債費がとうとう十兆円を超えることになった。社会保障費を追い抜いて、もう最大の歳出費目ですね。国債費というと一般国民なかなかわからないけれども、要するに国債の利子ですね。この利子を一体だれが受け取って、だれがもうけているかということです。そのうちの七兆円ぐらいの利子が民間に流れているけれども、その大半は大金融機関、大企業、大資本家に行っているのです。国民の本当に血が出るような血税が金利として、利息として金融機関だとか大企業だとか大資産家に流れている。一体これが我慢ができますか。これで税金を払うという気になりますか。皆さん、国民は、こんなばかなことないじゃないか、おれの税金が何だ銀行へ行くのか、十兆円、これが一番大きい金額だということになりますよ。これは総理、この問題を思い切って是正すべきじゃないですか、取り組んで検討して。いかがでしょう。
  337. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに十兆円を超すいわゆる利払い費、これはやはり予算を組むに際しましては、私どもも一番頭の痛い問題であります。ただ、今の議論を聞いておりますと、大企業とか銀行とかいろいろおっしゃいますが、大企業もまた金融機関も国民のいわば貯蓄あるいは出資の上に成り立っておるわけでございますから、そこが資金を運用して、そして利潤というものを得るということは、それはそれなりに是認しなければならない問題だと思います。だから、私どもが言っておりますのは、確かに昭和三十九年までは公債ございませんでした。四十九年までは建設国債だけで、締めて九兆七千億ぐらいです。したがって、五十年から赤字公債をも発行することになったわけですから、その累積がここまできておりますから、第一義的には、要するに六十五年までに赤字公債を財源として組み立てた予算、それからは脱却しましょう。そしてその後、今国債が減らないじゃないかとおっしゃいましたが、対GNP比に対してどのようなところへ位置づけていくかという残高そのものを減らしていくための努力をするというのが第二段階のことではないか。したがって、ことしも苦しいながら、まず初めに一兆円の減額ありきということでこれに対応したわけであります。  五十六年、五十六年ということをよく基準におっしゃいますが、五十六年、五十七年というのは、やはりこれは世界同時不況によるところが一番大きな原因であったというふうに理解すべきではなかろうか。  それから、予算に対してもいろいろな御批判がございましたが、一つの現象面だけをとらえて、それでもって一つ一つのお答えをするというのは、その衝に具体的に当たっている私どもではございませんので、必ずしもできないかもしれません。しかし、日本の生活保護水準は世界の中でどうなっておるのか、あるいは一人当たり所得はどうなのか、ずば抜けて低いのが失業率じゃないか、あるいは物価は世界でまた一番上がらなくなっているのじゃないか、そういう評価もやはりしていくというのが本当の予算審議ではないかな、こんな感じがしております。
  338. 松本善明

    ○松本委員 まあ大蔵大臣は、それはつくった人ですから、いろいろ言うでしょうけれども、なかなかそう簡単にいかない問題です。これは自民党の最高首脳で、自民党の政調会長藤尾さんが昨年自民党の軽井沢セミナーでこう言っているのです。これは「自由民主」の昨年九月号に、もうそのとおり読みます。この公債発行について「当時、経済界の代表は「この際、大量の国債を発行してもいいから、何とかこの経済的なパニックを避けるために、公共事業を拡大して景気を刺激し、振興してほしい」と政府に要望したわけです。その公共事業政策を強力に推進されたご当人が当時の経団連会長の土光敏夫さん、関経連会長の日向方斎さんという東西両経済界の代表であったのです。」国債発行を促したのは経済界だと、土光さんだと藤尾さんがはっきり言っておるのですよ。そして続けて「「経済界にはこれに対する何らの責任もない、それは政府がやればよろしい」という考え方は少し横着すぎやしませんか。」「経済界の方々がお持ちになっている国債の利子といったものについても「こういう非常事態だから、私どもにも協力させてくれ。我々が受け取る利息は半額でよろしい、三分の一でも結構。場合によっては利息分はいらない」というくらいの協力態勢を経済界も、あるいは国民の立場からも言っていただくような空気が出てこないものであろうかと。」これは自民党政調会長の言っていることですよ。総理、大企業優遇税制を改めるとかいろいろな検討をすべきじゃないですか。大型間接税検討じゃなくて、この国債費をどうやって、この利子を企業に負担させるか、あるいは金融機関にどういうふうにやるか、それを考えるのが政治でしょう。それでなければ、富める者はどんどん富む、貧しい者は貧しい者、これで大型間接税をやったらますますひどいことになりますよ。こういう国債費問題、検討するかどうか、お答えいただきたいと思います。
  339. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今のは藤尾君独特の精神訓辞をやったんだ、そう私は思っております。  それから、今松本さんのお話を聞いていますと、我々と次元の違うお考えをあなたはお持ちで、資本主義とかあるいは経済的メカニズムというものがまだおわかりにならない御議論じゃないですか。私の方から見るとそう思われる。やはり経済というものは有機的に動いておるので、そしてその有機性の中にみんながそれぞれの恩恵なり負担を受けておる。全体像においてぜひ把握していただきたいと思います。
  340. 松本善明

    ○松本委員 資本主義の仕組みがわからぬで二十年国会議員ができますか。それだけじゃないんですよ。村山調査会というのがあります。村山達雄さんが中心で、ここにおいての方も入っておられますよ。それはどう言っているか。これは去年の十一月号の「自由民主」で「公債の保有者は相対的に富裕層が多いと考えられるので、多額の元利払いは「意図せざる所得再分配」を生じ、財政の所得再分配機能からも問題である。」これは何も藤尾さんだけのことじゃないじゃないですか。自民党の中でも問題になっている。検討するのは当たり前ですよ。もうちょっと勉強せぬとだめだと僕は思う。  それで、大型間接税をやるという話がいろいろ出ています。総理大臣はこれを否定しないですよ。それで、先ほど来の議論でもEC型の付加価値税の導入については余地を残す、税制調査会答申を待つ、先延ばしでしょう。これはもう大型間接税導入の布石を打っているという以外にないと思うのですよ。なぜ我々が反対するかというと、結局いろいろなEC型のものにしても全部の商品にサービスに税金かけて、最終的には全額消費者に負担させる。その分は確実に物価が上がる。景気にも影響する。所得税を払っていない人でもこの税金はかかってくるわけですよ。高額所得者でも食べる量はほとんど変わらないです、貧乏な人と。だから高額所得者こそ負担率が低くて低所得者ほど重くなる。だから、最悪の大衆課税だから私たちは断固として反対をしているわけです。総理、これはもう絶対やらぬということを断言してほしいのですね。これをやったら中小企業はもっともっと倒産ですよ。景気は悪くなりますよ。そして苦しい人たちに温かい配慮どころか、私は本当に国民生活は苦しくなると思うのですよ。これは絶対やらない、やらない方向で、例えば国債の検討とかそういう方向で財政再建のことを考える、あなたがそう言ってくれればどれだけたくさんの人が喜ぶかわからないですよ。それをひとつ断言してくれませんか。
  341. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 けさほど矢野書記長にお答えしたとおりです。
  342. 松本善明

    ○松本委員 私は総理のお話を聞いておりまして、資本主義の仕組みはわからぬなんて言ったけれども、資本主義のもとでどれだけ国民が苦しんできているか、大企業がどんどん大きくなるかという仕組みをわかってないのは総理自身じゃないかと思うんですよ。これは事実なんですよ。これはイデオロギーの問題じゃなくて、客観的に事実を見ればわかることです。この四年間に一体何をやったでしょうか。老人医療有料化、それから健康保険の改悪、それから人勧は三年連続でストップするとか抑制するとか、それで賃金は抑えられるでしょう。そしてさらに恩給、年金はそれで連動するという状況で抑えられている。四十人学級は凍結をされる、私学助成は大幅に削られる、それでさらにまた生活保護からみんな削っていくということでしょう。一律カットということでしょう。これは国民は絶対我慢できないですよ。あなたは我慢しろと言ったって我慢ができないです。これは経済政策の方向を、軍事費を削って、そして暮らしと福祉、教育の充実をという方向に転換をしなければならぬということをはっきり申し上げて、私はこれで質問を終わりたいと思います。
  343. 天野光晴

    天野委員長 これにて松本君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  344. 天野光晴

    天野委員長 この際、公聴会の件について御報告申し上げます。  公述人の人選等につきましては、さきに委員長に御一任願っておりましたが、本日の理事会において慎重に協議いたしました結果、お手元に配付いたしました名簿のとおり決定いたしましたので、御報告いたします。     ―――――――――――――    予算委員会公述人名簿一、意見を聞く問題 昭和六十年度総予算について  ○二月十二日(火)     昭和女子大学教授   加藤 地三君     東洋大学経済学部教授 八巻 節夫君     北海道大学教授    木村  汎君     名古屋大学教授    水野 正一君     演劇製作者・まつ座     主宰         井上 好子君     医事評論家      水野  肇君  ○二月十三日(水)     青山学院大学教授   館 龍一郎君     住民の足を守る道民会 大内  基君     同盟政策室長     幸重 義孝君     全日本民主医療機関連     合会会長       莇  昭三君     サンケイ新聞社論説副     委員長        千田  恒君     軍事評論家      前田 哲男君     ―――――――――――――
  345. 天野光晴

    天野委員長 次回は、明日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時二十四分散会