○
瀬崎博義君 私は、
日本共産党・
革新共同を代表して、
政府提出の
昭和六十
年度予算三案に断固
反対の
討論を行います。(
拍手)
言うまでもなく、本年は広島、長崎の被爆四十周年、第二次世界大戦の終戦四十周年の記念すべき年であります。四十年前、すべての
国民は、廃墟の中に侵略戦争の根絶と恒久平和を誓い、平和と
民主主義、
国民主権を尊重する
政治の確立を目指して営々と努力を積み重ねてきました。そして四十年後の今、戦後
政治の総決算を標榜してやまない
中曽根内閣の手によって平和が脅かされ、暮らしが破壊され、
民主主義の土台が揺るがされていることは、
国民にとってこの上ない不幸と言わなければなりません。
六十
年度政府予算案とその
審議の中で明らかになったことは、
中曽根内閣がレーガン政権の核戦略の一翼を担って際限なき軍拡への道を突き進み、財界奉仕をさらに強めながら、
国民に対しては一層の
負担強化を押しつけようとしていることです。臨調行革路線が開始されて四年間、破局的事態に立ち至った
財政危機にもかかわらず、軍事費は実に三割を超える異常な急増ぶりとなり、とりわけその中核ともいうべき正面装備費の
増加は六割近くにも達しております。レーガン戦略に組み込まれた
経済協力費は三割以上、財界のためのエネルギー対策費も三割近くの大幅な
伸びという大優遇を受けているのであります。これに対して、
国民大多数がその増額を願ってやまない
社会保障費は八%、
文教費は二%の
伸びで、
実質的にはマイナスとなっており、中小
企業、農林漁業
予算に至っては一割を超える大幅マイナスを強要されたのであります。六十
年度政府予算案は、徹頭徹尾レーガン政権と財界の
要求を優先させた日米
運命共同体予算であり、
日本の
国民にとっては最悪の
予算案と言わざるを得ません。
日本共産党・
革新共同は、
予算委員会においてただひとり、軍事費を一兆四千億円
削減して
国民生活に振り向けることを主要な
内容とする
予算組み替え
動議を
提出したのでありますが、この組み替え提案こそが真に
国民の願いにこたえる
予算であり、
国民要求優先への
転換を決断しさえすれば実行可能な
内容であることを改めて強調するものであります。(
拍手)
以下、具体的に
政府予算案に
反対する
理由を述べます。
その第一は、本
予算案が
日本をアメリカの核戦略に一層深く組み入れる大軍拡
予算であることです。
軍事費は前
年度比六・九%増と五年連続の異常突出を示し、ついに三兆円の大台を
突破しました。地対空ミサイル・パトリオットの新規
導入を初め、F15戦闘機十四機、P3C対潜哨戒機十機、ミサイル
護衛艦三隻など、
日本列島不沈空母化、一千海里シーレーン
防衛のための軍備増強が急激に進められています。対
GNP比一%以内という枠組みのもとでさえ、二兆三千億円もの後
年度負担のからくりによって、米核戦略に直結する正面装備費が四年間で実に五七%も急増するという大軍拡が行われているのであります。しかも
中曽根総理は、一%でやれる可能性が薄れていると述べ、これまで
政府自身が表明してきた歯どめさえかなぐり捨て、際限のない軍備拡大に道を開こうとしております。これが、
国民にこれまでにも増して多大な犠牲と
負担を強いるばかりか、レーガン政権の危険な核戦略にますます深く
日本を組み込むことになるのは火を見るよりも明らかであります。(
拍手)
とりわけ重大なことは、世界の圧倒的多数の人々が、人類の死活にかかわる問題として核兵器の全面的な廃絶を心から求めているこのときに、
中曽根総理が唯一の被爆国の首相にあるまじき核兵器使用容認の
姿勢を強く打ち出してきたという事実であります。
総理は、一月の
日米首脳会談で、核軍拡競争を宇宙にまで拡大する米
戦略防衛構想、いわゆる
SDIに協力を示しました。さらに
国会の論戦では、果てしない軍拡競争をもたらした核抑止論の
立場を改めて明確にしたばかりか、安保条約を
理由に、日米共同作戦中の
米艦船の核兵器先制使用を公然と認めるに至ったのであります。こうした好核
中曽根内閣に
日本の運命を任せることは断じてできません。
予算委員会の論戦において、軍事費一%問題がとりわけ焦点になったのは、軍事費が額において
GNP比一%を超えようとしているというだけではなく、その
内容がこのようにレーガン政権の核戦略と結びついた危険なものとなっており、同時に、これが
財政危機の
最大の要因ともなってきているからであり、
予算修正協議の核心はまさに軍事費
削減にあったわけであります。だからこそ、一部の
野党が一%を守れと言いながら
予算委員会に
提出した共同修正
要求では軍事費
削減問題を棚上げしたのに対し、我が党は軍事費大幅
削減を組み替え
要求の主要な柱とし、修正協議においても一貫して軍事費
削減を自民党に迫ったのであります。私は、軍事費
削減の
要求を拒否し、あくまで大軍拡を推し進めようとする
中曽根内閣と自民党の
態度を、心からの怒りを込めて糾弾するものであります。
第二の
理由は、本
予算案が
国民生活関連分野ではぎりぎりの
予算さえ大幅に
削減しながら、大
企業に対しては新たな優遇策を講じる露骨な財界奉仕、
国民犠牲、
地方自治破壊の
予算となっていることです。
政治の暖かい光を最も切実に求めている人々にかかわる社会保障
関係費は、前
年度比わずかに二・七%増と極めて低い
伸び率に抑えられ、臨調四年間で当然増経費の約四分の三にも達する二兆三千億円を切り捨ててしまいました。特に本
予算案では、国の
負担責任を
地方自治体に転嫁する補助金一律カットという乱暴な
措置まで強行しようとしているのであります。これが自治体
財政圧迫というだけでなく、社会保障そのものを切り縮めていこうとするものであることは論をまちません。民生
関係のカット額二千六百億円の約半分は最も苦しい生活を余儀なくされている生活保護世帯への保護費であり、その他も保育所、老人ホーム、障害者施設の運営費など
国民生活に欠くことのできないものばかりであります。しかも、その多くはもともと国が当然責任を負うべき国庫
負担金であり、その一方的カットは
地方財政法の原則を真っ向から踏みにじるものであります。生活保護の受給制限に拍車をかけ、老人ホームの食費
予算まで奪い取るような冷たい
政府の
やり方を絶対に許すことはできません。
教育関係でも、
臨時教育審議会を
利用して、
教育自由化の名のもとに、
教育の機会均等の原則を覆す全面的な反動化をたくらみながら、行政が責任を負うべき
教育条件の整備については大幅に後退させているのであります。公立学校の施設整備費を五年連続して大幅に
削減し、児童生徒急増地域や離島、過疎地域などの校舎新築の補助率の引き下げによって、マンモス校など切実な問題の解決を引き延ばし、教材費や僻地の就学援助費、給食費に至るまで削り込み、子供にまで犠牲を強いるとは言語道断であります。(
拍手)大
企業が空前の利益を享受しているのと対照的に、中小
企業倒産が最高の水準に達し、また農業の危機が深刻化する一方なのに、
中小企業対策費と農林漁業
予算は大幅
削減だということは、
中曽根政治が中小零細業者と農民を眼中に置いていないことを端的にあらわすというほかありません。
他方、大もうけを上げている大
企業に対しては、
民間活力活用の名のもとに、建てて間もない公務員宿舎を取り壊してでもという国有地の民間払い下げや、
企業のもうけの邪魔になる制約はすべて取り払うという各種規制の緩和を推進し、また次世代産業基盤技術研究開発費などの大
企業補助金も急増させています。その上、基盤技術研究促進センターを設立し、新電電の
政府持ち株の配当を注ぎ込むことによって、大
企業に無
利子融資などの新たな助成
制度を創設し、加えて百六十億円にも上るいわゆるハイテク
減税まで新設しようとしているのであります。
財政事情を
理由に、
国民生活関連
予算には削れる限りの大なたを振るいながら、大
企業には目に余る大盤振る舞いをする、こんな反
国民的な
予算を断じて認めることはできません。(
拍手)
第三の
理由は、
財政破綻をさらに新たな
段階に進行させながら、それを口実に
大型間接税導入を図ろうとしていることです。
政府予算案では、
国債費はついに十兆円を
突破、
社会保障費を抜いて
最大の
支出項目となり、
予算編成上の決定的な障害となってきているのであります。
中曽根内閣は、新たに
赤字国債の借りかえを強行しようとしていますが、これは
財政節度の
最後の歯どめさえ捨て去り、名前を変えて
赤字国債を増発することにほかならず、
財政を破局に導く暴挙であります。今や
政府は
財政の正常な管理運営能力を喪失しているとしか言いようがありません。この破局的な
財政破綻の責任は、大
企業本位の
景気浮揚策として
赤字国債を乱発し続けてきた
自民党政府と、それを
要求してきた財界にあることは明白であります。ところが、本
予算案では、財界に対してその責任を負わせるところか、
不公平税制の温存、拡大さえ図り、すべてのしわ寄せを
国民に押しつけようとしているのであります。
「
増税なき
財政再建」をスローガンに、
国民生活関連
予算の冷酷な切り捨てを強行してきた
中曽根総理は、その舌の根も乾かないうちに、
EC型付加価値税は
政府税調の
検討対象になると
大型間接税導入の方向を公然と打ち出しました。また、竹下蔵相は、
一般消費税導入を否定した
国会決議について、
国民の意識は変わるものだと述べ、
国会決議に挑戦する
姿勢を示しました。
我が党は、いかなる名目、いかなる形態であれ
大型間接税の
導入には断固として
反対します。そして、真の
財政再建は、我が党の組み替え提案で主張しているように、何よりも軍事費を大幅に
削減することであり、また、十兆円に上る
国債利子の大半を手中にし今日の
財政危機の事態からも利益を得ている大金融機関、大
企業に対し利払い軽減
措置を講ずることや、大
企業優遇
税制の全面是正によってこそ前進し得るのであります。
私は、
日本共産党・
革新共同を代表して、以上述べた
理由から本
政府予算案に断固
反対することを重ねて表明するとともに、平和と
民主主義、
国民生活擁護のために全力で奮闘する決意を、また軍拡、
国民犠牲強行の
中曽根内閣の退陣を強く
要求して闘い抜く決意を披瀝して、
討論を終わります。(
拍手)