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1985-05-22 第102回国会 衆議院 文教委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年五月二十二日(水曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 阿部 文男君    理事 石橋 一弥君 理事 大塚 雄司君    理事 白川 勝彦君 理事 船田  元君    理事 馬場  昇君 理事 池田 克也君    理事 中野 寛成君       青木 正久君    赤城 宗徳君       臼井日出男君    榎本 和平君       北川 正恭君    田川 誠一君       月原 茂皓君    中村  靖君       二階 俊博君    町村 信孝君       綿貫 民輔君    渡辺 栄一君       木島喜兵衞君    小林  進君       佐藤 徳雄君    田中 克彦君       中西 績介君    有島 重武君       伏屋 修治君    菅原喜重郎君       滝沢 幸助君    藤木 洋子君       山原健二郎君    江田 五月君  出席国務大臣         文 部 大 臣 松永  光君  出席政府委員         文部政務次官  鳩山 邦夫君         文部大臣官房長 西崎 清久君         文化庁次長   加戸 守行君  委員外出席者         警察庁刑事局刑         事企画課長   中門  弘君         文化庁長官   三浦 朱門君         通商産業省機械         情報産業局総務         課企画官    越智 謙二君         通商産業省機械         情報産業局電気         機器課長    広野 允士君         参  考  人         (成蹊大学法学         部教授)    紋谷 暢男君         参  考  人         (社団法人日本         電子工業振興協         会ソフトウェア         懇談会座長)  三次  衛君         参  考  人         (青山学院大学         法学部教授)  半田 正夫君         参  考  人         (コム・エンジ         ニアリング研究         所代表取締役所         長)      大山 明雄君         文教委員会調査         室長      高木 高明君     ――――――――――――― 委員の異動 五月二十二日 辞任       補欠選任   稻葉  修君     月原 茂皓君   渡辺 栄一君     綿貫 民輔君   佐藤 徳雄君     小林  進君   滝沢 幸助君     菅原喜重郎君 同日 辞任       補欠選任   月原 茂皓君     稻葉  修君   綿貫 民輔君     渡辺 栄一君   小林  進君     佐藤 徳雄君   菅原喜重郎君     滝沢 幸助君     ――――――――――――― 五月二十日  教育改革に関する陳情書  (第三五九号)  教育の基本問題に関する陳情書  (第三六〇号)  過大規模校早期解消に関する陳情書  (第三六一号)  文化振興及び学術研究充実強化に関する陳  情書外一件  (第三六二号)  教科書無償継続等に関する陳情書  (第三六三号)  大都市周辺市町村過大規模枝分離促進に関す  る陳情書(第三  六四号)  私学助成充実強化に関する陳情書外一件  (  第三六五号)  国立美術館早期建設に関する陳情書  (第三六六号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  著作権法の一部を改正する法律案内閣提出第  七四号)      ――――◇―――――
  2. 阿部文男

    阿部委員長 これより会議を開きます。  内閣提出著作権法の一部を改正する法律案議題といたします。  本日は、参考人として成蹊大学法学部教授紋谷暢男君、社団法人日本電子工業振興協会ソフトウエア懇談会座長三次衛君、青山学院大学法学部教授半田正夫君及びコムエンジニアリング研究所代表取締役所長大山明雄君、以上四名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、ただいま議題になっております著作権法の一部を改正する法律案について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。  まず、参考人から御意見をそれぞれ十分程度お述べいただいた後、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  それでは、紋谷参考人にお願いいたします。
  3. 紋谷暢男

    紋谷参考人 ただいま紹介されました成蹊大学紋谷でございます。  本日は、コンピューターソフトウエアに関して私の思うところを簡単に御説明したいと思います。  まず、このような無体財産というものに関しては、その保護形式というのは大きく分けまして二つしか方法がないということが言えると思うのです。一つは、特許実用新案、意匠、商標というような狭い意味工業所有権、それからあと一つは、著作権、それから商号保護あるいは不正競争防止法による保護というようなものの保護形式でございます。前者は絶対的な意味における独占的な排他権を認めている。すなわちこれは自分でつくったものが特許されますと、他人はそれを盗んでもいけない。それからまた、盗まなくても別個にこれを開発しても侵害になるという意味において絶対的に強い権利です。それに対しまして、著作権及び商号ないし不正競争防止法というようなところの保護権は、盗まなければいいという権利です。いわば別個に開発した場合においては、著作権の場合侵害にならない。不正競争防止法による保護権は混同がなければ侵害にならないという意味において、特許とは全く性質の異なっただれにでも主張できるというものではない相対的な権利である。特に著作権におきましては、これを盗まなければよろしいという意味における権利だということを申し上げておきたいと思います。  それで、まず保護客体というものに対してどういうふうに考えていくべきかという問題があるわけでございますが、保護客体であるコンピュータープログラムというものを見てまいりますと、果たしてどちらの方が妥当なのかという問題がございます。特許のような強い権利を認めますと、強力な企業というものだけの保護に堕していく場合が強い。というのは、別個に開発しても侵害だと言える絶対権ですから、その意味においてそれほど強い権利を果たして認めてしまっていいのかという問題がございます。他方、特許というものは完全な公開を旨とするわけですから、盗まれやすくかつ盗んだことがわかりにくいというようなものに対して、このような完全公開という原則をとらざるを得ない特許制度に乗せることは不可能に近いということが言えるかと思うのです。そういったことで、一応相対的な独占権である著作権法というものがここにクローズアップしてくるわけでございます。  それで、なおかつこのようなものは客体を無視して考えることはできませんので、果たしてその保護客体がどんな性質なのかというと、御存じのとおりプログラムというのは現在では国内だけに使われるのじゃない。もちろんネットワーク等を通じてあるいは国際的なライセンスを通じてあちこちに流通している。そうすると、これが国際的に十分に保護されなければならないという問題もございます。  そういったことからすると、果たして世界趨勢はどうであろうかということを見ていく必要がある。御存じのとおり、アメリカでは既に著作権法を一九八〇年に改正して、これを著作権保護しております。西ドイツではかつて司法省が、一九八二年ですか、GRUR、ゲベーブリツヘスレヒトシュッツ・ウント・ウルヘーバーレヒト協会からの質問に対して、著作権法で十分保護されるという見解を出しておりますし、判例趨勢もすべて固まってきております。オランダにおきましてもフランスにおきましても、判例著作権でこれを肯定しております。さらに、イギリスにおきましても、既にお聞きのことかと思いますが、著作権法保護に関しての見解が出されているわけでございます。その上さらに、一時問題とされたオーストリーでございますが、著作権法による保護を否定した判例がございましたけれども、これも翌年、八四年の判決でこれを肯定して、それで現にオーストリーでは著作権法改正がなされている。こういうような状態を見て、さらには東欧では、ハンガリーなどでは既に著作権法による保護判決が出ております。  このような世界趨勢及びさらに国際的な動きというものを見てみますと、一九七八年には既にWIPOプログラムモデル条項というのを出している。これは著作権的な発想を基礎に取り入れているものでございますが、かなり重要な問題は一九八三年のWIPO・ユネスコの第二回専門委員会でございまして、ここにおきましては既に先進諸国においては著作権法による保護の傾向が強まってきたことから、国際条約、すなわちベルヌ条約万国著作権条約と相まって、それは一応十分に保護されることが確認されて、少なくともパリ同盟諸国におきましては特別な国際協定の締結は当分行うべきでないという勧告が出ている。そういうような国際的趨勢を一応考える必要があるかと思うのです。  それで、このような形で見てまいりますと、著作権法による保護というものはいわゆる保護客体としてのプログラム性格等を勘案したものとしてかなり評価できるであろうし、さらに、我が国におきましても、御存じのとおり裁判所の判決著作権による保護を肯定しているわけです。  そこで、私、実は文化庁著作権審議会の第六小委員会でこの点を具体的に検討した者の一人として、いろいろな点を実は検討してまいったわけでございます。そこにおきまして一番問題とされていた点というのは、例えば著作権というのは文化保護だろう、コンピュータープログラムというのは産業だというようなこと等の主張も我が国においてはなされていた。しかし、これは著作権目的というものの解釈を誤った日本独自の見解であって、国際的に通用する見解ではなかった。すなわち著作権における文化目的というのは、広い意味において文化、いわゆるコンピューターが出てまいりますればコンピューター文化というものが起こってくる、こういうものも保護するのだというようなものでございます。それで、さらに——時間が参りましたが、そのほかに裁定制度や何かというようなものもいろいろと検討して、結果的には盛りませんでしたけれども裁定制度などというものがもしできたらどうなるか。諸外国にない制度です。そうすると、日本にあって外国にない制度というものはどういう効果を導くかというと、結局日本における権利制限という形になって、いわば裁定というのは没収に近いものですから、そうすると、従来の技術移転の慣行を見てまいりますと、そのような状態になった場合に、ライセンスは受けられますけれどもロイヤリティーというものが大体五倍程度に膨れ上がっている、これが技術移転の常識でございます。したがって、そのような制度を設けて、あえてそのような五倍程度ロイヤリティー外国に払うことによって日本企業が成立するのかというような問題も考えなければならぬ。  それからさらに、裁定制度などというのは、争えば地裁、高裁、最高裁、こう争う。十数年訴訟が係属し得る。そうすると、プログラム存続期間というのは比較的短い。短いとすると、そのような制度は害あってさらに実益がない制度だというような形で、いろいろと検討してまいります。  時間との関係で一応その程度にとどまりますが、一応今回の草案は、先ほど申しましたように審議会の結果を踏まえてできたものであって、現時点においてはこれ以外に方法はないものであると私は考えております。(拍手
  4. 阿部文男

    阿部委員長 ありがとうございました。  次に、三次参考人にお願いいたします。
  5. 三次衛

    ○三次参考人 ただいま御紹介にあずかりました三次でございます。  本日は、社団法人日本電子工業振興協会ソフトウエア懇談会座長といたしまして、この席にお招きいただき、意見を述べさせていただく機会を与えられましたことを深く感謝する次第でございます。  それでは、コンピュータープログラム法的保護につきまして、私どもがここ二、三年検討してきたことを踏まえまして、意見を述べさせていただきたいと思います。  まず最初に、コンピュータープログラム法的保護必要性につきましてからお話ししたいと思います。  これからの高度情報化社会の構築に当たりまして、コンピューターを初めといたします情報処理機器がその核としての役割を担い、その利用技術であるコンピュータープログラム重要性が非常に高まるということは申すまでもないことでございます。  さらに、ソフトウエア市場動向でございますが、ソフトウエア危機あるいはソフトウェアクライシスという言葉で代表されておりますように、ソフトウエアに対する需要が急激に昨今増大しております。これに対しまして、コンピュータープログラムの供給は十分には対応できてない状況が来るのではないか、そのような危惧がございまして、ソフトウエア危機等言葉が叫ばれているわけでございます。このような事態を防ぎまして、健全なソフトウエア産業の発達を図るというためには、現在生産効率の面でいろいろ問題のございますコンピュータープログラム生産効率化ということが重要なテーマとなっております。そのために、私どもソフトウェア生産に携わる者といたしまして、生産性の向上ということにつきましては基本的な課題として取り組んでおります。  一方、コンピュータープログラムの価値をより一層認識いたしまして、開発、流通を促進するとともに、これも非常に大事な問題でございますが、さらにその解決のために、コンピュータープログラム特徴を踏まえました保護を強く望んできたわけでございます。  ところで、コンピュータープログラムにつきましては、その製作並びに保守という言葉を使いますが継続的な利用に伴いますいろいろな手当て、これに多くの費用が必要でございます反面、その複製が非常に簡単だという特徴と申しますか欠点を持っております。したがいまして、コンピュータープログラム作成者の本来享受すべき利益が容易に侵害される危険性があるということでございます。これまでのところは、作成者利益保護につきましては、通常、契約に依存する割合が多うございまして、必ずしも利用者保護を含めました法的な手当てが十分なされているとは言いがたい現状となっております。  次に、今回の著作権法の一部改正あり方を拝見させていただいた上での意見を述べさせていただきたいと思います。  この法案につきましては、政府部内で検討を始められましたときから、私ども業界意見もよく聞いていただいておりまして、コンピュータープログラム特徴に対しましていろいろな手当てがなされております。  例えば、第一番に改変、これはソフトウエア業界言葉で申しますとバージョンアップなどと言っておりますが、コンピュータープログラム機能アップ等を図る場合にプログラムの中身を改良するわけでございますが、その場合の作成者権利利用者利用しやすさのバランスに対する配慮が払われております。それから、二番目といたしまして、プログラム作成につきましては法人によりまして開発が行われるケースが多うございますが、その際の権利帰属あり方につきまして。それから、三番目といたしまして、コンピュータープログラム自己利用のための複製権制限。こういった点につきましては、業界の実態を踏まえた法律案となっておりまして、私ども満足しておる次第でございます、  また、このプログラムの適切な保護あり方につきましては、その市場性が日に日に国際化を高めているということから、諸外国動向を十分に踏まえた保護であるべきと考えております。  したがいまして、これら申し上げましたような点に対処いたしますために、当面の対応といたしまして、WIPO中心といたします諸外国において検討されている状況を踏まえました上で、著作権法の一部改正ソフトウエア法的保護の対処をされるということにつきましては特に異存はございません。  しかしながら、コンピュータープログラム既存著作物と比べますと、その本質において幾つかの相違点があるのも事実だと思います。  例えば、芸術品等既存著作物は、一度形ができ上がりましたものを保護いたしまして、作成者以外の者による変更を容易に加えられることを拒むわけでございますが、コンピュータープログラムは、求められる役割によりましてその仕様を変えて機能アップを図りますので、もとの形からの変更が著しいものでございます。  また、既存著作物が人間の五感に直接訴えるのに対しまして、コンピュータープログラムコンピューターにおいて使用されまして初めて役に立つという特徴がございます。ここには、コンピュータープログラムの使用についての権利保護でございますとか保護期間問題等が内在しているのではないかと考えております。  そのほかにも、登録に対する新しい取り決めてございますとか、あるいは速やかな紛争処理の取り組みなど、今後さらに検討していただく必要がある面もあるかと思います。  また、コンピューター並びにコンピュータープログラムを初めといたします、技術進歩の甚だしい分野でございますので、これからの国際的な検討状況のいかんによりましては、著作権法による保護だけでは十分とされない場合もあるのではないかというように考えられます。  したがいまして、コンピュータープログラムのよりよい権利保護あり方につきましては、今後とも中長期的な観点から、国際的視野に立ちましての検討を続けていただきますように切にお願いしたいと考えております。  以上のとおり私の意見を申し上げさせていただきました。どうもありがとうございました。(拍手
  6. 阿部文男

    阿部委員長 ありがとうございました。  次に、半田参考人にお願いいたします。
  7. 半田正夫

    半田参考人 青山学院大学半田でございます。本日は、お招きいただきまして大変光栄に存じます。  プログラム保護についての著作権法改正案、これは私、かねて非常に心待ちにしていた一人でございまして、この改正案が国会に提出されたことにつきまして、非常に慶賀にたえない、こういう次第でございます。  プログラムをめぐりますトラブルというものは最近とみに増発しております。判例にあらわれましたケース、皆様御承知かと思いますが、既にビデオゲームプログラムにつきましては、昭和五十七年、五十八年、五十九年と三年連続いたしまして東京地裁横浜地裁大阪地裁判決がそれぞれ出ております。それから本年に至りましても、二月には例の新潟鉄工事件判決がおりておりますし、三月におきましても同様な事件判決がおりております。判例にあらわれますケースと申しますのは極めて氷山の一角でございますので、恐らくこの何十倍、何百倍というようなトラブルが実際に起こっているのではなかろうか、このように推察されます。  こういった意味におきましては、プログラム保護のための著作権法改正法の成立というものは一刻の猶予もゆるがすことのできない、まさに焦眉の急の出来事ではなかろうか、このように考えております。  私は、通産省産業構造審議会の方のメンバーとしてこの問題に加わっていたわけでありますけれども、そちらの方の角度から今度の著作権法改正案を見ましても、通産省側の希望をかなり大幅に取り込んだものでございまして、極めて妥当な改正案であろうかと思います。  二、三例を申し上げますが、今度の改正法におきましては、ソフトウエアを構成するいろいろなもののうちのプログラム保護に絞っておりますが、これは産業構造審議会の案と同じでございます。  それから、権利発生につきまして、産業構造審議会の方におきましては、登録権利発生の要件とするということを将来の課題としながらも、当面の間はこのプログラム作成によって発生すると解すべきだ、このようにしておりますが、今度の著作権法改正案におきましては、ほかの著作物と同様に創作と同時にそれが発生するということにしておりますので、この点も全く同じでございます。  それから、この権利保護期間で。ございますが、産業構造審議会の方におきましては短い方が望ましいという意見がございましたけれども、しかしながら、アメリカなど長期間保護するという国がもう既にございますので、それとの関連で我が国が極端に不利を受けてはまずいわけでございますので、やはり長期間保護するのが妥当であるという結論を出しております。そういった意味では、この点におきましても相違はないと考えます。  それからさらに、権利者の公的な証明のために登録やあるいは公示制度が必要であるということを述べておりますが、これも今度の改正案には生かされております。  さらには、バージョンアップのための何らかの立法的な手当てが必要であるということにつきましても、今度は生かされております。  こういった意味におきまして、産業構造審議会側といたしましても、完全に今度の改正案ではその趣旨が生かされているところでございまして、したがいまして、文部省それから通産省両方のサイドでもってこの法案意見の一致を見て提出されたということにつきまして、私は一国民といたしまして非常に喜ばしいこと、このように考えております。  それから、先ほど紋谷参考人からも御説明がありましたように、諸外国におきましてはこのプログラム著作権法保護する、そういう態勢に傾いております。我が国だけこれに異を唱えまして別な形で保護するということは、現在の国際的な保護という観点から見ると非常にまずいわけでございまして、そういった点からも今度の改正法は非常に当を得たもの、このように考えております。  一日も早くこれが諸先生方の努力によって立法化されることを切に希望いたします。(拍手
  8. 阿部文男

    阿部委員長 ありがとうございました。  次に、大山参考人にお願いいたします。
  9. 大山明雄

    大山参考人 大山でございます。  私は、新宿でコムエンジニアリング研究所という、ユーザー立場に立って特にオフィスコンピューター中心としてやっているわけですが、そのユーザー立場に立った代理業と申しますか仲立ち業と申しますか、あいまいな性格もあるわけでございますが、それを業としている者でございまして、広い意味ソフトウエアに携わっている者でございます。また、中小企業一員でもありますので、私はきょうはそういう私の商売上得た今までの経験からと、それから中小企業一員として、このプログラム保護という問題が著作権法に規定されたことがどういうふうに中小企業に及ぶかということを中心にお話ししたいと思います。  私は、今から大体五点にわたって意見を申し述べたいわけですが、まず総論的にいって、私もコンピューターに関係する一員としてプログラム保護するということについては大賛成なわけですが、私は同様の基本的な発想として、コンピューターシステムユーザーは買い取るんだという考え方を持っております。つまり、よく言われることですが、ソフトウエアが働かなければハードウエアはただの鉄くずということは我々業界でよく言われておりまして、コンピューター専門誌などにも、動かないコンピューターという事例が多々出ているわけでございます。そのような事例を見ましても、九十数%まではいろいろな意味ソフトウエアが不備なわけでございます。そういう不備で動かないコンピューターに対して五年間も対価を払い続けているいわゆるユーザーがたくさんいるわけでございまして、私はそういう人たちの中に立ってディーラーなりメーカーとの折衝もいろいろやっているわけでございます。  まず、第一の問題は、そういう点から考えますと、今回のプログラム保護という問題が著作権法の一部改正として出されたことが一体いかがなものかという疑問があるわけでございます。著作権になじむとか、いわゆる狭義の工業所有権になじむとか、いろいろ御専門の御判断はあるかと思いますが、私はそういう専門外、いわば法律の専門外として、著作権の専門外の者としてお話しできることは、これでは不十分である、賛成か反対かと言われれば反対に近い、留保したい、もっと慎重に検討すべきであるということでございます。  その一つの理由は、百一国会、前の国会におきまして、通産省文化庁、文部省のいわゆる縄張り争いという表現も各新聞に出ていたわけですが、百一国会であれを提案したかったものをとうとう三月の十何日にいわば両方とも断念したわけですね。それがなぜ今回この法案としてまとまったのか。その間のいきさつはいろいろ事務局からいただきました資料を見ても大体わかるわけでございますが、この著作権の問題というものは、プログラム保護という問題は、国内摩擦、適当かどうかわかりませんが文化庁通産省のいわゆる国内摩擦よりも、対米貿易摩擦、対米経済摩擦が先行してこのようなことに至ったのではないかと考えざるを得ないわけでございます。  日本著作権の問題が具体的にいろいろ問題になってきましたのは、いろいろ前から議論はあったわけですが、やはり先ほどお話のあった新潟鉄工の問題、それから東京地裁プログラム著作権という問題がはっきりと打ち出されてきたその陰には、一九八二年、昭和五十七年にアメリカの司法省がIBMに対する独禁法訴訟を取り下げたという、それらあたりと非常に微妙に絡んでいるというふうに判断しているわけでございます。  ここの結論は、日本の国内法の整備を不十分なままに、例えば先ほどお話しになられた客体保護する客体が一体いかなるものであるかということも、私に言わせれば極めてあいまいなままで法律案として提案されているということを憂うるものでございます。それに伴って、独占禁止法、不正競争防止法、それから一般民法、刑法、人材派遣業に関する法、そういうさまざまな法律との調整がどの程度進んでいるのか私は大いに疑問なわけであります。  二番目は、先ほども触れましたが、三次参考人もおっしゃいましたが、プログラムというものが例示されたわけですが、八つの例示と私は基本的に異なるものだと思っております。つまりそれは、著作権というものはもともと著作権者を保護するという意味で行われているということでございますので、プログラムの問題というのは、広い意味ソフトウエア保護という問題は権利ということだけに絞り込んでいいのかどうか、やはり権利者権利保護ということと同時に、ユーザーサイドの権利保護ということ、それから開発者の括弧づきの保守、メンテナンスをしていく意味の義務、責任、その限界等々をきちんと整備されるべきではなかろうかと思うわけでございます。  それから、三番目には、先ほども申し上げましたが、関係者の利害がどうなのか、特に中小企業の場合はいわゆるソフトハウスが開発を主に下請としてやっているわけですが、現在の大体の流れを見ますと、発注したメーカーがいわゆる括弧づきの著作権を自分に帰属させずに下請のソフトハウスに意識的に帰属させているという動きが出ているわけでございます。これはどういうことを目的としているかと申しますと、メーカーが著作権を持ちますと、著作権法との絡みでよくわからない面もあるのですが、いわゆる責任を負わなければいけない。そうすると、ソフトハウスが開発者、著作権者ですと、この方にお聞きしてくださいということで責任を回避できる可能性が十分に考えられるわけで、それを今度受けた場合、ソフトハウスがそれに対応できるだけのいろいろな意味の体力がない。そうなると、結局はユーザーにそのしわ寄せが来るのじゃないかという問題、ソフトハウス自体がまたコストアップになるだろうという問題がございます。  それから、ユーザーそのものは非常に不利になるだろうと私は理解しております。通産省の案のいわゆるプログラム権法に賛成ということじゃないわけですが、あのプログラム権法に出てきたユーザー保護という規定が著作権法にはない。これはなじまないということを言われているわけですが、そういう問題があるかと思います。  それから、最後にお話ししたいことは、ユーザーにとって著作権法、またソフトウエア関係者にとって著作権法というのはほとんどなじみのないものでございまして、私もいろいろな同業者に電話なり直接会ってお聞きしましたところ、ようわからぬ、ただ法律にああいうプログラムの定義があるけれども、専門家として見れば非常に不備である、そういう意見を聞いております。そういう点から、あえて言えば賛成しかねるという立場でお話を申し上げたわけです。
  10. 阿部文男

    阿部委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。     —————————————
  11. 阿部文男

    阿部委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。榎本和平君。
  12. 榎本和平

    ○榎本委員 自由民主党の榎本和平でございます。きょうは参考人先生方には非常にお忙しい中を御出席を賜りまして、ありがとうございます。時間も非常に限られておりまして十五分ということでございますので、早速お伺いをいたしたいと思う次第であります。  ただいま四人の先生方からそれぞれの御意見をお聞かせいただいたわけでありますが、四名の先生方大山先生だけがこの法案に対するちょっと違った御意見を述べられたような感じがいたすわけであります。改めてお一人お一人この法案に対する御意見を聞くまでもございませんので、早速大山先生にお伺いをいたしたいと思う次第であります。  先ほど紋谷先生、また半田先生からも、今回の著作権法改正に当たりまして、特に紋谷先生からは、今日のコンピューターソフトウエアに対する世界趨勢なり、また半田先生からは、国内におけるコンピュータープログラムの係争事件といいますか、これに対する判例等を出されまして、今の現況からいたしまして今回の法の改正案というものはそういう方向で進むことが妥当である、こういうふうな御意見があったわけでありますが、私どもも今日の特に国際的な日本立場というものを考えますと、国際協調というものは日本一つの国是のようなものになっていると私は思うわけであります。  こういう観点から考えまして、国際的な調和に私ども日本人は十分心がけていかなくてはならぬだろう、あらゆる分野においてそう思っておるわけでありますが、コンピューターソフトウエアの部門につきまして、今先生から第一番目の問題としてちょっと指摘のあった点につきまして、これからの国際協調といいますか、こういう点につきましてどのようにお考えになっておられるかをお聞きをしておきたいと思う次第であります。
  13. 大山明雄

    大山参考人 私も今御質問いただいた先生と同じように、国際協調ということは不可欠のものでございますとは考えておりますし、また世界の孤児になってはならないということも考えております。また、日本がいわゆる経済主義ということで諸外国からいろいろたたかれていることも承知しているつもりでございます。しかし、私が申し上げたいことは、国際協調も非常に重要ではあるが、まず国内での意思の統一ということも同時並行的に進められるべきではないか、そういう点からいいまして極めて一方的な面だけが進行していったおそれがあるではないかということで、さっき一、二申し上げたことをお話ししたわけでございます。
  14. 榎本和平

    ○榎本委員 次に、紋谷先生にお伺いを申し上げたいと思います。  今回の著作権法改正によりまして、コンピュータープログラム保護の基本的なルールというものは一応明確化されるものだろうと私は思うわけであります。しかし、先ほども先生方の御意見にございましたように、この機械文明というものが生み出したところのコンピューターというもの、そのプログラムというものは、これまでの著作物とは非常に異なりまして、私は非常にテンポが速いものであろうと思っておるわけであります。これは先ほどどなたかの先生から御披瀝されましたことと同じであります。これまでの著作権法によりますと、著作者がお亡くなりになってから五十年というふうな規定であるわけでありますが、こういう点で非常な大きな問題も今後に残されるのではなかろうかと考えるわけであります。こういうふうな一つ保護の期間について私は申し上げたわけでありますが、それのみならず、中長期的に見まして今後どういう点が検討をなされなければならないか、これらの点につきましてひとつお教えをいただきたいと思うわけであります。
  15. 紋谷暢男

    紋谷参考人 まず、ただいまの御質問を二つに分けてお答えいたします。  一つは、期間の問題をまず出されました。一応問題のように思われる点でございます。というのは、まず無体財産権において期間というものを考えるときには、先ほど申しましたように、二つの保護態様というものを十分に頭に置かなければならないということが言えるかと思うのです。すなわち、絶対的な独占権であって、盗んだだけじゃなくて別個独立に開発したものもおまえはだめなんだというような特許権という強い権利におきましては、現在特許法では、御存じのとおり出願公告から十五年ですか、出願から二十年を超えることができない、こう書いてございますが、果たしてその程度の期間であってもかなり強い効力があるわけです。それに対しまして著作権というのは、いわば盗んではだめだよ、別個に開発したら自由ですよというような権利なんです。とすると、盛んじゃだめだという限りは、正直言ってかなりな長い年度であろうと何であろうと、産業の抑制的な機能、機能というか弊害というか、そういうものを考えてみるときにはこれは同一に論じることはできないわけです。ですから、権利性質との関係で期間というものをまず見なければならないということが言えるかと思うのです。先ほど御質問にありましたように、著作権というのは原則として生存中及び死後五十年というふうに書いてある。そうすると、この点はあらゆる著作物がすべてこれに当たる。しかし、さほど必要のないようなものは自然に淘汰されていくわけでございまして、例えば新聞に入ってくるような広告のチラシや何か、あれも著作物たり得るものでございます。しかし、あれは生存中及び死後五十年あるからといって決して弊害が起きるわけではない、これは自然に淘汰されていく問題です。なお、片や優秀なものがあるということであるならば、それをある程度保護するということの方が、かえってそういう優秀なものをつくるという奨励政策としての意味が強まってくるということが言えるんじゃないかと思うのです。そして、それは著作権法でいくならば、盛んじゃだめだという意味で絶対的な独占権じゃないということ、これをまず念頭に置いてほしいと思うのです。もちろんこの点におきましても、国際的な動きとの関係で将来調整がなされ得る、また、国際的に短い期間ということになってくれば、それに応じて我が国も対応していくというのは一つの考え方だと思います。  次に、第二の問題として、今後どのような点の検討が考えられなければならないかということでございます。私は、元来著作権法改正自体もある意味では余り必要ではなかったんじゃないかという方の立場なんです。というのは、例えば、プログラムというものは、少なくとも新しく出てきた限りにおいてはあらゆる法制になじまないということが言えるかもしれない。しかし、プログラムというのはいわゆる自然語ではなくして人造語である、人がつくった言葉である。これがRAMなりROMなりに固定してあると仮定するならば、これはモールス信号がテープに入っているのと同じ問題なんです。その意味においては、著作権法の例示規定であるところの十条の一項一号の「言語の著作物」というものに当然入ってくるわけです。ただ、そういうものを明確化するという意味合いていろいろな規定が置かれているということにしかすぎないと私は考えているわけなんです。そのほか、同一性保持権との関係で適当にバージョンアップする必要がある。なるほどあるかもしれない。しかし、同一性保持権との関係、いわゆる著作者人格権との関係でここいらのところは問題が起きるというような向きもあるわけなんですけれども、しかし著作者人格権というのは、名誉、声望を害されるという人格権でございます。そうすると、技術的なものが対象になっているという限りにおいては、これは小説であるならばちょっと直しても名誉、声望というものは害される、しかし技術的なものであるならば、機械にマッチした形でバージョンアップや何かしても名誉、声望が害されるということはまずない。だとしたら、あえて明文の規定を置く必要もなかったように私は考えているわけなんです。それは現在の二十条第三号ですか、同一性保持権のところで読んでいけるというようなところで、私は余りその必要はなかったと思うのです。ただ、明確化という意味でいろいろと改正がなされた、それはそれなりに、法律というものは国民に対してあるものですから、明確化するという意義は十分にあるわけです。将来いわゆる電子工学の分野というものは迅速に発達していくものであるからいろいろの問題が出てくる可能性がある。現在でも先ほどちょっと挙げました使用権どうのという問題もございます。しかし、一応著作権法ではそこまで認めるというのは基本的にまずい。したがって、この改正法では、ある程度不正な使用を阻止するという意味侵害とみなす行為というところの規定が置いてございますが、今後の問題として、諸外国の動きにマッチした形であるいは情報工学の発達にマッチした形で、またもう一度見直さなければならない問題も起こり得るということは否定できないと思いますので、またそのときにはそれなりに、全無体財産権法の体系からいろいろな改正なり、あるいはあるときには別に法制をつくらなければならない、あるときには別に業法をつくらなければならないというような問題もあると思うのです。現に現在でも、例えば著作権法だけでいくのじゃなくて独禁法の十分な活用が必要であろうとか、いろいろな現在起こっている品質の問題、さらには流通促進というような角度から、業法的なものもあっていいんじゃないかと私は考えているわけです。  お答えになったかどうかわかりませんが、一応そのくらいで失礼いたします。
  16. 榎本和平

    ○榎本委員 時間もございませんので、もう一点だけお伺いを申し上げたいと思います。三次先生にお願いを申し上げたいと思うわけであります。  今回の著作権法改正案によりますと、創作年月日の登録制度というものが出るわけでありますが、しかし、その次の条項にプログラム著作物登録に関する特例というものが設けられまして、その具体的なシステムにつきましては別途法律で定めるという規定になっておるわけでありますが、この点につきまして、実務者としての先生の何が御指摘なり御希望なり御意見なりございましたら、お教えを願いたいと思うわけであります。
  17. 三次衛

    ○三次参考人 今回の著作権法の一部改正によりましてソフトウエアの法的な位置づけがはっきりいたしますと、それによりまして、結果といたしまして産業界でのソフトウエア開発が進むということを私は祈願しているものでございます。昨今コンピュータープログラムに対する需要がどんどんふえているのでございますが、類似したプログラムが世の中に存在することを知らずにそれぞれ創作しているというケースも間々ございまして、こういった重複開発の防止ということにつきましては、私ども企業内におきましても努力しておりますし、例えばIPA等におきましてもソフトの登録制度等をとらえているわけでございますが、なおこのような重複開発をできるだけ避けまして、限りあるソフトウエア開発能力というものを有効な形で創作活動に振り向けていく、そういうためには、どういったプログラムが世の中で創作されているのかということを何らかの形、データベースのような形でもって知りたいというように念願しておるものでございまして、そういう形でこの登録制度が機能していただけるように今後の法律の検討がされることを望んでいる次第でございます。  以上でございます。
  18. 榎本和平

    ○榎本委員 それではこれで終わります。どうもありがとうございました。
  19. 阿部文男

  20. 木島喜兵衞

    ○木島委員 きょうは、四先生いろいろと御教示ありがとうございました。  まず最初に、半田先生、通産省のこの問題の委員もやっていらっしゃるそうですが、これは先ほど賛成とおっしゃいましたが、私社会党の木島と申しますが、賛成者であります。賛成者でありますけれども、ただなおちょっと抵抗を感ずる。今までのいわば伝統的な著作権というものと多少違うところに抵抗を感ずる。半田さん、あなた抵抗をお感じになりませんでしたか。そして同時に、もし感じるとすれば、一体それはどこにあったのでしょうか。
  21. 半田正夫

    半田参考人 確かに、全く抵抗がないと言えばうそになります。と申しますのは、今までの著作物というのはすべていわば固定されていると申しましょうか、小説にせよ、論文にせよ、音楽にせよ、中身の変動というものが本来伴わない、そういう性質のものであると思います。ところが、こういうプログラムというのは、その内容が絶えず変更していく、動きのあるものであるという点では、従来のものとはかなり違う要素があるのではないかと思います。これは今後機械技術の進歩によりまして、こういった似たようなケースが多々出てくるのではないか、そういう気がいたします。したがいまして、いずれはこれは我が国だけにとどまらず、世界的な規模でもって根本的に考える必要があろうかと思います。しかし、現在の段階におきましては著作権法でいく、これしかないのではないか。このように考えております。
  22. 木島喜兵衞

    ○木島委員 半田さん、もう一つ。  著作権法では、第一条の「目的」で、最後に「もって文化の発展に寄与することを目的とする。」とありますが、産業の発展に寄与するものであるということとのかかわりで、むしろ抵抗があったのではございませんか。
  23. 半田正夫

    半田参考人 私は、その点は余り抵抗を感じませんでした。プログラム保護という点もやはり文化の発展に寄与する学術的なものであるということについては全然異存のないところだ、このように考えております。
  24. 木島喜兵衞

    ○木島委員 紋谷先生、先ほどあなたからいわゆる文化の問題、第一条のそれは目的ですね。「著作物並びに実演、レコード及び放送」等、それから隣接権、「これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利保護を図り、もって文化の発展に寄与する」という、その「文化」というここに例示されておるものは狭い意味文化なんですね。そこで、あなたは先ほど、これを広い意味文化と考えるべきだとおっしゃったわけです。しからば、文化というものを人類の歴史のすべての遺産というものに考えたら、文化の理解というのは非常に幅があるでしょう。だから、ここに言っておる著作物だとかレコードだとかいうものは極めて狭い意味文化ですね。あなた先ほど、そうじゃなくてもっと広いと言う。広いということでうんと広くしたら、人類の歴史のすべての遺産が文化ということになるわけです。先生のその文化の範囲ですね。
  25. 紋谷暢男

    紋谷参考人 お答えします。  著作権法の第一条では、御指摘のとおり文化的所産の保護、こう書いてございます。この文化的所産というのは一体どういうものかということで、プログラムはある意味では産業的所産ではないか、それと対立する概念で把握される向きが特殊日本だけにはございました。  というのは、著作権法で言う文化というのは実はかなり広い意味になる。御存じのとおり、著作権というのは著作物のつくる目的あるいはそこで言うところの内容や用途を一切問わないわけなんです。そういう意味からするならば、著作権法は中立的、没価値的なものだということが言えるかと思うのです。したがいまして、ある意味では技術的な目的を持っている例えば特許明細書というものがございます。これは当然に著作権の対象になる。それから、商業的目的を持っている広告やパンフレットや何か、これも当然に著作権の対象になる。そればかりでなくて、例えばレコード産業あるいは出版産業、放送産業あるいは建築産業というようなもの、すべてこの著作権を基礎にして成り立ち得る。ということは、著作権法の「文化」というものは極めて没価値的な広い意味だということであり、いわば生活形式の総体だという形で少なくとも国際的には把握されているわけなんです。そういったことからして、諸外国コンピュータープログラムに関してはまず著作権法でどうかということがいろいろと検討されたわけでございまして、文化目的というものを先ほどのような形で狭い意味で言っているのは、特殊日本的なというか、日本の中だけと言ってもいいくらい、その意味においてはかなり誤解があったのではないかと私は考えているわけでございます。
  26. 木島喜兵衞

    ○木島委員 狭い意味文化というのは日本的だ、国際的においてはそうではないのじゃないか。そこで私は範囲を聞いたのです。なぜかと申しますと、しからば人類の歴史のすべての遺産が文化だというように考えたら、先ほど分類されました工業所有権もまた人類の文化の中に入る、とすればそれは著作権でいいということになる、そこをお聞きしているのであります。
  27. 紋谷暢男

    紋谷参考人 工業所有権というようなものとどうなのかという御質問でございますが、この点は保護の中身、保護のやり方が違うということでお答えしたいと思うのです。産業プロパーのもの、いわゆる産業的財産権である特許権と称せられるところのものは、保護の内容は思想でございます。  それに対して著作権、広い範囲で産業的なものも全部含むというか、むしろ没価値的なものですから何でも入ってまいりますが、この保護のやり方はその表現形式を通じての問題でございます。したがいまして、保護のやり方が法的性格の上においては大きな違いになっているということだけでございます。
  28. 木島喜兵衞

    ○木島委員 ですから、先生二つの方程式をおっしゃるならば、広い意味文化全体であるならば、例えば狭い意味文化という章があり、あるいは工業所有権という章があり、文化ということにまとめるならば、そういうことをしながらでも一つの法律の中に包括した二つの章があってもいいじゃないか、そういうことの方が、もっと文化というものを保護し、文化の創造に対する、あるいは歴史をつくってきた人たちの成果を保護するためにも、もっと総合的でいいのじゃないのかとすら思うわけなんですが、もうちょっと……。
  29. 紋谷暢男

    紋谷参考人 ただいまの点は、文化という限りにおいては全部一つの法律でいけるのじゃないかというような御質問でございましたが、必ずしもそういうふうに考えられない面がございます。というのは、先ほど申しましたように、特許というようないわゆる発明というものは、思想そのものを保護することによってかなり広い範囲の保護を与える、そして一番初めに申しましたように絶対権として与える必要性があるわけなんでございます。これは歴史的な理由ということから申し上げなければならないかと思います。  それに対して、同じ文化と申しましても、産業上のものでないと言おうか、いわば特殊技術的なものでない、発明や何かでないようなものというのは、余り広く与えると、表現形式を外れて思想そのものだとすると、ある思想はいろいろな表現形式をとり得るわけです。そこまで果たしてやっていいのかという問題がある。そういうようなことで、それに応じた態様における法制を準備してきたわけでございます。  それで、もう一度、一番初めの御質問との関係で申しますと、著作権法の「文化」というのは、少なくとも産業と対立するところの文化ではない、それをのみ込んだところの広い没価値的な、いわゆる著作物というようなものが目的や用途や内容というものを問題にしないということからして、かなり広いものだという意味合いでお答えしたいと思います。
  30. 木島喜兵衞

    ○木島委員 紋谷さん、だから、文化というものが産業と対立するものではないということは、産業を包括するものである、産業を包括するものであるならば、そういう文化保護しようとするならば、一つの法律であって、しかし今先生おっしゃいますように、例えば絶対的な独占権を認めるものと盗まれてはならないというものとに分けた二つであっても、法体系としてはいいではないかということをお聞きしておるのです。
  31. 紋谷暢男

    紋谷参考人 私は、元来無体財産全部を研究している者として、例えば種苗法というのがございます。それから先ほど申しました不正競争や何かの問題もございます。さらにノーハウ保護の問題もございます。したがいまして、そのような形で無体財産権法というものを平素研究している者といたしましては、一つの法律で、しかもおのおの中身の異なったもの、しかも保護の範囲、保護性質、異なったものをやっていってもいいではないかという考え方、これも一つの考えでとり得ると思います。しかし、やはりそのおのおのの態様に応じた形で、おのおの別個の法制においてやっていく方が、誤解もないし、それでまたそれをつかさどるとこみの官庁もそれなりにいろいろの特色がございますので、おのおのの官庁にその管轄を与えるということの方がある意味では能率的であるというようなことも考えられますので、理論としては、無体財産権法という一つの法律をつくっておのおの別個、独立にやっていくということも考えられなくはないわけでございますが、一応現在のような体制の方がベターであろうというふうに考えております。
  32. 木島喜兵衞

    ○木島委員 ありがとうございました。  著作権という難しい法律の上に、コンピューターだとかプログラムだとかいうまた政治家にとっては一番弱いものがプラスされているものでございますから、全くわからなくて聞いておるのですから、それはお許しください。  ただ、最初に半田さんにもお聞きしたように、通産省とのいろいろなことがあった。そこには文化に寄与するのか産業に寄与するのかということのそういう見解の違いというものが基本的には根底にあったのだろうと思う。ただ、今紋谷さんは、産業と対立するものではないのだという意味プログラムというものを著作物とお考えだという一つのお答えがあったものでありますから、とすれば、経済財も著作権保護の中に入るならばすべて入っていくのじゃないか。なぜかと申しますと、科学技術の急速な進歩に対して法体系が全体としておくれているのじゃないかという一つの考え方を私は持っておるのです。例えば、知る権利、知る権利といって、情報公開のことがありますね。一方においてはプライバシー、すなわち知られたくないという権利がありますね。これは矛盾した権利です。一方には知る権利、一方には知られたくない権利というように、文化の進み方と同時に法的なことが、過去の法律体系というのは文化の進み方におくれをとっておるというのでありましょうか。だから、いつでも後追いの、問題が起きたときにそれで裁判、裁判。裁判なんて何年もかかってしまうわけですね。こういうのでいいのだろうか、私は基本的にそう考えるものであります。だから、今先生がおっしゃったようなことであるならば、一つの法律でもって文化を守る、文化を創造した者に対するその保護をする、その保護の仕方はいろいろあろう、いろいろあろうが、しかしそういうことがあっていいじゃないかと考えたからでありますが、これは十分お聞きいたしましたから結構でございます。  大山さん、どうでしょうか。これから情報技術が急激な進歩をするであろう、そのことが経済的に利用されることが拡大される可能性を随分に持っておるじゃないか。したがって、プログラムは経済財に重点が移行していくのではないか。そうなると、プログラム著作権から離れて工業所有権の方向に行く可能性はないか。これは今ではなくて今後の見通しになりますから何とも言えないことでございます。しかし、一般的にはそういう懸念も全くないわけではないのだろうと思うのでありますけれども、御見解があれば承りたいと思います。
  33. 大山明雄

    大山参考人 お答えいたします。  私も先生と同じような考え方を持っておりまして、今先生の御重言の中からちょっと思いついたわけでございますが、確かに経済財、つまりソフト権法ですね、通産省が出されたあれは、経済法、経済権といいますか経済財という形で強調されて、文化財という文化庁通産省の大きな衝突の焦点だったわけでございます。私も、先ほどの文化法案というか、そこまでいかなくても現行の法律で考えてみますと、確かにそういうものの立法は必要だと思うのです。私は、あえてその名前を言えはプログラム法ですね、権法じゃなくて権を除いたプログラム法、これは権利者保護、それからユーザー保護、いろいろ各側面での権利保護、これはいろいろぶつかると思うのでございますが、そこらあたりをある程度調整したものが必要かと思います。  それで、現行の法律であえてそれを類推しますと地方税法的なものになるだろうと思います。御存じのとおり、国税の場合は法人税法、相続税法、所得税法、さまざまな法がそれぞれ独立した法律として存在しているわけでございますが、地方税の場合は、地方税と言われる住民税、事業税その他いろいろないわゆる地方税が地方税法という大きな表題のもとにまとまって、それぞれ整合性を持って、もちろん国税との整合性も十二分に配慮されてできているわけなんです。  ですから、私はあえてここで留保したのは、今先生がおっしゃっている意味でのものがあった方がいいであろう。しかし、現在どこまでそれが展開しているかということは疑問でありますし、またもう一つは、例えば今国会でいろいろ論議されています、ことしの二月の商工委員会でのいわゆる促進法への改正、それから四月のいわゆる半導体、通常チップ法と言われていますが、それの論議は商工委員会でなされておりますし、それから知的所有権の統一ルールを通産大臣が国際的に提案しているわけでございますが、これはいわば通産省の管轄というふうに理解できるわけで、それから去年の十二月には、データベースをはっきり著作物と認めろ、それで今度の改正案プログラムとあのように例示——私は例示という表現はちょっと理解しかねるわけですが、例示、あれと同じようにデータベースというものを入れるというのは文化庁で行われているわけですね。そういうものをいわば一括、合同審議といいますか、よくわかりませんけれども、もし国会レベルであればそういう形でいくべきである。経済財であるということは私は賛成でございます。
  34. 木島喜兵衞

    ○木島委員 同じ質問を三次さんにお聞きしようと思ったのでありますけれども、時間切れになりましたのでお許しください。  終わります。
  35. 阿部文男

    阿部委員長 池田克也君。
  36. 池田克也

    ○池田(克)委員 公明党の池田克也でございます。本日は、お忙しいところありがとうございました。  最初に、紋谷先生が先ほどのお話の中で独禁法の問題に触れておられました。私、独禁法にも関心を持っておりますのですが、この著作権法改正に伴い、プログラムの社会における適正な位置づけあるいは運用というものが出てくるわけですが、それで足りない部分は独禁法で解決ができるのではないかというふうに承ったのですが、その部分をもう少し詳しく教えでいただきたいのであります。
  37. 紋谷暢男

    紋谷参考人 お答えいたします。  独禁法の問題というのは、諸外国すべて独禁法を持っているということは御存じかと思います。したがいまして、現在の独禁法というものをもう一度これとの関係で見ていく必要がありはせぬかという意味において独禁法の活用ということを申しました。例えば、日本にあったある事例でございますが、アメリカ企業が、うちのプログラムと同一または類似のものを使ってはいけないという契約をいたしました。これは著作権法でいいますと、同一であれ類似であれ別個に開発したのなら自由なんですね。ですから、そんなものはいわば独占禁止法違反になるという問題が当然に出てくるわけなんです。というのは、自己の権利外のものを主張するという意味において違反が出てくる。それから、例えばある企業にはかなり安くライセンスし、ある企業にはかなり高くでなければライセンスしないというようなことをやったら、不当な差別、いわゆる独禁法上の不公正な取引方法に当たってくるわけですね。それから、今のようなやり方でなくても、ある企業を不当に排除するというようなことになってくると、当然にまた不公正な取引方法の問題が出てくる。こういうものを厳格に適用することによりまして、かなりな程度強力な企業というものの横暴を防ぐことができるという意味合いが当然にあるわけで、これは御存じのとおり、特許の場合にも、特許権というのはなるほど強いですけれども技術導入の自由化をめぐって独禁法がどこまで適用し得るかというので認定基準を出したことがございました。それと同じように、私は、かなりな程度公正取引委員会や何かで著作権との関係というものをもう一度見直して、今申しましたような少しの例でございますが、当然に独禁法違反になるような場合というのはどんどんと取り上げていってもらいたい。すなわち独禁法を活用していってもらいたいという意味において先ほど申し上げたわけでございます。
  38. 池田克也

    ○池田(克)委員 ありがとうございました。  三次参考人にお伺いをしたいのですが、いろいろ業界のお立場を理解していらっしゃると思うのですが、先般私この委員会でも問題提起をしたのですが、一定規模のプログラムについて登録しあるいは公示する、こういうことによって産業界においてむだな投資というものが省けるのじゃないだろうか。これは先ほど来のお話のように、特許と違って、絶対的な排他権というものではなしに独自に開発することを認めているということでありますが、しかし、私プログラムについて素人なんですが、規模の大きなものは開発に相当な費用がかかるということから、やはりある程度汎用的にこれを活用するということはあるのだろうと思うのです。そうした場合に、プログラムそのものの売買ということが具体的にあるのか、あるいは幾つかの企業体が合同で使うということがあるのか、さまざまな問題でこれが明らかにされた上で、同一のものはやはり同一で十分活用がお互いになされてしかるべきではないか、素人考えでそんなふうに思いまして、一定規模のプログラムについての登録義務や公示というものを制度化してはどうか、こういう問題をお出ししたわけですが、これについてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  39. 三次衛

    ○三次参考人 現在コンピューター利用分野が非常に広がっておりますような状況でございます。したがいまして、コンピューターによって処理される情報の範囲につきましても、例えば工学系のエンジニアリングの問題でございますとか、あるいは金融取引といったいわゆる事務的な面、いろいろなところにわたっております。規模の大小もございます。全般的に申しますと、今先生御指摘のございましたような方向に進んでおりまして、例えば、特に工学系につきましては、一つの問題に対しましてのソリューションというのは比較的ユニークに決まるという傾向がございますので、それを解法するコンピュータープログラムを商品化して販売されているという例は幾つかございます。私どもでも、例えばアメリカのロッキード社がつくりました設計支援用のシステムのライセンスを受けまして国内のユーザーに提供しております。  それから、一方、事務的な分野につきましては、それぞれ各企業のポリシーと申しますか、競争関係がございますので、いろいろな事務規定等とも結びついておりまして、それを右から左へ持ってまいりましても企業間の体質になかなか合わないということで、この適用がなかなか難しい面もございますが、その分野におきましてもせめて部分でも使えないかということで、例えば都銀さんのような大きな機械におかれましても、実績のあるプログラムにつきましては利用しようというような機運が出てきておりまして、全般としては今御指摘の方に相当急速に動いているという状況でございます。  ただ、非常に大型のシステムの場合は、世の中にその数が限定されるということと、それから業界同士でそういったことはよく知っているということで、直接のお話し合いでそういった導入を図られているという場面もございます。一方におきまして、小型のコンピューターあるいはオフィスコンピューター、パーソナルコンピューター、こうなりますと、利用者の数が非常に大勢になりますので口コミだけではなかなか行き渡らないということがございますので、これらをカバーいたしますためには、広い範囲でプログラム製品の存在を世の中に知らしめるような登録あるいは流通機構の整備というものがぜひ必要であろうというふうに思っております。部分的には、先ほど申し上げましたけれども企業あるいは業界等でやっているのでございますが、全域をカバーするようになっておりませんので、今後、この法律案の中でも述べられておりますような登録制度等によりましてこれが進んでいくことを私ども望んでおりますし、業界としても協力させていただきたい、このように考えている次第でございます。
  40. 池田克也

    ○池田(克)委員 関連してもう一つ、三次参考人にお伺いしたいのですが、プログラムをおつくりになる技術者の資格という問題で、先般もここで私が申し上げたのですが、かなりいろいろ機密を知る立場にあるということから、職種として国家試験というのがふさわしいかどうかわかりませんが、それなりの資格というものを認定して登録し、そしてそのモラルの育成というものを図るべきではないか。技術者が法人の中でプログラムをつくって退社する、あるいは引き抜きがあるということから、そうした秘密やノーハウというものが流れる。先般の新潟鉄工の事件はちょっとそれとは違うのですが、企業間のそうしたものが出てきたように私は理解しておりまして、非常に影響力が大きいという観点、あるいは悪意を持ってそれを動かすならば社会的に極めて大きな影響を及ぼすであろうという観点から、プログラマーの資格という問題についてどんなふうに考えたらいいのかというのが一つ。  もう一つは、先ほどのお話に関連して、仲介業というのが業としてこれから出てくるのかどうか。著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律というのが別にありまして、きちんと認可を受けなければならぬという法律が一つあるのですが、これにはプログラムについてそれが入るという例示はないわけで、今後の課題だと思うのです。その二つのテーマについて御意見を例えればと思います。
  41. 三次衛

    ○三次参考人 第一点の問題につきましては、今回の著作権法の一部改正の法律によりまして基本的な権利の帰属ということにつきまして規定されておりますので、これが確定いたしますと、一つの尺度として有効に作用するというふうに考えております。  それから、技術者の資格につきましては、例えば情報処理技術者試験制度がございまして、特種、一種、二種といったような形で検定が行われているわけでございます。これは、私どもメーカーの中のエンジニアに対してもそういった試験を年々多数受けさせているという状況でございます。ただ、世の中の適用範囲が広うございまして、それから、日進月歩と言うとちょっと大げさですが、どんどん技術も変わっていく内容でございますので、技術者試験だけでは必ずしも直接の作業に対する能力の検証にはならないという点がございますので、それぞれ企業内で技術者の育成ということについて教育制度をつくられまして実施しているというのが現状ではないかと思います。  それから、その技術者の技術面以外に、今御指摘のありましたようなモラルと申しますか、守秘義務等の履行につきましては、私どもでは社員教育の中で取り入れておりまして、一般的な従業員としての規定以外に、特に客先での作業によりまして知り得ましたお客様の問題につきましてはそれを口外することのないように、そういったモラル面での教育をあわせてやっているのが現状でございます。それぞれの企業ごとの努力並びに作業いたしますときの客先との契約、そういったものに準拠して進めていけばよろしいのではなかろうか、そんなふうに考えております。  それから、仲介業務につきましては、最近特に急増しておりますパーソナルコンピューターあるいはそれに類似した規模の製品につきましては、小規模での開発で済む場合もあるのでございますが、その場合には販売チャネルがなかなか確立てきないということでございまして、一番わかりやすい例は、パーソナルコンピューターの場合はソフトウエアの仲介業というのが既に存在しているというように認識しております。この分野は次第に底辺からもう少し中規模のものまで広がるのではなかろうか、そのように考えております。
  42. 池田克也

    ○池田(克)委員 ありがとう。ございました。  時間がだんだんなくなってまいりましたけれども半田先生にお伺いしたいのですが、コンピューター犯罪について先ほどお話がちょっと出たのですが、この事故防止の問題で私が警察庁から得た資料などでは、建物について出入り口を一つにするとか窓をなくするとか、いろいろそんなことが行われているわけなんですが、具体的に考えてみますと、プログラムの犯罪とデータの犯罪と二つに分かれるんじゃないだろうか。今回の法改正プログラムについては権利がきちっと決められた。しかし、データの問題についてはまだはっきりしていない。データベース等についていろいろと言われておりますが、今後幾つかそうした犯罪についての防護策というものを法制化していかなければならないんじゃないか、私はそういう気持ちを持っております。この問題は、共通して大山参考人にも、ユーザーの側の保護ということをおっしゃっておりましたので、同じテーマで、時間がないものですから短く御感想をお伺いしたいと思います。
  43. 半田正夫

    半田参考人 私、刑法の専門家でございませんのでよくわからないのですけれども、確かにおっしゃるとおり最近のハイテクノロジーの時代におけるそういう特殊な犯罪と申しましょうか、あらわれてきているかと存じます。確かにこのプログラム保護のみならずデータベースの保護の問題、これは今文化庁の方においても検討されておりますけれども、いずれは何らかの形で法案という形で出てくるのではなかろうか、このように思いますけれども、やはりそういったような過程を通じて強力な対策を講じていくということが早急の課題になってきているのではなかろうかと存じます。
  44. 大山明雄

    大山参考人 御質問のあったユーザー保護という観点でお話ししたいのですが、通産省の一〇一国会での著作権法案にはユーザー保護という規定がございまして、この文教委員会の調査室でお調べいただいた資料集の四十六ページにも出ておりますけれどもプログラムという一般の人に非常にわかりにくいものにいわば内容表示する義務を負うということ。「ユーザー保護」として、まず第一は、「通商産業大臣はプログラムの取引に関し、表示内容等指針となるべき事項を公示する。」「プログラム作成者が保守義務を果たせなくなった場合に備え、登録機関がソースプログラムを受理する特別寄託制度を設ける。」ここらあたりは私はユーザー立場で非常に重要かと思うのでございますが、これが完全に抜けていて、文化庁のお考えでは、新聞報道等によりますと、それはよく記憶ないのですが、著作権法百五条だかで、あっせん制度でカバーできる。私は実務家として、これはほぼ不可能だと思います。実務的にそれは追いつかないと思います。そういう点では、通産省の案の極めていい点をあえて著作権法に入れるとすればあっせん案だと思うのです。もっと具体的に、文化庁が委託するのは専門委員を三人とか記憶しているのですが、これは三人ではとても回り切れないし、またそれぞれの専門家というのはたくさん必要になってくると思います。
  45. 池田克也

    ○池田(克)委員 ありがとうございました。終わります。
  46. 阿部文男

    阿部委員長 中野寛成君。
  47. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 民社党の中野寛成でございます。きょうは本当にありがとうございます。持ち時間が十分でございますので、端的にお伺いいたします。  今話題になっておりましたユーザー保護の問題、これは日本人的感覚だと、便利なものができたらみんなで使おうじゃないか、そして大いに産業界を発展させて日本の経済に貢献をしようという意識は、何か権利を守るという以上に伝統的に強いような感じがするのであります。そういう意味で、著作権あり方というのは、日本人のそういう伝統的な感覚が国際社会ではややもするとそれが内外の摩擦を呼びかねないということにつながるわけで、そういう意味では、日本人の著作権に対する感覚を大いに開発して努力しないといけないと思うのであります。しかし、だからといってそれを強調し過ぎて、ユーザー立場を大変困った状態に追い込むこともどうかと思うわけで、その辺のバランスが大変難しいと思うのであります。  そういう意味では、きょう大山参考人が特にユーザー立場からの御発言をなさいました。今もそのことがあったわけでありますが、もし大山参考人の方で、このユーザー立場からまだ言い残したことがあれば、御指摘をいただきたいと思います。  あわせて、半田先生から、通産省産業構造審議会立場からすると、やはりここにユーザー保護は規定すべきだという立場でおられたのではないかと思いますが、この辺についてはどうお考えなのか。  そして、その大山参考人半田参考人のお二人の御意見に対して、三次参考人紋谷参考人はどういうふうにお考えなのか、これをまとめてお伺いいたしたいと思います。  それから、再度質問する時間が残るかどうかわかりませんので、三次参考人に特にお聞きをしたいのでありますが、先般文化庁に質問いたしましたところ、労働者派遣事業法案というのが衆議院を通過して今参議院で審議をされているわけであります。これについては、大山参考人も先ほどちょっと触れられたのでありますけれども、派遣元のプログラム開発業者が労働者を派遣して、派遣先でプログラムソフトを開発した場合に著作権はどこに帰属するのか。これは契約で特段決めていない場合果たしてどうなるのだろうか。また、そういうことは業界としては十分意識して契約で定めるようにしていくということなのか、これからはこのコンピューター関係の派遣事業というのはむしろ大変活発化してくると思いますので、この辺のことにつきましての業界の御認識、今後の方向づけ、そういうことをあわせてお答えいただければありがたいと思います。大山参考人からお願いいたします。
  48. 大山明雄

    大山参考人 ユーザー保護ということでございますが、プログラム、いわゆる広い意味でのソフトウエアというものは、コンピューターソフトウエアを使うことにより最終の利益が帰属するユーザーにとっては極めて不明確なものなわけでございます。著作権法を私なりに読ませていただいたのですが、言語としてあって、それは文書によるもの、口頭によるもの、口述、演説、そんな表現になっておりましたが、そのように通常のある程度のレベルの方でしたらだれもが認識できる形かと思います。  プログラムというのは、仮にプログラム著作権者からユーザーが直接買ってそこで動かしてみても、これは実際に動いて予想されたものがアウトプットされなければ、ユーザーにとってプログラムとしての価値が何らないというように私は判断しております。現在は、例えばリースの問題がございますが、大概機械が搬入されプログラムが納められたときにリースが開始されております。現在私の手元でやっておりますのは、サブディーラーからコンピューターシステムを入れたけれどもプログラム開発し終わらない前にそのサブディーラーが倒産してしまった、しかし、リース会社からは現在請求が来て、もし今度手形をまた供託するようであれば裁判上の訴訟に踏み切る、そういう強硬な通達があったということできのう出張先まで電話があったわけなんですね。  そういう点で見て、ユーザー保護という立場からいきますと、先ほどの通産省案で言えば登録制度といいますか寄託制度という表現になっておりますが、それをある程度つくっていただくことは必要かと思いますが、実際問題としてそこをどこがバックアップしてくれるのか、ソースプログラムがございましても、それをほかの開発者が理解するということは私の経験では非常に難しいかと思いますので、そこらあたりが、今度登録の内容にまで至るかと思うのですが、この法律の文言を見ますと非常にあいまいでございまして、先ほどもちょっとほかの先生の質問であったのですが、人材派遣業の問題も、法律的には使用者ということだけあって従事する者という概念が非常にあいまいなわけで、それで、派遣業者それからソフトウエア技術者、発注者、三角にも四角にもなっていろいろなトラブルが起きることは十二分に考えられる、そういうことであります。
  49. 半田正夫

    半田参考人 ユーザー保護ということを一体どういう意味に使うかということによって多少違ってこようかと思います。先ほど先生から御質問がありましたように、ユーザー保護ということが一般の人ができるだけ広く利用できるようにということでございますならば、こういう知的創作物というものは我が国では本来余り保護していない、そういったような風潮、つまり他人の考えたいわゆる無形のものは利用してもお金を払うという気持ちは全然持たない、そういう悪い風潮がございまして、その点で過去におきましていろいろなトラブルが国際的にもあったわけでございます。今後、やはりそういうことはまずいわけでございまして、他人のつくった知的の創作物というものを尊重しそれを保護する、利用する場合には一定のルールを守って、つまり権利者の許諾を受けて利用する、こういう体制を確立することがやはり必要だろうと思います。  ただ、権利者利益を損なわない限りで利用させたらどうかという点になりますと、これはまことにごもっともでございまして、現在著作権法におきましても三十条以下で、権利者利益を損なわない限りでの一定の限度内でありますが、自由な利用というものを認めております。したがいまして、プログラム著作権法保護いたしますと、そういったいわゆる一般の人のニーズにもかなうような措置が講ぜられるのではなかろうかと思います。  それから、産業構造審議会の方でもってユーザー保護ということで議論されましたのは、そういう観点ではございませんでして、つまりプログラムの品質基準というものを決めないとユーザーが非常に迷惑をする。いろいろな欠陥があって、そういった欠陥のあるプログラムを押しつけられるということでえらく迷惑をする。したがって、何らかの品質基準確立のためのルールづくりというものが必要ではないか、そういうことが議論されたことがございます。しかし、こういう角度でのユーザー保護でございますと、これは著作権の範囲外の問題でございますので、これは別途通産省サイドなどでルールづくりなどがされることが望ましいのではなかろうか、このように思います。
  50. 三次衛

    ○三次参考人 最初に、ユーザー保護という側面につきまして私の考えを若干申し上げさせていただきますと、いろいろな面がございますが、コンピューターそのものを実務に役に立つようにこれを使いこなすということは必須の事項でございます。そのために個別的にプログラムシステムをつくるのか、あるいは既に実証されているソフトウエアがあればそれを利用するのかということになりまして、現状におきましてはできるだけ後者のような方法をとったらどうだろうかというのが一つの解決策となってきております。  ただ、コンピューターシステムはいろいろな用途がございます。それぞれの企業の経営と申しますか、日常の経営並びに生産活動、受注その他もろもろの実態とリンクした形で動きますので、既存プログラムと自社のやり方が違うといったようなことがございまして、なかなか右から左に進んでいないのが実態でございまして、これはむしろ流通の促進ということにかなり推進力が要るのではなかろうか、そんなように考えている次第でございます。したがいまして、ユーザー保護につきましていろいろな側面はございますが、私ども立場といたしましては、このソフトの流通促進という面にぜひ今後力を入れたいものだ、そのように考えている次第でございます。  それから、第二の点で、派遣業法案等の成立に伴って出てまいります著作権の所属の問題でございますが、一般に、ソフトの開発の際に外部の勢力を利用するというタイプには二つあるのではないかと思います。一つは、派遣していただく人たちによって仕事を進めるというタイプと、それからもう一つは、製作すべきソフトウエアのスペックを決めまして、それを例えば競争入札等によりまして一括的に契約してやってもらうということがございまして、いずれの場合にいたしましてもそのプロジェクト別に契約を結ぶわけでございますので、プログラム委託側とそれから派遣側あるいは受託側、この間には開発に伴っての契約が結ばれますので、その中で守秘義務あるいはその権利の帰属等が規定されるのが通常かと思います。  以上でございます。
  51. 紋谷暢男

    紋谷参考人 いわばユーザー保護の問題という点に関しましては二つの側面がございまして、先ほど大山参考人の言われたところですと、これは流通取引の促進、安全化というような面で、このようなものに関しては、例えば品質保証とか品質表示とか要趣公開あるいは標準化というような問題がいろいろ考えられるわけで、こういったものはいわば著作権法となじみがたい。先ほど半田参考人が言われましたように、これは業法としての問題であって、ちょうど例えば建築の著作物というのがある、これは権利著作権発生する、しかし、それは建設省というところで業法でほとんど賄われているというような実情、こういうものも勘案する必要があるのじゃないかと思います。  第二番目の、公共の利用によると言おうか、そういったためのものとしては、著作権法上では著作権制限という形がございます。そして、それとの関係では三十条以下に、先ほど半田参考人が触れられましたようにいろいろと書かれている。それでなおかつ、例えば通産案ですと裁定という制度がある。これは先ほど申しましたように、裁定制度を入れるということは、ユーザーが従来よりも五倍程度ロイヤリティーを払わなければならないという経験的な事実というのがあるわけです。というのは、時間が余りないので具体的な例は申し上げませんが、これはちょうど片一方にそのような制度があると、強者というか、供給する側は必ずそのリスクに対してそれなりのものを課するというのが取引の現状でございます。そうすると、それなりにロイヤリティーは上がってくる。そういうようなものも今回の著作権法ではございませんので、その意味においてはユーザー保護というものは全うできるのじゃなかろうかと思います。  それから、ついでながら派遣社員の創作の問題ですが、この点は特許にもございます。出向社員が出向先で発明した場合にどうかというような問題は特許にもございます。著作権にもございます。この点に関しましては、だれの従業員か、従業者という考え方で考えられるのか、すなわち指揮命令権はどういう関係にあるのかというのが一番中心であって、それの認定においては、賃金をどう払っていたというようなものやいろいろの附属資料を勘案して決めていくので、あるときには共有ということも法律的にはございますし、あるときには片一方の派遣先の場合というようなこともございます。これは具体的な事実との関係で決めていくよりほかないというふうに現在では解釈しております。  以上です。
  52. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 ありがとうございました。
  53. 阿部文男

  54. 山原健二郎

    ○山原委員 四名の先生方、本当に御苦労さまでございます。共産党の山原です。  日本コンピューター業界に、昭和五十七年六月二十三日を忘れるなという言葉があるわけでございます。例のIBMがFBIと一緒になりまして、おとり捜査までして日本コンピューター業界を追い詰めた事件ですね。著作権法について今まで共産党は反対したことはありません。それから、積極的に賛成もしてまいりましたし、またローマ条約に対する参加も積極的に進めるべきだという立場できたわけですけれども、今度の場合、私はどうも文化庁にふさわしくない著作権法が出てきたのではないかという感じがしまして、むしろ日米経済戦争の中に文化庁も巻き込まれていったというような経過を感ぜざるを得ないのです。そういう意味で、この法案について審議をしましたが、今回の法案については賛成することができないという立場を現在決定をいたしております。もちろん、まだ本日の午後質問が残っておりますから、その中で明らかにしたいと思います。  そこで、きょうは賛成をされる先生方、そして賛成できない立場の先生とがいらっしゃいます。また、中にはこの法案作成に当たっての審議の中で一定の参画をされました先生方もいらっしゃいますから、両者のお考えはよくわかるわけでございますが、同時に、幾つかの点について、時間の関係がございますので、最初に賛成できないという立場大山先生にお伺いしたいと思うのです。  このプログラム保護につきまして、著作権だけで考えました場合にどのような矛盾が出てくるかということが一つです。これは簡単にお答えいただければと思います。  二つ目は、保護期間の問題ですが、せっかく開発された技術が五十年間オープンされないでいくならば社会発展上もマイナスになりはしないかという、非常に単純な質問ですが、この点についてどうお考えでございましょうか。  三番目が、基本ソフトにつきまして、基本ソフトにつきましてはIBM、ATT、いわゆるアメリカの超巨大企業が圧倒的な権限を持っておりますから、著作権でこれが長期間にわたってその権限が独占をされるということになりますと、これは日本企業の発展にとっても重大な問題でありましょう。中小のソフトハウスの方では、あるいは十五年とか、あるいは基本ソフトは公開してもらいたいというような要望があるようでございますが、これはどのように解釈したらいいのか、この点について最初にお伺いをいたしたいと思います。  時間が余りましたら他の先生方にもお伺いしたいと思っております。
  55. 大山明雄

    大山参考人 まず、第一の御質問でございますが、著作権法でどういう矛盾があるかということは私は再三お話ししたつもりでございますけれども、今問題になっているプログラム保護というもの自体私は賛成でございますが、現在のような形でこれを展開していくことは反対でございまして、いわば括弧つきのプログラム法をつくってその中で検討すべきであるという立場でございます。  私、著作権は全く素人でございますが、やはり先ほどからいろいろ申し上げておりますようなことで、著作権法にはどだいなじまないものであるというような理解をしております。  それから、期間の問題でございますが、これは三番目の基本ソフトの公開の問題も含めて、中小企業にとっては、いわゆるプログラムは陳腐化するのが早い、せいぜいそれが生きるのは三年か五年といわれているわけですから、五十年も縛られる、しかし文化庁ではなく通産省の案は十五年だったわけです、それと、アメリカ著作権法改正によるプログラム保護期間の七十五年、それの間をとったような感じがいたすわけでございますが、これは基本的には長過ぎると思います。産業振興という立場からいきますと、やはり基本ソフトをできるだけ低コストで、これは開発利益を失うという問題がありますが、そこいらあたりでできるだけ短期間に区切って、中小ソフトハウスがこれを十二分に利用して自分のコストダウンに利用できるということは望ましいことだと思います。
  56. 山原健二郎

    ○山原委員 もう一つは、もうちょっと時間がございますので、中小の企業保護の問題でございますけれども、先ほども御質問がありましたが、これと、今労働者派遣法案が参議院にかかっておりますが、現在、いわゆるコンピューターに従事する労働者に対する労働時間が、例えば富士通にしましても日本電気にしましても物すごい状態になっているのですねの例えば、あるところでは残業十三時間、八時間労働と合わせて二十一時間。しかも、三六残業協定は月にして五十時間以内となっていますけれども、現実には月に百時間という数字が出てきておるわけでございます。そういう点から考えまして、労働者の保護あるいは中小ハウスの保護をどういうふうにしたらいいかという問題があると思いますが、この点について一点伺いたいと思います。  それから、今の問題につきまして、五十年期限の問題について、すべての先生にお答えいただく時間もありませんので、一応業界との関係を持っておられる三次先生の方からの御答弁をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  57. 大山明雄

    大山参考人 中小企業、中小ソフトハウスの保護という問題は、総論的にはいろいろなことが考えられるわけですけれども、各論的にまいりますと、私もいろいろなソフトハウスのトップの意見を聞いたわけでございますが、現時点では結局は力関係である、力関係をそういう著作権法制限できるかどうかということもございますので、非常に望ましいことではありますが、現時点では非常に不可能に近い。そこらあたりをどういうふうに理解したらいいのか、私もちょっとまだまとまっていない段階でございます。  以上です。
  58. 三次衛

    ○三次参考人 五十七年の事件は大変不幸な問題だと思っておりますが、私どもの受けとめ方といたしましては、やはりそれぞれが社会的に認知されました企業といたしまして、公開された情報、それから相手先の企業秘密、この辺を峻別して開発に当たるべきだ、そのような反省を込めて見ております。
  59. 山原健二郎

    ○山原委員 もう御答弁は時間がありませんけれども、私が心配しておりますのは、IBMとの関係、言うならば今圧倒的な力を持っているアメリカ企業、既に契約金も払って日本へ入ってきておりますが、その権限が長期にわたって保護されるということになりますと、日本業界にとっても大変重大な事態が将来出てくるのではないかということと、同時にまた、日本が米日関係のような格好で開発途上国に対する一定の支配権を持つということになってまいりますと、せっかくつくったこの著作権がむしろ逆の意味で国際情勢を悪化させる可能性が出てくるのではないかといろことでございますが、これは私の心配でございますから、午後の質問の中で明らかにしたいと思います。  私の質問をこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  60. 阿部文男

    阿部委員長 江田五月君。
  61. 江田五月

    ○江田委員 社会民主連合の江田五月でございます。四人の参考人の皆さん、本当にありがとうございます。  大山参考人から、ユーザー保護というとかく我々忘れがちになるポイントをお出しいただきまして、本当に啓発されたわけですが、それにもかかわらず多少聞いてみたいなと思うことがあります。  大山参考人は、幾つかの点でユーザー保護に落ち度があるので、この今回の著作権法改正反対に近いという御意見ですが、今回の著作権法改正というのは、今ソフトウエアについて権利性が判例などで出てはきているのですが明確でない。そこで、立法をきちんとして明確にしておいて若干の必要な手当てだけをしておく、その程度のものだろうと思うのですね。  このユーザー保護というのは、ソフトウエアに限らず何にでも今時に重要な課題になっておる。権利というものが同時に責任を伴う、義務を伴うのだという形で、例えば、不法行為の一類型としての製造物責任であるとか、あるいはまた契約法をさらに発展させて不完全履行とか積極的債権侵害とか、いろいろな法理でユーザー保護を図ろう、あるいはメーカー側の競争の態様をいろいろ規制することによって、独占禁止とか品質の表示とか、そういう形でのユーザー保護、あるいは最近の社会経済の発展に即応して例えば情報公開とかプライバシーの保護とか、いろいろあると思うのです。そういうものを全部今回の著作権法改正で入れてしまえというわけには恐らくいかないだろうし、あるいはまた、そういうものを全部含んだプログラム法とさっきお話しになりましたが、プログラム基本法というのですかコンピューターソフトウエア基本法というのですか、そういうものがいいのか、それとも今の製造物責任とか情報公開とがそれぞれの法理ことにどんどん発展させていくのがいいのか、これもこれからの課題だと思います。  いずれにしても、ユーザー保護がいま一歩であるということと今回の著作権法改正がけしからぬということとすぐ結びつくことでないような気がちょっとするものですから、もう少し先ほどの話を敷衍して説明いただきたいと思います。
  62. 大山明雄

    大山参考人 お答えいたします。  ユーザー保護著作権という御質問なんでございますが、先ほど申し上げましたように、ユーザー保護という立場に限って言えば著作権はもともとなじまないものであるというふうに私は考えております。なぜならば、文化庁のいろいろなものを拝見しますと、これはそもそも権利者保護目的としているからユーザー保護は考えない、そのように私には理解できるわけでございます。ですから、そういう点で、ユーザー保護という立場に限定していけば著作権法はどだい無理であると考えて賛成しかねるということでございます。
  63. 江田五月

    ○江田委員 この著作権法改正案は、確かにユーザー保護するための立法ではないのであって、しかし、コンピューターソフトウエア権利性がはっきりすることが、コンピューターソフトという一つの分野における流通を円滑にしたり、秩序あるものにしたり、妙な競争が起きるのを防いでいったりということには役に立って、その反射的効果としてユーザー保護ということも多少関係するかもしもぬけれども、このもの自体は確かにユーザー保護ではない。しかし、ユーザー保護の法律でない法律は全部反対だということになると、これは論理的にどうなるのかよくわからないのですが、紋谷先生に今の点を、ユーザー保護著作権という大山参考人の御意見に私は先ほど申し上げたような疑問がどうもあるのですけれども、どういうふうにお考えになりますか、お聞かせください。
  64. 紋谷暢男

    紋谷参考人 お答えします。  元来、ユーザー保護ということだけを取り出してみると、御質問のとおり、これはユーザー保護法というようなものをつくってやらざるを得ない。著作権の今回の改正は、プログラムというものが出てきた、これをどのように位置づけたらいいかということが中心でございます。したがいまして、先ほど私が申しましたとおり、その点においてユーザー保護で取引の安全、迅速というものを考えていくならば、これは業法の問題であって著作権法になじまないということが言える。  それでは、著作権法というのは本来ユーザー保護を考えないのかというと必ずしもそうではない。元来、一つには著作権でいくということ自体がユーザー保護になっているというか、絶対的な権利でないという点で別個の開発を自由にしている。そういうことと、さらには、弱者保護という言い方の方がベターかもしれませんが、今言った絶対的権利でないという点で弱者保護のものにもなっているし、さらに裁定制度というようなものを設けなかった、これはユーザーに対するロイヤリティーの支払いを高くしなくていいという意味合いにおいてできるということなんです。そして、そういうものに対する弊害は、先ほど申しましたように独禁法や何かの活用によってやっていくべきなんで、著作権法の今回の立法においてはそこまで入る必要性はないし、また入ってはいけない問題ではないかと考えております。
  65. 江田五月

    ○江田委員 それから、話はちょっと違うのですが、先ほどの大山参考人のお話の中に、著作権であるとか、あるいは恐らく特許権なども頭に入れてのお話かと思いますけれども、この権利の帰属を元請の方でなくて下請の方にどんどん移している、それはなぜかというと、権利者となると責任が生じてくるのでそれを回避するためにやるのだという御指摘がございましたね。大山参考人のその御指摘が一体正しいのかどうか、どうも伺って、なるほどという感じと、ああ本当にそうかな、むしろ例えば税法上の問題とか投下した資本や技術に見合うといいますか対応する権利関係の帰属ということにしようということであるのか、何か必ずしも責任逃れということではないのじゃないかという感じがちょっとしたもので、これは一番そのあたりにお詳しいといいますと三次参考人でしょうか。お答えいただけますか。
  66. 三次衛

    ○三次参考人 プログラム開発には、規模、内容さまざまでございますが、最近パーソナルコンピューターでございますとか、それからもう少し大型になりますがオフィスコンピューターでございますとかといったところにつきましては、さまざまな既製のソフトウエア製品を取りそろえて仕事を進めていくということが業界の実態となっております。その際のプログラム開発につきましては、私どもメーカーサイドからスペックを提示してつくっていただくという形がそもそもでございましたが、その場合は権利帰属が発注者側にございまして、発注者の責任で販売するということでございます。ソフトハウス側につきましては契約に対しまして一定金額をお支払いするということでございます。そういう形態でございますと、でき上がったものが成功すれば百あるいは千売れるかもしれない。メーカー側の企画が悪ければ一本も売れない。そういうことになりましても、すべてのリスクはメーカーがかぶるという形でございます。ただ、昨今そういうビジネスがだんだんふえておりますので、すべての権利をメーカー側には譲りたくない、例えばロイヤリティー収入等を期待したいということで、一部あるいはすべての権利をソフトハウス側で持って自己の商売にしたいというケースが出てきております。これはむしろ積極的な御主張でございまして、メーカー側の責任回避ということには当たらないというように私は理解しております。権利の持ち分等はケース・バイ・ケースでさまざまでございますが、今後そういう形はふえると思います。  いずれにいたしましても、メーカー側の一方的な押しつけで仕事をいたすわけではございませんので、ソフトハウス側の実力がついてまいりますと、自主的な営業品目として扱われるそういう分野が伸びるのじゃないか、そういうふうに理解しております。
  67. 江田五月

    ○江田委員 ありがとうございました。
  68. 阿部文男

    阿部委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言お礼を申し上げます。  本日は、御多用中のところ当委員会に御出席いただき、また、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  午後一時再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ————◇—————     午後一時十五分開議
  69. 阿部文男

    阿部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木島喜兵衞君。
  70. 木島喜兵衞

    ○木島委員 もう随分質問が進んでおりますから、ほとんど聞くことが……。  文化庁通産省の合意の中に、「コンピュータ・プログラムのよりよい権利保護の在り方については、国際的調和に留意しつつ、今後とも中長期的観点から、国内的及び国際的検討を行うことに両省庁が協力する」という合意があると聞いておりますけれども、このような合意はいかなる理由により、いかなる事情によってなされたのであるか。言うなれば、どこに対立点があったのでありましょうか。まずお伺いいたします。
  71. 加戸守行

    ○加戸政府委員 先生御承知のように、一昨年来通産省プログラム権法構想と文化庁著作権法一部改正案との間に基本的な考え方あるいは法形式、内容等の違いもあったわけでございますが、昨年四月二十七日におきます経済対策閣僚会議での決定を受けまして、両省庁間で調整を続けるという考え方のもとに両省庁間で話し合いを進めてまいったわけでございます。  その段階におきまして、基本的には国際的な情勢の動向を踏まえながら、内容といたしましてはコンピュータープログラム保護する方向で両省庁一致しておるわけでございますので、具体的な内容の詰めも行ってまいりまして、その中で、文化庁側といたしまして著作権制度の枠の中で取り入れられる考え方は取り入れる、しかしながら、著作権制度の枠をはみ出すものあるいは現在のベルヌ条約、万国条約と申します国際著作権条約の内容に抵触するものについては対応できない、そういった考え方での両省庁間の考え方を詰めてまいりました結果、一応著作権法改正案で対応する。しかしながら、今後の検討課題として、なお、著作権制度の枠の中で考えられ得る事柄については、国際的な調和にも留意しつつ今後両省庁間で十分検討してまいりたいという考え方で、ただいま先生が御指摘なさいましたような両省庁間の合意に達したわけでございまして、具体的には、中長期的観点から検討すべき課題といたしましては、五十年の保護期間あるいは使用権の問題というのが念頭にあるわけでございます。
  72. 木島喜兵衞

    ○木島委員 そうすると、中長期的な一定の展望を持つことによって、著作権法の枠内であるかあるいは枠外であるか、しかし、そのことは条約との関係がありますから、場合によってはその条約改定への日本からの提起を含めて検討されると理解してよろしゅうございますか。
  73. 加戸守行

    ○加戸政府委員 そこまでの、条約形式につきましての今後の対応についてまでが中に含まれておるとは当方は理解はいたしておりませんが、通産省サイドからの理解とすれば、あるいはそのことも含むものと理解しておられるかもしれません。しかしながら、その合意の内容にございますように、「国際的調和に留意し」という考え方は、現在世界の大勢が著作権条約の枠の中で進んでいるという現状認識に立ちますれば、著作権条約の枠の中でなおかつ必要な手直し等が将来あり得るかどうかということも含めまして検討するわけでございますので、著作権条約とは別個の条約をつくるという動きが将来において出てくる可能性というのは文化庁としてはまずないのではないかと理解しておりますけれども、これはもちろん世界各国の考え方、大勢によって左右されるわけでございますから、絶対あり得ないとは申し上げられませんけれども、現時点におきます文化庁の判断としては、まずその可能性としては極めて低いと理解しておるわけでございます。
  74. 木島喜兵衞

    ○木島委員 両省庁の合意ということの焦点というのは実はそこにあるのではございませんか。例えば、プログラム権法は国際的な流れから否定をされたと私は見る。けれども、なお中長期的に検討しなければならぬという中には、国際的な関係という条約の枠内であれば問題はない、問題があるとすれば条約の枠外に出るということもあり得るのではないかと私は思ったのでありますが、次長はそのようなことはないとおっしゃる。しかし、それは文化庁としてはないと思うが、通産省はあると思っているかもしれないでは、それは合意に達したとは言えない。一番問題点について合意に達しておらないということになりはしないだろうかと思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  75. 加戸守行

    ○加戸政府委員 両省庁間で合意に達しましたのは、コンピュータープログラムの公的保護を明確にする、保護制度を確立する、そういう視点に立ちまして、法形式の違いはございましたけれども、両省庁が意図したところは究極の目的は同じでございました。そのための選ぶべき手段として、著作権法改正によって対応することも両省庁間で合意に達したわけでございます。  ただ、現時点でのこのような対応につきましては、両省庁間完全に意見は一致しましたけれども、今後の検討すべき課題として何があるのかという点につきまして、若干のニュアンスの差はございますが、むしろ両省庁間で話し合いましたのは内容的な面でございまして、法形式の面を今後の積み残しの課題にしたとは当方は考えていないわけでございます。
  76. 木島喜兵衞

    ○木島委員 当方が考えておらないという点で理解をいたしておきます。  それから、先ほど参考人紋谷さんにお尋ねいたしましたけれども文化の範囲ですな。これはさっき紋谷さんの見解を聞きましたけれども著作権法の一条の「文化的所産」というのは狭い意味文化ですね。ところが、紋谷さんは広い意味、経済財も文化の中に含めるという意味のことをおっしゃっている。もしそうだとすれば、私が先ほど言ったように、それは文化全体という広い意味文化であるならば、人類の歴史のすべての遺産というものが文化だとなってしまうわけですから、そうなったら工業所有権もみんななってしまうのではないか、その辺がこの問題の一番中心なのじゃないのだろうか。すなわち、生産財なのか経済財なのか、著作権法において保護しなければならないのかという形の上においてそういう問題があるのだと思うのですけれども、その点……。
  77. 加戸守行

    ○加戸政府委員 ただいまの先生の御質問の趣旨は、文化ということに関連いたしまして、本来著作権法目的保護対象とすべき著作物に当たるかどうかという基本的な御質問であったように理解いたします。  ところで、著作権法におきます保護対象といたします著作物と申しますのは、人間の思想、感情を創作的に表現したものを保護するわけでございまして、保護する対象が結果的には経済財であれ何であれ、人間の知的活動の所産を保護するということに主眼があるわけでございまして、その結果といたしますれば、保護されたものが例えば情報産業の発達に資するあるいは映画産業の発達に資する、放送産業しかり、レコード産業しかり、出版産業しかり、各方面の産業の進展に寄与するものである側面を持っていることは否定できないわけでございまして、しかも、保護いたします著作物と申しますのは、今申し上げましたように人間の知的活動の所産でございまして、その用途、目的というものが何であれ保護する。結果的にそれがどんな効用を果たすものであろうと、とにかく人間が生み出した知的活動の所産というものを保護する結果が広い意味での日本文化の発展につながる、そんな考え方で第一条は規定されていると理解しておるわけでございまして、ある意味ではその文化の定義自体が、かなり広い幅のあるいは経済的な分野も当然包含しながら、いわゆる広い意味での日本文化の発達に寄与するということが一条の目的であろうと理解いたしております。
  78. 木島喜兵衞

    ○木島委員 だから、そうなれば、人間の知的活動の所産であるものがすべて著作権法ならば、工業所有権である特許権もすべてそうならないか、人間の知的活動の所産ではないのか。  そこで、午前中に言ったのは、例えば工業所有権特許権なら特許権というようなものは、これは絶対的な独占権として保護せねばならぬし、著作権の方は、それは盗用を防ぐという範囲であるならば、それは章を変えてもいいではないかと私が主張したのはそこでありますが、そういうことと絡んでくるのが今日——今日というよりも今日以降におけるところのこの問題の解決の基本のごとく私は考えるから、そのことを申し上げているのであります。いかがですか。
  79. 加戸守行

    ○加戸政府委員 繰り返しになりますが、著作権法保護いたしますものは、先ほど申し上げましたように、人間の思想、感情を創作的に表現したものでございまして、それはいわゆる表現形式と呼んでおりますが、外部的に覚知する表現形式を保護するわけでございまして、表現しようとしている基本的な思想、感情そのものを保護するわけではございません。  ところで、工業所有権サイドで見ますと、特許法にいたしましてもあるいは実用新案法にいたしましても、技術的な思想というものを保護するわけでございまして、その技術的思想があらわれた成果物を保護するわけではございません。そういった意味での保護の形式の違いがございます。  ところが、工業所有権の領域におきましても、例えば意匠法のように美的な形状というものを保護する形態がございまして、これはある意味では表現形式の問題でございまして、もちろんこの問題は例えば条約の上におきましても著作権と意匠権の調整規定はそういった関係におきまして設けられているわけでございますが、基本的に、これらの工業所有権というのは産業発達の目的のために考案されました技術的な思想であるとか、あるいは今特殊例外でございますけれども、意匠、デザイン、形状というものを保護する体系をとりながら、かつそれは午前中に紋谷参考人が申し上げましたように、絶対的な独占権を確保するという考え方をとる法形態あるいは法内容の基本的な違いがございます。  一方、著作権法の方では、相対的な独占権という形で創作者である著作者を保護するという考え方で、基本的には工業所有権著作権というのが成り立っております歴史的、伝統的あるいは理論的な差というものがありまして、国際的な今の保護体系におきましても、例えば知的所有権という言葉が使われておりますが、WIPO世界知的所有権機構の中にありまして、こういった知的所有権を二領域に大きく分けまして、一つベルヌ条約サイドの著作権あるいは著作隣接権といった創作者または創作者に準ずる者を保護する領域、これが著作権あるいは著作隣接権と呼ばれるものでございます。それからもう一つの領域が、パリ条約を中心といたします工業所有権という考え方で、特許権あるいは意匠権というサイドのもので、知的所有権と呼ばれておりますものの中には二通りのものがあり、しかもかつ成り立ちから、歴史、伝統的にあるいは理論的にもあるいは権利性格自体もそういったような違いがあるということでございます。
  80. 木島喜兵衞

    ○木島委員 特許庁の昭和五十七年十二月の「マイクロコンピューター応用技術に関する発明についての審査運用指針」というのがあります。これに「例えばマイコン内蔵電気炊飯器においてマイコンに記憶された温度制御のプログラムにより加熱量の制御を行いその性能を向上させた場合は物の発明となり得る」と。これは、だから難しいということなのでありますが、一体発明なのか、著作権保護すべきことなのか。ここにはプログラムが入るわけですね。だから、そういう意味ではソースプログラムというのとオブジェクトプログラムという関係等が絡み合ってくるときに、ここに機械を動かすだけのものか、あるいは創造的な文化著作権として保護すべきものかという違いが出てくるし、したがって、それだけに機械を動かすものだけだとするならば、それは生産財、産業財ということになってくる。ところが、今日このオブジェクトプログラムもこれを著作権法でもって保護するということになりますと、一体産業政策の上に支障を来さないだろうかという懸念が通産省にはあるんだろうと想像をいたします。その辺はどう理解したらよろしゅうございますか。
  81. 加戸守行

    ○加戸政府委員 先生おっしゃいますように、確かにプログラムの場合、コンピューターという機械に対して発する指令の組み合わせでございますので、機械を動かすというその機能面が非常に重要な性格のものであり、かつ経済的価値が高い経済財というような側面を有することはおっしゃるとおりだと思います。  問題は、私申し上げておりますのは、著作権法保護する著作物であって、その著作物目的、用途のいかんを問わず著作権法上の著作物として保護される、その中の同類項として入り得る事柄であるということを繰り返し申し上げたわけでございますが、先生がおっしゃいますような経済的な側面を持つということは、コンピュータープログラムのみならず著作物の従来から保護されているものの中にもあり得るわけでございまして、それは経済財であるがゆえに著作権法とは別枠で取り出して保護ということを考えたわけでもございませんし、今回コンピュータープログラムの場合につきましても、経済財の性格を有するがゆえに著作権制度が適当ではないというぐあいには私ども考えていない次第でございます。
  82. 木島喜兵衞

    ○木島委員 この間、科学万博でもって天皇陛下が見たけれども、ロボットがピアノを弾いておりましたな、あれはどうなるのですか。あれは音楽の著作権ですか、オブジェクトプログラム著作権ですか。
  83. 加戸守行

    ○加戸政府委員 先生の御質問ちょっと聞きそびれましたが、あれはロボットが音楽を演奏したケースでございますか。これはいわゆる今国際的にも議論になっておりますコンピュータープログラムによってあるいはコンピューターによってつくり出された作品、特に音楽の場合等ございますが、コンピューター創作物と一般的に呼んでおりますけれども……(木島委員「それじゃないよね、あれは」と呼ぶ)だから、作品の場合は著作物でございますが、作品でなくて例えばテーマ、曲がございまして、それを指令に従ってロボットが演奏するというような形態でありますれば、それは著作物がロボットによって演奏されているということでございます。
  84. 木島喜兵衞

    ○木島委員 そういうものだろうか、それともオブジェクトプログラム著作権と認めるのか。音楽を演奏したという、ちょうどレコードみたいなものあるいはテレビみたいなものとしての著作権なのか、オブジェクトプログラムによってという著作権なのか。
  85. 加戸守行

    ○加戸政府委員 そこは、いわゆるロボットを動かすのはコンピュータープログラムが指令を出しているわけでございますから、そのプログラム著作物である。しかし、そのプログラム著作物性が対外的にあらわれたわけでございませんし、あるいは利用されているわけでもないということで、現行の著作権法の立て方をとります限りオブジェクトプログラム著作権が機能しているとは理解いたしません。  そこで、いわゆる今回積み残し課題としております中長期的な検討課題の中に、プログラムのいわゆる使用権という問題がございます。これは、コンピュータープログラムによってコンピューターを作動させることについての権利を及ぼすべきであるかどうかということを中長期的観点からの検討課題にいたしておりますけれども、先生おっしゃいました問題は、関連するといたしますれば、ロボットに対して音楽を演奏することを指令するそのプログラムが作動した時点において、そのプログラム著作権が動かせるべきかべきでないかという意味での使用権の観点から議論され得る事柄だと理解いたします。
  86. 木島喜兵衞

    ○木島委員 私が午前中から言っておりますのも、文化というものの幅、範囲をどう考えるかということが一つの大きなポイントだと思うのです。例えば、今衆議院を通って参議院に回っている半導体集積回路の回路配置に関する法律、あれはチップ法案と言っているのです。あれはアメリカでは著作権法の中に含まれた一つの章になっているでしょう。これは日本ではなぜ著作権の中に入れないで商工委員会でもってなされておるのか。もしこれを著作権の別の軍とするならば、当然ここでもって一体のものとして審議しますね。この関係はどう考えればいいのですか。
  87. 加戸守行

    ○加戸政府委員 アメリカにおきまして半導体チップの保護が図られたわけでございますが、先生おっしゃるとおり、アメリカ著作権法の中に一軍起こしまして、半導体チップに関する著作権を規定いたしております。ところが、アメリカにおきます。そういった審議の状況あるいは提案理由等を拝見いたしますと、著作権法の枠の中といいますか、著作権法という中におさめてございますけれども、本来的な伝統的な意味著作権ではなくて、工業所有権的な著作権というような説明がなされておりまして、今までの伝統的な著作権からは全く切り離して、独立の保護体系を著作権法の中で著作権と称して保護しております。ただし、条約上、例えばアメリカが加入しております万国著作権条約上の著作物でもなければ、万国著作権条約上の著作権でもない。一種の著作権という名前をつけました半導体チップ権だというような理解の仕方をしておるわけでございます。  ところで、我が国通産省から提案いたしております半導体集積回路の回路配置に関する法律案の中におきます回路配置権というものも、ある意味ではアメリカの法制度をなぞったものでございますけれども著作権とは全く異なる形で、かつ工業所有権とも違う第三の権利というものを創設しようとするものでございまして、その限りにおきましては、アメリカと法形式の違いがございますが、内容的にはほぼ同様の効果を意図したものだと考えております。
  88. 木島喜兵衞

    ○木島委員 僕がずっと一貫して言っているのはそこなんです。だから、文化というものの幅の広さによっては、いわゆる伝統的な狭い意味文化というものを今まで著作権では考えておった。ところが、それが工業所有権的なものまでも含まれる、先ほども例えば紋谷さんがおっしゃったように。とすれば、もっと新しい法体系があってしかるべきではないか。そうして、そのチップ法案というものは、日本と同じものであるけれども、おっしゃるように著作権法に置いておるけれども著作権法ではない、著作権的ではない、工業所有権的である。そうして、条約にはとらわれないが、しかし著作権法の中におさめる。言うなれば、あなたがおっしゃったように第三権的なものですね。そういうものが今後どうなっていくのだろうか。将来を考えていくと、生産財的な要素が大変に多いわけでしょう。だから、そうなれば、いっそ広い文化全体の中において章でもって分けて著作権を通した方がいいんじゃないかというのが私の主張でもあったわけであります。そういう点で何か御見解ございますか。あなたが今、私のことをうんと言えない立場であることはわかります。だが、将来を考えたらそうならざるを得なくなってくるのじゃないかなと思いますが、どうですか。
  89. 加戸守行

    ○加戸政府委員 確かに、木島先生おっしゃいますような考え方もあり得ることでございまして、将来そういうようなことにならないとは言えません。ただ、今の著作権法の立て方自体が、章別に申し上げますと、著作権あり、著作権をベースとして発生いたします出版権が一つの章、それから著作権に隣接する権利として著作隣接権が一つの章でございまして、そのほかは、今の著作権、隣接権等すべてに共通いたします紛争処理権利侵害、罰則、これらがそれぞれ独立の章をとった体系をとっているわけでございます。  ところで、コンピュータープログラムの場合には、今の著作権そのものとして保護することが適当であり、かつ原理原則を踏襲しながらコンピューターの特性に見合った若干の特例等を規定することによって体系的に成り立っているわけでございますので、あえて独立の章を設けて規定することは、再度繰り返し保護期間につきましても権利制限につきましても登録につきましても、それぞれ同じ基本的な事柄がち全部原理原則を書き直さなければならないというような法技術的な仕組みもございますし、今の体系上は独立の章というのは考えられませんけれども、これからの日進月歩の時代の中にありましてまさに純粋に著作権でカバーし得ないものであるけれども著作権に隣接する権利、あるいは著作権の周辺的な権利、あるいは著作権に準じた権利というものの考え方を取り入れる必要性が出てくるような知的所産というものは想定し得ることでございまして、そこはそういうような法体系をとることはあり得ることだろうと考えます。
  90. 木島喜兵衞

    ○木島委員 大臣、今例えば臨教審に二十一世紀を展望した教育あり方というのが諮問されておりますね。臨教審に教育改革の諮問がされておりますね。二十一世紀はどんな時代だとお考えになりますか。
  91. 松永光

    ○松永国務大臣 二十一世紀はあと十四年半で来るわけでありますけれども、どういう世紀であるかということは、我々の予測能力では必ずしも的確に予測できない分野もありますけれども、概して言われることは、一つには高齢化社会がより一層進んだ社会であろう、科学技術が今よりもさらに進んでおる社会であろう、あるいは情報化社会と言われるものがより一層進んだ社会であろう、こういったことがほぼ確実だと言われておるようでございまして、その他の分野ではどういう社会になっておるか、私の知的能力ではまだまだ的確にお答えできない、こういうふうにお答えするしかないわけでございます。
  92. 木島喜兵衞

    ○木島委員 大臣の知的能力ではなどという御謙遜でございますけれども、しかし、私は、世界の未来学者もまただれもが予測し得ないことでありますから、大臣がそうおっしゃらなくてもいいことなんだろうと存じます。  例えば二〇〇一年から二〇九九年、百年間、この一世紀、これは過去百年の変化とは、明治の初めから見れば今日随分変化があります、しかしこれからの百年の変化というものはまさに幾何級数的な変化であるかもしれませんから、まさに予想することはできないと思います。だから、例えば脱産業社会だとか説経済社会だとか、情報化社会だとかポスト情報化社会だとか、いろいろ説はありますよね。脱産業社会だ、脱工業社会だというけれども、そういう未来学者たちは、それでは未来は何かといったら明確に示しておりませんね。示し得ないからです。科学技術が極めて急速に進歩し発展するから、予測が立たないからです。例えばトフラーの「第三の波」にしたって、彼がいろんなことを言っておりますけれども、明確に未来はこうなると言ってはおりません。  そこで、私が考えるのは、一体そういう社会の中で、科学技術が進んでいく、そういうことを予想する中でもって、人間は時にその社会に順応せねばならない。しかし同時に、一方においてはそういう社会をあるいはある想定される社会はつくらないために努力せねばならないかもしれない。  これはきっとキリスト教の思想から来ているのだろうと私は思うのでありますが、大臣、アメリカの南部のカトリックの方々が、ダーウィンの進化論を教えていることがけしからぬといって裁判を起こしております。これは、我々の祖先が猿だったということが承知できないことです、簡単に言えば。ということは何かというと、神、人間、動物を峻別し、人間が亡くなったときに神のもとへ行く。同時に、動物が人間のために存在する、自然は人間のために存在する、だから、科学技術は自然を支配し征服するために発展せねばならない。科学技術が無限に発展することによって人間の無限の幸福が得られるとしたところに、西欧からの科学技術の発達があったと思います。  けれども、それでは科学技術が無限に進歩したときに無限の幸福が得られるかというと、例えば自然破壊や資源の枯渇に見られるように、人類の生存にかかわることすら起こってきておる。そのことは、もっと極論するならば、科学技術の粋を集めた核兵器が人類を壊滅せしめるかもしれない。しかし、科学技術はひとり歩きをする、そういう科学技術が進歩する、進むという中で、ただそのことを認めてその中に生きていかねばならないのだろうか。そういう社会をつくらないためにどうやらねばならないか。すなわち、先ほど加戸さんがおっしゃるように、科学技術を、人間の知的活動の成果を、保護するだけでなしに、知的能力を制限しなければならない。知的能力から発するところのそのものをとめなければならない、そういうものがあるのじゃなかろうか。(「みんなやっているよ」と呼ぶ者あり)そう、やっている。そのとおりでいいんです。例えば自然破壊があるから一定の制限をする、ハイテクノロジーがもしも進んでいったらどこかできっとストップさせなければならぬことになるでしょう。そうすると、一体保護だけでいいんだろうか、禁止をさせねばならない要素があるんじゃなかろうか、そういうものが二十一世紀じゃないのか。  こういう観点をもし大臣がお持ちであるならば、しからば、そのようなことをだれがいかなる機関でなすべきなんだろうか、これは私もわかりません。けれども、政治家たる者、そのことを一つのテーマとして考えねばならないときが今来ているのではないだろうかと思うのですが、大臣いかがでございましょうか。
  93. 松永光

    ○松永国務大臣 先生の質問の趣旨を私が的確に把握できたかどうか自信がありませんけれども、要するに先生の御所論は、科学技術が無限に発達をしていくというとかえって人類を不幸にするような事態になりはせぬか、であるから科学技術の発展の中で、ある分野等についてはそれを制限すべきではないか、こういった御所論だと思います。  科学技術の進歩発展は、人間生活を快適ならしめ人間生活を豊かにするその手段であるというふうに私は理解いたします。そういうことでありまして、科学技術が発達をし発展をした、その結果として人間がより豊かになり、より幸せになるかどうかというのは、まさしくその時代における人間の英知がどの程度発揮されるかということにかかってくると思うのでありまして、まさに人間自身の問題だというふうに思います。  先ほど先生の御所論の中にありました工業社会から脱工業社会へといったようなことが今既に進んでおりますけれども、そのことは、今までは人間の基本的な生活に必要な物資等の生産が必ずしも十分ではなかった。そこで、科学技術の進歩発展をやり、工業生産を盛んにして、人間生活の基本的な物資を充足させるということが非常に大事なことであったわけでありますけれども、生産技術の進歩発展によって、物の生産そのものはあり余るほどの生産能力を人類がある分野におきましては持つようになってきた。そこから、工業の生産を通じて物を豊かにすることもさることながら、むしろ人間の選択は物自体よりもその物の中で特定の嗜好その他に応じて選択をするという時代になってきたことから、工業社会が脱工業社会になってきたという一つの道筋であったろう、こういうふうに思うわけであります。科学技術の進歩発展というのはもろもろの社会の変化をもたらすわけでありますが、その変化の中でその社会における人間が豊かな幸せな暮らしができるかどうか、まさしくそれは人間そのものの英知にかかっておるというふうに私は思います。  そういうことでありますので、今から特定の分野の科学技術の進歩を人為的にとめるあるいは制限するなどということを軽々しく言える立場には私はありません。出てくる結果を予測しながら、そのときそのときの人間が英知を持って促進したりあるいは場合によっては特定の分野等についてはみんなの意見がまとまるならば人間の幸せのために制限するという事態もあり得るかと思いますけれども、原則的にいえば、科学技術の進歩発展は、人間の幸せをもたらす、人間の生活をより充実し快適ならしめる、そのことに貢献する手段が科学技術であるというふうに私は考えておるわけでございます。
  94. 木島喜兵衞

    ○木島委員 私の言っていることもあなたの言っていらっしゃることも、余り変わったことを言ってはいないわけです。全くそうなんです。それでいいのですけれども、ただ、これはどうですかね、例えば、もう既にロボットがたくさん出ておりますね。ロボットが出たら失業者がたくさん出ますね。すると、いつごろになるかわかりません、何百年後になるかわかりませんが、きっと大変知的な労働をやる人間と機械に使用される人間と全然何もしない人間と出てくるのじゃないですかね。既にヨーロッパ病とかイギリス病とかと言われておりますけれども、これはいろいろな見方がありますが、一つには機械に使われる、人間疎外に対する抵抗ではないでしょうか。そういうものが現にあらわれておらないだろうか。人間疎外がされておる、機械に支配される、そういう中で人間とは一体何か、そういう抵抗がイギリス病の中にないでしょうか、ヨーロッパ病の中にないでしょうか。  そういうことを考えていくと、もう既にそういう時期が来つつある。科学信仰が崩壊しつつあるのじゃないですか。無限の科学の進歩は無限に人類を幸せにするといった科学信仰が今人類の中から崩れつつあるのじゃないのか。その極端なことが、先ほど申しましたところの核兵器だと思う。だから、そういう観点に立って、今最初におっしゃったように——今から何をとめると言うのではありません。先ほど申しましたように、ハイテクノロジーならハイテクノロジーの問題では、そこには学会なら学会がどうすべきだという一つ検討を始めていますね。確かにおっしゃるとおり、そのときそのときの時代において、起こったときにおいてそのことをやらなければならない。それはそのときの英知でありましょう、人類の英知でありましょう、おっしゃるとおり。だがしかし、もうそういう時代が一方においては見えつつあるではないか、だけれども、科学技術のその信仰だけはあって、その崩壊の意識が足らないじゃないか、そういうものをもっとどこかでだれかが何かしなければならないときが来つつあるのではないか、そういうことについての御所見を承ったのでありますが、もし何か御所見があるならば承りますし、ないならば私はそれで質問を終わります。
  95. 松永光

    ○松永国務大臣 ロボットと人間生活との関連につきまして先生御意見を述べられたわけでありますが、私は、ロボットというのは、人間のその知的活動の結果、人間の労働作業その他を快適ならしめる一つの生産手段であるというふうに思います。そうした生産手段が発展をしていけば人間の働く分野が狭くなるだろうという御意見のようでありましたが、私はそうは思わないです。ロボットが盛んになって多くなってくれば、見た目には人間の働く分野がロボットから奪われるという面も表面的にはありましょうけれども、そのロボットを生産するための仕事がこれまた人間の仕事の中にはたくさん出てくるわけであります。しかも、ロボットというのは、そもそもは労働条件その他人間にとっては非常に苦しい厳しい事柄等をロボットが代替するということで随分盛んになってきたわけでありますが、ロボットが盛んになってきたからといって人間の仕事の場が奪われるということは、その場から見ればそうでありますけれども、全体的に見れば、ロボットをつくるための生産活動というものがあるわけでありまして、その分野に人間は回っていくことができる。しかし、全体的にいえば、総計からいえば人間が働く時間数は減ってくるでしょう。減ってきたならば、それこそまさに労働時間の短縮あるいは余暇の活用、こういったことを通じて人間の幸せを増進することができるというふうに私は考えるわけでありまして、この分野ではそう人間の不幸せをもたらすものではないというふうに思うわけでありますが、いずれにせよ、科学技術の進歩発展の成果をいかに人間の幸せに直結させるかは人間そのものの英知が決めることであるというふうに私は思っております。
  96. 木島喜兵衞

    ○木島委員 今おっしゃったことは矛盾なんだ。ロボットができたから失業者が出るわけじゃない、だけれども時間短縮になるだろう、それは矛盾ですよ。ただ、私が言いたいことは、少し長期な面で、長期な視点でもって政治を、科学技術を、社会を見ていただきたいということをお願いいたしまして、終わります。
  97. 阿部文男

    阿部委員長 小林進君。
  98. 小林進

    小林(進)委員 私は、文教委員の皆さんの御理解をいただきまして飛び込んでまいりました。実はこの国会の中に音楽議員連盟という超党派の議員連盟がありまして、そこで私は、最近行われておる著作権の問題とローマ条約加入の問題の二点についてひとつ我が連盟を代表して質問せよ、こういう使命を受けてまいりましたので、その点をあらかじめ御了承をいただきたい。  そこで、私は質問をするに際しまして、第一に、通産省の、大臣ならばいいが、大臣がだめなら局長、それから参考人、こういうことを事前に要望いたしておりましたが、見ますると、これは何ですか、通産省は機械情報局の何とかという課長だ。国会は原則として課長を相手に論議を交わすことにはなっておりません。こんなのは説明員といって正式な答弁の資格がない。こんなのを相手に我々国会議員が国民代表で質問するなんというのは国会軽視の一つのあらわれです。  同時に、私はきのう質問の用意をやっておりますと、通産省の何とかという役人が電話をしてきて、あなた、あした質問するそうだが、その質問を言え、こういう話だ。私は、一通産省の一官僚に私の質問の尋問を受けて答えなければならない理由はない、失敬なことをするなと言って電話を切ったが、幸いなるかな、夕べそれが済んでから通産大臣の村田君に会った。私は早速言っておいた。君の通産省というのは行儀の悪いお役所だ、いやしくも国会議員が国民代表で質問をするのに、一官僚が電話一本で何を質問するのか教えると言う、こんな失敬なやり方があるか。名前知っているかというから、名前は知らないけれども、君の方はわかっているだろうから調査して、そんなやつは厳重に処分せい、できれば首にせい、私はきのう村田通産大臣に言っておきましたから、これは委員長もひとつ含んでおいて、こういう委員会や立法府を軽視するような行政のあり方はきちっきちっと処理をしていただきたいと思います。  同時に、我々は参考人だって要望しているんだから、ここらにいる諸君も一生懸命我々の要望することをやらなくちゃならない。きょうは参考人は一人も出ていない、こんなことはよくありません。何しろ限られた時間だから、しゃべっていると時間が足りなくなるから、私は声を大きくして委員長にひとつ重大なる警告を発しておきますから処置をしていただきたいと思います。  そこで、私の質問の要旨でありまするけれども、質問するんだから、私はこの著作権とローマ条約の問題についてこの委員会における従来の質問をずっと精力的に読んでみましたよ。読んでみたら、文教委員会の速記録の中に私の質問をしたい要綱は全部出ているんだ。私が新しく質問する要旨は何にもない。にもかかわらず、その結果はどうかというと、ここに行われている質問が一つも実行されていない。何にも行われておりませんよ。これはまた驚くべきことだ。それで、何で一体これが実行されていないのかということを私が考えてみると、犯人はどこだ、第一に言われるのは文部省だ。文部省が悪い。これほど委員の方々がまじめに全部質問していることを一つも実行をしていない。立法府と行政府の関係はどうなっているんだ。よろしくない。その問題をこれからしゃべりますから、できれば委員長、二時間もくれればさらに委員長が理解を得られるように私はしゃべる。  第二番目は、所管の文部省のもとに何々の委員会審議会、あるいは民間もあるけれども、その審議会における審議の過程や論議の過程を見てみると、立法府における決議などというものは一つも参考にされていなければ活用もしていない。だから、文部省の立法府軽視と同時に、この委員会で行われている重要な附帯決議だとかその他の決議が何にも生きていない。言いっ放し、聞きっ放し。こんなことでは、立法府が汗水垂らして何をやってもだめじゃないかということを私はつくづく考える。これはほかの委員会もそうなんですけれども、一番いんぎん無礼で軽視しているのは文部省だ。私は昭和二十七、八年文教委員を三年も五年もやった経験があるが、その当時からちっとも変わってない。進歩の形勢なし。幸いながら新しく松永という優秀な文部大臣を我々は迎えたのでありますから、この文部大臣の力をもって文部省の悪い慣習をぶち破るようにお願いをしておいて、次の質問に移りたいと思います。  まず、著作権の問題ですけれども、最近我が日本で行われましたCISAC、著作者作曲者協会国際連合の総会の決議に基づいて、パリから会長と副会長の芥川也寸志さんの両名の名前で決議文が外務省、文部省、あるいは文教委員長のところまでもちゃんと来ているはずですが、この国際的な決議文の要請に対して一体どう処置をされたか、まずそれから簡単に聞いていきたいと思います。
  99. 加戸守行

    ○加戸政府委員 昨年十一月にCISACと申します著作者作曲者協会国際連合の総会が日本で東京大会という形で持たれまして、そこで著作権法改正あるいは著作権制度についての要望を決議いたしまして、私ども受けとめております。国際機関でございますが、民間団体からの要望書でございますので、もちろんそれは文部省内で供覧いたしまして、それに基づいて、現時点では二つの問題がございますが、特にホームテーピングの問題につきましては、当方といたしまして現在検討を進めている段階でございますので、重要な参考資料として取り扱わせていただいております。
  100. 小林進

    小林(進)委員 このとおりです。検討中というのは役人固有の弁明です。  レオポルト・サンゴール会長、芥川也寸志副会長の名でパリから一九八四年十二月十一日の日付で来ている。これは阿部文教委員長、あなたのところにも来ていますよ。あなたは委員長としてどう処置されたか、ちょっと聞かしていただきたい。
  101. 阿部文男

    阿部委員長 まだ読んでおりませんのでわかりません。
  102. 小林進

    小林(進)委員 あなたは文教政策の最高の、立法府を代表する委員長ですから、行政府に対して間髪を入れずそれをサウンドする、それくらいの処置をしてもらわなければ——それは委員長、あなたが悪いのじゃないのです。あなたの周辺にいるこういう諸君が能力がないからです。こういうのをもっと使嗾して、間髪を入れず処置するようにしていただきたいと思います。  第二問に移ります。著作権法の三十条の問題からやっていきたいと思うのですけれども我が国著作権法は一九七一年に抜本的改正をされたが、その三十条の規定は、潜在的には著作権者及び隣接権者の権利を認めた上で、当時の私的利用の実態から見て家庭内など閉鎖的な範囲内での零細な利用者だけを認めた、これが三十条の立法の趣旨であると私は考えている。これは間違いがあるかどうか。こういう著作権者並びに隣接権者の権利をきちっと認めたが、例外的に家庭内とか私的なホームテーピング程度のものは認めてよろしいというのが立法の趣旨であるということがきちっと理論づけていられれば、今日、予測もできなかったような個人的複製の問題がこんなに増加をして、著作権者の利益が侵されているこういう現状からは当然三十条は改正されなければならないという結論が出てこなければならぬと思うのでありますが、それが行われていないということはこの基本的な問題に対する認識ができていないのじゃないかと私は思うが、この点いかがですか。
  103. 加戸守行

    ○加戸政府委員 明治三十二年に制定されました著作権法におきましては、科学的、機械的方法によらない複製のみが許されていた、つまり手書きしか個人的利用が許されていなかったわけでございまして、それが時代の実態に適合しないということで、昭和四十五年に著作権法の全面改正の際に現在の三十条が設けられまして、機械的な方法、つまりテープ録音等も認められるようになったわけでございますが、その範囲は、先生おっしゃいますように個人的または家庭内、その他これらに準ずる限られた範囲内における使用ということでございまして、いわゆる零細かつ使われる範囲が狭いというようなものについてだけ許容しようという形で三十条の規定が設けられたわけでございます。ところが、今の録音・録画手段の急速な発達等がございまして、だれもが録音、録画用の機器を家庭内で持ち、かつ安易にコピーできるという事態が来て、その三十条自体の是非が問題になっていることは、先生御指摘のとおりでございます。
  104. 小林進

    小林(進)委員 委員長、私の質問にだけきちっと答えるようにひとつ指導していただきたいと思うのです。  私は、いわゆる著作権、その隣接権は基本的な侵すべからざる権利だと思う。あるいは、あなた方先ほど木島委員との答弁の中で、これが所有権であるかあるいは創作権であるか、いろいろ言葉の使い方はあるだろうけれども、これは侵すべからざるその人たちの持つ固有の権利だ。それを便法的、例外的に狭い範囲で許可した、この原則が私はきちっとできていなければならぬと思う。あなたのおっしゃるようなことだとすると、過去にはそういう個人の権利は認めなかったというのだから。そうでしょう。四十五年とおっしゃったな、あなたは。しかし私は、この速記録をずっと見ますると、大体経済的な議論が中心になっていって、どうも余り広がってみんな無責任に利用、使用されるものだから、経済的に非常に著作権者の財産権が侵されておる、収入が減っておる、こういうような議論が中心になって流れておる。あるいは一方には、製作者といいますか、機器、機材の製作者の方は、こんなものに賦課金かけたり税金取ったり使用料取ったりなんかすると品物が売れない、高くなって商売が成り立たないからそれは困るという、経済的な論争が大体この議論の中心になっておるようだが、その経済の損得の問題よりもっと本質的に、この著作権というものは実に重大な一つの侵すべからざる権利であるということが明確に確立されていけば、人の財産なり人の所有権なり人の特許権なり創作権なり、人の知能を傾けてつくり上げたものを無断で借用するなどということは断じて許さるべからざることであるという、はっきりした基本線がまずできてこなければならぬ。これができ上がった上にそういう例外の法規を認めるということであるならば、私は今日の著作権問題のこれほどの混乱は起きなかったと思うのです。この点は、ひとつ文部大臣、文部大臣は法律学者であり法律の専門家ですから、こういう著作権のいわゆる侵すべからざる権利に対する本質というものを明らかにここに答弁をしていただきたいのです。だれか勝手にこれを使用、利用してもいいものかどうかという、その問題点ですから。よろしゅうございますか。
  105. 松永光

    ○松永国務大臣 これは、お答えすればわかっておるというふうなおしかりを受けるかもしれませんが、著作権法第三十条を、前回の改正のときに、いわゆる商売として複製する、そういったことは絶対にいかぬということでこの条項が実は入ったわけでありますが、そのことの効果がこれからどう出てくるかな、できればいい方向に出てきて、そして結果的には商売としてやるような複製業者がなくなることが望ましい、私はそれを希望しておるわけでございます。
  106. 小林進

    小林(進)委員 この基本的な権利については、いま少し本質的に賢明な大臣も研究してもらいたいと思うのだが、人のつくった財産をいわゆるホームテーピングなんかすることは空気を吸うのと同じことだという非常に安易な考えがあるんだ。おい、空気を吸ってだれか一体金をよこせなんて言う者がいるか、空気はいつも無料で吸っているんだ、同じように、こんな著作品や音楽や映画なんというものは、個人の家庭や一人ぼっちでぼつぼつ利用するにおいては、空気を吸うのと同じで金なんか払うばかなことをやる性質のものじゃないという、こういうずうずうしい思い上がった考えがいわゆるメーカーを中心とした企業家の中に流れているんだ。人のとうとい財産を無料で使用するなんということは大変に悪いことだという良心の苛責が一つもないんだ。こういう速記録を見ていてもそういう論争が出てこないのは、私は残念でたまらない。松永文部大臣は法律家ですから私は言いますよ。この問題に関連いたしまして、権利者があるのです。その権利者が今被害者になっている。加害者があるんです。その加害者は二組あるんですよ。一組は利用者です。一組は利用する機器、機材を製造をしているメーカーなんです。これをよく考えてみますと、利用者は法律で言えば直接加害者だ。直接正犯というやつだ。メーカーの方は法律で言えば間接加害者なんだ。犯罪で言えば間接正犯なんだ。同じ犯罪を構成する正犯であるにおいては間違いない。しかし、今のレコードなんかに関する限りは間接正犯だ。これが一番紛争している根源ですよ。けれどもこの諸君は、いや私どもは何もテーピングしたわけじゃないし私はそれを利用したわけじゃない、ただ機械やテープをつくっているだけなんだから、我々の商売に影響するようなそういう規制、法律はごめんこうむりますという姿勢なんだ。これが問題の根源ですから、この点をひとつ大臣からきちっと理論づけをしていって問題の解決の方向へ進んでもらたい。余り極端ですけれども、メーカーは間接正犯だ。私はこれは明確に言っておきます。その観点に立って事に処していかなければだめです。  時間がありませんから次の観点に移りますが、この三十条に対しましては先ほども言うように附帯決議がかかっている。その附帯決議は、七一年の抜本的改正の際に附帯決議として、「今回改正される著作権制度についても、時宜を失することなく、著作権審議会における検討を経て、このような課題に対処しうる措置をさらに講ずるよう配慮すべきである。」これが立法府の附帯決議なんです。それに対して一体文部省は何をやったか。七一年の抜本的改正の附帯決議に対して、その審議会を設けたのは、驚くなかれ七年間もほっぽらかしておいて、ようやく七七年に文部省は、権利者利用者、学者などを集めて審議会をつくった。この七年も空白にした、これ自体でも、これは立法府に対する重大な違反行為だ。附帯決議無視の態度です。いやしくも立法府がここで決議を付したということは、単なる文書や言葉のやりとりじゃないのです。立法府の権威において行政府に、時宜を失することなくこれを直ちにやりなさいと。やるならば次の日からでもモーションを起こすのが行政府の崇高なる責任、務めです。なぜ七年間もこれをすっぽかしておいたか。このこと自体を私は言うんだ。文部省はけしからぬと言うのはこれが理由だ。しかも、七七年に至ってようやく審議会を設けたはいいけれども、今度はまた八一年まで四年間もじんぜん日を過ごした。だから、立法府の決議は七一年から八一年まで、これだけでも十年もすっぽかされてきている。すっぽかされたと言っては悪いあれだけれども、まあまあ言いわけだけつくってそのままにしてきた。そして八一年になってこの審議会が出した答申は一体何ですか。私が言わなくたってわかっているだろう。その答申の内容は何だ。その中には立法府の中でつくったこの附帯決議に対しては一言も触れていない。この附帯決議を全部無視しているじゃないですか。全部無視した答申が行われている。  時間がないから駆け足で言いますけれども、第一には、ホームテーピングは現在のところ関係者の間で合意ができていない。第二番目は、国民の理解もまだ十分でない。第三番目には、国際的なコンセンサスを見定める必要がある、これもまた見定めていない。だから結論としては、特定の対応策を採用することは困難であります。こういう答申を受けて、文部省はそれをそのままにしておくのだ。これなら立法府が何ぼ附帯決議をつけても、決議をしても何にもならない。けれども、さすがに委員会も若干良心がとがめたのかどうか、その後で、将来制度面で対応することが課題となる、その場合、関係者の基本的合意が重要であると考えるから、そのような合意の形成に向かって関係者の話し合いが進められることを期待し、また文化庁においてもこの話し合いが円滑に進められるよう配慮するとともに、この課題について検討を進める必要があると言っている。この審議会の答申の中に関係者という言葉が一体何遍出てくるんだ。その関係者の合意がなければだめだということを言っているのだ。この関係者とは何だ。だから、さっきから、著作権に対する基本の態度を決めていかなければだめだ。関係者というのは言わなくたっていいだろう。私の言ったいわゆる権利者と直接の加害者と間接の加害者、ところが、時間がないから急いで言うけれども、直接の加害者である利用者の方は、その後の調査統計に基づいて、私どももただで使っているのは悪い、ただでコピーしているのは悪い、テープをとっているのは悪いから応分の賦課金を払うのは至当であると思います、お払いいたします、これはみんなが言っている。むしろ消費者の方はかくのごとく素直に言っている。資料をみんな読み上げてもいいけれども時間がないからやめるが、それに対して、断じて使用料も払わなければ、空気のようにただでこれを使用する、作品をつくるのはメーカーなんです。だから、ここで言う関係者というのはメーカーなんです。この権利を侵されている著作権者あるいは隣接権者とメーカー、この二つの関係者が話し合いをして、話し合いをするように一生懸命文化庁はやりなさい、その話し合いができなければ永久にだめですよ、いつまで権利侵害されたままにしておくのですよ、これが答申の内容なんです。こんなことがまともな人間として一体考えられますか。これが今までの文部行政の実態ですよ。  まあ時間ですから、参考までに申し上げますけれども、いわゆる権利者権利侵害している利用者に対するアンケートで、直接これを使っている諸君はアンケートに答えて、何らかの救済措置が必要であるとなす、これが録音経験者だ。みずからテープをとった諸君の七三・二%がお金を取ってくださいと言っている。それから録画の機器ユーザーの六八・二%も、私どもただでこれは録音していますけれども、取ってくださるのが至当です、こう言って答えている。だから、取ってはいけない、断じてただでおけというのが今はもうメーカーだけなんです。しかし、このメーカーはなかなか力が強い。東芝だ、あるいは松下だ、あるいはソニーだ。まさか文部省はそんなもののしっぽ持ちをしているとは私は考えないけれども、こういうようなことでは問題の本質が何にも解決できないということを繰り返し私は申し上げておきたい。  そこで、この問題に関連いたしまして、参考人に承る一これは参考人はいないのだからしようがない。こういうような問題に対する文部省の答弁もちゃんとここにある。加戸君、君の答弁書も私は持ってきている。君は一体、何と言っている、これは文部省を代表する姿勢だろう。この速記録の中にちゃんとあるのだから、これはうそはない。「文化庁の姿勢といたしましては、メーカーサイドのある程度の」ーメーカーですよ、「メーカーサイドのある程度の御理解が得られるのであるならば、こういった制度の抜本的な制度的対応へ向けての方向性ということは、——もっとはっきり言うものだよ、わかったようなわからないようなことをぐだぐだ言わないで、「方向性ということは、審議会報告もございますし、文化庁としてもその方向へ向けての努力を今積み重ねていっているという段階でございます。」あなた、どうです。この答弁は一にメーカーの鼻息をうかがっているだけの答弁ではないか。そんなことで一体、行政の妥当性、公正が保たれますか。しかし、私はあなたを攻撃をするのではない。文化庁の中ではあなたは一番著作権に理解を持っている。だから、私はこの程度にしておく。その点は認めているから、この程度にしておくが、こういうメーカーの了解を得なければ、話し合いがつかねばというような姿勢を、ここできちっと方向転換してもらわなければだめですよ。これをやってもらうために、私は先ほどから本質論を言った。この所有権と創作権、持っているのはいわゆる著作権者なんだから、彼らは例外的にそれを使用することを許されている程度のものなんだから、しかもそれを利用する範囲は決められているのだから、こういう過去の関係が明確になれば、これは対等だ。メーカーも権利者も対等、五分と五分の形において何か商業取引でもやるような話し合いをして、あなたが軍配を入れるようなそんなばかげた答弁がこの中から出てくるわけはないのだ。それを私はひとつはっきり申し上げる。  この問題について懇談会が設けられた。この懇談会はしかし民間ですから、これは文部省の諮問機関でも何でもないのでありまするけれども、一体その懇談会の中で今どういう審議が行われておるのか。これは文部省に聞いてもだめだな。あなた方の諮問機関じゃないのだから、参考人がいなければだめだ。参考人がいれば私は聞きたかった。そしてメーカー側の本当の主張も、ここで速記録をつけて明確に言ってもらいたかった。しかし、怠慢で参考人を呼べなかったことはやむを得ません。  そこで、加戸君にお伺いするが、質問は別として、まず第一番目には、文部大臣に正しく事態の重要性を進言して、さっき私が繰り返しているように、著作物のいわゆるホームテーピングは著作権者の基本の権利侵害する例外的な便宜的な処置である、こういうことを三十条の中に明確に打ち込む、規制する。そして、この著作物のコピーなどが安易に行われることを阻止したい、文化国家育成の面で措置したい、こういうことをひとつ明確にこれから行動してもらいたい。これが基本問題ですから、明確にひとつ措置してもらいたい。これを明確にして、その上でこの問題の処置をする方向に進んでもらいたいと思うが、どうですか。これはひとつイエスかノーかでよろしい。余分なことを言う必要はない。
  107. 加戸守行

    ○加戸政府委員 先生のお言葉を肝に銘じて努力させていただきます。
  108. 小林進

    小林(進)委員 いやいやなかなかいい答弁だ。あなたの肝がどんな肝だか知らぬけれども、とにかくその肝に銘じてひとつやってもらいたい。  第二番目に言いますが、ことしの一月一日から施行された改正著作権法の問題、これは貸与権の問題でございますけれども、これも私ども音楽議員連盟が非常にかかわりを持ちまして、私どもは汗水垂らして一生懸命に努力しましたから、この問題に対して私どもが動いたこともあなたはよく知っておられるはずだ。しかし、それは採用されて法改正まで至ったことは大変結構だ。大変結構でございますが、その中で、この審議が行われた際、これまた国会で重要な附帯決議が一つ付されているのです。その附帯決議の中を見れば、「録音、録画機器の急激な発達普及の実態と今後の動向にかんがみ、これらの機器に対して、諸外国制度も参考にしこれは文部大臣、諸外国なんかに、西ドイツなんか最もよき参考になる制度なんでございますが、「諸外国制度も参考にし、著作物の私的使用等のための複製について賦課金制度の導入など、抜本的解決を図るための対応をすすめること。」こういう附帯決議がつけられているのですが、これに対して文部省はどういうモーションを起こされたか、どういう具体的な行動をお起こしになったか、承っておきたい。
  109. 加戸守行

    ○加戸政府委員 昨年の当委員会におきます附帯決議につきましては、著作権審議会にも御報告申し上げますとともに、先ほど先生おっしゃいました著作権資料協会に置かれておりますこの問題を討論いたします著作権に関する懇談会、既に二十一回の会合を重ねておりますが、その会合にもこういった決議のありましたことを御報告し、かつ、その問題についての関係者の理解を得るべく、現在いろいろと話し合いをさせていただいている段階でございます。
  110. 小林進

    小林(進)委員 残念ながら、私はその答弁をいただきかねるのですよ。それが文部省の悪いところだ。明確に言いますが、先ほど言った七一年の根本改正のときの附帯決議には、あなたのおっしゃるように、委員会に諮ってあるいは審議会に諮ってという言葉が入っているが、この附帯決議には委員会に語れとか審議会に語れなんという言葉一つもありません。文部省に対してストレートにこの決議がぶつけられている。文部省がやりなさい、早急に抜本的な改正をやりなさい、賦課金をかけること、これを中心議題に置いて行動を起こしなさいと言っているんだ。審議会に語れなんて一つもない。なぜそんな余分なことをするのです。それはあなたが立法府なんかというものを軽視をしたりあるいはまたないがしろにしようという一つの意図であるとしか我々は考えられないくらい実に余分なことをしている。いけないじゃありませんか。  だから、先ほどからも私は申し上げているように、立法府の決議というものは言いっ放し、聞きっ放しの問題じゃないのですよ。これは行政府に対して、直ちにモーションを起こしなさい、行動を起こしなさいという立法府の意思を代表して行政府に責任をおんぶさせたんだから、行政府はこれを受けて、なるならないは別にして、モーションを起こす、行動を起こす、実行に移るというのが立法府に対する崇高な責任ですよ。立法府というのは何ですか。これは国民ですよ。国民の総意です。我々は国民の総意に基づいてここで質問をし、ここであなたに行動を要望しているんだ。それを、先ほどから言うように、審議会を設けたり委員会を設けたりして、その委員会の答申を重要視している。その答申では、関係者の話がつくまでまだ急ぐなど言ったら、そっちの方を一番活用、利用しておいて、一番重要な立法府の意思の決定に対してはいささかも行動していない。これは委員長、あなたはこの委員会をリードせられる責任者としても、こういう基本的な姿勢を直していかなければだめですよ。今も言うように、この附帯決議には、くどいようだけれども委員会審議会やほかの第三者機関に諮ってから結論を出しなさいなんということは一つも言っていない。文部省はこれをやりなさいと明確に言っているんだ。これはストレートで要求しているのです。それを何にもやらないで、やらないと言ってはぐあいが悪いから、縁もゆかりも関係のない、要求もしていない、頼んでもいない、意思も決定していないようなところへ問題を持ち込んでいっている。そしてみんなごまかしている。そんなことはいけませんよ。まことにどうも怒りにたえない。たえませんが、時間もありませんし、怒ってはかりいたのでは時間が経過してしまうから次へ移ります。  この賦課金を含めて早急に混乱を直すべきだという立法府の決議を、あるいは文部大臣はこういうお話をお聞きになるのは初めてじゃないかと私は思いますけれども、これは、我々委員と言ってはまことに僭越ではありますけれども、音楽議員連盟を含め、我々は文部大臣に非常に期待いたします。我々の期待にも沿って、御研究いただきまして、部下官僚を動員していただきまして、早急に問題を解決するようにひとつ御努力をしていただきたいと思います。  事態は非常に急迫を告げています。私が一番心配いたしているのは、これは日本だけの問題じゃないのです。国際的な問題なんです。国際的な問題で、世界の先進国が今みんなこの問題に注目をいたしております。大臣の前でこんなことを申し上げてなんですけれども、貿易摩擦の問題で今日本世界から袋だたきになっている。経済大国だの、いやエコノミックアニマルだとか、古くはトランジスタ売り込み人だとかいろいろなことを言われて、日本が持つ香り高い文化ということが一つも国際的に反映していないが、今我が日本に加えられている汚名といいますか、これを払拭する意味においても、これが文化問題のメーンですから、今国際社会の中で取り上げられている問題のメーンは、この著作権の問題とローマ条約加入の問題なんです。これが今国際問題で大きく発展しているのですから、ここへ日本世界先進国に伍して、ローマ条約だってまだ二十四カ国しか入っておりませんけれども、これはだんだん火を吹いできますが、せめて文化の面だけでも、日本が他国に率先をしてこれに加盟したり、著作権、人のとうとい権利を守る、そういう法的措置をやっていただければ、それだけでも経済アニマルと受けている日本のイメージをチェンジするためにどれだけの効果があるか、私の推定の及ばぬほど大きな反響、よき反響を世界で呼び起こすのではないか、私はこう考えております。この私の見込みはやはり間違いないと思いますが、確かに歴史的問題でございますけれども、松永文部大臣のときに決意を持っていただいてこの問題を処理して、日本文化性、日本の芸術性、日本の持つ薫り高い姿を世界にアピールするようにひとつ御努力をしていただきたいと思います。  時間だからやめれなどという紙が、私はこの紙が一番いただきたくない紙でございますけれども、これが参りましたものですからやむを得ません、駆け足で申しますが、今の著作権の問題では随分質問があります。ちゃんとこれだけ原稿を書いてきたのですけれども、やむを得ません、やめます。あとローマ条約の加盟の問題だけに一言触れておきますが、これも古くて新しい問題です。けれども、この問題は日本国内においてはそれぞれの著作者あるいは作曲者あるいはレコーディング会社その他の問題はちゃんと権利は守られているのだが、問題は洋楽なのです。洋楽、いわゆる外国作成せられた作品に対しては実に自由に使いっ放しで著作権を一銭も払ってない、録画権も払ってないというのがローマ条約の問題でございまして、主としてこれを使用いたしておりますのはNHKあるいは民間の放送会社等でございますが、洋楽などは実に大変使われている。各放送会社、特にNHKは一番使っているようでございますが、何かほのかに聞きますと、NHK等も国際情勢の動きを眺めて、洋楽に対する使用料も、賦課金という形になりますかどうなりますか、これは支払うという方向に変わりつつあるかというふうに聞いておりますが、もしこれが事実ならば甚だ結構だと思います。このローマ条約加入の問題についても、文部省は一体どういう決意とどういうモーションを起こされたか、承っておきたいのであります。
  111. 加戸守行

    ○加戸政府委員 昨年四月二十七日付の本委員会での決議を受けまして、翌月、昨年の五月でございますが、文化庁といたしましては、著作権審議会に対しまして隣接権条約加入の検討依頼を行いまして、現在関係当事者の意見の聴取を行いまして問題点の整理を行っているところでございます。
  112. 小林進

    小林(進)委員 残念ながら、時間が参りましたから私はこれ以上質問を続けることはできませんが、ここで私の言葉も少し激しかったかもしれませんけれども著作権やローマ条約の加入に対して文部行政がいかに怠慢であるか、なかなか頑固な官僚はみずからの良さを反省する力がない、これは私は非常に残念なことでありますけれども、この際一番反省してもらいまして、決意を新たにして早急にこの問題を処理していただきたい。  私もこうやって皆さん方の貴重な時間を借用して、ここで速記録をつけて論じさせていただいた以上は、これは聞きっ放しにしておりません、言いっ放しにしておきません。これから私は皆さん方の行動を見せていただいて、また日を改めて、文教委員の皆さん方にもお願いして、再度でも再三でも再四でも質問し、文部当局を弾劾さしてもらいます。  同時に、きょう参りました通産省のそういう説明員などには、私は質問を山ほど持っている。特にメーカーの問題ですから、著作権のいわゆるテープの問題である、機材の問題である、機具の問題でありますから、通産省はやはりこの問題に対しては半分の責任があるのでありますから、私は通産行政の意思と決定と行動を聞きたかったのでありますけれども小林進は老いたりといえども政府の説明員などにこの重要問題を聞くなどという気持ちはありませんから、この通産省に対する問題は留保いたしまして、私の質問を終わります。  委員長、どうも大変ありがとうございました。
  113. 阿部文男

    阿部委員長 池田克也君。
  114. 池田克也

    ○池田(克)委員 公明党の池田克也でございます。先般もお伺いしましたコンピュータープログラムについての法改正に続きまして、先般ちょうど警察庁のこの問題に携わっておられる方がお見えになりませんでしたので、その問題から入りたいと思います。  先ほど小林先生の指摘されたいわゆるホームテーピングの問題について私重大な関心を持っておりますので、後ほど時間の許す限りこの問題にも触れたいと思っております。  最初に、警察庁にお伺いをしたいのですが、コンピューター犯罪の防止策あるいは安全対策という問題についてであります。  この著作権法に初めてと言えるようなプログラムに関する改正が入ってまいりました。なぜこういうことになったのか。午前中に参考人の諸先生からいろいろ御意見を承りました。いろいろな議論があったようであります。五感に訴える表現というものが今日までの著作権保護される主体であったわけでありますが、今回初めてそうした具体的に人間が感ずることができない高度など申しましょうか、複雑な機能を持った要因がこの法律に入ってきたわけであります。しかも、他の著作権保護されている幾つかの例示されているものはむしろ見せることを目的として創作をされている。しかしながら、プログラムというのは必ずしも見せることをねらっていない、逆に見せたくないプログラムもあるということでありまして、これがこの法律に含まれていくということはいろいろとまた議論の余地があった。あるいは私もこの委員会で指摘をいたしましたが、本質的にこの著作権法の含んでいる意味合いが変わってくる、こんなふうに先般お伺いをしたわけでありますが、なぜ今回こういうふうになったかということを私なりに考えてみますと、やはりプログラムというものがいろいろと事件を起こす要因となってきている。創作性を持っている、今回初めでこのような決定がなされまして法律で保護することになったわけであります。何者かによってこれが侵される、保護してあげなければならない、こうしたことからこの法律が我が委員会にかかってきたわけであります。  まず最初に、この犯罪の実態について、先般幾つか例示をされて御説明があったわけでありますが、再度犯罪の実態と防止策、これについて警察庁からお伺いをしたいと思います。
  115. 中門弘

    ○中門説明員 お答えいたします。  まず、コンピューター犯罪の実態でございますが、警察庁におきましては、コンピューター犯罪を大別いたしまして、いわゆるキャッシュディスペンサー、銀行等の現金自動支払い機をめぐります犯罪、これをCD犯罪というふうに呼んでおりますけれども、そういう形態のものと、それからそれ以外の一般的なコンピューター犯罪というものに分けておるわけでございます。  一般的なコンピューター犯罪をさらに大体六つぐらいのパターンに分けておるわけでございまして、不正データの入力、データ、プログラム等の不正入手、コンピューター破壊、それからコンピューター不正使用、プログラムの改ざん、消去、もう一つが磁気テープ等の損壊というふうな六つぐらいのパターンに分けておるわけでございます。  で、この種の統計をとり始めましたのが昭和四十六年でございますが、四十六年から昨年末まで一般的なコンピューター犯罪は、警察で認知しておりますのが四十八件ございます。この四十八件の中の大半のものは、最初に申し上げました不正データをコンピューターに入力しまして不正に金銭等を引き出すというふうな形態のものでございます。したがいまして、例えば金融機関のコンピューターの端末を操作して虚偽のデータを入力いたしまして、その結果その金融機関から金をだまし取る、あるいは横領するという形態のものがこの四十八件の中の大部分を占めておるわけでございます。  一方、プログラムに関する事案と申しますのはこの中で三件ございますが、その形態は、例えばプログラムが入力されておりますフロッピーシートをソフトウエア会社の従業員が社外に持ち出しまして、それを他社のコンピューターに入力をするというふうな事案でございますとか、あるいはプログラムが入力されている磁気テープを盗み出すというふうな事案でございます。  これらのコンピューター犯罪に対しまして防止策についてでございますけれどもコンピューターシステムに社会生活がどの程度依存しておるかというその依存の度合いが高くなればなるほどコンピューター犯罪が社会生活に与える影響は大きくなるわけでございますので、そういう観点から、警察といたしましては、コンピューター犯罪の未然防止については現在非常に大きな課題ということで取り組んでおるわけでございます。  そういう観点からいたしまして、去る昭和五十七年には部内にコンピュータシステム防護法制研究会というものを設置いたしまして、必要な調査研究等を行ってまいりましたし、また、昭和五十八年の警察白書においてもこの問題を分析しておるわけでございます。さらに本年一月には、部内だけでなく部外の学識経験者等を加えましたコンピューター・システム安全対策研究会というものを発足させまして、コンピューター犯罪からコンピューターシステムをいかに防護するか、また安全対策はどうあるべきかということについての研究を現在行っておるわけでございまして、この問題の重要性にかんがみましてこの問題には今後とも積極的に取り組んでまいる所存でございます。
  116. 池田克也

    ○池田(克)委員 国内の実例が四十八件というふうに伺ったわけでありますが、私ここに五十八年の警察白書の写しをいただいております。この中に「人の生命の安全にかかわる事件まで発生するに至っている。」という記述がございまして、コンピューター犯罪が事と場合によっては人の生命にかかわる。これは例えば心電図とか病院におけるさまざまなコンピューターの機能を駆使した治療、あるいはそれに伴う患者の移動、そうした問題も出てくるであろうと思いますが、この点について警察庁が、なぜといいますかどういう経過で「人の生命の安全にかかわる事件まで発生するに至っている。」と記述しておられるのか、この裏づけとなる事件がありましたら御報告をいただきたいと思います。
  117. 中門弘

    ○中門説明員 現在、日本国内におきましてはただいま御指摘のような事案が発生しておるということではございませんけれども外国の例、特にアメリカ等におきましては、例えば空港の管制塔のコンピューターの操作によって航空機同士が危うく接触をしかけたというふうな事例もございますし、また、コンピューター犯罪の形態につきましても外国ではいろいろ多様なものが起こっておるわけでございます。そういうことにかんがみまして、今後日本においてもコンピューターの普及が進めばそういうこともあらかじめ考えて対策を講じなければいかぬということでございます。
  118. 池田克也

    ○池田(克)委員 外国の実例が挙げられたわけでありますが、コンピューターそのものをねらって破壊工作があった。例えば、今お話が出ませんでしたけれども、随分前になりますが、間組のビルに爆弾を仕掛けるような事件があった。これはいろいろの報道をつなぎ合わせてみますと、ねらいはコンピュータールームにあった、あるいは今後はこういうことをやるぞという、脅迫してお金を取るというふうな脅迫的なことも起きてくる可能性があるのではないか。したがって、生命の問題になりますと、これは人質をとるに等しい、もっと凶悪なことになりかねないわけでありまして、この著作権法改正によって従来いろいろと起きていたコンピューターをめぐる犯罪が根絶されるとは私は思わないわけです。  警察の側からごらんになって、世間一般に言われている時代の変化に伴ってコンピューターをめぐるさまざまな犯罪や事件が起きてきているという一つの事柄から、こうした権利をきちっと保護していくということが今回の法案になった趣旨であろうと私は理解するのですが、どうもなまぬるいのではないか、これで我々が安心してコンピューターに自分の財産や生命をゆだねていくという事態にはなっていないのではないか。この法案の総合的な評価と言うと大変大げさな言い方でありますけれども、警察庁としてはこの問題についてどういうふうに受けとめているのか、お伺いしたいと思うのです。
  119. 中門弘

    ○中門説明員 先ほど御説明申し上げましたように、コンピューター犯罪の形態はさまざまでございますので、その形態によりましていろいろな対応策があろうかと思います。  そういう意味から申しまして、今回の著作権法改正に係る部分につきましては、プログラム複製という形態の犯罪に対しては従来よりは明確になったという点で評価できるのではないかという気がいたしております。それ以外の問題につきましては、それぞれの対応の仕方はまた別個だというふうに考えております。
  120. 池田克也

    ○池田(克)委員 先ほどコンピューターの犯罪が四十八件ある、そのうちで三件がプログラムについてであって、あと残りはデータであるというお話があったわけでありますが、私は、今回この法律について若干勉強するような状況の中で、プログラムそのものをねらったものとデータをねらったものと大きく二つに分けられるように理解しておりますけれども、この辺はいかがですか。
  121. 中門弘

    ○中門説明員 これは申すまでもなく、プログラムに非常に価値があるようなものか、データに非常に価値があるのかということによりまして、ねらうべき対象は変わってくるだろうと思います。犯罪者側からいたしますと、データに非常に価値がある場合はデータをねらうということになりますし、プログラムに非常に価値があるということであればそちらの方をねらうということになるのだろうと思います。先ほど申し上げましたデータに関するものの中にも、データを不正に持ち出すというふうなケースも含まれておるわけでございます。
  122. 池田克也

    ○池田(克)委員 そこで、データをどう保護するかという問題になってくるわけですが、先般私は文化庁に今回の改正を含めて今後残されている課題は一体何と何であるかという問題をお伺いいたしましたところ、七つぐらい挙げられたわけでありますけれども、その中にデータベースという問題が出てきておりました。今お話が出ましたプログラムとデータということ、このデータを保護する方向にあるんじゃないか、こう考えておりますけれども、どういう構想で進んでいるのかお伺いをしたいと思います。
  123. 加戸守行

    ○加戸政府委員 文化庁が抱えております著作権法上の課題はたくさんあるわけでございますが、今先生おっしゃいましたデータベースの問題につきましては、昨年文化庁著作権審議会に第七小委員会を設置いたしまして、ニューメディア及びデータベースに関する検討を行っていただいております。ニューメディア分科会並びにデータベース分科会を設けて検討中でございますが、データベースにつきましては昨年の十二月にデータベースに関する一応の中間報告をちょうだいしております。現在ニューメディア分科会でも作業をしていただいている段階でございますが、近いうち、本年秋までにこの第七小委員会としてニューメディア及びデータベースに関するとりあえずの御報告をちょうだいして適切な対応策を考えたいという段階でございます。     〔委員長退席、船田委員長代理着席〕
  124. 池田克也

    ○池田(克)委員 新聞の報道を見る限り、データベースについてかなり煮詰まって、今のお話よりもう少し詳しく、例えばこれとこれはデータベースにふさわしいとかというふうな項目が列挙されていたように私は記憶するのです。方向性はわかりましたが、もう少し詳しく、何と何がデータベースに含まれるのか、著作物どもそれに含まれていくだろうと思うのです。現行著作権法にかなり抵触する部分が出てくるのじゃないか。現行著作権法登録制度があって、どこに何があるかということを登録する制度になっておりますが、現実には余り件数は多くないように私ども承知しております。例えば、一人の人物がどういう著作物を持っているという著作の一覧などもそれに入ってくるような場合があるわけですが、その場合の題号であるとかその内容のサマライズされたものが入ってくるとかいうことになりますと、いわゆる題号とか見出しとか要約とかという問題で著作者人格権の同一性などという問題も出てくるのじゃないかということが気になるわけでありますが、データベースについて考えている点についてもう少しお聞かせいただければと思います。
  125. 加戸守行

    ○加戸政府委員 先ほど申し上げましたように、昨年十二月にデータベース分科会の中間報告をちょうだいしましたが、その中におきまして、データベースを保護するという考え方としまして一つの議論の整理をいたしております。それは、従来著作権法の上におきましては、これに類したものとしては編集著作物という概念がございまして、資料の選択、配列において創作性を有するものを著作物と規定しているわけでございますが、このデータベースを即編集著作物として概念するのがいいのかどうかという御議論もちょうだいいたしまして、どちらかと言えば、編集著作物というよりは第二条一項一号で言う思想、感情を創作的に表現したものとして著作物そのものと考えるべきではないかという御意見が強うございまして、単純に編集著作物という概念ではなくて、いわゆる著作物そのものという考え方でこのデータベースを押さえるべきであろうという考え方が述べられております。  と申しますのは、データベース自体が、先生がいろいろおっしゃいましたような論文とかデータとか書誌番号とか、そういうものを中心としてつくられるものが多いわけでございますけれども、単なる選択、配列ではなくて、いろいろな工夫、加工等がございましてデータベースとして情報を電気的に送る、非常に検索、利用がしやすいように相当の創意工夫が加えられているものでもございます。そういった観点から、データベースそのものを著作物として、場合によっては著作権法上の著作物として例示するあるいは明記するというような措置が適当ではなかろうかという段階の報告を受けているわけでございます。  その他、データベース分科会の中間報告におきましては、データベースの利用の問題、それにまつわる著作権問題等もございますけれども、なおデータベース自体が別途審議しておりますニューメディアと密接にかかわるわけでございまして、データベースをディストリビュートする場合、通例は最近の、今検討しておりますニューメディアという手段によって利用される場合が多うございますので、ニューメディア分科会におきましては、その利用関係を中心とした著作権の動き、特に権利内容、権利の動かし方、あるいは権利性を明確にするというような措置等の御議論もいただいておりますので、両々相まった形で総合的にデータベース並びにニューメディアに関する考え方をまとめていただく方向で今進んでいる段階でございます。
  126. 池田克也

    ○池田(克)委員 例えば英語の辞典がありますね。英語の辞典の編集の状況から見ますと、コンピューターを導入することによって容易に一あれは検索が問題でございますので、従来かなりの長年月をかけて、さまざまな労力が払われてでき上がってきているわけですが、人名事典であるとか事典編集という問題にかかわってはコンピューターというものが非常な威力を発揮するわけであります。そういうことになってまいりますと、既存の事典の値打ちというものが大幅に変わってくる。それが具体的な効力を発揮するようになる、特に著作権法上の効力を発揮するようになった場合、権利関係と申しましょうか利害関係が従来と少し狂ってくるのじゃないか。これは現場の話ですので、私どもは直接名前を挙げるわけにはいきませんけれども、非常な普及能力というものが出てくる、単価的にもすごく安くなってくる、あるいは分冊形態になって次々と増補、追加なども容易になってくる。こういうふうな時代の変化に伴う著作物変更、私は大変便利でいいことになると思うのですが、そういう便利なことと過去に営々として積み上げられた努力というものが相対しますと、今までのそうした積み上げが時代の変化とともに一挙に価値が変わってくるということも出てくるわけですね。  したがって、私は前にも申し上げたのですが、単にデータベースとしてこれだけ一つ権利を認めるというのではなしに、全体的に著作権のバランスを見直していかなければ、それによって失われる権利あるいは財産の価値というものも出てくると思うのです。そうした点から、これからを見通して著作権の諸問題を総合的に考え、抜本改正と申しましょうかそうしたことをおやりになっていくお考えはないかということをお伺いしたいと思うのです。
  127. 加戸守行

    ○加戸政府委員 データベースに関します著作権の問題が具体的に大きな問題として考えられますのは特に利用関係でございまして、御承知のように、データベースもデッドコピーがすぐ可能になる、しかもそれは非常に資料価値の高いものである、その点ではある意味コンピュータープログラム保護と似通った性格のものであろうと思います。特にデータベースの特性といたしましては、そのデータベースそのもののデッドコピー、丸々のコピー、これはもちろん権利侵害は疑いございませんが、実際にユーザー側にデータベースを提供します場合に、データベース丸々提供ではなくて必要な部分だけを抜き出すわけでございますので、その場合、データベースそのものの利用と言えるのかどうかという著作権法上の問題もあるわけでございます。  今先生おっしゃいますように、いろいろなメディアの急速な発達によりまして、従来の伝統的な著作物利用形態と違う利用態様が出てくるわけでございますが、そのことによりますデータベース創作者あるいは著作者と言われるような権利者立場が実態に応じて十分カバーできるような、そういう実情に見合った法体系の整備ということが急がれているわけでございまして、そういう意味検討を詰めているということでございます。
  128. 池田克也

    ○池田(克)委員 これは非常に興味深い著作権の問題であろうと私は思うのですが、時間の関係もありまして、こればかりやっているわけにはまいりません。この問題に関して最後にちょっとお尋ねしたいのですが、現行著作権法にも登録制度というのがあるはずでございます。今度の著作権法改正でもプログラム登録が新たに具体的に制度化されるというようになっておりますが、現行著作権法登録制度というのは私の認識では余り実効が上がってない。法制はあるにせよ余り登録されてないように私は受けとめておりますが、年間どのくらいあるのか、どういう実例が登録をされているのか、それによって一体何が保護されているのか、この辺を明らかにしていただきたいと思うのです。
  129. 加戸守行

    ○加戸政府委員 著作権法の上におきましては登録制度が幾つかございますが、一つが実名の登録でございまして、これは、無名または変名で出されております著作物の本当の著作者はだれであるのかということを登録しておく、つまり個人の権利保全の観点に立つものでございます。実名登録といたしましては五十九年度では七件ございます。それから、第一発行年月日の登録という制度がございまして、これは書籍、出版物のように、いつ発行したかという最初に発行した時点の登録でございます。この第一発行年月日の登録の件数が五十九年度では三十八件ございます。それから、第一公表年月日の登録という制度がございまして、これは発行ではなくて、いつ放送したのか、いつ演奏したのか、いわゆる世の中にいつ発表したのかという意味での年月日を登録する制度でございまして、五十九年度では八十件の登録がございます。それから、著作権移転しました場合、移転移転譲渡等によりまして当然に効力を生ずるわけでございますが、契約関係がございまして二重譲渡というような場合もございますので、どちらの譲渡が勝ちかという意味での対抗要件として、二重譲渡があった場合には先の譲渡が有効であるというような制度移転登録制度がございますが、この著作権移転登録が五十九年度は五十二件ございます。そのほか、例えば質権の登録その他細かい登録制度がございますけれども、その他の登録が二件、合わせまして五十九年度で文化庁登録いたしました件数は百七十九件でございまして、例年こういったような状況にございます。
  130. 池田克也

    ○池田(克)委員 時間がなくなりましたので、先ほどちょっと申し上げましたホームテーピングの問題、これは先ほど小林委員の方からるる質問があったわけであります。私もこの問題に触れたかったのですが、重複を避けて別の観点から少しお伺いをしてみたいと思うのです。  大臣、先ほどからずっと質疑を聞いておられたと思うのですが、家庭内の録音・録画問題、かなり深刻な被害が出ているわけであります。やはり文化行政としては創作者の意欲というものを大事にしていかなければならない。創作というのは、種をまいて実りをとるというような、具体的にこうすればこうなるというふうなものではないと私は思うのです。私もそうした編集や出版に携わっておりましたので、何月何日に作品ができると約束をしていてもなかなか筆をおろせない、あるいは途中でもって筆が進まない、非常な苦悶というものがその内面にあるわけであります。  きょうは三浦文化庁長官が御出席でありまして、本来であれば一番の体験者でいらっしゃる長官のお話を伺いたいところなんですが、どうでしょう、長官、私はその点について一言でも長官のお話を伺いたいのです。著作物というものは単にどれだけの材料をどこへ投入すればどういう答えが出てくるというものではない。できるときはどんどんできるけれども、できない場合は非常に苦しむ。したがって、創作意欲をいかに助長するか、減殺しないようにするか、これは国の文化行政として最も重要な部分ではないか、私はこう思っているのです。突然のことですが、およろしければ御発言いただきたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  131. 三浦朱門

    ○三浦説明員 ただいま御質問いただきまして、自分もまた著作権を持つ者として大変うれしい質問だと思います。しかし、著作者個人といたしましては、創作することは苦しいことであると同時に喜びでもありまして、読者があるいは聞き手がいたり、それを複製したりするということは決して残念なことでも悔しいことでもなく、権利侵害されたとも思いません。そういう人が大部分だと思います。ところが、著作者の組織といたしましてはやはり著作者の権利を守らなければならない、そういう二重の立場を私たちは持っていると思います。そこで、政治といたしましては著作者個人のあるいは創作者自身の創作の喜びに甘んずることなく、個々の人間、個々の創作者を保護してくれるような、またそれらの人間の思想、感情の表現物を楽しもうとする人たちが少しでも便利なような形でそのような権利が運営される、そのような制度がつくられることが望ましいと考えております。抽象的ですけれども……。
  132. 池田克也

    ○池田(克)委員 ありがとうございました。今長官からお話がありましたように、著作者はそうした喜びあるいは御自分の一つの表現活動としての充足感がおありだと思うのです。問題は、その方々を支えている、例えば出版社、あるいはレコードであればそのレコードをつくっているレコード会社あるいはそれを取り巻いている作曲家、その周辺というものも非常に重要な意味を持ってくると私は思うのです。  私の乏しい経験では、例えば著作者と出版社の間では部数の契約がございまして、それに従って印税をお支払いする、何回かに分ける場合もございますが、有名な有力な作家の場合には売れようと売れまいとかなりの印税を保証しているような状況でございます。しかしながら、コピーがされまして具体的に作品が金になってこないという事態が出てくる場合がしばしばあるわけであります。物にもよるわけでありますけれども、コピーされても結構、それは結構宣伝なんだという見方もあるかもしれませんが、深刻な受けとめ方をする特に学術的な出版物もあるわけであります。したがって、きょうはホームテーピングの問題でございますので、むしろ音に関しての大臣の御見解を承りたいと思って私は発言したわけでありますけれども、とにもかくにもそうした表現を扱うものをつくっていく人たちにとっては非常な準備、そして、そう言ってはなんですが、壊れ物にさわるような非常に精神的なところがございまして、一つ間違うと、おれはもうやめた、連載でもこれは途中でも中断してもいいのだとおっしゃる作家もいらっしゃるわけであります。非常にデリケートな状況の中で、資料を差し上げたりあるいはお書きになったものを言うならば評価して激励、督励、そしてそう申してはなんですが、さまざまな周辺での活動があって作品というものが生まれてくるわけであります。  例えば歌い手さんを一人養成するにしても、プロダクションの話を聞いてみますと、涙ぐましい活動の末に、あちこちに説明に行ったりPRに行ったりしてようやく歌が有名になってくる。こうした活動の末に一つ著作物というものが社会的な価値を生じてくる、私はこう理解しております。したがって、単純に考えるわけにはいかない。ともかく、あとう限りの制度、あるいは制度だけではございません、PRと私は申し上げたいのですが、著作権意識の高揚等を図って創作物というものを保護して、その周辺も御本人も意欲が減殺されないような文化行政というものが非常に重要だ、私はこんなふうに思っているわけでございます。  このホームテーピングの問題について、先ほどの小林委員の質問も含めまして、大臣の御所見を承りたいと思うのです。
  133. 松永光

    ○松永国務大臣 複写機器あるいは録音機器の非常な進歩発展と普及によりまして、著作権者あるいは隣接権者の経済的な利益が大幅に侵害をされておる、その状態が続いておるということは甚だ遺憾なことだと思います。  そこで、その対応策としていろいろなことが議論をされたわけでありますが、複写機器や録音機器等に対して賦課金をかけて権利者の経済的な利益をそれによってカバーしていくという考え方、これは、この問題を解決する極めて理屈の通った話だと私は思います。  ただ、問題は、つくられてそして売られておる複写機器や録音機器というものを消費者は、著作権者や隣接権者の権利侵害する目的あるいは意図、そのために購入しているとは限らないわけでありまして、自分の書いた手紙をたくさんの人に送る場合もあれば、いろいろな使われ方があるわけであります。ある意味で私なども、プロ野球が大好きなものですから、しかしなかなか見られない、そこで家族の者に頼んでおきまして、放送をテープにとってもらう、それで帰ってきてからそれを見るということを私どもはしばしばやっておるわけでありますけれども、これも厳密に言えば問題があるのかもしれませんが、さようなわけで、必ずしも著作権者の権利侵害する、あるいは隣接権者の利益を害するという意図で使う場合のみではなくして、その他の利用目的を持って消費者は購入しているという面が実はあるわけでして、その点において機器そのものに賦課金をかけてということがやややりにくい面があろうかなというふうに思うわけであります。恐らくそういうことから、先国会で著作権法の第三十条を改正した場合には、業としてやるような大型のもの、それを使っての複写、録音等はいけないというふうに明記をされ、かつそのことが刑罰をもうて担保されるような仕組みになりまして、この一月から施行されたわけでありますが、その施行の結果がどういうふうになってくるか、それをよく見ながら、同時にまた、先ほど言ったような事情がありますので、賦課金ということについて国民一般の了解が得られるかどうか、そういったことも考えていく必要があるというふうに思うわけであります。しかし、もとになるものは、先生も御指摘になりましたような著作権思想の普及というのが基本としては大事なことであろうと思いますので、その面におきましても今後とも一生懸命努力をしていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  134. 池田克也

    ○池田(克)委員 JASRACという組織がございます。歴史も古く、日常的にもJASRACは非常に活発に活動をしているように見受けます。例えば雑誌などにちょっと歌の楽譜や歌詞を載せる場合でも手続を要しますし、その場合にかなり細かい手続が必要とされております。昨今、いろいろな状況の中でJASRACから入金を迫られながら滞納して、厳しい対応をしなければならないというふうな現実の声を聞いたこともありますが、それほどきちんとした体制が今日まで整って歴史的に進んでおります。これでもまだ不十分な面がたくさんあると思いますけれども、このJASRACの著作権使用料の徴収あるいは分配、この実態についてかいつまんでお聞かせいただければと思います。
  135. 加戸守行

    ○加戸政府委員 日本音楽著作権協会、いわゆるJASRACは、日本国内の楽曲のみならず、外国関係の音楽楽曲も管理いたしておりまして、ある意味で音楽に関する一手専売のような事業をやっております。  そこで、日本音楽著作権協会が徴収いたしております使用料が昭和五十八年度の実績で二百四十億円でございます。この二百四十億円の内訳が、ちょっと若干バランスの問題もございますけれども、放送、演奏といったような使用料が約四分の一、一方、出版とか録音といった有形的複製等の関係が四分の王といったような比率で、これは例年の傾向でございますが、そのような内訳になっております。  この配分につきましては、例えば演奏でございますれば曲別報告、社交場の場合でございますとサンプリング調査、放送の場合も生放送であれば曲別の分配、それからレコード放送でございますとサンプリング調査といった、それぞれ利用の実態に伴いまして、悉皆把握ができるものにつきましては個別配分、一斉把握が不可能なものにつきましてはサンプリング調査によります比例配分という形で、権利者にそれぞれ配分されている状況にございます。
  136. 池田克也

    ○池田(克)委員 今お話がございましたような二百億を超える相当な徴収実績があるわけでありますが、私は、もう一方で、芸団協が著作権の二次使用の問題でいろいろと動いてまいりまして、そうした実演家の利益、あるいは何か年金等に用いられているというふうな実態も伺っておりますが、芸団協の方は実態はいかがでしょう。
  137. 加戸守行

    ○加戸政府委員 芸能実演家を包含いたします日本芸能実演家団体協議会、略称しまして芸団協におきましては、主として取り扱いの大きいものが著作隣接権の対応といたしましての放送の二次使用料でございます。これにつきましては、今の実績が多分二億五、六千万円程度だと思いますが、その二次使用料を一応放送局あるいは有線放送事業者から受け取りまして、それを権利者といいますか傘下の各団体に分配をいたしております。分配の仕方は部門別に分けておりまして、例えば歌手部門でございますと一七・四%、演奏家部門でございますと四九%、邦楽部門が五・一%、演芸部門が四・七%、俳優部門が一・六%、舞踊部門が一・二%、そのほかにクレーム資金として一%留保いたしまして、それから管理手数料が二〇%で、一応そういうような傘下の各団体の実情に即しまして二次使用料配分委員会の議に基づきまして各関係団体に配分し、かつ団体におきましては、例えば歌手の休業補償であるとか、文化目的、公益目的、いわゆる実演家の共通目的のためにこれが使用されている実態にございます。
  138. 池田克也

    ○池田(克)委員 関連してなのですが、仮定としてローマ条約に加盟した場合、いわゆる放送に携わる企業と申しましょうか、一時はもうつぶれてしまうぐらいの金を支払わなければならないというふうな話を聞いたこともあるのですが、いやそれほどでもないんだと。大体このくらいの勘定ではないかというような何か試算があるのですか。
  139. 加戸守行

    ○加戸政府委員 現在、著作権法に基づきます放送の二次使用料として放送事業者が支払っております金額が、レコード協会と芸団協を合わせまして五億円を超えているわけでございますが、今、邦盤、洋盤の比率の違い等もございまして、NHK、民放ともにそれぞれのウエートの差がございます。ただ、試算といたしまして、現在隣接権条約に加入し、かつ、日本の実演家に払っている比率と同じ比率でレコードの使用頻度に応じ、外国の実演家、つまり洋盤を使用いたします場合の実演家に二次使用料を支払ったといたしますれば、全体的にNHK、民放トータルいたしまして三五%程度の増になろうかと思います。と申しますのは、実は隣接権条約には現在アメリカとかフランスといった有力国が加盟しておりませんものですから、仮にこれらのアメリカ、フランスその他の、日本で使います洋盤の外国も全部隣接権条約に加入したと仮定いたしますれば、使用頻度が、NHK、民放合計いたしますと、ちょうどフィフティー・フィフティーでございますので、現在の使用料を倍増するという結果になろうと思います。単純計算でございますと、そのような推測をいたしております。
  140. 池田克也

    ○池田(克)委員 このホームテーピングの問題やローマ条約については、もっともっといろいろとお伺いもしたいし議論もしたいところでありますが、私がこの著作権法の審議に当たって痛感しますのは、基本的にやはり著作権思想の普及ということだなということでございます。この統計など、最近著隣協からもらいまして、ホームテーピングの実態を見ますと、大体十七、十八、十九歳というこれぐらいの年代の若い人たちが非常なホームテーピングをしております。やはり意識は低いと私は思うのです。一応著作権法というのがあることは知っているようでありますが、これが大変な権利侵害があり、文化の創造の上ではまずいことなんだという思想の普及が私は非常に大事だと思っております。前回も申し上げたわけでありますが、締めくくりとして大臣からこの問題についての御所見を伺って終わりたいと思います。
  141. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほどもお答えをいたしましたように、著作権思想の普及、これは非常に重要な文部省、文化庁の仕事であると思っております。いろいろなパンフレット類を作成したりあるいは講習会等を開いたりしてやっておるわけでありますけれども、学校教育等の現場におきましても、生徒の発達段階を考慮しながら著作権思想の普及のための努力を今後とも一層進めてまいりたいと考えておる次第でございます。
  142. 池田克也

    ○池田(克)委員 終わります。
  143. 船田元

    ○船田委員長代理 中野寛成君。
  144. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 著作権法について、先週金曜日に行いました質問の若干残りについてお尋ねしたいと思いますが、それに先立ちまして、今の池田委員からの質問、そして先般の小林先生からの御質問にもございましたが、このホームテーピングやローマ条約の件、これにつきましても先週金曜日におおよそ同趣旨の御質問を申し上げ、また昨年の本委員会における附帯決議にも触れてお尋ねをしたところであります。先般来お聞きしながら、私どももまた同じ気持ちでぜひともこの作業が実効のあるものとして早急に進められることを心から強く御要望を申し上げておきたいと思います。また、きょう採決に当たって同じ趣旨の附帯決議をまた付することになろうかと思いますけれども、そういう附帯決議が来年も再来年もまた著作権法改正のたびにというふうなことがないように、ぜひともお願いを申し上げておきたいと思います。  なお、ローマ条約にも関することでありますけれども、先ほど三浦長官が作者としてのお立場お含めて御答弁があったことでありますが、私からもせっかくでございますから三浦長官に一言お尋ねを申し上げたいと思います。  むしろ、長官というよりも作者としての長官にお聞きすることになると思いますが、今の質疑応答がありましたローマ条約にしても、例えばラジオやテレビでの放送、分野が違いますけれども、しかし同じ作者または演奏家という立場から考えますと、単に創作の喜びまたは演ずることの喜びということだけではなくて、それが広く社会に認められる、このことが付随して初めて喜びというのは意味を持ってくると思いますし、まして人間でありますから当然生活をしていかなければならない。その評価をされるに見合った収入というものがそれについてくるということが、言うならば創作や演ずることの喜びをなお一層倍加させることになっていく、その意欲をまた増加させることになっていくだろうと思うのであります。  例えばローマ条約、アメリカ等主要国が加盟していないということもありますけれども、しかし、今加戸次長の御答弁にもありましたが、現在のところ音楽で言えば邦楽、洋楽の放送されている比率はおよそフィフティー・フィフティー、おっしゃるとおりであります、しかし、もっと数字を見ますと洋楽の方が若干とはいえ上回っているわけです。これをいろいろ分析をいたしますと、必ずしも洋楽の方が人気があるからということだけではなくて、その方が安上がりであるということは否めないと思います。そのことがひいては、邦楽の発表の機会またはそれが放送される時間がそれによって少なくなるということになりますと、邦楽ひいては日本人独自の創作によるものの発表がそれだけ少ないということになるわけですし、日本文化の高揚には決して現状はプラスにならないということにも結びつけて考えられるのではないかというふうにも思うわけであります。  同じ作者というお立場をも含めまして、こういう現状についてどのようにお考えか、そして今後文化庁として、このローマ条約、ひいてはあわせてホームテーピングの問題等についての長官の御見解をお尋ねをさせていただきたいと思います。
  145. 三浦朱門

    ○三浦説明員 先ほど、著作者といたしましてはそれが利用されることは喜びだと申しましたけれども、同時に、それらのものを頒布することによって、放送することによって利益を得ている人たちがいるわけでございまして、あるいはそのための道具を製作し売っていることによって利益を得ている人たちがいることは確かなのでありまして、その人たちから適切な形で著作権としての収入を得ることは当然のことであると考えております。したがいまして、今おっしゃられましたような、安上がりだからという安易な形で安上がりの著作権を使うというふうなことができないような形で、このような形の法律が一日も早く整備されるように心がけたいと思っております。
  146. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 そこで、先般もお聞きしたのでありますけれども、こういう問題の整備について審議会等で相談をしていただいている、また関係業界等との調整をも含めて作業をしておられる、こういうことであります。質問を繰り返すようでありますけれども、次長にお聞きいたしますが、さっき小林先生もおっしゃっておられましたけれども審議会よりも国民を代表する立法機関の意思を尊重しろ、こうおっしゃっておられましたけれども、今後の御決意をお聞きしておきたいと思います。
  147. 加戸守行

    ○加戸政府委員 私ども立場といたしましては、著作権に関する重要事項につきましては著作権審議会意見を聞くことを行政的な意味では義務づけられているわけでございまして、その意味では、審議会という一応第三者機関といいますか、公正な民意を反映した形での意見を踏まえて対応するのがシステムでございます。そういう制約はございますが、もちろん当文教委員会での附帯決議でございますので、その重みを十分受けとめまして、その意を体してそういう方向へ向かって努力すべき筋合いでもございますし、またそういう努力をさせていただきたいと考えております。
  148. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 それでは、本来の法改正に関連する質問をいたします。  先般お尋ねをいたしましたものの残りについて質問いたしますから、ストレートに各論に入ります。  通産省との調整の結果、現行の登録制度のほかに創作年月日の登録制度を創設をされたわけでありますが、現在の登録制度との違い、またその趣旨、そういうものについてちょっとダブるようですが、簡単に御説明いただきたいと思います。
  149. 加戸守行

    ○加戸政府委員 現在、著作物が世に出た時点を登録する制度といたしまして第一公表年月日登録あるいは第一発行年月日登録という制度がありまして、この著作物が出てその後から別の著作物が出た場合に、この場合は海賊版になるんだなという前後関係を立証するための一つの有力な公証制度として制度が設けられておりますが、コンピュータープログラムの場合には書籍やレコードと違いまして、発行したりあるいは発表したりという性格のものが少のうございまして、企業内部で利用されるものが多い。そういうもので、いわゆる著作物を例えばいつ世に出したかを証する手段がございませんものですから、それにかわるものとして創作年月日登録という制度を設けまして代替させたいというのが一つの考え方でございます。この結果といたしまして、いつ創作されたのかということを立証する法律上の推定効力が動きますとともに、同時に著作者がだれであるかとか、あるいはこの著作物が先につくられたに違いないとか、事実関係を証するよすがともなるわけでございます。そういう意味の第一発行年月日登録、あるいは第一公表年月日登録にかわる制度として、プログラムについて設けた創作年月日登録の趣旨でございます。  と同時に、もう一点、通産省との調整に当たりまして、プログラム権法構想の中には登録公示制度というのは考えておられたわけでございますが、それは経済的観点から、特に流通の促進とか二重投資の防止とかいうような意味合いもあったわけでございますが、この創作年月日登録制度を設けることによりまして、結果としてそれをてことして、通産省がいわゆるユーザー保護的なニュアンスから考えておりました重複投資の防止とかあるいは流通の促進にも資することができるというような、一石二鳥の意味合いを込めまして、この制度を創設することとした次第でございます。
  150. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 その創作年月日登録制度なのですが、これは果たして本当に有効に機能するだろうかどうだろうかという疑問をまだ払拭し得ません。一つは、登録をすることのメリット、もちろんメリットはあるには決まっていますが、登録しなくてもどうせ証明できればいいのだからというふうなことになるのか、やはりこれはぜひともやっておこうというふうになるのか、プログラムによって違うでしょうけれども、しかし、関係業界だとかそういう著作者の場合、果たしてどういうふうになるだろうか、まだ正直言って私の頭の中に想像がつかないわけであります。  それから、もう一つは、その辺のことについてどういうふうにお考えかということと、もう一つは、この登録については何か登録に関する法律を新たにつくるとかということをお聞きいたしておりますけれども、これはどういうふうになるのかしら、そしてまた、登録の受け皿、機関等はどういうふうになるのかしら、こういうふうなことについてもお尋ねをいたしたいと思いますと同時に、この著作権法だけでは十分対応できないもの、または著作権だけに期待をするのは過大な期待であるという部分もあるのではないだろうか。例えば今のユーザー保護の問題にしたって、別の観点からの措置が必要だろうというお考えがありますね。それから、例えば独禁法の問題もけさほと出ておりました。ですから、今回のコンピューターソフトプログラム保護していくについての関係法令というのは、決して著作権法だけではないわけですね。それが総合的に機能を発揮して初めて本当の保護がなされるということではないだろうかというふうに思うわけですが、その総合的な措置、制度、法律、機関、そういうものについてどういうふうになっていくのでしょうか、それをお尋ねしたいと思います。
  151. 加戸守行

    ○加戸政府委員 幾つかの御質問がございましたが、まず第一点目に、この創作年月日登録の実効性の問題でございます。  一般的にプログラムというのは、極めて認識することが難しいわけでございまして、多分訴訟等になりますと、盗作であるか否かということにつきましての専門技術的な判断が必要になってくるだろうと思いますけれども、通常考えますと、業界といたしましては、自分たちがプログラムをつくるためには膨大な投資経費をかける必要がございますものですから、既存にどんなプログラムがあるのかということを認識した上でつくられる。そういう意味では、こういう登録制度があることは業者、ソフトメーカーにとっても非常に実益のあることでございますので、多分この登録についてはそういった訴訟上の有利な立場を確保したい、あるいは自分たちソフト業界全体のソフト開発の利点からも考えまして、そういう登録制度利用するケースが多くなるだろうということは想定いたしております。  そこで、登録に関します別法律の内容でございますが、現在考えておりますのは、例えば登録の手続でございますとか、納付すべき複製物をどのようなものとして規定するのか、あるいは登録されたプログラムについてその内容の概要等を公示する制度、つまり公報等によりまして一般に周知させるようなシステムというのを導入するような事柄も含めまして、これから関係省庁あるいは関係業界の御意見も聞きながら詰めていきたいと考えておるわけでございまして、時期としては次の通常国会に調整ができれば提出をさせていただきたい、そういう方向での努力をこれからしたいと考えております。  それから、お尋ねの登録につきましての機関ということでございましたが、法律上は一応文化庁長官登録をするという建前で現在おるわけでございますけれども、非常に膨大な量に上る登録が予想される、あるいは登録された現物の、つまりプログラム複製物の保管の問題とか等を考えましたときに、文化庁として十分今の体制の中で処理できるのかどうかという問題も、ございますので、今後に検討する必要がございますが、いろいろな条件等の規制をかけまして一定の民間機関に適当な機関がございますれば、そこに登録を委託するという方法一つ方法としてあり得るだろうという意味で、そういったこと全体を含めまして、これから関係団体等の意見も聞いてみたいと考えておるわけでございます。  そこで、総合的な法体系とおっしゃいましたけれども、いわゆる著作権法の今回提案申し上げております七十八条の二をベースとして定める法律でございますので、著作権制度としての登録制度の中で関連の必要事項を別に法律で定めるわけでございますが、もちろん独立の法律でございますから、いかように書くこともできますけれども、事柄が著作権法をベースとしてつくられる法律でございますので、余り著作物としてのプログラム登録にかかわりのない事柄を規定するのは立法態度としていかがなものであろうか。例えば、ユーザー保護といたしまして内容の表示を義務づけるというようなことは、ちょっと登録とはかかわりのない事柄なので、そこまでは登録法で書くことは適切ではないであろうと考えます。しかしながら、プログラム権法との一応折衷を図りまして、今回提案申し上げた趣旨からしますれば、通産省が希望しておりました事柄で、ユーザー保護観点から著作権制度との関連において規定できる事柄は、先ほど申し上げましたように、登録されたプログラムの内容、概要の公報等を発行するとか、そういうような事柄は別法律で定めたいと考えておる次第でございます。
  152. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 質問に入ります前に、通産省の方は結構ですと申し上げたのですが、どなたもいらっしゃいませんね。——それでは結構です。別にいないから都合がいいという意味ではないのです。いらっしゃったらちょっと聞こうかと思ったのですが、それは私の方でお断り申し上げておりましたので結構です。  それで、今次長の御答弁の中に、争いが起こった場合のことについて触れられたのですね。そのことについてちょっと追加してお尋ねいたしますが、このプログラム権利につきまして争いが起こった場合、直接法廷で争われるということになった場合に、コンピュータープログラムの秘密性が保持できないことがあるのではなかろうかという心配が一つあります。そのために訴訟に行く前に紛争を処理するような方法を講じたり、あっせんの制度を活用したりとが、いろいろなことが起こってくるのではないだろうか、そういう心配があるのかないのか。それから、創作年月日の登録につきましても、具体的なプログラムの内容までは公表されないシステムになるのだろう。この秘密の保持がちゃんと保たれるような登録方法になるのだろうとは思いますけれども、その辺のいろいろな場合を想定しての秘密保持についてどういうふうに対応を考えておられますか。
  153. 加戸守行

    ○加戸政府委員 先生おっしゃいますように、確かにプログラムの内容によりましては機密性、秘密を保持する必要性の多いものがあろうと考えます。その意味で、訴訟に持ち込むことによってオープンになるかどうかと言われますと、多分に0101で表現されております信号でございますから、例えば判決文その他等によりましては一般には理解できないと思いますので、むしろ鑑定をした場合の鑑定者の問題等ございますが、この辺も当然秘密保持義務というのが例えば証人等にあると思いますし、裁判になったから当然にオープンになるとは考えられませんが、そういった危険性は十分あり得ると思います。そういった意味で、裁判にいく前段階の手続を求める場合もあり得ようと思いますし、例えば著作権法の中でも紛争解決あっせんの制度はございますが、ただ、こういった裁判以外の方法と申しますのは両当事者が合意をするということが前提でございますので、その意味で、両当事者が合意して実際に行われた場合の、例えば紛争解決あっせん委員がその秘密を知った場合、その秘密を保持するということも国家公務員法上の秘密保持義務がかかるわけでございますので、そういった点につきまして、一般的に申し上げれば秘密は保持されるということが理論的に言い得ますけれども、実際問題としては、極めて経済的価値の高いものについてそういう意味で訴訟を求めないというのが、訴訟によって得る利益とそのことによってオープンになる危険性を冒すリスクがあるかどうかという問題は、当然いろいろ迷われるケースは出てこようかと思います。お答えになるかどうかわかりませんが、この辺の問題につきまして、文化庁としてちょっとこれ以上申し上げるのが難しい答えではないかと思います。
  154. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 最後にお尋ねをしますが、一連の審議を通じて感じますことは、何といっても日本では著作権思想をいかにして正しく普及をしていくかということにかかっているのではないかという感じが強くいたします。ホームテーピングの問題も、先ほど大臣が御自身のことに例えておっしゃいましたが、例えば我が家でもやはり同じようなことがありまして、音楽でも貸しレコードのことを論議をいたしておりますときに、中学校へ行っております私の娘、ここで前に言ったことがあると思うのですが、娘がこういう言い方をしたのです。私たちは貸しレコードを利用しない、あれを利用して家でテープにとるとマッチや聖子ちゃんがかわいそうなんでしょう、こういうことを私に言ったことがあります。それはそういう演奏家の皆さんが貸しレコード対策について集会を開かれた、そのことのニュース等を見ていて子供たちがそういうことを感じたようであります。それは、言うならば著作権に対する知識の芽生えであったと思うのでありますけれども、しかし、例えばホームテーピングなんかはまさにそういう子供たちの世界で起こっていることなんですね。ですから、そういう子供の時代から著作権思想について大いに普及する努力というものが必要だし、そのころにしっかりと身につけておれば、後々これから新しい時代にどういうことが起こってこようとも、それを基礎にして判断をしていくことができるようになるだろうと思うのであります。ゆえに、折に触れてより一層、学校教育はもちろんのこと、あらゆる場において著作権思想というものが大いに普及をされることが望ましいと思いますし、例えば、ローマ条約やホームテーピングの賦課金のことやいろいろな問題を論議するときに、業界の抵抗、これは金銭に置きかえての判断もあるかもしれませんけれども、そういう方々も著作権思想というものをより一層深く理解しておれば、そういう方々の理解を得ることはなお一層速いということになるだろうというふうにも思うわけであります。  こういう考え方、著作権思想の普及等について、文部省またひいては文化庁の果たす役割は極めて大きいわけでありますから、最後に、大臣と、それから大変関係の深いお仕事でもあります、次長ではなくて長官に、お考えがありましたらあわせて、長官のこの社会に対して与える影響は御自身お持ちのネームバリューからいって大変大きいわけでありますから、お二人に最後にお聞きをして、質問を終わりたいと思います。
  155. 松永光

    ○松永国務大臣 著作権法というのは、著作権者等の権利保護する、またそのことによって一面においては経済的な利益が保障されるような仕組みをつくっておるわけでありまして、そういうことでありますので、著作権者がいろいろな苦労をして創作をされたものが結果的に保護されていくわけでありまして、そのことが広い意味文化活動をしている人たちの創作意欲を刺激することになります。そして、そうすることが広い意味での日本文化国家としての発展を促すことにもなるわけでありまして、著作権思想の普及、充実、徹底というのは極めて大事なことであると思います。  そういうことで、前々から文部省、文化庁といたしましては、著作権に関するいろいろな資料の作成、配付あるいは講習会の開催等を通じて著作権思想の普及に努めておるところでありますが、そうした著作権思想の普及の仕事と同時に、学校教育の場でも子供たちの発達段階を考えながら著作権思想をより一層普及するような教育をしていかなければならぬ、こういうふうに考えるわけでありまして、そういう考え方で今後とも一層の努力を続けてまいりたいというふうに考える次第でございます。
  156. 三浦朱門

    ○三浦説明員 我が国におきましては、伝統的に芸術作品の著作権という考え方はございませんで、和歌で申しますと、本歌取りなどと申しまして古い有名な歌を部分的に借用しながら、それに新たに自分のものをつけ加える一種のパロディーのような創作物が創作として考えられておりまして、そのような文学精神といいましょうか、その全体を共有するというふうな思想がございました。これは著作権というものが個人に帰属するあるいは共同のグループに帰属するという意識がなかったことでありまして、そのような考え方が今なお我が国では基本的にあると思います。  今、御質問の中にありましたような、小さなお子さんが自分の家でダビングをすると聖子ちゃんが困るというふうな発想をする、そういうお子さんは今日まだまだ非常に少ない、例外的な存在ではないかと思います。文化庁といたしましては、これから先、さまざまな形で近代的な著作権性質をまず国民の間に普及させるために、いろいろな広報活動とか、ある場合にはテレビの番組とか雑誌、新聞の記事とか、折に触れてその知識を普及させて、国内においてはもちろん、国際的にも日本という国が著作権についての先進国であるというふうな評価を得るように、そのような運動を進めていきたいと考えております。
  157. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 ありがとうございました。終わります。
  158. 船田元

    ○船田委員長代理 山原健二郎君。
  159. 山原健二郎

    ○山原委員 文化庁長官に、せっかくお見えになっておりますし、ただいまも御見解を述べられましたので、最初に一言お伺いをしたいのですが、私の党も著作権の問題については、人類あるいは民族の文化発展のために大変重要なものとして考えておりまして、今までの著作権法改正についても、もちろん不十分な点については批判をしてまいりましたが、これに賛成をしてきたわけでございます。この意味で、今長官がおっしゃられたことを大変積極的な御発言だと思います。同時に、今回出されております著作権法改正、特にコンピュータープログラムの問題については今までと違った態度を今とろうとしているわけでございますけれども、昨年の第百一国会で改正されました著作権法のときにつけられました附帯決議、例えばローマ条約の加盟の問題その他の附帯決議がございましたが、これらの改正がこのコンピュータープログラムよりもむしろ先に改正案として出るべきではなかったかという感じを私は持っているわけでございます。国会の決議というものはそれほど立法府の意思を表明しておるものでございまして、これは重視していただきたいと思うのです。  ところが、先日他の党の議員も御質問になりましたし、また我が党の藤木洋子議員も質問をしまして、例えばローマ条約に対する加盟の問題について、残念ながら文化庁次長の御答弁は、いつになるかわからないような答弁のように私はお聞きをいたしました。苦労しておることはよくわかるわけですけれども、これでは、著作権の先進国になりたいとおっしゃる文化庁長官のお気持ちとは少しかけ離れておると思わざるを得なかったのでございますが、このローマ条約の問題あるいは附帯決議の実現についてどういうお考えを持っておるか、一言最初にお伺いしたいのですが、いかがでしょうか。
  160. 三浦朱門

    ○三浦説明員 このことに関しましては、お互いに利害の反する当事者がおるわけでございまして、著作権審議会が昨年の五月から審議しているわけでございます。しかし、国会の附帯決議もございましたし、文化庁といたしましても、この国際条約に加入し得るような形で目下いろいろな問題を検討している最中でございます。
  161. 山原健二郎

    ○山原委員 率直に言って、じんぜんと日を過ごすという意味ではなかろうと思いますけれども、随分遠のいたなという感じを持ったのですが、私の受け取り方が間違いであったら、これは次長に訂正していただきたいと思いますが、聞いておりましてそういう感じを受けたのです。利害相反するものの調整というのがいかに難しいかということは、今出ている法案でもそうですからね。それでいけばいつまでたっても問題の解決にはならない。もちろん著作権の思想の普及というのも大事でございますけれども、あえてこの問題について、さらに積極的な意欲を燃やしていただきたいということを最初に申し上げたいと思います。  次に、この法案について若干の質問をいたします。  コンピュータープログラム、特にオペレーションシステムと呼ばれる基本プログラムの国際的な保有状況がどうなっているか。統計的数字が出ておるかどうかわかりませんが、例えばアメリカ日本を比較した場合に概略どういう状況にあるか、通産省の方、おわかりでしたら御答弁をいただきたいのです。     〔船田委員長代理退席、委員長着席〕
  162. 越智謙二

    ○越智説明員 ソフトウエアプログラムの現状でございますが、これを概観いたしますと、米国が群を抜いておりまして、日本、英国、西独等がこれに続くという状況で、日本は米国の約四分の一程度と承知をしております。  このうちの電子計算機の基本ソフトウエアにつきましては、基本ソフトウエアのみの統計はございませんけれども、電子計算機の売り上げ等を比較いたしますと、基本ソフトウエアについても米国の生産高が我が国の生産高を大きく上回っているものと考えられます。
  163. 山原健二郎

    ○山原委員 例えばIBM事件、けさ参考人にも少しお尋ねしたわけですけれども、その決着の仕方というものを見てみますと、結局、日本の大企業がIBMのソフトウエアを手に入れるためにもう大変に危ない橋を渡らなければならなかったというところに、アメリカ日本の今日のソフトウエアに関する関係があるのではないかというふうに思います。しかもあのときには、IBMは、御承知のようにFBIと結びましておとり捜査をして、それにひっかかったのが日立と三菱電機であったわけですね。当初両社は徹底抗戦を叫んでおりましたけれども、急転直下でIBMと和解をするという事態が起こったわけでございます。そして多額の和解金、すなわちソフトウエア契約金を支払うという協定が結ばれたということでございますが、これが現実に日本国内におけるアメリカ日本の関係を示しておると思います。  このIBM事件日本側当事者である日立製作所の有価証券報告書総覧というのを私ここへ持ってきておりますけれども、これは五十九年度版、最新版ですが、これを見ますと、この十ページの「営業上の重要な契約」の項の中に「その他の重要な契約」という欄がございまして、IBM相手に、ソフトウエアの使用について昭和五十八年十月一日から昭和六十六年十一月二十九日に至る期間で契約を結んでおります。この契約に基づくソフトウエア使用料は、現時点における見込みでは、月額にして五億ないし十億円であるということがこの中に書かれているのです。年額にいたしますと実に百億円前後の巨額をIBMにソフトウエア使用料として支払いをしておるわけでございまして、こういう契約料を払っておりますのは、調べてみますと、このIBM事件の当事者である日立並びに三菱電機だけでなくて、いわゆる自主開発派と言われていた富士通でさえ巨額のソフトウエア使用料をIBMに払っているということが考えられるわけですが、そういう事実はおつかみになっているでしょうか。
  164. 越智謙二

    ○越智説明員 ソフトウエアに関しましてIBMと日立あるいは富士通という会社の間の見解相違があったということでございますが、それぞれ当事者間の協議により友好裏に解決が図られたというふうに伺っております。
  165. 山原健二郎

    ○山原委員 私は、私の質問を一々やっておりますと時間をとりますので、私の見解を申し上げたいと思いますが、ごく最近「富士通がIBMに恐れられる理由」という書物が出ておりまして、この中に富士通幹部の話を紹介しております。それには「ソフトウエアは人類共通の基本財産、という認識にわれわれは立っており、事実、IBMの主張(基本ソフトは著作権が確立されるべきという)は何らいわれのないものだから徹底的に闘うべきだ、という声も役員会で少なくなかった。しかし、裁判沙汰にでもなれば十年、二十年がかりを覚悟しなければならなくなるし、その間、ユーザーに迷惑をかけることになりかねない。そこで涙をのんで歩みよることにしたんだ」、こういうふうに書いておるわけでございます。これが一体何を示しているかという問題で、私は考えてみますと、第一に、基本ソフトと言われるものの一番重要なものが、アメリカの巨大企業といいますかIBMあるいはATTなど、いわば超巨大資本に多くを握られている、だから屈辱的などまで言われるような契約を結ばざるを得ない、これが日本の置かれているソフトウエアの実態ではないか。私は、この法案を審議するに当たって、この背景を見ておかなければならぬという意味で今申し上げております。第二に、著作権に立った保護が明確になれば、五十年とか七十五年という長い保護期間とも相まちまして、ほんの一握りの巨大資本のソフトウエア技術に対する支配力を一層優位なものとすることは明らかである。日米大企業間の問題を今私は取り上げて申し上げたわけですけれども、これが例えば国内で見ますと、数えるほどの大電算機メーカーの支配が国内においては中小の業者に対する優位性を持つことになりはしないか。アメリカ日本というコンピューター先進国とその他の国、例えばアジア諸国の発展途上国との関係で見ますと、米日巨大資本の支配力を強める役割を果たすことになるのではないかという感じがするわけでございますが、これについて簡明にお答えをいただきたい。私の考えが間違っているでしょうか、いかがですか。
  166. 越智謙二

    ○越智説明員 プログラムに係ります知的財産はそもそも尊重をされるべきものと考えておりまして、今回の著作権法改正によって新たに何らかの問題が生ずるということはないと考えております。今後とも、コンピューターメーカー各社ともソフトウエア技術開発に全力を挙げて取り組んでいるところでございますので、ソフトウエアの自主開発に積極的に取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  167. 山原健二郎

    ○山原委員 文化庁は、この法案審議における答弁で、国際的動向も勘案をし、保護期間の見直しも今後の検討課題とするという含みの答弁をなさっておられます。「著作権審議会第六小委員会中間報告」、ここへ持ってきておりますが、これは昭和五十九年一月文化庁が出しておられますけれども、「プログラムについては、」「現行著作権法保護期間は長すぎるのではないかとの意見があった。」そういう紹介がなされております。しかし、結論としては、「五十年間の保護期間については特段支障があるとは考えられず、むしろこの期間保護すべき意味も大きい面があることから、他の著作物と同一の期間保護すべきである」というふうに結論づけておられます。意見はあったんだけれども、結論としては五十年間長期保護すべきであると言っておられるのです。ところが、私のところへおいでくださいました文化庁のレクを受けました場合に、明確におっしゃったことは、プログラムが思想の創作的表現であるかどうかが問題なのであって、その使われ方などは関係ない、そういう立場からしても、長い期間の保護というのは全く支障はないという御説明でございました。ところが、その保護期間の見直しも検討課題だということは、一方では問題ないとおっしゃいながら、一方では保護期間の見直しがまたこの法案の中に出てくるわけでございまして、普通一般の著作権法上の対象となる著作物と異質な面があることを認めている結果ではないのでしょうか。つまり、経済財としての性格を持つことをも十分勘案しないと現実にさまざまな矛盾、支障を来すという認識の結果ではないかと思うのでございますが、この点はいかがでしょうか。
  168. 加戸守行

    ○加戸政府委員 第六小委員会報告の中でそのような記載がございますが、五十年では長過ぎるという意見はごく少数の意見でございまして、圧倒的多数の委員は五十年でしかるべしだという形でこのような報告がまとめられたわけでございます。問題は、今回御承知のように一昨年来通産省プログラム権法構想と文化庁著作権法一部改正との間の議論の調整があったわけでございますけれども、百点満点が著作権法であり、プログラム権法が零点だという形ではなくて、お互いの調整の結果として今回の合意に達したわけでございます。もちろん五十年というのは条約上の義務でございますので、著作権法改正案におきましては五十年を提案申し上げておりますが、著作権条約そのものは、ベルヌ条約にいたしましても改正の機会があるわけでございますし、また、これからの条約改正の際にどのような動向になるのか、あるいは各国として五十年でみんな満足するのか、そういった状況並びに国内的な意向も受けまして中長期的観点から検討課題とするということで両省庁間で合意に達したわけでございまして、基本的に筋としては合っていると考えております。
  169. 山原健二郎

    ○山原委員 今まであなたの答弁は一貫しておりまして、そのことはよくわかります。ただ、やはり長期的狂見直しの問題が出てくるというところの中に、この問題についてはやはり著作権では律し切れない何物かがあるということを私は考えざるを得ないのですよ。ではほかの文学とか音楽、そんなものはないわけでしょう。ここにわざわざこれが出てきたところに、そういうものを……。あなたは否定されるかもしれませんけれども、時間がありませんから先へ進みます。  次に、国際的動向に関連してというのがあります。しばしばおっしゃるわけですけれども著作権保護すべきだという方々の急先鋒としてIBMがあるわけですね。アメリカの巨大電算機メーカーが存在することは周知の事実です。先年通産省プログラム権法構想をまとめようとしたとき、IBMはいち早くこれに反応を示しまして、率直に言ってつぶしにかかったのですね。ところで、一九六八年に米国特許局がソフトウエア法的保護に関して関係業界、学識経験者の見解を求める公示を出した際、IBM社は一つの具体的提案を行っております。ギャルビ試案と呼ばれるものでありますけれども、この概要がどういうものかといいますと、特に著作権立場に立ったものかどうか、あるいは保護期間は何年程度になっているかという点から見てみますと、特許著作権がといった従来のような単純な割り切り方でなく、第三の道を模索をしたものでありました。そして、保護期間は五年ないし十年となっておったのであります。そうすると、IBMの法的保護の考え方が一九六〇年代以降現在までの間に相当大きな変化を示しておることがわかります。それはなぜか。私の考えでは、六〇年代はコンピューター業界ではIBMが圧倒的な強さを持っておって、一人の巨人と七人の小人と言われるくらいの力を持っておったわけでございます。ところが、八〇年代になりますと少し様相が変わってまいりまして、特に日本がハードの部分につきましてアメリカにかなり迫ってきたという事情が生じました。これは、日本の場合は国家的な支援で巨額の補助金を投入されまして開発されたわけでございますから、したがって、日本コンピューターは日の丸コンピューターと言われるようなこともあったのですが、ともかく迫っていった。こういう情勢の変化の中でIBMは、プログラムに対する保護の考え方に変化を来しておったのではないか。そして、著作権が有利だから著作権だという考え方になってきたわけです。しかも、このIBMはアメリカ政府を動かす巨大な力を持ち、特にアメリカ政府を介して世界的な論議の方向にも少なからず影響力を発揮できる存在だと思うのであります。これがこの法案の背景にある現実ではないか。  ここに読売新聞がございますけれども、昨年の三月二十九日にこう書いています。「アメリカは「著作権法による保護世界の大勢」と説明する際、西ドイツ、フランスなどの例を引くのが常。だが、通産省幹部は吐き捨てるように言う。「それらの国々のコンピューター市場は、すべてIBM社が五割以上、押さえている。国際会議の各国代表も大半がIBMの社員かシンパ」。」これがあなたたちが使う国際的な環境という中に含まれているのではないかというふうに考えられるわけでございまして、世界の市場を支配する力を持っているIBM、ATT、こういう状態から考えまして、この著作権法が通りました暁に、果たして日本コンピューター業界がこの支配を受けないで守り切ることができるかどうか。私は、ここのところは私の一方的な見解でなくて本当に慎重に審議をしてほしいという気持ちを持っておるわけでございます。  委員長、申しわけありませんが、私は本日反対の立場で討論をさせていただきたいと思っておりましたけれども、そういう状況ではございませんで、一言最後に一、二分申させていただきたいのです。  私は、コンピューター利用技術の発展が国民のさらには人類の生活や文化の増進に貢献することを強く期待するものでございます。この点は一致しております。しかし、コンピュータープログラム保護制度もそうした発展の方向に立って第一に考えられなければなりませんし、その意味では十分論議を尽くす必要があるように思います。そして、五十年という長期にわたる保護は、コンピューター利用技術の多様な開発を阻害し、ひいては文化、科学技術産業の発展にとってマイナスになるのではないかという心配を持っています。  次に、プログラム無体財産としての性格からも著作権とは異質の面があって、これも慎重に検討されるべきではないかと思います。他の国の圧力のもとで急に立法化することに対しては大きな疑問を持つわけでございまして、全体として超巨大な資本の利益を保障し、そのために我が国が犠牲になるようなことは断じて許してはならないと思うのでございまして、そういう意味で私はこの法案に対して残念ながら今のところ賛成することはできないということを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  170. 松永光

    ○松永国務大臣 今先生は、今回の著作権法改正がIBMの圧力によるとか、外国の圧力によってこの法案を提出したかのごとき御発言でございましたが、大変な誤解、曲解でありますし、また、この法案を提案した我々に対する非難めいた、侮辱めいたこととすら私は考えるわけであります。  この法案を我々が提出することになりましたことは、前々からしばしば申し上げておりますように、コンピュータープログラムにつきましては適切な保護をすべきである、これはもう、我が国国内においてもまた世界的においても異論のないところであるわけであります。  そうして、どういう法体系で保護すべきかということについての多少の異論はございました。しかし、文化庁の方で前々から答えておりますように、本年、ユネスコ・WIPO主催の専門家会議——ユネスコというのは御承知のとおりアメリカはこれに入っておりません。そのユネスコの会議ですら、専門家会議著作権法によりプログラム保護すべきであるという意見が大勢を占めておる。そしてまた、我が国の裁判所でもしばしば、コンピュータープログラム著作権法保護の対象である著作物に該当するという判例が示されておるということが実はあるわけであります。そうして、保護あり方につきましても、通産省との多少の意見相違はありましたが、しかし、これは法体系を整備して保護すべきものであるということについては異論はありません。  そしてまた、コンピュータープログラムが音楽とか絵画とかそういった鑑賞物の著作物とはやや違う点もあることは事実なんでありますけれども著作権法保護対象というのは、鑑賞の対象であるか、あるいは新たな経済財を生み出すものであるかという利用方法ではなくして、創作活動の結果出てきたものであるかどうかという点がポイントなんでありまして、そういう点で通産省と文部省との間にも意見の合意が見られまして、そうして、世界第二のソフトウエア生産国であるという日本の実情にかんがみ、世界の大勢におくれないようにしなければならぬ、また、そうした法体系を整備することが日本の国際的な信用を高めるゆえんでもある、こういう考え方でこの法案を提案したということを御認識願いたい、こういうふうにお答え申し上げる次第でございます。
  171. 山原健二郎

    ○山原委員 委員長、済みません。  私は反論するつもりはありません。事態の背景を申し上げたのであって、あなた方が圧力に屈してこの法案を出したと言っているわけではないことを申し上げておきます。
  172. 阿部文男

    阿部委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  173. 阿部文男

    阿部委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、採決に入ります。  内閣提出著作権法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  174. 阿部文男

    阿部委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  175. 阿部文男

    阿部委員長 この際、船田元君外四名から、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合、社会民主連合の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。馬場昇君。
  176. 馬場昇

    ○馬場委員 私は、提案者を代表いたしまして、ただいまの法律案に対する附帯決議案について御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     著作権法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について、適切な措置を講すべきである。  一 プログラム登録に関し別に定める法律の制定については、関係各方面との意見の調整を行い、速やかに対応を進めるとともに、今後ともプログラム権利保護の在り方については、国際的調和に留意しつつ、中長期的観点から検討を行うこと。  二 ニューメディア、データベースに関する著作権問題については、早急に検討を行い、制度改正を含め必要な措置を講ずること。  三 複写複製問題については、文献複写に関する著作権の集中的処理体制の確立に努めるとともに、出版者を保護するため出版物の版面の利用に関する出版者の権利の創設について検討を行うこと。  四 私的録音・録画問題については、国際的動向にかんがみ、録音・録画の機器・機材に対する賦課金制度の導入など抜本的解決のための制度的対応について検討を進めること。  五 著作隣接権保護の徹底を図るため、現在行っている「実演家、レコード製作者及び放送事業者の保護に関する条約」への加入についての検討を急ぎ、適切な対応を講ずること。  六 著作物の公正な利用について良い慣行が育成されるよう、著作権思想の一層の普及に努めること。   右決議する。 以上でございます。  その趣旨につきましては、本案の質疑応答を通じて明らかであると存じますので、案文の朗読をもって趣旨説明にかえさせていただきます。  何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。  以上です。
  177. 阿部文男

    阿部委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  178. 阿部文男

    阿部委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。松永文部大臣。
  179. 松永光

    ○松永国務大臣 ただいまの御決議につきましては、御趣旨を体しまして、今後努力をいたしたいと考えております。     —————————————
  180. 阿部文男

    阿部委員長 なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  181. 阿部文男

    阿部委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  182. 阿部文男

    阿部委員長 次回は、来る二十四日午前九時五十分理事会、午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十三分散会