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1985-06-12 第102回国会 衆議院 農林水産委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年六月十二日(水曜日)    午前十時一分開議 出席委員   委員長 今井  勇君    理事 衛藤征士郎君 理事 島村 宜伸君    理事 田名部匡省君 理事 玉沢徳一郎君    理事 小川 国彦君 理事 田中 恒利君    理事 武田 一夫君 理事 神田  厚君       大石 千八君    太田 誠一君       鍵田忠三郎君    菊池福治郎君       佐藤  隆君    鈴木 宗男君       田追 國男君    月原 茂皓君       野呂田芳成君    羽田  孜君       松田 九郎君    山崎平八郎君       若林 正俊君    上西 和郎君       串原 義直君    新村 源雄君       日野 市朗君    駒谷  明君       水谷  弘君    吉浦 忠治君       菅原喜重郎君    津川 武一君       中林 佳子君  出席国務大臣         農林水産大臣  佐藤 守良君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産省経済         局長      後藤 康夫君         農林水産省構造         改善局長    井上 喜一君         農林水産省農蚕         園芸局長    関谷 俊作君         農林水産省畜産         局長      野明 宏至君         食糧庁長官   石川  弘君         林野庁長官   田中 恒寿君         水産庁長官   佐野 宏哉君  委員外出席者         公正取引委員会         事務局取引部景         品表示指導課長 黒田  武君         外務大臣官房審         議官      木幡 昭七君         外務省中近東ア         フリカ局アフリ         カ第二課長   杉内 直敏君         国税庁税部所         得税課長    岡本 吉司君         海上保安庁警備         救難部警備第一         課長      神谷 拓雄君         農林水産委員会         調査室長    門口 良次君     ――――――――――――― 六月十一日  農林年金制度改悪反対等に関する請願外三件  (中林佳子君紹介)(第五四五九号) は本委員会に付託された。 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件      ――――◇―――――
  2. 今井勇

    今井委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。月原茂晧君
  3. 月原茂皓

    月原委員 この前農林水産大臣食糧安保の問題についてその柱だけをおっしゃっていただいたわけですが、それについてもう少し詳しく農水省考え方なりをお尋ねしたい、このように思うわけであります。  そこで最初に、食糧安全保障についての農水省考え方、その柱について、もう一度農林水産大臣から御説明願いたいと思います。
  4. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 月原先生にお答えいたします。  国政の基本で一番重要な課題というのは食糧安定供給安全保障を確保することだと思っております。  この点、三つ基本的考え方を持っております。  一つは、国内で生産可能なものは国土を有効に利用し生産性の向上を図りながら極力国内生産で賄うことを基本として、総合的な食糧自給力維持強化を図ることだと思います。その次には、どうしても輸入に依存せざるを得ないものについては安定的な輸入の確保を図るとともに、世界食糧需給の安定のための国際農業協力を推進するということだと思います。実はこういう場合にも輸入障害とかいろいろな不測事態が発生します。そういう場合に備えて備蓄を行うことを基本として食糧政策の推進に努めてまいる考えでございます。
  5. 月原茂皓

    月原委員 そこで、第二の柱に言われた安定輸入の件について、具体的に今どのような手を打っておるのか。今大臣のおっしゃった中に、世界全体が安定せぬといかぬのだから、そういう意味でいろいろな協力もしていくのだと言われましたけれども、その点はさておいて、我が国の立場から見て、我が国自身安定輸入のためにどういうふうな手を打っておるのか、御説明願いたいと思います。
  6. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 お答え申し上げます。  我が国がどうしても輸入に依存せざるを得ないような農産物につきましては、その安定的な供給を確保するという観点から輸入安定化ということに努めていかなければならないということでございます。  現在、アメリカ豪州カナダといったような主要輸出国との間におきまして、相互に需給動向なり貿易取引に関しますいろいろな個別の問題、品質のクレームの問題なども含めまして毎年二国間協議をやる、あるいはまた豪州カナダ等の間では安定的な取引目標といったようなものについて年々お話し合いをしながら、安定的な輸入を行うように努めておるという状況でございます。
  7. 月原茂皓

    月原委員 今、アメリカ豪州等というふうなお話で、うちの方が安定的に輸入できるように供給してもらいたいという国と常にコンタクトをとっておるというお話でありますが、もう少し個別の国、アメリカ豪州以外の国々について、それは物によると思いますけれども、もしあるならば、どういうものについてどういう国とやっておるかということを御説明願いたいと思います。
  8. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 我が国輸入に依存せざるを得ない農産物ということになりますと、小麦大麦大豆トウモロコシ、主としてこういったところになっております。そういたしますと、我が国に対します安定的な供給国というのはアメリカカナダ豪州というようなところになりますので、そういった諸国と二国間の協議を定期的にやっておるということでございます。それ以外の国につきまして、安定取引ないし安定供給というようなことで恒常的にそういった協議なり話し合いをするというような必要は今のところ余りございませんので、主としてその三カ国についてやっておるという状況でございます。
  9. 月原茂皓

    月原委員 輸入の点についてはわかりました。  先ほどの大臣の御説明で、国内自給できるものについては生産性を向上させたりしながらそれを高めていくんだ、そしてまた、安定輸入の件については今局長のおっしゃったような方法がある。そして大臣は、その方針の中で、何かトラブルがあった場合の備蓄ということをおっしゃいました。これについては農林省の方も既に十分研究されておると思いますが、短期的に乱れた場合にどういうものが対処しなければならない品目が、それについて今現実にどうやっておるかということは別として、どのくらいのものを持っておきたいと思うのか、そしてまた現在それがどういうふうに行われておるのかということについて御説明願いたい、このように思います。
  10. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 外国の不作でございますとか輸出国港湾ストあるいは輸出規制、こういうようなことでどうしても一時的な食糧供給の不安というものが出てくるわけでございます。そういう不測事態に対処いたしまして備蓄ということをいろいろと心がけておりまして、現在のところの考え方なり品目を申し上げますと、海外からの供給に多くを依存しております小麦飼料穀物大豆、こういうものについてそれぞれ備蓄をしておるわけでございます。  まず、食糧用小麦につきましては、外麦の総需要の約二カ月半分に相当する九十万トンというものを備蓄しておりますし、飼料穀物につきましては、配合飼料の主原料の需要の約一カ月分、それからトウモロコシ、コウリャン、大麦、こういうものを合わせまして総量として約百万トン程度備蓄するということでやっております。それから大豆につきましては、特に食品用大豆需要の約一カ月分ということで大体八万トン程度備蓄適正水準として行っておるわけでございます。このほかに、業者の中にもランニングストックといいますか流通在庫もございますので、そういうものを足しまして不測事態に適切に対処できるというふうに考えておる次第でございます。
  11. 月原茂皓

    月原委員 今のお話考えておる品目がわかったわけでございます。米の問題は今おっしゃらなかったが、これは後にいたしまして、素人的に言うと、大豆はこの間豆腐の問題が出てきたからということでしょうが、長い間の不測事態ということは考えないにしても、短いところで国民を非常に不安に陥れてしまうというような品目食料品はほかにどういうものがあると考えられておるか。そういうものはないと言うのならば今のこれでいいのですが、もしあるとすればそれに対しても一つ考えを持って、着実に国民の不安をなくしておくということば農水省にとって大切なことだと思いますので、その点とういうふうにお考えか、教えていただきたいと思います。
  12. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 できるだけいろいろな品目につきまして大量の備蓄をするということが国民にとりまして安心材料になることはもちろんでございますけれども、一方で、備蓄するものによりましては品質の保持とかあるいは財政負担とか流通の問題とかいうこともございますし、先ほど申し上げました基本的農産物以外のものにつきましては、物によっては代替関係といいますか、これがなくなればほかのもので充当するというような性格もございますので、先ほど言いました食用小麦なり飼料用あと大豆というような基本的食糧について国の責務として常時持っているということが基本じゃなかろうかというふうに考えております。
  13. 月原茂皓

    月原委員 それで、いよいよもう一つの我々の主食である米の問題でございます。これも国内でできるだけやっていくということでございますが、この備蓄と申しますか、そういうことについては今までも既にいろいろなところでお話しになられておると思いますが、どういうふうに考えておるか簡単に御説明願いたいと思います。
  14. 石川弘

    石川政府委員 主食でございます米につきましては、国内自給をするという基本論でございますので、不作その他のいろいろな不測事態考えまして、在庫水準をどのようにしたらいいかということを常々検討いたしておるところでございます。  御承知のように、過去において二回大変な過剰という事態もございましたけれども、昨年の端境期におけるいわば非常に奥行きのない需給ということもございましたので、私どもは第三期の計画の中に織り込みますときにその水準ということをいろいろ考えてみました。  一つは、不作のときを考えますと、どちらかというと多い方が楽だという数字がすぐ出るわけでございますが、米の場合、やはり主食として極力良質のものを消費者の方に差し上げるという観点に立ちますと、今度は低温保管をいたしまして品質面の劣化を防ぎますけれども、それでもやはり、新米との競合関係考えますと、余り古米充当率が高いということになりますとこれは操作が不可能でございます。もう一つは、多く持ちますことはそれだけ財政負担を膨大にいたしますので、この三つを勘案しまして、過去のいろいろな経験法則等考えました結果、三期の対策を立てます際に、単年度で約四十五万トン前後のものをほぼ三カ年で積み増しをしていくぐらいが水準として適切ではなかろうかということで、第三期の対策では今申し上げましたような形で在庫を積み増ししている途中でございます。  これはあくまで計画でございまして、豊凶とかあるいは需要の動き、特に転作の進度等いろいろな問題がございますので、余り硬直的に考えますと過剰なり不足という形になりますので、これを基本にして考えていきたいと思っておりますし、それから単に量の問題だけではなくて、先ほど申し上げましたように、やはり良質のもので、たとえ年を越して持ちましても十分主食に充当できるようにということで原則として低温管理、もちろんもみによるカントリーエレベーター貯蔵とかあるいは高冷地帯における普通倉庫も使いますけれども、そういう考え方で回転させながら在庫数量を積み増ししていこうということで、ことし三月に決めました米穀の管理に関する基本計画の中でうたっておりまして、これを実行していきたいと思っております。
  15. 月原茂皓

    月原委員 今、前半に食糧安全保障安定供給の問題についていろいろお尋ねしたわけでございますが、私がこういうことをあえてお聞きしたのは、最近格好いい学者の間では総合安全保障とかいうようなことがよく言われておる。その中にあって食糧安全保障というものは非常に重要なウエートを占めておる。紙の上では非常に重要なことと言われながら、本当に農林水産省はどういうふうに取り組んでおるのか、そして、これは国民にとって最も身近な問題であり、これが一つ崩れると非常に不安が出るだけに、この取り組みがどうであるかということをお尋ねしたわけであります。  これで今農水省の方も真剣に取り上げられておる。例えば今後米価の問題が出てくる、そういうときにまた備蓄というかそういう問題が絡んで必ず議論されると思います。そういうときにあって農水省として堂々たる考え説明できるような、今のお話でわかったわけですが、そういう理論的なことも固めておいていただかなければ、その場その場で備蓄議論が都合よく使われてくるということを私は心配して申し上げている次第であります。今の姿勢で十分だと思いますが、今後ともまたもう少し、土地がなくてもできるバイオの問題とか、そういうものも安定供給に資するのは非常に大きいものと思いますので、予算の面においても真剣にその問題に取り組んでいただきたい、このように思う次第であります。  次に、肉用牛をやっておる畜産農家負債、これはいつも言われていることでございますが、この問題についてお尋ねしたいと思います。  今農水省が把握されておる肉用牛関係農家負債の現状はどういうものであるか、どの程度負債があるのかということについて御説明願いたいと思います。
  16. 野明宏至

    野明政府委員 お答えいたします。  肉用牛経営負債実態につきましては、農林水産省統計情報部農家経済調査により調べておりまして、その調査によりますと、五十八年度末の肥育牛単一経営について見ますと、負債額経営全体といたしまして千五百六十万円というふうになっております。前年に比べて一%程度増加しておるわけでございます。二戸当たりで見ますと、飼養頭数がこの調査では若干減っておるということもございまして、一頭当たり負債額が三十三万円というふうな状況になっておりまして、前年に比べて二・五%程度増加しておるわけでございます。  なお、負債はそういうことでございますが、資産額は四千六百万円程度ということで、前年に比べて二・四%程度増加しておる、こういったような状況でございます。
  17. 月原茂皓

    月原委員 そこで、言い古されていることとは思いますが、その原因はどこにあると考えられておるのか、それについて御説明願いたいと思います。
  18. 野明宏至

    野明政府委員 負債実態につきましては、平均的に見た姿は今申し上げましたようなことでございまして、また肉用牛経営経営環境と申します点につきましては全般的に改善されてまいっておりまして、所得もそう多くないものの、最近ではふえてまいっておるわけであります。ただ、問題となりますのは、個別に見てかなりの負債を持っておる経営があって、こういった経営をどうしていくかということが問題になるわけでございますが、そういった経営についてどういうわけで負債が生じてまいったのかという点でございます。  もともと肉用牛経営特徴と申しますか、これは幾つかあるわけでございますが、肉用牛経営というのは、肥育経営につきましても、素牛導入いたしましてから肥育をして出荷するまでには一年以上かかるというように、生産期間長期にわたる、それから他の耕種などと違いまして相当の施設投資をしなければいかぬということに加えまして、えさ代というものもございまして、相当多額の運転資金を必要とするわけでございます。それから、肉用牛経営はもともと収益性といいますか所得率といいますか、これが低いわけでございます。耕種の場合には五割ないし六割という状況でございますが、例えば肥育経営の場合には一〇%台、こんなような状況でございます。  そういう特徴を持っておるわけでございますが、肉用牛生産自体歴史が浅い、それから資本のストックも乏しいという状況の中で、最近になって投資を行い、どちらかといえば借入金に依存して規模拡大を行ってきた経営というものがあるわけでございます。その場合に、素牛価格が高いときに規模拡大を行ったというふうな経営もあるわけでございます。そういうものの中には、ややもすれば飼養管理技術なり経営管理技術が必ずしも十分伴わないまま規模拡大が行われたとか、農協等営農指導がそれに十分ついていなかったというふうなことも加わりまして、借入金の償還が困難となって負債固定化あるいは累積するというふうな経営が出てまいっているものと考えておるわけでございます。
  19. 月原茂皓

    月原委員 今局長のおっしゃった中で、畜産局の文書にも「農協等を含めた経営資金管理の未熟さ等も重なり」こういう表現があるのですが、私、また後で農協等についての御指導についてお尋ねしたいと思います。  先を急いで御説明願いたいと思うのですが、その負債対策として最近農水省肉用牛経営合理化資金の問題について非常に真剣に取り上げて取り組まれておるのですが、そのことについて簡単に、どういうふうに新しい考え方負債対策をしようとしているのか、御説明願いたいと思います。
  20. 野明宏至

    野明政府委員 お答えいたします。  肉用牛経営負債対策につきましては、これまでも臨時特例的な措置といたしまして、五十七年度肉畜経営改善資金というものの融通を行ったわけでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、個別経営の中には負債をかなり抱えておるものもあるということで、ただいまお話しございました肉用牛経営合理化資金というものを六十年度から三カ年計画ということで創設することにいたしたわけでございます。  これは、農家の方に経営合理化計画というものをつくっていただきまして、経営状況がどうであるか、所得がどうであるか、またその中で生活費を差し引いて返せないものがどれだけあるかというふうなことを毎年見直しまして、その返せない部分について融資をしていく、その場合に農協等融資機関自助努力をしていただく、また関係団体と一体となりましてこれに取り組んでいただくということで、例えば既貸付金につきましても条件緩和等措置をあわせてとっていただくというふうなことと組み合わせまして、長期低利負債整理資金融通を行うというふうな内容でございます。  全体といたしまして、三カ年計画で五百億円というものを予定いたしておりまして、六十年度につきましては二百億円程度考えておるわけでございまして、現在その計画の作成方法なり、相当な指導を伴っていかないといけませんのでその指導方法等、細部について詰めておる段階でございます。
  21. 月原茂皓

    月原委員 今三カ年で五百億ということでそれに真剣に取り組もうというお話でございましたが、これは農水省が直ちにお答えできないと思いますが、私の郷里の方でこういう関係に携わっておる人間もこのことについて非常に期待をしておりますので、恐らくこの指導よろしきを得ればもう少し融資枠をふやしてくれとかいう話も出てこようかと思います。そのときにはまた農水省がその実態に応じて努力されんことを希望いたしまして、なかなか各省庁との関係もあるでしょうからあえてここで答弁を求めませんが、これが非常に順調に、農協等指導それからそれぞれの人の自立の精神、そういうものが積み重なって、これで立ち直ろうとした場合にはぜひ温かい手を差し伸べていただくとともに、融資枠の問題あるいは期限の問題についてもその時点で真剣に考えていただきたい、このように要望する次第であります。  続きまして、今、農家の方は、農産物輸入だ何だかんだ、我々だけがいじめられておるというような印象を受けておられます。その上に今度はいよいよ、今までやったこともない税の問題が新たに出てきておる。農協に勤めておる私の友人たちも頭を痛めておるし、農家自身もこれは大変なことになった。制度そのものを悪く言っているわけではありませんが、それになれるまでの期間非常に不安がっておると思うのですが、まずその点について農水省の方でどのように指導されておるのか、簡単に御説明願いたいと思います。
  22. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 お答え申し上げます。  本年の一月から青色申告者以外の事業所得者等につきまして記帳義務制度が実施されることになったわけでございますが、農林水産省といたしましては、この制度導入農家の過度な負担になりませんように、この制度導入についていろいろ議論がありました当時から税務当局に何回も要請を行ってきたところでございまして、税務当局とされましても、こういった要請に対応していただきまして、現実的な対応をなされていると承知をいたしております。
  23. 月原茂皓

    月原委員 そこで、税務当局にお尋ねしたいのでございますが、いよいよ一月一日から動き出したのですが、現実の問題として出てくるのはこれからの問題だと思います。  そこで、各税務署を含めた一線のところ、農協等を含めたそれを指導するところに対して税務当局としてはどのような手を打っておられるか、それを御説明願いたいと思います。
  24. 岡本吉司

    岡本説明員 国税庁におきましては、従来記帳慣行のない方に帳面をつけていただくということでございますので、その制度の円滑な定着がまず第一だというふうに考えております。そのためにはやや長期的な目で考えなくてはいけないだろうということを念頭に置いておりまして、特に納税者実態に十分配意をいたしまして指導を中心に運営してまいりたい、こう思っておるところでございます。  具体的に、例えば記帳制度適用者に対しまして昨年の秋十月以降、関係民間団体農協等の御協力を得ながら記帳開始のための指導説明会も、全国的に申し上げますと短期間の間に四千五百回ほど開いているところでございますし、さらに記帳の仕方を易しく説明しましたパンフレット等も作成してお配りし、あるいは税務署に備えておるというところでございます。本年度におきましても、こういった記帳説明会をさらに続けたいと思っておりますし、さらに御希望の方には説明会じゃなくて個別の指導まで考えているところでございます。  このように、国税庁といたしましてはそれぞれの納税者実態に十分配意した上で運営してまいりたいと思っておりますけれども、我々のお願いでございますが、正しい納税というためには正確な記帳ということが必要だろうと思っております。今すぐ満点というようには当然いかないわけでございますけれども、ぜひ長い目標を目指しまして着実に進歩の御努力納税者の方にお願いしたいと思っております。よろしくお願いします。
  25. 月原茂皓

    月原委員 税務当局に要望しておきますが、今おっしゃったように円滑な定着そしてそれを長期的に眺めていく、こういう点をしっかりと末端の方にも指導していただきたい、このように思うわけです。  最後に、この税の問題について今農家の方が非常に心配しておりますから、農林大臣大蔵大臣に会って、定着するまでは温かい指導、こういうことをお願いしていただきたいと思いますし、そのことについて農林水産大臣から言いただければみんなも安心する、このように思うのです。  これをもって私の質問を終わります。
  26. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 月原先生にお答えしますが、お話ごもっともでございます。そんなことで、私も今お聞きしまして竹下大蔵大臣とよく話しまして、今国税庁等から話があったように十分親切、丁寧に、定着できるようにひとつよくお願いしたいと思っております。
  27. 今井勇

    今井委員長 次に、小川国彦君。
  28. 小川国彦

    小川(国)委員 きょうの毎日新聞を農水省の皆さんもごらんになったと思うのですが、一面のトップで「市場開放行動計画政府指針まとまる 基準認証制度を原則廃止 海外データ認める」こういう大きな記事で、中を見ますと「政府は中曽根首相の国際公約である市場開放のためのアクションプログラム(行動計画)策定を急いでいる」その中の一つで、いろいろな日本の複雑で厳しすぎるという批判の強い基準認証制度について改めていく、その中に「安全保障、環境保全、国民の健康に著しく影響の大きいものを除き撤廃を原則とする」二番目に「海外の検査データを認め、例外は理由の明白なものに限定する」こういう記事があるわけであります。  私ども、貿易自由化の大きな流れの中で、中曽根総理が進めている市場開放行動計画というものが一つの大きな国政の流れとして動きつつあるという実態は理解しておるわけでありますが、その中で農産物の市場開放にも大きな問題がある。同時に表面化されてない問題で、日本におけるいろいろな動植物の輸入に伴って検査防疫体制というものが一体どういうふうになっているのか。特に最近においてアメリカあるいはヨーロッパ、世界各国から輸入した動植物、特に家畜の伝染病が日本の各地で非常に蔓延している、こういう状態から見ますと、きょう報ぜられている「海外の検査データを認め、例外は理由の明白なものに限定する」ということは、こういうものにも適用されてくるのではないかというふうに思うわけであります。  そういう点で、現状のいろいろな家畜の病気の蔓延状況から見ると非常な不安を感ずるわけでありますが、まずこの記事に対して農水省としてどういう公式なり非公式なり見解を持っておられるか、その点からまず伺いたいと思います。
  29. 野明宏至

    野明政府委員 お答えいたします。  今度のいわゆる行動計画の中の一つのアイテムといたしまして基準認証制度の問題が含まれておるということは承知いたしておりますが、具体的にその内容としてどういうものが盛り込まれるかということについてはこれからの問題であると考えております。ただ私どもといたしましては、いずれにいたしましても検疫の水準というものを引き下げるような内容というものは考えるべきではないというふうに思っておるわけでございます。
  30. 小川国彦

    小川(国)委員 まずそのことを前提としまして、私は現状の問題について触れていきたいと思うのであります。  最近、これは主として戦後になってくるかと思うのですが、家畜の輸入に伴って我が国で発生した牛のウイルスあるいは豚のウイルス、こういうものの病気が大変に数多く発生してきている。それからまたウイルス性の伝染病を除いた牛の主要な伝染性疾病あるいは豚の主要な伝染性疾病、こういうものがあると思うのでありますが、農水省の方に、牛のウイルス、豚のウイルス、これの輸入に伴う我が国に今までなかった病気が一体どのくらいの病名数で発生してきているのか、こういう実態把握についてまず伺いたいと思います。
  31. 野明宏至

    野明政府委員 お答えいたします。  そういった疾病というのは幾つかあるわけでございますが、最近問題となっておりまして私ども防疫対策に取り組んでおるものといたしましては、豚のオーエスキー病というものが典型的なものであろうというふうに考えております。
  32. 小川国彦

    小川(国)委員 皆さんの方で御準備がなければあれなんですが、例えば我が国で発生した牛のウイルス病でいくと、イバラキ病とか牛の流行熱とか牛のRSウイルス感染症とかあるいは牛の伝染性鼻気管炎ですか、それから牛のアデノウイルス感染症とかパラインフルェンザとか、牛のウイルス性下痢とかレオウイルス感染症とかずっとあるのです。  それからまた、我が国で発生した豚のウイルス病でいけば、豚コレラ、豚伝染性胃腸炎、豚水胞病、豚のインフルエンザ、豚の日本脳炎等々、こうあるわけですね。  私の手元にある資料でいくと、牛のウイルス病は十五種類くらいですね。それから豚で言えば十種類くらい上がっているわけですね。これの大半が戦前の我が国にはなかった病気ではないのかというふうに私は思うのでありますが、我が国で発生した牛のウイルス病あるいは豚のウイルス病、この中の、戦前は我が国になくて、戦後こういう動植物、家畜の輸入に伴って発生してきたと思われるもの、あるいは戦前我が国になくて戦後起こったもの、これはどのくらいの割合を占めるというふうに御検討なさっているのでしょうか。
  33. 野明宏至

    野明政府委員 割合ということについては今手元にデータがございませんが、今おっしゃられました病気の多くは、昔からもあったわけでございますが、やはりそれを発見する技術といいますか、そういうものに伴いまして出てまいっておるというものもあるわけでございます。中には戦後になって入ってまいったというものもあるわけでございますが、多くはやはり検査技術の発達という中で把握されてまいっておるというものが多いという状況でございます。
  34. 小川国彦

    小川(国)委員 しかしながら、諸外国で発生していて、そして我が国では少なくとも、検査技術ということもありましょうけれども、私は問題はそれだけではないと思うのですね。やはりいろいろな動植物の国際的な動きが活発になってくる、しかも我が国のいろいろな多頭飼育が行われるようになってきた、そういう状況の中で、海外から牛にしても豚にしても鶏にしてもいろいろな家畜が入ってくる。大家畜、小家畜が入ってくる。そういう中でやはり発生したのではないかというふうに思われるものがあるはずなんですね。その主要なものをちょっと挙げていただきたいと思うのです。
  35. 野明宏至

    野明政府委員 お答えいたします。  牛では、例えば牛の伝染性鼻気管炎というものがございます。それから豚では先ほど申し上げましたオーエスキー病のほか、例えば豚赤痢というふうなものもございます。
  36. 小川国彦

    小川(国)委員 私は農水省の方の実態把握というものをもう少し深めていただきたいと思うのです。そこで、当面非常に大きな問題になっているところに少し論点を絞って伺いたいと思うのです。  今日本で非常に流行しているこの豚のオーエスキー病、これは何か仮性狂犬病というのだそうで、私もこの名前を聞いてびっくりしたのですが、一番蔓延しているこの仮性狂犬病。そしてオーエスキー病というのはどういう意味ですかと聞いたら、いや、仮性狂犬病というと、豚にこういう病気があるということになると大変なことで、それを発見した人の名前で何かオーエスキー病ということになっているのだというふうに伺ったのですが、いずれにしてもこれが大変な勢いで蔓延している。それからAR病という萎縮性の鼻炎、SEP病という豚の流行性肺炎、TGE病という伝染性胃腸炎、私どもは、これらは皆我が国になかった、少なくとも検査技術の問題は別にして、恐らく我が国になかった病気が、海外にあったものが我が国に発生した、こういうふうに理解しているわけなんですが、この点はいかがですか。
  37. 野明宏至

    野明政府委員 お答えいたします。  ただいま幾つかお話があったわけでございますが、TGEとか豚赤痢とかSEPとかあるいはAR、こういったものが確かに海外から入ってまいっておるわけでございます。
  38. 小川国彦

    小川(国)委員 私ちょっと「食品衛生研究」という雑誌で見ましたところが、一九八〇年、昭和五十五年に、「わが国に侵入のおそれのある豚ウイルス病」というものの中に、仮性狂犬病、いわゆるオーエスキー病というものが挙げられていた。ところが、我が国に侵入するおそれがあるということになっていた病気が、もう五十六年になったら早くも、我が国で山形、岩手、茨城、この三県で、山形では百四十頭、岩手では百二十二頭、茨城では百二十四頭、三百八十六頭の豚のオーエスキー病の発生を見、それが五十六年、五十七年、五十八年、五十九年、六十年と、この五年間に、福島から千葉、神奈川、栃木、埼玉、愛知というふうな各県にこの病気が蔓延していって、昭和六十年度では発生累計は三千首八十一頭に上っている、こういう状況になっているようなんであります。  六年前には外国にオーエスキー病という仮性狂犬病が発生していて、我が国に侵入するおそれがあると昭和五十五年に言ったのが、五十六年には早くも我が国に入ってきて、この五年間で九県、三千百八十一頭にこの病気の発生を見た。これは私はやはり大変な事態ではないかというふうに考えるわけなんです。  こういう事態に対して、農水省としては検疫体制をよほどしっかりしていかないと、今農水省の方から答弁のあった病気、その他ここで細かに論議をすると限りがありませんけれども、実にたくさんの病気が海外から入ってきているというふうに判断せざるを得ない状況があるわけですね。そういう中で、この豚のオーエスキー病に見る限り、こうした五年間の大変な蔓延、私はまずこの数字、この実態というものを農林省はどういうふうに把握なさっているか、その点から伺いたい。
  39. 野明宏至

    野明政府委員 オーエスキー病の発生の状況でございますが、ただいま先生お話がございましたように、五十六年から発生を見ておるわけでございます。こういった状況の中で、オーエスキー病につきましては五十八年からこれを届け出伝染病という形で位置づけまして防疫対策をとっておるわけでございます。
  40. 小川国彦

    小川(国)委員 非常に簡単な答弁なんですが、どのような防疫対策をおとりになっていらっしゃるのですか。
  41. 野明宏至

    野明政府委員 お答えいたします。  この病気は子豚に感染した場合にはほとんどが発病してへい死するわけでございますが、育成豚とか成豚、親豚は感染いたしましてもほとんどが症状が出ないで経過する、それでこれが他への感染源となっておるわけでございます。したがいまして、この病気についての防疫の基本は、抗体検査をいたしまして、抗体が陽性になっております豚をできるだけ早く発見しましてこれを計画的に淘汰する、また、この病気にかかっていない正常な素豚を導入していくということが基本であるわけでございます。したがいまして、これにつきましては、一つは家畜保健衛生所の体系、それからもう一つは全国の家畜畜産物衛生指導協会が主体となりました自衛防疫の一環として防疫対策を進めておるわけでございます。  まず家畜保健衛生所、これは各県にあるわけでございますが、この病気にかかった豚をできるだけ早く発見していかなくちゃいかぬということで、検査機器、これはエライザー法によるものでございますが、これを整備していくということで、本年度までにすべての都道府県にこの機械が設置されるようにいたしております。それから、こういったオーエスキー病に汚染されました地域におきまして抗体検査を行って早期発見に努めていく、同時に、正常な素豚の供給体制を確立していくということで、先ほど申し上げました全国の家畜畜産物衛生指導協会が、優良な雌豚の供給農家につきまして繁殖雌豚の抗体検査を行いまして、その農場が正常であるという証明を行いまして、そういった正常な農場から素豚の導入を行う体制をつくるということで、これに関する事業を進めておるわけでございます。  そういうふうな対策を総合的に実施することによりまして、被害を最小限度にとどめるとともに、その撲滅を期していきたいと考えておるわけでございます。
  42. 小川国彦

    小川(国)委員 このオーエスキー病が発生することによって起こる農家あるいは農場の被害はどういうことになっておるのですか。
  43. 野明宏至

    野明政府委員 オーエスキー病の発生状況につきましては先ほど先生からお話があったような状況でございますが、被害の形態といたしましては、親豚から生まれた子豚、これがへい死するということで、せっかく繁殖雌豚から生まれた子豚がいわば使えなくなってしまうというのが具体的な被害ということになってまいります。
  44. 小川国彦

    小川(国)委員 AR病、SEP病、TGE病、これについての発生状況対策等はどういうふうになっておりますか。
  45. 野明宏至

    野明政府委員 一つは伝染性胃腸炎、TGEと言われておるものでございますが、これは五十九年に疾病検査によって疾病の摘発と申しますか発見を行っておるわけでございますが、約四千三百件ということになっております。それから豚の流行性肺炎、SEPと言われているのもでございますが、これが全体で一万九千件ということになっております。それからAR、萎縮性鼻炎でございますが、これが約二万四千ということになっております。  これらにつきましては、物によって予防注射を打つというふうな対応をとっておるものもございますし、また、ただいま申し上げましたようにこういった疾病検査によりまして発見していきまして、それに対する対応をとっておるわけでございます。
  46. 小川国彦

    小川(国)委員 このAR、SEP、TGEの病気は年度別にこの五年間を見るとふえているのですか。
  47. 野明宏至

    野明政府委員 ただいま手元にデータがございますのは届け出伝染病にいたしております伝染性胃腸炎でございます。これは一九八三年で頭数にいたしまして二万六千六百四十七頭でございます。年によって変動があるわけでございますが、例えば一九七六年、昭和五十一年には三万五千頭で、昭和五十五年を見ますと一万八千頭というふうな状況でございまして、年によって変動がございます。
  48. 小川国彦

    小川(国)委員 何というのか、データの把握がちょっと不十分のようでありまして、変動はあるということですが、そうすると先ほどおっしゃった件数は今まで何年間かの発生件数ですか、あるいは五十八年とか五十九年度に限っての発生件数ですか。AR、SEP、TGEについてそれぞれおっしゃられた発生件数ですね、四千三百件、一万九千件、二万四千件というこの発生件数は何年間かを累積したものですか、それとも単年度のものですか。
  49. 野明宏至

    野明政府委員 お答えいたします。  最初にお答えいたしました数字は五十九年単年の数字でございまして、これは疾病摘発によって摘発された頭数でございます。
  50. 小川国彦

    小川(国)委員 そうすると、十年とか二十年とか一定期間の累計はあるのでございますか。
  51. 野明宏至

    野明政府委員 手元にある資料でお答えいたしますと、TGEにつきましては五十九年が四千三百十九頭ということでございますが、五十四年から申し上げますと、五十四年が約八千、五十五年が一万八千、五十六年が七千、五十七年が八千九百、五十八年が一万七千四百十九というふうなことになっております。
  52. 小川国彦

    小川(国)委員 時間がございませんので、それらの戦後における累計をひとつ資料としてお出しいただきたいと思います。
  53. 野明宏至

    野明政府委員 お答えいたします。  資料として別途先生にお届けいたしたいと思います。
  54. 小川国彦

    小川(国)委員 今伺った数字を聞いて私大変びっくりしたわけでございますが、ARという豚の鼻炎、それからSEPという肺炎、それからTGEの胃腸炎ですか、こういうのが発生しますと、例えば萎縮性鼻炎というのは鼻がつぶれるような状況になってきてしまう、そうすると結局食欲が落ち込んでくるというようなことで、何か鼻の軟骨も腐ってくるというような状況になってくるので、やはり呼吸が苦しくなったりしてえさの食いつきが悪くなる。いろいろ詳しく病気に伴う発生症状については私ここで申し上げませんが、いずれも鼻炎、肺炎、胃腸炎を起こしてくると豚のえさの食いつきが悪くなる。そのために余計にえさを、ロスが多くなるというので二割、三割余計にえさを食べさせるようになる。日本全国の農家で飼っている豚の頭数から見ると大変な数に上っているわけで、しかも、今病気の発生している九県にあらわれているオーエスキー病の数字というのは本当に氷山の一角じゃないかと私は思うのですね。これはこの五年間で日本に入ってきてから三千百八十一頭になっていますが、私は、この数字はあるいは十倍か百倍か、もう恐るべき状況で蔓延しているのではないかというふうに思うわけなんです。  これは本来なら法定伝染病ということにして、そして屠殺してこれを絶滅するというぐらいのことができなければならないと思うのですが、問題は、この病気の大変な蔓延状況から、これを法定伝染病の中に加えてオーエスキー病になった豚は全部殺せということになったら、例えば一つの農場で七割もこの病気にかかっているというところでは破産、倒産しかねない状況が発生すると思うのですね。だから、そういうことのために農水省があえてこれを届け出制度にして法定伝染病にしなかった、それはある意味でそういった農家に対する配慮であったかもしれないのだけれども、結果的にはそれを撲滅する体制から見れば手ぬるいものになったというふうに私は思うわけなんですね。  ですから、私はこれを撲滅する対策として考えるならば、大変厳しいようですけれども、ある意味では法定伝染病にして撲滅する。しかし、何小法律でいくと、屠殺した者については、三分の一ですか、補助金なりそういうような見舞いか何かの金が出る、こういう制度があるということですから、私はそういう制度をもう少し、補償制度なりを活用して、やはり病気を絶滅するということに思い切った対策をつくるかあるいはまたこれらの病気に対する強力なワクチンをつくる。これは農水省の家畜の試験場でも研究されているしあるいは民間のいろいろなワクチン製造所なり会社ででもこの研究は行われている、あるいはアメリカや台湾でも、豚を飼っている関係から大変研究も行われているということなんですね。  だから、そういうことを考えてみると、日本全国で今豚は二千万頭いると言われているわけですね。この二千万頭いる豚の中にこれからこれがどんどん蔓延していくおそれを持っている。しかも、貿易自由化の中で中曽根さんが検査を簡単にしてどんどん入れろということになってきますと、このオーエスキー病一つを見ても大変な蔓延状況があるのに、さらに日本のいろいろな家畜に恐るべき病気が起こってくるという事態にもなりかねない。六年前に侵入するおそれがあると言ったのが、五年前の翌年にはもう入ってきてしまったという実態、それからこの蔓延状況の恐ろしさから見ると、やはり抜本的な対策農水省として立てるところへもう来ているのではなかろうか。  ですから、繰り返して申し上げますが、法定伝染病の方に入れるのかあるいは今のまま報告制度でいくのか、そのどちらでいくのがいいのか。それから、もし仮に今のまま報告制でいくとしたら、これをもっと徹底しないと、皆さんの方で、二千万頭いる豚の中から四万二千頭ですか、抽出して検査しただけでは、二千万の中の四万頭ではとてもこの病気の実態の把握はできないのじゃないか。だから、思い切ってここのところは全国的に、病原菌対策としてこの検査にどういうふうに取り組むかとか、そういうことを含めて総合的に考える必要があるのじゃないかと思うのですが、その点いかがでございますか。     〔委員長退席、田名部委員長代理着席〕
  55. 野明宏至

    野明政府委員 お答えいたします。  オーエスキー病につきましては、やはりその防疫体制の徹底を期していかなければならないと考えておるわけでございます。ただ、ただいまお話しの、一つは法定伝染病の問題でございますが、我が国の法定伝染病の対象にいたしております考え方と申しますのは、広範かつ急速に蔓延する疾病あるいは国際的に問題となる疾病、さらには人の公衆衛生上問題の大きい人畜共通伝染病というふうなものに限定して指定をいたしております。  先ほど大変な蔓延であるというお話がございました。オーエスキー病については、おっしゃいますとお力、養豚経営におきましてこれにかかった豚というものが出てまいりますと、やはり経営にとっては大変な痛手でございます。したがいまして、養豚農家もこの問題については大変注意を払っておるわけでございます。  現在の発生状況でございますが、例えば五十九年について見ますと、先ほどのお話にありました九県で戸数といたしましては二十四戸というふうなことで、どちらかといえばまだまだ局限的な段階でございます。したがいまして、私どもといたしましては、やはり先ほど申し上げましたように、早期発見をしてその撲滅に努めていくということが基本だろうと思っておるわけでございます。  それから、諸外国の中にはワクチン接種をいたしておるところもございます。先ほどお話ありました予防注射の問題でございますが、ただ、ワクチンを注射いたしますと抗体が陽性となります。したがいまして、オーエスキー病に感染をして陽性となった豚との区分がつかないということになるわけでございます。したがいまして、現在私どもは全体として正常化する方向で全県に検査機器も整備し、また先ほどの自衛防疫体制の中での取り組みというふうなことでその撲滅を期す方向で対応をいたしておるわけでございます。ワクチン自体、打ちましても、発病は抑えられても感染を抑えることはできないということがございますので、まだまだ我が国のオーエスキー病は、一部の外国でとられておりますように、どうにも手がなくて発病を抑えるためのワクチン接種ということにはなっていないわけでございまして、防疫体制を徹底して進めてまいることによりましてその撲滅を期する方向でやってまいりたいと考えておるわけでございます。
  56. 小川国彦

    小川(国)委員 それでは、農水省として、特に発生の中心になっている東北から関東についての実態調査をまずきちんとやる。五年間に発生した戸数が七十一戸、四百九十六腹、三千百八十一頭ですか、とてもこの数字ではない。先ほど局長さんが答弁なさったほかの病気の発生状況、AR、SEP、TGE、これは非常に早くから入ってきた病気であった。集積するとあるいは十万件の台に達するような数字もあると聞いて今大変驚いているわけですが、オーエスキー病自体もこのままいけば大変な勢いで蔓延していくのじゃないか。  これはまだその実例はないそうでありますが、医学的には人間にも感染する病気であるというふうに言われている。これを法定伝染病に入れずに届け出制だけにして、しかも市場に食肉として出ていくという状況、一般の国民の食事にも供せられているというふうに考えてみますと、農水省がまず被害発生県の実態調査をきちんとして押さえる。表面にあらわれた届け出の数字だけではなくて、届け出をすることによってそこの豚はどこからも買ってもらえなくなる、子豚の買い手が来なくなるということにもなるわけです。現にもうそういう状況が発生しているわけですから、そこのところを、先ほど局長さん防疫体制防疫体制とおっしゃるのですが、じゃあいつごろまでに撲滅するのか、撲滅作戦くらいきちっと立てて農水省が本格的に取り組まなかったら、これは大変な勢いで蔓延していくというふうに私は思うのですね。  だから、まずオーエスキー病一つに絞って申し上げますが、撲滅作戦なり撲滅対策をどういうふうに取り組むお考えがあるのか、そこをもう少し明らかにしていただきたいと思います。
  57. 野明宏至

    野明政府委員 オーエスキー病につきましては新しい病気でございまして、それを発見する技術というものにつきましても、エライザー法というのが最近開発された技術でございます。また抗原が開発されませんとその検査機器を活用することができないわけでございますが、オーエスキー病につきましてはその抗原を開発し、エライザー法という簡易な方法でそれを発見するという手法が最近になって確立してまいったわけでございます。したがいまして、そういった手法を活用いたしまして、先ほど先生お話しございましたような全県的に実態の把握を行うという点につきましては、私どももその必要性を痛感いたしておるわけでございまして、この問題については早期に取り組むようにして、それをベースにさらに防疫体制を整備していくということで取り組んでまいりたいと思っております。
  58. 小川国彦

    小川(国)委員 もう一つ、この問題については系統造成豚を国で育成していく、ランドレースなどについても千葉、茨城、埼玉のいろいろな畜産試験場やら農業団体やらで研究開発を進められているということなんですが、国として系統造成豚をつくっていくという考え方はないのですか。
  59. 野明宏至

    野明政府委員 現在、国の種畜牧場におきましては産肉性の高い優良な種豚をつくっていくということで系統造成について積極的に取り組んでおるわけでございます。ただ、実際に肥育農家への供給という点につきましては、例えば全農とかそのほかにも種豚場がございます。今の養豚経営におきましては約七割が繁殖と肥育の一貫経営でございます。三割が子豚を買ってきて肥育するという形になっておるわけでございます。したがいまして、全農等の子豚を供給する基地あるいは雌豚を供給する基地についても防疫体制の徹底を図って、心配のない豚が供給されるようにしてまいりたいと思っております。
  60. 小川国彦

    小川(国)委員 農林大臣、今いろいろな問題点を申し上げました。私、率直に申し上げて、農水省としてこういう家畜の伝染病対策、それから家畜の輸入に伴う伝染病発生対策がまだ非常に不十分である、それから外国から入ってきた病気が国内で蔓延しつつあることに対する対策が非常におくれている状況を痛感するわけです。こういう病気の対策でありますから、国内の畜産振興という面から見れば、思い切って最優先で予算的にも対策的にも施策を講じていくべきじゃないか、こういうふうに考えますが、大臣としての所見を伺いたいと思います。
  61. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 小川先生にお答えいたします。  実は、私は大変申しわけないのですが、豚のオーエスキー病というのはきょう初めて聞きまして、質疑応答を聞きながら急性伝染病で非常に怖いものだなと思ったわけで、子豚ならすぐ死ぬし、またほかに感染してもすぐ死ぬ、感染経路も四種類あるような感じで、島とか口とか呼吸器、あるいは母豚から子豚への乳汁、それからふん床とあるということで、先生おっしゃるとおり大変な病気だな、こういうふうにお聞きしておったわけでございます。  検査体制等につきましては局長が答弁したとおりでございますが、私はまた実態調査させます。そして、それに基づきまして早急に、報告制がいいか法定伝染病がいいかを踏まえて検討したいと思っております。よろしくお願いします。
  62. 小川国彦

    小川(国)委員 具体的に申し上げますと、外国からのいろいろな肉の輸入の差益が二百四、五十億あるわけです。その使途を見てみましたときに、全国家畜畜産物衛生指導協会というのですか、そういうところに予算が流れているのですね。今のこういった病気の発生しないところを、ここは病気が発生していないうちにマークしてやる。だけれども、発生していないうちにマークをしてやるということよりも、発生しているところに思い切った対策を講ずることの方が大事なんじゃないか、ここは大丈夫なんだよと言ってやるより、ここで発生しちゃって困っている、これは、日本の国内畜産農家が好んでつくった病気じゃないので、外国からどんどん輸入されてくる中からそういう病気が持ち込まれてきて被害を受けておる実態があるわけなんですから、同じ輸入の中から生まれた差益などもあるのですから、そういうものを思い切ってこういうところへつぎ込んで、抜本的な対策を講ずる予算、これは、国から予算をもらわなくたって、農水省が動かせる予算があるのですから、そういうところから思い切って出してやっていく、こういうお考えもぜひ持っていただきたいと思いますが、そういう点はいかがですか。
  63. 野明宏至

    野明政府委員 オーエスキー病に対する対策につきましては、国の補助事業、これも相当の額を計上いたしておるわけでございます。ただいま畜産振興事業団のお話もございましたが、いずれにいたしましても、実態調査を踏まえまして、適切な対応をしてまいりたいと思っております。
  64. 小川国彦

    小川(国)委員 この点については、ひとつ早期に絶滅のための措置を要望したいと思います。  それから次に、農業後継者の問題について、これは大臣あるいは農水省の担当の方々から御所見を承りたいと思うのですが、日本の農家では今、農地とか山林、いわば田畑ですね、そういうものを農業後継者がそっくり相続する。これを不動産として相続する人はいるわけですけれども、本当に農業経営者として相続する人は、みんな出稼ぎなり勤めになり行ってしまって、いない。だから、農家の資産を承継する人はいるけれども農業経営を承継する人が全くいないという状況が今発生しているわけですね。  アメリカなどでは、農家が息子に何ヘクタールかの財産をただやるのじゃなくて、子供に全部買わせる。アメリカの相続法というのは、大体一代か二代相続したら財産がなくなるようになっていますから、非常に相続税が高い。ですから農場を経営している農家の人は、その財産を自分の息子に、日本じゃ考えられないことですが、有償でそれを売る。せがれが買う力がないし農業をやる気がなかったら第三者にそれを売っちゃう。農家の両親はその金で余生を暮らす。またその子供もそういうふうにやっていく。それだけにアメリカの農業の中では、農家を後継した息子は、おやじから多額の金を出して買ったものですから、だから農業経営に真剣に取り組んでいる、こういう形なんです。  ところが日本では、親からはただで農業財産をもらう、そのかわり親と一緒に暮らしてよく面倒を見るという形になっているのですが、どうもそこのところで農業経営に対する熱意というものがいま一つ欠けている点があるのじゃないか。そういう意味では、やはりこれから農業後継者をしっかりつくっていかなければいけない。しかも科学技術の進歩した時代になってまいりますと、農業後継者をいろいろな面で育てていくという面では、人的能力もすぐれた者にしていかなければならない、あるいは新しい技術に対する適応能力も持たしていかなければならない。それからまた、そのやっていく人たちの土地利用権の集積もしていかなければならぬ。こういう農業経営を本当に引き継いでいく人材をどう育てていくか、それを引き継いでいくシステムをどうつくってやるかということが私は当面急務じゃないかと思うのですが、その点について、農水省としてどういうような農業後継者に対する考え方を持っているか。  それからもう一つ、日本で農業をやりたいというのは、もし仮にそういう希望があっても、現実には農業後継者でなければ、農家の息子でなければできない。だけれども、考えてみれば、では医者の息子が医者になったらいいかというと、そう言ってはなんだが、医者の息子でも、無理して、親が医者で病院をやっていたから、能力的に劣った人が、医者に適さない人が医者になったらいいかというと、それはやはり不適格だと思うのですね。それと同じで、親が農業をやっていたからやはり農業をやるということじゃなくて、農業に関心がある人、やる気のある人が農業をやっていくという形をつくっていくべきじゃないかと思うのです。  そういう意味では、農林省の言葉で言うと新規参入というらしいのですけれども、よそから農業をやる気がある人がもっと農業に入ってこられる、農業を跡取りでやる人がいなかったら、サラリーマンでもあるいは自由業でもあるいは中小企業でも、そういうところの人が、あるいは教育関係に携わる、どういう人たちでも、農業をやりたいという人、農業を本当にやる気のある人たちにやってもらうという形もやはりつくっていくべきではないか。  私は国土庁でつくっている四全総のあれを見てびっくりしたのですが、今一九八〇年に七百万人いる農業就業人口が四十年後の二〇二五年には八十万人になるという国土庁の計画が出ているのですね。それでしかも、六十五歳以上のお年寄りが一九八〇年には二四・五%だけれども四十年後には六五%を占めるという国土庁の数字も出てきているのですね。こういうのを考えると、まさに日本の農業の後継者と日本の農業の将来というものは大変肌寒い感じになってくるわけなんです。七百万人の農業就業人口が一割近い八十万人になってしまう、今六十五歳以上が二四・五%というのが六五%なんということになると、本当に少数の、しかも大半がお年寄りで農業をやってもらうという事態考えたら本当に慄然たる思いがするわけで、そういう四全総の示している将来展望を含めて、一体農業後継者をどうしていくのか、大変大きな問題でありますけれども、簡潔に農水省考え方をお聞かせいただきたい。
  65. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 農業後継者の確保については、今先生のお挙げになりました四全総の見通しもございますし、「八〇年代の農政の基本方向」の中でも、大体同様な農業従事者の減少とか高齢化の進行、それからいわゆる中核的な農家が相当減少していく、そういうような見通しもしております。  そういう中で我々として農業後継者をどういうふうに確保するかということでありますが、第一に、最初にお述べになりました資産承継の問題については、農林水産省の方針は、どちらかと申しますとむしろ親からの資産承継に際して相続税の負担を軽減していく、それからできるだけ一人の農業後継者に資産が集中していくようにということで、むしろ負担をできるだけ軽減するようにという、そういう方向の政策をいろいろとっている次第でございます。  それから、具体的に人の確保につきましては、学校教育の問題もございますし、それから私どもがやっておりますのは、農業後継者を主として対象に想定しました中央の段階での農業者大学校あるいは関係の団体がやっております農民の自主的な教育の促進、それから県段階では農業者大学校、この辺の教育を中心に進めております。それから、若い人たちがいわゆる仲間づくりを進めるということで自主的な集団活動を改良普及事業の中で助長する、あるいは資金の融資の面では農業後継者資金、農業改良資金の中にございます後継者の無利子の資金、さらに今回の金融の改正の中で拡充いたしました農林漁業金融公庫の総合施設資金、こういう融資面の措置も講じておる次第でございます。  こういうことで、全般的に後継者の確保については大変努力しなければならない問題がございますが、その中で特にお挙げになりました新規参入の問題については、これも「「八〇年代の農政の基本方向」の推進について」の中で、今後新規参入についても考えるべきだということをちょっと書いております。これは具体的には先ほどちょっと申し上げました金融措置の中で、いわゆる農家の子弟ではない方でも融資を受けた実績が少しあるようでございますけれども、ただ、これは全体的には、そういう道を開くと同時に反面がなり慎重にならなければならない面もございまして、確かに農家の子弟だけが後継者になるという狭い考えではいけないわけですけれども、同時に、余り幅を広げますと、農業をやっていない方が比較的投機的な、あるいはそんな気持ちで農地等を買うとかいうようなことも助長しかねませんので、この辺は農地法等の適用上は可能であるわけですけれども、十分そういう本当に農業を一生懸命やるという方に農業を始めていただく、そういう政策についてはこれからの問題として考えていかなければならないと思っております。
  66. 小川国彦

    小川(国)委員 現在の農家戸数が四百五十万戸あるわけですが、そのうち本当に専業でやっている農家というのは五十万戸。四百五十万戸農家があるのですが、実際は専業でやっているのは五十万で、あと四百万戸近くは農業をやらないで出稼ぎに行ってしまっている、そういうことになったり、ほかへ就職してしまっている。そうすると、さっき申し上げたように、これからコンピューター時代、いろいろなオートメーション化の時代が来る、あるいはまたロボットの導入もある、そういう近代科学、科学万博じゃありませんが、ああいういろいろな新しい科学技術がどんどん進歩していく中で、農業も当然そういうふうな中に進んでいく状況がある。ところが、農業だけはさっき申し上げたように、親から資産は受け継ぐけれども、経営の主体になっていくだけの教育なり条件、時間がないから申し上げられませんが、例えば最近の農業高校を見ますと、一番試験が易しく入れるのが農業高校だから、農業をやる気はないけれども農業高校に入るという形が多くなって、それからまた農業高校を卒業したけれども農業をやらない人が大半だ、こういう状況になってきているわけですね。  ですからそれだけに、四百五十万戸の農家の中からだけ後継者を考えているのじゃなくて、全国に四千万戸の一般の家庭があるわけです。その全国四千万戸のいろいろな家庭の中からも、農業をやりたいという人があったらそういう者を受け入れていく。農地の流動化法案もありますし、さっき白書で示された一、二の、一般の全く違うサラリーマンの世界のようなところから農家へ入った事例はほんの数例としてはありますけれども、そういう流れとしてはつくられていない。これだけ職業選択の自由が来た時代にはそういうものをつくって、日本農業をこれからの若い後継者によって維持し発展させていく、そういうことは、ぜひ農水省として総合的にこの問題を考えて取り組んでいただく必要があるのじゃないかと私は思うのですね。その点に対して最後に御見解を承りたい。
  67. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 小川先生にお答えいたします。  実は一般論でございますが、基本的に農業の後継者が少ないということは、日本農業の将来をどう思うかということで非常に暗い感じを持っている。したがって、一番大切なことは、日本の農業の将来をどう明るくするか、少なくとも、他産業に比べて収入等を含めましても同じにどうしてするかということが基本的に大切だと思います。そうすれば恐らく後継者もどんどん出てくる。そんなことで、実は一番大きな問題は、生産性を高めるという言葉をよく使いますが、経営規模の拡大はそう進んではいない、そういう形の中にこれからもなかなか進みにくい、そうしたらどうしたらいいか、私は生産性を高めることに二つあると思います。  経営規模を拡大するということと、もう一つは今の同じ経営生産性を倍にするということ、これがバイオテクノロジーだと思います。そんなことで、実はつい最近も、例えばイチゴなど、同じで倍できるという話を聞きました。耐病性のイチゴで倍できる、ユリでも倍できる、どんどんハイテクでできてくる。したがって、そういうものをうまく活用すれば土地利用型農業、特にこれについていろいろ言われていますが、土地利用型農業におきましてもすばらしい農業ができるのじゃないか。こんなことで、私は、日本農業を明るくすれば、今先生おっしゃったような後継者問題もおのずから解決していく、このように理解して頑張っておりまして、御理解をひとつ心からお願いする次第でございます。
  68. 小川国彦

    小川(国)委員 終わります。
  69. 田名部匡省

    ○田名部委員長代理 串原義直君。
  70. 串原義直

    ○串原委員 私は、過般、列国議会同盟会議がアフリカのトーゴ・ロメで開催されまして、そこに出席をいたしました後、エチオピアを訪問することになりまして、かつて安倍外務大臣が現地を訪問いたしましたメケレ市郊外のメケレ救援センターを訪問する機会を得たわけでございます。なかなか厳しい条件の中でこの訪問ができましたことは、外務省当局の皆さんの大変な御努力をいただいた、それからアフリカ協会の皆さんにも御高配をいただいたということで、この際、改めて私は厚く御礼を申し上げておきたいと思うのでございます。  そこで、メケレの難民キャンプを視察をし、エチオピアの現状を、そう長い時間ではなかったけれども訪問さしてもらいまして、幾つか感じた点がございます。このことに対して以下順次伺ってまいりたいと思うのでございますが、私どもが伺いましたメケレ市郊外の難民キャンプには、キャンプ内における収容された皆さんはおよそ六万人という多くの人たちでした。ところが、間いて驚いたのでございまするけれども、キャンプに収容してもらえない多くの皆さん、六万八千人というふうにたしかあのときにお聞きをしたと思うのでございますが、合わせますと、十三万近い皆さんがあの狭い難民キャンプの地域に飢えで苦しんでいたわけであります。大変に悲惨なものでありました。先ほど申し上げましたように、私どもは大変多くのものを教えられたわけでございますし、ぜひ頑張るようにという激励も関係当局にして帰ってきたところでございます。  まず大臣に私は伺いたいのでございまするけれども、このアフリカにおける飢餓の問題あるいは後ほど申し上げますけれども、山から緑が消えたという問題、これはまさに人ごとでないということを本当に痛感をした次第なのであります。まさに農業、食糧問題は国家存立の基本である。ある意味でエチオピアは農業問題に対する、適当な言葉がどうかわかりませんけれども、教師であるというふうに感じて私は帰ってまいりました。まさに私どもは食糧自給度をもっと高めるために努力をしなければいかぬ。日本は今穀物自給率が大臣御前知のように三〇%に落ちてしまったわけでありますから、もうこれ以上食糧自給率を落としてはいかぬ、外国から輸入してはいかぬ、このことをきちっと改めて確認する機会に来ているのではないか、こう思うのです。  実はたまたまでございますが、けさ日本農業新聞を見ましたところが、こういう記事が出ています。ミッテラン・フランス大統領は、自由化に反対だということを世界食糧理事会年次総会で演説をしたというのであります。御承知のように、フランスは一二〇%と言われるほど自給率の高い国であります。それにもかかわらず、農産物の自由化はもうしてはいかぬ、こういうことを彼は言ったというのであります。まさにフランスの大統領だなということを実は感じたところでございますが、急いでちょっと読みますと、ミッテラン大統領は、   「食糧生産は極めてもろい分野であり、貿易を完全に自由化することが経済を刺激し、すべての人の要求を満たす唯一の方法だとは思えない」としたうえで、「適切な方法は、市場を組織化することであり、フランスとしては今後、新ラウンド交渉の場でこの考えを強調したい」と語った。 というのであります。  なるほどというふうに私は思いまするけれども、日本の食糧を管掌する責任者の農林水産大臣、あなたの考え方を今申し上げた立場に立ってきちっとこの際、お示しを願いたい、こう思うのであります。
  71. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 串原先生にお答えいたします。  私、先ほどのアフリカの問題、全く同感ですとともに、実は、政治家の責任は大切だということを改めて教えられたわけです。  もう一つ、ミッテラン大統領のことは私も読みました。うれしかったというのが私の感想でございます。私も同じ気持ちということで、さすがミッテラン偉いな、こんな感じがいたしたわけでございます。  私は、国政の基本ともいうべき重要課題というのは、やはり食糧安定供給安全保障を確保するということが一番だと思っています。そんなことで、三つ考え方基本にこれからの食糧政策を進めたい、こう思っています。  その第一は、国内で生産可能なものは極力国内で生産を賄うことを基本とし、そのためには国土を有効利用し、生産性の向上を図るということでございまして、総合的な食糧自給力維持強化を図るということでございます。それから、どうしても不足するものがございます。そういう意味で、輸入に依存せざるを得ないものについては安定的な輸入の確保を図るとともに、世界食糧需給の安定のための国際農業協力を推進するということでございます。三つ目には、いろいろな障害がございます。輸入障害の発生とか、あるいは国内不作等の問題がございます。そういうときの不測事態に備えて備蓄を行うということで、この三つ考え基本として今後の食糧政策の推進に努めてまいりたいと考えております。
  72. 串原義直

    ○串原委員 ぜひひとつ食糧は自国で確保するということを、農林省はもちろんですけれども、日本政府の基本として今後頑張っていただきますように、この際、改めて強調させていただきたいと思います。  次に、いま一つ大臣、今貿易のあり方、日本の貿易収支黒字問題で各国からの批判がなかなか強い、したがいまして、市場開放対策が今検討されておるわけでございますけれども、この対策につきましては、今申し上げた農産物を除外するという立場に立ちながらもそれぞれの対策を立てなければならぬだろう、こう私は思っているわけでございますけれども、その具体的なことはここで触れる機会じゃありませんから触れません。  そこで伺いたいことは、アフリカやエチオピア等の発展途上国に思い切った援助協力をしていくということが、つまりはこの貿易収支問題、市場開放問題等々に対する各国からの理解を得るところの大事な施策ではないのか、こう思うのであります。それは、安い、物のいい品物が外国に出るということになると、それを欲しいという国もあるわけなんですね。そのことを否定するわけにはいかないわけでありますから、なかなか市場開放問題の解決ということは難しい。しかし、その各国に対する理解を得るということは、発展途上国に対する援助協力を日本が一生懸命やる、そのことでそれらに対する多くの国々の皆さんの理解を得ることもできるだろう、私はそう思う者の一人なんですよ、大臣、その考え方はいかがですか。
  73. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えします。  自由世界第二位の経済力を有する我が国の国際的責務は何かというと、今先生の御指摘のとおり、開発途上国の経済社会開発への支援を通じて南北問題の解決をすることだ、こう思っています。特に食糧、農業開発のためには実は二つの考えに基づいてすべきだと思うのです。  その一つは、食糧不足に悩む開発途上国の食糧増産を図ること、それからもう一つは、その多くが農業国である開発途上国の国づくりに資するものであることから、我が国としても政府の開発援助の重点分野として推進することだと思います。そんなことで、我が国の援助計画拡充への努力は国際的にも高い評価を受けており、このような援助の質及び量の両面から今後とも拡充努力し、そして開発途上国との経済関係改善にも資したい、こう考えております。
  74. 串原義直

    ○串原委員 それでは、外務省来ていらっしゃいますか。――外務省に伺うことにいたしますけれども、ただいま大臣に開発援助に対する積極姿勢について私は質問をしたところでございますけれども、アフリカの援助等々にはより力を入れていくべきだ、こういうことを今回の私どものアフリカ訪問に当たって痛感して帰りました。特にエチオピアの対策は緊急を要するというふうに考えて帰りました。したがって、国内の機関、民間団体とも協力をいたしましてより援助の手を差し伸べるべきである、こういうふうに思うのですけれども、いかがでしょうか。ここ三年ほどの援助の現状について説明をいただくと同時に、エチオピアに対する緊急援助対策が行われたはずです、その若干の内容と、今後こうしていきたいと考えておりますという方針があったらお伺いをいたしたい。
  75. 木幡昭七

    ○木幡説明員 お答え申し上げます。  アフリカに対します援助、特に食糧を中心とする援助の緊急性については、先生が実地にごらんになられて御指摘になられたとおりでございます。したがいまして、昨年来安倍大臣みずからアフリカ、エチオピア等を訪問されまして、我が国としては、こういう食糧、なかんずく穀食糧不足に悩む国に対して緊急の援助とともに、さらに大臣からも御答弁ございましたような食糧増産関連の援助等々を含めて、これから非常に積極的な姿勢で臨むということを内外に明らかにしているわけでございます。  特に昨年来どのような措置をとったかということから申し上げますと、まず昨年、総額一億一千五百万ドルの食糧関係の援助の実施を早々と打ち出し、かつそれを実行したわけでございます。さらにまた十一月の安倍大臣のアフリカ諸国訪問の際に、追加的にもう少しやらなければいかぬということで、五千万ドルの追加的な食糧、農業関連の援助を約束され、これまた年度内に実施したわけでございます。  昭和六十年度、今年度におきましては、緊急性の高い食糧援助及び食糧の貯蔵、輸送手段に対する援助に加えまして、アフリカの農業開発、食糧増産の体制の確立に資するための無償の資金協力、さらにはまた技術協力等を合わせました二国間の贈与としまして、総額六百億円を目指すということで努力しているところでございます。このような無償のほかに、さらに円借款につきましても、一億ドルを目指して弾力的に努力するという考えでやっているところでございます。  さらにまたここで申し上げておきたいことは、このような対アフリカ農業関係の援助につきましての指針を得るということを目的といたしまして、四月に中野元農水事務次官を団長とする政府調査団をアフリカに派遣しまして、その調査結果に基づきまして着実なアフリカ支援の体制をつくり、地道に努力も続けていく、こういうことでやっているところでございます。  また、ちなみに、先生から事実関係の御要望もございましたので、エチオピアについて過去三年来の数字を申し上げますと、一九八二年度から八四年度、八四年度はまだ集計中でございますが、三年度ということでございますのでそこまで申し上げますと、八二年度につきましては、債務救済を中心とする無償資金協力が四億円でございます。さらにまた八三年度食糧援助、債務救済、災害援助等を含めまして八億五千万円でございます。八四年度、これは総額で無償資金協力関係が十二億七千九百万円、内訳は食糧援助、災害援助等々を含んでいるわけでございます。そのほかにも、研修員の受け入れとか専門家派遣とか技術協力関連の援助がございますが、これについては、細かいところでございますので御要望がございますればまたお答えさせていただきますが、典型的な、今御指摘のありましたエチオピアにつきましては、そういうところでございます。また具体的なその他の国についても御要望がございましたら申し上げたいと思います。
  76. 串原義直

    ○串原委員 そこで、今後の対策についても、ただいま若干お触れになりましたけれども、積極的に取り組んでもらいたいというふうに思うわけでございます。  具体的にエチオピアに関連してさらに伺うわけでありますけれども、日本から援助物資が随分送られているはずです。各国からも送られている。それがなかなか現地に届いていないという意見も私どもが行く前にありました。その辺にも大きな関心を持って伺ったのでございますけれども、行ってわかりましたことは、確かに港までは着いているという話で、関係者から随分と説明いただきましたから私どもはそう理解をいたしましたが、港から現地にまで着かない。つまりそれは輸送力がないということをよく知ることができたわけなのであります。  したがいまして、せっかくの援助物資を一日も早く現地の被災民の諸君に届けたい、そう考えますだけに、私たちは輸送力に対する配慮をよりしなければならぬ、こういうことを感じて帰りましたし、また、向こうの救済調整委員会議長兼労働社会大臣や外務大臣さん等々からも、この輸送力の問題についてぜひ配慮してもらいたい、こういう強い要望を受けてきたところでございます。とにかくトラックがない、トラックがあっても修理する部品がない、さらにタイヤがないという話なのであります。そういうことを感じて帰ってまいりましたし、帰ってまいりまして外務省にも要請を申し上げたわけでございますが、その対策を急いで考えてやるべきではないか。せっかくの日本の好意というものが現地に届かないということであるなら、これはまことに遺憾なことだ、こう考えて帰りましたので、それに対する対策、いかがになっておりますか。
  77. 杉内直敏

    ○杉内説明員 お答えいたします。  私どもといたしましても、エチオピアにおける輸送力増強の必要性また緊急性ということについては非常に痛感している次第でございまして、先生御指摘の国内輸送用の車両のパーツとかタイヤ等々の供与につきましても検討しておりまして、そのうちスペアタイヤにつきましては、最近、アフリカ協会から一千二百本のタイヤを、価格にいたしまして約四千万円でございますけれども、昨年来、対アフリカ支援ということで国民の皆様から寄せられた募金から寄贈するということで話がまとまりまして、既に日本の港を出たところでございます。六月の末には着くことになっております。それからまた、スペアパーツについても同じような形でできないかということを今検討しているところでございます。
  78. 串原義直

    ○串原委員 スペアタイヤについては急いで対策をとってもらって敬意を表したいというふうに思いますが、そのパーツについても強い要請がありました。これは御検討いただいているということでありますから、できるだけ早く対策を立ててほしい。強く要請をしておきます。  それと同時に、これは簡単にはいかないことは理解できるけれども、何とかトラックを考えてやることはできないのか、いかがです。
  79. 杉内直敏

    ○杉内説明員 車両につきましても、実はちょっと私、申しおくれましたけれども、日本自動車工業会から車両十台でございましょうか、エチオピア向けに寄贈したところでございますけれども、私どもとして、現在一番有効にいかなる形でできるかということ、これは諸外国とも協議をしつつ、さらに検討したいと思っております。
  80. 串原義直

    ○串原委員 では、次に伺いますけれども、今大臣からもアフリカ等における発展途上国に対しての援助は農業開発が最も重要であるという話がありました。そこで、審議官からは中野調査団の話もございました。したがいまして、積極的に取り組んでいくという方向ではあろうけれども、さらに私、この際強調して伺いたいわけでございます。  とにかく、あれらの国々を再建する、救うということになるには、何といっても農業再建ということが優先だ。いま一つは水を確保することだということを痛感して帰ってきました。いま一つは山を緑にするということ。この三つだと思いました。中野調査団等を派遣していただいたその努力は評価いたしますが、いよいよ来年度予算編成に向けて皆さんもこれから努力をされるわけでありますから、その立場で伺いますけれども、アフリカにおける発展途上国、これは農業開発、水の確保、山の緑に対する復興、山の復興、このことに対してより積極的な外務省の取り組みが必要だ、要請をしたい、こう思うのであります。いかがですか。
  81. 木幡昭七

    ○木幡説明員 先生御指摘の点につきましては私どもも全く同感でございます。関係農水省ともかねがね協議さしていただいておりまして、既に過去におきましても水関連あるいは森林保全等の関連につきましては協力の例がございます。  水資源の開発の例としまして実例を申し上げますと、セネガルの地方水道の整備計画あるいはトーゴにおきます村落に対する水の供給計画、あるいはマリの地下水開発計画等々がございます。これは非常に伝統的な井戸掘りの技術と、さらにより近代的な技術とをうまく現地にマッチするような形でやっているわけでございまして、成功例ということで現地からは高く評価を受けていると承知しております。このような地道な努力を引き続き水に関してやってまいりたいと考えているところでございます。  さらにまた、森林の保全の観点からは、ケニアにおきまして薪炭林の造成プロジェクトということで、小規模ではございますが、実証的なデータを得ながら協力を進めるということで、既に実施中の案件がございます。  このような経験の積み重ねを踏まえまして、さらに努力を継続してまいりたい、このように考えているところでございます。
  82. 串原義直

    ○串原委員 もう一点外務省に伺いますけれども、青年海外協力隊は向こうの国々も大変に成果を上げているというふうで喜んでいたことと受けとめました。明年度はこの点に対しても外務省は配慮をすべきだと考えておるわけでございますから、ひとつお答えを願いたい。  それからいま一つは、この青年協力隊の諸君の身分の問題についてであります。青年たちは情熱を持って各国々に行って奉仕をしたいという希望がある。ところがなかなかに職場等の理解を得られない。二年行くということになると会社なりその職場をやめて行ってもらいたいという話が随分と多い、こういうことを開くわけであります。まことに遺憾な話でございますが、先進国と言われる日本でそんなふうでは困るなというふうに考えているところでございまするけれども、休職をしなくとも、そんなことでなくとも、青年協力隊として行く諸君にはそういうことでないような立場で送ってやりたい、帰ってきてからも職場に苦労するなんということのないようなシステムをつくってあげたい、私はこういうことを痛感しました。外務省、これはひとつ汗を流すべきだと思う。いかがでしょう。
  83. 木幡昭七

    ○木幡説明員 青年海外協力隊の派遣につきましては、これまでの地道な努力が実りまして、先生御指摘のとおり受け入れ国からも大変高い評価を得ているところでございます。そこで、今後も引き続き積極的に派遣していくということで、過去、青年協力隊の派遣数の倍増計画等を立てて努力してきたところでございますが、これも六十年度にほぼ計画は達成できるというめどができております。私どもは、数の派遣とともに、中身、質の面でもいい人たちに応募してもらい、いい人たちを派遣したいということで、各方面の御協力をちょうだいしまして鋭意努力しているところでございます。  先生の第二の御質問でございますが、協力隊員の人たちの身分保障の問題でございます。これも特に昨年来国会の諸先生方からの御指摘ございまして、私どもいろいろな努力をしてまいったわけでございます。特に帰国間際の隊員に対しましては、就職情報の提供とか、あるいは職種に応じて、こういうところなら現実に求人の申し出がありますよというようなきめ細かな情報を提供するということでやっているわけでございます。  さらにまた先生の御質問の中にございます制度的な面、例えば民間の企業でございますと帰ってから再就職させるということを法律的に私ども政府として申し上げるわけにはいきませんが、例えば地方公共団体の場合では、そういうところに対しましては休職の形で参加ができるように、身分条例というような形で、いわゆる休職条例の制定の働きかけを鋭意続けているところでございます。若干まだ県によっては制定されていないところもございますけれども、おいおいふえてまいってきているところでございます。  さらにまた国家公務員法につきましては、派遣法の適用というような形で、帰ってまいりました場合の再就職の問題が解決されるように努力もしている、民間企業に対しましてはお願いということでございますが、ひとつよろしくお願いしたいというような個別な努力も続けている、こういうところでございます。  おかげさまで最近は帰ってまいりましてからの就職率も大変よくなりまして、若干時間はかかりますが、最近の例では九七、八%は就職をしている、こういうふうになっております。また、私ども青年協力隊を預っております役所としまして、外務省におきましても協力隊のOBを、引き続き協力していただくということで派遣専門家に登用するとか、あるいは外務省員として、立派な方であればぜひ協力してもらうということで、現に今、私の記憶では四名外務省員として正規に採用もしているところでございます。
  84. 串原義直

    ○串原委員 この青年協力隊のことで具体的に伺いますが、エチオピアに今何人行っていますか。向こうの大臣、政府から大変に強い要請でございました。ぜひとも指導者を送ってもらいたい、こういうお話でございました。したがいまして、指導者にもいろいろあるでしょうけれども、この青年協力隊をとりあえず来年は倍増という姿勢、緊急を要するエチオピアですから、そういう姿勢で臨んでやってもらいたい、私はこう思うのです。いかがですか。
  85. 木幡昭七

    ○木幡説明員 エチオピアに対しましては、本年の五月一日現在で二十四名派遣しております。農林水産、その他土木関係等が多うございます。  そこで倍増ということでございますが、私ども倍増という数字面で直ちにお約束はできないわけでございますが、先方の要請がどういう職種でどういうところに派遣してほしいかということを私どもは事前に、例えば調査団を出してよく打ち合わせて、向こうの需要をちゃんと把握した上で選考いたしまして、それで派遣前の研修等を約一年かけてやって送り出す、こういう制度をとっているわけでございます。したがいまして、直ちに倍増ということについてお約束はできかねますが、できるだけ前向きに対処するということでやらしていただきたいと思っております。
  86. 串原義直

    ○串原委員 それでは、この件に関して農林省に伺います。  ただいま外務省で援助協力に対する姿勢についてお答えがございました。そこで、中野調査団をアフリカに派遣した話もございましたが、今も若干触れたのでございますが、エチオピアに行って、とにかく農業振興を急がなければいかぬ、山を緑にしてやらなければいかぬ、まさに痛いほど痛感して帰ってきたところでございます。しかし、それは痛感したというだけのことであって、どうすればいいかということになると我々はわかっていない。日本では、私どもとしては先方のことがよくわからないというのが実態であります。  しかし、言えることは、今まで小規模経営農業という格好できた日本は、必ず、かの国の助言、指導に大きな役割を果たし得るだろうというふうに私は確信を持って帰ってきたところです。したがいまして、今御答弁にありました中野調査団の任務も大きかった、大きかったけれども、それはそれとして、地道に今少し長い期間、十日、一週間ということではなくて長期間にわたって現地の皆さんとよく話し合いながら検討する調査団、これを農林省として派遣してもらいたいし、派遣すべきだと思う。どうでしょうね。
  87. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 ただいま外務省からも種々御答弁がございましたけれども、私どもも、アフリカの食糧、農業問題というのは非常に国際的にも大きな関心を呼んでおるところでございますし、積極的にこれから取り組んでいかなければいけないというふうに考えておるところでございます。  中野調査団の報告におきましても、自然、経済、社会の諸条件が地域により国によりまして非常にさまざまだということで、協力の実施に当たってそれぞれの国なり地域の農業事情の十分な調査検討が必要だということが指摘をされております。ヨーロッパ諸国のように、アフリカとの関係で旧宗主国というような長いおつき合いがございませんのが我が国の立場でございます。そういった意味におきまして、農林水産省といたしましても、昭和六十年度にアフリカ地域の食糧、農業事情につきまして実態調査を実施をする予算を計上いたしておるところでございまして、六十年度からこういった調査にも取り組みたいと思っておりますし、またそのほか国際協力事業団を通じました調査等にも私どもも積極的に協力をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  88. 串原義直

    ○串原委員 それで、今申し上げましたように若干の長期にわたる調査団、これを派遣してもらいたいと思うのですよ。いかがですか。
  89. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 私どもアフリカ諸国の要請、そしてまたどういうところを我が国として優先的に取り上げていく必要があるかというようなことにつきまして、相手国なりまた外務省ともよく御相談をいたしまして、どういう形でどの期間、どんな分野の人を出すかというようなことにつきましては具体的に検討させていただきたいと思っております。
  90. 串原義直

    ○串原委員 いま一点それと関連して伺いますけれども、特に強調させてもらいたいのでございますが、林業、山を緑にしなければあの国の将来はとても難しいとすら考えてきたわけです。しかし、樹種は何がいいかわからない。どうすれば山を復活させることができるか、その手段もなかなかに難しい。したがいまして、調査検討も現地に試験地を持つくらいでないとなかなか取り組めないのではないかと思うだけに、農業はもちろんですけれども、林業につきましても検討する調査団を考えてもらわなければならぬと考えるのですが、いかがでしょうか。
  91. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 私ども、砂漠化の防止という点で、農業あるいは食糧増産ということを考えます場合にも、森林の問題が非常に重要だと思っております。焼き畑農業の問題あるいはまた薪炭の採取でどんどん森林がなくなっていく、これがまた水の問題に直結しておるわけでございまして、私ども、森林・林業面での協力につきましても林野庁と十分協議をしながら積極的に対応していく気持ちを持っております。  調査団というお話につきましては、ちょっと今林野庁と具体的にまだお話を詰めておりませんので、先生のお話を頭に置きまして林業関係方面とも相談をしてまいりたいと思います。
  92. 串原義直

    ○串原委員 時間が経過いたしますのでこれでアフリカ問題をやめることにいたしますが、いずれにせよ、大臣も御答弁になりましたように、諸外国から対外問題なかなか厳しい情勢にありますときだけに、我が国は発展途上国に対する援助を通じていろいろな外圧に対する理解を得ていくという政治姿勢をぜひとも政府としてお持ち願いたいと強調させてもらいまして、次に畜産問題について伺いたいと思うわけであります。  まず初めに、公取に生乳一〇〇%表示問題について伺いたいと思うのでございます。  生乳一〇〇%表示問題は、生産者団体、消費者団体それぞれ強い要請があるわけであります。本物の牛乳一〇〇%と表示するのは当然ではないか、またそれが消費のためにも、日本の酪農振興のためにも大きなプラスになる、こういう立場で要求の声が高いわけです。私もこの要請なり御意見は適切なものだと受けとめているわけでございます。  この問題に対して過般物価対策特別委員会で論議されたやに聞いておりますので、そのことも踏まえまして公正取引委員会の立場で御検討願っていると思いますが、聞くところによると関係団体との打ち合わせもなさった、こんなふうに聞くわけであります。その経過も踏まえて、今どんな取り組みをなさっていらっしゃるか、教えてください。
  93. 黒田武

    ○黒田説明員 お答えいたします。  ただいま御指摘のありました件につきましては、まず本年の五月三十一日に関係者を集めまして牛乳等の表示についての懇談会を開催しております。それで、この懇談会を開くことにいたしました経緯をちょっとお話しいたしますと、牛乳一〇〇%表示を提案された中央酪農会議と、牛乳等の商品を製造し一般消費者に対する表示を行っている事業者であります全国飲用牛乳公正取引協議会との間に必ずしも意思疎通が十分ではない、あるいは意思疎通を欠いていたのではないか、これを補う意味で開催したらどうかということでやったわけです。  それで公正取引委員会としましては、牛乳等に適切な表示がされるよう一般消費者、それから牛乳・乳製品の製造販売業者、それから原料乳等の生産者の間で十分議論することが必要であると考えておるわけで、そういった意味から、いわば話し合いの場を提供する、あっせんの労をとるということで五月三十一日に会議を持っておるわけです。  それで、今後の方針といいますか公取の考え方としましては、こういう中央酪農会議で提起されました飲用牛乳についての問題点を踏まえまして、今後飲用牛乳の表示について公正取引協議会という場で検討していき、その場で消費者の適切な商品選択が行われるようにそのあり方を検討してくれるよう公正取引協議会を現在指導しておるところであります。
  94. 串原義直

    ○串原委員 そういたしますと、その協議会でこれから検討していくということになりますね。ところがこれは、期限がなくて検討してもらいたいということでもいかがかと私は思うのであります。しかるべき目標を持ちながら関係団体、今御答弁いただきました協議会等々で検討してもらわなければいかぬ、こう思うのでございますが、その辺に対して公正取引委員会はどんな見解をお持ちですか。
  95. 黒田武

    ○黒田説明員 協議会に検討させておりまして、協議会からの返事をいつまでにくれという期限は切っておりませんけれども、できるだけ速やかに検討して公取の方に案を提示してほしいということで目下指導しておるところであります。
  96. 串原義直

    ○串原委員 それでは、次に発酵乳の問題について伺いたいわけでございます。  畜産物価格決定の際、加工原料乳二百三十万トンを決めた際に、発酵乳等に使用する牛乳ということで二十万五千トンと一応枠を決めまして、今申し上げました加工乳限度数量二百三十万トンというふうに決まった、こういう経過があるわけでございます。それと同時にこの発酵乳に対しまして若干のそれに伴いますところの予算化もなされたわけでございます。つまりこのことは、発酵乳二十万五千トンの取引についての位置づけをした、行政的な芽を新しく出した、こういうことであって、言いますならば、二十万五千トンの発酵乳に対する取引量というものは関係団体に対するある意味では約束事であるというふうに私は実は受けとめているところでございます。したがいまして、この処理といいますか配分といいますか、これは一番消費量がふえるのは夏でありますから、夏を控えまして余り時間を経過してはいけない、こういうふうに受けとめるわけでありますけれども、その後どんなぐあいになっていらっしゃいますか。
  97. 野明宏至

    野明政府委員 お答えいたします。  畜産物価格決定の際に、六十年度の限度数量を二百三十万トンというふうに決めたわけでございますが、その決定の過程で発酵乳取引につきまして二十万五千トンというものを見込んでおるわけでございます。  これにつきましては、ただいまお話にございましたように、その確認のための経費とかあるいは乳用施設を持たない工場等においてもやっていただきたいということで、貯乳タンクのリースというふうな助成も組み込んだわけでございます。  発酵乳取引それ自体につきましては、具体的な進め方といたしましては、生乳生産者団体に対しまして年間定量の生乳供給の体制をつくっていただく、それからまた地域間の問題がございますので、全農とか全酪連といった広域需給調整機能を活用した取引の推進、また製造メーカーに対しましてはそういった取引をやっていただくようにお願いする、さらには調整のための協議会の開催や都道府県による取引の確認というふうなことによってその推進を図ってまいりたいと考えておるわけでございます。  ことしは約二十万五千トンというものを見込んでおりまして、これにつきましては、現在それぞれ取り組みについての準備が進められておるという段階でございます。
  98. 串原義直

    ○串原委員 作業がとてもごゆっくりに思えてしようがないのです。今申し上げましたように大量消費される時期は夏ですよね。そういうことも含めて考えますと、この作業は急ぐべきである、ゆっくりしていてはいかぬ、こう思うのです。いかがですか。
  99. 野明宏至

    野明政府委員 お話しのとおりでございまして、六十年度の限度数量が決められておるわけでございますが、これにつきましてもできるだけ早く配分をいたしまして、それと裏腹の形でその推進を図ってまいるようにしたいと思っております。
  100. 串原義直

    ○串原委員 今お話しのように加工原料乳の配分も含めてやらなければいけません。急ぐべきだと思う。いつまでにやるのですか、局長さん。繰り返して言うように、需要期は夏なんですよ。大事なところなんでございます。急がなければいかぬ。少なくとも今月いっぱいぐらいには答えを出さなければいかぬと思うのです。いかがですか。
  101. 野明宏至

    野明政府委員 お答えいたします。  限度数量はまだ配分されてない段階でございますが、既に一部の関係者においては発酵乳取引を行っておるという例もございます。ただお話しのように限度数量との関係もございます。したがいまして、限度数量につきましては今月の中旬、もう中旬に近いわけでございますが、それとの関連で各県取り組んでいただける一つのめどになるわけでございますので、中旬をめどにできるだけ早く配分を進めてまいりたいと思っております。
  102. 串原義直

    ○串原委員 確認をするわけでありますけれども、中旬をめどに加工原料乳の配分の作業を終えたいと思うということは、その裏腹の発酵乳の問題につきましても、それと同じ日というわけにはいかないにしても、それと同じ程度の時期に配分の方向を示すことができる、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  103. 野明宏至

    野明政府委員 お答えいたします。  発酵乳取引の個々の指定団体あるいは個々の乳業者の具体的な取引数量の問題でございますが、これは基本的には当事者の取引の問題でございます。したがいまして、具体的に県別あるいは団体別というふうな発酵乳取引それ自体の配分ということは考えておらぬわけでございます。それぞれの地域の生乳の生産あるいは飲用乳の動向あるいは加工原料乳の動向というものを踏まえつつ、関係者のいわば自主的な取引関係の中で発酵乳取引が進められるように誘導してまいりたいと考えておるわけでございます。
  104. 串原義直

    ○串原委員 話としては理解できないことはないけれども、私の申し上げるのは、二百三十万トンを決めるときに、発酵乳は二十万五千トンという枠がありますが、それを踏まえて限度数量も決めたはずです。今局長から加工乳配分と裏腹の形で発酵乳の問題についても対応していくという話がありました。したがって私は、各会社ごとに、あるいは各県ごとにきちっと加工乳のような配分ができるとかいうことまで要請はしないけれども、発酵乳二十万五千トンの処理に対して、農林省としては加工乳の配分のときと同時に一定の指示をすることができる、方針を出すことができる、こうでなければおかしいと思うのです。そういうことを伺っているのですが、いかがですか。
  105. 野明宏至

    野明政府委員 お答えいたします。  限度数量を配分いたしました場合に、先生御案内のように北海道の場合には従来とも限度外生乳というのが非常に大量に出る。そういうものを、昨年の場合でございますと例えば出荷調整乳というふうな形で乳製品向けに処理しておる実態があるわけでございます。それから府県の場合には、地域によって異なりますが、夏場でもある程度加工原料乳の発生する地域と、夏場にはむしろ飲用向けが足りないというふうな地域もあるわけでございます。例えば北海道でどこまで発酵乳ができるかというふうな問題とも相関連してまいるわけでございますが、いずれにいたしましても限度数量の配分というのが、その地域の加工発生見込みとの関連からすれば一つのメルクマールになるわけでございます。したがいまして、限度数量の配分とあわせまして、できるだけ早い時期に発酵乳取引推進の考え方というものを関係者に示してその推進を図ってまいりたいと考えておるわけでございます。
  106. 串原義直

    ○串原委員 それではその作業を急いでください。  最後に、LLミルク常温化問題について伺います。この問題は関係者との話し合いが大事だというふうに前回の質問に対して御答弁をいただきましたが、どうなっておりますか。
  107. 野明宏至

    野明政府委員 お答えいたします。  たしか昨年の八月のこの委員会だと思いますが、先生からるる御指摘がございまして、自来関係者の意見というものを伺い、それらを踏まえて調整に当たっておるわけでございます。
  108. 串原義直

    ○串原委員 その調整のめどはつきませんか。
  109. 野明宏至

    野明政府委員 お答えいたします。  この問題につきましては、基本的な考え方といたしまして、LL牛乳の常温化に伴いまして流通の混乱を来さないというふうな点が一つございます。それから、従来のLL三原則の中で、例えばフレッシュが基本とか、輸入は行わないとかというふうなつながりもございます。そういった点を踏まえて調整が行われておるわけでございますが、先生御案内のように、厚生省におきまして安全宣言が出されて既に二年有余になっておるわけでございます。そろそろ取りまとめの段階に来ておるというふうに考えておるわけでございます。
  110. 串原義直

    ○串原委員 そろそろ取りまとめの段階に来ているという表現でございましたが、一番大事なことは、厚生省で安全性が確認されたというわけでございますけれども、なおかつ今に至るも消費者団体等々から安全性に対する疑念がとても強く出されておることを関係団体との話し合いの中で特に重視してもらわなければいかぬ。このことに対して農林省はどのような作業と努力をされてこられましたか、と同時に、これからどんなぐあいにやろうとしているのか、伺いたいと思うのです。
  111. 野明宏至

    野明政府委員 その点につきましては、厚生省においても各種の調査研究を行った上で、学識者の意見も十分聞いた上で五十八年三月に安全宣言を出されておるわけでございます。一部にいわゆる安全性の問題についての御意見を言われる消費者の方もおられるようでございますが、基本的な安全という点につきましては、LL牛乳はそもそも常温流通が可能な技術として開発されたものでございます。したがいまして、その点については心配はないわけでございます。  ただ、これは中に入っておるのはやはり牛乳でございますので、衛生的な取り扱い、あるいは開封した後はやはり冷蔵しておかなければならない、開封後も常温で置いておくというわけにいかないわけでございます。したがいまして、流通面あるいは消費者が消費するに当たっての注意すべき点、そういった点については適正な取り扱いが行われるように厚生省において対応をしていただくようなことで、厚生省においても検討をしていただいておるわけでございます。
  112. 串原義直

    ○串原委員 残念ながら時間が参りましたものですから、最後に大臣に伺います。このLL問題は慎重の上にも慎重に取り組んでもらいたいということを強く要請してまいりました。したがいまして、大事なところでありますから、より慎重に取り組んでもらいたいと思いますが、大臣の決意を最後に伺うわけであります。  この問題に対しては、衛生上の問題等々もありますが、いま一つは、LL牛乳を常温流通化した場合には輸入に窓が開くのではないかというのが実は一番大きな問題点なんです。絶対に牛乳は輸入しない、これは将来ともにきちっとしなければいけないし、そのことが関係団体と話し合う場合の大きな課題なのであります。これは大臣承知のとおりであります。IQ品目だから大丈夫だと言ってみたところで、今問題になっておりますように順次なし崩しみたいに農産物の自由化、関税の引き下げ等が行われる傾向にあります。そういうことでありますから、関係団体がとても心配をし、意見が強いということなのであります。大臣、この際、乳は輸入しない、これに対してきちっとした方策をいま一度お示しを願いたいと思うのでございます。いかがですか。
  113. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生にお答えいたします。  飲用牛乳というのは先生御指摘のとおり国民基本的食糧一つでございます。そんなことで、可能な限り国内で賄うべきものと考えています。  また、LL牛乳は輸入制度上、今先生おっしゃった非自由化品目でございます。そんなことで、今後とも我が国農業を守る見地からこれを堅持してまいる決心でございます。
  114. 串原義直

    ○串原委員 時間が参りましたから、終わります。
  115. 田名部匡省

    ○田名部委員長代理 午後一時半から再開することとし、この際休憩いたします。     午後零時三十六分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十一分開議
  116. 島村宜伸

    ○島村委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。新村源雄君。
  117. 新村源雄

    ○新村(源)委員 政府が先般発行いたしました「昭和五十九年度 農業の動向に関する年次報告」、ちょっと目を通さしていただいたのですが、この大きなⅡの中の「農業生産の動向と食料供給構造」この中で主な内容として、一つ目には「我が国では、五十年代に入ってから食料消費が伸び悩むなかで、多くの農産物需給緩和ないし供給過剰基調にあり、農産物の生産者価格の上昇率は著しく低下している。こうしたなかで、我が国農業の体質強化が要請されており、一層の生産性向上に努める必要がある。」こういうふうに言われておるわけです。そこで、農業の現状というものを、これは何回も折に触れて申し上げておるわけですが、さらにその中で農業生産費と生産性の向上、こういう中で、「農産物価格を巡る環境はこのように厳しい状況にあり、農業所得の確保を価格上昇に依存することは極めて困難になっている。」こういうように言っているわけです。  しかし、これは農林統計でございますが、農産物の価格指数では過去七年間で政府米価は八・九%、生産資材価格は一八・三%も上昇しておるわけです。こういうふうに農畜産物の価格が停滞もしくは微増する中で生産資材がどんどん上がっていく、こういうことになれば農家が困ってくるということは当たり前のことなんです。そしてまた、全国農協中央会がことしの米価運動の末端の対策資料として、水田再編対策米の五十二年と五十八年の米の生産費比較では、六十キロ当たりで六千三百六十八円、四二%上昇している。しかしこの間に米が上がったのはわずかに千三十四円で六%より上げていない、こういうように言っておるわけですね。  ですからこういうような状態というのは、いろいろ言われておりますけれども、具体的にこういう格差をどういうように埋めて農業経営が安定をしていくように考えられているか、お答えをいただきたい。
  118. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 新村先生にお答えいたします。  実は、農業は先生おっしゃったように、基本的に価格政策と構造政策、いかにして農家所得をふやすかということで、そういう形の中に先生がおっしゃるような生産資材をいかに安定させるか、安くさせるかという問題があると思います。ところが、農業を取り巻く情勢は先生御指摘のように非常に厳しい状況にあるということでございます。  そんなことで、実は私はいろいろな地域の実情に応じまして三つのことを中心にやってみたい。その一つは各種作目を効率よく組み合わせた複合経営の確立、それから消費者のニーズに対応した特産物の生産振興、あるいは付加価値を高めるための農産加工業の育成等を進めていくことが必要であると考えております。  特に、これからの農業につきまして大切なことは、価格政策、構造政策とともに、技術の改良、すなわちバイオテクノロジーとニューメディアをどう駆使するかということによりまして、例えば経営規模の拡大、これは生産性の向上につながるわけですが、実はそう簡単に経営規模の拡大はできません、時間がかかります。そういう場合に、同じ面積で生産を倍にするためにはバイオテクノロジー、例えば北海道で今イチゴなどは倍できます。ユリも倍できる。みんなバイオテクノロジーです。そういうものを駆使して農家所得をどうふやすかということを研究し、そしてそういう技術を駆使する。例えばニューメディアを駆使しまして生産管理から販売まで、そうすると、例えば生産の状況をキャッチできますとともに、販売も、どこの地域は幾ら高いか、そういうところへ持っていく、そんな形で農家所得の確保を図ることが大切じゃないか、こう思っておるわけでございます。  また、生産資材につきましては、ここのところ安定しておりますが、これはやはり安定した形へ持っていくことが基本的に大切だ、そんなことで我が省も努力しているという現状でございます。
  119. 新村源雄

    ○新村(源)委員 大臣のおっしゃることは、そのとおりいけば、まさに目標としてそういうように掲げておいていただくことは結構だ。  ところがこの白書の中で言っていますように、こういう過剰化傾向の中で他の作物に転換をしていくということは非常に困難だ、こういうように指摘をしておりますし、さらにまた、これは過去生鮮食料品その他の農畜産物で、そのように増産をされていったならば、例えば去年の北海道の豆の価格が豊作で余計どれた、そうしたら値段が半分になってしまった、こういう状態があるわけですね。そういうようにどんどん生産を伸ばしていっていいかどうか、こういう二つの問題があると私は思うのですが、この点についてはどうですか。
  120. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 農業生産全体につきましては、基本的な考え方としては需要の動向に応じてこれを誘導していくということでございますので、先生のお挙げになりました昨年の豆のように、気象条件その他の関係で生産と需要面の関係から価格が非常に下がる、こういうようなこともございます。  しかし、全体としては基本的には農業の需要に応じて生産を誘導していくわけでございまして、その場合にそれぞれの地域の条件に応じまして、例えば北海道の畑作でございますれば、各種の基幹的な作物を輪作体系として組み合わせて定着させていくことを考えながら、生産過剰、価格低落が来ないような誘導もしていく。それから、場合によりましては、米その他に見られますような需要の大きいものについて、やや過剰と見られますものについては需要の動向を見きわめながら地域の条件に応じて転換を指導していく、それに必要な関係対策も充実していくということで考えてまいりたいと思っております。
  121. 新村源雄

    ○新村(源)委員 私は、この前の質問でも申し上げましたように、日本の今までの農畜産物は国内需給ということを原則としてやってきたと思うのです。ですから、外国に積極的にそういうものを売っていく、こういう姿勢が全然ないということが一つと、それから、午前中の質問にもありましたとおり、海外援助等に、例えば日本で今バターがだぶついているということであれば、一定数量そのバター等は海外援助に振り向けてやる、そして市場在庫を適正なものにしておく、こういうような努力というのはほとんどないのですね。  もっと輸出を振興させる、あるいは、海外援助というのはいつまでもあるかどうかはわかりませんが、海外援助等に日本の農畜産物を輸出していく、こういうことについてどうお考えになりますか。
  122. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 農産物の輸出につきましては、現在の農政の中で、今お話にもございましたようになかなかまだ成果がはっきりあらわれてない面でございます。  しかし、大変大事な仕事でございまして、農政全体の中でも重要な項目として取り上げているわけでございますが、具体的な取り組みとしましては、最近非常に顕著な成果を上げているものとしましては、主として果実関係等でございまして、例えば従来からございましたミカンの対米あるいはカナダ等への輸出のほかに、最近ではミカンの果汁を中近東中心に輸出をする。それから、鳥取県産の二十世紀ナシ等につきましては、昨年初めてアメリカに輸出をされるというようなことで、昨年でございますと鳥取県だけで七十八万ケースも対外輸出をしております。  これは、いろいろ相手国の需要の動向も見、またこういう植物に特有のいわゆる検疫条件の改善、こういう面の努力もしながらいたさなければならないことでございますが、例えば果実に例をとりますと、これからの需給安定の面でも非常にこういう市場開拓ということでの努力を充実しようということで、ことしから果実緊急特別対策基金の中に輸出関係の仕事も重点的に取り上げていく、こういうようなことでやっております。  その他、現状で輸出のあるものとしましては、例えば一部の薬用ニンジンとか、割合特産物の一部のものが多いわけでございますが、これはもっと大きい作物についても広げていくような努力、そういう意味での市場開拓について常々考えていかなければならないことと思っております。
  123. 新村源雄

    ○新村(源)委員 それは、これからの課題としてひとつ積極的に日本の農畜産物を輸出をする、そういう方向に向けてやはり農林水産省が真剣に取り組んでいただきたい。  それから大臣、今申し上げましたように、今アフリカでは非常に困っておるわけですね。そこへ、日本の海外援助というのがちゃんと予算があるわけですから、そうすれば、今酪農関係では脱粉の需要が非常に多いけれども、バターがこれに伴ってないということで若干滞貨をしている、こういうものを援助物資の中に入れてやる、こういうことができませんか。
  124. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 先般、アメリカからの一千万トンの穀物を援助用に日本が買って使えないかというお尋ねがございましたときにお答えを申し上げましたように、一つは、我が国の行っております食糧援助の基本的な枠組みと申しますのはケネディ・ラウンドのときに決まった食糧援助規約というものがございまして、それが主体でございますが、その中では、まず開発途上国が希望する穀物その他の食糧ということになっておりまして、そういった点からいたしますと、やはり穀物がどうしても中心にならざるを得ないということが一つございます。緊急援助で若干水産缶詰その他使っている例がございますが、特にバターというようなものになりますと、輸送その他の問題も出てまいる。  それからもう一つは、食糧援助に先進国が使います食糧というのは、開発途上国産のものを優先して先進国はお金を出してほしい、こういうことが一つの原則的な考え方としてありますものでございますから、両面からいたしまして、なかなか我が国の国産のバターを食糧援助に使用するというのは難しい状況にある、こういうことでございます。
  125. 新村源雄

    ○新村(源)委員 これはまた後日の課題といたしまして、農業白書の内容に戻したいと思います。  先ほど申し上げましたように、体質強化、いわゆる生産性の向上を中心にして日本の農業の再建を図れ、こういう言い方をしているわけです。ところが、生産性の向上というのは、やはり第一番目には規模拡大、その次には省力化ですね。規模拡大をするにはどうしても省力化をしなければならない。さらにこれに対して土地改良、こういうものが伴ってくるわけです。  それで、これは北海道の農民組織が調査したものでございますけれども、畑作あるいは酪農、米、これらの類別農家負債の原因を調べますと、第一番は土地の購入です。二番目は省力化のための機械の購入、三番目は土地改良、四番目は災害その他、こういうようになっておるわけです。したがって、生産性の向上の中心となる、そして今までそういうことをやってきたものが全部逆目に出てきている、こういうことが言えると思うのですが、これは一体どういうように御理解なさっていますか。
  126. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農家負債実態につきまして、私ども、農家経済調査等によりまして状況の概況を把握しているところでございますが、北海道について申しますと、先生御指摘のとおり都府県とかなり違った状況が見られるわけでございます。全国の平均で申しますと、借入金が百八十八万で貯蓄が千三百二十八万ということでございますが、北海道の場合には、貯蓄も千五百八十六万ということで二百六十万ほど多いわけでございますが、借入金が千百十二万ということで、北海道の一戸当たり借入金が特に高い。そして、その中の内訳を見ますと、財政資金が五百三十三万、主として公庫資金だと思いますが、それから系統資金が四百三十八万、市中銀行その他が百四十一万、こういった割合になっておりまして、借入金の中での財政資金の割合も高い、こういうことでございます。  ただ、農家経済調査等のこういう統計で見ますと、御案内のとおり、農家は農業経営部門と家計部門というものが未分離でございますので、負債の要因というようなものを家計部門によるものと区分して統計的に把握するということはなかなか難しいわけでございます。そうして、累積負債の要因というようなことになりますと、それぞれ個別に発生時にさかのぼって当たることが必要になるわけでございますが、お話がございましたような規模拡大のための農地取得とか機械、施設の導入によります大型化あるいは基盤整備、そういうようなものが要因になっているケースも当然あろうかというふうに思っております。財政資金の借入残高が高いというようなところもそれを反映しておるのではないかというふうに考えております。  しかしながら、他にも累積負債の要因には、生活資金でございますとか、あるいはいろいろな運転資金の買い掛けが証書貸し付けになってそれが金利で膨らんでいったというようないろいろな要因もあるというふうに承知をいたしております。
  127. 新村源雄

    ○新村(源)委員 私がこの間地元へ帰りましたら、若い青年諸公が、ぜひ会ってくれ、こういうように言って私のところへ来ました。私も当然、そこに住んでおりますから、実情はわかるわけですけれども、昭和四十年代から五十年代の前半にかけて、北海道の農家がもう雪崩を打って離農した時期があるのです。そのときはまだ残っておる農家が土地を買ってくれた、むしろそのために地価が高騰したというような現象も起きました。ところが、今日こういうように農業情勢が厳しくなって、これは今年もそういう実情が出たわけでございますが、離農してもその土地を買ってくれないわけです。買ってくれないから地価が下がっていく。地価が下がっていくと、今まで農協が多額の融資をしておりますが、地価に見合う、いわゆる財産に見合う、そういうものを一つ融資の限度枠、限界として融資をしてきた。ところが、地価が下がってきたからもうこれ以上貸せない、こういう状態が出てきたわけです。ですから、これはある町村の予測でございましたが、ことしのようなこういう状態で来年も同じように査定をされるならば、そこは約五百戸ぐらいの組合員でございますが、まず二〇%の組合員は離農しなければならぬだろう、一体これをどうしてくれるのだ、こういう深刻な情勢を訴えられました。  そこで、これは北海道の新聞でございますが、北海道新聞、道新と言っていますが、この特集で「再生成るか米国農業」という記事が出ております。これは十勝の今言ったような農業状態とほとんど似たような、同じようなことを言っているわけですよ。ですから、やはり農業の代表的なところはアメリカ、こういうように考えていました。まあ日本の農業の中でも比較的専業農家経営をやっている、いわゆる本当にわずかに残された農業専業地帯だと思うのです。こういう先進的な農業、いわゆる生産性を向上しようと思ってやっていったところが同じようなパターンになってきている。これは局長さんからいろいろ御説明はいただいたのですが、こういうアメリカ農業の実情について御存じですか。
  128. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 お答え申し上げます。  一九七〇年代というのはアメリカも大変に農産物輸出が伸びまして、農業ブームでございました。その時期にやはりかなり土地を借り入れによりまして買い足しをいたしました。それが、八二、三年ぐらいから農業が不況に落ち込みまして、やはり担保価値が低下をしてくる、追加の借り入れができないというような状況が発生をいたしまして、これがアメリカの農業不況ということで、特に、ことしに入りましてから春のまきつけにも支障を生ずる農家が出るというようなことで大きく報道されまして、アメリカの議会なり行政府でもそういった事柄に対する今後の対策をどうするかというようなことが議論されているというふうに。承知をいたしております。
  129. 新村源雄

    ○新村(源)委員 後で負債対策については改めて申し上げたいと思いますが、非常に厳しい状況になっております。  そこで、現在農民にとって非常に深刻な悩みは、生産資材が遠慮なくどんどん上がっていくということです。しかし、農産物の価格は依然として抑えられている。そこで、こういう情勢の中で一体政府は、農業生産資材について今どういう価格でどういうように売られているかということ、これは農林統計では出ておりますが、その中でどういう対策をお考えになっておりますか。
  130. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 農業生産資材の中で大宗を占めますものはやはり農機具、肥料、それから農薬、えさ等飼料もございますが、全体的にはそれぞれのものによってかなり問題点というか、今後の対策基本的な考え方が違うと思います。  大きく申しますと、肥料と農薬のような大きな化学産業が生産される物資につきましては、やはりその産業それ自体のいわばコスト引き下げということが必要でございまして、肥料については、御承知のように構造改善を今進めております。こういう基本的な施策を通じまして、コスト引き下げになるようないわば合理化、設備廃棄をやってもらうということがやはり基本になるわけでございます。農薬の方につきましては、これはもちろんコスト的な問題もございますけれども、現在の私どもの感じでは、いわゆる安全性の問題、効く上に安全性も高い、こういう安心して使えるような農薬をつくる、そういう開発面なりの問題が一番大きかろう、この辺に重点を置きたいというふうに考えております。  一方、農業機械については大変問題の所在が広うございまして、いわゆるメーカーの体質の合理化によるコストの引き下げというものもございますけれども、同時に、それを買いました後の利用の仕方、これも過剰導入ではなくて適正な規模に応じて導入していく、あるいは共同利用にして利用を効率化していく、それからさらに中古市場を育成したりしましていわば大事に長く使う、こういうようなことであります。こういうようないわば利用面の対策と両方兼ね合わせながら、農業機械については農業の省力化、合理化のいわばかなめとなる手段でございますので、そういう幅広い視点かも今後の対策を講じていかなければいけない、かように考えております。
  131. 新村源雄

    ○新村(源)委員 これは去年の肥料安定法のときにも質問をいたしましたが、明確な答えは得られませんでした。尿素も、工業用に使うものとそれから農業用に使うもの、この価格差がトン当たり約三万円ぐらい開いているのではないかというようなことを聞いているわけです。私もこれは知らなかったのですが、先般、農業用に使うビニールですね、この農業用というレッテルが張ってあるものとそうでないものとでは、全く同じ規格で同じ品物が農業用というレッテルを張っただけで倍するというのです。倍になっていっている。  さっき申し上げた肥料の問題あるいは農業生産資材の問題あるいは農機具の問題、こういうものについて、例えば自動車を生産する場合には一体どのくらい原価がかかっている、トラクターを生産する場合には幾ら原価がかかっている、こういうような農業生産資材に対する基本的な調査なんかおやりになっていますか。
  132. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 今お尋ねの中で、肥料につきましては昨年改正について御審議をいただきました肥料価格安定臨時措置法によりまして、今お話のありました原価面からのチェックも含めました適正な価格の実現ということを指導しております。  これは御承知のように、メーカー所管省でございます通産省と私ども農林水産省とが共同で原価の資料を取りまして、それを十分チェックして、価格決定取り決めに当たりますメーカーとそれから最大の買い手でございます全農との価格取り決めの資料として提供する、その取り決めの届け出を両省が受けまして、それに基づきまして独占禁止法の適用除外の措置をとる、こういうことでやっておりますので、この過程で通産、農林両省一緒になりまして、メーカーから出ました資料のチェック、その中では今お尋ねのございましたようなほかの用途向けの尿素等の使用、そういう面に対する観点も十分含めまして原価をチェックしまして、適正な価格取り決めが行われますように指導しておるところでございます。  その他の資材につきましては、肥料の法律のような法律がございませんので、基本的には最大需要者でございます全農と生産メーカーとの間のいわゆる協定というような形で、結果的には肥料に準じたような形で農機具、農薬については取り決めが行われている状況でございます。  なお、お尋ねの中の農業用ビニールについては、これは、私どもも御質問がございましたのでさらに事情調査をしてみますが、農業用ビニールの場合には非常に用途が温室、ビニールハウス等で規格がございまして、その他用途、温室、ハウス等の構造等に応じました厚みでありますとかいろいろと規格が多様化いたしましたり、それから比較的小口の販売になっていくというようなこともあって、あるいは一般に使われますものと少し価格が違うというようなことがあろうかと思います。いずれにしましても、この辺の問題も含めまして、御指摘のございましたような適正な原価チェックに基づく価格の実現ということについてはこれからも努力してまいりたいと思っております。
  133. 新村源雄

    ○新村(源)委員 昨年の肥料価格安定等臨時措置法、これを決めたときに、この質問の中でそれぞれ合理化目標が示されました。それは、六十肥料年度中にアンモニア一〇%、尿素一一%、燐肥一六%、いわゆる構造政策を進めていく中でこれだけの引き下げを目標としてやる、こういうように言っておりました。そして私の方から、少なくともこの成果を毎年農林水産委員会、国会に報告をしてもらいたい、こういうように大臣に要望いたしましたところ、大臣は御希望に沿うようにいたしたい、こういう答弁をいただいたわけであります。ことしはどんなようになっておりますか。
  134. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 昨年の肥料価格安定法のときに、今お話のございましたような先生からの御質問がございまして、今回この状況について通産省にも照会をしたわけでございます。  ただ、現状において、今先生がお述べになりました目標としておりますコスト引き下げ、これがどのくらい実現をしたかということについては、なかなか資料上チェックできないそうでございます。  構造改善の目標といたしました設備処理の目標数量がございますが、これはアンモニア、尿素、湿式燐酸、落成燐肥、化成肥料、この五つの区分において設備処理の目標が決まっておるわけでございます。この設備処理の目標に対して六十年四月一日現在でどれだけ達成されたか、つまり廃棄が進んだかということでございますが、これについては資料上チェックをできるということで、これを申し上げますと、アンモニアについては目標に対する達成率が一一八%、尿素の場合は八四・一%、湿式燐酸が六二・四%、落成燐肥四六・三%、化成肥料四三・七%ということで、全体としましてその構造改善に伴います設備処理につきましては今申し上げましたようなことで、いわば進み方としては順調でございますので、この過程で目標としますコスト引き下げについても逐次実現をされていくということでございますが、現状では今申し上げましたような設備処理のいわば達成率という形で御報告を申し上げおことができる、こういうことでございます。
  135. 新村源雄

    ○新村(源)委員 私はこの問題につきまして全農に照会をしてみました。この価格の決定は大体七月だそうですが、しかしメーカー側は、いわゆる為替レートの問題、あるいは銅の製造に硫酸を使う、そこから出てくるアンモニアですか、こういうもの等の関係で四%ぐらい上置きをしてくれ、こう言っておるのですね。そうすると、去年、少なくとも六十年度でこのくらいの目標は達成しますからこの法案をひとつ認めてくれ、こういうように言っておったことが、第一年度で既に、引き下げるどころではなくて引き上げる方向に向いている、これは一体どうしたことですか。
  136. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 先ほど先生も御引用になりました構造改善の中での目標に挙げられましたいわばコスト引き下げ率、これは、いわゆる価格指数と申しますか、簡単に申しますと価格がその当時のままで推移した場合、こういうようなことで見通されているわけでございます。  今私ども、七月から始まります来肥料年度の価格取り決めについて折衝の最終段階に来ておるわけでございますけれども、具体的な数値は私どももまだ聞いておりませんけれども、恐らくそこで挙げられておりますのは、いわゆる原材料的なものの入手単価、そういう単価が上がったというようなことによる、それが肥料価格にはね返っていくという問題であろうかと思います。したがいまして、構造改善の目標価格は、いわゆる単価がそのままである、変動なしという前提で行われたものでございますので、そういうその後の、特に肥料において非常にウエートの高い原材料単価の上昇による価格改定という要求が恐らくメーカー側から出ているというのが現状ではなかろうかと思っております。
  137. 新村源雄

    ○新村(源)委員 あの法律は、カルテルを組むことを認めて、しかし肥料の国際価格にさや寄せするためにひとつもう五年時期をかしてくれ、そして合理化目標というものを示しながら法案の審議をやったわけです。ところが、今おっしゃったようですと、農林水産省指導なりあるいは通産省のそういう構造政策の推進指導といいますか、そういうものが農民の実際に使う肥料の価格というものに全然作動してないということですね、むしろ四%ぐらい高くしてくれと、こう言っているわけですから。農畜産物の価格はそのままでしょう。そしてまた四%も上げてくれ、こう言っているわけですね。農林省、これは一体黙って見ているつもりなんですか。
  138. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 問題が二つあるわけでございます。第一の先ほども申し上げた問題は、結局肥料の原材料になります資材については、これは世界のあらゆる肥料企業について同じような条件にあるわけでございますので、全体が上がりますと、確かに日本は資源がございませんので不利ではありますけれども、やはり原材料の値上がりに応じて国際価格全体が少し上がっていく、こういうことにどうしてもなるわけでございます。  構造改善計画の中で予定しましたコストの引き下げ率は、簡単に申しますといわゆる国際価格にさや寄せしていく、日本で入手し得るような外国の肥料の価格に大体近づけていくという、やや簡単に申しますと国際競争力を付与するというような感じでやっておりますので、そこは世界的な規模で見ましても、肥料工業全体としてはある程度似通った条件でその原材料価格の値上がりを吸収しなければいけない、こういうことでございます。  それから、もう一つの問題は、こういう動向でございますので、今私どもも全農とメーカーとの来肥料年度の価格交渉の経過等については詳しい報告をまだ受けておりませんので、私どもとしましては、全体として非常に厳しい農産物価格等の情勢でもございますので、その取り決めの中で極力抑制をしていくように指導してまいりたいと考えております。  この辺の動向につきましては、来肥料年度のことでございますので近々のうちにこの交渉の決着を見ることにもなろうかと思いますので、さらに私ども、肥料価格の抑制につきまして指導してまいりたい、かように、考えております。
  139. 新村源雄

    ○新村(源)委員 農畜産物の価格の大部分は政府が決めるわけでしょう。だから、政府が決めたらその価格の中で農民は生産費を払ってみずから生活をしていかなければならぬわけですね。そうすれば、生産資材価格というものはこのくらいでなければならぬという目標をきちっと持って指導してもらわなければ、私が先ほど申し上げましたように、もう困った部分は負債になって農民は農業経営ができなくなってくる、アメリカの農業に似たような形になってくるわけですね。  大臣、そういう点について農水省はどういう考え方ですか。今指導していくとおっしゃっていますけれども、しかし、現在まではそういうことというのはほとんど実効がないわけですね。どんどん上がっておる。
  140. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先ほどから局長の答弁しているとおりでございますが、実は、私、大臣就任早々資材問題懇談会というのをつくってもらいまして、特に機械、肥料等につきまして局長を中心に検討していただいておる最中でございます。  それから、実は先ほどの話で、私の理解が不十分あるいは間違っていたらお許し願いたいのですが、肥料につきましては、実はこの間全農のある幹部とばったり会いました。そのときに、率直に言いますと、若干値上げをしたいという話がありましたものですから、それはおかしいんじゃないか、ことしはゼロにしてもらいたい、こういう話を僕はしておきました。  そのときの理由に為替レートを言っておりましたね。昨年は一ドル二百二十五円で計算しました、為替が上がらないと思っていましたら今二百五十円前後というようなことで、どうしても値上げせざるを得ない、こういうことを言ったので、私はそれは困るということで、現在の農政を取り巻く厳しい状況お話しして、できればゼロにしてもらいたい、これは局長は知りませんけれども、私はそういう話をしたというようなことでございます。  また、機械等につきましては、これは肥料と違いましてなかなか我が省の及ぶところでないように聞いておりますが、局長を中心にいろいろな努力をしておるということでございます。  そんなことで、肥料につきましては為替レートが大きな要因のように私は聞いておるところでございます。
  141. 新村源雄

    ○新村(源)委員 肥料の場合はそういうことで安定法という法律のもとで運用されている、だから当然農林省の指導が及ぶが、他の農機具には手が及ばないということですか。
  142. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 価格の決定について、肥料の場合には臨時措置法によるそういう取り決めの届け出、こういうシステムができておるわけでございます。  ほかのものは、農機具、農薬等についてはそういう法律がございませんので全農とメーカーとの取り決めによるわけでございますが、これは実は、実際上は大体各年の末に来年の分を決めておるわけでございますけれども、その段階では私どもに、これは全農の方からでございますが、いろいろ動向についてアドバイスを求めたり、そういうこともございます。その過程で十分メーカー側の原価事情等も見ながら極力抑制するような指導を実際上しております。これは法律によらない措置でございます。  そのほか、農機具、農薬、両方同じでございますが、質的な面についてはいろいろ検査なり登録なり、こういう面で質的なチェックをする。それから利用面については適正安全使用とか合理的な利用方法指導するということで、価格直接ではございませんけれども、全体的に農機具、農薬等、肥料も同じでございますが、効率的な利用をすることによって実質的な農家負担を切り下げていく、こういう努力をしているわけでございます。
  143. 新村源雄

    ○新村(源)委員 そうすると、私これからお伺いをしていこうと思っていたのですが、日本のトラクターもかなり外国に出ていっておりますね。外国に売っている価格と日本で売っている価格とはどういう関係になっているかということが一つ。  さらに、外国から輸入されてきたトラクターが幾らで入って、そしてそれが末端価格はどういう形で売られているかということについてちょっと知らせてください。
  144. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 農機具の代表でございますトラクターにつきまして、お尋ねの点について申し上げますと、まず第一に日本から出ます方の輸出の面でございます。これは御承知のように、トラクターの場合には輸出台数が非常に多うございまして、かつては輸出の方が全体から申しますと五分の一足らず、二割にも満たないくらいでございますが、現在は輸出の台数が多いわけでございます。  そういう状況で輸出というものが大変大事になっておりますが、私どもの承知しております五十八年あたりの数字で見ますと、乗用トラクター平均輸出価格は大体九十一万円という数字が得られておりまして、国内平均価格は百四十一万円でございます。こう見ますと、大変両方の差が大きいわけでございますが、これは御承知のように、トラクターを出します場合にはいわゆる完成品ではなくてタイヤとかロータリーとかそういうものをつけないで出しますので、この部分がタイヤ約二十万円とかロータリー約三十万円とか、こういうような不可欠の附属品の部分を抜いた価格でございますので、これらを見ますと必ずしも輸出価格の方が国内価格に対して大変安い、こういうことではない状況ではなかろうかと思っております。  それから次に、輸入の方の価格でございます。輸入については全農等がかなり大きなシェアを占めておりまして、全農の価格の推移等を見ておるわけでございますが、御承知のように単純に外国における農機具価格と日本における価格とは――日本は水田で使いますので、いろいろ牽引力とかそういう面で大変高度なものを要求されるわけですので、質の差がございます。それで、そういう直接入ってきたものが幾らになっておるかこういう比較はなかなか難しいわけでございますが、それぞれの国内価格ということで見ますと、例えば比較的代表的なものとしてマッセーファーガソンMF240いう四十八馬力の機械で見ますと、日本では三百四十一万円、イギリスでは三百六万一千円ということで、日本がイギリスよりも一割ぐらい高い。そのほかのものにつきましても大体そんなような状況になっておるようでございます。
  145. 新村源雄

    ○新村(源)委員 大臣、このように農民の使う生産資材は、農林水産省が一生懸命おやりになってもなかなか抑えることができないわけですね。それが上がっていけば上がっていくほど農民の生活や経営が苦しくなってくる。ですから、ことしの米価は、何といっても生産費というものはきちっと基本に置いて、その上で農民が生活できる、そういう農畜産物の価格をつくってもらわなければ、先ほど十勝の実情を申し上げましたように大変な事態が出てくるんではないかと思います。  今、北海道の農民の負債総額は約一兆五千億、それから私の住んでおります十勝地区、ここでは三千億以上です。ですから、今まで農民がこういう状態の中でどんどん借金をつくりながらでも生活をしてきた、経営をやってきた。しかし、先ほど申し上げましたように農協が資金をとめなければならないという農家が二割も三割も出てきたわけです。そういう状態が出てきたために、十勝の中心都市であります帯広市でもう十三件ぐらいの大型倒産が出てきています。町を挙げて、どうなっていくんだ、農業を基礎産業としている地帯ではそういう状態になってきているわけです。ですから、言いかえますと、今まで農家負債をしてきたことは、いわゆるその地域の経済を潤すための公共事業費的な役割を果たしてきた、こういうように私は思うわけです。  そこで、もう時間がなくなりましたので、最後に大臣、この前お伺いしたときに、負債整理を前提としたところの農家の経済調査をする、こういうようにおっしゃっていたのですが、私もかつて北海道議会におった時分に二度ばかり負債整理をやったわけです。その当時は、農業生産のために出てきた赤字については見ていこう、しかしそれ以外の生活関連については、例えば自動車を買ったあるいはテレビを買った、そういうことについては見ていかない。そのために、負債整理というのは全く農家実態とは合わない、かけ離れた整理しかやらなかったわけです。そういうものがずっと持ち越してきて今日のような破局を迎えているわけです。  ですから、今調査をなさっていると言いますが、その調査方法と、それからこれからやっていただく負債整理については、そういうものも含めた、いわゆる農家がこのことを整理することによって健全に立ち上がれる、こういう整理をやってもらいたいというように思うのですが、お答えをいただきたい。
  146. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  御指摘のとおりでございまして、大体農家負債については概況は我が省も理解しておりますが、北海道庁においては夏に調査を実施すると聞いております。そんなことでございまして、特に厳しい経営環境における畜産部門等については、実態把握に努めつつ、例えば酪農経営負債整理資金あるいは肉畜経営改善資金等をつくり、また六十年度新たに肉用牛経営合理化資金を創設したところでございます。  特に、先生から御指摘ございました生活部門の負債でございますが、率直に言いますと、これは一般勤労者とのバランスもございまして、生活部門の負債を対象とするのは非常に困難であると考えております。
  147. 新村源雄

    ○新村(源)委員 時間がなくなって恐縮ですが、それは全額を入れるということは非常に困難であるかもしれぬけれども、しかし、農家が経済再建ができるということを基本的な考え方としてやってもらわなければ、せっかくの対策が最終的には役に立たなかったということになりますので、この点を要望して、時間が参りましたので終わります。
  148. 島村宜伸

    ○島村委員長代理 菅原喜重郎君。
  149. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 林業行政について、きょうは大臣と長官とにお伺いいたしたいと思います。  五月十七日の夜のNHK番組を見ておりましたら、「杉山崩壊」というテレビの放映がありました。多分、大臣や長官もあのテレビを見られたのではないかとは思いますが、私はあれを見ておりまして、来るべきものが来た、今まで再三質問してまいりましたが、密植植林による弊害あるいは単純化された一斉造林地の造成、さらに、育苗から植林していく、裸苗を長距離をかけて送って、そして何%かもう既に苗落ちが出てくるようなああいう今の植林技術、これを更新しないと、とても百年、二百年というような林相は出ないし、結局今の技術では一斉皆伐するところの皆伐造林技術であって、これは必ず弊害が起きてくる。自然の復原力そのものも壊してしまって、国土の保全もできなくなってくる。これは平地や何かはいいわけなんですが、傾斜地は大変な事態になるということを完全にテレビはとらえておりました。それで私、今ぜひ林業行政の大転換をさせなければ日本の山林がどうなっていくか、もう本当に心配になってきたわけでございます。  そこでお伺いするのですが、実はテレビの中でおばあさんが、今までのあの密植された植林、三百本になっていますが、その林相は、六、七十年たつと先端が丸くなってくる、そういうことを言ってましたね。どの植林地を見ましても、六、七十年の木はだんだんと丸くなってくるというわけです。木は丸くなってしまうと成長はとまった証拠ですから。  さらに、あのテレビが技術的な面でも非常に国民に教えてくれたのは、木というのは枝を張った下までしか根が伸びないということを話してましたね。だから、私のじいさんなんか、私も小さいとき山に行ったときは、当時、昭和の初めまでは一反歩百本が一応植林の本数の常識だったのですね、そして必ず木というのは三角に育てて、木と木とが接触してきたときには即座に間伐していって、枝打ちは力枝の張った下だけは落としていって、絶対枝を切っちゃいかぬと言っていましたね。今の木は密植していますから、上に行くほどだんだんやり持ちのやりのかさのようになっていく。根は枝の張った範囲の下までしか張らないこととなりますから、当然根そのものも完全な表土を保全できるような根張りがしないわけですね。  ですから私はテレビを見ておりまして、本当にひとつ大臣と長官に、世紀にわたる日本の新しい林業施策というものを方向づけだけでも一応ここら辺で樹立してもらいたいなというふうに感じたわけでございます。  こういう観点からお伺いするわけでございますが、植林についてポット植林の技術問題、これも今まで質問してきたところなのでございますが、この試験結果はどうなっているか、お調べになっていたのか。こういう技術導入を私はすべきだと考えているのですが、まずこのことについてお伺いいたします。
  150. 田中恒利

    田中(恒)政府委員 ポット造林についてでございますが、これは国有林につきましては比較的早く入りまして、四十年ごろから大体五十年ごろが最盛期で、二千ヘクタール近い造林をいたしたわけでございますが、その後いろいろな事情から大分減少をしてきております。民有林につきましてはずっとおくれまして、五十五年ごろから少し入っているというような段階でございます。したがいまして、経験の蓄積は国有林の方が多いわけでございます。  確かにいろいろ利点もございまして、山元で仮植する必要がなく、運搬できること、何よりも植えつけの適期が非常に広くなりまして、国有林のように固定的な作業員を抱えておりますと雇用計画の非常に円滑な作成ができるという利点もあったわけでございますが、その後、生産コスト、運搬コスト等にいろいろ問題もある、また非常に難しい点を感じましたのは、水管理がなかなか大変なのでございますが、休日が続いたりなんかしますと、その間の水管理にどうしても休日出勤を余儀なくされるというようなこともありまして、それをある程度克服もしてまいったのですが、多少数量的には減ってまいったのが現状でございます。  そういう経験も踏まえてではございますけれども、いろいろと限定された場合には非常に効用がある。限定されたと申しましても否定的な意味ではないわけでございますけれども、例えば山元土場に使いまして非常に地表の荒れたところを急速に復旧させるとか、あるいはトラクターの集材路などの早急な緑化造林とか、そういうところではまた非常に効用もある。もちろん適期の幅が広いということも大変に有利な点でもございますので、そういうふうに使います場合には非常にすぐれた技術ではないか、全面的にこれに頼って行うとなればいろいろ経済的な問題も出ますけれども、そういうふうに特徴を生かして組み込むことは大変よろしいのではないかということが私どもの現在の知見と申しますか認識でございます。それによりまして特に営林局署を指導してまいりたいと思っております。
  151. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 これはちょっと技術的な問題になるのですが、今のポットはどういう材料を使っているかでございまして、ビニールポットとかなんかで根が貫通しないポットを使いますと、かえって弊害が出るのですね。木ですと根がぐるぐる回っていきますから。植物ですと回った根はすぐに腐っちゃって新しい根が出ますが、木の場合は大変な弊害になるのです。それから今度ポットを置いた場所が、むしろコンクリートとか木の上に置かないと、直立根がポットを通して地下に行ってしまいますと切りますから、これもまた弊害になるわけです。ですから、このポット植林についてはもう一つ、今のような密植には適さない、やはり疎植に適するものです。このデータは、北欧、殊にゾフィーポットという泥炭でつくったポットを植林に使っているのはノルウェーが世界で初めてやったわけですから、長官、ひとつ現場に行ってぜひ調査してこの導入を図るべきです。大臣にもこれは要望しておきますが、どうも日本で知見がないところで論争したって、こっちは一生懸命見たり実際にやってきたりしますとどうしてもかみ合いませんので、長官、これだけは本当に現地に技術屋を一人やって、日本の百年の林業対策をつくるためにやっていただきたいと思うのです。  それから、密植はやはり好ましくないと私は思っているわけでございます。といいますのは、技術的に、密植しても疎植しても伸びる高さは大体同じだというデータが出ているわけですよ。そうすると、密植してぼんと伸ばした木は、皆伐ということを頭に置きますから、一本の木から一丁の柱を取るという想定になっているわけですよ。しかし、百年、二百年というように大口径木にしていきますと、一本の木からいわゆる総まさあるいは三万まさ、二万まさの材木を取るという方向でいきますと、何も皆伐しなくても、山も守り、それから適度の間伐をしていっても生産は上がってくる、私はそう考えるわけです。そういう点で、今のポット植林の導入には、根本的に山の林相を百年、二百年、三百年と残していくのだという発想がないと、五、六十年の間伐を対象にしたのではどうにもならぬわけです。  さらに、大体皆伐しますと十年ぐらいはその人工林の落葉層の表土の減少が続いていく、そして、その後徐々に回復していく、これは一つのデータが出ているわけです。しかし、こういう回復比率で旧態に戻るには百年近くかかることがわかっています。さらに、南傾斜面では一回の皆伐で表層土までも流亡させていくというデータも出ているわけですね。こうなりますと、人工皆伐林を今造成していて果たしていいのか。これは、民間は皆伐造林に適している土地もありますから、それはさせてもいいのですが、国は少なくとも皆伐人工林の発想はやめて、そして新しく大口径木をつくりながら間伐して収入を上げるという一つの林業施策をとるべきではないだろうか、こういうふうに考えるわけでございますが、こういういわゆる非皆伐施策、公益的機能の確保の視点から国有林ではぜひこういう施策をとっていただきたいという願いから、ひとつ長官の考えをお伺いしたいわけでございます。
  152. 田中恒利

    田中(恒)政府委員 最初の、ポットの材料につきましては、一時、ビニールでしょうか、ああいうものも使いましたが、現在ではジフィー、ピートモスとかそういう植物性のものを使っておりまして、そのために非常に中での根茎の発達もよろしいように観察をしております。  それから、先生、大変皆伐施業につきましての深い御観察をいただいておるわけでございますが、釈迦に説法のようになりましても恐縮でございますけれども、日本の国の杉、ヒノキにつきましてはやはり相当安定した施業技術として確立しておる。それに甘え過ぎて適地の判断をおろそかにしたり、あるいは適地であっても限度以上の大面積にわたって単一の作業を繰り返す、そういうふうなことがありますとかえって弊害の方が大きく出てくるということは、私ども御指摘のとおりだと思っております。  やはり日本の林業全体として、昭和三十年代までの非常に生産力を重視いたしましたときには、すべてそういうふうな大面積の作業が行われましたし、生産も造林も、ともに大きい単位で能率を重視したわけでございますけれども、その結果の問題につきましては、現実に現地でいろいろ私ども見聞きしておる。そういう反省に立ちまして、今、施業方法につきましては大分大きな転換を行っているところであります。  やはり皆伐、新植の適地は最も慎重な選び方をしなければならないし、一回に作業する単位も、現地の立地条件を見ましてなるべくそれを小さくしていくとか、それからおっしゃるように、一時に大変大きい衝撃を林地に与えますので、そういうことを与えないで済む複層林とか多段林とか言っております施業が非常に望ましい場合が、日本のようなきめの細かい自然のところでは随所にございますので、現在一斉林で皆伐を予定しておったところであっても、切り方の誘導によりましてそういう複層林、多段林に持っていく。少しあけて広葉樹を入れるとか、下木を植栽するとか、いろいろな観察のもとに、どっちの方に誘導したら一番そこの場所に合った山に仕立てることができるか、現在が一斉林でありましても必ずしもその一斉林を繰り返すという施業はとらない、そういうのを現地でよく判断して採用するのが現地の技術者の大事な仕事である、そういうことを常々教育をしておるところでございます。
  153. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 今、長官も答弁の中に時代の変わっていることを認めたように話されていますが、本当に戦後量産をしなければならぬ、また荒れた山を早速植林して復旧しなければならぬという時代、今まで密植も当然だったと思うのですが、しかしもう時代は既に変わっているわけでございますので、ひとつ林業の方針もできるだけ皆伐式じゃなくして百年、二百年と世紀にわたって林相が保存形成されていくような方式をぜひとってもらいたい。  しかしそのためには、既に植えた植林の中でこういう過密化していもところがたくさんあるのじゃないかと危惧されるわけでございます。それで一応、既に株分を形成している中で間伐を積極的に行わなければならない面積は大体今どのくらいになっているのか、これをお聞きしたいと思います。
  154. 田中恒利

    田中(恒)政府委員 先生のお話にありましたように、戦後、大変な戦時中の伐採によります伐跡地を抱えておりましたし、その後の戦災復興、経済建設の伐採も大量でございました。しかし、当時そういうところについては必ず植えるということを合い言葉にしてやってまいりましたので、現在一千万ヘクタールの人工造林地を抱えております。約九割が三十五年生以下というような非常に幼齢な構成になっておりますが、私どもの調査で申し上げますと、その中で、ここ数年、五年くらいの間にどうしても間伐をしなければ森林の機能保持、発揮上いろいろ問題があると考えられる要間伐株分と言っておりますが、それが百九十万ヘクタールございます。これが当面の対象になるわけでございます。
  155. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 この百九十万ヘクタールに対する間伐施業の計画というのはどのような見通しになっているわけでございますか。
  156. 田中恒利

    田中(恒)政府委員 年に直しますと三十八万でございますから、約四十万ぐらいが毎年行われれば大体それは解消できると考えていいと思いますけれども、現在いろいろな手だてによって行われております間伐が二十五万ヘクタールは行われております。したがいまして、大体必要な量の約六〇%が行われている。足りないことは足りないわけでございますけれども、そういうふうな実行上の実情にはなっておるわけでございます。
  157. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 今の木価低迷の中ではなかなか間伐を促進させようとしても大変だと思うわけでございます。しかし、この間伐の適期を逃がしてしまいますと林相そのものが荒れて、あの「杉山崩壊」のような自然破壊にまで至る問題でございますので、この点に対しては十分な監督ができるように要望いたしておきます。  次に、シイタケ原木が不足しているわけでございますが、現状がどうなっているのか。また、これからのこの植林事業の中にナラ、クヌギ林の広葉樹造林も進めるべきで、ぜひこの指導もお願いしたいと思うわけなんでございますが、そういう指導に際しては、やはり適地適木の研究もあわせて促進して指導していただきたいと思うわけでございます。  ついては、このシイタケ原木の需要とナラ、クヌギの植林の推進についてどうお考えになっているのか、長官から政府の方針をお伺いしたいと思います。
  158. 田中恒利

    田中(恒)政府委員 シイタケの原木といたしまして現在使用されておりますのはコナラ、クヌギ等が多いわけでございますが、毎年約二百万立方が伏せ込まれておるというふうに見られております。総量を見ますと大体間に合っておるという状態でありますけれども、これは地域的には非常にアンバラもございまして、過不足がございます。     〔島村委員長代理退席、衛藤委員長代理着席〕 生産県で申しますと、大分、宮崎、岩手県も大変な生産県でございますが、これらにつきましては大体間に合っておりますけれども、同じ生産県の群馬、静岡は不足しておりまして、他県から相当量が入っておるというふうな状態でございます。やはりこれからは、遠く輸送するということはこの特用林産のためにも決して好ましいことでもありませんし、そういう原木需給事情を緩和することも大事でございます。  林野庁で現在行っておる施策としましては林産集落振興対策事業というのがございますが、ここにおきましてシイタケ原木林を造成することなどが大きな事業として組み込んでございます。また、国有林におきましても、地元の大変大事な産業である場合が多いわけですので、計画的、保持続的に供給できるように国有林側からの森林施業についても配慮するようにいたしておるところであります。  現実に行われていること、数量的なことをちょっと申し上げますと、広葉樹につきましても造林補助事業がございまして、適地についてはこれを積極的に進めるようにいたしておりますが、ここ数年でございますと、こういう人工仕立てによる広葉樹造林は約五千ヘクタールぐらいで実行をされておるわけでございます。やはり最近は特用林産資材としての要望も大変多いわけでございますので、それには対応できるように考えていかなければならぬと思っております。
  159. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 最後に大臣にお伺いするわけでございますが、ひとつ大臣、長官と一緒に力を合わせて、ぜひ百年、二百年、三百年といわゆる非皆伐の森林造成を、どこか五十町歩でも百町歩でもいいわけですから、それを設定しまして、新しい日本のいわゆる林業施策の先進的な、先駆的な役割を果たしていただぎたい。  そのためには、先ほど言いましたようにポット植林のような植林を導入しないとそういう林相形成はできないわけでございますから、これは本当に時代が量から質の時代に変わっているわけでございますので、こういう非皆伐人工林の造成ということに対して大臣がどのようにお考えなのかお聞きいたしまして、質問を終わりたいと思います。
  160. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 菅原先生にお答えいたしますが、先生の御提言、私実はポット植林というのはよく知らないのです。きょう初めて聞いたわけで、お考えについては確かにおっしゃるとおりであると思いますが、現在日本にとりまして林業に大切なことは、どうして健全なる運営をするかということです。そんなことで、まず総合対策をどうするか、やはり対策としてはいわゆる中長期長期対策になる。  そんなことで、やはり私は林業経営を安定させながら将来そういうことも考えてみたい、こう考えておるわけでございます。よろしくお願いいたします。
  161. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 終わります。
  162. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員長代理 吉浦忠治君。
  163. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 私は、水産関係を中心にお尋ねをいたしたいと思います。  声がちょっと苦しいものですから余りよく聞き取れないかと思いますけれども、長官が、日ソサケ・マスの問題で大変大きな障壁があって苦しい中を妥結までこぎつけられた点について、敬意を表するわけでございます。国民の声はいろいろ厳しいものがございますけれども、当事者としての大臣並びに長官は大変なことであったろうと推察をするわけであります。  そこで、これからの問題もあるものですから、国内の日ソサケ・マスにも匹敵するような私の地元の問題で、少しばかりきょうはお尋ねをいたしておきたいと思うわけでございますが、房総半島の南部を主漁場としておりますサバのたもすくい漁業について、時間の許す限り詰めてみたいと思うわけであります。  二年続きの大変な不漁でありまして、ことしはいいのじゃないかということで取り組んでおりますが、それも大変な収穫減でございまして、漁期も今終わろうとしておりますが、どういうわけなのか、漁場の環境が変わったとか乱獲のために資源が枯渇してしまったとかいろいろ言われておりますけれども、こういう点について少しばかり詰めさせていただければと思うわけでございます。  千葉県のサバ釣り漁業、いわゆるたもすくい漁業の漁獲量は、長期的に見ていくと、昭和五十四年の八万四千トンをピークにして年々減少しておるわけであります。五十七年には九千トンに落ち込みまして、翌五十八年には二万五千トンに回復をいたしましたものの、昨年は皆無という状態でありました。今年に入りまして海況はサバ釣り漁業にとって絶好のものではないかというふうな期待を持っていたわけでありますが、四千五百七十トンにとどまっておるのが現状でございます。  一方、北部まき網、いわゆる北まきと言っておりますが、漁獲の模様を見てまいりますと、五十三年の百八万トンをピークにこれまた減少の傾向にありますけれども、五十八年に三十二万トン、五十九年に四十五万トンと増加しております。しかし、これを子細に見てまいりますと、この増加は漁獲努力量の増大の結果ではないかと思うわけでありまして、一綱当たりの漁獲量は減少しているというふうに思うわけであります。  そこでお伺いをいたしたいのですが、サバ釣りのいわゆるたもすくい漁業の五十七年、五十九年の大幅減の原因は何であったと長官はお考えなのか、まずこの点からお尋ねをいたしたいと思います。
  164. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  確かに先生御指摘のような漁獲量でございますが、私どもは、これは何と申しましても漁獲対象である太平洋系のマサバの資源量水準が従前に比べてかなり小さくなっているということが原因であるというふうに考えております。  五十九年の場合には、こういう資源量水準が従前に比べて小さくなっているということに加えまして、さらに産卵親魚群の分布域に当たります房総から伊豆諸島にかけての海域の水温が異常に低かったものでございますから、そのためにサバの魚群が分散して希薄になった、魚群の浮上が抑えられて漁場形成がなされなかったというようなことが特殊事情としてございますが、基本的には資源量水準が従前に比べてかなり小さくなっているということが原因であろうというふうに認識をいたしております。
  165. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 六十年は海の状況が大変好転をするということでありますけれども、ことしも昨年同様に低迷をしているというような点はどういうふうにとらえていらっしゃるのか、お答えをいただきたい。
  166. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  本年の場合には、五十九年に申し上げましたような特殊な海況、魚群の分散、希薄化というような事態は当てはまらないわけでございますが、ことしにつきましてもたもすくいの漁獲状況は決して満足すべきものでございませんで、五月中旬までの集計でございますが、千葉、静岡、神奈川の三県合計でマサバが三千五百トン弱、それからゴマサバが一万七千トン弱でございまして、先ほど申し上げました特殊な漁海況にございました五十九年に比べますると上昇はいたしておりますが、依然として甚だ低い水準であるという状況でございます。
  167. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 長期的な漁獲量減少の原因というものをお尋ねしたいわけでありますけれども、私は、いわゆる象の鼻水域てまき網漁業が産卵前のサバを大量に捕獲するために資源が回復しないというふうに考えているわけでありますけれども、こういう乱獲がたたって漁獲量が年々減少してきているのではないかというふうな気がしているわけでありますけれども、長官はどういうふうにお考えか。
  168. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  現在の資源量水準が低下をしておりますのは、昭和五十一年以降漁獲量が高水準で推移してまいりましたが、五十四年ごろから産卵量の減少や初期生残率の低下、そういうことがございまして漁獲対象資源への加入量が減少してまいりました。そういうことの結果、今日御指摘をいただいておるような事態になっておるというふうに私どもは認識をいたしております。  それで、このような事態とそれからまき網の操業との関係でございますが、これは先生御高承のとおり、浮き魚の資源につきましてはなかなか操業と資源量との関係というのは特定しにくいものでございますので、現在のまき網の漁獲努力水準というのはほぼ満限に近いものであるというふうに認識をいたしておりますが、まき網の漁獲努力がこの資源量減少の、資源量水準の低下の犯人であるというふうに特定できるかどうかということについては、率直に申し上げまして、私どもとしてはそこまでは断定いたしかねるというふうに思っておるわけでございます。  それから、象の鼻水域のお話でございますが、これはサバの生活史の中でいろいろな水域を回遊しながらあれしていくわけでございますから、特にどの水域でとることが有害であり、どの水域でとることを抑制することが資源量の回復につながる道であるかということも、これまたなかなか科学的には特定しにくいという事情にございますので、その点、御理解を賜りたいと思っておる次第でございます。
  169. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 来年はどのようになるかというような点がよくわからないというのが恐らく長官の今の答弁のように私は受け取るわけでありますけれども、今後の見通しについても、よくなる可能性もないのじゃないかというその原因がわからなければ、来年のことを言ってもわからないわけでありますから、そういう点で、正直に言って好転する要素は一つもないのじゃないかという心配をいたしておるわけでありますが、また後で詰めてまいりたいと思っております。  そこで、利根川尻協定の締結についてお尋ねをいたしておきたいのですが、現在千葉県沖のサバ漁業につきましては、北都太平洋海区まき網漁業生産調整組合と東日本さば釣漁業生産調整組合との間で利根川尻協定が結ばれておるわけであります。この協定は本年の七月三十一日をもって期限切れ、いわゆる有効期限が切れるわけであります。  そこで、この更新期を前にいたしまして四月の十七日にさば釣組合の方は一部改正の申し入れをしたのでありますけれども、これに対してまき網組合は、太東崎以北でのサバたもすくいの操業実績はない、こういう理由で利根川尻協定は必要ないとしてその廃止を求めてきているのであります。太東崎以北では地元の小型船が操業しておりまして、いわゆる競合する場所でありますが、との競合を避けるためにたもすくいの漁業の方は操業を自粛していたのでありまして、この協定廃止の申し入れに対して六月三日にさば釣組合は、協定適用海域である茨城県の沖合の線までまき網漁業の操業を制限する追加申し入れを行ったのであります。  このような経過を見てまいりますと、全く相入れない主張が対立をしておるわけでありまして、加えて、千葉県の太平洋側に出漁する全部の小型漁船に影響が及ぶことになるわけでありまして、大変な事態になると憂慮をしておるわけであります。  そこで、今後この協定の交渉は難航することが予想されるわけでありますが、万一無協定というふうなことになるとこれは大変なことになると思います。現場では恐らく血の雨が降るのではないかというふうに心配をいたしているわけでありますが、大変な混乱が生ずるだろうと思います。何らかの協定はぜひとも必要であるというふうに考えるわけでありますけれども、まず、この協定の更新について水産庁はどのような見解を持っておられるのか、お尋ねをいたしておきたいと思います。
  170. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えをいたします。  水産庁といたしましても、七月三十一日をもって有効期限が満了することとなっております利根川尻協定は、利根川尻のサバ漁場における漁業秩序の維持を図るという見地から今後とも極めて重要であるというふうに考えておりますので、本協定の立会人といたしまして関係漁業者間の十分な意見の調整を図りまして、協定が更新されるように全力を尽くしたいと考えております。
  171. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 また、無協定なような状態になる可能性もあるわけでありまして、このような状態にならないように水産庁としてはどのような指導をすべきであるというふうにお考えなのか、その対処方針について伺っておきたい。
  172. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  私どもとしては無協定状態になることはぜひ避けたいということで、期限までに更新できるように最大限の努力を傾けてまいりたいというふうに思っております。
  173. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 先ほど申しましたように、銚子沖の象の鼻と呼ばれております水域は、三陸沖の方から南下してまいりましたサバが一時その場所で保養する、魚の保養というのはちょっと当たりませんけれども、一時休むところでありまして、そしてそこで産卵の準備をして、さらに南下をして伊豆七島沖の銭洲というところで産卵をしているというふうに調査になっておるわけでありますが、資源保護上大変重要な水域がこの象の鼻水域ではないかと思うわけであります。  そこで、この象の鼻水域をサバの漁場というふうにとらえてまいりますというと、ここでサバの資源を守る、いわゆる資源を回復させるというためにその漁獲を控えることが大事ではないかというふうに思うわけでありまして、その結果は、サバ釣り漁業者だけでなくてまき網漁業の方にとっても有益なことであろうというふうに考えるわけでありますが、水産庁は漁獲を控えるという点についてどういうお考えをお持ちなのか、お尋ねをいたしておきたい。
  174. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  先ほどもちょっと言及させていただいたことでございますが、そもそもサバのような浮き無資源につきましては、資源の変動要因が自然環境によって支配されるという側面が非常に大きいものでございますので、漁獲と資源状態との間の因果関係というのがなかなか難しいわけでございます。  御指摘のサバの象の鼻水域のお話でございますが、元来浮き無資源についてそういう事情がございます上に、このサバの場合には、広く我が国の沿岸水域に分布して、季節ごとに、成長段階ごとに回遊して、それぞれの回遊地先で漁獲の対象になっている、そういうものでございますので、どこを保護すればどういう効果があるということがなかなか科学的には特定しにくいということがございます。  そういう事情でございますので、私どもとしては、科学的な見地から見て象の鼻水域を保護水域にすべしという結論が当然に出てくるということにはなりにくいものでございますので、そこをエイヤと漁獲を制限するということにするというのもまた同時に非常に難しい問題ではないかというふうに思っておるのが現状でございます。
  175. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 十分検討していただければというふうに思うわけでございます。  現在のいわゆる利根川尻協定は水産庁の立ち会いのもとで締結されたものでありまして、今年に入りましてまき網のほとんど全般が違反するというふうなことで、協定は全く無視されているような状況にあるわけであります。  まき網の違反件数、これは非公式でありますけれども、五十七年に八日間だけ見てまいりましても二百隻以上のまき網船の違反があるし、五十八年に五日間で三十九隻、五十九年に十一日で百一隻、六十年、本年ですが、十二日間で百八十一隻、これはあくまでも非公式な数字でありますが、こういう違反、いわゆるまき網のほとんどが違反をしているという状況であるわけでありますが、これでは水産庁の権威も全く踏みにじられてしまっている。こういう状況に対して水産庁はどういう態度で臨まれるのか、いわゆる協定違反が横行しているのに対してどのような考え方でおられるのか、この点をまず伺っておきたいと思うのです。
  176. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えをいたします。  私どもといたしましても、利根川尻協定はこの水域における漁場の秩序維持のために非常に重要な協定であるというふうに認識をいたしておりますので、私どもとしては、御指摘のような協定違反が行われているということを大変に遺憾に存じておるわけであります。  それで、私どもといたしましては、利根川尻水域でのまき網漁業の操業に当たりましては、監視船を派遣するとか、あるいは漁労長を対象とする説明指導会を開催するとか、いろいろな方法で協定の遵守について鋭意指導に努めてきたところでございます。  今後とも私どもは、監視船の派遣による現場指導あるいは漁労長や通信長のような操業責任者に対する協定遵守の指導と、それからもう一つは、協定の当事者であります北部太平洋まき網組合に対して違反防止対策を厳重に指導してまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
  177. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 守らせるために打っておられる対策だというふうには思いますけれども、いわゆるその両方の立場に立って、まき網だけを責めているわけじゃありませんけれども、守らせるためにどのような対策をとればいいというふうにお考えなのか、この点を伺っておきたい。
  178. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  私どもも、先ほど申し上げましたように行政の側としていろいろ指導監督をいたしてまいっておりますし、今後ともそうしてまいりたいというふうに思っておりますが、何と申しましてもこの利根川尻協定は民間の協定でございますので、協定の当事者である、まき網側について申しますと、北部太平洋まき網組合が協定の当事者としての責任を自覚されて、団体の内部の規律の問題として所属漁船の操業秩序を維持することに責任を持っていただかなければいけないというふうに考えております。私どももそういうことをまき網組合に対してきづく申しまして、まき網組合におきましても違反船について団体内部で制裁措置を科しておるようでございまして、私どもは、まき網組合が協定の当事者であるという事態に立脚して、まき網組合の団体内部の秩序の問題として厳正に対処していただくということがそもそもの基本であろうというふうに考えております。
  179. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 水産庁の指導にもかかわりませず、まき網業者の違反が絶えないという点では私は大変残念に思うわけであります。  そこで、協定が守られないのは罰則が内部的なものであるということも大きな原因であると私は考えるわけでありますが、違反が続出するという状況に対しては、水産庁は立会人としての責任を持っておられなければならないと思うのです。そこで、水産庁の権威を守るためにも、協定の内容を指定漁業省令に基づく告示として許可に制限条件を付して、違反者に対しては法律に基づく罰則を科すというふうな強い姿勢で臨まなければならぬのじゃないかと考えるわけでありますが、まずこの点、見解を伺っておきたいと思うのですが、どうですか。
  180. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  これは先ほども若干言及させていただいたところでございますが、元来、利根川尻協定というのは民間協定で、まき網組合がまき網側の当事者としてこの協定が締結されておるわけであります。私ども役所としても、そういう民間の団体間の協定に対して立会人として立ち会っておるわけであります。  したがいまして、その協定の当事者でありますまき網の組合は、当然組合員に対して協定の遵守を確保するだけの意思と能力を備えておるという前提で民間協定が成り立っておるわけでありまして、先ほど先生も御指摘なさいましたように、かつ私どももお答えいたしましたように、利根川尻協定を民間協定として更新をするという前提で私どもは事態を進めてまいっておりますので、そういう意味では、まき網組合が当事者としての責任を遂行する能力を持っているということがまず大前提でありまして、役所のそういう制裁措置に依存しなければ、まき網組合自体ではこの協定を遵守する能力はないのであるということになりますと、民間協定として更新するということがそもそも成り立たないわけでありまして、私どもとしては、いろいろ指導はいたしますが、違反に対する対策というのは、基本的には協定当事者である団体の規律の問題として処理をしていただくべきものであるというふうに考えておるわけであります。
  181. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 長官もなかなか述べにくいようでございますけれども、やはり私はこの違反者に対しては法律に基づく罰則を科すというふうな強い姿勢で臨んでもらいたい、いわゆる制限条件を付してもらいたい、こう思うわけです。ですから、精神訓話みたいで申しわけありませんけれども、行政として、正直者がばかを見るような、弱い者がいつも損をするというふうな行き方、約束されたことも力によってねじ伏せてしまうというやり方、これを放置していることはやはり政府に対する信頼を失ってしまうと私は思うわけでありまして、今後新たな協定が円満に結ばれた場合でも、また結ばれない場合には水産庁独自の判断でまき網漁業の操業に、制限条件を付して、私がいつも申し上げておりますように、資源管理型漁業を達成できるように望むわけでありますけれども、見解をお聞かせいただきたい。
  182. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  先ほど来申し上げておりますように、私どもとしては、利根川尻協定が民間協定として更新されることを目標に更新に向かって努力をしたいと考えておりますので、そうである以上は、当然まき網の組合が協定を遵守する責任を自覚し、組合員にそれを守らせる能力を具備していただかなければそもそも民間協定として更新をするということが成り立たないわけでありますので、私どもとして、この協定の遵守については、先生御指摘のような強い決意で当たりたいと思っておりますが、協定を遵守させる第一義的な責任はまき網組合が負ってもらわなければ成り立たない話であると思っております。
  183. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 大臣、くどいようでありますけれども、今私が申し上げているように、お話をお聞きになっておわかりだろうと思いますけれども、行政の責任者として、正直者あるいは弱い者がいつも損するような約束であってはならないと思うわけでありまして、私、先ほどから申し上げておりますように、制限条件を付したらどうだという強い姿勢を持っているわけでございますが、大臣の御見解を伺いたいと思うのです。
  184. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 吉浦先生にお答えします。  今、長官の答えたとおりでございますが、この協定の遵守というのは、結局一部のまき網漁船の違反を理由として直ちにまき網全船に制限条件を付すことよりは、話し合いを基調とする漁業調整のあり方が基本のようでございまして、そういう意味からいきますと、やはり長官の言ったように粘り強く指導してやっていくというのが適当ではないか。先生のおっしゃる趣旨はよくわかりますけれども、やはり私は、長官の答弁の方が現状としてはやむを得ないのじゃないか、こう理解しておりますが、よろしくお願いします。
  185. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 ちょっと地図が小さいので見えないと思いますけれども、専門家の方々だからおわかりでございましょうが、一の島灯台九十度からこの房総半島の一番先のところの南の方がいわゆるたもすくい等の東日本の方々、それが今度、百三十五度の線と百二十度の間のところは両方とも入っても構わないというふうなことで水産庁が調整をとってくださったところでございますが、今度、北まきの方々は、その海域を全面、いわゆる大臣許可ということで操業をすると言うし、東日本の方々も今度はこの点で白紙委任はしないというふうなことで、両方が強硬な条件提示のようでございまして、水産庁に白紙委任はしないというふうなことでかかってまいりますと、これは相当混乱をするのじゃないかという心配をいたしているわけでございます。どうか長期にわたりまして無協定にならないように行政の責任者として対応していただきたいと思いますが、最後に、この決意のほどをお願いしておきたいと思うのであります。
  186. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  具体的な線の引き方の話につきましては、円満に話がまとまるためには、途中の段階でいろいろ軽々しく論評を加えることは避けさせていただいた方がよろしいかと思いますので御容赦いただきたいと存じますが、私どもは、先ほども申し上げましたように、断じて無協定状態は避けたいという決意で、更新ができるよう全力を傾注する所存でございますので、ひとつよろしくお願いをしたいと思っております。
  187. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 千葉県のサバ釣り漁船の場合は、四十九隻のうち約二十一隻の減船、六十、六十一年度で減船をするというふうになっておるわけでありますが、そのスクラップ事業に、必要な事業費は十二億九千百万円、こうなっておるわけでございまして、そのうち千葉県が補助するのは約四億八千四百万円、これは県の予算で既に計上されているように聞いているわけでございまして、国の補助金が県と同額がおりるものというふうに期待しているわけでございますが、国の補助は近々出される見込みであるというふうに聞いておりますけれども、この点いかがでございましょうか。
  188. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えをいたします。  六月の十一日付で関係県から水産庁に減船計画のお申し出があったところでございます。  それで、千葉県から御提出いただきました計画によりますと、対象船五十隻中二十三隻を減船をするということで、これを二年間に分けまして、ことしが十三隻、来年が十隻ということになっております。総事業費十四億、そのうち補助は国、県同額の八分の三ずつということは先生御指摘のとおりでございます。私どもとしては、御提出をいただきました計画の内容を検討させていただきました上で所要の助成を行うことといたしたいと思っております。
  189. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 たもすくいの方は以上にさせていただきまして、北米系のマスノスケの問題について少しばかりお尋ねをしておきたいと思います。  日ソサケ・マス交渉が母川国の権利をめぐり難航の末にようやく妥結を見たのでありますが、今度はアメリカがマスノスケの母川国としての権利を主張をしてまいりました。サケ・マスの沖取りを事実上中止すべきではないかというふうに問題を提起してきておるわけでありますが、明日からでありますか、その交渉が行われるわけでありますけれども、アメリカの主張は、日本の母船式サケ・マス漁業あるいは中型サケ・マス漁業が混獲するマスノスケは、うろこの分析をしたところアラスカを起源とするもので、この捕獲は禁止すべきであるというものでありますが、鱗相分析だけでその起源がわかるものかどうか。  また、日本のサケ・マス漁業は三カ年で三十万尾の自主規制をしておるわけでありますが、北米系のサケ・マスをどの程度捕獲しているのか、水産庁としてどのような把握をなさっているのか。  時間がないから続いて質問をいたしますけれども、私は、アメリカ側の主張に対して、科学的な根拠で対抗できるような資料が日本側に整っていないというふうな印象を受けるわけでありますけれども、研究体制の整備についてどのように対処する考えなのか、伺っておきたいと思うのです。  またさらに、この問題がアメリカで政治問題化しているとするならば、捕鯨禁止問題のように科学的主張だけでは片づかないというふうに考えるわけでありまして、明日からの交渉、いわゆる日米サケ・マス協議が開かれますが、この協議にどのような姿勢で臨まれるのか、まずこの点を先に伺っておきたいと思います。
  190. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  まず、アメリカ側の主張でございますが、アメリカ側の主張は、ただいま先生御指摘のございましたように、マスノスケの鱗相分析の結果から、ベーリング公海におけるマスノスケのほとんど、それから北西太平洋のマスノスケの約半分が北米系であるという主張をいたしまして、したがってその北米系のマスノスケの漁獲を禁止すべきであるというふうに言っておるわけであります。  それで、従来私どもは、一九八四年から八六年の三カ年間にわたりましてマスノスケの漁獲尾数を三十万尾、そのうちベーリング公海での漁獲尾数はその三分の一にするという自主規制措置をとっておりまして、これによりまして北米系起源のマスノスケは十二分に保護されておるというのが私どもの認識でございます。したがいまして、私どもとしては北米系のマスノスケの資源を保護するために現状以上の規制が必要であるということではないという認識に立って対処をいたすつもりでおります。  さらに、アメリカ側の主張のようなことでいきますと我が国のサケ・マス漁業に甚大な影響がございますので、理屈の上からいってアメリカ側の主張が筋が通らないということと同時に、我が国のサケ・マス漁業を擁護していくという見地から見てもアメリカ側の主張をのむわけにはいかないというふうに考えておるところであります。  次に、アメリカ側が主張しております鱗相分析というものの考え方でございますが、うろこは、うろこが成長する過程におきます生活環境、特に水温の違いによって影響を受けるわけで、特にサケ・マス類は河川における生活期及び降海直後の時期の水温などから、鱗紋も地域によって微妙に異なるわけでございます。これに着目して、この差を統計的に処理解析をすると起源が推定できる、そういう考え方に立脚をしておりますのが鱗相分析法でございます。  しかしながら、異なる河川から生まれたサケ・マスでございましても、似たような環境条件下にある河川から生じたものの場合には、鱗紋に差があるといいましてもその差は極めて微妙なものでございまして、鱗相分析のみからその起源を判断するということはやはり無理がございまして、標識魚の採捕等による直接的な調査結果とあわせて起源の推定を行わなければいけないものであるというふうに私どもは考えております。  殊に、今回アメリカ側が鱗相分析に使いましたデータは、例えばアジア系の場合には、ソ連の川はわずか二つの川から採取された標本を使っておるわけでございまして、それでアジア系全体を代表して理論を組み立てるというようなことはとても無理な相談であるというふうに私どもは思っておりまして、その点は科学的にも十分反論可能であるというふうに考えております。  それから、サケ・マスの研究体制の問題でございますが、水産庁所属の各水研あるいはさけ・ますふ化場を通じましてサケ・マス研究者全部で三十五名ほどおりまして、資源関係調査研究については、遠洋水産研究所の北洋資源部を中心にしてサケ・マス類の生態の把握あるいは資源状態の評価等を行っているところでございますが、近年、こういう厳しい国際環境の中で資源研究の重要性が高まっておりますので、これからも若手の研究者の補充に努めて体制を整備してまいりたいというふうに考えております。  それから、先生ただいま御指摘がございましたように、国務省の次官補代理のエド・ウルフを団長とするアメリカの代表団と明日から協議が始まります。その際、先ほど申し上げましたようなことを主張してくるものと思っておりますが、我が国といたしましては、先ほど来我が国のポジションについては概括的に申し上げましたが、さらにそれに加えまして、北米系のサケ・マス資源の保存につきましては日米加漁業条約というもので規制措置が定められているわけでありますが、それと先ほど若干言及いたしましたマスノスケの漁獲についての自主規制措置、これによって十分効果的な保護をされておるのであって、我が国の北洋漁業に重大な被害を与えかねないような追加的な保護措置は必要がないということを基本に据えて対応してまいりたいと思っておるところでございます。
  191. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 万一アメリカ側の主張を認めて日本が沖取りをやめてしまいますと、アメリカは自分たちでその魚をとって最大の市場である日本に輸出をしてくるのではないかというふうに思うわけであります。我が国アメリカから八百八十億円、サケ・マス全輸入量の九二%にも達するサケ・マスを輸入しているのでありまして、これ以上の輸入は、他のすべての魚価に及ぼす影響を考えますと絶対に許されるものではないというふうに思うわけでありまして、私はこの輸入の規制をてこにして漁場を確保すべきであるというふうに考えるわけであります。  もう一点、やはり日本も対応措置を十分考えてこの交渉に臨むべきではないか、捕鯨と同じような立場で一方通行になってしまうようなことがないよう日本も法的措置考えなければいけないのじゃないかと私は思っております。  以上、政府の積極的なお答えを期待いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  192. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えをいたします。  先生御指摘のように、現に我が国アメリカからの水産物の大輸入国でございます。しかも、我が国の水産業界が、アメリカとの協調関係なしには我が国の遠洋漁業の操業が円滑には行えないという認識のもとに、我が国の漁船の操業を確保するためにかなり無理をして輸入をしておるという部分も含めて、日本は大輸入国になっておるわけであります。  したがいまして、もしアメリカ側が我が国の今後の遠洋漁業の存続について理不尽な態度をとるという事態になりますれば、それに対して当然我が国の水産業界も従来のような姿勢で協力をし続けるということは成り立たないわけでございますし、私ども水産庁といたしましても、従来のようにアメリカ側の水産物の輸入について好意的な態度で対処するということも当然できなくなるわけでございますから、そういう点はアメリカ側との協議当たりまして十分交渉のてことして活用しながら対処してまいりたいと思っております。
  193. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 時間になりましたので終わります。  ありがとうございました。
  194. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員長代理 駒谷明君。
  195. 駒谷明

    ○駒谷委員 私から二点にわたりましてお尋ねをいたしたいと思います。  最初に、米価問題につきまして大臣にお伺いをしたいと思うわけであります。  昭和六十年産の生産者米価を決める米価審議会が七月早々に開かれるというような現況を報じておるわけでありますけれども、御存じのとおり、全国農協中央会が六月五日に基準価格を決定いたしまして、政府の買い入れ価格の引き上げを要請したという報道がなされております。六十キログラム当たり基準価格は一万九千三百八円、現行の価格からいたしますと、四・九五%、九百十円のアップということになっておるわけであります。  昨年の米の生産につきましては作況指数が一〇八で大変豊作であったということがあるわけでございますけれども、ことしはどうかということについてはまだ明確な状況ではない。長年にわたる米価の抑制という政策のために農家にとっては経営状態が大変厳しいことは御承知のとおりであります。農業を守り振興する、農業生産者に希望を持たせる、生産意欲を持たせていくという観点からいきますならば、農業団体及び農家の皆さんが納得のいくような政府諮問であり、米価の決定でなければならぬと私は思うわけであります。  今回の米価については、価格の引き下け云々とか据え置きが決まったようなことが諮問前にもう既に世上に流れている状況であり、私は大変遺憾に思うわけであります。特に大臣みずから、過日鹿児島におきます「一日農水省」においでになった際に、据え置きを示唆したというようなことが新聞に報じられておるわけであります。農業生産者を守る立場からいくとこの発言は受け取れないと私は思うわけでありますけれども、今回の生産者の希望をどのように受けとめておられるのか、米価決定に臨む大臣基本的姿勢と決意についてまずお伺いしたいと思います。
  196. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 駒谷先生にお答えいたします。  今、先生御指摘の、農業団体の本年産要求米価一万九千三百八円、昨年に比べて四・九五%アップ、これは私も承知しておりまして、昨年五月にまとめました米価審議会の米価算定に関する報告の大枠を踏まえて算定されたものであり、その労は多としておりますが、いずれにいたしましても、具体的な水準や内容についてはこれから十分検討してまいりたいと考えております。
  197. 駒谷明

    ○駒谷委員 鹿児島の記者会見での農林水産大臣の発言が報道されておりますけれども、その点についてのお考えをお伺いしたいと思います。
  198. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えします。  「一日農林水産省」の済んだ後に記者会見で質問に答えました。私は、基本的にはまだ何も決めておりません、食糧管理法に基づきまして、物価等諸事情を考慮し、農業生産の再生産を旨として、米価審議会の意見等を聞いて検討したいと思いますということの中に、率直に言いますと、例えば昨年と同じような生産費所得方式で数字を入れた場合にはかなり厳しい数字になるようですという話をしたわけでございます。
  199. 駒谷明

    ○駒谷委員 その価格の算式の問題でございますけれども、前回同様、生産費所得補償方式を適用されると思うわけであります。昨年の米価審議会あるいは当委員会においても、生産費のとり方、家族労働の評価、あるいは自己資本利子、地代の評価等についてはかなり食い違いがあって論議があったわけでありますが、農家の生活の実情、経営の改善という観点、ひいては日本の農業の振興発展という立場に徹したものでなければならない、このように思うわけであります。長官のこれに対するお考えをお伺いします。
  200. 石川弘

    石川政府委員 米価の算定方式でございますが、生産費所得補償方式といいますのは、昨年の五月の際にも米価審議会の小委員会におきまして、当面三年間ぐらいはこういう方式で算定をすべきじゃないかというお話がございまして、昨年もそれに従ったわけでございます。先ほどおっしゃいました農協が要求なさっている米価につきましても、考え方はこの生産費所得補償方式というものをとっておるわけでございます。  具体的にどういう数字をとるかということになりますと、これはいろいろ論議のあるところでございまして、例えば農協要求と私どもが一番違っております点で申しますと、生産費をとります場合に、私どもは潜在需給ギャップ、要するにそのままつくればもっとできるわけでございますから、そういう需給ギャップを反映させた生産費をとりますが、農業団体の御要求の方は、一俵以上というものをみんな集めて計算をなさる。それから、例えば数字で一番大きく出ますのは、先生も御指摘になりました家族労働の評価の仕方の問題でございます。私どもは五人から千人未満というような製造業の賃金につきまして、これも米の販売数量ウエートという形で加重平均しますけれども、農業団体の御要求では五人以上という、青天井といいますか、一番大きいところも全部含められて製造業の労働者数ウエートでお割りになる、このあたりで考え方の違いが出ております。  しかし、基本的には今申し上げましたように生産費所得補償方式という考え方でございますので、米価審議会に私どもがかけますいろいろな数字、考え方というものにつきましては、今からよく検討しまして審議会にお諮りをしたいと思っております。数字等は最近の時点までとって出すわけでございますので、決してまだ決まっているような状態ではございません。
  201. 駒谷明

    ○駒谷委員 今回の米価につきましては、良質米の奨励金の確保の問題が一つの大きな焦点であろうと思うわけであります。この点についてもいろいろとこれから検討が行われるであろうと思うわけでありますけれども、これについても削減というようなことがもう完全に流れておる。  そういうことで、この良質米奨励金の問題については、米の消費の拡大という観点から、国民良質米志向であるということはもう十分御承知のとおりであります。したがって、おいしい米というものの供給というのを国民が期待しておる、そういうことから自主流通米の役割というのはもう大変大きいことは御承知のとおりであります。単収が平均して低いこの良質米の生産に農家の皆さんが大変苦労をして取り組んでいらっしゃる、この農家の人たちに報いるためにも奨励金の削減という問題はとるべきではない。流通米の制度にかかわる問題であると思うわけでありますので、現行の奨励金の確保ということを私は強く希望するものでありますけれども、この点についての決意といいますか御所見をお伺いしたいと思います。
  202. 石川弘

    石川政府委員 良質米奨励金を含みます自主流通の奨励につきましては、今先生が御指摘のように、良質米志向、それから良質米については単収を同じようにとれなくて経費もかかるといういろいろなことがございまして、私ども、自主流通制度が順調に伸びるようにいろいろな形で助成をしてきたところでございます。しかしそういう中でも、例えば逆ざやというものに着目してつくっておりました流通促進奨励金、これは逆ざやがなくなることによって廃止したとか、そのときどきで制度を見直しながらやってきたわけでございます。  現在の良質米の奨励金の水準は昭和五十五年に定めたわけでございますが、その後、自主流通をめぐりますいろいろな変革と申しますか、状態の変化がございます。自主流通米、しかもその中の大半が良質米でございますが、そういうものをつくっていることによって農家にメリットを与えて自主流通米をつくらせる、そういうことに対する基本につきましては私どもは必要だと考えておりまして、自主流通米の奨励金はもう目的を達成したとか、そういう気持ちでいるわけではございません。  ただ問題は、例えば本年に見られるように、良質米奨励ということだけではございませんが、自主流通米の規模がかなり大きくなって流通量がふえてまいりますと、それがなかなか全体として順調に消費につながらない。今の実情から申しますと、建て値を下げてまで売るという状態ではございませんが、かなりのものが流れにくくなっている。これは今回に始まったことではございませんで、昭和五十四年におきましてもそういう状態が起きまして、この五十四年の場合は建て値を若干下げてまで売るということをやったという経緯がございます。  したがいまして、私どもはこの自主流通制度を健全に発展させるという立場を堅持しながら、ただ助成の仕方いかんではせっかく財政負担をしながらかえって農家の手取りが下がるというような事態もございますから、その辺も見詰めながら、そういう流通実態を踏まえましてこれを合理化するということで、昨年の米価決定の際にそういう方針を打ち出しているわけでございます。  したがいまして、私どもは今申しましたような観点から、要するに良質米奨励は要らないという意味ではなくて、良質米奨励は必要なんですが、やり方を間違えますと必ずしも生産者にもプラスにならぬということもございますので、その辺のことを踏まえながら現在検討しているところでございます。
  203. 駒谷明

    ○駒谷委員 この問題はこれからもいろいろと集中論議等が行われると思うわけでありますけれども、この四・九五%の要求については、農業団体からの要求としては史上二番目の低水準であるというふうに言われておるわけであります。それだけに、農業団体その他農家の皆さんの意見等を含めて、あらゆる問題を分析しながらこうして要求をされてきたというふうに私は思っておるわけであります。  したがって、大臣、その点を十分踏まえていただいて、農業者が希望を持って農業に従事ができる、そういうふうな今回の米価決定でありたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。  では、この点はこれで終わりまして、次に漁業問題についてお尋ねをしたいと思います。  私が取り上げますのは養殖漁業の関係でございますけれども、我が国の漁業につきましては、もう既に御案内のとおり、二百海里の規制等で漁業生産をめぐる経済的、社会的情勢が大きく変化をしてきておる。漁業の生産の維持拡大を図って食糧の安定的供給を確保するというためにも、自給体制というのは今後も進めていかなければならない問題であろうと思うわけです。  その一環として海面養殖業の振興が水産庁を中心に図られておるわけでありまして、その生産量も徐々に増加をしてきておるわけであります。その反面、漁場の老化や密殖等の問題から急病が多発をして、水産用の医薬品の適正使用の指導体制等種々問題を投げかけているところであります。  そこで、まず養殖漁業の生産動向について簡単にお伺いしたいわけでありますけれども、まず第一点は、魚類の養殖による生産量の最近の状況は、海面、内水面、魚種別にどのようになっておりますか。また、最近の漁業経営は、重油の価格高騰など漁業支出の増加と魚価の低迷により漁業収入が伸び悩んでおる、経営不振の状態が漁業者の中にあるわけですけれども、この養殖漁業者の経営状況はどのような状態になっているか、所得状況等についてあわせてお伺いをいたしたいと思います。
  204. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  海面養殖業の生産量でございますが、昨年は百十万七千トンでございます。これは五十八年の百六万トン、五十七年の九十三万八千トンから逐次増加をしてきたわけでございます。それで、これを魚類、貝類、海藻類に分けてみますと、昨年の百十万七千トンのうち魚類が十八万八千トン、一番大きなものはブリ類でございます。それから貝類が三十三万二千トン、この中で大きいものはカキでございます。それから海藻類が五十七万六千トン、そういう数字に相なっております。  それから内水面養殖業について見ますと、五十九年が九万八千七百十三トン、これは前年の五十八年が九万四千トン強、それから五十七年が九万六千トン強でございますからかなりの増加になっておりまして、大きなものはウナギ、コイ、それからアユといったところでございます。  それから漁業収入の方でございますが、海面養殖業の漁業収入は五十八年の数字で千四百十三万五千円、これはちょっとさかのぼりますと、その前の五十七年が千三百六十二万三千円、その前の五十六年が千百八十九万三千円ということでございますので、毎年増加のテンポをたどっております。これを収支を差し引きまして漁業所得で見ますと、五十八年の漁業所得が四百三十二万五千円、これもその前の五十七年が四百二十万円強、その前の五十六年が三百二十万円強であったものがずっと増加をしてまいってきておるわけでございます。
  205. 駒谷明

    ○駒谷委員 それでは次にお伺いをいたします。  漁業現場におきます魚類等の防疫対策でございますけれども、急病の被害を防止し、かつ食品として安全な生産を確保する上で重要な問題であるわけでございます。私の兵庫県は瀬戸内海にあるわけでございまして、兵庫県は大変この養殖あるいは増殖、栽培漁業等魚介類の関係についての経営あるいはその事業に相当力を入れておるわけでございます。瀬戸内海各府県とも同様でございますが、大臣の御出身のところもよく御承知と思うわけでございますが、重要な問題であるにもかかわらず、この急病の発生状況、これが依然としてかなりの発生になっておるというふうに聞くわけであります。  このような急病の発生状況はどのようになっておりますか。また、発生する急病の症状あるいは被害額等について簡単に明らかにお願いしたいと思います。
  206. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えをいたします。  急病による被害は、実は五十七年までは増大の一途をたどってまいりました。五十七年におきましては被害額は二百七十億円に達しまして養殖魚生産額の八・一%相当ということに、相なったわけでございます。しかしながら、おかげさまで五十八年にようやくわずかではございますが下向きになりまして、五十八年では急病の被害額が約二百十億、養殖魚生産額に対する割合は六・五%ということでございまして、ようやく急病対策の効果があらわれ始めたのではないかというふうに思っております。  それで被害の内訳でございますが、まず魚種別に見ますと、当然ながら生産量の多いブリとかウナギで大きいわけでございますが、病気の種類別に見ますと、これは数種の病気に集中をいたしております。ブリ類について見ますと、連鎖球菌症、類結節症、それからタイ類、アユ類の場合ではビブリオ病、マス類の場合もビブリオ病、それからIHN、これは伝染性造血器壊死症でございますが、それからIPN、これも伝染性膵臓壊死症でございます。それからウナギの場合はえら病、こういう特定の病気に集中をいたしておるわけでございます。  それで、最近におきます急病の発生状況特徴的なものは、常習化した急病による被害は相変わらず続いておるわけでございますが、それに加えて新しい養殖魚種、例えばテラピアでございますとかトラフグ、そういうものに急病が発生をいたしておるということと、それから発病期間の長期化、周年化あるいは複合感染による被害の増大、そういうことが最近特徴的な事態として見られるわけでございまして、急病被害額は五十八年若干でございますが減っておりますが、急病被害の複雑、多様化という傾向がうかがわれるように存じております。  私どもといたしましては、これらの急病発生の原因を究明いたしまして必要な対策を確立するための技術開発研究を行っておるところでございますが、研究の成果を踏まえて急病対策の一層の充実に努めてまいりたいと思っております。
  207. 駒谷明

    ○駒谷委員 とる漁業からつくり育てる漁業ということで、食品の安定供給については三つの重要な問題があろうかと私は思うわけであります。その一つは食品の安全性という問題であり、一つは価格が安定をする、そしてもう一つ需給が安定をする、この三つの問題が食糧安定供給ということについては一番重要な問題であろうと思うわけであります。  したがって、魚の病気、この発生の問題、防疫の対策というものは大変重要な問題であろうと思うわけでございます。各府県におきましても巡回あるいは指導等に当たっているわけでありますけれども、全国でこの実務者等どのような人員になっておりますか、また、急病に対する指導体制について簡単にお伺いしたいと思います。
  208. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えをいたします。  急病対策という見地から見ますと、何と申しましても、急病について、あるいは診断、治療について十分な知識と技術を持っている技術者が適正に養成され配置されておることがまず第一に肝要であろうと思うわけでございます。  水産庁といたしましては、そういう見地から昭和四十八年度から都道府県の職員を対象といたしまして急病技術者研修というのをやってまいったわけでございます。この急病技術者研修を修了いたしました人員が現在約二百五十名でございますが、これが都道府県の水産試験場あるいは急病指導総合センター、こういうところに配置をされておりまして、養殖業者に対する防疫対策あるいは医薬品の適正使用等の指導に当たっておりますし、また同時に急病関係の技術開発のための研究にも従事しておるわけでございます。  そこで、五十九年度から、さらにこのような研修の実績を踏まえまして、急病技術者の養成、確保の一環といたしまして、魚類防疫士技術認定事業というのを日本水産資源保護協会に委託をして実施をしてまいっております。これは、先ほど申しました急病技術者研修の修了者を対象にいたしまして技術認定試験を実施をいたしまして、その試験にパスした方を魚類防疫士として認定をして、急病対策推進の中核的な役割を担うということで働いてもらおう、それがてこになって急病関係の技術者の全般的な知識、技術の向上と急病対策の充実強化を図ろうということでございます。  それで、ことしの二月四日に実は第一回の技術認定試験を実施したところでございまして、その第一回の技術認定試験の結果、現在百六十名の魚類防疫士というのが生まれておるわけでございます。私どもは、このような体制で急病対策の充実を図ってまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
  209. 駒谷明

    ○駒谷委員 後段において長官から御説明がございました魚類防疫士技術認定事業という点でございますけれども、これにつきましては、水産庁が日本水産資源保護協会に委託をされて、そして認定試験が実施をされているというふうに思うわけでありますけれども、この防疫士認定あるいは防疫士の試験等についての事業の目的あるいは受験資格、そういう問題についてはどのようになっておりますか、お伺いします。
  210. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えをいたします。  魚類防疫士の技術認定試験を実施いたしますために、先ほど先生が言及なさいました日本水産資源保護協会におきまして、学識経験者等により構成されます魚類防疫士技術認定委員会というものを設置をしております。これは魚類の養殖あるいは急病関係の学識経験者によって組織されておるわけでございますが、この委員会が認定試験を実施して、合格者に魚類防疫士という肩書をつけておるわけでございます。  受験資格はどうなっておるかというお尋ねでございますが、都道府県職員のうち、急病技術者研修を修了して急病対策の実務経験を二年以上有しておられる方というのを受験資格者ということにいたしております。  ただ、これは当分の間でございますが、実は急病技術者研修を正規に修了していない方でも、委員会が特に認めた中核的な急病技術者として現に実務に従事しておられる都道府県職員に受験資格を認める道は開かれております。  それで、先ほど申し上げました魚類防疫士というのは、第一回の試験で百六十名生まれておりますが、これは現在どういう部署に配属されておるかということを申し上げますと、県の水産試験場に配属されておられる方が百十五名、それから栽培センターとか種苗生産施設とか、そういう栽培関係の仕事に従事しておられる方が二十四名、それから行政部門でお仕事をなさっておられる方が十一名、普及所などが九名、そういう構成になっております。
  211. 駒谷明

    ○駒谷委員 現在百六十名ということでございますけれども、急病対策推進の中核的役割を担うということで期待をされる人材の養成ということのようでありますけれども、全国的にこの防疫士という認定をする、この防疫士についての将来構想、これはどういうふうなお考えを持っていらっしゃるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  212. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  この魚類防疫士を将来、制度的にどういうふうに位置づけていくかというのがお尋ねの御趣旨であろうというふうに思いますが、実はこの問題につきましては、私どもの方で、急病に関する各分野の学識経験者にお集まりいただきまして急病対策検討会というのを開催をしております。それで今後における魚類の防疫体制のあり方を具体的に検討していただくということにいたしておるわけでございますが、この中で魚類防疫士の取り扱い方というのもあわせて検討をしていただくという予定にしております。  いずれにいたしましても、魚類防疫士が急病対策の中で中核的な役割を担っていくべきものであるということは先ほど申し上げたとおりでございますが、そこから先の具体的な問題につきましては、今申し上げましたような検討のプロセスにあるというのが実情でございます。
  213. 駒谷明

    ○駒谷委員 こちらの方に「事業の概要」というのをちょうだいしているのですけれども、先ほど水産庁長官からも御説明があったこの目的の中に、「急病に関する専門的知識及び技術を有する都道府県職員に対し技術認定試験を実施することにより、急病対策推進の中核的役割を担う「魚類防疫士」としての認定を行い、この魚類防疫士を積極的に活用することによって、急病対策関係者全般の知識、技術の一層の向上及び急病対策の充実、強化を図ることを目的とする。」この認定事業についてはそういうことが書かれておるわけであります。  そうしますと、この魚類防疫士の認定事業の目的に照らしますと、専門的知識ということになると、魚類の生理あるいは病理、薬理学の知識とかあるいは抗菌剤の性能、副作用等、薬剤の適正使用についても、また技術面においても高度なものが要求されると思われるわけでございますが、認定試験の中身の問題ですけれども、これらの知識がこの認定試験の中で判断されるような内容でなされておられるのかどうか、中身の問題についてちょっと伺いたいと思います。
  214. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  ただいま先生が言及なさいましたようなそれぞれの科目は認定試験の中に取り入れて、そういう分野での知識がわかるような試験をいたしております。
  215. 駒谷明

    ○駒谷委員 この急病の指導その他の養殖関係指導については、漁業改良普及員あるいはその上に主任研究員といって各水産試験場に研究員がいらっしゃるわけであります。そして現実指導に当たられておるわけでございますけれども、今伺った内容でいきますと、将来この魚類防疫士が中心となっていくような構想のように受け取れるわけでございますけれども、そうなりますと、先ほどは明確な内容の御答弁がありませんでしたけれども、防疫士の社会的な位置づけという問題ですね。まだ検討中だということでありますが、職務権限、法的な根拠というのはどういうふうな考え方になるのか、私は今大変その点を疑問に思っておるわけでございます。  実際にもう既に百六十人、将来こういう指導に当たっていく人たちは、少なくとも五百人、千人という人材の養成をなさっていくのではなかろうかと思うわけであります。そうしますと、この魚類防疫士というのは、公的ないわゆる役割あるいは位置づけ、こういう問題が大変重要な問題でありますし、実際に試験を受ける受験者にとっては、防疫士というのは一体どういうことなのかという問題が、やはり試験を受けられる方あるいは合格された方、またそれぞれの各府県におきますそれぞれの業務の内容についての分担、そういうふうな問題等もいろいろと意見が出されているところでありますけれども、もう少し具体的な、長官が考えておられることがありましたら、その点についての御所見をお伺いしたいと思います。
  216. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  先生お尋ねの問題は、まさに私どもも同様な問題意識を持っております。これは、魚類防疫士の仕事というのは高度に専門的な知識を要するわけでありますから、単に知識、能力の試験をすればそれでよろしいというものではなくて、そこから先、制度としてどうするかという問題が当然提起されるであろうということが展望されるわけであります。  先ほど申し上げました急病対策検討会に検討をお願いしたいと思っておりますのも、まさに今先生御指摘のような問題が当然提起されてくるべきものという認識の上に立って検討をお願いしているわけでございまして、問題の所在については全く先生御指摘のとおりというふうに私どもも思っておりますが、そこを具体的にいかなる制度に仕組むかということにつきましては、しばらく研究の時間をいただきたいというのが私の今の気持ちでございます。
  217. 駒谷明

    ○駒谷委員 時間が大分経過をいたしましたけれども、畜産局の方にお伺いをいたします。  獣医師法の第十条に基づいて獣医師の国家試験が行われるわけでありますけれども、今度の国家試験ですか、五十九年度でございましたか、急病学が試験科目の中に加えられたということでありますけれども、この科目に加えられた経緯について、また急病の問題についての考え方をお伺いしたいと思うのです。
  218. 野明宏至

    野明政府委員 お答えいたします。  急病につきましては、これまで獣医学教育におきましても六年制への移行に伴いまして急病学というものがその一分野に加えられてまいっております。これはたしか五十三年度からだと思います。それから、ただいまお話がございましたように、獣医師の国家試験におきましても五十八年度から急病学を試験科目に加えたわけでございまして、五十八年、五十九年と二カ年度にわたって国家試験を実施してまいっておるわけでございます。  獣医師法の十条に基づきまして獣医師の国家試験を行っておるわけでございますが、その試験科目に急病を加えました趣旨でございますが、これは、獣医師は言うまでもなく公衆衛生に関する知識、技能を有すべきものでございまして、その一環として急病についての識見も備えている必要があるということと、それから、ただいま申し上げましたような獣医学教育においても動物医学の一環として急病が位置づけられたというようなことを背景といたしまして、試験科目に加えてまいっておるわけでございます。  急病に対応する技術者といった点につきましては、ただいま水産庁長官の方からもお話があったわけでございますが、獣医学教育における分野におきましても、急病教育の進展というものに伴いまして、急病の分野におきましても獣医学、獣医師の分野におきましても、急病に関して十分な知識を有する者をまず養成していくということが必要であろうということで、この点につきましては、獣医師の分野におきましてもそういった急病に関しても能力を有する人をできるだけ養成していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  219. 駒谷明

    ○駒谷委員 この件につきましては、もう時間も大分経過をいたしてまいりまして、いろいろとお伺いしたいわけでございますが、次の機会にしたいと思います。  ただ、これは簡単に長官並びに局長にお伺いをしたいと思うのですが、五十二年五月十一日に附帯決議が農林水産委員会で行われております。御承知であろうと思いますが、獣医師法の一部を改正する法律案に対する附帯決議でございますが、その中に、衆議院におきましては、「今後における急病対策の重要性にかんがみ、急病に対する教育内容の充実及び急病技術者の養成に努めること。」これが衆議院の附帯決議の第七項に出ておるわけであります。参議院におきましては、「今後における急病対策の重要性にかんがみ、急病に関する研究体制を整備し、その教育内容を充実するとともに、急病技術者の養成確保に努めること。」これも参議院において附帯決議としてなされておるわけであります。  そこで、今回の問題につきましては、恐らく畜産局の方におきましてもこの急病学というものを国家試験の中に取り入れたというのはその一つの動きであろうと思うわけであります。また、魚類防疫士の問題についても、水産庁としての考え方、急病対策ということで、一つの大きな方向づけというものを踏まえながら今そういうふうに認定試験が実施をされるようになったのではないか、こういうふうに思うわけでございますけれども、そのように決議の内容を踏まえてのお考えというふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  220. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 私どもといたしましては、先ほどの魚類防疫士の認定事業あるいはそれに先立ちまして行ってまいりました研修その他すべて、この委員会の御決議の御趣旨を体してやっておることであるというふうに認識をいたしております。
  221. 野明宏至

    野明政府委員 お答えいたします。  獣医学教育におきまして、六年制の移行に伴いましてまず修士課程というふうなものが取り入れられて、それの際、急病学というものが取り入れられたわけでございます。今日では十六の大学において急病学というものがカリキュラムの中へ組み込まれておるわけでございます。こういった点につきましては、決議の趣旨を踏まえて対処しておるというふうに考えておるわけでございます。
  222. 駒谷明

    ○駒谷委員 時間が超過して大変申しわけないわけでありますが、この獣医師法十七条の問題は今まで数々論議が行われてきたわけでありますけれども、大臣、この件でずっと今論議をしてきましたけれども、急病に関する診断あるいは治療に関する問題というのは、すべてが国民の生活のための安全な食品ということを確保するのにはどうあるべきかということが中心に論議され、あるいは行政の推進をしていかなければならぬというふうに私は思っておるわけであります。  水産用の医薬品の要指示薬に指定するかどうかの問題あるいは急病対策に対する診断、投薬等に対する指導の適任者の問題、そういうふうな問題でいたずらに行政の中で対立するような感じがあってはならない、的確な対応がおくれることは許されないことだというふうに私は思うわけであります。そのために不幸になるのは、適正な指導を期待しておる漁業者、いろいろと養殖業者は期待をしておりますし、食糧の安全を期待している消費者であるというふうに私は思うわけであります。  この問題は一日も早く基本的な方向を明確にすべきであろうと私は思っておりますので、この点についての御所見と、将来の養殖についてでありますけれども、過密養殖とか、医薬品の依存から脱皮した養殖の原点に戻った養殖の管理のあり方という問題も見直す時期が来ておるのではないか、こういうふうに思うわけでございますけれども、最後に大臣の御所見をお伺いして、終わりたいと思います。
  223. 野明宏至

    野明政府委員 ただいま獣医師法十七条というようなお話があったわけでございますが、十七条の場合には、そこに急病が加えられますと獣医師以外の人は診療が禁止されるということになるわけでございます。  急病対策の問題は、先ほど水産庁長官からお話しございましたように、まずはその担い手と申しますか、急病の治療なり診療なりのできる能力を有する人を養成していくということが先決だろうと思います。獣医学の分野におきましてもまだ開始されたばかりでございます。したがいまして、やはり双方でそういった担い手というものを養成していくということでやってまいるということがまず大事であろうというふうに思っております。
  224. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 駒谷先生にお答えいたします。  私に対する質問は二つだと思います。  一つは、急病に対してもっと早く対処したらどうかということで、一番問題は、先生の御質問を聞いておりまして、あるいは長官、局長の答弁のように、やはり人の育成だと思います。これをどうするか、また、これをきちんとしないと大変なことになる、そんなことでございまして、人の育成にかなり時間がかかるというようなことで御理解願いたいと思うわけでございます。  それからもう一つは、養殖の問題でございます。先ほど水産庁長官が言うたようなことでございますが、やはり日本は遠洋漁業が大変厳しくなってくる、そういう形の中で一体どうするかということで、資産管理型で、つくる漁業、栽培漁業をどうするかということの中で養殖を熱心にやっているということでございますが、ただ、今の形の中でこれからまだまだ遠洋漁業というのはかなり厳しくなってくる、そのかわりに養殖をやる必要があるというふうなことでございます。その辺の秩序をどうするかということを含めて、長官に検討をさせたいと思っております。よろしくお願いいたします。
  225. 駒谷明

    ○駒谷委員 どうもありがとうございました。
  226. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員長代理 神田厚君。
  227. 神田厚

    ○神田委員 私は、ビール麦のしま萎縮病の発生が大きな問題になっておりますので、このしま萎縮病対策につきまして御質問を申し上げたいと思うのであります。  まず最初に、大分被害の実態が明らかになってきていると思うわけでありますが、このビール麦のしま萎縮病の被害の実態につきまして御報告をいただきたいと思います。
  228. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 ビール麦のしま萎縮病でございますが、ことしの六十年産の状況でございます。大体関東、九州が中心でございまして、全国で約一万九千ヘクタール、北関東が約八千ヘクタール、そのうち栃木は約四千ヘクタールとなっております。正確には発生面積で三千六百十ヘクタールということでございます。それから九州が全体で約七千ヘクタールございまして、全国的に見ますと、ビール麦のしま萎縮病につきましては現在佐賀県の三千九百四ヘクタールが一番多うございまして、次いで栃木県三千六百十ヘクタール、その次が茨城県の二千五百八十五ヘクタール、こういうような状況でございます。
  229. 神田厚

    ○神田委員 そういうことでありまして、大変大きな被害が出ているわけであります。特に農協などでは契約した数量を達成することができないということで大変打撃を受けているわけでありまして、例えば、私どもも調査をしたのでありますが、栃木県の栃木市農協等々では五月二十日段階で千二百三十四ヘクタール中庭作が百ヘクタール、これに準ずるものとして二、三俵しか収穫ができないものが百ヘクタールあります。契約数量は八万八千俵でありますが、出荷予想は四万八千俵にしかならない、この差は実に四万俵近い出荷減になるわけでありまして、約四億円の被害額であるというふうな予想がされているわけであります。また、同じようにその隣にあります大平町農協でありますが、これも廃作が四十から五十ヘクタール、これに準ずるものが百ヘクタール、契約三万俵に対しまして、達成率は五〇%を切って一万三千ないし四千俵しか出荷できないのではないか、これも一億五千万円くらいの被害予想を出しているわけであります。  このように、また御報告いただきましたように、九州佐賀等でも大変な大きな被害が出ておりますが、農林水産省といたしましては、これらの実態考え、今後どういうふうな形でこの問題に対処をしていくおつもりでありますか。
  230. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 しま萎縮病の病源でございますが、これは御承知のように糸状菌の一種でございますポリミクサ、これが媒介いたします土壌伝染性のウイルスでございます。こういうことからしますと、発生原因は、大体ビール麦栽培が連作されますと土壌中にこの病源ウイルスが滞留して密度が高まっていくというようなこと、それから、昨年、播種後気温が非常に高目に推移しまして、苗から育つ段階でもってかなりやられたということが主要因だと考えております。  こういうような状況でございますので、全体的には一種の総合的な防除対策としまして、収量に影響しない範囲内で播種をおくらすとか、それからいろいろ栽培面での注意をしていく、あるいは排水の改良を図るとかいう耕種面の総合的な防除対策が必要だと考えております。こういう総合的な防除対策とあわせまして、抵抗性のある品種を育成する必要があるということで、現在、県の農業試験場あるいはビール会社等におきまして、抵抗性のあります品種を逐次育成いたしまして、実用段階に持っていくために開発研究、さらに試作等に向けて努力しているところでございます。     〔衛藤委員長代理退席、委員長着席〕
  231. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、この原因といたしましては、ウイルス汚染、また天候等々の問題があったということでありますが、同時に抵抗性品種の導入について関連して申し上げますれば、あまぎ二条の導入、これの切りかえが今回の被害を出した非常に大きな原因になっておるわけであります。この点は後ほどまたお伺いをいたしますが、農林水産省といたしましては、その被害の大きくなった原因はあまぎ二条に切りかえたということが一つの原因だというふうにお認めになりましょうか。
  232. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 これは従来、特に栃木県におきましてビール麦の主力の品種はアズマゴールデンであったわけでございますが、これがどうも製麦あるいは醸造適性がよくないということで、五十四年産から要整理品種ということで、五十六年八月に五十九年産限りで契約対象品種から除外する、こういうことが取り決められたわけでございます。こういうことで、このアズマゴールデンからの円滑な切りかえを図るという必要がありますので、従来から奨励品種としてございましたニューゴールデンに加えまして、五十七年度からあまぎ二条、はるな二条、こういうものを奨励品種として採用した次第でございます。  こういう過程の中で、あまぎ二条というのをそういうビール麦としてより優良なものに切りかえるということがなされたわけでございますが、この辺のものがすべてしま萎縮病の抵抗性がない、ないというか非常に弱いという状態でございますのでこういうような経過になったわけでございまして、特別全体として弱いものを大いに奨励したというようなことではございませんで、あくまでもビール麦としてより優良なものへの切りかえを進めてきた、こういうことでございます。
  233. 神田厚

    ○神田委員 これはこの前も質問したときにちょっとお話し申し上げたのですが、あまぎ二条の導入というのは、適性からいいまして非常に罹病性があるということはもう既にわかり切っていたことでありますね。そうでありますから、そういうことを非常に現地の農家の人は不安に思っていたわけであります。そして、一九八三年九月十五日でありますから今から二年前の九月十五日に、現地の朝日新聞が「とちぎの農業」という中で、「〝主役〟交代に農家が抵抗 はるな・あまぎ導入」、こういうふうに、県が来年度の作付方針を示したときに、非常に生産農家はそのことを心配して、既に罹病性があり大変収穫の面でも問題があるはるな、あまぎの導入に対しまして抵抗を強くしておりました記事が載っております。  これによりますとこういうことを言われております。  来年産麦の作付け方針が、このほど県農務部などによってまとめられた。このうち、関係者が注目しているのはビール大麦について。今年の秋まき限りで、六十年からは作付けしないアズマゴールデンは、割合を長期計画の数字よりさらに低く抑えられ、代わって、ビール会社などが強く推すはるな二条、あまぎ二条の割合が増える。だが、病気に比較的強く栽培しやすい主力のアズマゴールデンを、「ひ弱で育てにくい」とされるはるな、あまぎに切り替えることについて、栽培農家従はかなりの抵抗があるようだ。 こういうふうに書かれておりまして、結局このアズマゴールデンを外すために、はるなとあまぎ二条が導入されるわけであります。  アズマゴールデンは、全国有数の麦作県である本県の主力品種といえる。それがゼロになる理由は、キリンビール本社原料部によれば、麦芽の歩留まりなどが悪く、エキスがあまり取れないから。「アズマをビール作りに使うのはもう、大幅な時代遅れだ」と同部。だが、栽培農家にしてみれば、代わりに〝押しつけられる〟はるな、あまぎの二品種は、収穫までの手順が、アズマゴールデンよりはるかに面倒だ。こういうふうなことでありまして、特に、今回大変な被害を出しましたあまぎ二条につきましては、  実が細く、すぐ倒伏してしまう。農家が最も難色を示すのは、ビール麦を連作していると出る「大麦縞萎縮病」にからきし弱いこと。  これらの「欠陥」は、いずれも栽培農家にとっては死活問題だ。特に、このところ県南地域は悪質な「縞萎縮病」に毎年悩まされているだけに、病気に弱いとされる品種への転換は深刻に受けとめられている。下都賀、安蘇、足利の各地区農協組合長たちは連名の陳情書を、八月十九日付で知事に提出した。趣旨は、「現在、農業試験場栃木分場で開発しているビール麦の新品種関東二条21号、22号を、一刻も早く農民が使えるよう、態勢づくりを急いでほしい」というもの。  両品種のうち、特に22号は縞萎縮病など連作障害に極めて強いとされ、農家の期待は大きい。こういうふうなことであります。  つまり、既に二年前にこれだけの問題点が指摘をされておりまして、この前質問で申し上げましたように、栃木県の速報などでもこのあまぎの問題は罹病性があるから注意をしろというようなことが出されているにもかかわらず、強引にあまぎに切りかえて、結果的にはこんな被害を出しているというようなことであります。農林省として、そういう意味では、局長は明言をされておりませんが、やはりあまぎ二条の導入ということがことしの被害を大きくしている、こういうことであります。ですから、私はその点はひとつお認めをいただきたいと思いますが、いかがでありますか。
  234. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 アズマゴールデンにかわりまして、特にあまぎ二条、はるな二条、この辺の品種の導入が進められたわけでございまして、これは両方とも試験成績等を見ますと、しま萎縮病には、罹病性と言うといかにも病気にかかるようでありますが、病気に対する抵抗性が確かに弱いという成績は実態あるようでございまして、その辺、ピール麦のような加工用作物の場合には、栽培面での強さあるいはつくりやすさと加工した場合の適性と両方がマッチしなければなりませんので、いい品種がなかなかないときには、やはりそういうどちらかの面で問題があるものでもつくらざるを得ないというようなことでございます。  そういう意味で、結果的に見ますと確かに先生のおっしゃいますように、あまぎ二条というものはっくらざるを得なかった、こういうような状態が非常に発生面積の大きさにもちろん影響があるということは事実としてあろうかと思います。
  235. 神田厚

    ○神田委員 そして、農林省も対策をかなり熱心にやっていただいておりますのはわかっているのでありますが、五月七日に現地検討会が開かれたわけであります。この現地検討会におきましてどのような意見が出され、どのような結論が得られたのか、ちょっと御報告をいただきたいと思います。
  236. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 五月七日の現地検討会は、各県、それからいろいろな方面の研究機関、これは国も県も含めました研究機関の大変多数の参加者を得ました。大変有意義な会合だったわけでございます。そこで出ました議論は、特に関東二条二十二号の育成の状況、その施策というかその辺の状況、こういうものについて関係機関から説明をし、またその取り扱いについて協議をしたわけでございます。  ここでは、最終の一種の協議結果のこれからの対応方針としましては、一つは、先ほど私もちょっと申し上げましたが、耕種的防除対策指導ということで、小麦等への作付転換、排水対策の徹底、播種時期その他栽培技術め改善、それから周辺圃場への蔓延防止、こういうような一種の耕種的な面の総合防除対策指導する、それから抵抗性品種の導入ということで関東二条二十二号の作付拡大、こういうようなことについて、これは関係機関でもってこれから協議をしながら進めよう、こういうようなことが大体大方の意見として一致したわけでございます。  なお、この際、土壌消毒は、御承知のようにダコソイル粉剤というもので土壌消毒すれば先ほど申し上げたウィルスが消毒されるわけてすが、高いということで、非常に徹底的な防除方法であろうがなかなか難しいであろう、こういうような議論もあったようでございます。
  237. 神田厚

    ○神田委員 この検討会、農林省のお骨折りで実現させていただいたのですが、いわゆる現場の人間が出席できなかった、つまり農協等現実に問題にぶつかっている人たちが発言できる機会がなかったという問題が一つありました。それからもう一つの問題は、これからではどういうふうにするんだ、つまり秋まきを含めて今後の対策をどういうふうにするんだということについて明確な方向が示されなかったという問題があったようでありまして、私は農林省は非常によくやっていただいたと思っておりますけれども、その点は画竜点睛を欠いたような形でありまして、なおその点につきまして私の方から二、三問題点を質問させていただきたい、このように思っております。  まず、この醸造試験の結果が先月の末ごろに取りまとめられるということでありましたが、おくれているようでありますが、どういう経過になっておりますか。
  238. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 ことし、五十九年産麦でやっております小規模醸造試験でございますが、これは大体試験の行為そのものは終わりまして今データの取りまとめが行われていますので、近日中にその結果が明らかになるというように考えております。  したがいまして、この結果の発表された時期での問題でございますが、やはり関東二条二十二号自身が抵抗性品種としては全く初めて登場したということもありまして、醸造面での結果の把握について今回の小規模醸造試験だけでうまくいくかどうかという問題もございますし、いずれにしましても、その結果が非常に断定的なものになるか、あるいはさらに大規模醸造試験につなげてもっと醸造方法も含めた試験をしていくというような必要があろうかという感じもいたしまして、その辺の結果については、もちろんその結果が出た段階での判断でございますが、同時に、やはり全体としてこの二十二号を普及、実用化するかどうかというその段階、一つのステップとしてあくまでも考えるべき試験であろう、こういうふうに考えております。
  239. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、この結果はいつごろ取りまとめられる予定でありますか。
  240. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 大体二十日ごろ、来週には結果がまとまる、こういうふうに考えております。
  241. 神田厚

    ○神田委員 その結果は、検討経過を含めて公表されるわけですか。
  242. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 これはいわゆる公表行為というふうにするかどうかは別としましても、いずれにしても大変注目を浴びています結果ですので、この結果は御関心のある方にはお伝えできるように、そういうふうなことにいたしたいと思っております。
  243. 神田厚

    ○神田委員 ちょっと前後するような形で恐縮でありますが、被害の面積、被害の実態が明らかになりました。それでは現実として一体ことしの秋まきをどうするんだというようなことが出てきております。私の考え方は、やはりその被害地、少なくとも激甚被害のところは関東二条二十二号でカバーをしていただかなければならないし、そういうことでなければ農家も納得をしない、生産農民も納得をしないと思うのでありますが、この辺のところを農林水産省はどういうふうに指導をして、いくお気持ちでありますが。
  244. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 これは、その地域での被害状況それから作付に関連しましていろいろな条件を勘案した上で決まることでございますが、やはり非常に達観的に申しますと、先生のお尋ねにもございましたように一種の多発常襲地帯、こういうところについては、関東二条二十二号が作付できる地域であればそれをできるだけ作付ける。それから、やはりそれだけではなかなかできないということにもなりましょうと思いまして、例えば小麦とか普通のほかの大麦、こういうようなものへの作付転換も考えなければならない地域になろうかと思います。  それから、比較的発病程度の低い地域につきましては、先ほどもちょっと申し上げましたが、いろいろ播種の時期をおくらすとか、あるいは心土破砕等による排水対策とか、それから深耕、反転耕等に耕起法を改めるとか、さらにできますれば薬剤による土壌消毒をやるとか、その他細かいことでございますが、使いました機械を洗いまして蔓延を防止する、こういうようないろいろな総合的な対策を講じまして、やや発病程度の低い地域についてはこれからの病気の激化を抑えていく、こういうような考え方で今後の対策考えていくのがいいのではないかと思っております。
  245. 神田厚

    ○神田委員 ことしの被害は史上最高であるわけでありますが、このままでは来年はもっとひどくなる、つまり原因がただ単に天候ということではなくてウイルスの増加ということでありますから、来年はもっとひどくなるという予測の上で仕事をしていかなければならない。  そういうことで、ただいま局長からの御答弁がありましたが、それでは大体どのくらいの種をまくような指導をしていただけるのか。小麦に切りかえるといってもこれはなかなか農家では対応できません。田植えとの関係があったりいろいろありましてそんなに簡単にできないわけであります。ですから、何とかやはりビール麦をつくりたいということでありますから、非常に種の問題等もあるわけでありますが、そういう意味では、種も豊作もあってかなり増量もされているというようなこともありますから、少なくとも種を合わせて五千トン収穫ぐらいのものをしていただかないとなかなか激甚地のカバーができないのではないかというふうに思っておるのでありますが、その辺のところ、ひとつ率直にお答えをいただきたい。
  246. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 ことしの秋につくりますいわゆる六十一年産のビール麦に関東二条二十二号をどのくらいつくることができるかという種子の手当ての問題でございます。  これにつきましてはいろいろな要素を勘案しなければいけないわけでして、近々発表されます先ほどの小規模醸造試験の結果を見る必要もございます。それから、ことしの種、これは全体としてはある程度とれているわけでございますが、その種の生産状況とその割り振りでございまして、これはもう全部来年の種にするというわけにまいりませんで、現在やっております小規模醸造試験に続く醸造試験をもっと大きな規模でやって、やはりその品種に向いた醸造方法を確立するということも必要でございますし、品種の適性を確認するということも必要であります。したがいまして、ことしとれました二十二号の種子の来年の種の振り向けと、それから醸造試験への振り向け、これも考えなければいけないわけでございます。  こういうことを全体考えまして、関係者であるビール会社とそれから生産者団体、この辺のところと十分協議いたしまして、今月中を目途に決定したいと考えておりまして、全体の気持ちとしましては、六十一年産一千トンにいわゆる上乗せをするという場合には、こういうしま萎縮病の多発状況をよく考えまして、できるだけ数量の拡大を図る方向でこれから関係者を指導してまいりたいと思っております。
  247. 神田厚

    ○神田委員 大変前向きの御答弁で、数量がきちんと言えない事情もわかりますが、私はこの前の質問のときには一万トンぐらいのあれが必要だという話をしたわけでありますが、最低でもやはり五千トンぐらいのものは何とか御指導をいただきたい、このように思っているわけであります。そして同時に、関東二条二十二号を農民がつくるというのは、これは農民の自衛策でありまして、そういう意味では現場では非常に真剣であります。  ですから、どうぞその点をよく御理解をいただくことと、あまぎ二条の拡大方針、これはまだピール会社は持っているわけでありますが、今度またあまぎをまかせて被害が出たという場合には、これはやはり補償問題、見舞い金問題等に当然にして触れていかなければならない。国会でこれだけ論議されて、なおそういうものを押しつけていくという姿勢があれば、我々といたしましては、この論議を踏まえて、やはりそれだけの問題に対しまして、酒造会社はもちろんでありますが、農林水産省、行政当局の責任問題まで追及をしなければならない、こういうふうに思っております。ですから、やはりこのあまぎ二条の問題は真剣にお考えをいただきたい、このように考えております。  最後に大臣に、今いろいろ質問をしてお聞きをいただいておりましたが、とれは農家にとりまして非常に深刻な問題であります。共済金の支払い等のことを考えますれば、これは国にとりましてもやはり大変大きな損失でもありますし、これを何回も同じようなことをさせておくということは非常に問題があるということであります。それで、やはり一番問題は、先ほど局長が答弁をしておりましたように、関東二条二十二号というのをたくさんことしの秋にまかせてほしい、そういうことでありますが、ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  248. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 神田先生にお答えします。  実は、もう局長が答弁したことに尽きるかと思いますけれども、御指摘の意味はわかります。関東二十二号につきましては、大量醸造試験用として六十一年産で御存じのように特例的に千トンの生産を予定したところでございますが、今度、病気の多発に対処しまして、実需者側とも協議し、その数量の拡大を図ることとしております。  具体的には、先ほど局長が言いました二十日ごろ小規模醸造試験の結果が出るそうですが、それとか種の生産状況を把握した上で関係者と協議し、今月中を目途に決定したいと考えております。
  249. 神田厚

    ○神田委員 ですから、ひとつ大臣の方からも、千トンプラスアルファのアルファ分を相当数量、私が先ほど話をしていたような形の中で、そういう論議に御理解をいただいた形でふやしていただきたい、そういうふうにお願いしたいのですが、いかがでありますか。
  250. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えします。  今、私答弁したとおりでございますが、プラスアルファ、大変厳しい状況でございますが、最善の努力をしたい、こう思っております。
  251. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  252. 今井勇

    今井委員長 次に、中林佳子君。
  253. 中林佳子

    中林委員 まず最初に食糧庁にお伺いいたしますけれども、五月三十一日付の昭和六十年度産の米の売買条件の告示によると、ことしから新たに、政府へ売り渡し数量の申し込み時に六十キロ当たり三千円を限度に出されている概算金について、米が出された時点で、自主流通米に回った分については概算金の利息に相当する金額、調整金と告示の中ではなっておりますけれども、これが、八月までに出された分は六十キロ当たり二十円、九月以降に出された分は六十キロ当たり三十円を徴収することになっているわけです。こうした新たな農民に対する徴収攻勢というのは、一体総額幾らぐらいの収入を見込んでおられるわけですか。
  254. 石川弘

    石川政府委員 これは強制徴収とおっしゃいましたが、そういう性質のものではございませんで、いわば今まで概算金で支払っておりました――これは御承知のように、政府に売るものも結果的に自主流通に回るものも一緒に概算金を交付をいたしておりまして、結果的に自主流通に回りますものにつきましては、回りました時点において渡しました金額を返還をしていただいていたわけでございますけれども、これにつきましては五十七年あるいは五十八年両年におきまして会計検査院その他からいろいろな御指摘がありました。いろいろな折衝をしました結果、そういうものについて、結果的に政府に来ないものについて前もって概算金を差し上げてあるわけでございますから、これについて一定の調整金をつけて返していただくということにしたわけでございます。  総額は、これは概算払い自身は農家の方が受けられるということがあってお払いをするものでございますから、その額を今ここで幾らということは申し上げられませんが、一定の架空計算をいたしますと、十億を若干超えるような金額になろうかと思います。(中林委員「幾ら。最後のところをもう一回」と呼ぶ)十億を超える金額になろうかと思います。
  255. 中林佳子

    中林委員 いろいろな説明はつくと思いますね。それはもちろん今の臨調行革絡みの中ですから、財政当局の方からいろいろ削れという話は出てきているのだと思いますけれども、しかし今まではこういう調整金というお金を返すということはなかったわけですね。それを今年度、新たに六十年度産から設けだということは、これは私は実質やはり米価そのものの切り下げだと言わざるを得ないと思うのですね。総額幾らかという判断は、十億をちょっと超えるぐらいかとおっしゃいましたけれども、事前に主計課の方にお聞きしましたら、五十九年度実績では十六億ないし十七億ぐらいになるのではないか、こういうふうにおっしゃっているわけですね。ですから、これは実際に自主流通米から十七億円もの新たな農家負担がふえる。実質それだけ米価が抑えられるということになると思うのですね。  大臣、先ほどの論議も聞いておりますけれども、自主流通米、これはほとんど良質米になるんだというお話もあったのですけれども、この告示そのものは大臣の名前で出ているわけです。ですから、こういう米価がまだ決定されないうちに政令とはいえ新たに十七億円、昨年ペースで概算すれば農家負担がふえる、実質米価を切り下げるようなこうした告示は撤回してほしいと思うわけですけれども、いかがでしょうか。
  256. 石川弘

    石川政府委員 今のお話負担がふえるというお話でございますが、これは五十七年、五十八年、いろいろな経緯をもう少し申し上げますとおわかりいただけると思いますが、これは理屈だけで申しますと、どちらかといえば、今までそれに対して負担をさせていなかったということについてはむしろ不公平ではないか、要するに政府に売らないものについて財政負担もして、結果的に三千円の金について、概算払いの支払いから返還の期日まで無利息の資金を運用させていたのではないかという指摘があったわけであります。  私どもは、自主流通と政府米を一体として管理をするという建前から、会計検査院等がおっしゃる政府米だけに支払うようにしろということは事実問題として非常にやりにくい、自主流通と一体管理をしてやるという意味からは、概算払いをするということは守るという立場を通したわけでございます。しかし、無利息の資金運用ということについては、資金運用と申しますか、結果的には無利息の金を寝かしておくということについては、財政の立場、これは会計検査院の立場からも問題があるということでございます。  しかし、私どもは、事務を円滑にやるという観点からは、今利息とおっしゃいましたが、利息という姿ではなくて、事務の円滑化も進めるという前提で調整金という形で生産者団体ともお話をしながら決定をしたことでございまして、このことは単価をどうこうとか、あるいは水準をどうこうするということではなくて、五十七年以来のそういう問題点を整理をした上で、しかも政府米と自主流通米を円滑に運用するという制度基本は守って、そういうことで決定をしたという経緯でございますので、米価とかあるいは農民所得というような観点とは別に考えておるわけでございます。
  257. 中林佳子

    中林委員 いずれにせよ、どんな理由をつけられても、概算金を出していた、その時点で政府米じゃなくて自主流通米にすれば六十キロ当たり二十円ないし三十円は徴収されるわけですから、そうすれば農家負担になってくるわけですよ。そうすると、米価がわずかながら上がっても、今度はまだわかりませんけれども、実際切り下げになっていくことは明らかではありませんか。ですから、財政当局からいろいろな指摘はあろうとも、これまではそれで通ってきていたものを、新たに六十年度産から全体では十七億ぐらい農家負担をふやすということについては私はどうしても納得がいきません。  あわせて大臣、鹿児島で十日に開かれました「一日農水省」の後の記者会見で、生産者米価の抑制を示唆したと報道では伝えられているわけですね。これは農水大臣としては私はどうしても納得のいかない言葉だというふうに思います。この委員会の答弁では、米価の問題はまだ全然決めていませんとかいろいろおっしゃってきた経緯から考えてみても、大臣のその発言はとても認めるわけにはいきませんし、いろいろ伝えられていることは、今度の生産者米価抑制は結局消費者米価据え置きに連動していって、一つは都議会議員の選挙絡みだ、こういうふうにも言われているわけですから、まさに論外だと言わざるを得ないわけですね。  ことしの生産者米価は、言うまでもなく、農家の生活実感だとかあるいは物価だとか、それから農機具、資材の上昇を考えていけば、全中がお出しになっている四・九五%の引き上げても少ないぐらいだというふうに私は思います。ですから、大臣が、自分の意向とは違った形で報道になったという弁明の記事も読みましたけれども。生産者米価を抑制するようなこういう言動は本当にけしからぬということを強く抗議をいたしまして、次の質問に入りたいと思います。  これは四月三日のこの委員会でも実は私、取り上げた問題なんですが、島根県の浜田市を中心といたします漁業危機の問題なんですけれども、その後事態は非常に深刻になってきております。特に沖合底びきの漁の落ち込みというのは深刻で、ことしに入って浜田漁港を基地とする漁業者の倒産が三件も相次いでいて、その負債総額は三社合わせて十三億五千万円にも上るという大変な状況で、地域全体への経済に大きな悪影響を及ぼしております。倒産の原因は、四月三日のこの委員会でも指摘をしましたけれども、国の制度資金を借りて漁船の近代化を図ったものの、燃油が高騰する、あるいは漁獲量が激減してくるという中で実はこういう倒産などが起きてまいっております。  問題なのは、この漁獲が非常に減ったことの一因に、ほとんどの漁民がその理由を挙げられるわけですが、韓国漁船の無謀な操業によるものだということになっているわけですね。五月末までに山陰沖で拿捕された韓国漁船が既に十一隻に上っております。これまで異常に検挙件数が多かった昨年の二十五隻を、ことしは追い越す勢いではないかと言われております。これらはすべて拿捕されているわけですから、日本の領海内の侵犯による拿捕になっているわけですね。そういう領海内も含めて、日本近海で韓国漁船がどのくらい操業しているかというのを視認、見て認めだというのが県の漁政課でまとまっておりますけれども、これは昭和五十八年度は二千三百六十隻、五十九年度は三千三百十六隻と大変はね上がっているわけです。六十年度はこの一カ月で、四月末までの視認隻ですけれども、四百六十九隻になっております。ですから、相当の韓国漁船が山陰沖の漁場を荒らしているということがはっきりするわけですね。  今この地域で非常に問題になっておりますのは、六月から八月までの間は資源保護ということで、沖合底ひきは休漁期に入るわけですね。ですから、今や漁場世韓国漁船の独壇場になっている。地元の漁民からは早く二百海里を設定してほしいのだ、こういう話も非常に強く出てきております。  まず最初に海上保安庁の方にお伺いしますけれども、四月三日の私の質問に対する御答弁では、状況によって集中的な取り締まりをやらなければいけない、こういうふうに答えていただいているわけですけれども、今後、山陰沖の韓国漁船の無謀操業をどのように取り締まっていく御計画があるか、その点について明らかにしていただきたいと思います。
  258. 神谷拓雄

    ○神谷説明員 お答え申し上げます。  先生からただいま御指摘ございましたように、本年度に至りましても十一隻を検挙しておりまして、昨年の異常に多かった二十五隻、その水準を上回るのではないかというような御指摘がございましたが、確かにそのように非常に違反操業は多くなっております。  それで従来も、昨年も実施いたしましたけれども、状況によっては集中取り締まりというようなことも考えておるわけでございますけれども、現在のところ、一応、夜間取り締まりを中心にいたしました航空機それから巡視船による取り締まりで対処しております。
  259. 中林佳子

    中林委員 地元の自治体やあるいは団体などから強い要望がありましたときには、昨年以上の集中監視体制をとっていただきたいことを重ねて申し添えておきます。海上保安庁の方、結構でございます。ありがとうございました。  浜田市の漁港を基地としますこの沖合底びき漁船は、先ほども言いましたように、ことしに入って三統六隻が倒産したことが明らかになっておるわけですけれども、今後、この休業期間中にさらに一、二統の廃業が出てくるのじゃないかとそこの漁港を中心にしてはささやかれているわけです。実は、つい最近、私どもの事務所の方に、借金返済に困り果てて、沖合底ひきの漁業者の一人から何とかならないかという相談も駆け込みで入ってこられたという状況もあるわけです。  こういうことで、今、漁業者全体が返済のめどが非常に立たなくなっているという状況の中で、浜田市が緊急措置といたしまして四億円の市独自の漁業経営安定資金制度を発足させ、一統当たり二千万円の融資が限度で、三年償還という短期の資金ではありますけれどもこれを実施いたしました。しかし、その土地の人たちが、せっかく市で二千万円の融資がスタートしたのだけれども、これは国の制度資金の返済に回ってしまって漁を再開するための準備資金にはならないだろう、このぐらい深刻な状況になっているわけですね。  四月三日の質問でも同じような質問をしたわけですけれども、そのときの水産庁の御答弁で、固定化した債務を借りかえするという措置だとか償還期限の延長という道も開かれている、こういう回答もいただいているわけです。浜田港のように連続倒産が沖合底びきを中心に出てきているという地域に対しては、特にこの休業期の間だけでもせめて国の制度資金などの償還期限の延長を具体的に考えていただけないかという要望が非常に強いわけですけれども、水産庁としてそのような特別の指導をしていただけないものでしょうか。
  260. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  私どもといたしましては、固定化した負債の処理につきましては漁業経営維持安定資金というのを用意しておりますし、制度資金の関係につきましてはそれぞれ償還期限の延長の道が開かれております。  それで、先生御指摘の浜田市の沖合底びき業者のお話でございますが、私どもとしては、従来から公庫などにも、実情に応じて業務方法書で認められておるような償還延期の措置は随時適切に講ずるように指導を行っておるところでございまして、公庫としては御相談があれば当然御相談に乗る体制ておりますので、個別具体的に公庫の支店と御相談していただければ御相談に乗るようになっております。
  261. 中林佳子

    中林委員 ほとんどの沖合底ひきの会社は、制度資金と名のつくものはほとんどお借りになっている。私のところに相談に来られた方の負債状況を見ましても、ほとんど借り切っているという状況で、返済が五月末から始まって一遍に返していかなければならない。そこにもっていって休業期間だという特殊な事情になっているわけですね。ですから、もちろん個別に公庫へ相談したり基金協会に相談したりいろいろなことは行われておりますけれども、ぜひこの休業期間中だけでも何とか倒産しないで済む道――この方々は、漁が始まればまた新しい道も開けるだろうということで、人員を減らしたり、それなりの経営努力をして再建の計画も立てていらっしゃる非常にまじめな方方ばかりでございますので、ぜひ特段の県に対する指導も含めて行政指導を強めていただきたいということを申し添えて、次に移らせていただきます。  次に、まず大臣にお伺いしたいと思うわけですけれども、去る六月二日に松江市で自民党の島根県連主催の政経文化パーティーが開かれて、佐藤農水大臣も出席されたと聞いているわけです。私は、この委員会で中海干拓淡水化問題を取り上げるたびに、大臣もぜひ現地を視察してほしいという要望も意思表示してきたところでございますけれども、今回、自民党のそういう政経パーティーでございますから、特別な仕事ということではありませんけれども、せっかくいらっしゃったわけですので、その際、この中海干拓の事業視察を計画に盛り込まれたのか、もし盛り込まれていなかったといたしましても、あのパーティーが開かれたのは宍道湖畔のホテルだと聞いておりますので、ごらんになったと思うのですけれども、あの宍道湖をごらんになった印象といいますか、今事業を進める立場にある大臣としての御感想をまずお伺いしたいと思います。
  262. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 中林先生にお答えいたします。  実は私は前日、選挙区福山で会合しておりました関係で、朝自動車で松江へ参ったわけで、久しぶりの宍道湖で、すばらしいところだな、こう思いました。そんなことで、午後は政経文化パーティーが済みましてから、実は翌日岡山で「一日農林水産省」をやるということで、汽車で岡山へ夜入ったということでございます。そんなことで視察することはできず、まことに残念に思っております。
  263. 中林佳子

    中林委員 今大問題になっている干拓事業でございますので、ぜひ特別に現地視察もしていただきたいということを要望しておきたいと思います。  すばらしい湖だ、こういうふうに大臣自身が御感想を述べられるように、宍道湖は面積で日本で第五位の湖沼であるわけです。漁獲量も二位の霞ケ浦を大きく引き離して全国一の漁獲量を誇っております。その漁獲量の九割がヤマトシジミになっているわけですね。単に自然景観がすばらしいというだけじゃなくして、漁場としても我が国の貴重な湖だと私は思いますし、県民にとっても誇りになっている湖でございます。だからこそ周辺住民の大半が、営業計画の見通しも立たない干拓やあるいは水質悪化や環境に大きな悪影響を及ぼす淡水化事業はすぐに中止してほしいということで、二十八万人もの淡水化反対の署名が集まったところなんですね。  ところが、私、三日の日、ちょうど岡山で「一日農水省」をおやりになった日の記者会見のことを地元でニュースで聞いたわけなんですけれども、そのニュースを聞いて私、びっくりしたのですね。というのは、この中海干拓事業は促進しなければならない、もちろんそれにはコメントがついておりました。地元の人たちの協力を得てという一言はありましたけれども、今まで私がこの委員会で質問するたびに大臣は、慎重に対処していきたい、促進という言葉はお使いにならなかったわけですね。ですから、これは大臣、せっかくすばらしい湖をごらんになったにもかかわらず、促進方の方向に一歩変わられたのかなということで大変びっくりして、その真意をどうしても確めたいと思っているわけですけれども、大臣のお気持ちはお変わりになったのでしょうか。
  264. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 実は私は、どのように報道されたかというのは知らないものですから……。  中海干拓事業というのは、先生御存じのように、鳥取、島根両県知事からの強い要望を受けて実施しているものであります。しかし、淡水化の試行については、地元で水質悪化を心配する声も非常にあるので、従来より鳥取、島根両県の了解を得るとともに、建設省、環境庁とも協議調整を図った上実施することとしておる旨答弁しているところでございまして、現在でもこの考えについて変わっておりません。  そんなことで、実は、例えば建設省から、たしか百二十四くらいですか質問事項がございましたが、それを一々答えておるとか、とにかく環境庁、建設省、鳥取、島根両県の了解を得ないと難しいのだという話は十分いたしたということでございます。
  265. 中林佳子

    中林委員 去る五月十八、十九日に松江市で実は水郷・水都全国会議というのが開かれました。これは昨年の世界湖沼会議を受けて住民運動の立場から今回初めて開かれたものです。  この会議には、全国から、湖沼環境を守る運動をやっておられる人だとか、湖沼環境保全の研究などをやっている学者、研究者ら、あるいは行政関係者ら約七百人が結集されました。私も、地元での開催でもあり、また中海干拓事業が重要な節目に来ているということから、この全国会議に出席したわけです。二日間の各地の報告や活動状況を聞いて、湖沼を自然のまま後世に残すことが現代を生きている私たちの使命であるということを痛感したわけです。各地の人たちから、日本の宝とも言うべき中海・宍道湖をこれ以上人工的な破壊を進めてはいけない、こういう声が圧倒的に多かったわけです。農水省も、開かれたことは御存じだと思うわけですけれども、水郷・水都全国会議をどのように受けとめておられるかということ。  それから、この会議で、全国の干拓や淡水化及び総合開発された湖沼や湾の現状について生々しい報告がされました。例えば琵琶湖では、琵琶湖総合開発が進んで自然湖岸が半分を既に割っていて、年々水質の悪化が進んでいることだとか、諌早湾では淡水湖化計画が破綻している問題、あるいは岡山の児島湖では、淡水化前には、行政側が東洋のベニスになるだとか淡水魚の宝庫になると宣伝されていたのだけれども、実際は水質汚濁が進んで農業用水にも使えなくなっている。いずれも先例地での失敗している例が次から次へと報告されました。さらに、この全国会議で、初めて全国的規模で水に親しむ権利、親水権の確立も提唱されたわけです。  農水省として、この会議の受けとめ方とあわせて、これら先例地での教訓を中海干拓事業にどのように生かそうとしていらっしゃるのか、この二点をお伺いしたいと思います。
  266. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 五月に松江市におきまして水郷・水都会議が開催されたことは新聞報道等で承知をいたしております。ただ、その場で討議されました具体的な中身等については承知しておりませんので、コメントする立場にございません。  地域の住民がその地域の水質保全でありますとか環境保全につきまして関心を持ち討論をするのは、それはそれとして意義深いものがある、十分意義があるものであるというふうに考えるわけでございます。  水に親しむ権利、これは琵琶湖畔で昨年行われました会議でも言われたことでございますけれども、これも水郷・水都会議で検討されたということが新聞報道でされておりますが、具体的に親水権というものがどういうものであるかは承知していないわけでございます。したがいまして、中海干拓事業どこの親水権の関係については、これまたコメントする立場にございません。
  267. 中林佳子

    中林委員 先例地の教訓をどういうふうに生かすか。
  268. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 先例地の紹介につきましても、私、どのような事例がどのような形で紹介されたがは承知してないわけでございますけれども、私どもが事業を実施いたします場合には、そういったことも十分検討いたしまして新しい事業に生かしていくというのは従来から一般的にとってきている方法でございます。
  269. 中林佳子

    中林委員 農水省がおやりになっている干拓問題あるいは淡水化事業、こういうものは、先例地の例として、ほとんど汚濁が進んだり営農計画の見通しが立たない事例として出されました。ですから、本当に先例地の教訓を生かす道は、この中海干拓事業を今すぐ中止することだと私は思います。ところが、御承知のように農水省は、今年度も概算要求を大きく上回る四十五億円の予算が大蔵内示でついたわけですけれども、着々と事業が進んでおります。これは地域住民に対して新たなる挑戦だと思うわけです。  そこで、具体的に聞いてまいりますけれども、六十年度の事業実施計画のうち本庄工区に関する主な事業はどんなものを組んでいらっしゃいますか。
  270. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 本庄工区につきましては、堤防関係が五千九百万円、揚水機場関係が三億円、排水路が二億三千万、合計で五億八千九百万の工事費を計上いたしております。  全体を申し上げますと、本庄工区につきましては、現在までに堤防がほぼ完成している状況でございます。したがいまして、今年度は干陸に必要な排水機場の附帯設備と支線排水路の掘削を実施する、こういうことで、ただいま申し上げましたような事業内容の事業を予定をしているわけでございます。
  271. 中林佳子

    中林委員 中海干拓淡水化事業の中で、既に干陸されているところもあるわけですけれども、今言っております本庄工区は全体の六八%を占める裏も大きい面積の部分です。既に堤防は、今局長がおっしゃったようにほぼ完成に近づいているわけですけれども、干陸化そのものにはまだ着手されてないということになっているわけです。しかし、今お話しになりました排水路掘削工事だとか排水機ポンプ製作というのは実際干陸化工事への着手ではないか、こういうふうに思うわけです。今一番論議になっております淡水化試行の問題、これではまだ各自治体の同意も得られておりませんけれども、その本庄工区、最も面積の大きいところが実際干陸化にことしの秋ぐらいから着手されるということになりますと、実際には淡水化に拍車をかける方向になるのじゃないか。これだけの本庄工区という一番大きい干陸地がもうできるのだから水が必要だ、淡水化せよ、こういうことになってくると思うわけです。ですから私は、この淡水化論議が決着しない間にこういう実質干陸化に踏み込む工事は凍結すべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
  272. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 中海干拓事業につきましては全体の計画がありまして、それらについての工程が組まれているわけでございます。事業は順次合理的に進めていく必要がありますので、本庄工区につきましても、先ほど申し上げましたような干陸の準備を進めるということにいたしたわけでございます。  中海の淡水化の試行につきましては、私ども設置いたしました調査委員会としても、現在の中海の水質を大きく変化をしないで淡水化ができる、このように考えておりますけれども、地域住民の方の心配もございますので、鳥取、島根の両県あるいは建設省、環境庁等の関係機関とも十分協議調整をして進めていきたい、このように考えているわけでございます。
  273. 中林佳子

    中林委員 淡水化の同意が得られるとは限らないわけですよ。今、島根県が農水省に出しました質問に対する回答についてもいろいろな疑問が出されているし、科学者や研究者の間からも新たな事実などが明らかになっている状況なんです。ですから、実際に国の予算を使ってもし同意が得られなかったら、干陸化のこの工事というのはまさにむだな工事だと私は思うわけですね。ですからそういう意味では、今財政が非常に厳しいときでもありますし、事実上干陸化へ着手するようなこういう工事は凍結すべきだということを重ねて申し添えまして、次に進みます。  農水省の中海干拓事務所は、ことしの四月十五日付で、先ほども話しました島根、鳥取両県から出された中間報告に対する質問に対して回答を発表したわけですね。この回答が出されたのはそれなりに私は意味があったと思いますけれども、実はこの両県以外にも、共産党の島根県委員会を初め幾つかの団体などから質問が出されていたはずです。  そこでお尋ねするわけですけれども、今風の回答が両県のみで、我が党の県委員会を初めほかの団体に対する回答が出されていないのはなぜなのか。少なくとも私は、早急に誠意を持ってこれらの団体に対しても回答をなさるべきだというふうに思いますし、これまでのこの委員会でも、するという御答弁もいただいているわけですけれども、ぜひ早く回答をいただくこととあわせて、その回答をしないうちに淡水化試行には入るべきでないというふうに思うわけですけれども、いかがでしょうか。
  274. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 いわゆる中間報告に対しまして、関係機関でありますとか団体等から質問が出されております。これにつきましては、現在整理をして、回答できるものから順次説明をしていっているわけでございまして、淡水化の理解を得るための努力はこれからも続けていく考えでございます。まだ回答をしていない団体がございますけれども、これらの団体につきましても、私どもに出されました質問につきましては今後回答していく考えでございます。
  275. 中林佳子

    中林委員 この島根、鳥取両県に出されました農水省の回答、これを見て幾つか疑問な点があるわけですね。これでは回答になっていないという点を幾つか質問したいと思いましたけれども、残り時間がわずかですので、二点ほどお答えいただきたいと思います。  その一点は、この回答申最も大きな問題点になっている「異常事態考え方及び判断基準」の問題です。一番最後のページに判断基準が示されておりますけれども、この数値は、CODで中海・宍道湖の水質基準Aを目指しているわけですが、しかしそのAの基準の三倍の数値でありますし、窒素は米子湾で環境保全基準一類の二十二・五倍の数値ですし、燐は宍道湖湖心部で基準一類の五十五倍というとてつもない高い数値になっているわけですね。  これはまさに死の湖が前提になって、こんな状態になったときに、異常基準だからこれから検討して水門をあけるかどうかを聞くんだとか、これが警戒態勢になる基準だとかおっしゃっても、これではもとに戻らないと思うのですね。こういう数値をお示しになったその判断根拠、これは何に基づいてこういう数値を出されたのかというのが一点。  それからもう一点は、この委員会でも私問題にしてきましたけれども、渇水や豊水時の水質についてこの回答書では「渇水年は平常年に比べてやや高く、豊水年は平常年とほぼ同程度であろう」と水質を予測しているわけですが、この中を見て私びっくりいたしましたのは、データ値が年平均値で出ているわけですよ。水質悪化は季節の変化で非常に変わるわけですね。夏場の渇水時、こういうときが非常に水質悪化されるだろうというのに、年平均なんかで出されたのでは、これはやや平常年に比べて高いというような結論にはならないと思うのですね。ですから、なぜこれが月別ではなくて年平均値で出されたのか。月別データはあるはずですから、それをぜひお示しいただくべきだと思います。  それから、本当の近年の渇水年は昭和四十八年ですよ。それが昭和五十三年の渇水年がとられているということも、地元では大変疑問を投げかけております。ですから、この二点についての農水省の立場をお答えいただきたいと思います。
  276. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 淡水化を試行する過程で警戒態勢をとる場合にどのような場合を想定するか、という問題でございます。  あくまで異常事態ということでございますので、農林水産省案としてお示しいたしましたものは、昭和五十一年から五十六年までの六カ年間において観測されました数値のうち、まずCODとそれからトータル窒素とトータル燐につきましては季節ごとに示しておりますけれども、その季節ごとの月別の全層平均値の上限値をとっております。それから、透明度につきましても季節ごとにとっておりますけれども、これも季節ごとの月別観測値の下限値をとっております。それから、クロロフィルaにつきましては、これは年間の月別全層平均値の上限値を採用しているということでございます。  この全層平均をとりましたのは、現在は大まかに言いまして二つの層に分かれているわけでありますけれども、淡水化されますと層が均一になる、こういうような考えのもとに全層の平均値をとっているわけでございます。  それから次に、渇水年の検討の問題でありますけれども、これも、先ほど申し上げましたようにデータの整備されております五十年度以降で、年平均で一番降水量の少なかった五十三年度を渇水年として水質の検討を行ったわけでございまして、確かに御指摘のとおり年の平均値で整理をしておりますけれども、これにつきましては特に他意はございませんで、たまたま中間報告の解析結果が年の平均値で出しているということで、それとの比較もありまして年の平均値で整理をした、こういうことでございます。したがいまして、渇水年のデータはあるわけでございますので、必要がありますれば私どもとしても十分説明をする用意はございます。
  277. 中林佳子

    中林委員 時間が過ぎておりますので、最後一点だけ要望して終わりたいと思います。県などは、やはりこの回答では不十分なので再質問をしたいと言っているわけですね。それに対しては誠意を持って再度答えていただきたいということを申し添え、そして大臣には、このぐらい非常に大きな論議を呼んでおりますし、先例地の経験も含めて、ぜひ勇断をもってこの中海干拓淡水化事業は中止していただくよう強く要望しまして、私の質問を終わります。
  278. 今井勇

    今井委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十分散会