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1985-04-03 第102回国会 衆議院 農林水産委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年四月三日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 今井  勇君    理事 衛藤征士郎君 理事 島村 宜伸君    理事 田名部匡省君 理事 玉沢徳一郎君    理事 小川 国彦君 理事 田中 恒利君    理事 武田 一夫君 理事 神田  厚君       大石 千八君    鍵田忠三郎君       菊池福治郎君    佐藤  隆君       鈴木 宗男君    田邊 國男君       月原 茂皓君    保利 耕輔君       松田 九郎君    三池  信君       山崎平八郎君    若林 正俊君       島田 琢郎君    新村 源雄君       日野 市朗君    細谷 昭雄君       松沢 俊昭君    駒谷  明君       水谷  弘君    吉浦 忠治君       稲富 稜人君    菅原喜重郎君       津川 武一君    中林 佳子君  出席国務大臣         農林水産大臣  佐藤 守良君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産大臣官         房審議官    吉國  隆君         農林水産省経済         局長      後藤 康夫君         農林水産省構造         改善局長    井上 喜一君         農林水産省農蚕         園芸局長    関谷 俊作君         農林水産省農蚕         園芸局次長   畑中 孝晴君         農林水産省畜産         局長      野明 宏至君         農林水産省食品         流通局長    塚田  実君         水産庁次長   斉藤 達夫君  委員外出席者         水産庁漁政部長 渡辺  武君         運輸省海上技術         安全局船員都労         政課長     森谷 進伍君         海上保安庁警備         救難部警備第一         課長      神谷 拓雄君         海難審判庁海難         審判理事所調査         課長      榎本  武君         参  考  人         (北海道農民連         盟委員長)   岡本栄太郎君         参  考  人         (新潟県、入広         瀬村土地改良区         理事長)    須佐 昭三君         参  考  人         (大分信用農         業協同組合連合         会会長)    竹光 秀正君         参  考  人         (千葉大学園芸         学部教授)   斎藤  仁君         農林水産委員会         調査室長    矢崎 市朗君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農業改良資金助成法及び自作農創設特別措置時  別会計法の一部を改正する法律案内閣提出第  三九号)  農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案  (内閣提出第四五号)  農業近代化資金助成法及び漁業近代化資金助成  法の一部を改正する法律案内閣提出第四七号  )      ――――◇―――――
  2. 今井勇

    今井委員長 これより会議を開きます。  内閣提出農業改良資金助成法及び自作農創設特別措置特別会計法の一部を改正する法律案農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案及び農業近代化資金助成法及び漁業近代化資金助成法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題とし、審査を進めます。  本日は、各案審査のため、参考人として北海道農民連盟委員長岡本栄太郎君、新潟県、入広瀬土地改良理事長須佐昭三君、大分信用農業協同組合連合会会長竹光秀正看及び千葉大学園芸学部教授斎藤仁君、以上四名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。参考人各位におかれましては、各案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げますが、岡本参考人須佐参考人竹光参考人斉藤参考人順序で、お一人十五分程度意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人委員に対し質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  それでは、岡本参考人にお願いいたします。
  3. 岡本栄太郎

    岡本参考人 私は、北海道十一万戸の農家のうち七万五千戸が加盟している北海道農民連盟委員長をしております岡本栄太郎であります。私自身も、富良野市で七ヘクタールの水田を耕作し、近隣農家との生産組織に加入している農民の一人であります。  このたび、当委員会において農業金融三法の改正に当たって広く意見を徴されることになり、発言機会をお与えいただきましたことにつきまして、委員各位に深く感謝を申し上げます。  昨年来、農業金融の諸制度について、臨時行政調査会第五次答申と新々行政改革大綱の示される方向のもとで改正問題が検討され、いろいろの臆測で改正内容が流布されました。北海道農民連盟は、数次にわたって農業金融制度改善について農林水産省当局を初め、関係機関に強く要請活動を実施してまいりました。  国会に提出されている改正内容では、例えば貸付利率三・五%の農地等取得資金が我々の要望どおり残され、貸付限度額も引き上げられており、農業近代化資金貸付利率引き下げ、新たに地域農業総合整備資金創設等となっております。しかし、この改正案に全面的に賛成はできません。  せっかくの機会でありますので、北海道における農家経営収支負債状況農業金融に対する農民の要望など、幾つかの点について実情を申し上げたいと思います。  最初に、北海道信用農業協同組合調査の五十九年十二月末の総貸出金は、一兆四千四百十五億円余となっております。土地改良区が農業基盤整備に要する補助残融資として借り入れしておるのが千二百億円余りありますので、北海道十一万二千戸の累積負債は一兆五千億円を超えております。五十九年は豊作でありましたが、五十八年末の貸出総額より二百二十七億円、前年比一・六%増であります。経済地域別に見ても、水田地帯でわずか〇・九%減少しただけで、畑作は二・一%、酪農は〇・八%、混合三・四%、都市周辺四・一%とそれぞれ増大をしております。  全道農家一戸当たり借入額は、五十八年の平均千二百四十六万円から五十九年末には千二百八十六万円、四十万円ふえております。五十九年の営農別内訳は未発表でありますので、五十八年末の実態を申し上げますと、酪農二千七十六万円、前年比一・九%増、畑作一千七百二十八万円、一〇・五%増、水田一千七十三万円、四・八%増と、畑作農家負債累増が目立っております。一戸平均年間収入借入金割合では、水田一七一%、畑作一一五%、酪農一四七%と、水田酪農経営の深刻さが目立っておりますが、五十九年末では畑作農家負債比率増大すると思います。  北信連では、毎年、組合員勘定取引から見た農家経済動向を発表しております。  その内容は、稲作地帯のうち、空知上川管内農協、九千百四十六戸の一戸当たりという形で農家経済動向が明らかにされています。五十八年は冷害年でありますので、五十七年で見ますと、農業収入四百八十八万円、転作奨励金百四万円、農外収入二十万円で、合計六百十二万円の収入に対して、農業経営費は三百八十一万円、うち支払い利息五十万円、租税公課七十九万円を差し引き、農業所得百七万円、農業所得率二一・九%となっております。転作奨励金農外収入を加えた可処分所得二百三十一万円、家計費百二万円、資金返済百四十五万円でありますので、十六万円の赤字となっております。資金償還支払い利息合計百九十五万円は、農業収入に対し三九・九五%を占め、農家収入に対しては三一・八%であります。  畑作では、十勝、北見十農協、六千八百五戸の平均資金償還支払い利息合計は二百八十五万円、農業収入に対して一九・二五%となっておりますが、五十九年はさらに悪化しているものと思います。  酪農は、根室、宗谷の四農協、七百九十五戸の資金償還支払い利息は、二月平均三百二十二万円、農家収入の一八・一%となっております。  なぜこのように深刻な状況にあるのかでありますが、例を稲作空知上川農協、九千三百二十四戸の実態で見ますと、五十四年を一〇〇として、五十七年では、農業収入は一〇七・二%、農家収入では一一三・九%であるのに対し、農業経営費は一二四・五%となっており、そのうち支払い利息は一四二・八%、資金返済は一三八・一%となっております。この間、米価は四・五%しか上がっておりません。先ほど、五十七年の空知上川各五農協九千戸の農業所得率が二一・九%であると申し上げましたが、同年の畑作は二六%、酪農二一・九%となっており、酪農の五十六年は実に一〇・四%という低率でありました。  北海道統計情報事務所による北海道農林水産統計年報でも、稲作畑作酪農単一経営所得率はいずれも年々低下しております。  北海道農民連盟調査をした三つの事例についても申し上げてみたいと存じます。  第一は、空知管内南部A農協の場合、組合員数六百二十八戸、うち負債額が十アール当たり三十一万円以上の農家が百二十一戸、実に一九・三%であります。十アール当たり三十一万円以上ということは負債生産額の二倍を超えるものでありまして、信用限度超過経営再建が非常に困難であると思います。そのほかに、二十六万円から三十万円が三十八戸、六%、二十一万円から二十六万円までが四十九戸、七・八%となっております。  次に、同じ空知管内B農協は、組合員四百七十一戸のうち稲作が四百五十五戸で、経営階層別内訳は、A階層百三十戸、二八・五七%、B階層百五十七戸、三四・五%、C階層七十四戸、一六・二六%、D階層九十四戸、二〇・六七%、うち再建が全く困難な十五戸があると聞かされております。  第三は、上川支庁管内旭川市隣接のC農協でありますが、九百六十一組合員負債額は、五十三年平均四百五十五万円が五十八年は七百十二万円となっており、五カ年で実に五六・三八%増加しております。五十八年の一月平均支払い利息は四十五万七千円、償還金は百九十四万四千円となっております。水稲作付面積は二・六ヘクタール、平均反収五百三十キロでありますので、収穫量は二百三十一俵、五十八年生産者米価六十キロ一万七千五百十二円で計算しますと、支払い利息米販売額の一一・二%、資金償還は四七・九%に相当し、合計すると米代金の五九・二%は支払い利息資金返済で消える状況であります。  C農協は四〇%を超える転作面積の割り当てを受けておりまして、農協を挙げて野菜生産団地化を進めております。しかし、五十九年は野菜価格の暴落で惨たんたる状況でありました。コスト割れ稲作赤字野菜生産旭川市内への農外就労で埋めてきているわけであります。この状況は多かれ少なかれ北海道米生産地における実態であります。  畑作酪農においても似通った状態にありまして、農外就労条件のない地域では経営収支悪化負債累増になり、結果として挙家離農となって、その離農跡地を処分するのが困難になってきております。  昭和三十年代後半から四十年代前半にかけて挙家離農年間七、八千戸から多い年は一万戸に達した年もありましたが、近年では二千戸を切るようになりました。三十五年当時二十三万五千戸あった農家戸数は、五十九年十一万二千戸へと半減しておりまして、構造政策推進では北海道全国一の優等生であると思います。  府県に比べ経営規模も大きく労働生産性の高い北海道農業がなぜ負債重圧にあえいでいるかが問題であります。昭和五十年の農家負債総額は六千百六十億円でありましたが、その後毎年一千億円程度借入金がふえ続け、五十八年にはついに一兆五千億円を超える事態となりました。農業生産は約一兆円でありますので、負債額生産額の一・五倍となり、さきに申し上げましたように利息と元金の返済農業経営は非常に厳しい状況にあります。  生産性の向上、規模拡大行政指導で進められ、大型機械導入近代化施設土地改良農用地拡大、多頭数飼育等大型投資が続けられる中で、農畜産物生産者価格は政治的に抑制され、生産資材飼料価格等の値上がりにより経営内容悪化させてきたのであります。経営収支交易条件悪化借入金で補ってきたのでありますが、この借入条件がどのように変わるかは直接経営を左右する問題であります。十一万二千戸の中でボーダーラインにある農家は相当数あります。ある意味では現在は投資圧の時代と見られ、脱落させないためには低利経営資金融資低利借りかえ資金への借りかえ以外に救われる道はないと思います。  今後の追加投資需要について二つの見方があります。一つは、今後の追加投資需要は減少し、必要なのは低利経営資金であって、経営資金が確保できなければ支払い利息資金償還重圧に耐えての経営はさらに困難になるという見方であります。もう一つは、負債累増によって信用限度超過になっている経営再建困難な農家群後継者のいない離農予備群農用地移動に伴う資金需要増大は避けられないという見方であります。  農林漁業金融公庫北海道支店資料によりますと、農地等取得資金の貸し出しは五十四年百五十二億円が五十八年には二百七億円となっております。五カ年に三六%増加しており、今後もふえると見込まれております。また、農地取得資金貸付枠が不足し、五十四年から五十八年まで五カ年間、毎年四十二、三億円から五十三億円の総合施設資金併用貸付が行われており、両資金金利差は一・五%あります。道内市町村では農地取得資金の不足に苦慮しているのであります。  農業金融法改正で当初危ぶまれました三・五%資金がなくなるのではないかという心配は、一部を除き存続されることになりました。農林水産省当局努力は多として評価を惜しまないものであります。しかし、資金枠需要に沿って拡大されなければ、価格政策から構造政策へ、あるいは補助政策より融資への政策転換はまさに絵にかいたもちにすぎません。資金枠を確保していただきたいと思います。  自作農維持資金再建整備については、特認限度額を八百五十万円から一千五百万円に引き上げられることになっております。しかし、六十年度予算を見ますと、資金枠を見れば五十九年の二百五十五億円から二百六十五億円へとわずか十億円の増額では、経営再建に必死に努力している農民の期待にどうこたえようとしているのか、全く理解に苦しむのであります。  次に、土地改良事業補助残融資についてでありますが、融資額は五十八年末で全国九千二百億円を超えており、北海道では一千三百十六億九千万円を超えております。近年、土地改良事業費が高くなっております。水田圃場整備事業を例にいたしますと、五十年ごろは十アール三十万円程度であった事業費が現在では百万円になっている地区もあります。十年間で三倍近くになった理由はいろいろあると思いますが、もう少し事業費が安くならないか、そして六・五%の金利経営負担となっていますので、大幅に引き下げていただきたいと思います。  以上、北海道農業の現状と農業金融について申し上げましたが、構造政策では優等生北海道農業が今や借金王国になり、借入金返済をしながら果たして自立できるか、非常に難しい局面に立たされているのであります。北海道農民連盟といたしましては、北海道農業の安定的な発展のために、五十年、二分の資金創設を長年にわたって訴え続けてまいりました。この資金制度があれば今日のような借金王国にならなかったと思うと残念でなりません。さらに、昨年からは借金をこれ以上ふやさない対策として、組合員勘定自主的管理の実践と組合員勘定利息の一%引き下げを各農協に要望し、組勘利息引き下げ経営改善の意欲を盛り上げようと努力を続けているのであります。  私たち北海道農民は、今後の農業政策に強い関心を持っております。五十七年八月に農政審議会農林水産大臣に提出した「「八〇年代の農政基本方向」の推進について」と題する報告の中で、農業構造展望として、北海道では稲作主業十ヘクタール程度酪農搾乳牛三十五頭、耕地三十五ヘクタール程度とし、さらに中核農家作付規模拡大として、水田十から二十ヘクタール、畑作三十から四十ヘクタール、酪農三十五頭、耕地面積三十五ヘクタールと想定しています。そのような方向に向かって構造政策が進められることが今後の農政政策課題であると考えるならば、この推進には多くの農民の犠牲と困難が伴うことは必至であって、私は必ずしも賛意を表するものではありませんが、その方向の中で農業金融制度が果たす役割やあり方はどのような内容のものであるか、明らかにしてほしいと思います。  さらに問題なのは、六十五年生産目標をどのように対策しようとしているかであります。貿易摩擦の解消のためにさらに農業生産抑制を続けようとするのかどうかであります。これ以上の生産抑制日本農業崩壊であると思います。  中曽根内閣になって三カ年で農林予算は約四千億円減額されました。逆に、防衛予算は五千五百億円の増であります。来年度も農林予算は減額されるのか、金融三法、農業災害補償法農民年金法改正は、臨調行革財政再建推進のために提案されており、今後されるものと思います。農業金融制度は各般にわたる農業政策の総仕上げでなければならないと考えております。今回の改正財政負担長期展望に立って削減しようとする臨調行革方針のもとで見直そうとするものであって、三法改正に賛成することはできません。  我が国の農業農村の限りない発展に資する前進的かつ抜本的な農業政策の確立と金融制度創設を強く要望いたしまして、私の意見開陳を終わらせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)
  4. 今井勇

    今井委員長 ありがとうございました。  次に、須佐参考人にお願いいたします。
  5. 須佐昭三

    須佐参考人 御紹介をいただきました新潟県の入広瀬土地改良理事長須佐昭三であります。なお、入広瀬の村長の職にもございます。  本日は、当委員会にお招きをいただきまして、意見の陳述の機会を与えていただいたことを光栄に存じます。  地域活性化を図り、農業生産性を高め、若者定住条件整備、そして何よりも山村の集落の崩壊を防ぐために地域住民全体が真剣に努力をし実行に移されてまいりました山村地域農業基盤整備事業の推移と、その結果生じました債務の援助対策等についてのありのままと、入広瀬村の施策内容と今後の展開について、お手元にお示しをいたしました資料に基づき申し述べたいと存じます。  まずもって申し上げたいと思いますことは、全国には私どもと類似する地域も多いと存じます。すなわち、山間不遇農村地域でも、地域全体の真剣な対応と取り組みによっては、農林関係の各種の援助融資制度が充実強化され十分に諸制度の適用が可能となってまいりましたことが、今日のごとく山村地域農業基盤整備が飛躍的に実施されるに至ったものと考えられる次第でございます。この点、深く敬意と感謝の意を表する次第でございます。  早速、資料によって順次申し上げたいと存じます。お手元にこのような表紙の資料を差し上げてございます。「若者定住のために 農業基盤整備事業の実施とその負債整理援助施策について」であります。  きのう現在、我が入広瀬村の積雪は一メーター五十六でございます。恐らくきょう現在一メーター五十程度になっていようかと思います。山地の地域は二メーターから二メーター五十の積雪下にまだございます。入広瀬村は福島県の南会津に接する新潟県の中央東端に位置をいたします。新幹線で参りますと、浦佐の駅から車で約三十分の距離であります。なお、圏域は長岡・小出地域広域行政圏に属しております。  人口は、ほかの過疎地と同じように減少をいたしておりますが、昭和五十年以降微減の傾向にございます。現在人口は五十五年国勢調査で二千七百五十三名、このようなことでありますが、他の農村地域と同様に老齢人口が増加をいたしております。産業別人口構成等も、お手元資料にありますように、農業人口、いわゆる第一次産業は三八・五%と、五十年の国勢調査に比べて五十五年国勢調査では激減をいたしております。二次産業が逆に増加し、三次産業は若干の減、横ばいというふうな状況に推移いたしてまいりました。  村の財政は、これから申し上げますいろいろな施策展開等に合わせて、よく税、財源に恵まれているというようなことを言われますけれども、決してそのような状態ではございません。昭和五十八年度決算で〇・一九六というふうな財政力指数であります。財政は、経常収支率は六七・五%と、県下百十二市町村では極めて健全なところに位置しております。公債費比率も一〇・一ということで、これまた極めて健全な状態にあります。  このような財政状況でありますが、このような環境の中で我が入広瀬村がどのような行政施策展開してきたか、少しくそのことに触れてみます。  戦後の荒廃した農村の中で、昭和二十六年に新農村計画というものを立てました。そして当時、本当におなかがすいて何とか腹いっぱい御飯を食べたい、こういうふうな悲痛な願いのもとに村民が開拓政策取り組み、当時三百俵の米をようやく供出しておった農村が、現在は一万一千俵余の米を出荷するに至りました。  昭和四十五年、安定した状態の中にあって、「豊かな村造りへの提言」と題する行政基本構想をまとめ、五十二年が「発展と調和へのビジョン」と進み、さらに五十五年、若者の住まいする村をつくりたい、そのために何をなすべきかということについて真剣な取り組みをいたしました。  その施策は、まず若者定住を図ろう、そしてどこの町、どこの村よりもすぐれた福祉の里をつくろう、そして山村であっても都市並みに生活できるような環境をつくろう、このような三つ行政目標を定めまして、諸施策推進を図ったのであります。特に、福祉の里の問題では、福祉憲法ともいうべき社会福祉条例を制定し、あるいはまた、都市並み生活環境のためには、農林省の補助事業による下水道整備等を進め、昭和六十五年には全村の下水道を完成させたいということで目下取り組みを進めております。  さて、本日、意見開陳を申し上げますこの若者定住施策の中に、三つ重点施策を定めて推進してまいりました。  そのまず第一点が、就業の場の拡大であります。若者よ村へ帰れと言っても、若者が帰っても働く場がなければ若者は帰りません。そこで、農村工場団地をつくり、工業導入を図りました。また、この山間不遇の地に工場進出もなかなか期待できませんので、村が若者就業センターというものをつくりました。また、地域バイタリティーセンターというものもつくり、工場を貸与し、若者Uターンを求めたのであります。これは、県の地域バイタリティー育成事業から一億円の無利子の金をお借りしてこれらの施設整備し、そこに約二十四名の若者Uターンをいたしました。また、下請センターの建設であるとかいろいろな制度を設けるとともに、今、若者定住促進条例という条例をつくって、何としても地域活性化を図りたい。  そのためには、若者よ帰れということでいろいろな政策を進めております。その若者定住促進条例の中には、農業後継者の育成があり、また、地域工場に勤める若者に対する就職支度金の支給があり、就学援助があり、結婚のお祝いの補助金の給付があり、若者の居室の資金融資の方法があり、あるいは商業後継者の店舗改造資金融資があり、これらの制度を入れました若者定住促進条例を制定し、若者Uターン政策を積極的に推進しているところであります。なお、これらの資金貸し付けの金利は、農協に村が原資を預託し、三分五厘の金利で貸与いたしております。  次に、二つ目の政策は、若者よ帰れと言っても、若者にはレクリエーションの場がなければいけない。若者が村に帰ってもゴーゴーぐらい踊れる場所がなければ若者は帰らない。そのためにいろいろな施設整備しようということで、地域コミュニティーセンターを整備し、「若者の砦」を建設し、こうした施設の充実を図ったところであります。  さて、問題は三つ目であります。若者が村に帰るためには、農林業の基盤が整備されなければならない。農業が放棄されたり農地が放棄されたら、もう入広瀬村という山村の存在の意義はなくなります。農村の灯をともしていくためには、農地を守らなければなりません。そのためには基盤整備推進しなければいけないということで、これを最重点の施策に取り上げて推進してまいったのであります。  昭和五十年に農業基盤整備促進条例を制定し、農家の皆様がこれだけの負担をしてくれたら農業基盤の整備ができるのだ、これだけは村が援助してくれるのだというふうなことをきちんと明文化をしまして、農家取り組みを求めたのであります。その条例が、お手元に記載してございますように、農業生産基盤整備促進条例であります。この条例の中に、具体的にそれぞれの事業について、国の補助事業、いわゆる公共事業と称するものに対する村の援助の内容、また村が単独で行う事業の補助内容、こうしたものを明文化したのでございます。  その内容は記載のとおりでありますので、詳しく申し上げることを省きたいと思いますが、圃場整備等について申し上げますと、国、県の補助事業については、補助、融資残の五〇%を助成しようということであります。また単独事業、いわゆる山間狭隘の地でありますので、国、県の補助事業の及ばない地域がございます。恐らく全国各農山村に共通するものがあろうかと思いますが、こうした地域については、受益面積が十アール以上であること、一アールの田んぼは三区画を一つにして三アール以上にしなければいけないぞ、こういうふうな条件をつけまして五割補助を行うということでありました。以下、かんがい排水事業、農道整備事業、農地開発事業、老朽ため池補強事業、あるいは客土、暗渠排水、こうした事業についてそれぞれ補助金の内容等について明文化いたしまして、農家取り組みを求めたのであります。  幸いにして、この条例行政効果は、私どものような山間不遇の地でありますが、昭和五十九年度までに、約二百二十ヘクタールの水田のうち百八十七・三三ヘクタールの圃場整備が実行に移され、国費助成事業を通じ、本年度末には約百九十ヘクタールの圃場が整備されることになったのであります。これは、この山村にあってはまさに隔世の感がございます。  お許しをいただいて、今お手元一つの写真をお届けしてみたいと思います。よろしゅうございましょうか。
  6. 今井勇

    今井委員長 どうぞ。
  7. 須佐昭三

    須佐参考人 今お手元にお届けいたしました写真は、この資料にもついてございますけれども、従前の地域とその後に変わりました農村の農地の姿が写っておりますので、ごらんをいただきたいと思います。  さて、こうした農業基盤の整備事業の取り組みは、当然農家の債務の累増になってあらわれてまいりました。  昭和五十六年二月に私は村議会で、この基盤整備によって農家債務が累増している、父祖伝来の土地を守ることが村民の生活を悠久なものにするために大事だ、だけれども、これをやることによって農家負債は累増してまいる、これは数年先、村の圃場整備が終わったときは何らかの行政上の対応が必要である、援助の施策が必要であるということを村民の皆様にお話しを申し上げたのであります。そして昭和五十八年二月に、このような事業の推進によっておおよそ圃場整備事業のめどもついたので、財政事情が許されるならば、昭和五十九年度においてはこれらの援助施策を示してまいりたい、このようにさらに言及をいたしたのであります。そして昨年の二月、村の定例議会におきましてこの債務援助の条例等が議決されるに至ったのであります。  すなわち、今申し上げたとおり、農村で農地が放棄されれば農村ではありません。父祖伝来の農地があってこそ農村であります。このために基盤整備を実行に移した。その債務に対する償還について基金を設定し、そしてこの基金を使って、元本の繰り上げ償還の援助等を通じて農家債務の負担の軽減を図ろうではないかという基金積み立ての条例であります。  その考え方といたしましては、村内には、圃場整備において十アール当たり最低八千円程度の年賦償還で済むところと、多いところでは約五万五千円の年賦償還金を要するところがある、このように平均を上回る額について元本の繰り上げ償還援助を行おうではないかということでありまして、その条例は全会一致とはまいらず、遺憾ながら多数決ではありましたが、御承認をいただき、これらの基金の設定により、過重とも思われる長期にわたる債務負担の暗い思いに悩む農家の皆様にとっては必ずや明るい話題となるであろう、このように申し上げたのであります。  その条例全文は、そこにございますように極めて簡潔な条例でございまして、いわゆる圃場整備事業に対する債務の援助の基金を設定し、この基金を取り崩して行うについては、議会の議決を求め、そしてその基金をもって元本繰り上げ償還の援助を行うということであります。本年二月に予算を提案いたしまして、このうち四千五百万の基金を取り崩して、本年度から元本の繰り上げ償還の援助を行うことといたしたのであります。  その内容については、お手元資料の十ページのところに一つ参考として数字を出しておきましたが、このような圃場整備がどのような実態になっているかということでございますが、山村にありましては、やはり公共的用地の占有割合は――そこに「退路」となっておりますが、これは「道路」の間違いでありますが、道路、用排水路等の占める比率は、最高では三九・三%であります。平均二六・一%となっております。十アール当たり事業費は、内面積におきますと、少ないところで三十六万四千円、多いところでは二百二十四万七千円の経費を費やしております。先ほど北海道の方の御発言にもございましたが、十アール当たり最高二百二十万の経費を要して圃場整備が実行されたということであります。新潟県下の平均は百七万三千円と伺っております。  しからば、十アール当たりの元利償還金はどうか。今も申し上げたとおり、少ないところで八千八百円でありますが、多いところでは五万四千三百四十八円となっております。なお、本村の昭和五十八年度の農業所得というものから見ますと、十アール当たり農業所得平均して八万七千二百八十二円という数字が出ております。五万四千三百四十八円の十アール当たり償還金は、この農業所得に対しますと六二・三%に相当するという数字になろうかと思います。平均の二万三千二百九十八円は、十アール当たりの所得に対しますと二六・七%というふうな数字に相当する額に相なろうかと思います。  なお、県の今日のいろいろな助成制度内容、あるいはまた村が今日農林水産省関係の補助事業でやっております内容等はお手元に記載のとおりであります。このような事業を実行いたしました各地区別の内容等は、御参考にそこに数字を出しておきました。なお、今お手元に回っております写真以外に、その写真の一部についてお手元資料に写真を三葉ほどつけております。一枚目の写真が国の助成事業であり、二枚目は県の助成事業であり、三枚目は村の単独補助事業による事業の写真でございます。  このようなことで、この若者定住のためにという考え方の中で基盤整備を実施し、また債務の援助施策を示したのでございますが、残念なことに、この負債整理援助がいわゆる「公益」に反する、なじまないとして行政訴訟が提起されまして、目下新潟地方裁判所で審理中でございますが、私どもは元利償還に今年度から入りますので、関係農家の窮状を放置することはできないので、当初予算に組み入れて執行するべく今準備中であります。なお、この制度は、六月の村の定例議会で基金の取り崩しと、また農業生産基盤整備条例の別表の一部を改正し、この債務の援助の執行を図るべく、合成案作成中でございます。  以上のようなことで、本村の実情を申し上げたところでございます。山村地域における農業基盤の整備、これは本当に大変なことでございました。しかし、これを実行することによって農家は安住の地を得ることができた、このように私どもは自負をいたしております。債務の援助という問題は容易ならざることでありますけれども、やらなければ村落は崩壊する、こういう考え方で相進めたところであります。  以上、申し上げまして、意見開陳を終わります。(拍手)
  8. 今井勇

    今井委員長 ありがとうございました。  次に、竹光参考人にお願いいたします。
  9. 竹光秀正

    竹光参考人 ただいま御紹介いただきました大分県信連の竹光でございます。  きょうは、重要な金融三法の審議に当たりまして、私、参考人としてお呼びをいただき意見を申し上げる機会をお与えいただきましたことを、心から先生方にお礼を申し上げます。  私は、先ほど申したように大分県で、九州の一角の零細県でございます。大分県の概観を簡単に申し上げますと、大分県は農家戸数が約九万三千戸の純粋な農業地帯で、農業作物としましては、米、畜産、野菜からかんきつ、大体これらの均衡のとれた農業生産がなされておる貧乏県でございます。  このうち特にきょう先生方にお願いを申し上げたいのは、畜産関係で固定化している農家負債整理の問題について、ぜひとも先生方のお力添えと申しますか御協力と申しますか、お願いを申し上げたいと思うわけでございます。  私は信連会長で、金融の問題もありますが、金融に関連して、夜も寝られないような思いをいたしておるのは、私どもの県においては、全国でもそれが多いのですが、基金協会の会長も兼ねておるわけでございます。  それで、きょうは畜産の負債整理というような借金の問題を中心に申し上げてみたいと思いますが、実は大分県の六十年度の予算編成の際に、私ども農業団体の代表が県の負事のところに参りまして強く要請を申し上げた際に調査をいたしました、畜種別の固定化債権の五十九年九月三十日現在の表がございます。これは農業関係全体の固定化債権でございます。貸付金でございません。固定化債権が、小さな大分県で、端数は切りますが、二百二十九億八千万円であります。この大別は、畜産関係が九十五億二千万円であります。かんきつが三十五億七千万円でございます。また、野菜が九億二千万円、その他が五十九億と相なっております。特に、固定化債権の中で最大の二三・四%を占める五十三億八千万円が肉用牛の負債、固定化債権でございます。  御案内のように、九州は、鹿児島県をトップといたしまして宮崎県が全国の三位、熊本が四位、長崎八位、私ども大分が十位でございまして、八万一千頭の和牛肉用牛がおるわけで、九州全体で七十九万七千頭、全国生産の約三分の一が九州でございます。ところが、この和牛の肉用牛におきまして最高の負債を各県とも抱えておって、金融機関としましても、またこれを保証する基金協会としても、どう対応していくべきかということに今大変苦労をいたしておるわけでございます。  先ほど申したように、私が県の金融保証機関である基金協会の会長としまして、三月の私どもの役員会で理事の皆さんに提案いたしましたのは、基金協会の業務方法書第四条ただし書きによる債務保証の理事会特別承認に関する件でございます。  これは詳しく申し上げますと、基金協会の保証する農協の畜産農家等の貸付金に対する保証に限度額がございます。すなわち、農業を営む個人については千五百万円、農業を営む法人については三千万円、上記以外の農協とか市町村共同出資等の肥育団体等に対しては一億五千万円という保証の限度額が一応設けられております。これを超した保証については理事会の特別承認ということになっております。  最近三、四カ月の間に県下の農協から保証を求められた分が四十件であります。これをいろいろ見ますと、どうにもならないというのが十六件でございます。これは取り下げをしていただいて、あと二十四件について検討しましたが、その総額は八億四千万円という膨大なものでございます。しかも、今回保証の申し入れの八億四千万円の前には、いずれも農林漁業金融公庫資金あるいは近代化資金、こういういわゆる制度資金を精いっぱい借りられるだけ借りて、なおかつ農協等にたまっているえさ代等を一般証書貸付金に切りかえて、それらが主に保証を求められている点でございます。  金額が非常に大きいのと、代位弁済というか固定化する可能性が非常に強いということで、私どもは、非常勤理事の手助けをかりて、職員とともに個々の農家に当たって実態調査をしてみますと、非常に気の毒なことには、真剣に和牛生産で五十頭なり六十頭なり百頭なりを飼っておりますけれども、残念ながら収支面では雪だるま的に大きな赤字を抱えてどうにもならぬ状態でございます。この厳しい実態、しかも、これはほとんどまじめな、四、五十頭以上、百頭程度の肉用牛を飼って生活しておる真剣な農家でございます。  もちろん、この農家の土地、建物、財産は、全部公庫資金や近代化資金借り入れの際に担保設定をいたしております。また、保証人も徴求しておりますが、畜産農家がこれだけの借金を持ちますと、第三者は、親族といえども保証人にはなりません。したがって、牛を飼っている者同士が保証し合うというのが実情であります。このような状態にあって、しかも、えさ代等を一般資金に切りかえた者については何も保証はないわけであります。まさに無担保無保証に等しいのでございます。それを基金協会が保証を拒否すれば、農協もこの農家に貸し付けをすることはできません。そうなると、この農家はまさに破産に等しい整理をしなければならぬというような大変な事態になるわけでございます。  私どもはこのような事態に対応して、金融機関としてどうあるべきか、農家を守りながら農家を育てていくという面から見て、これだけの、今申し上げました二十四件、八億七千万の農家の保証を求められております残高についてでございますが、こういう点から見ますと、もし保証拒否すれば農家がつぶれる、保証をすればやがては基金協会の代位弁済になる。この仕組みは先生方も十分御承知と思いますが、基金協会は農業信用保険協会に再度保証を求めております。そして代位弁済の際は、七〇%は保険金で賄えますが、三〇%は県の基金協会がこれを補てんしなければなりません。  ところが、私の大分の例を申し上げますと、基金協会の基金残高は約十七億であります。ところが、今日までの各種資金に対する代位弁済額が約七億です。したがってあと十億しか保証残高はございません。もし今回この八億七千万を保証して、これが一年後、二年後に固定化、代位弁済になってくると、基金はなくなってしまうというような状況下にあるわけでございます。  さような関係からしまして、特にお願いをいたしたいのは、今回の金融三法等、あるいは先般の畜産物価格決定等によって、政府の温かいいろいろな面は感謝にたえませんけれども、この対象にならない、既に公庫資金も近代化資金も、制度資金借りられるだけでは精いっぱい借りて、さらに一般資金をえさ代と運転資金として農協から借りている農家を見殺しにするのか、どうやってこれを救済するのかという道しかないわけでございます。私どもは、何とかこれらの農家に、気長く最低の利息で、非常に長い期間の低利負債整理資金を興していただいて、何とかこういう大型農家、真剣に畜産問題に取り組んで四十頭、五十頭、一家を挙げて全財産を担保にして取り組んでいるこの肉用牛生産農家を見殺しにしないようにしていただきたい。そのためには長期低利の方法を考えていただきたい。  それとともに、これまでの指導におきましては技術面に走って、農家経営管理、資金管理がおざなりになっておる。その点は私ども系統金融も大きく反省しなければなりません。私の方の県のある開拓農協等におきましては、完全なる経営管理と資金管理をして、牛を肥育して売った代金も全部プールしまして、その中から借入金の元利の償還、えさ代の返済に充て、農家の生活資金は最小限の資金しか渡さないで、売上金を返済金にプールしておる。これくらい厳しい経営管理、資金管理をしておる農家においては借金の累積が防がれております。さような意味から、この際そういう方法もお願いしたい。  ということは、例えば公庫資金融資についての審査委員会とかいうような、まあ県庁の方、公庫の方等も入って検討されておりますが、ただ貸すときに検討しただけで、後の管理は一切タッチしてない。あとは固定化しても何にも手を差し伸べてくれない。これが全部これを取り扱う金融機関の後始末になっておる。さような点も十分今後御理解をいただかなければならぬ。  もう一点は、先ほど申し上げました、一生懸命やって畜産経営に専念する農家を助けていくためには、やはり基金協会がこれを保証し、その分を保険協会に再保険してでもして、リスク負担を軽くしながらやらざるを得ぬと思いますけれども、大分県の例を先ほど申し上げましたように、基金協会も保険協会も現在の積立基金は極めて零細であります。今のように肉用牛の生産農家全国的に行き詰まり、手を上げる危機的な状況に来ているときにおいては、基金協会も保険協会も余りにも基金が零細である。  今や公庫資金も近代化資金融資の対象にならない、多くの借入金と家族を抱えている肉用牛農家を殺すのか、救うのか、この岐路に立っている現在におきまして、私どもも非常に苦慮しておる、このことをひとつ御理解いただきまして、先生方の温かいお力添えをお願いいたしまして、時間が来ましたので終わらせていただきます。  よろしくお願いします。(拍手)
  10. 今井勇

    今井委員長 ありがとうございました。  次に、斎藤参考人にお願いいたします。
  11. 斎藤仁

    斎藤参考人 御紹介いただきました斎藤でございます。  農業金融三法の改正法律案と関連改正事項につきまして、気のつきましたことを、いささか抽象的になりますが申し上げて、御参考に供したいと思います。もっとも、私は林業と漁業は全く不案内でございますので、農業金融に関係した部分だけを申し上げることでお許しをいただきたいと思います。  今日、農業に対する投資は、ひところの高度経済成長期とすっかり変わりまして、大変に沈滞していると言ってよい状況にあることは周知のところでございます。このため、金融の面では、かつて高度経済成長期において農業金融の大きな特徴でありました積極的な追加生産資金、いわゆる前向きの資金というふうに最近よく言われますが、その積極的な追加生産資金融資の伸びが、系統金融制度金融ともに顕著に小さくなってまいりました。融資機関が懸命に努力をしておりまして、そのことは明らかに認められるところでございますが、それにもかかわらずそういう状況であります。  御承知のように、系統金融機関、農協の貯貸率はかつての五〇%台から今日三〇%台に、貯金と貸出金の割合がそういうことになっている次第でございます。そして、これにかわって新しく伸びてきておりますのが負債整理関係の資金、すなわち、いわゆる後ろ向きの資金、これが伸びてきておりまして、特に畜産部門にこれが顕著であります。これもただいまるる御説明があったとおりだと思います。  こういう状況でございますので、農業に対する金融がなかなか伸びていないという状況でありますが、しかしながら、農業の生産の再編成と生産性の向上というのは、これは今日むしろ大いに必要である、そういうことが言えると思います。こういうわけで、農業に対する政策的誘導の必要というのは今日ますます高まっているというふうに考えられます。ところが、他方で、補助金から融資へとよく言われることですが、主として今日の財政事情に基づく政策手段の転換の要請があり、こうして今日のような政策融資制度金融の整理、拡充が行われることになった、およそこのような筋で今日の改正を考えている次第でございます。  そこで、新しい改正法案ないし構想について、多少問題を分けて述べてみたいと思います。  まず第一点ですが、今度の改正で、資金は従来に比べて農業に流れやすくなるかどうかという点が問題だろうと思います。  実は説明資料としていただきました資料を拝見いたしますというと、この改正点は、これだけで十分に融資実態がどういうふうに変わるのかがわかるようなものもありますが、しかし、政令とか通達とかあるいは業務方法書とか、あるいは各都道府県それぞれの方針とかが今後どういう内容を持ってくるか、どういう内容のものになっていくかによって具体的に決まってくる面があるようで、全体として非常に明確な判断を下すわけにはまいりません。  しかし、それでも次のようなことは言えるのではなかろうかと思います。つまり、公庫資金の三分五厘資金を基本的に維持をしたということ、それから、無利子の改良資金を拡充したということを含めて利子率で多少の引き下げが行われた面があるということ、償還期間、据置期間の延長が行われたということ、貸付限度額の引き上げがある部分でなされたということ等の点で、全体として条件が多少とも緩和されたこと、また、次のような新しい措置、つまり改良資金の技術導入資金が拡充されたこと、近代化資金あるいは公庫資金においてもいろいろと新しい措置あるいはメニューが用意されたこと、それから、さらに改良資金資金管理の全国調整がなされるような措置が講ぜられたこと等々の諸点で、基本的には今回の措置を評価することができると思います。  もっとも、先ほど新しい措置、新しいメニューというふうに申し上げましたが、その中で、例えば改良資金で無利子の農地流動化措置が資金的に用意をされたわけですが、これがさしあたり初年度で全国五、六百町歩というふうに大変小面積であることの意味が、私は大分いろいろお聞きしたのですが、どうもよくわからないという点がまだございまして、多分試みでこういうことをやるということだろうと思いますが、そういう試みならば次年度以降を待ちたいというふうに思います。  そういった点、あるいは公庫の四分五厘資金をすべてなくしたということ、特に大事な総合資金の据置期間についての四分五厘、これをなくしたということ等々、遺憾な点がございますが、今回の改正措置は、以上の点に関する限り、つまり融資条件をくつろげ、あるいは対象領域を多少とも広げたという点に関する限り、農業に従来よりも資金が流れやすくする効果を、具体的に言いますというと、融資機関は融通しやすく、農家は受けやすくなるという、そういう効果を持ち得ると言うことができると思うわけでございます。  しかし、第二番目として、一口に農業といいましても、どのような場面に資金を流すのかという点、これを同時に問題にしなければなりません。この点に関しましてはいろいろとございますが、新しくできました措置の中で、二点ほど特に注目をして申し上げておきたいと思います。  一つは、総合施設資金の借入資格を多少緩めたという点でございます。一挙に自立経営にならなくても、その後の育成によって自立経営になれるような規模に、具体的には、自立経営を十割といたしますとその七割程度の達成ということのようでございますが、そういう中途段階の規模になることが見込まれる者にも借り入れの道を開いたという点であります。  総合施設資金ないしはそれを中心とする総合資金は、御承知のように最優等生に対する点の融資、面ではなくて点の融資だというふうに言われ、自立経営を育成することもさることながら、もともと自立経営であるような農家に対する貸し付けも結構多かったようであります。しかし、今日の農業の実情を見ますと、中堅層も厳しい状況の中でよくその経営を維持しているという事実があります。したがって、最優等生だけではなく、すそ野を広げて中堅層にも有利な資金を得る道を開くということは、日本農業の堅実で安定的な発展のために意味のあることであるというふうに考えられます。  もっとも、現行の制度におきましても、昭和五十一年度以降段階的な融資の道が講じられておりますが、しかしその実績は余りはかばかしくないようであります。これは恐らくその資金の仕組み方が本格的でなかったためと思われますが、今回は法律まで改正しようとすることであります。実績が大いに上がることが期待されますし、またそのように運用されるように望みたいと思います。  それからもう一つは、近代化資金地域農業総合整備資金をつくった点であります。これは従来の融資制度、特に昭和五十六年度発足の地域農業再編整備資金発展させようとするものであるようですが、これは、高い生産性を持った農業者あるいは農業者集団というものは、農村社会の中に安定した位置を占めながら出てこないことには定着をしないというふうに私は考えます。     〔委員長退席、田名部委員長代理着席〕 既設の農村環境整備のための資金がいろいろございますが、そういったもの、それからその他のさまざまの施策とともに農村社会の活性化を促す措置の一つとして評価をし、今後一層拡充されるよう望みたいと思います。  以上申し上げましたようなことで今回の改正を評価したいと思うものですが、しかし、ここでどうしても問題が残ってまいります。  それは、改めて言うまでもない基本的なことでありますが、今日の農業は、農産物の価格あるいは生産資材の価格、地価、労働力の状況等いずれの面から見ても、一般的には金融にとって安全確実な貸し付けの対象である状態から遠いところにあります。日本の農業はもともとそうだということは言うまでもありませんが、特に今日そうであり、それから、長期の貸し出しに対応する長期の展望ということになりますとますますそうであります。大変厳しい状況にあるわけでございます。  今回の改正のように、貸し出しの方の、融資の方の条件をくつろげ対象領域を広げれば、先ほど申しましたように確かにそれなりの効果を持ち得ますが、その点で評価し得るわけですけれども、しかし、そのせっかくのことが十分に生きるような農業の実体経済の側の条件を整えることがやはり必要だということであります。  多少抽象的なことになりますが、一般に金融というものは経済実体の動きの早さを促進をする、あるいは多少これを引きとどめるということができるだけで、その動きの方向を根本から変えたりあるいは新しくつくり出したりということができる、そういう力を持つものではないというふうに思います。したがいまして、金融を政策手段とするということは、それをどのようによく仕組んだといたしましても、やはりそれなりの効果、つまり政策手段としての一定の限界内の効果しか持たないということが今日の状況の中ではやはり問題として言われざるを得ない点だろうと思います。  今申し上げましたことは、基本的な、その点でかなり抽象的な点でございますが、そのほかに、今後に残された問題として気のついた問題を三点ほど、いずれもこれは事新しく申し上げるまでもない問題でございますが、ただいままでの参考人お三方からもるる述べられたことでございますが、述べておきたいと思います。  第一点は、これは公庫資金と近代化資金とのいわゆる分野調整の問題であります。これは大変古くからの問題でございまして、時々分野調整を新しくやるというようなことが――これはいずれも政策的に人為的につくられた資金制度でございますので、どうしても実態との間にそご、ギャップが生じて、必ずある一定の時期にやらざるを得ないわけですけれども、公庫のカバーする個人向けの資金が拡充されればされるほどこの問題が大きくなってまいります。これは今後具体的に詰めらるべき問題であるというふうに考えます。それが第一点でございます。  それから第二点としましては、これは逆に、公庫資金と近代化資金ないし系統資金の協調の問題であります。これは総合資金についてでありますが、総合資金は御承知のように公庫の総合施設資金と近代化資金、それから系統資金のセットの融資ということがうたわれております。ところが、それにもかかわらず、実際にはほとんどの場合総合施設資金の比重が極めて高く、このセットという趣旨が必ずしもうまく実現をしていないというふうに言われております。この点は単に農協にとっての問題であるというにとどまらず、融資を受けた農家にとって困る問題でありますので、融資決定の際に十分に公庫と系統機関と協議をしてやるべきであるというふうに考えます。  それから第三点としましては、これは冒頭にも触れましたし、先ほど来からも申されてきておることでございますが、過重負債の処理の問題でございます。この問題は今日極めて重要な問題でありますが、特に畜産農家に対しましてはいわゆる畜特資金などの措置がとられ、系統もそれなりの措置を懸命に講じているように思います。今回の改正の中でこれは取り上げられておりませんが、しかし、今後早急に本格的に取り上げるべき問題であるというふうに考えます。  しかし、その際、負債農家は結局切り捨てた方がいいといったような方向で当たるのではなく、生きる農家を生かしていく方向で、相当に長期間の資金の手当てを考えながら経営の指導をしていくことが必要ではないかと思います。単なる負債整理、整理をしてそれでおしまいということではなくて、生かしていく、そういう負債の面倒の見方ということが必要ではなかろうかと思います。  そしてまた、この負債問題というのは、単に当面大変厳しい問題になっております負債の問題の処理というにとどまらず、これからますます融資という方式を農業政策の重要な手段にしていくといたしますれば、その政策融資が過重な負債に将来転化する可能性、これはもちろん必ずなるというふうには言い切れませんし、そうならないように努力がなされると思いますが、そういう今日の政策融資が、これが過重な負債に転化する可能性も同時に増大するというふうに考えられます。したがいまして、融資政策のいわば裏側の政策として負債対策というものをあらかじめ真剣に考えておく必要があるのではなかろうかというふうに考えられます。  以上、大変抽象的でございますが、申し上げます。(拍手)
  12. 田名部匡省

    ○田名部委員長代理 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  13. 田名部匡省

    ○田名部委員長代理 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。衛藤征士郎君。
  14. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 本日は、参考人の皆様方におかれましては、金融三法の審議に当たりまして貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。  時間が限られておりますので、早速参考人の皆様方に御意見を拝聴いたしたいと思いますが、時間は二十分という極めて短時間でありますので、全参考人に御意見をお伺いすることができないかもしれませんが、あらかじめお許しをいただきたいと思います。  まず、岡本参考人にお尋ねをいたしますが、岡本参考人から北海道農業経済動向につきまして詳しく、またきめ細かに御説明がございました。説明をいただいておりますと、北海道農家の皆さん方の御苦労が身にしみるようにわかるわけであります。  北信連によるところの報告によりますと、酪農あるいは畑作農家あるいは水田農家負債が極めて大きいということでございまして、特に生産額の一・五倍というような形で負債があるというような御指摘もございました。  お尋ねしたいのでありますが、このような負債でございますが、これには営農設計あるいは生活設計のミスリードとかそういうものもあるのではないかという感じがいたしますし、さらには、負債内容についてでございますが、家の普請でありますとか生活用品の購入、あるいは自動車を買うとか、そういうことも考えられるかと思うのでございますが、その辺のところにつきましていま少し詳しく御説明をいただければと思うわけでございます。  そして、御提案のありました長期低利融資につきまして、五十年で二分の資金をというような訴えがあったわけでございますが、こういった問題につきまして、北海道はもちろんのこと、全国の組織として、あるいは道あるいは国に対しましてこういうアピールについての具体的な取り組みを過去どのようにしてきたのかについてもお伺いをしてみたいと思います。
  15. 岡本栄太郎

    岡本参考人 衛藤先生からただいま御質問をいただいたわけでありますが、先ほども申し上げましたように、私ども北海道農業者といたしましては、今の一兆五千億に達する累積負債は、経営の上で非常に大きな負担になっております。したがいまして、農民組織もこれ以上の負債をふやさないような対策をしなければならないという、いわばぎりぎりの線まで来てしまったというふうに我々は理解をしておるわけであります。  この負債を担った理由はいろいろありますけれども、先ほども申し上げましたように、近代化施設導入あるいは機械化、それから、それに伴っての農用地拡大であるとか土地改良の負担であるとか、そういうものもございます。もう一つ大きな要因になっておりますのは、冷災害の問題もあります。それから、資材、飼料等の値上がりに比して我々がつくる農畜産物価格の上昇が低い、いわば据え置き同然に抑えられてきた、こういうものもやはり中身としてございます。それから、家族に病人が出たとかあるいは今御指摘のように家も直したとか建てたとかというものも原因のうちには入っておると思います。  しかし、それが主流をなしてこれだけの負債になったということでは、私どもの調査の中ではございません。したがって、大体八割以上は営農にかかわって、経営にかかわって累積された負債だということだけは、これは間違いのない事実でございます。  それから、五十年、二分の関係でありますけれども、これは十年以上前から、特に行政的に、そして系統農協も一緒になって構造政策に取り組んで、いろいろな施設や何かがつくられてまいりました。この段階で私どもは、農協のプロパーであるとか高い近代化資金だけでそれらの施設を運営し、そしてコストを安くできるかどうかという内部的な論議もしました。しかし、いろいろ検討してみますと、逆にそういう施設あるいは機械化がコストを押し上げる、規模拡大がコストを押し上げる要因になっている点もたくさんあったわけであります。  したがって、これらの対策をするためにはやはり長期で低利資金制度創設しなければ、今までの機械化、近代化施設を維持し営農を続けることができない、こういう考え方に立って、実は五十年、二分の資金制度創設を今から十年余り前から訴えてまいりました。しかし、どこへ行っても笑われてまいりました。君たち、そんなこと言ったって今の状況でできるか、それは君たちの願望かもしれないけれども、それは事実としてできないというふうに言われてまいりました。農協系統の人たちにも笑われました。  しかし、私ども、先ほど申し上げましたように、今のような状況になってみればなおさら金融制度の大切さ、そしてその中身についてもっともっと検討をしていただいて、これは後ろ向きの資金だと言われない五十年、二分の資金創設をぜひ実現させたいし、御理解をいただいて御協力もいただきたい、このように考えております。
  16. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 長期低利資金融資につきまして今御説明がありましたけれども、各参考人の皆さん方の御意見も尽きるところはそこでありまして、皆様方の御要望に沿うように私どもとしましては精いっぱいの努力をしなければならない、このように考えておるところであります。  須佐参考人にお尋ねをいたしますが、須佐参考人土地改良区の理事長であられまして、さらに入広瀬村の村長さんをされておるということでございます。  先ほどすばらしい村づくりにつきましてのプロフィールの御説明があったわけでございますが、感心して聞き入りました。公債費率が一〇・一%ですか、経常収支比率が六七・五%とか、このようにたしか御説明がありましたが、すばらしい村であると思うわけでございます。今時分経常収支比率が六〇%台で公債費率一〇%そこそこという町村はまず珍しいわけでございまして、ただただ感じ入ったわけでございます。  さて、お話がありましたいわゆる農村工業導入地域をつくったり、コミュニティーセンターをつくったり、あるいは役場ももう既にできたんでございましょうが、いろいろと環境整備ができている姿がよくわかるのでございます。承りますが、全体予算に占めます農林予算の割合は何%ぐらいになっておられるんでございましょうか。  また、先ほど若者Uターンが進んでおる、具体的には二十四名の若者Uターンをしてきたという話もありましたけれども、御案内のとおりこれからだんだん高齢化社会になっていくわけであります。いろいろのすばらしい負債整理援助施策が行われておりましたり、農業構造改善につきまして融資の補助残を二分の一村で負担をしたり、土地改良区の負担を軽くしたり、すばらしい施策が次々と行われておりますが、先ほど御説明のとおり、十アール当たり償還金が八千八百円から五万五千円ぐらいのところもあるというようなことでありまして、これから百九十六ヘクタールの圃場整備をさらに全部を完了するというような意気込みでございますが、これは十年据え置きの十五年償還でございますか、この資金は大変なものがあるわけでございます。  私がちょっと懸念いたしますのは、いわゆる環境整備、そして生産基盤の整備、これもどんどん整っておるわけでございますが、農家一戸一戸のいわゆる農家所得、新潟県の他の町村に比較いたしまして農家所得そのものは高いのかどうか、お尋ねをいたしたいわけであります。受け皿は大変立派な受け皿がどんどんできておるのでございまして、感心しておるわけですが、ちょっと懸念するのですが、この一戸の農家所得とあわせて農業所得、これについてお伺いしておきたいと思います。  また、高齢化社会になるにつれまして、若者Uターンはもちろんですが、人口が流出しない、過疎にならないのはもちろんでございましょうが、このようなすばらしい村でございますから、将来、高齢者が、退職された方が、退職後この入広瀬村に、ふるさとに帰ってくる、こういうようなことが見込まれるのかどうか、お尋ねをしておきたいと思います。  といいますのは、これから高齢化社会になりますので、農村山村、漁村というのはいやが応でも高齢者を迎え入れるための二十一世紀に向けての受け皿づくりをしなければならないことはよくわかっております。それはよくわかっておるのでございますが、これから二十一世紀にかかる十五年間にへたばっちゃったのではどうしようもないわけでありまして、北海道のお話とかあるいは大分のお話を聞きますと、十五年の間にへたばるのではないかな、そういう懸念があるわけです。いや、我が村はへたばりませんよというような御意見をいただければと思うわけでございます。いかがでございましょう。
  17. 須佐昭三

    須佐参考人 お答えをいたします。  まず、いろいろな国の制度を求めまして、各種の事業を実行させていただいてまいりました。先ほども申し上げましたとおり、若者就業センターあるいはまた地域の働く場の整備、こういうものを通じてUターンが進んでおりますことは事実でございます。しかし、高校を終わりますと、やはり一たんは村を離れるという傾向はとどまっておりません。いかに安定企業があるといっても、若者は一たんは村を出る、そしてまたUターンをする、こういうふうな傾向が続いておるわけでございます。おかげさまで各種の施策によりましてそうした事業が推進されていることについては、心から敬意を表しているわけでございますし、御礼を申し上げたいと思うわけでございます。  さて、農林水産業費でございますが、昭和五十九年度の村の農林水産関係の予算でございますけれども、資料にもございますとおり、国の補助事業等については、農村基盤整備あるいは農業集落排水事業等を通じて約四億五千万ほど事業を実行いたしております。農林水産業費自体の予算全体では、人件費等を加えまして約六億程度になっております。一般会計財政規模は十七億ほどでございますので、それに占めます比率は、村の予算全体からしますと非常に高い規模になっておるということで御理解をいただきたいと思います。  それから、いろいろ御指摘がございましたが、農家の所得でございますけれども、こうした山村でございますので、これは私の村の行政の基本計画でございますけれども、この中にも、所得の推移というようなものについて、県下と入広瀬村における状況とを比較していろいろ検討したデータもございます。県下の中における我が入広瀬村ということになりますと、県下を一〇〇としますとおおむね八五から八七程度であるというようなことで、まだまだ県下の標準には至っておりません。ただいま精いっぱいいろいろな生産性の向上を図りながら所得の向上を目指して施策展開いたしておるわけでございます。  それから、将来に向かって夢があるか、こう言われれば、私は、この入広瀬地域というものの環境からいって、いろいろな若者の働く場をつくり、あるいはまたこれからの地域開発を推進することによって、地域の将来に必ずや安心して若い者たちが住める、あるいはまたお年寄りの皆さんも安住の地として入広瀬村にいていただけるという確信を持っていろいろな政策を進めておるところでございます。どうぞ御理解をいただきたいと存じます。
  18. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 竹光参考人にお伺いいたしますが、先ほど固定化債権につきましてのお話がありました。極めてみじめな実態でございまして、本当に心配をしておる一人でございますが、例えば畜産農家につきまして、二十四件で八億四千万というような負債を抱えておるということでありまして、これをどのように救済するか、保証限度額をはるかに超えて保証してやらなければ融資ができないというようなお話もありました。  私が心配しますのは、例えば四十件を超す申請があった、十六件は取り下げをした、二十四件を取り上げていく方針ではありますが、先ほどおっしゃいましたように、第三者の保証は全くない、お互いに保証し合っておるということでありますから、一戸の肥育農家が破産しますと、連鎖倒産のように、連鎖してずっといくのじゃないかということが懸念されるわけであります。そのためのいわゆる緊急避難的な手だてはできておるのかどうか、来年、再来年、長期的なことはいざ知らず、その辺のことをお尋ねをいたしたいと思うわけです。  なおかつ、先ほど御指摘もありましたけれども、経営管理とか農家資金管理、生活設計、営農設計、こういうことについての単協の職員の研修といいますか、そういうことについて十分な研修が行われているのかどうかもお尋ねいたしたいと思います。
  19. 竹光秀正

    竹光参考人 ただいまの衛藤先生の御質疑にお答えいたします。  私が申し上げましたように、保証申請について十六件を取り下げていただきましたが、この農家はいずれも膨大な借入金を持ち、再起不能とは申し上げませんが、非常に厳しい、いわば病人なら瀕死の患者じゃないかというような状態にあります。したがいまして、私どもはこれをそのまま放任するということでなくして、そういう農家はほとんどが公庫資金、近代化資金の借入者でございますから、ただこれ以上の一般資金の保証を打ち切るというだけにはまいらずに、やはり公庫資金、近代化資金の膨大な債務者ですから、これらについてはどう今後の処理をするか、末端の融資機関である農協と基金協会、また、私ども信連、それに県、公庫と一緒になって、この事後処理なり後始末を考えていかなければいかぬのじゃないか。  かつての場合に、その一族の親戚の親族会議を持って、共同でこの処理あるいは財産の処分とかいうようなことで対応した例もございますし、私どもが保証を却下するというのはよほどの人であるし大変なことでございますが、今申し上げたような措置でできる限りの事後処理をしていきたいというように考えております。  それから、やはり私どもも金融機関として大きく反省せねばいかぬのは、金を貸してさえおけばまあまあいくだろうという考え方でおったが、農協自身が、業務の忙しい間に、農家個々の畜産経営、肉牛肥育農家経営管理まで入り切れないで、これはある場合においては、例えば大きな借金を抱えながら冠婚葬祭を派手にしたり家を新築したりというような面を見て、あれでいいのかという感じを持っても、個人の面までプライバシーの問題だし立ち入れないというような状況で、そういう農家が多くの負債をだんだん積み上げていったという例も、全部とは申しませんが、そういうのもないとは申しません。  しかし、やはりこれからは、さっき私もちょっと申し上げましたが、大分県の開拓農協では全部の売上金を開拓農協で管理して、そして例えば乳雄であろうと和牛の子牛であろうと、その購入代金も開拓で見、そしてそれに必要なえさを与えて、そのトータルから差し引いて、例えば乳雄肥育の場合に、最終販売価格の例を見ると、四十六万九千円で売られているものについては三十三万五千円の今言った雄の購入代金とえさ代というものしか見ないで、あとはプールして返済代金に充てておるというような非常に厳しい、もう農家の生活を一貫して組合が管理して、そして累積赤字なりの償還に充ててつまずきを未然に防ぐ、こういう状態にいけば非常にいいと思うのですが、率直に申し上げまして、大分県でも県下五十八農協でそういう状況にいっている農協が非常に少ない。  ただ、衛藤さんも御承知と思いますが、安心院町農協の例を申し上げますと、それは資金管理までいっておりませんが、県の三分五厘の県単低利資金に対しまして、農協が二%を出して農家に一・五の資金でやらせておる。そのかわり、今言った素牛の購入からでき上がった牛の販売からえさまで一切農協が責任を持って、余剰が出てこれらの負債返済できるような措置を講じております。  私どもは、先ほど申したように、これから農協の指導部職員を、ただいい肉質の牛をつくるという考え方よりか、経営を安定して赤字を出さぬで生活でき、幾らか利益が出るような経営コンサルタント、畜産コンサルタントのできる人間を中央会あたりと一緒になってこれから養成して、金を貸しただけでなくて、その後を管理するという形に持ってこなければならぬというふうに思って、中央会と協議をいたしております。
  20. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 時間が参りましたからこれで終わりますが、将来金融の自由化が進むわけでありますから、ひとつ十分な職員の研修にお取り組みをいただきたいと思います。  これで終わります。     〔田名部委員長代理退席、委員長着席〕
  21. 今井勇

    今井委員長 次に、田中恒利君。
  22. 田中恒利

    田中(恒)委員 参考人の皆さん、大変貴重な御意見ありがとうございます。で、衛藤先生の方から順番で質問させていただきます。  非常に大きな問題でありますけれども、今度の三法の改正点のいいところ、問題になるところ、全体の残された課題、そんなものを概括的に、短い時間でしたがありがとうございました。私も同感の点が多いわけであります。  御指摘になったように、金融政策が果たす役割というものには一定の限度があると思います。確かに三法の内容の中にはいろいろいい問題もあるわけでありますけれども、現在の経済というか、金融を囲んでおる全体の構造の変化、特に金融の自由化、こういう大きな土台の動揺の中で、枠の拡大、償還期限をちょっぴり延ばす、こんなことをやっておりますが、御指摘にもなったように、枠はある程度伸びるというかあるいは現状維持しておるわけですけれども、実際の需要はどんどん減ってきておる、こういう状況が現実に今ある。ざっと言えば、金はだぶついておるが借り手はだんだん少なくなっておる、これが今の日本経済の中の農林金融実態だと思うのですね。これから枠をこんなふうにふやしていっても、さてどれだけの需要が出てくるのか、非常に問題は大きいと思います。  中でも、自由化への方向がいろいろ現実に、預金金利の弾力化の問題であるとか貸し出しについてすらそういう方向農協の中にも出始めてきておる、こういう状況の中で本法が果たして内容が機能し得るのかどうか、そういうことについて私は大変疑問を実は持っておる一人でありますが、そういうことについての御意見一つ。  それから、御意見の中に公庫資金と系統資金との分野調整、そのほか金融相互間の調整の必要という問題が指摘をされました。調整金融というか、そういうものが制度の中にも総合資金制度なんかであるわけでありますが、この問題は、先ほど申し上げました自由化という大きなバックグラウンドの中で、現在の農林金融の機関あるいは団体、こういうものが今の形でいいのかどうか。例えば公庫というものが制度金融の柱としてある。系統金融も信連あり中金あり、単協へいきますとありますね。単協も下でだんだん大きくなってきております。  こういう意味で、団体あるいは政府機関を含めて農林金融機関というものの組織なり機能なりのあり方が改めて今日の段階では大きな問題ではなかろうか、単に金融制度間の調整で話がつく問題ではないんじゃないか、こんな気が私はするのでありますが、この点についての先生の御意見を承りたいと思います。
  23. 斎藤仁

    斎藤参考人 大変大きい問題でございまして、にわかにきちんとしたお答えができるかどうかわかりません。  第一点の自由化の問題につきましては、直接に影響をひどく受けると思われますのは組合金融、系統金融の場面だと思います。系統金融は、御承知のようにただいま貯貸率、貯金に対する貸出金の割合がどんどん下がってまいりまして、何とかして持ち直そうと思って一生懸命やっておるようでありますが、なかなかもってそうは実現をしていない、こういう状況のところに自由化が事実上既に進んできているというふうに思うわけです。  これ以上進みますと、預金獲得の競争というのがますます激しくなってまいりまして、恐らく預貯金の利子が上がらざるを得ない。同時に今度は、そういう点で資金のコストが上がります。ところが、他方で貸し出しの方は、今日どこでも今おっしゃいましたように資金がだぶついておりまして貸し出しが伸びない。そこで一生懸命貸し出しをしようとしまして、例えば大都市銀行はかつての地方銀行のところに下がり、地方銀行はかつての相互銀行のところに下がり、どんどん下の方に下がってまいりまして、農協が基盤としておりますところの農村地帯あるいは都市化した農村、そういうところもまた競争の場面に非常になってきている状態だと思います。  そういう点で、地域金融機関化といったようなことが、都市銀行まで含めての今日のスローガンになっているようなそういう状況で、これは競争が農協を含めて大変激化をするということを意味しているのだと思います。そこからいたしますと、預金の金利は上がり貸し出しの金利は下がるということで、今日でも信用事業の収支が思わしくございませんが、ますますマージンが落ちてくるというようなことになってきて、信用事業に依存をしておる系統金融の全体の収支が悪くなってくるという状況になるかと思います。  そこで、政策金融についての影響ですけれども、これは恐らく直接の影響というよりはむしろ間接の影響ということになろうかと思いますが、一つは、農協資金を原資といたしております制度金融、近代化資金とかあるいは天災資金とか、それからそのほかいろいろ県単位の資金がございますが、こういう県単の資金が大方の系統資金を原資としてこれに利子補給なり債務保証、損失補償なりをつけて流しているという場合ですが、そのコストが上がってまいりますと、利子補給をよほどたくさん受けませんと今度はきちんとした政策金融ができない、政策の意図が通らないといったようなことに、そういう方向に行くかと思います。  それからもう一つは、公庫の方ですが、これも私はっきりとした計算をして申し上げているわけではなくて、ざっとした感じで申し上げるのであるいは足らない面もあるかと思いますけれども、方法といたしましては、公庫の原資というのは今日は郵便貯金が原資の主たるものでございまして、そこからこれらの補給金の整理縮減といったような問題が持ち上がってきたのだと思いますけれども、その郵便貯金のコストというものが、やはり今までのところ郵便貯金の金利問題というのは大変やかましい問題で、これを下げようというような力、そういう世論がありますけれども、郵便貯金が今度はむしろ競争関係を通じて利子が維持される、あるいは上がってくるといったようなこともないわけではないというふうに思います。そういたしますと、公庫の原資というものが、ただいま七分何ほかと思いますけれども、こういうものが依然としてそうである、あるいはより高くなるというようなことになりますと、公庫のそういう原資問題あるいは補給金問題というものがもう一度大きくなってくるといったような可能性もあるかと思います。  そういう点で、金融の自由化というのは、これは恐らくもはや引き返せない道だといったようなことを言う人もおりますし、私もある程度そうだと思いますけれども、系統金融、政策金融いずれにとっても厳しい状況を意味するというふうに私は考えております。その点が第一点でございます。  それから第二点といたしまして、これも大変大きな問題で、ここでにわかにお答えできるような問題ではございませんけれども、先ほど申し上げましたのは、公庫資金農協資金を原資といたします近代化資金あるいは系統資金との総合資金における協調の問題ですが、段階そのものをどうするのかというお話でございまして、これも大変難しいことでございます。といいますのは、系統機関での三段階制というもののちょうど真ん中のところの、きょうは信連の会長さんもこの座にいらっしゃいますが、信連によりましていろいろとバラエティーが非常にたくさん出てまいりまして、一口に信連と言えないような、そういう状況が、資金の吸収それから調達、運用の場面で出てまいりました。そういう点で何とも一口に言えませんけれども、信連の機能を、地方の金融機関として、元締めとして大変重要でございますが、そういう機能をどうするかということが恐らくこれから先問題になってくるのではなかろうかというふうに思います。  それと、単協の合併などもその金融の自由化に絡めて今大変進められているところでございますけれども、こういうことで、協同組合なるものの本来の姿と合併がもたらすところの機能のプラス画と、いずれを重しとするか、その調和をどうするか、そういう問題がやはりこれから大きな問題になってくるのではなかろうかと思います。  公庫と系統金融、そういう団体間の関係ということにつきましては、これはちょっと私にわかに答えるものを持っておりませんので、御勘弁をいただきたいと思います。
  24. 田中恒利

    田中(恒)委員 時間がありませんから、あとの参考人に一括して御質問申し上げますので、あと私の時間は七、八分ですが、大変御苦労でございますがその範囲でお答えいただきたいと思います。  北海道岡本参考人にお尋ねいたしますが、一つは二分、五十年について、これは北海道農民連盟が大変長い間言われておるわけでありますが、これの根拠というか、なかなか難しいのだと思いますけれども、どういうことでこれが打ち出されてきたのか。まあ理由は今るるお話しいただいたわけでありますけれども、二分、五十年についての何か一つの理論というか、理論というのはちょっとおこがましいわけですが、根拠になっておるものは何か、このことをひとつお聞かせください。  それから須佐理事長さん。私どもも、地域農政というものがこれからの農政の中で非常に大切だと思っております。従来主張してきたところでありますが、その面について、最も厳しい山村で具体的に実践をしていらっしゃるわけでありますが、その中で、きょうは金融のことですから金融に関するお話があったのだろうと思います。  恐らく水田が中心なんだろうと思いますが、基盤整備をやって、後何を植えつけていくのか、米プラスどういう形の複合で農業経営をどう持っていくのか、この方針が一つ。  それから、相当長い歴史がおありのようでありますが、今お話をお聞きすると、それでもなお現実に過疎は進んでおるし、若者はなかなか完全に定着し切れていないということでありますが、若者が村に残っておる状態が、若者がますます減っておるのかとまってきたのか、多少ふえかかってきたのか。特に、御承知のように嫁取りの問題が非常に厄介なというか大変な問題になっておるわけでありますが、後継者と嫁取り問題などについてのおたくの事情を、村長さんでもございますのでお聞かせをいただきたいと思います。  それから竹光参考人。非常に負債問題の深刻な現状を私どもも胸を打たれてお聞かせいただいたわけであります。私も実は竹光さんと全く同意見でありまして、この委員会でも、こういう制度の中でこれから対象になるものは、やはり貸し付けた後をどうするのか、つまり指導金融をどういうふうにしていくのかということについてきちっとした行政の対応がないと、これが政令なり通達なり県なんかの指導文書になってくるのだと思いますが、これがぴちっとしたものが一本大きな柱にないと、枠は大きくしていくわ――それから、ともすると日本の農政というのは、上で一つのモデルをつくってしまったらそれを下へおろしていく、下はいともまじめにそれを受けて、自分のところでこなしていくという力が比較的弱い、だから逆に言えば、だんだん借金拡大内容になる危険性が今日の段階ではある、こういう不安を実は私どもは指摘し続けてきておるわけであります。  そういう意味で、借金にさせないように、借りた金が実って戻すことができる、償還能力を持つ、そういう内容になる金融指導というものはいかにあるべきかという問題になってくる。具体的には、県段階で貸し付けの審査会のあり方の問題から始まって、特に単協段階、村段階で各種の技術陣営がこの中に相当大きな力を発揮して、個別の肉畜なり養豚なり和牛なりあるいは酪農家の庭先というか、さっきおっしゃられたいわゆる経営計画、資金計画、生活設計、生活指導、これまでやはり入っていかないとできないと思うのですね。そういうものをやるための主体をどこに置いてだれがやっていくか、この問題がやはり非常に大きな課題のように私は思うのです。そういう意味で何か御意見がありましたら、あわせてお聞かせをいただきたいと思います。
  25. 今井勇

    今井委員長 順次御指名申し上げますので、簡潔にお答えをいただきたいと思います。岡本参考人
  26. 岡本栄太郎

    岡本参考人 五十年、二分の資金についての私どもの考え方でありますけれども、北海道の場合はどうしても大型投資になる。利率等を計算してみますと、冷災害の関係もありますし、それから農畜産物価格がそんなに高くなるというふうにも想定されない、非常に経営内 が厳しい。そういう中で農業拡大再生産を進めていこうとすれば、やはり長期低利融資制度がなければこれは成り立たない、こういう考え方が基本であります。  たまたま私の前の委員長、新村先生が委員長だったのですけれども、委員長が今から十数年前にヨーロッパの農業事情を視察されまして、そしてお帰りになってから、私が今申し上げましたようなそういう状況判断に立って、長期低利融資制度を、しかしそれは言葉だけではだめであって具体的にという考え方で、五十年、二分の資金制度創設というものを訴えてきたわけであります。  そういう事情でありまして、この機会に先生方の御審議をいただいて、後ろ向きでない前向きの資金としてこの資金創設をぜひお願いを申し上げたい、このように私ども思っております。
  27. 今井勇

    今井委員長 ありがとうございます。  それでは、須佐参考人お願いいたします。
  28. 須佐昭三

    須佐参考人 お答えいたします。  第一点の基盤整備に対する水田の問題でありますが、御案内のとおり私どもの方は豪雪地帯でございまして、年間百四十日から百五十日の根雪期間があるというふうな地域でございますので、米以外の作物を水田に入れるということはできない現状にございます。いわゆる水田単作地帯である、こういう現状にありますことを御理解いただきたいと思います。  第二点の若者定住の問題でありますが、お説のように、本当に今一番困っております問題は嫁、婿の問題でございます。行政的な措置としては、結婚相談員を置いたりいろいろな方法をやっております。また、若者のそうした機会を持つための研修費なども予算に組んで、いろいろな機会を持たせております。  これは一つの事例でございますが、村で山菜共和国というようなイベントを行いました。その際に、建国祭に都会の若いお嬢さんを十人ほど無料で招待して、村の青年たちとあるドッキングの機会を与えたのでありますが、なかなか村の青年たち覇気がございません、勇気がないのでございます。なかなか絵のごとくドッキングの機会は成功を見なかったのでございますけれども、そうはいってもあきらめてもなりませんので、どしどしそういう機会を村としても行政の立場で設けながら、大いに若者にハッスルしていただくように、村に生きることを誇りに思って頑張っていただくようにしなければいかぬ、そういうことを対話の機会に常に言っているところでございます。  そんなところでお許しいただきたいと思います。
  29. 今井勇

  30. 竹光秀正

    竹光参考人 先ほど衛藤先生にお答えいたしましたように、当面、私どもは県中央会なり農協なりの営農指導員を十分再教育しなければならぬというふうに考えておりますが、決してこれで十分と思っておりません。  今先生のお話があったように、審査会というのは貸すときに県や公庫やいろいろ出て議論はするのですが、それっ放しであとは何にも拘束力がない。したがって、貸すときだけでなくて、貸した後の経営がうまくいっているのか、効率的にいっているかということについてチェックをしていくということについては、その審査会なりにある程度の権限を与えていただいて、もしそれに反すれば繰り上げ償還をするとかあるいは利子補給を停止するとかして、真っすぐな方向融資が効率的にいくようにできるような審査会的機能にしないと無理じゃないかというふうに私は考えます。
  31. 田中恒利

    田中(恒)委員 ありがとうございました。
  32. 今井勇

    今井委員長 次に、松沢俊昭君。
  33. 松沢俊昭

    ○松沢委員 きょうは四人の参考人の先生方、どうもありがとうございました。  もう同僚の皆さんからそれなりに御質問等もございましたし、また四人の方々からは私たちの理解しやすいような御説明もございましたので、ここで質問というようなことは余り必要もないような気がいたしますけれども、ただ、私考えまするに、今回は金融三法の改正をめぐってのいろいろの御意見を聞いているわけなんでありまするが、しかし、北海道の岡本さんの話を聞きましても、とにかく昭和三十六年に農業基本法が制定されたわけでありまして、その前の三十五年には北海道農家は今の倍以上あったというのですね。それが一生懸命やっているうちに半分に減ってしまった、こういうことであります。  あるいはまた、入広瀬の村長さんのお話を聞けば、どんどんと過疎化が進んで、そのために大変な努力を払っておられる。そして土地改良等をやって、農地がなかったならば農村はないのだということで一生懸命にやってはきたけれども、とてもじゃないけれども農家そのものが負担に耐えかねる、やむを得ないから村の方で相当の金額を補てんして助けてやっているのだ、こういうお話であります。  あるいはまた、大分竹光さんのお話を承りますと、これも一生懸命牛飼いをやってきた、しかし莫大もないところの負債がたまってしまった、固定負債だ。これをほったらかしておけばつぶれてしまうのだ。だから何とかして手当てはしているけれども、しかしこの先一体切り捨てた方がいいのか、あるいはまた守り育ててやらなければならぬのか。守り育ててやるとなれば、またそれ相当の新しい手だてが必要なんじゃないか。こういう御三人の方々の、それぞれの立場に立っての御説明がございました。  そこで私は、御三人の皆さんにお聞きしたいわけでございますが、昭和三十六年の農業基本法以来、規模の選択的拡大という日本の農政展開されてまいったわけでございます。その結果このような結果になったということになりますと、もう既に二十年余りたっているわけでございまするが、やはり日本の農政に対して、この辺でこうしてもらわなければならぬじゃないか、こういう意見の集約をおやりになって提言をするような時期に来ているのではないか、こう考えますので、御三人の現地におられるところの皆さんから日本の農政に対する注文をお聞かせ願いたい、かように考えるわけなんであります。  それからもう一つ、千葉大学の斎藤先生にお伺い申し上げたいわけでありますが、一番最後に先生の方からも御提言がございました。それは結局、今の固定負債を抱えたところの農家は相当長い時間、大目に見ながら考えてやらなければならないのじゃないか、こういうお話。それから岡本さんの方からは、五十年間、二分資金で何とかしてもらいたい、そういう主張がございました。私よく勉強しておりませんで、世界各国いろいろ金融政策が立てられていると思いますが、一番長期低利資金というのはどこの国にどの程度のものがあるのか、おわかりでございましたならばお聞かせをいただきたい。  以上でございます。
  34. 岡本栄太郎

    岡本参考人 今、先生から日本の農政に対する注文というお話があったわけでありますけれども、私ども農民は、特に北海道としては、現在四五%に及ぶ水田の転作、それから牛乳の生乳の生産調整、いわば計画生産であります。さらに、昨年の春政治決着した日米農畜産物の枠拡大の中で牛肉の枠の拡大、あるいは雑豆も十二万トンということになっています。聞くところによりますと、国内の豆の消費量は小豆も含めて四百万俵だと言われています。ところが、十二万トンというのは、数字でわかるように六で割れば二百万俵ですから、半分の輸入であります。これで昨年の北海道の豆は大暴落であります。たまりかねて、北農中央会は畑作の作付制限に類する地域指標を設定しようという動きもあります。したがって、北海道農業実態から考えてみますと、生産抑制は本当にとどめを刺されるようなものでありまして、先ほど申し上げましたように、私は不満はあるけれども、少なくとも六十五年見通しを達成させる農政をしっかりやってもらいたい。その上にEC程度の、必要なものは国内でつくり足りないものだけ輸入をする、こういう農政に転換して、我々はつくる闘いと申しておりますけれども、つくるものを拡大してもらえる農政、これがやはり一番根幹になる、これが確立されることによって資金問題等も経営内容も大いに変わってくると思います。そういう点で、私どもは拡大再生産を実現することが一番大切だ、このように理解をしておりますので、よろしくお願いいたします。
  35. 須佐昭三

    須佐参考人 お答えになるかどうかわかりませんが、第一線の山村行政を担当する立場で申し上げます。  これは農政であるかどうかわかりませんが、いわゆる総合的な農政という立場からお願いしたいことは、農村に活力を与え地域活性化していくためには、若者が村にUターンをしてこなければなりません。若者たちがふるさとに誇りを持って暮らせるような環境をつくっていくことが必要であると思います。  そのために何が必要か。二つあると思います。若者が村に帰ると言っても、働く場がなければどうにもなりません。農政だけでということではございませんが、農林省の施策の中にあっても、若者たちが村に帰る雇用の拡大機会を与えるという政策をさらに進めてほしい、このように思っております。私どももいろいろな政策を通じてそれらの事業をやっておりますが、さらにそういう政策を拡大されるように望みたい、これが第一点であります。  もう一つは、山村であるがゆえに都市並み生活環境から逃れたような生活であっていいとは思いません。山村であっても都市並み環境がなければいけない、それが若者たちに地域の誇りを与えるものになると考えますので、生活環境整備ということについてさらに農政の立場から考えてほしい、このように思うわけでございます。  以上であります。
  36. 竹光秀正

    竹光参考人 お答えいたします。  私のことで申し上げるのはどうかと思いますが、私も昭和二十四年から今日まで農協の組合長で三十六年お世話をしてきております。  第二次農業構造改善事業で、成長作物はかんきつと畜産だということで、私どもは大変な意気込みを持ち、農家にも膨大な資金投資、借り入れ等をいたしましたが、かんきつの場合もことしは二百万トンを下回りまして、価格は若干持ち直しましたけれども、過去三年間は豊作貧乏で、農家は手取りがキロ四十円という状態に追い込まれました。  それで、今の畜産同様にかんきつ農家がかなりの借金を抱えて十分片がついておりませんが、園を処分したりして借金整理をしたというような状況から見ると、特にまた最近の自由化の彼等を見るときに、日本の農業はどの程度の自給を維持していくのか。特に国際競争力において、構造的にも弱い。私ども毎年米価運動をしておりますが、確かに消費者から見れば外国の安いのが来たら三倍、四倍と言われますが、農家自身は赤字で苦しんでおります。畜産の牛肉等の場合も同じであります。  しかし、国民食糧を外国にのみ依存していったときに日本の将来はどうなるかということを考えると、この厳しい構造環境にある日本の農業でありながら、そこを選択的拡大で、これだけは自給力として守らなければならぬという基本線に立って、我々、農家と一緒に行く者も頑張らなければならぬし大いに勉強しなければならぬが、国、政府、皆さん、みんなが日本の――金さえあれば何もなくてもいい、外国からどんどん買えるというときに果たしていくのかというと、特に先般の第二次戦争の厳しい戦後、アメリカの脱脂粉乳を子供に飲ませて、私どもは芋づるというカンショの菜っぱをゆでて食べた経験を持つだけに、高い安いということよりも、最悪の事態における国民の食糧を維持していくという一つの限界点は、採算を度外視して守らなければならぬのじゃないかと感じておりますし、国としてもそういう線に沿った国の基本政策をはっきりしていただきたいということをお願いしたいと思います。
  37. 斎藤仁

    斎藤参考人 私は、今ここにデータを持っておりませんので、しっかりしたお答えができなくて恐縮でございますが、私の今の記憶では、一九七〇年代のことになりますけれども、西ドイツで六十年という長期の農業資金が、これは財政資金を原資とするもので民間の資金を原資とするものではございませんが、そういうものがあったように記憶しております。多分、構造改善関係の資金であったかと思います。
  38. 松沢俊昭

    ○松沢委員 どうもありがとうございました。  私、この三法の説明書を見ておったのですが、公庫の資金枠を決めても、その枠を超えるほど強い需要が出ておりませんで、五十八年度の貸付決定額が五千八百十八億円、貸付計画が七千二百五十億円になっておるわけです。ですから、ずっと減っているわけです。さっきも斎藤先生の方から、負債償還の金はふえているが生産の方は減りつつあるというお話がございましたが、いろいろな統計を見ましても減っておるわけであります。今回この三法の改正によって、それじゃ資金需要がふえてくる条件が出ているのかどうかというと、価格の面あるいは資材の面、地価の面、こういうような面というものが解決されないと、どういう法律の改正があろうとも需要額がふえるというふうには私は考えられないわけなんでありますが、皆さんは一体どうお考えになっているか、これが一つ。  それから、もう一つは、サラ金のようでは困るわけなんでありまして、貸してくれというものはどんどん貸していく、それであげくにバンザイさせてしまうというようなことでは困るわけですね。ですから、今、固定負債になっているものを、今の法律改正に基づいての資金の融通によって救済することができるかということになりますと、私はそれはできないのじゃないか、もっと新しい制度をつくって、そして今までの固定負債は処理をしてやるということ以外に方法がないと思っておりますが、この辺もそれぞれ、簡単でよろしゅうございますから御答弁いただきたいと思います。
  39. 岡本栄太郎

    岡本参考人 資金の貸付状況についてでありますけれども、これは今生産の分野の資金需要というものが減っていると言われましたけれども、確かにそうだと思います。これは今の農業生産状況から考えて、危なくて投資ができないです。ですから減ってくるのが当然だと私は思います。しかし、その反面、負債累増負債を何とか今片づけなければ、あるいは借りかえをして、利息負担を軽減しながら元金の返済もあわせて考えていかなければならないという状況でありますから、どうしてもこの方に力が入ってくるというのが実態だと思います。したがいまして、私どもとしては、生産に対する再投資ができる可能性というものを農業政策の中で誘導してもらわなければならないと思います。  もう一点は、経営改善のための固定化負債借りかえる、先ほど来お願いをしている五十年、二分のような資金創設していただいてこれを処理していく、これは両建てでなければ今の危機を乗り切ることはできない、このように思っております。
  40. 竹光秀正

    竹光参考人 ただいまの御質問にお答えします。  確かに公庫資金にしましても近代化資金にしましても、五十九年度の三月末貸付残高は間もなく集計されると思いますが、私の得ている感じは、正確な数字ではございませんが、かなり枠が残るのじゃないかと考えております。  と申し上げますのは、今のように農業が低迷しておりますと、先行投資に農家も非常に慎重になりまして、危ない農業等をやるより土建の人夫でも、特に私のところあたりは別府市の北で、大分や別府の市街地があるので一日働きに行けば五千円なり六千円もらえるという、出稼ぎに行く方が安全だ。私の方はかんきつ地帯でハウスミカン等かなり投資をやっている農家もありますけれども、全部が全部成功するとは言えません。赤字を持っている農家はあります。  そういう点からいくと、先ほども申したように、今後の日本の農業で安定的に採算のとれる農業方向が示されぬ限り、借りた金は担保を出し利息を出して返さんならぬという農家の良心的責任からいって、無責任な借入金をしようとしませんから、率直に言って私ども金融機関としては貸し付けは伸ばさんならぬわけですが、サラ金と違いますので、その金が農家の生活、再生産に意義のある資金でなければ貸し付けを伸ばすわけにはまいりませんので、やはり大きな国の方向づけをしていただかないと容易じゃないのじゃないかと思います。  さらに、負債整理の問題は、北海道の方も申されましたが、もちろん今度の資金枠ではとても処理できないので、別個に超低利の長いものにかえていただきたいと思います。  しかし、今の農家の中には、若い人あたりで真剣に新しいアイデアで農業の再生産に取り組もうとするような人にとっては、今の公庫資金制度あるいは近代化資金制度が若干でもよくなる面は大いに喜ぶ面もあろうかと思いますけれども、さっき申したように、現行の総合資金や近代化資金がことしはかなり消化未了が出るであろうという条件下にあるということは申し上げられるのじゃないかと思います。
  41. 斎藤仁

    斎藤参考人 資金枠が余っているということは、公庫資金につきましてもそうでございますし近代化資金等々についてもそうでございます。系統資金も、系統金融の中でそういう計画を立ててしかも余るという状況で、これは先ほど申し上げましたように、私的な投資誘因が極めて小さくなっている。なぜそうなのかと言えば、農業の今も申されましたようないろいろな条件が大変悪くなっているというところから来ていると思います。私的な投資誘因がないにもかかわらず、しかし投資は必要である、生産性を高めなければいけない、あるいは社会的に農業発展させなければいけない、そういう要請があって、そこの間にギャップがある。そのギャップをいかにして埋めるのかということが問題であろうかというふうに思います。  それでは今度の改正需要が伸びるかということで、恐らくそんなに需要は伸びないだろうというようなお話でございましたが、これはいろいろな条件そのものを固定して考えませんと、今度の改正需要が伸びたのか減ったのか、実験的にやるわけにはいきませんので、なかなか判定は難しいと思いますけれども、ほかの条件が変わらざる限り、条件をくつろげた点だけは需要が少しは伸びるだろうというふうに言ってよろしいのではないかと思います。ただし、基本的に、それじゃ今日の需要が伸びなかった趨勢が変わるほどに、方向が全く逆になって、今まで伸び率が下がってきたのがぐっと上がるように需要が伸びるかというと、そういうことは恐らく全く考えられないというふうに思います。  それから、サラ金のようでは困るというお話ですが、これは全くそのとおりで、金融を活発にといっても、大いに貸し込むといったようなことでは大変困るわけで、事実、農業の急成長というのは、高度成長期に大変急成長いたしましたが、これは借入金借金経営でもって急成長した。このことも恐らくもう少し慎重に借金をすればよかったのではないかと思われる前もございまして、その点は慎重に、むやみに貸さない、あるいは今日みんな慎重になっている、そのこと自体はいいことではなかろうかというふうに思います。  それから、固定負債についての新制度という点につきましては、先ほど申し上げましたように私もそのように思います。  以上でございます。
  42. 松沢俊昭

    ○松沢委員 どうもありがとうございました。
  43. 今井勇

    今井委員長 次に、吉浦忠治君。
  44. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 参考人の方々、長時間大変貴重な御意見ありがとうございました。時間が大変経過いたしておりますので、なるべく簡潔にお尋ねいたしますので、またお答えいただきたいと思います。  全部の先生方にお尋ねできないかと思いますが、まず、岡本参考人にお尋ねいたします。  北海道酪農は大変厳しいことを私も十分承知いたしておりますが、現在の乳価でその解消が図られるのかどうかということ、これを第一点にお尋ねいたしたいと思います。  第二点に、酪農はどのくらいの規模の経営が適正というふうにお考えか。また、今のような厳しい現状のもとで経営が安定しているところもあるわけでありますが、不安定な方と安定している方の格差というのはどこに原因があるというふうにお考えか。  三点目には、本年で酪農負債整理資金が切れるわけでありますけれども、この継続の要望が出されているわけでありますが、具体的にどのような要望が出されているのか。  以上三点をお尋ねいたしたいと思います。
  45. 岡本栄太郎

    岡本参考人 酪農についてのお尋ねでございますが、第一点の現在の酪農経営状況の中での問題でありますけれども、北海道酪農は、昭和四十年代に入りましてから、ゴールなき拡大だという悪口を言われながら、経営規模拡大、多数頭飼育が進められてまいりました。この中で問題になってまいりましたのは、やはり急激な投資をした農家経営状態が非常に悪いということだけは言えると思います。宗谷の一町村でありますけれども、農協が取り扱っている生乳の代金や個体販売等の販売金額が十七、八億しかない。系統の農協プロパー、公庫資金等を入れての負債総額が四十五億に達しているところもございます。こういう中には一戸一億円以上の負債をしょっている農家がたくさんございます。我々計算してみますと、負債の払える限界というのは、これは元利償還でございますが、大体販売総額の二五%からぎりぎり持っていって三〇%程度ではないか、これを超えるようになると容易でないだろうという見解を実は持っております。  それで、現在の乳価は九十円七銭でありますけれども、特に乳業メーカーが年々膨大な利益を上げております。これは飲用乳ではもうからないため加工乳でもうけている、特に発酵乳でもうけているというような状態でございます。したがって、ことしの乳価の段階の中で、この発酵乳は飲用乳と加工原料乳価との中間ぐらい、百円でありますが、百円の乳価で買ってもらいたいというのが我々生産者の気持ちであります。ところが限度数量は抑制されておりますので、北海道も五十九年では十二万トン以上の補給金対象外の牛乳があります。これは六十九円でありますから、これらもかなり経営状況悪化させる一つの要因になっておると思います。  もう一つは、計画生産によっての総体量の抑制というものもあるわけであります。第三次酪近では、北海道で生産される牛乳は三百十四万トンというふうに一応計画されました。第四次酪近でも同じく三百十四万トン。しかし現在これに到達しておらない。到達しておらないにもかかわらず生乳の生産抑制が行われている、今の北海道酪農にとってはこれが一番大きな問題であります。  つまり、急激な過剰投資ということと生産抑制、それから飼料その他が値上がりしているということ、こういう問題が北海道酪農の危機をつくり出したというふうに私は思っています。  それから、安定している農家と安定してない農家というのは、急激に大型投資をした農家が、生乳の生産調整の時期に入ってきた、それで計画がもうどうにもならない状況になったわけでありまして、ここに北海道酪農負債の大きな原因がつくられたと私は思っています。  それから、負債整理の関係でありますが、御案内のように五十六年にこの制度が発足をしたわけでありまして、ことしその関連対策として延長について具体的な内容を決めていただいたわけであります。五十六年この制度に登録された農家北海道で三千八十五戸であります。その後、五十七、五十八、五十九、六十年と五年間借りかえをしていった人、いかない人もおるでしょうけれども、そういう形で対象農家が五十九年では千七百二十二戸に減ってきております。  そういう意味ではこれはある程度効果があったと思うわけでありますが、先ほどの大分竹光さんのお話ではないですけれども、おまえはもうだめだ、とても対象にするわけにはいかない、負債が累増していて、この制度に乗っけてもおまえの経営はとても成り立たないよというふうに言われて、落とされる農家もあるというふうに私ども聞いておるわけであります。  この北海道酪農そのものの実態は、行政も系統もみんなで多数頭飼育をやれ、規模拡大をやれ、農民の中からはゴールなき拡大だという悪口を言われながらも、それに乗っかってきたという現実があるわけでして、これは農民にも責任があるけれども、半分以上の責任は行政と系統の方にあると断ぜざるを得ないというふうに私は思っておるわけでありまして、そういう点、今後ともよろしく御検討をいただきたいと思います。
  46. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 須佐参考人にはすばらしい実情をお話しいただきましたので、私ちょっと遠慮させていただきまして、竹光参考人にお尋ねいたします。  竹光参考人には、昨年の夏私は現地にお伺いしてお世話になりました。どうもありがとうございました。  今回の改正についてるる御説明をいただきましたけれども、それが農業経営に及ぼす影響をどういうふうに受けとめておられるのか。特に、近代化資金について今回二倍の引き上げをされるわけでありますけれども、巷間、機械化貧乏というふうに言われておるわけでございますが、過剰投資の心配はないかどうかという点をまずお尋ねしたいわけです。  二点目には、先ほどからるるお話もございましたが、貸し付けのあり方という点についてお尋ねをいたしたいのです。一般に、安易に貸し付けを行う傾向が指摘されておるわけでありますが、営農とタイアップした形での融資とか、改良普及員等の意見をよく聞いて、またアフターケア等の必要がないかどうかという点も十分検討して融資をした方がいいのではないかと私は考えるわけですけれども、こういう点について御意見をお聞きいたしたい。  三点目には、大分県の一村一品運動というのが全国的に大変有名でございまして、私も現地に参りまして知事さんからもるる説明をいただいたわけでございます。大山町も見せていただきましたし、竹光さんからもお話を伺いました。一村一品運動の発祥地であるわけでありますが、信濃連の事業がこの運動にどのように生かされているとお考えなのか。  大変難しいことでございますが、この三点をお尋ねいたしたいのです。
  47. 竹光秀正

    竹光参考人 お答えいたします。  先ほども申したように、多分五十九年度においては、近代化、中でも農機具関係の需要は、もう機械が古いから買いかえようと思っても、最近は大型化しているし、農業の所得も低いから、それに特に明るい希望がないから遠慮しようというような意味における投資の差し控えという点がかなりあるのじゃないかというふうに見ております。しかし、先ほど申したように、すべてがそうであるとは言えなくて、また若い連中の中には思い切った意欲的なことを考えようとするような人もあるかとも思いますし、今回の改正によって、我々、借りる方もまた貸す立場になる者にとっても、農家が喜ばれるような条件にある制度になるということであればいいのじゃなかろうか。ただし、貸し付けが今度大分改正されても伸びるというような甘い期待は、私ども金融機関ですから金を扱わせていただくことは結構ですけれども、今の農業情勢のもとではそうなかなかいかぬのじゃないか。しかし、借りる場合、農民の立場でよりよくなるという点については賛成ではないかというふうに思っております。  それから、貸し付けの場合においては、先ほども申し上げましたが、行政の面も私どもも、ただ金を貸すということでなくて、貸した後の資金がどう使われ、それがどう有効に農民の生活に、再生産に役立っておるかどうかということを絶えず確認しながら指導できる体制をつくっておかなければならぬのじゃないか。  それから、先ほど申し上げましたように、畜産関係等においては、ただいいものをつくればいい、肉質の高いものをつくればいいということでやっておると、濃厚飼料のコストが非常に高くつくので、そういう一部の農家があってもいいが、むしろ安いコストで安い牛肉をつくるという指導もしなければいかぬのじゃないか。やや競争的に、品評会等で一等になればいい牛だと言うけれども、それにはかなりコスト高となっており、経常的にはかなりの犠牲となっております。なるべく安い自給飼料でいける指導ということについては、技術のみでなくて、経営コンサルタント的な温かみのある指導性を持つ必要が大いにあるのじゃないかと私は考えております。  最後に一品運動ですが、これは私どもの県のことで、私どもとすると、知事さんが一生懸命やっておるから悪くはないけれども、知事さんは農業のことは余りわからぬのじゃないか。例えば私の方のしょうちゅうまで一村一品に入る。商品性があって量が多くできて、そしてそれが農家所得につながるような一村一品を大いに伸ばさなければいかぬのじゃないかと私どもは言っているのですけれども、先に宣伝がいって、珍しいということで全国に知れたのじゃないかと思いますので、悪くはないのだけれども、もっと深みのある、農業生産につながる一品じゃなければいかぬのじゃないかと思っております。
  48. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 最後に、斎藤参考人にお尋ねいたしたいのですが、簡潔で結構でございます。  金融の自由化の大きなうねりが今後農協等にどのような方向であらわれてくるかということに関心を持っているわけですけれども、農協が信用事業拡大をして大きく成長することと、系統運動といいますか、農民に営農指導をする面とはある意味では矛盾しているのではないかというふうに考えるわけであります。農協として大きく成長することは、スケールメリットとして追求することは、個々の営農指導という地道な活動を置き去りにするのではないかというふうに私は心配をいたしておるわけであります。今後の農協のあり方についての御意見をお持ちでございましたら、お尋ねをいたしたいのが第一点。  もう一点は、先ほども出てまいりましたけれども、中金とか公庫のいわゆる分野調整についてどのようにお考えになっておられるかという点でございます。現実に末端では融資先の奪い合いをしているとも聞いているわけでありまして、いわゆる中金と公庫のあり方を含めて御意見をお聞かせ願いたい。  この二点でございます。よろしくお願いいたします。
  49. 斎藤仁

    斎藤参考人 金融の自由化につきましては、これは恐らく大変な影響が系統金融に起こるものだろうというふうに思います。この自由化とちょうど重なって、例の金融技術革命というふうに一般に言われておりますコンピュータリゼーションが、これまた大変な勢いで進んできておりまして、コンピューターを入れるために農協の体制を変えなければいけないといったような要請があるようにも思います。その場合に、自由化に対しましてもあるいは同時に進んでおりますコンピュータリゼーションに対しましても、農協の合併を大いに進めるということが言われております。  それは確かに、おっしゃったようなスケールメリットというのを上げるということをねらわれているわけでございますけれども、私の考えでは、農協は幾ら大きくなってもしょせん大銀行にはかなわないわけでございますので、農協農協たるゆえを発揮するのは、何といっても組織の問題だろうというふうに思います。そういう点で、組織のスケールが大きくなったことによって、なおざりにされるということになっては元も子もなくなることでございまして、やはり何でも大きければいいといったようなことでなくて、そこに一定の限度があるのではなかろうか。  何よりも組織がぐずぐずになり崩れないということが第一の主眼であって、それの歯どめとしては、具体的には、なに県かに県、それから個々の町村においてスケール等が違ってくると思いますが、基本としてはその組織を基本とするということが大事ではなかろうかというふうに私は思います。  第二点の中金、公庫の分野調整というお話でございますが、系統金融と公庫とが現地で融資先の奪い合いをしているといったようなことを私も時々見聞きをするわけでございます。公庫の融資分野が非常に広がってまいりまして、特に、昭和四十三年に総合資金ができまして個別農家を相手として融資がなされるようになって以来、そのほか、ずっと構造改善関係の個別農家向けの資金ができてきまして、ぶつかり合うということになる。公庫の方が利子が安いということで系統が参るということですが、この辺は、系統の資金を伸ばすという点から考えますれば、これはいろいろ問題があろうかとも思いますけれども、一つの可能性としては、近代化資金に特認事項をつけて、そうして利子をこういう面については安くするということを仕組んでもいいのではなかろうかといったようなことを、これはちょっとした思いつきでそれ以上のことではございませんが、思っております。  以上でございます。
  50. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 ありがとうございました。
  51. 今井勇

    今井委員長 次に、菅原喜重郎君。
  52. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 まず、岡本参考人にお伺いいたします。  実は、農業基本法を国が制定いたしましてからもう二十五年でございますが、この間、農作物の消費の長期見通し、需給の展望生産性の向上あるいは専業化形態をうたいまして、規模拡大、機械化を指導してきたわけでございますが、その結果は、もう既に多くの農家は脱落しておりますし、現在残った大半の農家借入金増大しているわけでございます。こういう点では今までの農業基本法によるところの指導は大きく見直されなければならない段階に来ている、こう私は考えているわけでございます。  ただ、今負債償還不能になった農家もたくさんあるわけでございまして、このことについて低利借りかえ資金の対応をうたわれてもおりますが、今回も改正されようとしておるわけなんですが、農林漁業金融公庫貸し付けの計画額、五十九年総額が七千五十億でございましたが、六十年度は六千八百五十億と総額は減っているわけでございます。しかし、調べてみますと、農地等取得資金とかあるいは自作農維持資金、このうちには再建整備資金も入るわけでございますが、これらは十分に活用されておりましても、他の資金は一応枠があるようでございます。  そこで、今参考人が申されましたこういう農家実態からして、どの資金枠拡大が必要なのか、また、どの分野に緊急に対応してもらいたいのか、こういう点、具体的にお知らせいただけるところがありますならひとつお知らせいただきたい、こう思うわけでございます。
  53. 岡本栄太郎

    岡本参考人 ただいまお尋ねをいただきました資金需要関係でございますけれども、先ほどもちょっと申し上げましたように、北海道における資金需要は、一番ウエートの高いのは農地等取得資金総合施設資金、それから土地改良補助残融資の六分五厘資金、この三資金がほかの資金よりもかなり多く利用されております。  冒頭申し上げましたように、北海道の場合は特に農地等取得資金が非常に足りない。これは、町村あるいは農協も、農業委員会を含めて非常に苦慮をしておるというのが実態であります。申し上げましたように、毎年四十億から五十億ぐらいの不足資金が出まして、これを総合施設資金の併用で何とか切り抜けてきているというような実態であります。これからも北海道におきましては、経営再建が非常に困難だということやらあるいは後継者がいないということで離農が続くものと思われます。しかし、そういう状況の中で自己資金でそれらの離農跡地を取得するということは不可能であって、やはり資金によって処理をしなければならぬということになると思います。したがいまして、農地等取得資金需要がふえるだろうというふうに実は思っております。  それから、総合施設資金等につきましても、やはり再投資というものが個人的に行われて、今までとは違いますけれども行われていくと思いますので、こういう資金についての需要も確保しておかなければならない、このように考えておるわけであります。
  54. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 なお、参考人は五十年償還、二分利息農業資金の対応を要求されておるわけでございますが、これは既にデンマークではこの対応をしておりまして、聞くところによりますと、以前は百年の三分償還が、利息がちょっと高いから五十年、二分台という要求で現在現実化されているわけでございます。ですから、農協系統が笑ったといいましても、デンマークではさらに農地の均分相続の禁止をしまして近代化の対応もしている、ですから、こういう点では自信を持ってひとつ要求していっていただきたいと思うわけでございます。  次に、須佐参考人にお伺いいたします。  私も農村の地方自治体の首長を経験したものでございますが、山村地帯におけるところの基盤整備なくして山村崩壊するという信念に対しましては全く同感でございます。私も実はそういう関係で、基盤整備に対するところの町単独での補助金交付を条例化したわけでございます。全く同じ御苦労をなされている。しかし、こういう若者定住政策のための補助金交付が、かえってそういう基盤整備を進めても農家負債増大しまして、農業基盤整備事業負債整理援助基金制度まで創設されたということ、全くこれは身を切るような思いで私は参考人のお話を聞いていたわけでございます。  さらに、基盤整備前と基盤整備後の写真のページを見まして、これは立派に国土保全であり国土改造でありまして、後世の国家民族の永久資産形成だ、そういう感を強めております。現に私も、基盤整備と水の確保は、もう強制執行をかけてもいいから国家が全額負担で資金を持ってこれを実行しろということを去年からしょっちゅう国に要求しているわけでございます。こういう点で、同じ参考人意見が聞かれたことは本当にうれしく思っているわけでございます。  ついては、あと二、三カ年で圃場整備事業が完了しました時点で、この諸制度財政事情が許されるなら農家負担の軽減等について何らかの具体的施策を立てたい、次期行政基本計画の中でこの成案を得たいという要望でございますが、何かこの点についての見通しがありますならば、国家要望としてひとつお聞かせいただきたい、こう思うわけでございます。
  55. 須佐昭三

    須佐参考人 お答えを申し上げます。  大変激励をいただきまして恐縮に存じております。先ほど申し上げましたように、何としても農地を整備して、国土の保全のためにもこれをやらなければいけないという努力を重ねてまいったわけであります。  そこで、御質問の問題でありますが、負債整理援助基金の制度については、既にこの二月の村の議会で予算の措置が終わったのでございます。ただ、五十八年度と五十九年度で合計六千万円の基金積み立てをいたしました。この五十九年度会計閉鎖期までに六千万の基金積み立てができますので、そのうちの四千五百万円を取り崩しまして元本繰り上け償還に充てたいということで、既に予算措置を終わっております。  なお、行政基本計画にその内容を明記すると申しましたのは、これがその構想でありますが、この中に具体的なその措置を示したわけでございまして、その内容はお手元に差し上げております資料に尽きるわけでございます。  さようなことで、もう一年ほど圃場整備完成には時間を要しますけれども、この基金をもって十分にその政策目的を達成することができる、かように考えております。
  56. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 何せ農地は農作物以外生産できない土地でございまして、これを個人が所有しているといいましても、農作物に対しましては国家が一たん緩急の際はいつでも統制をかける種類のものでございます。ですから、農地だけはほかの個人の土地所有とは違って、ひとつ国家に堂々と要望できる一つの案を私たちにも今後お知らせいただきたい、こう思う次第でございます。  次に、竹光参考人にお聞きする次第でございますが、今、公庫資金あるいは近代化資金、その他金融資金関係が満杯になって融資の対象にならない、しかし大型畜産を経営している農家あるいは四十、五十頭ぐらいの中農家を何とか救済しなければならぬということを切実に訴えられたわけでございます。このための負債整理資金の要望もされているわけでございますが、農協管理でこういう資金の対応ができれば果たして再建できるのかどうか。どちらかといいますと、参考人資金融資をする側にある参考人でございますから、あるいはこういう点ではちょっと当を得ない質問かと思うわけでございますが、農協で本当に責任を持ってこういう資金対応ができれば、大体倒産させないでこれらが救済できていけるのか、その見通しをお聞かせいただきたい。
  57. 竹光秀正

    竹光参考人 大変難しい問題で、決して私ども農協融資関係のみでの指導で再建できるという安易なうぬぼれは持っておりません。ただし、さっき申し上げましたように、今の厳しい農家をつぶすというか、かなり連鎖反応的性格を持っている大型の農家であるだけに、私は、私の地方ならば県や町村等も御加勢をいただいて、農協と一緒になって、農家資金のみでなくて、経営管理をその債務者の同意を得て一緒にやるという気持ちで、それをできるような努力を――私どもは率直な意見は、我々農協利息を大幅に減免しようし、町にも援助を頼もうし、県にも頼もうということで、とにかく農家の先祖伝来の田畑から財産全部を競売にして農家をつぶしてしまうような状態に追い込まぬように、最大限度の努力をしていかなければならぬというふうに思うわけでございます。
  58. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 先ほどの岡本参考人からも、肥料の値上がり、機械化等が生産コストを押し上げて農家経済を圧迫し、負債増大をさせている、そういう意見を聞いているわけでございますが、この肥料問題は全農が九〇%近く握っておりまして、これは国際価格より高い肥料を売っているのですね、国もこの価格保証をしている。さらにこの機械化を進めたのも農協でございますし、制度資金以外の農協の単独の金利はもう一〇%も超えていますから、こういう点では大いに農協にも責任があると思うわけでございます。  ひとつそういう面で今後農家救済のために農協内部の改革に力を注いでいただきたいことを要望して、次に斎藤参考人にお伺いする次第でございます。  斎藤参考人は、今回の制度改正、これを二つに分けられまして、総合施設資金とかあるいは中堅層への資金の道を開ける対応がなされていることに意義のあること、また、近代化資金地域農業整備の道も開いているということで、ある程度の賛意を示されながらも、果たして現在のこういう流れの中で投下資金が本当に農家そのものの近代化に効率的に役立っていくのかということで不安も投げられているわけでございます。  ついては、これは金融問題とは関係のないこと――関係のないことじゃないのですが、一応中堅層への資金の道の開かれることはいいわけでございますが、しかし、今この中堅層の農家に専業形態の農業を指導していったのではとても対応できない、私はこう思っているわけでございます。やはり中堅農家というのは複合形態の農業指導が必要じゃないか。その中には、これも私再三主張しているわけでございますが、既に食うものをつくる農業生産の指導から食わないものをつくる農業指導をすべきだ、そのためには、先生は園芸部門出身でございますし、そのプロパーでございますので、こういう中堅層への資金の道を開くに当たって複合経営、特に園芸その他を入れていけば、何か一つ農家救済のできる新しい経営方法の道が開けてくるのじゃないか、私はこう思えるわけでございます。このことについて何か技術的な指導への先生の御所見等がありますならばお伺いしたい、こう思うわけでございます。
  59. 斎藤仁

    斎藤参考人 お尋ねでございますが、私、技術の方はとんと不案内でございまして、はっきりしたお答えにならないと思いますが、おっしゃるような複合経営というのは、大いにこれから進めらるべき方向であろうかと私は思います。高度成長期はずっと専業農家、一部門に専業化することが推進されましたけれども、それで全くだめだということではございませんが、大変不安定な面を持っておりまして、その点で、特に頑張っている中堅層というのは複合経営がこれから推進さるべきであると思います。その中で園芸というのも、これまた最近はバイオテクノロジーなどで大変あっと思うような園芸が出ておりまして、専業的なのが出ておりますが、そういうものも複合の一部門ということで進められてよろしいかと思います。  以上でございます。
  60. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 時間が来たので、質疑を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  61. 今井勇

    今井委員長 次に、中林佳子君。
  62. 中林佳子

    ○中林委員 参考人の皆さん、どうも昼の時間を随分過ぎまして、私が最後でございますので、よろしくお願いしたいと思います。  まず最初に、岡本参考人とそれから斎藤参考人にお伺いしたいと思います。  今回の金融三法の改正というのは非常に大きなものを含んでいるというふうに思うわけなんですね。北海道負債状況岡本参考人からるるお聞かせいただいた中で、私もずっと農家を回りながら、もうこれ以上借金はたくさんだという話はどこに行っても聞くわけなんです。今、行革というようなことなどで、補助から融資へという方向が強まっている中での今度一つ改正というものが出てきたと思うのです。その中で、私どもがやはり農家にとって一番大変だと思うのは、三・五%の資金が、一部は残されますけれども五%に引き上がる、これでは今の農家実態農業実態からすれば大変な影響が出てくるのではないか、こういうふうに懸念せざるを得ないわけです。  そこで、岡本参考人の方に、こういう引き上げが農家にどのような影響を与えるであろうか、また、その点に対する政府などに対する御要望があればぜひお聞かせいただきたいと思います。  それから斎藤参考人の方には、先ほどからも農業情勢が悪い、経営が大変困難になって貸し付けの実績も随分下がってきているという話があるわけですから、こういう金利の引き上げが行われれば最低必要な投資にも影響が出るのではないかという懸念を持っているわけですけれども、その点についてのお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
  63. 岡本栄太郎

    岡本参考人 北海道農業負債実態についていろいろ御心配をいただきまして、大変ありがとうございます。  今回の改正につきましては、やはり臨調行革財政再建の一環として、三分五厘資金というのは高率補助だ、こういうような考え方がありまして、そして利息の引き上げをこれはどうしても実現させようという、させなければならないというこれは財政側の強い圧力もあったというふうに我々聞いております。  しかし、今の農業金融制度の中で、これは文句を言いながらも三・五%の制度資金がなくなったとしたら、これは日本の農業はより非常に困難になってくるだろう。これはもう農地の流動化を含め、すべての機能がある程度とまってしまうんじゃないかというふうに実は考えております。そういう意味で、農林省の方々が頑張っていただいてある程度残していただいたということは、これは成果だと思うのですけれども、逆に、総合施設資金なんかは金利が引き上げられるということは、これからの再投資、これは生産拡大に向けてのあるいはコスト引き下げに向けての中で大きな問題になってくるというふうに実は考えております。  したがいまして、我々としては、申し上げておりますように、この今の制度改正については理解に苦しむ、したがって、長期低利の、いわゆる五十年、二分の資金創設をしていただきたい。これは我々の本当の気持ちであるし、今回の改正に伴って将来日本農業展望に立った基本的な対策であるという認識の上に立ってのお願いでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  64. 斎藤仁

    斎藤参考人 全体といたしまして、三分五厘資金が根幹のところは残ったと思いますけれども、それでもおっしゃるように引き上げられたものがございます。土地改良資金農地等取得資金の関係でございますが、その中で引き上げられたものがあります。これは、私は総合施設資金の据置期間中の四分五厘が五分に上げられたのと同様に、今日の、金融によって政策を推進していこうという立場からいえば、マイナスの効果を持つだろうというふうに思います。
  65. 中林佳子

    ○中林委員 次に、岡本参考人とそれから竹光参考人借りる方とお貸しになる方、どちらかと言えば、分ければそういう仕事だと思うのですけれども、その観点からお二方の御意見を聞かせていただきたいのですが、私、畜産農家などを回ってみますと、お金を借りるのはいいのだけれども、要らないものまでつくらなければいけない、牛舎にこんなに立派な施設は要らないと思うのだけれども、それを取り入れなければお金が貸してもらえないのだというような話を至るところで聞くわけなんです。  今の制度資金がそういういろいろなものをくっつけなければ貸さないというような条件をつけていることに対して、岡本参考人の方の具体的な御意見でもあればお聞かせいただきたいと思いますし、また、竹光参考人の方からは、実際、多分農家の方々からそういう御意見もお聞きになっていると思いますので、お考えがあればお伺いしたいと思います。
  66. 岡本栄太郎

    岡本参考人 御指摘の点は、まあ大分改善されたというふうに思っておりますけれども、やはり機械化体系の中では、一貫作業体系というのが一つ義務づけられております。したがいまして、トラクターが入るとすべての作業機までというような、いわゆる一組のセットになって購入をしなければならない、そして、これも価格がある程度決められている。今まで農機具屋が、口は悪いのですけれども、これによってかなり利益を上げてきただろうと思います。ですからそういう点では、補助はある、あるいは融資制度はあるとはいいながら、高い機械を我々が買わなければならない条件というのはそういう中でつくられてきていたと思います。  それからもう一つ施設等につきましては、補助がある場合はある一定の基準がございまして、これは建築基準法とかいろいろあると思うのですけれども、同じ鉄骨でもやはり大きな鉄骨を使わなければならない、間に合うのだけれども、補助をもらうためにはその規格に合った資材を使わなければならない、こういうことが建築費を押し上げてきたと思います。  極端なことを言うと、やはり補助がないと一番最低の施設でやってしまいますので、そういうことがいろいろな過大施設といいますか、そういうようなぜいたくな施設といいますか、そういうことになってきたと思うわけでありまして、今後、こういう農業施設等についてはできるだけお金をかけないで利用のできる施設を、我々自身も考えなければならないし、そういう補助事業等についての基本的な基準といいますか、そういうものもぜひ改善をしていただいて、いわゆるもうかる農業になる施設がつくられるように、補助事業の中でそういうものが実現できたらというふうに私どもは期待をしておるわけであります。  以上であります。
  67. 竹光秀正

    竹光参考人 ただいまの御質疑でございますか、むしろ、私どもは貸す立場ではございませんで、反対に、数年前のごときは、大型酪農家に、まだ草地が草も出ていないのに大型の草刈り機を入れたり、それから大きな鉄骨で牛舎を建てたりということで、そういうときに私ども言ったことは、君たち、アメリカやヨーロッパへ行って酪農を見たのかとまで言って、投資をさせぬようにしました。しかし最近は、今お説のようなことはかなり修正されてきまして、是正されてきたと思っております。  私ども、やはり貸す立場ではありますけれども、払うときの農家の苦悩を知っておりますから、投資は最小限に、例えば牛乳あたりでも、冷却装置、サニタリーあたりにしましても十分乳が出るときに入れればいいじゃないかということで、むしろ二年、三年延ばすべきだという附せんというか意見をつけて、公庫あたりにも意見を出しているという状況でございます。
  68. 中林佳子

    ○中林委員 次に、須佐参考人の方にお伺いしたいと思うのですけれども、私、地元が島根県なものですから、山間地帯を抱えているわけなんですね。ですから、非常に注目をして入広瀬村の施策というのを拝聴させていただいたのです。ただ、非常に棚田の多いところを圃場整備されるわけでございますから、大変な御苦労があったというふうに思います。それが今九〇%の達成率にまでいっているというのでびっくりしているようなわけなんですけれども、負債がたくさんになるということで基金もおつくりになった。  こうしたお話を聞いた中でちょっと懸念するのは、私などは、圃場整備事業などをやるときはあくまでも農家の方々が本当に心から賛同してやらなければいけないのじゃないかという立場をいつも持っているのですが、村会でも全員の賛同は得られなかったんだとおっしゃいましたし、行政訴訟が起きているという話がございまして、その辺、どうしてなんだろうなと思うわけなんですね。もしお差し支えなかったら、反対者の方の意向というものをお話しいただければと思うのです。
  69. 須佐昭三

    須佐参考人 お答えいたします。  圃場整備事業についての農家取り組みは、一〇〇%賛成であります。一〇〇%賛成で圃場整備は実行されました。農家が圃場整備を行うに当たって、国、県の諸制度、そしてこれに対する村の対応はこうだ、ひとつしっかりとこの内容をわきまえて圃場整備事業に取り組んでくれということで、農家の皆さんも納得ずくで圃場整備が実行された、この点は事実は全く誤っていません。そのように実行されたわけでございます。  私が申し上げました議会における反対というのは、負債整理援助基金という基金を設定するに当たって、この基金を通じて農家負債を援助するということについては、公益に反するのではないか、こういう意見がお二人の方からあった。議会構成は十四人でありますが、そのうちの二人の意見がそういう意見であった、こういうことでございます。  しかし、私どもはこの事業、土地改良区に対する財政援助というものは、先ほど来先生方のお話にございますように、公益に合致するというふうに確信を持っておりますので、そのような方針によってこれからも対処してまいるという考えでございます。  負担金その他については十分納得ずくの中でなされましたが、結果的にはこういう数字が出てまいった、このままに放置すれば大変なことになるぞということからこのような行政上の措置を講ずるに至ったということでございます。
  70. 中林佳子

    ○中林委員 積極的に大変な御苦労の中で取り組んでいらっしゃることに敬服するわけですが、最高と最低の負担がかなり開きがあるということで、やはり山間地帯というのは平地よりも随分圃場整備にはお金がかかるだろうと私は思うのですね。私どもも、中国山地の市町村を初めそれを含んだ県から、こういう山間地帯には特段に補助率を高めていただけないかという要望なども出ているわけですけれども、この点について、もし国に対する御要望がありましたらお聞かせいただきたいと思うのです。
  71. 須佐昭三

    須佐参考人 その資料にも差し上げてございますように、私どもの実行いたしてまいりました国の制度は、補助率が七〇%から七五%という大変高率なものをちょうだいいたしてまいりました。農村工業導入対策事業あり農村総合整備事業あり、あるいは新農構事業あり、こうしたような制度をそれぞれ適用いただいてまいりましたが、どうか願いたいことは、現行補助率はあくまでも守ってほしい、この補助率を下げないでほしい。  今回補助金の削減等がなされましたけれども、幸いこの事業についてはそれらの措置はなされなかった。ただ、新潟県が財政が厳しくて、県の負担率を下げられたので結果的に私どもの受ける率が下がった、こういうことで残念に思っておりますけれども、ぜひこの現行制度の補助率は堅持してほしい、このように願っております。
  72. 中林佳子

    ○中林委員 最後に、竹光参考人にちょっと御意見を聞かせていただければと思うのです。  私のところも肉用牛和牛が非常に盛んなところなんです。先般も畜産の問題でいろいろとお話を聞かせていただきますと、やはり負債整理の問題が一番の要求になっているわけなんですね。先ほど北海道岡本参考人の方から負債整理資金の話などがありましたけれども、肉用牛の農家についてはそうした制度がまだできていないということがあるわけなんです。経営指導というものが非常に大切だとおっしゃったわけですけれども、酪農に今出しておる負債整理の資金は一年一年見直していくわけですね。だから、引き続いて借りかえをしていかなければいけないところもあるし、そのままでいいところもあるしということで、そういう面では、酪農に今適用されておる負債整理資金というのは営農指導も当然やらなければできない中身になっているわけなんです。ですから、私は、肉用牛肥育などについても当然そのような制度が必要なんではないかと思うわけなんですけれども、その点についての御意見があればお聞かせいただきたいと思います。
  73. 竹光秀正

    竹光参考人 お答えいたしますが、それは二通りに考えられるのではないかと思います。  普通に順調な酪農なり肉用牛経営をしておりましても、従来のようにただ金を貸しっ放しだけではなくて、えさでも効率的に使わせるなり、より安い牛の飼い方なり、あるいは経営管理とあわせてやれるような指導と、それから、私どもも、さっき申し上げましたように、北海道の岡本さんから二分の五十年という意見も出ましたが、こういう固定化しておる大口の債権については、より温かく、より厳しい姿勢で、農家を立て直すのだという気持ちでいかなければならぬと私は思いますから、普通の畜産の経営とは違った姿勢で、もうつぶれておるというか、つぶれかかっておる農家を救済するのだから、農家自身も真剣に夜も寝ないで取り組み、それに側面から農協や県や改良普及所、みんなが一緒になって資金管理、経営管理等をやっていくという二通りに考えなければ、一本ではいかぬのではないかと考えます。
  74. 中林佳子

    ○中林委員 皆さん、長い間どうもありがとうございました。これで終わります。
  75. 今井勇

    今井委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言お礼を申し上げたいと思います。  参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げたいと思います。  午後二時四十分から再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後一時二十九分休憩      ――――◇―――――     午後二時四十五分開議
  76. 今井勇

    今井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  審査を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新村源雄君。
  77. 新村源雄

    ○新村(源)委員 農林大臣はさきの所信表明の中で、これからの農政の基本的な方向構造政策で、こういうようにおっしゃっているわけです。この構造政策というのは、やはり価格政策を補完をして農業経営農民生活が守られるものでなければならない、こういうことは理の当然であるわけです。そこで、今回提案されております金融政策というのは、これは何といいましても構造政策の裏打ちをされる、構造政策がうまくいくかいかないかという非常に重大なかぎはこの金融政策にある、こういうように思うわけです。  そういう観点から今回のこの金融三法の改正内容を見てまいりますと、価格政策の補完をしながら進めていこうとする、そういう構造政策の裏打ちとしての金融政策としてはどうしても受けとめがたいわけですね。そういうことで、これはただいま私が申し上げたような、構造政策を裏打ちをする、そういうものとして改正されたのか、あるいはただ単に今までの金融体系というのを一時的に見直したのか、まずこういう点について大臣のお考えをお伺いしたい。
  78. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 新村先生にお答えいたします。  今回の農林漁業関係の制度資金改正というのは、一つは農林水産業者のための必要と要請があってやることにしたわけで、その一つは、最近の農林漁業をめぐる諸情勢の変化に対応しまして、私が申しております足腰の強い農林水産業の育成のため、さらに農林漁業投資を積極的に推進していく必要があること、それからもう一つは、財政の効率的運用等を図るため、いわゆる効果的助成手段の確立が要請されていること等を踏まえまして、各資金制度の特性に応じ資金種類の拡充等を内容とした改善合理化を図るものでございます。すなわち、それは三つございまして、一つは無利子資金である農業改良資金の再編拡充、それから近代化資金貸付限度額の引き上げ、公庫資金の貸付対象の拡大等各種の内容を行うとともに、構造政策等の推進方向に即した重点化を図るものであると思っております。  そんなことで、一番大切なことは、真剣に農林漁業の振興に取り組む者への円滑な資金の供給に配慮しています。全体として補助から融資への方向及び農林水産施策推進方向に即した内容となっていると私は考えております。
  79. 新村源雄

    ○新村(源)委員 今大臣のおっしゃったようなことでございますと、これはこれから進めようとする構造政策の裏打ちをされた、そういう改正である、こういうように理解していいわけですか。
  80. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 そのとおりでございます。
  81. 新村源雄

    ○新村(源)委員 そういたしますと、今回のこの金融三法の改正では、今言われております補助金から融資、こう変わっていくわけです。そうしますと、今日の農業情勢の厳しさというのは、これは昨日あるいはきょうの午前中の参考人意見等をお聞きいたしましても、非常に厳しい状況の中にある。そういう中で、もちろんこれは財政の問題もありますけれども、この農林予算内容を見てまいりますと、全体的に非常に厳しくなっている。今の金融三法のみではなくて、農業者に対するところのいわゆる補助金なり交付金なり、そして今度新たに金融措置をしていくというものを全体的に見ますと、非常に大幅な後退をしている、こういうように言わざるを得ないわけです。  今回提案されておりますこの予算案の中で農林漁業金融費、こういう中で総体で三十六億円の増になっています。しかし、内容を見てまいりますと、被害農家営農資金利子補給、あるいは信用基金協会にはわずかななんでございますが、信用保険事業に対する交付金がわずか二億を増額しておりますが、近代化資金の利子補給補助金あるいは利子補給金、こういうものを見ていきますと大幅な減額になっておる。特に金融事業のみではなくて、例えば農業振興費あるいは農業構造改善費、さらには農業改良普及対策費、畜産振興費、こういうものを見ていきますと、金融は確かに農林漁業金融公庫補給金が四十八億円ほどふえておりますけれども、私がざっと計算してみましても約二百億近いものが減額になっているわけですね。そして、その上でただ単に農林漁業金融公庫に対する補給金の四十八億円しかない。そうしますと全体的に大幅なダウンをしておる、こういうように言わざるを得ないわけですが、こういう内容でもって、一体今大臣がおっしゃったように構造政策の重要な柱として今度の金融政策というものは構えていけるのかどうか、こういう大きな疑念を持つのですが、どうですか。
  82. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生にお答えいたします。  制度改正につきましては先生お話しのとおりでございますが、私は二つの観点から施策の充実を図っていきたい、こう思っております。その一つは、農林漁業者の自主性や創意工夫をより生かすことができるという制度金融のすぐれた特徴を発揮させること。その次には、農林漁業者の資本装備の高度化等を着実に推進するという、この二つの観点から施策の充実を図っていきたい、こう思っております。そんなことで、今度の改正は、率直に言いますと真剣に農林漁業の振興に取り組む人々の利益につながるものと考えております。
  83. 新村源雄

    ○新村(源)委員 ほかの補助金、交付金に触れていきますと大変長くなってまいりますから、とにかく全体的に非常に大幅なダウンをしている、こういうように言わざるを得ない。そしてまた後ほど、今まで農林水産省が中心になってそれぞれの都道府県で進められてきた各種の構造政策、こういうもの等を見て論議をしていきたいと思いますが、いずれにいたしましても、理状では大幅なダウンをしている、こういうように断ぜざるを得ないわけでございます。  そこで、今金融の三本柱として取り上げられておりますのは、一つ農地等取得資金あるいは自作農維持資金、さらに総合施設資金あるいは土地改良資金、いろいろたくさんありますけれども、金融の柱として、資金の量から見ていきましても大体三本あるわけです。そういうように見ていきまして、農地等取得資金の現況等、これは私の町で調べたところでございまして、ごく近年の例でございますが、五十八年に四十五件、融資額が二億三百七十二万、さらにこれに総合施設資金が四千二十四億円、それから五十九年で見てまいりますと、四十件で農地等取得資金が一億一千九百万、総合施設資金が八千九十万、こういうように、現在農委のあっせんの額で一千万ですが、そういう限度枠を持ちながらも、資金の不足ということで金利の高い総合施設資金と抱き合わせにすることになっているのですね。そういう方向資金予算化というものが少ない、こういう現況があるわけです。  こういう現況の中で、今度この貸付枠が一般は二百万から四百万にする、農委あっせんのものは一千万から一千二百万にする、あるいは農用地利用増進計画によるものは一千五百万から一千七百万にする、こういうようにいずれも枠の拡大を図られた、これは私は非常にいいことだと思う。しかし、現況は、今言ったように五百万を超すものは総合施設資金と抱き合わせでやってくれ、こういう、北海道ですと道の要請があってやむなく金利の高いものを充当していかなければならない、こういうようになっているわけです。これらについては、これから資金枠をこういうようにふやされたのだけれども、そういうことではなくて、この貸付枠限度いっぱい予算化していくという、そういう裏づけが果たしてできますか。
  84. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 農地取得資金でございますけれども、近年のこの資金に対する需要動向を見てまいりますと、年々増加の傾向にございます。五十九年度におきましても、当初七百億円というのを予定したわけでございます。これは前年度の当初枠六百四十六億円に比べますとかなりの増枠をしたわけでございますけれども、これを上回る資金需要がございまして、年度途中に五十億円をさらに追加をいたしまして、合計で七百五十億円という資金枠でもって貸し付けを行っているような状況でございます。六十年度につきましては、資金需要動向を見てまいりまして前年度比、つまり昭和五十九年度比でございますけれども、この当初比で一〇二・八%ということで七百三十億円を計上しているわけでございまして、非常に厳しい財政事情のもとではございますけれども、私どもとしては精いっぱいの努力をしたつもりでございます。  また、総合施設資金との併用貸し付けについての御指摘がございました。この併用貸し付けの道は開かれておりますけれども、その限度いっぱいまで農地取得資金を使わないでこの総合施設資金を使っているのじゃないかということかと思いますが、確かに御指摘のようなことがあろうかと考えるわけでございます。資金需要動向によりましてそういったこともあるいはやむを得ないものとして総合施設資金を活用するということかと思いますけれども、これからも私どもとしては原則的に農地等の取得資金で対応いたしたいというふうには考えておりますが、状況によりましては必ずしもそうもいかないような状況も出るかと思います。地元と十分協議をしながら、できるだけ農地等の取得資金で充当できますように努力をしてまいりたい、このように考える次第でございます。
  85. 新村源雄

    ○新村(源)委員 過去の実績については了承いたしますが、私の問いたいのは、今度新たに二百万から四百万にした、あるいは一千万から一千二百万にした、一千五百万から一千七百万にしたという貸付枠を、資金需要に応じて、農地等取得資金、これは現在の金融の中で一番有利な金利あるいは償還年限等を持っておるわけですから、これを満席に重点的に、金利の高い総合施設資金などと抱き合わせにしないでやっていくかどうか、そういう決意があるかどうかということをお伺いしているのです。
  86. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 私どもといたしましては、農地等取得資金の限度額まではできるだけ農地等取得資金で対応いたしたい、このように考えておりますが、状況によりましては必ずしもそのようにまいらないような状況もあるのではないかと思いますけれども、できる限り本来の趣旨に沿いまして農地等取得資金で対応できるように努力をしてまいりたい、このように思う次第でございます。
  87. 新村源雄

    ○新村(源)委員 せっかくこういう貸付限度枠というものを増枠されたわけですから、実際に一千二百万あるけれども一千万で、あとは総合施設資金を使いなさい、こういうことになったのでは、せっかく限度枠はふやしたけれども何にもならぬわけですね。絵にかいたもちになるわけですよ。ですから、限度いっぱい農地等取得資金については予算の確保に全力を挙げてもらいたいということ。  それから、自作農維持資金でございますが、これは同じように私の地元の町で調べましたところ、昭和五十八年におきましては百五十八件、一億六千六百八十万、これは、御案内のように五十八年は北海道は大変な冷害でございまして、災害資金としてこれだけの融資がされたわけであります。ところが、昭和五十九年には九件で四千五百万。農協等に問い合わせますと、枠があれば大体一億円以上の需要がある、しかしこれは枠がないからもうこのくらいで勘弁してくれということで、せっかくの自作農維持資金という制度がありながら、災害資金等では大幅に認められるけれども、平年度においては本当に少ない額より認められないということが一つ。  それからもう一つは、今回のこの改正で一般枠は五百万はそのまま五百万ですね。しかし、特認が八百五十万から一千五百万、こういうように伸ばしておるわけです。これは、今の農家経済実態からいいまして、なぜ今回この一般枠も、少なくとも今まで特認で認めた八百五十万くらいまで上げられなかったのか、こういうことについて農水省の考え方をお伺いします。
  88. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 お答えをいたします。  自作農維持資金のうちの災害資金でございますけれども、これは天災融資法が発動されますような大災害の場合にはその都度自創資金の所要の災害枠というのを設定いたしまして融資を行っておりますし、また、被害が非常に激甚な地域におきましては、被害農業者の既貸付金の残高等の実情に応じまして特例の貸付限度額を設定してきておるわけでございまして、この限度額が必ずしも年度ごとに一定をしないわけでございます。今北海道の例がございましたけれども、そういった関係で五十九年度の場合には貸し付けの方が減少してきたのではないか、このように考えているわけでございます。  それから再建資金の方でございますが、これは五百万円の貸し付けの限度額で運用してきておりますが、五十六年度に特認の限度額で八百五十万円というのを設定いたしておりまして、この限度額をさらに六十年度におきまして千五百万円に引き上げる、こういうことにしたわけでございますけれども、一般の五百万円という限度額につきましては、貸し付けの実態からいいまして、これを引き上げる、そういう必要性は必ずしもないのではないか、こういった判断からこれを据え置いたわけでございます。
  89. 新村源雄

    ○新村(源)委員 恐らく、大臣もそういうように積極的に検討されようという言明をいただいているわけですが、農家負債整理対策というのはこれから検討し、実現に向けて努力をされる、こういうように思うわけです。しかし、これと関連をいたしまして、自作農維持資金というのは、平常年において農家が個人的にいろいろな災害を受けることが間々あるわけですよ。そういうものに非常に有効な資金として使われてきておるわけです。しかし、これは今までの経験から申し上げましても、平常年においては非常に窮屈な資金になっておるわけです。これがもう少し機動的に運用できる、そういうことであれば、今の負債整理対策というものについてもまた違った考え方が出てくるというような面も考えられるわけです。この点について、もっと積極的に枠の拡大なり、あるいは資金枠が、必要なものは大体満たしていける、こういうように積極的に取り組む意思はございませんか。
  90. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 自創資金資金枠でございますが、これにつきましては資金需要動向を見ながら適切に設定をして、その枠の確保に努力をいたしたいと考えております。なお、限度額等につきましても、貸し付けの実態等を見ながら適切に限度額を設定すべきという考え方で我々対処してまいりましたけれども、今後ともそういった考え方で運営してまいりたい、このように考える次第でございます。
  91. 新村源雄

    ○新村(源)委員 今度の改正の中で農業改良資金、無利子の資金というのがあるわけですね。これは枠がわずかに百五十億で、しかもこの内容を見てまいりますと、かなり選別をしなければ貸さない、審査が非常に難しい、なかなか対象にのれない、こういうように内容を見て感じておるわけですが、この点についてはどういう運用をされようとしておりますか。
  92. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 生産方式改善資金については、無利子の非常に政策的な資金でございまして、国の貸付金それから県の一般会計からの繰り入れという、いわば公的資金を使いまして県が貸し付けますので、御指摘のとおり、この資金を使います場合、特に新しい部門の生産方式改善資金については、果樹、畜産、養蚕、野菜等につきまして、それぞれの場合に一定の生産方式を導入する、従来の技術導入資金のように個々の技術ではございませんで、一つの技術を組み合わせました一定の生産方式を導入しまして、果樹でございますれば品種の転換なり樹種の転換をする、こういうような一定の要件に適合することが必要でございます。そこが非常に政策度合いの強い金融であるということになりますので、こういうような状況を見ますと、当面この新しい部門については百五十億円ぐらいの資金を見込もう、こういうことで計上したわけでございます。
  93. 新村源雄

    ○新村(源)委員 償還年限が、果樹の場合が十年、畜産が十年、野菜が七年、養蚕が七年、こういうようになっておるわけですが、この貸付条件といいますか、使い方によっては、農業の未来に希望を抱く後継者等がこういう資金によってかなり積極的に取り組めるのではないか、私はこういう期待を持つわけです。  しかし残念ながら、先ほどから言っているように貸付条件が少し厳しくなるという懸念が一つと、それから、これから恐らくこの資金の枠をもっともっと拡大していかれるだろうという期待は持っておりますけれども、もっと資金の貸付条件の緩和をすると同時に、資金枠拡大ということ。もう一つは、経営内容によっては、施設をするあるいは技術を導入するという実態に合わせてもう少し弾力的に償還年限を設定すべきではないか、こういうように思うのですが、どうですか。
  94. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 今先生のお尋ねの中で、貸付条件が今回厳しくなる、こういうふうに御質問があったわけでございますが、お尋ねの百五十億円部分はいずれも新設でございます。畜産につきましては五十九年度のものを継承いたしておりますが。したがいまして、従来一定条件があったものを今回より厳しくしたのではなくて、こういう一定の条件にかなうものについては無利子資金として新しく融資の道を開く、こういうことにしたわけでございます。そこが政策資金としてのいわば拡充と申しますか、新しい資金内容を設けたわけでございます。  なお、償還期限につきましては、従来一般的に七年でございましたが、畜産につきましては十年ということでやってまいりましたので十年にいたしましたほか、果樹等につきましても、十年ございますとこういう新しい生産方式の導入による所得増等を考慮しますと大体償還は可能であろう。特に貸付限度額が百分の九十というようなことで九割に設定をしておりますし、最長三年の据置期間を設ける、こういうようなこともあわせて考えますと、この資金融資を受ける方々の経営改善努力によりまして十年というような期間であれば大体処置できる、償還も可能である、こういうふうに考えております。
  95. 新村源雄

    ○新村(源)委員 次に、総合施設資金でございますが、これは午前中の参考人の御意見がございましたように、近年、農業情勢の厳しさから非常に積極的な資金需要というのは年々減退をし、減少傾向にあるわけです。今回、本制度活性化に非常に大きな期待を持っている、こういうことでございますが、今の資金需要という面から見て、この総合施設資金に今までよりもより積極的に資金需要増大してくる、こういうようには考えられないわけですね。そういう中であって、今度の公庫資金の整理統合の一環として、総合施設資金のいわゆる据置期間中の四・五の金利を廃止をした。これは一体どういうことであるか。積極的にやっていきたいという農林水産省の意向と裏腹に、据置期間の金利を、いわゆる特利というものをなくした。こういう点については、どういうお考え方でこういうような方向をとられたのですか。
  96. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 御質問の第一点の総合施設資金の今後の需要というか、貸し付けがこれで伸びるか、こういうお尋ねでございます。  この数年来の傾向を見ますと、御質問のように確かに総合施設資金融資実績は、件数、金額とも低下傾向をたどっておりますが、これは一つには資金需要がある程度一巡したというようなこともあろうかと思います。今回の改正内容としましては、育成して自立経営になるというような、私ども自立経営目標の七割程度の目標を達成するという経営にしてはどうかと思っておりますが、そういう経営を目指して経営改善する者を対象にするというようなことで、これは従来段階的融資ということでやっておりましたものが、実際の件数はこれまで百四十一件でございまして、非常に少なかった。こういうことも考えますと、今回の改正を契機にしまして、また、私ども従来からやっておりますような本資金借り受け農家に対する指導を十分徹底をすることによりまして、総合施設資金という、これは公庫融資の中では非常に大事な資金でございますので、何とかひとつここでこの需要活性化すると申しますか、もっと利用されるような、本当に資金を必要とする方の利用されますような状況に持っていきたいと考えております。  また、据置期間中の金利につきましては、これは確かに、全体の背景としましては今回の改正一つの要素でございます財政資金の効率的活用、こういうことに対応する措置であることはそのとおりでございますが、一方、総合施設資金については、ただいま申し上げましたような貸付対象、若い農業者で意欲がある人にも利用できるように拡大していく、また一方、貸付限度につきましてもこの際若干の引き上げを行っていく、こういうような改善措置とあわせまして、全体の資金の効率的利用という観点からしますと、こういうような形で据置期間中の四分五厘という金利を廃止するということはやむを得ない、こういうふうに判断をした次第でございます。
  97. 新村源雄

    ○新村(源)委員 財政状況からいえば、先ほどから言っているように補助金から融資、さらにできるだけ低金利のものを整理統合と言ってどちらかといえば上げていくわけですね。大臣、こういうことで、財政の事情だけでこういう金融体制を、例えば金利を上げる、あるいは補助金等を少なくしていくというようなことになれば、現実の問題として日本の農業というのは一体もっていくというようにお考えになっていますか。     〔委員長退席、島村委員長代理着席〕
  98. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 今回の制度金融の見直しに際しまして、貸付条件につきましてもいろいろ検討をいたしたわけでございます。そして、その中で、ただいまお尋ねのありました総合施設資金の据置期間中の四分五厘という金利を廃止をしたということでございますが、今回の見直しの中で金利については全部上げているということではございませんで、総合施設資金の借入対象者の資格を拡大し、今までの自立経営目標の七割方の規模のいわゆる中核的な担い手の農家の方々まで借りられるようにするということに伴いまして、酪農・肉用牛経営改善資金でございますとか果樹園経営改善資金、こういうものも統合いたしまして、その結果、従来五分五厘でございましたこれらの資金総合施設資金に統合されまして五%の金利借り入れができるということになったわけでございますし、四分五厘の金利制度を簡素化するということで整理をいたしましたが、重要なものは一部三分五厘に下げるというような措置もやっておるわけでございます。
  99. 新村源雄

    ○新村(源)委員 特にここで大臣に強く要請をしておかなければならないのは、確かに財政の事情からいえばできるだけ予算を少なくしていく、そして金利等を高くしていくということになると思うのです。しかし、今の日本の農業実態というものはそういうものではなくて、一つには国際化への対応という問題があるでしょう、さらにはまた、今日低農畜産物価格をある程度余儀なくされている。こういう中で制度までもどんどん後退していけば、農民の生きていく道というのはなくなっていくわけですね。全体から締められてくる。ですから、今後農業施策の中で、財政上の理由というようなことで制度の後退というのは、むしろ後退ではなくて充実したものにしていかなければならない農業実態にあると思うわけです。そういう点について、大臣、どういうようにお考えになりますか。
  100. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生にお答えいたします。  先生御指摘の点もございましたが、例えば国営事業とか土地改良事業等を見ておりまして、補助と融資という場合に、補助事業の場合、一般会計が非常に厳しくなって事業がおくれできます。融資の場合ですと、例えば自分の計画どおりいくというようなことも出てくる。そんなことで、事業効果を高めるのには非常にいいのではないか。したがって、先ほどちょっと言いましたが、真剣にまじめに農業に取り組んでいる人にとっては非常に有利ではないか。こんなことも考えているわけですが、基本的には守るべきものは守るというような姿でこれから農政を進めてみたい、このように考えております。
  101. 新村源雄

    ○新村(源)委員 次は、北海道農家負債の問題に触れていきたいと思います。  これは北海道農林水産統計年報の中から拾ってきたものですが、稲作単一経営それから畑作単一経営あるいは酪農単一経営、こういう三部門で見ているわけです。まず稲作単一経営では、昭和五十二年に農業所得率が六一・二%ありました。しかし、それが年々後退しまして、昭和五十八年には三四・四%に低下しております。さらに、畑作単一経営では、これも昭和五十二年では四二・七の所得率が五十八年では二九・四%に下がっています。また酪農経営では、五十三年に三六・二%のものが五十八年には二二・一%、こういうように年々所得率が下がっております。  その背景には何があったかといいますと、北海道においては約十万ヘクタールの米の減反、酪農におきましてはいわゆる生産調整、畑作においては、これは凶作もございましたが、いわゆる外豆等による価格の暴落等が含まれてこういうように年々農業所得率というのは低下してきておる。  そこで、今水田畑作酪農負債の問題は大体似通っておりますけれども、酪農の部分について拾ってみました。これは十勝のある農協実態でございますが、昭和四十七年当時の負債が約十八億三千万、昭和六十年には九十六億七千万、こういうように、所得率が下がると同時に負債がどんどん伸びてきておる。そして酪農の場合に限って申し上げますと、この間には第二次酪農近代化計画、昭和四十二年から五十二年、そしてこのときの目標は百十八万トンから二百五十一万トン、年率一一・三%伸ばしていけという計画。しかしこの計画が達成しないうちにさらに昭和五十年から六十年に第三次酪農近代化計画、これは基準年次の百四十六万トンから達成年次の六十年には三百四万トン。しかし、これも達成年次を迎えないで、第四次酪農近代化計画というのを昭和五十七年から六十五年を目標年次にして、二百二十八万トンから三百十四万トン。こういうように、目標が達成されない、その次にまたすぐ新しい計画を示していく、こういうことが相次いで行われたわけです。それが、先ほど私が申し上げましたように、昭和四十七年当時十八億三千万程度負債昭和六十年、ことしの三月には九十六億円という、実に五倍強の負債額増大してきたわけです。  こういうように経過をたどってみますと、まさに第二次、第三次、第四次という酪農近代化計画をもって農民に目標を達成させるために、あらゆる制度を利用してどんどん施設の増強を図ってきた。しかし残念ながら昭和五十四年度からいわゆる牛乳の生産調整が行われた。こういう状態で、今日北海道酪農酪農経営安定資金という負債整理の対策が行われておりますけれども、それはわずか三千戸程度であって、多くの酪農家がこういう中にいる。こういう点について畜産局長は、反省として今どういうようにお考えになっておりますか。
  102. 野明宏至

    ○野明政府委員 お答え申し上げます。  酪農負債の問題に関しましては、五十年代の初め生乳生産の伸びが七%ないし九%ということで、需要を相当上回る規模で生産が拡大してまいったわけでございます。そういう中で過剰に突入いたしまして、ただいまお話がありましたように、五十四年度から計画的な生産ということが生産者団体の自主的な努力によって始められたわけでございます。そういう中で、これまで規模を拡大してまいった農家の一部には負債が固定化するというふうなことが出てまいったこともございまして、五十六年度から酪農負債整理資金というふうなことで負債対策を講じてまいっておるわけでございます。その後経営環境が好転してまいっておるわけでございますが、なお一部には今後対策を要するというものもあるわけでございます。一般的には、先ほどお話がございましたような自創資金における再建整備資金というものを活用して対処してまいっておるわけでございますが、なお特別な対策を要するというものにつきましては、六十年度におきます酪農負債整理資金の融通におきまして負債整理計画に対する最終年度としての対策を講ずることといたしまして、いわばこういった農家が六十年度以降におきましても経営の安定が図られるような措置を講ずることとしたいと考えておるわけでございます。
  103. 新村源雄

    ○新村(源)委員 そうすると、確認をしておきたいのですが、昭和六十年度以降についても酪農家負債整理対策というものを引き続いてやっていく、こういうことでございますね。
  104. 野明宏至

    ○野明政府委員 お答えいたします。  対策農家が三千戸余でございますが、これらの中には経営改善が達成されて卒業された農家が千二百戸程度あるわけでございます。それらの農家で、六十年度のいわば約定償還金で返せないものについて酪農負債整理資金による融資を行いまして、なお残高が残るということになりますと、これらの農家については六十年度以降やっていけないという問題が出てまいるわけでございます。ですから、そういった点も含めて、六十年度の対策の中に織り込んでやってまいりたいと考えておるわけでございます。
  105. 新村源雄

    ○新村(源)委員 私が先ほどから強調しておりますのは、昭和五十六年度に対象になった三千八十戸ですか、この農家について言っているのではなくて、北海道酪農全体が、もっともっと多くの対象以外の方々がこういう状態の中で非常に困っておる。ですから、それを改めて対策をしていくか、こういうことを聞いているわけです。
  106. 野明宏至

    ○野明政府委員 お答え申し上げます。  そういった御意見があることは承知をいたしております。ただ、五十六年度に酪農負債整理資金をスタートさせましたときに対象農家として手を挙げていただいて、経営改善計画を立てて毎年見直しをしてやってまいっておるわけでございますが、そういった農家は三千数百戸であったわけでございます。  それで、これ以外の農家の問題につきましては、必要があれば一般的な自創資金による対策というふうなものが用意されておるわけでございまして、この臨時特別な資金というものについては、それらの農家を対象とすることは考えておらないわけでございます。
  107. 新村源雄

    ○新村(源)委員 大臣にお伺いしますが、一般的に農家負債整理の必要性というものについて、今までしばしばこの委員会でも問題提起がされているわけですね。大臣もその実態については大体理解を示されて、今後善処していきたい、こういうお気持ちになっているというふうに私ども理解をしているわけです。  そこで、今畜産農家、酪農家、こういう人たちはそれぞれの時点で一定の対策を進めておりますけれども、そういうことがもう全体的に広がってきているということでございますから、今局長がおっしゃったように酪農の部分については考えていかないんだということになったら、これは大変な問題になる。この点について大臣、引き続いてそういう対策を検討していくというように理解しておるわけですが、どうですか。局長の話とちょっと違うのですが。
  108. 野明宏至

    ○野明政府委員 お答えいたします。  酪農負債整理資金につきましては、先ほどお答え申し上げましたように五十六年度から三千数百戸を対象としてやってまいったわけでございますが、これらの対象農家経営環境が非常によくなってまいったわけでございます。ただ、六十年度にやりました場合も、六十一年度以降に措置を要するような残高が残る農家も見込まれるわけでございます。したがいまして、そういう農家につきまして、六十年度以降もやっていけるような点を含めて今回対策をとってまいりたい。  それ以外の一般的な部分につきましては、先ほども申し上げたわけでございますが、酪農をめぐる環境は、生産性の問題あるいは所得の問題、全般的には改善されてまいっておるわけでございます。したがいまして、それ以外の方についてはいわば一般的に用意されております措置によって対応してまいりたい、そういうふうに考えておるわけでございます。
  109. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  今局長が言ったとおりでございますが、先月末の畜産物の価格対策につきましても、やはり負債対策をかなり加味したと思います。  それからもう一つは、たしか道庁で六十年度に農家実態調査をやると聞いておるので、その実態調査を踏まえまして諸施策を考えたい、こう思っております。
  110. 新村源雄

    ○新村(源)委員 局長さんと大臣の答弁はちょっとニュアンスが違うわけですが、理解としては、道庁で今そういうものの実態調査をしている、その実態を見た上で必要があれば一般酪農家についても対策を進めていく、こういうように理解してよろしいわけですね。
  111. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 そのとおりでございます。
  112. 新村源雄

    ○新村(源)委員 畜産局長、先ほどから私が言っているように、せっかく高い目標を何回もつくりかえていっておるわけですね。しかしその目標に到達しないうちにまた目先を変えていく。そしてさらに限度数量ということでいわゆる生産の枠をかぶせてきておるわけですね。そのために北海道の第三次計画を見ましても、昭和六十年度には三百四万トンにならなければならないものを、五十八年度では二百四十万トンよりないわけですよ。五十九年においても二百五十万トンまでいっていない。こういういわゆる生産調整によって生産がずっと規制されてきているわけですね。そういう中で、ことし農業団体の限度枠が三十一万トン要求されていたにもかかわらず、わずかに八万トンより認めなかった。これは非常に遺憾なことであって、こういうことが北海道酪農というものを非常に困難な状況の中に陥れてしまった。この点については、私は、やはり先ほど局長がおっしゃったように、生産が拡大してきたから滞貨をした、こういう農林水産省としての見通しなりあるいは対策なりがその時点その時点で適切でなかった、こういうことが現在の農家経済実態になってきていると思うわけです。  そこで、昭和五十九年度のいわゆる乳業者の利益というものは非常に膨大な利益があるということはもう既に公表されたところですね。そういうことで、ことしの基準取引価格を九十九銭値上げした。しかし、値上げはしたけれども、これは政策吸収をされて、農民のところには一つも利益還元がされなかった。そこで、昭和五十九年度分は乳業メーカーが持っているわけですから、これをせめて一年分ぐらい農民に、いわゆる無脂固形分の増加分といいますか、九十九銭、それだけになるかどうかは別として、その利益分を五十九年度に限って農民に還元させる。せめてそのぐらいの農林水産省としての酪農に対する思いやりがあっていいのではないかと思うのですが、どうですか。
  113. 野明宏至

    ○野明政府委員 六十年度の保証価格等の決定につきましては、先般、畜産振興審議会の意見を聞いて決定いたしたわけでございます。その際、安定指標価格あるいは基準取引価格についての見直しも行っておるわけでございます。  そこで、ただいま大変利益が出ておるではないかというお話がございましたが、これは安定指標価格と対比いたしました場合に、昨年度それを上回る状態があった。また、かつては安定指標価格を十数%下回るというときもあったわけでございます。したがいまして、そういう中でどこまでがいかなる利益かということを言うことはなかなか難しい点がございます。  今お話しの基準取引価格との関連の問題でございますが、基準取引価格につきましては、いわば加工原料乳につきましては基準取引価格水準以上での取引というものが行われることになっておるわけでございます。こういった上回る価格での取引というのは当事者間の合意にゆだねられておるわけでございます。したがいまして、いわば指定生乳生産者団体、これは一元集荷、多元販売を基礎といたしました交渉権限も与えられておるわけでございます。実際にこれまでも両者の交渉によりまして相応の還元がなされたということもあるわけでございます。そういうことでございますので、私ども、この問題につきましては、当事者間の合意によって取り扱われていくものであるというふうに考えておるわけでございます。
  114. 新村源雄

    ○新村(源)委員 局長、それはちょっと私は責任逃れだと思うのですね。農林水産省としては、基準取引価格を決定するのに、いわゆる脂肪が幾ら、無脂固形分が幾らというふうなことを、そういう農林水産省の基礎資料に基づいて基準取引価格が決められるわけでしょう。ですから、それ以上に出ていったものについては、当然行政官庁として、どうあるべきかということを関係諸団体に行政指導すべきじゃないですか。そんなに、当事者間でやればいいというものじゃないでしょう。こういうことだとその問題点を明らかに指摘をして、この問題については当事者間において協議をしなさい、そういう指導通達を出すべきだと思うのですが、どうですか。
  115. 野明宏至

    ○野明政府委員 お答えいたします。  基準取引価格自体は、最近の諸般の情勢を総合的に勘案いたしまして見直しを行っておるわけでございますが、これは見直す前の状態と対比いたしまして、過去においてどれだけ利益が留保されておったかということについては、これは必ずしもつまびらかではないわけでございます。したがいまして、いずれにいたしましてもこの問題は、当事者間の合意にゆだねられるべきものであろう、その意味におきまして、指定団体という制度が設けられ、交渉権限も与えられておるわけでございます。両者の間で十分話し合って解決すべき問題であるというふうに考えております。
  116. 新村源雄

    ○新村(源)委員 局長、それからもう一歩出て、もう乳業がもうかっているということは、これは昭和五十七年からわずか三カ年間のうちに毎年百億以上の利益が出ているということは、これは報道関係者やその他の調査で明らかなわけですね。そういうのに農林水産省は目をふさいで、一番苦しい農民に我慢をせい、そういう精神じゃいかぬと思うのですよ。私が言っているように、もう一歩進んで、こういう状態であるので当事者間において十分協議をしなさい、こういう指導通達を出せ、こう言っているのですが、それは出せないのですか。
  117. 野明宏至

    ○野明政府委員 利益が出ているかどうかということにつきましては、先ほどお話し申し上げましたように、過去においては、極端な場合には安定指標価格を一〇%以上下回る時期が続いたこともあるわけでございます。したがいまして、その時点その時点の条件の中でメーカーなり何なりはそれなりの企業努力がなされておるわけでございます。したがいまして、おっしゃるような、単に安定指標価格と比べてどうだということは一概には申し上げられないわけでございます。したがいまして、いずれにいたしましてもこの問題は……
  118. 新村源雄

    ○新村(源)委員 もっと簡単でいいですよ。私が言っているのは、あなたがここで説明しているのを、それをもう一回、ただ単に、指導通達をしなさいと言っているだけなんだ。あなたはその現実を既に認めているのでしょう。
  119. 野明宏至

    ○野明政府委員 その点につきましては、先ほども申し上げましたようにメーカーと指定団体が十分話し合って解決すべき問題であろうというふうに考えております。
  120. 新村源雄

    ○新村(源)委員 これは、これからも局長さんに強く迫って、ぜひともその実現を期していきたいと思っております。  時間がなくなりましたので、以上で終わります。
  121. 島村宜伸

    ○島村委員長代理 吉浦忠治君。
  122. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 金融三法につきましてお尋ねをいたしたいのですが、私は、水産関係だけに絞りまして質問をいたしたいと思うわけでございます。  最初に大臣にお尋ねをいたしたいのですが、法案に入ります前に、日ソサケ・マス漁業交渉についてお尋ねをいたしたいのです。  新たな日ソ漁業協力協定を締結するための第六回目の交渉が三月二十一日から始まっておるわけでありますが、母川国の主権を協定文にどう書き込むかという、その入り口のところで話し合いがついていないわけでありまして、現在、日ソ漁業協力協定は昨年末で失効しておるわけであります。新たな協定が締結されない限り今年の北洋サケ・マス漁業は操業できないということになるわけでありまして、この早期締結が望まれているところでありますが、安易な妥協はこれまた禁物でありまして、政府に大変御苦労を願わなければならないわけでありますけれども、現在までの交渉の進捗状況と今後の見通し、しかも五月の操業に間に合うかどうか、これはぜひとも間に合わせていただきたいけれども、こういう点を要望申し上げてお答えいただきたい。  もう一点、大臣よろしゅうございますか。鯨の問題ですけれども、これは日米捕鯨協議が行われておるというふうに聞いておりますけれども、アメリカが大変厳しい態度でありまして、商業捕鯨全面禁止の決定に対する異議申し立ての撤回の期限でありますところの四月一日を前に、当委員会でも決議を行ったわけであります。この四月一日を過ぎて交渉はどういうふうに進んでおるのか、また政府は異議申し立ての撤回をどのように取り扱うのか、我が国の捕鯨を継続できるのかどうかという瀬戸際でありますので、この点お答えをいただきたい。
  123. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 吉浦先生にお答えいたします。  日ソ漁業関係につきましては先生の御指摘のとおりでございまして、五月からの漁期を控えまして、北洋サケ・マス漁業の根拠となります日ソ漁業協力協定の締結交渉が現在モスコーで行われており、厳しい局面を迎えておると考えております。  また、日米漁業関係につきましては、近年、米国は自国漁業の発展を背景として、その二百海里水域から外国漁業を締め出す姿勢を強めており、また、二百海里水域内の漁獲割り当てを捕鯨禁止の手段として利用するという態度を見せております。私といたしましては、我が国遠洋漁業の存続を図っていくために、今後とも相手国に応じ、我が国の漁業協力や伝統的な漁獲実績等我が方の立場を情理を尽くして相手国に説明をしていくなど、粘り強い漁業外交に最大の努力を傾注してまいりたい、このように考えております。
  124. 斉藤達夫

    斉藤(達)政府委員 まず、日ソ漁業協力協定交渉についてでございますが、先生御指摘のとおり三月二十一日から第六回目の交渉に入っております。しかしながら、基本的には母川国にサケ・マスに関する第一義的な利益と責任があるということ、それから、日本の漁船に公海漁獲を実態上認めるということについては大筋の合意はあるのでございますけれども、実際に海洋法の規定をどうやって二国間の協定の中へ織り込むか、特に、日本漁船が漁獲をするための条件をだれがどういうふうにして定めるのかというようなところが非常にデッドロックになっておりまして、予断を許さない状態になっておるということは事実でございます。  今回の交渉では、五月の出漁時期を控えまして、具体的な条文の作成をできるだけ早くやりたいということでやっておるわけでございますけれども、いまだにその具体的な条文はできておりません。その条文ができ上がった段階で実態交渉に入るわけでございますが、我が国の北洋のサケ・マス漁業者並びに関連産業の方々の御心配、それから今後の生活というような問題もありますので、今後とも最大限の努力を傾注してまいりたいと思うわけでございます。  それから、捕鯨についてでございますけれども、三月二十三日から私、ワシントンに参りまして、その後佐野長官がワシントンに参りまして、米側関係者と協議をやっておったわけでございますけれども、米側としては、昨年十一月に行った提案以上の譲歩はできないということで非常に強硬な態度に終始しておりまして、事実上、四月一日を過ぎました現在でもまだ決着を見るに至っておらないわけでございます。この問題につきましては、引き続きまして関係の業界とも協議し、かつ本委員会の御決議あるいは国民一般の世論等にも細心の注意を払いながら対処してまいりたいと思っております。
  125. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 それでは法案の方に入りますけれども、私はたくさん通告はいたしておるものですが、一時間以内にとても終わりそうにございませんから、なるべく簡潔にお答えをいただきたいと思います。  私は、金融三法のうち、特に漁業近代化資金助成法改正案に限定をいたしまして質問を行いたいと存ずるわけでございます。  今回の改正案は、厳しい財政状況のもと、水産庁が財政当局と真剣な折衝のもとに法案を提出されたものであると考えるわけでありますけれども、三重苦にあえぐ我が国漁業の立場からいえば決して満足すべきものではないと思うわけでございます。私が重点的に金融三法のうち特に漁業近代化資金助成法改正案のみを質問するゆえんもそこにあるわけでありまして、以下、現行制度上の問題点が今回の改正案でどのくらい克服されたか伺ってまいりたいと思うわけでございます。  漁業近代化資金は、系統資金原資の代表的な制度資金でありますが、漁船資金を中心に融資実績の純減、貸付残高の減少がこの二、三年継続しているわけであります。これは、三重苦に見られる漁業環境悪化を反映した漁業者の設備投資の減退という現象がありますが、制度に内在する問題点が大きく作用していると考えるわけであります。そこで、今回の改正はいわゆる漁業関係者の要望をどの程度改正に入れられたのかどうか、これが第一点。二点目は、今後の貸付枠の消化の見通しはどういうふうになっておるか、この点をまずお伺いをいたしたい。
  126. 斉藤達夫

    斉藤(達)政府委員 漁業近代化資金制度につきましては、先生御指摘の近年の漁業経営悪化というようなことから、漁船使用が長期化いたしまして、漁船を中心としました設備投資に対する資金需要が低迷しているという状況に対応いたしまして、貸付限度額を二倍に引き上げる、それから漁船資金の貸付対象トン数を七十トンから百十トンに引き上げる、それから漁船資金の償還期限を十二年から十五年に延長する、それから地域漁業総合整備資金制度創設する等、いろいろ改善を行うことにしておるわけでございます。これは厳しい財政事情のもとにおきましては、関係団体等の要望を相当十分に取り込んだものであると考えておる次第でございます。  第二点の御質問にございました今後の資金需要の増加ということでございますけれども、この資金需要につきましては、今後の経営動向に大きく左右されるということはやはり認めざるを得ないと思いますし、それに加えまして、従来から現行のトン数規模あるいは貸付限度についても特認制度というのを設けておりましたので、これが一部吸収されるというようなこともありますので、今回の改正がすべて純増につながるということにはならないかと思いますけれども、やはり資金需要増大は相当見込まれる。ただ、正確に数字で申し上げることは困難であるということでございます。
  127. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 漁業近代化資金農業近代化資金の貸付状況を対比してみますと、同じく貸付率は低下をしているわけでありますけれども、農業近代化資金の方は、昭和五十三年の七三・九%から五十八年五六・七%と緩やかに下降しているわけであります、ところが漁業近代化資金は、五十三年の九八・八%から五十八年五二%と、異常と思われるほど急激に低下をしているわけであります。私は、ここに漁業経営の困難さと、条件が農業に比較して著しく悪くなっている、このように半減している状態を見るわけでありますけれども、農水省はこの差をどういうふうにお感じになっていらっしゃるのか、この点をまずお伺いをいたしたい。
  128. 斉藤達夫

    斉藤(達)政府委員 漁業関係の貸付実績の落ち込みが、農業に比べてかなり激しく落ちているということは事実でございます。特に、近年の漁業経営は、先ほど先生御指摘ありましたように、燃油価格等の高水準での推移、それから二百海里体制の強化、定着化、あるいは水産物需要の伸び悩みによる魚価の低迷という、いわゆる三重苦という厳しい環境下にございます。実際に、第二次オイルショック後の五十五年以来、中小漁業経営につきましては赤字基調で推移しておるということで、経営状況は厳しい状況にある。それからまた、沿岸漁家経済につきましても、中小漁業経営ほどではございませんけれども、やはり同じく燃油価格の高水準での推移あるいは魚価の低迷ということで、漁家所得が低迷を続けているという状態でございます。このような事情のために、漁業者の設備投資資金である漁業近代化資金の貸付実績が低調に推移しているというふうに考えざるを得ないと存じております。
  129. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 貸付限度額の引き上げについて伺ってまいりますが、単純に現行の二倍に引き上げる、こういうふうになっておりますが、最近の漁業用施設の大型化あるいは施設単価の上昇とあわせまして勘案してまいりますと、二倍の引き上げが本当に妥当であるかどうか、大変私は疑問であると思うわけです、  そこで四点にわたってお尋ねをいたしますが、まず第一に、二倍とした根拠は何なのかどうか、二倍で足りない漁業者に対してはどのように対応なさるのか、この点が第一点。漁船資金借り受け者等について、二十トンで線引きをされているわけでありますが、二十トンを境に金利が違うのでありまして、この二十トンの根拠というのはどこにあったのか、これが第二点。第三点は、船が大型化している今日において、二十トンの基準を見直す必要があるというふうに考えますけれども、水産庁はこの見解をどういうふうに持っていらっしゃるのか。第四点は、特認の問題でありますけれども、今後の特認の運用方針についてどのようなお考えを持っていらっしゃるか。その四点、お尋ねをいたしたい。
  130. 斉藤達夫

    斉藤(達)政府委員 まず、今回の貸付限度額の引き上げでございますけれども、主な融資対象施設の一件当たりの貸付額を、前回限度額を引き上げました四十九年度と比較してみますと、四十九年度の一件当たり貸付額と五十八年度の一件当たりの貸付額でございますが、四十九年度を一〇〇といたしますと、漁船につきましては一八八、それから漁船漁具保管修理施設等につきましては二一八、それから養殖用施設が二三五、それから養殖用種苗の購入育成施設が一六九と、ほぼ二倍前後に伸びていることや、それからまた、漁業用の生産資材の卸売物価が十年間くらいの間にほぼ二倍になっておるということで、漁業者等の資金需要に十分対応できるのではないかというふうに考えておる次第でございます。もちろん、一部の漁船、例外的な場合でございますけれども、この引き上げられた貸付限度でも資金需要に対応できないような場合には、大臣の特認制度の適切な運用により対処してまいりたいと存じております。  それからまた、二十トンという区分でございますが、一般的に中小漁業と言われておりますのが、十トンを境にしまして、十トン未満を沿岸漁業、それから十トン以上を中小漁業と言っておりますが、中小漁業の中でも船の小さいものというのは、沿岸漁家と同様に生業的な零細な経営であるということで、近代化資金の漁船資金の適用金利につきまして、沿岸漁家と中小漁業の下のものを一括しまして、二十トンのところで線を引いておるということでございます。  それからまた、限度額の引き上げにつきまして、大型化という御指摘がございましたが、沿岸漁業といいますと十トン未満が中心、それに類似の経営、中小経営の下の方ということで、やはり二十トンということで、同じような考え方で区分しておるわけでございます。  それから特認の運用方針でございますが、この近代化資金貸付限度額はおおむね平均的な漁業規模を基準として設定されておりますが、例えばいろいろな漁業種類の中には、二そうの船をどうしても使わなければいけないとか、あるいはさらに二そう以上の複船操業でなければいけないというような漁業、あるいは同じ漁船の規模であっても非常に装備が高度化しておる漁業等がございます。例えばカツオ・マグロ漁業とかサケ・マス漁業とかいうようなものがございまして、これらの中には、引き上げ後の貸付限度額でも資金需要に対応できないということもありますので、このような場合には、今後とも貸付限度額の特認を行いたいというふうに考えておるわけございます。
  131. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 次に、漁船資金対象漁船トン数の見直しについて伺っておきたいのです。  まず最初に、制度発足当時、七十トン未満の漁船に限定しても、沿岸並びに沖合の大部分の漁船を漁船資金の対象としてカバーすることができた、こうされております。漁船の大型化あるいは新測度法施行に伴いまして、見かけトン数等がアップされたことから、業界なりあるいは関係者から大幅に引き上げるべきだというさまざまな要望が出されているわけでありまして、本法改正で百十トン未満に引き上げる、こういうふうにしておりますが、なぜ百十トンというふうに規定されたのか、その根拠をお伺いいたしたい、これが第一点。  第二点は、現在おおむね九割をカバーしてきていたとしても、新造船の造船が進むに従いまして、日ならずしてまた急激にそのカバー率が低下することは明らかでありまして、適宜、対象漁船の見直しを行わなければ制度そのものの後退となるというふうに考えるわけであります。適宜その見直しについてのお考えをどういうふうにお持ちなのかどうか。この二点をお伺いいたしたい。
  132. 斉藤達夫

    斉藤(達)政府委員 漁業近代化資金制度の貸付対象漁船は、この制度ができました昭和四十四年度以降、原則として七十トン未満を限度としてきたわけでございますが、先生御指摘のとおり、近年、漁船が大型化しているということ、それからまた、新しくトン数のはかり方が変わりまして、今までは漁船の内容積ではかっておったものが外容積ではかるというようなことになりましたので、実際に漁船そのものの大きさは変わらなくても、名目上トン数が上がってしまうというようなことが出てきております。そういうことのために、漁船建造資金に占める近代化資金のシェアが減少傾向にあるわけです。  このため、今回の制度改正におきましては、本資金の貸付対象の漁船のトン数限度についても見直すことということにしたわけでございますが、この際、近代化資金というものの貸付原資は沿岸及び沖合漁業者の系統関係の預貯金でございますので、それに相応する沿岸及び沖合漁業の大部分を融資対象とできるようにするという制度創設当時の基本的考え方にのっとりまして百十トンというふうに定めたわけでございますが、このことにつきましては、都道府県等の意向も踏まえまして、大体現在の沖合漁業の大部分を包含し得るというふうに考えておるわけでございます。  それからまた、もう一つ御指摘がございました、今後漁船の更新が行われて大型化していけば限度を変えるべきではないかという御指摘につきましては、今後漁船のトン数別構成が相当程度変化し、今度のトン数限度が成り立っております沖合漁業のほぼ大部分という基本的な考え方と乖離するような状態になりましたら、その段階で見直しをすべきだというふうに考えております。
  133. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 次に、地域漁業総合整備資金制度について伺いたいのですが、これは水産庁が六十年度予算で活力ある漁村づくりの三本柱の一つとして行おうとしているものでありますが、地域営為計画のもとで地域漁業再編に資するものに特利によって近代化資金融資するというもので、枠は四十億円、こういうふうに聞いております。政府の一部ではこの特利を、例えば減船を伴うもののみを対象として運用すべきであるという考え方があるやにも聞いておるわけでありますが、少なくとも水産庁が本年度予算の上で活力ある漁村づくりの目玉として行おうとする事業であるならば、後ろ向きの事業であってはならないと思うわけでありまして、栽培漁業を含めまして、資源管理型漁業推進のため並びに本来の意味での活性化を図るためには、拡大をしていただきたいというふうに私は要望を兼ねて伺っておきたいと思います。この点まずお答えをいただきたい。
  134. 斉藤達夫

    斉藤(達)政府委員 地域漁業総合整備資金制度につきましては、沿岸漁業を中心としました地域漁業が漁獲努力と資源とのアンバランスというようなことから多くの問題を抱えていることにかんがみまして、漁場利用の適正化を基本として活力ある漁村をつくるということで今度計画されておるものでございます。そのような趣旨に立ちまして漁場利用の適正化を推進しようとする場合に、そこで生じてくる地域内における漁業者の負担能力の低下というような事態に対処するために漁業近代化資金の特利措置を講ずるということにしたわけでございます。  したがいまして、本制度の適用に当たりましては、漁獲努力の抑制を通ずる漁場利用の適正化という方策が実施されるということが必要でございまして、栽培漁業等もそれらとの関連では考えられるのではないか。ただ、その運用の細部については今後とも財政当局と相談してまいりたいと思っております。
  135. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 そのようにしますと、運用によっては四十億円の特利の枠が超過することが考えられるわけでありますが、そういう場合にはどのように対処なさるおつもりなのかどうか、お尋ねをいたしたい。
  136. 斉藤達夫

    斉藤(達)政府委員 今後財政当局とも協議していく問題でございますけれども、今年度の対象地区数は百地区を予定しておりまして、初年度でございますので当面恐らく特利融資枠四十億円で対応できるものと考えております。もし予想以上に需要が強い場合には、次年度以降の段階で検討してまいることにいたしたいと存じます。
  137. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 次に移りますが、農業の場合には特利制度は公庫資金と近代化資金と二つあるわけでありますが、水産に関しましては近代化資金のみであります。その点、水産金融の軽視は否めないというふうに思うわけでありますけれども、かつまた金利について言えば、公庫資金平均で、水産関係が五・九%に対しまして農業関係は五%、こういうふうになっておるわけでありますが、この金利の格差はなぜ生じているのか、この点まず最初にお伺いをいたしたい。
  138. 斉藤達夫

    斉藤(達)政府委員 御指摘の地域漁業総合整備資金制度というのは、現在の沿岸漁村の窮状、特に適正な漁場の利用を推進しながら活力ある地域漁業の振興を図るという観点から、厳しい財政事情のもとで創設することにいたしたものでございまして、結果としまして近代化資金についての特利制度でございまして、公庫資金の特利ということにならなかったわけでございますけれども、公庫資金融資の重点化が課題の一つとなっている現状のもとで、新たに特利制度を設けるということが困難でありましたという事情を御理解いただきたいと思うわけでございます。なお、今回特利の対象とならなかった公庫資金の一般施設資金につきましては、近代化資金によっておおむねカバーされるのではないかと存じております。  それからまた、農業関係の金利と漁業関係の金利との比較の問題でございますが、公庫資金金利について見ますと、確かに先生御指摘のとおり水産関係が五・九%、それから農林漁業全体にしますと四・九九ということで、水産関係が若干上回っているということになるわけでございますが、農林業関係におきましては農地等取得資金それから林業経営改善資金等、償却資産でない土地の取得資金や、土地改良資金あるいは造林資金等、回収に極めて長期を要する資金がございまして、漁業関係には見られない長期低利資金があるためでございまして、業態の差異を考えますと、私ども残念でございますけれどもやむを得ないと考えております。
  139. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 資金の用途が異なりますけれども、農業の場合は土地というふうに、また水産の場合にはそれに匹敵するものは漁船ではないかと思うわけで、漁船資金金利水準を引き下げて水産の金利負担の軽減を図るべきだと考えますけれども、こういう点はいかがお考えですか。
  140. 斉藤達夫

    斉藤(達)政府委員 漁業にとりまして漁船というのは、生産手段として農業におけるトラクターその他の農業機械等と比べるとはるかに重要度が高いことは事実でございます。しかしながら、同時に農林業における土地に相当するものが漁船そのものであるのかあるいは漁場なのかというところは、いろいろ考え方があるところではないかと思います。私どもとしても漁船資金金利はぜひとも低くしたいと思うわけでございますけれども、直に漁船イコール土地ということで関連づけて考えることは必ずしも適当ではないと考えております。
  141. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 この点について、水産金融に大変詳しかった金子元農林水産大臣は、当委員会において答弁に立たれたときに、水産関係の金利が高過ぎることを明確に認められたわけです。是正さるべきであるというふうに言明されておりますけれども、この金子元農林水産大臣の答弁は今回の改正でどのように生かされたのか、これは大臣、どうですか。
  142. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生にお答えいたしますが、金子元農相の考え方はよく承知しております。さきに申し上げたように業態の差異による平均的な金利水準に差が生ずることはやむを得ないと考えておりますが、金利水準が低いことは望ましいことではございまして、これまでもその方向に向けてできるだけ努力を続けてきたところでございます。しかし、先生御存じのことでございますが、厳しい財政事情により、低金利資金についてその融資の重点化を図るなどの状況下においては、この漁業関係の資金については金利引き下げの実現は極めて困難であることを御理解いただきたいと思います。
  143. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 続いてお尋ねをいたしたいのですが、国は三重苦にあえぐ我が国水産業救済のために各種の緊急融資制度創設して対応してきているわけでありますけれども、現在その緊急融資の償還期がピークに来ておるわけであります。これが各種の影響を与えておりますが、全国の漁協貸付金前年同期比増減額推移を見てまいりますと、五十八年十二月期以降長期貸付金と短期貸付金の異常とも思える増減が見られるわけであります。金利の安い長期貸付金が減り、その分だけ金利の高い短期貸付金が増加している数字があるわけでありますが、水産庁はこの事実をどのように把握しておられるのか、お答えをいただきたい。
  144. 斉藤達夫

    斉藤(達)政府委員 先生御指摘のとおり、五十八年十二月から五十九年九月の間におきます全国の漁協の長期貸付金が、残高でございますが三百二十四億円減少しているのに対しまして、短期貸付金が百四十四億円増加しておるということになっております。これは、長期貸付金については償還が進み、他方短期貸付金については漁業経営の厳しさを反映しまして、資金繰りが窮屈になってその需要増大したという状況を示しておると存じますが、緊急資金の償還がどういうふうにして行われたかということは、必ずしも私ども資料を有しておりません。ただ、借り受け者の資金繰り上、緊急資金の償還に当たって短期的に漁協等の資金を利用する場合もあり得るという事情は否定できないものと思っております。
  145. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 私は、相当無理して償還に充てているのではないかというふうに考えざるを得ないわけですが、体質がまだ改善されていないにもかかわらず、高い金利の短期資金借りて安い金利の長期資金返済に充てれば、先行きはもう詰まってしまうのは明らかでありますから、国はこのような無理な返還現象を生じないために、いわゆる漁業構造再編整備資金等を弾力的に運用する必要があるというふうに考えるわけでありますけれども、この点とういうふうにお考えなのかどうか。
  146. 斉藤達夫

    斉藤(達)政府委員 確かに昭和五十九年度におきましては制度資金の償還がピークを迎えたわけでございますが、さしたる混乱が生じたというふうには私ども見ておらないわけでございます。その理由としましては、まさに御指摘のとおり、都道府県、金融機関あるいは漁業団体等の協力によりまして、漁業経営維持安定資金による借りかえや漁業生産構造の再編整備に参加した漁業者に対する漁業構造再編整備資金というようなものの貸し付けがあったことも寄与しているものと考えております。     〔島村委員長代理退席、委員長着席〕
  147. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 次に、中小漁業融資保証保険収支の改善策について伺っておきたいのです。  まず最初に、五十八年度末で求償権残高が全国で三百六十五億八千六百万円、一協会平均八億三千二百万円、こうなっておるわけでありまして、信用事業の収支が悪化しているわけでありますが、こうした中で政府は五十七年度と五十九年度に本制度の収支改善のため借りかえ緊急融資等の保証料、保険料の引き上げ、金融機関から協会に対して代位弁済額の一部を特別出資してもらい、さらに中央基金及び協会に協力出資などを行い、収支の改善を講じてきたのでありますが、これに伴いまして、将来代位弁済の危険が生じるおそれがあると思われるわけであります。そういうところには金融機関は貸し付けを行わないという傾向が現実に生じているわけでありまして、金融機関は比較的に経営の安定している優良企業だけを相手として貸し付ける傾向が出て、緊急資金の効果を著しく減殺していることは問題でありまして、緊急資金の本来の目的を達し得ないのではないかというふうに考えるわけでありますが、水産庁はこの点をどのようにお考えなのかどうか、お尋ねをいたしたい。
  148. 斉藤達夫

    斉藤(達)政府委員 漁業信用保証制度の存続ということが大事だと思うのでございますが、その融資保証制度制度として維持しますためには、それが保険理論に従って機能するということが大事なのではないかと思います。そのために中央漁業信用基金に補正予算での追加出資等をやっておるわけでございますが、とにかくこの中央漁業信用基金の保証保険収支が回復するということが必要であると考えております。そのために、一方では慎重な融資審査をする、あるいは保証審査をするように指導するということが必要になっておるわけでございますが、そういうことで単にいたずらに融資を締めようと考えておるわけではなくて、経営の再建の見通しのあるものにつきましては所要資金の融通に必要な保証を行っていくという考え方はきちんと通していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  149. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 緊急資金は後ろ向きの対策資金制度でありまして、非常に事故率の高い資金でありますから、保証制度とは本来的になじまないものではないかというふうに考えざるを得ないわけであります。漁業者も金融機関も、それぞれ保証料の引き上げとかあるいは特別出資、協力出資等でこれ以上協力を求めることは限界ではないかと思うわけでありますが、国はこれまで約百八十億円を出資してきており、本年度も四十二億円出資することが見込まれておるわけであります。この段階で国の支援を基本として抜本的な対策を講ずる必要があるのではないかというふうに考えますが、御見解を伺いたい。
  150. 斉藤達夫

    斉藤(達)政府委員 緊急資金借り受けに関しましては、借り受け者の受信能力が十分でない場合には融資保証を当然に受けなければいけないわけでございますが、この保証制度そのものが壊れますと融資そのものが行われなくなるということでございまして、その保証制度を安定的継続的に運用していくためには、国の負担だけということではなくて、関係者の相応のリスクと負担が必要であるというふうに考えるわけでございます。
  151. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 いわゆる中央基金からの保険金の支払いについてでありますが、その財政状態のためとは思いますが、スムーズにおりないという実態があるわけであります。中央基金は、債務不履行に陥った漁業者が完全に倒産しない限り保険金の支払いを金融機関に行わないということであります。死なないまでも細々と活動しているうちは焦げつきとして漁協等の金融機関に抱かせておくということで、これが金融機関の余裕をなくして金融の先細りを招く結果となりはしないかというふうに思うわけでありますが、契約できるものであれば契約どおり案件が生じたら迅速に出すべきではないかというふうに考えます。漁協等の金融機関の足を引っ張ることは厳に慎んでもらいたいというふうに思うわけであります。お考えをお伺いしたい。
  152. 斉藤達夫

    斉藤(達)政府委員 最近、代位弁済が非常に増加しているということは先生御指摘のとおりでございますし、それから政府としましても中央漁業信用基金には五十四年以来五十九年度までに百五十七億円という多額の出資を行って保険金支払いに努めておるわけでございますが、御指摘のような運用を余儀なくされているというのは事実でございます。こういう事態を解消するためには、金融機関の負担軽減を図るため、金融機関及び保証機関がそれぞれの立場におきまして融資の適正化のための厳正な審査、求償権の回収等に努め、制度運営の正常化と保証保険収支の改善を行うことが必要でありますし、そのための所要の指導を行っていきたいと考えておるところでございます。  なお、多額の欠損金や固定化債権の発生によりまして信用事業を中心としまして経営困難に陥っております漁協につきましては、六十年度から実施することとしております漁協信用事業整備強化対策によりその再建を助けていくということにいたしたいと存じております。
  153. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 次に不振漁協対策について伺っておきたいのですが、国は漁協信用事業整備強化対策一つとして、漁協管理債権について、借りかえ債権の利率が三%になるように利子補給を行う、もう一つは、共同事務処理体制の強化として、事務処理推進費、いわゆるコンピューター等の導入でありますが、これに三分の一補助する等が講ぜられる、こうなっているわけでありますが、この事業の実施によって漁協の再建にどの程度の効果が発揮されるというふうに予想されているのか、お尋ねをいたしたい。
  154. 渡辺武

    ○渡辺説明員 お答えいたします。  先生ただいまおっしゃいましたような漁協信用事業整備強化対策というのを六十年度から実施しようということにしておるわけでございますが、これは漁協の組合員とか役員、あるいは系統団体、行政機関等、関係者が一丸となりまして、漁協経営実態を直視しまして、それをどのようにして再建していくかということを協力して実施していこうというところに特色があるわけでございまして、そのためには漁協自身も増収に努めるとか、経費の削減、手数料の引き上げ、あるいは不稼働資産の処分といったようなできる限りの自助努力をまずやって財源を確保するということをやってもらわなければなりませんが、あわせまして、系統上部団体、都道府県、国等も、欠損金あるいは、管理債権という名前を私たちつけておるのでございますが、一定の固定化した債権の見合いの借入金につきまして金利負担をするための利子補給をしていこう、こういうようなことを考えておるわけでございます。組合の現状がいろいろ事情が違いますので、傷の深さといいますか経営の苦しさ、程度にもよろうかとも思うわけでございますけれども、ある程度の傷の漁協にとりましてはかなり大きな回復剤になるのではないかというように期待をいたしておるところのものでございます。
  155. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 この場合に、漁協の管理債権の範囲はどの程度のものというふうに想定されておられるのか。
  156. 渡辺武

    ○渡辺説明員 お答え申し上げます。  この管理債権という言葉でございますが、私たちが仮につけた名前で一般的な用語になっておらないものですからなかなか御理解がいただけないかとも思いますけれども、従来、漁協対策をやります場合には、欠損金が出ておりますと、それに対してそれを処理するための助成等を行っておったわけでございます。ところが、それだけでは追っつかないというような状況もございますので、新たに管理債権というようなものも利子補給の対象にしようというのが趣旨でございます。そこで、この管理債権ということの中身でございますが、漁業者であります組合員経営不振に陥りまして、そして組合に対しての償還が滞っている組合から見る貸付金の中で、所定の約定ではその回収が事実上困難である、だから欠損金までにはきれいに処理し切れておりませんけれども、組合側から見ますと回収が不可能である、そういうような性格の債権につきまして、これを管理債権というように名づけて助成の対象にしていこうと思っておる次第のものでございます。
  157. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 これからの漁協の信用事業について伺っておきたいのですが、漁協は経営形態にばらつきがありますし、規模においてもさまざまであるわけでありますが、これからの金融自由化または国際化の中で、うまく対応していかなければ孤児として取り残されてしまうのではないかという危険性があるわけであります。信用事業の統合を進めていかなければならない反面、漁村での唯一の金融機関でありますし、大きく統合することはなかなか目が届かなくなるという矛盾も抱えているわけであります。また、全銀、内為制度に加入していない状況下にもあるわけで、現在の法制度のもとで二律背反する二つの役割をいかにして担っていくのか、この点をお伺いしておきたい。
  158. 渡辺武

    ○渡辺説明員 先生御指摘のとおり、漁協の果たすべき役割というのは、その地域社会にとりまして非常に大切な機能を持っておると思っております。したがいまして、漁協が健全に経営されていくということをどうしても確保しなければならないと思っておる次第でございます。ところが、最近の漁業の状況は、遠洋漁業につきまして非常に後退を余儀なくされておるとか、あるいは漁業全体につきましての構造の変化がある、あるいは経営問題もしたがいまして漁業者につきまして出てきておるというような問題もございます。また、御指摘のような金融自由化に対処していかなければならないということもあるわけでございます。  このような厳しい環境の中で、どうしましてもやはり組合員たる漁業者自身が、やはり組合員でありますので、その人たちの意識の喚起に基づきまして漁協が立派なものになるようにお互いに協力して漁協経営の健全化に努めていただきたいということではございますけれども、私たちといたしましてもできる限りの経営基盤の強化あるいは漁協の経営の合理化、効率化ということに対しまして助言なり指導なりの強化をさらにしていかなければならないというように存じておる次第のものでございます。また、先ほど御説明申し上げました信用事業につきましての整備強化対策を始めたというのも、そのような趣旨の一環として始めさしていただきたいというように考えておる次第のものでございます。
  159. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 合併助成法がこの三月三十一日で期限切れとなったわけでありますから、これからはいわゆる漁協の自主的努力にまつことになったわけでありますが、合併は今後とも進めていかなければならないというふうに考えるわけでありますけれども、水産庁はどのようにお考えなのか。
  160. 渡辺武

    ○渡辺説明員 お答えいたします。  漁協の合併につきましては、昭和四十一年に制定されました合併助成法がありまして、以後三次にわたりまして議員立法によりその延長措置が講じられてまいったものでございます。ところが、これがことしの三月末で新たな合併あるいは事業計画の提出期限というものが切れてしまったわけでございます。ただ、この間約二十年ございますけれども、合併の推進はこの法律のもとである程度達成されたと私たち考えておりまして、近年では合併の件数は極めて少なくなっておりますし、今後合併が見込まれる組合も非常に少ないという予測でございまして、そういう意味からいたしましても、この法律が切れてしまったことでございますけれども、やむを得ないのではないかと思っておる次第でございます。また、系統団体におきましても、この際法律の期限延長をあえて求めずという立場でございまして、自主的に今後は運動として取り組んでいこうということを機関決定いたしておる次第でございます。しかし、零細な漁協が多数あるという現状はまだ残っておるわけでもございますので、私たちといたしましては、合併の推進自身の旗をおろしたということには考えておりませんで、今後とも系統の自主的な努力につきまして適切な指導等をさせていただきたいというように考えておる次第でございます。  以上でございます。
  161. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 現在漁業再編整備は業種に着目してのみ行われておりますが、現実は例えばサンマとかサバとか兼業で行われているのであります。業種別にとらえた減船方式は、例えばサバのたもすくい漁業等の沿岸漁業には合わないのではないかというふうに思うわけでありまして、業種別じゃなく経営形態をとらえた方式での減船をやらなければ構造改善の実を上げることはできないのではないかというふうに思うわけでありますけれども、この点についてお尋ねをいたしたい。
  162. 斉藤達夫

    斉藤(達)政府委員 御指摘のように、近年の厳しい漁業環境のもとにおきまして、地域によりまして、また漁業種類によって減船等の漁業構造の再編をやらなければいかぬという事態が出てきておりまして、漁業者団体による自主減船が円滑に進みますように、特定漁業生産構造再編推進事業という助成措置を講じておるところでございます。この事業によりまして減船をやります場合には、当該漁業種類を営む漁業者が組織する団体が計画を策定いたしまして、それを実施するという形をとりますことが、利害関係の調整あるいは経営階層の類似性といったようなことから円滑に進める上で有効であるというふうに考えておるわけでございまして、水産庁といたしましては、やはりこのような業界団体の自主的な意向を尊重しながら、またあわせて同一魚種を対象とする他種漁業団体間の調整を図りながら、円滑な推進に努めていきたいと思っておるわけでございます。
  163. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 また、同一漁場での各種漁業のあり方について、やはり総合的に調整して構造改善を図っていくべきではないかというふうに思うわけでありますけれども、この点についてどういうお考えですか。
  164. 斉藤達夫

    斉藤(達)政府委員 同一魚種に関しまして、異種の漁業間でいろいろな調整問題が生じておることは事実でございますし、それぞれの経営問題につきまして、やはり業種ごとに団体での話し合いあるいは団体間での話し合いを進めながら進めていくということになるのではないかというふうに考えております。
  165. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 これは大臣にもお答えいただきたいと思っていますが、現在沖合、沿岸漁業の構造再編は自主減船を柱に行われているのでありますが、この減船方式は、残存者負担の関係から思い切った構造再編が行われないわけであります。国や県は、漁業の許可を行うに当たって、その資源量あるいは漁獲努力量を考慮して公示制度をとっているのであり、許可隻数については責任があるわけであります。国、県は、第一義的に責任を持って構造再編を進める必要があるのではないかというふうに思うわけであります。また、農業においては六十五年見通しという長期見通しがあります。漁業にはそれがないわけであります。国の努力目標とともに総合的な、長期的な日本漁業のあり方を示して漁業再編を進めるべきではないかというふうに考えるわけでありますが、先の見通しのない減船では意味がないというふうに思うわけでありまして、これはどのようにお考えか、お尋ねをいたしたい。
  166. 斉藤達夫

    斉藤(達)政府委員 農業と漁業との長期見通しという点でございますが、農業では確かに需要と生産の長期見通しを作成、公表されておるわけでございますが、水産物につきましては、生産が漁海況等の自然条件やあるいは諸外国の漁業規制の強化等によりまして変動するということがありまして、長期見通しが農業の場合に比べてかなり難しいということが言えるのではないかと思います。特に減船との関係で見ますと、単に長期的な需給の見通しだけではなくて、やはりかなり長期的、短期的な不規則変動をいたします資源の変動、諸外国の漁業規制、それから経営条件の激変等、いろいろな問題が突発的に生じてまいりますので、これらの要因を総合的に勘案しながら個々の事案に即してやっていくということが適切な指導ということになるのではないかというふうに考えます。それからまた、長期的な措置ということになりますと、例えば許可漁業につきましては五年ごと、漁業によっては一年ごとということで一斉更新というような制度もございまして、資源との関係あるいは諸外国との関係で隻数を定めていくという仕組みになっております。
  167. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 最後になりますが、サバのたもすくい漁業について一点だけお尋ねをして終わりたいと思いますけれども、昨年のサバたもすくい漁業の漁獲量が三百五十トンというふうに未曽有の不漁に終わったわけでありまして、本年もまた同じでございまして、これを契機にサバたもすくい漁業が三十七隻の減船に踏み切ったわけであります。ちなみに千葉県では二十一隻減船する予定で、六十年十三隻、六十一年八隻というふうになっておるわけであります。この減船は特定漁業生産構造再編推進事業によって、いわゆるスクラップ事業を行うことになっているわけでありますが、まず、この事業に必要な来年度の国の補助、六十年度五億円、六十一年度三億五千万の手当てはできるのかどうか、この点をまずお伺いをいたしたいことと、加えて、近海カツオ・マグロ等も減船を計画しているというふうに聞いておりますが、特定漁業生産構造再編推進事業の資金枠は三十億円しかない。本当にこの手当ては十分であるというふうに考えていらっしゃるのかどうか、この二点をお尋ねをいたしたい。
  168. 斉藤達夫

    斉藤(達)政府委員 サバたもすくいにつきましては、先生御指摘のとおり、東京、千葉、神奈川、静岡の一都三県の関係漁業者が、二十トン以上のサバたもすくい漁船の、これは全部で百二十三隻でございますが、その三割に当たる三十七隻を、六十年、六十一年の二カ年にわたりまして特定漁業生産構造再編推進事業によりまして減船を行いたいという計画を既にお立てになったと伺っております。それからまた、近海カツオ・マグロ漁業につきましては、二百海里の漁場制約、それから燃費その他の高騰、それから特に昨年カツオ魚価が安かったというようなことによりまして、経営が非常に悪化しております。そのために、近かつと我々は呼びますが、全国近海かつお・まぐろ漁業協会におきましては、同じく生産構造再編等の経営再建対策について検討を進めてきておりまして、昨年末に約二割相当の自主減船を行うという基本方針について機関決定を行ったわけでございますが、まだ減船の具体的な実施計画はできておらないというふうに聞いております。  水産庁といたしをしては、これらの漁業の生産、経営の安定を図るために、減船計画が具体的にまとまった段階で、減船の内容、効果、残存漁業者の経営の安定、それから減船を実施するに必要な資金の額、調達方法、財政事情等を勘案しながら検討をしてまいりたいと存ずるわけでございます。
  169. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 残存者は、千葉県の場合に一隻当たり一千百五十万円の負債をこの事業の実施によって新たに負うことになるわけでありますが、これらの残存者も経営は非常に苦しいのであります。この減船の結果残存者の経営が安定する見通しがあるのかどうか、政府の見通しあるいは対処方針を伺っておきたいわけであります。また、残存者に対して漁業構造再編整備資金の貸し出しは行われるものというふうに考えているわけでありますが、改めてこの点も確認をしておきたいことと、一人当たりの貸付額は残存者の経営の安定に十分なものとなるかどうか、この三つの点、簡潔で結構でございます、お答えをいただきたい。
  170. 渡辺武

    ○渡辺説明員 せっかくの御下問でございますけれども、先ほど次長から御答弁申し上げましたように、まだ具体的な計画というものにつきましては私たちお話を聞いておらないわけでございます。具体的な計画ができ上がりましたら、その計画を見せていただきまして、先生御指摘のような点につきまして、どのようになっているかというような点につきまして私たちも判断をさせていただきたいと考えておる次第のものでございます。
  171. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 最後でございますが、たもすくい漁業の不振の原因というのは、私は昨年からいろいろここで述べておりますけれども、いわゆるまき網漁が小型魚を大量に捕獲した結果であろうというふうに思うわけであります。これには業界では「利根川尻さば漁場の操業調整申合せ」というのが結んであるわけでありますけれども、これは水産庁、千葉県庁等が確認したものでも、五十八年には延べ五十三隻、五十九年には六隻のまき網による違反操業が行われておるわけであります。本年に入ってからも、まき網のほとんどがいわゆる違反をしているというふうに聞いているわけでありまして、何がゆえにこのように違反が続くのか。聞いてみますと、イワシをとるために入ったというふうに弁明をしているわけでありますが、そういう言いわけはもう通用しないわけであります。  このようにいわゆる協定違反が続発していることを見ますと、この協定はまき鋼業者にとってはほとんど効果がないのじゃないかというふうに思うわけでありまして、千葉県沖の小型サバ回遊海域でのまき網漁業の操業というものは、資源が回復するまで指定漁業省令第十八条に基づいてまき網漁業の許可に制限的な条件をつけるという措置がぜひとも必要でないかというふうに思うわけであります。この点についてどういうお考えをお持ちなのか、お尋ねをいたしたい。
  172. 斉藤達夫

    斉藤(達)政府委員 御指摘のたもすくい、まき網、いずれもマサバを対象としておるわけでございますが、マサバ等の多獲性の大衆魚、多獲性の浮き魚類というのは自然条件によって非常に大きく左右されるわけでございまして、漁獲による影響というのはそれほど大きいものではないというふうに言われております。したがいまして、まき網の操業が直ちにたもすくいの漁業の不振をもたらしたというふうに断じるには科学的にはちょっといかないのではないかと言われております。  御指摘の利根川尻のサバ漁場におきます漁業秩序につきましては、水産庁としても非常に重視しておりまして、毎年まき網漁船による協定違反がたびたび生じていることはまことに残念なことだと思っております。この利根川尻協定というまき網とたもすくい両者の間の協定は、双方が漁場利用の秩序をお互いに守る、それから資源の有効利用という観点から話し合いを行いまして、合意の上成立している非常に有意義な、自主的な漁業者間の協定であると考えております。したがいまして、その遵守は当然当事者の責任であるというふうに考えておりますが、水産庁といたしましても、協定の趣旨が遵守されますように、今後とも監視船による現場指導の強化、それから漁労長、通信長あるいは操業責任者に対する協定遵守の指導、それから特に北部太平洋まき網組合に対する違反防止対策の要請等により、さらに指導を徹底してまいりたいと存じております。
  173. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 時間になりましたので、終わります。
  174. 今井勇

    今井委員長 次に、駒谷明君。
  175. 駒谷明

    ○駒谷委員 引き続いて私の方から、金融三法の一部を改正する関連の法案につきまして、特に農業改良資金助成法及び自作農創設特別措置特別会計法一部改正を中心にいたしましてお尋ねをいたしたいと思います。  まず農業改良資金助成法の一部改正でございますけれども、当面する農政の重要課題、一つ農業生産の再編成、二つには土地利用型農業経営規模拡大という問題、さらに生産コストの低減等々の問題に対応しながら経営基盤の強化を図るために、農業改良資金の種類の再編成、充実を行う、そういうことで、新しい技術の導入に加えて経営改善に着目をした合理的生産方式の導入が必要であるという趣旨から、新たに生産方式改善資金創設するということでありますけれども、この資金の運用について若干お尋ねをいたしたいと思います。  まず第一点でございますが、今回の資金の種目別の貸付枠が定められておりますけれども、果樹については三十億円、畜産については九十億円、野菜十五億円、養蚕十五億円というような予算になっておるわけであります。貸し付けにつきましては都道府県が中心になりまして、国の貸付資金枠、さらに都道府県から三分の一の資金を一緒にした範囲内において貸し付けが行われるということになるわけでございますが、この種目別貸付枠という問題、これは地域農業者の需要等を考えていきますと、必ずしもこの貸付枠にとらわれないで、あくまでも資金需要の増減に応じた運用の必要性があるのではないか、そのように考えるわけでございますけれども、この点につきましての今後の運用について考え方を明らかにしていただきたいと思います。
  176. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 種類別の資金枠につきましてはお尋ねのような枠の状況になっておりまして、これは各資金部門ごとの生産方式の導入の必要性なり技術の普及率とか過去の実績とか、いろいろそういう点を総合的に勘案して設定されたものでございます。我々としては大体この程度でそれぞれ部門別にちょうど均衡ある貸し付けができると考えておりますが、お尋ねのように、もちろん地域ごとの実情というものを十分考えなければいけないわけでございます。したがいまして、国の段階におきましては全体の資金需要の把握、これは県を通じまして把握しまして、必要がございましたらもちろん弾力的な貸し付けの実行を行うように指導いたしたいと考えておりますし、各県におきましても、それぞれの資金枠トータルの中で同様な配慮もしていただきたい。国、県、両々協力しながらこの総枠の中で部門別の需要にも適正に対応するように十分配慮してまいることといたしたいと思っております。
  177. 駒谷明

    ○駒谷委員 次に、今回の改正の中で、特に果樹栽培合理化資金それから畜産振興資金につきましては償還期間が十年以内ということになっておるわけでございます。償還の期間については一番長いわけでありますけれども、この償還期間十年にした背景、どのような事情を考慮されてそのようにしたのか、まずその点をお伺いいたします。
  178. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 今回十年以内としましたのは、畜産振興資金と果樹栽培合理化資金、その中でも改植、高接ぎに係る経費でございます。  畜産振興資金につきましては、御承知のように五十九年度から畜産振興対策の一環としての畜産振興資金供給事業というのがございまして、これを組みかえたものでございますので、十年以内ということでやってまいりましたので、それのいわば実質的な引き継ぎということもございまして十年としております。ただこれは、関係の機械、施設の耐用年数とか農家の償還能力とか、総合的に勘案して五十九年度に十年というふうに設定されたというふうに承知しております。  また、果樹栽培合理化資金のうちの十年関係の経費は、やはり改植、高接ぎ等でございますと、経営の安定段階に入るまでに数年を要するということになりますと、ほかの七年以内ということではなくて十年というところまで貸付期間を少し長くする必要があるということで十年といたしたわけでございます。
  179. 駒谷明

    ○駒谷委員 きのうそしてきょう、参考人の質疑の中で参考人からいろいろな意見の陳述がございました。もう既に御案内のとおり、農業経営というのは大変厳しい状況でありますし、農業者の所得というものも全然伸びない状況になっておる。むしろ減少しておるというような傾向にあるわけであります。融資を受ける、いわゆる制度融資、系統融資等があるわけでありますけれども、この件につきましては無利子の融資ということになるわけでありますが、特に畜産関係については、もう御承知のとおり大変厳しい経営状況になっておるわけでございます。今回、十年という形での融資の新設が今度の中から出てきたわけであります。果樹につきましても、永年作物ということで栽培開始後収入までにかなりの期間がかかる等を考えて十年ということにされたように伺うわけでございますけれども、果たしてこの十年という期間、生産方式改善資金が新設をされて、この目的といたしております経営改善を行い、健全な農業経営が維持できるかどうか。今大変厳しい状況でありますので、この融資の問題、償還期間の問題について、むしろもう少し長く検討すべきではなかったかというふうに私自身思うわけでございまけれども、そういう点について御所見をお伺いいたしたいと思います。
  180. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 今回の貸付条件全体として見ますと、生産方式改善資金のうちの畜産振興資金については、貸付限度が百分の九十というようなことで極めて高いということもございます。また、上限償還期間十年ということだけではなくて、最長三年の据置期間を設けております。こういうことで、もちろん果樹や畜産の収益性、それから資本回収がほかのものより長くかかる、こういう点を十分考慮しなければいけないわけでございますが、そういう点を考慮しつつ、また経営改善の能力、意欲のある農家に対する貸し付けの審査、そういう面でも十分配慮をするということも含めまして、そして何よりも本資金は当然のことでございますが無利子でございますので、ほかの資金と違いまして、借りている間、残高がある限りそれに何がしかの利息がつく、こういうことではございませんので、これら総合的に勘案しますと、もちろん経営面の指導なり、特に融資後の指導については十分留意をしなければならないわけでございますが、全体としては十年程度の期間設定をしますと、この中で農家の償還は可能である、こういうふうに考えておる次第でございます。
  181. 駒谷明

    ○駒谷委員 次にお尋ねをいたしますが、このたびの生産方式改善資金制度におきましては、米、麦、大豆あるいは普通畑作物等の営農については対象になっていないわけであります。ただ、経営規模拡大資金が新しく創設されておりますのでその問題はあるわけですけれども、生産方式による新たな資金措置というのが今度の改正では出てきておりません。この改善の方針、どのようなお考えであったのか、その点についてお伺いいたします。
  182. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 お尋ねのように、米麦、大豆、こういう部門につきましては、今回、生産方式改善資金の中で従来の技術導入資金のほかに一つ新しい資金を設ける、こういうことにはいたしておりません。これは、趣旨としましては、やはり畜産、果樹、野菜、養蚕というような四部門におきましては、御承知のようなそれぞれの部門をめぐる最近の需要動向、それから経営改善の必要性、これを見ますと、やはり従来の技術導入資金のほかに、生産方式というような、より広い一連の技術を組み合わせました生産方式の採用によりましていわゆる体質の強化を図っていく、こういうことが緊急に必要な部門であるというふうに判断した次第でございます。  御指摘の稲作畑作等の部門につきましては、従来の技術導入資金でこれからも引き続き対応するわけでございまして、御承知のように、生産組織育成資金あるいは水田の転作案件の整備等を行います経営転換等推進資金それから地域農業技術導入資金、これは知事がいわゆる特認的に農林水産大臣と協議して指定するわけでございます。こういう関係のいわゆる従来の技術導入資金は継続するわけでございまして、こういう資金により従来も対応してまいりましたし、今後も対応していくという考え方でございます。もちろん、四部門を緊急に必要と考えて新しい資金創設しておりますが、情勢の変化がありますれば、これはもちろんほかの部門についても政令指定により対応する、そういう道が閉ざされているわけではないわけでございますので、その点の判断については今後とも十分留意してまいる所存でございます。
  183. 駒谷明

    ○駒谷委員 従来の農業改良資金の助成法、この施行令の中で、先ほどお話のありました生産組織育成資金、この中に標準資金需要額というのが決められておるわけであります。機械等その他の設備の関係でありますが、稲または麦の場合につきましては十アール当たり二万五千円という標準価格が決められておるわけでございますけれども、地元のいろいろな御意見を伺いますと、この単価が大変低いのではないかということがいろいろと要望があるわけであります。この単価アップをどうしてもしてもらいたい。例えば大型機械を購入するについても、機械の本体だけでほとんど資金が飛んでしまう、その他の付随する機械等の資金というものは出てこない。したがって、この標準単価というのは少なくとも二倍ぐらいに上げてもらいたいという農業者の希望等がいろいろと出ておるわけでございますけれども、従来から行われておりますこの要綱に基づいての標準資金需要額という問題について、どのように考えておられますか。これの見直しについてのお考えがあればお伺いしたいと思います。
  184. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 技術導入資金関係等の標準資金需要額の改定、見直しについての問題のお尋ねでございます。  これは、御承知のように標準資金需要額設定をいたしておりますが、従来、こういう関係の経費の物価上昇等の状況も見ながら必要に応じ改定をしてまいってきておるわけでございます。重立ったところは、最近の標準資金需要額の改定は大体五十五年に行われまして、その後設けられました二、三の新しい部門の資金につきましては、その時点で、五十七年とか五十八年とかいう時期に資金需要額を設定しておるわけでございます。  私ども基本的な考え方としましては、やはりお尋ねにございましたように資材費等の動向も見ながら必要なものは改定をしていくということで、これから改正法施行後の問題としてはこの辺の問題も検討しなければいけないと存じておるわけでございます。ただ、五十五年度に改定されたものが多いわけですが、その後、物価賃金調査等による農村物価指数等で見ますと、農業生産資材総合で五十五年度一〇〇に対しまして一〇二・四、農機具の場合、一〇五・七というようなことで、もちろん上昇はございますけれども、極めて大きい上昇ということは必ずしもないものですから、今までのところはすぐ上げるという考え方はないわけでございます。  いずれにしましても、必要な資金に対しては対応するというのが基本的な考え方でございますので、この改定、見直しについては、今後とも物価上昇等の状況を見ながら常に検討してまいりたいと思っております。
  185. 駒谷明

    ○駒谷委員 この資金の貸し付けの窓口になるのは都道府県でございます。多少の流動性は認められておるようでありますけれども、どうしてもこの基準額というのが基本になった考え方で、需要者の要望等から考えていくとこの際検討してもらいたいという声があり、広島に行きましてもそういう意見が実際にあったわけでございます。政令の時点においてきちっとこの点についての検討をよろしくお願いいたしたいと思います。  次に、経営規模拡大資金の問題につきまして、まずその前提として農地流動化の促進ということでお尋ねをいたしたいと思います。  昭和五十七年八月に農政審議会から「「八〇年代の農政基本方向」の推進について」と題する報告が行われました。昭和六十五年を見通しての農業構造展望を示されておるわけであります。そこで、昭和五十六年から昭和六十五年までの十年間の流動化、いわゆる農地の移転の関係については九十万ヘクタール、特に都府県については七十万ヘクタール程度を目標にしておるわけでありまして、そのうち八〇%を経営規模の大きい農家に集積させるという一つの指針といいますか、報告があるわけであります。そしていわゆる中核農家を育成していく、この戸数が七十万戸と一応見込まれているわけでありますけれども、最近の、昭和五十六年から五十八年までの農地の移動につきまして、農地移動の実態調査によりますと、この三年間で所有権移転農地は十一万三千ヘクタール、賃貸借の関係で移動した農地が十三万六千ヘクタール、トータルしますと二十四万九千ヘクタール余りの数値が出ておるわけでございます。  そこで、五十九年度は大体どのような見通しになるか、その実態はどのような数値が出てくるかということでありますけれども、四年間の流動化の内容、六十五年九十万ヘクタールの目標に対してどのような状態になっているのか、今後の流動化対策の問題等についての御所見をお伺いいたします。また、規模の大きい農家への集積は現在どのように進行をしておりますか、今後の方策についても御所見をお伺いしたいと思います。
  186. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 お答えをいたします。  ただいまお話がございましたように、農政審の報告では五十六年から六十五年までの十年間に九十万ヘクタールの農地の流動化を行う、したがいまして、年間平均いたしますと九万ヘクタールということになるわけでございますが、その大部分の農地を経営規模の大きな農家に集めていく、そうすることによって中核農家を育成していくということになっておるわけでございます。  農地の流動化の実態を見ますと、これには所有権の移転、つまり売買によるものと賃貸借によるものとがございますが、合計して五十六年は七万七千ヘクタール、五十七年は八万九千ヘクタール、五十八年は八万四千ヘクタールに相なっておりまして、先ほど申し上げました年間の目標流動化面積九万ヘクタールに割合と近い数字で推移してきていると見られます。五十九年につきましては、数字をこれから集計いたしますのではっきりした数字はまだ出ておりませんけれども、大体、従来のような傾向を中心にしてその前後に落ちつくのではないかという感じがいたすわけでございます。  今この流動化の中で中心的な位置を占めておりますのは、農用地利用増進事業に基づく利用権の設定によるものでございまして、この利用権によります流動化面積のトータルといいますか、現在なお有効な利用権に係る面積は、五十九年十二月末で十五万八千ヘクタールと、かなりの面積になってきているわけでございます。あと、この農地の流動化というのとは若干意味を異にいたしますけれども、農作業の全面受委託というのが最近広般に行われてくるようになってきております。特に水稲につきましては、大体六万八千ヘクタールくらいの面積のものが中核農家等へ全面作業委託されるようになってきておりまして、この面積を加えますと、かなりの実質的な流動化が行われてきていると思うわけでございます。  この流動化の中身でございますが、利用権の場合、所有権の場合、ほぼ同じような傾向でございますけれども、ただいま利用権の場合について見ますと、都府県に、おきましては、農地の貸し手は一ヘクタール未満層が六四%、農地の借り手は一ヘクタール以上層が六九%、また北海道におきましては、農地の貸し手は十ヘクタール未満層が六四%、借り手は十ヘクタール以上層が六五%となってきておりまして、規模拡大方向で農地の流動化がかなり進んできているということが言えるのではないかと思います。  こういうことで、農政審の報告が、例えば稲作主業経営規模は都府県の場合には五ヘクタールということを言っておりますが、この五ヘクタール規模の階層を中心に進んでいるというところまでは進んではおりませんけれども、ただいま申し上げましたように、年々規模の大きな階層へ漸次集積されてきていると考えるわけでございまして、今後ともこれまでに実施してきました施策を着実に推進していき、かつ新しい考えられる施策についても積極的に実施していくということで農地の流動化に一層努めてまいりたいと考えておる次第でございます。
  187. 駒谷明

    ○駒谷委員 次に、経営規模拡大資金の新設に関してお尋ねいたします。  土地利用型農業経営規模拡大を促進し生産性向上を図るために、安定的な農地の賃貸関係を通じてその促進を図る必要があるということで経営規模拡大資金の新設を考えられているところであります。そのため、賃貸借の設定に係る小作料一括前払いのための資金貸し付けを行う、そのように今度の経営規模拡大資金内容がなっておるわけでございます。  そこでお尋ねいたしますが、昭和六十年度予算において貸付枠として十億円を計上されているわけでありますけれども、仮に十億円全額貸し付けの実績があったとして、いわゆる農地流動化に向かっての面積はどれくらいを想定なさっておられるのか、お伺いをいたします。
  188. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 どれくらいの面積かというお尋ねでございますけれども、これは借地の期間でありますとか標準小作料等によって違ってくると思いますけれども、おおむね五百ヘクタールから七百ヘクタールぐらいの面積が対象になるのではないかと考えております。
  189. 駒谷明

    ○駒谷委員 大体五百ということでありますけれども、そういたしますと、先ほど御報告いただきました昨年の流動化の全体面積の内容からいきますと四万六千四百ヘクタール、この資金の関係は、それに対応するのはわずか一%ということになるわけであります。今後もどんどん流動化を進めていかなければならないという基本的な方向からいくと、この十億円の資金枠というのは大変下回った考え方になっているのではないか。初めてのことでありますから実際にどういうふうな形になるか、これからわからないわけでありますけれども、将来においてこの貸付計画、どのような考え方でおられるのか、お伺いをいたします。
  190. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 経営規模拡大資金につきましては、関係者との話し合いによりまして、こういった制度創設することが流動化を促進していく一つの大きなてこになる、こういうことでこの制度を発足させたわけでございまして、その資金規模は六十年度は十億円ということにいたしております。これは初年度ということも考慮いたしましてこのようにいたしたわけでございますが、現在の時点におきましては全体として大体六十億円ぐらいの資金需要があるのではないかと私ども考えておりますけれども、これにつきましても全体的な実施状況を見ながら必要な資金枠を確保していく、このようにいたしたいと思っております。将来、この資金需要が相当大きくなりまして六十億円をあるいは超えるという事態になるかもわかりませんが、そういうときにはそういう資金需要動向を見まして、適切な貸付枠を設定するようにしてまいりたいと思います。
  191. 駒谷明

    ○駒谷委員 次に、この資金の貸付対象者につきましては、一定の規模等を持つ農家層に限定する、そのように思われるわけでありますが、具体的にどのような形で貸付基準を考えられるのか、その基本的な考え方についてお伺いいたします。
  192. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 本資金経営規模拡大資金という名称でございますので、経営規模拡大していく農業者に貸し付けるわけでございますけれども、貸し付けにつきましては、やはり地域の実情に応じまして、貸付対象者となります農業者が規模拡大に意欲を持っておること、あるいは平均経営面積が地域平均面積以上を目指しているというような条件が必要かと考えております。いずれにいたしましても、県の段階におきまして具体的にどのような農家に貸し出しをしていくかということを決めるようにいたしたいと思います。
  193. 駒谷明

    ○駒谷委員 この貸付限度額の算定には標準小作料を用いるようでありますけれども、現在においてはこの標準小作料と実勢小作料との格差が相当ある地域が出ておるようであります。この格差の縮小の問題、そしてその指導方針等についてお考えをお伺いしたいと思います。
  194. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 実勢小作料がどういう水準であるかということはなかなかつかみにくいわけでございますけれども、米の生産費調査等から判断いたしますと、私どもが定めております標準小作料と幾分乖離しているような傾向が見られるわけでございます。標準小作料自身は賃貸借の円滑な促進、こういうような目的のために設定されたものでございまして、私どもといたしましては制度資金の貸し付け等に当たりましてはやはり基準とすべきものであると考えているわけでございます。そういうことで、貸し付けの単価といたしましてはこの標準小作料をとっていくのが適切であろう、こういうふうに考えているわけでございます。  なお、標準小作料と実勢小作料が著しく乖離いたしますような場合には、現在の制度のもとにおきましても農業委員会によりまして実勢小作料の減額勧告を行うことができるわけでございまして、そういう著しい格差があります場合には、標準小作料を基準といたしまして適正な実勢の小作料水準が形成されますように指導してまいりたい、このように考えるわけでございます。
  195. 駒谷明

    ○駒谷委員 次に、自作農創設特別措置特別会計法の一部改正法律案につきまして、私は国有農地等の売り渡し、貸し付けに係る処理の現況及び今後の処理の方法についてお伺いいたしたいと思うのです。  現行の自作農創設特別措置特別会計制度は、自作農創設のために政府が行う農地等の買収、売り渡し等に関する経理を行うために設けられた制度でありますけれども、今回の制度改正においては、この経理に加えて、農地保有合理化促進事業に係る助成に関する経理及び農業改良資金の貸し付けに関する政府の経理をあわせて行うということとし、特別会計の名称も農業経営基盤強化措置特別会計に改めることになっておるわけであります。  そこで、まず国有農地等及び開拓財産と言われる未墾地の管理面積の現況及び過去三年ぐらいで結構でございますが、面積の推移はどのような状況になっておりますか、その現況について御説明をいただきたいと思います。
  196. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 国有農地の管理状況でございますが、最近におきます売り払いの努力によりましてかなり面積が減少してきておりますが、五十八年度末におきましては千四百五十二ヘクタールでございます。それからあと開拓財産がございますが、これは未墾地でございます。これが九千二百五十三ヘクタールということに相なるわけでございます。  その最近の状況を申し上げますと、国有農地の方から逆に年度をさかのぼるという形で申し上げたいと思いますが、五十七年が千五百二十二、五十六年が千五百七十六ヘクタールでございます。それから開拓財産の方は五十七年が一万八百十五ヘクタール、五十六年が一万二千四百四十八ヘクタール、このように相なっておるわけでございます。
  197. 駒谷明

    ○駒谷委員 現在、管理面積は、国有農地等につきましては千四百五十二、開拓財産、いわゆる未墾地につきましては九千二百五十三、こういうことでございますけれども、農耕用地として貸し付けたもの、転用地として貸し付けているもの、あるいは未貸し付け、その他市街化区域におきます内容等について、また未墾地の状況等について御説明をいただきたいと思います。
  198. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 五十八年度末現在で申し上げますが、国有農地につきましては、農耕目的で貸し付けております農耕貸付地が六百八十五ヘクタール、四七%、それから農耕以外の目的で貸し付けておりますいわゆる転用貸付地でございますが、これが百十一ヘクタール、八%、それから未貸付地が六百五十六ヘクタールでございます。これの市街化区域内の面積でございますが、このうち市街化区域の中が二百五十一ヘクタールでございます。  次に開拓財産でございますが、これは未墾地でございまして、農耕貸付地が百六十ヘクタールでございます。それから転用貸付地が百二十三ヘクタール、未貸付地が八千九百七十ヘクタールでございます。このうち市街化区域の中の状況でありますけれども、農耕貸付地がゼロ、転用貸付地が三十九ヘクタール、未貸付地が四百九十三ヘクタールで、合計いたしまして五百三十二ヘクタール、このようになっております。
  199. 駒谷明

    ○駒谷委員 この国有農地等の問題につきましては、行財政改革の一環としてその売り渡しの促進が叫ばれておるわけでございますけれども、聞くところによりますと、時価の問題あるいは小作権の農地については買い受けの関係が消極的であるとか、転用農地等については財政上の理由から地方自治体等の買い取り等についても大変難しい面があるというようなことで、その進捗状況については思うようにいかないというように伺っておるわけでありますけれども、具体的にどのような支障が起きているのか、その実情についてお伺いをしたいと思います。
  200. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 国有農地の売り払いを促進しているわけでございますけれども、必ずしも円滑、順調に進んでないわけでございまして、その理由としては幾つかございます・  まず、旧所有者とその相続人に売り渡すということがございますけれども、何分農地買収後かなり長い期間経過をしておりますので、その把握が非常に難しくなってきておりますし、かつまたそういった関係者が多くなっておりまして、その間の意思といいますか合意がなかなか容易に進まない、こういった状況もございます。それから、土地の境界等について争いがございまして、これを解決しないと処分ができないというような土地がございます。それから、農耕貸付地の場合のように、現に農耕をしている耕作者がおります場合には、その耕作者と話をつけなければ処分ができないわけでございまして、そういった話し合いが難航するというようなこと、それから、地方公共団体等に貸しております場合は非常に安くといいますか、あるいは無料で貸している場合が多いわけでございますが、こういった場合なかなか買い取ろうとしない、こういった状況もございます。さらに、国有農地等は一般に小規模でございます。小さな土地が分散をしてございまして、利用する上から若干の問題がある、こういったことがいろいろと重なりまして現在の状況になっているということでございます。
  201. 駒谷明

    ○駒谷委員 この国有農地等につきましては、農水省の方で昭和五十八年から二年がかりで現地の調査が行われているように聞いておりますけれども、この調査の結果、管理の適正化という問題について、売り払いの促進等の具体策はどのように検討が行われるのか、お伺いをいたしたいと思うわけでございます。  先ほども御答弁がありましたけれども、境界の明示がないあるいは農用地が特定できない、そういうふうなところがあちこちにあるようでございます。私もあちこちで内容を伺うわけでございますが、既に無断で農用地が使用されておる、占用されておる、いわゆる無断転用といいますか、そういうところもあるやに伺っておるわけでございますけれども、そういう問題等についてどの程度把握されておられますか。五十八年度の調査結果で結構でございますが、その内容についてお伺いをいたしたいと思います。
  202. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 自作農財産の適正な管理と処分を行いますためにまず実態の把握を正確にする、こういうことで五十八年度と五十九年度、二カ年にわたりまして国有農地等の一筆調査を行ったところでございます。五十九年度の調査結果はまだまとまっておりませんが、五十八年度の調査結果によりますと、調査をいたしました対象の面積は六百七十一ヘクタールございますが、そのうちの約一%の八ヘクタールが無断で転用されている、こういう状況になっているわけでございます。  このような無断転用の土地につきましては、そういう実態をなくするということが原則であると思います。それと同時に、それまでの無断転用については賠償金を取るということも必要かと思いますが、いずれにいたしましても、原則としてそういう不法占拠等の事実をなくしまして、その後に売り払い等を促進していく、こういうような方針で臨みたいと考えている次第でございます。
  203. 駒谷明

    ○駒谷委員 御答弁では、六百七十一ヘクタールの調査の結果で約一%、八ヘクタールということでございますから、五十九年度の調査が最終的にまとまれば、かなりそういう問題が起きているのではないかと思うわけでございます。  この問題については実際に民法上の問題等もあり、長期に無断転用が行われておるという場合、これについては現地の状況などを間接的ですけれども伺いますと、結局農地が特定されていないということですね。したがって御本人は全然知らないうちにそういうふうな形で使用している場合が中には出ておるというふうに聞くわけでございます。この適正管理の問題については、全国的に大変な地域でありますので、各都道府県にこれについての依頼等が行われて、管理の委任を受けているという形でありますけれども、この都道府県が適正管理の代行をするという点については、事務上あるいは財政上大変負担がかかるのではないか。本当にきちっとやっていこうと思えばいろいろな問題が起きてくるのではないかと思うわけであります。そういう点についての十分な配慮を農水省としてはなさっていらっしゃるのか、その点についてひとつ改めてお伺いします。
  204. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 不法占拠の原因につきましては、ただいまお話がございましたようにいろいろなケースがございます。境界が不明確なために不法占有になってしまったというようなケースもあるわけでございまして、明らかに不法占拠の場合には我々としても対応しやすいわけでございますけれども、最も問題になりますのは、境界が不明確なために不法占拠の事態を招いている、こういうところでございます。私どもといたしましては、五十九年度からこういう境界の測量費を相当増額いたしまして、的確な境界画定をやっていくようにいたしているところでございまして、六十年度につきましても引き続きそういった方向で実施をいたしたい、このように考える次第でございます。
  205. 駒谷明

    ○駒谷委員 大臣、この問題でございますけれども、今回の新しい農業経営基盤強化措置特別会計、用地の売り払いというものがこれの財源になる、そういう問題があります。したがって、この一部改正の中に出ております農地保有合理化促進事業に係る助成等のいわゆる運用面での財源確保という点からも、売り払い収入というのが大変重要な地位を占めてくることになるわけです。現地調査におきまして、そういうふうな無断転用の問題は、今後民法上いろいろ出てくる可能性もなきにしもあらずというふうに私も感ずるわけでございます。この適正管理面についての今後の対応等について、改めて大臣からお伺いをいたしたいと思います。
  206. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 駒谷先生にお答えいたします。  先ほど局長が答弁いたしましたけれども、国有農地等の売り払いにつきましては、これまでも旧所有者またその相続人への売り払いを中心にその促進を図ってまいったわけでございますが、何分にも農地改革以来長年月を経過しておることもあって、先生御指摘の権利関係が非常に複雑化しているなど、種々の問題があることは否定できないのです、そんなことで、現在農林水産省におきましては、国有農地等問題研究会を設けて学識経験者の方々に御検討いただいておりますので、そこでの検討結果を踏まえまして、今後さらに売り払いの促進に努めてまいりたいと考えております。
  207. 駒谷明

    ○駒谷委員 次に、農林漁業金融公庫法の一部改正に関連いたしまして、私は、卸売市場近代化資金の充実についてお伺いをいたしたいと思います。  卸売市場につきましては、生鮮食料品等の流通の合理化を図るため、中央卸売市場及び地域流通の拠点となる地方卸売市場について整備計画に基づいて計画的に施設整備が進められているところであります。今回の改正では、地方卸売市場の一体的な施設整備を促進するために、新たに仲卸業者の施設を貸付対象にするということになっておるわけであります。この近代化資金融資枠は、昭和六十年度で七十七億が設定されているところでありますけれども、地方卸売市場についてはその数が極めて多いということで、全国で千七百五十二という数字があるわけでありますけれども、総体的に市場規模が小さく、施設が狭隘な上に老朽化してきておるものが大変多いということでいろいろな問題を残しておるわけでございます。したがって、流通の合理化と消費の安定的な拡大を図るということから、この整備の充実が今後も重要な課題であろうと私は思っておるわけであります。しかし、本資金の、五十八年度までですか、この貸し出しの実績を見ますと、融資枠と大きな実績の開きが出てきておるわけであります。その原因についてはどのようなところにあるのか、地方卸売市場の実態と今後のあり方について御所見をお伺いしたいと思います。
  208. 塚田実

    ○塚田政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のように、卸売市場近代化資金の貸付実績を見ますと、近年、貸付枠に比べまして、その消化が低い実態となっております。  そこで、この原因をいろいろ考えてみますと、御指摘のように卸売市場、地方卸売市場の数が非常に多い。千七百五十二ございます。それから規模が零細である、取扱金額も十億円以下のものが全体の五〇%強を占めるというように、非常に零細でございます。そこで、地方卸売市場についての建設整備につきましては、御案内のように都道府県の卸売市場整備計画に基づきまして、まずは統合整備ということで進めてきているわけでございます。この事業主体は地方公共団体が多いわけでございますけれども、その場合に、統合整備に当たって関係する業者の方々が非常に多い。それで業者の方々の意見の取りまとめに難しい面があるというようなこと、それから卸売市場をつくりますと、どうしても一定の規模の広がりを持った土地が必要ですけれども、地権者がかなりあって、すべての地権者の方々の御理解をにわかに得られない、一部の方は反対するというようなこともありまして、そういうようなことから必ずしも統合整備が進捗しておりません。そういうような事態が貸付枠に比べてその消化が低いというようなことになっているのだろうと私ども思っておりますけれども、しかしながら地方卸売市場の整備というのは非常に大事なことであるというふうに私ども思っておりまして、これからも整備計画に従って進めていく必要があると考えております。
  209. 駒谷明

    ○駒谷委員 今後、六十一年を初年度とする第四次市場整備計画の作成を検討しておるというふうに伺っておるわけでございますが、この作成に当たりましては、消費者ニーズの多様化を踏まえ、また高度情報化社会の進展など、卸売市場の流通をめぐる環境、これは大変変化をしてくるのではないかと考えるわけであります。このような問題に対応して、産地と市場との連携が、新しい情報システムの整備、産地と直結する新しい情報システムという問題の整備が重要な課題であろうかと思うわけでございますが、今検討が行われております第四次整備計画の中にこの問題はどのように位置づけをされようと考えられておるのか、御所見をお伺いいたします。
  210. 塚田実

    ○塚田政府委員 私どもかねてから、卸売市場の整備の基本方針及び地方卸売市場の整備計画につきましては、五年ごとに、十年後を見通して策定することになっておりまして、現在、昭和七十年度を目標年次といたしまして、昭和六十年度に策定することになっております。このため昨年の七月から卸売市場の審議会に専門委員会を設置いたしまして、また、関係業界団体等の御意見も聴取しながら、鋭意今後の卸売市場のあり方について検討を行っているところでございます、昭和七十年度を目標年度といたしますと、一九九五年でございます。ですから、二十一世紀も極めて近いわけでございます。そういう中長期の視点を十分踏まえて検討を行っているところでございます。  そこで、そういう展望をいたします際にやはり大事なのは、御指摘のように情報化の進展ということだろうと思うわけでございます。現在でも新しいメディアがいろいろ出ておりますけれども、二十一世紀を控えてこの情報化社会の進展というのはますます進展していくと思いますので、私どもはこれを重点項目の一つとして検討を進めているところでございます。御案内のように、卸売市場につきましては、大量の取引が集中して行われますし、各種情報が集積される場でもございます。言ってみれば情報センターとしての役割もあるわけでございますので、そういうようなことも踏まえて現在検討しているところでございます。
  211. 駒谷明

    ○駒谷委員 最後に大臣にお伺いをいたしますが、今回の金融三法の改正におきましては、従来から推進をされておりました補助金による構造政策から制度融資の政策に切りかえが行われた、いわゆる構造政策路線の考え方からいきますと、資金返済能力のある確実な農林漁業者あるいは規模拡大志向の農林漁業者というようなところに焦点が当たっておるように思うわけであります。したがってその反面、低利で長期の金利、こういう問題を切実に願っておるいわゆる零細農家の人たちにとっては大変厳しい選別があるのではないか、そのように言われる人たちもおるわけでございます。また、無利子あるいは低利融資であったとしても、やはりこれは返済をしていかなければならぬという問題、そういうことから、生産者にとっては長期的な営農計画あるいは返済計画を立てて現在取り巻くいろいろな厳しい環境を乗り切っていかなければならない、そういういわゆる営農的な問題があるわけであります。  特に、赤字を抱えて大変厳しい状況にあります畜産、酪農あるいは果樹経営者等、こういう人たちの経営の安定を図るためには、将来にわたってこの資金手当ての一層の拡大、また記帳指導、経営分析等による経営改善における指導等の融資後のアフターケア体制の整備というものが、いろいろと毎回出ておりますけれども、論議の問題になっておるわけであります。大臣、この問題について、今後の対策についての御所見をお伺いして終わりたいと思います。
  212. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生にお答えいたします。  制度金融改正につきましては、最初私が申し上げたとおりでございますが、そんなことで、今先生の御指摘を受けまして、今後とも制度金融改善には努力いたしたい、このように考えております。
  213. 駒谷明

    ○駒谷委員 ありがとうございました。
  214. 今井勇

    今井委員長 次に、中林佳子君。
  215. 中林佳子

    ○中林委員 今回の農林漁業金融関係の改正がこれだけ大がかりに行われるのはこれまで余り例がなかったと思います。日本農業新聞によりますと、今回の金融三法の改正昭和二十八年の農林漁業金融公庫の設置、昭和三十六年の農業近代化資金創設に次ぐ戦後三番目の大改革である、このように位置づけているわけです。  そこで、まず初めに大臣にお伺いをするわけですけれども、今この時期にこれだけ大がかりな金融三法の改正に着手される意義は何であるのか、そしてこの三つ改正案を共通して貫く考え方は何であるのか、お考えを伺いたいと思います。
  216. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 中林先生にお答えいたしますけれども、今回の農林漁業関係制度資金改正というのは二つのポイントがございます。  その一つは、農林漁業をめぐる諸情勢の変化に対応しまして、足腰の強い農林水産業の育成のため、さらに農林漁業投資を積極的に推進していく必要があることでございます。それからもう一つは、財政の効率的運用等を図るため、効果的助成手段の確立が要請されているということを踏まえまして、各資金制度の特性に応じまして、資金種類の拡充等を内容とした改善合理化を図ったものでございます。  これは具体的に申しますと三点ございます。その一つは、農業改良資金につきまして、補助と制度金融の中間的な分野を担うという役割を踏まえつつ、農業生産の再編成、経営規模拡大等の緊急な課題に対応し得るよう資金種目の再編拡充を行うほか、資金全国的調整を行う仕組みを導入するものでございます。  また農林公庫資金につきましては、農林漁業経営の育成強化及び構造改善等を促進しつつ、資金の効率的利用と制度の簡素化を図る等の観点に立って、制度改善充実等を行うものでございます。  また農業近代化資金及び漁業近代化資金につきましては、最近における資金需要の大型化に即応しまして、貸し付けの最高限度の引き上げを行うものでございます。
  217. 中林佳子

    ○中林委員 大臣の御答弁を聞けばいいことずくめの改正案のように聞けるわけです。しかし今回の三法を貫いている考えは、一言に言えば、農漁業を取り巻く厳しい状況の中で、比較的規模の大きい農漁業者には融資拡大の道を開く一方で、零細農漁業者を切り捨てる選別的構造政策を一層鮮明にした一連の法改正案である、こういうことが言えると思うわけです。  しかも現実は、中核的農業者であればあるほど多額の負債を抱えております。今回のように金利の引き上げと引きかえに貸付限度額の引き上げや融資枠の拡大をするという改正案は、結果的には中核農家育成にも逆行していきますし、一層借金づけの農業を進行させていくものであると思われます。その背景には、臨調行革路線に基づいて大がかりな補助金削減を進める一方で融資拡大する、いわゆる補助から融資へという方針で臨んでおられて、これでは今日の農業危機打開はできないし、一層深刻な危機になっていくのではないかと思うわけですけれども、その点はいかがでしょうか。
  218. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 今回の制度改正のねらいにつきましては、先ほど大臣からお答えを申し上げたとおりでございます。農林漁業者の自主性なりあるいは創意工夫を生かすことができるという制度金融の特徴を発揮させながら、資本装備の高度化なり構造改善推進をしていくということでございます。  もちろん、今日の財政状況その他と全く関係なしにということを申せば、これはうそになると思いますけれども、私ども農林水産行政の効率的な執行、効率化ということがやれる余地はないかということも頭に置きながらも、基本的な視点としましては、やはり足腰の強い農林水産業をどうやって育成をしていくか、そこに基本的な視点を置いて制度の見直しをやったつもりでございます。無利子資金の拡充もございますし、また各種の償還条件の緩和も織り込んで今回の制度改正をやることにいたしておるわけでございます。
  219. 中林佳子

    ○中林委員 大臣もおっしゃいましたし、今お話しになったようなことを聞いても、きょうも参考人の御意見を聞かせていただく中などで、やはりもう借金づけというのは御免だというような声があるわけですね。ですから、こうした今回の改正案全体を貫くものは、やはりこれまでどおりの選別的な構造政策推進に向けての金融体制の整備であることには間違いないというふうに思います、  私は、きょうはこの三法のうちの農業改良資金助成法及び自作農創設特別措置特別会計法の一部改正案についての問題点を若干ただしていきたいというふうに思います。  この法案は、生産方式改善資金導入だとか経営規模拡大資金の新設などで従来よりも農業改良資金貸付枠や種類をふやすことが主な柱で、一定の農民の要求にこたえる側面を持っているというふうに思います、しかし、幾つかの重要な問題点も指摘をしなければならないと思うのです。  その第一点は、野菜や果樹の資金規模拡大を図る中核農家の育成を目的にするとか、それから農用地経営規模拡大資金が借地を含む農業経営規模が都府県で五ヘクタール、北海道で十ヘクタールとなる見込みのあるものを対象にするというようなことに見られるように、やはり中核農家優先の考え方が貫かれていて、小規模の農家の人で本当に農業経営に意欲を持って取り組んでいる人たちが、今回の改正で切り捨てられていくのじゃないかと思うのですね。都府県で五ヘクタールといいますと、私の地元の島根などでは、もうそれは本当に数えるほどしか出てこないわけですから、そういう意味で、私はせっかく農業に意欲を持っていらっしゃる方々が切り捨てられない、そういう方向が必要だと思うのですけれども、その点はいかがでしょうか。
  220. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 今回改善いたします生産方式改善資金、特に新設の果樹等の部門におきます資金の貸し付けの問題でございますが、これは従来の技術導入資金でもそうでございますが、今回の生産方式改善資金として拡大されたものにおきましても、我々の一番重点としておりますのは、この経営改善の意欲、能力、こういうことでございまして、これによりまして、従来でございますれば技術導入、今回はもっと広く生産方式の改善に本当に取り組む、こういう意欲、能力を重視するわけでございまして、もちろんこういう方は現実にある程度の規模の農業を営んでいるのが普通でございますが、私どもとしましては借り受け前、現状において一定の規模をどうしても有していなければいけない、こういうような要件は一切設けないわけでございまして、そういう意味でいわゆる小規模農家あるいは現在においては規模の小さい、若い農業者の方々、こういう方を排除するというような考え方は一切とっておりません。こういう趣旨で、あくまでも経営改善意欲、能力を重点として融資をしてまいる考えを持っております。
  221. 中林佳子

    ○中林委員 小規模を切り捨てる考えはないとおっしゃいましたので、その点はぜひ踏まえて進めていただきたいと思います。  それから、生産方式改善資金創設され、その中に畜産、果樹、野菜、養蚕などの資金種目を設けるという新たな仕組みに変えることによって、借りる際の要件審査が厳しくなって、事実上借りにくくなるという不安が今出てきております。合理的な農業の生産方式の導入にこだわる余り、よほど先駆的な生産方式でない限りこの資金借りられないのではないか、どんなに資金種類や枠をふやしても、そういうことであれば意味がないというふうに思うわけですね。もともとこの農業改良資金は、法律の目的にもはっきりうたっているように、農業者が自主的に農業経営農家生活の改善を図るという性格を持つもので、今回の改正で新たな制度や要件を加えて資金種目を複雑にすることによって、従来の自主的なという趣旨が後退させられてはいけないというふうに思うわけですけれども、その点はいかがでしょうか。
  222. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 私どもの考えでおりますことは、今先生のお尋ねのような事態と全く逆のことでございまして、従来の技術導入資金のほかに、当面四部門の緊急に経営改善に取り組む必要がある部門を決めまして、その新資金創設しておるわけでございますが、これらはいずれもそういう生産方式の改善に取り組む必要があるということで、前向きの意味で資金を設けておるわけでございまして、これはもちろんそれぞれの資金の、本当にこういう資金を必要とする方に借りていただく、こういう意味で、従来から農業改良普及事業と密接な連携をとりながら貸し付け決定、貸し付け後の営農指導に当たっておりますが、今後御指摘のような事態は全く生じないというふうに考えておりますけれども、なお本当のこれからの農業者の自主的な意欲、それにこたえるような運用については十分留意してまいりたいと考えております。
  223. 中林佳子

    ○中林委員 それはぜひ要求しておきます。  それから、今回の改正案のもう一つの特徴は、資金管理方法を、従来の国から各県へ補助して県段階で特別会計を設けて農家融資していた方式を、今回は国に特別会計を設けて、そこで資金を一元化していく方式に変えた点だと思うのですね。これは確かに、各県ごとにばらつきの目立った農業改良資金全国的に有効利用できるというメリットがあるというふうに思います。しかし、一面、運用を少し間違えると、従来のような県段階での自主性が保たれなくなるおそれがあるのじゃないか。農民への融資の直接窓口は県の特会であることは従来と変わりはないので、あくまでも県段階での自主性を尊重して、国は県の要望に沿って資金の運用を図るべきであるというふうに思います。その点で、従来どおりの県の自主性を第一義的に考えて運用されるべきだというふうに思いますけれども、その点は変わりはありませんか。
  224. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 その点は全く変わりがないわけでございます。従来どおり、これはあくまでも県が自主的に貸し付けをする。それに対して原資供給を国がいたしましてそれを助成するわけでございまして、その資金管理の面が貸し付けに変わりましたのは、今お尋ねの中にございましたような資金の調整というメリットを発揮するためだけのことでございまして、県が自主的な意欲のある農業者に県の判断においてこの資金を貸し付けるということは毛頭変わらないわけでございます。
  225. 中林佳子

    ○中林委員 次に、私は今回の金融三法に関連して、特に水産国日本の漁業者を取り巻く負債状況というのが非常に深刻なものですから、この点について質問したいと思います。  金融三法のうち漁業近代化資金助成法改正は、融資枠の拡大や償還の延長などを盛り込んでおって、漁業に対して金融面でのてこ入れを感じないわけではありません。しかし、これらの対応では、到底今日の漁業が置かれている深刻な負債状況を打開するには至らないというふうに思うわけですが、今回の漁業近代化資金助成法改正案で漁業再編のための特別融資を新たに設けたということになるわけですが、その制度の目的と内容についての御説明をお願いします。
  226. 斉藤達夫

    斉藤(達)政府委員 御指摘の特別融資事業といいますのは地域漁業総合整備資金制度のことと存じますが、近年二百海里体制の定着に伴いまして、我が国周辺水域の高度利用の必要性というのが非常に増しております。しかしながら、沿岸漁業を主体とします地域漁業におきましては、漁獲努力に比べまして資源がやや少ない、あるいは漁獲努力が過大であるということで、資源と漁獲努力とのアンバランスを中心としまして多くの課題を抱えておるわけでございます。  したがいまして、今回用意しております総合整備資金制度のもとにおきましては、適正な漁場利用を推進する、適正な漁場利用を推進しながら地域漁業の振興を図っていくということでございまして、これは活力ある漁村の形成のための対策の一環として行うものでございます。この制度のもとにおきましては、漁業者が資源と漁場の自主的管理を行うということを基本といたしまして、地域の漁業者の話し合いによって漁場利用の適正化あるいは水産資源の維持増大就業機会拡大筆を図ることといたしまして、このための特別融資を行うということでございます。  特別融資措置の内容につきましては、漁業者の場合、通常五・五%のところを〇・五%下げまして五・〇%、漁協等の場合は通常六・五%のところを六・〇%とすることとしております。それから対象地区数につきましては六十年度百地区、五年間で四百八土地区を予定しておるわけでございます。
  227. 中林佳子

    ○中林委員 一定の救済措置にはなると思うのですけれども、ただこの特利融資の対象が操業隻数の縮減を行う漁業者のみを対象にする、生産調整のためだけの施策ということになれば、せっかく地域漁業の総合的な振興ということを銘打っていらっしゃることには相反するようになるのじゃないかという心配をするわけです。ですから、単に生産調整だけに向けられたものではないと思うわけですけれども、その辺の運用はどのようにお考えになっているのでしょうか。
  228. 斉藤達夫

    斉藤(達)政府委員 先ほど先生の御指摘にもありましたように、まず第一番に、沿岸漁業で困っております経営の不振の基本的な原因は、漁獲努力と資源水準とのアンバランスにあるというふうに認識しておりまして、やはりその点を解消するという方向に向けてこの制度を考えておるわけでございます。
  229. 中林佳子

    ○中林委員 本当にこれが生かされるように経緯はぜひ見てみたいと思うわけですが、既に農林漁業金融公庫の構造改善資金である漁船建造資金融資については、ことしの一月末現在で前年の三分の二まで落ち込んで約百億円もの減になっているわけです。ここ数年来を見てもずっと減り続けていて、船は老朽化して新船が欲しくても、漁業不振だとか不況のために新建造ができなくなっている漁業者が、この数字、経緯を見ても裏づけられていると思うのです。漁業近代化資金の貸し付け状況を見ましても、貸付枠の消化率が昭和五十三年には九八・八%、ほぼ満杯であったものが、五十八年には五二%まで落ち込んでいるということにあらわれていますように、漁業者の投資意欲は大きく減退しております。  その一方で、漁協の信用事業による焦げつきはかってなく大きな金額になっています。漁業不振によって借りた金が返せないまま漁業者が倒産し、貸し付けが焦げついた事例が多いことを物語っております。全漁連が水産庁の委託を受けて調査した五十八年度の水産業金融構造調査報告書では、回収不能債権及び回収に不安のある債権は無作為抽出百組合で七十億円にも上っておるわけです。全国二千組合として換算しますと、大体一千四百億円という膨大な不良債権が存在する計算になってしまうわけです。水産庁の集計でも全国漁協の約二割の四百二十三組合が損失組合となっております。水産庁は、こうした漁協信用事業の不良負債や焦げつきに対して今後どういう対策を考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
  230. 渡辺武

    ○渡辺説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、個々の漁業者の経営が非常に不振ということでございまして、その影響を受けでそのような方々に資金を融通しております漁協が経営不振に陥るということが最近増大してまいっております。そこで、漁協の本来果たすべき役割というのが当然ありまして、それを達成するためには、やはりどうしてもこのような経営の不振な漁協を再建しなければならないということを考えておるわけでございまして、そのために六十年度から新たに漁協信用事業整備強化対策事業というのを実施しょうとしておるところでございます。これはもちろん漁協自身が自助努力を払っていただいて、それに対して国とか県あるいは信漁連といった関係団体が一致協力のもとに立て直しを図っていくということになっておるわけでございます。  端的に申し上げますと、不幸にして漁協の経営がまずくなりまして欠損金を生じておるという場合、あるいは欠損金ということまできちっと計上はされておらなくても、貸し付けた債権が非常に固定化して回収になかなか困難があるというような債権、これらを合わせて、それ見合いの借り入れを新たに上部団体から行うことにいたしまして、その部分について金利を助成するということが第一点でございます。そのほかに、信用事業の事務の共同処理を推進いたしますための機械の導入費についても助成を考えておるわけでございまして、それらを合わせて漁業協同組合の信用事業についてその体制を整備してまいりたいと考えている次第でございます。
  231. 中林佳子

    ○中林委員 負債が非常に多い漁協、大体どのくらい対象を挙げていらっしゃるのか、その数をお教えいただきたいと思いますし、六十年度は大体どのくらいの組合を対象にお考えになっているのか、お伺いしたいと思います。
  232. 渡辺武

    ○渡辺説明員 対象としては全体として二百三十五組合でございますが、六十年度初年度においては、そのうち九十五というように考えておる次第でございます。今申し上げたのは利子補給についての仕事の分野でございます。また、先ほど申し上げた機械の共同処理センターをつくるという点につきましては、共同処理センターとしては全体で十七でございますし、初年度としては四というように考えておる次第でございます。
  233. 中林佳子

    ○中林委員 利子補給という手だてだとか事務の合理化という手だてだけで今の負債が救済できるというのは甚だ疑問なわけです。問題は、そうした漁協の焦げつきが単に金融政策上の失敗から起きただけではなくて、やはり漁業を取り巻くかつてない厳しい状況がその背景にはあるということを、農水省としてもぜひしっかり認識してほしいと思います。  我が国の水産行政の行き詰まりが今日非常に深刻な金融事情をもたらしているわけですが、その事情を裏づけるかのように、実は去る三月一日に島根県内の漁業会社が二つ相次いで倒産いたしました。このことによって県内の漁業関係者は大変なショックを受けておりまして、これからどうなるだろうかという心配をしているわけですが、ここ数年の漁業者の倒産状況はどのように推移しているか、水産庁つかんでいらっしゃればお答えいただきたいと思います。
  234. 渡辺武

    ○渡辺説明員 お答え申し上げます。  一口に漁業者の倒産ということでありますが、例えば漁家経営といったような漁業者の形態、あるいはそれが企業経営によって行われているといったような形態等ありまして、倒産ということにつきましての意味合いが非常に異なるわけでございます。また、漁業者につきましては御承知のようにいろいろな漁業を兼業もいたしております。それから、倒産という場合のその時期をどう確定するかという問題等もありまして、倒産というものを統計的に処理するときに非常に難しい面があるわけでございます。したがいまして、私たちといたしましては、残念なことではございますが、漁業者の倒産というものを計数的には現在把握いたしておりません。  しかし一方、先生御承知のように漁業信用保証制度というのがございまして、保険金の支払いを最終的には行っている制度があるわけでございますが、その支払い件数等から類推いたしますと、支払い件数が非常にふえてまいっておるあるいは支払い金額もふえてきておるというような事柄がありますものですから、漁業者の経営状況が最近非常に悪化しておりまして倒産も増大しているのではないかというように認識はしておるところでございます。
  235. 中林佳子

    ○中林委員 今おっしゃいました中央漁業信用基金の保険金支払いの状況を見まして私はびっくりしましたけれども、この五年間で件数にして六・三倍ふえております。それから金額は四・七倍にも達しているわけですね。だから、これは保険料を支払っている一定規模の漁業者についての状況であるわけですから、ましてや個人の零細漁業者を含めますともっと深刻な倒産状況になっているのじゃないかと思います。個人でやっている人たちがいつ倒産したりいつ仕事を始めたりするかを把握するのは非常に難しいということで実情把握ができてないとおっしゃるのは甚だ遺憾だと私は思うわけです。全国的にすべてを調べることは非常に難しいにいたしましても、水産庁としてはせめて業種だとか地域だとか、その辺を限って事例的な調査というのをおやりになる必要があるのじゃないかと思いますので、その点について一点お伺いしたいということ。  それから、政府は五十七年度と五十九年度に中小漁業融資保証保険制度の運用を厳しくされているわけですけれども、これでは緊急融資資金が漁業者に円滑に融資されにくい状況を促進するだけで、負債や倒産がふえる状況に逆行するものではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  236. 渡辺武

    ○渡辺説明員 お答えいたします。  先生おっしゃいますように、私たちといたしましても倒産というものにつきましての計数の把握は、今後の問題ではございますけれども、ぜひ必要なんではないかというように存じておる次第でございます。そこで、部分を限ってではございますけれども、先ほど御説明申し上げましたような信用保証制度の運用上もこのことがぜひ必要になっておりますことから、五十九年度におきまして、各県の漁業信用基金協会から、債務保証を行っている漁業者の倒産状況につきまして一定期間ごとに中央漁業信用基金に報告させる体制を整備したところであるわけでございます。したがいまして、今後はこの保証を受けておる漁業者の範囲ということで限定はあるわけでございますけれども、そのような方々につきましての倒産状況の把握は可能になると考えておる次第でございます。  それから、第二番目に御指摘ございました、この保証保険制度を安定的に存続といいますか機能を発揮させていきますためには、基金の保証保険に関します収支がきちっと回復するようにする必要があるわけでございまして、そのためにも先生御指摘のようにいろいろな措置を従来ともに講じてまいったわけでございます。その措置の一つといたしまして、融資をする場合の審査あるいは保証にかけます場合の審査につきまして、それを慎重にするようにということも指導をしてまいったわけでございます。しかし、これはいたずらに緊急融資その他の融資を締めるという趣旨でやっておるわけではございませんで、当然、政策に基づきまして融資をしなければならないような資金につきましては、融資が円滑に行われなければならないものであるというように考えておるわけでございます。したがいまして、このような審査の面での慎重な措置ということは、またそれとして当然御理解がいただけると思いますが、そのようなことを通じましても、経営が本当に再建する見通しのある人につきまして所要資金が必要な額融資されるというための保証、これはぜひ行っていくという考えには従来ともに変わったところはないわけでございまして、御了承いただければと思う次第でございます。
  237. 中林佳子

    ○中林委員 現状をしっかりと把握していただいて、それに本当に敏速に対応できるようにしていただきたいことを申し添えておきます。  私は今回、島根の倒産した二社について、会社関係者や漁協の人からいろいろと話を聞いたわけですけれども、それぞれに水産行政に起因する問題が中にたくさん含まれておるわけです。  まず、浜田漁港を基地とする福洋漁業生産組合は、沖合底びき網漁を中心に漁船一統を持って約三十人の従業員を抱えておりました。ピークには年商二億三千万の水揚げがあったということですが、ついに先月一日に約四億円の負債を抱えて倒産したわけです。浜田漁港では沖合底びきが総水揚げの六割を占めた時期もあって、ここ数年来、漁の不振で廃業した事例が少しはあるのですけれども、倒産は今回が初めてということで、漁業関係者に大変なショックを与えているわけです。  この間、浜田漁港の洋底漁による水揚げは、五十五年に二万二千トンを記録して以来、五十七年に一万五千七百トン、さらに五十九年には一万三千四百トンと落ち込んでいるわけです。この福洋漁業が倒産に至った直接の理由は、二年前に漁船を入れかえた際の借金が、減り続けている水揚げとのはざまで大きな負債につながったということであるわけです。浜田漁港ではこのところ、今回の法改正で論議になっている制度資金などを活用して、荷揚げ場の新設だとか漁港整備を進めている矢先でもあったわけです。こうした制度資金の投資が活用されていくためにも、今回のような洋底漁会社の倒産が再び起こってはならないと思うわけで、緊急のてこ入れが今求められております。特に、洋底ひきの漁は島根県全体の漁獲生産高で見るとトップを占める漁であるわけですね。この福洋漁業の倒産は県下漁業全体に暗雲を投げかけたものであると言われております。  県内の洋底ひきの組合組織であります県機船底曳網漁業連合会では、緊急融資資金だとか公庫資金などの制度資金返済期限がことしの五月末に集中してくる、洋底ひきの厳しい状況にかんがみて返済期限の延長など特段の手だてを講じてほしい、こういうふうに制度融資に対する要求を非常に強く訴えているわけですけれども、何か手だてがあるものでしょうか。
  238. 渡辺武

    ○渡辺説明員 お答え申し上げます。  漁業経営悪化というのは全国的でございますけれども、御指摘のように、島根県におきましても経営悪化しておるようでございまして、制度資金の償還状況につきましても延滞が発生をいたしております。しかし全国的な視野で見る限り、全国平均の延滞率に比べますと、島根県の場合は幸いにもそれを下回っているという状況にあるようでございますが、一部、先生御指摘の沖合底びき網漁業とかイカ釣り漁業といったようなところではかなり厳しい状況にあると聞いております。  それから、個々の漁業者の具体的な経営の困難の度合いといったようなことに関しましては、十分に承知していないところもございますので、一般論でしか申し上げられないところではございますけれども、県当局とか関係金融機関との個別の協議が調えば、そのような個々、個別の漁業者でありまして長期資金の償還が延滞しておるという方々に対しましては、長期低利負債整理資金でございます漁業経営維持安定資金というのが別途あるわけでございまして、この資金を新たに借りるということによりまして固定化した債務を借りかえするという措置もあるわけでございます。また、先生おっしゃっているのは公庫資金なり近代化資金のうちの漁船関係の資金であろうかと思いますけれども、制度の枠内においての償還期限の延長というのも道は開かれておるということでございますので、つけ加えて申し上げさしていただく次第でございます。
  239. 中林佳子

    ○中林委員 倒産したもう一社はおっしゃいましたようにイカ釣りなんですね。境港を基地とする三洋漁業というところなんですが、ここは船を一隻持って、十人の従業員で、多いときは年間約一億円の水揚げもあったということなんです。しかし、五十七年から三年間にわたって日朝漁業協定の期限切れという不測の事態が起こってイカ漁全体が大きく低迷したことだとか、漁船燃油が高騰したことなどでついにコスト割れを起こして、約一億円の負債で倒産いたしました。  日朝漁業協定はようやく昨年十月に再締結されたのですが、燃料代の方は、五十四年に一リットル当たり三十一円五十銭だったものが五十八年には八十二円十二銭とピークに達して、現在は六十円二十銭と、五十四年当時の二倍にはね上がっているわけですね。昭和四十八年に比べて魚価が二倍程度なのに燃油は五倍にもはね上がっているということで、日銀の物価指数年報でもA重油は昭和四十七年当時の七倍以上にもはね上がっておるわけです。ほかの漁業用生産資材、卸売物価が軒並みに二、三倍という状況と比べると、この燃油は大変な高騰だと言えると思うわけです。しかもイカ釣り漁は、御承知のように集魚灯を使うこともあって全コストの三分の一を燃料で占める燃料多消費型漁業であるわけです。  燃油については漁業用燃油対策特別資金という融資制度が設けられていて、五十八年、五十九年、六十年と、これを借りた者は償還がピークに達しておりまして大変な負担増になっているわけですね。融資にも限度があって、農林漁業用燃油の安定のために農水省としても特段の施策が求められているのではないかと私は思うわけです。特にこの時期に、一部言われていますようにA重油の石油税の免税打ち切り、この話があるように聞いているわけですけれども、今でさえも、免税があってさえもこのような倒産が起きているときですから、免税の延長は今後とも継続されるよう強く要望したいわけですけれども、いかがでしょうか。
  240. 渡辺武

    ○渡辺説明員 お答えいたします。  漁業生産資材の中心をなします漁業用のA重油の価格につきましては、御承知のような四十八年の第一次石油ショック、それから五十四年の第二次石油ショックで非常に価格が高騰いたしまして、最近は若干低下ぎみではございますけれども、全体といたしましてはかなりまだ高水準で推移しているという状況でございます。このように漁業にとって必須の生産資材でございますA重油につきまして価格が高水準で推移しているわけでございますが、加えまして水産物価格が低迷しておるというようなこともありまして経営を圧迫していることになっておるわけでございます。  先生御指摘のこの免税制度につきましては、そのような事情を背景といたしまして、これまでも関税及び石油税につきまして免税措置をA重油について講じてまいったところでございますし、毎年税制改正の中で問題にはなるわけではございますけれども、私たちといたしましては今後ともこれを免税のまま続けるという方向で対処してまいりたいと考えておる次第でございます。
  241. 中林佳子

    ○中林委員 それから、このたびの倒産の背景にもう一つあるものが韓国漁船の不法操業、これがやはり非常に大きいと県の漁業関係者は指摘しているわけです。韓国漁船の取り締まりについては私も昨年の三月この委員会で取り上げて、そのとき早速集中監視体制をとっていただいて一定の成果があったということで、地元でも大変喜ばれたわけです。しかし期間が、外国漁船取り締まり監視本部というものをしいていただいて大体一カ月半で解散したということがありますので、昨年の十一月には開口板つきのスターントロール漁船が拿捕された、こういうような状況も出てきております。これでは厳しい漁法規制をしている日本の漁業者が倒産するのも当然だとも言われております。島根県沖合での昨年一年間の韓国船拿捕は二十五隻で、これは八三年の八隻、八二年の一隻と比べても大変多い拿捕件数だというふうに思います。拿捕されるのは領海侵犯しているものを拿捕するわけですから、違反操業というものがどんなに多いかということを物語っております。日韓漁業協定に基づく違反操業、これは相手国への通報しかできないわけですけれども、これも年間千件近くにも達しているわけですね。  昨年私は、漁業を中心の産業にしております隠岐島へ渡ったときにも、関係漁業者から、この取り締まりをしてほしい、一カ月半などという短期間ではなくて、集中的な監視体制というものは日本が漁をしている間は本当にずっとしてほしいという要望が大変強いわけです。海上保安庁に要望したいわけですけれども、これから夏にかけてシイラ漁だとかアナゴ漁だとかそういうものが始まってくるわけです。そうなりますと、韓国漁船がまたまた島根沖、山陰沖へ接近してくることも考えられますので、ぜひ取り締まり本部、集中監視体制、これを強化していただきたい、できれば恒常的にやっていただきたいというふうに思います。それから、水産庁としても、漁業関係者からたくさんの要望が出ていると思いますけれども、対韓国との折衝などで、日韓漁業協定を守って秩序ある漁業が行われるよう、今後とも強く対応していただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  242. 神谷拓雄

    ○神谷説明員 お答え申し上げます。  先生から御指摘がございましたように、昨年一年間で二十五隻を検挙しておりまして、この結果、最近ではかなり島根県沖合分の違反操業が減少してきているのではないかというふうには思っております。  今後の取り締まりについての御要望でございますが、そういう効果もあらわれておるとは思っておりますけれども、今後韓国漁船の不法操業、状況によってはさらに集中的な取り締まりをやらなければいけないというふうに思っておりますので、そういう意味からも監視取り締まり体制強化を図っていきたいというふうに思っております。
  243. 斉藤達夫

    斉藤(達)政府委員 取り締まりの点につきましてはただいま海上保安庁から御説明があったわけでございますが、水産庁といたしましても、取り締まりの面におきましても保安庁と協力いたしまして、最善の努力を払っていきたいと思います。  それからまた、韓国政府に対しましては、実にしばしば申し入れはやっておるわけでございますが、特に本年一月二十八日から三十日まで開催されました第十九回の日韓共同委員会の際に、違反船防止措置の確立について強い要望を行いました。これに応じまして韓国側も、監視船の継続派遣等によって違反操業の根絶に努めるということを言っておりまして、その成果があるいは出たのか、最近では違反操業が若干減少しておるということでございます。さらに、韓国側は、日本近海における違反船を防止するための措置としまして、日本側の申し入れに応じた形で違反船に対する罰則の強化、船長、漁労長等への協定遵守の指導徹底、監視船の継続的派遣、特に違反の多い一月-三月という時期になりますが、これへの集中配備、監視船増隻の検討、それから、底びき漁船の減船指導というようなことをやるということを言っておりました。
  244. 中林佳子

    ○中林委員 非常に強い要望がありますので、ぜひよろしくお願いいたします。  続いて金融政策に関係する漁業要求について若干質問したいと思うわけですけれども、隠岐島に渡って漁業関係者と懇談した際に出てきた要求なんですけれども、水産専用の運搬船購入にぜひ援助をしてほしい。離島はどこでもそうだと思うわけですけれども、漁業が第一次産業の中心になっているわけですね。離島であるがゆえに、とれた新鮮な魚を本土に早く送れるようにしたい。今隠岐島では、民間のフェリー船で魚を運んでいるわけですけれども、これは人を乗せる船でありますので、魚の水揚げと時間が合わないという弱点があるわけです。ですから、ぜひ離島の運搬船の確保のために助成をお願いしたいという点が一点です。  それからもう一点は、負債対策の一例なんですけれども、隠岐に浦郷漁協というのがありまして、年間の水揚げが約六十億円なんです。それに対して漁業者への貸付累積が二百二十六億円にもなっていて、漁協でも、金利を下げるなど返還条件の緩和に努めているわけですけれども、とても追いつかない。漁協信用事業へのてこ入れを行う際、漁協の置かれている状況だとか負債の深刻なところからぜひ救済の手を差し伸べてほしいと思うわけです。先ほどの対策もありますのを聞きましたので、ぜひこの浦郷漁協への特別な援助、今年度大体九十漁協くらいを対象にというお話がありましたので、大変困っている漁協でございますので考慮していただけないか、この二点についてお伺いします。
  245. 斉藤達夫

    斉藤(達)政府委員 隠岐島の西郷漁協の件でございますが、六十年度に沿岸漁業構造改善事業で水産物運搬船を建造したという希望を持っているということは承知しております。今後県当局等から施設の具体的な規模、集荷範囲等、具体的内容を聴取した上で検討してまいりたいと存じます。  それから、同じく隠岐の浦郷漁協でございますが、同漁協の欠損金、管理債権の額、内容、それから組合及び組合員の組合再建への意欲、自助努力内容、これに対する県、系統上部団体等の対応を見た上で判断させていただきたいと思います。
  246. 中林佳子

    ○中林委員 引き続き隠岐島の漁業に関してちょっとぜひ質問したい点がありますのでお願いしたいのですが、二月八日に隠岐島の西郷港の入り口付近で第十六琴鳥丸が転覆して、乗組員十一人全員が死亡するという大変痛ましい事故が起こりました。私このニュースを聞いたときに、相当なしけでもあったのかなと思ったのですけれども、これは大したしけでもなかったということなんですね。当日は曇りで東の風十メートル、波高一メートルないし二メートル、うねり二メートルないし四メートルという状況で、こういう状況ではどんな船でも出ていくという状況だったと報道されております。一体あの転覆した原因、これは今運輸省の海難審判理事所で調査していると思いますけれども、原因はどうなのか、どのように分析されているのか、お伺いしたいと思います。
  247. 榎本武

    ○榎本説明員 第十六琴島丸転覆事件の調査状況についてお答えいたします。  この事件は、発生後重大海難事件に指定いたしまして、直ちに理事官が現場に赴きまして、第十六琴島丸の船体の実地検査を行いますとともに、船舶所有者とか、当時現場近くにおりました僚船の船長、あるいは付近を航行中の船舶からの目撃者に対しまして事情聴取を行いました。今後当庁といたしましては、本船の船体構造及び事故当時の気象、海象に関する証拠の収集を行うほか、その他の関係者に対しましての事情聴取を行うなど、鋭意調査を進めまして、本件の原因の究明を図る所存でございます。
  248. 中林佳子

    ○中林委員 まだ原因が明らかになっていないので事前にお話を聞きますと、大体一年くらいは原因究明にかかるのじゃないかというお話があったのですが、ここのところは地元では三角波のよく起こるところだというふうなお話もあるわけです。ですから再び同じような事故が起きないとも限らないわけですので、調査をぜひ急いで行っていただきたいということを要望しておきます。ここは運輸省の港湾区域外なものですから、調査の結果を踏まえて海上保安庁としても、漁船の航路変更の指導など、ぜひ対策を強めていただきたいことを要望しておきます。  非常に私今心配しておりますのは、この転覆の後、この事故によって漁船の所属している会社が閉鎖せざるを得なくなって、残りの従業員十四人もみんな解雇という状況になっておりまして、再就職の道が非常に求められているのですけれども、ここは離島だということもありましてなかなか再就職の道が大変だということなんですね。運輸省として船員職業安定所を設けていて、現地の出先機関を通じて、残された人たちの再就職のあっせんをぜひ強力に指導していただきたいというふうに思いますけれども、その点を一点お伺いします。
  249. 森谷進伍

    ○森谷説明員 お答え申し上げます。  船員の職業紹介につきましては、各地方運輸局に設置しております船員職業安定所等におきまして、船員職業安定法に基づいて求職の申し込みを受理し、当該求職者に対して申し込みの内容に適合する職業紹介を行っているわけでございますが、御質問の第十六琴島丸に関連して発生しました離職船員の再就職につきましては、当方の調査によりますと、離職給員十四名のうち現在まで八名の方が、中国運輸局の松江支局なり境支局に求職に来ております。船員の求人、求職の状況につきましては、求職が求人を大幅に上回っておるという状況が続いておりまして、極めて厳しい状況でございますけれども、求職中の方に対しましては、早期に就職ができるよう今後とも努力していきたいというふうに考えております。
  250. 中林佳子

    ○中林委員 離島という状況がありますので、ぜひその点よろしくお願いいたします。  それから、一番深刻な状況になっているのは遺族の方々なんです。遺族の方々は、船員保険から三百万、それから水産共済から三百万、計六百万円内外の補償金が支払われているわけです。遺族の人たちは、皆一家の大黒柱を失って、あすの生活の見通しも立たないという状況になっております。ある御婦人の方は、小学校に通う二人の子供を抱えて、わずかな補賞金だけでこれからどうやって生きていこうかと思案に暮れている、自分も働きに出なければならないけれども何分離島ゆえに働き口がない、しかもまだ小学校低学年の子供の面倒も見なければならない、今どき、交通事故で数千万の補償がされるという時世に、わずか数百万円で命があがなわれたのではもうやりきれない、子供がいなければ死にたい気持ちだと、涙声で訴えておられるような状況があります。そういう状況があるときに、私は今全国的にも海難事故の後のこういう遺族の方々の生活再建という問題は大きな問題になっていると思いますけれども、とりわけ育英資金の問題で最後に質問したいと思うわけです。  これは、御承知のように昭和四十五年に発足をしております。これは民間の漁船海難遺児育英資金ということで、募金を中心にして資金運営をしているわけです。国は、五十五年度に基本財産造成費ということで三億円出しています。五十五年、五十六年、五十七年の三カ年は、特別募金活動費ということで千五百八十二万円を出したきりで、水産国日本と言われているのですけれども、この育英資金に限っては余りにもお粗末な措置だというふうに思います。育英会では、六十年度から遺児への学資支給金などを引き上げたということをおっしゃっておりますけれども、それでも小学生で月額五千円、中学生で月額六千円と非常に少ないわけです。高校生に至っては、月ごとの給与金はなくて、入学時に十万円の支給があるだけなんですね。育英会では、民間団体として募金をもとにしてやれる事業はもうこの辺が精いっぱいで、国としても何とか手厚い保護をしてほしいと、こういうことを訴えているわけです。民間の育英会がここまで努力をしているわけですから、本来育英資金は国が全額見るぐらいの措置が必要なんじゃないかと私は思うわけですけれども、少なくとも育英会の活動費の助成、これは五十五年、五十六年、五十七年はしていらっしゃるわけですから、それぐらいはやるべきではないかと思いますけれども、検討していただけますでしょうか。
  251. 斉藤達夫

    斉藤(達)政府委員 先ほど先生の御指摘にありましたように、昭和五十五年度三億円の基本財産造成費の助成を行ったところでございますが、さらに助成を強化すべきではないかという御指摘でございますけれども、現在の財政事情のもとでは非常に困難な面が多いかと存じます。
  252. 中林佳子

    ○中林委員 大臣、遺族の人たちというのは本当に大変な状況なんですよ。五十五年、五十六年、五十七年と出ておりました活動費の助成、これは非常に少額ですけれども、それでもやっぱりこの育英会としては随分助かるというふうにおっしゃっている。それが打ち切られている状況でございますので、私はぜひ前向きに検討いただきたいと思いますけれども、その一点だけもう一度お伺いして、質問を終わります。
  253. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 今次長が答えたようなことでございますが、基本財産の造成費の助成に最善の努力をしているわけでございます。
  254. 中林佳子

    ○中林委員 済みません、もう一度。
  255. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 本事業の重要性にかんがみまして、基本財産造成費の助成に全力を尽くしております。
  256. 中林佳子

    ○中林委員 終わります。
  257. 今井勇

    今井委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十七分散会