○島田
委員 限られた時間ですから、
大臣のおっしゃりたいことはいっぱいあるのでありましょうが、また
機会を改めまして私もお聞きすることにして、きょうは二、三の問題を提起しまして、ひとつぜひ真っ正面から取り組んでいただきますようにお願いをしたい、こう思っております。
さて、
農家経済は大変厳しい
状況を迎えている。たまたまきようこの席で「
農林金融の実情」という
農林中金から提出されましたものをめくって読んでみました。私が今さらいろいろなことを挙げて申し上げる必要はないほど
情勢は非常に厳しくなっております。それで、
農林中金が主として農協あるいは漁協、森林組合等の組合に対する金融の実態からとらえておるのは当然でございます。しかし、ここで「農協系統組合金融 要旨」として五十四ページに載っておりますのを見ますと、こういうふうに言っております。五十九年度の稲作というのは、先ほど松沢さんからのお話の中でも触れておりましたけれ
ども、ことしは何とか愁眉を開いたという年でございます。しかし、五十八年度というのはもう大変な
輸入圧力が高まってまいりまして、大揺れに揺れた年でありました。そういう中で主要
農畜産物の
生産調整が追い打ちをかけるように続けられ、そしてまた
価格も臨調
行革路線に沿って抑制されてきた。
こういうことになりますと、
農家経済が困難になるのは当たり前なんです。その当たり前の当然のことを中金は言っておるのでありますが、しかしそのために
農業所得が伸び悩み、
農業経済は大変悪化をした、こういう趣旨でこれは
報告されているのであります。あと漁業の
関係、林業の
関係を見ましたけれ
ども、やはり同じように、押しなべて第一次産業は大変不況の
状況を今迎えている。
とりわけ私が心配しますのは、今申し上げましたような外圧やらあるいは内圧で
農家経済が極度に窮迫をする、こういう
状況の中で、それではどうやったらこれを打開することができるのかという点をしっかりと模索しなければならぬと思うのです。残念ながらその模索が十分ではないという思いを私は強く持っています。
例えば私は
一つの提言をしたい。交易条件なり交易指数というものが
農業経済を見る場合の
一つの目安でございます。こんなことは
大臣は百も御
承知のことを私は申し上げているのであります。我々
農家が売る
価格がこういう水準で、
農畜産物を
生産する
生産資材、つまりコスト部分を占めます重要な資材費が下がっていってくれると、この間は所得でございますから、
農家所得としてこれで私たちは生活をし、子供を教育し、経営の維持拡大を図り、あるいはまた生活の向上を目指すことができるという余力がここで生まれてまいります。
ところが第二次オイルショックの後、五十三年、五十四年と引き続きました現象の中では、売るものは抑えられて、使うものが上がってしまったのです。つまり、はさみ状の
状態で言えば逆シェーレみたいな現象になりました。そして、
農家が単年度で大きな赤字を生み、続いて翌年も同じ現象から抜け出すことができなかったために、それが固定された負債になりました。せっかく五十六年で回復しましたけれ
ども、五十七年にまたこうなりました。五十八年になりましたら、東北、北海道を
中心にして未曾有の冷害、凶作になりました。ことしは雨不足のために
日本列島はからからという
状態でございました。
農家経済はたまったものじゃない。
ですから、今私が申し上げましたように、
価格が抑えられるということは、そのままにしておけば所得が圧迫されるわけでありますから、これをもう少し広げるために何が必要かと言えば、
農家が
生産するときに使う農薬だとか肥料だとか、飼料だとか農機具だとかの
価格をできるだけ下げていかなければ
農家所得はふえないのであります。ところがこれはほうりっ放しなんです。
価格は抑えることに積極的でありますけれ
ども、使う資材費を積極的に抑制するという
政策がそこに伴っていない。
農家の経済はめちゃめちゃであります。
私はそこに力点を置いた
農政展開が急がれるのではないかというふうに思うのです。私は、きょうは時間が余りありませんから、交易条件の中で実態的に占めております
農家の
状態というものを詳しく述べるということは次の
機会に譲りたいと思うのです。
そこで、限定して申し上げますと、農機具、これは
農畜産物を
生産するときのコストに占めるウエートが非常に高いものでございます。トラクター一台が何百万もするわけでありますから、これをできるだけ下げていく努力をしてほしい、私はこう思って、十三年前に初当選をいたしましたときから、舶来のトラクターにだけ依存していて、
我が国の農機具、まあ少し大げさに言えば農機具
政策という位置づけをしてもいいのだろうと思っております。
府県と北海道に分けますと、確かに府県の
農家は小型の、いわゆる耕運機型のトラクターが
中心でございました。ですから、これは
国内の農機具メーカーが分担をする、北海道は四十馬力以上のいわゆるトラクターが稼働力の
中心になって、求められておりましたから、その大型のところは舶来に依存をするという形でおったのであります。
私自身トラクターの運転もできますし、やります。近ごろは少し年をとりましたので、若い者に任して、トラクターのハンドルを持つことは余りやりません。しかし、つい先日まで私はトラクターを駆使して第一線で百姓をやっておりました。ですから、私は自信を持って申し上げられるのでありますが、私は舶来の機械そのものがいい悪いというのではなくて、大変不都合な側面を抱えているのは、これはやむを得ないことなんでありますが、トラクターが故障いたしますと部品が直ちに必要です。
何といったって、天気を見ながら農作業をやるわけでありますから、西の方から雲がやってくれば、もう一刻も早く農作業を終わらせたい。ところが、その焦っているときにトラクターが故障を起こしたときの思いというのは、
大臣、これはやった者でないとちょっとおわかりいただけぬかもしれない。いらいらなんというものではないのであります。
例えば牧草に例をとりますと、今トラクターがスムーズに動いてくれればきれいな牧草、栄養価の高い、いい牧草が上がるのに、雨に一回打たれますと大体栄養分が半減すると言われているのであります。トラクターはそこにありながら、天気はどんどん悪くなってくる。この気持ちは大変なんであります。それで、トラクターの部品を、これはもう当然のことでありますが、早く持ってきてもらいたいという
要請をいたします。ところが北海道じゅう探してもない。
私が使っておりましたのはジョン・デアーという機械であります。西ドイツであります。
アメリカの会社と合弁いたしましたものでありますが、さあ大騒ぎです。東京にないか、ない。西ドイツまで手当てをしている。これでは、とてもじゃないが農作業にならぬのであります。
そういうことも身につまされておりましたので、何とか国産にすれば、幾ら遠くたって東京にはあるはずだから、空輸すれば何とかその日のうちに手当てができる。ワシントンだなんてことを言わなくたって、何とか済む。だから国産化をやってもらいたい。
農林省は当初は渋りました。しかし国産化できない理由はない。日産だってトヨタだって世界じゅうを走り回っている優秀な車であります。トラクターと引き合いをするというのであればブルドーザーがございます。
大臣御
承知のように、小松のブルドーザーは、世界じゅうを席巻していると言ってもいい威力を持っている機械でございます、舶来品にかわるような国産トラクターが
国内の技術をもってできないというわけはどこにもない。踏み切っていただきました。
国産化はようやく本腰が入って、三、四年前から私の農事組合の中でも四台あるうちの一台が国産にかわりました。やがて国産に全部かえていこうという動きも私の組合の中ではあるのであります。せっかく国産でありますから、
外国から入ってくるものよりは安いだろうというのが我々の当たり前の
期待であります。ところが、最近安くなくなったのです。外車と比べても値段の上ではそんなに差がなくなっちゃったのです。おととしあたりまでは差がありました。さすがに国産は安くていいわい、しかも六十馬力、七十馬力。今百馬力の大型までできるようになりました。なかなかしっかりしたボディーで、国産も捨てたものではない、むしろ国産の方がいいのではないかという評価も一部にはあるぐらいであります。これは
農林省の戦略は見事に成功したと私は思っておりました。
ところが、残念ながら最近はそうなっていないのであります。むしろ外車、舶来の方が安い。そしてあろうことか、一番大事な部品が時々品切れをするのです。これじゃ国産化した
意味が全くない。あげくの果てにモデルチェンジが物すごく激しい。だから部品なんかを求めてやっているよりは新しいタイプのものができました、こっちの方がよほど威力があるよ、宣伝もなかなかよろしい。セールスマンは
皆さん大変熱心でございますから、
農家も渋々ながらもこの宣伝に負けちゃうことが多い。新しい方がいいに決まっているわけであります。古いものをなるべく高く下取りしてくれるなんていったら、面倒くさい、部品探しているよりはチェンジした方がいい。どうもこんなことになりそうに思えて、今私は大変警戒心を強めている。
またぞろ
農家経済の大変大きな重圧になっていくのではないか。トラクター、農機具が
農業経営にのしかかるおもしというものには言い知れない大きなものがある。だから農機具の下敷きになってはいけない。できるだけ大事に使って、八年のを十年、十年のを十五年使う、そういうことでなければ
農家経済、
農業経営というものは成り立っていかないという自覚を
農家の
皆さんも持っておられるわけです。それにぴしゃっとこたえる行政の姿勢というものがもしもどこかで損なわれちゃったら大変だ、こう私は思うのであります。
事トラクターにそんなに大げさなことを言う必要はないとおっしゃる人もいるかもしれませんが、私はそう思っておりません。経営に占める割合が非常に高いということを考えますときに、機械について真剣に組り組んでいただくことが、先ほど申し上げました
農家所得をふやす大事な——もちろん肥料とか農薬とか飼料とか、いっぱいあるのでありますけれ
ども、それは時間の
関係できょうは触れないでおきますが、そうしたコスト面をどうやって下げるかという積極的な姿勢が今日必要だという点にもう少し
農政の視点があってしかるべきではないか。私はどうもそこが抜けているように思えてなりません。構造
政策、構造
政策だけてあります。もうトラクターなんかもその一環に組み込まれているということは事実ですけれ
ども、しかし一生懸命旗を振って高いトラクターを買え買えとやられたのじゃ、これはかなわぬ話であります。それと同じような結果になったとしたら、
農政の欠陥だと
指摘されても仕方がないのじゃないでしょうか。
少し長くなりましたが、
大臣に御認識をいただきたいと思って、私は私の体験を含めて実情を申し上げたのでありますが、お考えをお聞かせください。