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1984-12-18 第102回国会 衆議院 農林水産委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年十二月十八日(火曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 今井  勇君    理事 衛藤征士郎君 理事 島村 宜伸君    理事 田名部匡省君 理事 玉沢徳一郎君    理事 小川 国彦君 理事 日野 市朗君    理事 武田 一夫君 理事 吉浦 忠治君    理事 神田  厚君       大石 千八君    太田 誠一君       菊池福治郎君    佐藤  隆君       鈴木 宗男君    月原 茂皓君       西山敬次郎君    羽田  孜君       保利 耕輔君    山崎平八郎君       若林 正俊君    島田 琢郎君       田中 恒利君    細谷 昭雄君       松沢 俊昭君    駒谷  明君       水谷  弘君    菅原喜重郎君       津川 武一君    中林 佳子君  出席国務大臣         農林水産大臣  佐藤 守良君  出席政府委員         農林水産政務次         官       近藤 元次君         農林水産大臣官         房官      田中 宏尚君         農林水産大臣官         房経理課長   松下 一弘君         農林水産省経済         局長      後藤 康夫君         農林水産省構造         改善局長    井上 喜一君         農林水産省農蚕         園芸局長    関谷 俊作君         農林水産技術会         議事務局長   櫛渕 欽也君         食糧庁長官   石川  弘君         林野庁長官   田中 恒寿君         水産庁長官   佐野 宏哉君  委員外出席者         総務庁行政管理         局管理官    加納 正弘君         環境庁水質保全         局水質管理課長 小林 康彦君         大蔵省主計局主         計企画官    中島 義雄君         建設省河川局河         川計画課長   陣内 孝雄君         建設省河川局治         水課長     萩原 兼脩君         会計検査院事務         総局第四局農林         水産検査第二課         長       永井 琢磨君         農林水産委員会         調査室長    矢崎 市朗君     ————————————— 委員の異動 十二月十二日  辞任         補欠選任   斎藤  実君     渡部 一郎君 同日  辞任         補欠選任   渡部 一郎君     斎藤  実君 同月十八日  辞任         補欠選任   松田 九郎君     西山敬次郎君 同日  辞任         補欠選任   西山敬次郎君     松田 九郎君 同日  理事吉浦忠治君同日理事辞任につき、その補欠  として武田一夫君が理事に当選した。     ————————————— 十二月十三日  第七次漁港整備計画の促進及び漁港関係事業予  算に関する請願菊池福治郎紹介)(第四一  号)  木材産業不況対策に関する請願中川利三郎  君紹介)(第八〇号)  同(中林佳子紹介)(第八一号)  同(野間友一紹介)(第八二号)  同(不破哲三紹介)(第八三号)  同(三浦久紹介)(第八四号)  米の国内自給体制に関する請願志賀節紹介  )(第一五二号) 同月十八日  韓国米輸入反対等に関する請願吉原米治君  紹介)(第二三六号)  は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  農林水産業振興に関する件      ————◇—————
  2. 今井勇

    今井委員長 これより会議を開きます。  この際、理事辞任の件についてお諮りいたします。  理事吉浦忠治君から、理事辞任いたしたい旨の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 今井勇

    今井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。  ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 今井勇

    今井委員長 御異議なしと認めます。  それでは、理事武田一夫君を指名いたします。      ————◇—————
  5. 今井勇

    今井委員長 農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中恒利君。
  6. 田中恒利

    田中(恒)委員 佐藤農林水産大臣今井委員長、新しく御就任をいただきまして、農政が極めて多難の折、御苦労さまでございます。  私ども野党でありますが、今日の農林漁業をめぐる情勢の厳しさ、特に国際環境の中で日本の食糧問題をどうするかということについては憂いを同じゅうするものでありまして、当委員会論議を通して国民期待にこたえ、農林漁業従事者の要求にこたえる農政に渾身の力を注ぎたいと思っておるところでございまして、これからまた何かと御激励、御指導をいただきますように、この機会に、冒頭、お願い、御要請を申し上げておきたいと思います。  きょうは、農林水産省中心農産物自由化後の果樹制度政策の問題についての検討結果がようやく公表されましたので、私はこの問題を中心にいたしまして若干の論議をいたしたいと思っておりますが、まず冒頭に、新佐藤農林水産大臣農政、特に農畜産物輸入問題についてどのような御見解を持っていらっしゃるか、改めてこの機会お尋ねを申し上げたいと思います。
  7. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 田中先生お答えいたします前に、大変な御激励をいただきまして、ありがとうございます。至って未熟でございますが、先生がおっしゃるように内外ともに厳しい状況でございますが、全力を尽くして頑張るつもりでございますから、何とぞ御指導、御鞭撻をよろしくお願いいたします。  先生の御質問についてでありますが、農産物輸入に当たっては、国内農産物需給動向を踏まえ、食糧の安定供給の上で重要な役割を果たしておる我が国農業の健全な発展と調和のとれた形で行われることが基本的に大切だと思っております。  そんなことで、これらの観点から、農産物輸入につきましては、我が国農業生産農家経済悪影響を与えないような形で十分配慮いたしたい、こう考えております。
  8. 田中恒利

    田中(恒)委員 大臣は、私ども農政に携わる者にとりましてこの二、三年来最大課題でありました農産物輸入問題については、与党、自民党の果樹議員連盟幹事長もせられていたわけでありますから、その辺の事情はよく御承知でありますが、大臣になられますと、恐らく今お役所のお役人が書かれたものを私どもにお伝えいただいたように思うのですけれども、肝心の問題は我が国農業自給力というものが年とともに低下をしておる、このことについては、国会の決議もございますが、歴代農林水産大臣所信表明の中でいつも指摘をせられたことであります。しかし、残念ながら自給力自給率というものは現実低下をしておると私は思います。自給率のとり方についてはいろいろ細かい立場がございますけれども、ともかく我が国農業生産の力は弱くなっております。その大きな原因は、何といっても外国農産物輸入という問題に一番大きな原因があると思うのです。この問題について大臣がこれからどういう施策をとっていかれるか、私にとりましても、日本農林漁業者国民にとっても、一番大きな問題だと私は思うのです。  その点について、率直な生の大臣の御見解を重ねてお尋ねしてみたいと思います。
  9. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 田中先生お答えします。  今申したとおりでございますが、私は基本的に先ほど話したような観点から、農産物輸入について我が国農業生産農家経済悪影響を与えないよう十分配慮したい、こんな考えております。
  10. 田中恒利

    田中(恒)委員 悪影響を与えないということなんですけれども現実悪影響を与えておる、私はこういうように思うのです。何をとっても今そうじゃございませんか。野党皆さんも、今農村を歩いて、一体これでいいのかとみんな言うわけですよ。マスコミはいろいろなこと多言っておりますけれども、実際に百姓をやっておる連中は、これでは生きられぬ、息子に農業をやる気がない、専業農家中核農家のトップを行く諸君だってそういうことを言っていらっしゃる人が大半であります。現実は、困難な状態が日とともに強まってきておる、そこのところをどう切りかえていくかというところが最大の問題だと私は思います。ただ、この議論は非常に大きな問題でございます。また、再開国会の発頭からこれらの点について論議を深めることだと思いますので、改めて申し上げませんが、この点は大臣自体もよく御承知だと思いますから、しっかり腹に銘じてこの対応をお考えいただきたいということだけ要請をしておきたいと思います。  そこで、本論に入らせてもらいますが、ことしの六月ですか、果樹対策研究会というものが設置されまして、先般その報告書を私どもにもお示しいただいたわけでありますが、この果樹対策研究会性格、位置づけ、この報告書報告事項の今後の取り扱いにつきまして、これは局長さんだと思いますが、お答えをしてもらいたいと思います。
  11. 関谷俊作

    関谷政府委員 お尋ね果樹対策研究会でございますが、今回、日米農産物協議後、特にその事後対策検討、そういうような意味合いもございまして、果樹生産者団体、各方面そういう御要請もございましたので、今後の果樹対策について幅広い検討を行おう、こういうことで農蚕園芸局設置したものでございます。  六月二十九日以来六回検討しまして、十二月十三日にただいまお話の中に出てまいりました検討結果を取りまとめたわけでございます。  内容的には、果樹の現状を踏まえて大変広範に対策を書いてございますが、今後の取り扱いといたしましては、当然予算措置関係で実施することもございますけれども、特に今通常国会果樹農業振興特別措置法改正という形で立法化できるものは立法化していくということがいいのではないかということで、研究会の結論に従いまして早急に検討に着手したような次第でございます。
  12. 田中恒利

    田中(恒)委員 果振法の改正報告事項内容を敷衍したいということでありますが、この果振法の内容改正中心になる点は主としてどういう点ですか。
  13. 関谷俊作

    関谷政府委員 幾つかございますけれども、一番中心は、国内的な意味での需給安定のための措置充実強化ができないかということでございます。これは、現在の果振法の中にはそれに直接該当するようなシステム等はございませんけれども、何とかこれを生産者団体関係あるいは出荷団体にいわば協力した形での体制を整えまして需給調整に取りかかるということを法律の中に位置づけていくことができないかということでございます。  なお、果樹農業振興基本方針あるいは県の基本計画、こういうものにつきましても、今日の情勢に応じまして若干その既定事項等の手直しも必要であろうかということも検討いたしておりまして、大体以上のような諸点が改正中心的な検討事項になろうと考えております。
  14. 田中恒利

    田中(恒)委員 私もこの報告書をいただいて二度、三度と読ませていただいたわけでありますが、率直な私の印象を申し上げますと、この問題の背景は、言うまでもなく農産物自由化・枠拡大問題、日米交渉、こういう中でオレンジ輸入枠がふえた、このことからこの際果樹問題の制度政策について何か国内生産者が安心できるような体制をつくってほしい、こういう形の中から起きた問題だと理解をしておるわけであります。しかし、御承知のような財政事情中心とする状況でありますから、新しいものをつくるということについて大変骨が折れる。そういう意味では、農林水産省中心に、あるいは研究会皆さん議論の中でいろいろ難しい問題があっただろうと思います。今日の諸制度、諸立法あるいは政令、そういう複雑な多様な要素の中で一体何をどうやっていくかということについて、御苦心のほどは行間を通して私もわからないことはありません。しかし、問題の最大課題は、私はやはり外国オレンジなりその他の果実なり果汁輸入に対してどういう対応をしていくかというところが一つのポイントであったと思うのです。その辺は余り明確に結論づけられているようにも思えません。  あるいは果樹農業生産構造というか、生産状況が非常に悪化をしておる、これは確かに述べております。その原因は、兼業農家経営参加をしにくくなってきておる、農業外所得に依存しておる、こんなことも書かれております。しかし、そういう中で果樹生産構造というものに対してどれだけの方法を、具体策を立てるのか、例えば特にこの問題の兼業農家対策をどう立てるのか、こういう点も何かちょっとした示唆は示しておりますけれども、私としてははっきりしたものは出ておるようには思えません。あるいは価格流通問題、特に果実流通は非常に複雑でありますが、こういう問題についての対応需給調整という形で出ておりますけれども、今日の自由流通機構の中の非常に複雑な体系をどうすればいいのかということも明確であるようには思えません、おるいは随所に需要の変化ということが出てきておるわけでありますが、しからばその需要というものをどういうふうに喚起をしていくのか、需要をどうつくり出していくのか、こういう積極的な消費拡大対策輸出増進対策というものも、項目は出ておりますけれども中身はそれほどあるようには私には思えない。  これらの問題は、当面の我が国果樹問題なり果樹制度なり果樹政策を考える場合の大きな幾つかの柱であります。そういうものはやはりまだ後に取り残されておるように思うのでありますが、こういう問題につきまして今後当該のお役所であります農林水産省としてはどういうふうに対応されようとしておるのか、改めてこの点をちょっとお聞きをしておきたいと思うのです。
  15. 関谷俊作

    関谷政府委員 果樹対策研究会報告内容、またその検討経過におきましては、ただいま先生からお尋ねのございました諸項目につきましても議論がされたことは事実でございますし、報告の中にも、そういうような方向については、多少厚い、薄いの違いはございますけれども、触れられております。例えば輸入規制の問題については、これもかなり議論がございまして、いろいろ検討がされたわけでございますが、最終的には現在の諸情勢のもとで実現可能な措置というのはどういうことか、こういうことで意見の集約が図られているわけでございますし、生産構造の問題についても、兼業農家と中核的な農家とのいろいろな意味での生産面出荷面での活動、意識、そういう面の乖離がございますので、なかなか産地の対策が難しい。これについては中核農家中心にした生産出荷のいわば組織化強化を図っていく、こういうことが今後の方向ではなかろうかと思っております。  流通の問題、需要の問題につきましても、流通には直接触れておりませんけれども、現在の出荷システムあるいは市場流通システム、こういうものを一応前提にした上での今回の検討であった、こういうふうに考えております。  なお、需要の問題、特に消費拡大輸出振興、こういうことについては大事である、力を入れなければならないということは繰り返し力説されておるわけでございまして、ただその内容のやり方という点になりますと、これはかなり現実的に国内需要をどういう面で伸ばすか、どういう方法を使うか、輸出面ではどういうような市場開拓活動をやるか、こういうことは割合運用面での具体的な検討の中で実現すべきものであろうということで、中身までは触れないけれども大変重要性は強調している、こういうふうに考えております。
  16. 田中恒利

    田中(恒)委員 細かいことは、また法案でも出た際に詰めていきたいと思います。  そこで、大臣、私は問題はたくさん残っておると思っておるのですが、一番の問題は輸入農産物対策をどうすればいいのかというところでありましたので、それだけに国境調整措置というものに対する期待は非常に強かったわけでありますが、この問題はなお検討をしなければいけないというような形になっておるように思うのです。果樹地帯生産農家団体皆さんの言っておることは非常に単純なんであります。つまり、今日我が国農畜産物の七割から八割近くは何らかの形で価格支持中心とする政策制度の仕組みの中に入っておる。米は御承知のように食管制度完全国家管理体制に入っておる。あるいは畜産物価格安定法に基づいて上下限価格支持政策の枠をとって事業団設置をされておる。今問題になっておりますけれども、蚕糸も同じような形になっておる。あるいは野菜についても、安定基金制度の中で相当強力な政策手法が取り入れられておる。その中で、ミカンとかリンゴとかナシとか桃とかクリ、こういう果実あるいはこれに伴う果汁というものについて政策手法というものはないじゃないか、それを何とかしてくれということが今度の最大のねらいであった。特に今我が国貿易摩擦の障害をまともに受けて、これらの果樹産品というものがいつもアメリカの矢面に立たなければいけない状況になっておる、これを何とかしてくれということが私はこの問題の発端だと思うのです。我々はこれにこたえなければいけないと思うのです。  こういう意味での制度政策をどうつくるかということについて、大臣はどういうふうにお考えになられていらっしゃるか、お尋ねをしておきたい。
  17. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 田中先生お答えします。  今の果実について、実は米あるいは畜産物輸入を含めた需給調整措置を設けるよう生産者団体から要請があり、その趣旨は十分理解しております。ただ問題は、果実嗜好品としての性格を持ち、米などと同様な制度をとることには困難な問題もあるようです。また、新たな国境調整措置の導入には国際的に見ましても極めて難しい問題があるというようなことで、慎重な検討を要するものと考えております。
  18. 田中恒利

    田中(恒)委員 事業団構想というものがこの報告書の中にも生産者側から非常に強く指摘をされた、こういうふうになっておるわけですね。私自体も、たしかある時期に、私が初めて国会に出たころに、グレープフルーツの自由化の問題が起きたころに、果樹振興事業団構想が相当進んだ時期があったと思うのです。実はそのころが最後で、それから後は今の行革というか、そんなあおりの中でだんだん姿を消したわけでありますけれども、今度こういう大きな出来事が起きたのを契機に、またこれが燃え上がってきたわけであります。  この事業団設置構想というものはなかなか難しいと言われておるのですが、今大臣の答弁の中にもそのお答えのようなものが一、二あったわけですけれども局長さん、これは研究会の中でも相当議論をされた問題なんでありますが、一体どこに一番難しい問題があるのか。国境調整措置を何らかはっきりわかるような形で示す場合に、難しいと言われた原因はどこにあったのか、もう少し詳しくお答えをいただきたい。
  19. 関谷俊作

    関谷政府委員 事業団による価格安定の方策でございますが、これは幾つか問題、難しい点がございます。確かに研究会の中でも生産者団体方面の方の御要望に基づきましてかなり議論がされたわけでございますが、一つは、基本的には果実の場合は、加工品というものはございますけれども果実そのものが、事業団というと大体売買方式による価格安定になりますが、売買方式による価格安定になかなかなじまない。一般的には一つ価格安定帯という帯の幅を設けまして、その中に安定させるように事業団売買をやるというのが通例でございますが、そういう方式になかなか果実生鮮品という特性からなじまない。それでは加工品、ジュースでそれができるかと申しますと、これも需要の中の一部を占めるにすぎません関係で、なかなかできない。こういうような商品としての難しさ。そのほかに、先ほど大臣お答えの中にございました嗜好品というような性格もあったと思いますが、基本的にはなかなか事業団方式に乗りにくいということがございました。  それからもう一つは、今先生お尋ねの中にもございましたが、特に第二次臨調にかけまして、特殊法人あるいは認可法人野菜供給安定基金のような認可法人も含めまして、そういう形での特別の法人を設ける、それが何らかの形での価格安定等事業を行う、こういう方式に対して非常に制限的な考え方が強く出ているわけでございまして、果実の場合には、ある意味では需要が減退してかなり需要調整問題が出てきた時点に、一方、行政改革等でそういう国ないし国に準ずる機関による価格安定措置というものが非常に限定される状態になってきた。  こういうことで、事業団方式というのは今申し上げました大きな意味での二つの点で非常に基本的に仕組みにくい情勢であった。この辺のところは研究会の中でも私の方からもいろいろ考え方をお話しし、また学識経験者の方も含めまして討論がされたところでございます。
  20. 田中恒利

    田中(恒)委員 果実果汁生鮮食料品としての性質というか、そういう問題でなかなかやりにくいという理屈は私にはちょっとわからないのです。昔はそんなことを言っておった時代もあったが、今のように貯蔵なりいろいろな施設が完備をしている中ではそんなに難しいことではないし、牛乳だったらどうするのだ、野菜だったらどうするのだということだって出てくるので、そういうことで、今は、嗜好品の問題も言っておったけれども、一体主食とは何だということになっていくとわかりはせぬですよ。今果物などというものは、ある面では食ぜんに必ず並べなければいけない、食べる人は米と同じくらいの量を食べるような人だっておるので、そんな理屈ではない。やはり今の行革の中で、事業団を新しく設置しない、廃止する、こういう強い行革路線が今の内閣にあるから、これはますますやりにくい。  いま一つは、国際的なアメリカ中心とする日本に対する風当たりというものがこういう制度をつくらせてはいかぬという形でしょう。そこのところの方がよっぽど大きいと思うのです。そういうところで押しまくられたのでは、最初の話ではありませんが、我が国農業は私はじりじり押し込められていってしまうと思うのです。これはどこかで歯どめをしなければやれないのですよ。  そうしたらアメリカだって、アメリカ自由経済だというが、農産物は自由にしておりますか。アメリカ農政の根底の骨組みの中には、きちんとアメリカ農民を保護するという体制がつくられておるでしょうが。それは私が言わなくたって、農林省の皆さんの方がよっぽどよく知っておる。根っこには日本の食管的な性格のものが流れておる。それが不足払いであったり融資レート制度の問題であったり、そういうものを背景にしてアメリカ国際市場で自由に動くことができるという条件ができておるのだと思うのです。  ECのことはだれも言いますけれどもECだってあれほど激しい水際での対策を立てておる。EC課徴金なり輸出奨励金というものがどんなに大きな財政的負担をそれぞれの国に与えておるか。私などもこの間ヨーロッパに行って多少勉強させてもらいましたが、そういう意味からいえば、日本農業保護政策がどうだこうだと言いますけれども、国際的に見て我が国農業がそんなに特別に保護されているとは私は思わない。その中でも果樹問題は一番おくれておるわけなんであります。だから、私は、やるときには思い切ってやらなければやれるときはないから、やはり一定の水際作戦を何らかの形でつくってもらいたい、こういうことをこれまでも申し上げてきたと思うし、これから法改正の本格的な取り組みに入ると思いますけれども農林水産省としては、この問題、もう一歩突っ込んで、明確に事業団とかなんとかいうことが難しければ、何か新しい妙手を、知恵のある人ばかりおるわけですから、私は考えていただきたいと思いますが、大臣どうですか。
  21. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 田中先生お答えします。  研究会報告を踏まえまして、ゆっくり検討してまいりたいと思っております。
  22. 田中恒利

    田中(恒)委員 委員長、この問題は当委員会でも本当に長い間、正直言って汗を流したわけでありまして、一度ならず二度委員会の決議をやったりしたわけでありますので、今お話を聞くと、報告書に基づいて必要な制度政策確立に向けての農林省の動きもだんだん詰まっていくのだろうと思いますが、この委員会でも農産物自由化に伴う、特に果樹制度政策づくりについては何らかの意向を示すことができるような議論理事会などでぜひ一遍していただいて、一応検討していただきたい、このことを委員長にお願いしておきますが、よろしいですか。
  23. 今井勇

    今井委員長 理事会等でよく相談をしてみたいと思います。
  24. 田中恒利

    田中(恒)委員 中身でもう少しお聞きしたいことがございますから、なおお尋ねいたしますが、輸入果実輸入果汁については、国境調整措置としては現行の割り当て制度を堅持するということは明確に示されておるわけですね。そのことが大切である、こういうふうに言われておるわけですが、現行の割り当て制度を堅持するということは、今のIQ制度をこのまま維持していく、片一方ではそれを外せ、取っ払え、こう言っておるわけですけれども、その程度のものなのか、それとも過般日米交渉で妥結をした枠の数量、この数量ももうぎりぎりだ、こういうふうに理解をしてよろしいのか、この点どうですか。
  25. 関谷俊作

    関谷政府委員 研究会報告の中におきましては、「現在のGATT体制下では困難な面もあるが、引き続き輸入割当制度等の現行国境調整措置の維持に、最大限の努力を払うことが必要。」である、こういうようなことがございまして、結局、私ども考え方としましては、こういう研究会報告に従いまして、先ほど大臣お答えでも申し上げましたように、調整措置の推持には最大限の努力を払っていく、また輸入割り当て制度がありますので、その運用については価格安定、需給調整、いろいろな面を考慮しましてその適切な運用に努力をしていく、こういうことでございます。  こういうのが研究会報告に従いまして我々のこれから考えるべき措置というふうに考えておるわけでございますが、やはり全体として、需給を長期的な観点から見通しまして、輸入も含め、国内品も含めて総合的な需給調整、安定に心がけていくというのが基本的な考え方であるというふうに思っております。
  26. 田中恒利

    田中(恒)委員 需給の総合的な調整をするというところに大体この報告書のポイントがあるし、それに基づいての果振法の改正内容である、こういうようなことでありますが、総合的需給調整という場合に、問題は、先ほども何度も申し上げておりますが、輸入の品目なり数量なりというものが総合的需給調整の機能の中に入って、輸入を含めたものになるのかどうか、問題はここのところであります。これはどうですか。
  27. 関谷俊作

    関谷政府委員 果振法も含めまして、需給調整ということを考える場合には二つの視点があるわけでございまして、一つは、輸入も含めた総合的な需給調整という場合には、やはり長期的な需要の動向を見て、それに応じまして、従来の果樹農業振興基本方針におきましても輸入分も見込みながら全体として需給調整、需給の見通しを立てていく、こういうふうな対応の仕方をしております。  もう一つの問題は、それではその中の国内的な問題については、できる限り現在ございますような果実生産出荷安定基金でありますとか、それから果実生産出荷安定協議会のような国内の機構を何とか整備強化をして、これによって当面する国内の需給の安定に努力していく、この二つの面で今お話し申し上げました総合的な需給調整に努力する、こういうことで考えてはどうだろうかというふうに思っております。
  28. 田中恒利

    田中(恒)委員 そうすると、生産計画というのはできるわけですね、果振法に基づいて需給計画というものもできるのですか、国の需給計画というものは。その需給計画に基づいて、これから出てくる新しい制度の中で、それに基づいて国内生産調整なり出荷なり、いろいろな面の調整をやっていく、こういうふうに理解していいですか。
  29. 関谷俊作

    関谷政府委員 需給計画という言葉で申し上げたわけですが、一つの長期的な方は、現在の法律で申しますと果樹農業振興基本方針、それに基づきます県の計画がございます。その中で中長期的な果実の需給見通しを立ててそれに応じて生産を誘導していくわけですが、その場合に我々としましては従来のような新植面積だけのコントロールじゃなくて、栽培面積全体についてめどを出していくというような形で、中長期的な視点に立った需給調整のいわば指針を出していくというのが果樹農業振興基本方針関係考え方でございます。  それから、非常に短期的な、単年度的な需給の調整につきましては、私ども考え方としましては、先ほどちょっと申し上げましたが、やはり生産出荷団体の共同した努力というのを基本にして、現在の言葉で申しますと、生産出荷の安定の計画という言葉を使ったりしておりますが、ことしの時期別、仕向け先別の出荷量というようなものの計画をつくりまして、それに従って需給調整に努めていく、これは基本的には生産者団体出荷団体の共同部な活動によって実施をしていくということでなかろうか、こういうふうに考えております。
  30. 田中恒利

    田中(恒)委員 言葉で言えばそういうことで、何か長期的な見通しの中で輸入の問題も含めて考えると言うのですけれども、問題は、毎年毎年の積み上げが長期的な展望の路線に仕組まれていくわけですが、その毎年毎年の需給計画というか、生産計画というか、そういうものの中には外国から入ってきたものは入らないことになると私は思うのですよ。それは文章では出るけれども。どうですか、この果振法の長期見通し、六十五年見通しが今立っておるけれども、完全にこれもぶち破られているわけでしょう。作付面積にしたって収量にしたって果汁にしたって、百万トンだと見込んでおったものがもう五十万トン、半分くらいだ。三百五、六十万トンと言っておったのがもう二百五、六十万トンだ。物すごい差が出てきておるわけでしょう。六十五年見通し、この二、三年前につくったそんな文書の中に輸入の問題が多少入ったからといって、実効はないわけなんですよ。だから、総合的需給調整というものの中には輸入の問題も含めたものを考えなければいけない。そのためには、外国から入ってくる果実なりジュースなりというものをどこかで一元化をしていくというような対応を何らか考えないと、国内生産流通の体系との組み合わせができない。だから、それをやらないと、こういう自由流通商品でありまして全体としてはそういうものが完全に今日だぶついていろいろ問題になっておるわけですけれども、その域から脱することができない、こういう心配があるわけであります。ですから、ここのところはやはり一つの大きな問題だ、こういうように思います。  時間がありませんし、たくさんございますから申し上げますが、そういう意味で、総合的需給調整機能というところを、輸入の生がいけなければジュース程度に絞っても何か調整ができる方法はないのかどうか、もう一度私は検討していただきたいと思います。  それから、新しい制度というか、そういう需給調整を進めていく機関として、今の中央果実基金、需給調整協議会、こういうものに新しく法的な裏づけをさせてやらしたい、こういう意見が報告書の中には出ておるようでありますが、この法的な裏づけに基づくものができるのか、できるとすれば法的裏づけというのはどの程度のものになるのか。現在、事業団があるし、あるいは野菜の問題があるし、あるいはもう少し軽いのがあるし、多少似たようなのがあるわけでありますが、どういうものが考えられるのか、この点も一つの大きな問題だと思いますから、お尋ねをいたします。
  31. 関谷俊作

    関谷政府委員 この点は、いわゆる事業団のような新しい法人形態を新設するというよりは、私ども考え方としましては、現在で申しますと中央果実基金、これは法人格、民法の法人でございます。生産出荷安定協議会の方はいわゆる会議体で法人格はないわけですが、考えますと、何か国内的な需給調整を計画を立てて実施する場合には、生産者団体出荷団体が自分たちが集まって実施をする、そういう団体が自分たちで構成する恐らく民法の公益法人、こういうものを想定しまして法的な位置づけということになりますと、そういう法人に国の立場から需給調整事業を実施しろ、あるいは実施をするならその計画とはどういうふうにやるのか、これをいわば事業の面でそれの位置づけをしていくという形になるのではないかな、これが率直に申しまして私どもの現段階で持っております研究会報告に基づきます法律改正案をつくる場合の基本的な考え方であります。やはり何と申しましても、果振法の中に、今ございませんが、需給安定措置というものを実施するんだということを明確にしまして、それをただいま申し上げましたような民間の法人が実施をしていくんだ、こういう事業のあるいは機能の位置づけというふうなことで法的な位置づけができないだろうかということでございまして、いずれにしましても、これは法律にいたします場合にはそういう意味での専門的な審議、審査もあるわけでございますので、私ども今の段階では、そういう基本的な考え方はそういうことでどうだろうかということを思っていることをお答えするような段階でございます。
  32. 田中恒利

    田中(恒)委員 いろいろ細かいこの公益法人内容などまではきょうは申し上げませんけれども、ただ、やはり需給調整といったようなものをやるとすれば、相当強い権限というか機能がないと私は実効が伴わないと思うのです。自主的にやっていくなんか言ったって、これだけ全国にばらまかれておる農家なりいろいろな現状の中ではそんなにできないので、だから一番手っ取り早いのは、政府自体が責任を持って需給調整の機能の主体になるというところがいいわけでありますが、それがどうしても難しいということになれば、それに準ずる性格のものでなければ効果がないということであります。効果がなければ何にもならないのですから、そういう意味では、一定の法的な裏打ちが相当強く機能するようなそういう組織的な性格づけ、それに伴って今局長が言われた機能、事業、こういうものが伴っていくものを私どもとしては強く御要請を申し上げておきたいと思います。  それから、この需給調整の手法の中ではどういう場合にもとられるわけでありますが、いわゆる緊急事態における商品というか対象品目の買い上げであるとか放出であるとかという問題があるのですが、こういう問題をこの機関がやるべきである、こういう報告書の答申がなされておりますが、これを考えるのか。その主体はこの機関が今考えられておる仕組みの中で行うということなのか、この点もお聞きをしておきたい。
  33. 関谷俊作

    関谷政府委員 果実加工品の買い上げの問題についてのお尋ねであると思いますが、研究会報告の中でも、直ちに全国機関による買い上げを具体化すると明確には言っておるわけではございませんが、ただ私ども現状で見まずに、県段階の主として連合会が加工場を持ち、かつ調整保管を実施しておりまして、それに対して中央果実基金協会が調整保管の経費を助成するというのが現在の仕組みであります。これでは、緊急時にはそのままではなかなか十分ではないだろうというのが議論でございまして、そういたしますと、やはり相当緊急なときには県段階の連合会等が実施しておりますものの一部を何らかの形で全国的な機関あるいは全国的な事業として調整保管に持ち込むというようなことが必要になろう、その場合の仕組みは何か、こういうふうな視点から検討をしておるわけでございます。  ただこれは非常に難しいのは、いろいろな緊急の場合の全国的な調整保管をします条件とか時期とか数量をよく明確にして実施しませんと、いわゆる持ち込み一方で、全国的な調整保管になったものはもう市場に出てこないということになりますと、これは大変なことでございます。そういう意味で、具体的なやり方についても相当検討を要する。ただ方向としては、従来の体制だけでは十分でないだろうという意識は私ども持っておりますので、そういう趣旨でその具体的なやり方について検討いたしたいと思っております。
  34. 田中恒利

    田中(恒)委員 いま一つ、果振法の改正で、果振法に基づく基本方針なり基本計画なり、あるいは府県の振興計画ですか、こういったようなものが新しい視点に立ってどうも策定されるようでありますが、六十五年見通しの例の現在の果振法に基づく果樹基本計画というのは根本的に狂っておるわけであります。したがって、これはできるだけ早く改定をしなければいけぬと思いますが、それはいつごろになるのか。  それと同時に、その時点で新しい計画ができるのでありますが、これまでの果振法の例の基本計画に基づいて考えられたものがどこに欠陥があったのか。私は、改めて検討して再び過ちを繰り返さないように、実態に沿うようなものにしてもらわなければいけないと思っておるわけであります。県の計画、町村の計画と国全体の計画との間に整合性がほとんど持たれていない、こういう問題を是正しなければ、今日の今言われた需給調整というのは本当に動かぬわけでありますから、ここのところをきちんと立ててもらわないと、出発が狂っておったのではどうにもならぬわけでありますから、その点を特に要望しておきたいと思いますが、現在の実態との乖離、これをどういうふうにせられますか。
  35. 関谷俊作

    関谷政府委員 ただいま先生お尋ねのとおりのような事態が確かにあるわけでございまして、端的に言えば六十五年の見通しと現実との乖離というところにもあらわれているわけでありますが、ひとえにミカンを中心にしまして果実需要が非常に減退をしてきた。その減退の幅ないしテンポが確かに当初予想するようなものではなかったというのが、今日の事態を招いた基本的なことだと思います。  これに対する対応としましては、幾つかございますが、当面、現行法のもとでの果樹農業振興基本方針の改定については一応法律改正がございますけれども、来年度までにという目途で今作業を進めております。ただ基本的には、現在の果振法がいわば需要の拡大、生産の拡大、こういうことを前提にした制度になっておりますので、これをやはり現実的に需要対応していく、そのためには、もっときめの細かい生産誘導ということで、先ほど申し上げましたように新植面積、植栽面積をコントロールするのじゃなくて、果樹の栽培面積全体を目標として取り上げてそれを誘導していく、こんなことも含めまして、確かに果振法を中心とします需給調整なり生産誘導、これについては御指摘のとおり、今これを相当見直しをすべき時期に来ている、こういうふうに考えております。
  36. 田中恒利

    田中(恒)委員 あと消費の問題、需要の問題があるわけでありますが、時間が余りありませんので、改めて御質問する機会を得たいと思っておりますが、特に消費拡大の問題は本格的に取り組まなければ、私は今の市場の中ではなかなか大変だと思うのです。そのためにも、輸出という問題には改めて力を入れていただきたい。特にこの報告書の中には、全体を通して、温州ミカンというものが大変過剰でこれを縮小しなければいけないという論調が随所に流れておるわけでありますが、これはこれなりに、現状の分析の中では私はわかる点があります。しかし、温州ミカンというのは日本果樹産品の中では国際的に対応できるものであるし、今日の状況からしてこれをその他のところへどんどん変えていきよるのですが、それがいいかどうか、私は若干疑問を持っておる一人であります。将来我が国の農産品というものが国際的に立ち向かっていく体制をとらなければいけません。そういう意味で、温州ミカンなどについては、大胆に輸出振興の品目として検討すべきであると思います。その場合に輸出秩序の一元化という問題などが当然考えられないと、外国に対しては、特に日本の品物の銘柄というか、いわゆる存在価値を明確に植えつけなければいかぬわけでありますから、余りあっちこっちからやられたのでは本物にならぬと思うから、そういう意味の輸出の振興対策の秩序化の問題など、政策として難しいだろうが、輸出振興について何らかの対応策が金も含めて立てられないのか、こういうものをもう少し大胆に踏み出していただきたいということを私は要望しておきたいと思います。  そこで、あとわずかでありますが、実は蚕糸の問題であります。  これも果樹と同じようなことで、当面御承知のような事態になっておりますが、先般基準価格を二千円引き下げられたわけであります。このことが及ぼしておる影響は非常に大きい。養蚕農家は、このままいけば恐らく養蚕も製糸も皆一緒にお手上げじゃないか、こういう空気に満ちておるわけであります。前の亀岡大臣のときも、これほどではなかったが、たしか七百円ほど引き下げた経過があります。そのときにも安定するだろうと言われておったが、やっぱりどうにもならなかった。今度は、この間やったばかりですから、今のところ安定糸価の中に入っておるようですけれども、これも私はどうなるかわからないと思いますが、二千円引き下げたということで将来糸価というものは安定するという自信が一体あるのかどうか。  この問題もやはり輸入の問題だと私は思うのです。確かに生糸の輸入は減っているというけれども、重量が多くなっておるから実質的な輸入量は織物を含めてずっとふえておる。日本需要が御承知のとおりぐっと落ち込んできておる。需要が落ち込んでおるから二五%からの減反をやって、つくるなということで桑をつぶしてきておる。しかし、輸入は相変わらずほとんど変わりませんね。この矛盾を是正しなければ、消費が減って生産を減らすのであれば、二割減らせば輸入も二割減らしていく、こういう形が伴わなければやっていけるはずないでしょう。そこのところの問題は、さっきの果樹の国際規制の措置をどうするかという問題と軌を同じゅうするのでしょうけれども、養蚕問題は現実の問題になっておりますから、今中国、そして近く韓国と二国間協定の話が進む、中国の話はどうも物別れになったようですけれども、これらを含ませていわゆる蚕糸の対策、特に韓国、中国に対する話し合いについての政府の態度をこの際はっきりさしてもらいたい。輸入の問題は、我々は正直言って一定の在庫量というものを超えるときには場合によれば輸入禁止というような措置までとるべきだ、そういうことができないのか、こういう意見を持っておるわけでありますが、改めてこの機会お尋ねをいたしまして、質問を終わりたいと思います。
  37. 関谷俊作

    関谷政府委員 輸入の問題でございますが、現在絹織物、絹製品関係は御承知のように全体として自由化されておりまして、ただ中国、韓国だけは二国間協議によって絹糸、絹織物の輸入についての話し合いをしておるわけでございます。生糸の方は御承知のように一元輸入でございますので、これが主にその二国を対象にしてやはり協議をしておるわけでございますが、私どもの基本的な考え方としては、今お尋ねのございましたようなこういう日本国内の内需の減少と、それに伴って生産の方をかなり圧縮をしている、最近はかなり思い切った価格引き下げもしたという情勢でございますので、何とかこういう現在の措置を使いまして輸入については抑制的に対応したいということでございます。  ただ、生糸の方は直接的に一元輸入によって担保されておりますので、かなり強い交渉もしておりますし、現実に相当輸入を抑制しておりますので、協議はしたけれども入っていないものが残っておりまして、これが約束不履行だということで今回の交渉でも二国から相当その実施を迫られておる、さらに新規枠の設定も早くやってくれ、こういう状況でございますので、私ども国内情勢を強く訴えまして、確かに約束したものについてはかなり問題がございますが、今後の輸入については相当厳しく対処していきたいと思っております。  絹織物関係についても、これは通産省が交渉当事者でございますが、国内の絹業の実態から見て、相当厳しい状態に応じて何とか輸入量を減少するように交渉しておるようでございますが、両国の外貨事情等を見ますと相当輸出圧力が強くて、交渉はかなり難航しておるというふうに聞いております。  いずれにしましても、今お話しのございましたような日本国内の需給体制から見ますと、二国間の交渉につきましては我々としても実情を訴え相手方の協力を求める、こういうような姿勢で何とか輸入の抑制に努めてまいりたいと考えております。
  38. 今井勇

    今井委員長 次に、松沢俊昭君。
  39. 松沢俊昭

    ○松沢委員 質問をする前に、新しく大臣が就任されましたのでお祝いを申し上げたいと思います。おめでとうございました。  私は、大臣が就任されたとき、新聞社の方から、今就任された佐藤大臣は運輸だとか郵政だとかの専門家だけれども農政問題については余り経験のない大臣なんだが、あなたは一体どうお考えになりますかという問いがございましたので、私の方といたしましては、いや今までのしがらみのあるような大臣よりは、そういうものに余り関係のなかった大臣の方が思い切った農政の展開をやってもらえる、こういうぐあいに期待しているからむしろいいんじゃないか、こういうふうにコメントをしておったわけでございます。それだけに新大臣に対しての期待は大きいわけなんでありまするが、ただ、まだ所信の表明もなされておりませんので、いずれ所信表明がございますとき詳しくまたいろいろとお聞かせを願いたい、かように考えております。  きょうは、私、米問題を中心に質疑をいたしたいと思いますので、まず若干大臣の物の考え方をお伺いいたしたいと思います。  申し上げるまでもございませんが、昭和三十六年農業基本法が制定されましてから、規模の拡大をやるということが日本農政一つ中心的な課題であったわけであります。その後、財界の方からも提案がなされまして、国際化の時代であるから国際競争にたえ得る低コストの農業をつくっていかなければならないから、そういう点ではもっともっと規模の大きなものにしていかなければならぬではないかというような提言もございまして、私たちから見まするならば、小さい規模の農家は切り捨てをやっていくというやり方が農業の基本のように受け取られてきたわけであります。  しかし、最近になりましてから、特にことしあたりは米の臭素汚染問題なんかがございました。それから、淡路島のモンキーセンターの調査によりましても、麦だとか大豆だとかで野生の猿のえづけをやっておったところが、十数年間に七十数匹の猿が奇形児として生まれてきているというような点からいたしまして、食べ物の安全性というものは一体保証されているのかどうかというのが、実は今消費者運動の中では大きな問題になってきているわけであります。そういうことを考えた場合、アメリカ農業などは、何か日本一つの模範的なものとして提起されるときがございまするけれども、あれだけの大きな規模の農業になりますと、やはり機械と農薬に頼る以外に経営の方法はないわけなんですね。最近出版されたある書物などを見ますと、アメリカ農業などというものは百年たたないうちにだめになってしまうだろう、そういう極言すら出ているという現状であるわけであります。  そんなことを考えてみますと、今までの規模拡大という農政の基本というのは根本的に誤りなのじゃないか、日本型の小規模経営で、余り農薬などを使わなくとも手づくりで農産物をつくっていくというような、そういう農家農産物生産というものをやっていくということが望ましい姿というふうに私は受けとめておりますし、また、三十六年から構造政策が進められてまいりましたけれども、法律や制度はたくさんできましたが、思うぐあいに規模の拡大というものがなされておりませんで、むしろ兼業化が進むという状態でございまして、もう大臣も御承知のとおり、ほとんどの農家というものは兼業によって生活をしている、こういう状態であります。そうだとすると、今までの法律や制度政策はやはり無理であったというふうに考えております。そんな無理なことをわざわざこれからも続けなければならぬという理由はないじゃないか、やはり現状の中から、日本農業、そして消費者のニーズにこたえる農産物生産というものをやっていくというのが正しいのじゃないか、こんなぐあいに考えておりまするが、大臣は一体どうお考えになっているか、この点まずお伺いをいたしたいと思います。
  40. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 松沢先生お答えします。  最初に、大変御理解あるお言葉をいただいて、ありがとうございます。至って未熟でございますが、内外ともに厳しい情勢先生の御高承のとおりでございますが、全力を尽くしてまいりますので、御教導をよろしくお願いいたします。  今先生がおっしゃいましたのは、結局、日本アメリカの土地構造についておっしゃいましたが、アメリカ日本の二十数倍ということで、実はいつも行ってうらやましいなと思って帰ってくる。そういう形の中に、我が国農業というのは、主食を完全自給するという立場をとりながら、どうして地域改善を図るか、あるいは国土の改善を図るかということに沿っていわゆる構造改善政策を進めておるということでございます。  そこで、先生がはるかに専門家でございますが、農業には二つの型がございます。一つは施設型農業部門、もう一つは土地利用型の農業部門とあると思います。それで、施設型農業部門においては割合規模拡大が進み、生産性も進んで、かなり順調にいっておるのではないか、こう思います。  問題は、稲作等の土地利用型の農業部門を一体どうするかという問題の御指摘だと思いますが、これは、率直にいいますと、規模拡大というのはおくれておりまして、そして生産性向上を図る上で障害となっておるというのは先生御高承のとおりでございます。そういう形でございますが、つい最近においては、経営規模別の生産性格差の拡大とかあるいは跡取りのない高齢農家の増加等、構造政策を進めるための条件はだんだん熟してきておる、このように考えております。このような情勢で、今後とも地域の実情に即した農地の流動化とその中核農家への利用集積等を進めることにより土地利用型農業の規模拡大を図る、そういう形の中に生産性の高い農業をやり、そういう農業構造を実現したい、このように考えて進めておるわけでございます。
  41. 松沢俊昭

    ○松沢委員 今ここで議論するつもりでお伺いしたわけでもありませんけれども、私は、今までの規模拡大で生産性を向上していくという、そういうところにウエートを置くよりも、むしろ安全な農産物を提供するにはどうするか、そういうところにやはり重点を置いた農政の展開をやっていってもらいたい、こういうぐあいに希望を申し上げるわけなんでありまして、これはいずれ所信表明がございましてからの質疑にゆだねたい、かように考えております。  もう一つの問題は、日本農業というものは、やはり水田農業一つの大きな柱になりまして、そして小骨にいろいろなものが複合されて成り立ってきている、こういう歴史的経過があるわけでございます、それというのも、やはり千八百ミリから千九百ミリの雨量がある。しかも、それが通年的に降り続けているわけなんでありますから、私は、そういう長い間の歴史の中から今のような日本農業というものが形成されてきた、そしてまたそれが先人の知恵であった、こう思っております。したがって、水田農業というものは、畑作農業と比較いたしますと比較にならないほど優秀な農業だと思います。大体畑作なんかの場合においては、二年か三年同じものを連作した場合におきましては連作障害が起きて物にならぬということになりますけれども、水田だけは何千年、何万年、毎年同じ稲をつくっても連作障害などというものが起きてこないわけでありますから、そういう点からすると大変すぐれた農業だということになると思うのであります。  そこで、今減反政策を考えているわけなんでありまするが、もう既に始まってから十何年たっております。とりわけ、五十三年から強制減反というものがなされておりまして、ペナルティー、それから行政的におきましても、農林省の方ではそんなことも言っておりませんけれども、府県段階とか町村段階に入りますと、減反に協力しない者には金を貸さぬぞとか、あるいはまた減反に協力しない者に対しては補助金は出さぬとかという、そういう圧力までかけられてきておりまして、それで荒らしづくりが最近非常にひどくなってきているわけであります。政府の方といたしましては、米の需要はだんだんと少なくなってきている、そしてかわりに肉だとか卵だとか、そういうものがふえてきているのだ、だからこれは国民の食生活の変化、それに伴った日本農業にしていかなければならぬじゃないかというお話も時々お聞きしておりますので、それもごもっともだ、こう考えるわけなんでありまするけれども、ただ問題は、日本輸入穀類というものは、えさなんかが相当たくさん輸入しなければならない状態でございますので、大体日本の耕地面積の二倍ぐらいの面積を外国から借りて、そして穀物輸入というものをやらなければならぬという状態になっているということをよく聞かされるわけなんであります。  そこで私考えるわけでありますが、そういう食生活の変化があった場合においては、今までは米というものはもう大変貴重なものでありまして、我々は子供のころ一粒の米でも粗末にすれば目がつぶれるとか、それからおぜんの前に座ると必ず手を合わせてそれから食べなさいとか、そういうしつけがなされたものでありまして、これは大臣も同じだと思うのであります。しかし、最近は食生活が変化してまいりましたから、したがって、米というものをそういう主食だけに使うということでなしに、日本型の伝統的な水田農業でありまするから、この水田農業を生かしながらえさ米にも米を使う、あるいはまたアルコールを製造するにも米を使う、あるいはまたその他の加工用にも使う、それからさらにはまた開発をいたしまして、そして工業用の石油にかわるものとしてこれまた使っていくとか、いろんな分野を開発して利用分野というものを拡大していく。  そして一面におきましては、私たちももう既に農林省に御注文申し上げまして、超多収穫米の開発をやってもらいたいということで今研究を進めてもらっているところでございまするが、最近はバイオテクノロジーをどのようにして利用して農業生産を高めるかとか、あるいはまたハイブリッド、F1を米に、要するにアメリカではもう既に開発済みだ、こういうことが言われておるのだが、日本はまだそこまでいってない。それを民間にも政府にも研究開発ということを急いでもらうとか、そういうようなことにして、既に今までの育苗それから栽培の研究によりまして、ことし新聞を見ますと、青森県等におきましてはある農家では十アール当たり一トンどりに成功した、こういうことが報道されているわけなんでありまして、日本の米の栽培技術というのは非常にすぐれていると思います。  でありまするけれども、まだまだやればもっともっと伸びるんだ。ある専門家に聞きましたところが、物理的においては十アール当たり三トンぐらいとれるんじゃないかというようなお話も実は承っているわけでございます。そういうことで、今減反なんというのをやって、そして農民の生産意欲を衰えさせるよりは、今私が申し上げましたような方法生産をうんと伸ばすところのそういう技術的な水準を高めると同時に、またとれたものを多分野に利用するところの開発を図っていく、そういう水田農業の展開というものをやっていくということが将来の日本のためになるんじゃないか、こんなぐあいに考えております。したがって、減反政策なんというのは愚の愚の農政だ、私はこう思っておりますが、大臣、その点はどのようにお考えになっておりますか。
  42. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 松沢先生お答えします。  今お話を聞いておりまして、結局、米の消費拡大方法とそれから減反政策についての御意見だったと思いますが、実は先ほど教育の話が出まして、全く同感で、私ら小さいときは米は八十八ということで、八十八回人の手を通しておるので大切にしろ、一粒落ちても拾って食べだというような教育を受けております。ただ、つい最近の子供を見ておりますと、お米を食べると頭が悪くなるのだとか、重たくなるとか、そんな話が言われて、消費拡大に逆行しておるような話が伝わっておる、そんなこともございまして、こういう点を大いに改めていただきたい、こう考えております。それからまた、実はアメリカがヨーロッパにお米を輸出しておりますが、いろいろ資料を見ますと、ライスメニューというのが非常に幅広くいっておる。そういう形の中に、お米を食べるとやせるというライスメニューもございます。そんなことで、もっとお米の消費拡大に工夫を要するのじゃないか、こう思います。  ただ、先生がおっしゃった、今のいわゆる多収穫の品種ですか、これは今農林省でも研究しておりまして、また日本でも一トンぐらいとれた、ただし、これは全刈り収量でなくて坪刈り収量の、とれたという話もございます。そういう形の中で、実はお米の消費は間違いなく減っていっておるわけです。これは御存じと思いますが、一人当たり平均大体七十数キロでございます。これは東京、都市では年間一人当たり四十数キロ、それから田舎が百十キロ、そんなことで平均七十数キロになっている。食生活の変化で非常に副食がふえて、米が減っておるということ。実は、これは先生御存じのことで、第三期水田利用再編対策というのは、ゆとりある備蓄と三たび過剰を招かないということでございます。財政負担の問題があるわけです。  そういうことでございまして、将来、先生がおっしゃるような三トン、二トン出るかもしれない。現段階におきましては、やはりお米のコストは高いということもございまして、その辺を踏まえまして、今の減反政策につきましてはやむを得ない措置である、こういうふうに考えております。
  43. 松沢俊昭

    ○松沢委員 これも議論はいたしませんけれども、私の一つの物の考え方大臣にお話を申し上げまして、さらに所信表明のときにまた議論させてもらいたい、かように考えているわけであります。  そこで、具体的な問題に移りたいと思いますが、食糧庁長官もおいででございますので、米の需給計画でございます。ことしの春は大変な、言ってみまするならば米騒動ということですね。そういうことで、食糧庁長官の首まで吹っ飛ばしてしまったというような結果にまずなっておりますので、大変な米不足ということでございました。ところが、幸いなことに五十九年産米というのは大豊作でございまして、政府の十月十五日現在の統計におきましても一〇八%という成績だということで、私たち農業関係者も実は大変喜んでいるわけでございます。しかし、今までは五十三年産以前の米というものもありましたから、だからいよいよという場合におきましては、その辺を棚上げされたところから引っ張り出してつじつまを合わせることができましたけれども、今度はその米というのはもうないわけでありますから、したがって、来年仮に不足であったということになりますと、六十一年の需給事情というものは大変に逼迫をしてくるということは言えるわけなんでございます。  そこで、政府の方からお話を聞きますと 五十九年の一〇八%で計算すると、この生産量が千百八十五万トンで、それから年間の需要量というものが千四十五万トンだ、こういうことでありますから、確かに生産されたものと必要なものとの開きというのは大きいわけなんでありまして、その分余裕が出てきているということが言えるわけでございます。  しかし、需給計画の数字と実績とをいろいろ見せてもらいますと、需要そのものというのはそう減っていないわけでございます。それともう一つは、他用途米というものが需給計画の中に入っていないというのもおかしな話なんでありまして、これは当然入れておかなければならぬ問題なんじゃないか。それで、二十万トンくらいは新しい米穀の中から差し引かなければならないという考え方が出されておりますし、ことし米の需給関係が大変逼迫いたしまして、まさに綱渡り的な年越しをやらなければならなかったわけでありますから、政府の発表からいたしましても九十五万トン早食いをやった、こういうことが言われているわけなんであります。でありますから、結局、そういうことになりますと、政府の方といたしましては六十年の十月末には七十万トンから六十万トンくらい積み増しができるんじゃないか、こういうことになっていますけれども、私の計算からいたしますとそういうことではないのでありまして、わずかに二十数万トン、つまり言ってみまするならば半月分しか余裕がないんじゃないか、こういうことになるわけであります。やはりそういうところは明らかにしていかれたらどうか。  だから、この前も石川長官に冗談ながらに言ってみましたけれども、あなたの計算というのは東大法学部の計算なんであって、おれの計算は尋常小学校の算術の計算なんだ、先食ってしまったんだから、先食ってしまったものが、九十五万トン食ったのに五十万トンしか食わないんだというところの計算は、東大の法学部なんかではやるかもしれぬけれども、一般の小学校を卒業したところの国民はそんな計算をしていないよ、こういうことを言っている。実際は半月くらいな余裕しかないんじゃないのですか。  それで、さらにきょうの新聞を見ますと、「他用途米の主食転用五万トン追加」ということが出ているわけなんですね。これは一体どういうことなんだか。その前には他用途米は主食用に回すことにしたということが末端の町村それから農協に伝えられまして、各農家は大変喜んだわけでありますが、その後また変更がありまして大混乱になった。そういうような状態の中で、今度は十五日付で県別に五万トンの他用途米の主食用転用というものを追加して割り当てをやるということになると、やはり私の言っているように、米そのものというのは窮迫を告げている、だから主食用にこれを回さなければならない状態になっているんじゃないか、こういうぐあいに私考えますが、その点、長官はどうお考えになりますか。
  44. 石川弘

    ○石川政府委員 六十米穀年度の需給見通しをまず申し上げますと、これは公表してある数字そのままで申し上げますが、ことしの三月につくりましたときは、前年産米、五十八年産米を十万トン持ち越しまして、それに通常の作でございますと千九十万トン米がとれる、それを合わせますと供給総計が千百万トンでございます。それに対しまして千四十五万トンの需要があると見ておりましたので、次年度、六十一米穀年度へ持ち越します米が五十五万トンという想定をしたわけでございます。  それに対しまして、現時点の見通しで申し上げますと、早食いをするまでしてやったわけですから、前年産米十万トンというのはゼロでございます。それに対しまして、五十九米穀年度でできましたお米を千百六十五万トンと置いておりますけれども、この六十五万トンと置いておりますのは、十月十五日現在の作況によりますと千百八十四万トンが米の生産量でございます。それから加工原料用として予定しました二十万トンを引きまして、四とか三とかという数字は五にしておりますが、千百六十五万トンが供給量でございます。予定量に比べまして七十五万トンの増を予定しているわけでございます。ただしそこから、先ほど先生が御指摘になりました新米早食い、これは九十五万トンを若干超えるくらいでございますが、ここで引き算をしますときは私どもは約五十万トン規模にまで落とせばいいと思いますので、三角で五十万トン落としているわけでございます。三角五十万トンを落としますと、要するに早食い後の供給計画としては千百十五万トンでございます。千百十五万トンと言いますのは、予定しました供給量千百万トンより十五万トンまだ上回るわけでございます。  そこで、消費につきましても、これは若干の伸びがあるかもしれぬということで、需要量は、計画では千四十五万トンと先ほどは申しましたが、少し幅を持たせまして千四十五万トンないし千五十五万トンというものを差し引きますと、六十年十月末の持ち越し量は、先ほど五十五万トンと申しましたところが六十万トンないし七十万トンということでございまして、これは私どもの方も単なる足し算、引し算だけでやった数字でございますので、先生のおっしゃるような数字の違いにはならないのではないかと思います。これは私ども何度も申し上げておりますので、資料で御説明をいたしたいと思います。  それから、もう一つおっしゃいました主食用に五万トン買うということを言ったじゃないかというお話は、他用途問題の解決の手法として、二十五万トン程度はお約束、契約ができていた、その中で政府は二十万トンは他用途に回してくださいということをお願いをしたわけでございます。それについて、農協の御努力で二十万トンがほぼ集まることがお約束できてきましたので、そのときに二十万トンを超える部分についてはただといいますか、助成なしのお米を出さなくても、主食に別に買い上げましょうと言っておりましたものが約五万五千トンございまして、それにつきまして買い入れをいたしましょう。これは今言いました需給ベースの話ではございませんで、当然、作とすれば千百八十五万トンの中側の数字で、政府が買い入れます数量に五万五千トンを加えたということでございますから、需給の総量の中で政府が買うかあるいは他の流通農家消費等にあるかという、そちらの移り変わりだけでございまして、私どもは、米不足だからというのではございませんで、これは他用途のお約束を実行しているということでございます。
  45. 松沢俊昭

    ○松沢委員 この前から平行線をたどっておりまして、これ以上議論してもしようがない話なんだけれども、とにかく千百八十五万トンのものがあって、そこから二十万トン引いて九十五万トン引いて残ったもの、それが余裕だ、こういうことになるんだから、石川さんがどんなに弁明されようとそれは違うと思うのですよ。これはもうここで議論してもどうしょうもございません。ですから、これは第三者が判断する以外にない、こう思っておりますし、また、食糧庁長官が今どき米が足りなくて来年どうなるかわからないというようなことを言ったら日本国じゅう大騒ぎになるからその程度の答弁になるんだろうというふうに私も理解をいたしておりますが、ただ、何も米が足りない状態でも何でもないんだということになれば、こんな新聞に出ているように他用途米の五万トンの追加を各県別に割り当てなんかする必要がちっともないんじゃないですか。  そこで聞きますが、きょうの新聞にも出ておりましたが、来年度予算の要求を今しておられるところでございますが、しかし、この食管やあるいはまた減反奨励金だとか、そういうものにつきましては昨年と比較して五%減にして要求しておられるということが新聞に出ているわけであります。私は、今の食管制度というものがこれから一体どうなっていくのだろうかという疑問を一つ持っております。  そこで、あしたから消費者米価に対します米価審議会が行われることになっていますが、きょうの新聞なんか見ましても、大蔵省と農林省が綱引きをやっている、大蔵省は四%を上回るように、農林省は三%程度でとめるように、お互いにこういう主張をやっているということを言っているわけであります。これは米価審議会へまだ諮問していないのだから発表するというわけにはいかないということになると思いますが、諮問するところの案はできていないかもしれませんけれども農林省はどう考えているのか、この点はこの際ひとつはっきりお話をお聞きしたい、かように考えております。
  46. 石川弘

    ○石川政府委員 政府の諮問案をつくります際には、大蔵省だけではございませんで、物価担当の経済企画庁とも御相談をするわけでございます。大変時間をかけて申しわけないわけでございますけれども、現在なお折衝中でございます。  私どもは、食管法に定めております規定に基づきまして、家計の安定、そういうものを旨としてどういうような決め方ができるかということで主張をいたしておりまして、財政当局の方は、当然のことながらこういう厳しい財政下における食管運営ということに力点を置いてお話しになっているわけでございますが、先ほど申しましたように、私どもの主張のほかに経済企画庁からもいろいろな御主張があろうかと思います。早急に詰めて、米価審議会に諮るべく政府原案を決めたいということで努力中でございます。
  47. 松沢俊昭

    ○松沢委員 これは、上げるということだけは間違いないわけでしょう。
  48. 石川弘

    ○石川政府委員 私どもは、改定をしていただくという前提で作業を進めております。
  49. 松沢俊昭

    ○松沢委員 そこで、これも新聞に出ておりましたのですが、十二月十六日の新聞でありますけれども、豊作なのに消費者米価値上げとは一体どういうことか、一方では安売り合戦が展開されているじゃないか、こんなことをやっているということになれば米離れはますます加速度を加えるのじゃないか、こういう記事になっております。その内容を見ますと、いろいろ書かれておりますけれども、もう業界の方では都内におきましても大変な競争をやっておりますね。安売り合戦。そういうとき、長官の方では、第四条の家計の安定を図ることを旨として定めるという法律の趣旨に従って私たちは考えていますと言うけれども、しかし、実際の米の値段が下がっているときにそういう法律に基づいてやるということになれば、それはそれなりにやはり考えていかなければならぬ問題なんじゃないか。これはやはり財政絡みの話ということになるのじゃないか、こう思いますが、財政に重点を置くことによって大事な米というものが消費者から見放されるというようなやり方というのは間違いなんじゃないか、こう私は思います。  要するに、安売り合戦が行われているのに、しかも豊作なのに消費者米価が上げられるということは一体どういうことなのか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  50. 石川弘

    ○石川政府委員 最初に、安売り合戦という記事でございますが、御承知のように、お米の中には政府が直接管理をします政府管理米、これは価格等につきましても政府が決めておるわけでございますが、今御指摘の記事は、自主流通米が非常に豊富に出回ってきたので、今まで比較的高い建て値を維持してきたものが若干それを引いて売っているという事態はあろうかと思います。それは、建て値自身は落としておりませんけれども、非常に大きなマージンを取ったものが若干マージンを下げるとかという形もあろうかと思います。かつては、例えば五十三年に建て値自身を直して安くしたということもございますけれども、これは、価格の決め方がそういう需給関係背景にして出荷団体と卸の間で決めるというルールに従っているわけでございます。しかし、それは決して米自身が安く売られているのではございませんで、自主流通米につきましても建て値におきましてはぼ二%を超えます上げをやっているわけでございますから、決して安売りということでは、そういう意味では安売り、要するに前より安くなっているということではございません。  それから、その次の御指摘の、そういう時期に豊作なのに上げるのはという御指摘でございますが、政府の価格は豊凶にかかわらず、逆に言うと、凶作なら上げていいという代物でもないということでもございまして、政府の価格といたしましては四条の規定に定めるように定めるということでございまして、私どもはそういう意味で、いろいろな可処分所得とかそういうものが上がっていく中で米にどれだけいわば回していただけるか、回していただける範囲を超えますれば、それはいわば今までと同じ条件で買えないわけでございますので、そういう中にどうして入れられるかということを考えながらやっているわけでございます。もちろん背後に財政の問題が皆無とは申しませんけれども、私どもはそういう範囲で行動をいたしているわけでございます。
  51. 松沢俊昭

    ○松沢委員 法律が幾らあっても、法律どおりには生産者米価も決まっておりませんし、それから消費者米価も決まっていない、一切合財が財政再建というところへ、その視点に立っていろいろと価格操作がやられているということは甚だ遺憾だと私は思います。やはり豊凶にかかわらず、ちゃんと法律に基づいて米価というものは決めてもらっていかなければならぬじゃないか、こんなぐあいに考えております。  ただ、私が一番心配しているのは、逆ざやが、売買逆ざやにいたしましても、末端逆ざやにいたしましても言えるわけでありまするが、これがだんだんつづまっていきますと、直接統制というものはだんだん緩んでくるのじゃないか、最終的にはこれは間接統制へ移行するということにならざるを得ないじゃないか、こんなぐあいに実は考えているわけでありますが、そういう危険性というのはないのですか、どうですか。
  52. 石川弘

    ○石川政府委員 御承知のように、私ども三年前に食管法を改正しました際にも、そういう食管の根幹と言われるものは政府が管理をしてやっていくというところは残しているわけでございます。これは私どもがどうこうできるということではございませんで、食管法という法律のもとで行動しているわけでございますので、売買逆ざやが縮減されたからといってそれが食管の根幹を揺るがすものではないと思っております。
  53. 松沢俊昭

    ○松沢委員 あなた方は食管を守っていくんだ、いくんだと言うけれども、逆ざやというものがなくなっていけば政府に集まるところの米というのはだんだん不足になって、それは間接統制かもしれませんけれども、業者と生産者が直結するとか、そういう傾向というのが強まっていくんじゃないですか。現に、これも新聞に載っておりましたけれども、今日本の米の値段というのは、これは農協の組合長さんが言っているのですよ、政府米が一万八千七百六十一円、超過米が一万五千百円、他用途利用米が一万四百四十四円、加工原料米が六千二百四十円、それにこの米がコシヒカリならば二万三千円以上に売れるんだ。そうすると、価格が既に五本立てになっているという状態ですよ。こういうのは食糧管理法の建前からするとあり得るべきところのものではないわけですよ。それが今米の価格が五本立てになっているというものについて、これでもまだ食糧管理法というものは堅持しながら政府は進んでいるというふうに長官は御理解しておられるのですか。
  54. 石川弘

    ○石川政府委員 他用途のような全く性質の違うものは別にいたしまして、主食の範疇に入りますものについては御承知のように政府米の価格水準がございまして、それに比べて、自主流通でも例えばAランクはどれぐらいのメリットがある、Bランクはどれぐらいのメリットがあるということで価格の取引水準というのはおおむね決まるわけでございます。これは、政府米の水準がございませんとすればそういうものはできるわけではございませんで、これらの格差というのはその品質に応じあるいは用途に応じて生まれているものでございまして、何本立てということではございませんで、何しろ、例えば生産者の米価の場合は再生産確保ということで政府が買い入れる価格が決められまして、それを質的に上回るものが自主流通の世界で別途需給関係も加えて価格水準ができているわけでございます。特に、改正法以前には法的にははっきりしておりませんでした自主流通米も明らかに食管法の上に明記されているわけでございますので、これは、私どもは明らかに食管法の定める運用だと考えております。
  55. 松沢俊昭

    ○松沢委員 これは大臣に一言だけ聞いておきますけれども、今私が申し上げましたように米の価格というのは大変乱れている、これだけは言えると思います。生産者価格というのと消費者価格。自主流通米というのが導入されていますから、そのほかにもう一つ価格というのが出てくる。大体この三つというのが普通なんでありまするから、これが五つにも六つにもなるようなことは、やはり価格体系が乱れておって、そして食管そのものというのが非常にたがが緩んできている、こういうことが言えると思うのですよ。ですから、もう少したがの締め直しを新大臣からやっていただきたい、こう思いますが、どうですか。
  56. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 松沢先生お答えします。  今御指摘の点につきましては、食管法の精神にのっとってやりたい、こう思っております。
  57. 松沢俊昭

    ○松沢委員 時間がありませんので、先に進みます。  他用途米の問題でありまするが、今長官の方からも答弁がございましたように、比較的うまくいっているように御報告がございました。しかし、末端の方では実は大変な混乱になったわけでございます。これは、私の地元の村の他用途米の政府対応、つまり七月五日ですか、いろいろ農協なんかとお話し合いされましたね。そういう中で決まっているわけなんでありますが、それによりますと、結局、他用途米はすべて政府米として買い入れを行う、そういうことになったということを、これは村長が通達を出しているのですよ。それから、青刈り稲から他用途米として、申し込みは八月六日までにせいとか、いろいろなことを出しているわけでありまするが、その後、八月の末になりましたところが、今度は逆に、他用途米はそういうわけにいかないという通達をまた出しているわけなんです。そんなことで大混乱が起きたのですよ。これはもう長官も聞いておられると思うのですが、来年はそんなようなことがあってはならぬと私は思います。  そういうことで、一体何で他用途米というものを農家が嫌がるかといいますと、これは同じ品質の米を別々な値段で売らされる、だから嫌がるわけなんだから、そういうことのないように、やはり新しいところの検査規格というものをきちっとつくって、こういうようなものは他用途米としてひとつ安く出してくれ、こういうものは政府米なり自主流通米に回してもらいたい、こういうすかっとした——これはもうせんべい、みそ、しょうゆの業者の皆さんにも、当然のことながら農民からするならお客様なんでありまするから、供給してあげなければならぬわけなんです。ただ、主食とは違った加工用原料米でありまするから、若干質が落ちておっても利用できるわけですから、質の落ちたこの程度のものを加工用原料米の規格だというふうにして決めてもらえば農家の方もそんな嫌な顔をして出すなんということはないわけなんでありまして、やはり協力はすると思います。そういう意味で、新しいところの検査規格、これを来年度におきましてはぜひつくって、そして対応してもらいたい、こう思いますが、どうでしょうか。
  58. 石川弘

    ○石川政府委員 他用途米のことしの取り扱いには、末端において大変混乱がございました。私ども、今後そういうことがありませんように、市町村、都道府県、それから農協と、今回の六十年度の他用途米問題につきましてはじっくり話し合いをいたしたわけでございます。これが行政サイドからだけ流れておりますと農協サイドの方では御不満があるということもございますので、今回は私どもは割り当て等につきましても、都道府県、市町村だけではなくて農協団体の方も自主的にそういう考え方を流していただく、そして末端で協力してやっていただくという体制をつくりましたので、六十年産につきましてはそういう御心配がないようにやっていきたいと思っております。  それから検査規格問題でございますが、何度もお答えをいたしましたように、いわばくず米の世界に規格を設けろということでございますと、くず米、これは普通三十数万トン、ことしは大変少ないわけでございますが、三十数万トンのくず米については既にそれぞれの需要先がございまして、幾ら規格をつくりましても量がふえるわけではございません。結局普通の、いわば食用の米の世界からどれだけかのものをその世界に送り出しませんと量的に不足するということで、三等以上の規格のものの中からやっているわけでございます。もしその三等以上のものの中に新たに他用途米専用の規格をつくれということでございますと、これは御承知のように当然主食たり得るものを主食以外の用途に格付けすることになりますから、生産者としては大変強い反対があるはずでございます。その辺のことも申し上げながら、農協陣営でもいろいろな検討を進めるというお話がございますので、私どもそういう非常に困難な要素があるということを重々お話しの上で、それでなおかつ名案があるかどうかということを生産者団体とも相談をいたしております。
  59. 松沢俊昭

    ○松沢委員 特定米穀業者を皆さんはどの程度把握しておられるのか。それから、その取扱数量というのはどの程度正確なのか、その点では私は非常に疑問に思っているわけなんであります。今、ライスグレーダーの目は一・七、一・七五、一・八、一・八五、一・九というふうにして五種類に分かれているわけであります。それで、一・七を使っている農家はほとんどおりません。ところが、農林省の坪刈り調査をやる場合においては一・七を使っているわけであります。したがって、一・八から見るならば〇・一の違いがあるわけです。そういうことをいろいろ専門家に聞いてみますと、米選機の下に落ちるところの米は一ミリの違いによっても大体五%ぐらいは下に落ちてくるのじゃないか、こう言われておるわけであります。したがって、特定米穀業者はやはり相当の米を持っていると私は理解いたしております。しかし、これは全く政府の管理外の米であります。それを自由にさせていることが問題だと私は思うのであります。  でありますから、皆さんは農協を相手にしていろいろ首を絞めるようなことをやられましたけれども、絞めるのであれば特定米穀業者を絞めたらどうだろうか。私の知っているところの業者の施設などを見ましても、立派な米がどんどんと入ってきているわけです。出ているのですよ。ああいう米というのは食管法があるにもかかわらずほったらかされておって、そして、いやおまえたちがそれを出してくれなかったなら輸入する以外にないぞというおどかしなんというのはもってのほかだと私は思うのです。ですから、そういう特定米穀業界というものをもう少しきちっと洗い直して、そういうところから他用途米というものも出してもらうようにしたらどうか。したがって、三等以上のところに規格をつくれということじゃなしに、三等以下のところに規格をつくってやってもいいじゃないか。  それからもう一つの問題は、さっきも話をしましたように、当然のことながらそれも米の需要の一部分でありますから、需給計画の中に入れておかなければならぬ問題なんじゃないか。二十七万トン必要だということなら二十七万トン、五十万トン必要だということなら五十万トン、それは全然なされていない。この辺はもう一回検討する必要がある、こう私は考えるわけであります。  時間が参りましたので、学校給食の問題も触れたいと思っておりましたし、それからまた超多収穫米の問題も触れようと思っておりましたけれども、その時間がございませんで、関係の方々おいでになっておりますので、まことに申しわけございませんが、次の機会に譲らさせていただきますが、要するに規格の問題、それから特定米穀業界の問題、この点につきましてはぜひとももう一回検討し直してもらいたい、これは大臣にひとつお答え願いたいと思います。
  60. 石川弘

    ○石川政府委員 特定米穀業者は、御承知のようにやらせますときには許可という形で受けさせておりまして、先生現在の特定米穀の販売業者のことを御指摘かと思いますが、四千数百のものがございます。昔からくず米の世界というのはそれなりに需要供給のあるところでございまして、今先生おっしゃいました選別の仕方によって非常にすぐれたものが出るというのは、むしろ農家段階でどこまでを選別してくずの方へ落とすかという問題もございます。その辺は今回の他用途米という考え方の中で、大型の施設を持っている農協はそういうものをうまくとりましていわば三等以上の世界に入れたということから、逆に特定米穀が少なくなったという話もあるわけでございます。したがいまして、私どもはこういう今までの運用の外側にどうしても他用途の米が要るという点においては、特定米穀をどうしようが起こってくる問題だと思います。  それからもう一つ、御指摘の三等以下に規格をつくれというお話になりますと、三等以下の世界は今何らの助成なしに動いている米でございますから、その何らの助成なしに動いている米に新たに助成をするということは大変困難なことではなかろうかと思います。
  61. 松沢俊昭

    ○松沢委員 これで終わりますが、私は質問というよりもむしろ提言をしたはずなんでありますから、ぜひ大臣、次の所信表明におきましてはそういう点も十分御理解の上ひとつ表明していただきたいと思います。  終わります。
  62. 今井勇

    今井委員長 次に、島田琢郎君。
  63. 島田琢郎

    ○島田委員 時節柄、大変めぐる情勢の厳しい中で、農林大臣、御就任大変御苦労さまでございます。ひとつ大いに頑張っていただきたい。冒頭激励を申し上げておきたいと思います。  ただ、私、田中さん、松沢さんの質問を通しまして、大臣がどういう御決意で今日の厳しい情勢の中で農政を展開していこうとお考えになっておるのか、その片りんだけでも知りたいと思って大変耳をそばだてて聞いていたのでございますが、私の大臣に対する認識が乏しいのか、そこら辺のところがどうも私自身わかりませんでした。  時あたかも厳しいということを申し上げましたが、早速またぞろロン・ヤス体制のもとで日米農産物の問題が厳しい局面を迎えるということも予測されますし、また後ほど詳しく触れてまいりたいと思いますが、農家経済は非常に窮迫をいたしております。さらにまた、六十年度の予算に当面いたしましても、農業に対する切り詰めといいますか予算の削減が厳しく要求されている。これは農業ばかりではございませんで、水産業、漁業あるいは林業も含めまして、農林水産省にとっては大変厳しい課題幾つも山積しているわけであります。ですから、従来にない非常な決意を持ってこの任に当たっていただかないと、我が国農政は一体どうなっていくのかという危機感は、ひとり私だけではなくて、農政関係者だけでもなくて、全国民がこれを持っていると思うのであります。ですから佐藤守良という大変大事な方が農林水産のこれからの任に当たられたというのが歴史的にも大変大きな重い意味を持つのだ、こういうふうに考えて、私は新大臣に対して強い期待を持っているのであります。  ところが、その期待にこたえてくれるのかなと、さっきから二時間ほどの間聞いておりまして、いささか疑念を含めてそんな印象を私は持っているのでございますが、大臣、この際、所信表明は後ほどおやりになると思いますけれども、せっかくの機会でございますから、大臣がどのようなお考えと決意を持っておられるかを、役人の書いた文章じゃなくてあなたの声でお聞かせいただきたい、こう思うのですが、いかがですか。
  64. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えします。  最初に、大変温かい御激励をいただいてありがとうございます。至って未熟でございますが、全力を尽くして頑張りますので、よろしく御協力のほどお願いしたいと思います。  先ほどおっしゃいました点で、内外ともに厳しい状況というのは同じ認識だと思います。そんな中でどのような農林水産行政を進めていくかということでございますが、私は実は三つの考え方があると思います。  その一つは、農は国の基本であるということです。そういう形の中に一億二千万の方に主食を完全自給するという食糧安全保障的な立場も持っております。そういう形の中に経済性をどう加味するかということ、それとともに市場開放性をどう加味するか、この三つがこれからの二十一世紀を踏まえての農政の新しい心構えの一つだと思います。  そんなことで、もちろん経済性、市場開放性も将来日本の置かれている立場では大切でございますが、基本は、農は国の基本であるということを一〇〇%にこれから農政を進めてみたい、そういう形で、重大な決意で進みたい、こう思っておりまして、何分御協力をよろしくお願いいたします。
  65. 島田琢郎

    ○島田委員 限られた時間ですから、大臣のおっしゃりたいことはいっぱいあるのでありましょうが、また機会を改めまして私もお聞きすることにして、きょうは二、三の問題を提起しまして、ひとつぜひ真っ正面から取り組んでいただきますようにお願いをしたい、こう思っております。  さて、農家経済は大変厳しい状況を迎えている。たまたまきようこの席で「農林金融の実情」という農林中金から提出されましたものをめくって読んでみました。私が今さらいろいろなことを挙げて申し上げる必要はないほど情勢は非常に厳しくなっております。それで、農林中金が主として農協あるいは漁協、森林組合等の組合に対する金融の実態からとらえておるのは当然でございます。しかし、ここで「農協系統組合金融 要旨」として五十四ページに載っておりますのを見ますと、こういうふうに言っております。五十九年度の稲作というのは、先ほど松沢さんからのお話の中でも触れておりましたけれども、ことしは何とか愁眉を開いたという年でございます。しかし、五十八年度というのはもう大変な輸入圧力が高まってまいりまして、大揺れに揺れた年でありました。そういう中で主要農畜産物生産調整が追い打ちをかけるように続けられ、そしてまた価格も臨調行革路線に沿って抑制されてきた。  こういうことになりますと、農家経済が困難になるのは当たり前なんです。その当たり前の当然のことを中金は言っておるのでありますが、しかしそのために農業所得が伸び悩み、農業経済は大変悪化をした、こういう趣旨でこれは報告されているのであります。あと漁業の関係、林業の関係を見ましたけれども、やはり同じように、押しなべて第一次産業は大変不況の状況を今迎えている。  とりわけ私が心配しますのは、今申し上げましたような外圧やらあるいは内圧で農家経済が極度に窮迫をする、こういう状況の中で、それではどうやったらこれを打開することができるのかという点をしっかりと模索しなければならぬと思うのです。残念ながらその模索が十分ではないという思いを私は強く持っています。  例えば私は一つの提言をしたい。交易条件なり交易指数というものが農業経済を見る場合の一つの目安でございます。こんなことは大臣は百も御承知のことを私は申し上げているのであります。我々農家が売る価格がこういう水準で、農畜産物生産する生産資材、つまりコスト部分を占めます重要な資材費が下がっていってくれると、この間は所得でございますから、農家所得としてこれで私たちは生活をし、子供を教育し、経営の維持拡大を図り、あるいはまた生活の向上を目指すことができるという余力がここで生まれてまいります。  ところが第二次オイルショックの後、五十三年、五十四年と引き続きました現象の中では、売るものは抑えられて、使うものが上がってしまったのです。つまり、はさみ状の状態で言えば逆シェーレみたいな現象になりました。そして、農家が単年度で大きな赤字を生み、続いて翌年も同じ現象から抜け出すことができなかったために、それが固定された負債になりました。せっかく五十六年で回復しましたけれども、五十七年にまたこうなりました。五十八年になりましたら、東北、北海道を中心にして未曾有の冷害、凶作になりました。ことしは雨不足のために日本列島はからからという状態でございました。農家経済はたまったものじゃない。  ですから、今私が申し上げましたように、価格が抑えられるということは、そのままにしておけば所得が圧迫されるわけでありますから、これをもう少し広げるために何が必要かと言えば、農家生産するときに使う農薬だとか肥料だとか、飼料だとか農機具だとかの価格をできるだけ下げていかなければ農家所得はふえないのであります。ところがこれはほうりっ放しなんです。価格は抑えることに積極的でありますけれども、使う資材費を積極的に抑制するという政策がそこに伴っていない。農家の経済はめちゃめちゃであります。  私はそこに力点を置いた農政展開が急がれるのではないかというふうに思うのです。私は、きょうは時間が余りありませんから、交易条件の中で実態的に占めております農家状態というものを詳しく述べるということは次の機会に譲りたいと思うのです。  そこで、限定して申し上げますと、農機具、これは農畜産物生産するときのコストに占めるウエートが非常に高いものでございます。トラクター一台が何百万もするわけでありますから、これをできるだけ下げていく努力をしてほしい、私はこう思って、十三年前に初当選をいたしましたときから、舶来のトラクターにだけ依存していて、我が国の農機具、まあ少し大げさに言えば農機具政策という位置づけをしてもいいのだろうと思っております。  府県と北海道に分けますと、確かに府県の農家は小型の、いわゆる耕運機型のトラクターが中心でございました。ですから、これは国内の農機具メーカーが分担をする、北海道は四十馬力以上のいわゆるトラクターが稼働力の中心になって、求められておりましたから、その大型のところは舶来に依存をするという形でおったのであります。  私自身トラクターの運転もできますし、やります。近ごろは少し年をとりましたので、若い者に任して、トラクターのハンドルを持つことは余りやりません。しかし、つい先日まで私はトラクターを駆使して第一線で百姓をやっておりました。ですから、私は自信を持って申し上げられるのでありますが、私は舶来の機械そのものがいい悪いというのではなくて、大変不都合な側面を抱えているのは、これはやむを得ないことなんでありますが、トラクターが故障いたしますと部品が直ちに必要です。  何といったって、天気を見ながら農作業をやるわけでありますから、西の方から雲がやってくれば、もう一刻も早く農作業を終わらせたい。ところが、その焦っているときにトラクターが故障を起こしたときの思いというのは、大臣、これはやった者でないとちょっとおわかりいただけぬかもしれない。いらいらなんというものではないのであります。  例えば牧草に例をとりますと、今トラクターがスムーズに動いてくれればきれいな牧草、栄養価の高い、いい牧草が上がるのに、雨に一回打たれますと大体栄養分が半減すると言われているのであります。トラクターはそこにありながら、天気はどんどん悪くなってくる。この気持ちは大変なんであります。それで、トラクターの部品を、これはもう当然のことでありますが、早く持ってきてもらいたいという要請をいたします。ところが北海道じゅう探してもない。  私が使っておりましたのはジョン・デアーという機械であります。西ドイツであります。アメリカの会社と合弁いたしましたものでありますが、さあ大騒ぎです。東京にないか、ない。西ドイツまで手当てをしている。これでは、とてもじゃないが農作業にならぬのであります。  そういうことも身につまされておりましたので、何とか国産にすれば、幾ら遠くたって東京にはあるはずだから、空輸すれば何とかその日のうちに手当てができる。ワシントンだなんてことを言わなくたって、何とか済む。だから国産化をやってもらいたい。農林省は当初は渋りました。しかし国産化できない理由はない。日産だってトヨタだって世界じゅうを走り回っている優秀な車であります。トラクターと引き合いをするというのであればブルドーザーがございます。大臣承知のように、小松のブルドーザーは、世界じゅうを席巻していると言ってもいい威力を持っている機械でございます、舶来品にかわるような国産トラクターが国内の技術をもってできないというわけはどこにもない。踏み切っていただきました。  国産化はようやく本腰が入って、三、四年前から私の農事組合の中でも四台あるうちの一台が国産にかわりました。やがて国産に全部かえていこうという動きも私の組合の中ではあるのであります。せっかく国産でありますから、外国から入ってくるものよりは安いだろうというのが我々の当たり前の期待であります。ところが、最近安くなくなったのです。外車と比べても値段の上ではそんなに差がなくなっちゃったのです。おととしあたりまでは差がありました。さすがに国産は安くていいわい、しかも六十馬力、七十馬力。今百馬力の大型までできるようになりました。なかなかしっかりしたボディーで、国産も捨てたものではない、むしろ国産の方がいいのではないかという評価も一部にはあるぐらいであります。これは農林省の戦略は見事に成功したと私は思っておりました。  ところが、残念ながら最近はそうなっていないのであります。むしろ外車、舶来の方が安い。そしてあろうことか、一番大事な部品が時々品切れをするのです。これじゃ国産化した意味が全くない。あげくの果てにモデルチェンジが物すごく激しい。だから部品なんかを求めてやっているよりは新しいタイプのものができました、こっちの方がよほど威力があるよ、宣伝もなかなかよろしい。セールスマンは皆さん大変熱心でございますから、農家も渋々ながらもこの宣伝に負けちゃうことが多い。新しい方がいいに決まっているわけであります。古いものをなるべく高く下取りしてくれるなんていったら、面倒くさい、部品探しているよりはチェンジした方がいい。どうもこんなことになりそうに思えて、今私は大変警戒心を強めている。  またぞろ農家経済の大変大きな重圧になっていくのではないか。トラクター、農機具が農業経営にのしかかるおもしというものには言い知れない大きなものがある。だから農機具の下敷きになってはいけない。できるだけ大事に使って、八年のを十年、十年のを十五年使う、そういうことでなければ農家経済農業経営というものは成り立っていかないという自覚を農家皆さんも持っておられるわけです。それにぴしゃっとこたえる行政の姿勢というものがもしもどこかで損なわれちゃったら大変だ、こう私は思うのであります。  事トラクターにそんなに大げさなことを言う必要はないとおっしゃる人もいるかもしれませんが、私はそう思っておりません。経営に占める割合が非常に高いということを考えますときに、機械について真剣に組り組んでいただくことが、先ほど申し上げました農家所得をふやす大事な——もちろん肥料とか農薬とか飼料とか、いっぱいあるのでありますけれども、それは時間の関係できょうは触れないでおきますが、そうしたコスト面をどうやって下げるかという積極的な姿勢が今日必要だという点にもう少し農政の視点があってしかるべきではないか。私はどうもそこが抜けているように思えてなりません。構造政策、構造政策だけてあります。もうトラクターなんかもその一環に組み込まれているということは事実ですけれども、しかし一生懸命旗を振って高いトラクターを買え買えとやられたのじゃ、これはかなわぬ話であります。それと同じような結果になったとしたら、農政の欠陥だと指摘されても仕方がないのじゃないでしょうか。  少し長くなりましたが、大臣に御認識をいただきたいと思って、私は私の体験を含めて実情を申し上げたのでありますが、お考えをお聞かせください。
  66. 関谷俊作

    関谷政府委員 農業生産資材、特に農業機械の問題につきまして島田先生の大変現実に即しました御指摘、御質問がございまして、私どもとしましても、申すまでもなく農家経済上大変重要な資材でございますし、これからの農業生産の安定なり生産の向上の上で大変大事な問題でございますので、いろいろな形で努力をいたしているわけでございますが、なお今御指摘のありましたような諸点につきましても、さらに一層これから問題の解決に向かって努力すべき点が多々あると存じております。  若干最近の傾向だけ申し上げますと、価格につきましては、生産資材全体としましては五十七年、五十八年、生産指数で見ますと両年とも〇・三あるいは〇・五%の低下、こういうような状況も見られておりますし、六十年で申しますと、肥料につきましては先般の七月来の取り決めが一・八%引き下げ、農薬、農業機械については来年からの分が大体据え置きというのが全農とメーカー筋との交渉の結果決まっておりまして、価格面全体としましては今のところはそう上昇傾向は見られていないわけでございます。  若干細かく見ますと、例えば外国産のトラクターの問題がございますが、これもいろいろ比較は難しいのでございますけれども、私どもの手元にあります資料では、同じ馬力のものをとりますと、必ずしも外国産の方が安いというわけではなくて、物によりましてむしろ国産の方が割安になっている、こういうような傾向もあるという資料がございます。それで問題は、利用面におきまして全体としていわゆる過剰投資を避ける、適正な使用規模を前提にして入れる、そのためには機械銀行でございますとか農作業の受委託の促進とか、こういう利用面での組織化がまず基本的に大事だと思っております。  それから、御指摘のございましたモデルチェンジの問題についても、この数年来非常に重要な行政指導上の措置としてやっておるわけでございまして、農業機械化研究所に持ち込まれますような安全鑑定基準の面で見ますと、この安全鑑定基準の適合をチェックします新しい型式のものが、五十一年ごろですと、大体年間九百型式ぐらいありましたのが現在二百五、六十型式ぐらいまでに減っておりますので、従来はどのモデルチェンジの傾向はないのではないか。ただこれも、いいモデルチェンジはよろしいわけですが、非常に不要不急の、ただ新しい販路を求めるような形でのモデルチェンジについては厳に抑制指導をすべきものというふうに考えております。  さらに、部品の問題につきましても、建前というか指導の方針としましては、それぞれの機械の製造中止後も法定耐用年数経過後数年間は部品を供給するように、通産省とも連携をとりながら指導しているところでございます。一方、部品センターにつきましてもできるだけふやすようにということで、現在農協系統、商系、農協で申しますと農協系統で五十九年一月で七十四カ所、このほか会社別に大体七、八カ所程度設置するというようなことで、部品の供給面でのいろいろな不便を少なくしますように努力しておりまして、多少効果は出ているような感じもいたしますが、今お話のございましたような諸点につきましては、私ども大変大事な農政の一分野としましてこれからもさらに一層努力してまいりたいというふうに考えております。
  67. 島田琢郎

    ○島田委員 ひとつ実情を把握していただいて的確なる対策をお立ていただくようにお願いをしたい。  時間の関係がありまして、次に進ませていただきたいと思います。  先ほど大臣に、あなたの施政方針をお聞かせいただきたいと申し上げました。私は今一番農家にとって大事なことは、つくる権利といいますか、そこをしっかり保障してもらいたい、こういうものを強く持っております。あれつくっちゃだめ、これつくっちゃだめ、実に不自由な、我々の農業経験から言えば今日ほど束縛された感じを強く持っておるときはない。北海道で言えば、米をつくりたいがつくらせない、傾斜が強くある。その分北海道で安全な作物をと思っててん菜に向かおうとすれば、砂糖がたくさんでき過ぎるからやめてくれ、事ほどさようにそういう状況のもとで、今農家は、つくる権利が奪われつつあるという意識が芽生えています。これは私は大変ゆゆしきことだと思うのです。働く者にとって働きを奪ってはならないというのが私は原則であり法則であると思うのです。そういう点で、新大臣に私が期待をするのは、まずはつくりたいというこの気持ちにぴたっとこたえるような行政、政策を展開してほしい、このように望みます。  ところで、そうは言っても予算の面で大変難儀をされている実態は私どもわからぬではありません。ですから、まず今日のような財政事情の厳しいときには、選択をする姿勢に厳しさがないとだめである、ですから、臨調行革の言うような一律平板的にみんなやってしまおうなんというようなことに対しては、農林水産省としてはそれを受け入れられないという部面が多いのでありますから、そこは断固としてはねのけるという姿勢があってしかるべきではないか。そういう中で、今、我が国農政の転換の最も大事な点は、つくりたい、そして作物の選択の自由も与えてもらいたいというこの希望にこたえていくためには、まず基盤となる農地をどうやって確保し、農民にこれを供給していくか、ここのところが大変大事だと私は思う。  そういう意味で言いますと、土地構造というものに対しての基盤整備、土地改良事業というのは大変最近おくれております。これは財政当局なり政府は、シーリングの中で公共事業中心にして抑制を強めてきているという点が一つ影響しているのであります。しかし、この点については強い姿勢でもってやはり押し返していただいて、基盤整備というものについては積極果敢ないわゆる攻撃に出ていただきたい。そうでないと、かなりの大型プロジェクトが各所に持たれておりますが、予算が抑えられますと、それは結局、予想される年次で終わらなくて、先延ばしされていくということになるわけであります。  例えば、北海道にもそういう大きなプロジェクトを持っている土地改良事業がございます。詳しく調べてみましたら、当初計画で三百二、三十億のものが、五十九年度のことしで六百億を超える予算になっているわけですね。先へ送れば送るほど当初予算が膨張していくわけであります。その上、単年度の予算が頭打ちで抑えられてしまいますと、結局は先に延ばしていかざるを得ないということに結果的にはなってしまうのであります、なかなか終わらない、終わらないから新規のものもなかなか頭を出すことができない、こういう悩みを構造改善局はお持ちになっているのだと私は思います。だから、一律抑制策に乗ってしまうと、農林水産業政策部門で大変大きなそごを来す。佐藤大臣にこの点は特に私は頑張ってほしい。ですから、構造改善局が抱えております事業が大半でありましょうが、ここのところは徹底した公共事業型の、事業推進を図るという意味も含めてひとつやっていただきたい。この部分は激励でございます。大臣の御決意をお聞かせいただきたい。
  68. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 島田先生お答えいたします。  土地改良事業というのは生産性の向上に最も大切なものでございます。それともう一つは、実は土地改良事業は特に農村でやるわけでして、用地買収費が三%前後、そういうことで地域経済に役に立つということで、先生の御理解と全く同感でございまして、頑張るつもりでございます。よろしくお願いしたいと思います。
  69. 島田琢郎

    ○島田委員 何か、私の方がえらい力んでいて大臣の方が……。そんな印象でありますが、そんなことはないでしょうね。まあ余り私の方が力み過ぎているのかもしれませんが、しかし、深刻なのです、正直言って。  新規事業だって、及び腰で町村長は出してくる始末です。だって、先に進んでいるものが終わらなければ、農林省そのものだって、新規のところは、おい、ちょっと待ってくれと言わざるを得ないのじゃないでしょうか。さっき申し上げた事業なんか、そういうことになりますと、私の計算では、私どもの子供の時代に終わらなくて孫の時代になってやっと終わるなんというような話になりかねない。私は、これではとてもじゃないが話になりません。農林水産委員会の我々メンバーは与野党力を合わせて応援しますから、多分応援しているはずでありますから、この点は頑張っていただいて、公共事業をぜひ一定のペースに戻していただくように頑張ってほしいと思います。  さて、三番目の問題でありますが、連日、新聞、テレビを通して人類の危機が報道されております。それはアフリカの干ばつによる飢餓状態、あるいはASEANにおきます食糧不足の実態、実に生々しく伝えられております。同じ生きとし生けるものとしてこれを放置することができないのは、人道主義の立場に立って当然のことであります。私も、何とか我が国がこうした状態に少しでも手をかすことができれば、こういう思いで、例えば今森繁久弥さんあたりが中心になって毛布百万枚運動などというのも展開されている。自民党も本部に、えらい自民党だけがやっているような格好で載っておりますけれども、これは決して自民党だけじゃありません。我が方だって真剣に考えているのであります。  私もうちの家内に、毛布がたしか大分余っていて、もう家族がいなくなって夫婦二人になったのだから最少限にして、あとのものはアフリカなりASEANの方に供給するように出せということを言いまして、そういう運動にも参加をいたしておるのであります。  ところが、私は、どうも我が国の海外援助、とりわけ今回のこうした飢餓救済に臨みます姿勢にやや鼻につくような現象のあることも否定できないのではないか、こう思います。例えばこの間、外務省の三宅アフリカ局長がいみじくも、ぽろりとでしょうか、何か言ったことが新聞に載っておりました、何か我が国が一生懸命やっているとか、我が国だけが何とか前へ出たいとかいったような、そういうものが鼻につくような気が私はするのです。それでは、本物の腰の入った今日の飢餓救済にはならないのではないか。現地で現に今もう死ぬかもしれないという状態、死線をさまよっている人たちに、それが本当に親切な救済の手だということになるのだろうか。そしてまた、私は、毛布一枚運動、百万枚運動は大変結構なことであります。しかし、ひもじくて腹ぺこで飢餓状態に陥っている人に毛布だけかけたって生き返らぬでしょう。まずは、やはり食糧だと思います。  ところが、残念ながら、いろいろの報道を見せていただいております、朝日とか毎日とか読売とかあるいは各テレビ局なども連日、本当に生々しい報道を続けております。そういう中で見ておりますと、どうももどかしいのは、大事な命を救う食糧が確実にその死線をさまよっている人たちの口に入っているかどうか、私は、これは大変問題だと思います。それは、供給する我が国の立場でも大変もどかしい思いをされているようでございますから、そこのところをやはり、これは外務省が所管している、窓口の責任を持っているようでございますが、事食糧とか農業の技術援助とかそのほかのいわゆる経営の援助などという点については、これは佐藤大臣の手元でおやりになるということでございますから、私が今短い時間で申し上げておりますようなことは、断片的に申し上げておりますけれども、それはもう皆さん、百も御承知のことだと思うのです。私が今述べようと思っております思いといいますか気持ちも恐らく御理解がいただけると思うから、断片的にしか今申し上げておりません。  しかし、これは急がれる。長期的には、確かに安倍外務大臣が述べておられますように構造的な問題がありますから、何でもただでくれればいいというものでないことも私はわかります。それは自立をさせる、民族自決というものが基本であることは間違いありません。しかし、現実に今大変な飢餓状態が起こっており、一説によれば四億をこえると言われるような飢餓人口がおる。毎日毎日、一分間に三十人ずつ死んでいるなどという報道も、私は余りにも生々しくて目を覆いたくなる思いでありますが、そういう点について的確にやっていかなければならぬというものが、今、緊急に必要ではないのか。この点をしっかり区分けしながらやっていくのが最大の効果を上げるやり方ではないかというふうに考えて、私は一定の御提案を申し上げるのでありますが、この緊急性に対応する農林水産省の食糧その他の援助について具体的なお考えをこの機会にお聞かせ願いたい、こう思います。
  70. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 ただいま島田先生からるるお話がございましたように、アフリカ諸国につきましては、近年、相次ぐ干ばつ等によりまして食糧事情が極めて悪化しておる実情にございまして、アフリカの飢餓問題というものが世界的に注目を集め、また人道的な観点からも問題になっているわけでございます。  今お話がございましたように、緊急食糧援助の窓口は外務省でございます。また、私どもの分担をいたしておりますのは、どちらかと申しますと地域の食糧増産のための農業振興、そのために各開発途上国が行っております自助努力にどういうふうにお手伝いをしていくかということが中心でございますけれども、御指摘ありましたように、当面の措置につきましては食糧援助を強化する、死線をさまよっている方々に一人でも多く食糧を供給していくということが必要であるということにつきましては、私どもも全く同様に考えております。関係省庁とも十分相談をいたしまして、そのための努力をやってまいる考えでございます。
  71. 島田琢郎

    ○島田委員 私の聞きたかったのは、心がこもった援助というものを頭に置きながら、長期的には確かに政府が今お考えになっている点、それもぜひおやりいただかなければならない問題であろう、だからただで安物をくれるだけが救済の道ではないという点にあえて私も理解を示したのでございます。しかし、当面とにかく口元に持っていってあげないことにはこれは生き返りません、飢餓の現状を救うことになりません。それについて農林省としては、これは何でも外務省だと言って済まされたのでは困るのでありまして、この部分は我が省がしっかり責任を持つという気持ちをぜひ御表明いただきたかった、こう思うのです。  これは毎日新聞の最後のくだりでありますが、私は大変強い感銘を持ちました。官、民の立場で論議をすると、まだまだどうもやり方とか手法をめぐっていろいろな隔たりがあるようだ、しかし最も重要な立場が一つ抜け落ちているということを政府は考えなければいけない、我々も考えなければいけないと言っている。それはアフリカの人々の立場でありまして、官民合同で初めてアフリカに調査団を送った意義は大きいと評価をしながら、しかしながら余りにアピール効果を追求する姿勢、私がさっきちょっと申し上げました、農林省も同じようなアピールの姿勢に立って物を考えるとしたら、心がこもっていない、私はこういう指摘を強くせざるを得ません。援助本来の精神というものを見失ってはいけないということを言っておりますが、私も同感であります。  現実に安倍外務大臣も現地に入られて自分の目で確かめておられますから、深刻に考えておられることは間違いないようでございます。しかし、その日その日の食を求めて必死に生きているという現実に、我々が今どうやってこの人たちの期待にこたえていくかというのは大変大事なことだ、こう思うものですから、具体的なことをお聞かせ願いたい、こう思ったのです。重ねてこれは大臣から私は伺っておきたい、こう思うのです。
  72. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生お答えいたします。  けさ私が朝刊を見ておりましたら、ことし、アフリカ諸国二十四カ国で食糧が三百四十万トン足りない、来年は五百二十万トンという記事を読みました。想像以上に干ばつ等が厳しいのがわかるわけです。実はこの所管は外務省でございますが、それを抜きにして対策に二つあると思うのです。  先生おっしゃいました緊急対策と長期対策ですが、緊急対策では五百万トンの食糧をどうされるかという問題がございます。そういう形の中において、今日アフリカ諸国がそういう事態を引き起こしました政治家にも問題がある、こんなことを含め、我が省の立場というのは、率直に言いますと長期対策に重点を置いておる。そんなことでむしろ土地改良等をやる、そういう形で食糧をどうして増産するか、そんな形で全力を尽くしたい、こう思っておるわけでございます。
  73. 島田琢郎

    ○島田委員 私は前にもこの問題を取り上げましたときに特に強調しておきましたし、今もその考え方は変わっていないのでありますが、こうした食糧問題というのは決して戦略化してはいけない、またそれを政争の具に供してはならぬ。これは人類共通の願いでありまして、しかもまた食糧、食べ物というのは、先ほど生きとし生けるものという古色蒼然たる言葉を使いましたけれども、生きているものにとって平等に分かち合わなければならない大事なものである、この認識から私たちは遠ざかってはいけない。  ところが、残念ながら、我が国は飽食国だ、こう言われています。腹いっぱい食べている、げっぷが出るほど食べている、そのありがたみを、こうした困った人たちにも思いとしてはせることができればこれはいい。しかし、我々だけ腹いっぱい食っていればいいのだ、そういう考えで物事を考えるということは食糧に関する限りいけない、これは私が今さら言うまでもないことでございます。  そういう意味で言いますと、世界人口のわずか三%足らずの我が国が、金に飽かせて世界の食糧を買いあさっているという非難は依然として世界各国から消えておりません。特にこうした開発途上国あるいは飢餓を抱える国々からは、我が国に対しての評価は大変厳しいのであります。そうでしょう。世界穀物貿易量の二〇%になんなんとするような輸入をやっておるわけでありますから、言われたって仕方がないのであります。それは穀物の価格を高騰させる原因にもなっております。そういう罪深い我が国の現状をしっかり反省しなくてはいけないのではないか。食糧はまさに人類共有のものだという認識に立ち、金があるからどこから買ってきてもいいのだというやり方では、これは帝国主義的な発想だと言わなければなりません。自分の国の食糧はあとうる努力を払って自給する、自賄いする、これがなかったらいけないのではないでしょうか。  先ほど来、田中さんも松沢さんも、同じ趣旨でこの点を強調されているのであります。私も同じように、その点は幾ら強調しても強調し過ぎない今日的状況にあるということで、やや焦燥感、いら立ちを覚えます。国会で決議しても、ここで幾ら決議しても決議のしっ放しで、本気になって大事な国民食糧の自賄いということに踏み出すことをしない、これは政府全体に責任がありますけれども、とりわけ農林水産省最大の責任を負わなくてはならぬと私は思う。そういう改善されない基盤の中からおこがましくてよその国に援助もできないということになったら、これまたさらに罪の上塗りになってしまうじゃないですか。  まず農政の大転換を図りながら、国内で食糧の自賄い、自給率最大限確保する努力をしながら、こうした人類共有の食糧に対しては我が国が世界に先駆けてその救済あるいは積極的な食糧供給の道開きをするべきである、こういうふうに私は長い間私の持論としても持ってきたわけであります。もちろん、これは我が党の農業政策に臨む基本的な姿勢であります。異存はありますか。——なるべくは大臣に。後藤さんとはいつも話しているから、きょうは大臣と話したいのです。
  74. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 ただいまお話にございましたように、国会の御決議もございます。国内生産可能なものについてはできるだけ国内で合理的な生産を図っていくということでやってまいるべきだと思いますし、また、飽食の状態にある先進国と飢餓の発生をいたしておりますアフリカ等の開発途上国との間で、先ほど来お話がございますような食糧援助の強化ということも同時に並行的に努力をしていく必要があると考えております。
  75. 島田琢郎

    ○島田委員 さらに、一九七七年の発表によりますと、世界の各国で累積をいたしますと八千八百億ドル、邦貨にいたしまして百八十四兆円、これが軍事費として使われている。実に一分間に三億ずつ軍事費で消えているのであります。このうちの一割でも二割でも食糧を供給するという方向に向けられていけば、私は問題はそんなに時間を要しないで解決できると思うのです。世界のこういう傾向に迎合するかのごとく、我が国も軍事化路線にのめり込んでいます。食糧増産の大事な国会決議を無視しながら。  どうか、佐藤大臣のところで国会の決議が生かされるような農政展開をせひお願いしたい。閣議においても、またぞろ突出した軍事予算を認めるような、防衛費予算を認めるような、そういうことにはぜひひとつ逆らって、農業予算をふやす努力をしていただきたい。それが我が国の食糧の自立化であり、今飢餓に陥っているこうした国々を救済する道につながると私は思うからであります。この点を重ねて強調しておきたいと思います。  さて、話題を大きく変えますが、六十年度予算に絡みまして、また、林政審答申等がございまして、一局統廃合という問題が俎上にのせられ、具体的になってまいりますに及んで、めぐりますこうした問題に対しまして大変混乱が広がりつつあります。  私はことしの予算委員会でも厳しく言いましたが、これからの緑づくりは国民の大きな期待でございます。その期待に反するような、また、国民の大きな願いを踏みつぶすような林野行政の展開に対しては厳に慎んでもらいたい、こういうことを申し上げました。そういう考えの延長線上で考えますならば、私はどこの局が統廃合されるのかわかりませんけれども、そのお考えは即刻やめてもらいたいと思います。この地域の大混乱をそのままにして進んでいくこと自体が大変大問題でございますし、まさにこの混乱を未然に防ぎながら林野行政を、とりわけ国有林再建の国民の側からの協力を取りつけるということは大変重要なことでございますが、どうも勘違いをされていらっしゃるようです。国鉄問題に象徴されるように、何か役所と働いている者が食いつぶしてしまって、それを合理化すれば国有林の再建ができると思っている。やがては、それは国民のニーズと全く相反する方向に進んでいくということにお気づきにならなければいけない。  ことしは第二次の改善計画がスタートいたしました。臨調行革、林政審の答申は、骨身を削れということを盛んに言う。しかし、削っていい骨身と絶対に削ってはいけない骨身があります。それはまさに局の問題、これもその一つだと私は思う。どうか、国民皆さんが積極的に緑づくりを期待していることに背いていただきたくない。そのためには、局の廃止は後退であり、この要求に対して逆行するものだという認識をお持ちになるならば、私は臨調路線に逆らってもこの暴挙を中止されるのが筋だと思うのです。私の申し上げていることにお答えをいただきたいと思います。
  76. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 島田先生お答えいたします。  国有林野事業についてはもう御高承のとおりでございまして、国民経済、国民生活に重要な役割を果たしておる。そういう状況で実は林野庁は非常に厳しい状況にあるというようなことで、今後とも経営改善を推進してやる必要がある、このように考えております。  そういう形の中で、実は組織機構の簡素合理化は経営改善の一環として避けて通れない課題でございまして、実は一月の閣議決定や新改善計画に即して営林局の統廃合問題に対処していく考えでございますので、特段の御理解をお願いしたいと思うわけでございます。
  77. 島田琢郎

    ○島田委員 もう時間が来ましたからやめますけれども、避けて通れない、こう言っている、私はそんなことはないと思います。行政の責任は佐藤大臣がお持ちになっているのです、農林水産のこの分野は。だから新大臣、あなたは思い切った、ひとつ従来の農林大臣にないものを持ってお進めいただきたい。それが今、農林漁業に携わっている者はもちろんのこと、国民から期待される農林水産大臣の姿だということを忘れてほしくないということを言ってきたのでございます。  残念ながら時間がなくなりました。この問題はまた引き続きにさせていただいて、ここで私の質問を終わりたいと思います。
  78. 今井勇

    今井委員長 午後一時二十分から再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十七分休憩      ————◇—————     午後一時二十分開議
  79. 島村宜伸

    ○島村委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。武田一夫君。
  80. 武田一夫

    武田委員 まず最初に、佐藤農林水産大臣に質問いたします。  このたび農政の最高の責任者としての御就任、心から私はお祝い申し上げるわけであります。非常に苦労人であって、新聞によりますとバランス感覚のとれた方だからその手腕期待するところ大だと農林省の皆さんの受けもよいようでございます。私は、その期待農家皆さん方の期待に置きかえてもらいたい、こういうことをまず要望するわけでございます。  最初に、就任に当たりましていろいろ新聞等で大臣の抱負等述べておられるわけでございますが、特に今後の農政に対しまして、大臣として、これとこれにはぜひとも力を入れてやっていきたいというふうにお考えなさっている点がございましたら、その問題についてひとつ御所見を伺いたいな、こういうふうに思うのでございます。
  81. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 武田先生お答えいたします。  最初に、大変未熟な私に温かい言葉をありがとうございます。未熟でございますが、全力を尽くして頑張りたいと思っておりますので、何分御教導を心からお願いいたします。  現在の農林水産業をめぐる諸情勢内外ともに大変厳しいのは御高承のとおりでございます。米など一部農産物の需給不均衡、あるいは規模拡大の停滞や諸外国の市場開放要求、また行財政改革など非常に厳しい状況でございますが、私は、今後の農林水産行政におきましては、総合的な食糧自給力の維持強化を基本として、生産性の向上を図りつつ農業生産の再編成を進めるなど、各般の施策を進めたい、こう思っております。  私は、農政と取り組む場合に、そういうことを基本にいたしましてどんな考えで取り組むかということを考えた場合に三つの要素があると思います。  その一つは、農業は国の基本であるということでございます。それとともに、一億二千万の国民に主食を安定的に供給するということ、いわゆる食糧の安全保障、こういう意味が入ると思います。そういう形の中にやはり経済性をどうするかというような問題がある。それとともに市場開放性をどう考えるか、これをどのようにして加味していくかということがこれからの農政に取り組む基本姿勢だと思っています。そういう形の中に私は、もちろん経済性、市場開放性ございますが、やはり現段階におきましては、農業は国の基本、一〇〇%そういう立場でこれからの農政を進めたい、このように考えておるわけでございます。  そんなことで、私が特にやりたいことが三つございます。それは一つは、生産性の高い、土台のしっかりした農林水産業を実現していくということでございます。第二番目には、二十一世紀に向けてバイオテクノロジー、ニューメディアなどの先端技術を駆使した魅力のある農林水産業を築くということでございます。第三番目には、農林水産業に携わる人々が意欲と生きがいの持てるような活気のある豊かな村づくりを進める。この三点を中心に、そういう考え方でこれからの農政を進めたい、このように考えております。
  82. 武田一夫

    武田委員 その三点、しかと承っておきます。  それで、そのことに関係いたしまして、今大臣は食糧の安全保障というのは特に力を入れなければならない重要な課題である、私もそう思うわけでございます。そこで、食糧政策というような国の基本政策にかかわる問題は、国全体として、政府全体として、大事なものだから互いにこれをしっかりと守っていこう、そういう政策を進めていこうという、政府部内においてもあるいは国民すべてにおいても共通の認識を持たなくてはいけないと思うのですが、大臣はその件についてはどうお考えですか。そうであるかそうでないのか、ただその答えだけで結構です。
  83. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えします。  そのように考えております。
  84. 武田一夫

    武田委員 これは当然、特に政府部内、総理を中心とした大臣等を含めたそういうところで、まず共通の重要なものであるという認識がなければならないと私は思うわけです。しかし、中曽根内閣になってから特に私は痛感するのですが、農業に関してはそれが非常に軽視されてきたという気がしてならぬです。  いろいろと今具体的な問題を申し上げますが、今回減反の緩和の問題がございましたね、このことについても大臣は、米が豊作だとか不作だとかということで減反緩和の方針を破るのは一番よくない、これも記者会見のときか何かでお話しになった。そのとおりだと思うのです。そのときの都合によって約束したことを破るのは一番不信につながるわけですから、大臣の言われたことは当然のことだと思うのです。結果的には、大臣が就任なさってから最初の仕事がこの数量をどのくらいにするかということだったわけですね。出てきたのが、減反緩和面積二万六千ヘクタールでございましたか。  この緩和の措置について、国民の食糧の安定という、いわゆる食糧の安全保障という基本的な政策についての政府部内での認識の食い違いというか、それがあったのではないかと思うのです、この数が出てくるのには。恐らく農林水産省としては、こんなものではいけないと思っていたはずだと私は思うのです。昨年総理もこの委員会において、とにかくきちっと需給ができるようにゆとりある需給計画をつくっていくというようなことで答弁もいただいておるし、農林省の皆さん方も意を強くして、もっと、それこそ三万や四万あたりを腹に持っていたのではないかと思うのです。  しかしながら怖い相手がいた。大蔵省が財政的な観点から攻めてこられて、この辺でというふうに妥協したのではないかと私は感じているのですが、農林省といえども大蔵省といえども、特に大蔵省が財政的な問題からそういう国家の安全保障の中で重要な食糧の安定確保、安全保障という問題に切り込んでいくということはいかがなものかということを、私が農村地帯をずっと歩きますともう既に心配している。大臣農業を守ると一生懸命決意をされているけれども、そういう状況では今後どうなるのだろうという心配もされている。この点どういうふうにお考えでしょうか。
  85. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 武田先生お答えします。  このたびの転作緩和の約二万六千ヘクタールについては、ことしの作柄とか、その前に先生のおっしゃいました政治家は約束を守るというような立場、それからさきの国会の決議等を踏まえまして慎重に検討した結果、第三期水田利用再編対策の枠組みの中でゆとりある備蓄、それから三たび過剰を招かない、実はこんな立場で決めたわけでございます。  それで、これは先生御存じのとおりでございますが、米の消費拡大はなかなか厳しい状況を迎えております。これは食生活の変化等によるものでございますが、そんなことで、例えば今一人当たり平均七十数キロでございます。都市では四十キロちょっと、田舎で百十キロ、そんなことでございまして大変な米離れ。しかも、都市におきましては良質米志向に重点を置かれている、そんなこともございまして、やはり米の需給関係を見ておりますと、将来とも消費は減退する、そんな考えを持っております。
  86. 武田一夫

    武田委員 消費の問題、これはやはり消費拡大ということで一生懸命努力しながらも少しずつ減っているということは私もわかるのですが、その前に、ことしかなりの豊作であった。現実には、私の宮城県などは、正直言いまして作況指数一〇八となっているが、そんなにいってない。現実にとってみた後で、最終的には一〇二、三であろうというところも出ているわけです。ですから、平年作と見ておる。四年間ずっと不作であって、ようやく、ありがたいことに大臣のときに豊作になったというのですから、非常に運のいい大臣だと私は思うのですよ。この運のよさがこれからも続いてほしいと思うのです。  しかしながら、過去十年のデータなどを見ますと、そういうふうなことというのはないわけです。となると、来年はどうなるのだという心配がある、また再来年はどうなるのだ、こういうことを考えると、政府、農林省としては、食糧庁としても、来年もこのくらいはいかなくてもまず平年作だろう、であってほしいものだという願いと期待の中で需給操作を考えていく。そういうことを考えると二万六千ヘクタールくらいでもいいのじゃないか、いずれ五、六十万トンくらいは余分に押さえておくことができる米が出てくるということも恐らく考えているのじゃないかと思うのです。備蓄も含めまして一年間に四十五万トン体制云々というのを考えていくときに、ことし一年よかったからということで安心してはならぬ。次、最悪の場合のことを考えた上でこの程度のものでいいのかということ、ひとつこの点を少し詳しく長官から説明してもらいたいと思います。
  87. 石川弘

    ○石川政府委員 御指摘のように、私どもあの問題を考えます際にも、決して平年作だけで想定をいたしておりませんで、いわば六十年の十月末に六十万トンないし七十万トンをもって年越しができることは一応確実なわけでございますが、今度は六十年産米が作況がよかった場合それから悪かった場合、その場合でもこれはある程度の幅を持って考えるのは当然必要なわけでございます。  例えば一番悪かった五十五年の八七みたいなものを持ち出してきまして、そういう場合でもぎりぎり大丈夫かどうかということもやってみました。しかし、逆に言いまして、そういうことを想定しますと、そこで余裕を持とうとしますと、一〇〇前後の作況が参りましても今度は逆に大変過剰が出てくる。ましてや、ちょっと平年作を上回ることになりますと単年度で百数十万トンという規模のものが簡単に外側に出てくる、そういう要素がございましたので、私どもは最悪の場合もある程度持ち越しの米とか早食いとかいろいろな手法をもって試算はしてみましたけれども、そういうところよりも、むしろ今まで過去にありました九五、六程度の作況が来ても絶対問題がないし、それから一〇〇がちょっと超えるくらい来まして直ちに過剰に来ることもない、そういうことをいろいろと試算をしました結果、二万六千というものがあればかなりゆとりのある操作ができるのではないか。どちらかというと可能性としましては、ゆとりがあるということでいっておるわけでございますから、積み増しの可能性の方がむしろ大きいというようなところを一つ考え方に置きましてあの数字が適当ではないかと考えたわけでございます。
  88. 武田一夫

    武田委員 わかりました。  ただ、今までどちらかというと単年度需給操作の中で、余りにも財政的な経費削減ということを主眼として作業が進められてきた中でのことし前半の米不足、ああいうような不慮の災難が出てくるということは二度と国民の前に発生させてはならない、これはもう絶対してはならないという至上の課題が与えられたのじゃないか。そういう意味で、今回こういう米不足ということで非常に苦労したことは、毒を薬に変ずるという姿勢でもって臨んでほしいと思うのです。幸いこの間は自流米のおいしい米が余っていたということで余り大都会でも騒がなかったのですが、正直言うと、今になって言いますと、私たちの宮城県は非常に標準米がなくて大騒ぎをしたけれども、大騒ぎをすれば大変なことになるというので抑えていたという経過もあるわけです。そのことは当局は御承知だと思うので、私はそういうことを二度と繰り返さないようなしっかりした取り組みをしてほしいと思う。  そういう意味でひとつ大臣にお願いしたいのですが、先ほども社会党の島田先生から予算の問題の話がありましたが、農業の要求予算が非常に切り込まれるのじゃないかということをうわさされているし、現実に毎年のように大事だ大事だと言われている農業の部門にメスが入ってくるというのは、政府の農業軽視の一つの具体的な見本じゃないかと私は思うのです。  今回も、何か聞くところによると、既に要求段階で前年比の二%の減額というような話などが出ております。大臣はまたこういうことも言っている。もっとお金を持った農業農林水産予算にしたい、こういう決意でございますから頑張ってほしい。この頑張りが農業者に一つの大きな希望と夢を与える、それが一つ生産意欲の向上と活力を与える支えになってくると私は思うのです。それをひとつ大臣にお願いしたいと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  89. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 武田先生お答えいたします。  実は私も、農林水産大臣になりまして、農林水産予算が毎年低下しておる、しかも五十九年度は一〇・六%の率ということでまことに遺憾に思っております。こういう厳しい状況でございますが、何とか概算要求確保で頑張りたい、このように思っております。
  90. 武田一夫

    武田委員 とにかく食糧問題についてはどんなに力を入れてもこれでいいというものはないと私は思うのです。外に向かっていくよりも、まず内を固めなくてはいけない。やはり国を支えている大きな力ですから、そういう意味で、国家の重要な部門としての農業に対する部内の意思統一をひとつ中曽根総理にも進言をしまして、いつも何かあると財政的な問題で攻めてくるというようなことのないように、事の重要性、その中身の重要性ということをもっと認識をさせていく、そして意思統一をしながら仕事をしてほしい、こういうふうに思っております。ひとつ機会あるごとに、そのことを進言なさるなりあるいはアドバイスをしていただける大臣になってほしいと要望したいと思うのです。  次に、二番目に質問したいのは、他用途米の問題なんですが、水田利用再編第三期対策、来年は二年目。一年目のことしは他用途米の扱いで農家に非常に混乱を与えた。ところが来年はそういうことであってはいかぬ、いよいよ、他用途利用米をどういうふうに定着さしていくかということは、米全体の政策の上で重要な一つの問題になってくるのではないかと思います。そういう意味で、今後のこの点についての当局のお考えをひとつお聞かせをいただければと思います。
  91. 石川弘

    ○石川政府委員 まず、去年と申しますか、ことしのいろいろな問題もございまして、私どもやり方なり内容なりについていろいろ考えておりますが、その一部を御報告させていただきますと、まず、実施に当たりまして農業団体がある程度自主的に自分たちの中で生産をしていただいてこれを実需者側に渡していくわけでございますが、そういう農業団体の取り組みと、これはあくまで行政サイドからいいますと転作の一部でございますので、国、都道府県を通ずる、そういういわば行政との間にどうも乖離が見られたということでございますので、今回はまず計画なり割り当てなり、あるいはそういうことの指導につきまして、農業団体サイドあるいは行政サイドに再三お話をいたしまして、国の段階はもちろん、県段階あるいは市町村段階で両者の意思が疎通するようにというようなことに努力したわけでございます。  量といたしましては、御承知のように約二十七万トンが必要と考えておりますので、これにつきまして、これは各県にどうやってやっていただくかというときにおきましても、ことしの場合一律に分けたという御批判もございます。そこで今回は、年度が変わりましたので去年と異なりますように、まずそういうことを県段階で、経済連あるいは中央会と県あるいは市町村との間でよく調整をしていただきまして、ことしどれだけ契約をなさっているかというようなこと、それからやはりこれは米の生産の力が大きいところにお願いしやすいわけでございますので、そういう米の生産力がどうか、あるいは他のものが定着しているときに無理して入ってきますとそれがかえって負担になりますので、他の転作との関係というようなことを相談をいたしまして、かなり重点を変えまして、一般論と申しますと北陸、東北、北海道が少し重くと申しますか多くやっていただいて、関東から西にかけてが昨年よりも比較的しょっている部分が少ない、そういうような形で配分をいたしまして、県あるいは市町村それから農業団体等の大方の御理解を得ているところでございます。  問題は、今後どうやっていくかという中で、御承知のようにことしのものにつきましても価格交渉の問題その他が残っておりますが、これにつきましては、この他用途米制度をつくりました趣旨に従って関係団体で話し合いをさせておりまして、私どもそれを応援するわけでございますが、そういう中から来年度に関していろいろ問題になること、これは各業界がどのような数量を使うかというようなこと。それから、これは加工、輸送等の経費をなるべく少なくしたいわけでございますから、そういう加工等をやっております実需者に近いところのものを持っていかせるための仕組みはどうしたらいいか。それから、先ほどお話に出ました規格問題等についても、これは大変難しい問題でございますが、まだ関係者にもいろいろな意見がございますので、そういうものをどう取り扱うか。そういうことを全部今検討を、ことしの実行と同時並行にやっております。  こういうことで得ました成果をなるべく早く行政サイドあるいは生産者サイドに流してまいりまして、今度の六十年のものにつきましては、間違いなく量的にもあるいはそういう行政指導の面でも定着化が図られるようにやっていきたいと思っております。
  92. 武田一夫

    武田委員 長官も話されたようにこれはいろいろな問題がございますね。ですからよくそういう担当者、関係者とのコミュニケーションというか意見の交換をじっくりやってもらいたいと思います。最後になるといつも一般の農業者から、あちこちで意思の疎通不足や説明の不十分というのが返ってくるわけですね。それで一つの波動が大きくなってすぐ皆さんの方に返ってくる。一生懸命やっている割には何だかかえって恨まれるような、お気の毒な場面にぶつかっているのを私はよく見ますので、やはり一番大事なそういう農業団体と行政サイドとの話し合いを十分にこなせるだけの食糧庁担当者の説明とそういう打ち出し、これをやはりしてほしい、こう思います。また要らぬ混乱を引き起こさないように御配慮をしていただいて、スムーズに事が運ぶように私はお願いをしたい、このように思いますので、よろしくお願いいたします。  時間の都合で、次に漁業問題に移らせていただきます。  日本の漁業というのは、正直言って、非常に今、米以上の大変な状況にあるということは御承知のとおりでございますが、私の宮城県も漁業県でございまして、今度の北転船の減船の問題、これは典型的な病める水産業の一つの姿ではないか、こう思いますので、この問題を一つ取り上げまして御質問をいたしたいと思います。  今回また、北洋に向かおうとしている船の灯が幾つか消えようとしているわけでございます。二百海里時代から漁業を取り巻く環境はいろいろと厳しくなってきたのでありますが、特に米国二百海里水域へ出漁する船が約四割減となった。今回四十三隻北転船が減るということになって、五十四隻しか行かない、こういうことで地元でもいろいろその対応で苦労しておりまして、県、関係市町村で対策本部をつくって事に当たっているわけでございます。その対策が十分に行われるように国のバックアップをまず最初にお願いしたいと思います。  それで、まず一番最初に、今回の北転船の減船の実情につきまして詳しく内容を教えていただきたい、こう思います。
  93. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  北転船の減船計画は、現在北転船九十七隻ございまして、毎年ソ連水域に二十七隻、残りがアメリカ水域に出漁しておったわけでございます。  ところで近年、アメリカ水域におきましてだんだん漁獲割り当て量が窮屈になってまいりまして、殊に混獲魚種として大きな位置を占めておりますメヌケとかギンダラのたぐいの混獲魚種の削減が特に顕著でございます。先生御高承のとおり、混獲魚種について、その一つの魚種でも混獲魚種のクォータを使い切ってしまいますと、主対象魚種のクォータが残っておりましても事実上操業不能になるということでございますので、そういう事情から北転船の操業が大変窮屈になってまいりました。  それで、先生今お話しのございましたように、この九十七隻のうち四十三隻を減らして五十四隻ということにいたしまして、五十四隻を二等分して二十七隻ずつそれぞれアメリカ水域及びソ連水域へ出漁をする、そういう体制にしたいということで現在減船計画の御相談が進んでおるところでございまして、もう間もなく話がまとまるところへきておるという段階でございます。
  94. 武田一夫

    武田委員 そうすると、四十三隻減らす。それで、そこに乗り込んでいる乗組員の数はどのくらいとつかんでいますか。
  95. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 離職者の正確な数字、ちょっと手元に持っておりませんが、四十三隻の減船によりまして千名をちょっと超える離職者が発生するはずでございます。
  96. 武田一夫

    武田委員 そこで、問題はそういう方々の今後の救済、それからあと船主に対する救済措置としてどういうものを今考えておられるか、その問題をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  97. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  先ほどアバウトな数字で申し上げましたが、想定されております離職者は千七十五名でございます。それでこの千七十五名の離職者につきましては、まず労使間の話し合いによりまして残存漁船への吸収あるいは他の漁業等への配置転換が行われるようできるだけやってもらいたいということで指導をしておるところでございまして、今後もそうするつもりでございますが、結果的に発生いたします離職者に対しましては、国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法、略称は漁臨法と申しておりますが、これに基づきます職業訓練、就職指導、職業転換給付金の交付、こういう措置によりまして離職者対策について遺憾なきを期してまいりたいということで、関係の運輸省、労働省と御相談をしておるところでございます。  それで、減船の対象になります漁業者自体につきましては、農林漁業金融公庫からの共補償用の資金の融資及びそれに対する利子補給の措置を講ずるというつもりで大蔵省と御相談中でございます。
  98. 武田一夫

    武田委員 そこで、共補償として必要な金額百六十億とか言われておりますが、これの確保は十分できるのかどうか。  それから残った人々、いわゆる船主、経営者は果たして大丈夫なのかということ。減船したからそれでいいというものではなくて、減船がスタートだという感じがするわけですので、今後のそういう方々の経営における問題はないものかどうか。特に漁獲割り当ての問題で、要するにほかの業種との割り当ての配分の問題などもあるのではないか。こういうふうに思うときに、この減船によってもなおかつ厳しい状況が続いていくのではないかという心配もするのですが、そういう点の今後の見通しと対応について十分な措置をしてほしいというふうに私は要望するのですが、その点はいかがでしょうか。
  99. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  まず、共補償資金の融資につきましては、農林漁業金融公庫の資金ボリュームの点で御迷惑がかかるということはないと考えております。  それから、残存漁業者の今後の経営でございますが、ソ連水域につきましては現在日ソ漁業委員会が現に行われておるところでございます。アメリカ二百海里水域につきましては一九八五年の割り当てを確保すべく現在水産庁の田邊審議官を派遣してアメリカ側と折衝に当たらせておるところでございまして、それぞれ相手のあることでございますが、私どもといたしましては、先生今御指摘のような事情を十分体して、全力を傾注して米ソそれぞれに対処してまいる所存でございます。
  100. 武田一夫

    武田委員 今、日ソ交渉の最中ですが、来年の一月一日から出漁できるかどうかというのも大きな関心です。おくれればその分困るわけですが、この見通しは今のところどういう状況でしょうか。
  101. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  現在では特別の判断材料を持ち合わせておりませんが、ソ連側も早期決着を図りたいと考えておることは疑問の余地がないように見受けられます。私どもももちろんそのつもりでございますが、双方の主張が厳しく対立することも予想されますので、私どもとしては一月一日出漁ということを念頭に置いて全力を傾注したいというにとどめさせていただきます。
  102. 武田一夫

    武田委員 いろいろと御苦労があると思いますが、漁業関係者が本当に大変心配をしているし、苦労の多い場面に当面しているわけですので、ひとつ一層頑張って、こういう方々への対応を十分にしてほしい、こうお願いを申し上げます。  そこで私は、北転船の操業条件がこのように非常に悪化してきたのはなぜなのかということをもう一度考えてみたいと思うのです。と同時に、これからの日本の漁業、水産業の方向をしかと見直すべきではないのかなという気がしてならないのです。  かつては七つの海を制覇するというような大きな目標を掲げました。そして沿岸から沖合へ、沖合から遠洋へというような大きな計画を掲げたが、どうもこれが裏目になってきて、かえって遠洋から沖合へ、沖合から沿岸へというふうになってきたような気がしてなりません。そういうことで、今後の水産たんぱく源を確保する意味において、水産行政の中におけるこの問題にもっと本格的にメスを入れて取り組んでいく必要があるのではないかと思うのであります。  北転船の問題にしましても、これまで三度ですか、業界での再編成が進められたにもかかわらずこういう状況でありますから、これが今後四度、五度と続くとなれば、北洋の灯は完全に消えるのではないかという心配もある。特にアメリカなどは、自分の国でとった魚を買え、こうまで言っているような話を聞くにつけまして、この辺でしかとした水産行政の確立を行うときではないか。どうも今まではどちらかというと米、農業の方に目を向け過ぎたとは言わないにしても、そういう嫌いがあって、海はいつでも自由にとれるものだと思っていた、ところがこういうふうになってしまった。日本の大事なたんぱく源でございますから、この辺でその確保のための水産行政の明確なるビジョンといいますか、方向性を打ち出す、そのための検討、研究をしてほしいと思うのですが、この点いかがでございますか。
  103. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  何と申しましても今や二百海里時代でございますから、重要な漁業資源はすべて沿岸国の主権下に置かれておるわけであります。そういう中で沿岸国といたしましては、主権下に置かれておる漁業資源をできるだけみずからの国益のために有効に活用しようと考えることは当然でございまして、例えばアメリカの場合には自国漁業の振興と自国漁船の漁獲物の輸出市場拡大のための武器として自国二百海里内の漁業資源を活用しておるというのは今まさに先生指摘のとおりでございます。  したがいまして、私どもは基本的にはこういう外国の主権下にある漁業資源というものが抱えておる厳しい現実というものをやはり冷厳に直視する必要があると思うわけでございまして、そういうことを冷厳に直視すれば、おのずと我が国の主権下にある漁業資源というものがいかに貴重であるかということについて当然再認識が生まれてくるはずのものでございまして、そういう再認識を踏まえて、最近の言葉で言えばつくり育てる漁業ということに今精力を傾けておるところでございます。  従来、ともすれば二百海里時代のそういう冷厳な現実を直視する度合いに欠けるところがあって、やや甘えの精神で将来を展望しておったという嫌いかないとは言い切れないと思いますが、近年の二百海里時代に入った中でも、当初予想されたよりは一段と苛烈な状況の中で、先生指摘のような認識が私どもの間にも当然業界の間にも生まれてきておるわけでございまして、そういうことを踏まえて主権下の漁業資源を大事にする水産行政の方向ということを追求していくべきものと考えております。
  104. 武田一夫

    武田委員 この問題は大変大きな問題でありますし、日本の漁業あるいは水産界の中における大きな問題だと私は思うのです。そういう意味で、大臣におきましてもひとつ十分なる手当て、対応をお願いしたいと思うのです。  そこで、その中で私はいつも思うのですが、一つは、外交交渉の中で事が運ばれるわけですね。ですから、そういう意味では農林水産省というのは世界各国のあらゆる国々とこれから折衝する、現実にしているわけですが、アメリカ、ソ連にせよ、農産物にせよ水産のこの問題にしましても、その任に当たる方、佐野長官などは随分苦労をなさっているし、前の松浦長官なども苦労をなさって、優秀な人材がいるわけですが、もっと欲しいなという気がしてならぬのです。そういう窓口にある担当官の方々。  国際課というのがあるのだそうですが、そこに四十四人いて一室八班、十六の係がある。そこに総務班が六人、協定班が四名、人数が張りつけてあるのですが、協定班というその中の四名、協定係、それから北米第一係、北米第二係とか、こういうふうにあるのです。あるいはまた、北洋班、北洋第一係、第二係、第三係、人数が七人ということですが、こういうところに優秀な方々が張りついて、折衝のときには一生懸命頑張っているのだと思うのですが、私は十分ではないような気がしてなりません、かつてある方が交渉の過程の中で、もう少し人が欲しいとふと漏らしたことを聞いているわけです。忙しすぎるという話をちょっと聞いたのが耳に残っておりまして、中身をもっと重要視した、そして堂々と向こうを説得しながら日本の水産業界を守るという力を、この国際課ですか、どこかわかりませんが、そういうところにひとつ私は御検討されたらいかがだろうというふうに思うのですが、この点はどうでしょうか。
  105. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  全く先生指摘のとおりでございまして、水産庁といたしましても二百海里時代に入りましてから、水産庁本庁の組織につきましても、あるいは在外公館に派遣する職員につきましても、鋭意その拡充に努めてきたところでございます。先生指摘のように、現状でもなおかつ不十分であるという御指摘もございましょうが、こういう行革の時代でございますので、そうむやみに組織を広げるというわけにもまいりません。その任に当たっておる職員が一層努力をいたしまして負託にこたえるように努めてまいりたいと思っておるわけでございます。
  106. 武田一夫

    武田委員 大臣、今佐野長官も行革云々ということで遠慮しているのですが、こういう大事なところはそれなりに、行革云々というのをもう考えないで、ここにきちっとカンフル注射を打たぬとだめだというときに、必要なときに打たぬで病める日本のそういう水産業界というのを健全に立ち直らせることができないのだ、そういうめり張りをつけた対応、これはきちっと大臣の期間のうちにやってほしいと思うのですが、ひとつ御決意を聞かせていただきたい。
  107. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 武田先生お答えいたします。  今水産庁長官の言ったとおりでございますが、実は私は就任後まだ二月たちませんけれども、水産庁の人員は最高のスタッフだ、こう思っております。そんなことで、これからの人的強化その他の問題は佐野長官とよく相談しながら進めたい、こういうように考えております、よろしくお願いいたします。
  108. 武田一夫

    武田委員 最後に一つ。私はこれは前から事あるごとに話はしていたのですが、今回の自主減船に踏み切ったという背景には、やはりアメリカに対する一つの業界としての姿勢、みそぎ論を言っているのですね。これは全国底曳網漁業連合会というのですか、全底連の会長が、一つはみそぎの意味もあるのだと言う。それはなぜかというと、やはり違反操業が非常に多かったということをきちっとつかまれているということですな。そのことは国際的にも非常に信用を失墜するから、これは厳しく対応しないとまじめな漁業者というのはとばっちりを受けるぞと指摘をしていたのですが、やはり業界としてもそのことが一番心にこたえているようでございます。今後こういう機会にさらにそういう違反操業を徹底して取り締まるという、そこに日本としての信義をしかと示す必要がある、こういうふうに思うのでございます。  そういう意味で、今後こうした違反操業、昨年の一月から今年の八月まで北転船の違反操業件数というのは警告を含めて百二十一件だということも聞いておりますから、これは大変な数でございます。この点の対策をしかとすべきであろう、私はこう思います。いかがでしょうか、この点についての御見解をひとつお聞かせいただいて終わらせていただきます。
  109. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 私ども全く先生指摘のとおりに考えておりまして、厳しく対処してまいりたいと思っております。
  110. 武田一夫

    武田委員 それでは、終わります。
  111. 島村宜伸

    ○島村委員長代理 小川国彦君。
  112. 小川国彦

    ○小川(国)委員 新大臣、就任どうも御苦労さまでございます。初めて委員会農政の問題について新大臣にいろいろな見解を伺わしていただきたいと思います。  最初に、年々農業あるいは食糧に対する国民の関心というものがあるわけでございますけれども、政治的にはどうも農政あるいは農業、食糧問題というものが非常に低い位置に置かれているということで、私ども今後の農政というものが国民の主要食糧を賄う重要な産業でありますだけに、農林大臣も任務に対する非常な決意を持ってひとつ臨んでいっていただきたい、こういうふうに考えるわけです。  それで、卑近な例でありますけれども農業予算というのが最近年々減少してきておりまして、国の予算の構成比の中では、五十六、五十七、五十八、五十九と最近の四年間を見ましても減ってくるばかりである。国の予算に対する農業予算の割合は、五十六年が国の予算に対して六・五%、五十七年は六・一%、五十八年は五・八%、五十九年は五・五%ということで、年々減少してきておる、ところが、防衛費の方を見ますと、五十六年五・一%、五十七年五・二%、五十八年五・五%、五十九年五・八%ということで、防衛費の方は年々ふえていく、農業予算は落ち込んでくる、まさに去年から農業予算を防衛費が上回った、こういう状況にあるわけです。  私どもは、武器よりもやはり食糧という平和国家のあり方から考えてみまして、大臣に、農林水産業の予算については、こうした防衛費の比重に負けないようなウエートを国の予算の中で占めるような、そういう御努力をひとつこれからの取り組みの中で願いたいと思いますが、まずその点の決意を伺いたいと思います。
  113. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  実は、私も農林水産大臣になりましてから約一月と半ぐらいでございますが、農林水産予算が毎年低下しておりますのにびっくりいたして、まことに遺憾に思ったわけでございます。そんなことの中で、全体が厳しいわけですけれども、そういう厳しい予算の中に、実は役所の人々が大変内容の充実に心がけ、国民期待に沿うような予算づけをしておることにまず気をよくいたしたということでございます。  今先生がおっしゃるようなことで、毎年低下いたしておるのではございますが、私は、こんなことではいけないというようなことで、実は中曽根総理等にもその話をいたしまして、今先生がおっしゃるような角度で六十年度の予算に取り組みたい、そして何とか概算要求を確保いたしたい、こんな決意を持っておるわけでございます。
  114. 小川国彦

    ○小川(国)委員 これから二十四日の予算の大蔵原案の内示、それからまた二十八、九日ごろに昭和六十年度予算が決まると思いますが、まず大臣にひとつ御奮闘を期待したいと思います。  それから次に、あす、あさって、十九、二十と米価審議会において消費者米価が決められるということでございますが、私ども消費者米価の推移を見てみますと、生産者米価値上げのツケが全部消費者に回されてきている。そして、この十年間の推移を見ましても、生産者米価が上がったよりも消費者米価の方がはるかに上回って値上げをされている。昭和五十年の生産者米価が一四・四に対して消費者米価が一九、五十一年は六・四に対して一〇・二、五十二年は四・○に対して九・八、五十三年はゼロに対して四・二、五十四年は同じくゼロに対して三・二、五十五年は生産者米価二・三に対して消費者米価がゼロでありましたが、五十六年は生産者米価が〇・五に対して六倍の三・二も消費者米価が上がっている。それから五十八年は一・七五に対して三・七六、五十九年は二・二に対して三・〇ないし四・○、こういうことが言われておりまして、どうも生産者米価を上げたツケは全部消費者に回されている、こういう歴年の状況があるのです。  それからもう一つ、国政の中で、我々見てみますと大体十月から十一月に大臣がかわる。そうすると、生産者米価を上げたときの大臣は消費者米価を上げませんと約束して、そして内閣を全部やめていってしまう。新大臣が値上げをするという役割になっているのですね。私は、どうもこれは大臣交代に紛れてうまく役割を分担し合って国民の目をごまかしているのじゃないかという印象を持つわけなんです。ですから、先ほども議論がございましたが、やはり食管制度の中で消費者にツケは回さないというような農政のあり方、米価決定のあり方というものを農林水産大臣はこれから考えていくべきじゃないか。何か、聞くところによると大臣は私は消費者米価値上げの急先鋒だ、一食二、三円値上がっても差し支えないというような発言をされたということですが、これは大臣の真意でございましょうか。
  115. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 小川先生お答えいたします。  就任のときの私の発言でございますが、実は私は、主食のお米というのは安いという話はいたしました。その場合に、並行して、日本農業国民全体で守ってもらいたいという話をいたしたということでございます。そういうことを申し上げたわけでございます。
  116. 小川国彦

    ○小川(国)委員 その発言が大臣の真意ではなかった、こういうことでございますか。
  117. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 小川先生お答えします。  今言ったとおりでございます。とにかく日本農業というのは大変厳しい。そういうことの中で基本的に、先ほども申し上げたわけですが、農業は国の基本である。そういう形の中で一億一千万の国民に主食は完全に供給する義務を持っておる。そんなことで、日本農業の厳しい現状をよく見ていただきまして、日本農業をよくすることにつきましてひとつ国民全部で担いでもらいたい、こういうことを実は話したわけでございます。
  118. 小川国彦

    ○小川(国)委員 あす、あさっての審議会の中で出されてくると思うのですが、経済企画庁の「物価レポート84」というのを見ましても、消費者の物価指数一一〇・三に対して米を含む穀物の指数は一一三・二ということで上回っておりまして、米の値上がりの仕方は低いとは言えない、こういうふうに思うわけです。それから、どうも値上げの正当性もなければ値上げの理由というものも見当たらないのですが、三%ないし四%上げようという値上げの理由というものを大臣はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  119. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 小川先生お答えいたします。  これは、米の政府売り渡し価格というものは、これまで家計費及び物価その他の経済事情を参酌し、消費者の家計の安定を旨として決定してきております。実は今回も同様の考え方で対処する方針でございますが、具体的には家計、物価の状況、売買逆ざや、財政事情等を総合的に勘案し、米の生産流通、消費に及ぼす影響などに配慮して決める考えでございます。
  120. 小川国彦

    ○小川(国)委員 あす、大臣の諮問案は何%で出されるお考えですか。
  121. 石川弘

    ○石川政府委員 実は、昨夜も遅くまで財政当局等と折衝いたしておりますが、まだ決まっておりません。これに経済企画庁と相談をいたしまして政府案を決めるつもりでございます。
  122. 小川国彦

    ○小川(国)委員 いつの時点でこれは決定するわけですか。
  123. 石川弘

    ○石川政府委員 私どもは今晩中にぜひ決めたいと思っております。
  124. 小川国彦

    ○小川(国)委員 腹づもりは決まってないのですか。
  125. 石川弘

    ○石川政府委員 何しろ相手のあることでございまして、なかなか今回は厳しい交渉をやっております。
  126. 小川国彦

    ○小川(国)委員 最小限度に抑えようという腹はございますか。
  127. 石川弘

    ○石川政府委員 私どもの立場は、どちらかといいますれば上げ幅について厳しい方でございまして、そういう厳しい中でどこまでが今大臣お答えしましたような、いわばよく言います家計米価という考え方の中でこなせるかどうかということで判断をいたしたいと思います。
  128. 小川国彦

    ○小川(国)委員 厳しく考えていくという長官の考えに大臣も同じでございますか。
  129. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えします。  同じでございます。
  130. 小川国彦

    ○小川(国)委員 あすの朝数字が出ますので、ひとつこの政治姿勢にこたえるような態度でこれは頑張っていただきたい、私どもまたその結果を見て議論をさしていただきたい、こういうふうに思います。  次に、米の販売の中で、来年の六月に卸売業者の首切りが行われるということで、今全国的に非常に問題を呼んでいるわけであります。これは、消費者に直接的にはつながっておりませんが、間接的にはやはり卸売業者の統廃合という問題は小売を統御する問題になりますし、それはまたひいては消費者、国民にもつながっていくわけで、こういう行政というものはやはり国民のために行われていかなければならないと思うのですが、私は、まず大臣に、行政というのは一体だれのために行うものかという点を伺いたいのです。これはごく一般論で聞きたいのです。
  131. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えします。  食糧庁長官から答えさせます。
  132. 小川国彦

    ○小川(国)委員 それじゃ具体的な問題をもっと突っ込んで質問させていただきたいと思います。  具体的に申し上げますと、食糧庁は、米の卸売業者の中で年間四千トン以下の取扱数量の業者に対して、昭和六十年六月をもって他社と合併しなければ免許を取り消す、こういうような方針を出しているようであります。しかし、今全国で三十七社の大半は、それぞれの地方や地域において設備やそれから運営、業務内容もすべて十分にその機能を果たしているというように見受けられるわけです。そうした状況の中で、政府が強制的に合併を求めていく、応じなければ免許を取り消すというやり方は、どうも国の民主的な行政のあり方としてはいかがかというふうに思うのでありますが、この点についてまずひとつ見解を伺いたい。
  133. 石川弘

    ○石川政府委員 御承知のように、食管法では卸というのを特定の方々だけにやっていただくという形で許可制をとっております。その場合に、特別の方にやっていただくにはどういうようにやっていただけるか。これはやはり効率的にやっていただいて、なるべく合理的な経営をしていただきたいわけでございますので、その一つの基準といたしまして、今先生指摘のような、これは小売の結びつき要件でありまして、小売を何軒下に抱えるかということのほかに、取扱要件としまして約四千精米トンをやっていただきたいということを政令で決めているわけでございます。その考え方は、要するにその程度のことをやっていただけますと多分いろいろな面で合理的な経営ができるということを試算をいたしておりまして、一つは、先生も御承知だと思いますが、卸でございますから、大型鳩精施設をもって合理的な精米をやってほしいわけでございますが、大体五十馬力程度の精米機をもちまして、これは一馬力が大体百三十一精米トンぐらい精米できるわけでございますが、それが六〇%ぐらい稼働すると考えますと、大体これは四千トンぐらいの規模。しかし、そうはいうものの、そういうことだけじゃなくて、実現可能かどうかという面で、これは五十六年にやりました当時、県別で見まして、平均で一番低いのが実は宮崎でございましたけれども、これは四千トンをちょっと切るぐらいの数字でございます。その次小さいのが山梨でございますが、いずれも平均しましても四千トンぐらいの水準を持っていた。     〔島村委員長代理退席、委員長着席〕  それからもう一つは、どれくらいの売上高があると経営的に非常に収益力ができるか。これは売上高固定費比率みたいなものでやったわけでございますが、全国の卸を調べまして、御承知のようにその当時から少し米の消費が減っておりますので、数字が下がってきておりますのを使いまして、その分岐点を見ますと、当時の感じでは売り上げで十億前後のもの。それをトン数に直しますと、これはトン数が若干落ちましたので、落として直しますとやはり四千ぐらいということで、そこをめどにいたしまして、これは先生も御承知のように大半のものはこれに合格をしているわけでございますが、この規模に達しないものについては極力三年間のうちにそういう方向に来ていただく、そうして効率的な卸運営がしていただけるということで、そういう目標を決めまして、実はこれは行政サイドだけではなくて、お米屋さんの団体でございます、これは系統が二つございますけれども、そういう系統も通じて合併をするとか、したがいまして、それは何かやめさせるということじゃなくて、その力を合わせてもっと強いものになっていただきたいということを、これで約三年近くやってきたわけでございます。  そのことによりまして、大半のものにつきましては、何らかの意味の合併その他の合理化とか、あるいは自力でその限度を上回ってきているとかいうものがふえてきておりますが、そういう中で、私どもも、個別案件で幾つかのものについては超えそうもないとか、あるいは合併等についていろいろな御意見があるということを承っております。これは六月の許可更新についての我々の運用問題でございますが、現時点で個別案件のどれがいいとか悪いとかということを申し上げるわけにはまいりませんけれども、私どもは当初考えましたような線で現在も指導してきておりますし、それによってそれなりの成果は上がってくるのではないか、そのように考えているわけでございます。
  134. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私の方では、未合併というか四千トン以下というのが三十七社というふうに伺っておりますが、この数字は間違いありませんか。
  135. 石川弘

    ○石川政府委員 そのとおりでございます。
  136. 小川国彦

    ○小川(国)委員 これで、小売店舗の数で要件を満たないというのは何件ございますか。
  137. 石川弘

    ○石川政府委員 それは四社でございます。
  138. 小川国彦

    ○小川(国)委員 それを県別におっしゃっていただけたらと思うのですが。県別に、四社は何県に存在するか。
  139. 石川弘

    ○石川政府委員 静岡と千葉と埼玉、もう一つありますが、今調べましてお答えをします。
  140. 小川国彦

    ○小川(国)委員 これは私のところの千葉ですが、千葉は合併なすったんじゃないですか。
  141. 石川弘

    ○石川政府委員 具体的にはあるわけでございます。数がちょっと足らないというだけでございます。
  142. 小川国彦

    ○小川(国)委員 いずれにしても、小売の店舗数からいけば四社、しかし四千トンということになると三十七社ということになってくるわけなんですが、今の食糧庁の合併の進め方、これは三年前の方針を来年の六月までにということなんでございましょうが、私ども実態を見てまいりますと、どうも合併は少し無理なんじゃないか。  現在まで秋田県で七社の合併が行われたそうでありますが、いずれもペーパー合併で、本当の合併ではなかったのではないかと言われているのですが、この合併は、会社のいわゆる固定資産からあらゆるものを全部一本化した合併だったのでしょうか。あるいは、現状の組織はそのままにしてのいわゆる統一会社をつくったという合併であったのか。その実態はどういう合併であったのでしょうか。
  143. 石川弘

    ○石川政府委員 私の手元の数字によりますと、五十九年十二月一日合併とございますので、つい先日かと思います。私、個別案件につきましてまだ詳しく知っておりませんので、調べましてお答えをいたします。
  144. 小川国彦

    ○小川(国)委員 次に、具体的な例で今度は岩手県の場合です。  岩手県でやはり合併が進められておりまして、これは現在四社残っているようでございますが、この岩手県の場合には釜石、大槌、釜石共栄と三つの合併を考えられているようでありますけれども、釜石、大槌、これはいずれも協同組合、釜石共栄というのはスーパー。協同組合と株式会社の合併は、組織的に、協同組合と株式会社ですから合併するのは非常に無理がある。それからまた、スーパーのようなところはお米の卸のほかにいろいろなもの、他業種の商売もしている。そうすると、業種の内容も複雑でありますし、資産も違う、地域的にも離れているということで、この点についての合併もかなり困難があるというお話なんですが、この点についてはいかがでしょうか。
  145. 石川弘

    ○石川政府委員 私が伺っておりますのでは、今先生がおっしゃいました岩手県は四つの欠格と称するものがあるわけでございますが、今おっしゃいました釜石、大槌、釜石共栄の三つにつきましては新会社設立による合併の話し合いをしておりますけれども、それを全部足しましても数量が若干足らないということで苦慮なさっているというようなことを、私どもの方に報告を承っております。  それから、もう一つの九戸米穀というのは既に盛岡の米穀会社と十二月六日に合併をいたしまして、六十年四月一日から業務開始をする予定だと報告を受けております。
  146. 小川国彦

    ○小川(国)委員 ちょっともう一度おっしゃっていただきたいのですが、岩手、四社ありますうちに合併しましたというのはどこでございますか。
  147. 石川弘

    ○石川政府委員 九戸米穀でございます。
  148. 小川国彦

    ○小川(国)委員 それを除いての三社で四千トンに足りないということでございますか。
  149. 石川弘

    ○石川政府委員 三社が合併をいたしましても四千トンという数字に若干足らないのではないかということで、御心配だという話は私は承っております。
  150. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私の手元にあります数字でまいりますと、釜石米雑穀が一千九百二十二トン、大槌米雑穀が一千三百二十八トン、釜石共栄四百九十四トン、こうまいりますと、ぎりぎりのところということでございますか。
  151. 石川弘

    ○石川政府委員 私が聞いておりますのは、その四千という数字には若干足らないというようなことで御心配だという御相談があったと聞いております。
  152. 小川国彦

    ○小川(国)委員 しかし、今の、業種が違う、組織形態が違うというようなものの合併についてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  153. 石川弘

    ○石川政府委員 したがいまして、米の卸売部門について合併をしていただきたいわけでございまして、そのスーパーの部門を連れてきてというお話ではないように私は伺っておりますが、個別案件につきましては私詳細に熟知をいたしておりませんので、今御質問のありました件もさらに私も調べました上でお答えをさせていただきます。
  154. 小川国彦

    ○小川(国)委員 次に熊本県の場合なんですが、熊本県におきましても八社ございまして、これの合併問題が進められているようでありますが、熊本県の皆さんの意見を聞きますと、この三年間に売り上げをふやして四千トンの卸売数に達せよと言いましても、四年続きの凶作であって特に本年などは五%、一〇%あるいはそれを上回る販売数量の制限を行われて、そういう状況の中ではとても販売数量を上げていくということは不可能であったということが言われているのですが、こういう点はいかがでございます。
  155. 石川弘

    ○石川政府委員 私ども、数量として売りにくいような環境にあったことはそうかと思いますけれども、熊本の場合は大変数が多うございます。ごく一般的に申しますと、協同組合系と申しますか、小売の方がいわばつくっていらっしゃいます事協系というようなものがあります。それからもう一つは商業系のものがありまして、現在の場合、それにもう一つ、大半の県におきましては農協の経済連自身が卸をいたしております。農協の経済連等は御承知のように一県一事業体でございますから、そういうものとの競争というようなことを考えてまいります場合でも、余りに弱小のものでございますと、それはやはり販売力が小さくなって、そのことが消費者の方にもいろいろ御迷惑があるということでございますので、熊本の場合、非常に小さな卸が多いところの事例としまして、さらに大型化の御努力をいただけるところではないかな。私どもの方もまだどれとどれでどうするということは聞いておりませんけれども、いろいろと事案は私どもの方に報告が上がってきておりますので、やはり経営力をつけていただくという方向指導していきたいと思っております。
  156. 小川国彦

    ○小川(国)委員 農業団体が一県に一つの卸売の形でやっているのでということなんですが、そうすると、長官の方のお考えは、全糧連系も一県一事業体というような方針をお考えになっていらっしゃるのですか。
  157. 石川弘

    ○石川政府委員 いや、消費の多いところ、それから昔から伝統的に地域を割りましてかなりの規模でやっていらっしゃるところ、いろいろございます。私が申し上げたのは、米の二つの大きな流れというのは、事協系、商業系とそれに対抗する農協系でございますので、何も一本にする必要はないと思いますが、それなりの強い力を持っていただきませんと、どちらかといいますと現在はいわゆる事協系のものがシェアをだんだん落としている、どちらかというと商系のものともう一つ農協系統がシェアをふやしてきているということでございますので、そういう面で事協系統が自分の力をおつけになることも必要ではないかということでございます。
  158. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私は、必ずしも大きな事業体にしていくことが望ましいことではなくて、やはり中小であってもそれなりに過疎の地域において、地方において力を発揮している、こういう事業体はやはりそれなりに存続を認めていくべきじゃないのかというふうに思うわけなんです。  熊本の場合もかなり合併には困難性がありまして、伺ってみますと、組合員個々の地域格差がある。いわゆる協同組合の、同じ県内にあっても、大小の地域の力の格差がある。それからまた、含み資産がそれぞれ違う。事業協同組合ごとに、大きな含み資産を持っているところもあれば、小さいところもある。それをいきなりあと半年後に合併せよと言っても、かなり合併には無理があるのじゃないか。それから、含み資産を表面化させて分離課税によって簿価以上のものに課税される会社も出てくる。こういう税の問題は一体どうなるのか。それから、今のような合併ですと、既存の協同組合なり企業なりを合併させても、今までのものを組織を残した上の屋上屋のような合併になってくるので、人件費がさらにふえてくる。それから、内部留保も放出しなければならぬ。それから、現在の工場をまた再編成するというようなことになってきますと、従来の工場がスクラップ化していく、そういう損失の問題も出てくるというふうに、来年六月までの合併には非常に無理が多い。それから、今小さいところは内容が問題だというような御発言がありましたが、伺ってみると、中小の事業協同組合でも内部留保をかなり、一億近い内部留保も持っておりまして、中小の食糧事業協同組合でも非常に立派な運営をやっていらっしゃるという実態があるわけですね。  そういうような点を見ますと、やはり中小は中小なりの存在価値というものを考えてやるべきではないのかというふうに思うのですが、この点はいかがでございますか。
  159. 石川弘

    ○石川政府委員 御指摘のように、資産内容等につきましては、長い間の伝統の中でかなりのものを保有していらっしゃることもあると思います。それから、税法上のいろいろな御指摘もございます。したがいまして、短期的問題としてそういう問題があることは事実でございますが、やはり長い流れから考えますと、米の卸というものは、御承知のように玄米販売というようなことはもはやもうほとんどないわけでございまして、これからはそれなりの近代的な搗精施設を持つとか、小売に対して積極指導をするとか、いろいろな役目があるわけでございます。私どもが例えば四千トンと言っておりますのは決して大ではございませんで、先ほど申しましたようにつくりました五十六年の宮崎県が一番小さいわけでございますが、そこの平均の数字でございますから、圧倒的に大きい御承知のように三十万トン近い卸までいるわけでございます。ですから、先生指摘の中小の規模も当然この規模に入るわけでございます。  私どもは、いわばこれは卸業者の方々が自分たちが将来どんな方向に行ってどのように経営を改善して業務を遂行していただくかという意味では、役所の押しつけという感じよりもまさしくみずからの問題でもあるということで、こういう組織に参画をなさっております上部団体であります全糧連なり全米商連なりもいろいろ御指導いただいているわけでありますから、そういうものとも連携をとりながら今後も指導していきたいと思っております。
  160. 小川国彦

    ○小川(国)委員 今の熊本の場合も、売り上げも一生懸命伸ばしているところがあるのですね。消費拡大に一生懸命貢献しようというので、五十六、五十七、五十八と一千九百トンから二千二百トン、それから二千三百トンと非常に上げてきているのですよ。ですから、こういうところも存続していってやれば三千トンにいけるんじゃないか、四千トンにいけるんじゃないかというふうに思えるわけです。しかも、資産内容もいい。業績も順調にいっている。それで、先ほど申し上げたように経営の内容も規模もその地域にふさわしい形でやっている。たまたま凶作の中で政府の米の売り渡し数量がどうしても限定されている。またそれも削減されたという状況の中で、伸びようとしても伸び得なかったという状況がある。こういう点については、長官、御理解はいかがですか。
  161. 石川弘

    ○石川政府委員 重ねて申し上げますが、私、個別案件のよしあしをこの場ではなかなか実態をそこまで、先生がお調べになっている程度まで十分私も知っていないと思いますので、私は一般論として申し上げておりますのは、やはり四千トンという基準で六月に向けて指導中でございます。そういうものの成果がどのようにあらわれてくるかということを見ながら判断をしなければいかぬと思いますが、そういう意味で今までやってきた四千トン水準による統合なり、そういうことはそれなりの成果をおさめて現在前進中でございますし、先ほど申しましたように六月を目指して非常に多くのものが統廃合計画を立てているわけでございますので、そういうものの中からその六月の時点でどういうものが最後に出てくるかということも見きわめないといけませんので、私ども国会先生お答えしますのは今のようなお答えにさせていただきたいと思っております。
  162. 小川国彦

    ○小川(国)委員 今長官は玄米販売はもうないというふうにおっしゃって、それはそういう方向というのは進んできていると思います。ただしかし、それは大手だからいわゆる白米販売が行われておるのじゃなくて、中小でも白米販売をやっているのですね。  これは長官の方でまだ調査が不十分のように思えますが、私、滋賀県の場合もいろいろ調査をして事情を伺ったのですね。ここも五社、協同組合が四つ、株式会社一つ、これの合併が進められているのだそうでありますが、現在までこの二年半の間にもう二十六、七回も合併の話し合いが行われているというのですね。なおかつまだ合併のめどがつかないというような状況にある、この滋賀県も例の琵琶湖を挟んでぐるっと協同組合が分散しているようですが、それがそれぞれの地域では立派な役割を果たしている。しかもここの場合には、その協同組合の中では、もう中小の卸でありながら小売に対して白米を販売しているのですね。これは非常に立派な内容を持って、中小なりに一生懸命努力しているところなんですが、これも五社合併の話が進んでいる。そうすると、本社は彦根にする。実際の事務処理は大津の県連合会で事務をとる。なぜかというと、本来なら事務をとる大津を本社とすべきなんだけれども、大津に土地は買えない、資金がない、そして湖東には四社あるということで、結局彦根に本社を置くのだけれども、これは人がいない、名目のもの、実質は大津の連合会の方で事務をとるということで、どうも滋賀の合併の場合も実態を見るとかなり無理があるように思うのです。  こういうふうに見てまいりますと、全国的に中小卸を四千トン未満であるという理由で、来年の六月までに四千トンに満たないものは、合併できないものは卸を許可しないということでは、これは余りにも地域の実態を無視し、消費者や小売の実態を無視した、余りにも卸というものを独占的に集中させていくという方向になりはしないだろうか。中小でも小回りがきいて、しかも小売店や消費者サービスというものが徹底して行われている、しかも業務内容もしっかりしているということであれば、食糧庁がそうした実態調査をこれから十分やっていただいて、そういう中でこれは独立してやっていけるじゃないか、四千トンには満たないけれども、しかし今後の指導の中で米の消費拡大に大いに役立ってもらえるじゃないかという将来展望を十分見きわめた上で、そういうものを来年の六月という期限にこだわらず政令改正の中でもう一つ考えてやるという配慮が必要なんではないか、こう思うのですが、いかがでございましょうか。
  163. 石川弘

    ○石川政府委員 私ども、あの政令の規定に基づきまして今行政を指導し、またそれと同時に、業界団体もその線で前進をさせているわけでございます。物には若干の例外が出ることがあるかもしれませんけれども、私どもとすれば、今御指摘の滋賀の例も、たしか二月に合併をし、四月から業務承継をするという方針が出ているようでございますが、期日がだんだん近くなってまいりますので、一つ一つは県を通じまして事情をよく聞きまして精査をしたいと思っております。  政令の規定につきましては、私ども、あの規定自身は、いわばそういう目標として必要なものではないかと思っております。
  164. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私はこの問題を最初伺ったときに、これは単に一地方の問題ではないかと思っておったのですが、調べてまいりますと全国十九県にまたがるわけです。北海道から岩手、宮城、秋田、福島、群馬、埼玉、千葉、山梨、長野、静岡、滋賀、和歌山、鳥取、香川、高知、佐賀、熊本、鹿児島と十九県に上る。しかも、五十社のうち今まで二年半かかってできましたのは二〇%の合併であって、この二年半の中で二〇%しか合併できなかったということは、私は合併がいかに困難かということのしるしてはないかと思うのです。  長官はこれは政令で決めた方向だということでありますけれども、全国限られた卸の中で五十社というのはかなりなウエートを占めるわけだし、そのうちの八割がまだ未合併だ。それを、合併ができなくて数量がやや足りないということで卸を許可しないということになると、大変な混乱が起こるのではないかということが懸念されるわけです。こういう点で、この半年の間にじっくり各全国の卸の、聞くといっても三十七社でございますから、私はそれぞれの事情を伺う機会は十分あると思うのです。そういう事情をやはり親切に聞いて、それぞれが本当に卸売業者としての機能を果たせるというのであれば、その点を食糧庁としてもう少しお考えになってもらう必要があるのじゃないかと思うのですが、いかがでございましょうか。
  165. 石川弘

    ○石川政府委員 合併の進み方でございますが、六月という一つの期限がございましたので、みんないろんな計画を立てまして、したがって進捗率二〇%でございますが、私どものところに報告が来ましたものから見ますと、かなりのものが計画中でございます。  それから、先ほど四社と申し上げましたけれども、岩手は既にクリアしておりますので、結びつきの足らない卸は三社でございます。先ほど申しました千葉と埼玉と静岡の三社でございます。  それから、もう一度御指摘の各社の実情をということでございますが、私ども、当然これから問題が詰まってまいりますので、各社の実情は十分調査をするつもりでございます。
  166. 小川国彦

    ○小川(国)委員 食糧庁が進めようとしているのはペーパー合併なのか実質合併なのか、私は今のままで進めていくとどうもペーパー合併、言葉を悪く言えば偽装合併をやらせることになりはしないかと思うのですね。  秋田の場合も私はこれから調査をしていただこうと思っておりますが、秋田の場合は実質合併はできたのですか。
  167. 石川弘

    ○石川政府委員 計画の中に指精工場の問題とかいろいろ入っているようでございますが、先生のおっしゃるペーパーと申しますか、形式上はちゃんと一社になるわけでございます。これはこの種の統合の場合に常に、これは卸だけじゃございませんで、中央市場の卸売の入場資格等の問題にもあるわけでございます。最初緩やかなものからだんだん実質のものへ進めていくというようなやり方もございます。今おっしゃったようないろんな経理の問題とか、極端に言いますとだれが理事者になるとか、そういうことまで含めましてかなり前向きに展開しなければいかぬものですから、最初が緩やかでだんだん実質的に一本化するというようなこともあるわけでございます。従業員の給与水準一つとりましても、違うからどうするかとか、そういうことも私どもよく聞いておりますので、私どもがねらっておりますのは、時間をかけまして真の一つの企業体になっていくということを考えておるわけでございます。
  168. 小川国彦

    ○小川(国)委員 今まで合併できたのは何社でございますか。
  169. 石川弘

    ○石川政府委員 二十六社でございます。
  170. 小川国彦

    ○小川(国)委員 二十六社が何社に統合されたわけでございますか。
  171. 石川弘

    ○石川政府委員 ちょっとお待ちになっていただきたいと思います。
  172. 小川国彦

    ○小川(国)委員 それから次に、残っている三十七社を何社に統合されようということでございますか。
  173. 石川弘

    ○石川政府委員 私どもが何社に統合するという計画を立てているわけじゃございません。  今言いました二十六社というのは、合併をして業務運営も行い始めたものが二十六でございますが、合併をしましたけれども業務開始がこれからというものが五社。それから、合併統合等の期日まで含め、いつやるかということも含めまして合意されたものが十七社。それから、合併等の大方の趣旨と申しますか、大体いいだろうという程度の合意を得ましたものが五社。それから、資格要件だけで単独でクリアできる、要するに量がふえてきているから大丈夫というのが二社。それから、資格要件のクリアについて検討しているものが九社。これは粗っぽい集め方でございますが、こういうことがございます。  一つ一つどうするかということは、これは私どもが計画をするといいますよりも、地元で計画を立てて、行政サイド、業界サイドで指導をつけて、それで私どもの方へ相談に来るというのが大方の姿でございます。
  174. 小川国彦

    ○小川(国)委員 今おっしゃった中で、実質合併がなされたというのは何社でございますか。
  175. 石川弘

    ○石川政府委員 先生の御指摘の実質という言葉でございますが、株式会社で一本の会社になったというようなことでございますれば、先ほど申しました二十六はそういう形になっているわけでございます。
  176. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私が申し上げているのは、先ほど御答弁あった五十社の指導してまいりました中で、十三、四社が合併されたというのですが、十三、四社が四、五社になった、この合併の中で実質合併は何社ですか。
  177. 石川弘

    ○石川政府委員 私今言いました六十四というのは五十七年の姿で申し上げましたので、五十と先生がおっしゃいましたそれは五十八年末の数字かと思います。
  178. 小川国彦

    ○小川(国)委員 もう一遍もとに戻って数字をはっきりさせていただきたいのですが、私が三十七社残っているというふうに申し上げましたね。そうすると、私もっと絞って言いますが、実質合併というのは、今までの株式会社なり協同組合なり組織を解散して五つなら五つが合併するときに一つの組織体にした、完全に資本金も役員も全部一つで、従来のものはその下に下請のような形では残っていない、完全な合併がなされたのはこの二年半に幾つかということを伺っているのです。
  179. 石川弘

    ○石川政府委員 二十六の会社が五つの会社になっております。
  180. 小川国彦

    ○小川(国)委員 そうすると、もう一遍伺いますが、残っているのはあと三十七社ということになるのでございますか。
  181. 石川弘

    ○石川政府委員 三十七社でございます。
  182. 小川国彦

    ○小川(国)委員 その二十六社が五社になったというのは、これは間違いなく会社として一つになって、役員も資本金も、それから固定資産も全部一つにして従来の組織は解散した、こういう形でこの五社ができ上がったわけでございますか。
  183. 石川弘

    ○石川政府委員 いずれも新しい会社をつくりまして、業務承継をいたしております。
  184. 小川国彦

    ○小川(国)委員 新しい会社をつくったのはわかったのですが、従来の組織は解散したのですか。
  185. 石川弘

    ○石川政府委員 確定したことは申し上げられませんが、この中にも残存会社があるものがあるようであります。
  186. 小川国彦

    ○小川(国)委員 その数字は明確に答えられないのですか。
  187. 石川弘

    ○石川政府委員 調べましてお答えいたします。
  188. 小川国彦

    ○小川(国)委員 こういうことでは審議できないですよ。少なくとも私は、きょう卸の合併統合問題について質問するということを言っているわけですよ。しかし、実質的に、本当に合併が行われたのが何社ということが明確にならないではこういう審議はできないと思うのですよ。少なくとも合併を指導してあと半年、来年六月までにやろうというのなら、今までに実質合併が行われたのは何社かということは長官の答弁から明確に出てこなければならぬと思うのですよ。いかがですか。
  189. 石川弘

    ○石川政府委員 私、全社のことは今資料を持っておりませんので、全体の数字につきまして御説明しましたけれども、個別の会社のどこが残っているかということでございまするとすれば、後ほど調べましてお答えをいたします。
  190. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私の質問しているのは逆で、今まで行われた合併の中で実質的に従来の組織を全部解散して合併したのは何社かということを聞いているわけです。
  191. 石川弘

    ○石川政府委員 それならば五社でございます。ただ、その五社で、合併したものの中で、残存会社のような、例えば何かほかの業務なんかをやっていてほかの業務のことを残してきているとか、そういうのがあろうかと思いますが、五社につきましては、先ほどから申し上げておりますように、新会社を設立しまして卸の業務の機能を引き継いでおります。
  192. 小川国彦

    ○小川(国)委員 もう一度長官に伺いますが、二十六社を五社にしたということですね。五社ができたことはわかっているのです。そうすると、その二十六社というのは全部解散して五社に統合されたのですねということを聞いているのですよ。
  193. 石川弘

    ○石川政府委員 私が今聞いておりますのは、卸というものは米の卸以外のこともやっている場合もあるわけでございますから、幾つかの会社にして残存会社があるということでございますので、それを、どういうのが残存しているのかということは調べてお答えをいたします。
  194. 小川国彦

    ○小川(国)委員 そうすると、少なくも米の部分についてはこの二十六社は全部その五社に統合して、全部解散している、こういうことですか。
  195. 石川弘

    ○石川政府委員 卸売業務に関しましてはすべて承継をしております。
  196. 小川国彦

    ○小川(国)委員 そうすると、この残った三十七社についても来年の六月までにこういうように——私の言っている意味は実質合併ですよ。合併の中身は、従来の組織を全部解散する、一本の新しい統一会社にする、従来のものが独立して下請としては残らない。こういう形で三十七社をおやりになるということですか。
  197. 石川弘

    ○石川政府委員 先ほども申しましたように、食糧庁が何か計画を立ててそこへ引っ張っているということじゃございませんで、関係業者が都道府県と一緒になりましてそういう計画を立ててやっているわけでございます。ですから、合併の形もありますし、残存型のもございます。こういうものにつきましては、先ほどから申し上げているように、個別の事情がだんだん明確になってまいりますから、私どもは、そういうことをよく聞きまして指導をしたいと思っております。
  198. 小川国彦

    ○小川(国)委員 いや、食糧庁長官、それは逃げの答弁で、食糧庁が現実には食糧庁長官という名前で国の食糧行政を統括しているわけですよ。卸業者をどういうふうにふやしていくか、縮めていくか、これはやはり食糧庁長官の行政の範囲であり、農水大臣の行政の範囲だと思うのですよ。それは、許可はあるいは都道府県知事に委託されるかもしれません。しかし、本来的には食糧庁長官指導の業務ですよ。今長官が言うように下から盛り上がってきた合併なら、私は何も今そういうことを論議しないわけです。下では、中小でも残してくれ、小売店をしっかり統括して消費者サービスに努めていきますという卸を、ぐんぐん独占的に集中させていくだけが国民へのサービスではないのではないだろうか、そういうところでやはり考え直すべきじゃないかということを私は申し上げているわけなんです。  大臣、お聞きになっていていただいて、長官の方の調査もこれからということでありますが、この問題については、国民の生活に直結した米の行政にかかわることでありますので、大臣自身もどうかひとつ検討願って、民主的な行政として、三十七社が首を切られるように生活権を奪われるということじゃなくて、やはり実態を十分かみしめて対策を考える、こういうことについての御見解を伺いたいと思います。
  199. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 小川先生お答えいたします。  先ほどから小川先生食糧庁長官のやりとりをずっと聞いておりまして、卸売業者の経営の効率化を図り、そしてその目的を達するためにということで、一応一定の基準をつくったようですが、そこらに何かいろいろな問題があるような気がいたしますが、今食糧庁は個別指導をやっているそうでございますから、十分よく聞きまして対応をしたい、こう思っております。
  200. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私も質疑の時間が参りましたので、食糧庁長官に最後に、これはどうも東京でも大阪でも、大消費地では小売店が大きくなって卸になりたいという希望者も出ている。だから、例えば大阪の第一食糧のような二十四億円も内部留保を持っているような大手がますます関西でも大きくなろうとしている。そういう大手の卸だけが大きくなって、食品卸業の中でランキング何位なんというふうに、通常なら米の取り扱いの中でそんな食品の二百社の中に五十何社も卸業が入るというのはおかしいのですが、大手でもそういう問題を抱えている。  だから、中小がそういう問題があるという言い方ではなくて、大手、中小を問わず、内容を十分検討して今後の——来年六月、一片の政令改正でこの業の人たちの首を切ることも救うことも食糧庁は持っているわけですよ、食糧管理法施行令の附則のわずか一条、この前のときにはその一条によってこの五十社の人たちは救われてきた。それをもう三年延長するならば救うことができるけれども、それをそのまま置くことによって切り捨てることも可能だ。政府の一片の政令改正いかんに業者の首がかかっているという問題ですから、内容検討についてはこれから半年間かけてひとつ十分お取り組みをいただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  201. 石川弘

    ○石川政府委員 私どもは、そういう政令で定めました要件で今やっているわけでございます。こういうことでやってまいりまして、その経過というものでどういうものが出てまいるか、それがどのような影響を与えるかということも見きわめまして、最終的に処置をしたいと考えております。
  202. 小川国彦

    ○小川(国)委員 終わります。
  203. 今井勇

    今井委員長 次に、吉浦忠治君。
  204. 吉浦忠治

    吉浦委員 このたび、佐藤農林水産大臣、御就任大変おめでとうございました。国民期待が大変大きいときでございますので、さすがはと言われるような立派な御答弁であっていただきたいし、また、私どもも御期待に沿えるような形で一生懸命頑張ってまいりますので、よろしくお願いを申し上げる次第でございます。  水産庁長官が大変お忙しい中の日程のようでございますので、なるべく簡潔にお尋ねをいたしたいと思いますが、捕鯨問題に絞りまして、少々の時間、質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、アメリカの姿勢に対する基本的な考え方を伺いたいわけでございますが、このたびの捕鯨業の問題で、IWCの規制強化によりましてその規模の縮小を余儀なくされておるわけでありますが、しかしながら、依然として日本の伝統文化でありますし、また、住民の生活の中に根づいたものでありますが、この反捕鯨国の問題で、特にアメリカがその旗頭みたいな形になっているわけであります。この委員会の声がぜひアメリカの世論を変えていただきたいという願いを込めて私は質問をいたしておるわけでございますが、アメリカ国内法でありますパックウッド・マグナソン修正法なりあるいはペリー修正法によって、我が国が捕鯨を続け、また鯨肉等を輸入した場合にも我が国に対する北洋の漁獲割当量を削減する、また水産物のアメリカへの輸入も禁止するという態度をとっているわけでありますが、何が何でも捕鯨をやめさせようとしている、こういうふうに私は受け取るわけであります。  このようなアメリカの意図は、我々日本人にははかりかねるものがあるわけでありまして、その結果、いわゆる捕鯨関係者五万人の職業と生活の安定を奪うばかりか、日本人が伝統的に培ってきたところの産業までも否定してしまう。また、長年親しんだ鯨の肉を食べるという習慣を野蛮的な行為かのように独善的な非難をしているわけであります。これを力によってやめさせようとしている、このような独善的な力による外交、こう言っていいと思うのですけれども、漁業関係者ばかりではなくて、日本国民全体の気持ちを逆なでしておりますし、また、日米の友好関係にも決してよい影響ではない、私はこう思うわけであります。  そこで、アメリカ国内にも私どもと同じような冷静な判断力を持っている方も多いわけであろうと思うわけでありまして、また、FAOも捕鯨禁止に対し非難声明を出しているわけでありますから、このような人々の声がアメリカの世論をリードするような環境づくりが我が国にもできないものかどうか、また、アメリカのこのような姿勢に対してどのように考えておられるのか、まず最初に農水大臣の基本的な考え方お尋ねいたしたいと思います。
  205. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 吉浦先生お答えいたします。  最初に、私に対して温かい御激励、ありがとうございます。至って未熟でございますが、全力を尽くしてこの何かと厳しい農林水産業に取り組みますので、何分御協力をよろしくお願いいたします。  先ほどの鯨の問題については、全く先生と同じ見解を有しているわけでございます。私がちょうど十一月一日に就任したときに、一番最初に聞いたのがこの鯨の問題でございました。ちょうど佐野水産庁長官は渡米しておりまして交渉に入ったときということでございまして、実は捕鯨の経済的、社会的、文化的重要性にアメリカは理解を示しておりません。またそういうことの中に、国際捕鯨取締条約に認められております締約国の当然の権利である異議申し立ての権利を行使すれば制裁を加えるというような国内法を持っているわけで、実はまことに遺憾に思っているわけでございます。  そんなことで、政府としては今後とも我が国における捕鯨の重要性について米側の理解が得られるよう、あらゆる機会を通じまして説得に努力をしてまいりたい考えでございます。
  206. 吉浦忠治

    吉浦委員 続きまして、八四年、八五年のマッコウの捕鯨並びに八六年、八七年以降の商業捕鯨の継続についてお尋ねをいたしたいのですが、十一月の日米捕鯨協議では、本年と来年の二カ年間、マッコウクジラを昨年どおり四百頭ずつとることができる、こういうふうにしているわけであります。この点については交渉団の努力というものは私は高く評価するのでありますけれども、協議の結果に基づいて十二月十一日にマッコウに関する異議申し立ての撤回を閣議決定したことについて、反捕鯨国側のモデルで二十万頭もいる、こう言われているマッコウについて、科学的根拠のないアメリカだけの力の外交によってねじ伏せられたのではないかという感じを私は持っているわけであります。それで、この点について政府としてどのようにお考えなのか、この点が第一点。  また、本年度のマッコウ捕鯨枠の実質ゼロというIWC決定に関して異議申し立ての撤回をしたにもかかわらず、アメリカとの話し合いだけでマッコウの捕鯨を継続するということは、アメリカ以外のIWC加盟国の意向を無視したことになりはしないか、こう思うわけであります。そういう批判を浴びることはないのかどうか、この点が第二点。  次に、この十一月の日米協議の際に、これは長官も出席だろうと思うのですが、アメリカ側から、一九八五年四月一日までに日本が商業捕鯨の禁止に関する異議申し立ての撤回をした場合には、一九八六年、八七年のマッコウの捕鯨枠を毎年二百頭ずつ認める、または一九八六年、八七年漁期以降二漁期の南氷洋のミンクと北太平洋のミンクとニタリの捕獲枠について日米間で協議するというふうに表明した、こういうふうに言われておりますけれども、これに対して捕鯨関係者の中には、アメリカの示す条件に従っても捕鯨業は壊滅的な状態にあるわけでありまして、異議申し立ての撤回はせず、科学的根拠に従って捕鯨は継続すべきである、このように、アメリカの対日漁獲割り当ては別の問題として確保するように粘り強く交渉すべきであるという強い意見もあるわけであります。この点についての政府のお考え、対処方針、特に商業捕鯨禁止に関する異議申し立ての撤回をするのかしないのか、この点をお伺いいたしたい。
  207. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  まず第一点。今回のマッコウ捕鯨をめぐる日米協議でございますが、これは私どもは国際捕鯨取締条約の精神から申しますれば、日本は当然締約国として異議申し立ての権利を有しておるわけでございまして、日本側としては、マッコウの捕獲枠をゼロとする決定は何ら科学的根拠を有しないと考えておりますから、これを撤回する理屈は全くないわけでございますが、先生先ほど御指摘のようなパックウッド・マグナソン修正法というアメリカ国内法が存在をしておるという冷厳な現実の中で、日米間の激突を回避するためのやむを得ざる措置としてそのような決定を行ったわけでございます。  それから第二点。国際捕鯨委員会の他の加盟国との関係でございますが、今般行われましたマッコウ捕鯨に関する異議申し立ての撤回は、撤回通告はいたしましたが、撤回の効力が発生するのは四期後にしてございますので、本年の四百頭、来年の四百頭、さらにその次二シーズンの分は、これは依然として異議申し立ての効力が存続しておりますから、そういう意味で、国際捕鯨取締条約上、合法的に操業可能でございますので、そういう意味では他の国際捕鯨委員会加盟国から非難を受けるということがないように考えてやっておるつもりでございます。  第三点の商業捕鯨モラトリアム撤回の問題でございますが、これは先般の協議の際、先ほど先生指摘のような商業捕鯨モラトリアムの撤回と絡めて、商業捕鯨モラトリアム発効後二シーズンの期間についてある水準の捕鯨を認めるというアメリカ提案があったことは事実でございますが、私どもは十一月の協議の際は、マッコウクジラ以外の鯨種については日本代表団は何ら交渉権限を有しないという態度で臨んでおりまして、この問題については米側と全く討議をいたしておりません。したがいまして、商業捕鯨モラトリアムの撤回問題については、今後、日本政府として独自に諸般の事情を考えながら意思決定を行うべき性質のものでございます。  そうするに当たりましては、先ほど大臣からもお答え申し上げましたように、捕鯨問題と二百海里内の漁獲割り当ての問題を絡めて締約国政府の当然の権利行使に対して制裁を科するというようなアメリカ国内法が全くとんでもない法律であるということは、私どもも全く先生と同じ意見であります。したがいまして、先生先ほど御指摘のような我が国の固有の産業としての捕鯨業の前途、何らかの形での捕鯨の存続を図るという考え方に立って、かつ北洋水域における我が国漁船団の操業ということも念頭に置いて、慎重に検討してまいりたいと思っております。
  208. 吉浦忠治

    吉浦委員 五十七年の第三十四回のIWC会議では、商業捕鯨の禁止を決定するとともに、その決定について一九九〇年、いわゆる六十五年までに包括的見直しをすることが決定されたのでありますが、このモラトリアムの早期見直しのために諸外国に対して強力に働きかける必要があるというふうに考えるわけでありますけれども、捕鯨を一たん休むというと、いわゆる機材の面なり人の関係の面なりで再開は不可能というふうに今日まで言われているわけでありますから、いわゆる捕鯨問題検討会答申のような形ででも捕鯨を継続する努力が必要であるというふうに考えますけれども、この点どんなふうにお考えか、お尋ねをいたしたい。
  209. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  まず、先生指摘の包括的見直し、これをできるだけ早い時期にやるように関係国に働きかけるべしという先生の御指摘につきましては、私も全く同感でございまして、先般、日米協議に当たりましてもアメリカ代表団に対してその旨は強く要請をしたところでございます。アメリカ代表団は確定的には反応いたしませんでしたが、日本側の主張に対しては好意的に耳を傾けてもらったと思っております。それ以外の加盟国に対しても同様のアプローチをいたしたいというふうに考えております。  それと、先生指摘の捕鯨問題検討会の報告の中にございます調査捕鯨、生存捕鯨、これらの概念は我が国の捕鯨をこういう厳しい状況のもとで生き残らせるために適宜、有効に活用していくべきアイデアであるというふうに思っております。
  210. 吉浦忠治

    吉浦委員 本年の南氷洋ミンク操業についてのお尋ねをいたしますが、本漁期の南氷洋ミンクの捕獲枠が昨年比三七%減ということで四千二百二十四頭でありますが、ブラジルの捕獲枠を除いた捕獲枠を日ソ間で会議を開いて分配することになっているわけであります。しかし、ソ連はこの決定に対して既に異議申し立てをしておりますから本年の枠に拘束されない立場にあるわけでありまして、三千頭の捕獲を行うことを表明しているということを聞いているわけであります。そういたしますと、日本側は果たして何頭捕獲した場合にIWCの決定に違反するのか、これは種々解釈の分かれるところだというふうに思うわけであります。いずれにせよ、この決定に異議申し立てをしないと本漁期はかなり早い時期に操業を切り上げなければならない事態になろう、こう思うわけであります。そこで政府は本年十月の閣議において異議申し立ての基本的方針を決定し、十二月十四日にその発動を閣議決定したのでありますから、この異議申し立ての撤回を行った後に、アメリカとの話し合いの後、我が国の南氷洋ミンクの枠を決めることになるわけであります。業界では、昨年の比率で分配した場合でも、千九百四十一頭でも採算が合わないというふうに言っているわけでありまして、今年の南氷洋ミンクの枠について具体的にどの程度の捕獲枠を確保しなければならないというふうに考えておられるのかどうか、今後の日米間の話し合いのスケジュールもあわせてお答えいただきたい。  もう一点は、捕獲枠いかんによっては減船なり乗組員の解雇等が予測されるわけでありますが、万一の場合に従来の捕鯨減船の例に倣って万全の措置をとる必要があるというふうに考えますけれども、この点についてどのようにお考えか、お答えいただきたい。
  211. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  まさに先生指摘のような事情のもとで、我が国も南氷洋のミンククジラの捕獲頭数について異議申し立てを行ったところでございます。  そこで、具体的な頭数として何頭とるかということでございますが、私どもも当然ミンクの捕鯨が秩序ある、節度をわきまえた操業でなければならないというふうに考えておりますので、異議申し立てをしたからといって青天井でとるということではなくて、しかるべき頭数を決めなければいけないわけであります。その際、私どもといたしましては本年の科学小委員会における討議の経緯あるいは関係国との協議あるいは前年の捕獲頭数、こういうことを念頭に置いた上で適切な水準に決めたいというふうに考えております。  その際、マッコウクジラの場合と同様にミンククジラの場合につきましてもアメリカのパックウッド・マグナソン修正法の存在ということは無視し得ないわけでありまして、当然米側ともしかるべき協議を持つ必要があるわけでございますが、この点につきましては、現在一九八五年二百海里内対日割り当て問題で米側と協議するために代表団が訪米中でございますので、そこで米側としかるべく接触をして南氷洋ミンククジラの協議の機会をセットさせるようにしたいと思っておるところでございます。ただ、米側は、南氷洋のミンクにつきましては、従来これはもう問答無用であるという言い方をしておりましたので、前途はなかなか予断を許さないと思っております。
  212. 吉浦忠治

    吉浦委員 次は、沿岸捕鯨の操業等についてお尋ねをいたしたいのですが、我が国の沿岸では大型捕鯨、小型捕鯨が行われておりまして、千葉県でも和田浦港等にその基地があるわけでありますけれども、地域住民の生活に密着したものでありますし、これらの沿岸捕鯨は我が国二百海里内での操業でありますので、諸外国からとやかく言われる筋合いのものではないというふうに私どもは考えるわけであります。政府としてどのようなお考えを持っておられるのか、継続実施方針をお伺いしたいわけであります。  また、大型捕鯨の場合に、ニタリクジラとマッコウクジラをとっているわけでありますが、ニタリクジラへの依存の度合いが高くて、マッコウクジラを昨年のとおり四百頭確保したとしても、ニタリクジラが約三割削減されておるわけであります。五十八年が五百三十六頭、五十九年が三百五十七頭。いわゆる大型捕鯨業三社の経営はかなり厳しいものとなっているわけでありますし、また、小型捕鯨の八社についても同様の状況にあるわけであります。特に北太平洋ミンク捕鯨枠五十八年三百六十七頭、五十九年三百二十頭、一三%減であります。北のニタリ、ミンクについても南氷洋のミンクと同様に異議申し立てを行うべきであるというふうに考えるのでありますが、どのようにお考えか。  また、このままの状態では捕鯨関係者、いわゆる乗組員に対する救済策も必要かというふうに考えますけれども、具体的方針をお尋ねをいたしたい。  さらに、南氷洋、北太平洋の捕鯨縮減に伴いまして、その影響が流通業者なりあるいは加工業者なりあるいは小売店などにもかなり広い範囲に及ぶものというふうに考えるわけであります。その影響を十分に見きわめて、国として適切な措置をとらなければならないと思うわけであります。この点についてお答えをいただきたい。
  213. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  まず、我が国の沿岸捕鯨が御指摘のようなローカルな色彩を持った産業で、かつ二百海里水域内で行われておって、外国からとやかく言われる筋合いのものでないということにつきましては、私も全く同感でございます。  ただ問題は、現在の国際捕鯨取締条約は二百海里時代に入ります前につくられた条約でございますので、そういう意味では、国際捕鯨取締条約自体は二百海里内外という問題について特に手当てはしていないわけでございます。そういう中で、アメリカのパックウッド・マグナソン修正法がかぶさっておる。そういう状況下におきまして難しい問題が生じているということでございます。ただ、日本側の主張としては、先生指摘のような性格の捕鯨業であるということは、私どもアメリカに向かっては十分主張していくべきことであると考えております。  その次に、我が国沿岸捕鯨のニタリクジラ、ミンククジラの捕獲枠の削減問題についてでございます。これは確かに先生指摘のような捕獲枠の削減が行われたわけでございますが、これについては、南氷洋のミンクと違いまして、何らの科学的根拠を有し得ないと言うほど、弾劾をするような性質のものでは必ずしもないというところがございますのと、国際捕鯨委員会におきましては我が方も異議なくこれを決定されたという経緯もございますし、かつ本年程度の捕獲枠であれば業界の経営にとっても耐え得る範囲であるというふうに業界の方も見ておりますので、現在のところはやむを得ないことではないかというふうに思っております。  ただ、モラトリアム発効後の問題につきましては、先ほど申し上げましたように今後の問題でございますから、十分慎重に対処をいたしてまいりたいというふうに思っておりますし、その際、先生指摘のように、捕鯨業の縮減という問題が流通、加工あるいは小売業者等非常に広い範囲に重大な影響を及ぼすものであるという点も十分わきまえた上で、米側に対してもそのような側面は十分理解を得るよう主張しながら対処をしてまいりたいというふうに考えております。  最後に、捕鯨業が縮小していく過程で何らかの救済対策が必要になるのではないかという点につきましては、これは、先ほど申し上げましたようにモラトリアム発効後の問題につきまして今後米側といろいろやる前の段階でございますので、そういう事態を極力回避するような決意で対米折衝に当たりたいということをお答えするにとどめさせていただきたいと思います。
  214. 吉浦忠治

    吉浦委員 最後に、大臣と長官、やはりこれは大事な問題でございますので、強い姿勢でひとつ臨んでいただきたいと思います。  捕鯨問題に加え、来年のアメリカの対日漁獲割り当て量は相当厳しいものとなるというふうに私は予想をいたしますが、このようなアメリカの対日漁業外交に対して日本側としても何らかの対抗措置を持たなければならないという声が今広がっているわけです。アメリカからは我が国の水産物の輸入の一七%に当たる千八百億円もの水産物を輸入しているわけでありますし、また、アメリカの水産物の半分以上も日本輸入しているというのが現状であります。日本輸入がなければアメリカの漁業は成り立たない面もありはしないかと思うくらい大きいわけであります。この点を漁業実績の確保とリンクさせる国内法も検討してもいいのではないかというふうに考えるわけであります。  政府としてどのようにお考えか、最後に大臣並びに長官の力強い御答弁をいただいて、終わりたいと思います。
  215. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  私どもも、アメリカと折衝いたしまして、先ほど申し上げましたように、パックウッド・マグナソン修正法でございますとかあるいはペリー修正法というような、とんでもないアメリカ国内法に悩まされ続けておりますので、我が国もこれに対して有効な対抗措置があればなという感じは、私もひしひしと痛感をしながら対米折衝に当たっております。  ただ、ただいま先生の御指摘のような法律を具体的に制定をするということになりますと、仮にでございますが、政府提案としてそういうものを出すことの適否ということになりますと、我が国のガット加盟国としてのガット上の義務、そう。いったこととの関連もございますので、勢い、前段で申し上げました私の願望にもかかわらず、そう前向きにはお答えしにくい事情がございます。現実を見てみますと、アメリカの場合には、大体この種の法律というのは、むしろ行政府の制止を振り切って議員立法として制定をされるというのが通例でございまして、そういう間の事情を御賢察いただければと思う次第でございます。
  216. 吉浦忠治

    吉浦委員 大臣、最後に決意のほどを。
  217. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 吉浦先生お答えします。  今水産庁長官の話したとおりでございまして、非常な矛盾があるわけですが、何とか皆さん方の力をかり、国際捕鯨が残るように最善の努力をしたい、こう思っております。
  218. 吉浦忠治

    吉浦委員 終わります。ありがとうございました。
  219. 今井勇

    今井委員長 次に、菅原喜重郎君。
  220. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 まず、新大臣に御質問いたします。  その前に、自由化圧力の流れの中にあって、今や日本農業は大きな試練に立たされているわけでございます。この難局のさなかに日本農林水産行政の総指揮、監督者として就任された大臣にはまことに御苦労さまでありますが、ひとつ国際自由化に対抗して日本農業が対等に立ち行くことのできるような、その整備改革を進めることができるよう存分の手腕を振るっていただきたいと念願するものでございます。  私は、前大臣にも再三日本農業の改革に対する提案を質問してまいりましたが、新大臣にも確認していただける基本的な農業に対する私の所信を申し上げたいと思います。  私は、今までの長い農業改善に取り組んできた経験から、太陽と水の恵まれた国土の中にある日本農業の将来には明るい希望を持っているものでございます。農業も立派な頭脳集約型の産業で、今後この分野ほど研究開発による技術革新、施設、機械の行使、経営合理化等による影響で著しい進歩を見る産業はないのではないかと考えております。その暁には、農業も先進国型産業として十分に国際自由化にも対抗して自主自営していける能力を持つと思います。しかし、今はこのための国の強力な後押しが必要でございます。  しかし、その国の後押しが現在までのあり方でよいかとなりますと、私は補助金政策価格支持政策では一つの壁に来ていると思っております。国家財政の赤字からもうこれ以上の補助金や価格保証への出費増は望めないわけでありますが、しかし何としてでもここ十年、十五年のうちに、せめてヨーロッパ、EC並みの農業水準に改革していくためには、どうしても農業改革への投資を今の三倍以上にはふやさなければならないのであります。この点私は、本年畜産費において三年据え置き七年償還の融資制度が創設されたことは、戦後農政における革命的変化であると理解しております。  農村も今大きく変貌しております。水田地帯と畑作地帯の土地生産性は逆転しておりますし、基盤整備とよいリーダーに恵まれたところにはすぐれた地域農業集団が形成されているのでございます。二十一世紀を目指した農業政策、それにはまず人材育成であり、これには農業研究開発、頭脳労働、先進型の職業だという内容があって初めて若い人たちが集まります。これには、新しい農業への技術開発と並行して、ぜひ国家が主導的に当たっていただきたいと思うのでございます。  次に、基盤整備の問題であります。  私は、水資源の確保等、農業基盤の整備は国土保全の立場からも国の責任でこれを実行すべきだと主張しているものであります。このことの促進は焦眉の急でありながら、第三次土地改良長期計画の進捗を見ますと、今のままでは全く寒心のほかありません。ひとつこの点についても大臣の特段の認識を深めていただきますが、このほか、農業も経済でございますので、市場原理が有効に作用する流通面の整備、情報の交換は農業近代化の前提でございますから、これらへの政策的配慮も新しい農政方向ではないかと思うのであります。  このほかいろいろありますが、まず以上申し上げ、特に融資制度の問題、農業の体質強化策について大臣の所信をお伺いしたいと思います。
  221. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 菅原先生お答えいたします。  最初に、私にいただきました温い御激励、本当にありがとうございました。至って未熟でございますが、内外ともに厳しい農林水産行政で、全力を尽くして頑張りたいと思っています。何分御教導を心からお願いいたします。  先生御存じのとおり、我が国を取り巻く農業は大変厳しいわけでございまして、農産物価格の伸び悩みとか経営規模の拡大の停滞、行財政改革の推進、諸外国からの市場開放の要求など、極めて厳しいものがございます。それで、私はこれから農林水産行政を進める上におきまして三つの基本的な考え方を持っております。  その一つは、農業は国の基本だということでございます。一億二千万の国民に主食を完全に供給するという食糧の安全保障的立場でございます。それとともに経済性、これも無視できないと思います。それと、現在日本の置かれている立場からいって市場開放性、これも無視できないと思います。これをどのように組み合わせて今後農政を進めるかということが大きな問題だと思っています。そんなことですが、ただ私は、現段階におきまして、やはりそういう立場を考えながら、農業は国の基本であるということを一〇〇%中心にこれからの農政を進めていきたい、そういう形の中に経済性をつくりたい、そういう形の中に市場開放性をつくりたい、こんな考えでおるわけでございます。  そういうことで、まず第一番に中核農家の経営規模の拡大、これが基盤整備に大きな関係があるわけでございまして、基盤整備をしないと経営規模の拡大ができないということでございます。その次に同じく農業基盤の整備ということになる。また、先ほど先生が情報とおっしゃっていましたが、これは当然バイオテクノロジーとかニューメディアを駆使しました新しい農業の情報体制をつくりたい。こういうことを中心にこれからの施策を進めてみたいと考えております。
  222. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 さらに私は、自由化社会にありましては輸出を忘れた産業は発展しないという信念に立っているものでございます。こういう点では、現在の日本のミカンあるいは二十世紀のナシ、それから種苗会社における種子の輸出量も黙過できない現象でございます。ひとつこういう輸出産業、日本農業外国農業に太刀打ちできないのだという劣性化意識を払いのけまして、こういう前向きの政策にも力を入れていっていただきたい。  このことは一応要望いたしまして、次に、ほかの質問に移りたいと思うわけでございます。  林業に携わる労務者が年々減少していることは政府統計でも明らかでございます。水資源確保を中核とした国土保全は森林の持つ公益的機能に依存せざるを得ないと考えているわけでございます。このことについて、総務庁にこれからお伺いしたいと思うわけでございます。  政府は行財政改革の一環として公務員の定数削減に力点を置いているわけでございます。今年度、五十九年度三千九百五十三人という削減目標を一応立てたわけでございます。しかし、この重点は行政官庁がそれとも現業官庁かとなりますと、私たちには数字的には一つの不公平があるのじゃないかというふうに感じられるわけなんでございますが、この点に対する総務庁の所信を伺ってみたいと思います。
  223. 加納正弘

    ○加納説明員 国家公務員の定員につきましては、現在の厳しい定員事情あるいは臨時行政調査会の答申を踏まえまして厳しい定員管理を行っておるところでございまして、現業であるとか非現業であるということを問いませず事務事業を見直しまして、その縮減に努めておるところでございます。
  224. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 行政官庁、現業官庁を問わないで一応その縮減に努めているというわけでございますが、しかし、森林行政の公益的機能の立場からいたしますと、総務庁にもこの機能保全に対する一つの認識、価値判断というものを行政改革の中で取り入れていただきたいと私は思うわけでございます。政府機関の定員について総務庁はその実権を握っているわけでございますので、国有林野事業について、昭和五十三年度以降では平均八欠一補となっているわけでございますが、昭和六十年度についてもこの方針でいくわけでございますか。
  225. 加納正弘

    ○加納説明員 昭和六十年度の定員管理のお尋ねでございますが、現在、林野庁と鋭意折衝中でございます。  ただ、基本的な考え方といたしましては、国有林野事業をめぐる厳しい情勢にかんがみますと、昭和六十二年度末までに約四万人規模とするということを定めました本年一月に閣議決定いたしました行革大綱でございますとか、本年六月に改定されました新しい国有林野事業の改善計画に沿いまして、厳しい要員管理を行う必要があるものと私どもは考えておる次第でございます。
  226. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 五十三年度以降で平均八欠一補となっている、この比率についての質問なんですが、六十年度についてもこういう比率になっていくようでございますか。
  227. 加納正弘

    ○加納説明員 八欠一補という具体的な数字がそのようになるかどうかということにつきましては、現在林野庁と折衝中でございますので差し控えさせていただきたいと思いますけれども、いずれにしても厳しい情勢にあるということにつきましては御理解をいただきたいと思います。
  228. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 私が国有林野の定員問題に触れて質問しておりますのは、山は放置していてはだめだという観点、いわゆる日本の国土は守れないという考えと、将来の豊かな出づくりをするためにはどうしても若い労働力を今のうちに確保しなければならない。さらに、緑の森林の機能でございますが、公益的利益換算いたしますと、環境保全あるいは水質保全あるいは気象の緩和、酸素供給、その他いろいろあるわけでございますが、五十七年度一年間に大体二十五兆円から以上の換金した数字の機能を果たしているというわけでございます。  こういう日本の国家財政の半分にも当たるような国土保全の機能を果たしている分野を、短期間の収支で就業者の減を図っていってもらっては将来大変な事態になる、こういうような危機感、こういう観点から質問しているわけでございますが、現在林業就業者の高齢化も問題でございます。平均五十歳でございます。しかし、新規学卒者の採用は全く厳しく抑制されているわけでございまして、昭和五十九年度第一次合格者が四百十四人に対しまして第二次合格者が三百六十二人、そのうち百九十七人の採用決定、これは五四%でございます。今まで第二次合格者は全員採用になっていたわけでございますので、学校側といたしましてもこれは深刻な事態だという声が出ているわけでございます。さらに、採用合格のサインが二月に出ます。これではよい労働力は確保できないのじゃないかという不安を持っているわけでございます。我が国の森林造成にとって極めて危険な要素を含んでいるわけでございます。  ついては、総務庁の経営に関する方針、その根拠となる緑資源の造成、確保、この人員削減との整合性ということについて、いかなるものなのか、総務庁の方からお伺いいたします。
  229. 加納正弘

    ○加納説明員 臨調答申を受けました新しい行革大綱でございますとかあるいは国有林野事業の新しい改善計画におきましても、経営の健全化を図り国有林野事業の使命を果たすためには、要員規模の適正化ということが不可欠であるということが言われておるところでございまして、このために厳しい定員管理をお願いいたしておるわけでございます。森林資源の確保に国有林野が大きな役割を果たしておることは私どもも認識しておるつもりでございますけれども、一方、事業運営の改善という重要な問題もあろうかと思います。そういった意味で、国有林野事業の運営の効率化を図る中で、先生おっしゃいました森林資源の確保という役割をよりよく発揮していくことが肝要ではないかと我々は考えている次第でございます。
  230. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 要員規模の適正化というこの適正規模の算出も、これは単年度で見た場合と長期的な展望で見た場合とでは全然基準が違ってくると思うわけでございます。こういう点では、林業は長い目で見ていただきませんと大変な事態に直面してくる。私は農村出でございますので、身をもって自然のしっぺ返しといいますか、自然の報復というのが恐しいことを知っておりますので、この点ひとつ、要員規模の適正化の中にもそういう要素を入れてもらいたい、こう思うわけでございます。  次に、大蔵省の方にお伺いいたしたいと思います。  現在、我が国の木材需要の停滞、木材価格の低迷によって国有林野事業は連年赤字を余儀なくされており、既に財投資金からの長期借入金も一兆円と見込まれております。民有林はさらに深刻な事態で、むしろ国有林よりも大変な状況にあります。木材価格の動向に左右される国有林野事業が、現況においてどんなに林野の労使が努力しても黒字に転換できる可能性はないと判断されるわけであります。しかし、森林資源を守るその使命は国家的な使命じゃないか、こう思っておるわけでございますが、一応このことに対する大蔵省の見解をお伺いしたいと思います。
  231. 中島義雄

    ○中島説明員 国有林野事業特別会計の赤字の原因といたしましては、先生も御指摘のように、収入面では、伐採量が近年資源上の制約等により縮減せざるを得ない状況にあるということ、並びに木材価格が近年の住宅需要の不振等のため下落、低迷しているということが非常に大きいかと思います。あわせて支出面では、人件費を初めとする諸経費が大きくなってきているということ、それから投資資金等について借入金への依存度が高まってきているということから、これに伴う利払いが増大しているということが挙げられるかと存じます。  このため国有林野事業が今後とも課せられた使命を果たしていくためには、その経営の健全性を確立することが緊要であろうと思うわけでございますが、このような観点から、臨調の答申を踏まえまして、本年、国有林野事業改善特別措置法の改正及び新しい改善計画の策定が行われたところでございます。  この改善計画におきましては、七十二年度までに収支の均衡を回復するということを目標といたしておるところでございまして、農林水産省では、今後これに基づきまして事業経営の能率化、経営管理の適正化、それに需要の開発を含む収入の確保等、各般にわたる経営改善の着実な推進に努めていくということにしておるところでございます。大蔵省といたしましても、このような努力を通じまして国有林野事業の経営の健全性の確立が図られていくべきものと考えておるところでございます。
  232. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 林野庁にも七十二年度を目標の収支均衡を図る計画で行政改革、人員削減を進めていく、こういう意味でございますか。
  233. 中島義雄

    ○中島説明員 本年改正されました国有林野事業改善特別措置法を踏まえまして、新しい「国有林野事業の改善に関する計画」というものが策定されたわけでございます。  その計画では、「昭和七十二年度までに国有林野事業の収支の均衡を回復する等その経営の健全性を確立することを目標とし、昭和六十八年度までにこれに必要な基本的条件の整備を図ることを旨として、」云々ということになっておるという意味でございます。
  234. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 私は、国有林野事業の赤字は国鉄、郵政などの法定料金制のもとでの財政と全く異なる要素を持っておると思っております。国全体として百二十兆円を超える借金を抱えている中で行財政改革を進めているわけではございますが、今や地球的規模で緑資源が減少していること、年間一千万ヘクタール以上の砂漠化が進み、二〇〇〇年には全陸地の三五%が砂漠になるのじゃないかという地球的な危機も叫ばれているわけでございますが、このような緑資源の減少は我が国にもまた無関係ではないわけでございます。さらに、木材は輸入できましても縁を輸入することはできないわけでございまして、森林の造成は国民生活にとって不可欠の要件でございます。  大蔵省としても、かかる事態に対して、単に赤字財政だという理由で他官庁と同様の締めつけを林野庁にするのではなく、特殊財源捻出の方策はないのか、このことの努力をひとつ要望するものでございますが、この点について大蔵省の考えをお伺いいたします。
  235. 中島義雄

    ○中島説明員 大蔵省といたしましても、国有林野事業の重要性につきましては十分認識しておるところでございます。しかし、国有林野事業は、本来独立採算の原則に基づきまして一般会計から独立して企業的に経営されるべきものでございまして、従来からも公益的機能も含めて管理運営されておるところでございます。  しかしながら、先ほど申し上げましたように、国有林野事業の財務の現状が、資源が若齢であること、材価が低迷していること、あるいは事業運営の能率化が必ずしも十分進んでいない現状から見まして、収支状況が厳しい状態になっておることは十分に承知いたしております。このため、国有林野事業に対しまして自主的改善努力の一層の徹底をお願いするとともに、あわせまして一般会計としましても、事業の円滑な運営に資するという観点から、造林、林道開設等に要する経費の一部、それから治山事業に要する経費の全部について財源の繰り入れを行ってきたところでございます。さらに五十九年度においては、新たに退職金に係る借入金の利子の一部について財源繰り入れを行うことといたしました。  このように、国有林野事業みずからの自主的改善努力を徹底してもらうとともに、一般会計といたしましても、国の予算全体が大変厳しい異例の状態の中ではございますけれども、国有林野事業の経営改善に必要な措置について精いっぱい配慮を行ってきているということについては、ぜひ御理解を賜りたいと思います。  なお、国有林野事業についての特定の財源ということでございますが、現在具体的な検討を行っているわけでは全くございませんけれども、いずれにいたしましても、国有林野事業に限らず異例に厳しい財政事情にある現状では、各種収入対策を含めまして、その財源問題について幅広い検討を行う姿勢が必要なことは当然であると考えております。
  236. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 農林大臣にお伺いしますが、大臣は就任以来、林野行政は長期間でこれを眺めるなら決して赤字ではないという信念をお持ちだと聞いているわけでございますが、この点に関してひとつ大臣の所信をお伺いしたいと思います。
  237. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  実は私は農林水産大臣になりましてから国有林野事業に取り組んだわけですが、基本的に特色が二つあると思います。  その一つは、杉は五十年、ヒノキは六十年ということで非常に長期にわたるということ。それからもう一つは、水資源の涵養とか国土の資源保護、そして人間にとって一番大切な酸素を供給しているのが緑だと思います。  そんなことで見てみますと、単年度会計でやっているということで、これはいかがかなというような話を実はしたわけです。また、現在の木材の販路拡大にいたしましても、もっと国として考えるべきではないか。例えば田舎等に行った場合に、率直に言いますと鉄筋じゃなくていいのですね、木材であっていいのですが、学校や講堂を皆鉄筋コンクリートで建てておる。そういうことを含めて政府はもっと配慮する必要はないであろうか、こういう話をして、もっと長い目で見てやったらどうかということを言ったのが私の発言の趣旨でございます。  今大蔵省から言ったようなことで、多額の損失を持っています。この損失をどう見るかということで、私はある意味で必要経費とか投資的経費ということではどうだろうかという話をしたわけです。ただ、現実にそういう形で多額の損失を持っており、そういったものの合理化は当然やる必要があるということで、もっと長い目で見てもらいたいと申したわけでございます。
  238. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 大臣の所信、私ども全く同感でございます。大蔵省、総務庁も農林大臣のような価値観から林野庁への行政の手厚い配慮をひとつよろしくお願い申し上げまして、質問を終わります。
  239. 今井勇

    今井委員長 次に、神田厚君。
  240. 神田厚

    ○神田委員 佐藤大臣には、大変厳しい農政の環境の中での御就任、まことに御苦労さまでございます。  きょうは大臣に対する初めての質問でございますので、農政課題になっております問題につきまして、大変短い時間でありますから簡単に御質問を申し上げさせていただきます。  まず最初に、今後の農政に取り組む大臣の基本的な考え方をお聞きしたいと思います。
  241. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 神田先生お答えします。  最初に、私に大変温かい御激励をいただきまして、本当にありがとうございました。至って未熟ではございますが、内外ともに厳しい農林水産行政に全力を挙げて取り組むつもりでございます。何分の御教導を心からお願いいたします。  私、就任してまだ一月半ぐらいでございますが、先生御高承のとおり、農林水産業をめぐる諸情勢を見ますと、大変厳しいものがございます。内におきましては、米など一部農産物の需給不均衡あるいは経営規模の拡大の停滞、それから行財政改革の推進などがございます。また、外におきましては相次ぐ市場開放要求ということで、まことに厳しい情勢でございます。そういう形の中で、今後の農林水産行政の推進に当たっては、総合的な食糧自給力の維持強化を基本としまして生産性の向上を図る、そのためにいろいろな施策をいたしたい、こう考えております。  実は私は、大臣になりまして、今後の農林水産行政を進める上において三つの基本的考え方を持っております。  その一つは、農業は国の基本だということ、それとともに、一億二千万の国民に主食を完全に供給するという大きな役割りを持っておるということ、そして、そういう形の中に経済性を考え、市場開放性をどう考えるかということ、これを基本に考える。ただ問題は、経済性、市場開放性を考えたいわけですが、現段階におきましてはそこまで行っておりません。そんなことで、農業は国の基本ということを一〇〇%基本にして農政を進めたい、こう思っております。  そういう形の中に私は三つのことをやりたいわけです。一つには、生産性の高い、土台のしっかりした農林水産業を実現していきたい。二番目には、二十一世紀に向けてバイオテクノロジーあるいはニューメディアなどの先端技術の開発による魅力ある農林水産業を築く。三番目には、そういうことに基づきまして、農林水産業に携わる人々が意欲と生きがいを持てるような、活気のある豊かな村づくりを行いたい。この三点を中心に今後の農政を進めたい、こう考えております。
  242. 神田厚

    ○神田委員 そういう形の中で六十年度の予算編成が現在進められているわけでありますけれども、これに対する取り組みについての大臣の基本的な方針はどういうことでございますか。
  243. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 農林水産業につきましては、先ほどから言っておるように、国民生活にとって最も基礎的な物資であります食糧の安定供給の確保というのにかかわる重要な産業でございます。そんなことでございますが、実は私は、大臣になりましてから予算を見ておりますと、連年削減を受けておるというようなことでございまして、厳しい事情はわかりますけれども、まことに遺憾に存じておるというのが現状でございます。そういうことでございますが、昭和六十年度の予算におきましては五十九年八月に概算要求が出ておるわけですが、その概算要求に向かってひとつ全力を尽くす。そういう形の中にいろいろな制約があるかと思いますが、予算面におきまして実質的にそういう農林水産業の目的を達せられるようないい予算づけをしたい、このように考えて全力を尽くす考えでございます。
  244. 神田厚

    ○神田委員 これは予算に関係することですが、きょうの農業新聞等でも触れられておりますけれども、指定野菜価格安定対策事業等々の問題で、これの国庫負担削減及び出荷奨励金の減額というような問題が出ているようでありますが、この辺についてはどういうふうなお取り組みをするようなことになりますか。
  245. 田中宏尚

    田中(宏)政府委員 ただいま予算編成中でございまして、まだ具体的に結論には至っておりませんけれども、ここのところの野菜の置かれております需給事情あるいは保護水準というものにつきまして大蔵省からかなり厳しい指摘がございまして、現在鋭意折衝中のところでございます。
  246. 神田厚

    ○神田委員 ことしの冬の野菜も豊作貧乏というような形で、産地ではこういう環境の中で奨励金の削減等が行われては困るというような陳情が相次いでいるわけでありますが、この辺の事情についてはどういうふうに御判断になりますか。
  247. 田中宏尚

    田中(宏)政府委員 野菜価格の安定は物価政策としても欠くことのできない重要な仕事でございますので、お金が足りないからといって基本を崩すようなことが決してないように我々としては頑張りたいと思っております。
  248. 神田厚

    ○神田委員 さらに、予算全般の問題で、農協等、法人に対する課税強化の問題が検討されているわけでありますが、これも、法人課税がこれ以上強化をされますと、農協経営が非常に悪化をし、しかも一般組合員に対する影響も非常に大きいということで、各団体におきましてこれらの反対陳情が強く出ているわけでありますが、この点につきまして農林省としてどういうふうにお考えでありますか。
  249. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 現下の大変厳しい財政状況のもとで、各種の租税特別措置と税制上の優遇措置の見直しが全般にわたって非常に厳しく行われておるわけでございますが、農協等の協同組合に対します法人税の優遇税率の見直しにつきましても、政府及び与党の税制調査会において審議をされておりまして、今検討が大詰めを迎えているという状況でございます。  農林水産省所管の協同組合としての農協等は、今神田先生からお話がございましたように、需要の不振、価格の低迷、そしてまた金融自由化というような問題も押し寄せてきているという非常に厳しい経営環境のもとに置かれておるわけでございまして、法人税率の引き上げ等が今後の農協等の経営に与える影響は少なくないものというふうに考えております。  私ども、この農業協同組合の経営の現状なり将来の見通しということを考えまして、できるだけこういった影響が大きく起きないように各方面に御理解をいただく努力をいたしておるところでございます。
  250. 神田厚

    ○神田委員 ひとつ大臣におかれましても、これらの農業環境を守る大変大事な予算問題でありますので、御尽力をいただきたいと思います。
  251. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  今、後藤経済局長の言ったとおりでございまして、非常に厳しい現状を理解しておるものですから、最善の努力をいたしたい、こう思っております。
  252. 神田厚

    ○神田委員 それから来年度に向けまして、農政の混乱の問題で、他用途利用米の今後の取り扱いをどういうふうにするのか、今後の方針をどういうふうにするかという問題は、農家皆さん方はいろいろと非常に関心を持っているようであります。現場でかなり混乱が見られているわけでありますが、この収拾策及び来年度の取り組みはどういうふうにしていくのか、こういう点につきまして御答弁をお願いいたします。
  253. 石川弘

    ○石川政府委員 本年度の問題につきましては、おかげさまで農協等が二十万トン集荷目標を定めまして各県において取り組んでいただいております。その一方五万五千トンの主食買い上げにつきましても、つい先日県別の配分をいたしましたので、この計画に沿って実施をしていただくということになろうかと思います。  来年につきましては、これはやはり転作の一環という面から行政的な指導も大切でございますので、国、都道府県、市町村を通じてやっておりますが、農協自身がやはり自分のこととして受けとめていただくという意味から、全国団体、県連、単協につきまして、末端で各地方公共団体ともすり合わせながら目標配分をしたところでございますが、ことしは昨年のような一律ということを避けまして、米の生産力が比較的高いところ、それからことしたくさん契約をしていただいたところ、そういうところに重点を置きながら、二十七万トンについて配分が終わったわけでございます。  そのほか、買い入れの価格の問題だとかあるいは規格の問題、いろいろございまして、こういうような問題につきましても、関係者等行政庁が中に入りまして、他用途米が定着するようにという方向指導しておりますので、今年混乱して大変申しわけなかったわけでございますが、来年につきましてはいわばより地についた動きとしてやっていただけるのではなかろうかと思っております。
  254. 神田厚

    ○神田委員 時間がありませんので突っ込んだ論議はできませんが、いずれまた年が明けました段階でいろいろと御質問申し上げたいと思います。  さて、会計検査院の指摘事項がありまして、これは農政に対する不信を大変増した問題でありまして、我々といたしましてもまことに遺憾に思っております。  一つは、かんがい排水事業に関しましてむだな出費が六千億円もあるという指摘でございます。もう一つは、いわゆる生産者団体に対します補助が、結局目的に使われなくて、飲食用などに使われているというようなことでございまして、これらの問題について農林水産大臣はどのようにお考えでありますか。
  255. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 お答えいたします。  会計検査院の指摘でございますが、国営かんがい排水事業につきましては、工期が長期化いたしまして事業効果の発現がおくれているとか、あるいは国営事業と関連いたします事業の調整がとれてない、そういったことが主たる指摘内容であったわけでございます。  この指摘につきましては、例えば昭和四十年代後半の石油ショックで資材あるいは労務費が非常に上がりまして、工事費が大幅にアップをいたしましたことでありますとか、近年の公共事業の抑制、あるいは最近農業の整備水準が上がっておりまして工事の中身が違ってきているわけでございます。こういうことで、ある意味ではやむを得ない面もあったわけでございます。  そういう意味におきまして、これを改善していくというのはなかなか難しい面もあるわけでございますが、私どもといたしましては会計検査院の指摘の趣旨を踏まえまして今後努力をしていくわけでございますが、主としましては、一つは必要なる予算を確保していきますこと、またこれまで一般会計でやっておりました事業に部分的に特別会計制度を導入いたしまして、特定の工種につきましては早期に工事を完成していくこと、あるいは新規の事業を極力抑制をしていく、こういうことで会計検査院の指摘にこたえていきたい、このように考えているわけでございます。  なお、私どもに関連いたします農業集団の補助事業といたしましては、集落ないしは数集落を基礎にいたします地域農業集団の活動に対して助成を行っております。この集団は土地の利用調整活動をやっている集団でございますが、会計検査院の指摘の中には、効果が十分上がってないものでありますとかあるいは経理の仕方について問題のありますものなどがあるわけでございますが、こういった事業につきましては、これからの構造政策を進める上におきまして必要な事業でございますので、私どもといたしましては、こういった事業の趣旨を十分関係者に徹底をし、かつまた、経理等につきましては遺憾のないような形で行われますように指導してまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  256. 神田厚

    ○神田委員 農蚕園芸関係の補助金不正の問題はどうですか。
  257. 田中宏尚

    田中(宏)政府委員 農蚕園芸局生産組織関係でも、ただいま構造改善局長から説明がありましたのと同じように、地域で話し合う経費につきましていろいろと会計検査院から指摘されたわけでございますけれども、あの事業自体非常に必要な事業ではございますが、会計検査院の指摘を踏まえまして、その内容の見直しというものを現在の予算編成過程で行っておるところでございます。
  258. 神田厚

    ○神田委員 報道によりますと、そのことによって農林水産省はいわゆる補助金を廃止するというような考え方を持っているようでありますが、会計検査院の指摘はただ単に廃止をしろということではなくて、行政指導等にも問題があるわけであるから、そういう意味におきましては、農林水産省は責任を持ってこれらの問題についてもっと指導強化をしていくという前向きの取り組みをすべきだというふうに考えております。その辺のことも含めまして大臣の御見解をいただきたいと思います。
  259. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  御指摘を受けた点はまことに遺憾に存じております。そして指摘を受けた事項につきましては、先ほど官房長、構造改善局長が言いましたようなこと、補助金の返還等厳正な措置を講じますとともに、今後の再発防止を図るため関係部局及び都道府県に対し通達を発し、市町村、農協等に対する指導監督の徹底を図るほか、今後とも補助金の効率的使用等を確保する観点に立って、一層の適正化努力を行ってまいる所存でございます。
  260. 神田厚

    ○神田委員 この問題も、きょうは時間がありませんから触れるだけにいたしまして、今後また問題にしたいというふうに思っております。  さて、最後に林業問題であります。総務庁にお伺いをいたしたいのでありますが、国有林野事業の問題であります。  国有林野事業は現在一兆円にも上る累積債務を抱えておりまして、五十三年度からの第一次経営改善計画に続きまして、五十九年度を初年度とする新たな改善計画に着手しております。総務庁から見まして国全体の行政改革は計画どおりに進んでいるのか、また全体の中で国有林野は着実に改善が進んでいると見ているのかどうか、その辺の御見解をまずお聞かせいただきたいと思います。
  261. 加納正弘

    ○加納説明員 お答えいたします。  行政改革につきましては、臨調から広範な改革提言を受けまして、累次にわたります行政改革大綱を決定いたしまして諸般の改革を着実に推進しているところでございまして、各般にわたります改革方策は全体として既定の方針に沿いまして着実に実施されているものと考えております。  それから、国有林野事業についてでございますが、昭和五十三年度以降、改善計画に基づきまして組織、定員等の合理化を含みます事業運営の各般にわたって改善努力が行われてきたということは承知をいたしております。しかしながら、近年の国有林野事業をめぐります厳しい情勢から、その運営がさらに悪化したことによりまして所期の改善目標の達成が困難になったということから、本年六月に改善計画の改定が行われたわけでございまして、この新しい改善計画に沿いまして、今後とも組織、定員の合理化を含みます諸般の厳しい改善努力が必要であるというふうに考えておる次第でございます。
  262. 神田厚

    ○神田委員 国有林野につきましては今後さらに要員の三〇%に及ぶ約一万五千人の削減、十九営林署以上の統廃合を中心に改善が計画されておりますが、この計画を着実に進捗させるためには、その中核となる営林局の機能充実が重要な位置を占めるものと考えております。  この時期に政府は、東京、前橋、長野、名古屋営林局のうち一局を統廃合するということを一月二十五日の閣議で決定をしておりますが、どういうメリットがあるのか。また、この営林局の統廃合につきましては関係地元自治体を初め関係機関のすべてが強い反対をしていると聞いておりますが、政府としてこの計画を変更する考え方はないのか。以上、二点をお聞きをいたします。
  263. 加納正弘

    ○加納説明員 業務運営の合理化を図っていきます上で組織機構の簡素化あるいは合理化ということは大きな課題であると考えております。要員規模の適正化ということに対応いたしまして組織機構の改善合理化を図っていくということは、長期的に見ますれば業務の効率的運営あるいは間接的な経費の節減等の効果があるものというふうに考えておる次第でございます。  それから、計画を変更する考えがないかという趣旨の御質問でございますが、営林局一局の統廃合につきましては、行政改革の一環といたしまして農林水産省設置法にも規定されているところでございますし、また本年一月に閣議決定されました行革大綱にも明記されている事項でございまして、そういう意味で政府の方針として決まっておるわけでございます。私ども総務庁といたしましては、これらの方針に基づきまして、行革推進の立場から現在農林水産省と鋭意折衝をいたしておるところでございます。
  264. 神田厚

    ○神田委員 この問題は、昭和五十五年三月二十八日閣議決定をされました「地方支分部局の整理再編成について」という中で、一つは総務庁設置法に関係をいたしますところの行政管理庁の四国行政監察支局の機関の問題、さらには大蔵省設置法に関連をいたしまして福岡財務支局として設置をされている機関の問題、さらに厚生省設置法に関連をいたしまして四国地方医務支局として設置をされている機関の問題等々の横並びの問題としてこの営林局統廃合の問題が出ているわけであります。したがいまして、先ほどお話ししましたこの三つの機関については現在どういう進め方がされておりますか。
  265. 加納正弘

    ○加納説明員 お尋ねのありました三省庁の支局の問題につきましては、総務庁といたしましては、既定の方針に基づきまして行革推進の立場から現在各省庁と鋭意折衝をいたしておるところでございます。
  266. 神田厚

    ○神田委員 この農林水産省の営林局の統廃合だけが先行するというような形では非常にまずい問題でございますから、そういう点で私どもは時間をかけて検討していく中で、この営林局統廃合についてはひとつ政府の考え方を変えてほしいという気持ちを強く持っているわけでありますが、その点につきましてどうでありますか。
  267. 加納正弘

    ○加納説明員 先ほどもお答えを申し上げましたとおり、営林局一局の統廃合につきましては農林水産省設置法に規定されておりますし、また、本年一月に決定をいたしました新しい行革大綱の中でも定められている事項でございまして、これに基づいて私どもとしては、現在関係方面と折衝をいたしておるということでございまして、この点について十分御理解を賜りたいというふうに考えております。
  268. 神田厚

    ○神田委員 私どもは、行政改革はすべきだということでありますが、特に現業部門は少し大事にしなきゃいけないということで従来主張をしているわけであります。先ほど総務庁の答弁では、行政官庁も現業官庁もどちらも大事なんだという話でありますが、それはそれで原則論になりますけれども、現業部門をどんどんと縮小していくことによっていろいろと弊害がある、こういう問題についてひとつよく考えていかなければならない、こういうふうに思っております。  特に、今、この営林局の廃止反対の陳情等によりまして、非常に地元関係市町村及び業者等の陳情活動が活発でありまして、そういう中で農林水産省もあるいは林野庁も、予算編成業務が著しく妨げられている、こういう状況もあるというふうに聞いております。また、統廃合にかかわる経費の支出が今後の財政負担を一層拡大する、こういう心配もあるわけであります。  この計画に賛成する者がほとんどないという状況の中で、例えば十二月八日に前橋局管内で行われましたある統廃合反対の決起集会には、中曽根総理を初め多くの自民党議員秘書が反対の激励に駆けつけた、こういうふうに聞いております。これだけでも、政府のこういう計画が一省庁の独断的という言葉は少しきついのでありますけれども、そういう判断でなされているような気がしてならない、こういうことで、どうかひとつこの統廃合問題につきましては慎重な取り組みをしていただきたい、このように要望したいと思っておりますが、総務庁及び農林水産省見解を聞きたいと思います。
  269. 加納正弘

    ○加納説明員 お答えいたします。  やや繰り返しになるかと思いますが、営林局の統廃合につきましては、行政改革の一環といたしまして既に農林水産省設置法に規定されている事項でございます。また、本年一月に閣議決定をされました行革大綱の中でも明記されております政府の方針でございますので、何分この点に十分御理解をお願い申し上げる次第でございます。
  270. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 営林局の統廃合につきましては、広い各般各層の方々からいろいろ御意見をいただいておるわけでございますが、ひとつ行革を基本に立てて推進すべきであるというふうな要請もまた、私どもに対してなされておるところでございます。  林野庁といたしましては、広いそういう御意見を十分踏まえまして、営林局がこれまで地域において果たしております機能を損なうことのないよう、地元の方々の受けております便益等に支障のないように、細心の注意をもってこれを考え、行革推進の実も上げながら、避けて通ることのできないこの統廃合の問題について対処してまいりたいと思っているところでございます。
  271. 神田厚

    ○神田委員 避けて通ることができないというのは、非常に消極的な答弁でありますが、やはり方向は転換をしてもらわなければならないわけでありますから、そういう意味では林野庁も、責任官庁でありますから、ひとつもう少し自信を持って御主張なさっていただきたい、このように思っております。  現在、地球的な規模で砂漠化が問題となっておりますが、来年、FAOが国際森林年にする決議をしようとしております。こうした時期に、森林を守り育てる中核となるこの営林局等がその統廃合を行うということは、時代の要請に逆行するということでもありますので、その点につきましては、農林水産大臣の英断によりましてひとつお考えを改めていただければと思うのでありますが、最後に御答弁をいただきます。
  272. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 神田先生お答えいたします。  実は私、就任してこの問題にすぐ取り組んでいろいろ勉強いたしましたわけです。また、現在候補に上がっております各局削減につきましては、四局それぞれ皆特色があり、歴史的使命を持っているということでございますが、先ほどから総務庁からお話がございましたし、林野庁長官も話したようなことで、やむを得ない措置になるようなことをまことに遺憾に存じております。
  273. 神田厚

    ○神田委員 問題は残っておりますが、時間が参りましたので、終わります。
  274. 今井勇

    今井委員長 次に、中林佳子君。
  275. 中林佳子

    中林委員 まず、六十年度農林水産予算編成に関連して幾つかの質問をさせていただきます。  第一に、先ほど大臣もおっしゃっておりましたように、農林水産予算が年々削減されていることは非常に重大な問題だというふうに思っております。五十八年、五十九年度と、農林水産予算はほかの省庁と比べても大幅なマイナス予算となっており、国の総予算額に占める農林水産予算の割合は、昭和四十八年度、これが一二・三%ですが、これと比較しても約半分に低下しているわけです。最近数年間をとってみましても、五十三年が九・四%、五十四年が九・一%、五十五年が八・六%、五十六年が八・一%、五十七年が七・二%、五十八年が六・八%と着実に下がっているわけです。佐藤農水大臣がこれだけは守りたいとおっしゃっております六十年度の概算要求を見ますと、さらに六・二%にまで低下する、こういうことで、一体どこまで削られていくのだろうかと懸念をせざるを得ないわけです。  しかも、五十六年度の予算を一〇〇として、主な省庁の六十年度の概算要求と比較をしてみますと、外務省が一三四・二%、防衛庁が一三〇・九%、通産省が一一四・六%、厚生省が一〇九・四%、文部省が一〇二・四%、建設省が九六%、農水省が九一・三%ということで、農水省関係が最も低い水準になっているわけです。そこには、軍拡、大企業奉仕で、アメリカの要求だけは最優先させる、そして農業は軽視するという中曽根内閣の姿勢が象徴的に示されていると思わざるを得ません。  そこで、大臣にお伺いするわけですが、今述べましたように、農林水産予算は、他省庁と比べてみますと大幅に上回るような削減がなされておりまして、国の総予算額に占める比率の低下は、国の財政が厳しいからだとか超緊縮予算だからという一般論では絶対合理化できないものだというふうに思うわけです。中曽根内閣としてはこの事態をどう説明されるのか。他省庁と比べて農林予算はむだがあると見ていらっしゃるのか。予算がなくとも国内農業振興できるというふうにお考えになっているのか。それとも日本農業生産は縮小しても構わない、こういうふうに思っていらっしゃるのか、見解をお伺いします。
  276. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生お答えいたします。  農林水産関係の予算というのは、御存じのことでありますが、基礎的な物資である食糧の安定供給ということで非常に大切な任務を持っております。そんなことで歴代大臣等、予算の確保には全力を尽くし、また歴代総理も農林水産予算には特別の配慮をしていただいておる、こう考えております。そういう中で年々削減を受けているわけですが、これは厳しい財政事情ということでまことにやむを得ないことと思っております。しかし内容面につきましては、農林水産業をめぐる情勢は大変厳しいですが、質的充実に配慮して重点的かつ効率的に予算の配分をされている、こう考えて、十分その任にたえ得ると考えております。また、六十年度の予算編成に当たりましては、概算要求を何とか確保ということで最善の努力をしておる状況でございます。
  277. 中林佳子

    中林委員 先ほど数字を述べましたように、他省庁と比べても大変低い。これは毎年削られてきているということで、今の大臣の答弁は農業振興にはとてもならないというふうに私は思わざるを得ないわけです。  中曽根内閣がイの一番に農林予算を大幅に削減するその理由として、臨調答申の具体化だと言わなければならないと思います。臨調は、行政の果たすべき役割、責任領域の見直しが必要な分野として、いわば切り捨ての対象として社会保障、文教とともに農業をトップに挙げているわけです。農林予算の内容を見ましても、生産者米価の抑制、売買逆ざやの解消、補助金の整理あるいは合理化、補助から融資へ、転作奨励金のカットなど、臨調の指摘事項を予算の中に次々と具体化していると指摘せざるを得ません。  こういうことは、すべて農家経営を圧迫し、農業と農村に大変な困難を持ち込んでおります。財界の言いなりになったり、軍拡や大企業奉仕の予算には手をつけないで、国民向けの予算を行革と称してはっさりと削る臨調路線こそ、今の農業や農村を深刻な事態に追い込んでいる元凶だと言わなければならないと思います。  大臣は、中曽根さんが断行するとおっしゃっている臨調路線に基づく行革を忠実に実行されていくおつもりでしょうか。
  278. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生お答えいたします。  国家財政は御存じのとおりでございまして、現在百二十二兆円という赤字国債を出しているという現状で、ことしの予算を組むにも国債の発行が必要だ、来年度予算においては約十兆で九兆利払いがある、こういう現状でございます。そんなことで、少なくとも後年度、我々の子孫に借金を残さない形でどうしてやっていくかということのために臨調路線は必要だ、これを堅持していく方針でございます。
  279. 中林佳子

    中林委員 臨調の指摘農業をつぶすということをそれぞれ挙げているわけですから、大臣がそういうことを断行するとおっしゃるならば、日本農業が本当にますます踏みつぶされていくのではないかという懸念を指摘せざるを得ないわけです。私も農村をずっと歩いているわけですが、その深刻な実態に接して、今こそ農家の経営安定だとか農業を基幹産業として見直していく、そういう緊急性を痛感しているわけです。ですから、本当に農政の抜本的転換と農林予算の大幅増額がとりわけ必要になっていると思います。これは単に農林水産業振興や農漁民の経営安定にとどまらず、国土とか国民経済のバランスのとれた発展また食糧の安定供給という、先ほどから大臣農業の大切さをおっしゃっていることから考えても当然求められていることだと思うわけです。  大臣は、先ほどの答弁でもおっしゃっておりましたけれども農林水産予算が少ないのには驚いているとたびたび言っていらっしゃるわけですね。本当にそういうふうにお感じであるならば、農業の発展を望んでいらっしゃるわけですから、少なくとも国の予算に占める農林水産予算の割合がこれ以上低下しないように大いに頑張っていただきたいし、ぜひ勇気ある御決意を求めたいと思います。
  280. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  私もそのつもりで頑張る決心でございます。
  281. 中林佳子

    中林委員 言葉だけにとどまらず、そういう成果が見られるようにぜひ頑張っていただきたいと思います。  続いて、農林漁業金融制度の大がかりな見直しが今農水省の方で進められているわけですが、見直しの内容として農林漁業金融公庫資金の金利引き上げも含まれていますか、含まれているのであれば、なぜそれが含まれているのか理由をお聞きしたいと思います。
  282. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 お答えを申し上げます。  御質問の中にございましたように、現在農林漁業金融公庫資金につきまして全体的な見直しをやっておるわけでございますが、その背景と申しますか動機につきましては、制度資金につきまして長期にわたりまして資金種類の追加あるいは金利の部分的な手直しというような改正、そういったものが積み重なりました結果、いわばサンゴ礁のようにかなり複雑な制度になっておりまして、簡素化し、わかりやすい制度にする必要があるという状況が生じているということが一つでございます。  第二には、現下の厳しい農林漁業情勢及び補助から融資へという方向のもとで、制度金融の役割がますます重要になっておるにもかかわりませず、貸付実績がむしろ停滞をしている。これは、一つは最近の情勢の厳しさから農家の投資意欲がかなり慎重になっているということもあるわけでございますが、もう一つ、最近の資金需要の変化に十分即応できていない面があるのではないかといったことがあるわけでございまして、そういった最近の状況変化に対応した制度改善を行って農林漁業振興に寄与していく。  第三には、農林漁業金融公庫の補給金が近年著しく増大をいたしておりまして、公庫の貸出金利は平均で約五%でございますが、この原資でございます財投資金は現在借入金利が七・一%というようなことでございますので、ことしの予算で千三百五十億というような利子補給金になっておりまして、こういったことを背景にしまして臨調なり財政当局から、行財政改革の方向で公庫資金について融資の重点化なり貸付条件の見直しが求められている、こういった三つのことを背景にいたしまして現在全般的な見直しを行っております。当然のことながら、そこで資金の統合の問題あるいは金利につきまして一部引き上げるあるいは一部引き下げるというような形でのいろいろな検討を今行っている段階でございますが、まだ結論を得ておるわけではございません。
  283. 中林佳子

    中林委員 見直すということですから金利の引き上げが当然その中には見込まれているわけですが、それは農業生産農業経営の実態からいえば非常にかけ離れたものでありますし、また農林漁業金融制度の趣旨からいっても当てはまらないのじゃないかと思うのです。  そもそも農林水産業は自然の生産力に依拠して営まれるものであって、工業と違って生産力も低くならざるを得ないわけです。それだけにそれを対象にした金融制度が長期で低利になるのは当然なことであるわけです。それを専ら財政支出削減が、私今三つの理由を聞きましたけれども、三点目がやはり大きな理由ではないかと思うのですけれども、それだけが先行されて金利が引き上げをされれば、ただでさえ厳しい状況に置かれている農漁民にとって一層の経営難、漁業経営を苦しくさせるものだと思うわけで、私どもはこういう金利の引き上げは認められないと思っております。  農林漁業金融公庫法の第一条を見ましても、「農林漁業金融公庫は、農林漁業者に対し、農林漁業生産力の維持増進に必要な長期且つ低利の資金で、農林中央金庫その他一般の金融機関が融通することを困難とするものを融通することを目的とする。」こういうふうにうたってあるわけですから、金利を引き上げるということは法の目的にも反するものだと思うわけですけれども、その点はどうですか。
  284. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 農林漁業金融公庫の目的は、まさに中林先生がおっしゃったとおりでございまして、私ども今後とも、農林漁業金融公庫資金は生産力の維持増進に必要な長期かつ低利の資金を融通する、そしてまた、他の金融機関の融通し得ないものを融通する、こういう基本的な性格には将来とも変わることはないと考えておるところでございます。  ただ、一方におきまして、先ほども申し上げましたように、貸付残高の増加に伴いまして公庫の補給金が急速に増大してまいってきていることも事実でございまして、先ほどの大臣の御答弁にもございましたように、農林水産省の枠の確保ということに全省を挙げて努力しているわけでございますが、そういう中におきましても、かなり急テンポに公庫補給金がふえてまいるということが、農林予算全体の資金の配分としてどこまで可能かというような問題も一方あるわけでございます。ただ、臨調答申でも確かに利子補給金の抑制ということも言っておりますが、同時に、農林漁業の近代化と体質強化に留意しつつ見直しをやれということを書いてございます。私ども、この農林漁業の近代化なり体質強化ということを見失わずに検討をしてまいりたいと考えております。
  285. 中林佳子

    中林委員 公庫の金利の引き上げが新聞などで報道されているわけで、農家にとっては大変な問題だということで、私の地元でも心配の声がたくさん上がっているわけです。  島根県の江津市にある畜産農家の場合ですけれども、公庫資金の中の総合施設資金、これは現行五%の金利で五年据え置き、十五年償還なんですけれども、五千五百六十一万円も借りて、これの返済のために毎年利子を含めて五百三十五万七千五百七十八円も返しているわけなんです。また、同じ江津市の四戸の畜産農家が五百頭規模の肉用団地を五十七年度から始めているわけですが、その資金を総合施設資金で一億五千三百五十三万円、未墾地取得資金、これは現行三・五%、一番低い金利の分ですが、三年据え置き、十七年償還で千八百六十六万円、合計一億七千万円を超える資金を借りているわけです。これを毎年千六百二十七万二千四十二円返済しているわけですね。これで今、仮に一%上がったとしても相当ふえていくという状況になっているわけです。しかも一たび経営でも行き詰まれば、こうした公庫資金の返済は優先してやれということで、農協などが間に入って新たに一〇%を超える金利の資金をその穴埋めに借りさせるわけです。借金は雪だるま式にふえて、ついに夜逃げをせざるを得ない状況というのが実際に出ているわけです。  しかも政府は、アメリカからの肉用牛の輸入攻勢に対抗するためだといって、国内産の牛をもっとふやすように県を通じて指導しているわけです。畜産農家にとってはますます施設整備を求められているわけです。ですから、金利を下げるから牛をふやせと言われるならばわかるのだけれども、この逆のことをやられたのではとても牛をふやすという状況でない、こういうふうに地元の方では声が上がっているわけです。大臣も中国山地のことはよく御承知のことだと思います。本当にこうした畜産農家を初めとする農家の経営を守るという立場からすれば、金利は引き上げるべきでないと思うわけです。ですから、引き上げない、こういうふうにお約束できませんでしょうか。
  286. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 先ほど申し上げましたように、まだ検討の途中でございまして、結論がこうだというようなことを申し上げ得る段階にないわけでございますが、今お話のありましたようなことも頭に置きまして、農林漁業振興に努力をしておられる生産者の方々の意欲をそぐようなことのないように配慮しながらやってまいりたいと思っております。
  287. 中林佳子

    中林委員 さらに、今農民にとって大きな不安材料になっているものに農業共済制度の見直しがあるわけです。これは一部報道によりますと、共済掛金の国庫負担割合を水稲の場合、これは平均ですが、現行五九%を五〇%に引き下げようというねらいがあるというふうに報道されております。冷害など災害の多い北海道では、五〇%に引き下げられますと一戸平均三万六千円以上の農家負担がふえる、こういう試算になるわけですね。このほか、共済への当然加入の基準の引き上げも検討されている、こういう報道があります。  島根県の共済連の会長さんと会って私もいろいろ御要望を聞いたのですが、掛金の農家負担増も困るけれども、島根では規模が非常に小さいので、水稲の場合当然加入の基準が、現行、今島根の場合二十アールと二十五アールの二通りあるわけですが、これが三十アールにまで引き上げられたのでは各共済組合の存亡にもかかわる重大な問題だ、もしそういうことになれば、各共済組合員に引き上がったことを隠してでも入ってもらわなければならない事態が起こるのではないか、こういう心配を大変されているわけです。  こうした声に十分耳を傾けて、共済制度の改悪はしない、こういうふうにぜひ約束をしていただきたいと思いますし、特に、こうした改悪ではなくして、むしろ拡充をしていただきたいということで団体などからも強い要望が今日まで出されております肉用子牛を家畜共済の対象に加えることをぜひ要望したいわけですが、改悪しないということと肉用牛の問題、二点お答えいただきたいと思います。
  288. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 農業災害補償制度につきましても、私ども、今種々検討を行っておるところでございますが、一つ農業経営あるいは農業事情の変化に即応した制度の改善、さらにはやはり、現在の厳しい行財政事情のもとで農業災害補償制度の運営につきましても効率化が求められている、こういった視点からいろいろ検討を行っておるところでございます。  超過累進制に基づきます国庫負担率につきましては、御案内のとおり、水稲について申しますと五〇%から七〇%という超過累進制をとっておるわけでございますが、かつての時代と違いまして、現在、五十数万ヘクタールに及ぶ水田利用再編対策を適地適産ということで進めておりますことと、被害率が高い地域ほど高い国庫負担をするという仕組みとの間の整合性の問題、あるいはまた臨時行政調査会以来、五〇%を超える高率補助につきましては、一つ一つその内容の洗い直しというようなことが行われているという、その一環としての検討というようなことがございまして、現在検討をいたしておるところでございますが、まだ結論を得るには至っておりません。  いずれにしましても、農業の分野におきまして農業災害補償制度というのは災害対策の基幹でございますので、制度の効率的な運用を図るという観点に立ちますと同時に、災害対策の基本だというこの制度の重要性を十分考えながら対応していかなければいけないというふうに考えておるところでございます。  それから、肉用子牛の共済につきましては、最近の農業事情の動向に即応した改善ということでいろいろ考えておるわけでございますが、肉用牛振興につきましては、やはり繁殖経営の安定ということが非常に大事であることは私どもも十分認識をいたしております。かねてから、島根県を含めます肉用牛の関係の県の方々からは御要請もいただいておりますので、この問題も制度の見直しの中に含めて検討をいたしておるところでございます。
  289. 中林佳子

    中林委員 改善の部分、それで改悪は絶対にしないということを強く要望して、次に移らせていただきたいと思います。  次に、食糧管理費についてお伺いするわけですが、十二月十一日付読売新聞を見ますと、大蔵省が食糧管理費を千三百億円カットせよと迫っているわけですね。そのためには消費者米価の大幅な引き上げのほかに、転作奨励金の大幅カットや良質奨励金の引き下げまで踏み込まなければだめだ、こういう中身まで言っているように報道されております。もしこんなことを許したら、農民や国民の不信は一層高まるに違いありませんし、また食管の空洞化を進めるものにほかなりません。もし大蔵省の迫り方に従うならば、国民の食糧確保に対する国の責任を放棄するものだと言わなければなりません。  そこで、念のためにお伺いするのですけれども、転作奨励金の体系は三期対策期間中は動かさないというのがこれまでの農水省の農民に対するお約束だったというふうに思うわけです、ですから、六十年度予算編成の過程で、この奨励金の削減を検討対象に入れるというようなことはよもやされないと思いますけれども、いかがでしょうか。また、ちょっと質が違うのですが、良質奨励金についてはいかがでしょうか。
  290. 関谷俊作

    関谷政府委員 私からは、転作奨励金関係についてお答え申し上げます。  お尋ねの中にございましたとおり、第三期対策を現在実施しておりまして、当初の考え方からしまして、第三期対策の中では転作奨励金は、具体的には単価でございますが、いわゆる十アール幾らという単価については、第三期対策中はそのままいくということでございますので、第二年でございます来年度につきましては、当然単価の減額等はありません。ただ念のために申し上げますと、例えば今度のように転作等目標面積が調整によりまして二万六千ヘクタール減りますと、当然総額の方はそれに応じまして減額がございますが、いわゆる単価については第三期対策の中で変えることはない、こういうことでございます。
  291. 石川弘

    ○石川政府委員 新聞でいろいろ報道されておりますが、私どもの方には正規に何をどうするという話は来ておりません。私どもは、食糧管理費として必要なものは取るつもりでございます。
  292. 中林佳子

    中林委員 いよいよあすから米価審議会が開かれるわけです。消費者米価の諮問が行われるわけですけれども、消費者米価については、ことしの二月に、多くの国民の反対にもかかわらず三・七六%引き上げられたばかりです。今報道されているのを見ると、四%近い引き上げが諮問されるのではないかと言われておりますが、もしそういうことになれば、一年間に七%から八%の引き上げになって、家計に与える影響は甚大なものがあると指摘をせざるを得ません。消費者米価は五十一年から連続的に値上げをされて、ことしの四月で上げ率というのは四四・八%で、同期間の消費者物価指数三九・六%を大幅に上回っております。米の消費拡大とかあるいは食管法の消費者の家計を安定させるという趣旨からしても、もしも引き上げがされるならば、こういうことに反するものになると指摘をせざるを得ないわけですから、食管法の趣旨に沿って、あるいは米の消費拡大という観点で、今回の引き上げは絶対すべきでないというふうに思うわけですが、大臣、いかがでしょうか。
  293. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生お答えいたします。  米の政府売り渡し価格は、これまで家計費及び物価その他の経済事情を参酌し消費者の家計の安定を旨として決定してきております。今回も同様の考え方でございまして、具体的には、家計、物価の状況、売買逆ざや、財政事情などを総合的に勘案し、米の生産流通、消費に及ぼす影響などに配慮して決定する考えでございます。
  294. 中林佳子

    中林委員 上げないというふうにお約束されなかったので非常に残念でございますけれども、ぜひ食管法の建前、今おっしゃったことを堅持して、あすからの米審に臨んでいただきたいと思います。  さらに、米の消費拡大の一環として実施される米飯給食に適用される助成措置がずっと今日までなされてきているわけですが、今、平均週一・八回ということで、まだまだ目的は達せられていないと思うわけです。島根県の松江市でも現在週二回米飯給食をやっておりますけれども、これをぜひ三回やりたい、父母の人たちの非常に強い要求の中でそういう目的を持っている。しかし今報じられているように、もしもこの米飯給食に対する値引き助成が、今六〇%が仮に五〇%にまで削られるということになれば、父母負担がとてもふえて非常にやりにくくなるので、松江市などでもぜひ六〇%の値引き制度は守ってほしいという強い要望が出ているわけです。ですから、農水省としましても、この見直しはやるべきでないし、まだ目的を達していないわけですから、六〇%の線はぜひ守っていただきたいと思うわけですが、いかがでしょうか。
  295. 石川弘

    ○石川政府委員 学校給食の助成でございますが、御承知のように、現在九六%程度の普及でございますが、実施回数等はまだまだもう少し広げたいと私どもも思っております。このこと自身につきましては、臨調等で、御承知のように、農政政策上の観点というものを見ながら縮減に努力してほしいという文言がございますが、片一方では消費拡大に大変役立っているとか、日本的食生活の定着という面にも寄与しているという面がございまして、現在財政当局といろいろ折衝中でございます。
  296. 中林佳子

    中林委員 ぜひ多くの全国の父母たちの願いにこたえていただきたいと思います。  次に、松くい虫被害についてお伺いするわけです。  松は、治山治水あるいは防潮、防風の保安林として全国各地で植えられてまいりました。森林資源の一割を占める松が年々松くい虫被害によって失われております。松くい虫防除法ができた昭和五十二年から五十九年度の九月までの被害を推定していきますと、大体千三百五十九万立米、これが被害の総体積になるのではないかというふうに推測されるわけです。ですから、本来、法ができて終息型に向かわなければならないのに、それがなかなかできないという状況を大変遺憾だと思うわけです。  特に、私どもの島根県の実情から申し上げまして、島根でもことしは異常発生をいたしまして大変な状況になっているわけです。伐倒駆除が非常に有効的なわけですが、これも実は行政監察が五十六年に行われて、その報告書を見ますと、伐倒駆除については極力秋季に行うように、こういうことになっているわけですが、島根の場合は三割ぐらいは冬から春にかけてどうしても残ってしまうというようなこともあります。ことしの場合などは、国からの補助もありますけれども、県費を三億一千万、さらに十二月補正予算で四千八百万追加しなければならないということで、松くい虫駆除のためには大変多くの予算を強いているわけです。  こういう中で県の方から特段の要望がありますのは、こういう激害地に対しては、国が予算の配分も含めて特段の配慮をしていただきたい。さらに来年度の予算では予算カットの話も出ているけれども、まだまだ広がるような状況がありますので、予算の確保も含めて、松くい虫対策法にのっとって終息型に向かうような努力をぜひしていただきたいと思うわけですが、その点いかがでしょうか。
  297. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 先生お話しございましたように、本年は本当に記録的な高温少雨でございまして、五十七年に改正、延長いたしました松くい虫被害対策特別措置法におきまして、本年の異常高温少雨までの間はだんだん減少型で参りまして、これまでの施策の効果があったということで私ども非常に喜んでおったわけでございますが、本年の高温少雨はちょうど五十三年の異常気象と全く似たタイプでございます。全国的には大体一割程度しかふえていないということではございますけれども、特に北陸と山陰の方で倍増という大変な被害が出ております。一たんこれの被害が発生いたしますと、これまでの私どもの経験ですとそれが高原状に続くことも考えられますので、将来といいますか、これから先を非常に憂慮しているところでございます。  お話がありましたように、本年林野庁におきましても全体の予算を調整いたしまして、特に北陸、山陰中心に追加措置をとることといたしました。これは伐倒駆除を中心といたしております。また、予算の配算等も効果的な秋季防除に間に合うように内示をするとか、いろいろな労務の都合でどうしてもおくれるというようなときには油性の浸透力の強い薬剤に切りかえるとか、そういうきめ細かい指導をいたしまして、法の趣旨とするところの微害型、減少型に何としても持っていくべく最大限努力をしているところでございます。
  298. 中林佳子

    中林委員 それでは次に、中海干拓淡水化事業の関連で御質問したいと思うわけです。  ことしの八月二十日にようやく「宍道湖中海淡水湖化に関連する水理水質及び生態の挙動について」といういわゆる中間報告、また「宍道湖・中海淡水湖化に伴う将来水質予測」、そして「宍道湖・中海淡水化試行計画」の三つの文書が農水省より島根、鳥取両県に説明されたわけですが、それから既に四カ月が経過いたしました。  農水省は、私の十月三日の質問に対して、中間報告について地元の県、市町村、あるいは中央の関係機関の了解が得られれば淡水化の試行に入りたい、こういうふうに述べていらっしゃったわけですが、現在どういう段階を迎えているのか。また淡水化試行開始のめどをどのように見積もっていらっしゃるのか、端的にお答えいただきたいと思います。
  299. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 多分前の委員会だったと思いますけれども、その委員会お答えいたしましたとおり、淡水化の試行につきましては、地元の関係機関あるいは国の関係機関とも十分協議の上実施をいたしたい、このようにお答えしたわけでございまして、現在その協議をしている最中でございます。したがいまして、今の段階におきましていつ淡水化をするかということにつきましては明らかにする段階ではございません。私どもといたしましては、前回お答えいたしましたように関係機関との協議が調い次第淡水化を始めたい、このように考えております。
  300. 中林佳子

    中林委員 まだいつかということが言えないというのは私は当然だと思うわけですね。十月三日のこの委員会で私が指摘した点についてもまだ十分な説明もされていないですし、この四カ月間随分いろいろな方面からこの中間報告内容に手厳しい批判と質問が相次いでいるわけですね。  主なものを挙げてみましても、九月十日島根の自然を守る会が試行中止の申し入れ、九月十二日中海・宍道湖の淡水化に反対する住民団体連絡会の結成、九月二十八日島根県議会で中間報告批判相次ぐ、十月十日住民団体連絡会の署名開始、十一月二日日本共産党島根県委員会、農水省へ公開質問書提出、十一月十八日島根大学陸水研究会主催の公開シンポジウム、十一月二十五日両県の助言者グループ検討会議から批判が相次ぐ、十一月中旬日本科学者会議島根支部「中間報告批判」刊行、十一月二十六日日本の魚類専門家の三割が結集している淡水魚保護協会が水生物研究者約五千名の淡水化反対署名を提出、この中には東宮御所の研究員も入っていると報ぜられております。十二月四日島根大学地域分析研究会が公開質問状、十二月十日、十一日島根県、鳥取県それぞれ農水省へ質問照会、十二月十日住民団体連絡会が約二十八万人分の反対署名提出。いずれもふるさとの自然を守り、本当に環境をよくしていこうという願いから、中海・宍道湖の淡水化に大きな疑念を抱いての質問なり意見なり運動が起こっているわけです。  これらの質問や意見について、中間報告を公表された農水省としては誠意を持って回答したり説明したりする義務があると思うわけですが、その点いかがでしょうか。
  301. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 今まで関係機関でありますとか、あるいはいろいろな団体からたくさんの御意見をいただいております。私どもといたしましては、お答えできるものにつきましてはその都度十分御説明をし、お答えをしているわけでございますが、なお委員会等におきまして検討していただくものにつきましては、これらを集約の上、いずれ委員会において検討をいただきたいと思います。そういったものにつきましては、その後再度説明いたしまして理解をしていただく努力をする予定でございます。
  302. 中林佳子

    中林委員 しかし、私ども共産党島根県委員会の方から公開質問状を出して十一月末までの回答をと要求しましたけれども、来ないものですからこちらで電話で聞きましたら、上とも相談してというお答えだったわけですね。ですから、やっているとかというようなお答えだったのですけれども、住民に対して本当に納得のいく回答なり説明を十分やっていただきたいということを重ねて要請しておきたいと思います。  この間、こうした公開質問状だとか意見だけでなく、大臣、わずか二カ月の間に淡水化反対の署名が二十八万人分以上集まったわけですね。私はここに署名の集計表というのを持っているわけなんですが、宍道湖周辺の宍道町、ここでは全人口の九八%の署名が集まっているわけです。つまりこれは、宍道湖の汚染から子供たちの将来もちゃんと守っていくんだ、そういう願いで子供たちの署名まで含まれているということですね。そのほか、玉湯町が七一・九%、斐川町が六八・四%、そして県都であります松江市が六八・二%。島根県の場合はすべてが人口の過半数を超える署名が集まっているわけです。これは、少なくとも我が島根県においては、関係市町村住民の二十五万人分もという反対署名が、短期間、二カ月間で集められたということは、有史以来のことなんですね。ですから、こうした住民の意思表示を大臣としてはどういうふうにお受けとめになるのでしょうか。
  303. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 中林先生お答えいたします。  先ほどから構造改善局長が申しておるとおりでございまして、中海干拓事業の淡水化試行を実施するに当たりましては、関係機関との協議調整を行うこととしております。既に、鳥取、島根両県及び関係十二市町へは、中間報告内容を説明し、協議を進め、また関係機関との打ち合わせを行っていると聞いております。  宍道湖・中海の水質汚濁を進めたくないという住民意向については十分に理解しており、淡水化の試行に当たっては、このような住民の意向を十分考慮し、また関係機関の意見を聞いて慎重に対応したいと考えております。
  304. 中林佳子

    中林委員 特にこの署名に込められた願いというのは非常に重いものがある、本当に人口のほとんどが署名しているというような状況は、今までの運動形態からいっても、私も初めての経験なんですね。ですから、ぜひ大臣も厳正に受けとめていただきたいということを重ねて要望しておきます。  建設省の方にお伺いするわけですが、農水省は中間報告公表の際に関係行政機関とも相談すると述べていらっしゃるわけですが、建設省は、いつどのような形で農水省から相談を受け、現在どういう検討を行っていらっしゃるのか。また、建設省としての意見提出のめどはいつごろになるのでしょうか。
  305. 陣内孝雄

    ○陣内説明員 お答え申し上げます。  中海干拓事業に関しまして、八月二十日に農林水産省より「宍道湖中海淡水湖化に関連する水理水質及び生態の挙動について」中間報告書が送付されております。  現在、農林水産省の出先の事務所と私ども建設省出雲工事事務所におきまして、中間報告書内容について相互に理解を深めるために質問を通じての意見交換を行っております。農林水産省に対しましては、中間報告書で述べられております宍道湖及び中海の水理特性、水質解析、塩水の遡上現象等の考え方を理解するために必要な、データの根拠、使用されております解析方法、実験方法等につきまして詳しく質問をして、逐次勉強しているところでございます。さらに、今後不明な点等がございますれば、質問を通じまして意見交換を行いながら、河川管理者として納得のいくよう内容検討を進めてまいります。  したがいまして、いずれにしても両省の見解を調わせることが必要であると考えておりまして、現在のところ、意見書の提出等につきましては考えておりません。
  306. 中林佳子

    中林委員 この淡水化事業は、外海とつながっている中海・宍道湖を水門によって閉め切って、その水門操作によって淡水化を進めようというものなわけです。地元の住民は、水質汚濁や生態系が変わってしまうことを大変心配しているわけですが、これと同様に、洪水時の治水問題についても非常に重大な関心を持っております。特に、昭和四十七年に宍道湖の水があふれて大洪水に見舞われたという最近の経験も持って、まさに死活問題になっているわけです。ですから、治水対策は当然建設省の所管でもあり、建設省は水門閉め切りによって、胸を張って地元住民への治水上の安全を保障できると現段階で言えるのでしょうか。
  307. 萩原兼脩

    ○萩原説明員 お答えをいたします。  中海の干拓事業に関しましての治水上の安全性の問題でございますが、中海につきましては、御存じのように大変干拓が行われますので、この干拓の見返りといたしまして、堺水道の掘削が農林省によって行われております。したがいまして、この事業によりまして基本的に洪水に対する治水条件が悪くなるということはまずないものと考えております。  また、中浦水門でございますが、その水門の操作につきまして、洪水時には全開していただくということが原則かと思います。現在も出先において相談をしておるところでございますが、引き続き農水省の出先の方と十分協議をいたしまして、支障のないようなゲート操作が行われるようにしてまいりたいと思っております。
  308. 中林佳子

    中林委員 事業の始まる前に、この治水の問題ではいろいろ検討して塩水道の掘削も行った、こういうふうにおっしゃるわけですけれども事業着工から既に二十年近くもたっております。ですから、私は本当に再検討が必要だというふうに思わずにはおられないわけです。  特に、実は二年前に建設省の出雲工事事務所に出かけていろいろお伺いしたわけですが、その際、治水上最も重要なデータとなるはずの最大降雨量や、大橋川からの中海への最大流量が、建設省と農水省の資料では大きく食い違っているわけなんです。  ちなみに農水省、これは中海干拓事業計画書に載っているわけですが、これは三日間最大降雨量三百五十五ミリ、それに対して建設省は二日間最大雨量三百九十九ミリ。大橋川からの最大流量は、農水省が一秒間に千三百立方メートル、建設省が一秒間に千六百立方メートル、こういうことで数値が違うわけですね。一致しているのは、中海の計画洪水位だけ、これだけは一致しているのですが、こういうふうに違うことについては建設省はどのように説明されるのでしょうか。
  309. 萩原兼脩

    ○萩原説明員 お答えをいたします。  農水省の方の御計画でいろいろ治水上の数字を使っておられますのは、先ほど申しましたように、中海を干拓いたします。そのために、そのままにしておきますと、水位が上がってしまうわけでございますから、塩水道を掘ったりいろいろされるわけでございますし、さらに御自分の干拓されましたところの堤防の計画高さを決めなければいけないということで、つまり中海に着目いたしました治水計画をお立てになる必要があるわけでございます。それが農林省がいろいろ数字をお使いになって立てられたもので、おっしゃいますように中海の計画洪水位が、たしか一メートル四十四ということになり、塩水道の計画能力と申しますか、通過流量が三千九百トン毎秒ということになっておるかと思います。  一方、私ども建設省の方は、中海だけでございませんで、斐伊川流域全体に着目した計画を立てる必要があるわけでございます。私どもが工事実施基本計画というもので、その斐伊川の流域全体の計画を改めてオーソライズいたしましたのが昭和五十一年でございますので、農林省の計画の方が先行しておられましたので、中海に関しましては、当然、農林省の計画を前提として私どもの方の計画を決めておるわけでございます。したがいまして、中海に関しては、いずれも計画の基本数字が変わっておらないわけでございます。  ただ、先生おっしゃいますように、それじゃ大橋川の流量が建設省の方が大きいではないかということでございますが、中海の計画上一番高い水位をどういう状態で招来するかということを考えてみますと、まず雨が降りまして中海に直接入ってくる洪水があるわけでございます。例えば飯梨川とか加茂川とかあるわけでございますね。それとさらに上流に降りまして、斐伊川を伝わって宍道湖を伝わって、大橋川を伝わって入ってくる洪水があるわけでございますが、中海の最高水位を決めますものは、その前段に直接入ってくる河川の洪水流量によって決まってしまうわけでございます。したがいまして、後で大橋川が最大流量になりましても、そのときはもう中海の水位はずんと下がっておりますので、これが計画の決定要素にはならないということでございまして、したがいまして、その水位なり流量を決めるために使っております前提の数字はいろいろ違いますけれども、計画は完全に整合しておる、私どもこのように考えておるわけでございます。
  310. 中林佳子

    中林委員 私もたびたび干拓事務所にも建設省の工事事務所にも行って伺うのですけれども、今の説明を聞いてもなかなか納得がいきません。現に違うわけですからね。時間もありませんので、次に移らせていただきます。  農水省は水門閉め切りを急ぎたいといつもおっしゃっているわけですが、この水門操作の管理規程はもう決まっているのでしょうか。
  311. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 水門管理規程は、河川法上の協議を行いまして、承認をされまして定められる、こういうものでございます。現在その操作規程につきまして内々建設省の方と御相談をしている、そういう段階でございます。
  312. 中林佳子

    中林委員 建設省の方は、今相談しているとおっしゃっておりますけれども、農水省からもう協議を受けていらっしゃるのでしょうか。  それからまた、水門の管理だとか操作だとか、その所管も決まっているのでしょうか。
  313. 萩原兼脩

    ○萩原説明員 お答えをいたします。  中浦水門の操作の方法に関しましては、現在私どもの出先でございます出雲工事事務所におきまして、農水省の出先の方から具体的なお話を伺っておるところでございます。  それから、管理を具体的にだれがやるかという問題でございますが、当然、農水省が利水のために設置されました施設でございますので、維持管理に関しましては、設置者でございます農水省の方でなさるのが原則かと考えております。ただ、先生も御指摘のとおり、治水上非常に難しいその他の議論がございますので、例えば兼用工作物としてはどうかというような、まだこれからいろいろ議論する問題が残っておるかと思います。その辺はよく農水省の方と協議をさせていただこうと考えております。
  314. 中林佳子

    中林委員 そうしますと、少なくとも管理規程が整備されない限り淡水化試行に入らないと理解してよろしいですか。
  315. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 そのように私どもも考えております。
  316. 中林佳子

    中林委員 次に、環境庁の方にお伺いしたいと思いますが、ことしの三月一日、私の質問に対して環境庁は、農水省の調査だとか検討の結果を待って、その説明を受けて慎重に対応していきたいというふうに答えていらっしゃるわけですが、中間報告について現在どういうようなところまで分析されているのか、また現在のところそれについての御感想があれば聞かしていただきたいのですが……。
  317. 小林康彦

    ○小林説明員 お答えいたします。  本年八月二十日に農林水産省から「宍道湖中海淡水湖化に関連する水理水質及び生態の挙動について」中間報告及び淡水化試行計画の提示を受けまして、現在これらにつきまして慎重に検討を行っている状況にございます。したがいまして、現在は内部的な検討の段階でございます。
  318. 中林佳子

    中林委員 さらに環境庁にお伺いしたいのですが、これまでの中海干拓問題で論議されている国会の審議の過程の中で環境庁は、水門閉め切りは下水道の整備が前提だとおっしゃっているわけですね。その態度は今もお変わりございませんか。
  319. 小林康彦

    ○小林説明員 従来国会で長官を初めお答えをしております事柄は、将来水質汚濁の問題を生ずることのないように、所要の汚濁負荷の削減対策を講ずる必要があるということを述べたものというふうに理解をしております。  現在も環境庁といたしましてはこのような基本的な考え方に変わりはございませんで、水質保全の観点から、本件淡水化問題を検討するに当たりまして、下水道整備を初めといたします汚濁負荷の削減対策の動向についても十分注意を払っていきたいというふうに考えております。
  320. 中林佳子

    中林委員 この周辺の下水道整備は現在まだ対象戸数の三%しか供用開始になっていないのです。ですから、とてもまだ水門閉め切りという段階ではないと、こういうことからしても言えるのではないかと思います。  次に会計検査院にお伺いするわけですが、さきに会計検査院は、国営かんがい事業について、投入された国費が効率的に使われていないとして農水省へ処置要求をしていらっしゃるわけです。その指摘を見ますと、予定工期が二倍以上かかったり、事業費が当初予定の三倍以上にもふえているものがあるとして、事業の適正化を要求しております。  中海干拓淡水化事業は、当初昭和三十八年の予算で百三十八億円、昭和四十六年の段階で二百三十五億円の見積もりをしております。今日八百二十億円で、さらに完成までには、おくれるということも含まって一千億円近くにもはね上がるのではないか。そうすれば六倍から七倍の予算が必要になります。それからさらに工期についても、当初の完成予想は昭和五十一年だったわけですが、今農水省の見込みを聞きますと六十二年とおっしゃっているわけですから、十年以上もの延長になろうとしているわけです。  ですから、国営かんがい事業と比べるとよっぽどこの中海干拓事業の方が国費のむだ遣いと言わざるを得ないというふうに思いますし、周辺の住民が二十八万人も反対している、こういう状況から見て、会計検査院としてどのようにお考えなのか、当然こういうところにはメスを入れるべきではないかと思うわけですけれども、いかがでしょうか。
  321. 永井琢磨

    ○永井会計検査院説明員 お答えいたします。  国営中海干拓事業につきましては、五十六年四月に現地の実地検査を行いまして、その結果につきましては他の国営干拓事業地区とあわせまして五十五年の決算検査報告におきまして、「特に掲記を要すると認めた事項」ということで掲記したところでございます。  その後は、検査計画などの都合上、本地区の実地検査は行っておりませんが、ただいま御指摘のございましたような点につきましては、農林水産本省から、工期が延伸していること、それから事業費も増高していることにつきましてはそれぞれ事情を聞いてございます。このような事態の推移につきましては関心を持っているところでございますので、近い将来事態の調査を行いたい所存でございます。
  322. 中林佳子

    中林委員 大臣、以上明らかにしましたように、この中海干拓事業はかつてない大きな反対世論も巻き起こっておりますし、加えて、治水上の面から建設省初め、水質保全の立場から環境庁、さらに国費の効率的運用の面から会計検査院まで、それぞれニュアンスは違いますけれどもこの事業推進に慎重な対応を求めていると思うのです。淡水化試行の了解が求められている島根県の知事でさえも、さきの十二月県議会で、県の水質管理委員会で淡水化によって汚濁が避けられないということが納得できる、そういう結論が出れば中止せざるを得ない、こういうふうに答弁をしております。ですから、これらの意見に率直に耳を傾けるならば、これまでこの委員会では、慎重に対応していくと大臣はいつも——前大臣の話ですけれども、そのような答弁をされておりますけれども、もうそういう段階ではないのじゃないかというふうに思うのですね。この際、本当に勇気を持って淡水化試行を中止にするべきだ、そういう時期に来ているというふうに思うわけですので、ぜひ大臣、勇気を持って中止すべきだと思うわけですけれども大臣の御見解をお聞かせいただいて終わりにしたいと思います。
  323. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 中林先生お答えいたします。  御存じのように、この事業というのはもともと鳥取、島根両県及び関係十二市町村からの強い要請を受けて実施しているものでございまして、地元においては、先生おっしゃるように反対の声があることはよく承知しております。我が省としては、従来から淡水化試行の実施に当たっては、両県及び関係機関と協議、調整を行うこととし、水質悪化を心配する住民の意向に十分留意し、かつ関係機関の意見を聞いて慎重に対応したい、こう思っております。
  324. 中林佳子

    中林委員 終わります。
  325. 今井勇

    今井委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十一分散会