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1985-08-20 第102回国会 衆議院 内閣委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年八月二十日(火曜日)     午前十時三十分開議 出席委員   委員長 中島源太郎君    理事 石川 要三君 理事 戸塚 進也君    理事 深谷 隆司君 理事 宮下 創平君    理事 小川 仁一君 理事 元信  堯君    理事 市川 雄一君 理事 和田 一仁君       池田 行彦君    石原健太郎君       鍵田忠三郎君    菊池福治郎君       塩川正十郎君    山本 幸雄君       角屋堅次郎君    新村 勝雄君       山本 政弘君    鈴切 康雄君       日笠 勝之君    田中 慶秋君       経塚 幸夫君    三浦  久君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (内閣官房長官藤波 孝生君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 後藤田正晴君  委員外出席者         内閣参事官   中嶋 計廣君         内閣官房内閣審         議官      的場 順三君         内閣法制局長官 茂串  俊君         人事院総裁   内海  倫君         人事院事務総局         管理局長    網谷 重男君         人事院事務総局         給与局長    鹿兒島重治君         人事院事務総局         職員局長    叶野 七郎君         総務庁長官官房         長       藤江 弘一君         総務庁人事局長 手塚 康夫君         総務庁行政管理         局長      古橋源六郎君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁経理局長 池田 久克君         大蔵省主計局給         与課長     竹島 一彦君         運輸省航空局次         長       山田 隆英君         労働省労政局長 加藤  孝君         内閣委員会調査         室長      石川 健一君     ————————————— 委員の異動 六月二十一日  辞任         補欠選任   池田 行彦君     河野 洋平君 同日  辞任         補欠選任   河野 洋平君     池田 行彦君 七月十八日  辞任         補欠選任   田中 慶秋君     横手 文雄君 同日  辞任         補欠選任   横手 文雄君     田中 慶秋君 八月十九日  辞任         補欠選任   三浦  久君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   東中 光雄君     三浦  久君 同月二十日  辞任         補欠選任   柴田 睦夫君     経塚 幸夫君 同日  辞任         補欠選任   経塚 幸夫君     柴田 睦夫君     ————————————— 六月二十五日  一、地域社会における公共サービスの向上のた   めの新社会システムの開発に関する法律案   (鈴切康雄君外三名提出、第百一回国会衆法   第一八号)  二、国家秘密に係るスパイ行為等の防止に関す   る法律案伊藤宗一郎君外九名提出衆法第   三〇号)  三、行政機構並びにその運営に関する件  四、恩給及び法制一般に関する件  五、公務員制度及び給与に関する件  六、栄典に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公務員制度及び給与に関する件(人事院勧告  )  恩給及び法制一般に関する件(内閣総理大臣そ  の他の国務大臣靖国神社公式参拝問題)  行政機構並びにその運営に関する件      ————◇—————
  2. 中島源太郎

    中島委員長 これより会議を開きます。  行政機構並びにその運営に関する件、恩給及び法制一般に関する件並びに公務員制度及び給与に関する件について調査を進めます。  まず、去る七日の一般職職員給与改定に関する勧告及び休暇制度改定に関する勧告につきまして、人事院から説明を聴取いたします。内海人事院総裁
  3. 内海倫

    内海説明員 去る七日に勧告いたしました勧告について御説明を申し上げます。  人事院は、去る七日、公務員給与に関する報告及び勧告並びに休暇に関する報告及び勧告国会及び内閣提出いたしました。本日、早速勧告内容について御聴取いただく機会を与えられましたことに感謝をいたしております。以下、二つ勧告内容概要を御説明いたします。  まず初めに、給与に関する勧告内容について御説明をいたします。  本年も、従来と同様の方式により、四月時点における官民給与を厳密に比較いたしました。その結果、官民給与較差金額で一万四千三百十二円、率で五・七四%であることが判明いたしましたので、公務員給与についてこの較差を解消することといたしました。この較差は、昨年の一万五千五百四十一円、六・四四%の改定勧告が八千百三十八円、三・三七%の実施にとどまったこと、及び本年の春闘による民間給与の上昇を反映したものとなっております。  改善に当たりまして、民間企業における年齢別地域別給与配分の状況、公務員在職実態及び生活面等を詳細に検討し、一万四千三百十二円の較差の何分として、俸給に一万一千九百七円、四・七八%、手当に千六百八十四円、〇・六七%、この改善定率手当へのはね返り七百二十一円、〇・二九%といたしました。  まず、俸給表につきましては、初任給、三十歳ないし四十歳代、管理職員層に重点を置きつつ、全俸給表にわたって、金額改定を行っております。特に本年は、職務責任に応ずる給与原則をさらに、推進するため、現行俸給表等級構成を、例えば行政職俸給表(一)につきまして、現行の八等級制を十一級制に改めるなど再編整備するとともに、航空管制官特許審査官審判官等を対象とします専門行政職俸給表の新設、定年制度実施を踏まえた号俸構成整備等を行うことを内容とした俸給制度の大幅な改正についても勧告をいたしております。また、指定職俸給表につきましては、諸般の事情を勘案し、行政職と同程度の改善といたしております。  次に、手当につきましては、まず給与地域別配分を適正化し、大都市における人材確保等を図るため、東京、大阪等大都市に勤務する職員等に対する調整手当支給割合を九%から一〇%に改めることといたしました。これと均衡上、筑波研究学園都市移転手当等支給割合についても同様の措置を講ずることといたしております。その他、扶養手当通勤手当住居手当、医師の初任給調整手出についても、民間における給与実態等を考慮して所要改善を行っております。  特別給については、公務員の期末。勤勉手当年間平均支給月分民間のボーナスの年間支給月分とがほぼ均衡しておるので、据え置いております。  実施時期につきましては、当然のことではありますが、本年四月一日からといたしております。  勧告をいたすに当たり、報告の中で申し述べておる骨子について御説明を申し上げます。  まず、人事院勧告制度意義について、これが労働基本権制約に伴う代償措置であるという趣旨に照らしましても、この制度が尊重され実施されるべきものであって、それによってこの制度が適正に機能することが極めて重要であるということを述べますとともに、人事院給与勧告が、職員にとってほとんど唯一の給与改善のための機会となっていることについて御理解を求めております。  次に、職員現状を見ますと、職員給与は連年にわたり抑制されてきておる実情にあり、このことが職員勤務意欲及び生活面公務における労使関係の安定に影響を及ぼすことを懸念し、また、公務への人材確保の面から、将来にわたる国の行政のあり方に与える影響を憂慮する声の大きいことを指摘しております。  本院としては、このような給与勧告取り扱い公務運営影響を及ぼすことのないよう、速やかに異例の事態が解消され、勧告どおり給与改善実施される必要があることを痛感している旨を述べております。  さらに、国会及び内閣におかれては、労働基本権制約代償措置である人事院勧告制度意義、並びに職員行政の各分野において真摯に職務に精励している実情及び給与をめぐる現状に深い理解を示されるとともに、本年の勧告官民給与較差を埋め合わせるのみならず、職務責任に応じた給与原則をさらに推進するための給与制度改定についても措置しているものであることに御留意をいただき、この勧告を速やかに実施されるよう強く要請いたしております。  次に、休暇勧告について御説明いたします。  一般職職員休暇につきましては、国家公務員法規定が適用せられるまでの官吏の任免等に関する法律により、太政官布告第二号等の「従前の例」によることとされているため、これを法制的に整備し、あわせてその内容についても現在の社会情勢に適応したものとする必要があると認められますので、今般、給与法第二条第五号の規定に基づく勧告を行いました。  今回の休暇制度改定の主要な点を申し上げれば、第一に、休暇に関する基礎事項給与法で定めることとしたこと、第二に、休暇内容につきまして、民間実情等を考慮して結婚休暇等を新設する一方、親族の死亡等を事由とする休暇等について期間の縮減等を行うこととしたことであります。  なお、このほか、国民の祝日に関する法律による休日における勤務義務の免除の取り扱いを整備する等、所要体系整備を行うことといたしております。  休暇制度改定実施時期については、昭和六十一年一月一日からといたしております。  最後に、給与報告の中で言及いたしております職員週休二日制につきまして御説明申し上げます。  週休二日制につきましては、民間における情勢等を考慮いたしますと、公務においても近い将来四週六休制へ移行させる必要があるものと認められます。このため、当面、四週五休制の枠内で現行の運用を弾力化し、四週間の中の二回の土曜日について四分の一ずつ交代で休む方式を導入するなど、所要対応策検討する必要があるものと申し述べております。  以上、給与及び休暇についての二つ勧告内容及び報告概要を御説明申し上げましたが、国会及び内閣におかれましては、人事院勧告意義を御理解賜るとともに、行政のさまざまな分野において誠実にその職務を遂行しておる公務員及びその給与休暇をめぐる現状について深い御理解を賜り、何とぞこの勧告をぜひとも早急に実施していただくようお願いを申し上げまして、説明を終わらせていただきます。
  4. 中島源太郎

    中島委員長 この際、内閣総理大臣その他の国務大臣靖国神社公式参拝について、政府から発言を求められておりますので、これを許します。藤波内閣官房長官
  5. 藤波孝生

    藤波国務大臣 お許しをいただきまして、内閣総理大臣その他の国務大臣靖国神社公式参拝について御報告を申し上げたいと存じます。  去る八月十五日は、「戦没者追悼し平和を祈念する日」でありまして、戦後四十年目に当たる記念すべき日でもございましたが、内閣総理大臣は、気持ちを同じくする閣僚とともに、靖国神社内閣総理大臣としての資格での参拝、いわゆる公式参拝実施いたしました。  この公式参拝趣旨目的配慮すべき事項等につきましては、その前日、あらかじめ内閣官房長官定例記者会見におきまして、内閣官房長官談話の形で発表を行い、明らかにいたしたところでございます。  詳しいことはその談話をお手元に差し上げてございますのでごらんになっていただきたいと存じますが、要点のみを申し上げますと、この公式参拝は、国民遺族方々多数の強い要望にこたえたもので、戦没者追悼し、あわせて我が国世界の平和への決意を新たにするためのものでございます。  憲法政教分離原則規定との関係につきましては、その方式等の面で十分配慮をしておりますが、また、戦前の国家神道軍国主義の復活に結びつくのではないかとの懸念につきましても配慮をいたしており、今後も十分そのようにいたしてまいりたいと存じます。さらに、国際関係の面でも、我が国が従来と同様平和国家としての道を歩んでいるものである旨、外務省を中心にいたしまして諸外国の理解を得るよう十分努力をいたしておるところでございます。  なお、靖国神社参拝問題に関しましては、お手元に差し上げてございますように、昭和五十五年十一月十七日の政府統一見解がございましたが、閣僚靖国神社参拝問題に関する懇談会報告書参考といたしまして政府で慎重に検討をいたしました結果、今回のような公式参拝憲法が禁止する宗教的活動に該当しないものと判断したわけでございまして、その限りにおいてこの統一見解変更したものでございます。  昭和五十五年十一月十七日の政府統一見解変更に関する政府見解を申し上げたいと存じます。   政府は、従来、内閣総理大臣その他の国務大臣国務大臣としての資格靖国神社参拝することについては、憲法第二十条第三項の規定との関係違憲ではないかとの疑いをなお否定できないため、差し控えることとしていた。   今般「閣僚靖国神社参拝問題に関する懇談会」から報告書提出されたので、政府としては、これを参考として鋭意検討した結果、内閣総理大臣その他の国務大臣国務大臣としての資格で、戦没者に対する追悼目的として、靖国神社本殿又は社頭において一礼する方式参拝することは、同項の規定に違反する疑いはないとの判断に至ったので、このような参拝は、差し控える必要がないという結論を得て、昭和五十五年十一月十七日の政府統一見解をその限りにおいて変更した。  以上が、昭和五十五年十一月十七日の政府統一見解変更に関する政府見解でございます。  なお、さらに具体的に少し何一百をいたしますと、当日、政府主催追悼式典が終了いたしました後、内閣総理大臣靖国神社に赴きまして、そして拝殿から本殿に進み、一切のいわゆる神社形式による参拝形式をとらず、本殿に参進して一礼をして帰ってくるという形をとらせていただきました。  なお、戦没者追悼し平和を祈念するという誠をささげますために、靖国神社お願いをいたしまして、供花をお供えすることにし、そしてその手配、配置をお願いして、その代金を公費で支出するという形をとらせていただきました。  なお、各閣僚につきましては、内閣総理大臣はこのような形で公式参拝をするということを説明いたしました後、各閣僚の全く自由な御判断によって参拝してもらうことにいたしました。これは憲法との関係信教の自由を保障するためでございます。その結果、大部分の閣僚内閣総理大臣気持ちを同じくして同じような形で参拝をするということになった次第でございます。  以上、具体的なことも付言をさせていただきまして、お許しを得て報告を申し上げた次第でございます。
  6. 中島源太郎

    中島委員長 これより質疑に入ります。     —————————————  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小川仁一君。
  7. 小川仁一

    小川(仁)委員 先に、今回の総理公式参拝問題について御質問を申し上げたいと思います。  なお私は、前回のいわゆる十五年戦争、第二次世界大戦において、非常に多くの友人、そして知己、親戚を失っておりますし、教師をしておりましたがゆえに、たった一人ではございますが、自分の教え子を戦場に散らしている、こういう立場の者でございます。同時に、その戦争中におきまして、その時代における一つの風潮の中で、抗するすべもなく、いやむしろやや積極的な立場でこの戦争を推進する一人の国民であったということの反省も含めながら、戦後のこの変化の中で自分なりに考えてまいったものでございますが、特に国の命令で私の友人、知人を含めて大勢の国民が亡くなられた、自分意思いかんにかかわらず国の命令自分の青春を失った人たち、こういう人たち追悼することに一つもやぶさかでありませんし、むしろ積極的に、あるいはいろいろな会合、その節目には、もう再びこういう悲惨な戦争の状態は起こしませんということを誓いながら現在まで生きてきた者でございます。そういう立場を前提にしながら、ただいま御報告がありました官房長官談話並びに総理の行動について御質問を申し上げたいと思います。  まず最初にお聞きしますが、今回の公式参拝は従来からの政府統一見解を百八十度変えたものでございます。公式参拝違憲ではないかとの疑いを否定できない、この言葉は素直に言えば公式参拝違憲である、こういう言い方につながります。宗教色を薄めた今回のようなやり方なら、社会通念憲法に定める政教分離に反しないといったような感じての百八十度の転回ということに対して非常な疑問を持ちながら、これを変えた根拠になりました私的諮問機関というものの性格についてお伺いをいたします。  官房長官私的諮問機関、これは一体どういう性格を持つものでしょうか。後藤田総務長官は前に、私的諮問機関意見交換の場にとどめるべきで審議機関と紛らわしい取り扱いはすべきでない、こういうふうに正確に私的諮問機関といわゆる政令あるいは国会決定審議機関との違いを指摘されております。にもかかわらず、今回、私的諮問機関報告によって、国会の了承も得ず、政府統一見解を、それは私たちは不満足ではありますけれども、国会の中で一応一つ事態として進行しておったそういう見解変更したということは非常に大きな問題だと思いますので、政府統一見解私的諮問機関報告に基づいて変えたという点についての御見解を承りたい。
  8. 藤波孝生

    藤波国務大臣 近年、国民あるいは御遺族の方方などから、あるいはいろいろな団体の方々から、靖国神社戦没者追悼する中心的な施設である、この靖国神社の場所で戦没者追悼する、内閣総理大臣閣僚が公人としてその追悼をしてもらいたい、こういう強い御要望がございました。自由民主党からも強い御指摘があったところでございます。政府といたしましては、この問題は従来統一見解をもって当時の宮澤官房長官国会お話し申し上げてきておるという経緯もございますし、特に憲法問題との関係につきましては十分慎重に検討する必要がある、このように考えまして、時間をかけて検討するという態度をとってきたところでございます。  そんな中で、行政が独断で判断をするというようなことになってはいかぬと考えまして、私的懇談会お願いをいたしまして、法律学者方々宗教学者方々、いろいろな角度から御活躍をいただいております各界代表方々にお集まりをいただき、内閣総理大臣等靖国神社参拝問題についての懇談会お願いをいたしまして、約一年間、二十一回にわたる会合を重ねていろいろな角度から御意見を出していただいたところでございます。  それらの報告書が出されたところでございますが、この報告書によって決定したというのではなくて、あくまでも慎重に検討してまいりました政府といたしまして、この懇談会報告十分参考にさせていただきまして、さらに政府として独自の検討をし、そしてその上に立ちまして憲法との問題をクリアしなければいかぬ、こういうふうに考えました結果、いわゆる宗教的活動、さらにそのような活動だというふうに誤解を受けるようなことのないように、また十分この問題について信教の自由が確保されるような形をとらなければならぬ、そんなことをいろいろな角度から検討もいたしまして、その上に立ちまして靖国神社公式参拝するということを決定したところでございます。  なお、国会との関係でございますが、国会におきますこの問題についてのいろいろな御論議を従来いただいてまいりましたことも十分参考にさせていただきまして、態度決定に非常に有益に御指導いただいた、このように考えておるところでございます。  なお、事前に国会報告あるいは御相談を申し上げるべきではなかったかという御指摘がございましたが、もう八月十五日のぎりぎりまで検討いたしてまいりました。その上に立ちまして態度決定いたしまして、そして昨日衆議院、参議院の議院運営委員会理事会におきまして御報告を申し上げたところでございます  今後とも、この問題について、国会さらに各党からのいろんな御指導を賜りますように切にお願いを申し上げる次第でございます。
  9. 小川仁一

    小川(仁)委員 私的諮問機関というものの性格は、あくまでそれは報告書提出するなどという性格のものではなくて、十分そこでお話をし合うという性格のものでありますが、中曽根政治の中には、この私的諮問機関多用による政治手法がございます。今回の靖国問題につきましても、中曽根総理の指示で設けられた官房長官私的諮問機関であり、その人選等もたれに諮ることなく、あなた自身があなたの好みで決められた人選でございます。こういうところにこの私的諮問機関性格が明確だと思うのです。それを、報告書参考にした、こう言っておられますけれども、これは個人が、官房長官参考になされるのはいいですけれども、政府方針変更参考にするということについてはどうしても納得できない。そして同時に、先ほどのお話ですと、国会論議参考にした、こう言う。国会論議諮問機関論議というのを同一水準に置いて、政府参考材料にしかならないとすれば、一体立法府というものがどういう性格を持ち、国会審議の中における政府統一見解というものの重み、こういうものはどういうものであろうか、再度この点についてただしたいと思います。
  10. 藤波孝生

    藤波国務大臣 政府は、いろいろな施策を推進いたしてまいります中で、あるいはいろいろな政治上の判断をいたします中で、国会の御論議を最も重視して尊重して、これを十分頭に置いて取り組んでいかなければならぬ、こう常々考えてきておるところでございますし、また、この問題につきましても同じように国会での御意見、御論議十分念頭に置いて検討し、判断をしなければならぬ、こう考えまして取り組んできたところでございます。  なお、私的懇談会の問題でございますが、いろいろな各界からの代表方々にお入りをいただきまして、いろんな角度から、大所高所から御意見をお寄せいただきました。運営につきましては、日本赤十字社の社長であります林敬三さんを座長にお願いをいたしまして、全くこの懇談会の山主的な御判断、御運営お願いしてきたところでございます。みんなそれぞれ意見が出たので報告書という形をとろう、こんなふうにおっしゃっていただきましたので、報告書という形で受け取らせて一いただいたところでございます。  なお、この懇談会の中では、従来の靖国神社に関するいろんな経緯でございますとか、あるいはこの靖国神社参拝問題についての各方面のいろんな御意見でございますとか、世界各国の、その国のために亡くなった方々への追悼の仕方などについてのいろいろな資料でございますとか、そういったことが十分この懇談会にお寄せがありまして、それらも非常にこの懇談会意見交換の場で参考になったのではないか。  政府といたしましても、ただ懇談会報告を受けた、それを参考にしたというだけではなくて、この間にいろいろな角度から勉強をしていただきました資料十分参考にさせていただくことができた、こんなふうに考えておる次第でございます。
  11. 小川仁一

    小川(仁)委員 今のようなお話を聞きましても、私的諮問機関報告書参考にしたということによって、国会においてほぼ各党のある程度の、一致とまではいきませんが了解を得た政府統一見解変更しなければ一ならない理由並びに根拠、一切ないと私は感ずるんです。私的諮問機関国会における政府統一見解をどんどん変えていくというような政治手法が行われるならば、これから以降の国会政府の答弁というものは、どんなに閣議決定をして我々の前に出されたものでも、後でその諮問機関が何かやるというとすぐ変えられる、こういう悪例を残すことになりますので、この点についてはどうしても納得できません。  それともう一つは、皆さんが参考にされた私的諮問機関の中でも、決して意見がまとまった報告書ではない、幾つもの意見が存在した。特に憲法学者の立場方々は、法的な立場から違憲という問題を提起しておられる。法治国家であるこの日本の国が、憲法学者によって違憲疑い報告書の中に書かれたときに、なぜ憲法に基づいてもう一度再検討するということをなされなかったのか。また、報告書が出されて八月十五日までの間、一定の日数があったはずであります。国会は閉会中といえども必要があればこれを召集することができるはずであります、委員会等も。なぜ国会に御相談をなさらなかったのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  12. 藤波孝生

    藤波国務大臣 まず国会との関係でございますが、先ほども申し上げましたように、十四日ぎりぎりまでいろんな角度から検討をいたしてまいりました。その検討は、今も御質問がございましたように、報告書の中にいわゆる憲法学者の方々などのいろいろな御意見がございました。したがいまして、私もできるだけ懇談会には出席をいたしましていろんなお話を伺うようにいたしましたが、そんな中で特に憲法との問題などについて強い御指摘もございまして、それらも報告書の中では全部併記されておるわけであります。併記されておる事柄などにつきましても一つ一つ十分慎重に検討をいたしまして、どのように態度を決めるかということで時間を重ねてきたところでございます。  最終的に、宗教的活動、そういった誤解を与えることのないようにといういろいろな検討をいたしまして、神社のいわゆる宗教儀式による参拝、別の言葉で申しますと、普通は、神社にお参りをいたしますときには、おはらいをして玉ぐしをささげて二洋二拍手一拝というような参拝形式がございます。そのような形式をとらないで、靖国神社に赴いて一礼をするという形をとらせていただきました。それを靖国神社お願いに参りましたのが十四日の午後でございまして、靖国神社は非常に困惑をいたしました。靖国神社自身は神社界の中で神社本庁には所属をいたしておりませんけれども、靖国神社自身長い間のしきたりがある。そして、全国のいわゆる神社界からも靖国神社への参拝がどんな形になるのかということが注目をされておる中で、そういう宗教儀式を排した一礼というお参りの仕方ということについて非常に困惑をされまして、宮司さん、いろんな御意見がございました。しかし、憲法等をよく検討した結果、こういう形をとらせていただくということのお願いをしたのが十四日であったわけでございまして、どうして事前に国会に了解を求めなかったのかということにつきましては、まことに申しわけないと思いますけれども、これは政府が、政府自身統一見解として従来考え方を申し上げてきたところのものを今回一部変更するということになりまして、参拝をいたしました後、早速に衆議院、参議院の議院運営委員会理事会に報告するという形をとらせていただきましたので、どうか御了解を賜りますようにお願いを申し上げる次第でございます。
  13. 小川仁一

    小川(仁)委員 終わってから報告したから了解してくれという言い方は、これは国会の今までの経緯を否定するものでありまして、国会としては、立法府としては絶対了解できません。  それからもう一つ、今形式をお変えになったと言う。参拝形式というのはいろいろございます。戦争中、我々は護国神社や靖国神社参拝をするときには、学生であっても銃を担っていって捧げ銃の礼をした。また一般市民は、今参拝するときにはおさい銭を投げて一礼をする、あるいは形式的に一礼二拍手一礼をやっているかもしれません。こういうのは形のあらわし方の問題でありまして、形を変えたから宗教活動に当たらないというのは、小手先のごまかしであります。公式参拝は、靖国神社自体に対して非常に大きな影響を与える精神的な援助になると思います。したがって、今回のこの公式参拝は、政教分離原則にもとると思います。  今までの経緯を踏まえて、法制局として、この政府統一見解が百八十度転回してこういう形をとったことに対する見解を求めたいと思います。特に憲法の解釈は最高裁の判断が最優先いたしますけれども、日常、国会等では法制局が法律立場憲法解釈等を行っておりますので、法的な立場からの明確な見解を求めます。
  14. 茂串俊

    ○茂串説明員 お答え申し上げます。  先ほどからいろいろと御指摘のございます政府統一見解、これは昭和五十五年十一月十七日に当時の宮澤官房長官が本院の議運委の理事会でお読み上げになったものでございまして、五十五年当時、この靖国参拝問題につきまして国会でいろいろと活発な御論議がございました末、国会の閉会宮前になりまして統一見解を求められてお出し申し上げたという経緯であると承知しております。  当時のことを振り返って考えてみますと、私どもの立場からいたしますと、この靖国神社公式参拝問題というのは、非常にデリケートと申しますか、国民の意識に深くかかわり合いのある問題でございまして、法理の一点だけで結論を出すということは非常に難しいことでございますので、当時としましては、公式参拝そのもの全体をグローバルにとらえまして、これはなかなか合憲とにわかに断じがたいという含みを持ちまして、あのような統一見解提出した次第でございます。  そこで、今回の公式参拝の合憲性の問題でございますが、これにつきましては、委員も御承知のとおり、法律的な判断の一番の根拠をなしますものが、昭和五十二年の津地鎮祭判決に関する最高裁の判決でございます。この判決におきましては、憲法の禁ずる国の宗教的活動というのは、「行為の目的が宗教的な意義をもち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為をいうもの」とされ、また、ある行為がこの宗教的活動に該当するかどうかを検討するに当たっては、その行為の外形的側面のみにとらわれることなく、諸般の事情を考慮して社会通念に従って客観的に判断すべきであるという判示がなされておるわけでございます。  ところで、今回の参拝につきましては、まず、国民遺族の多くが、靖国神社戦没者追悼の中心的施設であるとして、その神社において総理閣僚戦没者追悼を行うことを望んでいるという事情を踏まえまして、そして専ら戦没者追悼という宗教とは関係のない目的で行われるものであり、しかも神道儀式によることなく、追悼行為として世俗に行われておる一般の方式によって追悼の意を表するものでございますから、その意味で、今回の参拝につきましては、その目的及び効果の面から考えましても、憲法二十条三項の禁止する「宗教的活動」に該当しないというふうに考えまして、そして今回の参拝に踏み切った、このような事情でございます。
  15. 小川仁一

    小川(仁)委員 私は、御質問申し上げたのは、法理上の問題を御質問申し上げたのであって、社会通念上の問題なんかお聞きしていません。  それで、そういう御答弁をなさるのなら、内閣法制局長官にお聞きしますけれども、社会通念上というものの解釈と、それから多くの国民が望んでいるということの具体的実例を挙げてください。少なくとも国会においては、国会議員の野党すべてと自民党と連立を組んでおられる新自由クラブの方々もこれに対する反対の表明をしておられるということは、少なくとも国会議員の半分はこれに反対しているということじゃないですか。なぜこれが多くの国民が望んでいるという言い方に変わるのか。あなたがそういう御答弁をなさるのなら、あなたの方からこの具体的情勢をどう把握したか、判断基準をどう把握したか、御答弁願いたい。
  16. 茂串俊

    ○茂串説明員 その点につきましては、先ほど官房長官からの御答弁にもありましたように、靖国神社問題に関する懇談会におきまして、各界の有識者を集めまして、そこで一堂に会した上でいろいろと意見を出していただきまして、そして大勢の意見としまして、ただいま申し上げたような靖国神社戦没者追悼の中心的施設である、そこで、その場所で総理閣僚の皆様方にぜひ戦没者追悼の意を表してほしいというのが多くの国民及び遺族の願いであるというような、いわゆる社会的な一般的な考え方としましてそのようなことが報告書に述べられておるわけでございまして、我我としましてもそのような各界各層にわたる非常に権威のある有識者の意見のそれが大勢であるということを考えまして、それを尊重して私どもとしてはただいま申し上げたような結論になったわけでございます。
  17. 小川仁一

    小川(仁)委員 私が言っているのは、法律論的に公式参拝が宗教活動に当たるか当たらないか、法律論で一つ。  それから、あなたが多くの国民が望んでいるとこうおっしゃるから、私的諮問機関の結論をあなたが報告を受けたわけじゃあるまい、そばで聞いているだけだ。だから具体的に、国民の多くが望んでいるというのを望んでいないというように、私は国会議員の数の例証を挙げて質問しているのだから、それに対して、多くが望んでいるという判断基準を、私的諮問機関報告に求めるのではなくて、あなた自身がどういうふうに把握したのか、法制局としてどういう調査をしたのか、こういう立場をはっきりしてください。あなたがそう答弁なさるから、逆にそういう質問を申し上げる。
  18. 茂串俊

    ○茂串説明員 二点の御質問があったと思います。  第一点は、今回のいわゆる靖国神社公式参拝法律的に見て一体憲法適合性があるのかどうかという点でございます。  この点につきましては、先ほど申し上げましたように我々の法律判断の基本的な基礎をなしますものはいわゆる津地鎮祭に関する最高裁判決でございまして、いわゆるこの目的効果論に依拠して、先ほど申し上げたようなことで、今回のような形の公式参拝憲法二十条三項に言う「宗教的活動」に該当しないという結論を得たわけでございまして、この点は先ほどるる申し上げたとおりでございます。  それから第二点の、靖国神社戦没者追悼の中心的施設である、その点についてどういうような判断を持っておるのかという点でございますが、この点につきましては、これは我々としましては、従来から靖国神社の位置というものは一体どういうものかということにつきまして、いわば社会的な通念と申しますか、そういった点での判断というものが非常にしかねるという点も一つの問題でございました。その点につきまして、先ほど申し上げましたように、各界各層の有識者から成る懇談会のメンバーからいろいろな意見が出まして、そうしてその結果としてそのような靖国神社の位置づけというものがいわば大勢として判断されたわけでございまして、我々としてはそのような各界各層の有識者のいわば大勢の意見であるということを尊重してこれにのっとるということになったわけでございます。
  19. 小川仁一

    小川(仁)委員 法制局長官にもう一度お伺いしますが、津の地鎮祭の問題はかなり前に判決が出ているわけです。そのことによって法律的に今回のような行事が、公式参拝が許されるのなら、政府統一見解変更するようにあなた自身法律立場で申し入れた事実がありますか、あるいは見解を表明した事実がありますか、津の地鎮祭の判決が出た後に。これはあくまで次元の違う問題なんです。だから今まで黙っていたでしょう。今回こういう格好になったから、無理して津の地鎮祭の判決を引っ張ってきた、こういう形でしか私には理解できませんが、その経緯どうですか。
  20. 茂串俊

    ○茂串説明員 若干ダブったお答えになりますけれども、政府は、先ほど申し上げましたように、昭和五十五年の十一月十七日に宮澤官房長官がお読み上げになりましたいわゆる政府統一見解があったわけでございます。そこで、今御指摘のとおり津の地鎮祭判決につきましては、既にもう昭和五十二年の七月だと思いましたが判決が出ておりまして、そこで政教分離原則とは何か、政教分離規定の意味するところはどういうものかということにつきましてるる判示がございまして、その中で特に憲法二十条三項の「宗教的活動」とはどういうものであるか、またこれを「宗教的活動」に当たるかどうかということはいかにして判断すべきであるかということは、非常に一般的な形で述べられておるわけでございます。  ただ、この内容をごらんになりますとおわかりになりますように、結論的には、いろいろな諸般の事情を考慮して、社会通念に従って客観的に判断をすべきであるというような判示になっておるわけでございまして、この靖国神社公式参拝に関しましても、一体この社会通念とはどういうものかということは非常に難しい問題でございまして、先ほど申しましたように単に法理の一点だけで結論を出すというわけにはまいりませんでした。  そこで、私どもといたしましても、この目的効果論が出ましても、今の本件の問題につきましてすぐに見解を改めるとかあるいは一定の方向づけをするとかいうことは非常に難しいということ、これは実はもう当時から、あるいはその後におきましても、私の前任者である角田長官あるいは私からも国会でもるる御答弁申し上げている点でございまして、いずれにしてもこのような社会通念を把握しなければ結論が出ないような問題であるということで、その意味におきまして、我々としては従来の見解をそのまま維持していたところでございます。
  21. 小川仁一

    小川(仁)委員 どうも私の質問に的確にお答えをいただかないようです、長い御答弁ではございますけれども。  それで、この政府見解、行動に対して、あなたはこれは合憲的であるという見解をお述べになったのかどうか、この点についてだけ明確にお話しを願いたい。
  22. 茂串俊

    ○茂串説明員 先ほども申し上げましたが、今回実施されました公式参拝という形における参拝は、これは合憲であるということを申し上げた次第でございます。
  23. 小川仁一

    小川(仁)委員 一片の疑いもそれはございませんね。念のために聞いておきます。
  24. 茂串俊

    ○茂串説明員 これは、我々専門的な立場で十分に検討した結論でございます。
  25. 小川仁一

    小川(仁)委員 社会通念という漢としたもので法律解釈をなさるなら、社会通念というのは非常に幅の広いものでございます。社会通念によって物を考えるというふうな考え方を法制局がおとりになるということ自体、非常に大きな問題です。文化的あるいは習俗的、伝統的な問題もあるでしょうが、こういう問題で法制局が今後物をお決めになるという考え方については、法制局の存在肉体さえ疑いたくなるものであります。しかも、官房長官談話によれば、「憲法の禁止する宗教的活動に該当するか否かを的確に判断するためには社会通念を見定める必要があるが、これを把握するに至らなかったため」だと書いてある。社会通念を把握したというのは、閣僚靖国神社参拝に関する懇談会報告書参考にして把握したと書いてある。ところが、報告書を作成した人たちはあなた自身が人選をなさった、いわゆるブレーンと言われる人たちであります。幾つか反対の人もいましたが、その人たち意見一つも入れなかった。社会通念を把握するというなら、官房長官、とてもこの私的諮問機関の人数だけでは把握し切れないのじゃないでしょうか。ここにだけ口実を求めて社会通念、こういった言い方をするというのは、憲法を無視し、小手先を弄し過ぎだと思いますが、いかがでございますか。
  26. 藤波孝生

    藤波国務大臣 靖国神社参拝問題に関する懇談会方々各界代表的な方々と、こう思っておりまして、決して自分の好きこのみで選んだということではなくて、できる限り広い角度から選考いたしまして、御意見をお寄せいただきたいということでお願いを申し上げたところぞございます。ずっと我が国古来からのいろいろな宗教問題についてお話をいただいた方もいらっしゃいましたし、中にはクリスチャンで、靖国神社を離れて、国のためにあるいは公のために亡くなった方々追悼するような新しい施設をつくってはどうかといったような立場で御意見をお述べになった方もありましたし、法律学者方々憲法との関係を非常に克明にお述べをいただいたというようなときもございましたし、十五名の方々は非常にお忙しい方々ですが、慎重に回を重ねていろいろな立場から御意見を寄せていただいた、このように考えておる次第でございます。もっとも、その受けた報告書を、決して懇談会がこういうのが大勢であったからということで政府が決めたということではなくて、責任はあくまでも政府にございますけれども、一年間かけていろいろ御意見をお寄せをいただいてまいりましたその報告でございますので、十分参考にさせていただいた、そして、先ほど先生から御指摘がございましたようなそういう感じをうかがい知ることができましたことを背景にし、さらにいろいろな角度から検討を重ねました結果、今度の靖国神社公式参拝という形をとって実施するということに結論を導いた次第でございます。
  27. 小川仁一

    小川(仁)委員 やはり依然として、社会通念というものを解釈する判断の基準あるいは判断の基礎というものについてはどうしても了解できませんが、質問を変えまして、靖国神社自体の性格について質問をいたしたいと思います。  これはこの報告書概要にも書いてありますが、明治二年、東京招魂社として設立されました。この明治二年に設立されたというのは、戊辰の役の戦死者、当時の天皇の軍隊、違った言い方をすれば当時の権力を握っておりました薩長政権の軍隊、ここで天皇の軍並びにその権力機椎の軍に所属しておった人たちだけを祭ったのです。したがって天皇に対していわゆる忠誠を誓った人たち。国内において意見が違った者たちはここから排除されておる。靖国神社自体が現在も東京招魂社以来ずっと続いているのだとすれば、これは天皇制と深くかかわった性格を持つ神社である、そう考えてよろしゅうございますか。
  28. 藤波孝生

    藤波国務大臣 靖国神社経緯についてのお話がございましたが、靖国神社は明治十二年に東京招魂社を改称したものでございます。その東京招魂社は明治二年に、今お話がございましたように戊辰以来の戦死の士を祭るものとして営まれてきたところでございます。以来今次大戦の終戦に至りますまで、同神社は戦没者等を祭神といたしまして祭ってきたというのが経緯でございます。戦後、靖国神社は、所要の手続を経まして昭和二十一年に宗教法人となり今日に至っております。現在、しながって宗教法人靖国神社ということになっておるわけでございます。  問題は、今先生の御指摘とかかわることになりますが、その靖国神社経緯を頭に置くわけでございますけれども、国民の皆さん方や遺族の大部分の方々戦没者追悼する場所として靖国神社が中心的な施設である、こういうふうに考えておるところがございまして、ぜひ戦没者を公人としての立場追悼するということを靖国神社で行ってほしい、こういう強い御要望がございまして、それは戦没者追悼の中心的施設であるというふうに理解をしておるということを背景としたものでございますが、その上に立ちまして靖国神社戦没者追悼し、公式参拝するという形をとらせていただいたところでございます。深い御理解を賜りますようにお願いを申し上げます。
  29. 小川仁一

    小川(仁)委員 私の質問は、靖国神社性格は天皇の軍隊、それは戊辰の役以来日清、日露から今度の戦争までの間、天皇の統帥権のもとに天皇の軍隊として戦って死んだ者を祭っているという神社でありますから、天皇制と深くかかわっているなということに対する見解を求めたのでございます。その辺はっきりしませんからもう一度お答え願いたい。  それから、今祭神という言葉がありました。祭る神。では、靖国神社に祭られている祭神はどういう性格を持つ神様でございますか、お伺いをしたいと思います。
  30. 藤波孝生

    藤波国務大臣 靖国神社経緯あるいは靖国神社性格につきまして御質問がございましたので、そのままお答えをしたところでございます。  問題は、そこで公式参拝するということについての御質疑でございますが、それは今お話を申し上げましたような宗教法人靖国神社が、国民あるいは遺族方々の大部分が戦没者追悼の中心的施設であるというふうに靖国神社を考えているということを背景といたしまして、そこでぜひ公式に参拝をしてもらいたいということでございましたので、靖国神社に赴いて一礼をするという形で戦没者追悼するということをいたした次第でございます。靖国神社をめぐっての先入観とか靖国神社に対するいろいろな考え方はあろうと思うのでございます。ただ、靖国神社は今申し上げてまいりましたように国のために一命を捨てて亡くなった方々をお祭りする、これは靖国神社の方でそのように言っておるわけでございますが、そういう方々を祭神としてお祭りしているというのが靖国神社のお立場であるというふうに私どもは宗教法人靖国神社理解いたしておるところでございます。(小川(仁)委員「だから祭神はどういう性格を持つのだ」と呼ぶ)亡くなられた方々を神として祭るというふうに靖国神社は言っておられまして、その宗教法人靖国神社が言っておられることを私が今御紹介申し上げたところでございます。
  31. 小川仁一

    小川(仁)委員 靖国神社が言っていることをそのまま言われても困るので、靖国神社が言っていることやいろいろな経過を政府がどう認識しているかということを私はお聞きしているのです。  それで戦前でございますけれども、靖国神社の祭神の働きを当時の大宮司が言っております。靖国神社の祭神はにぎたまとあらたまという二つ性格を持つ。にぎたまというのは平和時に国の安全を守り、戦時になるとあらたまとなって天皇の護持と戦場の将兵の守護神となる、天かける神である、こういうふうに靖国神社の祭神を定義づけておられるのが戦前の靖国神社の祭神の性格でございます。  現在もそういう認識が政府としてあられるのかどうか、靖国神社を見るときに。靖国神社説明は要りませんから、このことに対する政府の認識をお伺いします。
  32. 藤波孝生

    藤波国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、靖国神社戦没者追悼を行う中心的な施設であると国民の皆さん方や遺族方々の大部分の方々が考えておられるということを把握させていただいておるところでございます。戦前、戦時、一命を賭して国のために国民のためにあるいは家族のためにお働きいただいて一命を亡くした、そういう方々が神として祭られておる場所であるというふうに靖国神社のことを私どもは理解いたして索ります。
  33. 小川仁一

    小川(仁)委員 私が申し上げることに対する御答弁をなかなかいただきにくいのですが、とてもこれでは、一時的な討議では討議が進まないような感じもいたします。私は戊辰の役の賊軍の南部藩に属するからひがんで言っているつもりはありませんけれども、国内においてすら既に天皇に忠誠を尽くす者、尽くさない者という形で、尽くした者は神になり、尽くさない者は賊軍という名前で切って捨てられている、意見の違いがあったとしても。こういう状況が一つある。  もう一つは、今度の第二次世界大戦においては、最もその戦争を指導したA級戦犯が合祀され、A級戦犯の起こした戦争によって被害を受けた国々の人たちあるいは国民については、政府は何ら公式参拝あるいはこれに対する祭り事もいわゆる宗教活動としてはしていないのです。したがって、現在の靖国神社の祭られている神の中には、被害者ではなくて、東南アジア並びに国内において加害者的立場にある人たちがかなりあるということであります。加害者を英霊として祭るということは、東南アジアの人たち、中国の人たち、こういった人たちから非常な批判がある。国内においてもこのことについて非常にきつい批判があるわけであります。こういう点に対してはどういうふうに意を払われましたか、どういうお考えをお持ちになりましたか。
  34. 藤波孝生

    藤波国務大臣 靖国神社のいわゆる前身であります神社、その創建のときから、どういう方々を祭神として祭るかというようなことにつきましては、その時代時代のいろいろな判断があったかと思うのでございます。これはよしあしは抜きにいたしまして、そういう事実が積み上げられておるという事実はございます。  問題は、今お話がございましたA級戦犯云々が合祀されておるということをどう考えるかということでございますが、この合祀するかどうかということの判断は宗教法人靖国神社の持っておる判断でございまして、そのことについて政府は今とやかく申し上げるという筋合いではなかろう。これは宗教法人靖国神社の自主性を侵害するものになってはいけませんので、靖国神社判断であると申し上げざるを得ないかと思うのでございます。(発言する者あり)  問題は、今不規則発言で御指摘いただいておりますように、その靖国神社というものをどう考えるかということでございます。私が先ほどから何回も何回も申し上げておりますのは、国民や御遺族の大部分の方々戦没者追悼する中心的な施設として靖国神社を考えているということでございまして、靖国神社に赴いてそこで戦没者追悼するという形をとってほしい、しかも国のために命を捨てて亡くなった方々に対し追悼するのであるから公人としてぜひ敬意を表してもらいたい、こういうお話がございまして、それにこたえるためにはどうするか。靖国神社に赴くけれども、宗教的活動だと誤解を与えるような儀式は一切行わないで、一礼をもって戦没者に対して心からの追悼の誠をささげるという形をとることにしたらどうかということで政府態度決定したところでございまして、その態度決定いたしますまでに、これらの今御指摘をいただきました事柄などは懇談会の中でもいろいろな角度から御指摘もあったところでもございますし、十分念頭に置いて検討させていただいたところでございます。  なお、御指摘をいただくようなそういう御懸念に対しまして、各方面に誤解を与えるようなことのないように今後も十分注意をしてまいりたい、このように考えておる次第でございますし、特にアジア諸国などにいろいろな心配をかけるのではないかといったこと等につきましても、今回の内閣総理大臣閣僚公式参拝をいたしましたことの真意をよく説明をいたしまして、戦没者追悼すると同時に、平和を祈念し、新しい平和をつくっていこうとする決意を持って公式参拝するものであるという真意をよく説明を申し上げるようにしてきたところでございます。
  35. 小川仁一

    小川(仁)委員 いろいろ申し上げましてもなかなか私が申し上げていることに対する直接の御答弁がないわけでございまして、時間もなくなりまして大変遺憾の意を表明せざるを得ないところでございますが、この際、藤波官房長官談話の中で、社瞭において一礼する方式で行うということは書いてありますが、公費支出問題については触れておりませんので、供花料という形で公費を支出している、公費支出というのは当然のことながら憲法に触れるわけでございますから、この点について何ら談話に触れなかったということはこのことをお隠しになったのか、それともそれをどういうふうに解釈してここに触れられなかったのか。玉ぐし料という表現でこれは違法だと言われた、違憲だと言われた。しかしこれを供花料と名前を変えるだけで、やはり出す場所は同じなんです。神社に対する援功は同じだと思います。しかもテレビで見ますと麗々しく、一番高い、最高の場所に中曽根総理の生花がございまして、それは非常に大きな宗教活動としての靖国神社に対する援助を与えている、こういう感じさえするわけでございますから、公費支出問題についてのお考えを伺いたいと思います。
  36. 藤波孝生

    藤波国務大臣 今、少しお話がございましたように、従来これらの問題を考えます場合には、靖国神社に神社の形式参拝をするということにいたします場合に、玉ぐしをささげて二洋二拍手一拝というような形をとるのを通例といたしております。そういう場合にはよく玉ぐし料として神社にお納めするということがあるわけでございます。今回の場合、あくまでもそういう宗教的な活動また神社の参拝形式をとらないということにいたしまして、靖国神社に赴いて、一礼をして戦没者を遮悼するという形をとったわけでございます。そういう場合に、戦没者追悼し、平和を祈念するという、公人としてそのことを行うという場合に、その場所にお花を置くということが当然考えられていいというふうに考えまして、それでは公式参拝いたしますときにお花を持っていってそこへ置くか、こういうことも考えたのでございますが、やはりその土地は靖国神社が当然管理しておる場所でもございますし、前日に私赴きましていろいろ公式参拝の形についてお話をいたしましたときに、靖国神社でお花を注文してもらってそこに配置することをお願いしたいということを依頼いたしました。そして、それに基づいて、当日、具体的に申し上げますと、一対金三万円なりを供花料としてお払いをしてきた、それが実態でございます。  なぜ公費であるのかということにつきましては、公人として、内閣総理大臣中曽根康弘が公式参拝する。したがって、その公人が戦没者追悼し、平和を祈念するという、誠をささげるという、その場所に配置するものとして公費で出すべきもの、このように考えまして、公費を支出して支払う手続をとった次第でございます。
  37. 小川仁一

    小川(仁)委員 公費支出というのは公的参拝なら許されるというなら、供花料じゃなくて玉ぐし料でもよかったじゃないですか。なぜ玉ぐし料をやめたのですか。
  38. 藤波孝生

    藤波国務大臣 何回も申し上げておりますが、玉ぐし料と供花料とは全く性格を異にするものと考えております。玉ぐし料の場合には、従来、神社の参拝形式で玉ぐしをささげて二洋二拍手一拝という形で参拝する。その場合に、通例玉ぐし料として神社に納めるものが玉ぐし料であるかというふうに思います。内閣総理大臣靖国神社に赴いて、その靖国神社の場所で戦没者追悼し、平和を祈念する一礼をする、その場所に、その誠を明らかにいたしますために花を供える、花を配置する、こういうことでございますから、そのお花代として供花料を公費支出した、こういうことでございまして、あくまでも宗教形式にのっとる玉ぐし料とは性格を異にするものである、このように考えております。
  39. 小川仁一

    小川(仁)委員 時間もなくなってまいりましたので、まだ問題がいっぱいありますけれども、最後に総括的に問題を済ませます。  これは私的諮問機関報告書の中で、「閣僚靖国神社公式参拝に関して配慮すべき事項」として、非常に本質的な問題を指摘しておられます。例えば公式参拝の問題として、その行為が宗教との過度の癒着をもたらすことによって政教分離原則に抵触することがないようにとか、あるいは合祀対象において「国事に殉じた人々」とされているものの、賊軍と称される人々が祭られていないことや極東軍事裁判においていわゆるA級戦犯とされている人が合祀されているところに問題がある、こういったようなことを国際関係を含めて五項目出しているわけでございます。この問題はかなり本質的な問題を含んでいると思いますが、この点について政府としては一つ一つ具体的に検討しておられると思うので、その五項目に対する検討の結果をお知らせ願いたい。  なお、七項目に「新たな施設の設置」という考え方が出されております。私は、国民の非常に大きな部分では、例えば広島、長崎の原爆で亡くなられた人あるいは外地で亡くなられた人、東京や大阪の空襲で亡くなられた人、こういった大勢の方方がおられると思うのです。そういう方々を、宗教的活動ではなしに、非常に大きな立場国民追悼の意を表せるような施設を政府として将来考えているのかどうか。靖国神社はあくまで一宗派であり、一宗教であります。靖国神社に公的参拝をやろうということが許されるなら、ほかの宗派で、きょう戦没追悼会をやります、こういうときにはキリスト教にもあるいは他の仏教関係の宗派にもおいでになるのだろうとは思いますが、そういうことを抜きにして、いわゆる外国にあるような、日本の靖国神社とは違ったような無名戦士の墓なりあるいは戦争犠牲者の墓なりというものをおつくりになる考え方があるかどうか。  以上、質問をさしていただきたいと思います。
  40. 藤波孝生

    藤波国務大臣 懇談会報告書の中に列記されております、いろいろな角度からこの問題を考える場合に配慮すべき、注意すべき事項というものは、いろいろと御指摘をいただきましたので、それらを一つ一つ丹念に点検をいたしまして、そういった角度から、政府態度決定いたします際に非常に参考にさせていただいたということを申し上げたいと存じます。  なお、その報告書の中にも記されておりますように、新しい施設をつくって、そこを戦没者追悼する、あるいは戦没者のみならず、平和時におきましても公のために命を捨てて働いて亡くなった方々追悼する、感謝するというような場所として新しく設置をしてはどうかという御提案は、懇談会の際にもございました。昨日も議院運営委員会理事会におきましてある理事さんから、そのことについての強い御提案もございました。また、各方面でこの問題のお話をいろいろいたしますと、そういった考え方を抱いておられる国民の方もあろうか、こう思うのでございます。  問題は、何回も同じようなことを申し上げて恐縮でございますけれども、今日、国民方々やあるいは特に御遺族方々の大部分の方が、戦没者追悼の中心的施設としては靖国神社を考えておられる、こういう事情がございまして、したがいまして、今日すぐにどこかに新しい施設をこしらえて、それを平和の塔と申しますかあるいは新しい廟と申しますか、あるいはそういう魂を静めるための施設と申しますか、考え方はいろいろあろうかと思いますが、そういう場所をつくるということに今すぐにするといたしましても、従来国民方々や御遺族方々がずっと長い間考えてこられた、国のために亡くなった方々に対し公人として敬意を表してもらいたいということを解決することにはすぐにはならないんだ、そんなふうに思いまして、非常に有力な御提案として受けとめさせていただいておるのが今日の気持ちでございます。  今後時間が経過をしてまいります中で、国会の先生方などのいろいろな御意見やまた各方面のいろいろな御指導もちょうだいをしながら、よく検討をしていかなければならぬ課題の一つであるかというふうには考えておるところでございます。
  41. 小川仁一

    小川(仁)委員 もう質問は終わりますが、今回の私的諮問機関による国会の軽視、さらに靖国神社自体の性格、その中にはいわゆる軍国主義復活への非常な懸念、加えて一%枠の増額問題等含めて、中曽根政治の戦後総決算というものの危険な性格のあらわれ方がこの靖国神社公式参拝だと私は感じております。それだけに、今後とも、こういう重要な問題については国会において十分な審議をするかあるいはそうでなければ、あなたは、報告書によって多くの国民が望んでいるといったような表現の仕方をせずに、本当に国民の多数がどう考えているかということを改めて政治的に問う方法も含めて、十分な反省をしていただきたい、こう申し上げて、私の分を終わります。
  42. 中島源太郎

    中島委員長 関連して、元信堯君。
  43. 元信堯

    ○元信委員 私は、人事院勧告が出されましたので、これの実施方あるいは人事院勧告そのものの持っておる内容等について、人事院総裁あるいは藤波官房長官後藤田総務長官、それぞれ御出席をいただいておりますので、質問してまいりたいと思います。  まず、人事院総裁に伺いますが、今年度の人事院勧告の特徴点、人事院としてはこういうふうに考えているというところがありましたら、まずそこから伺いたいと思います。
  44. 内海倫

    内海説明員 今回の勧告いたしました内容につきましては、先ほど私の説明において明らかにいたしておるわけでございますが、もし特に特徴点というふうなことを挙げるといたしますれば、一つは、官民較差につきましては在来と同様の方式によりあるいは同様の手順によりましてこれを導き出したということが第一点でございます。  それから第二の問題につきましては、俸給というものにつきまして、御存じのように昭和三十二年以来、俸給表というものは途中若干の修正はございますが、ほとんどその体系は異なっておりません。そういう面から考えまして、職務責任関係というものをより明確にしていくという給与の基本原則に従って、俸給表というものについてのかなり大幅な改正を勧告いたしております。それから俸給の配分につきましては、先ほども御説明申し上げましたように、初任給それから中堅層あるいは管理者層というふうなものに若干の思いをいたしながら配分を定めております。  それから、給与に関しましては後刻給与局長から御説明をさらに補充させますけれども、今回の勧告にはさらに休暇に関しまする法的な整術、その整備に伴って現在の一般民間においても行われておるような休暇をさらに新しく設けるというふうな措置をとったところ、以上のようなものがごく大ざっぱに申し上げて特徴であろうかと思いますが、とりわけ今回の勧告におきまして、その報告において、私どもは、現在の公務員現状あるいは公務員の生活の実態を考えて、五十七年以来継続しておるいわゆる異例の事態というものをこの際解消して、真に公務員をして安心してその職務に努め得るような条件を確保してほしいということを厳しくこの報告において要望しておる。これも在来もそういうふうな要望はいたしておりますが、今回はそういうふうな点を特に強く要望をいたしております。
  45. 元信堯

    ○元信委員 人事院は人事行政施策の見直し作業をずっと続けてきたわけですけれども、今回給与制度の改正とそれから休暇制度の法的整備、これが二木の勧告として行われたわけですが、一応この二つ勧告によって、二つの作業の完了によって、従来進めてきた見直しというのは終わりになる、そういう御認識ですか。
  46. 網谷重男

    ○網谷説明員 諸情勢の変化に対応いたしまして、人事行政施策の見直しということにつきましては、昭和六十年を一応の目途といたしまして、成案を得たものから逐次実施措置をとっていくということで進めてまいりまして、今お話のございましたように、その成果といたしまして、今回給与制度、あわせまして休暇制度につきまして勧告を申し上げたところでございます。  それから、その先でございますが、既に行いました採用試験体系の再編とそれから研修体系の整備等とあわせまして、今回の勧告二つとそれから過去にやりましたそれらをあわせまして、これらによりまして、公務の民主的かつ能率的な運営を将来にわたって確保していくための人事行政の基礎がさらに整備されたことになると考えでございます。  なお、勧告の際報告いたしましたように、今後においても引き続き人事行政施策の検討を行いまして、公務員制度改善に鋭意取り組んでまいりたい、このように考えておるところでございます、
  47. 元信堯

    ○元信委員 完結したのか、こういうふうに聞いているわけで、今のお話ですとあるいはまだあるような話でしたが、六十年度を目途に見直しを進めてきた、その中で今回の勧告までに盛り切れなかった部分というのは具体的にあるという認識なのかどうか、そこをもう一遍伺います。
  48. 網谷重男

    ○網谷説明員 五十八年の勧告報告の際に、先ほど申し上げましたこと以外にいろいろ検討事項を御報告したところでございます。これらにつきましては、もちろん今後とも引き続いて検討を進めていかなければならない。そのほかにも、諸情勢の変化に対応してこれからの時点においていろいろの問題が起こることでございますので、それらについても検討していきたい、このように考えております。
  49. 元信堯

    ○元信委員 今後の諸情勢で起こる問題なんというのは、もちろん今から予測することはできぬわけですが、五十八年に六十年までに見直しをするということで挙げたものの中で今回までに盛り切れなかったものがあるのか、あればどういうものか、それを具体的に教えてください。
  50. 網谷重男

    ○網谷説明員 例えば昇進管理、官職分類、それから俸給制度の中でも調整額、調整手当等がございます。
  51. 元信堯

    ○元信委員 では、それについては引き続き改善のための施策を検討していく、こういう理解でいいですね。
  52. 網谷重男

    ○網谷説明員 はい、さようでございます。
  53. 元信堯

    ○元信委員 今回の給与改善勧告を見てまいりますと、今の御答弁とも関連あるのでしょうけれども、幾つかの点で問題が残っているし、あるいはやや問題が拡大したのじゃないかというふうに思われるところがあるのですね。特に地域調整給の問題については、ことしは大都市手当を九%から一〇%に引き上げるということを勧告されたわけですけれども、この問題についてはずっと長いいきさつがあって、問題があるということは指摘され続けているわけですね。このことについては全体的には全然触れずに、都市手当だけを改善した。例えば千葉県と東京都の間は川一本の差だけれども、今まででも千葉県側は三%、東京都は九%。今度はその差がむしろ三%と一〇%に開いた。千葉県と東京でどれだけ生活が違うんだという疑問が従来からあったわけですけれども、むしろそこの部分だけを見ていけば拡大をしているということ。それから、各地方都市からもいろいろな方から私どものところへも要請が参っているわけですけれども、やはりこれは抜本的に見直す、そういう時期に来ていると思います。非常に調査が難しいから難しいからということでずっと先送りになっていて、ついにことしも勧告の中に盛り込まれなかったわけですが、具外的にどのような展望を持って作業をされているのか承りたいと思います。
  54. 鹿兒島重治

    ○鹿兒島説明員 お話がございました調整手当につきましては、確かにいろいろな問題があることは事実でございます。今回は、民間の地域調整手当というものを頭に置きまして、とりあえず大都市、三大都市につきまして九%を一〇%にするという措置勧告いたしたわけでございますが、お話しの地域区分の問題につきましては、昭和四十二年に現在の手当制度ができまして以来、従来の地域区分というものをずっと引き続いております。社会経済情勢の変化によりまして都市の環境その他も変わっておりますので、当然に見直しをする必要があるというぐあいに基本的には考えているわけでございますが、ただ、この問題につきましては、各地域のデータ、特に民間におきます賃金、物価、それからさらには民間地場賃金、こういったデータを集積いたしませんと的確な判断をいたしかねるという問題がございます。したがいまして、これまでのところは、若干の微調整ということで、官署指定の方法によって周辺地域の微調整を行ってきたというのが実情でございます。  私どもといたしましては、今後も引き続きデータの蓄積に努めまして、この地域区分の見直しをいたしたいというぐあいに考えておりますけれども、問題が実は多々ございまして、おっしゃるように、地域区分を改めて手当内容改善すべき地域もあります傍ら、他方におきましては、従来の産業、経済のあり方が変わりまして、逆に地域手当を引き下げなければいけないというような地域も見受けられるわけでございまして、その辺、関係者の理解を得ながら今後早急に検討を進めてまいりたい、かように考えております。
  55. 元信堯

    ○元信委員 いつまでという日にちの設定はついに聞かれないわけでございますけれども、資料の集積と慎重な検討も必要でありますけれども、何せ公務員としては日々の問題でありまして、早い話が退職してから改正されても何もならぬわけでありますから、こういう問題については迅速な対応を改めてお願いをしておきたいと思います。  それから、今度給与について伺いたいと思うのですが、ことしの勧告の特徴として、一般職給与表が従来の八等級表から十一級表へ変わったということが大きな特徴だと思いますけれども、この表の切りかえに要する、新しい新五等とか新二等とかつくったわけですけれども、その直近上位のところまで滑らさなければなりませんから、本来の賃金の改定に要する原資とは別に、切りかえ、新しい給与表に移行することによって必要となる原資というものがあろうかというふうに思われるわけですが、大体いかほどの比率になるかパーセントでお答えをいただきたいと思います。
  56. 鹿兒島重治

    ○鹿兒島説明員 ごく概略の数字でございますが、今回の官民較差五・七四%ございますが、五・七四%のうちの〇・三%というぐあいに考えております。
  57. 元信堯

    ○元信委員 五・七四%というのは、官民較差がはね返りを含めて五・七%、こういうことでございますね。そうしますと今の〇・三%というのは、該当する人はその分改善をされるわけでございますけれども、そうでない方については、原資のうちの〇・三%がそっちへ食われるということになりますと実際上は五・四四%の改定、平均で申しますと、トータルで申しますとこういうことを言わざるを得ないことになろうかと思います。そのとおりですか。
  58. 鹿兒島重治

    ○鹿兒島説明員 較差のうちから何%分を制度改正に充てるかというお話の限りではおっしゃるとおりでございます。しかしながら、全体として五・七四%の較差というものは、本俸分、手当分、あるいは本俸の中におきましてもそれぞれ重点的に手当てする分、そうでない分という配分の問題として御理解をいただきたいと思います。
  59. 元信堯

    ○元信委員 従来もこういう給与表の構造そのものを改定したことはあったと思いますが、そのときには今の問題はどういうふうに処理されましたか。
  60. 鹿兒島重治

    ○鹿兒島説明員 昭和三十九年に新三等級を新設した例がございます。またその後におきましては、昭和四十八年に行政職(一)表の特一等級を新設した例がございますが、この二回の場合はいずれも同様、官民較差の中で制度改正を行ったという事実がございます。
  61. 元信堯

    ○元信委員 次に、週休二日制の問題について伺いたいと思います。  ことしの勧告の中では週休二日制についても検討すべきだ、こういう勧告になっておろうかと思いますが、何時に報告の中で、民間ではほとんど定着をしておる、こういうふうに書かれているわけでございまして、そうだといたしますと、公務員週休二日制についても、一部に仕事の内容等から難しい部分があることは承知をいたしておりますけれども、今の全体の流れから見ますと、週休二日制実施に踏み込むような勧告をすべきでなかったか、こう思うわけであります。実際、全銀協も今、月一回やっております土曜日の閉店休業、これを月二回に拡大するような方向をとっているやに聞いておりますけれども、今公務員が四週五休にこだわっておりますと、これらの民間週休二日制への流れを阻害することになりやせぬか、そんなふうにも思われるわけですが、週休二日の実現に向けて人事院のお考えを承りたいと思います。
  62. 内海倫

    内海説明員 ただいまの週休二日制の問題でございますが、御存じのように現在、かなり長い間の試行期間を経てようやくこの四週五休というものが公務員の中において定着してまいったわけであります。一方、民間実情を見ますと、既に四週六休というものにかなり多くの企業等が進んでおるわけでございますし、公務の中におきましても四週六休ということの必要性は私は十分認めなければいけない。したがって、まだ勧告までにはいたしておりませんが、今回の報告の中におきまして、四週六休というものの必要性を認めて、されば、一歩前進といいますか、四週六休を前提にして、現在の四週五休の中においていかようなる措置をとって次への段階を進めるかということを報告の中で申しておるわけでございます。  その内容は、要するに四週五休の中におきまして現在四分の一を土曜日に休ませておる状況を今度は四分の二、要するに二分の一休ませることによって、次の四週六休の場合におけるその土曜の勤務実態がどうなるかということも十分調べてみたい。反面、そういうことと並行しながら民間の動向も考える、さらに各公務所における公務実情というものにどういうふうな影響が出るかということも検討したい。しかしながら、私どもの方向としましては四週六休へのステップを進めていきたい。されば、いつからと聞かれるならば、私はまだそこまではっきりいつからということを申し上げかねますけれども、以上申しましたような考え方に立っております。
  63. 元信堯

    ○元信委員 ところで、ことしの人事院勧告をめぐる問題の中で、全国の特に公務員の皆さんが一番心配されているのは、連年にわたって続いてきた抑制措置、それが一体ことしはどういうふうになるのだろう。当然政府としては責任を持ってこれは解消しなければならぬ責務があろうと思うのですけれども、これがどうなるのか。  それと関連して、けしからぬことに、昨年、一昨年政府の恣意的な俸給表の改ざんという問題が生じてきたわけでございます。この前の国会でも承ってきたところでございますが、こういう事態が続いている中で、あるいは人事院の存在そのものに対する基本的な疑問も既に沸き上がってきておるところでございますから、ことしの人事院勧告実施方に関して、人事院総裁として完全実施をかち取る決意をひとつ伺いたいと思います。
  64. 内海倫

    内海説明員 先ほどもほかの問題についての答弁の中で若干申し上げましたし、また今回の私どもの勧告に際しましての報告の中でも、私どもの心情といいますか私どもの厳しい要望を申し上げておるところでございまして、私どもとしましては、この連年にわたる異例の事態というものが公務員諸君にどのように反映しておるかということも、各省の人事当事者あるいはそれぞれの職員団体、さらにいろいろな状態を察知いたしまして、大変厳しい状態にあるということを承知いたしております。  今年におきましては、政府においても最大限努力をするということはたびたびおっしゃっておるわけでございますから、そういうふうな政府の御尽力に期待をするとともに、国会におきましても、私どものこの勧告に述べておる真意、私どもが述べておる客観的な諾条件というものにどうか御理解を賜りまして、今年はこれをぜひ実現していただきたい、こういうことを私どものいわば勧告に際してお願いを申し上げておるところであり、その申し上げているところが私どものいわば決心であり希望でございます。
  65. 元信堯

    ○元信委員 人事院総裁の決心なり希望なりがぜひ貫かれるように、これは政府の問題でございましょうけれども、今からそのことについて伺うわけでございますが、その前に人事院総裁、ことしの報告の中で、各省庁、職員団体双方から切実な要望が行われている、こういう表現がございましたけれども、職員団体は当然そういうことはやかましく言っているかとは思いますが、省庁から人事院に対して人事院勧告の完全実施方について要望があったというようなことですから、その内容についてお聞かせいただけますか。
  66. 鹿兒島重治

    ○鹿兒島説明員 職員団体、各省庁の要望の主たる窓口を私どもでやっておりますので、概括的に申し上げたいと思います。  多岐にわたりまして、本俸の内容あるいは各手当等につきまして、個別の問題あるいは総括的な問題、種々意見がございました。各省庁の当局といたしましては、各省庁の人事課長あるいは秘書課長から、労使関係というものを前提に置きまして、ぜひ完全実施をしてほしいという要望、あるいは各省庁の出先機関の長から、それぞれの職場におきます労使関係ということを前提にいたしまして、完全実施についての強い要望があったということが特に印象的な事柄でございます。
  67. 元信堯

    ○元信委員 そうすると、それは官邸も総務庁も大蔵省も全部そういう要望があったということですね。
  68. 鹿兒島重治

    ○鹿兒島説明員 特定の省庁と申しますよりも、すべての省庁を通じてというぐあいに御理解いただきたいと思います。
  69. 元信堯

    ○元信委員 もう一つ公務内外の意見の中にも人事院勧告を完全実施せよとの意見が強かった、こういうふうに書いてございますけれども、公務内外の意見を聞かれた場合に、人事院勧告を抑制せよ、こういうような意見はございましたか。
  70. 鹿兒島重治

    ○鹿兒島説明員 公務員の能率の問題でありますとかあるいは公務員の服務の問題でありますとか、そういう点についての御意見等はございましたけれども、抑制せよという形の御意見は、私に関する限りは聞いておりません。
  71. 元信堯

    ○元信委員 そうすると、社会通念人事院勧告を抑制せよ、こういうような意見はなかった、こういうことでよろしゅうございますね。  それでは総務庁長官、既に勧告後第一回の給与関係閣僚会議が開かれたやに聞いておりますが、その閣僚会議はどういう内容であったか、お聞かせ願いたいと思います。
  72. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 八月七日に人事院当局から政府に対して本年度の給与勧告があったわけでございます。そこで、当日給与関係閣僚会議を開きまして、その席上、事務当局から人事院勧告内容のあらましの説明をして、その後関係閣僚から、それに対するいろいろな御意見の発表があったわけでございます。もちろん閣僚それぞれ立場を異にしますから、いろいろな意見が出まして結論が出てないというのが現状でございます。今後またこれは内閣官房で日程等を調整なさるわけでございますが、何回か開きましてできる限り早く結論を出したい、こういうことに相なっているわけでございます。
  73. 元信堯

    ○元信委員 意見がいろいろあってまとまらなかったということだそうでございますが、総務庁長官、あなたは給与担当大臣ですが、どういう御主張をなさいましたか。
  74. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 正確に発言を読みましたから、それを申し上げたいと思います。  「人事院勧告制度は、公務員労働基本権制約代償措置として設けられた制度であり、人事院勧告を受けた政府は、国政全般との関連を考慮しつつ、勧告の完全実施に向けて最大限の努力を尽くすべきものである」、これは基本的な物の考え方を述べたわけでございます。  そこで「政府としては、公務員の生活を安定させるとともに、志気の低下をきたさないよう配慮することにより、公務員職務に専心努力する環境を整備し、もって国民に対し、行政の適正かつ能率的な運営を確保する責務を有している。」これは要するに雇い主としての政府責任はこうだと私は考えるよ、こういうことでございます。  その次「一方、御案内のように去る七月二十二日、臨時行政改革推進審議会から、公務員給与改定について「人事院給与勧告制度を維持・尊重しつつ、かつ現下の極めて厳しい財政事情その他国政全般との関連も十分勘案し、給与改定は、政府及び国会責任をもって適切に決定すべきである。」との意見政府に対して提出されているところであり、公務を取り巻く客観情勢、国民世論が厳しいことも事実である。」これは要するに、現在の公務員給与についての客観情勢は昨年同様厳しいものがありますよということを申し上げ、「したがって、本年度の人事院勧告の取扱いに当たっては、国政全般との関連を考慮しつつ、昨年度の給与改定等のこれまでの経緯を踏まえ、勧告尊重の基本姿勢に立って、今後鋭意検討を進めていく必要があると考える。」これが私の発言でございます。これでひとつ私の考えは御理解をしていただきたい、かように思います。
  75. 元信堯

    ○元信委員 官房長官はその閣議ではどういう発言をされましたか、
  76. 藤波孝生

    藤波国務大臣 日程を調整いたしまして、まず八月七日に人事院勧告を受け取りましたので、早速に第一回の給与関係閣僚会議を開かなければいかぬ、そんなふうに考えまして段取りをいたしました。  第一回の会議では、今御発言のありました総務庁長官あるいは大蔵大臣、労働大臣などがそれぞれ御発言があったところでございます。一回ではなかなか結論が出ないなと思いましたので、ひとまず第一回の給与関係閣僚会議を閉じまして、いずれ日程を調整して第二回目を開こう、こういう発言をいたしました。  以上でございます。
  77. 元信堯

    ○元信委員 官房長官の今のお考えを伺いたいわけですが、人事院勧告を完全実施する、とれは当然だと思いますが、いかがですか。
  78. 藤波孝生

    藤波国務大臣 人事院勧告制度を尊重いたしまして、完全実施に向けて最善の努力をしなければいかぬ、こういうふうに考えておりますが、国政上、それぞれの立場でいろいろな考え方もあるわけで、特に、わけても財政上のいろいろな考え方もあるわけでございますから、それらを調整いたしまして、最終的に政府態度決定が、今申し上げたように、完全実施に向けて最善の努力をする、その誠意があらわれたというような形になるように努力をしてまいらなければならぬ、こう考えておる次第でございます。
  79. 元信堯

    ○元信委員 それでは現時点では完全実施は約束できぬ、こういうことですか。
  80. 藤波孝生

    藤波国務大臣 完全実施に向けて誠心誠意取り組んでまいりたいと考えております。
  81. 元信堯

    ○元信委員 ちょっと後で言葉の問題はまとめてやりますけれども、現時点では完全実施は約束できない、こういうふうに理解をせざるを得ません。誠心誠意だとか最大限の尊重だとか、いつものとおりであるけれども、今までの経過から見ると、言葉の持っている内容とは裏腹に、これはやらない気だな、どうもこういうふうに受け取らざるを得ぬのを大変残念に思います。  ところで、新聞によりますと、最大与党であります自民党は、ことしの人事院勧告は四・二%がよかりそうだというようなことをきのう決めたとかというお話ですが、これに対する総務庁長官の御感想はいかがですか。
  82. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 党からはまだ私のところに何も言ってきておりません。ただ、きのうの党の労調での会議に私の方の事務当局著が出席をしておりましたから、その話の内容は承知をいたしております。  もちろんこの問題は、政府部内で責任を持って給与問題を解決するわけでございますが、その過程において党とも十分調整をしなければならない、かように考えておるわけでございます。その党との調整をするに当たって、労調の意見は、昨日の意見はこうであったということは我が方も念頭に置いておかなければならぬ、かように考えております。
  83. 元信堯

    ○元信委員 官房長官、あなたは去年は人事院勧告の完全実施のために最善の努力をするとおっしゃいましたか。去年の八月二十一日の内閣委員会で、人事院勧告を完全実施するかという質問に対して、最善の努力をする、こういう答弁をなさいましたか。
  84. 藤波孝生

    藤波国務大臣 どの時点でどういう表現で申し上げたかというのを、ちょっと記録を持っておりませんので定かではありませんが、気持ちとしてはそういうふうに申し上げたであろう、こういうふうに今は考えております。
  85. 元信堯

    ○元信委員 その後、あなたのなさった最善の努力の内容についてひとつ承りたいと思います。
  86. 藤波孝生

    藤波国務大臣 給与関係閣僚会議を回を重ねて開きまして、今申し上げましたように最大限の努力をしてきたところでございます。政府部内でそれぞれいろいろな意見がございます。一時に今申し上げましたように、財政上の理由というのが一番大きな、ある観点からの意見ということになろうかと思います。  内閣官房長官という仕事柄から考えまして、政府部内全体の御意見をよく取りまとめて一つの方向が出るように調整をしていかなければならぬわけでございますが、各大臣などのいろいろ御発言を踏まえて、横の連絡を取り合って完全実施に向けて取り組む、こういう姿勢が具体的に結果としてあらわれるように最善の努力をしたところでございます。
  87. 元信堯

    ○元信委員 要するに、最善の努力と言っても官房長官として取りまとめのためにやったというだけで、私は、今官房長官個人として聞いているのではなくて政府代表として聞いているわけですが、政府として人事院勧告を完全実施するために必要な財源をどういうふうに調達するか、そのことについて何か具体的な努力があったのかどうか、それを聞いているのですよ。
  88. 藤波孝生

    藤波国務大臣 大蔵大臣を中心にいたしまして財政上の立場からのいろいろな発言もございました。完全実施に向けてぜひさらに積み上げようといったような各閣僚関係者などのいろいろな声を背景にいたしまして、できる限り完全実施に向けての努力をしよう、当然その中には財源の確保などがあるわけでございます。それらに向かって最善の努力をいたしたところでございます。  特に昨年の場合に大きな論点となりましたのは、従来実施できないで来ております分が積もってきている、この問題をどう考えるか、これはその年その年でいろいろな調査をしていただいて勧告が出るということでございますから、一般的に言われております積み残しという表現をとるべきではないと思いますけれども、いわゆる積み残しと言われてきております。その分についてどうするのかといったような御意見がいろいろ各方面に渦巻いたということで、昨年は非常にきつい環境にあったというふうに思うのでございます。  そういった中で、先ほどもお話が出ておりますように公務員の士気に影響しないように、あるいは公務員方々の生活水準の低下をもたらさないように、さらに公務員に対して人材の確保等の観点から十分配慮しなければいかぬ、政府部内よく連絡を取り合って完全実施に向けての努力を重ねたところでございます。
  89. 元信堯

    ○元信委員 何回言っても努力努力という言葉だけで、努力では全く腹はふくれないわけですから、実際には何らの前進もなかったということを改めて記憶しなければならぬということを大変残念に思います。  今官房長官から、公務員の皆さんにずっと積み残しで御迷惑をかけてきた、その額もかなりのものになった、こういう認識が示されたわけですが、一体連年にわたる人勧抑制によって公務員の皆さんが個々にどれくらいの被害と言わざるを得ぬわけでありますけれど、犠牲を強いられてきたか、そのことについて課長職あるいは課長補佐、係長、係員それぞれについて計算できていると思いますので、大体お一人当たりどれくらいになっているか、御報告願いたいと思います。
  90. 鹿兒島重治

    ○鹿兒島説明員 私どもの試算でございまして、いずれも本省勤務の場合の行政職表ということで試算をしたものでございますが、五十六年以降の累積額で申しますと、課長クラスの場合、大体年齢は五十歳前後ぐらいかと思いますけれども、五十六年から五十九年までの額にいたしまして約百五十一万円ということでございます。それから課長補佐クラス、年齢は四十歳を少し超えたぐらいかと思いますが、同じ期間におきまして約七十三万円ぐらい、それから係長クラス、三十五歳前後かと思いますが、約六十一万円ぐらい、こういう試算が出ております。
  91. 元信堯

    ○元信委員 昨年は共済年金の掛金も上がりましたね。それからもちろん税金も上がるわけでありますし、一体公務員の皆さんが去年の抑制の結果による勧告実施によってどれくらい生活がよくなったか悪くなったか、今申し上げたグレードに分けてひとつ御説明いただきたいと思います。
  92. 鹿兒島重治

    ○鹿兒島説明員 私どもは、個々の公務員の可処分所得と申しますかあるいは非消費支出と申しますか、そういう実は計算をいたしておりませんので、個々に申し上げることはできないと思いますけれども、御承知のように昨年は六・四四%の勧告に対しまして実施は三・三七%でございました。そしてその間に消費者物価指数は、全国の総合の指数で申しますと約二・二%上昇をいたしております。そしてまた、非消費支出といたしましては、共済組合の長期掛金率が昨年十二月に一・九七%アップになりまして、また本年の五月からは例の国鉄救済という関係で〇・五三%アップしているという事情がございますので、いずれにいたしましても、可処分所得あるいは消費支出というものは、そう大きくは伸びていないというぐあいに判断をいたしております。
  93. 元信堯

    ○元信委員 今の数字から見ていくと、伸びていないところか減少しているというのが全国の公務員の生活の実態ではないかと言わざるを得ないわけであります。  ことしの勧告の中に、平均的な公務員の収入は、四十八歳で俸給二十一万六千四百三十円、手当を入れて二十三万六千十九円。こういうふうに言われていますけれども、これから税金や共済の短期長期の掛金、こういうものを引きますと、実際の手取りは二十万そこそこではないかと思うのですね。ところが、同じように勧告の中にございます標準生計費を見てまいりますと、三人世帯で二十万四千円強、四人世帯ということになりますと二十三万八千五百六十円。これは収入よりも支出の方が多いということになっているわけですよ。全国の公務員は一体どうやって生活しているのか、まことに私は嘆かわしい事態だというふうに思いますが、総務庁長官、今みたいな数字をお聞きになって、全国の公務員はどうやって飯を食っておられると思いますか。
  94. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 今御質問のような点、よく組合の諸君からも国会でも御意見として拝聴しておるのですけれども、いずれにしましても、仮定の計算としてはこういうことになるということかもしれませんが、私は、実際上公務員の生活そのものが悪くなっているというふうには考えておりません大変厳しい状況に、あることだけは間違いがない。したがってでき得る限り、私はやはり今日まで続いておる抑制措置というのはあくまでも異例の措置なんですから、これは一刻も早く正常の姿に返すのが私どもの務めであろう、かように考えているわけでございます。  御質問の中にありました、理屈っぽくて恐縮だけれども、例えば共済年金の云々、これは将来の掛金なんですから、これを計算するのはいかがなものでしょうか。こういうような、いろいろ中を調べてみないと必ずしも明確に私はお答えできないと思うけれども、いずれにせよ厳しい状況に置かれておるというその認識だけは、私ども政府の者としては常に頭に置かなければならぬ、かように考えておるわけでございます。
  95. 元信堯

    ○元信委員 随分不思議なお話を聞くものでして、可処分所得が減っていっておる、去年よりもことしは伸びるどころか減っておる、そういうことが客観的に明らかになり、しかも人事院が言っている標準生計費よりも公務員の標準的な収入の方が少ないということを申し上げているのに、それで生活が悪くなってないというのは、使用者としてはまことに情けない現状認識だと私は申し上げざるを得ないわけであります。  さっき官房長官から、人事院勧告実施方については財政状況、特に財政再建との関連で申されているのだと思いますけれども、今日の国債の残高、天文学的な数字に上っているわけでございますけれども、一体それでは人事院勧告を節約したためにどれぐらい改善をされたものなのか、あるいはされ得るものなのか、この辺のことを数字を挙げて伺いたいと思いますが、これまで人事院勧告をこうやって値切り続けてきた、五十六年以降値切り続けてきた、その金額の累計というのは、一体全部で五十九年度までで幾らぐらいになりましたか。
  96. 竹島一彦

    ○竹島説明員 五十六年度からの累計のデータがちょっと手元にございません。五十九年度単年度の数字を申し上げますが、五十九年度の場合に六・四四の勧告が出されまして、実施は三・三七でございました。約三%下回った実施になっておりますが、それに伴いまして国庫負担の軽減分は、一般会計、特別会計合わせまして純計ベースで二千三百七十億円でございます。ただ、人事院勧告実施に伴いまして、その影響はその他の経費にも有形無形にございます。恩給でありますとか年金等への波及問題とかその他の経費に影響がございますので、実際の財政効果はこれを上回るものと考えられますが、狭義の人件費につきましては今申し上げた数字でございます。
  97. 元信堯

    ○元信委員 これはきのう、五十六年までの累計を出すようにと言っておいたんだから、用意してこないのはまことにけしからぬと思うのですが、できてないのは仕方がない。  五十九年度一年に国債の未償還残高はふえましたか減りましたか。そして今の二千三百七十億円ですか、一体その額の何%ぐらいになるものか、ちょっと教えてください。
  98. 竹島一彦

    ○竹島説明員 五十九年度に対しまして六十年度公債残高でございますが、六十年度が百三十三兆円でございます。五十九年度が百二十二兆円、これは四捨五入でそういうことでございます。したがいまして、約十一兆円の残高の増というふうになっております。(元信委員「何%になるのか」と呼ぶ)それに占める先ほどの軽減額でございましょうか。十一兆円分の二千四百億円でございますので、約二・四%程度というふうになると思います。
  99. 元信堯

    ○元信委員 要するに、人件費を抑制してもそれは財政の公債の残高のふえぐあいから見ればほとんど焼け石に水だ、こう言わざるを得ないわけですけれども、政府は一方において、国家公務員である現業職員の仲裁裁定については完全実施の方向であるように伺っていますが、なぜ現業は完全実施で非現業はそれができないのか、そのお考えをまず教えていただけますか。
  100. 藤波孝生

    藤波国務大臣 現業だからどうということでなくて、それぞれ制度が違いますので、それぞれの制度の上に立ちまして決定をしてきておる、こういうことでございます。
  101. 元信堯

    ○元信委員 制度の上に立ってというのであれば、人事院勧告というのは完全実施するのが制度なんですよ。それをしないのは政府の考え方でしょう。そうじゃないですか。制度のとおりと言うのなら、ちゃんと制度のとおりやりなさいよ。
  102. 藤波孝生

    藤波国務大臣 制度の上に立ちまして努力をしてきておるところでございます。  問題は、さっき先生のお話では焼け石に水だというお話でありましたけれども、やはり聖域を設けないで今日のこの行財政改革を推進するという大目標に向かって努力をしていかなければいかぬ。その中で人事院勧告が完全実施できないで来ておりますから、公務員方々には大変なつらい思いをしていただいてきておる、まことに申しわけのないことだ、そういう気持ちでおるわけでございますけれども、それぞれ聖域を設けることなく努力をしてきておるという一方の財政再建への努力がありまして今日に至っておるわけであります。  しかし、あくまでも今お話しのように制度としては完全実施すべきもの、こういうことは私どもはよく心得ておるつもりでございますので、そういった中であらゆる努力を積み上げまして完全実施に向けて最善の努力をしていくようにいたしたい、こう考える次第でございます。
  103. 元信堯

    ○元信委員 一方では公務員に対してはこういう理不尽な抑制措置を続けておりながら、聞くところによれば、政府は、財政再建の過程であるにもかかわらず総理の官邸を建て直したいとやら、総理大臣が外国へ行くときの飛行機は政府の専用機にしたいとやら、さまざまな計画を持っているようでありまして、とても財政再建の過程で、公務員に人勧すら完全実施しない政府の考えていることとは思えない。自分たちは好いただけのことをやって痛みを分かち合おうだなんと言ったって、痛みはみんな人に分かち合って自分たちは何一つ痛みを分かち合っていない、そういうふうに言わざるを得ないわけであります。  ところで、ことしの人事院勧告の特徴の一つに、行(一)の八等級制から十一級制への移動にもあるように、新たな給与体系がとられたわけであります。そうしますと、この給与体系を昨年のような乱暴なやり方、すなわち人事院勧告した新給料表に政府が勝手に、抑制をすると称してつくった比率を掛けて新給料表をつくったわけですね。改ざんをしたと我々は言っておるわけだが、ことしもこの改ざんをやるつもりがあるのか。そんなことは言わぬと思うけれども、せめてそういう改ざんだけは絶対にやらない、この決意を承りたいと思います。総務庁長官
  104. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 ただいまの段階では、いずれにせよ完全実施に向けて最大限の努力をする、こういう気持ち給与関係閣僚会議で主張をしていきたい。同時に、給与の抑制そのものが異例の措置である。これは、五・七四%を昨年のように削っていくということは異例の措置である。同時にまた、勧告の中で給与表、つまり配分をこうしなさい、こういう勧告になっているわけですから、政府責任を持ってやるわけですけれども、給与表を直すということもこれは異例の措置でございますから、先ほど言ったように、できる限りは私は一刻も早く正常な姿に戻したい、こう考えておるわけでございますが、どうしてもそれが客観情勢で厳しい、できないということになったときにさてどうするかといったようなことについては、これはまた給与関係閣僚会議のこれからの課題でございまして、今どうこう言ってとは、この段階ではお答えを差し控えさせていただきたい、かように思います。
  105. 元信堯

    ○元信委員 今の長官の答弁は、要するに給与表の改ざんをしないということについては約束はできない、これは裏から見ればそういうことがあり得るよ、こういうふうに受け取らざるを得ませんが、そこで人事院総裁。ことしは人事院も大変な努力をされて勧告をされたと思うのですけれども、去年のようなやり方ですね、ああいう一律に掛けるというやり方では、人事院はいろいろ配慮をされてそれぞれのウエートをつけて勧告をされたものというふうに私ども理解しておりますけれども、そういうものが台なしになるのではないかというふうに心配するわけでございますが、総裁の御意見はいかがですか。
  106. 内海倫

    内海説明員 私どもが勧告をいたしますに際しては、とりわけことしの勧告につきましては、俸給表のかなり大幅な改正もし、またその改正を通じて公務員諸君の職務責任の体制というものもよりしっかりとした体制にして一層精励していただきたい、こう思っているわけですから、そういうふうにして組み立てられておるわけでございますから、この俸給表というものはやはり政府において勧告の極めて重要な内容としてぜひ尊重していただきたい。私どもは、いわばこれが改められるということは今時点、頭から考えてないことでございますから、ただひたすらにこれをぜひ実施していただきたい、こういうことでございます。
  107. 元信堯

    ○元信委員 人事院勧告を抑制するということが異例な事態だ、こういう話です。その中で政府給与表を改ざんするということ、これまた異例な事態、異例中の異例だ、こういうお話でございました。異例ということはどういう意味ですか。
  108. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 通常でない、こういう意味でございます。
  109. 元信堯

    ○元信委員 人事院総裁に伺いますが、人事院制度発足以来、人事院勧告が完全実施された回数というのは何回ですか。
  110. 鹿兒島重治

    ○鹿兒島説明員 正確かどうかあれですが、昭和四十七年に時期を含めまして完全実施ということになりました。以来昭和五十三年まで勧告どおりの実施が行われておるという状況でございます。
  111. 元信堯

    ○元信委員 勧告は今まで全部で何回しましたか。
  112. 鹿兒島重治

    ○鹿兒島説明員 昭和二十三年以降でございまして、二十三年から六十年まで、その間一回勧告しなかった年があるだけでございます。
  113. 元信堯

    ○元信委員 総務庁長官、異例というのは、私が広辞苑で調べてきたら、いつもの例にないこと、前例のない事柄、こういうのです。今の人事院の御答弁だと、むしろ人事院勧告が完全実施されたことの方が異例じゃないですか。いかがですか。
  114. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 私が通常でない、こういうお答えをしている趣旨は、今日労働基本権制約しておる、そして人事院勧告制度というものを設けてこの人事院制度の基本を守っていく、これが正常な姿であろう、こう思います。そういう意味合いにおいて、この正常な姿に戻すのが当たり前な話であって、それを抑制するというのは異例である、私はさような観点で申し上げているわけでございます。
  115. 元信堯

    ○元信委員 先ほどの最善の努力といい、今の異例の措置といい、政府が言っていることは言葉の内容とは全然違う、こういうふうに私どもは受け取らざるを得ないですね。異例の方が毎年毎年続いていく、前例のないこと、まれな事柄というのが、むしろそっちの方が常態になっていくということになりますと、政治というのは言葉で行われる部分が多いわけですけれども、一体政府が話している日本語というのは国民一般が普通に理解している日本語とはまるきり違う、こういうふうに理解しなければならぬ。これは僕は政治に対する極めて深い不信を生むもと、こうならざるを得ぬと思いますね。言っていることと腹とはいつも違う、こういうことになりますと、我が国政治そのものが、先ほどの公式参拝のことでもそうです、そのときどきに言葉で切り抜けようとするそういう政府態度というのは、これから政党政治の根幹を掘り崩していくものだということを改めて指摘せざるを得ないと思います。  時間が参りましたから、もう一つ伺って終わりたいと思いますが、ことしのILOの第七十一次総会に日本の公務員制度の問題が議題になりました。その条約適用委員会勧告の中で、今後日本政府は、この人事院勧告の問題、日本の公務員制度の問題について、労働組合と今まで相談してきたのと同様にILOとも協議をするということを求められていますが、政府は一体これにどういうふうに対応するおつもりか、それを最後に承っておきたいと思います。
  116. 加藤孝

    ○加藤説明員 今回の討議におきまして、労働側がダイレクトコンタクトの要請を行ったわけでございまして、政府はこれに対して、従来からILOに対して十分な情報提供を行って緊密なコンタクトをとってきておる、したがってダイレクトコンタクトは不要である、こういう主張をしたわけでございます。  この結論といたしまして、ダイレクトコンタクトは不要とされ、従来からのILOとの緊密なコンタクトを今後とも行っていくということで結構である、こういう趣旨で、議長集約の中で今回の「ILOとの協議」、こういう表現がとられることになったものと受けとめておるわけでございます。したがいまして、この総会報告の中で述べております「ILOとの協議」の趣旨は、今後ともILOに対して十分な情報提供を行い、緊密な連携を保つことにある、こういう理解をいたしておるわけでございまして、こういうような対応を今後ともいたしていきたい、こう考えておるところでございます。
  117. 元信堯

    ○元信委員 最後にもう一つ、そう言うなら言わなければいかぬですが、この最後の部分は、「委員会は、専門家委員会が取り上げた事項に関し、特に日本の労働団体から意見を受け取った事項に関し、政府が十分な情報を提供するよう希望した。委員会はまた、専門家委員会が示した方向に沿って、労働組合及びILOとの協議の上、解決がみられるよう希望した。」ということで、十分な情報提供とは別に別個の文章を起こして、労働組合及びILOとの協議をせよと、「ILOとの協議」というのは今度初めて出てきたことですね。そういうのが出ているにもかかわらず、今の労働省の御答弁というのはまことに不誠実なものと言わざるを得ない。ILOが、日本の政府がダイレクトコンタクトを拒否した、調査もさせない、こういうことであれば、せめて今までの文書が十分でないと思うから十分な情報をよこせということと、もう一つコンサルテーションを要請しているわけですから、今のような答弁では到底ILOの総会の意義というものを労働省は理解していないというふうに思わざるを得ないわけです。  時間でございますから以上で終わりますが、どうか言葉の問題として四の五の問題を先へ延ばすのではなくて、政府として責任ある態度をとって、これはもう最低の責務なんです。何をさておいても人事院勧告を完全実施するということは、再三言われているように使用者としての責務でありますから、ことしこそは抑制などということのないように強く要求をいたしまして、終わりたいと思います。
  118. 中島源太郎

    中島委員長 午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五十二分休憩      ————◇—————     午後一時三十一分開議
  119. 中島源太郎

    中島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。鈴切康雄君。
  120. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 本日の委員会は、人事院勧告を受けて公務員給与審議を行うことになっておりましたけれども、日航ジャンボ機の墜落事故、また八月十五日の閣僚靖国神社公式参拝と、国政全般にわたる重要な問題が出てまいりましたので、そのことをも触れずに済ますことはできないと私は思っております。そこで委員長の許しを得て、人勧に関連して質問をしたいと思います。  まず、日航機事故についてでございますけれども、去る十二日午後七時過ぎ、五百二十名の死者を出して航空史上空前の大惨事となりました日本航空ジャンボ機の墜落炎工事故につきましては、公明党を代表して、亡くなられました方々の御冥福を心からお祈りいたしますとともに、奇跡的に助かった四名の方々が一日も早く全快されますことをお祈りいたしたいと思います。  なお、現地において連日の酷暑の中で遺体収容に当たっておられます多くの関係者に対しましては、心から感謝を申し上げ、労をねぎらうものでございます。  この問題につきましては、八月十六日、参議院運輸委員会の「航空機事故絶滅に関する決議」もございましたし、また本日、運輸委員会においてこの問題の集中審議がされておりますので、私は内容についての見解をただそうというものではございません。  しかし、私が申し上げたいことは、今回の日航機墜落事故で五百二十名近い乗客が亡くなられました。原因についてはこれからの調査を待つ以外にはないと思いますけれども、これだけたくさんのどうとい命が失われたという政府政治責任は免れないと私は思います。さきに日航の高木社長が辞意を表明されたと伝えられておりますが、そのことは、社長である限り本当に申しわけないという気持ちで、責任感から職を辞したということは当然のことと私は思いますけれども、問題は日航が単なる民間企業ではないということであります。  政府が三五・三七%出資して最大の株主となっている特殊会社であるということが私は問題だと思うのです。いわゆる半官半民の会社でありますけれども、言うならば政府色の濃い会社である。私はいろいろと調査をいたしました。日航の株をずっと調べてみましたところが、国が三五・三七%、東京海上火災保険が二・七八%、同和火災が二・五五、小佐野賢治が二・二八、安田火災海上が二・二二、そして日航グループの社員の持ち株が二・〇一、こういう状況の中にあって政府が三五・三七%、すなわち三分の一の株を持っているということであります。  こうなってまいりますと、今回のこの事故というものについて政府の監督不行届きが大きな原因であり、また役員大事にしても承認権は政府にありますし、直接日航に介入できるだけの権限を政府はお持ち合わせであり、深いかかわりを持っている以上、政府みずからの政治責任を回避することはできないと私は思います。政府としてこの問題についてどのような政治責任をおとりになるつもりでしょうか。
  121. 藤波孝生

    藤波国務大臣 御指摘のように、五百人を超える人命にかかわる非常に大きな事故、前代未聞の大きな事故が日航機墜落という結果生じましたことは、まことに遺憾なことでございます。  政府といたしましては、早速に救援、捜索の作業に全面的に取り組んでまいりまして、生存者の方々を発見をして、その全快をお祈りをしていろんな措置を講ずる、また不幸にして人命を失われた方々につきましても、その後、捜索活動を続けて次々と遺体が発見をされて御遺族にお渡しするということで来ておるところでございまして、きょうの閣議におきましても、日航機墜落によるいろんな捜索活動等について防衛庁長官からの報告もあり、また運輸大臣からも、なお遺体の発見できない御家族の方々について非常にいらいらした状況が生じているというつらい御報告もあったところでございます。政府といたしまして、事故が起こりました以後の対策につきましては万全の措置を講じてきておるわけでございます。  なお、御指摘のように政府が最も大きな分野の株を所有しているというようなことから、一般会社と違いまして政府とも非常にかかわりの深い会社の形になっておるわけでございます。運輸省を中心にいたしまして、絶えずこの航空行政の中でもいろんな指導をしてきておるところでございますし、また長い間にわたりまして、当然のことながら、人命を預かる仕事でございますから、安全を第一にするといったことについてのいろんな監瞥指導にも当たってきておるところでございますが、今回のような大きな事故が起こりまして、まことに遺憾のきわみに存じておるところでございます。  どのような政治責任をとるのかという御質問でございますが、今日このような事故が生じましたいわゆる事故対策に万全をまず期しまして、そしてさらに日本航空当局にも、飛行機の点検であるとかあるいは乗客に対する接客の態度であるとか、いろんな面にわたりまして今後ひとつ心を入れかえて、この事故を契機として新しい気持ちで取り組んでいってもらわなければ困る、そういった角度からの強い指導もいたしておるところでございまして、二度とこのような事故の起こらないように万全の措置を講じていくということにおいてその責任を果たしていくようにしなければならぬ、こう考えておる次第でございます。  総理と会われましたときに、日航の社長からも大きな責任を痛感しているといった意思の表明もございまして、いずれ時期を見てそんな形になるかと思うのでございますけれども、日航関係者全員が、ひとつこういう事故を契機に心を入れかえて、さらにサービス業務の万全を期すようにということを一層徹底をさせてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  122. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今官房長官が言われたことは当然過ぎるほど当然なことなんですね。今一番政治に欠けている問題は、やはり政治責任が明確になっていないという問題。政治責任というのはそれではどういうことかと言えば、やはり結果責任なんですね。発想はどうあろうと、やり方がどうあろうと、そのときに責任を問われる者はない。しかし、今日五百二十名というかえがたい多くの悲惨な家族を生んでしまった。言うならば、これはもう空前絶後の航空機事故だと言っても過言ではないわけです。一名の方の生命というものは山よりも高く海よりも深いというふうに言われている。にもかかわらず、五百二十名という方々関係者の悲惨というようなものは筆舌に尽くしがたいものがあろうと私は思うのです。となれば、三五・数%の株を持って人事権から何から全部コントロールできる、そういう立場にある政府がこの問題をほおかぶりをしていこうなんということは、当然許されるはずはないですよ。だから、もちろん日航の社長が責任をとるということは、責任の上において当然のことであろう。しかし、政府責任をとらなければならぬと私は言うのですが、その点についてはどうですか。
  123. 藤波孝生

    藤波国務大臣 日本航空が御指摘のように、まさに大きな、大勢の方々を悲惨のどん底に落とし込むような事故を起こしましたことにつきましては、大きな責任を痛感いたしておる次第でございます。  問題は、やはり一日も早くこの事故後のいろいろな対策を講ずるということが非常に緊要なことでございまして、そのために、きのうもきょうも大勢の方々が、自衛隊、警察あるいは地元消防団、地元の県、市町村、関係者など必死の捜索活動がさらに続けられておるところでございまして、これら御遺族方々、なお生存しておるとお考えになっておられる方々が多いわけでございますから御家族と申し上げなければなりませんが、そういった方々のお気持ちを体して、その作業がさらに進展をするように私ども心からそのことを、各省、各方面と連絡をとりながら努力をいたしておるところでございます。  問題は、その作業と並行をいたしまして原因の究明ということがやはり一日も早く明らかにならないといかぬということで、いろいろな角度からその作業も進められておるところでございまして、だんだんと時間がたつうちに原因なども明らかになってきておる部分もございますし、今後さらに調査委員会等のいろいろな検討を経て明らかになっていくもの、このように考えておる次第でございます。それらの原因等が明らかになっていくにつれまして、いずこに責任があるのかといったことにつきましても当然議題に上らなければなりますまいというふうに考えるところでございますが、当面はやはり救援、捜索活動の進展ということに第一に眼目を置いて取り組んできているところでございまして、一方では原因の究明の作業が進んでいくのを見守っておる、こういう状況にあるわけでございます。  政府といたしましては、このような事故が起きましたことにつきましては、心から責任を痛感いたしておるところでございまして、一般的な言い方でございますけれども、今後も十分監督指導の任に当たって、強力にそれらが徹底をしていくように努力をいたしまして、二度とこのような事故が起こらないように襟を正して努力をしていくのでなければなるまい、このように考える次第でございます。
  124. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、やはり政府政治責任というものははかり知れないものがあろうかというように思います。ここで官房長官政府政治責任についてどうとるかと言っても、あなたは閣僚の任免権を持っているわけではないのですから、この問題についてはいずれやはり明確にしなければならない事態が来るだろう、私はそのように思っておりますし、このことについては官房長官の方から中曽根総理大臣の方に、篤と政治責任について明確にすべきであるというきょうの論議があったということだけ伝えておいていただきたいと思います。  次は、靖国神社公式参拝についてでございます。  八月十四日、内閣官房長官談話が発表され、内閣総理大臣その他の国務大臣が八月十五日に靖国神社公式参拝を強行されました。先ほど官房長官から説明がありましたけれども、政府はかねてから、靖国神社公式参拝違憲ではないかとの疑いを否定できないという統一見解に基づき、慎重な立場をとってこられました。しかるに今回、官房長官私的諮問機関である靖国懇の報告書を受け、国会審議を経ずして一方的に従来の政府統一見解を放棄して公式参拝を断行したということは、国会軽視であり、議会制民主主義を踏みにじる暴挙であると言わざるを得ないと思うのです。  公明党も、靖国懇から官房長官報告書提出されて以来、公式参拝憲法に抵触する問題であると、談話政府に対する申し入れを行ってまいりました。私も官房長官のところに参りましてその申し入れをしたことは御存じのとおりであります。政府がそれを無視して公式参拝を行ったことに対して、私は強い抗議の意をあらわしながら、官房長官に何点がお聞きしたいと思うのであります。  そこで、先ほどもいろいろとお話がありましたけれども、今回の靖国懇、すなわち藤波官房長官私的諮問機関である靖国懇はいかなる法的根拠に基づいて設置されたものか、またその懇談会性格はどのようなものなんでしょうか、これについてお答え願いたい。
  125. 藤波孝生

    藤波国務大臣 閣僚靖国神社参拝問題に関すする懇談会、俗称靖国懇と申しておりますが、靖国懇は、内閣官房長官決定により開催したものでございまして、その性格行政運営上の会合懇談会であるというふうにいたしております。  なお、決定をいたしました際の考え方でございますが、「内閣総理大臣その他の国務大臣靖国神社参拝に関しては、近年、総理国務大臣としての資格での参拝公式参拝)の憲法上の可否を始めとして、参拝の在り方を巡る議論が絶えない。また、自由民主党からは公式参拝の早期実現について要望があったところである。ところで、内閣総理大臣その他の国務大臣靖国神社参拝を巡る問題は国民意識にも深くかかわる問題であるので、この際、内閣官房長官が高い識見を有する人々の参集を求め、この問題に関して懇談会を開催することとする。」ということを趣旨といたしまして、具体的にはおおむね一年間にわたり、原則として毎月一回開催する。懇談会の庶務は関係行政機関の協力を得て内閣官房内閣審議室において処理する、こういうことで十五名の方にお願いを申し上げまして懇談会を出発させたところでございました。
  126. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今回の政府に出された私的諮問機関である靖国懇の報告書そのものにも大きな問題がありますけれども、その報告書参考として公式参拝決定した政府態度には、さらに私は問題があると思います。  確かに、靖国懇の報告書には六通りの異なった意見が取り上げられておりますけれども、問題は、報告書の中にこう書いてありますね、「政府は、この際、」「国民の多数により支持され、受け入れられる何らかの形で、内閣総理大臣その他の国務大臣靖国神社への公式参拝実施する方途を検討すべきであると考える。」こういういわゆる靖国懇の結論を出しているということだ。結論を出している。いいですか、もう一度言ってみましょうか。「政府は、この際、」「国民の多数により支持され、受け入れられる何らかの形で、内閣総理大臣その他の国務大臣靖国神社への公式参拝実施する方途を検討すべきであると考える。」という、言うならば靖国懇自体の結論を出している。これはちょっと問題じゃないですか。私的諮問機関意見の併記を行って、いろいろの意見があるから慎重にというなら私は話はわかる。それなら話はわかる。しかし、公式参拝を「検討すべきであると考える。」その報告書に書いてあるからよく見てください。     〔委員長退席、石川委員長代理着席〕  そういうように私的諮問機関の意思を結論として述べていることは、これは私的諮問機関として越権も甚だしいじゃないですか。越権も甚だしいでしょう。だから、私的諮問機関としてこのような結論めいた報告書を出したということについて、官房長官はおかしいと思いませんか、どうですか。
  127. 藤波孝生

    藤波国務大臣 行政運営上の会合として靖国懇をお願いしてきたところでございます。一年間、二十一回にわたりまして、十五名の方々の大部分はほとんど出席で、非常に大所高所から各方面からの意見を述べていただいた、そんなふうに思っております。懇談会運営につきましても、全く座長さん、座長代理の方にお願いをいたしまして、とかくお願いをいたしました私どもの側から、事務局の側からいろいろなことを申し上げて懇談会そのものの自主性を損ねることになってもいかぬ、自由に思い切って意見を述べてもらいたい、こういうふうにお願いをして運営に当たっていただいてきたところでございます。  今申し上げましたように大体一年間ということでお願いをいたしましたので、大体一年間に近づいてきたのでこの際報告をするという形をとろう、ついては、いろいろな意見があったからそれらはやはり併記して十分注意すべき事項として書きとめていくようにしよう、全体の流れとしてはこういうことだろうかといったようなことが、林座長を中心として各委員にいろいろ打診が行われまして、その結果、報告書がまとめられたものでございます。  結論的に公式参拝を促す、そのために政府としていろいろ検討をしろというような感じになっておりますが、これらも林座長を中心とした委員方々の御意思によりまして書かれたものである、こういうふうに申し上げたいと思うのでございます。  ただ問題は、それを受けて、全部報告書に基づいて政府態度を決めたか、こういうことになりますと、それはまた別の問題でございまして、私的な立場ではありましても諮問をいたしたのでございますから、当然報告書を尊重するということを申し上げるべきでありますけれども、責任は一切政府にあるわけであります。したがいまして、出されました報告書十分参考にさせていただきまして、さらにいろいろな角度から、政府といたしまして、特に憲法上との問題がございますので、慎重に検討をいたしました結果、朝から御報告を申し上げましたような形で公式参拝するということに決定をさせていただいた次第でございますので、懇談会報告書が非常に断定的である、それを受けて政府としても隠れみのにして態度を決めたのではないかということにつきましては、どうか今申し上げましたような事情のもとで作業が進められてまいりましたことを御理解いただきたい、このように考える次第でございます。
  128. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 はっきり申し上げまして、私はそれは理解をできるものではありません。  審議会と懇談会の差異については、これは非常に前からいろいろの論議がなされてきた問題なんです。昭和三十八年三月十八日に、内閣法制局といわゆる行政管理庁行政管理局との間でこの問題についてのいろいろの意見がありまして、それの調整済みの問題がございます。  それによりますと、こういうことが書いてあるのですよ。「国家行政組織法第八条にいう審議会といわゆる懇談会との差異は、審議会にあっては、合議機関そのものの意見が公の権威をもって表示されますのに反して、いわゆる懇談会にあっては、合議機関としての意思が表明されることなく、出席者意見が表明されるにとどまるところにあります。」と書いてあるのです。「したがいまして、懇談会は、出席者意見の表明又は意見の交換の場にすぎないのであります。」と書いてある。総務庁長官、これは間違いないでしょう。おたくとそれから内閣法制局との間で詰めた問題ですから、間違いなければ間違いないと言ってください。
  129. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 お読みになったとおりでございます。
  130. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは、官房長官、私に御理解願いたいと言ったって、結論を出して理解をしてくださいといったって、理解できないでしょう。私的諮問機関が、言うならば国会の権威あるいわゆる統一見解をそれを破棄するという状態にまでなっているこの問題について、私的諮問機関の結論が出たものに対して、これを私どもが理解を持ってくれなんというわけにはいかないじゃないですか。結局、言うならばこれは、中曽根総理がかつて総理並びに閣僚公式参拝できるように何とかならぬか、こういう総理の肝いりがあったればこそ、あなたは私的諮問機関をつくったのじゃないですか。公式参拝ありきじゃないか、公式参拝ありきということで、結局は最終的にこういう形になった、しかも結論を出して政府報告書を出した。  法制局長官、こっちを見なさい。あなた、先ほどこの報告書について、尊重するというのは何です、報告書を尊重するというのは何事なんですか。あなたは法律の番人なんですよ。先ほども、よく話を聞いていれば、ちっとも憲法上の解釈もしないで、(「社会通念」と呼ぶ者あり)社会通念的な、しかも報告書を尊重して政府にアドバイスしたら、政府は待っていたとばかりにこういう形になって公式参拝するじゃないですか。そうでしょう。これはとにかく越権ですよ。それをもとにして参考にしたとするならば、あなた脱法行為だよ。私はこの問題は勘弁できないよ。
  131. 藤波孝生

    藤波国務大臣 この問題につきましては、長い間の経緯がございまして御高承のとおりでございます。国会におきましても、いろいろな御意見が寄せられてまいりました。自由民主党におきましても、鋭意この問題についての作業が進められてきておりまして、昨年の夏前に自由民主党としての考え方がまとめられて、そして、政府としてもこの考え方に基づいて実行するようにという非常に強いお話もございました。  政府といたしましては、憲法とのかかわり合いという非常に慎重を要するデリケートな問題がございますから、時間をかけて検討しなければいかぬなというふうに考えまして、昨年八月十五日少し前から、靖国神社の境内で日本遺族会の青壮年部が公式参拝を要求して断食祈願をされるといったようなこともございまして、私もその席にお邪魔をいたしまして、とにかくこの問題は慎重に検討しなければならぬので時間を欲しい、こういうお願いもしてきたところでございました。その後も、国民の皆様方、特に遺族会の大方の方々から、この公式参拝実現を迫る強い御要請等もございましたが、それらの中で約一年間を要しまして、懇談会のいろいろな御意見を伺ってきたところでございます。  また、午前中にもお答えを申し上げましたように、単に十五名の委員方々意見を述べていただいただけではなくて、これを機会にいろいろな資料も集めようということで、従来の靖国神社経緯でございますとか、あるいはいろいろな団体、宗教団体なども含むいろいろな団体の御意見懇談会報告をしてもらう、あるいは外国の、国のために亡くなった方々への慰霊の方法等についても、いろいろと外務省を中心にいたしまして、在外公館から資料を集めてもらいまして研究するといったことを重ねてきたところでございます。決して、最初から公式参拝ありきで、それのための理由づけをするために資料を集めたり、あるいはその方向をつくり上げるために懇談会を設けたというのではない、それではお願いをいたしました私が懇談会のメンバーに対して大変失礼なことになるわけであります。そんなことではなくて、この問題は非常に大きな問題で国民の皆さん方注目の中でのことである、よくひとつ各方面からの御意見を寄せていただきたいということでお願いをいたしまして意見の開陳が進められてきた、こういう経緯になっておるところでございます。  懇談会報告書を受けて、政府といたしましてもいろいろな角度から検討をいたしまして、今回の形で公式参拝するということを決定したということでございますので、これらの経緯につきましては、冷静に対処してまいりました私どものあり方をぜひひとつ御理解をいただきたい、このようにお願いを申し上げておるところでございます。
  132. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 官房長官、私が質問している要点だけを言っていただければいいのですよ、時間が余りないことだし。これは重要な問題ですから、論議をはぐらかさないように。  この私的諮問機関は、あなたの任命する方でしょう、あなたの任命権なんですよ。(「国会承認じゃないんだ」と呼ぶ者あり)そうなんです、国会承認じゃないんです。総理並びに閣僚公式参拝何とかならないものかと言って、それを受けてあなたがつくったものなんだ。それは確かに立派な方方がおられることはわかっていますよ。しかし、私的諮問機関である以上は、意見だけを聞けばいいのであって、六通りの意見の並列があったということだけでいいんですよ。あと政府はどう考えるかということについては政府が考えるべき問題であって、この私的諮問機関が結論を出すなんというのは、これは越権も甚しいよ。こんなことを許したらどんな世論操作だって全部できるということよ。そうじゃない。(「総務長官」と呼ぶ者あり)今総務長官の意見を聞けと言うのですよ。総務長官答弁しなさい、そういうようなやり方について。
  133. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 行政組織法八条によるいわゆる審議会と懇談会の問題については、従来からいろいろな御議論があり、私も何回かお答えをしているつもりでございます。  政府あるいは各省庁が行政運営上のいろいろな課題について、これは必要だ、こういう考え方に立つ場合に各方面の有識者の意見を聞くということは、これはむしろ非常に有効な措置でもある、かようにすら私は考えているわけでございます。ただ、その場合には、あくまでもこれは答申にまとめて公の権威を持って意思決定するといったようなものではなくて、その点は審議会のあり方とは違う、かように考えるわけでございます。     〔石川委員長代理退席、委員長着席〕  今回の決定は、官房長官懇談会として設けて、過去一年間にわたって各方面からの資料をもとに意見の交換もして、それを個々の委員の御意見として取りまとめた。ただ、今お読みになったようなことは十五人の委員の中の大多数の人の意見の流れであったと思いますから、それらを一まとめにしてああいった報告書の形になったものである、私はかように考えておるわけでございます。別段懇談会審議会を混同するというようなことなく、あくまでもそれは意見として、政府責任において意見参考にしながら政府決定をしたものであるということでございますから、特別に鈴切さんがおっしゃるような越権のさたであるというふうには私は考えておりません。
  134. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 おかしいじゃないですか。きょうの新聞に図らずもその内容が出ておりますね。「会合は、主として各委員が順々に意見を述べる形で進めてきたが「内容的にも意見が多様なうえ、とくに結論を求める方向での討議をしたこともなかった」という。」ところが、だんだん八月十五日が近づいて「七月三十日の会合で示された第一次素案は、公式参拝を容認するトーンで貫かれ、反対論はほとんど無視されていた。これには違憲諭を唱えてきた憲法学者らが「いくら何でもおかしい」とかみつき、純粋な両論併記を求めて結論を持ち越した」という形にして、最終的にはまとめてしまった。こういうことをやっておって、非常に公平なことでやられたんだということは、とても私は信じられません。そういう意味においては私は納得がいかないということだけ申し上げておきます。後へ進まなくてはなりませんので。  法制局長官、あなた先ほど津の地鎮祭の最高裁判所における判決を引用されましたね。あれはいつですか。五十二年七月十三日でしょう、要するに最高裁判所の判決は。そうでしょう。そうなると、政府統一見解は五十五年十一月十七日だよ、あなた。「政府としては、従来から、内閣総理大臣その他の国務大臣国務大臣としての資格靖国神社参拝することは、憲法第二〇条第三項との関係で問題があるとの立場で一貫してきている。」というのでしょう。こういうふうな内容統一見解は、そのときにもう地鎮祭の判決があったのですよ。今ここでなぜ地鎮祭の問題を持ってくるのですか。おかしいじゃないですか、あなた。葬式とか法事とかそういう地鎮祭とかという問題と本質的に違うのじゃないですか、これは。法制局長官はこの問題についても、地鎮祭のことはあのときは全然わからなかったとおっしゃるのですか。靖国神社のこの問題について、この間統一見解が出ているのに、踏まえないとは言わせないよ、あなた。どういうことなのですか。
  135. 茂串俊

    ○茂串説明員 ただいまの時間的な関係は全く委員のおっしゃるとおりでございます。すなわち、昭和五十五年十一月十七日の政府統一見解なるものは、もとより基本的には津の地鎮祭判決に関する最高裁判決に示された理論に立脚していることは当然でございます。ただ、閣僚公式参拝が同判決の示す宗教的活動に関する基準に該当するか否かという問題は、国民意識に深くかかわるものでありまして、先ほども申し上げましたように、同判決が判示しておりますこれは何かといいますと、それに関する社会通念を的確に把握しない限りは結論が出ないというふうな問題でございます。すなわち、先ほどもちょっと申し上げましたように、津の地鎮祭判決のいわゆる目的効果論と称する一般論でございますが、国の宗教的活動とは、行為の目的が宗教的な意義を持ち、その効果が宗教に関する援助、助長、促進または圧迫、干渉等になるような行為を言うものとされ、またある行為がこの宗教的活動に該当するかどうかを検討するに当たっては、その行為の外形的側面のみにとらわれることなく、諸般の事情を考慮し、社会通念に従って客観的に判断すべきものとしておるのでございます。  したがいまして、ただいま問題になっております閣僚公式参拝が果たして同判決の示す宗教的活動に関する基準に該当するかどうかということは、すぐれて国民意識、すなわち言葉をかえて申しますれば、これに関する社会通念を把握しない限りは結論が出せないという問題でございます。この点につきましては、前々から御答弁にも申し上げておるところでございますが、先ほども申し上げましたように、法理の一点だけで結論が出るような問題ではなくて、国民意識に深く根差す問題であるだけに慎重に検討しなければならない、法制局だけで結論を出すような問題ではないという見地に立ちまして、そして昭和五十五年十一月十七日のような政府統一見解をお示しした次第でございます。
  136. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 全くおかしいですね。法制局、この地鎮祭があって、判決を得て、それから統一見解が出たのですよ。だから全部含まれてなくてはならないので、それを一気に統一見解変更するなんというようなのはもってのほかですよ。社会通念があればそれでは政府憲法違反を犯してもいいというのですか。社会通念、通念ということで憲法に違反してもいいというのですか、あなた。社会通念はどこで調べたのですか。  これも一緒に答弁してもらいますけれども、談話の中で政府は、「この公式参拝が宗教的意義を有しないものであることをその方式等の面で客観的に明らかにしつつ、靖国神社を援助、助長する等の結果とならないよう十分配慮」したとして、参拝形式だけを変えたと言うのですね。しかし靖国神社は、かつて国家神道一つの象徴的存在であり、現在も宗教的施設で憲法上の宗教団体である以上、その靖国神社公式参拝、いいですか、参拝というのは何かと言えば、参拝自体はこれは宗教行為なんですよ。参拝をしたということは宗教活動なんですよ。大変なことだ。公式参拝なんてここで出したって、これは大変なことよ。これが例えば違憲訴訟になってごらんなさい、たちまちのうちにして政府は、最高裁判所において明確にあなたたちがみんな違憲だということになりますよ。だから、この問題についてそんなことを言って、言うならば方式を変えたということだけでこれが国の宗教的活動に当たらないなんて、こんなことがありますか。官房長官どうですか。おかしいんじゃないですか。
  137. 藤波孝生

    藤波国務大臣 方針を決定いたします際に一番気をつけたのは、憲法との関係でございます。少なくとも国が行いますことにつきまして憲法に抵触するというようなことがあってはならぬ、こういうふうに考えまして、いろいろな角度から検討をいたしたわけでございます。  靖国神社国民及び遺族方々から戦没者追悼する中心的な施設であると見られており、そして、その中心的な施設に赴いて戦没者追悼の誠をささげてもらう、それを公人としての立場でぜひ実現をしてほしい、こういう御要望にこたえて行われたものでございますが、そのために、従来靖国神社参拝いたしますときにとってまいりました参拝形式などを一切変更いたしまして、いわゆるおはらいもしない、二拝二拍手一拝の拝礼もしない、玉ぐしもささげない、こういった形で宗教的活動と誤解を受けないようにあらゆる配慮をいたしまして、今回公式で追悼するということに決定をいたしたわけでございます。慎重に検討いたしてまいりました結果そのような結論に導かれまして実行いたしたものでございまして、ぜひ御理解をいただきたい、このように考える次第でございます。
  138. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は本当にこれは理解はできないのですよ。官房長官談話の中に今回の方式によるならばということが書いてありますね。それは、宗教色を薄めて参拝方式を変えた方式にするならば、公式参拝を行っても、社会通念憲法が禁止する宗教的活動に該当しないと判断の基準を示しておりますけれども、これは全くひとりよがりなんですね。靖国神社は少なくとも一宗教法人であり、宗教団体であることは紛れもない事実なんです。今回の公式参拝に際して靖国神社側に変化があったとは私は聞いてないですよ。いいですか、靖国神社側に何か変わった、今までの儀式を取りやめたとかいうそういう話は聞いておりませんよ。一宗教団体の靖国神社に、どんなに参拝方式を変えたとしても、参拝それ自体が宗教活動の重要な柱なんです。だから、公式に参拝をしたということは国が宗教的活動を行うのと同じことになるのだよ。(「参拝ということがよくわかってないんじゃないか」と呼ぶ者あり)参拝ということがよくわかっていないんじゃないかな。今もそういうあれがあったけれども、わかってない。もう既にこれは国が宗教的活動を行うと同じことなんです。これは憲法違反じゃないですか、どうなんですか。これは明らかに憲法違反ですよ。そうでしょう。これを憲法違反でないなんてだれが言えるんですか、そんなことは。
  139. 茂串俊

    ○茂串説明員 先ほど社会通念の問題が出ましたが、まずそれについてお答え申し上げますと、法律の解釈にも二通りございまして、いわゆる法律解釈そのもの、法理論そのものについてこれを変更すること、これは大変重要なことでございます。ただ、今この公式参拝で問題になっておりますのは、法理論そのものあるいは法律解釈そのものを変更するのではなくて、法律を具体的な事象に当てはめる場合に社会通念が必要となる場合があるわけでございます。その社会通念につきまして従来十分な把握ができなかったから、したがってその適用の面で必ずしも具体的な結論が得られなかった。それが今般いろいろと検討いたしました結果社会通念を把握したということで、そこで先般行われました公式参拝実施ということになった次第でございます。  それから参拝の問題でございますが、参拝という言葉を神社仏閣に赴いて拝礼をするという行為として把握する場合には、通常は神仏に祈りをささげるとかあるいは何かを祈るといったような意味に使われておりますけれども、時にはそのような宗教的な意義を持たずに、例えば表敬をするというような意味で行われる場合もございますし、今回はまさに追悼という非宗教的な目的参拝をするという意味でございまして、参拝という言葉には広狭いろいろな意味があるというふうに理解をしておるわけでございます。
  140. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それじゃこうなりますね。政府は今回の参拝は合憲であるとして公式参拝に踏み切った。そこで、裏を返すと、政府は、参拝方式だけを変えることによって宗教色を薄めたことが憲法の禁止する国の「宗教的活動」に該当しないとの判断のようであるけれども、参拝方式を変え宗教色を薄めれば、いかなる宗教団体また宗教法人にも国として公式参拝ができるという道が開かれたと判断していいのでしょうか。
  141. 茂串俊

    ○茂串説明員 ただいまの御質問、なかなか難しい問題でございますけれども、今回の靖国神社公式参拝につきましては……(鈴切委員「このことを聞いている。このことに答えてください」と呼ぶ)先ほども申し上げましたように、国民遺族の多くが靖国神社戦没者追悼の中心的施設であるとして、この神社に赴いて総理閣僚戦没者追悼を行うことを望んでいるという事情を踏まえてのことでございまして、他の一般の宗教施設につきましてこれと同じような事象があるかないかということでございまして、その辺の判断は私すぐにはつきかねますけれども、なかなかそういった特殊な事情というものは他の宗教施設にはないのではないか。これは私の独断でこの際余りはっきり申し上げるわけにまいりませんが、恐らくないのではなかろうかなという感じがいたしております。
  142. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 法制局長官、あなたは、憲法のいわゆる解釈なんで、これはあいまいにしちゃいけないのです。ちょっと時間をここで中断をしてきちっと統一見解を出してもらわなければ困る、そんなあいまいなことを言われたのでは。私の個人の意見でございますなんて、そんなことを私は聞いているのじゃないよ。おかしいじゃないの。だから、これはいずれにしてもこれからちょっと統一見解を出してもらわなくちゃなりません、今の問題について。宗教色を薄めて憲法に抵触しないということであるならば、一宗教法人並びに宗教団体について国の公式参拝というものは今後許されるというふうに判断していいかということについて、あなたは何度も答弁を保留していますから、それを明確にするまで、どうぞごゆっくりやってください。
  143. 茂串俊

    ○茂串説明員 御答弁申し上げますが、先ほどもちょっと私、意を尽くさなかったかもしれませんけれども、鋳国神社の場合には、先ほどから申し上げますように、国民遺族の多くが靖国神社戦没者追悼の中心的施設であるとして、同神社において総理閣僚戦没者追悼を行うことを望んでいるからでありまして、他の宗教施設がこのような要件を備えていない限りは、仮に今回のような参拝方式をとったとしても、そこに総理閣僚公式参拝することには憲法上問題があるというふうに考えられます。
  144. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 おかしいじゃないですか。それはおかしいじゃないですか。一宗教団体の靖国神社だけが公式参拝を許されて、ほかはそうでないとするならば、国が宗教団体の取り扱いに差別を設けることになるでしょう。靖国神社は宗教団体であり、その靖国神社公式参拝をしたことも宗教的な行為なんですよ。その効果は、他の宗教団体と違う有形無形の援助あるいは関与、権威づけることは明白じゃないですか。差別扱いだ。宗教法人を差別扱いしていいんですか。どうなんですか、それは。
  145. 茂串俊

    ○茂串説明員 靖国神社公式参拝問題につきましては、その目的は、先ほどから申し上げておりますように、専ら戦没者追悼といういわば非宗教的な目的があるわけでございまして、他の宗教施設につきまして同じような目的が果たして立てられるかどうか、その辺は私先ほど申し上げましたように自信がございませんけれども、恐らくそういう一般的な非宗教的な目的の設定ということはなかなか難しいんではなかろうかというふうなことを先ほど申し上げたわけでございます。
  146. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それはおかしいね。一宗教団体、宗教法人を特別扱いにする。たとえどんなものがあろうと、特別扱いにしてそれでいいんでしょうか。憲法がそういうふうなことを是認するんでしょうか。官房長官、その点どうなんですか。そんなのはおかしいじゃないですか。差別するというのはどういうことですか。
  147. 藤波孝生

    藤波国務大臣 法制局長官からお答えをいたしておりますように、靖国神社戦没者追悼する中心的な施設であるというふうに国民の多くや特に御遺族方々などが考えておられるという背景がございます。したがいまして、その中心的施設であります靖国神社に赴いて、そして宗教色を薄めてという先ほど来のお話がございますが、宗教色を薄めるのではなしに宗教色を排して、これは新聞によりましてそういうふうに書いてある新聞がございますが、正しくは宗教色を排して靖国神社戦没者追悼を行う、こういうことが今度の態度決定をした根拠になっておるわけでございます。国民の多くの方々戦没者追悼するにふさわしい、こここそその大事な場所だとお考えになるような場所がどこかにあって、そういうふうなお話になって、宗教色を排除してそこに赴いて一拝するというような形になるかどうか、それはその状況にぶつかってみないと何とも言えないことで、一般的な話として申し上げますことはかえって誤解を招いてもいかぬと思いますが、靖国神社に赴いて一拝をしたということ、戦没者追悼したということは、今申し上げたようなことを念頭に置いて決定をしたものである、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  148. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 宗教色を排したと言うんですね。公式参拝という事実、これは全然宗教色を排したことにならぬよ。あなた、何を言っているんだ。公式参拝ということ自体が「宗教的活動」なんですよ。それを排したとは何事よ。わからない。あなたのあれに「公式参拝」と書いてあるじゃないか。公式参拝は「宗教的活動」じゃないか。何を言っているんだ。排したも何もあったものじゃない。そんなのはだめだ。
  149. 茂串俊

    ○茂串説明員 先ほども申し上げましたが、参拝という言葉の意味合い、使い方の問題かと思います。すなわち参拝というのは、先ほども申し上げましたように神社、仏閣に赴いて拝礼するという行為として把握する場合に、通常は神仏に祈りをささげるといったような宗教的な目的を持ったものでございますけれども、そのほかに広い意味の参拝という言葉としては、例えば表敬をするとか、このたびのいわゆる参拝のように非宗教的な戦没者追悼という目的のために参拝するという場合もあり得るわけでございまして、これは言葉の使い方の問題であるというふうに考えております。(発言する者多し)
  150. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それはだめだよ。参拝なんというのは宗教的な活動のあれだよ。これは本当にだめだよ。こんなこと許せないよ。参拝というのは宗教的行為だよ。要するに宗教色を排したといったって、おじぎをして献花をしているのに、何言っているんだ。
  151. 藤波孝生

    藤波国務大臣 何回も同じようなことを申し上げて大変恐縮でございますが、少し整理して申し上げたいと思います。  靖国神社戦没者追悼する中心的な施設である、国民の皆さん方、特に御遺族方々などがそのように考えておられて、ぜひその靖国神社に赴いて公人としての立場戦没者追悼してもらいたい、こういうお話がございまして、それを受けていろいろ検討させていただいたところでございます。  憲法との関係を考えてみまして、私は十五日の日などに随分いろいろな方からお電話などもいただきました。それに対してこちらから時間がなくて一々電話できませんでした。いろいろ御注意をいただいたり御質問をいただいたりした宗教団体の方々などもございました。そういった方々に、こういう形で公式参拝する、こういうふうにしたとお話をいたしましたところ、従来も宗教法人靖国神社が宗教性が除かれるといいがなと我々宗教団体は考えてきたことがあった、しかし政府がそんなことを言えば当然宗教法人に対する干渉になるし、圧迫になるし、憲法上できることでもないなというふうに思ってきたが、宗教法人靖国神社の側ではできなかったけれども、お参りに行く立場の者が宗教色を排除して、そして靖国神社に赴いて戦没者追悼するということになったわけだな、こういうお話がございました。そういったことなどを十五日にいろいろ宗教団体の方々などとも電話でお話を申し上げたようなことでございました。憲法に抵触するという誤解を与えないように、靖国神社参拝形式をとらないで、靖国神社に赴いて一拝するということによりまして、心の底から戦没者追悼し、感謝し、そして平和を祈念するという機会にさせていただいた次第でございます。  先ほどからお答えしておりますように、それでは同じような状況の中で、例えばほかの神社であるとかほかの仏閣であるとかほかの宗教団体のいろいろな場所であるとかといったようなところにも、同じような形で宗教色を排除していけば公式にそこへお参りできるなという御質問に対しましては、あくまでも前提が、国民の多くの方々戦没者追悼する中心的な施設として靖国神社を考えているという背景がある中でのことでございますので、御指摘のようなことがどういうような状況の中で決定をする運びになるのか、その状況が明らかになってみないと何ともお答えのしょうのないことである、こういうことをお答え申し上げることはお許しをいただきたいと思うのでございます。
  152. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そこで、私は次から次へと何点か質問しますから。なぜかというと、もう時間的にもかなり私の時間があれですから、五、六点質問しますから答えてください。いいですか。  先ほど、目的戦没者追悼ということであるならば許される、こうおっしゃいましたね。それならば、これが例えば護国神社とか招魂社とか、そういうふうな目的戦没者追悼であるというなら、どこへでも総理公式参拝されるかということがまず一点。いいですか。これが一つ。  それから……(「一つ一つ明快に聞かなきゃだめだよ、ごまかされるから」と呼ぶ者あり)では、それを一つ
  153. 藤波孝生

    藤波国務大臣 国民の多くが戦没者追悼の中心的施設であると考えておる靖国神社に赴いて、靖国神社の場において一拝をするという形をとって、そこで戦没者追悼をする、公人として追悼する、こういう形をとったわけでございます。
  154. 茂串俊

    ○茂串説明員 先ほどは言葉が足らなかったかもしれませんが、答弁を二つに分けてしまったような感じでございますので、その点はおわび申し上げますが、先ほど申し上げましたことを繰り返して申し上げますと、あくまでも靖国神社の場合には、国民遺族の多くの方々が依然として戦没者追悼の中心的施設とみなしまして、その場所で総理閣僚がいわゆる公式参拝をすること、戦没者追悼のための参拝をすること、これを強く望んでおるという前提があるわけでございます。  そこで、そのようないわば国民の中の広い意識の上に乗りまして、そして政府がその願望に沿って靖国神社公式参拝をする、閣僚靖国神社参拝をするということに相なるわけでございますが、護国神社の場合になりますと、これはあくまでも地域的な存在でございます。したがいまして、そこに政府代表する総理などが戦没者追悼のために参拝すべきであるというのが、多数の国民意見であるかどうかということは必ずしも明らかでございません。もちろん私まだ具体的に検討しているわけではございませんけれども、そのような点が明らかでございませんだけに、この段階で果たして総理等の公式参拝が許容されるかどうかということについては、しかとした答弁は差し控えたいと思っております。
  155. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これはちょっと問題じゃないですか。戦没者追悼するということは今回の靖国神社が中心的だというのでしょう。中心的だなんというのはだれが決めたの。  それから、先ほど靖国の公式参拝社会通念上許されると判断したというふうに言われましたね。というのは、社会通念というのはどういう調査で、要するにどういうことをわかってやったのか、その根拠を示してもらいたいですね。社会通念社会通念と言うが、どういう方法で調べたの、あなた。(「私的諮問委員会の多数意見なんというのじゃだめだぞ」と呼ぶ者あり)だめだよ、そんなのは。長官、おかしいじゃないか。
  156. 茂串俊

    ○茂串説明員 お答え申し上げます。  ただいま社会通念内容いかんということでございますが、先ほどから申し上げておりますように、先般藤波内閣官房長官提出されましたいわゆる靖国懇の報告書によりますと、国民遺族の多くは、戦後四十年に当たる今日まで、靖国神社を、その沿革や規模から見て、依然として我が国における戦没者追悼の中心的施設であるとしており、したがって、同神社において、多数の戦没者に対して、国民代表する立場にある者による追悼の途が講ぜられること、すなわち、内閣総理大臣その他の国務大臣が同神社に公式参拝することを望んでいるものと認められる。という報告書内容がございます。こういう点につきましていろいろと我々も検討いたしました結果、やはりこのようないわゆる社会的な常識の面における事実があるのかなということに乗りまして、私どもは先ほどから御答弁しているような措置をとったわけでございます。
  157. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 法制局長官というのはもっとシビアに物を判断しなければだめなのよ。私的諮問機関報告書を尊重するなんてお粗末なことを言われたのでは、もう国民はそれでは何を法制局長官に聞いたらいいかわからなくなってしまう。いいですか、これは大変な問題ですよ。  あと二問聞きますからね。それで、あとまた問題があったらやって、それで終えますけれども、天皇の靖国神社参拝は戦後もしばしば行われてきましたけれども、これはすべて私的行為であって、宮中三殿への天皇の参拝と同様、天皇の信教の自由の行使であると考えられて、昭和五十年十一月、三木総理大臣は、天皇の靖国参拝は純粋に私人の立場であると答えておりますね。今回、政府宗教色を薄めたというか宗教色をなくしたというのですが、参拝方式を変えることによって国の「宗教的活動」に当たらない、合憲だとして、靖国神社公式参拝を断行しました。となると、天皇も一宗教法人靖国神社政府の言う方式公式参拝ができるということになるのでしょうか。これについてはどうなのか。  それで、憲法ということから見ますと、国事行為という問題があるのですよ。このこととはどういう関係になるのか、この点がまず一点です。いいですね、法制局長官。そのことが一つ。  それからもう一つ、今回の靖国神社参拝は首相及び閣僚公式参拝ということであるけれども、国の機関、なかんずく自衛隊。首相並びに防衛庁長官は、自衛隊法を見ますと、「内閣総理大臣は、内閣代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有する。」あるいは八条には、防衛庁「長官は、内閣総理大臣の指揮監督を受け、自衛隊の隊務を統括する。」こういうことになっていますね。その首相及び防衛庁長官は公式参拝したのですよ。となると、国の機関、なかんずく自衛隊も公式参拝するということについては合憲である、こうなりますね、その点について。  最後は、人事院勧告完全実施しなさいよ、総務庁長官。そんなことは当たり前のことだ。労働基本権の代償機関としてのこの人事院勧告を尊重するなんて、そんなあいまいなことではなくて、完全実施しなさい。これは最後にあなたに一問だけ質問しておくから。  法制局長官、どうですか。
  158. 茂串俊

    ○茂串説明員 二問、私に対して質問がございましたが、まず天皇が国の機関として靖国神社参拝することはどうか、それからまたそれについては一体国事行為との関係はどうなるのかという点でございますが、さしあたって私どもは総理閣僚靖国神社公式参拝についての見解と申しますか判断をいろいろと勉強したわけでございますが、天皇について具体的にどういう問題が一体どうなるかということにつきましては、これはさしあたってまだ検討しておりません。したがいまして、この席で具体的にお答えすることは差し控えたいと思いますので、御了承を願います。  それから、自衛隊の関係でございますが、これは自衛隊の任務というものに照らしてみますと、政府代表して戦没者追悼するという立場にはないので、総理閣僚の場合とはおのずから異なる立場にあるのではないかというふうに考えております。
  159. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 一問だけ。——内閣は天皇陛下に対して言うならば助言を与えるというわけでしょう。天皇陛下は、総理並びに閣僚公式参拝をしたね、私も今までは私的参拝だったけれども、公的参拝ということはできないのだろうか、こう聞かれた場合、まさか違憲でありますからあなたはちょっと控えてくださいとは言えないでしょう。そうした場合に、最終的に違憲判決が出た場合には内閣は総辞職ですよ、助言によるのですから。そのことだけ申し上げて、あと一問だけ……。  時間になったようでございますから、総務庁長官、人勧の問題だけ。いいですか、追及だけはまたこれから後に残して、一応終わります。
  160. 中島源太郎

  161. 田中慶秋

    田中(慶)委員 私は民社党を代表して、人勧の問題を含めて関連の質問もさせていただきたいと思います。  まず冒頭に、去る十二日の夜、日航機一二三便が群馬・長野県境の山中に墜落し、五百二十名のとうとい生命が失われたことに衷心より御冥福をお祈り申し上げたいと思います。  この事故についての原因究明は、関係者が努力をされておりますけれども、まず冒頭に安全確保の手落ちがなかったかどうかという問題。ということは、この飛行機は五十三年に大阪空港でしりもち事故を起こしたということも報道されているわけであります。同時に、従来ジャンボ機が導入されるまでは、安全点検においては全箇所にわたってそれぞれの点検整備チェック項目があったわけであります。ところがジャンボ機が導入されることによって、少なくともジャンボ機を総点検することによって約一カ月半から二カ月かかる、こういう形の中で、企業を中心とした形の中での一つの安全チェック項目ではなかったかと思います。そんなことを考えてまいりますと、人間尊重の時代と言われながら、逆に大型機を導入して、その中においては少なくとも今はそれぞれサンプリングチェックになっている、こういうところに大きな問題があり、このことがもし以前のような形で全チェック項目になっていたならば、五百二十名のとうとい生命が失われなくて済んだのではなかったか、こんな気もするわけでありますけれども、この辺についての見解をお伺いしたいと思います。
  162. 藤波孝生

    藤波国務大臣 今回、日航の事故が起きまして、前代未聞の多くの方々が犠牲になられましたことに対しまして、まことに遺憾に存じます。生存者の方々には一日も早い御全快を、また亡くなられた方々には心から御冥福をお祈りいたしたいと思うのでございます。  航空交通の安全の確保ということは航空行政の最も基本的な課題でありまして、すべてに優先をして安全対策に最大限の努力を傾注するということが大切でございまして、政府といたしましても強く関係者に指導をしてきたところでございます。  去る八月十二日、ジャンボ機が墜落をするという事故が起きたということは実に残念なことでございます。事故の再発防止のために事故原因の徹底的な究明を今急いでおるところでございますが、当面ジャンボ機の垂直尾翼及び胴体与圧室後部の一斉点検を指示したところでございます。  今後、このような事故が二度と起こらないよう航空機の安全確保に万全の処置をとることといたしたい、このように考えております。  先般、極めて身近なところで痛感をしたのでありますが、総理がヨーロッパに出かけてまいります際にも、出発直前に故障が発見をされまして、そのために一時間半おくれて出発をする。国際的な外国との行事なども控えておりまして、非常に気をもんだところでございましたが、そのときも日航の幹部に対しまして私からも強く注意をいたしまして、とにかくこの機体の整備点検、あるいは安全を第一に考えて、事前に事前にいろいろな整備をしていくというような考え方というものをもっと徹底させる必要があるのではないか、そんなような注意をしたところでございました。その後にこんな大きな事故が起こってしまいまして、本当に心の底から遺憾に存じておるところでございます。  なお、具体的にジャンボ機の安全の確認の問題につきまして、専門的な分野にわたりますので政府委員から少しお答えを申し上げたいと思いますので、お聞き取りをお願いいたします。
  163. 山田隆英

    ○山田説明員 ジャンボ機の安全対策についてお答え申し上げます。  航空機の安全性につきましては、定期航空運送事業者の場合、航空機自体の安全性を証明する耐空証明と、それからこれを運航する航空会社によりますところの整備の方式等規定いたしました整備規程というものを基本といたしまして、その安全性が保障されているところでございます。日本航空のジャンボ機につきましても、有効な耐空証明、それから運輸大臣の認可いたしました整備規程に基づきまして運用されているところでございます。  航空局といたしましては、航空会社に対しまして、整備規程等の遵守につきまして日ごろから指導監督をしているところでございます。また、立入検査等通じまして実態把握いたしまして、必要があれば改善するよう指導しているところでございます。  ジャンボ機につきましては、連邦航空局が定めました整備点検間隔とかあるいは点検方法等に準拠いたしまして整備方式というものを定めております。ジャンボ機の場合、ただいま御質問ございましたように全数点検ではないのではないか、サンプリングでやっているのではないかというお話がございましたけれども、これはジャンボ機に限らず、今までYS11等についても、一部サンプリング調査でやってきているところもあるところでございます。ただジャンボ機につきましては、これまでの航空機に比べまして非常に安全性が高いということで、そのサンプリングの率等がこれまでの航空機によるよりも低くなっている、こういうことでございます。  これまで航空機というものは、機体とかエンジン部品等については、今申し上げましたように定められた点検間隔であるとか点検方法等によって整備を行うならば、航空機自体は使用寿命というものはないという考え方に基づいて運航されてきたわけでございます。  なお、ジャンボSRの定時整備といいますのは、飛行二百五十時間ごとにA整備というものを行いまして、さらにまた三千時間ごとにC整備ということでチェックいたしまして、万全を期しているわけでございます。
  164. 田中慶秋

    田中(慶)委員 現在のジャンボ機は連邦局の定めるところによってということでありますし、少なくともC整備は三千時間、それもサンプリングということでございますから、国民の生命あるいはまた安全運航を考えたときにそのことが果たしていいかどうか。先ほどお話がありましたように、サンプリングの点検はYS11にもあったということでありますけれども、以前は全点検であったわけであります。従来の飛行機がせいぜい百人、二百人単位のところで全点検をしていた。しかし、今五百人も乗れる飛行機の場合においてサンプリング点検というのは、確かに性能が上がったとはいえ、ここに大きな問題があるのではないかと思います。特に大阪空港において五十三年の時点でこの飛行機はしりもち事故を起こした機種でもあったわけでありますから、今度の事故もこういうところに大変大きな問題があったのではないかと思いますので、これからのジャンボ運航に当たっては、今までのアメリカの連邦航空局が指定するものとは別に、日本の運輸省でそれぞれのチェック項目をつくりながら正しい安全運航を図るべきではないか。そういう点にどのようなお考え方を持っているか、再度質問をさせていただきたいと思います。  同時に、政府は、今回の事故に対して、再発防止指導はもちろんでありますけれども、遺族に対する対応の仕方等々、しっかりした見解を明確にすべきじゃないかと思いますが、これらについての見解を述べていただきたいと思います。
  165. 山田隆英

    ○山田説明員 私の前回の発言、若干誤解を招くような表現があったかと思いますので、ちょっと確認をさせていただきたいと思いますが、私がサンプリング調査と申し上げましたのは、整備点検をサンプリング調査に基づいて行うということではございません。A整備、C整備ともに全機について行います。ただ、サンプリング調査といいますのは、機体の構造部材等について一部サンプリング調査を行っているということでございます。  それから、今後の対応でございますけれども、今回の事故の原因を今事故調査委員会で究明しておりますが、この事故調査の結果を待ちまして私どもは必要な対策を講じていく所存でございます。これまでも、今回の事故につきまして機体の後部に問題がある疑いが持たれましたので、直ちに後部部分についての点検を各エアラインに指示したところでございます。  なお、今回事故に遣われました旅客の方々の補償問題につきましては、日本航空に対しまして、誠意を持って補償問題に当たるよう指導していきたい、かように考えております。
  166. 田中慶秋

    田中(慶)委員 政府の方からの今回の遺族に対する対応の問題については官房長官から述べていただきたいと思いますので、この辺について代表して官房長官が明確に述べるべきではないかと思いますので、もう一度お伺いしたいと思います。
  167. 藤波孝生

    藤波国務大臣 政府といたしましては、事故が起こりました後、生存者の救援あるいは遺体の捜索等に全力を挙げて取り組んできたところでございます。ここにきょうもなおその作業が進められているわけでございますが、遺体や遺品の収集、そしてその身元確認、そしてそれぞれのお地元への移送などについて最善の努力をしていくようにしなければならぬ、このように考えておるところでございます。  なお、その後に起こります補償の問題につきましては、政府といたしましても、今回の大きな悲しむべき事故に遭遇した御遺族方々に対し心からのお慰めを申し上げると同時に、補償についても誠心誠意対処するようにしなければならぬと考えておりまして、日本航空に対して強くそのことを指導していきたい、このように考えておる次第でございます。
  168. 田中慶秋

    田中(慶)委員 この事故の問題についてでありますけれども、事故発生後初動捜査の活動がおくれたという批判もあるし、自衛隊の対応についても、先般マスコミ等の問題を通じながらこれらに対する批判もあったと思います。同時に、生存者の話によると、四名以外に事故直後においては生存者がまだもっといたのではないかという推測も立たれると思います。その点では、この救生活動についても、もっと具体的に夜間捜索活動実施すべきではなかったかという話も出ております。さらにはまた、自衛隊の空挺部隊員が現場にもっと早く降下したならば、こんなお話もありますけれども、これらについて防衛庁の対応をお伺いしたいと思います。
  169. 西廣整輝

    西廣説明員 まず、事件当日の当初どういう対応をしたかという点からお答え申し上げます。  当日十八時五十七分に、運輸省の羽田ターミナルの管制所のレーダーから機影が消えた旨の情報が、十九時ごろ東京ACCから私どもの入間のRCCの方に御連絡がございました。私どもはこの事態を非常に緊急な事態と認識いたしましたので、自発的に直ちに十九時一分に、領空侵犯待機のために待機いたしておりましたF4EJ二機を発進させて、現場の確認に向かわせたわけであります。当該F4EJは、十九時二十一分に現地の上空に行きまして炎があることを確認いたしまして、やみ夜でありますので場所がはっきりいたしませんので、横田のタカンを用いまして、タカンから三百度の方向約三十二マイルだという概位を報告いたしたわけであります。その後十九時三十分、事件後約三十分経過したころ、陸上幕僚長が、これは大変な事態になるだろうということで、東部方面総監に対しまして災害派遣の準備を指示いたしております。したがいまして、陸上部隊はその時点から、当然のことながら勤務時間外でございますので非常呼集をかけまして隊員を集め、かつ、出動準備を始めたということになっております。  その後、さらに事故現場をより正確に知るために救難機バートル107を発進させまして、F4よりもよりスピードの遅い飛行機でありますからきっちりとした場所がわかるということでこれを発進させまして、同様にタカンを用いて位置確認を行ったわけであります。これは後からわかったことでありますが、そのとき確認した位置は現在の現場から一ないし三キロぐらいの間に確認されておりますので、その範囲では誤差の範囲で十分なところまで確認できたと思っておりますが、何分にも暗やみのことでございますので、下の地形等が全くわからないという状況でございました。  以後、ヘリコプターによりまして、地上から現場に急行しております警察あるいは地元の消防団員といった者を誘導できるのではないかということでいろいろ実験を試みたわけでありますけれども、現場が見えるところまでヘリコプターが上がると今度はヘリコプターのランディングライドが地上から見えない、地上から見えるところまで下がると今度はヘリコプターが現場が見えないということで、上空からの誘導はできなかったというのが実情でございます。  以上が当日の状況でございます。  その後、翌日未明からヘリコプターで現場を確認し、地形使察をして空挺隊員をおろすというような手続をとったわけでございますが、御承知のように現場が何分にもかなりの高度の非常に険峻な山岳地帯でございまして、一般にはヘリコプターというのはどこででも空中停止できるようにお考えでございますけれども、ヘリコプターが空中停止できるにはそれなりの条件がございまして、一定の空気密度があるか、あるいは平らな地面があってその地面効果というものを利用して壁に手を当てて支えるような格好で停止をすることになりますので、今回事故が起きました千六百メートルというような高地でしかも非常に傾斜の激しいところということになりますと、ヘリコプターが空中で停止すること自身が非常得難しい。さらに、かなりの立ち木が残っておりましてそれにひっかかるおそれもあるというようなことで、十分に地形を把握した後でないとへリコプターが近づけないということもございました。いずれにしましても、かなりの苦労をされて現場の地形等を確認をした後に、空挺団をリペリングと申しますかロープで降下させたわけでございますが、これも通常の場合よりも非常に高いところ、四十メートルないし二十メートルのところから降下をさせてようやく現場にたどり着くことができたという状況でございました。
  170. 田中慶秋

    田中(慶)委員 現在も捜索活動が続けられているわけでありますし、報道によりますと、延べ二万とも三万とも言われる自衛隊及び警察の皆さんがそれぞれ捜索活動されているやに伺っております。しかしテレビ報道から見る限りでは、現地に行かれた人たちもいろいろな形で疲労の度合いやらあるいはまた二次災害が出ることも心配をされておりますので、そういうことのないように盤石の体制をとりあえず指示をしていただきたい。これは要望しておきたいと思います。  続いて、靖国神社公式参拝の問題についてお伺いをさせていただきたいと思います。  靖国神社公式参拝違憲ではないかという疑いのもとに、なお否定できない今日の中で、先般の国会論議、その統一見解変更する旨、先ほどお話も出ましたけれども、これらに対して、少なくとも最高裁判所が十二分に検討し、判決に照らしてもなお公式参拝違憲ではないかという疑いが否定できないということを明言されている、こういうことを先ほども質疑をされてきたわけであります。  こういう一連の問題の中で、法の解釈という問題、先ほど法制局長官は、法の解釈の変更は重大な問題であるということを指摘されたわけであります。確かにそうだと思います。ところが、この五十五年十一月十七日の政府統一見解と今回の法の解釈というのは、私は重大な変更を来しているのではないかと思います。そういう点について、少なくとも重大な法の解釈の変更の場合においてはかねてから国会論議をされてきたわけでありますから、こういう問題について国会論議を経た後に行うべきではないかというふうに考えますけれども、官房長官並びに法制局長官の見解をお伺いしたいと思います。
  171. 藤波孝生

    藤波国務大臣 このたび従来の政府統一見解変更いたしまして、内閣総理大臣その他の国務大臣が、国務大臣としての資格靖国神社公式参拝をしたわけでありますが、政府統一見解変更ということは非常に大きな意味を持つもの、御指摘のとおりでございます。  ただ、この問題につきましてはあくまでも政府がその責任において判断すべき事柄であるというふうに考え、事前に国会意見を求めなかったことにつきましては、決して国会を軽視したという意味ではなくて、日常からこの問題についてもいろいろ御意見をお寄せをいただいております国会での御論議などもよく参考にさせていただいて、慎重に政府としてみずからの態度決定をした、このように考えておるところでございます。ただ、一日も早く御報告をしなければいかぬと考えまして、昨日衆参両院の議院運営委員会理事会に出席をいたしまして、政府の考え方を説明をさせていただいたところでございます。  また、政府統一見解変更公式参拝実施につきましては、靖国懇の報告書参考といたしまして、政府として鋭意検討をいたしました結果でございまして、あくまでも先ほど申し上げましたように、国会での日常の御論議、そしてこういった懇談会での報告書などを参考にして十分慎重に検討をいたしました結果、政府態度決定した、このことをぜひ御理解をいただきたいと思うのでございます。
  172. 茂串俊

    ○茂串説明員 先ほどもお答え申し上げましたが、五十五年十一月十七日の政府統一見解は、基本的にはあくまでも津地鎮祭に関する最高裁判決に示された理論に立脚しているわけでございますが、何分にも閣僚公式参拝が、この判決に示されております「宗教的活動に関する基準」に該当するかどうかという問題は、国民意識に深くかかわるものでございまして、この判決が判示するように、それに関する社会通念を的確に把握した上で、それを踏まえて判断する必要があったわけでございます。  そこで今般、いわゆる靖国神社参拝問題懇談会からの報告苦が提出されましたので、これを参考としまして鋭意検討いたしました結果、内閣総理大臣その他の国務大臣が今回実施したような公式参拝は、憲法二十条三項の規定に違反する疑いはないという判断に至りましたので、このような参拝を差し控える必要がないという結論を得た次第でございます。
  173. 田中慶秋

    田中(慶)委員 その辺がちょっとおかしいと思うのですね。例えば憲法学者の間では、公式参拝参拝方式にかかわらず「宗教的活動」に当たり、違憲という考え方が根強い、こういうことが明確になっております。そして、今あなたは、国民の大多数とかあるいはまた国民からのそれぞれの考え方によってということでありますけれども、それぞれのその時点時点において憲法がそんな形の中でねじ曲げられたのでは、憲法の権威とかあるいは憲法の信頼性とか、こういうものが失われるのではないかと思います。法制局がその都度そんな形で見解をことごとく変更されたのでは法の意味がないのではないかと思いますけれども、その辺はどうなんですか。
  174. 茂串俊

    ○茂串説明員 先ほども申し上げましたが、一般的に申しまして、いわゆる法理論そのもの、これを変更するということは大変に重大なことでございます。もちろん、それを適用する段階におきまして、その適用の仕方を変えるということも重大でございますけれども、適用する場合にはこの社会通念というものが必要になる場合があるわけでございまして、公式参拝の問題につきましては、その社会通念が問題が問題でありますだけに絶対に必要だったわけでございますが、なかなか把握するに至らなかったというのが五十五年十一月政府統一見解当時の考え方でございました。  それにつきまして、今般のいろいろのいきさつがありまして検討いたしました結果、この社会通念に照らして考えました場合に、今回実施したような公式参拝憲法規定に違反する疑いがないという判断に至ったので、これを実施したということがその実態でございます。
  175. 田中慶秋

    田中(慶)委員 社会通念とか法律がそのような形の中でそれぞれ判断されていたのでは、法制局としての権威というものが失われるのではないかと思うのです。  先ほど、例えば靖国神社というのは代表する中心的な施設ということを言われたと思います。しかし、今宗教法人として代表する中心的な施設であるかどうかということを考えたときに、それは果たして宗教的に代表する中心的な施設であるかどうか。私は違うと思います。戦前であるならともかくも、現時点においては政教分離が言われているわけでありますから、そんなことを考えたときに、代表する施設とは言いがたいと思います。こんなことを考えたときに、今その社会的通念とかいう問題についても、現在の世相からして果たしてそのことが合法的かどうか、私は少なくとも法制局が今言われた見解については承服できないわけでありますけれども、再度その辺について申し述べていただきたいと思います。
  176. 茂串俊

    ○茂串説明員 ただいまは今までの経緯を一般的に述べたわけでございますが、それでは法律解釈として、一体この今回の公式参拝憲法適合性を持っているかどうかという点につきましては、午前中の答弁でも申し上げましたように、これは我我はあくまでも津地鎮祭最高裁判決に依拠しまして、これにのっとって解釈を下しておるわけでございます。  この最高裁判決には、いわゆる目的効果論というのがございます。そして、この目的効果論に当てはめまして、憲法二十条事項が禁止する「宗教的活動」に該当するかどうかという判断を下すことになるわけでございますが、今回の参拝は、先ほどるる申し上げましたような事情によりまして、その目的及び効果の面から見て、憲法二十条三項に禁止する「宗教的活動」に該当しないという判断を下したわけでございます。
  177. 田中慶秋

    田中(慶)委員 例えば、先ほどの津の問題は昭和五十二年の問題であります。その後に、それぞれの経緯を経て五十五年に統一見解が出されて、そしてそのときには、この憲法二十条三項の関係の問題から一貫して、これらについては少なくとも憲法違反の疑いを否定できないという統一見解のもとに今日まで来たと思います。  あなたが今おっしゃられるように、この津の地鎮祭の判決、最高裁の問題について言うならば、当然五十五年の見解について、まずこのときの統一見解というものは少なくともおかしいということを明確にしてください、その後の今日のものについてあなたは合憲だ、あるいはまた疑いはないということを明確にしているんですから。当時はこれは疑いがあるということを言っているでしょう。津の五十二年の時点と五十五年、六十年、そんなに法の解釈が三年、四年、五年という形で年を追うごとに変わっていったのでは、法の信頼性というのは失われるわけであります。まずそれを否定してから今度の問題を明確にすべきではないかと思いますけれども、その辺どうですか。
  178. 茂串俊

    ○茂串説明員 先ほども申し上げましたが、この統一見解を御提示いたしました昭和五十五年十一月の当時におきましては、この問題がもともと国民意識に深くかかわるものであって、単なる法理だけの一点で決めることはできない。先ほども申し上げました津の地鎮祭判決の目的効果論に照らしましても、やはり社会通念に従ってもろもろの要素を考慮した上で客観的に判断すべきであるというような判示がなされておるわけでありまして、その段階におきましてはなかなかこの社会通念というものを把握するに至らなかったという点があるわけでございます。  したがいまして、当時といたしましては、参拝方式についてどうこうと分析検討を加えたわけではございませんで、公式参拝を総合的にとらえて意見を述べたものでありまして、結論として、当時は政府としては公式参拝を差し控えるという方針をとっているということを確認的に述べた次第でございます。
  179. 田中慶秋

    田中(慶)委員 それじゃ官房長官、やはりそれぞれこんな形の中で法の解釈が違っていたのではまずいと思うのですね、はっきり申し上げて。そして、疑いがあれば少なくとも政府はそういうものをやめなければいけないと思いますよ。  ということは、先般日本武道館において、少なくとも全国民の注視の中で戦没者の慰霊祭が行われているわけです。それはもう総理から我が党の塚本委員長が出ながら、当然これは行うべきであるという前提でやっておるわけですよ。何のためにあれをやったのですか。その後また参拝をする。屋上屋を重ねるようなものじゃないですか。特に、あなたは先ほど戦没者ということを明確に言われております。戦没者の中には戦犯の名前、靖国神社には戦犯の名前も入っていると思います。逆に、戦没者ならば無名戦士の人たちはどうなるのですか。あそこに名前は入ってないでしょう。そんなことを考えたときに、今回の行動というものはやはりちぐはぐである。そして、外層ではそれぞれ無名戦士の墓にいろいろな形の中で参拝をしたり、いろいろなことをしております。宗教法人じゃありません。靖国神社は明確に宗教法人になっているのです。その辺は、幾ら外国ナイズされているからといっても、明確にする必要があるのじゃないかと思う。  官房長官、その辺明確に答えてください。
  180. 藤波孝生

    藤波国務大臣 今回の公式参拝をめぐりまして、いろいろ御心配をかけ、また、きょうは委員会におきましていろいろな御指摘をいただいてきておるところでございます。  政府といたしましては、懇談会報告書なども十分参考にいたしまして、そして従来の経緯などもよく検討をして、さらに国会でのいろいろな御意見なども踏まえさせていただきまして、今回のような形式公式参拝するということであれば違憲ということにはならない、こういう意味において、従来の統一見解変更いたしまして、公式参拝実施することにいたしたところでございます。  武道館におきましては、年々政府主催戦没者追悼式典が催されてきておりまして、国民代表、御遺族代表など御参列の上で、極めて厳粛に式典がとり行われてきておるところでございまして、政府といたしましては、この大事な式典を今後も心を込めて主催をしていくようにしなければならぬ、こう考えておるところでございます。  屋上屋を重ねるではないかという御指摘に対しまして、同じ八月十五日にこういった式典を持っておることでございますから確かにそういう感があろうかとも思うのでございますが、午前中から何回も申し上げてきておりますように、国民の皆さん方や特に御遺族の多くの方々が、戦没者追悼の中心的施設として靖国神社というものを頭に置いて、そしてぜひ靖国神社に赴いて戦没者に対して追悼の誠をささげるように、しかも従来の形でなしに、公人として、国のために、国民のために、家族のために一命をささげて亡くなった戦没者方々に対し、国を代表する内閣総理大臣が公的な立場戦没者追悼することは当然ではないか、各方面からそういった強い御意向もございまして、政府といたしましても、それらの御意見を受けて慎重に検討を進めてきたところでございます。  どなたに対して追悼するのかということにつきましては、その中に例えばA級戦犯が含まれておるのかとか、午前中もお話がございましたように、招魂社として出発しました当時いわゆる賊軍は入っていない、いわゆるですが、というようなことについてどう考えるかという御質疑もございました。一つ一つどなたを追悼するということでなくて、国のために命をささげてお亡くなりになりました戦没者に対し心からの追悼の誠をささげる、こういう意味で公式参拝をさせていただいておりますので、説明の至らざるところが多うございまして御心配をかけておりますが、各方面にいろいろな御意見もあるように伺っておりますので、この戦没者に対する追悼ということを、公式参拝という形の中で追悼の誠をささげたということの意味合いをよく御説明を申し上げたい、こんなふうに考えておる次第でございます。
  181. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしてもこの問題は、日本だけではなく、外交問題まで、それぞれ大きな関心なりあるいはまた批判も来ておるところであります。それはあなたは戦没者慰霊者のそれぞれの代表する人たちからそういう声があったからということでありますけれども、これだけ国会論議をされている、少なくとも国会代表者なんだよ、悪いけれども。そして、こういう批判はあって、そういうことはずっと続いてきて、今回初めてやられるということ自体が、極端なことを言えばやはり選ばれた人たちをあなたは無視しているということと同じ、国会を無視している、こういうことにもつながっていくことになるわけであります。こういうことを含めてやはり慎重にしなければいけない問題だと思うのです。  もし靖国神社、これからも本当に公式参拝をするということならば、宗教法人を返上させてもらったらどうなんですか。そうでしょう、こういう問題を含めて宗教行事なんですから。参拝じゃなく訪問ですよ、あれは。そういうことも含めて明確にしていかないと、やはりこういう問題は、これからの本当の意味での戦没者、例えば無名戦士の人たちにとったって本当に成仏できない問題だと思いますよね。そういう点を含めてあなたたちのとっている行動は一部の人にしかすぎないのじゃないか、こんなふうに思いますので、そういうことを含めてこれはすべての人ということではない、こんなふうに思いますので、そういうことを明確にしておく必要があろうと思うのです。  もう一度見解を述べていただきたいと思います。
  182. 藤波孝生

    藤波国務大臣 靖国神社をめぐっては、従来もいろいろな御論議があったところでございます。政府といたしましても、いろいろ考えないわけではありませんでした。いろいろな方々のいろいろな御意見を伺ってきたところでございます。  今、宗教法人を返上してもらえばいいではないかというお話がございましたが、これはまさにその宗教法人に対する公の側からの干渉、圧迫ということになりまして、憲法上許されざる行為ということになるのではないかということを心配をいたします。したがいまして、宗教法人靖国神社戦没者追悼の中心的施設であるという大方の国民の皆さん方の御意見を踏まえて、靖国神社にどうやって戦没者追悼の誠をささげるかということをいろいろ考えてみまして、先ほども申し上げましたように宗教的な色彩を省きまして、そして靖国神社に赴いて戦没者追悼するという誠をささげる一拝をした、こういうことにいたしたところでございます。ぜひ御理解をいただきたいと思うのでございます。  国会におきまして、いろいろなこの問題についての御意見が出されておりますことにつきまして、十分慎重に私どもも参考にさせていただいて検討したということを午前中からも申し上げておるところでございます。国会の大部分がというお話でございますが、自由民主党からは合憲であるから公式参拝せよという強いお話がございました。国会の中にもいろいろな御意見があり、それぞれいろいろな御意見を十分慎重に検討させていただきまして、今度の結論を導いたということを御理解をいただきたいと存じます。
  183. 田中慶秋

    田中(慶)委員 少なくともこれだけ国会論議をされているもの、野党もそうでありますし、新自由クラブもそうであります。政府・自民党の中だって、この問題では全員一致でそれぞれ皆さん方が公式参拝をすることを望んでいないと思います。そういうことを考えたときに、我が党はかねてから、国に殉じた人々に対する追悼は当然である、国民がそろって参加をできる、すべきであろう、それが八月の十五日、平和を祈念し、国並びに地方自治体が戦没者追悼と平和の祈願を、式典等々を含めて、先般武道館で行ったものを全国的に展開をすべきだ、こういうことで今まで主張してきたところでありますので、いずれにしても靖国神社問題というのはやはりそういうことを含めながら少なくとも大きな問題を抱えていること、そしてまた、今あなたは政府・自民党はと言っておりますけれども、少なくとも自民党の中でも、先ほど申し上げたように大多数ということならば、自民党も全員であるでしょうし、新自由クラブも含めて与党の人たちが全員ということになろうかと思います。しかし、今の与党の中にもそういう靖国神社参拝問題についてはそれぞれ疑義があり、反対をされている人たちもあるわけでありますから、そんなことを考えたときに、少なくとも国会過半数の人たちが賛成をしていない、こんなことを考えたときに、あえて公式訪問はすべきではない、こういうことを明確に指摘をしておきたいと思います。  それでは、続いて本題の人勧問題に入りたいと思います。人事院が去る七日給与に関する勧告を出されているわけでありますけれども、時間の関係もあるので、要約をしてそれぞれ質問をさしていただきたいと思います。  今回の人勧の問題について、民間の賃金との較差の中でそれぞれ給与比較をして人事院勧告がされたわけでありますが、まず一つにはその調査方法でありますけれども、昨年も私はここの席上でこの問題を指摘しました。少なくとも官尊民卑という、こういう形の問題がそれぞれ今の賃金体系の中でされているわけなんで、そういう点では公平な面で、それぞれこのサンプリングの時点で、現在五十人以上とかあるいはまたそういう点を含めてでありますけれども、もっときめの細かいサンプリングをしてその較差をできるだけ少なくすべきであろう、こんなふうに考えておりますし、そうしてその妥当性を明確にすべきであろう、こんなふうに思うところであります。  さらにまた、俸給表等の問題でありますけれども、多くの俸給表において等級の新設あるいはまた統合がされたわけでありますが、その処置と理由、そしてまた、この等級の構成の変更によって、例えばそれぞれのジャンプ、それぞれのところで、それぞれのポスト等々の問題から、ポストのためにあるいはまた役職のためにという形の中でこういう問題が今回出されたのではないか、そういう疑いもあるわけでありますので、給与というものはもっと明確にわかりやすく、そしてなおかつ、これらの問題について役職をつくるためにより複雑化したというようなイメージのないようにすべきであろう、こんなふうに思います。そういう点ではこの辺も明確にしておきたいと思います。  さらにまた、俸給表について切りかえの時点でそれぞれ今度新等級に振り分けられるわけでありますけれども、それぞれの等級の間における較差が出ないように、こういうことが言われておりますし、またそれによって損失が出ないように、例えば行政職で新たに三段階増設されたわけでありますけれども、そのハードルを超えるために昇進昇格がおくれるようなことのないようにしなければいけないと思います。  こういうことから含めて一連の関係で、今回の勧告された問題についてその考え方をお伺いしたいと思います。
  184. 鹿兒島重治

    ○鹿兒島説明員 いろいろございますので、要点をかいつまんでお答え申し上げたいと思います。  まず、官民給与比較の対象企業のとらえ方でございますが、御承知のように現在企業規模百人以上、事業所規模五十人以上ということでやってまいりまして、この方式は三十九年以来定着した方式として、大方の御納得を得ているものというぐあいに実は私どもも考えているわけでございます。ただ、この企業規模につきましては、一方ではもっと大規模の企業と比較すべきだという職員団体の方からの意見もございますし、また臨調でも御指摘がございましたとおり、もっと小規模企業も調査すべきだという意見もございます。そういうこともございまして、五十八年からことしまで三年間にわたりまして小規模企業の調査実施してまいっておりますけれども、実はその結果というもの、まだ対象企業が三百五十というぐあいに限られておることもございまして、必ずしも安定した数字を得ておりません。例えば、賃金表を正式に採用いたしまして給与決定しているという企業はわずか三分の一程度しかないというようなこともございまして安定した数字を得ておりませんので、いましばらく調査を続けさしていただきたい。現在のところは企業規模百人以上、事業所規模五十人以上というものはおおむね妥当なものということで、来年もまたこういう形でやりたいと思いますが、小規模企業につきましても引き続き調査をいたしたいということでございます。  次に、等級増設の理由でございますが、今回、行政職。表で申しますと三つの等級につきまして等級増設をいたしました。一口で申しますならば、職務の分化に対応して職務給の原則を明らかにするという意味で三つの等級に分けたわけでございまして、一例を申し上げますならば、新しく新二等級をつくりました理由といたしましては、現在の二等級に課長のほか室長とかあるいは専門調査官というようないわゆる準課長クラスが混在している、これを明確に区分することによりまして職務給の原則を明らかにする、こういう考え方で等級をそれぞれ区分したわけでございます。  そこで、ポストのための増設ではないかというお話でございますが、現在の給料制度ができましたのは御承知のように昭和三十二年でございまして、その八等級制が今日までずっとその形で推移してまいったわけでありますが、その間の行政内容の変化によりまして非常に多岐にわたる職制が設置されております。行政の高度化、複雑化に対応するものと理解しておりますが、その職制が複雑化したことに対しましてこれを明確にするという意味で等級を増設したわけでございまして、決してポストのための処遇ということを頭に置いて今回の等級増設を行ったということではございません。  それから、等級の切りかえに当たりましての格付でございますが、これは御承知の標準職務表を設定いたします際にそれぞれの職務につきまして明確な基準を設けまして、標準職務表に基づいてそれぞれの格付を実施したいというぐあいに考えております。  そしてまた、昇格の基準でございますが、今回増設いたしません等級につきましての昇格の基準、スピードは従来と全く変更いたしておりません。その間に挟まれます新しい等級につきましては、従来の等級間の二分の一のスピードということにいたしますので、全体として制度の水準といたしましては、昇格のスピードは従来と変わらないというぐあいに御理解をいただきたいと思います。
  185. 田中慶秋

    田中(慶)委員 そこで人事院総裁にお伺いしたいのですが、いずれにしても人事院勧告というものは、生い立ちから考えてまいりますと労働基本権の制限、代償、そのような過程の中で行われているわけであります。総裁として五・七四というこういう形で勧告をされたわけでありますから、これらについてはあなたの責任においてこの辺を実施されるよう強く要請する必要があろうと思いますけれども、その辺はいかがでしょう。
  186. 内海倫

    内海説明員 私どもの勧告というのは、たびたび申し上げておりますように、厳しい調査の上でその較差を導きまして、国会及び内閣に対して勧告をいたしておるわけです。その勧告につきましては、報告におきまして私どもの厳しい考え方、そして国会及び政府内閣に対して、ぜひこれの完全なる実施を行って、連年における異例な事態を解消していただきたいということを強く要望いたしておるわけであります。これは私どもの希望であり、そしてまた決意でございますが、今後もこの線上におきまして私どもも努力をいたしたいと思っておりますが、その努力は何よりも国会及び内閣において認めていただかなければならないことでございますので、この席におきましても特にお願いを申し上げておきたいと思います。
  187. 田中慶秋

    田中(慶)委員 そこで総務庁長官、今それぞれ人事院の方の決意が述べられたわけでありますけれども、これから五・七四%という問題が総務庁長官を中心として大いに検討されるわけだと思います。今までの決意や昨年のいきさつ、積み残し分等々を考えてまいりますと、あなたの心中というのは複雑だと思いますけれども、いずれにしても完全実施に踏み切る、こんな決意を明確にしていただきたいと思います。
  188. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 しばしばお答えをいたしておりますように、人事院勧告につきましては、政府としては完全実施に向けて、国政全般の立場もございますから、それらを考え合わせながら最大限の努力をいたしたい、かように考えております。
  189. 田中慶秋

    田中(慶)委員 完全実施について努力をされる、昨年も同じようなことを繰り返したと思います。財政の事情とかいろいろありますが、少なくとも労働基本権の代償なんですから、そういうことをちゃんとしないと、片方においてこれから行革を進め、いろいろな形の問題を含めて協力を願うわけです。こういうことを含めて完全実施を努力というか、完全実施を本当にする決意がもっとにじみ出ていいのじゃないかと私は思うのです。昨年も完全実施をするように努力をします、そのような形で過去の経緯が来ましたものですから、三遍うそを言われるとうそもまことになってしまいますから、そんなことを含めて総務庁長官の再度の決意を述べていただきたいと思います。
  190. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 私もあなたのような気持ちで最大限の努力をいたしたい、かように考えます。
  191. 田中慶秋

    田中(慶)委員 私の気持ちは一〇〇%実施ということでありますから、そういうことをぜひこれからもやっていただきたいと思います。  時間も相当来ましたのですけれども、最後に二点ほど。  今回、週休二日制といいますか休日問題について勧告がされたと思います。貿易摩擦の問題やらいろいろな形の中で、日本の労働時間が指摘をされております。こんなことを含めて、民間の労働時間の問題もさることながら、今の全体的な流れが公務員の休日という問題についてやはり大きく左右すると思います。銀行とか公務員、そういうことを含めて、週休二日制あるいはこれからの毎週の休日という問題についてより前向きに検討すべき時期が来ているのではないか。それが一つ。  もつ一つは、民間から考えてまいりますと、休日をするにしてもその一時間はコストに入ってきますから、こういうことを含めて相互関係の中で検討すべきであろう、私はこんなふうに考えておりますので、この辺も含めて取り組み方についてお考えを明確にしていただきたいと思います。総務庁長官
  192. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 今回の人事院勧告の中には、休暇制度について民間との均衡、さらには法的整備、こういう立場から休暇の問題についての勧告がございますから、これは勧告を尊重して私のところで準備を進めてまいりたい。  なお、現在御案内の四週五休制度、これについての御勧告は、私が理解している範囲では先行き四週六休になるのではないか。で、それのいわば一種の準備段階というようなことで、四週五休の配分について従来四分の一ずつの上陸を二分の一ずつにしたらどうだ、こういうことでございますから、これから各省庁とよく相談をしまして、人事院勧告趣旨に沿ってでき得べくんば改正をしたい、かように考えております。
  193. 田中慶秋

    田中(慶)委員 最後に、人勧と防衛費の問題について質問をさせていただきたいと思います。  人事院勧告五・七四%が完全実施された場合、防衛費はどのくらいになるのか、そしてGNPとの割合、さらにまた昨年並み三・三七%という考え方になってまいりますと一%を超えるのかどうか、この辺も明確にしていただきたいと思います。  先般八月七日の国防会議に五九中業の防衛費の総額が示されなかったわけでありますけれども、一説によると十九兆とも二十兆とも言われるわけでありますが、示されなかった理由、計算していたかどうか。五九中業というのは積み重ねでできているのですから、当然示されて明確にすべきだろうと思います。公表を差し控えたというのはどういうためか、その辺を明確にしていただきたいと思います。  それから、この五九中業を政府計画として格上げする時期はいつごろなのか。  それから、政府計画に対する調整を具体的に進めているというふうに聞いておりますけれども、この辺も明確にいつごろになってくるのか。  それから、政府計画の格上げと一%の問題。  本日も国防会議が開かれる、こんなことを聞きますけれども、こういう問題を含めて、その一%と防衛費、人勧との割合について、これを最後の質問にさせていただきますけれども、これらについて見解を明確にしていただきたいと思います。
  194. 池田久克

    池田説明員 人事院勧告が今後どう取り扱われるかについては未定でございますし、また、人事院勧告を受けて防衛庁の職員給与法もこれから整備しなければいかぬという状況でございます。したがいまして、確たる数字は申し上げるわけにいかないわけでありますけれども。先生の御指摘されました、まあ仮定の前提だと理解いたしまして計算をいたしますと、五・七四%がそのまま実施されることになりますと、現在既に六十年度予算で一%分として百三十三億円の前提で計算しているのが一%ございますから、それを引きますと全体として約六百三十億必要になります。GNPも現在の政府の六十年度の当初見積もり、これは実は昨年の暮れに閣議了解されたものが今確たるものになっているわけですけれども、これがそのままであるという前提に立ちますと、八十九億ばかりすき間がございますので、したがいまして差し引き五百四十一億になります。そして、今申し上げました昨年の暮れに閣議了解いたしましたGNPが変わらないという前提で計算をいたしますと一・〇一七になります。  次に、昨年並みの三・三七が実施されたらどうかということでございますが、同様の計算でまいりますと二百二十六億足りないという計算になりまして、また先ほどの当初の政府見積もりのGNPが変わらないという前提に立って計算いたしますと一・〇〇七になります。  あらかじめ申し上げましたように、人事院勧告取り扱いについては決まっておりませんし、当庁の給与法等についても今後の検討でございますので、あくまでも仮定の計算でございます。
  195. 藤波孝生

    藤波国務大臣 いろいろな御質問がございましたので抜けておりましたらまた補足をいたしますが、今人事院勧告実施した場合にということのお答えは、防衛庁経理局長からしたところでございます。  昭和六十一年度から六十五年度までを対象といたしますいわゆる五九中業につきましては、昨年の国防会議におきまして、大綱に定める防衛力の水準の達成を期すという基本的考え方のもとに、防衛庁において策定作業を行うことが了承されまして、その作業が進められてきておるところでございまして、去る七日に開催された国防会議におきまして、防衛庁からその策定作業の状況を報告を受けたところでございます。  どうして数字が出なかったのかということにつきましては、やはりこの五九中業策定をいたしますために防衛庁と大蔵省との間でいろいろな意見の交換が行われておりまして、それらがなお詰まるところまで来ておりませんので、そういう状況の中で数字だけ発表いたしますと、数字がひとり歩きしてもいかぬ、いろいろな形容詞をつけて数字を発表するということになりましても、それもいつの間にか数字だけが歩いていくことになりますので、恐らく慎重を期して数字を出すことにはならなかった、こういうふうに私ども理解をいたしておるところでございます。  今後の問題でございますが、五九中業で大体こんなところかなということで防衛庁が努力をして策定しておる状況を聞いてみますと、今日の財政状況から比較検討してみましてなおもう少し圧縮した形にならぬのか、こういうふうに国防会議出席者も大体考えまして、そんな作業をさらにお願いしたところでございます。政府の中には、予算編成の際に防衛庁が手持ちの資料としていわゆる五九中業という形で数字を持っている、資料を持っているという形よりも、やはり国防会議できちっと説明を受けて、閣議にも諮って決定をするという形で、いわゆる政府計画へ格上げと称して一般に言われておりますけれども、そんな形の五カ年計画にしてはどうかという提案も政府部内にもございまして、それらの意向も受けまして、さらに、文民統制などがどのようにうまく進めていったら徹底をするのかというようなこと等も頭に置いて、さらにひとつ検討を進めよう、こういうことで政府部内でいろいろな検討を進めてきておるところでございます。  一%問題につきましてもいろいろ御心配をいただいておりますが、経理局長から今お答えがございましたように、従来のような見当で、いろいろな今後の予測などももう無責任に、大体今までの見当でいたしますと一%を突破するということになりました際に、三木内閣以来歴代内閣がとってきたこの一%との問題をどう考えていくべきか、実に苦慮いたしておるところでございます。したがいまして、一%問題も一緒に考えあわせましてさらに政府部内でよく検討をしていくようにいたしたい、こう考えまして、きょうも夕刻国防会議を開く予定にいたしておりますが、こういった機会を重ねましていろいろな角度からひとつ検討を進めていくようにいたしたい。いつ、どういう時期に、どういうふうにするかというようなことはまだ決定をしていないのでここでお答えをするわけにまいりませんが、十分慎重に検討してまいりたいと考えておりますということを申し上げたいと思う次第でございます。
  196. 田中慶秋

    田中(慶)委員 時間が大分オーバーしましたので、以上でやめさせていただきます。  ありがとうございました。
  197. 中島源太郎

    中島委員長 三浦久君。
  198. 三浦久

    三浦(久)委員 私は、まず最初に靖国神社公式参拝問題についてお尋ねをいたします。  中曽根総理を初め多くの閣僚は、戦後初めて靖国初社に公式参拝を強行いたしたわけであります。私は大変残念に思っております。これは国民の強い批判の声を押し切って強行されたものであって、本当に遺憾千万と言わなければならないと思います。私は、ここで改めて公式参拝に対して強く抗議の意思を表明いたしたいと思います。  靖国神社というのは一体どういう神社なのかということを根本的に考え直してみなきゃいけないのじゃないでしょうか。私が言うまでもなく、靖国神社というのは戦前、これはもう軍国主義の鼓舞と侵略戦争の美化のため重要な役割を果たしてきた神社であります。では終戦後はどうなっているのか。確かに国家管理はされていない、民間の宗教団体にはなったけれども、その宗教法人「靖国神社」規則というのがあります。これは普通の公益法人で言えば定款とかそういうものに当たるものでしょう。その規則によりますと、第三条が「目的」になっていますけれども、そこでは「本法人は、明治天皇の宣らせ給うた「安国」の聖旨に基き、国事に殉ぜられた人々を奉斎し、神道の祭祀を行なひ、」云々、こういうふうにあるのですね。要するに、天皇の遂行した戦争に参加して戦った結果死亡した人だけを神として祭る、合祀するということによって、戦争を美化するという特殊な政治的な意図を持っている宗教法人だということははっきりしているわけであります。  ですからそのことは、戦後、彼らは、こっそりかどうかわかりませんが、A級戦犯である東條英機等々をぱっと合祀してしまいましたね。今、靖国神社の出しているものを見ますと、誇らしげにA級戦犯を合祀したことを書いてありますよ。いわゆる戦犯、これは「我々は昭和殉難者と呼んでいる。」と書いてある。こういう人々も祭ってあるのだというふうに靖国神社はみずからの宣伝文書に書いています。ですから、まさにこういう彼らの態度靖国神社側の態度によっても、大東亜戦争を初めとするそういうさまざまな戦争を肯定し美化する役割を戦後も一貫して果たしてきている、そういうことが言えると思うのですね。  そして、靖国神社の存在自体が信教の向山を侵害するものなんです。戦前どうでしたか。大本教であろうとキリスト教であろうと仏教徒であろうと、戦争に行って亡くなったらみんな強制的に合祀したわけでしょう。強制的に合祀したのですよ。じゃ、戦後はそういうことはないか。戦後は、これは靖国神社じゃありませんが、護国寺の問題ですね、山口県の護国寺。中谷という人ですが、自衛隊員が事故で殉死しました。そうすると、奥さんがキリスト教徒だから、私は護国神社なんかに合祀されるのはいやだ、こう言っているにもかかわらず強引に合祀してしまったのですね。これで訴訟になっていますでしょう。ですから、こういう靖国神社とかいうものの存在それ自身が信教の自由というものを侵害している、そういう存在だということが言えると私は思うのです。ですから、こういう戦争を賛美し、信教の自由を侵害する、こういう靖国神社公式参拝するという中曽根内閣の意図はどこにあるのかということです。  官房長官談話によると、戦没者追悼して、そして平和に対して新たな決意をするんだ、こう言っていますけれども、私はそんなものじゃないと思う。何でこういう歴史的な性格を持った靖国神社、それでそういう尾をまだずっと引っ張っている靖国神社、これに公式参拝する意図というのは、ことしの自民党の軽井沢セミナーで中曽根総理がこの問題に触れられて、国のために倒れた人に感謝をささげないでだれが国に命をささげるか、こういう発言をしていますね。これは新たな英霊をつくろうというそのために靖国神社を利用しよう、こういう考え方でしょう。まさにアメリカの核戦略に沿って新たな侵略戦争国民を動員するための精神的な土台、支柱、そういうものをつくることを意図したものでありまして、まさに侵略戦争を美化すお以外の何物でもないと私は思うのです。  だから、諸外国からもいろいろな反響がありますね。非常に厳しい反響がありますよ。報道されているものだけでも、アジア諸国を侵略した第二次大戦を正当化する新たな動きだ、アジア諸国民の感情を傷つけるものだ、過去の歴史の免罪を図る赤裸々な行為である、第二次大戦のことはもはや恥じないといった姿勢を示したもの、これは必ずしも政府の論評ではありませんけれども、アジア諸外国の新聞の社説とかそういうものも含まれていますけれども、そういう反応が起きておるわけです。  それでお尋ねしたいのですが、官房長官、どうして諸外国から、特に侵略を受けたアジアの諸外国からそういう反応が起きているのか、この靖国神社公式参拝について何でこういう反響が起きるのか、政府はどうお考えになっていらっしゃるのか、そのことをまずお聞きしたいと思います。
  199. 藤波孝生

    藤波国務大臣 従来いろいろな経緯がございましたから、靖国神社経緯等につきまして、あるいは靖国神社性格等につきましていろいろ検討もしたところでございます。懇談会の中でもそのことがいろいろ研究をせられたのでございました。その後、態度決定いたします際にも、政府としてもさらにいろいろ靖国神社について研究もさせていただいたところでございます。国のために亡くなった方々が神として祭られておるところというふうに私ども考えておりますが、戦争を美化するとかあるいは宗教法人靖国神社自身の存在が信教の自由を害するものというふうには考えておりません。これはお考えになる方の御自由であるかと思いますけれども、あくまでも靖国神社は国のために亡くなった方々が神として祭られておるところ、こういうふうに私どもは理解をいたしておるところでございます。  いろいろと今回の公式参拝につきまして検討検討を重ねまして慎重に取り運んだつもりでございます。ただ、新聞等にもいろいろ御心配をいただくような表現の報道などもございまして、それらも受けていわゆる近隣各国が、日本が再び軍国主義の時代に入っていくのではないかといったような意味での懸念をされまして、いろいろ心配の声が上がっているということも私ども聞いたところでございます。ただ、それは私ども靖国神社公式参拝するという気持ちの真意ではありませんので、あくまでも日本の国のために、同氏のために一命をささげて亡くなった方々に対し公人としての立場追悼の誠をささげるものである、同時にそのことは、二度と戦争を起こしたりあるいは戦争に巻き込まれたりするようなことのないように、あくまでも日本の国も世界も平和であってほしい、そのことを心から祈念をするということも気持ちとして込められておるものである、こういうことをよく御説明を申し上げ、外務布から外交ルートなどを通じまして、近隣諸国に誤解を与えるようなことのないように説明をしてきたところでございます。なおその真意を、今後もよく注意をいたしまして、近隣各国に御心配をかけないようにして御説明をして進んでいかなければならぬ、このように考えておる次第でございます。
  200. 三浦久

    三浦(久)委員 これはあなたも若干お認めになりましたように、中曽根内閣政治的な姿勢に起因しているんですね。これはもう中曽根総理自身が、アメリカと日本は運命共同体だ、そういう認識を持っておられる。そしてアメリカに対してシーレーン防衛、こういうものを約束して、どんどんアメリカの要求に従って軍備拡大の道を進んでいます。そうして今もGNP一%の枠を突破しよう、こういうふうにしているわけでしょう。そして国家機密法の制定であるとか有事立法とか政党法の制定、そしてまた、この前ここで私も追及しましたけれども、金鵄勲章の復活というようなことまでやろうとしているわけですね。さらに、ソ連との核戦争のシナリオだと我々は考えていますが、あの昨年の十二月には日米共同作戦計画、こういうものを両国によって調印をする、そしてそれに基づいて日米共同軍事演習がどんどん頻繁に行われているわけでしょう。そういう最中にこういう靖国神社に対する公式参拝というものが起きているわけでありますから、これはもう日本が軍備を増強するということにだってアジアの諸国は神経をとがらしているのに、こういう靖国神社への公式参拝をその上やるということで、今述べたような厳しい反応を示したのだというふうに私は思うわけであります。誤解だから誤解を解くということよりも、百遍の弁解をするよりも、そういう誤解を生ずるような行為をやめる、それが先決だというふうに私は思うわけであります。  しかも、この公式参拝というのは、私これから追及しますが、憲法第二十条三項の政教の分離の原則にも反する違憲な行為でありますね。我が党は断じてこういう行動を容認することはできません。政教分離原則というのは一体どういう経過で保障されてきたのかということを考えただけでもわかるじゃありませんか。これは戦前靖国神社が国家管理されて、国家神道ということで、日本軍国主強の鼓舞とか侵略戦争を美化するためにずっと利用されてきたわけでしょう。それはもうこの靖国懇の報告書だって認めています。その結果、信教の自由を侵害したということも靖国懇の報告は認めています。これはもう歴史的な事実です。こういう歴史的な事典の反省の上に立って、政教分離というととが憲法上高らかに宣言されているわけでしょう。そしてそれを保障するために、国が宗教的な行事に参加してはいけないとかまた公費を支出してはいけないとか、さまざまな歯どめ措置を講じているのです。それを、事もあろうに当の靖国神社自身に国が一定の関与を持とう、そして今までは私人としての参拝、今度は公式参拝、今度は国家管理、こういう方向へ向かおうとしているというような、こんなことはもう断じて許されませんし、今の中曽根内閣政府憲法感覚自体を疑わざるを得ないというふうに思うのです。  公式参拝違憲性を追及する前に、政府のこの公式参拝に対する統一見解変更の手法についてちょっとお尋ねをいたしたいというふうに思います。  政府は、今まで公式参拝違憲疑いを否定できないという統一見解をとってきましたけれども、今回それを変更するに当たって、靖国懇を設置してこれを利用したわけでありますが、これは従来の懇談会についての政府見解と異なるものだというふうに私は思うわけであります。これは懇談会審議会等々がどう違うのかということが問題になりましたね。それは行政組織法八条で設置されなければならないものを、私的な懇談会をつくってこれに代置するというようなことは脱法行為じゃないかというようなことから、この審議会と私的な懇談会等々の運用についてやはりはっきり区別させる、それで、それは審議会とは違うんだということをはっきりさせようということでしょう。それで、これは昭和三十六年四月十二日に行政管理庁から通達が出され、そしてまた、三十八年の三月十八日には行政監理局の「審議会と懇談会との差について」という見解も出されている。後藤田長官は、昨年の四月の十日に参議院の予算委員会でもってこの問題について答弁をしている。「この際、懇談会等と審議会等との区分につきまして申し上げます。すなわち、審議会等にありましては、審議会等を構成する個々の委員の意思とは別の合議機関そのものの意思が答申等としまして公の権威を持って表明されますが、懇談会行政運営上の会合にありましては、合議機関としましての意思が公の権威を持って表明されるものではなく、単なる行政運営上の意見交換懇談会等の場にとどめるべきものであります。」こういうふうにはっきり述べられておるのですね。こういう政府自身の通達、見解、そして大臣がそれに基づいて行われたこういう見解というのは、懇談会運営に当たって守らなくてもいいものなんですか、守らなきゃならないものなんですか。長官、どうですか。
  201. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 今回の官房長官のもとでの靖国問題の懇談会は、今お読みになった私どもの見解に沿って運営をせられたもの、私はかように理解をいたしております。
  202. 三浦久

    三浦(久)委員 そう言われますけれども、先ほども同僚議員が質問しましたように、この報告書というのはちゃんと一定の合議体としての結論を出しているんです。それは憲法に違反しないように靖国に対して公式参拝する方途を探るべきである、これは懇談会としてのまとまった意思表明なんですよ、合議機関としての。権威があるかどうかはまた別の話なんです。そういたしますと、これは少数意見が確かに付記はされていますね。しかし、だれがそう言ったなんて書いてないですよ。あそこには委員の名前、だれも出ていませんよ、だれがどう言った、こう言ったということは。ですから全体として見れば、少数意見があったとしても、この報告書の結論というのは懇談会の結論だというふうにしか受け取れないのです。ですから、これは今までの政府懇談会逆用の見解と全く違った取り扱いがなされているというふうに私は思うのです。  先ほどから藤波長官の御答弁を聞いていますと、余り干渉しちゃいかぬと思うから、向こうが報告にまとめるからと言うから受け取った、こんな話ですね。しかし、これが私的懇談会であるということは藤波官房長官自身もおわかりなんですから、ですから、報告書を出すというときに、いや、これは私的な懇談会であって審議会とは違うのでございます、だからそういうような懇談会としての意思形成をしてもらっては困るのでございます、それが政府見解でなければならぬ。何でそう言ってこれを断らなかったのですか。その点ちょっとお尋ねしたい。
  203. 藤波孝生

    藤波国務大臣 審議会と懇談会との違いは先ほど来御質疑があったところでございます。そのお願いをいたしまして、いろいろな角度から意見を述べていただいた。その意見を述べられたことが記録としてとどまっておりますから、それらが非常にわかりやすいようにいろいろ整理をされて非常に多くのものが併記をされておりますが、そういういろいろな意見があったことについては併記をして記録にとどめる、そして大勢はこういうような意見がまとまりとしては流れがあったというようなことも書かれているということでございまして、八条機関できちっと合議して一つの結論を導いて、そのことを政府に迫るというよりも、非常に自由に一人一人の意見が述べられて、それがまとめる際に記録としてとどめられるというような形をとっていると思うのです。そういうふうなことでおまとめをいただきましたので、報告書を受け取らせていただきました。  なお、報告書参考にいたしまして、各方面のいろいろな御意見なども十分慎重に検討させていただきまして、政府責任におきまして政府態度を決めるということにさせていただいたところでございます。
  204. 三浦久

    三浦(久)委員 もう全くの詭弁ですよね。あの報告書を見れば、ちゃんと検討すべきであるというふうに書いてあるのですよ。憲法に違反しない公式参拝方式検討すべきだ、だから公式参拝やりなさい、一定の方向をぴちっと出しているじゃありませんか。それで出して、あなたたちはそのとおりやっているじゃないですか。そうすると、これは藤波官房長官というよりも政府自身が、今までの政府見解と違って報告書提出させて、それを政治的に利用したというふうにしか私には考えられない。  特に藤波官房長官自身は、昭和五十九年、去年の五月八日の参議院の内閣委員会で、懇談会は勉強する金なんです、一定の方向づけをしたり方向づけをするのに利用するということはいたしませんとはっきり述べていますね。これははっきり述べられています、議事録に書いてあるのですから。しかし実際はどうかというと、一定の結論、一定の方向を出させて、そしてそれをそのまま、さっきの内閣法制局長官、尊重してそして公式参拝に道を開いた。これはもうあなた自身の言っていることとも違う。そしてまた、後藤田長官が国会で答弁したのとも、政府が正式に見解を表明している懇談会の運用のやり方とも違うのですよね。ですから、かなり強引なやり方でやっている。  私がお尋ねしたいのは、こういう懇談会運営について、みずからつくったルール、それからまた藤波長官の御答弁、こういうものに違反をして、そしてこういう懇談会報告を出させ、これを政治的に利用して公式参拝の道を開いた、このことについての責任をどうお感じになっていらっしゃるか、お聞きしたいのです。
  205. 藤波孝生

    藤波国務大臣 各界で御活躍の方々にお集まりをいただいてこの問題についてのいろいろな意見をぜひお聞かせをいただきたい、こういうふうにお願いをいたしまして、約一年間という見当で御論議をいただいてきたところでございます。非常にお忙しい方々が大部分毎回御出席をいただきまして意見を述べていただきました。非常に貴重な御意見がたくさんにあったというふうに思っております。また、この懇談会を中心にいたしまして、靖国神社をめぐるいろいろな従来の経緯等を資料も整理されまして、また、諸外国の国のために亡くなった方々への追悼の仕方などにつきましても、午前中にもお答え申し上げましたようにいろいろ資料を集めていただきまして、この問題についての検討が慎重に進められてきた、こういうふうに考えております。     〔委員長退席、深谷委員長代理着席〕  これも何回も重複をいたしますので恐縮でございますが、各方面から一日も早い公式参拝をというお話がありました中で、時間をかけて各界の御意見を伺ってきたというふうに考えておりまして、それらの御意見がまとめられましたので、それを参考にいたしまして、政府自身のいろいろな検討を加えました上に立ちまして態度を決めさせていただいた次第でございます。  懇談会報告書政府の側から働きかけてある方向に向かってまとめてもらったとか、あるいはそれを隠れみのにして政府態度を決めるということに利用したとかというふうには考えておりません。お願いをいたしました委員方々は誠心誠意この問題についての意見の開陳をしていただきましたし、座長、座長代理を中心にいたしまして、個別の意見は個別の意見、大勢は大勢の意見として報告書の中に盛り込まれた、こんなふうに考えておりますが、なお、それを受けて検討いたしましたその責任政府にございまして、政府自身の検討の上に立って態度決定した、こういうことを明らかにいたしておきたいと思うのでございます。
  206. 三浦久

    三浦(久)委員 もう私の質問にはまともに答えていないですね。何しろ懇談会というのは、出席者意見の表明または意見の交換の場であるにすぎないということなんですよ。一定の結論を出させるというようなことはあなたたち自身の責任で避けなければいけない問題じゃないですか。そういうことであれば、脱法行為だという議論がまた出てくるわけですよ。  私は、まあ余り押し問答をしていてもしようがないですから次に進みますが、こういう憲法の解釈に関する政府統一見解、こういう重要な問題を一私的諮問機関というものを利用して行うというのは極めて不見識だと思うのですね。  例えば、この懇談会報告書というのは法的な根拠もないし、また権威もないのでしょう。権威もないのですよ。それは後藤田長官自身が言われていますね。そういうように公に権威のある意思形成をするものではないんだとはっきり言っているわけです。全く権威がないと政府自身も認めなければならないような、そういうこの懇談会の結論ですよ。そういうものを利用して大事な大事な憲法解釈の統一見解変更する、これはもう本当に私は許されないことだというふうに思います。  ですから、マスコミもこういう問題については独裁者の手法だと言って批判しているところもあるくらいですね。私は長官が出された談話は何回も読んでみましたけれども、この報告も権威がない、そしてまた内容がずさんだということです。それに基づいてこの談話ができていますね。そっくりそのままです。ですからこの談話自身も私は矛盾だらけだというふうに思うのですね。  この談話の最終的な結論というのは、「今回のような方式によるならば、」いわゆる公式参拝形式を変えるならば「社会通念上、憲法が禁止する宗教的活動に該当しないと判断した。」こう言っているわけですけれども、なぜこの参拝形式を変えただけで——例えば社会通念なんというのは全然変わっていないのです。要するに、さっきから法制局長官が、まあ社会通念を今度新たに発見したみたいなことを言っていますけれども、それは参拝形式を変えたということによって社会通念も変わったという、恐らくそういう意味でしょう。ですから、問題は社会通念という問題よりも、そういうあいまいもことしたような問題じゃなくて、いわゆる二礼二拍手一礼ですか、そういう儀式をしなかった、だから合憲なんだ、こういうことにすぎないのじゃないかと思うのですね。  では、なぜ参拝形式を変えたら今までは違憲疑いのあったものが急に違憲疑いがなくなって合憲になってしまうのか、そのことをちょっとはっきりお尋ねしたいと思うのです。
  207. 藤波孝生

    藤波国務大臣 御指摘憲法の第二十条第三項が禁止いたしておりますのは国の「宗教的活動」ということでありますが、今回の参拝は、一つは、国民遺族方々の多くが、靖国神社戦没者追悼の中心的施設であるとし、同神社において内閣総理大臣閣僚戦没者追悼を行うことを望んでいるという事情を踏まえて、二つ目に、専ら戦没者追悼という宗教とは関係のない目的で行うものであり、しかも三つ目に、神道儀式によることなく、かつ、追悼の行為として世俗に行われている一般の方式により追悼の意を表するのであるから、今回の参拝目的は宗教的意義を有せず、靖国神社に対する援助、助長の効果を有しないので「宗教的活動」には当たらない、こういうふうに考えておる次第でございます。
  208. 三浦久

    三浦(久)委員 その宗教的な儀式を省いた云々というのは、それじゃちょっと二拍したとかなんとか、じゃ三つ打ったらどうなるのか、十打ったらどうなんだ、そういう話にもなるでしょう。ですから、こんなものは神社が内部で決めた規則の問題であって、そういう外形的な行動によってだけで判断してはいけないのだというのがあの津地鎮祭の最高裁の判決ではありませんか。  あなたが今いろいろ言われましたけれども、これはみんな違うことを言っていらっしゃる。例えばあなたの談話の中にも、国民靖国神社我が国戦没者追悼の中心的施設であると考えておる、こう言われましたね。そして、国民がそこで公式参拝をされることを強く望んでいる。国民はそんなことを望んでもいない。靖国神社をどう思っておるか。靖国神社は一宗教法人であって、政教分離の今日の社会では国家が関与してはいけないものだというふうにほとんどの国民は思っているのですよ。だれが戦没者追悼する中心的な施設だなんて思っておりますか。これがまず第一に違うでしょう。  それで、ただお礼しただけだから、また追悼の意思で行ったんだから、だからこれは宗教的な意義を持たない、こう言われましたね。そんなことだけで宗教的意義を持たないなんて判断していいんですか。  憲法二十条三項で禁止されている「宗教的活動」というのは、さっき法制局長官も言われましたように、津の地鎮祭の最高裁判決によれば、我々はあの判決の多数意見には批判的見解を持っておりますけれども、政府がそれをよりどころにしているから我々もそれを引用して言いますが、要するに当該行為が宗教的な意義を持ち、そしてその宗教を援助したり圧迫したりそういうような効果を持つもの、そういうものが禁止されている、こういうことなんでしょう。そして、その宗教的な意義を持つかどうかということ、また圧迫するかどうか、助長するかどうか、そういうことについての判断は、まさに諸般の事情というものを考慮して、諸般の事情を考慮するのですよ、そして社会通念に従って客観的に判断しなければならない、これが裁判所の立場です。だから、あなたのように単純に、儀式を省いたからそれでいいんだ、宗教的色彩がなくなったからいいんだ、そんなことは裁判所は言ってないのです。  裁判所はその諸般の事情としてどういうことを言っていると思いますか。これは法制局長官ずるいから、今までに一言も言ってない。その諸般の事情というのは、当該行為が行われる場所を考慮しろ。地鎮祭のような、あれは全然神社と違ったところでやっておりますね。けれども、その場所をちゃんと考慮に入れなさい。当該行為に対する一般人の宗教的な評価、これも入れなさい。それから当該行為を行う行為者の意図、目的、宗教的意識の有無、程度、こういうものも考慮しなさい。また、一般人に与える影響、効果、こういうものも考慮しなさい。こういうものを総合的に勘案して、そして社会通念をもって客観的に判断しなさい、こう言っているんですよ。ですから、参拝の儀式をしなかった、ただお礼しただけだからいい、そんなことは最高裁は言ってないのですよね。  それで、全く宗教色が抜きになったとさっきから言われておりますけれども、参拝というのは一体何でしょうか。参拝追悼とどう違うのですか。ちょっと教えてください。
  209. 茂串俊

    ○茂串説明員 参拝追悼の違いはどういうところにあるかということでございますが、参拝という言葉を神社、仏閣等に赴き拝礼するというように広く行為の外形を意味するものと解しますと、神社等で行う追悼参拝に含まれることは明らかでございまして、政府公式参拝というときの参拝はこの意味で用いているものでございます。  他方、参拝をより狭く、神社等に赴いて神仏に祈る意思を持って神仏に拝礼するというように、参拝者の内心までを含めた意味の言葉であると解しますと、神社等で行う追悼参拝ではないということになろうかと思います。
  210. 三浦久

    三浦(久)委員 参拝というのは、あなたが言ったように「社寺に参って神仏を拝むこと」と広辞苑に書いていますね。神仏を拝むことなんです。これは社寺に参って拝むのだから完全な宗教的な行為なんです。社寺に参って追悼するのだからそれはそんな宗教的な活動じゃないんだ、あなた、そんなことは詭弁でしょう。判決も言っているじゃないですか。客観的に判断しろとちゃんと言っているのですよ。それで、諸般の事情というものに照らして客観的に判断しろ、判決がこう言っているわけでしょう。  あなた、一つ一つやってごらんなさい、当てはめてごらんなさい。例えば場所を考慮しろ。靖国神社の前でやっているのだから、昇殿してやっているのだから、こんなものは宗教的色彩がうんと強いという判断になるでしょう。そして、さっき言ったように参拝ですから、拝礼するわけですから、みたまを拝むのですから、これは完全な「宗教的活動」ですよ。行為者の意図、これは総理大臣の意図ですからなかなかわかりませんけれども、その前に無宗教の全国追悼集会に出ているわけでしょう。それじゃまだ足らぬといって、今度神様の霊のところに行ってやるんだというのだから、それは宗教的な意図がありありとわかっているじゃないですか。そして一般人に与える影響、効果、あなた、この問題でこれほど世の中が騒いでいるのですよ。クリスマスツリーをどうかしたとかそんな話じゃないのです。国会だって与野党がこれで対立をする、そういう大きな効果なんです。新聞だって宗教、信教の自由を守れ守れというので、毎日のように報道がされているでしょう。非常に大きな効果があるじゃありませんか。  ですから、こういうものを考えれば、私は結論的に言って、参拝形式を変えたってこれは宗教的な行事ですよ。宗教的な意義を持った行為ですよ。そして、あなたはさっき、靖国神社を援助することにならぬ、こう言った。そんなことないですよ。靖国神社と一定の関係を持つわけでしょう。毎年毎年やるわけでしょう。国の権力者である内閣総理大臣が公式の資格靖国神社参拝をする。一回きりじゃない、来年もやるかもしらぬ。政府はその次もずっと永久にやっていこうというわけでしょう。そうすれば、この靖国神社を国家がオーソライズする、権威づけるということになるじゃありませんか。そうすれば、それは結果的にはその宗教に対して援助し、そして助長し推進する、そういう結果になるのです。それで、一つの宗教にそういう特別なオーソライズをすれば、他の宗教がそれに基づいて反射的に圧迫されるという雰囲気にもなってくるのですよ。ですから、私は津の地鎮祭の最高裁判決には批判的な見解を持っているけれども、あの基準に照らしてみても今度の公式参拝というのは明白に憲法違反じゃないですか。その点どう思いますか。
  211. 茂串俊

    ○茂串説明員 今回の靖国神社におけるいわゆる公式参拝でございますが、靖国神社が宗教施設である以上、この参拝が宗教とかかわり合いのある行為であることは否定できないと思います。これは認めざるを得ないと思います。  ただ、先ほど官房長官が御答弁になりましたように、まず第一に、国民遺族の多くが靖国神社戦没者追悼の中心的施設であるとして、この神社において総理閣僚戦没者追悼を行うことを望んでいるという事情を踏まえてこの参拝を行うわけでございまして、同神社が宗教施設であることに着目して行くわけではないわけでございます。  それからまた、専ら戦没者追悼という、宗教とは関係のない目的で行われるということはあらかじめ官房長官談話等で公にしておるわけでございまして、一般の方々もこれが追悼という非宗教的な目的で行われていることを十分に周知しておられるわけでございます。  それからまた、この方式につきましても、神道儀式によることなく、いわゆる追悼行為として世俗に一般に行われているような方式、一礼方式と申しますが、そういう方式追悼の意を表するということでございまして、このような点を総合的に判断いたしますれば、先ほど官房長官も言われましたように、目的及び効果の面で憲法二十条三項に言う「宗教的活動」に該当し、違憲になるというような考え方は我々はとっていないわけでございます。
  212. 三浦久

    三浦(久)委員 全くでたらめの見解ですよ。  もう時間がないみたいですけれども、それじゃお尋ねしましょう。従来の形式でやるのなら憲法違反の疑いは消えないのですか、どうなんですか。二社二拍手一礼、そういう形式をやれば憲法違反の疑いがあるのですか。
  213. 茂串俊

    ○茂串説明員 総理閣僚靖国神社でいわゆる正式参拝を行った場合にどうなるかということでございますが、たとえその旧的が戦没者追悼にあったといたしましても、外形から見ましてその目的が宗教的意義を有する行為と受け取られるおそれがございますから、津地鎮祭の最高裁判決の考え方、いわゆる目的・効果論に照らして考えましても、なお憲法に違反するのではないかという疑いが残ることになろうかと思います。
  214. 三浦久

    三浦(久)委員 そういう外形だけにとらわれて判断してはいけないというのが津地鎮祭の最高裁判決の結論なんだよ。そんな都合のいいところだけほじくって合憲だなんというのはもってのほかだよ。  それから、あなたの話を聞いていると、法律家らしくないんだよ。その必要性がある、要するにみんなが強く望んでおる、強く望んでいて政府がやりたいということ、いわゆる必要性という問題と合法性という問題は全く違うでしょう。あなたの話を聞いていると、いや、これは中心的な施設であってとか、国民が強く望んでおることを背景にしてとか、そんなことを言っておるけれども、要求が強いか強くないかも基準に入れるなんて最高裁の判決は言っていますか。そんなことはちっとも言ってないんだよ。必要性と合法性はしっかり違うということを認識した上で法律的な判断をしてもらわないと困るよ。  それからまた、官房長官談話社会通念上許されるというふうに判断しているのですけれども、そうすると法制局長官、社会通念というのはどういうものだと考えているのですか。一般的に言って社会通念とは何ぞや。
  215. 茂串俊

    ○茂串説明員 社会通念とは、いわゆる法律学辞典的に申しますと、一般社会における常識と申しますか、日常生活における良識という意味合いでございます。
  216. 三浦久

    三浦(久)委員 そうでしょう。そうすると、みんながああいう形の公式参拝は合憲であると思っているということでしょう。みんなも思っていますか、あなた。社会通念というのは一般人が持っている常識、良識でしょう。そうすると、我々は一般人じゃないの。社会党も公民党も民社党も共産党も一般人じゃないのかね。(「新自由クラブは……」と呼ぶ者あり)新自由クラブも。今どのくらいの人がこれに反対していますか。少なくとも国会の中だけ見たって野党は全部反対している。与党の一部も反対をしている。キリスト教界も反対している。仏教界も反対しているじゃないですか。遺族会の中だって反対しているでしょう。こんなものをまた戦争に利用されては困るんだというので、反対している遺族会もありますよ。マスコミも全部、これは論調をごらんになったとおりみんな反対じゃないですか。そうすると、みんな一般人じゃないのですか。そんな社会通念のつかまえ方ってありますか。一般人というのは、特別な利害関係を持ったり何か特殊な関係を持った人以外、みんな一般人でしょう、あなた。そういう一般人がこれだけ反対しているものを、いや賛成しているのが社会通念だと言う。社会通念を何と心得ているんだ。そんな社会通念のとらまえ方というのは全く独断的ではないか。それが法律家の言うことか。社会通念というのは一体どういうものなんですか。これは社会通念上合憲だとみんな思っているのですか。一般人がみんな思っているのですか。どうなんですか、もう一回答えなさいよ。
  217. 茂串俊

    ○茂串説明員 確かに御指摘のように、このような今般の公式参拝につきまして、反対する方々もいらっしゃることは十分承知しております。(三浦(久)委員「いらっしゃるじゃないよ、たくさんいるんだ」と呼ぶ)私どもといたしましては、先ほどからるる申し上げておりますように、今般のいわゆる閣僚公式参拝、これは先ほど申し上げたような論拠によりまして憲法二十条三項の「宗教的活動」に入らない、したがってこの規定に違反するものではないというふうに確信をしている次第でございます。
  218. 三浦久

    三浦(久)委員 何が確信か。社会通念というのはあなたが今言った、日本の社会における一般人の持っている良識、常識でしょう。日本の社会を構成している日本人の大多数が公式参拝を合憲と思っているということが社会通念でしょう、あなた。国会の中だってこれだけの反対があり、仏教界もキリスト教界も反対がある。日本人でほとんど宗教に関係していない人間というのはいないんですよ。そういう大多数の人々が反対しているものを、いや賛成が社会通念と確信しています。あなたの確信は何の確信かね。  では、そんなに確信しているのなら、そんなに科学的な根拠を持って言うのなら、何名ぐらいが反対して、何名ぐらいが賛成しているのか、言ってごらんなさい。言えないでしょう。そんな反対が目に入らないのかね。
  219. 茂串俊

    ○茂串説明員 法律の解釈でございますから、あくまでも法律規定に従って、規定趣旨を十分に考えてそれで判断をするわけでございまして、これはあらゆる法律規定につきまして、また学界におきましてあるいはまた国会におきましてもいろいろな解釈があり得るわけでございますが、この憲法二十条三項の規定に関する解釈としましては、政府としては、今申し上げたようなことでこれは合憲である、閣僚公式参拝は合憲であるという解釈をとっているのでございます。
  220. 三浦久

    三浦(久)委員 あなたが最高裁の判決を出すから私も言っているんだよ。社会通念に従って客観的に判断しろというんだよ。主観的に判断してはいけないんだよ、あなた。少なくとも国会で半分ぐらいの勢力が反対している問題を、我々だってみんな何万という人から選ばれてきているんだ、その我々の支持者を集めただけでも、この反対勢力のそれは大変なものでしょう。それを社会通念に従って客観的に判断しろということは、社会通念というのは一般人が持っている常識でありますと言うんだから、社会通念に従って判断するということは、その一般人が持っている常識に従って判断しろということでしょう。そうするとあなたは、そういう公式参拝憲法違反でないというような社会通念がいつ形成されたというのですか。そういう社会通念がいつ形成されましたか。形成されてないじゃないか、この日本を見たって。  では、社会通念というのは半分でいいのですか。私は半分以上は反対していると思うけれども、大多数の人が反対していると思うけれども、仮に百歩譲って半分の人が賛成していれば、社会通念上それは賛成したということになるのですか。全くばかげていますよ。だから、あなたたちの考え方というのは全く独断的だ。  我々は、今後もこの靖国神社公式参拝を廃止させるために追及していく決意を表明し、そして二度と再びこういう公式参拝などを行わないように強く要求して、質問を終わりたいと思います。
  221. 深谷隆司

    ○深谷委員長代理 本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十五分散会