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1985-04-23 第102回国会 衆議院 内閣委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年四月二十三日(火曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 中島源太郎君    理事 石川 要三君 理事 戸塚 進也君    理事 深谷 隆司君 理事 宮下 創平君    理事 小川 仁一君 理事 元信  堯君    理事 市川 雄一君       池田 行彦君    石原健太郎君       内海 英男君    鍵田忠三郎君       菊池福治郎君    塩川正十郎君       月原 茂皓君    中村喜四郎君       二階 俊博君    堀内 光雄君       山本 幸雄君    上原 康助君       角屋堅次郎君    嶋崎  譲君       新村 勝雄君    関  晴正君       山本 政弘君    鈴切 康雄君       日笠 勝之君    田中 慶秋君       柴田 睦夫君    三浦  久君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 加藤 紘一君  出席政府委員         内閣法制局長官 茂串  俊君         防衛庁参事官  古川  清君         防衛庁参事官  池田 久克君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房         長       西廣 整輝君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛庁教育訓練         局長      大高 時男君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         防衛庁装備局長 山田 勝久君         防衛施設庁長官 佐々 淳行君         防衛施設庁総務         部長      平   晃君         防衛施設庁施設         部長      宇都 信義君         防衛施設庁建設         部長      大原 舜世君         防衛施設庁労務         部長      大内 雄二君         環境庁大気保全         局長      林部  弘君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省北米局長 栗山 尚一君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省経済局次         長       恩田  宗君         外務省条約局長 小和田 恒君  委員外出席者         経済企画庁調整         局調整課長   西藤  冲君         科学技術庁長官         官房審議官   三浦  信君         大蔵大臣官房参         事官      松川 隆志君         大蔵省主計局主         計官      西村 吉正君         運輸省航空局飛         行場部長    松村 義弘君         内閣委員会調査         室長      石川 健一君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十九日  辞任         補欠選任   上原 康助君     中村 重光君 同日  辞任         補欠選任   中村 重光君     上原 康助君 同月二十三日   辞任         補欠選任   山本 政弘君     関  晴正君 同日  辞任         補欠選任   関  晴正君     山本 政弘君     ――――――――――――― 四月十九日  中小企業専任大臣設置に関する請願大石千八  君紹介)(第三四〇四号)  同(古賀誠紹介)(第三四〇五号)  同(関谷勝嗣君紹介)(第三四〇六号)  同(戸塚進也紹介)(第三四〇七号)  同(渡辺栄一君)(第三四〇八号)  同(越智伊平紹介)(第三五三八号)  同(原田昇左右紹介)(第三五三九号)  同(三原朝雄紹介)(第三五四〇号)  旧満州棉花協会等恩給法による外国特殊機関  として指定に関する請願足立篤郎紹介)(  第三四〇九号)  同(角屋堅次郎紹介)(第三四一〇号)  同(渡部行雄紹介)(第三四一一号)  同(小沢貞孝紹介)(第三五四一号)  同(宮下創平紹介)(第三五四二号)  対戦ヘリAH1Sの十勝飛行場への配備反対に  関する請願新村源雄紹介)(第三五三六号  )  防衛費削減等に関する請願嶋崎譲紹介)  (第三五三七号) 同月二十日  中小企業専任大臣設置に関する請願外一件(大  西正男紹介)(第三五九九号)  同(細田吉藏紹介)(第三六〇〇号)  同(渡辺栄一紹介)(第三六〇一号)  同(吉井光照紹介)(第三六五九号)  旧満州棉花協会等恩給法による外国特殊機関  として指定に関する請願愛野興一郎紹介)  (第三六〇二号)  旧治安維持法等による犠牲者賠償に関する請  願(梅田勝紹介)(第三六五一号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第三六五二号)  同(小林進紹介)(第三六五三号)  同(沢田広紹介)(第三六五四号)  同(柴田睦夫紹介)(第三六五五号)  同(土井たか子紹介)(第三六五六号)  同(林百郎君紹介)(第三六五七号)  同(三浦久紹介)(第三六五八号) 同月二十二日  旧満州棉花協会等恩給法による外国特殊機関  として指定に関する請願相沢英之紹介)(  第三七一一号)  同(佐藤信二紹介)(第三七八五号)  中小企業専任大臣設置に関する請願梶山静六  君紹介)(第三七一二号)  同(橋本龍太郎紹介)(第三七一三号)  同(森田一紹介)(第三七一四号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三七一五号)  同外一件(佐藤信二紹介)(第三七八一号)  同(鳩山邦夫紹介)(第三七八二号)  同(浜西鉄雄紹介)(第三七八三号)  同(箕輪登紹介)(第三七八四号)  旧治安維持法等による犠牲者賠償に関する請  願(中林佳子紹介)(第三七一六号)  同(東中光雄紹介)(第三七八六号)  同(正森成二君紹介)(第三七八七号)  同(松本善明紹介)(第三七八八号)  同(井上一成紹介)(第三九七五号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第三九七六号)  同(岡田春夫紹介)(第三九七七号)  同(角屋堅次郎紹介)(第三九七八号)  同(金子みつ紹介)(第三九七九号)  同(小林進紹介)(第三九八〇号)  同(左近正男紹介)(第三九八一号)  同(嶋崎譲紹介)(第三九八二号)  同(新村勝雄紹介)(第三九八三号)  同(関山信之紹介)(第三九八四号)  同(田中美智子紹介)(第三九八五号)  同(中島武敏紹介)(第三九八六号)  同(中村正男紹介)(第三九八七号)  同(馬場昇紹介)(第三九八八号)  同(藤木洋子紹介)(第三九八九号)  同(松前仰君紹介)(第三九九〇号)  同(山花貞夫紹介)(第三九九一号)  同(渡部行雄紹介)(第三九九二号)  防衛費削減等に関する請願大原亨紹介)  (第三九七四号) 同月二十三日  旧治安維持法等による犠牲者賠償に関する請  願(瀬崎博義紹介)(第四一五五号)  同(高沢寅男紹介)(第四一五六号)  同(藤田スミ紹介)(第四三五八号)  中小企業専任大臣設置に関する請願愛野興一  郎君紹介)(第四二七二号)  同(小宮山重四郎紹介)(第四二七三号)  同(笹山登生紹介)(第四二七四号)  同(井出一太郎紹介)(第四三九七号)  同(小沢貞孝紹介)(第四三九八号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第四三九九号)  同(串原義直紹介)(第四四〇〇号)  同(塩島大君紹介)(第四四〇一号)  同(清水勇紹介)(第四四〇二号)  同(田中秀征紹介)(第四四〇三号)  同(中島衛紹介)(第四四〇四号)  同(中村茂紹介)(第四四〇五号)  同(羽田孜紹介)(第四四〇六号)  同(宮下創平紹介)(第四四〇七号)  同(若林正俊紹介)(第四四〇八号)  旧満州棉花協会等恩給法による外国特殊機関  として指定に関する請願石川要三紹介)(  第四二七五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月十九日  靖国神社の公式参拝実現に関する陳情書外三件  (第二七七号)  太陽と緑の週の休暇制定に関する陳情書外一件  (第二七八  号)  国旗掲揚国歌斉唱に関する陳情書  (第二七九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  行政機構並びにその運営に関する件      ――――◇―――――
  2. 中島源太郎

    中島委員長 これより会議を開きます。  行政機構並びにその運営に関する件について調査を進めます。  防衛庁所管について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。嶋崎譲君。
  3. 嶋崎譲

    嶋崎委員 きょうは時間が一時間二十分ということになりましたので、質問に対してはなるべく簡潔にお答え願いたいということをあらかじめ申し上げておきたいと思います。  きょうの質問のテーマは二つでございまして、一つは、去る四月一日から四日まで小松基地におきまして日米共同演習が行われました。その日米共同演習をめぐる問題と六十年度予算における基地の強化の方向などについての質問が第一点。二番目は、十数年前から本内閣委員会安保特別委員会などで議論をしてまいりました軍事基地自衛隊基地における環境基準の問題の見直しの時期に来ていると思いますが、御承知のとおり昭和四十八年に環境基準が出ましてから、昭和五十八年十二月でいわゆる十年間の環境基準目標の達成時期を経過いたしております。したがいまして、幾度か委員会で取り上げてまいりましたこの環境基準の問題に対する基地への対応についてただしたいと思います。以上、二つの点を中心にそれぞれ質問をいたしたいと思います。  さて、四月一日から四日まで小松基地において日米共同訓練が行われましたが、この共同訓練について、国民には、特に小松市並びに県、それから漁連海上保安庁その他を含めまして、事前にいつごろどのような形で通告をなさいましたか、国民に知らせる方法をとられたか、お答えください。
  4. 大高時男

    大高政府委員 お答えいたします。  ただいま先生お尋ね小松におきます日米共同訓練でございますけれども、従来から、航空自衛隊日米共同訓練の場合、おおむね一週間前に公表いたしておりますけれども、その際に、あわせまして関連自治体にも通報いたしておるわけでございます。  今回の訓練の場合でございますけれども、二十日に事前通告を行いまして、それから二十五日に関連自治体に御連絡申し上げたということでございまして、御連絡をいたしましたのは小松市、それからあと加賀市、松任市、根上町、寺井町、辰口町、川北村、美川町、こういったところ及び石川県に対して通報を行ってございます。なお、戦闘機戦闘訓練につきましては、本来訓練空域で行うものでございますので、海上には直接影響を及ぼすものではないということでございまして、海上保安庁、漁協に対しては特に通報は行っておりません。
  5. 嶋崎譲

    嶋崎委員 昭和五十五、六年ごろだったと思いますが、新田原基地日米共同訓練をやるということをめぐりまして、官報告示するかどうかということが議論になって告示されたという事実がありますが、御存じですか。
  6. 大高時男

    大高政府委員 新田原昭和五十五年二月十六日から二月二十日まで日米共同訓練が行われたわけでございますが、この際に、共同使用化ということで二4(b)の閣議決定が二月一日に行われまして、これが告示されたということは承知いたしておりますけれども訓練そのもの告示されたというふうには承知いたしておりません。
  7. 嶋崎譲

    嶋崎委員 しかし、官報告示をしたということは、国民に向かって、いつ、どの地区で、どのように訓練をするかということを表示したことを意味しているのではありませんか。
  8. 大高時男

    大高政府委員 官報告示されましたのは、新田原基地日米共同訓練のために使用されるという、二4(b)化されましたということについて告示がなされたというふうに理解いたしております。
  9. 嶋崎譲

    嶋崎委員 しかし、新田原基地を、日米地位協定をめぐりまして施設を使うということに関連して行われることになったから、告示したわけでしょう。
  10. 大高時男

    大高政府委員 私どもが理解しておりますのは、この施設そのものが本来的には自衛隊施設でございますが、これを日米共同訓練のために使用する、すなわち米軍も使用できるということで、施設共同使用化というものが告示されたということでございまして、現実に行われます訓練はその後状況を見て行われるということでございまして、必ずしも訓練そのもの告示されたというふうには理解いたしておりません。
  11. 嶋崎譲

    嶋崎委員 小松基地の場合の経過はどうなっておりますか。
  12. 大高時男

    大高政府委員 先生お尋ね小松基地でございますが、これは昭和五十七年十一月十二日に二4(b)化の手続がなされまして、共同訓練の開始の時期といたしまして五十七年十一月三十日から行われたということになってございます。
  13. 嶋崎譲

    嶋崎委員 先ほど説明にもありましたが、日米共同訓練関連して小松当局防衛庁との間に基地使用についての協定その他があることは存じておりますが、問題は、幾つかの新聞でも問題になりましたが、上空訓練するのだから、G空域訓練するのだから海上影響はないという意味で、漁連には直前まで通告がなかった、連絡がなかった、海上保安庁もなかったということを報道されております。安全については海上保安庁自身判断ができない、どういう正式の訓練でどういうものなのかはっきりしないからということを言っておりますが、そういう意味で市町村並びに県の自治体連絡をするだけで事足りると判断されたのですか。
  14. 大高時男

    大高政府委員 ただいまお尋ねの点でございますが、先ほども申し上げましたとおり、自衛隊におきまして訓練を行います場合、特に例えば射撃等を伴いまして危険を伴うような訓練、あるいは航空自衛隊ではございませんけれども海上自衛隊の行う規模の大きな訓練海上自衛隊訓練でございますとか、あるいは日米共同訓練の中でも十隻以上の艦船をもって行うような訓練でございますが、こういう場合におきましては、海上保安庁あるいはさらには関係漁業関係団体等にも通報するということになってございます。  先ほども申し上げましたように、航空自衛隊訓練におきましては、もっぱら訓練空域において訓練を行いますので、危険が及ぶということはないという判断通報は行っていないというところでございます。
  15. 嶋崎譲

    嶋崎委員 確かにおっしゃるように、投下射撃訓練というものはなくて、そして上空飛行だけでの訓練なので船舶には影響ない、こういう判断のようですが、海上保安庁の方は、危険があるかないかは私たちが判断するのであって、防衛庁側日米共同訓練をやるからといって一方的に危険でないと判断して通告しないのはおかしいと、前々日ぐらいの地元の諸新聞が報道いたしております。したがいまして、こういう一連の事実から見ても、やはり安全を期して、殊に漁業の場合には、飛行機の音には大変魚は敏感です。ですからそれだけに、訓練がある場合には漁船は全部その地域を離れまして、その時間待機したりしております。そういうことなどを見て判断をいたしますと、基地使用について仮に協定があるからといっても、共同訓練が行われるときには、いつの時期に、どのような地域で、どのような訓練が行われるがゆえにという大ざっぱな通知ぐらいは出すべきだ、連絡すべき趣旨のものだと私は思います。  そういう意味で、こういうところへの連絡その他が不十分であった点にかんがみて、今後の反省の材料にしていただきたいと思います。いかがですか。
  16. 大高時男

    大高政府委員 ただいま先生がお話しの趣旨というものは私どもも理解するわけでございまして、訓練を行うにつきましては十分安全を確認しながらやってまいりますし、また今回の訓練につきましても、二十五日に公表いたしまして、関係新聞等にもいろいろ公表されておる、あるいは関係自治体にも通報がいっておるというわけでございますので、今後とも安全に配慮しながらやってまいりたいというふうに考えております。
  17. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そこで、この四月一日から四日まで行われた共同訓練の内容の説明をいただきたい。簡潔にお願いします。
  18. 大高時男

    大高政府委員 本年の四月一日から四月四日まで小松基地で行われました日米共同訓練でございますが、使用いたしました基地につきましては、小松基地のほか、輪島の分屯基地、経ケ岬の分屯基地訓練空域といたしましては小松北方空域通称G空域と称しておりますが、その地域でございます。  参加いたしました部隊機種でございますが、航空自衛隊の場合、第六航空団小松、第七航空団百里でございますが、これのF4EJRF4E等でございます。一方、米軍の方でございますが、第二十一戦術戦闘航空団等でございまして、F15A、E3A、これが参加をいたしております。  訓練の科目でございますが、異機種の対戦闘機戦闘訓練援護戦闘訓練要撃戦闘訓練等々を行っております。  以上でございます。
  19. 嶋崎譲

    嶋崎委員 援護戦闘訓練というのはどんな訓練ですか。
  20. 大高時男

    大高政府委員 今回の共同訓練におきまして行いました援護戦闘でございますが、先ほど申し上げました航空自衛隊F4EJあるいはRF4でございますが、これを援護される飛行機というふうにいたしまして、これに対しまして航空自衛隊F4EJ、それと米軍のF15でございますが、これが援護機要撃機交互に演練をするという形態の訓練でございます。
  21. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そのときに敵機米軍機ですか、日本機を予測しているのですか、どちらを想定しているのですか。
  22. 大高時男

    大高政府委員 敵機というわけではございませんで、守られる対象自衛隊F4EJまたはRF4E、これに対して空白のF4EJ援護をすることもありますし、逆にF15が援護することもある。F4EJ援護しております場合には、攻撃を仕掛けてくる側は米国のF15、こういったものが交互に行われるというふうに御理解いただけばいいのではないかと思います。
  23. 嶋崎譲

    嶋崎委員 それでは、要撃戦闘というのは何なのですか。
  24. 大高時男

    大高政府委員 これは日米相互に、何と申しますか、攻撃してまいります敵機に対してこれを迎え撃つという形でございます。
  25. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そのとき敵の飛行機戦闘機ですか、爆撃機ですか。
  26. 大高時男

    大高政府委員 この場合におきましては戦闘機同士で行っておりまして、ただ、被援護対象といたしまして先ほど申しましたようにF4EJとか、あるいはRF4というようなものがなるということでございます。
  27. 嶋崎譲

    嶋崎委員 要撃というのは、敵の戦闘機爆撃機が侵入してくるのに対して迎え撃つ、そういう訓練だと私は理解しております。したがって、有事訓練みたいなものですな、はっきり言って。  そこで、この小松訓練に際しましてアメリカのE3A、あれは嘉手納にいるのですか、早期警戒管制機が使われていますね。同時に、嘉手納におりますF15戦闘機が使われておりますね。ところが、これは後で少し六十年度予算関連してお聞きしますけれども日本にはE2Cが現実にございます。既に二、三の基地に配置されております。同時にまた、F15も千歳と新田原に配置されております。日本にあるE2CやF15を使わずに、アメリカのE3A並びにF15と日本自衛隊との間で訓練を行っているが、その異機種との訓練の目的はどこにあるのですか。
  28. 大高時男

    大高政府委員 今回訓練を行いました米国のF15でございますが、これは沖縄の嘉手納ではございませんで、米国アラスカにエレメンドルフという基地がございますが、ここのF15戦闘機五機が参加をいたしたわけでございます。E3Aは先生御指摘のとおりでございます。  御承知のように、航空自衛隊におきましては、戦術技量向上あるいは新たな戦術戦法の修得のためにできるだけたくさんの種類の戦闘機との訓練を行う、これによりまして新たな戦術戦法というものを修得するわけでございますけれども、仮に同じような機種にいたしましても、その部隊によりまして戦術運用の発想でございますとかやり方というものは非常に異なりますので、こういったものと多様な訓練を重ねるということは、結果的には航空自衛隊練度向上につながるというふうに考えております。  なお、E3Aとの訓練でございますが、E3Aにつきましては非常に強力な索敵能力を持っておるわけでございまして、万が一、我が国のレーダーサイトがつぶされたというような状況下におきましては、これの支援を受ける状況が当然考えられるわけでございまして、そういったことを念頭に置きまして、E3Aの情報の提供を受ける訓練を行ったということでございます。
  29. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そうしますと、ちょっと脱線になりますが聞きますが、小松市に発表されたアメリカのF15、アラスカに配置されている部隊ですが、これはどこの基地から日本に来ましたか。
  30. 大高時男

    大高政府委員 この航空機が発進いたしました基地については定かに承知いたしておりませんけれども、このF15の部隊はちょうど韓国で行われましたチームスピリット訓練が終了いたしました後、今回の日米共同訓練参加したというふうに承知いたしております。
  31. 嶋崎譲

    嶋崎委員 小松当局事前に発表されたのでは、韓国からチームスピリット85に参加した米軍のF15が来る際に、六機来るというふうに発表されておりましたが、一機減りまして五機来たのはなぜですか。
  32. 大高時男

    大高政府委員 私どもの方も、当初、訓練を計画いたしました段階におきまして、F15が六機というふうに考えておったわけでございますけれども、このチームスピリット訓練の際に米空軍のF15一機が墜落事故を起こしたというふうに承知をいたしておりまして、ただ、この事故が直接にこの訓練参加機が五機になった理由であるのかどうか、あるいはこの事故影響をいたしまして機数が減ったかどうか、この点については承知をいたしていないというところでございます。
  33. 嶋崎譲

    嶋崎委員 訓練のときには二機編隊で訓練するんですよ。だから偶数なんです。それが六機が五機になったということは、恐らく最初計画した訓練とは変わった訓練にならざるを得なかったと思います。どんなふうに二機ずつ組ませたかとか、いろいろなことがあるかもしれません。したがって、一機来なかったというのは大変重要な意味を持っていると私は思うのです。  いずれにしましても、墜落したといううわさは聞いておりますが、どこでどんなふうになったかはお調べになっていないんですね、どういうことで墜落したか。
  34. 大高時男

    大高政府委員 どのような形で事故があったかということにつきましては、承知いたしておりません。
  35. 嶋崎譲

    嶋崎委員 やはり、米韓共同訓練の中にF15が現実事故で墜落しているんですよ。小松でもG地区でやっている訓練に際してそういう事態が起き得るわけですよ。だから、安全だという保証はどこにもないでしょう。だから最初に言うように、やはり海上保安庁だとかそういうところに一定の事前連絡をして対処すべきだと私は思うのです。  いずれにしましても、六機なのが五機になったということの意味を、どこまでわかるかわかりませんが、お調べの上、どこでどんな事態があったのか、後で御連絡ください。よろしいですか。
  36. 大高時男

    大高政府委員 この点につきましては、私ども外務省を通じ状況を聞いて、また御連絡を申し上げたいというふうに考えます。
  37. 嶋崎譲

    嶋崎委員 日米合同委員会にかけて聞けばわかることですから。  そうしますと、つまり米軍のF15、チームスピリット85の訓練に行っていた韓国からのF15が日本に来て日本飛行機訓練をした、この訓練の中には、おっしゃるようにパイロットの訓練というのが一つありましょうね。それからもう一つ、小松に配置されているのはファントムですね。このファントムは性能から見てF15から見れば古い型です。ですけれども、将来F15を入れるかどうかは別としまして、現在の段階でファントムを使って違った機種訓練をやっているということの中には、ファントム自身の機種としての性能も、訓練上同時に確かめておかなければならぬという訓練が含まれていると判断をいたしますが、どうですか。
  38. 大高時男

    大高政府委員 先生今御質問趣旨がちょっとよく理解できなかったわけでございますが、もう一度お願いできましょうか。
  39. 嶋崎譲

    嶋崎委員 つまり、新田原や千歳にはF15がいるわけですよ。小松はファントムです、F4Jですから。そのF4Jが訓練に主力の機種として使われているわけですよ。その意味はどういうことかということについて、パイロットの訓練もあるが、同時に、F15が配置されない段階で、ないしは今のような現状の基地の航空編隊が配置されている状況の中で訓練をするとすれば、ファントムという機種そのものの性能をテストする、訓練するという意味も含まれているはずですねと聞いているんですね。答えぬでもいいです、これは時間がかかりますから。  僕はそうだと思います。二つある。パイロットと、それから飛行機の性能がこれに耐え得るかどうかというこの両面。言葉をかえて言いますと、ファントムでも、いろいろなところの中身の機械の技術革新を行えば、一定程度対応できるものかどうかなということも含めて訓練される性質のものでなければ意味がない、こういう趣旨のことを言っているのです。多分そうだ。時間がありませんから答えは要りません。  E3Aですね。アメリカのE3Aというのを配置して訓練したのですが、日本のE2Cが仮にやられたとしますね。そこで、その早期警戒管制機の機能がなくなった、そこでアメリカのE3Aがかわりをやるということを含めて、E2CではなくてE3Aとの訓練が必要だという意味でE3Aを使ったと判断できますか。いかがですか。
  40. 大高時男

    大高政府委員 E2CとE3Aの性能そのものの細かい点につきましては、私、必ずしもつまびらかにいたしておりませんけれども、いずれにいたしましても、E3Aは、日本有事の場合におきまして、我が航空自衛隊に対して支援をやってくれるということは当然想定されるわけでございまして、日ごろから、これからいかなる形で情報をもらい、どうやって要撃あるいはその他の航空自衛隊としての訓練を行っていくかということは、仮にE2Cがございましても、必要なことであるというふうに考えております。
  41. 嶋崎譲

    嶋崎委員 アメリカのE2Aは、これは当然在日米軍のバッジシステムと全部つながりますね。アメリカの第五航空団と全部地上と連絡して対応できますね。同時に、飛行機に対してもE2Aの場合は通信の対応ができる仕組みになっています。ところが日本のE2Cは、地上に送りますけれども、まだ飛行機に対してはできないんですね。だからそういう意味では、E2Aの方がバッジシステムとの関連で言いますとより性能がすぐれていることは事実だと思うのです。このことは何を意味しているかというと、つまり在日米軍、特にフィリピン以北から極東全体の、在日のアメリカの第五空軍が米韓で共同演習をやっている場合に、E2Aの果たす役割というのは、地上と飛行機相互間とのいろいろなレーダーで受けたものをバッジシステムでもって連絡をし合えるような仕組みにとって、大変大きな役割をしているものだと判断できると思うのです。ですから、日米共同訓練の中で日本のE2Cを使わずにアメリカのE2Aを使っているというのは、明らかに日米共同訓練の中で相互に通信システムが可能になるような仕組みを想定しての訓練だと判断をいたしますが、いかがですか。
  42. 大高時男

    大高政府委員 先生がE2AとおっしゃいましたのはE3Aのことだというふうに理解いたしますけれども、(嶋崎委員「E3Aです」と呼ぶ)航空自衛隊がE3Aと共同訓練を行います際には、こういう具体的な形で行っておるわけでございまして、E3Aが侵入目標を探知いたしますと、航空自衛隊レーダーサイト通報をいたします。一定地点で要撃機の飛行コース情報提供、これは最初は一定地点まで航空自衛隊レーダーサイト要撃機の誘導をやっていくわけでございますが、一定地点まで参りますとE3Aに引き継ぐ。それから後、要撃機が目標を捕捉いたします地点まで飛行コース情報をE3Aから受ける。それで、空中戦闘訓練を行っております間、目標機が動くわけでございますが、それをさらに要撃機に情報として提供する。あとは、帰りのある地点までの情報を提供いたしまして、その後は航空自衛隊レーダーサイトが引き継いで誘導するという形でございまして、この提供された情報に基づきまして、航空自衛隊の編隊あたりの指揮官がどういう形で行動するかという判断をするというのが訓練状況でございます。
  43. 嶋崎譲

    嶋崎委員 時間がありませんから全体的な構図だけ申し上げますと、昭和五十七年以降、チームスピリットが二月一日から始まって大体四月の中旬まで例年行われておりますね。その米韓共同訓練というのは、御承知のようにフィリピン、それから嘉手納、横田、三沢、それから在日米軍のみならずアラスカ等々を含めましてかなり広範な、これはアメリカは第五空軍ですけれども、これが軸になって韓国との間のいろいろな訓練が行われていることは御承知のとおりですね。時期が二月一日から今度は四月の初旬で終わっていますが、いつもは四月の中旬まで続いておりますね。そこで使われ、戦闘訓練が行われていることと小松日米共同訓練は、形は別だが実質は訓練の内容においてつながりを持っていると私は判断をしているのです。これは軍事的な問題ですから、いや、形は別ですとおっしゃるでしょう。  じゃ、もう一つお聞きしますが、二月の中旬ごろ、岩国の基地小松のファントムが行って行なった日米共同訓練がありましたでしょう。二月十九日ごろにやっていませんか。
  44. 大高時男

    大高政府委員 二月の十九日から二十二日まででございますけれども、築城及び岩国を使いまして戦闘機戦闘訓練を行っております。これは日米共同訓練でございます。
  45. 嶋崎譲

    嶋崎委員 それにも新田原並びに小松の飛行隊は参加しておりますか。
  46. 大高時男

    大高政府委員 ただいまちょっと手元に資料がございませんので、すぐ調べまして御返答申し上げたいと思います。
  47. 嶋崎譲

    嶋崎委員 二月十九日から四日間、岩国の基地を使って、小松基地からも新田原からも参加して共同訓練を行なっています。したがって、二月一日から始まった米韓共同訓練は極東地域全体にわたって韓国との間で行われている訓練ですけれどもアメリカ韓国とで行われているこの訓練の一環として、岩国や小松基地共同訓練が並行して行われると私は想定をするわけですが、その辺はどう判断されますか。
  48. 大高時男

    大高政府委員 ただいま御指摘の訓練でございますけれども参加したのが果たして小松から出ているかどうかということは確認をいたしますけれども、この場合の日米共同訓練におきましては、在日の米空軍機が参加をいたしておりますし、それからまた、先ほどの四月一日から行われました小松におきます日米共同訓練につきましても、いずれも韓国チームスピリットとは全く関係がないというふうに私ども理解をいたしております。また、チームスピリットの終了の時期でございますが、三月の末というふうに当方では理解をいたしております。
  49. 嶋崎譲

    嶋崎委員 去年まではみんな四月中旬、ことしは少し早く終わったようですが、いずれにしてもそういう米韓共同訓練と密接不可分な時期に岩国や小松でも行われるという事実は、どんなに関係ないと言ったところで、その米韓共同訓練にいたF15そのものが小松に来て、日本のパイロット訓練を含めましてやっておるわけでありますから、私は国民の立場からは密接な関連があると理解すべきだ、そう思うわけであります。  時間がありませんので、ちょっと小松基地のその後の動きについて聞きますが、昭和六十年度予算には、F15の十四機のうちJ型が十機、それから複座のDJ型、練習パイロットが乗るものですね。これが四機、こうなっておりますが、このJ型十機を入れますと、六十年度にはF15は日本に何機配置されたことになりますか。
  50. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 六十年度予算で予定をしておりますF15の購入が完成をいたしますと、取得をした暁には百十四機のF15の勢力になるものと見込んでおります。
  51. 嶋崎譲

    嶋崎委員 時間がないから僕の方が言うが、六十年度までには五十三機、現在まで二十三機ぐらいだと思いますが、今年度は十機ぐらい入るはずです。六十三年度までにはおっしゃるように百十四機くらいになるはずであります。それはいいです。  そこでF15の配置について、六十年度に第四番目の飛行隊が新たに編成されると聞いております。そして同時に、五番目の飛行隊用の受け入れ施設の整備が行われるという予算がついていると思いますが、まず最初の方を聞きます。四番目の新たにつくられる飛行隊というのはどこですか。
  52. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 F15の部隊は現在三個飛行隊おりまして、千歳、百里、新田原の三カ所にあるわけでございますが、本年度に四番目の飛行隊を千歳に配備する予定でおります。
  53. 嶋崎譲

    嶋崎委員 四番目は千歳ですね。じゃ、五番目は。
  54. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 それ以降の具体的な計画はまだ決定をいたしておりません。
  55. 嶋崎譲

    嶋崎委員 私は、小松に近い将来配置される可能性があると判断をいたしております。既に新田原が入り、千歳が入り、嘉手納の方は航空のいわば戦力そのものがかなり整備されておりますから、次は小松、こういうふうに判断をしておりますが、受け入れの施設整備という予算項目はどんな内容のものですか。
  56. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 六十年度におきます小松については、弾薬庫の整備計画があるということでございます。
  57. 嶋崎譲

    嶋崎委員 いや、僕が聞いているのは、F15の第四番目の飛行隊、それから第五番目の飛行隊の配置を予測して、F15の六十年度予算から六十三年度までの予算の方式が出ているわけです。それを入れるということになりますと、F15に伴う飛行隊の受け入れ施設の整備をやらなければならないということで、その設備の予算が今年度ついておるはずです。それはどこにつけたのか、そしてどういう内容のものかと聞いているのです。
  58. 大高時男

    大高政府委員 防衛局長の答弁の前に、先ほど先生お尋ねの二月の訓練でございますが、小松の第六航空団参加をいたしております。先生御指摘のとおりでございます。
  59. 池田久克

    池田政府委員 F15関連施設の整備計画につきましては、既に配置が決まっておるものにつきましてはそれぞれ予算化をお願いしているところであります。
  60. 嶋崎譲

    嶋崎委員 それはもっと正確に調べて、そしてわずかであっても、どこに何がついているか、後で連絡ください。  E2C関連で言いますと、六十年度予算でE2Cと結ぶバッジシステムの通信バッファーの四号機が調達されることになっております。第一号機は御承知のように三沢、第二は春日、第三は入間、第四番目の四号機が配置されますと、E2Cのバッジシステムは全土に広がって、やっと機能が全体的に整うことになります。先ほど挙げましたアメリカのE3Aに比較しまして、今まで十分な態勢が整っていなかった我が国の自衛隊のバッジシステムがほぼ完成することになると思いますが、この通信バッファーの四号機というのは那覇に配置されると聞いておりますが、いかがですか。
  61. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 御指摘のとおり、那覇に予定をいたしております。
  62. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そうしますと、レーダーでキャッチして、そしてバッジシステムにざっと連絡して、いつも攻撃、援護できるような態勢にほぼなってくるという意味では、かなり戦力は強化されてきているというふうに言うことができると思います。そういう意味で、今度の日米共同演習のときにアメリカのE3Aで訓練をしているということと、今後E2Cのバッジシステムができ上がってくる際の機能とを関連づけて考えてみますと、アメリカのE3Aを使ってやった訓練意味がわかるというふうに言えると思うのです。言葉をかえて言いますと、アメリカの極東における戦略体制の中にすっぽり我が国の自衛隊の体制がはまり込んだということになる。しかも、日本海側の小松基地新田原、千歳と並行して非常に重要な基地と変わりつつあるということが言えると思います。  それに関連して、今年度予算小松基地では、三沢、新田原、築城などを含めまして、弾薬庫の拡張工事が行われておりませんか。予算がついておりませんか。
  63. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 六十年度予算におきましては、弾薬庫の新設に着手することにいたしておりまして、この小松基地に新設をするわけでありますが、その完成は六十一年度を予定いたしております。
  64. 嶋崎譲

    嶋崎委員 弾薬庫の拡張というのは、地下に入れるんですか。簡単に説明してください、時間がありませんから。
  65. 池田久克

    池田政府委員 来年度予算でお願いしておりますものは一級の弾薬庫でございまして、覆土式の、地上でございます。
  66. 嶋崎譲

    嶋崎委員 今年度の予算で、小松基地に短SAM五セットのうち一セットが配備される予算がついておると思いますが、いかがですか。
  67. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 短SAM二セットを配備することを予定して、調達をすることにしております。
  68. 嶋崎譲

    嶋崎委員 小松にはその一セットが配置されるわけですね。
  69. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 失礼しました。小松基地に配備を予定している数は短SAM二セットということでございます。
  70. 嶋崎譲

    嶋崎委員 短SAM一セットというのは、車の上に砲が二つくっついたあれを四台で一セットというんじゃありませんか。
  71. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 要するに発射機といいますか筒が四つ車に乗っておりまして、それが一セットでございます。
  72. 嶋崎譲

    嶋崎委員 一セット幾らですか。
  73. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ワンセット約二十八億円でございます。
  74. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そうしますと、小松基地は二セットですから約五十億円ですね。
  75. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 約二十八億円ですから、二セットですとその倍の五十六億円程度になろうかと思います。
  76. 嶋崎譲

    嶋崎委員 短SAMというのは、これは御承知のように地上から空に向けていくいわばミサイルですから、それには、発射するときに発射を勢いつける、推進するものがありますな。だから、海に向かって出ればいいですよ。もしもそれが住宅近辺に、後でもやりますが、環境基準でいきますと、小松というのは七十五Wのところにだあっと旧市内がすっぽり入るのです。そういうところに短SAMを持って、確かに防衛のためには必要だが、これは訓練をやるのですかやらぬのですかということと、そういう場合に、こういう地域にこういうものを配置しているということは今後大きな問題を起こしやせぬかということを心配しますが、どういう判断ですか。
  77. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 基地に配備いたしましても、その場で、そこで実射の訓練をするということはないわけでございます。
  78. 嶋崎譲

    嶋崎委員 海にばかり向かっていけばまだいいですよ。それでも漁船がいるのですよ。しかし、敵機が侵入することをめぐって行われる訓練最中に、これは敵機が近くに来たときに地上から撃つのでしょう。これは市街地を横に置いた基地でこういうものを撃って、うまくいけばいいよ、海に行って安全ならいいですが、それは戦争になれば国民だって犠牲になることはありますが、しかし、そういうものを予測してこの膨大な市街地を持つところの基地をだんだん強化していこうとしているが、こういうあり方でいいのかどうか。後の環境基準との関連で大臣にも言いますけれども、大臣、感想はどうですか。
  79. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 短SAMなどでしっかりと防空態勢をしておくということが抑止になり、またその地域の安全にも資すると思っております。
  80. 嶋崎譲

    嶋崎委員 短SAMで届くのは、抑止どころじゃないのだよ、もう手前に来ているのですよ、そんなに遠いところに撃つのじゃないのですから。まあいいですわ。  さて、いずれにしましても、一連の弾薬庫の施設が強化され始め、短SAMが入り、そして六十年度予算で四番目までは、千歳、新田原、百里、さらに千歳と言っていますが、この飛行隊は新たな飛行隊が千歳に配置されるのだと思いますが、第五番目はインテロゲーションマークでございますが、これは私の情報では小松に配置されると判断をいたしております。したがいまして、これまた後の環境基準問題と関連しますが、新しい機種小松に入れる場合に事前連絡をすることになりますか、なりませんか。
  81. 池田久克

    池田政府委員 先生お尋ねのように、機種が新しくなるということでございますれば、従来我々の行なってきた例から判断いたしましても、通知をすることになると考えております。
  82. 嶋崎譲

    嶋崎委員 事前にきちんと通告をしてください。  新田原その他で、F15の騒音についての測定の実測値はありますか。
  83. 宇都信義

    ○宇都政府委員 お答えいたします。  F15の騒音につきましては、岐阜基地におきまして測定したものがございます。離陸時におきまして滑走路端の先端から一・二キロの地点で九十九デシベルAでございまして、着陸時は九十五デシベルAになっております。
  84. 嶋崎譲

    嶋崎委員 いずれにしても、時間がありませんから簡潔に環境基準問題を聞きますが、機種が変更になった場合には事前連絡をしてその対応をしていただくように約束をしていただきましたので、実行をしていただきたいと思います。  さて、この問題に関連して最後に一つ聞きますが、小松の民間空港の増便について、自治体、県当局や経済界を挙げて定期便の増便、新規路線の設定を強く要望しております。この際に、運輸省の方は要望にこたえたいと言っても、常に防衛庁が難色を示してきていることは事実であります。現に仙台線につきまして、ペンディングになっていたのがやっと動くようになりました。こういう状況にかんがみて、お聞きしますが、千歳では一日に離着陸の回数が何ぼで、そのうちに自衛隊機が占めている割合はどのくらいですか。
  85. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 済みません。今ちょっと資料が手元になく、調べに走っておりますので、一、二分ちょっとお待ちいただきたい。
  86. 嶋崎譲

    嶋崎委員 それなら僕の方が言います。  千歳は一日平均の離着陸は二百三十回です。そのうちの四〇%が自衛隊機であると言われております。正確に発表されておりませんが、約四割と言われております。小松の場合には東京便五便、それから札幌便、福岡便、仙台便が各一便、こうしますと、せいぜい八往復くらいですから、離着陸数ははるかに少ないわけです。したがって離着陸数の要望が大きいわけです。ところが、防衛庁はだめだと言う。  では、この小松基地を使用する場合に、千歳でやっているような割合を想定した場合に小松では可能なのか不可能なのか、いかがですか。
  87. 池田久克

    池田政府委員 離発着回数につきまして、千歳、小松を今ここで比較した資料を手元に持っておりませんけれども小松の例を見ますと、五十八年度の例を見ますと民間機の使用回数は非常に少ない状況でございます。
  88. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そんなのは、滑走路の許容容量というものをちゃんと調査して、そして今民間が何ぼ自衛隊機が何ぼというふうにやれば、比較はすぐ出てくるのです。大ざっぱな見当を千歳で自衛隊が四割と今言いましたが、民間が圧倒的に強く利用されて、自衛隊が横にくっついている、それで千歳の基地は機能しているのです。しかもF15がいるわけです。したがって、小松基地が千歳に比べて自衛隊のいわば訓練用により使われている、もちろんその容量その他も、滑走路の許容量も関係してまいりますが、それで民間のいわば飛行機便の回数増の要望に、運輸省の方の許可を得る前に防衛庁の許可を得なければならぬが、それがいつも問題になってきているという意味で、その基準をなぜなのか民間の方の要望に対してこたえられないので、その内容を、基準を明らかにしてお知らせしてください。今すぐ回答できぬでしょうから、防衛庁長官いかがですか。
  89. 大高時男

    大高政府委員 小松の飛行場に対しまして民間航空機を持ってくるということは、以前にも話がいろいろございまして、これについて防衛庁の方でもいろいろ検討をいたしましたのですが、現在持っております航空機、それから訓練、それから基地としての機能を保全するという面から申しまして、非常に困難であるという形でお話を申し上げておるというふうに理解をいたしております。ただ、現在データがちょっとございませんので、それをいつ、どういう形でということは申し上げにくいわけでございますが、ただいま申し上げましたように、基地の機能を確保する面におきまして非常に問題がある、真剣に検討したけれども、非常に難しいというふうに御回答申し上げた経緯があるというふうに理解いたしております。
  90. 嶋崎譲

    嶋崎委員 難しいのですな。ということは、小松基地軍事基地として、千歳よりも軍事基地としての機能、軍事的性格の方が強い、こう理解していいですか。
  91. 池田久克

    池田政府委員 先生十分御承知と存じますけれども、千歳と比べますと小松の場合は地積も非常に狭くなっております。それから、御承知のように小松の場合は滑走路が一本しかございません。それからさらに、先生は十分御承知と思いますけれども小松の我が航空団運営につきましては、地元といろいろお話をいたしまして、時間の規制だとか夜間の規制、祭日の飛行をできるだけ制限するとか、我々としても極力地元の意に沿うように運営をしております。飛行機も五十機程度展開しておりまして、しかも重要な基地でございまして、我々としては現在の航空自衛隊運営をできるだけ阻害しないように考えています。もちろん現在でも民間機の使用については御協力申し上げておりますが、我が方の事情もお酌み取りいただきまして、御理解を得たいと思っておるところでございます。
  92. 嶋崎譲

    嶋崎委員 小松では滑走路を二本にする計画はあるのですか。ありますか、ないのですか。
  93. 池田久克

    池田政府委員 現在のところ、そのような具体的な計画は持ち合わせておりません。
  94. 嶋崎譲

    嶋崎委員 もう時間がないですけれども、今度の新たな線引きのときに、八十五Wから九十Wに格上げしたのです、意識的に。そこは全部集団移転するのです。そうなりますと、そこを使えば第二滑走路ができることに客観的にはなるのです。だから、線引きの際に、後で質問しますが、なぜ今になって第三種の部分、つまり八十五W、九十W、九十五Wのところで新たな線引きが行われているのです。どうも基地強化のねらいを持っているのではないかという不安を市民が持っております。そんなわけでいろいろお聞きしましたが、小松基地は、日米共同訓練などの具体的な事実に示されるように、六十年度予算以降の予算の対応などを見ましても、非常に重要な前線基地としての機能を既に持ちつつあるということだけがわかったような気がいたします。  そういう意味で、この基地をめぐる問題は、住民とのコンセンサスを得ないと日本の防衛努力の達成ができないわけでありますから、以下、時間がありませんが、簡潔に環境基準問題について御質問いたします。  昭和五十年十月四日に、小松基地にF4ファントム戦闘機が配備されるということをめぐって、石川県並びに小松市など関係八市町村と防衛施設庁との間に、「小松基地周辺の生活環境の確保を図る上で騒音の防止が極めて重要である」という意味で、一〇・四協定というものが結ばれております。この点はもう聞きませんが、これは四十八年の環境庁の環境基準に基づいて、昭和五十八年十二月二十七日までですかに、屋内外を問わず、騒音基準値七十ないし七十五Wの達成を期する旨の協定と当時理解をいたしまして、内閣委員会質問をし、それで環境庁、運輸省、それから防衛庁相互において、小松基地を第二種Bというふうに規定をいたしまして、環境基準達成を期するということにしてまいりました。時間がありませんから改めて確認はいたしませんが、環境庁、私が言った趣旨で間違いはないと思いますが、いかがですか。
  95. 林部弘

    ○林部政府委員 ただいま先生のおっしゃったとおりでございます。
  96. 嶋崎譲

    嶋崎委員 時間の関係で、運輸省さん大変申しわけないですけれども、あと質問する時間がありませんから、運輸省は省かせてもらいますので、どうぞお引き取りください。  そこで、小松基地をめぐりまして、いよいよ一昨年の五十八年の十二月で、この環境基準の達成時期が切れました。さあ、十年間に達成すべき環境基準は達成された、ないしはどのように環境基準の達成について御判断されておられますか。これは長官だ。
  97. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  先生御指摘の五十年の一〇・四協定につきましては、防衛施設庁といたしましては、この基本協定書に基づきまして、その趣旨を尊重してできる限りの努力をいたしてまいっております。  例の環境庁告示一五四号の基準によりまして、音源対策、それから運航対策、周辺対策と三つをお約束しておりますが、この音源対策につきましても、消音装置であるとか防音壁をつくるとか、いろいろな努力をいたしました。また運航対策につきましても、飛行コースだとかなんとか、いろいろな努力をいたしました。それから周辺整備法四条、五条に申しますところの八十W以上あるいは七十五W以上、これに対する措置、これにつきまして鋭意努力をしてきたところでございます。  まず、これらの努力にかかわらず実行できなかったこと、これを率直に申し上げますると、星外における七十WECPNL以下にするという努力目標、これは達成できませんでした。運用の状況等からいって非常に困難でございまして、屋外の七十五以下あるいは七十以下というのはさらに困難でございました。しかしながら、この問題につきましては、この環境基準の第2の3「航空機騒音の防止のための施策を総合的に講じても、1の達成期間で環境基準を達成することが困難と考えられる地域においては、当該地域に引き続き居住を希望する者に対し家屋の防音工事等を行うことにより環境基準が達成された場合と同等の屋内環境が保持されるようにする」という基準がございますので、これによりまして防音工事を鋭意実施をいたしまして、屋内防音につきましては六十年には七十五W以下のものを完成いたします。それから、五十九年までで移転措置、これは周辺整備法五条にかかわるものでございますが、これは完成したと思っておりましたところ、近年希望者が七戸出てまいりましたので六十年に達成をいたしたい。  一言で申し上げますと、屋外の基準七十五W以下というのは困難でございましたが、その部分は環境基準の第2によりまして何とか屋内防音の方をさせていただくということで、防衛施設庁としてはかなり努力をし、達成したと考えております。
  98. 嶋崎譲

    嶋崎委員 時間がありませんから問題を簡潔に言いますが、昭和五十九年十二月十日に、いわば五十八年の十年の環境基準達成の時期を想定して第一種区域、第二種区域、第三種区域についてそれぞれ線引きが行われております。ところが、問題の七十五の場合でありますが、昭和五十七年五月に行われましたその線引きに比べて、五十九年に行われました七十五以上の線引きは大変に地域に変化が起きております。もう今から説明しませんが、こういう地図、皆さんのところにもありますから。これを見ると、びゅっと横に伸びておりますし、上の方もびゅっと伸びております。どうしてこの変化が起きたのですか。簡潔に答えてください、時間がありませんから。
  99. 宇都信義

    ○宇都政府委員 お答えいたします。  昭和五十七年六月にいたしました告示は、五十二年に調査しましたファントムの騒音測定の資料をもとにコンターを作成しております。これを行いました事情につきましては、ファントムの配備が五十六年度に行われまして、その際に、自衛隊等の場合は現地における騒音測定を行いましてコンターの作成資料を収集するわけでございますが、石川小松市等から早急にコンターを作成するようにという御要望もありまして、その御要望を踏まえまして、とりあえず五十二年度の資料に基づきまして、電算機により処理いたしましてコンターを作成いたしました。その後、五十九年度にコンターを作成いたしまして指定告示をいたしましたが、この資料は、五十七年度の十一月と五十八年度の九月に、二回にわたりまして現地におけるファントムの騒音測定を行った結果、実際の騒音測定値に基づきまして、また現地におきます常時測定をしております三者共同測定値などとの整合を図りまして、現地の事情に合わせましてコンターを作成しております。その際、道路あるいは河川、そういう行政区画等の区切りのよい場所を線を引いてまいりましたので、五十九年度の場合のコンターのカーブがかなりでこぼこになっているという実情はございますが、いずれにしましても、五十七年度のコンターは電算処理された暫定的なものでありまして、五十九年のコンターが実測値に基づくものでございます。
  100. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そもそもおかしいんじゃないですか。この小松の基本協定書には「少なくとも年一回騒音コンターの見直しを行う。」ということで、きちんとやりながら経過を明らかにしていくことに基本協定書はなっておりますね。ところが、実際にやっておらぬのです。そして、五十七年にやったときは今言うように電算機でしょう。理論値なんですよ。実測値じゃないということですよ。理論値でやって狭いものを出しておいて、そして二年後になって慌てふためいたような格好で大きくなっておる。  いずれにしましても、最初の五十七年に出した線引きのときは、五十二年度の基地状況を前提にした騒音の調査と言っていますね。その当時はF104とファントムの二編隊の騒音に基づくデータなんです。そして最後に五十九年に出たのは、ファントム二編隊による基地近辺の騒音に基づく環境基準のデータなんです。そうしますと、かつてよりも広くなったということは、104プラスファントムよりも、ファントム二編隊の方が騒音が大きくなったということに理論的にはなります。私が五十一年、五十四年と、何回か委員会質問してきたときには、皆さん方は、いや、104よりもファントムの方が音は小さいんだと言い続けてきたのに、結果は逆になっておるのです。この根拠はどういうふうに説明しますか。
  101. 宇都信義

    ○宇都政府委員 お答えいたします。  五十七年度の告示の際に使用しました五十二年度の調査のデータでございますが、この中にはF4とF104の二種類の戦闘機の騒音が入っております。それは、私ども五十二年度に実施しました場合には音を分離しておりますので、五十七年度に実施しました場合は、そのうちのF4につきまして、飛行回数等から電算処理しまして、F4だけのコンターを作成しております。もちろん五十九年度はF4二個飛行隊の現地の飛行回数、それから実測音によりまして測定いたしておりまして、F4二個飛行隊になったからその騒音が多くなったということではございませんで、五十二年度のデータと五十九年度の飛行回数等のデータの差によるものと考えております。
  102. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そんな簡単な説明じゃ済まぬですよ、現地の住民にすれば。三年前に引かれたときにはおれのところは入っていない。後で引いたらおれのところは入っておる。七十五以上にというのは、屋外で七十五以上を実施するというのが原則なんです。しかし、経過措置として、七十五以上のところというのは住宅専用地域としては問題のある地域なんです。それはわかっているでしょう。七十から七十五、七十五から八十。この七十五から八十というのは環境基準、つまり建設省や自治省の側からの都市計画という観点からしますと、これはまた第一種、第二種の問題がありますが、非居住地域的性格を持つのです。だからこそ屋内で六十五以下にしよう、こうなっているのですよ、過渡的措置として。ですからそういう意味で、七十五に入るか入らないかということは、専用の居住地域であるのかないのかという一つの重要な分かれ目なんです。それが、二年前にやったときには手前の方で、そして二年後にやったらぐっと広がる。こうなりますと、これは住民の側からすると——何やっているのですか、このコンターの国民への表示というのは何を意味しているのですか。つまり最後ぎりぎりになったらしようなしに広げたけれども、その間、既に昭和五十七年から日米共同訓練が始まった、スクランブルの回数が多くなっています。それで騒音の量が多くなってきているから、一時的に短くしておいて、そして最後の段階に広げだということも、住民の側からは想定されるわけです。  ちょっと聞きますが、五十七年、五十八年、五十九年、それぞれの年の小松市における年間のスクランブルの回数は幾つですか。
  103. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 小松基地におきます過去三カ年のスクランブル回数を申し上げますと、五十七年度が百六十七回、五十八年度が百七回、五十九年度が百四十五回ということになっております。
  104. 嶋崎譲

    嶋崎委員 それ以前、五十六年、五十五年はどうなっていますか。
  105. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 五十五年から申し上げますが、五十五年度が百五十二回でございます。五十六年度が百九十六回、五十七年度が百六十七回、五十八年度が百七回、五十九年度が百四十五回でございます。
  106. 嶋崎譲

    嶋崎委員 小松基地は大体スクランブルの回数が一千五百回を超したと報道されておりまして、他の基地に比べまして今日全国で二番ないし三番目くらいのスクランブルの回数になっていると理解してよろしいですか。
  107. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 五十九年度の例で見ますと、北から申しまして、千歳が二百七十七回、三沢が百、六十二回、小松が百四十五回、百里が七十六回、新田原が七十四回、築城が百四十四回、那覇で六十六回ということでございまして、一番多いのはやはり千歳が特に多い基地になっておるように思います。
  108. 嶋崎譲

    嶋崎委員 小松は三番目だな。今の数字でいくと二番ないし三番になりますな。  さて、そこで聞きますが、環境基準をとるときに、音源対策というのを今までやかましく言ってきましたね。その音源対策というのは何ですか。
  109. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  ハッシュハウスと呼ばれております消音装置、防音壁あるいは防音堤、こういうような、環境に騒音を及ぼさないようなものを私ども音源対策と考えております。
  110. 嶋崎譲

    嶋崎委員 対策を立てる前の音源の中身だ。音源対策、サイレンサーのことですね。サイレンサーというのは音源対策だと思いますか。
  111. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  音源対策であり、かつ、周辺対策であろうかと存じます。
  112. 嶋崎譲

    嶋崎委員 サイレンサーというのは、エンジンを整備したり、飛行機を整備したりするときの囲いなんです。やかましいのは、そのサイレンサーをチェックしただけじゃだめなんですよ。ランナップというのは環境基準の騒音の中に環境庁、入れていますか。防衛庁、入れていますか。ランナップをどう評価していますか。
  113. 宇都信義

    ○宇都政府委員 お答えいたします。  先生質問のランナップの騒音は、騒音コンター作成資料の中に組み込んでおります。
  114. 嶋崎譲

    嶋崎委員 環境庁、入れているのだな。防衛庁も入れているね。  それで、いつごろから入れましたか。最初から入れていますか、途中で入れたのですか。
  115. 林部弘

    ○林部政府委員 お答えいたします。  四十九年七月二日付の通達の中に「「航空機騒音」とは、ターボジェット発動機、ターボプロップ発動機又はピストン発動機を主な動力とする航空機の航行に伴って発生する騒音」というふうに記しております。
  116. 嶋崎譲

    嶋崎委員 ところが、私が五十六年の段階で聞いたときはランナップは頭にはっきりなかったのです。それが後の五十九年、最後のものにはランナップを入れておるのです。そういうふうに、民間の飛行機と違いまして自衛隊機ですから、スクランブルあり、同時にエンジンの音あり、これはエンジン証明でエンジンを点検するようなことはできぬわけですから、音を出してみなければならぬので、音源対策にはおのずから限界がある。限界があるが、住民にとって一番やかましいのは、朝の五時半ごろからランナップで一遍吹かすのです。そしてスクランブルで飛び立つときにもまた吹かすのです。そういうものを全部含めて環境基準としてきちんととり始めると、相当な量の拡大が考えられる。五十九年にこれだけ広がっているのはその結果だと私は思うのです。  ランナップの問題はそこまでにしておいて、もう時間がありませんから、今度は運航ですが、中島方式は守られているのですか、いないのですか。
  117. 大高時男

    大高政府委員 先生御指摘の中島方式と申しますのは、小松基地におきます自衛隊機の場周経路の方式のことでございますが、五十年一月一日に採用されて以来、特に変更は行っていないというふうに考えております。
  118. 嶋崎譲

    嶋崎委員 守られているのですか、いないのですか。
  119. 大高時男

    大高政府委員 変更は行っていません。守られております。
  120. 嶋崎譲

    嶋崎委員 これは守られておらない。日米共同演習が始まった昭和五十七年から現地で私たちが調査をいたしました。それには、小松基地から加賀方面に出ていくときに、旧浜佐美上空日本海へ旋回するコースが中島コースというのです。これは離陸するときは大体守られています。しかし、着陸の際にはそれよりずっと先の伊切というところを含めて旋回しておりてきております。だから、七十五のコンターのときに伊切町を含めて七十五が入ったのです。これは中島コースが守られていない一つの証拠で、これは南側の方です。北側の方、問題は旧都市です。旧都市を通るときには、中島方式というのは旧鶴ケ島の上空から坊丸というところを旋回して根上町の道林町から出る、これが中島コースと言われているのです。ところが、現在はほとんどは上牧から始まりまして、旧犬丸を通って根上町の大成町を通っています。かつてから見ますと、中島方式は守られておりません。これは我々の調査によるデータであります。  したがいまして防衛庁は、小松基地について、小松の市民とともに、私も内閣委員会でこの中島方式をお互いに確認をしたところでありますが、それが今日守られていないという状況を改めて点検をして、中島方式で訓練をしていただくように約束ができますか。これは防衛庁長官
  121. 大高時男

    大高政府委員 先に、事務的に御答弁を申し上げたいと思います。  ただいま先生御指摘の中島方式でございますけれども、私どもの方ではこの決められました方式に従いまして訓練を行っておるわけでございますが、何分ジェット機が高速でございますので、常に正確に乗っておるということは、時にはこの訓練コースから出ておるかと思いますけれども、今後ともそういった面には十分注意をいたしまして、このコースからそれないように努力をしてまいりたいというふうに考えます。
  122. 嶋崎譲

    嶋崎委員 では、中島方式に向かって改めて検討して努力するということですね。そう理解します。
  123. 大高時男

    大高政府委員 従来から中島方式は変更されておりませんし、この方式にのっとりまして安全に航行するよう努力をいたしたいというように考えます。
  124. 嶋崎譲

    嶋崎委員 あと二問だけ聞きます。簡単に聞きますからね。  協定書に言っている人体への影響ということに関連して、協定書ではこの騒音の人体への影響は国の費用において行うということを協定しています。医学調査の現状はどうなっていて、これをやるのかやらぬのか、これが第一問。  それからもう一つ、七十五の線引きは終わりましたが、七十の線引きを防衛庁はやるかやらないか、この二間についてお答えください。
  125. 宇都信義

    ○宇都政府委員 まず人体への影響調査についてでございますが、先生承知のように、四十六年当時からこの調査を続けておりまして、現在も基地の周辺におきまして人体への影響、特に聴覚に対する影響調査を実施しております。  小松基地におきましても、五十三年度と五十六年度におきまして、周辺に居住する者、それから基地の隊員等で騒音のひどいところで仕事をしておるような者を対象調査いたしております。ただ、こういう調査につきましては、データをたくさん集めないとその結論がなかなか導きにくいような状況でございまして、目下まとめて御報告するような結果が出ておりません。  第二点の七十WECPNLまで騒音対策範囲を拡大するかどうかという点でございますが、自衛隊等の飛行場は、現在七十五WECPNLまでの騒音コンターを指定告示しておりますけれども、三十五飛行場ございまして、その飛行場の住宅対象戸数が約二十六万戸ございます。この戸数をできるだけ早く住宅防音等を達成しまして環境の整備をしたいと思っておりまして、七十までにつきましては、この七十五までの事業が進捗していった段階で検討していきたいと思います。特に、七十Wまで広げます場合の工事の工法等につきまして、まだ現在一般的に研究されておりませんので、そういう時点を踏まえまして、工法についてもあわせて検討していきたいと思っております。
  126. 嶋崎譲

    嶋崎委員 もう時間が参りましたのでこれでやめますが、医学調査はもう十年以上たっているのだよ。四十八年に方向づけて、やるということを五十年に協定している。十年もたっているのにいまだにその調査結果が出ない。これは大変な怠慢だと思うのです。協定違反だと僕は思うのです。至急その調査をした上で、国民、県民の前に明らかにするように約束していただきたい。これは防衛庁長官にひとつ……。  そして二番目、もう一つ一緒に……。七十五から七十というのは、防衛庁では七十の線引きは要らぬという判断をしているのだと僕は思うのです。ところが、七十から七十五というのは住宅専用地域ではどこでも保全地域なんです。七十五以上は住宅地域としては適切でないと言われているのです。それで協定では、七十五以上が屋外でというのが、屋内で六十以下にしたのです。問題は、七十から七十五まで防衛庁はやらない意思があるかもしれないが、なぜかというと騒音源は防衛庁自身が出しているのです。防衛庁自身が基地を置いているために出ているのですから、そのために、住宅専用が可能であるかということの目安は、防衛庁自身がその数字を出すべきだと私は思うのです。したがって七十の線引きに取り組むことが必要だと思う。  大臣の答弁、この二つをお願いをいたしまして、私の質問を終わります。
  127. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 いろいろ個々の問題につきましては御指摘もあり、また御議論もあろうかと思います。いずれにいたしましても、私たちそれぞれの駐屯地、それぞれの基地におきましては、地元の皆さんとの十分な話し合いと理解がなければなかなか順調な運用はできないと思っております。  今後とも既定の方針にのっとりまして、音源及び運航対策や住宅の防音などの周辺対策の総合的な効果により環境基準の目標とするところに到達するよう努力してまいりたい、こう考えております。
  128. 嶋崎譲

    嶋崎委員 終わります。
  129. 中島源太郎

    中島委員長 この際、矢崎防衛局長から発言を求められておりますので、これを許します。
  130. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ちょっと失礼します。一点だけ訂正させていただきたいと思います。  先ほど短SAMワンセットの内容につきまして御質問がありまして、ミサイル四発搭載の発射機一つでワンセットであるとお答えしたのではないかと思いますけれども、この四発搭載をしたランチャー二つが組になりましてワンセットということでございますので、訂正させていただきたいと思います。
  131. 中島源太郎

    中島委員長 市川雄一君。
  132. 市川雄一

    ○市川委員 五九中業の策定中ということでそれぞれ国会で議論されているわけですが、きょうは五九中業に関連して二、三お伺いしたいと思います。  まず一つは、きのうの委員会でも防衛庁長官、お答えになっていらっしゃったようですが、GNP一%枠の問題ですね。時間がありませんから端的に伺いますけれども、長官御承知のように、この国会で予算委員会でいろいろな経過がございました。また与党の金丸幹事長も最大限尊重したいという、こういうこともございました。こういう国会でのGNP一%を尊重するというやりとりの経過というものを、何か新聞の字面で拝見しておりますと、防衛庁はこの五九中業の策定に当たっては余り配慮してないのじゃないかな、むしろ一%枠を突破することはもうやむを得ないんだ、そういう既成事実化を図っているような印象を強く受けるわけです。しかし、御承知のように、この国会では予算委員会はたびたびとまり、そのたびごとに総理大臣からは、GNP一%枠は尊重したい、まあいろいろな場面があったわけです。そういう国会の論議は当然御承知だと思います。  そういう点で、どうでしょうか、これは防衛庁で五九中業をおつくりになるわけですから、守ろうという本当の意思があれば守れるわけですね。これは客観的に何か、どうしても守れないということはないのじゃないのかなというふうに思うわけです。まずGNP一%について国会でのさまざまな今までの経過というものを防衛庁はどう受けとめていらっしゃるのか、この点をお伺いしたいと思います。
  133. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 予算委員会でも衆参双方で、この一%の問題は大変御議論いただいたわけでございます。したがって、その中の御議論というものは私たちは当然尊重しなければなりませんし、そこで総理大臣が申したこと、私たちが申したこと、それから、政府ではございませんけれども与党の幹事長が申したことというのは、私たち十分心に入れて尊重しなければならない、こう思っております。  ただ、今委員御指摘の、ここ二、三日の五九中業と一%についての防衛庁とか私たちの発言というものはそういうことをなし崩しにするのではないか、それからそういう守るという約束を本当に守る意思がないのではないかという御指摘でございましたけれども、市川委員非常に御専門でございますので、あえてこういうことを重ねて申し上げて失礼ではございますけれども、五九中業はあくまでも政府が概算要求をするときの基準ということでございまして、一%というのはその概算要求を受けて大蔵省も入り政府全体で年の暮れに決められる予算案で基本的には判断されるべきもの、これが補正予算でもなのかいろいろ議論があろうと思いますが、政府予算としてのものであろうというふうに考えて、これは本質的には直接大きく関係するものではないという立場でおるわけでございます。
  134. 市川雄一

    ○市川委員 理屈をこねればそういう理屈も成り立つと思うのですね。ただ、本来防衛庁内部限りの業務見積もり、こういう性格だと。しかし逆に、日本の国内では余り知られてなかったのが日米交渉でアメリカの方から出てきたという経緯もあったわけですね。そういう意味では、今長官のおっしゃることはペーパー上の話であって、実際は五九中業で大体五カ年の計画を立てれば、それでこの概算要求を出していくわけですから。ということは、政府の予算案ではないのだから予算案が決まるときに考えればいいんだというお考えだと思うのですけれども、しかし、五九中業というのは防衛庁の計画ですから、防衛庁は、少なくとも政府が国会の場でGNP一%は尊重します、こう言っているわけですから、したがって、防衛庁の計画を立てる段階でも一%を尊重した計画をつくるのが当然じゃないのかというふうに私は思うのです。その点はどうですか。
  135. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 五九中業に限らず中期業務計画は、御案内のとおり、正面装備を中心につくってあるものでございまして、それ以外の後方につきましてはなかなかわからないし、特に人件費、ベースアップの動向というのはわからないものですから、これは推算で言っているわけです。その正面装備というのは年によって違いますけれども、現在で言えば三兆一千億の予算の中の二四、五%、四分の一でありまして、残りの四分の三につきましては、いろいろな積算ではなくて大体の推計でいくというのが中業でございます。そういう意味で、やはり本予算というものとはちょっと違うのではなかろうかというふうに思います。  それから、実は五六中業を策定したときも、上限はこの程度、下限はこの程度と申し上げて提出したわけですけれども、その上限の場合には一%の枠を超える数字でございました。しかし、現実には三年目で達成率四三%ということもございまして、そして現実には一%との間のすき間は大分あったということが言えるのではないかと思っております。
  136. 市川雄一

    ○市川委員 五九中業はいつごろ策定を終わるのですか。今年いっぱいですか。
  137. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 夏までに作業を終えたい、こう思っております。
  138. 市川雄一

    ○市川委員 長官はしばしば、GNP一%枠と大綱水準の達成とどちらをとるのかという質問に、大綱水準の達成の方に重きを置きたいという趣旨の答弁をなさっているやに聞いているのですが、今同じお考えですか。
  139. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 その点は私たちも非常に苦慮いたすところでございます。といいますのは、五十一年からの長い国会の答弁ということを考えて、そこで歴代の総理大臣、政府、防衛庁長官が申したことをちゃんと守るという、そういう意味で考えますならば、一%を守りたいという答弁と大綱の達成はできるだけ早期になし遂げたい、この両方があるわけでございます。この両方が若干今、その後の経済見通しが五十一年当時よりも半分の成長率になったものだから矛盾してきているというわけで、迷うわけです。私たちもそこは十分考えますけれども、「防衛計画の大綱」というのは、私たち歴代総理大臣が申している公約でもありますし、それの達成を期するようにという指示を前任長官が出して作業をしていることでもありまして、その達成を中心に考えたい。もっと申しますならば、大綱の水準達成に重点を置いて考えたい、こう思っていることは事実でございます。
  140. 市川雄一

    ○市川委員 防衛費の突出ということがこの二、三年ずっと国会で議論されてきたわけでございます。日本の安全に対する脅威が存在している、その脅威が著しく切迫しておる、こういう状況の中にありましては、私たちは一定の防衛力を認める立場に立っておりますから、本当に日本の安全、平和が脅かされる、そして切迫した脅威がある、そういうときには、それなりの予算の措置というものが当然必要になるだろうと考えておるわけです。  しかし、どうもこの二、三年の議論を伺っておりまして、何か日本に差し迫った、ほかの予算に優先して防衛費を増額しなければならない脅威というものが存在しているのか、この辺に非常に強い疑問を抱いているわけでございます。その辺防衛庁は、大綱水準を早く達成したい、防衛費をほかの予算よりも伸び率を高くする、そういう背景にはこういう切迫している、差し迫った脅威があるのです、こういう納得のいく説明国民に向かってなければならないと思うのですよ。そういう脅威というのは一体何なんだろう、それはどういうふうにお考えでございますか。
  141. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 現在私たちが考えております「防衛計画の大綱」の水準ということでございますが、私たちはこれがある意味では非常に誤解されている部分があるんじゃないかと思っております。つまり、一%を守りなさいという御議論が片方にあり、そして片方に私たちが、いや、その「防衛計画の大綱」は達成しなければいけないと思いますというような反対概念みたいな形で申すものですから、この「防衛計画の大綱」の水準というのは物すごく大きな防衛力で、非常におどろおどろしい感じのもの、そしてもう大変な正面装備を持っているものというふうな印象を過去二、三カ月の委員会で与えたのではないかなという気がいたします。  しかし、私たちは、これは平時から保有していなければならない防衛力、そして正面、後方ともにバランスがとれ、そして何か大きな事があったら移行し得るような態勢を持っているもの、こういうことでございまして、平時からこの程度のものは持っていなければならぬというところにポイントがあると私たちは思います。  それに加えまして、最近、極東ソ連軍の増強は厳しいものがあって、潜在的な脅威の増大ということは否定し得ない。したがってこの水準は達成したいということでございます。いずれにしましても、その内容が聖域ではないと私たちは思っておりますから、いろいろ御議論いただいて、それを参考にしながら私たちはまた五九中業の作業を続けていきたいと思っております。
  142. 市川雄一

    ○市川委員 なぜこういうことをお伺いするかというと、本当に脅威があるなら備えなければならないと思うのですけれども、平和時の防衛力を目指した。国会で、一次防、二次防、三次防、四次防と来てこのままいったのでは防衛力に歯どめがないじゃないかという強い議論を受けて、平和時における基盤的防衛力構想というものを下敷きにしてつくった。しかも国際情勢が五つくらい例示されていたわけですね。前提とする国際情勢に変化がない限りこの基盤的防衛力でいくんだ、そういう国際情勢に変化がなければこの大綱水準でいくんだという、これは一つの考え方として歯どめであったと思いますね。もう一つ、GNP一%を当面のめどとするという予算面の歯どめを一緒にかけたと思うのです。  それがアフガニスタンの事件以来、大綱の水準そのものは変わってないのかもしれませんが、大綱水準というのはまた非常に抽象的なもので、防衛庁で何かを決められるわけですね。例えば戦車の数にしても、大綱水準に戦車何両なんていうのは出てないのです。だから、言ってみれば戦車が何両であってもいいわけですよ。防衛庁が、大綱水準としては戦車はこれだけ必要なんですと言えば、それが戦車の保有台数になってしまう。こういう非常にあいまいなところが多いわけです。しかも質の面については触れられてないのですね。例えばP3Cも百機なんということを五九中業で言っておりますけれども、P3Cが百機でなければならないなんということは大綱には触れられてないわけです。そういう点で、大綱水準というものを考えますと、どうも防衛庁の恣意的なものが十分に入る、恣意的というか防衛庁判断というのが自由に入ってくる。僕らに向かっては、何か大綱水準の達成ですとにしきの御旗を掲げているのですけれども、その大綱水準なるものがどうも不明確でわからないという面がある。そしてアフガニスタンの侵攻以来、大綱水準達成のスピードを速めるという形で歯どめが外されたわけですね。  それからもう一つは、GNP一%の歯どめが今揺らいでいる。このGNP一%というのは軍事的合理性がないとか、動くものによって歯どめを決めるなんというのはおかしいとか、GNP一%を守っていれば日本の国は守れるのかとか、みんないろいろなことを言うのですけれども自衛隊についての国民の世論がかなり支持率が高くなってきた、しかし反面、増強とか有事法制ということをやろうとすると世論はまた強く反発するわけです。ですから、自衛隊についてのコンセンサスをつくるという上において、このGNP一%というものが、軍事的合理性はないかもしれませんが、政治的には非常に重要な指標の役割を果たしてきた。これをやはり防衛庁は重く見た方がいいんではないのかというふうに考えるわけです。  幾ら防衛力を、正面装備を仮にそろえたとしても、後方支援の関係が追いついていない現状ですよ。整合性とはいうけれども、全然整合されてない。同時に、国民にまた、自衛隊に対する是か否かという議論を巻き起こしてしまうと思うのですね。自衛隊に対する国民の一定のコンセンサスをつくるということの方がむしろ重いんじゃないのか、こういうふうに一つは考えているわけです。  そういう立場で申し上げているわけでございますが、長官、この大綱水準ができたときは、GNP一%はたしかこれはセットでできているのですよ。大綱水準と一%枠というのはワンセットなんだ。三木内閣当時の元衆議院議員の石田博英さんが、三木内閣当時を回想した文書の中にそういうことを言っておりますよ。これはワンセットで決めたんだ。だから、大綱水準とGNP一%枠というのは対立した概念ではなくて歯どめという、歯どめを持った防衛力という意味においてはワンセットのものだ、ですからGNP一%枠を守りながら大綱水準を達成する、こういう想定でつくられたものと私は思うのです。今までは一%枠にすき間がたくさんありましたから余り議論されなかったが、いよいよすき間が少なくなってきた。すき間が少なくなったときに守ってこそ歯どめなんであって、すき間がなくなってきた途端にほかの理由で外しちゃうというのは、歯どめとは言わないのじゃないか、こういうふうにも考えているわけでございます。GNP一%枠の尊重について、最大限防衛庁としては努力していただきたいということをまず申し上げたいと思います。どうですか、長官。
  143. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 国会で総理大臣や私たちも申しておりますような、GNP一%の枠は守りたい、こう思っております。そして、この一%につきましてこれだけの御議論があるということは、やはり国民の間でも大変な関心を呼んでいるからこういう大きな御議論になるんだろうと思っております。したがって、累次国会で申しておりますような方針で守りたい、こう思っております。  今後のことでございますけれども、私たちは防衛政策の中身につきましてもいろいろ御議論いただくと思います。そして単に一%問題だけではなくて、その一%の中の実際の装備はどうなるのかということも、当然シビリアンコントロールの最終場面であるこの国会で御議論いただくべきことだと思っております。また、逆に言いますならば、一%の枠を守っていればどんな装備をしてもいいというものでもないと思っておりますので、そういう意味で十分に国会で御議論いただくことを率直に私たちは聞いてまいりたい、こう思っております。
  144. 市川雄一

    ○市川委員 それでは、少し具体的に御質問したいと思います。  まず陸上自衛隊について伺いたいんですが、我が国は御承知のように海に囲まれているわけですね。ですから、ヨーロッパ大陸のようにいきなり戦車が入ってくるということはないわけですね。空か海を必ず渡ってこなければならない。そうすると、我が国の本土防衛というものを考えた場合に、輸送中というのは非常に相手側にとっては弱い、ウイークなときですね。その輸送中にたたく、あるいは水際でたたく、水際から多少後ろへ下がった沿岸というところで食いとめる。それは、攻撃は最大の防御なりという考え方に立ては、向こうが港を出る前にたたいちゃうのが一番早いのでしょうけれども、しかし日本の憲法、専守防衛ということを念頭に置けばそれは許されない、憲法というものを念頭に置きながら日本の防衛というものを考えた場合には、対上陸阻止というものは非常に基本になるんではないかというふうに考えるわけです。  ところが、この陸上自衛隊というものの存在を見ておりますと、対上陸阻止というものに主眼があるように思えない。「国防」とかいろいろな雑誌に、陸上自衛隊関係の幹部の方々が論文をお書きになっている。論文を拝見しておりますと、ほとんどの論文が、対上陸阻止をどうするかということではないのですね。陸上自衛隊の前提というのは、相手側がもう日本の本土に上陸を完了した、そして向こうの戦車が動き出した、さて向こうの戦車をこちらの戦車でどう迎え撃つか、こういう話が満載されておるわけです。  しかし、考えてみますと、どこで戦車戦をやるのかというふうにいつも思うのですね。北海道は多少考えられるけれども、しかし、この東京で戦車戦なんかできないと思うし、名古屋でもできないし、大阪でもできないし、どこでやるのか。そういうことを考えますと、陸上自衛隊というものが、防衛白書では一応対上陸阻止とか水際云々とか書いてはありますけれども、装備の体系とか考え方が対上陸阻止というものにからっとおさまってない、こういうふうに思えてならない。この点について、防衛庁の方で反論ございますか。
  145. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 詳しくは防衛局長から専門的に申しますけれども、今回の国会の討論、これは一%問題について大分御議論があって国民の注目を引きましたが、もう一つ大きな注目を引いたのは、総理がおっしゃったことを新聞等で海空重視というような表現にされ、そして、水際防止であるというようなことを今後政府が考えるのではなかろうかというようなポイントというのが一つの大きな御議論であったと思います。  総理大臣は別に海空重視ということを、それだけを強調したものではないと思っておりますが、やはり委員御指摘のとおり、四面海に囲まれております我々としては、やはりまず第一に上陸阻止ということを考える、そしてまた、上陸されそうになっても水際またその周辺で、内陸部に至る前にできるだけのことをやっていくということは一つの考え方だと思うのです。しかし同時に、じゃ陸上自衛隊はそれ以外の任務はなくてもいいのかね、そしてもう上陸されたら必ず全部おしまい、こう思い込んでしまっていいのかねというような議論もございまして、実は現在、防衛庁の中でも特に戦車を中心にしまして御議論いただいておりますので、五九中業の策定の段階で内部でいろいろ議論をいたしていることも事実でございます。
  146. 市川雄一

    ○市川委員 海空重視ということについて、私は、本土防衛ということを考えるならば海空重視であるべきだというふうに考えているわけです。ただ、その中曽根総理の言っている海空重視というのは、どうも私の考えておる海空重視と違いまして、千海里シーレーンの防衛のための海空重視のように、そっちにウエートがかかっているように私は聞こえてならないわけです。  それで先ほど議論に戻りますが、陸上自衛隊の編成、装備、これはアメリカの編成、装備をそのまま用いたもの。本来、ヨーロッパ諸国でもアメリカでも、一国の防衛力とか軍事力の編成、装備というのは、それこそ血のにじむようなノーハウの分野に属するのですね、要するにどういう編成をするかという。ところが、アメリカは本土防衛戦なんということは考えたこともないし、本土を攻められたこともないし、今も考えていないと思うのですね。それはSDIとかということでは考えておりますけれども、いわゆる通常兵器でアメリカが上陸されるなんということはアメリカは考えていない。言ってみれば外征部隊、外へ出ていって戦う部隊ですね。日本の旧陸軍は全部外征ですね。本土防衛なんて、沖縄戦を除いてはやったことがない。全部よその国で戦った。戦後、そういう旧陸軍の考え方の人たちが防衛庁に入り、アメリカのそういう外征部隊的な組織、編成をそのまま持ってきてしまった。もうこの辺で一回、本土防衛にふさわしい陸上自衛隊のあり方というものを大胆な発想で考えるときに来ているんじゃないですか。  例えば、読売新聞で出しておる「昭和史の天皇」という本があるのです、御承知かもしれませんが。この本の中に、昭和十九年の本土決戦、「法号作戦」、大本営が本土決戦というものをどういうふうに考えておったかということを、当時、大本営の本土防衛の作戦を立案した人たちがここに登場してしゃべっているわけです。これを拝見しますと非常におもしろいことを言っておるのですね。  例えば、「いままでわれわれが外地でやって来た作戦のように、住民のことを——全く考えないわけではなかったが——あまり心配せずにやれた作戦」とは、この本土防衛戦は違うということをまず言っているわけですね。まずその認識が一つ。要するに住民のことを考えないで今まではやれた、しかし本土防衛戦は日本の同胞が後背地にいるんだ、これを考えなければならないということを一つ言っているわけです。  それから、作戦参謀の原さんという方がさらに言っておるわけです。「一口にいえば沿岸作戦で、ここで敗れれば帝国陸軍は終わりなのだ。軍司令官以下全員、沿岸において討ち死にする。いや、あとからかけつける総軍、方面軍の全員、大本営参謀のわたしらもしかり、全部かけつけて死ぬことになっていた。一歩さがって抗戦することは、毛頭考えていなかった。」こういうことも言っておるわけです。  それから、さらにほかの方がまた言っておるわけです。「沿岸地帯での戦闘にすべてをかけたのは、奥には住民がいる。住民を守るためにも海岸で勝負をつけねばならなかったのだ。」「本土決戦は一回戦だけで、二回、三回戦はない。」要するに、関東で敗れたら長野の山奥に立てこもるなんということは、そういう考えを出した参謀もいるけれども、しかりつけた、こういうことも言っているわけです。  要するに、やはり長官おっしゃるように、上陸されたら終わりだというこの思いが強くなければいけないと思うのですね。もちろん上陸されたら何もかもおしまいだという考えでいいのかと言われれば、それじゃ防衛というのは成り立たない。上陸された後のことも当然考えなければならない。そういう意味においては戦車の必要な地域も当然あるだろうとは思います。しかし、上陸されたら日本列島は終わりですよ、そんなに縦深がないのですから。しかも、これだけ人口が都市に密集している都市型社会ですよ、戦車戦なんかやる余地はありませんよ。ですから、そういう意味では対上陸阻止、沿岸ですべてをかけるというぐらいの、もちろん二段構えで、された後も考えるというものは補助的にあっていいものであって、やはり主眼は対上陸に向かなければいけないと思う。そのくらいの考え方が、海空陸と三自衛隊が統合された防衛構想というのがあるのかと言いたいのですよ。  まず、陸についてそういうことを考えますと、上陸されそうな海岸というのは大体わかるわけでしょう。ここにもいろいろな専門家がおっしゃっている。いろいろな本からコピーをとってきましたけれども、もし日本に上陸するとすればどういう海岸か。いろいろなことを言っておりますよ。一々読み上げて、本当は防衛庁の反論を聞こうかと思っていたのですけれども。ですから、そういうことを考えますと、この中にも言っているのですけれども、築城なんですよね、トーチカをつくる。今、平和なときにトーチカをいきなり防衛庁がつくり出すとみんな驚きますから、むしろそういうものをつくる優秀な機械が今の日本にはあるわけですよ。機械を持っている、いざというときは掘る。ある意味ではこれが一番効果的なわけですよ、上陸されそうな地点の地下にベトンで固めたものをつくるということが。この「昭和史の天皇」の中でも言っているのですけれども、もうそれしかないというので始めたのだけれども、どうも陸上自衛隊の幹部は、つるはしとくわで掘る土木屋かという意識があってだめだ、士気が上がらない、戦車を転がしてかっこよく、奉天大会戦みたいなことをやりたくてしようがないと言っている。北海道以外はそんな場所、ないのですよ。こう思うのです。  ところが、戦車のことを資料要求で伺ったのですけれども、いろいろなところに戦車が置いてありますね。甲乙の師団があるようですけれども、北海道を除いて、例えば岩手県の、第九師団ですか、それから東北で第六師団、あるいは静岡の駒門、いろいろなところに置いておりますが、戦車というのは何をやるのですか。そして、実際問題としてこれだけの台数が必要なんですか。どこで戦車戦をやる想定なんですか。それを伺いたいと思います。
  147. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 背景に非常に大きな戦略的な御指摘がございましたので、若干それに触れながら御説明申し上げたいと思います。  確かに先生御指摘のように、我が国は四面環海の国でございますから、我が国に侵略があるとすれば、海空経由で来ることにならざるを得ないわけでございます。したがいまして、我が国を防衛するという観点から考えれば、まず第一に、戦火が国土に及ばないようにするのが先決ではないかというのは、全くそのとおりであろうと思います。したがいまして、そういう意味で私ども、現在いろいろ五九中業の中で検討しておるわけでございますが、そういった洋上あるいは水際で未然に侵略を阻止するという態勢に重点を指向していかなければならないというふうに考えておるわけでございます。  そういう意味で申し上げますと、陸上自衛隊で装備をすべきものとして、現在開発中の地対艦誘導弾、こういったものの部隊をできる限り整備をしていきたいということがまず第一の問題ではないかなというふうに思っております。それからまた、着上陸阻止機能という面で言えば、これは陸だけでやる話ではございませんで、先生御指摘のように統合的な見地から防勢作戦を実施するわけでございますから、航空自衛隊におきます対地支援戦闘機の行動というものも重要でございますし、さらにはまた海上自衛隊の艦艇の支援もこれまた必要であろうかというふうに思っております。それを統合して運用できるような作戦構想を常に部内で検討しておくということが、これまた重要であろうというふうに考えております。  しかしながら、我が国の防衛を考えます場合には、そういった洋上阻止の機能だけがあればいいかというと、決してそうではありませんで、万一それが破られた場合には水際付近でこれをさらに阻止をする、あるいは若干内陸部に入った場合にさらに抵抗を継続するというふうな力を持っていることが、逆に言えばこれがまた抑止力になるというふうな性格のものであろうと思うわけでございます。陸上戦闘力というものはそういった抑止力的な性格も持っておるわけでございますから、そういう面の整備もやはりバランスをとって考えていく必要があると思っておるわけでございます。  それで、陸上戦闘力の一つの中核になる装備が戦車ではないかなというふうに思っておるわけでございます。これは戦車の機動力、装甲防護力、火力というような面で、大変すぐれた性能を持っているという特性に由来をするわけでございます。この戦車は、例えばいろいろな戦闘場面が考えられるわけでございますけれども、水際で阻止をする場合の火力としての機能、あるいは局部的に反撃をして突進していく場合の撃破の機能とか、いろいろな場面での有効性はやはりあるわけでございますから、そういう面に着目をして、戦車というものの有効性を十分に認識をしながら私どもはやっておるわけでございます。  ただ、先ほど来申し上げておりますように、それだけではもちろん十分ではございませんで、いろいろな機能を持つことが非常に大事だと思います。例えば、機動性とそういった対戦車火力を併有しました対戦車ヘリコプターといったものも重点的に整備をしたいと思っておりますし、それから対戦車ミサイル、これは小型の火器でございますけれども、防御の際には有効な力を発揮いたします。そういったものも重点的に整備をしたいというふうに考えているわけでございまして、要は、そういったいろいろな各種装置の組み合わせによって有効な防衛力を形成していきたいということでございます。またそのことが、簡単に日本を侵略することができないということを侵略を企図する側に知らしめるゆえんでもございまして、それが全体としての抑止力につながっていく、そういう考え方でやっていきたいと思っておるわけでございます。
  148. 市川雄一

    ○市川委員 それはおっしゃるとおりなんですよ。いろいろなものを持っていれば一番いいのです。それは、予算というものを抜きに考えれば当然そうなんです。戦車も、ないよりあった方がいいに決まっているのです。ただ、GNP一%を超えるか超えないかというこれだけ議論している中で、そんな悠長な発想でいいのかということなんです。何でも子供のおもちゃみたいに一そろえがないと気が済まないという、だだっ子みたいな装備のそろえ方でいいのか。本当に日本に必要なものは何だという、もっと切れ味のある装備論というものはないのですか。
  149. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 今、局長が申しましたように、それぞれの機能をきっちり持って、そのコンビネーションで総合的な抑止力というふうに考えております。  ただ、今の委員御指摘のように、限られた予算の中で、そしてこういう財政厳しい中で、国民が多く防衛関係費について論議されている中で、より効率的にどういう部分に運用するか、これは私たちも今真剣に考えているところでございます。従来に比べて、水際での着上陸阻止という意味で、そういう観点での機能により重点を置いてきているということも事実でありまして、したがって、今度の地対艦ミサイルの導入等につきましてもその辺が重点的なポイントになってまいると思っておりますし、対戦車ヘリなんかもよりそういう重点を置かれることになると思います。  ただ、それに比べまして、今具体的に御指摘の戦車につきましても、私たちはその有用性を十分に感じております。したがって、これは北海道以外には要らないというような議論は、私たちはまたいろいろ御反論させていただきたいと思いますが、それぞれの地域でどの程度の戦車が要るか、そして具体的にその数はどうあるかにつきましては、よほど効率的に、そのあり方を今検討いたしているところでございます。
  150. 市川雄一

    ○市川委員 全く要らないとは思ってないですよ。これは卵の黄身の例え話でよく出てくるのですけれども、対上陸を突破してしまえば中は空っぽじゃないか、黄身がない。卵殻を破ってしまえば中は空っぽだ。だからもう、とにかく向こうは上陸にすべてをかけてくる。だから、上がった後も一定のものがあるんだということになれば、またそれだけの準備をしなければならないという意味において抑止力の効果は果たす。それはわかるのですよ。わかるのですけれども予算という前提があるのでしょうと言うのです。予算を前提に効率化というものをもっと考えるべきじゃないですかね。ですから、水際、沿岸上陸阻止、最近そういう考え方が芽生えていることはわかるのです。それは最近ですよ。本来、それがどしんとなければいけないものだったと私は思うのですよ。まず洋上、水際、沿岸、こういう考え方をこれからは防衛構想の基本に置くのですか。五九中業をつくるというけれども、まず何が基本になるのか。本来はそういうポリシーがなければいけないのですよ。日本列島をどう守るのか。どこでどういうふうに守るのか。憲法というものがあり、専守防衛という方針があり、専守防衛という一つの大方針をもうちょっと具体化すると、日本の国土条件を考えた場合は、洋上、水際、沿岸で対上陸阻止にかける。そのポリシーをまずはっきりと決めて、それにふさわしい装備とは一体何なのだ、しかもそれにふさわしい組織、編成というのはどうあるべきなのか、こういう議論がもっと行われなければいけないと思うのですね。  それが最初に、陸上自衛隊は戦車ありき、海上自衛隊は護衛艦ありき、航空自衛隊はF15ありきというので、どうも正面装備をずらっと持ちたがるという体質が抜けがたい。防衛研修所や海上自衛隊の幹部学校で、各党の安全保障政策を聞くというのでときどき御招待いただいて行くのですけれども、若い方々と話してみると、そういう点はもっと柔軟ですね。何か幹部の方が、隣の方にいて渋い顔をして私の話を聞いているのだけれども、若い人たちはもっと敏感に反応していますよ。あなた方は、旧陸軍や海軍の古い固まりみたいな人たちと違って昭和の生まれなのだからもっと合理的に考えなさい、戦車なんてもっと極端に減らしていいじゃないですかと。沿岸というものにもっと力を入れれば、これは今すぐトーチカを振れというのじゃないのですよ、優秀な機械があるのですから、それを持っていればいいのです。あるいは対戦車砲。これは向うに行って戦うのじゃなくて日本の本土で戦うのですよ。その場合、こっちには地の利があるのです。向こうは、どこに地雷があるのかわからない、またいろいろなところに隠れ場所があって撃つわけですから。だから、制空権で優勢をとられたら、戦車はめためたにやられちゃいますよ。そういう意味から考えても、本土防衛力というものを考えたときには、沿岸ですべてをかけるぐらいの基本をまず定めて、もっと効率化というものを真剣に考えてもらいたい。これは国民の税金ですから。  さらに言いますと、例えば航空自衛隊にしても防空ミサイルとかレーダーというのは軽視されているのですね、今回パトリオットとかいうものが言われておりますけれども。レーダーが二十八カ所ほとんどが、バッジシステムが旧世代化してしまっている。ところが、買う要撃戦闘機は非常に最新鋭のものを買う。レーダーが古い。つり合いがとれませんね。あるいは大湊の地方隊とか舞鶴とかああいうところに行きますと、大した船は置いてないですね。その辺の輸送船みたいなものがぽこんと寂しそうに港にいるだけです。それで四個護衛艦隊群なんて、七つの海を支配するみたいな発想で大きい船をつくって外洋、シーレーンに行く。海軍というか海上自衛隊の方は、大きな船で外洋に出かけていく、艦長としての栄光に浸る、どうもこういう傾向がある。したがって、小さいミサイルボートなんというものは持ちたがらない。  そういうように、各自衛隊がみんなばらばらに考えているわけです。同じ防衛構想をもっとしっかりつくって、本当に血のにじむような議論をしていただいて、防衛のポリシーの基本をもっとしっかり定めて、それにふさわしい装備、編成のあり方——極論すれば、三つの自衛隊は要らないと思うのですね。一つでいいですよ。こんな狭い日本の国を守るのに、何で三つなければいけないのですか。ナイキとホークは別々にやっているわけでしょう。何でナイキとホークは別々でなければいけないのです。大体、陸は戦車のパイロット出身が偉くなっていく。海上自衛隊は船の艦長さんが上になっていく。空は戦闘機のパイロットが偉くなっていく。だから何となく、ナイキとかホークの部隊というのは意気が上がらないわけです。そういうことを思うのです。  しかも人件・糧食費が予算の五〇%を占めておる。何か労働集約型の自衛隊という感じですね。人民解放軍みたいな感じです。要するに、テクノロジーとか先端技術とか精密誘導兵器とか騒がれているのに、旧態依然とした発想で、ただ予算をふやしてくれ、ふやしてくれもっと血のにじむような議論と、自分のぜい肉を落とす努力を本気でやるべきだと思うのです。そういうものが目に見える形で出てくれば、GNP一%の議論も私は変わってくると思うのですよ。  だから、みんな言っておりますよ。防衛庁にいる間は言わないのだけれども、統幕議長とか幕僚長とかが防衛庁をおやめになると、OBになるとおっしゃり出すわけです。すごいタカ派になる方とハト派になる方と極端なんですね。聞いてみると、北海道あたりでも、ソ連の戦車が上陸が終わったという前提でやってみたら、一週間持たせようと思ったら二、三日でだめだったとかと得々と話していらしたのだけれども、何で揚げちゃうのだ、何で揚げた後に戦うということでいつも議論しているのだ、揚げないようにするにはどうしたらいいのかと言う。そうすると、戦車を転がしたいと言うのです。土木作業はいやだと言うのです。ここなんですよ。だけれども、本当に現実というのはそういうものなんです。実際は戦車なんかよりもがっちりしたトーチカの方が、上陸阻止ということを考えれば、飛行機からも守れるし、よほど威力を発揮するわけです。戦車はガソリンがないと動かないのですよ。しかも戦車というのは訓練された要員がきちっとそろっておりませんと動けませんよ。対戦車砲なんというのはそんなに訓練は要らないです。割と操作が簡単だし。そういう点で長官、五九中業をもっと——私はいつも暴走族の論理、こう言っておるのですよ。余り悪態ついて申しわけないのですけれども、人がいい車を持っておりますと自分の車がみすぼらしくてしようがないのですよ。あの車が買いたい、こうなる。買うわけですよ。パイロットというのはそういう心理が働くと思うのです。この飛行機はもう旧型だ、今度はあの飛行機がいい、おれの命をかけているのだ。だから内局を突きあげる。内局もだだっ子をなだめるように、しようがないから買ってあげるなんという。もう少しその辺について、効率的な防衛力をどうつくるかという本当に防衛庁の中での議論がもっと闘わされて、そしてぜい肉をもっと落としていく、それを一回やるべきだと思うのです。GNP一%が外れちゃいますと、またそういう議論をしなくなっちゃう。どんどんどんどんふやしていけばいいのだという発想だけ。創意、工夫、節約という体質がない。ですから、GNP一%で縛られているからこそ知恵がわいてくるのですよ。考えるわけでしょう。その辺のところどうですか、長官。これから、若い長官と言うのは失礼ですけれども昭和防衛庁長官、柔軟なしかも新しい時代の息吹を持った長官に、そういうメスを大胆に入れていかれることを期待しておるわけですが、どうですか。
  151. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 大分専門的に、また、うちの自衛隊のいろいろな状況を御研究の上、御質問いただきました。ただ、我が自衛隊の名誉のため申しておきますと、確かに、陸上自衛隊が六四式の古い装備を持っていたりするものですから、それから、ある部分の火砲につきましては本当に戦後間もないものを持っていたりするものですから、陸上自衛隊を初めとして自衛隊はかかしてはないかというような御議論をなさる方がおります。しかし、毎年国の大切な財源を使わせていただいております私たちの自衛隊は、諸外国に比べると数は少ないのですけれども、しっかりとした、ぴりりとしたところがあるものに今訓練し、仕上げていると思っております。例えば、F4ファントムのスクランブルの時間は、諸外国は大体十分たたないと離陸できないと思いますが、私たちは五分以内でということを指示し、実際は四分以内でもう緊急発進いたしております。それから、ナイキ、ホークの実射訓練でも、命中率はアメリカに行って九〇%を示しているものですから、かなりの称賛を得ているのではないかな、そんなふうに思っておりますし、他の面でも、私たちは大変な厳しい中で訓練はされていると思っております。  それから、非常に古い、旧当時代の人間が多くて、その発想で中期業務計画なんか立てられているのではないかというお話でございますが、昨年度で実戦経験のある旧軍の方はゼロになりましたし、この間調べてみましたら、我が自衛隊員の七〇%は戦後生まれであります。戦後育ちではなく、隊員の七〇%が戦後生まれでございます。そして現在、五九中業の作業は防衛課長、防衛部長たちの防衛大学卒業生が担当いたしております。完全に戦後の人間がやっております。したがいまして、それなりに、最近の新しい諸外国の技術水準の向上に対応するような柔軟性を持って作業はさせておりますし、だからこそ、今内局と各幕と議論をやっているときに恐らく担当者たちは徹夜で議論をやっております。そういう中で、どういったことが今度の五九中業で違った方向として出るかということを、防衛局長からちょっと答弁させたいと思います。
  152. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 先ほど委員から、本土の防衛を考えるに当たってはまず上陸を阻止するということを重視すべきではないかという御指摘がございました。その点は私どももそのように考えておるわけでございまして、そういう意味で、先ほど申し上げましたような地対艦誘導弾でございますとかというものを重視していかなければいけないというふうに考えているわけでございます。それだけではなくて、陸上自衛隊の装備の持ち方につきましても、我が国の地理的特性に応じた効率的な配備ということにも意を用いていく必要があるというふうに考えておるわけでございます。こういう点は、今後、私どもは、従来よりもさらに重視をして防衛力の整備を進めていく必要があると思うわけでございます。  先生御指摘のように、限られた貴重な財源を使うことでございますから、そういう点についてはもうできる限りの配慮を払っていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  153. 市川雄一

    ○市川委員 今、陸のことが主体になったのですけれども、空も、例えば英国の戦略研や何かいろいろなところで資料が出ているわけですけれども、ベトナム戦争では、北ベトナムの地対空ミサイルは米軍損失機の九二%に相当する九百九十機を撃墜したのに対し、ソ連製のミグ戦闘機はわずか八十機、全体の八%相当しか落とせなかったとか、第四次中東戦争では、アラブ側の防空システムが八十一機、七九%を撃墜したのに対し、要撃戦闘機では四機、四%しか撃墜できなかった。あるいは英戦略研のレポートによりますと、中東戦争では、対戦車ミサイル、防空ミサイルの戦車、航空機に対する直撃率は八〇%以上に達している。やはりPGMという革命的な兵器があらわれて、ミサイルの持つ威力というのは非常に高まっているわけですね。  ですから、本土防衛というものを考えるならば、もちろん機動性があるという点では要撃戦闘機が必要なことはよくわかる、だけれども、極論すれば今の考え方は要撃戦闘機一本やりでしょう。一本やりと言うと、いや、そんなことはありません、支援戦闘機もあります、ナイキもホークもあります、こう言いますけれども、しかし、どうも一本やりの考え方です。要撃戦闘機に回している予算をもっと防空ミサイルに回すとか、あるいは支援戦闘機、着上陸の阻止ということになれば対地、対艦攻撃ですよ。もちろん空の戦いも重要という意味においては要撃戦闘機と防空ミサイル、対地、対艦攻撃力を持たなければ岩上陸阻止なんてできないじゃないですか。航空自衛隊についてもそういう面が言えるし、あるいは海上自衛隊についても、護衛艦の大半が駆逐艦であるという実態。要するに、向こうから上陸を目指して来る船を艦対艦でやり合うという船ではない。最近艦対艦ミサイルとか艦対空ミサイルの装備を始めましたけれども、これは岩上陸阻止で始めたのではなくて、千海里シーレーンの防衛をどうするかということが主眼ですよね、どう見ても。ですから海上自衛隊も岩上陸阻止という方に基本が行ってない、ある意味では駆逐艦ばかり持っているわけですからね。だから、着上陸阻止という観点で海上自衛隊の組織、編成と装備がなされていない。航空自衛隊も、全周防衛ということを言っておりますが、そういう嫌いがある。  せっかく若い昭和の長官が長官になられたわけですから、陸上に戦車なぎは海に艦艇なきがごとしなどという古臭い信念は破っていただいて、限られた予算の中でどう効率的な装備を考えるか、そういう観点で、ぜひ五九中業は、GNP一%という歯どめをしっかりと守った中で、まず創意工夫をしてぜい肉を落とす作業をやってもらいたい。それを国民に見せてもらいたい。それがむしろ自衛隊に対するコンセンサスを高めるのではないか。私はこういうふうに考えているわけでございます。  最後に、今の私の意見に対する感想を長官から一言伺って、質問を終わりたいと思います。
  154. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 若干、具体的な点を御説明させていただきますが、防空を考える場合の機能といたしまして、戦闘機だけではなくてミサイルの活用を考えるべきだということは、全くそのとおりだと思います。そういう観点から、今我が防衛庁におきましては、現在持っております航空自衛隊のナイキシステムが非常に老朽化しておりまして、一九五〇年代の技術で一九六〇年代に開発をされたというものでございますので、能力が低下しました。これをぜひ最新型のものに換装したいということで、六十年度予算でお願いをいたしまして、ペトリオットをライセンス国産で導入するということをお認めいただいたわけでございます。本年度予算は教育用のものでございますけれども、六十一年度以降逐次具体的な装備を始めたいということでやっておるわけでございます。そういたしますと、このペトリオットシステムと、それから戦闘機の体系、それに五十八年度から着手しております新バッジシステムの整備が数年後には完了いたしますが、この三つが組み合わさりまして有効な防空体系を形成できると思います。  それからまた、航空自衛隊で申しますと、先ほども申し上げましたように、対地支援能力の充実ということも重要な課題だと私どもは認識いたしております。  それから、海上自衛隊につきましては、先生御指摘のように本土防衛の問題ももちろんあるわけでございますが、海上交通の安全の確保を図るということも我が国の安全を確保するためには必要不可決でございまして、海上自衛隊の艦艇、航空機はそういった両方の機能を兼ね備えさせるように整備をしているわけでございます。着上陸侵攻に際してはその有効な運用を図りたいと思っております。
  155. 中島源太郎

    中島委員長 答弁者に申し上げますが、時間の関係がありますので簡潔にお願いします。
  156. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 いろいろ御議論いただきました。私たちは、本当にこの国の独立と安全と自由を守ろうと思うときには、やはり士気の高い隊員がいなければならぬと思いますし、それは単に装備だけではだめなんで、日ごろから例えば陸上なんかでしっかりと訓練している陸上自衛隊の任務というのは、非常に大きいと私は思っております。  そういう前提でいろいろ申し上げたいこともありますが、一言、最後に申しますならば、やはり私たちの限られた財源の中でより有効な防衛力を整備するという観点からいえば、国民の皆さんの中にも、私たちの国の技術水準が高いものもあるわけですから、それに応じた日本独特のものも持つべきではないかという御議論もあります。いずれにいたしましても、現在、私たちは、そういう効率的なそして近代的な技術に根差した、しっかりとした防衛力の構築ができないか、精いっぱい努力をしてまいりたいと思っております。従来の考えに必ずしもとらわれないでそういうものを考えていきたいと思いますが、私たちが政策をこういうところで御議論申しますときには、よほど固まった段階でないとなかなか変わった答弁はいたしませんので、いろいろもどかしい点もあろうかと思いますけれども、私たちは私たちなりに内部でいろいろ議論をしながら、より効率のいい防衛力整備になるように努力しておりますので、その辺を十分御理解いただければありがたいと思います。
  157. 市川雄一

    ○市川委員 終わります。
  158. 中島源太郎

  159. 田中慶秋

    田中(慶)委員 私は、この五九中業を中心とした形の中で質問をさせていただきたい、こんなふうに思います。  加藤防衛庁長官は、四月十七日の安全保障特別委員会で、五九中業の必要経費について、直感的に言えば国民総生産、GNPの一%の範囲でやることは容易でない、一%を上回る公算が大きいということを示唆されたわけであります。つまり、一%を守っている限り政府の防衛政策での基本である「防衛計画の大綱」の早期達成が困難ということにもなるわけであります。「防衛計画の大綱」の水準の達成については、中曽根総理が内外に表明していることでもあり、六月にまた長官が訪米を予定されている中で、アメリカにおいても強く要請されてくると思います。  これらについてでありますけれども、こういう中で、現在、我が国の防衛政策は一%と大綱水準の達成という、相反する公約の中で苦慮されているのではないかと思いますが、長官の見解を明確にしていただきたいと思います。
  160. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 先日、安保持でそのような発言をいたしたことは事実でございます。五九中業の作業は現在進行中でございまして、まだ全体像を計数的にまとめ切っている段階ではございません。したがって責任のある御発言は申し上げられないのでございますけれども、個々の作業の一つ一つの途中経過などを聞いておりますと、どうも一%以内で五九中業の作業を完成するのはちょっと容易ではないかなという感じが私自身しておりますので、そういうことを印象的に申し上げたわけでございます。
  161. 田中慶秋

    田中(慶)委員 五九中業の中で今積み上げをされているということも事実だとは思いますけれども、いずれにしてもこれは七月ごろを目途にという、従来の予算概算要求の関係からするとこういうことになってきようかと思います。そういう点では、もう既にそういう前提に立つと、最後の積み上げとはいっても、私は、この一%という問題で、今長官は本音で話をされているような気がしますし、そういう点で一%の枠を信用すれば、あるいはまた一%に固執すれば、大綱の水準達成という基本姿勢といいますか基方方針は逆に空文になってしまう、こんな心配もあると思います。国の防衛政策がこのような形の中でいつまでもあいまいであってはいけないと思います。私は、そういう点で、最終的に一%の枠も大切でありますけれども、五九中業というものが五カ年計画として、国を守るための防衛費として、今議論されました装備の問題を初めとするそれぞれの問題について、その辺を明確にすることが国民の同意もコンセンサスも得られるのではないか、こんなふうに思いますので、長官のこの辺に対する見解を述べていただきたいと思います。
  162. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 まず最初に、一つだけお断り申し上げたいと思いますが、いわゆる内閣の決定、三木内閣当時の一%に関する決定は、政府の予算ないし予算案の段階における基準でございまして、それは補正の段階なのか当初予算の段階なのか、いろいろ御議論がありますが、いずれにしても政府の予算案についての一%の枠であったと思っております。したがって、現在の五九中業は、防衛庁内部が概算要求のためにつくっているものというふうに御理解いただきたいと思います。  その前提で、いわゆる一%問題と「防衛計画の大綱」水準達成の問題でございますが、私たちは、五十一年に決められました「防衛計画の大綱」は二つの重要な任務があろうと思っております。一つは、節度のある我が国の防衛力整備のあり方について国民に、この程度のものでございますよというふうに示すのと、それからもう一つは、三次防、四次防というふうに防衛力整備が進んでいった当時、防衛力の最後の行き着く姿というのはどういうものなんだろうという国民の不安が当時生じましたので、それにこたえるという意味で、最終的にはこんなものの水準を考えていますよということを国民に示す、そういう役割があったと思います。  したがって私たちは、防衛につきましてはもっとふやせという立場の御議論とこんなに多くちゃいけないじゃないかという御議論と両方あるわけですけれども、その中で、皆さんどうでしょうか、こういう水準にしていきたいと思いますけれども、皆さん御議論いただきたいという、ある種のコンセンサスづくりの中核であると思うんですね、この「防衛計画の大綱」は。だからこそ、これを平時から持っていなければならないものと定義している以上、歴代内閣及び防衛庁長官が言いましたように、これはできるだけ早期に達成すべきではないか。そういう意味で私は、「防衛計画の大綱」の達成というのを、防衛力整備についての議論を集約させるためにもぜひ早く達成させていただきたい、こんなふうに思っております。
  163. 田中慶秋

    田中(慶)委員 今、五九中業の問題は概算要求をつくるための内部資料としてというお話がありました。確かに内部資料としてということもあろうかと思いますけれども、しかし少なくとも防衛政策を最低このぐらいやるためにはという形の中でやる、一定の枠の中でそういうことを論ずるのでなく、それよりも、今の日本が置かれている立場や環境を含めて、そういうことを含めて最低限このぐらい必要である、こういう前提に立ってやるのが本来の防衛計画ではないかと思うのです。そういう点では、今、長官がその防衛大綱の問題を含めて考え方を述べられてまいりましたけれども、逆なような気がするわけです。例えば概算要求をつくるためにも、一%を毎年予算編成をする際にそれをまずめどとしてという前提で今日までやられてきた、あるいは三木内閣のそういう考え方でという、予算編成時に一%枠におさめる立場をとって、そういうことを明確にして、何かそのような形でやってきているのじゃないかと思います。そういう点では、その一%という問題とこの五九中業、概算要求という形のものと、そういう点で私は相反するおそれがあるのではないかという心配をしているのですけれども、その辺は防衛庁長官は、先般の安全保障特別委員会で、五九中業の理想的なスタイルでやられると一%の枠を超えるだろう、こんな話をされているわけでありますけれども予算編成時に一%枠内におさめる立場をとるという形で、これからも五九中業という問題に取り組んでいかれるということで理解していいかどうか、その辺を明確に答えていただきたいと思います。
  164. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 繰り返しますけれども、いわゆる一%の枠の問題とそれから五九中業の作業というものは直接関連するものではない、こう思っております。したがって、私たちは、現在「防衛計画の大綱」の水準に到達することを頭に置いて、それを基準にし、その水準の達成を期するということを頭に置いて五九中業の作業をいたしております。
  165. 田中慶秋

    田中(慶)委員 一%の枠におさめるということと五九中業というものを別に考えながらということでありますが、少なくとも、防衛庁が五九中業を概算要求をするための単なる内部資料としてだけ、こういうふうに考えられているのでは真の防衛政策とは言えないのではないかと思うわけです。その辺について長官の考え方を述べていただきたいと思います。
  166. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 もちろん五九中業は五六中業と同じように、作成が終了した段階において国防会議に御報告いだすことになると思います。しかし、あくまでも防衛庁内部の概算要求のための一つの準備の作業という性格は変わらないだろうと私は思っております。  そして、その作業の基本はどういうことかといいますと、五九中業の段階で「防衛計画の大綱」の水準を達成するという前提でつくってみるとどういうことかという気持ちでやっておる次第でございます。
  167. 田中慶秋

    田中(慶)委員 その辺がよく理解できないのです。例えば一%と関連して五九中業の作業が進む、それで要するに五九中業の作業が進展しないために、この一%問題というものを避けようとする論理にとられるような感じがするわけです。すなわち内部資料であればもっと理想的な形で、あるいはまた国民のコンセンサスを得るために最低これくらいの防衛予算が必要である、こんな前提で概算要求をつくりながら、今、長官が明確に言っていたように五九中業と一%とは関係なく検討されているのだということであるならば、私はもっと具体的に、この一%問題とは切り離して理想的な形でやっていい、それを明確に答弁されていいと思うのです。ところが、最後になると、一%という問題がそういう点でくっついてくるものですから、その論理というものが何かおかしくなってしまうような形で今私は受け取っているのですけれども、その辺を、この作業の進展だけではなくして、理想的な立場と一%問題というものをあなたがおっしゃるように切り離して考えるならば、そういうことを明確にわかるように、そして国民の前にコンセンサスを得られるような形の中で明確にすべきだと思うのですけれども、その辺をもう一度答えてください。
  168. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 中期業務計画は、委員御案内のとおり正面装備を中心に行っておりまして、それで、この正面装備は、最近の統計というか予算額で見ますと防衛関係費の大体四分の一になろうと思います。この四分の一の部分につきまして、「防衛計画の大綱」の水準を達成できるようにしっかりと計画を立て、見積もりをするわけですけれども、それ以外の人件費その他の問題につきましてはある種の概算でつくり上げるということでございまして、そういう意味で、しっかりとした毎年の予算の一%閣議決定の問題とはちょっと違うのではないかな、こう申し上げているわけでございます。  いずれにいたしましても、その正面装備の積み上げ計画におきましては、「防衛計画の大綱」の水準を達成することができるように、しっかりとその点につきましては今作業いたしているところでございます。
  169. 田中慶秋

    田中(慶)委員 再度お尋ねしますけれども、「防衛計画の大綱」を達成する、並行して五九中業の作業が進む、そして最後にまた一%の枠内でという形で、要するに、五九中業なり防衛大綱を達成することによって一%を守っていけないかもわからないという答弁がされているわけですけれども、その辺を明確にする必要があると思うのです、はっきり申し上げて。今もその辺がちょっとひっかかっているわけですけれども、まさしくこの五九中業、防衛大綱、そしてまた一%の関連づけをするそのプロセスの中で来るものですから、どうしても歯切れが悪いのじゃないかと思うのです。  そういう点で、私は、この一%におさめるということもそれぞれの立場で必要であろうかと思いますが、五九中業は単なる内部資料ということじゃなくして、最終的には国防会議にかけるということでありますけれども、それぞれ今の段階で、五九中業あるいは防衛大綱という問題について、一%との問題でその辺を明確に関連づけをする必要があるだろう。例えば今申し上げたように、「防衛計画の大綱」というのが早期達成が困難なこともあり得るということを先般安全保障特別委員会で言われていると聞いているわけなんで、その辺を明確に答えていただきたいと思うのであります。
  170. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 「防衛計画の大綱」で定められております水準の達成を期するということを目標にして、五九中業の作業を開始してみなさいということを、私の前任者の栗原長官が五十九年の五月に指示されたわけでございます。それで、その基準に従って今作業をやっているわけでございますけれども、正面装備なんかを中心に今その作業をやっておりますと、具体的にいろいろ見てみますと、単にこの期間内に減耗していきますものの補充等を考えてみましてもかなりのものにもなりそうな気もいたしますし、そのほか大綱水準の達成との間に差があるような部分を考えてみたりしますと、この達成を期するためにはGNP一%の枠内でやるのはちょっと容易なことではないなという印象を作業を見ながら持ったものですから、先日そのように申しましたし、現在もそんなふうに思っております。
  171. 田中慶秋

    田中(慶)委員 そのように明確に答えていただければいいんで、そういう点で、私は、五九中業というものをこれからは少なくとも内部資料ということだけではなくして、最終的に政府の国防会議に報告して了承を得るということを明確にする必要があると思いますし、先ほどそのような考え方で述べられておるようですけれども、その時期はいつごろになるのですか。
  172. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 先ほども大臣からお答え申し上げましたように、五九中業がまとまりますればいずれ国防会議に御報告ということにはなろうと思っておりますが、その時期は一応夏ごろということでございまして、まだ具体的にきちっとしためどがついておるわけではございません。
  173. 田中慶秋

    田中(慶)委員 少なくとも、概算要求をするまでにこれを国防会議に諮って臨むという形の理解でよろしいわけですね。
  174. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 現在進めております作業といたしましては、先ほども申し上げましたように、夏ごろまでに五九中業をまとめ上げて国防会議に御報告していきたいというふうに考えているわけでございます。
  175. 田中慶秋

    田中(慶)委員 その中で、実は空中給油の問題でありますけれども、これは私どもの塚本書記長が、昨年の予算委員会と今年度の総括質問の中で触れ、総理、防衛庁長官は、空中給油の問題についてはファントムの硫黄島における訓練等々の関連の中で検討するという答弁をされておりますけれども、五九中業策定に当たっては検討されていると思いますが、どのようになっておりますか。
  176. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 F4の空中給油の問題につきまして、昨年の衆議院の予算委員会で、御指摘のように塚本委員から、F4の硫黄島におきます訓練の際の長距離移動の安全対策として検討すべきではないかという御指摘があったわけでございます。これに対しまして中曽根総理大臣から、過去に種々議論のあった問題でもあるので慎重な検討が必要ではありますが、問題の御提起がございましたので研究してみたいという趣旨の御答弁をされた経過がございます。  他方、最近の航空軍事技術の進歩による航空機の侵入能力の向上に対処するという問題がございまして、将来の問題として、空中警戒待機の態勢を強化する必要が増大するということも考えられていたわけでございます。これとの関連でも空中給油機能を利用しなければならないということも、将来の問題として予想されるということは従来からしばしば御説明を申し上げてきた経緯がございます。  そこで、今申し上げましたようないろいろな経緯を踏まえまして、防衛庁としては、硫黄島におきます訓練に関する安全対策に万全を期するということと同時に、空中給油機能の一般的な利用の問題につきまして、部内におきましてその後も種々検討を続けてきているわけでございます。  今、五九中業との関係について御質問ございましたが、まだ五九中業において具体的な事業がどうなるかということについて明確にお答えできる状況にはございません。ただ、空中給油機能の問題は先ほど申し上げましたような非常に重要な問題として認識をいたしておりますので、鋭意検討を進めているところでございます。
  177. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、本会議予算委員会の中からも、総理及び長官から、防衛大綱の見直し及び五九中業を含めてこういう問題は検討するという答えを得ているものですから、その辺も含めて取り組んでいただきたい。これは力強く要望しておきます。  次に、衛星の利用問題についてお伺いしたいと思います。これは科学技術庁及び法制局長官あるいは防衛庁の考え方について触れてみたいと思います。  現在の衛星の利用問題について、通信衛星さくら二号には防衛庁の自営専用回線を持っていないと聞いております。その理由としていろいろな形の問題が国会でも議論されていたようでありますけれども防衛庁の自用回線を設定することは平和利用の国会決議に反しないと思いますけれども、これらについて科学技術庁並びに法制局の考え方を述べていただきたいと思います。
  178. 三浦信

    三浦説明員 お答え申し上げます。  国会決議の有権解釈は国会においてなさるべきものと承知しておりますけれども、国会決議の平和の目的の趣旨につきましては、さきの衆議院の予算委員会、二月六日に行われましたが、ここにおいて政府見解として示されたとおりでございます。  いずれにしても、具体的な計画が出てきた段階で検討してまいりたいと思います。
  179. 茂串俊

    ○茂串政府委員 ただいま科学技術庁の政府委員からお答え申し上げたとおりと私も考えております。
  180. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、具体的な問題ということは、すなわちCS3号の問題も絡んでまいりますし、あるいはまた貿易摩擦の解消のために民間衛星の利用、通信衛星の利用の問題も考えられているわけであります。そういう点では、アメリカから通信衛星の購入を求められている、あるいはまたこれを運用された場合において、防衛庁は今までのそれぞれのいきさつとは関係なく、民間でありますから独自に平和利用をすることができる、こういうこともそれぞれ考えられると思いますけれども、これらについて法制局並びに防衛庁としての考え方を述べていただきたい。
  181. 山田勝久

    ○山田(勝)政府委員 ただいま法制局及び科学技術庁からCS3についての御答弁がございましたけれども、私ども防衛庁といたしましては、指揮・統制等に必要な通信体制というものを向上させるための検討を行っておるところでございます。通信衛星の利用はその中の一つの有効な手段でございます。  さて、国会決議との関係でございますけれども、先般の二月六日の衆議院予算委員会におきまして私ども政府としての考え方というものを申し上げさせていただきました。それは、一般化している衛星を私ども自衛隊が使わせていただくのはお許しいただけるのではないかということでございました。CS3もまたCS2の後継機と理解しておりますので、その意味ではもう一般化しているものではなかろうかと思います。詳細はつまびらかでございませんけれども、個々具体的の事例に即しましてまた検討をしていくことになろうと思います。  先生御指摘のアメリカ等から輸入された衛星というものに関しましても、私どもとしては国産の衛星と同じように考えておりまして、自衛隊の衛星利用に関する国会決議との関係につきましては、外国のものも国産のものも同じようなものとして私ども考えておる次第でございます。
  182. 茂串俊

    ○茂串政府委員 ただいま防衛庁当局から御答弁がありましたが、私は民間の通信衛星の利用につきましての具体的な問題はよく存じておりませんが、自衛隊による衛星利用の問題と国会決議との関係に関する限り、ただいま防衛庁の政府委員が御答弁になったとおりであると心得ております。
  183. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、この衛星利用というものは、国会決議の問題もありますけれども、個々の事例という話が先ほど科学技術庁からあったわけでありますが、こういう問題も、少なくともCS3号あるいはまたアメリカの衛星の購入等々の問題も具体的な問題となってきているわけでありますので、その辺も、個々の事例ということではなく、前向きに、五九中業やいろいろなことを含めながら今防衛計画が検討されているときでありますので、その辺を含めて御検討をお願いしたいと思います。  以上で終わります。
  184. 中島源太郎

    中島委員長 午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五十九分休憩      ————◇—————     午後一時三十分開議
  185. 中島源太郎

    中島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。三浦久君。
  186. 三浦久

    三浦(久)委員 防衛庁長官お尋ねをいたしたいと思います。  五九中業についてでありますが、防衛庁昭和五十九年度の中期業務見積もりの策定作業を行っておりますね。これはこの前中間報告がなされたということが新聞で報道されております。報道によりますと総額が十九兆円、そして主要装備は六兆円というふうな報道がされておるのですけれども、それはさておいて、策定作業が現在どういう段階になっているのか、そして今後どのような段取りで策定作業が続けられていくのか、それからまたまとまるのはいつごろなのか、それをまず最初にお尋ねいたしたいと思います。     〔委員長退席、戸塚委員長代理着席〕
  187. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 中間報告という言葉を委員おっしゃいましたけれども、多分私たちが総理大臣のところに行ったことを申されておるのではないかなと思います。  確かに、現在の進行状況は総理大臣に御報告申しました。ただ、個別の案件を今お互いに議論しているところでございます。お互いと申しますと、御承知のように陸海空、三幕あるわけですけれども、それと内局、特に防衛局を中心に今大変議論いたしておりまして、まだそういう調整作業の真っ最中というところでございます。日程といたしましてはこの夏までには作業を終えたい、まとめ上げたい、こう思っております。
  188. 三浦久

    三浦(久)委員 アメリカは、日本の防衛力の整備の問題については、継戦能力の向上を初め自衛隊増強の対日圧力をずっと続けておりますね。特にこの報道を見てみましても、例えばついこの間、我が国の松永駐米大使が着任のあいさつをしに行ったのに対して、アメリカのワインバーガー国防長官、この方が松永大使に対して、「日米双方とも一層の防衛力増強が必要であり、その努力は「目に見える必要がある」との考えを示した。」というふうに報道されております。そうすると、今後五九中業を策定するに当たって、まとめ上げるに当たって、アメリカとの協議というようなものは行うのでしょうかどうでしょうか。
  189. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 米国は、日米安全保障条約に基づきまして、万が一我が国の有事の場合には、我が自衛隊とともに共同対処することを誓約、コミットメントを与えている国でございますので、米国、特に米国防省が私たちの防衛力整備についていろいろ関心を持つのは当然のことだと私たちは思っております。しかし、我が国の防衛力整備、防衛政策というのは、そういう米国の期待は念頭に置きつつ、私たち自主的に決定していきたい、こう考えております。
  190. 三浦久

    三浦(久)委員 そうすると、アメリカと協議することはないということでございますね。
  191. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 意見交換はもちろんいろいろなレベルで随時やっておるわけでございますけれども、私たちの防衛政策の中心、防衛力整備計画、特に今度の五九中業は私たちの自主的判断で決定いたします。
  192. 三浦久

    三浦(久)委員 五九中業は「防衛計画の大綱」の達成を期するということになっていますね。そして中曽根総理自身も、この大綱の水準を達成することが目的なんだと再三言われておられます。ところが、この肝心の「防衛計画の大綱」は、先ほどもちょっと話が出ましたけれども、主要装備の数をただ抽象的に示しているだけであって、例えばP3Cが何機だとかF15が何機要るとか、そういうことは全く明記されていないわけであります。  そこでお尋ねしたいのですが、この五九中業で示されるものが「防衛計画の大綱」の実質的な内容だ、これが総理の言う大綱の水準なんだというふうに理解してよろしゅうございますでしょうか。
  193. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 大綱水準は何かということがよく言われるわけでありますが、これは量と質の両面から考えていく必要があろうかと思います。  量的に申し上げますと、確かに大綱の別表に基本的な部隊の規模あるいは装備の数というものを示しているわけでございまして、そういう意味で申しますと、例えば海上自衛隊におきましては、作戦用航空機が大綱水準は約二百二十機ということになっておりますが、現在の六十年度予算の完成時勢力を見ましてもこれがまだ約百五十機であるというふうに、約七十機不足しているという実態がございます。それから航空自衛隊につきましても、作戦用航空機が大綱別表では約四百三十機というのに対して、六十年度の完成時になりますと約三百七十機ということで、大変隔たりがあるわけでございます。したがって、こういった隔たりを埋めて、大綱の別表に定めている規模の防衛力をつくりたいということがまず一つあることは事実でございます。  それと同時に、質的な面におきましても諸外国め技術水準に対応し得るようなレベルのものを装備をしていきたいということが同様に大綱の本文の中に書いてございますから、そういった意味で質的な改善というものはいろいろな面で配慮をしていく必要があるだろう、そういうふうに考えておるわけでございまして、そういった両面を含めて、私どもとしては、大綱水準はいかにあるべきかということを現在検討しておる次第でございます。
  194. 三浦久

    三浦(久)委員 大綱というのは防衛力整備の基本的な目標になっているわけですよね。その基本的なものが極めてあいまいだということは、私は大変問題があるだろうと思うのです。ですから、防衛庁長官も、大綱の水準を達成するのとGNP一%を守るのとどっちが大事か、こう言われると、大綱水準の達成の方が優先するんだというような答弁をされたと報道されておりますけれども、それぐらいこの大綱というのは大変重要な問題ですね。それが具体的になっていないところに問題があると私は思う。具体的になっていないから、「防衛計画の大綱」の水準を達成するんだ、そのためにこれだけ金がかかるんだと言われても、じゃ一体先々何ぼ金がかかるんだということが明らかにならないわけですね。国民はわからないわけだ。そこが私は大変問題だと思うので、この「防衛計画の大綱」の水準というのを何らかの形で具体化することが必要じゃないかと思うのです。一応五九中業の中身がある程度の目安にはなっているけれども、即大綱ではない、大綱の中身でないという意味だと思うのですが、そうすると、やはり何らかの形で具体化する必要があるのじゃないかと思いますけれども、いかがでしょう。
  195. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 一国の防衛政策及び防衛力整備というのは、その国の主観的な考えとともに、また同時に、そのときどきのその国をめぐる国際情勢、またグローバルな状況によってもいろいろ変わらなければならないものだろうと思います。しかし、そうはいっても、大体こういう水準で我が国の防衛力は考えるということで定めたのが大綱でございまして、またこれを余り細かくびっしり決めても、それが弾力性を持たずに、その有効性がほんの一、二年で終わってしまうことになると思います。  そういう前提で考えていきましても、航空機が大綱では別表で四百三十機、こう書いてあります。潜水艦は十六隻、それから護衛艦等の一般の艦艇は六十隻前後、こうやって明確に書いてあるということは、私はかなりの明確度ではないでしょうかと申し上げたいのです。例えば陸の場合には、確かに装備はそんなに詳しくは書いてありませんけれども、しかし、普通の師団で十二、それから混成団として二つ、それから機甲師団で一つ、そして人数として定員十八万、これだけ明確に書いてあるということは、かなりの枠がはまっているということが言い得るのではないだろうかな、こんなふうに思っておりますので、その辺は別表はかなり明確にしたものと御理解いただければと思うのでございます。
  196. 三浦久

    三浦(久)委員 しかし、そう言われますけれども、同じ戦闘機でも種類もたくさんあって、それはかなり値段の違うものがたくさんあるわけです。ですから、どういう機種飛行機がどうだということが明らかになりませんと、全くもう幾ら金がかかるのかわからない、国民はそういう不安の気持ちを持つのではないかというふうに思います。  次に、昨年の暮れに日米共同作戦計画案というものが双方の制服によって調印された。中曽根総理にも報告されたということが言われていますね。これは政府もお認めになっているわけです。その問題についてお尋ねしたいのです。  矢崎防衛局長は、五十八年十月三日の参議院決算委員会で、シーレーン共同研究に関してこういうふうに答弁されていますね。シーレーン共同研究についての前提となる現有兵力、この問題について質問を受けまして、「現有兵力と申しますのは、まさに現在自衛隊といたしまして保有し得る兵力でございますから、これは五十八年度の予算で実現をするいわゆる完成時、そういうものを前提とした勢力であると御理解をいただきたいと思う次第でございます。したがいまして、御質問にございましたように中業完成時であるとかあるいは大綱達成時とかいうふうな兵力を前提にしての研究ではございません。」こういうふうにはっきり答弁されておられますね。  それでお尋ねしたいのですが、今回まとまった日米共同作戦計画案、これはいつの時点の現有兵力でつくられているものでありましょうか。
  197. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 日米共同作戦計画の研究と申しますのは、いわゆる作戦計画の研究、オペレーションプランを研究する役割を持っておるわけでございまして、そういう意味で現有兵力というものがその基礎に当然なるわけでございますけれども、これは毎々申し上げておりますように、常時これを見直していきまして、エンドレスにこの研究を補備していくという性格のものでもあるわけでございます。したがって、これは現有兵力ということで御理解をいただきたいと思うわけでございまして、具体的に、どこのある時点ということを申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。
  198. 三浦久

    三浦(久)委員 シーレーンの共同研究のときには、これは五十八年度で完成する現有兵力と理解してくれと言われましたでしょう。このシーレーン研究というのは五十八年から始められたからですね。日米共同作戦計画というのは、これが始まったのは五十三年十二月の長官の指示で始められたと思うのですよ。そうすると、五十二年時点での現有兵力というものを前提にした上でこういう共同作戦計画案がつくられたということではないということですか。
  199. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 これは先ほど申し上げましたような性格でございまして、常時エンドレスに研究は進展をしているわけでございますから、どの時点のものを固定的にということではなくて、常時、その現有兵力というものを基礎にしてこの研究が続けられているというふうに御理解をいただきたいと思います。  シーレーン研究のことの御引用がございましたので、その点を若干御説明いたしますと、これは先生も御承知のように、既に何回も申し上げておりますが、五十七年の第十四回の日米安保事務レベル協議のときの議論がその発端になって、研究を開始したものでございます。その当時におきまして、アメリカ側から、日米が協力してシーレーン防衛に当たる必要があることとか、あるいは自衛隊のシーレーン防衛能力等についてアメリカ側でこう考えているのだというふうな説明があったわけでございます。そこで日本側といたしましては、アメリカ側のそういった分析の前提になっているいろいろな点を、我々としてもではひとつ検討してみたいということを提案いたしまして、そういうことで、一つのシーレーン防衛に焦点を当てた作戦計画を特にやってみよう、それについては前提として、現有兵力は日本の場合は五十八年度完成時の勢力でやってみようということを決めて、走り出した経緯がございます。  これはもう何回も申し上げているわけでございますから繰り返しませんが、そういった経緯があっての話でございまして、そのことを御質問があったときに御説明をした経緯はございます。そういった若干の違いがあろうかと思います。
  200. 三浦久

    三浦(久)委員 日米共同作戦計画、これもエンドレスにずっと研究していくんだ、こういうお話ですが、昨年日米双方でまとまった共同作戦計画案、私らも中身を見れないからどういうものなのかわからないからお尋ねするんですけれども、それをつくったときには、日本の現有兵力というものはどういうものを前提にしているんですか。大綱水準の達成、そういう兵力を前提にしているのか、それとも昨年十二月の段階での兵力を前提にしているのか、それをちょっとお尋ねしたいんですね。それとも五十三年の現有兵力を前提にしているのか。
  201. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 研究の具体的内容にわたる点でございますので、お答えは差し控えさしていただきたいと思います。
  202. 三浦久

    三浦(久)委員 研究の具体的内容に入る、しかしそのくらいのことは言えるんじゃないですか。長官から指示があったときの五十三年の時点の現有兵力を前提にして作戦計画を立てたのか、それとも昨年の十二月の段階なのか、それとも大綱水準の達成の段階なのか、そういうことは言えるんじゃないですか。そんなことまで言えないのですか、この共同作戦計画案については。それは長官、いかがですか。その程度のことは教えていただいていいんじゃないでしょうか。これじゃ我々、皆目、この日米共同作戦計画案の内容を知る由がないですよ。全くうかがい知ることすらできないという状況です。ですから、今の点について御答弁いただけるんじゃないでしょうか。秘密でも何でもないと思うのですよ。シーレーン共同研究のときには五十八年度のということを言っていらっしゃるんですから、その程度のことは私は御答弁いただけるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。     〔戸塚委員長代理退席、委員長着席〕
  203. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 繰り返しになって恐縮でございますが、ただいま申し上げましたように、この日米共同作戦計画の研究の内容につきましては、お答えを差し控えさしていただきたいと思います。
  204. 三浦久

    三浦(久)委員 それじゃもう一点聞きますけれども、この日米共同作戦計画案、どういうものか内容がわかりませんが、ここでは共同作戦計画ですからいろいろなことが想定されて書かれているんだろうと思うのですね。そうすると、そこでやはり日本アメリカの軍隊の兵力差とかそれから装備の差とか、そういうようなものも当然議論されてきているだろうと私は思う。例えばこの日米共同作戦計画というものを実行する、その場合には結局まだ今の自衛隊ではこういうふうに兵力が足らぬ、それからまた装備もこういうふうに足りないとか、そういうことは当然議論されてきているだろうと思うのですね。  そこで、いわゆる今度の五九中業というものは、そういう日米共同作戦計画を立てた、その結果いろいろな不備が出てきた、補充しなければならない点が出てきた、そういうことをやる目的で五九中業というものが策定されているのかどうか、その点お尋ねしたいと思うのです。
  205. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 共同作戦計画の研究は、まさに有事の場合にどういうふうなオペレーションを共同対処でやっていくかということを研究することを目的とするものでございまして、この研究は防衛力整備のために実施をしているものではないわけでございます。したがいまして、五九中業をやっていくための考え方といたしましては、もう繰り返しお答え申し上げておりますように、大綱水準の達成ということを期してやっておるわけでございまして、まさに平時におきます必要最小限の防衛力を形成するということが基本になって、判断をしているわけでございます。
  206. 三浦久

    三浦(久)委員 この大綱の水準も、それから日米共同作戦計画にしても、五九中業にしても、それぞれ非常に密接な関連性を持った問題だというふうに私は思います。全然内容が、五九中業は別ですが、あとの二つの問題については極めてあいまいなまま、また日米共同作戦計画案についても全く国民に知らされないまま事が運ばれているということは、非常に残念だと私は思います。ぜひこの内容を明らかにしていただくように強く要望いたしたいと思います。  次にお聞きしたいのは、空中給油機の問題であります。これは五九中業で検討するということが決まったというふうに報道されておるのですが、五九中業で検討するということを決めだというのは本当なんでしょうか。
  207. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 五九中業における具体的な事業がどういうものになるかということについては、現在何も確定をしたものはございません。  ただ、ただいま御指摘の空中給油機能の問題につきましては、これは昨年来研究をしておるということをしばしばお答え申し上げておるところでございまして、これは近時におきます航空技術の発達に伴いまして低空侵入能力とか高高度高速侵入能力が高まってきておりますから、それに対処するためには空中警戒・待機の態勢をとる必要が出てくるという状況にございまして、そういうことをやるためにはやはり空中給油機能を充実する必要がありますし、そのためには、空中給油機というものが非常に重要な役割を果たすという認識は持っておるわけでございます。そういう認識のもとに、現在、この空中給油機の問題も含めまして空中給油機能の充実ということにどういうふうな具体的な問題があるのかということを鋭意検討、研究を進めている段階であることは事実でございます。ただ、具体的に五九中業にどうなるかというふうなことについてはまだお答えを申し上げられる状況にはございません。
  208. 三浦久

    三浦(久)委員 じゃ、五九中業を離れて聞きますが、「防衛計画の大綱」ですね。この大綱上、空中給油機というのは持てることになっておりますかお尋ねしたい。
  209. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 大綱の内容をごらんいただきますと、別表で、航空自衛隊が保有すべき作戦用航空機は約四百三十機というふうになっておるわけでございます。したがいまして、そういった機数の中で空中給油機を仮に持つとなった場合に、持つことを工夫することは可能ではないかというふうに考えておるわけでございます。そのことは、大綱の本文の中にも、我が国の防衛力は諸外国の科学技術水準の動向に対応したものでなければならないということが書いてあることからも、そういった最新のものを持つこと自体は、大綱の考え方の中で排除されているものではないというふうに理解をいたしております。
  210. 三浦久

    三浦(久)委員 そうすると、あなたは、この大綱の作戦用航空機、これはまとめて四百三十機となっているわけですけれども、この中に入り込ませることも可能だ、何とか入れたいというお話なんですけれども、しかしこの別表を見てみますと、基幹部隊ということで、基幹部隊が七つ、ずっと明示されているわけですね。これは、航空警戒管制部隊とか要撃戦闘部隊とか支援戦闘機部隊とか航空偵察部隊とか、ずっと入っています。主要装備と下に書いてあって、作戦用航空機というのは基幹部隊と全然別個に、何も並列的にあるものではなくて、基幹部隊の主要装備が四百三十機ですよということを書いてあるわけですね。そうすると、空中給油機を入れるとすればこの基幹部隊の中に入れる項目がなければならない。そうすると、それはどこに入るのですか。この基幹部隊の中のどこに入れてしまうのですか。矢崎さん、あなたのお考えはどこに入れてしまうのですか。
  211. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 この空中給油機と大綱との関係と申しますのは、先ほど申し上げましたように、現在空中給油機能そのものの研究をしている段階でございますから、まだ具体的に装備をどうするかというところまで詰めているわけではございません。したがいまして、先ほども申し上げましたのは、私が今の時点で感じておりますところを申し上げたわけでございまして、機数で言えば作戦用航空機の約四百三十機の中で持つことを工夫することは可能ではないかというふうに考えているわけでございますが、具体的な持ち方というのは、これまた部隊の編成の中で、空中給油機そのものをどういうふうに所属させるかという問題ももちろんあろうかと思います。したがって、そういった細部の詰めということはやっておりませんので、今ここでにわかに、どこで読むんだというふうに申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  212. 三浦久

    三浦(久)委員 ですから、この大綱自身、あなたもいろいろ苦労しているように、空中給油機が入り込む余地がないんですよ。ですから、素直にこの大綱の水準を達成するというのであれば、空中給油機は持てないということなんです。それを無理やりこの大綱の水準で持てるんだということでいろいろ考えるから、あなたはいろいろ苦労しなければならぬということですね。ですから、今後も空中給油機というものは導入すべきではない、大綱の水準に照らしても導入すべきではないということを私は強く主張しておきたいと思います。  時間がありませんのでもう一つだけお伺いしておきますが、響灘の機雷掃海訓練海域の問題であります。防衛庁は、対馬海峡寄りの響灘に機雷掃海訓練海域を設定しようというので、地元の漁協との接触をずっと行ってきました。この響灘の海域に機雷の掃海訓練海域を設けるというのはどうして必要なんですか。というのは、あなたたちの資料によりましても、全国に五カ所も現在そういう掃海訓練海域というものがあるんですね。これ以上何で拡大して、また響灘というところに、——これは魚のおいしいところですよ。私の地元ですから。イカもとれればカレイもとれる。クルマエビもとれる。そして、そういうとりたての魚を地元の人にいろいろ食べさせる。そういう非常に重要な漁場なんですね。こういうところにどうして掃海訓練海域を設けるのか。その点お尋ねしたいと思います。
  213. 大高時男

    大高政府委員 お答え申し上げます。  海上自衛隊におきましては、戦術的技量の向上ということで、従来から、単独あるいは米国海軍等と共同で各種の訓練を行ってきておるわけでございます。しかし、我が国周辺海域におきましては、一般の船舶あるいは漁船等の交通は非常にふくそういたしておりまして、また漁期との調整等の問題もあるということで、海上自衛隊訓練は、一般的に、訓練の場所あるいは時期といった面で少なからぬ制約を受けておるわけでございます。中でも掃海訓練でございますが、これは比較的水深の浅い海面を必要といたしますし、この条件を満たしまして、しかも一般船舶の航行あるいは漁船の操業といったものと競合のない訓練海面として設定できるような水域、これは非常に限定されておるわけでございます。また水域を使用する期間、時期、これも制約されざるを得ないという現状でございますので、防衛庁としては、可能であれば響灘において掃海訓練を行いたいと思っておるわけでございます。  また、なるほど先生御指摘のように、現在全国で五カ所の訓練水面があるわけでございますけれども、年間を通じて厳しい訓練をやってまいるといった面から見ますと、先ほど申し上げましたように、漁期とかあるいは交通の問題その他で制約を受ける。したがいまして、私どもとしてはぜひ年間を通して訓練をやっていきたい、こういった面から、この響灘の訓練水面について可能ならばお願いしたいというものでございます。
  214. 三浦久

    三浦(久)委員 全国で、石狩湾、陸奥湾でしょう、この訓練海域が設定されているのは。そのほかに北九州沖、それから周防灘、下関ですね。そうすると、あの付近にもう三つも重なっているわけです。そのほかにもう一つ響灘につくろうという。これはやはり対馬海峡の封鎖ということと関連があるのじゃないかと私ども今疑いを持っているのですが、それはともかくとして、これは漁協との話し合いがつかなかった。それで、ことしの一月十九日に、防衛施設庁が、この話はなかったことにしてほしいということを各漁協に申し入れしたということを聞いておるのですけれども、今後もこの海域について訓練海面は設定しないのかどうか、ちょっとお尋ねしたいと思います。
  215. 宇都信義

    ○宇都政府委員 秀答えいたします。  響灘の掃海訓練海面の設定につきましては、地元の関係漁業協同組合等と接触いたしておるところでございますが、先生おっしゃられますように、現時点では設定の同意を得られておりません。しかし、今後につきましても、可能であればぜひ訓練が実施できるよう、関係漁業協同組合等と調整してまいりたいと考えております。
  216. 三浦久

    三浦(久)委員 終わります。     —————————————
  217. 中島源太郎

    中島委員長 次に、外務省所管について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上原康助君。
  218. 上原康助

    上原委員 できれば防衛庁長官も一緒に議論をしたかったのですが、いろいろ申し合わせの日程があったようで、その点は大変残念に思います。  外務大臣、連日御苦労さまです。昨日も沖縄北方委員会でも外務大臣、日ソ関係あるいは日朝関係等々についてはかの先生方の御質問にお答えいただいておりましたので、私がお尋ねしたいことをかなり議論された向きもありますけれども、改めて日ソ関係について少しばかり冒頭触れておきたいと思います。  御承知のように、米ソ関係が七〇年代後半までのように、友好関係というかデタントの方向でなかったという面もあって、国際情勢全般に非常に緊迫した面、あるいはよく指摘されるように核軍拡競争が危険な方向に向かいつつあった。ある面では、米ソ超大国を頂点とする核軍拡競争によって国際情勢というのが極限状態に至っておると見ても、そう言い過ぎでもないという感じがするわけです。  しかし、ようやくソ連の方にも変化がありまして、ゴルバチョフ書記長という若手の書記長が誕生した。一方また、レーガンさんの方も二期目に入って、幾分従来のタカ派路線を軌道修正するような感も受けないわけでもない。しかしスターウォーズ計画などを見るとなかなかそういかないかもしれませんが。そういう意味で、米ソ関係をデタント、緊張緩和の方向に向かわすと同時に、外務大臣がおっしゃる創造的平和外交、軍縮を本当に日本外交の基本としてやっていかれるということであるならば、この機会に、北方領土の問題とか日ソの経済関係等々含めて、グロムイコ外相の来日問題も取りざたされて、そういう面でいろいろ御努力しておられるようですが、日本側としても、単にソ連敵視政策をとるのでなくして、あるいはちょっとしたソ連首脳の発言に対してすぐ目くじらを立てるということでなくして、もちろん抗議をすべき面あるいは当を得てないことについてはそれなりに物をおっしゃる、意見を言うことは大切だと思いますし、私はそれを全面的に否定するものではありませんが、もっと我が方からもそういった環境づくりをやって、この際、米ソの関係、日ソの関係が国際情勢に及ぼす影響非常に大である、そういう意味で、改めて日ソ関係をどのように改善をしていかれようとお考えなのか、これからの見通し等を含めて外務大臣の所見を伺っておきたいと思います。
  219. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 日ソ関係については、基本的に領土問題が横たわっております。日本としましては、領土問題を解決をして平和条約を結ぶというのが基本的な方針でございますが、ソ連側は残念ながらこの日本の主張には応じる状況にはありませんで、先般の日ソ首脳会談におきましても、この領土問題についてはソ連はこれまでの方針どおりだ、ということは領土問題はもう決着済みだという姿勢をとっているわけで、この点は大変遺憾であります。日本としては、領土問題というものを抜きにして日ソの真の友好は考えられませんので、この点につきましては、あくまでも腰を据えて、一つ交渉のテーブルに着くべく努力を重ねていきたい、こういうふうに思っております。  こうした領土問題は横たわっておりますけれども、何といいましてもソ連は日本の隣の大国でありますし、経済面におきましてもあるいは歴史的な面においてもいろいろのつながりがあるわけでありますし、またアジアの平和、安定ということを考えますと、ソ連との間の関係は改善をしていかなければならない。残念ながらソ連の極東における軍事力の増強あるいはまたアフガニスタンへの進駐であるとか、大韓航空機事件、そういうことでもって日ソ関係は大変冷却しておったわけでございます。しかし、こうした問題につきましては日ソ間で十分討議をする必要もありますし、基本的な立場については依然として違っておるわけでもございますけれども、日ソ両国が隣国関係である、またアジアの平和を考えますと、そうした対立点はあっても対話への努力はしなければならぬ、こういうことで、実はむしろ日本の側からいわば対話攻勢を去年以来かけておるわけでございます。  幸いにいたしまして、ソ連側も、国際情勢の変化というのも確かに背景にあると思いますが、この日本の対話への努力というものに応じてまいりまして、局長級の会談であるとかあるいはまた次官級の会談であるとか、そういうものも実現をいたしましたし、私とグロムイコ外務大臣との間の国連総会における会談も実現をいたしたわけでございますし、同時にまた、日ソ間で、改善のために、これまで停滞しておりました文化協定、租税協定あるいはまた支払協定、そうした問題についても話し合いをしようという機運も盛り上がっております。日ソ首脳会談でも、日ソ関係は非常に重要であるという認識をゴルバチョフ書記長も明らかにされたわけでございます。  そんなことで、日本としましては、いろいろとそうした問題点はありますけれども、やはり対話を詰めていって改善の道を拡大をしていきたい、それにはやはり一つの大きなポイントとしてはグロムイコ外相の訪日を求めることが大事であるということで、この点も詰めてまいりました。ゴルバチョフ新書記長がこれを肯定的に考える、こういうことで、私も指示を出しまして、グロムイコ外相の訪日について詰めるようにということで、今折衝も行っておるわけでございます。まだ具体的には明らかになっておりませんし、詰まっておらない状況でございますが、これはゴルバチョフ書記長も肯定的に対応するということでありますし、グロムイコ外相も私に対しては、今度は日本を訪問する番だということでございますので、何としてもひとつ実現をしてもらいたいものだ、そうして日本で私と会うことによりましてそれなりに日ソ間の関係改善の実りが出てくる、私はこういうふうに思っております。グロムイコ外相が日本を訪れることによりまして、私もモスクワを訪問することができるわけでございます。そうしたいわゆる外相定期会談というものがここできちっと決まっていけば、さらにまた、日ソの首脳会談という道も開かれてくると私は思っております。その間にいろいろの問題も徐々に解決していける、こういうことで、私自身も何とかこれからの日ソ改善の道を自分自身の手で切り開いていきたい。幸いにいたしまして、米ソの首脳会談も行われるという機運が熟してまいりましたので、やはり日ソの関係を改善する一つの大きなチャンスじゃないか、こういうふうに考えて努力を続けていきたい、こういうふうに思っております。
  220. 上原康助

    上原委員 確かに一つのチャンス、転換期といいますか、このタイミングを逸するとまたなかなかうまくいかぬということになろうかと思います。そこで、九月の国連総会にゴルバチョフ書記長が行かれて、恐らく米ソ首脳会談が実現することになるでしょう。今、グロムイコ外相の来日については詰めているが時期はまだはっきりしないということでしたが、もし米ソの首脳会談が九月に実現するということであるならば、私はやはりそれ以前に来ていただいて、いろいろ日ソ関係を協議する、またそのことを米ソ首脳会談に反映をさせるということがより効果的じゃないかという感じを持つわけですね。そういう面についての御努力をやっていただきたいし、その見通しはどうなんですか。
  221. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは、できれば今おっしゃるように早い方がいいと思いますけれども、やはり両方の都合もありますし、また、今いろいろと詰めておる問題の処理のこれからの方向というものもあるわけでございますから、そういう点等を全体的に向こうと相談をして、少なくともことし中には実現をしたいものだ、こういうふうに思っております。
  222. 上原康助

    上原委員 ぜひひとつ、日本側が受動的な受け身な立場ではなくして、むしろ積極的な対話外交を推進していくということで御努力を願いたいと思います。細かいことはいろいろありますが、この点はこの程度にいたします。もう一つ日朝関係。朝鮮半島の平和と安定の問題は我が国の防衛とは密接不可分だし、また隣国という面でも、一衣帯水の関係にあるとよく言われているわけですね。きのうも沖特でいろいろ御答弁があったわけですが、少なくとも政府として、朝鮮民主主義人民共和国との関係というものをもう少し改善をしていくという、国交回復というか、いろいろ南との関係もありますから難しい面もあるわけですが、従来のような一方的に韓国とだけ友好関係を結んで北半分を無視するどいテ外交は、国際的にも私はもう改める段階に来ていると思うのですよ。したがって、きのうも、いろいろ朝鮮半島をめぐっての動きがあるのでそれに対応するように政府としても慎重にやっていきたいという御答弁があったわけですが、一説によりますと、アメリカが北京で四者会談を開こうという提案をしたという情報もあるわけですね。このことについても政府は確認をしたいというような報道もなされているわけですが、対共和国との関係についてこれからどのように友好親善の促進を図るお考えなのか、外相の所見をこの点についてもお聞かせいただきたいと思います。
  223. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今、政府としましては、今日の時点で北朝鮮と国交を開始するという考え方は持っておりませんけれども、しかし、民間の交流が進むということは、南北対話も現在進みつつある状況でありますから、それは結構なことではないかとこういうふうに考えております。幸いにしまして、民間の交流も進んでおりますし、また議会の間の交流も行われております。社会党の書記長も近くおいでになるというようなことでありますし、各党の議員もまた交流を持つ計画も持っておられるようであります。さらに経済の面でも、北朝鮮側がいわゆる開放政策というものをとってくれば、日本の経済界というものもそれに即応した交流というものも進む可能性はあると私は思っておるわけでございます。日本としましては、いわゆる制限措置をとっておりましたが、ことしの一月一日にそれを解除しましてからこれまでのような日朝間の交流が続くことは、これはそれなりに意味があることではないかと思うわけでございます。一番肝心なことは北と南の間の対話がいかに進むかということであろうと思います。これも、我々の得た情報では、だんだんと前向きにいっておるようでございます。やはりそうした交流、対話が進むことが基本であろう。そういうものを見ながら、同時にまた、これを進めるに当たっては、また日本の役割というものも出てくるでしょうし、中国の役割というものもあるでしょうし、またアメリカの役割というものもそのうちに出てくるかもしれない、全体的にそうした空気が熟するということを我々は期待をしながら、そして注目しながら見守ってまいりたい、こういうふうに思っております。
  224. 上原康助

    上原委員 少しこの点は消極的な感じもいたしますが、いずれにしても、分断されて四十年たって、同一民族でありながら往来もできない、文通もできない、二十世紀最大の悲劇と言われているのですね。この問題を解決することが私は日本外交のこれからの一つの大きな課題だと思うのですね。ぜひその御認識は持っていただいて、積極的な御努力をなさることを強く要望を加えておきたいと思います。そこで、次に移りたいわけですが、私は、きょうは核問題というか在日米軍基地の実態というか機能というものについて、もう一度、若干いろいろな意見を交えながら政府の御見解をただしてみたいと思うのです。といいますのは、昨日も沖特でこの事前協議の問題、非核三原則とのかかわり、いろいろやりとりがございましたが。聞いておって、本当にこんなちんぷんかんぷんの質疑応答というのがよくも国会という場で通るなと、改めてむなしさを実は禁じ得ない面が多いわけですね。そこで、防衛庁も来ていると思いますが、在日米軍基地の機能、能力というものを総合的にというかどう認識評価をしておられるのか、まずその点からお聞かせいただきたいと思います。
  225. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 在日米軍基地日米安保体制を有効に機能させるための重要な基地でございまして、これによりまして日本の安全保障にも大きな寄与をしているものと認識いたしております。
  226. 上原康助

    上原委員 アメリカのそういったアジア戦略というか極東戦略というか世界戦略の中での位置づけは、どういうふうに理解をしますか。
  227. 古川清

    ○古川(清)政府委員 米国は、米国の国防報告にも述べられておりますけれども、世界の民主主義国の平和と安全、これを守る重要な責任を持っておるわけでございまして、その観点からも、グローバルに兵力を展開して、自由主義諸国が脅威にさらされないようにという配慮をしてくれておるわけでありますが、その観点からも、在日米軍基地というものは非常な重要性を持っておると私どもは考えております。
  228. 上原康助

    上原委員 非常に重要性を持っている、恐らくそういうお答えしか返ってこないかと思いながら聞いているわけですが、そうしますと。非常に重要性を持っている、それはだれも否定しないと思うのですね。アメリカのそういった世界戦略、アジア戦略というか軍事体制というものが、核戦略体制であるということは認めますね。
  229. 古川清

    ○古川(清)政府委員 アメリカの戦略の基本は抑止戦略でございまして、これは核のみならず通常戦力によっても裏打ちされておるわけでございまして、通常戦力及び核戦力によってこの核抑止戦略というものが裏づけられておる、こういうふうに私どもは考えております。
  230. 上原康助

    上原委員 抑止と均衡論については少し後ほど聞きますが、いずれにしてもあなたがおっしゃるように、もちろんそれはそうでしょう、核・非核の両様で一つの国防というか防衛軍事戦略が成り立っている。ですからそういう意味で非常に重要視をしている、重要な基地であるということであり、アメリカの軍事戦略というものが、皆さんが言うように抑止であろうが攻撃的であろうが、とにかく核戦略が主要な体系になっていることは間違いないわけですね。それは、在日米軍基地とて別の扱いはされていないと思う。その点はどういう御認識ですか。これは外務省もあわせてお答えください。
  231. 古川清

    ○古川(清)政府委員 私が申し上げましたのは、米国の世界的な戦略というものが、核戦力及び通常戦力の両方によってその抑止戦略というものが裏づけされておるということを申し上げた次第でございます。
  232. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 御質問趣旨が必ずしも定かではないのですけれども日米安保体制というものが抑止のためのものである、それでアメリカの抑止力は、先ほど防衛庁の方から御答弁がありましたように、通常戦力と核とその双方から成り立っておる、そのアメリカの抑止力、そういうものが日米安保体制の根幹にある、こういうことは外務省としても認識しております。
  233. 上原康助

    上原委員 都合のいいときは日米安保を外して、都合の悪いときはまた日米安保というような議論は余りよくないですね。だから、通常と核の両様で成り立っている、これは常識でしょう。しかし、在日米軍基地とて、アメリカのそういった国防の基本政策というところの軍事戦略と無関係ではないということは否定できないと私は思うのですね。このことだけで議論したくありませんが。なぜ私がこのことを言うかといいますと、沖縄国会において、私も随分この核問題については疑問を持ち、勉強もある程度やってきたわけですが、何を聞いたってこれはのれんに腕押しみたいに余りあれがなかったので、途中で中断したこともあって、また最近いろいろ調べてみたわけですが、一体核基地とはどういうものですか。
  234. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 核基地とはどういうものかという御質問にちょっとそのままお答えできないのでございますが、委員の御質問の御念頭にあるものが事前協議との関連であれば、これは累次政府が御答弁申し上げておりますように、事前協議の対象になるものとして核弾頭、中長距離ミサイル及びそれらの基地ということで、中長距離ミサイルの発射基地というふうに御理解いただければよろしいかと思います。
  235. 上原康助

    上原委員 ここは非常に重要なことなんで、私たちが沖縄返還に当たっての核抜きという場合のその核とは一体何ぞやということで、当時は随分議論をしたのですよ。あえて引用いたしますが、これは沖縄国会の昭和四十六年の例の強行採決された日、十一月十七日、いみじくも私が質問したことに対して、核抜きということは核基地の撤去を意味するという場合には、核の貯蔵庫あるいはそれに伴う運搬手段、そして近代戦略兵器の装備の中で特に重要視されている通信施設そのものを含めての、いわゆる核戦略のシステムということを考えずに、単に核弾頭だけ抜けばいいという概念で論じられる問題ではないと思うのです。そうなりますと、外務大臣や総理の御答弁からすると、当然、沖縄の核基地の撤去——核の撤去ということは核基地の撤去だということですから、核装備をしている部隊や弾薬貯蔵庫、あるいはそれと関連のある通信施設を含めて撤去さるべきだというのが、私たちの核抜きの主張なんです。これに対してはどうお考えですか。これに対して、佐藤総理はどう答えていますか。
  236. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 これは、先般いただきました記録によりますると、そのときの佐藤総理大臣の御答弁は、   核に関連するものは一切なくなる、これが私どもの願いでもあります。おそらく、ただいま言われることは同様じゃないかと思っております。こういうふうな御答弁であったというふうに承知しております。
  237. 上原康助

    上原委員 さらに、当時の久保防衛局長も、このことについて、要するに私たちは核基地という場合に、単なる弾頭を持ち込むか持ち込まないかだけの議論じゃいかぬ、あるいはそれが撤去されるということだけじゃいかぬというのが私たちの認識で、政府の方もそういう認識を一応国会では答弁したはずなんですね。」当時の防衛局長もこういう答えをやっておられるわけですよ。   核基地ということばの場合には、私にとっては、きわめて政治的な表現のように思われます。したがいまして、対米の関係で外交的な見地から検討すべきだと思いますけれども、もし軍事的に申せということであれば、核爆弾その他の核弾頭を発射するに緊要な関連施設、いわばファシリティーズということばが適当だと思いますけれども関連施設をシステムとしてとらえたものと考えるのが相当かと思います。こう言っているわけですね。だから、日本への核持ち込みという場合に、私たちがいろいろ議論をする場合に、在日米軍基地の機能なり能力なりその実態というものが、この核持ち込みなり核使用とどう関連づけられているかということと無関係ではないと思うのですね。そのものが抜けているから、ただ非核三原則がありますから、アメリカを信頼していますというだけの議論になってしまっている。今私が指摘したことについてはどういうお考えですか。
  238. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 今、委員が御質問になられました同じ日の沖縄返還協定特別委員会昭和四十六年十一月十七日でございますが、若干時系列的に申し上げますと、今上原委員が御引用になりました委員と政府委員とのやりとりの後に、佐藤総理が改めてこの問題につきまして、核に関する事前協議の対象になるもの、これは核弾頭及び中距離ミサイルの持ち込み、並びにそれらの基地の建設、こういうことに非常にはっきりいたしておりますから、こういう問題は、ただいまがどうあろうと、返還時においてはそういうものはなくなる、そのことをはっきり申し上げておきます。こういうふうに御答弁になっておられます。要するに、確かに上原委員御指摘のように「核抜き本土並みの沖縄返還」という場合に、単に核弾頭だけを抜けばいい、撤去すればいいということではなくて、これは上原委員よく御承知のことでございますが、当時沖縄には一般的にメースBと言われる核ミサイルが置かれておるということが言われておりまして、したがいまして、核抜きという場合にはその弾頭とかメースBのミサイルそのものだけを撤去するのではなく、メースBであればそのメースBの発射基地そのものを完全に撤去をしてもらう、これは当然事前協議の対象になるような性格の施設でございますから、そういうものはきれいになくしてほしい、こういうのが当時の政府の考え方であったということは、先ほど私が引用をさせていただきました佐藤総理の御答弁からも明確であろうと思います。
  239. 上原康助

    上原委員 私がお尋ねしているのはそういうことじゃないのです。確かにそういう答弁もあります。しかし、それは実際には確かにメースBは撤去されましたね。しかし、今言った通信施設であるとか核が貯蔵されておったであろう弾薬庫というものは、依然として継続して機能しているわけですね。その疑惑が晴らされていないわけですよ。むしろそれが、今は本土全体、日本全体がそういう基地の態様になりつつあるということです。それについての反論はまたいたしますが……。そこで、核基地という場合の基地の態様ということが、冒頭申し上げましたように、そういったアメリカの世界戦略に組み込まれての核体系下にあるというこの認識は、私は日本政府や防衛庁は恐らくそれは否定しないと思う、専門家だから。私だってわかるわけだから。そこで、そういう日本米軍基地であり、それが安保体制、安保条約下における基地の機能だと私たちは一貫して認識をしている。だから危険だ、抑止にならないという見解、立場をとるわけですが、その中で、では具体的に事前協議の問題につきまして、これももうこれまでいろいろ議論されてきていますね。六〇年以降、外務委員会でも予算委員会でもあるいは内閣委員会でもいろいろ議論されてきているわけですが、簡単に言うと、条約はその信頼性によって成り立っているから、アメリカ側が事前協議を求めてこないから核は持ち込まれていないのだ、この一点張りでしょう。  改めてお尋ねしますが、事前協議事項ということは、日本側からも提起をする発議権というかそういった権限があるのかどうか、この点をまずお聞かせいただきたいと思います。
  240. 小和田恒

    ○小和田政府委員 この問題についての政府の考え方は、累次、国会のいろいろな場で御説明しているところでございます。  要するに事前協議制度というもの、第六条の実施に関する交換公文の中で規定されている事前協議の制度の考え方というものは、一般に、安保条約第六条のもとにおきまして、日本が我が国に駐留する米軍に対して一定の便宜を供与している、そこで、そういう形において米国が一定の行動の自由を保持しているわけでございますけれども、交換公文に規定されておりますような三つの事柄に関しましては、米国が自由にそういうことをやってもらっては困る、日本側の同意を必要とする、日本側と協議をした上で、日本側がよろしいと言ったらそういう行動をとってもよろしい、こういうつまりアメリカの行動に対して一定の制約を課するという見地から規定されているものでございます。したがいまして、米国がそこに規定されているようなことについて行動をとりたいという希望をするときには、日本側に対して事前にそういうことを申し出て日本側と協議をしてもらいたい、これがこの交換公文によって課せられている米国の義務である、こういう考え方に立つわけであります。  したがいまして、そういう事前協議制度の性質から考えまして、そういう制約の解除を求めるべき立場にある米国政府が、条約上の義務として、我が国政府に対して提起をしてくるべき性質のものであるということを累次、従来から申し上げているわけであります。
  241. 上原康助

    上原委員 失礼ですが、私が聞いていることに答えてくださいよ、そんな回りくどいことを言わないで。何が従来からそう言っていますかですか。皆さん、いつから変わったのですか、今の見解に。  三十六年の四月二十六日、これは外務委員会です。もう一度確かめますが、日本側から発議をする権限はないか。あるかないかをイエスかノーで、あなた、答えなさいよ。
  242. 小和田恒

    ○小和田政府委員 これは制度的なことを御説明いたしませんと的確な御理解がいただけないかと思いますので、くどいようですが繰り返して申し上げているわけですけれども日本側から提起をする権利があるかどうかという性格の問題ではなくて、アメリカ側がそういう義務を負っておる。したがって、その義務を果たす側から申し出るのが条約上の建前である、条約がそういう法律的な仕組みの上に成り立っている、こういうことを申し上げているわけであります。したがって、我が国の方から、我が国の条約上の権利としてそういうことを申し出るということは、この事柄の性格上想定されていないということを申し上げているわけであります。
  243. 上原康助

    上原委員 そうしますと、いつからそう変わったんですか。今言いました昭和三十六年四月段階の事前協議問題に対して、たしか当時の中川条約局長でしょうね、「事前協議の問題でございますが、これはもちろん双方からできるわけでございます。」こうはっきり、明確に答弁していますよ。さらに、一々全部は言いませんけれども、愛知外務大臣時代にもそういう答弁がなされていますね。それと大平外務大臣、これは三十九年二月十八日の会議録、「事前協議の申し出は、当方からもできると承知いたしております。」少なくとも国会の公式の場で、条約局長とか役人、その権限のある人々が、外務大臣がこういうふうに答えておって、昭和四十五、六年から政府の答弁の内容は変わっていますよ。たしかエンプラが佐世保に入港した時点からだ。年代は相前後して符合している。こういうふうに有権解釈を政府が勝手に変えるということは、全くもってけしからぬ話ですよ。でもその後、ころりころりと変わっている。  私は、さっきも言いましけれども、この間の外務委員会会議録をほとんど大ざっぱに読んでみたのです、これまでの予算委員会なり安保国会でやった問題についても。当初の段階では、双方からできる、日本側にもその権限ありというのが政府の有権解釈だったのです。その後、いっ、どこで、どの時点で変えたのですか。統一見解もない。法制局長官も来ておると思うのですが、まず、法制局長官に聞く前に外務大臣の見解を聞いておきましょう。
  244. 小和田恒

    ○小和田政府委員 この問題につきましてはほかの委員会でも質問がございまして、私から御説明したところを繰り返して申し上げることになりますが、昭和三十五年に新安保条約ができましたときに、その安保条約の審議の過程におきまして、岸総理大臣・それから当時の藤山外務大臣等の答弁からいたしましても、これはアメリカ側が申し出てくることを想定しているという趣旨は明らかであると思います。その後、一連の国会の御議論のやりとりの中におきまして、今御指摘のありました中川条約局長答弁のような答弁があったことは私ども承知しております。承知しておりますが、昭和四十三年であったかと思いますが、当時の高辻法制局長官から、こういう過去におけるいろいろな答弁を踏まえまして、それを一応整理した形で政府の考え方をまとめて説明をしておるということがございまして、それが、この問題についての政府の統一的な考え方であるというふうにお受け取りいただきたいということを申し上げているわけでございます。
  245. 上原康助

    上原委員 条約局長、あなたはそうおっしゃっても、外務大臣が明確に言っているわけですよ。「事前協議の申し出は、当方からもできると承知いたしております。」これだけでなく、ほかにもたくさんあるのですよ。三木外務大臣の答弁もある。愛知さんのもある。そして今のあなたがおっしゃる元法制局長官の高辻さん、この人には私も随分いじめられた、この人の言っていることは全くわからない。何がこれが統一見解ですか。何と言っていますか。まずそこで言ってみてください。高辻さんは何と言っているのですか。
  246. 小和田恒

    ○小和田政府委員 高辻法制局長官の答弁の関連部分をお読みいたします。   「わが国の同意を得るために事前協議をしてまいるわけです。したがって、その事前協議そのものの協議を日本側からするというのは字義の上からはなはだおかしい。」云々ということでございます。
  247. 上原康助

    上原委員 法制局長官、いらっしゃってますね。またあなたも高辻さんみたいなことをおっしゃってはいかぬよ。法の権威者なら国民が、みんながもう少しわかるように言ってもらわなければならない。今のやりとりを聞いてみても、高辻さんの見解は私ここに持っていますが、長たらしくなりますから、今の条約局長の答弁だけでは納得できませんが、要するに高辻さんのものも否定はしていないのですよ。この答弁は我が方もできるという含みを持っているのだ。そうでしょう。この際はっきりさせてくださいよ。なぜ以前の答弁を変えなければいけなかったのか、理由を含めて法解釈上も。一種の契約であれば、借家人であろうが大家であろうが、両方に権原があるわけでしょう、民法上の土地の賃借契約にしたって。これは法律と条約はまた性格が違うとおっしゃるかもしれないが。法制局長官の見解を聞いておきましょう。
  248. 茂串俊

    ○茂串政府委員 ただいま、当時の高辻法制局長官の答弁を中心にして御議論が展開しておると雇っておるのでございますが、先ほど小和田条約局長が申されましたように、この安保条約第六条の実施に関する交換公文の内容というものは、これはあくまでも米軍の一定の行動に規制を加えるということを目的としておるわけでございまして、米国がこれらの行動をとろうとする場合に我が国に対して事前に協議を行わなければならないということを義務づけられている交換公文でございます。したがいまして、このような制度の性格からしますと、法論理といたしましてもその協議は米側から提起すべきものであって、我が方から米側に対し事前協議を行うという筋合いの問題ではないということが明らかでございます。またこれは、高辻元長官の答弁にもございますように、交換公文の文言からいたしましても「日本国政府との事前の協議の主題とする。」と言っておるわけでございまして、この明文の規定から申しましても、あくまでも米側から申し出をするということが読み取れるわけでございまして、私どもといたしましては、従前から一貫してそのような見解を踏襲しているわけでございます。
  249. 上原康助

    上原委員 あなたも高辻さんと全く同じ。何が従来から一貫している。  じゃ、私が引用しました中川元条約局長であるとか大平外務大臣であるとか宮澤外務大臣の、双方にあるということは政府は否定なさるわけですか。だから、それはどこで変えたかというのだ。なぜ変えたか。それをはっきりしてもらわぬと困ります。  それじゃ、角度を変えて聞いておきます。米側の行動に規制を加えるのがこの制度でしょう。規制を加えるのはどこですか。
  250. 小和田恒

    ○小和田政府委員 御質問意味を的確につかまえたかどうか必ずしも自信はございませんが、先ほども申し上げましたように、米軍が一定の行動をとるに当たっては我が国の同意がなければならない、したがって、我が国の同意がない限りにおいてはそういうことがやれないという形で規制が加えられているわけでございます。
  251. 上原康助

    上原委員 そうすると、事前協議において日本側ができるのは何ですか、逆に聞きましょう。さっきから法制局長官は、事前協議の中身によっては規制を加える面がある。規制を加えるのは日本側ですかアメリカ側ですか、どっちですか。法制局長官、規制を加えるのがあるとすると。
  252. 茂串俊

    ○茂串政府委員 先ほども申し上げましたように、この交換公文の意図するところは、あくまでも米国が一定の行動をとろうとする場合に事前に我が国に対して協議をしなければならないということを義務づけておるわけでございますから、この規制を加える根拠はもちろんこの交換公文でございますし、また、そのような義務を負っておるという意味米国に対しては規制が加えられるという実態でございます。
  253. 上原康助

    上原委員 じゃ、結局何もないということじゃないですか。それは米軍がみずから規制を加えるはずはないですよ。  そこで外務大臣、今やりとりを聞いておわかりだと思うのですが、私が疑問を投げかけているのは、政府の見解が事前協議の有権解釈について変わってきている。しかも高辻さんのこの見解というのは、四条を引用したり、実に回りくどいことを言っているのですね。しかし、はっきり「ない」とはここでも言っていない。しかし、だんだんいつの間にか変えてしまって、要するに米側に義務があるから、米側が申し出てこなければ日本側から申し出れないという方向に変わってきたのですよね。そうしますと、さっきから引用しますように、こういうふうにはっきりと双方にある、日本側にもある、しかも、条約局長であるとか時の外務大臣であるとかそういう人々の国会答弁が、政府の一存で変えられるということには我々は合点がいかぬということなんですよ。外務大臣、これは本当に重大な問題だと私は思うのですよ。なぜ変えたのか、その根拠をはっきりさせていただきたいと思う。
  254. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私は、これは何も答弁の趣旨が変わっているとは思いません。これは事前協議制度そのものについての解釈から出た考え方でありまして、事前協議制度というのは、米軍の行動に一つの規制を加える、そのためにアメリカ側が申し出なければならないという筋合いのものですから、事前協議についてアメリカの申し出というものを義務づけたということであって、事前協議制度の建前から言うと、アメリカがまず問題を提起しなければならぬ、これは当然のことだと思いますし、我が方からアメリカ側に対して事前協議を行うという筋合いのものではない。ですから、事前協議の制度の建前として、あくまでもアメリカに申し出の義務があるのであって、日本側から申し出る筋合いのものではない、こういうものじゃないか。これは終始一貫している日本政府としての事前協議制度に対する考え方であって、これが交換公文の基本的な考え方であろう、こういうふうに私は思っております。これは変わっていないと思います。
  255. 上原康助

    上原委員 これだけに深入りするわけにもいきませんが、やはり政府は無理があるんじゃありませんか。私に言わせれば、仮に善意に解釈して、条約解釈上、法律解釈上、それはないといかぬですよ。アメリカが申し出なければ、我が方にないといったら、ではどんな疑惑があっても、検証することも確かめることも日本側はできないということですよ。そんなばかな話がありますか。しかも旧安保から今日まで何年になる。新安保からでも二十五年たつ。これだけ核疑惑があって事実関係も我々が国会で出しても、アメリカ側から申し出がないから、協議がないから核持ち込みはありません、こんなばかな議論日本の国会以外どこで通りますか。だから解釈も変えざるを得なかったわけでしょう。だから、条約解釈上、法解釈上はやはり日本側にもその権限は留保されていると私たちは思う。しかし皆さんは、非核三原則との関係で、政策的に聞かないことにしたんじゃないですか。少なくともそれなら論議的にもある程度筋が通るのですよ。国会の場というのは時間も制約されるので、なかなか突っ込んだあれをやったって中途半端に終わるのだが、大臣、そんな全く説得性のない答弁だけでは納得できませんよ。そこはどうなんですか、今私が言ったこと。法制局長官、法律解釈上はどう考えたって、日本側に疑惑があるというものについて、全く、相手が持ってこない限りこれを確かめることもできない、どうですかと言うこともできない、こんなふざけたあれで、何が平和と安全ですか。法解釈上はその権限は留保されているけれども、あるけれども、政策的に皆さんは聞かないことに立場をとった、こう理解するのが私は論理的にも合っていると思うのだがね、どうですか。
  256. 小和田恒

    ○小和田政府委員 正確を期するために申し上げたいと思います。  政府が解釈を変えたというお話がございますけれども先ほども申し上げましたように、昭和三十五年の新安保条約を審議する国会におきまして、岸総理大臣あるいは藤山外務大臣等の方々が、この問題についての成立当時の考え方を申し述べておりまして、その考え方は今日に至るまで同じ考え方でおるわけでございます。例えば岸総理大臣はこの点につきましてこういうふうに述べております。   これらの事項が、従来アメリカが単独の意思で実現できたものを、事前日本側に協議して、日本側の意見を聞いてこれを実行するということにいたしたわけでございます。従ってその場合に、アメリカ側から相談があり協議があった場合において、日本日本の自主的な立場で、それをよろしいといって承認する場合云々 こういうふうに述べているわけでございます。  それから、第二点のお尋ねでございますが、御承知のように国際条約というものの基礎にありますのは信義誠実の原則でございます。したがいまして、国際条約において国と国とが約束をしました場合に、相手がそれを誠実に実行する、こういうことは国際条約の大前提になっているわけでございます。したがって、私どもといたしましては、日米安保条約の体制の中において米国日本に対して厳粛に約束をした国際約束を誠実に守る、こういうことを前提にして対処しておる、それが日米安保条約の基本であるということを申し上げているわけでございます。
  257. 上原康助

    上原委員 もうそういう優等生答弁はいいのですよ、条約局長。それでは納得しない、できない。あなたは、誠実に実行されていると言う。  ではもう一度確かめますが、事前協議というのはいわゆる三項目ありますね。これも議論すれば幾らでもありますけれども、あなたは、配置における重要な変更にしても、装備における重要な変更にしても、我が国から行われる戦闘作戦行動にしても、全く形骸化しているじゃありませんか。幾らも例はあったのだ、しかも量的には全部拡大をした解釈をとってね。では、それは誠実に守られていると言うけれども、なぜこの核持ち込みの疑惑というのが深いかというと、冒頭申し上げたように、一つは、在日米軍基地の実態というものがアメリカの核戦略下にあるということ。それは十分な核能力を備えているということ。第五空軍にしても、嘉手納の三一三にしても、あるいは第三水陸両用海兵隊にしても。北から言えば、北海道でしょう、青森でしょう、横田、横須賀、佐世保、沖縄、どこだってみんな核一体ですよ、だれが見たって。それは常識論なんだよ。皆さんは、そういう疑惑が出ても事前協議の申し入れがないからという一点張りで、アメリカ側を信じているというだけで通していますが、それでは通りませんよ。  七四年のラロック証言、八一年五月のライシャワー発言があるでしょう。こういうことに対して解明ができていないじゃありませんか。それと、これはきのうの沖特でも取り上げられましたが、改めて確かめておきたいわけですが、アメリカ側から申し入れがないというわけを盛んに言っているわけですが、アメリカ側としてはある意味では迷惑をしているのじゃないですかね。日本の国会がそういう非核三原則というものを盾にとって、状況判断の上では明らかに核が持ち込まれているという実態であるにもかかわらず、知らぬ存ぜぬ。もう見ざる、聞かざる、言わざるの原則ですよ。非核三原則ではなくて、これは三ざる原則だ。  そこで、具体的に聞いておきたいわけですが、例えばおとといの朝日新聞です。要するに「六十年代に結論出す」、核持ち込みについては。一時は、どこかにおろしてくるとかそういうことが真剣にアメリカ側でも検討をされた、日本の反核運動や非核三原則や核に対する反応が強いということで。こういう事実は日米間においてあったのかどうか。少なくとも、アメリカ側がそういう検討を具体的にやったという米元高官の発言がある。これは名前は出ておりませんが。そして具体的には、ラロック証言とかライシャワー証言とか、そのほかに幾らでもある。そういうものを総合して考えてみると、少なくとも一時寄港であるとか領海通航であるとかいうことについては核は持ち込まれている。私は陸上にも持ち込まれている可能性は強いと見ている。こういう変化があって、この解釈というものをだんだん皆さんは変えてきたのじゃないのか。状況判断からして、客観的な面から見て、これも疑わざるを得ません。こういう事実はあったのですか、なかったのですか。
  258. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 御指摘の新聞記事については、私ども承知しておりませんし、それから、そこに書いてありますような内容につきまして、過去において日米間で話し合われたことはございません。
  259. 上原康助

    上原委員 そうしますと、外務大臣、後でまたF16の問題を含めて核の疑惑についてただしていきますけれども、これだけ核が持ち込まれたのじゃなかろうかという、非核三原則がなし崩しにされ、実質的には二・五原則から二原則に変わってしまっている。私は、これは良識ある政府職員にしても自民党の皆さんだって、内心は大変おかしいと思っていらっしゃると思うのですよ。しかも我が方から確かめることもしない。二十五年たってもアメリカはそういう協議はしたことはない。恐らくこれからもやらぬでしょうね。これじゃいけないのじゃないですか。このことに対しては、やはり政府は国民に疑惑を晴らす義務があるのですよ。このことをどういうふうに今後解決していかれようとするのか。改めて事前協議のあり方と核持ち込みの問題を聞かせていただきたいと思うのです。
  260. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 事前協議の解釈については、先ほどから私を初め政府委員が申したとおりでありまして、上原さんの発言を聞いておりますと、基本的には、アメリカの行為というものに疑惑を持つか、アメリカを信用するかどうかという認識の差ですね。安保条約というものはそういう両国のかたい信頼性の上に成り立っておるわけですから、その信頼性が失われたら条約の意味はなさないわけですね。両国とも安保条約はきちっと守るということを言っておるわけです。確かにラロック証言もありましたし、ライシャワー発言もありました。それから新聞に出ておるようなこともありました。私も外務大臣になりまして、この問題は国民の中に疑惑があることも事実です。国会で上原さん初め皆さん方が、疑惑があるからといって追及されておることも事実です。この点はアメリカ側に対しても、一般的に条約についての信頼性というものをはっきりさせなければいかぬと考えまして、実はおととし私がマンスフィールド大使を招致して日本の非核三原則を説明いたしまして、こうしたいろいろの問題が起こっておるし、国民の間にもあるいは国会の中にも議論があるのだ、こういうことを申し述べたわけです。これに対してマンスフィールド大使は、アメリカは安保条約、その関連規定というのはあくまでも遵守する、この関連規定の中にはもちろん事前協議制度というものがあるわけですから、これは遵守するということをはっきり言っておるわけでございます。同時にまた、日本における核に対するいろいろな国民感情というのもアメリカとしては十分承知しておる、こういうことでございますから、我々としてはこれは問題はない。いろいろな発言はあっても問題はないし、あくまでも信頼性に基づいた安保条約、その関連規定というものがきちっと日米両国の間で守られておるということによって、日本の平和と安全は保たれておるし、また今後も保たれるというのが我々の確信であります。
  261. 上原康助

    上原委員 そういうことで納得するということであれば、外務大臣、それはおめでたい話ですよ、本当にあなた、ニューリーダーとして。何も、アメリカを信ずるか信じないかという問題じゃないのですよ。これだけの疑惑があるものに対して、日本の非核三原則、いわゆる非核地帯ということに対しての認識の問題なのですよ。事実の問題なのですよ。  それでは、これまでアメリカは、核の存否については明らかにしないという方針をとってきたということを言っているわけですが。最近、ニュージーランドの例があるわけでしょう。外務大臣、あなたはそんなことをおっしゃいますが、常識的に考えてみてくださいよ。ニュージーランドに寄港する軍艦の七割が、核を積載しているから入港できないといった事実が報道されたでしょう、ロンギ首相の拒否によって。それは一般常識です、アメリカの艦船というのは、だれが考えても、しかも洋上でおろすことは、技術的には可能かもしれぬけれども難しい。それはそうでしょう。日本に寄るときにフィリピンでおろしてくるとかどこでおろしてくるとか、そんなしち面倒なこと軍隊はしませんよ。それを日本だけは、申し入れがありませんから信じておきましょう、こんなおめでたい話がありますか。それではあなた、対米外交の対等性、平等性というのは全くなし、アメリカがやりたいほうだいの基地運用じゃないですか。そのことを私たちは問題にしていることを改めて指摘しておきたいと思うのです。  スペインとの取り決めについても、これは五十一年ごろですか、核を持ち込まないということを明記しているわけですね。それと最近、ポルトガルとの取り決めにおいても核の持ち込みはしない、十分に査察、点検できるようになっておる。このことについてはおわかりですか。また、スペインとの関係の資料はありますが、ポルトガルとの新しい協定については外務省は入手しているのかどうか。
  262. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 ポルトガルとの協定につきましては、私ども承知しておる限り、核兵器の問題に直接触れた規定はないというふうに承知しております。
  263. 上原康助

    上原委員 それもおかしいですね。そうしますと、どういう内容になっているか勉強さえもしないのですか。
  264. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 私どもが把握しております昨年の五月にアメリカとポルトガルの間で署名されました協定の中の補足協定の中で、通常兵器の弾薬、爆薬の貯蔵についての規定があるということを承知しておりますが、それ以外、直接核兵器の問題に触れた規定というのは承知しておりません。
  265. 上原康助

    上原委員 要するにわかっておって、それもまたごまかしもほどほどにしてくださいよ。要するに通常兵器しか、ポルトガルには貯蔵もしくはあれが協定上できないということでしょう。裏を返せば、核についてはノーということですよ。スペインもそういうふうになっておる。スペインははっきりニュークリアウェポンと書いてある。ポルトガルはあなたが言うようにぼかしておる面はあるけれども、取り決めは通常兵器しか貯蔵できない。外務大臣がおっしゃるように信頼関係というが、ほかの国ではそういう取り決めをやっておる例が幾らでもあるわけです。なぜ日本だけがそれもやらない、確かめもしないのか。ここに日本外交の主体の問題がある、主権の問題がある。私が強調しているのは主権の問題ですよ、外務大臣。改めてお答えいただきたい。
  266. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 アメリカとスペインとの協定については委員承知のようでございますが、これは確かに核兵器の貯蔵についてはスペイン国政府の同意を必要とするという規定がございます。それで、まさにスペイン政府の同意がなければスペインの領域内に核兵器の貯蔵はできない、こういう仕組みでございますから、貯蔵に関して申し上げれば、我が国の安保条約の事前協議と本質的には異ならない制度であろうというふうに一応理解しております。
  267. 上原康助

    上原委員 だから、核の存否については明らかにしないとか、時にはそういうものを建前にして非核三原則をぼかしたりいろいろやってきたから、今はかの国は例があるじゃないか、しかも最近はニュージーランドの例だってある、だから日本が主体的にやろうと思えばできないことじゃないのです。核の持ち込みがなされているかどうかを確かめることは可能なんだ。それをやるからといって、何も友好関係を損なうとかそういう問題じゃないと私は思うのだ。  次に進みますが、今、核の持ち込みについてアメリカが協議をしないからそういう疑いはないのだということですが、例えば沖縄基地の実態にしましても、前から言っているように、嘉手納弾薬庫、第四百弾薬整備部隊というのは明らかに核弾頭、核装備を扱う能力はもとより、一説にはまた貯蔵の疑いが深い。それから、これは三沢にも新しくできるようだが、AUWショップというのがある。核爆雷等の最新の水中兵器を貯蔵する弾薬庫、施設ですね。あるいは核積載能力のあるF4がある。岩国にもA4、A6、これも核攻撃能力を持っている。また能力のあるのと装備しているのとは別だとおっしゃるでしょうが、B52の飛来、明らかにB52というのはアメリカの核戦略の一つの柱ですよね。これが台風避難というようなことでしばしば飛来をする。しかもB52はこれからハープーンに改良されて、この七月からグアムにいるものが全部核装備をするということを、アメリカ自体がスターズ・アンド・ストライプスで明らかにしていますね。幾らでもそういう実例はあるわけですよ、外務大臣。だから私たちは、核基地、核機能の体系というものを真剣に考えなければ、この核問題というのは、核抜きとか、ただ持ち込む、持ち込まないだけの論議では片づかない。日本の平和と安全が保たれていると言うわけですが、本当に皆さんは、核の抑止で日本国民の生命、財産というものが保たれると思うのですか。その抑止論というものを少しやってみたいわけです。  日本を核の傘で守るという場合に、どこの核の攻撃から日本を守るというのですか、これは明らかでしょうが、これが一つ。  しかも不思議なことには、かつて防衛庁でいろいろ防衛問題をやってきた防衛庁出身の人々が、核の傘では日本を守れない、そんな論理は成り立たない、こういろいろ主張している方々もたくさんいますね。本当に核の傘のもとで、日本が有事の場合に、核戦争になったという場合に、日本国民の生命、財産が守れるという理解をしているとするならば、その根拠と、なぜ守れるのかを明らかにしていただきたいと思うのです。報復措置は受けないのかどうか。
  268. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 核の傘と通常言われております場合に、私どもの理解しておりますのはあくまでも抑止力ということでございまして、実際に核戦争の場合にどうのこうのという問題ではなくて、先ほどの冒頭の委員の御質問に対して御答弁申し上げましたように、あくまでも戦争が起こらないための抑止である、その抑止力の中には通常戦力と同様に核戦力というものも含まれておる、こういうのが核の傘という場合の政府の理解であろうというふうに存じます。
  269. 上原康助

    上原委員 ですから、その抑止という面だけでは、本当に核が使用されないという保証はないわけでしょう。万一の場合使うから核開発をやろうというわけでしょう。現にまた核を持っているわけでしょう。欧州一帯に七千発、韓国に七、八百発戦術戦域核がある。それは抑止と言ってしまえば皆さんは安心かもしらぬが、それを万一使うおそれがあるから、核を貯蔵し、核兵器を、核弾頭を保有するわけでしょう。使われた場合にはどうなるであろうかということも考えるのが政治であり、核に対する認識じゃないですか。この点についての答弁は外務大臣と防衛局長ですか。
  270. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 安保条約が結ばれまして二十五年にもなるのですけれども、やはり核の抑止力があるから日本の平和というものは保たれている、これはまさに歴史が証明していると思います。戦後四十年間も核を持っている国の戦争がなかったというのは、これは今までの歴史の中では考えられないことでありますし、非常に危険なときもあったわけですが、平和を保ち得た、相戦わなかったというのはやはり核の抑止力だったと私は思います。この抑止力があったから平和が保たれているのであって、核でお互いにぶつかればもう両国の破滅につながる。それが抑止力というもので保たれておった、これが大きな原因ではないか。ですから、米ソ間においても核抑止力、核の均衡というのがここにあったから、熱い戦争というものがなくて今日に至っておる。  しかし、我々は、核の抑止力についても、核がどんどん増幅されるということは世界の平和のために決していいものではないと思っております。そのための核軍縮というものが今行われているのですから。しかし現実的には、世界の歴史の中で核の抑止力というのが世界の平和を保ってきた、これはもう現実に歴史が証明しているじゃありませんか。
  271. 上原康助

    上原委員 そこを言われると、やはり安倍さんかなという感じがしないわけでもないですが、それはちょっと外務大臣としていただけませんね。そうなると、あなたの言う創造的平和軍縮外交ということとは大分理論がかけ離れるのじゃないですか。核が存在するから抑止になっておって戦争が起こらなかったのだなんて。それは人類の良識ですよ。そういう感覚ではこれはいただけませんね。アメリカが核を持っているから、ソ連も持っているから、バランスがとれているから平和だなんて。  では、皆さんは、報復攻撃ということについてはどういうふうに見ておられるのですか。
  272. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 繰り返してございますが、抑止というのは、核報復ということよりも、核攻撃でありましょうと通常兵器による攻撃でありましようと、およそ戦争というものを抑止する、そして平和を保つ、こういうことでございますので、核報復という問題自体を取り上げて論ずるというのは、適当ではないのではなかろうかというふうに考えます。
  273. 上原康助

    上原委員 それなら報復はあり得ないというのですね。もちろんそうあることが望ましいですよ。しかし、万一の場合にはボタンを押すかもしらないわけでしょう。レーガンさんは現に先制攻撃もあり得ると言ったのですよ。それは国防白書を持ち出すまでもないですが。  私がなぜそのことを言うかといいますと、今、軍の施設あるいは在日米軍基地で、核報復を受けるかもしらないということで、災害訓練なりいろいろやられている事実が私はあると思うのですが、皆さんはそういうことについて御存じですか。
  274. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 従来から種々御質問がありましてその機会にお答えしておりますが、一般的に米軍訓練を行う場合に、核攻撃を受けた場合の対応ぶりというものについて必要に応じて訓練を行うことがあるということは承知しております。ただ、今の委員の御質問に対して、具体的にどういうことをアメリカがやっておるかということについては私ども承知しておりません。
  275. 上原康助

    上原委員 すぐそういう答弁にすりかえていくということはこれまでも二、三ありましたが、しかし、これは大変深刻なことが今行われているのですよ、外務大臣。核の報復を受けるかもしらぬということで。  これをちょっと外務大臣に見せてください。これはそうたくさんありませんが、ちょっと目を通してください、外務大臣。   「攻撃、平時の大きな事故」、自然災害等によって引き起こる現実の恐怖。沖縄の嘉手納基地は太平洋のかなめと言われている。周りを見よ。航空機、軍需品、兵員など、我々が抱く報復攻撃措置は脅威である。戦争になった場合は、敵はこの可能性を否定しようと試みることを論理が指摘する。我々は、下記のそれぞれ、あるいはその組み合わされた攻撃を受けやすいのである。生物化学兵器攻撃、核攻撃、化学兵器攻撃、通常兵器攻撃。  生きるための知識を持たなければなりません。それぞれの兵器のこわさを知り、生きるための最良の技術を知ること。各自はいかなる災害や緊急事態に対応する行動を知る責任があり、保護者として、生き延びるチャンスを多くするために、家族に対してこの知識を与えねばならない。何をなすべきか、いっそれをなすべきかを知ること。 ということで、核の報復攻撃を受けるかもしらないということで、実際に次のページ、二章のところを見てください。   攻撃に備えて要求される危険と各自の行動。  核兵器の危険。  核爆弾の爆発は、二、三の違いはあっても通常の爆発物に似ており、その爆発力は数千倍あるいは数百万倍大きく、そして兵器に核分裂物質が使用されているので、放射線の放射をもたらす。このタイプの爆発の危険は…… A、B、Cとずっと書いてある。どういうふうな対策もしなさいとか、ガンマ線に対してはどうだとか、ベータについてはどうだとか。これは米軍は全部、今、在沖米軍だけじゃないと私は思う。恐らく横田その他、そういうことをなされているでしょう。ここまで深刻なんですよ。だからアメリカ人は、こういうマニュアルあるいはテキストによって全部教育訓練をされている。これはなぜかというと、特定の日本人に対して教育訓練をしようという資料なんですね。もちろんそれは災害とか台風とかなんとか言うかもしれませんが、これのメーンは、核攻撃を受けた場合にどうするかということなのです。だから、核の傘に安住するとかなんとか言っていますが、冗談じゃないですよ。あなた。なぜこういう軍事基地のあるところがこういう訓練まで、しかもこれは一般には明らかにされていない。だから、一説によると、米軍は万一有事の場合には二十四時間以内に全部日本以外に撤退をする、そういう体制もできているという計画さえあると言われている。そうしますと、軍事基地を抱えている沖縄であるとかあるいは三沢であるとかあるいは佐世保であるとか、まあ関東周辺は日本の心臓部なので一発とかんとやるかどうかは別だが、わかりませんがね。  これはどうなんですか、本当に。ここまで事態は深刻な問題が出ているということに対して。だから私は、日本全体の今の軍事基地の実態、アメリカの核体系にすっぽりはまり込んで、やれ非核三原則だ、核は持ち込まれていませんなどと相も変わらず同じことを繰り返しているのだが、報復攻撃を受けるかもしらぬということで、アメリカはちゃんとそういう警戒訓練を常時やっているんですよ。この事実に対してどういう御見解なのか。また、これは今後私たちにとって大変重要な問題だと思う。日本人に対してもできればそういう訓練をさせようという計画があるやに聞いている。どうですか、今私が事実をもって指摘した点について。これは別の資料じゃないんですよ、本物です。
  276. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 この資料はどういうものか、私も今初めて見たばかりですけれども、しかし、私は、仮に軍隊が出しておる資料とするならば、軍隊の性格からして、あらゆる事態に備えていくということはこれは軍隊としての属性といいますか、軍隊としての性格上からこれは当然のことだと思うんですね。ですから、あらゆることを考えながら軍隊は常時これに備えておくし、この準備のための訓練もするということは当然だろうと思うんですね。それと日本の非核三原則、それからまた安保条約、そういうものとはこれは関係のないことだと私は思っております。
  277. 上原康助

    上原委員 外務大臣という感覚がよくわからないね、そこまで言うと。軍隊はどんなことでもやっていいのだということになる。さっき皆さん方から、核の抑止で本当に安全が保たれるかという質問に対して、極論事態においてはどうかというと、いや、それは使われる可能性はないはずだからそれが抑止なのだと、そんなのんきなことを言うわけでしょう。しかし、あなたはここで大臣になられて、ニューリーダーさんだから、核の心配なんかしないかもしれない、報復攻撃を受けないと言われる。しかし、現にこういうものを見せつけられて、その基地周辺で生活している住民というものは、あなたが言うように、軍隊はそういう訓練をするのは当たり前だからそんな心配はするなと言ってみたって、そうはいきませんね、大臣。だからあなた方が言うように、核の傘で甘んじておれば安全なんだということは、この一つの事実をもってしてもこれは戦々恐々ですよ、その周辺の住民、国民にとっては。したがって、これだけ報復攻撃を受けるであろうという前提でいろいろ訓練をしている、警戒態勢をとろうということは、即相手が核を使うならこっちも核を使うという前提で、在沖米軍基地や在日米軍基地全体というものが仕組まれている、いわゆるシステム化されている、構造化されているということを考えるのが、あなた、常識じゃないですか。だからそういうことを取り除く努力を政府がやることが、本当の非核三原則をアメリカに対して遵守をせしめ、日本が被爆国として、あなたがおっしゃる創造的反核、反核ということはあなたは言っていないが、創造的軍縮平和外交というものをやる基本でなければいけないと思うんですね。それを、軍隊だからそれをやるのはしようがないだろう、どんなことでもやるだろう、そういう御認識ではいささかどうかと思いますよ。いかがですか。
  278. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 アメリカの軍隊ですから世界的に展開をしておりますし、日本には日米安保条約の趣旨のもとに展開しているわけですけれどもアメリカの軍隊がいろいろと演習したり、あらゆる場合を想像してこれに対する対応策を考えるというのは、私は軍隊である以上はこれは当然のことじゃないかと思いますね。  また、上原さんは、そういう軍隊は日本にいない方がいい、そしてまた安保条約なんかない方がいい、その方が日本は平和であり、安全であるというお考えにつながるのじゃないかと思いますが、私たちはむしろ、今の安保条約、そしてそれによるところの米軍の駐留、そういうことによって自衛隊の存在とともに日本の平和と安全が保たれておる。米軍の抑止力によって日本の平和と安全が保たれておる。それは、戦後ずっと日本の平和が保たれておるという歴史から見ても、我々のこの政策というものが正しかった、こういうふうに思っておりますし、同時にまた、日本の非核三原則、そういうものはもうきちっと、日本としては国是としてこれを守り続けていかなければならないことでありますし、また核の持ち込みについては、これは申し上げるまでもなく事前協議という立派な制度があるわけですから、これによってきちっと歯止めがかかっているから、その辺についての御心配は要らない、こういうことでありますから、いろいろと全体的に見て、日本の今日の平和というものは、我々の先輩が築き上げてきたこの日米安保体制というものによって築かれ、そして今後も平和というものが保障されているというふうに私は思っております。
  279. 上原康助

    上原委員 確かに戦後四十年平和が続いた。私は、それは何も日米安保のあれとかそういうあれじゃない。それはいろいろな犠牲を幾らも受けてきたし、やはりそういう日本の戦争体験と、国民の二度と戦争をしないという、平和憲法を守れという、むしろ私たちの良識が発揮されて今日まで来ているという理解です。  しかし、安倍外務大臣、民族というのは、四十年続いたからこれで結構というわけにはいかないでしょう、未来永劫に繁栄しなければいかぬわけですよ。私たちは、あなた方が言うそういった核抑止とか、あるいは日米安保体制の中でがんじがらめにされて、核が持ち込まれても、いや、相談がないから持ち込んでおりませんという、そういうおめでたい立場はとらないというだけのことなんです。万一の場合に、ボタンを押されたら核のえじきになるかもしれない。そのときは、四十年平和だろうが五十年平和だろうが、それこそもう民族の滅亡じゃないですか。そういう事態を来させないための平和のあり方、軍事・防衛のあり方というものを考えるべきだというのが私たちの立場なんですよ。何もアメリカとけんかしなさいとは言っていない。  それで、あなたは今軍隊とおっしゃっていますが、これはれっきとした日本人向けのテキストですよ。場合によってはこういうことを特定の監督者あたりにはさせていくということなんです。そこまで事態は深刻だということなんです。そのことについて、これがどういう目的でやられているのか、確かめますね。
  280. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 ちょっと確認させていただきますが、今いただきました資料は、沖縄において駐留軍の労務者の方々のために米軍が作成した資料、こういうことでございますか。もしそういうことであれば、私どもとしてはアメリカ側にちょっと照会してみたいと思います。
  281. 上原康助

    上原委員 そうではないです。
  282. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 手引と書いてございますが、ちょっとどういう性格の文書であるかということを教えていただいた上で判断したいと思います。
  283. 上原康助

    上原委員 何も私が教える必要ないでしょう。あなた方、それはちゃんと調べなさいよ。アメリカにただせばいいじゃないですか。  核の傘と言うけれども、そういう事態まで深刻な向きもあるということは御認識いただかないと、大臣、日本全体の今の基地のあり方というものがそういう一触即発の状況に行きつつあるのですよ。だから、これを引用するとまたいろいろおっしゃるかと思って言いませんが、前にグロムイコさんも沖縄に核があるのじゃないのかと言われ、この間ゴルバチョフ書記長に中曽根首相がお会いしたときも、初対面で、沖縄に核が配備されているのじゃないかという懸念を表明したということは、非常に重大ですよ。けしからぬというだけではいかないのです。  そういうものと、こういうことがやられているということとを突き合わせて考えてみると、沖縄基地の実態ということとか、グリーンベレーが配備をされ、現にいろいろな事故がもう頻発している、日米の軍事演習が激しくなっている、三沢にはF16が配備される、これはもう明らかに核攻撃能力を持っていますね。こういう日本全体の基地の機能、基地の強化という実態からして、やっぱり核戦争の危機というものがあり得るかもしらないという懸念を持つことは当然でしょう。しかも、こういうことが基地内で部分的に出てきているということを考えた場合にです。そこで私は、そういう事実関係を今言っているわけですよ。皆さんが余りにも平和だ、日米安保は平和のために役立っているんだ、何の心配もありませんと言ったって、そうはいかぬというのです、こういう事実があらわれている以上は。  したがって私は、外務大臣、改めてやはり、日本の核基地化ということについての国民の懸念ということと事前協議のあり方というものについては、日米関係は信頼関係だ、相手を信頼すればいいというだけで事済まないいろいろな事実関係が出てきている以上は、アメリカに対してもう少しこの種の国民の疑惑について精査をしていく、ただしていく努力を私は政府、特に外務省はやるべきだと思うのですが、いかがですか。
  284. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いや、この点は私がるる申し上げましたように、両国間で結ばれた条約というのは両国の信頼関係、これはアメリカ日本が信頼するというだけでなくて、アメリカ日本を信頼するという、お互いの信頼関係がなければ条約の基礎、根底というのが完全に崩れるわけですから、やはりその辺が一番大事じゃないかと思うのです。何か疑いがあるんじゃないか、危ないんじゃないかというふうに疑ってかかるということでは条約というものが機能しないわけですね。そういう意味において、我々は、今の日米の体制からしましてその信頼関係はきちっと保たれておる、そして少なくともその根幹であるところの事前協議制度といったものは立派に今日作用しておる。それは、私はアメリカの大使を呼んで、安保条約とその関連規定というものはきちっと守りますよということをアメリカも明言をしているわけでありますから、この日米安保条約に関しては決して問題にされるようなことはあり得ないということでございます。ですから私は、あれが危ない、これが危ないと言われても、どうもそこのところに完全に認識の差があるんじゃないかというふうに思われてならないわけです。  確かに、ソ連のグロムイコさんも沖縄に核があるのじゃないかと言いました。ゴルバチョフさんも確かに言いました。私も聞きました。これは日本側としてははっきり否定したわけでございますが、そうしたソ連の疑問というのも、それは国会でも上原さんが指摘されているようなそうした議論の中でおのずから、ソ連もあるいは日本にあるかもしれないという疑問も生まれてくるかもしれませんけれども、これこそまさに日米関係に亀裂を起こさせよう、日米を分断させようというソ連の一つの考え方というものがどうもあるように思われます。私たちはソ連と仲よくしたいと思っておりますけれども、そういうところはやはりちゃんと日ソ関係で信頼関係をはぐくむように、ひとつ時間をかけて育てていきたいと思っております。
  285. 上原康助

    上原委員 別に他意があってこういう問題を指摘しているわけじゃないんですよ、外務大臣。事実は事実としてお認めになった上で、外務大臣や中曽根首相がゴルバチョフ書記長に、いや、沖縄に核はありませんよ、日本は非核三原則は守られていますよと、それはそう言うでしょう。しかし、そう言ったって、我々はそれじゃ納得できませんね。国民だって、日本に核が持ち込まれていないという皆さんの国会答弁の論理の説得性のないということについては、もうわかると思うのですよ。だから、そうおっしゃいますけれども、遠からず、この非核三原則の問題とか事前協議の問題では、政府はどこかでもっと苦しい立場に立ちますよ。  条約上、それは双務性があるべきなんですよ。仮に政策上聞かないことにしているというなら、これは論理として話はまだ合う。まだこの方が理論はかみ合うでしょう。しかし、今のアメリカの軍事戦略というか、そういう装備の関係で、核を持っていないと考える方がおかしいですよ。カール・ビンソンにしても、ニュージャージーにしても。そこまで言ったら何かソ連に味方するような、私は何もそんな主体性のない男じゃないです、冗談じゃありませんよ。もっと主体的な外交をやってもらいたいということを言っているのです。  あと、関連で関先生がおやりになるということですから、最後に施設庁、国会も終わりかけていますのでちょっと聞いておきたいのですが、基地周辺の住宅防音問題で端的に聞きますからね。  要するに、米軍機自衛隊機の騒音対策の一環としての住宅防音の対策が講じられているわけですが、この線引きがなされた後にできた家屋に対しては今、防音対策をやっていませんよね。北谷町や嘉手納町ではそういう家屋が一体幾らぐらいあるのか、またそれについてはどういうふうな対策を今後おとりになろうとするのか、これが一つですわ。この面の実態把握はなさっているのかどうか。  それともう一点は、やはりこれの原因というのは米軍ですから、そういう意味で電気料が非常にかさむということで再三要請行動がなされている。だが、一向に政府はこういうことについても対策を立てようとしない。大蔵省も来ていただいているから、簡単に説明していただきたいと思います。  三点目は、既にその耐用年数が来て取りかえなければいけない空調施設というものもあると思うのですが、これについてはどういうふうな対策を今後おとりになろうとするのか。あわせて御答弁をいただきたいと思います。
  286. 宇都信義

    ○宇都政府委員 まず第一点でございますが、第一種の住宅防音の区域指定告示を行いました後に建設されました住宅の防音工事につきましては、先生おっしゃるとおり、現在私の方では防音工事の対象世帯として取り扱っておらないわけでございますが、自衛隊等の飛行場におきましては、全国に三十五飛行場ございまして、対象戸数は、現在七十五WECPNLの地域におきましても、約二十六万世帯の住宅がございます。そういう告示後にできました住宅がいかほどあるか全体をつかんではおりませんけれども、沖縄におきましては嘉手納飛行場周辺に数百戸あるのではないかと考えておりますが、これらの住宅につきましての対策としましては、現在やっております告示される以前にありました佳宅の防音工事が先決だと考えておりますので、そういう工事の達成後においてまた何らかの考えが出るかとは思いますが、少なくとも現段階におきましては格別の措置をとる考えになっておりません。  第二点の、その住宅防音工事をやりました場合の空調機といいますか換気、クーラー等の電気料の補助の点でございますが、この点につきましては、できるだけ早く七十五WECPNL以上の地域に住んでおられる方々の住宅防音工事ということを第一義的に考えておりまして、電気料の補助については今後の検討課題と考えております。しかしながら、施工しました世帯の中には生活保護世帯等の方もございますので、こういう方については何とか、国の財政事情の苦しい中ではありますが、今後実現について努力したいと考えております。  それから第三点の、設置しましたクーラー等の機械が沖縄等におきましては特に塩害を受けているという実情にございますので、この点についてどうするかということでございますが、先生承知のように、腐蝕の状況等につきまして五十九年度におきまして調査を実施いたしました。現在その調査結果を取りまとめ中でございますので、その結果を分析しました上で検討し、処理方針を決めていきたいと考えております。
  287. 上原康助

    上原委員 約束の時間ですから、十五分残しますが、一言だけ大蔵省に。  今の財政状況もわからぬわけではありませんが、特に二点目の電気料の問題は、施設庁からは何回か予算要求されているけれどもなかなか計上されないということでしたが、特におっしゃった生活保護者等々弱者の方々を優先するとか、何らかの方法を早目にやっていただきたい。  それと、告示後になされた家屋についても検討課題ということですから、これも不平等なので、施設庁としては積極的に実現できるように取り計らっていただきたい。  この二点だけ要望して、大蔵省の見解をちょっと聞かせていただきたいと思います。
  288. 西村吉正

    ○西村説明員 ただいま御指摘の幾つかの点につきまして、施設庁の方から実情等についてはたびたびお話は伺っておるわけでございまして、中には予算要求として出てきておるものもございます。残念ながら、ただいまの非常に厳しい財政状況のもとで、そのような御要望を予算上実現するに至っておりませんけれども、なお引き続き、施設庁の方から実情をお伺いしながら御相談をしていきたいというふうに考えております。
  289. 上原康助

    上原委員 終わります。
  290. 中島源太郎

    中島委員長 関連して、関晴正君。
  291. 関晴正

    ○関委員 外務大臣に、まず第一にお尋ねしたい。と思います。  私どもの青森県の三沢にF16が配備され、やがて五十二機にもなんなんとする計画であるようでございます。このF16が加わることによって天ケ森の射爆撃場の訓練回数も多くなりましたし、ますますこの射爆撃場が使われていく方向にございます。ところが、昭和五十年につくられました青森県におけるむつ小川原開発第二次基本計画というのがございまして、これはもう十年も前につくられた計画ですけれども、ちっとも進まない。進まないからといってもこの計画を放棄するわけにはいかない。計画はそのままにしておいて、今度は核燃料サイクル基地をここに設置したい、こういう計画が出てまいりまして、明日は十四省庁会議においてこの問題についての討議が行われる。そうして二十六日には閣議において口頭了解までこれが持ち運ばれる状況に現在ございます。  そこで私の聞きたいことは、アメリカ軍の大変なる訓練が強化されていく、核模擬爆弾も使われるような訓練が多く展開されていく、そういうことからあの地域は特別管制区として規定している。他の飛行機はすべてここに寄ってはならない、アメリカ軍が安全にその活動をし得るようにという配慮で特別区があるわけでございます。この特別区の真下に核燃料のサイクル基地が今置かれようとしております。我が国においては、民間の飛行機も軍用の飛行機もすべて核燃料施設の上は飛んではならない、飛ぶ際にはそこを避けて飛ぶように、こういう指示が運輸省からなされております。そういうときに、原発の何倍もの危険のある再処理工場やウランの濃縮工場を建設する、さらには低レベル、高レベルの廃棄物までそこに持っていこうというような計画があるときに、この飛行機の下にそういうものを置くことは適当ではない。そういう意味において、外務大臣としてはそれはうまくない、こういうふうにお考えを同じように持っていただけないだろうかと思うので、その点でお伺いしたいと思います。
  292. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今御指摘がございました原子燃料サイクル施設の建設計画に対しましては、お話しのように現在関係省庁間で調整が行われている、こういうふうに聞いております。  三沢の対地射爆撃場につきましては、これはもう今さら申し上げるまでもないわけですが、安保条約によりまして我が国が、米軍の使用のために安保条約及び関連取り決めによって提供をしておる重要な施設、区域でありまして、外務省としましても、この原子燃料サイクル施設の安全と三沢対地射爆撃場の機能の円滑な維持運用、この二つの調整が十分に図られるように、米軍との間においても、連絡も含めまして所要の措置がとられるもの、こういうふうに承知をいたしております。
  293. 関晴正

    ○関委員 特別管制区の下に施設がつくられる、当然飛行機は飛ぶわけであります。この問題について、私はアメリカの考え方、当然アメリカだってそういうようなことがあっては困ります、こう言うに決まっていると思う。そういう点についての御相談をされているのでございましょうか。
  294. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 御指摘のような問題もあろうかと思いますが、これまでのところではまだアメリカ側とそういう問題について話し合っておりません。
  295. 関晴正

    ○関委員 当然話し合って、そうしてある一定の意見の交換、そういうものがないままに外務省としてもよろしいとかというようなお返事はできないものと思うのですが、この点どうです。
  296. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 今後、当然のことながら関係省庁とも十分御相談いたしまして、もし米軍との間で何らかの話し合いが必要であるという場合には、防衛施設庁、それから外務省の方で話し合うということになろうかと思いますが、今までのところは外務省といたしましては関係省庁間のいろいろな御検討の結果を待っておる、こういう状況でございます。
  297. 関晴正

    ○関委員 そこで大臣、やはりきちんとしてもらわなければならないと思うのですよ。大体、青森県においてこのむつ小川原開発第二次基本計画というのがあるのですが、その基本計画にある同じ場所にこの核燃料の施設を置くようなものなのです。しかも、この二次基本計画というのは何かといいますと、石油コンビナートなのです。石油精製から、石油化学から、火力発電から、それが同じ場所なのです。大石平であり、弥栄平であり、この同じ場所に、何の修正もなく、何の変更も加えることなくして、今度は同じ場所に核燃料のサイクル施設を置きますよ、そういう計画なのです。そんなばかげた計画を、とにかく知らない人をいいことにして通してしまおう、計画では通してしまう、今こう考えている。防衛庁の方に対してはこれまでも再三申し上げてきました。そういうような危ない危険物の下に危険物が来る、しかもまだ核攻撃のできる飛行機が来るなんということになったら、また大変じゃないか、核訓練もまた行われる、そう考えますと、これに対して、この計画についてよしとするわけにはいかないであろう。「正式にまだ申し入れがないので、私どもの方の考えはまだはっきりいたしておりません」、これが防衛庁のお答えでありましたが、もうこの協議に入っているわけであります。それだけに、私は防衛庁の考えも聞きたいけれども、特別アメリカに、計画が進められた後に、これはいけませんよと言われた日には実に情けない。そういう点から、今の時点において、政府はもう二十六日にも閣議決定しよう、こういうときです。それだけに、外務大臣にも閣議の決定となれば責任があります。その際知らない、わからないでもいけないと思いますので、これはやはり時間をかけて、いましばらくきちんとした方針を整えるまでは考えさせてもらおう、再検討させてもらおう、こう構えるべきではないかと思うのですが、大臣いかがですか。
  298. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今お話しの問題は、私も初め基本的な考え方を答弁しましたし、政府委員も答弁いたしました。まだ米軍との話が開始されないといいますか、まだ米軍から申し入れがないということであります。今その調整作業がどういうふうに進んでいるか、今の段階で私自身承知しておりませんが、やはり安全ということは大事なことでありますし、そうした点も踏まえて調整等につきまして、こうしたこれから話し合うという事態が起これば、そういうことを踏まえながら話し合っていきたい、こういうふうに思います。
  299. 関晴正

    ○関委員 ぜひ、私は、起これば話し合うじゃなくて、もう起こっているわけですから、そうして明日は十四省庁会議外務省はこの十四省庁会議の中に入っておりません。したがって、外務大臣の役割を演ずる場所というのは閣議になってしまいます。二十六日の閣議です。そのときにぼんやりして、済みましたというのじゃ、これは大変です。そういう意味において、私は、そういうようなこともあるだけに、この問題には慎重に対処する、拙速主義はとらせない、こういうことで外務大臣もひとつ意思を明確にしていただけないだろうか、こう思いますので、重ねてお尋ねしたいと思います。
  300. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今の省庁間のあれに外務省も入っておらない、こういうことでありますし、私は、今初めての質問ですから事情をよくわかりませんが、今の御質問趣旨はよく承りましたので、そういう点も考えながら、今後いろいろ相談もないわけでもないでしょう、やはり安全という問題についてはそれなりに外務省としても関心を持っておりますから、そういう際には、そうした御意見等も踏まえながら話すということも十分考えられるわけであります。
  301. 関晴正

    ○関委員 以上申し上げた点に関連して、防衛庁の方のお考えがその後どうなったか、お答えいただければと思います。
  302. 池田久克

    池田政府委員 燃料サイクル関連の問題につきましては、現在、国土庁を中心にして関係省庁がいろいろ調整しております。防衛庁といたしましては、この燃料サイクル等の施設はエネルギー確保のために国家として非常に重要な政策であるとも考えておりますし、他方、対地射爆撃場その他、我々の施設の維持も非常に大事だと思いますので、それが両立するように国土庁の方と調整をしているところでございます。
  303. 関晴正

    ○関委員 両立するようにということは、あなたの方は、特別管制区を変更するか縮小するか射爆場を移転するか、そうでもしない限り私は方法がないと思うのです。例えば鷹架のあたりまで飛んでおるのだからいいだろう、尾駮の方に飛ばなければそれで済むだろう、こんな陳腐な話でこの問題をよしとしたり、それで調整がつくのだというような考えに立ったら、私は大間違いだと思う。  これは、ことしの三月七日の予算委員会の分科会においてもおたくの方から御答弁がありまして、「正式の申し入れがないので何とも言えない」、こうありました。今度あったわけですから、あったことに対しては、調整がつくというのはどういう方法で調整がつけられるか、その調整をつけられる見通しが立てられて、それが納得されるような問題になればこれは別です。しかしながら、こういう核燃料の施設の上には危険物を置かない、危険を誘発するような、そういう誘うような原因になるような事象は避けろ、これが安全審査の指針であります。この指針の精神というものを見るときに、せっかくやっているところにそんなものが来るのはもってのほかだ、これがあなた方の意思であるべきだ、こう思うので、その点についてひとつきちんと構えて対処していただきたいし、核燃料ということに迎合してしまって後で困るようなことをまたさせてもならないだろう、こう思いますので、この点強く要望申し上げ、間違いのない方向をとらせるように、明日の会議、さらにまた安倍大臣には二十六日の閣議、決して軽率に事が進むことのないように十分配慮して対処されますことを強く望んで、私の質問を終わりたいと思います。
  304. 中島源太郎

    中島委員長 市川雄一君。
  305. 市川雄一

    ○市川委員 外務大臣に、最初に貿易摩擦の問題をちょっと伺いたいと思います。  今、貿易摩擦の問題で米国側からいろいろなアクションがあるわけですが、要求もございます。外務省というか外務大臣は、そのアメリカ側の要求についてどう見ていらっしゃるのか。アメリカ側の要求はほぼ妥当なものである、こういう見方をされているのか、あるいは行き過ぎた面がある、こういう見方をされているのか、その辺をまず伺いたいと思います。
  306. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 アメリカ側は、正月の日米首脳会談に基づきまして、四分野について日本側の改善を求めてまいりました。その中にはできるものもありますし、できないものもありますが、日本としても、市場アクセスを改善するということは自由貿易体制にとって大事なことでありますから、日本側としても最大の努力をいたしまして、四分野につきましては大体アメリカ政府との間に一応のけじめはついたんじゃないか、こういうふうに思っております。  しかし、アメリカ政府としては、なお依然として黒字が膨大でありますし、これが議会を刺激し、あるいはまたアメリカ国民を非常に刺激しておりますので、市場アクセスのさらなる改善と、それによるところのアメリカからの輸入の増大、さらにまた日本の内需等の振興というようなものについて希望を表明している、こういうことでありますし、政府との間の一応のけじめはついたといたしましても、しかしやはり議会の方はなかなか容易でないと思っております。私もアメリカへ参りましていろいろと聞いてまいりましたけれども、一応政府間のけじめがついた一ということでちょっと下火にはなっておりますが、議会の日本に対する不信感というものは大変根強いものがありまして、この前と違った空気が出ておるようで、日本に対しては何らかの差別措置、差別法案を可決する以外にないんだというような相当険しい空気にありますから、これからの日米間の努力というものが大変大切になってきておるのじゃないか、こういうふうに思っております。  しかし、日本としてもただアメリカの注文を聞くだけでもありません。やはり日本の黒字の原因の最たるものはアメリカの高金利・ドル高にありますから、その点につきましては、アメリカ自身の善処方というものを私も強く求めてまいったような次第であります。
  307. 市川雄一

    ○市川委員 今、市場アクセスの改善というお話もございましたけれども日本の市場の閉鎖性ということをアメリカが言っておるわけですね。今、大臣も市場アクセスの改善ということをおっしゃったわけですが、具体的にどういうことですか、日本側が改革すべき点というのは。
  308. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 やはり全体として、アメリカとしては、日本の今の貿易の手続だとか基準・認証だとかあるいは日本の流通制度だとか、そういうものに非常に大きな問題がある、いわゆる閉鎖性があるのじゃないかということを言っておるわけでありまして、日本はこれまで何回か市場改善には努力したけれども、その成果が具体的なアメリカの輸入拡大となってあらわれてないということに対する不信感もあるわけであります。  具体的にこれから日本がやろうというのは、一つは関税の引き下げ、特に鉱工業製品を中心にした関税の引き下げ等による輸入の拡大、あるいはまた全体的な日本の基準・認証手続、そういうものの見直しをやって、そうしたものをもっと簡素にしていく、透明にしていく、こういうことが大切なことじゃないか。同時にまた、内需を拡大する。なかなか財政主導によって内需拡大というのは非常に困難だと私は思いますが、民間活力の推進であるとかディレギュレーションを推進するとかいろいろな措置を出し、知恵を出すことによって民需拡大を行って、輸入の拡大を図っていかなければならない、こういうように考えておるわけです。
  309. 市川雄一

    ○市川委員 通産省の方などに伺いますと、アメリカ日本を比べてみて、確かに日本の輸入の事務というのですか手続というのですかが非常に煩雑である、これは行政としてももっと簡素化を思い切ってやらなきゃいかぬ、こういう意見もあるのですが、大臣はその点はどう思われていますか。
  310. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これまでも随分やってまいりましたけれども、やはり多少、アメリカの制度とかは日本の仕組みと変わっておりますから、アメリカのようにはいかない面もありますけれども、まだまだ全体的に見てもっと簡素にする面も残っておるのじゃないか、あるいはまた、もっと透明性というものも充実していく必要があるのじゃないか、こういうふうに思います。
  311. 市川雄一

    ○市川委員 日本アメリカから輸入できるもの、買うもの、これは具体的にありますか。あるのですけれども、買うと、例えば農産物の場合ですとまた日本の農家という問題が起きてくるし、ベニヤの合板みたいな問題をやるとまたああいう形で国内産業が反発する。実際考えてみて、アメリカから日本が輸入をふやすのにどういう分野があるのか、その辺はどうですか。
  312. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 なかなか、それじゃ具体的に名前を挙げろと言われても難しい面があります。飛行機とか通信衛星とか大型コンピューターとか、いろいろとそういう面ではあるのですが、なかなか消費関係では——我々閣僚も百ドルぐらい買ったらどうだなんて言われておりますけれども、それじゃアメリカ製品何か買えるかということになりますと、具体的に名前が挙がるものがないような状況でありますから、なかなか苦労しているわけですが。  きのうも通産大臣が、大企業の社長を集めまして、輸出するだけが能ではないからアメリカからもっと製品を買えということを要請しておりまして、日本の自動車会社が、部品なんかもアメリカから買うように努力したいけれども、部品を買うにしてもなかなか今の手続等に対して問題があるというようなことを、関係の自動車会社の社長さんなどもいろいろと指摘しておりました。そういう点もあると思いますが、これはいろいろと知恵を出していかなければならぬ、こういうふうに考えております。
  313. 市川雄一

    ○市川委員 総理大臣が国民一人百ドル買ってくださいという話で、総理御自身が高島屋のデパートですか行かれたそうですが、結論として、アメリカの製品は何も買っていなかったということでした。日米関係で考えてみて、日本アメリカからの輸入をふやすというけれども、それは非常に難しい問題があると思うのですね。  内需拡大という問題が、中曽根内閣の中で議論されていますね。宮澤総務会長あるいは河本大臣は内需拡大論、総理と外務大臣は内需拡大に非常に否定的な見解、あるいは竹下大蔵大臣もそういう見解と承っているのですが、大臣も、ドル高・高金利の是正とかアメリカの赤字財政の立て直しとか、日本として言うべきことは言われているようでありますけれども、しかし感情論として、日本の貿易黒字が非常に大きい。百ドル買ってくださいなんというところではもうどうにもならないのじゃないかな、そういう気がしておるわけですね。  この辺で少し、戦後四十年の節目で、もう内需のあり方を考えるときに来ているのじゃないのかというように思うのですね。かつての三種の神器と言われたカラーテレビを初めとする耐久消費財、これはもう完全に終わっているのですね。今ビデオとかレーザーディスク、そういうものが出回ってはおりますが、かっての共稼ぎをしてまでも買おうという、そういう魅力を持ってはいないわけですね。ですから、魅力のある商品が消費財の分野でなくなってしまった。今一つだけ残っておる。何かというと住宅ですね。良質の住宅、しかも安く手に入る住宅、これは多少の無理をしてでも手に入れようという要求は非常に強いわけですよ。それからもう一つは、老齢化社会に向けて、寝たきりのお年寄りの問題がございます。特別養護老人ホームというような問題については非常に強い需要があるわけですね。あるいは教育投資、四十人学級という問題もございます。働くだけ働いて、安くていい品質の物をつくって外国へ売って、お金が日本に入ってきて黒字になって、今国際的に非常にたたかれておる。肝心の日本人の生活はどうかというと、ストックという面で見ますと決してそんなに改善されていない。ですから、その辺、そろそろ日本のこれからの行き方を変えなければならないのじゃないかということを考えているわけです。  労働者の賃上げ、もうちょっと賃金も高くする、あるいは休暇もふやす、労働時間も短縮する、そういう形で内需拡大というものを考えないと、ずっと今のままで続いていってしまうのじゃないのか。ですから、外国に行きますとよく言われることは、軍事的にはソ連という国がなければ今この地球は非常に楽しい、経済的には日本という国がなければ非常にいいのだ、今この地球にソ連と日本なかりせばということを、向こうは嫌みを込めて盛んに言うわけですね。  そういうことを考えますと、米ソのデタントということがもし仮に進んできますと、今度はいじめっ子は日本だけになってしまうのじゃないか、こんな気もしますし、この問題、これから非常に重要な問題ではないのか。そういう意味で思い切った内需拡大の方向へ、経済の運営というか、そういう考えを大臣はお持ちではありませんか。
  314. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 内需拡大はだれも反対する者はいないのですけれども、しかし、それじゃ今の日本の経済が非常に不況な、大変な低成長の状態かといえば決してそうでもないと思います。設備投資なんか割合順調にいっておりますし、四・六%という政府の見通しを上回る可能性すらあるのじゃないかと私は思うわけです。     〔委員長退席、深谷委員長代理着席〕 しかし、貿易問題なんかを考え、あるいは摩擦をやはり解消していくためには、さらにもっと内需を拡大して外国からの製品を輸入しなければならぬという面もあるわけで、そういう面では、我々も、内需拡大という点については世界的な日本の責任を果たすという立場から必要だと思います。必要だと思いますが、しかし、そのやり方ではいろいろと問題がある。これは党内においてもおっしゃるように議論があるところで、やはり百三十兆も財政赤字を持ちながら財政主導でもって内需を拡大するというわけにはなかなかいかないのじゃないか、私はこういうふうに思っておりますし、アメリカもヨーロッパもこうした財政主導型の、財政赤字でみんな苦しんでいますから、財政主導型の内需振興というものを求めておるのじゃない。シュルツさんがプリンストン大学で演説した内容を見てもそういうことじゃないように思いまして、やはりおっしゃるような民間活力だとか今の週休二日制というような問題ですね、そうした主張なんかは大いに推進することが消費の拡大にもつながっていくのじゃないかと思いますし、規制の緩和といったことも大事であろうと思います。そうしたいろいろな面の知恵を絞る、やはり今おっしゃるように四十年たった一つの転換期でありますから、そうした経済政策あるいはまた金融政策、そういった面をもっといろいろの面から考え直していく、そういうことによって内需拡大にも拍車をかけることができるんじゃないだろうか。  これも、政府も全体の知恵を絞って、大体七月までには今の個々の関税の引き下げ、それから今の市場アクセスのさらなる改善、もう一つは今私が申したような立場の内需拡大振興策、そういう三つを柱とした新しい政策を打ち立てよう、こういうことでございます。
  315. 市川雄一

    ○市川委員 財政主導の内需拡大は、確かにおっしゃるように財政赤字の現状では難しいと思うのですが、もう少し政府の考え方を変えることによって、民間活力を利用した内需拡大というものができるんじゃないかということを申し上げたつもりでございます。  次に、SDIについて伺いたいと思います。  中曽根総理は昨日、野党との党首会談でいろいろおっしゃっております。外務大臣、サミットのときに中曽根総理とレーガン大統領とお会いになるでしょう。そこで、研究に対する参加を要求された場合どういう態度をおとりになるのですか。ウィリアムズバーグ・サミットのとき総理は、NATOへの核配備、戦域核ですけれども、この核配備を断固支持するという形でやってこられたわけですけれども、国会でいろいろ議論しているのですけれども、このボンのサミットで、総理は出先で、レーガン大統領に、日本も研究に参加しますなんてお約束をまさかなさらないとは思うのですが、その辺どうですか、政府としての方針を伺いたいと思うのです。
  316. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 政府としての方針につきましては、中曽根総理がレーガン大統領とロサンゼルスで会ったときに言いましたように、SDIの研究に対して理解をするというのが今の政府としての方針でありますし、それに基づきまして、今専門家がちょうど来ておりまして、いろいろと専門家の意見を聞いているわけでございます。  今の状況から見まして、これ以上進んで日本が態度を明らかにするという状況ではないように私は思っておりますし、またヨーロッパの状況も、そんなまとまってヨーロッパがSDIに参加するといったような時代でもないように私は思っております。  確かに、これから中曽根総理とレーガン大統領との会談もあるでしょうし、恐らくサミットで議論もあるでしょうけれども、今の状況から、SDIは、レーガン大統領の構想はわかっておりますが、また、レーガン大統領が非常に道徳的決意を持っておられることはわかっておりますけれども、しかし日本としても、やはりこれは日本にとっての重要なことですから、もっとやはりSDIそのものの実態というものが明らかでなければ日本判断というものは出てこないんじゃないか、こういうふうに私は思っております。
  317. 市川雄一

    ○市川委員 今の外務大臣のお話は、日本参加できない、不参加を示唆したという感じに受け取れたわけです。SDIの研究への不参加という選択肢は日本にはあるのですか。どうもアメリカの態度は非常に強力ですね。フランスの人ですか、大分大論争をやって、席を立って帰国したという新聞のニュースもありますけれども、そういう点から見ますると、アメリカは、西側諸国に対するSDIへの参加要求というものは非常に強いというふうに見られるわけです。日本が、いや、日本は違います、研究に理解はいたしますが、不参加でございますという選択肢が今の時点であるんだ、こういうお立場ですか。
  318. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 客観的に見まして、参加、不参加ということは今決められるような状況ではない、私はそういうふうに思っております。日本においてはまだ、専門家もきのう来ましていろいろ聞いている段階でもありますし、今の段階でSDIの全貌というものもそう明らかになっておるわけじゃありませんから、そうした日本の意思を表明する段階ではないように私は思っております。
  319. 市川雄一

    ○市川委員 そうすると、どの辺の段階になると意思を表明できるのですか。  それから、不参加という選択肢を日本はしっかり持っているのかどうか。いろいろと検討した結果、アメリカの専門家グループの意見を聞いた結果、日本は不参加です、こういう選択肢があるのかどうかということ。  じゃ、どの辺の段階なら日本は態度を表明できるのですか。SDI構想そのものはこれ以上聞いても出てこないのじゃないかという気がするのですが、どうですか。
  320. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 ワインバーガー国防長官は私に手紙をよこしまして、六十日以内に、六十日以内というのは大分まだありますけれども日本参加するかどうか六十日以内にひとつ決めてもらいたい、こういうあれです。参加というのはどういうことを意味しているのか、我々ちょっとわからぬところもありますけれども、またワインバーガーさんはその六十日にはとらわれないということを言っておるわけですから、それはもっと勉強しなければならぬから時間はかかると思いますし、あくまでもSDI問題について日本が態度を決める場合は日本の自主的な立場に立って、いろいろな日本の基本政策というものがありますし、そういうものも踏まえながら慎重に判断をしなければならぬ、こういうふうに思っております。
  321. 市川雄一

    ○市川委員 外務大臣、これからの段階を考えますと、SDIの研究、開発、配備、こうなるわけですね。日本は憲法、専守防衛とか非核三原則とか、日本の基本的な原則、プリンシプルから考えると、参加するしないはこれから検討なさるでしょうけれども、どの段階までいけるのですか。配備までいけるのか、あるいは研究までなのか。あるいは研究、開発、配備とこうなるのですけれども、開発までなのか。その辺はどうなんですか。
  322. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 市川委員承知のとおりに、目下話題になっておりますのはあくまでも研究であるというふうに理解をしております。開発、配備、何が開発かということはまた難しい問題があろうかと思いますが、いずれにしましても開発、配備というのは将来の問題でありまして、アメリカは、研究段階から先にいくについては、ABM条約の問題がありますし、これは同盟国とも十分協議をしてやるべき話である、目下あくまでも研究の問題である、こういうことを言っておりますので、私どももそういうこととして問題を理解をしておる、こういうことでございます。
  323. 市川雄一

    ○市川委員 だけれども、研究で協力して、開発段階になってだめですと言えるのか言えないのかという問題もございますし、日本がポリシー、政策上参加は研究までだ、あと開発とか配備はできぬという、これは今でも御答弁できるのじゃないですか。今確かに研究のことを言っているけれども、当然これは研究、開発、配備、こうなるわけですから、日本の政策上、それはどうなんですかと聞いておるわけです。
  324. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 アメリカ自身が累次の機会に、開発、配備に進むについては改めて決定が必要である、そのためには研究の成果を十分見なければいけないし、それから同盟国との協議も必要である、こういうことを言っておりますので、研究から先の段階の問題というのは全く新しい問題であろうというふうに御理解いただかないと、現在の問題は正しく御理解いただけないのじゃないかというふうに思います。
  325. 市川雄一

    ○市川委員 新しい段階かもしれませんが、それが日本のポリシーでできるのかできないのかと聞いているわけです。そういう判断は持っていていいのじゃないですか。  ではお伺いしますが、この間も伺ったのですけれども、答えがちょっとぼやけちゃったのですが、ことしの一月の首脳会談は研究に理解を示した、しかし、研究に参加するということはSDI構想を支持するという一歩ぐっと踏み込んだ態度の表明になる。もし研究に参加という決定を下した場合は、SDI構想を支持する、こういう認識を私は持っておるわけですが、外務大臣、一緒ですか、違いますか。
  326. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 理解を示したというのは、アメリカが、SDIが非核兵器であって、防御兵器であって、中距離ミサイルを無力化するものだ、最終的には核廃絶につながるものだ、こういう構想でありますから、それなら、核廃絶は日本の悲願ですから、そういう面についての研究に対しては日本は理解を示すということであります。これを支持するかしないかという点についてはさらに最終的な判断というものにつながっていくわけですから、それに対してはいわば保留をしておるということであります。それまでにはまだ専門家の意見も聞かなければならない、あるいはまた協議もしなければならぬ段階があるということであります。
  327. 市川雄一

    ○市川委員 外務大臣、そうじゃなくて、研究に、理解から研究に参加という決定をした場合はSDI構想を支持したということになりますけれども、そういう受け取り方でいいのですか、こう聞いているわけです。
  328. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 研究、開発、配備全体を通じて分けて考えていただかないといけないと思うのですが、研究、配備、開発の問題については、いずれにしても我が国としては判断を留保しておるということだろうと思います。  それから、現在申し上げておる理解ということと、委員質問の研究参加ということについていえば、理解をするということを総理がレーガン大統領に言われたことによって、研究に参加する、しない、その問題は全く白紙である、こういうふうに御理解いただいたらよろしいのじゃないかと思います。
  329. 市川雄一

    ○市川委員 よく理解できませんね。だから、研究理解が研究参加は、SDI構想支持ということになりますね、こう聞いているのですよ。なりませんという答えと、なりますという答えの二つしかない、どちらですかと聞いているのです。
  330. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 SDI構想と言っておられる場合に、そのSDI構想というのは何を念頭に置いて言っておられるのか必ずしも私理解いたしませんが、要するにアメリカが研究するということについては理解をしておるわけでございまして、それに対して今度は、その研究に日本自身が参加をするという問題はまた別個の問題であろう、新しく日本自身が自主的に判断を要する問題であるということは、総理も大臣も累次言っておられるわけでございます。
  331. 市川雄一

    ○市川委員 それはわかっているのです。自主的な判断なんですよ。その自主的判断をしたら支持になりますね、こう聞いている。どうも言語障害に陥ったみたいな感じだが、どうですか、大臣。
  332. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これははっきりと言いますけれども日本が決めているのは理解だけです、理解まで。これ以上何も決めてないわけですから……。(市川委員「その先を決めたら支持になりますね」と呼ぶ)ですから、それはこれからの問題なんです。これからの問題というのは、あくまでも日本が自主的にいろいろの基本政策というものを踏まえてやらなければならぬ、こういうことですから、今のところは理解だということで、これ以上のことは我々は何も考えてない、白紙である、もっと情報とか……(「白紙じゃない、隠しじゃないか」と呼ぶ者あり)白紙なんです。その辺のところを御理解いただきたいと思います。
  333. 市川雄一

    ○市川委員 ですから、これからの段階は白紙、それはもうよくわかっているのですよ。日本が自主的にお決めになるわけでしょう。自主的に研究に参加すると決定を下したら、これは研究理解から一歩進んで、アメリカのSDIという戦略構想を支持することになりますねと、こう言っているのです。どうも御返事したくないみたいですが。というのは、これは非常に重要な問題を持っているわけですよ。SDIというのは、米国がソ連の核戦力に対抗しようというものですよ、まさに米国の核戦略そのものですよ、ソ連の核ミサイルを落とすというわけですから。これに日本参加し、協力し、支持するということは、米国の核戦略体制に日本が全面的に協力するということで、あえて理屈を申し上げれば、「防衛計画の大綱」で特定の第三国を脅威と想定しない、こういう前提で今防衛力の整備もやっておるし、外務省も仮想敵国は持っておりません、こう言っておるわけでしょう。しかし、アメリカはもう明らかにソ連を仮想敵国とみなし、ソ連のミサイルを落とすということですから、これに日本参加するということは、日本アメリカと同様アメリカの核戦略に入り、同時にソ連を仮想敵国としてやっていくのだ、こういう基本方針の変更ですよ。これはそういう問題を含んでおると思うのです。そういうふうにはお考えになりませんか、外務大臣。
  334. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私も、まさに非常に重要ですから非常に慎重にお答えしているわけですね。ですから、これから先のことはなかなか予断を持ってお答えするということは差し控えたい。それだけにSDIというものは、これからについてはやはり日本というものは慎重に考えて自主的に判断しなければならない、そういうふうな非常に重要な課題である、こういう認識でございます。
  335. 市川雄一

    ○市川委員 もう時間が来ているのですが、もう一問。  SDIの研究参加問題について、一九七二年のABM制限条約第九条もしくはその附属文書によって、日本など第三国のSDIへの研究参加、配備は、米国が条約違反になるのではないか、こういう「外務省筋」という新聞のニュースが四月十九日付の東京新聞に出ているわけですけれども、「本体部分への日本の研究参加は条約上恐らく不可能であろう、しかしその識別とか追尾部分は汎用技術の分野でもあるので、これは条約並びに附属文書にひっかからないのではないのか」、こういう形で「外務省筋が語るところによると」という前提で出ているのですけれども、この問題はどういう見解でございますか。
  336. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 先般、その新聞記事に基づきまして他の委員会で御質問がありましたので、私からお答えしましたことは、時間が長くなりますので簡単に申し上げますが、要するにABM条約の第九条、それからその解釈に関します合意声明書で、アメリカが第三国に対して渡してはならない、あるいはソ連も同じ義務を負っているわけですが、米ソ双方が第三国に対して渡してはならないとされておりますABMシステム、またはその構成部品についての技術的な記述でありますとか青写真とかいうものが、具体的にどういうものであるかということは、私ども条約の当事者ではないものですからわかりません、したがってアメリカに聞いてみないと、アメリカがこの条約上どういうものを第三国に渡してはいけないという義務を負っているかというのはわからないものですから、その点はアメリカから十分聞いてみる必要があるであろう、しかし、そこの条約に書いてある限りにおいてそういう制限はアメリカもソ連も受けておって、第三国に渡す技術的なデータとか青写真みたいなものについてはおのずと制限があるということは条約上明らかである、こういうことを申し上げた次第でございます。
  337. 市川雄一

    ○市川委員 SDIが核廃絶を目指すという、その目的の是非は別としまして、やはり核エネルギーを使わざるを得ないとか、あるいはもし仮にそういうものができ上がれば、当然衛星キラーという形でその衛星を攻撃するものを考えてくるでしょうし、やはりこれはだれが考えても、宇宙の核軍拡につながる落とし穴と見ざるを得ないわけですね。ですから、そういう点で、どうぞ日本政府は、日本の非核三原則、日本の憲法、専守防衛というものを踏まえつつ慎重に検討していただきたいということを御要望申し上げて、質問を終わります。(拍手)
  338. 深谷隆司

    ○深谷委員長代理 田中慶秋君。
  339. 田中慶秋

    田中(慶)委員 貿易摩擦の問題を中心として、外務大臣に見解をただしてまいりたいと思います。  四月九日、総理が、日米間の貿易摩擦解消のために、四分野にわたって関税の引き下げや貿易摩擦解消のための取り組みについて方針を指示されたわけであります。我が国の市場開放については米国から一応の評価を得られたとしておりますし、また米議会においても対日批判も鎮静化に向かったところとされておりますが、この点について外務大臣としての見解をいただきたいと思います。
  340. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 自由貿易体制の維持強化、調和ある対外経済関係の形成及び世界経済の活性化を図るための積極的な努力を行っていくことが、我が国の重要な責務であると考えておりまして、こうした観点から、政府としましては、先般新たな対外経済対策を決定いたしまして、その強力な推進を図るための本部を設置したところであります。今後は、この本部を中心としまして、特に市場アクセス改善のためのアクションプログラムの早急な策定に取り組むなど、右政策の誠実かつ着実な実施に努めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  341. 田中慶秋

    田中(慶)委員 それぞれ政府の考えが明らかになりましたけれども現実に米議会が鎮静化に向かったというふうに、そんなふうに理解をしていいのかどうか、あるいはまた、アメリカ政府のそのような日本に対する評価や鎮静化ということについて、そのまま率直に理解していいかどうか、この辺をお聞きしたいと思います。
  342. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 日米の政府間におきましては一応のけじめができました。もちろんこれからの日本の行動、政策を見守るということでありますが、一応のけじめはできてボン・サミットに行く一つの路線は数けた、こういうふうに思いますが、しかし、アメリカの議会は非常に深刻な対日批判が燃え上がっておりまして、これはアメリカ議会も、政府が一応努力したということで今後を見守るということで、ちょっと矛をおさめたような感じはありますけれども、しかしやはり根底に流れておる日本に対するいわば不信感というものはなかなか払拭できるものではないと私は思います。したがって、これからのボン・サミットがどうなるか、これから七月までの日本の政策決定がどうなるかということによっては、また一挙にアメリカ議会としては対日批判が噴き出て、そして、制限法案というものがアメリカ議会を通る可能性はあるというふうに私は見ておりまして、なかなか深刻な状況だと考えております。     〔深谷委員長代理退席、委員長着席〕
  343. 田中慶秋

    田中(慶)委員 アメリカ政府は日本に対する理解をされたというふうに大臣の発言でありますけれども、実は、アメリカのシュルツ国務長官が講演の中で、日本の個人の総預貯金はOECD加盟国の平均値よりも五〇%高い、しかもGNPの三〇%に値するというようなことを指摘をされた上で、この高い預貯金の率を国内消費の低さによるものであるとして、内需拡大を求めたとされております。すなわち、アメリカ経済がこの一月から三月までGNP対前年度比較で三%増、こんな形の下方修正をされ、景気の陰りが現実には強められておるということを承っております。逆に我が国の経済環境はGNP五・八%、こんな形の中で上方修正をされているわけであります。こんなことを含めて考えてまいりますと、日本に対する対日批判やアメリカの議会の問題を含めて理解をされた上で、なおかつこういうことを言われている。こんなことを考えてまいりますと、本当に理解をされたかどうかという疑問を持たざるを得ないわけであります。こういう点について担当大臣として、この辺を明度に説明をいただきたいと思います。
  344. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 シュルツさんの演説は、日本だけを取り上げてということよりは世界経済全体、アメリカのドル高・高金利・財政赤字、そういう問題に対する考え方、あるいはまたヨーロッパの構造不況等に対する考え方、同時にまた、日本の今の黒字問題に対する考え方、その一環として日本の貯蓄率が非常に高い、しかし日本の国内投資を見るとその辺が非常にアンバランスだ、消費は依然として低い、そういうことで、こうした高い貯蓄率というものを日本の内需を高めるためにもっと活用すべきじゃないかというふうな、いわば意見の開陳と言えるのじゃないかと思います。これは日本に対する要求というよりは、自分の考えを述べたと私にも言っておられましたが、そういうことでありました。同時にまた、シュルツさんは私との会談で、市場アクセスの改善だけでは日本の黒字問題はなかなか解決できない、もっと日本の内需、そういうものにも問題があるんじゃないかというふうな意見も述べられたわけでありますが、私はそれは貴重な御意見だと思います。  そして、私も、OECDの閣僚会議等に行ってみまして、日本の製品輸入というものをもっと高めるための内需というのを高めるべきだという議論も海外にあります。これは日本の財政というものはわかっておりますから、財政主導によってやれということでもないと思うのですが、しかし、とにかく内需を高めて、もっと製品輸入を図って、今の黒字が拡大するようなことでは、日本に対して我々はそのまま置いておくわけにはいかないという、そういう空気でありました。  したがって、こうした市場アクセスというものも改善していきながら、同時に、関税の引き下げだとか内需の振興というものをいろいろと知恵を出して考えていく、そして、この七月ごろまでには、アクションプログラムとともにそうした日本の世界経済の均衡を図るための新しい努力というものがはっきり打ち出されないと、これはなかなか難しい事態になってしまうというふうな感じを率直に言って私は持っているわけです。
  345. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いろいろな形で大臣がそれぞれお会いした中での考え方として述べられておりますけれども、こんな形で関税の引き下げやらいろいろなことを含めて向こうの言いなりといいますか、こんな形でやっていったらどこに主体性があるか。極端なことを言えば、内需の拡大から個人の消費の問題まで、あるいはまた預貯金の問題まで触れる、アンフェアのような形をとられるような気がするのですね。関税とかそういう問題になっている点についての指摘をして、それについて対処させるということであれば、それなりにもう考えているわけであります。そういう点では逆に、総理も何か向こうからそう言われたということのせいかどうか、先ほども問題になりましたけれども、一人百ドル輸入品を買ってもらいたいとか、国電にまでそういう広告を出しているわけであります。このような形で少なくとも百ドルを買えと言う前に、減税をするとかその財源をちゃんと明確にしておいてやるべきだと私は思うのです。ベースアップをちゃんとするとか時短もやるとか、そういうことが片方において余り積極的な取り組みがされてない。そういう中で、現実には国民に、政府としての明確な指針というかそういうものを経済政策として打ち出していないような感じがするわけです。ですから、政府の中においても、後ほど触れますけれども、それぞれ見解がばらばらであるわけであります。こういう点では、私は、国民そのものが理解もしないでしょうし、納得もしないと思います。そういう点で逆に、アメリカの圧力によってこんなことを場当たり的にやったのかな、こんなふうに考えられると思います。  私は、むしろ、例えば本当に消費をさせるのであれば、この五月の連休が緑の連休として、各労働組合やあるいはまた少なくとも労働大臣からも、それぞれの要求があったりいろいろなことをして根回しをされているわけであります。こういうことを含めて総体的にいろいろなことを模索をされてやるべきじゃないか、こんなふうに思います。そういう点で、こういう減税の問題とかを含めて、直接大蔵大臣ではないという立場もあろうかと思いますけれども、政府として、これからだんだん発言力が大きく増すであろう安倍大臣の見解を伺っておきたいと思います。
  346. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 黒字がどんどん大きくなっている、これは日本だけの責任でないということは、私もOECDあるいはアメリカとの会談においてちゃんと言っております。OECDのコミュニケで、日本の膨大な黒字が世界経済を緊張させる要因だ、こういう一項目がありまして、我々はこれには納得できない、アメリカのドル高とか高金利とかそういうことにも大きな問題があるし、あるいはまた同時に、ヨーロッパの構造調整の問題にも大きな問題があるので、日本だけが責められるということは我々は承知できないということで、この事項を落とすことに成功したわけです。しかし、黒字がとにかく大きく存在しているということはこれは事実ですから、したがってやはり、日本としては自由貿易体制を堅持していく以外に日本の生きる道はないと思っておりますし、そういう意味では、理屈は理屈としてこの黒字を減らしていく努力というものは払っていかなければなりませんし、また市場のアクセスの問題でも、日本の工業製品等が国際競争力の点でアメリカとかヨーロッパに勝っているわけですから、そういうものについてはある意味でのハンディを出してでも、他国の批判というものをかわしていく必要もあるんじゃないか。ですから、工業製品については関税をゼロにしろというふうな方向も今政府で検討をしておるわけでございますし、同時に、内需の問題についても意見がいろいろと今出ておりまして、政府・与党としてまだ完全にまとまっておりませんが、しかし内需を何とか振興していこうということについては異議がないわけで、ただそのやり方が財政主導ということになりますと、これは百三十兆の財政をさらに悪化させるだけですから、どうしても財政以外の手段によって内需の振興を図っていかなければならぬ、そういう一つの方向になっていくんじゃないだろうか。  これから七月までに政策をまとめます、その中で、今おっしゃるような例えば週休二日制度なんというものは、これはいろいろと問題はあるのですが、しかし、消費を拡大するという面からいけばヨーロッパもアメリカも実行しているわけですから、日本もそろそろ実行の段階に入ってもいいんじゃないかな、こういうふうにも思っておりますし、その他いろいろと、消費の拡大あるいはまた内需の振興といった点で、規制緩和だとか民間活力の活用とかいろいろな方策、知恵を出して政策をまとめたい。私もそういう中で、ただ外務大臣という立場だけではなくて、政府の閣僚の一人として、内需振興等についてももっと積極的に具体的に発言をしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  347. 田中慶秋

    田中(慶)委員 世界一労働時間の長い日本と指摘をされているわけであります。そんなことを含めながらあらゆる面で、減税やらあるいは今申し上げた労働時間の短縮等々を含めて、この問題に対処しなければいけないと私は思っております。  特に一番問題なのは、これからサミットに行かれる前なのに、内需拡大についても政府自体が二派に分かれているといいますか、財政再建中心ともう一つは公共投資を、こんな形で分かれていること自体がやはり大きな問題だと私は思っております。そういう点では、大蔵省初め経済企画庁、あるいはまた当然このサミットに外務大臣として一緒にいろいろな形の中でお出かけになるだろうし、そんなことを考えたときに、意見の統一や具体的なこれの対策について所見を伺っておきたいと思います。
  348. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いろいろと意見はありますけれども、自民党というのはにぎやかな政党ですから、いろいろな意見があって、そういう中でだんだんと一本に集約されていくのじゃないかと思っております。政府の中にももちろん意見が今あります。その意見を取りまとめよう、これは八月概算要求というようなこともありますし、また諸外国の情勢を見るといつまでも待っておれないということもあって、七月までにまとめよう。一つは、アメリカだけじゃなくてEC、それからASEAN、ASEANも随分要求が出ております。そうしたASEANの要求にも対応しなければなりません。したがって、そうした要求等全体を踏まえた関税の引き下げ等がどれだけできるかということが、これから七月までの一つの課題だろうと思います。  それからアクションプログラム、もちろん関税を含めたこれからの市場開放措置、製品輸入、そういう点についての具体的な措置、製品輸入等については、きのうも通産大臣が、各企業の代表を集めて、輸出だけに精を出さないで輸入の方も少し協力してほしいということで、そうした企業、特に輸出を中心とする企業の諸君もこれに協力を約束されたわけですが、そういう成果がこれからどういうふうに出てくるか。  それから、第三番目がいわゆる内需振興、この点について今いろいろと意見を集約して、七月にはこれを具体的にまとめて内外に明らかにしよう、こういうことでございます。基本的な政策、方向は出ておりますから、具体的にこれをどういうふうに実施していくかという内容であります。
  349. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、それぞれ模索をされて、昨日も通産を初めとするいろいろな形で、業界の人を招集されて、その中でお願いされたようでありますけれども、そういう努力もわかりますが、官僚みずからががっちりと押さえられている許認可とがそれぞれのシステムとか、そういうところに大きなメスを入れていかなければ、それぞれ輸入したくてもリードタイムが長くてだめであるとか、いろいろな問題が出てくると思います。そういう点では、こういう問題についても積極的な取り組みが今要求されていると思います。そういう点で、これらに対する取り組み方と考え方はぜひ前向きにやらなければいけないと私は思います。一方において民間の人たちに、何しろ輸入をしてくださいとお願いしているわけです。しかしガードがかたくて、そういういろいろな障害があって、今日までできなかった部門もたくさんあると私は思います。  そういう点で、本当に市場開放をするのであれば、そういうことも開放されて、正しい自由競争を日本の中で繰り広げればいいと思うのです。当然いい物を安く、そして日本で国内製品と競争して、選択するのは国民だろうと思います。  そんなことを考えたときに、今申し上げたようないろいろな形のガードの問題をここで再度総点検をして、取り除くべきものは取り除く必要がある、私はそんなふうに思いますけれども、その辺どうでしょう。
  350. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは全く同感であります。やはり日本の場合は、自由貿易体制を堅持していかなければなりません。今外国が指摘しているのはやはり市場アクセス、特に日本の貿易が不公正だということを言っておるわけで、これは我々にとりましてまことに腹の立つ思いであります。しかしまた同時に、そう言われれば言われるだけの理由が全くないとも言えないわけで、輸入の手続とか基準・認証制度なんかについても、外国が輸入する場合と比べて日本が輸入する場合は随分時間がかかるというふうな面もあるわけですから、そういう点はやはりこの際、世界から不公正だと言われないように、日本みずからも積極的に改めていく必要がある。これはまさにアクションプログラムで、そういう具体的な措置をこれから決めていくわけでございます。今回をおいてはなかなかないのじゃないか、私はそういうふうに思っておりますし、今度は総理大臣を本部長とする大変強力な実施部隊ができましたから、恐らく相当な成果を上げることができる、こういうふうに思っております。
  351. 田中慶秋

    田中(慶)委員 そこで、推進本部長として総理大臣がその任に当たるわけでありますけれども、その中で、一つ大変懸念される部分があるわけであります。当然それぞれ内需拡大とか貿易摩擦の解消のために今努力をされているわけでありますけれども、しかし、あそこにそれぞれのプロジェクトをつくられても、すべての省庁が現実に次官クラスの人たちが参画をされる、こういうことは、今の機能ですらそういう弊害があってできないわけだと思うのです。現在の機能を十二分に全うされれば何も推進本部をつくらなくてもいいのじゃないか。組織に屋上屋を重ねるようなことであってはいけない、こんな気がしてならない。まして、そういう批判も現実に出ているわけであります。当初の目的からは大分後退されたのじゃないか、こんな指摘もされているのですが、大臣としての所感を伺っておきたいと思います。
  352. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今度は本部の中に各省の次官が全部入りました。これは今までとは全く様相が違っておりまして、次官が入ったというのは、それだけ次官の責任でやらなければならぬ面が非常に出てきたということであろうと思いますし、これをやらなければ日本は非常に厳しい状況になっていくことは間違いないわけですから、そういう危機感を前提にした本部体制、そして各省次官の参加ということになったわけですから、今度は相当なことがやれるのじゃないかと思っておりますし、それがやれないのじゃ、まさに今の政府の責任そのものが問われる事態になりかねない、そういうふうに思っております。政党政治は一体どこへ行ったのだ、議会政治は一体どこへ行っているのだ、こういう批判すら出かねない可能性があるわけですから、やはり性根を据えて頑張っていかなければならぬ、こういうふうに思います。
  353. 田中慶秋

    田中(慶)委員 ぜひ期待したいものであります。  そこで、実は大蔵省が十二日に発表された五十九年度の貿易統計によると、我が国の輸出超過額は史上最高の三百五十一億ドルとなっているわけであります。こういう問題について、この要因について私は私なりの調査とさらに考え方を述べさせていただくならば、全体的なバランスがとれてない。日本の国内の経済を見ても、業種間の格差が非常についているような気がします。輸出を中心として、いい物は確かにいいわけでありますけれども、そういう点で、これらについてどのような考え方を持たれているがが一点。  そしてまた、例えば民間調査機関が調べた五十九年度の倒産件数は、戦後最高と言われております。二万三百六十三件。そしてまた負債総額も三兆四千五百十一億という形で、五十八年対五十九年度の対比で一九%増。こういうことを考えてまいりますと、内需の問題を含めてもこういう点に大変難しさもあろうし、そして、この問題もやはり国内の均衡とれた経済政策が要求されているんじゃないかと私は思っております。そういう点では、片方について輸入を拡大しろと言ったところで、経済のアンバランスが生じるおそれがありますし、むしろこういう問題を含めてバランスのとれた経済政策というものが今要求されているんではないか、こんな気がしてならないわけでありますけれども、この辺について大蔵並びに経済企画庁の考え方を伺っておきたいと思います。
  354. 松川隆志

    ○松川説明員 確かに、今先生が御指摘になりました貿易黒字でございますが、五十九年度三百五十一億ドルと過去最高になっております。これはやはり輸出が輸入よりベースが高かった上に伸びが非常に大きかったということでございますが、地域的に見ますとやはり対米輸出が、特に自動車とか事務用機器、VTR、半導体等が中心になりまして非常にふえたということでございます。  それから倒産件数の方でございますが、これも五十九年の数字を見ますと、倒産件数及び負債総額とも過去最高になっております。ただ、これは、よく内容を見ますと、個々の業界の特殊事情とか、あるいは経営戦略の失敗とか、あるいは産業構造変化への対応の誤りとか、必ずしも国内の景気動向とは直接関係のない倒産がかなり多かったというふうに我々は評価しておりまして、特に昨年後半からことしにかけましてはかなり倒産件数も減ってきておりまして、二月、三月はいずれも一四、五%から二〇%ぐらいの減少になっております。  それで、国内経済が非常にアンバランスになっているんじゃないかというお話でございますが、我々の方は必ずしもそう見ておりませんで、特に設備投資がハイテク関連を中心に非常に力強く伸びておりますし、それから中小企業の設備投資も引き続きふえております。また、景気動向調査等で見ますと、これは企画庁、日銀、大蔵省、いろいろな調査があるわけでございますが、いずれも収益は増収増益ということですし、中小企業の景気も悪くないという状況でございますので、内需は着実に増加しているんではないかというふうに考えております。  それから、財政主導による内需拡大というお話でございますが、政府の方針として、財政再建あるいは財政改革を進めるというのが喫緊の課題でございますので、そういうものを十分尊重しつつ知恵を出していきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  355. 西藤冲

    ○西藤説明員 景気の現状につきましては今大蔵省から御説明があったほぼそのとおりだと思いますが、黒字を解消するための基本的な方策としてはやはりドル高の是正ということが最大の問題だと思いますけれども、しかし、それに加えて、内需拡大も進めるべきだということは御指摘のとおりだと思います。  政府としましては、いろいろな規制を緩和して民間活動を刺激することとか、あるいは公的な分野での民間活力の導入によりまして社会資本の整備を進めていくといったようなことを既にやっておるわけでありますけれども、それに加えて、四月九日の対外経済問題諮問委員会、いわゆる大来委員会の報告によりますと、今申しました二つに加えまして、先ほど御指摘のありましたような週休二日制の一層の普及でありますとか労働時間の短縮といったようなことを通じ、消費機会の拡大をしていく。それからさらに税制の見直し、これは貯蓄、投資、消費というようなバランスを図るという観点からの税制の見直しという御提言をいただいております。そして、四月九日の対外経済対策におきまして、この中期的な提言を十分尊重して政策運営をしていくというふうに決めておりますので、こうした点につきましては、今後十分政策運営の中に反映させていくということが政府の対応であろうと思います。
  356. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、国民が安心して物を買えるような、時短であるとかベースアップであるとか減税であるとか、そういうことを含めて政策の一環としてぜひ取り上げていただきたいということも要求しておきたいと思います。  実は外交、さらに防衛庁の問題も一部入りますけれども、第七艦隊あるいはまた自衛隊関係で、艦載機の着陸訓練の問題等でありますが、艦載機の着陸訓練が現在神奈川県の厚木基地で行われているわけであります。パイロットの練度を維持していくためには不可欠な問題であろうかと思いますけれども現実には、人口十万から十五万と言われておりますこの厚木地区に、騒音の被害とか、あるいはまたそれぞれの住民感情としてこの飛行場の内陸部に対する移転の問題、あるいはまたそれぞれの対策の要求、こういうことが持ち上がっておりますし、あるいは神奈川県の知事初め関係の市長からも、それぞれの要求が出ているわけであります。こういう問題についてどのような対策をされているのか、さらに移転をされようとしているのか。もしされるとするならば、具体的にいつごろまでということを含めてお答えをいただきたいと思います。
  357. 平晃

    ○平政府委員 ただいま御質問のありました厚木飛行場における艦載機の夜間着陸訓練、これは御存じのとおり大変騒音がうるさいことで周辺地域に大きな問題を提起しているわけでございますけれども、私どもかねてから、この厚木飛行場にかわる訓練施設を関東及びその周辺地区に新設が、あるいは既存の飛行場の使用という形で解決すべく努力してまいっているわけでございますけれども、いまだその解決の見通しは立っていないということでございます。  いずれにいたしましても、厚木飛行場は住宅防音の対象世帯だけでも約十万世帯、三十二万人の方々が騒音の影響を受けているということで、何とか早くこれを解決したい。一方、米側にとりましても訓練が十分にできない。パイロットの夜間着陸訓練というのは艦載機のパイロットにとって必要不可欠な訓練でございますので、何とかこの訓練施設、できれば島嶼部に、島嶼部でありますと訓練旋回コースを海上にとれるということで、島嶼部に見出したいということで努力しているところでございます。いつまでという期限を切られている問題ではございませんけれども、厚木の今の状況を考えますと、早急に解決しなければならない問題だと考えているところでございます。
  358. 田中慶秋

    田中(慶)委員 島嶼の問題を含めて検討される、しかも早急にということで今お答えをいただいているわけでありますけれども、反面においては、訓練も不可欠である、こういう条件の中でいろいろ御検討されていることと思います。腹づもりといいますか、具体的に候補地が幾つかあると私は思うのです。具体的にここをこんな形で交渉されている、しかしまだコンセンサスは得られていない、こういうこともあろうと思いますので、そういう点でもし明確なお答えができるならば、御説明をいただきたいと思います。
  359. 平晃

    ○平政府委員 候補地につきましてはいろいろと検討いたしております。もう既に新聞紙上でも明らかになっておりますが、立地条件からいたしまして、私ども一番適地と考えておりますのは三宅島でございます。  ただ、三宅島につきましては、一昨年の十二月、地元の村議会で誘致の決議が行われまして誘致の要請がございましたけれども、その後、議会の議決が村民の意思を十分に反映していないということで反対決議に変わりまして、それ以来現在まで具体的な交渉もされないまま、私ども説明も聞いてもらえないという状況が続いておるわけでございます。  三宅島の場合には、民家の上空を飛行することなく旋回コースを海にとって飛べるということで、騒音影響も最小限に抑えられる、この訓練場設置をお受けいただける場合には、私どもの生活環境整備法によりましていろいろな施策も講ずる、ひいては村の復興計画あるいは将来の振興にも結果的にはお手伝いできるようになるんではないかということで、ぜひ説明の機会を与えていただきたいと考えておるところでございます。
  360. 田中慶秋

    田中(慶)委員 今申された三宅の問題も、まだコンセンサスを得られていないということであれば、当分時間がかかると思うのです。そうすると、防音対策というものはここで明確にやっておく必要があるだろうと思うわけであります。片方に受け入れられないからといって、片方にそのしわ寄せをしていいわけはありません。片方が明確になる、具体的になるまでは、防音対策を含めてその対策に取り組んでいただきたいということを要望して、私の質問を終わります。
  361. 中島源太郎

  362. 三浦久

    三浦(久)委員 安倍外務大臣にお尋ねいたしたいと思います。  中曽根総理が二月十九日の衆議院の予算委員会で、日米共同作戦中、公海上の米艦の核使用については、安保条約の解釈上、日本が排除する立場にはないというふうに答弁をいたしました。御承知のとおりであります。事は日本の防衛の問題なんですね。日本自身の防衛の問題について、特にその防衛に関してアメリカ軍が核兵器を使用するということについて、日本が全然関与できないということは私は全く大問題だと思います。こんなことを許しておりますと、米軍の先制核使用によって、日本が核戦争の戦場にされる危険性が非常に大きくなる。ですから私は、こういう問題というのは絶対に起こしてはならないし、許してはならないと考えているわけであります。  この核兵器の持ち込みについては、一応政府は、非核三原則があり、そしてまた事前協議制度があると言っておられます。我々はそれが完全に機能していないと思っておりますけれども、一応政府は、その事前協議と非核三原則が歯どめになっているんだと言っているのですね。ところが、核の持ち込みよりももっと恐ろしい核兵器の使用の問題について、何の歯どめもないということになっておるわけですよね。これでは、安保条約のもとでは国民は安心して生活できないという結果になってしまうのではないかと思うのです。  安倍外務大臣は四月三日の衆議院外務委員会で、公海上米軍が核先制使用することは好ましくないことである、基本的にそういうことは避けるべきであるというふうに述べられておるわけであります。また先日の中曽根総理の答弁も、米軍の核先制使用を排除できないというのは安保条約の解釈の論理上の問題であって、そういう場合にどう対処するかは、いろいろ大局的に見て日米両方で考えることでありましょう、こう答弁しております。しかし、大局的に見て日米両方で考えることでありましょうというその意味が、必ずしも明確ではないのですね。  そこで、私は伺いたいわけですけれども日米共同作戦中に公海上米軍が核先制使用するということについて、日米双方でもって協議するということになっているのかどうか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  363. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 我が国が外国から武力攻撃を受けまして、日本防衛のために自衛隊米軍が共同対処をする、こういうことは安保条約第五条のもとで想定されておるわけでございますから、そういう事態になりましたときに、共同対処をする自衛隊米軍、あるいは日本政府とアメリカ政府との間で、どういうふうに共同対処を効果的に行うかということについては当然密接な協議があるということが予想されるだろうと思います。
  364. 三浦久

    三浦(久)委員 私の質問はそういう一般的なことではなくて、核兵器を先制的に米軍が使用する場合に、事前に協議をするようになっているかどうかということを聞いているのであります。
  365. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 あくまでも、先ほど私が御答弁申し上げました一般論として申し上げるほかないのではないかというふうに考える次第でございます。  核の使用の問題は、累次政府の方から御答弁申し上げておるとおりでございまして、政府の認識といたしましては、あくまでも、侵略をあらかじめ未然に防止するための抑止力というのが政府の基本的な認識でございまして、仮に万が一にも抑止が破れました場合に、核の使用という問題についてどういうふうな話し合いが行われるかということにつきまして、あらかじめ仮定に立っていろいろ議論をするということは適当ではないのではないかというふうに考える次第でございます。
  366. 三浦久

    三浦(久)委員 そういう答弁はちょっと逃げの答弁ですよ。総理大臣自身が二月十九日の予算委員会で、「日本列島が侵略されて敵が日本に上陸しているとか、日本が爆撃されているとか、そういう非常事態」のときには共同対処するんだ、共同対処している中で、公海上で米艦が核を先制的に使用しても、それを排除する立場にないとはっきり言っているわけでしょう。ですから私はそれに関連して聞いているわけで、ちゃんと答えていただかないと困ると思うのです。  例えば安保条約の第五条に基づいて共同対処をする、そういう場合に、作戦の調整とかいろいろ話し合いがされることはあるだろうと思うのです。それからまた、四条の随時協議でやられることもあるだろうと思います。しかし、核兵器というのは通常兵器と違うから、その核兵器を使用することがあるんだと総理大臣がおっしゃっているから、それを使用する場合には、制度上、事前日本と協議をする仕組みになっているかどうかということを聞いているのです。安保条約上の仕組みの問題として聞いているわけであります。
  367. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 総理の御答弁も、現実事態というものを予想して御答弁になられたわけでは必ずしもなくて、そういう日本に対する侵略が起こった場合に、アメリカ日本防衛のために公海上日本の領域外でございますが、公海上における核兵器の使用というものを全面的に排除してしまうということは、抑止力についての基本的な考え方から申しまして適当ではない、こういう観点からの総理の御答弁であったというふうに理解をいたしておるわけでございます。  それから、先ほど私御答弁申し上げたことの繰り返してございますが、安保条約第五条のもとにおきましての日米共同対処ということでございますので、具体的な共同対処の仕方については、条約の仕組みと申しますか安保条約第五条というものの性質上、当然日米間でいろいろ緊密な協議が行われるであろうということを申し上げた次第でございまして、ここで一般論以上のことを核兵器の使用との関連で申し上げることは、適当ではないだろうというふうに考える次第でございます。
  368. 三浦久

    三浦(久)委員 適当でないとか適当であるとだれが判断するのですか。質問について答える義務があるわけでしょう。そういう答弁はちょっと納得いきませんね。時間が限られているから、質問に端的に答えていただきたい。  それでは、協議がされるだろうということだけはわかりました。それは条約上協議をする義務があるかどうかは別としても、協議をされるだろうということはわかりました。  そうすると、米軍の核使用について、どうも核使用しそうだなということを察知した場合に、日本側から協議の申し入れをすることができるかどうか、それをお尋ねしたいと思うのです。
  369. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 核兵器の使用に委員は非常にこだわっておられるようでございますが、いずれにしましても前提が日本が武力攻撃を受けた場合でございますから、その前提に立ちまして、どうやって日米が起こりました侵略というものを効果的に排除するかということについて、アメリカと我が国との間に当然のことながら密接な協議が行われるということは常識の問題として申し上げられるだろうと思います。
  370. 三浦久

    三浦(久)委員 制度上どうなっているかということは非常に重要だと私は思うのですよ。常識上それはいろいろ協議するでしょうというだけでは、協議しなかった場合どうなるのかということですね。アメリカ側からも協議は申し入れない、そうすると、あなたの場合だと、こっちが協議を申し入れることはできるという判断ですね、核・非核を問わずできるということですね。どうですか。
  371. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 これは我が国自身を防衛する問題でありますから、我が国を防衛するに当たって自衛隊米軍がどういうふうに行動したらいいかという問題でありますから、当然我が国としてもいろいろ意見がありますでしょうし、アメリカ側としてもいろいろ意見がありますでしょうし、当然密接な協議が行われる、これは安保条約上当然のことであろうと思います。
  372. 三浦久

    三浦(久)委員 協議の内容ですけれども日本側から協議を申し込むということになれば、恐らく核の先制使用は中止してほしいというような内容になるのだろうと思いますが、安倍外務大臣、これは基本的なことですからぜひ御答弁いただきたいのです。協議をして、その結果、日本側が米軍の核先制使用に同意をするということはあり得るのですか。
  373. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 先ほどから申し上げておりますように、現実の核兵器の使用というものを想定して同意をするとか同意をしないとかいうことを申し上げるのは、やはり適当ではないのであろうと思います。  先ほどの繰り返してございますが、核戦争というものはあってはならないことであって、核兵器というものは使われてはならないというのが政府の基本的な認識だろうと思います。アメリカも別に安易に核兵器を使いたいと思っているわけでは全くありませんので、あくまでも核兵器というものは侵略を抑止するための手段であるということでございますので、実際に核兵器を使うについてどういうことを、どういう手続でどういうことになるかということを御議論いただくということは、やはり適当ではないのだろうというふうに私は考える次第でございます。
  374. 三浦久

    三浦(久)委員 総理大臣が、核の先制使用について、それは安保条約上排除する立場にないとはっきり答弁されているわけですね。だから、それとの関連で聞いているのです。排除する立場にないということであれば、いろいろ協議をした結果、同意することもあり得るということになるでしょう、核の使用を一切禁止するというような態度はとらないということですから。そうすると、拒否をする場合もあればまた同意をする場合もあるだろうと私は思うのですね。ですからその点を聞いているので、それを答えるのは適当じゃないとか議論するのは適当じゃないというのは、余りにも一方的な見解の押しつけじゃないでしょうか。総理大臣が答弁していることに関連して聞いているわけですから。
  375. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 大変恐縮でございますが、総理の御答弁自体も、現実の核兵器の使用というものを前提とした御答弁であったというふうには私どもは理解をいたしておりません。  日本は非核三原則を堅持しておるわけでございますから、いずれにしても、日本の有事の場合であっても日本の国内への核兵器の持ち込みはあり得ない、こういう前提で、それでは公海上ではどうか、公海上につきましては、核兵器の使用というものを一切排除するということになりますと、アメリカの核抑止力に依存しておるという安保体制の一つの基本的な側面がございますので、それの否定ということにつながるであろうということで、そういうことを完全に排除する立場には我が国としてはないんだというのが、総理の御答弁の趣旨であろうというふうに理解をいたしておるわけでございます。
  376. 三浦久

    三浦(久)委員 ちょっと注意していただけませんか。質問に答えていただきたいのです。  ですから、そういう立場に立ては、協議をしても同意をするということもあり得るということになるじゃありませんか。必ず拒否するんだということじゃなくて、同意をすることもあり得るということになるのじゃないですか。私は質問に適切に答えていただきたいのですよ。安保条約の運用上の問題、仕組みの問題を聞いているわけですから。
  377. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 公海上における核兵器の使用というものを完全に排除する立場にはないということを総理はおっしゃられたわけでございまして、これはまさに先ほどの繰り返してございますが、いかなる場合でも核兵器を使用してはならないということを日本としてアメリカに注文をつけるということであれば、これは核抑止力の否定ということにつながるので、そういう立場は日本としてはとらないということを総理はおっしゃられたにすぎないのであろうというふうに理解をしております。
  378. 三浦久

    三浦(久)委員 同じような答えですね。そうすると、やはり同意することもあり得るということでしょう。  それでは、時間がないからちょっと先に進まなければいけませんが、協議の結果、日本側が核の先制使用について同意しなかったという場合も状況によってはあるだろうと思うのですね。アメリカは使いたいと言う、しかし日本側はそれはやめてくれと言う。そういう場合に、アメリカ軍は核兵器の使用はできないのかどうかですね。これは安保条約上の仕組みとして聞いているのですよ。それでも構わずできるのかどうか、そのことをお尋ねしたい。
  379. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 全く理論的な問題と実態の問題と一緒になって議論をいたしますことは、核兵器というものの性格上、甚だ適当ではないというふうに考えるわけでございます。  ただ、いずれにいたしましても、問題は我が国自身の防衛の問題でございますから、共同対処をするアメリカといたしましては、実際問題として考えますと、日本の防衛というものについて日本がどういうふうに考えるかということについては、これは核兵器の使用の問題のみならず、あらゆる問題につきまして十分念頭に置いて対処するということでなければ、安保条約というものは機能しないのであろうというふうに考えます。
  380. 三浦久

    三浦(久)委員 しかし、安保条約の仕組み上、日本が拒否した場合に果たして米軍がそれに拘束されるのかどうかということ、そのことについては今お答えになられませんでしたよね。安保条約によって日本の平和が守られていると言うけれども、例えば安保条約の第五条によって、日本が有事でない場合に、極東の平和と安全という立場でもってアメリカ軍が行動を起こした場合に、相手から報復攻撃を日本基地が受ければ、自動的に戦争しなければならないようになっているでしょう。核兵器の問題についてもそうです。アメリカの意思によって核兵器が使われる、そのことによって日本が核戦争に巻き込まれる。今の核安保という体制の中では、この安保条約は非常に危険な役割を果たしているというふうに私は言わざるを得ないのであります。  そこでもう一つ、それじゃ問題を変えまして、公海上でもって共同対処をしているときに、アメリカ軍が日本に上陸している敵に対して先制的に核兵器を使用する、そういうことは私は絶対に許してはならないというふうに思うのですが、安倍外務大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
  381. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは先ほどから政府委員がしばしば答弁しましたように、今三浦さんがおっしゃるのは全く仮定の仮定の話ですよね。仮の仮の話ですよ。今の日米安保体制というのは、要するに核の抑止力によって日本の平和、安全を守っていこうということで、そのために生まれたものであって、それによって現在も平和が維持されている。これは厳然たる事実なんですね。ですから、今、日本が有事の際というのはいろいろなことが考えられるわけなのですが、そういう中でやはり日本はあくまでも有事の際といえども非核三原則は堅持していく、核の持ち込みは事前協議があってもこれは認めない、こういう日本の非常にはっきりした非核三原則の考え方というものは、しばしば国会で明らかにしたとおりでありますし、我々はこれを貫いていきたい、こういうふうに思っております。
  382. 三浦久

    三浦(久)委員 何か全然質問に答えていませんね。非核三原則の話なんて聞いてないでしょう。公海上の問題は非核三原則と関係ないじゃないですか。そう言っているわけでしょう。日本の領空、領海、それからまた領土、そういう中での話でしょう、非核三原則というのは。そういうことを今まで何回も何回もおっしゃってこられて、そういう答弁ではぐらかさないでいただきたいんですよね。  日米が共同体——いや、中曽根さんが言っているから、それに関連して聞いているんですよ。中曽根さんが、先ほども言いましたように、日本列島が侵略されて敵が日本に上陸しているとか日本が爆撃されるとか、そういう非常事態のときに、どうしてもほかに手段がないような場合に米軍が核を使うというようなことまで日本が排除するという、そういう立場にはないとはっきり述べられていますからね。  そうすると、この核の使用というのは二つ考えられるでしょうね。相手の基地をたたくという場合と、それからまた日本に上陸をしている敵をたたくという場合と、両方あるだろうと思うんですよね。ですからそういう場合、日本に上陸をしている敵を核兵器でもって米軍が攻撃するということについてはどう思われますかと聞いているわけですから、それはお答えになれるんじゃないでしょうか。
  383. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは政府委員も答弁したことと同趣旨ですけれども、我が国に対する武力攻撃が行われまして、今お話しのように我が国に外国の軍が侵攻するような事態が、いかなる状況のもとで行われ、いかなる対応で生じるか、これはいろいろと対応があると思いますね。これを現時点で想像するということは余り適当じゃないように私は思いますが、いずれにしても、そのような事態に対しまして、日米両国が安保条約第五条に基づき共同対処を行うことによりまして、侵略された国土と国民の防衛のために具体的条件のもとで最善と判断される自衛手段を講ずることとなるわけであります。政府としては、こうした場合といえども、どうしても非核三原則、これはもう日本の国是ですから、非核三原則を堅持するとの基本的立場で対処すべきものであることは当然でございまして、このことは従来より繰り返して申し上げているところであります。
  384. 三浦久

    三浦(久)委員 侵略に対して最善の対処をする、その最善の対処の中にそういう核兵器の使用も許す、そういうものが入るのですか。そこを聞いているんですよ。最善の対処をするというのは当たり前ですよ。最善の対処の中に——これは非核三原則の問題じゃないんですよ。公海上から米軍が、日本に上陸している敵に核先制使用攻撃を加える、そういうことを聞いているんですよ。何も首をひねることはないじゃないですか。質問は極めて明瞭簡単でしょう。それについて安倍大臣はどう思うかということを聞いているんですよ。あなたも全然答弁しないね、のらりくらりで。
  385. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 中曽根総理も同趣旨の御質問、東中委員でございますが、ことしの衆議院の予算委員会において、「日本に上陸してきている敵の、攻撃してきているその部隊に対する使用も、それは米軍が勝手にやるということですね。」という東中委員の御質問に対して、総理は、「私はそのときの情勢で大局的に判断をすべきものがあります、そう言っているのであって、我が国の民衆に対して、あるいは我が国の都市に対して被害を及ぼすようなことは、これは避けるのは当たり前であって、そういう侵略をやっている基本的な主力をたたく、そういうような意味が込められておるわけであります。」こういうことを総理は言っておられます。
  386. 三浦久

    三浦(久)委員 言っておりますね。いや、それは答弁にならぬじゃないですか。そうすると、それじゃアメリカ軍が使用すること、それは日本としてはもう了承する、そういうことですか。これは何も否定していないんですよ。「そのときの情勢で大局的に判断をすべきものがあります、」こう言っているわけですから、そうすると、米軍の公海上からの日本本土に対する核の先制使用というものについて、日本政府はそれを了解する、了承する、同意を与えることもある、そういうアメリカ軍の核の先制使用に対しては排除する立場にない、そういうことなんですか。これはもう極めて危険ですね。
  387. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 総理は別に、我が国に上陸してきている侵略部隊に対してアメリカが核を使うということを容認されるというようなことを言っておられる趣旨ではないので、この総理の御答弁は、まさにそういうことは考えていないということをおっしゃっておられるのだろうと思います。  そこで、冒頭から申し上げていることの繰り返してございますが、あくまでも核兵器の使用の問題というのは抑止力の問題として御理解いただきたいわけでございまして、先ほど申し上げましたが、政府としましては、これは当然核戦争というものはあってはならないと考えておるわけでございますし、核戦争というものは避けなければならない、核兵器の使用というのはあってはならないということから出発しておるわけでございますので、そういう前提に立って御理解をいただきたいと思うわけで、ある一つの想定を置かれて、そのときに核兵器の使用がどうなるのであるかということを御質問を受けても、それに対してこうである、ああであるということを御答弁申し上げることは非常に誤解を招くことになるというふうに私としては考える次第でございますので、先ほどから繰り返し申し上げておるわけでございますけれども、あくまでも核兵器の使用という問題は抑止力との関連で御理解をいただきたい、こういうことでございます。
  388. 三浦久

    三浦(久)委員 抑止力と言うけれども、核兵器があるから核戦争が阻止されているなんて、そんなばかな話がありますか。核兵器があるから核戦争の危険が強まっているだけであって、核兵器があるから核戦争を抑止しているんだなんて、そんなことはもう国民の常識から反していることですよ。本当に核戦争をなくすということであれば、核兵器をなくしたらいいんですよね。ですから、国際的な核廃絶の協定を結べばそれでいいのです。そして、その協定に基づいて世界の核保有国がどんどん核兵器を削減していけばいいんじゃないですか。それを検証だとか何だとか、抑止力だとか何だかんだ言って、そういう核廃絶の国際的な協定を締結することをサボっているというのがあなたたちの態度なんですよね。  それで、私、時間がないので、全く何のために質問したのかわけがわからないというような状況になりましたけれども、安倍大臣、こういう問題というのは、一度起きたら人ごとなんですよね。ですから万全の歯どめをかけておかなければいけないんですよ。ですから、非核三原則だって日本の国是になっているわけですよ。そうすれば、私は、アメリカ軍が日本の防衛のために核兵器を使うということについて、やはりアメリカ軍との間に何らかの合意をしておくべきだと思うのですよね。日本としては、合意の前にそういう日本の防衛のために核兵器は使わないという政策をひとつぴしっと確立をするということ。そしてもう一つは、そういう政策に基づいてアメリカとの間に、日本の防衛に関しては核兵器は使用しないという合意を取りつけておく。それがないと日本国民というのは安心して生活ができないと思うのです。そういう意見を私は持っていますが、どういうふうにお考えですか。
  389. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 核兵器についてはまさにあなたと見解は違いますが、私はやはり戦後四十年間世界の平和が保たれておるというのは、核兵器が戦後核保有国との間に発達してきて、核戦争が起これば世界が大災害が起こっていくということによって、これは一つの抑止力としての作用が冷厳な事実としてあったと思うのです。しかし同時に、そうした核兵器を廃絶しなければならぬというのは、特に日本は広島、長崎で核の洗礼を受けたただ一つの国ですから、日本としてはそういう理想を持ってこれまでも努力してきましたし、これからも努力していくのは当然のことであります。  やはり現実と理想というものはそれぞれあるわけで、今の現実の姿において、日本の平和と安全を守るためには、安保条約によってアメリカの核、それから非核のいわゆる戦力、これによる抑止力というものに依存をして、これが現実的に日本の今の平和というものに貢献していることも事実だ、こういうふうに思っておるわけなんです。そういう中で、これからそうした仮の事態というものについて、我々は抑止力というものに万全の重きを置いておりますから、そうした今おっしゃるようなことについて、明快に問題をイエスかノーかというふうな形で考えることは非常に危険な考えだ、国民をかえって不安に陥れると私は思っています。  我々は、核というものは、中曽根総理も言っているように、全くどんな場合でも使わないということでは抑止力というのはあり得ないわけですから、論理的にはそういうことがあるわけですけれども、しかし日本の場合において、私自身としては、核が使われれば日本の破壊につながるわけですから、やはりそういうことは避けていかなければならぬし、それはアメリカ日本も同じような考えだと思いますよ、核を簡単に使おうなんて考えていないわけですから。抑止力としての核を全く排除できないという論理的な帰結はありましょうけれども、実際にこれを使うとか使わないとかいうのは日米両国とも現実の姿においては考えていないわけですから、日米両国でそうした問題について話し合いをするということはありませんし、また日本に対するそうした核の攻撃というものについては、日本日本なりにこれまでの悲惨な経験、あるいはまた日本の持っておる諸原則というものを踏まえて日本が自主的に判断をして決めていかなければならぬ、私はそういうふうに思います。
  390. 三浦久

    三浦(久)委員 核が何で抑止力ですか。それじゃ、アメリカだけが核を持っていたときに、昭和二十年の八月の六日と九日に日本がやられたでしょう。アメリカ自身が核兵器を使用したわけでしょう。その被害を日本が受けたんですよ。核兵器が抑止力だったら、恐らくあれは使わなかったでしょう。何が抑止力ですか。核兵器というのは使うことを前提にして、実際に使われているじゃありませんか。そして、本当に核兵器が使われないようにしているいわゆる抑止力は、例えばベトナム戦争のときでもその前の朝鮮戦争のときでも、アメリカの高官自身が言っているように国際世論なんですよ。核兵器反対の国際世論がずっとあって、それが怖くて使えなかったということをちゃんと述懐しているじゃありませんか。核兵器自身があるから核戦争が阻止されているのじゃないのです。核兵器反対の国民世論がある、国際世論があるから、今の戦後のそういう危険な状態でありながらも辛うじて平和を保ってきたということなんですよ。その点、私は全く根本的に違う。私どもが危険な考えを持っているなんて、全くもう黒を白と言うたぐいですよね。そんな議論は全くやめていただきたいと私は思うのです。他の委員にも迷惑がかかりますからそれでやめますけれどもね。
  391. 中島源太郎

    中島委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十四分散会