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1985-03-28 第102回国会 衆議院 内閣委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年三月二十八日(木曜日)     午前十時三十分開議 出席委員   委員長 中島源太郎君    理事 石川 要三君 理事 戸塚 進也君    理事 深谷 隆司君 理事 宮下 創平君    理事 小川 仁一君 理事 元信  堯君    理事 市川 雄一君 理事 和田 一仁君       池田 行彦君    石原健太郎君       菊池福治郎君    塩川正十郎君       月原 茂皓君    堀内 光雄君       山本 幸雄君    角屋堅次郎君       山下洲夫君    山本 政弘君       鈴切 康雄君    日笠 勝之君       田中 慶秋君    柴田 睦夫君       三浦  久君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         外務大臣官房長 北村  汎君         外務大臣官房領         事移住部長   谷田 正躬君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省北米局長 栗山 尚一君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省経済局長 国広 道彦君         外務省経済協力         局長      藤田 公郎君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君  委員外出席者         防衛庁長官官房         防衛審議官   藤井 一夫君         防衛施設庁建設         部建設企画課長 黒目 元雄君         外務大臣官房審         議官      瀬木 博基君         文部省初等中等         教育局教科書検         定課長     小埜寺直巳君         文部省教育助成         局海外子女教育         室長      牛尾 郁夫君         厚生省援護局業         務第一課長   森山喜久雄君         内閣委員会調査         室長      石川 健一君     ――――――――――――― 委員の異動 三月二十八日  辞任         補欠選任   嶋崎  譲君     山下洲夫君 同日  辞任         補欠選任   山下洲夫君     嶋崎  譲君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申入れに関する件  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第一九号)      ――――◇―――――
  2. 中島源太郎

    中島委員長 これより会議を開きます。  内閣提出在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  趣旨説明を求めます。安倍外務大臣。     ―――――――――――――  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  3. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ただいま議題となりました在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案について御説明いたします。  改正の第一は、在外公館設置関係であります。今回新たに設置しようとするのは、総領事館一館で、中国瀋陽に設置するものであります。これは、実際に事務所を開設するものであります。瀋陽中国東北部中心地で政治的、経済的に重要な地域であるばかりでなく、我が国と歴史的に深い関係にある地域でもあります。  改正点の第二は、同総領事館に勤務する在外職員在勤基本手当基準額を定めるものであります。  改正点の第三は、子女教育手当に関するものであります。現行制度のもとでは、年少子女一人につき月額一万八千円の定額支給のほか、特定の在外公館に勤務する職員に対してのみ、一定の範囲教育費につき一万八千円を限度として加算が認められております。今回の改正は、現地における外国人学校授業料等が高額であり、多額の教育費負担を余儀なくされている在外職員が少なくないので、それに伴う負担の軽減を図るため、加算対象職員範囲を拡大し、かつ、在外職員年少子女が特別な事情により当該職員在勤地及び本邦以外の地において就学している場合にも加算が認められるようにするとともに、その加算限度額を三万六千円に引き上げようとするものであります。  最後改正点は、昨年八月の上ヴォルタ国国名変更に伴い、同国にある日本国大使館名称を在ブルキナ・ファソ日本国大使館と変更するものであります。  以上が、この法律案提案理由及びその概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  4. 中島源太郎

    中島委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ―――――――――――――
  5. 中島源太郎

    中島委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。角屋堅次郎君。
  6. 角屋堅次郎

    角屋委員 ただいま安倍外務大臣から提案理由の御説明のございました在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、法律改正内容にも後段もちろん触れてお尋ねいたしたいと思いますが、せっかくの機会でありますので、安倍外交展開というよりも、広く言えば、これからの日本外交推進基本姿勢といったような問題についても若干御質問を申し上げたいというふうに思います。  安倍外務大臣は、御案内のとおり、中曽根内閣が成立をいたしました昭和五十七年十一月二十七日以降、内閣の中枢である外務大臣として、今日まで二年数カ月東奔西走我が国平和外交展開努力してこられたわけでございます。私は、国会同期の人間として、その労を多とするものであります。  言うまでもなく、ことしは戦争が終わりましてから四十年、しかも国際情勢から見ましてこの節目の年に、日本としては、あるいは国際的にも、平和と軍縮の一年にしなければならぬという大きな命題があろうかと思うのでございます。この際、安倍外務大臣は、これからの日本外交推進について、大臣自身は「積極的かつ創造的な外交展開」というお言葉を使っておられるようですが、安倍外交のこれからの展開についての所信をまずお伺いをいたしたいと思います。
  7. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 角屋委員からのお話のように、今、日本は戦後四十年たって、まさに大きな節目の年に際会しておると思いますし、また外交も、そういう意味で、四十年を振り返って、今後の新しい世界平和への貢献をしていかなければならない重大な年を迎えたと思っております。  そういう状況の中にあって、今、国際情勢をどういうふうに判断しているかということでございますが、依然として厳しい状況にあるということを我々は認識いたしております。同時に、そういう中にあって、我が国の国力にふさわしい国際的責任を果たして世界平和と繁栄に積極的に貢献をしていく、こういう立場から「創造的」ということを私、言っておりますが、まさに創造的な外交展開していく考えでございます。  具体的には、自由民主主義諸国との連帯と協調の強化。第二点としては、アジア太平洋諸国との友好協力関係の増進。まさに、日本アジアの一国として、その責務は大きいと思います。また東西間の対話、これはまさに今、米ソ軍縮交渉軍備管理交渉再開をされるという時点に立っておるわけでありまして、そういう意味でもその対話が進むことを念願して、日本はそのための外交努力というものを惜しんではならない、こういうふうに考えております。  そういう中にあって、地域的にも紛争が起こっておりますが、今非常に大きな注目を集めておりますイランイラク紛争、あるいはまたカンボジア問題等のこうした地域紛争の平和的な早期解決に向けての努力を、これまでも続けていきましたが、今後とも続けていかなきゃならない、そういう中で日本役割というものは非常に大きいと思います。日本でなければできない平和努力というものもあるわけでございますから、そうした平和努力を行っていく。そして、まさにことしこそ平和・軍縮へ向かって大きく踏み出さなければならない、そういう年にしたいものだ、こういうふうに思っておるわけでございます。  さらにまた、今、日米経済摩擦に象徴されるように、世界の中で保護主義がじわじわと台頭してきておるわけでございますが、まさにそうした困難を克服して自由貿易体制というものを維持していく、堅持をしていく、これは世界の平和と安定、経済繁栄のためには欠くことのできない基本的な体制であろうと思いまして、こうした自由貿易体制維持強化、さらにまた世界経済の発展に向けて貢献をしなければならないと思います。  同時にまた、第五番目に、私が強く主張しておるわけでございますが、今アフリカ等は大変な飢餓に苦しんでおるわけでございます。南北問題も、累積債務問題等いろいろと深刻な問題等が起こっておるわけでございます。日本としましては、去年以来特に飢餓に苦しむアフリカに対しまして、官民挙げて協力、支援を強化いたしておりますが、こうしたアフリカを初めとする開発途上国への援助、協力等につきましても積極的に取り組んでいくということがこれからの外交の大きな課題であろう、こういうふうに思っておるわけでございます。  こうした世界情勢の変化の中で、日本は具体的に日本の進むべき道を探求しながら、世界平和への貢献世界経済の安定と繁栄のために、日本でなければできない自主的な積極的な外交展開してまいりたいというのが私の決意でございます。
  8. 角屋堅次郎

    角屋委員 今の安倍外務大臣所信、これは従来からも、大臣自身外交姿勢として、日米友好を基軸にしながら西側の一員としての立場に立ち、またアジア外交を重視しながら、同時に、今もお話しのように東西間の緊張を緩和するといったような立場も踏まえて、しかも現実に起こってくる日米経済摩擦の打開問題、あるいは飢餓に苦しむアフリカの問題、現地には大臣自身がみずからも行かれたわけでございますが、あるいは今相当激化を伝えられておりますイランイラク戦争といったような問題に対して、日本として当面どういう手を打とうとするのか。また数日前、東独におきましてソ連兵による米軍将校射殺事件が起こって、これが米ソのこれから本格的に始まらなければならぬ包括軍縮交渉に暗影を投げるのかどうかといったような問題があったり、あるいは中国魚雷艇の艦内でいわゆる反逆殺人事件が起こる、韓国にこの船が行って、そして中国韓国外交ルートを通じて平和裏にこれが返還をされるといったような報道もあるわけですが、これらの問題について、これからの外交展開上、どういうふうに判断をしておられるのかという点についても若干御説明を願いたいと思います。
  9. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今イランイラク戦争激化をいたしておるわけでありまして、我々も非常に心配をいたしております。この状況がますます悪化し、そして激しくなれば、思わざる事態に突入するおそれがあるわけでありまして、何としてもこのイランイラク戦争拡大防止努力をしていかなければならない、同時に最終的には平和的解決に持っていかなければならないと思っております。  日本としましては、一昨年来、このイランイラク戦争につきましては、日本イランイラク両国とも友好関係があるという利点を生かして、何とかこのイランイラク戦争拡大防止のために貢献できないかということで、一応いろいろの道を探ってまいりました。私自身イランイラクを訪問いたしましてその道を求めたわけでございますが、何といいましてもイランイラク戦争の背景は非常に根が深くて、歴史的な問題もあるわけですから、なかなか容易なものではございません。しかし、日本としましても、イランイラクとの外交関係強化する中で辛抱強く戦争拡大防止のための努力をいたしてまいりまして、日本提案等も既に昨年の国連総会で私からも発表いたし、これを両国が受諾するようにも努めてまいったわけでございますが、なかなか大きな成果を上げるに至っておりませんで今日に至っておるわけであります。  そういう中で爆撃や攻撃が続いて、テヘランの在留邦人等引き揚げ問題等も起こってきたわけでございますが、しかし、私としましては、イランイラク両国日本との間で、外交パイプも太くなってまいりましたから、何としてもこの際一つの役割を果たして貢献をしていかなければならぬというふうに思って、その後も引き続いて関係強化しまして努力を重ねております。  イランイラク両国とも戦争はお互いにやっておりますが、やはり日本に対する期待は相当大きいように思います。最近では、イランの特使が日本にやってまいりましてイラン立場説明するとともに、戦争解決に向かっての日本努力要請をしてまいりました。また来週の初めにはイラク外務大臣が、一日だけてありますが、わざわざ日本を訪問いたしまして、日本イラク関係だけでなくて、イランイラク戦争全体についても日本と話し合うということでございます。したがって私たちは、こういう機会をとらえまして日本の真意を説明をいたしまして、さらにひとつ努力を大きく進めてまいりまして、これは日本だけでできることでもないわけですから、国連との協力あるいはまた関係国協力も求めながら、戦争の不拡大あるいはまた最終的な平和解決に向かってこれからもひとつ全力を傾けたいと思っております。  それから、中国魚雷艇韓国領海に入っていろいろとそこで問題が起こったわけでございますが、この事件につきましても、日本中国韓国との間のいわば意思の伝達等につきましてもいろいろと協力をしてまいりました。最終的には中国韓国との間の直接交渉によって問題が解決をいたしまして、既に、韓国内にありました中国魚雷艇、そしてその乗組員中国に出発したと聞いておるわけでございますが、この事件も大きな問題に至らずして解決をいたしたことを喜んでおるわけでございます。  また、ポツダムにおいてアメリカ軍将校ソ連兵士によって射殺されたという事件が起こりました。これはアメリカ国内におきましても大きな反響を呼んでおるわけでございまして、まだこの問題は片がついておらないわけでございます。しかし、せっかく米ソの間で核軍縮交渉がようやく再開をしたということで、世界は非常に大きな注目をいたしておりますし、期待もいたしております。流れがそうした軍縮方向へ大きく進んでおるという国際情勢の中ですから、こうした事件によりましてこの流れが変わらないように、何とか米ソ交渉等もこれから進んでいくように、我々としてもこの事件がそういう立場から解決されるということを期待をいたしておるわけであります。
  10. 角屋堅次郎

    角屋委員 今安倍外務大臣から最後に触れられました点とも関連をいたしますが、質問の第二点といたしましては、御承知ジュネーブで三月十二日から始まっております米ソ包括軍縮交渉、これが現実話し合いがなされておりまして、私ども承知しておるところでは、戦略核の問題あるいは中距離核の問題、宇宙兵器の問題、こういった問題での個別交渉、あるいはそれらを包括する全体会議といったようなことでこれから話し合いが進んでいくという情勢にありまして、ことしを平和と軍縮の年にするという意味では、米ソの従来の厳しい対立関係からいわゆるデタントの方向へ一歩進むということで、国際的にも大きな期待が持たれておるわけでございます。  カンペルマン米国首席代表が、大統領の指示もあったと思いますけれども、最近一時帰国をいたしまして、レーガン大統領にこれまでの状況を報告するとともに、次期戦略ミサイルMX予算凍結解除について、下院に対する働きかけ等もしたということが報道でも出ておりますが、それはそれといたしまして、ソ連カルポフ代表との間で、この包括軍縮交渉が実りある方向に進むことを私どもとしても強く期待をしておるわけでございます。現段階においては、来月二十三日ごろまで第一ラウンドの話し合いが行われるというふうにも報道されておるわけでございますが、こういった米ソ包括軍縮交渉の始まっている矢先に、今次国会でも大変大きな問題の論戦になりました、新年早々のレーガン中曽根日米首脳会談、これは安倍外務大臣も同行して一緒に議論されたわけでございますけれども、そこで出ましたいわゆる戦略防衛構想SDIの問題について、中曽根さんはこれに理解を示した、今後の研究開発等の問題については日本側にも連絡を願いたいといったようなことで、SDI構想に対して深い理解を示したということが言われております。  言うまでもなく、日本平和憲法体制の中にあるわけでありますし、同時に、世界唯一被爆国として、核廃絶というものの悲願に向かって国際外交展開しなければならぬ重要な役割をやはり持っていると思うのでありますが、数日来、このSDIの問題について、アメリカワインバーガー国防長官が、日本を初めNATO諸国等に対して、いわゆるSDIに対する協力要請ということをしておるというふうにも伝えられております。こういったSDIに対する協力要請というものが、正式に日本の方にも書簡としてなされてきておるのかどうか、もしなされてきておるとすれば、どういった中身で要請をしてきておるのか。こういった米ソ包括軍縮交渉の展望といったような問題、同時に、アメリカワインバーガー国防長官からSDIに対する協力要請が来ておるのかどうか、また、そういった問題が来ておるとすれば当然これに対するいわゆる内閣としてどう対応するのかという問題が重大な問題でありますけれども、率直に言って、これらの問題については日本としては慎重な対応が必要である、基本的には我々としてはそういうものに加わっていくということに反対でありますけれども、慎重な対応が必要であるというふうに思いますが、これらの問題について御答弁願いたいと思います。
  11. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まずジュネーブ交渉でありますが、三月十二日から開始されました交渉は、当初週二回のペース会合が行われましたが、今週からはグループごと会合がそれぞれ週一回のペースで行われることになっておりまして、また、今次交渉ラウンドは四月二十三日に終了の予定、こういうふうに承知をしております。  交渉見通し等につきましてはまだ確たることは申し上げられないわけでありますが、具体的問題につきましては米ソ間で主張が大きく異なっておりまして、今後交渉が相当長期にわたることは不可避の状況と思われます。  いずれにしましても、我が国としては、右交渉においてたちまちにして合意に達する可能性があるといった幻想は抱くべきでなく、辛抱強く冷静に見守っていく必要があると考えます。  我が国としましては、交渉の進展のため、今後とも西側の結束を図りつつ、米国交渉努力を積極的に支持していく所存であります。  なお、特にINFの分野につきましては、この問題のグローバルな解決が図られるよう引き続き訴えていく考えでございます。  なお、今、同時に御質問がございましたSDI、いわゆる宇宙戦略構想につきましては、ロサンゼルスの首脳会談におきまして、アメリカ側から、このSDI構想があくまでも防御構想であり、また非核のものであり、相手方の弾道ミサイルを無力化するものである、こういうことで、最終的には核の絶滅に結びついた構想であるので、これに対して日本協力を求めてまいりました。日本はこれに対しまして、中曽根総理から、この研究については理解をする、しかし同時に、この構想はまだ始まったばかりであって、これからどういうふうに進むか、その段階ごとにおいて情報の提供を受けたい、また場合によっては協議を受けたい、こういうことを申し入れて、アメリカ側も了承した次第でございます。  なお、このSDI構想につきまして、ワインバーガー国防長官から日本に対する協力が求められたかという御質問が今ございました。この席をかりまして申し上げたいと思いますが、実は昨日の夜遅く、ワインバーガー国防長官から私に対しまして、アメリカワシントン大使館を通じまして書簡が届いたわけでございます。  その書簡内容につきましては、ワインバーガー国防長官NATO理事会において発表いたしましたように、日本に対して協力を求める内容となっておるわけでございまして、この内容そのものについては政府委員からも答弁をいたさせますが、まだ受け取ったばかりでございまして、内容を十分慎重に検討いたしまして、それに対する政府態度を決めたい、こういうふうに考えております。
  12. 栗山尚一

    栗山政府委員 ただいま大臣から御答弁のありましたワインバーガー国防長官から外務大臣あて書簡内容について、補足的に御説明申し上げます。  書簡の日付は二十七日付ということでございまして、内容につきましては、ポイントだけを申し上げますと、今後、アメリカとしては、SDI研究貢献し得る各種の技術分野において同盟国一緒研究を行っていく用意がある。したがいましてそういう考え方に立って、同盟国の方で関心のある技術分野、そういうことでアメリカ協力をして研究をやっていく関心のある分野について、どういう分野関心があるかということをアメリカに知らせてほしいということ。それから、そういう同盟国判断に資するために、今後、専門家に対して、アメリカとしてはいろいろなブリーフィングを行う用意があるということ。それから、その関心表明については、一応六十日以内にアメリカに対してそういう関心表明をやっていただきたい。主な点はそういう内容でございます。
  13. 角屋堅次郎

    角屋委員 後段の、ワインバーガー国防長官の方からSDIに対する、今政府委員から説明のありましたいわゆる協力要請というものに対して、日本政府としてどう対応するかという問題はやはり極めて重大な問題であります。径ほど日ソ関係についても質問をいたしたいと考えておりますが、いわゆるSDI構想について、日本はもとよりヨーロッパNATO諸国等に対して協力要請するということで、日本がこれに積極的に組み込まれていくとすれば、いわゆるアメリカ防衛戦略に、アジアにおいての日本、あるいはヨーロッパにおけるイギリス、西独、フランス等を初めとするNATO諸国といったものが一体化の中で、ソ連との対立姿勢をより一層明確にしていくということに相なってまいるわけでありまして、ジュネーブで始まっていく包括的軍縮交渉のこれからの展開に大きな期待を持つ我々としては、SDI研究そのもの米ソ包括的軍縮交渉を通じてストップさせるということが我々の基本的な考え方でありますけれども日本側態度というのはそういう意味で極めて慎重であらねばならぬ、また全面的にということであっては断じてならないというふうに考えます。これらの問題に対する対応は今後どうしていくのかということについて、もう一度外務大臣から御答弁を願いたい。
  14. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 SDI構想につきましては、日米首脳会談において日本立場は明確に中曽根総理から述べております。これは、アメリカの言いますような構想内容であるとするならば日本はこれを理解する、こういうことでございます。しかし、何といいましてもこのSDIは大変長期的な研究開発を要するものでありまして、まだまだ研究が始まった段階でございますから、この間に全貌について今云々するという状況ではないわけでございます。これからSDI研究が進むにつれて日本アメリカから情報を得たいということにつきまして、アメリカの了承も得ております。同時に、場合によっては協議もしなければならない、そういうことで協議についても合意を見ておるわけでございます。非常に先の長い問題であるわけでございますが、このSDI構想アメリカによって発表された、こういうことは、ある意味においてはジュネーブ米ソ交渉再開するに当たって一つのばねになったということも言えないわけではないのではないか、私はこういうふうに見ておるわけでございます。ソ連もこの構想に対しましては大変重大な関心を持っておることは御案内のとおりでございまして、このSDIジュネーブ会議の中でこれからどういうふうに取り扱われていくかということは、米ソ間の問題として我々も注目をいたしておるわけでございます。  いずれにいたしましても、日本との関係におきましては理解ということで、今いわばその他の問題については保留をしておるという形でございますので、これからどうするかといったことについては、十分政府の中で相談をいたしまして、何としても日本の基本的な考え方というものがあるわけでございますから、この基本的な立場というものを踏まえながらこれの対応をしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  15. 角屋堅次郎

    角屋委員 本委員会においても安倍外務大臣の出席を求めて外交、防衛問題についての議論をいたす機会が予定されておりまして、そういうときには、我が党の上原さん初めそれぞれ、こういった基本問題についてはさらに議論をしていただくことに相なると思うのでございます。いずれにしても、このSDI構想そのものについて我が国としてどういうふうに対応するかといった問題は、宇宙については一九六七年の宇宙空間平和条約があり、また一九八三年十二月の第三十八回国連総会で採択された宇宙における軍備管理競争防止に関する決議、これは日本が賛成をしアメリカは反対したわけでありますけれども、そういう国連決議もあり、日本にもこういった宇宙の平和利用という問題における国会決議もあるわけでありますから、そういうものを踏まえきして誤りのない対応をしていただきたいということを厳しく注文しておきます。  次に、日ソ関係について触れたいと思うのであります。  私は、たまたま数年来日ソ友好議員連盟の事務局長という役柄を仰せつかっております関係上、ソ連を訪問する、あるいはソ連からおいでになるお客さんが政府の方々なり衆参両院議長に表敬訪問されるときには御案内するという役目も持っておるわけでありますが、去年、大韓航空機撃墜事件以降、日ソ関係がアフガン問題も含めて大変厳しい状況の中、私は佐藤文生さんと一緒に春にモスクワを訪問して、懸案のソ連国会代表団を日本に迎える問題を含めて、ソ連の首脳部といろいろ話し合いをいたしました。さらに八月には、日ソ友好議員連盟の会長に御就任をされた櫻内さんと一緒ソ連を訪れて、そして、私としては初めてでありますけれどもソ連の幹部の皆様以外にグロムイコ外務大臣と約二時間、日ソ間の問題についていろいろ議論をいたしたわけでありまして、櫻内さんから、北方領土問題を解決して日ソの平和条約を締結する、これが真の日ソ友好の基本的なスタートになるという立場から、日本側の主張をされたことは当然のことでございます。さらに十月には日ソ円卓会議があり、そういうところで、これから日ソの問題を考える場合の一つの判断の素材として、日ソの経済協力問題あるいはまた日ソの文化協定締結の問題といったようなものを含めた共同コミュニケが、民間ベースではございますけれども取り決められたわけでございます。  で、御案内のとおり、中曽根総理安倍外務大臣は本年早々日米首脳会談を持たれ、さらにソ連との関係では、チェルネンコ書記長が御逝去されたのに伴います中曽根総理安倍外務大臣一緒になって弔問外交ソ連を訪れられる、そして新しく書記長になられましたゴルバチョフさんと日ソの首脳会談が持たれた、そこで、かねてからの懸案でありますグロムイコ外務大臣の訪日といった問題も大きくクローズアップしてきておるわけであります。  これから米ソ包括的軍縮交渉が進められてまいりますけれども、何といっても日本立場としては、アメリカに深く傾斜するということを戒めながら、ソ連との関係についても、グロムイコ訪日の問題を含めて日ソ関係の改善を図るということが安倍外交の重要な柱であろうかと思うのでありまして、これらの問題について安倍外務大臣としてどう推進されようとするのか、お答えを願いたいと思います。
  16. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日ソの問題につきましては、日本の基本的な立場は、角屋委員もよく御承知のとおり、領土問題を解決して平和条約を結ぶということでございまして、これまでそういう基本姿勢のもとで対応してまいったわけでございます。  そういう状況の中で、日ソ間はいろいろと変転を続けてまいりました。一昨年の大韓航空機事件、大韓航空機が撃墜されるという事件等もありまして日ソ間は急激に冷えた時代もあったわけでございますが、日本としましては、そういう領土問題という基本問題はありますが、同時にまた、日ソというのは隣国同士でございますし、歴史的にもいろいろのつながりを持っておるわけでございます。体制は違いますけれども、しかし日ソ間の対話あるいはまた友好関係は維持してまいりたい、そういう中で領土問題を解決して、平和条約を結びたいというのが我が国考えでございます。したがって何とか関係の改善を図っていかなければならない、それが将来の日ソの懸案を解決し、真の友好関係を結ぶ上にも大事だということで、私としましても、いろいろと不幸な事態はあったわけでございますが、日ソ間の友好関係を進めるための対話努力はしようということで、今日まで努力努力を重ねてまいりました。  政府間におきましては、中東問題あるいは国連問題についての協議であるとか、前山村農林大臣の訪ソであるとか、貿易問題についての政府間の交渉、相互間の協議再開であるとか、さらにまたソ連からの要人の来日を求める、こういう努力を重ねてまいりました。クナーエフ政治局員も去年日本を訪問されたことは、御案内のとおりであります。民間あるいは議会のベースにおきましても最近相当交流が活発になってまいりました。議員連盟間における交流であるとか経済界における交流、日ソ経済委員会の開催といったもろもろの対話が積み重ねられてまいりました。その点では私自身としても大変喜んでおるわけでございます。そして、今回弔問、チェルネンコ前書記長の逝去に伴います中曽根総理と私とのモスクワ訪問におきまして首脳会談も実現する、こういう運びになったわけでございます。  私たちとしては、そうした対話を積み重ねる中で、日ソ関係を大きく前進させるには、グロムイコ外相の訪日を求めなければならない。これは日ソの間ではいわゆる日ソの定期外相会議というのがあるわけでございます。しかしその定期外相会議がちっとも動いていない。やはり外相間の協議が動くことによって両国関係というのは大きく前進していくわけですから、定期外相会議というものを定着させなければならない。しかしそれには、何といいましても今度はグロムイコ外相に日本に来てもらわなければならない、その番がやってきたんだ、こういうことで強く求めておりまして、これに対しましてグロムイコ外相も前向きに対応したいということで、今日までいろいろとその点について話を詰めておったわけでございますが、今回の首脳会談におきまして、ソ連の最高の責任者であるゴルバチョフ書記長みずからが、グロムイコ外相の訪日を肯定的に対応するということを発言いたしたわけでございます。これはまさにグロムイコ訪日の大きな前進を意味するものじゃないか、こういうふうに思っております。  私も早速、日ソ間の事務レベルでこの訪日問題を詰めるように指示をいたしたわけでございますが、私としましては、グロムイコ外相の訪日を迎えまして、二国間の問題あるいは国際情勢等について基本的にまた十分論議を重ねまして、そして日ソ関係の改善のための大きな一つのスタートといいますか、そういうものに持っていきたいものである、こういうふうに思っておるわけであります。
  17. 角屋堅次郎

    角屋委員 チェルネンコ書記長の逝去に伴いますゴルバチョフ新書記長の登場ということは、日本はもとよりでありますが、西側の諸国においても、いわゆるこれからの東西対立の緩和、あるいは米ソにこれから展開されてまいります包括的な軍縮交渉といったようなものの展望について期待が持たれておる。それは、二階堂さんが中国を訪問されて、きょうの報道でも出ておりますように、中ソ間は必ずしもいい条件に長い間なかったわけでございますけれども、ゴルバチョフ新書記長の登場を歓迎しながら、もちろん中国としては、かねてから中ソの国境における軍事的な問題、あるいはベトナムのカンボジアヘの進攻問題、アフガンの進攻問題等々についてのソ連側の改善の姿勢というものが前提条件になりますけれども、これから中ソ間においても従来より関係改善がなされていくという予測も持たれるわけであります。  そういった中で、弔問外交ではございますが、米ソの間で首脳会談が持たれる、そしてこれから、今も安倍外務大臣答弁のように、グロムイコ外務大臣の懸案の訪日日程を秋までに実現させるということは大きな意味を持っておると思います。  グロムイコ外務大臣は、御案内のとおり一九〇九年生まれ、七十五歳という年齢と承知しておりますし、新しく登場いたしましたゴルバチョフさんは五十四歳という若さで書記長として登場する。世代交代的な感を国際的にも深くするわけでございますけれども、グロムイコ外務大臣自身は、かつてはアメリカの大使をやり、あるいはイギリスの大使をやり、国連大使をやり、外務次官から外務大臣へのコースということで、長年にわたって、戦中戦後を通じて外交関係の中枢にあってやってきた、国際的にも異例な不倒の記録を持った外務大臣ということが言えようかと思います。日本への訪問は昭和四十一年、昭和四十七年、昭和五十一年、この三回にわたってグロムイコ外務大臣が訪日されたと私自身承知をしております。今回訪日をされることになればまさに九年ぶりの訪日ということにも相なろうかと思うわけでございますが、この訪日と関連をいたしまして日ソの事務レベル協議というのが五月に予定されておるわけでありますが、恐らくそこでは、経済協力の問題あるいは文化協定締結の問題というふうなことを日本側としても検討しながら、日ソ間で事務レベルでも協議をなされ、グロムイコ外務大臣訪日のいわば環境づくりといった配慮もなされていくかと思うのであります。  私は、文化協定そのものについては、日本自身外国との関係でも約二十数カ国との間で文化協定を結んでおるわけでありますし、日ソ間においても協議を通じて文化協定の締結ということを強く望みたいと思うわけでありますし、長期経済協力協定ということになりますと外務省はむしろ否定的な立場をとっているやに聞いておりますけれども、しかし、日ソ間における経済交流というものは、当然隣国として進めなければならぬし、日本経済自身にも、やはりそういう面での強い要望等も背景としてあるわけであります。  この際、五月の日ソ事務レベル会議を通じて経済協力問題、特に文化協定の締結あるいは租税関係の協定の締結等取りまとめながら、その上に立って秋のグロムイコ外務大臣の訪日というプログラムにあるのかどうか、この点について重ねて御答弁を願いたい。
  18. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日ソ関係、まだまだこれからやはり長い道のり、しっかり腰を据えてやっていかなければならぬと思います。そういう中にあって、当面グロムイコ外相の訪日を求めるというのが私どもの姿勢でございますが、五月の末にはカピッツァ次官が今おっしゃるように日本を訪問することになっております。この次官協議におきまして、日ソ間の広範な問題にわたりまして協議が行われるわけでございますが、私も、今おっしゃるように、この次官会議というものを通じましてグロムイコ外相の訪日の件についてひとつ詰めがなされることを期待をいたしております。  その間にいろいろと問題が協議されるでしょう。今の文化協定の問題も、これは中曽根総理とゴルバチョフ書記長との会談の中で、日本としてもこれに取り組んでいく考えたということを明確に申し上げましたので、この点も話し合う必要があると思います。同時に租税協定についても、いよいよ交渉を開始するということについても日本も異存はありませんから、この点も話し合われる可能性も十分あると思いますし、あるいはまた経済協力の問題につきましても、民間あるいは政府それぞれのレベルの経済交流についても話し合われるわけでございますが、ただ、長期協定につきましては、これは首脳会談におきまして中曽根首相から、経済協力を進めるということは結構だし、この点についてはこれから大事な問題でもあろう、日本としてはこれに対して異存はないけれども、しかし、長期的な協定をつくるということについては日本はこれに賛成することはできないということを率直に申し入れてあるわけでございます。したがって、経済協力関係そのものを否定するわけではありませんし、これはやはり隣国の関係でありますし、貿易、経済、これから進めていかなければならぬと思いますが、長期的な協定を結ぶということについては、これは私どももその考えがないということをソ連側に強く申し入れておりますから、ソ連もその辺については日本立場は十分御承知をいたしておるものと考えております。  この次官協議は我々としても非常に大事な会議であるというふうに考えまして、この会議において、これからの日ソ関係が新しく展開していくための一つのスタート点になることを念願をしております。そして、これがグロムイコ外相の訪日につながることもまた同時に願っておるわけであります。
  19. 角屋堅次郎

    角屋委員 この機会に、これは当然近くなされると思うのでありますけれども、パブロフ大使がやめられて、新しくアブラシモフ駐日ソ連大使が日本においでになっておるわけでありますが、まだ信任状の認証手続を終わってないわけであります。恐らくこれは天皇陛下の日程の御都合等も考えながら日程を詰めておる、今月末までには実現するのではないかというふうにも観測をいたしておるわけでありますが、我々日ソ議連のような立場で新しく就任されたアブラシモフ大使と懇談をしたいと言いましても、やはり外交辞令として正式に日本大使としてきちっと決まるということでないと日程が組みにくいということもございまして、この辺のところは今大体どういうことになっておるのかということについても、次の御答弁機会にお答えを願いたいと思います。  日ソ関係については、グロムイコ訪日を含めて、これから安倍さんとしても本格的に東西対立の緩和、デタントの空気の醸成といった立場からも積極的に取り組んでもらいたいと思いますし、私どもも、こういった国益に基づいて必要な点については超党派的に協力する姿勢ももちろん持っていかなければならぬ。これは朝鮮民主主義人民共和国に我が党の石橋委員長が行って、懸案でありました民間漁業協定の中断問題というものについて話し合いをつけて、そしてこれが再開されることになる。安倍外務大臣からも石橋委員長に謝意を表されたようでありますけれども、そういった外交問題は、基本的に与野党で、場合によっては意見の食い違いを来すという問題は民主国家の常として当然ありますけれども、しかし同時に、我が国の国益から見て必要な外交展開については、政府政府外交権限に基づいて、我々は議員外交、民間外交を通じて場合によってはそれをバックアップするということも当然あっていいと私は思うのであります。  この際、難航しております日ソ漁業交渉の問題についても少しくお尋ねをいたしたいと思います。  去年、私は、櫻内さんと一緒に行ったときに、山村前農林大臣が訪ソされる前でありましたから、ソ連のクドリャフツェフ漁業次官と約二時間にわたって、日ソの協定の改定問題あるいは日ソ漁業交渉に関する基本問題ということについて、いろいろ日本側立場をお話し合いをし、懇談を重ねたことがございます。同時に、辞任されましたパブロフ大使に対しても、櫻内会長とともに約二時間、日ソ漁業交渉の問題について日本側立場説明したりいたしました。  第一ラウンドは一応解決したわけでありますが、サケ・マスを含む第二ラウンドの交渉というのは、やはり相当難航しておるというふうに観測をいたしております。これは、国連海洋法の第六十六条、遡河性資源の問題のソ連側の解釈と日本側の解釈という問題がやはり対立点の一つだと思うのでありますが、日ソの当面の漁業交渉がどういうふうに進んでいるのか、これはサケ・マスの漁期を迎える前に話し合いをきちっと決めて、関係漁業者に影響を与えないように最大限の努力をしなければならぬ問題であります。  やはり私は、日ソの漁業交渉という問題は、漁業者だけの問題でなしに、いわゆる北洋の関係あるいは太平洋、日本海のソ連日本にかかわる海が平和の海として存在するためには、日ソ間の漁業が平和裏に操業が継続されていくということも非常に重要なファクターでありますし、日ソのある意味における平和のきずなということも言えようかと思うわけでありますが、日ソ漁業交渉の当面の経過と問題、これからの展望ということについて御答弁を願いたい。
  20. 西山健彦

    ○西山政府委員 お答え申し上げます。  日ソ漁業協力協定につきましては、昨年の五月に第一回協議を行いまして以来、ことしの二月に第五回の協議を行うまで、双方でもって意見交換をずっと続けてまいりました。  御指摘のとおり非常に難しい点を含んでおりまして、そういう過去の経緯を踏んまえた上で、この三月二十一日から、現在モスクワにおいて第六回の協議を継続中でございます。我が代表団は、現在、新協定の早期締結に向けて全力投球で努力をしているわけでございます。  主要な問題点は、既に先生が御指摘になりましたとおり、我が国漁船によるサケ・マス漁獲の取り扱いでございまして、国連海洋法条約中の遡河性資源の取り扱いに関する条項の規定ぶり、これを念頭に置きまして、具体的に、このような考え方を新協定の中にどのような形で規定するべきであるか。これは両国間の漁業の態様を今後長きにわたって決めていく問題でございますので、非常に慎重に双方ともに対応しなければならない。そういうことで、双方間に主張が対立しているのは事実でございます。  このほかにも、これに関連いたしまして、日本漁船が漁獲を行うときの条件をどのようにするべきであるか、あるいは取り締まりについてどのように規定すれば先ほど申し上げましたような立場と調和がとれるか等々という細かい問題もございます。そういうわけで、現在鋭意交渉中でございますので、それ以上の細部に触れることはこの際はお許し願いたいと存じます。  ただ、その見通しといたしましては、ここ数日相当の進展が見られているというふうに私ども考えております。
  21. 角屋堅次郎

    角屋委員 時間の関係もありますので、日ソの漁業交渉問題については、私も党の水産関係に長年タッチした関係もありまして、これがスムーズに妥結され、サケ・マスの漁期の開始に重大な支障の起こらぬようにしたいものだ、こういうふうに思っておりまして、外交ベースにおける最善の努力をぜひお願いしておきたいと思います。  次に、経済協力問題について若干お尋ねをいたします。  政府開発援助の問題、ODAの問題も含めて経済協力問題というのは、軍事で国際的な役割を果たさないという日本の基本的立場から見て、やはり世界の自由主義国第二位の経済力を持つに至ったというふうに数字上出ておるわけでありますので、そういう面から、南北問題の根底にあるところの相互依存と人道的配慮といったような基本的理念に立脚をして、開発途上国の経済社会開発、民生の安定、福祉の向上を支援するという意味における経済協力というのは、我が国として積極的に進めてまいらなければならぬ。そしてこれは、直接そういう問題の議論をする衆参の一つの重要な委員会であります外務委員会においても、昭和五十三年四月五日「対外経済協力に関する件」、昭和五十六年三月三十日「経済協力に関する件」を委員会決議として、こういった経済協力問題について、いわゆる超党派的な立場からの経済協力についての基本的注文というのをなされていることも、大臣承知のとおりだと思います。  私は、今日、日本経済協力アメリカ防衛戦略的な強い圧力といいますか、そういうものでゆがめられていっては断じて相ならぬという基本的な認識を持っておるわけでありますが、きょうはそういう点に深く触れて議論するいとまはありませんけれども、これは、これまで日本政府としても、昭和五十二年から五十五年までの中期計画でODAの三カ年倍増計画というのを進めてまいられましたし、引き続き新中期計画として、五十六年から本年までODA五カ年倍増計画というのを国際的にも公約され、九八%本年をもって新中期計画達成ということにも相なっておりますが、問題は、これから新々中期計画をどうするのかということがやはり今重要な国際的関心事であろうと思います。  それで柱は、ODAの量的拡大のみならず、国際的にも非常に水準としておくれた面もございまして、こういう面の質的な改善、いわゆる贈与比率アップの問題であるとかいったような点等も含めて質的改善も新々中期計画の中へ織り込んで、国際的に打ち出さなければならぬという時期に来ておるかと思うのであります。  この点では、十一、十二日にOECDの閣僚理事会がパリで開かれることになっておりまして、安倍外務大臣がそれに御出席になるわけでありますが、世上伝えられておるところでは、このOECDの閣僚理事会の際に、安倍大臣の演説の中で、経済協力に対する新々中期計画を対外的に打ち出すというふうに注目をされておるわけであります。これは五月のボン・サミットも控えておりますし、貿易摩擦に対する先進諸国における批判等もある中でありますから、日本の姿勢を示す重要な機会かと思いますけれども、こういった新々中期計画の基本的構想というものも含めて御答弁を願いたい、こう思います。
  22. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ODAは我が国平和外交推進する上における最も大きな柱の一つである、こういうふうに思っております。日本としましてもこのODAの充実にはこれまで努力をしてまいりました。今お話がありました三年倍増計画も一応達成し、さらにまた昭和六十年度で終わる倍増計画も予算の上では九八%の達成率を見たわけでございます。しかし、これからの日本が国際的な役割を果たしていく上においては、さらにこの開発途上国に対する援助を増大をし、強化をしていくということは最も必要なことであろう、私たちも全くそういうふうに思っております。  そういう中で、一応の中期計画が終わったらこれからの新しい計画をどうするかというのがまさに国際的にも注目をされておりますし、また日本としてもこれは避けては通れない課題であろうと思っております。OECDの閣僚理事会におきましても、この問題につきまして私自身日本政府を代表しまして方向を打ち出していかなければならぬ、日本の基本的な姿勢を打ち出していかなければならないと考えておるわけでございますが、今このこれからの新しい計画をどういうふうな内容に持っていくかということにつきましては、現在関係各省とも詰めておるわけでございます。非常に厳しい日本の財政状況の中で日本がどれだけ国際的な責任を果たし得るかというおのずから限界もあるわけでございますが、そのぎりぎりのところまで日本努力をする姿勢を世界に対して示したい、こういうふうに思っております。  具体的にはまだまだ詰めの段階でございまして、いずれにしてもこのODAの強化、増大に努力していくという基本方針は持っておりますが、具体的にどういうふうにするかということについては、もっと詰めた上で、少なくともOECDの閣僚理事会までには見通しをつけておきたい、こういうふうに思っております。
  23. 角屋堅次郎

    角屋委員 DAC諸国の政府開発援助を、一九八三年について資料をいただいておりまして、それを見ましても、先ほどもちょっと抽象的に触れたように、量的な面ではアメリカ、フランスに次いで日本は第三位のポジションを占めておる。フランスは自分の海外領土その他の関係の援助も含まれておりますから、そういうものを除きますと、日本は量的な面ではアメリカに次いでナンバーツーの地位を占めておる。しかし、対GNP比ということになると、いわゆるOECDの下部機構である開発援助委員会、DAC、十七カ国がメンバーでありますけれども、この十七カ国中で〇・三三ということで第十二位、同じく国民一人当たりの負担額ということで見ますと三一・五ドルで第十二位、贈与比率という点から見ますと五五・二で第十六位、グラントエレメントについて見ますというと七九・五でこれも第十六位、いわば量的な面ではアメリカに次いで第二位ということでございますけれども、これはまあ、フランスの中身を海外領土その他の点を削除すれば第二位ということになりますけれども、質的な面、贈与比率あるいはグラントエレメントというところになると、残念ながら最下位から一つ上という状態に置かれておるわけでありますから、当然、質的な面の改善ということもやってまいらなければならぬと思います。恐らく安倍外務大臣は、きょうの機会はやはり対外的にも必ずしも適当な機会でなくて、十一、十二日のOECDの閣僚理事会において日本の新しい新々中期計画を打ち出すということで、御説明については今詰めておる段階である、OECDの会議までに詰めたいというのはそういうお気持ちであろうかというふうに受けとめております。  これ以上深く触れませんが、いずれにしても三カ年倍増計画、五カ年倍増計画でまいりましたから、新々中期計画もそのオンライン上であり、積極的な政府開発援助を日本として対外的に打ち出すということが強く望まれると思います。日本の財政状況その他もあり、しかも経済援助そのものについては、時間がありませんので深く触れませんけれども、外務省自身もいわゆる経済協力については「経済協力評価報告書」というのをそれぞれ最近出しておられまして、私も全部目を通したわけでありますが、まあ、こういった経済協力の評価という面では、こういう報告書の中で、「外務省が派遣した調査団による評価の概要」、これはいわばお手盛りであります。「在外公館が実施した評価の概要」、これもお手盛りの評価と言えようかと思いますが、ただ「外務省が民間団体等に委託して実施した評価の概要」、これは私は日経の方に委託をされて、「アフリカ諸国に対する経済協力」という中身についても目を通させていただきましたが、大変ざっくばらんに問題点というのを出しておりまして、評価のやり方、これについては私がお手盛りと言ったのはちょっと言い過ぎかもわかりませんが、もう一つのやり方は、経済技術協力実施機関が実施した評価、これも海外経済協力基金とかあるいは国際協力事業団が実施するわけですから、まあ対外的に我々から見ればお手盛りということもざっくばらんに言えば言えようかと思うのですが、しかしお手盛りというふうにざっくばらんに言うにしても、外務省自身在外公館自身、あるいは経済協力実施機関が評価を実施するということは大変重要なことでありまして、それらを実施をしながら問題点を総括し、国民の共感の中で経済協力を進めていくということがやはり当然必要かと思うのでありまして、これら経済協力の評価も含めて、国会の決議では経済協力評価の改善等にも触れられておるわけでありますが、さらに簡潔に御答弁を願いたいと思います。
  24. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 経済協力の御答弁をする前に、この前答弁が落ちておりましたアブラシモフ大使の信任状の奉呈は、あした行われることになっております。  それから経済協力につきましては、我々も、この経済協力の資金は非常に貴重な国民の血税でございますから、これが大事に効果的に使われなければならぬということで、外務省自身としましても非常にまじめに、一生懸命にそのフォローアップ等の努力をして、それが今の報告文書等にもなっておるわけでございます。これは引き続いて外務省の責任においてやらなければなりませんけれども、しかし同時に、この経済協力のあり方等についてもいろいろとまだ問題はあるんじゃないかというふうに私は思うわけでございます。これはあらゆる角度から、客観的に協力が本当に相手の国に喜ばれる、国民に喜ばれるような形で行われておるかということを、やはりいろいろな角度から調べる必要がある。それには、外務省だけじゃなくて、いわゆる第三者の客観的な目というものも必要じゃないかというふうに私も考えまして、今回、私の諮問機関といいますか懇談会ということで、学識経験者の皆さんに集まってもらって、経済協力全般について率直な意見を聞かしていただきまして、これからまた改善をすべき点があったら積極的にこれに取り組んで改善をしていこうという考えで、この懇談会をスタートする考えでございます。  非常に重要な協力でありますし、また貴重な税金でございますから、そういうものを踏まえて、まさに日本がODAを通じて国際社会の平和と安定のために努力しておるという成果が世界的に評価されるような形に持っていきたい、こういうふうに思っております。
  25. 角屋堅次郎

    角屋委員 経済協力問題でさらに一点、お伺いをしておきたいと思います。  政府は新年度、これからの経済協力を進めるに当たって、いわゆる民間の活力を導入しながら経済協力問題に取り組むというお考えをお持ちのようであります。NGO活動の支援あるいは民間技術者を登用しながら実のある技術援助等もやっていこうという体制にあろうかと思うのであります。宗教団体とかあるいは市民団体を中心に、我が国のNGOの関係では百八十八の団体、グループがあると承知いたしております。これはまさにボランティア的にまた人道主義的な立場から、アフリカ飢餓の状態にあるところに医療その他いろいろな点で協力していこう、あるいはまた難民救済問題その他、いわゆるそういう点で日本の非政府、民間の団体が積極的に経済協力に取り組むということは高く評価をしなければならぬかと思います。  国際的に見てまいりますと、やはりこういうNGO活動というものについては、政府の開発援助の中から一部資金を割り振りながら、ともども経済協力の実を上げる、いわば政府の開発援助というのは、ややもすると相手国の権力者擁護、権力者支援、いわゆる下部まで浸透しないということになる嫌いが一面にはあるわけでございますけれども、NGOの活動というのはやはり大衆レベル、草の根レベルにおける、真に相手国の現地が望んでおる、そういう面の経済協力をやろうという点では大切な活動だと思うのでありますが、こういった我が国の発展途上国に向けての援助に政府はこれから民間活力を導入するという考え方を強く持っておられるようでありますけれども、どういう考え方対応しようとするのか。もちろん、この問題については民間は自主的にやっておられるわけですから、こういう百八十八のNGOを全国的な連絡組織づくりにしようといったような官主導型に反発する動きも伝えられておるわけでありまして、そういう、本来持っております持ち味というものを殺したのでは意味をなさないということも含めながら、どういうふうに対応されるか、お答えをいただきたい。
  26. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 ただいま委員御指摘のとおり、我が国におきましても、経済協力に携わっておられるNGO団体が約二百、活動しておられます。ただ、数百年の歴史を持っております欧米諸国に比べますと、まだ、資金的な規模におきましても政府の支援という面におきましても、我が国ははるかに及ばないというのが現状かと思います。  現在、NGOの進めておられる援助活動を積極的に支援していこうということで政府考えておりますのは、三つ挙げられると思います。  一つは、補助金という形でございまして、これは先ほども委員御指摘のとおり、NGOの団体の自主性を尊重しながら、政府の補助金を受けつつ活動することを足とされる団体というものを対象にして行っております。規模から申しますと、ODA総額の約一%程度が向けられております。  第二番目は、NGOの活動と政府の援助の有機的な連携ということでございまして、六十年度予算におきましては、例として申し上げますと、シルバーボランティアズが中国に派遣される専門家の経費の一部を政府予算でお助けするということですとか、バングラデシュでOISCAという団体が計画しておられる婦人労働のためのセンターの建物だけを政府予算で建設する、先生はNGOの方から派遣されるというようなことが例示として挙げられるかと思います。  第三点は、日本のNGOの諸団体の連絡体制というものを進められるに際して、NGOの自主性を阻害しない限りにおきまして政府としてお助けするということで、NGOの名簿の作成費の一部を補助するというような形で、NGOの相互連携関係強化に多少なりともお役に立ちたい。  こういう三つの方向でNGOの活動にできるだけお力添えをし、草の根レベルでの協力を活発化していきたい、こう考えております。
  27. 角屋堅次郎

    角屋委員 法案の改正の中身についても、若干お尋ねをいたしたいと思います。  今回、国名の変更に伴う大使館の名称変更ということが改正案の一点としてございます。そして、新たに在瀋陽日本総領事館を新設するということの法律改正の問題がございます。同時に、在外公館に勤務する外務公務員子女教育手当加算限度額を百分の百から百分の二百に改めるという改正の中身がございます。これらに対する所要経費として、約六千六百十万円ということで、子女教育手当の改定分として約三千百万円、在瀋陽日本総領事館新設分として、人件費、物件費を含めて三千五百十万円というふうに言われておるわけであります。  中国瀋陽総領事館をつくるという問題は、実は私自身昭和五十六年四月九日の本委員会におきまして、当時伊東外務大臣の時代に、中国の残留孤児問題を取り上げて、しかも中国残留孤児の相当多くは旧満州、今の東北に存在をしておる、私もかつて学校へ上がってから満州に行った経験の立場から見ても、中国残留孤児の問題は決して人ごとでない、おいでになって親に会えるということについては涙をし、会えなかった人々については深い悲しみを覚えるといったような実感を持つ一人でありますけれども、そういった立場から、やはり満州、瀋陽あたりに早い機会日本総領事館を持つ必要があるということを当時強く伊東外務大臣要請をいたしまして、伊東外務大臣も、行革厳しいさなかだけれども中国でもし総領事館を設けるとすれば、先生おっしゃるように瀋陽あたりに早い機会に設けたいということをおっしゃっておられたわけでありまして、今回瀋陽日本総領事館が新設されるという点では、私としても大変うれしいことに感じておるわけであります。  そこで、在外公館問題というものを考えてまいりますと、実館、兼館も含めて在外公館の今日の実態がどうなっておるかといったような問題について、簡単にまず御説明を願いたいと思います。
  28. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 ただいま委員の方から、既に四年前に落陽の総領事館の必要性について御指摘があったということを伺いまして、私どもも、今回瀋陽総領事館が開設されるに至りましたことを適切なことだと思っております。  在外公館の数は、現在実館で百六十八ございます。未公開になっておるものが二、三ございますけれども、百六十八ということでございます。ただ、その在外公館の半分以上が非常に勤務条件の厳しいところにあるという状況でございまして、今回の予算、六十年度の予算におきましても、そういう勤務条件の改善というところに重点を置いて努力をしてまいったわけでございます。
  29. 角屋堅次郎

    角屋委員 これはかっても本委員会で同僚議員等も含めて取り上げた問題でございますが、現在、我が国においては、国家財政の状況あるいは行革推進という内閣立場ということももちろん念頭に置かなければなりませんけれども、いわゆる我が国外交の実施体制というものが先進諸国に比べて極めて低位にあるということは、かねてから指摘されておるわけであります。  我が国外交予算一つをとってみましても、先進国のサミット参加国で比較をすれば、米国日本の四・四倍、ドイツ連邦共和国は二・二倍、イギリスは一・八倍というふうなことにも相なりましょうし、人員の面からいきますと、我が国の外務省の定員は主要国の中では最も少なくて米国の四分の一、イギリスの五分の二、フランスの二分の一程度にすぎないということも数字上明らかであります。  そういう点で、日本としてはせめてイタリア並みにまで近づきたいということで、かねてから五千人体制ということが言われてまいりました。今も御答弁の中にもありましたように、在外公館は館員が七名以下という小規模公館と言われるものが相当数あるわけでありまして、これは去年の場合でいえば七名以下の小規模公館が六十九公館、公館全体の四一%、本年度は少しく改善されましても五十六公館、三三%、これが館員七名以下であるという現状にも相なっておりまして、外務省の場合は、行革推進の中でありますけれども、やはり人員を整備していかなきゃならぬということで、本年の場合も八十八名の実質的な増員が認められております。しかし、五千人体制ということを前提に考えてまいりますれば、今のような七、八十名の増員ということでは優に十数年を要する。単に外務省の職員が、人がふえればいいというのではなくて、問題は中身ということももちろん基本的に重要でございますけれども、人手がなくては、重要な本省、在外公館を通じての我が国外交展開ができないということもまた逆に厳然たる事実でありまして、そういう点で、この在外公館の小規模公館の解消等も含めて、外務省としても政府全体としても共通認識の上で対応しなければならぬと思うわけでありますが、それらの点について御答弁をいただきたいと思います。
  30. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 外務省の外交実施体制につきましては、いろいろと御関心を持たれ、また御支援をいただいておることに対しまして心から感謝をいたしております。また、当委員会は、特に在外公館の勤務状況等につきまして御配慮いただきまして、小委員会まで設けてこの問題について御検討していただいていることに対しましても深く敬意を払うわけでございます。  国際社会における日本役割がますます重要になっておる中で、日本外交体制というものはさらにこれにこたえるための充足を図っていかなければならぬわけでございますが、残念ながら今の財政状況の中で定員の方も思うようにふえない、あるいはまた予算の方もふえないということで、大変厳しい中で、しかし同時に、外務省一丸となって努力は重ねておるわけでございます。  そういう中でも、ほかの省に比べますれば人員は少しずつふえておりまして、六十年度予算では八十八名という定員の増加もお認めをいただいたような次第でございますが、私たちとしましては、何とか名実ともに日本が国際社会の中で堂々と外交活動を展開していくためには、少なくとも五千人、インドはもう五千人になっておりますから、インド並みになりたいというのが念願でございますが、今の状況でいきますと、五十九年度が三千七百九十五人でありまして、ふやしていただきまして三千八百八十三名でございますから、まだまだほど遠いわけでございますが、しかし財政状況等もありますし、そういうことは十分踏まえながらこれからもひとつ御理解を得ながら全力を尽くしてまいりたいと思っております。  同時にまた、こうした定員、予算の増強とともに大事なのは、やはり先ほどからいろいろと御指摘いただきましたような、勤務状況の非常に悪いところで働いておる外務公務員の処遇の問題でありますし、あるいは在外公館体制の問題でございます。  私も昨年アフリカを回りまして、特にアフリカ等における日本在外公館は大変な苦労をいたしております。発電装置等もないところが多いし、停電ばかり続くというふうな状況、あるいはまた治安の非常に悪いところで働いておる在外公館の館員、通信施設も非常に貧弱なところでやらなければならない、そういう状況等を見ますと、何としてもやはり、経済大国あるいは国際社会の中で大きく認められておる日本にもっとふさわしい体制をつくっていかなければならぬということを、責任者として大変強く感じた次第でございます。これは外務省として全力を挙げて、また私もその先頭に立って努力を続けていく次第でありますが、何といいましてもやはり国会の皆さんの御理解と御支援がなければならぬわけでございまして、その点については当委員会の御支援に対して非常に感謝するとともに、今後ともひとつ最大の努力を傾けてまいりたいと思っております。
  31. 角屋堅次郎

    角屋委員 一点お伺いしたい点は、五月にボン・サミットが行われるわけでありますが、今日男女雇用平等法の議論がなされ、あるいは婦人差別撤廃条約の批准の問題が俎上に上っておるわけでありますが、サミット参加国の女性大使というものの現状をお知らせ願ったのでありますが、これを見ますと、現在アメリカは女性大使三、イギリスは女性大使二、フランスは女性大使三、ドイツは女性大使四、サミットの諸国ではイタリー、日本のゼロというのと違って、数は多くありませんけれども、女性大使が登用され活動しておるわけでありますが、かつて緒方さん、高橋さん等も有能な大使として活動されましたが、現状はゼロになっておるわけであります。意識的にということではありませんけれども、やはり有能な女性大使の登用ということも、大臣としてもフェミニストとして積極的にお考えになっていいんじゃないかと思いますが、その点はいかがですか。
  32. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 女性大使の登用につきましては、外務省としてもこれまで努力を続けてまいりました。先ほどお話しのように立派な緒方大使あるいは高橋大使等に活動していただいたわけでございますが、今のところはちょっと途絶えております。しかし、最近キャリアの女性外交官がだんだんと力をつけてまいりまして、もうそろそろ大使に起用ができるという段階になりましたので近く起用したいと考えておりますし、また同時に、国際婦人年という意義ある年でもありますから、ひとり外務省という点にとどまらず、広く女性の人材を活用して、また適材適所といいますか適任者があれば女性大使に用いたい、こういうことで今いろいろと努力をしておるわけでございまして、今は途絶えておりますが、これから少しずつふやすように努力し、またその可能性は十分あるのじゃないかというふうに判断をいたしております。
  33. 角屋堅次郎

    角屋委員 瀋陽総領事館が設置をされるということと関連をいたしまして、私も若干中国残留孤児問題について触れたいと思います。これは後ほど我が党の小川先生からも触れられると聞いておりますので、時間の関係もありまして私は数点お伺いをしておきたいと思います。  一月十五日の成人の日に、NHKで「青年の主張」というのが恒例によって毎年なされるわけでありますが、皆さん方御承知のように、ことしは中国残留孤児として帰られた姚慧彬さんが、九州関係からの代表として、日本語を随分努力されたと思いますが、堂々と青年の主張を述べられて最優秀賞を得たというのはまことにうれしいことだと思うのでありまして、日ごろ、会話をしては疑問が起こると自宅へ帰って一生懸命疑問を解くように勉強もしたり、そういうことで並々ならぬ努力をされて、ああいう全国から選ばれた成人代表の中で最優秀賞を得たというのは、名実ともに私は最優秀賞を得たというふうにあれを見ながら思ったわけです。日本語も非常にお上手になっておられましたが、中国におられた関係で私も中国語は若干知っておりますけれども、非常に流暢な中国語を後段の部分でやられて、なかなか傾聴できる青年の主張をされた。こういう明るいニュースというのは大変うれしいことであります。  しかし、中国にいまだおる残留孤児の早い機会の肉親との対面、そして希望する者については日本に来ていただくという体制を、これまでおいでになった者に対する体制強化と同時に推進してまいらなければならぬ。  御案内のとおり、新年度は四百人の帰国者を受け入れるというふうな形で、それぞれ百三十、百三十、百四十、これくらいの形で、第一次は九月ごろに、第二次は十一月から十二月ごろに、第三次は二月ごろを想定して、受け入れていこうという態勢にあると承知をいたしております。この場合に、やはりかねてから日中双方で確認されておりますように、「中国残留日本人孤児問題の解決に関する日中間の協議について」ということで、厚生省援護局から、昭和五十九年三月十七日の文書もいただいておりますけれども、その文書の中で、特に日本側として配慮しなければならぬことは、日本国に永住した孤児が、中国に残る養父母に対して負担すべき扶養費というものについて、日本政府が二分の一を補助をし、そしてまた、募金活動を通じて十億目標で集めた、ことしの一月で大体十億近い金額が集まっておりますけれども、それらを両方合わせながら、中国に残る養父母等に対して感謝の気持ちを込めた措置はやはり当然なされなければならぬ。日中の関係では、この養父母の金額というのは詰めておる段階だと思いまするけれども、こういった中国に残る養父母に対する措置問題、あるいは身元ははっきりわかりませんけれども永住希望をしておる孤児に対しては、これを日本側として受け入れるということは第四項でも双方で確認しておるわけでありますが、そういう問題と、さらに新年度の改善としては、従来の帰還の臨時手当を増額するというふうな、帰国後の当座の生活資金としての帰還手当の支給を改善する、あるいは中国残留孤児援護基金の中から、新年度から就学資金の貸し付けをやろう、これは四月から高等学校、各種学校、そういうものに入学する者について月一万円、就学資金貸し付けを新たに実施しようといったようなことも前進面として出てまいっておるわけであります。月一万円で中国残留孤児の御家庭の場合に十分かということになれば、これはやはりもう少し引き上げが必要であろうというふうに考えますけれども、そういった中国残留孤児のこれからの受け入れのプログラム、あるいは定着化対策としてとっておる新たな対策等も含めて、簡潔に厚生省の方から御答弁を願いたいと思います。
  34. 森山喜久雄

    ○森山説明員 先生おっしゃいました中国に残される養父母の扶養費でございますけれども、これは昨年の三月の口上書で、日本側が孤児に援助をするということが決まっておるわけでございます。それで、その額を一体どういうふうにするかということで、実は二月に向こうと協議をしたわけでございますけれども、我が方が考えていた額と若干の差がありまして、この問題については、とにかく残された養父母が安定した生活を続けられるということを眼目に両国政府考えていこうということで、一応話は成立しなかったわけでございますけれども、これも早急に詰めていきたいというふうに考えております。  それから、身元未判明の方の帰国の問題でございますけれども、これも中国側と話し合いがつきまして、そういう方については、日本に帰りたい場合は日本側は受け入れるということで、これは訪日をして親捜しをした人を優先するということで、中国側もそう言っておりますので、こういう該当の方に案内文を差し上げ、それから帰国の手続はこういうふうにしなさいといったような文書を全員に送るという段取りになっております。  それから、就学資金の問題でございますが、これは財団法人の中国残留孤児援護基金が今回初めてやったわけでございますけれども、先生御指摘のように一万円じゃ少ないじゃないかというお話もございますけれども、これも資金面をいろいろ考えながら今後また充実をしていきたいというふうに考えております。  それから、残留孤児の定着化対策につきましては、まずお帰りになったときには所沢に建てましたセンターに入所をさせまして、四カ月間教育をするという措置をやっておるわけでございます。  それから、いろいろな定着についての問題がございますが、これは各省間いろいろ仕事が分かれているわけでございますけれども、厚生省が幹事役になりまして連絡会議をやり、今後もその充実に一層努めていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  35. 角屋堅次郎

    角屋委員 中国残留孤児の問題については後ほど小川委員からも御質問がございますので、時間の関係上この程度にいたしますが、ぜひ、四十年あるいは四十数年他国にあって、養父母等の温かい庇護のもとに、日本に帰りたいといって帰ってこられる残留孤児の問題については、受け入れ態勢というものについてさらに強化をしていくということが必要であると思いますし、また進学の問題についても、この間東京都の公立高校の二次試験に希望した残留孤児が全部通ったということでほっといたしたわけでございますが、やはり日本語等を含めて日本におる者と同じような競争をしたんではとても太刀打ちができない、安定をしていくためにはやはり一定の学校教育も身につけなければならぬ、技術も身につけなければならぬ、それがやはり基本的に重要なことでございまして、そういう面については従来の対応というのは必ずしも十分ではなかった。各省で協力をする場合、いろいろな問題が海外子女の受け入れ態勢の問題で出ておりますけれども日本語教育問題も含めて、あるいは残留孤児で帰られた人の就職対策等も含めまして、もっともっとやはり誠意を持った対応が必要である。同時に、今も御答弁がございましたが、長年お世話になりました中国に対する気持ちと、それから養父母に対する感謝の気持ちというものを持って、後顧の憂いのないように養父母にしていくということは我が国として当然の責務でありまして、そういった点も誠意を持って対応していただきたいというふうに考えております。  それで教育の関係で、子女教育手当加算制度の改正がなされることになりました。実態から見て大変結構だというふうに思います、今までのいわば適用範囲というものを拡大をしていく、あるいは子女教育の手当について、従来加算が百分の百であったものを百分の二百という範囲内でそれぞれ適用していくという措置をとられることは、教育の重要性あるいは海外に派遣をされた在外公館職員、これは在外公館職員ばかりではなしに、政府関係の機関で海外に行かれておる方あるいは民間の商社その他で海外に行かれておる万全体を含めまして、やはり外国に行っておる場合の子女の教育問題というのは大変重大な、親として苦悩の問題だというふうに思うわけでありまして、そういう問題に対して、いささかでも改善できる措置を講ずるということはやはり当然のことだと思っております。  そういう面で、文部省からおいでになっておると思いますが、日本人学校あるいは補習教育の学校の現状と、これからさらに強化をしていく問題について簡単に御説明を願います。
  36. 牛尾郁夫

    ○牛尾説明員 文部省におきましては、海外子女が国内に準じた教育を受けることができますよう、外務省と協力いたしまして、日本人学校等への教員の派遣、義務教育教科書の無償給付、日本人学校、補習授業校への教材の整備、あるいは日本人学校に通学できない子女のための通信教育の実施など、いろいろな施策を講じておるわけでございます。  今後とも、こうした施策の充実に努めてまいりたいと考えております。
  37. 角屋堅次郎

    角屋委員 もう既に昼食の時間も過ぎておりまして、私の持ち時間はあと十分ございますけれども、各委員のお気持ちをそんたくいたしまして、この程度で私の質問を終わらせていただきたいと思いますが、最後に、安倍外務大臣に要望申し上げます。  これまで二年数カ月、外務大臣として東奔西走御活躍を願ってきたわけでございますが、ことしは米ソ包括的軍縮交渉がスタートしておりますし、平和と軍縮の年にするためにはその面の努力ももちろん必要であります。安倍外務大臣自身、いまだ我が国外務大臣が行ってない東独等も含めて東欧諸国を訪ねよう、大変結構なことだと思います。同時に、これからOECDの閣僚理事会あるいはガット、国連総会、その間にサミット、いろいろ外務大臣としては大変であろうと思いますが、今後とも我が国平和外交の視点に立って、アメリカに過度に傾斜することなく、広く東西関係の緊張の緩和と我が国平和外交の成果を生むように最善の努力をしてもらいたいと思いますが、最後に、安倍外務大臣からの御答弁をお願いして終わります。
  38. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今御激励をいただきましたが、まさにことしは平和・軍縮の年ということで、大きく平和の方向へ踏み出すために、日本平和外交に徹して、これから最善の努力をいたしたいと思っております。
  39. 角屋堅次郎

    角屋委員 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。
  40. 中島源太郎

    中島委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十三分休憩      ――――◇―――――     午後一時五十五分開議
  41. 中島源太郎

    中島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。市川雄一君。
  42. 市川雄一

    ○市川委員 最初に、外務大臣SDIのことでお伺いしたいと思います。  午前中の質疑で、ワインバーガー米国防長官から書簡が届いた、昨夜遅く届いて受け取ったばかりで内容については今後慎重に対処したい、こういうことでございました。その書簡内容なんですけれども、我々は新聞で拝見しているだけでございまして、新聞報道によりますと、「ワインバーガー米国防長官は二十六日」「米国の提唱する戦略防衛構想に対し、日本を含む西側同盟諸国に対し積極的な参加と技術協力を呼びかけるとともに、期限付きで参加の意思の有無を回答するよう求めた書簡を発表した。」さらにその中身としては、「SDI研究開発プログラムに対する参加意思の有無と、参加した場合、その国が最も得意と考え分野について、六十日以内に米国防長官に対し具体的に回答するよう求めている。」こういう報道ですが、間違いありませんか。
  43. 栗山尚一

    栗山政府委員 けさ大臣の方から御説明がありまして、私からさらに若干その内容につきまして補足して御説明を申し上げましたが、基本的に、新聞で伝えられました、ルクセンブルグで開催されておりましたNATOの国防相会議、具体的にはニュークリア・プランニング・グループの会合ということでございましたが、その会合アメリカ側会議参加国の国防大臣に対して発出いたしました書簡と大体同一の内容のものと思われます書簡が我が方に接到いたしたということでございまして、内容については、けさほども答弁申し上げましたが、大体今市川委員がおっしゃいましたように、SDI貢献し得る技術について同盟国と共同して研究を進めていく用意アメリカとしてはある、したがって同盟国の方において関心があるそういう技術分野については、どういう分野関心があるかということについての表明アメリカに対して六十日以内にしてほしい、それから、そういう同盟国判断に資するためにアメリカとしては専門家等に対しまして十分なブリーフィングを行う用意がある、概要そのような内容書簡でございます。
  44. 市川雄一

    ○市川委員 ことしの一月の日米首脳会談でのやりとりは、中曽根総理が再三国会で御答弁されております。言っている骨子は、軍縮を目指したものである、防御的である、非核兵器である、しかもSDIについてはまだ内容全体については承知してない、ただ研究すること、そのこと自体には理解を示しました、こういうことが国会での答弁の骨格だったと思うのです。そういうふうに承知しておりますが、どうですか、外務大臣
  45. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 全くおっしゃるように、日米首脳会談での大統領、さらにシュルツ国務長官の説明は非常に概括的なものでありまして、研究が始まったばかりである、しかし、この構想はあくまでも非核であるし、同時にまたあくまでも防御的なものである、同時にこの構想によって弾道ミサイルを無力化できる、したがってこの構想が実施されれば結局核廃絶というものにつながっていくものである、こういう説明アメリカの首脳部から行われたわけでございまして、これ以上のものではございませんでした。これに対して中曽根総理から、これは非常に長期的なものである、したがってその内容については今後また情報をいただきたい、同時にまた場合によっては協議をするということもあり得る、そういうことを一つの留保的な立場といたしまして理解表明した、こういうことです。
  46. 市川雄一

    ○市川委員 外務大臣、今回のワインバーガー国防長官から来た書簡は、研究開発に参加する意思があるかないかということを求めているわけですね。しかも、参加するとしたら日本が得意とする分野はどこになるのか答えてもらいたい。これはちょっと、首脳会談での合意というのかやりとりというのか、これと違うものじゃありませんか。そういうふうに私は見ているのですが、その点まずどうですか。
  47. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカ政府日本政府立場をどういうふうに判断しているか、それはアメリカ政府の問題でありましょうが、日本政府研究に対する理解ということをはっきり言っておるわけですが、しかしアメリカ政府としては、日本アメリカとの同盟的な関係というものを踏まえて、この問題についてヨーロッパ諸国に協力したと同様の趣旨日本政府協力を求めてきた、こういうことであろうと理解しております。
  48. 市川雄一

    ○市川委員 ですから、首脳会談では戦略防衛構想についての説明があった、その研究には理解を示したというふうに理解しているわけです。今回の場合はもう一歩、研究一緒に参加しませんかということ、しかも得意の分野はどこですか、御希望の分野はどこですか、これは明らかに首脳会談のときよりももう一歩具体的な形で来たものだというふうに思うのですね。そういう御認識ではないのですか、受けとめ方は。
  49. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカは、そういう日本理解というものを踏まえて、さらに研究に対する参加を求めてきたのじゃないか、こういうふうに思うわけでありまして、これに対してどうするかというのはあくまでも日本の問題であろう、こういうふうに思います。
  50. 市川雄一

    ○市川委員 そこで伺いたいのですが、大臣は、昨日の参議院の予算委員会でも、この問題について、日本立場は「研究理解」以上のものでも以下のものでもない、こうはっきり断言しておられるわけです。また総理は、予算委員会でたびたび、いわゆる軍縮を目指したものである、防御的である、非核兵器である、それ以上のことはわからない、こうおっしゃっているわけです。「研究理解を示した」だけです、わからない、支持をするとかしないとかいうことじゃなくて、「研究理解を示した」という御答弁だった。この総理と外務大臣の御答弁から出てくる答えは、これはわからない、内容がわからない、研究理解を示しただけで、支持するとかしないとかという問題ではない。こうなってきますと、当然論理的な結論としては、わからないものに、研究開発をいたします、こういう分野でやりますということは、日本政府としては出てこないんじゃないのか、こういうふうにだれもが思うと思うのですけれども、何かそれと違うことを今外務大臣はお考えなんですか、どうなんですか。
  51. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本研究理解を示した、しかし、全体はまだ日本として十分わかっている問題ではない。ですから、これから漸次研究が進む段階の中で、アメリカ側からその情報の提供を受けたい、さらに場合によっては協議もしなければならない、こういうことを言っておるわけですから、とにかく研究段階においてはこうして理解を示したけれども、これからはどうなっていくかということは、その都度都度に応じて情報も得なければならぬし、あるいはまた、場合によってはアメリカ説明も受けなければならないということでありますから、この協力というのは、最終的にSDIというものの全貌が明らかになった段階でどうするかということまでつながっておるわけではないと私は理解しておりますし、これはその時点において、日本政府として、日本の持っておるところの基本的立場というものを踏まえて自主的に判断すべき問題であろう、こういうふうに思っています。
  52. 市川雄一

    ○市川委員 私は、SDIについては非常にいろいろな疑問を持っているわけです。きょうはそっちの方は後に回しますけれども、ということは、六十日以内に、日本としてはある程度アメリカSDI構想を向こうから聞かなければなりませんね。総理大臣は、よく全体を承知していない、わからないとこうおっしゃっている。わからないで判断はできないわけですから、向こうは六十日という期限を切っているわけですから、そうなると、まず日本は、六十日以内にこの研究開発に参加するかしないかを答える方針ですか、それとも六十日以内という期限は守らないというおつもりなのか、六十日以内に何か答えをするというお考えですか、どうですか。
  53. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まだ受け取った段階、昨夜受け取ったばかりでありまして、私も書簡そのものを見ていないわけですが、しかし、これに対して返事を求めているわけですから、回答しないというわけにいきませんけれども、しかし、六十日というのは、アメリカとして一つのめどを示したわけであって、何も最後通牒的に突きつけられたものではないと私は理解しておりまして、そうその六十日にこだわるとかこだわらぬとかという問題ではないと思います。しかし回答はしなければならない。しかし、その前に、今おっしゃるように、SDIというものに対して日本としても日本なりに勉強をするということは必要であろう。アメリカ側専門家をよこしていろいろと説明もしたいというようなことを言っておるようであります。そういう点も含めてこれからどういうふうに対応するかを政府部内でひとつ詰めてみたい、こういうふうに思います。
  54. 市川雄一

    ○市川委員 NATOの国防相の会議ではSDIを支持するという決議をしたようですけれども、西独の外務大臣ですか、これはSDIに非常に強い疑念を表明した。あるいはデンマークでは国会SDI反対の決議をした。オーストラリアではやはり首相がSDIに非常に疑念を表明している。そうすると、仮にこれは、六十日以内にやるかやらないかは別として、一応外務大臣は回答するとおっしゃったわけです。SDI研究開発日本が参加するということは、SDI構想を支持するということとイコールですね。その前提にSDI構想を支持しますというものがなければ、研究開発に参加するということはちょっとおかしいわけですから、そういうことも含めて日本は、これから政府態度をお決めになるわけですね。今は研究理解SDI構想そのものに対して支持するとかしないとかいうことはまだ日本政府は言ってないわけですね。今度はこれに対して支持しますと、研究開発に参加しますと、イエスの場合は。こういうことになると思うのですが、そういうことも御検討の上で御返事をすることになるわけですね。
  55. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今の段階においては、日米首脳会談で非常に概括的な、全く総論的な話しか出ていないわけですから、それ以上のことは日本としては何も知ってないわけですから、ですから、研究段階理解というところに日本態度をとどめておるわけですが、しかしこれに対して協力する、あるいは支持するということになれば、それはやはりSDIそのものについて十分日本も知識を得なければ、日本日本の憲法とか基本的立場というのがありますから、そういうSDI構想そのものの全貌について日本がもっと知らなければ、日本態度というものは決められないものである、こういうふうに思います。
  56. 市川雄一

    ○市川委員 それから、アメリカの今回のやり方というのですか手続というのですか、新聞を最初に続んだ印象を申し上げますと、研究開発に参加する意思ありやなしや、六十日以内に期限を切って回答せよ、しかも最も自分の得意とする分野を自分で考えて決めろ。何か非常に一方的で強圧的で友好国に対するやり方とは思えない、こういう印象を非常に強く受けたのですけれども外務大臣のお受けになった印象はどうですか。
  57. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカがああいう書簡を発出する、研究に参加を求めるということについては、漠然としてではありますけれどもヨーロッパ諸国等には行われるだろうというふうな感じは持っておったわけですが、日本の場合、一緒にこうして来る、あるいはまた六十日という期限に何もそうこだわるということではないのでしょうけれども、そんなことについては、返答を求められれば回答するのが特に友好日米関係からいえば当然のことですから、六十日というのは一体どういうところに焦点があるのかなという点について私もちょっと首をかしげている点もあるわけです。しかし、六十日ぎりぎりということに何も日本もこだわる問題ではないのじゃないか。いずれにしても問題は、SDIそのものの実態というものがどういうものかということについての日本の認識をどうするかということだろうと思います。
  58. 市川雄一

    ○市川委員 昨夜届いたばかりなので、今お聞きしても恐らくおっしゃらないと思います。今後検討なさるということですが、日本としてはどんな原則というか基準というか、そういう立場でこの問題を検討されるのか。それから、大体どんな手続で最終的な態度をお決めになるのか。この二点をお聞かせいただければありがたいと思います。
  59. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、日本の現在の基本的な立場あるいは基本的な政策というものがありますから、そういうものを踏まえて日本として決めなければならぬ、こういうふうに思うわけでございます。しかし、少なくともアメリカ大統領の言っておられるような防御兵器である、あるいは非核兵器であるという点については我々としても理解を示して、そしてこれが日本の理想とするところの核兵器の廃絶につながるということになれば、それなりの評価というものを与えなければならぬということで実は研究段階理解を示したわけでございます。これからの進み方あるいは内容が明らかになるにつれまして、それはやはり日本の今とっておる基本的な立場あるいは政策というものを踏まえて日本として判断をすべきことであろう、こういうふうに思います。
  60. 市川雄一

    ○市川委員 ボン・サミットの政治声明の中で、扱うか扱わないかとか、ボン・サミットのテーマにするかしないかとか、そういうことがやがては当然焦点になってくると思うのですが、その辺のお考えはどうですか。
  61. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ボン・サミットの議題については、今個人代表が行っていろいろ相談をしております。本来的にはサミットは経済を中心に扱っておるわけですが、最近では政治問題もしばしば登場しておりますし、この問題がどうなりますか、まだ個人代表の打ち合わせ等で、最終的に決まっておるわけじゃないのですから、軽々には言えないわけです。まあしかし、首脳間の話というのはいろいろと政治の問題でも大きな話が時々ぼこっと飛び出す可能性もあるわけですから、全くこの問題が出てこないということを言い切ることもちょっと危険であろうと思いますし、また必ず出てきますよということを言うのもちょっと自信はないわけであります。
  62. 市川雄一

    ○市川委員 わかりました。それではSDIについては、中身はいろいろな問題を含んでいるわけですが、これは改めてお伺いをさせていただきたいと思います。  それから、防衛費のGNP一%枠問題で外務大臣にお伺いしたいのですが、外務大臣は、昨年の十一月九日の衆議院外務委員会におきまして非常にいいことをおっしゃっていますね。軍事費のGNP一%以内に抑えるという日本の姿勢は、アジアの国民をして日本が軍事大国にならない決意をしている一つの象徴、あかしであると述べ、さらに「こうした軍事大国にならないというこの道がまさに日本のバーゲニングパワーといいますか、むしろそういう形の力として日本平和外交を強く進める推進力になるということを、私はロサンゼルスの演説でも強調したわけでございます。その気持ちは今も変わりません。」昨年の十一月九日衆議院外務委員会での安倍外務大臣の御答弁でございます。今年の国会での議論を聞いておりますと、外務大臣がこういうお考えを持っているということは非常に意を強くするわけでございます。ニューリーダーのお一人としてやがては日本の総理にということをお考えになっておられる外務大臣ですから、そう軽々に御自分の発言をお変えになるとは思いませんが、今私が読み上げたこの議事録に載っております外務大臣のGNP一%に対するお考え、現在も変わりませんかどうですか。
  63. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、政府の統一見解として一%は守りたいということをこの国会でも中曽根総理も言っておりますから、私も閣僚の一人としてそういう立場努力をしていきたい、こういうふうに思っています。
  64. 市川雄一

    ○市川委員 守りたいということよりも、言葉じりをとらえるような議論はしたくはないのですけれども、軍事費のGNP一%以内に抑えるという日本の姿勢は、アジアの国民をして日本が軍事大国にならない決意をしている一つの象徴、あかしである、こうおっしゃっているわけです。ということは、一%をもし超えた場合はあかしがなくなる、象徴がなくなる、バーゲニングパワーがなくなる、こういう意味になるわけですね。これは何か言葉じりをとらえるみたいな言い方で大変恐縮なんですけれども、しかし、おっしゃっている趣旨というものを考えるとそういうふうに受け取れるわけです。ことしの夏の人勧等で大体GNP一%という問題がはっきりしてくると思いますが、大臣はそのとき、今の内閣にあって、やはりGNP一%はアジア諸国に対する日本の平和主義のあかしである、断固守れ、守るべきだ、こういう強い姿勢で内閣の中で御意見をお述べになるお立場なのかどうか、その辺の大臣の御決意を伺わせていただきたいと思います。
  65. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私もアジア、特にASEAN諸国等を回ってみまして、やはりああいう国々には、日本が軍事大国になるんじゃないかというふうなそういう危惧というものが確かにまだ存在していると思います。これは根強く存在していると思います。これに対して日本は、憲法において平和国家として日本の道をはっきり打ち出したわけでございますから、日本としてはあくまでも、アジアの中で共存していくという立場からは、二度と過去の過ちを繰り返してはいけないわけですし、そのためには防衛力というものは最小限に抑えなければならない、やはりぎりぎりのところに抑えていくということが、日本平和外交展開する上において大きなバーゲニングパワーになるという気持ちを非常に強く持っておりまして、したがって、私がこれまで答弁した精神はまさにそこにあるわけで、日本の防衛というものが最小限、そしてそれはぎりぎりのところでなければならぬと思うし、そういう意味で三木内閣でも一%というものを言ってきているわけですから、そういう一%ということがまたアジアの国民に対してある意味においては安心感を与えている、こういうふうにも私も正直に言って思うわけです。  やはり日本としても、軍事大国にならない、防衛力というものはぎりぎりの線に抑える、こういう姿勢というものはこれからも堅持をしていくというのが日本立場でなければならない、こういうふうに思っております。
  66. 市川雄一

    ○市川委員 今の決意を、中曽根内閣の中で反映させる御努力をなさいますか。
  67. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これからいろいろと議論も出てくると思いますが、今の私自身の精神といいますか、そういう精神で十分議論をいたしてまいりたいと思います。
  68. 市川雄一

    ○市川委員 以上の問題はわかりました。  次に、問題を変えまして、一九七三年十一月七日にアメリカで成立しました米国の連邦議会と大統領戦争権限に関する上下両院共同決議、いわゆる戦争権限法というものと日米安保条約第五条との関連についてお伺いしたいと思います。  この問題は、参議院の方で三回くらい、衆議院でも一、二回議論されております。その議事録は全部手元にございまして、拝見いたしました。私どもは、御承知のように日米安保条約の持つ一定の抑止的役割というものを認めざるを得ないという立場に立っております。安保条約即時廃棄とか、そういうことを言っている立場ではありません。ただ、きょうの議論は、そういう何かイデオロギー的な立場というよりも、条約とアメリカの上下両院が憲法の権限に基づいてつくった権限法との整合性というものを伺いたいわけです。ですから、そういう立場でぜひまた御答弁をいただきたいと思います。  今までの政府外務大臣、大平総理大臣、園田外務大臣安倍外務大臣あるいはきょうお見えの栗山さんとか北村さんとかあるいは淺尾さんとかという方がずっと過去に答弁されているわけですね。ずっと読みましたけれども、どうもすとんと落ちないわけですね。何かこう希望的な観測、推測で、避けている感じがしてならないわけです。  そこで、改めてお伺いをいたすわけですが、この戦争権限法によって日米安保条約の骨格とも言うべき第五条の運用、実施に当たって何ら影響を受けない、こういうお立場なのかどうなのか、その辺をまずひとつ基本的にお聞かせいただきたいと思います。
  69. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まず私から全体的に申し上げますが、戦争権限法は御承知のように米国の国内法であります。日本政府として、その内容に立ち入って有権的な解釈を行うことのできないことは御承知のとおりであります。いずれにしましても、日本側として最も重要なことは、安保条約は米国政府が締結したということのみならず米国議会によっても承認されたものであり、言いかえれば、米国は、行政府のみならず議会を含めて、日本に対する武力攻撃が発生した場合安保条約第五条の行動をとることを宣言しておる、こういうことであります。すなわち、安保条約第五条の規定する米国の対日防衛義務は議会を含めた米国の国家としての対日義務を設定したものでありまして、この義務を承認した同じ議会が、他方においてこの義務の履行を妨げるごとき措置をとるようなことは本来考えられないということであります。  また、国家としては国内法のいかんにかかわらず条約の義務を履行すべきであることは一般国際法上確立した考え方でありまして、我が国としては、日米国家間の関係としてはあくまでも安保条約第五条を念頭に置いて本件に対処する考えてあります。  戦争権限法が御承知のように昭和四十八年に成立したわけでございますが、その後の累次の日米首脳会談におきましても、米国大統領日本側に対し安保条約第五条の米国の義務を遵守する旨誓約し続けているわけでありまして、我が方としても右に述べた観点から理解をいたしておる次第であります。  今申し上げました日米首脳会談の約束事については累次の首脳会談等で明らかにされておりますが、例えば三木総理大臣が訪米に際しての日米共同新聞発表を見ますと、この中で大統領は、総理大臣に対し、核兵力であれ通常兵力であれ、日本への武力攻撃があった場合、米国日本を防衛するという相互協力及び安全保障条約に基づく誓約を引き続き守る旨建言した、こういうことも確認されておるようなわけであります。
  70. 市川雄一

    ○市川委員 これは一つ一つ反論できるのですけれども、時間がかかるのです。  まず、最初におっしゃられた、行政府のみならず議会を含めて国家としての義務である、議会が承認したという理由で。行政府が締約して、しかも議会で批准を受けた、行政府と議会を合わせた国家としての義務である。その同じ議会がこの義務の履行を妨げるとは考えられない。最初の御答弁はこういう趣旨ですね。これは考えられないという推測、予想ですね。推測、予想を聞いているわけじゃないのですね。関連性を私は聞いているわけです。というのが第一点。  それからもう一つは、これは園田外務大臣も言っておりますが、議会が承認したと言うけれども、議会が安保条約を承認した前提、前提というか承認したのですけれども、その安保条約第五条にはまさに「自国の憲法上の規定及び手続に従って」、こういう明文があるわけですね。日本国の施政の下にある領域におけるいずれか一方に対する武力攻撃があった場合に、無条件で行動するとは言ってないのですね、この安保条約第五条は。「自国の憲法上の規定及び手続に従って」という前提がついている。したがって、アメリカの議会は、戦争宣言するという戦争宣言権という、アメリカ憲法で保障された議会の権限に基づいてこの権限法をつくったわけです。したがって、その憲法の規定と手続に従っておやりになることですから、これは議会も承認しているから云々という立論は成り立たないんじゃないか、こういうふうに一つは思います。  それからもう一つは、今のことと関連しますけれども、国内法いかんにかかわらず一般国際法上の確立した考えである、こうおっしゃっていますが、何も私は、戦争権限法によって安保条約第五条が持つ米国の対日防衛義務が消滅したというふうには言ってないわけです。消滅したわけじゃない、義務の履行の仕方に変化が起きるんじゃないかということを言っているわけです。対日義務は残っているわけですね、安保条約の条文を変えたわけじゃないのですから。条文を変えますよと言っているわけじゃない。ですから、国際法上の条約義務というものがこの権限法で消滅したとは私も見てないし、アメリカも見てないわけですから、その御答弁はちょっと成り立たないんじゃないかというふうに思うわけです。  それからもう一点は、大統領日本に対して安保条約第五条を含めた米国の義務の遵守を誓約し続けている、こうおっしゃるわけです。しかし、これはまさに、大統領の三軍の指揮権と議会の戦争宣言権の問題から起きて、議会が憲法に基づいて大統領の指揮権をある意味では束縛する法律をつくったわけですから、幾ら大統領が誓約をしても、議会がやっていることですからいかんともしがたいことで、大統領が誓約しているということでは答えにはならないのではないのか、こういうふうに考えるわけです。その点どうですか。
  71. 栗山尚一

    栗山政府委員 安保条約第五条に、「自国の憲法上の規定及び手続に従って」「行動することを宣言する。」ということが書いてあるということは、委員御指摘のとおりでございます。それで、従来からいろいろな機会に、この第五条の「憲法上の」「手続に従って」云々ということの意味につきまして政府の方から御答弁申し上げている次第でございますが、アメリカ憲法の関連規定としましては、一方におきまして議会の戦争宣言を行う権限、憲法第一条の八節に定められておりますそういう議会の権能、それから他方におきまして、同じく憲法二条に定められております三軍の最高指揮官、いわゆる統帥権というような言葉で説明しておりますが、三軍の最高指揮官としての大統領の権限、こういうものを念頭に置いた規定であるということを従来から御説明申し上げておるわけでございます。  そこで、第五条の規定に立ち返って考えてみた場合に、これは、我が国に対します武力攻撃があった場合にアメリカがどういうふうに対処するかということ、すなわち、一言で申し上げればアメリカの対日防衛義務についてこれを条約で定めた規定でございますので、当然のことながら、日本に対する武力攻撃ということでございますから、そういう武力攻撃を効果的に排除するためにアメリカが軍事行動をとるということを念頭に置いた規定でございまして、そういう我が国に対する武力攻撃というものを効果的に排除するためにアメリカが必要な軍事行動をとる義務があるということをこの第五条で定めておるわけでございます。  そこで、従来から累次政府が申し上げておりますことは、そういうアメリカの対日防衛義務というものは条約、国際法上の神聖な義務であるので、そういう義務をアメリカがいざという場合に忠実に履行するであろうということ、これは国際法上のアメリカの義務でございまして、別に一般的な期待感を政府として持っておるという説明ではございませんで、条約上の厳粛な義務というものが存在をするので、そういう義務の履行というものについてアメリカがそれを怠るということはあり得ない、戦争権限法のいかんにかかわらずそういうことはあり得ないということを累次政府が御答弁申し上げておるということでございます。
  72. 市川雄一

    ○市川委員 戦争権限法のいかんにかかわらず変化がないというのは、アメリカ政府と打ち合わせた、議会の了解を得た御見解ですか、外務省の見解ですか、いかがですか。
  73. 栗山尚一

    栗山政府委員 委員承知のように、戦争権限法の中には、第八条に、この法律アメリカの既存の条約の中身を変更するものではないという趣旨の規定もございます。累次申し上げておりますように、この戦争権限法は、いろいろな過程でアメリカの行政府と立法府の間でいろいろなやりとりがありまして、最終的には、行政府大統領の拒否権というものを議会がひっくり返しましてできたという立法経緯がございます。そういう過程でいろいろ行政府と立法府の間に難しい法律論が行われてでき上がった法律でございますので、第三国である私どもが、その内容技術的な法律解釈につきまして云々できる立場にない、有権的な解釈をできる立場にないということは累次申し上げておるとおりでございますけれども、少なくとも、先ほど申し上げましたような、戦争権限法の中にもその条約の中身を変更するものではないという規定もございますし、それから、先ほど申し上げましたことの繰り返しになりますが、これはアメリカの立法府も承認をした条約の神聖な義務でございますので、いざという場合にそういう義務の履行をアメリカが怠るというようなことは、そもそも国際法上あるいは条約上の問題としてあり得ないであろうということを申し上げておるわけでございます。  これは別にアメリカの議会と打ち合わせておるとかということではございませんが、事柄の性質上、当然そうあるべきであるということを申し上げておる次第でございます。
  74. 市川雄一

    ○市川委員 「そうあるべきである」と言うのですけれども、向こうは、憲法の手続に従ってつくった法律なんですよ、戦争権限法というのは。今八条のd項1のことをおっしゃっておりましたけれども、八条の同項では、御承知のように「敵対行為又は敵対行為にまきこまれることが情況から見て明白な事態に合衆国軍隊を投入する権限は、次の各号から推定されてはならない。」として、その各号の2の部分で、「この共同決議の制定以前若しくは以後に批准されるすべての条約。」こうなっているわけですね。これは安保条約入りますよね。入りませんか。八条のa項の2に安保条約が含まれていると私は思いますが、どうお考えですか。
  75. 栗山尚一

    栗山政府委員 これは法律の規定から読む限りにおいて、これまでに批准された条約ということは書いてございますので、アメリカの議会が批准をいたしました防衛条約は全部含まれておるであろうというふうに我々も理解しております。
  76. 市川雄一

    ○市川委員 そうすると安保条約も含まれておるわけですよね、八条のa項の2には。おっしゃられるように確かにd項では、「この共同決議のいかなる規定も、 1 連邦議会若しくは大統領の憲法上の権限又は現行の条約の規定を変更することを意図するものではない、」こういう条文のあることも事実です。しかし、考えてみまして、この八条のa項というのは、「推定されてはならない。」とはっきりしているのですね。条約を根拠にして、大統領が、合衆国の軍隊を投入する権限を推定してはいけない。しては「ならない」とはっきり断定的なんですね。それに加えて八条のd項の方は、これは「連邦議会若しくは大統領の憲法上の権限又は現行の条約の規定を変更することを意図するものではない、」三者を並列に書いて、変更するものではない。これは言っても言わなくても同じようなことなんですね、三つの権限を認めているわけですから。連邦議会の戦争宣言権、大統領の条約締結権もしくは三軍の指揮権というものを同時に認めているわけなんです。それから「現行の条約の規定を変更することを意図するものではない、」私も安保条約の条文の規定が変更されたとは思ってないのです。変更されたというふうに言っているわけじゃない。戦争権限法が成立しても、依然としてアメリカ日本に対する対日防衛義務を持っているというふうに理解しておるのです。ただ、その対日防衛義務の履行の仕方に変化が起きてくるのではないか。  もうちょっと申し上げますと、戦争権限法のできる前は、言ってみれば期限がなかったと思うのですね。しかし、この戦争権限法の成立によって、大統領と議会の判断が一致しなかった場合は六十日、あるいは撤退を目標とした場合はさらに三十日で九十日内に合衆国の軍隊は撤退しなければならない、あるいは上下両院が同意決議を行った場合はさらにそれが短縮されて撤退しなければならない、こういうふうになっているわけですね。ですから、条約上の対日防衛義務は消滅はしていない。消滅はしていないけれども、議会と大統領判断が不一致になった場合は、大統領の合衆国軍隊の使用について期限が切られるという形で変化が起きてくる。これは論理的にこうなると私は理解をしておるのですが、間違っておりますか。この理解が間違っているか間違ってないか、間違っていたらどういう点が間違っているか、これだけ簡潔にお答えいただきたいと思います。
  77. 栗山尚一

    栗山政府委員 冒頭申し上げましたことをもう一度繰り返させていただきますが、この法律はなかなか複雑な法律でございまして、私も、私事を申し上げて大変恐縮でございますが、この法律ができました直後から数年間在米大使館に勤務しておりまして、その間いろいろな機会に、この立法に参画した立法府の人あるいは行政府の人から、この法律の制定経緯、解釈等についていろいろ専門的な見地から意見を聞いたことがございます。そういうものを総合いたしましても非常に複雑な法律でございまして、法律条項を、当然こうなるものであると、有権解釈を政府としてこういう場で申し上げることは非常に適当でないであろうということを感じるわけでございます。  従来からも政府はそういうことで御答弁申し上げておるわけでございますが、一般的にこの法律の規定を見ますと、先ほど委員御指摘のように、一応原則的には、確かに、大統領の海外における兵力の使用につきまして六十日あるいは最大限九十日ということで、使用期間についての期限が付されておるということはそのとおりであろうと思います。しかしながら、例えば現実に安保条約の五条という事態が発生いたしましたときに、この法律をどういうふうに適用してそれが運用されるであろうかということにつきましては、すぐれてそのときの立法府の判断というものがございますので、これはどういうふうになるかということをこの場で申し上げることは適当ではないだろうと私は考える次第でございます。  しかし、原点に戻って考えますと、いずれにしましてもアメリカの議会も含めて安保条約というものにアメリカが縛られるということで、そういう意思表示のもとにできておる条約でございますから、結果的に、アメリカが安保条約五条のもとで定められておるような対日防衛義務を十分に履行しないというような結果になることは、アメリカの行政府も議会もやらないであろう、またそれは国際法上当然そういうことが言えるということを従来から申し上げておる次第でございます。
  78. 市川雄一

    ○市川委員 先ほどから、どうなるかという見通しは聞いてないのですね。この法律と安保条約第五条を論理的に詰めていくとこうなるのじゃないですかと質問しているわけでして、現実にはこうなるだろうというその予測は私は聞いてないのですよ。まず論理的関連性を伺っているわけです。  一つ申し上げますと、今せっかくの北米局長の御答弁ですけれども、しかし、アメリカの行政府は実際問題大分困っていますよ、この戦争権限法。それなのに日本政府が、こうなるだろう、ああなるだろう、大丈夫だろう、そんな考えでいいのですか。アメリカの行政府は大分困っているのじゃないですかということを申し上げたい。  さらに、まず論理的関連性ということで、これは権限法では御承知のように、もう釈迦に説法かもしれませんけれども、第二条で、「共同決議の目的は、」というのではっきり目的がうたわれておるわけですね。「目的は、」「連邦議会と大統領の両者の共同判断が適用されることを確保することである。」共同判断だ。いわゆる戦争宣言なき戦争に、勝手に大統領の権限でアメリカの国民が巻き込れたのではかなわない。したがって、憲法では戦争宣言権というものが議会にあるのだから、その議会の承認なくして、大統領が三軍の指揮権で軍隊を投入してずるずる、ずるずる、アメリカの国民を戦禍に巻き込むようなことがあってはならないという趣旨。その場合は大統領と議会が共同の判断ができるようにしましょう、そういう共同の判断を確保する目的でこの権限法ができた、こういうようにはっきりうたってあるわけです。しかも二条の(c)項では、「大統領が総指揮官として、敵対行為又は敵対行為にまきこまれることが急迫し、それが情況から見て明白な事態へ合衆国軍隊を投入する憲法上の権限は、」と、大統領の憲法上の権限を三つに分けているわけですね。「(1)戦争宣言 (2)特定の制定法による授権、又は、(3)合衆国、その准州、属領若しくは合衆国軍隊に対する攻撃により生じた国家緊急事態に従ってのみ行使される。」と、「のみ」とついておるわけですね、オンリー。大統領の憲法上の指揮権というものを三つに分類して、前者の(1)と(2)は議会が承認を与えた場合ですからこれは問題にならない。(3)番目は議会が承認を与えない場合ですから、この(3)番目のケースについて、さらにそういう議会の承認なくして大統領が軍隊を投入した場合は、四十八時間以内に議会に報告しなければならない。しかも四十八時間以内に報告して、六十日以内に軍隊を撤退しなければならない。撤退の安全を確保するためということが立証された場合はさらに三十日間プラスしてよろしい。少なくとも九十日間で撤退しなければならない。しかし、議会がさらに大統領と意見が不一致で、両院で両院同意決議をした場合は、大統領合意の署名がなくても、これは軍隊を期日を短縮して撤退しなければならない。こういう法律ですよ。  そういう法律でございますから、安保条約第五条はまさに第二条のc項で言う3番目に該当するわけですね。日本に武力攻撃があった、まだ議会は戦争宣言をしていない、特定の制定法による授権もしていない、ということは大統領の総指揮官としての権限で軍隊を動かしている。これは(3)番目のケースです。この(3)番目のケースの場合は、四十八時間以内に議会に報告して、六十日、最大限九十日で撤退をしなければならない。さらに、議会が大統領と別の判断を持てば、同意決議を行えば即時撤退しなければならない。こういうことに論理的にはなっているのではありませんか、どうですか。まず論理的関連性。
  79. 栗山尚一

    栗山政府委員 大変恐縮でございますが、委員の御質問に正面からお答えするということは非常に難しいのだろうと思います。百歩譲りまして、まずこの法律の解釈につきましては、例えば今委員が御指摘の、大統領が軍隊を投入できるのは本当に二条に掲げられておる三つの事態の場合に限定されるかどうかということですら必ずしも明確でございません。従来私ども承知しております行政府の一貫した意向は、この二条のc項で掲げられた三つのケース以外に、大統領が憲法上の権限に基づいて軍隊を海外において使用することが認められる場合があり得る、したがいまして、この二条のc項は、包括的に大統領の海外における兵力使用を定めたものでは必ずしもないということが行政府の見解である、というようなことを従来聞いております。これは一つの例でございます。  それから、先ほど委員御指摘の、六十日以内であっても、議会が決議をした場合には大統領は兵を引かなければならないという規定につきましても、行政府はこれに拘束されないということは、この法律ができた当初から行政府が言っておることでございます。  さらにはまた、あるいは委員承知かと思いますが、一昨年全く別件で最高裁の判決がございまして、行政府に一たん議会が授権をした権限を後から立法府、すなわち議会が拒否権を行使して否定するというようなことは憲法違反であるという最高裁の判決が出ました。この最高裁の判決によって、先ほど委員が御指摘になりました、六十日以内における議会の決議による撤兵ということは違憲になったというのがアメリカ法律家の大体の一致した意見のようでございます。  先ほどの委員の御質問にそのままお答えすることにはならないわけでありますが、ことほどさように、この法律の解釈につきましては種々複雑なところがありますので、大変恐縮でございますが、実際にこの法律がいざという場合にどのように適用されるかということにつきまして、断定的に申し上げるということはできないというのが私の正直な答弁でございます。
  80. 市川雄一

    ○市川委員 大変しつこいようで恐縮ですけれども考え方としては論理的なすき間がある。すき間があればそれを埋める努力を行政府としてするのが当然じゃないのか、こういう立場で今伺っておるわけです。  例えば、御承知のように日本と議会の権限が違います。アメリカは、議会がこうだからと――この間も何かレーガン大統領から中曽根総理に、議会の方で貿易摩擦の問題について非常に強い意見があるから日本政府も配慮してもらいたい、こういう言い方をしてきたわけですけれども、いろいろな事態があると思うのです。極端な仮説を立てますと、アメリカソ連から報復攻撃を受けるかもしれないという事態になれば、議会と大統領判断が不一致になるかもしれないということも考えられるのです。だから、条約とアメリカの憲法に基づいてできた法律との間にすき間がある。それをただ、確信とか推測とかそんなことは国際的にないだろうとか、そういうことだけで済まされていいのかという疑問を提起しておきたいと思うのです。アメリカも国益ということになれば非常にしたたかな態度をおとりになるのではないのか。本当は大統領も内心は反対なんだけれども、議会が反対だからという理由で、議会というものをうまく使ってやるということも考えられるし、過去において時々そういう節もみられたし、そういう立場で聞いておるわけです。  しかも、五十二年十月十一日の参議院予算委員会で園田外務大臣は、条約と戦争権限法というものが対立した場合は「戦争権限法というのが優先するというのが当然これは冷静な考え方であると存じます。」こういうふうにはっきり答弁しているのです。条約解釈としては戦争権限法と条約の関連性という、論理的な観点ではやはり権限法が優先する、こう受け取るのが冷静な考え方であるというふうに言っているわけです。ただ、現実の問題としてはそうならないように努力をしておる。  それから、五十五年三月十九日のやはり参議院の予算委員会では、「軍隊投入後、アメリカ議会によって同意決議に基づく撤退命令の可能性は否定できませんね。」こういう御質問に対して、政府委員の淺尾新一郎さんは、「もちろん論理的な問題として、先ほどから参考人からも御説明がありましたように、これは否定できないと思います。」このようにはっきりおっしゃっているわけですね、ここに議事録があるのですけれども。しかも、アメリカの議会と行政府の間で、今北米局長もおっしゃったように、その解釈をめぐっていろいろやりとりがあることも承知しております。その中には、この八条のd項、現行の条約の規定の変更を意図するものでないというのを削除してしまおうという、修正案を出そうという上院議員もいるわけです。これが紛らわしいんだ、だから削除したい。先ほど挙げた憲法違反というのはたしか移民法の問題だと思うのですね。この戦争権限法で憲法違反だとかなんとかというのは、判決はまだ出ていないはずです、私の調べた範囲では。  そういうことを考えますと、今までの国会での答弁でも、これからよく検討してみなければなりません、こうおっしゃっているわけですが、五十三年、五十五年ですから七年、五年という歳月が流れておるわけでして、今の答弁の骨格はその時点と全く同じ答弁をなさっているわけですね。このときは、これから検討しますということを盛んにおっしゃっているわけです、この議事録の答弁の中で。要するにその後検討なさってないように受けとれますし、これは、こっちが有権的解釈ができないならアメリカ政府に何らかの措置を尋ねてみるとか、戦争権限法と安保条約五条との関連について日本が一定の懸念を持っているという意思表示ぐらいはきちんとなさった方がいいんじゃないかと思うのです。その意思表示もなさってないと思うのですが、意思表示をなさるお考えはあるのかないのか、またその必要性をお認めにならないのかどうか。外務大臣、いかがでしょうか。
  81. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 安保条約上の米国の義務と戦争権限法との関係に関する基本的な考え方につきましては既に申し述べたわけですが、今御指摘がございました園田外務大臣答弁は、安保条約の履行と戦争権限法との関係につきまして、野田委員が、戦争権限法の関係規定によれば、安保条約の規定にもかかわらず、戦争宣言なしに投入された軍隊は米議会による特別の決定のない限り六十日以内に撤退することになる、こういうふうな主張をされたのを受けまして、この前提に立つ限り、戦争権限法の法解釈としては、六十日以後は、議会が戦争宣言をするかまたはこの期間を延長する措置をとらない限り米軍は戦闘を停止せざるを得なくなると考えるのは当然であろう、こういう趣旨を述べたものであります。  ただ、安保条約の履行と戦争権限法との関係が常に右のような考え方でとらえられる場合であっても、既に御説明しましたとおり、安保条約第五条の米国の義務は、米行政府のみならず米議会をも含めたいわゆる国家としての米国を国際的に拘束するものでおりますから、安保条約第五条が発動されている限り米議会が古義務の履行を不可能にするようなことはあり得ない、したがって六十日の期間は必ず延長されるとしか考えられないわけであります。御指摘の外務大臣答弁に引き続き外務大臣が、現実としてさようなこと、すなわち六十日で戦闘停止、戦闘中止、さようなことはないであろうという確信を表明しているのはまさに右の確信を述べたものであります。  また、戦争権限法成立後の累次の日米首脳会談において、米国大統領日本側に対して安保条約第五条の米国の義務を遵守する旨誓約し続けていることも、右の我が方の確信を裏づけるものである、こういうふうに考えているわけであります。
  82. 市川雄一

    ○市川委員 論理的には私が申し上げているとおりだろうというふうに私は思うのですね。議会は承認はしましたけれども、第五条には「自国の憲法上の規定及び手続に従って」という留保条件が入っているわけですから、憲法上の規定に従って、議会の戦争宣言権という憲法上の権限、その権限に従ってできた権限法に従って撤退ということを決議することは論理的には可能なわけですよ。僕はそう思うのです。ですから、そういう意味では、議会と行政府でそれなりに解釈が分かれておる面もあるかもしれませんけれども日本政府が一定の懸念を持っているという意思ははっきりした方がいいのではないかと思うのです。  それではお伺いしますが、第五条の「共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」という「行動」というのは、イコール軍事行動ですか。常識的にはそう言われているのですが、ここには軍事行動とか武力行動とかないですよね。ただ「行動」という言葉になっている。外務省の解釈はアメリカが直ちに軍事行動というふうにおっしゃるのですが、例えば国連に安全保障理事会を緊急に招集して、国連の場で停戦を呼びかける働きをアメリカがやるということもこの「行動」に含まれるのじゃないのですか、どうですか。
  83. 栗山尚一

    栗山政府委員 今御指摘のような、国連での行動自体を第五条が排除しているということはないと思います。しかし、五条の趣旨は、日本に対する武力攻撃があった場合に、ここに書いてございますように「自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、共通の危険に対処するように行動する」ということでございますから、第一義的には当然、日本に対して行われております武力攻撃を排除するために必要な限りにおいてのアメリカとしての自衛権の行使、すなわち軍事行動というものを念頭に置いた規定であるということは明確であろうと思います。
  84. 市川雄一

    ○市川委員 しかし、それは条約の常識的な解釈ではそういうふうに言われておりますけれども、排除してない、ですから、そういう国連での活動というもので済ますという場合も出てくるのじゃないかと思うわけです。――こういう場では御答弁できないということですから、これ以上議論してもこんにゃく問答になりますからここでやめておきます。  次に、核拡散防止条約の再検討会議がことしの九月に開かれ、そのための最後の準備委員会が四月中に行われる。中曽根総理が豪州へ行かれたときに、記者会見でオーストラリアの首相から日本も再検討会議に出たらどうかと呼びかけられて、日本も代表を出席させたい、こういうふうにおっしゃっているわけです。  この核拡散防止条約の再検討会議というのは、これは非常に重要な会議だと思うのです。外務省の方はよく御存じだと思いますが、いわゆる核を拡散しない、この条約に参加した国は核兵器を持てない、その代償措置として核兵器国は軍縮努力します、こういう軍縮努力義務というものがこの条約にはうたわれているわけでございます。  外務省の核拡散防止条約の説明の解説を拝見いたしましても、「核兵器を持っているアメリカソ連、イギリス、フランス、中国の五カ国のうち、フランス、中国はこの条約に参加しておらず、またイギリス、フランス、中国の核と、アメリカソ連の核とでは比較にならないので、実際的には米ソ両国の核軍縮が問題です。そしてこのことが、非核兵器国の核兵器に対する手をしばる一つの代償になっています。」こういう説明をしているわけです。     〔委員長退席、戸塚委員長代理着席〕 ですから、本当に日本世界軍縮を求めるならば、この核拡散防止条約に基づく再検討会議、過去二回行われていますが、二回とも米ソはうまく逃げてしまったわけです。今回も、これが近づいてきたのでジュネーブ交渉を始めたのじゃないかと見られているわけです。中曽根総理は、いや、違う、パージングⅡとかヨーロッパの二重配備決定がソ連を和平のテーブルに引き出したのだと自画自讃しておられますけれども、実際の国際情勢を専門に見ている方は、そんな甘いものじゃない、米ソ交渉をやっていないと、この秋の会議で第三世界からがんがん言われてしまう、その場合に言い逃れができない、だから秋に照準を合わせて始めたと見られているわけです。そういう意味でも、米ソに核軍縮を迫る絶好の場所であると私は理解をしているわけです。SDIの問題もありますけれども、結局米ソの核軍縮がこの条約で義務づけられている、だから簡単に米ソがやると私も現実には考えておりませんけれども日本としては積極的に取り組んでいいのじゃないか。外務大臣が出席されるのかどうか、何かそういう積極的な役割をこの再検討会議で果たそうというお考えがあるのかないのか、その辺をお聞かせいただきたい。
  85. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 我が国は核不拡散条約、いわゆるNPTが核拡散防止と原子力平和利用を両立させる主要な国際的枠組みであるという考えから、一九七六年に同条約に加盟するとともに、それ以来同条約体制維持強化に積極的に貢献してきております。  同条約の第三回再検討会議は本年九月ジュネーブで開催される予定でありますが、我が国は、同会議がNPT体制維持強化の上で重要である、こういう考え方から同会議に積極的に参加をいたしまして、同条約体制強化のため、未加盟国の加盟促進であるとか同条約が求めておる核兵器国の核軍縮促進、あるいはまた原子力平和利用の推進等を強く訴えていく所存であります。  この会議には特に私自身が出席するということは今のところ考えておりませんが、我が国が同会議を重視しておるという姿勢にはいささかも変わりございません。  なお、昨年四月に行われた第一回準備会合では、我が国の今井軍縮代表部大使が議長、また昨年十月の第二回準備会合でも副議長を務めた経緯がありまして、こういう立場から我が国としてもできるだけ積極的に参加をしたい、こういうふうに考えております。
  86. 市川雄一

    ○市川委員 最後にちょっと。さきの質問に戻って恐縮なんですけれどもアメリカからのSDI研究参加呼びかけに対する回答を出す前に、日本政府として国会で意見を聞くというようなことをなさるお気持ちはありませんか、どうですか。議会の意見を聞くというお考えはないかどうか。行政府の専権的な判断でやってしまうのか。その辺はどうですか。
  87. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 このSDI構想SDIにつきましてはこれまで議会での論議の中で与野党からいろいろと議論が行われておりますし、また政府の見解も述べております。これからも国会内のそうした議論が尽くされることは当然のことであろうと思いますし、また政府政府として、日本のこれまでの基本的な理念というものを踏まえまして、なおかつ議会の論議等も十分参考にいたしまして、慎重に対処してまいりたいと考えております。
  88. 市川雄一

    ○市川委員 時間が参りましたので、あと関連で同僚の議員が質問いたしますが、SDIについては問題点が非常にたくさんございます。三分間とか二十五分間とかといううちに判断をしなければならないというような側面もこれあり、全部のミサイルを無力化することはできなくて、ソ連の八千発の核弾頭の約八%はアメリカ本土へ届くという想定にあるやにも聞いております。全部無力化できるならばあれですけれども、八%残るということは約六百四十発ぐらい残るわけですから、それだけでも核ですから相当被害を受けるわけでございますし、いろんな問題がございますので、この問題については「研究理解」ということにも私たちはいささか不安を感じておりますが、本当に慎重に対処していただきたいということを御要望申し上げ、また先ほどの権限法については、何かいま一つどうも歯切れ悪くてよく納得できないということを申し添えて、私の質問を終わりたいと思います。
  89. 戸塚進也

    ○戸塚委員長代理 関連して日笠勝之君。
  90. 日笠勝之

    ○日笠委員 外交全般にわたりましては、先輩の市川委員の方からマクロ的な見地から質問をされましたので、私は重箱の隅をつつくようなミクロ的な見方で、何点かお聞き申し上げたいと思うわけでございます。  まずその第一点は、外務省関係法令集二百七十七ページにございますが、いわゆる外務公務員法でございます。これの二十三条、「休暇帰国」という項目の中にございます、皆さん方がよく御存じだと思いますが、「不健康地」というのが出てまいります。日本外交官の方が勤務するのに大変湿度が高いとか、温度が高いとか、海抜、高度が高いとかいうことで、一年半勤めれば二カ月以内ということですか、帰国休暇というものを認めておるわけでございます。この中に「不健康地」という名称がございます。また、同じく省令の中にも「不健康地」というのが出てまいります。不健康地というのはどういうところがあるか。別表第一に、例えば欧州地域であればソビエト連邦のモスクワなんかも入っておるわけでありますが、こういう不健康地という言葉の使い方、いかがなものかというふうに考えるわけであります。  実は商社マンの方がこのことを知りまして、私にこういうふうに教えてくれました。もしこれを向こうの国の人にそのまま言うと、これは経済とか貿易摩擦というのじゃなくて、文化とか精神、そういう意味の大変な摩擦になるような気がする。商社ではこういう言い方をせずに「特別地域」、このように言っているそうでございます。商社となれば第一線の方でございます。そういうことも配慮した上で、規程でそのように言っているのではなかろうかと推測するわけでございます。  私も、このことにつきましていろいろと自分なりに調べてみました。アメリカでは、一九五一年までは、大統領命令で、こういうふうな地区のことをアンヘルスフルポスト、直訳すれば不健康地ということでございます。しかし、最近は、いわゆるアングロサクソン系の西欧におきましてはハードシップポスト、困難地である、このように言いかえておるようでございます。  どんなものでしょうか。法律というものは時代とともに変わる。例えば監獄法というものも、「監獄」という名前がいかがなものかということで、今回は上程されませんでしたけれども、留置施設法であるとか刑事施設法であるとかいうふうに名前も変わっていきます。そういう意味におきまして、この不健康地という、相手の国の方々がこういうことを知った場合とのように感ずるかという、まさに貿易摩擦ではなくて文化摩擦といいましょうか精神的な面の摩擦といいましょうか、不健康地という言葉の使い方につきまして、私も何人かの法律家の方に聞きましたけれども、それは今の時代にはそぐわないのではなかろうか。何人もの法律専門の方もおっしゃっておられます。この点につきましてどのようなお考えを持っておられるか、まずお伺いしたいと思います。
  91. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 ただいま委員が御指摘になりました不健康地という言葉、先ほど引用なさいました外務公務員法の二十三条で使われておりまして、これは勤務環境が非常に厳しいという意味で使われておるわけでございます。この言葉は戦前から法律に使われておりまして、戦前は今の休暇帰国制度に当たる賜暇休暇という制度がございまして、そのときにも不健康地という言葉が使われておったものですから、この公務員法がつくられましたときにはその言葉が踏襲されたのではないかと思います。  先ほど委員がいろいろお調べになりまして御指摘になりましたように、アングロサクソンといいますか英語圏の国ではハードシップポストという言葉が使われておるように思います。ただ、このハードシップポストというのは不健康地という意味ではございませんが、勤務環境が非常に厳しくてという意味でございますが、日本語にはこのハードシップポストにそのまま当たる言葉がなかなか見当たらないということもあって、私どもは今まで不健康地という言葉を使ってきたわけでございます。  確かに今委員が御指摘になりましたように、こういうことが、相手国がおまえの国は不健康地だというふうに我々が考えているということがわかりますと、これは決していいことではないのでございますけれども、この不健康地という言葉は、先ほども説明しましたように、外へ出ております我々の職員が何年かに一度休暇で本国に帰ってくる、その場合に、普通ならば三年に一回なんだけれども、勤務環境が非常に厳しいところではその半分の一年半たてば帰ってこれるというときに、その基準を言うのに使っておるわけで、いわば我々内部の制度で使っておりますので、余り外国の人に対して、あなたの国は不健康地ということになっていますよというようなことは、普通はそういうことはないのでございます。今までも幸いそれで問題が生じたということはないのでございますけれども、確かに委員が御指摘になりましたような面、それは私ども理解できますので、何かいい言葉があれば検討させていただきたいと考えております。
  92. 日笠勝之

    ○日笠委員 先ほど言いましたように、商社の方も特別地域とか特別地とか言っておるわけでありますし、いろいろと言葉遣い、言い方については、御専門でありますからよく御検討いただいて、外務公務員法の第何条地区とか何条地でもいいわけでございますし、当たりさわりのない言葉でも、わかればいいわけでございます。ただ、外務公務員法という法律によれば、翻訳されて出る場合もどんどんあるわけでございます。そういう点を踏まえまして、ひとつ今後慎重に検討していただければと、このようにまず御要望申し上げておきたいと思うわけでございます。  続きまして、毎年外務省の方から出ております「世界の国一覧表」というのがございます。これは、昨年までは情報文化局編集でございましたけれども、内部の組織の機構が変わりましたので、本年度からは外務報道官編集、こういうふうになっておりますが、この「世界の国一覧表」の中の裏に地図がついておるわけでございます。この地図でございますけれども、この地図の国の名前でございますけれども、どのようにして決めておられるかお聞きしたいと思います。
  93. 瀬木博基

    ○瀬木説明員 「世界の国一覧表」の国名につきましては、原語の国名をできるだけ忠実に日本語にいたしておる次第でございます。ただ、その中で、日本語の中にない発音がございます場合には、できるだけ日本人が発音しやすいような形で国名を仮名にいたしてございます。
  94. 日笠勝之

    ○日笠委員 この今お手元のは八五年のでございますね。九ページの一番下の右の方でございますが、「外国の地名・国名を表記する場合のかなづかいについては、文部省「地名の呼び方と書き方」(昭和三十三年)等によりました。」こうありますが、きょうは文部省の方にも来ていただいておりますけれども、これは文部省、現在「地名の呼び方と書き方」、何か資料がございますか。
  95. 小埜寺直巳

    ○小埜寺説明員 お答え申し上げます。  先生も御指摘のとおり、教科書におきましては、それぞれの地名がまちまちになると児童生徒に支障が生じるわけでございますので、検定基準をつくりまして、その検定基準に基づきまして、まちまちにならないように指導しておるわけでございます。
  96. 日笠勝之

    ○日笠委員 先ほどの昭和三十三年の「地名の呼び方と書き方」というのは、まだ現存で、効果を発していますか。
  97. 小埜寺直巳

    ○小埜寺説明員 お答え申し上げます。  それはただいま絶版になってはおりますけれども、その考え方は今でも学校現場において使われていると思っております。
  98. 日笠勝之

    ○日笠委員 昭和五十三年に絶版になっているというふうにお聞きしております。ですから、九ページのこの行はもう少し書き方をお考えにならないといけないのではないか、このように思うのです。  今度は文部省の方にお聞きしたいと思います。  義務教育諸学校教科用図書検定基準実施細則、この中に、外国の地名・国名の表記は、外務省情報文化局編集「世界の国一覧表」による、こうなっておりますね。ところが、これによります地図の国名と、この前いただきました小学校の高学年でしょうか、社会科の地図、これを見比べますと、国の名前が一緒でないところがございます。例えば東西ドイツ、それから韓国、北朝鮮、大体大きい国ではそういうところかと思います。あとドミニカですね。ドミニカ国とこちらはなっておりますが、地図の方はドミニカだけでございます。そのように数カ所、これによるというふうになっておりますけれども現実に子供さんが使う社会科の地図には数カ国違うわけですね。先ほどおっしゃったように、ばらばらにならないようにやるということで、私は地図の会社の方にもお聞きしましたら、地図の出版会社というのは、まず海図、それから世界の国一覧、それから文部省の地図、こういうものを勘案して一般の地図の出版会社は国名を決めて出版しておるわけであります。  そこで、実は私、今回の在勤法のことで、大変恥ずかしい話ですが、上ヴォルタという国を一生懸命地図で探したのですが、ないのですね、幾ら探しても。地図を買いまして探しましたら、オートヴォルタというふうに出ているわけです。今回は名前を変えましてブルキナ・ファソですからいいですけれども、上ヴォルタというふうに印刷された地図もある、オートヴォルタと印刷された地図もある、ばらばらでございますね。  そういうことで文部省さん、どんなものでしょうか。先ほど言いましたように「世界の国一覧表」によるとありながら、実際に数カ国違っておるということ、この点についての御見解……。
  99. 小埜寺直巳

    ○小埜寺説明員 先生ただいま御指摘の点でございますけれども、先生御存じのとおりと思いますが、現在は教科書の制度は国定制度でございませんので、執筆者がまず自由に書かれたものについて文部省の方で検定で直していくという仕組みになっておるわけでございます。そのための物差しとしてこの実施細則というのがありますし、その実施細則に基づきまして、この「世界の国一覧表」というのができておるわけでございます。検定に当たりましてはできるだけこれによってもらうということで指導はしております。  それで、私もまだ詳細に中身をちょっと検討しておりませんのでお答えしにくいと思いますけれども、私の見た限りでは、大多数の教科書はこれによっているというふうに解しておりますけれども、例外等がありましたら、十分また検討さしていただきたいと思っております。     〔戸塚委員長代理退席、委員長着席〕
  100. 日笠勝之

    ○日笠委員 今言った東西ドイツ、北朝鮮、ドミニカ等々、現実に違うわけであります。これによるという細則があるわけでございますので、ひとつその点もよく外務省さんと相談をしていただいて、外務省さんの方がはっきり申し上げてその道のプロでございますから、その辺を参照文献等々をいただいて、「世界の国一覧表」と地図と教科書が数カ所も違うということのないように、私のような未熟な者が地図を引いたら、東ドイツを幾ら探しでもなかった、ドイツ民主共和国であった、こういうようなことになりかねませんし、今後とも、教材ということでございますから、これによると細則に明記しておるわけでございますから、この点ひとつよく御相談いただきたい、こう思うわけでございます。  今度、外務省の方には、そういうことで一般の地図会社もばらばらでございますので、新聞協会であるとか統一用語というのはあるように聞いておりますけれども、その辺をよく参照した上で、いわゆるガイドラインのようなもの、できれば外務省としては、先ほどから言いますように国の名前を間違って、間違ってといいましょうか、きちっと言ってもらいたいという要望もあるでしょうから、このように言っていただくとありがたいのだが、外務省の法令集の中には、国の名前は、エチオピアなんかはエティオピアというような古い仮名遣いで使っておるものもあるわけでございます。ですからこれに合わせるというのも、現代用語、新聞用語ということがありましてなかなか難しいかと思うのですけれども、いわゆるある程度のガイドライン、いろいろな摩擦が起きないようなガイドラインというものをつくる必要があるのではなかろうか、こういうように思うのですが、いかがでしょうか。
  101. 瀬木博基

    ○瀬木説明員 ただいま委員御指摘のとおり、国際化が進む世の中におきまして、やはり国名を国民が正しく理解していただくということは大切なことだと思います。私どもがこの「世界の国一覧表」を出しておるというのもまさにそういう趣旨でございまして、これを文部省の方が検定基準にお使いになっているということも結構なことではないかと思っております。
  102. 日笠勝之

    ○日笠委員 では、これが一応ガイドラインである、このように理解していいわけですね。  そうすると、文部省さんの方で、これを、日本の国のいわゆる外交のあらゆる面の責任を持つ外務省さんがつくっておられるガイドラインと考えれば、地図の方もこれに合わせていかなければいけないのじゃないか、このように思うのですが、今後御検討される余地がございますか。
  103. 小埜寺直巳

    ○小埜寺説明員 現在の検定基準でも、「世界の国一覧表」によるということになっております。先生の御趣旨に従いまして検討してまいりたいと思っております。
  104. 日笠勝之

    ○日笠委員 きょうは、せっかく外務大臣がいらっしゃっているのに全然質問をしないというのも失礼でございますので、急な質問でございまして大変恐縮なんですけれども、一問だけひとつお聞きいただければと思います。  これは二月でございますが、アメリカの国務次官補・国際機関担当のニューウェルさんが日本においでになりまして、ユネスコの問題でいろいろ外務省と協議された、このように報道記事等々に出ておるわけでございますが、ユネスコ以外にいわゆる国際機関、国連のいろいろな機関でも結構でございますが問題がある、ユネスコ以外にいろいろと是正してもらわなければいけない、日本の国の立場から見て改革してもらわなければいけない、そういうふうな国際機関、ニューウェルさんは国連貿易開発会議ども問題のある国際機関であることを指摘していると出ております。ILOなんかもアメリカは脱退いたしましたし、最近では東欧八カ国も脱退通告をしている、こういうようなこともありますが、ユネスコ以外に国際機関で今のところ問題があろうかと思うものがあるかどうか、突然な質問ですが、大臣、この点はどうでしょうか。
  105. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ユネスコ以外にもいろいろと問題を抱えている機関はあると思います。これは後で政府委員から説明をいたさせますが、まずユネスコにつきましては、日本国連に加盟する以前から入った国連機構でありますし、これは非常に大事にしてきております。日本も積極的に協力してきておりますが、最近の状況を見ますと、アメリカとかイギリスが脱退をするということで、いろいろと内容的に問題があるわけで、私たちは何とかしてこれを改革をしたい。これは、日本アメリカに追随してすぐ出ていくということではなくて、残って改革をしたいということで今苦心をいたしておりまして、今度ムボウという事務局長がやってまいりますから、私も会って改革について日本立場説明したいと思っております。どうしても改革は難しいということならば、そのときは再検討しなければなりませんが、やはり一般的に見てどうも問題があり過ぎるように思うわけであります。  そういう意味では国連自体も実はいろいろと問題、批判があるわけでありまして、国連が発足しましてより四十年たっておっても、いろいろと国際的な平和維持機構とかあるいはまた平和維持機能であるとかその他、国連のやらなければならない使命、国連の理想というものとほど遠くなっているのではないかという批判も実はあるわけでございますが、日本国連中心外交というものをやってまいりましたし、あくまでも国連を重要視してこれから外交を進めていきたい。ですから、国連、ユネスコあるいはILOその他、いろいろと問題を抱えておるが、ちょうど戦後四十年たったので、そういう点についても改革すべきは改革して、本来の国連憲章あるいは国連の精神にのっとった活動ができるように期待をし、日本もそのために努力協力をしていきたいと考えております。
  106. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  基本的には今外務大臣から御答弁申し上げましたとおりでございますが、アメリカは、レーガン政権になりまして、アメリカが参加いたしております九十八の国際機関の全部の点検をしたと申しております。その中で一番問題がございましたのがユネスコでございます。それからなお、先生御指摘ございましたようにUNCTAD、UNCTADの中におきましても、非常に事務的に余り効率的でない仕事が行われるということで問題点の指摘がされております。また、同様な問題がFAOなどにも少しございます。  これらの点につきましては、大臣からも申し上げましたように、ちょうど戦後の国際機関ができまして四十年を迎えております。それぞれの機関が本来の目的に沿って効果的な形での国際協力推進できるような形に持っていくということで、その観点から日本もできるだけの努力をいたしたいと考えております。
  107. 日笠勝之

    ○日笠委員 それでは最後に、いわゆる国連中心の外交方針というものを、先ほど外務大臣もおっしゃいましたように堅持していただくということで、四十年たっていろいろな矛盾点もあるかと思いますが、日本も先進国の一員でございますし、リーダーシップをとって改革に向けて御努力をいただきたい、このことをお願いして終わりたいと思います。
  108. 中島源太郎

    中島委員長 和田一仁君。
  109. 和田一仁

    ○和田(一)委員 在勤法について御質問したいと思います。  私は海外旅行にも時々参りますけれども、旅行へ参りまして帰ってくると、いつも、日本はいいな、こういう感じを持ちます。生まれ育った住みなれた土地というのは私には一番合っているのではないかと思うのですが、それは食べ物も日本はうまいし、水も本当にどこでも安心して飲めるし、また治安も大変よくて、夜遅くなっても本当に安心してひとり歩きができる、こういうような日本にいるために、余計そういう感じを持つのかなという気もいたします。  そこで、海外に勤務している方というものは、気候風土が違うところで、そしてまた人情風俗も違う異文化の中で生活をされる、そういう文化・社会での生活というものは、国内で同じ仕事をやっている以上に仕事の面では特殊な条件下にあるものだ、こういう理解をいたしております。勤務先というか勤務地によっては、国内の勤務から比べてうらやましいなと言われるようなところもあろうかと思います。花のパリなんというのは、かつては日本人にとって旅行が十分でない時代には本当にあこがれの土地であったかもしれませんけれども、今の日本の国内の生活状態を考えると、パリといってもそう魅力のあるところではなくなったし、押しなべて海外で勤務をしておられる方は御苦労さんと言った方がよい、そういう条件下での生活ケースが多いのではないか、私はこう考えております。  住めば都という言葉もありますけれども、しかしながら、海外で勤務をしている人やその家族にとっては、国内での生活とは違った意味でのいろいろな気苦労だとか不便さというものを実感しているのではないかと思うわけです。  そこで、私は、こういった人たちの問題を考えるときに一番考えなければならないのは、そういう異文化、異なった社会の中で、そういう勤務に携っている人たちの安全の問題が大変大事だと思います。加えて、そういった勤務にある人たちだけではなくて家族も含めて、そういう安全やら健康管理の問題あるいは生活環境の整備、教育の問題とか、日本の国内にあっては余り問題にならないようなことが大変重要な問題になってくるのではないふと考えております。こういったことを考えて、一体本省としてどういう対策をとられておるか。そういう今私が申し上げたようなものは十分であるというふうに、対策はできているというふうにお考えか。いや、必ずしもそうではない。であるならば、その必ずしもそうでない不十分な部分に対してはどうしていったらいいと考えておられるかをまずお聞きしたいと思います。
  110. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 ただいま委員の方から、私どもの方の在外勤務について大変深い御理解をお示しいただきましてありがたいと思っております。  今委員が御指摘になりましたように、文化の違い、気候の違い、いろいろなことがございまして、特に最近の在外勤務はなかなか厳しい条件のもとで行わなければならないということが多うございます。在外公館百六十八ございますが、その半数以上は自然環境など勤務環境の厳しい土地に所在をしております。こういう土地に勤務する職員は、当然そういう土地で勤務をするということについての高い使命感には燃えてはおりますけれども、しかし、やはり毎日のいろいろな障害が多いために職務に十分に専念しがたいという悩みもあるわけでございます。  そういうことで、私どもは、外交実施体制強化という一環といたしまして、まず第一に健康管理の対策、二番目に宿舎対策、それから三番目に物資対策、そしてそのほかの福祉対策にいろいろ努力をいたしておりまして、来年度、六十年度の予算案では対前年度比三七%増の約十二億円が計上されておりまして、これは今までに比べましてこういう面での増額が相当大幅に行われたということでございますけれども、しかし、先ほど委員が御指摘になりましたように、こういう勤務環境の厳しいポストがふえております。特にまた安全の面で、今まで相当安全の面ではよかったところがだんだん悪くなってくるというのが世界的な傾向でございますので、そういうこともあって、決して今の私どもの対策が十分であるとは申せませんが、とにかくこの点を外務省の予算の重点事項、特にその中でも優先度の高い重点事項として折衝をいたしまして、先ほど申し上げたような増額を得たわけでございます。これにつきましては内閣委員会、特に小委員会でも御支援をいただきまして御理解を得た点でございます。
  111. 和田一仁

    ○和田(一)委員 日本世界の平和と繁栄のために積極的に貢献していかなければならない時代が来ただけに、その出先である在外公館の整備についてはひとつ一層の御努力をお願いしたいと思います。  海外でそうして苦労をしながら勤務している職員の皆さん、家族はもとよりでございますけれども、やはり同じように、海外にあって会社の用務で滞在をしているあるいは旅行で通過をする、そういう邦人が今非常にふえてきておるわけでございますけれども、そういう人たちの安全、生命財産の保護ということも出先公館の大変大事な使命ではないか、私はこう考えております。  そこで、一つお聞きしたいのですけれども、一般的に申しまして、これはなければそれにこしたことはございませんが、海外において戦争であるとか動乱であるとかあるいは暴動、クーデター、こういった発生がやはりあるわけでございまして、そういうものが発生したときに、その対応をもし誤りますとこれは大変なことになっていくのではないかと思います。海外在留邦人が非常にふえつつあるだけに、こういったことが大変大きなウエートで在外公館の仕事の中に入ってきておる。こういう邦人の生命財産が安全に守られるかどうか、これは大変大事な問題ではないかと思うのです。こういった人為的なもののほかにも、天災地変というか地震やら、あるいはそうではなくて人為的な交通事故、大型の交通事故、飛行機が落ちるとか大型バスが転落するとか、あるいは火災に巻き込まれたとかガス爆発があるとか、そういう災害発生に当たっての救出や救護、こういうことも、当を得ればいいですが、その処置を誤りますと災害を大きくするだけでなくて二次災害に巻き込まれる、こういうケースも考えられるわけでございまして、こうした緊急事態の発生を予想して、在外公館対応というものは常日ごろからやはりきちっとしておく必要がある、私はこう考えるわけですが、どのような指導あるいは体制を持っておるか、ひとつ簡単に御説明いただきたいと思います。
  112. 谷田正躬

    ○谷田政府委員 外務省といたしましては、平素から、緊急事態発生の際の在留邦人の退避とか引き揚げというものに関しましては、その手段、方法あるいは経路等につきましてあらかじめ検討いたしております。それで、そういった際に共通した事項につきましては、本省におきましてあらかじめ対処要領というようなものを作成いたしまして、これを全在外公館に配付してございまして、事態の態様に応じて講ずべき措置というものを、在留の現地のそれぞれの日本人会と相談しておく、これはあらかじめ相談しておくという問題について指示を行っております。一番重要なことは、結局在留邦人と在外公館との間の平素からの連絡協議体制というものをしっかりつくっておくことでございまして、こういった事態が起こったときには、これはかなり流動的な変化が非常に起こるわけでございますので、そういうものに対応できるような体制というものを日ごろからきちんとしておくということがまず第一でございます。  それから、実際に緊急事態が発生いたしまして情勢の悪化によりまして引き揚げ、退避といったような問題が起こりますと、その時期の判断をするということで、これは在留邦人に対しましてこういった退避とか引き揚げの勧告を在外公館の方でいたしまして、それと同時に、かかる措置が円滑に行われるように必要とされる外交上の措置、相手方官憲との折衝等の援助をいたすということになっております。  あと、邦人救出のための具体的措置に関しましては、これは紛争の形態等によってまさにケース・バイ・ケースでございますけれども、我々といたしましては、日ごろからそういった本省と在外公館との間の体制を整備いたしますとともに、できる限り邦人の安全確保のために最大限の努力を払う、あらゆる方法を使って最善の手段を講ずるということを心がけております。
  113. 和田一仁

    ○和田(一)委員 そういった総括的な体制というか、指導はしているのではないかと思いますけれども、やはり具体的な場になりますとなかなかうまくいっていないのじゃないかなという感じがするのです。先般のあのイランイラク戦争の熾烈化に伴って、テヘランからの邦人脱出がございました。これが一体万全であったかどうか。幸いに邦人の脱出について事なきを得たわけでございますけれども、それは何かこう、いろいろ見ておりますと、トルコの好意で脱出ができて、僥幸というかそういうケースが加わったので事なきを得たというような感じもいたします。こういう点について、時期の判断とあわせて、もう少し手際よく救出するような手だてを講じられなかったかどうか。大臣のところにもこういう事態ですという連絡が当然入って、大臣の方から決断をされたものと私は思うわけです。大臣いかがですか、あれでよかったと思いますが、あれが万全であるかどうか、どのように御理解されているか、お聞きしたいと思います。
  114. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先般のイランからの邦人の脱出につきまして、トルコ政府には非常に配慮していただきまして、トルコ航空で大半の邦人が脱出したということは、いろいろとその後の事情等を聞いてみますと、これまでの日本外交努力によってトルコ政府日本に配慮したということは十分あったわけでありまして、イランにおける日本の野村大使がトルコの大使とかねてから非常に親交を結んでおったということも、一つの大きな原因でございます。トルコは、日本の野村大使からの要請にこたえまして、早速特別機を出してくれまして、在留トルコ人に先立って邦人を送ってくれたわけであります。こういうことも、平生の努力というものが大事な段階で実を結んだ証拠だろうと思っております。  そういう意味ではトルコ政府に対して感謝しているわけですが、我が国としましても、イランイラク戦争激化するという状況の中で、当然在留邦人の脱出も考えておかなければならぬということで、外務省は外務省なりに対策を講じておりましたし、同時にまた、外務省と現地の大使館と十分なる打ち合わせ等も進めておったわけでございまして、まず第一には、イラン当局と談判をしてイラン航空を使用するということは考えられるわけでございます。その点についてもイラン当局といろいろと協議をしておったわけであります。次に、友好国の航空機を利用する。こういうことでございまして、これについては最終的にトルコの協力を得たということでございます。第三番目としましては、どうしても他国の航空機に頼るということができない場合においては、日本航空の特別機を派遣するということを緊急避難の体制として進めていかなければならぬ。その点については日本航空側とも打ち合わせをしてこれも体制をつくっておったわけでありますが、日航機を飛ばす場合にはイランイラク両国の安全保障がなければなりませんので、その点について外交ルートを通じまして折衝を続けておった。最終的に、それもできないということならば陸地を通って避難をさせなければならぬ。こういうことで、陸地からどういうルートを通じて、どういう輸送手段で、どこの国に避難させるかということ等も準備を進めておったわけであります。  そうしたもろもろの体制を講じておる中で、トルコ側の好意によりましてトルコ航空で脱出することができたということでございまして、そういう意味で、日本政府としては、そうした事態に備えて周到な準備は進めておったわけであります。これからまたバグダッド等で何が起こるかわからない状況もありますので、イラクにおきましてもイランと同様、そうした緊急の事態に対してどういうふうにするかという体制は万々怠りなく今進めておるということであります。
  115. 和田一仁

    ○和田(一)委員 大臣、今度は本当にそういう段取りどおりいったのですか。今の大臣の御答弁だと、本当に事なきを得たからよかったのですが、大臣は、報告を受けて、どうしようかと頭の中で考えたときに、今の筋書きどおりだったかどうかです。  私はいろいろと聞いてみると、とにかく日本航空も、外務省から出ろという命令があればいいようにスタンバイしていた、行けと言われれば六時間で飛べるというところまで用意をしていた、そういう状況下にあって、いっとき現地では、現地の正月が近いというので込んでいたこともあるようですけれども、予定していた切符をキャンセルされる。アエロフロートあたりはもう全く一人も乗せてもらえなかった。全部キャンセルされた。それで邦人の中にパニック状態が起きて、やはりそういうときには自国優先です、どこの定期便であろうと何であろうと。自国優先で、自国の人間を乗せるということになると、やはり後回しにされる。だから邦人にとっては、そういうことを具体的に、キャンセルさせられ、目の当たりにほかの飛行機は飛ぶが、我々の飛行機はないということになったときには、頼るものは、出先機関はどう判断してくれているのだろうか、どういう手だてを講じてくれているのだろうかということになってくると私は思うのです。なぜ日本だけは自分の国の飛行機が飛んでこないのだろうか、こういう思いも持ったのは当然ではないかと思うのですね。そういう意味で、今大臣みずからおっしゃったように、隣でもこれはやっているわけですよ。バグダッドでもいつどんなふうになるかわからない。むしろこっちの方が人が多いというようなこともあわせ考えますと、こういうことに対する対応はきちっとしていただきたいと思うのです。  それで私は、恐らく大臣は、日本航空がスタンバイしているのも承知で、飛ばせたい思いも十分あったと思うのです。ところが、飛ばしたはいいが、みんな定期便や近隣の飛行機で処理されて、やあ、よかったということで、行った飛行機がむだになるといかぬということも配慮されたと思うのですね。私はそういうことが、日本航空でなくトルコの好意で事なきを得たという結果になったような気がしてなりません。もしそういう好意を寄せてくれる便がなかったとすれば、これは飛ばしたかどうかですね。私は、そういう好意をまず探してみるというよりも、むしろ政府みずからが、こういう場合にはこうしようというきちっとしたマニュアルを持って対処できるようにしておく方が大事だと思う。政府が飛行機を出したときには、本当に引き揚げないと危ないのだよ、この飛行機が最後だということが邦人にきちっとわかれば、来たときに乗らないでとかまだ残りたいとかいうようなこともなく、もう機会としては相当切迫しているのだという認識を在留邦人も持つのではないか。対応がばらばらだと、まだ何かやってくるかあるいはもうおしまいか、やはり判断も難しいと思うのですね。ですから、そういう意味では、専用機を持っているとかあるいは常に自由に大臣の裁量でチャーターできる体制をとる、私はそういう方途を考えていただきたいと思いますが、専用機は別として、チャーター便あたりは出先公館の長と大臣との相互の連絡で即断できるようお体制をおつくりになりますか、どうですか。
  116. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今度のイランからの邦人脱出につきましては、外務省としてもベストを尽くしましたし、現地イラン大使館も非常な努力をいたしまして、その成果がトルコ航空の特別機配慮ということにつながったことは間違いないと思います。そういう意味では邦人の皆さん方にも大変感謝をしていただいておる、こう私は思っております。  もちろん、我々としても、そうした協力が得られないということになるならば、これは何が何でも日航の特別機を飛ばす以外にないわけですから、確かに日航機もスタンバイしておりました。ただ、すぐ飛ばすことがいいに決まっておりますけれども、やはりイランイラク、ちょうど向こうへ飛んで行ったころに戦争空域の指定の期限に入ってしまうわけですから、どうしてもイランイラクの上空の安全というものはイランイラク両国の保障をとらなければならぬということで、実はその辺についてイランイラク両国と外相折衝を続けておりまして、この安全保障さえあれば直ちに飛べるという状況までもちろん来ておったわけであります。この点は日本航空側も非常に協力してくれたわけで、外務省もその前提に立って進めておったわけでありまして、日本の処置としては非常に機敏に、そして最大の成果を上げたんじゃないか。  ほかの国の情勢を見てまいりますと、特別機を出したのはトルコが在留邦人を脱出させるために出してくれただけで、アエロフロートにしてもあるいはまたエアフランスにいたしましてもその他の航空機にいたしましても、皆々テヘランに路線を持っておりますから、その路線で引き揚げた、自国優先という立場で引き揚げたということで、特別機をわざわざ出したというのはトルコ航空だけである、それも日本のために出してくれたんだ、こういうふうに承知をいたしておりまして、これはトルコ側の平生のやはり日本等に対する好意、いろいろなものが積み重ねられ、大使館の大使同士の非常に深いつき合い、そういうものがこうした特別機派遣につながったと思っておりまして、日本としてはそういう意味ではいろいろな面で努力をしたその成果が上がったんじゃないか。しかし、また同時に、テヘランの問題については、こういう諸外国だけに頼る、これはトルコ航空が出してくれたからいいようなものの出してくれなかったら日航機を飛ばさなければならなかったと思いますから、これからどういう国にどういう事態が起こらぬとも限りませんから、こういうものを一つの先例としていろいろと緊急の体制はこれからもつくっていかなければならない、こういうふうに思います。
  117. 和田一仁

    ○和田(一)委員 ぜひこういったケースを参考に、次のもしこういう不幸なことがあった場合にはひとつ万全の措置ができるようにしていただきたい。日本航空が飛ぶときに上空の安全を確認しなければ飛ばせない、これは当然でございますが、それを戦争当事国でない日本が邦人を救出するために飛ばす場合には、そこが外交の力ではないか、そこがやはり一番大事なところで、向こうが宣言したそれを過ぎれば、もう一時間過ぎてもこれはだめなのだといってあきらめるのでは大変なことであって、たとえ一時間過ぎようが半日過ぎようが、もしそこに在留邦人が取り残されているというケースがあるならば、そこに日本が派遣する飛行機は絶対に安全に脱出させるという交渉をきちっと仕上げるのが外交の一番大事な点だと私は思いますので、ぜひひとつそういう意味で万全を期していただきたいと思います。  そこで、私はこの問題でつくづく思ったのですけれども、昨年の六月、国連事務総長のイニシアチブで、このイランイラク両国は文民地区相互不攻撃、こういうあっせんに合意されまして、そしてその戦争紛争の拡大の歯どめをかけたと私は思っておりましたし、これを契機に、さらにその部分停戦あるいは全面停戦、こういうところへ行くことを願っておった、これはもう世界がそう願っておったと思うのですね。ところが、今申し上げた事態が起きるように、今月に入ってから両国の戦闘がエスカレートしてまいりました。ついに首都攻撃、こういうふうになったわけですが、このイランイラク双方の国に通じている外交官というものあるいは政治家というものは非常に少のうございますけれども、その数少ない一人として安倍大臣は、非常に両国に対してのパイプも太くお持ちのようでございますが、そういう意味で、なぜ、せっかくデクエヤル事務総長のこうしたあっせんの労で合意したにもかかわらず、こんなふうにエスカレートしてしまったか、大臣、どういうふうにごらんになっていますか。
  118. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も、今日の事態に至ったことは非常に残念に思っております。せっかく国連事務総長の提案を両国が受諾をいたしまして、ずっと文民地域攻撃がお互いに行われなくて今日に至ったわけでありますが、その合意も今や全く踏みにじられてしまったということで、いろいろと庸勢を見てみますと、この一連の都市攻撃は、四日にイラクがアフワズのパイプ工場及びブシェールの原子力発電所施設を攻撃し、この攻撃に対する報復として五日、イランがバスラを砲撃したことに端を発するわけでありますが、イラク側が、四日の攻撃は経済施設に対する攻撃であって都市を含む文民区域に対する攻撃ではないと主張しているのに対しまして、イラン側は、四日のイラクの攻撃は文民区域に対して行われたものであり、これに対する報復として五日のバスラ砲撃を行ったと主張しておるわけであります。  これは、文民区域の定義のあいまいさ及びそれから生じた文民区域に関する解釈の相違にイランイラク両国の根深い相互不信感が相まって、今次の相互都市攻撃再開に至ったものではないかと考えておるわけでございますが、いずれにしてもお互いの解釈の相違とか不信感の増幅というのが今日になったとしても、とにかくお互いの戦争行為はエスカレートするばかりでございますから、これはこの状態が続けば両国だけでなくてその他の国々まで巻き添えになるおそれがありますので、何としてもその拡大防止に努めなければなりませんし、日本もその間に、イランイラクに対してこれまで多くの努力を重ねてそれぞれに外交的な強いパイプを持っております、イランイラク両国日本に対する期待するところが非常に大きいわけで、先般もイランの特使が日本にやってまいりましたし、来週はイラク外務大臣がたった一日の日程でございますがわざわざ日本にやってまいりまして、私と二回にわたって会談することになっております。そういうことで、イランイラク双方ともやはり日本に対する一つの期待はあると思いますし、日本両国との友好関係は持続しております、そして和平に対する日本努力というものを今日まで続けてきておるわけでありますから、こうした機会を通じまして、この戦争拡大防止のためにさらにひとつ力をいたさなければならないと決意をいたしておるわけであります。
  119. 和田一仁

    ○和田(一)委員 いわゆる都市文民地区の解釈がきちっとしてなかったという大臣の見解ですが、それはそれだけじゃない、別の原因があってあえてやったのではないか。そういう点について大臣は何か感じておられるか。ただ、あの合意と違うところを攻撃したんだというだけですか、これは。私はそうでないような気がするのです。この戦闘を激化させ、これからこの攻撃目標が拡大され、それに対する報復攻撃、こういうようにどこまで行くか予断が許されないようなこういう状態は、私は何かのねらいがあるのではないかという感じすらするのですが、大臣は全くこれは行き違いからこういうふうになってしまったとお考えなのかどうか。  だとするならば、今、大臣がずっと敷衍してお話しになっていましたけれども、先般は特使が見えたし今度はイラクからもお見えになる。大臣は、昨年の国連総会の演説でこのイラン戦争不拡大についても触れられて、三つ提案をされていますね。都市相互不攻撃、これは今言った事務総長の仲介で合意がされた。さらにそれに加えて、化学兵器の不使用であるとか、それからペルシャ湾岸全域の安全航行、それと港湾使用の安全確保、このことを演説の中で触れられておるわけですね。そして「特にこの都市攻撃はしないという合意に達したことは大変高く評価するものです。しかしながら、最近に至り両国経済施設に対する攻撃が行われたことは遺憾であります。」こういうふうに敷衍しておっしゃっている。「日本に対して両国も非常に、停戦への何かの足がかりを求めている。同時に日本期待している。」こういうふうに大臣はおっしゃった。その大臣が三つの提案をされて、「そういうことで何とか和平への道を開こう。」こういうふうに言われた。私は大変結構だと思うのです。その中で、今、都市攻撃されたことは遺憾だ、こういうふうにおっしゃった。今度来た特使の方にこのことをしないように言われたかどうか。それからまた、今度来られるイラク外務大臣にも、こういう点を踏まえて、この三提案を守らなければだめだというふうにもう一回きちっとお話をされた上で、和平への努力をされるかどうか。もし都市攻撃というものの言葉の解釈が違った、見解がはっきりしなかったというだけでは、これはまた同じことになってしまう。そうでなく、そういうものの背景にあるものがあれば別ですけれども、この都市という、文民地区という、この範囲がきちっとすればいいのだというのであれば、私はそのことによって一日も早く停戦への道づけをまたしていただきたい、こう思うのですが、いかがですか。
  120. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 文民地区の解釈の行き違いだけではもちろんないと思います。これは、双方が我々に対してお互いに約束を破ったのだということを言っているわけであって、実際にはやはり、先ほど申し上げましたように、相互の不信感というものがどんどん増大をしていったということもあるでしょうし、あるいはまた、戦争でありますから、イランが国境地帯に大軍を集結した、これに対してイラク側が先制攻撃を始める意味において攻撃を加えた、その辺のところは戦争でありますから、お互いに機先を制するとか、お互いに打撃を与えて戦意をなくするとか、いういろな問題がもちろんあると思いますけれども、今の解釈については双方が破ったのだということを言い合っておるわけでありますから、もちろんその解釈だけでこの問題は解決するとは私は思いません。  それから、私は、特使に対しましては、日本のした三つの提案、一つは化学兵器を使わない、あるいはまたペルシャ湾の安全を保障する、あるいは港湾地区をお互いに攻撃しない、さらに加えて都市攻撃をお互いにしないということまでやって、お互いに戦争の拡大を防ぐべきだ、幾ら戦争を続けていってもお互いに国民の死傷者が続発するだけで不幸な事態になるのじゃないかということは力説をして、日本の提案をもう一回再検討して、ひとつこれを受け入れてほしいということは訴えたわけでございます。イランの特使も十分検討しますと言って帰ったわけでありますが、今回またイラク外務大臣もやってまいるわけであります。  今、どちらかというとイラク側が、本当の実態というのはわからないとしても、爆撃等そうした空軍力等では相当まさっているような感じがあるわけでありますし、そしてまたアメリカイラクを支持するというふうなことを表明して、イラクは昔とは違って相当自信を持っているというふうな半面もあって、いろいろとイラク側も、戦争に対する考え方もどうなっているか、その辺のところは多少変化があるかもしれません。そういう点も十分確かめながら、しかし同時に、お互いにお互いの国を絶滅させるわけにいかないわけですから、どこかで矛をおさめなければならない。そのためには、今の日本の提案をぜひともひとつイラク側も受け入れてほしい。そうなれば、日本イランに対して間に入って、イランに対してまたイラク側の考え方、真意は率直に説明しますということで、イラク外務大臣とも腹を打ち割って、私も何回も会っておりますからそういう点についてはお互いによくわかっておりますし、またイランイラク両国とも、日本が全く野心を持たない、そして過去においてイランイラクに対して何らきずを持っていない、非常に純粋な立場イランイラクに対して戦争拡大防止を訴えておるということをよく理解し信頼しておりますから、これはひとつ率直にやらなければならないと思っております。イラク外務大臣も、戦火の中をわざわざ一日だけ、たった一晩泊まるだけで日本にやってくるわけですから、その辺については平和解決に向かって何か引き出せるのではないかと、それはひとつ大いに努力してみたいと思っております。
  121. 和田一仁

    ○和田(一)委員 どうぞ大臣、この戦争の中に入って、部分停戦、全面停戦、和平へと、こういった道のりをつけられる国は少ないと私は思っております。それだけに、今度そうやって特使が見えたり外務大臣が来られるという機会に、今おっしゃったような提案を通じてぜひひとつ一日も早い実りある道をつくっていただきたい、お願いをしたいと思います。提案はされますね。新しくまたひとつ提案をしていただきたい。やっていただけますね。
  122. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私の方の提案もし、ひとつ全力を尽くしてみたいと思います。そして、また同時に、日本だけではこれはなかなか解決できない問題もあります。国連とかあるいは志を同じくする国々とも力を合わせてこれはひとつやっていかなければならぬ、こういうふうに思っております。
  123. 和田一仁

    ○和田(一)委員 それでは別の問題ですけれども、去る二十三日にアマコスト米国務次官が来日されました。ここで日米高級事務レベルの協議が行われたわけでございます。私も新聞で報道を見ました。これは、ことしの一月二日のロサンゼルスの安倍・シュルツ日米外相会談の合意で、こうした事務レベルの協議が行われるようになった、こう理解いたしております。この一月のシュルツさんとの間での、こういうことをやろうやといって合意された協議の目的は一体どういうところにあったのか。伝えられるところによれば、これは日米関係あるいは援助政策、国際情勢等でより密接な意見交換の場をつくろう、こういうことであったようでございますけれども、こうした協議がまた新しく持たれたという目的は一体どうだったんですか。
  124. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ロサンゼルスでの私とシュルツ国務長官との会談で、援助につきまして次官レベルで協議していこうということについては合意を見たわけでございますが、これはアメリカの援助も非常に膨大であります。また、日本の援助も非常に膨大になってきておるわけでございます。そういう中で日米は非常な友好関係にある。そこでやはり、この両国の膨大な援助をお互いに協力してやればそれなりの成果というものもさらに上がってくる、世界の平和と安定のためにそれなりに効率的に行うことができる、そういう点で、一緒にやれるものあるいはお互いにそれぞれの立場でやれるものは相協力し合ってやった方がいいのじゃないかということで、協議をすることになったわけでございます。しかし、アメリカにはアメリカの援助の基本方針というのがありますし、また日本には日本の援助の基本方針というものがある。その基本方針をお互いに曲げて相協力するというわけにいきませんので、日本協力はしますけれども、またそうしなければならぬと思うけれども、しかし同時に、日本の援助のいわゆる人道的な立場あるいは相互依存の立場、そういう日本の援助の基本方針、その枠内において協力しましょうということを実は言ってきておるわけでありまして、その趣旨に従って、今回、アマコスト次官と浅尾外務審議官との間にいろいろと具体的に協議が行われたわけでございます。私は、この協議世界、特に開発途上国に対する日米の膨大な援助の一つの効率的なやり方として今後とも成果があるものである、こういうふうに確信をしております。
  125. 和田一仁

    ○和田(一)委員 アマコスト次官も浅尾審議官も政務担当のようでございまして、ここでは当然国際情勢その他の問題も討議されていると思うのです。  今、大臣は援助のことをおっしゃられましたけれども、援助のことは後で伺いたいと思いますが、この国際情勢の分析の中で、先般のモスクワの弔問外交の中で出てまいりました米ソ首脳会談が行えるのではないか、こういう見通しでございますが、そのことに対して、先般のアマコスト次官との協議の場での意見交換はどのようでございましたか。
  126. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アマコスト次官と浅尾審議官との間では、援助ももちろんその一環でありますが、広範な分野にわたっての意見の交換が行われております。米ソ軍縮交渉について、あるいはまた朝鮮半島の情勢につきまして、あるいはまた日米の二国間の経済摩擦問題等につきまして、それぞれ広範な分野にわたって意見の交換が行われておりまして、特に米ソ核軍縮交渉につきましてはアメリカも非常に熱意を持ってこれに取り組んでいきたい、ソ連の新しいゴルバチョフ政権もこの交渉に対しては現実的に対応していこうという気持ちがうかがわれる、まだ大きな隔たりがあるけれども、何とかひとつこれは実りあるものにしたいというアメリカ側説明もあったわけでございまして、我が国としても、この交渉が何とかひとつ結実するように努力してほしいということはアメリカ側に申したということを聞いております。
  127. 和田一仁

    ○和田(一)委員 いや、それと同時に、米ソ首脳会談見通し等についての情報交換はなかったですか。
  128. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私もまだそこまで立ち入った話があったというふうには聞いておりませんし、これはこれからの問題で、軍縮交渉がこれからどういうふうに進展していくかによって、これは可能性としては起きてくるのじゃないかというふうに私は判断しています。
  129. 和田一仁

    ○和田(一)委員 今、大臣は、援助の問題については両国とも非常に大量の援助をやっておるし、これが協力することによって成果を上げ、さらに効率もよくなる、こういう意味での密接な連絡、協議をやろう、こういうことだというお話でございましたけれども、途上国に対して経済協力政策を一緒にやることによって、成果を上げ効率をよくしようということは、言いかえると、日米の共同プロジェクトをもっとふやしていこう、あるいはそれをもっと活性化していこう、こういうことかなと思いますが、そうですか。
  130. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 それも一つの、援助を効率的に行う意味において日米協力していく案件だろうと思います。フィリピン等でやっておりますが、そういう点は非常にうまくいっておるというように承知をしておりますし、今後、各国において、そういう可能性のあるプロジェクトについては日米間でやったらどうか、私もそういうふうに思います。
  131. 和田一仁

    ○和田(一)委員 共同のそういうプロジェクトになれば、うまくいっているところもありますし、また、これからやれば非常にプラスになって今おっしゃるような効率もよくなる、成果も大きくなるというプラスの面もあるが、同時にやはりマイナスの面も若干はあるだろう。プランのすり合わせやらノーハウの違いやら、そういった違いを克服するための、マイナスというものも考えていかなければいけない。  それにも増して、日本としての援助の基本の方針、姿勢、さっき大臣がおっしゃった人道主義的なあるいは相互依存的な面を重点にやっている、こういうお話でした。私は、そういったことを踏まえながら経済協力の実態を見ておりますと、今まではアジア地区が大体七〇%、そしてその他の地区で三〇%というような割合で援助をやってこられた。そのODAの最近の援助のあり方を見ますと、大分バランスが変わってきて、中近東やアフリカやあるいは中南米、こういう地区への援助がふえつつあるのではないか、こういう感じがいたします。これはこの基本的な方針を変えたのか、そうではないのか、その辺は少しずつ方向転換をしているのか、いかがですか。
  132. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本の援助の具体的な方針として、やはりアジアを重視、これは日本アジアの一国でありますから、アジアを重視という考え方は変わっておりません。ですから、ODA全体で大体七割という線はアジアに対してはずっと続けておりますし、今後ともその辺のところを目指してやらなければならぬ。  ただ、アジア以外にアフリカ地区等が非常に困難な厳しい事態に陥っておりますから、日本もやはり国際的役割の一つとして、こうしたアフリカ地域に対しても今までよりは援助を増大していかなければならぬ。そういう認識を持って、例えば無償援助等についてはむしろ六割がアジア、三割がアフリカ、その他の地域が一割というふうなところで、今アフリカに重点を置いておるわけでございます。しかし、全体的には依然としてやはりアジアというものが日本の場合は中心になることはこれまでと変わらないわけであります。
  133. 和田一仁

    ○和田(一)委員 私は、こういった援助計画についても、日米協議で密接に連携をとる中で、だんだんと比重がアジアからその他の地区へ重くなっていくのではないか、こういう感じがいたしますが、基本的な姿勢だけはぜひきっちりと守ってやっていただきたい、独自の援助計画というものを遂行していただきたいと思います。  特に、もう午前中の御質問で出ておるのですけれども、そういったODAの倍増計画、八一年からの今やっております第二次ですか、これが八五年で終わることになっておりますけれども、引き続きこれの第三次というか中期計画を策定するはずだと思いますが、おやりになりますね。
  134. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 三年倍増計画、五年倍増計画、予算の上では昭和六十年をもって一応終わったわけでございます。しかし、世界は、日本がこれだけの大きな国に、経済力を持った国になっておりますから、さらに期待は強くなっておりますから、やはり日本としては、基本的には財政は非常に苦しくてもODAはふやしていかなければならぬ、そういうふうに思っております。やはりその姿勢を世界に対して明らかにしなければならぬ。  それではどういう具体的内容にするかということにつきましては、今実は関係省庁等で詰めておりまして、OECDの私の演説の際にその基本的な考え方を盛り込んでいきたい、こういうふうに思っておるわけでございますが、まだ詰めておる最中でございます。具体的にこうですというところまで言い切るような状況にはなってない。ただ、ODAを伸ばしていかなければならぬという基本線は何としても維持してまいりたいと思っております。
  135. 和田一仁

    ○和田(一)委員 私は、OECDにおでかけになるのに、当然そういう計画、プランを持っていかれると思っておりましたが、大臣は明確にそれは持っていく、こういうことでございました。きょう今の段階では具体的なものはない、こうおっしゃいますが、それもわかります。しかし、現実にもうタイムリミットに来ているのではないか。基本的な姿勢を打ち出す、しかし関係各省と詰めつつあるので具体的なものはこれからだというお話ですが、大臣、それでは今までやってきた三年倍増、五年倍増あるいは七年で倍増・三年で五〇%、こういったいろいろなケースがありますけれども、大体どの辺のところで――今、日本が国際経済社会の中でこれだけの経済大国になって、なおかつ貿易黒字も、この間の事務次官レベルの会合ではこれを援助で出せというような今までにない新しい強い要請すらあった、こういう背景の中で、大臣行かれて、今具体的ではないにしても自分としてはOECDにこれくらいのプランで持っていきたいという、今大臣の気持ちの中にあるプランをおっしゃっていただきたい。
  136. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私自身の案もあります。しかし、財政という立場から財政当局からの制約というようなのも当然あるわけで、日本全体としては、そうした財政の面も見ながら、さらにまた今の貿易の黒字だとか世界に対する日本役割とか、そういうものを全体的に判断して打ち出さなければならぬ、今関係各省とそういう点について意見のすり合わせをやっておるわけであります。  いずれにいたしましても、私はとにかくこのODAをこれからも伸ばしていく、ふやしていくという姿勢が打ち出されるようなものでなければならない、こういう基本的な考え方で今対応しておるわけでございます。
  137. 和田一仁

    ○和田(一)委員 私は、大臣は将来日本の国をしょって立とうという意欲があるし、またそうなると思っております。それだけに私は、これからの国際社会の中で、安倍大臣は、今度のOECDでも非常に熱い眼で注目をされていると思います。ここで世界が、どれだけのことをやっているか、そのことを踏まえて、これからの日本経済貿易摩擦その他の問題が論議されるのではないか、こう思うので、これはやはり相当の決断を持って竹下さんとやっていただきたい。竹下さんとの関係から言えば私は大臣の主張は通る、こう思っております。ぜひひとつきちっとしたプランを持って臨んでいただきたいと思うわけでございまして、それが持てないようではサミットでは日本は本当に孤立してしまう。私は何といっても、今一番大事なのは、日本世界の孤児になる、そういう立場は絶対に求めてはならない、こう思うのです。大臣も全く同感ではないかと思うのです、うなずいていらっしゃる。そういう意味で、もう一回、時間がありませんので、くどいようですけれども、このOECDに対処するに当たって、援助を含めて日本世界で孤立しないような、そういうきちっとした方策でお臨みになることを期待しますが、いかがでございますか。
  138. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 全力を尽くす決意でございます。
  139. 和田一仁

    ○和田(一)委員 時間が来ました。もう少し聞きたいと思ったのですが、後があるようなんで、また次の機会に、OECDからお帰りになりましたらぜひまたいろいろとお尋ねしたいと思います。ありがとうございました。
  140. 中島源太郎

    中島委員長 柴田睦夫君。
  141. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 まず、法案についてです。  今回の法案では、すべての在外公館在勤基本手当基準額の改定を見送っております。これは、前回改定後の物価と為替相場の変動は政令改正範囲内で吸収できる、こういう考え方であるかどうかということが一つ。  それから、前回の法改正の際に、本委員会で「生活及び勤務の環境の厳しい地域に在勤する職員の勤務環境の整備・処遇の改善等に努める」という附帯決議をしております。また外務人事審議会も、昨年十月二十三日に「瘴癘地の在勤諸手当のあり方について所要の検討に努める」ようにと勧告を行っておりますが、これらの附帯決議、勧告の実施のため、今後どういうような措置を講ずる予定であるか。  この二つについてお答えを願います。
  142. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 お答え申し上げます。  最初に在勤基本手当についてでございますが、ただいま委員御指摘のとおり、名称位置給与法の第十条に基づきまして法律基準額の上下約二五%の範囲内で政令に委任されておりますので、今回の在勤基本手当の支給額はその範囲でございますので、政令によって対処するということでございます。  それから、第二の御質問の「生活及び勤務の環境の厳しい地域に在勤する職員の勤務環境の整備・処遇の改善等に努める」という、昨年のこの委員会での附帯決議並びに小委員会での小委員長の御見解、その他外務人事審議会の勧告などございますが、これを踏まえまして、外務省といたしましては、まず第一に健康管理対策、第二に宿舎対策、第三に物資対策、第四にその他の福祉対策というものに鋭意努力しているところでございまして、六十年度の予算案では対前年度比三七%増の約十三億円がこの分野の予算として計上されまして、これは当内閣委員会及び小委員会の諸先生方の本当に御支援を得たことでございますので、外務省としても深く感謝をいたしております。  今後とも、外交実施体制強化の見地から、これら勤務環境の厳しい地域に対する対策というものを一層充実さしていきたいと考えております。
  143. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 次に、外交文書の公開問題について大臣にお尋ねしたいと思います。  先日の衆議院の決算委員会でこの問題が取り上げられましたときに、中曽根総理は、国益上やプライバシー問題以外はできる限り公表したいと答弁されました。外務省の官房長は、日米行政協定や日韓会談に関する外交記録は整理がつかなかったこともあり、出さなかった、こう言われました。  そこで大臣、行政協定や日韓会談の記録は、国益の観点からして公表できるものと考えておられるか、それとも出せないものと考えておられるか、お伺いします。
  144. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 外交記録の公開につきましては、従来より外務省が自発的に、公開制度の基本原則にのっとりまして、原則として作成後三十年を経たものについて、事項ごとに審査の上、その事項が一応決着したと見られる時点で順次実施してきておるわけであります。もっとも、その公開によりまして国の重大な利益が害される場合及び個人の利益が害される場合は、例外として当該記録は非公開、こういうことにしております。今回公開した記録は、時期的には大体において講和条約発効前後から昭和二十八年までに案件として一段落したものの中で、審査作業が終わり準備が整ったものであります。  日米行政協定は今回の審査の対象となっておりましたが、まだ審査作業が終わっていないので、今回の公開には含まれておりません。  なお、日韓会談の文書につきましては、本件が昭和二十八年の時点ではまだ案件として一段落していないので、審査の対象とならなかったものでございます。  今回の公開で審査の対象となりながら公開されなかった行政協定等につきましては、現在作業中のことでもありまして、確たることを申し上げることは難しいわけでございます。しかし一般論として申せば、今回公開されなかったものについては、公開政策の基本原則に沿って検討をされることになるだろうと思います。
  145. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 多くの人が指摘しておりますように、日米行政協定というのは日米安保条約の根幹にかかわるものであります。米軍が持っております数々の特権はどういう経過で決められたものかという点は、戦後外交史の上でも極めて重要な記録であると思います。私は、この外交記録では、アメリカが一方的に決めて日本に押しつけた、日本がこれに従ったという内容を示すのだろうと思っております。安保条約の対米従属性を示す具体的な中身が出てくる可能性が濃厚であろうというように思っております。しかし、そういうものであっても、それは歴史の事実であるわけです。国益に反するというものではなくて、国民が正しい歴史を知る、国民の知る権利を保障し、ひいては民主主義と平和という国益に合致することだというように考えております。どのような内容であっても、歴史的事実を国民に知ってもらうことが大変重要なことだと考えております。この点について外務大臣の所見を伺います。     〔委員長退席、石川委員長代理着席〕
  146. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 先ほど外務大臣から御答弁をいたしましたように、外務省といたしましては、できる限り三十年ルールに従って外交文書を公開するという原則で進んできております。民主主義のもとで外交政策を展開していくためには、やはりできるだけ外交文書というものは公開をしていくのが正しい方向であろうという認識を持って、昭和五十一年から既に八回、最近は三月二十五日に約二万ページを超える外交文書を公開したわけでございます。  ただ、御指摘の日米行政協定につきましては、先ほど大臣から御答弁いたしましたように、まだ審査が終了しておりませんので、今回の第八回の公開には含まれなかったわけでございます。今後、その審査を続けまして、そして外交記録公開の原則、これについても先ほど大臣が申しましたように原則としては公開する、ただし、国の重大な利益と個人の利益を害するような場合は非公開にする、この原則に照らしまして検討した上、公開できるものを公開していく、こういうことに考えております。
  147. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 外務省の公表問題についてはいささか疑念を持つわけでありますけれども、一般的に言って、国の安全保障に関する問題であっても国益に反しない問題はあるということは確認できると思うのです。行政協定や日韓会談などの外交記録についても整理がつき次第できるだけ公開の対象にする、私は全部公開してもらいたい、こういう態度で臨んでもらいたいということを申し上げておきたいと思います。  それでは次に、在日米軍司令部と自衛隊の共同作戦体制についてお尋ねいたします。  最初に防衛施設庁の方に説明していただきたいのですが、横田の在日米軍司令部建物拡張の事実関係について明らかにしていただきたいわけです。三年間の予算でやったその工事の内容、つくった建物の高さ、面積、従来かぎ型であったものが今度はコの字型になって、それは従来の建物につながっているのかどうか。あるいは空調、ガス、水道、電気などの施設もつくったかどうか。そして、それはもう米軍に引き渡されているのかどうか。この点をお伺いします。
  148. 黒目元雄

    ○黒目説明員 お答えいたします。  横田飛行場の管理棟に係る提供施設整備で実施しました建物本体につきましては、既に完成しておりまして、昭和五十九年十月二日に在日米軍に対してかぎの引き渡しをしており氏す。なお、本体工事を除きます屋外の附帯工事はこの三十一日までに完成する予定でございます。  それから規模とか構造についてでございますが、構造は鉄筋コンクリートづくりの地上二階・地下一階建てでございます。規模としましては、面積は四千平方メートルでございます。予算額は十五億円ということでございます。  それから附帯の工事でございますが、屋内関係では空調、換気、消火設備等でございまして、屋外関係につきましては給排水とか道路、駐車場等をやっております。  それから、これは既存の司令部とは連絡するようになっております。  以上でございます。
  149. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 この司令部の建物、これは関東計画に基づいて七〇年代の中ごろにリロケーションで日本が全額負担してつくったものであります。昨年、我が党の不破委員長が総括質問で取り上げましたEWOシェルターの建物であるわけです。増築部分もやはり特別設計のEWO設計になっているかどうか、お伺いします。
  150. 黒目元雄

    ○黒目説明員 お答えします。  今やっております管理棟は国内関係法規等に基づきまして実施しておるものでございまして、特別な構造とか基準にはなっておりません。  以上でございます。
  151. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 この拡張工事を日本のいわゆる思いやり予算で出したのはなぜかという問題です。米軍基地建物の拡張ですから、本来は米軍が負担するのが当然であるわけですが、思いやりでやったというのは、これはアメリカ側からの申し込みがあったからであるかどうか。それから、どんなものを思いやりでやるというような基準は決まっているのかどうか。この点をお伺いします。
  152. 黒目元雄

    ○黒目説明員 お答えします。  いわゆる思いやり工事は、毎年度、米側の要望を踏まえまして、緊要度を勘案しまして、米側が使用するための施設を整備していくというものでございます。
  153. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 特別の基準は緊要度という抽象的なものだけであるということになりますが、実は私は、この司令部の増築は、これを思いやりで出したというのは、この建物が有事に際して日米共同作戦の調整所とするつもりがあるからだ、こう考えております。そういう意味の建物であるから思いやり予算で出したのではないのか、この点をお伺いします。
  154. 藤井一夫

    ○藤井説明員 横田の在日米軍司令部の作戦室でございますが、私ども理解は、これはあくまでも在日米軍が在日米自身の作戦を行うための作戦室であると理解しております。
  155. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 一九七八年十一月に日米間で合意した「日米防衛協力のための指針」いわゆるガイドラインの中に、「自衛隊及び米軍は、効果的な作戦を共同して実施するため、調整機関を通じ、作戦、情報及び後方支援について相互に緊密な調整を図る。」こういうことが書いてあります。ここで言っております調整機構、調整センターとも言うわけですけれども、これは日米合同司令部のことを意味するのですか。
  156. 藤井一夫

    ○藤井説明員 先生御案内のように、日米我が国有事のときに共同対処するという場合があるわけでございますが、その際日米両国は別々の指揮系統に従って行動するわけでございます。したがいまして、有事に調整を行うということが大変重要でございまして、ただいまお読みいただきましたように、ガイドラインの中にも、有事の調整所というものをあらかじめ研究しておくようにという規定があるわけでございます。ただ、その研究は現在のところ余り進捗しておりませんので、現時点において、有事にどういう調整所を置くかというようなことが日米間で合意されているということはございません。
  157. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 そうすると、調整センターをどこに置くか、こういう問題が決まっていないということですが、この点については協議は進んでいるのですか。
  158. 藤井一夫

    ○藤井説明員 現在、防衛庁と在日米軍は有事に共同対処をする場合のさまざまな形態につきましていろいろ研究を行っております。その中の研究項目の一つにただいま御指摘の調整機関のあり方というのもございますけれども、現在のところ、ただいま申し上げましたように余りこの関係研究は進捗していないという状況でございます。
  159. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 それは結局アメリカ任せ、あるいは日本の制服組任せ、そこに任せているから、そういうふうに進んでいないという報告しかできないということになるのじゃないかと思うのです。昨年末、中曽根総理が了承したと言われております日米共同作戦計画、ここには調整センターはないのですか。
  160. 藤井一夫

    ○藤井説明員 昨年暮れに中曽根総理に、共同作戦計画の一つの研究につきまして御報告いたしました。その中身については事柄の性質上申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますが、このガイドラインの研究項目といたしましては、この共同作戦計画の研究と別に調整機関の研究というものがあるわけでございまして、それが進捗していないということをるる申し上げているわけでございます。
  161. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 どうもないというのがおかしいのです、ガイドラインの中にちゃんと言っているわけですから。ないと言うならば、これはいつごろつくるか、あるいはそういうプログラムが当然なくてはならないと思うわけです。  この点について言いますと、アメリカの空軍通信電子協会の機関誌「シグナル」というのがあります。これはアメリカの軍産結合体から生まれ、活用している、非常に権威のある雑誌であります。歴代大統領がメッセージを寄せて、電子協会のメンバーは米軍通信に中心的な貢献をしていると評価しているわけです。その一九八四年二月号に、米空軍大佐二ール・K・ウェザービーの「日本にある指揮・管制・通信システム」という論文が出ています。ウェザービー大佐は在日米軍司令部指揮管制通信システム担当参謀長補佐官、J6という地位を持つ人です。つまり在日米軍司令部の通信の最高責任者であるわけです。彼は、全世界の米軍の通信管制システムと日本本土及び沖縄の米軍指揮通信網を結びつけ、運用している部隊の責任者です。この人が今言いました論文で書いているのを見ますと、日米双方で、調整システムには研究と改善が必要ということが痛感された。それから、米日二国間の「企画立案の努力は進展して、初期の具体化計画を生みつつある。すなわち、在日米軍司令部のための新しい指揮所・調整センターが建設中であり、その当初作戦能力達成(実戦配備)は一九八四年十一月に予定されている。」去年の十一月ですからもう過ぎております。「「日米防衛協力のための指針」が要求している調整センター・システムの構想研究が進行中である。」こういったことが書いてあります。ウェザービー大佐が言っております指揮所・調整センターはガイドラインが言っている調整機構と同じものであると考えておりますけれども、この点はどうでしょうか。
  162. 藤井一夫

    ○藤井説明員 ただいまお読みいただきました論文がどういう趣旨で書かれたか私ども承知はいたしておりませんが、多分申し上げられますことは、有事の共同対処をいたしますときに指揮関係の調整が必要である、そのための研究をしなければならないということはガイドラインに基づきまして合意をされておるところでございます。ただ、先ほど来申し上げておりますように、この関係研究は、日米共同作戦計画の研究が今先行しておりますので、調整所の調整機能の研究につきましてはまだそれほど進捗していない、こういうことでございます。
  163. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 一部引用しましたけれども、実戦配備は昨年の十一月に予定している、今度つくった作戦室の方は十月二日に仮引き渡ししている、それで米軍が管理している、こういうことですが、ウェザービー論文はこのガイドラインの調整センターの発展をずっと解説しているわけです。その中に、指揮所・調整センターというものを歴史的に語っているもので、ガイドラインで言う調整機構であることはもう間違いないわけです。ところが、防衛庁の方は認めようとしない。ここに問題があります。  そこで次に、ことしの二月六日と二月二十一日の予算委員会で、我が党の松本善明議員の質問に対して、政府は、米軍の指揮統制システムにつきまして答えております。  一つはミスティック・スター・システム。これは米軍の指揮統制システムの一部であり、大統領その他の政府・軍の高官の航空機が飛行する際に、電話、テレタイプによる通信を提供する能力を有する。二つはコマンド・エスコート・システム。これは太平洋軍司令官及び太平洋空軍司令官が隷下部隊との間で指揮、統制、通信を行うことを可能にするとともに、太平洋軍の空中指揮所と地上の短波無線通信網とを連絡する能力を有する。三つ目のジャイアント・トークについては、横田と嘉手納においてNCA、ナショナル・コマンド・オーソリティーに対する一般的な指揮、統制、通信の支援のための通信施設であるということを認めた上で、これが横田にあることも認めております。  そこで尋ねることは、二月二十一日の松本質問に対する答弁で外務省が、第三点として、これらの通信システムは、横田基地内の指揮統制ステーション、グローバル コマンド アンド コントロール システム ステーションとも言われるものですが、横田基地内の指揮統制ステーションによってもサポート、支援されている、こういう答弁があるわけです。このグローバル コマンド アンドコントロール システム ステーション、これは松本議員が質問して政府が答えた三つの機構とどういう関係になるわけでしょうか。要するに三つの機構と別のシステムなのかあるいは同じものを言うのか、この点をお聞きしたいと思います。
  164. 栗山尚一

    栗山政府委員 グローバル コマンド アンドコントロール システム ステーションと申しますのは、米軍の説明によりますと、アメリカ軍の地上設備及び航空機に対しまして信頼性ある迅速な送受信能力を付与するためのシステムの総称でございまして、衆議院の予算委員会におきまして私から御答弁申し上げましたミスティック・スター、それからコマンド・エスコートとの関係におきましては、そういうシステムをサポートするためのシステムの総称であるというふうに理解をいたしております。
  165. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 そうすると、三つのシステムとはまた別のもの、第四のものということになるわけですか。三つのもの全体をサポートしている、こう言われましたね。それは、三つのシステムとまた別の第四のシステム、新しいもの、今まで国会説明した三つ以外のシステムということですか。
  166. 栗山尚一

    栗山政府委員 実は、私も通信システムにつきましては必ずしも専門的知識を有しておるわけではございませんので、十分に御説明できるかどうか自信がございませんが、全く切り離されたシステムというものではないというふうに理解をいたしております。  ミスティック・スター、それからコマンド・エスコートにつきましては御答弁申し上げましたようなシステムでございまして、そういうシステムを地上からサポートするものとして、先ほど申し上げましたようなグローバル コマンド コントロール システム ステーションというものが横田に存在する、そういうふうに理解をしております。
  167. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 ちょっとはっきりしないのですが、在日米軍の電話帳を見てみますと、ラジオ・オペレーションの欄にグローバル コマンド コントロールというのがあります。その次にジャイアント・トーク、その下にコマンド・エスコート・ステーション、こう続きますが、ここでミスティック・スターというのがないわけです。グローバル コマンド コントロールというのはミスティック・スターの変名、別な名前ではないかとも考えるのですけれども、それとも別系統の――これは全部核戦争指揮網ですから、別な系統の核戦争指揮網であるとすれば、グローバル コマンド コントロールとジャイアント・トークの間にミスティック・スターが隠れているのじゃないか。この電話帳からしますとこの三つしかない。その関係はわかりますか。
  168. 栗山尚一

    栗山政府委員 先ほど申し上げましたように、私も必ずしも十分な専門的知識を持ち合わせて括りませんので、正確に御説明できるかどうか非常に自信がございませんが、私の理解しておりますところは、ミスティック・スターにつきましては、御承知のように、大統領その他アメリカ政府・軍関係の高官が航空機に乗っておりますときに、その航空機が地上その他の施設との間で必要な通信を行うためのシステムであるということでございますから、これ自体は地上の通信施設の一部を構成しているということではないであろうというふうに理解をいたしております。  他方、委員御指摘のジャイアント・トークでありますとかコマンド・エスコートとかにつきましては、例えば戦略空軍司令部でありますとか太平洋軍司令部とその隷下の部隊との間を結びます通信システムでございますので、横田なら横田の方にそういう通信システムのいわば受け手としての施設があるということは当然予想されるところだろうというふうに考えます。
  169. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 グローバル コマンド コントロール システムは、この国会の予算委員会で焦点になっておりますウイメックス、WWMCCSのことではないか、あるいは別のものなのか、これをお尋ねします。
  170. 栗山尚一

    栗山政府委員 ウイメックスと申しますのは、アメリカの国防省等で公表されております資料から私ども理解しておりますところは、大統領あるいは国防長官、すなわちアメリカのナショナル・コマンド・オーソリティーという名前がつけられておりますが、要するにアメリカの最高指揮官と、太平洋軍司令部でありますとかその他の統合軍司令部を通じまして、さらにその隷下の各部隊との間を結びます、いわば米軍の指揮統制システム全体の総称というふうに御理解いただければよろしいんじゃないかと思います。したがいまして、その総称でありますところのウイメックスの中に、先ほど御指摘のような例えばジャイアント・トーク・システムであるとかコマンド・エスコート・システムというようなものがその一部として存在しておる、こういうふうに御理解いただければよろしいのではないかと思います。
  171. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 ジャイアント・トーク・ステーションというのは、前から指摘しておりますようにB52に対して最終核攻撃命令を無線中継するものであるわけですが、このステーションが横田基地内の四三四号ビルから、先ほど施設庁の方から説明を受けました増築された在日米軍司令部が置かれております七一四号ビル、ここに移転してきております。これは増築部分に入ったのかどうか、また七一四号ビルに移転したのはなぜか、この点をお伺いします。
  172. 栗山尚一

    栗山政府委員 今御指摘のような、米軍の横田なら横田の施設の中のどのビルにどういう米軍の組織が存在しておるかということについて、その詳細については私ども承知いたしておりません。また、特定の施設の中で、特定の建物の中から他の建物に移ったのがどういう理由によるものかというようなことについても、私ども承知をしておりませんので、ただいまの御質問に対してお答え申し上げることはできないと存じます。     〔石川委員長代理退席、委員長着席〕
  173. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 思いやり予算で十五億円も出してつくってやった、何のために使うのかそれもわからない、そういうことを今の答弁は言っていると思うのです。それじゃ全く情けない話ですが、今までの答弁も踏まえて考えてみますと、結局七一四号ビルというのが日本における核戦争の中心として強化されてきているということであります。これは核戦争において一番の攻撃の対象にされるものであるわけです。そういう危険なものを思いやり予算でやるというのは、国民の意思に全く反するものだということを指摘しておきたいと思います。  それから、朝日新聞の二月二十二日の朝刊によりますと、在日米軍司令部内に新しい作戦室が作られ「陸、海、空軍、海兵隊各部隊の調整を行う在日米軍の「中央指揮所」ともいうべき施設で、衛星通信でハワイの米太平洋軍司令部やワシントンの国防総省、ホワイトハウスの大統領執務室とも直接連絡できる」、こういうことが書いてありますが、これは事実でありますか。
  174. 栗山尚一

    栗山政府委員 御指摘の施設が、太平洋軍司令部あるいはワシントンとの間でどのような具体的な通信能力を保有しておるかということにつきましては、私ども承知をしておりません。
  175. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 これは知らないでは困る問題です。米軍の今の通信網、世界の通信網を考えてみた場合に、常識的に言って、米軍が朝日に書いてあるようなことをやるのは当然だと思うわけです。当然なのです。  また、同じ記事に、三月には防衛庁内の中央指揮所との直通通信回線が設けられ、これを使って近いうちに日米共同指揮所演習が予定されているということがありますが、これは事実ですか。
  176. 藤井一夫

    ○藤井説明員 中央指揮所でございますが、これは防衛出動等自衛隊の行動に関しまして、防衛庁長官が指揮をとるあるいはそれを補佐する、これを円滑に実施することを目的として整備をしたものでございます。このような活動を中央指揮所内において行います際に、米軍との連絡が必要となるということが当然考えられますので、在日米軍司令部との間に専用の通信回線をこのたび設置したものでございます。
  177. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 それでは、その回線というのは電話、テレファックスだけであるか、そのほかに何があるか。それから、仮に今はそうであっても将来はどうなるのか。この点を伺います。
  178. 藤井一夫

    ○藤井説明員 中央指揮所と在日米軍司令部の間で設置いたしました電話回線を利用した通信連絡手段といたしましては、電話、ファックス及びテレタイプでございまして、現在これ以上の計画はございません。
  179. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 計画がないということですが、六本木の中央指揮所には在日米軍から米軍の参謀あるいはそれに類する将校、こういった人たちが派遣されてくるのかどうか。また、自衛隊の方が横田に幕僚を派遣することがあるのかどうか。そういう場合に、六本木あるいは横田において米軍及び自衛隊の派遣参謀の人たちがこの回線をそれぞれ使用することになるのかどうか。これをお伺いします。
  180. 藤井一夫

    ○藤井説明員 自衛隊の中央指揮所に米軍人が常駐するとか、逆に横田の作戦室に自衛官が常駐するというようなことは考えておりません。
  181. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 常駐ということはどういう意味ですか。常駐となれば事実上そこで勤務していることを言うのでしょうけれども、一週間とか必要な期間行く、お互いに派遣し合うということはないのですか。
  182. 藤井一夫

    ○藤井説明員 有事におきまして自衛隊と米軍は緊密な調整を図りながら共同作戦、共同対処行動を実施する必要がございますから、平時から相互のシステム、これは通信指揮システムも同じでございますけれども理解を深めておくということは必要であろうかと思います。そういう意味から、見学等のために双方の職員が立ち入るということはあると思いますが、米軍人が中央指揮所の施設を利用して活動を行うというようなことはございません。
  183. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 それでは、横田に集中する米軍の情報というのは六本木の方にも伝達されるわけですか。あるいは自衛隊だけが米軍に情報を提供するという関係になるのか。私は、今までの体系から見て米軍が秘密情報をその従属軍隊である自衛隊の方によこすことはないと思っておりますが、この情報の提供関係はどういうことになりますか。
  184. 藤井一夫

    ○藤井説明員 自衛隊と米軍の間ではいろいろな情報交換をするわけでございます。その内容については一々申し上げる性格のものではございませんが、少なくとも必要な情報を相互に交換し合うというものでございまして、自衛隊の情報が一方的に米側に流れるというようなことではございません。
  185. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 外務省や防衛庁は否定するようでありますけれども、私は、今度米軍の司令部に増築されました建物は、調整センターという名前をつけている日米共同作成最高司令部だ、これが置かれるところだというように見ております。これは先ほど言いましたウェザービー大佐もそのように言っていると読めるわけです。これを認めませんけれども、いろいろな状況から見ましてそう思わざるを得ない。これは政府の方が言わない。そのことから考えてみますと、反対にこれは秘密のうちにつくっているんじゃないか。  それから、六本木に集約される自衛隊の軍事情報、この中心的重要情報を横田にはリアルタイムで送り込む、横田には「重要な情報」と朝日新聞が書いているようなアメリカ情報一緒になって集まる。それは、そういう関係から考えてみましても、情報関係から見てみましても、太平洋あるいは宇宙的規模の戦争につながる作戦指揮所ができるような仕組みができ上がってきているんじゃないか、こういうように考えております。この点について見解を伺います。
  186. 藤井一夫

    ○藤井説明員 有事に自衛隊と米軍が共同対処行動をとります場合には、さまざまな形の連絡や情報交換があろうかと思います。ただ、再三申し上げておりますように、現在、中央指揮所が横田の在日米軍との間に持っております通信手段は、電話、ファックス、テレックスでございます。これらは、今御指摘にありましたようにリアルタイムである情報流れるというものではございませんで、あくまでどういう情報を流し、どういう連絡をするかということは自衛隊、防衛庁の自主的な判断に基づいて行うことになるものでございます。
  187. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 ずばりお聞きしますけれども、六本木と横田の司令部はコンピューター対コンピューター通信、言いかえればコンピューターを使った高速データ通信の設備を計画しているのではないかというように思います。これは朝日新聞も書いていることであるわけです。現在はどうも否定されておられるけれども、将来はどういうことになるのか。たとえ今日本にその計画がなくても、これから先、このようなコンピューターを使ったつなぎ方をすることをアメリカから要求されてくるんじゃないか。こういうことも当然予想しているんじゃないか。自衛隊の方にもそういう希望があるんじゃないか。これはどうでしょうか。
  188. 藤井一夫

    ○藤井説明員 現在の通信手段は、先ほど来申し上げておりますように電話、ファックス、テレタイプでございまして、コンピューターとコンピューターがつながっているということはございません。それから、現在、私どもは在日米軍との間でコンピューター・ツー・コンピューターでこれを結ぶという計画もございませんし、米側からそういう要請があったという事実もございません。
  189. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 そうすると、防衛庁としてはコンピューターとコンピューターを結ぶということはやらない、今後ともやらないということでありますか。
  190. 藤井一夫

    ○藤井説明員 現在、私どもコンピューター・ツー・コンピューターで結ぶという計画はございませんし、また米側からの要請もございませんので、実際にそういうことはどうなるのかということを検討していない、こういうことでございます。
  191. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 そうすると、何でもそうですが、自衛隊でも発展の流れが、変化の流れがあるわけですから、そういう中でということで聞いているわけですけれども、現在はない、これだけを強調する。だから、ないと言うならば今後ともないのかとなると、現在は検討していない。また、将来横田と六本木をコンピューターとコンピューターで結びつける、こういうことになるのか。結局は、今の返事を聞いているとそれはどうなるかわからない。こういうことのように聞き取っておりますが、そういうようにとってよろしいですか。
  192. 藤井一夫

    ○藤井説明員 コンピューターとコンピューターで結ぶということに関しましては、現在、自衛隊側にも米側にもそういう要請がない段階でございますので、全くどうなるか検討していないということでございます。
  193. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 この日米の高速データ通信システム、これはもしこっそりつくってもすぐわかる。これはこっそりつくることはできないものであるわけです。だから、今はつくらない、ない、こう言われるけれども、つくればすぐわかることであるということですから、将来については今言えない状況のようですが、要するにすぐわかることだ、つくればわかることだということをちゃんと知っておかなくてはならないというように思います。  それから、先ほどの朝日新聞に出ております日米共同指揮所演習が予定されている。この計画はあるのですか。
  194. 藤井一夫

    ○藤井説明員 共同指揮所演習につきましては、昭和六十年度秋以降に実施することを計画しております。
  195. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 これは、秋以降に実施する予定の演習というのはどういう演習であるわけですか。
  196. 藤井一夫

    ○藤井説明員 これは有事に日米両国が共同対処します場合の指揮関係、指揮所の運営等について演練をするというものでございますが、これから日米双方でその内容を詰めていくものでございまして、具体的には現在計画は判明しておりません。
  197. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 やるということはわかりましたが、しかしその中身は言われない。この指揮所演習、図上演習ですが、これはどこで行われるか。これはどうですか。
  198. 藤井一夫

    ○藤井説明員 実施いたします場所等につきましても、これからの調整事項であると理解しております。
  199. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 と言われますけれども、この共同指揮所演習というのは、それこそこの場所、今問題にしている建物、これを使わないと実際上の演習、図上演習ということにはならないのじゃないですか。やれるところ、ありますか。
  200. 藤井一夫

    ○藤井説明員 指揮所演習をいたします場合におきましても、あくまで日米の指揮は別々でございます。したがいまして、別々にできます指揮所、これをどうやって円滑に運営をしていくかという演習に相なるわけでございます。そのとき日本側が中央指揮所を使用するということは十分考えられることであります。
  201. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 そうすると、横田と六本木とが別々にやる、こういうことのようです。そうしますと、別々にやっているのだから、別々に図上演習をやるわけだから、それこそ高速データ通信システムがなければこれは演習にならないのじゃないですか。  中央指揮所を我々は見にいきました。ぱっとスクリーンに、一遍に日本全体がわかるようにスクリーンに出てくる。あの状況が、別々にやれば、アメリカの方でも同じものが出てこなければ演習にならない。そういう点で、この高速データ通信がなければ演習ができない、別々にやれば。あるいは横田に日本の幕僚が行ってやる、あるいは六本木にアメリカの幕僚が来てやる、こういう場合はそれでできるでしょうけれども、別々にやれば、そういう通信システムが必要になってくると思うのですけれども、それはどうですか。
  202. 藤井一夫

    ○藤井説明員 先ほど来申し上げておりますように、指揮所演習の内容につきましては今後米側と調整をすべきものでございます。いずれにいたしましても、現在中央指揮所と横田の間にありますのは電話、ファックス等でございますので、それ以外の通信手段を持っていないということでございます。
  203. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 そういう現状の凍結した状態で考えて、横田と六本木で別々にやる指揮所演習、これじゃ、今米軍なり自衛隊なりが持っている共同演習、これは成り立たないということになると思うわけです。そういうことから見れば、まさにこれから高速データ通信施設がつくられる、その方向に進んでいく、こういうことになるというように考えざるを得ないのです。  もう、きょうは答弁を何回聞いてもおっしゃらない。現在のことは言うけれども、将来のことは全く研究もしていないかのごとき答弁であるということですが、今までの話を考えてみますと、今ずっとアメリカが横田を中心に計画しているということは、そういう中で見ますと、横田の中に六本木の支所をつくる、言葉をかえればまさにそういうことにもなると思うのです。憲法違反の自衛隊、これが今憲法が禁じている集団自衛権の行使、この道を進んでおります。その道は、この通信施設の関係からいっても核戦争の道であるわけです。自衛隊と米軍とを混合化する方向に進んでいる。これはウェザービー大佐もやはりそういうことをちゃんとさっきの論文の中で言っているわけです。これは全く日本で核戦争対処行動をやる、そういうことですから、今、核兵器の廃絶、全面禁止、核戦争を一切阻止、この世論の中でこういう方向での計画がやられている一ということは、全く反国民的な計画であるわけです。図上演習、これはその動きを裏づける行動であるわけで、これはもうとんでもないことをやっているというように考えております。そういう方向に進んでいく計画に対して私は強く抗議をいたしまして、時間が参りましたので終わります。
  204. 中島源太郎

    中島委員長 小川仁一君。
  205. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 同僚議員がいろいろ御質問いたしましたので、そういう重複を避けて、できるだけ私も率直に申し上げますから、簡明な御答弁を願いたいと思います。  まず、瀋陽に領事館を新設されたということは大変喜ばしいこと、むしろ遅きに失したと考えております。中国が長崎と福岡に領事館を、こう言っておりますから、日本でもまだ領事館をつくり得る可能性があるわけであります。よき隣人、最も友好的な、将来ともまた、ともにこのアジアの中で友好を深めなければならない国でありますだけに、二つお願いをしたい。  一つは、瀋陽の領事館は来年一月となっておりますが、いろいろな事情を申し上げるまでもないと思いますが、できるだけ早く、一カ月でも二カ月でも早くこれを実施できないのかということ。それから、あの広い中国でございますだけに、もう一カ所領事館を最低でも置かれたらどうか、こういうことに対するお考え、計画をお聞きしたいと思います。
  206. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 瀋陽総領事館の開設の時期につきましては、一応来年の一月ということでなっておりますけれども、ただいま委員が御指摘になりましたように、瀋陽総領事館というのは非常に必要な、いろいろ重要な事務が期待される領事館でございますので、私どもできるだけ早期に開設できるように努力をいたしたいと思います。  それから二番目の、第四の総領事館というものにつきましてでございますが、先ほども御指摘になりましたように、中国は福岡と長崎に開くわけでございますので、現在上海と広州、そして今度瀋陽ということで三番目の総領事館を開いた我が国としましては、第四の総領事館を開くことはできるわけでございます。ただ、今どこにその第四のものをいつ開くかということについては、まだ検討を下しておりませんのでここでは申し上げられませんけれども、開くことになれば我が方としてはいつでも開けるということでございます。
  207. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 要望になりますけれども大臣瀋陽をぜひ、予算措置もあると思いますけれども、できるだけ早くやっていただきたい。これは非常に大きな、遼寧省を中心とする経済、文化の交流もありますし、これはますます発展するだろうと思いますし、また非常に多くの残留孤児といいますかそういう方々に対する対策もあると思いますので、ぜひ一カ月でも早くという物の言い方を申し上げますが、お願いをしておきたいし、それからやはりもう一カ所、本年できなかったら来年度は必ずというぐらいの御決意で、一層友好の実を深めるようにお願いをしておきたいと思います。  次は、この残留孤児の問題を一言申し上げたいと思いますが、昭和十八年、当時の大東亜省でございますか、満州移民計画という計画をつくって、そしてこれを国の方針、国策として各県、市町村に対して強く押しつけたのでございます。私はそのころ、農村の教員をしたばかりのときでございましただけに、その満蒙開拓団あるいは満蒙開拓義勇軍、こういったような人たちの送り出しその他にもかかわったわけでございますが、これはやはり日本の国策として、満蒙開拓あるいは満州移民政策というものが存在したという御認識をお持ちでございましょうか。
  208. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まさに、当時の満蒙開拓団等の派遣、満州移民等は日本の大陸政策といいますか国策の線に沿ったものである、こういうふうに認識しています。
  209. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 そういう形で御認識の上で、実はこれからの孤児問題を取り扱っていただきたい、そう思うわけでございます。当時、私は教員をしておりましたが、私の教え子からは義勇軍はございませんでしたけれども、私の地域の東北、岩手の中からは多くの人が参りました。それで、その人たちのお子さんに当たりますか、そういう人たちが大勢残っておられるわけでございます。  ちょうど三十年くらい前に訪中いたしました際に、落陽で在留邦人の方々と会って事情をお聞きして以来、私もこの三十年間、受け入れの仕事に参加して、岩手では、実は県独自で宿舎も持てば日本語教育もし、あるいは職業訓練所にも入れるというふうな経過を持って運動を進めてまいりましたが、この間、御調査によりますと、日本の厚生省あるいは外務省が把握しております残留孤児の数と、それから昨年でございましたか、渡部厚生大臣がおいでになったときの中国側の発言の数、二千人と八百人で非常に大きな開きがあります。こういうことを考えますと、こういう調査に対する熱意を持ってお仕事をしていただきながら、この差をどういう形で今後確かめていかれるのか、そういう方策がございましたらお伺いしたいと思います。
  210. 森山喜久雄

    ○森山説明員 中国残留孤児の数でございますけれども、実は厚生省の方に孤児の方から、自分の肉親を捜してほしいという依頼が参りまして、これは現在までに千六百十五参っているわけでございます。これを調査の結果、八百二十四判明したわけでございます。したがいまして、現在調査中が七百九十一、この七百九十一のうちには、訪日調査と申しまして、日本に孤児の方をお呼びして直接調査をやるというのがございまして、この調査の結果、まだ未判明のままお帰りになったという方が二百二名ございます。したがいまして、厚生省に調査の依頼があってまだ日本に来ていないという方が五百八十九、約六百名近くいるということでございます。  それから、中国の方で二千名残留孤児がいるというお話がございまして、この二千名の中には、恐らく身元が判明したけれどもまだ向こうに残っておられる方とか、それから今申し上げた訪日調査の結果未判明の方とかいう方がございますので、これを差し引きますと、大体我が方の千六百十五のうち二百人くらいが日本にお帰りになっていますので、千四百でございますから、約六百名ちょっと食い違うということになっているわけでございます。恐らくこの方々は、まだ厚生省の方に調査の依頼が出てないので私どもつかみようがなかったのでございますけれども中国側にお願いをいたしまして、中国側で今鋭意調査をされているそうでございまして、ことしの七月ぐらいまでにはその二千名の名簿をもらえないかというお話をしましたら、そういう方向努力をして差し上げられるようにしたいというお話がございました。したがいまして、その名簿をいただきますと私の方で名前がわかるわけでございますので、そういう方にはまた、我が方から手紙を差し上げるとかいろいろな通信手段ができるわけでございますので、その結果を見たいというふうに考えておるわけであります。
  211. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 毎年日本に来られる肉親捜しのこういったような人たちを見るたびに、日本人の多くは非常に涙を流して何とかならないのかなという気持ちを訴えているようであります。私は、日本国内において厚生省に届け出得る状況にある人は届け出ていると思うのです。むしろそうではなくて、国内においても御両親も亡くなられる、あるいは戦争末期において子供を預かったが、自分も帰らないで途中で亡くなられた方、こういったような方々があるために、御本人だけが残っておられてその認識がはっきりしない、日本国内において調査ができないという人たちもおられると思うのです。ですから、この際に、四十年たちますから、ここ数年というよりも二、三年でこれを処理してしまわなければもう手おくれという状況さえ来ると思うので、ぜひそのことについて徹底した努力をしていただきたいと同時に、瀋陽に領事館をお開きになった場合に、厚生省のこういう関係をおやりになっている方、これを外務省の好意の中で館員の中にお加えいただきたいという希望を持ちます。  それは、この前、渡部前厚生大臣がおいでになったときに、黒竜江省でもまだ千人いるよというお話があったように新聞で伝えられております。こうなってきますと、残留孤児問題はすぐれて東北地帯の非常に大きな課題になると思いますので、この点についてはここでお答えをいただかなくてもいいわけでございますが、外務省に特段に要望を申し上げておきたいと思います。  さて、私の長い経験の中から、残留孤児の方が日本に帰ってきても必ずしも幸せになるとは限らない。途中で挫折された方もありましたし、私たちお世話しても、どうしてもお世話し切れないような状況が出てくる場合もあります。そういうものの一番の基本に言葉の問題があります。日本語、これをどうわからせるかということが非常に大事なことなんですが、厚生省、こういうことに対してどういう施策をしておられますか。
  212. 森山喜久雄

    ○森山説明員 残留孤児の方々が家族の方をお連れになって日本へ帰ってくるわけでございますが、厚生省といたしましては、昨年の二月に中国帰国孤児定着促進センターというのを所沢に建てまして、これは財団法人の援護基金の方に委託をしておるわけでございますが、ここで四カ月間日本語教育なり生活習慣の指導というのをやって、それからそれぞれの定着地にお帰りいただくという施策を昨年の二月から始めたわけでございます。
  213. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 長い間中国で過ごしてきた人が、四カ月ぐらいではとても、その後の生活の前提として就職その他に対応するような日本語はできないと思うのですよ。これをもっと拡大するお考えはありませんか。
  214. 森山喜久雄

    ○森山説明員 四カ月といいますのは、これをつくるときに、ほかにそういう日本語教育をやっているところはないかということで、インドシナ難民のセンターがございまして、あそこの方にも伺ったところでございますけれども、大体三カ月日本語教育をやると大体日常会話ができるというようなお話でございまして、一応四カ月というふうに私の方で決めたわけでございます。  ただ、センターの日本語研修と申しますのは、文化庁の国語研究所を中心とする専門家の方々にカリキュラムをつくっていただきまして、入所者の学歴とか年齢、いろいろ差はあるわけでございますけれども、四カ月間集中的に指導をするということで、出所時にはおおむね日常生活に不便のないような日本語が習得できるということを目標にしておるわけでございます。ただ、発足後まだ一年間でございますので、いろいろ研究をいたしまして内容の改善とか、あるいは四カ月が足りないのかどうかというようなこともまた検討してまいりたいと思っております。
  215. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 私が岩手でいろいろそういうお世話をしたり仕事をしたりした経験ですと、就職するため、生活するためには言葉ができなければどうにもならない。私は、何とか仕事についていけるような日本語ができるようになるには最低一年かかる、こういう経験を持っております。文化庁の方がおやりになるとしても、どんなすばらしいカリキュラムがあるとしても、人間の生活の中における言語というものの認識、そして自分の言葉で意思を伝えるということはかなりの経験を必要とするという課題があるわけであります。言語というのは理解ではなくて経験なんです。そういう意味で、四カ月で事足れりとせず、もっと拡大する工夫をぜひ考えていただきたい。  私は、六年前にもこういう問題を御質問申し上げて、例えば外国から水際までは外務省、中に入ると生活保護等は厚生省、就職というと今度は労働省、小さな子供の教育というと文部省、こういったようにそれぞれがそれぞれ責任を負っているようだけれども、総合的にお考えになっている一つのセクションがないということで、それをおつくりいただきたいということをお願い申し上げました。もう四十年もたっているし、それから、今まで私だけではなしに多くの人がそういうことを申し上げているわけなんで、あと残すところ年数が少ないと思いますので、遅まきではありますけれども最大の努力を払っていただきたいというふうに要望を申し上げておきます。  同時に、文部省の方にお聞きしますが、中国から帰った子供たち、いわゆる学齢児童に対していろいろ苦労しておられるようですし、また、一般の人に対しても日本語の学習の教材等を出しておられるようでございます。そこで、これもお願いなんですが、今はもう本の時代、活字の時代ではなくなってきております。例えば一つのスライドの中に中国の言葉が書いてある、そしてそれをまた日本語で書いてある、これにかなで発音記号なりをつけて、その下に例えば絵か何かでそれを認識させるといったような教材のつくり方、あるいは発音その他を含めてビデオを使ったような教材、これはビデオを使うとなればそんなに費用もかかりませんし、ぜひこういったような多くの工夫をしていただきたい。昔流に言う教科書一冊配れば終わりだ、こんなふうな形ではとても日本語というものを認識させることはできないと思いますので、これをお考えいただけるかどうか。  さらに学齢児童でございます。東京では今回は高校を希望した子供たち全員入りましたが、田舎へ参りますと一つの学校に一人あるいは兄弟で二人、三人というふうな格好で、引き揚げてきた人の子供さんが入るわけであります。そこではそれに対応する教師もおりませんし、また大勢の中にその子を入れてしまいますと、その子はますます言葉から来る劣等感が激しくなるのです。教師自身もそれにどう対応したらいいかわからないという状態ですから、そういう子供を預かった教師を、例えば夏休みでもいいですよ、国で費用を出して二週間なり二十日間なり短期的に講習をして、その教育のあり方を勉強させて帰してやって、その子供たちに対応する、こういったような考え方等ございませんでしょうか、お伺いしたいと思います。
  216. 牛尾郁夫

    ○牛尾説明員 中国からの帰国者の子女につきましては、原則として学齢期の子女は小中学校の年齢相当学年に編入をさせているところでございます。ただ、先生御指摘のようにこうした子女は日本語が十分ではないわけでございますので、日本語の教育や生活面、学習面での適応指導を十分にしていくことが非常に大切なことであると考えております。  こうした観点から、文部省といたしましては、昭和五十一年度から、中国帰国子女が比較的多く在籍をしております学校を引揚者子女教育研究協力校に指定をいたして、積極的な受け入れと指導をやっておるところでございます。さらに、その日本語指導のための補助教材を作成いたしまして配付をいたしておりますけれども、指導方法の工夫改善につきましては、御指摘のようなことを踏まえてさらに努力をしていかなくてはいけないと考えております。  それから、研究協力校の教員その他、中国からの帰国子女を担当する教員等の研修につきましては、現在、年に二回研修会を開催いたしまして、その研修会に参加をしてもらうようにしておるところでございますが、その研修のやり方につきましても今後充実に努めてまいりたいと考えております。
  217. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 私は一般論を聞いているのじゃなくて、田舎の小さな学校に一人や二人いるようなこういう子供の担任教師についてこういう考え方はないかと聞いているし、補助教材についてもビデオやスライド等を使っていくという考え方はないかと聞いているんです。それについてだけ答えてください。
  218. 牛尾郁夫

    ○牛尾説明員 教材の開発につきましては今後検討をいたしたいと思います。  それから教員の研修につきましては、広く全国に呼びかけて関係の教員に集まってもらうようにいたしておるわけでございますので、今後とも、現在行っております研修会への参加についてさらに積極的に呼びかけてまいりたいと思います。
  219. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 私は、今やられている状態を知った上で実は御質問を申し上げているのです。さらに具体的にこれはどうかと聞いているのです。これ以上やりますと時間がもったいないですから言いませんが、私が言った具体的事項についてはぜひ、会もそんなにかかりませんから実施するよう、きょう大臣はおいでになりませんけれども大臣に申し上げておいていただきたいと思います。  次に移ります。海外の子女教育についてでございますが、昨年私もシンガポール、シドニー等の日本人学校を見せてもらいました。一緒に行かれました長谷川峻団長あるいは今の山下大臣等が理解がありまして、私の学校を見たいという希望に非常に好意を示していただいて全部回ったわけでありますが、その中で感じましたことの一つ、シンガポールと香港は学校が大き過ぎます。日本の国内でもあんな大きな学校というのは、はっきり言って非行のもとになるなどと言われるような学校でございますが、これを二つないし三つに分けてつくらせるといったような教育的配慮を含めた御指導の方針はございましょうかどうか。
  220. 谷田正躬

    ○谷田政府委員 今、先生御指摘の千人を超える大規模海外校といたしましては、シンガポールが二千人、香港が千三百人、そのほかにジャカルタとバンコクは九百数十名という段階になって、これらが御指摘の大規模校であると思います。おっしゃるとおり、理想的な形といたしましては、これを分離して管理することができるのが望ましいと思いますけれども、ただいまのところ、在外の特殊事情と申しますか、第一には財政上の問題、それから運営上のさまざまな問題等がございまして、現時点といたしましてはすぐに実現することは困難でありますが、将来に向けての検討の課題といたしたいと思っております。
  221. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 大規模校というのは教育効果も非常に落ちます。特に海外の子女の皆さんの場合は、日本国内のいわゆる受験体制に組み込まれた教育的方向も少ないわけでございますだけに焦りがおありのようですから、これは大臣、ぜひひとつ、文部省とも相談をして、大きな学校は二つないし三つに分けてつくっていって、教育の徹底を期していただきたいと思います。  続いて、シドニーの日本人学校なんですが、これは地元の州からの土地の提供もあり、非常にすばらしい環境でできておりました。そして、地元の人たちも一緒に入るという学校形態をとっておられました。そこでお話を聞きますと、中学まではある、高校がないために、せっかく地元の人を入れても、地元の人が高校段階でもう一つこの学校の延長線上にいたいと言っても入れない、日本とシドニー地域の人たちとの友好とか国際理解、あるいは日本に対する理解等を深める意味においても高校をぜひ欲しい、こういう話がございました。義務教育段階ではございませんけれども、高校をそういう要求しているところにおつくりになるという考え方、外務省あるいは文部省の指導方針の中にございましたらお示し願いたいと思いますし、もしなかったら、これも将来の検討課題にしておいていただきたいと思うのですが、いかがでございましょうか。
  222. 谷田正躬

    ○谷田政府委員 シドニー校に関する問題といたしましては、実は私も昨年この地を訪問いたしまして、同じような要望を承ってまいりました。確かに高校の問題は、これから徐々に各地で問題になってきつつあると存じます。  ただ、現在やっております国の補助というのは、やはり義務教育段階のところをまず充実するということで、外務省といたしましても、毎年予算要求の重点事項の一つとして、各地に小中学段階日本人学校を設立するというところに重点を置いておりまして、高校段階にまで今すぐ手をつけるということには参っておりません。  しかしながら、冒頭申し上げましたように、各地でそろそろ高校の問題について、これをどうするかというのが在留邦人の中で問題意識として取り上げられているということは存じておりますので、今後検討してまいる課題であると思っております。
  223. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 商社等の方々にはかなりの長い年数あちらにおられる方等もありますし、また日本の教育を現地の人たちと一緒に行って日本理解を深める、こういう意味からも、国の補助はないといっても、高校は県立高校等が多くて自治体がやっておりますが、その肩がわりで、文部省が高校の二つ三つをやれないこともないと思いますけれども、試験的にでもいいからぜひこういう方向をお考え願いたい。それは海外に働いておられる人たち、これは外務省の職員も含めて非常に安心感を与える、こういう面もありますので、ぜひこれもお願いをしておきたい。  もう一つ教員の問題ですが、全日制は八三・一%教員を充足しているようですが、補習授業校はたった三十九人なんですね。学校の数が百ぐらいあるんですが、これでは余り少な過ぎはしないか。また補習授業校でも、例えばニューヨークとかワシントンなんというのはかなり大きな生徒数を持っているわけであります。ロサンゼルスなどは千五百三十九人という数字も出ていますから、補習授業校に対して文部省、重点的にこれからの課題として日本の教員を派遣する方式を考えてほしいと思います。いかがですか。
  224. 牛尾郁夫

    ○牛尾説明員 御指摘のとおり補習授業校への派遣教員は少ないわけでございます。一定の規模以上の補習授業校に対しては現在教員を派遣いたしておるわけでございますが、補習授業校は授業日が週一回が通常でございまして、その一回の授業のために多数の教員を派遣するのはなかなか困難な面があろうかと思いますけれども、大規模な補習授業校等につきましては今後とも教員の派遣に前向きに取り組んでまいりたいと思います。
  225. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 今ある土曜日一日だけの教育と考えるから、文部省の画一性とか統一性が臨教審にまでたたかれるわけです。やろうとすれば、毎日授業が終わって帰ってきた後だってやることが不可能じゃないのです。それは教員の熱意と父兄の熱意によってやられるわけでございますから、今後とも週一回というふうな、大規模というふうな固定的概念ではなくて、むしろそういうところよりも非常に困っている地帯にどう手を伸べるかということが大事な問題ですから、そういう観点からお考え願いたい。日本だって、僻地の小さな学校にだって教員を出しているわけですから、ぜひお考えおき願いたいと思います。  以上要望して、次は子女教育手当でございますが、今回これで九〇%以上をカバーしたということは大変いいことだと思いますが、同時に、主要商社の子女関連手当の調査をいただきまして見ましたら、一つ非常に気がついたことがあるのです。これは五歳以上二十五歳未満の子女に手当を出している商社等もあるようでございます。それで、外務省としてお考え願いたいそれは、今までは高校対象者だけを中心にしてそこまででございましたが、日本人の国際理解を深める、一つの国際的な教育を受けるよいチャンスでもあり、また同時に、地元で高校まで育ちますと日本の受験体制の学校に適応しないという状況もあるわけでございますから、地元あるいはその他の地域の大学に入れていっていいじゃないか。またアメリカンスクール等で高校までの教育を受けた子等もあるわけでございますから、それで、この十八歳という年齢を二十五歳まで延ばしてもそんなに大勢の人数でもないと思うのですが、いかがでしょうか。
  226. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 今六歳から十八歳、高校水準までのことでやっております。確かに委員御指摘のように、二十五歳まで上げてもそれほど人数が多くはないということはあろうかと思いますけれども、何分とも今財政事情が厳しいところをやっとここまで持ってまいりましたので、むしろ現在のシステムをさらに充実していくということの方が、今の現実の問題としてはそれを拡充するよりも急務であろうということで、今回も子女教育手当を拡充したわけでございますが、将来の問題として検討させていただきたいと思います。
  227. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 私の友人の経験を含めて今二十五歳という数字を申し上げているのです。国内に帰ってきて大学に入るのに非常に苦労いたしました。そういうことがあるので、できればアメリカでもイギリスでもそういう地域、あるいはそういう地域でないところでも大学に入れてやったらという思いがしたことがありましたので申し上げましたが、去年ここで臨教審の討議をしたときに、中曽根総理も、教育のためには金を惜しまないとおっしゃっておりました。日本はこれから教育に本当に思い切ったお金をかけて人材をつくり出すことが非常に大事な時期でございますから、ぜひ御検討を願いたいと思います。  予定時間までに終わるつもりでしたが、あと一つ残っていましたので、次に、在勤手当の中で、外務公務員給与の中で「戦争等による特別事態の際の在勤手当」、こういうのがございます。日本の場合、もう憲法で交戦を禁止しておりますから国内において戦争が起きるという状況はないと思いますが、例えばイランイラクのような状況の中でお勤めになっておられる外務公務員というのは、精神的にも生活的にも非常に苦労しておられる面があるのではないか、そう思います。この手当を見ますと、在勤手当の一五%と書いてあるようでございます。しかし、考えてみますと、ああいう事態の中にいる外務公務員というのは、精神的だけではなしに生活的にも、物資を手に入れるとか、あるいは行動するにしても動き回るにしても、車等を使いながら大変苦しい思いでおやりになっているのではないか、一五%程度で間に合わないのではないかという感じを持つのです。それでやれと言えばそれでやっておられると思いますが、これについて何か特別お考えがありますか。
  228. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 ただいま委員から大変御理解のある御指摘をいただきました。  ただ、この戦時等の特別事態における加算でございますが、これは生活条件が困難を極めます中で、危険の問題もあるし、また御指摘のようにいろいろな生活費が急増することが考えられますので、そういうことをいろいろ考えまして、同時に、一般職の給与法の特殊勤務手当の傘との横並びの問題、あるいは諸外国の外交官の例とかというものを念頭に置いて、また、今までに同じような戦乱とか内乱のような事態が発生した土地での在勤者の体験なども参考にいたしまして、一五%というものを定めたものと承知しております。  ただ、場合によっては生活の必需物資が非常に高騰する場合がございます。そういうものが一時的であればよろしいのでございますけれども、戦乱が長続きして非常に長期化するというような場合には、さらに在勤手当の基本手当というものを根本的にそこで見直していくという措置をとることも考えておりますが、今までのところ割合短期的な事態でございましたので、一応一五%という範囲内で対応しておるところでございます。
  229. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 イランイラクの例をとって適切でないかもしれませんが、空襲とかミサイル攻撃という形があるようでございます。これは攻撃目標を特定してもかなり誤差があって、いつどういう状況に置かれるかわからぬ。こういうことになりますと、例えば大使館とか、そういうものに対する危険から館員を守る等の施設は一体どうなっているのでしょうか。外交官の場合ですから、在留邦人がみんな引き揚げても最後まで残っていなければならないという状況があり得るだけに、ほとんど生命の危険を感じながら勤めておられると思うのです。そういうことについて、施設等ありましたらお願いします。
  230. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 例えばレバノン大使館の場合でございますけれども、ガラスは防弾ガラスにいたしまして、また土のうを積んで破片を防ぐとか、自動車も防弾の自動車を手配するとか、なかなか十分ではないのですが、御指摘のように、そういうところに勤務して、しかも一生懸命我々の在外での仕事をやってくれておる館員のために、できるだけの措置をとっておるわけでございます。決して十分なことではありませんけれども、我々としてもこれは強化いたしたいと考えております。
  231. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 戦乱の場合ですから、私的財産の損失ということもあるでしょう。また、今言ったインフレその他による生活の困難もあるでしょうし、まして生命の危険、精神的な苦痛、大変なものがあると思います。お金でこれを賄うということだけではないにしても、ぜひそういう地帯にいる人たちに対する適切な施策を講じていただきたい。今一番危険な場所にいるのが、自衛隊でも何でもない、外務公務員だという感じさえするから、特に申し上げておきます。  それから、不幸にして、ミサイルその他の偶発的な攻撃があって死亡したという場合も、今の状態の中で予想されないわけではないわけであります。こんなことを申し上げるのは余り縁起でもないのですけれども考えておかなければならないことだと思いますので、そういう点についての施策がございましたらお聞かせ願いたいと思います。
  232. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 在外職員が公務災害を受けた場合、一般的には国内における公務災害と同様に、国家公務員災害補償法に基づいて補償が行われるわけでございますが、在外勤務の特殊性にかんがみまして、昭和五十二年四月から特例措置といたしまして、在外職員または外国出張中の公務員が戦争あるいは事変、そういう内乱等の異常事態の発生時に、その生命あるいは身体に対する高度の危険が予測される状況のもとにおいていろいろ仕事をしておるわけでございますので、その公務上の災害を受けた場合におきましては、年金等の補償額に五〇%加算をしたものが支給されることになりました。また、不幸にも死亡または不具廃疾となったような者に対しましては、補償制度とは別に、表彰制度の一環として賞じゅつ(恤)制度が設けられておりまして、その賞じゅつ金を授与することができるようになっております。また、外務省の中で、そういう場合に保険あるいはその他共済組合からのお金を出すとか、そういうことも考えられております。
  233. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 以上、いろいろ給与、教育にかかわる具体的な問題を要望申し上げました。これは決して実現不可能な無理なお願いではないような気がして申し上げたつもりでございますので、各省において十分御検討の上、一日も早く実施をしていただきたい。  特に最後に申し上げましたが、戦争等による不幸な事態が生じた場合においての賞じゅつ、賞じゅつという言葉をお聞きしましたけれども、慰労金といいますかそういうふうなもの、これはお金の問題で解決すべき問題ではないと思いますが、十分な御配慮を願いたい。  そして、とにかく日本の国においてはもう戦争はございません。したがって、国内においてそういう状況を想像するということは余り適切ではないわけでございますけれども、やはりそういう地区で働いている人たちがあるんだということを前提にしてお話を申し上げました。  同時に、今のイランイラク戦争等について、大臣、非常に平和外交立場で御苦労しておられるわけでございますが、一面、この戦争を、大国の武器を小国に輸出をして、小国に武器の試しをさせているといったような言い方で、大国の武器輸出とそれから小国の戦争を批判している人もあります。日本の国には武器輸出はきっちり禁じられております。いろいろな形で、技術援助等含めて武器または武器にかかわる技術の輸出が要請されているようでございますが、ああいう戦乱の教訓に学んで、日本の国は、今後、武器輸出または武器にかかわる技術の輸出等については厳格にこれを守っていただきたい。そして、あるいは戦いの援助になりますか戦いの一つの準備になりますか、そういったようなものには一切手をかさない、そういう立場で今後外交を進めていただきたいと要望いたします。  それについてお考えあれば伺って、私の質問を終わりといたします。
  234. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほどからの子女教育についての非常に温かい御意見に対しまして、傾聴させていただきました。外務省としましても、ますます海外の子女がふえてくるわけでございますから、それに対して、これからも教育の充実のために努力していきたい。  また、戦乱時における外交官はまさに命がけで働いておるわけであります。そうした労苦に報いるために、今後とも、外務省としましても、いろいろ対策を充実していかなければならぬということも痛感をいたしておるわけでございます。  さらに、我が国基本姿勢はあくまでも平和外交でありますし、平和に徹する覚悟で、世界の平和、さらに地域紛争平和的解決のためには、これからもひとつ全力を傾けて積極的に取り組んでまいりたい。日本がもちろん憲法の立場からそうした紛争の助長に手をかさないということは、これは当然のことでもございますし、武器輸出三原則等もあります。こうした基本は。きちっと守って、平和外交を進めてまいる考えてあります。
  235. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 以上で終わります。      ――――◇―――――
  236. 中島源太郎

    中島委員長 この際、連合審査会開会申し入れに関する件についてお諮りいたします。  すなわち、大蔵委員会において審査中の内閣提出、国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案について、同委員会に連合審査会開会の申し入れを行いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  237. 中島源太郎

    中島委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、来る四月二日火曜日午前九時三十分理事会、午前九時四十五分委員会を開会することとし、本印は、これにて散会いたします。     午後六時二十五分散会      ――――◇―――――