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1984-12-13 第102回国会 衆議院 内閣委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年十二月十三日(木曜日)     午前十時三十二分開議 出席委員   委員長 中島源太郎君    理事 石川 要三君 理事 戸塚 進也君    理事 深谷 隆司君 理事 宮下 創平君    理事 小川 仁一君 理事 松浦 利尚君    理事 市川 雄一君 理事 和田 一仁君       池田 行彦君    石原健太郎君       内海 英男君    鍵田忠三郎君       菊池福治郎君    月原 茂皓君       中村喜四郎君    二階 俊博君       堀内 光雄君    山本 幸雄君       上原 康助君    角屋堅次郎君       元信  堯君    渡部 行雄君       鈴切 康雄君    山田 英介君       田中 慶秋君    柴田 睦夫君       三浦  久君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (内閣官房長官藤波 孝生君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)     河本嘉久蔵君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 加藤 紘一君  出席政府委員         内閣官房長官 山崎  拓君         内閣法制局第二         部長      関   守君         人事院総裁   内海  倫君         人事院事務総局         給与局長    斧 誠之助君         総務政務次官  岸田 文武君         総務庁人事局長 藤井 良二君         北海道開発政務         次官      上草 義輝君         北海道開発庁総         務監理官    楢崎 泰昌君         防衛政務次官  村上 正邦君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房         長       西廣 整輝君         防衛庁教育訓練         局長      大高 時男君         防衛庁人事局長 友藤 一隆君         防衛施設庁施設         部長      千秋  健君         防衛施設庁建設         部長      大原 舜世君  委員外出席者         経済企画庁調整         局審議官    丸茂 明則君         労働大臣官房国         際労働課長   佐藤ギン子君         労働大臣官房審         議官      平賀 俊行君         内閣委員会調査         室長      石川 健一君     ————————————— 委員の異動 十二月十三日  辞任         補欠選任   渡部 行雄君     山本 政弘君     ————————————— 十二月十二日  一般職職員給与に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第一号)  特別職職員給与に関する法律及び国際科学  技術博覧会政府代表設置に関する臨時措置法  の一部を改正する法律案内閣提出第二号)  防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案(内  閣提出第三号) 同月十三日  福岡財務支局の存置に関する請願外一件(沢田  広君紹介)(第一号)  同外一件(堀昌雄紹介)(第二号)  同(小沢和秋紹介)(第八七号)  同(正森成二君紹介)(第八八号)  同(三浦久紹介)(第八九号)  同(簑輪幸代紹介)(第九〇号)  同(三浦久紹介)(第一二六号)  公務員賃金引き上げ等に関する請願田中実  智子君紹介)(第三号)  同(田中美智子紹介)(第四三号)  同(田中美智子紹介)(第九一号)  元日赤救護看護婦に対する慰労給付金に関する  請願塩川正十郎紹介)(第八五号)  同外一件(藤本孝雄紹介)(第八六号)  同(武藤嘉文紹介)(第一二七号)  人事院勧告に関する請願志賀節紹介)(第  一二五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  一般職職員給与に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第一号)  特別職職員給与に関する法律及び国際科学  技術博覧会政府代表設置に関する臨時措置法  の一部を改正する法律案内閣提出第二号)  防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案(内  閣提出第三号)      ————◇—————
  2. 中島源太郎

    中島委員長 これより会議を開きます。  この際、当委員会所管国務大臣及び政務次官方々から、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。まず、内閣官房長官藤波孝生君。
  3. 藤波孝生

    藤波国務大臣 このたび再度官房長官を拝命し、引き続いて内閣官房及び総理府本府の事務を担当することになりました。  今後とも誠心誠意職務遂行に当たる考えてありますので、委員長初め皆様方格別の御指導と御鞭撻を賜りますように心からお願いを申し上げます。  どうぞよろしくお願いいたします。(拍手
  4. 中島源太郎

  5. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 このたび再度総務庁長官を拝命をいたしました。  今後引き続き、総務庁設立趣旨を踏まえ、行政改革推進を初め各般の課題について誠心誠意取り組み、職務遂行に当たる所存でございます。委員長初め皆様方格別の御指導、御鞭撻を心からお願いを申し上げまして、ごあいさつといたします。  よろしくお願いいたします。(拍手
  6. 中島源太郎

  7. 河本嘉久蔵

    河本(嘉)国務大臣 このたび北海道開発庁長官を拝命いたしました河本でございます。  委員長初め委員皆様方には、日ごろから北海道開発に対し格別の御配慮をいただきまして、心からお礼申し上げます。  私は、北海道我が国の将来の安定的な発展に大きな役割を果たすことができますように、全力を挙げて北海道総合開発推進に取り組んでまいる所存でございます。委員長初め委員各位の御指導、御鞭撻を心よりお願い申し上げまして、ごあいさつといたします。  ありがとうございました。(拍手
  8. 中島源太郎

  9. 加藤紘一

    加藤国務大臣 今般、防衛庁長官を拝命いたしました加藤紘一でございます。  内外の諸情勢が殊のほか厳しいこの時期に、国家存立の基本にかかわる防衛行政を担うこととなり、その責務の重大さに改めて身の引き締まる思いがいたしております。  私は、我が国防衛のため、国民の理解と支持のもとに防衛力の着実な整備充実を図るとともに、日米安全保障体制信頼性維持強化に最善の努力を図っていく所存でございます。何とぞ委員長並びに委員各位におかれましては、格段の御支援、御協力を賜りますとともに、よろしく御指導賜りますようお願い申し上げまして、私のあいさつといたします。  よろしくお願いいたします。(拍手
  10. 中島源太郎

  11. 山崎拓

    山崎(拓)政府委員 このたび内閣官房長官を拝命いたしました山崎拓でございます。  藤波官房長官を補佐いたしまして職務に精励してまいる決意でございますので、委員長初め委員各位の御指導、御鞭撻お願いいたします。(拍手
  12. 中島源太郎

  13. 岸田文武

    岸田(文)政府委員 このたび総務政務次官を拝命いたしました岸田文武でございます。  長官を補佐しまして全力を尽くす所存でございます。委員長初め皆様方の御指導、御鞭撻のほどを心からお願いを申し上げまして、ごあいさつといたします。(拍手
  14. 中島源太郎

  15. 上草義輝

    上草政府委員 このたび北海道開発政務次官を拝命いたしました上草義輝でございます。  河本長官のもとで北海道開発推進のために全力を挙げて頑張ってまいりたいと思います。委員長初め委員各位、諸先生方の一層の御指導、御鞭撻を心からお願いを申し上げて、ごあいさつにかえさせていただきます。  よろしくお願いいたします。(拍手
  16. 中島源太郎

  17. 村上正邦

    村上(正)政府委員 防衛政務次官を拝命いたしました村上正邦でございます。  微力でございますが、加藤長官を補佐し精励してまいりますので、委員長初め各先生方の御指導、御鞭撻を心からお願いを申し上げます。  ありがとうございます。(拍手
  18. 中島源太郎

    中島委員長 これにて国務大臣及び政務次官発言は終わりました。      ————◇—————
  19. 中島源太郎

    中島委員長 内閣提出一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案特別職職員給与に関する法律及び国際科学技術博覧会政府代表設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  順次趣旨説明を求めます。後藤田総務庁長官。     —————————————  一般職職員給与に関する法律の一部を改正   する法律案  特別職職員給与に関する法律及び国際科学   技術博覧会政府代表設置に関する臨時措置   法の一部を改正する法律案     〔本号末尾掲載〕     —————————————
  20. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 ただいま議題となりました一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案及び特別職職員給与に関する法律及び国際科学技術博覧会政府代表設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について、一括してその提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  まず、一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。  本年八月十日、一般職職員給与について、俸給及び諸手当改定内容とする人事院勧告が行われました。政府としては、その内容を検討した結果、本年四月一日から平均三・四%内の改定を行い、その配分については、人事院勧告趣旨に沿って措置することとし、このたび、一般職職員給与に関する法律について所要改正を行おうとするものであります。  次に、法律案内容について、その概要を御説明申し上げます。  第一に、全俸給表の全俸給月額を引き上げることといたしております。  第二に、初任給調整手当について、医師及び歯科医師に対する支給月額限度額を二十一万七千六百円に引き上げるとともに、いわゆる医系教官等に対する支給月額限度額を四万千百円に引き上げることといたしております。  第三に、扶養手当について、配偶者に係る支給月額を一万三千二百円に、配偶者以外の扶養親族に係る支給月額を二人までについてそれぞれ四千二百円に引き上げ、この場合において、職員配偶者がない場合にあっては、そのうち一人について八千九百円に引き上げることといたしております。  第四に、住居手当について、家賃の月額が一万六千五百円を超えるときに加算することとされている二分の一加算限度額月額七千二百円に引き上げることといたしております。  第五に、通勤手当について、交通機関等を利用して通勤する職員に対する全額支給限度額月額一万八千三百円に引き上げ、全額支給限度額を超えるときに加算することとされている二分の一加算限度額月額三千四百円に引き上げるとともに、自転車等を使用して通勤する職員に対する支給月額を引き上げることといたしております。  なお、交通機関等自転車等を併用して通勤する職員に対する支給月額についても、引き上げることといたしております。  第六に、非常勤委員、顧問、参与等支給する手当について、支給限度額日額二万三千五百円に引き上げることといたしております。  以上のほか、附則において、俸給表改定に伴う所要の切りかえ措置等について規定することといたしております。  続きまして、特別職職員給与に関する法律及び国際科学技術博覧会政府代表設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。  この法律案は、ただいま御説明申し上げました一般職職員給与改定に伴い、特別職職員給与について所要改正を行おうとするものであります。  次に、法律案内容について、その概要を御説明申し上げます。  第一に、特別職職員俸給月額を引き上げることといたしております。具体的には、内閣総理大臣俸給月額は百六十三万二千円、国務大臣等俸給月額は百十九万円、内閣法制局長官等俸給月額は百十三万七千円とし、その他政務次官以下の俸給月額については、一般職職員指定職俸給表改定に準じ、九十六万九千円から八十四万千円の範囲内で改定することといたしております。  また、大使及び公使俸給月額については、国務大臣と同額の俸給を受ける大使は百十九万円、大使号俸は百十三万七千円とし、大使号俸以下及び公使号俸以下については、一般職職員指定職俸給表改定に準じ、九十五万九千円から六十二万三千円の範囲内で改定することといたしております。  なお、秘書官については、一般職職員給与改定に準じてその俸給月額を引き上げることといたしております。  第二に、委員手当については、委員会の常勤の委員日額手当支給する場合の支給限度額を四万千四百円に、非常勤委員支給する手当支給限度額を二万三千五百円にそれぞれ引き上げることといたしております。  第三に、国際科学技術博覧会政府代表俸給月額を九十五万九千円に引き上げることといたしております。  以上のほか、附則においては、この法律施行期日適用日等について規定いたしております。  以上がこれら法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いを申し上げます。
  21. 中島源太郎

  22. 加藤紘一

    加藤国務大臣 ただいま議題となりました防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  この法律案は、このたび提出された一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案に準じて、防衛庁職員給与改定を行うものであります。  防衛庁職員給与改定につきましては、参事官等及び自衛官俸給並びに防衛大学校及び防衛医科大学校学生学生手当一般職職員給与改定の例に準じて改定を行うとともに、営外手当についても改定することとしております。  この法律案規定は、公布の日から施行し、昭和五十九年四月一日から適用することとしております。以上のほか、附則において、俸給表改定に伴う所要の切りかえ措置について規定しております。  なお、一般職職員給与に関する法律規定を準用し、またはその例によることとされている事務官等俸給扶養手当通勤手当住居手当並びに医師及び歯科医師に対する初任給調整手当等につきましては、一般職職員と同様の改定防衛庁職員についても行われることになっております。  以上がこの法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛同くださいますようにお願い申し上げます。
  23. 中島源太郎

    中島委員長 これにて各案についての趣旨説明は終わりました。     —————————————
  24. 中島源太郎

    中島委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小川仁一君。
  25. 小川仁一

    小川(仁)委員 一般職職員給与に関する法律案についての質問をさせていただきます。  まず、官房長官に伺いますが、官房長官の五十九年十月三十一日の談話を拝見いたしました。全文は読み上げませんが、その中に「来年度以降においては、給与改定後の官民較差が、少なくとも本年度程度更に縮小されるよう鋭意努力してまいる所存であります。」という文章がございます。その前段には、完全実施に向けて最大の努力をすると書いておられますが、さきに申し上げました来年度以降という問題につきましては、他の閣議決定文章を見ましてもそれから総務長官談話を見ましても、ございません。官房長官談話の中にのみ「来年度以降」という一文がございます。この文は私に渡されましたプリントのミスプリントではないか、そうさえ感ぜられるのです。しかし、もしこれが正式のものだとすれば、来年度以降についての政府一つ態度を明らかにしたということで、非常に大きな人事院制度にかかわる問題でもありますし、それがまた政府態度であるとすれば、人事院勧告制度が不必要になるとさえ考えられる要素もあるわけでございます。したがいまして、この文章についての真意をお伺いしたいと思います。
  26. 藤波孝生

    藤波国務大臣 五十九年度人事院勧告実施につきましては、国会でもいろいろ御論議をいただいてきておるところでございますが、政府といたしまして完全実施に向けて最大限努力をいたしたところでございます。また、来年度以降におきましても、人事院勧告制度を尊重して完全実施に向けて努力をしていかなければならぬ、この決意を表明しておるところでございます。  一方、財政状況を見てみますと、五十九年度の場合も公務員給与を取り巻く財政状況が非常に厳しい状況にありまして、鋭意財政の好転に向かっての努力をいたしておりますけれども、来年度以降におきましても相当に厳しいということを覚悟して対処していかなければならぬ環境に、これは客観的にそういう環境にあるわけでございます。  そこで、今御指摘がございましたように、五十七年度見送り、五十八年度大幅抑制ということで来ておりますので、そのいわば未解決分というのが非常に高いげたを履いてきておりまして、本年度完全実施に向けてあらゆる努力をしたところでございますが、それにも限界があったということはおわびを申し上げなければならぬと思うのでございますけれども、公務員方々生活実態あるいは公務員執務をいたしますその士気、さらに公務員に人材を確保するといったようないろんな角度から考えまして、この従来未解決になっておる分をどうするかということが、ことしの勧告実施していく態度を決めます中で非常に大きな問題になっていたところでございます。  御指摘がございましたように、来年度人事院勧告が出ましたならば、勧告が出ました分につきまして完全実施に向けてあらゆる努力をする、これは当然のことでございまして、それはもうその年その年、勧告を受けて完全実施に向けて努力をしていくということでございますけれども、五十七年度、五十八年度が非常に異例の措置でありましただけに、その問題をどうするかという内外からの強い御意見が寄せられております中で、来年度再来年度完全実施に向けて努力をしていくけれども、しかし財政状況などを考えてなかなか厳しいことも一面考え得るので、少なくともいわゆる従来積み残しておるという分について、人事院勧告制度建前からいくと確かにおかしな話ではあるけれども、三年をめどとして解消していくんだというこの最低限の、何といいますか、保証といいますか、決意といいますか、これだけは表明をしておく必要がある、こんなふうに考えまして、必ずしも行儀のいいことであるとは思いませんけれども、せめてそこに政府完全実施に向けて努力をしていくという、公務員皆様方への気持ちを表明しなければならぬ、こんなふうにぎりぎりのところで判断をいたしまして、官房長官談話の中に盛り込ませていただいた次第でございます。どうか意のあるところをぜひ御理解を賜りたいと思うのでございます。
  27. 小川仁一

    小川(仁)委員 政府の意のあるところは、そうしますと、三年をめど実施するということになると、これは来年度人事院勧告が全然無意味なことになります。  同時に、積み残しというお話をしておられますけれども、人事院勧告制度の中には積み残しという存在はないはずでございます。したがいまして、この段階的な実施といいますか、三年をめどといいますか、こういうものを人事院制度とのかかわりの中で考えますと、このような「来年度以降」という表現はまことに不適切であり、かつ現行制度を否定する、こういう要素があると私は信じます。したがいまして、政府がどのような意図をお持ちになって御苦労なさっているか、こういうことと現行制度をどのように尊重していくかということとは、おのずからそこに区別があってしかるべきと考えます。そういう立場から、現行制度がある中でなおかつ、今言った政府一つの意図的なものを公的に表現されるという形は非常にまずいことだと思います。またすべからざることだと思います。  したがいまして、この際、この公的談話の部分の「来年度以降」というものについて、特に来年度財政も、また政治状況もどう変わるかわからぬという状況の中でお話しなさるということは適切でないと思います。俗に来年のことを言えば鬼が笑うという話もございますが、鬼が笑うようなことを、しかも制度を否定するかのごときことを官房長官がおっしゃるということは不適切だと思いますので、この点についてひとつ官房長官、先ほどのあなたのお考えというものをどうこうという問題じゃなくて、現在制度の上からいって適切かどうかということについての御見解並びにこういう談話「来年度以降」についての云々という問題について、人事院総裁、この問題をあなたが御了解なさるとすれば、人事院自体の来年度の作業というのは何もなくなってまいります。したがって、人事院総裁のこれに対する決意、同時に、このことを直接取り扱う総務庁長官考え方、総務庁長官の所感の中には来年度以降は一つも触れておりませんが、ここにやはり食い違いがあると思いますので、この点についての総務庁長官のお考えをそれぞれお伺いしたいと思います。
  28. 藤波孝生

    藤波国務大臣 人事院勧告制度から考えまして、来年度以降のことに言及することが適切であるかどうかということにつきましては、私の談話の中で触れますまでに随分いろいろ検討もし、考えもし、悩みもしてきたところでございます。来年度は来年度勧告が出ました段階で完全実施に向けて努力をするというのが当然のことでございまして、その努力をしてまいりたいと存じます。ただ、今回の勧告実施に向けて態度を決定いたしますいろいろな各方面の御論議の中で、私が積み残しと申し上げたのではなくて、積み残し分についてというふうに各方面論議をされたわけでございますが、その分については一体五年かかって解消するのか七年かかるのかというような御意見まで出まして、随分各方面で御心配になっておられるという、そういう空気がございましたので、来年度完全実施に向けて努力するのは当然でございますけれども、少なくとも三年以内にこの問題の解消をするという政府決意と申しましょうか、努力目標というか、そういうところを明らかにしていくことによりまして、公務員皆様方に希望を持ってひとつそれぞれの執務を進めていただきたい、このように考えまして、どちらかといえば建前よりも本音のところをさらけ出して、こういうふうに政府考えておるのであるから公務員皆さん方もどうぞ頑張ってもらいたい、こういう気持ちを込めて談話を出した次第でございまして、どうかひとつ意のあるところをぜひお酌み取りをいただきたい、そのように心からお願いを申し上げる次第でございます。
  29. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 ただいま官房長官から詳しく政府の意のあるところをお答えを申し上げましたが、私も全く同意見でございます。  この官房長官談話内容をどうするかということは政府の中でもいろいろな議論をし、この方が職員の諸君にかえって安心感を与えるのではないかということで踏み切ったわけでございます。  と申しますのは、御案内のように、昭和五十四年から何らかの形で人事院勧告抑制措置が講じられておる、しかも人事院勧告は基本的に政府としては最大限尊重しなければならぬ、こういう立場があるわけでございますので、完全実施に向けて最大限努力をすると申し上げながら長い間完全実施が行われていない、しかも今日の公務員給与をめぐる客観情勢というものは、ことしも、また来年も当然客観的に予想をせられるところでございます。御案内のように、昭和六十五年までに財政の再建という目標を掲げておるわけでございますから、これは考えようによるならば、政府はいつも完全実施に向けて最大限努力すると言いながらも、公務員の立場に立てば、やはり財政の再建完了の年まで完全実施が見送られるのではないかといったような不安感を与える、私はこういう心配をしたわけでございます。  そこで、来年度についても当然人事院官民較差を調べた上で勧告をなさる、政府はこれを最大限に尊重して完全実施に向けて努力をしなければならぬことはもう当然でございますけれども、しかし従来のような、同じような政府考え方であっては不安感をかえって与えるので、客観情勢が厳しくとも、少なくともことしは一・四%ぐらい、いわゆる積み残しといいますか、言葉はこれは適切でないかもしれませんが、基本にはいわゆる過去の積み残しがあるわけでございます。そこで、少なくともその程度政府としてはどんな場合でも努力をするよという政府決意を表明することによって、おおむね、仮に来年実施ができなくても三年目には完全実施をしますよと言った方が職員の諸君に安心感を与えるのではないか、こういうことで官房長官談話の中に入れさせていただいたわけでございます。もちろん、職員の立場に立てば、来年、ともかくいつまでもいつまでも不完全実施じゃ困るじゃないかというお気持ち、これはよくわかりますけれども、しかし、同時にまた、今日置かれておる客観情勢についても十分お考えはしていただけるのではないか、かような意味合いであえて申し上げたわけでございまするので、その点はぜひひとつ皆さん方、そして同時に公務員の諸君も、政府の意のあるところを御理解をしていただきたい、かように思うわけでございます。
  30. 内海倫

    内海政府委員 たびたびお答え申し上げておりますように、人事院勧告というものは、これは私どもの全力を挙げて厳密な調査を行って政府及び国会に対して勧告を申し上げておるものなのでございますから、この勧告というものは、本当にこれはゆるがせにできない重みを持っておるものでございます。したがいまして、いずれの場合におきましても、これは政府において、あるいは国会において十分御検討の上ぜひ実現を期していただきたいものである、このことはたびたび申し上げておりますし、また私どもの勧告に際しての報告の中でも申し上げておるところでございます。この点は、どうなりましても私どもはこの答弁以外に答えようがないのでございます。  ただ、今政府の側からいろいろ御答弁がございましたように、政府においてもいろいろこの勧告を実現するための苦労と努力をされたということは、官房長官談話なりあるいは総務庁長官のお話を通じて私どもも承知いたしております。しかし、そういうものを乗り越えて、今度は、来年こそは本当に実現を期していただきたい、これをこいねがうのが私どもの真情でございます。
  31. 小川仁一

    小川(仁)委員 私は、どうしても今の官房長官並びに総務庁長官のお話を納得できません。それは、現在の憲法、国家公務員法、給与法の立場からいって、人事院制度の立場からいって、本音がどこにあろうが、やはり法律の立場、特に憲法の二十八条とのかかわり、これを含めて、どうしても納得できないわけであります。お一人お一人の政治家が持つ気持ち、そのことを否定するのではありません。しかも加えて、来年度の云々というお話をされておりますけれども、来年度の予算だって現在お聞きするところ、一%しか組んでいない。また、そうなりますと、来年になりましてその予算も含めてどれくらいかかる、これくらいかかるといったようなお話になる。  同時に、今の公務員状況というのは、御承知と思いますけれども、国家公務員でいいますと、来年四月までに長期の掛金が二・五%も引き上げられるわけでございます。そうなりますと、三・三七%以内の賃上げというものは実質手に入る何物もない、こういう実態もあるわけであります。そこへ、三年目には実施するんだから安心してやれというお話は、余りにも公務員に対して非情な物の言い方ではないか。その三年目だといったって、どういう予算措置でどういう形で現内閣が確約できるのか。現内閣は三年続きますか。そういう政治的な状態も考えますと、こういうお話、政治家個人としての気持ちという形での表明を公的にされるということについては、絶対納得できません。したがって官房長官、この公的談話についてこだわることなく、やっぱり制度上の問題としてはこれは言い過ぎであったとおっしゃることはできないでしょうか。
  32. 藤波孝生

    藤波国務大臣 御心配をいただいておりますが、繰り返して申し上げたいと存じますが、来年度は来年度人事院勧告が出されました段階で完全実施に向けて最大限努力をする、そういう決意を既に持っておるわけでございます。ずうっとそういう気持ち政府は取り組んできておるところでございます。先ほども申し上げましたように、不完全実施状況というのが五十七年度、五十八年度ずっときた、そういう非常にほの暗い感じ、受けとめ方を公務員方々がしていただいておりまして、そのことを非常につらく思ってきておるわけであります。隗より始めよという言葉で、こういう厳しい財政状況の中で公務員皆さん方にこの今日の置かれておる状況をよく御理解をいただいてひとつ頑張ってほしい、こういう願いを込めて従来態度決定をしてきたところでございます。  しかし、将来にわたってもずっと不完全実施状況が続いていくのではないだろうかというような随分暗い空気が漂う中で五十九年度態度決定を迫られたことになりましたので、先生御指摘のように、来年度以降のことについて触れるということがいいかどうかということについての随分いろいろな検討をいたしたのでございますけれども、来年度以降についても完全実施に向けて努力するということをきちっと踏まえて、そして、この今日の財政状況の中で、来年度も非常に厳しいものになろうとも、それにしても三年をめどとして今回までにきておりますこの不完全実施状況というものを解消するという目途を立てて進んでいくことにしよう、こういうふうな気持ちをどこかであらわしたい。そういうことであるならば、表立った官房長官談話で書かないで、例えば国会のこの御質疑などをちょうだいをして、政府としてどう考えているのだということで、こういう質疑の中でお答えをするということも一つの方法がなということもよく考えてみたのでございますけれども、やはり態度決定をいたしますときに公務員方々がどのようにお受けとめをいただくかということは非常に大事だと、こういうふうに思いましたので、将来にわたって希望を持っていただくような、そういう気持ちを言外にあらわすような表現で談話の中身に加えさせていただいた、こういうことになっております。それでよかったかどうかということにつきましては、今日もなお内心じくじたるものがございますけれども、今申し上げましたような意味で、公務員方々に希望を持ってひとつ仕事に取り組んでいただきたい、政府としても最大限努力をしてまいりますと、こういう決意を表明したものとしてぜひお受けとめをいただきますように御理解のほどをお願いをいたしたいと思います。
  33. 小川仁一

    小川(仁)委員 意見だけ申し上げます。  この問題は私としては現行制度上絶対納得できませんから、改めての機会にまた官房長官とこの問題を討議をいたしたいと思います。予定のお時間と思いますので、きょうは官房長官に対する質疑は以上で終わらせていただきます。  さて、今の問題、総務庁長官かねての御持論のようでございますが、これも、この問題の討議を後に残しまして、次に移させていただきます。  人事院に、国公法二十八条二項に「勧告」という言葉が使われておりますが、これは国会並びに内閣に勧告するのでして、先ほど人事院総裁は逆に、政府並びに国会にとおっしゃった。この認識が既にあなたの非常に間違った認識なんだ。条文には国会が先に書いてあります。  さて、国会に勧告するという制度は、日本の制度上この部分だけでございます。まことに特別な例でございますだけに、法制局長官おいでになっているかと思いますが、他に例を見ない国会に対する勧告というものに対して、どういう性格、どういう期待を持ってこの条文が入ったかということを法制局の立場から御説明願いたいと思います。
  34. 関守

    ○関(守)政府委員 お答え申し上げます。  先ほど来お話も出ておりますけれども、人事院勧告制度は、既に十分御承知のとおり、昭和四十八年四月のいわゆる全農林事件に関する最高裁判所の判決でも述べられておりますように、国家公務員の労働基本権の制約の代償措置一つとして重要な位置づけがなされているものでございます。  ところで、一般の国家公務員給与につきましては、これはいわゆる給与法定主義と申しますか、国民の代表により構成されております国会が原則として直接決定すべきものであるというような観点から、法律をもって定めるということになっておるわけでございます。したがいまして、御指摘の国家公務員法第二十八条等におきましては、その提案及び決定の権能をお持ちでございます国会と、それからその法律提案権を持っております内閣に対して、人事院給与改定等に関する措置勧告する、そういう仕組みになっておるわけでございます。  重ねて申し上げますと、非常に重要な機能を持っておるということからそういうふうに、確かに御指摘のように、この人事院の機能と申しますか、人事院勧告というのは非常に異例でございますけれども、それはそういう位置づけによるものだと考えております。
  35. 小川仁一

    小川(仁)委員 私がお聞きしたのは内閣に対する部分じゃなくて、国会に勧告するというのはあらゆる法律の中でこれ一つでしょう。したがって、国会に何を期待し、国会がどのようにこの勧告というものに対処すべきかという、勧告という制度の意義、性格をお聞きしているのです。国会においてです。
  36. 中島源太郎

    中島委員長 この際申し上げますが、政府の答弁は要領よく簡潔にお願いいたします。
  37. 関守

    ○関(守)政府委員 ただいま申し上げましたように、この勧告と申しますのは、労働基本権の代償措置ということで非常に重要な意味を持っているわけでございます。したがいまして、国会に勧告するということもあるわけでございますけれども、それを国会でどのように位置づけてお取り計らいになるかということは、私どもの立場でちょっと申し上げるのはいかがかと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、給与が法定されるという原則になっておりますので、したがいまして、法律提案なり決定をなされます国会に勧告がなされるということだと思います。
  38. 小川仁一

    小川(仁)委員 どうも質問に対するお答えになっていないようですがね。国会に対する勧告というのはこの例一つだとさっきから申し上げておる。法定主義というのは何も給与だけじゃありませんよ。しかも、人事院の権限の中には「報告」という条項もあり、さらに「勧告」とあえて使っている。この勧告の意義というのは、国会に何を期待しているのか。政府提案するのを審議するだけの期待であるならば、あえて「勧告」という言葉を使う必要はない。報告でもよろしい。また、内閣に対する勧告だけでもよろしい。それを国会にとあえて書いてあるこの文章の成立の意義を含めて、先ほどあなたが労働基本権の代償措置と言ったが、その代償措置を国会がどういう立場で受けとめることをこの法律が期待しているのか。国会がこれに対してどういう手続をとることを、あるいは対応することを期待しているのかという法律勧告の意味について私は質問している。  それからもう一つ、同じような公務員対象の中で仲裁裁定という形があって、これは国会の議決を要する、こういう形で、一方はある意味では非常に代償措置としての機能を発揮して、公務員の場合は代償措置としての機能が、現実に今行われているように、十分に発揮されていない、こういうことを考えてみますと、この「勧告」という言葉が実は仲裁裁定の議決事項と同じような意味を持って、逆に非常に大きなウエートを持っているのではないかと考える面もあるので、あえて、国会に対する勧告というものの国会の受けとめ方、国会への期待、国会がどのようにこれに対応するか、このことをきっちり御説明願いたい。きのうちゃんと政府委員説明してあるから、今みたいな答弁をいただくと思っていなかった。あなたがだめなら長官に出てもらいたい。
  39. 関守

    ○関(守)政府委員 先ほど申し上げましたように、国家公務員の労働基本権に対する代償措置一つといたしまして、非常に重要な位置づけを人事院勧告制度というものは持っているわけでございます。したがいまして、御指摘の国家公務員法の第二十八条等におきまして、法律提案権及び決定権をお持ちであります国会、それから内閣でも提案権を持っておりますので、内閣に対しても人事院勧告をするということになっているわけでございます。  この人事院勧告制度趣旨にかんがみますとどういう期待を法はしているのかということでございますけれども、勧告を受けました国会及び政府は、その制度が実効を上げていくことができますように最大限努力を尽くすべきであるということが当然に要請されているというふうに考えるわけでございます。国会においてどのようにその勧告をお受け取りになるかということは、私どもの立場ではちょっと申し上げにくいところでございます。
  40. 小川仁一

    小川(仁)委員 法律の中でただ一つの例として「勧告」という言葉を、しかも国会に対して行うということが存在するということは、それなりの意味があることだと私は思います。それが、先ほどからの御答弁ですと、普通一般の報告なりあるいは一般的なものの扱いと同じような形での御答弁しか返ってきません。時間がございませんからこれもここであえて論争いたしませんが、法制局でもう一度よく御検討願いたい。そして、来年の国会においては、国会に対する勧告という意味を大事に考えながら国会の中でもこれに対応する措置考えてまいりたいと思いますので、御検討をお願いして、法制局に対する質疑を終わります。よろしゅうございましょうか。検討していただけますか。
  41. 関守

    ○関(守)政府委員 私どもも御質問の趣旨を十分考えて申し上げたつもりでございますので、どういう御指摘であるのか、十分吟味を尽くしてないとすればなお検討はいたしたいと思います。
  42. 小川仁一

    小川(仁)委員 何のために政府委員が私のところへ来て物を聞いていくの。私は質問に対しては全部、こういうことをやりますということを申し上げておいて、あなた方に問題提起しているつもりなんですがね。こういうふうな形での御答弁をいただくとは思いませんでした。改めて次の機会に法制局長官においでをいただいて、この問題についての討議をいたしたいと思います。  さて、時間がありませんので端的にお聞きしてまいりますが、今回のこの俸給表についての法律的事項については、もう再三委員会でもお話しになっておられるからおわかりと思いますし、給与法、国家公務員法の立場もおわかりと思いますからそこまでは入りませんで、国家公務員法第六十四条の二項に俸給表を決める要素が書いてあります。一つは生計費、二つは民間における賃金、三つ目はその他人事院の決定する適当な事情、これを考慮して決められていると思います。そこで、総理府が今回の俸給表改ざんをいたしましたときに、これらの三つの要素が具体的に検討されたかどうかについてお伺いしたいと思います。
  43. 藤井良二

    ○藤井(良)政府委員 お答えいたします。  人事院俸給表を作成するに当たりまして、生計費、民間賃金等を考慮して俸給表を定めているというふうに聞いております。このうち生計費につきましては、その傾向を考慮して俸給表上の配分に生かしているというふうに私どもは聞いております。今回政府で作成しました俸給表は、閣議決定でも明らかにしておりますように、本年度人事院勧告で示された配分に従って引き上げ額を比例的に圧縮して作成したものでございます。
  44. 小川仁一

    小川(仁)委員 事務局では、人事院から出した生計費関係の資料をごらんになっていると思いますが、この資料の六十三ページに「東京における独身男子(十八歳程度)標準生計費」というのがございます。これは、独身男子一人一日当たり基準熱量を二千七百カロリーと決めております。それによってその他の費用を含めて八万七千二百五十円、こういう数字が出され、これが世帯人員別標準生計費の基礎にもなっているわけであります。  そうしますと、人事局としては、この生計費を全然問題にしないということになると、一体公務員は一日何カロリーおとりになれば適当かなんということを考えなかったのですか。結果として何カロリーぐらい公務員はとればいいかということを、この改ざんの際にお考えになりましたか。考えたら、その数字をお知らせ願いたい。
  45. 藤井良二

    ○藤井(良)政府委員 先生御指摘のように、東京における標準生計費というのは八万七千二百五十円になっております。人事院の方からお聞きいたしますと、人事院はこの男子の標準生計費、これに対応する号俸といたしましては八−三を考えているようでございます。八−三は人事院勧告によれば九万三千四百円でございます。今回、政府が提出いたしました俸給表におきましては、八−三が九万七百円になっております。したがいまして、この男子標準生計費よりも八−二の方が若干上回っているという結果になっております。
  46. 小川仁一

    小川(仁)委員 私は、こういう計算を人事院はなさっていると思って聞いたのですが、上回っているというのは改ざんした方が上回っているというわけですか。——そうすると、全体的に水準が、あなた方の方がこの世帯別の表を含めて上がっているというふうに御認識なさっているわけですか。その部分だけをおとりになっているが、私が聞いているのは、その資料の次のページに世帯人員別の東京の数字も出しているわけですね。八万七千二百五十円が二人になると十五万七千六百五十円、三人になりますと二十一万九百八十円というように、世帯別を出しておられる。この世帯別のポイントが全部、今度人事局で出したのが上回っておられる、こう認識してよろしいか。
  47. 藤井良二

    ○藤井(良)政府委員 今ここに詳細な資料を持ってきておりませんので、一概に言うことはできませんけれども、先ほど申し上げましたように、八−三のところでは上回っているということでございます。上の方につきましても、大体ほぼ見合っているのではなかろうかというふうに考えております。  それから、先ほどちょっと言われました何カロリーになるかという問題でございますけれども、ここまでは私どもの方では計算しておりません。
  48. 小川仁一

    小川(仁)委員 生計費というのは非常に大きな要素を持つわけです。これはもう藤井さん御存じと思いますが、マーケットバスケット方式によっていろいろ出しております。したがって、かなり精密な計算でございまして、その例を見ますと、例えば参考資料の二の中で、牛肉は十五グラム、公務員はそれだけしか食えないわけでございます。豚肉は四十グラム、鶏肉は二十グラム、こういう肉の種類まできちっと計算をして出してきているのです。これを、生計費の方はそこまで調査しませんというのは、あなたの方は、同じ俸給表をつくりかえるにしても、公務員には最低これだけは食わしてやりたいと、こういったようなことを考えておつくりになるのが至当じゃないでしょうか。  だから、月給をもらって、牛肉の十五グラムはなして、公務員は牛肉分を差し引けばちょうど生計費のカロリーが間に合うななどと考えなければならないような状況では、まことに困った状態だと思うのですよ。生計費は見ませんでしたで逃げるわけにはいかないと思うのです。基礎になるものが、こういう精密な生計費が存在するわけですから。知らなかった、見なかった、一律にやったという形で物を考えては、それは人事局としてまことに困った俸給表作成の仕事をなされたと思いますが、御感想はどうですか。
  49. 藤井良二

    ○藤井(良)政府委員 私ども、今回俸給表を作成いたします場合には、人事院の方からその配分の傾向等について詳しく聞くわけでございます。今先生が言われたような生計費への配慮の部分につきましても、人事院からいろいろと説明を聞いております。それでポイントになりましたのは、先ほど申しましたように一応人事院の方も八−二ということに置いておりますので、そこを基準にして我々は物を考えたわけでございます。  それで、全般的に見れば俸給表というのは人事院の配分傾向をそのまま比例圧縮するという形をとっておりまして、人事院の配分傾向を我々の方として変えるというような考え方は全然ございませんで、組合の方からは、縮小するのだから配分傾向も変わっていいじゃないかという議論がございましたけれども、我々といたしましては、あくまでも人事院の配分傾向というものをそのまま尊重いたしまして俸給表をつくったわけでございます。
  50. 小川仁一

    小川(仁)委員 そういうことになりますと、人事局がつくった案というのは、少なくとも法六十四条の俸給表という人事院が期待し、法律が期待しているものには合っていないということですね。
  51. 藤井良二

    ○藤井(良)政府委員 先ほど申し上げましたように、人事院俸給表をつくる際に生計費、民間賃金等を考慮しているということは当然でございまして、私どももその人事院のつくりました生計費、民間賃金等を考慮した俸給表を基礎にして、それをそのまま比例圧縮した。そういう意味においては人事院の配分傾向というのは生かされておりますし、その意味において生計費、民間賃金も十分に考慮してあると思います。したがって、六十四条の規定には違反していないというふうに考えております。
  52. 小川仁一

    小川(仁)委員 それ、違反しているんじゃないの。生計費自体がもう既に圧縮されている。民間賃金との幅も圧縮されている。その他の条件は今わかりませんけれども。当然のことながら、全体的に圧縮したということは、法第六十四条が期待しているもの、要求しているものを圧縮したのですから、やはりこれは六十四条違反だということになりませんか。
  53. 藤井良二

    ○藤井(良)政府委員 先ほどから申し上げておりますように、人事院勧告の中における生計費、民間賃金の考慮というものに対しては、我々も当然その配分傾向の中で生かしているつもりでございます。
  54. 小川仁一

    小川(仁)委員 多分水かけ論になりますな、これは。ただ、人事院の権限を侵したという面と、私はもう一つ俸給表をつくる際に公務員の生活というものを無視した、こういう批判は免れないと思います。これだけはぜひ認識をしておいてもらいたい。  そういう立場で抑えられた公務員は、実は今度退職なさる方があるわけですよ。そういう五十七年凍結、五十八年抑制、ことしも抑制でおやめになる方がございます。この方々は非常に大きなマイナス影響を受けまして、退職金あるいは年金に対して、個人的にそれぞれ期待権を失われたような感じで減額される方々が多いと思いますが、大臣、この人たちに対する運用その他の方法によって、今まで長い間公務員をやってこられた方々だけに、幾らかでも救済するという表現は適切でないかもしれないけれども、配慮をする方向、方針をお考えいただけないでしょうか。
  55. 藤井良二

    ○藤井(良)政府委員 お答えいたします。  今回抑制された期間内において退職される方について何らかの配慮をしろということでございますけれども、過去におきましても抑制あるいは時期おくれというようなことがあったわけでございます。この場合におきましても特別の措置はとっておりません。要するに、退職時の俸給によって計算するというこの原則は、残念ながら変えられないと思います。
  56. 小川仁一

    小川(仁)委員 そういうところでは原則をひどくきっちり大事になさる。とするなら、人事院勧告の方も原則どおり完全実施してもらえばいい。あなた方が原則を否定するからこういう問題が出てくるということをやはり考えてもらわなければならない。  しかも、これは人事院総裁にもお伺いいたしますけれども、この人事院の規則、いわゆる五十五歳、五十六歳、五十七歳、五十八歳というふうな昇給の延伸または停止は、皆さん五十五、六歳でおやめになる方が非常に多い時期に決まっているのです。六十歳定年になりました時期になってもこの規則が生きて、例えば十八カ月延伸あるいは二十四カ月の停止、こういった状態が一方では続けられている。六十歳定年という事態を迎えて、今後の課題としてこの部分は再検討の余地がございますか。
  57. 斧誠之助

    ○斧政府委員 人事院俸給制度を定めます場合に、民間の給与の配分状況も参考にしながらいろいろ考えておるわけでございますが、この五十六歳で昇給延伸、五十八歳から昇給停止という措置をとりましたのは、実は五十五歳を超す年齢層で官民を比較しました場合に、官の方が非常に高くなっておる、ここがいわゆるプラス較差ではなくてマイナス較差になっておるということから、公務部内の俸給配分を考えます場合に、そのマイナス較差分を若い層でしょって、較差が全体として総合較差として出ているというようなことを考慮しまして、実はそういう措置をとったわけでございます。したがいまして、今後もそういう民間の年齢別の給与支払い状況公務員の年齢別の給与支払い状況というものをにらみながら検討していく、こういうことになろうかと思います。特段に定年制ができたからそれをきっかけとしてどうということは、ただいまのところ考えておらないところでございます。
  58. 小川仁一

    小川(仁)委員 いろいろお聞きしましたが、政府態度は、先ほど来官房長官のお話でも、何か来年度以降の完全実施を否定なさるやのごとき状況の御答弁がございました。  改めて人事院総裁にお聞きしますが、そうなりますと人事院は要らないんじゃないですか。存在価値がなくなるんじゃないですか。人事院の立場からいっても、官房長官談話というものを人事院総裁は肯定なさるわけにはいかないと思いますが、その点についての総裁の決意を簡単にお聞きしたい。
  59. 内海倫

    内海政府委員 今までもたびたび答弁しておるところでございまして、勧告というもののでき上がる過程あるいはその持っておる意味というものを考えまして、人事院というものはそういうことのために全力を挙げて仕事をしておるところであり、これが果たしておる意義というのは決して少なくないと私は思います。しかし、その意義を一〇〇%実現するのはやはり政府において私どもの勧告を一〇〇%尊重していただくということにかかるわけですから、今私どもが申し上げることは、来年は必ず実現していただきたいということを政府にもまたお願いをし、順序は逆になりましたが、さらに国会におかれましてもそういう面で十分御検討いただきたい、こういうふうに思います。
  60. 小川仁一

    小川(仁)委員 もう私は、ILOの勧告等もありますし、こういう状況なら人事院制度というものを制度自体の中から取り払っていいと思います。  これは総務庁長官にも考えていただきたい。行政改革の方の担当の大臣でもございます。何にも意味のない人事院勧告を残すくらいなら、人事院勧告制度というものを廃止なさったらいかがです。財政財政という経済効率一本やりの今の政策にはかなりお合いになるんじゃないですか。そして、新たにILO等の勧告している問題を考慮しなければならない時期だと思いますが、長官、いかがですか。
  61. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 政府としましては、労働三権代償措置としての今日の人事院制度、人勧を最大限尊重していくというこの基本方針は守っていかなければならぬ。そこで小川さんがおっしゃるように、今までのようなことであっては意味がないではないか、こういう御意見でございますが、それは実際は私どもの立場は、国政全般との関連において完全実施に向けて最大限努力をする。私どもは、この人事院勧告があった際の扱い方というものについては本当に苦慮しているわけでございます。この苦慮しているということは、人事院制度というものが立派に機能を果たしておるではないか、私は逆にそう考えているわけです。したがって、今までの制度を改めるとかいうような考え方はありません。むしろそうじゃなくて、一日も早く人事院勧告完全実施するように政府としては最大限努力をするんだ、ここに重点を置いてやっていきたい、かように考えます。
  62. 小川仁一

    小川(仁)委員 もうお約束の時間が参りましたので、言いたいことの十分の一も言わないで質疑を終わりますけれども、ただ、人事院勧告制度ができましてからかなりの年数たちました。人事院おわかりと思いますが、勧告制度が完全に実施された回数というのは、何回勧告したうち何回実施されたか、御答弁願いたいと思います。
  63. 斧誠之助

    ○斧政府委員 昭和二十三年に第一回の勧告をいたしまして、以来三十回を超えると思いますが、四十五年から実施時期も含めて人事院勧告どおりの完全実施になりまして、五十三年まででございます。したがいまして、九年間でございます。五十四年から指定職につきまして実施時期をおくらせるという措置がとられまして、以来、勧告の抑制あるいは時期の延伸、こういうことが続いておるわけでございます。
  64. 小川仁一

    小川(仁)委員 自分のやった勧告が何回実施されているかわからないような人事院じゃ困りますな。少なくとも勧告実施された回数というのは十二回ぐらいでしょう。そうすると、一体制度として機能していると思いますか。昭和二十三年から人事院制度ができて、勧告実施されてない回数の方が圧倒的に多い。これで人事院制度が機能しているなんというふうな考え方は、私たちはどうしても承知できないのです。長官、おわかりでしょう。人事院制度ができてから勧告された回数のうち、完全実施された回数が実施されない回数よりも少ないんです。私の計算だと、実施された回数は十二回ぐらいだと思います。あるいはもう少しあるかもしれません。こうなりますと、不完全実施のために人事院が存在する、こういうことになりますよ。こういうことに対してさっきの総務庁長官の御答弁は、気持ちはわからないわけじゃありませんけれども、政府というものの立場からいってもう一考なさる必要があると思うので、改めてこういう事実を含めて来年度完全実施、これに対してどのような取り組みをなさるか。特に、まことに申し上げにくいが、官房長官の先ほどの来年度以降という問題についての見解もあわせてお伺いして、終わりにしたいと思います。
  65. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 しばしばお答えをいたしておりますように、私どもは、人事院勧告があればその都度完全実施に向けて最大限努力をしていくというこの基本姿勢は守らなければならぬ、私はかように考えておるわけでございます。  官房長官談話については、小川さんのような御批判もあろうかと思いますけれども、問題は、完全実施に向けて努力をすると毎年言いながら五十六年以来抑えておるではないか、これはいつまで続くんだという職員の不安感を払拭するために、おおむねいかなる場合にあっても本年を含めて三年間で政府としては完全実施をやるという方針を示すことによって一般職員に安心感を与えたい、こういう考え方でああいう声明を出していただいたわけでございますので、政府の意のあるところはぜひひとつ御理解を賜りたい、かように考えるわけでございます。
  66. 小川仁一

    小川(仁)委員 答弁、納得いたしませんが、時間が来ましたので一応私の質疑を終わります。
  67. 中島源太郎

    中島委員長 この際、暫時休憩いたします。     午前十一時四十九分休憩      ————◇—————     午後零時五十一分開議
  68. 中島源太郎

    中島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。午前中の小川仁一君の質疑に関連して、元信堯君。
  69. 元信堯

    ○元信委員 私は、政府の連年にわたる人事院勧告の凍結という、不当、でたらめきわまる措置が、一体国際的にはどういうふうに評価されておるのか、政府はそれをどう受けとめているのか、さらにまたILOの報告、こういうものをどういうふうに理解しているかということについて質疑を行いたいと思います。  まず、八二年の人勧凍結について我が国の労働側はILOに提訴をして、それに対しては結社の自由委員会の二百二十二次の報告というものがありました。これは理事会で採択になりましたね。その後八四年二月には八三年分の抑制についても提訴がありました。これについても同じような措置があったというふうに思います。この内容について、結社の自由委員会勧告並びにこれを受けた理事会の報告、こういうものについて政府はどういうふうに理解をしておるのか。特にこの二つの報告の内容にはかなり開きがある、そのことについてどういう理解をしているか、まずそこから承りたいと思います。
  70. 平賀俊行

    ○平賀説明員 お答えいたします。  御質問のように、昭和五十七年の人事院勧告の取り扱いに関しまして関係組合からILO結社の自由委員会に申し立てがございました。それに対してILOは、昭和五十八年三月に二百二十二次の報告をILOの理事会で採択し、その後昭和五十八年の人事院勧告の取り扱いについてことしの三月に提訴があり、これにつきましては、先般の十一月の理事会で同じく結社の自由委員会の報告があり、これを採択いたしました。  それで、その間に、実はことしの三月にILOの条約勧告適用専門家委員会で同じような案件について審査がなされ、今度の結社の自由委員会の報告は昨年三月の二百二十二次報告とことしの専門家委員会の報告、両方を引用してこれについてILOの理事会に報告したわけでございます。  その一番肝心な部分、骨子というのは、二百二十二次報告もそれから専門家委員会の報告もい労働基本権を制限されている代償措置としての人事院勧告実施されていないということについて論及をし、日本政府に対してこれらの人事院勧告完全実施するよう強調したもの、いずれの報告もそういう立場でなされているというふうに理解をしております。
  71. 元信堯

    ○元信委員 結社の自由委員会の二百三十六次報告というのは八三年分ですね。これの提訴に対する委員会としての勧告でありまして、この二百七十五項の(a)にこういうことが書いてあります。ちょっと読み上げますね。「今回のケースのように、不可欠業務もしくは公務において団体交渉権ないしストライキ権などの基本的権利が禁止ないしは制限の対象とされている場合には、当事者があらゆる段階で参加でき、そしてその裁定が一旦下されたならば、完全かつ即時実施される、迅速かつ公平な調停及び仲裁手続きなどの適切な保障が、自らの利益を擁護する不可欠な手段をこのように奪われている労働者の利益を十分に守るために確保されるべきである、という原則を本委員会は想起する。」こういうふうに書いてあります。  このところは二百二十二次の報告とはかなり内容が違うのじゃないか。単に人事院勧告完全実施せよということではなくて、今の我が国人事院勧告制度がこのようにたび重なる連年の凍結あるいは抑制、こういうことに対して有効に機能し得ないという段階にあっては新しい制度が必要なんじゃないかということをこの委員会勧告をしている、こういうふうに思うのですが、ここのところを労働省は、今のお話ですと、二百二十二次報告と二百三十六次の報告は実質上同じで、人勧を完全実施すればいい、こういうふうに理解をしていると言いますが、いかがでしょうか。
  72. 平賀俊行

    ○平賀説明員 今先生がお読みになった部分、多少言い回しは別にして、今度の二百三十六次報告の結論の冒頭の部分でそういう表現がございます。ただ、その表現につきましては、ILOのいわゆる代償措置に関する報告、これはかって何回もございますが、その場合におおむね同じような表現がとられておりまして、二百二十二次報告につきましてもその百六十九項の(a)というところで、「委員会は、本件のように、不可欠な業務又は公務において団体交渉権又はストライキ権のような基本的権利が禁止され又は制限の対象となる場合には、その利益を守るための必須の手段をこのようにして奪われている労働者の利益を十分に保護するため、迅速かつ公平な調停及び仲裁の手続きのような適切な保障が確保されるべきであり、その手続きにおいては、当事者があるゆる段階に参画することができ、かつ、裁定が一旦下されたときには完全かつ迅速に実施されるべきであるとの原則を想起する。」と、同じ表現が実はございます。
  73. 元信堯

    ○元信委員 それでは、その部分について政府は一体どういうふうに受けとめているのか。完全実施をされれば、そういう今平賀審議官がおっしゃったところについては、政府としてはそのことによってこれが達成される、こういうふうに考えているわけですか。
  74. 平賀俊行

    ○平賀説明員 公務員人事院勧告に基づく給与の取り扱いというのがここで言っております代償的な措置というふうに当たり、それにつきましてはやはりILOの原則に従えば、迅速かつ完全に実施されなければならないということをILOで言っておるというふうに理解しております。
  75. 元信堯

    ○元信委員 そんなことを聞いているんじゃなくて、今の我が国人事院制度がこのILOが要請しているような制度であるかどうか、そういう認識を政府は持っているのかということ、そこを聞きたいのです。
  76. 平賀俊行

    ○平賀説明員 そういう制度であると認識をしております。
  77. 元信堯

    ○元信委員 今読んで聞いてもらったとおりでありますけれども、我が国人事院制度が、「当事者があらゆる段階で参加でき、」しかも、これは繰り返して読むのは省きますけれども、労働者の利益を十分に守るために当事者として参加できる制度、これを求めているわけですね。こういう制度になっているという政府の認識だ、こういう驚くべき見解だと私は思いますが、人事院総裁、いかがです、そういう制度ですか、あなたの人事院というものは。
  78. 内海倫

    内海政府委員 人事院につきましては、今までもたびたび御説明申し上げておるように、いろいろな機能は持っておりますけれども、勤務条件、とりわけ給与等に関しましては、労働基本権を制約されておる公務員についての給与あるいはその他の勤務条件につきまして、この制約に伴う代替の機関、したがってまた代償措置として機能を発揮しておるわけでございまして、この人事院勧告機能というものが十分に働くということが、労働基本権を制約されておる公務員に対するいわば当然の代償であろう、こういうふうに思います。  先ほどおっしゃいましたILOの報告もまたそういう点を指摘しておるのでありますから、政府としては、何よりもそういうふうな人事院の機能を機能として尊重し、勧告を意義あるものにしていくどいうことが一番大事なことではないか、こういうことが私の所見でございます。
  79. 元信堯

    ○元信委員 そういう一般的なことを承っているのではなくて、ごく具体的なことを聞いているわけですよ。  今の人事院制度というものが、私が今申しましたように、「労働者がその雇用条件の決定に参加しうる、公務における賃金および労働条件の決定手続きを確立することを政府が可能ならしめるよう、」こう希望しているわけですね、結社の自由委員会というのは。翻訳の問題は後でちょっと時間があったらやろうかと思いますが、おおむねそういうことを言っている。そういう希望に沿うような今の人事院制度になっているかどうか、直接参加して労働者の意見が迅速かつ公平に、しかも完全に実施される、そういう制度になっているかどうか、そこのところを承っているわけですからね。ひとつ明確に言ってください。  それでは、聞き方をちょっと変えますが、ILOが求めているような制度、それを我が国のほかの制度で置きかえてみるとどういうふうに考えられるか。そういうことでちょっと答弁してください。
  80. 内海倫

    内海政府委員 御質問は大変的確な御質問なんですけれども、答弁をいたしますには非常に答弁しにくい問題でございます。  私どもは、たびたび申しておりますが、人事院としては、長い経験を踏まえ、精緻な調査とそしてまた分析とを行いまして勧告というものを行っておる。その過程におきましては、公務員考え方、要望というふうなものは、あるいは組合の皆さん方を通じ、あるいは各省の人事担当者の意見を徴し、あるいは民間のいろいろな実態を把握して、その上で勧告を行っておるわけでございますから、少なくとも勧告の中には基本権を制約されておる公務員の意思、要望というふうなものは的確に織り込んである、私どもはそういうふうに確信をいたしております。  では、その勧告というものをさらに実現するに際してどういうふうに公務員の参加があるのかという問題になりますれば、私どもの漏れ聞く限りにおいて、しばしば官房長官なりあるいは総務庁長官なりが会談をされ、いろいろ議論をされておりますので、そういう面からは公務員の団体の皆さん方の意向というものもいろいろ伝わっておる。さて、それをどうされるかということになりますと私の答弁の限りではございませんのでいたしませんが、そういう意味で先ほど申しましたように御質問に的確にお答えするということは非常に困難でございますが、そういう御質問に対する私の答弁し得る限度において御答弁を申し上げました。
  81. 元信堯

    ○元信委員 ここでは「労働者がその雇用条件の決定に参加しうる、」ということを言っておるわけです。参加するということは、第三者機関である人事院に対して、あるいは陳情、要望という形で意見を述べるとか、あるいは、今公務員の労働団体が政府と話をする場合も団体交渉ということで話をしているわけじゃありませんね。形式的にはどういうことになっていますか、総務庁長官
  82. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 私どもは腹を割ってお互いの意見を述べ合って、その意見の交換の中から私どもとしては組合の諸君の御主張あるいは御要望等をできる限り尊重していこう、こういうことで、公式、非公式を通じて密度の濃い話し合いをいたしておるのでございます。
  83. 元信堯

    ○元信委員 承っているのは、腹を割っているだとか密度が薄いとか濃いとか聞いているのじゃなくて、今政府公務員の労働団体の話し合いというのが対等の労使交渉といいますか、団体交渉の形になっているかどうか、そこのところの認識を承っておる。
  84. 藤井良二

    ○藤井(良)政府委員 先生御承知のように、公務員の勤務条件というのは法定されることになっております。いわゆる勤務条件法定主義をとっているわけでございます。したがいまして、最終的には公務員の勤務条件というのは国会の場で審議され、決定されるという方式をとっております。  それで、私どもといたしましては、人事院勧告を受け国会に法案提出する際に、そのことも職員参加には至らないかもしれませんけれども、いずれにしても勧告を受けて国会に法案を提出する際にいろいろと組合の御意見を承り、それをできるだけ反映するように努力しているところでございます。いずれにしても……(元信委員「法的にはどうなんだ」と呼ぶ)  法律的に申し上げますと、先ほど申し上げましたように、公務員の勤務条件というのは勤務条件法定主義をとっております。したがいまして、最終的には国会でお決めになるわけでございまして、政府が勝手に決めることはできません。したがいまして、政府としては組合の御意見を十分に反映しつつ法案をつくって国会に提出し、国会で御決定願っているわけでございます。
  85. 元信堯

    ○元信委員 私の聞いていることとどうも答弁が食い違って困るのですが、組合の意見が十分反映されるようにしている、こういうお話ですが、それでは政府は、ことしで四年になりますか、連年にわたる抑制、凍結、こういうものが十分組合の意思を反映したものだという認識ですか。
  86. 藤井良二

    ○藤井(良)政府委員 先ほど申し上げましたように、私どもの場合は公企体の場合と異なりましていわゆる団交ではございません。ただ、団交ではございませんけれども、人事院人事院勧告をつくる際に、また政府が法案をつくる際にも、十分組合の意見を取り入れられるものは取り入れるように、できるだけ努力してやってきているということでございます。
  87. 元信堯

    ○元信委員 少しずつ食い違うのですな、聞いていることと答弁が。ですが、今おっしゃいましたように、公務員職員団体と使用者との交渉は団体交渉ではないということですね。つまり、労使対等の立場に立って話をしているのではなくて、あくまで法定主義ということで政府が法案を提出する、国会がそれを決定する、その過程でせいぜい職員団体の意見を聞きましょう、こういうわけですね。これがILOが言っている雇用条件の決定に参加したということになると政府はお考えですか。
  88. 平賀俊行

    ○平賀説明員 ILOでは、公務部門に限らず、たくさんの加盟国のいろいろな法制度について原則といいますか、それを包括的に表現をする。したがって、その原則の実現方法というものは各国の実情に即したやり方で差し支えない。この文字を狭く解釈をしてそのとおりに、そのままやるということではなく、特に公務部門の場合に、例えば団体交渉という形でなければならないということを規定したわけではない、こういうふうに理解をしております。
  89. 元信堯

    ○元信委員 それでは、なぜことしILOがわざわざこんな報告を採択したかということについて、政府はどう思っているのです。ILOは日本政府措置で結構だと思っているのにこういう報告を採択したということについては、日本政府は、何ら今のやり方で問題はない、意の赴くままにことしは凍結したり来年は抑制したり、そんなことがなされている、それでILOの要求したことにぴったり合っている、こういうふうに考えておるわけですか。
  90. 平賀俊行

    ○平賀説明員 今回の報告では、(b)の部分で「委員会は、一九八三年度において再び人事院勧告が完全には実施されなかったことに遺憾の意を表明する。」こういうことになっております。したがって、ILOの原則が完全に実施されているというふうにはILOは考えておらないわけでございます。
  91. 元信堯

    ○元信委員 後半の部分ですよ。時間の関係もあるから余り同じことを言わせないようにしてもらいたいのだけれども、二百七十五項の(b)の前半に今あなたがおっしゃったようなことが書いてある。それはそうです。しかしその後に「かつ労働者が」云々、その後、こういうふうにしなければならぬと「固い希望を表明する。」こういうことになっていますね。そのことについて、もう今、我が国人事院制度で十分機能しているにもかかわらずILOがなぜこういうこと空言ったかということについて、政府はどういうふうに理解しているのです。
  92. 平賀俊行

    ○平賀説明員 二百七十五項の(b)の後段の部分は、前段に「委員会は、第一一六五号事件において本委員会が到達した結論及び一九八四年にこの関連で専門家委員会が行ったコメントに対し政府の注意を喚起し、」ということになっております。そこで、専門家委員会のコメントというのはことしの三月にILOの条約・勧告専門家委員会でまとめられたものですが、「委員会は、これらの事項に関して総評が提供した詳細な情報の全てに慎重に留意した。委員会は、経済的な危機又は困難の時期にあっては、政府が賃金決定の通常の手続に制限を課することが必要であると判断する場合のあり得ることを十分認識しつつも、非現業部門における公務員(すなわち公共企業職員以外の全ての国家公務員及び地方公務員)について、ストライキ権が否認されているのみならず、その交渉能力も相当程度に制限されている本件においては、委員会は、人事院勧告が完全に実施されることがなおさら重要であると考える。委員会は、そのような労働者の基本的な労働組合権に対する制限を維持するのであれば、政府は、条約(第九十八号条約)に規定されている保障がその対象となる公務員に十分に適用され得ることを確保するため、公務における賃金及び労働条件の決定のための手続並びに仕組みを再検討するであろう、との希望を表明したい。」この表現、これを前段に引用して、後段の部分で、したがってこういうような労働基本権が制限されている場合には少なくとも人事院勧告完全実施されることが極めて重要である、そういう前提のもとに、人事院勧告実施されていないという状態では制度についての再検討が必要であるのではないか、こういうことを言っております。その関係の部分をここで引用している、こういうふうに理解しております。
  93. 元信堯

    ○元信委員 聞いていることにはっきり言いなさい。要するに私が聞いているのは、今あなた方は人事院勧告完全実施されない状態にあるわけですけれども、そういう状態で人勧を完全に実施しなさいとILOが言うのは当り前ですね。当たり前だけれども、その後段に、今言うような手続が確立されるように「固い希望」を表明しているわけです。そのことについて政府は、今人事院勧告制度がありますよ、完全に実施していないことはまことに遺憾ではあるけれども、完全に実施さえすればこういうものは必要ないと考えているのか、そこのところを聞いているのですから、そんな関係ないことをごちゃごちゃ引用せずにはっきり言いなさい。
  94. 平賀俊行

    ○平賀説明員 ILOは人事院勧告が完全に実施されることを求めている、完全実施されなければ再検討することが必要だ、逆に言うと、完全実施されておってもこういうことが必要であるということは言っていない、こういうふうに理解しております。
  95. 元信堯

    ○元信委員 そういう読み方が一体どうやったらできるのか、私は不思議で仕方がない。  これは長いけれども読みますよ。しようがない。  (b)は、「本委員会は一九八三年の人事院勧告が再び完会実施されなかったことに遺憾の意を表明する。従って本委員会は、一一六五号事件において到達した結論および一九八四年にこれに関連して専門家委員会が行ったコメントにたいし、政府の注意を喚起し、そして、労働者が現在享受していない基本権にたいして、これらの労働者に適切な代償を与え、かつ労働者がその雇用条件の決定に参加しうる、公務における賃金および労働条件の決定手続きを確立することを政府が可能ならしめるよう、本委員会は固い希望を表明する。」こう言っている。  あなたの言っていることと全然違うじゃないですか。人勧が完全に実施されなかったことは極めて遺憾だ、こんなものはだれでも遺憾だと言うのです。しかし、それだけではなくて、もうこういう事態が連年にわたって続いているわけですから、日本はそういう、今みたいな人勧のように第三者機関であるということと同時に、これは後から人事院総裁にも伺いますが、迅速かつ公平に、完全かつ即時に実施されることが担保されていなければ困ると言っているのです。そういう制度に早く移行すべきじゃないかと明瞭に書いてあると思うのです。  そこで、今度は人事院総裁に伺います。今読みました二百七十五項の(a)の方ですが、そこにさっきのようなことが書いてあるわけですが、今の我が国人事院勧告制度人事院制度というものは、勧告が下されたならば、裁定が下されたならば完全かつ即時に実施される担保がある制度だというふうにお考えでしょうか。
  96. 斧誠之助

    ○斧政府委員 公務員給与の決定につきましては、公務員法二十八条で、国会がその変更を行うことができるという規定でございます。人事院はそれに対して勧告を怠ってはならない、こういうことですが、公務員につきましては、最高裁判決にもありますように、全体の奉仕者という職務の特殊性から労働基本権が制約されることもやむを得ない、ただし、この場合はそれに見合う代償措置がなくてはならない、そういう必要から人事院設置されているんだということを最高裁の判決では言っておるわけでござざいます。ILOも最高裁判決を引用しまして報告を行っておるわけでございますが、まさに最高裁判決の言っているとおりである、人事院勧告を尊重し、迅速に実施する、こういうことが基本権を制約された公務員に対する補償措置になるんだ、ぜひともそれを迅速かつ完全実施しなさい、これがILOの変わらぬ姿勢でございます。  人事院としましては、基本権が制約された場合に果たして公務員給与はどういうことで決めていけばいいのかということになりますと、公務員給与の絶対的基準を求めることはなかなか難しいわけでございまして、第三者機関である人事院というものを設置して、そして客観的な資料に基づいて勧告を行う。そういう勧告になっておりますのは、先ほども申し上げましたように国会で最終的にお決めになるという、その国会を拘束していいかどうか、こういうことの重要な問題にぶつかるものでございますから勧告という制度になっておるわけでございます。  そういう意味で、ILOの報告、それから最高裁の判決というものも当然勘案していただかなければなりませんし、それから公務員制度本来の趣旨、それも理解していただきまして、そして人事院勧告最大限尊重していただく、こういうことをお願いしたいということを繰り返し申し上げておりますし、それから、ILOで今回こういう手続上の問題が提起されたり、それから(a)項では「信頼を確保しているかどうかについての疑問を表明しなければならない。」ということも述べられておるようなことでもございまして、人事院勧告が非常に長期にわたって完全実施が行われないということになると、各方面において果たして人事院勧告制度がこのままでいいのかという議論が大変起こりますよ、ですからひとつぜひとも勧告完全実施していただきたい、こういうことを終始お願いしておるわけでございます。
  97. 元信堯

    ○元信委員 問題は、今、斧さんのお話にもありましたけれども、人事院制度勧告であって拘束力がない、ここにあるわけですね。ILOが求めておるのは、勧告をして、その一方の当事者である政府財政事情その他のことを言い立てて、それも余り客観性があるとは言えぬですね。ただ政府の都合だけ、使用者の都合だけを言い立てて労働条件を値切るというようなことがあっては困る、こういうふうに考えるのが今日の国際的な常識だと思うのです。ILOは、そういう観点に立って勧告をしている、報告をしている、採択していると考えるわけですが、人事院、それで間違いないでしょうね。
  98. 斧誠之助

    ○斧政府委員 ILOでは、人事院勧告の抑制あるいは見送りということが続いている状況というものを非常に異常な事態、こういう見方をしておるのであろう、こう私どもは受けとめております。そういう中で、昨年の場合も完全実施でなかった、そういう継続した状態の中で非常な憂慮を表明しているのではないか、こういうふうに受けとめておるわけです。
  99. 元信堯

    ○元信委員 制度に対する憂慮ということですね。
  100. 斧誠之助

    ○斧政府委員 そういうことでございます。
  101. 元信堯

    ○元信委員 単に勧告完全実施されないということじゃなくて、これは制度に対して、こんな制度でいいのかというふうにILOは憂慮している、これは今人事院からお答えのあったとおりです。  そういうふうにこの報告は理解すべきだと思いますが、政府の方はどうです。
  102. 平賀俊行

    ○平賀説明員 人事院勧告完全実施されないような状態が続くならば制度に対する憂慮に言及している、こういうふうに理解しております。
  103. 元信堯

    ○元信委員 午前中の論議ですと、もうことしで、今政府提案しているような給与法がそのまま通るということになると、四年目ですね。四年目というか、指定職に対するものを入れれば五年目ということになります。  それで、官房長官も後藤田さんも盛んにそういうことを言われているのですけれども、三年がかりだということになると、あと二年ですね。すると合計で七年になりますか。こういうずっと何年も何年も抑制をしているというようなことになりますと、今政府がおっしゃったように、平賀さんがおっしゃったように、ILOとしては、こういう制度ではだめだ、こういうふうに断ぜざるを得ないところに来ているというふうに思います。  そこで、政府はILOの勧告、報告というものを一体どういうふうに受けとめられておるのか。毎年毎年このことが日本は問題になっておるわけですね。しかも、単に勧告をどう扱うかだけじゃなくて、制度そのものにすら立ち入って言及されている、こういう国際的な状態について一体どういうふうに政府は受けとめられておるか、御答弁願います。
  104. 藤井良二

    ○藤井(良)政府委員 今まで労働省の方から御説明のあったように、ILOの結社の自由委員会の報告あるいは専門家委員会の報告あるいは総会の報告、そういった中でILOが言っていることは我々も十分に理解しているわけでございまして、そのためにも我々としては人事院勧告完全実施に向けて最大限努力を尽くさなければならないというふうに考えております。
  105. 元信堯

    ○元信委員 そんなことじゃなくて、制度の問題にまで踏み込んでこれではだめだと言っているのですよ。しかも政府のさっきの答弁では、あなたたち御自身がまだ当分やらないと言っているのでしょう。努力はするけれども実施はしない、ことしを入れて向こう三年間でやるということは政府自身が言っていることですよ。それで完全実施のために努力すればいいというのはどういうわけですか。ちゃんと答弁し直してください。
  106. 藤井良二

    ○藤井(良)政府委員 先ほど官房長官あるいは総務庁長官の方から御答弁がありましたように、何も来年度完全実施をいたしませんとは言っておりません。来年度におきましても完全実施に向けて最大限努力をいたしますということを申し上げているわけでございます。ただ、仮に完全実施できない場合でも、本年度埋めた較差分ぐらいは埋めましょうという物の考え方でございます。
  107. 元信堯

    ○元信委員 よくそんなことが言えるね。さっきの御答弁を今思い返してみると、ことしも財政状況は厳しいですよ、ことしがわかって来年がわからぬわけがないから、恐らく来年も厳しいでありましょう。後藤田さん、そう言いましたね。言ったでしょう。だからそれを敷衍していけば、当然来年も完全実施はできませんが、しかしそれじゃ余りに申しわけないから残りの三分の一はまたやってあげましょう、こういうことだから全国の公務員諸君は安んじて黙って働け、こういうことをおっしゃったわけだ。それを今政府委員は、来年も実施しないということは言っていないという。それはちょっと閣僚の答弁の上を行ったことになりはせぬですか。後藤田さん、どうですか。
  108. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 いや、別段人事局長の答弁も私の答弁とちっとも変わってないのですよ。午前中にお答えしたように、政府としては来年も勧告があれば完全実施に向けて最大限努力をいたします、こう申し上げておる。万一できない場合でも、そこらで将来の見通しをつけたつもりだ、こういうことなんですね。  そこで、先ほど来の御質疑を聞いておりまして、ILOの報告はやはり私どもも十分配意しなければならぬ報告書だと考えております。ただ、ILOの五十八年度における政府の処置についての報告書というものは、いつまでも人事院勧告完全実施できないという状況は遺憾だ、完全実施を日本政府に対して強く求めておるんだ、私はそこに基本があるのだと思うのですね。制度そのものについては、国内的に言えば、たしか第三次の行政審議会、それから第二次の臨時行政調査会においても、今日の人事院勧告制度は守っていくべきであるという御意見が出ておりますし、政府としてもこの制度は守っていこう、こういう基本方針を持っておる。ILOも、かつてドライヤー勧告というものがございます。これは向こうからお見えになったように私は記憶しておるのですが、その際も、今日の日本の給与決定方式を容認していらっしゃるのです。私はそれが基本にあると思う。ただし、最近のように人事院勧告が毎年毎年不完全実施では困るよ、できるだけ完全実施するように日本政府努力すべきではないのか、ここに基本を置いた報告書であると私どもは理解しておりますので、午前中からお答えしているような今回の決定をして一日も早く完全実施をやりたい、こういうことでございますので、御理解を願いたいと思います。
  109. 元信堯

    ○元信委員 僕に言わせれば、本当に言っていることが汚いのだよ。あなたたちは言葉の上では努力をすると言うが、努力というのは実らなければ努力にならぬのですよ。幾ら言葉の上で努力してもらったって、上がらなければ何にもならない。そうでしょう。今では国民、特に公務員の中で、政府努力をすると言うことを信用している人は一人もいない。努力をしてそれがだめでもこれだけはやりますということをあなたたちは盛んに言っているわけですけれども、もうこっちの努力の方は相手にせずにこっちで安心せよ、こう言っている。そうでしょう。最低これだけはやってやるから安心せよ、そう言ったじゃないですか。こんなことを言っていると、今度は「努力」という言葉が笑い物になりますよ。「できもせぬことを言うことを努力と言う」こういう新たな定義ができはせぬかと僕は心配するのです。そういう意味で後藤田さんの名前が歴史に残るのではないかと思うんだな。「努力」という言葉に新しい意味をつけた。やらないということを、今からやらないつもりのことをそこまでの間つなぐためにごまかすのが努力だというのでは、どうしようもないですね。  このことばかり言っておっても先に進みません。私は改めて指摘しておきたいのは、今、日本を取り巻く国際環境というのは甚だ厳しい。特に貿易摩擦等について、従来から日本の低賃金・長時間労働ということが言われているわけですね。それの一つの根拠として、公務員に対して刑事罰まで加えて労働基本権を制約して、そうしてその代償措置政府の都合によって適当にサボっておる。値切っておる。奴隷労働だと言うのですよ。それに対してILOは、完全実施は当たり前のことであって、完全実施できぬような制度であるなら制度そのものを本来の姿、労働基本権の制約と言うなら労働者の参加がある、しかも下した裁定については勧告しかできませんということではなくて、ちゃんと法的に拘束する制度にしなさいということを言っているわけです。これは世界の世論というものが、我が国の労働慣行、労働制度公務員制度に対して極めて厳しい見方をしているということです。  それをさらに敷衍して言えば、我が国の従来からある低賃金・長時間労働に対する批判に一つの大きな根拠を与える、言うならばそのきっかけを政府が与えている、こういうふうに言わざるを得ないと思うのです。そういう意味からも、毎年ILOにこういう問題がかけられて、しかも政府に対して厳しい勧告がその都度採択されている事態というのは、国際的には極めて恥ずかしい事態であろうと思います。ですから、これを早急に政府の責任において解消しなければならぬというふうに思うわけです。  ちょっと話を変えますけれども、ことしは四月四日に政労交渉をやって、そこで政府から、人事院勧告を完全に実施するように努力をする、こういう態度の表明がされて、労働側もそれを受け入れたような形になって一応の合意を見たということになっておるわけです。そして政府は、八三年の分のILOに対する労働側の提訴に対して、既にこういう政労交渉が持たれて、それがますます発展することを期待をし、そうして最終的には必ず労働組合との間に合意が成立するものと期待しておる、こういうことを言いましたね。その後の経過について、一体どういうふうになったのか、ちょっと御説明を願いたいと思います。
  110. 藤井良二

    ○藤井(良)政府委員 四月四日に人事院勧告、仲裁裁定に関する政労会見が行われたことは事実でございます。この中で、政府としては、従来から申し上げておるように、労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度及び仲裁裁定制度を維持尊重するとの基本姿勢を堅持する、昭和五十九年度人事院勧告及び仲裁裁定が出された場合には、この基本姿勢に立って完全実施に向けて誠意を持って取り組む、なお労働団体とは従来どおり誠意を持って話し合うという基本的な考え方をお示しいたしまして、具体的には、出された段階で政府部内のいろいろな意見を踏まえて総合的に判断して決定することになるであろうということを、この政労会見では言っているわけでございます。その後、私どもとしては組合とも何回も会見をいたしまして、それで今回の結論に達したわけでございます。  本年度人事院勧告の取り扱いにつきましては、人事院勧告制度を尊重するという基本姿勢を堅持しつつ完全実施に向けて誠意を持って取り組んできたところでございますし、今回の決定も、厳しい客観情勢の中で政府としてなし得る最大限努力の結果であるというふうに考えております。したがいまして、四月四日の政労会見におきまして関係団体に申し上げた政府の基本的な考え方に反しているとは考えておりません。     〔委員長退席、石川委員長代理着席〕
  111. 元信堯

    ○元信委員 その後、関係団体と誠意を持って交渉したと言うのですが、その交渉の内容をもう少し詳しく答弁してください。
  112. 藤井良二

    ○藤井(良)政府委員 ちょっと回数は忘れましたけれども、総務庁長官官房長官あるいは私ども、組合とも何回も会っております。それで、ぜひ完全実施をしてくれというのが組合の方の要求でございましたけれども、この点については非常に難しいんだというようなことで、財政事情その他のことを御説明申し上げました。組合は、例えば共済組合の掛金の問題であるとか公務員の士気の問題であるとかそういったことについていろいろ言ってきましたので、そういうことにつきましてはこれを聞き取りまして、総務庁長官の方から給与関係閣僚会議の中でいろいろと申し上げて検討してきたような次第でございます。
  113. 元信堯

    ○元信委員 結局あなたたちは一方的にそういうことを言っただけで、ILOに対しては、組合との間で合意が成立することを期待するというようなことを言っているわけでしょう。そこらの責任というのか、その段階ではそんなことを言っておいて、そして最後は財政事情だの難しいだのと言って、言うならばしりをまくるような態度は甚だ遺憾だと思うのですよ。そういうことを言ったでしょう。どうですか。
  114. 平賀俊行

    ○平賀説明員 四月四日の政労会見の後に、そういう五十九年度の仲裁裁定及び人事院勧告の取り扱いについて政労会見があったという事実、それから、ただいま人事局長が申しましたそのときの発言といいますか、その内容について事実だけを報告といいますか、情報として提供いたしました。
  115. 元信堯

    ○元信委員 日本政府の代表として中村さんという人が行って発言をしておりますね。この人はこういうことを言っておるわけですよ。「人事院勧告実施についてでありますが、一九八二年に実施されなかったことは事実でありますが、しかし、翌年一九八三年には、部分的ではありましたが二・〇三%が実施されました。従って人事院勧告に関しても進展があったと言えます。人事院勧告の原則は尊重し、対話も続けるということは政労とも合意している訳であります。対話は拡大しつつあるという状況がある訳ですから、いま言ったダイレクトコンタクトは、そういう状況のなかでは受け入れる必要はないということであります。政府は組合との間に必ず解決策がみつけられるというように考えております。」こういうことを発言しておるわけです。どうですか。     〔石川委員長代理退席、委員長着席〕
  116. 平賀俊行

    ○平賀説明員 ただいまの中村の発言につきまして、どういう場で発言をされたかというのは存じませんが、ILOの結社の自由委員会は政労使の限られたメンバーでの秘密会でございますので、昨年度人事院勧告についての申し立てに関してそういう発言をしたということはないと思います。
  117. 元信堯

    ○元信委員 そんなことを言うなら出典を示して言うけれども、ことしの六月十九日、条約勧告適用委員会の中で中村さんという人がこういうふうに発言しているわけです。確認してください。
  118. 平賀俊行

    ○平賀説明員 ことしの六月の総会の条約勧告適用委員会で、中村課長がこの政労会談の問題について発言をしたという事実はございます。ただ、その内容といいますか、労働組合と政府の間の会談の結果を報告をして、政府と労働側で引き続き話し合いを継続するということは合意している、こういう発言をしております。
  119. 元信堯

    ○元信委員 今僕が読み上げた「政府は組合との間に必ず解決策がみうけられるというように考えております。」そういう発言について確認をしてくれと言っているのですから、確認をしてください。したというならした、しないというならしない。中村さんというのはどういう身分の人か、それもついでに言ってください。
  120. 平賀俊行

    ○平賀説明員 中村といいますのは、その当時の国際労働課長でございます。それで、ILOの総会に政府代表顧問として出席をし、条約勧告適用委員会発言をしましたが、私どもが報告を受けた限りにおきましては、そこまで突っ込んだ発言をしたということは確認をされておりません。
  121. 元信堯

    ○元信委員 労働省から出かけていって、それがした発言が確認されていないというのはおかしいじゃないですか。後任の国際労働課長という人も来ているみたいですが、どうです、あなたなら聞いているでしよう。
  122. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 今、平賀審議官が申し上げましたようなことで、条約勧告適用委員会で前国際労働課長の中村から、四月四日に政労の会見があったという事実について報告したということは聞いておりますが、今、先生がおっしゃいましたような文言で申し上げたというふうには聞いておりません。
  123. 元信堯

    ○元信委員 ちょっと正確に話をしましょう。  私が言ったようには聞いておらぬというのは、私が言ったようには言っておらぬということですか、それとも、そのことについて何も聞いておらぬということですか、どっちですか。
  124. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 今、先生の方からは、ちょっと正確でないかもしれませんけれども、組合と政府の間で必ず解決策を見出すというような発言をしたというふうなお話でございましたが、そういうことを中村前課長が発言したというふうには聞いておりません。
  125. 元信堯

    ○元信委員 だから、発言したというふうには聞いておらぬというのは、そうは言わなかったということなのか、言ったか言わぬか全然知らぬということか、どっちですか。
  126. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 率直に申し上げまして、そういうことにつきましては聞いておりませんでしたが、後で書類を見ましたところ、四月四日に政労会見があったということについては報告をしているということを知ったわけでございます。
  127. 元信堯

    ○元信委員 僕は、これは重大なことだと思うのですよ。四月四日に一応の原則的な合意は見ました、その後のことについても必ず解決策が見出されますというようなことを、政府の顧問だかなんだかが行って日本政府の代表として発言しているわけだ。そのことについて全然報告もしてない。こんなことは常識的に考えて、その当時に解決策なんか見出せっこないわけですよ。そのころは、もう凍結だとか、ことしは三分の一実施だとかと後藤田さんがぼつぼつ言い出したころだ。そのころにそんなできっこないことを約束して、しかもそのことについて後任にも引き継がず、さらにまた上司にも報告をしておらぬ。言うならばこんなものは二枚舌だ、日本政府の代表として国際的には何とかなるというようなことを言っておいて実際には何にもしないのだから。こんなことが許されていいのですか。大体佐藤さん、あなたはそのとき一緒に行っていたのじゃないですか。
  128. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員  当時私は婦人少年局におりまして、この問題には一切タッチしておりませんでしたので、その場には行っておりません。
  129. 元信堯

    ○元信委員 わかりました。  労働省に申し上げます。きょうは労働大臣の出席を求めたのです。労働大臣は都合が悪くてだめだと言う。谷口労政局長の出席を求めたら、これも嫌だと言う。ILO関係は総務審議官が担当だと言う。総務審議官は偉くて、とてもじゃないが国会に出て答弁できぬと言う。あなたで必ずわかるからということで、聞いておりませんだなんというような答弁はしないからということで、私はきょう佐藤国際労働課長で承知をしたわけだ。何ですか、その答弁は。何にも聞いていない、わかりません、知りません、これで国会答弁が過ぎるなら、だれにでもできるんだ。このことについて、後で調べて僕のところへ返事をしてください。  それで、ぼつぼつ時間が来ましたから締めくくりたいと思います。  要するに、ILOの場において日本の政府は、労働組合との話がうまくいっているとか、あるいはまた来年こそは完全実施努力します。政府にやる気は全然ありませんけれども、言葉の上では完全実施努力をしますというようなことを言って、結局そこのところはごまかした。しかもILOの意思というのは、こんなにいいかげんな制度であるのであれば、本当に実効のある、労働者の参加と実施についての担保、そういうものがある制度に変えるべきだということを明瞭に言っているにもかかわらず、完全実施すればいいんでしょう、ことしはしないけれども来年は努力します。来年になってもまだ同じことを言うのです。来年になったらまた、ことしは努力したけれどもできませんでした、その次の年はやるからいいんでしょう。これでやっていこうというのでは、日本の労働界における国際孤立というのはますます深まるばかり。それがまた日本の貿易問題等にはね返って国際的な孤立を招くということを私は深く憂慮するとともに、日本もそろそろ国際的に足並みをそろえるべきだ。経済大国だと言い、あるいは客観的には軍事大国になりつつある、こんなお国がいまだに足元の公務員制度については後進国並みの制度であってはならぬというふうに思うのです。  それで、そのことについてはもう答弁は要りませんけれども、一点申し上げておきたいのは、総務庁設置法の第六条に公務員制度審議会というものを置くことができるとなっているわけですね。そろそろこういうものを設置して考え直すべきときに来ているのじゃないかということです。これだけ矛盾が多い、できもしないことを政府はどんどん約束をして、国民の間でも相当信頼が失墜していると思うのです。本当はやる気のないことを努力するという言い方でごまかすということ、このままでいけば七年も続きそうなわけですから、こんなことをやっちゃいけません。午前中は人事院不要論というものまで出ましたけれども、そこまでは言わぬにいたしましても、人事院制度そのものの抜本的な再検討というものを考えなければ、我が国公務員制度の根幹が揺らぐ時期に来ているというふうに思います。  ぜひこの検討をお願いいたしまして、大変不満足でございますが、労働省の態度はまことに遺憾千万でありますけれども、時間が来ましたから私の質問は終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  130. 中島源太郎

    中島委員長 鈴切康雄君。
  131. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 人事院から八月十日に人勧が内閣及び国会に提出された。それを見ますと、アップ率は六・四四%であるわけでありますけれども、政府は十月三十一日に「公務員給与改定に関する取扱いについて」という閣議決定を行ったわけでありまして、その閣議決定は平均三・四%内の改定を行うということに決められたわけでありますが、三・四%内と決めた根拠というのはどこにあるのですか。
  132. 藤井良二

    ○藤井(良)政府委員 今年度人事院勧告の取り扱いにつきましては、完全実施に向けて誠意を持って取り組んできたところでございます。良好な労使関係あるいは士気への影響等に配慮する一方、厳しい財政事情も含めて配慮してきたわけでございます。  それで、五十七年度実施見送り及び五十八年度給与改定が二・〇三%であったということから、給与改定後の官民較差が四・三六%残っており、これが職員の士気に大きな影響を与えていることから、これをできるだけ早く解消していくというめどを立てて、いわゆる将来展望を示し職員安心感を与えるということを考えまして、少なくとも三年をめどにして官民較差の解消を図っていこうとしたわけでございます。したがいまして、本年度におきましては一・四%程度の改定後の官民較差の縮小を行う必要があり、それにいわゆる本年度分と見積もられます二%程度を加えますと三・四%になるということを念頭に置きつつ、政府としてなし得る最大限努力の結果として、五十九年四月一日から平均三・四%内の給与改定を行うことにしたわけでございます。
  133. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 人勧のアップ率は六・四四%なんですよ。それを三・四%内の改定を行うということは、まさしく人事院勧告無視ということですね。これは政府の御都合主義じゃないですか。これは政府のお手盛りですよ。だから、この三・四%内の改定を行うなんというのは何の理論的根拠もないし科学的な合理性もない。言うならば政府が勝手に決めたアップ率。これを認めろといったって認めるわけにいかないじゃないですか。人勧というのは、少なくとも労働基本権の代償機関として人事院というものをつくって、民間準拠ということを根本にして民間の給与を精密に調査をした上においてその差額を勧告する、そのことに基づいて政府は国家公務員との間において交わした約束じゃないですか。その約束を破って勝手に三・四%以内に改定を行うなんということは言語道断ですよ。少なくとも人事院は内閣及び国会にこれを報告するということになっているわけですから、政府だけがこういう勝手なことを決めて人勧を不完全実施するなんというのは許されないことじゃないですか。この点について総務庁長官、どうですか。
  134. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 私は、午前中からしばしばお答えをいたしておりますように、人事院勧告というものは最大限に尊重をして完全実施に向けて努力するという基本認識の上に立ってことしの勧告の処理に当たったつもりでございます。ただ、いわゆる過去の積み残しがあるものですから、毎年毎年の人事院勧告にはそれが入って官民較差として出てくる。そこで、この積み残しの処理をどうすれば一日も早く解消できるか、ここに実は重点を置いて閣僚会議その他においても強く主張をしたつもりでございます。公務員給与をめぐっては、皆さん方のお立場のように完全実施をやるべきである、これはもう当然の御主張だろうと私は思うのです。ただしかし、公務員給与をめぐっては、やはり国民世論といいますか、その中に一つは今日厳しい財政状況が続いておるし、同時に行財政の改革という課題を解決しなければならない。その際に、やはり国民の広い方々に影響を及ぼすような、痛みを伴う施策を一方では推進をしておる、こういうこともあり、同時に国民の側からは、世論の中には、公務員はいいではないか、こういう空気があることもこれは否定し得ません。それは端的に言えば、生涯給与を含めて公務員はよ過ぎるのじゃないかといったような厳しい御意見も世論の中にある。これはやはり私どもとしては配慮の中に入れざるを得ない。同時に、民間のことしの給与改善が四・四六%、これは御案内のように、ベースアップのほかに定期昇給が含まれております。あるいは公労協の給与改定が四・二六だと記憶しておりますが、これもベースアップのほかに定期昇給を含めた額でございます。国家公務員についての人事院勧告は定期昇給は含まれておりません。ベースアップとしてあれだけの六・四四という高い改善率が出た。これは先ほど言ったように、五十七年の凍結、五十八年の二・〇三というものがあるから官民較差としてそう出てきておるということでございます。  そこで、私どもとしては、ただいま申し上げましたようないろいろな各般の御意見なり状況なり客観情勢なりを判断をして、一刻も早くこの完全実施に向けてめどを立てなければならぬということで三・四弱という方針を決めたわけでございますが、現在おる個々の職員にとっては、そのほかに定期昇給としては、御案内のように二・〇八ぐらいがこの率の上に加わるのだ、ここらもやはり御理解をしていただきたい。  しかし、いずれにせよ、人事院勧告制度というものは、政府最大限に尊重しなければなりませんから、それに向かって今後とも私としては最大限努力をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  135. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今、総務庁長官の、国民の間に、生涯給与について公務員はよいじゃないかという声があるというお話も、言うならば今回の人事院勧告からいわゆる三・四%ということを決めた一つの条件の中にもあるのだというのですけれども、その生涯給与について、これがどうのこうのという問題について、もし民間準拠という立場から問題があるとするならば、それは人事院が、あなたの方で勧告をしなければならない問題でしょう。  それと同時に、もう人勧は別の問題なんだ。だから、人勧は完全実施をしてもらわなければ、もしあなたがおっしゃるように、生涯給与でいつもいつも公務員の方はいいからということになれば、それが理由ということになれば、人勧は永久に完全実施されませんよ。だからそういう意味において、人勧院総裁、人勧を完全実施してもらわなければならないという問題と生涯給与の問題について、どうこれをとらえたらいいのか、その点についてどうお考えですか。
  136. 内海倫

    内海政府委員 ただいま総務庁長官がおっしゃいましたように、確かに民間と申しますか、マスコミ等において、生涯給与ということで公務員給与が高いというふうな意見があることは事実でございますけれども、しかし私どもが調べております限りにおいて、そう非難されるような高いものではない。それはいろいろな調査の仕方もあろうと思いますから別途の問題といたしましても、もともと、いわゆる給与というものと年金、それから退職手当というものは、それぞれ別個の性格を有するものでございます。したがって、今私どもが人事院勧告ということで勧告をいたしておりますのは給与、要するに諸手当を含む給与というものを勧告いたしておるわけでございまして、これは、言ってみれば公務員が毎日毎日を生活していくためのいわば資になるものでございます。年金あるいは退職手当というものも別途ございますけれども、これはまたそういうものとは性格を異にするものであって、それはまたそれぞれ民間との対比、比較をして適正に考えられるべきもの。したがいまして、人事院勧告というものを考える場合において、冒頭申しましたように、確かに民間の中における声としてございますけれども、私ども勧告するものの立場からは、今申し上げましたような意味合いで、勧告の中の、要するに給与というものの勧告をお取り扱い願いたい、こういうふうに思うわけでございます。
  137. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いわゆる年金とかそういうものについては、これからまた是正されていく問題であると思いますけれども、少なくとも給与というものを勧告をした人事院、その人事院勧告というものに対しての完全実施は、これはもう当たり前のことなのです。当たりまえのことをできないという状況で、しかも昭和五十六年から五十七、五十八、今回という形でこう出されてきたのでは、これはまさしく公務員方々は、みずから生活を営んでいる以上、大変に厳しい状況を強いられてきているわけです。  政府の方としては、十月三十一日の給与改定閣議決定でも、「労働基本権の制約、良好な労使関係の維持、公務員の志気・生活への影響、現下の経済社会情勢、厳しい財政事情、国民世論の動向等を総合的に勘案し、昭和五十九年四月一日から平均三・四%内の改定を行う」ということになっておりますけれども、人勧が出されて、たしか参議院の内閣委員会総務庁長官が答えられている中を見ますと、やはり財政状況理由として、もう初めから不完全実施やむなしというような考え方であったように私どもは見ているわけでありますけれども、使用者の立場として初めからそんな考え方であってよいのかどうか。少なくとも給与担当大臣である総務庁長官は、完全実施ということについて最後まで言い続けていかなければならない立場にあると私は思うのですが、それについて、もう財政事情云々、そういうことだけで、あなたがもしそういう御発言をされているとするならば、それは問題じゃないかと思うのですが、その点についてはどうなんですか。
  138. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 私は、給与関係閣僚会議その他においても、やはり今日のような、人事院勧告完全実施に向けて最大限努力をする、こう言いながら、結果としてはいつも抑制するということはよくない、それは今お読みになったような、公務員の士気の問題であるとかあるいは公務員の生活の実態あるいは良好な労使関係、こういうような点を考えて、やはり許される限度最大限の処置をすべきだ。しかし問題は、過去のいわゆる積み残しというものがある、これの処理をどうするかということではないのか、しかもそれを余りにも長くほうっておくということは許されない、できるだけ短期に完全実施をやるようにやってもらいたいということで主張したつもりでございます。最大限努力をした結果がことしの決定である、私自身はさように考えております。人事院総裁としては当然ああ言うことでしょう。人事院としては、官民給与の較差あるいは生計費、こういうのを見て勧告をなさる、それを受けて政府完全実施できればそれが一番いいのです。しかし、今日公務員給与をめぐっての厳しい客観情勢を考えるなうば、それが仮にできないという場合にさてどうするかということについて、ベターなやり方はどういうやり方であろうかというような意味合いでことし頑張って、そして本年は三・四内、そしてめどを立てる、こういうことにいたしたわけでありますので、この点は御理解をしていただきたい、かように思うわけでございます。
  139. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 この後官房長官が見えられますから、官房長官への質問は留保いたします。  総務庁長官は、給与担当大臣であると同時に一方には行管庁の長官も兼ねておられるというのが総務庁長官なのでございますけれども、行政改革は国民的な至上課題である、私はそのように思っておりますし、また、政府がむだを省くということは当然のことだと思います。  そこで、経費節減によって生じた決算剰余金というものがございます。昭和五十七年には千四百七十億円、五十八年度には二千五百億円、恐らくまた五十九年においても決算剰余金が出るでしょう。これは政府努力によってそういう形になるわけであり、またそれをやることは国民の税金を大切にするという意味において当然だと私は思うのですけれども、その決算剰余金というお金については、第一番目には給与面に反映させるべきではないだろうか。少なくとも人勧を完全実施していないわけですから、余った金については、これだけ余りましたから、少なくとも今回においては経費において節減されたものは人勧完全実施に向かってお払いをしますというのが誠意ある対処の仕方ではないかと思うのですが、いつもそういう形がとられておりませんね。どういうことでしょう。
  140. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 例年、若干の決算剰余金が出ていることは事実でございます。五十八年も二千五百億ばかりの決算剰余金が出ております。さて、それをどういう追加財政需要に充てるか、これは取捨選択の問題。それで、鈴切さんがおっしゃるように公務員給与に充てるということも一つ考え方かもしれませんが、今日、御案内のように国債の残高が百二十兆円、これを、少なくとも特例公債だけはできるだけ早くゼロにしたいというのが政府の基本の方針でございますから、やはり国債の償還に充てざるを得ない、かようなことであろう、かように思うわけでございます。  ただ、私は総務庁の長官としての立場で、こういう金もあるではないかということは主張したつもりでございます。しかし、財政当局としては、やはり特例公債の残高を一日も早くゼロにしなければならぬ、これはまた大きな国政上の課題でございますからそちらに回したいというようなことで、あれこれの論議があったということは事実でございますが、私が主張しておるのはそれのみならず、決算剰余金だけでなしに五十九年もいろいろな金があるのじゃなかろうかというようなこと。他方、財政当局としては、それだけでなしに追加財政需要、例えば健保の改革がおくれたことによって追加財政需要がたしか千六百億ぐらい要るのじゃないかと思います。そして同時に、税の自然増がどれくらい出るであろうかということも議論になりました。なるほど法人税等は予想より上回っておりますけれども、地方酒税を中心にした大きな見込み違い、歳入滅、こういうものもあるわけでございまして、我々が予想もし、一般の方々もことしは相当歳入がふえるのじゃないかといったような見通しとは全然逆でございまして、それほど大きな歳入増が出てこない、税収増が出てこないというようなこと。それから五十九年の予算編成は、御案内のように厳しい財政事情の中でぎりぎりした予算を組んでおりますから余剰というものもなかなか出てこないといった、いろいろな議論のあげく、ことしのような処置にならざるを得なかった、こういうことでございますので御理解を仰ぎたいと思います。
  141. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 公務員給与改定をどうするかという考えは専ら財政的な見地から論じられているような傾向がありますけれども、それでは財政事情が好転すれば、従来公務員がこうむった損失について何らかの形で補てんをするのかということについてはどうお考えなのでしょうか。
  142. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 その御議論もしばしば衆参両院で出ているところだと思いますけれども、これは、給与は法定主義で毎年毎年その都度解決いたしておりますので、いわゆる過去これだけ損があったからこれを支払ってもらいたいということは政府としては受け入れがたい、こういうことでございます。
  143. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 もしことしも政府の一方的な決定で不完全実施された場合、公務員の損失額は職責別にどれくらいになるのでしょうか。
  144. 斧誠之助

    ○斧政府委員 本年の給与改定につきましてはただいま御審議を願っておりますので結論は出ていないわけでございますが、もし政府提案の三・三七%という改定になりました場合には、人事院勧告いたしております六・四四%の差額は、これは東京在勤の場合ですが、妻のある係員クラスで八万七千円でございます。それから、妻と子供二人がある係長クラスで十三万三千円、課長補佐クラスで同じ条件で十六万円、課長クラスで同じ条件で二十七万四千円程度かと思います。
  145. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それは、五十九年にもしそういう形でなされたということなのでしょうけれども、実は五十六年から給与が抑制されたりあるいは五十七年は凍結されたりということで、不完全実施がずっと続いているわけでしょう。だから、もしことしまで入れた場合においてはどういう形になるかということです。
  146. 斧誠之助

    ○斧政府委員 係員クラスで三十九万五千円、係長クラスで六十一万円、課長補佐クラスで七十三万二千円、課長クラスで百五十一万一千円程度でございます。
  147. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 このようにして、人勧が不完全実施されることによって公務員方々がこうむる損失というものは非常に大きな金額に上るわけですね。それだけに公務員方々も厳しい状況を強いられているわけでありまして、人勧が実施されないということになりますと公務員の士気が低下するという問題があるわけであって、絶対に人勧は完全実施をすべきであるということを私は強く申し上げたいと思っております。  実は問題は、政府給与改善費の計上の仕方にも問題があるだろうと思うのです。人事院は、国家公務員法第二十八条の一項と二項に勧告を義務づけられているわけであります。この中にあっては、「人事院は、毎年、少くとも一回、俸給表が適当であるかどうかについて国会及び内閣に同時に報告しなければならない。給与を決定する諸条件の変化により、俸給表に定める給与を百分の五以上増減する必要が生じたと認められるときは、人事院は、その報告にあわせて、国会及び内閣に適当な勧告をしなければならない。」こうあるわけでありますけれども、五%の増減がなくても今現在は大変に公務員皆さん方が生活が苦しいという状況の中にあって、それを五%増減がなければ人事院勧告できないというようなことではなくして、少しでも変わった場合においては勧告するということで、今勧告をしているわけでございますね。  ところが、わずか一%のいわゆる給与改善費の計上ということは、これはいつもいつも最後になって、一%組んであるからというので人事院勧告が出されるとすぐに、一%もなかなか財政事情が厳しいということになる。政府は少なくとも段階的な実施ということを、私どもは認めるわけにはいかないけれども、そういうことをお決めになったらなぜこの給与改善費にプラスアルファをやらないかという問題が出てくるわけですよ。  その点、総務庁長官、人勧を最大限尊重するという考え方であるならば、少なくとも一%の給与改善費という予備費を増額してこそ初めて人勧尊重へ向けて大きく踏み出したとか、あるいはまたそういう姿勢というものは言えるのではないでしょうか。その点についてことしは相も変わらず一%ということで甘んじているようですが、その点はどうお考えでしょうか。
  148. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 毎年の予算への人件費の組み込み方、これは予算技術上の問題だと私は理解をしております。過去の例を見ても、五%組んだときもあれば二・五あるいは二、そして最近はずっと一%を組み込んでおるわけでございますが、私はそれによって給与改善が拘束されるというふうには毛頭考えておりません。給与改善の方は改善の方の問題として決定をして、それで足りなければこれは当然補正予算、こうならざるを得ないわけでございますから、拘束は受けないというのが私の基本的な考え方でございますが、御意見のような点もあろうかと思います。最終予算がどうなるかまだわかりませんけれども、予算計上に当たっては十分留意をしてまいりたい、かように考えます。
  149. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 一般会計に占める人件費の割合は、最近の公務員給与の抑制によって低くなってきている。しかし、公務員賃金を抑制、凍結した結果どう財政事情に反映され、財政再建にどうつながってきたかということについては私は大変に疑問に思うのですが、財政再建ということを看板にしておられる政府は、このことによってどんなに財政再建が進んでいるのでしょうか。その点についてはどうお考えですか。
  150. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 財政の再建は、御案内のように人件費だけの問題ではありません。行財政の改革ということが政府の内政上の最大の課題でございますから、それによって厳しい予算も編成されるであろう。ならばその際に、人件費等について財政当局としては厳しい態度をとるであろう。しかし私は、そういうわけにもまいらないということで、そこらが人事院勧告をどう受けとめてどう実現していくかということでいつもながら厳しい対立があるわけでございますが、私は財政事情ということは大きな要素であると考えざるを得ません。しかしながら、先般来申し上げますように、いろんな目配りをして、国政全般の観点に立って適切な給与の改善をやるべき筋合いのものである、かように考えておるわけでございます。
  151. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 臨調答申に、総人件費の抑制ということが言われておりますね。その中に、人勧についての現在の慣行は続けていきなさいということであって、人勧の内容を不完全実施せよということはどこにも書いてありません。それよりも、徹底的に行政改革によって総人件費の抑制を図っていきなさいというのが本来の筋だと私は思うのですけれども、その点、政府はどうお考えになっていましょうか。もし人勧に対する不完全実施によって臨調答申の総人件費の抑制を行う、そういうお考え方に立ってはいないだろうと思うのですが、それを思うと、行政改革は思うようにまだ進んでいない。私は行政改革を徹底的にやることによって総人件費の抑制をやり、少なくとも人勧については完全実施をすべきである、そういう考え方に立つべきじゃないかと思うのですが、総務庁長官、どうお考えですか。
  152. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 これは先般来申し上げておりますように、人事院勧告制度を尊重するという基本姿勢でございますから、完全実施に向けて努力する、これはもう当然のことで、この基本線はいささかも揺るがすつもりはございません。また第二臨調の御答申も、人勧制度はそのまま尊重しなさい、ただし総人件費を抑制すべし、こういう御答申でございますね。  そこで、私は率直なことを申し上げれば、個々の公務員の待遇を抑えていくということは適切なこととは考えておりません。しかしながら、今日、総人件費が雪だるまのようにふえるということについては、今日の厳しい財政状況、また一般の世論というものも考えまして、やはり総人件費抑制に向かっては全力を挙げるべきである。ということは、つまりは定員の問題に帰着せざるを得ない、かように考えておるわけでございます。
  153. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私も、行政改革をやることによって機構を簡素化し、仕事の量を減らし、それに伴って首を切らない言うならば人員の整理、自然退職に対してそれを補充することについては極力抑えるという形によって初めてできるだろうと実は思うわけでございますけれども、そちらの方は余り進まなくて、片一方の人勧を不完全実施して総人件費を抑制するというやり方は本筋ではないだろうと思うわけです。行政改革について、やはりもっと総務庁長官は真剣にこの問題について取り組まなければいけないだろう。そして片一方においては、少なくとも人勧が出された以上は、それを完全実施することについて前向きに考えなければいけない問題だと思うのですが、もう一度お聞きします。
  154. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 私も、基本的な物の考え方としては鈴切さんの御意見とそう食い違っているとは考えておりません。やはり本来は総人件費を厳しく抑制するということではないのか、個々の待遇は許される限りよくしてあげる、これが一番いいことではないのかなと思います。  ただ、定員の問題になりますと、これは国会の御決議にもありますが、要するに出血はやらないという前提でございますから、自然に退職していく方がおる、その後補充をどうするか。甚だしい御意見としては、仮に二万名前後の自然退職の方がおるとすればそれみんな不補充にしろ、こういう御意見もございますが、これは行政の実態に合わざる議論であろうと思います。一番やめる職種がとれた、こう考えますと、例えばお医者さんだ、看護婦さんだということになると、後補充をゼロにして病院が経営できるのかといったように、職種が合わないといったところにこの定員問題の扱い方も、現実的な処理をしなければこれは公務遂行上大きな障害を生ずる、こういうことを頭に置きながらも、やはり総人件費抑制のために定員管理は厳しくやっていきたい、かように考えておるわけでございます。
  155. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ことしの人事院勧告は、あくまでも四月一日現在の官民較差が六・四四%であるということであって、その較差を去年の分が何%、あるいは本年度分が何%と分割して考えることはできないと私は思います。総務庁長官が、ことしを含め三年間で完全実施に持っていく、いわゆる段階的実施論について言われておりますけれども、私は人勧完全実施が当たり前のことで、認めるわけにはいかない。はっきり申し上げておきます。そういうことを続けるということは、もう三年間も引き続いて政府は異例の俸給表を作成するということについては大変に問題があると思うのですが、これについて人事院総裁、どうお考えでしょう。
  156. 内海倫

    内海政府委員 けさほどから総務庁長官、いろいろ御苦心のあるところをお述べになっておりますので、私、その気持ちを逆なでするということは甚だつらいのでございますけれども、やはり人事院総裁という大事な立場に立ちますと、人勧というものについては勧告のとおりにやっていただかなければいけないし、したがいまして、それに付してある俸給表というものも、勧告をするに当たっていろいろな資料を集めて、しかも配分というものの仕方をいろいろな角度から考えてつくり上げた俸給表でございますので、まず何よりも完全実施とともに俸給表を使っていただかなければいけない、これが人事院総裁として厳しく考えておる考え方でございます。
  157. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 官房長官、お忙しいところ済みません。おいでくださいましたので官房長官にちょっと御質問を申し上げますが、公務員給与改定に関する閣議決定と同時に出されました官房長官談話の中で、「来年度以降においては、給与改定後の官民較差が、少なくとも本年度程度更に縮小されるよう鋭意努力してまいる所存であります。」というふうに言われておりますけれども、この意味というのはどういうことなんでしょう。さっぱりわからないのです。
  158. 藤波孝生

    藤波国務大臣 午前中にも小川委員の御質問にお答えをしてきたところでございますが、ことしも人事院勧告完全実施に向けて最大限努力をするということで取り組んでまいりました。この政府考え方は来年度も同じでありまして、人事院勧告が出された段階で最大限努力をして完全実施に向けて努力する、こういう考え方をとってまいりたい、このように考えておるわけでございます。  しかし、ことしの公務員給与決定についてのいろいろ各方面の御意見を伺いますと、五十七年度、五十八年度、非常に厳しい抑制をして今日に至っておりますので、官民較差の非常にこの数字が大きい、これが一体いつになったら完全実施になるんだ。ことし当然完全実施に向けて決定すべきであるけれども、もしことしなお処理できない部分があるとしたら、それはいつになったら完全実施になるんだ、こういうふうな御意見が随分渦巻きまして、何らかの形でそのことに触れないと公務員の士気にも影響するのではないか、そんなことを実は心配をいたしたわけでございます。給与関係閣僚会議を何回も開きまして、そういったこと等もいろいろと論議の対象になりまして、それらを踏まえまして官房長官談話という形でまとめた次第でございます。  午前中もお答えをいたしましたように、人事院勧告制度のあり方からいたしますと、法律の精神に照らして、来年あるいは再来年のことにも触れておるようで大変恐縮に思っておる次第でございますけれども、あくまでも来年度完全実施に向けて最大限努力をする、こういう前提に立ちまして、財政事情などはここ数年なかなか厳しいものがあるとは思うけれども、それにいたしましてもことし、来年、再来年、少なくとも来年もことし以上の較差を解消するための努力を、最低限どこかでそのことに触れて申し上げておいて、そして結果としては三年をめどとして完全実施ということになるためにあらゆる努力をしていくんだ、こういう政府の姿勢、考え方というものに触れておきたい、こんなふうに思いましたので、非常に御理解いただきにくい文面でありますけれども、ことしもいわゆる積み残しというものの解消のためにあらゆる努力をいたしました、来年は完全実施に向けて最大限努力をするけれども、それでもなおことしよりもさらにもう一つ努力するということをこの機会に気持ちとして表明をいたしておきます、こういう言外の意味をお酌み取りいただくことによって、具体的にはどれだけ財政事情が厳しくとも三年間で解消するということをめどとして進むんだ、こういうことを今お読みをいただきました文章で示そうとした、こういうことでございまして、ぜひひとつその辺の私どもの気持ちを御理解いただきますようにお願いを申し上げたいと思うのでございます。
  159. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 要するに、三年間段階的実施論と言われているわけでございまして、ことしも最大限努力した、来年も最大限努力するけれども、結局は不完全実施をやりますよと、こういうことになってしまいますね。もしあなたが完全実施をやるというなら、なぜこんなことを書くのでしょう。不完全実施をやりますよということを明確にここにあらわしたわけで、こんなのを認めろといって、だれが認めるのですか。このことによって労働組合の人たちが納得をしたとか、国家公務員の人が納得をしたとか、そういうことにはならぬでしょう。結局不完全実施を来年もやりますよ、そういうことなんですよ。これじゃ人事院なんて何にも必要ない。給与改定の表もそれに伴って政府はどんどんつくってしまう。だから人事院給与改定表をつくる必要もなくなってしまう。それくらい問題を含んでいる。それを認めろといったって認めるわけがない。これはもう撤回しなさい、官房長官
  160. 藤波孝生

    藤波国務大臣 官房長官談話として発表させていただきましたものを、大変恐縮でございますが、少し読ませていただきたいと思いますが、その中段のところで「財政事情等公務員給与を取り巻く情勢は引き続き厳しいものと見込まれますが、政府としては、今後とも、人事院勧告制度を尊重する基本方針を堅持しつつ、給与が勤務条件の基本に係わる重要な事項であることにかんがみ、人事院勧告完全実施に向けて最大限努力を尽くしてまいります。」こう申し上げまして、来年も再来年も勧告が出た段階で、その勧告完全実施に向けてあらゆる努力をいたします、こういうことをここで決意表明をいたしておるわけでございます。しかし、財政事情など見まして、一体どうなっていくんだろうかというような各方面の御心配が随分ございましたので、それらの御心配に対しましては、来年も再来年も完全実施に向けてあらゆる努力をするけれども、それでもなお完全実施ができない場合ということも一応想定をして、それでもいわゆる積み残しというのは三年をめどにしてもうなくするのです、こういうことをここでつけ加えさせていただきまして、公務員皆様方に——来年も抑制するということをここでうたい上げたのだとおっしゃいますと、何とも私どもも弁解のしようもないのでございますけれども、どれだけまずくても三年以内にはこの問題は解決しますよということをちょっと御説明申し上げた、こういうふうにお考えくださいますと、そのことによって一体いつまでかけてこの格差を解消するつもりなんだろうということに対しては、少なくともちょっと安心をしていただける足がかりになるのではないか、こんなふうに思いまして、随分いろいろ検討をいたしました上でこんな文案にいたしましたので、どうぞひとつ御理解をいただきますようにお願いを申し上げる次第でございます。
  161. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 こんな不完全実施を約束させるような内容理解せよと言ったって、理解のしようがない。  人事院総裁、あなたはこの官房長官談話を見てどうお感じになりましたか。人事院としての立場を明確にしてくださいよ。
  162. 内海倫

    内海政府委員 私の考え方、人事院の立場というものは、今までも何遍も御説明しておるところでございます。今、官房長官談話、前にお出しになったわけですが、その談話を承りましたからといって私どもの考え方を変えるあるいは引っ込めるということではございませんので、どうぞ御理解をいただきたいと思います。
  163. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 人事院総裁、何か口ごもってしまって全然はっきりしたことをおっしゃらないようだけれども、人事院総裁というのは少なくとも公務員の立場に立ち、そして民間準拠ということで厳然としていなくちゃ人事院総裁は務まりませんよ。官房長官が言ったからといって私が今までやってきた考え方には変わりありません、では済まされぬ。もっと明確に答えなさいよ。おかしいって言いなさい。
  164. 内海倫

    内海政府委員 もうたびたび申し上げておりますから繰り返すことを控えたんですけれども、私が申し上げておるのは、やはり人事院総裁というものはなすべき勧告をなし、なした勧告が完全に認められる、このために全力を挙げる、これが私の立場であり、考え方でございます。
  165. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 こういうふうなことを、人事院勧告についていわゆる三年間の段階的実施論ということを官房長官が発表したときに、あなたは直ちにそういうことについて厳しく指摘をし、そして撤回を求めるのがあなたの考え方じゃないですか。それができないようじゃ、公務員の人は何を頼っていいかわからないじやないですか。少なくとも権威を持ってこの四月以降懸命に人事院としては調査したんでしょう。だれにも非を言われることのない調査に基づいて給与法をつくったんでしょう。それで、しかも内閣と国会に提出をした以上は、これを守ってもらわなければ困るということを明確に言うのは当たり前じゃないですか。そういうふうな、隣に官房長官がお座りになっているから、顔を見ながら手控えるというようなことは私は必要ないと思うのですが、その点についてもう一回言ってください。
  166. 内海倫

    内海政府委員 たびたび申しますが、手控えておるわけでも何でもございませんし、私自身も勧告前から、そしてまた勧告をしてからも、いささかおまえの顔を見るのは嫌だと言われるほど厳しく意見も関係方面に、ここにおられるお二人の大臣にも申し上げてきておるわけでございます。  ただ、出された談話に対していろいろな機会にこうして答弁申し上げておりますし、国会にも勧告を申し上げておるわけですから、どうぞ国会においてもその辺のことは十分御審議を願いたい、こう思います。  私にしましたら、本当に苦悩に満ちながらこの勧告問題というのは扱っているということを、もう少しおわかりいただかなければいけないと思います。
  167. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 国会についてどうのと言う。国会は一生懸命こうやって今論議して、完全実施をせいと言うのですから、あなたが国会にいちゃもんをつける必要は何もない。むしろそちらの方へ向かってあなたは言うべきじゃないですか。(「国会の場で遠慮しないで堂々と言えばいいんだよ」と呼ぶ者あり)そうなんですよ。  それで、官房長官、とにかくああいうようなことであなたは本音をぶちあげたと言うけれども、本音をぶちあけられた公務員はがっかりですよ。また来年も不完全実施が、これじゃ士気が上がりません。何年までこういうふうな形が続くのだろうというふうな気持ちでいる公務員の方が多いんですよ。公務員の方は本当にこういうふうに踏んだりけったりされながらずっと続いてきた。それを本当に踏ん張りながら頑張っておられる方々ばかりじゃないですか。だから、そういうことを考えて、こういうふうなことは官房長官が本音をあらわしたなんということで済まされる問題ではないということを私は申し上げておきたいと思います。  それから、総務庁設置法第四条の「所掌事務及び権限」、これにはどういうことが書いてありますか。
  168. 藤井良二

    ○藤井(良)政府委員 総務庁設置法の第四条でございますけれども、これには「総務庁の所掌事務範囲は、次のとおりとし、その権限の行使は、その範囲内で法律に従ってなされなければならない。」ということで、以下総務庁の権限をずっと並べてございますが、例えば第一号には「国家公務員に関する制度に関し調査し、研究し、及び企画すること。」二号には「各行政機関が行う国家公務員等の人事管理に関する方針、計画等に関し、その統一保持上必要な総合調整を行うこと。」というようなことで、総務庁の「所掌事務及び権限」をずっと並べて書いてございます。
  169. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 この総務庁設置法第四条の「所掌事務及び権限」の中で、給与法を作成してもよろしいということはどこで読めますか。
  170. 藤井良二

    ○藤井(良)政府委員 第一号の「国家公務員に関する制度に関し調査し、研究し、及び企画すること。」これの中に給与法を立案して国会に提出することが含まれていると思います。
  171. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そういうことでいいですか。給与法を立案して、そして作成してよいということは、いまだかつてない御答弁ですよ。  人事院総裁、おたくの方はもちろん給与法をちゃんとつくりなさいということで、ここに所掌事務が書いてありますね。「人事院は、必要な調査研究を行い、職階制に適合した給与準則を立案し、これを国会及び内閣に提出しなければならない。」第六十四条には、「給与準則には、俸給表規定されなければならない。」「俸給表は、生計費、民間における賃金その他人事院の決定する適当な事情を考慮して定められ、且つ、等級又は職級ごとに明確な俸給額の幅を定めていなければならない。」これは人事院が与えられたいわゆる権限ですね、所掌事務です。これは私、よくわかります。ところが、あなた以外に、要するに給与法をつくってよいというふうにあなたは思っていますか。人事院どうですか、この点は。
  172. 内海倫

    内海政府委員 今までもこの問題については代々の総裁が御質問いただいておるわけでございますが、今御質問にありましたように、勧告に伴う俸給表の作成というものは人事院の所掌業務に属するわけですが、しかしその法律の見方に立てば、要するに法律というものだけで見れば、内閣の方でつくってもそれが違法とは言えないという意味の答弁が今まで行われております。私もまた、それを繰り返すわけでございます。
  173. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 人事院総裁、あなたは人事院の、言うならば国家公務員法に基づいて給与準則による給与支給ということで、「職員給与は、法律により定められる給与準則に基いてなされ、これに基かずには、いかなる金銭又は有価物も支給せられることはできない。」こういうふうに明確にしてあるわけでしょう。だからこそ、あなたの方で調査をするという権限というものに対しては、これは第三者機関として尊重されているわけでしょう。それはもう一方の別な総務庁においても俸給表をつくることはできるというふうにあなたは解釈するならば、もう人事院は一切必要ないですよ。要らない。まずあなたからおやめになる以外にない。給与法は厳然と人事院がやるのです、総務庁がやるということは、これは少なくとも許されないことですとあなたは言えないのですか。私は、そんなあいまいな答弁では承服できませんよ。そんないいかげんな人事院なら、よした方がいいです。そうじゃないですか。
  174. 斧誠之助

    ○斧政府委員 現在人事院の行っております勧告は、国家公務員法の二十八条と給与法の二条に基づいて勧告を行っているところでございます。ただいま先生お読み上げになりました条文、これは給与準則で現在は制定されておりませんので、その条文は動いていないわけですが、基本精神は当然それを踏まえて給与法ができておるわけでございますので、その趣旨は酌んでいかなくちゃならぬわけでございます。  ところで給与法二条では、給与額について人事院は調査研究をして適当な給与額を国会及び内閣に対して勧告することができるということになっておるわけでございます。したがいまして、この給与額の中には当然俸給表及び諸手当、そういうものの配分、金額の決定、そういう権限は人事院は有しておるわけでございます。  さて、勧告しました公務員給与がどういうことになりますかというと、御存じのとおり、これは国会の立法を待って初めて有効となるわけでございます。国会の立法をする場合に、ここに提案権を持っております、つまり法律提案権でございますが、これは内閣がお持ちになっておるわけでございます。人事院には法案の提案権はないわけでございます。そこで、この場合に内閣の法案提案権というものをどういうふうに解するかということだろうと思うわけでございます。  したがいまして、人事院勧告を受けた内閣が法案提出権に基づいて法案を提出いたします場合に、絶対政府人事院と変わった俸給をつくっては相ならぬという規定、そういう禁止規定は実はどこにもないということでございまして、今総裁がお答えしましたように、したがって内閣の提案した法案が人事院勧告と全く異なっておるという場合に、それをしも違法であると決めつける根拠はないのではないかというのが、従来の人事院がお示ししているところでございます。
  175. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 最後になりました。一問。  禁止規定がないというふうにおっしゃいますけれども、それじゃ、それをつくってよいという規定はどこにあるのですか。どこに書いてあるのですか。つくってよいという規定はどこに書いてあるのですか。
  176. 斧誠之助

    ○斧政府委員 その点は、ただいま総務庁の人事局長から御説明ありましたように、政府としてそういう考え方で提案をしておるということで、政府側のそういう解釈でございますので、その事のよしあしをひとつ御論議していただく、こういうことになろうかと思います。
  177. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 人事院は、そういうふうな人事院以外に給与をつくるということを好ましいとお思いなんですか。
  178. 内海倫

    内海政府委員 今も給与局長説明いたしましたような次第で、本来これは人事院のやるべきことでございますから、したがってそれが内閣においてやられるということは決して望ましいこととは思っておりません。
  179. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 答弁をいただいて時間になってしまいましたので、これで質疑を終わらしていただきます。  以上です。
  180. 中島源太郎

    中島委員長 和田一仁君。
  181. 和田一仁

    ○和田(一)委員 公務員給与問題にとって最大のテーマでございます法案がかかりまして審議が進んでおるわけでございますけれども、この給与問題を考えるに当たりまして、一番抜本的なところからまずお伺いをしたいと思うわけでございます。朝から同僚議員の質問で、私の質問したいことはほとんど出尽くしている感もございますけれども、大変大事な問題でございますので、私の立場からもぜひひとつ、繰り返し同じような御質問になるかと思いますけれども、御答弁をお願いしたいと思います。  まず初めに官房長官にお伺いしたいのですけれども、公務員給与問題を扱うのは人事院というところに  給与法を初めとして何が適当であるかということを常に見ておれ、こういう意味で人事院があると思うのでございますけれども、人事院設置の本旨というものを政府といたしまして官房長官はどのようにお考えかをまずお伺いしたいと思います。
  182. 藤波孝生

    藤波国務大臣 人事院は、国民に対しまして「公務の民主的且つ能率的な運営を保障する」という国家公務員法の目的を達成するために設置をされ、この法律実施の責めを負うこととされておる次第でございます。  人事院は、中立的な機関として、人事行政の公正を確保するとともに、労働基本権を制限されております国家公務員について、その代償としての利益を保護する、こういう機能を果たして活動を進めておる、このように理解をし、認識をいたしておる次第でございます。
  183. 和田一仁

    ○和田(一)委員 それでは、私も引き続き同じ質問になりますけれども、十月三十一日の官房長官談話についてお伺いをしたいと思います。  今お伺いいたしましたような御認識の中で人事院勧告がことしも行われまして、それが閣議で三・四%内の給与改定を行う、こういう御決定があった際の、これは談話でございます。先ほど来、何回もこれは質問の対象になっておりますけれども、私も全く同じ立場から再度お聞きしたいわけでございます。  いろいろと財政事情が苦しいということはお訴えになられながら、しかしながら、特に来年度以降のあり方について言及をされている。「来年度以降においては、給与改定後の官民較差が、少なくとも本年度程度更に縮小されるよう鋭意努力してまいる所存であります。」こうございます。私がこの談話を拝見する限りにおいては、やはり来年も完全実施は難しい。努力はするけれども難しいので、そしてこれは完全実施をしなかったときにその較差を埋めていきたいという御意向のように承るのですが、相違ございませんね。
  184. 藤波孝生

    藤波国務大臣 今、御審議をいただいております給与法のいわゆる政府決定でございます五十九年度を決定する際に、随分時間もかけて政府部内、いろいろなそれぞれの立場からの論議を煮詰めまして、何とかして完全実施ができないか、こういう気持ちに立って会合も重ね、各省庁間の折衝も重ねて努力をしてきたところでございます。  その結果、完全実施できなかったことを大変申しわけなく思っておる次第でございますが、そういう考え方というのは、来年におきましても引き続いて政府態度としてとり続けていかなければいかぬ。すなわち、来年度勧告が出ました段階で、来年度勧告完全実施するために誠心誠意最大限努力をする、こういうことにしていくというのは、これも政府の当然の姿勢である、こういうふうに考える次第でございます。  ただ、一般的には非常に、この二、三年もそうでございましたように、ことしも来年も急に財政状態が好転するということがなかなか見込みがたい。こういう中で、公務員皆さん方からの、従来の非常に幅が大きくなっておる官民較差というものは来年度とうなるのだろうか、再来年度とうなるのだろうか、いろいろなお話の中には、午前中も申し上げましたように、六年も七年もかかってこの較差が解消されていくということになるのではないだろうか、そんな御心配が随分出ましたので、あくまでも来年度もひとつ勧告が出ました段階で最大限努力をする、完全実施に向けて努力をいたしますということを前提にいたしまして、それでもなお来年完全実施ができない場合にでも、従来いわゆる積み残しと言われてきておる分については、ことしも含めて三年間をめどとして解消するというふうに持っていくんですよ、こういう政府努力目標をやはりお示しすることによって、どれだけでも公務員方々に将来への不安を解消していただく手だてとしたい、こんなふうに思いまして、言及させていただいた次第でございますので、あくまでも来年度勧告が出ました段階で、完全実施に向けて最大限努力をいたします、こういうふうに、むしろそれだけを申し上げた方がよかったのかと思いますけれども、どうか、あえて言及させていただきました私どもの意のあるところを御理解をいただきたい、こんなふうに考える次第でございます。
  185. 和田一仁

    ○和田(一)委員 先ほど来の御答弁と全く同じでございます。  御答弁の中にありますが、そういった親心のようなつもりで、公務員の士気が下がらないように、ことしは完全実施の案ではない、来年もまたそうではないかという心配に対して、努力はするけれども、しかしできなかった場合には少なくも積み残しは埋めていくんだというのは親心だというようなことで、士気の停滞が起きないように、心配をしないようにという配慮でこれが加わった、こうおっしゃるわけですけれども、私は全く逆だ、こう思うわけでございます。この談話では、ああ、また来年も同じように完全実施には、恐らくこの較差、積み残った分を人事院はまた来年はきちっと補うべく、その勧告が出ると思いますが、その勧告どおりはいかないのだな、幾らか積み残しを減らしてはくれるけれども、これはやはり完全実施ではないのだな、そうしかこれはとれません。  それで私は、やはり親心のつもりで、心配をしないようにという意味でこれをつけ加えだというのは、これは士気の低下がないようにという親心とは全く反対だ。既に公務員の皆さんの実態というものは、ここ何回かの抑制、凍結、抑制というような中で、もうぎりぎりのところまできている。そういうような状態を考えていただけるならば、こういった文言では、逆に心配の度合いが大変ふえてしまう。心配を少なくするようにという意図とは全く反対のようになってしまっている。これは本当にやる気をなくすためにくっつけたような文言だと私は思うのですが、いかがでしょう。
  186. 藤波孝生

    藤波国務大臣 人事院勧告制度というものを考えてみましても、来年度勧告が今から予測されるわけではありませんし、また、来年度財政事情などもそう今から軽々に予測できるということではありません。いろいろ経済、社会が動いてまいります中で、どんなふうな数字を示していくか、今から予測しがたい要素はたくさんにあるわけでございます。しかし、今申し上げてまいりましたように、何年も何年もかかるのではないかというような不安感を与えてはいかぬ、こういうふうに思いましたので、法律に照らして、来年度勧告の問題に触れる、その処理の仕方について触れることがいいか悪いかということについて随分検討いたしたのでございますけれども、あえて触れさせていただくことにいたした次第でございます。これは、政府態度を決定いたしますまでの論議の中身というのは軽々に御披露できないことかと思うのですけれども、一方では、人事院勧告の来年度の処理の仕方について触れるということは法律に照らしていかがかという議論がありますと同時に、我が国財政制度は単年度主義でございますので、財政当局からいたしますと、来年度の、あるいは再来年度考え方について今から触れるということはいかにもいかがなものかという相当強い意見もあったわけでございます。それらもそれぞれの立場ではいろいろな意見がある。しかし総合的に考えてみて、公務員皆さん方の御心配をどれだけでもなくして、希望を持って執務していただくということにしなければいかぬ、こんなふうに考えまして、決して先生のおっしゃっていただくように親心などという生意気な考え方でこの文言を入れたのではなくて、完全実施できなくて大変申しわけないけれども、政府として一生懸命取り組んでいくのですから、こういう気持ちをあらわそうとした、いわばおわびを申し上げる言葉を少しそこへ連ねた、こういうふうに思っておる次第でございまして、むしろ一生懸命に完全実施に向けて取り組んでいこうとしておるのだな、そういうふうにひとつ御理解をいただく方向での言葉として受けとめていただけたら大変ありがたい、こう考える次第でございます。
  187. 和田一仁

    ○和田(一)委員 それは、日本の予算は単年度でやっておりますが、しかし、私は継続性のないものであるとは思いません。  今、三年で何とか解消という目途でこういうふうな言葉を添えたということでございますが、その三年ぐらいというのをそれではどういうところから計算されたのか。伺うところによりますと、いや、もっと長いスタンスで、六年ぐらいをかけてという議論もあったけれども、それを三年に絞り上げたというようなお話も漏れ承っておるわけでございますけれども、それではその三年というのは一体どこから出てきた目安なのか。私は、六年が三年になるものなら三年を一年にという思いで、完全実施がこれだけ実施できなかったのだから来年こそ完全実施でいくのだということで努力すれば、その三年もあるいはそんなことを言わぬで、来年は完全実施だという談話になったのではないかと思うわけですが、いかがでしょうか。
  188. 藤波孝生

    藤波国務大臣 あくまでも来年度勧告が出ました段階で政府として完全実施に向けて最大限努力をする、こういうふうな決意を持っておりますことをまず御理解をいただきたいと思います。そして、公務員の士気が阻喪しないように、官民較差の解消、五十七年度見送り、五十八年度大幅抑制、こういった非常に厳しい道を歩んできた公務員給与決定の従来の経緯にかんがみまして、一年でも早く、一日でも早く完全実施が実現をするようにしなければいかぬ、こういう気持ちで取り組んできたところでございます。  どうして三年にしたのかということになりますと、それでは四年だったらどうなのか、二年だったらどうなのかということになるわけでございまして、会議の中でいろいろな意見が出ましたのを総合的に判断をいたしまして、三年をめど、四年より長くなるということはいかにも公務員の士気に影響する、そんなふうに考えましてぎりぎり、非常に厳しい財政状況の中でもまず三年が限度だ、こういうふうに考えたのがあえて申し上げますと三年というめどを立てることにした理由が、こんなふうに考える次第でございます。
  189. 和田一仁

    ○和田(一)委員 六年ぐらいというのを三年に努力したというような話も聞くのですが、三年という数字——ことし平均三・四%内という閣議決定をされました。三・四%内と「内」という表現がついております。どういうところからその見当、目安というものをはじき出されたのか。この数字があるから積み残しを考えると三年ぐらいで解消していく方がいいという計算になったのか。三・回内というのをお決めになるときに一体どういう議論がされたのか。一説には、もし三・四%以上に、本年度勧告どおりあるいはそれに近い数字になったのでは防衛費の一%枠を超えてしまう、そのぎりぎりの中におさめなければいけないという逆算から、この辺を目安にということで三・四という数字が出てきたのではないかということも聞くわけでございます。  もろもろのことを配慮してと今、官房長官はおっしゃった。もしそのもろもろの中にそういうことも配慮の中にあるとすれば、冒頭お伺いしたように、人事院勧告をして、そして公務員の権利義務を守るために人事院はあるのだとおっしゃったその本旨からいえば、勘案をすべきもろもろの中にそういうような政治的な配慮が入ってこの大枠がまず三・回内というような数字が出てきたとしたら、これはまことに本末転倒だと私は思うわけですが、いかがでしょうか。私は、経緯よりも、むしろそういった三・回内という中にそういう配慮があったかないか、これは全く別問題だと思います。いかがでしょうか。
  190. 藤波孝生

    藤波国務大臣 政府は、給与関係閣僚会議を回を重ねて開催をいたしまして、それぞれの立場からのいろいろな意見を出していただき、それを検討しながら一つの結論を導いたわけでございます。しかし、その中で終始考えてまいりましたのは、六・四四ということしの勧告をどのようにして完全実施できるだろうか、ぜひそれだけの財源を確保して完全実施をしたい、こういう気持ちを持って終始してきた、このことだけはぜひ御理解をいただきたいと思うのでございます。来年はまた、来年の勧告が出ましたら来年の勧告が出ました数字を完全実施するように努力をする、これは政府の姿勢でなければならぬ、こんなふうに考えておる次第でございます。
  191. 和田一仁

    ○和田(一)委員 そうすると、もろもろの中でもそういうことは、私が今申し上げたことよりも、むしろ財源がないという従来の立場でやむを得なかったのだ、こういうことかと思います。もし財政の面だけでこういった抑制をせざるを得なかったというのであれば、私はこれはいろいろと問題があると思うのです。  これはいつもですが、ないそでは振れない、ないそでは振れないのだからやむを得ないでしょうと言うだけで何回かの不完全実施、これはもう済まされなくなってきていると思うわけです。さっきも議論が出てまいりました。財政論だけからいうならば、剰余金が出た場合には一体どうするのですか。一%の給与改善費を計上していながらも凍結をしているということは、財政論からいえばうなずけません。  そういうことを考えますと、この三・回内という数字も本当にそういうぎりぎりの数字で出てきたのか、六年を三年に圧縮できるというくらいの議論をされたということならば、来年完全実施のために努力をしていただければやれるのではないか、どうしても私はそう思うのです。そのことをおっしゃっていただくことが、公務員の皆さんの心配をなくして士気を高めるためには一番確実だ、そのくらいの努力は私は政府はすべきだと思うわけです。ないそでは振れない、財政が主たる理由であるというのであれば、剰余金が出たりあるいは一%の改善費を計上しておきながら凍結した過去の経緯はどう御説明いただくか、ひとつ御説明いただきたいと思います。
  192. 藤波孝生

    藤波国務大臣 人事院ではいろいろな調査を進められまして、その上に立って勧告をしておられる、こういうふうに私どもは認識をいたしておるところでございます。そして、冒頭にお答えをいたしましたように、人事院の役割を十分尊重をいたしまして、人事院から出ます勧告については完全実施に向けて努力をすべきもの、政府はそのような姿勢で臨むべきであると考えておる次第でございます。ことしの場合も、勧告を受けて財政状況だけというのでなくて、確かに公務員給与の決定をいたしてまいる場合には、財政状況というのはやはり非常に大きな態度決定の要件の一つであるとは思いますけれども、財政状況だけではなくていろいろな社会的な、国民世論の動向とか公務員の生活の実態だとか公務員の士気の問題だとか、いろいろな角度から議論をいたしまして、それぞれ所管省の大臣なども給与関係閣僚会議あるいは閣議におきましてもいろいろ発言があるというぐあいに、非常に大きな関心を持って論議を進めてきたところでございます。それらの論議をだんだん煮詰めてまいりまして、総合的に判断をして、最終の段階で三・四内という数字に絞り込んだというのが実情でございまして、その間にはいろいろな角度からの検討があったというふうに御理解をいただきたいと思うのでございます。
  193. 和田一仁

    ○和田(一)委員 剰余金というのはいろいろなファクターで出てくると思います。しかし、公務員財政の厳しいことを重々承知しておりまして、厳しいから自分らの給与改善はせっかく人事院勧告をしているけれどもなかなかそのとおりにならないのだ、そういう自覚のもとに公務員自身も冗費の節約というようなことでは大変努力している、こう聞いております。これは、今までと違って、鉛筆一本、紙一枚に至るまで末端では気を使いながら、ささやかながらも、少しでも財政の負担を軽減しようというようなものも剰余金の中にはあるわけですね。私は少なくもそういう意味で、財源がないからといってなかなか完全実施がされない、そして給与改善費も、これは後藤田長官のお話によれば予算の技術的な問題だ、こう簡単に片づけておられますけれども、給与というものは使用者と労働者、使われる者との間の契約による報酬だ。これは当然の義務費であって、そのものは絶えず最優先に考えていかなければいけないものだ。民間でも、給与の改善のための計上というものは何をおいてもやはり念頭に置かなければ民間会社の経営はやっていけない。国家においても全く同じだと私は思う。足らなくなれば税金で取ればいいというような発想であったのではそういうものは出てこないかもしれないけれども、何とかやりくり算段をしながら国家経営をやっていこうというならば、こういう大事なものは一番先、最優先に国家予算の中で重きを置いて計上していくのが当然ではないかと思うのです。いや、技術上の問題だからこれは補正予算ででもやればいいというようなお話ですと、公務員にとっては大変不安なやり方だ。この給与改善費がきちっと計上されているときは、今まで見ておりますと、大体完全実施が可能だったのです。やってまいりました。四十五年から五十五年ぐらいまでの、あるいは五十四年までのあの完全実施をやっていたときの給与改善費というものは、きちっと五%計上されておった。ところが、それが一%あるいは二%というような数字に落ちてしまってから、いろいろとやりくりができなくなってきた。不完全あるいは凍結、こういうことになってきておるのです。そういう意味からいっても、財政を組む際にこういうものはきちっと最初から計上しておいていただきたいと私は思うわけでございます。  来年の予算編成に当たっては私はこのことを強く申し上げて、これは大蔵省に要望すべきことで、ぜひそのことを官房長官から指令を出していただきたい。来年の給与改善費は今までと違うようにもっと、先ほどからいうなら、三年で積み残しを解消しよう、こういうことで談話を出されたというのならば、それに見合うような、私は完全実施をしてもらわなければいかぬと思いますが、この談話がさっきおっしゃるような真意であるならば、少なくもこの談話に沿うだけの来年の給与改善費は計上しておくべきだ。あるいは、初めから本予算の中できちっと予算化をしておく、人件費の中で予算化をしておく、改善費ということでなく。私はどちらかできちっと指示をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  194. 藤波孝生

    藤波国務大臣 来年度どういう勧告が出るかを今の段階で予測することはできないわけでございます。従来も給与改善費の計上につきましては、その年度財政事情などを勘案いたしまして一定率を計上する、こういうことになっておりまして、来年度給与改善の方向をそのことで予測せしめるとかといったようなことを意味するものではないと考えておりまして、極めて事務的にと言うと余りいい表現ではないかと思いますけれども、一定率を事務的に計上する、こういうことで従来も来ておるところでございます。これから予算編成の大詰めを迎えていくことになります。いろいろな角度から検討いたしまして一定率を計上していくようにいたしたい、このように考えておる次第でございます。
  195. 和田一仁

    ○和田(一)委員 私は、公務員の労働権の制約の代償措置といたしまして、人事院勧告制度、これを尊重されることは当然政府の義務である、また国会がその勧告をいただいたならば、その勧告に従って公務員の権利義務をきちっと守るような、そういう手当てを決めることが責任であると考えておるわけでございますけれども、ここ何回かの抑制、凍結、そういうことを見ておりまして、当然これは正常な姿ではないというふうに皆さんも考えておられる。だからこそ、これは異例の措置である、こういう表現で、これは常態ではないんだ、まことに異常な状態である、異例なことである、こういうふうに言われておるわけでございます。公務員の皆さんはほかに手段を持たない。自分らの労働条件の改善についての手段というものはない。これしかない。たった唯一の人事院勧告が出され、どうなるかというふうに見守っておるわけです。私も、ことしの人事院勧告は官民の比較の中から極めて妥当な線である、こう考えておるわけでございます。その勧告が、国会と同時に内閣にも出されました。きょうはその内閣の提案を私たちが審議をしておるわけです。私にとりましては、これは人事院勧告を尊重するという精神からいえば、抑制も甚だしいものである、こう考えまして、実は私どもは径ほどこの法案に修正をする考えを持って、完全実施の線でやっていきたい、こう考えておるわけでございます。  そういう経過の中で、何回か抑制がございました。しかし、従来は少なくも俸給表には手をつけなかった。実施の時期をずらすとかそういうことで抑制をされておったが、前年から、俸給表をつくりかえる、こういうことをされました。そのときも大変問題になりまして、これは一回限りの異例の措置、こう答弁されたことを私たちは記憶しておるのですが、それが今回また同じことをされようとしておるわけでございます。一体こういうことを繰り返すのは、これもまた異例と言うのでしょうか。こういうふうに繰り返され始めると、最初のとき一回は異例の措置だという答弁も、本当に一回限りかなという気はいたしましたけれども、また同じことをされるとなりますと、私どもにとりましては異例とは言えない、なれっこになってしまって、こんなことは当たり前なんだという感覚になっていくのではないか。ましてや、先ほどの鈴切議員の御質問に対する答弁を伺っておりますと、別に俸給表人事院が策定したもの以外に内閣といえどもやって違法ではない——確かに違法ではないと思います。御説明を聞いている限りにおいて、これをやったら法に触れるというものではないかもしれないけれども、しかし、それはいかがなものか。これは当然そうお考えだろうと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  196. 藤波孝生

    藤波国務大臣 従来も国会でお答えをしてまいっておるところでございますが、人事院から出されております俸給表以外に、政府態度決定をして俸給表に手をつけるということがいいことかどうかということにつきましては、いろいろ御論議をいただいてきておるところでございます。今おっしゃるように、違法ではないかもわからぬけれども正しいことあるいは適切なことではないという御指摘は、私どもも決していいことだと思っているわけではありませんで、できるだけ人事院のおつくりをいただいております俸給表をそのまま実施に移していくということがいいことだろうというふうに思っておるわけでございます。  しかし、財政事情その他を勘案いたしまして総合的に完全実施ができない、こういう情勢になりました上は、人事院がおつくりになりました俸給表を尊重するということをあくまでも大事にいたしまして、その基本の上に立ってとらざるを得ない措置、こういうふうに考えて取り組んできておるところでございまして、異例のことを今日実施しておるというふうに思っておるところでございます。  毎年度年度繰り返していけばそれで普通のことになっていくのと違うかということにつきましては、先ほど来申し上げておりますように、来年も完全実施を目指してあるゆる努力をいたしてまいります、こういうことを申し上げた上で、少なくとも従来のいわゆる積み残しということにつきましては三年をめどにして解消するんだ、こういうふうな決意を表明することによりまして、今日の状態というのが異例の状態であり、一日も早く完全実施に向けてぜひひとつ努力をしていかなければならぬという気持ちを持っておる、こういうふうに御理解をいただきまして、一層の御鞭撻を賜りますように心からお願いを申し上げたいと思う次第でございます。
  197. 和田一仁

    ○和田(一)委員 官房長官、御用があるようで……。ありがとうございました。  公務員にとりまして、自分らは労働者としての基本的な権利を非常に制約をされている、その代償措置として人事院というものを頼りにして、そこでのいろいろな勧告実施してもらう、そういうふうに権利を制約されながらも、そういう制度であるならばその制度に従って法を守りながらやってきている公務員の立場から見ますと、好ましくはないのはわかっていながら自分らの俸給表を、そういう制度を尊重しないで政府がづくっていく、使用者の恣意によって俸給表がつくられるんだというようなこと、これが異例な、ただ一回の措置でなくまたやられるということでは、こういうやり方が今回再び行われるということは、法を守りながら、公僕として全体の奉仕者であるからという自覚の上で日夜精励しておる人々の士気は決して上がらない。上がらないどころか、そういうことをやる政府というか国に対して、忠誠を誓って自分らが仕事をしているのはおかしいじゃないかというような非常に退廃した気分になってしまう。  総務庁長官、これは私は大変大事なことだと思うのです。こうしたことがただ一回の異例な措置だけでなく、何回も何回も続いてきている。あと三年あれば解消するんだからという問題でない。その数字だけの問題でなく、公務員の士気や規律やあるいは人材の確保というようなことを考えると、今やっているやり方は決してよくない。公務員が国の一つの柱として、一生懸命国家を支えながら働いておる、その人たちが国への忠誠やあるいは自分の勤労意欲を喪失したり規律が弛緩したり、そういったときに一体国家はどうなるのか。国の大きな柱である公務員が、こういうようなことを繰り返すことによってもし弛緩、退廃していったらば、そういった公務員を抱えている国家は一体どうなってしまうのか。これは財政が厳しいからといって無理をさして、そんなような大変なことになって国家の将来を誤らせるようなことにならぬようにやるべきだと私は思うのです。  少々の努力で六年が三年ぐらいに縮まるものなら来年は絶対完全実施、ことし本当は完全実施すべきものをこの法案ではそういかない、私どもは残念でなりませんから、きょう審議をしていただいておる自民党の先生方を含めて完全実施の修正案を通してもらいたい、私はこう思っているんです。自民党の先生方も、人事院勧告が出たときには、この勧告は尊重すべきだと総理大臣に内閣部会あるいは労働部会、あるいはほかの部会の人たちもあわせてこの申し入れをされている、私は新聞で拝見をいたしております。やはり国会と内閣に勧告をされた、その人事院勧告を私どもは尊重したい。できればこの法案は撤回していただくか、あるいはこの内閣委員会の独自の審議によって、私どもが出す修正案が通ることを私は望んでやまないのです。このことは提案した内閣もよくひとつお考えいただきたい。こんなことを繰り返していたら、本当に日本の国はおかしくなってしまう。官吏がそういうことになれば、これを見ている国民もまたいいかげんな姿勢にならざるを得ない。そういうことを考えると、公務員の最も大事な権利を抑制している限りにおいて、その代償措置としての人事院勧告は一〇〇%実施することが義務ではないかとすら私は思うのですが、長官、いかがでしょうか。
  198. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 ただいまの、国の将来を見詰めた高い見地からの御意見、私は敬意を表して拝聴をさしていただいたわけでございます。  私どもも、今日の国全体の行政の運営の中でいかに公務員の処遇という問題が重要であるかということは、十分心得た上で対処していかなければならぬ、かように考えます。したがって、今日の人勧制度というものがある以上、しかもそれを政府が尊重していくという基本的な考え方を持っておる以上、人事院勧告というものは完全実施に向けて最大限努力を払うべきものである、今日まで続いてきておるこういった毎年毎年の抑制措置、二%に抑制する、あるいは俸給表人事院勧告を尊重して比例的ではあっても変えておるといったことはやはり異例の考え方である、私はかような認識のもとに今後ともこういった問題については対処してまいりたい。  ただ、人事院人事院としての御見解、私どもはそれを尊重いたしますが、何分にも政府としては今日公務員をめぐる諸般の厳しい環境が一方にあり、国民の世論ということも無視し得ないといったようなことで、国政全般の立場に立っての判断をせざるを得ないのだ、しかしながら、今やっていることがこれでいいなんということは私どもは考えておりません。この点を申し上げてお答えにいたしたいと思います。
  199. 和田一仁

    ○和田(一)委員 長官は、国政全般を考えてこういうふうにやらざるを得ない、こういうお話でございます。まさにその国政全般を私も考えて、こういう財源がないというだけの理由でもし公務員の士気を乱すようなことは国政全般からいってまことに残念なことだ、こう私は思うわけでございまして、そういう意味でぜひひとつ、こういったことがもうないようにお願いをしたいわけでございます。  それで私は、そういう意味では後藤田長官がいろいろと頑張って、そして六年とか十年とかいう長期にわたらないとこの積み残しが解消できないというような財政事情の中だけれども、そんなことは言っていられないよということで三年に詰められた、こういう長官の大変な御努力も聞いておりますので、そうであるならばもう一つ長官の政治力、その力量で、そうなるともう公務員はポイントは長官だと見ているぐらいでございますから、ぜひお願いをしたい。この完全実施がもしことしできないとしても、官房長官談話にあるようにあるいは長官努力したように、三年で積み残しを解消する、私は何としてもひとつきょうこれは保証していただきたい。三年、これがまた先にいったら、来年は事情が悪くなったから四年だとか五年とか延びないように、それを前倒しに、本当は六年、十年かかるものを三年に詰めていただいた力で、来年は完全実施だと言っていただければ一番いいのですが、そうでないとしてもこれは責任を持っていただきたい。しかし、わしがいつまでもとおっしゃらないで、三年でやってください。今のお立場を続けて、あるいは総理になってひとつ実施してもらいたい。やはりそれぐらいその辺をきちっとおっしゃってやっていただくのでないと、この談話そのものもまた、ああいいかげんなものだ、そういう約束も頼りないものだ、人がかわればおしまいだというようなことにならぬようにしていただきたいと私は思うのです。長官、せっかく努力して詰めていただいたのを、三年にしないで来年は完全実施あるいはもっと詰める、いかがですか。
  200. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 先ほど来お答えをいたしておりますように、来年度完全実施に向けて最大限努力を払うというつもりでございます。そして同時に、仮にそれが困難であったということになりましても、三年を目安に積み残しを解消するということは、これは政府考え方を天下に表明したわけでございますから、それがさらに四年になる、五年になることはあり得ざることである、私はかように考えております。
  201. 和田一仁

    ○和田(一)委員 私もだんだん後退した質問になって、これは本意ではないのですけれども……。  総裁、こんなふうに人事院勧告完全実施から外れてしまって抑制抑制、凍結だ、抑制だというふうになってまいりました。どうもまた来年も難しいというようなことをきっと予感されているのではないかと思うのです。そうなると、一体人事院のこの勧告が今のような格好だけでいいのかどうか、人事院の独立性と存在性がもっときちっと機能できるような、そういう手だてというものがあるとお考えかどうか、今の中で抑制を続けられても仕方がない、人事院の立場からいってもこれはどうしようもないのだとお考えになっているか、あるいはこういう手だてをしたらもっときちっと自分からの勧告は尊重される、何かそういうものがあるとお考えかどうか、ひとつその辺もお聞かせいただきたい。
  202. 内海倫

    内海政府委員 勧告につきましては、やはり私どもの行います勧告が本当の信頼を持たれる、信頼性のあるものであるというところがまず一番大事なことでございます。したがいまして、人事院としましては、過去の長い体験を積み重ね、そしてまたいろいろな試行錯誤も経まして、いわば今日の勧告の仕方、そして調査の方法、いろいろな面を積み重ねて勧告案をつくり、そして勧告をしておるわけでございますから、まず何よりも他のいかなる手だてを設けるよりも、職員の間からもあるいは国民の皆さんにも信頼を受ける、また信頼に足る勧告というものをつくり上げる、これが人事院としては一番大事なことであろう、それでないと、例えば仮に政府がのんでいただけるかなというふうな考慮をしたような案をつくったのでは信頼を受けることができない。一遍そういう過ちを犯したならば、これは永久に取り返すことのできない過ちになります。したがいまして、きょうも朝からずっと論議されておりますけれども、政府では私どもの案をここ数年来認めていただいておりませんけれども、何としても私どもは信頼できるこの私どもの勧告を来年もまたいたしまして、これを政府に何としてものんでいただくようなことを考えなければいけない。  では、それはどうしたらいいのだろうかということは常に考えるのですけれども、勧告に強制力を持たせるということは、やはり国会の御審議を経るべきものでございますから、勧告自体の強制力というものもなかなか問題であろうと思いますし、この辺は私どももこれから考えなければならないと思いますし、政府においても考えていただかなければいけませんが、ひとつ何としても来年ぜひ実現していただきたいということを、ここでは強くお願いしておく以外ないと思います。
  203. 和田一仁

    ○和田(一)委員 御答弁のように、やはり信頼度の高い、全く信頼に足る勧告こそが最も強い強制力というか説得力を持つ、私はこう思うわけでございまして、そういう意味で我々は人事院勧告を妥当なものである、こう認めておるわけでございます。残念ながら、認めながらも政府は、財源がない、こういうことで努力で終わってしまうということの繰り返しなものですから、努力をもっとせざるを得ないような、同じ走るにしてももう全力疾走でいけるような雰囲気をつくるような環境がぜひ必要だ、こうも思うわけなんでございまして、これは我々もまた考えさせてもらいます。  最後に、これは日本の今の立場からいっても本当に政府がしっかりと受けとめていただかなければならぬのは、国際的にもILOあたりで、今の人事院勧告を抑制してあるいは凍結して完全実施しないということであるならば、これは制度そのものをやはりもっと公務員の基本的人権を行使できるように、守れるようなものを考えろというぐらいの勧告すらいただいているということを、これは軽々しく受け取っていただきたくない、このことをやはりきっちり受けとめて、先進国日本として、日本政府態度が世界に向かって恥ずかしくないような姿勢になっていただきたい。国際的にもやはり先進国家として公務員の基本的人権は十分守る、制度を尊重していると言われるような方向づけをきちっと早くしていただきたい。御要望申し上げます。  この審議を通していろいろ問題が提起され、はっきりいたしてまいりましたけれども、いずれにいたしましても、完全実施こそは今申し上げました公務員の士気や日本の将来、先進国日本としての当然の立場である、こういうことから、私どもは修正案を出させていただいて完全実施に向かって努力してまいりたいと思います。  御要望申し上げまして、終わります。
  204. 中島源太郎

  205. 三浦久

    三浦(久)委員 総務庁長官にまずお尋ねをいたします。  今回の三・三七%の給与の改善措置でございますけれども、これは六・四四%の人事院勧告を全く無視した、承服しがたい措置だというふうに私は言わざるを得ないと思います。  言うまでもなく、この人事院勧告制度というのは、労働基本権の剥奪の代償的な措置ですね。ですから、その代償措置が有効に機能するということが憲法上も要請をされているというふうに私は思います。そして、二度にわたってILOの結社の自由委員会勧告が出されておりますね。この二つの勧告でも、そのことが指摘をされているわけです。ところが、現在まで、一般公務員について言いますと、ことしでもう四年間連続して凍結を含む抑制というものが行われているわけです。ですから、平均的な公務員で見てみますと約七十万円ぐらいの実損がある、こういうように計算をされております。  総務庁長官は、そういう公務員に大きな損害を与えておきながら、十月三十一日に所感を発表されておられますね。この所感を見てみますと、私は何とも冷たいという感じがするのです。要約すれば、その所感の内容というのは、政府は一生懸命努力したぞ、不十分なことはよくわかっておるけれども、しかし、これからも一生懸命完全実施のためにやるからおまえたちは今後一生懸命働け、こういう内容なんですね。こういう高飛車な所感では公務員の皆さんは納得しない、もう公務員の賃金は高くはないのですから。民間と比べてうんと低くなっているのは、今官房長官も繰り返しおっしゃっておられるとおりです。ですから、少なくとも申しわけないとか、そういう気持ちがにじみ出るようなものが給与担当大臣の所感として出てこなければうそだと私は思うのです。それでなければ血の通った行政というふうには言えないじゃないかと思うのです。こういうように毎年毎年国家公務員の賃金を抑制しておいて、そういう国家公務員に対して総務庁長官は、悪い、済まぬという気持ちがあるのかどうか、また、そのことについての責任を給与担当大臣としてどうお感じになっておるのか、まず最初にお尋ねいたしたいというふうに思います。
  206. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 人事院勧告最大限尊重しなければならぬということは、これはもう当然の前提条件でございますから、そういう意味合いにおいてやはり五十九年度も抑制せざるを得なかったということは大変遺憾なことである、私はかように考えておるわけでございますが、しかし、先ほど来申しますように、公務員給与をめぐる客観状況環境はまことに厳しいものがあることも事実でございます。同時にまた、国民世論の中にもいろいろな意見もあるわけでございます。特にまた財政状況は申し上げるまでもありません。こういったようなことで、国政全般の観点に立ってことしのような処置をせざるを得なかったということでございますが、こういった条件の中で私、総務庁の長官としては現実的な最大限努力はさしていただいた、かように考えるわけでございますが、それでよかったかといえば、これは抑制しているんですから、その点はまことに不十分な処置であった。しかし、ここは公務員皆さん方に一応のめども示し御安心を願いたいというようなことも、政府としては声明の中で明らかにしたわけでございますので、そういった点はぜひひとつ御理解をしていただきたい、かように念願をしておるような次第でございます。
  207. 三浦久

    三浦(久)委員 政府としては最大限努力をした、こうおっしゃられているのですね。しかし、防衛費とか海外経済協力費とか、また大企業に対する補助金の増額とか、そういうものについては、私はかなり政府努力しているだろうというふうに思います。数字は挙げませんけれどもね。しかし、人事院勧告完全実施について、じゃどの程度の努力をしたのかということは大変疑わしいと思っておるのです。  それで、長官の口から直接お聞きしましょう。どういう努力をしたのか。人事院勧告完全実施に向けて最大限努力をした、こう言われているのですが、どういう努力をしたのか、ちょっとお尋ねしたい。
  208. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 閣僚会議あるいはそれぞれの大臣との個別の会談、こういったような際に私は、五十七年の完全凍結ということは異例中の異例の処置であるよ、それから五十八年の二・〇三の改善、この際には給与表に手を入れておるわけでございますから、これも異例の処置であるよ、したがって、財政状況だけでこういう問題は判断すべきではない、もう少し公務員の士気の問題、生活の問題、そういった幅広い目配りをすべきでないか。もちろん世論の中に公務員に対する厳しい批判があることも事実だ。これらも当然頭の中に置いて結構だけれども、しかし、いずれにせよ今やっている政府の処置は異例、つまり通常とは異なる、こういう意味でございますが、そういう観点でこの問題は議論をしてもらいたいということで、強く私は最後まで主張をしたわけでございます。個々の中身を一々申し上げるわけにはいきませんので、そこらは御容赦願いたい、かように思います。
  209. 三浦久

    三浦(久)委員 しかし、先ほど、三・四%以内というふうに閣議決定した、そう決めたことの理由についていろいろ言われましたね。厳しい財政事情だとか、国民の間に生涯賃金についての批判があるとか、勤務ぶりについて批判があるとか、定期昇給が幾らだとかいうふうなことを言われましたね。そうすると総務庁長官のお考えは、完全実施のために最大限努力ということじゃなくて、何とか六・四四%をへずり込もうという努力をいろいろして、そのファクターを探し出してきたということにしかならないのじゃないですか、さっきの答弁では。  それで、私はその点についてもうちょっと踏み込んで聞きたいのですけれども、生涯給与について国民の間に批判があるから、それも賃金抑制の一ファクターにしたのだ、こういうことですけれども、これは具体的にはどういうことをおっしゃっているわけなんですか。
  210. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 完全実施に向けて努力したのじゃない、逆じゃないか、これはあなたの御意見の方が逆です。そういうことではありません。  それから生涯給与、これはよく民間の方がおっしゃるんですよ。それに対して私は耳を傾けてはおりますけれども、しかし民間給与公務員給与、生涯給与というものの比較は、これはなかなか難しいよ、だからあなた方のおっしゃるようなとおりであるとは私は理解しておらぬ、こう言っているのです。しかしながら、そういった一般的な空気、これはまあ公務員の勤務ぶり等に対する批判もその背後にはあるのかもしれませんね。そういう厳しい批判があることも事実でございますから、それはやはり我々の念頭の中に置かざるを得ない一つのファクターである、かようなことでございます。
  211. 三浦久

    三浦(久)委員 そうすると、生涯給与を官民比較した場合に公務員の方が高い、そういう批判がある、こういう意味なんですか。
  212. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 そのとおりでございます。
  213. 三浦久

    三浦(久)委員 そうすると総務庁は、生涯賃金について官がどのくらい、民がどのぐらいというようなことを御調査なさったことがあるのですか。
  214. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 私はその民間の人に、今言ったように、そう簡単に比較はできませんよ、私は必ずしも即断はしていない、こういうことを言っておるのです。しかし、そういう点は、これは聞いてみなければわかりませんけれども、人事院御当局は恐らく御調査をなさっているのじゃないかな、私はこう思います。
  215. 三浦久

    三浦(久)委員 総務庁長官、そうするとあなたは、例えば民間よりも生涯賃金は国家公務員の方が高いという世間の批判があるけれども、そういう世間の批判が間違っておればそういう批判を受け入れる必要はないわけでしょう。どうでしょう。
  216. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 だから、民間の方がそういう議論を私に言うことがございますから、そう簡単に比較はできませんよ、だからそれには今直ちに了解するわけにはいかぬ、こう私は申し上げているのです。しかし、そういった風潮というか考え方が民間の方にあることは、私は否定はいたしておりません。
  217. 三浦久

    三浦(久)委員 しかし、それは全く間違っていることなんですよ。生涯賃金の官民比較を人事院はやったことがありますよ。日経連方式でもって計算をして、公務員の方が低いという結論が出ているのですよ。ですから、そういう誤った世間の批判というものに耳を傾ける必要はないでしょう。ましてや人事院勧告を抑制するために一ファクターにするなどということは、全く間違った態度だと私は思うのですよ。  人事院の方にちょっと聞いてみましょう。  人事院、先ほどもちょっと質問がありましたね。この生涯賃金で、トータルで比較するというのは適当ではない、こういうお話がありました。ですからこれは省略いたしましょう。それは日経連からいろいろ批判がありまして、何年か正確には忘れましたが、生涯賃金で一度だけ官民比較してみたことがありますね。その結果はどうだったのでしょうか。
  218. 斧誠之助

    ○斧政府委員 生涯給与問題が非常にクローズアップされましたのは、日経連が昭和五十六年に、昭和五十五年度の国家公務員給与と民間給与と比較した場合に、退職金、年金を含めてどちらが高いか、こういう試算をした、そして発表したということが非常に影響していると思います。そのことにつきまして臨調でも大変議論になりまして、人事院に資料の御要求があったわけでございますが、私たちは、今先生のおっしゃった給付目的の違うものを単純合算するのは問題ですよというのが第一点、もう一つは、日経連の比較というのは、民間の場合は実態値モデル、公務員の場合は制度モデルということで比較しておりますので、そういうモデルの性質が違うものを比較する、それも問題ですよ、それから公務員の六十歳退職で見た場合の高校卒が二等級ということで比較しておるのですけれども、公務員の退職実態を見ますと、高校卒の方は、二等級以上になっている方は一〇%程度で、九〇%の方は三、四、五等級で退職しているのが実態ですということで、そういう条件であえて日経連どおりのそういうモデルを使って試算したらどうなりますかということの資料を御提出したわけでございます。  それは、かつて中路先生の質問に本委員会でもお答えしたことがあるのですが、そのときの数字を申し上げますと、民間企業の場合が二億四千百万程度、それから三等級退職の場合が二億二千万、四等級退職の場合が二億一千二百万程度ということで、決して公務員の方が高いというような結果にはなっておりませんということを申し上げております。
  219. 三浦久

    三浦(久)委員 総務庁長官、今お聞きのとおりですね。それは全く間違った批判なんです。そうでしょう。そうすると、そういうものを人勧抑制の一ファクターとして考慮するということも間違いじゃありませんか。どうですか。
  220. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 日経連の御調査に対する人事院の調査の結果は、今局長が言ったとおりだと思います。しかし、意見の対立があって一致を見てないということも事実でございます。  そこで私は、あなた方の御主張にそのままそうですかと言うわけにまいりませんよ、比較は大変難しいのですよと、こう申し上げておる。しかしながら、こういった民間の方々の物の考え方、批判というものが役人の給与をめぐってあるという事実、これには私どもはやはり耳を傾けなければならぬ、こう申し上げておるのです。
  221. 三浦久

    三浦(久)委員 そうするとあなたは、日経連の主張と今の人事院の答弁とどちらを正しいというふうに思われるのですか。批判があるからと言ったって、間違った批判に耳を傾けることはないのですよ。むしろ政府としては、そういう日経連のやっていることは間違っておる、公務員の方が生涯賃金は低いのだ、そういう批判は当たらないということをはっきり言うべきじゃありませんか、給与担当大臣としては。どうなんですか。どっちが正しいと思われているのですか。
  222. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 私はやはり、そういう場合には人事院の御調査というものに耳を傾けなければならぬ立場にもありますけれども、民間からそういう調査の結果が出、そして一般的に公務員はいいよ、こういう批判がある以上は、それにも耳を傾けなければならぬというのが私の正しい態度ではないのか。一方的に役所のものだけが正しいと言うわけには、断言するわけにはまいらぬ。
  223. 三浦久

    三浦(久)委員 そうすると、ちょっと問題はこんがらがってきますよ。あなたは、人事院の調査の方が正しいと言いながら——正しかったら片一方は間違っているわけですよ、日経連の方は。そうしたら、間違った批判にもあなたは耳を傾けて、そうして人勧抑制の一ファクターにした、こういうことをおっしゃるわけですか、それでいいのですか。
  224. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 こういった比較の難しいものについて、人事院の見解と民間の見解が全く対立しているわけですね。ならば私は、両方に耳を傾けて、それらを頭に置いてそれはやはり考えざるを得ないのじゃないのですか。
  225. 三浦久

    三浦(久)委員 そんなことはありませんよ。あなたは政府の役人でしょう、大臣でしょう。人事行政の責任者じゃありませんか。そうしたら、同じ政府部内のいろいろな調査とか見解というものを尊重して、民間の誤った意見は正していくというのが私はあなたの立場だと思う。誤った意見だろうと何だろうと、何でもごちゃごちゃに物を聞いて、足して二で割るか三で割るか知りませんけれども、そういうようなやり方というのは行政の筋を通したことにはならないのじゃないですか。それは長官、あなたの答弁は間違っていますよ。  そうすると、じゃあなた自身は、生涯賃金を比較した場合に、国家公務員の方が低いということはお認めになるのですね。どうですか。
  226. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 その点については、双方に意見の開きがある以上さらに詰めるべき問題である、かように考えております。
  227. 三浦久

    三浦(久)委員 答弁逃げておられるでしょう。先ほどの答弁と違うじゃありませんか。先ほどはあなたは、人事院の見解のとおりだと思うと言われているのですよね。そうすると、人事院の調査は間違っていると言うのですか。見解の対立があっても、人事院としては専門的にいろいろ調べた結果、公務員の生涯賃金の方が低い、そういう結論を出しておられる、同じモデルで計算した場合に。そうでしょう。そういう事実は認めないのですか、給与担当大臣としては。どうなんですか。
  228. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 私が申し上げておるのは、人事院もそれなりの御調査をした結論ですから、それにも耳を傾けなければならぬ。しかし同時に、意見の対立がある民間の御調査にも耳を傾けなければならぬ、私はこう申し上げておる。あなたの御議論を聞いていると、おまえは政府の役人だから政府の決めたものは皆正しい、こう言え、こうおっしゃるのだけれども、対立がある以上は、大臣としてはそう言うわけにはまいらぬ、もう少し詰めて考えるべき問題ではなかろうかなあと、こう申し上げておるのです。
  229. 三浦久

    三浦(久)委員 今、日経連は生涯賃金の比較の発表はしていないのです。それはもう降参しているわけですよ。そんなものを出したって公務員の方が低いというのがはっきりしているから、その後出していないじゃありませんか。決着がついているのですよ、この問題は。対立があるなんという問題じゃないのです。  それでは、もう一つの問題にいきましょう。定期昇給の問題です。定期昇給が二・〇八%と言われましたかね。これに三・三七%を足すと五・幾つになる、春闘相場も定昇込みだ、ですからそれと比較すると公務員の方が多いというような意味での発言をされましたね。これは、定期昇給を含めてこの春闘相場と比較してどっちが高いかというようなことをやることは適当じゃないと思うのですよ。  人事院にちょっと聞きますけれども、今言ったように民間のベアは定昇込みで何%と出ておる、公務員の方は三・三七プラス二・〇八だから五・四五%だ、そういうものを双方比較して、そしてアップ率からいえば民間よりも公務員の方が多いというような結論を出すというのはどういうことなんでしょうか、どういうふうにお考えでしょうか。
  230. 斧誠之助

    ○斧政府委員 定期昇給と申しますのは、年齢が一歳進行しますと、その間一応通常の勤務をしますと一号俸上がっていくという、いわば年齢に伴う給与のアップでございます。基礎給与がアップしていく、これがベースアップでございます。したがいまして、我々の調査しておりますのは、民間で払っておる基礎給与が幾らか、公務員の基礎給与は幾らかということで比較をしておるわけでございます。     〔委員長退席、石川委員長代理着席〕 したがいまして、べースアツプと定昇を足してそれが民間の春闘分と合っている、合っていないというような比較は適当ではありませんということをお答えしてきておりますが、ただ経験的に申し上げますというと、人事院勧告によりますアップ率と公務員の年間定昇率、これを足しましたものが大体春闘と似たような感じの数字になっているというのが従来の傾向でございます。
  231. 三浦久

    三浦(久)委員 それは完全実施した場合の話でしょう。そうでしょう。  ですから、今の答弁、おわかりでしょう。大体こんなものを比較するのが間違っているということ空言われているのです。これは人事院月報にも出ていますけれども、ここにはこう書いてあります。「春闘相場と勧告による引上げ率とはそもそも計算方法が異なるものであるため、人事院勧告による引上げ率に定昇率を加えたものと春闘相場とを比較することは適当でなく、」適当でないことをあなたはやられているわけですね。そして、それを人勧抑制の一ファクターにしておるわけですよ。こんなばかなことがありますか、一体。あなたこれについてどう思われますか。間違いだと思われますか。
  232. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 間違いとは思っておりません。だから、私は先ほどの答弁は注意深くお答えをしているのです。それは確かに一年、年をとりますから上がるんだ、こういう今の御答弁でしょう。私がさっき言ったのは、個々の現役の職員について言うならば定期昇給が別に二・〇八あるのですよ、こう申し上げている、これは事実なんです。  それから同時に、今お読みになった人事院文章、あるいは人事院局長が言っておることも私、承知しております。しかし、その点についても相当な争いがあるということだけは事実である、私はかような認識を持っておるわけです。
  233. 三浦久

    三浦(久)委員 争いがあるって、どういう争いがあるのですか。人事院の見解に対して、また日経連がこの問題について、いやそうじゃないというようなことを言っているのですか、どうなんですか。
  234. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 この人事院の見解について、必ずしもそうではないのではないか、こういった議論が一部にある、こういうことでございます。
  235. 三浦久

    三浦(久)委員 後藤田総務庁長官としては、どっちが正しいと思われておるのですか。
  236. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 私は双方に耳を傾けております。
  237. 三浦久

    三浦(久)委員 そんなあなた、給与担当大臣として人事院を無視しているじゃないですか。人事院を全く無視していると思いますよ。それは人事院という制度それ自体をあなた自身が否定している考えじゃありませんか。人事院が綿密に調査をしてその結果一定の結論を出す、それに対して一定の政治的な立場から日経連が反対をする、そうするとどっちかわからぬ、両方正しいのだろうみたいな、そんなことで給与担当大臣が務まるのですか。  じゃ、ほかのことも質問しなければいけませんからちょっと先に行きますが、あなたは先ほど勤務ぶりについても批判があると言われましたね。その批判は正しいと思われておるのですか。
  238. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 端的に申し上げますと、ストライキ権がない、それに対する代償措置、したがって人事院勧告完全実施しなければならない、これは私は政府の責任だと思います。しかしながら、その組合がストライキを打っているということ、それについての厳しい国民の批判があるということだけはあなただって率直に認めてもらわなければ困る、こう思います。
  239. 三浦久

    三浦(久)委員 日本の公務員の勤務ぶりについて中曽根総理がこう言っておりますよ。五十六年十月八日の行政改革特別委員会、行管庁長官の時代ですけれども、日本の公務員は非常に勤勉であり優秀であると思う、こう言っておるのです。その一年前、五十五年十一月十一日の衆議院内閣委員会では、世界的比較において日本の公務員はかなり優秀である。あなたはこれを否定されるのですか。
  240. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 私も長年役人をやっておりましたから、日本の公務員が優秀であるということだけは間違いがございません。しかし、先ほど言ったように批判があることも事実である、この批判には耳を傾けなければならぬのではないのか、かように私は思います。
  241. 三浦久

    三浦(久)委員 ですから、それは公務員全体に対する批判じゃないでしょう。一部勤務ぶりとか、そういう個々的なものはまた個々的に是正していく措置があるわけですよ。だからといって賃金を抑制していいという理由にはならないでしょう。全体としては世界的にも極めて優秀な日本の国家公務員なんですから、それを一部にちょっと批判があるからといって賃金抑制のファクターにするというようなことは許されないじゃありませんか。  ですから、私が今まで申し上げてきたことは、後藤田長官が、財政事情だ、また生涯賃金だ、定昇だ、勤務ぶりだと言われてきたこと、そういうものを全部ファクターにしてこの三・四%を決めたと言われるけれども、それは全く根拠がないということを私は言いたいのです。みんなマイナス要因でしょう。そういう根拠のないものを取り除いて、あなたが本当に正しい目で事実を認識されて、それでもう一回給与について虚心坦懐に臨むならば、私はもっと上がってなければいかぬと思うのです。だって、あなたがたが挙げられたマイナス要因は、私今三つの問題を言いましたけれども全部間違っていることなんです。そういう意味では、あなたがおやりになった三・三七%の決定は全く根拠を欠いておる。ですから、撤回してもう一回出し直せというふうに私は要求したいのですけれども、どう思われますか。
  242. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 あなたの御意見として承っておきます。
  243. 三浦久

    三浦(久)委員 国家公務員は、この人事院勧告を抑制されたことによって非常に大きな実損を受けております。  今度の例えば差額の問題、この四月から十二月までの差額の問題だけ取り上げてみましても、完全実施と今の三・三七%とどのくらいの違いがあるかといいますと、これは私自分の選挙区の問題を調べてみたのですが、北九州市だけを見てみましても、この差額が五十億六千三百万円ですね。そうしますと、北九州の小売月額というのは七百七十八億円であります。ですから、十二月に五十億六千三百万円の金が落ちなくなっているわけですね、それだけ。これはこの小売月額の約七%に当たるのです。非常に大きな問題ですね。ですから、消費不況というようなものがますます深刻化していく一つの原因にもなっていると思われます。  また個別的に見ましても、例えば賃金の問題を取り上げてみましても、これは人事院からいただいた資料でございますが、課長補佐クラスでことしを含めてですが、今まで八十五万六千円の損害であります。それで課長ですと百六十八万円、こういう大きな損害であります。そしてまた、これは年金、退職金とも関係いたしてまいりますね。特に凍結をされたときにおやめになった方というのは非常に大きな損害を受けています。ですから、例えば五十七年度ですと、この退職金で、これは大体課長クラスですけれども、百二万円の損害ですよ。年金ですと、大体十二年くらい受け取るということを計算いたしますと、これでやはり百三十万くらい。ですから、全体で二百三十万くらいのそういう大きな損害を受けているわけですね。それで退職した年限によって、いわゆる官民較差が是正された後にやめられる方とそうじゃないときにやめられる方とでは随分差が出てくるわけですね。これは非常に不公平だと私は思うのですよ。  そういう意味からいっても、私、修正案にも出しておきましたけれども、この実損の回復というのはやはり後藤田長官が一肌脱ぐべき問題だと私は思うのですけれども、いかがでしょうか。
  244. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 御承知のように、この給与改善の問題は、毎年毎年の勧告に従って法律案として御審議を願って決定をいたしておりますので、ただいまお述べになったような損失をどうするかといったようなことを時々聞くのですけれども、それは政府としては遺憾ながら損失を補償するとかそういったような考え方は持っておりません。
  245. 三浦久

    三浦(久)委員 官房長官、まだお見えになりませんね。それでは後藤田長官、段階的解消の問題ですから長官に……。そうですか。それでは、次の質問に参りましょう。  防衛庁の方へちょっとお尋ねをいたします。  自衛隊は化学戦、いわゆる化学戦といいますと、核戦争、それから細菌戦、毒ガス戦、そういうものの準備をしておるんじゃないでしょうか。例えば自衛隊員に防護マスクを使用させるとか化学防護衣というようなものを部隊に配置するとか、そういうようなことはやっておられませんでしょうか。もしやっておられるとすればその役割、そしてまたその数、そういうものをちょっとお知らせいただきたいと思うのです。     〔石川委員長代理退席、委員長着席〕
  246. 筒井良三

    ○筒井政府委員 自衛隊では、化学兵器というようなものは保有しておりません。しかしながら、仮に化学兵器が使用されました場合にそれを検知し、測定し、あるいは防護し、除染する、そういったような器材は持っております。例えばガスマスクでありますとか化学防護衣でありますとか、そういった汚染地域を測定し、検知するための機動力を持った化学防護車とか、そういったものは持っております。
  247. 三浦久

    三浦(久)委員 その数をちょっとお知らせいただきたい。
  248. 筒井良三

    ○筒井政府委員 化学防護車はただいま二両保有しております。それから代表例としましてガスマスクを挙げますと、陸海空合わせまして約十三万七千程度持っております。
  249. 三浦久

    三浦(久)委員 化学防護衣はどうですか。
  250. 筒井良三

    ○筒井政府委員 化学防護衣はガスマスクのように数がございませんで、約七千弱というところでございます。
  251. 三浦久

    三浦(久)委員 大宮に化学学校というのがありますね。この化学学校というのはどういうことをやっているところでしょうか。
  252. 筒井良三

    ○筒井政府委員 化学戦におきますところの先ほど申し上げました検知、測定あるいは防護、除染、そういったようなことに関しまして訓練あるいは勉強する場所でございます。
  253. 三浦久

    三浦(久)委員 そうすると、化学戦というのはどういうものでしょうか。
  254. 筒井良三

    ○筒井政府委員 ただいまの学校での訓練はしておりません。  化学戦と申しますのは、私、技術参事官でございますのでその立場から申しますと、いわゆる化学剤と申しましても特に致死性に至る化学剤が使用される、そういったものを化学戦と私ども一般に称しております。
  255. 三浦久

    三浦(久)委員 そうすると、毒ガスだとか細菌戦だとか、そういうものが含まれるのでしょうか。
  256. 筒井良三

    ○筒井政府委員 このような戦争体系を普通CBRと三つに分けておりまして、化学戦がCでケミカルでございますね、細菌戦がバイオロジカルのB、それから核戦闘がRの放射能、そういったぐあいになっておりますので、ただいまの御質問のうちの化学戦といいますものは細菌戦は含まないというのが通常の解釈でございます。
  257. 三浦久

    三浦(久)委員 そうすると、毒ガス戦は含まれるわけですね。
  258. 筒井良三

    ○筒井政府委員 毒ガス戦は化学戦に入ります。
  259. 三浦久

    三浦(久)委員 六十年度の概算要求で防衛庁は化学防護車一両、これに一億五千二百万円計上されていますけれども、これは従来の化学防護車とどう違うのでしようか。
  260. 筒井良三

    ○筒井政府委員 先生のおっしゃられましたように、私ども概算要求の中に化学防護車一両、約一億五千万円を計上してございます。この在来と違いますところは、ミッション、目的等は全く同じでございますけれども、搭載いたします車両が在来のものはいわゆる兵員を運ぶところの、APCと私ども申しておりますけれども、それに積んだものでございまして、簡単に言うとキャタピラ式のスピードの遅いものでございます。今回のものは車体が八二式の指揮通信車といいます、私どもの装輪車という特別のタイヤを使ったものでございます。したがいまして、スピードが速うございます。
  261. 三浦久

    三浦(久)委員 そうすると、ちょっとこの毒ガス戦に限定して聞きますが、自衛隊自身が毒ガス戦の訓練というものをいたしておるわけでしょうか。
  262. 大高時男

    ○大高政府委員 お答えいたします。  ただいま先生お話しのそういった各種のガスにつきまして防護するための訓練は行っておりますけれども、これを使用するということは一切いたしておりません。そういう訓練はしてないということでございます。
  263. 三浦久

    三浦(久)委員 九月に宮城、岩手で行われました陸上自衛隊とアメリカの陸軍との日米共同演習、これはどういう訓練が行われたのでしょうか、お尋ねしたいと思います。
  264. 大高時男

    ○大高政府委員 ただいま先生御指摘の日米共同実動訓練、こういう名前をつけてございますけれども、本年の九月十八日から十月一日まで、岩手県の岩手山、それから宮城県の王城寺原、この両演習場を中心にいたします場所におきまして、日本側は第九師団の第五普通科連隊、これが中心の約千六百名、それから米国側でございますけれども、米国の第七歩兵師団の第一旅団長の指揮いたします一個歩兵大隊、基幹の約千四百名、これが日米部隊間の、要するに我が国有事の際の共同連携要領を演練するために現地において訓練を行っております。
  265. 三浦久

    三浦(久)委員 毒ガス戦の訓練、演習はしてませんか。
  266. 大高時男

    ○大高政府委員 この訓練におきまして、各種の機能別訓練というのを行っておりますが、この際に、自衛隊の方で持っております防護マスクでございますが、防護マスクの着脱のデモンストレーション、それからまた、日米双方が持っております、先ほど筒井参事官が説明いたしましたような防護マスクあるいは防護衣あるいは除染具、こういったものをディスプレーと申しますか、並べまして、相互に使い方の研修は行ってございますが、ただ、今先生がお話しのような毒ガスを使用しての訓練、そういったものは一切やっておらない、器具のディスプレーをやった、こういうことでございます。
  267. 三浦久

    三浦(久)委員 お話のとおりお聞きしておけばいいのですけれども、ちょっと違うのじゃなかろうか。例えば防護マスクの着脱訓練だと、そんなものを共同でやる必要はないわけですね。アメリカ軍と共同でやる必要はありませんよ。それから、お互いの防護マスクをディスプレーした、展示した、こんな訓練も、何もそれぞれ自分たちでやればいいことであって、日米共同訓練でやらなければならぬというようなものじゃないと思うのですね。ですから、この日米合同演習でやったとすれば、防御訓練と称してやったとしても、何かもっとほかのことをやったのじゃないかという疑いを私どもちょっと持たざるを得ないのです。  それはこういう記事がある。例えば在日米軍のワイアンド司令官、これは在日米陸軍の司令官ですが、九月二十七日付のアメリカ太平洋軍紙「スターズ・アンド・ストライプス」ですか、これに「みちのく84」、今言われた合同演習ですが、これについてこう書いておるのです。「日米合同演習でははじめてのことであるが、日米二国が共同で作戦する場合の諸問題をつぎの五つの主要分野について記録し点検できるように部隊の構成を意識的におこなってある。すなわち、通信、兵站、火力支援、諜報、化学戦の五分野である」、こういうふうに言っておるのです。これは「五つの主要分野について記録し点検できるように部隊の構成を意識的におこなってある。」こういうふうに言っておるのですね。だから、ただ単に防護マスクの着脱訓練、いかに早く身につけるかとかとるかとか、そういうような訓練じゃなくて、もっと何か別の、私はよくわかりませんが、何かやったんじゃないか、そういうふうに思っているのですが、いかがでしょうか。
  268. 大高時男

    ○大高政府委員 ただいまお話のありましたワイアンド中将の書きました「スターズ・アンド・ストライプス」については、私も見ております。  ただ、ここで申し上げておきたいことは、この日米共同訓練におきましては三つの種類の訓練があるわけでございまして、一つは予備訓練、それからいま一つは機能別訓練、それから最後に総合訓練という形で、日米双方がお互いに連携しながら対抗部隊に対して守勢あるいは攻勢を行う、その前段階の機能別訓練でございますが、それぞれに自分の持っております武器というものの性能、あるいはこれを最大限に発揮すべく、例えば今先生お話しの火力でございますけれども、火力を実際に撃って調整を行ってみる、日米双方でお互いのやり方を研修し、これによって戦術技量というものをお互いに向上させる、その過程におきまして今申し上げましたような化学兵器の防護の訓練、これも機能別訓練の一つとして出てくる、あるいは通信訓練も出る、こういうことでございます。一番最後に総合的な訓練が行われる、こういう形でございまして、この機能別訓練の過程で、ただいま私が申し上げたような、お互いに相手の武器というものを知り合う。必ずしも日米同一ではございません。またその使い方、実際に例えばガス等がございました場合において、その影響を除染するやり方にしましても車両の使い方にしても、それぞれ違う。そういったものを相互に研修するということでございます。
  269. 三浦久

    三浦(久)委員 この毒ガスに対するアメリカ政府考え方と日本の政府考え方というのは違うと思うのです。というのは、日本の場合には、これは一九六九年七月二十四日の衆議院本会議で当時の佐藤総理がこう言っておられる。「化学・生物兵器の使用を禁止するとともに、さらに、その開発及び製造を禁止し、在庫をも破棄すべきだというのが政府の基本的態度であります。」こうおっしゃっておられるのですね。こういう当時の政府態度というのは現在も堅持されているのですか。どうでしょうか。
  270. 大高時男

    ○大高政府委員 先生御指摘のとおりでございます。
  271. 三浦久

    三浦(久)委員 それから、毒ガスの使用を禁止しました一九二五年のジュネーブの議定書ですか、これを批准するに当たっても日本は何も留保条項はつけてないと思うのです。ところがアメリカは留保条項をつけてますね。先制使用はしないのであって相手から使われれば報復的にはそれを使いますよと、そういう留保条項をつけていると思う。それからまた、日本は毒ガス兵器というものは持っておりませんですね。持っておらぬから報復的に使うといったって使えないわけです。ところがアメリカというのは、この毒ガスというものを現実に保有しているわけですね。そして、攻撃を受けたら報復的には使うと、そういう立場をとっている国であり、そういう軍隊であります。  そういたしますと、この毒ガスについて全く見解が違う両国政府の軍隊が、毒ガス戦の防御であるとはいえ共同訓練をする、そういうことは、我が国の基本的な態度に反して毒ガス戦を肯定することになるのではないか。例えば一緒に戦闘行動をやるとすれば、それはもう一体のものですよね。共同の敵に対して一体となって戦っていくわけです。ところが日本の自衛隊の場合には、相手から毒ガスでの攻撃を受けても防御するだけ、報復的な攻撃は毒ガスで加えない。ところがアメリカはそういう立場をとるかもしれませんね。そうすれば、これは日本の政府態度とは違ってくるわけであります。お互いにそういう違った立場を持った軍隊が共同演習を繰り返しやるというようなことは、私は、毒ガス戦を肯定することに通じていく、日本の政府のそういう毒ガスに対する基本的な態度が変更されてしまう、そういう危険性があると思うのですよね。  そういう意味で防衛庁長官にお尋ねしたいのですけれども、こういういわゆる毒ガス戦を想定した日米の共同軍事演習というのはやめるべきではないかというふうに思うのですが、いかがでございましようか。
  272. 大高時男

    ○大高政府委員 再々御説明いたしましたように、機能別訓練の段階におきまして、相互に持っておる装備の性能の説明あるいは使い方、こういうのを互いに研修し合うということでございまして、いわゆる毒ガス戦という形で総合訓練において戦闘を行う、訓練を行う、こういうものではないという点をぜひ御理解いただきたいと思います。
  273. 三浦久

    三浦(久)委員 防衛施設庁、お見えですね。横須賀市の長井町にあります米軍住宅の返還問題について一言お尋ねいたします。  この長井住宅地区というのは住宅が百二戸ありまして、それから小学校、消防署、そういうものを有している住宅地区ですね。これは、五十二年の十二月十五日に日米合同委員会で、横須賀の米軍基地内に代替施設を建設する、そういうことを条件にして日本側に返還をするということで合意を見ている問題であります。横須賀の米軍基地内に長井の住宅の代替住宅が五十八年度内に建設が完了いたしております。それにもかかわらず、この長井住宅地区はいまだに返還をされていないわけでありますけれども、いつごろ返還をされるのか、その点をお尋ねいたしたいというふうに思います。
  274. 千秋健

    ○千秋政府委員 横須賀市にございます長井の住宅地区につきましては、ただいま先生御指摘のとおり、移設を条件に返還することが決まっておりまして、それに基づきまして、五十六年度、五十七年度でそこに所在します百一戸の住宅の移設を行ったわけでございますが、それとともに、そこに所在しました通信施設につきましてその移設等をいろいろ検討しておったわけでございますが、移設の適地が見つからないために、これを切り離して、住宅の移設部分だけを先に返還しようということで、米側、横須賀市といろいろ調整しまして、ことしの六月でございましたか、その点の合意が得られまして、現在通信施設を残すための附帯工事を行っております。これが今年度中に工事が完了いたしますので、来年度早々には返還になるというふうに思っております。
  275. 三浦久

    三浦(久)委員 ここに米軍の内部文書があるのですよね。これは長井住宅地区問題に触れた文書ですが、こういうふうに書いてあるのです。「長井住宅地域は一九八四年三月三十一日に閉鎖の予定であったが、日本国政府が新しく池子に住宅を開設するまで、従来どおり長井住宅地を維持することを要請した。この要求の結果は数カ月要する。」こういうふうになっているのですね。そうすると、我々としては、何か池子にまたさらに別の代替住宅をつくるまで返還しないのじゃないか、そういう疑いを持つのですが、そういうことはないのですね。
  276. 千秋健

    ○千秋政府委員 ただいま御指摘の件は、私ども承知しておりません。私どもとしては、先ほど申し上げましたように、現在やっております工事が完成すれば、所定の手続きをとって返還することになっております。
  277. 三浦久

    三浦(久)委員 横須賀の軍事基地の中につくった長井住宅の代替住宅ですね、これはもうかなりの部分入居しているんですね。そうしますと、いや返還はしたいんだけれども、そのための代替住宅にはもう既に人が入っちゃっている、だからというのでまた新しい住宅建設の要求というものが出てくるんじゃないかということを我々は非常に心配しておるのですが、そういう要求があってもこれはひとつぜひはねつけて、そして長井住宅の返還を実現させてほしいということを私は強く要求をして、この問題については終わりたいと思います。  官房長官お見えになりましたので……。官房長官いらっしゃらないから総務庁長官にお尋ねしようと思ったら、いやそれはもう官房長官に聞けという御意思でございますので、お待ち申し上げておりました。  皆さんもお聞きになりましたが、あの十月三十一日の官房長官談話でございますね。これは一口に言うと、三年をめどに較差については段階的に解消していく、そういうことを意図されたものだというふうに考えますけれども、私は、あの段階的解消という考え方は人事院勧告制度を無視しているというふうに思わざるを得ないわけであります。なぜならば、この人事院勧告を尊重するという義務、その義務も、憲法上さらに国家公務員法上の義務を負っているというのが政府の見解でございましょう。どうでしょうか。
  278. 藤波孝生

    藤波国務大臣 人事院勧告が出されましたならば完全実施に向けて最大限努力をすべきものである、人事院制度人事院勧告制度からにらみまして、そのように政府として取り組むべきものであるというふうに認識をいたしております。
  279. 三浦久

    三浦(久)委員 中曽根総理は、総理になられてからこの問題についではっきり、国家公務員法上の尊重する義務を負っておるということを答弁されておられるわけなんです。そして、その国家公務員法上尊重する義務というのは、完全実施に向けて最大限努力をする義務である、こういうふうにおっしゃっていらっしゃるんですよね。ですから、これはただ単に道義的義務であるとか政治的な義務であるとかというものではないわけです。法律上の義務だということを政府自身もお認めになっていらっしゃるわけなんです。  それにもかかわらず、来年度の問題です。来年度人事院勧告は完全には実施しませんよということが段階的解消ですね。そういたしますと、先ほどの御答弁を聞いておりますと、いや来年も最大限度の努力をするんだけれども、仮にできなかった場合にはまあ今年度並みの較差解消のために努力するんだ、こういうふうに段階的解消の考え方を合理化されておりますけれども、しかし来年度の問題については、まだ勧告が出ていない。出ていないのですから、あなたたち努力のしようがないんですね。勧告完全実施のために努力のしようがないんです。そうすると、全然努力をしていないんですよ。口だけで努力をしますと言っているけれども、現実には何の努力も来年の人事院勧告完全実施についてはしていないんですよ。していないにもかかわらず、来年の人事院勧告については完全には実施しないこともあり得ますよというようなことを官房長官談話として発表するなんということは、私は、これは国家公務員法違反だというふうに言わざるを得ないと思うのですが、その点のお考えはいかがでございましようか。
  280. 藤波孝生

    藤波国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、勧告が出ました段階でこれを完全実施するようにあらゆる努力をするというのが、法律の上からも、また政治的にも、さらに、公務員皆さん方にぜひひとつ頑張っていただきたい、そういうふうにお願いをしたいという立場から、心情的にも、ぜひそうあるべきものだ、このように考えておるところでございます。  来年度のことにつきましては、来年度勧告が出た段階で完全実施に向けて努力をする、今からそういう決意をいたしておるところでございますが、先生御指摘のように、来年度のことに触れるのは人事院を無視したことになりはしないかということにつきましては、政府は今申し上げてまいりましたような立場で人事院勧告実施するためにあらゆる論議を尽くし、そして検討を重ねて一つ態度を決めたのでございます。人事院あるいは人事院勧告を尊重したいと思えばこそこの努力をしてきておるわけでございます。来年度につきましてもその決意を持っておる、これが前段でございます。  来年一生懸命努力をするが、それでもなお各方面で非常に心配しておられるのは、非常に高い高げたを履いている、このげたの歯を一体どうやって低いげたに縮めるんだということについての御心配が随分ございましたので、ことし、来年、再来年と少なくともこの三年間をめどにして、従来の積み残しと一般的に言われておる分については少なくともその三年間で解消するということにしますよ、これは来年度完全実施しないことがあり得るということを申し上げたというよりも、どれだけ時間をかけても少なくともこの三年以内に解消するように努力しますよというふうに政府がみずからに手かせ足かせをはめた、こういうふうに考えておる次第でございまして、来年一生懸命努力をしてまいりますから、その前段をひとつ特に御留意をいただいて見守っていただきたいと思うのですけれども、どうしてもだめな場合でもこうだよということをあえてつけ加えて、公務員皆さん方に安心していただこうと考えた、こういうふうにぜひ御理解をいただきたいと思うのでございます。何回も何回も同じことを申し上げておって申しわけありませんけれども、心の底からそんなふうに思っておりますので、重ねて申し上げた次第でございます。
  281. 三浦久

    三浦(久)委員 三年をめどに解消するということは、来年度は完全に実施しないということなんですよね。それはもうはっきりしているのです。同じお答えですから、私は質問の時間がありませんのでやめますけれども、藤波官房長官もそれから後藤田総務庁長官も、政治家であると同時に行政の責任者なんですよ。そうすると、行政というのは法律に基づいて行わなければならないのですね。これは法治国家の原則であります。そうすると、片や人事院勧告制度というものがあって、そしてそれが出たら最大限実限のための努力を払う法的な義務を負っていながら、その義務を尽くさないうちに、来年度完全実施じゃありませんよというようなことを公式にあなたが官房長官としておっしゃるということは、私はどう見ても憲法や国家公務員法に違反をすることだというふうに思います。  そういう意味で、そういうことを平気でやられて、なおかつ、いや政府の善意だ、酌み取ってくれというようなお話は、それは人事院勧告制度の重みというものを本当に理解をしていない、そういう立場から出てくる発言ではないかと私は思って、非常に遺憾であります。何しろ完全実施することが原則である、そのことだけを私は申し上げて、質問を終わります。
  282. 中島源太郎

    中島委員長 松浦利尚君。
  283. 松浦利尚

    ○松浦委員 官房長官が経済閣僚会議があって忙しいそうですから、官房長官にお尋ねをします。また官房長官談話の質問をしておりますと、あなたの答弁が長くて私の質問時間が短くなりますから、各委員指摘したことをぜひ肝に銘じていただきたいということを申し上げて、私は事実関係だけお尋ねをしたいと思うのです。  御承知のように、人勧が政府、国会に勧告されたのは八月十日でした。八月二十一日に本委員会を閉会中でありましたが開いて、人勧を議論したわけであります。そのときに政府は、公務員の皆さんの関心事であるから速やかに作業して国会に法律を提出する、こういうお約束だったはずですが、延々として今なお提出がない。やっときのうの午後四時二十分に本院に提出された。その間物すごく時間がかかっておるわけですね。なぜこんなに作業がかかるのか。中曽根内閣の再選問題でがたがたしておったというちまたの声もあるのですが、なぜこれほどかかるのか、その点についてはっきり、そのことが一つ。  もう一つは、こんなにぎりぎり出されまして、そして我々の議論が続けば続くほど、完全実施をなぜやらぬのかという議論が続けば続くほど、公務員皆さん方に対する、非常に不満ではあるけれども、政府が出した範囲内のバックペイというのが四月から遡及してもらえる、それがもらえなくなるのじゃないか、そういうぎりぎりの段階にこの法案が委員会に提出されておる、非常に問題があると思うのですね。まともに議論をしておって、三日も四日もかけたらバックペイが出ない、そういう日程まで計算をしてきのうこちらの方に出されたのかどうか、そのことも含めて御回答いただきたいと思います。
  284. 藤波孝生

    藤波国務大臣 勧告が出されましてから政府態度を決定するまでには、四回の給与関係閣僚会議を開きまして、慎重にいろいろな角度からの検討を加えてきたところでございます。少し時間がかかりましたのは、やはり税収の動向などを含めまして、財政状況について少し時間をかけて検討してみるというような角度からの時間がかかったという点もございますし、政府部内でいろいろな意見がございましたので、それらをよく調整していく、そして最終的に総合的な判断で決定をするというところまでに時間がかかったというのが、政府態度決定の少し時間のかかった理由でございます。  その後、立法の作業を進めてまいりまして、総務庁を中心にいたしまして大変な努力を重ねてまいりまして、なるべく早くという気持ちで進んでまいりまして、やっと成案を得ましたので、閣議決定をして国会提出の運びになった、こういう次第でございます。
  285. 松浦利尚

    ○松浦委員 やはりこれからのこともあります。少なくとも、人事院勧告が八月ごろ出されましたら、早急に本院に出していただいて、十分議論ができるような対応を来年度からはしていただきたい、そのことを御要望したいと思うのですが、どうですか。
  286. 藤波孝生

    藤波国務大臣 人事院勧告が出されましたならば、なるべく早く政府態度を決める、そして、その態度決定に基づいて次の国会へ給与法を提出するということが、人事院並びに人事院勧告を尊重するものであるというふうに考える次第でございます。
  287. 松浦利尚

    ○松浦委員 どうぞ、来年度の経済諸表についての閣僚会議でしょうから、退席されて結構です。  それから、私は、自分の意見を挟まずに、今まで事実あったことをそのまま質問いたしますから、事実だったかどうか、間違っておれば御訂正をいただきたいと思うのであります。  五十八年の一月十四日、臨時行政調査会第二部会報告「公務員制の在り方について」、これは総務庁の管轄だと思います。この一ページに「今日、行政の果たす役割が極めて重要であることは論をまたない。行政機能は具体的には、行政組織を基幹として、さらには特殊法人等によって遂行される。したがって、このような機能を担う職員の在り方は、一国の命運」ですよ、「一国の命運を左右すると称しても過言ではなく、真に時代の要請に即した制度及びその運営の確保こそ、国民の関心事である。」こういうふうに初めにうたっておるわけであります。そして、最終的な締めくくりとして何と書いてあるかというと、「なお仮に今後、人事院勧告制度が継続的に機能し得ないこととなれば、公務員給与の在り方についての抜本的な検討にまで及ばざるを得ない。その際には、権威ある審議機関を設置し、一定期間内に答申を求める等の措置考えなければならない。」  まさしく今後も従来のような形であれば、人事院が継続して機能しておらぬのだから、公務員のあり方について抜本的な検討を加えるべきだ、こういう報告書を、これは残念ながら、第二部会報告書というのは最終臨調には取り上げられなかったのでありますが、この第二部会報告についての存在、これを事実、政府も持っておられると思うのですが、これについての感想を簡単に述べてください。
  288. 藤井良二

    ○藤井(良)政府委員 臨時行政調査会の第二部会報告の中に公務員給与のあり方が書いてございまして、その最後のところに、「なお仮に今後、人事院勧告制度が継続的に機能し得ないこととなれば、公務員給与の在り方についての抜本的な検討にまで及ばざるを得ない。その際には、権威ある審議機関を設置し、一定期間内に答申を求める等の措置考えなければならない。」というふうに書いてあるのは事実でございます。私どもとしては、あくまでも人事院勧告制度を維持、尊重するという建前で今後も進んでいくのが政府の方針でございます。
  289. 松浦利尚

    ○松浦委員 臨時行政調査会の第二部会ですらこういう指摘をしている。公務員制度のあり方について人勧というのはいかに重要かということをうたっておるのですね。しかも一般の人は国の根幹に触れるような仕事をしておられる。そのことを肝に銘じてください。  その次に、先ほど三浦委員指摘をいたしましたが、どうもこれも後藤田長官、大臣は大先輩でありますけれども、最近は公務員というと目の敵にされるのですね。この前、年末手当支給された。そうしたら何か新聞がえらいたくさん年末手当をもらったように書き立てるのですね。ところが、実際の懐ぐあいというのはそんなに公務員の人たちが金をもらっておるのだろうか、そういう点具体的にお聞きをいたしますからお答えいただきたいのです。  先ほど三浦委員指摘しましたが、昭和五十七年一月十三日、毎年、日経連の労働問題研究委員会が労働問題研究委員会報告書というのを出すのですね。そしてそれには「先進国病に陥らないために」こうなっておるのですね。これは人事院はよく知っておられますね。  これを見ますと、人事院は生涯所得などという発想は持っておらないのでありますけれども、この日経連のには生涯賃金という形で比較が出ておるのです。この比較でいきますと、本当に人事院の比較でいくと、国家公務員行政職の(一)の方で高校を卒業して六十歳で退職した人と、民間で働いておって高校卒で六十歳で退職した人の場合、民間を一〇〇としたら公務員の場合は一〇六だ、そういう指標になっておるのですね。これが臨調の中でも大変問題になった。それで五十八年以降は日経連は報告書の中にこの指標をつけないようになった。今はもうついておりません。  これに対して人事院が反論を加えましたね。その人事院が反論を加えた最大の理由というのは、この日経連の行政職(一)の高校卒六十歳で退職する人の場合、高卒の人が本省の課長になるという形で賃金計算がされておる。ところが実際に、高校卒は公務員の八〇%を占めておるのですが、その八〇%を占めておる高卒の方で本省の課長になるという人は八%しかおらない。残りの七二%はこの表の適用域から外れておる。それで日経連に対して、人事院の調査で人事院が反論を加えた。  きょうここにもらいましたこれを皆さんに、委員の方にもしあったら配ってあげてください。これでいったら、本当は日経連の言うような生涯給与というやり方は人事院はとっておらないけれども、具体的に日経連のそういう指標に合わして計算をしたら、何と驚くなかれ民間の皆さん方の方が生涯所得で約二千三百万多い。どうですか。人事院の皆さん、この指標についてあなた方は臨調に対して反論を加えたはずだ。それは間違いないかどうか、私の言った数字に間違いがないかどうか、そのことをお聞きをしておきたい。
  290. 斧誠之助

    ○斧政府委員 先生お持ちの資料の発表に至る過程は、今先生がお述べになったとおりでございます。  数字を申し上げますと、今先生、給与を御指摘になったと思いますが、三等級で退職する方と民間の高校卒で六十歳で退職する方の給与だけで生涯給与を見ますと、二千四百六十万ばかり民間の方が高くなっております。
  291. 松浦利尚

    ○松浦委員 給与に関する限り一千四百万ですね。退職手当あるいは退職年金等を加算をいたしますと、先ほど言いましたように二千三百万差が出るのですよ、長官。先ほどのこの第二部会の答申、今の比較、一体これで公務員皆さん方給与が高いとあなた思っておられますか。  あなた、先ほど三浦委員の質問で、あちらにも耳をかす、こう言われたが、二千万も差が出るのですよ。どちらに耳をかしますか。人事院の言っていることが正しいのじゃないですか。だからこの表を出さなくなったのじゃないですか。どうですか。
  292. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 その点の議論はもともと比較の難しい問題で、私はどちらにどうという軍配を上げるわけにはいきませんが、やはりそういう問題は争いがあるということだけは事実でございます。私に対しては最近もまだ言っておりますから。したがって、こういう点は詰めなければならぬ。それで私は、両方ともに耳を傾けるのが私の立場であろう、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  293. 松浦利尚

    ○松浦委員 しかし、この日経連の比較の表が実態に沿っておらない表だ。全体のたった八%の高校卒の人をここに並べておるわけですから。残りの七二%の人は二千万という差額の中で営々として働いておるという事実は認めてください。この表が違うのだ。そうでしょう。どうですか。
  294. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 大変比較の難しい問題じゃないでしょうか。だから私はもう少し人事院の見解と——日経連もやはり専門家ですから、それぞれの立場でああいったことをお出しになったのだから、議論が詰まってない以上はもう少し詰めて、非常に比較の難しい問題ですけれどもやるべきではないのかな、こう思います。  私も迷惑しているのです、それをしょっちゅう言われているのですから。そういうことです。
  295. 松浦利尚

    ○松浦委員 それでは総務庁長官、来年のことがありますから、来年また同じようなことをやられたら困るのですよ。私が言っておるこうした人事院の資料、日経連の資料、ちゃんと突き合わせて正しい作業をして書類をここに出してください。いいですか。
  296. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 ここの御議論を日経連にも伝えておきたい、こう思います。
  297. 松浦利尚

    ○松浦委員 伝えるだけではなくて、少なくとも給与担当大臣ですから、あなたはどちらに耳をかすかわからぬのだから、ですから資料をここに出してください。両方の資料を出してください。私たちが判断をいたします。どうですか。
  298. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 重ねてのお答えで恐縮ですけれども、日経連にここの議論を伝えまして、できればそういうことにしたいと思います。しかし、なかなか比較の難しい問題があるようですよ。だから、お伝えだけしておきますから、それで御理解しておいていただきたい。
  299. 松浦利尚

    ○松浦委員 このことだけでいろいろ議論するつもりはありません。しかし、少なくとも後藤田大臣に、公務員皆さん方は全部あなたにすがっておるのですよ。あなたに、そういう皆さん方の給料を上げてやろうという立場に立ってもらわずに何か消極的にやられたのでは、何であの人給与担当大臣だろうか、本当におれたちの給与担当大臣だろうか。後ろの皆さんを見てください。全然意欲のある顔をしておらぬですよ。情けない顔をしておりますよ。もっとやはり、公務員皆さん方が一生懸命努力をしておるし、民間のように労働三権もない、ただ人事院が頼り、そしてまた給与担当大臣が頼りだ。それにすがっておるわけですから。  スト権があって、自分たちの力が弱くて三・三七だったというならみんなあきらめますよ。自分の力がだめだった。でも、そうじゃないでしょう。全部奪っておいて、そして人事院から勧告されたものを、あなたが担当大臣であるにもかかわらず、いえいえそれは民間とどうのこうのと言われるんじゃ、行きどころがないじゃありませんか。これでは将来優秀な人が集まりませんよ。私は、そのことを注意しておきます。  それから次の問題ですが、ここに経済企画庁おいでになっていますでしょう。経済企画庁丸茂さん、来ておられますね。お尋ねいたしますが、昭和五十六年度を一〇〇として五十九年度の物価上昇を試算していただきましたが、幾らになっておりますか。
  300. 丸茂明則

    ○丸茂説明員 昭和五十六年度を一〇〇といたしまして、五十八年度までの消費者物価の上昇率は四・四%でございます。——今お尋ねは、五十九年度とおっしゃったですか。大変失礼いたしました。  それから五十九年度に関しましては、もちろんまだ実績は出ておりませんが、企画庁で九月に出しました五十九年度経済のレビュー、見直しというものをもとにいたしまして計算いたしますと、五十六年度に対しまして消費者物価が約七%上昇するという見込みでございます。
  301. 松浦利尚

    ○松浦委員 九月にGNPを上方修正したときの消費者物価見通しが五・三が二・六にダウンしたのですが、細かい数字を言って恐縮ですが七・一%——なるたけ端数は切り捨てぬようにしてください、後藤田長官おりますから。七・一%ですよ。それからGNP、実質、五十六年度を一〇〇とした場合に五十九年度、これは上方修正した数字を入れて幾らになりますか。
  302. 丸茂明則

    ○丸茂説明員 五十九年度の実質GNPにつきましては、今御指摘の九月の経済企画庁の見直しで前年度に対して五・三%というふうに見込んでおりますが、それをそのまま実現するという仮定を置きますと、五十六年度に対しまして五十九年度までの実質GNPの増加は一三・二%という計算になります。
  303. 松浦利尚

    ○松浦委員 今、経済企画庁が専門家の立場で指標を計算していただきました。ただ、五十九年度は上方修正した後ですからどういうふうな最終結果が出るかわかりませんが、これよりもさらにGNPは上がるでしょう。ところが、公務員給与は幾らになっているかということを私なりに計算をいたしましたが、公務員給与は五・四六、四捨五入いたしまして五十六年度から五・五、今度の五十九年度仮に政府が言うように三・三七ということで計算をいたしますと五・五%しか上がっておらないですよ。ですから、五十六年度を一〇〇として、GNPは何と一三%近く上がっておる、消費者物価も七・一%上がっておる、にもかかわらず公務員の賃金だけは五・五しか上がっておらぬということは、逆に言うと物価上昇に追いつかない賃金が今まで渡っておった、数字の上からいうとこういう事実なんです。その点はお認めになりますね。これは数字ですからね。どうですか長官
  304. 藤井良二

    ○藤井(良)政府委員 物価の方につきましては、今経済企画庁の方でお答えになったとおりだろうと思います。公務員の方でございますけれども、それをただ単に足しているのかどうか、その点の問題はあろうかと思います。ただもう一つ、現に在職している職員につきましては、定期昇給の制度もあるわけでございます。
  305. 松浦利尚

    ○松浦委員 足したわけじゃない、足すような計算ではないですよ。逆に掛けていかなければいけない。あなた、何を言うのです。この点は改めておかなければいけないですよ。  それから、さらにお尋ねいたしますが、五十七年度は人勧が凍結されたのです。完全凍結。これば御承知のように、当初予算から減額補正で行われたんですね。ですから五十七年度は全部カットされた。これは、国民の皆さんがいろいろ苦労されるんだから、税収もダウンしたんだから公務員の皆さん、我慢してくださいよという一面が言い得るかもしれない。五十八年度はどうか。やはり財政が非常に厳しいからというので、御承知のように不完全実施ということになったんですね。ところが、私は物価特別委員会で、昭和五十八年度の決算は恐らく五千億近くの自然増収が見込まれます、こういう主張を物価の委員会河本経済企画庁長官とやりました。河本長官も、ほぼそのとおりだ、こうお認めになったわけでありますが、五十八年度の決算が既に発表になりました。これは大蔵省が発表した数字です。四千五百六十三億二千八百万、昭和五十八年度租税及び印紙収入決算額です。これは閣議でも既に決定されている内容ですが、四千五百六十三億二千八百万円、これだけ黒字だったんですよ。財政が不足したんじゃない、結果的に黒字が出た。結果的に黒字が出て、これは総務庁長官が新聞記者会見をして談話を発表しておられる。その談話というのはどういう内容かというと、日経でありますが、五十九年八月の二十九日、「厳しい財政状況や行革推進という現実がある」としながらも、「問題は政府として最大限努力をしているかどうかにある。完全実施に向けて精一杯やらねばならない」こういうふうに言っておられる。  そしてまた、五十七年九月に当時の内閣法制局長官は、全農林の争議に対して最高裁判決が出されましたが、人勧の凍結問題に触れて、憲法が保障した労働基本権に抵触しかねない人勧凍結を高度の政治判断で決めておきながら、一方で一般歳出などをふやすということは憲法違反の疑いが起こるかもしれないということを述べられておる。ですから、金がない、金がない、こう言われて全体が抑えられておる、公務員の皆さん、あなたたちの給与も我慢してくださいよと言うときには、憲法問題というのはあるいは免責されるかもしれない。しかし、公務員給与だけ抑えておいて、一般会計ではほかの支出を増す、それはもう明らかに憲法違反の疑いが出てくるのですよ。  ところが、先ほど言いましたように、これは当初お金がないというふうに見込んでおられたのかもしれませんけれども、結果的に人勧を不完全実施をした昭和五十八年度の決算額で、四千五百六十三億二千八百万という余剰金が出ておる。完全実施する財源はここにあるんですよ。あったんだ。これについてどういうふうに公務員皆さん方を御説得なさいますか。何と言われ象すか、お答えいただきたいと思います。
  306. 藤井良二

    ○藤井(良)政府委員 五十八年度の決算剰余金でございますが、これは二千五百億ぐらい出ているのは先生が言われたとおりです。(松浦委員「四千五百億」と呼ぶ)四千五百億というのは税収だろうと思います。したがって、それから歳出だとか公債金の三角だとかを立てて総計で計算いたしますと、財政法第六条に言う決算剰余金というのは二千五百六億円ということになっております。この二千五百六億円でございますけれども、これはいわゆる特例公債償還までの間は全額公債償還財源に充てるというのが剰余金の使途に関する政府の基本方針でございますので、このようにしたと聞いております。
  307. 松浦利尚

    ○松浦委員 剰余金が結果的に出たら、半額はそういう手続をするのですよ。人勧を完全実施しておったら、この剰余金が人勧に回っておるわけです。それを言っているのです。手続じゃないんだ。確かに、お金は決算してみたらありました。あったけれども、人勧は完全実施しなかったんだ。その現実はこの数字で明らかなんですよ。だから、実施しなかった公務員の皆さんにあなたは何と言われますかと聞いているのです。結果的にはお金はあった。残った。しかし、完全実施はしなかった。これは公務員の皆さんにあなたは何と言われますかということを聞いておる。数字的なことはもういいです、私、知っておるから。
  308. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 五十八年度の決算剰余金が二千五百億出たことはそのとおりでございます。したがって、給与に支払うのが最優先であるということになればおっしゃるようなことになるかもしれませんが、同時に、今、国債残高がどんどんふえておって、これはどうにもならぬということで、政府としてはそういう場合の決算剰余金は国債償還財源に充てるべしということが決まっておるわけですね。だから、いわば取り合いの問題であろうと思うのです。  私は、そういうことを百も承知の上で、実はことしのこの給与の改善問題についても、そういうこともあるではないか、だから財政当局の言うとおりには自分としては承服できないよといったようなきつい主張をしたことも事実でございます。いずれにしても、これは優先度合いの問題であろうかな、かように私自身は判断をしておるのです。  それで、今御質問の中に、あれは五十何年でございましたかね、五十七年でしたか、公共事業費の一部追加の問題がありましたね。そのときに法制局が、そういうことをするならば  これは公共事業と先ほどの借金払いと多少性格が違うせいもあるのでしょうが、そこで、そういう財源を使うのならばこれは憲法上の問題も出てくるおそれがありますよ、こう発言した、こういうことですね。それは明くる日の新聞に、あれは正確でありません、そういう事実はありません、こういう記事が随分出ておりますから、そこらは前の日のものだけではどうでしょうかな。  だから、結論は、やはり人事院勧告は基本的に尊重しなければならないという基本の認識を持って、そういった場合にもこれは当然考えなければならぬと私は思いますけれども、今、とにもかくにも、五十八年度だって二千五百億出たというけれども、当初予算の中で行政経費の節減、これは厳しい節減をやっておるわけですから、そういったことも頭に置かないと、二千五百億あったから、それは凍結しておるのはけしからぬというのにすぐに結びつけるのは果たしてどんなものであろうか。私の立場は、先ほど言ったように、こうじゃないかということは言いますけれども、やはり国政全般の観点に立ってこういう問題は扱わなければならぬということでございますから、そこらはひとつ御理解をしておいていただきたいな、こう思うわけでございます。
  309. 松浦利尚

    ○松浦委員 理解いたしました。簡単に言うと、こういうふうに言われたのですね。お金はあります、あるけれども財政再建等が優先する、だからそちらの方にまず金を取るのだ、だから人勧そのものは今度のように値切る場合がある、我慢してもらわなければいかぬ場合がある、それが官房長官談話の本音じゃないですか。それがあなた方の感覚なんですよ。  私たちは、人事院勧告というのは聖域だと思っているのですよ。労働三権に対して聖域なんですよ。防衛予算は聖域でないのですよ。これは政策なんですよ。この前、八月二十一日に、繰り返しませんが、私は長官とやり合いました。現実に試算をして、ここに金がある。後で詳しく経済企画庁にお尋ねしますが、金がある。あって、人事院勧告実施するかしないかはまさしく政策の問題ですとあなたは答えられた。だから私はそこで打ち切った。ですから、今の政府は、仮にお金があったとしても人勧は完全実施するという政策は持たないということじゃないですか。お金があったって、聖域じゃないんだから、優先度合いは財政再建、赤字国債に優先される。だからまさしく政策なんです。ですから、自民党という、中曽根内閣という政策の範疇には人勧完全実施というのはないわけなんですよ。政策的に優先度は低いわけですよ。そういうことでしょう、あなたが今言っていることは。いろいろ言葉は丁寧に、もっともらしくふわふわしたことを言われるけれども、単刀直入にお聞きをするとそういうことなんです。人事院勧告といえども聖域ではありませんぞ、お金があったって聖域ではないのだから手をつけますぞ、結局そういうことが言いたいわけでしょう。どうなんです、長官、そのことは、簡単でいいですから。
  310. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 これは聖域という言葉の意味がどうかということにもかかわるのですけれども、あなたの言っていらっしゃるような意味合いの聖域であれば、これはやはり聖域ではありませんね。しかしながら、人事院勧告というものは最大限尊重して、そして非常に重要度の高い経費である、こういう理解が一番正しいのではないかな、私はかように思うわけです。そこで、国政全般との関連の中で考えるにしても、やはり重要度を置いて考えなければならぬ、私はさように考えるのです。
  311. 松浦利尚

    ○松浦委員 それでは経済企画庁にお尋ねをいたしますが、これは大蔵省に聞いてくれということでしたが、大蔵省は人勧を削減する側に回っておりますので、大蔵省をここに呼ぶつもりはなかったわけです。ですから、正確な数字だけお尋ねをいたしますが、五十八年度の先ほど言いました最終決算、その数字、それによりますと、対前年度比の税収の増加は三十二兆三千五百八十三億円で六・一%増加なんですね。税収というのは、この決算で租税と印紙収入等ですよ。これは六・一%増。これはもう動かせない。GNPは名目四・一%伸びた。租税弾性値は幾らになりますか。
  312. 丸茂明則

    ○丸茂説明員 五十八年度の名目GNP、税収の伸びは御指摘のとおりでございますので、この関係で弾性値を計算いたしますと、一・四九でございます。
  313. 松浦利尚

    ○松浦委員 御承知のように、昭和五十九年度の経済見通しは、経済企画庁によって九月、上方修正をいたしました。そのときのGNPの名目成長は幾らでしたですかね。
  314. 丸茂明則

    ○丸茂説明員 五十九年度の名目成長率につきましては、何回も申し上げておりますこの九月の見直しにおきまして六・五%と見込みを立てております。
  315. 松浦利尚

    ○松浦委員 昭和五十九年度の経済というのは、御承知のように法人税、物品税、大変な増収であります。この前、五十九年の七月から九月期の所得統計速報がありましたけれども、これは、御承知のように十月一日から油関係の税金等が上がるということで駆け込み輸入というのがありましたからこの段階である程度のスローダウンをいたしておりますが、実質的には経済成長というのは五十八年度よりも五十九年度は非常に活発である、私はそう思います。ですからもっとGNPの伸びは見込めると思うのですが、いずれにしましても、見直された経済成長六・五%に租税弾性値、私はもっと租税弾性値も上がると思いますが、去年の租税弾性値であります平均の一・四九を掛けますと、五十九年度の税収の伸びは幾らくらいが見込まれますか。
  316. 丸茂明則

    ○丸茂説明員 今の数字を計算いたしますと、約九・七%になります。
  317. 松浦利尚

    ○松浦委員 昨年の最終決算額が三十二兆三千五百八十三億円でありますから、それに今言いました九・七で計算をいたしますと、五十九年度の最終税収見通しというのは幾らになりますか。
  318. 丸茂明則

    ○丸茂説明員 今の計算をいたしますと、約三十五兆四千億になります。
  319. 松浦利尚

    ○松浦委員 そうすると、当初予算が三十四兆五千九百六十億円ですから、最終決算では九千十億円、自然増収が見込まれることになるのです。九千十億円。今言った計算どおりなんです。  長官、こうしておられるけれども、これは数字だからごまかせない。景気がどんと落ち込めば別ですよ。景気はずっと上方に向いておるわけですから。九千億の自然増収が一方にあるのですよ。さて、何にお使いになりますか。  あなたは政策的に選択をされるようですから、これから具体的にお尋ねをいたしますが、今度の人事院勧告どおり六・四四%実施をした場合に、一般会計職員特別職員等を含めまして所要額幾らになりますか。
  320. 藤井良二

    ○藤井(良)政府委員 五十九年度人事院勧告完全実施した場合の所要額でございますけれども、一般会計で四千七百三十億、特別会計で千七十億、重複分が八百三十億ございますので、合計で四千九百七十億になります。ただ、御承知のように一%給与改善費が計上してございますので、四千二百十億が純計でございます。
  321. 松浦利尚

    ○松浦委員 長官、六・四四%、人事院勧告どおり実施いたしましても、一%の予備費計上がありますから差し引き四千二百十億円あれば完全実施可能なんです。今経済企画庁がお話しになった数字で上方修正の経済見通し等で計算をいたしますと、約九千億円の剰余金が出る可能性がある。四千億でありますから、その半分にもならない。どうしますか。お答えください。
  322. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 ことしの税収がどうなるかということについても実は厳しい論議があったのです。しかし、現実は五十九年度の税収を一つは当初予算で相当大幅に見込んであったのですね。それからもう一つは、なるほど景気が上向いておりますから法人税等には相当な伸びがあると私は思うのですね。しかし、油の関係が最近ちょっと落ちているんじゃないですか。(松浦委員「駆け込み」と呼ぶ)そうそう、それで落ちているのですね。(松浦委員「また戻るのですね」と呼ぶ)それがどこまで戻るか、それはあなた、あれだから……。そして同時に、酒税が予想と比べまして相当落ち込んでおる。こういったようないろいろなことで、ここらがやはり今でもまだ最終どうなるかということは決まっておりませんけれども、私どもが最初考えておったよりは思いのほか税収の伸びが少ない。殊に最近、税収の伸びは落ち込んでおるということも事実でございますから、今お挙げになった九千何百億という税収が増になるというようなことは考えられません。  そういうようなことでございますので、基礎がちょっと違いますので、それをどこへ使うんだ、こうおっしやられましても、どこへ使うと、もとがわからぬですから、そういうのが現状でございます。しかし、給与改定の際には、私の立場としては筒いっぱい、自然増収があるではないかということで相当厳しい折衝をしたということは、やはり人事院給与勧告に当たってはこれをできるだけ完全実施の線に近づけていく、こういう基本の考え方があったんだ、これは申し上げておきたいと思います。
  323. 松浦利尚

    ○松浦委員 大臣、そんなことを言われたって信用できないですよ。五十八年度があんなに言われて、そしてある委員会河本長官と議論をして五千億出ますよと言ったら、先ほど言ったように出たわけだ。しかし、出たけれども、結果論としては人事院勧告はできなかったわけだ、不完全実施だったわけですよ。しかし黒字だったのです。私が今言った数字は決してごまかしじゃないのですよ。経済企画庁からお話しになったように、租税弾性値もちゃんと計算をして、とり方が違うと言うけれども、過去の数字からそういうデータが出る、こう言っている。この議論というのは、御承知のように経済企画庁長官河本さんですね、前経済企画庁長官時代から、昭和五十九年度はどうも一兆円近くの自然増収があるぞというのが、この数字というのは官庁エコノミストも含めてずっと出ておったのですよ。別に根拠のない数字じゃないのです。しかし、今度不完全実施して、また五十八年度と同じように黒字になったら、あなた何と言うのですか。先ほどあなたは、いや松浦さん、あなたが言うのはちょっとおかしい、人事院勧告を一生懸命やるんだ、こう言われているけれども、具体的に完全実施するだけの余剰財源が出たときに、あなた、それじゃどうするのですか。どうされますか。それは結果論だから答えられませんと言うのですか。
  324. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 やはり人事院勧告に対しては完全実施に向けて最大限努力をする。その際には、国政全般との関連で判断をしてまいります。あなたが言っていらっしゃる九千何百億の自然増収というのは、もう一遍よくひとつ御検討をいただきたいと思います。私は、そこまでは最近の状況からはとてもあり得ない数字である、かように考えております。
  325. 松浦利尚

    ○松浦委員 いや、これは結果論ですからね。今ここでどちらが正しいかということは、五十九年度の決算が来年出てまた論争せざるを得ないと思うのです。しかし、具体的に五十八年度は値切って、黒字が出た。それでは今度も値切って、黒字が出たときはどうしますか。それをお聞きしましょう。同じことが繰り返されたら、人勧を値切った、値切ったけれども黒字が出た、そのときはどうされますか。
  326. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 それがそのまま給与改善に向けられるという状況であれば大変結構ですけれども、それはやはり国政全般の立場で判断せざるを得ません。したがって、今、それは給与改善に全部向けますよというようなことは今は申し上げるわけにはまいらない。しかし、人事院勧告の重要性は十分わかっておる、かように申し上げておきたいと思います。
  327. 松浦利尚

    ○松浦委員 長官、またもとに戻りますが、公務員は労働三権が与えられておらない、こんなことは百も御承知でしょう。第三者機関として人事院がある。公平、中立、侵すべからざるもの。勧告された。お金はある。お金はあるけれども、努力はしたが人事院勧告完全実施しなかった。あなたはいみじくもこの前、政策の問題だと言われたのですよ。だから、政策として、仮に人事院勧告完全実施する余裕があったとしてもやれません、まず優先的に、赤字財政です、赤字国債から脱却するためにそちらに金を回します、こうやりますと。ですから、人事院勧告は非常に重要だ、重要だとこう言いながらも、実際は今の中曽根内閣の優先順位からいうと余り高くない、低いところに政策的位置がある、こう言われるなら理解します。あなたの言っておられることはまさしくそうだから。そういうふうに理解してよろしいですか。
  328. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 松浦さんの御議論は、ともかく金が相当余るじゃないかという前提での御議論ですね。しかし、今日どれくらい厳しい財政状況にあるかということは、十分また御理解をしていただいておると思うのです。そこらを考えながら総合的に、政策選択の問題ですから、私は先ほど言ったように、聖域と考えるわけにはいかぬ、そして同時に、国債償還ということは今日国政の上において極めて重要性の高いものである、こう考えておる、同時に給与の改善については、これはやはり相当な重要性を認めなければならない経費でもある、かように先ほどからお答えをいたしておるのです。そういった基礎が違うものですから、私が今ここでどうこうと言うわけにはまいらない、こういうことでございます。
  329. 松浦利尚

    ○松浦委員 基礎はない、基礎はないと言われるけれども、基礎は出さないですものね。あなたは基礎がないと言われるけれども、基礎は出されない。だから、基礎がないのじゃなくて、私は基礎を持って出しておるけれども、今長官が言われるのは、あなたの方は基礎がないのですよ。基礎がないのにあなたの基礎はどうだ、そういう比較をするのはおかしいのですよ、あなたの方は何もないのだから。五十八年度の決算書を見たら、黒字みたいになるのですよ。私はそうならないように——なぜそうならないように言うかというと、さっきから言うように、臨調の第二部会で書いてある。「一国の命運を左右すると称しても過言ではなく、」こうなっているのですよ。長官も含めて一国の命運を左右する人たちがおるのです。そういう人たちに中立である第三者機関が勧告をした。しかも、過去の物価上昇から、五十六年度を一〇〇として七・一%物価は上がっておるのに自分たちの賃金は五・五しか上がっておらぬ。この前国民生活白書が発表になりましたが、子供さんを大学とか高校に入れておられる家庭を見てごらんなさい。中堅幹部、公務員で言えば中堅の皆さん方ですね。そういう皆さん方は全部家計簿は赤字だ、それは国民生活白書にみんな出ておる。いみじくも経済企画庁が言われた数字と議論をした私の数字と合うのですよ。七・一%物価が上がって五・五しか賃金が上がっておらないから、公務員皆さん方は民間に比べて大変厳しい状況に置かれておる。民間も厳しいのですよ。民間は楽だと言っておりませんよ。しかし、その民間より以上に公務員皆さん方は厳しいのですよ。先ほど官房長官がいろいろなことを言われました。官房長官はあの談話を出されたのですから、取り消せと言っても無理でしょう。あなたは公務員が頼りにする給与担当大臣です。来年に向かって完全実施のために努力する、努力してみて結果としてできなかったときは別。来年に向かって、完全実施に向かって一生懸命努力する、こういう断言をここでできますか。できればしてください。
  330. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 それは松浦さん、さっきから私、何遍も申し上げておる。来年度もやはり完全実施に向けて最大限努力するのは当然じゃないですかと。だから私は努力をするつもりなんですよ。その点はひとつ誤解のないようにしていただきたい。  それで、あなたは今資料を持っていらっしゃる。しかし、長官は資料を持っておらぬとおっしゃる。なるほど資料を持っていないのですよ。しかし、私は今予算編成のさなかなんですよ。詳しい説明は全部聞いておる。それで最近の経済企画庁の御意見を聞いてみても、税収はそう期待するほどは出ないと言っておるのが実情じゃありませんか。だから、そこらで根っこの税収の最終の見通しについて大きな開きがあるのだ。しかも、今どれくらい財政が厳しい状況にあるかというのは百も御承知なのだから、そこらは政策選択の問題として、聖域ではないが、やはり人事院勧告というものは重みを持って考えざるを得ないのだ、それは私は考えていきますよ、こう申し上げているのだから、そこらで御理解をしていただきたい、こう思うのです。
  331. 松浦利尚

    ○松浦委員 人事院総裁、今お聞きになったとおりですが、私たちも人事院勧告完全実施できるように国会で超党派で努力をいたします。しかし、率直に言って、ILOが既に勧告しておりますように、日本の人事院勧告制度というのがこういう状況に置かれますと、もうこの際、この第二部会の報告書にあるように、人事院勧告制度そのものを見直して、もう一遍労働三権を公務員の皆さんにも渡したらどうかという議論がほうはいとして起こってくるのですよ、ただ単に金があるからないからという問題以前の問題として。重要な国の政治の根幹に触れる、行政の根幹に触れる、公務員制度の根幹に触れる問題を内包しておるのです。ですから私は、さっきから一生懸命、人勧は完全実施できる財源があれば出せ、こう言っておるのです。あなたは少なくとも超党派で、衆参ともに満場一致で推薦された人事院総裁です。行政の長官、これは総理大臣任命であります。そういう意味では、本当に国会に勧告をするということは、あなた自身が勇気を持って行政に向かって勧告完全実施してくれ、そういう人事院努力があって初めて我々のバックアップ態勢ができるのですよ。あなたもかつては国家行政の中の頂点をきわめた方。しかし、それはもう過去のことであって、今は人事院の総裁であります。あなたは中立的な立場なんだから、間違っておることに対しては厳しく指摘をし、完全に実施されないときには厳しく糾弾をする、総理大臣に文書で申し入れをする、それくらいの気概を持った人事院であって初めて公務員の皆さんが頼りにするのですよ。そういう点について総裁の決意をお聞かせいただきたいと思います。
  332. 内海倫

    内海政府委員 ただいまいろいろ御質問を通しての御意見も拝聴しておりまして、私どももますます気持ちを引き締めて来年度における人勧をつくらなければいけませんし、また政府に対してもぜひこれを実現してもらうように、また国会に対しましても大いに審議をしていただくようにお願いをしたいと思いますし、何よりも、今もおっしゃいましたように私自身の決意の問題もございます。率直に申し上げて私は、本年の勧告に際しましても、私の考えられるできるだけの努力はいたしたつもりでおります。しかし、皆さん方からあるいは公務員の皆さんから見ればなまぬるい、足りないことでございましょう。しかし、来年においてはさらに決意を新たにして何とか実現できるように努力をいたしたい。
  333. 松浦利尚

    ○松浦委員 私は、まだまだ大蔵省の皆さん方も呼んで議論をするつもりもありました。しかし、完全実施されない、不完全実施で非常に不満だけれども、しかし、もう公務員皆さん方は生活がせっぱ詰まったところに来ておる。ですから年内に、不満だけれどもこの法案が早く通ってバックペイをもらいたい、こういう気持ちは全部の公務員に共通の願いだと思うのです。ですから、これ以上ここで議論をして支給が年内でなくて翌年になったなんということになれば、泣き面にハチということで追い打ちをかけるような感じになりますから、私はぜひ年内に、公務員皆さん方が不満ではあるけれども期待をしているバックペイを差し上げていただきたい。それは私は、ここに来ておる与野党通じての委員の共通の願いだと思うのですね。だからそういう意味で、これ以上政府との論争はやめます。ぜびひとつ年内にすべての公務員、地方自治体の皆さんにバックペイが支給されるように、政府並びに与党の皆さん方の御協力を心からお願いをいたしたいと存じます。  以上で私の質問を終わりますが、ぜひそういった意味も含めて質疑を終結していただきまして、直ちに採決の手続に入られるようお願いをいたしまして、私の質問を終わります。よろしくお願いします。
  334. 中島源太郎

    中島委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後五時五十三分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕      ————◇—————