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1985-04-09 第102回国会 衆議院 大蔵委員会内閣委員会地方行政委員会文教委員会社会労働委員会農林水産委員会運輸委員会建設委員会連合審査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年四月九日(火曜日)     午前九時四十三分開議 出席委員  大蔵委員会   委員長 越智 伊平君    理事 熊谷  弘君 理事 熊川 次男君    理事 中川 秀直君 理事 堀之内久男君    理事 上田 卓三君 理事 沢田  広君    理事 坂口  力君 理事 米沢  隆君       糸山英太郎君    大島 理森君       金子原二郎君    瓦   力君       塩島  大君    田中 秀征君       中川 昭一君    東   力君       平沼 赳夫君    伊藤  茂君       川崎 寛治君    渋沢 利久君       戸田 菊雄君    藤田 高敏君       武藤 山治君    石田幸四郎君       古川 雅司君    安倍 基雄君       玉置 一弥君    正森 成二君       簑輪 幸代君  内閣委員会    理事 戸塚 進也君 理事 深谷 隆司君    理事 小川 仁一君 理事 元信  堯君    理事 和田 一仁君       鍵田忠三郎君    菊池福治郎君       塩川正十郎君    中村喜四郎君       堀内 光雄君    角屋堅次郎君       山本 政弘君    鈴切 康雄君       日笠 勝之君    柴田 睦夫君  地方行政委員会   委員長 高鳥  修君    理事 愛知 和男君 理事 糸山英太郎君    理事 臼井日出男君 理事 平林 鴻三君    理事 加藤 万吉君 理事 安田 修三君    理事 柴田  弘君       伊藤 公介君    大村 襄治君       工藤  巖君    坂本三十次君       中川 昭一君    松田 九郎君       山岡 謙蔵君    小川 省吾君       佐藤 敬治君    細谷 治嘉君       山下洲夫君    小谷 輝二君       吉井 光照君  文教委員会   委員長 阿部 文男君    理事 大塚 雄司君 理事 船田  元君    理事 佐藤  誼君 理事 池田 克也君       臼井日出男君    榎本 和平君       中村  靖君    中西 績介君       滝沢 幸助君    藤木 洋子君       江田 五月君  社会労働委員会   委員長 戸井田三郎君    理事 稲垣 実男君 理事 丹羽 雄哉君    理事 浜田卓二郎君 理事 池端 清一君    理事 村山 富市君       愛知 和男君    伊吹 文明君       自見庄三郎君    谷垣 禎一君       中野 四郎君    長野 祐也君       西山敬次郎君    野呂 昭彦君       林  義郎君    藤本 孝雄君       網岡  雄君    多賀谷眞稔君       竹村 泰子君    沼川 洋一君       森本 晃司君    浦井  洋君  農林水産委員会   委員長 今井  勇君    理事 田名部匡省君 理事 小川 国彦君    理事 田中 恒利君       大石 千八君    太田 誠一君       鍵田忠三郎君    菊池福治郎君       鈴木 宗男君    田邉 國男君       松田 九郎君    山崎平八郎君       上西 和郎君    島田 琢郎君       新村 源雄君    日野 市朗君       細谷 昭雄君    松沢 俊昭君  運輸委員会   委員長 三ッ林弥太郎君    理事 鹿野 道彦君 理事 久間 章生君    理事 津島 雄二君 理事 小林 恒人君    理事 吉原 米治君       関谷 勝嗣君    田中 直紀君       近岡理一郎君    林  大幹君       福家 俊一君    左近 正男君       関山 信之君    田並 胤明君       薮仲 義彦君    梅田  勝君       辻  第一君  建設委員会   委員長 保岡 興治君    理事 亀井 静香君 理事 北口  博君    理事 桜井  新君 理事 中島  衛君    理事 井上  泉君 理事 新井 彬之君       榎本 和平君    金子原二郎君       野中 広務君    村岡 兼造君       森田  一君    清水  勇君       前川  旦君    瀬崎 博義君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 松永  光君         厚 生 大 臣 増岡 博之君         農林水産大臣  佐藤 守良君         運 輸 大 臣 山下 徳夫君         労 働 大 臣 山口 敏夫君         建 設 大 臣 木部 佳昭君         自 治 大 臣 古屋  亨君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 河本嘉久蔵君  出席政府委員         内閣法制局長官 茂串  俊君         総務庁長官官房         審議官     佐々木晴夫君         総務庁行政管理         局長      古橋源六郎君         国土庁長官官房         長       永田 良雄君         国土庁大都市圏         整備局長    佐藤 和男君         大蔵政務次官  中村正三郎君         大蔵省主計局次         長       平澤 貞昭君         大蔵省銀行局保         険部長     加茂 文治君         国税庁税部長         兼国税庁次長心         得       冨尾 一郎君         国税庁調査査察         部長      村本 久夫君         文部大臣官房審         議官      菱村 幸彦君         文部省教育助成         局長      阿部 充夫君         文部省社会教育         局長      齊藤 尚夫君         文部省体育局長 古村 澄一君         厚生大臣官房総         務審議官    北郷 勲夫君         厚生大臣官房会         計課長     黒木 武弘君         厚生省健康政策         局長      吉崎 正義君         厚生省生活衛生         局長      竹中 浩治君         厚生省社会局長 正木  馨君         厚生省児童家庭         局長      小島 弘仲君         厚生省保険局長 幸田 正孝君         社会保険庁年金         保険部長    長尾 立子君         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産大臣官         房審議官    吉國  隆君         農林水産大臣官         房予算課長   鶴岡 俊彦君         農林水産省構造         改善局長    井上 喜一君         農林水産省農蚕         園芸局長    関谷 俊作君         食糧庁長官   石川  弘君         通商産業省生活         産業局長    篠島 義明君         運輸省地域交通         局次長     熊代  健君         労働省職業安定         局高齢者対策部         長       小野 進一君         建設大臣官房長 豊蔵  一君         建設大臣官房会         計課長     望月 薫雄君         建設省都市局長 梶原  拓君         自治大臣官房審         議官      土田 栄作君  委員外出席者         労働省労働基準         局労災管理課長 松本 邦宏君         会計検査院事務         総局総務課長  門田  浩君         内閣委員会調査         室長      石川 健一君         地方行政委員会         調査室長    島村 幸雄君         大蔵委員会調査         文教委員会調査         室長      高木 高明君         社会労働委員会         調査室長    石黒 善一君         農林水産委員会         調査室長    矢崎 市朗君         運輸委員会調査         室長      荻生 敬一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国の補助金等整理及び合理化並びに臨時特例  等に関する法律案内閣提出第八号)      ――――◇―――――
  2. 越智伊平

    越智委員長 これより大蔵委員会内閣委員会地方行政委員会文教委員会社会労働委員会農林水産委員会運輸委員会建設委員会連合審査会を開会いたします。  国の補助金等整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。多賀谷眞稔君。
  3. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ちょうど今から十七年ほど前、昭和四十三年に、日本炭鉱の中にも全国一社化案あり、三社化案あり、ちょうどドイツルール炭田株式会社というのを一社にして、そして統合を図ったことがある。そのときに私は西ドイツへ行ったわけですけれども、ドイツというのは、石炭経営者鉄鋼経営者が大体同じですね。要するに炭鉱鉄鋼共同体、こういう形になっておるわけです。それから電力は、炭鉱が大体四〇%を供給して電力会社に行っておる。そういう仕組みになっておるものですから、ちょうど西ドイツ鉄鋼経営者連盟を訪れました。  その経営者が私どもに言ったわけです。岡田利春君と二人で行ったわけですが、この前、鉄鋼連盟稲山会長がブラッセルへ来て大演説をされました。そのときに、鉄鋼を一億五千万トン生産するという話があった。一体だれが一億五千万トン買うのでしょうか、こういう話をされた。今から考えれば、その後日本はどんどん高炉を建てましたけれども、ようやく一億トンあるいは一億一千万トンのベースにしか乗り得ない。なるほどそういうところにも問題があったんだなと言いながら私は考えたのですが、そのときその経営者が、日本経営者になってみたいと思うと。とにかく日本経営者は楽ですよ。それは第一に、労働者が三百日働く。ところが、西ドイツでは二百日しか働きません。もう一つは、社会保険料が非常に高い、ドイツに比べて日本は安い、こういう意味ですね。  そこで、私はこの言葉を聞きまして、今、総裁ダービートップグループを行っておられる竹下大蔵大臣に、まず所感をお聞かせ願いたい。
  4. 竹下登

    竹下国務大臣 多賀谷先輩からはテストを受けているような感じがいたします。が、確かに私も、いわば勤労時間の問題、そしてそのことはまた、その基礎にもう一つ精神的に存在しておる問題は、いわゆる労使関係が、西ドイツもヨーロッパの中ではそう悪い方だとは思いませんけれども、日本に比べますならば、よく構造的問題といって指摘されるように、日本ほどに労使関係というものが、お互いの立場を理解しつつも、協調した体制にあるとは私も思っておりません。  労働時間の問題につきましては私は素人でございますので、今お聞きしながら、三百と二百というとまさに三分の二だなという感じを持ちましたが、そのこともあるいはあろうかと思っております。それから社会保険負担というものも、多賀谷先輩は専門でございますが、なるほど、私もその点は西ドイツの方が負担が高いだろうというふうに思っております。  さあそこで、国際的な市場経済情勢の中でいずれがベターかということになりますと、私は議論の分かれるところがあろうかと思います。ことしもサミットはボンであるわけでございますけれども、元来西ドイツ日本というのは、お互い意見交換をした場合には、お互い足らざるところを補い合うというような状況にはあるんじゃないかという感じがいたしております。  私は今後とも、今いわばアメリカEC日本という三極で物を考えますと、アメリカはいわゆるドルの独歩高、高金利、日本貿易黒字ECもとより西ドイツを含めて、いわゆる構造的な問題というのがそれぞれの持っておる問題点でございますだけに、それらにつきましても双方がより協議を重ねて、お互いの足らざるところ国内政策の中にも生かしていくという努力が必要ではなかろうか、こんな感じで承った次第であります。
  5. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 日本では、税負担の話はかなり論議がされております。(私語する者あり)
  6. 越智伊平

    越智委員長 大勢でございますから、お静かに願います。
  7. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 社会保障給付費負担率の問題ですが、この点が極めてないがしろにされておるのではないか。そこで私はわざわざドイツの例を引いたわけですけれども、ドイツは、労働者事業主関係は、日本と同じようにフィフティー・フィフティーだとよく言われておりますけれども、ILOが出した資料でも、西ドイツの場合には被保険者が二九・五%に対して事業主は四一・一%になっているわけです。  そこで、厚生大臣、これは事務当局でも結構ですけれども、ILOが出しております国の費用負担分労働者事業主負担割合は一体どうなっておるのか、これをお聞かせ願いたい。
  8. 長尾立子

    長尾政府委員 お答えを申し上げます。  社会保障負担割合でございますが、先生から今お話がございました被保険者本人負担事業主の方の負担、全く純粋の国庫負担、それから地方公共団体公費負担運用収入等と四つに分けまして申し上げさせていただきます。  一九八〇年の数字で申し上げたいと思いますが、我が国の場合には、被保険者本人負担が二五・五でございます。それに対しまして、事業主負担は二七・九、国庫負担が二八・一、その他運用収入地方公共団体負担化合わせましたものが一八・五ということになっております。  アメリカの場合には、被保険者本人負担が二一・二、事業主の分が三七・五、国庫負担が二三・一、その他の分が一八・二ということでございます。  イギリスにつきましては、被保険者本人負担が一五・八、事業主負担が二六・五、国庫負担が四八・三、その他が九・四でございます。  西ドイツは、被保険者負担が三三・六、事業主負担が三三・九、国庫負担が二九・O、その他が三・五でございます。  フランスの場合は、被保険者負担が二〇・〇、事業主負担が五一・一、国庫負担が二〇・〇、その他が八・九でございます。  スウェーデンの場合には、被保険者負担が一・〇、事業主負担が四五・九、国庫負担が二一・五、その他が三一・六という数字になっております。
  9. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これを見てもわかりますように、日本の場合は事業主負担というのが非常に低いですね。今財源がないといって大騒ぎされておるわけですけれども、一体これらの問題をどうするのか。私は今から順次質問をいたしますけれども、積立金の問題、厚生年金基金の問題、労災厚生年金併給調整の問題、これらを全部合わせますと日本経営者は大変優遇されておる、なかんずく大企業はなお優遇されておる、こういう例を今から質問をしてみたいと思うのです。  あなたの方は、今一番肝心な社会保障費用をばったと補助金の率を切ろうとされておる。こういう中で、本来財源負担をしなければならない層が財源負担をしていない。こういう問題に出くわすわけですね。そこでわざわざ今お聞かせ願ったのですけれども、日本経営者負担率が二七・九、アメリカだって三七・五でしょう。イギリスが二六・五、ドイツの場合の計算がちょっと私のとは違うのですけれども、三三・九、フランスは五一・一、スウェーデンは四五・九、こういう状態なんです。ですから、臨調というけれども、財界が集まって議論しておるのですよ。そして増税反対というけれども、これは自分企業税制反対を言っておる。こういう中で、一方では労働者の方は減税を要求しているでしょう。一体どこから財源を求めるのか。社会保障費はどんどん上がる、こういうところに問題を残している。(「厚生大臣いないじゃないか」と呼ぶ者あり)これじゃだめだよ、委員長。今から私が質問するのは厚生省ばかりですよ。きょうの議題はほとんどが厚生省予算ですよ。これじゃ質問できないね。(発言する者あり)
  10. 越智伊平

    越智委員長 速記をとめて。     〔速記中止
  11. 越智伊平

    越智委員長 速記を入れて。  この際、暫時休憩をいたします。     午前十時休憩      ――――◇―――――     午後零時二十九分開議
  12. 越智伊平

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。多賀谷眞稔君。
  13. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この法律によって行革特例法が延長されて、そしてその減額が三千五百六十一億ということになる。そこで、そのうち年金会計からは幾らであるのか、これをお聞かせ願いたい。お忙しい厚生大臣にわざわざ来ていただいたのは、あなたの方が一番多いのです、何でもこの法律は。でありますから、まず厚生年金、それから共済はだれか一括して答弁してもらいたいが、年金関係でどのくらい減額になるのか、お聞かせ願いたい。
  14. 平澤貞昭

    平澤政府委員 六十年度で、厚年から共済全部合わせまして三千三百十五億円となっております。うち厚生年金分が三千五十億円ということでございます。
  15. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この三千五十億円、さらに昨日の政府委員の答弁によりますと、六十年度末で元本が九千四百七十億円、利息を合わせますと結局一兆七百七十五億円、こういう説明がございました。  大蔵大臣、この厚生年金には政府資金は入っているのですか、厚生年金基金積立金には。
  16. 長尾立子

    長尾政府委員 お答えを申し上げます。  ただいま先生おっしゃいました一兆七百七十五億円といいますものは、国庫負担当分といいますか、その分を繰り延べたわけでございますので、国庫負担分ではないということでございます。
  17. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 両大臣、これには政府資金はそもそも入ってないのですよ。というのは、共済と違うのです。共済は今度、国公共済から七十五億円、地方共済から八十五億円、私学共済から二十三億円、農林共済から七十億円出ていますが、これは政府資金が入っている。それは、政府は拠出時に出すのです。保険料を取るときに出すのです。ところが、厚生年金に限っては、国民年金も最近そうですが、給付をするときに金を出すのです。ですから、後から質問いたしますが、積立金には一銭も政府資金が入っていない。その点非常に違うのですよ。全然自分の金を入れていないところの財布から今度は金を借りよう、そこに私は非常に矛盾を感ずるのです。一部自分負担をするならば別ですよ。負担してないのです、これは。その点が違うということです。  それから、今厚生年金積立金はどのぐらいになっているのか、五十九年度末。六十年度はどのぐらいになる予定か、これをお聞かせ願いたい。
  18. 長尾立子

    長尾政府委員 お答えを申し上げます。  厚生年金の六十年度末の積立金予定は四十九兆六百四十四億円でございます。
  19. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 なぜこの五十兆もの金が積み立てておられるのかという点ですね。これは、厚生年金が非常に非情な、残酷な年金だったからです。二十年間、給付者がいなかったのです。こんな公的年金は世界にない。それは厚生年金の発足が軍事費の調達、これを目的として発足しましたから、やむを得ない点がある。  ところが、公的年金というのは次のような性格があるのです。第一は強制加入、第二はスライド制を認める、第三は企業からかわっても通算される。この原則のほかにもう一つは、制度が始まったときに、過去に勤務をした人の分を見るということです。それは全部見るか一部見るかわかりませんが、日本共済制度は過去を全部見たのです。国鉄共済は大正九年にできた。国有鉄道になってから十三年間、過去の通算をしたのです。それに見習って日本共済制度は全部過去を通算したのです。先輩に対して申しわけない。ところが、厚生年金だけは二十年間、炭鉱は十五年でしたけれども、全然給付者が出ない。金は余りっ放しに余るのです。こういう制度であったわけですね。これが非常に違うのですよ。  それからもう一つは、ですから結局どうしたかといいますと、もう昭和十七年からでき、これは労働者年金ができておるが、今日、四十数年たってもいまだに年金受給者が非常に少ない。老齢年金受給者は今幾らですか、老齢年金だけでいいです。
  20. 長尾立子

    長尾政府委員 お答えを申し上げます。  厚生年金の五十九年三月末の老齢年金受給者は二百七十二万八千九百四十九人でございます。
  21. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 大蔵大臣、二千七百万も加入者がいて、四十数年たってまだ老齢年金受給者が二百七十二万しかいない。それはどうしたかといいますと、結局脱退一時金をもらったのです。もう時間がありませんから一々聞きませんが、脱退一時金をもらったのが六百三十万あります。この人は資格がないのです。こういう制度のあり方。ですから、積立金が余っておるというけれども、払うべきものを払わなかったのです。これは非常に大事な金ですよ。  しかも、運用利回り幾らですか。運用利回りは七分ですよ。七・一が、七・〇です。長い間六・五だった。国債を買ってごらんなさい。国債だって運用利回りはかっては八・八、五十五年度はありましたけれども、今は七・五ぐらいですね。こういう状態です。そういう状態の中で、じゃほかの年金基金共済はどうなっているかというと、大変大きな利回りです、ほかの共済は。農林年金等については今七・四九%の利回り、民間の生命保険だって七・八ぐらいです。かつては一一ぐらいの利回りがありましたね。ところが、この大事な金を簡単に借りてくる。しかも政府は金を入れていない。  もう一つ大きい問題は、この厚生年金積立金が、今からは中小――中小と言えば問題がありましょうが、大企業は入っていないのです、この企業積立金の中に。それが一つ問題なんです。それは、企業年金をもらっているところは、自分の方で厚生年金基金というのをつくって、財源をそこへ入れておるのです。そうして、いわば定額部分、今からの基礎年金部分政府が管理する、これは入っている。しかし定額部分は、今からは賦課方式になるわけですから、一年集めたのを一年で返すわけです。これは積立金はできません。比例分だけが積立金が今からできるのです。この比例分の大部分はすなわちスライド制と再評価、これを除いては全部基金の中に入る。  そこで私は厚生省にお聞きいたしたいと思うのですが、一体厚生年金基金企業年金を含む基金利回り幾らになって、六十年度見込みはどのくらいの金があるか。
  22. 長尾立子

    長尾政府委員 お答えを申し上げます。  厚生年金基金昭和五十九年三月末現在の積立金残高は、総計で申し上げまして八兆七千六百六十七億六千八百万でございます。運用利回りでございますが、全体を平均いたしまして八・一八%でございます。
  23. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 いろいろ数字があります。利回りは、五十八年度は八・五三とか五十七年度は八・三八とかいろいろあるのです。要するに一・五くらい違うのですよ。その今の厚生年金の普通の人が入っている利回りと、それから大企業を中心とする企業年金を持っておるところ利回りとがそのぐらい違う、一・五違うのです。一・五といいますと、これは大変な利回りですよ。  そこで、こういう制度になっておるということを、大蔵大臣、ぜひ認識してもらいたいと思うのですよ。これは、同じ労働者の中にも、大企業の方は八・五%も利回りがある、あるいは八・一%も利回りがある、一般の労働者厚生年金は七・〇あるいは七・一しか利回りがない、こういう状態の中にあるのですよ。それはすなわち、保険料の中で三二%全部、基金の中に入れることができるからだ。しかも基金は株を持てるのです。そうして土地も不動産も持てるのです。こういう仕組みになっているのですよ。こんな不公平なことがありますか。そうして要するに、零細と言っては悪いですけれども、一般の労働者、民間労働者が積み立てた積立金を借りようというのですよ。私はこういう矛盾を感じざるを得ない。  そこで、厚生年金の今お借りになっている積立金の運用についてどういう所見があるのか、これを大蔵大臣からお聞かせ願いたい。
  24. 平澤貞昭

    平澤政府委員 運用のお話でございますが、理財局の方の担当でございますので直接担当しておりませんが、運用の場合、先生おっしゃいますように、基金に比べますと低い利回りになっているわけでございます。しかし、それは資金運用部に預託されまして、また国民に住宅金融公庫その他を通じて返ってまいりますし、それから厚生年金積立金を通じて、いろいろ住宅その他にも安い金利で資金を出しているということで還元している。したがいまして、全体として受益者にとっては利益を受けているという点もあるわけでございます。
  25. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それは基金だってありますよ。共済だってそれ以上あります。余り理由にならない。  そこで、厚生年金発足のときは軍事費調達ですから余り問題がなかったのですけれども、昭和二十九年の厚生年金改正、三十四年の国民年金を制定されるその以前、大変大きな問題になった。こんなインフレのときに、実質積立金の価値が下がるときに、これは自主運用すべきじゃないかというので大変大きな議論があった。そのとき大蔵省は何と言ったか。これは資金運用部資金に入れて日本経済再建のために使うのです、そうしてそのお返しを、果実が実ったら、日本経済が再建できたら、その果実は返すのです、こう言ったのですよ。果実は返してない、保険料はどんどん上がるじゃないですか。一体大蔵大臣はどう思っているのですか。  この厚生年金基金は年々二〇%ずつ上がっているのですよ、ハイピッチで。やがて基金の方が十兆から二十兆になる。こういう情勢の中にあるのです。基金は八・五%の利回りである、一方は七%の利回りだ。そうして自由にお使いください、株を買う、外債を買うでしょう、それから不動産も買えるでしょう。こういうような状態にしておるのです、同じ厚生年金という名前でも。大蔵大臣、これを聞かれてどう考えられるか、お聞かせ願いたい。
  26. 竹下登

    竹下国務大臣 私もその制定の当時の知識はございません。今日、いわゆる財政投融資の原資として、これは郵便貯金そして年金等があるわけであります。そして資金運用部のいわゆる預託金利というのは大体長プラでございましたか、たしかそういうもので一応の基準がある。そこで我々といたしましては、財投原資であるということが一つと、そうしていわばその自主運用議論につきましては、今日までもいろいろな議論がありますが、やはり経済全体を考えた場合に、いわば国の一元化の運用が適切であろう、こういう臨調のお答えもあるわけであります。  したがって、その運用に当たっては有利で安全、確実ですか、そこでその有利という点がおのずから限界がありますのは、株式投資なかんずく不動産投資とかいうようなことはしないということになっておりますので、その資金運用の利回りというのはおおむね預託金利並みということになっておるということであろうと思っております。  それから、一方の基金の問題につきましては、ちょっと私、知識が乏しいので、今お答えする能力がないと言わざるを得ません。
  27. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 今から情勢は企業基金の方がどんどん伸びできますね。退職金を減らして皆企業年金に回すわけです。でありますから、既に今でも二千六百三十七万人の厚生年金加入者中、基金加入者が六百五十六万人、それから適格退職年金が六百八十六万人、千三百四十三万人、半数いるのです、企業年金をもらっている人が。こういう情勢です。これがどんどん今から伸びていく。でありますから、私はこういう貴重な金を勝手に使っておるというのは観念的にけしからぬと思うのですよ。今この利回りが八・五になっている理由を見ると、国債や地方債、政府保証債は五〇%以上とはあるが、株は三〇%、不動産は二〇%、この外貨建ての証券が一〇%という制限はある。しかし、こういう状態ですよ。  ですから、私はそういう点を見ますと、どうも日本の場合は郵便貯金という零細な貯金、それから厚生年金という、大企業企業年金をもらわない諸君の預金を当てにして日本経済は伸びてきた。これが資金運用部資金の財投の原資でしょう。ですから、全体に言うと日本でも優遇されたものはそのままにしているのです。だから私は、臨調はメンバーを見ると余り信用できないのです。自分の縄張りのことは言わないで、人のことばかり言っているのです。一体どこに財源を見出すのですか。  そこで、もう一つ私は例を挙げましょう。職場でけがをしますと、その人は労災保険と厚生年金の障害年金をもらえる。ところが、今はどうなっていますか。これはせっかく見えておるから労働大臣だな。これは厚生年金はどういうように払われるのか、あるいは労働者災害補償保険はどういうように払われるのか、この併給についてどういうように調整されているか、お聞かせ願いたい。
  28. 松本邦宏

    ○松本説明員 お答えいたします。  同じ事由に基づきまして労災年金厚生年金が支払われます場合には、労災年金の方で調整いたしております。
  29. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると厚生年金は全部払って、労災の方が引っ込むわけだな。そうすると基準法はどうなっているのですか。
  30. 松本邦宏

    ○松本説明員 基準法上は六年間厚生年金の方が支給停止になります。
  31. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ですから、同じ労働省でもおかしいでしょう。すなわち、これは一時金ですけれども、基準法は全部払うのです。そうして六年間は厚生年金がストップする。厚生年金が調整に使われている。ところ労災保険は、今度は逆で、厚生年金を全額払って労災の方がカットされる。ところが公務員共済、公務員災害の場合はどうなっていますか、大蔵省。
  32. 平澤貞昭

    平澤政府委員 ちょっとわかりませんので、担当者を呼んでお答えさせます。
  33. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは公務員の方は公務員災害補償法が全部払う。共済の方が調整するのです。こんなに矛盾しているのです。ですから、おかしいでしょう。僕は厚生年金がいじめられているという話をしているのです。厚生年金はもうあらゆるところからむしり取られているのです、おまえは金があるじゃないかといって。そうして厚生年金は全部払って、労災の方はその調整分だけ払いますよ、これは本来は基準法無視です。ところが、公務員はどうかというと、公務員災害の方が全部払うのです。共済は引っ込むのです。こんな矛盾した法律がありますか。
  34. 越智伊平

    越智委員長 事務的に答弁して、後で大臣が答弁。
  35. 長尾立子

    長尾政府委員 お答え申し上げます。  厚生年金によります労災との給付の調整でございますが、先生今おっしゃいましたように、本来厚生年金は、労災保険、労災補償ができましたときに、業務外の補償に限って給付するという仕組みに改めたわけでございますが、その際に、業務上の災害が起こった場合に、その際は労災補償は一時金だったと思うのでございますが、他の第三者によります損害賠償請求と同じような形で、その一時金が支給されます期間、いわば六年間をとりまして、私どもの方の給付をしないという形の制度になったわけでございます。  労災補償法が年金化をいたしました際、これは昭和四十年くらいだったと思いますけれども、その際に、厚生年金労災年金化に伴う労災の補償年金とをどういう形で調整すべきかということが、政府の部内では議論になりました。今先生おっしゃいましたように、労災給付されるという形において厚生年金のある一定分を減額すべきか、または逆の方向でやるべきか、これは議論したわけでございますが、厚生年金の立場といたしましては、先ほど来先生から御指摘がございますように、被保険者事業主の双方から保険料を長い間拠出していただきまして給付のお約束をしている、こういう仕組みから、厚生年金は全額を支給するということを考えたわけでございます。しかしながら、この点につきましては、今後この部分の調整のあり方については両省で十分協議するようにというような形の附帯的な御意見を国会からいただいておりますし、労災法の附則にもそういった趣旨のものがその当時入ったかと覚えております。  そういう形で、私ども両省の間でこの問題の調整のあり方ということは検討の課題になっておるというふうに考えておるわけでございます。一番最初には、労災厚生年金給付が行われます場合には、厚生年金の半分に相当する額の給付自分の方で減額するという仕組みをとっていたかと思いますが、その後の変化によりましてこの部分の調整率を変えたことは先生御承知のようでございます。この大きな課題につきましては、私どもとしては先生御指摘の問題点はそのとおりだと思っておるわけでございまして、長期的な問題としては検討させていただきたいと思います。
  36. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 厚生大臣、率直に言うと、あなた仕事負けしているのです。こんなばかなことはない。公務員を見てごらんなさい。職場でけがをした場合、これは全面的に使用者の負担です。それを厚生年金を全額出して、そうしていわゆる事業主だけの負担労災は調整用に使われている。しかも、基準法はそうでないのですよ。基準法の六年間というのは、一時金の労災保険の全額なんです。全額を換算したら六年分だったというのです。しかも、公務員はのうのうと、その共済の方は出しませんと言う。実際、こんな矛盾した法律が平気でまかり通っているのですよ。だれが調整するのですか。こういう問題はだれがやるのですか。総理大臣……。
  37. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 そのような問題は、関係各省が集まりまして、まず調整すべき問題であろうと思います。
  38. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 年金財政が赤字だとかいうけれども、これは本当に年金積立金の運用の問題でも、大企業の分は外へ出してしまって、今からどんどん伸びるのは基金の方ですよ。これは企業年金で、企業だけの分なら私は文句は言わないのです。本来厚生年金の枠を企業が持っていって使っているのですよ。ここが問題なんですよ。厚生年金の比例部分企業が勝手に持っていって使っている。それは八・五%の利回りです。上乗せの、いわば今後の三段階の自分の分は、私は文句言いません、そんなことは。そんな失礼なことは言いません。  でありますから、そういう点が無視をされて今年金改革が行われているというところに問題がある。むしろこういう点は真剣に厚生大臣は調査をして、財源の捻出をしなければならない。これは大蔵大臣もそうでしょう。先ほどから言っておるのは、税の議論はあるけれども、社会保険の議論がないじゃないかと言っているんですよ、僕は。社会保険の議論が余りにも少ない。だから、社会保険の負担は、日本経営者が世界で一番少ない。先ほどからデータをお話しになりました。ここに問題があるんですよ。ですから、こういうところに今後メスを入れていかなければ、財源というのは浮かばぬのですよ。  それからもう一つ。今からますます大企業の方は社会保険料を納めませんよ。ME工場になったらどうしますか、全部オートメーションになったらどうしますか。これは社会保険は要らない、労働者は使わないから。中小企業の方は労働者を随分使いますから、それへの保険料はかかるのです。この調整だって全然してないでしょう。一体どうするんですか、これは。ただ益金が出たら取るんですか。しかし、中小企業は益金が出なくても、労働者と同じ負担分は出しているんですよ。大蔵大臣、どう考えておるんですか。
  39. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 ただいま年金は人にかかわっておる制度でございますので、今後そういうロボット化によっていろいろな問題が出てこようかと思います。まだ今すぐその制度を変える段階ではございませんけれども、将来の検討課題として心得ております。
  40. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 制度というのは、先々先手を打たないと、既成事実をつくったら非常な抵抗がある。それはそうですよ。制度というものは、我々が政策をやる場合に先手先手と打たなければ、物すごい抵抗が出てくる。事実上できない。今の政治的分野においてできなくなる。そういうものなんですよ、これは。ですから、その時代になって考えたときにはどうにもならない。だから、早く手を打たなければならぬ。  そこで、私はせっかく法制局長官を呼んでおるので、もう余り議論をしませんけれども、最近の法律は極めて乱れておるということです、一言にして言うなれば。肝心な、国民の一番問題の点が法律から抜けている。全部政令にゆだねられておるでしょう、ほとんど。肝心かなめの法律を見て、読んでもわからない。自分にはどう適用されるかわからない。今度の年金だってそうでしょう。今までわざわざ法律に書いてあったものを政令にゆだねている。自分が病気になったらこれは何級になるのかというものは、今度は全部ないんですよ。全部政令ですよ。そうして、自分が六十歳から勤めに行って、六十一歳になって六十二歳になったら幾らその在職老齢年金をくれるかということも、全部法律から抜けている。今一番問題は、六十から国民年金をくれますけれども……(「六十五から」と呼ぶ者あり)いや、六十五からくれますけれども、六十になったら減額はありますよという率も書いてない。これは年寄りにとって大変悩む問題ですよ、一年早くもらった方がいいかどうかというのは。これも全然書いてないんですよ。一体法制局はどう考えておるのか。  それともう一つ、最近乱れておるのは、さっきから議論がされておる国庫負担、国庫補助金、これが実に乱れておる。もう何回か答弁があったと思いますから言いませんが、補助金というのは奨励的な意味ですよ。主体は別にあって、そこへ国が補助金を出す。負担金というのは、国が責任を持ってその負担を分担するのが負担金。これを、いろいろ議論を聞いてみると、皆国庫補助金と言っておる。補助金というものはそういう性格でないでしょう。これは今の自治省の石原次官が書いている本だってそうでしょう。峻別していますよ、補助金というものはこういうものです、負担金はこういうものですと。それを、この補助金等の適正化に関する法律のときにごっちゃにした。しかし「等」が入っている。それでごっちゃにして、みんな補助金補助金と言う。それで補助金の打ち切りと言う。しかし、補助金の打ち切りは、省令や何かで、政府が、主体が別のところへ出す金ならいいですよ。本来政府が責任を持たなければならぬところまで補助金とは何事か。  これは法制局長官、こんなに法律が乱れたらどうにもならぬ。一回はっきりおっしゃっていただきたい、この二点。
  41. 茂串俊

    ○茂串政府委員 お答え申し上げます。  ただいま二つの事柄についての御指摘がございましたが、第一の、法律による政令への委任の範囲の問題でございますが、これもたびたび申し上げておりますように、もともと法治国家であります以上は、国民の権利義務にかかわる事項あるいは国の組織機構等に関する基本的な事項、こういったものはすべて法律で規定するのが建前でございます。  ただ、ただいま申し上げました権利義務に関する事項といい、また国の組織等に関する事項といいましても、非常に複雑な、また専門的な事柄もあるわけでございまして、したがいまして、技術的な事項、専門的な事項、手続にわたる事項あるいはまた機宜に応じていろいろと迅速に改正を要する事項とか、そういったものにつきましては、これは法律で一々規定しておりますと非常に煩瑣であり、また機宜に応じた手が打てないという問題もございますので、そういうものは合理的な範囲内で政令以下の命令に委任するというのが、現在の法体系の建前でございます。現在のやり方もそのような趣旨に即していろいろ立案され、また実行されていると思うのでございます。  それから第二番目の問題でございますが、委員御指摘のように、補助金負担金の区分けでございますが、補助金と申しますのは、今委員の申されましたように、国または地方公共団体等が、特定の事務事業を実施する者に対して、その事務事業を奨励助長するために交付する給付金をいうのに対しまして、負担金というのは、国または地方公共団体等が、自己の利害に関係のある事務事業に関して、法令により、自己の経費として負担すべきものとして交付する給付金をいうというのが、いわば法律用語的な意味の概念でございます。  それから、現行の法令の場合どうかと申しますと、確かに地方財政法の場合にはこれはちょっと観点が違うわけでございまして、先ほどもちょっとお触れになりましたが、地方財政法はあくまでも国と地方の負担区分についての一般原則を規定しておるわけでございまして、経費の最終的な拠出をだれが行うかという点に着目して、そして負担という用語を使っております。したがいまして、国がいわば実質的に負担すべきものは、仮にそれが奨励補助的なものであっても、すべて負担金という言葉で統一しているわけでございますところが、各実定法の方はどうなっているかと申しますと、これはただいま委員のおっしゃいましたような、そういった当該給付金の性格、内容に応じて、それぞれ負担金あるいは補助金という用語を使っておる、これが一般的な基準でございます。
  42. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 その一般的な基準のように法律をしっかり整備してもらいたい。法制局を通らない法律はないのですから、ぴしっとしてもらいたい。実に乱れていますね、用語の使い方も。  それから第一の質問ですが、一番肝心な、大事なところがないのですよ。例えば六十五歳からもらう国民年金、今から基礎年金に、なる。これを六十五歳でなくて六十歳からもらえたら四二%引きますよ、こういうふうに階段的に言われておる。これは政令ですよ。これは一番大事なことじゃないですか、年寄りにとって。それからまた、あなたが勤めながら働いている場合は、在職老齢年金といってこれだけしか上げませんよ、これも重要なことです。そういう重要なことがないのですよ。けがをしたときにはどの等級に当たるかも書いてない。今度は外しておる。そういう点が一番抜けている。ですから、国民は見てもわからない。  かつて、国民年金に勤め人の妻は入ることはならないと書いてある。ところが、実際は任意加入できるようになっている。私ら法律を見て、どこにあるだろうと調べた。附則の六条に入っておるのです。そんな重要なことが附則に入っておるのですよ。一体法制局は何をしておったんだ。それを認めた議員も悪いので、責任を感ずるのですけれども、日本法律には大事なことがないのですよ。しかも国民の権利義務に一番重要なことでしょう。ですから御注意を願いたい。もう時間がありませんから……。  そこで、今度いろいろ補助金一律カットを中心として、殊に私は産炭地の出身でありますから、大変影響が大きい。一つは生活保護、一つは失対事業。生活保護は全国平均千人に十二人です。ところが、産炭地と言われる九州の場合、大牟田、直方、飯塚、田川、山田、中間、これは皆五十人以上です。山田市のごときは百八十六人ですよ。単位費用を上げてもらっても、そのくらいではとても賄い切れない。今度単位費用は、生活保護については三八%上がりましたね。三八%というけれども、常識上考えると、八割が七割になったというのは国の話であって、市町村から見ると二割が三割になったのですから、五割上がらなきゃならぬです。本当は五〇%上がらないと市町村の方はだめなんですよ。こういう状態なんですね。一体自治省はどう見るのか。  山田の例を挙げますと、これはもう本当に市長さんのなり手はおらぬぞと思うくらい大変ですね。カット分が二億七千三百万円、地方税の収入が九億二千八百万円です。カット分が約三億ある、地方税の収入は九億円しかない、こういうような状態である。これを一体どういうように考えておるのか。  それから二百億、これはどういうようにお使いになるのか。  さらにもう一つ、失対の労働費は、この地方交付税の別表を見ると投資的経費になっておるけれども、本来投資的経費的なものではないが、これは経常的な経費に入れられるのかどうか、これをお聞かせ願いたい。
  43. 土田栄作

    ○土田政府委員 まず私から計数的、制度的な説明をさせていただきたいと存じます。  まず生活保護費につきましては、御指摘のような形での単位費用の引き上げしか行われておりませんけれども、実はこれは生活保護費の中に社会福祉事務所の職員費でございますとか、老人保護費とか、そういうふうなものが入っておりますためにそうなるわけでございまして、この単位費用の中の生活保護費だけをとってみますと五二・六%上がっております。これは負担の一割のふえた分とそれからレベルアップと両方の分を含めたもので措置をいたしておるわけでございます。  それから、御指摘のように。現在、生活保護費は人口を測定単位の数値として算入いたしておりますけれども、生活保護世帯の多いところにつきましては、これは密度補正ということで加算をいたしておりますので、山田市に対しましては所要の財源措置がされる。ただ、それで足りない分がありますれば、厚生省の方の補助金をお願いするという形になろうかと思います。  それから失対につきましては、一般の失対、これは経常でございます。それから、いわゆる特失の分でございますけれども、こちらの方につきましては建設事業と考えられますので、投資の扱いとして起債を充当する、その元利償還に交付税措置をしたいというふうに考えている次第でございます。  以上、制度の御説明を申し上げました。
  44. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 二百億については……。
  45. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 生活保護につきましての臨時財政調整補助金二百億円の使途でございますけれども、御指摘のような、財政規模に対して生活保護費の割合が非常に高く、財政基盤の脆弱な団体に重点的に配分するつもりでおります。
  46. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ちょっとわからないのですけれども、自治省の説明によると、大体五割増し、五二%見てありますよとこう言う。そして密度補正をやります、それは結構なんです。それから二百億も、そういう過密なところをやります、こういうお話なんですけれども、どこかが、基礎が狂っておるのではないか。そうせぬと数字が合わないんじゃないかと思うのだけれども、一体どういうことになっておるのか。
  47. 土田栄作

    ○土田政府委員 御案内のとおり、交付税の計算は統一単価と申しますか、同じ単価で計算をいたしますので、あるところにつきましては、扶助費の単価が非常に高いとか医療費の単価が高いといった地域がございます。そういうものにつきましては交付税の方でカバーできませんので、二百億の配分を通じまして適切に厚生省の方で対処していただくというふうに、私どもとしてはお願いしたいと思っております。
  48. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、これは厚生省が配分を決めて自治省が交付するのですか。どういう形になるの。
  49. 正木馨

    ○正木政府委員 生活保護の臨時財政調整補助金でございますが、先ほど大臣からお答えがございましたように、今回の補助率の引き下げに伴います影響を緩和するということで、財政規模――先生がおっしゃいますように、保護率に全国的に非常に開きがある。それはとりもなおさず被保護者が多いというために、財政規模に占める生活保護費の割合が高い、しかも財政基盤が脆弱だ、生活保護についても、適正な努力をされておるといっても非常に財政への影響が大きいというところに対しまして、重点として配分しようということでございます。  ただ、この補助率の引き下げに伴う地方負担につきましては、自治省からもお話がありましたように、基本的には地方財政計画で措置をする。しかし交付税というものは、まず基本的には前年度の単価というものが基本になるわけでございますので、生活保護のような、それぞれの地方公共団体による影響の違いをきめ細かく見ていく場合には、やはりこういった財政調整補助金というものを有効適切に活用することによりまして、できるだけ負担を軽減したいというのが私どもの考え方でございます。
  50. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 大蔵大臣、もう時間が来ましたけれども、日本法律の中で、日本国憲法の二十五条という規定を入れておる法律というのは、僕はほかにないと思うのですよ。これは非常に重要な法律になっておるのですよ。これは本来国が負担するのですよ。これは補助金じゃないのです。国が負担して、その一部を府県と市で持ってもらいたい、これは全面的に国の負担なんです。それを補助金補助金と言って、大蔵大臣までそういう言葉を使うというのは本当にけしからぬと思う。ですから、それを御注意申し上げ、それで社会保険の給付について、もう少し企業側の負担というものを考えてみなければ、それは財源を取るところはありませんよ。ですから、私はそのことを申し上げまして、終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  51. 越智伊平

    越智委員長 薮仲義彦君。
  52. 薮仲義彦

    薮仲委員 私は、ただいま審議されております国の補助金等整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法案、いわゆる高率補助の引き下げの特例、行革関連法案の一年延長に伴いまして地方公共団体がこうむる影響について二、三問題点を指摘して、大臣の御所見を伺いたいと思います。  大蔵省の資料にございますように、地方財政の対策について、昭和六十年度地方財政の歳出規模見込みが五十兆五千億、その中で地方財源の不足見込みが五千八百億生じます。五千八百億のうち、いわゆる経常経費二千六百億、投資的経費三千二百億、中でもこの投資的経費が公共事業に及ぼす影響について伺っておきたいわけでございます。  この中で、事業費の拡大に伴ういわゆる地方公共団体負担分一千二百億、これは事業費の拡大という観点からやむを得ない措置と考えられる面もございますけれども、いわゆる補助率のカットに伴って、二千億が影響してくるわけでございます。このうち元利償還に対して二分の一は交付税に加算しますよ、こういう大蔵省の御説明でございますが、問題は残りの一千億でございます。この一千億について地方自治体に影響がないのかどうか、自治大臣のお考えをまず伺っておきたいのです。
  53. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 投資的経費のうちで、今お話しのように、国庫補助負担率の引き下げに伴う増加が二千億でございまして、そのうち一千億は、六分の一カットと同じように、六十一年度以降地方交付税に国から加算をする。あとの一千億につきましては、地方債により処理し、しかもそれについては地方財政の基準財政需要額に入れまして、その利子、元金を払うときにおいて交付税措置を講じる、こういうことでございます。
  54. 薮仲義彦

    薮仲委員 この一千億が地方財政に影響を及ぼしませんかと聞いておるわけですが、まあ地方債を発行するということは結構です。ただし、いずれにしても借金であることは間違いございません。六十一年以降、例えば地方の税収が大変落ち込んでくるというようなことが起きた場合に、この一千億の影響はございませんか。
  55. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 私は、今のところは出ていないと思いますが、ただ、六十一年以後におきましてそういうような場合が生じましたときは、やはり所要の経費を交付税をふやすことによって措置せざるを得ないと考えております。
  56. 薮仲義彦

    薮仲委員 特に、地方でこの一千億カットがどういうふうに影響をしてくるかといいますと、いわゆる公共事業といっても、国の補助事業はそれなりの事業は進むでしょう。問題は単独事業です。地方自治体が単独でやろうとする事業をカットしなければならないという問題が六十一年以降生じないか。単独事業に与える影響については、自治大臣、どう考えていますか。
  57. 土田栄作

    ○土田政府委員 これは私どもも非常に懸念をいたしていたところでございまして、単独事業につきましてもプラスで計上するようにしたいということで、地方財政計画の策定に当たりまして、投資的経費全体では一・五%の伸びでございますけれども、そのうち公共事業の補助事業の系統が一・三%、単独事業が一・七%ということで、地方財政計画ではプラスで組んでおります。  それから、四十七都道府県の予算計上状況というのを見てみましても、これはプラスになっております。ただ、私ども市町村の予算計上状況まではまだ把握しておりませんけれども、これからその状況を調査いたしまして、もし落ち込みがあれば適切なる指導をいたし、また地方債等の措置を通じましてふえるように持ってまいりたい、このように考えております。
  58. 薮仲義彦

    薮仲委員 自治大臣、確認しておきますけれども、単独事業が圧迫されるようになったらば、大臣大蔵大臣と折衝して、地方自治体の財政をしっかりと守るというか、そういうことで単独事業ができなくて地方のいわゆる社会資本の整備が非常におくれる、あるいは地域の適切な発展ができないというようなことのないように努力してくれますね。
  59. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 単独事業をやって異常な不足が生じる、そういう場合には、今審議官から申し上げましたような措置をとってまいりたいと思います。     〔越智委員長退席、熊川委員長代理着席〕
  60. 薮仲義彦

    薮仲委員 最後に大蔵大臣にお伺いしますけれども、その前にもう一つ自治大臣に重ねて伺います。  我々が一番心配しますのは、特に財政事情の弱いところというのは高率補助の事業が多いわけです。例えば端的に言えば離島等です。この離島等は補助率の高い事業が重なっているわけです。ですから、一律にカットされますと、特にそういう離島とか財政力の弱いところへ、カット率ががっと切り込んでくるわけです。こういう点は、大臣、きめ細かく配慮していただけますね。いかがですか。
  61. 土田栄作

    ○土田政府委員 今回の国庫補助負担金の引き下げに伴います国費のカット額は二千億でございますけれども、この二千億につきましては全額地方債を充当いたします。そういうことになりますので、まず六十年度としては、その分についての離島辺地の負担は生じないということになります。  委員のお尋ねの点は、昭和六十一年度以降の元利償還の負担が大変になるのではないかという問題だと思いますけれども、これにつきましては、地方交付税で個別の団体については一〇〇%その元利償還金を算入するという措置をとってまいりますので、これらの団体の財政運営に支障を生ずることはないというふうに考えております。
  62. 薮仲義彦

    薮仲委員 大蔵大臣にお伺いします。我々が心配しますのは、地方自治体に及ぼすその一千億分の影響について、いわゆる単独事業等が切り込まれないようにしてほしいということですが、これはひとつ大蔵大臣にお願いしたいと思います。  それからもう一つ大蔵大臣と自治大臣とのいわゆる協議といいますか申し合わせ事項の中で、経常経費に係る二千六百億のうち一千億は交付税によって充当いたします。残りの一千六百億のうち不交付団体の分は除いたとして、一千億についてはどうするか、これはやはり非常に重要な課題を抱えていると思います。今後地方自治体の税収がそれなりに好転していくということがあれば、これに対しての心配はないかもしれませんが、国も苦しければ地方も苦しくなって財政状態が悪くなったときに、地方自治体が窮地に追い込まれることのないような配慮を大蔵大臣としてしていただきたい。今まで自治大臣に申し上げたことと今の点、大蔵大臣、いかがでしょう。
  63. 竹下登

    竹下国務大臣 大蔵省と自治省とで最初話し合いをしますのは、いわばマクロの地方財政計画というものを土台にして話しするわけでございまして、そうして国税三税の三二プロというのは、いわば入り口ベースではまさに三二プロが入って、そして今度は、問題は出口ベースでいつも議論をいたしますが、大変に地方財政が、まあそのようなことはないことをもちろん期待しておりますが、悪くなったというような場合、かってとったいわゆる出口ベースで地方財政計画に間に合うようなもろもろの財政措置というのは、幸い今のところは少しずつ地方財政計画全体で、マクロで見ますといい方向に行っておりますが、仮にもし悪い方向に行ったとすれば、いろいろな施策を組み合わせて出口ベースのことだけはやはりちゃんとしなければいかぬではないかというふうに私も考えます。
  64. 薮仲義彦

    薮仲委員 この問題は、専門の委員の方々があらゆる角度から検討なさっていらっしゃることであることは十分承知いたしております。どうかこのことによって地方財政がさらに悪化し、また地方自治というものが危機に陥ることのないように、大蔵大臣、自治大臣と特段の配慮をして、今後の推移を見通して、六十年以降の健全財政というものを国も地方も確立していただきたい、その点だけにとどめて次の問題に移らしていただきたいと思うのです。  私は運輸でございますので、運輸にかかわる問題をお伺いいたします。  今度、いわゆる自賠責保険の料率が改定されまして、四月十五日から、単純に言えば値上がりするわけでございます。この問題については、大蔵大臣が諮問なさる自動車損害賠償責任保険審議会の答申というものが出ているわけでございますが、この四十四年の答申の中でも、いわゆる運用益といいますか、滞留資金の運用益をどうするかという問題が指摘されているわけでございますが、そこにはこう書いてございます。「滞留資金の運用益については、今後は保険料負担の軽減に充てるほか、」云々、こうなっているわけです。また五十三年の答申を見てまいりますと、そこには滞留資金の運用益についてということで、こう書いてあります。「滞留資金の運用益については」「将来の収支改善のための財源として留保しておく」、留保しておきなさい、こう書いてあるわけです。あくまでも自賠責保険の滞留資金というものは将来の収支を改善するためにためておきなさいよ、こういう意向であるわけでございます。  これは運輸大臣にお伺いしたいわけでございますけれども、このような答申が出ているわけでございます。運用益というのは、ユーザーにとっての料率が高くならないように、圧縮されるように運用しなさいよ、こう書いてございますが、大臣としては運用益をどのように圧縮のために適切にお使いになったか、お伺いしたい。
  65. 山下徳夫

    山下国務大臣 先生御案内のとおり、自賠責保険の運用益は、保険契約者が納付した保険料を原資としてこれが発生するものでございますので、基本的には保険契約者の利益のためにこれは活用されなければならないと思っております。そのような趣旨から、自賠責保険審議会の答申の趣旨に沿いまして、まず交通事故防止対策、あるいは被害者救済対策、あるいはその他保険収支の改善という面に、これらのものを活用いたしますとともに、これらを活用した残額につきまして、将来の収支改善のための財源として留保する、こういう形をとってまいっておる次第でございます。
  66. 薮仲義彦

    薮仲委員 今大臣お答えになりましたように、運用益というのはユーザーの利益を損なわないような運用の仕方をしてまいりますということだと思うのです。ユーザーにとって不利益をこうむるようなことは余り好ましいことじゃない。きょうはごく素朴な質問大蔵大臣と運輸大臣にいたしますのでお聞きいただきたいわけでございますけれども、先ほどの答申にございましたように、五十三年の答申の段階で既に、この運用益については将来の収支改善のために財源としてためておきなさい、留保しておきなさいという指摘があるわけでございます。ところが、五十八年に二千五百六十億一般会計へ繰り入れるということになった。私もユーザーの一人として、この措置は不適切である、大蔵大臣ここにいますから、すぐ返してほしい、こう言いたいところでございます。  一般会計に導入しますとこれはどうなるか、これについてはいろいろ御意見もあるかもしれません。一般会計に繰り入れたということは、一般会計というものはその地域あるいは国民の利益のためにいろいろな事業をやり、それだけの効果、社会福祉というのを守っておるから一般会計に入れてもいいんですよ、こうおっしゃるかもしれません。しかし、我々は自賠責も納めておりますけれども、国民として税金をきちっと納めております。社会保険料も納めております。国民としての義務はきちんと果たすようになっているわけでございますから、一般会計へ入れて、このような利益があるから当たり前だよという論理は私、適切ではないと思うのです。そうなってまいりますと、この二千五百六十億を一般会計へ繰り入れたということは、運輸大臣としてユーザーの利益を損なったということになりませんか。その点、いかがですか。
  67. 平澤貞昭

    平澤政府委員 この二千五百六十億円につきましては、五十八年度予算の際に、国の財政事情が非常に厳しいということから、自賠責協会の累積運用益の二分の一を一般会計に繰り入れるということとしたわけでございます。  それで、御存じのように自賠責特会というのは、毎年毎年の短期の保険収支になっております。したがいまして、収支上そこで一定の収支差額が出たという場合に、それをどうするかという問題がございます。本来ですと保険料を過去に払った人に還元すべきものでございますが、しかし、その分がある程度累積してきた場合にこれをどう使うか、あるいはどう活用するかという問題もあるわけでございます。  したがいまして、それにつきまして一つは、先ほど来先生が言っておられましたような活用の仕方もございますし、あるいは一般的に交通安全対策とかその他に活用する方法もあるわけでございます。そういう中で、国の財政事情が非常に厳しいものですから、この二千五百六十億円を一般会計に繰り入れて、しかるべきときにまたお返しするという措置をとったということでございます。
  68. 熊代健

    熊代政府委員 運輸省の方からお答えいたします。  先ほど先生御指摘の、五十七年度末の累積運用益の二分の一を限度として、二千五百六十億を五十八年度一般会計に繰り入れたわけでございますが、これは当時の時点で保険料改定等いろいろ措置を講ずるといたしましても、一遍にそれだけの額をすぐ支出しなければいかぬということではないということから、五十八年度の特別異例の措置として、一般会計の苦しい財政事情にかんがみまして、当時の運輸大臣といたしましても、運輸大臣としてはなかなか承服しがたいけれども、国務大臣として、五十八年度予算の苦しい事情から繰り入れを了承するということで、あくまで後日繰り戻していただくということを条件にそういう措置を講じたものでございます。
  69. 薮仲義彦

    薮仲委員 これは二つ問題がある。運輸大臣はやむを得ざる措置として、国務大臣の立場から協力したと言いますけれども、我々ユーザーの立場からいえばこれは全く不本意であって、こういうことはやっていただきたくない。  大蔵大臣にも篤と申し上げておきますけれども、一般会計が赤字だから、自賠責のお金が余っているだろう、出せ、これはよろしくないと思います。我々は憲法二十九条で財産権を保障されています。法律によって個人の財産は守られています。法律によらない限り、お金を取られることはないわけです。法律をつくればお金を取ってもいいだろうという、逆にこういう論法、これは私、またあってはいけないことだと思います。これは後ほど大蔵大臣の御意見もお伺いしたいわけでございますが、法律をつくってお金を抜いたんだから悪くないだろう、しかし結果から見れば、ユーザーにとってはこれは決してプラスではなかったと思います。後ほど料率改定の中で運用益がどれだけ値下げに影響したか、このパーセントを聞けば大体二〇・五%という数字お答えになると思う。これは五カ年間で約三兆何がしかを割り戻していけば、二〇・五%圧縮のために役に立ちましたと、こうおっしゃっておる。これは私、わかる。  でも、国の財政が赤字だったかもしれませんけれども、この自賠責保険ですら単年度収支――今大蔵省の次長さん、あなた一般会計赤字と言ったけれども、自賠責特会だってこれ赤字ですよ。昭和五十三年以降単年度収支は赤字ですよ。累積赤字も、お貸しする前の五十七年度累積赤字は赤字になっているのですよ。単年度収支も五十三年の段階で赤字、累積赤字も五十七年度では赤字ですよ。国も赤字、自賠責も赤字。今一般会計は、大臣が直間比率を見直して何とか税制改正をやろうとしていらっしゃるけれども、国民の反対でできない。料率の方は簡単にユーザーにぼんと値上げを迫ってくる。こういうことで、こっちにお金があるからいいだろう、こっちの財政も赤字なんですから、赤字のところからお金を取っていくということは、決して私、やむを得ざる措置というのはわかりますけれども、好ましいことではないと思うのです。大臣、いかがですか。
  70. 竹下登

    竹下国務大臣 五十八年度、私も当時大蔵大臣でありまして、言ってみれば我々の心の中の整理をいたしましたのは、もとより今薮仲さんおっしゃいますとおり、あれは国費が積んであるわけではなく、再保険の皆さん方からいただくものが積んであるということでありますが、国の中に入った特別会計である。さようしからば、一般会計と特別会計の、言ってみればそのそれぞれの会計間の資金調達であるというところで、一応心の整理をまずいたしました。  で、しかもこの運用益というのは、当然のこととして、本来この自賠責そのものに関係のあるものに使いたい。だから、一般的な社会保障とかいいましても、なかなか心にきちんと我々も整理がつかない。まあしかし、考えようによれば、この問題は、あるいは交通安全施設の充実とか、あるいは道路もその一部かもしれませんけれども、そういうところに結果として、金に色がついておるわけではございませんが、使われていくということになれば、一応我々の良心の整理もつくじゃないか。こういうような議論をいたしまして、まさに当時の運輸大臣が、じゃ、国務大臣として、このいわゆる会計間の資金の調整には応じよう、こういうことになったものであります。これは当時のことでございますから、御承知のとおりでございます。  本来、そういう可能な限りの特別会計と一般会計間の資金のいわば調達というものについては、それはやはり我々も今度の予算でもやらせていただいております。健康保険の関係のいわば利益分についての問題とかやらせていただいておりますが、決して欣喜雀躍してやったという感じは私自身も持っておりません。したがって、その後の、いわば今度の料率改定に当たりまして、これは審議会に私が諮問をいたしました。で、答申を得つつ、各方面の意見を聞いて、結論として上げ幅が圧縮されたということは、やはりその運用益等があったからそれが可能であったというふうに御理解をいただかなければならない課題だなと、こういうふうに私どもも心を痛めながらお答えをするということであります。
  71. 薮仲義彦

    薮仲委員 大臣のあれはわかるのですが、私はやはりユーザーの一人として、大臣にわかってもらいたいというよりも、わかり過ぎていることをここで改めて言って、国民の気持ちをわかっていただきたいと思うのですね。というのは、単純に数字を挙げますから簡単に――大蔵省がいいのか運輸省がいいのか、これはどちらでも結構ですが、私の方にも試算表があるのです。普通我々が住宅を建てまして、例えば二千万の物件を買ったとします。これを十年のローンを組むとどういうことになるかというと、二千万は四千万、大体倍になりますよというのが、通常、我々庶民の生活の中の実感でございます。  仮に今、二千五百六十億、ざっと二千五百億として結構でしょう。これを一般会計に繰り入れることをやめた。単純な計算ですよ。ですから単純に運用益の運用益を計算していきます。これを七%、複利、十年間、計算すると二千五百億は十年目に幾らになっているか。運用益の運用益、今の条件で金額だけちょっと言ってください。おわかりになっていると思いますけれども。
  72. 熊代健

    熊代政府委員 お答えいたします。  単純に二千五百億を七分の複利で回すといたしますと、十年間分の利息の合計は二千四百十七億という数字になります。
  73. 薮仲義彦

    薮仲委員 利益の合計二千四百十七億、ざっと倍になっているわけですね。私の手元での計算では、二千五百億が四千九百十七億、これでいいと思うのですが、約二千五百億は四千九百十七億になっていますよ。これは当然大蔵省が四年目からお返しになりますから、これだけの金額、二千四百十七億、ユーザーが全額損したよとは私は申しません。でも、千数百億、これも数字は正確にお伺いしたいと思いますが、やはり国民は不利益をこうむっている。  そこで、運輸省が数字わかるんだったら言っていただきたいのですが、大蔵省と、わかるところで答えてください。料金改定に及ぼした運用益の寄与率何%、もしもこの運用益二千四百十七億をそのまま使った場合に、値上げをもう少し圧縮できたのではないか、この辺はいかがでございますか。
  74. 加茂文治

    ○加茂政府委員 お答え申し上げます。  まず自賠責の保険料でございますが、これは昭和四十四年以来据え置かれてきた一方、給付内容が大幅に改善されてきたということ、それから近年交通事故が増加傾向にあるということ等から、先ほど先生御指摘のとおり、収支は年々悪化をしてきております。その結果、五十九契約年度までの累積の赤字額は約四千八百億円に達する見込みになっております。  このような収支状況の悪化の理由に基づきまして、今回二九%の料率のアップを行っておるわけでございますが、この料率の引き上げを行う際に、一般会計に繰り入れました二千五百億円を含む五十九年度末におきますところの自賠特会及び損保会社の累積運用益約六千五百七十億円の全額を、料率引き上げ幅の圧縮に活用しております。この活用による寄与は二〇・五%マイナスでございます。  そこで、この自賠特会から一般会計に繰り入れました二千五百億、これを仮に有利子であるという計算をいたすならば、五十九年度末の累積運用益を活用するわけでございますから、運用利率七%と計算いたしました場合には、五十九年度におきます運用益は百七十五億円でございます。したがって、この百七十五億の営業保険料ベースに及ぼします引き下げ効果は〇・四%でございます。
  75. 薮仲義彦

    薮仲委員 余り時間がございませんから、この点はもうこれぐらいにしておきますけれども、大蔵大臣、いわゆる運用益というものをユーザーの利益に還元するという立場からいいますと、この一般会計へ繰り入れたということは、大臣も心を痛めながらということは理解はいたしますけれども、こういう措置はやはりドライバーにとっては、料率の値上がりにとって非常に疑惑といいますか、好ましくない判断を持っております。やはり国民であり、ユーザーの立場に立ってみますと、この運用益をどう使っているか、その収支の明確化、そしてまたユーザーにわかるように公表する、またユーザーの意見も十分運用益については反映されるような仕組みが必要であろうと思いますし、国会審議の附帯決議の中でも、衆参両院ともに、できるだけ早くこれは返還すべきではありませんかと。特に一般会計への繰り入れは無利子でございます。無利子で十年間でございますから、先ほど利子の計算もわざわざやったのは、余り大臣にとっては気持ちのいい計算ではなかったというのを十分承知の上で聞いたわけでございまして、そういう点を踏まえて、ユーザーのために、今後は運用益をガラス張りにし、しかもできる限り早く、財政が好転したならば返すという方向がユーザーにとって最も好ましいことだと思いますが、最後に大蔵大臣、いかがでしょう。
  76. 竹下登

    竹下国務大臣 運用益、それから収支の問題等は、それぞれいわば別に官報に掲載してどうということではございませんけれども、公表と申しますか、周知していただく機会はございますものの、そういうもののあり方、そうしてまた、そのユーザーの気持ちを、言ってみれば自分の掛金の積み立てを会計間の資金調整でお借りして使ったわけでございますから、そうしたことに対しては、少なくとも私は今おっしゃったような気持ちを、借りた経験者である私自身も持っていなければならぬ課題だという問題意識は持っております。
  77. 薮仲義彦

    薮仲委員 どうかその問題意識を持って対処していただきたい、このことをお願いして次の問題に移ります。  厚生省、お見えだと思いますが、簡単にお伺いしたいことがございます。交通事故による傷害というのは、いかなる傷害であろうとも、社会保険で、診療、いわゆる治療を受けられる、この認識が正しいかどうか。  それから、私は医療というものは患者にとって必要にして十分な治療を適正な治療費で受けることができる、これが厚生省の基本的なスタンスだろうと思いますが、この点、間違いだったら間違い、よければいいと答えてください。
  78. 幸田正孝

    ○幸田政府委員 社会保険の被保険者なり被扶養者が通常の手続、すなわち被保険者証を提示をいたしまして、医療機関に、かかりました場合には、労働災害の場合を除きまして、その事故が交通事故であれ、それ以外の事故であれ、すべて保険の取扱いになることになっております。  それから、保険診療で行いますものは、必要にして適切な診療ということが現在の療養担当規則に決められております。
  79. 薮仲義彦

    薮仲委員 それを前提にして何点かお伺いいたしますけれども、これは何かといいますと、自賠責の料率変更でも、審議会の答申の問題点に、いつも、四十四年、四十八年、五十三年、五十九年の各答申の中にすべて出てくるのは、医療費の適正化に対して云々というところがすべて出てくるわけでございます。これは問題点として、いわゆる交通事故というものは保険じゃできません、自由診療ですよ、こういう言われ方が一般世間にある点でございます。これはやはり関係省庁でこの問題については解決をしていただきたい。自由診療で治療を受けようと保険診療で診療を受けようと、患者にとっては医療行為は変わってもらいたくはない。やはり患者の生命を、またけがを治療するために、適切な治療が行われてほしいと思うわけでございます。  もう時間がありませんから、問題点を指摘いたしますと、このいわゆる七十九回の自動車損害賠償責任保険審議会の資料として出ておるものにこういう点がございます。この点について二つ申し上げますから、各省の御意見をちょっとお伺いしたいと思います。  第一点は、この開設者別の自由診療料金平均単価。これはどういうことかといいますと、健康保険を一とした場合の比率が出ております。いわゆる健康保険を一とした場合に、国立の病院にかかると自由診療が一・一六倍ですよ、私的な診療所にかかりますと二・二六倍、いわゆる個人病院にかかりますと自由診療の治療が倍になりますよ、こういう点がここに指摘されておりますけれども、これに関して一番専門の厚生省、どうお考えになりますか。
  80. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 お話の中ございましたように、自由診療は実勢として差がございます。いろいろな理由があるんだと思いますが、正確にはちょっとわからないのでございますけれども、お話のような趣旨に基づきまして、いろいろな統計を整備をいたしまして、大蔵省において診療報酬の基準案の策定に着手されておると聞いておるところでございまして、私どもといたしましてもその方向が望ましいと思っておるものでございます。
  81. 薮仲義彦

    薮仲委員 これは大蔵省に、じゃ今のことを、同じことを聞きますが、もう一つ聞きます。逆に今度、開設者別自由診療及び社会保険診療の取扱件数というのが、五十三年から五十七年までここに表に出ております。これでいきますと、今のとは全然逆の話が出てまいります。五十三年、自由診療が一件当たり二十万四千円、社会保険診療が三十一万一千円、五十七年も自由診療が二十万八千円、社会保険診療が四十二万円。これでいきますと今とは全然逆で、保険の方が一件当たりの治療費が高いですよという数字が出ておるわけです。  これは大蔵省さん、さきの自由診療ですと国立て一・一六倍、私立へかかると倍に、なりますという問題どこれとの関係はどう解析なさっていらっしゃいますか。
  82. 加茂文治

    ○加茂政府委員 自賠責の診療につきましては、これは健保あるいは自由診療、どちらでも選択できるということになっておりますが、医師会あるいは医療機関側から見ますと、この自賠責あるいは交通事故に関する治療は、緊急を要し、かつ特殊であるということで、社会保険診療になじまないという考え方が強くあるわけでございます。その結果、自由診療の割合が非常に高いわけでございます。  この自由診療にかかります費用につきましては、今申しましたような診療の緊急性あるいは診療機関の無限定性あるいは税制上の優遇措置がないというような理由から、健保の二倍強になっておるわけでございます。今度の審議会の答申に基づきまして、私どもは自賠責に関します診療報酬基準を、医師会と協力しながら作成してまいりたいと思っておるわけでございます。  次の御質問でございますが、確かに先生御指摘のように、社会保険の利用率は国や公的な病院ほど高くなっておりますが、これらの病院では、比較的重症患者を取り扱っているなどの理由で、入院率あるいは治療期間とも長くなっておるので、総診療費が平均より高くなっておるのではないかと考えられます。  診療費の内容を検討いたします場合には、受傷の部位、態様、程度別に分類して検討する必要があると考えられますので、現在自算会におきまして、これらをコード化しました自賠責の簡易傷害度表として、コードによる統計を集積しておりまして、この統計に基づきまして医療費調査の基準とすることを考えておるわけでございます。
  83. 薮仲義彦

    薮仲委員 時間が参りましたので、最後に大蔵大臣にお伺いいたしたいと思いますが、今申し上げましたように、例えば今日本医師会の方で、緊急性を要する高度の医療であるから、自動車の事故は保険になじまないという答えが返っています。しかし、スポーツの場合で、例えばスキーなんかも、立ち木に激突すれば交通事故と同じぐらいの傷害を得て、即死のケースもあるわけです。これは病気、病状によって保険になじむ、なじまないということではなくて、今申し上げたのは何かというと、病気によって自賠責の百二十万の範囲内で治療ができないなと思うと保険へ行ってしまうのです。ですから先ほどの資料のように、社会保険の方が高いです、自由診療は安いですよ。軽いものは自由診療でやりましょう。ところが今度、先ほどの国立と私立のいわゆる自由診療のあれを見ますと、個人の病院の方が倍です。国立は一・一六で、個人の診療所は倍になります。自由診療の場合は、それによってある意味ではもうけやすくなっているという表現はよくないわけでございますけれども、この点は保険料率の改定でいつも問題とされるところでございますので、今いろいろ大蔵省も運輸省も厚生省と協議をしていらっしゃるようでございますけれども、この点はやはり、いつ、どこで、だれが、どのような医療機関にかかろうと、あるいは自由診療であろうと保険診療であろうと、適切な医療が受けられることが大事だと思いますので、最後に大臣の御答弁を伺って、私の質問を終わります。
  84. 竹下登

    竹下国務大臣 今まさに御指摘がございましたとおり、昨年の十二月の自賠責保険審議会の答申をちょうだいいたしました。それにもまず一つ、医療費調査担当者の強化、二番目には交通事故医療に関する調査研究の強化、それから三番目が診療報酬基準案の作成等の医療費支払いの適正化対策。これについて、今後努力していかなければならぬ問題であることは申すまでもありません。それから後遺障害の認定につきましてもいろいろな御意見が出まして、認定方法の開発というものが答申をされてきておるわけであります。  この問題は、今も御指摘がございましたように、いわゆる顧問医さんの助言を得ながら、問題のあります医療機関に照会したりして改善依頼を行わなければなりませんが、いわゆる日本医師会さんとのいろいろな話し合いと協議というもの、これはもとより必要なことであろうと思いますので、先ほど御指摘になりました趣旨を踏まえまして今後とも熱心に取り組んで、この問題がいつも諮問するたびに意見として出ないような措置をとらなければならぬ。部内でも鋭意検討を進め、そして具体的な努力も続けておるさなかであります。
  85. 薮仲義彦

    薮仲委員 終わります。
  86. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 滝沢幸助君。
  87. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 どうも委員長御苦労さまです。大臣の皆様御苦労さま。  まず、基本的なことでちょっとお尋ねをしたいのでありますが、今回のいわゆる補助金一律節減の措置は、我が国の地方自治の根幹を揺さぶる問題であると私は思うのであります。ちょっと拝見しましても、高率補助率の引き下げによるものは、政令によるもの等も含めて五千四百八十八億と言われております。また、一般財源化に移りますのが四百二十八億、また行革関連というようなものは、政令措置のものを含めまして三千五百六十八億ということでございますが、実際問題としましては五千八百億ぐらいがいわゆる削減の対象になるであろう。その中で一千億ぐらいを地方交付金等にゆだねるということになりまして、その差額の四千八百億ぐらいを建設地方債等に回すというのでありまするけれども、私はこれは歴史的な改革と言わなければならぬと思うのであります。  ところで、今、中曽根内閣の大臣さんをちょっと拝見しますと、竹下先生は元県会議員を二期かお務めと承っております。山下運輸大臣は県会の議長をお務めと聞いております。また、村田通産大臣さんは愛知県で部長様ですか、お務めだと承っております。このように、地方自治に極めて経験の豊かな閣僚がたくさんお見えなのに、どうしてこのように地方をいじめる措置が出てきたものか、大変私は疑問に思うのであります。各大臣に承るのも煩瑣でありますから、大蔵大臣、どのようなことですか。
  88. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに私も地方議会の経験を持っております。ただ、当時と違いますのは、当時はまだ平衡交付金制度というもの、先生もその時代のお方だと、大体年配も一緒でございますし、いささか古くなりにけりという感じもいたしますが、平衡交付金制度でありまして、地方自治体の財政とまた国の財政というのも大変な開きがあった時代であります。その後、車の両輪として、両方の財政というものがそれなりに稼働してまいりました。六十年度の地方財政計画をマクロで見ますと、確かに今度の措置がなかったとすれば収支とんとんというようなところまで来ておるというのは、地方議会出身者としてはささやかながらもうれしいことではなかろうかと思います。  ここのところまではいいことでございますが、さてそうなった場合に今度どうするかということになりますと、あらゆる制度、施策の根源にさかのぼって、費用負担のあり方というものにメスを入れざるを得ない。これは私に課せられた仕事としては大変苦しいことであります。そこで、地方負担のあり方というものから、再度にわたりますところの答申等をにらみまして、結果として今度の一括法によりまして、なかんずく高率補助等に着目をしながら今回の措置をとらしていただいた。決していい気持ちでとったわけではございません。地方自治の原点はまだ頭の一隅にでも残しておかなければならぬという気持ちは持ち続けておるところでございます。山下さんや村田さんは私より長い地方自治の経験者でございますので、私以上にそういうような気持ちをお持ちではなかろうかと拝察いたしております。
  89. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 いろいろとおっしゃっていただきましたけれども、基本的な議論となりましょうが、私は補助金制度というものは、地方自治体が自主的に行政の方針を打ち出していくけれども、力が足らぬものだからこれを中央が助けるという趣旨のものでなければならぬと思うのでありまするけれども、現実を見ますと、おびただしい数の法律や政令でがんじがらめにこれを縛りつけまして、さらに強い中央の権力、ちょっと言葉がなにでありますが、官僚の機構によって統御していくわけです。まさにこれは主客転倒してきたのであります。しかしそこに、基本的な発想の転換というようなことで今ありましたけれども、基本的な発想転換にはまだ行ってないのにこのようなことをすれば、地方自治は破綻する、私はこのように見ているわけです。  大体中央の政府と地方自治体の力関係というものは、先ほど申し上げました法律制度、組織の上だけではなくて、そもそも財政力に問題があるわけであります。御存じのように、地方税は三二・四%しか徴収する力を持っていない。それに対しまして中央からの交付金は一七・六%、何といっても半分くらいはみずから生まなくてはならぬ苦労を持っているわけであります。ここまで問題が来るならば、いわば政治の恥部とも言われるべき陳情政治の実体にまで深く立ち入っていかなければ、中央政府が許認可権を持っている、そして補助金の財布のひもを持っていることによりまして、ちょっとなにでありますけれども、与党の皆さんの選挙運動絡みの官僚支配ということに、現実になっているわけであります。  そこで私は、税制の面でも大幅なる基本的改革を行って、地方税に非常に重いウエートを置いて、それは西欧諸国等にもあることでありますけれども、徴税の主役は地方自治体である、そして、むしろ中央政府は財政規模をぐっとおろしまして、そして郵便、鉄道、いわゆる最高裁等の裁判、外交、防衛、教育の基本にかかわることという程度のものを残しまして、あとは大幅に、大胆に地方自治体にゆだねるべきではないのか。そして先ほど申し上げましたとおり、財政力も地方に移していく。ここまで行かなくては、私は今回の改革の根源にさかのぼるものにはならぬと思うのでございます。  もちろんこれは国会自体の問題でもありましょうけれども、ことしの予算が通っているわけです。後でこの法律のことで今やっているわけだけれども、むしろこれは逆じゃないのか。法律を先につくって、それに基づいての予算が編成されるべきだと私は思うのであります。ここら辺は議論のあるところでありますが、政府のおやりになることを見ておりますと、議会の途中で、提案の前日くらいまで各省庁間ないしは与党さんと政府さんという間の調整等に手間取っていらっしゃるんだけれども、これでは出たとこ勝負の政治になるのではないかというわけで、よって立つべき法律の方は一年くらい早くから立法しておいて、それに基づいて予算が後から編まれてくるのが本当じゃないか。  長期にわたりまして、自民党さん、政権をお持ちなのだけれども、いわば猫の目行政の中で長期の見通しができぬという苦労がここに見えるのじゃないか、こう思うのです。特に省庁間の連絡調整ができずに、例えば去年の例の著作権法に見られる文部省と通産省の協議のごとく、結局は提案に至らぬということは、私は大変な問題だと思うのです。今のは一つの例でありますからお答えは要りませんけれども、大蔵大臣、ここら辺の基本的なお話はどうでしょうか。
  90. 竹下登

    竹下国務大臣 本来、地方自治体というものの自主性、自律性の尊重ということになりますと、国の行う業務は外交、防衛、教育でもどちらかと言えば根幹、大学教育とでも申しましょうか、そういうことであって、それぞれ地方の自主性においてもろもろのことはなされていく。その経過の中で、いわゆる新憲法後変わってきたのは、社会保障の責任が国、こういうような変化を遂げて今日に至っておると思うわけであります。  それで問題は、税源を求めた場合に、先生の福島と私の島根とは税源そのもの、税の取れる源が大変少ないわけでございますので、そこでどうしてもそれの調整機能としての国からの交付税というようなものが存在し、一方、補助金の問題につきましては奨励的補助、そして負担するものと、両方が存在して今日の国と地方との車の両輪が動いておる。ただ、その中でもより地方の自主性を尊重するような形で、権限移譲でございますとか、そういうことは行革の精神にのっとって今後ともやらなきゃならぬ課題だと思います。  二番目の、法律の出し方の問題は、ちょうど一つ考えられますのは、五十六年に行革特例法によりましてもろもろの措置をしまして、それが臨時国会において行われ、五十七年の予算編成の土台になったわけでございます。これは一つの国会のあり方だなというふうに当時も考えられましたが、そうなった場合、いわば通年国会みたいな形になるのではないかという議論もございました。  そこで今日、現実に対処することとしてはどうしておるか。例えば六十一年度以降に施行されるものについても、今国会でお願いしようという法律もあるにはございますが、おおむねのところ予算編成をいたしまして、それの使い方を決める予算関連法案というものは、今御指摘なさいましたように、予算書の後追いで出かけていくわけであります。その後追いで、予算審議が終わってなお使い方の法律が出ていないというのはおかしいからというので、予算関連法案は大体二月の第三金曜日ぐらいがいつでもタイムリミット。こうして内閣で、私どもも内閣におりますところから、各省にハッパをかけてそれにそろえておる。しかし幾らか評価――評価してくださいというのは、私の方から言い出すのはおかしいのでありますが、今度の法律はまさに予算の執行にかかわる法律だからというので、予算書と同時に提出した、これは精いっぱいの努力でありました。審議が今日に至っておるというのは、これは国会のお決めになることでございますから、それに、けしかるとか、けしからぬとか、そういう論評をするほど私も愚か者ではないというふうに思っております。しかし、それだけの努力をしたということは御理解を賜りたいと思います。  さらに、たまたま具体例としては著作権法ということでお出しになりましたが、いわゆる各省間調整、予算の調整権限は私どもに調整権というのはございますが、行政全体の調整というものは、やはり内閣がその責任を負うわけでございます。予算関係では、公共事業等に関する調整費というものが国土庁にございましたり、企画庁にもそれに類するものがあったり、あるいはまた科学技術庁に、各省にまたがる研究調整費があったりというようなことで調整をいたしますが、地方から出かけた私もかつて感じたことでございますけれども、各省間の連絡調整というものが、最も受ける地方なり住民個々にとっては一番こいねがわしいことだ、それに意を用いて当たっていかなければならないという考え方は、私と先生と同じだろうと思っております。
  91. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 時間の割り振りでちょっと苦労しておりますので、簡単にお伺いします。  会計検査院さんお見えだと思うのですけれども、いろいろと御苦労されて指摘していただきまして、そのたびに新聞がにぎわうわけであります。税金のむだ遣いは百七十一億円だと書いてございます。五十八年度の報告でございます。あるいはまた不適正な経理をしているものが百八十二件あると言われております。  一々の例を挙げませんけれども、そのようなことで検査院の御苦労があるわけだけれども、ただ、私はここでひとつお伺いしたいのは、これらの指摘を拝見しますると、ややもすれば瑣末的な事務的な面に力点が置かれまして、大所高所に立ちましたところの立法の精神、行政の目的というようなものがやや忘れられているのではないか。例えば、この地方に、この場所に、これだけのものが必要だろうか、これだけの予算が必要かということについては、余り触れられていないように思うわけであります。     〔熊川委員長代理退席、越智委員長着席〕  そのむだ遣いの最たるものはあの青函トンネルと言われているわけでありますけれども、しかし、小さいものでも、そのようにつくってはみたけれども、後がさっぱり役に立たぬというようなものもあるわけであります。そして、これだけの立派な建物が必要なのかと思うほどの建物が最近建つわけです。そういう点についての指摘をもう少しやっていただいた方がいいのではないか。そしてまた、いろいろと不正や適正を欠くものが出ておりますが、それが後を絶たないのは、どういうところに問題の根があるというふうに見ていらっしゃるかというふうな点、お伺いさせていただきます。
  92. 門田浩

    ○門田会計検査院説明員 お答え申し上げます。  会計検査院といたしましては、憲法第九十条の規定に基づきまして、国の決算についての検査を行いますほか、各種の検査を行っているわけでございます。したがいまして、決算の基礎となっております個々の収入、支出が適法、妥当に行われているかどうかという検討をなおざりにするわけにはまいらないのでございます。  しかしながら、私どもといたしましても、それで事足れりとしているわけではございません。発見しました不適切な事態の再発防止対策の考究でございますとか、さらには事業費の執行結果が有効に機能しているかとか、こういった観点からの検討にも努力を払っておりまして、このような面からも、それなりの指摘や問題提起はしてまいっている次第ではございます。  しかしながら、今後このような面での検討につきましては、ただいま先生から御指摘のございましたような御趣旨を念頭に置きまして、ますます力を注いでまいらなければならない、かように考えている次第でございます。
  93. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 各省庁にわたりまして、私は補助金の使われ方について問題を提起していきたいと思いますが、時間があれですから代表的なものだけに触れまするけれども、これは各省庁共通のことであります。  とにかく補助金というものは、もらうためには膨大な書類を持っていかなければならないものだ、トラックにつけるほどの書類を持っていって、本当にスズメの涙はどの補助金をもらうというように言われているわけであります。例を挙げれば切りがありません。厚生省には焼却処分場の設置なんというものもある。本当に小さななにをもらうために、膨大な書類と人員と、そして大変な時間を費やすと言われているわけであります。例は簡単にして、並べませんけれども、そういうことをひとつ基本的にどうなのか。  そしてもう一つ言われておりますのは、申請しましてその報告書を出したり、そして許可をもらうためには十回も東京に来なくてはならないと言われているわけです。一つの事業について十回も上京して、その説明をしたりしなくてはならぬということはどういうことなのか。こういうことをもっと簡素化しなければ、行政改革の実を上げることはできないのではないか、こう言われているわけであります。  もう一つ一緒にお尋ねさせていただきますが、費目別、品目別、課程別、系統別そして箇所別、こういうふうに申請書をつくらせるのだけれども、これをそうではなくて、補助金というものは自治体に対しての総枠を割り当てる、詳しいことは自治体に任せるというぐあいにいかないものかと思うのであります。  そして、各省庁にわたることを一緒に申し上げさせていただきますが、補助金の類に問題がなく、本当に小さな補助金でも同じ数の書類が必要だ。例えば建設費が二億五千万円というようなものに対しまして、わずかに七百七十万円しか補助金をもらわない。ところがこれに対して人件費が五十万円もかかる、旅費が五十万円もかかっているというような例もあるというのでありますが、こういうのは全く愚かと言わなければなりません。  そして文部省なんかを見ましても、就学援助費の中の医療費補助、こういうものについて五万円もらうのに五万円以上の事務費や旅費がかかるというようなことは、これはどうなんだ、こういうことを言われているわけです。  ここら辺で一つ区切りまして、挙げたのは一つの例でございますから、どなたがお答えになっても、これはいわゆる国の補助金に対する地方自治体の締めつけの例を申し上げているわけであります。
  94. 竹下登

    竹下国務大臣 まず、会計検査院にお尋ねになりました不適正経理問題、私いつも思いますのは、同じような指摘を二年続けて受ける、これが私ども一番頭の痛いところでございます。それに対しましては、まさに執行に当たる者のモラルの欠如というものもございますでしょう。そういう点について、これからまさに指導を適切にしてまいらなければならぬ課題だというふうに思います。  それから、今の補助金全体についてのお感じでございますが、今の滝沢先生の議論を進めていきますと、一つは、可能な限り地方自治体に財源が移って一般財源化というふうになれば、あるいは個々の補助金でなく、一番いいかなとも考えるのでございますが、事実、それぞれの奨励的意味を持つ補助金について、一括してやるというよりも、本来は一般財源化して、地方自治そのものが、そのような奨励的なものについてはその責任でおやりになるようなふうに逐次していかなければならぬ課題だというふうに思います。  それから、よく言われますのが、出先と一々協議をしなければならぬじゃないか。私の方で言えば、財務部へ起債の問題等、また財務局へ行って東京へ行かなければいかぬじゃないか、こういうような問題もございますが、それらについても、その地方からの苦情――苦情というよりも御意見を聞きながら、可能な限り合理化に努めていく。いわゆる補助基準等についての認定、そして交付手続、両面にわたりましての簡素化は、今補助金適正何とかいう会議でございましたかで、本腰を入れてやろうということで対応しておることは事実でございますが、地方の声として、今滝沢さん御指摘になりましたようなことが今日もあるということは、我々も十分承知しております。
  95. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 今のことについて、実は自治大臣という立場ではどのようにお考えなんでしょう。
  96. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 滝沢先生のお話でございますが、私は、地方自治の本旨というのは、やはり地域の身近なことは地域の住民が自律的に決定できるような、そういうことを基幹として考えるべきだと思っております。  それで、現在の国の補助金等につきましては、今お話しのとおり、金額の大きいものから小さいものとありまして、私もこの補助金をもらうための随分不必要な労――労といいますか、金銭のむだ遣いもないとは申しません。実は今回の補助率一律カットの問題につきましては、私どもの当初の考え方は、補助金というものを事務分担あるいは費用の分担ということから見て地方の一般財源化していく、地方の需要に定着しておるというものは一般財源化をすることが適切であると考えております。  ただ、御承知のように、今法案が出ております国の関与とか必置規制というようなものによりまして、地方の仕事は少しは簡素化される、合理化されると思うのでございます。一番大きいのは、今臨時行政調査会といいますか行革審で審議されて、六月ごろ答申が出ると言われる機関委任事務とか、そういう問題を地方にどういうふうに移譲するか、そのときにどういう財源を充てるかということによりまして、地方の自律性あるいはそういう点が確保されるかどうか、これが当面の一番大きい問題の一つであるかと私は考えておるわけでございます。  要するに私の申し上げたいことは、地方の自律性を尊重して、この補助金等につきましても、私どもは一律カットは、当初は国のやむを得ない財政状況で、一律カットはやりたくなかったけれども、やむを得ず一年間を限り、その差額、補てんすべきものを国で考えてもらえるということで了解したわけでありますが、本当の腹は、やはり補助金整理合理化は事務の分担、負担というようなことから考えてやるべきである、それは先生と私も同じような考え方でございます。
  97. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 地方自治体の立場を理解する、守るという意味で、自治大臣、もっと頑張っていただかなければ、地方自治体は大臣を頼りにしておるのですから。  そこで、建設省からもお見えだと思います。先ほども抽象的に申し上げましたけれども、小さい一々の仕事について、箇所づけまで中央政府で支配するのではなくて、大きく、どこどこの町の、ないしは府県の建設費に対する大枠の補助金はこれだけということに決めていった方がいい。そして、いやしくも補助金、同じことのために十回も二十回も東京に来なくたっていいような道を講じよ、こういうのでありますけれども、これはどうでありますか。  つけ加えまして、一つ補助金の決定をいただくのが非常に遅いと言っておるわけですよ。特にもう新年になってから箇所づけをちょうだいしたなんというのは困るわけです。特に私のように雪国で苦労している立場からいいますと、これは本当に急いでいただかなければ執行残になって残る、また返すには返すえらい手続が必要だ、こういうことになっているのだけれども、これはいかがですか。
  98. 豊蔵一

    ○豊蔵政府委員 お答え申し上げます。  第一点の補助金の一括化ということでございますが、御案内のように、私どもが預かっております補助金につきましては、国民からちょうだいいたしました税金によりまして賄われていることにかんがみまして、公正かつ的確にこれを実施する必要があるかと存じております。そういうような観点から見ますと、一括化ということになりますと、補助目的の的確な達成が困難となるおそれがある。あるいはまた使い方等につきましても総花になるおそれがあるのではなかろうかといったようなことが考えられますので、今後ともそれにつきましてはなお慎重な検討が必要であろうかと考えております。  それからまた、公共団体に対します補助金の交付でございますが、私どももなるべく早期に事業の実施ができますように、予算が成立いたしましたならば一般的には速やかにその補助額の内示を行いますとともに、その後の審査あるいは交付決定等の事務手続につきましても極力促進に努めております。特に早期発注の必要があります積雪寒冷地帯におきましては、事前に工法協議をするとか審査を優先的に先にさせていただく、そんなようなことをやりまして、早期に交付決定が行えるように努力をいたしているところでございます。
  99. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 これはなかなか大変な話ではありますけれども、補助金の申請についてのことをきょう申し上げているんだけれども、そのほかのことでもこれは同様でございます。とにかく町村にとっては県の出先機関があります。そして県があります。そして例えば農政局とか、そのような国の出先機関がある。それに対して今度は国の中央政府がある。そういうことで、「一山越えれば次の山」という言葉がありますけれども、これがいわゆる陳情政治の実態でございます。  しからば、それをバイパスして真っすぐ東京へ来たらどうかとなれば、私たち東北でございますと、仙台の局長さんにえらいおしかりを受けて、その補助金はだめになる、こういうことでございまして、これをひとつ簡素化して、二階座敷を一つなくしたらどうか。これは行革の大変大きな議論の目玉であります。これはだれにお答えいただいたらいいものか知りませんけれども、具体的には、農政局なんというのも一つの課題でございますが、この点はいかがですか。
  100. 吉國隆

    吉國政府委員 農業は、御案内のように全国各地域で非常に自然的条件も異なっておりますし、また、営農のタイプも違っておるという実情があるわけでございます。そういった状況の中で、地域ごとの実態に即しまして各種の施策を有効に進めるという観点から地方農政局を設けまして、可能な限り地方農政局に権限を移譲しつつ効率的な農政を進めてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  101. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 全然答えになっておりません。今のは、どうして農政局ができたかということを聞いているんじゃないのです。これはだめですな。  そこで、将来の総理大臣に聞いておけば一番安心だと思うので、大蔵大臣、今いろいろと言っても、とにかく出先機関が多過ぎるのですよ。仮に福島県ですと、仙台に行って、そして今度はまた東京に行かなくてはならない。仙台に行かなければ仙台の御機嫌が悪いということですから、そこら辺のところは勇気を持って行政改革の実を上げるということは、今の職掌にかかわらず、政治の基本的な課題としてお考えいただけますか。
  102. 竹下登

    竹下国務大臣 中曽根行革でいわゆる地方支分部局の統廃合、これが一つございます。例を我が省にとりますならば、いわゆる財務部の中で可能な限り事務分量を縮小いたしまして、財務局なり本省直通なりに移していく。これらの問題は、各省におかれてもそういう方向で詰まって、いわゆる支分部局の問題に対処したわけでございますので、ただこれで終わったというものではなく、これからもその問題については絶えず検討を続けていかなければならない問題だという考え方であります。
  103. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 中曽根行革で足らざる点は竹下行革に期待するほかはありません。  そこで、これはちょっと嫌な話なんだけれども、補助金をもらうと、一つは特定の業者や特定の協会等にこの仕事を委託しろというような圧力がかかってくる、こう言っているわけです。これは農林省にもあるし、建設省にもございます。こういうことは大変困ることでございますが、現実にあるわけです。これが一つ。  そしてもう一つは、「タデ食う虫も好き好き」と言いますけれども、補助金を食う虫もあるわけで、補助金をもらいますと、その何%という割り当てで上納金を取られる。これは地方自治体にとっては大変痛いことなんだけれども、断るわけにはいかぬという団体が随分とございます。例えば財団法人日本土地区画整理協会、こういうのも、入会金から会費から取られているパーセンテージがきちんとしている。また公民館の連絡協議会、あるいはこれは県だから知らぬと言われればそれまででありますが、数限りありませんけれども、例えば農村総合整備事業促進協議会というようなものが何か補助金の一%を取っているのですね。そういうようなことではいけないのでありまするけれども、各省庁にわたることでありまするが、この点はきちんと思想統一をしていただけませんか。  そしてしかも、それらの協会等に、いわゆるやめ検という言葉がありますけれども、やめ役、役人のOBが天下っているとすればこれは大変なことではありませんか。どうかひとつタデ食う虫でなくお願いをしたい、こういうことです。どなたがお答えいただいても結構です。
  104. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 お答えいたします。  先生のそういう御指摘がございましたので、私どもの所管のところにつきまして調査をしてみたわけでございますけれども、強制的に特定の団体に仕事をさせるというようなことは、私どもやってないわけでございます。  また、上納金の問題でございますけれども、各種の団体がそれぞれ団体の目的に従いましていろいろな活動をやっておりまして、その目的の範囲内におきまして会員の方から負担金を徴収するというのはございますけれども、事実上強制的に一定の金を召し上げる、こういう実態はないものと考えております。
  105. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 それは本当に知らないならば不勉強も甚だしいということだし、そしてそれは任意にやっているような話なんだけれども、どこどこの協会に設計をやらしてくれ、どこどこの業者にこれを請け負わさしてくれと言われたものは、正規なことではありません。それは確かに、オーケー、よろしゅうございますと言った方に責任があるのです。しかし、それは断れないのですよ。断れないのです。そこら辺のところ一つ問題点があるわけですから、それはきちんとなしにしていただかなくては困る。  もう一つ、これも聞いてたまげるような話なんだけれども、要らない補助金ももらわなければならない、こういうこともあるそうですよ。そしてもう一つは、抱き合わせに補助金が出てくる。こちらは、実際欲しい方をもらうためには、要らない方も抱き合わせにもらわなくてはならぬというようなものもあるというんです。こういうのを一一聞くのも煩瑣なことでありまするけれども、大蔵大臣、こういう実態を大臣はよく御存じだと思うのですけれども、これはいかがいたしたらいいものでしょうか。
  106. 竹下登

    竹下国務大臣 要らない補助金を強制的にというのは、私もちょっと、私の頭の中で整理してみましても、具体例がなかなかつかめないわけでございますが、普通の店屋でありますならば、これづけて買ってくれということもあるかもしれませんが、今補助金を厳しく査定しておるさなかでございますので、そういう事例があるとすれば、恐らくその所管省も、また調整権限のある大蔵省も、そうした補助金こそ一番先にメスを入れるべき性格のものであろうというふうに考えております。  いずれにしても、国民の皆さん方からちょうだいした税金でございますから、その奨励的意味が本当に生きるような形で補助金というものの交付決定等はすべきものであるし、そのもとにさかのぼる補助金自体のあり方についても、峻厳な態度で臨まなければならないものであるという基本認識は持っております。
  107. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 その議論を繰り返しますと時間がなくなりますからやめますが、これちょっと変わった話ですけれども、実は私、かねがね不思議に思っていることがあるんです。話の出だしが文部大臣みたいな感じだから、文部大臣で結構ですけれども、佐々木信綱という歌人の歌で、「ゆく秋の大和の国の薬師寺の塔のうへなる一ひらの雲」というのがあるんです。これは「の」という字を一番いっぱい使った歌なんだそうでございまして、「の」を使えば滑りがよくなる、しかし重点がぼけて難しいというようなことであります。短歌の講義でありませんからこの程度にしまするけれども、「塔のうへなる」というのですから、薬師寺の塔というのはどういうものかと思ってちょっと見ましたら、これは一千数百年前に建っているわけですよ。これは六八〇年に建てたというのですね。それで今は東塔のみが残っておる。その塔の上の雲でしょうけれどもね。あとまた、法隆寺なんというのは六〇七年にできた。法華寺なんというのは六八五年にできた。こういうことです。これがみんな、三重塔、五重塔、七重塔というようなのがきちんと今残っていて、文部省はこれは国宝だということで大変大事にするんでしょう。  そのころ東大を出た人はいなかったが、今東大の工学部を出た一級建築士様が設計して、そして一流企業が現代工学の粋を集めて建築なさっても、これは五年、十年、三十年、四十年といろいろあるんだろうけれども、木造ですと大体二十年くらいでチョンですわな。これはどういうことなんだか。私はこのことをひとつ聞いてみたいと思うのです。これは政府の方で何か、壊れてまた新しく建てた方が業界の刺激、救済にもなるというような発想でこういうことなんですかな。どうですかな。文部大臣、どうです。こういうとありますか。
  108. 松永光

    ○松永国務大臣 一般的に申し上げまして、昔の建物、昔の建造物は非常にもちがよろしいようであります。建設技術、建築技術が今よりもすぐれておったとは思えないのに、昔の建造物や建築物は非常に長もちする。材料がいいということもあるかもしれませんが、あるいはつくる人が本当に誠意を持ってつくったのかもしれませんが、いずれにせよ、昔の人がつくったものが長もちするのには感心するくらいであります。  私は、早くつくって早く壊れてしまうというのは、これは何とかの銭失いというわけであって、一番不経済なことだ、建築するときにはある程度高いものであっても、それが長もちするならば、そっちの方が国民の税金の使い方としては望ましいことであるというふうに思っております。  学校建築物につきましては、実は安全性が子供のために必要なんでありまして、文部省としては、学校施設設計指針等において、学校の設置者に対して、そういう点に十分留意するよう指導けいたしておるところでございますが、「安物買いの銭失い」が一番いけないことだという考え方で、今後とも努力をしていきたいと考えておるわけでございます。
  109. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 まあ千年と二十年を比べたからちょっと話があれですけれども、それほどでなくでも、これは一つ問題点です。今、見た目はいいけれども、骨がしっかりしない、現代の青年像と同じような時代相の影響かもしれません。もしも政府が、壊れるようにつくれ、二十年後にまた業者が請け負った方が経済刺激にいいからというねらいとするならば、私は時代相の影響というものかと文部大臣にお伺いしてみたんだけれども、これはまた後でもう一回勉強させていただきましょう。  ところで、多目的複合施設、これは難しい言葉ですが、つまり、仮に「働く婦人の家」というのがあると、それぞれ建てるのは大変だから、これに抱き合わせに勤労青少年ホームというものをつくるということです。ところが、これをつくっていく場合、事務室は別に二つつくれ、そして談話室も別につくれ、こう言われる。全部これから並べるのは時間が何でありますが、館長さんみたいなものも二人置け、トイレも別々につくれ、入り口も別につくれみたいなことが行われているわけです。数えればこれは切り張りありません。とにかく、トラックで運ぶと言ったらちょっとうそですけれども、かばんに入らぬほどいっぱいその資料はあるわけです。公民館と児童館、これは図書室も便所もそれぞれつくれ、婦人の家と青年の家、これは入り口を別々にしろ、これ切り張りなくあるんですよ。読む方も大変です。児童館と老人福祉センター、これは図書室をそれぞれつくれ。社会福祉施設の複合なんというような面におきましても、事務室はそれぞれ持て、養護老人ホームと精薄者授産施設、これは栄養士をそれぞれ置け、保育園と児童センター、それは玄関を別々につくれ。これもまた文部省、厚生省労働省に関係しまするけれども、公民館、保健センター、勤労青年ホーム、それぞれに料理室を別々につくって別のメニューを出せ、こういうことになっているんですよ。これは数えれば切り張りありません。後でそのためにまた一時間、時間もらわなくてはなりません。公民館と図書館、館長は別々に、専任の者がおれ、そして別々の部屋に入るために館長室をそれぞれつくれ、公民館と商工振興館を一緒にしたら出入り口を別々にしろ、文化会館と公民館、事務室をそれぞれつくれというようなことだというわけですよ。  そこで、各省庁みんな来てもらうのも大変なのでございますが、今申し上げた例を見ても、労働省さん、厚生省さん、農水省さん、いろいろあるわけだけれども、こういうようなことはいかがなものですかな。どなたからでも結構です。
  110. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる類似施設補助金、総合補助金、この類似施設補助金というのは、一番これがやかましく言われましたのが五十四、五年当時であったと思うわけであります。今、滝沢さん御指摘になりました以上に、今度は別の建物だから、通路があってはいけない、会計検査院が来たらその通路はすぐとれというような話も当時伺いました。  そこで、おのおのの補助金の持ちますところの基幹部分を除いて共有可能となる事務室、階段、玄関等は共有を可能とすべく、交付要綱、施設運営基準の改定、これが五十六年以後の予算執行面において行われてきたわけであります。だから、今後ともこの趣旨を踏まえてこのことは推進してまいらなければならぬ。いわゆる箱物の予算というのは、私どもも田舎でございますから、たくさんそういう複合施設がございますが、メニュー化いたしましたり、統合メニュー化というようなことをさらに積極的に今日予算面でもこれは推進さしていただいておる。五十六年の予算執行面のときからやっぱり一つの契機となって、今のような批判が出ない形で推進をしておる。センターだ、ホームだ、家だ、いっぱい名前がございまして、そういう事態が批判されたことは事実でありますので、今後も五十六年以降の方針というもので一層検討、精査をしていくべきものだ、こういうふうに考えます。
  111. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 ほかにありませんか。
  112. 松永光

    ○松永国務大臣 先生の御指摘の中に、文部省所管の社会教育施設等についてのものが多うございましたので、私の方からお答えをする面につきましてはお答えいたしますが、先生御指摘のとおり、公民館等社会教育施設につきましては、文部省としては、税金を合理的に使っていくという立場から、いわゆる複合化につきましては弾力的に対応してきたところでありますが、昭和五十六年度がらは補助要綱を改正するなどして、一層積極的に対応してきております。  複合施設をつくった場合に、先ほど玄関は別々云々という話でございますが、その点につきましては、入り口とか事務室とか、そういった共用を認めることの方が合理的で、認めないのが不合理という分野につきましては、できるだけ共用するよう、文部省としては指導いたしております。  それから、施設の利用を他に認めるかどうかという問題もございますが、これにつきましては、本来の利用に支障がない範囲内で目的外利用を認めることを含めて、設置目的に留意しつつ、設置者が自主的に判断して、できるだけ幅広い利用を認めさせて、利用効率を高めるよう文部省は指導いたしております。  それから、人員のことでございますが、法令上特段の定めがある場合、これは今先生の御指摘になった国庫補助に係る図書館の館長さん、これが専任というのは法律になっているものですから、そういった場合を除きまして、兼任が可能な業務については、実情に応じて合理的な人員配置が図られることが望ましいと考えまして、そうするように指導しているところでございます。なお一層そういう面では合理的にするよう努力してまいります。
  113. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 厚生省さん、労働省さん、お呼びしましたけれども、同じような答えだと思うのです。  私は、違法なことをやっていると言っているのじゃないのです。それはきっと法律的に合うからそう言っているのでしょう。だけれども、私はそういうことを言っているのじゃないのです。両方が協議して、どちらか片一方に譲ればいいし、それが法律的に、制度的に隘路があるならば、それは打破しようと言っているわけです。法律違反をしていると言っているわけではないのです。  そこで、時間が来ましたから締めくくりまするけれども、大臣の皆さん、国の主権者はだれですか。国民でしょう。まるで小学校の社会科の時間みたいなものだ。税金を納めるのはだれですか。国民でしょう。その税金であるところの国費は、だれのものですか。国民でしょう。つまり、国民は国会を選ぶわけです。国会は総理大臣を選ぶ。その総理大臣のもとに各省庁の各大臣がいらっしゃって、その各省庁の中に局長さん、課長さんがいらっしゃる。それはお仕事をなさる上の便法でそのようになっているわけです。よく質問の通告をしますと、これは何課ですか、何局長が答えますかと言ってくる。私はいつも、それはだれでもいいよ、中曽根さんが答えるのが本当なんだけれども、かわりに皆さんが答えるのだから、だれが答えてもいいと、こう言っているのだけれども、役人の立場に立っての物の考え、役所の仕事の都合上分けたシステムを絶対化してはいけないのです。そのために、主人であるべき国民が不便を受けてはいけないのです。そのことの発想の転換がない限り、これは百日議論をしてもむだというものです。  ですから、大臣に、法律に支障があるならば法律を改正し、制度を改正して、このようなときは一緒に共用できるようにするのが望ましいということで申し上げているわけでありまして、これが行革の基本精神でなくてはならない。主権者はだれなのか、金を出しているのはだれなのか、その人の便利のために施設等をつくるものだ、こういうことをきちんとしていただかなければ、憲法の精神そのものが揺らいでいるわけです。官僚の機構のために、官僚が生活をするために国民が税金を出しているわけじゃないのです。この辺のところをひとつ締めくくって大蔵大臣お答えいただきまして、これから政府はどのような心構えでこれらのことに対処していこうとしているのかを、この補助金制度が大幅に変わるこのときに私はお伺いをしておきたいと思います。
  114. 竹下登

    竹下国務大臣 主権者は国民であります。そのとおりでございます。間々我々も気をつけなければならないことは、その主権者たる国民から選ばれた国会、各級議員は、その意味においては、今度はいわば官僚機構に対しては強い。しかしながら、選ばれた議員は、また国民、いわゆる選挙民に対して弱い。また、ある意味において、官僚機構は選挙民には強い。その辺で一つの調整がとれておるのかなということをも考えながら、やはり本来まずは自分たちがいわゆる主権者たる国民に選ばれておって、その選良であるという意識を持って国政全般に対応すべき問題であると考えます。
  115. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 今、国民の皆さんはいわば中曽根内閣の手による行政改革、そして、その一環として出てきました補助金の一括削減のようなこの変化に対して、大きな不安と期待を持って見ているわけです。今我々が議会といえ、ないしは皆さん行政官庁といえ、立場は違っても、歴史の中で一つの課題に向かって国民から問われているわけです。そのことをひとつしっかりと御認識ちょうだいしまして、従来の発想、従来の制度、従来の法令等の規範からさらに一歩視点を高めたところの判断というものが必要な時代であろうと思うのです。それらの意味で、どうぞひとつ、中曽根内閣はいつまでどうなるか知りませんけれども、国民の生活は永遠に続くわけですから、将来を期待しまして、頑張ってちょうだいしますよう要望しまして、私の質問を終わらしていただきます。  委員長、どうもありがとう。各大臣、御苦労さま。
  116. 越智伊平

    越智委員長 瀬崎博義君。
  117. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 既に正森、蓑輪両大蔵委員初め、我が党同僚議員がこの法案の問題点全般について、また特に社会保障、福祉、教育の部門について質問をされております。私は、まず投資的経費の項について質問をしていきたいと思うのです。そこで、これは必ず建設大臣お答えをいただきたい、最初に断っておきます。  国の高率補助金負担金の補助負担率一律引き下げで、公共事業の国費の節減額は、道路整備で千四十億円、治水四百七十八億円、農業基盤三百二十六億円、下水道二百六十億円等、合計二千五百四十億円に達しているわけですね。  一方、これによる地方自治体の投資的経費の負担増でありますが、カット分によるもの二千億円。細かい計算は省略します。事業量確保分千二百億円、企業会計関係分六百億円、合計三千八百億円も増加することになっていますね。  このような地方自治体への負担転嫁が今後地方財政を圧迫し、住民生活に必要な公共事業の推進をおくらせることにならないと断言できますか。まずこの点を公共事業の主管官庁としての建設大臣に伺います。
  118. 木部佳昭

    ○木部国務大臣 今先生から社会資本について一律一割カットで影響はないか、こういうことでございますが、大蔵大臣からもたびたび御答弁がされておりますように、この法案は御承知のとおり一年限りということに今なっておるわけでございますから、しかも、引き下げに伴う地方自治体の分につきましては元利償還すべてについて自治省が面倒を見る、こういうことでございますから、私どもは支障はない、そういう判断の上に立っております。
  119. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 大臣、今一年限りと言われましたね。それは何を根拠に一年限り――一年たったら必ずもとへ戻る、そういう意味ですね。
  120. 木部佳昭

    ○木部国務大臣 法律が暫定で一年ということになっておりますので、私はそういう点を理解いたしております。
  121. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 補助率の引き下げによる国費の節減分を使って事業量をふやしていますね。それも地方負担財源の裏づけがあって、初めてこれはできることなんですよ。ところが、これは言うまでもなく、六十年度については企業会計分も含めて臨時財政特例債二千六百億円、それから、建設地方債千二百億円で財源を確保しているわけでしょう。これは当面の六十年度の事業遂行に必要な財源について見れば確保されたということは言えるけれども、結局は後年度の地方自治体の財政負担となってきて、その分だけ将来の財源を圧迫する、特別な対策を打たない限りはどうしたってそういうことになるのじゃないか。結局後年度の地方自治体の財源あるいは交付税交付金の先食い、こういうことにならざるを得ないのじゃないですか。
  122. 木部佳昭

    ○木部国務大臣 先ほど申し上げましたように、この全額起債で認められるとか、元利償還金については所要の地方交付税の措置が講ぜられるとかということでございますから、地方財政を圧迫するものではない、そういう考え方であります。
  123. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 その交付税による所要の措置という、そこが問題なんですよ。決められた交付税の枠内であれば、事実上六十年度事業による借金分、その利子分は、これは当然先食いですよね。一般会計から別途交付税に上積みすれば話は別ですよ。  そこで、五十九年十二月二十二日、大蔵、自治両大臣の覚書では、経常経費分二千六百億円については、六十年度に一千億円を交付税総額に特例加算する、これは明記されていますね。六十六年度以降に精算するべき交付税に一千億円加算する方向もまあまあ一応うたってある。私どもはこれはいいというのじゃないですよ。まあしかし、きょうは主として投資的経費分ですから、そっちの方です。  これについては同じ覚書の三項で、五十六年九月十八日付及び五十九年一月十九日付両大臣の覚書の例によるとされているだけで、特例加算についての約束は明確にはされていないわけですね。  そこで、五十六年九月十八日付覚書では、特定地域のかさ上げ補助の引き下げに伴う地方債の元利償還に要する額の二分の一を五十八年度以降の各年度で臨時地方特例交付金として交付税特会に繰り入れるものとする、こうなっていたのだけれども、ところが今回の二千億円の臨時財政特例債の元利償還に要する経費の二分の一相当額が交付税に特例加算されることがじゃ本当に約束されているのかというと、それははっきり出てないわけですね。もし約束されているというのなら、一体それは何年度からなのか、はっきりしておいていただきたいと思うのです。
  124. 土田栄作

    ○土田政府委員 お答えします。  五十九年十二月二十二日の覚書で、五十六年九月十八日の覚書を引用して「例による」と言っておりますのは、これはいろいろ法律をつくりますような場合に、これと同じ内容の措置をするというときで引用する場合にこういう形の措置をとるわけでございまして、今御指摘がありましたような二千億の中の一千億は、将来の地方交付税に特例加算するということでの内容も含むものでございます。  それから、この元利償還に要する経費について、何年度から算入するかという問題でございますけれども、私どもとしては、この利子償還というのは六十一年度から始まりますので、六十一年度以降交付税の特別会計に繰り入れるということで現在予定いたしております。
  125. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 一応そういう予定ではあるけれども、しかし五十九年十二月二十二日、昨年暮れの大蔵、自治両大臣の覚書では、今説明のあった五十六年九月十八日の両大臣覚書によって一般会計から交付税特会への繰り入れが約束をされていた五十八年度以前の臨時地方特例交付金、これがありますね。内容的には三つあって、五十一年から五十六年までの地方債発行による地方負担の軽減のための資金、つまり政府資金とそれから縁故債との差額七百八十六億円、それから地域特例のかさ上げの縮小に伴う地方債発行の元利償還の二分の一、六十九億円、それから利子所得に分離課税の選択を認めた、そのことに伴う住民税減収補てん分五百億円の、締めて千三百五十五億分、これは結局六十年度は約束どおりに一般会計から交付税特会への繰り入れが行われず、六十六年度以降精算額で調整する、こういうことになって繰り延べたのと違いますか。大蔵大臣いかがです。
  126. 土田栄作

    ○土田政府委員 御指摘のとおり繰り延べております。
  127. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 結局、覚書までつくって将来こういう予定ですと明確に約束されていたものでさえ、こういう形で国の都合で繰り延べていくわけなんですね。ですから、今回の臨時財政特例債のように単に過去の覚書の例によるとされているもの、その過去の覚書の例がことし本当なら実行しなければいかぬものを繰り延べているわけですね。そんなものを根拠にして、将来心配ありません、万全の措置をとっています、そんなことがよくも言えた義理だな、こう言わざるを得ないと思うのですよ。     〔越智委員長退席、中川(秀)委員長代理     着席〕  ちなみに、今回の臨時財政特例債発行から来る地方負担の増加なんですが、三千六百億円とした場合、概算ですけれども、最初の三年間は毎年百七十四億円ずつ、以後十七年間は約二百五十億円ずつくらいになって、総額四千八百億円ぐらいの元利を地方が負担する。これは大変な負担ですよ。とにかく、この補助金カットが六十年度一年限りの措置としても、結局四千億円以上の地方負担増になっていくわけでしょう。先ほど建設大臣は、法律がことし一年限りになっているから一年だと承知する、こうおっしゃったわけですね。問題はそこなんですよ。  これは竹下大蔵大臣に聞いておきたいんですね。大蔵大臣はこう言われているのでしょう。「この問題については、もう一年かけて議論をして恒久化した方がよかろうという判断の上に立ちましたので、一年ぽっきりという形で御審議をいただいた」。ことし一年やってみて、そして恒久化を考えるというのがあなたのお考えじゃないんですか。
  128. 竹下登

    竹下国務大臣 今の質問は、いわゆる社会保障関係に関する三大臣申し合わせに対する御質問がございまして、したがって一年間かかってしっぽり勉強して、それが可能なことならば、今のままが恒久、こういう意味じゃございませんが、それぞれ恒久的な補助率というものが決まる方が好ましい、こういう意味で申し上げました。  それで、投資的部門の問題につきましては、必要に応じて検討をしていくということはもとよりのことでございますが、これにしましても、いわば今の暫定措置を来年は今度は恒久法にするのだという意味で申し上げておるわけではございません。
  129. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いつもあなたの答弁は非常にどうとでもとれるように言うのだけれども、逆に言いますと、来年度は、六十一年度はこのいわゆる投資的経費の部分については――ほかはどうでもいいというのではないですよ。私はきょうはその部分についての質問に集中しているのです。投資的経費の部分についてはもとに戻ります、そういうお話と聞いていいんですか。
  130. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる地方と国との役割分担、費用負担のあり方というのは今後とも引き続き検討する課題でございますので、一年限りの措置でございますから、法律を見る限りは一年限りで失効するわけでございますが、来年は完全にもとに戻りますという答弁はすべきではないというふうに私は考えております。
  131. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 建設大臣、今のようなことなんですよ。これに対して建設大臣、どう対応されるつもりですか。
  132. 竹下登

    竹下国務大臣 ただ、申し上げておかなければいかぬのは、いわゆる後年度負担の推計によりますところの要調整額とかいうことの中期試算、仮定計算については、デフレーターだけでいわば予測するところの投資的経費は仮定計算の中で数字としてお示ししておるということをもう一つ申し上げておきます。
  133. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 要は、もとへ戻るとは言われないわけですね。建設大臣の答弁をぜひ聞いておきたいですね。それでいいんですか。
  134. 木部佳昭

    ○木部国務大臣 六十年度の予算編成に当たりまして大蔵大臣とも十二分に私は協議をいたしたわけでございます。そういうことで、先ほど答弁申し上げましたように暫定的に一年であるという原則に立っておるわけでございまして、これは間違っておりません。したがって、公共事業の確保ということになりますと多少社会保障とは趣を異にする点もあると思いますので、そういう点もしっかり把握させていただきたいと思っております。
  135. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 もちろん、社会保障、福祉、文教などの補助金カットを恒久化しようなんてもってのほかなんですよ。けれども、今の両大臣の話からいえば、結局、今出している法律が一年限りの法律だから一年限りの措置なんだと言うだけで、六十年度以降について、ではこういう国民生活に密着した公共事業の部分についての補助金や国の負担金をどうするかについても、これもまた検討事項であって、決してもとに戻るというのではないということを今答えられたんだ、そう言わざるを得ないと思いますね。  そこで、地域特例の問題についてもちょっと聞いておきたいのです。これは滋賀県御出身の河本国土庁長官は一番よく事情を御存じですね。琵琶湖総合開発特別措置法ももちろん地域特例法の一つであります。しかし、ここでは漁港整備事業とかダム建設、砂防事業、河川改修、道路整備、下水道事業、土地改良事業などの補助率がさ上げによる高率補助九事業とそれから一般高率補助四事業については、今回の補助金カットの特例からは外されましたね。これは当たり前のことなんで、これはあるべき姿なんで、それをやったからといって恩着せがましいことを言われては困るんですよ。  問題は、同じような地域特例、地域開発法なのに、離島振興法、奄美群島振興開発特別措置法、沖縄振興開発特別措置法、過疎地域振興特別措置法などなど、こういう法律では、法律によってその項目は違いますけれども、漁港とか港湾整備とか教員住宅、道路、砂防設備、土地改良、河川、こういう事業について補助金カットをやっているわけですね。片方は補助金カットをし、片方は補助金カットから一応除外する。一体どういう基準によってこれを分けたんですか。
  136. 河本嘉久蔵

    ○河本(嘉)国務大臣 国土庁といたしましては、水資源地域の対策、琵琶湖総合開発特別措置法に基づく事業、これの補助率を縮減することは適用外としたわけでございます。ほかに成田空港とか文化財のなにとか沖縄とか、いろいろなことございますが、当国土庁関係でございません。
  137. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そんなもの答えになってないじゃないですか。要は、削ったものと削らないものとの違いは一体どこにあるんですか、どんな基準でやったんですかと聞いているのですよ。
  138. 河本嘉久蔵

    ○河本(嘉)国務大臣 いや、担当大臣としまして、国土庁は水資源対策、それから琵琶湖総合開発であるということを申し上げているだけであります。
  139. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それじゃ、大蔵大臣に聞きましょう。
  140. 竹下登

    竹下国務大臣 例示を申し上げると正確を欠くかもしれませんが、要するにその地域の住民に対する受忍、その度合いということが検討の対象になったというふうに記憶しております。
  141. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そういう言い方をしますと、結局、じゃその奄美だとか沖縄だとかあるいは離島とか山村の方は受忍すべきものだ、しても差し支えないものだという結論になりますね。それでいいんですか。  さらに、同じ琵琶湖総合開発特別措置法の中でも、先ほど申し上げました事業については補助金カットの対象から外しているけれども、やはりカットの特例を受けている事業もあるのですね。これ点、都市公園とかあるいは自然公園とか一部の治山がそうなんです。先ほど河本長官が水資源確保も必要だから、結局そういう列島改造型といいますか、高度成長型の開発関係の補助率は、全部ではないけれども、比較的温存する、むしろ切実な住民に密着した事業の方は削っている、全体を見るとそういう傾向になりますね。基準がそういうところにあるんじゃないですか。
  142. 竹下登

    竹下国務大臣 あるいは主計局からお答えするのが適切かと思いますが、言ってみれば、密着しておるというような性格のものにいたしましても、それは行革特例の際にお約束をしたところの財政的措置が将来にわたってお約束されておるわけであります。  受忍関係のものにつきましては、確かに今琵琶湖ということを端的に私にすらすらと説明しろと言われてもそれだけの準備はございませんが、たしか、例えば明日香村とかというような、言ってみれば昔ながらの風致を残すためにそこの住民の方々に対する受忍と申しますか、それを強いておるというような点に対しての配慮をこれは行革特例法のときからいたしまして、その考え方が今日残っておる。いわゆる列島改造型と飛鳥古京を守る思想との関連性はおよそ迂遠なものだと思っております。
  143. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 だから、すべてとは言わないが、大きく分ければと、こういうふうに私は申し上げたのですね。問題はやはりそういうところに焦点があるわけじゃないのですよ。一つ一つをとってみますと、そのカット額というのは大きな額ではないのですね。何でそんなところへ国が目を向けるのか。しかも中には、単なる補助金ではなくて、よく言われます地方財政法十条で決められた国の負担の義務の課せられている分もあるのでしょう。こういうものも削りていっているわけですね。本来は、こんなことをやるよりも、我々が予算の修正組み替えでも提案しましたように、まず軍事費を削るとかあるいは大企業優遇の措置を是正する、こういうところへこそ目を向けるべきなんですね。  そこで、私はそのうちの一つとして、今日の税務行政が公正、民主的にきちんと行われているかどうか、一つの実例でただしていきたいと思います。ちょっと資料をお配りいただきたいと思います。  大阪国税局は、大津市内の建設業者、内田組という法人ですが、に対して五十八年の春ごろから内偵調査に入った。そして、五十九年の一月十八日に査察、つまり強制捜査を行った。そして、昨年の七月六日、大津地検に脱税容疑で告発をしたわけですね。同地検は、昨年の十二月二十八日に、脱税、法人税法違反で起訴をしたわけであります。  起訴状で認定している脱漏所得額、所得隠しは、五十六年度が三千二百四十四万円、五十七年度が四千二百九十五万円、合計七千五百三十九万円となっているのじゃないですか。
  144. 村本久夫

    ○村本政府委員 お答えをいたします。  大阪国税局が内田組に対しまして査察の調査をいたしまして、その結果に基づきまして大津地方検察庁が起訴いたしました脱漏所得金額は、ただいまお話がございましたが、五十七年三月期が三千二百四十三万六千円、五十八年三月期が四千二百九十四万二千円、合わせまして七千五百三十七万八千円、このようになっております。
  145. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 今の数字は、お配りしました資料の三枚目の右下のところに、これは私の注釈でつけ加えております。  今配りました資料というのは、この内山組に対する強制調査、つまり査察のときの文書、それに附属されております内偵調査の報告書の一部を、今質問の必要上お配りをしているわけであります。  ところが、この査察の前に、この資料の三枚目にありますように、国税局の方は内偵調査をやっているわけですね。この内偵調査による見込み脱漏所得額、これは三枚目の紙の左下に載っておるとおりであります。五十六年三月期六千六百四十三万円、五十七年三月期七千六百九十八万円、五十八年三月期七千五百九十八万円、合計二億一千九百三十九万円なんですね。  それは、内偵調査による見込み脱漏所得とそれから起訴時点の脱漏所得が、一割、二割の違いというのならわからぬでもないけれども、その差は実に一億四千四百万円でしょう。こうなってきますと、起訴した脱漏所得額の方が正しいとすれば、内偵調査による脱漏所得は極めてずさんなものだったのじゃないかと考えざるを得ないし、また逆に、内偵調査による脱漏所得が正しいものだとすれば、わずかその三分の一にすぎない起訴した脱漏所得、所得隠しですね、これはいいかげんなものだったのではないかと考えざるを得ないと思うのですよ。なぜこんな大きな開きが出てきたのですか。
  146. 村本久夫

    ○村本政府委員 個別の内容にわたりますことについて具体的に申し上げることはお許しをいただきたいと思うわけでございます。  ただ、一般的に申し上げさせていただきたいと思うわけでございますが、内偵調査といいますのは、やはり大口悪質な脱税があるというような端緒をつかみまして、将来これに最終的には刑事罰を求めるための調査ということでございまして、その途中過程におきましては、当然その嫌疑者にといいますか、犯則の嫌疑者に察知されないように行う必要があるというような点がございます。したがいまして、当然その一連の過程におきます言うなれば初期のものでございまして、そこにどうしても不十分なところといいますか、最終的なものと違った形のものがある。また場合によりまして、必要な資料等もないということで推計の要素も入るというようなことがございます。一方、実際に強制調査を着手いたしまして、最終的に告発に持っていくということになってまいりますと、当然のことではございますが、これは刑事裁判手続にのっとって裁判があるわけでございます。当然のことですが、そのためには、公訴を維持するということのために厳格な証拠固めをやる、こういう必要が出てまいります。また、一般論としては、内偵では小さなものであったけれども、実際に調査をした結果大きくなる、こういうような要素もございまして、そこでケースによりまして内偵の見込額と調査額というのは必ずしも一致をしないし、場合によってはそれがある程度の開差が開くというようなケースもあるわけでございます。  一例を挙げて申しますと、例えば仮名普通預金の入金額というようなものを一種の架空経費ではないか、こういうふうに見込んで調査をいたしましたところ、実際にその後よくよく調べてみますと、これが他人からの預かり金であった、あるいは借入金であったというようなことがございます。また、そういった主張がございまして、それを覆すだけの証拠がないという場合には、公訴維持を考えるという立場から、やむを得ずその点については引き下がらざるを得ない、こういうようなケースもございます。こういったことで両者に開きが出るということは、率直に申しまして間々あるというような状況でございます。
  147. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 多少の開きが出るのは、それはあるだろうと私も言っているでしょう。だけれども、今回の場合は内偵調査による見込み脱漏所得額は二億二千万円ですよ。ところが、起訴していものはそのたった三分の一の七千万円強なんですよ。この開きを何と説明するかという問題なんですよ。  ここに内債の全資料がありますよ。これは何でしたら大蔵大臣、ごらんになって結構ですがね。この要点を言いますと、私の入手した内偵調査報告書によりますと、内偵調査は五十八年の四月二十八日から五十八年の十一月五日まで、ここに書いてありますように六カ月半にわたり、そのうち延べ百三十八日間行われておるわけです。  この端緒は、五十八年四月二十八日、太陽神戸銀行草津支店の調査の際、内田組の入金に係る架空口座が発見された。まず基礎調査として、内田組への課税状況、代表取締役及び関係人の課税実績、代表取締役の関係人の所有不動産状況、代表取締役の異動、同社への過去の査察実績、こういうものを調べた。その上で、売り上げが順調に伸びているにもかかわらず申告所得が極めて少ない、架空外注先をつくり、架空外注先に支払ったように見せかけて簿外資金を捻出する、つまり所得隠しをやっている、こういう判断で内偵に移行していった。こういう経過の説明がされています。  この内偵では、今言いました太陽神戸銀行車津支店の架空名義預金のほかに、滋賀相互銀行の草津西支店、石山支店、守山駅前支店及び滋賀銀行の石山支店、山科支店、この計五つの銀行にある同じく架空の預金口座を発見してきているわけですね。それぞれの預金口座について詳細な調査をしている。ここにはその各預金の金の出入り等も全部書いてあります。そして、判断としては、印鑑証明、出金証明の筆跡がすべて同一であること、入金は全部内田組からのもので成り立っていること、それから口座開設日や大口出金日がほぼ同一であること、名義人はいずれも架空の人であること、住所にそういう名義人がいない、それから決算書における各架空外注先への未払い金額と決算期直後のそれぞれの架空外注先口座への振込金額、これが符合する、こういうことを確認して脱漏所得を認定してきているわけですよ。  もちろんそれだけではなくて、同業者と比較した所得率の比較表も詳細なものがここに出ております。また、完成工事高から逆算した損益計算書も出ている。不動産の取得状況も書いてある。そしてこの中にこう書いてありますね、「査察調査によりさらに不正規模は増大すると思われる。」  やり方がいいか悪いか別にして、査察に当たった当事者は相当確信を持った結論の出し方ですね。なのに、先ほどじゃないけれども、違いが出て当たり前だ、こんな説明で事済みますか。それで大きな開きの説明になると思いますか。だれもこんなもの、国民は納得しませんよ。もう少し納得のできる答弁をしなさい、なぜこういう大きな開きが生まれたのか。  だから、先ほど私が言ったでしょう、もし起訴している方が正しいとすれば、この内偵調査は極めてでたらめだったと。こんな吹っかけられた調査をやられたら国民はたまったものじゃない、こういうことになるのですよ。どっちなんですか。
  148. 村本久夫

    ○村本政府委員 先ほどもお答えをしたことの繰り返しの部分がございまして恐縮でございますが、内偵調査といいますのは、先ほど申し上げましたように大っぴらにといいますか、平たく言えば、相手方から状況を聞くとか、そういうようなことをやってない段階のものでございます。それを実際にやりまして相手方から詳細な供述を得る、さらにまた、それが表面に出た後におきまして関係者等からも十分に話を聞く、そういうようなことをやってまいりますと、当然そこに開きが出てまいります。今お話しのように、じゃ、どちらが正しかったかということでございますと、最終的に裁判にまでたえ得るだけの証拠のそろった犯則額は、起訴いたしましたその額であったということに相なる次第でございます。
  149. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 これは大蔵大臣に伺いますが、言うまでもなく同税通則法では「税務署長は、」「納税申告書に記載された」「課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときは、その調査により、当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正する。」こうなっておるわけでしょう。だから、当然こういう場合は普通だと更正決定ということになるのじゃないでしょうか。  しかも、この内田組に対する調査は、通常調査と違って犯則調査ですね。だから国税犯則取締法に基づく非常に強力な権限のもとに行われておる調査です。内偵も非常に長期間、綿密にやられている。通常調査の方は法人税法とか所得税法に基づく調査ですね。だからそれよりははるかにこれの方が厳しいと見なくちゃいけないでしょう。普通これだけの調査を行われたら、大概更正決定打たれますよ。少々文句を言ったって通りませんよ。それが今の話です。そういう綿密な調査をしたものが間違いで、起訴のが正しい。がくんと下がるわけでしょう。これで一体、国民は税務行政を信用すると思いますか。大臣いかがですか。
  150. 竹下登

    竹下国務大臣 私は、まずこの内部資料がお手元に渡っておること自体に疑問を感じたわけでございますが、具体的な税務行政のあり方については、私自身は詳しく知りません。一般論として申し上げれば、この調査といわゆるこの最終的な決定に乖離があるということも、それはない方が好ましいでございましょうが、間々あり得るだろうなという一般論としての感想を述べることが私の限界であろうと思います。
  151. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 おまけに、この資料の二枚目につけておきましたように、この強制調査というのは、資本金五千万円の中小企業に対するものとしては随分大がかりですよ。三十一カ所に対して調査班六十人、情報班五十六人、合計百十六人を配置する、動員するというものでしょう。  大阪国税局の査察部の査察の権限を持たされている職員は何人いますか。
  152. 村本久夫

    ○村本政府委員 お答えいたます。  大阪国税局で査察に携わっております職員が全体で百九十八人ということになっております。
  153. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 査察関係の職員は百九十八人ですね。そのうちの六割以上を投入しているわけですからね、これはまず税務署の査察としては大がかりな方でしょう。その結果が、今言ったこの起訴額が三分の一に下がる、こういう事態でしょう。ますますもってこれは疑問を持たざるを得ませんよ。ですから、私は何もすべての個別事案を国会で明らかにしなさいとは言いませんが、ここまで事実関係がはっきりしているものについては国民の納得するような説明をすべきではないかと私は思いますが、大臣に直接説明せいと言うんじゃないが、国税庁の方が説明しないので、大臣から説明するように言ってもらいたいと思うのです。なぜこんな開きがあったのか。
  154. 竹下登

    竹下国務大臣 まず、その資料が瀬崎さんの手にあること自体、私は奇異に感じております。  それから二番目は、元来、いわゆる公務員の持つ税務行政上の守秘義務ということに対し、個別案件についてのコメントはできない、それがまさに公務員たるの道である、こういうふうに私は考えます。
  155. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 今言ったでしょう。すべての個別事案を具体的に審議しようと我々思わない。だがしかし、これは税務行政のあり方の根本が問われる問題を含んでいるから、あえて一部も資料として出したし、我々は質問しているわけですよ。  さらに非常に疑問を呼ぶ点があるわけなんです。内田組の五十六年度の所得は、内偵調査によれば七千六百九十八万円と認定されているわけなんです。起訴段階ではこれは下がりますけれども、それでも四千八百八十一万円となっているわけなんです。ところが、五十七年の五月十七日に内田組が申告した所得額はわずかに千六百三十七万円なんですね。いずれにしても非常に低いんです。  ところが、五十七年の八月二十日に大津税務署が内田組からの減額更正請求を受け、調査を行って、何とこの申告所得額、今の千六百三十七万円という申告額をさらに一千万円減額して六百四十六万円、つまり、当初申告額の約三分の一近くに落とすわけなんです。これもちゃんとこの資料に出ておりますから、ごらんいただければわかりますね。後になって、その数倍にふやさなくちゃいけないようなこの所得を税務署がなぜ大幅に減額したのか、これも非常に疑問の持たれる点なんです。なぜこういうことが起こったのか、国税庁、いかがです。
  156. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 お答えをいたします。  法人税なり所得税なりの確定申告に当たりまして、本人が誤って過大に申告をしたという場合には、更正の請求ができることになっておることは先生御承知のとおりでございますが、その場合、税務署の応対といたしましては、まず調査をさしていただくのが基本でございまして、調査をいたしましてその事実が正当であるという場合には減額更正をする、こういう一般的な事務のルールに従って処理をさしていただいているというのが一般的な取り扱いでございます。
  157. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 あくまで事務的な答えなんですが、我々も、中小零細業者の方々の税務行政に対するいろいろな不信、不満はしょっちゅう聞いているわけですね。普通の中小零細業者の場合は減額更正請求して簡単に認められるものじゃないですよ。それが今回は、千六百三十七万円の申告額を一挙に六百万円ほどに、一千万円下げるわけでしょう。これは、今のようなあんな簡単な説明で納得できるものじゃないです。そして後でまたこれを引き上げるのでしょう。そうなってくると、税務署の税務調査とは一体何なのか。およそこんなものは信用できない、こういうことにならざるを得ないと思うのですね。そういう税務署が力の弱い中小零細業者のところにやってきて、やれ質問権があるからとかなんとか、そういうものを振り回して反面調査をする、推計課税を押しつける、これはそら恐ろしい事態にならざるを得ないと私は思うのです。だからこういう問題については、これはやはりこういう事態になった原因というものを明らかにして税務行政は信用を取り戻すべきだと思う。  時間の関係もありますから次の質問に入りますけれども、いわゆる通常調査と犯則調査、これは明らかに根拠法も違えば、目的、要件、効果も異にして区別されていますね。この点、確認だけしておきたいと思います。
  158. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 私どもがいわゆる税務調査という中には、広く言いまして、所得税法ないしは法人税法に基づきます質問検査権に基づく調査、これが一つございます。それから強制調査といいますか査察調査の場合には、国税犯則取締法の規定に基づいて行う調査、大別して直接国税の調査にはこの二通りがございます。
  159. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 今回の「内偵調査報告書」を見ますと、ここにもつけておきましたが、四枚目のところにありますように「端緒」、きっかけが書いてあります。「昭和五十八年四月二十八日太陽神戸銀行草津支店を調査した際次の帰属不明普通預金をは握した。 口座番号三一六三四〇九 名義山口工業 山口治一郎 住所草津市山田町六百五十九」云々とあるでしょう。この端緒と言っているこのときの太陽神戸銀行草津支店の調査の性格、あるいは目的といいますか、これは一体どちらなんですか。
  160. 村本久夫

    ○村本政府委員 当該案件につきまして、どちらであるかということについては差し控えさせていただきたいと思います。  一般的に申しまして、査察の端緒となります案件については、さまざまなルートから端緒となるケースがあるわけでございます。課税部門からの連絡ということもございますし、いろいろな新聞、雑誌等の情報あるいは投書ですとか端緒ですとか、そういうようなものがございます。  ただ、一般に査察事件につながるというものでございますので、そういうような調査というのは、これは国税犯則取締法に基づく調査としてスタートして、最終的にもその手続にのっとって告発に至るというのが一般的な姿でございます。
  161. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それじゃ一般論として聞きますけれども、犯則調査の場合、A社の調査を目的にして行った。そのA社を目的にした調査でありながら、そこで同時に当初の目的ではないB社の調査をするということもいいんですか。そういう立場ですか。
  162. 村本久夫

    ○村本政府委員 お答えを申し上げます。  一般的に、銀行に赴きますときに、これはA社の調査である、こういうことで行きまして、そのA社の預金取引であると思料される資料等を収集してまいるわけでございます。ただ、それを後になっていろいろと調べてみる。そうすると、それがB社のものであった。しかも、その取引の内容等を見ると、B社について犯則嫌疑事実的な要因を非常に深く含んでいるというようなことになりますと、それがB社の調査の端緒になるといいますか、そういうようなケースはあり得ることでございます。
  163. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それで、この太陽神戸銀行草津支店の内債調査に入る前の調査ということになっているのですが、そもそもその内債調査というものの内容、実態が今まで非常に不明確だったのですが、ここに一応実態は明らかになった。そこで、その内偵調査の法律上の根拠、あるいは法律上は一体どの条項に属する調査を言うのか、それをはっきりしてほしいのです。
  164. 村本久夫

    ○村本政府委員 先ほど次長からも答弁がございましたけれども、国税犯則取締法上の調査といいますかいわゆる査察事務、そういうようなものの職務を行うためには、国犯法一条に基づく任意調査と、第二条に基づいて裁判所の許可を得て行う強制調査の二種類があるわけでございます。  内偵調査という言葉は、法律上の言葉ではないわけでございますが、査察部内の一種の慣用語と言ってよろしいかと思います。私どもは、国税査察官が直接国税に関する犯則が存在すると認められる納税者について、犯則嫌疑事実の存在が推定された段階から犯則事件の調査に至るまでの間に行う調査を総称して申しておるわけです。これを法律的に申し上げれば、この内偵調査といいますのは、国税犯則取締法一条に基づく任意調査であるという場合が一般的でございますけれども、そのほかに、事業実態の把握等のために、一般人が通常立ち入ることができる場所等で行う情報収集などの事実行為も含めたものである、このように考えております。
  165. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 非常にこの点、内偵調査というのは範囲が不明確なんです。この内偵報告書を見ますとこう書いてあるのです。「内債選定」という項目がありまして、そこには、基礎調査の結果「総合的に判断して犯則嫌疑法人に不正の存在が想定されたので内偵調査へ移行した。」となっているのです。そうなりますと、この移行以前の調査、つまり基礎調査とそれを呼んでおりますが、これは一体、国税犯則法に基づく調査なのか、そうではないのか、どっちですか。
  166. 村本久夫

    ○村本政府委員 内偵調査といい基礎調査と申しましても、法律的に考えてまいりますと、これは国税犯則取締法一条に基づく任意調査である、こう言ってよろしいかと思います。
  167. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 大臣、これは今の話を聞かれてもわかりますように、法律上はおよそ内偵調査というものの規定というのはどこにもないわけですね。一種の慣用語だ、こう話しているでしょう。そういうものが結局勝手に調査官といいますか査察官あるいは国税局長などの判断で拡大されたりいろいろするということは、これはやはり憲法の租税法律主義にも反する事態にもなりかねないと思うのです。そういう点ではこれはやはり検討をすべき問題ではないかと思います。どうお考えですか。
  168. 竹下登

    竹下国務大臣 私も問答を聞きながら、やはり一番私自身が今の時点でも悩んでおりますのは、恐らく瀬崎さんのお持ちになっている資料というものがこの場に出ていくに当たっては、だれかがいわゆる守秘義務を違反しておるんじゃないか。そういうものがいわば質問のもとになっておる場合、私なりにいかに注意して一般論として申し上げようと思いましても、そののりを越える危険性がございますので、したがってこれには、その前提というものに私自身が思いをいたした場合、お答えする範囲外にあるんじゃないかな、こんな感じを、問答をしながら私自身感じたことを率直に申し上げます。
  169. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 問題はそこなんですよ。すべてを守秘義務、すべてを職務上の秘密、こういうことで言えば、税法を超えたような調査があっても、それは国会では審議できない。これは実態に基づいてでなければ、それぞれの個別のこのいわゆる税務行政が適法かどうかというのは判断できません。そういう点で私はこれは極めて重大だ。従来、大体内偵調査というようなものはどんなものなのか、わからなかった。初めてこういう形で内偵調査の実態が出てくると、これは考えるべき、そういうところへあなたが目を向けるのではなくて、むしろ、このもとになっている内偵調査そのものが一体どういう形で行われているのかをまず一遍調べてみるべきですよ、大臣
  170. 竹下登

    竹下国務大臣 内偵調査という問題に対しての関心を持て、これなら結構ですが、その議論を展開されるいわば基礎になっておるものが、私どもの大蔵省に所属するだれかが、いわゆる公務員法に違反する行為を行っておる者が前提におるという認識を持った場合には、私の答弁も勢い慎重にならざるを得ない、このように思います。(「何が証拠で本物だ」と呼ぶ者あり)
  171. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 本物でないという証拠がどこにあるんだ。  これは率直に言って、既にこの質問に至る過程において国税庁と私どもとのやりとりがあります。その上に立っての質問であることもはっきり言っておきます。(「街頭演説でないのだから」と呼ぶ者あり)街頭演説――失礼なことを言うな。  一応この基礎が、先ほど認められたように、五十六年度分と五十七年度分になっているわけなんですね。これは時期がおくれたために、五十五年度分はいわゆる時効と見たのではないか。これは私の推察です。しかし、課税面から見れば、これは五年間の期間があるわけですから、そういう点では本件についても、五十五年度分についての適正な課税ということは当然考えるべきじゃないかと思うのですが、どうですか。
  172. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 お答えいたします。  査察調査とは別に一般論としてお答えさせていただきますと、査察調査の結果に基づきまして、税務署ではその結果を踏まえて改めて所得税法なり法人税法に基づいた調査をいたしまして、適正な課税処理をするというのが一般的な処理の方針でございます。
  173. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私から言うまでもなく、最近においても、例えば三井物産が海外で支払った外国税を過大に控除して法人税を過小申告して、追徴税額を含む法人税六十五億円、地方税や加算税を加えたら百億円徴収されたとか、あるいは石川島播磨重工が過去五年間で百五十億円の申告漏れをしていた、七十億円の追徴を受けた、こういうような報道も出ているわけですね。さらに、これは昨年十月の読売新聞ですが、東京国税局では五十八事務年度中に資本金一億円以上の会社のうち二千六十社を税務調査して、九九・七%に当たる二千五十四社から二千四百七十八億円の申告漏れ、所得隠しを摘発した、このうち不正経理による脱税は二二%の四百五十六社だったというようなことが出ています。しかし、東京国税局に聞きますと五十八年度中の査察件数そのものは八十五件、少ないのですね。  私が最後に言いたいことは、大企業のこうした金額的にも莫大な、しかも組織的な知能犯的な脱税、こういうものがきちっとされているかどうか、ここなんですね。今度の大阪国税局のこの件は、悪質ではありますけれども、要は資本金五千万円の中小企業に対して今いろいろと説明したような極めて大がかりな調査をやって、査察もやって、そしてその結果が国民から見れば余りにも不信感を抱かざるを得ないような結果が出てきているわけでしょう。果たしてこういうことで、大規模で組織的で知能犯的でかつ政界との癒着も強い大企業に対して、今の税務行政できちっとやれるのかな、こういう疑問を非常に強く持つ。一方、中小企業にとっては、非常に厳しい状況の中で必死で生活と営業を守っている、そういう弱者に対しては、きちんと申告をやっておっても時、所構わず調査に出かけてくるとか呼び出しをかけるとか、あるいは反面調査、推計課税ということが乱発される。弱いものに対しては税務署は強い、こういう点を最も憂うるわけなんですよ。だから、やはり大きいもの、強いもの、大もうけをしているもの、取るべきところからちゃんと取る。小さいもの、弱いもの、赤字を出しながら生活を守るのが精いっぱいという業者に対して税務署がむやみやたらに強権を発動する、こういうことはやめるべきなんですね。本末転倒の税務行政が現在まかり通っているということに対して警鐘を乱打したいという気持ちでこういう質問をしているわけであります。そういう点では、我々は一定の資料は出したのですから、これを十分生かして国民の信頼の得られるような公正、民主的な税務行政に転換することを強く要求をして、私の質問を終わりたいと思います。
  174. 中川秀直

    中川(秀)委員長代理 江田五月君。
  175. 江田五月

    ○江田委員 補助金一括法案について、昨日総理に質問をいたしまして、その総理に伺ったことを繰り返すような形にあるいはなるかもしれませんが、大蔵大臣にただしておきたいと思うのです。  総理は心配ないということをおっしゃいましたが、やはり地方自治体は随分不安に思っておるんだと思います。三月議会で予算を決めて、その前に国の方から、これこれの補助金については減額になるけれども、しかし一般財源の方で措置をするから、交付金でちゃんと出すからということは言われておる。しかし、一体どの程度が措置され、あるいはどういう形で来るのか、いつ来るのか、いつまで続くかもわからない。その中でどうも先行き不透明という感じが強いですね。  自治体の方はそういう感じを持っておるんだと思うのですが、これで一体、本当に財政再建に資することになるのかどうか。こういう不透明感というものを自治体が感じておるということについて、大蔵大臣は一体どうお考えでしょうか。
  176. 竹下登

    竹下国務大臣 まず、財政再建あるいは財政改革のときに国の財政というものを担当しておる立場から申しますと、どこに着目するかというと、一般歳出の四割を超すいわゆる補助金等に着目をしていく、それでいろいろな作業をやってまいりました。が、やはりその制度の施策の根源にさかのぼれば、国と地方とのあるべき姿、それに伴う費用負担のあり方ということについて検討が進んでいくある種の必然性というものが私はあるのじゃないか、それが今回の措置となってあらわれておるわけであります。  しかしそれはいわゆる地方に対する心配を与えているのじゃないかという点については、私の立場から言いますと、地方財政計画という土俵が一つあって、したがって、その地方財政計画というマクロなところに大蔵省としては着目をしての対応策を考えるわけでございますが、さらに自治省におかれて、それをミクロな立場から各市町村に対して心配がないというところのいわゆる周知徹底方が行われるならば、私は国民でありかつ住民である皆さん方もいわば理解、協力していただける課題ではなかろうかというふうに考えております。
  177. 江田五月

    ○江田委員 はっきりしないんですけれども、大蔵大臣おっしゃるように財政危機を打開をしていく、国の財政を再建をする、そのためには国と地方との費用負担のあり方も考えていかなければならぬ、これはそうだと思うんです。じゃどう考えるのか。国と地方の費用負担のあり方についてこうこうこういうような考え方を持って、あるいは行政改革と財政再建はやはり絡んでいるわけですから、これからの行政改革とも絡めて、事務は国と地方でこういうふうに分け持つんだ、その財政負担はこういうふうに基本的に考えがあるんだ、そういうものがきっちりあってその上でこういうことになってくるならば――そうすると、これは大きな行政の変革であり財政の改革であって、大体今までの財政構造が壁に突き当たったのが今の財政危機ですね。ですから、どうしてもこれまでの財政構造を大きく変えるという根本的な考え方、国と地方とのあり方についての一つの哲学があって初めてこれからの指針が出てくるんだと思うのです。そういうものがあってというようにおっしゃりながら、しかし一体どういう考え方なのかさっぱりわからない。そうすると、今回のこの措置というのはいかにも財政のつじつま合わせにすぎないのじゃないか。財政再建なんておっしゃるけれども、ただ数字をあれこれいじるだけで、いかにも俗に言う大蔵省的といいますか、政治家としての考え方とはおよそ違う単なる数字合わせじゃないかという批判が出てくると思うのですが、いかがですか。
  178. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆるつじつまが合わなければ予算にならぬわけでございますから、これはつじつまを合わせなければいかぬわけであります。が、基本的に、今江田さんおっしゃるのは、いわば地方自治のあり方というものはこのようなものであって、国の役割分担とは外交、防衛あるいは教育、福祉それぞれ基本的にあるべきであって、あとは地方がその自主性において運営していくというのも、一つの考え方だと思います。  しかし、残念ながら我が国の税源というものが非常に偏ったところにある。岡山県と島根県ではかなり違う。そうすると国の関与するところの調整というものが必要になってくる。そういう考え方の中に仕組んでこられたいろいろな予算の柱が出てきておるわけです。その一つ一つの根源をさかのぼって国と地方とのいわゆる負担区分はどのようにあるべきかということは、やはり考えていかなければならぬ。そういう議論もしました。一年かかって本当にあるべき補助率を全部決めて、それから次のときからお願いするのが筋じゃないか、その議論もしました。それで、例えて言うならば、社会保障に関するならば、昭和二十一年以来の議論の経過をずっとやってみました。しかし、それをやるという基本的な認識を持ちながらも、今日の時点でやっぱりひとつ地方と国との費用分担をしようというのが今回お願いしておるものでございまして、したがって、社会保障については一年以内に引き続き検討して、そのあるべき姿をきちんとさせよう、そして他のものにつきましては、必要に応じ、これも費用負担のあり方ということについて検討しようということで、きょうお願いをしておる。まず初めに哲学ありき、その後この法律ありきというところまでいきたいと思いますが、それは江田さんの時代まであるいは見送らなければならぬかな、こう思います。
  179. 江田五月

    ○江田委員 なかなか基本的な考え方というものを明らかにしていただけないんですが、しかし、いろいろな議論がありますから、例えば教育の分野であっても、今教育は国というふうにおっしゃったけれども、必ずしも教育は国が全責任ということがいいのかどうか。教育においてもいろいろな分権ということもあり得ると思いますし、そういう考え方をしっかりさせるべきじゃないかというのに対して、なかなかそうはいかぬというお話ですけれども、しかし大蔵大臣、さあいよいよこれからと旗上げをされる大蔵大臣が「日本列島ふるさと論」なんという、大蔵大臣がそういうことでは困るんじゃないですか。大臣の「日本列島ふるさと論」の中では、この国と地方との分担というのは一体どうなっているのですか。
  180. 竹下登

    竹下国務大臣 まだ選挙演説のスローガンのようなものでございまして、いわゆる自治という立場の上には立たなければいかぬぞよということを観念的に申しておりますが、それを政策の整合性の中で並べていくほど、私もまだ成長した政治家ではないと思っております。
  181. 江田五月

    ○江田委員 そこで、勉強会をと言われるわけでしょうから、ひとつ大いに勉強会をやっていただきたいと激励いたしますが、根本的な立場がはっきりと確立してないとおっしゃるならば、やはりこの措置はとりあえずはことし限りという、来年は改めて考え直すということでなければならぬ。これからもずっとこれで続いていくのか、それともこの措置はことし限りなのか、そこはいかがですか。
  182. 竹下登

    竹下国務大臣 これは法律があくまでも暫定措置になっておりますから、一年限りの法律であることは事実であります。  しかし、一年限りで毎年同じものを出していくかどうか、こういう議論もやりました。率直に申しまして、いわゆる財源確保法につきまして、特例公債を発行するに当たっても、一年一年やった方がむしろみずからに対して財政節度を厳しく教えるためにもいいだろうといって、一年一年やってまいりました。だからこれらの法律も一年一年やっていくのが本当ではないか、こういう議論もしてみましたが、いずれにせよ、ことしの場合はこの一年の暫定措置ということでお願いして、社会保障は先ほど申しましたように、三省で協議して、各方面の意見を聞いて、なかんずくその意見とは、まず国会ありきというので、国会の意見を聞いたりしながらそれを詰めていこう、そして、他の投資的部門とかということになりますと若干違いますのは、年々それぞれの財政事情に応じて補助率等が違ってきた場合もございますので、それらの経緯をも踏まえながらそれも必要に応じて検討していこうということでございますので、ことし一年でお願いをしました。来年もまた同じように一年でお願いしますという精神ではございません。
  183. 江田五月

    ○江田委員 昨日総理は、私がお茶の間の声というのは非常に怨嗟の声にあふれておるというとちょっと大げさだけれども、しかし恨みつらみが重なっているよと申し上げたら、総理の方は、いやそんなことはない、お茶の間はみんな安心をしておる、なぜなら、別に国が金を出さないからといってすぐに国民に負担がかかるわけじゃなくて、地方がちゃんとその分を見るわけだから、こうおっしゃって、実質的に、最終的に予算規模がそれぞれの項目で減るというようなことはないんだ、こうはっきりおっしゃったわけですが、これは大蔵大臣、よろしいんですか。
  184. 竹下登

    竹下国務大臣 ちょうどそのとき私おりませんでしたが、総理は恐らく、社会保障なら社会保障は末端の給付水準はちゃんとスライド分も含めて従来と変わらないようにあるのでございますよ、だから負担区分は違いましたが、末端のサービスの点においては決して落ちませんという意味でおっしゃったと思います。もう一つ、投資的経費の場合におきましては、国費はなるほど減りました、しかし事業費でこのニーズに応じておりますよという意味のことをおっしゃったと思います。予算全体は、一般歳出でわずかながらトータルですれば減額になっておることは事実であります。
  185. 江田五月

    ○江田委員 ですから、末端のサービスについては、もちろん金は減ったけれども質が上がったなんて言われたらこれは困るわけですが、金額の面で水準は下がらない、こういう認識でよろしいんですか。
  186. 竹下登

    竹下国務大臣 正確に申し上げますならば、社会保障関係についての末端の給付水準というのは従来どおり、そしてプラス・スライド分、こういうことでございます。
  187. 江田五月

    ○江田委員 社会保障以外はいかがですか。ただいま私は文教という委員会の立場でお願いをしておるのですが、文教についてはいかがですか。
  188. 竹下登

    竹下国務大臣 文教については、いわゆる国庫負担法の根幹はそのまま守ってまいります。今度適用除外をいたしましたのは、あれは教材費でございましたか、これは既にいわゆる同化定着しておりますということであります。
  189. 江田五月

    ○江田委員 文教の場合ですと、教材費とかそれから旅費とかあるわけですが、じゃ教材費でとってみて、サービスの水準は下がらないんだ、そうすれば、地方自治体で組んでおる予算、これが基準財政需要額というものが増額になっておりますから、従来よりも二・八%ですか、増額した予算が組まれておらなければ従来どおりということにはならないということになるかと思うのですが、文部大臣いかがですか、そういうことになっておりますか。
  190. 松永光

    ○松永国務大臣 先生御指摘のとおり、文部省関係国庫負担法から外す分でございますが、それは旅費と教材費でありまして、旅費につきましては前年度と同じ額の財源措置、教材費については二・八%増の財源措置がなされることになっておるわけであります。  問題は、その財源措置に基づいて市町村がそういう予算を組んでくれるかどうかという問題も事実上の問題としては出てくるわけでありますが、文部省としては、既に都道府県教育委員会を通じまして、市町村に対して今までと同様の事業が執行できる旨の通知をしておるわけでありますが、この法律が通りますとさらに詳細に通知をいたしまして、そして教材の整備がなされるように指導してまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  191. 江田五月

    ○江田委員 今までと同様の事業が組めますよという通知をしておる、しかし現実に予算が今までと同様あるいは今の二・八%増というような予算が組まれておるかどうかということは、これはお調べになっていますか。
  192. 松永光

    ○松永国務大臣 この御審議を願っておる法律が成立したならば、速やかに、さらにこの今回の改正内容、財源措置、留意事項等について通知をして周知をさせる、こういうふうにいたしておるわけでありまして、それと相まって各市町村における所要経費の確保について積極的な指導をしていく、こういうことにいたしております。
  193. 江田五月

    ○江田委員 現実には、私がちょろっと調べてみただけでも、今までと同様の予算措置がなされているところもあるけれども、全部がなされていないなんて言いませんが、なされていないところもあるんですね。そういうところはこれから補正か何かでまたその分上乗せをしてというようなことをやるかもしらぬけれども、やらぬかもしらぬ。さっぱりわからない。各地方にしても、やっていいものやら悪いものやら、やるはやったが財源はないというようなことになるのかならないのか、そこら辺がわからないという非常に不安な状態に置かれておるわけですが、総理が心配ないのだ、最終的な末端の行政サービスは今までどおりやるのだと言うのですが、これは一つの指示と考えるべきであって、大蔵大臣もあるいは文部大臣もあるいはその他今回関係ある各大臣も、各自治体にそういうふうに、今までの行政水準を落とさないように指示をし指導をし、やらなければならぬと思いますが、大蔵大臣及び文部大臣の覚悟を伺って、ちょうど時間ですので私の質問を終わります。
  194. 竹下登

    竹下国務大臣 教材費の問題は、もとより文部大臣からお答えがあるでございましょうが、いわゆる交付税の中におきましてそれぞれの財政措置が行われておる。しかし、交付税は地方の自主判断に基づいて使われるものでございますから、私どもはそういう指導をいたしますけれども、地方自治の権限を超して命令するようなことはむしろしてはならないことだ。中にはもっとたくさんの予算を自主的におつけになるところもあるでしょうし、したがって、健全な地方自治における予算の執行を心から期待しておるというお答えが私から申しますならば限界でございましょう。
  195. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほどからお話が出ておりますように、教材費につきましては公費で措置をすることが定着しております。そしてそれに対する財源は、従来は補助が二分の一、交付税が二分の一となっておったわけでありますが、今回は総額とすれば二・八%増の財源措置がそちらに行きますよ、交付税の中身につきましてはこういう割合で積算されたんですよ、教材費の分としてこれだけの積算の上でこうなったんですよという通知が全体としてはなされるわけでありますから、したがってそれに基づいて措置されるように私どもとしては県の教育委員会を通じて指導してまいる、これでやっていく、こういうことなのでございます。
  196. 江田五月

    ○江田委員 終わります。
  197. 中川秀直

    中川(秀)委員長代理 午後六時より再開することとし、休憩いたします。     午後四時二十三分休憩      ――――◇―――――     午後六時十二分開議
  198. 越智伊平

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。松沢俊昭君。
  199. 松沢俊昭

    ○松沢委員 私は、国の補助金等整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案のうちの農林水産省所管法律関係につきまして、御質問を申し上げたいと思います。  まず、大蔵大臣竹下さんにお伺いいたします。  私、新潟の出身であります。大蔵大臣も島根県の出身でございまして、双方の県ともどもに、第一次産業であります農林水産業というものが基盤になったところの県経済ということになるんじゃないか、かように考えるわけであります。その農林水産業というのは今一体どうなっているか。  この前、私たちの農林水産常任委員会におきまして繭糸価格安定法の改正が行われました。これは大臣も御承知のように、生糸が大変在庫いたしまして、何とかしなければならない、こういうことで、今までありました異常変動価格安定帯、これを取っ払ってしまったわけでありますから、在庫は減るけれども、また養蚕農家も減っていくのではないか、そういう心配があるわけでありまして、現実に、今まで四十年代におきましては五十万戸以上あった養蚕農家というものが今十一万戸という状態であります。あるいはまた、つい最近、畜産、乳価の価格決定が行われましたけれども、乳価の保証価格は昨年と同じように据え置き、それから肉の方もやはり据え置き、こういう状態になっております。  一方、そういう農家の経済というのは一体どうなっているかということになりますと、これまた大変な状態でありまして、負債が固定化している。こういう状態で、国の方でも五十六年から酪農に対しましてはそのための手当てをやらなければならない、こういう事態に実はなっているわけであります。それじゃ、米作農家はどうなっているんだかということになりますと、米作農家もまた、昨年たった二・二%上がったきりでありまして、これまた、ほとんどが兼業農家になってしまっている、こういう状態であります。そして今、土地改良の償還の時期に入っておりますけれども、償還をすることができない、こういうことで、ある村では村の方で償還金を肩がわりをしなければならぬというような状態すら生まれているわけであります。そういう状態の中で、昨年は牛肉あるいはオレンジの自由化というものが、枠の拡大がございました。  こんなような状態でありまするから、全体的に農家経済というものが大変な状態になっており、また、日本の農業そのものも活力を失ってしまいまして、今、金融三法の審議をやっておりますけれども、資金の需要量というのは減退している、こういう状態であります。活力がないわけであります。  そういう状態でありますから、今、アフリカの方におきましては御承知のように飢餓で一億五千万に上るところの人たちが苦しんでいる、こう言われておりまするけれども、アフリカはそれでも食べる物の三分の一が足りないというのでありますが、日本の場合における穀類自給率というのは三分の二足りないという状態になっているわけであります。だから、考えようによってはアフリカよりももっとひどい状態になっている。ただ、金に任せて外国からどんどん物を買っているから飽食の国民生活が続いている、こういう状態なんでありまして、これはやはり、将来を考えた場合、大変重要な問題になってきているのじゃないか、こういうぐあいに私は考えておりますのですが、大蔵大臣は、これらの日本の農業の現状等についてどのような受けとめ方をやっておられるか、この点をまずお聞かせを願いたいと思います。
  200. 竹下登

    竹下国務大臣 私は決して農政の専門家でもございません。ただ、まさに先生と同じような、俗称裏日本に生をうけて、選挙基盤も、知識水準も含めておおむね同じようなところにおると思っております。したがって、そういう松沢さんの体験から、養蚕から乳価あるいは総合した畜産物価格、米作農家、そして土地改良の自治体による償還の肩がわり、また、昨年のいわゆる牛肉、オレンジ等の輸入問題等を松沢さんなりに消化をしながらの御質問でございます。  確かに、最終的におっしゃいましたいわゆるアフリカの飢餓問題、しかし実態からすれば自給率は高いじゃないか、それはそのとおりであると思っております。したがって、食糧の自給率という問題については、なかんずく主食等、私どもはゆめゆめそのことを忘れてはならない課題だというふうに考えておるわけであります。  そこで、農村全体を見ますと、私なりの感覚でまいりますと、いわゆる兼業農家がどんどんふえてまいりまして、俗に言う専業農家というものの数は減ってきております。その中に、しかし、かつてお互いが青年運動等しております当時の諸君か既に青年ではなく、六十歳の老人になっておりますが、その後継者の中で、時にお会いずれは、なお農業に対する大きな希望を持ちながらそれに専念しておる諸君を見ますと、これはある種のノスタルジアも含めながら、大変私どもは感動を覚えることがございます。したがって、それらの諸君というものをエンカレッジしていくためには、私は政策上の誤りを犯してはならないと思います。そして、それらの方々の自立心というものを刺激するための施策として、農業とてこれは一つの産業でございますから、いわばその自立心の中におきまして、政策的には、感覚的に申しますと補助から融資へというふうな方向へ移っていっておるではないかというふうに現状を私は認識をいたしておるところであります。  しかしながら、補助から融資へと申しましたところで、それぞれの基盤というものはやはり規模の拡大とともに進めていかなければならぬ、そこに農業基盤でございますとか、あるいは林業構造改善でございますとか、あるいは漁村の近代化の問題でございますとか、それぞれが予算の上でも形づくられておる。したがって、食管会計等の毎年の三角がございますので、予算全体としては数字で見る限りにおいては減ってきたな、こういう印象は私も持っております。問題は中身であろう。そういう意味におきましては、今後ともそういう貴重な御意見を承りながら、もとより農林水産省を中心にして、私どもも予算編成に当たっての調整権の範囲内で御協力を申し上げなければならないという問題意識はひとしくしておるところではなかろうかと思うわけであります。
  201. 松沢俊昭

    ○松沢委員 そこで、今大臣の方から補助から融資ということが言われたわけでありまするが、補助も金だし融資も金だから、金には確かに変わりがないと思うのでありまするけれども、私は、農業だとか林業だとか水産業というものは、工業化のできない分野がそういうものなんじゃないか。したがって、第一次産業というものは第二次産業の工業と比較した場合、効率が非常に悪いわけですね。しかし、第一次産業がなかったならば第二次産業の発展というものはないわけでありますから、したがって、その第一次産業に第二次産業の効率のいい、稼ぎ高のあるところから援助、配当、こういうものをやるという考え方に立って農林水産業というものを考え、農林水産業に対する補助というものもそういう見地に立って考えていく、これがつまり農林水産業に対する補助でなければならないじゃないか。  融資の場合におきましては、例えば牛を飼うから素牛の金を借りる、しかしこれは五年なり六年なりすれば元を取って利益を上げる、そのために金を貸してくれ、こういうことなんであります。あるいはまた、つなぎの資金が足りないからその分貸してくれということなんでありまして、これは農業における補助と農業における融資とは根本的に違っていると私は思います。  そういう点で、融資も補助も何か同じような考え方にどうも受け取られているような気がいたしますが、大蔵大臣、これはどうお考えになりますか。     〔越智委員長退席、堀之内委員長代理者     席〕
  202. 竹下登

    竹下国務大臣 私も、日本人が世界一勤勉であり、世界一知識水準、学歴をも含めて高い国民でございますから今日の第二次産業の点において世界の一等国になった、逆にそれが貿易摩擦というようなものも招来しておると思います。かといって、国際分業でこれは済ますべきだなどという愚かな議論にくみするつもりはございません。まさに食糧安全保障の立場からも農業は必要でございますし、と同時に、国土保全とか環境保護とか、まさにお互い生まれたふるさとを思い出せば、私どもは今まだ田園に対する大変な郷愁を持っております。これは、話が横道にそれますが、例えば、これは時代の趨勢でございますし、私はそれ自身に反対するものじゃございませんけれども、労働時間の短縮というような言葉を聞くにつけ、我々が青年のころ、あしたに霜を踏み分け、夕べに星をいただく、こういうのは私はまさに田園賛歌ではなかったか、こういう一つの郷愁もございます。しかし、郷愁だけで現実の施策は実行されるものではありません。  そこで、今おっしゃいました補助という問題は、これはいわゆる資源の再配分と言った方が適当でございましょう。あるいは、税制、予算の持つ性格からいえば所得の再配分とも言えるかもしれません。しかし、あくまでも私どもが自立ということを考えました場合には、もとよりその資源の再配分としての補助政策は必要でございますが、より自立心というものからいたしますならば、お互いが切磋琢磨していく場合、私は融資制度というものにも大きな意義を置かなければならない一つの施策ではなかろうかというふうに考えるわけであります。  私も、今年度予算におきまして、いわゆる質的充実の具体例ということで補助から融資へということから、御議論をいただいておるそうでございますが、農業改良資金制度の再編拡充の問題でございますとか、農用地経営規模拡大資金の貸付枠、十億円でございましたか、の創設でございますとかということに一つのそういう融資制度の力点を見出した。もとより農林水産省で立案されたものでございますが、調整権ある立場からそれらに力点を私なりに感じさせていただきました。いま一つは、いわゆる活力ある村づくりでございますとか、そうした問題につきまして一つのロマンのようなものを今でも感じさせていただいております。そして、別にすぐ工業生産化するわけじゃございませんが、やはり世界の推移の中に、バイオテクノロジーというようなところ予算の際に非常な興味と関心を持たせていただいたわけであります。  これからもやはり、私はたまたまその辺の育ちでございますけれども、そういうものを振り返りながら、農政そのものに対して、私どもの後を継ぐ若い人がいわゆる意欲を持ち得るような諸施策、環境整備に努めなければならないと感じております。
  203. 松沢俊昭

    ○松沢委員 大臣、いろいろと述べられたわけでありまするけれども、三十六年から農業基本法が制定されまして、ずっと構造政策が進められてまいりましたね、規模の拡大、選択的拡大ということであの当時は、もう米だけの時代じゃないんだ、畜産三倍、果樹二倍なんだ、こういうキャッチフレーズでありましたし、それから価格政策から構造政策という方向に進むんだ、こういうことを言われたわけでありますが、それから二十数年間たったわけです。結局、政府の言うとおり動いたところのいわゆる模範生、これがみんな今、固定負債を抱えて身動きのできない状態に実はなっているわけであります。今の大蔵大臣の、若い者にいい農村を継がせたいというお気持ちはわかりますけれども、政府のやってこられた施策によって、その言うことを聞いていた者、優等生がみんな転落していっている。みんなというわけではありませんが大方転落しているということになると、中曽根総理が戦後政治の総決算をやるということを言っておられますが、中曽根さんの総決算は我々とは違っているのでありますけれども、この辺で農政の総決算もやはりやっていかなければならない。そうして今までの過ちを直していく。そしてそのためには、農業にもう一腰入れなければ、どうにもならないおんぼろになった農業、あるいは二百海里時代を迎えたところの水産、あるいはまた山の問題、こういう問題の解決はできないと私は思うのです。そういう点では、臨調路線というのは大きな誤りなのじゃないかと私は思うわけであります。その臨調路線に沿って今回補助金のカットをほかの補助金並みにやられた分には、大蔵大臣の言われるような農村はでき上がらないと思う。やはり臨調の答申そのものの過ちを指摘しながら再建のために動いてもらわなければならぬのじゃないか、こういうぐあいに考えるわけであります。  そういう点、せっかく農林大臣も来ておられますので、農林大臣の方から御所見を伺いたい、こう思います。
  204. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 松沢先生にお答えします。  私への質問は、補助金の削減で農政がどうなるかというふうに理解しているわけですが、先生御存じだと思いますが、日本農業というのは特に自然環境に左右されます。そういう形であるから、日本の農業の特異性というのは、経営規模が小さいとか、収益性が少ないとか、作目が多様化している、こんなことでございまして、補助金日本の農政を進める上において非常に大切な部門である、重要な部門である、このように考えております。  今度の補助金一律カットの場合につきましては、大変厳しい国の財政のもとにやむなくこうなったわけですが、そういう場合におきましても、各地方自治体等におきまして、例えば交付税あるいは建設国債等でその不足を賄うというようなことでございます。そんなことでございまして、いろいろな点がございますが、農政の推進においては心配がない、支障がない、このように私は考えておるわけでございます。
  205. 松沢俊昭

    ○松沢委員 農林大臣は、補助金というのは大事だけれども、しかし今回のこのような措置は農政を推進する上においては心配はない、こういうふうにお考えになっているということでありまするが、これは大体こういう審議にも問題があると思うのですね。五十九本も一まとめにまとめて、各常任委員会にまたがっているものを一括して審議してなんといったところで、これはうまいぐあいに審議はできないわけです。農林省の方の法律にしましても十四本あるわけでしょう。それで行革関連法案の年金ものも含めますと十五本。しかし、この十五本の補助金のカットの総額は、これは農林省からもらったわけでありまするけれども、全部で二百二十九億三千万ということですね、法律関係のものは。これは水面上に見えるものなんですよね。ところが、政令それから予算でつけられておりますところ補助金というのは四百四十二億一千万ということでしょう。約倍近いのですね。これは水面下にあるわけですね。ちょうど氷山みたいなものですな。そしてその総トータルというものが六百七十一億四千万ということになるわけでございまして、そういうことからしますと、これは支障がないなんというものではないじゃないか。  この中で一番大きなものは何であるかということになりますと、例えば土地改良の関係の金で、これは大幅に削減されるわけでございます。さっきも私は申し上げましたけれども、償還するところの金というのが固定負債化しているのです。そういう状態の中で、きのうはこの土地改良の問題について我が党の島田委員に大蔵大臣お答えになったそうでありますね。  それはどういうことかといいますと、例えば国営かん排の場合におきましては国が六〇、県が二〇、それから地元が二〇、こういうことなんですね。それが今度は国が五五になって県が二五になって、したがって受益者の地元には負担をかけないのだ、こういうことであるし、それからもう一つは、六〇が五五になれば、金額は同じだとなれば面積がふえるのだからむしろ土地改良事業は進むのじゃないか、こういうお答えがあったというのですね。私は、これほど詭弁はないじゃないかと思うのですよ。  なぜそうかと申し上げますと、県の方で持ち出しをしなければならぬわけでありまするから、確かに持ち出した分は特別の起債を認める、そして元利償還の場合におきましてはその二分の一は国の方で面倒を見てやる、だからそう心配したものじゃないじゃないか、こういうお話なんであります。しかし、県知事は何も土地改良ばかりやっているわけではありませんで、いろいろな仕事をやっているわけでありますから、そんな煩雑なことをやって持ち出しをさせられるよりも土地改良事業をやらなければ一向問題ないじゃないかということで、やる気を起こさない、こうなったならば、幾ら土地改良を進めようとしても進まないのですよね。だから、六〇が五五になれば五%面積がふえるから土地改良事業が進むなどという答弁はいただけない答弁なんじゃないか、こう思いますが、これはきのう大蔵大臣お答えになったというから、大蔵大臣から答えていただきたいと思うのです。
  206. 竹下登

    竹下国務大臣 厳しい財政事情のもとにあって、これは聖域を設けることなく、とにかく一般歳出を前年度以下にしよう、そこで、ことしお願いをしたわけです。しかし、土地改良にいたしましても、もろもろの公共事業についてだれもが進捗率を上げたいという一つの気持ちがある。さようしからば補助率が下がった分をいわば地方がそれだけ余計負担していただくことに結果としてはなるわけでありますが、そうすれば事業費そのものはいささかでも伸びていくというところにこのたびの投資的経費部門に対するこの補助率問題に対する救いがあった、予算折衝の段階でそのように私自身は感じております。  ただ松沢さんおっしゃいましたように、さはさりながら、それをいわば起債等で補てんをして、そうしてその元利償還を見てくれるといったところで、今年自体は去年に比べれば県の持ち出しはそれだけ多くなる、そういうところに昨年よりも負担が余計かかることに対する、いわば土地改良に対する意欲を失ってしまうのではないか、こういう論理だと思うわけであります。そこのところは、都道府県等に対して十分な理解を得ながら、事業自身は進捗していくように誘導していかなければならぬ課題だと思うわけであります。  この問題は、結局、相互理解の問題が深まるならば、現実、今国と地方のいわゆる費用負担のあり方はどうか、こういうことを議論した上での、ことし一年だけの暫定措置ということでお願いをしておるわけでございますが、私は、これは相互の緊密な理解の上に立って、それだけの意欲の減退というものはもたらすことのないような御理解はいただけるものではないか、また、いただける努力をしていかなければならないというふうに考えておるものであります。
  207. 松沢俊昭

    ○松沢委員 そういう理解をしてもらうという立場に立ってきのうの御答弁であった。しかし、私の指摘したこともあり得るわけでありますから、そう要するに簡単に面積がふえるということにはならないと思う。これも認められるわけですね。
  208. 竹下登

    竹下国務大臣 いわば同じ国費あるいは若干の減額の国費をもっていたしましても、事業費は若干ふえていく。それはいわゆる予算の配分につきましては、それぞれの事情で工期等がございますから上がり下がりはあるでございましょうが、個対的には事業費そのものは前年度を上回る事業費が確保されてきた。物価の値上がりも若干はございますにいたしましても、それを差し引いてみても、事業費あるいは今松沢さんおっしゃっている面積といたしますならば、事業量とでも言った方がいいかもしれません、それは相対的には若干の伸びが期待できる予算措置になっておる、こういうことでございます。
  209. 松沢俊昭

    ○松沢委員 いや、そういうことにはなっているにしても、しかしそれはやはり理解をしてもらわぬと、今私が指摘したようなことも起きるということもあなたは理解できるでしょう。
  210. 竹下登

    竹下国務大臣 都道府県で、仮に去年と同額というものが補助金として交付される場合、我が方は去年と同じ額でしか補助裏は出さないよということになれば、それは事業費は補助率がカットされた分だけ減ってくる、こういうことにはなりますが、それは、あとはこのようにしてその財源の補てんがございますということを極力理解していただく努力をすれば、私は、もっとやりたいという農家の方々の意欲と調和して、事業費そのものがこれによってダウンしていくであろうというふうには考えないし、そうあってはならぬ。やはり我々といいますか、農林省当局の、そして関係者の皆さん方の理解と協力を求めていかなければならぬ課題だと思います。
  211. 松沢俊昭

    ○松沢委員 そこで農林大臣、さっき、要するにそう支障はない、こう言われましたのですけれども、ことしの農林水産予算ですね、それは昨年と比較すると九五・四%ということになるのじゃないですか。  そこで、今までの農林水産省のやりくりというのはどういうふうにしてやっておったかといいますと、臨調攻撃を受けて、そしてその中に生き延びるためには農林省の事業はなるべく減らさないようにする、しかし銭が足りない、だから足りないのは食糧管理特別会計を減らしていく、こういうやりくりが行われてきたことだけは間違いないと思うのです。ですから結局、五十五年と比較いたしますと、食糧管理にかかわるところ予算というものは三〇%も減っているのじゃないですか。そうしてさらに要するにこの補助に手をかけられるということになれば、今までと比較して支障がないなどということは所管の農林大臣が答えるところの筋合いのものではないじゃないか。私も大臣と一緒に農林水産行政を発展させるために努力をしているというのに、大臣が心配ございませんなんて言われたら、これはやっぱり農林水産関係をやっているところの連中というのは腹が立つのじゃないですか。そういう点はどうお考えになりますか。
  212. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生にお答えいたします。  実は先生の方が私よりはるかにお詳しいわけで、いろいろやりくり等は御存じですが、私実は十分それはよく理解しておりませんが、今国の財政が大蔵大臣がおっしゃったように大変厳しい状況でございます。そんなことで、昨年に比べまして減額になる、これは間違いございません。ただ、そういう形の中に、やはり農林水産業というのは国の基本でございまして、食糧を一億二千万の方に安定供給する、そういう大切な役目を持っておりますが、そのことに必要な予算は最小限確保しておる、また、そういう形の中にひとつ財政を資金的に充実し効率よく運営しておるということでございまして、十分とは言えませんけれども何とかやっていけるのではないか、このように思っておるわけであります。  そんなことで、先ほどの高率補助の引き下げによる地方公共団体負担の増分についてでございますが、やはりこれは先ほど大蔵大臣が言ったようなことでございますが、地方公共団体の財政運営に支障が生ずることのないよう所要の地方財政措置が講ぜられることとなっております。  そんなことでございまして、農業基盤整備事業は先生御指摘のとおりこれからの日本の農政のいわゆる基本でございまして、構造政策をどうやっていくか、その場合に経営規模の拡大等の一番中心になる仕事ですから、その仕事につきましては支障はないと考えております。
  213. 松沢俊昭

    ○松沢委員 支障があるとかないとかということは、これは水かけ論になりますので、これ以上申し上げません。申し上げませんが、さっき私指摘しましたように、減額部分というのが全部で六百七十億円を超える、こういう状態になっているのでありまして、そのうち法律関係のものはその三分の一にすぎないわけですね。これは農林省の方で出された資料でありますが、これは今回直接この予算には関係がないと思いますけれども、昭和五十八年三月十四日臨時行政調査会で最終答申が行われましたですね。  その最終答申の中で「農業」の項を見ますと、食糧管理制度を手直しをやる、逆ざやの解消、それから奨励金の依存から脱却を図るために奨励金の単価の引き下げ、それから良質米奨励金、自主流通助成についてもこれは引き下げる、こういうようなことが挙がっているわけでございます。そうなりますと、水面下にあるのが二倍だと申し上げましたけれども、さらに七月になるとこの問題もやはり出てくるのじゃないか、こう思います。これはもちろん農林大臣頑張られると思いますが、大蔵大臣が要するにこの五十八年三月十四日のこの答申を尊重されるということになりますと、米価そのものにも大変な変動が起きる、こういうことになると思いますが、その点の考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  214. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今のお話は、いわゆる良質米奨励金の取り扱いについての御質問だと考えておりますが、先ほどお話がございましたように、臨調答申におきましても、これにつきましては奨励金単価を引き下げるという答申がございます。  したがいまして、政府といたしましては、この答申の指摘を踏まえて、自主流通米の流通の実態や政府米の財政負担との関連等を見ながら、この問題について引き続き検討を加えていきたいと考えております。
  215. 松沢俊昭

    ○松沢委員 もう時間がなくなりましたので終わりますが、中途半端になりましたけれども、やはりこの行革路線というものは決して日本の農林水産業のためにはならない、こういうふうに私は確信をいたしております。  そういう点で、ひとつ農林大臣、所管の大臣でありますからもっと頑張ってもらわなければなりませんし、大蔵大臣も、これはやはり農林水産業というものが大事だという御理解があることは承っておりますから、米価のところまで及ぶようなこと、これは避けてもらいたい、こういうことを要望申し上げまして質問を終わります。
  216. 堀之内久男

    ○堀之内委員長代理 中西績介君。
  217. 中西績介

    ○中西(績)委員 私は、昭和五十六年行革特例法が制定をされました、その中で文教関係について主に質問をいたしたいと思っております。  そこで、まず文教関係の中でございました公立義務教育諸学校の学級編制、教職員定数の標準に関するもの、二つ目に公立高等学校の教職員定数の標準に関するもの、三つ目に児童急増地域市町村における指定都市、この校舎の新築あるいは増改築国庫負担二分の一を七分の四に、この分について六分の一カットする分、そして四つ目に私学共済組合長期給付費国庫補助百分の十八を四分の一カットするという、この四つが関連すると思うのでありますけれども、この点でこの三年間どのような影響が出てきたのか、簡単に触れていただきたいと思います。
  218. 阿部充夫

    阿部政府委員 お答えを申し上げます。  いろいろ御指摘がございましたが、とりあえずまず一番中心になろうかと思いますので、義務教育のいわゆる四十人学級の問題についてお答えさせていただきたいと思います。  四十人学級問題につきましては、先生御案内のように昭和五十五年度から十二カ年計画がスタートいたしました。当初の計画におきましては、児童減少市町村と一般の市町村に分けまして、児童減少市町村につきましては六十年までに四十人学級を達成する、一般の市町村につきましては五十八年度から六年間でこの達成を図る、こういうような計画になっておったわけでございますけれども、その後御承知のような事情でその推進が抑制されてまいったわけでございます。  六十年度の予算におきましては、この児童減少市町村関係のいわば残っておりましたものについて、一挙にこれの解決を図るということにいたしました関係上、児童減少市町村につきましてはいわば当初計画に追いついたという状態になっておるわけでございます。しかしながら、その他の市町村につきましては五十八年度からスタートということで、五十九、六十と三年間を経過している予定のものがまだ手がついていないということで、その点については今後の宿題ということで残されている。  四十人学級問題を中心に申し上げますとそのようなことでございますけれども、その他配置率の改善等につきましても、ほぼ同様に、計画の達成につきましては当初計画よりかなりのおくれを見ているというのが現状でございます。
  219. 中西績介

    ○中西(績)委員 今お聞きしますと、特に出てまいりました問題として学級編制あるいは教職員定数の標準に関する経過措置、この部分の説明がございましたけれども、この四つのうちここに主要なもの、集中的なものがあるわけでありまして、この問題を論議する際に、私は大蔵大臣にお聞きしたいと思うのです。  ちょうど大蔵大臣が前、大臣をやっておられる時期、五十四年にさかのぼるわけでありますけれども、第五次学級編制等改善計画案を作成した際に、我々社会党は五年で、そして文部省は九年、ところ竹下大蔵大臣反対をし、そしてその結果は十二年という、こういう長期にわたる期間延長をしたということが明らかになってまいりました。そこで谷垣文部大臣との間におきまして確認メモがあったと言われています。三年後に各般の状況を勘案しその計画につき検討するという。もうこれは谷垣文部大臣を大変泣かせてこういう確認をしたということでありましたけれども、この点どうでしょう。
  220. 竹下登

    竹下国務大臣 中西先生、泣かしたという表現は別として、これは事実は事実でございます。あの際、四十人学級の議論をしまして、私もお恥ずかしい議論をしたと思うこともございます。我々の時代のことを考えまして、あれはお互いが野育ちで、五十人学級にも六十人学級にもおったからかえって切瑳琢磨してお互いが成長してきたじゃないか、たくましく、というようなことを言いましたら、いやそういう五十人学級、六十人学級だったからおまえ程度の者しかできなかったじゃないか、こういうやりとりをいたしまして、それでそのほかに、相撲でも強いのは大部屋から出るじゃないかとかいう、まるきりすっとんきょうな議論もいたしましたが、そこでぎりぎりあのとき調整をいたしまして、十二年間ということは私なりに、表現が適切だとは思いませんけれども、その妥結を総理官邸で最終的に行いましたときには、まさに芸術作品をつくったような気持ちに本当はなったわけでございます。  ところが、それから五十六年、五十七年、あのようにして世界同時不況になった。それで行革特例法でそれを凍結したという、私も行革の際の委員の一人でもございました。そうして、去年あれだけ議論した問題がこうなったなということに対して本当にじくじたる思いをしながら、しかし、現在の国家財政から考えれば仕方ないだろうということで、そのとき私はこの席に座らしていただいておりました。  それで今度、今局長からお答えがあっておりましたように、いわば減少市町村に限ってではありますけれども、これが一応の合意に達した。しかし、将来の問題はまだ残っております。が、そこで自分なりにほっとしたという気持があることは率直に申し上げます。
  221. 中西績介

    ○中西(績)委員 あったことはお認めいただけるし、その間におけるいろいろ在論議があったと思うのですけれども、この中で、一応文章表現いろいろあると思いますけれども、三年を加えた。文部省の案が九年ですからね、加えて十二年。そうすると、その計画につき検討するという意味は、この三年を将来どうするかということも含めてそうした話をしたのかどうか。例えば状況によってはこれを短縮をするという、こうしたことまで含んでおったのではないか、私はこう考えるわけでありますけれども、先般の五十六年の行革特別委員会におきましていろいろ論議をした際も、そうしたものを含めてあったのではないかと思ったのですけれども、この点どうでしょう。
  222. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに十二年という最終的に詰めましたときに、私、中身はそう詳しくございませんが、いわゆる標準法のことから、今度は生徒数から、そのときの教職員の方々の増減問題からずっと描きまして、それで十二年というのはまことに芸術作品だとそのとき思ったわけですが、やはり三年見直しということをつけておこうということも合意に達したわけでありますので、私どもの心の中には財政の好転とかそんなことが皆無であったわけではございませんが、私どもはこの十二年をいかにして順調に進めていくかということで、本当のところ、私自身は頭がいっぱいでございました。
  223. 中西績介

    ○中西(績)委員 ところが、先ほども申し上げましたように、行革特別委係員会におきましても論議をしたところでありますけれども、もう一つ、同じような悩みを持ち、同じような討論をして確認をしておる部分があるのですね。それは、五十五年度の予算を成立させる場合に、社公民三党で修正案を提出をした際の中に、その一項目に、四十人学級など教職員定数改善計画は、おおむね三年後に各般の状況を勘案して、その後の計画につき検討する、見直しをするという内容で、自民党を含みまして四党で合意をしておるわけですね。  私は、これはそのときにも確認をしたわけでありますけれども、当時行管庁の長官でありました中曽根現総理、渡辺大蔵大臣田中文部大臣、それぞれこのことについて認め、しかもその内容は、やはり大臣がこうして谷垣文部大臣との間におきまして確認メモを交わしたと同じように、見直しをする、こうした内容を含んでやられておるわけですね。私は、これはあくまで予算編成のための手段としてやったのではないだろうということを確認をしたんですけれども、この点やはりそうそれぞれの大臣認めたわけでありますが、この点について御存じですか。
  224. 竹下登

    竹下国務大臣 これは五十五年の予算、たしか予算が成立する直前であったと思っております。それで、当時御案内のとおり逆転委員会でございまして、だからそんなことを言ったという意味じゃございませんけれども、私も各党の方々との話し合いに出かけまして、真剣にそのことは承りました。  だが、もとよりその後の財政事情というものをネグってそういう合意を私が承知したわけではもちろんございませんが、その後おっしゃいますとおり、何分にも行革関連特例法を今日また延長していただかなければならぬような状態でございますので、あのときの、三年後に各般の状況を勘案し、その後の計画につき検討するということについては、いわば経済、財政の環境が極度に変化したということで行革特例法をお願いし、さらにそのまた延長をお願いする、こういう時点でございますので、言ってみればこれは党対党の話ではございますものの、私どもにも、もとよりこの事実を知っておったわけでございますから、責任がないとは言えませんが、そういうことをやる環境にないようになったとお答えせざるを得ないと思います。
  225. 中西績介

    ○中西(績)委員 少なくとも行革に関する特別委員会は五十六年ですからね。ですから、五十五年度の予算成立の際に今言うこうした四党合意、確認されたわけでありますから、財政状況というのはこのころから厳しいというのはわかっておったし、そうなってまいりますと、厳しい財政状況の中でありましても三年後にこれを見直すというその内容は、教育をやはり重要視したという、ここに論議の基盤があったし、これなしにはこうしたことは恐らく合意されたりあるいは確認メモが交わされたりということにはならなかっただろう、こう私は考えるわけであります。  したがって、今最後に大臣が言われたようなことでなくて、少なくとも三年後ということになりますと五十八年でありますから、その五十八年にはこうした点について十分検討し直す、こういう状況がそのときにあったわけですから、あくまでも予算編成のテクニックでなかったということを私は明確にしていかないと、これから後の問題等について論議をする際にこれはまた大変大きな問題になりますから、この点ひとつお答えください。
  226. 竹下登

    竹下国務大臣 御案内のようにこの五十六年、いわば五十五年は四百八十数億でございましたか剰余金が出て、戻し減税が五十六年度においてできたし、そういう議論がなされておる状態であったと思うのであります。したがって、まだいわば五十九年度赤字公債脱却という旗印をおろしておりませんでした。五十六年の決算から五十七年にわたっての歳入欠陥というもので、今度は五十八年に運悪く私がまた予算編成の衝に当たるようになっておるわけでございますから、したがって、その際、五十八年度予算編成に当たりましては、いわばそういう厳しい環境の中におきまして見直さなければいかぬという心境には率直にございませんでした。ただ、あのときの予算の概算要求のときにどのような議論をしたかにつきましては、ちょっと今記憶にございません。
  227. 中西績介

    ○中西(績)委員 私が言っているのは、こうした四党合意をする過程の中におきましてはこうしたいろいろな条件があったのだけれども、少なくともこの分については将来見直しをして少しでも回復措置を遂げていく。十二年間というのが余りにも長いという、こうしたことからこの問題が派生をし、そして修正をすべきだということで出てきたわけでありまして、したがって、その分をこのように三年後に云々ということになってきた。だから、ここの点については、財政が五十八年に云云ということのかかわりでなしに、これを合意した時期で物事の判断をしておいていただかないと、後のことまでずっと関連づけてまいりますと財政的なものが厳しくなってきたのでもう全くできません、そういうことが先行する中での論議しかできませんから、素直に、こういう二回にわたる確認、この点はひとつ大臣がどういう状況にあろうとも、あくまでもこの予算編成のテクニックでない、手段として用いたのではないんだという立場で私は確認をしておいていただきたいと思うのです。
  228. 竹下登

    竹下国務大臣 まず、五十五年度の予算の三月三日でございます。その五十五年度予算に対する社会党、公明党、民社党共同修正要求への回答ということ、これはおおむね三年後に各般の状況を勘案し、その後の計画につき検討するという際に、私は、ただ予算を本院を通過させていただくためのテクニックとでも申しますか、そういうことで議論されたとは思っておりません。これはまじめにそう思っておりますが、もとより諸般の情勢を勘案してということについては、いわゆる確実な自信が必ずしもなかったから我が党からの返事がそうであったというふうにも思われますが、まじめな議論の上になされたことであるというふうに私も考えております。
  229. 中西績介

    ○中西(績)委員 私がなぜこのことにこだわるかと申しますと、何と申しましても、世界的に見ましても日本の場合大変おくれておる、このことをどう脱却していくかという、この二十年にわたって遂げてきた学級における生徒の数だとか教職員の配置だとかをこの時期一年間棚上げしまして、そして発足をするという状況が出てきたときに、こうした五十四年のこの確認事項があり、それをめぐって予算編成をする際に少しでもそれを好転させていこうという願いの中からこうした話が出、その結果は、今大臣おっしゃるように予算編成のそうした手段、テクニックでなしに、各般の状況を勘案するということはあり得ても、少なくともこの十二年というものを意識してこれをやったということを今言われましたから、この点は一応お認めいただいたと確認をしておきたいと思います。  そこで、これに加えまして、五十五年の四月にさらにまた文教委員会などにおきましては単独決議をしまして、この十二年間を短縮するということを前提にしての決議がされておるわけであります。  このようにいたしまして当時の田中文部大臣は、就任早々に、この四十人学級編制計画は計画期間短縮で検討していきたいということを主要な柱として発言しておるわけです。ですから、ちょっと古くなっておりますけれども、この種の問題については、文教行政の中におきましても文部省の施策の中においても大変重要視する課題であったし、こうしてこの国会論議の過程あるいは政府間における調整、すべてがこうした問題で何回となく取り上げられてきておるという実態は見落としてはならないのではないだろうか、私はこう思っておるわけです。そういう意味で私、ここで申し上げておるわけであります。  そこで文部大臣に聞きますけれども、このようにして、かつて諸先輩の皆さんが、谷垣文部大臣にいたしましても、それから以降の私たちが接しました何人かの大臣、すべてこうした方向に向けて努力をしなくてはならぬということを言い続けてきたわけです。この点は大臣もお変わりないでしょう。どうでしょう。
  230. 松永光

    ○松永国務大臣 現行の四十人学級を含む定数改善計画、標準法の現行改正法をつくる上において関係者は大変な努力をされたものと私は理解いたしております。やはり財政当局の了解がなければ政府提案はできぬのでございますので、その関係で大変な関係者の努力があったろうと思います。そしてまた、文教委員関係の皆さん方の大変な熱意もあったので、そこでこの改正標準法ができたものというふうに私は受けとめておるわけでありますが、ただ、教育の充実を図りたいという熱心な先生方は、たびたび先生がおっしゃいますように十二年計画というのは長過ぎるじゃないか、もう少し短くすべきである、これもまた私としては理解できるわけであります。  ただ、恐らく大蔵大臣もおっしゃると思いますけれども、その後、第二次オイルショックですか、それに基づく世界同時不況等々の問題が起こったことから、まあないそでは振れぬということがありまして、十二年計画であるけれどもできれば少しは縮まるだろうという期待も持っておったわけでありますけれども、それが実は期待が満たされなかった。そうして約半年経過したことになるわけでありますが、六十年度の予算におきまして、厳しい財政状況ではありますが、先ほど局長が御答弁申し上げましたとおり、とにもかくにも小学校について、児童減少市町村すべてについて六十年度でこれが完成を見る、こうなったわけでありまして、これから私どもに課せられた任務は、残りの市町村の小学校及び中学校について、標準法に定めるとおり六十六年度までに完成するように着実に歩み続けていくということであろう、こういうふうに私は認識しておるわけでありまして、その務めを果たすべく懸命に努力してまいります、こういうことでございます。
  231. 中西績介

    ○中西(績)委員 私が大臣にお聞きしたいのは、こうした先輩の皆さんの涙ぐましい御努力、大変な期間と、そして内容を高めるための努力をしてこられたわけでありますから、その基本は、いろんな条件はあるにしても、やはり十二年間を少しでも可能な限り短くしていきたい、そうした気持ちは先輩大臣とお変わりないんでしょうということをお聞きしているわけです。
  232. 松永光

    ○松永国務大臣 最低条件は六十六年度、すなわち法律に定めるとおり完成をするということ、そしてできるならば先輩の人たちと同じように、少しでも早めることができればという気持ちには変わりはございません。
  233. 中西績介

    ○中西(績)委員 そこで、総務庁長官お見えですが、中曽根総理が当時行管庁の長官でありましたし、そうした確認も何回となくしてきておるわけでありますけれども、教育の重要性について答弁の中にも何回となく説かれておるわけであります。最重要課題として教育はあるべきだということを言っておるわけでありますけれども、長官はこの点について中曽根総理とお変わりないだろうと私は思うわけですけれども、どうでしょう。
  234. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 教育の問題は国家としての最重要課題であるという認識は、私も人後に落ちないつもりでございます。  実は、先ほど来のやりとりを聞いておりまして私も思い出したんです。私、当時自治大臣でございます。五十五年ですね。そのときに、自治省の財政当局を含め大蔵省、これは全部反対でした。谷垣さんにいろいろ説明を聞き、陳情を受けまして、おれは賛成だ、これはやろうやということで踏み切ったのが実際の経緯でございます。そのかわり竹下大蔵大臣には大変な御迷惑を財政的にはかけたかもしれません。  そこで、ことしのこの法案で一年延期せざるを得ない、こういうことでございますから、私は当時の経緯から見て、最初の九年という御主張が六十六年度まで十二年間に延びたわけですね、そのときに、これは一年延びるのは今の財政事情からしてやむを得ないが、一体それがために六十七年度以降に延びるというようなことはないだろうな、こういうことを事務当局にただしましたら、先ほど来御答弁のように、ことしは児童数が減少した市町村ができて大丈夫だ、こういうことでございましたから、ならば今回の措置は財政事情からやむを得ぬということで私は賛成をしたわけでございます。  この気持ちの中に、これは事情が許せば、文部大臣がおっしゃるように期間短縮する方がベターだと私は思っております。しかし、今日の財政事情から見てそれがなかなか困難である、少なくとも六十六年度以降に延びないようにだけはぜひしなければならぬ、かように考えておるわけでございます。
  235. 中西績介

    ○中西(績)委員 熱意については我々と一致するわけですね。後半の部分で言われたのは、六十六年という一定の枠、それを今度は少しでも短縮をするような論議にさせぬような答弁をしておりましたけれども、いずれにしましても、何としても四十人学級、一学級の生徒数編制、あわせまして、それに伴う教員定数の改善寺含みまして、この際にやはり基本的に論議をしておく必要があるのじゃないだろうか。なぜなら、今、後藤田長官が言われましたように、財政というのがもう必ず付随的に出てくる。そうすると、この一年というのが次にまた一年という可能性だって出てくるわけです。ですから、この四十人学級というものの持つ意味をもう少し論議をしておく必要があるんじゃないだろうかと私は思うのです。  特に、前回のときにも文部省の局長と討論をする過程の中から私が確認ができましたのは、例えば五十人あるいは四十五人あるいは四十人を比較した場合に、最も理想的なものは二十五人から三十人、これは九大、広島大学、名古屋大学などの大学関係の調査結果あるいは全国教育研究所連盟の調査によりましても、あるいはアメリカイギリスあたりの調査によっても、数の点からしますと四十名よりはるかに低いということです。これが一つ。  それからもう一つ。時間がありませんから簡単に申し上げますと、四十人と四十人以上、五十人くらいと比較をした場合に、集中力、集中性にすぐれたものがあり、授業が大変しやすいという、このことは文部省も認めているわけです。さらにまた、学級の秩序を維持しやすい条件がこの中には含まれている、あるいは児童生徒間の協力活動がやりやすいという。  先ほど大蔵大臣が言われましたように、私も七十人近い学級で育った一人です。ところが、雑草みたいにはなったのかもしれないけれども、私たちのクラスは、当時小学校であのクラスには近寄るなというぐらいに、もうとにかく乱暴で始末がつかなかった、そういう状況を私は経験した一人です。ですから、ここにありますように、今一番問題になっておる集中性、それから、そのことによって学級における秩序がどう保たれ、連帯し、そして活動がしやすくなるかという今一番問われておる部分が私はここにはあると思うのです。  かつて私がある大臣と討論したときに、少なくとも私も教職の経験がございますので、五十名いる、五十五名いるクラスを当時の高等学校でやった場合と、それが今度は選択によって半分になった場合の例なんかを挙げて、教師の視角の中に入る、そうするとその生徒との関係が、十分絶えず対話ができる。左を向いたときに右の者が視角から外れてしまうということは、やはり教師にとっては大変な過重になるし、生徒にとっては人間的なかかわりというのが薄らいでくるわけですね。私だって、やはり話をするときにはそうなんです。ですから、この点からいたしましてこの範囲内と、こう言ったところが、その大臣こう言ったのですよ。いや、アイスホッケーなんかの場合にはこちらが見えるようになっている、だから少人数にする必要はないというような話をしましたから、私は、もうそんなばかげた話、討論はしたくないからと言ってやめたのですけれども、もう少し実態と現場の状況というものを判断してほしいということをその際に私は申し上げたわけであります。  いずれにしましても、こうした四十人学級の持つ意味、このことが、今の時期に最も私たちが期待をし、要求をしておる部分であるということの理解をぜひしておいていただきたいと思うのです。このことが、将来三十五人学級を目指すということにつながっていくためにも、私は何としても必要だと思うのです。というのは、もうこれは御存じだと思いますけれども、大規模校の場合には、四十人以上の、四十五人学級なんですよ。しかも、それは対人関係のない、完全に孤立化したような子供たちが集まってくるようなところで特にそれが多いわけでしょう。ところが今度は、我我が育ったような山村あるいは田舎の方に参りますと、生徒の数というのは二十五人だとか三十人程度で、例えば四十五人を超えれば二クラスになるわけですから、そういうところでは、周囲の社会的な人間関係というのは割合深い中で、なおかつそうしたものが整えられておる。ですから今、非行問題だとか暴力問題、特に中学校なんかで出てくる状況というのはどういうところに多いかということを考えますと、はっきりしているのは大規模校であり、そうした都会の人間関係の薄いところでそういうものが出ておる。一学級の数はどうか、四十五人だという。こうしたものが具体的な例として出ておるわけです。  ですから私は、この四十人学級、わずか五名だけれども、これの持つ意味をもう一度政府においてはとらえ直しておく必要があるのじゃないか、こう考えるわけです。大蔵大臣、この点について感想があればお聞かせいただきたいと思います。
  236. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに四十六人になれば、その半分半分、二十三、二十三と、それはまことに、私も三年三カ月田舎の中学校で英語の先生をしておりまして、ちょうど私のところはもっと田舎でございましたから、本当に一学級、今でも三十五人程度でございました。一年が一学級で、しかも三十五人程度、それは山村、僻村でございますから。そのころのことを思い出してみましても、確かにそういう適切な感じは受けないわけでもございません。  したがって、私も、五十五年、大蔵大臣に初めてなったときでございますので、財政の厳しさの中で、今の中西さんおっしゃったのと同じ趣旨を谷垣君からじゅんじゅんと予算折衝の際に説かれました。それで結局、たび重なる大臣折衝でまとまらぬままに、とうとう総理官邸の三役折衝に持ち込んだわけでございます。そのときに、別室へ入りまして、当時はまだ、もうやめました田中敬君が主計局長でありましたが、相談をして、その谷垣君の趣旨を私も心の中で賛同しながら工夫してやったのが、では十二年間でやろうじゃないか、こういうことであったわけであります。  今御指摘なさいますように、私どもいささかその辺が気のつかないことがございます。確かに人間的かかわりの比較的多いところが、結果として今日四十人学級そのものになっておる。したがって、大規模学校のところは、仮に数名のいわば減がございましたにしても、割ってみればやっぱり四十四とかというのが精いっぱいでございますから、したがって、そういう人間的かかわり合いの比較的少ない地域がなおそういう状態になっておるから、そこにいろいろな問題が発生しておるということについては、心してお話を聞かしていただきました。  これからの課題ということになりますと、今おっしゃいます教育的見地からのいわゆる教師としての集中性でございますとか、そういうものに対することは念頭に置いておかなければならぬ課題だな。先ほど、後藤田当時自治大臣で最初はおっしゃるとおり、最終的には谷垣君の大変な努力だったと思います、説明で我々も合意に達したときにほっとした心境を申し上げると同時に、今まさに教師の体験の中からおっしゃった問題は、心に深く刻み込ましていただきます。  ただ、予算ということになりますと、いつまで大蔵大臣やっておるというわけでもございませんが、なかなか難しい問題もある。理想と現実のさなかに迷える小羊というような心境もいたします。
  237. 中西績介

    ○中西(績)委員 後段の方は私は余り聞かないことにして、とにかく先ほども総務庁長官は、そうした話をお聞きいただいて、これに賛成をする、そういう態度をとられたということをお聞きしましたので、その関係は、財政問題ということが出てくると、そこを財政から全部を抑えていくという、どうも大蔵大臣もそれから総務庁長官もこうしたお考えのような気がするのですけれども、しかし、この教育的な側面からする考え方については、私はぜひ理解を深めていただければと願っておるわけですけれども、この点はどうでしょう。
  238. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 私は中西さんの御意見を伺っていまして、やはり教師としての現場の御経験を踏まえての御意見、四十人がいいのか三十五人がいいのか、三十人がいいのか、ここらは私にはわかりません。ただ、余り生徒が多いと、やはり教師としては大変やりにくい、したがって子供の十分な指導もできない、この御主張はよくわかります。また、余り数が少ないと、これは切磋琢磨ということができませんから、そこら何人がいいのかということは、これは相当議論の余地があるだろう。  しかし、いずれにせよ現在はまだ四十人学級そのものができ上がってないわけですから、まず我々としてはやはり現実の政治を担当しておるわけですから、財政問題ということもこれはやはり頭に置きませんと、理想論だけではなかなか物事が解決しない。しかし、中西さんのおっしゃる理想的なお考え、これは私は十分理解ができるところでございます。
  239. 中西績介

    ○中西(績)委員 そこで、このことはもう一度文部省の方から、各大臣、資料を取り寄せていただいて、じゃ世界的にどうなっているかということを一回、全部調査した結果があると思いますから、文部省お持ちでしょうから……。  私たちがこう見てまいりますと、問題になる部分というのは、例えばトルコだとか、それからフィリピンだとかあるいは中国が四十五ですね。それからガーナ、ケニア、それからスーダンなどくらいが四十五以上ですね。韓国もあるんですね。ですから、他のところは大体全体的にもうその域を脱して四十人というのが常識だし、先ほど申し上げたように、各大学の調査結果なりあるいは各国国のそうした教育機関の研究結果というのは、余り少ないと団体生活の中における先ほどから皆さんの言っている部分が欠ける面はありますけれども、しかし、三十人程度おれは、これはもういろんなボールゲームにしましても何にしましても完全にできるわけですからね。この点をやはり十分認識をしておいていただきたいと思うわけです。ですから、ぜひ文部省はそうした面について資料等もう一度念のためにもお配りいただければと思います。これは要望しておきます。  そこで問題は、こうした結果、五十五年から実際に手をかけてきたわけでありますけれども、六十年度までの間にどれだけ達成しておるかというのを見ますと、時間がありませんから私の方で申し上げますが、四十人学級を見ますと、達成率は九・四二%ですね。それから配置率などの改善が一七・二%になっています。その内訳は細かくございますけれども、最もおくれておるのが学校事務職員が一三・六六%です。したがって、全体的に四十人学級、それから配置率の改善などを含めましてしますと、一三・二%にしか達していません、六十年度を含めまして。そして、あとが六十一、六十二、六十三、六十四、六十五、六十六ですから六年間、ちょうど半分に年限は達しておるのに、結果的には今一三・二%にしか達しておらないという状況があるわけであります。  ですから、内容等についてはもう私ここでは申し上げませんが、ぜひ大蔵大臣に知っておいていただきたいと思いますのは、これから後、教職員定数の自然減がどうなっていくかということを見ますと、六十年というのは三千六百四名です。そして、四十人学級で千八百三十五人入れて、減少地域における小学校だけはこれで一挙に解消していくという措置をとりましたと言うが、配置率の改善が六百六十九ですから、これは三千六百四名に達していないんですね。減少する数の中でこれを消化しておる。  ですから、私は文部大臣にちょっとお聞きしたいのだけれども、今度のことし六十年度はこうした措置をいたしまして抑制を一部解除したような形になったわけでありますけれども、これは文部あるいは大蔵関係の中で、何か話し合いでほかのところを犠牲にしてこの部分をやったとか、あるいはいや、そうじゃない、これはあくまでも十年間を短縮するぐらいの気概でもってこの措置をやったんだ、あるいは自然減の数があったのでこういうふうな体制をとったんだ、それが大蔵省を説得し得たのだ、いろんな意見があると思うのですけれども、どういうところから本年度は一挙に――これでも随分おくれているんですよ。先ほども御説明あっておりましたように、自然減のないところで、減少市町村でないところで実際に学年進行でやらなくちゃならぬ部分が既に三年ばかりおくれてきておるわけですから、この点、どういうところでこれをことしは手がけたのか、どうでしょう。
  240. 阿部充夫

    阿部政府委員 先生御案内のように、大変厳しい国の財政状況の中で、また行革審の方からも引き続き極力財政事情を考慮して抑制をしろというような御指摘もいただいておるわけでございますので、そういう中での検討の結果、自然減が先生御指摘のような相当数に上っている、その範囲内でやっていくということであれば、それほど大きな財政負担を新たに要するということではないであろうというような判断で文部省としては大蔵省にお願いをし、御了解をいただいたということでございます。
  241. 中西績介

    ○中西(績)委員 ですから、実質的な予算の面における大きな負担をかけてそれを突破するような中身にはなってないということなんですね、このことは。減少する数の中でしか実施されておらない、現状の中でやったということになるわけです。  そうしますと、これから後ずっと見てまいりますと、この六十年度を入れますと減少する数が約七万六千三百あるわけですね。そうすると、この改善増の定数、大体確定的ではないようでありますけれども、一応の全体的な見通し、新しく調査をした結果が、生徒減がうんと増大をしておるという結果もありまして、結果的には四十人学級でいいますと三万八千八百人、それから配置率改善で三万二千六百人程度ということになると、合計すると七万一千四百人。ですから、七万六千三百と相対的に考えまして、ことしのあれからいきますとそのことが可能だということをこのことは指し示しておるわけですね。  ですから、私は、むしろことしこうした措置をとって、一部を解除することによってこの特例法をわざわざ適用する必要はなかったと思うのですね。だのに、これを適用した中で一部だけ解除していくという措置をとられたこの理由は何でしょう。
  242. 阿部充夫

    阿部政府委員 先ほども申し上げましたように、行革審の方からも従来に引き続いて抑制措置をとるようにという御意見をいただきまして、政府としてもこれを尊重していくという建前で、そういった中で自然減の範囲内で達成可能なものをまず手がけようという姿勢で対応したわけでございますので、そういう意味で行革審意見を踏まえながらという措置でございますので、予算措置についてもそういう形でお願いをし、関係法律の延長についても行革審意見を踏まえたという形でお願いをしたということでございます。
  243. 中西績介

    ○中西(績)委員 私は、先ほどからずっと申し述べてまいりましたように、皆さんも教育というものが最重要課題としての施策としてあるといたしますならば、今この論議が起こってきて臨教審などというものを設置する、その理由は、画一化だとかなんとか言っていますけれども、そうでなくて、実際に出てきたその最も最初の原因というものは何かというと、非行、暴力だとか、いろいろな問題が大変大きく世論化されてきた。こういうことからして、中曽根総理はこれにうまく乗るかごとく教育改革ということを言い始めたのですけれども、いずれにしましてもこのような状況というものを考えますと、学校教育の中における一番基礎になるこの部分をわざわざいまだに解除せずにこの特例法の中に含めておるということ、実質的にはこうして一応曲がりなりにも抑制措置を一部だけ解いておる、こういう実態等があるわけですから、将来的に考えますときにこの点をこの六十年度でぜひなくしておく必要があったと私は思うのですけれども、この点について文部大臣どうでしょう。今のような局長の答弁でなくて、そりしたものを当然、むしろ逆に要求をしていくべきではなかったか、こう考えるのですけれども、この点どうです。
  244. 松永光

    ○松永国務大臣 先生が先ほど申されましたように、当初の予想よりも児童生徒の減少が多うございまして、その結果として自然減の範囲内で四十人学級は実現できるという数字になってきたことは事実のようであります。そこで三年間停止状態になっていたわけでありますが、自然減の中で措置ができるのだから、したがって、財政事情は十分考慮するとしても六十年度は何としてでも足踏みじゃなくして着実なスタートへの第一歩を踏み出させてもらいたいということで、財政当局に強く要望いたしまして、そうして財政事情を考慮しながらではありますが、足踏みから一歩踏み出す、そして六十六年度完成に向けての歩みが始まることになったというふうに私は受けとめておるわけでございます。  したがいまして、標準法自体はそのまま残っておるわけでありますから、この標準法の規定どおり六十六年度完成、これを私どもは最低限の条件として実現するよう努力していく所存なんであります。そして、先ほど先生も御指摘のように、もし財政事情が好転をしてまいりまして可能であるならば、それは四十人よりも少ない生徒数の方が行き届いた指導あるいは教育ができるわけでありまして、それに加えて申し上げますと、学校に入る前の家庭におけるしつけとか家庭教育とか訓練とかそういったものが昔に比べると今の生徒の方が不十分であるという指摘もなされておることでありますので、財政が許すならば、希望としては繰り上げができればありがたいことだと思っておるわけなんでございます。しかし、私自身も国の財政状況が厳しいことは承知しておりますので、まず第一には法律どおり六十六年度完成、そして財政が許すならば希望としては、前倒しという言葉がありますが、前倒しが可能ならばそうであればありがたいな、こういうふうに思っておる次第でございます。
  245. 中西績介

    ○中西(績)委員 時間が参りましたので終わりますけれども、財政の再建策については、大蔵大臣、大変困難だという状況があるわけでありますけれども、いずれにしてもこの範囲内でやれるという条件は一つの目安として大変有利になってきておるということが一つですね。それともう一つは、一年延長ということでこれはもう来年は絶対に延長しないだろうと私はきょうの話を聞いておって確信をするわけでありますけれども、この一つの点について簡単にお答えいただければと思います。
  246. 竹下登

    竹下国務大臣 これはきょう大変勉強させていただきました。それで、大蔵大臣の役目柄におりますとこれはとかく財政事情、あるいは銭金とでも申しましょうか、そういうことになりがちでございます。そういう意味において頭を洗脳していただいたことはありがたいと思っております。  ただ、今の問題につきましては、あくまでも財政事情に応じということはその都度都度の予算編成の際決めるべきものであって、今から予見を持って私が申し上げるわけにはまいらない、残念なからそうお答えせざるを得ないということであります。
  247. 中西績介

    ○中西(績)委員 絶対に延期しないということは。
  248. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 今大蔵大臣が言ったとおりなんですが、私はことしのは一年限りという前提の上に立って法案の審議をお願いをしておる、かようなことでございます。
  249. 中西績介

    ○中西(績)委員 終わります。
  250. 堀之内久男

    ○堀之内委員長代理 次回は、明十日午後二時より連合審査会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後七時五十七分散会