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1985-06-04 第102回国会 衆議院 大蔵委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年六月四日(火曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 越智 伊平君    理事 熊谷  弘君 理事 熊川 次男君    理事 中川 秀直君 理事 堀之内久男君    理事 上田 卓三君 理事 沢田  広君    理事 坂口  力君 理事 米沢  隆君       伊吹 文明君    糸山英太郎君       加藤 六月君    金子原二郎君       瓦   力君    笹山 登生君       自見庄三郎君    塩島  大君       田中 秀征君    中川 昭一君       林  大幹君    平沼 赳夫君       松田 九郎君    宮下 創平君       山岡 謙蔵君    山崎武三郎君       山中 貞則君    川崎 寛治君       渋沢 利久君    関山 信之君       戸田 菊雄君    藤田 高敏君       堀  昌雄君    武藤 山治君       石田幸四郎君    古川 雅司君       宮地 正介君    矢追 秀彦君       安倍 基雄君    玉置 一弥君       正森 成二君    簑輪 幸代君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         内閣審議官   海野 恒男君         内閣法制局長官 茂串  俊君         内閣法制局第三         部長      大出 峻郎君         総務庁長官官房         審議官     佐々木晴夫君         総務庁人事局次         長       吉田 忠明君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         経済企画庁調整         局審議官    丸茂 明則君         外務大臣官房長 北村  汎君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省北米局長 栗山 尚一君         外務省経済協力         局長      藤田 公郎君         大蔵政務次官  中村正三郎君         大蔵大臣官房総         務審議官    北村 恭二君         大蔵省主計局次         長       平澤 貞昭君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省理財局長 宮本 保孝君         大蔵省理財局次         長       中田 一男君         大蔵省証券局長 岸田 俊輔君         大蔵省銀行局長 吉田 正輝君         大蔵省国際金融         局長      行天 豊雄君         国税庁税部長         兼国税庁次長心         得       冨尾 一郎君         厚生大臣官房会         計課長     末次  彬君         建設大臣官房会         計課長     望月 薫雄君         建設省建設経済         局長      高橋  進君  委員外出席者         総務庁行政管理         局管理官    八木 俊道君         経済企画庁総合         計画局計画官  伊東 俊一君         法務省入国管理         局登録課長   黒木 忠正君         通商産業省産業         政策局産業資金         課長      坂本 吉弘君         郵政省電気通信         局電気通信事業         部調査官    浜田 弘二君         参  考  人         (日本電信電話         株式会社常務取         締役)     寺島 角夫君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ————————————— 委員の異動 六月四日  辞任         補欠選任   糸山英太郎君     林  大幹君   大島 理森君     伊吹 文明君   東   力君     自見庄三郎君   藤井 勝志君     松田 九郎君   伊藤  茂君     関山 信之君   野口 幸一君     堀  昌雄君 同日 辞任          補欠選任   伊吹 文明君     大島 理森君   自見庄三郎君     東   力君   林  大幹君     糸山英太郎君   松田 九郎君     藤井 勝志君   関山 信之君     伊藤  茂君   堀  昌雄君     野口 幸一君     ————————————— 六月三日  身体障害者使用自動車に対する地方道路税、揮  発油税免除等に関する請願(奥田敬和紹介)  (第五〇七三号)  同(草野威紹介)(第五〇七四号)  同(橋本龍太郎紹介)(第五〇七五号)  同(小平忠紹介)(第五一九〇号)  同(横手文雄紹介)(第五一九一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和六十年度の財政運営に必要な財源確保を  図るための特別措置に関する法律案内閣提出  第九号)  国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律  案(内閣提出第一〇号)  産業投資特別会計法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一一号)      ————◇—————
  2. 越智伊平

    越智委員長 これより会議を開きます。  昭和六十年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律案及び産業投資特別会計法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  この際、お諮りいたします。  三法律案につきまして、本日、参考人として日本電信電話株式会社常務取締役寺島角夫君出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  4. 越智伊平

    越智委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。沢田広君。
  5. 沢田広

    沢田委員 今日までこの法案審議のために、与野党を通じて今日の日本の持つ課題というものをとらえながら、苦しみあるいは訴えあるいは国民を思い、憂いながらそれぞれ質問もしてきたわけであります。きょう一応なるべくそう長時間にわならないように、細かく通告はしておいたつもりでありまして、不明な点等もあるかと思いますが、それぞれひとつ明確に、再質問がなくて済むようにお答えをいただきたい、こういうふうに思います。  まず大臣、この法案審議を通じて、予算委員会、それから六十一本の補助金カット法案、続いてこの三法、考えてみると国の財政の根幹をなす法案審議を続けてきたわけであります。大蔵委員の各位の御努力にも敬意を表しますが、大臣も大変御苦労だったと思うのであります。  顧みて、この法案がきょう最終日を迎えているわけでありまして、この法案等に対して我々は及ばざるところを補いながら全努力を傾けて審議をしてきたつもりでありますが、それに大臣も応じて部下を督励し、そして大蔵省としての権威を高め、国民の信頼をつなぐ、こういう決意のほどについてまずひとつお答えをいただいておいてから入りたい、こういうふうに思います。
  6. 竹下登

    竹下国務大臣 この財確法、今度中身の問題につきましては国債整理基金産投会計の新しい問題がありましたものの、基本的にいわゆる特例債を出すのは、毎年毎年国会法律審議していただくということは、その都度みずからの身に政府側もいわば財政節度というものを言い聞かせながら審議していただいておる、こういう印象を強くいたしたわけであります。     〔委員長退席熊川委員長代理着席〕 だから、首あった議論で、当分の間とかいうようでないことがやはり財政節度をより肌で感ずる、こういうことじゃなかろうかと思いました。
  7. 沢田広

    沢田委員 続いて、昭和六十年度予算のこの「増税なき財政再建」路線、緊縮抑制編成方針というものは、余り長いことを聞くとわかりませんから、少なくとも昭和六十一年度は、三光幾らの要調整額はあるにいたしましても、同じ方向で編成されるものと考えるのかどうか、その点についての見解を承りたいと思います。
  8. 竹下登

    竹下国務大臣 やはり財政が余裕が出たとかそういう環境にはございませんので、引き続き厳しい姿勢歳入歳出両面において対応していかなければならぬ課題だ。ただし、歳入の税の問題は、別途これから国会の論議を整理して税制調査会等で結論を出していただくわけでありますから、いわばとりあえず始まるのは概算要求基準、こういうことになるわけですが、厳しく対応していかざるを得ないというふうに考えております。
  9. 沢田広

    沢田委員 百三十三兆に及ぶ大変な累積債務を持っているわけでありますが、先般もある程度弾力性を持ちながらもという意見も述べましたが、解決方向と指針。なぜここで建設防衛に聞いたのかということは、大蔵はひとつ累積債務をどうやって解決していくかということについてお答えいただきますが、建設特殊財源も持っておる省でもありますし、そういう意味において、この債務に対して建設国債発行していく一つの一番大きな分野でもあるわけですから、その意味においての見解を、我々は支出だけがすべてであって歳入については関知しません、こういうことなのか、その辺も含めて御回答いただきたい。  それから防衛も、単にアメリカとだけの問題で、国内がこんなにもうどうにもならないような財政事情になっているのに、何ふやせ何ふやせと、きょうは戦車とP3Cは言いませんけれども、とにかくやはり見直しをしながら、この累積債務解消協力する意思があるかどうか、その点をひとつ、一番金を食うところだけ挙げて来てもらったというのが今の状況ですから、二番の質問大蔵建設防衛、この累積債務に対する解決方向考え方、ひとつ御明示をいただきたい、このように思います。
  10. 竹下登

    竹下国務大臣 何しろ利払い等に要する経費歳出の一九%強を占めるという厳しい状況にございます。したがって、私どもとしては、これは考え方として申し述べておりますように、第一段階としては、一般会計における単年度ごと新規財源債としての特例公債発行を、六十五年の努力目標年度に向かって毎年毎年努力しながら、それを減していくということに不断の努力を続けていかなければならぬというふうに考えます。
  11. 望月薫雄

    望月政府委員 御承知のとおり、公共事業財源は、御指摘道路特定財源以外はほとんど建設国債に依存しているというのが現状であるわけです。そういった中で、確かに五十九年度で六十八兆円という膨大な建設国債累積残があるわけでございますが、この解消方策そのものについては、建設省として具体的にどうこうということについてはちょっと御答弁申し上げる能力を持ち合わせておりませんので、回答を差し控えさせていただきたいと思います。  ただ、建設国債につきましては、いわゆる債務に見合いますストックを残していくという特性、あるいはまたストックに伴います地域経済社会発展効果、いわゆるストック効果というものがかなり大きい、こういったこと等々の特性をひとつ御理解いただく必要があるのじゃないかと思っております。そういった観点から、建設省としては今までも建設国債の適度の発行ということを御要望申し上げておるわけでございますが、いずれにしましても御指摘のような背景等々を考えまして、今後財政政策全体の中で御判断いただくべきもの、このように考えておる次第でございます。
  12. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 防衛費につきましては、厳しい財政事情を十分勘案いたしまして、他の諸施策との調和を図りながら、防衛力整備に必要なぎりぎりの経費について、これからも効率化合理化を図ってまいりたいと考えております。
  13. 沢田広

    沢田委員 建設省お答えは、社会資本としてストックで残っているのだから債務とは見なくてもいいんじゃないのか、こういうことで、財政法上これから考えますが、じゃ六十八兆を建設省へ持っていって建設省で順次返してもらうという形をとっていくと、大臣、これも借金と思ってない場合ならば、それは社会資本と見合うということであれば、これは一応累積債務から外して、建設省独自財源の中で払うものを払い、あるいは投資するものを投資し、何年かかるかわからぬが、六十年なら六十年の耐用年数に応じて償還をしてもらうという方法をとっていくことも一つの道じゃなかろうか、今の答弁ではそういうふうに思うのです。何も大蔵省が百三十三兆だと言わなくてもいいような今の御答弁のようでもありましたから、六十八兆を建設省予算の中に入れて、建設省予算の中で償却をしてもらう。こういう方法をとると、百三十三兆は一度にすぐ六十兆に半分に減ってしまうということになって、建設省も六十年なら六十年で社会資本としてのストック償還してもらう。しかも特定財源もお持ちになっておるわけでありますから、それである程度ずつ返済していただく、こういうことも考えられると思うのですが、この点、建設省はそういう意図、考え方はございますかどうか。それから大蔵省もあわせてお答えいただきたい。
  14. 望月薫雄

    望月政府委員 建設省独自財源というお話でございますが、実は建設省独自財源はないわけでございまして、先ほど申し上げましたようないわゆるストック効果、あるいはそれによる経済開発効果等々はいずれも税収という格好で返ってくるもの、こういったように理解しておりますので、御質問の趣旨については、建設省の責任においてどうこうということは、言うならば不可能な部分である、こんなふうに考えておる次第でございます。
  15. 竹下登

    竹下国務大臣 特定財源といえば道路特定財源だけでございます。建設省で自前の財源を持っておられるわけじゃございませんので、建設特別会計勘定を設けて新たに特定財源を何か求めないことには、その発想はできないことではないかなというふうに考えます。
  16. 沢田広

    沢田委員 建設省は、持っている百二十三兆は国民全体への借金である、社会資本に残っていれば返さなくていいという考え方ではないと思うのですね。だが返さなくてはならぬ、やはり税金が主体だ、こう言っている。だとすると、累積債務解決方向なり考え方はやはり持たなければならぬのではないかと思うのですが、建設は持つ必要はないというふうにお考えなんでしょうか。それとも、これはやはり国家財政全般的に見れば借金一つなんだから、それが資本に残っていようとも、それは長期になろうとも返していくべき性格のものである。だとすれば、建設建設なりに協力をしていくという必要性があるのではなかろうか。何年でという考え方でもあればひとつその年数も言ってもらって、六十八兆はことしやったものと去年やったものと十年前やったものといろいろありますが、それらを含めて、大体どの程度ならば建設国債償還の妥当な年だとなる。いやそういうことは大蔵省の方でやることですから、私の方は大蔵省の指示に従ってやっているんですという考え方なのか、もう一回ちょっと。歳入は我々は全然関知しないということでいいのかどうかという問題もあるのですが、それを含めて建設省のお考え方をお聞かせいただきたい。
  17. 望月薫雄

    望月政府委員 誤解を解くためにあえてもう一遍確認さしていただきますが、先ほど私申し上げましたのは、建設国債というものはストック効果をもたらし、資産を残すという特性を持っているということをひとつ御理解いただく必要があるのじゃないかということを申し上げたわけでございまして、その累積残について全く極楽トンボというか無責任でいいという姿勢では決してないわけでございます。そういった観点から、最終的には財政政策全体の中で御判断いただくべきもの、こういうふうに申し上げたわけでございますが、私ども建設省としましても、そういった国の財政との関係というのは非常に大きな課題であると認識しておりまして、したがって、ただ何でもやみくもに増発増発ということを言っているわけでもないわけでございます。  ただ、あえて申し上げさしていただきますならば、建設国債増発といいましょうか適切な発行、それによる社会資本への投資公共事業の執行という形で日本経済全体を活性化していく中で、国の財政制度の中でそう矛盾しない調和点というものもあるのではないかということも、昨年来申し上げている次第でございます。
  18. 沢田広

    沢田委員 それはそれなりの一つ意見でありますから、また後でその問題には触れてお伺いします。  そこで、これは大臣でありますが、これは解決しなければならぬ、六十一年は今の方向でいく、それでも三兆円程度不公平税制なり何らかを見出さなくてはならぬ、歳出カットもしなくてはならぬだろう。そこで幾つか挙げてみました。不公平税制中身はいろいろ意見があるだろうと思いますが、それはそれで後でまた細かい点は聞いていきます。じゃやはり増税はある程度ちびちびしたものはやらなくてはならないだろうか。これも後で、常に心配になっている大型間接税は聞きます。そこで、じゃ大型間接税はどう対応するのか。それから景気回復増収一つ意見では、今言ったような公共事業を若干ふやしたりあるいは減税をやったりあるいはその他景気回復のための必要な措置を講じながら増収を図っていくという方向経済の成長、活性化という言葉が出ましたが、そういうことで収入を図るんだ。それからもう一つは思い切ってアメリカ方式減税をやっちゃって、そこで内需拡大をやりながら増収を図っていくんだ。それからまた同じように、若干でも歳出カットをやっていこう。  ここでやはり一番問題になりますのは大蔵厚生大蔵は主管だからいい。厚生はこれ以上またやるのかどうかも含めて、やられるということになるのかどうかわかりませんが、自分の意思とか、他動とか自動とかは別として客観的な情勢としてどうなのか。建設も同じ、防衛も同じ、歳出カットについてどういう態度で臨もうとされているのか。その点ひとつお答えをいただきたい。一、二、三、四と大蔵でありますが、そこはまとめてお答えをいただきたい。あとは厚生建設防衛、今日の経済財政予算編成状況の上に立ってのお答えをいただきたいと思います。
  19. 竹下登

    竹下国務大臣 一つ不公平税制ということですが、国会で議決していただいて、その税制が不公平なものがありますというわけにはまいりませんが、人それぞれによって受けとめ方も違うと思います。クロヨンとかトーゴーサンとかという言葉があることも十分承知をしております。  そこで、一般的に租税特別措置というのが一つはあると思うのであります。特別措置というのは、まさに特別措置でございますから、これは五十一年度から連年にわたって厳しい見直しを行っておりますけれども、この見直し作業は引き続き絶えず進めていかなきゃならぬ課題だと思うわけであります。  それで、その中で二つの側面がありますが、一つ抜本改正の問題がございます。もう一つは、従来から指摘されておる、いわば検討に値する事項とでも申しますか、そういうものは絶えずやっていかな。ければいかぬ。その二つ組み合わせで、いわゆる不公平感があることは事実でございますから、そういうものをなくす努力を引き続いて行っていかなければならぬと考えております。  それから、今御意見の中にありましたように、経済活性化することによって、俗に言う自然増収が上がるということは非常に好ましいことでございますけれども、私いつも思うのでございますが、例えば公共事業を一兆円やりますと三年間ぐらいにわたって四千数百億の税収増につながる、よくそう言われております。ただ、さはさりながら、その根っこの一兆円はそのままやはり後世代への負担転嫁になあ。そこにやはりおのずからの節度というのが必要ではなかろうか、私はこういうふうに考えるわけであります。  それから、所得税減税というふうな問題につきましては、これはまさに今各党間の話し合いの課題にもなっておりますし、政府側からも、税調審議を迎えておりますので、その辺。もう一つ対外経済対策の方からも、内需拡大のための税制の問題が出ておりますので、その三つの要素をどういうふうに組み合わせでこれから進めていくかという課題ではなかろうかと考えます。
  20. 末次彬

    末次政府委員 先生御案内のとおり、厚生省におきましてはこれまで、五十七年度からでございますが、厚生年金国庫負担の一部繰り延べ、また五十八年度からは国民年金国庫負担平準化、五十九年度には医療保険制度の抜本的な改革、さらに六十年度には高率補助率引き下げ措置等々いろいろな縮減策を講じてきておるところでございます。したがいまして、厚生省におきましては既に可能な限りの対応策は講じてきたつもりでございまして、高齢化社会に向かいますこの状況で、これ以上の圧縮につきましては非常に難しい状況にあるというふうに御理解いただきたいと思っております。
  21. 望月薫雄

    望月政府委員 社会資本整備につきましては、地域の要望、国民課題意識は大変強いわけでございますが、御案内のとおりの予算抑制が続いている中で、いろいろとひずみも起こっているという状況になっているわけでございまして、そういった中で極力社会資本を着実に整備しようという中では、財政事情の許す範囲でぎりぎりの線で予算確保をお願いしたい、こういう姿勢でおるわけでございます。  と同時に、私ども建設省としましても、できるだけ国費を有効に活用して効果を上げようという姿勢方針は年々強めているところでございまして、こういう観点からもできるだけの努力はしたいと思いますが、何分ともそういった意味での適切な予算確保事業費確保ということが大変大事な課題であると思っております。また、あわせまして、今後は民間活力の活用ということも検討課題だろうと思っております。
  22. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 防衛庁におきましては、かねてより防衛力整備を着実に行って、できるだけ早く「防衛計画の大綱」の水準にまで持っていこう、こういうことで努力をしてきているところでございます。今後ともなおそういう必要性はございますから、その辺のところを一つ頭に置きながら、また同時に、先ほど来お話がございますように、財政事情は極めて厳しいものがありますし、また、国の他の諸施策とのバランスを当然考えなければいけないわけでございますから、その辺のところを彼此考量いたしながら、ぎりぎりの着地点を模索していきたい、こういうふうに考えております。
  23. 沢田広

    沢田委員 再質問はなるべくしないでいこうと思ったのですが、建設で、ぜひこれは大蔵大臣大蔵省も聞いておいてもらいたいのですが、橋を一橋つくるのに仮橋をつくる、あるいは回り道をつくる。これは、六十年の耐用年数を持つ橋をつくるとすれば、もし一年間かかったとして六十分の一の犠牲である。言うならば六十日に一日の休暇をとるようなものである。だから、極端な例を言えば、いわゆる仮建設、そういうものは再生産に寄与しないものなんだ。で、国民受忍限度との調整から言って、例えば百年にわたるような橋をつくるときに、一年なり二年なりの犠牲国民も受忍できる限界ではないか。それをわざわざ回り道をつくって、仮橋をつくって、そして七割以上の費用をそこにつき込んでやっていくことは果たして正当なものかどうか。こういう経済情勢の中において、それなら二橋やってもらった方がいいんじゃないか、こういう考え方もなくはないのであります。  大蔵大臣地域もいろいろあると思いますが、私たちも関係しておりますが、絶対これは通行どめで御協力を仰いでいる。通行どめで一年なら一年は勘弁してもらう。今、車時代ですから、回り道したからといって特別重大な支障が起きるわけではない。しかし、そのために、例えば五億かかるとすれば三億は仮設橋にかかり、しかもそれをまた取っ払ってしまう。これは国鉄も、鉄建公団もそうでありますが、建設省も同じような状況が見受けられる。これは会計検査院をごまかすのには一番いいかもしれないのであります。これは、やっておいて取っ払ってしまえば、あと残らないのでありますから。  そうかもわかりませんけれども、ごまかすという言葉は適、不適は別として、建設の従来の考え方はこの辺で改めるべきではないのか。やはり住民に十分納得してもらって、その上で今言った六十分の一のその確率は、受忍の限界はどこなのかということを模索しながら、そして経費の節約をすれば、今の費用で三分の二は他に転用することも不可能ではない。皆、橋だと仮定をして、道路でもそうですが、不可能ではない。その方がかえって経費も安くできる。事故も起きないし、事故の対策も必要でない。  そういうことを一例で挙げて申し上げますと、これは大臣でいきますが、特別の場合は別です。通常の場合、何でも仮設をしてやっていくというむだは目に余るものがある。会計検査院もこういうところは何を見ているのかなと思うくらい、余計なところ、つまらないところはからゃからゃ言っているけれども、そういう点については全然言わぬ。そういう点、受忍の限界がどこにあるのか、それを模索しながら、やはり有効投資というものをしていく必要があるんじゃないのかという気が私はいたします。  大臣に明快な見解を求めて、今のような惰性に流れた建設省答弁では、これからの財政なんてとてもやっていけっこない、こういうふうに判断しますので、あえてその点大臣から、あるいは担当のいわゆる予算を編成する立場からお答えをいただきたい。
  24. 竹下登

    竹下国務大臣 非常に難しい問題でございますが、私どもは、田舎でございますと、本当に交通どめで陸の孤島みたいなところができてはならぬ、こういうようなことをよく議論をしておりますが、その受忍の限度がどの辺が、その辺を恐らく地方団体等の方々の意見も聞きながら、建設当局でもやっておられるのではなかろうかというふうに私はこれを見ております。確かに交通どめにしてやっている工事も見受けますし、それから仮設橋等をきちんとしてやっているところも見受けますし、交通量でございますとかいろいろなことを、その地域の自治体の方等の意見も聞きながら施工しておられるのではなかろうかというふうに私は見ております。
  25. 望月薫雄

    望月政府委員 御指摘のようなケースについて、私今ちょっとつまびらかな、具体的にどういうものということをつかんでいないわけでございますが、一般的には、公共事業をやる場合でも、地域の合意、了解、理解、こういったものを得ながら仕事を進めねばならぬという中で、大変難しい場面が多々あるわけでございます。そういった中で、あるいは先生の目でごらんになって、むだと思われるものがあるかもしれませんが、私ども、決してむだのための仕事をやることは好ましくないという認識は人後に落ちないところでございまして、厳しく戒めながら、今後とも的確な事業執行に努めてまいりたいと思っております。
  26. 沢田広

    沢田委員 これは私、野党の人間ですら、そのぐらいな考え方を持っている。建設工事もそう、夜ばかりやっている。なぜ交通どめにして昼間やらないのか。その方が経費がどれだけ安いか。超過勤務だけ考えてもどれだけ安いかわからぬ。それは今の自動車だったら、どこをぐるぐる回っていったって、それほど時間がかかるわけじゃない。私はそういう立場から見て、建設についてももっと真剣に考えていくべき筋合いのものがあるというふうに思うわけであります。これは私の見解でありますから、それはそれなりにひとつどこかでやっていきます。  それから、昭和六十五年度までの、これは中期計画という言葉で私は言っておりましたが、「展望と指針」でありますが、これを遂行する覚悟は果たしてあるのかどうか。その次にもありますけれども、簡単に覚悟のほどを大蔵と、まあ経済企画庁に聞いてもこれはわからない点はあるのでしょうが、見通しとして、それは心配ないでしょうと言えるのかどうか、その点ひとつお答えいただきたいと思います。
  27. 竹下登

    竹下国務大臣 これはやはり六十五年度までに特例公債依存体質から脱却するという努力目標は容易ならざる課題であるという事実認識は持っておりますが、しかしやはりこの財政改革を進める第一次目標でございますだけに、この旗をおろすことなく、今後ともいろいろな組み合わせの中で、目標達成のための最大限の努力を払っていかなければならぬ問題だというふうに認識をいたしております。
  28. 伊東俊一

    ○伊東説明員 我が国の財政事情は非常に厳しい状況にありまして、「展望と指針」で示されました昭和六十五年度までに特例公債依存体質から脱却するという努力目標の達成は容易ならざる課題ではありますけれども財政改革の推進は我が国の経済社会の将来の安定と発展にとりまして避けることのできない課題でございますので、今後とも全力で取り組んでまいる必要があるというふうに考えております。
  29. 沢田広

    沢田委員 予算の方で、後で聞きますからね、建設の関係の査定の問題は。  それから続いて、自民党の中には公共事業拡大という意見もありますし、それから大幅減税という河本さんのような意見もありますし、多様化された意見が出ております。大臣が今答弁されているのは、今の内閣の大蔵大臣としてなのか自民党の大蔵大臣として答えたのか。その点も含めて、こういう意見があるけれども、それは十分に調整は可能だし、抑えつけると言っては悪いけれども、現在の方針を遂行することは間違いないというふうに言えるのかどうかということもひとつお答えをいただきたい。  あわせて、日本はウサギ小屋を初めとして社会資本のおくれは著しいものがある。もっと悪い、苦しい国もたくさんありますが、それはまた否定できない事実である。そういう社会資本のおくれとの均衡は、こう圧縮圧縮でいった中でどういう調和を図っていこうとされているのか。これは建設とあわせて大蔵お答えをいただきたい。
  30. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに自民党内にも、またこれは与野党を通じても、社会資本のおくれを取り戻すためにもっと計画のスピードを上げろ、こういう意見がございます。かつての七カ年計画のときは、最初二百四十兆公共事業をやろう、それからその後の見直しで百九十兆になりましたか、まあとにかく事ほどさように大きな見直しを行わなければならぬような財政的な環境に、世界経済の同時不況等々があってなった。したがいまして、いろいろな五カ年計画がございますけれども、それの進捗率は決して上々のものではないということは、私も十分承知しております。が一方、GNP比で見ますと、他の先進国が二・数%、日本は五・数%でございますから、その限りにおいては追いつけ追い越せの土台は、まだこの予算のあり方の中にも残っておるというふうに私は見るわけでございますので、そういうことをかれこれ考えながら、要するに息の長いそういう計画の中で問題を解決していかなければならぬではないか。  それで一方、これがいわゆる景気に与える影響というものも、別途これは考慮すべき問題でございますので、そこにいわゆる民間活力あるいは規制緩和という問題が大きな政策課題として浮かび上がってきておるのではなかろうかというふうに見ております。ことし御審議いただきました例の公共事業の補助率カットとそれの地方負担ということが、結果として事業費そのものを伸ばしたというのも、いわばぎりぎりの調和の上の産物ではなかろうかというふうに考えるわけであります。
  31. 沢田広

    沢田委員 これは再質問がないからといって、簡単に、適当になんというふうに思わないでください。何だったら途中でやめて、そこでやってもいいんですが、時間の関係がありますから、なるべくもう結論を聞いていきたい、こう思っております。  防衛費を一%とすると、今GNP三百十五兆、そうすると三兆一千五百億といって、これは予算委員会でさんざん問題になったわけです。それでいわゆるGNPの結果から見た防衛費、それから見通しの経済成長率から見た防衛費、どちらを主点とされておるかがありますけれども、もし五%程度GNPで伸びるとすれば、防衛費もその一%の枠内だということでいくと、その分が伸びていく、そういうふうに考えてよろしいのかどうか。それとも、現在時点における、昨年度の実績のいわゆる三百十五兆ですかの金額の範囲内にとどめることが至上命令である、こういう立場で大蔵なり防衛は考えておられるのか、その点の見解だけお聞きをしておきたいと思います。
  32. 竹下登

    竹下国務大臣 防衛費というのは、やはり他の施策との調和を図ってぎりぎりの調和点を見出す、そしてもう一つは五十一年の閣議決定の一%を超えざることをめどとする、それとの両方をかみ合わしてぎりぎりの調和点を図ったものが、御審議をいただいた予算である。今沢田さんおっしゃいますように、仮に一%というものを固定したら、名目経済成長率ずつずっと伸びていけばいつまでもその枠にある、こういうことにはなりますけれども、その点は、四五%のシェアを占める人件費等の部分が名目成長率とどうなっていくかという問題で、いろいろ変化はあろうと思います。
  33. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 ただいま大蔵大臣が御答弁なさいましたとおりかと存じます。  ただ、先生の御質問を伺ってみて、あるいは私の聞き違いかもしれませんので、御質問の趣旨を取り違えておりましたらまたお断り申し上げたいと思いますが、六十年度の予算につきましては、三百十四兆六千億というGNPの一%以内ということで予算を組んだわけでございまして、この後ベースアップが幾らになるか定かでございませんが、それを予算化いたしましたときにGNPは三百十四兆六千億で考えるのか、それとも、それがもうちょっとふえたところで考えるのかという御質問かと思います。もしもそうでございますれば、通常でございますれば、三百十四兆六千億というのが改定されるといたしますれば、改定された数字が分母になる、こういうように考えます。
  34. 沢田広

    沢田委員 では、これはこれでいいです。  財政再建防衛費を抑制するという場合に、財政再建の方にウエートを置くのか、防衛費の方はやむなしということで抑え切れないのか。財政再建防衛費のどちらかを選ぶとすれば、大臣はどちらを選ばれるのですか。防衛庁防衛だと言うかもしれぬ。財政再建なんかどっちでもいいと考えているかどうかわかりませんが、シビリアンコントロールと言われているのですから、常識的な答えは得られるだろうと思うのでありますが、大臣防衛から、財政再建を選択されるのか、いや防衛費はどうにもならないのだから、ふやすものはふやすのだというふうになるのか、どちらを選択されるのか、簡単にひとつお答えいただきたい。
  35. 竹下登

    竹下国務大臣 やはり財政再建という至上命題の中でぎりぎりの調和を図っていくべきものが防衛費だ、したがって聖域ではない、こういうことであろうと思います。
  36. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 私ども防衛費が聖域だとは思っておりません。財政再建はどうしてもやっていかなければならない必要性があるわけでございますし、同時に私どもといたしましては、先ほども申し上げましたように「防衛計画の大綱」の水準にできるだけ早く到達するという防衛力整備の基本方針がございますので、どちらが優先するということでなく、両方に足をしっかと踏まえて、ぎりぎりの調和点を探っていく、こういうことかと存じます。
  37. 沢田広

    沢田委員 これは防衛費の方の関係でありますが、これからも一%以下に抑える努力を行うかどうかという質問であります。先ほど大臣は、人勧などの乙ともあって、人件費が四五%占めているから、それが上がると、何かその辺の先がちょっとぼやっとした返事をされたのでありますけれども、いつも言う、戦車なんかを全部なくしても当面必要ない。これは、P3Cは一回議論しようと思っていたのですが、潜水艦を見つけたからといってどうこうできるものでもない。ああ、いたいたと鬼ごっこしているようなもので、これも余り効果のあるようなものではない。とすれば、そういうものを削ってでも一%以下に抑えるという決意が必要なのじゃないか。近代の社会の防衛なら防衛を考えてみた中で、ウエートの中で、古いものは捨てて新しいものにかえるのでしょうから、そういうものは思い切って、ないものはなしにしていく。歩兵が戦争する時代は終わったんだから歩兵も要らない。ゼロにしようというのではなくても、とりあえず人件費も削減するということは、時代とともに、ふくれ上がるだけではなくて、削るものも当然できてくるわけですから、抑えようと思えば抑えられるのではなかろうかと思うのですが、その辺、一%に抑える努力は、私はできると思っているのですが、あなたはいかがでしょう。
  38. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 一%の問題につきましては、ことしのこの通常国会予算委員会で何回か総理大臣防衛庁長官等から御答弁申し上げましたように、守りたいというのが基本的な願いでございます。でございますから、防衛庁といたしましても守りたいという願望を基礎にいたしまして、私ども努力するのは当然かと思っております。  ただ、実際問題として、その努力が容易なことでできることでもないということも事実かと思います。何せ今の状況でございますと、八十九億円のすき間がある。これは先生よく御承知のとおりでございますが、それだけでございます。したがいまして私どもといたしましては、今後の置かれた諸要件が明らかになるに従いまして、その時点その時点で全力を挙げていろいろな努力をしてみたい、このようには考えておりますが、簡単にこれができるものかどうかという点については、なおなかなか難しい面もあろうかと思います。
  39. 沢田広

    沢田委員 多くの疑問がありますが、きょうはこの程度にしておきます。  それから続いて、財政再建への大変厳しい予算が続いて、「おしん予算」だなんて言われているわけでありますから、国民の理解はこれ以上得られるかどうか。もしこれ以上圧縮できる分野を求めるとすればどこに求めていったらいいのであろうか、こういう素朴な疑問がありますし、どこを削られるのであろうかという心配をしている国民も少なくはない。そこで、大蔵からは総括的な御意見を聞かしてもらう。通産はどうだろうか。貿易でうんともうけているのだから、もうけているところから考えられないだろうか。厚生は、さんざん弱い者いじめだと言われながらも、まだやるつもりはあるのかどうか。その点をお聞かせいただきたい。
  40. 竹下登

    竹下国務大臣 一つには、やはり今後とも歳出歳入両面にわたっての努力を継続していかなければならぬ。したがって、歳出面の見直しということになりますと、これは政府がやるべき分野、これは民間がやるべき分野、あるいは国と地方とのたびたび御議論いただきましたいわゆる機能分担と費用負担のあり方、そういうようなことについて、まだまだ可能な限りの努力を尽くして対応していかなければならぬ課題だと思っております。
  41. 沢田広

    沢田委員 厚生はもう無理だとさっき答弁しておりましたから、その答弁をもってかえるということで、ここは省略いたします。通産はいいです。  時間の関係で次にいきます。  今日まで各方面から指摘されている退職給与引当金のざらな引き下げをされたらどうだ。それから交際費課税を強化したらどうだ。もう一つは法人所得。これはいつも議論しながらすれ違ってしまうのでありますが、三千億もうけている企業もあれば一千万もあれば三億もある、これに一律というのはどうも納得がいかぬ。三千億ももうけたらもうけたなりに応分の負担をしてもらったらどうだろうか。ここで一応、六〇、五〇、四〇などという数字を挙げてみましたが、応分負担について真剣に理屈——擬人であるとか人でないとかいうことは別として、それなりの応分負担を求めていくことは、当面の措置として必要ではなかろうか。それから、いつも言っておりますが資産再評価による長期負担による増収。これも大蔵大臣余り好きではないのでありますが、もとの七千円くらいの簿記価額で固定資産勘定にそのまま載っておるものを現在価額に引き直して、それを十年なり二十年の長期によってその分の現在額の利益分についてそれぞれ若干の負担を求めていく。それから貸し倒れ引当金などの圧縮。もう一つ六番目の問題は、これは角度が若干違いますから後にして、以上五点を簡単にお答えいただきたいと思います。
  42. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 五点ほど御指摘がございましたので、ごく簡単に申し上げます。  まず退職給与引当金は、昭和五十五年の改正で累積限度額を五〇%から四〇%に引き下げを行いましたけれども、この点につきましては、税制調査会の答申にもございますように、今後とも企業の雇用の実態、企業経理の実態を見まして、引き続き限度額の水準については見直しを行っていくべき課題と考えております。  交際費につきましては、我が国の場合は資本金五千万円以上は一〇〇%課税でございますから、世界のいろいろな国も交際費については課税を強化いたしておりますけれども、その中でも非常に厳しい税負担をお願いしておるわけでございます。問題は資本金五千万円以下のところでの定額控除をどうするのか。税制調査会の従来の御答申では、この点は控除分についてもやはり圧縮することが望ましいという見解が示されております。今後の検討課題かと考えます。  それから、法人税の累進税率の議論はかねがねあるわけでございますけれども、そもそも累進税率は限界効用の逓減とか所得再分配ということで理論づけられておりまして、自然人の所得課税になじむ税率構造であるというのが基本的な考え方でございます。したがいまして、法人税というのはやはり税制でございますから、企業に対しては中立的でなければならないというのが理想でございます。したがいまして、多段階の税率を組みますと、どうしても会社分割の問題が起こるとか、あるいは資本とか所得に着目いたしまして恐らく税率を多段階に展開することになると思いますけれども、それは企業はその事業の実態によりまして必然的に資本が大きくなければならない、あるいは所得が大きくなるというのは避けられないことでございますので、経済の中立性という観点から問題ありというのが、私ども税制当局なり税制調査会の伝統的な考え方でございます。アメリカの財務省の改革案を見ましても、昨年の十一月に、現在の五段階を一段階に単一化するという提言を行っているのも同じような見解かと思いますけれども、今回の提案では五段階を四段階にするというふうに修正されておりますが、基本的には一本税率が望ましいということでございます。  資産再評価につきましては、従来社会党の方から土地増価税の御提案がございまして、この点については先年税制調査会に御報告申し上げ、検討の御答申をいただいたわけでございますけれども、基本的な考え方は、所得課税ということになりますと未実現利益に所得課税と同じような税率で税負担を求めるというのは好ましくない、必然的に税率が下がらざるを得ないという問題がございます。そういたしますと、将来キャピタルゲインが発生いたしました場合、むしろ長い目で見ると税収という面からいってもいかがかというふうな見解も示されております。それから、保有税として理論構成をするといたしますと、これはむしろ現在固定資産税という地方税がございまして、この評価をどう考えるのか、それがまず検討の先決問題ではないかという考えが示されております。  最後に、各種の引当金につきましては、先ほど申し上げました退職給与引当金、それから委員が御指摘になりました貸し倒れ引当金につきましても、会社経理の実態に即しまして適正な水準に絶えず見直していかなければならない。六十年度の改正でも、金融保険業以外の各業種につきまして、貸し倒れ実績率を見ながら繰り入れ率をそれぞれ千分の二ないし千分の三ポイント引き下げを行ったところでございまして、これも今後とも引き続き見直しをしていかなければならないということかと思います。
  43. 沢田広

    沢田委員 これは国税庁大臣、総理府も関係するのですが、思い切って各省庁から、向こう三年なり五年、一年間研修として五年程度、二万名ぐらいを大蔵省国税局に配置転換をして実調を強めて——厳しくなるおそれはありますけれども、その実調によって増収を図っていくという方法、特にトーゴーサンなどの不均衡の是正、この二点について大蔵省と関係のところからお答えをいただきたい。
  44. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 お答えいたします。  国税庁といたしましては、従来から先生御指摘のように合理的な事務配分を行いまして、できるだけ実調率を確保し、ないしは高めていきたいということで努力をいたしております。私どもとしては、とりあえず部内の職員を地方から納税者のふえております都市の国税局の方に、また直税部以外といいますか、所得税、法人税を担当しております以外の部門から直税系統の方へ職員を移すというようなことで内部で異動し、地方間で異動しということで、できるだけ実情に合った戦力を確保するということで努力してまいっております。また、事務の運営につきましても、コンピューターの導入とかいろいろなことで戦力を確保しております。それ以外に省庁間の配分につきましても、実は私どもとしてはできるだけ配分をいただくという方向で対応させていただいておりまして、現在毎年数程度の受け入れをさせていただいております。  ただ、国税職員というのは、ある意味では極めて専門的な仕事になりますので、素人の方がおいでいただいてすぐに仕事ができるという面でなかなか難しいところがございますが、全般的に、先生のおっしゃるような再配置をするかどうか、その辺につきましては高度な御判断だと思っております。私どもとしては、国税の仕事につきましては専門的な能力を持った職員をできるだけ確保しながら、御指摘のように課税の公平を目指して今後とも努力をさせていただきたいと思っております。
  45. 八木俊道

    ○八木説明員 実は、国家公務員全体の定員管理につきましては、四十四年の総定員法以来極めて厳しい定員管理を全体としてはいたしておるわけでございます。一方におきまして計画削減を実施する、そして一方におきましてやむを得ざる行政需要にはある程度積極的に対応する、こういうことでございまして、四十三年以降六十年までの差し引き勘定で申しますと、政府全体では二万三千人ほどの純減ということでございます。その間、大蔵省におきましても、省全体といたしましては二千人ほどの純減をしていただいているわけでございますけれども、国税行政の重要性にかんがみまして、この間国税庁につきましては千二百二十七人の純増。計画削減と新規増員との差がこの数字になっているわけでございます。  全体の数字はそういうことでございますが、国家公務員の実員の配置転換——以上申し上げましたのは、主として欠員を保留いたしまして定員を回すわけでございますが、実員の配置転換につきましてはなかなか難しい問題が、先ほど国税庁から御説明ございましたようにございます。実はこれは五十五年から始めております。五十五年から五十九年までに政府全体五百五十三人でございます。少ないという御批判はあるいはあろうかとは存じますが、何分違った職場に持っていくわけでございまして、国会の附帯決議でも、その本人の意に反しないようにやるように、こういうことでもございますので、目下のところ五年間で五百五十人という水準でございますが、今後とも努力をいたしてまいりたいと思います。
  46. 沢田広

    沢田委員 極めて中流意識で円満にやっておられるようで、優雅だなと思っておりますが、森永の事件を見ても、あるいは国鉄の今の配置転換を見ても、本人の意思もさることながら、今まで列車を動かしていた者がコーヒーを売る、そういう条件、あるいは今まで経理をやっていた連中が町へ出て森永を売ったという状況、そういうせっぱ詰まった者の感情になってないということを、いみじくも今の答弁は証明したんだと思うのですね。  問題は、歳出ならだれでもできる。全員が当たっても財政再建の道を歩むとすれば、全力をそこに集中して、九割を抜いてきて、仕事は一年間待ったというぐらいなつもりで、そして皆さんに協力を仰いで——歳入なくして歳出なしなんですね。その歳入を得るために各省庁がどれだけみずからが努力をするかという、その気持ちがまだお役所仕事の段階を過ぎない、こういうことだと思うのであります。  非常に優雅であって、おめでとうございますと言っておきたいぐらいな気持ちでありますが、恐らく大蔵大臣は、これは皮肉にしか聞こえないだろうと思いますから、改まるようにひとつ政府部内でやっていただきたい。そういうことで、これ以上答弁を聞いてもしようがないです。  それから次に、中期の「展望と指針」なんですが、三年延ばしてみたらどうだ。このまま厳しく、厳しくということで、六十五年を何か政治の目標なんだからというのでなく、それを三年延ばして幾らか緩めていくという方法はとれないかどうか。これは大蔵大臣、ひとつお答えいただきたい。
  47. 竹下登

    竹下国務大臣 この六十五年ということに執拗なまでに固執することなく、弾力的にという御意見でございます。そういう議論はありますけれども、今、一たび六十五年を仮に六十八年とかあるいはアバウト六十五年とかいうようなことにしますと、その途端から歳出圧力に抗し切れなくなるんじゃないか。したがって、その旗を執拗なまでにもやはり掲げ続けて、せっかく少しずつでも滅してきているわけでございますから、この道を歩んでいくしかないな、こんな感じでございます。
  48. 沢田広

    沢田委員 もう一つだけ。大型間接税への転換がいろいろ言われておりますけれども、認められる間接税それから認められない間接税があるわけですね、この前の総選挙の結果で認められる間接税というのはどんなものがあるのだろうか、それから認められない大型間接税というのはどんなものなんだろうか、簡単に——簡単にとはこれはいけないかもしれませんが、大臣からお答えいただきたい。
  49. 竹下登

    竹下国務大臣 これはなかなか難しい問題でございますが、要するに直接税、間接税を通じて税制全般にわたり広範な角度から議論と検討を行う必要がある、こういう答申に基づいてこれから作業をしていこうということでございますので、あらかじめ認めるべきもの、認めざるべきものということを区別するのは難しい問題であろうと思っております。  総理が申しておりますのは、多段階、包括的、網羅的、普遍的、大規模、投網、こういうことは採用する考えはない、こういうことを言っておられるわけでございます。それはいわゆる総理の体験から言えば、戦後一時期やりました旧取引高税といったようなものを念頭に置いて言われたことであろうというふうに考えておるところでございます。
  50. 沢田広

    沢田委員 続いて、先般週休小委員会を聞かしていただきました。  二千時間を超えている先進国はない。二千時間をとにかく割ることは最小限度の、貿易摩擦の課題にも必要だということで、労働省、通産省、各省の意見も聞きましたが、大蔵大臣もこの週休二日制、金融機関と限定しておきます、金融機関の週休二日制をもう一日ふやす。全銀協あたりも、来年の八月ごろにはもう一日ふやしたい、こういうようなことも言っているわけでありますが、私は遅過ぎるのじゃないかという気がするわけです。そういう意味において、大臣としては閣内においてこの週休二日制をもう一日ふやして、そして貿易摩擦解消の一助にしていく、こういう考え方について、認識のほどをお聞かせいただきたい。
  51. 竹下登

    竹下国務大臣 週休二日制をふやして、それで消費が拡大するということも、それは中のワン・オブ・セムの効用であろうかと思いますが、本来やはりこういう時代になりましたので、ワークシェアリングの立場からしても、そういうことは好ましいことでございますので、基本的には労働省を中心にいろいろやられておりますが、私の担当分野であります金融機関においては、せっかく進みつつある、そういう環境が熟しつつあるわけでございますから、それは中には漁業協同組合はまだキャッシュディスペンサーが一台も入ってないというような状態もありますものの、方向は積極的に進めていかなければならぬ課題だと思っております。
  52. 沢田広

    沢田委員 大臣に以上答弁をいただきましたが、これは竹下大蔵大臣というよりも、今政府の大臣竹下大蔵大臣がかわろうとも、大蔵大臣の職にある者は以上の答弁については責任を持つ、引き継がれていく、こう確認してよろしゅうございますか。
  53. 竹下登

    竹下国務大臣 それは結構だと思っております。
  54. 沢田広

    沢田委員 時間の関係で、今度は電電の方へ参ります。  電電株はこの前もいろいろ皆さんに言われましたが、ここに言われているように、いろいろ世間から注目されております。そういう現状にかんがみ、特にガラス張りの取り扱い、こういうことが求められておりまして、公開、平等、公正は守られなければならないと思いますが、その点、いかがでありますか。
  55. 竹下登

    竹下国務大臣 国民に疑惑を抱かせるようなことはいささかもあってはならない、そしてまた国益を損なうこともいささかもあってはならない、厳正かつ公正、明朗に対処していく、こういうことを基本的に考えるべきであると思います。
  56. 沢田広

    沢田委員 その次に、内閣法制局来ておりますが、今竹下大蔵大臣が持っておる電電の株は国有財産であるのかないのか。これは大蔵大臣からもひとつ、持っているその三枚か四枚かわからない券は国有財産であると認識されているのか、いわゆる国有財産であり、しかもいわゆる国有財産法で言う国有財産であるかどうか、これを含めて御回答いただきたい。
  57. 中田一男

    ○中田政府委員 新電電株式会社の株式は、新しい会社法に基づきまして、設立のときに国に対して無償譲渡されて、現在大蔵省大蔵大臣が株主になっております株券でございまして、国有財産法の第二条第一項第六号で、国がこのように保管しておる有価証券は国有財産であると書かれてございます。そういう法律に基づきまして国有財産であると認識しております。
  58. 大出峻郎

    ○大出政府委員 ただいま大蔵省の方からお答えがございましたように、国有財産法上の国有財産であるというふうに理解をいたしております。
  59. 沢田広

    沢田委員 そうすると、今後この株の取り扱いは、その基本法規となるものは、国有財産法に定められておる諸事項、政省令を含めて、それに準拠することが当然基本となる、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。そのとおりなら、両者から首を縦に振ってもらえばいいです。
  60. 中田一男

    ○中田政府委員 御指摘のとおりだと存じております。
  61. 沢田広

    沢田委員 内閣法制局もそうですか。——はい、わかりました。  では、これは大蔵委員会にも国有財産法に基づいての所管が当然伴ってくる、こういうふうに理解してよろしいですね。首を縦に振っているから、そのとおりだと速記録には書いておいてください。  それから、電電の方についても、衆参に逓信の小委員会が設置されていることもあります。これは大蔵にもあわせて必要に応じその概要などは報告されるものと解してよろしゅうございますか。これは電電、大蔵、逓信、それぞれお答えいただきたい。
  62. 寺島角夫

    寺島参考人 NTTといたしましては、国会の御決定に従う立場でございます。
  63. 沢田広

    沢田委員 大蔵大臣、今電電の方は、必要に応じて国会に来て述べる、こう言っておりますから、そういう解釈で当然大蔵も逓信も対応する、こういうことでよろしいですね。
  64. 竹下登

    竹下国務大臣 はい。
  65. 沢田広

    沢田委員 それから、電電は民間会社となったわけでありますから、今後はその自主性、独立性、資金上等、政府は介入すべきではない、やはり民間の活力を生かすという立場に立ってその独自性を尊重する、こういうように理解をしてよろしゅうございますか、大蔵大臣
  66. 竹下登

    竹下国務大臣 これは日本電信電話株式会社法の際に議論された問題でございまして、政府の関与は必要最小限のものにとどめる、あくまでも経営の主体性を背景とした責任ある経営体制のもとで、競争原理が導入されて、その効果と相まって効率が上がっていくということで、法律もでございますが、気持ちの上でも、介入というものをしてはならぬというふうな気持ちで対応すべきものだと思っております。
  67. 浜田弘二

    ○浜田説明員 大蔵大臣の方から御答弁なさいましたとおりでございます。
  68. 沢田広

    沢田委員 続いて、社員の持ち株制について極めて要望も強いわけでありますが、電電としてはどのように考えておりますか。
  69. 寺島角夫

    寺島参考人 社員持ち株制度につきましては、企業と従業員の一体感の醸成あるいは愛社精神の高揚、安定株主の育成、従業員の財産形成等のいろいろな観点からいたしまして、現在、他企業におきましても広くとられている制度であると認識をいたしております。現在、上場会社のうちの約八七%程度が実施しておられるというふうに承知をしておりますが、そういう状況でございますので、NTTといたしましても導入をする方向検討していきたい、かように考えております。
  70. 沢田広

    沢田委員 これは逓信だと思いますが、僻地、離島など公共的目的のために政府が特に電電に要請をする施設などは、政府においてその費用の一部を負担するものと解しますが、その点はいかがでありましょう。
  71. 浜田弘二

    ○浜田説明員 先生御案内のように、今回の電電改革におきましては、アメリカのように分割という政策をとらずに、電電公社の有しておりましたところの設備なり業務なり人員なりのすべてを新しい電電、すなわちNTTに引き継ぐ、そういうスキームをとったところでございます。したがいまして、全国津々浦々に張りめぐらされております優秀な電気通信ネットワーク、これはすべて電電新会社が所有するわけでございます。  こういう形で電電新会社がスタートするわけでありますけれども、今回の改革におきましては、こうした我が国の基幹通信事業体である新電電に十分な当事者能力なり自主性なり弾力性なりを付与するというふうな政策を考えますと同時に、会社法の第二条におきまして、電話の役務のあまねく日本全国における安定的な供給の確保等の公共的役割についても規定いたしたところでございます。  私どもといたしましては、新電電におかれまして、今回の改革の趣旨に沿いまして、ただいま申し上げましたような公共的役割を果たしつつ、健全な事業経営がなされるものと期待しておるところでございますけれども、過日の委員会においても申し上げましたが、いわゆる市内、市外の費用負担の問題、これにつきましては、まずもって、今後トラフィック量等の数値に基づきまして市内、市外の原価を把握することが必要であり、非常に大きな前提になるものと考えておる次第でございます。  この問題は、要するに、NTTなりあるいは新規参入事業者なり、最終的には利用者国民の究極的な料金負担のあり方というふうな問題になってくるわけでございますけれども、この負担の分担のあり方なりあるいはまた費用の計量的な把握を含めまして、今後郵政省といたしましても多面的な角度から検討してまいる必要があろうか、そういうふうに考えておる次第でございます。
  72. 沢田広

    沢田委員 今の答弁、ちょっと気になるのでありますが、結果的には、電電が自主的にやる場合は別なんでありますが、政府の介入なり力が加わって僻地、離島等に配線を特に要望し要求した、こういう場合には、原因者負担という原則もあるわけでありますが、当然その一部は原因者負担として政府がその負担に応ずる、こういう原則は生活慣行上も商法上も、同時にまた、いわゆる内鉄協定とかその他の一般原則に基づいても当然存在すると解しますが、その点はいかがですか。
  73. 浜田弘二

    ○浜田説明員 ただいま私の方から申し上げましたのは、NTTが我が国の基幹通信事業体として、電話の役務を先生御指摘のような僻地、離島等を含めましてあまねく安定的に供給する場合の費用負担のあり方について申し上げたわけでございますけれども、それとは別に、政府がユーザーとして、利用者としてNTTの施設を利用する、そういう場合には、先生御指摘のような形での利用者負担というのは当然に考えられてしかるべきであろうというふうに考えております。
  74. 沢田広

    沢田委員 それで結構です。  それから、あと六番目以下は時間の関係で、一人株主制は先般の答弁もありまして、やや商法上にも合法的な点に問題もあるようでありますから、速やかな整備を求めたいと思います。これは後でお答えください。  それから、産投会計のあり方は、結論は抜本的な見直しを行う必要性がある。これはそのとおりだと思っておりますが、その点、いかがですか。  それから、持ち株の三分の一の配当はどの程度と考えているのか。まあ一〇%ともいろいろうわさは飛んでいるのでありますが、これも未定のものかもわかりませんから、考え方を。以上、八まではまとめてお答えください。
  75. 中田一男

    ○中田政府委員 日本たばこ産業株式会社及び日本電信電話株式会社は、それぞれの会社法により、現在いわゆる政府全額出資による一人株主会社となっておりますが、これにつきましては、さきに法制局から御答弁がありましたとおり、商法上特に問題はないと聞かされておるわけでございます。しかしながら、いずれにいたしましても、一人株主という状態がいつまでも続くということは、もちろん民営化の趣旨からいっても適当なことではございませんので、政府としては、電電株式の場合、漸次売却を行って、正常な、大勢の株主がこれを保有するというふうな姿に持っていくべきものだと考えております。
  76. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 産投会計見直しにつきましては、そのときどきの経済社会情勢の変遷に応じて見直しをやってまいりまして、それにふさわしい運営の仕方というものを考えて運営してきたわけでございまして、今回いろいろお願い申し上げております問題につきましても、そういう方向見直しの結果出てまいった結論でございます。  それから、配当収入につきましては、産投会計に帰属する電電の株式の仮に一〇%ですと二百六十億でございますし、五%ですとその半分でございます。いずれにいたしましても、産投会計に電電の株が帰属しているという趣旨を十分踏まえまして、その配当金の使い方につきましては、技術開発等しかるべき適切な資金配分に努めてまいりたいと考えております。
  77. 沢田広

    沢田委員 九番目は、通産ではこの法案が通らない以前に、産投会計からもらうのだということを予期して法案を決定をしておるということで、これは大蔵委員会としては必ずしも心穏やかでない。もらう方は勝手にもらいますよということで決めちゃっておいて、出す方が決めないのに、それを勘定に入れて計算していくというのは、これは若干道義に反するのではないか、こういうことに思うわけであります。こういう法案の出し方、審議の仕方にも、若干顔を逆なでするような点なしといたしません。大臣、一言、通産を含めて、これは御迷惑をおかけいたしましたというぐらいな言葉はあってしかるべきではないか、こういうふうに思いますが、通産とあわせてお答えをいただきたい。
  78. 坂本吉弘

    ○坂本説明員 ただいま沢田委員指摘の点につきましては、基盤技術研究促進法案を御審議をお願いいたしまして、現在御検討、御審議いただいております本法案より先に成立させていただいたわけでございます。私どもも、研究開発の必要性にかんがみまして、予算策定の段階におきまして、その重要な財源として、産投会計というものにこの財源を求めるということをお願いをし、財政当局の合意も得て出させていただいたわけでございますが、いずれにしろ、本法案を可能な限り慎重御審議の上早期に成立させていただきますように、私どももお願いする次第でございます。
  79. 沢田広

    沢田委員 今回はこういう状況に来て、本当に腹は煮えくり返るような気持ちなんでありますが、感情的にはもう反対、まあもちろん反対でありますけれども、余計反対で、これは通さないという気持ちも持っていたのでありますが、今後はこういうことのないように、ひとつ委員長の方においても十分配慮されることを期待してやみません。おれの方はおれの方だというのなら、これは同じ社会党の中だって、違った態度が出てきても問題がないわけでありますから、そのことを要望し、最後に、産投会計経済効果が秘密に属さない事項についてはできる限りまた報告を求めて、提出されることを願って、これは努力目標としてお願いを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  80. 熊川次男

    熊川委員長代理 午後一時三十分より再開することとし、休憩いたします。     午前十一時二十六分休憩      ————◇—————     午後一時三十一分開議
  81. 越智伊平

    越智委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渋沢利久君。
  82. 渋沢利久

    ○渋沢委員 せっかく総理にお出ましをいただいて質疑を行うのでありますので、法案の質疑に入ります前に、一点お尋ねをしておきたいことがあるわけであります。  朝鮮半島の平和は、これは即日本の平和、世界の平和に通ずるという理解に立って、南北の対話の流れがどう展開するかということを注意深く見守っているわけでありますが、そういう中で、先般第八回の南北赤十字会談が十年ぶりに開かれて、しかも審議継続を確認して今後に大きな期待を残して閉じるという成果に重ねて、六月一日には、四月に朝鮮民主主義人民共和国が提起されました南北国会会談、これを韓国の議会が満場一致で受け入れる、こういう決定をしたということは非常に重大な、大変喜ばしい事態だというふうに受けとめているわけであります。  こういう状況の中で、先般私ども社会党の田邊書記長が北を訪ねて、その内容は総理に直接御報告申し上げた。その際、ぜひ自民党の訪朝団、代表団を派遣してほしい、派遣してはいかがかという進言といいますか申し入れをされたわけでありますけれども、これは私は大変いい提案をいたしたというふうに思っているわけであります。これが今のような環境の中で実現するということは、南北の平和的な統一を目指す友好ムード、対話ムードを進める上で、その環境づくりにも非常に大きな役割を果たすだろうと思いますし、同時に、これは私個人の観測ではありますけれども、当然社会党もまた韓国に対して正式な代表団を送るという事態になるであろうということは、決してそう遠いことではなかろうと思うわけであります。自民党の総裁に、ぜひ北を見て、北の話を聞いて、友好を深めてくださいという御相談をして、我々は南を見る目も、話を聞く耳も持たぬというわけには、これは筋の通らぬことであります。いずれそういうことになるということは当然のことだと私は思っておりますが、いずれにしてもこれもいいことだ。  大切なことは、まさに朝鮮半島の平和即日本、世界の平和に通ずるという観点で、この南北の対話ムードを大切にしていくということにお互いが責任を果たさなければならない思いがいたします。田邊書記長の申し入れに対しましては、総理はぜひ年内にも実現されるよう前向きの対応をされるものと確信をいたしております。御所見をまず承っておきたいと思います。
  83. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 先般田邊書記長が訪朝されまして、お帰りになりましていろいろ現地の情勢について貴重な御所見を伺う機会を得まして、大変感謝しておるところであり、また御労苦を多とするところでございます。その際にお話しのようなことがございましたので、我が党でもひとつ検討していただきましょう、そういうふうに申し上げた次第でござます。     〔委員長退席、熊谷委員長代理着席〕  朝鮮半島の問題は、南北に存在する二つの国家の間の話し合いで自主的にお決めになることがまず第一である、そう考えておりまして、今回のような赤十字会談あるいは両国会間の会談が前進したということは私は大いに歓迎するところであり、今後とも南北間の自主的話し合いが円滑に前進するように期待してやまないところであり、我々も周辺に存在する国家群の一人としまして、その環境醸成に積極的に協力していきたいと考えております。
  84. 渋沢利久

    ○渋沢委員 大変前向きで積極的な姿勢を御説明なすったわけで、大変結構だと思います。ぜひ早期にこの訪朝団の派遣についても実現をしていただきたいものだと思っております。  さて、本題に入って幾つかお尋ねをいたしたいと思います。  まず、ボン・サミットから帰られた首相の報告を受けまして、各党から本会議でも質疑がございました。各党の代表の質疑で共通していることの中に幾つかありましたけれども一つ内需振興、内需拡大にかかわるサミットにおける総理の言明にかかわる部分が共通してございました。これは自民党の森さんの発言をそのまま引用させていただいて恐縮だけれども、そのままの言葉で申し上げると、総理御自身もサミット協議の場において内需拡大の推進と大幅税制改革に着手する決意を表明されたと聞いております。国際場裏において約束したことは、これを実行に移していくことが国際的責務であり、いかなる困難に当面しようとも、一層の市場開放の推進と内需拡大による内外均衡の達成の二本柱を、すべての政策課題の中心に据えて取り組んでいかなければなりません、こう歯切れよくおっしゃっておるわけであります。そのとおりだろうと思うわけであります。内需拡大と抜本税制改正、市場開放、これで国際収支の改善のこの命題は、まさに日本の国際公約としての至上命題となっているという認識を持つわけでありますが、いかがでしょうか。
  85. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 ボン・サミットにおきましてまず明確にしたのは、いわゆる機関車論というものはとらない、そういうことでこれは明確にいたしまして、各国もそういう態度でございました。  それから第二番目に財政赤字の削減、インフレなき継続的成長拡大に向かって努力していく。インフレなき持続的拡大というのは非常に大事なことでございます。その一環といたしまして、我々は内需拡大する方向努力していきたい、輸出依存体質からも大きく脱却していきたい、そういう話も我々の考え方としていたしました。その線に向かって我々は今後も努力してまいりたいと思っております。
  86. 渋沢利久

    ○渋沢委員 ところで、この内需拡大はいつまでにその成果を示すというか役割を達成すべきものであるか。当然タイムリミットを持って話し合われた課題だと思います。その点はいかがでしょう。
  87. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 これはいつまでにするというような、そういう時間的制約はないので、次の東京サミットで会うまでの間にこれこれのことがあったというレビュー、そういう問題はあると思いますけれども、時間的な約束はしておりません。
  88. 渋沢利久

    ○渋沢委員 いつまでと言わなくても、それは、しかし来年の東京サミットまでには笑顔で話し合える状況をつくるというのが、おっしゃったとおり常識の線だろう。タイムリミットはないわけじゃありません、厳格にありますということだと思います。五年先、十年先でもええわいという、中長期の、二十一世紀へ向けての経済の議論をしたわけではありません。今起こっている摩擦について、今起こっている問題についてどう解決をするかということの中で、この内需拡大税制改正論が展開をされたと思うわけであります。来年の東京サミットというタイムリミットを考えると、これは大変急がなければならない課題一つの枠の中でこれから取り組まなければならぬということだろうと思うわけであります。  そこで、市場開放策というのをいろいろ出してみましても、今までの例から考えましても、そのことでそう簡単に輸入増大が短期に図られるというようなものではないと思うわけであります。結局、内需の積極的な拡大と市場開放というものとが相重なって相乗的な効果を果たすということで国際収支に投影をしていく、こういうことになるのではなかろうかと思うわけであります。そういう意味では、やはり内需拡大がかぎになっているという理解をすべきだと思うわけでありますが、そういう認識が一つ。  さて、そういう意味で、これはタイムリミットはないと言われても明確にある、客観的にはそういう状況の中で、内需拡大を具体的にはどう展開されようとしておられるのか、お尋ねをいたします。
  89. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 これは経済財政及び金融政策の運用、国際環境を見ながら適切に処理していくということが一つと、もう一つは、規制解除、民活、こういうようなものを大いに促進いたしまして、内需拡大にも大いに役立たせるようにいたしていきたい、そう考えておる次第でございます。
  90. 渋沢利久

    ○渋沢委員 二つのことをおっしゃったけれども、第一の点は内外の状況を見ながらということでありまして、要するに、最近総理が御自身であらゆる機会に強調しておられるのは、内需拡大の主力は民間活力、そのための規制緩和、これを主材にして都市再開発などを展開をする、ここに重点を置いた内需拡大策を進められようとしているというふうに受けとめられるわけです。そういう受けとめ方でよろしゅうございますか。
  91. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 大体そんなところも入っておるわけであります。
  92. 渋沢利久

    ○渋沢委員 今まで言われておる総理の内需拡大政策、その民活、規制緩和の施策中身は、例えばそれがどう雇用にはね返っていくのか、変わっていくのか、個人所得がどうなっていくのか、あるいは民間資金投入、投資はどうなるか、それは個人消費にどう返っていくか、経済的な計量性というものが何にも示されない形の中でこの民活、規制緩和ということが言われておる、やられておるということでありまして、内需拡大策、そして民活、規制緩和とおっしゃるけれども、そういう手法で一体具体的にどういう形で内需拡大していくかという展望は何も示されておらない、経済的計量性を欠く中身であるということが非常に特徴的ではなかろうかと思うわけであります。  例えば、規制緩和で都市改造がやられるといいましても、都市改造という再開発事業に、国有地の開放を含めて総理は大変御熱心でいらっしゃるというのが特徴だと思いますけれども、しかし一歩間違うと、この規制緩和による都市改造が、本当に限られた一部の民間デベロッパーの気ままな開発の道具になって、その結果、限られた大手開発業界の大きな収益、そして土地価格、そして場合によれば政治献金だけが高い水準を保たれる、こういう特徴、傾向だけが残る、そうなりかねないという側面も持っているわけであります。  我々が問題にしたいのは、内需拡大の政策課題として、今お認めになったように、そして事実明らかなように、民活、規制緩和、この手法による都市改造計画、ここに重点を置くというような手法で、本当に具体的に内需拡大がどう実のあるものになっていくのか。しかもこれは、長期的なものではなしに、短期的な即効性を求められているという特徴からいえば、今の御説明ややり方だけではいかがなものか、こう思うわけであります。教えていただきたいと思います。
  93. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 電電公社を解体しまして民間の株式会社に変えまして、それと同時に電気通信法の改正を行いまして自由参加を認めるようにした、その結果、第二電電とか衛星通信とかいろいろな仕事が一斉に噴き出しております。こういうような発想に基づきまして、関西空港につきましても株式会社方式で民間資本を導入してやった。こういうような考え方に立ちまして、民間資金をいかに動員するか、また、今まで官庁の持っておった権限を民間に放出することによって、民間が思い切って動けるようにしてあげる。重要な公共性を必要とする場合には、もちろんそれは担保しておく必要もございます。そういうような考えに立ちまして、今懸命の努力をしておるところでございます。
  94. 渋沢利久

    ○渋沢委員 率直に申し上げて、決して十分なお答えになっておらないと思うのであります。秩父セメントの諸井社長は、民活はあくまで長期的なもので、内需の即効性はない、こう言っておられる。新日鉄の斎藤会長は、例えば東京湾横断道路をとらえて、この種のものは二十一世紀につながるプロジェクトであって、当面の景気刺激に結びつくようなものでない、こうおっしゃっております。こういう構造的なものは、まさに民活、規制緩和重点の内需拡大政策というものでは、即効的な内需拡大には全く役に立たないということは明らかなのであります。  先般の本会議でも、各党の質問に対して、対外経済問題諮問委員会の提言を軸にして、これを尊重し、これを遂行していくということを総理は表明しておるわけでありますけれども、あの委員会の提言というのは、私が言うまでもありませんけれども、四つの柱を持っておる。一つ内需拡大方向税制改革、一つは労働時間の短縮、一つ社会資本投資の分野に民間資金が導入できる対策、そしていま一つは民間の経済活動を活性化するための規制緩和、こういうような四つの柱でしょう。あなたのやろうとしておることは、この四番目の規制緩和にだけ重点が置かれておる。しかも、社会資本投資の分野に民間資金が導入できる対策とか民活、規制緩和というのは、これは効果はないとは言いません、否定はいたしませんが、いずれもかなり中長期的に見ていかなければならない性質のものであります。それに重点を置いていて、例えば労働時間の短縮というような、この委員会が提起している課題についてはどんな取り組みをされておられますか。あるいは内需拡大のための税制改革という課題についてはどう取り組もうとしておられるのでしょうか。
  95. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 労働時間の短縮問題については、与野党の協議もございまして、それらの結果も踏まえまして我々は努力してまいりたいと思っておるところでございます。  私たちは、いわゆるゴールデンウイークについていろいろ御議論を伺いましたが、中小企業の皆さん方やその他の関連企業等のことも考えてみて、まだ踏み切るというところまでは熟していないという感じがいたします。しかし、欧米等との関係も考えてみますと、労働時間の短縮につきましては我々はやはり誠意を持って努力する必要がある。ただ、官のやることと民のやることとは相侵すべからざるものがお互いあるわけでありますから、民のやることを官が強制してやるということは、この問題については必ずしも適当でない部面がございます。そういうような意味におきまして、よく分限をわきまえつつそういう方向にリードしていく、時代を誘導していく、それが政治の仕事であろうと考えております。
  96. 渋沢利久

    ○渋沢委員 労働時間の問題は、きょう私の持っている時間の範囲で、これは少し議論をせねばいかぬのですけれども、きょうやっておれませんので、これは省きます。  税制改正の問題ではお触れにならなかったけれども、これは後でまた改めて聞きます。  個人需要が伸びない、これは実質可処分所得が伸びないということから出ていることははっきりしておるわけであります。もろもろの情勢からいいまして、総理、ことしはやはり内需拡大というものを手がけていく観点からすれば、人事院勧告、仲裁裁定等について、ことしは値切りはできない、すべきでないというふうに思うのであります。これはひとつ十分弾力的な対応を、政府としてはことしはきちんとしなければならぬというふうに考えておるのですが、ことしも値切るのですか、いかがですか。
  97. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 新しい人事院勧告が出ました際に、政府としての対応を考えてみたいと思いますが、原則として人事院勧告を尊重して、これを実現するために我々も誠意を持って努力しておる、そういう基本的立場を持っておる次第でございます。
  98. 渋沢利久

    ○渋沢委員 住宅投資減税という問題があります。来年の予算編成に向けて、これは積極的に検討するお考えはございませんか。
  99. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 減税全般については、私は所得税、法人税等の減税を実行したいと前から申し上げているとおりで、これらはいろいろ検討してまいりたいと思っておるわけでございます。住宅投資減税というのも、やはり考うべき大事なアイテムであると私は心得ております。これらにつきましても、税調等におきましていろいろ検討もしていただく、そういうことになるのではないかと考えております。
  100. 渋沢利久

    ○渋沢委員 予算審議の過程で取り決められました与野党合意に基づく減税措置というものについては、これは総理は尊重して、これが実現されるように努力すると言っておりましたけれども、せっかくの機会ですから、改めてどう進められるのか、伺いたいと思います。
  101. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 予算審議に際しまして、幹事長・書記長会談等におきまして決められました内容につきましては、これを尊重していく考え方でおります。与野党の責任者同士の話し合いの結論を今見守っておるということでございます。
  102. 渋沢利久

    ○渋沢委員 時間がありませんので、この部分では締めくくりをしなければならないと思うのでありますが、総理のお話聞きましても、タイムリミットを持った内需拡大というこの取り組みについて、具体的な、即効性のある成果を予見できるような施策は皆無である。皆無であると言わざるを得ない。これはどうしてお果たしになるお考えなのだろうかと思うのであります。  従来、総理がとってこられた「増税なき財政再建」という名の緊縮政策は、賃金の抑制、公共事業の抑制、個人消費の抑制の上に、輸出ドライブをかけて、輸出関連大企業は高利潤を保証して、そして高い設備投資の水準を維持してきたという特徴を持っておるのです。しかし、私はこの路線と、当面差し迫って内需拡大に成果を上げなきゃならない貿易摩擦の解消、貿易収支の改善というところ、それが姿に見える形で、来年の東京サミットは笑顔で話し合えるような状況をつくるためには、これは両立しない。どこで一致させるのか、どっちをどう手直しをするのか、今のままでいいのかというふうに思うのであります。これはやはり今のこの状況に大胆に対応した展開が必要なところに来ていると私は思うのであります。     〔熊谷委員長代理退席、熊川委員長代理     着席〕  今度のボン・サミットの経緯から考えましても、このままの事態で推移をして、もし内需拡大に策なし、結果なし、誠意なしというような事態にでもなれば、私はこれは大変重大な事態になりかねないと思うのであります。これは総理はどう御認識でいらっしゃるのか。日本経済は我が国一国で成り立たず、それはボン・サミットでの国際公約の後始末で総理が責任を問われるようなことがあって、中曽根内閣が倒れても、それはどうでもいい、失礼な話だが。しかし、日本経済は、そういう状態のときは大変なことになると、私はそれを憂える。下手をすれば、それは輸入制限まで行きかねないという状況だろう。事態は、総理が言葉鮮やかにさまざまな会合でくくり抜けてこられたような状況とはちょっと違うのではないか。かなり具体的な形で、しかも短期にこの内需拡大を軸とする成果を内外に示すということが迫られておる、こう思うのであります。それに対応するにしては、私は、総理のお話は非常に具体性を欠く、迫力を欠く、こう考えざるを得ないわけでありますが、総理、いかがでしょう。
  103. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 政府としては、公共事業の執行とかその他の面につきましても、適切に次々に今実施をやって、成果を上げようと努力しておるのであります。また、いわゆる民活という面につきましても、規制解除等について、今馬力を入れて行革審が最終的段階において我々に答申を出してくださるということでありますから、それを受けてこれを推進してまいりたい、そうも考えております。  幸いに景気は持続的に拡大をしてきておりまして、本年予算編成に際してお示しした我々の見積もりである実質四・六%の経済成長実現を目指して今一生懸命努力しておりますが、今の情勢では大体順調のように思えるのであります。最近は特にまた内需、特に消費面も次第に拡充してきつつあります。こういう傾向を助長して、内需拡大にも資するようにしていきない、そう考えておるところであります。
  104. 渋沢利久

    ○渋沢委員 そのいい状況だけとらえておっしゃるのもいいけれども、しかし、ここ最近の設備投資の趨勢は停滞をしている。輸出も停滞状況がある。アメリカ経済も容易でない事態が出ている。この間竹下さんにそれを言うたら、いやそれは一時的なものだとおっしゃっていましたけれども、私は、そう状況を甘くだけ見るべきではない。もっと厳しい環境の中に実は立たされておるように思うわけであります。  さらにお尋ねをしていきますが、レーガン大統領がいわゆる税制改革の案を先般提起せられました。あの大統領の税制改革案をごらんになって、総理が最も強い印象をお受けになったのは何ですか。
  105. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 私は、やっぱり簡素という点を非常に強く出したなと思います。所得税制にいたしましても、一五%、二五%、三五%という三段階に区切ってしまって、そして煩瑣なものを全部切ろうとしておる。法人税にいたしましても、たしか三三%あるいはそれ以下というふうにいたしまして、枝葉を切り取りながら、また今までの特例措置等も削減しつつ簡素化しつつある。そういう形で、簡素と民活ということを中心に考えていらっしゃる、そういうように拝読したところでございます。     〔熊川委員長代理退席、中川(秀)委員長     代理着席〕
  106. 渋沢利久

    ○渋沢委員 総理は、今国会予算審議の過程を通して税制改革に触れて、これを公平、簡素、公正、選択、それに途中から活力というものを乗っけて、五つのテーマを表題にされたわけであります。これは多分アメリカの財務省の提起、作文を参考にされたのだろうと思うのであります。  去年の十一月に、財務省が大統領の諮問に答えて、大統領に提起いたしました税制改革の試案の表題は、あなたもお読みになったように、これはまさに今回も全く同じ形で出ておると思いますが、公正、簡素、それから経済成長のためのということですか、これを御参考になって日本的に、中曽根的に幾つかおつけになったということだろうと思うのであります。しかし、願わくはその財務省のお書きになった作文の表題だけ、もと表紙だけ参考にされるということでなしに、これは総理、その内容をどう選択して酌み取られるかということが一番大事なことで、そこを聞きたかったわけであります。  簡素が非常に印象的であった、簡素ということの受けとめ方は所得税の簡素化ということでありました。しかし、あそこで言っているのは単なる簡素化、この簡素は簡略化ということではない。五つあるものを三つにしたということだけでないことは、これは深く読めばだれが見ても明らかなことなのであります。日本のある新聞の表現をおかりすれば、「複雑かつ既得権益保護の抜け穴だらけとなっている日本税制の改革を迫る契機」こう言っていますが、まさに租税特別措置の累積する、近代国家における税制の恥部と言われまじきこの仕組みを温存をしております。  竹下さんが頭をかきかきいつも大蔵委員会でおっしゃるのだが、あのグリーンカード制を出した男も竹下だ、つぶして引っ込めたのも竹下だ、非常に正直な素直な方でいらっしゃるから、そういうことを御自身でおっしゃるんだ。これは全く歴史に残るお話ですよ。また、あのことをある面では果断に選択して行動しておれば、今の財政危機の中で日本財政危機を救う、財政の再建に寄与する。何も電電株をむちゃくちゃに強引にむしり取るような乱暴なことをしなくても、大きな成果があったはずなんだ。それをちゃんと取り残して、自分でつくって自分でつぶしてまでやっている、そういうことなんだ。  その他、日本税制をめぐっては多くを議論いたしませんけれども、そこをレーガンはきちんと整理しておるじゃないですか。それがちゃんとついておるじゃないですか。課税最低限の扱いもどうですか。やはりその税金を納めるべきでない層に対する的確な対応をやっておるじゃないですか。単に十四を三つにしたというような簡素化、簡略化ではないのですね。そう言ってほしかった。そう書いてある。そういう中身なんですから。私はそういう意味では非常に画期的な側面を持った税制改正案であると思う。表題だけ、総理、ロン・ヤスで参考にされて学ばれるというのは困る。中身をお考えいただかなきゃならぬはずだと思うのでありますが、いかがでしょう。
  107. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 もちろん日本の社会とアメリカの社会は違いますから、日本的な自主的な考えで、我が民族や社会風土に合ったものをやらなければいかぬと思いますが、さきに挙げた五つの目標を考えていきたい、そう考えております。
  108. 渋沢利久

    ○渋沢委員 私、内容についてはきょうは細かく触れませんけれども、ただ一つ、これだけは総理、申し上げておきたい。  一つ学ぶこと、それは十一月ですよ、財務省がレーガンに答申を出しているんですね、案を。それを受けて、今回大統領が大統領の税制改革案というものをお出しになった。これをまず国民に問うておる。そして、これから議会に法案としてかけるのですね。間もなくかかるでしょう、あるいはかかっているか。まず国民にかける、議論をしてもらおう、そして国会にも出して九月の十五日まで、会期いっぱいまでひとつ国会での議論もしてもらう、ずたずたに国民国会に、このレーガン大統領の税制改革案の議論をしてもらおうというこの姿勢ですね。  総理のおやりになっているこの仕事の流れの中の一つの特徴は、さまざまいろんな委員会をつくる、審議会をおつくりになる。教育改革、何の改革といろいろなテーマは多いのですが、皆各種委員会を、臨調がその代表的なものだがおつくりになって、そこで、——ここは国民の選択を受けた、負託を受けた代表ではない。あなたが選んだ代表だ。専門家に違いないかしらぬけれども一つの物差しでお選びになっている。国民から選ばれたものではない。その機関ではない、そういう委員会をたくさんおつくりになって、そこで何か一つまとめ上げてそれを既成事実化していく。そして国会に出したときには、あとは数の論理で、日程と数で詰めていく、こういう繰り返しで本当の議論になってない川国民の間でじっくり議論をし、議会もまた議論をして、時に党派の垣根を超えて協力し合うというような状況で、みんなのものとして取り組ませるというような環境にない。これは私は、我々の反省もなきゃいけませんけれども、やはりレーガンのこの姿勢の中に学ぶべき点だなと思いました。何よりもその決めようとする税制国民のものだ、こういうことが一つ私はあるように思う。この点、総理はいかが思うかということが一つ。  それからついでに言いますが、あの内容の中で大型間接税、一般消費税的なもの、これは否定していますね。明確に否定している。これはやらぬと言っている。そのやらぬ理由は非常にはっきり書いてある。非常に鮮明ですね。やらぬ理由は幾つかあるが、一つ、これは低所得者層を苦しめる。二つ、そこを解決しようと思うと、食品その他日常生活必需品のための課税措置を特別につくろうとすると、制度が大変複雑になって面倒きわまる。職員を二万人ふやさねばならぬ。十八カ月の準備期間とその準備執行費用が七億ドル見込まれる。この四つの理由でこれはやらぬ方がいい、別な手法だ、税収についてはこういう見解を示している。実にわかりやすい、中学生にわかる話で、この税制改革の大型消費税は、あなたの今国会でのさまざま言葉をもてあそんだ答弁、どうひっくり返して速記録を裏から読んでも表から読んでもわからない、逃げ道ばかりですね、そういうものとはどうもこれはやはり大変大きな違いがあるように思う。これは私があのレーガンの税制改革案を見た一つの所感で、二つの手続、手法の問題、この点について総理の率直な御意見を伺いたいと思います。
  109. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 私はあなたのおっしゃったようなことを実はやりたいと思って審議会をつくっていただいて、その間で議論がうんと出ますと、新聞に載って国民の皆さんがみんな関心をお持ちくださる。それを十分煮詰めた上で政府としては国会に提出して、国会は立法、予算等に関する最高、最終の権威のある機関でございますから、そこで国民代表の皆さん方に権威のある御議論を願って御採決を願う、そういう考えに立ちまして今までやってきたつもりでございますが、今渋沢さんがおっしゃいましたことにつきましては、よく肝に銘じまして今後とも努力してまいりたいと思います。     〔中川(秀)委員長代理退席、沢田委員長     代理着席〕
  110. 渋沢利久

    ○渋沢委員 各種審議会等の機関設置が隠れみのになっておる、議会無視に通じておると思う。  そこで伺うが、さて、レーガン大統領の税制改革もさることながら、我が国の税制改革、これはあなたの在任中にどうしても実現したい、決めたいというふうにお考えになっていらっしゃると思うのです。そういう気構えでこのことは大きくあなたはお打ち出しになったと思う。いかがですか。
  111. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 この議会が終わりましたら、税制の改正、特に所得税や法人税の減税等を中心にして、どういうふうにこれを処理していくかということを大蔵省や党の皆さんにも御相談をして、そしてどういうふうにこれを処理していくかということをだんだん腹を固めていきたい。具体的には税調というものをどういうふうに扱ってどうしていくかという問題になりますが、何といっても党の皆さんや大蔵省の皆さんの御意見もよく聞いてやりたい、そう考えております。
  112. 渋沢利久

    ○渋沢委員 私が聞いたのは、あなたの在任中にこれを仕上げるという御決意でしょうねと聞いている。
  113. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 私はもう時間が迫っておりまして、持ち時間がないので、果たして税制改正が完結するかどうか、法律案まで通って実行に入れるかどうか、これは国会の皆様方の御協力にもよるし、これからのスケジュールにもかかっておるところでありますが、国民の皆様方は減税を欲しておる、そう思いますので、ともかく軌道に早く乗せるように努力したい、そう思っております。
  114. 渋沢利久

    ○渋沢委員 それはともかく、各種制度の戦後政治の見直しということで大きな決意を振りかざしてあなたは登場なさって、そしてさまざまな改革、教育改革、国鉄改革といろいろ手がけようとされておるわけです。その中で、税制改革というものは主要な柱になって残されておることは明らかで、私の在任中に果たし得るか否かなどという、さような姿勢ではあるまいと思う。だとすれば、今急がねばならぬとおっしゃいましたけれども、少なくとも来年の予算編成にはこれは反映させるというような状況でとらえておられるのかどうか。来年でなければ、在任中にこの形を残すとすれば、もう再来年の予算編成、これはあなたの在任が確かにお切れになる時期ですから、来年におやりになる以外にないんですね。まさに言葉のみありきでしょうか。いかがですか。
  115. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 ともかく先ほど申し上げましたようなスケジュールをまず立てて、そして党の皆さんや大蔵省の皆さんとも相談をしてやっていきたいと思いますので、それから先のことは今のところ何とも申しかねる次第でございます。
  116. 渋沢利久

    ○渋沢委員 私は、レーガンの税制改革案に学ぶところ多し、こう言いましたけれども、総理、表題だけでなしに、さらにその中身についても、あなたの御都合のいい部分だけつまみ食い的に利用されるというような扱いでなしに受けとめてほしいということをまず申し上げておきたいと思います。  それで最後に、残された時間、電電株の問題に触れて若干のお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。  総理、公共企業体の事業の成否というのはまさにさまざまであります。電電は実によくやってきたと私は思っておるわけであります。すぐどこへでも通じる電話をすぐに引く、こういうキャッチフレーズ、これは電話局などに行きますと職場の中にそういう趣旨のことが、二大目標とかいっていつも掲げてあるのを私よく見て知っております。やっておるなあという思いであります。必死でやってきたと思うのであります。電電事業は独占事業だからとか、こう殊さら言う人があるわけでありますけれども、私は、独占に甘えた事業運営であったらああいう成果は生まれないと思うのであります。労働者も合理化に耐えて随分頑張ってきました。まず要求し、まず闘い、から取った範囲で仕事をするというのではなしに、まず事業を進め、高い技術を求め、そしてそういう取り組みをしながら、国民へのサービスを常に意識しながら、取り組みながら、お互いの権利と暮らしを守っていくという運動の支えが大きかったと私は思っているわけであります。  現に世界の主要国の中で、電話機当たりの従業員数においては、英国やフランスや西ドイツというものよりもはるかに低い条件ですね、要員は。しかし、ここ十数年、電話機設置数の伸び率は一貫してトップの位置を保つというような非常にすぐれた成果を上げておる。これは単に独占事業の甘えの上に成り立つ成果ではない。大変な合理化を労使ともにくぐり抜けて、こういう事業成果というものをおさめてきたという経緯があります。だからといって私は恩着せがましいことを言うつもりはありませんけれども、この事実は事実として、やはり総理もこの電電関連の民営の法律案を扱う際にも、そして今その株の売却益について決めようとするこの法案審議に当たっても、まずこの認識をしかと受けとめておく必要があると私は思っております。総理の認識を伺いたい。     〔沢田委員長代理退席、上田(卓)委員長代理着席〕
  117. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 電電の皆様方にはかなり能率を上げていただいて、政府といたしましてもかなり巨額の納付金を出していただいて財政の苦しいときをいろいろお助けをいただいた、そういう点については非常に感謝をしておりますし、民間会社への切りかえにつきましても、電電公社の旧労働組合の皆さん方が労使関係を実に円滑に運用されまして、スムーズに切りかえをやらせていただいたという点についても大いに評価しておるところであります。
  118. 渋沢利久

    ○渋沢委員 労使の企業努力に加えて、電話加入者の財政協力というものが、口は出すけれども金は出さない政府のもとでこの事業を発展させてきた力であることは言うまでもないのです。そして、国の財政危機を理由に、金を出さない政府が、今おっしゃったように金を取り上げる政府となって、七千億に近い電電の収益を国庫に納付させるということもやってきた。事業の成果を上げているといっても、五兆六千億の負債を背負った事業体である。民間に移ることでさらに大きな負担が加わる。  これはもうくどいこと申しません。いろいろ見ていたら、竹下大蔵大臣がこの大蔵委員会で、去年の財確審議の中で言っておるのです。いわゆる会社経営に移れば、今ゼロの退職給与引当金、限度いっぱいやれば一兆七千億というようなことになる、会社経理に移っていかれるまでには、この種の問題、実際たくさん出てくると思う、民間会社経理形態に移行される問題などによって生ずるもろもろの問題については、十分理解と関心を持って対応すべき課題だと理解している、こう言っております。  しかも、この竹下さんの言葉の中にあります退職給与引当金のほかにというのは、これもいろいろ指摘があったように、税金とか道路占用料とか社会保険料とか配当、さまざまな負担が強いられようとしているのに加えて、さらに公共的な事業性格というものもいわば義務づけられておる。民間企業だからということで企業の収益性、採算性だけを基準にして、目標にしてこの事業遂行に当たればいいというわけにはいかない。このNTTの責務として、電話サービスを全国隅々にまであまねく安定供給させようという公益的な責務を負わしておる。将来出てくる企業が不採算地域へのサービスは逃げる。NTTが光電電公社なるがゆえの経営負担というもの、あるいは災害時の通信確保の責任を果たすというような負担というもの、責務というもの、他の企業に見られないであろう経営負担を担って出発をしておる、こういうふうに思うわけであります。しかし何の配意もない。大蔵大臣言葉だけ。言葉のみありき、こういうことでありました。どんな配意があるか。今ここで示されているのは、まさに株の売却益の使途を、みずからつくり出した赤字国債の運営に充てる、それだけのことであります。  大蔵大臣、中国には、水を飲むときには井戸を掘った人を思えという言葉があるけれども、先ほど紹介したこの委員会での答弁であなたが言っているように、民間に移ることによって生じるもろもろの問題について、十分な理解と関心を持って対応すると言うが、どう配意をされるのか。社員持ち株制は社会の趨勢である。英国電電の例などを踏まえてこれが実現されるような配意はあるのか、あるいはその他どんな配意をあなたはされておるのか、この法案で何が示されておるのかということを問いたいと思うのであります。
  119. 竹下登

    竹下国務大臣 まず、電電の問題というのは、総理からも先ほどお答えがございましたように、労使の長い完熟したとまで言えるような関係の中で営々として努力されてきた、これを否定する者はいないと私は思います。  そこで、今度民間に移行されたということになりますに際しては、何よりもまず政府の介入することは最小限にとどめるべきだ、全く干渉しないというぐらいな姿勢でこれに対応していくべきだということが一つであります。     〔上田(卓)委員長代理退席、米沢委員長代理着席〕 そしてもともと資産も、そしてまた債権債務両方を引き継がれるし、長年蓄積された技術、ノーハウも引き継がれていくわけでございますから、今後ともこれが一層発展していくこと、どんな競争原理にあろうと発展していかれることに対して、私は強い期待と信頼を寄せておるものであります。  そこでまず、議論をいたしてまいりました中には、せっかく孜々営々としてきたが、株式の売却はいわゆる負債の返却に充てるべきだ、こういう議論もありました。しかし、このことはやはり国民共通の負債であるところへ国民共通の財産としてこれを充てることによって、やはり債権債務ともに継承されたわけでございますから、その考え方は、経営者あるいはそこで働いた人の考え方としてはわかるが、それは御寛容をいただきたい、こういうことを申し上げてきたわけであります。  そして、さらに社員持ち株制はどうか、こういうことに対しましては、これは基本的には労使間の問題でございますが、日本の優良企業というものの数多くがいわゆる社員持ち株制というものをとって、そのことが社員意識を高揚するし、一方また安定株主対策にもなっておるということは、私どもも非常にそれは評価をしておるところであります。基本的には、新電電のいわゆる労使の問題であるという表現にとどめておるわけでございますけれども、我々が、優良企業の多くがそういう形にあることを評価しておるということで、お答えはやはりそれ以上踏み込むのはいかがかな、こう考えて、その程度に限界を決めて答弁しておるわけでございますが、おっしゃる気持ちに対しては、我々は絶えずそういう環境整備のための努力はしなければならないものであるというふうに考えております。
  120. 渋沢利久

    ○渋沢委員 時間がありませんので、総理、最後にお尋ねをしたいと思うのであります。  とにかくこれはひどい法案だと私は思うのです。ひど過ぎて、まさに強権的、強奪的法案ですよ。赤字国債の大量発行というのは、時の政府の政策選択の判断の一つでやられたことなんだ。議会を挙げてやってほしいといってとっていただいた政策とは違うのであります。野党はこれに反対をいたしました。一部の有識者も、このような国債の大量発行が招く結果、事態についてやはり厳しい警告も発している。そういう中でおやりになったことであります。そのいわば後始末を、営久として築き上げてきたこの電電労使の事業成果をむしり取るような形でするというこの法案は、まことに私は納得しがたいものだと思うのであります。国民共有の財産だから国民共有の負債に充てるというような言い方、全くこれはおこがましいにもほどがある、ごろ合わせにすぎないと思うのであります。まさに電電労使の努力や電話加入者の協力で築いたこの財産、それを自民党の時の政府の誤った政治判断に基づいてつくられた赤字国債の後始末に充てるというだけのことでしかないのであります。  このようなものは納得しがたいということを私は強調いたしまして、ちょうど時間でありますので私の質問を終わりたいと思います。
  121. 米沢隆

    ○米沢委員長代理 武藤山治君。
  122. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 中曽根総理と一年半ぶりに論戦を展開きしていただく機会をいただいて大変感謝をいたしております。いろいろ尋ねたいこといっぱいあるのでありますが、一時間でありますから、かなりぶっきらぼうな質問しかできないと思うのであります。  最近、新聞報道で解散問題があちこち報道されて、国会議員の中には浮き足立つ人もおるし、また、次点で落選している人にとっては大変早期を期待をしたり、いろいろな情報が乱れ飛んでおります。総理の気持ちの中では、解散というのはどういう事態のときに解散をしなければならないという、幾つかの事態が想定されると思うのでありますが、どういう事態のときをまず想定していらっしゃいますか。
  123. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 これは憲法に基づいてやることでありまして、一番典型的なのは不信任案が成立した、そういう場合には辞職するか解散するかという問題。信任案が否決された場合も同様でありましょう。それから普通またもう一点言われるのは、いわゆる人心一新、重要政策等が提示をされて、そして国会が紛糾したり、あるいは紛糾しない場合もありましょうが、国民の信を問う、そういう場合に今まで解散というのは行われてきた、そう思います。  大体そういうことが主で、いわゆるばかやろう解散とかいろいろなものがあったけれども、ああいうものははずみがあって起こったので、政治にはそういうはずみというものもまた過去においてはあった。しかし、そういうものは民主政治の常道としてはない方がいい、そう思います。
  124. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 総理がおっしゃるように、不信任案が可決をされたとき、あるいは可決されるおそれのあるとき、大平さんのように解散をした人もいらっしゃいますね。あるいはまた、総理自身の基盤である政党の内紛、党内の紛糾、そういうものを収拾するために、あるいは総理としてどちらを選択するかという場合も、首相によっては解散ということもあり得る。  今一番心配しているのは、それ以外のこと、総理の恣意的な、自己の延命のためや自己の勢力あるいは自己の派閥の温存、勢力拡大、そういう恣意的な場合の解散があったら大変だという気持ちが、報道を読む限り、ちらほらとないとも限らないという感じを抱かしておるのであります。それは、自民党の総裁任期が二年になっている。そうなると、総理はあと一年半しか時間がない。それでは、あれもこれもと提起した問題を処理する時間が足りない。だから一応年内解散か、いや六月の同時選挙がといううわさが、あちこちの報道におもしろおかしく書かれているのだと思うのであります。  私は、憲政の常道から、あるいは議院内閣制という民主主義の基本から見て、そういう解散はあってはならない、恣意的なそういう解散は断じて避けなければならない、こういう気持ちを持っておる一人なのでありますが、その点については首相のお考え、いかがでございましょうか。     〔米沢委員長代理退席、堀之内委員長代     理着席〕
  125. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 解散は、そういう一身の都合とか恣意的にやるべきものではないと考えております。
  126. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 もう一つ、選挙に関連して。  前に同時選挙というのをやりました、衆参一緒に。私はこの選挙のあり方は憲法の精神に反すると思うのです。それは憲法第五十四条に、手帳の中に書いてありますが、この条文を見ますと、五十四条のただし書きのところに、「前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであって、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意」を得なければならないという文章の前に、衆議院が召集できないときには参議院において緊急集会を開くという規定になっております。そうすると、参議院のこの緊急集会が、国家存亡のとき、危急のとき、特に緊急決議をしなければならない課題が発生したとき、常に参議院が国権の最高機関として機能する仕組みに憲法はなっているのであります。ところが、同時選挙というのは参議院の半数がいなくなってしまうわけでありますから、この機能が停止しちゃうんですね。そういう事態を憲法は想定していないのであります。ですから、憲法違反と言えるかどうかは、また法制局長官の意見を聞かなければわからぬと言うかもしれないが、憲法の想定した事態から見ると、同時選挙は憲法違反の疑いが私はあると考える。総理はこの問題についてはどう理解をされますか。
  127. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 いわゆる同時選挙というものについては違憲ではない、そういうふうに政府、法制局長官は今まで答弁してきたと記憶しております。その理由は、参議院の半数改選の場合は半数は残る、参議院の本会議を開く場合には、出席は定数で三分の一以上、そして過半数で決する。そういう意味では半分以上おるわけだから、法的には支障はない、そういう解釈があったと配慮しております。  同時選挙が適当であるか適当でないかということは、そういう法的解釈あるいはそのときの政治情勢、あらゆる問題を考えて、やはり政治ですから、総合的に考うべき問題ではないかと考えております。私はしかし、今解散の御論議を武藤さんなすっておりますが、解散する気持ちなんかないんですから、そのことは念のために申し上げておきます。     〔堀之内委員長代理退席、委員長着席〕
  128. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 中曽根首相というのは大変賢い、知性派の人格者で、物を読み取るのにも大変迅速に、理解力を持った、すばらしい品格を持った人だと、私は実は個人的には思っているのであります。というのは、一年半前以前の中曽根総理の言動と、この一年間の総理の言動や姿勢や態度というのは、大変慎重になって、やはり国民の棟梁としての配慮というものを感じさせる言動が大変多くなってまいりました。総理一年のときの中曽根首相というのは、どこへ行ってしまうか大変心配だという不安を私は率直に抱いたのであります。そういう私の目から見ると、まあそんな乱暴な解散などを勝手に恣意的にはやらないだろうという期待は持っております。しかし、今お答えになったので、実はさらに安心をいたしたわけであります。やはり政党政治は堂々と政策で張り合って、与野党の対決で国民に信を問う、そういう習慣をつけないと、私は民主政治というものは発達していかないんじゃないか、そう感ずるものですから、財確法に関係のない話を聞いて大変失礼でありますが、冒頭に確認をしてみたかったわけであります。  次に、法務省の方の時間の関係で、これを先に質問しないといけませんので、指紋押捺問題について質問をしてみたいと思います。  大蔵大臣、その前に、在日韓国人、朝鮮人の国税納税総額は年間どのくらいになっておりますか。
  129. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 突然のお尋ねでございまして、ただいま国税庁の方に至急連絡をいたしまして、お答えするようにいたします。
  130. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大蔵大臣、韓国の方も朝鮮の方も、皆税金を納めているんですね。また、そういう人たちが社長になっている法人もちゃんと法人税を納めております。したがって、日本人と同等の義務を皆負っているんですね。ここのところを我々はやはりしっかりと認識しておかないと、これらの問題、在日韓国、朝鮮の方々の問題を論ずる場合に、大変なひとりよがりの、日本人独善の発想で物を処理することになる危険があると思うのであります。後で税額は知らせていただきます。  そこで、今韓国の人たちやあるいは共和国の人たちは、指紋押捺問題ということで大変心配をし、不満を持ち、国内では既に百万名の日本に対する非難の署名活動が展開をされておる。韓国においては与野党を問わず、この問題について、中曽根首相と全斗換大統領の間の話と違うじゃないか、約束と違うではないか、こう言って新聞が報道しているのであります。総理はそこまで約束したことはないとおっしゃればそれまででありますが、相手側はそういう感じで、この間の韓国の新聞を見ると、日本人の旅行者にも一切食堂に入らせない、食物を一切供給するな、そういう決めをした商店もあると報道されております。私は、これは日韓問題の今後にとって大変な汚点になるんじゃないかという心配をする一人であります。  そこでお尋ねをいたします。この指紋押捺制度は昭和二十七年にできたようでありますが、その理由、こういうものをやらざるを得ないという積極的な根拠、そういうものはどういうことでできたのでしょうか。
  131. 黒木忠正

    ○黒木説明員 お答えいたします。  外国人登録制度が始まりましたのは昭和二十二年でございますけれども、その当時の制度では、人物を確認するための方法として写真に頼っておったわけでございます。ところが、その当時約五、六十万の登録が行われておったわけでございますが、非常に多くの二重登録、三重登録、あるいは幽霊登録と申しますか、実在しない人物も登録が行われるというような不正が大変多かったために、昭和二十七年、現在の外国人登録法を制定いたします際に、新たに指紋制度を導入した、こういうことでございます。
  132. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 中曽根総理、昭和二十二年から二十七年のこの制定までは写真で確認した。当時朝鮮人は写真で確認をしていたのでしょうか。
  133. 黒木忠正

    ○黒木説明員 その当時は写真だけでございます。
  134. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そのころは、昭和二十年までは日本人で、二十二年にはすべての在日朝鮮人は外国人ということに取り扱われたんですか、昭和二十二年に。だとすれば、昭和二十二年の写真で、日本に在留している数は何名おったのでしょうか。
  135. 黒木忠正

    ○黒木説明員 昭和二十二年の外国人登録制度が始まりました際に、朝鮮半島出身の人、それから台湾出身の人、これについては国籍はまだ形式的には日本にございましたけれども、外国人登録の取り扱い上は、これは外国人とみなすという規定がございまして、外国人登録をしてもらっておりました。  それから、その当時の数でございますが、ちょっと今手元にございませんが、私の記憶しておりますところでは、その当時、先ほど申しました約五十万から六十万近い登録がございましたけれども、その大半の人たちは朝鮮半島出身の人であったというふうに記憶しております。
  136. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 昭和二十七年にこの指紋押捺制度ができたのは、どこの国の例に倣ったんでしょうか、法務省。こういう制度はどこの国でやっているからというので、大体先例はどこに倣ったのでしょうか。
  137. 黒木忠正

    ○黒木説明員 戦前の日本における外国人管理と申しますのは、旧内務省において行われておりまして、外国人の居留届といったものは警察署において行うというような制度が行われておったわけでございます。  昭和二十二年当時、マッカーサー司令部の指令によりまして、そういう制度ではない別個の登録制度というものをつくるというような指示がございまして、昭和二十二年に現在の登録制度のもとができたわけでございますけれども、どこの制度を参考にしたかということにつきましては、ちょっと私つまびらかではございません。しかし、従来の制度と違った取り扱い、戦前の外国人管理方式とは違った管理方式をとるということは、一つの大きな要素になっていたと記憶しております。
  138. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 写真から指紋に変わったこの例は、恐らくアメリカ法律を参考にしたのだろうと私は思うのであります。というのは、アメリカでは移民法の中に書いてあるのですね。ですから、これは移民をするということをはっきり確認——アメリカは世界じゅうの国から移民を受け入れる国ですから、そういう場合にこれをやった。今、法務省の調査の結果をいろいろ聞きますと、今までに約五十カ国についてどういう制度になっておるかを法務省は調べた。五十カ国のうち指紋押捺をしている国は二十四カ国だ。あとは特別な場合、名前が書けない、字が書けないという場合には指紋をとるというのが九カ国。ですから、大体半数は指紋制度ではないのですね。やはり写真なんですね。写真一枚でいいんですね。しかも、それを一々携帯をさせて歩くというようなことは、なかなか酷ですね。  そこで総理に伺いたい。いいですか総理、お疲れのようですが。  日本に来ている半島の人たちは、移民の人たちなんでしょうか。大体世界の移民法に基づいたこの押捺制度、日本が韓国人、朝鮮人に適用しているのでありますが、これは移民の人なんでしょうか、当時日本にいた半島の人たちは。どういう理解をしますか。
  139. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 終戦時、たまたま日本に存在しておったという歴史的理由、因縁というものが大きく作用した、そういう方々であると思います。
  140. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 昭和二十年まで日本人だったのですよ。そして、兵役の義務があったのですよ。徴用にもちゃんと引っ張られて、日本の炭鉱や製鉄工場へ連れていかれた。もちろん軍隊にもいっぱいいます。陸軍中尉、少尉、大分います、私の友達でも。日本人だったのですよ。その日本人だった在日朝鮮人の方々を、昭和二十七年に——台湾もそうです、そういう人たちを突然、平和条約ができたからということで移民の扱いにするというのは、一体どういうわけなんです。これは過去の過ちだったと思うのですよ、当時の。したがって、三十三年たった今日、こういう発想でできた指紋押捺制度というものを直ちにやめるべきだと私は思うのですよ。当然の道理だと思うのですが、総理、どうでしょうか。——いや総理、これは政治的判断です。法に縛られた話ではないのです。
  141. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 歴史的理由、因縁というのは、武藤さんのおっしゃるようなところであると思います。ただ、法的地位という問題につきまして、御本人を確認するということから、いわゆる日本国籍を持った者たちと立場が異なり、あるいは取り扱いが変わってきた。それを日韓国交回復の際にどういうふうに処理するかというのでいろいろ議論があり、両方でも交渉いたしまして、そして、一定の法的地位に関する考え方というものが示されまして、現在のような事態になってきている、こう考えております。
  142. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 その法的地位の問題は、それからまた二十年後なんであります。今から二十年前なんです。これをやったのはもっと前なんです。だから、日本人として徴用に引っ張られ、軍隊に連れていかれ、日本に来た人たちを移民扱いをするということ自体がおかしいじゃないか。もしアイデンティティーが証明できない、おれが自分だということが証明できないために指紋をとるんだということになったら、中曽根首相あるいは武藤山治のアイデンティティー、日本人はどうやって証明しているのですか。何で証明しているのですか、日本は。日本人一人一人の、おまえは間違いない、これだということの証明は、日本はどうや一でおるのでしょうか。——いや、これは総理大臣答えなければいかぬ。
  143. 黒木忠正

    ○黒木説明員 日本には戸籍制度もございますし、住民登録制度もございます。それから、日本人はもともと日本に長く生まれ育っておりますので、この人たち——この人たちというのは、日本人のアイデンティティーというものは確立されていると思います。ところが、外国人の場合は、一般的に申しまして外国から来られた方であり、日本に血縁関係の少ない人もいるということで、一般的に外国人につきましては日本人よりアイデンティティーが薄いと申しますか、ということから日本人と別の確認方法が必要である、このように理解しております。
  144. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 課長に聞いても  これは政治の問題なんですね。高度の政治判断の問題なんです。法務省や警察庁の、法秩序を維持するなんという法の問題じゃないのだ。法の体系や秩序の問題じゃない。今必要なのは政治的な、政策の決断の問題なんです、この問題の変更ができるかどうかの問題は。政治は法律をつくる力であり、法律を破る方なんですから。法の最高の力によってこれを変えるということは、政党政治で、政党間の話し合いが一致すれば可能なのでありますから、そういう見地からこの問題は少し論議しないと、解決はできないですね。韓国と日本との関係の最も悪化する、いつもこれが発火点になりますね。さらに、共和国との国交を回復した後も、この問題が最大のあつれきになりますね。  日本人が、戸籍謄本なり戸籍抄本なり住民票で、この雲とおれが同じものだということが見ただけでわかりますか。だれか証人がいて、この戸籍謄本と君は同じ人だと証明しなければ、わかりますか、写真ならすぐわかりますけれども日本人自身がアイデンティティーをきちっと立証する方法をとってないのですから、外人だけとるということは、これはおかしい。しかも、旧日本人だった人をそういう形でとるというのはおかしい。差別ですよ、これは。新たに日本にこれから旅行に来るとか、六カ月間滞在するとか、一年間だけ日本で仕事をして帰るという場合だったら、パスポートで、写真だけでいいはずです。  しかも、私が朝鮮の早稲田の同級生から涙ながらに電話で聞いた話は、武藤、おれは兵隊に行って、そして、早稲田の高等学院から大学まで君と一緒に出て、何でおれのせがれが二十四になり、二十五になって指紋を押させられ、いつも首に身分証明書をつけて歩かなければ外に出られないのか、この政策は間違っていないか、武藤と、泣きながら僕に言った。僕は、人類という立場に立って、この不当な制度に対して憤りを感じました。これは日本の恥だと思いました。  なぜこれを日本の政治は改革できないのか。総理、総理の英断と総理の英知をもってすれば解決できるはずなのであります。どうでしょうか、総理。
  145. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 武藤さんの言われることも胸打たるる感がなきにしもあらずであります。日韓関係の友好というものを私は本当に欲しておるし、我々は誠意を尽くす考えでおることは変わりありません。  ただ、主権国家といたしまして、日本日本独自の政策をとり、韓国は韓国独自のアイデンティティーを固める方式をとっており、そして、日本国家という立場から、いわゆる内国人、日本人と申しましょうか、それと外国人というものとの区別をするという方式をもって政治は今進行し、やっておるわけでございまして、その中におきましても最大限改良をやろう、そういう考えに立ちまして、私と全斗煥大統領との話し合いに基づいて声明も行われたわけでございますから、その線に沿って改良を行おうというので、今般は黒い色を使わない、また回転方式をやらない、ちょっと液をつけてさわってもらえばそれで済む、そういうような形に変えて前進したと実は考えておるのであります。  しかし、そういういろいろな御議論もございますから、これは長期的課題一つとして、今後も検討を続けてよく考えていきたい、そういうふうに考えておるわけであります。
  146. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 日本では犯罪者しか指紋というのはとらないのですよ。だから犯罪人扱いなんですよ。これがやはり在日半島の人たちの最も納得できない点なんですね。しかも旧日本人、そして軍隊に行った、その子供、二世、二十四、五歳、三十歳くらいにみんななっている、この子供までがそういう扱いになっている。  じゃ、君、子供たちは帰化させたらいいじゃないかと言ったら、こういう犯罪人的な扱いをされているときに帰化することはできない、こういう制度が廃止してもらえるなら、直ちに子供は全部帰化させたい、そう言って泣いたのであります。  総理、政治は理屈だけじゃだめなんであります。特に上州任侠の地に育った中曽根総理、政治にはやはり情けもなきゃだめなんであります。いい法律はできないのであります。あなたは外務委員会で、同僚の土井たか子議員の質問にやはり今と同じように、長期の問題として引き続き検討していくべきものと考える、こんな木で鼻をくくったような答えしかできないんでしょうか。日本における大宰相として将来歴史に名が残る人ならば、この際、国際化を口にし、人類の中の一日本、主権にしがみついて閉鎖する鎖国の日本ではない、あらゆるものを国際化しようじゃないかと言っている中曽根総理、国際的な見地に立つなら、速やかに臨時国会にでもその法案を出すべきじゃありませんか。  改善をしたと言うけれども、色が黒から白になったからだけが何で改善ですか。しかも、それを三カ月説得して、できない者は全部警察へぶち込んでやれというこの強硬な指令は何ですか。人は温かく迎え、「友達の友達は皆友達だ、世界に広げよう友達の輪」という国際の観念に、こういうことは反するんじゃないですか。私はその辺が総理の英断を求めてやまないところであります。長期に検討すべき課題だだけは訂正してもらいたいですね。早急にですね、これは。どうでしょうか。早急に検討をするという形にならぬのでしょうか。
  147. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 たしか五十七年に制度の改革をやり、法律の改正をやりまして、現在はその法律のもとに行われておるわけでありまして、その中でのやり方についての大きな改善をやったということでありますから、現在の法律がある間は法律に従っていただいて、そしてこの場で、今のようなやり方で改良型でともかくやっていただく。その後で、日韓間の友好親善というものも我々は心がけているわけでありますから、検討させていただく。課題として我々はこれを受け取っておる、そういう考えに立って検討していきたい、そう思うわけであります。
  148. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 総理、これは韓国の新聞でありますが、「国際人権擁護韓国連盟は」「ソウルをはじめとした全国で指紋押なつ撤廃を要求する百万人署名運動を始めた。」あるいはまた、「韓国キリスト教青年協議会は、同日、日本製品の不買と日本人の飲食店への出入りを拒否する運動の展開を決めた。」今彼らにとっては大変な心配と不安の問題なのであります。一刻を争う問題だと私は考えるのであります。  総理は、総理の期間としてそう時間がないと先ほど答えました。任期の時間がだんだん少なくなっていることはわかります。しかし、この問題一つをやはり国際化の一環として、サミットに出て堂々と、日本には差別はない、——しかも、旧植民地だったが、この半島の人たちに対して日本人とやや同等に近い取り扱いをした。指紋をやめて写真じゃなぜだめなんですか。しかも、五年に一回ずつ、なぜそんな指紋などときついことをやらねばならぬのですか。そんな理由はないじゃないですか。  そういう点、中曽根総理がかつて警察関係に奉職をしていた、そういう関係から警察官僚にいろいろ入れ知恵をされ、注文をされて、やはりそちらに同調して、大きな人類的視野を失っているんじゃないのかな。旧内務官僚であったればこそ、こういう問題をきちっと片づける、これこそが、私が中曽根総理に望む大きな問題の一つなのであります。  速やかに与野党の話し合いもするし、政府・自民党でひとつ、政府としてメンツがあってできないならば政党同士で、議員立法でやったらいいじゃないですか。外国人戸籍法というのをつくったっていいじゃないですか、外国人市民登録法という法律をつくったっていいじゃないですか。法律は政治がつくるんですから、そういう意味で、私は、この問題については中曽根首相の英断を心から望むものであります。  党は今、堀昌雄さんを代表にして指紋押捺等問題対策特別委員会をつくって、この問題は人道上の問題だということで党を挙げて取り組むことを決めました。私もそのメンバーの一人であります。きょうはその堀先輩も後ろで聞いております。いささかがっかりしたんじゃないかと思うのであります。ですから、そういう問題を政党として、我々としても十分考えているんだということをもう一度しかと頭にとめていただきたいが、いかがでしょうか。
  149. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 ただいまお答え申し上げましたとおりでございまして、武藤さんのおっしゃることはよく胸にとめて考えてみたいと思っております。
  150. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 次に、総理は、税制改革についても再三意見を述べたり、あるいはサミットの終わった後も、新聞記者会見などで税制改革に取り組むということをずっとおっしゃっております。総理の考える税制改革というのは一体何がねらいなのか。私は、税制改革には、今の日本財政事情の中でいろいろあると思いますが、一つはやはりクロヨン、トーゴーサンと言われる不公平、納税者の大部分を占めるサラリーマンの不満ですね。これは、高いというよりは不公平があるということに対する反撃なんです、税に対する不満なのであります。そういう不公平をなくすことが優先されるのか。負担を軽くするのが優先されるのか。大蔵省税収入をふやすために税制改革が必要なのか。それとも、二十年後に大変な高齢化社会になる、その高齢化社会に対応する福祉目的税的なものの発想を税制改革の基本に据えるのか。その据え方によって仕様が全部違うのですよ。総理自身の考える公正、公平、簡素、選択なんと言ったって、一体何をまず公正、公平にしようとするのか、そういうことの中身がさっぱりわからないのですね。大ざっぱな話が、まず何をねらいとするのでしょうか。
  151. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 ここでも御答弁申し上げましたように、税収増を目的としてやるものではありませんと申し上げました。そして、シャウプ税制以来の日本の長い税制改革、税制施行の歩みの中でいろいろなゆがみやひずみができて、不公平感、重税感というものがかなり強く国民から訴えられておる。そういうものを直したい。言いかえれば、所得税、法人税等について減税を断行したい、そしてゆがみやひずみを直したい、重税感から解放させてあげたい、そういうような気持ちが中心点にありまして、いろいろ申し上げてきている次第なのであります。
  152. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 レーガン大統領の税制改革案に賛意を表され、あれをある程度手本にしようという気持ちはよくわかるのでありますが、税制専門家でない総理大臣質問するのはちょっと非礼かと思いますけれどもアメリカのレーガンがああいう思い切って三段階に税率を圧縮できる根底には、アメリカは脱税ができないという仕組みがあるのですよ。個人は利子、配当も総合課税になっているのですよ。ですから、捕捉というものがまことに確実にできる法体系がきちっとできているのですよ。日本は抜け穴だらけなんですよ。  その違いを一つ二つちょっと申し上げてみますと、レーガンがああいう思い切った税率構造を改革できるその根底には、一つは所得税法の申告がアメリカでは収入基準になっておる。日本では所得基準なんだ。所得があったと思ったら申告しなさい、所得がなかったと思った人は申告しなくてもいいというのが所得税法百二十条。だから、日本の申告制度はそういう倫理規定なんです。客観的に事実を表現して、数字で所得を計算しろということになっていない。ドイツのは網羅的に事実を記帳し、その記帳の数字に基づいて申告しなさいとなっておる。日本はそうじゃないです。五千万売り上げがあっても、私は貯金がなかったから所得がなかったわと思えば、クラブのママも一銭も税金を納めなくてもいいのですよ。税務署へ申告しなくてもいい。個人事業者が七百何万件あると国税庁は発表していて、税務申告を出しているのは二百二十万件。五百万件は税務署へ書類すら出さなくてもいいんだよ。こういう所得税法百二十条の規定というものをやはり国際先進国並みにちゃんと、アメリカのように収入基準にきちっと改める。業種別にそのランクをある程度きちっとつくる。アメリカはそれができている、一つは。日本と違う。  第二には、取引資料せんの不提出に対しては罰則がある。ですからアメリカは、一件一日当たり十ドルから二十五ドル、そういう取引があった場合には全部その資料を保管をし、税務署にいつでも提出するように保管をしなければならない。そういうようなことがきちっとできている。収入と支出というものが、客観的に事実がきちっと税務署に把握できるようになっているのですよ、アメリカは。  第三番目には、脱税未遂まで罰せられます。個人は十万ドル以下の罰金または五年以下の懲役または両罰併科、大変強烈な担保措置が脱税に対してできているのです。しかも、その脱税の時効制度がないのですよ、アメリカは。日本は七年です。七年ごまかしておけば、何億脱税しても税金を取られない。アメリカは時効の規定がありません。  また、個人の場合は利子、配当が総合課税になっておりますから高い。したがって、税率を下げてやろう、こういうわけなんだ。日本は違う。利子、配当は別です。分離課税です。最高税率七〇%の人も三五%の配当税率で済ませられるようになっている。半分の税金で済んでいる。  ですから、そういう根底が、税制体系そのものが大変日本は不備なんですよ。アメリカのまねすることはないけれども、ドイツのを見てもイギリスのと比較しても、日本はそういう基礎が、税捕捉のあるいは申告せねばならない根拠の体制が全く整備されていない。これは勤労者に対しては冷たく、財界、事業家に対しては温かくという発想が自由民主党にずっと長く育ってきたためなんです。年々ちょっと収入がふえれば、どんどん税金を納めねばならないサラリーマン。五%ベースアップがあると、税金の方はことしの例で一二%ふえちゃう。それでも営々として日本の勤労者は、源泉所得者は働き続けて、世界一の対外純資産を持つほど日本の資金力を豊富にした。日本経済の支え手が、これらの働く勤労諸国民なのであります。  ですから私は、そういう意味で、レーガンの税制をもし日本に導入をしようという気持ちがあるとするなら、これらの法体系そのものをまずきちっと速やかに大改革をやるべきであると提案をいたします。総理の見解を伺いたい。
  153. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 アメリカ税制の基礎には、そのような非常に厳重な記帳義務やら罰則やらがあるということは、私もよく承知しております。また、総合課税という特色もあるということはよく知っておりますし、大体において直接税中心主義で、そういうようながっちりした体系を組んでいるというのがアメリカの特色であると思っております。日本の場合は、また日本人特有の社会的なインスティチューションといいますか、生活のあり方というものがあるわけでありまして、契約社会と和の社会の差がまたあると思うのであります。  そういうような民族性というものをわきまえない税制というのは、また失敗するだろうと思っている。やはり現在の制度がここまで来るについてはそれなりの理由もあった。が、しかし、いつまでも不公平感というものが残留しているという状態は、それは直さなければいけない。そういうような考えに立ちまして、この日本の生活体験や生活信条に合うような感じのものにどう改革していくかということでいろいろ勉強してみたいし、勉強してもらいたい、そう考えておる次第なのでございます。
  154. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 どうもやはり財政税制問題を知らないのかどうかわかりませんが、答えが全く殺風景ですね。レーガンのやること、公正、公平、簡素、選択はいい、私もそれでいきたい、こう言っているのですから。今度は、日本には日本の古来からのいろいろ制度があってどうのこうのと言って、じゃレーガンのあれは否定するのですか、まねしないのですか。どうもまねするようなことを言っていたから、私はそういう前提でこうやってみたんだけれども、それでちょっと質問をされると、いや日本には日本の制度がちゃんとあって云々。日本の制度の中にそういうでこぼこ、いいかげんな法規定がいっぱいあるのですよ。これを大蔵省はやりたいのですよ。税制調査会も、記帳義務の問題なんかにしても、ちゃんとある程度答申を出したのですよ。政府・与党がだめなんですよ、大体。与党が寄ってたかってそういうのをつぶしちゃうのですよ。グリーンカードもそうですよ。答申どおりなんか全然やらせないのですよ。これを総指揮監督するのが総裁の任務なんですよ。生殺与奪の全権を握っておるのですよ、中曽根先生。  だから、今私が提起したような、なるほどその所得基準より収入基準、あるいはまた罰則——ドイツなんか廃業とか営業開始のときにはきついですよ。個人事業者も営業をやる場合は営業届、開業届をして、ちゃんと法務局に登録しなければならない。そういう法律になっている。やめるときは廃業届を同じく日本で言う法務局に、登記所にちゃんと提出しろということになっている。登録しないで営業をやった者が捕まると、罰金と最低六カ月の懲役という規定まである。ですからどこのだれが営業をやっているというのは、全部税務署へすぐ連絡が行く、登録される。したがって税務署は、どこに商売人が一軒ふえた、二軒ふえたというのはすぐわかるようになっているのですね、ドイツは。さすが法の国ドイツですよ、まことに詳細です。税というのは倫理観や恣意的な自己の良心に任じてはならないという発想なんです。事実に基づいた申告という制度なんですね。その事実を記帳しなさいということを法律や通達できちっとしている国がドイツです。ですから日本アメリカのまねしなくてもいい、ドイツのまねしなくてもいいが、いいところや、大体税がでこぼことかトーゴーサンと言われないような仕組みにするために役に立つ制度はどこの国のも全部取り入れて、与党の中で足を引っ張ってだめだなんという、あのグリーンカードみたいなことにならぬようにするのが総理・総裁の任務だと思うのですね。そういう意味で、私は速やかにそういう基礎的なベースをまずきちっと直さぬといかぬと思うのであります。  総理も御承知のように、私は学生のときから大変興味を持って読んだ、オックスフォード大学で学んだ例のエドワード・ギボン、三千ページの膨大な「ローマ帝国衰亡史」というものを書きましたね。僕はこの間、学生のときに読んだのを質問するのでちょっとあけてみていろいろ考えさせられたのであります。彼はローマ帝国崩壊の原因を総括して四つの原因を挙げていますが、その中の一つは社会秩序の崩壊だと書いている。社会秩序の崩壊は人心の腐敗だ、堕落だ、悪徳の横行、法秩序の無視、スキャンダルの多発、そういう現象がローマ帝国を滅ぼしたんだと彼は指摘しているのですね。今日本は世界一の成長国家、対外純資産を持つ世界一の国になったと言っているけれども、この日本がいつ崩壊をしていくのか、衰亡するのか、日本が衰亡するときには何が原因になるのか、そういうことを私なりにいろいろと考えてみると一社会を侵している道徳的な退廃、これがやはり国家の存亡に最大のキーポイントになっているな、こういう感じがしてならないのであります。  その端的なあらわれが脱税です。税金をごまかせる税理士が喜ばれ、税金をごまかした者が賢いというこの風潮です。新聞でも悪徳医者脱税、弁護士あるいは大商社、調査をしたらみんな脱税でつかまっている。要するにできるだけ税金をごまかした方が得だという風潮が今日本を風靡している。こういう状態のときに、それをまねして悪徳警察官、殺人をする警察官まであらわれる、右翼暴力団と手を組んでも金を求めようとする警察官があらわれたり、大変な混乱をしているこの道徳の退廃。すべてを一挙に片づけるなんということはできない。まずせめて脱税のところからくらいきちっとすべきだと思うのでありますが、この私の論に対して総理の所感はいかがでございますか。
  155. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 そのお考えは正当であるだろうと思います。脱税に対しましては厳しくこれを取り締まっていかなければならないと思います。
  156. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 私が言っているのは、警察官的発想で取り締まれなんということを言っているのじゃないのですよ。脱税ができない制度をきちっと税体系の中に組み込めということを言っているのです。おい、こらでつかまえて、脱税けしからぬとやっつけるためには税務署員が少なくてだめですよ、五千人ふやしてくれなくては。実調率三%、四%しか手がないのですから。総理が今おっしゃるように脱税はびしびしと摘発してきちっとやるためだったら、五千人ふやせますか。
  157. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 脱税を起こさないシステムをつくるということも大事でありますが、また脱税している者をつかめるということも大事だろうと思います。
  158. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 私が言っているのは、つかめるのも大事だし、脱税ができないような仕組みをつくることが先決だ。人の倫理性よりもまず事実をきちっと申告させるという制度をきちっとつくれ、これについてどうか。どうでしょうか。
  159. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 ですから今、脱税を起こさせないシステムをつくるということが大事だと申し上げておる次第でございます。
  160. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それが日本にできてないところに、道徳の退廃が脱税という現象であらわれている、私はこう言っているわけです。そういうことができないようにきちっとチェックする、そういう号令を総理大臣として下しますか。
  161. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 これは先ほど来申し上げましたように、日本の商売の形態、あり方、商慣習、生活形態、そういうものとも関係しておるので、単にアメリカのものをまねしてそれが日本にうまく適用されるというものでもないのであって、日本独特のそういう条件をよく探求してやらなければどじを踏む、そういう点でよく日本状況も踏まえながら研究さしていきたいと思います。
  162. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 総理は軍事、外交、SDIなんかの論争だと得意にやるんでしょうが、税や経済のことになるとちょっと答弁がはがゆいですね。そんなに臆病にならなくともいいじゃないですか。あと一年半みっちり大宰相として、百年の後まで、やはり中曽根総理というのは立派にやったと——総理になったことに意味があるんじゃなくて、何をなしたかに意味があるということを就任のころおっしゃいましたよ。だんだん萎縮して、やれ教育予算は減らす、社会保障予算は減らす、公共事業は前年並み、そしてだんだんラッキョウの皮みたいに小さくなっていって国民に夢も希望も持たせないようじゃ、大宰相と言えなくなるんじゃないでしょうか。私はやはり、富の移動、富の再分配というものをきちっとやるという姿勢を総理が持たなければ、このクロヨン、トーゴーサンの批判から抜け出ない。税に対する道徳的退廃、この風潮はますます広まっていきますね。税金を納めるのなんかつまらぬ、いやだという考え方が充満してきますね。これは国家存亡に関する問題になる、小さな問題じゃないんですよ。しかしこれ以上総理に言っても前の答弁と同じですと言われたのでは何ともしようがないので、ちょっと先へ進みます。  先ほど渋沢委員質問をしましたが、昨年十月三十日の経済政策研究会報告「これからの経済政策と民間活力の培養」、これは大体中曽根ブレーンの人たちを集めて、これから何をどのように内需拡大民間活力を引き出そうか、こういう小冊子であります。何回も読みました。賛成の部分もあり、賛成しかねる部分もございます。  この中で、特に皆さんが一番心配しているのは国有財産の払い下げです。この「東京都内における民間活力導入検討対象財産例(十二件 八・五ヘクタール)(閣議報告 五十九年十月十六日)」に、大蔵省の旧司法研修所六千七百八十六平米、芸術大学音楽学部二千四百七十二平米、林野庁六本木宿舎一万二千四百二十九平米、日本社会事業大学二万七千二百六十九平米などなど、しかもそれを六十年度処分可能とか六十何年度処分可能と皆書いてある。  大蔵省、この研究会の報告で「六十年度処分可能見込」と書いたのは、六十年度に処分するんですか。処分するとしたらどのくらいの金額になるんですか。
  163. 中田一男

    ○中田政府委員 昨年の十月十六日に東京都二十三区内の民間活力導入検討対象財産推進本部の方に御報告をいたしました。  今幾つか挙げられましたが、十二件のうち六十年度処分可能なものは五件ございますが、これらにつきましては処分が可能になった時点でこれを民間に払い下げていくという方針で作業を進めておるところでございます。
  164. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 六十年度二十三区で約五件売却しようと事務を進めておる。大ざっぱに総額何百億になるかね。
  165. 中田一男

    ○中田政府委員 実はまたこれらの財産につきまして正確な評価はいたしておりません。また財産の価格を公表いたしますといろいろな思惑も出ますので、実は金額については触れておらないわけでございます。  また、これらの財産につきましては一般会計に所属しているものもございますし特別会計に所属しているものもあり、それが直ちに一般会計の税外収入に結びつくということでもない面もございますので、金額についてはここで申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  166. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 しからば口座名、この五件というのはどこですか、ことし売っ払うのは。
  167. 中田一男

    ○中田政府委員 ことし処分可能予定として挙げておりますのは、旧司法研修所、法務省の東京入国管理局庁舎及び東京入国管理局の宿舎、農林水産省の国有林野事業特別会計にございます東京営林局の白金台の宿舎、文部省の国立学校特別会計にございます東京芸術大学赤羽宿舎、この五件でございます。
  168. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 総理、こういう国有財産、我々の先祖から百年かかって築き上げたこういう財産を、日本列島切り売り政策で、民間活力だと言ってみんな売っ払っちゃうことはいいことですか。
  169. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 一番考えられるのは公共用にするということで、今まではそういう考えに立ってもやってきました。そういう面で活用するということも考えられますが、また一面におきましては、国家財政がこれだけ窮迫しておるときで、できるだけ税金で国民に迷惑をおかけしないというために、会社あたりでも赤字で非常に苦しくなった場合には土地を売りあるいは株式を売ったりして資金を獲得するというときでありますから、宿舎等でほとんど休閑的に使われているあるいは非常にぜいたくに使われている、民間水準から見たらべらぼうにもったいない使い方をしている、そういうところは、もっと合理化して国民の皆さんも納得するような使い方に変えるという考えを持ちまして、民商売却ということも考える。ことしは税外収入たしか八百億を千二百億まで上げて増税しないような努力を実はしてきておるのでありまして、その一環としてお考え願えればありがたいと思うのであります。
  170. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 昭和六十年度は五件。もうそろそろ予算編成時期に入ってきますが、来年度六十一年度は何カ所ぐらい、もしわかっていればどことどこを処分したいと考えているのか、それを明らかにしてください。
  171. 中田一男

    ○中田政府委員 ここで取り上げました財産は、いずれも行政財産として使っておりましたものを集約、立体化等効率化いたしまして、そしてその跡を先ほど総理からお話がございましたように公共用に使うか、その予定がなければ民間に処分していくということで作業を進めておるわけであります。  来年度処分予定につきましては、これからその移転等がどういうふうに進んでいくかということを詰めなければなりませんので、現在まだはっきりとお答え申し上げる段階にはございません。
  172. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 総理は、会社が赤字になって苦しいときは財産を売っ払うことが先だ、まあ、しようがない。しかし、物にはいろいろ順序があると思うのです。普通の会社が苦しくなれば、できるだけ身軽になる合理化をやる。そうすると、まず国家の場合はできるだけ歳出のむだを省く、効率のいいものだけをどんどんふやしていく、そういうために行革をやっている。しかし、それでもなお足りないからやむを得ず切り売りをどんどんするんだ、こう受けとめたわけでありますが、そのことによってその付近の区画整理や都市改造がやりにくくなって、地価がどんどん上がってしまったり、その付近の区役所など大変迷惑に思っているところも大変あるわけです。  さらにもう一つは、これをめぐって建設会社が政治献金の競争をしたりトラブルを起こしたり、いろいろな問題がこれから起こるのではないかという危惧の風潮もありますね。どの会社が請け負ったか、どういう大建設会社が入札をしたかとかいろいろな問題がまた出てくる。したがって、そういう汚い、どろどろした問題が起こらないように、政府としてはこの管理を十分うまくやらないと、きっとこれは問題の種になる代物じゃないかという心配を私はするのであります。その点についての総理の決意のほどを聞きたい。
  173. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 これは武藤さんおっしゃるとおりでございまして、あくまでも公正を期して、国民の皆さんの疑惑をもたらすようなことは全然存在しないように注意してやらなければいけないと思っております。
  174. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 予定の時間を経過をいたしましたので、通告項目すべてが消化できなかったことを、答弁側にお呼びした方には大変失礼でありますが御容赦を願いたいと思います。  以上で、私の持ち時間を終わりました。ありがとうございました。
  175. 越智伊平

    越智委員長 宮地正介君。
  176. 宮地正介

    ○宮地委員 きょうは財確法を中心とした審議でございますが、中曽根総理大臣もお見えでございますので、当面する第百二国会の重要な案件につきまして、初めに何点か質問をしたいと思います。  最初に、先週末に大変問題になっておりました定数是正の六・六増減案につきまして、議員立法として国会に提出をされたわけでございますが、この提出に当たりましては、国民の間から見ておりますと、国会に提出をすることによっていわゆる総理の解散権のフリーハンドを確実なものにするというような意見もあり、あるいはこの夏の最高裁の違憲判決が予想されるところから、この問題についてはどうしても国会に提出をしなければならないということであって、この国会で本当に成立をさせていくという意思が果たしてあるのかどうか。今までの自民党内の確執を見ておりますと、今回出てまいりましたこの六・六増減案の真意というものがいま一つ国民の目から見ますとはっきりしない、こんな感じがするわけでございます。その点について、総理の真意をしかとお伺いしたいと思います。
  177. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 衆議院議員の定数問題については、既に裁判所においてその判断が示されておりまして、違憲状態というようなことが指摘されておりまするので、行政府並びに立法府といたしまして、それに対応する措置をとらなければならない位置に来ておると思うのです。  私は立法府における自由民主党の総裁であり、かつ行政府における最高責任者である内閣総理大臣でありまして、そういう意味におきまして、この裁判所から我々の方へ要請されておる課題にこたえなければならぬ、そういう考えを持ちまして、六・六案を提出した次第なのでございまして、真っ当にお受けいただきまして、十分迅速に御審議を願えればありがたいと思う次第でございます。
  178. 宮地正介

    ○宮地委員 そうしますと、当然この国会において与党自民党としては、また政府としては、ぜひ成立の意思を持って議員立法として提出をした、このように理解してよろしいでしょうか。
  179. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 全くそのとおりであります。
  180. 宮地正介

    ○宮地委員 特に六・六増減案の中におきまして問題なのは、二人区の四選挙区でございまして、これは我々野党といたしましては、将来的に小選挙区制につながる、こういう大変危険なところがある、こういうことで、本日も野党書記長会談等で、野党統一案の方向検討会議が開かれたところでございますが、政府として、そうした今回の議員立法の修正問題に応じて前向きに対応する意思があるかどうか、この辺についてはいかがでしょうか。
  181. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 小選挙区は考えておりません。また、法案審議については十分御審議願いたいと思いまして、与野党の合意ができる協議が成立すれば、これは結構であると思います。
  182. 宮地正介

    ○宮地委員 もう一点。現在通常国会が開会中でございますので、先のことについてお伺いするのは若干早い感じもいたしますが、特に秋の臨時国会召集、開会問題につきまして、総理はこの点についてどのように考えておられるか伺いたいと思います。  というのは、今開会中で、通常国会の終盤に入っておりまして、この時期にはまだ話せない、こういう御見解もあろうかと思いますが、当然この夏には今申し上げましたような最高裁のいわゆる違憲判決の可能性もございますし、あるいは人事院勧告、これによりますところの防衛費のGNP比一%突破問題等々この秋には重要案件が非常に山積してくるわけでございまして、十二月の通常国会に先送りをするという意見もございますが、いわゆる国民の立場から臨時国会を召集すべきである、こういう意見もあるわけでございます。また一方では、金丸幹事長のように、解散の火種になる云々、こういういわゆる政局絡みの話も出ているわけでございますが、そういう点をいろいろ考えた中で、総理として、現段階においてこの臨時国会の問題の取り扱い、どういうふうにお考えになっているのか、率直なところをお伺いしたいと思います。
  183. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 ただいま通常国会の終末期でございまして、法案成立に全力を注いでおるというときに、臨時国会のことを云々言うということは不見識であると思います。
  184. 宮地正介

    ○宮地委員 それは承知の上で、今御質問をさせていただいたわけでございますが、それは時期の問題もあろうかと思いますから、不見識と言う総理のそうした見識あるお立場であれば、我々も常識的に判断をしていきたい、このように考えるわけでございます。  さて総理は、五月の連休を通じましてボン・サミットに行かれまして、大変に御苦労され、また日本国の総理大臣として大変によく奮闘努力をされたと私は個人的に大変に評価している次第でございます。     〔委員長退席、堀之内委員長代理着席〕 しかし、このボン・サミットにおける経済宣言、これとこれからの我が国の世界に果たす今後の責任、こういうものの対応を考えてまいりますと、大変身の引き締まる思いがするわけでございます。  けさの閣議でも、総理は特にこの市場開放のアクションプログラムにつきまして各関係大臣にさらに強力に取り組むよう指示をされたと聞いているわけでございますが、この目標日程として当面考えられますのは、この六月二十七、二十八日に日本・ASEAN経済閣僚会議が迫っておるわけでございまして、恐らくASEAN諸国の各国も、ボン・サミット後の日本の対応、この七月を一つの目途としてのアクションプログラムづくりについての何らか中間的な報告を期待をされているのではないか、こんな感じがするわけでございます。この日本・ASEAN経済閣僚会議に向かいまして、何らかの報告といいますか、回答といいますか、こういうものを考えて努力をされるおつもりがあるかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  185. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 さきに藤尾政調会長にASEAN諸国をお回り願ったのも、同じ動機もございましてお願いしたわけでございまして、日本・ASEAN経済閣僚会議を非常に重視いたしまして、できるだけ日本としての市場開放の努力を示したい、そう考えておる次第でございます。
  186. 宮地正介

    ○宮地委員 特に政府・与党対外経済対策推進本部、本部長は総理でございますが、この幹事会におきまして、藤森官房副長官も、三原則というものをひとつつくって計画の策定に当たりたい。三原則については、もう既に御承知のとおり原則自由、例外制限、こういうような問題を含めた問題でございますが、こうした三原則を基本にして、この日本・ASEAN会議に臨むに当たりましてこの中間報告というものを当然つくっていく考えであるのかどうか、この点の確認をしたいと思います。
  187. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 先般私がテレビ等を通じまして国民の皆様方にお訴え申し上げました、あの原則を基軸にしつつ処理していきたい、そう考えておる次第です。
  188. 宮地正介

    ○宮地委員 特に総理が外国製品を一人当たり百ドルぐらい買おうじゃないか、こういうことで大変にテレビでお訴えになりまして、私も拝見させていただきました。また、黒板等を使いまして非常に熱心に国民にPRをされ、訴えられている真摯な姿には、私も敬意を表するわけでございます。しかし、この百ドル購入問題につきましても、なかなか国民の間でも難しい、ましてや閣議の中でも、関係閣僚の中からは非常に高いとかいろいろ問題の発言があったと伺っております。  私はやはり、今回の経済サミットの中で何といいましても、日本が具体的な数字をもって、結果をもって世界に示しませんと、すばらしい処方せんあるいは政策を訴えられましても先進国の各国の皆さんもなかなか理解できないのではないか。そういう意味では、来年の東京サミット、これがやはり黒字減らしの効果をそこまでに上げられるかどうか一つの正念場であろう、また恐らく、総現在任期間中の一つの大きな責任ある国際的な立場に立たされるのではないか。そういう点で、これからの努力が実際に実を結ぶかどうか、これが非常に大事でございます。  その点についての総理の決意、いろいろと私も新聞報道等で伺っておりますが、黒字減らしの効果というものに対して、日本経済的な体質の改善はもちろんでございますが、割と欧米各国の皆さんは、日本のような単なる義理人情論というよりも、ある意味ではトラスチックに一つのそうした数字の上の効果、こういうものをやはり合理主義という立場からも見ているのではないか。そういう点で私は、総理の御熱意と打たれる手というものの実際に出てくる効果を相対的に考えてみると、若干心配の念がぬぐい去れないのでございますが、この点について総理はどのように考えておられましょうか。
  189. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 四月九日の決定を実行いたしまして、できるだけ結果的にも効果を上げるように全力を尽くしてまいりたいと思っております。  しかし、これは日本一国だけの責めに帰すべからざる大きな問題もあるので、きのうもオルマー・アメリカ商務省次官が来て面会しましたときに、アメリカ側もしっかりやってもらわなければ困る、こんな高いドルで高い金利のもとに幾らやれと言ったって限度がある、したがってアメリカ努力日本努力、両方の相乗的効果によって物は解決されるのだということをちゃんとぴしっと言っておいた次第であります。日本だけに責任を背負わされて物が解決される、そういう状態ではない、しかし日本としては市場開放だけはしっかりやって、そしてその点についてアンフェアだと言われることは根絶したい、そう考えております。
  190. 宮地正介

    ○宮地委員 特に、内需喚起に対するところの経済的な規制の緩和ということが中曽根内閣としては非常に重視をされておる。しかし、これは果たして即効性についてはどうだろうかと、私も非常に疑問を抱いている一人でございます。  御承知のとおり、アメリカにおきましては特に、十年以上も前から、規制緩和につきましては航空問題、金融問題などあらゆる分野で開放経済体制をつくってまいりまして、そしてレーガン大統領の政権になりましてから、いわゆるアメリカ経済活性化、再生化を掲げて手を打たれた。一つのバックグラウンド、土壌というものがもう十年前に手を打たれて、そこにレーガン政権ができて手が打たれ、スムーズに活性化に向かっていた。日本の場合は即効的にどんと今出てきた。まさにそういうような状況の背景が一つあるということ。もう一つは、どうしても日本の場合は、各種団体との利権、利害というものの調整が非常に難しい国柄という一つの特徴を持っている。そういう点では日本の場合は非常に時間がかかる、調整に非常に苦労がかかるという一つの事情があるのではないか。そういう点で私は、むしろ中曽根政権中にこの問題で効果を上げることができればもう最高のベストじゃないかという気持ちを持っているぐらいでございます。そういう点、いわゆる内需喚起策の中の規制緩和論について余り誇大評価といいますか、大きな成果を期待するのはどうかな。  今総理のおっしゃるように、世界各国にアンフェアなものについて取り除いていく努力をしているのだということを示す、これは大変私も同意でございます。しかし一方では今申し上げたような一つのハンディというものが日本にはあるという感じを率直に私は持っているわけでございますが、こういう点についての配慮、また総理はどういうふうに考えて手を打たれておるのか、この点について伺いたいと思います。
  191. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 規制緩和は非常に大事だろうと私は思っております。これは行革の理想にも合致することでもありますし、民活を誘発するという意味においても大事な方法であると思っております。現に電電公社を民有化いたしまして、電気通信法の改正等をやりまして規制解除をやりましたら、あのように第二電電以下の活動が活発に出てきておる、これがいい証拠であると思うのでございます。関西国際空港についても、民間資本は予定よりも約三倍ぐらい多く殺到してきている。こういう状態を見ますと、規制緩和という形、新しい仕組みを考えることによって民間に対する刺激を与えて、国のお金でなくして民間のお金を活用して、これがまた景気にもプラスになるという方法は十分あり得る、そういうふうに考えて、今努力しておるところなのでございます。
  192. 宮地正介

    ○宮地委員 私の質問から若干それている感じがするのですが、私は、言わんとすることは理解ししております。しかし、総理の何でも自分のやっているのはベターでありベストなんだという一つの信念は結構でございますけれども、やはり現実というもの、またアメリカのレーガンさんの打たれた手の背景というもの、そういうものを日本の場合と比較対照して私は今ちょっとお話ししたわけでございまして、そういう点についてまだ御答弁がなかったので、その点、もうちょっとお話しいただきたいと思います。
  193. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 民活あるいは規制緩和というのは世界的風潮であり、有力な民主主義国家はみんな今やっておるところであります。サッチャーさんにいたしましても、あるいはレーガンさんにいたしましても、ドイツのコールさんにいたしましてもみんなやっているところでありまして、我々はそれに負けないくらいの早さ、初期の段階において既に着手してきておるものなのであります。ようやく皆様方の御協力をいただいて、専売あるいは電電の民有化が実現し、あるいは関西国際空港がスタートするとか、あるいはさらにそのほかの民活の方策についても今いろいろ努力をし、規制緩和等を中心にして進めているところでございまして、この努力を持続的に続けていくことによって持続的に経済が活力を維持しあるいは拡大していく、そういうことを考えてやっておる次第なのでございます。
  194. 宮地正介

    ○宮地委員 次に、いわゆるタックスミックス論について少し総理の所見を伺っておきたいと思います。  増減税抱き合わせ論というものが最近大変急浮上してきているわけでございますが、まずこのタックスミックス論についてどういうふうに総理はお考えになっているか。
  195. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 タックスミックス論いうのを私余り勉強していないので教えていただきたいと思うのですが、要するに増減税一緒にやつて、そしてバランスシートをとりながらやっていく、そういうミックスという、そういう意味でおっしゃるのでございましょうか。
  196. 宮地正介

    ○宮地委員 これは、総理が経済的に少し御勉強なさればこの問題は常識的な用語として、もう最近は国民の間でもわかっているわけでございまして、後ほど大臣秘書官から篤と勉強していただきたい。  いわゆるタックスミックスの問題につきましては、具体的にいろいろ方法はあるわけなんですね。一つは、投資優遇の貯蓄冷遇型、こういう問題もあります。今恐らく総理の頭の中にぽっと浮かんだのは、大型間接税導入型によるいわゆる法人税とか所得税減税抱き合わせの問題ではないか。あるいは内需振興型の問題、日米協調型、大体四つぐらい型がございまして、そういう中でどういう方向性というものを総理はお考えなのか、この辺を実は私は確認をしたかったわけでございまして、その点について総理、言葉にとらわれずに率直に——今まで所得税減税、法人税減税はやりたいんだ、こう言っておりました。果たしてその財源はどこに求めるんだ。一部には大型間接税という論もあるでしょうし、あるいはマル優の取り崩しというところに求めている方もいらっしゃいます。そうしたこれからの日本財政を再建していく上におきまして、この歳入の問題というものの改革、こういう問題について最近タックスミックス論というのが非常に強く出てきているわけでございます。おぼろげながらおわかりになったと思いますので、まずその点の総理のお考えをお伺いしたい。もしできなければ、大蔵大臣がフォローアップしていただきたい。
  197. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 私は、タックスミックス論よりもっと広いものを考えておるのでございます。ポリシーミックス論を考えているわけです。つまり財政経済、金融あるいは租税、そういうもの全体を総合して、その中にいろいろな政策目的を実現していく。例えば減税であるとか簡素化、あるいは税の不公平感の是正であるとか行政改革の目的であるとか、そういうような総合的なポリシーミックスという考えに立って、タックスミックスという程度のことだけではないものを考えているというふうにお考え願いたいと思うのです。
  198. 竹下登

    竹下国務大臣 これはいろいろな場合がございまして、消費優遇型税制とか貯蓄優遇型税制、あるいは直間の組み合わせの中に財政的には中立を保ちながら行っていく税制とかいうような各般の問題がございますので、それらは国会の論議等をそれこそ正確に整理しまして、これは税調等で議論をしてみてもらうもちろん課題だと思っているところであります。だから、総理がいつもおっしゃいますように所得税の減税はしたい、しかし赤字公債をもって財源にすることはできない、そういう発想もタックスミックスの議論にもまた展開していくことでございましょうし、そういうのを総合して議論してもらうのが今度の税調の場所ではないかなと思っております。
  199. 宮地正介

    ○宮地委員 私は今回のレーガン大統領の税制改革も、考えてみればタックスミックスの処方せんの一つであろうと思うのです。  そこで、与野党幹事長・書記長会談で、具体的に政策減税三つと所得税減税については来年の三月まで、今年度じゅうに結論を出す、こういうふうになっているわけです。この点について総理はどの程度真剣に受けとめておられるのか。  特にその中でも、これは事務当局で結構ですが、所得税の控除の中で、寝たきり老人減税控除についても十万円程度にというような話ももう既にちらちら聞かれておるのでございますけれども、まず総理、この与野党幹事長・書記長会談の政策減税所得税減税の問題はどの程度まで御決意を持って取り組んでいらっしゃるのか、伺いたいと思います。
  200. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 与野党幹事長・書記長会談の結果についてはこれを誠実に守っていきたい、そう申し上げておるとおりでございまして、その結果が出るのを待っておる、こういう状況でございます。
  201. 宮地正介

    ○宮地委員 結果が出るのを待っておる、こういう待ちの政治でなくて、これこそやはり国民は非常に期待されているわけですから、総理のリーダーシップを私は強く要望しておきたい。  先ほどちょっと寝たきり老人減税の問題に触れたのですが、この点について事務当局、既に何らかの検討に入っておるのでしょうか。
  202. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 政策減税の問題はただいま総理がおっしゃいましたように、立法府の場で公党間での話し合いでございますので、事務当局としてはその結果を見守るということでございまして、積極的にこちらが検討するという立場にはないわけでございます。
  203. 宮地正介

    ○宮地委員 そうすると、今いろいろマスコミ等で伝えられている十万円というこの控除額は全く白紙、こう見てよろしいのですか。
  204. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 仰せのとおりでございます。
  205. 宮地正介

    ○宮地委員 国会審議を皆さんの方から税調に諾問されまして、速やかにこうした問題の解決のために事務的にもスピードアップをしていただきたいと強く要求をしておきたいと思います。  先ほども、今回のレーガン大統領の発表したアメリカ税制改革案につきまして、総理は、これについて簡素だ、こういう率直な御意見を述べておられました。今回のレーガンの出された改革案の中身は、いわゆる増税減税抱き合わせで財源的にはフィフティー・フィフティーにしておられる。率直に言いまして、アメリカの大統領政府が勇断を持って今回のこうした税制改革案を出された、これについては私はまず敬意を表したい。  日本のこれからの財政再建を考えていく場合におきましても、この歳入構造、特に税制改革は非常に重要な課題である。日本の場合は、今もお話しございましたように、税調に諮って、税調の答申を待って税制の改革をしていく、こうした一つのルールができているわけでございまして、大蔵当局に税制の問題について問う場合に、税調答申の出る前には大体余り歯切れのいい話は出てこない。今までの税調答申の議論の経過は話が出る、政府みずからが今後の日本税制改革についてどういうビジョンを持って、また一つ方向をつくっていく、こういうものが日本の場合は税調に頼り過ぎている、こんな感じがするわけでございます。  今回のレーガン大統領のとられた税制改革案は、まさに政府がどんと国民の前に打ち出して議論していく、ある意味では中曽根さんもうらやましいという感じで受けとめられたのではないかと私は察するのでございますが、この処方せんについては、しょせんお国柄によって違うわけですからこれは云々できません。私は、中曽根内閣が来年いっぱいで終わるか、あるいはその後続くかわかりませんが、やはり中曽根内閣がこの時期に、これからの日本財政再建、特にあなたは「増税なき財政再建」ということを強く訴えられ、行政改革に取り組みいろいろやっているわけでございますが、税制改革の面になるといまひとつ歯切れがよくない。果たしてあなたの目指すこれからの歳入構造というものの改革はどうしていくんだ。  歳出の面では確かに行政改革について御熱心に取り組んでおられる、これは非常に見えるわけでございますが、そういう点でレーガンさんのとられた勇気といいますか対応、これはそうしたシステムの違いはあるにせよ大統領としてのリーダーシップを私は非常に高く評価している一人でございます。こういう点、総理としてこうしたレーガン大統領の税制改革を見ながら日本は今後どういうふうに決断をし対応していくべきなのか、この点のリーダーシップのとり方といいますか、あなたのお考え、こういうものについてお伺いしたいと思います。
  206. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 アメリカは大統領制でございますが、日本は議院内閣制でありまして、また国情も違います。したがいまして、日本日本の政治手法という形でやっておるわけであります。  税の改革につきましては、政府税調及び自民党の党税調というものがございまして、いろいろの歴史的な経緯も踏まえ、精力的にそのときになれば努力をしていただいて成果を上げてきておるわけであります。  そういう意味におきまして、議会が終わりましたら大蔵省や党の皆さんとよく相談いたしまして、かねて国会で私が申し上げてきたようなことをどういうふうに具体的に処理するか、またこの国会における皆様方の御議論も政府税調によく、余すことなく伝えて重大な資料にしてもらう、そういうようなこと等もやりたいと考えておる次第なのでございます。
  207. 宮地正介

    ○宮地委員 特に所得税減税についてやりたい、この程度の発言にとまっているわけですね。やはり所得税減税をやりたいと言うからには、それの一つのやるべきバックグラウンドといいますか、考え方、こういうものが必要であろうと私は思う。  一つは、内需を喚起させるためにどうしても所得税の減税をやらなければならない。昨年度、所得税減税をやりましたけれども、先日も大蔵委員会で大蔵大臣にも示しましたが、やはり五十二年の所得税減税のいわゆる課税最低限引き上げ以後、今日の国民の可処分所得というのは決してプラスになっていない。私のデータではマイナスに、三角になっておる。また、今回のボン・サミットの中で、税制改革に取り組む、公約はしていないと言いながらもこれだけの御発言を総理がされたわけですから、この所得税減税について、ただやりたいと言ってもなかなかこれは国民にわかりにくいと思うのです。やはり総理の特にこの所得税減税をやりたいというその背景には、どういうお考えがあっておっしゃっておられるのか、この点もう少し具体的に所見を伺いたいと思います。
  208. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 今申し上げましたように、今議会における私の発言、大蔵大臣の発言、野党の皆様方の御議論、そういうものを税調に余すことなく報告をして、そしてよく審議してもらう材料をまず提供する。それから、税調に対してどういう仕事をしていただこうかということについて——ことしはやはり税調に諮問した方がいいと思っているわけです、大幅な大税制改革になるわけでありますから。内容やらあるいは時期やら、そういうものについて党及び大蔵大臣等とよく相談して、そして腹を固めていきたい、そういうことを申し上げておるわけです。
  209. 宮地正介

    ○宮地委員 そうしますと、七月に税調がこれから開かれていくわけでございますが、今いみじくもおっしゃいました大幅な税制改革の意思というものも、税調にお伝えをする考えですね。
  210. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 いずれ適当なときが来ましたら考えをまとめまして、思い切ったシャウプ税制以来の税改革、特に所得税や法人税の減税というものを頭に置いていろいろ考え方をまとめてもらいたいと思っておるわけであります。
  211. 宮地正介

    ○宮地委員 特にタイムスケジュールの上から見まして、恐らく六十一年度予算編成の中の税制改正というものはそんなに大幅なものではないのじゃないか、こういう意見もあるのですね。今総理のおっしゃったようないわゆる法人税減税所得税減税あるいはマル優の問題等の大幅な増税減税を抱き合わせたような改革は、もしやるとしてもタイムスケジュールの上からいくと六十二年度以降じゃないか、これは大方のいわゆる議論なんでございます。  しかし今国会の中では、今お話しのようにやはり非常にこれからの日本税制改革においては簡素な活力のある思い切ったものを総理はやりたい、こういう意思を再三予算委員会以来おっしゃっているわけで、そうしたものも含めてこの七月の税調に、この国会が終わりましたら総理みずから意思を伝達されるお考えがあるのかどうか、この点について伺いたいと思います。
  212. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 私が現通常議会の終わり際に今申し上げられることは、以上のようなことで御了解願いたいと思います。
  213. 宮地正介

    ○宮地委員 その辺はぜひ総理も、国会が終わりましたら、この第百二国会における税制論議の重要性については十分に御理解いただいていると思いますので、そうした総理の意思というものはやはり率直にお伝えいただき、また大蔵大臣も受けとめて対応していただきたい、私はこのように思うわけでございます。  またこれは、時期的に早いかというふうに、また総理からいろいろ不見識というふうに言われるかもしれませんが、やはり六月でございますし、この国会が終わりますとすぐに大蔵省は概算要求の問題に取り組んでいかなければならない、当然来年度の予算編成についてのいろいろ方針等も決定をされていかなければならない、そういう段階に入ると思うのでございますが、総理、この六十一年度、来年度予算編成の取り組みについて、今総理の頭の中に全く白紙であるのか、あるいは今後、来年はどういうふうに取り組んでいこうか、こういう考えですね、いろいろ閣議了解等も必要かと思いますが、総理の個人的な一つのお立場から、現在どういう方向を考えておられるのか、率直にお伺いできればありがたいと思います。
  214. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 内外をめぐる日本財政環境というものは、極めて厳しいものがあるように思います。そういうことをよく自覚しつつ、六十五年度赤字公債依存体質から脱却する、この目的を達成するという考えに立って概算要求というものもつくるべきである、そういうふうに考えております。
  215. 宮地正介

    ○宮地委員 いみじくも今総理から、六十五年度の赤字国債依存体質脱却を目指して六十一年度の予算編成は取り組んでいきたい、こういうお話でございます。そこで私は、若干残された時間につきまして、本日の三法の要点について何点がお話を伺っていきたい、こう思うわけでございます。  先ほども実は大蔵大臣にいろいろ伺ってきたわけでございますが、日本の公債政策というもの、今までとられてきた国の政策の変遷というもの、そしてこれからの公債政策、公債管理政策、こういうものをどういうふうにしていくか、これは非常に大事な問題ではないか。  本来、財政法というのはいわゆる均衡財政主義というものをとっております。そういう点から、公債というものは原則として不発行なのだ、こういうことで戦後日本財政民主主義というものを貫いてきたわけでございます。しかし、景気の問題、ドルショックあるいはオイルショック、いろいろな経済の変動の中で、公債発行時代が到来をしてまいりました。昭和四十年に、いわゆるフィスカルポリシーを前面に打ち出しまして建設国債発行に政府はまず踏み切ったわけでございます。そして十年後の昭和五十年、この補正で、特例中の特例ということで、担保のない特例公債発行に踏み切りました。当時は石油危機による不況、大幅な税収不足、こういった経済的な変動はあるにせよ、臨時特例の措置ということで、この特例公債昭和五十年度に発行されてまいりました。そして七年後、今度は昭和五十七年度の補正におきまして定率繰り入れの停止、こういう大変な事態を迎えてきたわけでございます。そこでこの四年間定率繰り入れの停止が続いて、本日の財確法審議もされているわけであります。そして昭和五十九年度、その定率繰り入れの停止後二年後には、いわゆる特例公債についても建設国債同様に借換債を認める、こういう大変な政策の大転換を政府がされました。いよいよこの昭和六十年度に、五十年度に発行した特例公債の大量償還時代に突入した。これが一つのこの約二十年間における政府の公債政策の変遷であります。  まず、こうした一つ経済変動もさるものながら、いわゆる国民の目から見ればサラ金地獄的な状態に置かれている今日の公債政策、率直に言いまして総理大臣みずからはどのようにこの問題をお考えになられているか、伺いたいと思います。
  216. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 二度の石油ショックを受けまして、景気を維持し、失業を防止し、そして経済を正常化ならしめていくというためにやむを得ず赤字公債を多量に発行いたしました。  百三十三兆にもなんなんとしてきておる次第でございまして、結果的に見ますと、この公債の累積というものは甚だ遺憾な事態で、国民経済財政を圧迫している大きな要因になってしまったと言いますが、しかし、当時の状況を考えますれば、外国が税金あるいは失業あるいは物価高という三重苦をしょって非常に困難な状況にあったときに、日本は比較的に経済も失業も順調に推移してきて、外国からはうまくやったという、模範生といいますかそう言われるぐらいのものであったと思うのであります。  そういう過渡的な大きな功績を公債自体はやっておるので、やはり公債のお葬式というものは懇切丁寧にやらなければいけない、非難するばかりが能ではない、そう私は思うので、我々は今その始末をしておるわけでありますが、感謝の念を持ってこのお葬式をうまくやっていきたい、そう考えておる次第なのでございます。
  217. 宮地正介

    ○宮地委員 では総理にお伺いしますが、鈴木政権のときは昭和五十九年度赤字国債依存体質脱却、中曽根総理になりましてから今度は六年後の昭和六十五年赤字国債依存体質脱却、これは本質的に違いがあるということをこの間大蔵大臣はおっしゃったのですが、その認識を総理大臣はどのようにお持ちになっているか、お伺いしたいと思います。
  218. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 大蔵大臣がどういう意味で申されたか、まず大蔵大臣の所見を聞いてから申し上げたいと思います。
  219. 竹下登

    竹下国務大臣 要するに、これはあくまでも財政再建の第一歩として鈴木内閣は五十九年度赤字公債脱却を心がけ、そして五十五年度予算に一兆円の減額をし、進んできたわけでありますが、五十六、五十七と、いわば世界同時不況の中でどうにもしようのない歳入欠陥をもたらした。よって、そこで改めて財政改革、こういうことで私どもといたしましては、その第一義的目標である赤字公債脱却を昭和六十五年ということに努力目標を設定し、と同時に公債残高を可能な限り減していく、これを第二義的な目標として設定した、こういう経過で申し上げたつもりであります。
  220. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 私も同感でありまして、その辺が鈴木さんの財政再建と中曽根の財政改革との違いが出てきておると思います。     〔堀之内委員長代理退席、熊谷委員長代     理着席〕
  221. 宮地正介

    ○宮地委員 総理、その辺の認識をもっと明確にしていただかないと国民に大変な問題になると私は思うのです。鈴木政権が昭和五十九年の赤字国債の依存体質脱却が実際無理だ、政権を悪い言葉で言えばほうり出したというか、責任をとられた。それは別にしまして、いわゆる五十九年の赤字国債の依存体質脱却というものと、総理が設定された昭和六十五年度の赤字国債依存体質脱却というのは、本質的に大きな違いがあるという認識をぜひ持っていただきたいと私は思うのです。  それはなぜかといいますと、昭和五十九年度に赤字国債の依存体質脱却をするというときは、これはもう五十八年度で特例公債発行は終わりなんです。五十八年度ということは、長期国債でやったとしても十年なんです。そうしますと、五十八年に赤字国債、特例国債を発行したものは、償還は遅くとも六十八年なんです。ところが、あなたの六十五年の赤字国債の依存体質脱却というのはそうじゃないのです。それはなぜかというと、いわゆる五十九年度に借換債を認めるという大変な政策転換が行われているのです。ですから、あなたの昭和六十五年度の赤字国債の脱却というのは、昭和六十四年に出された長期国債、これは七十四年に償還されないのです。借換債という方式は御存じのとおり六十年償還ルールなんです。十年たっても六分の一しか返ってこない。あなたの昭和六十五年の赤字国債の依存体質脱却というのは、昭和六十四年に出された赤字国債というものが完済されるのには、さらに六十年後の昭和百二十四年なんです。鈴木政権のときの五十九年赤字国債の脱却というのとあなたの六十五年の設定は、単に六年間延びたというだけのものじゃないのです。この認識を総理が強くお持ちになって、そして今の特例公債の六十年償還ルールを早く例えば二十年にするとか、そういうことをお考えになって対応しなかったら、総理のかわいいお孫さんにだってしかられますよ。私は、その認識というのを総理大臣たるトップのお方ががっちり持ってこれからの財政運営、公債政策に取り組んでもらわなければ、国民というものはそう簡単には納得しませんよ。このことを確認したかったのです。総理、この点について真摯な総理大臣としての御決意を伺いたいと思います。
  222. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 そういう結論を持ってきたいと思うのです。いつまでも六十年まで便々としておれるものではないでしょう。しかし、そういう結論を持ってくるためには、毎年発行する赤字公債を早くゼロにしなければそれはできない。そういう意味におきましてまず正面の目標、攻撃目標を六十五年赤字公債依存体質脱却という線に置いて今懸命の努力をしておるわけなんでございます。
  223. 宮地正介

    ○宮地委員 どうか中曽根内閣の時代において、具体的には六十一年度、これが勝負の正念場だと私は思うのです。この特例公債においての六十年償還ルール、この変更についても——大著も非常にしんどいと思います。しかし、あなたが赤字国債依存体質を脱却するため六十五年を設定したのですから、そのあなたの時代にこの六十年償還ルールの圧縮を、建設国債の場合はこれはまだ担保があります、設備投資をして物が残りますが、借金のための借金特例債でありますから、その御決意があるかどうか、もう一度確認させていただきたいと思います。
  224. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 ともかく六十五年赤字公債依存体質から脱却する、それが我々がまず攻撃目標として完成すべきことである、そう考えて懸命の努力をいたしたいと思います。
  225. 宮地正介

    ○宮地委員 それじゃ答弁にならないですよ。償還ルールについて全然答弁されないのです。その点について言ってください。
  226. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 償還ルールについてお話がありましたが、償還ルールのことを考える以前に、まず発行ルールの方を取り上げなければいかぬ。それが償還金と申しますか債務の累積をつくっていくわけでありますから、そういう意味においては、やはりまず発行の方を、火を消すことがまず大事なのであって、そういうような考えに立ちまして六十五年赤字公債依存体質からの脱却について懸命の努力をする。償還期間六十年を五十年、三十年にするという問題はその次の問題であります。しかし、これらにつきましては、財政審とかいろいろな機関がございまして、それらの御意見もまた聞かなければならない、十分検討を要する問題があると思いまして、それはいずれ検討いたしたいと思っております。
  227. 宮地正介

    ○宮地委員 そのために今回の財確法の中でも、やはり借換債についての努力規定というのが第二条にあるのですよ。総理、その点についてもう少し認識を深くお持ちいただきたいのです。  もちろん大蔵大臣もおっしゃっています。総理のおっしゃるように、六十五年の赤字国債依存体質脱却、これをまずやることだ、それができたら次は国民総生産、GNPとの対比の比率を下げることだというふうにおっしゃっている。我々もずっとこの問題を審議してきているのですからわかっていますよ。しかし、建設国債償還ルールに準じて即特例公債が六十年償還ルールに乗ってしまったんです。これがやはり国民から見れば大きな心配の種なんです、担保も何もないのですから。恐らく大蔵省も、ここのところを早い時期に改めたいというものはおなかの中に持っていると思うのです。しかし、総理自身がその認識についての意識をもっと強くお持ちいただかなければ、大蔵省とてなかなか踏み込んでいけないと思うのですね。  時間ももうあとわずかでございますから、私はこれ以上申しませんが、どうかこの言わんとする意図をお含みいただきまして、中曽根内閣時代にこの問題の決着をつけていただきたいと特に私は要望をしておきたいと思うのでございます。この点について、大蔵大臣、せっかくでございますから、一言確認をしておきたいと思います。
  228. 竹下登

    竹下国務大臣 今宮地さんからもおっしゃいましたように、第一義的に六十五年脱却を図る。そうなりますと、約百六十五兆あるいは百六十六兆くらいになりますが、そのうちの百兆が建設国債、六十五兆がおおむね赤字国債、こういうことになろうかと思われます。我々は、年々これを発行するときに身を引き締めるために努力規定というものを置いて御審議をいただいて、さてその具体的な問題になりますと、これもまた今御審議いただいております電電株の売却益の問題等も透かしの中へは入ってまいっておりますが、具体的にどうしていくか、こういうことは、まさにまず第一目標を達成した後の課題として真剣に検討していくべきことであるというふうに考えております。     〔熊谷委員長代理退席、委員長着席〕
  229. 宮地正介

    ○宮地委員 では、時間が参りましたから終わります。
  230. 越智伊平

    越智委員長 安倍基雄君。
  231. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今同僚議員がいろいろ質問したわけでございますけれども、私も総理の顔を見るといろいろ問題を聞きたくなってしまいまして、たくさん問いを用意したのでございますが、私の時間が余り長くないのでございます。さっき武藤委員から、準備をした人に済まなかったなという話もございましたが、私も昔役人のころにいろいろ想定問答を書きまして、せっかく書いたのにどうも当たらなかった、残念な気持ちもあったけれども、当たらない方がやっぱりよかったという気持ちがございましたので、もし私の質問が当たらない方がおられた場合にはよかったという気持ちじゃなかろうかというつもりで、あらかじめおわびしておきます。  いろいろあるのでございます。基本論を議論する前に、個別的にちょっと関心のある問題をまず先にお聞きしたいと思います。  今度の国会で、いわゆるGNP一%問題というのが非常に大きな問題になっている。国防の一%というのが論議になる反面、経済援助というものがみんなの知らないうちに意外とぐんぐん上がってきている。私いささかつむじ曲がりかもしれませんけれども、外務省のある人間に会いましたときに、経済援助については与党、野党もろ手を挙げて賛成する、あなた一人反対するのはおかしい、こういうような話もございました。もちろん経済援助というのはいいには違いない、しかし、これは最終的には税金で賄われているということをやっぱり十分認識しなくちゃいけないんじゃないかということでございまして、経済援助というものが一体どうなっているんだ、どのくらい伸びているんだということをまず外務省の方からお聞きしたいと思います。
  232. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 先生御承知のように、我が国の経済協力は、三年倍増計画及び五年倍増計画という二回の計画的な拡充努力というものを行ってまいりまして、過去九年間くらいの実績で見ますと約三・三倍くらいの伸びを示しているのが現状でございます。
  233. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 前の大蔵委員会で、例えば五十五年を一〇〇にしたときに経済援助がどのくらいになっているのか、そしてほかの経費の伸びと比較したらどうなのかという質問をいたしましたけれども、その点についてどのくらいか、ちょっとお答え願いたいと思います。
  234. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 最初の先生の御質問を実績の御質問と心得ましたものでございますから実績でお答えいたしましたが、ただいまの御質問、五十五年度を一〇〇と置きました場合に六十年度、本年度の経済協力予算の伸び率はどのくらいであるかという御質問でございますが、本六十年度のODA一般会計分は五千八百十億円の計上をいただいております。これは五十五年度を一〇〇と置きました場合に一六五・二、すなわち六五・二%の伸びということになっております。  ほかの経費全般との比較ということでございますが、私ども必ずしも全般をあれしておりませんが、一般会計総額というもので見てみますと、この五年間では一二三・三、二三・三%の伸びになっているものと承知しております。
  235. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 時間もございませんから私の方から申しますと、これは大蔵委員会でこの前私が論議したわけでございますけれども、ODA、政府開発援助でございますが、いわゆる一般会計の分と、それから最終的に事業予算と申しますのと二種類ございまして、一般会計の分は六十年度で五千八百十億でございますけれども、事業規模としましては一兆二千五百四十七億ということでございまして、五十五年を一〇〇とすると、前者が一六五、後者は一四九、五割から六割伸びております。  この間、一般予算はどうであるかと申しますと、今話がございましたように、一〇〇に対して二三でございますけれども、国債費と、そしていわゆる交付税ですか、それを抜きますと一般の伸びは一〇六、五十五年を一〇〇といたしましてわずかに六しか伸びてないわけでございます。ほかのいろいろの福祉の問題あるいは貿易の問題、いろいろ計算ございますけれども、いずれにせよ一般の費用が五年間で一〇〇が一〇六しかなってないときに、五割から六割の伸びを示しているということでございます。  援助が少ないうちは余り目につかなかった。しかしいつの間にか大きくなってしまった。これは五年前に五年間で倍増すると約束をいわば日本政府がした。この責任は必ずしも中曽根総理の責任ではございませんけれども、昔、五年前に五年間で倍増するという約束をしたおかげで、それは見る見るうちに太ってしまってきて、これで約一兆円を超える規模になっているところでございます。  このほか、一兆二千億プラス値のいわば政府資金の流れというのがございまして、これは五千億ぐらいございます。そうすると、要するに二兆円近くの援助というのが出ているわけでございます。ただ、この五千億の政府資金の流れというのは、いわゆるODAには入らない。いわば贈与とかそういった面からいうと、援助的な色彩は非常に薄いということで、国際的にはそれは認められていないというのでございまして、ODAは一兆二千億、そしてそれプラス五千億というものは、国際的には認められていないけれども、非常に援助的な色彩がある。例えば、輸銀が日本の企業に貸して、企業がそれを出資しているというものが非常に大きな部分あるわけでございます。こういう点を考えますと、この日本のいわば援助というものが、国際的に見た場合に決して少ないわけじゃない。しかも、これは国民の税金で行われているということを本当に痛感せざるを得ないのでございます。  この点に関連しまして、ちょっと追加で外務省に質問したのでございますけれども、例えばフランスでございますが、フランスが世界で二番目ぐらい援助していると非常に威張っているわけでございます。ところがその中身を見ますと、旧植民地に対する援助もあるし、しかも、例えば技術協力ということで、フランスは要するに三十八億ドルのうち約十七億ドルというのを技術援助という形で出しております。その実態はどうかということを外務省に聞いたのでございますけれども、その点、お調べはついたでございましょうか。
  236. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 ただいま先生から御指摘のとおり、一九八三年の実額が、今までわかっている最近の数字でございますが、アメリカ八十億ちょっと欠ける程度、第二位がフランスでございます。そのうちの約三分の一ぐらいが海外領及び海外県に対する支出であるということで、フランス自身もその点はよく認識しておりまして、それを除いたもので今後国際目標を達成しようというようなことを言っている程度でございます。  ちなみに、技術協力の実績でございますが、ただいま御指摘のとおり四二・一%ということで非常に高い比率でございます。そのほとんどは実は人件費及び留学生、研修生等の受け入れ費用でございまして、海外領等を除きましても、派遣専門家が二万二千名、それから受け入れております留学生、研修生の数が一万五千六百名ということで、人数的には圧倒的に多いという状況でございます。この内訳でございますが、留学生、研修生は御承知のとおりいろいろなものを勉強しに来ております。特に教員ですね、フランス語の教師というものが非常に多い。七割以上を占めているというのが実態と承知しております。
  237. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いずれにいたしましても、日本の場合に、ODA、政府援助以外に国の公的資金が使われている部分が非常に大きいわけでございます。これがほかの国に比べてべらぼうに違う。例えば、日本の場合には一九八三年で公的資金が十九億ドル使われている。ところがイギリスやフランスやドイツは、ほとんど二億とか五億とか六億とかということでございまして、我が方としては、公的資金をこれだけ使いながら、それプラスいわゆる政府援助というのを倍増してきている。この点もう少し考えるべきじゃないかということでございまして、ひとつ総理にお伺いしたいのでございますけれども、対外援助を聖域と考えているのは、そこまで考えてないかもしれませんけれども、ちょっとおかしいのではないかということが第一点でございます。  それから第二は、この使われ方についてどの程度監視しているのか。この点外務省からも説明を受けるべきでございましょうが、時間の関係もございますから簡単にいたしますけれども、例えばアフリカの援助などにつきましても、食糧援助なんかする、それが結局は困っている人間に使われない、送られない。結局は政府の私腹を肥やす。そこまで言っていいのかどうかわかりませんけれども、そういった種類のものが幾らもあるのではないか用でありますから、これだけの量になってきたものについては、やはり監視制度というものを十分見なくちゃいかぬじゃないか。  それからまた、私がさっきお話しいたしました公的な資金、ほかの国はほとんどないけれども日本の輸銀のようなもの、これはある意味から言うとODAの援助とは言わぬという限定をしておりますけれども、そういったものをできるだけカウントしてもらうように努力すべきじゃないかということでございます。  聖域と見るのか見ないのか、あるいはその使われ方についてどう考えるか。第三に、そういった公的な援助をどう考えるか。三点について、総理のお考えを承りたいと思います。
  238. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 対外援助は、私は、政治だろうと思います。すなわち、相手国の福祉、社会安定等のために使われるのでありまして、これは政治である、経済原則のみを考えてやっておるものではない、そう考えます。しかし、これが乱用されたり、あるいは不効率であったりしてはいけません。そういう意味におきまして、有効に活用されるような監視制度というものをやっぱりもっとやる必要があると思います。これはODAの口上書等をつくるときに、そういういろいろな条件をきつくやっておりますけれども、ややもするとルーズになりがちでありまして、外務省からも監視官を派遣したり、サーべーをやらしておりますけれども、これらをもっと有効に、きちきちやらせる必要があるだろう、そう思っております。
  239. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 援助は経済原則だけで見てはいけないということは、私もまさに同感でございますけれども、これだけの額になり、しかもそれが国民の税金であるということになりますと、外に向かってすぐ胸を張って倍増するとか、そういう種類の大見えは余り切っていただきたくないという気がいたします。  そういう意味におきまして、対外援助につきましてこれだけの問題になってきた、大きさになってきたという状況のもとに、やはりここでは、要するにほかの経費はこれだけ切り詰められている、国の財政がもっといいならば話は別ですが、国民の税金でやっている。そういうことでございますから、総理がしきりと言われる民間の活力というのでございますれば、民間でもってそういったものをもっと補完していって、国のものについてはできるだけ民間で置きかえていくというような考えがあると思いますが、いかがでございますか。
  240. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 これはOECDでいろいろお約束をしたり、国連の関係もございましたりして、国がやるべきものはやっぱり国がやらなければいけません。が、しかし、単に国のみならず、民間外交という面もありますし、バンクローンもありますし、あるいは今おっしゃいましたようなODAにあらざるいろいろな政府関係のものもございます。そういうものの総合的なやり方でやることが望ましいと考えます。
  241. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 次に、これはまた私が本会議の演説のときでも引用したのでございますけれども、まず出るを制すという面で考えられますことは、いわば地方の行革の問題でございます。  私はその際に提起した問題点でございますけれども、例えば地方税、これは東京を考えますと全国の人口の九・七%、九・六でしたか、一〇%未満にかかわらず地方税収入は一七%が東京に入るようになっておる。もっと細かく見ますと、法人住民税などというものは二五%が東京に落ちるようになっている。これは結局はいろんな法人が東京に集中して、そこからお金を納めるということでございます。  最近しきりと、大都市周辺の地域が非常にむだをしているという話がございます。この問題はなかなか、自治省に聞きましても、地方自治の問題があるからなあというようなことを言われるのでございますけれども、しかし、もともと地方税というものを考えるときに、そう一つ地域、メガポリスに偏在するような地方税を決めることそのものがいささか問題ではないか。私は、税調の小倉会長が参考人に来られたときにそういう話をいたしました。今後の検討課題とするというような御発言もございましたけれども、この点、総理は今後の検討課題としてこれを取り上げられるかどうか、この点について御質問したいと思います。
  242. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 この点は臨調においても検討され、行革審においても検討されたところでございます。いわゆる富裕団体と富裕にあらざる団体とのバランスの問題もございます。そういうような点で、関係各方面の協調を得ましてバランスを回復する、そういうような形で行革の実を上げていきたいと考えております。
  243. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 現在バランス上、結局地方交付税という形で貧乏な団体に送る、そうすると、むしろ富裕団体と横並びぐらいの高さで交付税を出さざるを得ない。一時新聞に、大蔵省が偏在している地方税をプールして配るというような案を検討するというような記事がございました。私はそれ真実かと言ったら、そうではないということでございますけれども、これは、地方税そのものをもう一遍見直すときに、偏在しない地方税を考えていくということかと思います。いかがでございますか。
  244. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 これも検討課題一つであると考えます。
  245. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 これが一応個別的な私のいわば関心項目についての質問でございますけれども、一般論に戻ります。  貿易摩擦というものが随分問題になった。私は連合審査のときに総理に、特に木材の関税を今引き下げるとすごい補助金を将来払うようになるだろう、我々が補助金一括法案でこれだけ苦しんでいるときに、一言下げると言うと途端に何千億もの補助金が出るようなものは問題であるというようなことをお聞きしました。最終的には比較的緩やかなというか、時間を置いた形の引き下げという形で落ちついたことは非常に私はいいと思うのでございますけれども、この問題と関連しまして、金融の自由化という問題がずっとあったわけでございます。  これは私は、総理がこの前、百ドル買いましょうというようなことを言われたのは非常にいいのでございますけれども、ただ、しかし、向こうのものが高い以上はどうしても入ってこない。高い理由が最終的には向こうのドルが高い、ドルが何で高いかというと、資金がすばらしく流出していっているということでございます。  私、ちょっと自分で金融の自由化についてどんな問題点があるかということを数え上げてみたのでございますけれども一つは、こういう資金の海外流出、これは為替の自由化の問題がございますけれども、向こうはもともと円が安過ぎるから自由化するというような形を言っておりますけれども、その結果、最終的にむしろ円の安過ぎるのを助長するような資本流出が出てきているということが第一の問題でございます。第二番目は、金融機関がやはり倒産する可能性があるなということでございます。第三は、今度日本景気が悪くなってきたときに金利政策ができなくなる。かつては低金利政策でもって景気を引き上げたということがあるわけであります。第四点が財政投融資の変化という問題でございます。今まで日本は第二の予算としていろいろなものに資金を投入しておった、それが金利が上昇してきますとコストが上がってくる、財政投融資というのができなくなるのじゃないか。こういう四つの問題がある。非常に大きな問題が含まれておる問題でございます。それで去年私も、金融の自由化というのは注意しなきゃいかぬ、特にアメリカの高金利のときにこれは急いでやっちゃ困るよということをしきりに言ったわけでございますが、何か最近、新聞あたりあるいは雑誌あたりでもいよいよ非常に大問題になってきているという感じがいたします。  この四つの点があるのでございますけれども、まず第一の金融機関の倒産問題ということをひとつお聞きしたいと思うのでございます。  私、いろいろ調べてみますと、アメリカでは金利の自由化以降どんどんと倒産がふえている。一九八一年までは大体年間十件だったのが、八二年には四十二件、八三年四十八件、八四年は七十九件と、すごい倒産が起こってきているわけでございます。  ここでちょっとアメリカ日本との違いを言いますと、アメリカの金利は小口まで大分自由化されているのでございますけれどもアメリカの場合には他の州に支店を持てないという要素があるのでございまして、バンク・オブ・アメリカという非常に大きな銀行がございますけれども、これはカリフォルニアだけに支店を持っている、ほかの地区には支店を持てない。でありますから、非常にローカルな銀行はそれぞれの地区でもって要するに自分のところを守っていればいい。でございますから、アメリカの場合には金利の自由化があっても、ローカルな銀行はどんどん倒れておりますけれどもまだまだ安全である。  ところが日本の場合には、全国銀行が各地に支店を持っておるわけでございますから、金利を自由化して高い金利を預金にぽこっと払いますと、そこへ資金が集中していくようになる。そうすると、ほかの中小金融機関は資金を集めるためには預金金利を上げていかなくちゃいけない。となると、アメリカにおけるいわばバリアと申しますか、現在アメリカでは、余り自由化は進め過ぎるとそういったものは困る、現在州際というか、州の間のバリアを外すか外すまいかということで、むしろ外さない格好で反撃が出てきているという形でございます。その意味で、むしろ金利の自由化をやり過ぎたのじゃないかという動きさえ出てきているわけでございます。  私は、実際上日本の制度の場合にまず心配なのは、中小金融機関が倒れていくかもしれない。特に日本の場合には中小企業者が中小金融機関に頼っておった。私、実はかつて役人のころに、豊川信金の取りつけ事件というところに遭遇しました。そのときに、取りつけが始まってどうそれを防衛するかということで非常に心配したことがございます。これは大蔵大臣にお聞きするのがあれでございますけれども、これはむしろ総理に、これから金融機関、中小金融機関がどうなっていくか。倒産する可能性が、アメリカでもこれだけあった、しかもアメリカの場合には州と州との間で自由に支店を持てないといういわば制限のもとにこうあったということになると、日本の場合には県と県との制限もなしで、信用金庫、中小金融機関は本当に僕は何カ所かどんどん倒産していくのではないかという心配がございます。こういったものに対してどういう対応を考えられていらっしゃるか、お聞きしたいと思います。
  246. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 やはり円の国際化、金融の自由化ということは、国際的日本という面からも進めていくべきであると思います。  ただ、金利の自由化も必要であると私は思いますが、日本には日本のいろいろな個性があります。郵便貯金という問題もございますし、零細金融機関という問題もございます。それらの日本国有の事情というものについては、相応の注意を払いつつ、いわゆるソフトランディングで、そして預金をしていらっしゃる皆様方に心配をかけないようなやり方をやりながら着実に自由化を進めていく、段階的に進めていく、そういうやり方が正しいやり方だと思います。
  247. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 ソフトランディングという言葉はいいんですけれども、具体的に合併を促進するかとか、どういったことを考えていらっしゃるのか。これは余り総理ばかり責めてもあれでございますので、大蔵大臣からお答え願いたいと思います。
  248. 竹下登

    竹下国務大臣 したがいまして、今金融制度調査会でしっぽりと議論してもらおう。いわば一つの預金者保護とかそういう問題からいうと、それは預金保険機構なんかの問題も出てくるでございましょう。それから、今言い出すと混乱が起こるでございましょうが、あるいは合併問題等も論議されていくことになるでございましょう。  ただ、私いつも思いますのは、アメリカは何といったって銀行そのものの数が多うございますね。そして設置も、州際問題は残っておりますが、その中においては支店は届け出で何ぼつくってもいいとか、そういうようなところから倒産も出ていったでございましょう。したがって、今度も店舗の許可等を今やっておりますが、それについては行政指導をも含め非常に健全性が確保せられるような指導をしていかなければならぬし、それからやはり中小金融機関は、いわゆる連合会等でいろいろやっておられます職員の資質の向上、今低いという意味ではございませんが、そういうような研修等も最近盛んにやっていらっしゃるというような形で力をつけていかなければならぬ。  ただ、総理からお話がございましたように、大口のCDだMMCだ、こうやってきておりますが、最終的に郵便貯金を含む金利の自由化というのには若干の時間がございますだけに、それこそソフトランディングという形で、みんなが心配することのない方向でこれを定着させていかなければならぬ課題だというふうに考えております。
  249. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今おっしゃっなように、アメリカは非常に数が多いということも知っております。しかしその反面、州際というかバリアがあるために、金利が自由化されても地域によっては割合と保護されている要素がある。日本の場合には大きな規模の銀行が全国各地に支店を持っているわけでございますから、そういう州際問題がない。そうすると、そこが自由にどんどんやりますとほかのものはどんどん負けていくという問題がございまして、これは私は保険か何かで保護するなんという問題だけで済む問題ではないんじゃないか、大問題じゃないかと本当に思っているのでございます。特に日本の場合には間接金融が大きい。今お話しいたしましたように、中小企業は中小金融機関に頼っているというような問題もございます。  最後に総理、本当にその辺を踏まえて合併的な問題も考えていくのか、非常に慎重にやっていくのかどうか、御答弁願いたいと思います。
  250. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 金融機関の相互関係あるいは金融秩序という問題は、着実に段階的に行っていくべきであると思います。
  251. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 それから、今挙げた中で財投の変化の問題がございます。これは別の委員もかつて大蔵委員会で既に指摘され、私自身も本会議の演説でちょっと触れたのでございますけれども一つは、そうやって金利が自由化していきますと資金コストが上がっていくという問題と、もう一つは、だんだん老齢化社会になってきますと積立金の増加がだんだん減ってくるということでございまして、今までのように第二の予算のつもりで公共的なものにどんどん使っていけなくなるという考えがございます。でございますから、我々は今までそういった低利の預金でもって非常に公共的なことをやってきた、そういうことがだんだんできなくなるんではなかろうか。そろそろこの辺を考えて考え方を変えていかなければいかぬじゃないかと思っておりますが、この点、もう既に大蔵大臣の御意見はお聞きしてありますから、総理にちょっとお答え願いたいと思います。
  252. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 長寿社会になりますと預金が減るかどうか、これは研究課題であるだろうと思いまして、必ずしも即断はできないと思います。しかしながら、長寿者を保護するということは社会福祉政策としても大事な点であり、生活の安定ということも政治として心がくべきことでございますから、そういうことにかかわりのある金融問題については慎重にやる必要があると考えております。
  253. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今申しましたのは、ちょっと誤解があると思いますけれども、結局今の財投の原資というものは、厚生年金の積立金があるわけでございます。それが要するに、積み立てよりも取り崩す分がふえてくる。そうなると財投の原資が減ってくるという問題と、金利自由化になりますとコストが上がってくる。そうすると、それを上手に運用していかないと戻らぬ、今までのように低利で豊富な財投資金がもうこれから期待できないということでございますので、この点ひとつこれからの検討課題として考えていただきたいと思うのでございます。  それと、時間もございますのではしょって言いますと、こういった財投の問題、金融機関の倒産の問題、それから金利政策ができなくなるという問題、これは今言っても仕方がないのですが、今までは、日銀が公定歩合を下げることによってみんなの貸し出しがふえる、それが景気の振興策になっていった。それが日本の場合には、現在公共事業をやろうにもまず財政が悪い、そしてまた金利操作ができなくなる。したがいまして、日本が今度不況に陥ったときになかなか手がないという問題があるわけでございます。  そこで、さっき話が出ましたタックスミックスと申しますか、いろいろな税制でもって考えていかなければいかぬ時代が到来してくるんじゃないかと思うのでございますけれども、これと関連しまして、私、ちょっと意地悪な質問なんですけれども日本の対外純資産が非常にふえてきた。この前の発表によりますと大体七百四十億ドル、去年一年間で五百億ドル流出しているわけでございます。これはアメリカの高金利を求めて海外に流出したものが非常に多い。結局それはいわば向こうの証券を買ったりそういったものが非常に多い。これがまた継続的なドル高を生み、また、せっかく中曽根首相が百ドル買いましょうと幾ら叫んでも、向こうの物が高いために要するに日本の輸入がふえないというメカニズムを生んでいるんでございますけれども、こういったときに、将来必ずドルが落ちていくだろう——フェルドシュタインという人がいまして、これは総理も御存じかと思いますけれども、彼も終局的には八〇年以来生じた七〇%の上昇は要するに下がっていくだろうということを言っております。  こうなりますと、いわばせっかくみんなが集めて貯金をして、それが日本の国内に投資されないで海外に流出してしまう、海外に流出したのが、逆にドル高が落ちできますと一遍に損をこうむる、そういったおそれが非常にあるんでございまして、この点、総理はどうお考えかということでございます。
  254. 竹下登

    竹下国務大臣 これは安倍さんいつもおっしゃる、要するに今のドル高のときに、しかも高金利を頼って流出したものが、ドルそのものがファンダメンタルズの問題からして将来下落すれば、いわばそこに為替差損を生じる、それそのものが減価してしまう、だから、その流出したものも減価してしまうということに対する懸念をいつもお述べになるわけでありますが、その点は、今の場合はかなりの比率を掛けてみても、今の金利四%も差があれば相対的に大変な損害をこうむるというような計算も出てこないようでございますけれども、市場原理によって動くわけでございますから、投資家もそれはちゃんとその辺を見てやっておりますから、大変減価して取り返しのつかぬことになるというようなことは必ずしも私は考えません。しかし可能な限り、国内で投資される需要が起こるような施策は絶えず考えていかなければならぬ課題だと思います。
  255. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私も、投資家は大体機関投資家が多いものですから十分計算の上で投資していることは知っておりますけれども、ただしかし基本的には、最終的にたくさんためたものが結局大して損をしなかったという程度で終わってしまうのでは何で我々せっかく貯蓄したのかということがございまして、やはり内需拡大と申しますか、国内における投資機会を要するにつくっていくてとが大事ではないか。  私は、やはり貯蓄優遇税制から投資あるいは消費促進税制という切りかえをする時期が来ていると思いますけれども、さっきも話が出ましたけれども、資産所得、利子所得に対する分離課税は問題ではないかという大きな問題点がございます。あるいは投資促進のための、たまたまこの前の税制改正でレーガンは投資の期間短縮をまたもとへ戻すような動きをしたものでございますから、その点はあるいはちょっとやり過ぎたという要素があるかと思いますけれども、それぞれのいわば耐用年数なんかも効用に合わせて要するに考えていくという点でございます。この点ちょっと専門的でございますが、大蔵委員会で論議したことで総理の御感想をお聞きしたいと思ったのでございますけれども、総理としては内需拡大にどういう施策を中心で考えられていくか。私としては、公共事業もなかなか苦しいし、そしてまた金利操作もできない、そうするとやはり税制がな、税制を中心で考えなくていかぬのかと。さっき話が出ましたけれども、一方において資産所得に課税して、一方において投資もしくは消費を伸ばすものを減税するという形でいかざるを得ないのじゃないかな。  私はこの前委員会でも発言しましたけれども日本の場合には、単にみんなが貯蓄を好むというのじゃなくて、現在は十兆円ぐらいの国債の利子が払われている。そうすると、そういった利子所得者、資産所得者の方にどんどんと金が集まっていって、そこでは資産所得者というのは消費が知れておりますから、構造的に日本の社会は貯蓄過剰になる形になりつつある。所得の格差がますます拡大していって、結局みんなが貯蓄を好む以上に構造的に貯蓄過剰になる。その貯蓄過剰が海外に資金として流出していく。それが最終的には余り得にもならない形で、ドルが下がって落ちてしまう。何のために貯蓄したかわからぬし、構造そのものを変えていかなければいかぬという考えでございますけれども、これについてちょっと、既に委員会でも論議したことでございますから、若干専門的な話でございますので、総理が内需拡大策について何を中心に考えておられるか、私の今考えている考え方についてどう考えるかという点についてお聞きしたいと思います。
  256. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 やはり規制解除ということによる民活というものが中心点にあると思いますが、そのほかは、景気の動向等をよく見ながら金融あるいは財政、あらゆる面において連係動作を保つ、これは情勢によりつつ弾力的に考えていくべきものである。しかし、赤字国債でこれを行うというようなことはやるべきでないと思っております。
  257. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 時間もございませんので、規制緩和と関連しまして、ちょっと細かい問題かと思いますけれども、私は予算委員会の分科会である発言をしたのでございます。  と申しますのは、これから高齢化社会が要するに進展すると、老人ホームに対するいろんないわば需要がふえてくる。ある人から聞きますと、老人ホームは都会地でしかつくっちゃいかぬ、市街化調整区域と申しますか、ちょっと外れたところに行きますとなかなか規制が厳しい。そこで我々の考えとしては、要するに安いところでそういうものをつくらした方が入居料も安くて上がる、都会に住んでいるうちはどうしても入居料が高くなって、みんなが利用できない、そういった意味で、規制緩和の一つとしてこういった老人ホームなどもむしろ田舎につくるようにした方がいいのじゃないか、それが高齢化社会に対応して一石二鳥の考えじゃないかというようなことを人から言われた。  私もその問題を分科会で建設省あるいは厚生省の人に持ち出したのでございますけれども、なかなかはっきりした答弁も得られなかったのでございますけれども、この点、どの程度厚生省建設省の方がレクチャーされているかわかりませんけれども、もう時間がございませんので、総理、こういった問題についてのお考えを、御感想でいいですからお聞きしたいと思います。
  258. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 それは一つの着想であって、検討に値すると思います。
  259. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 時間もございませんからこれ以上いたしませんけれども、ひとつ金融自由化の問題、それから貿易摩擦の問題も、この間私が大分木材問題で言いましたけれども、例えばフェルドシュタインなんかも貿易摩擦の問題についてどう言っているかといいますと、これは「「日本製品を全部締め出せ」と本気で言う米国人は今日では少なくなった。もしそのようなことがいまでも言われているとすれば、それはあくまで日本の市場開放を実現するための一つのテクニック」であるというようなことも言っております。この間アメリカの世論調査を見ますと、一般の民衆は必ずしも日本が悪いとばかり思っていない、むしろ騒いでいるのはどっちかというと政治家だというような世論調査もございました。  私は何もこの問題を軽く見ているわけじゃございませんけれども、やはり正論は、私がお話ししたのは、ドル、円の相場が逆転したときに関税問題は大問題になるよというお話をいたしましたけれども、補助金を出してまでも市場開放するような開放というのはおかしい、やはり頑張るべきものは頑張るという点でございます。この点について最後に総理のお考えをお聞きして質問を終わりたいと思います。
  260. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 物により事態によりけりでありまして、要するに足腰の強い産業にするということは政治として考えていくべき問題であると思います。
  261. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 じゃ終わります。
  262. 越智伊平

    越智委員長 正森成二君。
  263. 正森成二

    ○正森委員 財源確保法案について、若干の問題について質問さしていただきたいと思います。  まず最初に定率繰り入れの問題について伺いたいと思います。  御承知のように、本年、この法案でもう定率繰り入れが四年連続停止になっております。総理も御承知のように、本年度はまだ残高が九千九百億円ございますが、六十一年になりますと差し引き六千億円足りないということになります。これは国債の償還あるいは国債に対する国民の信頼というものを考える上でも非常に大切なことで、何とか手当てをしなければならないというのは自明のことであります。これについて本委員会でも二、三の同僚から御質問がありました。それに対して政府委員から、いずれにしても基金残高がゼロになるということは国債管理政策を行う上で種々問題を生ずることも予想されるので、ある程度残高を維持しようということを念頭に置いて考えていかざるを得ないと思いますという趣旨の答弁がございました。また大蔵大臣からは、村山調査会の二分の一程度というのを念頭に置かれまして、一つ見解として十分検討させていただいたが、今年はやむを得なかったという趣旨の御答弁もございました。  そこで、六十一年度に限って伺いたいと思いますが、通常定率繰り入れをやりますと、たしか二兆八百億円くらい繰り入れなければなりませんが、要調整額との関係からなかなかそうぜいたくなことの言える財政状況ではないということになりますと、六十一年度は、定率繰り入れはやらないが二分の一程度予算繰り入れをやるか、あるいはNTTの売却益を計上するかというどちらかを真剣に考えなければならないと思うのですね。国債の信認のためにもそれらの点について所見を承りたいと思います。
  264. 竹下登

    竹下国務大臣 やはりいろいろな議論をいただいて、それで結局財政審でも、その根幹は維持すべきものであると。私もそう思います。  で、やむを得ざる措置としてこのような措置をとっておるわけでありますが、今正森さんおっしゃいましたとおり、空っぽになるわけでございますから、これは確かに電電株の問題も法律を通していただければそういう可能性はありますが、国民共有の財産でありますから、それが言ってみれば適正な価格というものがどういうふうにして醸成されていくかということを考えますと、これがありますとだけでは済まない問題だろうと思います。したがって、減債制度の基本的な問題は維持するという考え方に立って、六十一年度予算編成のときに、ぎりぎりの段階で決断をすべきことだというふうに理解をしております。
  265. 正森成二

    ○正森委員 それで、当局に伺いたいのですが、私が二十二日に、NTTの売却について、ここにございますが、証券取引所の上場関係規則などを引用して質問いたしましたら、政府委員から、「多数の株式の保有者があって、その中で競争の原理が働いて自由な価格形成をしていくということが前提でございますので、ある程度の株式の保有者が分布していないことには、やはり上場という意味がなくなるのではなかろうか」という趣旨の答弁がされております。この答弁意味がもう一つよくわからないのですが、それは、適当な流通市場を提供するということが当然の前提であって、これはNTT株の上場等を当然の前提とした上での答弁なのかどうか、その点を承っておきたいと思います。
  266. 岸田俊輔

    ○岸田(俊)政府委員 前回の御審議の際に、そういう形で参考人からお答えをいたしました。そのときの私どもの理解は、政府が直ちに上場して、それから売却を始めるというふうに理解をいたしたものでございますからそういうふうにお答えをしたわけでございまして、私どもといたしましては、売却の方法につきまして決定をいたしました段階におきましては、関係方面の意見も十分聞きながら、また先生御指摘の部分上場の問題とかそういう点も十分念頭に置いて、現行の上場基準をどのようにするかということにつきましては、株主に適切な流通市場を提供するという立場から弾力的に検討したいというふうに考えております。
  267. 正森成二

    ○正森委員 今の証券局長答弁で、あのときに私が東京証券取引所の理事などを参考人に呼んで伺いましたことと、基本的にはお考えの差異がないということがわかったと思います。  それで、ここに持ってきております「株券上場審査基準の取扱い」というところを見ますと、その中に、「前bの規定にかかわらず、本所が新規上場申請者の発行済株式のうち、一部に上場に適さない株式があると認めた場合には、上場に適さない株式を除く発行済株式について上場を認めることができるものとする。ただし、上場株式数が第一号a又はbに定める数以上であって、かつ、当該株式数が発行済株式総数の五〇%以上であることを要するものとする。」と書いてあります。  これはNTTに即して考えますと、大体今回の場合は、半分は国が株式を持っていなければならないんだから、NTTの七千八百億円の株式のうち半分は上場しなくてもいいということで、残りの何%かが一般に出回っておればいいという解釈も成り立ち得るものである、こう解釈しますと、規則の基準が半分ほど和らげられることになるのですね。そういうことも含めた、あるいはそれをさらに超えた柔軟な考え方をおとりになるのかどうか、伺いたいと思います。
  268. 岸田俊輔

    ○岸田(俊)政府委員 先生御指摘の少数特定者持ち株数基準、それから一部上場の問題でございます。現在のところ、先ほど来から申し上げておりますように、まだ売却の方法が決定をいたしませんので確たることは申し上げられませんけれども、すべての上場基準につきまして弾力的に対応していきたいというふうには考えております。
  269. 正森成二

    ○正森委員 私の指摘を必ずしも否定されなかったと思います。  この問題について総理にも伺いたいのですが、技術的な問題ですから、サミット関連の問題について伺いたいと思います。  総理はサミットで、三十年来の税の抜本的見直しということを言われまして、事実上国際的な公約でもあると思います。どういう意図でこういうことを言われ、その内容としては何を考えておられるのかということが第一。  それから、時間がございませんので、アメリカ税制改正を相当大規模に打ち出しましたが、これを参考にされるのかどうか、お答え願いたいと思います。
  270. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 アメリカ税制改正の提案は参考にしたいと思います。  サミットで申しましたのは、内需の振興あるいはインフレーションなき経済成長、繁栄、こういうような問題の論議の中で、我が国においても将来こういうものを課題として私は受け取っておりますと、そういう話をしたので、別に約束したことではありません。
  271. 正森成二

    ○正森委員 アメリカ税制改正も参考にしたいという御意見のようでありますが、アメリカ税制改正のいろいろの改革案、それの報告がこのごろ出回っておりますが、その付加価値税に関する部分を見ますと、アメリカでは付加価値税あるいは大型間接税というものにつきましては消極なようであります。例えば、これを実際に行うためには法案が通ってから準備期間に一年半は要るとか、人員が大体二万人は要るとか、あるいは徴税のコストが日本円にしますと千七百五十億円ぐらいかかって大変だとか、あるいは逆進性が強いとかということで、その実施はしないという方向の報告であります。あるいはまた、この報告を見ますと、あるいは今度のアメリカ税制改革案を見ますと、課税最低限を四人家族で大体一万二千ドル、三百万円に引き上げるというようなことも出ております。  私としましては、所得税の税率を最高限を下げて三段階にするとか、法人税を三三%にするとかいうようなことだけではなしに、大型間接税を導入しないとか、課税最低限を上げるとかいうようなことも大いに参考にしていただきたいと思いますが、総理の御所見はいかがでしょうか。
  272. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 大型間接税につきましつは、私はこの予算委員会や本会議等で申し述べたとおりで、その点は今でも変わっておりません。  それから税制改正の問題につきましては、これはアメリカの議会の論議の模様、国民の反応等も十分よく検討した上で我々の方も考えていきたいと思います。
  273. 正森成二

    ○正森委員 それでは次の問題に移らせていただきたいと思います。  御承知のように、先日、五月二十二日でありますが、アメリカの国務省が「米国の外交関係一九五二—五四年、中国・日本編」というのを公表されました。その中で、国家安全保障会議の対日中期政策の一連の文書が初めて公開されまして、日米行政協定についても公開をされ、その中に、日本有事の際にアメリカに指揮権を与えるという了解事項などもあったということが報道されております。  そこで、我が国の場合は三月に第八回目の外交文書の公開がございましたが、その中には御承知のようにこの関連の部分は公開されませんでした。  で、外交上、アメリカの文書の公開も、ああいうように日本政府に関係のある部分については日本政府の了承がなければ不可能であるのが外交関係の通例であるというように言われております。また、日本において三月に外交文書が公表されましたときに、三月二十六日の決算委員会の議事録でありますが、我が党の中川委員質問に対して、時間の関係で議事録を全部引用はいたしませんが、大量にあってまだ審査が終わっていない、つまり未審査である、国益の問題とプライバシーの問題ということを考えた上で決定するという、たしか官房長の答弁がございまして、総理はこのときに、「できるだけ公開して正しい歴史を伝えるようにすることは、行政あるいは政治の責任であると思いまして、方針としてはそういう方に持っていくべきであると思っております。ですから、私は行管長官のころから情報公開には積極論者でありまして、今でもそういう方向で各省が話し合いをして調整を早くやるようにと督促しておる次第なのでございます。」という意味の御答弁、あるいは「歴史の真実を子孫に伝えるということは、政治及び行政の大変大事な責任であると思っております。これは前から私が申し上げているとおりでございます。その精神に沿いまして最大限今後も努力してまいるつもりでおります。」という御答弁であります。  そういう点を考えますと、既にアメリカ側が、日本政府の了解を得たのか了解を得ないのかわかりませんが、ともかく公表されたということになりますと、これを秘匿しておく国益上の理由というのはないのではなかろうか。もしそのアメリカ側の公表が当たっておるなら、今さら日本側が公開しても国益には影響がないし、もしアメリカ側の公開しているのが真実と違うなら、歴史の真実のためにも公開をするのが国益のためであるということになりますので、三月二十六日の総理の御答弁の趣旨にのっとって早急に我が方もこの関連の外交文書を公開されることが望ましい、私はそう思いますが、御所見を率直に承りたいと思います。
  274. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 正森委員が御指摘になった私の答弁は、今でも一貫して変わりはございません。やはり歴史の真実を伝えることが子孫に対する我々の責任であると考えております。ただその場合、国益とかあるいは個人的ないろいろな事情の配慮も大事である、そういう点はもちろん留保しておくべきでありますが、やはり歴史の真実を伝えるというのは一番大きな、大事な要点である、そう考えております。  独立当時、あるいは独立を獲得せんとして日米間がいろいろ交渉しているときには、国力の差もあり、あるいは占領されているという事実からいかに脱却するかというそういう状態で、吉田さん以下為政者も随分苦労したのだろうと思います。そういう苦労の実情を国民に正確に知らせるということも、私は意味があることであって、別に恥ずかしいことであるとは思いません。そういう点は、やはり真実をできるだけ国民に伝えるという精神でやっていくべきであると思います。
  275. 正森成二

    ○正森委員 私も、あの文書で事実上アメリカの指揮権を認めたから現在もそうであるとか、そういう飛躍したことを申そうと思っておるわけではございません。そうではなくて、やはり日米行政協定の締結をめぐるいろいろな、いまだ独立が回復されていないときの交渉であるとか、そういう点の真実が仮にアメリカ側の公開文書にあるとすれば、それは外国から公開された資料のみによって我々が知るのでなしに、我が国の外交文書の公表を、既に三十年たっているわけでありますから、それを通じて国民あるいは史家がみずからの真実を知りあるいは反省の具ともするということが大事でありまして、総理のそういうお心構えを伺ったということは幸せであったと思っておりますけれども、さらにできればここでの御答弁の中で、早急に公開をしたいという旨についての御決意なり御言明をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  276. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 問題は、こちらの資料にそういうことが載っているかどうかという問題があるので、向こうは向こうでいろいろ資料を残しているでしょうが、こっちはこっちでどういう資料が残っているか、そういう問題があるので、向こうの言っていることがこっちにないと言っても、それは必ずしも不穏当なことではない。歴史的真実さえ伝えれば、事実をそのままに国民の前に明らかにすればいい、そういう考えております。  それから指揮権の問題については、私は当時どういうふうになっているか知りませんが、現在は、自衛隊の発足等々のそれ以降というものは、これはアメリカ側はアメリカの指揮系統、日本の自衛隊は内閣総理大臣を頂点とする日本の指揮系統、そのもとにおのおの独立に、別個に指揮系統は発動されて、そして上層部においてそれは対等に調整されていく、そういう指揮系統になっているということを申し上げておきたいと思います。
  277. 正森成二

    ○正森委員 もちろん、アメリカアメリカで交渉の経過を報告された文書を公表しているわけで、日本側がどういうような文書を残しておるか、これは調べてみなければわかりませんから、向こう側にあるものがこちらには文書としてはないということもあり得るかもしれませんけれども、しかし、先日、三月二十六日の決算委員会での論議でも、何しろ文書が膨大で、未審査の部分が多いのでできなかったというような答弁でございましたので、私は、ああいうアメリカ側の文書が公表された以上は、特にその問題に限ってどういう文書があるかということを優先的に審査をされまして、その点に関係する真実が明らかにされることを心から望んでおきたいと思います。  それでは、次の問題に移らせていただきますが、総理はサミットで、SDIについて研究に理解を示されるだけでなしに、四条件とか五原則とか言われておりますが、本会議では総理は五原則という言葉をお使いになったようであります。間違っておれば御訂正いただきたいと思いますが、ソ連への一方的優位を求めない、これが第一ですね。二が、総合的抑止力の一環であり、三番目に、攻撃核の大幅削減、四に、弾道弾迎撃ミサイル、ABM制限条約の枠内であり、五が、配備の際はソ連と協議するという、五つの原則を提示されたと承っております。  それで、私が思いますのに、この五原則を言われたということは、SDIあるいはSDIの研究について単に理解を示されたというだけでなしに、この五原則が何らかの意味で満足されるならその研究に日本としても主体的に踏み込むという、条件と言っては言い過ぎかもしれませんが、環境について感触を示されたものであるというようにマスコミでも受け取る向きが多いし、私自身もそうではないかと思いますが、この問題についての総理の率直な御意見を承りたいと思います。
  278. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 これは、ボンにおけるレーガン大統領と私との二首脳会談の際に、私は、アメリカ側がいろいろ個々別々に発言しているものあるいはサッチャーさんとアメリカ大統領との会談等の結果等々を整理しまして、そして今の五つにまとめまして、ですから五原則と言って結構だと思うのですけれども、そういう認識であるのかということを確認した、先方側の認識を確認した、先方は、そのとおりですと、そういう返事があったということでありまして、それ以上に出るものではない。我々は研究に対して理解を示したという、その根拠になっておる背景がこれで私は認識できた、そういうふうに思います。
  279. 正森成二

    ○正森委員 そうすると、今の御答弁では、相手側の認識の中に五つの原則というようなものがあることを確認したのであるということで、今後さらに踏み込む条件のようなものではないと私としては受け取れる答弁でございましたが、しかし、最近、マスコミの報道などを見ておりますと、この間の、六十日以内にSDIの研究に参加するかどうか回答されたいというのは事実上延期されたようでございますけれども、それについてもこの夏ごろまでに意見あるいは決定を求められるでございましょうし、それからもう一つ気になりますのは、報道の中に、政府の決定前でも我が国の企業が研究に参加するのは、武器技術援助に関する交換公文その他我が国の法制から見て可能であるというような見解アメリカにおける出先外交技官あるいは本国における外務当局の見解であるというような報道がなされているようであります。政府がSDIの研究開発参加について正式の決定をしていないのに、民間企業だけが単独で契約をするとかあるいはこれを請け負うとか参加するということは、我が国の国益からいいましても、あるいはこの問題がジュネーブにおける米ソの交渉においても非常に重大な問題になっておるという点から見て決して好ましいことではないというのが私の意見でございますが、総理としてはこういう問題についてどのような御見解をお持ちなのか、伺っておきたいと思います。
  280. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 新聞等に伝えられておる、外務省として何らかの見解をまとめたとかなんとか、その種の報道がございますが、そのようなことは一切ございません。研究参加の問題につきましては既に従来から御答弁申し上げておりますように、政府としては、この問題を今後慎重に自主的な立場から検討していくということで、これは民間企業の参加の問題も含めてでございますが、全般的にこの問題につきましては慎重に検討をしていくということでございまして、まだ今の段階で、外務省としましても何らかの特定の方針を決めたというようなことは全くございません。
  281. 正森成二

    ○正森委員 時間でございますからこれで終わらしていただきますが、今の外務省当局の答弁は、政府としては態度を決めておらないし、政府が態度を決める前に、民間の企業等がSDIの研究に民間サイドで汎用技術であるとかなんとかということを理由にして参加することはない、少なくとも政府としてはこれを容認しないというように承ってよろしいか。
  282. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 政府といたしまして方針を決めておらないということを申し上げた次第でございます。これは従来から一般論としてしばしば御質問に答えて申し上げておりますが、一般的な現在の政府の方針と申しますか、現行制度というものについて申し上げれば、武器技術については、御承知のように日米間の武器技術供与の取り決めがございますので、その枠内に関してはその取り決めに従ってケース・バイ・ケースで処理をする、その枠外のいわゆる一般的な汎用技術につきましては、現行制度のもとにおきましては原則的にそれを規制するということは政府として行っていない、そういう現状であるということの御説明を行っておるわけでございまして、そういう制度の前提に立ちまして、政府としてどういう方針でこの問題に対処していくかということにつきましてまだ方針を定めておらない、こういうことでございます。
  283. 正森成二

    ○正森委員 今の答弁は非常に含みを残した答弁でありまして、いろいろ言われておりますのは、例えば光電子工学とか、ミリ波、マイクロ波の技術についてアメリカ側が非常に関心を持っておるというのが出ておるわけですが、問題は、これを汎用技術であるというように当事者や日本政府が考えれば、この技術援助について何ら妨げる法制はないし、武器援助の交換公文でもそういうぐあいになっていないということであるなら、これは言葉をかえて言えば、政府としては決定していないが、民間が汎用技術だとみずから判断して契約をしたりあるいは研究に参加するのは構わないんだというようにとれかねない重大な答弁でありますが、そういうぐあいにあなた方は判断しているのですか。
  284. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 繰り返しになりますが、政府といたしまして今、民間の協力ないし参加というものについて、すべきであるとかすべきでないとかいうふうに政策的な評価を行っておるということではございません。あくまでも現行制度上こういうことになっておるということで、それを前提といたしましてこれから政府の方針検討してまいりたい、こういうことでございます。
  285. 正森成二

    ○正森委員 総理、今の答弁に何かおつけ加えになることがございましょうか。
  286. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 北米局長答弁のとおりです。
  287. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  288. 越智伊平

    越智委員長 これにて三法律案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  289. 越智伊平

    越智委員長 三法律案に対し、堀之内久男君外三名より、それぞれ修正案が提出されております。  この際、提出者より趣旨の説明を求めます。熊川次男君。     —————————————  昭和六十年度の財政運営に必要な財源確保を   図るための特別措置に関する法律案に対する   修正案  国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律   案に対する修正案  産業投資特別会計法の一部を改正する法律案に   対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  290. 熊川次男

    熊川委員 ただいま議題となりました昭和六十年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に対する修正案、国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律案に対する修正案及び産業投資特別会計法の一部を改正する法律案に対する修正案、この三修正案につきまして、提案の趣旨及び内容を御説明申し上げます。  御承知のとおり、これら三法律の施行期日は、原案ではそれぞれ「昭和六十年四月一日」と定められておりますが、既にその期日を経過しておりますので、三修正案は、施行期日をいずれも「公布の日」に改めようとするものであります。  何とぞ御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  291. 越智伊平

    越智委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  292. 越智伊平

    越智委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に付します。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。金子原二郎君。
  293. 金子原二郎

    ○金子(原)委員 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表し、昭和六十年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律案及び産業投資特別会計法の一部を改正する法律案並びにそれぞれの法律案に対する修正案に賛成の意見を述べるものであります。  まず、いわゆる昭和六十年度財源確保法案でありますが、本法律案は、先般成立いたしました六十年度予算と表裏一体をなす重要な財源確保に関する法律案でありまして、現在の国の財政状況等にかんがみ、国民生活と国民経済の安定に資するための措置として、いずれも必要かつ、やむを得ないものと考えるものであります。  すなわち、第一に、特例公債発行であります。六十年度予算においては、一般歳出の規模を前年度に比べて三億円減額するとともに、税負担の公平化、適正化の推進、税外収入の確保など、歳出歳入両面の厳しい見直し等の政府の努力にもかかわらず、なお財源が不足するため、五兆七千三百億円の特例公債発行を予定するのやむなきに至っておりますが、財源確保のためにはいたし方のない措置と考えるものであります。  第二に、国債費定率繰り入れ等の停止であります。基本的には現行の減債制度の仕組みを維持するのが適当と考えますが、財政状況等によって、一時これを停止するなどの措置をとることによりさらに特例公債増発されることを避けようとするものであります。また、このような措置をとっても、現在の国債整理基金の資金状況から見て六十年度に溶ける公債の償還に支障を来すことはないものと見込まれているのであります。  第三に、政府管掌健康保険事業に係る繰り入れの特例であります。極めて厳しい財政事情にかんがみれば、政府管掌健康保険事業の運営に支障が生じない範囲内において厚生保険特別会計健康勘定への繰り入れを九百三十九億円を控除し、一般会計の負担を軽減することはやむを得ないものであります。  なお、本特例措置につきましては、後日、同勘定の収支状況によっては減額分に相当する金額を繰り戻すなどの措置を講ずることとしており、政府管掌健康保険事業の適切な運営が確保されるよう配慮されているのであります。  次に、国債整理基金特別会計法の一部改正法案についてであります。  本年度から始まる大量の国債の償還、借りかえに円滑に対応し、国債管理政策の適切な運営を期するためには、年度内償還の短期の借換債の発行及び年度越え前倒し発行の各措置はぜひとも必要なものであります。これにより市場ニーズの多様化に対応することができるとともに、借換債の発行を金融情勢に応じて弾力的に行うことが可能となるのであります。また、国債残高の状況にかんがみ、今回、国民共有の資産である電電株式、たばこ株式のうち売却可能な分を、国民共通の負債である公債の償還財源の充実に資するため、本会計に帰属させることとしたことは、まことに適切かつ時宜を得た措置であります。  次に、産業投資特別会計法の一部改正法案についてであります。  ただいま申し上げました電電株式、たばこ株式のうち政府の義務保有分を本会計に帰属させ、その配当金収入を技術開発等のための投融資に充てることは、今後の我が国経済の発展に資する上で妥当な措置と考え、これを高く評価するものであります。  また、施行期日を公布の日に改めることとするそれぞれの法律案に対する修正案につきましては、事の性質上当然の措置であると考えるものであります。  最後に、私は、政府が今後とも断固たる態度を持って行財政改革を一層推進し、我が国経済の着実な発展と国民生活の安定、向上に努力されることを切に希望いたしまして、これらの法律案及び修正案に対する賛成討論を終わります。(拍手)
  294. 越智伊平

    越智委員長 戸田菊雄君。
  295. 戸田菊雄

    ○戸田委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となりました昭和六十年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案を初め三法案に対し反対の討論を行います。  初めに、中曽根内閣の財政経済運営の基本姿勢について申し上げます。  今日我が国をめぐる諸情勢は極めて厳しい状況にあります。さきのボン・サミットでも名指しの批判こそ避けられたものの、増大し続ける我が国の貿易黒字への批判は一向に鳴りやまず、今後我が国の対応いかんでは大きな国際問題になることは必至であります。  こうした状況の中で、まず米国に対し膨大な財政赤字の解消と高金利の是正をとらせると同時に、SDI構想に見られる新たな宇宙軍拡競争中止を要請すべきなのに、国内での対米強気発言とは逆に米国の言いなりという姿勢であり、他方、国内においては大幅な政策減税、適正な賃上げ、社会資本整備促進等の施策によって内需拡大型の政策がとられなければならないのに、政府の経済見通し及び経済運営の基本方針での公約とは全く裏腹に内需拡大策は空念仏に終わっております。  我々が両三年にわたって主張してきた自律成長型経済運営への政策転換を無視し続ける中曽根内閣は、世界経済及び米国景気の転換に有効な対応力を持ち合わせていないばかりか、我が国を国際経済社会で孤立させかねないのであります。中曽根内閣の経済財政政策の誤りを指摘し、政策転換を要求します。  次に、法案に反対する理由を申し上げます。  反対理由の第一は、財政再建に何らの展望がないことであります。  中曽根内閣は、財政再建の名のもとに国民生活関連予算、殊に福祉、文教予算を大幅に削減、経済的弱者である農民、中小企業向けの大幅圧縮を行う一方で、軍事費だけは突出となっており、これでは軍事費捻出のための経費削減と言われても仕方がありません。こんなやり方では財政再建の展望が開けないのは当然で、経済運営の失敗と重なって財政赤字は膨らむばかりで、穴埋めのために借金をしようとする財確法に賛成するわけにはまいりません。  反対理由の第二は、中曽根総理公約の赤字国債の五十六年度脱却のあかしが立たないことであります。  反対理由の第三は、財政の対応力悪化をますます加速させる法案だからであります。  政府は財政の対応力強化、財政の自由度拡大財政再建のねらいとしてまいりました。しかし、いずれの指標を見ましても対応力の強化されたものはなく、一段と弱まっております。このような状況では賛成するわけにはまいりません。  反対理由の第四は、国債償還の当然の責務を回避することにしているからであります。  四年連続、国債整理基金特別会計への定率繰り入れの停止が恒常化し、国債整理基金が持っていた減債基金としての機能をも失わせるに至っているからであります。  反対理由の第五は、この法案で政管健保の黒字を口実に九百二十九億円の国庫補助を削減していることであります。  最後に、電電株式問題について申し上げます。  政府は、売却可能な株式(三分の二)は国債整理基金特別会計に帰属させ、その売却収入及び配当金収入を公債償還財源に充てています。また、政府保有が義務づけられている株式(三分の一)は産業投資会計に帰属させ、その配当金収入を技術開発などに活用することにしていますが、この政府の方針決定は、これまでの審議経過や衆参の逓信委員会の附帯決議、しかも六十年度予算には電電株式の売却収入が計上されていないにもかかわらず、その使途について拙速にも結論を出した責任は極めて重大であることを指摘しないわけにはまいりません。  殊に、株式売却のあり方等については、利権を防止し特定の個人、法人への株式の集中を規制するなど、一切不明瞭な動きを遮断しガラス張りの中で行うこと、株式が広く国民が所有できるようにし、また、社員持ち株制度の実現に配慮すること、加えて、株式の売却を二、三年凍結し、会社の財務諸表や決算書の状況等を参考に対応策を考慮すること等を要求し、反対討論を終わります。(拍手)
  296. 越智伊平

    越智委員長 古川雅司君。
  297. 古川雅司

    ○古川委員 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、ただいま議題となっております三法案について、昭和六十年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案及び国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律案に対しては反対、産業投資特別会計法の一部を改正する法律案には賛成の立場を表明し、討論を行うものであります。  まず二法案に反対する理由の第一は、政府が税制の抜本改革の名のもとに、大型間接税の導入を画策し、「増税なき財政再建」の総理公約を放棄しようとしていることであります。  中曽根内閣は、行財政改革をかたく公約しながら、福祉、文教予算の削減に終始し、本格的な行財政改革の進展はこれからが本番というのが実情であります。また、一般消費税の導入を拒否する国会決議によって、大型間接税の導入など増税による財政再建は明確に否定されております。こうした経緯から見ても、中曽根内閣は、「増税なき財政再建」を後退させることはもとより、理念として守るなどというあいまいな姿勢は断じて許されないのであります。私は、政府が大型間接税の導入を断念し、文字どおり景気対策と行政改革の両立て「増税なき財政再建」を貫徹されることを強く要求するものであります。  反対する理由の第二は、昨年、赤字国債の借りかえのための立法措置を強行して以来、政府に赤字国債の借りかえを抑制するための努力が極めて少ないことであります。  赤字国債の借りかえを行うことは、赤字国債と建設国債の区別がなくなり、赤字国債の歯どめを失い財政の病理を隠すことから、財政運営節度をさらに失う危険があります。また、赤字国債の借りかえに伴い短期国債が発行されることは、金融市場に多大な影響を与えることは必至であります。  こうした実情を踏まえますと、赤字国債の借りかえについては、新しい財政再建の目標、政府短期証券市場の創設など、国債管理政策の整備、国債残高の減少への取り組みなどを明確にすることは欠かせません。政府にはこれらについて具体的な対策が見られず、到底国民の理解を得ることはできないのであります。  反対する第三の理由は、国債整理基金への定率繰り入れに対する政府の姿勢が極めてあいまいなことであります。  五十七年度より四年連続して定率繰り入れを停止してきた結果は、国債償還財源が底をつき、赤字国債の借りかえという異常事態を招いております。しかも、政府は最近三年間の予算編成では、最初は定率繰り入れを行うことを前提として歳入不足を計上し財源難を強調することによって国民減税見送りや福祉、文教予算の削減を押しつけておきながら、編成途中で定率繰り入れを停止する財政のつじつま合わせを繰り返しております。来年度以降の定率繰り入れについてもその方策を政府がいまだに明示していないことは、国民の不安を助長するものであり、認めがたいのであります。  また、政府管掌健康保険事業に係る一般会計からの厚生保険特別会計健康勘定への繰り入れの減額は、単なる財源あさりにすぎず、結果として支給額の引き下げや保険料の引き上げにつながる懸念があります。仮に財源に余裕があるならば、本人十割給付への復帰あるいは家族への給付額の引き上げを検討すべき性質のものであります。  最後に、賛成する一法案につきましては、日本たばこ産業株式会社、日本電信電話株式会社の株式の売却益とその使途等については若干の疑問も残りますが、当面する財政事情などから勘案して理解せざるを得ない点もあります。ただし、今後の取り扱いは、くれぐれも国民の納得のいくように対処されることを強く要望いたすものであります。  以上をもちまして、私の討論を終わります。(拍手)
  298. 越智伊平

    越智委員長 玉置一弥君。
  299. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となっております昭和六十年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案並びに国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律案及びそれぞれの法案に対する各修正案については反対、産業投資特別会計法の一部を改正する法律案及びその法案に対する修正案については賛成の立場で討論を行います。  我が国財政が極度の危機の状態にあることは財政担当の大蔵大臣が再三にわたり表明をされ、また責任を感じておられることは我々もよく理解をしておるところでありますが、政府の財政再建に対する取り組みが柱となる政策なしに場当たり的に行われているのであります。  従来から大蔵省は、昭和五十九年度までに赤字国債からの脱却を掲げ、借換債の発行は行わないと主張されてまいりましたが、それが無理だとわかると、突然昭和六十五年赤字国債脱却に延期を図り、重ねて借換債の発行を打ち出し、今では昭和六十五年赤字国債脱却も難しいとの観測も出始めております。  財政が我が国経済に与える影響は以前に比べ小さくなってきていますが、まだまだ公共投資に対する依存が大きく、また対外経済摩擦等においては国の政策に対して国民の期待は大きいのであります。  我が国経済昭和五十九年度で実質経済成長率は五・九%と高い伸びを示しておりますが、そのうち八〇%は外需に依存したものであり、内需主導による潜在成長力の顕在化というにはほど遠い状況であります。特に内需の過半を占める個人消費の伸び悩み、公共投資の鈍化、不透明なアメリカ経済の先行き不安、貿易摩擦の未解決など、我が国経済を取り巻く情勢はなお厳しく、内需主導による適正成長を図るために積極的経済政策の推進が必要であります。  我が国の財政赤字は構造的赤字が六〇%、循環的赤字が四〇%と言われ、行財政改革推進と同時に景気対策をも行っていかなければならないのであります。すなわち財政再建途上であっても絶えず経済活性化のための配慮を次かしてはならないのであり、経済の安定成長こそが財政基盤を固めることになり財政再建につながるのであります。  ここで、財確法並びに国債整理特会改正に反対する主なる理由を述べます。  その第一は、両法案とも中期的な財政再建計画に基づいて出されたものでなく、場当たり的で、恒久的な財政再建につながらないことであります。  国債整理基金特会への定率繰り入れの停止を初めとした後年回しの分が三兆円余もある状況では、年度ごと予算編成財源確保にほかならず、これが行き詰まったときに財源不足を国民に負担させる増税が表面化するのは目に見えているのであります。  第二の理由は、この種の法案が当年度限りということで出されてきていますが、これを認めている限り財政肥大、財源確保の歯どめがきかないことであります。あくまでも中長期的な財政計画の中で財政再建を図り、安定軌道に乗せるべきであります。  産投特会改正について賛成の理由を述べます。  我が国は貿易立国として発展し、中でも工業における技術革新の進歩は他の国に例を見ないスピードであります。しかし、今回改正部分の基礎技術、基盤技術の開発状況は、米国並びに西欧諸国と比較しおくれをとっております。将来の日本の産業の技術開発を進め、技術的なおくれをとらないよう研究部門に対するてこ入れが必要であります。  以上、意見とそれぞれ理由を申し上げましたが、政府に対し、より一層の行財政改革の推進をお願いし、私の討論を終わります。(拍手)
  300. 越智伊平

    越智委員長 蓑輪幸代君。
  301. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 私は、日本共産党・革新共同を代表し、ただいま議題となりました昭和六十年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律案及び産業投資特別会計法の一部を改正する法律案、並びにそれぞれの法律案に対する修正案に対して、一括して反対の討論を行います。  まず、昭和六十年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案について述べます。  我が国財政法は、憲法の求める健全財政主義の立場から基本的に国債の発行を禁止しており、例外的に公共事業の範囲に限って建設国債発行が認められているにすぎません。財政法上許されていない赤字国債を大量に発行し、さらには歴代内閣の公約である期限一括償還の決まりさえ放棄して借りかえを行うことは、放漫財政への最後の歯どめを投げ捨てるものです。  さらに赤字国債の借りかえは、元金償還を先送りして当面の負担を軽減するものの、将来にわたって国債残高の累増と利払い費の急増をもたらし、財政危機を孫子の代まで永続化させるものにほかなりません。政府が財政改革の重要な一歩と称する国債縮減も、初めて借りかえとなる一兆八千六百五十億円を勘案すれば、実質的には八千六百五十億円の増発となります。  このほか、本法案による政管健保への国庫補助九百三十九億円の削減は、本人一割負担の導入による受診率の激減を主因とする健保財政の黒字分をさらに国庫に召し上げるというもので、国民にとってはまさに泣き面にハチの冷酷な措置であり、断じて許せません。また、四年連続の国債費定率繰り入れ停止は、当面を糊塗する安易な財源対策であって、今後の財政危機を一層深刻化させるものにほかなりません。  次に、国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律案について述べます。  本法案の最大の問題は、財政法の総計予算主義、会計年度独立の原則を踏みにじり、政府が金融市場の動向に応じて短、中長期の借換国債を弾力的に発行しようとすることにあります。  年度内に償還される短期の借換債は、国債整理基金特別会計の歳入歳出外として計理されるため、国会の議決を経ることなく政府の裁量で自由に発行されることになり、予算に対する国会統制を弱めるものです。翌年度における国債の整理または償還のための借換国債の前倒し発行は、予算の会計年度独立の原則に風穴をあけ財政節度を緩めるものにほかなりません。  最後に、産業投資特別会計法の一部を改正する法律案について述べます。  産業投資特別会計は、高度成長期には同特会を通じて一般会計の資金を開銀、輸銀などに出資し、大企業へ低利融資を行う上で大きな役割を果たしました。  本法案は、高度情報化社会による全産業再編によって資本蓄積の整備をねらう大企業のハイテク助成の有力な手段として産業投資特別会計の役割を拡大的に転換させるものであり、断じて容認できません。  さらに、日本たばこ産業株式会社、日本電信電話株式会社の株式の産業投資特別会計への帰属は、大企業奉仕の同特会の特定財源化を図るものにほかなりません。  最後に、我が党が質疑の中でも明らかにしたように、今日の深刻な財政危機を引き起こした原因と責任は、石油ショック後の内需拡大を旗印に赤字国債による膨大な公共投資などを強行した政府・自民党並びに財界にこそ全面的に帰さるべきであり、本法案のようにそのツケを最終的に国民に回す諸措置は、かかる経過から見て断じて許されないことを強く指摘し、私の反対討論を終わります。(拍手)
  302. 越智伊平

    越智委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  303. 越智伊平

    越智委員長 これより採決に入ります。  昭和六十年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案について採決いたします。  まず、堀之内久男君外三名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  304. 越智伊平

    越智委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  305. 越智伊平

    越智委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。  次に、国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律案について採決いたします。  まず、堀之内久男君外三名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  306. 越智伊平

    越智委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  307. 越智伊平

    越智委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。  次に、産業投資特別会計法の一部を改正する法律案について採決いたします。  まず、堀之内久男君外三名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  308. 越智伊平

    越智委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。  次に、ただい良可決されました修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  309. 越智伊平

    越智委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     —————————————
  310. 越智伊平

    越智委員長 ただいま議決されました三法律案に対し、中川秀直君外三名より、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者より趣旨の説明を求めます。上田卓三君。
  311. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して朗読いたします。     昭和六十年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律案及び産業投資特別会計法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について十分配慮すべきである。  一 財政赤字が引き続き増大する場合においては財政インフレが憂慮されるところから、政府は、健全財政考え方に即し、財政法第五条の精神を遵守するとともに、歳入確保・国債の償還に努めること。  一 今回、短期の借換債が発行されることとなるが、国債の借換債の発行に当たっては、市場の情況も十分考慮し、金融秩序の維持に努めること。  一 昭和六十年度予算においては、新規財源債は十一兆円余予定しているのに対し、歳出の国債費は十兆円に及ぶ情況にあり、その財政構造は、財政本来の機能を十分に果たし得なくなるおそれがある。このため、政府においては、財政構造の抜本的な見直し及び不公平税制の是正など勇断をもって臨むべきこと。  一 NTTの株式の処分に当たっては、国民共有の貴重な財産としての認識に立って、いささかも疑念のないよう厳正かつ公正、明朗な処置をすること。  一 NTTの民間移管の趣旨を尊重し、自主、独立、創意を生かすとともに、NTTの健全経営が行えるよう努めること。  一 NTTの株式は、特定の個人、法人に集中することのないよう十分配慮するとともに、具体的株式の処分の方法については、今後とも、国会における審議の経過等を尊重し、慎重、適切に対処すること。  一 産業投資特別会計に株式を帰属させる趣旨を尊重し、各分野にわたる技術の開発等のだめ、有効に生かすよう措置し、特に産業投資特別会計が惰性に流されることを避け、選択的重点主義の趣旨を生かすこと。 以上であります。  よろしく御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  312. 越智伊平

    越智委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  お諮りいたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  313. 越智伊平

    越智委員長 起立多数。よって、三法律案に対し附帯決議を付することに決しました。  本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。竹下大蔵大臣
  314. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても御趣旨を踏まえまして配意してまいりたいと存じます。  ありがとうございました。     —————————————
  315. 越智伊平

    越智委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました三法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  316. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  317. 越智伊平

    越智委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時九分散会      ————◇—————