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1985-05-31 第102回国会 衆議院 大蔵委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年五月三十一日(金曜日)     午後零時一分開議 出席委員   委員長 越智 伊平君    理事 熊谷  弘君 理事 熊川 次男君    理事 中川 秀直君 理事 堀之内久男君    理事 上田 卓三君 理事 沢田  広君    理事 坂口  力君 理事 米沢  隆君       糸山英太郎君    大島 理森君       金子原二郎君    瓦   力君       笹山 登生君    塩島  大君       田中 秀征君    中川 昭一君       東   力君    平沼 赳夫君       藤井 勝志君    山岡 謙蔵君       山崎武三郎君    伊藤  茂君       川崎 寛治君    戸田 菊雄君       藤田 高敏君    古川 雅司君       宮地 正介君    矢追 秀彦君       玉置 一弥君    正森 成二君       簑輪 幸代君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         大蔵政務次官  中村正三郎君         大蔵大臣官房総         務審議官    北村 恭二君         大蔵大臣官房審         議官      大橋 宗夫君         大蔵省主計局次         長       平澤 貞昭君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省理財局長 宮本 保孝君         大蔵省理財局次         長       中田 一男君         大蔵省証券局長 岸田 俊輔君         大蔵省国際金融         局次長     野崎 正剛君         国税庁税部長         兼国税庁次長心         得       冨尾 一郎君  委員外出席者         農林水産省経済         局国際部国際経         済課長     白井 英男君         農林水産省畜産         局食肉鶏卵課長 鎭西 迪雄君         郵政省電気通信         局電気通信事業         部調査官    浜田 弘二君         建設省都市局下         水道部下水道企         画課長     黒川  弘君         建設省住宅局住         宅企画官    杉谷 洸大君         自治省税務局企         画課長     湯浅 利夫君         参  考  人         (日本電信電話         株式会社常務取         締役)     児島  仁君         参  考  人         (日本電信電話         株式会社常務取         締役)     寺島 角夫君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ――――――――――――― 五月三十一日  所得税課税最低限度額引き上げ等に関する請  願(瀬崎博義紹介)(第四九七六号)  共済年金制度の充実に関する請願(吉原米治君  紹介)(第五〇六二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和六十年度の財政運営に必要な財源確保を  図るための特別措置に関する法律案内閣提出  第九号)  国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律  案(内閣提出第一〇号)  産業投資特別会計法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一一号)      ――――◇―――――
  2. 越智伊平

    越智委員長 これより会議を開きます。  昭和六十年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律案及び産業投資特別会計法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  この際、お諮りいたします。  三法律案につきまして、本日、参考人として日本電信電話株式会社常務取締役児島仁君及び同寺島角夫君出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
  4. 越智伊平

    越智委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川崎寛治君。
  5. 川崎寛治

    川崎委員 竹下大蔵大臣は、これまでサミットに四遍行かれておりまして、日本大臣といたしましては大変多くの経験をされておるわけでありますので、サミット感想を少し伺いたいと思うのです。  それは、この五月の初めのサミット当時と今のヨーロッパ、少し空気が変わっていると思うのです。つまりミッテラン大統領が孤立をしておるという当時の新聞の報道でもあったわけでありますが、特にSDI等をめぐっては、決してそうではなくて、むしろヨーロッパはまた修復方向にあるし、特に西ドイツコール首相は、四十年目の節目をひとつやろうということで、レーガンさんに対する大変な気の使い方をしていたと思うのですね。しかし、実際には、そのことは西ドイツの中でも必ずしも支持が大きくはなくて、ゲンシャー外相などは、やっぱり独仏修復という方向に動いておりますし、SDIの問題にしましても、ユーレカ計画というふうな方向で動いておるわけですね。  そういう動きを見ますと、私はやはり来年の東京サミットというものを展望してまいりましたときに、確かにニューラウンドという問題については、ボンサミットではまとまりの方向が出ずに、大変難しい状況があったわけでありますけれども、しかし、ヨーロッパのそういう動きというものを見ますと、単純にロンヤスという方向で行ってよろしいのかということが深刻に反省させられるわけです。十年前にランブイエで始まりましたときは経済サミットであったわけでありますけれども、最近は政治サミット的な様相が強まってきておる。それはレーガン大統領が出るようになってから、特にロンヤスという関係が強まりましてから、そういう色彩というのが強まってきたと思うのです。しかし、それが今アメリカの中における国防予算をめぐっての動き、そういうものを見ましても、大変複雑に、財政赤字の解消という問題等をめぐりながら動いておるわけです。  そうしますと、そういうサミットに四回出られて、世界首脳会談されてきておられるわけでありますし、将来日本トップリーダーとして頑張ろうかという決意を持っておられる。そういたしますと、今のこのロンヤスという、レーガン大統領をバックアップして、そこで先進工業国体制を引っ張ればいいんだということでは済まない、そういう今の現状、ここ一カ月を見ましても動いてきているわけです。ですから、四回出られた大臣の、そういう今のサミットというものについての感想、そして今後日本はどういうふうに行くべきかということについての感想といいますか、そういうお考えを伺いたいと思います。
  6. 竹下登

    竹下国務大臣 どうも甚だ難しい問題でございますが、私が最初出ましたのは、大平さんがお亡くなりになりまして、首脳抜きのベネチア・サミットというところへ参加をさせていただきました。それから二年、間があいておりまして、三回連続で出ておりますが、印象としては、今川崎さん御指摘なさいましたように、経済サミット政治サミットみたいになっているなという印象を持たないわけではございません。  ただ、日米ともにそこに意識を持ちながらも非常に気を使っておるという印象を受けましたのは、いわば環太平洋構想というようなことを日米中心になって考えて、徐々にヨーロッパというものと離れて一離れてという表現は適切でないかもしれませんが、政策重点志向がその方へ移っていきはしないかという懸念を、幾らかヨーロッパ皆さん方はお持ちのような感じがいたしております。  しかしながら、現実の問題として、環太平洋の方が人口からいえば圧倒的に多いわけでございますので、環太平洋という意味では必ずしもございませんが、中曽根総理の発言の中で私なりに非常に印象に残っておるのは、私はかつて御迷惑をかけたアジア皆さん方立場も代表する立場にございますということは、各国首脳とも非常に聞き耳を立てておったという印象を受けたわけでございます。  そういうアジアの一員であるという立場で、しかも自中世界第二位のGNPを誇っており、経済の問題で言いますならば、まさにヨーロッパはある意味において病めるヨーロッパという感じがしないわけでもございませんだけに、経済政策等においては、絶えず対米関係ばかりを重視しておるのじゃないか、こういう印象を与えないような配慮が必要ではないかという感じは、私も強くしておるものであります。  SDIの問題になりますと、私の範疇の外にありますけれども、やはりフランスはいわばNATOに参加してないという立場はきちんとそれなりにおとりになっておるという印象は、私も強くいたしたわけでございます。  個別の問題では、トルコのボスポラス海峡の橋の問題等、これらは要するに理解さえ深めていけば、いわば現象的に誤解に基づく点が多いではないか、こういう印象を強くいたしましたが、その後帰りまして、ヨーロッパが動いているという感じをお持ちになりましたのは、私もきょう新聞を見て驚きましたように、サッカーの試合でああいう国際紛争みたいなのが起こるとか、それも結局は経済的に言えば共通的に高失業率の中でそういう問題が起こったではないかな、こういう印象も深くしております。     〔委員長退席熊谷委員長代理着席〕  私どもの担当する経済面におきましては、やはり年々会合が濃密になっておりますので、どちらかといえば揚げ足取りとか、それから集中的批判とかいうことよりも、自分たちの抱えている国々の問題点をそれぞれが指摘し合って、いわゆるサーべーランスという言葉を使っておりますが、相互監視というような中で協調のある政策をとっていこうという空気が強くなっておるという印象を受けております。  まことに外交問題等範疇外にありますだけに、当を得たお答えにはなりませんでしたが、素朴な考えを申し上げたわけであります。
  7. 川崎寛治

    川崎委員 今日の国際政治というのは、まさに国際経済国際政治の重要な課題であるわけですので、決して外交というのが独立をしておるものではない、こういうふうに思います。  そこで、今大臣から環太平洋で動いている、そこでヨーロッパの方が少しそれに対する批判というか懸念を持っているんじゃないか、こうありますが、私もやはりその点は現実動きとして、ソ連・東欧圏というものとヨーロッパというのはやはり非常に緊密に動きつつある、こういうふうに思います。その点でいいますならば、東方外交を進めてまいりました西ドイツ社民党党首でありますブラント氏に対してレーガン大統領が会見を拒否をしたということは、今日のレーガン大統領世界リーダーとしてその点は非常にまずかったんじゃないかな、私はこう思います。現にブラント氏はモスコーに行き、ゴルバチョフ書記長とも会談をいたしているわけでありますが、日本はもっとやはりそうした点には注意しなきゃならない、こう思いますので、この点はそうしたレーガン大統領の偏った考え方――しかし、それが今日アメリカの中で財政赤字を減らそうということについての議会の動きレーガンさんの考えていることとのギャップというものを生みつつある、つまり彼のリーダーシップというものが今問われ始めておる、そういうもののあらわれじゃないか、こう思うのです。  実は今フォーゲルという西ドイツ社民党の副党首が来ておるわけでありますが、きのうも我々会談いたしました。二、三日前、西ドイツ大使館フォーゲルさんのパーティーがあったのですが、これはぜひ御紹介をしておきたい。特に、大蔵省財政当局外交関係ないということじゃなくて、ぜひ頭に入れておいてほしいということを御紹介したいのでありますが、そのフォーゲルさんのパーティー東ドイツ大使出席しているんです。つまり東ドイツ大使西ドイツ大使館に、フォーゲルさんの招待に応じて来ているということは、やはり東西ドイツの今の姿というものをあらわしておる。ですから、ブラント氏がモスコーに飛んでいる、フォーゲル氏が日本に来ておる、こういう動きですね。野党でありますけれども、そういう動きをしておるということをぜひ頭に入れておいて、今後のいろんな財政当局としての進め方についても判断の材料にしておいてほしい、こういうふうに思います。  次には、同じくこれはこの間の、長くかかりました補助金一括削減法案の際に、私は非常に古い補助金を引っ張り出してお尋ねをしました。北朝鮮に対する貿易事情調査補助金のことをお尋ねをしたわけです。それは田中内閣のときに、つまり四十八年、日中国交回復の後でありますが、この補助金を設定してもらったわけですね。ところが、残念ながらそれが凍結された――凍結というか、実行されないままきておるわけです。きのうソウルにおける南北会談が一応成功したと思います。離散家族をお互いに探し合おうということで大きく前進したと思うのですね。第八回目です、今度の会談は。過去に七回あるわけでありますが、その七回はつまり四十八年の補助金をつくった年、日本政府補助金を通産省に設定をしたその年に、七二年から七三年にかけて七回ソウルとピョンヤンを往復しておるわけです。  しかし、それが切れたまま八回目が今日になっておるということは、金大中氏の拉致で歴史歯車がひっくり返ったわけです。ですから、私はあのときに田中通産大臣中曽根通産大臣当時にそのことについていろいろと御相談をしたことも申し上げましたが、つまり十数年間の歴史歯車が逆戻りしたということについて、私たちは、今南北朝鮮が動き出しているということについて、やはり最も深い関係国としては十分配慮しながら、今後のその進展について我々としては努力をするということについて大変必要じゃないかということを、きのうの会談の結果を見ながら痛感をするわけです。大蔵大臣としての感想を伺いたいと思います。
  8. 竹下登

    竹下国務大臣 この南北対話というのは、これは心から歓迎すべきものであるというふうに考えております。ちょうど川崎さんの御指摘なすっておる予算措置が行われた当時、初めてのいわゆる墓参里帰りというのをやった時期とたまたま符合しておるような気がしております。――失礼いたしました。墓参里帰りの少数はもう少し前でございますが、少し人数を多くしたといいますか、そういう時期と符合しておると思いますが、そういう外交関係がないにいたしましても、いわば人道上の問題、文化の問題等について相互交流は好ましいことでございましょうし、そこに、私はちょうどけさ閣議総理とちょっとお会いしましたときに、田邊書記長の報告を聞いた、こういうことを申しておりました。長らく内容をお聞きする時間はございませんで、それの感想を聞く時間はございませんでしたが、そういう相互交流というものの中に歓迎すべきような状態が生まれる一因ともなっておれば大変いいことじゃないかなというふうに考えております。
  9. 川崎寛治

    川崎委員 今後特に日米、中ソそれぞれ関係深いわけでありますから、ぜひひとつ今のお答えのような方向で閣僚としての御努力をお願いしたい、こういうふうに思います。  そこで、きのうの、アクションプログラムに向けての市場開放のための取りまとめを進めつつあるわけでありますが、そのことについてお尋ねをしたいと思います。  藤尾自民党政調会長東南アジアを回った、そして東南アジア各国からもいろいろの強い要望もあるわけですね。具体的に各国はあるわけでありますが、タイの骨なし鶏肉とかフィリピンのバナナそれからインドネシアのパーム油、こういうふうに今三品目が来ているわけです。今度は大変地域的な問題に入りますけれども、実はこのぶつかります東南アジアからの三品目を見ますときに、残念ながら、鶏の日本一鹿児島なんです。豚の日本一鹿児島なんです。そうすると、パーム油も豚の脂と競合するわけですね。  そこで、「日本列島ふるさと論」の竹下大蔵大臣にひとつ御意見を伺いたいのでありますが、その前に農林省に聞きますけれども、私はこれは大来対外経済問題諮問委員長にも申し上げましたし、また河本特命大臣にも申し上げたことがあるのでありますけれども、平均的な日本経済論でいきますと地域経済崩壊をするという問題に今ぶつかってきているわけです。具体的に言いますと、例えば鉄、自動車、電機、これはアメリカにばあっと出るわけです。そうすると農産物開放せい、こうくるわけですね。そうすると、牛肉、オレンジ、芋でん粉そして鶏、こうやられるのはおくれております鹿児島鹿児島神奈川、こうやりますと、きょうは伊藤君はおるか――これを言うと伊藤君がいつも、神奈川県は行政投資が少ないと文句を言うのですけれども、つまり、そういう平均的日本経済論地域的経済論というものが非常に難しいところに来ているのです。  そこで、そうしますと、やはり竹下さんの「日本列島ふるさと論」という立場の具体的なものが今問われておる。それに答えないで、ただほんわかとしたムードだけを言っているのでは、二十一世紀は捉えないと思うのです。そこのところは私も社会党の国際経済対策委員長ですから悩んでいるんですよ。開放はしなければならない、自由貿易体制という問題もある。しかし一方では、地域経済崩壊という問題がぶつかってくるのです。  具体的に言いますと、あの特攻基地のありました知覧町には鶏工場が三つあるのです。鹿児島宮崎岩手という非常に限られた産地の中で、しかも一町に三つ工場がある。そこには、農協の三百五十名、それから民間の百五十、百という、六百名のその周辺の農村の主婦人たちが来て働いているわけです。養鶏農家でもあるわけです。そうしますと、きのうのあれを見ますと、農産品についても六月中に結論を出す、こういうことでございますが、農林省は今のそういう状況の中でこの問題についてどういう検討をしておるのか。つまり、もう一つあれしますと、農林省としてのアクションプログラムに対する検討課題、それから検討方向、そして具体的に骨なし鶏肉という今ぶつかっております、この摩擦を起こしておる問題についての農林水産省考え方というのを聞かせてほしいと思います。
  10. 白井英男

    白井説明員 お答えいたします。  アクションプログラムの作成につきましては、農林省といたしまして四月二十二日に、事務次官を長といたしますアクションプログラム策定委員会を設置いたしまして検討を行っているところでございます。  農林省といたしましては、我が国農業を生かし、その健全な発展を図ることを基本として、関係国との友好関係にも留意しながら、さはさりながら、現在残っております輸入制限品目関税等、いずれもこれは食糧の安全保障あるいは国土保全地域経済維持存立上極めて重要な産品でございますので、関税見直し輸入制限見直しに当たりましては慎重に検討してまいる所存でございます。
  11. 鎭西迪雄

    鎭西説明員 具体的に鶏のお話が出ましたので、鶏肉状況につきまして御説明させていただきたいと思います。  ブロイラーにつきましては、食肉供給の三割強を占めるということで、畜産業の中でも非常に重要なウエートを持っておりますし、それから特に、今先生からお話がございましたように、鹿児島宮崎岩手といった南九州東北等の比較的他産業への就業機会の少ない地域におきましては、雇用の場としても重要な位置づけにあるというように私ども認識しております。  しかしながら、五十年代前半までは、我が国ブロイラー産業は高い伸び率に支えられまして非常に順調に伸びてきたわけでございますけれども、五十年代後半以降消費が比較的緩やかになりまして、現在過剰基調にございます。ここ数年間価格が非常に低迷している、こういう状況にあるわけでございます。それを受けまして目下生産者計画生産に真剣に取り組まぬといかぬというような状況にございます。  一方、こういう状況の中で輸入状況でございますけれども、輸入は着実に伸びてきておりまして、特にタイからは、数量も伸びておりますし、輸入に占めますタイのシェアというものも高まっているという状況にございます。  そういう状況にございますので、私ども、鶏肉産業をめぐります国内の状況は非常に厳しいというように認識しておりますので、骨なし鶏肉関税引き下げ問題につきましては慎重に検討、対処する必要があろう、かように考えております。
  12. 川崎寛治

    川崎委員 大臣、今お聞きのとおりですね。それで、関税局はきょうは来てないのですね。日本農産品関税を見ますと、東京ラウンドの前が日本が九・七、ラウンドの後で八・六、アメリカが三・七から二・九、ECは一二・九から一二・三。そうしますと日本農産品関税というのはECアメリカのちょうど間にあるわけです。そういう意味ではやはり相当努力をしてきている、こういうふうに思うのです。ですから一町で、あるいはその周辺を含めましてですが、もしつぶれるということになれば六百名近い農家主婦が失業するという、今も農水省から答弁のとおりに働き場所を失うという重大な問題があるわけです。「日本列島ふるさと論」の立場から、この問題を大臣としてはどうお考えになるか。対外経済対策本部では、いずれにしても重要なポストでこれに参加されるわけでありますから、大臣の見解を伺いたいと思います。
  13. 竹下登

    竹下国務大臣 「日本列島ふるさと論」、これはそれほど大それたものじゃございませんが、いわば地域経済というようなことを中心としてその論理を展開してまいりますと、今、例示的に言えば、一村一品運動でございますとか、そういうそれぞれの地域地域において独自な特産、あるいは農業基本法で申しますところの適地適産ということにも合致するでありましょうが、そういうことがいろいろな形で進められてきておる、そしてそれがそれなりにその地域経済のために大いに役に立っておるということは言えると思います。  おっしゃいますとおり、そもそもいわゆる貿易自由化というのは、極めて下世話な表現をすれば、地球上に生存する人類が安価にして良質なものを自由自在に使用できる状態、こういうことが一つの角度から言えるということになりますと、おのずからそこにそれぞれの国の生い立ち等からいたしまして摩擦というものが生じてまいります。したがって、なかんずく生命産業農業ということになりますと、やはりその地域地域で、安全保障の問題をも含めてそれぞれの保護政策というものが現存しておることも言うを待たないところでございます。特にECというのができた大きな要因の一つはこの農業問題であったと言える、そういう論がありますように。したがって、その流れをどういうふうに調和させていくか、こういうことに、結論からいうとなろうと思うのでありますや大きく言えば、日本のようにいわば先進工業国家のいわゆる国際分業の役割からいえば、そうした方向がダウンしていくという傾向にはあろうかと思いますが、それをいかに摩擦なくして、雇用の場を充当しつつソフトランディングをさしていくかというところが当面の政策で、中期的にその辺が一番問題になるところではないだろうかなというふうに思っております。  これは私見になりますが、今まで農業農林業とでも申しましょうか、農林水産業あるいは第一次産業の中で極めて自然に吸収されたものは何だったろうか。ちょうど合うちの山口事務次官農林担当主計官をしております当時の資料をこの間私ちょっと見ますと、木炭生産者が十五万ぐらいおるのです。これはまことに高度経済、いわゆる燃料革命木炭はほとんどそのニーズがなくなってきた。ところが、高度経済成長の中で自然に、公共事業の労務者の中へ吸収された人もあるでございましょうし、高度経済成長のときでございますから、他産業へ若い人が比較的吸収された。だから、政策的なものが――日本財政政策を行うだけの力はなかったかもしれません。比較的ないままに吸収されてきたのは木炭生産者じゃないか、こういう感じがしました。そして、それに付随して見ますと、今度は木炭屋さん、薪炭屋さん、これがまたちょうど地域的にプロパン屋さんにかわっていって、これもうまく調和してきた。だから、そういう成長期と燃料革命のようなものとが、だれが作為的にやったものじゃないと思うのですが、ちょうどタイミングがよかったからじゃないか。  そうすると、今安定成長になりますと、マクロで考えれば安定成長の中でとれだけの人が吸収されていくかということになると、やはり労働時間の短縮とかワークシュァリングとかいうような形で吸収する面と、そして、その地方地方の、鶏も一村一品運動一つだと思うのですが、そういう中で別の体系で、それそのものを合理化していくことも事実でございますが、雇用の場ができて自然に吸収されていくというようなことを心して、その地域地域リーダーは、また大きくは国の段階においても考えてソフトランディングさしていかなければならぬのかな、こんな感じを持っておるところでございます。
  14. 川崎寛治

    川崎委員 ジョン・ケネス・ガルブレイスざんが、名古屋で朝日の五十周年の記念のシンポジウム、貿易摩擦をどうするかという「経済摩擦の解消をめざして」というシンポジウムをやっているわけです。それに参加されて言っておられるわけでありますけれども、その中で、やはり貿易摩擦の特殊な問題、それは農業問題だ、こういうふうに言っているわけですね。「農民はどの国でもみずからの経済的な利益を著しく明瞭に守ろうとします。農民は、海外からの競争に対してみずからを守る際には経済的かつ精神的な議論を持ち込んできます。」EC云々というECの問題にも触れておるわけでありますが、しかし、アメリカ自身も、レーガン大統領自身も、「レーガン政権がみずから唱える自由市場主義にとらわれることなく、かつてない規模と費用をもって農産物市場への介入を続けてきました。」こういうふうに言っておるわけです。  今非常に農業の不況が深刻だ。特にECの市場に殴り込みをかけようというのがレーガン大統領EC対策なんですから、ミッテラン大統領が抵抗に抵抗したのもむべなるかなと思うわけですけれども、やはりそういうときにニューラウンドをこれからそれぞれ話し合いをして軌道に乗せなければいかぬ。そうすると、アクションプログラムで、――そのアクションプログラムの前に六月二十七、八日の日本・ASEANの閣僚会議で答えを出そう、こういうわけなんですが、今度アタションプ月グラムなり、今の日本ECの間でこの問題について。関税の問題を出しますね。次にニューラウンド、またニューラウンドで発展途上国なりECなりとの関係が来るわけですね。今もう弾を使ってしまう。また次に来る。そうすると、次にまたやられてくるのはそういう途上圏ですね、地域なんです。ですから、きちっとした長期の政策なしに、今大変ふわふわふわといって、何を政策として述べられようとしておるのか、なかなかはっきりしないわけでありますけれども、そういう、つまり短期に一つ一つ答えようとしている。出しますと、まさにやられるのは弱いところなんです。それがもう目に見えているわけです。日本・ASEAN、アクションプログラム、そしてニューラウンドと続くわけですからね。  それなら、そういう長期のものがあるか。中曽根内閣は長期がないわけですよ。非常に今不安を持っている。だから、農産物、農業は聖域でない、こう中曽根総理は言われましたが、大蔵大臣はどうですか。
  15. 竹下登

    竹下国務大臣 日本としてのいわば最終的な一つの言えることといえば、工業製品は関税ゼロにして結構です。これは技術とか、総合的にそういうことが言えるというのは、元来が貿易国家でありますだけに、そのことは強みと申しますか、いいことであると私は思います。問題はやはり第一次産業、農林産品ということになろうかと思っております。  今度決めました対策の中で、例えば合板の問題は三年目には引き下げをやります、これは時限を明示して。そして一方森林対策というものは、国内対策を含め、川上、川下対策を含め五年間でやります。これは中期的な一つの示し方ではなかったかなというふうに思うわけであります。  したがって私は、ASEAN閣僚会議がございます。そこは、今川崎さんおっしゃいましたように、象徴的なものとしては、確かにマレーシアのパーム油、それはパーム油そのものからいえば、豚の脂と競合いたします。が、数量そのものは、仮に今の三%がゼロになっても、あるいは大きな影響はないかもしらぬ、やってみなければわかりませんけれども。が、象徴的なものになっておると見なければならぬ。バナナの問題ということになりますと、これはいつも言われますように、風が吹けばおけ屋のだぐいの議論で、シーズンごとにある程度の変化がないことには、まあ極端に最初は素人の論議の中では容易に理解できなかった。バナナが入ればリンゴに影響する、バナナとリンゴというのは大分違うんだがという議論もありましたが、そういう論理構築にずっとなってきております。それから合板の分はある程度の時限を付した。もう一つはやはり骨なし鳥肉。藤尾政調会長から詳細な説明を聞きましたが、日本人に説明するときは、一番わかりやすいのは焼き鳥と言った方がわかりやすい。なるほど、その方がわかりやすいなと思ったわけでありますけれども、こういう問題について、これは基本的には農林水産省でお立てになる問題でございますが、いわば量よりもむしろシンボルみたいな、シンボリックな取り上げられ方をしておる問題についての対応の仕方というのは、やはりある程度、私は、のんべんだらりとしておるわけにはいかぬ、急がなければならぬ課題だというふうに思います。  それから、今度これがニューラウンドの場合、まあガットの会議で、高級事務レベル会議が最近行われる。と、どういう進め方をするかというようなことから、恐らく会議が始まるでございましょう。そうなると、今度はバイラテラルな話じゃなくして、各国ともがいろいろな問題を抱えているものを、総合的な土俵で議論するようになってくる。そうする場合に、どういうふうにして進むものか。バイラテラルでございますと、この問題については、我が方は、ではこの問題で譲るから、こっちの分は残すとか、そういう話ができますが、今度はニューラウンドになりますと、そのバイラテラルな問題でないだけに、実態としてどういう形で物が進んでいくだろうかということも、実は私だけではなく、にわかにその進め方が皆わからぬのじゃなかろうか。したがって、そういう手順を含めた会合をまずやろう、こういうことになったわけでございますので、しばらくはその推移を見てみないとわからないなと。  ただ、バイのタイ等ASEANの問題がさらにニューラウンドで出た場合、よりそれが拡大された議論になるという性格ではあるいはないかもしらぬなと。ニューラウンドでやりますと、品物も多いわけでありますから、その辺、実際問題、私も専門家じゃございませんが、そういう交渉のテーブルに着いて、どういうふうな手順で進められていくかということは、高級事務レベル会議等の推移を見なければちょっと予測がつかぬなという感じを実は持っておるところでございます。
  16. 川崎寛治

    川崎委員 私は、農業は聖域なのか聖域でないのかということをお尋ねしたわけです。だから、その点について大臣としては、農業は聖域でないという中曽根総理と同じお考えなのですかどうですかと端的にお尋ねしたのです。
  17. 竹下登

    竹下国務大臣 これはまさにいわゆる原則自由なわけでございますから、聖域というものはあってはならぬ。ただ、大変に重要視していかなければならぬ課題だというのが正解じゃないかなと思っております。
  18. 川崎寛治

    川崎委員 これも時間がたちますからそこでとめておきますが、そういうことで次々に出てきますので、十分御検討願いたいと思います。  NTTの問題について次にお尋ねをしたいと思いますが、長い歴史を閉じて新会社になったわけでありますが、このNTTが高度情報化社会の国際的な企業として、これから重要な使命を持ちながら、競争原理というものに従っていくわけでありますけれども、NTTの今後の展望といいますか、というものについてひとつ伺いたいと思います。
  19. 児島仁

    児島参考人 お答え申し上げます。  四月から新NTTということになったのでございますけれども、今後とにかく財務上赤字を出すことは、今までもそうでございますけれども、さらに許されないということでございます。  私ども、事業としましては、やはり大量の要員並びに、ほとんどの収益は現在電話事業から上げておりますので、これは在来どおりあるいはそれ以上に力を込めてしっかりやっていきたい。幸い一種事業と二種事業、あわせて兼営できますので、二種事業の方でそのシェアを増していきたいというふうに考えております。  そういった形で事業をやるときに、じゃ、中の内部構造をどうするのかということが一つ問題でございますが、在来はやはり行政庁に似たような管理システムというものがございましたけれども、言い直しますと、本社だけが頭を使って、下部機関は手足のように動くというようなやり方でございましたが、それでは活性化にならぬということでございますので、サービス別の事業部、あるいは地域を分けた事業部、こういった事業部制を大胆に志向していきたい。その事業部長には一定の非常に簡単な目標だけを与えまして、その目標に到達する手段はすべて自分の機能において行わせるということでやっていきたいと思います。  私ども、やはり事業は大きいものでございますから、資金調達その他、外国も含めて大きなものをやらせていただきますが、特に外国からの調達につきましては、企業内容というものが非常によくありませんと、金利の安いお金も手に入らぬということでございますから、今年度の経常利益、一定の予定をしておりますが、さらに努力を重ねて大きなものにしたい。その中で配当もしていくことになると思いますが、配当性向の数字もできるだけいいものにして、翌年以降の活動につなげていきたいと思っております。  おかげさまで、管理職、職員も四月一日以降非常に気合いが乗っておるというふうに思っておりますので、その気合いに対して、現実、どういう仕事のしざまをしていくのかということを、この七月までに一定の整理をして与えていきたい。それが表に見えますのが事業部という形であるというふうに考えております。
  20. 川崎寛治

    川崎委員 今、常務からお話がございましたけれども、厳しい状況でありますが、今後の方向づけをきちんとしながら努力をしてもらいたいし、そのことが国際的な企業としての今後の発展を保証されることになるだろう、こう思います。  今、従業員に対するいろいろなこともお話があったわけでありますが、大変短期間に切りかえをやったわけですね。法律が昨年の暮れ成立いたしまして、この三カ月ぐらいの間に切りかえをやったわけです。相当な努力を労使でしてきた、私、こういうふうに思います。大臣も、国民共有の財産として積み上げてきた経過については、これまで繰り返し答弁をしてこられたところです。ですから、切りかえるために大変努力してきた労使の努力といいますか、そういうものを大臣としてどういうふうに評価をされるか。それから国民の共有財産として今日まで積み上げてきた、世界的に有数なこの高度情報化社会を担っていける企業体に育て上げてきた、その労使の努力をいうものをどのように評価をされますか。
  21. 竹下登

    竹下国務大臣 総じて申しますと、私がときどき国際会議へ出ますときに、労使問題としての典型的なものを当時の電電公社――私の表現が少しオーバーですけれども、日本には世界一の労使関係があるんだというときに、いつも私が例示する一つの企業体がかつての電電公社であったわけであります。  で、私は昔のことを思い出してみますと、それこそ電話、まだ特定局長さんなどが代理業務みたいな形をしておられた時代から、ああして大きなところに電報電話局というものができ、そして機械化の進展の中では過剰人員を抱えられた時期もあったと私は思いますが、それらの労使の対応の仕方というようなものは、実に完熟したと言うと表現は適切であるかどうか、非常に熟度の高い関係が、今日の世界に冠たる企業体をつくられた大きな要因であるというふうに認識をいたしております。
  22. 川崎寛治

    川崎委員 今の認識は、その御答弁を受け取って後でまたお尋ねをしたい、こういうふうに思います。  真藤さんが中国に行かれたのは、新会社になってからでしたか、その前でしたか、いずれにしましても中国に行かれました。環太平洋ということを先ほど竹下大蔵大臣は言われましたが、環太平洋の今後の経済というものを考えました場合には、中国の発展ということも大変大きな問題になる、私はこう思います。中国は建設を非常に急いでおりますが、その中で一番基本的なインフラストラクチャーを何とか急いでいきたいということは、鉄道、港湾、それから電信、こういうのだと思うのですね。日本も、そういう面での協力はそれぞれしてもおるわけでありますが、特にNTTが今後具体的に日中間の協力といいますか、そういう場合に、どういう形で中国の基本的な建設への協力を進めていこうとしておられるのか、あるいは、中国側と既に具体的な話が行われておるとしたら、どういう点で進められておるか、伺いたいと思います。
  23. 児島仁

    児島参考人 私どもと中国との関係歴史的に申し上げますと、昭和五十五年に、当然そのころは電信電話公社でございますが、技術協力協定というのを結んで栄ります。現在の法体系もそうでございますが、私どもは国内電気通信業務を行うということになっておりますから、おのずから海外との提携には限度がございます。したがって、具体的に中身を申しますと、幹部の交流を行う中で意見交換をして、電気通信事業というものを行っていく場合のノーハウと申しますか、一つ考え方というものの交換を行う。それから技術資料の提供、それから職員を引き受けての訓練、場合によっては設備をつくる場合のコンサルティングということに限られております。私ども今度NTTになりましたが、電電公社時代の協定をそのまま、もしくは変えて存続したいという中国側の意向がございますので、私どもとしては受けるつもりでございます。  今も申しましたように、繰り返しでございますが、私ども商社でもございませんし、メーカーでもございませんので、物を売ってもうけるとか、あるいは商談をまとめてそこでマージンを取るということはないわけでございまして、したがって、私ども過去独占的に国内電気通信事業をやらせていただいておりますし、それから現在もいろいろ保護を受けつつ仕事をさせていただいておると思っております。したがって、そういった社会的責任の中から、やはり国際的にもできる限りのことをやっていくということが、一種公共性と申しますか、社会的責任ではないかと思っております。  中国の問題でも、かなりお金はかかるのでございますけれども、私どもの電気通信技術あるいは電気通信設備をどう運営してコマーシャルベースに乗せておるかということ等を中国でしっかり理解していただけますれば、私ども、電気通信産業界に注文が回って入ってくるはずである、そういった観点で今後とも大いに協力をしていきたいと思っております。したがいまして、ことしの六月あるいは七月になるかと思いますが、中国に駐在事務所も置きまして、さらに協力をしていきたいと思っております。  最近、中国側が申しておりますのは、かつてはハードに着目して、これにお金を払うというふうな姿勢が基本でございましたが、ソフトと申しますか、ノーハウにもお金を払うという姿勢を見せてくれておりますので、私どもは、今後、コンサルティングというものもある程度対価をいただいて、きちっとやる。もうける気はございませんけれども、きちっとやるということで考えております。しかも、最近、経営のノーハウと申しますか、事業運営上の参考意見をゼミナール方式でやってほしいということもございますので、そういったことも入れ込んで、広い意味での技術協力協定というものを結び直したいというふうに考えております。今後、中国――近い国でございますし、百年単位くらいでおつき合いがいくのだろうと思いますが、そういったことに少しでも社会的責任が果たせればというふうに考えております。     〔熊谷委員長代理退席、熊川委員長代理着席〕
  24. 川崎寛治

    川崎委員 ぜひそういう方向努力してほしいと思います。これは、電信電話だけではなくて、鉄道にしましても、港湾にしましても、技術者の協力というものを非常に求めておるわけでありまして、どういう協力の仕方をしていったらいいかということについては、改めてまた別の機会にいたしたいと思います。  INS、高度情報化社会と、こういうわけですが、何か大変難しい、何を言っているかさっぱりわからぬという言葉もあるわけです。NTTは大変先進的、国際的な企業だ、こういうように言われるわけでありますけれども、光と影ということで、またこれは鹿児島から物を言って申しわけないのですが、災害県なんですね。例えば十島村とか三島村とかは、ついこの間まで学校に電話がなかったのですよ。つい最近というとあれですが、数年前まではなかった。ですから、異動時期になりますと、部落にあります一本の電話のところで交渉しますと、先生、我々を見捨てて帰るのですかと、部落の人たちが囲んでおって、そこで電話しなければならぬということもあったわけです。つまり公衆電話がなかったわけです、区域外で。大変努力して、今公衆電話は引かれておるわけでありますけれども、そういう大変な不採算部門を持っておるわけです。それから、災害もそうですね。これは、新規参入の企業はそういう面を持たないわけです。これはこれまでたびたび答弁もありまして、市外と市内との問題もあるわけです。  そうしますと、NTTにおけるそういう公共負担の実態というものは、この際、株券処分に当たりましてそういう問題というのは一応きちっとしておく必要があるのではないか、こう思います。ですから、そういう公共負担の、つまりNTTの影の部分というのをひとつ明らかにしていただきたい、こう思います。
  25. 児島仁

    児島参考人 ただいま先生おっしゃいましたように、私ども、不採算部門から撤退するという自由は法律上許されておりませんで、全国あまねく、公平に仕事をしていくべきだということになっております。現在の料金体系、これは過去の歴史をずっと背負ってきておるわけでございますけれども、市外部門でかなりの収益を上げて市内部門に補てんをするという傾向になってございます。ただ、それがどの程度であるかということにつきましては、現在の積算方法が全部込みであるということもありまして、現在のところ、はっきりいたしておりません。数字の上では明らかになっております。これは今後経営をやっていきます場合にはっきりしなくてはいかぬということで、現在、新しい機械を入れて、市内と市外の料金の上がり方、それにかかる原価は一体どういうふうになっておるかということを大至急詰めたいと思っておりますが、そういうふうな数字ができましたころには、恐らく新規参入の方々が入ってこられると思います。  この方々、当然のことでございますが、もうかるところにお入りになるわけでありまして、我々が得べかりし収入がそっちへ抜けていくということになると思います。その得べかりし収入が抜けていくということは、私どもにとってダメージでございますし、同時に、先ほど申しましたように不採算部門から撤退する自由がないわけでありますから、何らかの方途でそれを埋めていかなくてはならぬということであります。それは事業領域の拡張でありますとか、あるいは効率化でありますとか、いろいろな手法の合成で解決していかなくてはいけないと思いますが、一つだけ申し上げるならば、新規参入の方々は、私どもが不採算部門を持ちつつ事業をしているという観点から、ある種の負担をしていただいてもしかるべきではないか。その程度と額については今後十分話をしていくわけでございますし、場合によっては監督官庁の御指示も得たいと思っておりますが、そういう考えております。  具体的に今不採算、市内通話、市外通話のことを申し上げましたが、非常に目にわかりやすいもので申しますと、例えば緊急用通報一一〇番でありますとか一一九番でございますとか、それから福祉電話を原価の半分で提供させていただいておりますとか、それから、かつては加入区域というのは非常に狭うございまして、投資がかかるものでございますから、小さくしてできるだけ稠密な加入者を抱えたいということでございましたが、それではいかぬということで、加入区域も非常に拡大いたしまして、今ほとんど全国どこでも普通の料金で電話がつくという格好にしております。これが建設費の上ではかなりの負担になっておるということ等もございます。それから番号案内等も、これは私どもの収入に最終的にはつながるのでございますけれども、番号帳だけではなかなかわかり切れないということで、これにも相当の人間をかけておりまして、出が非常によくなりますと呼びが多くなる、ますます人をかけなければいかぬということもございます。これは私ども、事業をやっていく場合に当然附帯業務といいますか、そういうことでやらざるを得ないものでありますけれども、これも収入の面に限って言いますと、相当大きな負担でございます。  あと、今まで独占でもございましたし、電話は必ずかからなければいかぬ、四千数百万中、任意のどの二人がかけようと思っても必ず常時つながるようにしておかなくちゃいかぬということで、在来は二ルートをつくりますとか多ルートでありますとか、あるいは交換機を一気に災害で失わないように二分割しますとか、そういったふうな基礎的な投資も相当やってきております。そういった意味では、私ども不採算部門を持ち、また完全な通話を保証するための投資をしておるというふうな先生の御指摘は、そのとおりでございます。
  26. 川崎寛治

    川崎委員 そうしますと、これは本来なら、いわゆる五兆数千億の負債を新発足の前に処理をするとか、あるいは今後株券の処理ですべきであるとかという議論がこれまで繰り返しやられてきておるわけです。つまりその影の部分、重荷を背負ってこれからもいかなければいかぬわけですから、それは新会社として今後それぞれ努力をするという方向での解決以外にない、今の制度的な処理の仕方になってしまったわけですね。この点はやはりこれからも問題になると思うのです。  そうなりますと、郵政省は来ていますか。――今の新規参入の場合に、アクセスチャージの問題が出てくるわけでありますが、そうしたいわゆる不採算部門を今後どのように政策的に見ていくのか、その点についての指導機関としての考え方を伺いたいと思います。
  27. 浜田弘二

    ○浜田説明員 お答えいたします。  先生冒頭申されましたように、これから高度情報社会が進展していくわけでございますけれども、この社会の情報化に伴いまして、いわゆるインフラストラクチャーとしての電気通信の需要の増大、これはやはり期待してしかるべきじゃないかというふうに考えておりますので、一つ収入の増加要素があろうかと思います。  それからまた、先生御案内のように、今回の改革におきましてはアメリカのように分割という政策をとらずに、電電公社の設備、業務、人員のすべて、そしてまた世界的にも優秀な定評がございます技術力のすべてをこの新電電が引き継ぐ、そういうスキームをとったわけでございます。これらの経営規模によるところのスケールメリットというのもやはり考えられるのじゃないか。  それから、先ほどの収入の増加に関係いたしますと、こういう全一体の民営化をとることによりまして、新電電は市内と市外を両方営業を行う、日本全国一円の営業エリアを持つわけでございますが、そうしますと、仮にといいますか、基幹回線部門に新規参入者が参入いたしますと、新電電も含めて基幹回線部分のトラフィックの増加が当然期待できると思うのでございますが、現実に市内網につきましては、やはり当座は新電電の回線網に新規参入業者もよらざるを得ない、そういう実態になろうかと思います。そうしますと、新規参入事業者を含めました基幹回線のトラフィックの増加によりまして、新電電が運営いたしております市内網の回線の利用頻度が高まりまして、そちらの方の採算性の向上も期待できるのじゃないかと思っております。  そしてまた、これは非常に重要なことでありますけれども、今回の電電改革によりまして、新電電の経営者には、経営の自主性と弾力性を背景にして十分な経営責任体制の確立というのが期待できるわけでございます。  それから、先ほど申し上げました競争導入によるところのいわゆるインセンティブ効果、こういうものが相まって、新電電については今後一層のより効率的な経営が期待できるんじゃないかというふうに私ども考えておるわけでございます。  以上、るる申し上げましたけれども、これらの事柄によりまして、新電電、NTTは利用者、国民の期待にこたえまして、先ほど来先生御指摘のような公共的役割を果たしつつ健全な事業経営が行い得るんじゃないかというふうに私ども考えておる次第でございます。
  28. 川崎寛治

    川崎委員 今のあなたの答弁は、光の部分を一生懸命見ようとしているわけですよ。ところが、影があるということを言ったわけで、不採算部門が非常に大きいわけだから、そこはやはり当然配慮しますというのがなけりゃだめだよ。あなたのやつは、こうなってこうなってこうなってよくなるから頑張ってもらいます、こういうことで、今NTT側から言った不採算部門のそういう厳しい面というものをよく見ようとしていないというふうに私には思えるわけです。  だから、例えば災害だとか離島であるとか一つまり新規参入業者というのは東京、名古屋、大阪、こういう一番人間が集まって一番頻繁に利用されるところです。ところが離島、僻地そして災害、そしてさっき言われたような問い合わせであるとか福祉電話であるとか、そういうものがあるわけですから、それはそれで真っ当に評価をしなさい、料金を計算する場合には政策的判断に入りますねと、こう私は聞いているのですから、そこを答えてほしい。
  29. 浜田弘二

    ○浜田説明員 ただいま私申し上げましたところの一つのものにつきましては、新会社は確かに不採算地域も経営いたすわけでございますけれども、もちろん言わずもがなでございますけれども採算の非常にいい地域も経営するという意味で、全国一円を営業エリアとする経営規模によるところのスケールメリット、これも考えてもよろしいんじゃないかというふうに申し上げた次第でございますが、市内、市外のいわゆる負担の問題につきましては、先ほどNTTの児島常務の方からもお話がありましたけれども、今後トラフィック量の数値に基づきまして、まずは市内、市外の原価を把握する、こういった点の努力は非常に必要じゃないかと思っております。  先生、先ほど来御指摘の問題は、要するにNTTあるいは新規参入事業者、そしてまたより究極的には利用者、国民の負担のあり方に関係する問題だろうと考えております。これらにつきまして、この負担の分担の考え方なり、あるいはまた費用の定量的な把握を含めまして、今後郵政省といたしましても多面的な角度から検討することが必要であるというふうに考えておる次第でございます。
  30. 川崎寛治

    川崎委員 その点は、つまり伸びる伸びると言うだけじゃなくて、そういう現実をきちっと見て検討してほしいということを要望しておきたいと思います。  大蔵大臣、株券の処分についてはこれまでいろいろと御答弁がありますが、予算編成の過程で広く皆さんの御意見を開きながら、こういう結論ですね。予算編成の過程で皆さんの御意見を聞きながら、この点の中身をお尋ねしたいのですが、そうしますと、六十一年三月までの、つまり六十年度中の処分はありませんね。
  31. 竹下登

    竹下国務大臣 六十年度中はない、これは断定してもよろしゅうございます。
  32. 川崎寛治

    川崎委員 そうしますと、六十一年度予算に計上するためには、十二月末の予算編成までに処分の限度数を決めなければならないのですね。
  33. 竹下登

    竹下国務大臣 そのとおりでございます。
  34. 川崎寛治

    川崎委員 それを予算に計上するということになると、つまり価格を一応決めなければいかぬわけですね。     〔熊川委員長代理退席、委員長着席〕 そうしますと、十二月予算編成までに売買価格というものは決める、こういうことになりますね。
  35. 竹下登

    竹下国務大臣 予算計上をどういう形でやるかということだけは決めなければいけません。
  36. 川崎寛治

    川崎委員 私の質問も、六十一年度計上ということを前提にしてしまった聞き方をしたから間違ったと思います。六十一年度に計上する、こういうことになればことしの十二月までに価格も決めなければいかぬ、こういうことでございますね。
  37. 竹下登

    竹下国務大臣 それを前提とすれば、そのとおりでございます。
  38. 川崎寛治

    川崎委員 そうしますと、広く皆さんの意見を聞くという聞き方でありますが、その前にもう一つお尋ねしておきます。つまり普通、例えば日本合成ゴムとかあるいは電発とか日航とか、いろいろなものを処分しましたときに、類似企業というのを決めて比較をしたりということをやりますね。今度の場合に、類似企業というのがありますか。
  39. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 先ほどの大臣の御答弁を事務当局としてさらに補足的に申し上げますと、六十一年度予算に仮に計上いたします場合にどういう仕方があるか、それを現在検討を始めた段階でございまして、まず計上するかしないかもまだ決まっておりませんし、そういうことでございます。  そこで、それではその際どういうやり方があるかということも、恐らくいろいろのやり方があろうかと思います。この点につきましても、大臣が先日のこの委員会で、一、二こういうことも考えられるかなという御答弁がございました。そういうことでございます。  それから類似企業というのは、過去に日本合成ゴム等をやった場合に、いろいろ検討して価格を決める際の参考にしたことはございます。しかし、それでは電電株式会社の場合にそういうのはあるかということにつきましては、現在日本をオーバーオールにやっておりますので、実際問題としてそういうものはないこともまた事実でございます。
  40. 川崎寛治

    川崎委員 つまり、比較をする類似企業がない。こういうことになりますと、従来の国有財産の処分とはやはり違うわけで、大変新しい事態だと思います。そうしますと、広く意見を聞くという場合に、大臣の諮問機関、仮称何とか諮問機関ということになるのでしょうが、そういうのをつくるのか。そしてその場合に、つくってそれに諮って、国有財産中央審議会に必ずかけるのかどうか、その辺いかがですか。
  41. 中田一男

    ○中田政府委員 お答えいたします。  御指摘のように電電の株式、過去に例がないぐらい大きな規模で重要なものでございますから、実は過去私どもが政府の出資しております株式を売却しました幾つかの事例では、国有財産中央審議会にかけて、評価の方法でございますとかあるいは売却の方法でございますとか諮問したことはございますけれども、その先例どおりになかなかまいらないぐらい大きな問題ではないか。したがって、どういう形で広く民間有識者の方々の御意見を聞いていくかについて、まだ私どものところで煮詰まっておらない。それも検討中の段階ということでございます。
  42. 川崎寛治

    川崎委員 だから、電電三法の議論のときもありました。要するに民間にしてくださいという法律です、こういうことですね。今も言っているのは、検討しますということだけ。本来ならとこで、例がないのであるならば、つまり公認会計士であるとかあるいは証券会社であるとか会計の専門家であるとか、そういういろいろな方々に御意見を聞くのでしょうけれども、やはり国民の代表である国会に明らかにしてもらうということが私大事だと思うのです。それが疑惑を持たれないことにもなりますし、つまり国民が関心を持って見ておるわけですから、こういう機関にかけて相談をしますということがこの法律つまり国債整理基金の一部改正というこの法律で、大蔵大臣が持っておる株を処分をしますに当たっての方向づけをするに当たっては、やはりこういう機関に相談をしますというのが明らかにされるべきだ、私はこう思うのです。  だから、ここの国会の議論というのは、ただ単なる意見を聞く場所なのかどうか。つまり大蔵大臣の所有になっているのだから、これは大蔵大臣法律が通ったら相談をしてやればいいのだという論理なのか。そうじゃなくて、やはり例のない処分をやるわけですから、それならばこういう機関で相談をしたいということを明らかにして、この法案の処理をするということが私はあるべき姿ではないかと思うのです。ですから、どういう機関に相談をされるか、明らかにしてほしいと思います。
  43. 竹下登

    竹下国務大臣 大体、私いつも思いますのは、一つ法律が通ってそれを執行する段階において、それら執行の行為は今度は処分の問題に限定いたしてみましても、このような形でやりますということをそろえて議論していただく場合と、そして国会等の議論を踏まえて、法律が通った後検討して決める場合とあると思います。  最近いろいろな法律を出しますと、やはり国会の議論を聞いてから決めようという姿勢の方が、実は私の手法ではそれを余計とるようにしてきております。だから本当のところを言いまして、これは非礼なお答えになるかもしれませんが、とはいえ国会でいろいろな議論は出るだろうが、いわばプロの方というのは実際問題なかなか見当たらぬ。大蔵省にもプロはいないわけですね。初めてのことでこれだけのものだ。それは日本合成ゴムから電源開発株式会社から日本航空から、そういう過去の経験は持っておりますけれども、どだい機関係車と乳母車ぐらい違うわけでございますから、したがって言える限界というのは、まず民間有識者、今いみじくもおっしゃいました会計の専門家であるとかあるいは株式そのものの専門家、そういう議論を本当に聞いていかないと、いささかも不公正を指摘されるようなことがあってはならぬわけですから、したがって先例をつくるような気もいたすわけでございます。それだから慎重な上にも慎重にならざるを得ませんから、先ほど川崎さんが御指摘なさいましたのは政府の統一見解、その後で一歩仮に進んでおるとすれば、民間有識者の方々の意見をまず十分聞いてから取っかかりますというのは、あのときの統一見解から少し出ておる答弁というのが今のところ限界でございます。率直に申し上げます。
  44. 川崎寛治

    川崎委員 そうしますと、その民間の機関に御相談をするという場合には当然白紙で、つまり白紙ということは機関をつくってもらってひとつ検討してくださいということになるのか、あるいは当然国会での議論というのがその機関に正確に伝えられるというふうに理解してよろしいですか。
  45. 竹下登

    竹下国務大臣 後段はそれでいいと思うのです。ただ、その場合、最初から機関をつくって、国会ではこういう議論がありました、あるいは部内でもこんな先例を整理しましたという形でやるのか、そのもう一つ前に、国会ではこういう議論があります、部内でいろいろな経験はしておりますが一体どんなものだろうかという、機関をつくる前にもう一つ有識者の意見を個々に聞いてみなければ、機関をつくるところまでいかないのじゃないかな、こんな気持ちも実はしておるところでございますので、その限りにおいては白紙と言わざるを得ぬでございましょう。
  46. 川崎寛治

    川崎委員 それは、機関をつくるための意見を聞くということですか。
  47. 竹下登

    竹下国務大臣 機関をつくるための意見ではなく、新株の流通の問題もございますし、そういう問題についての本当のところを個々にも聞いてみて、その上で、こういうような議論が多い、国会の議論はもちろんこういう議論があった、それじゃどうしたメンバーの機関をつくるか、機関をつくるにしましてもその選定をどういうものにするかという勉強もしなければならぬじゃないかな。だから、その限りにおいては白紙という言葉があるいは本当に当たるのかな、こんな感じがしております。
  48. 川崎寛治

    川崎委員 これは、例がないというのは確かにそのとおりだと思うのです。日本合成ゴムだとかあるいは日航だとか電発とか、そういうのは非常にシンプルなんですね。だから政府の中の関係する機関も非常に少ないわけです。ですから、国有財産中央審議会の小委員会ということで済んだわけです。しかし今度の場合は、役所の中だけを見ましても主計局があり、理財局があり、そしてまた郵政省があり、通産省がありということで、非常に広範にまたがっているわけですね。そうしますと、どこが中心で聞くのですか。
  49. 竹下登

    竹下国務大臣 中心ということになると、今度は大臣中心だろうと本当は私は思っておりますが、国債整理基金でございますので、やはり理財局ということになろうと思っておりますが、知識からいえば証券局の方があるかもしれませんし、だから理財局が中心で作業は進めなければならぬというふうには考えております。
  50. 川崎寛治

    川崎委員 予算編成の過程でと、こう言っているんですね。そうしますと、いつ処分をするかということは予算編成と絡んでいるわけです。そうすると、理財局、証券局というのが予算編成のそれをリードしていくわけですか。
  51. 竹下登

    竹下国務大臣 二つありまして、一つは、とにかく民営に移管した。最初は素人論議で、中間決算ででも売れないかということまで考えたわけです。私がそんなことを申したわけですが、中間決算でやれません。だから結局民営にしたというのは、可能な限り早く少しでも売却するというのは、予算の問題とは別としての一つ課題であります。もう一つは、歳入の財源としての課題、この二つがあるわけです。ですから、国債整理基金じゃなく国有財産の処分という限りにおいては理財局が中心になりますが、歳入の問題、もちろん両面から主計局として検討していかなければなりませんし、それから証券もこれについて当然考えていかなければならぬし、それのみならず、本当に各方面広がり過ぎますね、実際が。だから、本当に各方面の意見を聞いていかなければいかぬな。だから、気持ちの上で大臣みずからが責任者くらいなつもりで当たっていかなければできぬなと思います。  それで、まだ折々勉強してみますときに、さあ値決めをどうするかという問題が出てまいります。そうすると、決算がない前に見込みの決算というのが予算の場合あり得るのか。あるいは簿価でやる、もう一つは資産評価がある、いろいろなことを考えてみて、今これならいいじゃないかというのは結論も何も出ておりません。だからこれは、民営になったということだけでもいち早く、少しでも公開するのが本当でございますが、これは容易なことじゃないなと思っております。これは素朴にそんな感じです。
  52. 川崎寛治

    川崎委員 いずれにしましても、早く売りたいという本音も出ているわけですよね。そうしましたら、一番早いのは十二月の予算編成のときには明らかになっておらなければいかぬ、こういうことですよ。そうすれば、つまり国会の議論を受けて法案が成立をすれば相談を始める、こういうことでしょうが、しかし十二月までということになれば、今言うような値決めの問題から売却の方法から出てくるわけですね。そうしますと売却それ自体というのは、一番早く理論的に売却できるのはいつですか。
  53. 中田一男

    ○中田政府委員 お答えいたします。理論的にというのが非常に難しいあれでございますけれども、まず国会の議決をいただかなければ、限度数を決めていただかなければ売却にかかれないわけでございますから、予算で限度数を計上していただくというのが大前提でございます。もし限度数の計上がなされますれば、今度はどういう方法でどういうふうに売却していくかということについて、詰めを急いでやっていかなければいかぬということだろうと思います。一
  54. 川崎寛治

    川崎委員 そうしますと、時期的には六十一年度予算が成立ということが一番早い処分だ。六十一年度予算成立ということが時期的には一番早い処分だというと、六十一年四月以降というふうに見てよろしいわけですね。  そうしますと、国会の議論を伝えていくというか、初めは白紙だ、しかしやはり国会の議論を踏まえなければいかぬわけですね。そうしますと、NTTの議論を始めました冒頭に大蔵大臣が、世界のいろいろなところで労使の関係についても言っておる。こういうことですから、国民共有財産として今日までつくり上げてきた一方の協力者であり主体的に苦労してきた、そして六千八百億円の特別納付金というのを五十六年以降納めてきたわけですね。そういういろいろなことを踏まえますと、BTの例もこれまでも繰り返し議論されておるわけでありますが、あるいは日本合成ゴムの処分の場合には株式の処分に関する政令というのをつくって、「その株式を会社の株主、役員及び従業員その他会社と特別の縁故関係がある多数の者に随意契約により売り払うことができる。」ということで処分をしたこともあるわけでありますが、いろいろ議論になってきておる従業員の持ち株の問題についても、そういうこれまで行われてきた議論は当然処分に当たって正当に伝えられる、こういうふうに理解してよろしいですね。
  55. 竹下登

    竹下国務大臣 私もお答えする限界を自分で決めておりまして、正確に伝えることは間違いありません。実際、いわゆる従業員持ち株制度というのは、参加意識の問題もございましょうし、安定株主対策もございましょうし、優良企業の多くがそういう体系をとっておられるという現実はよく承知しております。だがこれも、それをやりますとは今の段階で言えないわけですが、国会でそういう議論のあったことはもとより正確に伝えるべき問題だと考えます。  イギリスの場合も、ちょうどあのころ日英金融協議、それからすぐ帰ってきて向こうの反応を見ますと、必ずしも参考になるようなならぬような気もしまして、これは一層勉強してみます。
  56. 川崎寛治

    川崎委員 そういうことで、これは前例のない大変な問題だということでございましたので、国会の議論を踏まえて今後の処理がなされるべきだ。ただ、衆参で小委員会をつくってした議論等もありますけれども、これはきょうは省いておきたいと思います。本来なら、そういう小委員会での議論がどうあるべきだったのか、これは私たち委員会でありませんので余り踏み入ったことは言えないと思いますけれども、要するに今、国会の議論を伝えるということでございますので、その点をはっきり受けとめておきたいと思います。  次に、アメリカの税制改革についてお尋ねをしたいと思います。  個人所得税を減らす、企業の税負担をふやす、そこでバランスをとる、こういうふうなことですが、公正、簡素化、経済成長の促進というふうなスローガンで進められております。この中身について私どもからくどくど申し上げませんが、アメリカの税制改正案について、大蔵大臣としての感想を伺いたいと思います。
  57. 竹下登

    竹下国務大臣 これはテレビてきちんと把握して、それから分析をしてという今段階でございますので、分析を十分終えておるというふうには必ずしも申されません。現段階で詳細を承知しておるわけでございません。したがって、内容にわたるコメントは難しいと思います。が、レーガン大統領のテレビ演説から把握しております限りでは、昨年の十一月末のリーガンさんが提案した税制改正の基本的な考え方がおおむね盛力込まれておる。整理しますと盛り込まれていないものもございますけれども、おおむね盛り込まれておると思っております。  ただ、この問題は、これはベーカー新財務長官もサミットの場でも言っておりましたが、税収効果は税制全体ではおおむね変化はなく、歳入に対しては中立的なものとなるではないか。今おっしゃいましたように、増減ゼロという表現は余り適切じゃないかもしれませんが、よく言いますところの中立的なものであるというふうに考えております。だが、いずれにせよ、個人と法人とで連邦税収の九割を占めるわけでございますから、アメリカ政府がその九割を占めるところに大胆な改革方向を示したということは、これも表現をいろいろ整理しまして興味深く見る課題だと思っておるところでございます。
  58. 川崎寛治

    川崎委員 NTTどうぞ、お忙しいところ御苦労さまでした。ありがとうございました。それから農水省、郵政省、結構ですから。  ところで、アメリカのこの秘制改正案の中で大変注目をされます問題は、大型間接税の導入を、八四年十一月の財務省報告があり非常に検討してきたわけですけれども、小売売上税や付加価値税などを検討した結果、税率一〇%で二千数百億ドルの税収があるが、低所得者層ほど税負担が重くなるという逆進性が問題になり、採用するのは適当ではないと大型間接税導入を否定をした、採用しなかったということでございます。この点は、今日本の国会でも大変大型間接税の議論がなされておるわけでありますけれども、アメリカでは大型間接税導入が否定をされたということでございます。この点についてどう思いますか。
  59. 竹下登

    竹下国務大臣 元来、消費に着目する税制というのは、アメリカでは州税の方にウエートがかかっておると承知しておりますが、今私どもが手にしておりますのは、その九割を持つ法人所得税、個人所得税で、その他というのがございますが、私、その他のところの中身がしくわかりません。あるいは事務当局の方で見ておるかもしれませんので、しばらくお待ちください。
  60. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 今委員がおっしゃいましたように、昨年十一月の財務省改革案の作業の過程で、これはかなり大部のものでございますけれども、第三分冊といいますか第三巻で、付加価値税の検討をいろいろやっておるわけでございます。  報告を見てみますと、いわゆる消費税と申しますか間接税についての議論の過程で、もしアメリカに導入するとすれば付加価値税であろうという前提でいろいろな作業をしているわけでございますが、いろいろなシミュレーションをやりましてメリット、デメリット、それぞれ議論しております。  それと大事なことは、先ほど大臣が触れられましたように、アメリカでは州税で小売売上税がございますから、そういう政治的なフィージビリティーといいますか、連邦と州との関係の税源配分等の問題というのはかなり意識して、つまり問題の困難性の重要な一つとして議論されておりますけれども、結果的に今回のアメリカ政府の動きから見まして、アメリカ自体としては当面、いわゆる付加価値税を導入する意向は持っていないということでございまして、これの是非の問題につきましては、それぞれの国の税制の話でございますので、日本政府としていろいろ云々すべき問題ではなかろうと考えております。
  61. 川崎寛治

    川崎委員 何を採用するかというのはその国の主体の問題でありますから、間接税を否定をしたという点についてアメリカなりの理屈があるわけであります。ただ、先ほど私が指摘をしましたように、低所得者層ほど税負担が重くなるということで、この逆進性が高いという問題があるということで否定をされた、採用されなかったという点については、そのように理解してよろしいですね。
  62. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 今回のアメリカの税制改革の考え方、これも推測の域を出ないわけでございますけれども、基本的な取り組みは、これは大臣が先ほど申し上げましたように歳入に対する中立性ということと、もう一つは、特に個人所得税の観点では各階層間に大きな負担の変化が起こらないように、つまり軽減する場合には軽減が各階層に及ぶように、そういった配慮からいろいろな工夫をしたというふうな考え方がにじみ出ておるわけでございますが、その過程で新たな付加価値税を仮にシミュレーションとして導入しました場合に、その階層間で、特にこれは非課税物品をどういうふうにするとか、いろいろ仕組みの問題があるかと思いますけれども、少なくとも財務省の今回の改革案の考え方では、相対的に低所得層に負担がむしろかかるような傾向というものをやはり避ける考え方一つとしてどうも取り上げているようなところは、仰せのとおりございます。ただ、いずれにいたしましても、どういう具体的な付加価値税を想定し、やったかということは、アメリカの作業の問題でございますので、私どもが申し上げられるのはこれが限度であろうというふうに考えております。
  63. 川崎寛治

    川崎委員 そこで、日本の大型間接税の議論というのは、最初に大型間接税ありきという議論の仕方というのが少しあったと思うのですね。だから、総理も随分あっちへ動きこっちへ動きして、答弁も動いたわけです。  今梅澤局長も、アメリカにおける階層間のいろいろな御指摘があったわけでありますけれども、今、国民の間における、つまり消費に課税をする、こういうわけでございますけれども、じゃ消費の実態はどうなのか。ところが、前にも所得税の議論のときに私ちょっと梅澤さんと議論した点でもあるわけなんですけれども、勤労所得を中心に議論している。それで、勤労所得の平準化ということが大型間接税、つまり網をかけるというか、大型間接税へ持っていっている考え方だと思うんです。そうしますと、これは今政策減税でもいろいろ議論になる点でもありますけれども、住宅のローンがある、あるいはちょうど子供の教育費をうんと負担せねばいかぬという時期、そうなりますと、そこの消費というものは非常に違ってくるわけですね。ですから、支出可能な消費というものの実態はどうなっているのか。これは政府税調でも議論してほしい、入れてくれ、この点は入れますということだったのですが、可能な消費支出というものの実態、それを今把握をしてからでないと議論はおかしい、こういうふうに思うのです。その点の、つまり可能な消費支出の実態というものの把握を、大蔵省としてあるいは政府税調として、どういうふうに進められておるのか伺いたいと思います。
  64. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 今後の税制を考えます場合に、特に勤労者がいわゆる所得税の納税者の九割以上を占める段階でございますので、そういった可処分所得なり消費の実態というものをまずきちんと押さえて税制の議論をすべきであるという御指摘はまことにごもっともでございまして、そのとおりだと思います。  ただ、五十九年の所得税の改正の見直しをしていただきましたときに、実は政府税調の中で公表はされておりませんけれども、学者を中心にいたします小委員会で、総理府の家計調査をデータにいたしまして、かなり詳細な分析はしていただいております。ただ、これは方法論的にいろいろ問題があるということで、公表をはばかるということになっておりますけれども、今後の問題といたしましては、当然先般やっていただきました学者のそういった作業、さらに最近のデータを入れまして詳細に分析していただく、そういったものがやはりこれからの税制の論議のスタートでなければならないということは御指摘のとおりだと思います。
  65. 川崎寛治

    川崎委員 そんならそういうのはひとつ議論ができるように、そういう資料は当大蔵委員会にもぜひ出してもらって検討させてほしい。それでないと、我が方はあるんです、ちゃんとしているんです、こう言われても、我々物がないわけですからね。そうしますと、やはり今のものはひとつ出してもらう、こういうことでいいですか。
  66. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 これはこれからの作業の過程がどうなるか、私ども事務当局としてもまだその方向、具体的な指示もいただいておらないわけでございますけれども、当然そういった作業の過程で、今御要請のありましたようなものについて必要なものをきちんと御説明申し上げるということは、御要請として承っておきます。
  67. 川崎寛治

    川崎委員 次に、つい最近東京国税局が、赤字中小企業の実態調査というのを発表しておるわけです。これを見ますと、東京国税局の管内、東京、神奈川、千葉、山梨の稼働法人が五十三万八千ですね。それで赤字申告が三十万社、そしてその中のおかしいというもの七千五百五十二社、資本金一億円未満を税務調査した。そうしたら、その八四・七%に当たる六千三百九十六社から申告漏れが見つかった、額は四百五十二億円、こういう膨大な額が出たわけです。  それでは、全国はどうなっておりますか。
  68. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 お答えをいたします。  東京国税局が法人の調査の状況を公表したわけでございますが、これは昭和五十九年七月から五十九年の十二月まで、我々五十九事務年度と呼んでおりますが、この上期分のとりあえずの数字でございます。全国計数は、まだ上期分につきましては私どもとしては取りまとめておりませんが、私どもとして現在つかんでおります昭和五十八事務年度の数字での全国の赤字法人に対する調査の状況を申し上げますと、全体としての調査件数は約二十万件の調査でございます。この中で赤字法人の調査が全体の約三〇%に当たります六十万件でございまして、そのうち申告漏れのありましたものは八二%に当たります約五万件、不正のありましたもの三一%、約一万九千件でございまして、また調査をいたしました結果、赤字でありましたものが黒字になりましたもの二二%、約一万三千件、こういうことでございます。  ただ、これは赤字法人全体がこのような黒字になるべきものを持っているということではなくて、私どもとしても赤字、黒字を含めて全体として申告内容に問題があると考えられるものにつきまして調査をいたしました結果ということで御理解を賜りたいと思います。
  69. 川崎寛治

    川崎委員 これは税法の議論のとき、大蔵大臣、実調率をふやせ、こう言ったわけです。大型間接税を入れるとしても大変な税務署の職員をふやさなければいかぬわけですが、そうなると大型間接税ありきではなくて、さっき言ったように消費の実態の問題とか、さらには実説率をふやして申告漏れをなくしていく、ごまかしをしないようにするというふうなことが大事だと思うのです。それがちっとも進んでいないのですね、実調率をふやすという方向についてはいかがですか。
  70. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに振り返ってみましても、意識するしないにかかわらず間接税論議から入ってまいりまして、元来間接税というのは、一物一価であるビールはどんな所得の人が飲んでも一緒でございますから、逆進性は本来はあるわけですが、その議論は別としまして、今梅澤主税局長がお答えしましたそういう資料は濃密なものをつくっていかなければいかぬということと、今おっしゃいました実調率、個人で二十五年に一遍、単純計算しますと法人で十年に一遍でございますか、そういうことになります。ただ、その問題は人員の問題ともいつも絡んでくる問題でありますが、実調そのものが極めて適正に効率的に行われるような工夫は年々してまいらなければならぬ課題だという問題意識は持っております。
  71. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 先ほど先生にお答えした中で、全国の五十八事務年度の赤字法人の調査件数を私、六十万件とたしか申し上げたかと思いますが、これは全体二十万件の中の六万件でございます。訂正をさせていただきたいと思います。
  72. 越智伊平

    越智委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後一時五十二分休憩      ――――◇―――――     午後二時二十三分開議
  73. 越智伊平

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。川崎寛治君。
  74. 川崎寛治

    川崎委員 最近我が国の国際収支の発表がありましたし、またOECDの方も一年半の見通しなどを出しているわけですね。これは世界経済の減速が続く、その中で日本の成長は突出をしておる、こうなりますと日本に対する要求というのはますます強くなっていくわけです。今度のOECDの発表を見ますと、具体的に日本に対しては内需を拡大せいと、三十七回の発表の中でOECDが具体的にこういう要求をしてくるというのは初めてだ、こう言われておるのでありますが、そういたしますと、日本の過剰貯蓄、過少投資という今の状況を変えていくためにはどうしたらいいか、伺いたいと思います。     〔委員長退席、堀之内委員長代理着席〕
  75. 竹下登

    竹下国務大臣 OECDのけさの発表の文を大急ぎで分析してみましても、言ってみれば「インフレーションと財政赤字が管理可能な水準にまで低下したにもかかわらず成長率が低過ぎ失業が多過ぎる国においては、適切な方式による減税等供給面での能力改善と需要面での若干の支援との両方の効果を持つような施策を検討することが有用であろう。」こういうようなことが書かれてあるわけであります。  この問題、確かに日本は国内では決して成長率が高いとは言われませんけれども、国際的比較をしてみれば、格好のいい数字がここのところずっと出ております。全体に若干の減速をする中で日本はまあまあというところをたどっておる。そこで、貯蓄過剰というのは、いわゆる貯蓄過剰と言うべきなのか投資過少と言うべきなのか。要するにこの問題は、貯蓄が多過ぎるからけしからぬという議論はどこの国もできないわけです。いろいろ説明すればするほど貯蓄することはいいことだ、こういうことであります。結果としてその貯蓄が、いわば結果としてですが、流出して他の国の金利がもっと高くなるものを抑え込んでおるという意味において、いわゆる資本提供国としての役割は果たしておる。しかし、可能な限りもっと国内で使えないか、こういう議論があるわけであります。  しかしながら今日の事情を見ますと、こういういわゆる安定成長、「インフレなき持続的成長」路線の中で民活でやるということしか、現実財政は、すなわち国がその金を借りまして公債という形で刺激を与えるという政策は、後世代への負担転嫁という意味においてとることを悼もう、こういうふうなスタンスで対応しておるわけであります。
  76. 川崎寛治

    川崎委員 つまり三十七回の見通し発表の中で、日本とドイツに対して具体的な要求をしてきているわけです、内需拡大をしてくれという。そうしますと「増税なき財政再建」で緊縮一本やりできている今の日本財政の運営の仕方というのが、そうしたOECDの要求からいたしますとぶつかってくる、こういうふうに見ざるを得ない、こういうふうに思うのです。だから、その点はどう対処いたしますか。
  77. 竹下登

    竹下国務大臣 これも大急ぎの分析でございますけれども、西ドイツ日本がその数字で見る限り成績がいい、したがって、先ほど読み上げましたような財政赤字が管理可能な水準まで低下しておるにもかかわらず成長率が低過ぎる国はと言っても、日本西ドイツを指してこれを言っておるとは、ちょっと読んでみると読めないわけであります。いわゆる一般論として言っておるというふうに見ざるを得ないのではないかな。  しかし、それはそれとしまして、内需拡大というものはだれも否定する者はおりませんし、また数字で見る限りにおいては、設備投資等もいわゆる内需拡大の路線で今日は動いてきておるということが言えるのじゃないか。財政赤字というのは、いろいろな数字で見れば、それは負担する方が低いからだと言われれば別でございますけれども、そうでなく、現実財政赤字というのはどの国よりも数字の上では多いわけでございます。したがって、これ以上財政を悪化さすというのは、結論からいうと後世代への負担にツケを回すことになるからそれは避けたい、こういう政策スタンスを今日もとり続けておるわけであります。
  78. 川崎寛治

    川崎委員 これは事務当局お尋ねしますが、私もけさ新聞情報でしか見ていないわけですからこれでお尋ねをするわけですけれども、「日本と西独に対し、減税して内需を拡大、米国の財政・経常収支の赤字減らしを支援するよう異例の注文をつけた。減税の内容や時期については言及していないが、これで三十七回目になる経済見通してわが国の財政政策に注文がついたのは初めて」だ、こういうふうに報道しておるのであります。今そういうあれはないんだというふうに大臣は言われましたが、その点はいかがですか、いずれオリジナルが来ればわかるわけですけれども。
  79. 北村恭二

    ○北村(恭)政府委員 今お尋ねの点でございますけれども、まだ文章を詳細に全体的に検討しておりませんけれども、私の承知しておりますところで申し上げますと、タックスのカットという言葉が出てまいります。これはいわゆる高失業率の国に対し需要をさらに伸ばすというような意味で言っている箇所がございますけれども、どうも私の読んだ限りでは、これは日本に対して言っているということではなくて、むしろヨーロッパの諸国に対して言っている箇所ではないかというふうに考えられます。  私どもが今得ております情報で日本に対する要請と申しますか分析を見てまいりますと、やはり日本についてはむしろ経常収支の黒字ということを大きく取り上げておりまして、日本世界に果たす役割という意味では幾つかの努力が必要であろう。その努力一つとしては、一層の輸入促進努力である、もう一つは非居住者へのより魅力ある円建て金融資産の提供、それから三番目に居住者への信用供与の改善といったような、従来から言われております輸入面の問題あるいは金融面の問題といったようなことについて日本に言っているというふうに私ども理解しておりまして、どうも私ども見た限りでは、税制といいますか、そういう減税といったようなことを日本に対して言っているのではないのではないかというふうに了解しております。
  80. 川崎寛治

    川崎委員 去年の経済白書で「国際収支の発展段階」というのを出してきておるわけであります。それによると未成熟債務国、成年債務国、成熟債務国、未成熟債権国、さらに成年債権国、成熟債権国、こういうことで、日本は未成熟債権国だ、こういう分析を経済白書でしておるわけでありますが、大蔵省もこの点については異議がないのですか。
  81. 北村恭二

    ○北村(恭)政府委員 経済の成熟度合いということと全体の国際収支との関係というものをいろいろ過去のことについて分析してみますと、日本の現状が今先生申されたような歴史的な段階にあるのではないかという分析は一つ考え方だと思います。ただしかし、そういった分析があるからといって、今の日本の国際収支の現状とかあるいは日本が今後いろいろと政策的に考えていかなければいけないことが、それですべて説明し尽くされているというものではないと私は思います。やはりそれは一つの発展段階としての考え方だと思いますけれども、今私ども日本が当面している問題についていろいろと政策的に考えていかなくちゃいけないことというのが、その説明で説明が尽くされたというふうには理解しておりません。
  82. 川崎寛治

    川崎委員 いや、説明し尽くされているなんということは言っておらぬわけです。これから高齢化社会を迎える、こういうことでございますが、二十一世紀というのは十五年後ですね。今、経常収支黒字、資本輸出、こういうことで対外純資産が十七兆円、ことしはトップになるかも、こういうふうになってきているわけです。私は、中曽根総理が一人百ドル物を買いましょうと言ったこの発想は必ずしもよくないと思うのです。つまり外国から物を買うには、軍艦か飛行機なんかを買えばお金は一番たくさん使うことになるわけですけれども、そういう使い方はしちゃいけないと思うのです。  今、日本が外国から責められるのは、まずウサギ小屋、それから大小の垂れ流し。こういうところに、日本世界一の黒字国でありながら、今の日本の姿の一番プアな面があらわれている、こう思うのです。つまり、今の過剰貯蓄を本当に国内の投資に向けるということが今なされなければならない。先ほど北村総務審議官は、それは一つの発展段階だと言われたけれども、日本が十五年先どうなっておるかということを考えますと、今のこのウサギ小屋をどう解消するかあるいは垂れ流しをどう解決をしていくか、そういう点に力を入れていく、そのことがまた内需拡大だと思うのです。そういう方向に進めるべきだ、こういう議論も大変多いと思います。その点について、「日本列島ふるさと論」を唱える大蔵大臣の見解を伺いたいと思います。
  83. 竹下登

    竹下国務大臣 おっしゃいますように、問題は外国の人からウサギ小屋と言われるような住宅、それから下水道ですね。下水道の方から申しますと、昭和四十六年でございましたか、下水道の五カ年計画が始まりました。そのとき下水道の普及率がゼロという県があるというから、どこかと思ったら、佐賀県と島根県でございまして、非常に残念でしたが、今は三十数%です。明渠とか暗渠とか言いますが、下水道にはかなり重点的に予算を執行しております。  それから、住宅問題では親子二世代ローンとかいろんなことをやりましたけれども、五十八年にやった住宅ローンの税額控除、あれは十五万円でございますと四百数十万円の人の所得税総額と同じだけが減税されておる、こういうことでございますので、これらはやはり効いていくべきものだというふうに考えます。
  84. 川崎寛治

    川崎委員 建設省は、住宅局長の諮問機関というのですか研究会というのですか、そこで宮崎勇さんや、あるいは財政審やら税調の委員もしておる石弘光さん、そういう方々の知恵もかりて、内需拡大策の一つとして住宅建設についての考え方を打ち出してきておりますけれども、それはどうしようというのですか。
  85. 杉谷洸大

    ○杉谷説明員 国民の住宅に関する意識を見ますと、今よりももっといい住宅に住みたい、こういうような意識が大変強うございますので、そういうニーズにこたえまして住宅建設の着実な推進を図っていくべきだ、こういうような御提言だ、こういうふうに思っております。
  86. 川崎寛治

    川崎委員 そうしますと梅澤局長、アメリカの税制改正案で住宅ローンの利子に対する所得控除という点については、本人用については継続、こういうことになりましたよね。やはりそういう考え方というのを建設省も志向しておる、私はこう思うのです。住宅建設ということは波及効果も非常に大きいし、国民の要望も非常に強いわけです。そうしますと、つまり金持ちの層が優遇されるというのであっては困るのだけれども、庶民も住宅を建てられるようにということになれば、今大蔵大臣が答えた減税というあれでなく、もう一つ踏み込んで、アメリカがやっているような住宅のローンに対する減税というものを私は日本でも採用すべきだ、進めていくべきだ、こう思いますが、いかがですか。
  87. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 いわゆる住宅をめぐる税制でございますけれども、先進諸外国を見ましても、ただいま委員がおっしゃいましたように、アメリカではローンの支払い利子の所得控除という格好をとっておりますが、そういったアメリカのようなタイプと、それから我が国のように税額控除でやるタイプ、我が国の場合は比較的フランスとタイプは似通っておる制度でございますが、これは先ほど大蔵大臣の御答弁にもございましたように、実は住宅取得控除というのは従来からずっとあった制度でございますけれども、五十八年の改正でいわば住宅ローンの控除に純化したわけでございます。ローン控除部分に着目して税額控除をするという制度で、実は私どもはその意味では一つの大きな改正をお願いしたというふうに考えておるわけでございます。  同時に、控除率なり最高限度額、これも先ほど大臣お触れになりましたように、十五万というのはサラリーマンの平均的な階層のその年に納めていただく税額に相当する部分の減税でございますから、私どもは現在の財政状況のもとでそれなりに先行してこういう制度をとらせていただいたと考えておりまして、今後この制度の効果というものは、実はこれからもう少し見きわめる必要があるのではないかという立場をとっておるわけでございます。
  88. 川崎寛治

    川崎委員 ドイツ方式で言えば、年収六百万の控除税額の比較というものをしてみて、日本の二十倍ぐらい大きいですよね。今フランス方式を言われたわけだけれども、アメリカ方式とある。だから大型間接税、ヨーロッパ参考、こうくるわけだけれども、そうなりますとウサギ小屋、垂れ流しという問題を解消していくためには、特に今の黒字、そして投資不足という点が問題になるわけでありますから、今も梅澤さんは検討したい、こういうことですので、そうなりますとアメリカなり西ドイツなりそういうものと比較しながら検討する、こういうふうに受け取っていいですか。
  89. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 今おっしゃいましたように、先ほど所得控除型と税額控除型と申し上げましたけれども、西ドイツの場合は、仰せのように事業所得者とか給与所得者の別を問わず、いわゆる住宅、家屋についていわば減価償却による経費を認めておるということでございまして、その意味では各国住宅税制何らかの措置を持っておりますけれども、仕組みはいろいろ違うということは御指摘のとおりでございます。ただ、私どもは先ほど申しましたように、五十八年の改正の効果というものをいましばらく見る必要があるということを申し上げたわけでございますけれども、所得税制の基本的仕組みにかかわるような問題の検討ということになりますと、これは今後の所得税制全般の見直しの中で一体どういう議論が行われるのか、私ども税制当局としては五十八年の改正の効果をもう少し見きわめる必要があるのではないかという立場でございます。
  90. 川崎寛治

    川崎委員 次には公共下水道。この公共下水道は、先ほど大蔵大臣も言われたわけですが、また我が貧乏県を引き合いに出して恐縮ですけれども、全国平均が三三%で私のところの鹿児島県は一七%なんです。国際比較をすれば、イギリスはもう九七%、アメリカが七二%、それからオランダが九〇%、スイスが八五%、スウェーデンが八六%、西ドイツが八八%となって、際立って低いわけです。そうしますと、これを解消していきますためには、つまり高齢化社会に入ってしまってからではなかなかできないのですよ。建設省としてはこれをどう急いでやろうとしておるか。
  91. 黒川弘

    ○黒川説明員 我が国の下水道整備の現況は、今御指摘されたとおりでございます。そういった状況でございますけれども、ナショナルミニマムという観点からこれらを早急に解消いたしまして、二十一世紀に向かいましてそういった基盤整備をしておこうという基本的な考え方でございまして、本年第五次の下水道整備五カ年計画が終わるわけでございますが、全体で補助事業につきましては六九%という状況でございます。  今後それらを着実に整備していくために、計画的にやるためにはどうしたらいいかというようなことについていろいろ検討したいということで、先般三月に、都市計画中央籍議会に、今後の下水道整備はいかにあるべきかということを建設大臣から諮問したところでございます。それらの審議の経過を踏まえながら、今後それらを計画的に推進するための方策について考えてまいりたいということでございます。
  92. 川崎寛治

    川崎委員 そこで、きのう政府・自民党は連絡会議で、公共事業促進のため民間活力を一層効果的に発揮させていくという方針を確認をした。財政難のため工事の長期化を余儀なくされているようなプロジェクトについて、民間資金を導入して完成を急ぐことになった。民間資金導入のための具体的な方法をめぐっても、大蔵省中心に早急に詰めることを決めた、こうあるのでありますが、大蔵省はどこでどういう検討を始めるのですか、伺います。
  93. 竹下登

    竹下国務大臣 これは私からお答えした方が適切でございましょう。  きのうの政府・与党連絡会議で話がありまして、私は早急につくりましょうというので、これは今つくったばかりでございますけれども、今の民間資金をどういうふうに活用していくかということを具体的に詰めようじゃないか、とりあえずは建設省当局と我が方の主計とで話し合いを始めようじゃないかという段階の話がきのう終わったばかりで、若干の例を整理して、けさ私が読んでおるという程度です。
  94. 川崎寛治

    川崎委員 それは具体的にどこでやるのですか。
  95. 竹下登

    竹下国務大臣 これはよく相談していかなければなりませんが、今までいわゆる民間資金を導入して、ことしから割にこれが進捗するではなかろうかというのはダムが一つ出てきております。それでそういうのを一つ一つ、ことしからやったのが道路開発資金貸付金制度の創設なんというのもございますけれども、もう少し民活という立場からやってみよう。だから内閣でいいますと、具体的な作業は原局でやらなきゃいけませんけれども、河本特命相のところで恐らくいろいろなディレギュレーションの問題が最近出てくるようですから、そういうものを中心に議論をしていこうということになろうかと思います。
  96. 川崎寛治

    川崎委員 そうすると、それは何か機関をつくってやりますか。大蔵省中心でやる、こういうふうに新聞報道はなっておるのですが、今特命大臣のところだと、こうなりますと対外経済政策、それは違うのじゃないですか。これは河本さんのところは私は違うと思いますよ。
  97. 北村恭二

    ○北村(恭)政府委員 政府で民間活力の問題というのは河本大臣のところに特命室というのがございまして、ここで今業界関係者からヒアリングを行うといったようなことを通じて、いろいろと民間活力のあり方ということについて検討をしております。
  98. 川崎寛治

    川崎委員 対外経済諮問委員会が四項目を出しましたね。そして規制の緩和とか税制の改正とか、こうあるわけです。そういう規制の緩和、民間活力というのはただ単なるうたい文句にとまっているのか。これを見ると違うのですよね。民間資金導入のための具体的な方法をめぐって、つまり河本さんは前にここで武藤委員が質問しましたときには、関西新空港方式とかなんということを言われておるのでありますが、それとは当然違うと思うのだな。そうしますと、たまっている黒字を海外の証券とかそういうものにどんどん出していくという形での今のやり方はやはり変えなければいかぬ、そして社会資本を充実させにゃいかぬというあれはないのですか、この中には。ただ当面何か格好をつけようというだけなんですか。もう少し長期の展望を持ったものなのか、ただ単に間に合わせて何かやろうというものなんですか。
  99. 竹下登

    竹下国務大臣 きのうの会合の模様、どなたが記者会見されたか私存じませんが、いわゆる公共事業に対して財政が出動することなく民間活力、なかんずく民間資金を利用してやる方法があるか、こういうような議論がありまして、ことしの予算編成の際に、藤尾さんがいつも言っておりました、ダムなどは通年施工しないで、六カ月なら六カ月でストップして次の年また持ってくる、そういうのを継続してやるようなことに民間資金の活用を決めました、政令はこの次の閣議かもしれませんが。そんな話を私がしまして、したがって、そのほかにいろいろある、それについての検討をしなきゃならぬという意見が政府・与党連絡会議であった。当然どこでやるかということになりますと、それは特命相のところでいろいろ民間活力の勉強をしていらっしゃいますが、私がそんなことを言ったから、それで大蔵大臣中心でやるんじゃないかというふうな印象を、出ておる人は受けたかもしれません、二十人ぐらい、割にたくさんの会議でございましたから。
  100. 川崎寛治

    川崎委員 さっき建設省から公共下水道の話もあったわけですが、つまりこの公共下水道というのはもうける事業じゃないのですね。だから、例えば公団債だとかあるいは地方債だとかそういうもので民間資金を入れて、そしてその入れたものに対しては税制上優遇をする。アメリカの高金利を目指して投資がアメリカの方に行かないように、国内のそういう社会資本充実に回るような方法というものは考えられないのかですね。そうでないと、二十一世紀はもう力がなくなっているわけですよ。そこらの点はどうなんですか。そういう検討というのは建設省でもしておるのか、それはもうできぬ、そういう問題は論外だという考え方なのか、あるいは大蔵大臣としてそういう方法も考えにゃいかぬなというあれがありますか。いかがですか。
  101. 竹下登

    竹下国務大臣 ことしの予算で公共事業費、なかんずく下水道は、若干でございましたけれども、たしか処理場の方が事業が少し減って、溝の方ですか、それがふえておったと思います、あるいは間違いかもしれませんが。しかし、下水道というのはやはり宿命的におくれているわけでございますから、そして率直なところ土地代が比較的かからぬ、下を潜りますから。そういうことで促進していける問題だという問題意識を持って、建設省の方でも勉強していらっしゃるというふうに私も理解しております。
  102. 川崎寛治

    川崎委員 いずれにしましても内需拡大という議論、それから今の貯蓄と投資のアンバラをどう解消していくかという点では、もっと腰を据えた検討があっていいのじゃないか、こういうふうに思うわけです。だから、今「増税なき財政再建」こういうことできておりますけれども、今言いましたように、住宅の面にしましてもあるいは公共下水道の面にしましても、諸外国から比較をすると大変おくれている。貯蓄を見ますと、日本の家計貯蓄率は一七・三%、これは八三年度ですね、アメリカが六・一%、これは八四年、西ドイツが一一・八%。日本が圧倒的に貯蓄率が高いわけですね。そうしますと、貿易摩擦解消、それから一方では国内におけるそうした社会資本の充実という面からしますと、今の状況が続く限り、これはやはり資本流出というのは出てくるのですね。そして経常黒字というのはそこからその帰結として出てくるわけです。だから国内投資をふやす、そのためにはどうしたらいいかという点についての、つまり国内投資をふやすというのは投資減税か公共投資拡大が。しかし、今のお話ではなかなか公共投資拡大の方に国民の貯蓄が向かうという政策指導はないわけですね。投資減税の方も、先ほど梅澤局長も言われましたように、西ドイツアメリカからするとずっと低いわけでありますけれども、そうした今の貯蓄優遇税制これ自体も見直さなければならぬわけですけれども、そういう貯蓄を投資にという、そしてそれが貿易摩擦解消という方向に進めていく、そのためにはどうすべきだというようにお考えですか。
  103. 竹下登

    竹下国務大臣 いろいろあろうかと思っておりますが、貯蓄は悪いことではない。(川崎委員「悪いと言ってない」と呼ぶ)そして今日までその貯蓄があったからこうなったというのは外国も理解することでございます。だが、その貯蓄をより国内、内需拡大のために使うというのは、大変これは正論であります。どういうふうにそれが使えるような環境を整備するか、こういうことになりますと投資減税。この場合は、いわば投資が半ば高度経済成長ぐらいにまで今趨勢は来ているわけですから、日本は投資そのものは今高いわけです。したがって、あえて投資減税をしても、減税したから投資したのか、実際必要があって投資したのか、なかなか費用と効果の判別ができない。したがって研究とかそういうところに限ってやった、こういうことであります。  それでもう一つは、やはり基本的には民間活力だと思います。建設国債が六十五年で百兆円残高になりますが、百兆円というものは政府が借りてそれを投資しておった。だが、それは余りにも孫子にツケを回すから、それじゃ民間がそれを使うような環境整備は政府でやらなければならぬじゃないかというので、その環境整備というので、ことしも建設省なんかで見ますと苦労して市街地の整備はやって、そうすればそれが環境の整備になって、そこでおのずから民活が起こってくるとかいうような、民活を誘導するような施策等をやっていこうというので、それならば規制緩和をやらなければならぬ。それで七十ぐらいでございましたか、たくさんの規制について後藤田さんのところで点検され、それを河本さんの方へ持ち込んでいかれる、そのヒアリングを今日やっておられるという状態であろうというふうに思っております。
  104. 川崎寛治

    川崎委員 しかし、貿易摩擦が解消しないということについて言えば、それは国民の消費購買力が伸びてないということですよね。個人消費が伸びてない。それで貯蓄の伸びぐあいを見ましても、つまり人事院勧告を凍結し、削減をしてきたという中で貯蓄の面も変化が出ているわけです。しかし依然として貯蓄が減らないということは、やはり将来に対する不安というものもあるわけですから、つまり購買力になってないわけですよ。  そうしますと、これは所得税の減税、それから政策減税、そして公共投資の拡大。つまり公共投資の拡大について言えば、先ほど来繰り返しておりますように、国内の社会資本の充実がおくれているわけですから、それを高めていく、そのことがまた内需を拡大し貿易摩擦を解消していく、こうなるわけです。そうなりますと、国債整理基金への繰り入れは停止をしておりますけれども、今の財政再建という面でいいますと六十五年に赤字公債発行ゼロ、こういう方向に参りますが、国債の残高は六十五年で百六十五兆円ですね。しかし私は公共投資を広げていく、あるいは国民の購買力を高めるための減税をやっていくということでいきますならば、つまり赤字公債でない建設国債についてはもっとやっていいんじゃないか、こう思うのです。  現にここで土光さんが「増税なき財政再建」ということをしきりにやかましく言っておられますが、土光さん自身が昭和五十年の四月八日、当時三木内閣、景気が大変落ち込んだんですね。そのときに土光さんは総理官邸に乗り込んで、「公共事業費の上半期契約率を高め、本四架橋や新幹線」云々と言い、さらには「財源不足が予想されるなら、国債増発も弾力的に検討すべきだ。稼働率アップのため」云々、こういうふうに大変強く要求しているわけです。だから今日の赤字財政つまり三木内閣なのか、福田内閣なのか、田中内閣の列島改造なのか、赤字財政の原因追及がいろいろありますけれども、そのときにこういう形で圧力をかけた。しかし財界は、今日、そういう公共事業に依存するというか、財政に依存する必要がなくなった。つまり自分のところの資金が豊富になったわけです。  そうしますと、今財政再建ということで、補助金の一律削減にしましても福祉の切り捨てにしましても国民にかぶせてきている。ですから、ここのところは、やはり財政の赤字公債の発行ゼロということは急がなければいかぬ。しかし、国民のそういう生活環境なり内需拡大なりという本当のものを考えれば、そこの財政運営の転換というのがなされてしかるべきだ。特に高齢化社会を迎える前に今日、今やらなければ、高齢化社会を迎えてからでは、公共下水道であるとか、あるいは今日の住宅に対する不満数百万、こう言われているものを解消していくということはできないと私は思うのですね。国債発行の減額というものを少し延ばすということによってでも今やるべきだ、こういうふうに思います。私たちもその六十五年という問題については延ばせということを主張しておりますし、さらには公共債、つまり国債だけでなくて公共債を活用して、地方にそういうものの主体的な力を与えるということをやるべきだ、こう思うのです。いかがですか。
  105. 竹下登

    竹下国務大臣 昭和六十五年度脱却目標を少し弾力的にしたらどうだ、この点につきましてはおっしゃる意味は痛いほどわかります。六十五年脱却というのは大変難しい話だ。しかし一番大事なことは、あの歯どめをとりますと、途端に私どもの立場からいえば歳出圧力というものに抗し切れなくなる、惰性のように進んでいくんじゃないか、一つはこういう懸念が物すごくございます。だから、少なくとも今脱却目標にしておるのは赤字公債でございますから、その目標を今例えば「ごろ」とかいうようなことにしますと、それは途端に延びてしまいはしないかな、私はこう思います。  それで、赤字公債でございますだけに、所得税減税財源を赤字公債によって賄ったならば、これは少なくともその三・七倍のものを六十年間にわたって後世代に負担を残すということになるではないか。だが建設国債ならば、確かにおっしゃいますように一兆円発行しますと三年間ぐらいで四千四百億ぐらい税収で返ってまいります。ただ、一遍これをやりますと、今度はその四千四百億円返ったものをあるいは減額に充てるとかいうことなく、それはやはり絶えず歳出増圧力で、減すことはまた大変困難な事態になる。民間の景気がいいから少し減そうやと言っても、減すことに対する、またこれに抗するということは大変に難しい問題だ。  ただ、おっしゃいますように、三兆円の建設国債を発行して公共事業をやりますと十三億ドル輸入がふえる。それから五兆円の所得減税をやると七億ドルの輸入しかふえない。そういう点から見てそれは建設国債の方へ志向していきがちです。それは私も、開発途上県と言ってはあれですが、川崎さんのところと大体似たようなところでございますので、そういう声を一番聞くところで、しかし建設国債といえども、残った場合にはやはり借金として孫子の代にツケを回すことには違いないわけでありますから、何かそういうものには負担と給付というものを考えると財源を見つけていかなければならぬ。だから可能な限りのものを民間活力にして、政府のいわゆる公共支出というものは、下水道なら下水道のようなところへ重点的に施行すべきだ、こう思っておるところでございます。
  106. 川崎寛治

    川崎委員 終わります。
  107. 堀之内久男

    ○堀之内委員長代理 古川雅司君。
  108. 古川雅司

    ○古川委員 ただいま議題になっております昭和六十年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律案産業投資特別会計法の一部を改正する法律案、以上三件に関連をいたしましてこれから質問をいたします。  これまで数々の非常に広範な、専門的な御質問がございました。それに対してまた専門的な見解の御披瀝があったわけでございます。私の質問はほとんど重複すると思われますので、あらかじめこれはお許しをいただきます。ただ、これまで御議論を伺っておりまして、国民生活の実感からは多少かけ離れたという感じを受けざるを得ない部分もかなりございました。これから私のお尋ねをすることは極めて素朴な素人感覚の質問が多いかと思いますが、ひとつわかりやすく、明快に御答弁をいただきたいことをまず希望するわけであります。  最初に、このいずれの法案も、既に予算が成立をいたしております。そこで、予算は通っているのだからどうしてもこの三法案を通さなければならないという感じはよくわかるわけでございますが、これまでの議論を通しましてもかなりいろいろな問題を含んでいるようでございます。この三法案、もし万が一通らないということになりますとどういう事態になるでありましょうか、まず大臣にその点からお伺いしておきます。
  109. 竹下登

    竹下国務大臣 通らないということになりますと、それこそ財源確保のための法律でございますから歳入財源が不足する、端的に言えばそういうことでございましょう。
  110. 古川雅司

    ○古川委員 さきに本委員会で審議をいたしました補助金削減の一括法案の審議においてもそうでございました。予算が通っている、成立をしているのだから何が何でもこれは通さなければならないという、いわゆる日切れ法案的な姿勢で臨んでこられたわけでございます。決算においても同じような問題がございまして、決算は常会で総理が報告をしなければならないということになっております。これは予算審議にその決算の結果を十分に反映をし、その議論に供するということを目的にしたものでありますが、これもきちんとそのように行われていない。そうしてみますと、予算が成立したんだから、この三法案についても何が何でも通さなければいけないんだ、そういうごり押し的な印象がぬぐえないわけでございまして、これから一つ一つの項目にわたってお尋ねをしてまいりますけれども、果たしてこうしたたくさんの問題を含んだ三法案をこのまま通してもいいのかどうかということがまず率直な感想でございますが、重ねて大臣に御感想を伺います。
  111. 竹下登

    竹下国務大臣 これは一つの御見解として、確かにいわば予算案を先に出して、それから関連法案をそれよりもおおむね一月以上おくれてタイムリミットをつくっておいてお出しして、こういうのが通例みたいになってしまっております。そうでなかったときはいつかとこう言えば、行革国会をやりまして行革特例法で補助率等をいじって、そして次の年の予算編成をしたという例が確かにございます。が、今回のように、先般の補助金一括法にしましてもその結論がぎりぎり出た。せめて身のあかしにということで、予算の後に出さないで予算と一緒にこれを提出して、そこであかしを立てたと申しましょうか、姿勢を示したわけでございます。したがって、毎年こういう状態が続いてまいりますのは、現在の通例、慣例の中ではこれはやむを得ないことではなかろうか、そういう感じが素直にいたしております。
  112. 古川雅司

    ○古川委員 議題になっている三法案の審議を通していろいろな問題提起がなされ、あるいは提案がなされていった場合、少なくとも既に成立している予算を執行していく上にどれだけそれが反映されていくのかということは、これは偽らざる一つの大きな疑問であります。そういう意味でも、この既に成立をした六十年度予算の中身というものについて、もう一度確認をしておかなければならないと思うわけでございます。  いわゆる財政再建という大きな目的を持って超緊縮予算が組まれたわけでございますが、この国債減額についても非常にその中身が粗末であるということは、先日来ずっと指摘をされてまいりました。六十五年度の赤字国債依存の脱却に不可欠であるとした、いわゆるこれは政府が決めたことでありますが、一兆円赤字国債の減額、これが七千二百五十億円にとどまったということ、これ自体、やはり次の六十一年度、六十二年度と次々と予算編成に大きな影を落としていくわけでございまして、その点について、大蔵省当局の今回のこの議論を通しての明確な姿勢というものが示されなかったのじゃないかというふうに思うわけであります。  この政府予算案とほぼ同時に発表されました「財政の中期展望」を通して見ましても、一つには、現行レベルの施策を継続する限りという仮定はありますけれども、年々要調整額がふえていって、六十三年度には五兆六千七百億円になる。また第二点として、現状では、こうした状況から見れば六十五年度の赤字国債依存脱却というのは、もう財政再建というこの大きな目的に対してほとんど不可能だと認めているのじゃないか、このようにどうしても感じ取れるわけでございますが、この点いかがでありましょうか。  そしてさらにそれにつけ加えれば、そこに大型の間接税を含めた増税という意図がもう既に明確になってきた。これは国民生活感情からそういうふうに受け取らざるを得ないのでありますが、そこのところ、ひとつわかりやすく所信をお述べいただきたいと思います。
  113. 竹下登

    竹下国務大臣 五十九年度赤字公債脱却、これが五十六、五十七の物すごい、決算調整資金から借りましたり、それから補正予算で三光何ぼの赤字国債を発行したり、それで五十六、五十七やりました。それでこれはギブアップせざるを得なくなった。そこで新たなる目標として六十五年度、これにやります。  今御議論、御意見を聞きながら思いましたのは、かつて「新経済社会七カ年計画」というのがありまして、あれの税収二十六カニ分の一、二六・五というその当時議論して決めた数字が書かれてありますが、あの数字は確かに一般消費税というものが念頭にあった数字でございます。そこで、それは国民の受け入れるところにならなくて、それで今回の八〇年代後半における「展望と指針」というものには、名目成長率を六ないし七、それから実質成長率四、物価が三、失業率が二、卸売が一という数字がありまして、それで仮定計算で、税収でどれをとるか。そこで、六と七の真ん中の六・五をとって、それに租税弾性値の一・一を掛けたものを土台にして、それから今おっしゃいましたような現行の施策、制度をそのままに持ってきて、それでギャップが何ぼできるかというのを要調整額、こういうふうにしてお示ししてきたわけです。  それで要調整額、毎年毎年示しておりまして、それが確かに去年のを見ればことしは変化してきております。それはなぜ変化したかというと、例えば制度改正はこれがございましたとか。だが、振り返ってみれば一つの数字になりますが、将来を展望するについては余りにも仮定、いわば一つの条件を決めて機械的に書いた数字でございますから、もっとしっかりしたものが出せないか、こういう議論が行われておるわけであります。  そこで、幸いにして電電株、今も御審議いただいておりますが、それらがその下の透かし絵としては見えてきておるわけです。その透かし絵が本当に透かしでなくしてあらわれてくるというのは、法律が通って、それを一回ぐらい実行してみればあらわれてくるでございましょう。今おっしゃいましたように、おとといでございましたか、年度内、五十九年のいわば国債の発行の最後の、出納整理期間内発行というのを千五百億やりました。そうすると、八百億ちょっと発行しなくて済んだわけです。それが今度は五十九年の分には減額の方ヘカウントされるわけですね。で、ことしも今通ったばかりで、この法律も通らぬ前から、可能なら税収が余計入って、予算の満杯まで発行しなくて済む努力もこれからもやらなければなりません。だから、年々年々そういう努力を積み重ねて、六十五年脱却というものは大変困難でございますが、先ほども申しましたように、この旗をおろしてしまうと、数年でいいじゃないかということになると、途端に歳出圧力というものに抗し切れなくなるということで、かたくななように六十五年赤字公債依存体質からの脱却、こういうものを依然として掲げておる、こういうことであります。  したがって、税収はあくまでも名目成長率の中間値掛ける一・一というところでお示ししておるのでありますから、いわば要調整額が大きくなれば、そこが透かしとして、その下にそれを埋めるための増税としての大型間接税が透かしとして見えるというようなところまでは考えないで議論をしていただいておる、こういうことでございます。
  114. 古川雅司

    ○古川委員 またしても細かい数字をお挙げになりまして、非常に専門的に御説明をいただいたわけでございますが、不幸にして、これまでの政府の将来展望であるとか予測というのは大幅に狂ってまいりました。いろいろな国際環境、いろいろな経済事情に左右されているのは当然でありますが、少なくともこの六十年度予算を通して見ても、六十五年度赤字国債依存脱却、これが大きな目的である、その目的の旗をおろすわけにはいかないと言いながら、これは既にいわゆるギブアップせざるを得ない現状である。むしろそのことを率直に認めて、その厳しさを国民の皆さんに訴えることの方がもっともっと大事ではないかという感じを持つわけでございます。まして大幅増税という、どういう形であれ、それが今大臣は透かしとしてというお言葉を使われましたけれども、透かしどころか、もっとはっきりと浮き彫りとして表面に出てきている、そういうことに大きな不安を持つわけでございます。  この三法案の審議を通じて、その審議の内容、各委員の提言やまた意見が六十年度の予算の執行にどう反映されていくか、これは今後の政府の責任にかかっていくわけでございますけれども、六十一年度の予算、来年度の予算の編成の準備作業がこれから始まるわけでございまして、せめてこの点についてまた幾つか大蔵省当局の明確な方向というものをお示ししていただかなければならない、そういう考えを持つわけでございます。  さて、その六十一年度予算の概算要求の基準設定でございますが、これは既に大蔵省としてはマイナスの要求枠ということを明確にお示しになっているようでございます。これは政府部内、与党内においても、これに対して大型の減税、それから公共事業の拡大というかけ声が非常に大きくなってきているようでございますが、この大蔵省のマイナス要求枠という基本方針とこうした周囲の事情、この辺をどう大臣はお考えになっていらっしゃるでしょうか。
  115. 竹下登

    竹下国務大臣 今のところ、概算要求基準は、正確に申し上げますならば、まだ決めていないという段階でございます。  ただ、私の答弁等からして、大変厳しいものにならざるを得ない、こう申しておりますので、いろいろな団体の方等が、自分の観念したものはこれ以上のマイナスには到底耐えがたい、こういうような御要請があるということも承知をいたしておるところであります。しかし、手順としては、いずれにしても八月末に概算要求を御提出願うわけでございますから、国会が終われば可能な限り早く基準は決めなければならぬ。その上で、その基準の中で各省ともいろいろな制度改正を含む知恵を出していただくわけでございますから、それは今のところまだ決まっていないというのが実情でございますので、新聞論調等で私どものこういう厳しい発言等が観測記事として出ておるという段階でございますから、まだ決めたということではない。  それから、先ほどのことで一つお答えを落としましたが、六十年度予算の執行につきましては、この国会の議論等を踏まえて、なかんずく、あの補助金一括法案のおくれによって交付決定がおくれておりましたものを、早急にその作業をして、今日おくれを取り戻す努力をしておるというのが現状でございます。
  116. 古川雅司

    ○古川委員 六十一年度の予算編成の方向づけてありますが、先ほど申し上げた大型減税あるいは公共事業の拡大という大きな要求は、これは何も野党の方だけが言っているわけではなくて、政府部内、与党の中からそういう大きな声が上がっているということで、これに対する大蔵省のこれからの取り組みというのが非常に大変だ、そういう事情はよく理解できるわけであります。  で、六十一年度予算の編成、これが六十年度と比較してどう違っているかということはいろいろ挙げられましょうけれども、一つ経済摩擦あるいは内需拡大の要求といったそうした外圧、これが一段と厳しくなってきているということ、それからまたアメリカの景気の障り、これが国内に対して、やはりこれも内需を拡大しろという内部からの声、これで非常に予算というものの担う役割がますます重要性を帯びてくるわけでございまして、さっき申し上げた減税であるとかあるいは住宅であるとか、財政再建の途上でこうした拡大要請が強くなってくるということはなかなか厳しいでありましょう。大蔵省としては既にそういったことに対しては否定的で、むしろいろいろな基準緩和等による民間活力の導入、そこに活路を見出そうと、その点を強調していらっしゃるかに受け取られるわけであります。しかも、その点については極めて即効性が薄いのではないか、小さいのではないかという指摘もあるわけでありますが、その点はいかがでございますか。
  117. 竹下登

    竹下国務大臣 今の御意見をお交えになりました議論でございますが、一つはいわゆる与党内にもある減税論といいますか、主として所得減税でございます。ということになりますと、これは話として、我々がお答えいたしておりますところの方針は、後世代の負担となる赤字公債の増発によって賄われるものであってはならない、きょうの減税が後世代の者の負担によって行われてはならない、それは絶えず申し上げておるわけでございます。  この税の問題というのは、三つ環境がございまして、一つは、申すまでもなく、中曽根さんがいつでも言っております税制全体の抜本見直しの中で位置づけましょう。もう一つは、与野党の幹事長、書記長さんの会談での話し合いの問題がございます。もう一つは、先ほど来お話のありましたいわゆる内需拡大ということ、対外経済対策からくる内需拡大の中で、消費と貯蓄と投資、そういうものに目をつけた税制改正、三つの場所が今あるわけです。その三つの場所をどういうふうに調和をとって進めていくかということで、二十九日でございましたか、与野党の第一回の話し合いがあったそうでございますが、我々はそれに対して忠実にいろいろな資料を出したり、そういうことで見守っておる、こういうことになるわけであります。  それから、もう一つ御議論にございました公共事業の問題でございますが、これも公共事業というのを昭和四十年に、オリンピックの翌年のまさに戦後最大の不況のときに三千億やりまして、それは即効薬みたいに効きました。そして、それが今日、日本の貯蓄が多かったからできたと思いますが、何分これほどの今度は率直なところ残高がたまってまいりますと、利払いがとうとう社会保障費を超した。これは初めてのことでございますので、おのずからそこに節度を持たなければいかぬ。実際に対GNPから見ますと、日本が五・五、アメリカ一・六、イギリス一・六、西ドイツ二・九、フランス二・九。だから、社会資本のおくれを取り戻すという姿勢は、今日も厳しい財政の中で貫いておるというのが実情でございます。  そうなれば、今度は公共事業を一般財源でなかなか出せないから、やはり民活、こういうことになるわけで、民活につきましては、今即効性がないというお話がございましたが、確かに民活の代表的なものは何かといえば専売、電電を民営化したというのが一番典型的なものであると思いますが、これはなったばかりでまだ効果は出ておりません、第二電電ができたわけでもございませんし。それからもう一つは、関西空港。これも話はつきましたが、まだトンカチという音はしておりません。それから国有地を活用しました西戸山の開発の問題も、まだトンカチという音はしていない。そうすると、今度の予算の中でそういうことができますのは、ダム等におきましてできるだけ通年施工をするようにして、早く卒業生を出そう、それに民間の資金を導入してやっていこう、こういうのがトンカチの一番早いもの、こういうことになるわけですので、なかなか即効性はございませんが、要するに行革審において規制緩和のことを今一生懸命勉強していただいておりまして、それから特命事項担当大臣のもとで経済界、関係者からのヒアリングが今行われておりますので、さらに問題を詰めて、恐らく具体的な施策が、中長期も含めてでございましょうけれども、出てくるであろうと今期待をしておるわけであります。  おっしゃいますとおり、一般財源が厳しくなりますと、どうしても民活、民間活力を利用したい。それには利用できるような環境整備などはやってもいいと思います。いわゆる都市再開発などをやれば、その中へおのずから民間がいろいろなものを工夫されていく、そんなようなことを今工夫してやっておるというのが現状でございます。
  118. 古川雅司

    ○古川委員 六十一年度、来年度のことばかり申し上げて恐縮ではありますが、争点として、歳出の抑制策を含めて六十一年度の予算の編成が本当に可能なのかどうかという、そういうぎりぎりの感じを持っているところもあり、そうまで危機感をあおったり危険視する必要はない、まだ多少の余裕はあるのだという見方も一方にはあるわけでございます。  一つには、国債償還のための国債整理基金への定率繰り入れ、先日来盛んに繰り返されておりますが、少なくともこれは過去四年繰り入れが停止されてまいりました。六十年度末の残高が九千九百億円というこの実態は、これは非常に危険な状態であるとはっきり言うしても過言ではないのじゃないかと思います。その点は、いわゆる償還財源として新電電の株式の売却益ということを見込んで今回何とか切り抜けようということであります。この点については、電電株の売却益の後は何があるのかということも先日来盛んに言われておりますけれども、どうもはっきりいたしません。  それからもう一点、一般歳出の抑制に最重点を置いていくということについて、これは六十年度の予算編成においても相当の努力をなさったわけでございます。大蔵省としては、さらにその努力が必要であるということを強調していらっしゃるわけでございますが、各省あるいは与党内でも、既にもうその点は限界だという感じを持っていらっしゃるようであります。これはもう全く余裕のない、限界だと認めなければならないのか。大蔵省としても、もっと努力をしろ、その必要があるとおっしゃる以上は、まだここに余裕があると考えていらっしゃるのか、その点はいかがでございましょうか。
  119. 竹下登

    竹下国務大臣 余裕があるかないかというのはなかなか難しい問題でございまして、余裕があろうとなかろうと、歳入歳出両面にわたって厳しい対応をしていかなければいけないという、総合して言えばそういうことになろうかと思います。それは確かに健康保険法の改正があり、ことし補助金の一括カットの問題があり、しかしながら、今日なお私どもは、その制度、施策の根源にさかのぼって、歳入歳出両面からこれに厳しく対応をしていかなければならぬ課題だというふうに思います。  それから、おっしゃいました定率繰り入れでございますが、おっしゃるとおりになりますし、そして来年度を考えると空っぽになってしまうわけでございます。本来空っぽになってはいけない性格のものでございますから、いわゆる減債制度というのは、発行しました六十分の一が積んであるから、それを国民が、国債は大丈夫だなという国債の信認性を維持するためにも、基本的にはやらなければならぬものでございます。したがって、空っぽになりますから、これは減債制度の基本は保ちながら、これにぎりぎりの工夫をしていかなければならぬと思っております。  そして、透かし絵のように電電株の売却というのはございますけれども、これも先ほど来の議論じゃございませんが、さあ本当に来年売るかどうか。本来、民営にすれば、活力を出すためにはできるだけ民間へ放出しなければならぬ。しかし、一方、国民の貴重な財産でありますから、有利に売らなければならぬ。そういうことで、また売り方も初めてのことですから、プロは一人もいないわけで、これについては結局民間の有識者等の意見を聞いたり、国会の議論などを正確に伝えて対応していかなければならぬ、本当に胸突き八丁という感じでございます。
  120. 古川雅司

    ○古川委員 その点でもう一つ。地方自治体に対する例の補助金の削減、特に一年間の暫定期間づきで実施をいたしました生活保護費などを含む高率の補助金の補助率のカットでありますが、この点は後ほどまた詳しく触れさせていただくといたしまして、こうした六十年から六十一年という短い期間を展望いたしましても、非常に厳しいということは大臣の御説明のとおり認めざるを得ないのでありますけれども、そうした中で、最近、無税国債ということをおっしゃる方が出てまいりました。  これはその中身を説明するまでもないと思いますが、宮澤総務会長が、おくれている社会資本の整備のために、無税国債の発行によって財源確保しようと提唱していらっしゃる。藤尾政調会長も、関税引き下げによる木材業界の救済策として、無税国債の基金をつくろうとぶち上げていらっしゃる。これに対して大蔵省は、無税国債という名の国債増発だ、借金することには変わりはない、非常にこれに警戒の姿勢を示していらっしゃる。大蔵省が今こうした財政運営に非常に苦慮をしながら進めていらっしゃるのに、与党の党内から、とりようによってはこういう非常に気楽な提案をぼんぼん打ち出してくるという、そうした事情、そうした背景を大臣としてはどうお考えになっていらっしゃるか。この無税国債という提言をどう受けとめていらっしゃるのか、その点をひとつ明確にお示しをいただきたいと思います。
  121. 竹下登

    竹下国務大臣 党内から、あるいは各方面からいろんな議論が出るというのは、民主主義でございますから、これはそれなりに――大蔵大臣をしておりますと、困ったななんて全く思わないわけじゃございませんけれども、それはあるいは立場が変われば私もそんなことを言うかもしれません。が、事実、無税国債というのは勉強したことがかつてございます。私が建設大臣をしておりました当時、何かに限定しようじゃないか、すなわち防災にだけ限定したらどうだというような議論をしたことがございます。  ただ、無税国債というのはいろんなことが考えられますが、いわばどこかへ、ドル高によって利益の余計上がった企業に強制的に抱かしてというようなことをおっしゃる人もございます。そうじゃなく、企業ではなくして、とにかく相続税もかからない無税国債を発行したらどうか。そうしますと相続税の場合は、我が国は西郷南洲「児孫のために美田を買わず」という思想でございますから、相続税の体系そのものに非常に影響をもたらしてしまう。それからもう一つは、アングラマネーがあるじゃないかということを前提にやることに対するいわゆる財政の秩序の問題がございます。が、いずれにせよ、言っておりますとおり、無税国債というのは要するに国債でございますから、借金は借金だという基本的な考え方をとっておるわけであります。いいとか悪いとかという評論をする前に、基本的にそういう考え方を持っております。  それから、消化面の問題で一体どれくらい消化されるのか。場合によってはそれが人気さわやまで、ほかのが全部そっちへシフトしていってしまったら一体金融秩序はどうなるか、こういうような問題も出てくるのでございましょうから、したがって、無税国債と申しましてもいろいろな形態が考えられますけれども、やはりこの点については慎重な上にも慎重に検討をしなきゃならぬ課題だというふうに思っておるところでございます。
  122. 古川雅司

    ○古川委員 おっしゃるとおり言論は自由でありますし、何を言っても勝手だと言わんばかりの御答弁でございますが、それが民主的な空気を反映しているなんて言っていただくと大変困るわけでございまして、今私が新聞報道を通して挙げましたお二人のお名前、これはそんじょそこらの方ではないわけでありまして、党内の責任ある立場にそれぞれいらっしゃる方でございます。竹下大蔵大臣にかわって次に宮澤さんが大蔵大臣になる、あるいは藤尾さんが大蔵大臣になったときにそのまま実施に移すというような内容であれば、これは現在大蔵省の最高責任者である大臣がこのことに対して遠慮なく、またはっきり、そんなことを言ってもらっちゃ困るとか、かえって事態を混乱させる、六十年度予算の執行の上で、あるいは六十一年度予算の編成の上で大変迷惑だというところまで、今日のこの事態を考えればはっきりさせられるべきじゃないかというふうに思うわけでございますが、その点はかなり御遠慮をしていらっしゃるのでしょうか、もう一度御答弁をお願いします。
  123. 竹下登

    竹下国務大臣 もともとの発言を正確に見てみますと、問題提起で、検討してみたらどうだ、こういうことですから、したがって、それに対してもとよりそれはこういう欠点がある。今申しましたようなことも、そういう発想の発表があったから、そういう問題点も整理したわけでございますから。ただ、藤尾さんの言っていらっしゃる分にはトタでは結びつかないわけで、あれはもう一遍よく聞いてみなければわかりませんが、恐らくドル高によって予定以上の利益を持ったものに、その利益の一部でもって、強制的にという言葉はおかしいのですが、無税国債、いわゆる税金のつかない国債を抱かせようという案かもしれません。その辺もまだ勉強をしておりませんが、いろいろな問題提起だというふうに思えば、また私どもが余り窮屈になっておればどこかで警鐘乱打してもらわなきゃいかぬ場合もあるでしょうし、言うのは勝手だというような意味じゃなく、いろいろな意見はやはりあるものだろうというふうに思っております。
  124. 古川雅司

    ○古川委員 どうもはっきりいたしませんが、先ほど来いろいろ問題になっております新電電株の売却をめぐる問題もその一つでありまして、これは中身を一々申し上げるまでもないのでありますが、少なくとも昨年暮れの予算編成の過程で決定されていたことは、一つには、政府の売却可能な株式の三分の二を国債整理基金特別会計に帰属させ、売却、配当収入を国債償還財源に充てるということ。もう一つは、政府の保有義務づけの三分の一については産業投資特別会計に帰属させて、その配当収入を技術開発などに充てるということ。したがいまして、予算案では、民営化して一度も決算をしていないからという理由もあって、株価を決めるのは難しい、売却収入として計上しないという決定をいたしておりました。  それで、既に国債整理基金が枯渇をしているわけでございますので、この売却にこれから取りかかるわけでございますが、大蔵省内、特に理財局と主計局との間でなかなか意見の調整ができない、そういうことが盛んに言われてまいりましたけれども、この点はもうきちんと見通しはつけたのでありましょうか。もう結論ははっきりしているかもしれませんけれども、省内の調整が難航をしているという印象はいまだにぬぐえないわけでございますが、そのポイントは定率繰り入れの再開ということ、あるいは再度また五度目にわたって停止をするということ、そういうことなのかどうか、その点はいかがでございましょうか。
  125. 竹下登

    竹下国務大臣 この定率繰り入れというのは確かに続けさせていただいて、それで空っぽになるわけでございますから、いずれにしても国債整理基金へ、減債制度の基本は維持をして、必要なだけは最低限入れなければならぬということになるわけであります。国債整理基金に直入する株の売却益というのも、もちろん透かしあるいは念頭にないわけではございませんが、私もこれは一体どういうふうにして値決めをしていいものか。まさか帳簿価格で売るわけにもいかぬでございましょうし、そして仮に今度値決めができても、入札によってやるべきものでございましょうか、あるいはシンジケート団のようなものをつくってやるべきものでございましょうか。そしてまた株式市況というのは、新株の出回りはおよそのキャパシティーがございますから、それよりも余計出せば値が下がるでございましょうし、国民共有の財産ですから、本当に大事に大事にこれから勉強させていただかなければいかぬ。だから、主計と理財が利害対立するところまでまだとてもいっておりません。一体どうしたらいいだろうかというのを、これから国会の議論等を聞いて、民間有識者の意見も聞きながら、本当にこれは慎重な上にも慎重に対応していかなければならぬ課題だというふうに思っておるところでございます。
  126. 古川雅司

    ○古川委員 新電電株の売却、株の放出の方法について考えても、そう何年も先の話ではなくて、たちどころにこれから詰めていかなければならない問題だと思うわけでございますが、この点もいわゆる国有財産中央審議会に諮問をして、その検討の結果を待つという言い方もあるでありましょうけれども、財政当局として毅然とした明確な方向は当然これからお示しになっていくのだろうと思います。さっき申し上げた理財局と主計局との間の見解の相違云々ということについても、大臣は今答弁を避けられましたけれども、タイミングとしてはそういう事態ではないのじゃないかという感じを持つわけでございますが、新電電株については巷間非常に熱いまなざしを注がれている株でございまして、この放出方法についてはいろいろ取りざたをされているわけでございます。これは大臣もよく御承知のことでございます。これは一般企業と同様に証券会社の引き受けで売却をするのか、あるいは完全入札という制度にするのか、方法、時期、いつごろには決めるということもはっきりしておりませんし、それから例えば一市民、一般の方がこの株を手に入れようとしたときに果たして手に入るのかどうか、どういう方法でこれを手に入れるのかということも既に話題になっているようなことでございまして、この点については電電会社の会社法成立の際の国会の附帯決議とその政府見解で、株式が特定の個人、法人に集中せず、広く国民が所有できるよう厳正かつ公正な方法で行うというふうに既に定めているわけでございまして、この辺も踏まえて株の放出の方法、一般国民がこれを入手する方途、こういったことについては大蔵省としてはどういうお考えを持っていらっしゃるか。
  127. 中田一男

    ○中田政府委員 電電株式の処分につきましては、御指摘のとおり非常に重要な問題でございまして、私どもかっては政府が出資しておりました株式を売却した先例もございますけれども、その先例に即してそのままやっておっていいのかどうかというと、もっともっと大きな問題ではないかということで、慎重に検討してまいらなければいけないと思っております。御指摘ありましたように、その売却に当たっては、特定の個人等に集中しないように、また一般投資家が参加し得るようにという点も、十分に配慮していく必要があると思っております。  いずれにいたしましても、具体的な売却方法等を決める前には、大臣からも何度も御答弁がございましたように、民間の有識者の皆さん方意見を広く聞きながら、いかに公正、適切な方法に到達し得るのか、これから十分慎重に検討してまいらなければいけない。こんな段階でございまして、いつごろまでに決めるとか、あるいはどのような方法でこういう民間の有識者の皆さん方意見を聞いていくのかというようなところについては、まだ煮詰まっておらないというのが現状でございます。
  128. 古川雅司

    ○古川委員 今の御説明の最後で、煮詰まってはいないということでございまして、いずれ煮詰まるのでありましょうけれども、いまだこの段階において煮詰まっていないということに一抹の不安を覚えるわけでございます。大臣、これはどう考えていけばいいのでありましょうか。
  129. 竹下登

    竹下国務大臣 この種の問題というのは、本当はこういう形で処分しますということの方針を法案審議の際にお示しするのも一つのあり方だと思うのであります。が、私はとてもこの問題はそれはできることじゃないな。やはり国会で十分譲諭していただいた後、それらを整理して民間有識者の方々の意見を聞き、その上で決めるべきものだ。だから基本的に特定の個人、法人に偏らないようにする方法をもちろん編み出さなければいけませんし、そういうことも含めて現段階においてはどうだと言われれば、率直に言って、今あれこれ考えておるが、紙は真っ白です、まだ白紙でございます、こういう答えをせざるを得ないのが現実でございます。
  130. 古川雅司

    ○古川委員 国債費の問題でいろいろ伺ってきたわけでございます。いずれにしても、初めに一兆円の減額ありきということで出発をしたわけでありますが、これは六十一年度以降にツケを回しただけだという指摘もあるわけでございます。国債費が今後こうして日本財政をがんじがらめに縛っていくということも明確になってきたわけでございますが、これはやはりその負担を国民も背負っていけということをだんだん強調していく土台づくりもできてきているのじゃないか、そういう不安を覚えるわけでありまして、それは先ほど来申し上げております国債整理基金への定率繰り入れを見送ってきたということ、六十一年度もこれはわからない、大蔵省御自身もこれは非常に危惧をしていらっしゃるところであります。  これは先日来御質問がございましたけれども、整理基金への定率繰り入れを停止して、そしてまた新電電株の売却をして、そうした方策を続けながらも国債費の増額を抑えることはできない。しかも、ここでこうした新電電株というような株の売却を当てにせざるを得ないという事態でありますが、国民はもっと先、その後はではどうするのか、何を民営化するといっても、これ以上思い当たらないところでありますし、その辺は非常に答えにくいと思いますけれども、不安はもうその先の方へ行っているわけでございますので、その辺についてどうお考えであるか。現大臣で今回この三法案を通してこういう対処をなさったわけでございます。次の大蔵大臣、何年か先の大蔵大臣がさらに厳しい事態でこの問題に取り組んでいかなければならない、その先もやはり考えていかなければならない、その点ではどういうお考えをお持ちになっていますでしょうか。
  131. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに御指摘のとおりでして、六十五年に赤字公債依存体質を脱却したという前提の上に立ちますと、残高は百六十五兆になります。大ざっぱに言って六十五年百六十五兆、百兆が建設、六十五兆が赤字、こういうことになります、端数がございますけれども。そうなった場合、いつも考えますのは、百六十五兆というのは七%の金利でやりますとちょうど五百十兆になります。だから五百十兆を私以後の納税者に言ってみればツケを回すということになるわけでございますから、それは物すごい責任を感ずるような気がいたします。六十年間にわたってということになれば本当に子、孫、ひ孫までということになります。そうすると、やはりまずは脱却ということが第一目標で、そして第二次目標といいますか、並行してやらなければならぬのはGNPに対する国債残高というものを減していかなければならぬ。それでもう一つは、約束したとおり返済はしていかなければならぬわけですから、したがって今度はいわゆる歳入としての公債財源の全体の歳入に対する比率も落としていかなければいかぬ、それをこれから苦心してやっていかなければならぬわけです。  それで、これは大蔵省としてそういう考えを固めたわけじゃございませんけれども、私よく思いますのは、昭和四十年から発行したわけでございますから三十九年まで公債は一銭もないわけでございます。そうすると、二十年間でこれだけのものをやった、少なくとも二十年間で赤字公債と言われるものの残高だけはなくしたいものだな、こういう夢を見ることもございます。いや、それじゃだめだ、やはり二十一世紀までにはやっておかなければいかぬ、こういう議論もございます。電電株といいましても、それはいろいろな評価がございますけれども、およそ新株というのはどれくらいしか売れぬかという、余計売れば値が下がりますし、だから本当に、それも表現は悪うございますが、上手に売って、国民共有の財産を国民共有の負債を埋めることに使っていかなければならぬ。要するに、国債残高を抱えた財政というのはある程度続くということはやむを得ないと思います。一遍に何かでパアになるものじゃございませんだけに、年々年々のGNPの伸び率等を考えつつ、その中の比率がどんどん下がっていくという毎年毎年の不断の努力をしていかなければならぬと思うわけでございます。だから一期の大蔵大臣で済む問題でもなく、毎年毎年の努力が必要なことだなという感じをしみじみと持っております。
  132. 古川雅司

    ○古川委員 ここで素人感覚の質問をもう一度重ねるわけでございますけれども、こうした大変な借金にいたしましても、国民としては恩恵を受けている人たちあるいはその恩恵にあずからない人たちという、世代間においてもその相違がありますし、また今の時代にあっても、地域であるとかあるいは部分によってそれぞれ立場を異にしていると思います。国債の償還といえども税金で賄われるというのは当然であります。これからも特に赤字国債の発行によって恩恵を受けていく人あるいはまた恩恵にあずからない人、それは負担のツケというのは全然別問題になってしまう。こんなに借金をして、こんなに国債を発行して、あるいは利払い等のツケが回ってきてという不満も起こってくるわけでございますが、これは一般の家庭の家計になぞらえてみればどういう事態になっているのか、ひとつ大臣の一流の解説力でその点をお示しいただきたいと思います。     〔堀之内委員長代理退席、熊川委員長代     理着席〕
  133. 竹下登

    竹下国務大臣 これはなかなか難しい問題でございますけれども、極端な議論をしますと、建設国債性善論ということをおっしゃいます方は、言ってみればローンで家を建てられないか、そうすると子や孫もそこへ住むんだから応分の負担をして持ち家の中に住んでいけるから、少なくとも資産が残るから建設国債は性善説のうちに入るじゃないか、こういう極端な議論でございます、これは一家になぞらえて。それから赤字国債は、きょうおやじさんが一杯飲むために、あるいはぜいたくな暮らしをするためにとでも申しましょうか、借金をして、そして子供もろくろく養育しないでぜいの限りを尽くして、それを子供にみんなツケを回すことになりはしないか、こういう議論もあります。ところが、その赤字国債でも、別の非常に極端な例を申し上げますが、いや、やはり赤字国債をやって金を借りて一生懸命で子供の教育をすれば、それは資産じゃなく無形の資産として残っている、こういう議論をする人もございます。  極端な話をいたしましたが、今家計に例えればそういうことが言えるでございましょうけれども、実際問題国全体を一つの家庭として考えることはなかなか難しゅうございますけれども,私どもは予算を組みますときに非常に悩みを感じますのは、予算というのは道路をつくりましたりあるいは教育をしましたり、そういう普遍的な国民一般にやること、あるいは外交もございますし防衛もございますが、いま一つは応能主簿、すなわち能力に応じて税をちょうだいしまして、それで生活保護等に使うという富の再配分の役目を果たす。ところが、その富の再配分の役目を果たすところの社会保障よりも利払いの方が多くなってきたわけですから、そうすると利払いというのは、いずれにしても持っているところへ金利はいくわけでございますから、まず予算をつくる前に初めに利払いありき、富の再配分とはおよそ違った性格のところへ――それをさておいて予算をつくるというときには、ことしから初めて利払いの方が社会保障を超したわけですから、それは非常な悩みを感ずるということは偽らざる私の感傷あるいは感情でございます。
  134. 古川雅司

    ○古川委員 日本という家計を預かっていらっしゃる大臣として最後に率直にその苦衷を御表現になったわけでございますが、国債が増加をしていく、しかもその中で、歳出の削減というようなことも大きな争点になって、これから大きな課題として残っていくわけでございます。  その一例といたしまして補助金問題でありますが、去る二十四日に閣議で関係閣僚会議が設置をされたという報道を伺いました。補助金削減一括法が成立をいたしまして、いろいろ席題を残したわけでございますが、ここでまず不思議に思いますことは、これからそこで議論をして、本筋である補助金の整理あるいは改革ということも含めて御検討なさるのでありましょうけれども、いわゆる一年限りということについてもこれは一つの大きな課題になるということ。特に自治体の方は、あくまでも一年限りの暫定措置としてそれ以上引き延ばさない、従来の補助率に戻すようにという主張がございました。これは前置きを忘れましたけれども、いわゆる高率補助率の一律カットの問題でございます。これは既に大蔵省が一年限りというお約束のもとに出発をしているわけでございますから、今後この会議の中の検討事項になること自体非常に不思議な事態でございますが、この点はどのように考えればよろしいのでしょう。
  135. 竹下登

    竹下国務大臣 大別しまして、いわゆる公共投資、公共事業の補助率、それからもう一つは社会保障ということが言えるわけであります。  公共投資の議論をいたしますと、言ってみれば財源の手当て等いろいろ工夫すれば事業量は確保できるじゃないか、あるいは事業量は伸びるじゃないか、こういう議論ができるわけでございます。事実、結果としては事業費は伸びておるわけであります。ところが、一方社会保障の方は、末端の受益者の方のサービスは低下しないけれども、いわば国と地方との役割分担と費用負担のあり方についての議論としてこれをやっていこうじゃないかということになりました。  それで、その昔は地方と国とが五分五分ということでございますが、昭和二十一年、日本が敗戦直後で引揚者の方等が多いようなときは、一時、六カ月間でございますけれども全額国が持った時代もあります。その後からいろいろな議論がなされて、八対二というものがずっと継続してきておるわけです。ただ、町村の分は前には一割の負担がありますが、それは町村は県、市は市で二割、こういうことになったわけでございますけれども、一応八、二という比率はずっと続いてきた。  そこで、これについていろいろ議論をしたわけです、哲学論争から。そしてぎりぎり、それではことしの段階においては費用負担のあり方は、正確にみんながみんなそうじゃございませんが、俗に言う一割カット、国の一割をカットして、その分を県、市が持とうということになったわけであります。それならば、基本的にまだ議論を詰めていかなければいかぬから、この措置は一年限りの暫定措置だよということで、いわゆる暫定措置とすることを覚書で約束をしたわけであります心したがって、六十一年度以降の補助率のあり方については、もう一度国と地方との間の役割分担、費用負担の見直し等とともに政府部内において引き続き検討を進めて、今後一年以内に結論を得ようということで覚書があり、そして先般法律を通してもらった。  それで、法律を通してもらった後、じゃどういうふうに検討するんだ。可能な限り早くやりたいという気持ちがございましたので、衆議院の段階から皆さんに御議論いただいたのを全部整理をいたしまして、よし、それではこれを正確な資料としてそのもとでやっていこうということで、五月二十四日に補助金問題関係閣僚会議の開催についてというのを閣議の口頭了解として発表をしたわけであります。すなわち、会議は三大臣の合意でございますけれども、まとめ役がいなければなりませんから内閣官房長官が主宰する、こういうことでこれを進めていったということでございます。  それで、第一回の会合は二十七日に開きまして、補助金問題を検討するため有識者の参集を求め、補助金問題検討会を随時開催することをさらに決めたわけであります。その検討会のメンバーも、その際に、先ほど来議論に出ておりました一橋大学の石先生・社会福祉・医療事業団理事長の上村さん、阪大名誉教授の木下さん、浜松市長の栗原さん、上智大学の小山先生、自治省出身で公営企業金融公庫総裁の首藤さん、青山学院大学の館先生、日本社会事業大学の三浦先生、日本たばこ産業株式会社の長岡さん、これは別に大蔵省が推薦状を渡したわけじゃございません。それから宮城県知事の山木壮一郎さん、長野県木島平村長の湯本安正さん、こういう方にお願いをしたわけでございます。
  136. 古川雅司

    ○古川委員 大臣から構成メンバーの御紹介まで御丁寧にいただきました。ただ、こうした検討会あるいは関係閣僚会議が隠れみのになって、問題の本質をどこかにそらされるのではないかという心配を持っているわけであります。  殊に私たち一番気になりますのは、もともと国が責任を負うべき社会保障関係費の補助金でありますが、これは今年度の削減額は、申すまでもありませんけれども。生活保護費千三百十億円、保育所や児童養護施設などの運営費六百六十七億円、老人ホームの運営費三百二十二億円、ほかに身体障害者の福祉あるいは母子保健、僻地医療、それから社会福祉施設の整備、こうした国民生活に直結をしていること、これは非常に大きな関係を持っているわけでございます。福祉サービスの低下はしていない、またしないと御説明になっておりますが、少なくともそうした福祉サービスの低下を招く心配は十分残っているのではないか。削減分の埋め合わせのために単独事業が縮小されるとか、これは自治体の財政事情によりましてもそういう心配な事情がたくさんあるわけでございます。  くどいようでありますけれども、一年ということについては、補助金の削減一括法の審議の中で、じゃ来年度からどうするんだということに対して、総理もついには白紙という答弁に徹しておられたわけであります。そうなりますと、大蔵、自治、厚生三大臣の覚書の六十一年度以降の扱いについては、国と地方の役割分担、費用負担の見直しなどを検討、一年以内に結論を得るという、その結論のところだけに意味があったのかなと改めて考えられるわけでございますし、自治体側は一年限りの暫定措置だ、あくまでもそう割り切って六十一年度からはもとに戻るんだという認識のもとに賛成をした、やむを得ず同意をしたという事情は、これからどうなっていくのか。これからこの検討会あるいは関係閣僚会議を通して自治省が百歩も二百歩も譲って、引き続いて削減を恒久化することに同意したとしても、果たして自治体がこれに同意ができるであろうか。これは地方自治体に、いろいろな格差はありましょうけれども、大部分と申していいかあるいは一部と申していいか、政府に対する相当大きな不信感が出てくるのではないか。したがって、この一年限りということについては、この検討に入る前に、大蔵省がまず明確に改めて確認をしておく必要があるのじゃないかな、このように感ずるわけでございますが、いかがでございましょうか。
  137. 竹下登

    竹下国務大臣 申しおくれましたが、五月三十一日、きょうでございます。きょう午後に第一回検討会を開催する運びとなっておる、こういうことでございます。  だから、一年限りの暫定措置でやった経過等を十分御説明申し上げなければいかぬことはお説のとおりであろうというふうに思っております。そして、メンバーの中にも知事さんや市長さんや町村長や入っていただいておるということも、いわば費用負担のあり方について合意ができることを期待をしてお願いをしておるわけでございます。
  138. 古川雅司

    ○古川委員 非常にお答えにくいと思いますが、その一年限りというところ、総理が白紙と既におっしゃっているのを、大蔵大臣がここでそれを覆すような御答弁は無理かとも思いますけれども、一番ポイントになりますので、もう少しはっきりと御答弁をいただければ幸いでございます。
  139. 竹下登

    竹下国務大臣 これから検討会の先生方にお願いするわけでございますから、予見を持って、紙の上に幾らか図面を書いて設計しよう、それで御審議していただこうというふうな考えはございません。その限りにおいては、あくまでも白紙の立場で、そして国会での御審議の経過あるいはまた今日に至った担当省間の議論の経過等を正確に伝えて御議論をいただく、こういうことになろうかと思います。
  140. 古川雅司

    ○古川委員 この問題でこれ以上時間がかけられませんので、次に移らせていただきます。  総理がボン・サミットで内需拡大の税制改革を約束をしてこられたということであります。何でそういう場所でそういう約束をしなければならなかったのか、これもわかりにくいところでありますが、先ほども申し上げましたとおり、こういう中で、与党内にもにわかに減税論議が盛んになっているというふうに伝え聞いております。これはいわゆる増税つきの減税論議あるいは大型間接税というような、盛んに言われてきたこうしたおまけつきの減税論議、スマートに言えばタックスミックスというような考え方で、いわゆる増税に対する抵抗を和らげるということを既に考えながら、大蔵省としては税制改正のスケジュールについて具体的な検討ないしもう作業も始めておるのではないかという感じを持つわけでございます。  以下、私が挙げることについて、もし否定されるならば、これははっきりとおっしゃっていただきたいと思うのでありますが、まずさしあたって、この六十一年度については、年金課税の強化、しょうちゅうなど酒税の強化、赤字法人の新規の課税、法人税の暫定上乗せの延長、相続税などの資産課税の見直し、印紙税の課税対象文書の拡大、さらに六十二年度、これはまだまだ先になりますけれども、いわゆる大型間接税の導入、地方消費税、これは仮称でありますけれども創設、所得税見直し、そういったことを指摘せざるを得ないわけでございますけれども、これに対してどういうお考えを持っていらっしゃるか。これは常に政府税調のことを大臣はお示しになるわけでございますが、大蔵省の代弁者になっているんじゃないか、国民の声はどの辺に反映されているのかという、多少不信感も交えて非常に不安に思っているところでございますが、以上、私が申し上げた点、ひとつ明確に御答弁をいただきたいと思います。
  141. 竹下登

    竹下国務大臣 税制改正の具体的スケジュール、これは今国会終了後、国会でなされた税制に関する御議論のすべてを税制調査会に報告して御審議、御検討をいただく考え方であって、したがいまして今度は検討作業はどういうふうに進められるか、こういうことになると、これはその後税調の主体性において議論をしていただこうということでございます。  今御指摘になりましたもろもろの問題につきましては、今日今まで税制調査会ではこんな議論がございました、こういうことは御披露できますけれども、言ってみれば、それに一つ一つ断定的なコメントはこれはやはり予断を与える、こういうことになりますので差し控えなければならないのではなかろうかというふうに今考えるわけでございます。できるだけ早く進めてもらいたいというのが政府の希望でございますけれども、相当大がかりな検討作業になるだろうという感じはいたしますので、確たることを今スケジュールとして申し上げるわけにはまいらない。  今御指摘なさいました個々の問題については事務当局からお答えをさすことをお許しいただきたいと思います。
  142. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 全般的な考え方は、ただいま大臣から御答弁のあったとおりでございますが、委員が具体的に挙げられました年金課税の問題、それからしょうちゅう税率の引き上げというのはむしろ酒税の税率全般の見直しの問題、それから法人税の暫定税率の問題はちょっと後で申し上げることにいたしまして、相続税の見直しにもお触れになりました。それから印紙税の課税範囲の見直しの問題、これらはいずれも既に税制調査会の中期答申でいろいろ検討方向なり問題点が指摘されておる問題でございます。ただ、これは六十一年度の問題になるのかどうかということについては今にわかに申し上げる段階にない、これは先ほど大臣も申し上げられたとおりであります。  法人税の暫定税率につきましては、これは六十年度、本年度で期限が参りますので、六十一年度でこれを打ち切ってしまうのかあるいは引き続き御負担をお願いするのかという問題がございます。  御案内のとおり、これは五十九年の所得税の減税を行いましたときに、その財源措置の一つとして企業に御負担をお願いしたわけでございますけれども、この問題をどうするかというのは、これはやはり六十一年度の予算編成の段階におきまして、財政事情なり経済諸般の事情を見ながらその段階で改めて判断されるべき問題であろうというふうに考えております。
  143. 古川雅司

    ○古川委員 これは先ほどの委員からの御質問にもございましたけれども、いわゆるレーガンが税制改革に着手をいたしました。これが有形無形に我が国の税制改革論議にも及んでくると思うのでございますが、細かいことは申し上げませんけれども、さっき私が言葉を挙げましたいわゆるタックスミックスというような考え方、減税と増税の抱き合わせ、そういった方向を志向していく、あるいはそういう議論の土壌をつくっていくというような意図がさっき申し上げたとおり感じられるわけでございますけれども、今回のレーガンの税制改革着手というこの報道、との事態からして、我が国における税制改革論議が早まるとか、あるいはアメリカと事情は違いますけれども、いろいろな形で影響を受けていく、その点について大臣としてどういう見解を持っていらっしゃるか、その点をひとつお示しおきいただきたいと思います。
  144. 竹下登

    竹下国務大臣 提案の内容は、古川さんもおっしゃいましたように、現段階でまだ詳細を把握しておるわけではございませんので具体的な内容をコメントするだけの準備はいたしておりませんが、レーガン大統領のテレビ演説から把握しております限りでは、今回の税制改正案は、去年の十一月末に財務省がレーガン大統領に提出した税制改革案の基本的な考え方がおおむね盛り込まれておる。中には削られておるものもございます。いわゆるレベニューニュートラル、すなわち歳入に対しては中立的、おっしゃいますようにタックスミックスという考え方。増減ゼロという表現は余り適切でございませんけれども、これによって歳入をどうするためという考え方でなく、今回の改正案の税収効果としてはおおむね変化がないから歳入に対しては中立的だ、こういうことが言えると思います。アメリカの税制は、個人所得税と法人所得税が九割でございますから、地方税は別といたしまして、したがって大胆なことだなというので興味深くこれを見ております。  きょうもどこかの新聞に出ておりましたが、日本は国会の議論などを聞いてから作業をする、アメリカはぼんと出して国会で議論する、簡単にいいますとそういう傾向でございます。したがって、国会がこれからどういう議論をしますのか。サミットのときにお会いしましたベーカー財務長官は、歳入に対しては中立的で、特別措置等がなり落としておりますから、それをやると要するに圧力がいろいろ出てくるだろう、そうするとそれに見合うものだけはちゃんと確保して対応していかなければならぬという、私見でございますけれども、私にそういう話をいたしておりました。どっちかといいますと、日本アメリカはそんな感じで議論をいたしますが、ヨーロッパは何分五〇%以上の国民負担率になっておりますから、減税したものはどこかで財源を見つけるのではなく、それだけは歳入を減すという格好で対応しなければとてもこの高負担率では耐え切れないという空気が強うございます。したがって、これによって速度がかかるとは必ずしも思いません。国会の議論いろいろこれから見てみなければなりませんから、大変興味のある問題だとは思っておるところでございますけれども、我が方はどちらかと言えば、古川さんの意見を聞いたのを報告してそれから政府案をつくる、向こうはぽんと出すという傾向があることは事実でございます。
  145. 古川雅司

    ○古川委員 先ほど大蔵省がお考えになっているであろう主な税制改正のスケジュールについて伺いまして、御答弁をいただいたわけでございますが、なかなかはっきりできない面もあると思います。特に後段で御答弁になりました法人税の暫定上乗せの延長の問題でありますけれども、これは産業界としては二年限りだから応じたという事情があるわけでございまして、それを厳守して作業に取り組むということなのか、あるいはまた合意を得てさらに延長という事態も含みとして考えをお持ちになっているのかどうか、その点をひとつもう一度御答弁をいただきたい。
  146. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 法人税の留保税率の一・三%の暫定税率の問題につきましては、当時法案を御審議いただきました段階で御説明申し上げましたように、現在一・三%の上乗せによりまして我が国の企業のいわゆる実効税率は戦後最高の水準になっておるわけでございます。朝鮮事変直後、あるいは昭和四十九年、五十年、会社臨時特別税をやりました当時の実効税率に比べましてもやや高い水準にある。したがいまして、これを恒久的な我が国の法人税率と位置づけることは適当でないということで、財政事情等も考えまして、二年間の暫定税率ということで御提案申し上げたわけでございます。  ただ、六十一年度以降、これを期限どおりぷっつり切ってしまうのか、あるいは引き続きなおしばらく御負担いただくのかは、やはり六十一年度の予算編成の過程で改めて判断せざるを得ないと現時点で申し上げておく方が率直であろうかと思います。これをどうするかというのは、くどいようでございますけれども、六十一年度の予算編成の段階で改めて判断するということになろうかと思います。
  147. 古川雅司

    ○古川委員 どうもお伺いしたことに対して明確にならないのが残念でありますが、年金に対する課税の問題もはっきりいたしておりません。共済年金、厚生年金あるいは国民年金の公的年金受給者に課税を強化していくという考え方で、一つには年金収入に対する給与所得控除の廃止あるいは縮小ということ、もう一つは老年者年金特別控除の見直し、そういったことが内容でありまして、六十一年度から給付水準の抑制が行われ、それといわゆるダブルパンチになるということで大変関心を呼んでいるところでございます。これはまた同時に、公的年金制度への不信感を非常に募らせるという大きな問題をはらんでいるわけでございます。  これは、六十一年度の実施を見送ったと一部伝えられておりますが、その点は確かなのかどうか。その理由が、総理のおっしゃる戦後税制の抜本見直しの実施が六十二年以降にずれ込むからである、そういう理由によって六十一年実施を見送ったんだというふうに聞いているわけでございますが、年金課税という方向、これは私が先ほど申し上げたような内容で大蔵省は真剣に考えていらっしゃるのかどうか、六十一年がだめなら六十二年と既に具体的なスケジュールとしてお持ちになっているのかどうか、その点いかがでございましょう。
  148. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 年金税制の問題は、これから我が国の税制を考える上で非常に大きな問題であると私どもは考えておるわけでございます。これはっとに昭和五十五年の政府税調の答申におきまして、今後の高齢化社会を考えます場合に、今後の我が国の年金税制につきまして、これは既に高齢化社会に達しております諸外国がいろいろな経験を積み重ねていろいろな税制を持っておりますので、そういった税制を参考にしながら検討すべきであるという基本的な問題の提起があったわけでございますが、一昨年の五十八年の中期答申の段階ではさらに具体的な検討の視点というものが示される段階になってきておるわけでございます。  端的に申し上げますと、現在の年金課税、公的年金課税の仕組みは、先ほど委員御指摘になりましたように、給与所得として考えられておる。同時に老年者年金特別控除がその上に上乗せになっておるわけでございますが、給与所得として年金をとらえるのは、昭和三十二年共済年金のスタートと同時にいわば過去勤務に伴う対価ということで給与所得として出発したという、多分に沿革的なものがあるわけでございますが、高齢化社会を迎えますと年金受給者は非常にふえてまいります。つまり年金という形での公的な所得移転部分が非常に大きな部分を占めてまいりましたときに、現役の働いている労働者の給与所得というものの担税力と年金所得というものの担税力とを給与所得という同列のものとして考えていくのが本当に適当かどうかという議論が税制調査会でも行われておるわけでございます。端的に申しまして、現在現役の労働者の夫婦二人の課税最低限と老夫婦お二人の年金だけで生活しておられるというモデルで見ますと、課税最低限にかなり差があるわけでございます。つまり、世代間の負担の公平をどう考えるかという問題もございます。  それから、先ほど申しましたように、年金所得をそもそも給与所得として現実に働いている労働者の所得と同じものとして考えるのがいいのか、むしろ年金所得というものを現在の所得税法の所得種類の中から抜き出しまして、年金所得の担税力をもって改めて検討するという問題もあるわけでございます。同時に、年金課税につきましては公的年金と私的年金、つまり企業年金とか任意年金との整合性というものをぜひ考えなければならない問題でございまして、いずれにいたしましても、年金課税あるいは年金税制の問題は避けて通れない検討課題であるというふうに考えざるを得ないと思うわけでございます。  繰り返しになりますが、六十一年度から実施するのかしないのかということは、先ほど大臣の御答弁にもございましたように、現段階でそれを申し上げられるような状況にはないわけでございます。
  149. 古川雅司

    ○古川委員 これも、国民の生活実感から申し上げれば、本格的な高齢化社会を迎えてお年寄りの生活に対する深刻な打撃であるというふうに受け取らざるを得ないわけでございますが、昨年九月、郵政省がいわゆる公的年金の収入だけで生活しているという方々に対して調査をいたしました。何とか大体賄えると答えたのが二七・五%、これが五十五歳未満になりますと一一%という数字が挙がっておりますけれども、かなり大きな不安としてとらえられているように私は考えております。  同じように、老人医療に定率負担制の導入を検討するということが、これは厚生大臣の諮問機関である老人保健審議会で検討されている。現行、平均して大体一・六%程度の負担が、一万円を限度額として五%の負担に膨れ上がるという内容であります。これは厚生省の所管とはいえ、厚生省予算が年々急増していっているという事態をにらみながら、大蔵省としても重大な関心を持って見ておられると思います。  こうしたお年寄りに対する負担の増大という事態がございますし、今後老人団体あるいは日本医師会等を通しでもいろいろな反対意見や反応があると思うわけでございますけれども、この点について大蔵省としてはどう受けとめていらっしゃるか、御見解を伺いたいと思います。
  150. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 いわゆる老人保健制度につきましては、同制度施行後の実績等を踏まえまして現在老人保健審議会において幅広い見地からいろいろ検討見直しが行われているわけでございます。しかし、具体的な検討の内容及び結果等については、まだ我々としては伺ってないわけでございます。  いずれにいたしましても、今、委員が御指摘のございました一部負担の問題等につきましては、この審議会の検討の結果を待って、それを見た上で十分に検討すべき事柄であるというふうに考えておるわけでございます。
  151. 古川雅司

    ○古川委員 内容は御答弁のとおりこれから詳細に審議会の答申として出てくると思うのでありますが、少なくとも方向としてはこのように示されているわけでございまして、一般に報道を通して、あるいはいろいろな団体、機関を通して老人の耳に伝わっているわけでございます。財政当局として、その点は審議会のいわば言いなりになってそういう方向をとっていくことに同意していくのか、あるいはまたそれに対して大蔵省としての意見をはっきりお述べになっていくというお考えなのか。その点はいかがでございますか。
  152. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 審議会におきましても御存じのようにいろいろ御意見が出ているやに伺っておるわけでございます。かつまた、この問題につきましては各方面いろいろ御意見等がございますので、そういうのを財政当局としても十分踏まえた上でこの問題に対処してまいりたいと考えております。
  153. 古川雅司

    ○古川委員 これと同じような問題はこれからたくさん出てくると思うわけでございます。  もう一つ挙げれば、昨年十月にスタートいたしました退職者医療制度がございます。これも今非常に大きな問題になっていることは御承知のとおりでございます。これは厚生省が加入者数の見込み違いをしたことによって市町村の国保財政がピンチになっているという実態でございます。これも大蔵省に対してお伺いをするとすれば、初めに削減ありきというような姿勢がこうした事態を招いているのではないかということが一つ考えられるわけでございます。  この退職者医療制度問題について言えば、厚生省としても今その対策をいろいろ検討しております。それは巷間伝えられているところでございますが、五十九年度、六十年度については何とか補正予算で対応措置をしたい、六十一年度以降についての救済策は特別な調整補助金を新設したい、これは当事者である厚生省自体がそういう考え方を既に示しているようでありますが、大蔵省はこれはいかがなのでありましょうか。新しい財源措置は行わないということは既に伝えられておりますけれども、そういう姿勢で臨まれるのか。もしそうであるとすれば、こうした見込み違いによるギャップを市町村の保険財政にすべて押しつけていくということになるのか、あるかは国保の加入者に対して負担を転嫁していくことになるのか。これは予算を編成した段階以来大蔵省に大きなかかわりのある問題でございますので、先ほど伺った年金課税等の問題あるいは老人医療の負担の問題、すべて問題の本質はつながってくることだと思いますけれども、財政当局としてはどのようにお考えであるか。次長の御答弁の後、大臣にも所見をお伺いしておきたいと思います。
  154. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 この問題につきましてもたびたび国会で御議論があったわけでございます。この御議論等を受けまして厚生省でも今実態調査を行っておるのも御存じのとおりでございます。したがいまして、財政当局といたしましては、その実態調査の結果を十分拝見させていただいた上で、この制度全体のあり方等を含めましてこの問題について検討してまいりたい。厚生省とも十分相談しながらやってまいりたいと考えておるわけでございます。
  155. 竹下登

    竹下国務大臣 今、次長からお答え申し上げたとおりでございますが、何さま今厚生省で調査していただいておるようでございます。いろいろな議論があるようでございますけれども、一義的にはやはり財政調整交付金ということで対応すべき問題であろう。調査結果に基づいて厚生省から協議があるといたしますならば、これは真剣に対応すべきものであると考えております。
  156. 古川雅司

    ○古川委員 時間が迫ってまいりましたので、最後に、今や流行語ともなっております内需拡大と貿易摩擦の問題、六十年度予算の編成に当たってもこれは大きな課題になりましたし、六十一年についてはさらに深刻な問題になっていくと思われますので、大蔵大臣としての御感想、また御所感をお伺いしておきたいと思います。  これはもう何百遍、何千遍と繰り返されておることでございますから、くどくど申したくはないのでありますけれども、相変わらず、いわゆる対目報復というような表現が繰り返されているわけでございまして、報復ということは、これは悪いことをしたことに対する仕返してございまして、そんなに悪いことをしているのか、質問の冒頭で申し上げました国民生活の実感からは、素人感覚からはなかなか理解できないことでありまして、これはいろいろ報道されておりまして解説も繰り返されておりますけれどもわかりにくい。経営者もあるいは労働者もいい物を安くつくって、経済界も一生懸命それに取り組んで、消費者も欲しい物も買わないでこつこつとためて、それが全部非難をされていっている。どうもやりきれない気持ちでありますけれども、そんなに日本は豊かなのかどうか、そういうことがまず気がかりになるところであります。まず最初に、その点について大臣のお考えを伺いたいと思います。
  157. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに対外経済の諮問委員会からのお答えにもございますように、そういう対外経済から考えたところの内需振興策というものを検討すべきだ、こう言われておるわけであります。  事実、今素朴な国民感情からしてよく言われる議論でございますが、勉強しますからますますいい物をつくりますし、いい物を安くつくりますから売れるんであって、こちらが売りまくっているのではなく、欲しいから買っているんじゃないか、こういう議論ももとよりございます。それから、日本人は一生懸命その国の言葉を覚えてセールスをいたしますが、相手国は日本語を大変に堪能に覚えてセールスされるような努力も欠けておるのじゃないかとか、あるいは、世界の国の中で輸入ミッションなんというのを出すのは日本だけで、それで一生懸命探すけれども適当な買う物がないじゃないか、こういうような素朴な議論もあることは事実であります。  そうして、報復とかいう言葉が使われますこと自身、それはお互い選挙のある人というのは、えてしてそういう表現を使いがちなものであるとみずからも反省しなければならぬと思っておるのでございますが、しかし要はやはり、一つは、日本の市場はフェアだ、不公平はないんだ、これの理解を徹底的に得ることがまずあろうというふうに私は思うわけでございます。それは誤解に基づくことが実際多々あろうと思うのであります。  そして、いま一つの内需の問題につきましては、やはり基本的にはよく言われますデレギュレーション、すなわち日本は国土は狭うございますし、また建物なんか地震の関係もございましたので、それは各種規制もございます。そういう規制緩和等を徹底的にやって、民間活力の環境の整備をするということに私は重点を置いてやるべきではなかろうかというふうに考えるわけでございます。
  158. 古川雅司

    ○古川委員 この対外経済の対策については、四月の九月に第七次の対策、「最近の決定と今後の政策方向」という副題をつけた対策が打ち出されておりますけれども、基本的には、外国の意見も素直に聞いて、誤解は誠意を持って解いていくということになるわけでございますが、対外輸出で大きく稼いでいるのは一体だれなんだという、まずこれは非常に素朴な疑問がございます。これはやはり、債券の運用とかそういうことだけではなくて、将来の子孫に残るような、そういう有形の形での国内での対応、使い道ができないものかどうか。財政当局としてその辺はどう考えていかれるのか。  これはまた付言になりますが、総理が舶来品の百ドル購入ということを呼びかけられました。これは一般国民としてはまじめなものとして受け取っていいのかどうかという大変な戸惑いがあるわけでございますが、その点は大臣、どう受けとめていらっしゃるのか。そんなことで事が済むとお考えになるかどうか、その点をお答えいただきたいと思います。
  159. 竹下登

    竹下国務大臣 貿易摩擦解消策ということになりますと、これは制度上で、この間法律を通してもらいました輸銀の製品輸入特別融資等が一これは五十八年の総合経済対策に基づいて製品輸入の促進を図るため輸銀融資の対象に製品が加えられ、本年四月の対外経済対策において、適用金利が引き下げられてまいりました。したがって、特定品目の場合はうんと優遇するわけでございますから、それは何であるかということは関係各省で今調整をしておるというような制度上の問題もございます。  それからこの問題につきましては、総理が百ドルずつと言うのは、これはまさに政治家の感覚で見ると、意外と各国において評価されておる。が、さてそれじゃ何が買えるか、こういうことになると、いろいろな問題がございます。買う物あるかいと言う人もおりますが、そういう素朴な呼びかけ方というのは、私は、それなりの評価はされるものだな、こういうふうにこの間もサミットにおいて感じたわけでございます。  したがって、これからは本当に先進国のみならず、いわゆる日本関係の深いASEAN各国とも、非常なシンボリックな品物もございますから、それらに対して濃密な連絡調整をお互いしていかなければならぬな。そしてそういう土壌ができましたところで、やはりいわゆるニューラウンドというものの中でまず精神的に貿易摩擦問題が薄らいでいくという方法を模索していかなければならぬではないか。と同時に、この四月九日に決定いたしましたことに基づいてアクションプログラムをきちんと各省、私の方も金融の関係ございますが、着実に実効を上げていく不断の努力をしていかなければならぬというふうに考えます。
  160. 古川雅司

    ○古川委員 同じようにこの貿易摩擦については、総理がボン・サミットで、日本はさらに市場開放を進めるというふうにこれまた約束をしてきておられます。それに伴いまして、行動計画の策定に日本全体の運命をかけるとまで明言をしていらっしゃるわけでございますが、いわゆるアクションプログラムとして市場開放行動計画というのが出てきておりますけれども、その効果はいかがなものか。  この詰めに入っていくと思いますけれども、これから各省からそういうお考えが出てくる、それを財政当局として御検討になるという運びにまずなると思うのでありますが、いろいろな提案が出てきて、直ちに大蔵省がこれに対応して検討しなければならないと考えるものが幾つかございます。  その一つは、輸入促進策として輸入機械の取得額の一定割合を法人税から控除しよう、そうした税制にかかわる問題、これは通産省から出ているはずであります。それから、日本輸出入銀行の製品輸入の金融制度の活用による輸入金融を拡充しようというのが一つございます。さらに、民間金融機関の余剰資金を、砂漠の緑化であるとかアフリカの飢餓救済のための穀物の援助であるとか発展途上国の鉄道車両の貸与であるとか、そういうもろもろの目的に対して信託基金として活用させてはどうか。これは当然税制上の優遇措置というようなことも考え方として示しているわけでございましょう。以上、今申し上げました三つは一例でありますけれども、こうした提案が出てきた場合、大蔵省としてはどう受けとめていかれますか。  さらに住宅関連では、ローンの減税あるいは土地取引に関する規制の緩和あるいは中古住宅流通の制度の改革、これはいずれも税制が誘導をしていかなければならない問題でございますので、これも大蔵省と大きな関係があると思います。  以上、いかがでございましょう。
  161. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 税制に関連する問題について二、三御指摘がございましたので、まず私からお答えを申し上げたいと思います。  まず最初に、製品輸入を促進するために特別償却とか準備金という法人税法上の優遇措置を講じたらどうかという提案がつとにあることは承知いたしておりますが、この問題に対する税制当局としての私どもの基本的な考え方は、経済の国際化あるいは開放経済に備えた内国税制のあり方としては、原則は内外無差別であるべきであるということになると思うわけであります。我が国の現状を見ました場合に、法人税はもちろんでございますけれども、各税につきまして内外無差別の原則を貫いておりまして、現行税制が輸入を阻害しておるというような状況にはもちろんない。  ただ、御提案は、何らかの優遇措置を講じて輸入を促進したらどうかという御提案であるわけでございますけれども、まずそういう税制の効果というのは一体どれほど期待できるのか。製品輸入と申しましても、必然的に海外から輸入せざるを得ないもの、あるいは国内品と外国品との選択に働くもの、これはさまざまでございまして、そういった効果を一体どう考えるのか、単に輸入関連企業に恩典を与えるだけの税制に終わってしまいはしないかという問題。それから基本的には、我が国でもかつて広範にやりましたけれども、輸出奨励税制と違いまして輸入促進の税制は各国ともほとんど例がないわけであります。これは一たんこういう税制を導入いたしますと、やはり諸外国の関心を引き、場合によっては諸外国の介入を招くおそれがあるわけでございまして、健全な国内租税政策の運用上から見まして、私どもは輸入促進税制というのは適当でないというふうに考えております。  それから、海外経済協力関係の税制上の優遇措置につきましては、現在寄附金の損金算入の制度がございますが、これは公共法人とか公益法人といったものにつきまして、原則としては具体的に大蔵大臣が個々の法人を指定いたしまして、その法人に対する寄附金が海外経済協力に使用されるファンドであるとすればそれは税制上の特例措置を講じておるわけでございますけれども、今議論されております公益信託のような格好でこれをやるという問題につきましては、私どもは詳細な検討はいたしておりませんけれども、現在の信託法上の公益信託そのままで、それをいわば公益財団的なものと考えて税制上の特例措置を講じるということはいかがか。むしろ現行の制度のままではなじまない。公益法人、そういう試験研究法人等を御利用願って経済協力といいますか、そういう国策に即した方向にお金が流れるということは、現在既に税制上そういう道が講じてあるということを申し上げたいと思うわけでございます。  長くなりますので、住宅関連税制の問題につきましては、午前中に川崎委員にもお答え申し上げましたけれども、私どもは五十八年の税制改正による現行のローン控除の効果をいましばらく見守るべきであろうというふうに考えております。
  162. 大橋宗夫

    ○大橋政府委員 金融の関係につきまして二つ御質問がございました。  一つは、輸銀の製品輸入の特別融資の制度でございます。これは先生御指摘のとおり、対外経済関係の現況にかんがみますれば、輸銀融資を活用して我が国への製品輸入の促進を図ることは、現下の政策課題として必要なものであるというふうに考えております。このような観点から、この四月に製品輸入金融制度の金利引き下げ措置を既に講じております。この際は、この利用の状況を期待しているというところでございます。  それからもう一つ、主税局長からもお答えいたしましたけれども、民間金融機関の資金を信託のような形で援助に使えないかということになりますと、御承知のとおりのことでございますけれども、民間金融機関は預金を民間からお預かりして、それを運用して利息を稼いで、元本もまた確実にしていかなければならないというものでございますので、援助のような形に使われますのには少し無理があるのではないか。これは税制上の若干の優遇措置がありましても、元本自体あるいは利息自体がまず返ってくることが前提でございますので、税制以前の問題として疑問があるというふうに考えております。
  163. 古川雅司

    ○古川委員 時間が参りましたので、最後になりますが、大臣の御所感を伺って私の質問を終わろうと思います。  ただいま内需拡大、貿易摩擦の問題で若干のお伺いをしたわけでございますが、対外経済対策をお決めになりまして、今御質問申し上げた具体的な例などでもおわかりのとおり、各省がこれからいろいろ対策を講じて一つの提案をしても、いろいろな事情でなかなかコンセンサスを得る、あるいはまたそれを実施に移していくということが非常に難しい問題があるということを痛感するわけでございますが、この対外経済対策についても、そうしたコンセンサスを得るのにかなり時間がかかるのじゃないかということをまず率直に感ずるわけでございます。それと同時に、この効果がだんだん上がっていったときに、これはまだその逆の現象として、我が国の側の経済の停滞であるとか、それに関連をして失業の増大といった、これまでアメリカを初めとしてヨーロッパ諸国等が日本に対して訴えてきたこと、そういう事態が今度日本で発生をしてくる、当然そういうことが考えられるわけでございますが、これもいわゆる素人感覚かもしれませんけれども、そういった点についてもお考えになっているのかどうか。  さらに、最近の報道で、日本における対外純資産が年内には世界一になるだろうというような報道がございました。しかし、実際に国民にとりましては金持ちの国だというような実感は薄いわけでございますし、むしろその資産のもとになった貿易による稼ぎそのものに対して外国から非難が集中しているわけでございまして、先ほどの質問で私は一言申し上げまして、一体だれがこうして貿易でもうけているのか、そういうことに対して国民がそのツケを払わされるような事態に対して大きな不満があるわけでございます。この純資産世界一というようなことにいたしましても、いい方向だととることもできますし、また大きな新しい不安の材料にもなってくるわけでございますが、以上申し上げたようなことを含めて、大臣の御所感を伺いたいと思います。
  164. 竹下登

    竹下国務大臣 素朴な国民感情として、資産世界一国といっても、実感として古川さんも私もそんな感じは決して受けていないと思います。それは、なるほど浦島太郎のようになって、目をつぶってお互い二十年前とかそういうところの環境を思い出せば、そこから比較してみれば確かに大変な成長をしてきておると思いますが、毎日毎日、徐々に徐々に上がってきておりますから、実感として――またこれでいいということはないと思います。これでいいといったときには退歩につながる。まさに限りなき理想への追求をしていかなければならぬ我々でございますので、これからもより努力を重ねなければならぬことであると思います。  今度は、仮にアメリカの国会の感覚からいいますと、日本は貿易でもうけた上に、そのもうけ分を貯金してまた利ざやを稼いでいくんじゃないか、これもまたかなり素朴な感情だと私も思うのであります。別に議論するわけじゃございませんが、しかし結果としてそういう金があるからおたくの金利が余り上がらなかったんじゃないか、こういうことも時に申しておりますし、財務省の方方は大体それはよくわかった話でございます。それだから結局は、先進国同士が絶えずコンバージェンスと言っておりますが、お互いが調和のとれた政策をとるように、またお互いが相互監視しながら調和のとれた政策をとることによってこれが世界全体のインフレなき安定成長につながっていくんじゃないか、これが結果としてボン・サミットにおける宣言の中に出ました基幹的部分ではなかろうか、こういうふうに私は考えておるわけであります。  したがって、我々も事あるごとに、昔よりよくなったからいいんじゃないか、そういうようなことは言ってもいけません。しかし、時には昔も思い出そうじゃないか、こういうことをやはり自分にも言い聞かさなければならぬし、また子孫に対しても、かつての時代というものの歴史も説明していかなければならぬのじゃないかな、こんな感じを持っております。     〔熊川委員長代理退席、熊谷委員長代理     着席〕
  165. 古川雅司

    ○古川委員 終わります。
  166. 熊谷弘

    熊谷委員長代理 戸田菊雄君。
  167. 戸田菊雄

    ○戸田委員 大臣、長い審議で本当に御苦労さまでございます。  財確法に関連して、財政再建等々の問題について、本題に入る前に若干質問をしてまいりたいと思います。  六十年度財確法の審議に当たって財政再建の進行状況をただしておきたいと思うのでありますが、政府は財政再建に二つの目標を掲げていると思います。一つは、赤字国債の六十五年度脱却です。この政府目標の達成状況をひとつ説明をしていただきたいと思います。
  168. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 今委員がおっしゃいましたように、一つの目標は六十五年度脱却ということでございます。これにつきましては、数字的に申し上げますと、その段階では毎年一兆円程度減額していくということでございましたが、本年度は七千二百五十億円でございますので、そういう意味では、六十五年度までの赤字国債の残額を年度で割りました平均値に比べますと、ぎりぎり努力はいたしましたが、数字的にはまだ若干その平均値に及ばないという状況にあることもまた事実でございます。
  169. 戸田菊雄

    ○戸田委員 今話がありましたように、五十九年度は五千二百五十億円、六十年度、今年度は七千二百五十億円、これはいずれも目標を下回っていると思いますね。五十八年度の赤字国債発行額が七兆円でありますから、これをベースに五十九年度から毎年度一兆円ずつ減らしていく、七カ年で発行額をゼロにする、こういう計画なわけですが、今話をしましたように五十九年度、六十年度、両年度とも目標額に達しなかった。その結果、六十一年度以降は毎年度大体一兆一千五百億くらいの発行減額を行わないと、六十五年度赤字国債脱却ができないということになります。これは正直言って相当困難ではないかと思うのですけれども、この見通しはどうですか。
  170. 竹下登

    竹下国務大臣 五十九年の場合は、おとといでございますか、いわゆる出納整理期間内発行が千五百億。あと、発行しないで済んだのが八百億くらいになりましょう。それを仮に足してみましても、おっしゃる数字に八百足しますとちょうど六千億ぐらいになります。ことしの場合も、赤字公債から見れば七千二百五十億でございますから、おっしゃるとおりでございます。  だが、単純平均では達しておりませんが、逐年そういう方向へ近づいていくという努力は毎年毎年の予算編成でやっていかなきゃならぬ。私は、六十五年度脱却というのは非常に難しい、困難性があるということは十分承知しておりますが、さればとて、いつも申しますように、仮に「ごろ」、六十五年ごろなんて言いますと、途端にいわゆる歳出圧力に対するところの厳しさというのが失われていくということで、旗を掲げて毎年毎年努力して進んでいくべきだ、こういう感じでございます。
  171. 戸田菊雄

    ○戸田委員 今大臣が正直な答弁をされたと思うのですが、私も全く困難ではないかと思うのです。計算しますと、六十一年度から六十五年度までの五年間、継続して五十九年度赤字国債発行減額の大体二・二倍ですね、六十年度赤字国債発行減額の一・五倍、これに大体相当するわけでありますから、ここまでまいりますと、今大臣が率直におっしゃられましたが、そういう結果にならざるを得ないと思う。非常に困難である、こういうことだと思います。  そこで、私の計算ですと五兆五十億円ですから、六十一年以降一兆円以上の減額をしていかなければいけないんですね。だから、六十年度の大体一・五倍の消化ということになります。これは可能でしょうか。どうでしょう、大臣の見解は。
  172. 竹下登

    竹下国務大臣 私は、単純平均でそれが可能でございますと言うことは難しいと思います。が、逐年その上限の方へ近づいていくという努力を進めていかなければならないというふうに考えております。
  173. 戸田菊雄

    ○戸田委員 六十一年以降六十三年度までの要調整額はどういう状況になっていましょう。
  174. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 現在、国会にお出ししておりますのは「財政の中期展望」と、それから「仮定計算例」とございますが、いわゆる財政における歳出の増加圧力というものを示しておりますのが「財政の中期展望」の方でございます。  その数字を見てみますと、要調整額で六十一年度が三兆七千三百、六十二年度が四兆八千六百、六十三年度が五兆六千七百というふうになっております。予備枠を入れました場合には、それに若干の数字が載るということでございます。
  175. 戸田菊雄

    ○戸田委員 大臣、今説明がありましたように、六十一年度三兆七千三百億、六十二年度四兆八千六百億、六十三年は五兆六千七百億円、これにさらに減額分一兆円見当プラスになっていくわけですから、いずれにしてもこの財源の調達を考えなければ、今後六十一年度の予算も編成できない、こういうことになってくると思いますね。  だから、仮に大型間接税導入など、財政運営の前提条件を大幅に変えればいざ知らず、中曽根内閣の歳出削減を中心とする「増税なき財政再建」の公約、こういうものを頑として守っていく、こういうものを条件にすれば、私は六十一年度以降毎年度一兆円を超える赤字国債の発行を減らすということはまずできないと思いますね。これはどうでしょうか、見解は。
  176. 竹下登

    竹下国務大臣 この「中期展望」では、特例公債は平均して落としてありますので、それが要調整額の上には載らないということになろうかと思います。が、それはそれといたしまして、これは大変な事態であることは事実であります。過去においても、ああして「中期展望」をお出しして、それが曲がりなりにも、三年間いろんな批判をいただきながらも、一般歳出をマイナスということでこれを埋めつつ今日来ておるわけでございますから、今後とも、やっぱり制度、施策の根本にさかのぼって、歳入歳出両面から厳しい対応をしていかなければならぬというふうに考えております。
  177. 戸田菊雄

    ○戸田委員 大臣としましても、立場上は、六十五年度赤字国債脱却は無理とか困難とか、こういうことはなかなか言えないと思いますが、正直に言われました。しかし、財政の実態について、本当に与野党が心を合わせてどういうふうにして財政再建をやっていくかということは我々野党としても非常に必要なことでありまするから、本当に建前論議じゃなくて、本音でもって私はこういった問題について検討を加えるべきだ、こういうふうに考えておりますので、これは意見を申し上げて、次の質問に参ります。  財政再建を進める目標として、政府は財政の対応力強化、こういうことを言ってきたわけであります。これは大蔵大臣もたびたび言葉にされるわけでありますが、財政の対応力というものはどういう内容を意味するのでしょう。
  178. 竹下登

    竹下国務大臣 対応力ということはまさに対応力でありまして、その硬直化したものの多くに支えられた場合、いわば機動的に対応する範囲というのは大変狭まってくる。それが今の実態ではなかろうかなというふうに思います。  確かに百三十三兆に達する見込みでございますので、十兆円を超える利子、これはもうまけてくれというわけにはいきませんし、それからこれは歳出予算の一九%を占めることになって、社会保障関係費を上回る、これは我々にとっても大変悩みでございます。そういう状態にございますから、利払い費の増高が、政策的な経費に充てる財源を極度に制約しておるわけでございます。だから、予算を組むたびに思います、初めに利払いありきと。その払った後それぞれ分けておるというような感じでございますから、その圧迫されたものが、いわゆる対応力というものの範囲を縮めておるということであろうと思います。  それからもう一つ言えるのは、かつて対応力の中で、いつでもまた必要なときには公債が発行できることも対応力の一つだという議論をしましたが、ここまで参りますと、実際問題金利上昇圧力になったり、およその限界になってしまったから、公債を仮に発行する能力があったとしても、それは後世代のツケであると同時に利払いをふやしていくだけであるということになれば、やっぱりそれだけ対応力の範囲を縮めていく、こういうことにならざるを得ないと思います。
  179. 戸田菊雄

    ○戸田委員 そこで、ちょっと六点ほど数字的なことをお伺いするのですが、今国債残高、五十五年から六十年までこの累増、どのような状況になっていましょう。それから国債費比率、それから赤字国債と建設国債の発行比率、対GNPの国債残高、建設国債のすき間率、税収比率、この六点についてちょっと説明していただけませんか。
  180. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 まず第一が公債残高でございますけれども、五十五年度が七十兆五千億でございます。逐年申し上げますと、五十六年度が八十二兆三千、それから五十七年度が九十六兆五千、それから五十八年度が百十兆円でございます。それから五十九年度が百二十二兆円、それから六十年度が百三十三兆円になると見込まれております。  それから、第二におっしゃいました国債費の比率でございますが、五十五年度が一二・五、逐次申し上げますと、一四・二、一五・八、一六・三、一八・一、一九・五となっております。  それから特例債と建設公債の比率は、今出しております。  それから、その次におっしゃっておりましたGNPに対する公債残高の比率でございますけれども、五十五年度が二九・三、三二・三、三六・一、三九・四、四一・一、六十年度が四二・三というふうになっております。  それから建設公債のすき間率でございますけれども、これは当初予算のすき間率ですが、五十五年度が〇・五、逐次〇・七、〇・四、〇・四、〇・五、六十年度が〇・五というふうになっております。  それから、これは主税局の方から本来申し上げるのが筋でございますけれども、ここにございますので私から申し上げますが、いわゆる税収比率でございますが、五十五年度が六二・〇、続いて六九・〇、七三・七、六四・一、六八・三、七三一・四が六十年度でございます。  国債の発行額全体を一〇〇といたしまして、その中に占めます特例公債の比率でございますが、五十五年度が五〇・九%、続いて四五・四、四九・九、四九・五、五〇・二、六十年度が四九・一となっております。
  181. 戸田菊雄

    ○戸田委員 大臣、今ちょっと発表されましたが、例えば国債残高で五十五年七十兆五千億、以下ずっとまいりまして六十年度百三十三兆円になるのですね。残高ずっと累増という、実に倍に近い累増ですね。それから国債費比率ですが、これも今お話しがあったように、一二・五%から一九・五%、こういうことになるわけです。額におきましても大体五兆三千百億から十兆二千二百億、こういうことになりますね。それから赤字国債と建設国債の発行比率ですが、建設国債四九、大体拮抗してきているわけです。五十五年度五一%、これは若干下がっておりますが、それはいろいろと減額に努力をした結果^若干率にして下がっている、こういうことだと思います。GNPに対する国債残高もだんだんふえてきている、二九・三%が四二・三%ですか。それから建設国債すき間率も、これは大体拮抗してきておりますが、税収比率においても六二%が七三・四%、この五年間の状況を見ましてもこういう状況なわけです。  大変な状況ではないか、こう思うのでありますが、したがってこういった問題に対する財政の対応力ですね、これが果たして弱まったのかどうなのか、強化されたのか、こういうことですが、大臣はどうお考えになられますか。
  182. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる公債依存度でございますね、この公債依存度というものが一般会計に占める比率というのが、これが本当は五十年から赤字公債発行いたしましたが、五十年は九・四ですが五十一年が二九・九でございましたから、これは一生懸命でやって二二・二まで、その点が一番成績がいいと言うと表現がおかしいのでございますが、いつも見たときにそういう感じを持ちます。  それから、税収比率がここのところ若干七〇%を超したということがございますが、しかし一方、やはり国借費というのが何分一九・五にまでなって、そして公債残高というものがGNP比率の上昇よりも上ってきておるわけでございますから、この辺はやはり対応力がますます厳しくなったと言えるんじゃないかというふうに思います。
  183. 戸田菊雄

    ○戸田委員 今大臣もお認めになったのですが、結局弱体化、衰弱化、こういうものが急速に進んでいるということが言えると思うのですね。だから、本当の意味財政の再建、対応力の強化あるいは健全化、こういう財政体質のいわば強化という点で役立っているかどうかということなんですね。まさに私は、そういう点で体力増強に有効な機能はしてないんじゃないか、こんなふうに考えているのですが、こういった観点から本来の対応力強化というようなことに持っていくためにはどういう諸措置をやったらいいのか、具体的な内容等があれば対策、これをお聞かせ願いたいと思うのです。
  184. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、例の八〇年代後半の「展望と指針」というものに現在のところ尽きると思うのであります。そして、それに基づいての財政改革の進め方ということになりますと、やはり六十五年にまず赤字公債脱却、そして逐年対GNP等、いわゆる残高の比率を今の六十五年の仮定計算や中期試算も建設国債は横ばいでずっと出す試算で御議論いただいておるわけでございますから、したがってやはりGNPに対する残高を滅していくという二つのことに毎年毎年努力していかなきゃいかぬ。  ただ、つくづく思いますのは、五十四年が公債依存度が三九・六でございましたか、四割借金すると人が金を貸してくれなくなると言うが、本当だなとあのとき思いました、国債が売れないような状態になったことがありましたが。そこで、あのときから縮めようというので、五十五年にまず一兆円の減額ありきということから始めていったわけでございますけれども、五十六年、五十七年、大変な国際同時不況の中で決算調整資金から借りて赤字を埋めて、そしてまた五十七年は補正予算で三兆の赤字公債を発行して埋めたというようなことから、また今度は目標を延ばしながら、今御指摘を受けつつも、赤字公債で言えば五千数百から七千二百五十、こういって逐年努力していく。これはしみったれたようでございますが、この努力はやはり執拗に続けていくしかないということではなかろうかと思います。
  185. 戸田菊雄

    ○戸田委員 今まで出された中期試算、計算例、これはずっとあるわけですけれども、このとおりいっていないんですね。だから、実態を踏まえた全像というものを、やはり国民が安心できるようなそういう再建方策というものを示すべきじゃないかと思うのですね。これはなかなか難しいでしょう。難しいですけれども、やはり踏み込んで、とにかくこのまま推移するならば国債残高だけでずっと――いつか大臣が、将来これは二十年ぐらいになると二百九十兆円ないし三百兆円を超えるというようなことを何かの対談で言われたことありましたけれども、いずれそんな状況になってふえていって、それは全部国民が負担することになるわけですから大変不安な状況が醸し出される。こういうことですから、まず本当に実像としてそういうものを、なかなか困難ですけれども指し示すべき必要がもう現段階で来ているのではないだろうか、私はこんなふうに考えるのですが、その辺の構想は大臣どうでございますか。
  186. 竹下登

    竹下国務大臣 そういう考え方に基づきまして、ことしもまたあの冊子をつくりまして、事ほどさように大変だということを国民の皆さん方にPR――PRと言ってはなんですが、理解を求めているわけでございますが、やはり日本国民というのは知識水準も世界で一番高い国民でございますけれども、いささか高度経済成長になれた体質を私も含んで持っておるのじゃないか。そういたしますと、高度経済成長感じがなかなか捨て切れない。その意識転換というのは大変なことだと思いますので、私も事あるごとに、一兆円は六十年間子や孫やひ孫に至るまでに三兆七千億になります、昭和六十五年に百六十五兆になればこれは五百十兆になります、こういうことを言って歩いておりますが、時には、そうはいっても何とかしてくれるのじゃないかというような国民の方もおられないとも限らない。そうあってはならぬと思って、最初おっしゃいましたように、与党だとか野党だとか、これはたまたま今政権を私どもが担当しておるのであって本来は政権交代はあり得ることでありますから、野党になれば我々もまたいわば回復力を持つだけの努力もしなければならぬし、本当は共通の土俵で財政再建ということもいろいろ議論してみたいな、しかしまたいろいろな背景がありまして、心ならずも時にはコンセンサスが得られない問題もあるかもしれませんけれども、本当はそうした状況にあるなということをいつも感じております。
  187. 戸田菊雄

    ○戸田委員 国債整理基金関係に入りたいのですけれども、今回の国債整理基金特別会計法の改正案は、五条ノ二を挿入いたしまして、翌年度の国債償還のための前倒しの借換国債の発行ができるようにした。これは財政法上からいっても、財政運営の大原則である年度独立の原則あるいは年度区分の原則、こういうものに大きく修正を加えるものじゃないかと思うのですが、その法的な見解はどうですか。
  188. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 今季負御指摘のように、今回の年度越えの前倒し発行は、会計年度独立の原則の例外になるわけでございます。独立の原則は財政法第十二条に規定があるわけでございますけれども、しかしこの会計年度独立の原則につきましては、いかなる場合もこの例外を認めないということではございませんで、合理的な理由があれば制度的に年度越えの措置をとることも可能であるということでございます。  具体的に申し上げますと、例えば歳出予算の繰り越しの規定がございます。明許繰り越し、事故繰り越し、それから継続費の年割り額の逓次繰り越しというのがあるわけでございます。そのほか歳入面では過年度収入というものが会計法九条に規定がございますし、前年度剰余金の繰り入れ、これも例外になるわけでございますけれども、財政法の四十一条にございます。歳出面では過年度支出で、会計法二十七条にあるわけでございます。  そこで、しからば今回のこの年度越え前倒し発行はその合理的な理由に当たるのかどうかということでございますけれども、これも委員御存じのように、五十年度以降の大量に発行いたしました国債の償還期が六十年度以降参るわけでございます。巨額の借りかえあるいは現金償還と申しますかを行わざるを得ないわけでございますが、特にそれが特定月、例えば年度初でいいますと五月に二兆、三兆というのが集中的に来るわけでございます。そういたしますと、その償還のためのお金を借換債によって準備しておかなければいかぬわけでございますから、どうしてもその借換債の発行を有利に、金融情勢に応じて弾力的に発行していくということになりますと、五月のためのものを四月あるいは五月に入ってから急にこの資金を調達してそれに対応するということになりますと非常に無理が生じるわけでございますので、やはり金融が比較的緩んでいる前年度末の二月とか三月とかから発行して資金を調達して、徐々に積み上げてまいりまして五月の大量償還に備えるという仕組みがどうしても必要であるということから、今回これにつきまして年度越えの前倒し発行をお願いしているわけでございます。  しかし、これを恣意的に幾らでも発行できるということでは問題であるわけでございますので、これにつきましては、その限度額は予算をもって国会の議決を経るということになっております。したがって、そこに歯どめもあるわけでございますので、そういう意味で会計年度独立の原則の例外ではございますけれども、必要な制度であろうということで、今回法案の中で御審議を願っている次第でございます。
  189. 戸田菊雄

    ○戸田委員 今次長から説明があったように、原則はできるだけ守っていただきたい。殊に今回条文で「予算ラ以テ国会ノ議決ヲ経タル額ヲ限度トシ」、こういうことになっておりますから、六十年度は一兆円ということですが、しかし六十年代各年度はいずれにいたしましても償還額が急増していくわけですね。そうすると予算の限度額を大きく引き上げていく可能性が出てまいりますね。そうするとやはり問題が出てくるんではないだろうか。財政紊乱というようなことになりはしないか。この辺の見解はどうでございますか。
  190. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 今の御指摘の点でございますが、ことし一兆円といたしました根拠を先に申し上げた方がいいと思うのでございます。  ことし一兆円にお願いいたしましたのは、来年度の四、五月分の償還額が三兆五千億あるということで、これを三、四、五の三カ月で平準化いたしますと一兆二千億円程度になるという点が一つございます。それから四、五月分の償還額に六十年度末の基金残高、これは九千九百億円ほど見込まれるわけでございますが、これを考慮に入れまして平準化いたしますと八千億程度になる。それからさらに、過去の実績によりまして一月から三月までの月平均の発行額が大体七千億くらいずつ発行させていただいておるというようなこともございまして、一応ことしは一兆円ということでお願いいたしたわけでございます。  さらにそういうふうなことから考えてみますと、六十二年度の四、五月分の満期到来は三兆一千でございます。それから六十三年度が三兆六千、六十四年度が三兆七千、六十五年度は三兆円ちょうど、六十六年度になりますと一兆六千ということに減ってまいるわけでございます。したがいまして、六十一年度の四、五月の償還額に比べまして六十二年度以降、その限りにおきましてはそれほど急増しているわけではございませんので、私どもといたしましても、今先生御指摘の点よく踏まえまして、乱に流れることのないように客観的な根拠に基づいた額をお願いいたしたい、こう考えておるわけでございます。
  191. 戸田菊雄

    ○戸田委員 例えば資金運用部資金、郵貯、大体百兆円ですか。これの国債に向けている分をずっと拾い上げてみたのですが、五十六年度は三兆五千億ですね。五十七年度が三兆五千億、五十八年度が三兆七千億、五十九年度が三兆六千億、六十年度になりますと五兆円ですね。総額で大体二十兆円ぐらい出ているわけですよ。だから、こういった新規引き受けの推移を見ましても、六十年度発行国債の大体四三%、これが資金運用部資金で受け取っていることになるわけですね。これは結局政府にとっては便利がいいですからそういうことになるんでありましょうが、それだけに国債償還のための借換債発行ということは厳密に運用していかないと、惰性に陥りますとますますこういったことで累増、増額、こういうことになりまするから、この辺はやはりぴちっとした節度を守っていただきたいというように私は考えるわけですが、これはどうですか、大臣
  192. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 私ども運用部資金の運用につきましては、これを国と地方と財投機関の三者にバランスよく配分することを使命といたしているわけでございますが、その場合にやはりどこに資金需要の実態があるかということを勘案いたしておるわけでございます。     〔熊谷委員長代理退席、熊川委員長代理     着席〕  ことしかなり国債をふやしました一つの理由は、最近は割と財投機関における資金需要が鈍ってきております。一方で御指摘のように国の資金不足が非常に多いわけでございますので、余裕があれば国の方に回すのが適正な資金配分ではないかというような気がいたしたのと、それからもう一つは、余り国債が市中に出ていきますと市中の市場を混乱さすというか、あるいは私どもの立場からいいますと国債の価格が、値が下がってしまう、金利が上がってしまうというようなこともございまして、そこは余裕があれば運用部で消化した方が全体の金融・証券市場の秩序維持にも役立つのではないだろうかというような点もございまして、かなりふやしたわけでございますけれども、一方で今御指摘のように、やはり私どもが一生懸命市中で苦労しながら出すことに歯どめみたいなものがあるわけでございますから、余り運用部の金で安易にどんどん引き受けていくというのは問題でございます。この辺は同と地方と財投機関のバランスを十分とって今後対応してまいりたい、こう考えております。
  193. 戸田菊雄

    ○戸田委員 今回の法案の十六条で、民営化に伴う電電株、たばこ産業の株の取得、これを売却することで国債償還の財源づくりに充てる、こうなっておるわけでありますが、そこで株式売却の方法ですね。これは大蔵省としてはどういう考えでしょう、大臣。なかなか意味深のところがありまして、今まで何回か皆さんが本問題に触れたようでありますが、発表のできる範囲でひとつ考え方を教えていただきたいと思います。
  194. 竹下登

    竹下国務大臣 これはまさに結論からいいますと、現段階では白紙でありますと言わざるを得ない。と申しますのは、それはだれにもいろんな議論がございます。最初考えましたのは、こういうふうにして処分をいたしますということを審議の前に決める、それも一つの方法であろうと思いますが、何分この問題については初めてのことでございますから、学識経験者はいないわけです。したがって、私がよくとる手法でございますが、いわば国会の議論をまず土台にして、その後民間有識者の意見を聞いたりして、そうしてどういうふうにして進んでいくかということをやらざるを得ないではないか。今まで日本合成ゴムやら電源開発やら例がないわけじゃございませんけれども、ちょっとそれそのものを参考にするには大変な違いがございますので、結局現段階においては白紙だということになっていくんじゃないか。少しでも紙の上に設計図が描かれるという状態にまでまだ至っていないというのが率直なお答えになろうかと思います。
  195. 戸田菊雄

    ○戸田委員 これは百一国会、五十九年の七月十八日水曜日、衆議院の逓信委員会、大蔵委員会、社会労働委員会の連合審査会議録でありますが、ここで私は、民営化に伴っての各般のそういった処分等の問題についても大臣の見解を承っているわけであります。同僚がその点ではいろいろ触れているようですから、これは割愛をします。  そこで、NTTの関係者来ておると思いますが、次のようなことについてひとつ説明をしていただきたいのです。  民営化移行後の事業計画の収支見通し。一つは支出増、どのくらいあるか。中身としましては税負担の問題、それから各種社会保険料、特に雇用保険、労災保険、それから設備負担金、退職引当金等々、それからもう一つは道路占用料。一遍にお伺いします。           、  第二番目は収支差額。経営利益、配当、内部留保、それから税引き後の利益、配当後の利益等々はどういうことになりますか。  それから最後に三点目ですが、固定資産、それから固定負債、負債総額等々についてひとつ説明してください。
  196. 寺島角夫

    寺島参考人 いろいろお尋ねがございましたのでお答えが前後するところがあるかと思いますが、御容赦いただきたいと思います。  まず、御案内のとおり、六十年度の当社の事業計画につきましては、法律によりまして郵政大臣の認可を必要といたします。したがいまして、この認可申諦を既に郵政大臣に提出をしたところでございまして、まだ認可に至っておらないわけでございますが、この事業計画におきまして六十年度の私どもの収支の見込みというものを出しておるわけでございますけれども、それによりますと収支の差額、いわゆる経常利益といたしまして約二千億を現在想定をいたしておるところでございます。  それで、その二千億を想定いたしますにつきましては、当然ながら、御指摘ございましたように公社から新しい会社になりましたことによって生じますいろいろな負担がございます。まずこの点をお答えさしていただきたいと思いますけれども、税の関係で申し上げますならば、事業税、道路占用税あるいは社会保険料といったようなものがかかるわけでございまして、このほかに経常利益にかかります法人税がございます。これは実際に決算をしてみなければわからない数字でございますけれども、先ほど申し上げましたような二千億というものを前提といたしまして一応のカウントをいたしますと、総体で諸税負担というものが約二千億円程度になるのではないかというふうにカウントしておるわけでございます。  そこで、配当についてもお尋ねがございましたけれども、御案内のとおり、配当と申しますのは経常利益が確定をいたしましてからのものでございまして、現在幾らにするということを何ら決めておるわけではございませんけれども、大まかな私どもの気持ちといたしましては、上場されております企業並みの配当をできるように努力をいたしていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  そのほかに社会保険料といたしまして約二百億円、それから退職給与引当金として二百億円というものが新しく税負担になるものというふうに考えております。それから道路占用料諸税で大体四百億円でございます。先ほど約二千億と申し上げました中には、ただいま申し上げました道路占用料諸税が約四百億円、それから社会保険料で二百億円、それから事業税で三百億円、それに先ほど申し上げました二千億というものを一応ベースにいたしました法人税、住民税で約千百億円、トータルで約二千億円、こういうカウントでございます。
  197. 戸田菊雄

    ○戸田委員 今説明がありましたように、民営化移行後において新しい支出増は税負担において約二千億。この二千億のやつは国税と地方税と半々でしょう。一千億見当でしょう。これは資料もいただきましたけれども、区分けがない。
  198. 寺島角夫

    寺島参考人 ただいま申し上げました数字のうちの国税と地方税の割合でございますけれども、二千億のうちから社会保険料約二百億円を引きますと千八百億円程度になるわけでございますが、そのうち大体国税が千億円強、それから住民税等の地方税が七百億円程度増負担になるものというふうに考えております。
  199. 戸田菊雄

    ○戸田委員 今年度から民営化が発足をしまして、一応従来納付金制度でもって納付してきましたけれども、大体五十七年度ベースでもっていろいろ検討した際にはその数字より若干下回っているのですが、今の説明によると税負担だけで二千億、こういうことになりますね。それから各種社会保険料でもって二百億、道路占用料四百億、それに退職引当金二百億、それから設備負担金というのがあるはずですが、そういったことをずっと考えますると相当な負担増が出ておるわけですね。そこで、国税関係、税金の関係で何かの節減方式ができないかどうか。  今、実効税率五二%が一%上げて暫定で来ておりますが五三%、これでいくわけでしょう。地方税の方は、法人住民税、それから法人事業税、固定資産税、こう決まっているわけですが、これは発足に当たってその耐用年限その他が決まっているわけですから、税額は当時発足するときは一六・九四%、こう言っておりましたが、それは間違いないでしょうか。
  200. 湯浅利夫

    ○湯浅説明員 一般論として申し上げまして、法人住民税と法人事業税を合わせました税負担は、実効税率は仰せのとおり一六・九ぐらいになっております。
  201. 戸田菊雄

    ○戸田委員 そこで主税局長、この節減方式、これは何かうまいことありませんか。NHK方式というのがありますね。あれは事業所とか公共用の放送電波その他、あるいは技術研究開発等々の問題については、若干税金で特別対象にしてやっているケースがあると私記憶しているのですが、それはどうですか。地方税の方ですかね。
  202. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 電電株式会社の税負担の問題でございますが、これは地方税も同様だと思いますけれども、国税につきましても、これはやはり商法上の会社でございますから、法人税法の問題であるとすれば普通法人と同じ税負担をしていただくということになるわけでございます。先ほど、いろいろな負担金の中で退職給与引当金とおっしゃいました。これは恐らく繰入額の話でございまして、これは別に負担の話じゃなくて、むしろ損金に算入されている額の話だろうと思いますが、いずれにいたしましても、電電株式会社特有の節減ということを考えるのが適当かどうかというふうに私どもは率直に考えるわけでございます。  ただ、昨年法律ができまして、発足の時点で、例えば今議論になりました退職給与引当金にいたしましてもあるいは不動産の取得時期の問題にいたしましても、これは公社時代の実態をそのまま新会社に移行するに当たって税負担面で余計な負担がかからないように、これは当時の公社当局なり郵政省とも十分お話し合いもいたしまして、税制上の整備はいたしておるわけでございます。
  203. 戸田菊雄

    ○戸田委員 これは地方税の場合はどうでしょう。そういう方法というか、検討対象はございませんか。
  204. 湯浅利夫

    ○湯浅説明員 基本的にはただいま国税の方でお答えになったとおりでございますが、地方税につきましては特例措置といたしまして幾つか設けているわけでございます。  一つは固定資産税でございます。固定資産税につきましては昭和六十一年度から一般の法人のように課税になるわけでございますけれども、電電公社から引き継いだ一定の基幹的な設備につきましては、五年間、課税標準を二分の一とするという特例措置を講じているわけでございます。こういうことで、経過的な、税負担の急速な増加を緩和するということには役立つのではないかと思うわけでございます。  また、非課税措置として、これは恒久的な措置と考えておるわけでございますが、特別土地保有税あるいは事業所税におきまして、第一種電気通信事業の用に供する一定の資産につきましては非課税扱いにするということにしております。電電株式会社は第一種電気通信事業を営む事業者でございますから、そういう事業を行う場合には特別土地保有税、事業所税が非課税になるという措置は今後講じられるわけでございます。
  205. 戸田菊雄

    ○戸田委員 なかなか難しい問題だろうと思いますけれども、各般の、例えば年金改正その他いろいろあるわけですが、軌道に乗るまで、経過措置として一応償却年限の短縮とかあるいは免税措置とかあるいは利子の特利、こういうことを設定してやられる、そういったケースは今までもあったわけです。だから、全面的に将来までということじゃなくて時限で結構ですから、三年ないし五年、経過措置としてそういう面を考えられないか。殊に来年三月末で初年度決算が出るわけですから、この初年度が出てどういう経営状況になるか、そういうものを踏まえて、本問題等について償却年限の短縮あるいは利子関係、それから減税等々で免税措置というものを検討できないかどうか。これはどうでしょうか。
  206. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 なかなか難しい御質問でございますけれども、まず耐用年数の問題について御説明を申し上げますと、これは公社当時から料金算定のための原価計算というのを非常にきちんとやっておられまして、この三月に電気通信関係の構築物、機械設備等につきまして新しく耐用年数を設定させていただいたわけでございますけれども、それは公社なり郵政当局と私どもの原価計算を審査する者との間で十分協議をいたしまして、きちんとしたもので業務の実態に即して定めさせていただいておると考えておるわけでございます。  委員おっしゃるように、特定の期間耐用年数を短縮するというのは、例えば租税特別措置でそういうことを行っている例が部分的にございますけれども、それはあくまでも国の施策として、そういった特定の産業なり特定の分野への投資を奨励するというような観点からそういう手法をとるわけでございまして、これはたばこ会社も同じでございますけれども、移行期間の税負担を軽減するために耐用年数を短縮するというのは、どうも税制上の措置としてもなじまないし、そういった政策をとるのが適当かどうかという大問題があると思うのでございまして、私どもはどうもそういう措置は余り好ましくないというふうに考えておるわけでございます。  同じような観点から、例えば利子について、電電株式会社だけに特定の期間利子部分を免除するという例はないわけでございますけれども、その種の税の軽減措置をあえてとる必要があるのかどうか、私どもはそういう必要はないんじゃないのかというふうに考えておるわけでございます。
  207. 戸田菊雄

    ○戸田委員 地方税関係、見解はどうでしょう。
  208. 湯浅利夫

    ○湯浅説明員 法人住民税あるいは法人事業税につきましては、法人税の所得の計算に準じて計算を行うということになっておりますので、ただいま国税の方から御答弁ございましたように、地方税独自でやることはなかなか難しゅうございますし、全体としてはなかなかこれは難しい問題じゃないかと思うわけでございます。
  209. 戸田菊雄

    ○戸田委員 僕はちょっと聞いたんですが、武蔵野に電電の技術研究所があるのですね。今度これが事業税でもって二十五億ぐらいかかるというのです。これは聞いてませんか。これは武蔵野市に入るわけですからね。
  210. 湯浅利夫

    ○湯浅説明員 ちょっと詳細調査してみないとわからないのでございますけれども、ただいまのお話は恐らく固定資産税の話ではないかと思うのでございます。固定資産税につきましては、先ほど申し上げましたとおり、昭和六十一年度から一般法人並みに課税が行われるということになっておりますので、そういうことで恐らく新たな課税関係が出てくるのではないかと思うのでございますけれども、ちょっと詳細を承知しておりませんので、そういうことでひとつ御勘弁願いたいと思うわけでございます。
  211. 戸田菊雄

    ○戸田委員 恐らくこれからいろいろと作業を進められるでしょう、耐用年限数とか。それで固定資産税がいろいろ決定されていく、こういう状況だと思うのです。今の技術研究開発等々の武蔵野の関係、わかったら資料を私にいただけませんか。いいですか。
  212. 湯浅利夫

    ○湯浅説明員 課税関係の問題になりますと、御案内のとおり税務職員には守秘義務が課せられております。特に地方税の場合には自治省が課税主体ではございませんで、あくまでも地方団体が課税主体ということになるわけでございますので、具体的な課税の状況を地方団体から聞き取るということはなかなか困難な面もございます。むしろ課税をされる方からいろいろと御調査された方がよろしいのではないかというふうに考えるわけでございます。
  213. 戸田菊雄

    ○戸田委員 しかし、資料を出すことは別に問題ではないでしょう、資料を出すことは。委員長、ちょっと決めてください。
  214. 湯浅利夫

    ○湯浅説明員 その内容が課税資料なのかどうかという点についてちょっと私ども判断がつきかねますので、よく調べて先生にまた御説明させていただきたいと思います。
  215. 戸田菊雄

    ○戸田委員 今、常務の説明がなかったのですが、最初に私は三つの大綱について質問したのです。こちらに数字を持っていますが、若干違うと思います。五十七年決算ベースで来ているが、恐らく常務の方は五十八年ベースで来ていると思うのですね。だからちょっと違うかもしれませんが、私の持っているのは収支差額が三千七百億円前後。それから経営利益は、資本金七千八百億円ですから配当は大体八%ないし一〇%、こういう見積もりだったと思います。ただ内部留保は数百億円、こういうことですが、これはどのくらいになっておりましょう。
  216. 寺島角夫

    寺島参考人 六十年度の結果についてのお尋ねかと思うわけでございます。先ほどもお答え申し上げましたように、六十年度は一応現在のところ経常利益で二千億円程度というふうに私どもは考えておりますけれども、これは決して固定をして考えておるわけではございませんで、当然のことでございますけれども、年度の経営執行の中で収支ともに最大の努力を傾けましてさらにいい数字を出していきたい、これは私どもの当然の義務であろうと考えておるわけでございます。それの結果によって配当という問題は議論さるべきことでございまして、現在のところ配当を幾らにするかということについては、まだ全く白紙と申しますか、何も決めておらない状況でございます。
  217. 戸田菊雄

    ○戸田委員 税引き後の利益ないし配当後の利益――これは五十七年ベースでもって私が百一国会の連合審査でお伺いしたときには、大体一千億、二千億、三千億と、三千億でいった場合にはおおむね五百億円見当だ、こういう回答だったと思います。だからいずれにしても利益は出るわけです。出す方としては努力はされておるのですが、出た場合には、電電の考えとしてはサープラスはいわゆるお客様に還元していこう、こういう方針のようです。具体的には長距離電話料金を下げていくとか、僻地地帯に電話を新設するとか等々でやっていくわけですね。そういう方向には変わりないのでしょう。
  218. 寺島角夫

    寺島参考人 料金に触れたお尋ねでございましたけれども、御指摘のとおり、私ども料金の中でもとりわけ遠近料金の問題、いわゆる遠近格差が諸外国に比べましても大変高いという点は大きな問題だと認識をしておるわけでございまして、この線に沿いまして過去三、四年間いろいろ値下げを行ってまいりました。御案内のとおり、一対七十でありましたものが現在一対四十まで下げてきたわけでございますけれども、なおこれで問題解決をしたというふうにも考えておらないわけでございまして、今後とも経営努力を重ねまして、財政のゆとりと申しますか財務体質を健全化いたしまして、それで生じますゆとりをもちまして、料金の問題につきましては、まず遠近格差をさらに縮めていきたいということを当面の一番大きな課題として考えておるわけでございます。
  219. 戸田菊雄

    ○戸田委員 そこで、結局民営化発足時に、固定資産として九三%、九兆円超、固定負債が五一・七%で、これは五十七年決算ベースですが、五兆二千九百五十五億円、それから利子等の金融費用が十一億円、元利金支払い年間一兆円、負債総額は五兆六千三百五十九億円、大体このくらい多く負債を持っているのですね。ですから、これから返却というと、年に大体一兆円ずつ返していかなければならない。だから大臣、ここはひとつ仮に株の売却益ですね、その一部をこういうところに補てん策はないものでしょうかね。何かその辺の手法はいかがなものでしょう。
  220. 竹下登

    竹下国務大臣 この問題、やはり負債も資産もそれをそのまま継承しておられる会社でございます。そしてまた世界に冠たる技術も継承しておられる。そういうことになりますと、私も最初連合審査等で議論をしておりましたときに、経営者としてはあるいは労働者としては、労使ともという意味でございますが、素朴に最初は負債に充てるべきだ、充てたいという気持ちにおなりになるのは、これは実によくわかる話だと思います。しかしいろいろその辺を議論した結果、やはりこれは国民共有の財産だ、したがって国民共有の負債の償還に充てよう。そして、いわゆる独占体制で債務も債権も高度な技術もすべて受け継いでいかれるということになりますと、まあ新たな競争やいろいろな難しい問題、不採算部門も継承されるわけでございますけれども、新たに参入する人はまた資本調達から全部やっていかなければいかぬということになると、この問題は、気持ちはよくわかりますが、現実にいわば国の財産を補助金として出すという結果になるものですから応ずることは結果としては難しい、こういうお答えをせざるを得ないと思います。
  221. 戸田菊雄

    ○戸田委員 そこで私たちもいろいろ検討しまして、一つは、来年度以降ですから、六十一年度ですから、そんなに急いで国債整理基金繰り入れ方式をとらなくてもいいのではないか、こういう考えがありました。したがって、この法案そのものを修正削除するという修正案を出してはどうかというようなことも考えましたが、これは現実なかなか難しい問題ですから、我々としては一応内容の整備でいろいろと具体的な提案をしていきたい、こう思っておるわけでございます。  そこで、非常に微妙な、難しい問題ですから回答は要りません。私たち考えることをひとつ申し上げておきたいと思います。  原則的に、私たちは売却益は主として電電債の償還に充てるべきだ、こう考えておる。このために国債整理基金特別会計法改正案に対して、原案から電電株式に関する部分を修正削除する、これは法務省ともいろいろと相談をいたしましてそういう案もありましたが、極めて簡単ですが、これは現実なかなか無理であろうということですからやる気はないんでありますが、そういう考えもいたしたわけでございます。  それから、株式売却のあり方等についてですが、これは利権防止、特定の個人や法人への株式の集中、こういうものを規制してもらいたい。不明朗な動きというものを遮断して、ガラス張りの中で行ってもらいたい。それから二番目として、株式売却のあり方等については、資産形成と国民の共有財産にふさわしく株式を広く国民が所有できるようにすべきであろう。また、安定株主、経営の民主化など、既に多数の企業で実績の上がっている社員持ち株制度等々も配慮されてはいかがでしょうか。それから、株式の売却は一遍にやっていくわけじゃございませんから、二、三年、少なくとも一年くらい凍結をして、その間初年度の決算状況その他を見まして、会社の財務諸表や決算書の状況を参考にしながら、十分誤りのない対応措置をとるべきではないだろうか、こういうふうに考えております。それから株式の売却益、配当益の使途については、国民の負担によって資産形成された経緯にかんがみて、電電債の債務償還、電気通信事業の研究開発、福祉の充実など、国民に還元される方式で一考すべきではないだろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。  そこで問題は、今までいろいろとこういった民営化した例というものがあるわけですが、電力会社、これもいろいろとまちまちでありますけれども、私の所属する仙台の東北電力、ここでは従業員持ち株制というものをつくっておりまして、一定割合をそこに売却をいたしまして、それで従業員持ち株会で、労使共同責任でこれをやっているケースがございます。だから、もしそういう方式でできるならば、イギリス方式じゃないけれども、各般の検討を加えられて、なおかつ、そういう問題について電電と専売については御一考を願いたいものだというふうに考えておるわけでございます。さらに、税金、利子、配当あるいは今の償却年限等々の問題についても何らかの軽減措置、これは暫定的な経過措置として、決算が済んだらその内容等を検討して一考していただきたいものだというふうに考えております。これは要望として一応申し上げておきたいと思います。  これら非常に重要な問題が前途に控えておるわけでございますが、五月八日、政府に電電及びたばこの株式が引き渡されて、国債整理基金が取得する分は電電株五千二百億円、たばこ株五百億円、こういうことになっております。そこで、株式の売り出し価格、これも実際はなかなか難しいのですが、どのくらいを考えているか。ある筋では簿価二十一万何がし、こういうはじき方をした人がおりますけれども、この辺の問題と、それから三分の二国債整理基金繰り入れなんですから、計算をしますと、七千八百億ですから五千二百億見当がいずれにしても入る。例えば全くの試算ですけれども、五倍に売れるということになると二兆六千億何がし、十倍ということになると五兆二千億。できるだけ政府は高く売りたいということになりましょう。しかし、こういうものの補てん策で、これを国債償還の財源に充てるということになっても、これだけでは満足するくらいの国債償還財源ということにはなっていかないのじゃないのか。その辺の見解はどう大臣はお考えでしょうか。
  222. 竹下登

    竹下国務大臣 値決めの問題でございますが、この値決めの問題がそれこそお答えできるところまで勉強も何もしていないというのが実情です。結局、そういうことも含めて有識者の意見を聞きながら、これから慎重に対応しなきゃならぬ。したがって、国会でありました議論、要望を含め、そういうものを正確に整理して議論の土台に上げていただかなきゃいかぬ問題だと思います。  それで、一つ言えますことは、民営にしたというのは、可能な限り早く民間人が株を持つ必要がございますね。銭金の多寡の問題は別として、そういう問題が一つあります。そして、当然財政当局としてこれが国民に国損を与えるようなことがあってはいかぬという二つの問題で、本当にたびたび言いますように白紙と言わざるを得ないのだろうなと思っております。  それから、赤字公債が昭和六十五年に仮に六十五兆になったといたしましても、あるいはそのほか建設国債も入れれば百六十五兆になったといたしましても、電電株だけが償還財源であるとは考えておりません。
  223. 戸田菊雄

    ○戸田委員 参考までに伺っておきたいのですが、六十年度から七十年度まででいいですが、現金償還額、これはどのようになりましょう。
  224. 寺島角夫

    寺島参考人 先ほど冒頭のお尋ねに私答弁漏れがございまして、大変失礼をいたしました。  長期債務の数字についてお尋ねがございました点をお答え申し上げますが、五十八年度末におきまして、トータルで五兆一千五百四十三億でございます。五十九年度につきましては、現在決算の取りまとめ中でございまして確定をいたしておりませんが、五十八年度に比較をいたしまして約六百七十七億円程度借り減らしになりまして五兆八百六十六億見当、これはまだ数字が確定いたしておりませんが、大体こんな見当というふうに考えて索ります。
  225. 戸田菊雄

    ○戸田委員 NTTの皆さん、結構です。  それじゃ次長、今の質問。
  226. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 昭和六十年度から七十年度までの国債のネット償還額の見通してございますけれども、これにつきましては本年一月に「国債整理基金の資金繰り状況等についての仮定計算」として国会に提出いたしました。それに基づきまして申し上げるわけでございます。ネット償還額といいますのは、総償還額から借換債収入額を控除した額ということでございます。まず六十年度でございますけれども一兆三千億、続きまして順次申し上げますと、一兆五千九百、二兆一千百、二兆一千二百、二兆四千四百、二兆五千五百、二兆三千六百、二兆九千二百、二兆八千四百、三兆九百、七十年度が三兆四千六百億円ということになっております。
  227. 戸田菊雄

    ○戸田委員 今数字的に説明をされたとおりなんでございますが、電電、たばこ合わせまして大体五千七百億円です。これが仮に額面の十倍だと五兆七千億、五倍なら半分の二兆八千五百億。それで、六十年度以降このような現金償還になるわけです。ですから、どうしても六十五年の脱却までいくのに、これは一遍に放出するわけじゃないですから、それで繰り入れていくわけですから、二年ぐらいは何とかやりくりはできるかもしれませんが、それ以降は全く財源の見通しなしという状況になりますね。こういう問題について大臣どういう見解を持っていますか。
  228. 竹下登

    竹下国務大臣 そもそも、二年ぐらいと仮におっしゃいましたが、新株の発行のキャパシティーがございましたね。したがって、これのみでなくほかにも新株も出るでございましょうし、そのキャパシティー等を考えれば、そう一度に余計売れるものではないという感じを私自身も持っております。したがって、今その株式の売却益を直ちに国債整理基金と償還財源というつながりでは考えておりません。
  229. 戸田菊雄

    ○戸田委員 今までの審議経過を見ますと、ひょっとしたらあるいは大臣もそんなところに期待を置いていたかなという印象を受けたことがあったのです、これはニュアンスであれですが。  そうしますと、いずれにしても国債残高がふえていく、利払いはふえる、国債費もずっとふえていく。そういう状況の中で、一応仮に電電、たばこのそういうものを充当したにしても、これは二年程度しかだめだ、それも六十一年度以降ということになる。そうすると、我々が受けているニュアンスとしては、今までいろいろと税制問題で検討されてきた、大型間接税か何かわかりませんが、そういうものを導入していく。しかし、それも六十二年度以降ということ。そうすると、六十五年度まで三年しかないのですから時間的にはとても間に合う話じゃない。だから抜本的に何らかの財源調達方式を考えないと、政府が言う計算であるいは中期試算で示した六十五年脱却というのは全く困難な状況で、大臣もおっしゃられたように全く難しいという状況にならざるを得ないのじゃないだろうか。  そこで、どうでしょう。景気浮揚その他で、アメリカはむしろ日本をまねて設備投資その他でやって昨年度は六・八ぐらいいったのですか、ことしになったら第一・四半期で二・三%の成長率が約一・三に落ちた。それで今大ショックを受けているわけです。この間、経企庁長官の同僚議員に対する回答も伺っておりましたが、そういう面から見ますと、日本も周囲からは内需拡大その他でどんどんやれ、どうのこうのとなっている。これは決定的なそういう状況じゃないか。歳出削減は四年間ずっとやってきた。きょうの朝日新聞等を見ますと、これも前年度同様経常部門ではまだ一〇%削減できますよ、公共部門では五%削減できますよ、こういう方針を堅持するということが出ておりましたが、そういうことになるとすれば、財政再建を含めて何かの財源の調達方式を考えなければどうにもならないのじゃないだろうか。こういったいわば具体的施策を大臣は一体どうお考えになっているのか、聞かしてもらいたいと思うのです。
  230. 竹下登

    竹下国務大臣 振り返ってみますと、それは去年、おととし、さきおととし、そのときに出した試算から見ますと、いろいろな工夫をして今日に至っておるわけでありますが、基本的には一般歳出の伸び率をマイナスにしたというのが大きなポイントであったと思います。その中には制度改正も含まれておったわけでありますが、まだこの制度、施策の根源にさかのぼった制度改正を念頭に置いて歳出削減に対して意を用いていかなければならぬ。六十年度予算案をつくり終えました昨年の暮れに、もうこれで歳出削減は限界だなと瞬間的に考えました。と同時に、待てよ待てよと思って、いま一度やはり引き続きこういうことを考えていかなければならぬなと思いました。  一方で、歳出削減をそういうふうにしてやりますと、今度税の問題は、今は増とか波とかいうことよりも制度の抜本的見直しをやれという段階でございますから、それを見ながら歳入面においても検討を加えていかなければならない課題ではなかろうか。したがって、毎年申しわけないと思いながら「財政の中期展望」とか「仮定計算例」とかいうことで御議論いただかなければいかぬのは、その中に今こうして議論しました電電株の売却益なんというのは透かしとしては下にありますけれども、これはまさにまだ透かしであって顕然化してはおらぬ、税制改正というのは透かしのもう一つ下にあるのじゃないか。そういうのを一つ一つ具体的に国会の問答等を通じて国民の理解を得ながら進めていかなければならぬ、厳しく険しい道だなということをいつも感じておるわけでございます。
  231. 戸田菊雄

    ○戸田委員 そういう面では私も大臣には同情を持っておるのですよ。大変だなと思いますよ。  そこで、本来の国債整理基金特別会計の定率繰り入れを六十一年度以降六十五年度までやりますと、これはどういう姿になりましょうね。
  232. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 六十年度につきましては、現在御審議願っておりますように定率繰り入れを停止させていただくということで、余裕金残高は六十年度末で九千九百億というふうになるわけでございます。  六十一年度以降は、定率繰り入れを続けていくということになりますと、先ほど申し上げました「国債整理基金の資金繰り状況等についての仮定計算」としてお出しいたしました資料にございますように、六十一年度が余裕金残高は一兆五千五百億、続きまして一兆八千億、二兆二千四百億、二兆五千三百億、二兆八千六百億、三兆五千三百億、三兆七千六百億、四兆一千七百億、四兆四千四百億、七十年度におきまして四兆四千三百億円というふうになっております。
  233. 戸田菊雄

    ○戸田委員 私が聞いたのは、ちょっと言い方が悪かったのかもしれませんが、定率繰り入れが百分の一・六ということで、六十一年度本来なら二兆八百億、それから六十二年度は二兆二千七百億、六十三年度が二兆四千五百億、六十四年度が二兆六千億、六十五年度が二兆七千三百億、本来ならこういう順序だと思うのですが、これは間違いありませんね。
  234. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  235. 戸田菊雄

    ○戸田委員 本来なら、こういうことで百分の一・六を積み立てていかなければいけないのですが、これは四年連続凍結いたしましたから……。  六十一年度以降は大体どういう考えでしょう。やはり同じような措置になりますか。
  236. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 先ほども申し上げましたように、六十年度末で余裕金残高が九千九百億円と、一兆円弱になってしまうわけでございます。ところが六十一年度につきましては、先ほども申し上げましたようにネットの要償還額が一兆五千九百億あるわけでございますから、したがいまして整理基金の資金繰りの状況としてはもう猶予できない状況にあるわけでございます。  したがいまして、何らかの措置をとらざるを得ないということになるわけでございます。仮に六千億円程度入れたといたしましても、基金の残高は六十一年度末でほぼゼロということでございます。ゼロということになった場合に、それではその国債管理政策が円滑にいくのかどうかという問題もあるわけでございます。そういう意味で非常に猶予できない状況であるということを念頭に置きつつ、六十一年度以降の予算編成の際にこの問題をどう処理していくかということを考えていかざるを得ない。  しかし、大臣もたびたび御答弁申し上げているように、その国債のいわゆる償還制度のあり方の基本的な考え方、これはやはり財政審の答申も言っておりますように、維持していくのが適当であるというふうに考えております。それとの絡みも含めて、今後の非常に重要な検討課題であるというふうに考えるわけでございます。
  237. 戸田菊雄

    ○戸田委員 いろいろと説明を受けたわけですが、いずれにしても五十年代後半の定率繰り入れ停止、こういう措置で償還財源の枯渇を招いていることは事実なんです。  それともう一つは、減債基金制度の機能、これはもう喪失をしてしまった、制度そのものが意味をなさない、こういう状況だと思うんですね。したがって、六十年代、さしあたって六十一年度予算編成その他についてもどこから一体財源を持ってくるかということは大変な御苦労な点だと思いますが、そういう点もいろいろと考えますると、予算の硬直化あるいは財政の対応力弱化、こういう悪循環が今後も何年か続けられていくという状況に相なると思うのですね。だから、こういう点について早い話、国民が安定できるようなそういう具体的な経済指標、具体的施策、こういうものを私はでき得るなら、大変でしょうけれども打ち出しをしていただきたい、こういう点を要望して国債整理関係は終わりたいと思います。  次に、財確法でありますが、これは結局、今回財政再建計画、赤字国債発行削減が計画どおり進まない。こういう結果は、六十年度財確法によって赤字国債発行額が五兆七千三百億円となって、九千九百億の計画をはるかにオーバーしているわけですが、こういう問題について、今までいろいろと削減方式にはそれなり努力したことはよくわかりますが、定率繰り入れ停止その他こういった点で、今指摘しましたように国債整理基金そのものが制度としての意味を失っている、こういう状況にあるかと思います。  それからもう一つは、今回の健康勘定、こういうものから九百三十九億円をいわばもぎ取ってしまったんですね。これは私は余り適切な処置とは言えないんじゃないがなという気がするんです。せっかく料金の引き上げとかあるいは経営合理化その地やって大努力をしまして、ようやく九百三十九億の黒字にした、ところがこの黒字を全部こっちへ持ってきちゃった、こういうのが実態なわけです。そうすると、今までいろいろな努力をしてきた経営努力に対しても何かそがれてやる気がなくなるんじゃないか、こういうような気がしてならないんです。これは大臣、どう見解を持っておりましょうね。
  238. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、一般会計が大変厳しい、そこで一般会計から多額の給付費補助を受けておる政管健保において単年度の収支差すなわち黒字が生ずることに着目をしまして、国の一般会計の財源確保を図るために、六十年度において一般会計から厚生保険特会健康勘定への繰り入れの特例を定めるということでございます。  こういう措置は、現在の厚生保険特別会計健康勘定の財政状況に着目して繰り入れの特例措置を行って、後日今度は健康勘定の収支状況を勘案して繰り戻しを行っていくという、いわゆる特別会計の繰り入れの調整に係る特別措置であるということで御理解をいただこうとして、着目して行った措置でございます。
  239. 戸田菊雄

    ○戸田委員 ここに「財政再建に向けて」という、自民党の村山調査会の中でつくられたものがある。昨年九月ですが、自民党の村山調査会が出した報告書、これによりますと、定率繰り入れ停止による六十一年度以降の負担急増を回避するために、定率繰り入れを六十、六十一の両年度については本来の定率繰り入れの二分の一に削減する、こういう前提でこの財政の試算をいろいろと述べておられますね。政府のこの案は定率繰り入れの完全停止ですから、結局村山調査会の大胆な前提の話というものは全く没になっている。ですから、結局六十一年度のこの反動的な負担増というようなことになってくるわけですが、こういう点はどう一体お考えになっていましょうね。これは自民党の村山調査会で出したものですね。これでは二分の一にして、当面やむを得ないからこれでいこう、こういうことなんですね。これが結局政府案としては全くゼロ、こういうことになっている。これはどう考えますか。
  240. 竹下登

    竹下国務大臣 これはまあ、私どもが中期試算をお示ししたり仮定計算をお示しする、したがって今度は、あらゆる前提に基づいた要求に対して、それに正確な作業をしてこたえて、いろんな資料の中で議論をした方がお互いのコンセンサスが徐々に近づいていくというので、この村山調査会の御指示に基づいてお手伝いをして、今のまさにお示しになった二分の一というのを、二分の一に根拠があるわけじゃございませんけれども、一つの見解として私どももそのことは十分検討させていただきました。  が、ことしの場合は、ぎりぎりやってみたが、結果としてこのやむを得ざる措置、財政審の言葉をかりればそういうことで、繰り入れ停止ということで対応せざるを得なかったということでございます。
  241. 戸田菊雄

    ○戸田委員 私は、定率繰り入れはやっていくべきだ、少なくとも借金をして、その支払う財源調達もなしでそのままいくなんというのは、これは全く社会的通念として通用するはずがないんですね。だから、それなりの準備をして、いろいろ苦労はあっても所定の定率繰り入れをやっていく。それができないから、まあ二分の一程度でもということで出されたわけですから、そのくらいはあと創意工夫をしていただいて、何とか努力をしてもらいたいものだ、このように考えておるわけでございます。  次に、時間もなくなってまいりましたから、取り急ぎ産投会計について若干の質問をしたいと思うのでありますが、この産投会計というものは本来どういう趣旨で設定されたものでしょう、見解をお伺いしたい。     〔熊川委員長代理退席、堀之内委員長代理     着席〕
  242. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 産投会計は、経済の再建、産業の開発及び貿易の振興のために国の財政資金をもって投資を行うために昭和二十八年に設置されたものでございます。  当時の経済は電力とか海運とか石炭とか鉄鋼等、経済の基盤となるべき重要産業の整備が緊急の課題であったために、開発銀行であるとか輸銀であるとかあるいは電発等に対しまして、出資及び融資の方法によりまして「経済の再建」と「貿易の振興」のために必要な資金の供給を行ってきたわけでございます。ただその後、経済、社会の変化に対応いたしまして、「産業の開発及び貿易の振興」のための資金の供給に重点を移しかえてまいりました。最近では北東公庫であるとか沖縄公庫等に対する出資を通じまして地方の産業開発等の役割をも果たしてきたところでございまして、その時代時代の変化に即応いたしまして、産投会計の機能といいますか、融資、出資の対象も変えてきたということでございます。
  243. 戸田菊雄

    ○戸田委員 本来は経済の再建ということで産投会計は出発したと思うのです。ところが今回、産投会計の改正案を見ますと、電電とたばこの民営化に伴って国が取得した株のうち、電電の三分の一、二千六百億円、たばこの二分の一、五百億円をこの会計の所属にして、その配当金で資金投資や貸し付けを行う、こういうことになっているのですね。そういうことになりますと、産投会計の趣旨からいってちょっと外れているのじゃないかと私は思いますが、どう考えましょうか。
  244. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 そのために「経済の再建」というのを落としたわけでございまして、「国民生活の向上」というふうな目的を書いているわけでございますが、今年度におきましては、産投会計法改正案によりまして新電電等の株式の同会計への帰属を決めるほかに、もう一つは開銀とか輸銀法の改正によりまして国庫納付金の増額が図られたわけでございます。そういうふうな原資の充実が見込まれるということを勘案いたしましてこれからの新しい経済、社会をにらみました場合に、またそういう資金の性格からいいまして、科学技術情報センターであるとか基盤技術研究促進センター、あるいは地域開発であるところの奄美群島振興開発基金等を新しく産投会計の出融資対象機関に加えまして、その出融資対象を時代の流れに沿ったような形でもって決めていくというようなことでございます。別途、中小企業対策等につきましてもこの産投会計で対応し、国民生活の向上を図るというふうなことでございまして、徐々に産投会計の機能を新しい時代に即応するように衣がえをしつつ対応してきているところでございます。
  245. 戸田菊雄

    ○戸田委員 電電、たばこの配当、これはどのくらい期待していますか。もし中身がわかればちょっと教えてください。
  246. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 新会社の配当がどうなるかという点につきましては、これからの経営状況いかんに左右されるわけでございまして、私どもとしては何とも申し上げられないのでございます。多ければありがたいわけでございますが、産投に入ります電電とたばこの株の合計が三千百億でございますので、仮に一割配当でございますと三百十億円、五%配当でございますと百五十五億円という試算ができるわけでございますけれども、具体的な数字につきましては今申し上げる段階ではございません。
  247. 戸田菊雄

    ○戸田委員 全くこれは私の試算ですけれども、仮に一割配当ということになると電電分で二百六十億円、たばこ分で五十億、仮に八分ということになりますと電電で二百八億、たばこで四十億、この程度の期待ですね。これはどうでしょう、余り当たっておりませんか。
  248. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 今の数字は先生御指摘のとおりでございますが、今回でもいろいろ技術研究センターというふうなところへの出融資をいたすわけでございますが、別途、技術研究センターの方では、こういうふうな産投の出融資をてこにいたしまして民間からも資金を集める。要するに民間資金の活用という点についても努力いたすわけでございますから、私どもの資金だけで事業を遂行するわけではないので、これをてことして民間資金の活用も大いにやっていこうというわけでございますから、そういう機能からいいますと、私どもといたしましては、自然に入ってまいります資金の範囲内でそれを有効に活用していくということに心がけるべきであろうと考えております。
  249. 戸田菊雄

    ○戸田委員 今の計算でいきますと、結果的に電電分、たばこ分合わせて二百五十億円ないし三百億円、このくらいの配当金収入。これは一部上場の平均値を見ますると、大体八%から一〇%程度ですね。やはりその辺いっているようですよ。だから常識的に判断をするなら、大体そんなところじゃないだろうかな、私はこう考えておるわけです。だから恐らく大蔵省としても政府としても、大体その辺を期待感としてにらんでいるのかな、こう思っているのですが、まあこれはいいです。いろいろと慎重に対処しているんでしょうから回答は要りません。  しかし、いずれにいたしましてもこの産投会計法は、設置目的を一応「経済の再建」ということで規定しまして、今回これを削除したわけですね。だから私は、むしろそういうことであればこの産投会計というものはなくしてもいいんではないだろうか、こんな気もするのですが、この点ではどうですか。
  250. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 先ほど来御説明申し上げておりますように、最初の発足のときの経緯、それから戦後の再建、復興、成長というふうな我が国経済の成長過程に応じまして、産投会計の機能も順次それに合わせて改組してまいったわけでございます。こういうものがあったからこそ今回も新しい時代に即応するような機能の発揮ができたわけでございまして、やはり何か新しいものをつくるよりも既存のものを活性化していくという方が行政改革的な見地からも好ましいのではないかというふうな気がいたしますし、産投会計法の今までの経緯から見まして、今回の衣がえというのは適切な対応の仕方ではないかと私ども考えておるわけでございます。
  251. 戸田菊雄

    ○戸田委員 これは話で聞いたのですが、あるいはまた報道になったのですが、電電の民営化の過程で、この配当金、それから株式取得、こういうことで郵政省と通産省の争いがちょっと報道されたときがあります。決して好ましいことではありませんけれども、しかしニューメディアとか通信革命時代に対処する点で政策目標はむしろすっきりしていると私は思いますね。だから、金の使われ方が国民にわかるというメリットがあるわけですから、そういうことでこの産投会計にぶち込んでということでは、金に色はついていないのですから、その運用がほかの出資やその貸し付け、こういうことに使われるという恐れも出てくるのではないだろうかという心配があるのですが、こういう点はどうでしょう。
  252. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 御指摘のとおりでございまして、電電とかたばこの株が一部産投に帰属し、その配当収入を活用していこうという趣旨は、やはりその株式が形成されてまいりましたときの経過あるいは産投に帰属されたときの経過等を踏まえまして、技術開発とか、そういう株の配当を使うにふさわしい資金の使途ということに十分心がけるべきでございまして、余りその金に色がないということで、資金使途について何でも幅広い使い方という点につきましては、私どもとしてはそれにふさわしい金の使い方に努めるべきだというふう考えております。
  253. 戸田菊雄

    ○戸田委員 大臣、本来なら一般会計から繰り入れをしておったのですね。何か今度の電電株それからたばこ株、これを、一般会計が非常に苦しいものですから、その肩がわりをさせたような印象を受けるのですね。実際はどうなんですか。
  254. 竹下登

    竹下国務大臣 産投会計そのものについて、当初の目的から、もともとはガリオア、エロアから、二十八年に経済再建というようなことからできたものですから、確かにいわば経済、社会の変動の中で変化がございます。したがって今度の問題は今随分郵政、通産の争いがあったということですが、あえて争いとは申しませんが、これも昭和二十七年でございますか、いわば郵政省、電電公社等が分かれます当時から、それでコンピューターは通産省とか、研究所も三つ残ってそれぞれが世界の頭脳を集めていろいろ基礎的な研究をしたい、こういうようなことがございまして、縄張り争いというよりも、むしろそれらの熱心の余りであったでございましょう。そこで、およそ国民の財産の売っていいものはではこっちにしよう、政府が法律改正しない限りは売れないものはそれではどこに帰属さすかということで、結果として産投会計へ入れた、こういうことになるわけであります。  とはいえ、それはいわば特定財源という考え方では必ずしもございません。従来の仕組みの中で生かすと言えば、これは私の素朴な感じですが、適当なものがあったな、こういう感じが率直にいたしました。
  255. 戸田菊雄

    ○戸田委員 大臣、この機会に時短の問題についてぜひ御検討願いたいと思うのですが、御存じのように、これは多年私もいろいろとやってきたのですが、愛知大臣のときに、銀行局長はアジ銀総裁になられました吉田局長でしたけれども、四十三年ごろかもしれません、私は参議院にいたときですが、ダンピングの問題で、世界経済会議のときに大臣が行って、えらい各国から責められて、時間短縮はやりますよ、こういうことになった。ところが、間もなくオイルショックで凍結をせざるを得ないという状況に来たのです。  いずれにしても、今大勢として世界的にはもう一千八百時間台、しかし日本は二千時間を超えている。西ドイツはことしいろいろな争議がありましたけれども、週三十八時間体制、こうなった。フランス、ミッテランさんは三十五時間体制、こうなっている。そういう状況で、大勢はもう三十五時間ないし三十八時間体制へずっといっているわけですね。そういう状況の中で日本ということになると、オーバー労働その他を含めますと全く長時間ですね。だから実質的には賃金が安いということに通ずるのでありますけれども、これは何といっても金融関係からまずこの時短、週休二日体制というものを完全に実行していくということにならなければいけないと思います。一この間、経済摩擦を通じてこの時短問題について、閣僚会議でも時間短縮を実行するということを決定されたようですが、それでおかげさまで、大蔵省、郵政省、所管の労働省、それから農水省と、この四省関係で連絡会議というものを持ちまして、とにかく週休二日制を完全に実行しようということで、実は昨年の八月に一応実行したのです。ところが、CDの関係で、これは郵政省に頼んで何とか稼働しないように、こうやってきましたけれども、二月以降どうしても稼働せざるを得ない。今まで三回、これはいろいろな角度で各省でも努力をしていただいてやったのですが、なかなかそのようにいかなかった。それで、二月以降CD稼働になりました。  今のCDの設置状況からいけば、私の記憶では、都銀等はもう一〇〇%設置をされている、あるいは地方銀行も大体そのくらいまでいっている。中小関係の信用金庫とか相銀とかあるいは農協等々については、まだまだそこまでいっておりません。だから、この間全銀協の関係では、大蔵省を含めまして、とにかくCD設置促進、何らかの助成体制をとりましょう、農水省も農協に対しましてそういう姿勢をとる、こういうことになっておるわけです。大体全銀協の意思統一を見ますのは九月ですね。一応足並みをそろえて六十一年度からこれを実行してはどうかというような一たんの方針を出して今いろいろとやっているわけなんです。しかし私たちから考えると、これはやはり急いだ方がいいだろう、でき得れば九月ころから実行してもらいたい。そういうためには、農協と郵政省のCD稼働の問題について調整をしなければいけない。実質週休二日体制が、これが稼働しているものですから、相当後退をしたわけですよ。  それで私は、考え方として、土休一日体制というものを土休二日休制にする、これは第三週とか第四週だったら金融の動きその他の関係がありますから、今の第二上体、それに第一土休でもう一日ふやして、そして実質的に週休二日体制というものを後退しないようにという諸措置をとってもらいたいということをいろいろ要請したところが、全銀脇でも本問題については大体了承して、そのようにやりたい、こういうことになってきているのですね。  そこで問題になっているのが郵政省関係なんです。これは公務員に属するわけですから、結局人事院の勧告等がなければなかなかそういう点で足並みがそろうというわけにいかない。もっとも向こうは四週五休体制ですから、これに対してもう一日ふやして四週六休体制をとるということになると、こちらの土休二日体制と大体バランスがとれる、こういう状況になってくると思うのですよ。  ですから、所管の労働大臣なり農水大臣なり、もちろん大蔵大臣にもあるいは郵政大臣にも、これからいろいろ計画的に本問題に取り組んでいただきたいと思っているのですが、これらについて、大臣、どういう見解をお持ちでございましょうか。
  256. 竹下登

    竹下国務大臣 これは一番最初に週休二日制が出ましたときには、率直に言って、民間は、まず官からやってくれぬか、その方がやりやすい、こういう話がありましたが、いかにも公務員が率先する課題としては、やはり民の方が先行すべきだというようなことから、長い議論がございました。今の愛知さんとの議論というのは昭和四十八年の議論でございます。  それから、今度は私自身の所管の方でいきますと、今戸田さんがおっしゃいましたような方向で、全銀協もそういう動きがずっと出ております。基本的には、やはり労働省に世話をやいてもらいまして、そこで、郵政、農林、大蔵の四省で検討を行っているところでございます。  全銀協の動きは今御指摘のありましたとおりです。  私がいつも感じますのは、週休二日制実施前と実施後のCD設置状態を見ますと、一番少ないのは漁業協同組合が零台でございまして、それで週休二日制実施後に何ぼになったかと見たら一台でございます。それだから、なかなか進まないものだなという感じも受けますけれども、その他はかなり進んできておりまして、郵便局にしたって二・七%が八・五%とかいうふうになっておりますので、そういう意味では労働省のあっせんを待ちながらもそういう方向でこれは進んでいかなければいかぬし、我々は、いわゆる金融機関のそれに対してはそれを支援していくという立場をとっておるわけでございます。
  257. 戸田菊雄

    ○戸田委員 そこで問題は、各行とも今ステーション等にCD設置をやることになっているのです。まあ相銀以上は大体受け入れ体制はいっているようですが、労金に対しましてはまだそこまでいってない、また労金自体もそういったCD設置まで来てないんです。だから本問題等についても、大蔵省自体としても消費金融としてCD設置を、顧客へのいわゆる利便提供になるわけですから、例えば仙台駅とか東京駅とかそういうところにも平等にそういうものが設置されてしかるべきではないか、こういうふうに私は考えます、これは国鉄当局とはまだそういう話をしておりませんが、これからいろいろと要請はしていくつもりでありますが、こういう設置促進の問題については、大臣、どうでしょうか。
  258. 竹下登

    竹下国務大臣 私も実態がよくわかりませんので、仙台駅とか東京駅にやった場合、そこを見回りしましたりで労働時間が逆にまたふえることにもなりはせぬかな、その辺のことは不勉強でございますので、貴重な御意見として勉強させていただきます。
  259. 戸田菊雄

    ○戸田委員 それから、きょうの朝日、日経等全部出ておったのですが、さっきもちょっと触れた六十一年度予算編成について、これによりますと、三兆七千億円程度の財源不足が見込まれ、思い切った歳出抑制が必要だ、それから、国債発行の一兆円減額は最優先課題として実施するなどの基本方針を説明して、自民党首脳は、厳しい予算編成をなし遂げるには要求基準を今年度と同水準に抑え込むしかないとの大蔵省考えを了承した、こうなっておりますね。この編成の基本の態度というものは、そう理解していいんですか。
  260. 竹下登

    竹下国務大臣 厳しいものにならざるを得ないということは事実でございますが、言ってみればまだ完全に説明して歩く段階になっておりません。一つは、私がずっと国会におるものでございますから、省内の会議をまだ確実に行っておる状態ではございません。厳しいものになるということは、私もそのように認識をいたしております。
  261. 戸田菊雄

    ○戸田委員 八月から概算要求で予算編成に取りかかると思います。その場合には、これでいきますと、やはり五十九年度以前のシーリング、こういう上限を設けてやっていくというようなことが言われておるのですが、例えば具体的には経常部門でもってマイナス一〇%、投資部門で同五%は五十九-六十一年度の三年連続ということになりましょうか。今自民党の内部でも歳出削減はもうこれで結構だと、しかしいろいろ苦労されて、ことしも七千数百億ですか削減したわけです。大変な努力だと思います。今後も恐らくそういうことになるでしょうが、同時に財源調達、これもまた間接税になるかどうかわかりませんが、そういう問題も六十一年度以降とにかく実行したい、税金等の減税に行く場合はやはり増減税セット論、昨年度やりましたが、大体そんな方法で考えていると理解していいのでしょうかね。
  262. 竹下登

    竹下国務大臣 すべてこれからの問題でございますけれども、正確に言葉として申し上げておるのは、赤字国債をもってその財源に充ててはいけない、こういうことだけは申し上げておるわけであります。
  263. 戸田菊雄

    ○戸田委員 それから、さっきちょっと触れましたけれども、アメリカの景気浮揚がどうも鈍化した。二・一%が一・三%等々、それから軍事費も、五・八%増を要求したレーガン大統領の内容は三%に共和党で抑えた、こういう状況でございます。だからアメリカの今の経済体質というのは高金利あるいはドル高、こういったものが相当影響してきておるわけだと思うのですが、それにも増して経済輸入依存体制といいますか、例えば耐久消費財等の輸入割合を見ましても、私の記憶では一四%台が三%つり上がって一七%台まで上がった。それから、自動車にしてもテレビにしてもあるいは電気製品にしても、すべて輸入依存体制である。だから、いわばアメリカ経済肉体が依存体質にがっちり、どっぷりとつかっちゃっているのじゃないか。そういう経済体質そのものが、一つは今日の財政赤字二千億ドル、貿易赤字が約一千四百億ドルというような状況になっているのだと思います。  だから、こういった問題を通じて私は、日本に対して市場開放その他、個別的にも、例えば貯蓄率とか人の懐に手を突っ込むようなそういう干渉がましいことまでやってくるようなことは、まさに不当ではないかと思うのです。もう少し自己政策見直しをして、そしてその上に立って対等の、あるいは自由貿易、そういったもので立ち臨んでいくのが一番ベターではないか、このように考えるのですけれども、この辺の見解は大臣どうでございましょうか。
  264. 竹下登

    竹下国務大臣 第一・四半期〇・七%というのが発表されましたときの各方面の情報として詰めたわけでございますけれども、第二・四半期も予想を下回るものとなろうが、これで年全体の目標が達成できなくなったということにはならぬ、第三、第四・四半期はかなり力強いものとなろう、これはベーカー財務長官のコメントでございますけれども、いろいろな点を見まして、私も、いわゆるリセッションという状態にはならないだろう、むしろアメリカ経済のソフトランディング、軟着陸みたいな感じてこれを受けとめるべきではないかというふうに考えておるところであります。  したがって、いわば財務省筋なんかはむしろ日本の貯蓄というものに対しては批判的な声はございません。実際問題、貯蓄は悪いことではありませんから。よく冗談では、日本がもう少し消費が高まって、アメリカがもっと貯蓄が高まっていけばちょうどいいじゃないか、こういうようなことをよく申しますが、まあ国民性の問題等もございますでしょう、三倍ぐらい高いわけでございますから。現段階においては、むしろ結果として日本から流田したものが金利を抑える方に回っておるわけでございますから、したがって、財務省などとはむしろ評価するという方になるわけでありますが、お互い選挙なんかやっておりますと、日本は貿易でもうけたものをまたうちに預けて金利を稼ぐとかというような素朴な議論も出ますだけに、私ども、毎日のようにお越しになりますお客さんとは、朝委員会に来ます前に、お互いの相互理解を深めるように努力しておるところでございます。ただ貯蓄がけしからぬというのは、サミットでも、なぜ貯蓄率が高いかという質問は出ても貯蓄が悪いことだとはさすがにどこの国も言わない、こんな感じがいたしました。  ただ、よその国のたくさんの外人記者なんかと話しておりますと、ちょうど私はアジア開発銀行へ行ってその足で今度サミットヘ行っておるわけでありますが、アジア開発銀行では多くの開発途上国の方々、それの随行の記者団の話では、日本のように働こう、日本のように貯金しよう、日本のように勉強しよう。今度サミット関係の記者さんは、日本よ、余り働くなとは言いませんけれども、日本ほど働いてもらっても困る、日本ほど貯金してもらっても、日本ほど勉強してもらっても困る、そんな雰囲気を感じたぐらいでございますけれども、貯蓄そのものが悪だという論理はどこでも通用しないというふうに私も考えております。
  265. 戸田菊雄

    ○戸田委員 もう一つは軍事費の問題ですね。アメリカ総体の予算の三〇%をと言っておりますね。それからもう一つは、そういうことですから軍事生産体制にすべてが集中される。例えば技術も人材も会も、こういうことになる。そうするとどうしても二次工業その他がおろそかにされる。  今アメリカでは、私が理解する範囲では、そういう軍事生産的なものに第一点集中している、それから宇宙開発、それから農業、こういうものが大体産業中心であり、力点の対象、こういうふうに聞いておるわけであります。南朝鮮もそうなんですが、軍事三〇%、インフレその他、こういうことです。物価は非常に下がったといえども、アメリカはまだ十何%ですね。非常に高物価で、失業が一〇%を超える、こういう状況ですね。日本は長年一%幅で抑えていく、こういうことで来ているわけですが、これが工業発展その他技術革新、そういった平和産業その他でずっと各国をしのいで世界一等国になったことに相当寄与していると私は思うのです。  だからそういう面については、今言ったような軍事的な、そういう非生産的なものはできるだけ抑えていくということが私は当然じゃないかと思うのですが、大臣の見解としてはどうですか。
  266. 竹下登

    竹下国務大臣 原則的にその理論は成り立つ理論であると思います。ただ、どこの国がどうだ、ここの国がどうだということになりますといささか内政干渉にもなるでありましょうけれども、原則の理論は私も否定するものではございません。そういう論理があるからこそ、アメリカ一つ見ましても、上下両院の予算削減決議なんというのがああして通っておるんだな、中身はこれからでございましょうけれども、そんな印象は受けております。
  267. 戸田菊雄

    ○戸田委員 さっきちょっと要望いたしました株の売り方あるいは持ち株制度等々については、ひとつ十分検討していただきたいと思います。それから時短の問題等々についてもぜひ御検討願いたいと思います。  以上、ちょっと時間を短縮いたしまして質問を終わります。どうもありがとうございました。
  268. 堀之内久男

    ○堀之内委員長代理 次回は、来る六月四日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時二十五分散会