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1985-05-24 第102回国会 衆議院 大蔵委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年五月二十四日(金曜日)    午前十時五十四分開議 出席委員   委員長 越智 伊平君    理事 熊谷  弘君 理事 熊川 次男君    理事 中川 秀直君 理事 堀之内久男君    理事 上田 卓三君 理事 沢田  広君    理事 坂口  力君 理事 米沢  隆君       糸山英太郎君    大島 理森君       金子原二郎君    瓦   力君       笹山 登生君    塩島  大君       田中 秀征君    中川 昭一君       東   力君    平沼 赳夫君       平林 鴻三君    吹田  愰君       藤井 勝志君    宮下 創平君       山岡 謙蔵君    山崎武三郎君       山中 貞則君    井上 一成君       伊藤  茂君    川崎 寛治君       渋沢 利久君    関山 信之君       辻  一彦君    中村 正男君       古川 雅司君    宮地 正介君       矢追 秀彦君    安倍 基雄君       玉置 一弥君    正森 成二君       簑輪 幸代君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      赤羽 隆夫君         経済企画庁調整         局審議官    丸茂 明則君         大蔵政務次官  中村正三郎君         大蔵大臣官房総         務審議官    北村 恭二君         大蔵大臣官房審         議官      大山 綱明君         大蔵大臣官房審         議官      大橋 宗夫君         大蔵省主計局次         長       平澤 貞昭君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省理財局長 宮本 保孝君         大蔵省理財局次         長       中田 一男君         大蔵省国際金融         局長      行天 豊雄君         国税庁税部長         兼国税庁次長心         得       冨尾 一郎君         国税庁調査査察         部長      村本 久夫君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      木幡 昭七君         外務省中近東ア         フリカ局アフリ         カ第一課長   宮本 吉範君         郵政省電気通信         局電気通信事業         部監理課調査官 浜田 弘二君         参  考  人         (日本電信電話         株式会社取締役         経営企画本部長高橋 節治君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ――――――――――――― 委員の異動 五月二十四日  辞任         補欠選任   加藤 六月君     吹田  愰君   平沼 赳夫君     平林 鴻三君   野口 幸一君     中村 正男君   藤田 高敏君     辻  一彦君   武藤 山治君     関山 信之君 同日  辞任         補欠選任   平林 鴻三君     平沼 赳夫君   吹田  愰君     加藤 六月君   関山 信之君     武藤 山治君   辻  一彦君     藤田 高敏君   中村 正男君     井上 一成君 同日  辞任         補欠選任   井上 一成君     野口 幸一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和六十年度の財政運営に必要な財源確保を  図るための特別措置に関する法律案内閣提出  第九号)  国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律  案(内閣提出第一〇号)  産業投資特別会計法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一一号)  米州投資公社への加盟に伴う措置に関する法律  案(内閣提出第七五号)      ――――◇―――――
  2. 越智伊平

    越智委員長 これより会議を開きます。  昭和六十年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律案及び産業投資特別会計法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  この際、お諮りいたします。  三法律案につきまして、本日、参考人として日本電信電話株式会社取締役経営企画本部長高橋節治君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  4. 越智伊平

    越智委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田卓三君。     〔委員長退席堀之内委員長代理着席
  5. 上田卓三

    上田(卓)委員 大蔵大臣、連日御苦労さまでございます。  まず、何を言いましても総額三百七十億ドルに上るところの日本経常収支黒字背景といたしました対外経済摩擦、特に日米経済摩擦の中で、我が国市場開放内需拡大を求める声が内外で非常に高まっておる、こういう状況があるわけであります。  政府は、四月に対外経済対策を決定し、五月のボンサミットでも、この日本市場開放が今後の大きな宿題となったわけでありますが、ボンサミットに参加された大蔵大臣は、今日の経済摩擦の基本的な原因がどこにあるのかということについてどう考えておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  6. 竹下登

    竹下国務大臣 まずは、現在の対外経済摩擦背景といいますものは、一つには、米国経済拡大のテンポが日本あるいはECよりも先行したということがあります。それから次は、やはり何としてもドル独歩高。そして一方、今度は入る方の一次産品価格の低迷。そういう三つの海外要因というものを主因として経常収支黒字が大幅なものになったというふうに言えると思っております。  しかし、それは多くなったということでありまして、それが摩擦ということになりますと、我が国の累次の市場開放努力にもかかわりませず、諸外国において、我が国市場が閉鎖的であるあるいはアンフェアであるという誤解も含めてそれが依然として強い、こういう事情があると考えられるわけであります。これはやはり基本的な認識として持っておくべきことではなかろうかと思われます。
  7. 上田卓三

    上田(卓)委員 経済摩擦原因一つアメリカの異常な高金利ドル高にある、これは多くの方々指摘しているところでありまして、決して日本だけの責任ではない、こういうように思うわけであります。特に、高金利ドル高世界各国経済政策を金縛りにしている、また、発展途上国累積赤字、この問題をも非常に深刻化させておる、こう言ってもいいのではないか。そういう関係で、世界景気の回復の足を引っ張る原因となってきたことは明らかなことではないか、こういうように思っておるわけであります。そういう意味で、アメリカ高金利あるいはドル高の是正というものが相変わらず世界経済最大問題点であろう、こういうように思っておるわけであります。  そのアメリカドル高あるいは高金利日本長期資本流出が支えておる、それも一つ原因であろう。そしてそれがアメリカ輸入増となり、アメリカ貿易赤字の増大につながっておる。そういう意味では日本にも大きな責任があると考えなければならぬ、こういうように思うわけであります。  そこで、アメリカの議会では、現在、総額五百六十億ドル財政赤字削減策が討議をされておるようでございます。昨年十二月に引き続いて、この五月十七日に公定歩合が再び〇・五%引き下げられて年七・五%となっておるわけでありまして、これはドル高修正に向けた動きとして一応我々は歓迎できるわけでありますが、しかし、このドル高修正が急激に進んで、一挙にドルの下落といいますか、そういうことになりますと、再び金利が上昇する、景気後退に陥る危険性もあるわけでありまして、そういう意味で、アメリカ高金利ドル高修正というものについてどのように大臣はお考えでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。
  8. 竹下登

    竹下国務大臣 参考までに申し上げますと、きょうの寄りつきが二百五十一円二十銭、こういうことでございます。  今の上田さんの論理の展開は、私もおおむね考え方を等しくするものであります。やはり財政赤字というものがアメリカにとって、サミット宣言にもうたわれておりますように、ドル高高金利というものの原因である。最初大統領予算教書を見ますと五百億ドル、それを上院、下院それぞれが五百六十億ドル削減決議をなされておる。中身は若干の相違がございますけれども、私も、アメリカ上下両院がそういう決議をしておるということは評価すべきことだというふうに思います。だから、基本的にはやはりそういうところの米国自身努力を願わなければならないことであろうというふうに思います。  そこで、この問題、日本側から、あるいはEC側からどういうふうなこれに対する決め手があるかということになりますと、一月の五カ国大蔵大臣会議で合意しました、必要ある場合におけるところの協調介入というものが幾らかの効果は上げると思います。しかし、これは乱高下に対応する施策であり、基本的にドル高修正軌道を定着せしめるための施策では必ずしもないということになりますと、やはり短期的には金利、それから中長期的に見ますと経済の諸指標、その中に、大きな分野としては経常収支の問題なんかも入ってきますから、それはいわばドル高修正要因ではあるわけでございますが、現在直ちにその効き目が出ておるとは思われません。しかし、徐々に双方の持つファンダメンタルズでございますか、要するに経済の基礎的諸条件というものが効いてくるべきものだというふうに私は期待をいたしておるところでございます。  それからもう一つは、これも今のドル高をどうするかという会合ではございませんけれども、この六月の二十一日に、十カ国蔵相会議におきまして通貨のあり方ということの議論をしなければならぬことになっております。結論を出すというふうに一応なっておるわけでありますが、今の変動相場制にかわるべき新たなる結論が出ようという性格のものではないと私も思っておりますけれども、その中でも、当面のドル高修正に対する議論お互い国同士で詰めていかなければならない課題ではなかろうかというふうに思っておるところでございます。
  9. 上田卓三

    上田(卓)委員 大臣、それじゃアメリカのこのドル高あるいは高金利政策、これは、なぜアメリカがそういうものをとっておるのか。その原因について、私先ほど、日本長期資本流出がそういうものを支えておる、そしてアメリカ輸入増につながり、赤字、そして貿易摩擦原因になっておる、こういうことも申し上げたわけですが、そういうアメリカ高金利政策、その結果のドル高、そういうものを一体なぜアメリカがとらざるを得ないのか、一体その背景は何か、そういう点についてお聞かせいただきたいと思います。
  10. 竹下登

    竹下国務大臣 これはなかなか難しい問題でございますが、ドル高というものも結果としては需要供給バランスで、アメリカ貯蓄率がもう少し高くて日本消費がもう少し高ければいいなということはよく言われる議論でございますが、アメリカ貯蓄率というものから考えてみますと、あれだけの財政赤字をつくれば、それは市場で、日本で言いますところの国債による調達日本はそれをしておりますが、向こうは、あるときには短期の国債でもありますけれども、そういう資本調達というものが、需要供給関係からいたしましてどうしても金利を相当に高くしなければそれを調達することはできない。そうしますと、金利が高くなりますと、市場原理に基づいて、いわば今や金融国際化時代でございますから、貯蓄性向の強い国からの金がその金利を求めて流れていく。しかし、それが仮に流れなかったとしたらもっと高くなる。だからその意味において、結果としてではあるが、アメリカから見れば日本資本の流入というものはこの金利をある程度抑える役割も果たしているんじゃないか、こういうことも時々言っておるわけであります。  したがって、やはり高金利金利というものも、おおよそ自由化時代でございますだけに、言ってみれば市場原理金利が高くなっておるということは、やはりアメリカ財政赤字そのものが大き過ぎるということに結論をつけざるを得ないではないかというふうに私は考えております。
  11. 上田卓三

    上田(卓)委員 高金利ドル高アメリカ財政赤字原因である、その財政赤字最大原因アメリカの膨大な軍事予算ということになるのじゃないですか。どうですか。
  12. 竹下登

    竹下国務大臣 これも一つ指摘であろうと私は思っております。上下両院削減をする決議は通りましたが、その中身を見ますと、やはり社会保障支出軍事予算あるいは防衛費とでも申しましょうか、そういうところの兼ね合いが議論されておる。したがって、それは、我が国等に比較いたしますならば、まさに軍事予算というのが大きく財政赤字に寄与しておると申しますか、財政赤字を生み出しておるということは言えると思います。
  13. 上田卓三

    上田(卓)委員 社会保障費は、これはやはりアメリカの国内問題といいますか、資本主義社会においては競争の原理でありますから、そういう点で底辺を形づくる方々に対して最低の保障あるいは社会保障の充実ということは当然のことであろうと思うのですね。  私が申し上げたのは、毎年二千億ドル近い要するに財政赤字に見合うものが軍事予算である、こういうことを考えたら、社会保障の切り捨て、削減というよりも、今米ソ中心とする軍事費が九千億ドルに近い、これの例えば五%でも一割でも発展途上国とかその他経済的に困っている地域に振り向けたらどうなるだろうか。ちなみに、累積赤字で困っている発展途上国世界の一年間の軍事予算で穴埋めしてあげれば、たちまちにしてこの問題が解決する。たった一年間だけの軍事予算途上国に援助することによって深刻な問題が解決する、こういうことでありましょうし、また、アフリカの飢餓状況、南北問題についても大きな解決になる。それだけではなしに、米ソにおいてもそうでございますが、我が国においても、軍事費削減によって経済に対して、あるいは社会保障に対して、教育に対して、もっと予算を振り向けることができるのではないかと私は思っておるわけであります。  そこでアメリカは、特に最近の新聞によりますと、第一・四半期、一月から三月期の実際の成長率が〇・七%と非常に大幅に下降しておる。去年はアメリカは非常に好景気に見舞われたわけでありますが、こういう四半期状況を見るとことしは大変な状況になるのではないかと私はきのう参考人に対する質問の中でも申し上げたわけでありまして、そういう点で、アメリカ状況個人消費需要がまた高いということも参考人の方からも述べられておりましたが、アメリカは何とか持ち直すだろうという意見もあれば、非常に大変な状況になってくるのではないか、構造的な赤字、それに基づいて不況の深刻化も懸念する向きもあるわけでありますので、そういう点についての大臣考え方。  それから、先般のボンサミットについても、経済問題だけ話し合われたわけではないにしても、米ソ中心とするところの世界の平和、核軍縮、軍備管理という問題で、日本政府が、中曽根内閣がどういう役割を果たしたのか、レーガンさんとそういう立場軍備縮小について話し合われたのか、その点についてひとつお聞かせいただきたいと思います。
  14. 竹下登

    竹下国務大臣 第一のお尋ねの問題は、米国経済に対する見方ということで、参考人の御意見も今間接的に御披露になりましたが、私も実は〇・七というのを聞きましたときに、これはリセッションじゃないかという感じを持ちました。国内外の情報をとってみますと、そこまでリセッションと断定しておるような状態にはない。グロースリセッションという言葉が使われておりました。情報をとりますと、これは参考人の方から既に御意見があったと思うのでありますが、いわばリセッションになってドルが暴落するという傾向にはない。経済ファンダメンタルズのほか、やはりドルに対する信認というのは結局ストロングアメリカといういわば経済以外の要因もあるであろうと私は思うわけでございます。しかしながら、昨年のような調子でないことは御指摘のとおりであろうと思いますが、その辺の情報を見ますと、割合第二・四半期、第三・四半期は、今も御指摘ありました個人消費は結構強いし、住宅着工も順調だし、そう落ちることはないじゃないか、こういうふうな見方の方が今は最大公約数ではないか、こんな感じを持っておるところであります。この問題、場合によりましては、専門的に分析しております国際金融局長あるいは審議官からお答えをすることも、お尋ねによっては結構ではなかろうかと思うわけであります。  次のサミットの問題でございますが、確かにサミットというのは最初はエコノミックサミットで、本当は経済サミットから始まったものでございますけれども、私も数えて四回出席させていただいておりますが、政治サミット色が強くなるとでも申しましょうか、新聞扱い等もそういうところが非常に多くなっておるという感じがしないわけでもございません。  ことしのサミット中曽根総理サイド発言の特徴は、私は日本国総理大臣でありますが、同時に、迷惑をかけたアジアの国々の意見も代表して述べる立場にあります、こういうことにつきましては評価が非常に高かったと私は思うわけであります。その中で軍縮問題は、まずは米ソ両国首脳が可能な限り速やかに腹を打ち割って話すことが大事だということで、早急に会うべきである、こういうような主張を特に中曽根総理から繰り返しておられたと私は理解をいたしておるところでございます。  したがいまして、経済の方は、朝昼晩と飯を食いながらの大蔵大臣会議が勢い中心になってまいります。したがって、この点につきましては、ウィリアムズバーグ・サミット、それからロンドン・サミット、それからIMF五カ国大蔵大臣会議、そういう中で継続しておる世界経済に対する基本的認識は、先進国がそれぞれお互い一が可能な限り、コンバージェンスと言っておりますが、調和のとれた経済政策をとろうや、そしてお互いが、何分七億の人口で世界のGNPの六割弱を担当しておると申しますか、生み出す力を持った国でございますから、したがって、お互いが相互監視しようやという土俵の上での議論が多かった。したがって、かつての機関車論に対する失敗という反省からいたしまして、財政節度金融節度を守って、インフレなき持続的成長にこれからも対応していかなければならぬというのが土台であったと思っております。  それから、各国宣言の中に、アメリカ大統領は、フランス大統領は、これは大統領で元首ですから、その後に、日本国政府はとかイタリア政府はとかいうことになるわけでありますが、この宣言文に、いわば自己批判というとちょっと表現が適当ではないかもしれませんけれども、自分自分の国の抱えておる問題点指摘して、それに対する努力を誓い合った。したがって、お互いが揚げ足取りでございますとか、お互いが非難の応酬とか、そういうことではなく、自己認識を表明して、それを宣言の中に組み込んだ、こういう経過で推移してきたということを感じておるわけであります。  最後にいま一つ申し上げますならば、フランス首脳のミッテランさんの主張の中に、我々の先輩が最初やったときは非常にインフォーマルな、いわゆる非公式なお互い経済の問題を話し合う会合であったが、だんだん事前にいろいろなペーパーが用意されたりして官僚化してきたんじゃないか、だから、そういう意味ではいま一度原点論議というものもしなければならぬじゃないかというような発言が、これは私個人にとっても印象として強く残った問題点であったというふうに、少し長くなりましたが自分なりに総括をいたしておるところであります。
  15. 上田卓三

    上田(卓)委員 今世界には、広島型の原爆に換算して百万発分ある、それを使用しますと地球が二十回も三十回も破壊し尽くされるだけの量がある、こう言われておるんです。私はよくわからないのですけれども、例えばアメリカミサイルを七千発持っている、ソ連が九千発持っている。九千発の方が多いんだから、多く持っているところが先に戦争をしかければソ連が勝ってしまうということではなしに、気がついたらそれだけではなくて、米ソだけが地球上からなくなるのだったらいいのですけれども、ついでに地球もなくなってしまう、人類が滅亡するという恐ろしい問題で、どちらが性能がいいかとかどちらがどれだけの数のミサイルを持っているか、かつての核の抑止力ということが今や余り意味がないという状況にあるのではなかろうか、私はこういうように思うのです。  そういう意味で、東西軍事バランスが崩れるということにおいて、今中東を初め中南米あたり東西のしがらみの中では大きな影響の及ぶところもあろうかと思いますが、軍事アンバランスが起きたからといって今すぐ直ちに第三次世界大戦が勃発するという状況にないことははっきりしておるのではないか、こういうように思うのです。だから、君の方が少し優位に立っているじゃないか、だからそっちの軍備を先に削れ、そうしたらこっちも縮小するんだといいましても、何を言っているんだ、うちの方が劣っているんだ、君のところの方が増強しているじゃないかということになって、お互いわからないのですから、わかっているのかもわかりませんが、そういう水かけ論のような形になりかねないわけであります。やはり世界の国民はじっと見ているわけですから、どちらかが先に勇気ある行動、決断をする、そしてその実績を持って外交手段によって相手を軍備管理、軍縮に引きずり込んでいく、こういうことが今必要ではないんだろうかと私は思っておるわけであります。  そういう意味で、アメリカ自身も非常に困って、ソ連も困っていることだろうと思うのです。中国においても、中ソ国境でいろいろあったわけですけれども、中国近代化現代化ということを考えた場合、ソ連との関係については軍事的な関係においてもある程度緩和しなければならない、貿易問題においても進んでおると聞いておるわけでありますが、賢明な態度であろう、それはソ連にとっても利益をもたらすことだろう、私はこういうように思うのです。こういう場合、一方的に一方が利益をもたらす、片方が損をするということはあり得ないことだ、私はこういうように思っているんです。そういう点で、日本ソ連に対しても言うべきことは言わなければならぬが、とりわけ近い関係にあるアメリカに対しては親身になってレーガンさんに忠告する。そしてそれだけじゃなしに、その至らないところ、足らざるを日本が軍事的にカバーしようというのではなしに、日本みずからが軍備縮小といいますか防衛予算削減して、我々はこうなんだ、あなたらもこうしなさい、そして一体となってソ連に当たろうじゃないか、こういうことでないとだめではないか、私はこういうように思っておるわけです。  これは中曽根さんに言えば一番いいことでありましょう。また、総理も御出席いただくのではないかと思いますが、将来ある竹下大蔵大臣でありますから、大蔵大臣ということであってもそのことは非常に大事でありますけれども、やはり日本世界という形で大きくこれから伸びていただかなければならない大事な政治家でもあるわけでありますから、スケールの大きい、世界に通用する竹下さんとして、そういう意味で我々としては申し上げたいと思うわけであります。そのことは御答弁いただかなくて結構です。  そこで先ほどの、アメリカ景気が非常に陰りを見せてきた。持ち直せばこれほどのことはないわけでありますが、何せ相手さんのことでありますからそうもいかないだろう。日本は独自の経済政策で、アメリカ景気がよければこれほどありがたいこともないが、アメリカ景気が悪くなっても日本はさほど影響されない、逆に日本アメリカを初め世界景気回復の先導役をするような積極的なものが必要であろうと思うわけであります。しかし、何をいいましても今貿易摩擦の解消が我が国の外交政策、経済政策中心ではないかと思うわけでありまして、そういう観点から内需拡大をせよという意見が非常に強くなってきておるわけであります。竹下大蔵大臣内需拡大ということについては反対ではない、問題はその中身だろうと思っております。きのうの参考人の先生方も、内需拡大ということについては、いやそんなことをする必要はないんだと言う人はないわけで、内需拡大景気回復が順調に進むのか進まないのか、現状認識をどうするのかということが大きな問題ではないかと思うのであります。  特に対外経済担当大臣の河本さんが、五兆円の大幅減税を主張されておりますね。それからまた宮澤総務会長さんは、例の「資産倍増論」を掲げておられるわけであります。金丸幹事長や藤尾政調会長は、公共事業の拡大中心とした議論をされておるわけであります。また、けさの日経を見ますと安倍外相も、秋ということになっているのですが、参議院の外務委員会で、内需の振興で補正予算の検討も、こういうようなことを言われておるわけです。秋の臨時国会ということでありましょうが、臨時国会をやるということは解散含みというようなことにもなりかねない大変な問題もあるわけでございます。そういうことで、いろいろな立場から主張されておることは事実だろうと思います。  いずれにしても内需拡大ということではないかと思っております。中曽根政府竹下大蔵大臣内需拡大は必要である、内需拡大の具体策はいわゆる規制の緩和や民間活力で対処し得る、財政出動はしないということを言っておられるわけでありますが、規制の緩和とか民間の活力ということだけで果たして本当に貿易摩擦の大きな解消につながる内需の拡大になるのかどうか、その点についてしかと大臣考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  16. 竹下登

    竹下国務大臣 最初のいわゆる力の均衡論によるところの問題については、御見識として承らしていただきました。  我が国の国防会議の議長は内閣総理大臣でございますので、私のお答えする範疇の外にあるということも御承知の上での御発言であったと思いますが、この機会に若干私的なことを申させていただくといたしますならば、この間、私が言っております「列島ふるさと論」というものの座談会がございましたが、ある学者が、竹下さん、あなたえらいつまらぬことを言う、本当は米ソ両方の宇宙飛行士が一緒に乗ってランデブーして宇宙から地球を見たときに、何であんなに核兵器の競争などというつまらぬこと、あるいは地域によっては限定戦争みたいなことをやっておるのか、それは地球をなくすだけでなく宇宙全体を汚染することになる、したがって、みんなが宇宙飛行士になって一遍回ってみれば大体物の考え方は変わってきて、「列島ふるさと論」でなく「宇宙ふるさと論」になる、こんなことを学者の方がおっしゃいまして、なるほどなと思って私も承らしていただきました。御見識として本当に承ったわけであります。  そこで次は、まさに私の職務であります財政の面からのいわゆる内需拡大の問題でありますが、今世界の中ではいわゆるインフレなき安定した持続的成長という点は世界一だと諸外国からは言われます。が、人間というのは限りなき欲求を追求する動物でありますから、また政治は無限の理想への挑戦であらなければならぬということにおいてより高いものを求めていくというのも、これは当然のことであろうと思っております。  今日のインフレなき持続的成長ということから考えますと、確かに内需も、設備投資等を見ましても、よく言われます設備投資は結果としてまた輸出増大につながるのではないかということではなく、ハイテク産業等々いわゆる内需が多いから設備投資が拡大していくという性格のものもございます。あるいはレジャーもそうかもしれません。定かに分析したわけではございませんけれども、私は今まで演説で連休になれば三千万人も旅をするということをよく言っておりましたが、大きな間違いを言っておったな、五十二年ぐらいの統計で演説しておった。六千二百三十万人がこういう連休でも旅をするような日本の国民の趨勢である。それが、この間連休が済んだばかりでございますから、どれだけ消費につながっておるか定かな数字を持ち合わせて言っておるわけではございませんが、そういうことで内需の面が輸出依存の比率の方を少しでも食いつつあるという現状認識はできるのではないかというふうに思います。しかし、対外経済対策の柱になっております諮問委員会の諮問等から見ましても、内需拡大について、規制緩和はもとよりのこと、税制も、消費、資産、そして貯蓄というような点に眼を向けて見るべきだ、こういうような御指摘もいただいておるところであります。  これは少し話が長くなって申しわけありませんが、いつでも大蔵大臣はそういうことを言いがちでございますけれども、私どもが一つの前提を置いて見ますと、五兆円の減税をやれば輸入が何ぼふえるかというと七億ドルふえるだろう。これは五兆円といえば今の所得税のおおむね三分の一、こういうことであります。それから公共事業に三兆円、三兆円というのは公共事業費のおおむね一五%であります。三兆円やれば十三億ドル輸入がふえるだろう。そういうふうな一つの前提を置いた数字があるわけでございますけれども、そういうことがトタで相当な数字として数量的にあらわれるとは限らないというふうに思ってはおります。河本大臣が五兆円とおっしゃいましたのは、例の四十八年の答申を受けまして四十九年のあの税制改正のときの一兆八千億でございますか、あれを今日のGNPの拡大に伸ばしてみれば五兆円になる、こういう意味でございます。ただ、あのときと若干違いますのは、石油ショックが四十八年の暮れから来ておりますから、したがって相当なインフレ率の高いときであったということば事実でございます。だが、平面的な比較をすれば五兆円という数字が出てくることも数字の上では私もわかります。  そこで、今人名を出しながらの御指摘になりますと、内需拡大に対しての財政出動をヘジテートと申しますか抵抗しておるのはもうあとあなた一人じゃないか、こういうことになるわけであります。この問題、私にとってもそれは悩みでございます。これは政治家でございますから、だれしも人気取りもしたいという気もありますが、人気取りというだけでなくそうしたことに対応していきたいという気持ちはありますが、まず減税、いわゆる所得減税ということになりますと、実際問題その財源をどうするか。  この間もサミットへ参りますと、ヨーロッパの所得減税というのはよくわかります。国民負担率にしますと、日本が三五とすると大体五〇から五五ぐらいでございますから、その減らすことによって歳出もそのまま減らせばよいという論理になるわけであります。それから、アメリカ日本はどちらかといえば増減税チャラの議論になるわけでございます。したがって、赤字国債をもってこれに充てるということになると、一兆円の赤字国債は六十年の長期にわたって子や孫やひ孫に三兆七千億のツケを回す、多少の、三%台のインフレ率をそこに掛けましても、生きとし生けるものとして後世代の負担によってきょうのみずからの税金を減らしていくということに対する抵抗というものは、一つの筋としてだれかが堅持していなければならぬ問題ではなかろうか。評価するのは、あるいは五十年後の後世代の国民がこれを評価する、そういうことになるのでございましょうが、この点は私は堅持していかなければならぬ課題だと思うわけでございます。  したがって、そうなるとおまえの言うのは本当に直ちに効果があらわれない民活ばかりじゃないか。確かにきょうも後藤田長官とお話ししましたが、今行革審で詰めておる、それは規制で緩和すべきものがたくさんある、しかし、それを各大臣にこの次の閣議あたりに要請して各省がそれに協力していくという態勢をとらなければならぬという御趣旨の発言を、閣議前に、これは私語としてしておりました。なるほどなと思います。  ただ、民活といってもそこに問題がありますのは、即効性があるかという問題があろうかと思います。本当は民活の典型的なものは、電電、たばこをとにかく民営にして競争場裏に立たした。ところが、これはまだ動いたばかりでございまして、競争が出てきて活力が出ているという状態では今日の時点ではまだございません。もう一つは関西国際空港でございますけれども、これもいい制度ができたけれども、まだ動いておるわけじゃございません。それから、ささやかに国有地を活用してというような問題もやっと方向だけは出ましたが、これも今動いておるとは言えない。そこで、今度あたりの予算の執行状態を見てみますと、環境整備のための都市再開発とか都市の堤防とか、そこへ民活ができるような環境づくりの予算づけがなされておるなということを細かく見てみますと、それなりの配慮はなされておる。しかし、それが即効性のあるものだとは私も必ずしも思いません。したがいまして、これからは、まずは行革審のその規制緩和というものを徹底的な解除の方向で実行に移していくということから民活というものが実を上げていくんじゃないか、こういうことに今期待を持って鋭意取り組んでおる。いささか話が長くなりましたが、そんな感じでございます。
  17. 上田卓三

    上田(卓)委員 私も大蔵委員会へ来まして三年目になるわけで、去年もおととしも大臣に質問するときはいつもこの話ばかり。私も割としつこい男ですので今後も議論してまいりたいと思うのですが、その中で、日本経済の現状認識にやはり相当差があるのではないかということです。  確かに日本経済大国になったことは事実です。金持ちになったことも事実だろう。外国から見ればそうだろうと思うのですね。確かに二十年前、三十年前から見たらよくなっているのは当たり前でありまして、飢餓状態にあるアフリカとかあるいはその他発展途上国のそういう方々の生活、あるいは私もアメリカとかヨーロッパにも旅したことがございますから、やはり日本の方が金持ちだなというように思われる部分もたくさんあることも事実です。だからよく言われるのですが、外国を見てきた日本人は割と豊かであることがよくわかるのじゃないか、こういうことですけれども、しかし、それじゃ日本の国民が我々はもう中流意識になったんだ、そこそこ金持ちだということでみんなが本当に気持ちよく生活しているのかというと、やはりそうじゃないと思うのですね。外見て暮らすな、内見て暮らせ、こういうことじゃございませんが、あるいはまた貧しからざるを憂えるのじゃなしに等しからざるを憂えるという言葉もあるように、確かに金持ちにはなったが、しかしわしはやっぱり貧乏や、豊かでない、私はこういう実感があるのではないか。それが昨今流行のマルビであるしマル金であるのではなかろうか、こういうふうに思っておるわけです。  そういう点で、例えば去年だけの統計を見ましても、企業倒産が一年間で二万三百六十三件、過去最高の記録を呈しているのですね。竹下大臣から言うたら、そんなもの、つぶしてまた新しくつくっている会社もあるのやと。こう言うんやったら、これは企業倒産件数なんか調べる必要はないので、それは逃げ口上になるのじゃないか。やはり統計史上最高の倒産件数が出ているのなら、深刻に景気が悪いんだなというように一つの指数として見なければならぬだろうというふうに私思います。  また、例えばことしの三月で完全失業者が百七十四万人、これはもう御存じのことだろうと思うのですね。ところが、口を開けば日本の失業率はまだ低いんだ、欧米に比べて低いんだということを言われておりますが、しかし失業の中身についての統計のとり方が違うのですよ。例えば、日本の場合であれば、月末の一週間に求職活動をし、しかも一時間働いた者は除く、こういうことになっているのですね。だから、他の国から比べて少なくとも最低でこの倍ある。倍以上だというように我々考えるべきではないのか、こういうように思っておるわけであります。そういう意味で、働く意志があって、週末に一時間働いたらそれで失業者ではないのだということが果たして正しいのかどうか、こういうように思うわけであります。  最近、消費が順調に伸びておる、こういうことも言われておるわけでありますけれども、日本長期信用銀行の資料などを見ますと、所得の平準化あるいは中流化というのは幻想で、むしろ所得の格差、資産格差が増大し、消費の階層化が起こっている、こういうように言っておるわけであります。そういう点についてやはり十分に理解をしてもらいたい、こういうように思います。  それから、何をいいましても社会資本が欧米に比べて非常に立ちおくれておるということははっきりしているのじゃなかろうか。次に示す数字は、これは建設省の出しておる資料でありますが、住宅問題では、我が国の住宅数は量的には充足しているが、しかし、最低居住水準四人世帯で専用面積五十平米に満たない不良住宅に住む世帯が全世帯数の一割強、約四百万戸ある。住まいに不満を持つ世帯も五割近い、こういうことが資料の数字として出ております。それから下水道の普及率は、日本が二三%、アメリカが七一%、西ドイツは七九%、イギリス九四%。これ一つ見ても、欧米に比べて三分の一程度、それ以下であると言ってもいいのではないかと思います。また一人当たりの公園面積、これも日本は一人当たり一・四平米、アメリカは十八・九平米、西ドイツは二十四・七平米、イギリスが二十二・八平米、こういうことで、我が国の社会資本整備は非常に立ちおくれているというように考えなければならぬ、こういうように思います。  それから、時間の関係でもう少し例を出していきたいと思いますが、社会保障制度。例えば児童手当については、欧米諸国では第一子から出ておりますね。実施されている六十六か国中五十八カ国は第一子から支給している。ところが日本は第三子から、それも支給に所得制限を設けている。経済大国という日本が果たしてこれで社会保障制度としては胸を張れるような状況にあるのか、本当にお粗末の限りであると考えなければならぬ、こういうように思います。  それから、日本の労働者の労働時間が他に比べて極端に長い。きのう武藤先生からもこういう数字を挙げられておりましたが、単に勤勉だからよく働くんだ、こういう面もあるのかもわかりませんが、そうじゃなしに、働かなければ食っていけない、もっと休みたいのだけれども働かざるを得ない、食うに困る、こういう勤勉さだけじゃない側面も大蔵大臣としてよく考えていただかなければならぬのではないかいこういうように思うわけであります。  そういう点で、どんどん外国へいい物が安く輸出される、輸出が伸びることもいいことでありますし、また資本の流出ということも、それは世界経済の活性化という意味でも役立っていることは事実でありますけれども、日本の国民の立場から言うたら、外国もいいけれども、日本社会保障とか教育制度とかあるいは社会資本を充実してもっと景気回復してもらいたい、こういうことになるのじゃないかと思いますが、この点について、大臣、総花的で結構でございますので、ひとつ感想を述べていただきたい、このように思います。     〔堀之内委員長代理退席、熊川委員長代理着席〕
  18. 竹下登

    竹下国務大臣 私いつも申し上げましたように、政治というのはやはり無限の理想への追求でなくちゃいかぬ。だから、きょうよりはあすへということで、上田さんと毎年こうして議論しておりますと、いささかゼネレーションのずれを私自身が感じます。  といいますのは、いつも思いますが、今お笑いになっている方の中にも、いわゆる大正二けたと昭和一けた論争というのがありました。大正二けた、昭和一けたの最初の方というのは、これはよかれあしかれ戦前を知り、戦中を知り、鉄砲弾のかわりに兵役に参加し、そして焼け跡、やみ市の中で今日まで来て、それで現状調和能力とでも申しますか、そういうものはそれなりに備えておりますが、いわば進取の気性とか気宇壮大さとかそういうものに欠けているのじゃないか、こういうことをいつも私は自己反省をしております。ところが昭和二けたの人と、そして時代のずれはありますけれども明治の人というのは、やはり気宇壮大である、こういうことを私は物の本でも読み、また書いたこともございます。そういう意味における絶えず前を見た御指摘というのは、政策選択の中に入れていかなければならぬ課題だと私どもは思います。  そこで、御指摘なさいました問題、それぞれについておもしろい、おもしろいという表現は適切でございませんが、興味のある指摘でございますので、ひとつ失業率を申しますと、確かにおっしゃるとおり、大体おまえのところは二・六とか七とか言うが、うちと同じ計算をしたら五・幾らになるじゃないか、先進国会合でもこういう指摘がありました。この間のサミットでもフランス大臣から私に指摘がありまして、それでこの問題は、OECDの統計がだんだんだんだん画一的になって、誤差といいますかそれが縮まってきておることは事実であります。そこで、私が計算したものですから必ずしも正確とは申しませんが、分母と分子のとり方をどうするかで決まるわけでございますが、その分母と分子を失業率の一番余計出る数字で計算をしました。それはたった一時間ほどの話でございますが、そうすると、フランスの方が言っていらっしゃる一番分母を小さくして分子を大きくする形の統計をとってみましても三・六ぐらいまでしかいかぬじゃないか。だからあなた、倍の五・二とか五・三はなかなかいかぬぞというような反論もしてみましたけれども、この統計というものは、できるだけOECD参加国全体が一目でわかるというふうな訓練はこれからもされていくべきものである。またフランスは、最初は統計がなくて数だけで出す。最近はできてきましたから、したがって、模索しておられるからそんな質問も出たのではないかというふうに思うわけであります。  ただ幸いなことには、これは先進国はどこでもそうですけれども、失業者が町にあふれ、塗炭の苦しみという状態にはないじゃないか。特に日本の場合、かつて私どもが子供のころ見ましたルンペンとでもいいますか、浮浪者の方というのは大体やせていらっしゃいましたが、今、時たまお見受けしますけれども、例外なく太っていらっしゃるという感じはいたします。その太っていらっしゃるのはあるいはアル中かもしれませんけれども、そういう状態は我々の子供のころから見ると違うな、こんな感じがしております。反論として申し上げているわけじゃございません。  それから社会資本の問題でございますが、社会資本の問題は、確かにおっしゃるとおり、今の人口当たりでいきますと先進国から見れば全部小さい数字しか出ません。それじゃどれぐらい投資しているかといいますと五・五、対GNP比でいきますとほかの国の大体倍やっております。それはおくれているからだと言われればそのとおりであります。  それで、そのおくれているものの中で申された二つの問題、一つは下水道の問題でございますが、昭和四十五年に下水道の計画をつくるといって議論をしましたときに、私、四十六年は官房長官でございましたが、下水道普及率ゼロという県があるかと僕が聞きましたら、はい、官房長官の島根県と幹事長の保利茂先生の佐賀県がゼロでございますと言われて唖然としまして、そういうことを記憶しております。下水道がなぜおくれたかと申しますと、要するに日本は真ん中に山がございまして、そして雨の量が先進国のちょうど倍降ります。したがって、日本海と太平洋へ汚物を流すという、それで子供のころから川は三尺流れればきれいになるなんて我々聞かされたものですから、そういう地形的なこともあっておくれたのであろうと思います。フランスなんかは百年前に既にジャン・バルジャンは下水道の中へ逃げておりますから、あそこは緩やかでございますから必要があってやはり進んだんだな、こういう印象を受けました。したがって、これだけは追いつけ追い越せやらなければならぬというので、予算配分のときも建設省におかれて重点的に配分されると同時に、今度は藤尾政調会長の各党協議との御結論によりまして、下水道というのは水が通って初めて下水道だ、水の通わない間は単なる溝である、そのとおりでございます。そういう意味から、三年間でございましたか、ちょっと忘れましたが、繰越施行して普及率を高めていこう、こういう御発想もあるわけであります。  それから公園面積は、都市公園として見た場合はまさに上田さん御指摘のとおりであります。我々田舎者ですと窓をあげれば皆公園みたいなものでございますから、そういう相違がございますが、この点と住宅問題は我が国の宿命的な一つの面積理論というものがあろうかと私は思います。アメリカの二十六分の一の面積でございますけれども、可住地面積はおむね八十分の一、人口は向こうが倍でございますから、したがって一人当たり四十分の一の土地しかない。厳密に言うと三十七分の一だそうでございますが、アバウト四十分の一。そうすると、ロサンゼルス郊外が坪当たり五万円で東京近辺が二百万だな、なるほどちょうど四十倍になるなどいう計算が出ました。  やはり面積の問題というのが大きな問題ではなかろうかというふうに考えますので、いわゆる実態的な幸福感といいますか幸福度といいますか、本当にそういうものはなかなか思うに任せないものだな。だから、歴史の中でアメリカの青年はロッキー山脈へ登って、ああ広大なるアメリカよというところに快哉を感ずるし、我々は四畳半でスズムシの音などを聞いておったのかな、こういう反省も含めておりますけれども、これは本当に今後とも、GNP比で倍、ほかの国から見れば倍の速度で進めておるものの、面積問題をどう解決していくかということは問題であるし、私が昭和五十一年に建設大臣をしておりましたときには四十九年の統計で百八十一万戸空き家がある。はあと思っておりましたが、この間聞いてみますと四百万戸弱だそうでございますが、これは遠くて高くて狭いところばかりがあいておる、こういうことでございますので、大阪が一つあいている理屈になるわけでございますから、大変なものだな。  しかし、それは量的なものであって、したがって質的な充実というもので住宅政策というのはいろいろな知恵を出さなければいかぬというので、大蔵委員会でいろいろ御指摘いただいて、私が親子二世代論というものもやってみました。それをどうして宣伝しようかと思って、それこそ「おまえも大きくなったから、一緒にお家を建てようや」、これはスローガンでございます。それからもう一つは、建て増しに対する枠を少し余計認めようというのは「じいちゃん、ばあちゃん、いらっしゃい、お家が大きくなったから」、こういうようなことを考えてやってみましたが、私が思ったほどその需要が伸びておりません。これはやはり今後とも一生懸命で知恵を出していかなければならぬ課題であるというふうに考えておるわけであります。  また、御例示なさいました児童手当の問題も、第三子からというのを第二子からというような改正をお願いしょうとか、労働時間の問題は、これは山口労働大臣に、上田さんと年が一つしか違いませんが、私はいつも言われます。私どもはどうしても「あしたに霜を踏み分け、夕べに星をいただく」、こういう農村田園賛歌を思い出しがちでございますが、あなたは島根県の農村青年団出身だからその程度しか言えないだろうなんて言っておりますい実態はワークシェアリングとかいろいろなことを言わざるを得ない今日、労働時間の短縮については、特に私の側は金融機関が主体でございますけれども、具体的にも進めていかなければならぬし、そういう空気が出つつあるということでございます。  勤勉ということに対する御評価もございましたが、確かに勤勉だろうと思います。しかしフォーシーズンズ、すなわち四季のある国民は大体勤勉でございます、統計的に見ますと。やはり冬場働けないから平素働いておこうというように習慣づけられて、ワンシーズンの人はでれっとして、でれっとしておるとは表現は悪うございますが、どちらかというとそういうところが少ないなという印象を与えておりますが、その勤勉さを、なお労働時間短縮といういわゆる近代国家の範疇の中で、いつも思います「あしたに霜を踏み分け、夕べに星をいただく」というのといわば現世代の労働時間短縮というものとをどう調和させていくかということは、やはり我々の時代から今おっしゃいました新しい時代への大きな一つの政策課題として引き継いでいかなきゃならない課題ではなかろうか。  何だか話が長くなりましたが、ついペースに引き込まれましたので、その点はあしからず御容赦をいただきたいと思います。
  19. 上田卓三

    上田(卓)委員 事細かく御説明いただいたんですけれども、私はそのことを余り聞きたかったわけではございません。  要するに大臣、私もちょうど終戦当時小学校一年生でして、早く父に死に別れまして、中学生のときはもう私働いていたんです。夜間高校ですから昼働いて、そうやって国会議員になってきたんですから、終戦当時のことは私自身もよく知っています。そういうことを思えば、今もう天国みたいな生活だなというふうに思わぬこともない。確かに昔は、終戦当時は、貧乏人といいますか、多くの人がそうでありましたけれども、食べるものがなくてみんなやせていましたよね。金持ちは食べるものを食べて、よう肥えている。おなかの出ている人は金持ちで、やせている人は貧乏人ということだったのですが、今貧乏人でもみんな肥えていますよね。それなら肥えているから貧乏人でなくなったのかというと、そうじゃないと思うんですね、ずばり言うならば。今は食うに困らぬ。それは食べられますよ。肥えてたらもうおまえ貧乏人と違うやないか。それじゃ、もう体重計ではかって、身長で何キロ以上の人間はそういうことになりますから、そんなこと言ってたら本当に多くの国民からそっぽ向かれるんじゃないかと私思うんですね。お父ちゃんが若いときはこんな生活で、おまえらまだ楽や、ぜいたく言うな、こういうような考え方では、もうこれからの政治家はやっていけないんじゃないか、私はこういうように今思っているんですね。  だから、外国がどうだから日本人はまだましじゃないかとか、隣の家から見たらうちはまだましやないかとか、そんな形で我慢せいということじゃなしに、日本が金持ちになったと言うなら、多くの国民が本当に我々金持ちになったんだなと思うようなことでないといかぬのじゃないか。そういう意味では、富の配分が余りにもアンバランスになってきて、いわゆる等しからざるを憂えるという状況にあるということを考えていただきたい。独裁国家であれば、我慢せい、辛抱せい、あるいは税金を取り立てるということもあるのでしょうけれども、一応議会制民主主義というのですか、特に日本の場合選挙制度があるわけですから、そんなやり方をやっていたら、今の中曽根さんが割と世論調査でも高いというのも実際わかりませんよ、選挙やってみたらどないなるか。そんなことを考えていたら大変なことに、次と思っておったら自民党が過半数割ってしまうということにもなりかねないわけでありますから、これは大蔵省の人もよく考えてもらわぬといかぬのじゃないか、こういうように思うわけでございます。  そういう意味で、きのうも私申し上げたのですけれども、やはり四年越しのマイナスシーリング、そしてこれからまた六十五年度に向けてゼロシーリング、マイナスシーリングで赤字国債の脱却、こういうことで果たして自民党の政権が続くのだろうか。さらに大型間接税ということに、国民の所得税減税も抱き合わせと言ったって、それはもうみんな国民はばかじゃないのだから、よくわかっていますよ。そんな毒と薬を一緒に飲ますようなことで国民が納得するはずがない、私はそういうように思っているんですね。  それと同時に、貿易摩擦の解消についても、諸外国が日本内需拡大せいと言っているから内需拡大についてある程度取り組まなければいかぬな、そんなことではなしに、日本の国民の立場から、内需拡大してもっと景気を回復してもらいたい。そのことが自然増収につながって、財政再建の一助になるのではないか。あるいは減税するとか大幅賃上げであるとか、あるいは不公平税制の是正、こういうような形で取り組まなければだめではないか。そういう意味では、私が今申し上げている、私だけが言っているのじゃないのですけれども、竹下大臣の「列島ふるさと論」の中にそういうものを入れたら、これは近いですよ。しかし、そうでなかったら本当に、中曽根さんのかばん持ちじゃないですけれども、失礼かもわかりませんけれども、何かそんなけちけちムードでは竹下ブームというものは起こってこないですよ。私はそういうふうに思いますので、それはまた後で折に触れてお答えいただいたら結構だ、こういうふうに思います。  次に進みます。対外経済諮問委員会の提言にあるところの、内需拡大のための税制の見直しについて大蔵省の見解を聞きたい、こういうように思うわけでございます。  諮問委員会の報告では、「内需中心持続的成長に役立つ税制の見直しが重要である。基本的には貯蓄・消費・投資のバランスを図る観点から検討を行う必要がある。」このように提言されておるわけでございまして、そういう意味で、税制の見直しという場合、大蔵省としてはどういうことを考えておるのか、ひとつお聞かせをいただきたい、このように思います。
  20. 竹下登

    竹下国務大臣 この税制改正でございますが、そうして先ほど来の御意見でございますが、どちらかといいますと、それは意識的に上田さんは拡大均衡論、私は意識的に縮小均衡論というような問答を闘わせておるような感じがいたします。それはいずれにいたしましても、この問答が国民全体のまた議論を呼んでいけばいいことだと思います。  そしてまた、過半数を割るということに対する御心配をいただきましたが、ある意味においては議会制民主主義というのは政権の交代があるべきものでございますので、私のように野党を一回もしたことのない者は絶えず自粛自戒をしておりませんと、私の前まではみんな、今当選連続十一回の人まではよかれあしかれ野党を経験していらっしゃいます。中曽根さんもそうでございます。だが私どもは、左右社会党統一、保守合同後が昭和三十年にできまして後に初めて三十三年の選挙で出ておりますから、どうしても与党マンネリズムになりがちだ。しかし、政権はいつでもかわるべきものであり、そしてかわった場合の復元力を持たなければいかぬというのは、私も二十数年間自分の心を戒めるために言い聞かせておるというところでございます。     〔熊川委員長代理退席、熊谷委員長代理者     席〕  そこで、この税制の問題ということになりますと、税の問題では、今私は税を論議する環境というのが三つあるだろうと思います。一つは、異例のことながらとして、六十年度税制のあり方についてということで税制調査会から答申をいただいて、それを受けて中曽根総理が公平、公正、簡素、選択、活力という観点から、シャウプ以来の検討を税調にお願いしようと思っております、それについては国会の議論を正確に整理し、それを土台にして議論をしてもらいましょう、こう言っている、その一つの環境がございます。それからもう一つは、与野党の幹事長さん、書記長さんの会談がございまして、それが政策担当者ベースでございますか、それで進んでいくという環境がもう一つあります。それからもう一つが、今まさに御指摘なさいました対外経済の諮問委員会の中で、内需拡大のための税制改正を検討しなさいよという御提言をいただいて、政府はこれを尊重する、こう言っているわけですから、その三つの組み合わせをどうして進めていくかということだろうというふうに、私は手順としてはそういうことではなかろうかなというふうに思っております。したがって、政府としては予見めいたことは申さないという立場をとり続けてきておるわけでございますけれども、一つ一つについて、やはりいろいろな議論があることは事実でございます。  その議論についての、今日までの税制調査会等での評価というものはいつも整理して申し上げることのできる立場にあるわけでございますが、実際問題、税制でどうするかというと、いや貯蓄が多過ぎるからという議論もそれはございますが、この貯蓄議論というのが、少し話が長くなって申しわけありませんけれども、なぜ貯蓄が多いかという質問をサミットでも受けました。私は自分なりに整理して申しました。  それは、まず先ほどの、勤倹貯蓄の思想が高いということを申しました。これは、理解した人としなかった人とあると思います。それはいいことだという評価はいただきました。  二番目は、ボーナス比率が日本の給与体系は高い。すなわち公務員さんでございますと十六・九カ月でございますから、四・九カ月がボーナスですから、四分の一から三分の一くらいまでがボーナス比率になっておるから、いわば固定給で生活してボーナスで貯金したり物を買ったりというような傾向があるということが二つ目であります。  それから三つ目が、老後の不安というものでございます。ところが、これは見ますと、年金制度なんかも諸外国と比べてまあまあのところへいっておる。しかし、かつてはなかったわけでございますから、それでその習慣が今日惰性としてやはり残っているんじゃないかということと、それから急激に訪れる高齢化社会という問題からしてそれがあるんじゃないか。  それから四番目は、私流につけたものですが、日本金融機関は倒産しない、こう申しました。それはアメリカは一万四千五百ありますから時々倒産しますが、日本の場合は相互銀行以上でも百五十六しかない、こういうことになります。  そうしますと、その次は、これはやはり端的な数字だけで話した話でございますから、私はそう思っているという数字だけで見ますと、国民負担率が他の国よりも低いから、だから貯蓄は多いんだという単純な論理が相手側からはよく出る論理であります。  それからもう一つの六番目が、いわゆる貯蓄優遇税制というものがある、それがやはり貯蓄を支えたんじゃないか。しかし、その貯蓄があったからこそこれだけの公債も発行できたのでございますから、私は貯蓄意欲が高いということを否定もしませんし、そしてそれはいいことだ。外国の人も結論から言うと、いいことだが何でおまえのところだけが高いかということが聞きたいのであって、悪いことだという指摘はないわけであります。  などなどを考えてみますと、その貯蓄をどういうふうな活用をしていくか、それが財政の出動で活用されることなく、民間活力でやってほしいものだというふうに思っておるところであります。  税制の問題は、あるいは御意見に基づいてまた個々にお答えすることもあろうかと思います。
  21. 上田卓三

    上田(卓)委員 我々が要求しておりますところの大型の所得税減税、あるいは教育減税とか寝たきり老人、単身赴任減税、これにつきましては与野党協議によって今国会中に実現を図ると、こういうことで協議いただいておるわけでございます。景気浮揚、内需拡大という意味でやはり減税も大きな目玉ではないか、こういうように思っておるわけでありまして、いたずらに大型間接税の導入の見返りに所得税減税、こういうようなことはいただけないというように思っておるわけであります。  五月九日に建設省の住宅経済懇談会なるものが住宅減税について提言をされておるようでございます。関連投資も含めてわが国の住宅投資は年間で大体三十兆円、こういうことでありますから、まず一点の住宅ローン利子控除制度をつくるとか、あるいは二番目の持ち家に減価償却制度を取り入れるとか、こういうような形で、やはり住宅減税も大きな景気対策といいますか、国民に対するサービスということにもなるんではなかろうか、私はこういうように思っておるわけであります。当然税制につきまして、我々は利子あるいは配当の分離課税というんじゃなしに総合課税、その他の優遇税制をやはり廃止して、本当に勤労者の立場に立った減税を行うべきだ、こういうように思っておるわけでありまして、その点について大臣のお考え方があれば少しお答えいただきたい、このように思います。
  22. 竹下登

    竹下国務大臣 私がお答えいたしますのは、今までの税調等の意見を集約してお答えするということになりますので、一つ一つを反駁するという意味ではございませんので、まず事前に御了解をいただいておきたいと思います。  住宅ローンの返済額に対します所得税制上の特例といたしましては、既に住宅ローン償還金の一定割合を三年間にわたって税額控除する住宅取得控除制度が設けられております。この控除額について五十八年、おととしの改正で控除率を七%から一八%に引き上げて、控除限度額を五万円から十五万円に引き上げるという改善措置を行ったところでございます。年十五万円の税額控除というのはどれくらいに当たるかと申しますと、年収四百二十六万円の夫婦子二人のサラリーマンの所得税の年税額と大体一緒のもの、それが税額控除される、こういう仕組みになっておるわけであります。したがって、償還金等の額を分母としまして、分子をその年の割賦、それから三十万円を引いたものに一八%を掛けたもの、その最高は十五万円という仕組みになっておりますので、住宅というものを政策税制として今日までも取り上げてきておるという実態を今申し上げてみたわけでございます。
  23. 上田卓三

    上田(卓)委員 次に、要するに本案の議題であります財政再建ですね、百三十二兆円の国債残高、こういうことでございまして、国債の利払いのために新規の国債を発行しなきゃならぬ、これが十兆円ということになっておるわけでございまして、恐らく国債の利払いは来年は十一兆円、再来年は十二兆円、年々ふえることは火を見るよりも明らかであろう。歳出の中でトップに躍り出て、地方交付税とかあるいは社会保障費をぐんと抜く、こういうような状況に、これはもう年々この格差が出ることは明らかではないか、私はこういうように思うわけでございます。  十兆円といえば一日当たり二百五十億円くらいになりますね。一時間当たり十億六千万円ということでありまして、もう大変なことでありますから、これをどう新たな借金をなくして、建設国債の分もあるとはいうものの、特に特例国債赤字国債をどう脱却していくか。当初五十九年度脱却、こういうことであったのですが、それができない、こういうことで六十五年度脱却ということになっておるわけでありますが、そうでなくても四年間のマイナスシーリングで、今後さらに五年間緊縮財政でやっていくということが果たして可能かどうか。こういうことで、私自身きのうも参考人の先生方にも申し上げたわけでありますが、本当にそのことはできるというように大臣がお考えなのか、あるいは新しい現実的な視点に立ってそういう再建の計画を見直すというのですか、そういうような必要を感じておられるのかどうか、その点についてお聞かせいただきたい、このように思います。
  24. 竹下登

    竹下国務大臣 五十九年脱却をギブアップせざるを得ない環境になった。そして、中曽根内閣になって六十五年脱却ということを財政再建の第一目標として挙げておるわけであります。その旗をおろすわけにはまいらないというのが現在の私の心境であります。  しかし、今まで単純平均する額ほどに減ってないじゃないかという御指摘もあろうかと思います。そのとおりです。今までも、年度決算で剰余金が出れば剰余金の全部を国債整理基金に入れて、そしていわゆる年度外の発行、六月まで発行できるわけでございますが、それを可能な限り当初の予定よりも少なく発行して、結果として発行しなくて済んだようなものをも足してまいりますと、この三年間で大変な苦労をしながら減らし続けて今日に至っておるわけであります。これは建設国債が善で赤字国債が悪だという議論は別といたしまして、今日のお互いのサービスを後世代の国民のツケに回してはならぬということからして、やはり六十五年脱却という旗印は掲げ続けていかなければならぬ課題だというふうに思っております。そこのところ、六十五年ごろとかあるいは少しでもワイダーバンドみたいなものを設けた途端から、やはり歳出圧力に対する厳しさが失われていくな、大蔵大臣を私もここのところ連続三回、そしてその前の五十四年、五十五年の経験からしてそういう気持ちを持ちます。したがって、時には損な役目だと言われることもございますけれども、考えようによればだれかがその役割を果たさなければならぬということになりますと、私も落選するかもしれませんが、やはりこの際心を鬼にしていなければならぬ、顔で笑って心で泣いてというような心境で対応していかなければならぬという心境でございます。
  25. 上田卓三

    上田(卓)委員 きのうも参考人の方の発言で、百三十二兆円の大変な国債の残高ですね、赤字国債をなくしていこうというようなことになれば戦争があるいはインフしか、そうもならぬ、こういうことも大変な問題であるということでおっしゃっておったわけでございますが、戦前のそういう軍事費調達という意味国債が発行された、あるいは戦後のインフレというものを我が国の国民は経験しておるわけでございまして、そういう意味で、財政法によれば建設国債であってもこれは例外中の例外だということであったように思うわけでありますが、昭和四十一年から建設国債が発行される。そしていわんや赤字国債というのはもう本当は認められない状況であるにもかかわらず、五十年度からオイルショックあるいはドルショック以後世界景気が非常に混迷する中で、我が国経済の建て直しという意味赤字国債が増発されてきて今日に至っている。  こういうことで、利払いさえもままならぬ、いわんや去年から国債の償還、そしてことしから本格的に大量な償還、こういうことになってきて、その償還のための定率の繰り入れ自身がもう四年間停止しているというような状況で、資金が枯渇している。こういうことで借換債を発行しなければならぬ。これは普通の会社で言えば、手形が落ちぬということになってジャンプをするということでありますけれども、取りつけ騒ぎで倒産ということになるわけでして、日本は国家権力であり、また信用があるということになるのでしょうが、本当にそういう意味では大変な状況だというふうに我々は認識しなければならぬ、こういうように思うわけであります。  そこで借換債ということでありますが、やはり借換債であれば中長期債ということになるわけでありますが、資金不足をカバーするという意味で短期債を発行する、あるいは年度にまたがる短期債というものも当然あるわけでありまして、そこで借換債の円滑な消化を図るための発行条件とか、あるいは短期借換債の商品の内容とか、あるいは他の金融商品との競合、資金シフトの問題、あるいは短期金融市場の拡充など、さまざまな問題が起きてくるのじゃなかろうか、こういうように思うわけでございます。  そういう点で、きのうも大分参考人意見も聞かせていただいたわけでございますが、特に金融自由化の中で短期借換債の今言った発行条件とかあるいは他の金融商品との競合問題、そういう点で特に銀行業界などにおいても非常に懸念をされている向きがあるわけでございますので、大蔵省として、政府としてどう対処されようとしておるのか、お聞かせいただきたい、このように思います。
  26. 宮本保孝

    宮本政府委員 御指摘のとおりでございます。私ども、借換債対策というのは今後の国債管理政策の大変大きな課題だと考えておりまして、今回も御指摘のような短期国債の発行であるとかあるいは翌年度を前倒しにして発行させていただくというようなことを御提案申し上げまして、今御審議していただいておるわけでございます。  特に新しい商品を出します場合には、やはり金融市場に与える影響であるとかあるいは既存の金融商品に与える影響、それから個々の金融機関とか関係の企業の収支に与える影響とか、いろいろなことを考えながら商品設計をしていかなくてはいけないわけでございますけれども、現在のところまだ法律も通っておりませんので、法律が成立いたしましたならば、できるだけ早くそういう点を考えてまいりたいと思っております。  今御指摘の点につきまして、こういう点が問題なんだというところを若干御披露申し上げてみますと、まず短期国債の商品設計をするに当たりまして、期間をどうするのかというふうな問題があると思うのです。これはやはり借りかえのための短期国債でございますから、その短期国債を例えば六カ月とか三カ月とかということで出しましたときに、その借りかえの短期国債が満期が来たときに、別の中長期国債の満期と重なるようなことがありますとますます市場を混乱させますので、そういう点はまず第一に考えなくてはいけない問題じゃないか。それからまた、国債整理基金の資金繰りの話があるわけでございまして、この点も考えながら期間を考えていかなくてはいけないということがございます。  それからまた、私どもといたしましては、できるだけ財政負担を軽減するという目的もございまして、短期国債といいますか種類を多様化させていただこうと思っておるわけでございますから、やはり最も有利に発行しなくてはいけない。そういたしますと、その発行する時点でどういう期間のものを発行すれば一番有利に調達できるのかというような点も必要でございます。それから、最初に申し上げました現在ございます短期の規制金利商品、例えば三カ月物定期とか六カ月物定期とか一年物定期は現在まだ規制されておるわけでございますが、そういう規制商品に与える影響、それから自由金利商品でございますCDとかあるいはMMCとかございますが、こういうものとのバランスもございます。その点を考慮しながらそのときどき発行する段階で期間を決めていく必要があるのではないかと考えております。  それから、最低の券面額でございますけれども、これはあくまでも入札でやるわけでございまして、結局自由金利商品になるわけでございます。したがいまして、これも先ほど申し上げましたけれども、既存の規制金利商品から急激に資金がシフトするようじゃこれは非常に困るわけでございますので、そういう点も考える必要がございますし、自由金利商品でございますCDが一億円、それからMMCが今五千万でございますので、これが金利自由化が進みます過程で、CDの一億円がどうなるのか、あるいはMMCの五千万がどうなっていくのかというような点も考えながら、短国の最低券面額を考えていく必要があるのじゃないかというふうな気がいたすわけでございまして、まああれやこれやいろいろ問題がございますけれども、その点も含めまして法律成立後に早急に検討に入りたい、こう思っております。
  27. 上田卓三

    上田(卓)委員 金融自由化、こういうことで短期債が発行されることに非常に心配の向きもあるわけでありますから、十分にひとつ配慮して対処していただきたい、こういうように思います。  時間も迫ってまいっておるわけでございますが、電電がNTTということで四月一日から新会社が発足、こういうことに相なって、その株の売却益を国債整理基金特別会計に一般会計から入れる、こういうことの法案の趣旨であるわけでございますが、きのうの参考人の方の意見にもありましたように、国債整理基金のあり方というものをちゃんとすべきであって、株の売却益といういわば臨時収入を当てにするということではだめだ、こういうことも述べられておったようでございまして、まさしくそのとおりだ、私はこういうふうに思っておるわけであります。  四年間も定率の繰り入れの停止、こういうことで現在九千九百億ですか、ところが来年度は国債の償還一兆六千億がある、こういうことで足らない、こういうことから電電株の売却益を入れよ、こういうことになるのではないか、こういうように思うわけであります。しかし電電株をどういうような形で売却するのか、価格はどうかということもあるにしても、実際この問題についてやはり多くの疑義があるのではないか、こういうように思っておるわけでございまして、国債整理基金並びに産投会計にこの売却益を入れるという本当の趣旨というのですか、そういう点で、この整理基金の本来のあり方ということから考えて、ひとつここで大臣考え方というものを披瀝をまずしていただきたい、このように思います。
  28. 竹下登

    竹下国務大臣 この問題、この大蔵委員会あるいは逓信委員会あるいは連合審査会でお答えをいたして、私自身がそのときの雰囲気として素直に受けとめますのは、大蔵委員会で議論しますと、やはり財政面からの議論になってまいります。したがって、国民共有の財産であるから国民共有の借金に充てるという論理、またそういう論議も出てまいりました。それから、どっちかといえば、逓信委員会で議論をいたしますと、自分たち――自分たちではありません、いわば電電公社の労使の努力によって今日これだけのものになり、それが民営化される、したがっていわば電電のために使うべきだという、雰囲気としてそういう論理になりがちでございます。私自身も本当に、この間申し上げましたが、株を四枚ちょうだいしまして、それは日本国政府と書いてあるかと思ったら、株主は大蔵大臣と書いてありまして、名前こそ書いてありませんけれども、これは大変なことだなという感を深くいたしたわけであります。  したがって、これは予算編成の過程、すなわち六十年度予算編成の過程におきましていろいろな議論が行われたわけでございますが、前国会で表明しました政府統一見解に基づいて、予算編成過程で政府部内において検討を行いました結果、国民共有の財産を国民共有の負債である国債の償還財源とするのが適当であるということから、売却可能な株式を国債整理基金に帰属させる、こういうことにしたわけであります。そうしてあとの三分の一については産業投資特会に帰属させて、その配当金をいわば技術開発というような低収益性とでも申しますか、あるいはリスキーなもの等に充てていくということにしようという結論を得て今御審議をいただいておる、こういうことになろうかと思われるわけであります。  そこで、昨日の参考人の御意見を私拝聴したわけじゃございませんけれども、国債整理基金というもの、いわば減債制度の基本でございますよね、それを、いわば今の上田さんの表現をかりれば臨時収入と申しますか、そうしたものに安易に頼ってはならぬという警鐘は、いつでも受けとめていなければならぬというふうに私は考えております。
  29. 上田卓三

    上田(卓)委員 現在、電電の資産は約十兆七千二百五十億円程度ある、こういうように聞いておるわけでございますが、この資産形成というものを考えた場合、特に国が電電に出資した分はわずか百八十億、こういうことで、あとはやはり電話の利用者が債券を買うことによって電電を支える、またそういう電電の皆さん方の営業活動といいますか、そういうお仕事によって資産が形成された、そういう意味で、もう全部が全部と言っていいほど、これは国のものというよりも国民のものである、これは国民に還元すべきものではないか、こういうように思うわけであります。  過去において電電公社は、国に対して五十六年度は一千二百億、五十七年度は二千四百億、五十八年度は四千八百億、五十九年度は六千八百億、これだけ納付金を上げてきたという経過があるわけでありまして、いわんや今度、どれだけのものになるか別にして、株の売却益を国に召し上げる。幾ら国は借金があるんだといっても、これはもう全く本当にけしからぬ話だ。これはやはり国債の償還、赤字の補てんというものについては別途考えるべきでありまして、いわんやNTT、新会社の今後のそういう運営といいますか、これから厳しい状況を迎えなければならぬわけでありますから、その点についてはどうも納得できない、こういうように思っておるわけであります。  特に、民間ということになりますと、第二電電、こういうことで、これは一社だけではなしに、もう既に数社が名のりを上げている。名のりを上げる以上は、これは恐らく赤字の部門は絶対仕事をしないでしょう。もうかるところだけを商売にする。こういうことになってくるわけでありますから、例えばたばこ株式会社、この場合は国内は一社ですよ、まさしく独占ですよ、外国たばこに対して闘えばいい、こういうことになるわけでありますけれども、このNTTの場合は、国内の大手資本がもうかる部分だけに参入してくるということでありますから、大変な状況にあるのではないかと私は思うわけであります。  例えば一一〇審とか一一九番、福祉電話あるいは全国的ネットワークの維持、これは公共性という立場からも当然のことでありましょうけれども、電話番号の案内というようなこともあって、NTTが一社だけで公共性という立場に立って多くの負担をしなければならない。十円の市内通話の部分は赤字だと聞いておるわけでございます。長距離については黒字である。しかし、第二電電があらわれてくるということになれば、この長距離電話についてももっと料金を安くしなければ競争に負けてしまうということで、黒字の長距離の部分について料金を下げるのは私は当然のことだと思うわけであります。さりとて、市内料金は赤字だからこれを上げるということは決してあってはならぬ、私はこういうように思っておるわけであります。  五月二十一日の日経新聞の朝刊によりますと、NTTの真藤社長が料金体系を見直す云々ということも述べておるわけでございます。NTTは約五兆円の負債、これは毎年一兆円くらいずつ償還していますね。五十六年度一兆円、五十七年度も一兆円、五十八年度も一兆円、五十九年度も一兆円、六十年、六十一年、六十二年約一兆円ずつ、これは六十七年度まで償還するということでありますから、大変な経営状況になるのではないかと私は思うわけであります。こういうNTTの立場から言うならば、株の売却益を国債整理基金に入れることについて何かぐっと押さえ込められたような感じでございますが、こういう状況というものをどのように考えておるのか、参考人の方の御意見を聞きたいと思います。
  30. 高橋節治

    高橋参考人 ただいま先生からNTTに対して非常に同情あふるる御意見をいろいろいただきまして、非常にありがたく感謝している次第でございます。  今回の法律の改正によりまして、従来独占でやっておりました電電公社が自由競争の中に入ってきた、当然そのために公共企業体という一つの枠、規制の中でやっておったものが規制が外れて大幅な自主性が与えられた、こういうことでございます。私たちとしては、会社法二条の中に会社の責務ということで相当重たいものがある、先ほど先生から御指摘があったとおりでございまして、そういうものを非常に重たく受けとめておりますけれども、何としてもこれは私たちの責務としてやり遂げていかなければならぬ、そのかわり与えられた自主性の中で経営のあり方をもっと根本的に自由に、濶達にしていきまして、財務の基盤をもっともっと確立をさせていきながら公共性を維持していきたい、このように思っております。特にそういう点では、国会の皆様方並びに政府の皆様方に、絶大なる御援助と御指導をお願いする次第であります。
  31. 竹下登

    竹下国務大臣 おっしゃいましたとおり公共性がございます。したがって、そのことについて私どもも今日まで議論をしてまいりましたし、これからも公共性に対する認識は十分持っていなければならぬという側面と、できる限り政府が関与するのは最小限にとどめて自由濶達な競争原理の中で育っていかれるべき局面、両面を備えておるのがまさに今度のNTTであると思うわけであります。したがって、今御指摘のありました売却収入を新会社の債務の償還に充てるべしという意見があることはわかりますし、私も仮に企業家であるとしたら、最初にそれはそうさせてくださいというのが極めて自然の流れで出てくる議論であると思うわけであります。しかし、国民共有の資産であります電電株式というものの売却収入は、究極的には国民共有の負債である国債の償還財源とするのが適当だという結論に到達いたしたわけでございます。債務もでございますけれども資産もすべて一括して承継しておる、その以前の段階は少なくとも独占事業であった、こういうことがありますだけに、そういうことについての決定を私はしたわけであります。  それからもう一つは、仮に第二電電等が出てきました場合は、なるほどおっしゃるように収益性の部分を対象にして参入いたしますにしても、すべてを根っこから民間資本調達していかなければならぬ。それを国の資産を、売却収入を仮にそれに充てたとしましたら、国から補助金を出したという一つ議論にもなるわけでございますので、かれこれ勘案しながら、今御審議をいただいているような方向で措置をするということでお願いをしておるという段階であります。
  32. 上田卓三

    上田(卓)委員 電話株式会社は約五兆円の債務があるわけでありますから、これを差っ引くと純資産が五兆円、こういうことになるのではないかと思うわけであります。いずれにいたしましても、一社だけに公共性の責任をなすりつけられて大変苦しい状況になることはもう火を見るよりも明らかである。もうかる部分は第二電電に全部取られて、全部取られるということじゃないでしょうが、当然競争原理ということにもなるのですが、そして赤字の部分は全部NTTが負担しなければならぬ。田舎であっても電話線を引いてくれ、赤字であってもそれを引かなければならぬという、非常に厳しい状況に置かれることになるわけであります。そういうことはないと思いますけれども、競争に負けて電電がつぶれるようなことになったらどうなるのですか。今までの電電は絶対につぶれないけれども、民間になったんだから大変な状況になりますよ。民間になったという状況のもとで電電が身軽になるという意味で、負債の部分については株の売却益で負担するということは当然のことではないかと私は思っておりますので、その点についてもう一度大臣からお聞かせいただきたい。  それから、電電の株の売却でございますが、これはどういう方法をとられるのかということに関連して、イギリスのBTの例などがあるんじゃないかと思います。BTは個人株主の育成とか大衆的販売に大変きまざまな工夫がなされておると聞いておるわけであります。  その一つは、株価を安目に設定するということ。二番目には、一年半で三回の分割払い。買いやすくするということでありましょう。三番目に個人株主に十株につき一株無償追加をしておるようでございます。四番目には、社員持ち株の優遇制度をしておる、こういうことも聞いておるわけであります。当然五番目には、大々的なPR、こういうことで、その結果、売り出しの総数の四倍の申し込みがあって、二百五十万人の加入者があった。そのうちの約百万人が初めて株式を手に入れるというような方々であった、こういうように聞いておるわけであります。  当然イギリスと日本では商習慣も違いますし、また経済的動向等からいってもいろいろ違いもあろうかと思いますが、検討する余地が非常にあるのではないか、こういうように思っておるわけであります。  特に、今まで電電公社の方々が大変御苦労いただいて今日の資産形成を見ているということを考えた場合、今後社員の持ち株制度というものも十分考えることは当然のことではないか、こういうように考えておりますので、これに関連してNTT参考人の方と大臣の双方の御回答をいただきたい、このように思います。
  33. 竹下登

    竹下国務大臣 まず第一点の問題でございますが、やはり確かにそういう議論がございました。それらも総合的に勘案いたしまして、要するに負債もなるほど承継しておりますが、まさに資産もまた承継しておるということになるわけであります。それから、新規参入の事業者はみずから資金調達を行って設備投資等を行う、したがって、新電電の債務だけを売却収入で償還するとすれば、競争上アンバランスになってくる。ある意味においては、いわば補助金を出したという結果にもなってくる。したがって、本来民活にしてより合理化しようということが第一義の目標であります場合に、いわゆる電気通信事業の自由化というものの趣旨に反することにもなるではないかというので、このような措置をとらしていただいたわけであります。  それからイギリスの例をお出しになっての御質問でございますが、ちょうどサミットが終わりました翌々日から日英金融協議を行いましたので、若干関心を持って、後からこれは専門家が答えた方が適切だと思いますが、私も関心を持っておりましたが、いわゆる組合との関係とか、なかなか苦労されたようでございます。日本の旧電電公社の労使関係なんというのはこれは世界一でございますから、世界一でございますからと言って断定するのはおかしいのでありますが、私自身はそういう評価をしております。したがって、いつでもその点は胸を張っておるわけでございますけれども、イギリスの場合は随分その点苦労されたようでございます、そういう結論を出すに至るまでには。そして出てみたら、今度は偉大なる国損を与えたではないか、こういう議論も国会等では行われておる。だから参考になるかどうかということになりますと、専門家ではございませんからわかりませんが、単純に、なるほどこれはすぐ参考になるなというのにはちょっと遠いような印象を私自身は持っております。
  34. 高橋節治

    高橋参考人 お答え申し上げます。  まず株の売却の問題でございますけれども、これは先生御案内のとおり、会社設立に伴いまして政府に全額無償譲渡をされております。したがいまして、株の売却等の具体的な方法、問題等につきましては、これは政府の方で検討されるべき問題であろうか、このように思っております。  それから従業員持ち株制度の問題でございますけれども、これも株の売却方法等が具体的になっていく段階の中で、我が社として、NTTとして考えていかなくてはいかぬ問題だろうと思いますけれども、会社としては安定株主対策というのは当然考えなくてはいかぬ。そういう面から、従業員持ち株制度というものは、企業と従業員の一体感の醸成とか愛社精神を高揚させるとか、あるいは先ほども申しましたように株主の安定化とか、それから従業員の財産形成とか、こういうような点から考えまして一般の民間会社でも非常に多くこういう制度がとられておる。こういうようなことから前向きに検討をしていきたい、このように考えております。
  35. 上田卓三

    上田(卓)委員 最後に、政省令はいつごろまでに出すのか、その骨子でもお聞かせいただきたい、こういうように思います。
  36. 浜田弘二

    ○浜田説明員 お答えいたします。  電気通信事業法、それから日本電信電話株式会社法、これらの政令、省令につきましては、本年四月一日から公布、施行されておるところでございます。
  37. 上田卓三

    上田(卓)委員 その株の関係ですよ。
  38. 浜田弘二

    ○浜田説明員 お答えいたします。  株の問題は政令とか省令とかいうことではございませんで、先ほど来大蔵大臣からもお答えになっておられますように、電電株式というのは国民共有の貴重な財産であるということで、その売却に当たっては国民に疑惑を抱かせることのないよう、今後適正かつ公正な売却方法について十分検討されるべきものと郵政省としても考えておるところでございます。  この電電株式の持つ重要性にかんがみまして、管理、処分権限は大蔵省にあるわけでございますが、郵政省といたしましても深い関心を持ってこの問題について対処してまいりたいと考えておる次第でございます。
  39. 上田卓三

    上田(卓)委員 時間が来ましたので終わりますが、いずれにいたしましても電信電話株式会社の前途というものは非常に多難である、こう言わざるを得ないと思うのですね。民間になったのですからそれでいいわけでありますけれども、くどいようでございますが、黒字の部分については競争相手がどんどん食いついてくるといいますか参入してくる、赤字の部分についてはこれは公共性だということで維持しなければならぬ、こういうことでございまして、電電の社員の本当に血のにじむような努力というものが期待されるわけでありますから、そこにいるから当然働くとはいうものの、やはりそういう持ち株制度などで本当に働きがいのある状況をつくってもらいたいし、また額面額に対して五倍とも六倍とも、あるいは五十倍とも六十倍とも言われて、国民は非常に大きな関心を持ち、不正の起こらないように目を見張っておるところでもございますし、そういう株価の問題、それと同時にこれが明朗に、そうして国民に広く開かれた株の売買にぜひともしていただきたいということを特に要望申し上げまして、私の質問を終わりたい、このように思います。ありがとうございました。
  40. 熊谷弘

    ○熊谷委員長代理 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕     〔熊谷委員長代理退席、熊川委員長代理者     席〕
  41. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 速記を始めてください。  宮地正介君。
  42. 宮地正介

    ○宮地委員 大変に食事の時間も短時間という人間性喪失のような厳しい中に、大蔵委員会、審議しているわけでございますが、これも国民のための大事な審議でございますので、お互いに理解をしてやっていきたいと思っております。  私は、今回の法案の財確法外二法の三法につきましての、まず財確法について少し質問してまいりたいと思います。  初めに大蔵大臣に伺いたいと思いますが、我が国の今までの公債政策の変遷を見てまいりますと、本来なら財政法の趣旨に沿いまして均衡財政主義、公債不発行、これがやはり本来の財政法の趣旨ではないかと思います。しかし、いわゆる不況、低迷などから公債発行の到来ということが昭和四十年に参りまして、当時はたしかフィスカルポリシーを前面に打ち出しましていわゆる国債発行をする、こういうことで、建設国債のみということで出発をしたわけでございます。しかし、さらに昭和五十年の補正から、石油危機による不況など、大幅な税収の不足などによりまして、特例中の特例ということで特例公債の発行に踏み切ったわけであります。これは当初は臨時特例の措置、借金のために国債を発行するいわゆる赤字国債というものはもう特例中の特例である、こういうことで、当時は借りかえ禁止規定を盛り込んで出発をしたわけでございます。しかし、昭和五十七年度の補正になりまして、今度はいわゆる定率繰り入れの停止をする。財政の逼迫、歳出の削減ということで定率繰り入れの停止をする。さらに昭和五十九年度には、先ほど申し上げました特例中の特例のこの赤字国債、特例公債に対して、この最大の歯どめでありました借換債の発行を認めるという重大なる政策転換を行ってまいりました。そして、いよいよその四十一年度に発行しました特例公債の満期がこの昭和六十年度にやってくる、いわゆる特例公債を中心とした大量償還時代に突入してくる、こういう事態に変遷をしているわけでございます。  こうしたいわゆる財政法の基本的な趣旨を踏まえ、財政民主主義という立場から  今日までこうした幾多の変遷の中で政府の公債政策の転換が行われてきた、そして今や百三十二兆円という莫大な公債残高を抱え、国民の皆さんに毎年毎年厳しいシーリングによる財政の圧縮あるいは社会福祉、公共事業などに大変なしわ寄せが今やってきているわけでございますが、こうした公債政策の変遷を振り返りまして、現在の公債政策あるいは公債管理政策につきまして、大臣として率直にどういう考えをお持ちなのか。特に大臣は四期連続、四期の大蔵大臣をやられており、こうした公債政策の中でも最も関与した大蔵大臣でございますので、その辺のまず感想、あるいは御決意、反省を含め今後についての所見を例えればと思います。
  43. 竹下登

    竹下国務大臣 今、宮地さん御指摘なさいましたとおり、三十九年までは公債発行は日本の財政の中においてはなかったわけであります。四十年というのは、オリンピックの翌年の戦後最大の不況、こう言われたときでございます。私はたまたま内閣官房副長官を当時いたしておりました。閣議で三千億円について議論がございまして、いわゆるインフレに対する歯どめはどこにあるかとか、そういうような議論がかまびすしく行われたという記憶は今なお鮮烈でございます。そしてまた、その三千億というものの効果としては、まさに即効薬的な効果が私はあったのじゃないかというふうに思います。それは四十年、四十一年にかけてその効果が出てまいりまして、それから四十一年から本格的にいわゆる建設国債、こういうように呼ぶようになりました。そうして四十九年までに累積されたものが九兆七千億、五十年に初めて赤字公債発行に踏み切ったわけでありますが、私はその当時は、五十一年は建設大臣でございまして、昭和五十年度予算編成に際しては必ずしも直接タッチしておったとは言えません。ただ、四十八年の暮れからあれだけの第一次石油ショックでございます。俗称二ドル原油があっという間に六倍になって、たしか十二ドルぐらいになったような気がします。そして一方狂乱物価、そういう雰囲気の中でありました。  ところが、そのときたまたま福祉元年ということを政府としては申し上げておりました。あの福祉元年というものが、やっぱり今日の社会保障制度充実の一つのきっかけになったとは私自身思います。そしてその惰性が、五十年に赤字公債の発行に踏み切らざるを得なかった。そのときは、まだ四十九年にはインフレ率も大変なものでございましたけれども、一兆八千億程度の減税を行ったときであります。それを対GNPで今にそのまま引けば五兆円になるという話のあるあのときでございます。そういうことの組み合わせの中でこの赤字公債に踏み切って、そのとき、大平大蔵大臣が後ほど言っていらっしゃったのは、税金の先取りをしたということに対する非常に悲痛な財政家としての感想をお述べになっておったことは、鮮烈に記憶をいたしております。そしてその後、機関車論なんかもございまして、そして五十二年、五十三年、公共事業なんか物すごい増査定をした時代でございます。  それで、私は結論から言うと、五十四年にピークになったのじゃないか。景気その他の指標はそれなりにいいのでございますが、財政はまさに三九%でございましたか、四〇%近い公債依存率になってきたわけでありますので、そこで公債の売れ行きもよくないようになりました。だから、公債政策の持つ悪い面が象徴的に一方に出て、一方、景気はそれなりに上昇してきた。そこで財政再建というものに五十五年から入ってきたと思うのであります。  五十五年予算は、私が大蔵大臣でございました。四期連続とおっしゃいましたが、途中があいておりますから。最初の年度でございますが、初めに一兆円の減額ありきという形で取り組みましたけれども、またいわゆる概算要求基準が一〇%増しまではいいという、そういうシーリングでありました。それで、五十六、五十七は私は休んでおりましたが、そのときに本当は、世界同時不況というので、第二次石油ショックの影響を受けてどうにも動きがつかなくなって、五十九年度の脱却をついに断念せざるを得ない素地はそこにあったのじゃないかというふうに思うわけであります。したがって、五十八年、五十九年、六十年と、いわゆるマイナスシーリングというものの中に予算編成に対応してきたわけでありますが、なかんずく今御指摘なさいましたとおり、昨年法律を通していただいて、大量償還期の来ますこの際、また赤字特例公債をも借りかえをせざるを得なくなった。そこで一方、六十五年にまたそれをずらしたという厳しさの中で、やっぱり毎年毎年の努力の積み重ねというものが、大変しみったれたような印象を与えますけれども、この財政再建への道ではなかろうか。感想を述べろとあえておっしゃいましたので、そういう感じがいたしておるところであります。
  44. 宮地正介

    ○宮地委員 そこで、そうした変遷と過程の中で、大蔵省当局もいろいろ御苦労をされてそうした政策転換をしてきたと思います。しかし私はその中で、今大臣からもお話ございましたが、昭和五十九年度赤字公債依存脱却、こういうことで鈴木政権も頑張りましたが、そうした経済状況などから全くこれは実現不可能、言うなれば責任をとられたというのが実情ではないか。そして新たに中曽根政権になりまして、今度は六十五年脱却、こういう目標設定をされたわけでございますが、私は、この鈴木政権の昭和五十九年度赤字公債脱却と、中曽根政権のいわゆる昭和六十五年度の赤字公債脱却とは本質的に違いがあると思っております。  これは釈迦に説法でございますが、ちょうど昭和五十九年赤字公債脱却の場合はまだ借換債が認められておりませんから、長期国債十年物としても、五十八年度に出された赤字公債が完済されるのは昭和六十八年であったわけであります。しかし、今回の六十五年度赤字公債依存脱却、これは昭和六十四年に最後の赤字公債が長期国債として十年物が出されますと、いわゆる現在の赤字公債は建設国債と同じように六十年償還ルールでございますから、昭和百二十四年になりませんと完済ができない。表向きは、五十九年脱却から六十五年脱却まで六年間引き延ばされた勘定に国民の皆さんの目には映ると思います。しかし、その完済される期限は昭和六十八年から昭和百二十四年ですから、これは大変長期にわたっての完済までの延期になるわけでございまして、おのずから、この借換債の政策転換というものが五十九年に行われたことによりまして、赤字公債依存体質脱却というその目標設定の時系列的な表向きの面と、その本質に抱え込んでいる依存体質脱却の本質には全くの違いがある。この点について、大蔵大臣としてはどのように受けとめておられるのか。私は、単なる六年延長というようなそんな生易しいものではない、こういうふうに受けとめておりますが、この点についての大臣の所見を伺いたいと思います。
  45. 竹下登

    竹下国務大臣 五十九年脱却というときには、いわば赤字公債の償還期が来る前に脱却しておこう、こういうことであったと思うのであります。私もこの政策転換による借りかえを認めていただく際に考えましたが、仮に五十六年、五十七年の世界同時不況などというのがなくて計画どおりいっておったとして、五十九年で脱却したとしまして、さあ六十年の償還に際して、そのときにどういう政策配慮がなされたのであろうか。六十年からは借りかえは認めてください、しかし五十九年で脱却しますということにあるいはなったかな。これはそういう現実が違うわけでございますから、単なる推測でございますけれども、そんな印象を受けたわけであります。  したがいまして、財政事情から見ますと、今の問題を横に置きましても、それはうんと違います、残高の面において。ただ、その年度に赤字公債を財源とする予算を組まないような努力目標としての設定という意味においては同じ、その限りにおいては延びたという理屈が通るのかな。しかし、その後の財政運営につきましては、それはおっしゃるとおり、いわゆる残高の面においてうんと違ってきますから、六十五年までに第一期目標で赤字公債依存体質から脱却し、第二目標は対GNP比の公債残高をできるだけ減らしていこうということを言っておるわけでございますから、その限りにおいては、大きな荷物が借りかえによって加わっておるという指摘はそのとおりであると思うわけであります。
  46. 宮地正介

    ○宮地委員 指摘がそのとおりということよりも、その辺の本質に、一つの政策転換によって大変大きな違いが出てきた、やはりこれに対しての新たなる歯どめというものも私は考えていかなくてはならないのではないか。  大臣としては、新規の特例公債の発行は確かに六年延びた、しかし残高の方は確かにどんどんふえるような形に今回はなった、そしてさらにそれは長期化した、と。それに対して、昨年の審議の中でもこの六十年償還ルールの見直しという問題が出てきて、いわゆる返済の状況がよくなれば速やかに減債をする、こういっただし書き的な努力目標というものもできているのは承知をしております。しかし私は、この特例公債に対しては建設国債のように担保がないわけですから、建設国債の六十年償還ルールというのはそれなりの担保に対する耐用年数とかそういうものが基準になってつくられているわけでございまして、赤字公債の場合には担保がないわけですから、全く同じようなルールをいつまでも長く踏襲さしておくということはやはり好ましくない。確かに努力目標というものがあるにせよ、私は、近い時期にこの六十年償還ルールを見直して国民の前に明らかにしていくという、そうした誠実な大蔵大臣、大蔵省当局の履行というものが必要ではないか、こう思っておるわけでございますが、この点についてはいかがでございましょうか。
  47. 竹下登

    竹下国務大臣 非常に大ざっぱな話をいたしますと――厳密に言うと百六十六と言うのが本当でございましょうが、昭和六十五年脱却をしたとすれば百六十五兆、六十五兆が特例債、百兆が建設国債、大ざっぱに言ってそういうことになります。その六十五兆分が、今おっしゃいましたように返済期限が、六十年償還で計算すれば御指摘のとおりに延びてくるわけでございますから、残高もそれだけずっとそれがオンした形のものが続いていく、こういうことになります。そこであえて努力目標というもの、訓示規定、努力規定を設けておりますゆえんのものも、それは最低限がそうであって、安易にそれに乗っかることだけでは許されないという気持ちから努力規定、訓示規定が乗っかっておる、こういうことでございます。  それで我々としては、目の前に若干ちらつく問題としては、それは確かにいわば電電株の売却益なんというのもちらついてまいることは事実でございますが、今後とも毎年毎年歳入歳出両面にわたる努力を重ねることによって、この最低限基準のみで対応していくことのないような努力は引き続きやっていかなきゃならぬというふうに考えております。
  48. 宮地正介

    ○宮地委員 大臣、しつこいようで申しわけないのですが、この努力規定、確かに第二条第四項、これは承知しています。私は、この努力規定は努力規定としてこれは必要であろうと思いますが、決してすぐとは言いませんが、その時期を見て現在の六十年償還ルールそのものを、でき上がったルールそのものの本質から見てもこれは建設国債一つのルールを準用しているわけですから、特例公債そのものの独自の償還ルール、やはり国民の皆さんがなるほどというような何らかのルールというものをこの努力規定から一歩踏み込んでつくるべきである、私はこう主張したいのですが、その点について今御答弁ありませんので、大臣として率直にどうお考えなのか、伺いたいと思います。
  49. 竹下登

    竹下国務大臣 ですから、昨年もお答えいたしましたのは、六十年度以降における特例公債の償還ルールについては、当面四条公債と同様のいわゆる六十年償還ルールによることとした。それで、これは去年の十二月の財政審の報告にもございますように、今の御指摘どおり「特例公債は、本来、できるだけ早く残高を減少させるべき性格のものであり、原理的にある一定年限で償還すべきとする方式を決め難い面があると思われる。」「財政事情は今後とも極めて厳しい状態が続くことが予想される。このような状態の下で、仮に特例公債の償還について、」「より短期の一定年限で償還するルールを設定するとすれば、償還財源を賄うための国債費の増加は」「六十年償還ルールによる場合に比べ、大きなものとならざるを得ず、財政事情をさらに厳しいものとすることは否めない。」ことによるものであり、「現実的選択としてやむを得ないと考える。」これは財政審の指摘を今朗読したわけでございますが、おっしゃるとおり六十年間というのを固定的に考えてはいけない。やはり今後の財政事情の中で可能な限り早く償還していくべきものであるという考え方は、今日も、また今後も持ち続けていかなければならない課題である。  ただ、おっしゃいましたようにせめて半分にしろやとか、あるいは二十一世紀までにしろやとか、そういう気持ちの上の御議論というのは、十分いただける御議論であるというふうに考えております。
  50. 宮地正介

    ○宮地委員 ぜひその点は、努力規定、さらにそれを踏み込んで速やかな減債ができるような財政事情もまたつくっていかなければいかぬと思いますが、強く要望をしておきたい、こう思います。  さらに、財政、特に公債管理をしていく場合のもう一つの大事なポイントは、定率繰り入れの問題であろうと私は思います。具体的にこれから昭和六十一年度の予算編成をしていくわけでございますが、ことし予算委員会に提出された財政収支試算では、ことしも定率繰り入れはしないということで計算されているわけでございます。この問題について、来年度も五年連続して定率繰り入れの停止をやろうと考えておられるのか、あるいは財政収支試算のように復活をされようとしているのか、その点についてまず伺いたいと思います。
  51. 竹下登

    竹下国務大臣 四年連続で定率繰り入れを停止した、これは御指摘のとおりでございます。元来、この減債制度というものは、要するに公債政策に対する国民の信頼というものをつなぎとめるものと、いま一つは公債の償還を円滑に行う趣旨と、二つの趣旨から設けられたものであります。したがって、やむを得ざる事情としてこの停止をいたしておるわけでございます。  しかし、財政審等にお願いをした御議論をまとめてみましても、減債制度そのものの基本は維持すべきであるということが書かれてあるわけでございます。したがって、減債制度そのものを廃止するものではないという趣旨から、各年度ごとの特例立法をお願いして今日に至っておるわけでございます。だから、仕組みを維持するという基本方針を放棄することなくしたがって、六十一年度予算ということになりますと、現実、国債整理基金自身の残高がもう減ってまいるわけでございますから、やはり歳入歳出両面にわたっての厳しい対応をしながら、減債制度の基本を維持するという方向で対応すべきものではなかろうかというふうに私は考えます。
  52. 宮地正介

    ○宮地委員 では、今お話出ましたから、具体的に。  現実問題として、基本的には財政審などにおいても定率繰り入れの復活、維持、これはやっていく、これは原則論として私もまた承知しておりますが、今いみじくも大臣からお話ありましたように、これから六十一年度の予算編成をするに当たりまして、現在の国債整理基金特別会計の残高がお話のとおり九千九百億円、これだけしかない。枯渇状態にあるわけですね。  そこで、一つは電電株の売却益を当てにする。こうなれば、六十年度予算では売却益ゼロですから、六十一年度予算では、何らかの形で電電株の売却益を予算に計上しなければならない。それともう一つは、今後のこうした国債整理基金特別会計の運用に当たって、普通、財政的に将来を考えた健全な国債償還財源確保、いわゆる余裕金的なものとしては、一兆円程度はやはりある程度回すためにも必要である。こうなりますと、六十一年度予算の中で、電電の売却益を含めても、最低一兆六千億円くらいは何らかの形でこの整理基金特別会計の中で対応していかなければならない。そうしますと、考えられるのは、この一兆円を一般会計から予算繰り入れする方法も一つとしてあるわけですね。そうして、やはり新電電のいわゆる売却益というものも最低六千億くらいは何とか確保しなくてはならない。  今、定率繰り入れを維持していくというふうにおっしゃっておりますが、現在の財政状況を見ていったときに、率直に言いまして恐らく来年も繰り入れは停止される可能性が強いのではないか、私はそういう感じがして今お話をしたわけでございますが、この点については大臣、今私が申し上げた一つの計算例をどういうふうにお考えになりますか。
  53. 竹下登

    竹下国務大臣 今おっしゃいましたように、国債整理基金の資金状況を見ますならば、先ほど申しましたように、六十年度末の国債整理基金残高値今おっしゃったとおりの数字になりますので、六十一年度に償還財源の繰り入れを行わなければ残高が枯渇してしまう、こういうことになります。  そこでどう対処するか。今おっしゃいました電電株というものは大変心強い支えではありますが、この売却というものにつきましては、株式市場との関連、有利販売、有利に売らなければこれは国損を与えるということになりますから、そういうことを考えますと非常に慎重に進めていく必要があるのではないか。したがって、今の段階で来年度見込めるかどうかということを確たる見通しの上に立って申し上げるというのは、実際問題として困難ではないかな、こういうふうに考えるわけでございます。  だから、この問題は今後の会社の運営、経済動向、それから株式市場の動向、一遍に出してもそう消化のキャパシティーがあるわけでもございませんし、それらを総合した上での適切な対応の仕方ということになりますので、今ちょっとあらかじめそれを念頭に置いて対応していくというのは難しいんじゃないかな。だから、基本としては、これから日にちのあることではございますが、あくまでも減債制度の基本を維持するという物の考え方で対応していくということではないかなというふうに、今日の時点でお答えすればそういう感じでございます。
  54. 宮地正介

    ○宮地委員 そうすると、六十一年度も売却益は予算計上ゼロ、こういうふうに考えてよろしいのですか。
  55. 竹下登

    竹下国務大臣 断定することは難しいと思いますが、一つは、やはり株の売買ということになると一年間の決算、そういう諸指標が出るということが最低限の一つの条件じゃないかなという感じもないわけではございません。中間決算してやっちゃえという性格のものではなかろうというふうにも考えます。四月一日からなったわけでございますから、仮に十二月に予算編成はするとしますと、断定的に申し上げるわけじゃございませんが、そうじゃないかなというふうには一面考えております。
  56. 宮地正介

    ○宮地委員 現段階で慎重な御発言は私は理解できますが、既にこの問題についてはいろいろマスコミなどでも報道されて、非常に動きつつあるわけですね。NTTのいわゆる資本金というのは七千八百億、一株五万円の株のようでございますから約一千五百六十万株、このうち五年以内に五〇%売却可能、こうなるわけですから七百八十万株、額面三千九百億ですね。そして国債整理基金特会の方に対応できるのがこれの三分の二、こうなるわけでございまして、通常、市場でどのくらいの相場になるかわかりませんが、五、六倍という論もあれば十倍ぐらいという論もあります。また、ことしの予算編成の十二月までに、今大臣もおっしゃいました、いきなり全部というわけにはいきませんが、全株のうち一〇%から二〇%ぐらい、こんな具体的なことがマスコミ等の間でも報道されているのが現実であろう。大臣の非常に慎重な発言発言として受けとめることはできますが、この問題については、やはり具体的に株式市場の動向をにらんで売却量あるいは時期などを決めていくわけですが、伺うところによると、現在もう既に大蔵省内の官房とか主計とか理財とか証券各局の事務レベルでそうした問題の検討をされているというふうに伺っていますが、それは間違いないのですか。
  57. 中田一男

    ○中田政府委員 電電株式の売却の問題は、先ほど大臣の御答弁にありましたように非常に難しい問題なので、私どもも今勉強はしておりますけれども、何か一部に報道されていますように、プロジェクトチームを設けるとか機構を設けるとかというような形ではございませんで、それぞれ関係する局がそれぞれに勉強はしているという現状でございます。
  58. 宮地正介

    ○宮地委員 勉強といいましても、もう少し具体的に。六十一年度予算編成に売却益を計上するための勉強なのか、どういう勉強なんですか。
  59. 中田一男

    ○中田政府委員 実はまだそこまで行っておりませんで、私ども、過去に国が持っております株式を売却した事例もございますし、あるいはけさほど来御議論がありましたイギリス等で売却した例もある。いろいろな先例等を集めまして勉強しているというような状況でございます。まだ御質問のところまでは行っておらない状況でございます。
  60. 宮地正介

    ○宮地委員 大臣、その辺はまだ現段階では恐らく答弁できないのはこちらも理解できます。非常に慎重な発言ですから私もそれなりに受けとめますが、ただ、電電株の売却については、いろいろちまたでは利権が絡んできな臭い話も現実に出ているわけですね。そういう点で、私はそういう面の予算計上の問題、そうした財政対策上の問題、もちろんこれはきちんと慎重にやってもらいたいのですが、こうした電電株売却に伴って、いわゆるちまたでは、政商株的に動くのじゃないかとか、黒い株的に動くのじゃないかと、いろいろきな臭い、いわゆる権力とそうしたものの庶民の期待する対応との間に、これはまた大きな疑獄事件になるのじゃないかとか、見方によっては大変危険な――やはり電電株の売却については常に国民が監視をしているわけですね。私は、ぜひそうしたことのないよう、特に大蔵大臣はそこに最大の監視と注意を払って、それこそ慎重過ぎるほど慎重にこの売却の対応については、そうした権力のしがらみなり政商株的なものに断じてしてはならない、その決意で進まれると思いますが、その点についての所見を確認しておきたいと思います。
  61. 竹下登

    竹下国務大臣 おっしゃるとおりでありまして、今私ももぐもぐと答えました一つのゆえんのものは、今の宮地さんの話を総合しますと、私どもそんな議論をしたことが――私の心の中で一問一答したことがございますのは、例えば国債整理基金、半分はうり込めば、あと今おっしゃったような感じの売却収入を充てればという観念上の組み立てを私もしたことがございますが、そもそも、いわゆる決算が三月終わったとしましょうか。すると、まあ決算総会といいますと、当面は私が株主だった一人でございますから、一人で総会開いたにしましても、普通五月ごろでございますね。そうすると、予算は十二月。仮にそれを見込めば、決算書のない時点で何らかの値決めをしなければならぬということで、そうすると、それは現実問題として難しいのじゃないかな。  そのような勉強をしておるところでございますが、その値決めというのが大変なものでございますから、その後実際問題としての売却につきましては、関心が高ければ高いほど、公正な売却方法というものになりますと、それこそ私どものような素人でなく、民間の有識者等あらゆる人の意見を聞いて、今のお言葉をそのままおかりするといたしますならば、慎重過ぎるほど慎重に決めていかなければならぬ課題だ。何だか自分大蔵大臣であるときに決めるのを避けたいような気がするぐらい慎重であるべきだと思います。
  62. 宮地正介

    ○宮地委員 ぜひそのように、国民にガラス張りの対応になるようにどうか最大の御努力を要望しておきたい、こう思います。  さらに、今回のいわゆる財確法あるいは国債整理基金特会の審議に当たりまして、もう一つ重要な国債管理政策の一つの歯どめとして議論されてまいりました日銀の引き受け禁止の問題、この問題についてもちょっと一、二点議論しておきたいのですが、これは財政法第五条のただし書きの精神にのっとってやっているわけでございます。昨日、日銀総裁もこの日銀引き受けはやらない、先日大臣もその趣旨でいきたい、こういうお話でございました。ただ、財政法第五条のこのただし書きの「特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。」このただし書きについては大蔵省どういうふうに理解をしておられるか、伺いたいと思います。
  63. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 今、委員がおっしゃいましたように、財政法第五条ただし書きには「特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。」ということで、日銀引き受けを認めるわけでございますが、その場合のそれでは「特別の事由」についての中身でございますけれども、法文上は何ら限定的にはこれは解されてないわけでございます。しかし、この財政法第五条の精神というものは、当然のことながら、これに解釈上非常に影響を与えるわけでございます。したがいまして、現在実際にそれではこの「特別の事由」で認めているものは何かといいますと、日銀が国債を乗りかえる場合、この場合は「特別の事由」に当たるということで、特別会計予算総則に規定を置いて認めているわけでございます。  それでは、なぜそのような場合に認めているかということでございますけれども、これは日銀が持っております国債を乗りかえる、借換債にかえるわけでございますけれども、これは通貨膨張の要因となるわけではないわけでございます、持っているものがそのまま差しかえられるわけでございますから。そういう意味で、五条本文の精神と食い違わないわけでございますので、「特別の事由」として認めているということでございます。この点につきましては、過去においてはそれ以外の事由がございましたが、その場合もやはり、この第五条の本文の精神を十分尊重して「特別の事由」としているということでございます。
  64. 宮地正介

    ○宮地委員 私、このただし書きがやはり今後の歯どめを打ち破る一つの口実になりはしないかという、大変心配をしている一人であります。専門の学者の方の解説も、私いろいろ見させていただきました。例えば「財政会計辞典」、これは学陽書房で、吉国一郎さんがこの問題については、「「特別の事情」には、たとえば、景気政策の見地から不況対策として政府が信用の造出をする必要がある場合、非常に緊迫した経費の支出を必要とするが民間資金の状況が悪くて市中公募ができない場合等が考えられる。」とか、学者のいろんな解説等を見ておりますと、このただし書きの歯どめというものも、はっきり言いまして大蔵省のいわゆる解釈いかんによっては、このただし書きを打ち破ることが非常に可能じゃないか。今、次長は日銀の乗りかえのお話をされましたけれども、私は、単に乗りかえだけではない。今の学者のようなそうした解釈については、大蔵省などはどういうふうに見ておられますか。
  65. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 今、委員がおっしゃいましたような学者の解釈の中には、恐らく過去におきまして、戦後「特別の事由」になった場合があるわけでございます。いろいろ緊急の事態が発生して財政経済が極めて混乱を生じるような事態、国そのものにとっても極めて問題が起こるような状態のときには「特別の事由」に当たるのではないかというふうに、恐らく学者の先生は念頭に置いてそういう言い方をしておられるのではないか。私は今伺っていてそう感じたわけでございますけれども、しかし現在はそういう事態ではございませんし、少なくとも政府といたしましては、いずれにしましてもこの「特別の事由」につきましては現在以上にこれを拡大して解釈するということは考えてない、こういうことでございます。
  66. 宮地正介

    ○宮地委員 大蔵大臣、この問題は非常に難しい問題なんですけれども、大臣はいろいろ財政審の基本答申、そうしたものの精神、原則から、またはこの第五条の本文の方から御答弁されておりますが、ただし書きについても私は、これは慎重な上にも慎重に、最後の歯どめ中の歯どめでございますので、やはり大臣の国会における責任ある答弁において歯どめしておきたいと思うのですが、この点についてお考えを明快に述べていただきたいと思います。
  67. 竹下登

    竹下国務大臣 今回お願いしております改正法による短期の借換債も、従来の中長期の借換債と同様、日銀引き受けはこれを考えていない、そうして、この第五条を遵守して、将来とも公債の日銀引き受けを行う考えはないということを明確に申し上げておくべきだと思うわけであります。  今も問答の中にもありましたが、いわば乗りかえの場合は性格上通貨膨張の要因となるものではないので、「特別の事由」に該当すると解されている。それからもう一つ例示すれば、昭和二十三年の特別会計予算総則というところに、「日本銀行において現に所有する公債または借入金の借りかえのためにするものに限る」というのが過去には例がございますが、拡大解釈をしようなどという考えは毛頭持っておりません。
  68. 宮地正介

    ○宮地委員 このただし書きについては、今大臣拡大解釈はしない、本文の原則でやると次長もおっしゃっておりますので、この面の軽率な大蔵省当局の、言い方を悪くして申しわけありませんが、勝手な解釈でこのただし書きを打破して日銀引き受けをするようなことは断じてやらないように強く要求をしておきます。  また、少しやわらかい話なんですが、最近、宮澤総務会長などが、おくれている社会資本整備のために無税国債の発行によって財源確保しようだとか、あるいは藤尾政調会長は、関税引き下げによる木材業界の救済策として無税国債の基金をつくろうとか、無税国債を発行して免税にするかわりに利率も五%に安くする、いろいろなこうした勝手な議論が自民党内の大物の中からされているわけですが、この無税国債の発行について、大蔵省としてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  69. 竹下登

    竹下国務大臣 私から最初に申し上げますと、無税国債論議をしますと、一つは郵便貯金も無税国債じゃないか、こういう議論がございます。確かに一面、言えぬことはない議論でございましょう。だが、その議論を別に置きまして、今の公債発行の中の、いわば国債の多様化の中の一つとしての新しい位置づけとして考えてみますと、現実問題、それは問題それぞれによって異なるでございましょうが、予測して、仮に相続税がかからぬ、こういうことになるといたしますと、下世話な論議としてはある程度アングラマネーが吸収されるじゃないか、こんな議論もありますが、そもそも我が国の相続税の税体系というのは、私のような素人の表現で言いますと、西郷南洲の「児孫のために美田を買わず」というのが大体の方式になっておりますね。その相続税体系全体をポシャらすことに、議論し直しになるのではないかという問題点が、相続税で見れば出てまいります。  それから、やはりある程度の有利条件というものがないとなかなか売れるものではございませんので、仮に低利なものにした場合、それが実際問題魅力がある商品になるかどうかということも考えなければならぬでございましょうし、また仮に大変魅力があった場合に、いろいろな金融機関のものがそれにシフトしていきはしないか。したがって、これもまた慎重な上にも慎重な課題として検討をすべきものである。今までも、例えば防災国債なんというのだけは、子孫のためにそういう防災をしたものを残すのだからこれはやってもいいじゃないかとか、無税無利子国債というような議論があったこともございますけれども、これは本当に諸般の問題を総合的に勘案して、慎重な上にも慎重に検討しなければならぬ課題であるというふうに考えます。
  70. 宮地正介

    ○宮地委員 わかりました。大臣から答弁がありましたから、当局の方は、時間の関係がありますので割愛させていただきたいと思います。  それでは次に、歳入問題として、税制改革の問題をちょっと話を進めていきたいと思います。  政府の税制改革について、特にこれから税調答申等いろいろ税調の審議が行われていくわけでございますが、特に二段階改革というようなことが最近マスコミの間で言われてきておりますね。第一段階として昭和六十一年度、これは内需拡大の改革をやろう、六十二年度あたりには税構造の見直しを盛り込んだ税制の抜本改革をやっていこう、こういう一つのタイムラグによりましてスケジュール的な税制改革をやっていこう、こういうことが言われておりますが、この点についてはどのように受けとめておられますか。     〔熊川委員長代理退席、中川(秀)委員長代     理着席〕
  71. 大山綱明

    ○大山政府委員 お答え申し上げます。  大臣がこれまでも御答弁なさっていらっしゃいますように、これから税制改革をどう進めるかにつきましては、これまで国会でいろいろ御論議いただきましたことを、国会が終わりました後税調に御報告をいたしまして、それで税調の場でどんなような審議をしていただくか、そういった御議論もしていただくということにいたしております。したがいまして、具体的にどういう段取りで進めていくかということも含めまして、内容につきましてはもちろんでございますが、まだ白紙の状態でございます。私どもも、大臣にどんなような進め方でこれからの税調における取り運び方をお願いしていくのかという点もまだ十分に御説明をいたしていない状況でございますので、こういった状態で、白紙ということしかお答えのしようがございません。お許しいただきたいと思います。
  72. 宮地正介

    ○宮地委員 白紙ということは何もやらないということですが、それじゃ話にならないので、やはり国会の場でございますので、もう少し責任ある答弁をしてもらいたいと思います。  言うなれば、内需拡大の税制改革の一つの大きな問題として、自民党内でも大きくクローズアップし、また途中で鎮静化、大蔵省が水をふっかけたようでございますが、いわゆる所得税減税論の問題だと思うのです。この所得税減税論、ふっとわいてきてまた鎮静化させる、そこに大蔵省のいろいろな思惑が動いておる、こんなようなことがよく言われておりますが、大臣、率直に言って、この所得税減税論については、特に、先ほどもお話がありましたが、与野党幹事長・書記長会談で六十年度中に所得税減税については結論を出す、こうなっておるわけですね。ましてや、外圧などによってこうした内需拡大策の税制論議もあわせて出てきた。  大臣、先ほど、三つの問題が出てきていろいろ検討しなければならない大きな課題になってきたというお話をしておりましたが、率直に言って、この所得税減税問題については今どういう所見をお持ちになっておりますか。
  73. 竹下登

    竹下国務大臣 先ほども申しましたし、今宮地さんも御指摘なさいましたように、確かに三つの環境というものの中に置かれておるな、こういう問題意識を持っております。したがって、三つの問題をどう調和させていくかということがこれからの課題であるなというふうに考えておるところであります。  中曽根総理もいつも口にしておりますのは、所得税減税を私とてやりたい、がしかし、それが赤字公債を財源とするものであってはならぬ、こういうことを繰り返して申し上げておるわけでありますので、その限りにおいては政府税調全体の抜本改正の議論の中でどう位置づけていくかということでございましょう。  ただ、一方、年度中にとなっておりますから平仄は合うのでございますが、党対党の話し合いも進められておる。それと、先ほど来三つ目として申し上げております、外圧というよりも対外経済対策の諮問委員会からの御提言、これをどう組み合わせていくかというので、宮地さん、今私はこのように進めようと思っておりますと言う段階にまで残念ながらございません。
  74. 宮地正介

    ○宮地委員 主税局に確認しておきたいのですが、昭和五十八年度の税収見積もりと実績、五十九年度の税収見積もりに対する実績の見通し、ちょっと数字を挙げてください。
  75. 大山綱明

    ○大山政府委員 お答え申し上げます。  五十八年度でございますが、一般会計税収の当初予算は三十二兆三千百五十億円でございました。年度途中におきまして補正の減をいたしました額が四千百三十億円でございます。決算額におきましては、三十二兆三千五百八十三億円でございます。それから次に、五十九年度でございますが、当初予算額が三十四兆五千九百六十億円でございます。補正で、税目によりまして若干の増減がございますが、二千三百九十億円の補正増をいたしておりますので、補正後の予算額は三十四兆八千三百五十億円でございます。  今後の見通しという御質問でございますが、現在三月末までの税収がわかっておる段階でございまして、進捗の状況が八二・三%でございます。八割強の税収が入っているところでございます。昨年の今ごろの状況を五十八年度決算で見てみますと、その時点で八二・六%入っておりますので、〇・三ポイント五十九年度の場合には下回っている状況でございます。また、五十八年度の決算と五十九年度補正後予算の対比をいたしますと、七・七%の税収の伸びとなっておりますが、三月末までの段階で八割余りが入りました段階での伸びは七・二%ということになっております。  そこで、あと四月分と五月分が五十九年度の税収に入ってくるわけでございますが、今後大きな塊といたしましては、三月末決算の法人税が昨年でございますと三兆三千億ばかりでございますが、ことしはそれよりももうちょっと伸びることを期待いたしております。三月末の決算の申告の状況がどうなりますか、まだ確たることを申し上げる段階にはないのでございますが、この申告は恐らく好調であろうと見込まれますところから、今は、先ほど申しました数字から五十八年度よりも若干おくれを見ておるということを申したわけでございますが、五十九年度につきましては、補正後予算額と大きな相違を生ずるような結果にはならない、ほぼ補正後予算額は確保はできるのではないか、こんなように見ているところでございますが、何分にも三月末の法人税の決算がはっきりいたしません段階でございますので、まだ不確定要素が若干あるというところでございます。
  76. 宮地正介

    ○宮地委員 経済企画庁、来ていると思うのですが、五十八年度の実質成長率、GNPの伸びは当初計画三・四%、これが三・九の実績、五十九年度は四・一%、これは五・三%の実績、これは間違いないですか。
  77. 丸茂明則

    ○丸茂政府委員 今先生の御指摘にございました五十八年度、五十九年度当初の見通しとそれから実績見込みの数字は、そのとおりでございます。
  78. 宮地正介

    ○宮地委員 大臣昭和五十八年度は経済成長率が三・四%から三・九%、約〇・五プラスになりましたね。景気が非常に上向いた。また、そういう関係がありまして、決算しまして約四千五百億の余剰金が出てきますね。五十九年度は、今お話しのように、当初四・一%で見積もったものが五・三%でプラス一・二、こういう景気状況なんですね。単純計算をしますと、やはり五十九年度の税収見積もりに対してその実績、今非常に控え目に審議官言っておりましたが、私は、やはり一兆円程度決算で余剰金が出るんではないか、こんな感じがしているんです。  その場合、やはりやってみなければ、結果を見てみなければわからぬ、こうおっしゃると思いますが、そうした余剰金、五十八年度よりも少なくとも五十九年度の方がクリアするだろう、それも相当な額になるんではないか。とらぬタヌキの皮算用じゃありませんが、この余剰金の対応ということ、これはやはり本来的には特例公債の方にバックするとか、財確法第二条二項による特例公債の発行、これでどうするかとかいろいろあるのですが、この財源の対応について今からどうせいこうせいと、とらぬタヌキの皮算用で言うことは大変失礼かと思いますが、やはり今後の所得税減税の一つ財源としても考えるべきではないかという感じも私はしているわけでございます。この点について、大臣として税収見積もりと実績の方向性、またその余剰金の処理、こうした問題についてどういうふうにお考えになられますか。
  79. 竹下登

    竹下国務大臣 補正予算で酒を減額しましたりということで御審議をいただいて通してもらって、今も審議官から申しましたように、その大変なウエートを持つ三月決算法人の行く方が全くわからぬ、こういうときでございますから、対補正後を見て今おっしゃっているような予測をすることは難しい。ただ、補正後予算から大きな差異を生ずることはなかろうと思います、こういうところまでは言えるのかな、こんな感じでございますが……  さて、その問題は別として、じゃ剰余金というのはおまえどう考えるか、こうおっしゃいますと、財政当局におりますと、ああ剰余金か、これはやはり可能なことならば法律の二分一でなく全額を国債整理基金に入れたいな、こういう気持ちがいつも先行することは事実であります。
  80. 宮地正介

    ○宮地委員 ちょっとこの資料を大臣に見ていただきたいので、よろしいですか、委員長。  今大臣にお見せしたのは「給与所得者の税負担比較」、夫婦子供二人の四人標準家族の可処分所得の比較の表なんで中が、昭和五十二年に課税最低限が引き上げられて所得税の一部改正がされ、五十九年度に抜本的に、また大幅な引き上げということで改正されました。しかし、ことしは所得税の減税がないわけで、昭和五十二年と、そうした引き上げ等の今までの問題等をいろいろ全部含めた現行の所得との比較をしたのを今お渡ししたわけなんです。例えば、注書きにございますように、年収については昭和五十二年度から六十年度の物価上昇率三三・六%にスライドさせてやっております。五十八年度までは実績、五十九年度は実績見込み、六十年度は見通してあります。また、税引き後実質所得は、税引き後所得を物価上昇率でデフレートしたものであります。  例えば、昭和五十二年に三百万の年収を取っておった方は、昭和六十年で三三・六%の増加率でありますと約四百万。これを見てもらいますとわかりますように、所得税、住民税の税合計は、五十二年のときは十一万六千六百円、これが昭和六十年には二十一万六千五百円、増加率八五・七%。税負担率から見ますと、昭和五十二年三・九、昭和六十年五・四。最後の税引き後実質所得を見ていただくとわかりますが、昭和五十二年に三百万の所得の方は二百八十八万三千四百円、昭和六十年には二百八十三万七千九百四十九円、マイナス一・六%、これは可処分所得であります。年収五百万の方にしても可処分所得はマイナス二・三%、年収七百万の方でマイナス三・六%、年収一千万の方でマイナス五・二%。そして逆に税負担率は、三百万の方は三八・五%、五百万の方は二一・四%、七百万の方は二〇・四%、一千万の方は一九・五%。こういうふうに、税負担は逆に低所得ほど非常に強まっている。  これは私なりにつくった一つの資料なんですが、こうしたことから見ましても、先ほどのいわゆる三つの約束事の中でいろいろガラガラポンやらなければならぬ、こういう感じ大臣言っていましたが、国民生活の実態という面から見ても、現在の国民の皆さんの実質的なこうした可処分所得、税負担が非常に高くなってきている。やはりこうした生活実感的な面においても、私は所得税減税というものは実行する必要性が非常にあるのではないか、このことをぜひ強調したいために大臣に今表を渡したわけでございますが、これを見まして、こうした問題についての配慮を大臣として全く考えないのか。今後、この六十年度中に所得税減税の結論を得るという与野党幹事長・書記長会談の趣旨あるいはその他のいろいろな状況も踏まえ、さらにこうした一つの国民生活の実態を踏まえて、やはり所得税減税という問題は真剣に取り組むべきではないか、こう私は主張したいのでございますが、大臣、この表を見ましてどういう御感想をお持ちになりますか。
  81. 大山綱明

    ○大山政府委員 この表をただいま拝見いたしましたばかりでございますものですから、いろいろ計算の前提等をもう少し伺わせていただいた上で私ども感想を述べるべきところかと思いますが、私どもも別途同じような試算を、さきの予算委員会で政審会長が御質問ございましたもので、いたしたりいたしておりますが、私どもそれをちょっと今比較をいたしておりますところでは、必ずしも税引き後の実質所得がマイナスになっているような数字を持ち合わせておりません。ですから、これは数字の前提と申しますか、試算の前提というものがどういうものであるかということをもう少し先生に伺いながら、またその計算につきまして大臣にも御報告させていただきましてからに、感想につきましてはお許しをいただきたいと思います。
  82. 宮地正介

    ○宮地委員 大臣、私が言いたいのは、そうした国民の生活実態、また生活実感、こういうものをやはり十二分に配慮して所得税減税の問題にも取り組んでいただきたい、こう思っておるわけですが、この点についてはいかがでしょう。
  83. 竹下登

    竹下国務大臣 私も、この比較の表の前提についてちょっとまだ完全に理解ができておりませんが、生活実感というものといわゆる所得税の問題、所得税の問題からする生活実感、そういうものは絶えず我々は念頭に置くべき課題であるという問題意識は、私も十分持っておるつもりでございます。
  84. 宮地正介

    ○宮地委員 特に、御存じのようにサラリーマン税制の最高裁の判決における所得捕捉格差の問題、この是正要求という問題も出てきているわけですね。そういう点からも、やはり私はこの所得税減税という問題は非常に重要な問題であろう。この問題についての受けとめ方もいろいろあろうかと思いますが、ともかくクロヨンとかトーゴーサン、こういうようなことがいつも不公平税制として言われているわけでございまして、私はぜひこの所得税減税の問題についても、大変厳しい財政当局の状況は十二分に我々も理解できますが、非常に重要なそうした事項における配慮というものをしなければならない、そういう事態に立ち至っているのではないか、このように思いますので、ぜひ大臣、この問題についてはむしろリーダーシップをとられて対応していただきたい、このように強く要望しておきたい、こういうふうに思うわけでございます。  そこで、時間も迫ってきておりますので、少し国税庁の方にお話を進めてまいりたいと思います。  昭和六十年四月に「最近五年間の税務調査の状況」というものを国税庁は発表しておりますが、これについて簡単で結構でございますから、特徴を御説明いただきたいと思います。
  85. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 お答えをいたします。  私どもとしては、毎年の税務調査の状況等につきまして、事務年度が終了し結果をまとめた後で、適宜の段階でその実績等について発表させていただいておりますが、先生今五年分とおっしゃいましたが、私どもとしては今まで一年一年というような形で発表させていただいておりまして、五年のまとめたものというものにつきましての公表ということは、ちょっと私ども心当たりがございません。(宮地委員「これを見ていないですか」と呼ぶ)先生御指摘のものは、国会の方の御要求がございまして、五年分をまとめて資料としてお出ししたことはございます。そういう性格のものでございます。
  86. 宮地正介

    ○宮地委員 その資料でいいです。それを説明してください。
  87. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 この資料は、申告所得税と法人税、それから相続税の調査状況、さらに譲渡所得の調査状況、四つにつきましての過去五年間の調査状況をまとめたものでございますが、申告所得税につきましてはこのところ毎年十五万件ほど、それから法人税につきましては二十万件ほど、それから相続税につきましては毎年一万件強、それから譲渡所得につきましては五万件ほどの調査を行っております。  それぞれの調査の状況につきましては、申告所得税の場合、その調査をいたしました中でおおよそ九割強の方につきまして申告漏れがございまして、平均しての申告漏れの所得割合は二〇%程度というふうに理解をしております。法人税につきましてはそのようなあれはございませんが、申告漏れの所得金額の総額といたしましては、この二年ほど約一兆円の申告漏れの所得を把握いたしまして、三千五百億前後の追徴をいたしております。それから相続税につきましても、基本的な割合は、調査をいたしました中で九割程度の申告漏れが見つかっておりまして、申告漏れ割合は大体一〇%程度というふうに基本的にはなっております。ちなみに申告所得税の調査割合でございますが、私どもが営業その他事業という形で、いわゆる自営業の方を対象にいたしました申告所得税の実調率は近年四%程度でございますが、法人税の場合にはこれが一〇%程度、それから相続税の場合には一二%前後ということでございます。それから、譲渡所得は大体五%程度の実調割合、こういう状況でございます。
  88. 宮地正介

    ○宮地委員 大臣、今次長から国税庁が国会に提出した税務調査の状況の説明があったのですが、私簡単にお話ししますと、申告所得税の実調率は今回%ということで非常に低いのですね。五十八年度の調査件数十五万五千件やりまして、申告漏れのあった件数が十四万六千件ということで、申告漏れ件数割合九四・六%、さらに法人税の実調率も一〇・五%、調査件数十九万八千に対しまして申告漏れのあった件数は十六万三千件、申告漏れ件数割合八二・二%。要するに法人税にしても一〇・五%、申告所得税にしても実調率四%。  私が大臣に御質問したいのは、この実態を見まして、先ほどのトーゴーサン、クロヨンではございませんが、納税者に対しての適正な申告、これに対する政府としての教育といいますかPRといいますか、そういうものをもっともっと徹底すべきではないか。要するに、調査をすればほとんど間違いなく漏れている。それから、国民の間に何か税金逃れをすると美徳のようなそういう感覚とか、税を納めることが何か損をするような感じを与えるとか、こういう納税に対する基本的なあり方。もちろん政府に対する信頼の問題等もあるでしょうが、そうした申告漏れをできるだけなくして、適切な公正な申告をしていただく、それがこれからの財源措置としても非常に比重は高くなっていくのではないか。やたらに増税論議みたいなものばかりどんどん手っ取り早いところから踏み込んでいくのでなくして、そうした税の本質、根本に至るところの問題についても、もっともっと積極的に政府挙げて対応すべきではないか。  私は決して徴税国家をつくれなどということを言っているわけじゃありません。むしろ自然のうちに、やはり自分たちも国に税金を納めることによって国をよくしていくんだ、福祉国家をつくっていくんだ、自分も参画をしていくんだ、こういったバックグラウンドといいますか、そういうものの国民に対する対応にもっともっと取り組んでいくべきではないか、そういう中で財源というものはもっと対応できてくるのではないか、私はこういう感じをこの一つの実態の調査を見まして感じているわけでございますが、大臣としてはこの点どうお考えでございますか。
  89. 竹下登

    竹下国務大臣 おっしゃいますとおり、仮に単純に平均しますと、申告所得の方は二十五年に一遍、それから法人で十年に一遍、そうなるわけでございますが、もとよりもろもろの事情、情報等々を集めましてその対象を選定しておるわけでございますので、私は、実際出てくるような高率の脱漏というものが平均して存在しておるとは必ずしも言えないと思います。大部分の納税者の方はまさに適正な納税をなすっておる、こういうことであろうと思っております。  しかしながら、御指摘がございましたように、いわば啓蒙宣伝、あるいは教育という言葉でも結構でございましょう。事実納税の義務は憲法にもちゃんと明記してあるところでございますから、したがって徴税とか納税とかという言葉が日本の場合定着した言葉でございますけれども、よく言われるタックスペイヤーというような立場に非常に平易な姿勢でなっていただいて、そういうタックスペイの意識が普及していくということはいろいろな場合にやっていかなければならぬ課題であろう。それがためには、それぞれの団体であります青色申告会でございますとか、あるいは税理士会でございますとか公認会計士の団体でございますとか、そういう方の協力も得ながら、またもう一つは地方の税務当局の方等の協力も得ながら、そういう普及徹底には努めていかなければならぬ課題だと考えておるところであります。
  90. 宮地正介

    ○宮地委員 それから国税職員の採用の問題をちょっと伺っておきたいと思うのですが、昨年とことしの国税職員の採用状況を簡単に御説明いただけますか。
  91. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 お答えをいたします。  昭和五十九年度、昨年度の採用状況でございますが、上級国税専門官、初級の税務職員合わせまして千五百名ほど採用してございます。それから六十年度、本年度でございますが、二千百名ほど採用してございます。
  92. 宮地正介

    ○宮地委員 国税専門官の採用は五十九年採用者五百六十二人、六十年採用者五百十三人、いわゆる高卒の方の税務大学校の普通科採用は五十九年採用者九百八十八人、六十年採用者千六百三十四人、これは間違いございませんか。
  93. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 お答えいたします。  五十九年度の初級につきましては約千人ほどというふうに理解しておりますが、基本的に先生のおっしゃるような数字でございます。
  94. 宮地正介

    ○宮地委員 そこで、私が非常に心配しておりますのは、国税専門官の採用の場合、時間がありませんから私からお話ししますが、非常に歩どまりが落ちてきたということですね。五十九年の採用が五百六十二人、六十年が五百十三人、採用は大体六百人程度していると思いますが、歩どまりが落ちているということ。それからもう一つは、高卒の方の税務大学校の普通科採用の場合、昨年五十九年度は九百八十八人、約千人、ことしは一挙に千六百三十四人にぐっとふえたわけですね。こういうことを言うのは失礼かもしれませんが、いわゆる質的に低下はしていませんか、税務大学校の場合。いわゆる採用の選考基準はレベルが低下してないかどうか。
  95. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 税務職員の採用試験の区分の中で、先生御指摘の国税専門官試験の状況でございますが、このところ大体五百人台の職員を採用さしていただいております。基本的に非常に難しい試験で、なかなか合格が容易でないということは事実でございますが、合格をいたしました中で他の就職先、例えば地方公共団体の職員に合格をしてそちらの方に流れていくという傾向もないわけではございません。ただ基本的にやはり私どもとしては、難しい試験に合格した優秀な方を採用さしていただいているという認識でございます。  これは初級の税務に合格して採用さしていただいております職員につきましても、私ども基本的には同様のことが言えるかと思っております。私どもとしては基本的に質のいい職員を確保する、それによりまして納税者の信頼が得られるような税務行政の執行の質が維持できるということがまずもって一番大事なことだというふうに理解をして、今後とも進めさせていただきたいと思っております。
  96. 宮地正介

    ○宮地委員 特に昨年に比べて税務大学校の普通科採用が一挙に六百四十六人ぐらいふえているわけですね。そういう中でまた新たに、前回の大蔵委員会で質問申し上げましたが、これから六十五年にかけてベテランの職員の方が相当数退職をする時期で、今度はベテランの方がやめていったその穴埋めをしていかなければならない。非常に厳しい一つの試練の採用の時期に来ると思うわけでございますが、こうした多くの新規採用者に対して、国税庁として今後どういう、いわゆる一般企業で言う企業内教育というものですね、単に税務大学校の一年三カ月のコースが終わったらもう職場に出して、それでおしまいなのか、何らかの形で資質の向上のための新たな教育を考えておられるのか。ベテランの人が相当数やめていくわけで、新規の人が幾ら来ても恐らく太刀打ちできない状況になるのであろうと思うのです。そういう点の新規採用者に対する今後の部内教育という面についての御配慮、何か御検討されておりますか。
  97. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 国税職員として採用した職員の部内研修でございますが、先生御承知のとおり、高校を卒業して採用いたしました職員につきましては、一年三カ月の期間税務大学校で教育をした上で職場につける、こういう基本的な方針でございますけれども、その後の状況につきましても、一定年限たちますと税務大学校本科の選抜試験を行いまして、毎年五百人の職員を一年間税務大学校において本当に専念をして勉強してもらうというシステムをとっております。このほかに、国際的な視点から英会話、貿易実務等に練達した職員を養成するための国際租税セミナーであるとか、各種の内部の研修を行っております。  これらのことによりまして、先生御指摘のように今後五十歳台のいわゆるベテランの職員がかなり大量に退職をしてまいりますが、そういう職員の穴を現在二十代、三十代の職員に大いに頑張って勉強してもらって埋めてもらうとともに、今後採用いたします優秀な職員をこれからもきっちりと教育をいたしまして、税務職員の全体としてのレベルが落ちないように、今後とも研修につきましては特に力を注いでまいりたいと考えております。
  98. 宮地正介

    ○宮地委員 特に私は、採用する、入職のときの魅力というのがやはり一番大事だと思うのです。資質のいい方を入れてから教育をしてやっていく方法も考えられますけれども、まずセレクトする段階で資質条件にかなった職員を採用する、これも重要なポイントだと私は思うのです。     〔中川(秀)委員長代理退席、熊川委員長代     理着席〕  そういう点で、私は前々から今の税務大学校のシステム、一年三カ月、これをもう少し延ばして二年くらいの期間の教育をやられたらどうか。場合によっては、文部省等の所管との問題等で大変難しい面があるにせよ、そこを卒業した方は短期大学卒業の資格を与えるというような処方せんも考える時期に来ているのではないか。そこで単に教育的に勉強したというだけで職場に行くのと違って、二年間修了して公的にも短期大学卒業の資格が得られるということであれば、そこに励みもできますし、また応募してくる方もそれなりの希望を持って対応してくるのではないか。この点については過日も大蔵大臣に要望をいたしまして、ぜひ前向きに検討していただくようにお願いをしておったわけでございますが、まず、国税庁としては今後この問題に取り組んでいくお考えがあるのかどうか、お伺いしておきたいと思います。
  99. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 先ほどお答えを申し上げましたように、現在、高等学校を卒業したいわゆる初級の税務職員に対しましては、一年三カ月の税務大学校での研修を行わせております。いささか私どもの手前みそになりますけれども、非常に熱心に勉強しておりまして、内容としては、二年の短大はおろか、実はそれ以上の実質のある勉強をしてもらっておると思います。  ただ、税務大学校での研修につきましては、御承知のとおりの部内研修でございます。私どもとしてもこの研修の期間に応じまして、先生御指摘のように、例えば短期大学卒業とか、場合によれば本科も含めまして勉強した結果につきましてそのような資格の認定をしていただきますと、例えば公認会計士の第一次試験の免除資格であるとか、いろいろな面で対外的にも通用する資格が手に入るわけでございます。その意味ではまさに職員の励みになることは御指摘のとおりでございますが、基本的にやはり部内研修であるというところが大きな壁になっております。例えば海上保安大学校であるとか、大学のような形での資格の認定につきまして、文部省と従来からいろいろお話し合いをしておりますが、なかなか難しいという現状を聞かされております。私どもとしては、職員に勉学意欲を持ってもらうためにも、資格と結びついた研修というのは、方向としては大事なことでございます。そういうことで今後とも検討させていただきたいと思います。  ただ、この勉学期間を現在の一年三カ月から二年にいたしますと、定員内の職員をその期間勉強させるということになりますので、実質的な税務職員としての総体の戦力は実は低下するという問題もございます。また、現実に二年間の研修を行いますためには、それなりの入れ物、教授陣その他も必要でございます。予算的な面とかいろいろございますし、先ほど申し上げました学校教育法に規定するような問題もございますが、私どもとしては、先生の御指摘の方向は職員の励みにもなるという意味で、今後とも引き続きまして十分に検討させていただきたいと思っております。
  100. 宮地正介

    ○宮地委員 大臣、今の次長の発言、私は大変に誠実な答弁だと思うのです。ぜひバックアップしていただきたいと思いますが、大臣の所見を伺いたいと思います。
  101. 竹下登

    竹下国務大臣 前回もお答えいたしましたが、学校教育法の問題とかいろいろございますが、十分に意思を体して、私も言葉そのままをおかりすれば、バックアップしていきたいと思います。
  102. 宮地正介

    ○宮地委員 特に国税職員の方々は、いろいろ伺ってみますと、残業というよりは自分の家に持ち帰って仕事をされる方が非常に多いのです。五十九年度の状況を見ますと約四二・四%、五十六年度でも四四・八%。そういう点で仕事の質、仕事の量が非常にふえていくのに伴い、定員の方がなかなか思うようにいかない。今回、六十年度では大変な中をプラス十一ということで対応し、本大蔵委員会でも附帯決議等で国税職員のそうした定員増について対応しているわけでございますが、特に過日は、私の埼玉県でも集団結核などが出てまいりまして、その後こうした問題について国税庁として何らかの改善策、職場づくりのためのそうした問題等についてどういうふうに取り組んでこられているか、ちょっと御報告いただきたいと思います。
  103. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 先生ただいま御指摘のように、税務署の職場はこの十年間に納税者の数が約一・五倍にふえるなど大変厳しい状況であることは御承知のとおりでございまして、このような職場で職員が元気に、健康に仕事をしてもらうという意味での健康管理には、私どもとしては大変力を注いできております。  ただ、先生御指摘のように、昨年埼玉県の越谷税務署におきまして結核の集団発生というようなことがありましたことは大変残念でございますが、おかげさまでその後、発病いたしました職員は全員元気に職場に復帰をしておりまして、私どもとしては大変胸をなでおろしている状況でございます。ただ、このような状況を今後二度と繰り返さないようにということで、確定申告期の健康診断、さらには成人病関係の人間ドックの診療内容の充実等につきまして、引き続き私どもとしてはできる限りの努力をし、一般的なレベルとしては、人事院規則に決められた以上の健康チェックの体制をつくりまして、今後とも職員の健康管理には万全を期してまいりたい、このように考えます。
  104. 宮地正介

    ○宮地委員 最後に大蔵大臣に、けさのマスコミでちょっと報道されておりましたが、金融制度調査会が本日答申を決定される、特に金融自由化に伴って、銀行倒産を防ぎ、預金者を保護するため、今までの合併による救済ばかりでなくて、資本獲得による買収や系列化を認める、こういうような新たな手法による金融自由化を進めるとともに、その一つのフィードバックといいますか、政府のそうした銀行再編問題等に対する新たな手法が答申をされる。今までは、こうなりますと、大手銀行によって中小企業を次々に系列に入れていくということでございますから、公取などでは寡占を招くということで大変慎重であったわけですね。伺うところによりますと、公取とも認可の問題等について大蔵省も協議をしておる。こういうようなことがこれから答申されてくると思いますが、そうした新たな決定がきょうされる、既にもうされていると思いますが、こうしたようなことが議論されているようでございます。この点について大臣、最後に現在の私見で結構でございますが、ちょっと御説明いただきたいと思います。
  105. 大橋宗夫

    ○大橋政府委員 お答え申し上げます。  本日の新聞に、きょう答申案が決定するというふうに書いてあるわけでございますが、実はきょうは小委員会を開催しておりまして、案文が一つ出ていることはそのとおりでございますけれども、きょう決定していただけるかどうか、まだ今やっている最中でございます。きょう決めていただけない場合にはもう一回月内に行いまして、来月の五日に答申をいただきたいということでお願いしているところでございます。  その内容につきまして、今先生御指摘の銀行による買収ということにつきましては、調査会の中でも議論はされておりますけれども、これは当然のことでございますけれども、独占禁止政策との整合ある運営を行っていかなければならないというふうに考えておりまして、今御議論をいただいておるところでございます。
  106. 宮地正介

    ○宮地委員 じゃ、終わります。
  107. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 安倍基雄君。
  108. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今まで同僚議員がいろいろ質問をした後でございますし、特に私なんか、質問と言っても共産党の正森氏に非常に似た観点が多いので、どうして私は共産党と同じ意見になるのかなと思うのでございますけれども、それは別といたしまして、いろいろなことを聞かれた後でございますので、要点に絞ってお聞きしたいと思います。  いろいろの問題の基礎に、経済成長がどうなるかということがいつも問題になるわけでございまして、その一番のいわばポイントと申しますか、日本の成長もさることながら、アメリカ経済がどうなるのだろう。今我々は内需中心型の経済に移行すべきであるということを非常に主張しておりますけれども、その前に、アメリカは最近経済の成長がいささか鈍化しつつあるのではないかという話もございます。私ども今まで、アメリカ経済成長はどうしてこんなに予想外に伸びるのかということに対しては、かつてのカーター政権のころに随分インフレが持続した、それが一応レーガンになっておさまった、したがって、それまでいろいろ投資も消費も抑え込まれていたのが一度に出てきた、そこにいわゆる減税政策が絡まってくるというような要素でもって成長していると説明しておったようでございますけれども、現在アメリカ経済が若干減速しておる。これは一説によると、統計上の問題で、いわゆる消費需要は結構伸びておるけれども、輸入がぐっと一時的にふえたからという説もございますけれども、アメリカ経済成長がこれからどうなるんだろうか、この一、二年どうなるか。それともう一つアメリカ経済成長のいわゆる原動力というか、もうとまりそうで結構とまらないでどんどん伸びておるという基本要因は何であろうかということを経済企画庁の方にまずお聞きしたいと思います。
  109. 赤羽隆夫

    ○赤羽政府委員 お答えいたします。  去る二十一日に、米国の商務省からGNP統計の改訂版が発表になりました。これによりますと、この一-三月期、第一・四半期のGNPの成長率は〇・七%、予想以上に低い、緩やかな成長ということになったわけでございます。  内容を見てみますと、今先生からも御指摘のございましたように、個人消費は引き続き堅調と言っていい状態だと思います。つまり、個人消費の伸びは年率で実質五・二%、中でも耐久財の伸びが八・七%、こういうことでございます。非耐久財の伸びは三・五%ほどでございますが、サービスは五・三%の伸び、こういうことになっております。  他方、個人部門に大部分関係しております民間住宅投資は、昨年の下半期、二四半期続さましてマイナスであったのが、一-三月期は一%、ごく緩やかではありますけれどもプラスに転じた、こういうことでございますので、個人部門、家計部門は依然として堅調な需要の伸びが見られる、こういうことだと思います。  他方、企業部門は在庫が〇・七%のプラス、これはかなり売れ残りの在庫、意図せざる在庫の部分があるのではないか、こういうふうに考えておりますけれども、〇・七%。これに対しまして設備投資、昨年の前半におきましては年率二〇%を超えておりました設備投資が、ここへまいりまして二・六%と伸びが鈍化をした。しかもその内訳を見てみますと、機械設備と構築物に分けてみますと、構築物の方は一六・八%、依然二けた台の強い伸びになっておりますけれども、機械設備が二・五%の減少ということになっております。この機械設備というのは生産性の向上の基礎になるものでございますし、またアメリカ産業の国際競争力を強めるために必要な、直接的な生産能力を高める種類の設備投資である。これがマイナスになってきておる。このあたりはやはり注目すべき点ではなかろうかと思います。  どうしてそうなったんだろうかということでありますけれども、やはりこれは輸入が非常にふえておる、輸入との競争に負けておる、こういうことのあらわれではないかと思います。国内需要ということになりますと四%程度の伸びということになりまして、主として家計部門を中心として需要の伸びは堅調ですけれども、アメリカの国内産業の生産活動、これをあらわします実質GNPが、最初に申し上げましたように〇・七%になってきておる、こういう点に非常に問題があると思います。  こうした状況が四-六月以降どうなるのか、いろいろな要因がありましてわかりませんけれども、しかし肝心なことは、やはりアメリカの為替レート、ドルが高過ぎる、そのためにアメリカの国内産業の競争力が落ちている、こういうことがまたアメリカの設備投資に対しても影響してきたという状況ではないかと思います。アメリカ経済の先行きを見通すことは、我が国についても同様でありますけれどもなかなか難しいことではありますが、四-六月期以降は一-三月ほどの低い伸びではない、そういうことで全体として三%から三%の半ばぐらいの伸びは見込める。本改定値が出た後のアメリカの専門家の中にもそういう意見が強いようでありますから、それほど心配する必要はないと考えておりますけれども、やはり今申し上げましたような点に問題点というか着目点があるという認識のもとに、私どもとしても慎重にかつ一生懸命分析をしていきたい、これが日本経済に対してどういうふうな意味を持つのかさらに研究を進めていきたい、こう認識しているところでございます。
  110. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 かいつまんで申すと、大分ドル高が継続しているものだから、国内産業の競争力が若干落ちてきている、であるから、基本的にはこれから少しは鈍化した形でいくのではないか、こういうことでございますけれども、これを前提にしたときに、日本の場合にはしばらくは内需が拡大していくだろう、だからしばらくは成長が持続するだろうと言われておりますけれども、アメリカが減速してくると、それに引きずられてタイムラグをもって日本経済も伸びが遅くなるという感じでございます。そういたしますと、ここ一年くらいはいいけれども、二年目、三年目くらいになるとどうかということについて、企画庁のお考えをお聞きしたいと思います。
  111. 赤羽隆夫

    ○赤羽政府委員 今先生御指摘のように、六十年度の経済につきましては、私どもといたしましては内需中心の安定した成長が達成できる。また世界経済を見ましても、昨年のようにアメリカだけが突出をして成長率が高い、それに引っ張られて各国もまた景気がよくなった、しかしながら成長率格差が非常に大きい、こういう状態に比べまして、六十年度、一九八五年の経済は、成長率の面でもまた物価の面でもギャップが少なくなりまして、よりバランスのとれた姿になるであろうという予想をしております。これは私どもだけの予想ではなくて、OECDなどもそういう予想をしているわけでございます。  これに対しまして、さらに来年八六年はどうなるだろうかという点でありますけれども、現在の政策、それから現在想定されておりますいろいろな前提条件、例えば為替レートその他が余り変わらないという状況のもとで予測をすると、八六年は八五年よりは若干伸び率は鈍化するけれども、それはリセッションと言われるような状態ではない。これがOECDの事務当局の現在の認識でございまして、私どもも大体そういった方向ではないかと考えている次第でございます。特に今の時点で八六年の経済につきまして経済企画庁として分析をしているわけではないものですから、OECDで研究をしていることを御紹介申し上げた上で、私どもも大体そういう線で来年を見ていると申し上げたいと思います。
  112. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いずれにいたしましても、財政再建のことを考えるときに、やはり数年間の経済見通しを考えていかなければいかぬ。そのときには、アメリカが持続的に本当に成長していくのか、軟着陸するのか、あるいはがたっといくのかということの見通しが必要であると思いますし、今一、二年と言いましたけれども、アメリカ経済成長の基本要因がちゃんとそのまま保持されていくならば軟着陸にいくでしょうけれども、財政の赤字あるいは貿易赤字でがたりといくのではないか等いろいろ説もございますが、その辺はアメリカ経済が軟着陸で相当持続的にいくのかどうか。  それとともに、二番目の問題といたしまして、米ドルと円との関係がこれからどうなるのか。例えば最近日本の「エコノミスト」のインタビューでフェルドシュタインが、「ドルは終局的には、八〇年以来生じた約七〇%の上昇のほとんどを打ち消すに足るほど下落しなければならない。」もうじき落ちていくだろうというようなことも言っておりますけれども、アメリカの成長、日本の成長との関連におきましてこれから円、ドルがどうなるのか。  実は去年の冒頭で、ファンダメンタルがあれだけアメリカは悪いんだからいつかは必ず円高になるだろうと予言したわけです。大抵の経済学者はそういうことを言った。ところが、一年たっても一向ドルが落ちないということで、我々としてはことしはできるだけそういう予想をしない形でいるわけでございますけれども、そろそろどうも、フェルドシュタインなんかもそう言っていますし、たまたま私が選挙区に帰りましたら、日銀の三重野さんが講演に来られて、円は漸次上がっていくだろうというようなことをちょっと言われたわけでございますけれども、これからのアメリカ持続的成長が可能なのかどうか。それとともに、日本がちゃんと持続的にいけるのかどうか、円、ドルはどうなるのかということについての御判断、それはどちらかと申しますと個人的な意見であるのか、あるいは企画庁としての考えであるのか、その辺を織りまぜてお話ししていただきたいと思います。
  113. 赤羽隆夫

    ○赤羽政府委員 大変難しい御質問でございまして、お答えがしにくいわけでございますけれども、まず為替レートがどうなるのかということでありますが、これはもう既に先生十分御承知のように、最近の為替レートは経常的な財貨、サービスの取引の黒字、赤字ということで決まるのではなくて、むしろそれの何倍あるいは十数倍あるいは数十倍という規模で起こっております資本の移動、資金の取引、金融取引で決まっております。そうしましたときに、現在の時点で多小金利差が狭まりましたけれども、なお四%くらいの金利差がある。こういうことで、一方でリスクはもちろんあるわけでございますけれども、多少リスクについて覚悟すれば、かなり長い間のことを考えてみると、これから先相当高い円高が実現しない限り必ずもうかる。こういうふうな状況のもとでございまして、そういう中で主として資本の取引で決まる、こういったような為替レートを予想するということはなかなか難しいと思います。むしろ現在の問題点は、経済の生産力、生産性の格差を反映いたします財貨、サービスの取引の結果として決まるのではなくて、資金的な、資本的な取引によって決まるというところに問題がある、こういうことではないかと思います。その結果どういうふうになるのか、これはなかなか私、予測ができない、こういうことだと思います。  金利差がドル高・円安の原因であるということならば、それでは金利が下がればドルが安くなり円が高くなるのか、こういうことになるわけですけれども、長期的にはその方向だろうと思いますが、短期的に見ますと必ずしもそうはならない、こういう現象が起こっているように見受けられます。と申しますのは、金利が下がるということはつまり、アメリカの債券の値段が上がるということでありますと、安いうちに買っておいてキャピタルゲインを稼ごう、こういう目先のきいた人たちも出てくるわけでございますし、そうした場合にアメリカの社債なり国債なりを買おうということになりますと、アメリカのお金でありますドルを買わなければいけない、つまり支払い手段としてのドルに対する需要がふえる。こういうことで、金利が下がる局面でドルに対する需要がかえってふえて、為替レートは下がるのではなくて上がるという現象もある。そういうことで、そのときどきの投機家と申しますか投資家の判断というものが影響する、こういうことでございまして、長期的な方向としては、それぞれの生産性の格差というものを反映したものになっていくんだろうし、またなっていかなければ困るということではありますけれども、具体的にどうなるのか、過去三年余り円は必ず高くなるということをみんなが予想し続けてきた結果が現在の状況でありますから、個人的でもいいからとおっしゃられましても、私としてもなかなか御返事ができない、こういうことだと思います。明確な結論を申し上げるわけにいかない。もちろんそういう結論自体も持っていないということでございます。  それからアメリカの成長力についてはどうかということでございますけれども、基本的にはアメリカの成長力というのは決して衰えていない、こういう認識でございます。と申しますのは、これから二十一世紀にかけての経済を考える場合問題になりますのは、いわゆるハイテク分野、先端技術分野、ここでの技術開発力、研究開発の能力、こういうことだと思います。そういったものについて、日本もそうでありますけれども、アメリカは依然として世界で一番強い研究開発力、技術開発力を持っている国だ。そういう点から見ますと、決してアメリカの実力がここに来て落ちたわけではない。しかし、短期的なものでいいますと、これまで御指摘もありましたし、私がお答えしましたようないろいろな問題で、為替レートが高い状態が予想外に長く続く、そのためにアメリカの競争力が衰えるといったこともございまして、いろいろ問題が多いという状態ではないか。しかし、長期的に見てアメリカの実力、アメリカの潜在力、可能性というものは高く評価しなければならない、こういうふうに理解しているところでございます。
  114. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 これは大蔵省の話と思いますけれども、この数年間資本流出が非常に多い。今お話がございましたように、それが本来下がるべきドルが下がらない、円がいつまでも安いという原因でございますけれども、現在におけるそういった海外に流出した日本資本の累積残高は大体どのくらいなのか。今度ドルが大幅に下落して累積債権残高が実質的に減価するという状況が起こったときに、日本の企業というか日本全体としてどういうことになるのか。日本の高い貯蓄率、それが実体的に日本経済の投資に向けられないで、むしろ海外投資にいってしまう、しかもポートフォリオとかそういったことを中心にしていく、それで最終的にドルが下落したときにせっかくためておいたそういう貯金が減価してしまうのは困るな。その辺についてどういうことであるのか、類とそれについての考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  115. 行天豊雄

    行天政府委員 我が国の対外資産の残高はいかほどかという御質問でございましたが、まさに御指摘のとおり、ここ数年我が国からの資本の流出が増加しておりますものですから、当然我が国の対外資産の残高もそれを反映してふえてきております。  実は私ども暦年の末でこの統計を整理しておるのでございますが、昨年末の統計は今最終的な集計段階でございまして、もうちょっとお待ちいただけるとこの数字が出るのでございますけれども、現時点ではまだ五十八年末の数字しかございませんので、その数字を御披露したいと思います。  五十八年、一昨年末におきます我が国の対外資産残高は長短、公的、民間すべてを含めまして二千七百二十億ドル相当でございました。これに対しまして、同じような範疇での対外負債の残高は二千三百四十七億ドルでございましたので、差し引きをいたしました対外純資産は三百七十三億ドルであったわけでございます。五十九年末の数字は現在集計中でございますが、御承知のとおり、五十九暦年の間に我が国経常収支が非常に大きな黒字を生んだわけでございます。それを考えましても、五十九年末におきます我が国の対外資産の残高は、今申し上げました数字に比べまして相当大きくなっておるのではないかと思います。  将来ドルが減価した場合にこの対外資産が減価するではないかという御質問は、まさにそのとおりだと思います。ドルが高くなれば円価額はふえますし、ドルが下がれば円価額が下がるわけでございまして、その場合に当然投資をされた機関なり個人は、その分の円建てにおける減価を甘受しなければならないということでございます。  ただ、これはそもそも考えてみますと、こういった外貨建ての資産に投資をされる場合に、投資家とすれば当然一方では金利格差による収益、他方では為替が将来どう変動するかわからないということに伴う為替リスク、それからまたドル建てでございますとドル建ての債務証書、証券類でも何でも、発行しております相手の信用度といったようなものをすべて判断の材料として含んだ上で投資の決定をしておられたはずでございますから、当然為替リスクはその中に入っておる話でございますので、将来仮にドルが下落したことによって対外ドル建ての債権の円価額に減少が生じても、これは当初の投資のリスクの範囲内の問題ではないかと考えております。
  116. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 五十八年の残高が約四百億足らずと言いますが、御承知のように去年一年間で五百億ドルぐらいの流出があるわけでございますから、恐らく七百億ドルあるいは八百億ドル近くの累積があるかと思います。今個々に為替リスクはヘッジされているだろう、それを織り込んだ形で投資が行われているだろうということは事実でございましょうけれども、逆に言えば、もうかるはずがとんとんで済んでしまったということになると言わざるを得ない。と申しますと、せっかくためたお金が結局とんとんだったというようなことと考えるわけでございます。  一番問題点は、我々の貯蓄が本来は国内における機械、設備の更新とか投資実物として残った方がいいわけでございますが、これが海外における利益、いわばポートフォリオみたいな形で利ざやを稼ぐという形でいって、終局的には例えばアメリカにおける設備更新なりに金を使われる。日本としては一向に実物的な資産の増加にならなくて、何年かたってみると、そこそこ損はしない程度にもうかっているというような形になりはしないのかという気がするのでございますけれども、この点の考え方について、企画庁あるいは大蔵省にも承りたいと思います。
  117. 赤羽隆夫

    ○赤羽政府委員 まず行天局長からお答えになった点につきまして、同じことでありますけれども、多少私から違った側面から申し上げたいと思います。  確かに、対外資産が減価をすればそれによって損をするだろうとおっしゃることはそのとおりでありますけれども、減価をしないようにポートフォリオマネジメントするのが財務担当者の腕みたいな話でありまして、むしろ上がったり下がったりするがゆえにもうかる、決して下がることだけが損をすることではない、こういうこともあるのではないかと思います。そういう点のリスクをも織り込んだ上でのマネジメントだ、こういうふうに言われたと思います。したがいまして、為替レート、ドルのレートが下がったからといって、それだけで日本が損をするということではないだろうと思います。  他方、国内的な観点から申しましても、ドルが下がるということは円が高くなる、円が高くなるということは、大体のこれまでの例からいいますと交易条件が改善をする、こういうことでありまして、交易条件改善に伴う実質所得効果というのが発生するわけでございまして、その面からいいますと、一方で資産が仮にドルの減価に応じて損をする点があったといたしましても、それを逆に交易条件効果によるところの実質所得の増加でカバーされる面もある、こういうことではないかと思います。経済の現象というのは、一方的に損をする、得をするということではなくて、その裏に必ずコストがある、コストがあればまたベネフィットもある、こういうふうに考えてみるべきではないか、こういうふうに考えているところでございます。  これから先貯蓄の運用をどうすべきかということでありますけれども、まさに現在の日本の貯蓄過剰というのがどういう原因で起こっているのか、これにつきましてはいろいろ見方が分かれているところでございます。貯蓄過剰があるから黒字がある、その黒字をさらに外国に対して投資をしている、こういうふうに見るのか、あるいは日本産業の国際競争力が強い、さらにそこに重なりましてアメリカの財政金融政策に問題があってドルが高くなっている、それによって日本の、日本ばかりではありませんけれども日本のことで申しますと、日本の輸出産業はプラスアルファの競争力のハンディキャップをもらっている、こういうことで黒字がたまっているから、それが日本経済、一国の国民経済として黒字になっている、こういう見方もあるわけでございます。そうなってくると、外国から黒字を稼ぐから貯蓄過剰になっている、黒字を稼げなくなりますとそれが一国の国民経済として、対外的に見て貯蓄過剰というものは減っていく、こういう見方もできるわけでございますので、一義的に国内貯蓄過剰が黒字を生む、黒字を生んでトラブルを起こすよりは国内で投資をする、必ずしもそのロジックにならないものかもしれない、こう思います。  そういうことでいろいろ論争のあるところでもありますし、見方の分かれるところでもございますので、私なども経済企画庁の中で大いに議論をして、どこに真理があるのか、こういうことで検討しているところでございます。これまでのところでは国内に投資をすべきである、まさしくそのとおりだと思いますけれども、必ずしもそうも言えない見方もできるのではないか、こういうことで研究中ということでお答えを申し上げたいと思います。
  118. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私の論点は、結局フェルドシュタインも言っているのですけれども、日本の貯蓄は決して悪くない、これは要するにアメリカのためにも役立っていれば世界のためにも役立っているというような話なんでございまして、本当は日本の国内に投資機会が十分あって、そこでいろいろ設備も更新され、生産性の高い機械をつくっていくことが一番好ましいことでございますけれども、その投資機会がないものですから、ごっそりためたものは海外に流出してそれが向こうに使われる。その結果残っているポートフォリオというか、債権は、減価は少しはしてもちゃんと元が取れるからいいじゃないかということでございますけれども、それほどプラスになってない。じゃ結局我々の一生懸命たくさんためたお金はどうなっているのかというと、むしろ海外で使われて向こうの機械に化けている。こちらとしては利ざやを若干稼いでおるからいいけれども、元の原価と差し引きするとちょっとしかもうかっていないというような感じなのでございまして、やはり基本的にはもっともっと国内で使える投資機会が必要である、内需の拡大が必要であるということに私は最終的には結論づけられると思うのでございます。  その場合に、どうやったら内需が拡大できるのかという問題が一番大きな問題として残る。いろいろ減税の議論もあり、あるいは公共投資の議論もあり、あるいは投資減税の議論もあるわけです。私は、この中でどれがいいのかな。余り投資減税の話が出ません。もっとも投資減税も、うっかりやると税収がすごく上がらなくなるという可能性もあるという御心配もあるかと思いますけれども、たしかこの前の予算反対討論のときに私が言いましたように、今までの貯蓄優遇税制というものが結局は過去においてはよかった。それが投資の資金を供給し、それが循環して高成長になった。ところが低成長に移行したときに、要するに貯蓄ばかりがあって投資機会がない。むしろ投資優遇税制を考えるべきなんじゃないかというようなアイデアもあるわけでございます。  御承知のようにレーガン経済政策、これは我々当初すぐ失敗するだろうと思ったわけでございます。減税もする、投資減税もやる、減価償却期間をえらい縮めてしまう、これはもし閉鎖経済、クローズドエコノミーであればすぐ破綻してしまう。ところが海外からのすごい資金の流入によって何とかかんとか長い間続いている。我々昔の考えでいったのと大分感じが違う形でございます。結局そうしますと、アメリカのいわば内需拡大策に引きずられて我々の貯金が全部資本流出という格好で使われてしまう。最後にそれががたっと減価するというようなことになりかねない。  そうすると、内需拡大策として一体何がいいんだろうということが問題になるわけでございます。この点につきまして河本大臣はえらい減税のことをおっしゃるし、私も大蔵出身なものですからそれに慎重なんで、減税はどのくらいやれるのかなという心配もございます。ところが一番根本の経済企画庁の長官は一言もこの点についておっしゃらない。私はきょう経済企画庁の長官に来ていただいて、一体長官どういうお考えですかと、今ここで減税すべきなんですかあるいはどうしたらいいんですかということを目の前でお聞きしようと実は手ぐすね引いて待っていたわけでございますけれども、ほかの会合でどうしても来られないというお話でございますので、それできょうは局長が長官にかわって、これは長官の出てこられぬときは私はそれを念を押してあるわけでございまして、長官の意思はこうであるという長官の発言をあなたの口からお聞きしたい。いかがでございますか。
  119. 赤羽隆夫

    ○赤羽政府委員 お答え申し上げます。  経済企画庁の金子大臣は常々言っておられるわけでありますけれども、まず内需の拡大というのが基本である、これはそのとおり言っておられます。それからまた減税の問題についてどういうふうにおっしゃっておられるかと申しますと、減税は確かにしたい、しかし現在の財政の状況、こういうことを考えてみれば、おのずからその点については今早急に結論を出すわけにはいかぬ、こういう趣旨のことを私どもに言っておられまして、その上でおまえたちももう少し研究をせい、いろいろな組み合わせにつきまして今その研究を命ぜられているところでございますけれども、それにつきまして、減税についての結論というのを大臣にかわりまして私から申し上げる時期に来ていない、立場にもない、こういうふうに思います。
  120. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 そうすると、現在検討中だからまた答える段階ではないというのが企画庁長官のお考えでいらっしゃいますね。
  121. 赤羽隆夫

    ○赤羽政府委員 私自身そのように理解をしております。
  122. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 どうも経済責任者である長官がちょっとまだ態度がはっきりしないというのは非常に心もとないわけでございますけれども、じゃそれと関連いたしまして、これは大蔵省と企画庁の両方にお聞きしたいのですけれども、何が本当に内需拡大策としていいんだろうか。所得減税か投資減税か公共投資が。もっとも、一面において非常に財政が悪いことも重々承知しておりますから、私も何もここで何兆円の――民社党の同僚には怒られるかもしれませんけれども、本当にどの程度所得減税をやったらやれるのだろうか。公共事業あるいはまた投資減税、その三つを考えたときに、本当に基本的には内需をどうしても拡大しなければいけないなという気持ちはあるわけです。じゃないと、せっかくためたお金がみんな海外に出て、さっき言ったように、ちょっとはもうかるかもしれぬけれども、ろくにもうからない形で使われてしまう。現実問題として新しい設備ができるわけでもないし。さっきアメリカの産業が輸入品が多くて設備投資が減ってきたという、そんな話もございました。そういう面もあるかもしれませんけれども、いずれにしましても、向こうは世界から集めた金でもって、減価償却期間も非常に短縮して新鋭機械をつくれる状況になってきている。こっちは減価償却期間は非常に長い。  私は今償却期間について、耐用年数よりもむしろ効用年数という考えで機械は考えるべきじゃないかという感じがいたします。耐用というのは物理的な耐用ではなくて、いわばどれくらい効用があるのか、続くのかということで考えますと、いろいろな設備、機械は効用年数というのは非常に短いのではないか。現在考えているような耐用年数というのは非常に物理的であろう。経済の変動を考えたときに、いわばそれぞれの設備というのは効用年数ということで考えるべきじゃないか。そうなると当然短いことを考えるべきなんじゃないか。アメリカあたりでどんどん短縮して新しい機械に切りかえていく、それも我々の金を使ってやっていくという状況のもとに、我々がためた金が全部そっちへ使われてしまっていいのだろうか。やはり効用年数という考えでいくべきじゃないか。これはそのためにどのくらい減収になるかという問題がございますから、余り早急に結論を出すのはどうかと思いますけれども、投資減税が一つのアイデア、考え方じゃないかと思うのでございます。  所得減税、投資減税、公共事業、この三つ、それ以外に何か手があるのかな。特に投資減税についてどう考えるかなどいう御質問でございますけれども、この点はどちらでございますか。まあさっきの企画庁のお話だと、企画庁長官はまだ検討せいという程度の話で、全然それ以上のことは考えられていないようでございますので、ではひとつ大蔵省の方にちょっとお聞きいたしたいと思います。
  123. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 これは税制当局の見解ということでお受け取り願いたいわけでございますけれども、現在の局面で、税制面であるいは所得減税とか投資減税という政策選択を行うべき局面ではないという前提に立っておるわけでございますが、とりわけ御質問の投資減税のうち、委員がおっしゃいますいわゆる耐用年数の短縮の問題でございます。耐用年数というのは、釈迦に説法ではございますけれども、期間損益を的確に計算する、資産なり設備の使用期間に応じて適正に費用配分するということでございまして、そうであればこそこの耐用年数、税法上の耐用年数でございますけれども、これはそれぞれの機械、設備等の物理的寿命に経済的な陳腐化というものを加えまして、今おっしゃいました効用年数でございますか、当然そういった観点も含めて客観的に定められるべきものであるということでございます。  やや余談になりますけれども、英国がかつてかなり大胆なことをやっておりました。初年度一〇〇%償却をやっておりましたけれども、これは一九八四年に廃止いたしております。そのときの英国の大蔵大臣の提案理由の中に、こういう制度があると、かえって英国の企業家は生産性のない設備まで投資してしまうという弊害があるということを廃止の理由の一つに挙げております。つまり、資源配分をゆがめてしまうという問題であります。  それからアメリカのACRS、一九八二年に採用されたわけでございますけれども、これにも種々の意見がございます。ただ、私ども税制当局として客観的資料で分析してみますと、あの制度が導入されてから現実にアメリカのGNPに対する設備投資の割合が顕著にふえてまいりましたのは三年目以降です。ということは、この種のものの税制上のタイムラグとしてこれを考えるのではなくて、これはやはりアメリカ経済サイクルと密着しているわけでございますね。そういたしますと、こういった制度の効果そのものが疑問でもございますし、それから、何といっても経済原則を税制面でゆがめるというのは、長い目で見て資源配分上好ましくない、こういう政策はとるべきではないというふうに考えております。
  124. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 効用年数を短くしていくときにどのくらい減収になるかという心配もありますから、それはそう急にぽっと結論を出すわけにいかないと思います。しかし、いずれにいたしましても、資源配分をゆがめるとおっしゃいますけれども、現実の社会において現在の耐用年数だけ本当に機械が役に立つのかというと、必ずしも現在の耐用年数がその効用においてちょうどぴたり合っているとは言えないのじゃないか。さっきのイギリスがえらい甘いものをやって投資が非常におかしくなったというのは極端な例でございまして、それぞれその機械、業種によって効用年数というものはまた考えられるんじゃないか。それは決して経済行動をゆがめることにならないんじゃないかという感じがございます。またアメリカの場合に、タイムラグで出てきたのが果たして今の役に立たなかったのか立っているのか、これは判定が非常に難しいところでございます。  いずれにいたしましても、アメリカの成長の何らかの役に立っているんじゃないかな、しかも彼らがそのためにどんどんと新鋭機械をつくって生産性を上げてくるという話になってきますと、長期的に見て日本としてはまずいのじゃないかな、そういうことでございまして、これは少し検討の余地がある問題ではないかな。財政当局としてこれが極端な税収減になってしまうと困るという気持ちは私も十分わかるので、今すぐどうのこうのではございませんけれども、一つ考え方としてあるのではないかな。特に私が冒頭申しましたように、ためたお金がそっちへいってしまうというようなことを含めましてそう考えるのでございますけれども、大蔵大臣のお考えを、突然でございますけれどもお聞きしたいと思います。
  125. 竹下登

    竹下国務大臣 対外経済の諮問委員会の答申の中にございますのが内需振興のための税制上の配慮をしろ、それは消費、資産、貯蓄といって書いてありました。  税制ということになりますと、貯蓄に対する優遇税制の問題はとりあえず外すといたしまして、そうすると今おっしゃいます所得減税か投資減税か、こういうようなことになるのでございましょう。所得減税をその財源赤字公債でやるような時代じゃない。したがって、いま一つの投資減税ということになると、今の状況でハイテク等内需を中心として、いわば投資というのは結構高度経済長期ぐらいにいっているんじゃないか、とりわけ新たなる措置というのを行うタイミングには今ないじゃないか、こういう議論もございます。振り返ってみれば、六十年度税制においても、ごく限られた形で投資減税が行われた。それの手法について、いわば減価償却期間の短縮の問題、そうするとすぐ原則論として物理的な耐用年数に陳腐化を加味する。ただし、この技術革新の時代でございますから、陳腐化というものの度合いは進んでおるということは、私もそれはそれなりに理解できることでございます。  したがって、どういう組み合わせが一番いいのか。いみじくも経済企画庁長官がこの赤羽さんに、こういうことでみんな勉強してみると言われた、なるほどなというふうに思って私も感じ取っておるところであります。したがって、結局今政治的な背景としては、税調の抜本見直しと各党間の話し合い、そして今の対外経済諮問委員会からの答申と三つに囲まれて、どういう手続でどういう組み合わせがいいのかということをこれから整理していかなければならぬなというふうに考えております。  失礼いたしました。「内需中心持続的成長に役立つ税制の見直しが重要である。基本的には貯蓄・消費・投資のバランスを図る観点から検討を行う必要がある。」私が資産と言いましたが、これは間違いでございましたので、このことをつけ加えさせていただきます。
  126. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 質問時間をちょっと短くすることになっちゃったものですから、先に進ませていただきます。まだちょっと税制の関連でまたここへバックする可能性もございますけれども……。  財政再建のために考えるべきことは、まず歳出の抑制と歳入の増加ということでございますけれども、歳出の中で、だれもかれももろ手を挙げて賛成しながらどんどんふえていってしまう項目があるという気がするのでございます。その一つが対外援助でございます。この対外援助に対してクレームをつけるとすぐみんなから怒られる。当然じゃないかということを言われるのでございます。私は若干あまのじゃくなせいかもしれません。対外援助といってもやり方もあろうし、じゃ一体対外援助がどのくらい伸びてきているんだということを自分自身でも調べてはみるのでございますけれども、この前、非常に短い時間にODAの話を私はちょっとお聞きしました。それをもう一遍繰り返すのでございますけれども、現在のいわゆる対外援助がどのくらいの伸びで伸びているのか、現在どのくらいになっているのか、そしてそれは税金で賄われる部分はどのくらいなんだ。財投ということもあるようでございますけれども、その辺の御説明をひとつ外務省からお願いしたいと思います。時間が余りないですから簡単でいいです。
  127. 木幡昭七

    ○木幡説明員 お答え申し上げます。  いわゆるODAでございますが、予算面では、その大部分が税金で賄われる一般会計予算と、それ以外に財投、さらには出資国債等一般会計以外の財源をも加えた事業予算と二本立てがあるわけでございます。  そこで、その一般会計予算につきまして例示を申し上げます。昭和五十五年度の一般会計予算のODA分は三千五百十六億円でございます。これに対しまして昭和六十年度は一般会計のODA分が五千八百十億円というふうになっております。  さらにまた、いわゆるODA事業予算でございますが、これにつきましては、昭和五十五年度は八千四百二億円でございましたが、六十年度になりますと一兆二千五百四十七億円というふうになっております。
  128. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今その事業予算が一兆二千億でございますけれども、国債を交付するというような話の要素もあるようでございますと、ぎりぎりいったときに、これは税金分としてはどのくらいを考えるのですか。一般会計が五千八百億ですね。それで財投がちょっとあって、いろいろ加えて一兆二千億になるんでしょう。交付国債というような話もございますけれども、それも税金を化体したものとすれば、税金負担分はぎりぎりどのくらいになるのですか。
  129. 木幡昭七

    ○木幡説明員 私ども、このODAの予算を大蔵省とも御相談させていただいてつくります場合に、一般会計分とODA事業予算というふうに二本立てでございますので、税金分という形での分け方は実はしてない次第でございます。先ほど申し上げましたように、一般会計予算の部分につきましては、大部分が国民の税金で賄われている歳入によって計上願っている、こういうことでございます。
  130. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 事業予算というのも、財投を使われたり、それから交付国債ということでございますから、税金に準ずるものと考えてもいいんではないかと私は考えていますが、それが大体一兆二千億でございますね。それではこの伸びを指数で見ますと、五十五年度を一〇〇といたしますと、一般会計で一六五、事業予算で見ると一四九、約五割増しになっておるようでございます。これはちょっと意地悪い質問かもしれぬけれども、外務省の方、この間に一般会計予算がどのくらい伸びているか御存じですか。
  131. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 一般会計の数字ですのでこちらから申し上げますと、五十五年度を一〇〇といたしまして一二三%ということになっております。
  132. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私ちょっと意地悪い質問をしたのですけれども、それはいわゆる国債費とか地方交付税も含んでいる数字でございますから、それを除きますと一般会計の歳出一〇〇に対して一〇六でございます。まさに五年間横ばいであるわけでございますが、この間においてODA予算はそれぞれ六割、五割という伸びをしているわけでございます。  またちょっと意地悪い質問かもしれませんけれども、外務省の方一防衛予算が大体幾らか御存じですか。
  133. 木幡昭七

    ○木幡説明員 私、ODAの担当でございますものですから、間違えても申しわけございませんので、正確な数字は存じません。
  134. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私ちょっと意地悪い質問をしたのですけれども、役人をいじめるつもりはないのですよ。ただ、援助というとみんなもろ手を挙げて賛成してしまう。確かに援助も大切かもしれないけれども、これは我々の税金で賄われているということですよ。我々は補助金削減法案を審議して五千億の節約をした。実体的には三千億しかされてないが、これをやるのにも随分苦労をしているわけでございます。援助であればいいと物事を聖域的に考えては困るという気がするのでございますが、これとの関連で、今後数年のうちに対外援助費をどういうぐあいに持っていこうと思っているのか、それに対する外務省の御見解をお聞きしたいと思います。
  135. 木幡昭七

    ○木幡説明員 政府開発援助につきましては、我が国の果たす重要な国際責務であるという観点から、昭和六十年度一般会計予算におきましても、大変厳しい財政事情の中で、対前年度比一〇%増ということで御配慮をちょうだいしたわけでございます。明年度以降のODA予算につきましては、現時点ではもちろん確たることを申し上げられる段階ではございません。  私どもといたしましては、我が国がその経済規模にふさわしい国際責務を今後とも果たしていくために、六十一年度以降も新たなODAの目標設定について御審議願い、引き続きODAの着実な拡充に努めていく、こういう考えでいるところでございます。
  136. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 この間資料を提出してもらった中なんですけれども、一九八三年のODAでございますが、ディスバースメントベースで三十七億ドル、その他政府資金、OOF十九億ドル、こういうことでございますが、この内訳はどういうことになっていますか。
  137. 木幡昭七

    ○木幡説明員 八三年度のOOF、その他政府資金十九億五千四百万ドルの内訳でございますが、まず輸出信用が四億七千二百万ドルでございます。それから、直接投資が大変人きゅうございまして十四億四千百万ドルでございます。その他国際機関に対する融資等が四千万ドルほどございます。
  138. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私は前回の質問のときに、OOFで直接投資が相当あるんじゃないかなということを非常に考えたのでございます。これはほかの国に比べますと、ドイツ、イギリス、フランスは、我々の十九億に相当するものが六とか二とか五とかいう数字になっているわけです。というのは、いわゆるグラントでないと言いながら、その他政府資金がこれだけ使われておるということでございます。と申しますのは、さっきのODAが大体事業費が一兆二千億としますと、それ以外に五、六千億円の資金がやはり政府資金として出されている、全部足せば二兆くらいになるのではないか。これはグラントエレメントというか、グラントの要素が非常に少ないと言われれば確かにこのODAの中に入らないかもしれませんけれども、ほかの国と比べてべらぼうにこの数字が多い。これだけ直接、間接に政府資金が使われているということでございます。こうなりますと、これを足しますと、防衛予算じゃないけれども、それに近いくらいの数字になるのじゃないか。それがグラントではないということでこの中には入っていないかもしれませんけれども、日本は結構政府資金を使っているのじゃないかなという気がしてならないのでございます。  この点を考えますと、私は、この前の会議のときに、サラ金に追われながらお中元を持って回っているというようなことを言ったのでございますけれども、確かに海外に対する援助は大切かもしれない。しかし、それはそれなりに、我が国がこれだけ財政が悪いときに余り格好ばかりつける必要はないのじゃないか。これは民間資金でやるなら別だけれども、やはり日本はみんな税金で賄われているということでございまして、これからの五年間を考えるときに、ただただつき合いをよくするというのはいささか考えものではないかということで、一つの例として私はこの援助の問題を持ち出したわけでございます。この点につきまして、それはあなた御自身今ここで即答はできないと思います。外務省としては、大方針もございましょうから、それはちょっと即答はできないかもしれませんけれども、それについてのお考え、また、大蔵大臣のお考えもお聞きしたいと思います。
  139. 木幡昭七

    ○木幡説明員 とりあえず私の方から私どもの考えを申し述べさしていただきます。  このODA以外の資金がもう少し援助というふうに計上されるべきではないかという先生の御指摘、私どももその御指摘の点は大変よく理解できるところでございますが、実はこのODAの定義は、OECDのDACという開発援助委員会におきまして決まっておるわけでございます。まず、開発途上国に対する公的資金の流れであるということ、また開発途上国経済発展、福祉の向上を主たる目的とするものであること、また第三には、いわゆる緩和された条件であるグラントエレメントが二五%以上なければならない、こういうふうに決められているわけでございます。したがいまして、御指摘の点、私どもも理解できるところでございますが、こういう国際的な基準で決められていますために、これを日本だけで変えるということはなかなか困難であるということでございます。
  140. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに今御指摘がありましたように、ODAで見ますと、五十五年を一〇〇とすれば一六五・二、防衛費で見ますと一四〇・七、社会保障関係費で見ますと一一六・六、これは補助率が仮にもとどおりだったらもう少し多いでございましょう。公共事業費は九五・七、これも補助率が変わっておりますから、若干実体は違うと思います。そういうことでございますだけに、今日までも、ODAをいわば聖域だ、したがって初めから予算の査定には入らないというような考え方で臨んでおるわけではございません。  それから、私いつも思いますのは、日本の国会でもおおむね賛成をしていただいてこういう問題が通るというのは、一つは、かつて債務国であったことが国民全体によく認識されておるのではなかろうかという感じが率直にいつもいたすわけであります。あの新幹線も、東名高速も、製鉄所も、ダムも、あるいは愛知用水も、そういうものもみんな世銀の金を借りた。それが今や債権国になっておる。だから、国際社会の中で果たさなければならぬ役割というものを痛感しなければならぬ、こういう意識が一つあると思います。  それからもう一つ意識の底にありますのは、いずれにしても貿易立国である。そうすると、今日まあまあ日本並みの、おおむね一人当たりGNP平均一万ドル以上の国というのは二十三カ国で、人間にして七億人ぐらいしかおりませんし、日本の二十分の一以下が大体二十四億おるわけでございますから、やはり新しい購買力をつけていくということが日本の将来のためにも必要であろうというような認識が、人道上の問題のほかにまたあるから、議会等で許容されて今日来たではないかな、私はこんな感じを持っておりますが、新規目標が面積でまた倍になったりするような環境にあるというわけで申し上げたわけじゃございませんで、聖域なく対応すべき問題であるという問題意識は持っております。
  141. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今、国会あたりで余り問題とされてないというのは、そんなに大きく膨れ上がってきているなという感じがちょっとなかったのじゃないかな。しかもこれはOOF、アザー・オフィシャル・フローなんか含めますと、一兆二千億プラス何千億というと、二兆円までいかないにしてもそれに近くなる。そうすると、防衛費だけでも一%であれだけがみがみあれして、それで三兆というときに、余り大盤振る舞いし過ぎるのじゃないかな。  もう一度対外援助というものは、外部に対して格好ばかりじゃなくて、本当に日本のためになる――それは海外の評判も大事かもしれませんけれども、私実は先日、安全保障委員会のピンチヒッターで質問したのでございますが、そのときに、やはり対外援助というのは国の安全ということも考えてやれよということを言ったのでございます。防衛のかわりに、要するに防衛費のかわりに対外援助をして世界平和を守るということはいいんだけれども、やはり自分自身の安全ということも考えなければいけない。もちろんおつき合いもありましょうけれども、しかし、おつき合いもほどほどじゃないか。しかも我々は、現在、民間の資本を随分流し込んで、民間資金でもってやっている部分がある。むしろできるだけそういったものに肩がわりしてもらって、こんなに国の財政が悪いときはちょっと考えるべきじゃないかと私は考えるわけでございます。  これとの関連でちょっと、時間もないのですけれども、アフリカ援助が大分問題となっておりますので、アフリカ援助は大体どのくらいの額がなということと、食糧をどのくらい出しているのかなということ、もう一つは、民間がわあわあ毛布とか米とか送っていますけれども、どのくらいの額になっているか、ちょっと承りたい。
  142. 宮本吉範

    宮本説明員 とりあえず民間の援助の方だけお答え申し上げます。  我が国の国民におきましては、アフリカヘ毛布を送る運動を初めとしまして、各種募金活動あるいはボランティアの派遣等活発なアフリカ支援活動が行われておりまして、昨年当初からの民間のアフリカ援助総額は、毛布の供与を含めまして、判明分だけでも百二十億円に上っております。
  143. 木幡昭七

    ○木幡説明員 我が国のODAの中でアフリカに向けられている援助額は約一一・八%でございます。  この中で、昨年以降とりました援助措置を簡単に申し上げますと、八四年五月のOECD閣僚理事会におきまして、安倍大臣から、一億ドルを上回る食糧関係援助を実施するということを表明されまして、その意図表明を踏まえまして、その後一億一千五百万ドルの食糧関係援助の実施を既に行ったわけでございます。そのほか、この八五会計年度におきましても、食糧援助さらにはまた有償関係の援助等を含めまして相当の援助を行う、例えば二国間の贈与、これは食糧援助等を含むわけでございますが、これにつきましては八十億円増の六百億円を目指すということで努力しているところでございます。
  144. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私も、人道ということを大事にすることはいいと思いますが、いろいろ新聞報道でも言われておりますけれども、現実問題としては、全然本人というか、困っている連中に渡っていない。例えばエチオピアなんかの場合には、聞いてみますと、政府が反乱地域に対してはむしろ物を送るのを拒絶している、渡さない。それのみならず、途中の要するに運輸手段が全然ない。基本的には、政府の連中がもらって横流しして、それでもって外国から物を買っておるということまで言われているわけでございます。この点、どうやってそういうチェックをしているのか。本当にただ相手の政府に渡すだけか、あるいは民間の場合には国際機関に渡すだけかということでございます。その新聞報道がどの程度正しいかどうかはわかりませんよ。そんなことを言うとプレスに悪いかもしれないけれども、その辺本当にどういうぐあいになっているのか。あれだけ善意で集まったものが一体どうなっているんだ。しかも、我々が一億ドルの食糧援助をする、それがどうやって使われているかについて、ある程度発言権というか、監視しているのかなということが考えられるのでございますが、いかがでございますか。
  145. 木幡昭七

    ○木幡説明員 アフリカに対する援助につきましては、政府ベースの援助と民間のボランティア活動の一環としての援助と二つあるわけでございます。  私どもの担当しております政府ベースの援助につきましては、例えば二国間の食糧援助の実施に当たりましては、我が方としましては、この援助が当然適正に使用されることを確保するために、ちゃんと約束を取りつけるわけでございます。そしてまた、当該食糧の再輸出などはしてはいけない、あるいはその食糧は援助を受け取る国の経済の安定及び開発に本当に有効に寄与するように、受け取った国の政府当局としては確保するという義務を課しているわけでございます。  もちろん実際に細かい分配の先まで、先方政府のやることでございますので、私どもそこまで立ち入るわけにはいかないわけでございますけれども、供与後の先方の配布状況等については、先方当局と常時コンタクトをいたしまして、できるだけ正確な情報を提供してもらい、我が方としても把握するという努力をしているところでございます。
  146. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 実は私ども、去年になりますか、南アフリカ連邦から呼ばれて議員団が何人か行ったわけでございます。民社党が行くというと、ちょっとアパルトヘイト問題かということも言われかねないのでございますけれども、そのときに向こうのボタ外務大臣と会うたときに、二つのことを言われました。一つは、アパルトヘイトが悪いと言われるけれども、ゲームで最後に物を言うのはスコアボードだ。結局、南アフリカは一つも黒人が逃げていかなくて、むしろ入ってくるじゃないか。私はアパルトヘイトを弁護しているのでも何でもないけれども。もう一つは、新しく新興国になった国が一つ一つ自己分解していく、破産していくではないかということを言っておりました。その意味は、内乱が起こる、結局耕土が、土地が荒廃する、アフリカの飢饉は天災でなくていわば人災だというようなことを言っているわけでございます。  その言葉が本当かどうかという問題はございますけれども、アフリカに対する援助というのは、むしろ社会をどうつくるかというテクニカルノーハウの問題ではないか。そういったのを全然度外視してただただ援助と言うのはおかしいのじゃないか。それぞれの国がそれぞれの国でございますから、内政干渉はできないにしても、本当に自助努力をする国に対して援助するという形でないと、要するにざるに水を流し込むようなものじゃないか。もちろん私は人道問題を度外視するわけじゃないですけれども、ただこの一つ一つがおれの税金であるということを本当に考えていただきたい。  この点、今後の対外援助のときに、特にアフリカ援助の場合には、むしろそういう社会そのもののいわば人災を招かないような指導というか、要するに、せっかく援助するならば、その国にちゃんと輸送手段もあるいは農地の開発も、そういう基本的な指導というか援助というか、それがない限りまさに意味のない援助になるのじゃないか。むしろ表面的にいいばかりであって、決して実体的に向こうのためにならないという気がするのでございますけれども、外務省の御答弁を……。
  147. 木幡昭七

    ○木幡説明員 アフリカ援助を進めるに当たって、当事国の自助努力を十分促進するような形で進めるべしという先生の御指摘、おっしゃるとおりでございます。私どもも、一般に開発途上国に対する援助を推し進めるに当たりましては、自助努力を前提として、それを支援する形で進めるのが一番いいということで対処しているわけでございます。  なかんずく、アフリカ諸国につきましては、大変深刻な食糧危機でございますけれども、食糧を一時的に緊急援助をするというだけでは本当に将来の展望は開けてこないわけでございますので、これは農業調査団、安倍大臣自身エチオピアも御訪問なすっておられますし、また先般中野調査団等にも行っていただきまして、そういう成果、報告を踏まえまして、私どもとしましては緊急の食糧援助のみでなく、食糧農業関係の援助あるいは経済社会基盤整備のための援助等、中長期的な観点からの援助をこれからもやっていかなければならない、このように考えているところでございます。
  148. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 援助の問題はこの辺で打ち切りたいと思いますけれども、いずれにいたしましても、どうも援助というとみんなもろ手を挙げて賛成だというのはそろそろやめにしないと困るよ。これはやはりそれぞれの中身をよく見るということと、それとともに、これだけの相当の額になってきているということをよく認識すべきなのではないかなと私は考えるのでございます。  話は少し飛びますけれども、それではこれはちょっと答弁は簡単にしていただきたいのですけれども、私はたしかこの前の大蔵委員会でも、あるいは衆議院の討論でも、地方税が非常に偏在している、例えば東京あたりは人口が九%近くなのに地方税は一七%入っている、法人住民税においては二五%も入っておるというようなことを指摘いたしまして、考えてくださいというようなことを言って、たまたまこの前の四月十七日の新聞に、都など「富裕自治体から”逆交付税”」なんというようなことが出ておりましたが、これは「大蔵省検討」なんて書いてございましたので、本当にやるのかな。もっともこれは地方自治という基本問題と非常に絡まりますから、そう簡単にいかないかもしれませんけれども、ただ、余り一地方に財源が偏在する地方税は見直すべきだという私の議論がある程度取り上げられたかと喜んだのでございますけれども、この新聞報道について、本当にそういう御検討を始められたのかどうか、ちょっとお聞きしたいと思います。
  149. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 この地方税の偏在、地方財源の偏在と申していいかと思いますが、そのための制度としては、現在地方交付税制度があるわけでございます。そういう中で、この制度そのものを今後どう考えていくかという点は、長い意味での問題としてはあるかと思いますけれども、いずれにしてもそういう問題を考えていきます場合には、やはり税源配分の問題あるいは国と地方の事務のあり方、そういうものすべてがかかわってくるわけでございまして、これだけを取り上げて検討するというのはいかがかというふうに考えているわけでございます。  そこで、新聞にこういうことが報道されたということは、我々として見てはおりますが、実際問題として、こういう問題を省内で検討しているということはございません。
  150. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私どもも、事務の再配分と絡めて税源の再配分を考えるべきであるということを常々主張しているわけでございまして、何もこれだけを切り離してぽんと動かすわけにはいかないということは重々承知しておりますけれども、私は、本当に腰を据えて事務の再配分、税源の再配分という形で地方の行革を進めていただきたいと思うのでございます。  これが大体歳出面においてどうするかという問題でございますが、歳入面において、さっきちょっと話題になったのでございますけれども、日本の内需が伸びないという一つ原因は、私はこの間予算の反対演説でも言いましたし、正森委員指摘されたのでございますけれども、私も前からそう考えていたもので三月もそういったことを言ったのですが、結局は十兆円も利子を支払う状況になってくる、みんなに税を課しては利払いする。ここに私が言った言葉をそのまま引用しますと、こういうことですね。  低成長に移行し、国内における投資需要の低下にかかわらず、高い率の貯蓄が行われております。これが一面国内での国債消化を可能としたのでありますが、現在のように年十兆円に及ぶ国債利子の支払いが行われるような状況のもとに、依然として利子所得等資産所得に対して必要以上の優遇措置が行われる結果、国民一般から税金の形で吸い上げられた所得が国債などの金融資産所有者に移転し、所得格差が次第に増大していくというメカニズムを生んでいるのであります。言いかえまするならば、国債の利払いあるいは償還のために増税を絶えず繰り返していっても、利子所得、資産所得への適正な課税が行われなければ際限がないことになるのであります。また、投資促進等の政策を伴わない貯蓄優遇型の税制は内需停滞の一因となり、また、国際間の資金交流が自由になった現在では、蓄積された資金が国内投資に向けられるよりも、金利差を追って海外に流出する結果になっているのであります。  これはさっきの私の議論と同じなんでございますけれども、結局は、内需が停滞している、貯蓄が多いということは、膨大な国債の存在、みんなから税金を集めては利払いしている。その利子をもらった者がそれをなかなか消費に向けない、金持ちの方に行くわけでございますから、要するにそれだけ消費性向は下がってしまう。内需の大きくならないという原因は、そういった所得格差の増大、そしてそれが一般の所得にならないでそういう資産所得になってしまう、それが内需停滞の一因ではないかと私は考えているのでございますけれども、この点企画庁、どういうぐあいに考えていらっしゃいますか。
  151. 赤羽隆夫

    ○赤羽政府委員 歳出面におきまして十兆円余りの利払いが行われている。他方、それに近いくらいの公債が発行されておる。公債を発行することによって政府部門、財政部門に民間部門、特に家計部門から銀行などを経由いたしまして貯蓄を供給しているということでありますけれども、それがまた利払いとして戻ってくる。アメリカなどのお話を聞きますと、先ほど先生も御引用になりましたフェルドシュタインからの話を聞きましたけれども、アメリカなんかの場合には利払いで払われた所得、利子所得というのはかなりたくさん消費に回ってしまう、こういうふうなことを言っておりましたが、私どもの感じでは、日本の場合にはむしろ貯蓄に回って消費されないものが多いのではないか。こういうことになりますと、民間、特に家計部門からの貯蓄を借りて事業をしたように見えながら、他方、歳出面において十兆円くらいの利払いがあるということは、再び貯蓄の方へ戻している。こういうことで、部門別の貯蓄バランスの偏在というものを解消していない、こういったような見方もできるだろう、こういうふうに思います。  今先生の御指摘がそういう問題意識であるといたしますと、私どももそういう可能性はあるのかなということを考えて、もう少しそのあたりを研究してみたい、こういうことで、私ども庁内におきましてもそういう議論もしているところでございます。
  152. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私が正森委員意見が一致しているというのは、私もたまたま前に国債の所有者別内訳がどうかということを調べてみて、結局所得格差がふえていくんじゃないかという、まさにその点が意見が一致したわけでございますけれども、この点、幾ら増税を繰り返しても、そういう資産所得に対する課税が十分行われないと切りがない。しかも、内需は伸びないという悪循環じゃないかな。日本貯蓄率が高いというのは、何もみんなが使わないで貯金しているということだけじゃなくて、要するに金が一部の持っている連中に集まらざるを得ない形になっちゃって、それか消費に回らないという構造的な要因があるのじゃないかと考えているのでございます。  でございますから、それとの関連でいわゆる資産所得に対する課税、今度大分マル優についての厳しい措置が始まったので、私はいいことだと思っておりますけれども、利子所得の分離課税が果たしていいのかどうか、あるいは配当などもどうなんだろうか。その辺について、要するにこれからの資産所得課税についての考えをお聞きしたいと思います。     〔熊川委員長代理退席、委員長着席〕
  153. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 お尋ねは、資産所得課税、なかんずく利子・配当課税の問題を御指摘になったかと思うわけでございますが、これはことしの税制改正で非課税貯蓄それから課税貯蓄双方につきまして、従来よりも一歩前進という形での御提案を申し上げ、法律を通していただいたわけでございまして、私どもといたしましては当面この措置での実効を見きわめる立場にございます。  ただ、税制調査会の中での議論ではいろいろな議論がございます。非課税貯蓄制度につきましても、税制調査会の答申では、これは優遇税制ではございますけれども、一般の源泉徴収税率よりも低い低率で課税してはどうかというふうな結論もいただいておりますし、それから課税貯蓄についても種々議論があるわけでございますけれども、現行の源泉分離選択課税というのは、利子・配当所得の特異性とかあるいは金融市場に対する中立性という観点から見ると、現状においてはやむを得ない、あるいはそれなりに評価ができるということで、引き続き存置をさせていただくということで今回の法律を通していただいたわけでございます。  ただ、中長期の利子・配当課税のあり方ということになりますと、これは当然所得課税の中で非常に大きな分野を占める問題でございますので、近い将来検討が始められるであろう税制の抜本的見直しの中でそれがどちらの方向へ行くかということは、もちろん税制調査会等の御議論をまたなければならないわけでございますけれども、あるいは改めて御議論の対象になる問題であろうかと私ども考えております。
  154. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 それから、いわゆる中小企業者の承継税制という問題を我が党が取り上げまして、一応それなりの一つの姿ができたことは大いに評価するわけでございますが、私ども地元を回りますと、私どものところは非常に中小企業が多いのでございますが、子供には要するに事業を継続できない、結局は今までのものをやめざるを得ないというような話が出てくる。これは簡単に申しますと、ちょうど戦後引き揚げてきて、あるいは仕事を始めた人が、そろそろ世代交代をしようという時期に来ているわけでございまして、その間、土地なんかがべらぼうに上がってきちゃっているわけでございますから、それがそのまま評価されてしまうとどうしても納め切れない。それで仕事をやめましょうということで、我々としては中小企業者の承継税制をしていただいたことを高く評価するわけでございますけれども、この相続税――外務省の方、もう帰られちゃったですかな。要するに相続税の税収全体で一兆円でございます。ということは、さっきのいわば対外援助の事業費と似たような金額、我が国の相続税は高いということで有名でございますけれども、トータルで一兆円、それが結局援助に回っていると見ても悪くはないのでございます。  相続税というのは平等という問題で大事なんでございますけれども、逆に言いますると、資産所得というものをぴしゃっと捕捉できる状況になれば、相続税を一遍に納めるのかあるいはならして納めるのかという差でございますので、資産所得をきちっとつかまえてそれにちゃんと税を課するということが行われるならば、相続税というものをある程度考えてもいいのじゃないかという考え方もあるわけでございます。この点ちょっと、中小企業者の承継税制についての御説明はある程度担当から聞いておりますが、これ以上というのができるのかできないのかという問題があるので、これは我々としてはもっともっとやっていただきたいのでございますけれども、それは将来の問題といたしまして、資産所得の課税強化の反面としてそういったことが考えられるのかどうかということをお聞きしたいと思います。
  155. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 資産所得課税と相続税の関係をどう考えるかということでございますけれども、非常に形式張った議論をさせていただきますと、相続税というのは、富の集中を排除するという機能と、もう一つは所得税の補完税ということで生涯の所得税を清算するというふうな考え方でおおむね説明されておるわけでございます。一方、資産所得の課税というのは、年々のフローの所得に対してどう課税するかということでございますから、理屈としては資産所得の課税方式と相続税の体系の議論というのは、一応別個に切り離して考えるべき問題であろうかと考えております。  ただ、先ほども申し上げましたように、相続税も含めまして税制全般についての見直しを行うという局面に来ておりますので、今後のいろんな議論につきまして、税制当局としては議論の推移を現時点においては見守っていきたいということでございます。
  156. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 相続税が生涯所得の清算ということはわかるのでございますけれども、現実問題として今一番問題となっているのは、土地などがぐっと上がってきてしまって、そのために、自分の稼いだというよりは地価の上昇に伴う問題が起こっているわけでございます。その面では、逆にそれを処分するときに完全に課するということであれば、別に事業をやめなくてもいいんだということでございまして、生涯所得ということについて、日本の現実問題としては、確かに地価の上昇も生涯所得かもしれませんけれども、任意で自分の土地を売る場合と、相続によって事業を継承してやむを得ず売らざるを得ない場合と、ちょっと状況が違うのじゃないかと思うのです。この点余り論議すると長い話になりますので、将来どうお考えになるか、この辺は大蔵大臣に聞くのもあれでございますけれども、資産所得に対する課税の方向、それを含めた相続税というごとで、ちょっと大臣、もしよろしければどういう姿勢でおられるか。
  157. 竹下登

    竹下国務大臣 いつの場合におきましても、いわゆる「所得、資産、消費、」この三つのうちに着目する税制の改革という言葉が、今度の答申にも、六十年度税制改正の場合の見直しの対象として出ております。  資産所得というのは、御案内のように、今たまたま例示として貯蓄優遇税制の問題についての御議論があっておりましたが、この間の閣議でやっと政令を決めて、いわば限度管理をやっていこう、こういうことを踏み出したばかりでございますけれども、しかし、あくまでも引き続き検討すべき課題であるという問題意識は、税調の流れの中にもずっと継続しておるというふうに考えております。  それから相続税の問題というのは、中小企業承継税制の問題、これはある程度の解決を見ましたけれども、まだまだいろいろな問題点を残しておりますが、やはり先ほど来の議論のように、日本の相続税というのは、私流に言えば、いつも西郷南洲の「児孫のために美田を買わず」、大体こういう思想が徹底しているのじゃないか、それはある意味においてはいいことじゃないかという認識も持っております。
  158. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私が提示した例は、特に自分で企業、中小企業を経営しているような場合には、事業をやめなくては困るというような状況になると、そこに働いている人間も困るので、美田を子孫に残すというよりは、彼らの働き口というか、それを浅さざるを得ないということもございますので、この点は将来の検討課題として考えていただきたいと思います。  それと、今度の法案に関連した質問でございますが、今度の法案で短期国債を出す話がございますが、それが今度の金利自由化とどのように関連するのかなという質問をひとつさしていただきたいと思います。
  159. 大橋宗夫

    ○大橋政府委員 お答え申し上げます。  金利自由化との関連が一番大きいかと思うのでございますけれども、金利自由化につきましては、昨年五月の円ドル委員会報告書で大口預金金利規制の緩和及び撤廃を二、三年以内に図るよう努めるということを申しております。目下CDの発行条件の弾力化、MMCの導入等を図ってきているところでございます。  短期の借換債、短期国債の発行が金利自由化金融市場等へ与える影響ということになりますと、その発行量、期間、最低発行単位、発行形態等によって異なってくるものと考えられるわけでございます。このような短期国債の具体的な細目につきましては、法案の成立後、金利自由化の進展状況を踏まえながら、既存の金融商品との競合や資金シフト等金融資本市場に及ぼす影響に配慮しながら、また、関係方面の意見も十分聞きながら決定することとしておるわけでございます。したがいまして、短期の借換債の発行が金利自由化の秩序ある進展をゆがめるというような悪影響を及ぼすことはないものと考えておりますけれども、短期の自由金利商品が一つふえるという意味では金利自由化を進める要因になるというふうに考えております。
  160. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 この問題もずっと突っ込んでいろいろお聞きしたいのですけれども、何か時間を早目に切り上げてくれというお話でございますので、あと一つ二つでやめますから、まだちょっと言わしてください。  幾つもあるのでございますけれども、一つ念を押したいことは、今度の法案に関連しまして、電電と専売の株については慎重に取り扱っていただきたい、これがいささかも疑惑を生じないように。きのう正森委員が、最初小さな単位でやってみたらどうかという提案もしましたけれども、これも一つ見方かと思います。これを非常に注意してやっていただきたいということが第一でございます。  第二は、今回の貿易摩擦、私は、大分しつこく木材について、いわば補助金を出してまで関税引き下げをやるなよと言いましたけれども、たまたまフェルドシュタインのやつを見ますと、なかなかおもしろいことが書いてありまして、結局「「日本製品を全部締め出せ」と本気で言う米国人は今日では少なくなった。もしそのようなことがいまでも言われているとすれば、それはあくまで日本市場開放を実現するための一つのテクニックとして使われているにすぎない」ということを言っているのです。もう一つは、「現在の日米貿易摩擦日本市場の開放度をめぐるものであって、全体的な不均衡をめぐってのものではない。最近の中曽根首相による「もっと外国製品を買いましょう」との日本消費者への呼びかけは、チョット的はずれだと言わざるを得ない。」というようなことをフェルドシュタインは言っているのでございまして、なかなかアメリカの有識者は見るところは見ているなどいう気がいたします。  これから木材といっても、関税とかいろいろな問題が起こると思いますけれども、私ども一時的なあれではなくて、アメリカにも良識はあるんだ、補助金を出してまでも関税を下げるということは問題ですよ、だから補助金を出さないでも済むようなものについてはやりましょう。それが一つの刺激になって競争力を強めるでしょう。しかし、どうしても補助金を出さざるを得ないような産業については、やはり頑張るべきところは頑張る。ここのいわば貿易摩擦の本当の原因は、彼もいみじくも指摘しているように、ドル高であるということを言っています。やはり学者はちゃんと正論を吐くなど私は考えております。  こういったことで、これからの市場開放につきましても、私はこれまで何回も繰り返しましたように、主張すべきことは主張していただきたいと思います。これで最後に大臣の御決意をお伺いして、私の質問を終わります。
  161. 竹下登

    竹下国務大臣 たまたま例示としてはいわゆるフォレストプロダクツ、まあ木材問題についての例示でございましたが、この問題は三年目にはきちんと下げる、そして国内対策等々は五年計画を立ててやっていこう。それはただその産業そのものに対する対策というよりも、恐らく今農林水産省で基本的に議論しておられるのは、森林のあり方そのものに対する問題という受けとめ方であろうというふうに考えます。で、御主張の趣旨のように、これはフェルドシュタインさん、前経済諮問委員会の委員長でございますから、なかなかいいことを言って的を射た評をしていらっしゃるということは、かねがね私どもも認識を等しくしておるところであります。
  162. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 株の話なんかは、慎重に……。
  163. 竹下登

    竹下国務大臣 電電株の問題は、慎重の上にも慎重に、また慎重にこれはやらなければならぬと思っております。
  164. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 終わります。      ――――◇―――――
  165. 越智伊平

    越智委員長 米州投資公社への加盟に伴う措置に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。沢田広君。
  166. 沢田広

    ○沢田委員 米州投資公社への加盟に伴う措置に関する法律案について、六項目でありますが、まとめて質問いたしますので、お答えをいただきたいと思います。  一つは、武器輸出三原則が昭和四十二年四月の決算委員会の中で言明されておりますが、それに抵触する企業についての貸し付けは行わないということをイエス、ノーでお答えいただきたい。  それから二つ目は、貸し付けは平和産業を原則とし、監視機能を充実すること。  それから三番目は、ラテンアメリカとASEANとの経済能力の相違も理解し、均衡を失しないように配慮すること。  四番目は、この法律の適用に当たって、貿易摩擦拡大や累積債務の償還に効果を生かし得るよう注意すること。  貸し付けの性格的あるいは種類別の実態とその経済効果の有無について、必要な報告が行い得るように配慮すること。  今回の法律は、各国が進んで協定に参加する態勢に問題があったとも言われておりますので、その点について留意すること。  以上、六点についてまとめて、それぞれの分野においてお答えをいただきたい。  以上であります。
  167. 行天豊雄

    行天政府委員 我が国の本公社への加盟をお認めいただき、本公社が発足いたしました暁には、ただいま委員指摘の趣旨を踏まえまして、当公社が中南米諸国の平和産業の育成に寄与し、民生の安定に資するとともに、同地域の経済発展を通じまして累積債務問題の解消にも資するよう、我が国といたしましては積極的にその発言力を行使してまいる所存でございます。  また、本公社の活動状況につきましては、必要に応じ適宜御報告できるよう配慮してまいりたいと存じております。
  168. 木幡昭七

    ○木幡説明員 私どもの省に関連した点の御質問に対してお答えいたします。  第一点の武器輸出三原則との関連でございます。この武器輸出に関する三原則につきましては、我が国の政策である重要な方針ということで、政府としてはかねてからこの方針を堅持してきたところでございます。  この公社との関連で申し上げますと、公社に加盟した場合には、公社の業務が同公社設立の目的である米州域内開発途上加盟国の経済開発を促進するものとなるように政府としては十分努力いたしまして、平和国家としての我が国の基本的な理念を踏まえて行動する所存でございます。  それから最後の点、今回の法律は必ずしも各国が進んで協定に参加する態勢になかったというような御指摘もございますが、これは進んで参加するという文言についての解釈等はございましょうが、付表等において若干の国が自分の考えを述べている、この点について将来問題がある場合には、その点を踏まえてまた理事会等で御審議いただくということになるわけでございましょうが、そういう点について私どもとしても十分配慮してまいりたいと思っております。
  169. 竹下登

    竹下国務大臣 先ほど来二人の政府委員から御答弁申し上げましたように、あくまでも中南米諸国の平和産業の育成発展に寄与して、民生安定に資する、そして、同地域の経済発展を通じて累積債務問題の解消に資する、そういうことで我が国としては積極的に発言権を行使してまいる所存であります。これは出資額からするところの発言権、さらに親金融機関の理事がどうも兼務するようになるようでございますので、そういう発言の機会は十分保てるのではなかろうかというふうに確信をいたしております。
  170. 沢田広

    ○沢田委員 以上で質問を終わります。
  171. 越智伊平

    越智委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  172. 越智伊平

    越智委員長 討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  米州投資公社への加盟に伴う措置に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  173. 越智伊平

    越智委員長 起立多数。よって、本案は可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  174. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  175. 越智伊平

    越智委員長 次回は、来る二十八日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十八分散会