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1985-04-16 第102回国会 衆議院 大蔵委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年四月十六日(火曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 越智 伊平君    理事 熊谷  弘君 理事 熊川 次男君    理事 中川 秀直君 理事 堀之内久男君    理事 上田 卓三君 理事 沢田  広君    理事 坂口  力君       糸山英太郎君    大島 理森君       金子原二郎君    瓦   力君       笹山 登生君    田中 秀征君       中川 昭一君    東   力君       平沼 赳夫君    藤井 勝志君       山崎武三郎君    山中 貞則君       伊藤  茂君    川崎 寛治君       渋沢 利久君    戸田 菊雄君       武藤 山治君    石田幸四郎君       古川 雅司君    宮地 正介君       矢追 秀彦君    安倍 基雄君       玉置 一弥君    正森 成二君       簑輪 幸代君  出席国務大臣        大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員        法務大臣官房長 岡村 泰孝君        法務大臣官房会        計課長     清水  湛君        法務大臣官房審        議官      稲葉 威雄君        外務省経済局次        長       恩田  宗君        大蔵政務次官  中村正三郎君        大蔵大臣官房総        務審議官    北村 恭二君        大蔵省主計局次        長       平澤 貞昭君        大蔵省理財局長 宮本 保孝君        大蔵省理財局次        長       中田 一男君        大蔵省証券局長 岸田 俊輔君        大蔵省銀行局長 吉田 正輝君        大蔵省国際金融        局長      行天 豊雄君 委員外出席者        厚生省薬務局経        済課長     大西 孝夫君        林野庁業務部長 江藤 素彦君        通商産業省産業        政策局産業資金        課長      坂本 吉弘君        会計検査院事務        総局第五局審議        官       吉田 知徳君        日本開発銀行総        裁       吉瀬 維哉君        日本輸出入銀行        総裁      大倉 真隆君        参  考  人        (住宅都市整        備公団理事)  救仁郷 斉君        大蔵委員会調査        室長      矢島錦一郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  日本開発銀行法の一部を改正する法律案内閣  提出第六五号)  日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案(内  閣提出第六六号)  登記特別会計法案内閣提出第六七号)      ————◇—————
  2. 越智伊平

    越智委員長 これより会議を開きます。  日本開発銀行法の一部を改正する法律案日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案及び登記特別会計法案の各案を議題といたします。  まず、政府より順次趣旨説明を聴取いたします。竹下大蔵大臣。      ————◇—————  日本開発銀行法の一部を改正する法律案  日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案  登記特別会計法案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいま議題となりました日本開発銀行法の一部を改正する法律案日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案及び登記特別会計法案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  最初に、日本開発銀行法の一部を改正する法律案及び日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  金融自由化の進展、厳しい財政事情民間活力活用要請等政策ニーズ変化など、政府関係金融機関をめぐる環境変化に対応して、日本開発銀行及び日本輸出入銀行についても量的補完から質的補完への転換を図り、経済社会の新しいニーズにこたえ得るようその機能の整備を行うこととし、ここに日本開発銀行法の一部を改正する法律案及び日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案提出した次第であります。  まず、日本開発銀行法の一部を改正する法律案内容につきまして、御説明申し上げます。  第一に、産業構造知識集約化情報化に伴って、技術開発国民経済的重要性が増大していることにかんがみ、産業開発及び経済社会発展に寄与する、高度で新しい技術研究開発等に必要な資金貸し付けることができることといたしております。  第二に、技術開発都市開発促進等国民経済的に緊要な課題に対応するため、高度で新しい技術研究開発等産業開発及び経済社会発展に寄与する事業で、政令で定めるものに対し、出資できることといたしております。  第三に、財政事情が近年特に厳しさを加えてきた状況にもかんがみ、日本開発銀行の長期的な財務基盤を損なわない範囲内で財政協力を行うこととし、法定準備金積立率を千分の七から千分の三に引き下げ、国庫納付金の増額を図ることとするほか、所要規定整備を行うことといたしております。  次に、日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案内容につきまして、御説明申し上げます。  第一に、海外直接投資の円滑化を図る観点から、本邦法人等の出資に係る外国法人に対する貸し付け等ができることといたしております。  第二に、民間資金活用による対外経済交流促進を図る観点から、民間金融機関のみが行う海外直接貸し付けの場合、すなわち、輸銀協融以外の場合等においても、日本輸出入銀行が債務の保証を行うことができることといたしております。第三に、日本開発銀行法改正案と同様の観点から、日本輸出入銀行法定準備金積立率を千分の七から千分の三に引き下げることとするほか、所要規定整備を行うことといたしております。  次に、登記特別会計法案につきまして御説明申し上げます。  登記申請登記簿謄抄本交付申請等の逐年の増加に対処するため、早急にコンピューター化を図るなど、その処理体制について抜本的な改革を講ずることが必要となっております。このため、登記所に係る事務の遂行に資するとともに、その経理を明確にするため、特別会計を設置し、これを一般会計と区分して経理することが適当と認め、この法律案提案することといたした次第であります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  まず、この特別会計は、登記所に係る事務に関する経理を行うことを目的とし、法務大臣が管理することとしております。  次に、この特別会計は、郵政事業特別会計からの登記印紙に係る受入金その他の収入をもってその歳入とし、事務取扱費その他の諸費をもってその歳出とすることとしております。  その他、この特別会計予算及び決算の作成及び提出に関し必要な事項を初め、一般会計からの繰り入れ剰余金繰り入れ、借入金の借り入れ等の必要な事項を定めることとしております。  以上が、日本開発銀行法の一部を改正する法律案日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案及び登記特別会計法案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 越智伊平

    越智委員長 以上で趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 越智伊平

    越智委員長 この際、お諮りいたします。  ただいま議題となっております各案について、本日、参考人として住宅都市整備公団理事救仁郷斉君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  7. 越智伊平

    越智委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渋沢利久君。
  8. 渋沢利久

    渋沢委員 この法案の中にもあるわけですけれども、言ってみれば国の財政窮迫の折から、御用金に似た御負担をちょうだいしようというようなものも盛り込まれておるわけですけれども、専売、電電が公社時代にもさまざまな形で調達を受ける、あるいは先般この委員会審議に当たりました一括補助率の切り下げというような中にも明らかなように、生活保護費にまで財政危機ということを理由にして手をつけるというような、まことに窮迫した状況の中で大蔵省は対応しているのです。しかし一方では、例えば最近言われておるところの国有財産への民間活力導入などというにしきの御旗で、本当の意味内需振興とかあるいは民間総体活力を引き出すというようなこととはおよそ無縁ではなかろうかと思われる、本当にわずかな一握りの民間開発デベロッパーとタイアップした形での国有地払い下げなどが、中曽根首相のお声がかり民間活力導入の旗印のもとに行われているようなムードがあります。  私はそういう意味で、一方では生活保護費にまで手をつけるこの大蔵省が、国有財産法が明らかにしているように、国有財産に対する大蔵省の大きな責任という中で、国有財産の取り扱いについていささか安易に走る傾向があるのではないかという危惧が実はございまして、この法案の具体的な中身に触れます前に、私はその点について若干のお尋ねをしておきたいというふうに思うわけであります。時間が少のうございますので、端的にお尋ねをしてまいりますので、ひとつ誠意のある御答弁を願いたいと思います。     〔委員長退席堀之内委員長代理着席〕  まず最初に、先般参議院予算委員会社会党安恒議員より指摘がありまして、大蔵大臣予算委員会において約束をいたしました。百人町三丁目国家公務員宿舎用地A地区新宿住宅地)及びB地区西戸山住宅地開発に伴う環境影響調査については、関東財務局の名において一定の書面をもって関係住民にこの真意を明らかにするという措置を、約束のとおりとられておるというふうに思うわけであります。その中身は、  新宿区の要請に基づき、東京環境影響評価条例に準じて、大蔵省関東財務局及び新宿西戸開発株式会社がそれぞれ行ったものですが、本調査は、その内容がA・B両地区における開発による複合的環境影響についてのものが大部分でありましたので、連名による報告書にいたしました。しかし連名にしたことにより、新宿西戸開発株式会社事業施行者として決まっているかのごとき誤解が生じるとの指摘もあり、単名にした方がベターであったと考えます。   新宿西戸開発株式会社は、現時点では、都市計画事業を施行する認可を受けているわけではありません。   また、新宿西戸開発株式会社都市計画事業として企画している事業は、大蔵省関東財務局との共同事業として行われるものではありません。 こういう趣旨のものであろうかと思うのであります。  これは言うまでもなく関係住民のすべてに周知徹底を図られるという措置を含んで、文書によって徹底されることと思いますが、これはいつ、どのように行われたのか、まず最初お尋ねしておきます。
  9. 中田一男

    中田政府委員 お答えいたします。  渋沢委員が今お読み上げの文書を、きのう安恒委員のところへ行って御相談してまいりました。これを地元の町会長のところへ持っていきまして事情を話をして、周知徹底する方法について御相談の上、おっしゃるとおりやらせていただきたいと存じております。
  10. 渋沢利久

    渋沢委員 先ほども言いますように、国有地払い下げというような作業をめぐって、参議院でも指摘されたように実に安易に、しかも大蔵省がわずかな民間新興開発デベロッパーとタイアップして調査をやったり報告書を出したりというような行為が、参議院においてたしなめられたので、文書をもってこのような恥ずかしいものを関係住民周知徹底せざるを得ないというような、これは大蔵省ともあろうものが、まさに醜態というほかないのであります。これほど今国有地にかかわる大蔵省の権威というもの、重みというものが問われているのです。  そこでお尋ねをいたします。大蔵大臣国有地管理処分については何を基準にして措置が行われようとするわけでしょうか。物差しは何ですか。
  11. 竹下登

    竹下国務大臣 国有地というのは、国民共有財産であると同時に貴重な国土でございますので、まずはやはり公共目的に使用するというのが基本でありまして、したがって国及び地方公共団体において利用する計画がない国有地につきましては、民間活力導入によって都市開発住宅建設促進に資する、あわせてそのことは財政収入にもなるということでございますので、まず例えば東京都内……(渋沢委員「何が物差しかということです。処分の判断の基準は何かと聞いているのです」と呼ぶ)まず処分するのは公共目的等のないもの、これを処分対象にするわけであります。
  12. 渋沢利久

    渋沢委員 聞いた趣旨が通じてないようですから、私の方から申し上げますが、国有財産中央審議会答申というのがあります。これは公用目的以外には、つまり民間には売らぬ——国有地処分の不正をめぐって大変スキャンダラスな事件が相次いであった。その答申を手直しして当面答申ということで、あなたの責任において問うて答えを得ている答申がある。国有財産法もある。会計法もある。ですから、国有財産処分に当たって一番大きな物差しは何かと言えば、私は答申に尽きるだろう、まず答申基本だろうと思うのです。そのことを聞いているのです。
  13. 竹下登

    竹下国務大臣 当面の問題は確かにおっしゃった答申、これが基準であります。
  14. 渋沢利久

    渋沢委員 答弁も私が一緒に申し上げて大変忙しいことでありますが、時間がありませんので先を急ぐことにいたします。  そこでこの答申、私が言うまでもないんですけれども、これはある意味で非常に問題なわけです。国有財産処分に当たって、国の財政収入増加を図るために処分に道を開いたということであります。にもかかわらず、その中での原則というもの、国有財産というものの重み、その扱いに対する原点というものは、言うまでもありませんが、明確にしてあるわけです。ここで再々強調されていることは、まず地方公共団体等に対して優先的にその利用要望地を特定する機会を与える、国有地払い下げに当たっては、買い受け等の手段によって国有地地方公共団体による利用というものに機会を与える、これをすべてに優先する、こういうふうに答申に明記してあるわけであります。  今度国有地等有効活用推進本部というものが、総理を本部長にしてできたわけであります。竹下さんもこれに、大蔵省が軸になって参加をしておるわけでありますが、この民間活力導入のための払い下げというような措置は、当然この答申趣旨にのっとって行われなければならぬということは、改めて言うまでもないと思うわけであります。したがって、まず地方自治体に、国有財産処分に当たってはこの利用について問うて、地方公共団体がこれを買い受けその他の方法によって活用しないということが明確になったものについてだけ、初めて民間払い下げ対象になるということだろうと思うのであります。そういう考え方でこの推進本部作業しているというふうに理解していいですか。
  15. 竹下登

    竹下国務大臣 まずは東京であれば二十三区のそれぞれ、あるいは東京都に意見を聞いて、そこで自分の方でもこのような計画で使いたいというものがあればこれは除外して、そうでないものが対象になることはおっしゃるとおりであります。
  16. 渋沢利久

    渋沢委員 私は東京選出議員でありますだけに、東京都内から公有地について大変たくさんこの本部に持ち込まれて、これが民間払い下げ対象言葉払い下げとは言いませんけれども、民間活力導入の可能な財産、こういうことになりまして、民間活力導入検討財産一覧表というものを大蔵省が絞り出して、そして、さあこれが民間利用払い下げ対象になる国有地でございますというものを、第二次提出ということで、大蔵省東京都内に絞って十二件、この推進本部提案をしておるわけであります。したがって、今大蔵大臣がお答えになりましたように、当然谷中の趣旨を踏まえて、まず地方公共団体利用を問うて、問うた後に、地方公共団体利用がないことが明らかになったものに絞って出されたものだというふうに理解をするわけであります。そういうことでしょうか。
  17. 中田一男

    中田政府委員 昨年の十月十六日に、東京都二十三区内における民間活力導入検討対象財産というのを、中西民活大臣要請によりまして大蔵省作業をいたしまして、まとめて推進本部の方に報告をいたしましたが、これは実は九月にそういう御要請があって、非常に急いでやったものですから、この公表した段階におきましては、まだ東京都なり二十三区なりの利用要望は聞いておりませんでした。したがって、その後そういう手続をいたしました。
  18. 渋沢利久

    渋沢委員 あなたが認めるように、推進本部提案するのに地方公共団体の意を問わずして出した。しかも出した書類は、言うまでもありません、推進本部に出しておるのです。これは役所の書類ですけれども、民間活力導入検討対象財産ということで、具体的に国有地十二件、東京都内から出している。これは民間払い下げ対象財産です、御検討くださいといって大蔵省文書をもって推進本部に出したのです。ところが、その書類は、事前に地方自治団体とは全く相談していないのです。この文書にもわざわざ、本件上記財産については、地方公共団体等に対して買い受け等要望の確認は行っていませんと書いてある。将来地方公共団体等から要望が出てきた場合には別途調整の必要がありますと、これは正直に書いてある。しかし、それではこれは民間活力導入検討対象財産ではないのですよ。現に私が資料を要求したけれども、拒否した。地方自治団体から、二十三区その他東京都等から、これらについて買い受け等の意思があるかどうかについて文書が出ておるのです、出てないのもあるけれども。その一覧表を持ってこいというのに持ってこない、拒否した。これは私は承知せぬ。そんな、ないしょでやらなければならぬようなことではない。  ところが、その中には明らかに、例えば清掃事業、ここはこう地方公共団体として使いたいというのが出ている。当たり前ですよ。出ていないのもある。買えません、買いたいけれどもお金がありませんというのもあるのです。ですから、まずそういう手続を経て初めて、地方公共団体が要りませんと言ったものについてだけこの財産表に載って、推進本部検討するということになるじゃありませんか。さっきの大臣答弁でいえば、答申の精神からいえば、そのとおりです。これは全く手続基本において間違っておるのです。  今、急ぐからという答弁があったけれども、答申には何と書いてありますか。大蔵大臣答申の中で払い下げ利用鉄則というのが二つ具体的に明記されている。一つは、さっき言いました、地方公共団体にすべてに優先してその利用の可否を問いなさい、これが一つ。二つは、「地方公共団体等に対し、未利用国有地一定期間原則三年程度)内に買受け等するよう勧奨しここう書いてある。つまり、そうやたらにほったらかして、買うか買わないか決まらぬのでは困る、限度がある。原則三年程度答申には明記してあって、一定期間内、地方公共団体が未利用国有地について買い受けするようなことを勧奨しと書いてある。大蔵省は、国は、お買いなさい、利用しなさいということを三年程度範囲内においてじっくりやらせて、三年を超えない範囲において、もし地方公共団体が買わぬという場合には、初めて民間等への処分をも考慮すると書いてある。  大蔵大臣、改めて問うが、あなたが諮問をいたしました国有財産中央審議会答申を、この当面答申鉄則を、あなたは大蔵大臣として守る意思があるかどうか、はっきり答えていただきたい。
  19. 竹下登

    竹下国務大臣 五十八年一月二十四日の答申は、基本的に守っていくべきものであると考えます。
  20. 渋沢利久

    渋沢委員 それなら、提案をしたいと思うのです。大蔵大臣推進本部提案をいたしました東京都内の十二件の国有地については、これはこのまま大蔵省推進本部提案をしたということは間違いである、答申趣旨からいって重大な間違いであることをあなたはお認めになったわけです。これはまず撤回しなさい。推進本部を代表して、あそこの本部長中曽根さんだし、座長は官房副長官だから、あなたはその二人にかわって、これはやめますとは言えませんが、大蔵省としては、大蔵大臣としては、答申趣旨からいって、このまま出して検討をしてもらうように出した処置は間違いであるからこれは撤回をして、これらの十二件について地方公共団体等の明確な意思表示を整理した上で、改めて推進本部において検討に値する財産に絞って再提案をするという処置をあなたがとらなければ、答申を守るという今の言明になってこないわけです。この点は明確に意思表示を願いたい。
  21. 竹下登

    竹下国務大臣 先ほど来事務当局からもお答えいたしておりますとおり、いわば可能性のあるところのリストをつくってみてくれ、こういうことでございましたので、したがって可能性のある、可能性を包蔵しておるリストをつくって、そこで正直に書きまして、これは地方公共団体からの要望がありましたら調整を要する問題ですよということまで正直に書いて出した、こういうことです。
  22. 渋沢利久

    渋沢委員 今私の言ったことには同意しますか。これは間違いを認めなければいけませんよ。やり直しなさい。
  23. 竹下登

    竹下国務大臣 撤回といいましても、可能性のあるものを出してこいというのですから、したがって正直にそこに書きまして、これは地方との調整が必要になるものもありますということも書いて出したわけですから、いわば政府部内で資料要求されたと同じことだと理解をいたしております。
  24. 渋沢利久

    渋沢委員 そんな無責任答弁はありません。答申趣旨からいって、大蔵大臣責任を果たすことにならぬ。私は大体大きな声で物を言うのは嫌いたし、社会党でも最も温厚をもって鳴る議員であるからして、余り強いことは言いたくない方なんだ。その私があえてだんだん声が大きくなって、身を震わせてあなたにこの責任をただす。これはあなた大蔵大臣国有財産管理運用についての責任は本当に大きくとらえてもらわないと大変だよ。そういう意味で、これはあなたは率直に認めた、認めざるを得ないのです。  では聞きますが、正直にこう言ってしまったと言うけれども、検討財産として出したことは間違いだったということは認めなさいよ。したがって、これが全部民間活力の材料ではない、今それを選別中であるという意味で、そういう説明のし直しを推進本部にやるということをしなければ、あなたの論理は矛盾しますよ。それははっきり言いなさい。そうすれば先に行きます。
  25. 竹下登

    竹下国務大臣 でございますから、上記財産については今後地方公共団体からの利用要望があれば別途調整を行う必要がありますということを申し述べて、これは資料として提供したということでございますから、政府部内の資料でございますので、強いて言えば、民間活力導入可能性検討対象という言葉でも使えば、今の趣旨からすればよかったかとも思いますが、部内の資料でございますから、ちゃんとそういうことも十分説明の上で、条件つきと申しますか、説明の上で出しておりますので、大きく趣旨に外れておるというふうには、私どものサイドに立ては、必ずしもそういうふうには思っていないということであります。
  26. 渋沢利久

    渋沢委員 これは全く大蔵大臣国有財産に対する責任感をよそに置いた答弁である。ここで議論していると、時間が非常に限られておるので、ほかの問題で尋ねることができませんからやめますが、これはいま少しあなた方の方も考え直してもらわないと困るという状況があると思います。  林野庁においでいただいておると思うので、ちょっと林野庁に具体的なことでお尋ねするが、林野庁の職員の宿舎の六本木にある用地、このことについては、一つは当該の地方公共団体の港区から、この地域において業務立地が高度に進んだ結果、夜間人口に対して昼間人口の割合が非常に高くなっていることにかんがみ、定住性のある住宅整備し、職住近接、夜間人口の確保をねらいとして、住宅都市整備公団にその事業を行わせることによって低廉な住宅を確保するよう要請してきている、これが港区の林野庁に対する要請である。林野庁はそのように港区の要請を受けとめておりますか。
  27. 江藤素彦

    ○江藤説明員 林野庁でございますが、六本木の公務員宿舎敷地につきまして、林野庁といたしましては、国有林野事業の改善計画の一環といたしまして、これを売り払う方向で現在検討を行っているところでございます。  売り払いの相手方といたしましては、公用、公共用の優先という考え方からいたしまして、東京都及び港区の意向を受けまして、住宅都市整備公団を有力な候補といたしまして、当該跡地の利用が地域の開発計画に即しました適正な計画となるように、かねてから打ち合わせを行っているところでございます。今先生から御指摘のありました要望書につきましては確かに林野庁に出ておるわけでございまして、御要望趣旨を体しまして快適な住環境整備に資するように住宅都市整備公団と種々お話を進めているところでございます。
  28. 渋沢利久

    渋沢委員 林野庁はこの港区の意向を受けて、その趣旨に沿うように、公団への払い下げを前提として話し合いをしているということであります。そういう意味では、公団に払い下げるという基本方針は決めたわけですね。今何を折衝しておるのですか。
  29. 江藤素彦

    ○江藤説明員 お答え申し上げます。  ただいま住宅都市整備公団の、今後この六本木跡地につきましての利用計画について、具体的なものはまだ出ておりませんのでわからないわけでございますが、その辺のところをいろいろ打ち合わせまして、できる限りといいますか、地元の御趣旨要望に沿うような、計画に沿うようなお話し合いを進めているところでございます。
  30. 渋沢利久

    渋沢委員 林野庁としては、先ほど私が読みましたような趣旨の区の要望をもって林野庁に対して求めてきている、それを受けて公団と折衝している、公団側からまだ利用計画が出ていないので確定に至らないけれども、地元の意向に沿うような考え方で利用計画検討して払い下げを決めていきたい、そういう趣旨で御答弁があったというふうに思います。それは非常に結構なことで、地方自治団体の意に沿うような処置、対応というものがやはり決定的に重要であるというふうに思うわけであります。  ただ、それが具体的にどうかということは、公団が提示する利用計画を見なければ判断しかねる、こういうことであります。その利用計画が、地元区が要望する趣旨に沿うものかどうかを検討して、それでこれが国有財産処分物差しに合致する適正な払い下げになるかどうかという判断に資したい、こういうふうに受けとめたわけですが、それでよろしいですか。
  31. 江藤素彦

    ○江藤説明員 そのとおりでございます。
  32. 渋沢利久

    渋沢委員 大蔵省の方は、こういう六本木の林野庁の公務員宿舎跡地の処置のあり方については、今林野庁の態度を聞いたわけですけれども、どういう態度で臨んでおりますか、お尋ねします。
  33. 中田一男

    中田政府委員 この六本木の林野庁の宿舎、十月の民活検討対象財産リストアップしたわけでございますが、その当時から、林野庁の方で林野改善計画に従って六十年度中には処分したい、地元の意向もあるので、これは住宅公団に処分することを考えておるという話は聞いておりましたし、住宅公団そのものは、先生も御承知のとおり、国有地を随意契約で売る対象になっておる相手方でございますから、基本的にそういう方針であれば結構ではないかということで考えております。
  34. 渋沢利久

    渋沢委員 林野庁答弁しておるように、大蔵省も公団が提出する利用計画検討して、払い下げが適法かつ適正なものであるかどうかという趣旨について判断をする、これが一つ。  それから、林野庁も、地元港区の要請というものを尊重する立場で、この跡地利用に関する公団の利用計画というものを検討していきたいという趣旨を述べておったが、大蔵省もそういう判断を尊重して同様の検討を加えるということに、今の答弁は受けとめてよろしいか。
  35. 中田一男

    中田政府委員 一義的には林野庁が御判断なさいますが、林野庁の意向が固まりましたら大蔵省に協議という形でやってまいりますので、そのときにはおっしゃるような考え方で対応してまいりたいと思っております。
  36. 渋沢利久

    渋沢委員 地元の要望を尊重するということを明らかにしたことは非常に結構なことですが、これは後で利用計画などが出てきたときに必ず問題になる。地方自治体の中でも問題になることでありますから念を押しておきますが、当該地方自治体港区、林野庁大蔵省もその希望に沿っていきたい、こうおっしゃいました港区の要請というのは、これは先ほど私が言いました、林野庁に聞いたときに申しました表現は、これは林野庁の業務第二課から大蔵省報告しております六本木公務員宿舎敷地の売り払いに関する報告の中の文章をそのままの言葉で、港区がこう言っておるということを申し上げたわけでありますから、そのまま大変適正に港区の要望を伝えていると思うのであります。もう一度言いますと、「この地域において業務立地が高度に進んだ結果、夜間人口に対して昼間人口の割合が非常に高くなっていることにかんがみ、業務・商業施設を整備するとともに定住性のある住宅整備し、職住近接、夜間人口の確保をねらいとしている。」こういうことになっているわけであります。  そうしてまた、別途港区の区長から林野庁の長官に提出いたしました書類の中でも、特にいろいろ書きまして、整備公団に売り払いをされるように希望いたします、そして低廉な住宅を確保するように、夜間人口の確保とあわせて低廉な住宅の確保ということを強調明記して、港区長の名において林野庁の長官に文書提出を行っているわけであります。この趣旨を具体化していく。そういう公団の利用計画であるということを期待しながら、地元自治体、地元の意向に沿うようなものとしてこの跡地の利用計画を考えていく。  本当はどこの自治体だって、のどから手が出るほど欲しいけれども、今東京二十三区や都の財政で、幾ら随契で買い取りができるといっても、そう簡単にこれだけのスペースのものを今の地方財政が買い取れるものではない。特に高齢化社会へ向けて、地域における医療施設の問題とかいうものやあれこれ考えると、公有地というものを確保しておきたいという願いをどの自治体も国以上に持っておる。年をとったら、今のような老後施設の薄っぺらな東京ではとても生活できないという声に、地方自治体はどう回答しようかと非常に苦悩しておる。そういう意味では国有地公有地の存在というのは、大都市においては非常に価値ある存在である。その痛みが一番よくわかっている地方自治体は、のどから手が出るほど欲しいのです。だから、一握りの資本力を持った民間デベロッパーの手によって思うがままに開発されてしまう、マンションといったって人の住まないマンション、みんな事務所、オフィス化している、こういう状況の中で港区の切実な要求がある。そういうことを踏まえて、今林野庁大蔵省がこの大蔵委員会において、国の態度として、この国有地処分に当たっては地元港区の意向というものを尊重した利用計画というものを堅持して払い下げを決めていく、こういうことを表明されたことは非常に重要なわけであります。  そういう意味で、くどいようだけれども、時間がないにもかかわらず、特にその点を念を押しておいたわけであります。林野庁は非常にすっきりしてわかっておる、大蔵省はどうもすっきりしない。もう一回、イエスかノーかぐらいのことでその点は明確にしておいていただきたい。
  37. 中田一男

    中田政府委員 六本木の宿舎の問題につきましては、これは林野庁特別会計財産なものですから、処分そのものを決定するのは林野庁でございます。私どもの方は協議を受ける立場でございますが、協議がありましたときには同じような気持ちで対応してまいりたい、このようにお答えした次第でございます。
  38. 渋沢利久

    渋沢委員 せっかく林野庁が見えておるので、ちょっと尋ねておきます。  さっき言いました、林野庁大蔵省に出したレポート、報告書の中にこういう一項があるのです。「この公務員宿舎敷地を含む近隣一帯の再開発が、住宅都市整備公団のほか周辺地域の開発を担当することとなる民間デベロッパーにより行われることになり、この公務員宿舎敷地の売払いが」この地域全体の開発に役立つであろう、こういう文章があるわけですけれども、ここで言う周辺地域の開発を担当する民間デベロッパーというのは、ちなみに具体的に言うとどこのことを指しておるのですか。
  39. 江藤素彦

    ○江藤説明員 先生の御指摘がありますような港区議会の要望書の趣旨というものは、区議会といたしましては、公団住宅の建設等によりまして同区の定住人口の確保、増大というものが図られることを要望しておられるわけでありまして、その点については十分に考慮しておるわけでございますが、先ほども申し上げましたように、住都公団からまだ具体的な土地利用計画提出は受けておらないわけでございますので、その点不明でございますけれども、同公団の性格にかんがみまして、今後適切な利用が行われるというふうに考えておるわけでございまして、民間その他の、今先生の御指摘のありました相手方というのは特定はしておりません。不特定なものでございます。
  40. 渋沢利久

    渋沢委員 ここでは答えにくいということだろうと思って、これ以上聞きません。  そこで、最後にただしておきたいのは、三月二十六日付で港区議会の議長名をもって建設大臣、これは大蔵大臣にも、関係の各省庁の責任者に要望書が出されております。これは決議と言っていいですね。区議会満場一致の決議と言っていいのです。これは一言で言うと、港区当局は、二年も前からこの林野庁の宿舎敷地払い下げ計画について、定住人口確保の施策の一環として、都市整備公団による公団住宅の建設の実現を要請してきたのです。しかるに、最近同公団は、周辺地区整備した上で民間払い下げ、公団住宅はその一部と伝えられている。主として公団住宅の建設を要請してきた港区にとっては、これらの動きに強い関心を持っているところであります云々といって、再度、当初の区が要望してきた、公団住宅の建設を主軸にした開発要望してきているわけであります。  つまり、公団は最初と最近はがらっと変わってきた。そして全部または一部を民間に、土地の整備だけやって払い下げてしまう、こういう動きが出てきた。このことについては超党派で港の区議会は重大な関心を持たざるを得ない、どうしてくれますか、こう叫んでいるわけであります。これが三月二十六日の港区議会の決議です。これは非常に重大だと思うのです。非常に重大な重みを持っております。地域を大切にすると答申が言い、大蔵省も言い、林野庁も言う。国有財産処分に当たっては、当該地方団体の意思というものを大事にしていると再三繰り返し述べてきている。その趣旨から言うと、この状況というもの、この決議の重みというものは非常に重大にとらえざるを得ない。このことについてどのように対処しておられるか、どう受けとめておられるか、大蔵省意見をお聞きしたい。
  41. 中田一男

    中田政府委員 恐らく建設省が今検討しておられますいわゆる公団方式、それの行動がきっかけになってこのような決議が行われ、要望書が出されたものだと思いますが、六本木のこの案件は、実はああいう公団方式の議論に入る前から公団を中心にということを考えておりましたので、恐らくこの案件につきまして御心配のようなことを、林野庁は必ずしも考えておらなかったのではないかという感じを私ども受けております。  いずれにいたしましても、基本は地元の利用要望なり、こういうふうに使っていただきたいという要望なりを十分そんたくしてかからなければ、どんな計画も円滑に進行しないんだと思います。そのためには、十分な話し合いなり調整なり、そういうものが必要になってくるので、一方的に進んでいくということはないと確信いたしております。
  42. 渋沢利久

    渋沢委員 林野庁、今の点について簡単でいいですから、同様の態度かどうか。
  43. 江藤素彦

    ○江藤説明員 林野庁といたしましては、当該敷地を、国有林の厳しい財務事情にかんがみまして、改善計画の一環として売り払うこととしてきたものでございます。したがいまして、当該敷地が民活対象財産となった経緯におきましても、改善計画の一環といたしまして、実は昨年度中に売り払うことが前提となっておったわけでございまして、いろいろな事情で延びておりますが、今後も可及的速やかに売り払うような条件整備を努力していく、そういう考えております。
  44. 渋沢利久

    渋沢委員 時間がありませんので、最後に公団と大蔵大臣の所見をただして終わることにしたいと思うのであります。  大蔵大臣、これはもう説明するまでもなく、例えば国会の他の委員会でも議論になりましたG地区研究などといって、林野庁の今尋ねました宿舎の跡地、宿舎用地の隣接地点を森ビルの、民間開発企業の何やら財団が全部金を出して、そして建設省の幹部職員がこれに参画して、ちょうど谷間になっている、ここに手をつけなければ、その周辺一体の面的な開発、快適な開発ということにはふさわしからざる問題の箇所も開発計画を、時間と金をかけて、私も手に入れて読みましたけれども、大変なレポートをつくっておられる。そういうことがあって、いや、それは結果においてたまたま隣接地にそういうことをやられたにすぎないなどと言っていますが、これは大変奇々怪々の感を国民に与えているわけであります。  また、その推進本部の実務機関であります企画小委員会というのは、実体はアドバイザリーグループという民間有識者の代表というが、実際は、よく検討してみると、その中ではまさに今港区が地区計画あるいは整備計画を立てて、そして住民に問うている、この六本木の宿舎を含めたその辺一体の土地の買い占めを一生懸命やっている有力なデベロッパーの代表がこのアドバイザリーグループの有力なメンバーとして、国有地払い下げのありようについて影響を与える意見を述べている、参画をしているというような事実も、これはどう言い繕おうと、大変異様な状態ではないか。  西戸山の、参議院指摘をされたような、大蔵省とまだ決まってもいない一企業とが連名でさまざまな事業に取り組むなどという、こういう醜態。何か国有財産の有効利用に名をかりて、そして民間活力導入に名をかりて、一部、一握りのデベロッパーとの癒着が非常に進んでおるのではないかという懸念を国民の間に広げつつあると思うのであります。私は最後に、大蔵大臣国有財産の管理責任を最大に持っておられる大蔵大臣として、こういう状況の中で毅然とした態度で、答申趣旨にのっとった厳しい対応を貫くように、改めて求めておきたい。     〔堀之内委員長代理退席、熊谷委員長代理着席〕  それから、公団の代表がおいでになっておられますが、先ほど来の港区の議会の決議あるいは林野庁大蔵省に私がただしました内容を踏まえて、まだ利用計画をお出しになっておらぬようですけれども、地元の自治体の意向を尊重する、この大原則に立ってこれからの利用計画——あそこはぜひ買い受けて仕事をしたいといって手を挙げたんだから、公団としての基本的な態度を、この際明確にしておいていただきたいということを最後に求めておきます。
  45. 救仁郷斉

    救仁郷参考人 先生のお話、若干お話しさしていただきますと、計画は現在港区の方で都市計画としていろいろおつくりいただいておりまして、私どもはそのお手伝いをしているという立場でございます。したがいまして、私ども当然その計画の中に港区の御意向あるいは東京都の御意向というものが十分反映される、また、その都市計画が決まった後、私どもがもしそれにタッチするとしますと、もっとそれを受けて具体的な計画ということになろうかと思いますが、いずれにいたしましても、港区、東京都で定住人口の確保ということがこの計画の一番基本になっているわけでございまして、私どもはそれを十分に尊重した計画を立ててまいりたいというように考えております。
  46. 渋沢利久

  47. 竹下登

    竹下国務大臣 今救仁郷さんからお話がありましたが、そういう経過でございます。だから、一義的にはこれは区、林野庁、そして住都公団と私ども当然協議があるわけでございますから、その際は十分意を体して対応していかなきゃならぬ。確かに千代田区とか港区というのは、もう区議会すら、それは与野党を問わず、定住人口、夜間人口が少なくて昼間人口ばかりだ、こういうことを絶えずおっしゃいますので、そういうことは十分念頭に置いて対応すべき問題であると思っております。
  48. 渋沢利久

    渋沢委員 一般質問でまた改めてただしたいと思います。きょうは終わります。
  49. 熊谷弘

    ○熊谷委員長代理 伊藤茂君。
  50. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 議題となっております法案に関連いたしまして、短時間ですが幾つかお伺いいたします。  まず、大臣に二、三お伺いしたいのでありますが、先般四月九日に対外経済対策が発表されました。本会議でも、我が党の川崎さんを初めさまざまな議論が行われたところであります。あのような対策が発表されましたが、前途はなおかつ困難であろうということが連日のように報道をされているわけであります。ことしの場合には、例年とは、今までとは違っているということがさまざま報道されております。例年ですと、三月、貿易収支の数字が出て、それからさまざまの対応が議論されて、サミットは円満に開かれるということでございましたが、ことしはそれとは違うのではないだろうかと言われているわけでありまして、このままでは、大蔵大臣も御出席になるでありましょうボン・サミットでも、相当集中砲火もあり得るのではないだろうかということが言われているわけであります。  この間発表されました対策で、七月中につくられるアクションプログラム、原則三年ということであるわけですが、その作業に入るわけでありますが、あわせてやはり何らかの第二次のといいますか、方策も必要ではないだろうかというふうなことも言われているわけであります。九日に発表されましたあの対外経済政策、その後の状況、それからサミットを展望するというふうな中でさまざまの省庁が関係をするわけでありますが、いろいろな意味大蔵省が、また大蔵大臣の立場が焦点になっているという面もございまして、その辺どのようにお考えになっておりますか。
  51. 竹下登

    竹下国務大臣 当面は、九日に発表いたしましたこの事柄をいかにして実行に移していくか、こういうことであろうと思っております。  そこで、いわゆるその問題の後に起こった事実としましては、OECD閣僚理事会と、それから四分野の総攬をする役目が安倍・シュルツ会談ということでございますので、その二つがあるわけであります。したがいまして、このOECDの閣僚理事会は、アメリカには財政赤字とドルの独歩高、日本に対しては黒字問題、それからヨーロッパに対しては構造問題、三つそれぞれ指摘をしておりますが、基調となるものは、たびたびこの議論を詰めているような「インフレなき持続的成長」というものをお互いが守っていこうという基調はそのまま変わらないというふうに思っております。その後安倍・シュルツ会談で、きょうの閣議に報告がございましたが、いわゆる四分野のそれぞれの問題を総攬するという立場におきましては、双方ともこの努力を評価し、今後これを実行に移すことが確認をされたということでございます。  そうすると、今度続くのがボン・サミットであろうと思っておりますが、ボン・サミットに対していろんな議論がございますけれども、要するにウィリアムズバーグ・サミット、そしてロンドン・サミットというふうに続いていった議論というものは、一つの国に、いわば経済政策に財政が出動して機関車的役割を果たさしめることは、極端に言うと失敗だった。したがって、日本で言えば昭和五十二年、三年、いわば大量の公債発行もやりながら景気を引っ張る役割というものにこたえてきたけれども、イギリスであろうとフランスであろうと、もともと宗主国でございますから、かつての英領どこどことか仏領どこどことかというところが、日本さえやっているのに、かつての宗主国もやるべきだというので、残ったものは結局財政赤字と高金利で、むしろ開発途上国はそれで困った。したがって、これからは先進国そのものも、「インフレなき持続的成長」というものを基盤に経済運営をすれば、結果としてそのことは開発途上国にもいい効果をもたらすことである。  こういう基調になっておりますし、一月の初旬の五カ国大蔵大臣会議でもその基調は変わらないわけでございますから、急にこのボン・サミットで、今までの基調を変えた、財政が出動する経済政策というようなものを議論するには非常に飛躍になるんじゃないか。私はこういう気がいたしますので、やはり従来の「インフレなき持続的成長」というものを、それぞれの国が一生懸命そういう努力をすることによって、当面起こっている、アメリカが抱えているのは高金利とドル高、日本は黒字、そしてヨーロッパは構造問題、そういう問題をお互いが指摘し合いながら、その中で当面可能な限りの協調した政策をとろうというのが、今度ボン・サミットヘ臨む際の、経済問題になりますと私が出かけますので、基調ではないかな。まだはっきりどういう議題が決まったわけではございませんけれども、当然そんな話をしなければならぬではなかろうかというふうに考えております。     〔熊谷委員長代理退席、熊川委員長代理着席〕
  52. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 基調としての「インフレなき持続的成長」、前から言われている、強調されているベースでありますけれども、現実の方は非常にドラスチックに差し迫っているという状況だと思います。九日に発表された中身でも、何か努力をするという姿勢は見せたことになると思いますけれども、現実、先般発表されました数字でも三百五十億ドルを超える貿易黒字、その九十数%がアメリカというような状況ですね。この数字には変化というのが難しいというのが大方の見る目であろうと思います。大臣は、先般発表されましたあの内容で、そういう数字の面でも何か変化は起きるというふうにお考えになりますか。百ドル買いなさいという、何か電車につり広告まで総理の名前入りでなさっているそうでありますけれども、こんなものも、いきなり何か効果が出るわけでもありませんし、この間発表されたもので数字面で何らか出るというふうには考えられないと思いますが、御判断は……。     〔熊川委員長代理退席、熊谷委員長代理着席〕
  53. 竹下登

    竹下国務大臣 私も、この間発表いたしたもので直ちに量の面、すなわち数字の面で出てくる効果というものは、そう大きく期待することは困難であるというふうに思っております。やはりこの問題が数字の上に出てくるのは、中期で見なければならぬではなかろうかというふうに考えます。実際問題として、百ドル買いましょう、こう言いましても、買うものがあるかということになると、日本の方が、何でもかんでもじゃございませんけれども、安くていいものがあるわけでございますから、それはみんなが工夫しなければならぬところでありますが、本当は、じかに舶来品を買うのが一番効果が上がって、ほかの施策というものでは端的な効果というのはなかなか出てくる問題じゃございませんので、定量的なものがいわばあの九日の発表ですぐ数字にあらわれてくるという状態ではないだろうと私は思います。
  54. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 いずれにいたしましても、ボン・サミットを乗り切れるかどうかということもあるでございましょうけれども、何らかのマスタープランといいますか、中長期的に見た大きな柱を大体どうするのかということを研究、検討しなければならないという段階だろうと思います。ですから、総理のおっしゃった、百ドル買いましょうということにいたしましても、日本の消費者にすれば、安くて非常にいいもので、サービスもいいということになれば当然売れるわけであります。じゃ一体そういうものの構想というものをどうできるのかというようなことは、これは国民に呼びかける前に、本来政府として、国内外を通じてやるべき努力であろうというふうに思うわけでありますが、いずれにしろ、この構造的な状況をどう変えるのかということについての対応策をとらなければならない。例えば私どもの社会党の主張は、先般の本会議などでもいろいろと質問から主張いたしたところであります。  その中の一つで、けさの各新聞を見ますと、昨日の政府・与党首脳会議ですか、内需拡大論をめぐっていろいろな議論があったというぐあいに報道されております。何か宮澤さん、河本さんが主張して、竹下さんも一応の理解とかあるいは消極的とかいうような、新聞によっては報道がございます。私ども大蔵委員会ですから、大蔵省大蔵大臣はこういうことだろうなというふうな気もいたします。  しかし、例えば河本さんが、内需拡大のためにさまざまの手がある、その中の一つとして大型減税、今日の時代でいえば四、五兆ぐらいのものをというふうな提案をなさっております。これは今日の財政事情からすれば、財政再建のスケジュールに、あるいはやり方に影響を及ぼすということも事実であります。しかし、それは大局的な大きな判断で、世界から孤立をし世界から途絶をした日本では、日本の経済自体がもたないわけでありますから、大蔵省のプログラムもあるわけでありますけれども、やはりさまざまな大胆な対応というものが求められるであろう。けさの新聞を読みながらそんな感じもするわけでありますが、政府・与党首脳会議には私ども入れませんので、どんなふうに大臣は主張なされたのか、どうお考えなんでしょうか。
  55. 竹下登

    竹下国務大臣 内需拡大ということにだれしも反対する者はおらぬ、要はその手法である。私がいつも本委員会等で申しておりますのは、いわば今の所得税の三分の一に当たる五兆円を減税すると輸入が何ぼふえるか、こう言いますと、七億ドルと、こう言います。それから、公共事業を三兆円やれば輸入が何ぼふえるか、まあ日用品もございましょうが、鉄鉱石なんかがふえてくるでございましょう。そういうことでやってみると十三億ドル。そうすると、やはりその効果というのは、皆無ではないが、実際問題としては数字の上ではそう大きいものが期待できるものじゃない。しかもその財源を、あるいは赤字公債なりあるいは建設国債なりで行った場合は、いずれにしてもそれの三・七倍の負担を我々の後の納税者に負担させる、これは耐えがたいことだ。  それで、五十八年、五十九年、六十年とかかって赤字国債、建設国債含めて減額さしていただいたのが二兆七、八千億になりましょうか、その財政再建路線が一遍に後戻りするようなことがあっては、これはまた耐えがたいものであるという主張をしておるわけです。したがって、内需振興については、民活とかあるいは各種の規制解除とか、そういう衆知を集めて対応すべきものであって、今日は財政が出動する環境にはないではないか、こういうことを私は絶えず主張しておるわけでございます。
  56. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 そういう趣旨からいたしますと、私ども報道で読んでおるのですが、先般シュルツ国務長官が言われている、貯蓄を投資、消費に回すように、あるいは金融自由化についてのもう一段の措置とか出ておりましたが、それについてはいかがですか。
  57. 竹下登

    竹下国務大臣 今の三番目に指摘なさいましたいわゆる金融市場の開放、これは進んでおると思っております。だが、いわゆる貿易市場を含めた市場開放は、これは至上命題としてやっていかなければならぬ。原則的にはそういうことが大事だということはわかりますが、金融・資本の自由化は着実に進んでおる、こう思っております。  それから消費。シュルツさんも財務長官もしておりましたし、いわば財政通でございましょう。あの人は、一つの反省もあるかもしれませんけれども、アメリカは減税した、それによって消費を刺激する、と同時に貯蓄がふえる、その貯蓄が企業の投資等に回っていく。ところが銀行へ行かないで、全部百貨店へ行っちゃった。だから消費はふえたけれども、一方、貯蓄は思うように進まなくて、結果として今日のような高金利ということになっておる。そういう気持ちがございますが、日本が何せアメリカの三倍の貯蓄率があるということがなかなか相手方にはわからぬことじゃなかろうか。  それはいろいろな理由があります。勤倹貯蓄の精神というのを我々子供のときから習ってきたという、その国民性もあると思うのです。だが、あの貯蓄があったから公債が発行できて、その割には金利も上がらないで、第一次石油ショックも第二次石油ショックもこれで克服し得たんじゃないか、私はそう思っております。そして、じゃ、貯蓄奨励策をやめると言ったら、これはやはりいわゆるマル優廃止とか、そういう議論にもなってくるでございましょうし、今度の法律でも通していただきましたが、にわかに対応できるものでもない。だから、貯蓄するのがけしからぬというのは、本当はいただける議論じゃないと思います。私はいいことだと思います。  だが一方、いや、日本は老後の保障とか、そういう問題ができていないから貯蓄率が高いんだ、こういう議論をなさる人もありますが、これとてアメリカと比べたら何ら遜色ないほどちゃんと充実しておる。だからやはり、貯蓄をする国民性というのは私はいいことだと思うわけでございますので、したがって、貯蓄をしないで、下世話な言葉で言えば、ぜいたくせいと、こういうことにはなかなかくみするわけにはいかぬな。ただ、可能な限りその貯蓄がいわば国内の市場で投資とかそういうものに回っていくことを期待するという気持ちも、私はわからぬでもありませんけれども、しかし、あの日本の貯蓄が結果として資本流出になっておるから、あれでアメリカの金利はあそこでとまっているのじゃないか、あれがなかったらもっと上がっているのじゃないか、こういうことも私は折に触れ話し合いをしておるところでありますが、シュルツさんの言っておりますのは、おおむねの原則を言って、日本にそれを強要したということではないというふうに私は思っております。
  58. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 大臣の御説明にあるように、なかなか難しい問題が確かに目の前にあるわけであります。しかし、目の前の対応あるいは局面を糊塗すると言っては失礼でございますけれども、何かやはり目の前の対応だけしておるわけにはいかない今日の状況だと思います。ですから、いろんな意味で、先般の対外経済対策の発表のペースとは違った、もっと中長期的な、あるいはもっと構造的な部面での考え方を、やはりこれは政府としては内外に明らかにしていく、そうして世界並びに日本の経済発展の方向をきちんと主張するということが必要ではないだろうか。  その中では、私どもはアメリカに対して要求すべきこと、もっと声を大にして毅然と言うべきことはたくさんあると思います。それは、財政赤字にしろ高金利にしろ、先般の本会議で伺っておりますと、そういうことも言っておりますということを総理は言われておりますけれども、これは日本もECも含めた大きな声として迫るべき問題であろうというふうに思いますし、また内需の問題についても、景気、減税その他の問題も含めた大きな意味で、大蔵省大蔵大臣は確かに財政再建について大きな使命感を持って取り組まれている、これも当然のことだろうと思います。それらの枠組み全体を越えた大きな発想も必要である。そういう意味でのマスタープランといいますか、そういうものを持って内外に提起をしていくということが必要ではないだろうか。  総理の立場ではロンとヤスという関係ということですから、そういうこともあるんでしょうけれども、私ども社会党から言えば、ロンとヤスだけではなくて、太郎とメアリーですね、言うならば国民ベースの理解を得られる共通のベースというものをつくらなくちゃならぬし、そういうものが必要であろうというふうに実は思うわけでありまして、これは大蔵省大蔵大臣の立場で気持ちをお伺いしたいのですが、そういうものと取り組みながら、サミットの場とかあるいは具体的なさまざまの対応とかをなさっていくことが当然必要ではないだろうかというふうに思いますが、大蔵大臣としてはどうお考えになりますか。
  59. 竹下登

    竹下国務大臣 今度七月までにアクションプログラムをつくろう、これは私、大事なことだと思っております。だから、当面はこの四分野の問題である種の理解が得られた。ところが、政府部内と国会とはまた違いまして、アメリカは来年また選挙でございます。下院議員はなかんずく二年に一遍でございますし、半数改選も来年でございますので、そういう角度から私に忠告する友人がおりましたが、あなたが一月に五カ国大蔵大臣会議でアメリカへ来たときと、少なくとも国会はさま変わりでございますよ、なるほどそうだなと。だから、いろいろな意味において、国会議員同士の交流というものも必要で、その都度この理解を深めていく努力もしなければならぬな、こういう感じも持っておるわけでありますが、やはり当面は、この決めたことをきちんと守っていくということではなかろうか。そしてアクションプログラムができるそのころには、いろいろな議論もしてみなければならぬであろうというふうには思っておりますが、言うべきことを言うというのがやはり一番大事なことである。  私どもも、要するにドルの独歩高というのは——よく私も矛盾を感じますのは、先般ここを通していただいた関税の法律を議論していると、一%下げるとか一・五%下げるとかいう議論、まあそういう法律を見ながら、はてな、為替レートというのは、たった四、五日前ともう今度二%ぐらい違っているんじゃないか。そうすると、「為替レートに比ぶれば関税などはアクセサリー」という川柳ができるんじゃないか、こんな感じがするぐらいでございますので、関税率というのは確かに象徴ではございますけれども、したがって、やはりそのドルの独歩高というものについて、これは日本だけでどないにもなかなかできぬ問題でございますが、その辺をアメリカにも、それはやはり高金利ということからそうなっているんだからと。日本のような金利調整は、アメリカにはできない状態かもしれません。しかし、その中でも可能な限りの努力をしてもらわなければならぬという主張は絶えず繰り返しておる。だから、結局サミットでも、ヨーロッパは構造問題、日本は黒字問題、アメリカは財政赤字とドルの独歩高、これが問題点として浮かび上がってくるだろうという感じはいたしております。  したがって、いま一つ考えなければいかぬのは、減税といったって、赤字公債を発行して減税するわけにもいきませんし、したがって、三十九年までは公債残高はなかった、四十九年までは建設国債だけで九兆七千億しかなかった、そういうことから考えると、大量の残高を抱えながら財政というものはどうしていくべきかという議論は、まだまだしていかなければいかぬ議論だというふうには思っておるところであります。  きのうの政府首脳会議での私の部分が、各紙みんなちょっとニュアンスの違いが出ておりましたので、やはり言語明瞭、意味不明なんだな、これは国会だけじゃなく、どこでも私はそうなのかなと思って、各紙を見させていただいておったということであります。
  60. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 竹下さん、さっき申し上げましたが、いろいろな意味で何か大きな柱を大胆に内外ともに立てるときではないかと思いますので、議会の議論と違って、現政府にもさまざまの御都合があるでありましょうけれども、ぜひ御努力をいただきたいと思います。  こればかりで時間をとってはなんですが、もう一つだけ申し上げてお伺いしたいことがあるのは、今日の日米貿易摩擦問題は経済界、国民生活も含めて、何か「国難来る」のようなキャンペーンの雰囲気があるわけであります。そして、開戦前夜であるとかいうふうな話も出ますし、総理も、国民の皆さん百ドル買ってくださいとかいうふうな話も出るし、そういう異常な状態にあるわけであります。     〔熊谷委員長代理退席、委員長着席〕 この貿易摩擦を見る目というのは、マクロの視点とミクロの視点、日の当たる場所と日陰の場所、いろいろな構造が当然あるわけでありまして、さっきお話に出ました対外投資の関係でも、三百数十億ドルの対米貿易黒字がある。それから、日本の昨年の対外投資三百三十億ドルのうちざっと二百億ドルぐらいは、アメリカの債券購入や企業の買収の形でアメリカに投下されたというふうに推定されている。言うならば輸出で巨額のドルをつかんで、またアメリカの高金利で運用して、二重の利益を得ているということも言われております。これも現実だと私は思います。  それから、私ども主張しておりますように、大幅減税を要求している私どもの立場からいたしますならば、労働者、勤労者というものが、一体そういうレベルと同じように、国全体の災難か問題のように扱われる必要があるのだろうかどうかということも思うわけでありまして、そういう問題について、日の当たるところ、日陰になるところ、マクロの視点とミクロの視点というものを含めた対応を考えなければ、国民も協力しないと思います。いかがでしょうか。
  61. 竹下登

    竹下国務大臣 同感でございます。ミクロの問題ですと、確かにいわゆる通信衛星をいつ発注するかとかいうような問題が出ております。あるいは電気通信機器でも、このような形で開放するとかいう問題が出ておりますが、マクロの問題では、何分日本経済の力が今日このような状態になっておるわけでありますから、なかんずく金融市場における方なんというのは大変なものだということになりますと、やはりマクロ経済政策の中で、世界の中における日本経済の位置づけというのはきちんとやっていかなければならぬ問題だというふうに、私も承知しております。
  62. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 ちょっと時間を勘違いしておりまして、あと時間が余りないものですから、輸銀と開銀について、それぞれまとめてお伺いいたします。  大倉さん、お越しいただきまして御苦労さまでございますが、二つまとめて恐縮ですがお伺いをしたいと思います。  一つは、今大臣のお話がありましたように、現在及び今後日本の対外経済の視点というものはさまざま変化をしているわけであります。これから先を考えますと、世界と日本とのかかわり合いというものは、もっと大きな変動も予想されるでありましょう。戦後の輸銀の活動も、それぞれの歴史的段階に応じて重点が組まれていたわけであります。五十八年、五十九年、六十年の計画の数字をちょっと拝見をいたしますと、輸入金融、輸出金融、直接借款、投資金融、それぞれあるわけでありますが、五十八年の場合は輸入金融が対前年比マイナス八六%、輸出金融がプラス六%、直接借款マイナス五六%などなどの数字が出ております。五十九年は傾向としては同じようだと思いますが、ちょっと状況が変わってきている。六十年の予算書に出ました数字を見ますと、輸入、投資を含め三千四百四十億円。今のこの状況を見ますと、日本経済が今までぶつかってきた経過、生の問題と見合っているような感じがいたします。また、政府政策金融でありますから、ぶつかってくる問題に対して先見性のある対応というものも非常に求められるのじゃないかというふうな気もいたすわけであります。そういう意味で、対外経済取引に関する政策金融機関という立場から、その辺の経過を振り返って、今重点的に何をしなければならないのかということを、先ほどの問答とも関連をしてどうお考えになるのかということが一つであります。  もう一つは中長期の視点の問題になるわけでありますが、世界と日本のあるべき視野という大きな意味からいいますと、さまざま勉強させられる問題が今あるわけであります。その中で、別途の法案でもまた集中的な議論を私どもしたいと思いますが、心配をすることが一つあるわけであります。それは、長い目で見てフェアであるべき関係、国際関係ということよりも、今日の日米関係を中心とした政治論が表面に出るというふうな傾向があるわけでありまして、これも別途議論したいと思います。  昨年の九月に発表されました日米諮問委員会日本側委員長牛場さん、米国側委員長パッカードさんのレポートをこの間読んでおりましたら、この中には日本のODAのことが中心に書いてありますけれども、具体的に名前まで挙げまして、アジアの地域の安定に大きく貢献をしてきたエジプト、パキスタン、トルコ、スーダン、ソマリア、アラブ湾岸諸国の一部、カリブ海諸国などなどと書いてあります。これらの援助の拡大は、「戦略的に重要な地域に対する援助の政治的重要性を日本が認識していることと、より広範囲にわたって日本が世界において政治的イニシアティブを発揮していく決意の表われとして大いに評価すべきものである。」今後のことにつきましても、「特別な海外援助努力を正当化する総合安全保障政策の一部として決定していくべきである。」これはアメリカ側から出た要望ではありませんで、日米諮問委員会報告の文章であります。このところは、いま一つの問題であるいわゆる戦略援助ということとも関連をいたしますし、従来言ってきた我が国の対外経済協力のあるべきプリンシプルというものとも関連をするわけでありまして、この部面は大倉さん、また大臣から伺いたいと思います。そういうことで大倉さんに二点、大臣に一点、御感想を簡単に……。
  63. 大倉真隆

    ○大倉説明員 大変広範なお尋ねでございますが、まず実態の方から申し上げますと、先ほど伊藤委員おっしゃいましたように、私どもの担当しております輸入金融が、最近貸付額が減少を示しておりますが、私どもの輸入金融は、ほんのおととしまではいわゆる資源開発輸入というものを専ら担当しておりました。例えばインドネシアで天然ガスを掘って、現地で冷却して冷凍船で日本へLNGで持ってきて電力、ガスをたくというようなことをお考えいただければいいわけですが、これにつきまして、実は大型案件が一服いたしました。というのは、国内の需要が、エネルギー需要を含めまして、一時予測されたほど伸びない、ある意味で九〇年代の中ごろくらいまではいわば手当て済みである。その先また必要が出てくるはずでございますが、手当て済みだという状態を前にいたしまして、大型案件が一服状態でございますので、私どもの方の現実の貸し出しも、一時に比べますと漸減傾向にある、そういう事態でございます。  それは事実関係でございますが、今後どういうことに重点を置かなくてはいけないかという点のお尋ねだと思います。それは、私どもやっておりますのは、大きく分けまして輸出金融、輸入金融、投資金融ということでございます。  この時期に輸出金融を政府機関がやるのはおかしいではないかというお話も時々耳にいたしますが、私どもが担当いたしておりますのは、これはプラント輸出でございまして、通常の自動車、半導体に象徴されるような輸出は、通常民間金融でやられておる。プラント輸出というのは、大体仕向け先は開発途上国でございますから、貿易摩擦というものと直には関係ございません。開発途上国側はできるだけ、自分の資金事情が許す限り、自分の国民の生活の向上のためにそういうものはやっていきたい、また、それによって現地雇用がふえる、技術が移転できる、経営のノーハウも移転できる。そういう性質のものでございますので、今後とも輸出金融は、私どもの担当しております分野では、決して重要性が減るものではないと思います。  輸入金融につきましては、製品輸入というのをおととしからやっと始めさせていただいておりますが、これは遺憾ながら実績は極めて微々たるもものでございます。今回の対策を契機にいたしまして、適用金利を引き下げることといたしました。ひとつ関係の方々に、こういう新しいスキームがあるんだということを十分御説明して、できるだけ製品輸入を私どもがお手伝いできるようにいたしたい。  海外投資につきましては、これは開発途上国向けの海外投資、海外事業というのは、従来から非常に熱心にやっております。今後もやってまいりたいと思いますが、最近では、特にいわゆる産業協力と申しますか、先進工業国に生産、サービスの拠点を移して、そこで、向こう側の雇用の増大にも資するという角度から、アメリカとかヨーロッパヘの製造業投資案件について、私どももできるだけお手伝いをいたしたいということで、これはある意味では着々と実績が上がりつつある、そう考えていただいてよろしいかと思います。  なお、輸出金融につきましては、今後国際的な関係としては、やはり国際協調による輸出、国際コンソーシアムの組成でございますとか、そういう活動を重視してまいりたいということも考えております。  大変お時間がないようでございますので、なお御質問があれば重ねて、もう少し詳しく御説明をさせていただきます。  第二点の問題は、実は私が承知しております限りODA中心に議論されておりますので、私からお答えするのはきょうはちょっと避けさせていただきたいと思います。  輸出入銀行といたしましては、私どもの持っております分類の直接借款と申しますのは、これは借り手が外国政府あるいは外国の政府機関、外国の金融機関あるいは日本からの輸出品を購入する外国の法人の場合にこの分類に入るということでございまして、そのいずれの場合も、どういうものが輸出されるのか、また、そのお金を使ってどういう仕事がされるかということは十分案件審査をいたしておりまして、それが、何と申しますか、軍事的なものにつながってくるということは従来もございませんでしたし、今後ともそういうことの起こらないようにということは、十分慎重に配慮してまいりたい、そのように考えております。
  64. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる直接借款の場合における武器輸出でございますとか、そういうことについての考え方は、今の輸銀大倉総裁からお話があったのと大体同じでありますが、ODAの問題につきましては、やっぱりこの問題をいわば戦略的な意図でもって行っていくという考え方には、我が方はくみしない。可能な限り国際機関等々と協調しながら、本当にODAのODAたるゆえんというものをわきまえながら対応すべき課題だというふうに考えております。
  65. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 いろいろと実体論を含めて議論をしたいところでございますが、時間がありませんので、もう一点だけ、開銀に関係をして質問をして終わりたいと思います。  開発銀行向けについて二つ伺います。これも時代とともに重点が変化をしてきたわけでありますが、今後を考えながら、またこの法案に関係をして二点伺いたいわけでありますが、一つ都市開発の問題があります。  私は、先般の補助金一括削減法案の議論の中でも思ったんですが、戦後、高度成長期など一時期に、都市から地方への相当大幅な所得の移転が行われて平準化が図られたという時代がありました。またそういう中で、一面では過疎の問題と同時に過密、大都市問題というのがクローズアップされて、それから国の方が随分マルビになってしまったものですから、それについての本格的な取り組みが進まないということで今日に至っておるというふうな状態だと思いますが、もうこれは、何も都市を代表してエゴイズムで言うわけではございませんけれども、さまざまの社会サービス設備などの各県別人口千人当たり分布状況などを見ますと、特に人口急増地帯都市と比べますと逆転現象が起きて、都市は文化的であり、田舎は貧しいという状況から逆転現象も一部には発生しているというふうな今日の状況にあるわけでありまして、いろいろな意味で大都市都市開発に力を入れなければならないのではないだろうかというふうに思うわけであります。  私のところでも、例えば横浜でも「MM21」とか大きな計画を組んでおりますが、今日の経済状況ですから、なかなか前途多難であります。また、開発銀行にもいろいろと御相談をしたり、お願いをしたりしているというわけでありますが、もう一つそういう方向への近代的な都市問題の解決、都市づくりへの重点というものを、国策と言うとなんですが、大きな社会目標として設定をするようなことが、これからの社会で必要なのではなかろうかということを最近非常に痛感をするわけでありまして、六十年度の計画の数字を見ましても、パーセンテージもちょっとふえているようでありますが、その辺の取り組みの問題をお伺いしたいと思います。  もう一つは、今回の法案中身になっております技術研究開発への貸し付け、出資の問題でありますが、既に衆議院のほかの委員会審議をいたしました基盤技術研究促進センターへの出資なども含まれております。三十億ですか、出資をする。含まれております。私はこの点思うのですが、ことしこの開銀を含めまして合計百六十億。その中身がどういうことなのか、商工委員会の議論を聞いてみましても、ひとつこう私もはっきりしないのでありますけれども、また来年になりますと、恐らくは電電、たばこ、双方の配当分がそこに回っていく。これも相当の額になる。五分配当になるか一割配当になるか知りませんが、いずれにしても相当な額になる。  なぜ今ここに出動しなければならないということになっているのか。相当潤沢な将来展望があるのに、なぜ今開銀がここに出動しなければならないのかということもありますし、それから、出すからには、中身にいたしましても、何か郵政省と通産省が引っ張り合いっこしている。通産省が主管というふうな話でありますけれども、私はそれもおかしいんだろうと思います。内容からしましたら、広範な意味でのテーマが必要になるわけでありまして、例えばバイオテクノロジーとかあるいは最近重要な最先端も大事でありますけれども、中小企業の技術革新に必要な視点とか、いろいろなものがあるべきではないだろうかというふうに思うわけでありまして、第二点は、その点についてどうお考えになるのか。時間がちょっとおくれまして恐縮でございますが、伺って終わりたいと思います。
  66. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 今伊藤委員御指摘のとおり、都市開発事業というものはますます重要性を増しているんじゃなかろうかと思います。開発銀行は、昭和三十四年以来都市開発には重点を置き始めまして、最初の融資は民鉄への融資であったわけでありますが、その後いろいろの都市開発とか流通施設とか、いろいろ対象を広げまして、今まで開発銀行が都市開発に投資した金額は一兆八千億ほどに及んでおります。最近では、全体の開発銀行の資金量に対して大体一〇から一二、三%程度で推移しておりますが、今後安定成長に伴いまして、一つの収益性の基盤につきましてますます難しさが加わってきているというようなこととか、公益負担の問題もばかにならない。いずれにいたしましても、都市閥発事業は懐妊期間が長うございますし、また、関係者の権利調整というような意味で、公的資金が出るには適した融資分野ではなかろうかと思っております。  私どもの銀行といたしましては、最近エネルギーの基盤の確保、それから技術開発と並びまして、都市開発事業を最重点項目の一つと考えている次第でございます。御指摘のございました横浜の「みなとみらい21」等の計画、これは東京近郊に残された非常に大きな魅力的な開発事業でございますし、私ども、これに対しましては十分な対応をしてまいりたいと思っております。過去におきましても、御承知のように、横浜の東口開発とかいろいろな点で御協力申し上げているわけでございます。六十年度におきましては、新たに核都市の拠点整備事業というようなものを融資項目に加えまして、対象事業計画内容によりまして適切な対応をしてまいりたい、こう思っておる次第でございます。  それから、第二点に御指摘がございました基盤技術の研究促進センターでございますが、確かに御指摘のように、産投と開銀両方から出資があるということで議論があるかと思います。これはいろいろ行政当局とも対応を詰めまして、開発銀行が行うのは融資事業の分野の基本財産たる資金、この三十億を出資する、産投会計の方はむしろ、よりリスクの高い出資事業基本財産、これを出資するというようなことでデマーケーションを行っております。今後この基盤技術研究促進センターの事業が拡大いたしましても、このデマーケーションは変わりはなかろうかと思います。  それから、最後の方に御指摘がございました各省庁のいろいろな問題でございますが、私はむしろ、その当事者でございませんけれども、もちろん大事な研究でございますので、各省が十分そこら辺のリスク、むだがないように、そういう調整が行われていってしかるべきではないか、こう感じている次第でございます。  以上でございます。
  67. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 ちょっと時間が延びまして、恐縮でございます。
  68. 越智伊平

    越智委員長 武藤山治君。
  69. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 最初に開銀と輸銀法の改正について、簡単に両総裁にお尋ねしておきたいと思います。  今度輸銀が外地法人に直接債務保証をする、こういう制度ができるわけですね。今までは日本の外地法人を持っておる親会社が融資するものに対する保証、今度は外地そのものの法人にも債務保証をする、こういう制度になるわけですね。今外地にある法人の数、たくさんあると思いますが、そういうものに直接保証した際の保証債務のリスク、そういうものは心配ないんだろうか。融資の場合は金利が入りますから、仮に焦げついても、それまでの間に利子収入がかなり取れますが、外地法人に対する保証というもののリスクはかなり大きくなる心配があるような気がするのですが、大倉さん、その点は見通しはどうでしょうか。
  70. 大倉真隆

    ○大倉説明員 ただいまの御質問につきまして、私どもが債務を保証いたします相手方は金融機関なんでございます。今のお話は、私どものもう一つの法改正といたしまして、外国の日系の現地法人に直接貸せるということに今回させていただきたい。従来親会社に貸しましたときにも、それに貸している金融機関に輸銀と一緒に貸せば保証するということでございましたから、今度外国の日系現地法人に貸すときにも今までと同じように、輸銀と一緒に貸している金融機関に債務保証することができる、そういうふうに変えておいていただきたい。  もう一つは、保証権限につきましては、今までは輸銀と一緒にお金を貸したときの金融機関に保証できる、こうなっておりましたのを、今回の改正でお願いしておりますのは、輸銀がかまないで民間金融機関だけで貸したときにそれを輸銀が保証できる。例えば今の米国輸銀がやっておりますようなこと、それができるようにしておいていただきたい、そういうお願いをしておるわけでございます。  ところで、おっしゃいますように、まさしくその保証というのも与信の一種でございますから、私どもは保証だから安易にやるというふうなことは決して考えておりません。保証するにつきましては、その債権の償還確実性というものを十分慎重に考えまして、私どもが実際に融資をする場合と同じように厳しく、慎重に考えてまいるというつもりでおります。−
  71. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 保証だけの場合の保証手数料というのはどのくらい取るのですか。
  72. 大倉真隆

    ○大倉説明員 これは私が決めるという法律上の仕組みになっておりますが、従来は大体〇・三%であった場合が多いというふうに御理解いただいてよろしいかと思います。今後も恐らくは〇・三を下らないという考え方をまず置きました上で、案件ごとにどういう保証料率をつくっていくか、実際に保証の需要が出てまいりましたときに十分慎重に考えてまいりたい。大体〇・三からもう少し上ぐらいになろうかなというふうに思っておりますが、これは民間銀行がそういう保証をいたしますときの保証料率も十分参考にするようにというふうに、法律にも規定されておりますので、その辺も考えながら運用いたしてまいりたいと思っております。
  73. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 今回の改正で、保証承諾額というのは従来よりかなりふえるという見通し、またふやさねば国際金融の状況から見て対応できないと考えるのか。資料によりますと、今までの実績を見ると保証承諾累計二千三百四十七億円。しかし、残は今日わずかで六十億円程度、こういう資料が手元にあるのでありますが、今回の改正で保証業務というのはかなり拡大をしようという意欲を持って改正するのか、この累計はどのくらいまでを一応予想ピークとして額を想定しているのか、その辺のこれから取り組もうとする見通しについてちょっと述べてください。
  74. 大倉真隆

    ○大倉説明員 私申し上げましたように、従来協融銀行に対して保証しておったという保証の実績は、大体御指摘のとおりの動きをしております。これは保証しましたものがリボルブいたしますから、現在の保証残高というのは大して大きな金額ではございません。今後これを非常に大きくふやしていくというふうには私、実は考えておりませんで、今回こういう規定をぜひつくっていただきたいと考えております背景を、やや時間をとりまして恐縮でございますが、御説明させていただきます。  今私の頭の中にありますのは、一つ典型的な例として、御承知の債務累積国というのがございます。これは今のところ国際的な約束によりまして、非常にこぶがある元利支払いを何とかならしていって、かなり時間をかけて払ってもらうという約束ができつつございます。一応の危機を乗り越えておりますが、今後そういう国々がちゃんと返してくれるという力をつけてやらなくてはいけません。そのためには、何としても今までの、彼らが借りた金の後始末だけではなくて、これからある程度新しい金が必要になってまいります。従来そういう国々に対する債権者は民間金融機関が非常に多うございます。その民間金融機関がその重さに耐えかねて、今後新しい金がなかなか出せないということになれば、それは公的な機関あるいは国際機関からも新しい金を出していかなくてはならぬ。そういうケースがかなり予想されまして、その場合には民間金融機関が、公的機関が保証するからもう少し新しい金のことも考えてくれないかということを言うようなケースが出てくるのではないか、そう考えております。  ところが、その場合の金額と申しますのは、これはやみくもに、政府が保証してくれるなら幾らでも出すよというわけにはまいらないわけでございまして、やはり国ごとに、ある期間はIMF、そしてIMFがその使命上、期間が終わりますれば、今度は世界銀行というようなところが、技術的で恐縮ですが、いわゆるモニタリングをいたしまして、新しく借りる金はこれぐらいにしておかないと全体がうまく動かない、これくらいの金の中で、例えばアメリカ、ヨーロッパ諸国、日本というのはそれぞれこれぐらいは提供してやることを考えてくれないかというような全体のフレームワークが徐々にできつつあります。その中の、日本がまあそれぐらいは国際的に協調してやってやったらいいではないかという中で、これを日本の民間でやるのか、私ども公的機関が直にやるのか、あるいは私どもが保証して民間にエンドースして出してもらうのかというようなことを頭に描いておりますので、決してこういう権限ができたから野方図にふえていくというものではございませんでしょうし、また、そのような運用をいたすつもりはございません。  その保証について、金額的に融資のほかに限度をつくるかということも中では議論いたしましたが、そういう実態でございますので、今幾らといって決めてかかるわけにはいかない。しかし、法律的には御承知のように、融資を含めまして私どもが保証いたします総額は限定がついております。自己資本の十一倍ということで今法律上決められておりますから、そういう枠の中でひとつ私どもの判断にお任せいただいて、しかし慎重に、誤ることなく運用してまいりたい、そのように考えております。
  75. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 輸出入銀行の昨年九月末の融資残高が四兆一千三百十九億円。この中で焦げつき、どうもこれはなかなか約束どおり果たせないな、そういうような金額というのはあるのですか。あるとしたらどのくらいの金額なんですか。
  76. 大倉真隆

    ○大倉説明員 私どもの資金運用残高は、現在のところ大体六兆円とお考えいただけばよろしいかと思います。(武藤(山)委員「資本金一億円以上のものでいいから」と呼ぶ)大体総額六兆円とお考えいただけばよろしいと思いますが、焦げついちゃったから取れないというのはございません。相手の事情によりまして、当初の約束よりは若干繰り延べて払ってもらわざるを得ない、それはこちらも了承いたしまして、繰り延べをやっておるのはこれはございますけれども、これはどう考えても取れる見込みがないから償却しちゃうというのはございません。
  77. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 開発銀行総裁吉瀬さん、この金利の問題、今大蔵省資金運用部資金の預託金利七・一%、開発銀行の貸し出しも七・一から七・四ぐらいですね。利ざやが余りない、ほとんどない状況ですが、今民間の金融が非常に緩んでいるとき、民間金融機関の金利も非常に安いですね。こういう高い原資を使って、民間と競合する政府金融機関の場合、これで一体今の民間活力とか、何か民間主導とか言われている時代に沿えるんだろうか。金利問題について、ちょっと所見を伺いたいのですが。
  78. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 御指摘のように、開銀発足当初には利ざやが二・幾つとか、四十年代には一・幾つというような利ざやでございましたけれども、今武藤委員御指摘の、最近の運用部からの借り入れと開銀基準金利を比較しますと、差が〇・六というようなことに相なっております。もちろん開銀の中に特利がございますので、そういうものを開きますといろいろ変化はございますけれども、確かに利ざやは縮小してまいっております。  ただ、一つ申し上げられることは、開発銀行の提供資金が非常に長期にわたる期間補完的な力を持っているというようなこととか、あるいは政府機関の審査を経て融資が行われていくことに関する、私どもから申し上げるのもあれでございますが、信用を受けるものからする一つの期待というものがございますので、最近のところでも、五十九年度も一兆一千六百二十四億の総枠はほぼ順調に消化されております。もちろん御指摘のとおり、利ざやの低下というものに対しては、私ども開銀の収益性の確保という面から対処しなければいけませんと思いますので、私どもとしては今後事業の効率的経営に努めてまいりたいと思っております。  ただ、一つ申し上げたいことは、最近外債発行を継続しておりまして、外債の発行残高が三千四百億ほどに及んでおりますが、これは幸いにいたしまして非常に低資金コストで調達されておるわけでございます。現在の開銀の資金構成、七割が運用部の借入金で一割が外債に依存している、あとの二割は自己資金というようなことでございます。今回法定準備金積立率を引き下げますけれども、法定準備金も幸いにいたしまして相当の額に達しておりますので、こういう点を総合勘案いたしまして、なお私ども銀行の体質改善に努めてまいりたいと思っております。
  79. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 先ほど伊藤君からも指摘されました地方への融資が、昭和五十六年が前年比マイナス三・六、五十八年マイナス六・二、五十九年六・七マイナス、六十年度は七・一マイナスと、地方開発の融資額がこのように減ってきているんですよ。これはどうも地方分権とか「地方の時代」とか、地方に重点を置くという発想に逆行するような気がする。これは資金量が足りないために、やむを得ず減らすところは結局地方開発枠だ、こういうことで安易に地方の枠を減らしているのか、需要がないのか、どちらに原因があるんでしょうか、地方の枠が減っているのは。
  80. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 一つには、金融緩和の時代を迎えまして、市中銀行もいろいろ低利資金をもって対応するようになっているということが大きな原因かと思いますが、一つは、やはり今経済成長はしておりますが、成長が産業によりまして非常にバランスを欠いておりまして、過去におきまして地方開発が盛んであったときには、素材型の産業のやや重厚長大の設備投資が地方に展開したという面もございます。最近でも、成長産業のエレクトロニクスとかいろいろなそういう面につきましては、開発銀行は十分その伸び率を確保いたしまして対応しておりますが、額の大きいものが非常に減ってきているというようなのがもう一つの原因かと思います。  しかし、御指摘のように、地方開発大事でございますので、私ども現在考えておりますのは、地方の行政機関と密接な連絡をとりましてプロジェクトの発掘を行っていこう、こういうぐあいに考えております。
  81. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 両総裁への質問は以上で終わりますが、これから大蔵大臣といろいろ論じたいことが山ほどありまして、時間が一時間でありましてあと三十分ですから、あれもこれも論ずることはできません。できるだけ結論だけを、政治家として少し論争してみたい。  日本もついにアメリカを追い越して対外純資産世界一の国家になってしまった。あるいはまた輸出競争力においても多くの品目で世界一の地位を占めてしまった。「大木は風に折られる」という。「水清ければ魚住まず」「出るくぎは打たれる」なんて、昔の人はうまいことを申しましたが、今、日本はそんな格好で、世界から大変風当たりの強い国家になっているわけであります。いい、悪いはいずれとしても、それは事実であります。  この状況の中で、つい最近いろいろな発言が新聞報道され、例えば先ほどのシュルツ国務長官のごときは、日本の貯蓄が多過ぎる、何とかこれを減らしたらいいんじゃないかというようなことを言ってみたり、もっと国内に投資すべきじゃないかとか、まさに内政干渉も甚だしいような発言を、平気でアメリカ側は日本にばんばん言ってくるような状態。またOECD、四極フォーラム、IMF、ECのそれぞれの意見なども、おしなべて日本の黒字減らしを要求し、もっと内需拡大をしてほしい。大体そういうところに集約をされた、日本に対する要望が出ているわけであります。  こういう問題の一番ぎりぎり決着は、結局今の貿易黒字を圧縮しろという要求だと思うのですね。  そこで、大臣、貿易黒字を圧縮する具体的な可能性のある道筋は何だろう。日本のような貿易立国で資源のない国は、資源国家との間では日本が赤字、資源を売ってくれない国とは日本が黒字になるのは、これは宿命なんであります。アメリカがそれをよく知ってくれないと、二国間だけで均衡させようというのはもともと無理な話なんであります。そういう点を、大臣は日本の経営を担当している財政の最高責任者でありますから、歯にきぬを着せないで率直に言ったら、この貿易黒字を圧縮する手だて、方法というのは具体的に何が考えられるのか。二階堂さんは、建設公債を発行して、公共事業をこの年度内にでもやったらいいじゃないかということを、きのうあたり大阪でしゃべっているようだし、また河本さんは、日本は時間を稼ぎ過ぎるから黒字になるのだ、もっと労働時間を短縮したら日本の輸出は減るだろうというような発言をしたり、よく中身はわかりませんが、税制改革でやればいいんだとか、みんな無責任なことをそれぞれぶち上げているのですね。大蔵省にやらしていてはだめだ、大蔵省にもう財政運営、こういうことをやらせないで、党主導でやればうまくいくというようなことを言ってみたり、国民を惑わすのも甚だしいと思うのであります。  こういうときに、本当に大蔵大臣として、可能性のある黒字減らしはこういうものがあると思う、そういうことを率直に勇気を持って言えないのでしょうか。ハレーションを起こし、いろいろ大変だということで遠慮せざるを得ないのでしょうか。今大変苦しい日本の状況ですが、率直な見解をまず大臣、述べてみてください。
  82. 竹下登

    竹下国務大臣 最近の一連したいろいろな、いわゆる外圧という言葉もちょっと必ずしも適当ではございませんが、外国の要人の発言というのの中で、私は、シュルツさんは言ってみれば大原則を比較的言っておるのであって、日本の経済政策の問題点というものは指摘しておるにしても、具外的に何をやれかにをやれということは節度を心得ていらっしゃるなという感じで、実は全文取り寄せて見ますとそんな印象を受けております。  が、いわゆる黒字減らしをどうしたらいいか。かつて非常に具体的な問題では、あれはウランでございましたか、現地へ保管しておいて、買いだめしたというような点がございました。具体的な問題で言えば、通信衛星なんかは、早く周波数等を決めれば、あるいは具体的な問題としては出てくる問題であろうかな、こういうふうには思います。が、基本的にはやはりドル高を是正していく。これは日本だけでできることじゃございませんけれども、ドル対円というものは、まずは短期的には金利差です。金利差でございますが、中長期的にはやはり双方の経済のファンダメンタルズでございますから、そのファンダメンタルズから見れば、なお円高基調にあってしかるべきだというふうに私は期待をしておるところでございます。だから、経済のファンダメンタルズはやはり「インフレなき持続的成長」という形できちんと守っていくことが、中長期的に見ればいわゆるレートの安定にもつながるものであるというふうに思っております。当面の問題といたしましては、したがって、金利問題というのも大きな影響がございますので、アメリカの財政赤字といわば高金利問題は絶えず指摘していかなければならぬ課題であるというふうに思います。  ただ、これも、金利問題についてはかなり議論いたしますが、財政赤字問題になりますと、若干私どもものどにつかえるのは、内政干渉にまで至っていくんじゃないかという気持ちが我々もないではございません。しかし、総体的に金利の原因が財政赤字にあるということは、絶えず指摘をしておるという現状でございます。
  83. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大体経済の見方は竹下大蔵大臣と私とそう違っておりません。私はやはりアメリカの財政赤字の根本原因は軍事費だと思うのです。とにかく軍事費を年間、日本の金にしたら五十兆近く、それだけの軍事費を使っていって、また世界各国全体で年間八千億ドルから九千億ドルの軍事費を使っているのですね。これは世界経済をおかしくするのは当然なのであります。アメリカはそれだけの軍事費を結局国債で賄わなければやっていけない。国債発行が約四十兆近いでしょう。そうすると、軍事費の大半を借金で賄っている財政に埋没してしまったのですから、これはなかなか抜け出るのは容易でない。したがって、ドル高なり高金利というものはそう簡単におさまらない。  ところが、アメリカ側はそれをごく短い期間で、年度間で黒字を減らせ減らせという政策を要求してくる。例えば食糧一千万トン日本で買ってほしい、まかり間違えば軍備をもっとふやしてこれを買えとか言ってくる。こういうことよりも、アメリカ自身、いかにして世界の軍縮を達成するか、むだな軍事費というものを減らすか、そういう視点でもっとしっかり国務長官からすべての長官が足並みをそろえて、自分たちの中身の問題を、他山の石というか、「人のふり見て我がふり直せ」という言葉が日本にありますが、日本のやっているようなことを本気でアメリカも内部から考えていかないことには、私はドル高の是正も高金利の是正もできないと思うのです。  これはかなり中長期的に時間を要する問題だと思うのです。アメリカは、これをもし短期間で処理しようとすれば、大インフレ政策しかないのじゃないかと私は見ています。こんなことで今アメリカの財政経済運営が続いたら、十年たたないうちに世界インフレに巻き込まれる心配がきっと出てくるような気がしますね。そういうことの警鐘を乱打するのが日本の大蔵大臣であり、総理大臣でなければならないのではないか、そういうことを最近ひしひし感じてならぬのであります。これはアメリカの内政干渉になるから、内部の問題で、大臣が答えるのは適切でないかもしれないけれども、アメリカもやはりそういう自分たちの財政経済の運営の仕方というものをじっくり反省してもらう必要がある。  結局、貿易競争というのは生産性の競争なんですから、生産性の高いものが勝つのは当たり前であって、自由貿易であり資本主義自由経済である限り為替レートは自由なんですから、やはりアメリカがもっと節度ある軍縮、そして財政赤字を減らす、そういうことによって金利を下げていく。それを長期的なプログラムをきちっとつくって、十年くらいでそういう方向を実現しますよ、それをサミットで彼が約束をし、世界に約束をするということをしてくれないことには、世界はいつも経済的な混乱と行きつ戻りつの錯誤を繰り返す。私はそんな感じがしてならぬのでありますが、私のただいま述べた見解は間違っていると思うか、それとも大蔵大臣、やや同じような感じだなと思うか。アメリカにしかられない範囲内で、ひとつ見解を述べてください。     〔委員長退席中川(秀)委員長代理着席〕
  84. 竹下登

    竹下国務大臣 軍縮というのは我が国の絶えず主張しておるところでございますので、財政赤字の削減という問題が結果として軍縮というものにつながっていくというのは、私は結構なことだと思います。ただ、考え方がいわゆる東西の均衡論という上に立っておるというところにも、一つ問題を置かなければならぬ課題だ。だから、包括的に財政赤字を削減すべきだ、こういう主張は絶えずしておるところでございます。  そういうふうに中長期的にしませんと、今武藤さんが御指摘なさいましたとおり、これを急速に収拾するにはいわば調整インフレしかない、こういうようなことになったら世界経済全体が大変に混乱を起こす。ただ、現状で見ますと、アメリカも、日本ほどにインフレ率が低いわけではございませんけれども、インフレ退治にはかなり効果があらわれておるなということは、いわゆる消費者物価の上昇率等から見て評価はされるではなかろうかというふうな感じがします。  今インフレ率の問題で事を論じますと、ここのところ七カ月ぐらい、西ドイツの方が日本よりも消費者物価の上昇率が、わずかでございますけれども低かった。ありゃ、ドイツに負けたな、こう思っておりましたら、先月またドイツより日本の方がちょっと低い。しかし、ドイツは日本と違いますのは、大変に失業率が高いわけでございますから、そこにやはり苦労があるなというふうな見方もしております。アメリカも、確かに消費者物価というのは安定基調になっておって、「インフレなき持続的成長」ということが一応言える経済状態にはあるなという感じは、私も持っております。  したがって、サミットの議論というのは、何度も申しますように、結局アメリカの財政赤字と、いわばドルの独歩高問題、日本の貿易黒字、それからヨーロッパの労使問題等の構造問題というようなところへいくのでありましょうが、可能な限り——サミット参加国で大体世界の総生産の五七%ぐらいにたしかなると思いますので、この中の調和のとれた経済政策をやっていこうという主張は、やはり絶えずやっていかなければならぬ問題だ。しかし、それにしても日本との二国間で見た場合も、貿易関係が大変黒字過ぎるという主張は、それはあるかもしらぬ。しかし、そこでは今武藤さんが御意見として言われたように、私は構造的問題も理解してもらわなければならぬと思っております。無資源国ですから、産油国とは大変な入超でございますし、そういうところでないところに対しては日本の場合は出超でございますから、そういうマクロで、あるいはグローバルな感じからの理解というものも、十分説得と申しますか、説明をしていかなければならぬ問題。  だから、数字にあらわれた問題と、もう一つは市場開放等においても、私は理解の不足というのもかなりあると思いますので、これはさらにいろいろな角度を通じて理解を深めていかなければならぬ課題はたくさんあるというふうに考えます。
  85. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そこで、アメリカとの日米二国間の問題ですが、私は過般、下田会議社会党を代表して出席をし、演説をしたのでありますが、そのころから、今言ったように日本には資源をアメリカはもっと安く、安定的に供給することを考えるべきだ。第一はアラスカの石油を日本に売るべきだ。ようやく五年にして、この間解禁になった。しかし、これも量がわずかである。あそこには天然ガスもある。アメリカには石炭がまだまだたくさんあるわけですね。しかし、オーストラリアの石炭より二五%ぐらい高いですね、アメリカは。だから、アメリカの石炭をオーストラリア並みの価格に合理化し得れば、石炭も日本に相当売れるはずなんであります。アメリカはそういう努力をすべきだと思うのですよ。  やはり無資源国日本に対しては、アラスカの石油やLNG、そして石炭、こういうものをもうちょっと思い切って解禁をし、資源を保存するんだという発想ではなくて、やはり相互依存の関係といったら、これをやるべきですね。安倍外務大臣が通産大臣のときにレーガンと談判して、ようやくここ一カ月前にアラスカの石油を、わずかですが、二十万トンですか、日本に供給することが決まりました。しかし、私は、これを本気でレーガンさんも考えるべきだ。こういうのをもっと二国間においては詰める。そして、値段の点もきちっと商業ベースに乗るように考慮してくれと。そうしないと、高いものを買うわけにいきません、これは経済競争なんですから。そういう点をやはりアメリカ側はもっと自己反省をすべきではないのか。それで、日本で困るような、食糧をとにかく一千万トン備蓄用に買えとか、軍事品を買えとかいうような、そういう押しつけ的なことは絶対受けてはならない。私は、やはりアメリカ自身がそういう資源輸出というものにもっと転換をしてほしいな。こういうことをぜひひとつ、これから蔵相会議やサミットや世界会議大蔵大臣は頻繁においでになるのですから、そういう場でもっと強く——今までも主張しているのでしょうけれども、ぜひもっと強く主張願いたい。これは希望であります。  それで次に、内需拡大策を図って輸入をふやして、貿易黒字を減らそうというところに大体一致してきました。内需拡大という言葉に反対する者はおりません。  しからば、国民のニーズ、国民が欲しがっている内需とは一体何なのか。大臣は何だと思いますか。日本の国民が、余っている資金をこういうところへ投資し、こうやってほしいという国民のニーズというのは一体何だろうか。そのニーズにこたえるには財政はもはや限界だとすれば、民間活力可能性のある手だてとは何か。まず根本は消費者あっての話ですから、ニーズがなければ、幾ら政府が号令をかけたって、経済は権力で動くものではないのであります。経済は自律的に動くのでありますから、政治の力や権力で経済を無理やりひん曲げようとすれば、必ずろくなことはないのであります。結果は必ず大変なことになる。そういうことを理解した上で考えた場合、国民の内需のニーズとは一体どんなものがあるだろうか、大臣の見解をちょっと聞かせてください。
  86. 竹下登

    竹下国務大臣 今日、自律的に、内需中心の経済発展はまず順調に進んでおるというふうに思いますが、内需拡大、内需中心型というのは、今武藤さんおっしゃったとおりで、だれもそれはいかぬことだと言うような者は今日おりません。したがって、財政がそれに対応するだけの力がないということになれば、民活という言葉が出てくる。民活という言葉は、言葉がひとり歩きをして、実体としてまだ目に見えたものは出てこないじゃないか。いや、あるではないか。関西空港もできた。できたことはできましたが、会社はできましたが、まだ工事にかかっているわけでもないし、目に見えたものがなかなかない。  今まで日本でやってきた比較的民活に近いものは、区画整理なんか、私はあれは民活に近いものだなというふうに思うわけでありますが、今内需の拡大の手法がどういうことがいいかということじゃなく、何が欲しいかといえば、私はやはり本当は公共事業に対する要求が一番強いのじゃないかなというふうに感じております。それを民活の中で消化していくということになりますと、その環境整備はよっぽど力を入れてやらなければならぬ。それが今日、手法としてはディレギュレーションでありましょうし、あるいは例えば都市開発なら都市開発環境に属するものはまず公共事業でやって、その中身の中で民活を生かしていく、こういうようなことを手法としては考えていかなければならぬではなかろうかなというような感じがしておるところであります。
  87. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 中曽根さんが総裁選の直前にブレーンを集めて、「経済政策研究会報告書」というのを出しました。これは「これからの経済政策と民間活力の培養」というサブタイトルのついた小冊子にまとめたものであります。その中で、これは大蔵大臣も聞いていると思うのでありますが、「閣議報告 五十九年十月十六日」、八・五ヘクタールの国有財産払い下げるという表があります。先ほど渋沢君も、この中の一つ林野庁六本木宿舎の問題を取り上げたのでありますが、これによると、大蔵省、旧司法研修所、千代田区紀尾井町、六千七百八十六平米、これは六十年度に処分可能見込み。文部省、国立学校、東京芸術大学音楽学部附属音楽高等学校、二千四百七十二平米、これは六十五年度以降処分をしよう。総理府、警視総監公舎千八百七十一平米、これは六十一年度以降処分可能見込み。こういうように、個別に処分可能年と面積、所在地を全部閣議に報告をしているんですね。これによって民間活力が生かされるという発想が一つ、こうあるわけですね。この国有財産払い下げることによる民間活力の活性化というのは、どういうものが頭の中で描けるんでしょうか。大臣、どうでしょうか。
  88. 竹下登

    竹下国務大臣 これは例えば——例えばというか、この東京二十三区内のもので見ますと、やっぱり昼間人口だけで夜間人口の少ない区は、大体定住人口、すなわち住宅というようなものを志向してくる傾向にあると思っております。したがって、この中で見ました場合に、もとより、先ほど渋沢さんの話がありましたように、いわゆる地方公共団体利用要望にもこたえていかなければいかぬという重大な一面を持っておりますので、それらとの総合調整をしながらの問題でございますが、私はどちらかといえば、二十三区内ということになりますと、やっぱり住宅型志向が強くて、そしてそれに付随して、避難場所をも兼ねる公園というようなものが、総括的に言いますと、ニーズとしては一番出てくるんじゃなかろうかな、こういう感じがしております。
  89. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 時間がなくなって、本論の一番時間をかけたいというところに今差しかかってきたのでありますが、せっかく我々の先祖が営々として税を納め、国の財産をためてきた貴重な土地であります。この土地を民間の大会社に払い下げしてしまうのはいいんだろうか、どうだろうか、この点を大臣、ちょっと考えてみたいのであります。一回売ってしまえば、もう二度となかなか買えない国有財産。しかも、これを競争入札で売らせれば、高い値段で、その周辺の地価をばっと高騰させてしまって、今度はその地域に別なことをやろうとすれば、もう地価の高騰で手がつかなくなる。住民にも大変迷惑をかける地価高騰をもたらすと思うのですね。  私はここでひとつ、今信託銀行が土地信託という大変すばらしい商品を開発をして、これから、土地は売りたくないが、信託に預けて開発をしたいというのは、地方においてもかなり盛んになってくるんじゃないかと見ているんです。その場合、国有財産を売り払ってしまって、一時しのぎに金さえ入ればいいという、この短絡的な財政赤字埋立方式、おれに言わせれば、日本列島切り売り政策だな。そういう国有財産切り売り政策というのを、中曽根さんはやろうと盛んに進めて、きょうの新聞でも、民間活力はやはり国有財産払い下げでと言っているんですね。中曽根さんはこれに執念を燃やしているんですよ。私はこの土地の売却をしないで、信託でやる方法をひとつ大蔵省は考えるべき段階が今到来したと思うのですが、詳しくは、これからまだ勉強しなければわからぬ問題がたくさんあると思いますが、そういう方法ではこの活用というものは考えられないものかどうか、大蔵大臣の感じはいかがですか。
  90. 竹下登

    竹下国務大臣 実は国鉄の用地が三千万円ぐらいでございましたかで売れたときに、国土庁なんかも、言ってみれば、財政はよくわかる話だけれども、周囲の地価を上げて、結果として好ましいことではないじゃないか、こんな議論もございました。そのころ、いわゆる信託問題というのが議論されて、これは私個人でございますけれども、率直に申しまして、これを大変な興味を持って見ました。  ただ、今の法律を読んでみますと、信託をするという前提がない法律じゃないかな、だから法律改正もそれは必要になってくるだろうという感じもいたしました。それとメリット、デメリットがどういうふうにあるのかということもございまして、私なりには非常に関心を持ちましたので、これからも私はこの問題については十分検討をしなければならぬ課題だという問題意識を持っておるところでざいます。特に民間の土地信託がかなり進んできただけに、非常に関心のある問題だというふうに思っております。
  91. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 理財局長大蔵大臣は関心を示しました。そこで役所側としては、この国有地公有地、市町村の持っておるものや国の持っておる土地、そういうものが今信託に出せない法律の規定国有財産法十八条、地方自治法二百三十八条の五、こういうものを少しいじらないと、積極的にはできないんですね。しかし、今の規定を例示的規定と解するか、または売り払い、私権の設定が信託の設定に当たると解するか、解釈によっては全くできないとも思わないのですが、今の解釈はどうなんですか。できるという解釈なんですか、法改正しないと、そういう信託に国有地活用することはできないという解釈なのか、まず解釈の点から先にちょっと説明してください。
  92. 中田一男

    中田政府委員 お答え申し上げます。  この解釈につきましては、参議院予算委員会で法制局長官がお答えしておられるのですが、その結論的なところは、「御指摘のような信託を行うことは現行の国有財産法のもとでは難しいのではないか、このように私どもは考えております。」というふうにおっしゃっておられます。確かに法律をどう読むかということで結論が変わってくることもあり得ると思いますが、有権解釈は法制局ということでございますので、私どももこの点は法制局と御相談しなければいけないだろうと考えております。
  93. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 わかりました。そう堂々と大々的にできない、こういう法制局の見解だということはわかりましたので、せっかく大臣が大変興味を示した点でありますから、今後これをひとつ私どもも法改正案をつくって国会に出す努力をしたいと思いますが、大蔵省自体、この国有財産法規定のどこをどのように直さなければ信託が堂々とやれない、こういう点をひとつ作業、努力をしてほしい。大蔵大臣、そういう作業の努力を命ずる意思がおありですか。
  94. 竹下登

    竹下国務大臣 基本的には興味を持っておりますので、やはり検討すべきだと思っております。ただ、私もそのことを考えたときに、さてどういうものが具体例としてあるのかな、それも調べてみなければいかぬな、こういう感じを持ったことを申し上げておきます。
  95. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 信託協会の専門家の意見をいろいろ聞きましたところが、欲しい、そういう具体的なやりたいというところは全国にはかなりある、ただ一応この法律がまだ整備されていないから受け入れられない。中曽根総理は、この新経済政策の中で、そういう意味では好ましからざる規制はどんどん取っ払えということも言っておるわけですから、その点では総理の言わんとしておることと今の大蔵大臣の発想は共通しているのでありまして、ひとつぜひその辺の検討を勇気を持って進めてほしい。そういう強い要望をお願いして、うちの方は代議士会が十二時半から始まるものですから、十二分縮めて私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  96. 中川秀直

    中川(秀)委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十分休憩      ————◇—————     午後三時二十四分開議
  97. 越智伊平

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。坂口力君。
  98. 坂口力

    ○坂口委員 けさほどから貿易摩擦に関するいろいろの質疑がされまして、少し私も聞かせていただこうと思っておりましたことがかなりもう既に議論されましたので、重複をできるだけ避けさせていただきたいと思います。  けさほど議論をされまして大臣が幾つか答弁をされました中で、貯蓄率に触れられまして、貯蓄率が高いことは悪いことでもないし、批判されることでもないのではないかという意味の御発言がございました。それから、年金につきまして、先進国に比較をして遜色ないという意味の御発言があったように記憶をしております。それで、前半のシュルツ国務長官が申しました、構造的黒字の内容一つに挙げられました貯蓄率につきましては、意見がいろいろ分かれるところであろうと思いますし、私もあえて大臣の御発言に対してもう一度質問しようとは思いません。ただ、年金につきましては、大臣が先進諸国に比べて遜色ないとおっしゃったわけでありますが、これに対しては少し異議を差し挟みたいと思うわけであります。  確かに現時点におきましては、サラリーマン世帯の標準的な年金額、いわゆるモデル年金と申しておりますが、このモデル年金を厚生省の資料で見ますと、六十一年度には十七万三千百円になっていく、現在のままずっと進んでいくといたしますとそういうふうになっていきますので、これは加入年限が三十二年で平均月収の六八%ということになります。このままでいきますとあるいは大臣の御発言も大きな隔たりはないということになるかもしれませんが、御承知のように昨年末から年金が審議に入りまして、現在参議院審議中でございます。間もなく本委員会におきましても国家公務員の共済年金がかかってくるわけでありまして、これらのこれからの改革案を総合してみますと、大臣の御発言は、現状の問題どこれから日本の年金がたどろうとしております運命とをいささかごっちゃにしたと申しますか、取り違えた御発言ではないかという気もするわけでございます。したがいまして、現在当面しております貿易摩擦に絡みますところのいわゆる日本における貯蓄率、そして年金制度を考えましたときに、このままでいいか。シュルツ長官が言いましたことは当たらずとも遠からずの発言ではないかと私は思う一人でございます。それに対しまして一つだけお答えをいただいて、次の問題に移りたいと思います。
  99. 竹下登

    竹下国務大臣 非常に大ざっぱな話をしたと、自分でも指摘されてみればそのとおりだと思っております。今後高齢化社会が急激に訪れてくるという前提の上に立って、今から準備しなければいかぬということでああして年金改革のスケジュールをお示ししておるわけでございます。参議院一つあって、その後また共済が追っかけてきて、それから昭和七十一年ですか、という一つのスケジュールを考えてみますと、今から対応していく必要があって、私は専門家でございませんので詳しくわかりませんが、たしか遜色ないという表現をいたしましたが、まずまずのものであるなという認識は私自身持っております。  したがって、趨勢的に見ますと貯蓄率はやや下がりつつありますから、年金というものが充実してきますと言ってみれば老後の心配がなくなるというようなことから貯蓄率が下がるか、こういうことになりますと、僕は必ずしもそうじゃないんじゃないか。やはり日本の貯蓄率というのは、基本的には国民性じゃないだろうかな。一つは、いろんなことに対して制度が完備してないから貯蓄率が高いんだという議論もあることはありますが、やっぱり基本的には国民性。それからもう一つは、これはあえて大蔵省だから言うわけではございませんけれども、例えばアメリカで銀行が一万四千五百ある、日本が相互銀行以上で百五十六ぐらいですか、そうなりますと、非常にアメリカは自己責任主義でありますけれども、それにしても銀行が、しょっちゅうという言葉はいけませんが倒れたりいろんなことをしますが、日本は金融機関というのは大体倒れないものだというような基本認識があるから、それもささやかであっても貯蓄率を上げている原因の一つであろうかなと思っております。が、貯蓄率が高いということは、あの第一次石油ショック、第二次石油ショックも、それがあったからこそべらぼうな金利にならないでいわば公債発行もできた、それでとにかく世界の中では一番早く石油危機から脱却したということも言えるでありましょうから、そういう面も含めて、貯蓄率の高いというのは悪いことじゃないと思っております。  ただ、年金制度が他に比べて遜色はないという表現は必ずしも適切でなかったかもしらぬ。まあ妥当なものだというのがお答えする限度がなと思います。ほかの国でもっと充実している国があるにはありますけれども、じゃそれがまたいいことなのか。あるいは自分たちが積み立てておったものをある一定年齢から貯金を引き出して生活するのと同じようなことだというので、非常に早目に年金生活の方へ入っていくということが、いわば働く喜びとか勤労意欲とかそういうものを阻害している面もあるかもしらぬ。専門家じゃございませんので、まあ妥当なものというのがお答えする限界ではなかろうかと思います。     〔委員長退席中川(秀)委員長代理着席〕
  100. 坂口力

    ○坂口委員 年金の方の議論は共済年金のときに譲らせていただきまして、これだけにさせていただきます。  日本の市場に関しましてこんな意見がございますが、これは一つだけ目にとまったものですから意見を聞いておきたいと思います。  エコノミストの二月号に、日米諮問委員会の米国側の事務局長をなすっているアルバート・L・セリグマンさんが書いておみえになります中に、日本の市場が閉鎖的だというイメージを払拭するためにはということで、日本は外圧が高まるとまとめて市場開放策というものを出してくる、またさらに外圧が高まるとまた出してくる、いわゆる小出しにまとめて次々出してくる。外圧が高まると出してくるというところが、現実はどうにしろ、外側から見ると日本は非常に閉鎖的だというイメージを受けるという意味のことを述べられている。したがって、そう外圧が高まらないうちにすぱっとやるべきことはやっておいたらどうですかという意味の発言をしておみえになるわけであります。  結果的には日本も開放策を次から次にとっているわけなんですが、後から考えてみますと、何回かに分けて小出しに開放策をやっていくんだったら、それほど言われないうちにまとめてすぱっとやっておいたらよかったのかなという気も私もしないことないわけです。これはなるほど傾聴に値する言葉ではないかと思って読んだわけでございますが、ひとつ御感想をお聞きをしたいと思います。
  101. 竹下登

    竹下国務大臣 中曽根総理が律令国家以来だ、こう言われますけれども、確かに日本の政策選択というのは、非常に慎重に下から積み上げてきて、だから積み上げたものの実行は確実だ、しかし、用心深く下から積み上げていくから時間はかかる、そういう成り立ちになっておると私は思います。諸外国の場合は目標が先にぽんと出て、それは非常にセンセーショナルに見える、しかし、後からやってみますと、結果としては必ずしもスピードはかかってない。これもそういう一つの国柄ではないかな、こういう感じがいたしますが、もう世界に冠たる経済大国でございますから、可能な限りそういう批判の一歩前に問題を解決するような積み上げ方もこれからは心しておかなければならぬというふうに私は思います。  しかし、結果としては日本は組み立てたものはなかなかきちんと仕上げるという仕組みになっておるんじゃないかな、その辺も相互理解の中でもっとお互いが理解を深めなければいかぬ問題であるというふうに考えます。
  102. 坂口力

    ○坂口委員 それでは、きょうの本題でございます日本開発銀行法の一部を改正する法律案及び日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案並びに登記特別会計法案、この三案につきまして質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、輸出入銀行の方からお聞きをさせていただきます。  今も議論になりましたように、貿易不均衡の問題が大きな問題になっているわけでございますが、そういう中にありまして日本輸出入銀行としてどういうふうに対応していこう、マクロでどんなようにお考えになっているかということが一つでございます。  それから、いただきました資料からちょっと計算をしてみますと、昭和五十七年には、これは当初計画予算でございますが、輸出が四九%、それから輸入及び投資合わせてでございますが、これが二六%でございます。それが五十八年には四五%対三〇%、五十九年には四〇%対三三%、六十年の計画では四〇%対三一%。こういうことでありまして、輸出の方は、そういう申し込みも少ないのかもしれませんし、あるいは政策的にそういうふうになさっているのかもしれませんが、若干下がってまいっております。それに対しまして輸入の方は、五十七年の二六%から三〇%台と若干上がってはきておりますけれども、三〇%で多少足踏み状態が続いている。これは、輸入に対してはやはりそういう希望が少ないものなのか、それともこれは政策的な意味でそういうふうに抑えておみえになるのか、その辺のところもあわせてひとつお話をいただければというふうに思います。
  103. 大倉真隆

    ○大倉説明員 まず第一段の御質問でございますが、私どもの役割からいたしまして、貿易摩擦あるいはその背後に場合によって存在しております文化的な摩擦、それを幾らかでも解消するために、私どもとしてできるだけのことはやってまいりたいというのがまず基本的な考え方なのでございますけれども、と申しましても、さて、なかなか具体的な即効薬のようなものは残念ながらございません。むしろ、ある程度長い時間がかかりながら、将来に向かってそういう貿易不均衡あるいは文化的摩擦を解消するために多少でも役に立つようなものを大事にしてまいりたいというふうに考えます。  具体的にはまず輸入金融でございますが、けさほど伊藤委員にもお答えいたしましたように、私どもの輸入金融のほとんど大部分はいわゆる資源開発輸入でございます。これにつきましては、こういうことを一生懸命支援いたします結果として、例えばオーストラリアとの二国間のバランスとかあるいはカナダとの二国間のバランスとかというもので、もしこういうことがなければそれなりに起こっていたであろう問題がかなり大幅に解消されるという面は確かにあろうかと思います。あるいはまた、武藤委員御指摘のように、もし双方の事情が許しますれば、米国のエネルギーなり資源というものの開発輸入が具体化することができますれば、これまたそういう意味でのお役に立ち方はあるのではなかろうか、そう思います。  輸入金融の中の製品輸入金融というのは、一昨年からやらしていただいておりますのですが、実績は残念ながらはなはだ微々たるものでございます。もう少し何とかならないかということで、今回の総合対策の機会に適用金利を引き下げることにいたしました。従来七・二から七・五五という金利幅でございましたものを、原則として七・一、特に摩擦が目立っている品目については六・八という金利も適用できるといふうにいたしまして、ひとつぜひこの意のあるところを酌んで、買えるものがあればぜひ買ってくれませんかねということをこれから関係の方々と御相談してまいりたいと思っております。  それから、海外投資の分野につきましては、これは従来は比較的開発途上国向けの投資が多かったわけでございますけれども、貿易摩擦の根本にございます問題を長い期間かかってでも解決するためには、やはり先進工業諸国に日本企業が出ていきまして、先方での雇用の創出に協力する、あるいは場合によって経営技術の移転にも貢献するということは、非常に長い目で見て大事なことだと思っておりまして、私どもできるだけそういうプロジェクトを支援するように、従来も一生懸命やってまいっておりますが、今後なお一生懸命やってまいりたい。  なお、この点に関連しまして、輸出ではそういう問題に関係ないかと申しますと、けさほど伊藤委員にお答えいたしましたように、私どもの担当は実は貿易摩擦が現に起こっている分野とは違う分野でございまして、いわゆるプラント輸出であり、受け入れ先は開発途上国が多いわけでございます。今後とも私どもの大事な仕事の一つであるはずでございます。  この面で今の御質問にお答えする側面があるとしますと、これは先進工業諸国と、単に競争相手としてだけ物を考えるのじゃなくて、やはり一緒に仕事をしていく。フランスでもドイツでもアメリカでもそれぞれ得意な分野があるわけでございますから、それぞれの得意な分野を持ち寄って、日本の企業と一緒になって開発途上国のために仕事をしていく、具体的に申しますと、国際コンソーシアムというものをつくって仕事をしていく、そういう傾向はぜひ進めていただきたいし、私どももできるだけ支援をいたしたい。それは長い目で見て、お互いの間のぎすぎすした関係を少しでも解いていくのに役に立つのではなかろうかと思っております。  同様の意味で、国際機関を軸にしていわゆるコファイテンスという、協調融資でございますが、こういうことも大いに考えてまいりたい。この点につきましては、世界銀行を初め各地域金融機関とも具体的な話を進めさせていただいております。  以上、第一点に対するお答えでございます。  第二点につきましては、実績的にごらんいただきますと、まさしくおっしゃったような姿が出ております。この点につきまして率直に申しますと、実は私どもは政策金融機関として市中金融を補完し、日本の経済政策に役に立つ分野に注力して仕事をしてまいる機関ではございますが、何としてもやはりプロジェクトが先でございますから、その意味では受け身なわけでございます。その受け身な姿が如実に出ておりますのが、資源開発輸入でございます。  資源開発輸入というのは、ある時期に非常に大型のものが幾つか出てまいりまして、その結果、私どもの貸付計画でも実際の貸出残でもかなりの伸びを示した時期がございますが、現在は高原で一服状態になっております。と申しますのは、やはり一応エネルギー資源あるいは鉄鉱石、石炭というようなものが、日本の国内需要の伸び方を頭に置きました場合に、例外もないわけじゃございませんけれども、大体九〇年度の前半ぐらいまではいわば手当て済みということで、私どもの仕事としては一服状態に入っておるわけであります。  その先をねらったものというのはこれから出てまいります。実際に手がけてから具体的に私どもの融資承諾になり、貸し出しになるのには相当長い時間がかかりますので、何年か後に現に今話題になっておりますもので申し上げれば、例えば西豪州のLNGの開発とか、あるいはいろいろ難しい問題がございますがカナダのLNGの開発とか、これはいわば九〇年代の終わりごろから先へ向かって、その時点での長期供給の安定化、供給先の分散化ということをねらったプロジェクトになります。それが具体的に貸付計画、運用資金計画に反映してまいるのにはまだもう少し時間がかかります。  そういう意味で、当面どこに一番ウエートを置いたらいいのだろうかという物の考え方はもちろん持っておりますけれども、くどくて恐縮ですが、やはりある程度受け身でございますから、その考え方がいきなり数字の上に出てくるというふうにはなかなかなりませんで、その点は御理解いただきたいと思います。  なお、海外投資につきましては着実に増加をしておりますし、今後とも一生懸命お手伝いいたしたいと思っております。
  104. 坂口力

    ○坂口委員 もう一つお聞きをしたいと思いますが、輸入、投資の部分について今も少し触れていただきましたけれども、もう一つ、地域別に見ました、東南アジアでございますとかあるいは北米でございますとか中南米でございますとかヨーロッパでございますとか、大枠に分けました地域別の、年度別には見せていただいてありますが、地域別に見た輸入、投資に対する額というのはどのくらいになるか。これは非常に細かくなりますので、余り細かく言っていただきましてもわかりにくうございますので、大まかに言っていただいたらどうなりますか、もう一つつけ加えていただきたいと思います。
  105. 大倉真隆

    ○大倉説明員 実は輸入、投資だけを合計したという統計はちょっと手元に持っておりませんので、輸入、投資それぞれの国別、地域別のものはございます。もちろん輸出のものもございます。  私ども取引先と申しますか、関係があります国が約百カ国ございますのですが、後ほどお手元に詳細をお示しする資料をお届けいたしたいと思います。本日ちょっと時間の関係もございまして、まず総額の残高ベースで申し上げます。これは輸出も入っております。直接借款も入っております。私どもの貸出総額の残高ベースでございます。  まず、地域で申しますと、東アジア、これは主な国としましては、中国、台湾、香港、韓国というあたりがあるわけでございますが、この地域が総残高の約一一%になっております。その中で大きいのは中国でございます。  次に、東南アジアという分類を持っておりまして、これは通常言われます東南アジアのほかにインド、パキスタンまで含めた地域分類でございます。これが残高でのウエートが約二七%、一兆六千億ばかりになります。この中ではインドネシアが非常に目立って大きな金額になります。インドネシアの場合が輸入の金融の金額が非常に大きいわけでございます。これはインドネシアの資源開発輸入、私どもが関連いたしますものがLNGでございますとか油でございますとかあるいはアサハンのアルミニウムでございますとか、そういうものがございますので、現在はインドネシアが大きなウエートを持っております。  次に西アジア、と申しますのは、通常の分類とちょっと違うかもしれませんが、イラン、イラク、シリア、ヨルダン、サウジアラビアといったあの地域でございます。これは地域合計でウエートは八%でございます。ただ、この地域には輸入、投資は余り目立ったものはございません。アラブ首長国連邦に投資として油関係の案件がございますけれども、全体としては余り目立ったものはございません。  次に北米地域、これはアメリカとカナダでございますが、地域としてのウエートは九%ございます。アメリカにつきまして輸入金融でかなりの金額が出ております。これはウラン関係でございます。  それから次に中南米地域でございますが、地域合計でウエートとしては一四%ございます。この中で、国として大きいのはやはりブラジル、メキシコというあたりが残高の多い国になるわけでございます。ブラジルにはやはり資源がかなりございますから、資源関連の輸入金融あるいは投資金融というものがある程度ございます。  次はヨーロッパ地域でございまして、ヨーロッパ地域にはソ連を含んでおります。ヨーロッパ地域のウエートは一七%、地域別としては東南アジアに次いで第二位の地域になります。この中でやはり金額的に大きいのはソ連でございます。これはソ連の特殊な事情もございまして、金融種類の分類といたしましては直接借款という分類に入るものが非常に大きくなっております。  それから、次の地域はアフリカでございますが、アフリカに対する貸付残高は、ウエートといたしましては約九%でございます。国として比較的大きな残高になっております国はアルジェリアでございます。  次に大洋州地域、これは御承知のとおり、オーストラリア、ニュージーランド主体でございます。オーストラリアにつきましては、かなりの金額の投資金融の残高がございます。  最後に、地域分類になじみませんけれども、国際機関向けの私どもからの融資もございます。ただ、残高は一%ということでそう大きなウエートではございません。  大変はしょって申し上げましたが、具体的な姿としましては、輸入金融につきましては何と申しましても資源開発輸入が中心でございますから、先ほどインドネシアのことを申し上げました。あとオーストラリアもあり、あるいはブラジルもあり、そういうところが中心になっております。  投資金融につきましては、従来は東南アジア、中南米地域向けというものが実績として細かいものが積み上がってきておったわけでございますが、近来、先ほど申し上げましたように先進工業国に対する投資、例えばアメリカの鉄鋼企業を日本の鉄鋼企業が買収するための出資資金、あるいはヨーロッパでのゴム製造企業の工場を日本のゴム製造企業が買収し経営するための資金、そういうものを私どもが金融いたしております。いずれも投資金融の部類に入りますけれども、投資金融として産業協力的なものが徐々に着実にふえつつございまして、私どもできるだけそういうところにも御支援を申し上げたい、さように考えております。
  106. 坂口力

    ○坂口委員 資金調達の面でございますが、今までは、これは輸出入銀行もそれから開銀の方も両方とも当てはまる話でございますけれども、主に財投から行っていたわけで、輸出入銀行の方を見せていただきましても、財投に対する自己資金の割合はだんだんふえつつはございますし、その他外貨債券等も入ってまいりまして次第に多様化はされてきているというふうに思いますが、しかし、まだまだ資金運用部資金が中心であることには間違いないわけでございます。  これを資金運用部資金で決して悪いというわけではないわけでございますけれども、これは私、予算委員会のときに少しこの議論をいたしまして、大蔵大臣には質問をさせていただいたことがございますが、これはまた年金の話に絡んでくるわけでございますけれども、できることならば年金資金は極力自主運用をさせてもらいたいというのが私の考え方でございまして、全部が全部そういうわけにはまいりませんけれども、たとえ若干たりともそういう方向に行けないだろうか。それは、非常に少ない財源の中でよりよい年金をつくっていくためにはそうせざるを得ないのではないかという気持ちもあるわけでございます。また、財投をお使いをいただいている以上は、貸し出しをしていただきます金利の方にもこれはかなりな限度があるわけでございまして、なかなか自由に皆さん方もおやりをいただけないということにもなる。そうした意味で、もう少し資金の多様化というものがまださらに進められないだろうか。  今回の改正案で輸出入銀行法の方は民間金融機関の貸し出しを保証するという形を認められたわけでありまして、こういうふうなことも一つ方法ではないか。しかし、開発銀行の方はまだそこまでちょっと至っていないようでございますが、相なるべく、こういうふうなやり方はそれなりのリスクもまた伴うものではあろうかと思いますけれども、多様化をさせていくという意味開発銀行の方もこれからそうしたことをとられる可能性は多分にあるのではないかと思っておりますが、ひとつ御見解をお聞きをしたいのと、これは大臣もしくは銀行局長さんにお聞きをした方がよろしいのかと思いますけれども、全体の資金調達というものを財投中心からもう少し多様化の方向へ進めていく道はないか、それに対してどんなお考えをお持ちになっているか、あわせてひとつお聞きをしたいと思います。
  107. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 坂口委員御承知のとおり、開発銀行法の十八条一項四号で開銀にも保証機能があるわけでございます。また、こういうものを活用いたしまして、実は外貨保証でアメリカからの輸入などに対して保証を供与をしましたり、あるいは過去において電力などにつきまして保証を供与したことがあるわけでございます。  一般的には、一般論でございますが、保証料が若干高いのじゃないかというような議論もございますし、それからもう一つは、保証を行うことによりまして、保証ということでやや融資がルーズに流れてくるおそれがあるのじゃないか、そういうような一般論がございますし、もう一つは、政策金融でございますので、融資を実行する金融機関の政策判断を一々またこちらがチェックしなければいかぬ、こういう手続の問題がございまして今御指摘のように余り動いていないわけでございますけれども、将来にありましては、こういうような機能も私ども持っておりますので、どの程度それが可能か、十分検討を続けてまいりたいと思っております。
  108. 吉田正輝

    吉田(正)政府委員 資金調達手段の多様化が必要ではないかという御質問かと思います。  現在、開発銀行と輸銀につきましては、一つは、このたびの法定準備金の引き下げとも関連いたすわけでございますけれども、自己資金あるいは回収金等が、長年の、三十年の歴史を持っておりますので、次第に蓄積されてきている、そういうものも回転しながら財投資金の依存度を引き下げている。現に、このたびは開銀につきましては四%台、それから輸銀も一七%台、財投の依存度を引き下げているという面もございます。つまり、自己資本による資金というものがございます。  それ以外に先生御指摘の外債でございますけれども、両機関ともそれぞれ活発にこの数年、外貨債をいろいろの手段を用いまして、開銀におきましては米貨債も発行するということで、各地で外債を発行する工夫を重ねておるわけでございます。  それ以外に考えてみますると、一つは、例えばこのたびの金融資本市場の自由化というようなことで、ユーロ円債を居住者が発行することなども民間などにはもう認められてくる、こういうことでございます。こんなものもいずれは認めるべきかというふうな議論も——実は内部で、このたびも認めるかというふうに議論もいたしてみたわけでございますけれども、何分にもまだ発足したばかりの資金調達手段でもございますので、なお市場の発達などを見ながら行っていく、考えていくという今後の検討課題などにも残されているように承知しております。  それから、ほかにも債券発行を国内でやるかというような議論もあるわけでございますけれども、内部の話を申し上げますと、なお国内の業際制度問題なども今後の金融資本市場の自由化等の情勢を見ながら検討すべき課題だということで、問題意識としては持っておりますけれども、とりあえずはこの自己資金あるいは回収金の改善、それから、ただいま御提案申し上げているような量的から質的機関へ転換を図っていくというようなことで、量の依存度も財投依存度を下げていくというふうなことを考えているわけでございます。
  109. 坂口力

    ○坂口委員 先ほど、開銀の総裁の保証料が高過ぎるというお話がございましたけれども、輸出入銀行の方の保証料というのはどのくらいなんですか。
  110. 大倉真隆

    ○大倉説明員 けさほど、伊藤委員でございましたか武藤委員でしたかにお答えいたしましたように、私ども従来、余り多くはございませんが、保証実績がございまして、その分は大体〇・三%の保証料を適用いたしております。  今回お認めいただこうとしております、輸銀供与でない場合、つまり輸銀供与でなくて民間金融機関が貸し出しをしている場合に輸銀が保証できる、その場合の保証料率をどのぐらいに設定するか。大体、今私の頭の中にはやはり〇・三%ぐらいのものがございますのですが、これは法律的にも銀行等の保証料、民間金融機関が保証する場合の保証料というようなものもよく考えて決めるのだというふうに規定されておりますし、なおお認めいただきました段階で具体的に各方面と協議してまいりたいというふうに思っております。
  111. 坂口力

    ○坂口委員 それでは次に移りたいと思いますが、これは開銀の方が中心になると思いますけれども、開銀の方のこれから進まれようとする新しい分野の中で、福祉に対してどんな分野があるだろうかということをお聞きしたいわけでございます。  一つは、これから高齢者がだんだんふえてまいりまして高齢者の雇用問題、それから重度身体障害者の雇用の問題、こうしたことと絡めて、そうしたお仕事をなさるところへ融資等が優先的に行くということになるならば、これは日本全体のためにかなり役立つのではないかというふうに考えておりますが、その辺の御用意があるかどうかということをひとつお聞きをしたいと思います。
  112. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 大きく言えば、例えば公害防止とか社会環境整備も一般国民福祉に関係があるわけでございますが、今坂口委員御質問の、直接福祉に行く融資でございますが、実は私ども昭和五十年から有料老人ホームなどを対象とする融資を始めております。また昭和五十一年度には福祉機器のリース、たとえば医療器具でございますとか、そういう種類のもののリースの制度も始めているわけでございます。  さらに、今御指摘の重度身体障害者の雇用、これをあえてなさる企業に対しましては、五十九年度、昨年度からでございますが、新たに融資を開始したところでございます。さらに、六十年度でございますが、福祉関連の住宅機器、これは身体障害者の方とか高齢者の方々が家の中を移動するための簡易な器具とか、あるいはそのための便利な浴槽とか、そういう種類のものをリースによって行うというリース事業に対する融資でございます。  今までの福祉関連融資でございますが、福祉関連融資の実態は、御承知のようにそう採算のとれるものでない、そういうような点から、融資に当たりましては私ども借り先と十分相談をしながらやってきておるわけでございますが、始まりました五十年度から五十八年度まで、ほぼ四百四十億の融資を幸いにして実行できておるわけでございます。内訳を申しますと、福祉関連機器の関係が三百九十八億、それから老人ホーム等の国民厚生施設の関係で四十二億というようなところでございます。なお、重度身体障害者に対する融資は五十九年度から始めたばかりでございましてあれでございますが、既に三件で約二億八千万円ほど融資を実行しております。  申し上げましたとおり、なかなか採算に乗らないようなことも多うございますし、また、あえて重度身体障害者を雇用する企業の数はまだ少のうございますけれども、私どもの見聞するところではだんだん出てまいりまして、私どもはこういう点につきましても開発銀行の大きな使命であると思いますので、将来これの充実を図っていきたい、こう思っておるわけでいございます。
  113. 坂口力

    ○坂口委員 ぜひひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。  それともう一つは、今回の改正の中で大きな柱になっておりますのが技術開発に対する融資であろうかと思います。技術開発というのは非常にリスクも高い分野ではなかろうかと思いますが、あえてその分野に踏み込んで大いに技術開発に手をかそうという姿勢は非常に立派な姿勢だというふうに私は思うわけでございます。  ここでひとつ、これは甚だ難しいことであることは私も重々知りながら実は申し上げるわけでございますけれども、技術開発をしまして、そこからいろいろの新しい製品機器、そうしたものが生まれてくるわけでございます。例えば一例を挙げますと、医療機械でございますとかあるいはまた医薬品でございますとか、そうしたものもその中の一つになろうかと思います、これは一例でございますけれども。それが間に合うものになるかどうか、それはリスクの非常に高い話ではございますが、立派に完成されますと、非常にまた高価なものになってくるわけです。  例えば今挙げました医療機器でございますと、今までにないような新しい機器がそこに誕生をいたします。そうすると、それはまたべらぼうに高い値段がつくわけでございます。そこで自由競争が働いて、他にもよく似た製品が出てまいりますと四、五年のうちに値段が十分の一ぐらいにがたっと落ちてくるわけでございますが、初期の段階におきましては非常に高い値段になる。だからこそ開発の意義があるということにも開発者にはなるのかもしれませんが、しかしそういう、内容は優秀であるけれどもべらぼうに高い値段がつけられたものが出てまいりますと、病院等はそれを買わねばならないというので競って購入する。そういたしますと、今度はそれを取り戻そうとして一生懸命になる、国民に対しても非常に大きな負担がかかってくる。また、国公立の大学病院だあるいは国立の病院だというようなところは、それに対して多くの金をまた出さなければならないというようなことになって、悪循環を繰り返すことになるわけでございます。したがって、何とか立派な新しいそういうものをつくってはほしいけれども、しかし、もう少しそれが適正な価格で社会に出ないものであろうかという気持ちがいつもするわけでございます。大きい病院等でも、非常に大きな赤字の原因の一つに、このべらぼうに高い医療機器の購入という問題があるわけでございまして、そうしたことを考えますと、国がそこへ持ち出します会もこれは大変大きな額でございまして、これはばかにならない額だというふうに思うわけでございます。  せっかく皆さん方がそういう新しい技術開発ということに取り組んでいただいて、そしてそれを進めていただきます場合に、そのことによって適正な価格のものが社会に出まして、そして国民全体にその利益が還元されるということになれば、皆さん方のやっていただきましたことがさらに大きな輪を広げることになるわけでございますが、しかしそうかと申しまして、私的企業に対してその価格を誘導するということも、またこれは非常にいろいろと問題のあるところではないかと思うわけでございますが、きょうは通産省の方もお越しをいただいていると思いますので、通産省の方からひとつお答えをいただいて、医療機器のことを例に挙げましたので、厚生省の方からもひとつ意見を言っていただきたいと思います。
  114. 坂本吉弘

    ○坂本説明員 ただいま医療機器の問題につきまして坂口委員から御指摘がございまして、その価格の問題でございますが、委員の中にも触れておられましたが、一般的に、こういった機械器具、こういったものにつきまして価格を幾らにすべしというようなことで行政的に介入するあるいは指導するということは実はなかなか難しいことではございます。ただ、私どもの方といたしましても、委員御指摘のように、できるだけ低価格で、かつ新しい技術というものが医療機器の市場に出回るように常々心がけねばならないと考えておりまして、開発銀行において行ってもらっております新技術企業化融資というようなことはもちろんのこと、その前段階で研究開発委託制度といったようなものも設けまして、次々とできるだけ新しい機器を出したい。  御指摘のように、どうしても新しい機器が出回った直後は、数も少ないこともございますし、コスト的にはなかなか高くつく時期があろうかと思いますが、そのうちに規模もふえ量産段階に入ると、ある程度値段も下がる。さらに、競争者というものが出てまいりますと、そこに市場といいますか、市場競争によって値下げも起こる。こういったようなことで、技術開発をできるだけいろいろな角度から進めるというようなことによりまして、市場に需給関係と申しますか、そういった客観的な条件の整備というものに常々心がけていかねばならないであろう、かように考えておりますが、なかなか直接的に幾らというふうに決めることは難しいかな、こんな認識でおるところでございます。
  115. 大西孝夫

    ○大西説明員 お答えをいたします。  厚生省におきましても、開発銀行の融資を医療機器、医薬品についてお願いをするという建前で今日まで来ておりますが、ここ四年間の実績では、医薬品については十二件、三十一億の融資をいただいておりますが、医療機器については実績がないわけでございます。  そこで、先生御指摘のように、医療機器、特に医薬品で申しますと非常に開発にリスクを伴うということで、多くのメーカーは自己資金でできるだけそういう開発をしたいという姿勢で経営に当たっておるわけでありますが、その資金が十分でない場合に日本開発銀行の融資をお願いするというケースもあるわけでございます。  そこで、価格でございますけれども、医薬品につきましては、御承知のとおり、八五%医療用薬品が占めて、その価格は薬価基準で決めておりまして、これが市場の実勢価格で決まってくるということでございまして、価格はメーカーが期待する価格より実際には低い価格に現在設定されるというケースが多くなっております。  医療機器につきましては、やはり限られた医療資源ということを考えます場合に、現実の医療ニードに合い、かつ医療保険運営上資するという要素を加えた形で、開発段階からそういう要素を考慮して行うことが大切ではないかということで、現在厚生省では医療機器の開発のあり方というものを、そういうユーザーまで参画いただいた形で開発段階から考えていくという総合的な取り組みを考えておるわけでございまして、先生御指摘のような形で今後医療機器の開発が行われ、国民に利益が還元されるような方向に持っていくべきだと私どもも考えておりますので、おおむね先生御指摘趣旨を踏まえて今後行政に当たっていけるのではないかと思っておるわけでございます。
  116. 坂口力

    ○坂口委員 今もお聞きいただきましたように、これはなかなか難しい問題を含んでいるわけでございますが、しかし、開発銀行の方もせっかくいい計画をしていただいているわけでございますから、そのことが一企業に対してプラスになるだけではなくて、その結果というものが多くの国民にプラスになりますように、ひとつこれはどの程度の指導をしていただけるのか、あるいは注文をつけていただけるのかよくわかりませんけれども、でき得る範囲内においてひとつそういうこともあわせて指導をしていただければというふうに思います。もし何かございましたら、一言……。
  117. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 五、六年前から開発銀行が技術振興融資につきまして相当力点を置いてまいりまして、技術振興融資をやるときに、今坂口委員の御指摘のとおり、技術の初期の開発段階におきましては開発銀行は設備投資を行っているわけでございますが、むしろ研究開発費が大変金がかかるというような御要望がございまして、今回技術開発に係る研究開発費の融資を法改正をいたしましてお願いしている趣旨も、それにかかるものでございます。  もちろん融資に当たりましては、非常にリスクの高いものは基盤技術研究促進センターがやりまして、これは無利子で、成功すれば金利を取るというようなやり方をやっておりまして、開銀の融資にはおのずから限界がありますけれども、御指摘趣旨を踏まえまして、できるだけ技術開発に対する融資が円滑に実行できるように努めてまいりたいと思っております。
  118. 坂口力

    ○坂口委員 では最後に、登記特別会計法案につきましてひとつお聞きをしておきたいと思います。  皆さんの方からいただきましたプリントを見せていただきますと、「大幅な人件費の抑制によるコスト減」になるということが書いてございまして、「今後とも増員のみによって対処しようとするならば、今後十五年間に数千人の増員を行う必要があるが、コンピュータを導入した場合には、これが全て不要になるだけでなく、現在稼働している非常勤職員二千名も不要となる。 したがって、コンピュータ導入については、一時的には、移行のための経費増が見込まれるが、最終的には、大幅なコスト減となる。」こういう御指摘でございます。  このとおりに進んでいただくことを期待をいたしておりますが、初めの計画はよかったけれども、途中でコストがかさんで、また、手数料をたんたんと値上げをしなければならないというようなことが続きましても困るわけでございます。これから十五年の間に機械化を進めていただきますためには、かなりの資金も要るわけでございまして、その辺のところは本当にこのとおり大丈夫かどうかということを念を押させていただきたいと思います。
  119. 稲葉威雄

    ○稲葉政府委員 先生御指摘のように、この問題は非常に長期にわたりまして慎重に対処していかなければいけないわけでございますけれども、その間、経済情勢の変化もございましょうし、あるいは技術の進歩というようなものを踏まえまして、慎重に対処して御趣旨に沿ったような運営になるように私どもとしては極力努力するということでございます。こういう行政は失敗が許されないわけでございますから、私どもとしては、先生御指摘のようなそういう事態にならないようにやってまいりたいと思っております。
  120. 坂口力

    ○坂口委員 最後に、大臣から三法案を含めまして、いろいろの議論をいたしましたが、一つ開発銀行の融資にかかわりますところのその利益たるものをいかに広く国民のために広げるかという問題、それから輸出入銀行の場合におきましては、それが新しい分野でいかにまた利用されるかという問題、それからまた今登記特会の方におきましては、手数料の問題にこれがはね返ってくる危険性はないかという問題、こうしたもろもろの問題点もあるわけでございまして、あわせて御答弁をいただいて終わりにしたいと思います。
  121. 竹下登

    竹下国務大臣 開発銀行というものができまして、経済、社会の推移に適応しながら今日まで発展してきたと私は思っております。その中の、いわば社会経済上のニーズに対応してこれからもその職責を全うしていかなきゃならぬ課題だと思うわけであります。  それから、輸銀ももともとは輸出奨励、時には外貨獲得とかいろいろなことが、徐々にいわゆる輸入に大きなウエートを占め、そして量から質への転換と、こういうようなところまで生々発展をしてきておりますので、これについても所期の目的を今後とも達成していかなきゃならぬ。経済協力等におきましても、二国間問題が出ますと、まずは円借何ぼだ、その次は必ず輸銀の融資は何ぼだ、そして一般のバンクローンがどうだ、こういう順番で折衝していくわけでございますので、より一層、いわば国際的地位が上がれば上がるほど、その果たす役割もまたそれに対応していかなきゃならぬと私は思います。  資金調達の面におきましても、国際化、自由化のこういう時代でございますので、今後そういう市場の進みぐあい等を見ながら十分検討していくべき課題だと私は思っております。実際部内では検討されたということも承っておるところであります。  それから登記特会は、これは本当はかなり長い間の、ある意味においては悲願というと法務省の方にはちょっと表現が適切でないかもしれませんけれども、ある意味において登記特会をつくるというのは悲願でなかったかとも私は思っております。そこで、先般審議していただいたときにも御指摘を受けました、あへん特会といういわば他省庁のものを一つスクラップしてつくったんじゃないか、こう言われましたが、それはそれとしましても、とにかくこの行政改革において特会を設置するその必要性は大変にあるという判断をいたしましたので、ことしこれに踏み切った。  今後、確かに金がかかるだろうと思います。それについては、法務省から十五年計画の算定というのも見せていただいたことがございますけれども、現段階ではそれは未確定な問題でございますので、これからも、今後のコンピューター化の段取り等は法務省におかれますところの御検討をまって、適切に対応していかなければならぬ課題だというふうに思っております。
  122. 坂口力

    ○坂口委員 十分ばかり早うございますが、答弁が非常によかったものですから、早く終わらしていただきます。ありがとうございました。
  123. 中川秀直

    中川(秀)委員長代理 安倍基雄君。
  124. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今まで同僚議員がいろいろ質問されてきまして、また貿易摩擦についても皆さんいろいろお聞きになったのでございますけれども、大臣御承知のように、私も実は、木材について関税を下げちゃ困るよ、補助金のいわば一括削減というときに大きな穴を将来あけるような関税引き下げはおかしいじゃないかということを強く主張したわけでございます。最終的には木材については比較的モダレートな形で回答が出たと思います。  この点について、外務省の方にお聞きするかあるいはまた大臣に、両方聞きたいのですけれども、アメリカの反応はどうだったのだろうか。つまり、頑張ってよかったのではないかという感じを私は持っておりますけれども、私の論議は、四つの品目丸々百点満点とる必要ない、やはり頑張るべきものは頑張らないと、次の新しい品目をどんどんぶっかけられていくんじゃないかというようなことを言ったわけでございますけれども、その後の動きについて、外務省どう把握されておられるか。そして新しい品目、この前食糧を買えというような話も出てきたわけでございますけれども、例えばアルミとか化学製品などについて、何か新しい品目をまたねらい撃ちしてくるんじゃないかという話もございましたけれども、どういうぐあいに受けとめているわけでございましょうか。     〔中川(秀)委員長代理退席、熊谷委員長代理着席〕
  125. 恩田宗

    ○恩田政府委員 今般の経済対策に関する米国における動きでございますが、簡単に申し上げまして、中曽根総理以下政府のとったこの措置一つの大きなステップとして評価する、しかし、今後とらなければならない政策は残っているので、それは成り行きをぜひ見守りたい、こういうのが大ざっぱに言って米国政府の反応であろうかと思います。議会筋については依然として厳しいものが残っているというのが状況でございます。  それから、その次に先生の御指摘になった四分野以外にどうであろうかという問題でございますが、米国はとりあえず、米国の製品で競争力が強いものであって日本においてその市場の可能性が高いもの、こういうことで四つを選んだわけでございまして、今後これの日本における市場のアクセスの拡大について日本側とぜひとことんまで議論したい、こういうことでございます。したがいまして、今後どうなるかということにつきましては、もうちょっと様子を見てみないとわからないというのが軌状ではないかと思います。
  126. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 率直に言って、大臣、頑張ってよかったとお思いになりますか。答弁するのはなかなか難しいかもしれませんが、どういう御感想を持っていらっしゃいますか。
  127. 竹下登

    竹下国務大臣 これは私は、木材問題というのは前からの問題でございますけれども、いわゆる針葉樹の合板でございますから節がありましたり、だから日本への今日の輸入量はそう大きなものではございません。むしろ日本の合板業界が一番気にしておったのは、それが広葉樹に広がって、いわゆる東南アジアの製品輸入という問題に対する圧力というものを心配しておったと思うわけであります。  ただ、向こうの山林関係の人は自由貿易主義者で、私個人的に人格者だと思っておりますので、そういう原則を主張しておられて、そしてその原則というものを六十二年からということできちんとお約束をすれば、それなりにその問題については理解していただける相手方だな、こういう印象を実は私は個人的に持っておりました。と申しますのも、合板議員懇談会というのの会長を私はやっておったことがございまして、そういうことからそういう印象を持っておったわけでございます。したがって、ちょうど円ドル委員会と同じように、ある種のスケジュールさえきちんとすれば合意に達し得る問題ではなかったか。  しかし、これからそういう事態を想定いたしまして、国内対策は川下川上と言わず基本的に考えなければならぬ時期に来ておることは承知をしておるつもりであります。
  128. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いずれにいたしましても我々がこうやって補助金を本当に一括削減というときに、アメリカさんが言ったからといって、将来大きな補助金のいわば種になるようなというか、関税でもって補助金を代替しておったのが、その分だけ補助金が大きな支出になるというような形のことは避けていただきたいと思うのでございます。  貿易摩擦問題はこのくらいにいたしまして、今度の新しい法律でございますが、今坂口委員からもいろいろ話がございましたけれども、輸開銀ともに資金運用部の資金が中心でございます。大分外債など、あるいは自己資金などで、今さっきもお話があった、開銀は三割くらいはそういったものでやっておるということでございますけれども、私ども今非常に考えておりますのは、こういった運用部資金がこれからどうなっていくのか。つまり、さっき年金の自主運用なんかもございましたけれども、高齢化社会がどんどんと進展していきますと、当然その分の支払いがふえていく、原資のふえ方がだんだん鈍ってくるということがございますし、午前中お話がございましたけれども、金利が当初のころは政府金融機関の基準金利、プライムと郵貯の差がべらぼうにあって、それがだんだんと縮まってきて、結局輸開銀のいわばプライムと運用部預託の差が非常に縮まってきている。当初から比べて十分の一くらいでございますか、十年前から比べても三分の一くらいになっているという状況でございます。  こういう資金調達の面で、財投はこれからどういう伸びぐあいというか、見通しであるのか。資金調達コストがどうやって動いていくのだろうかという、先の見通しをちょっとお聞きしたいと思います。
  129. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 財投の問題でございますが、今御指摘のとおりの問題があるわけでございます。先行きの見通しを立てることはなかなか難しいのでございますけれども、財投の原資といたしまして、まず、郵貯があるわけでございますが、これは一般の民間金融機関の預金と同じように、やはり経済の安定成長下におきましてはそう伸びが期待できない。また、いろいろな金利自由な商品が出てまいるわけでございますから、当面はなかなか伸びが期待できない。それから年金資金でございますけれども、これも年金受給者の増加等に伴いまして、どうしても支払い額の方がだんだんふえてまいるということで、従来と同じように積立金がたまるというわけにはいかなくなってくる。簡保のお金も郵貯と同じでございまして、そうそう高度成長期とは違いましてなかなか伸びが期待できない。それからまた自己調達いたします政府保証債につきましても、国債をこれだけ出している状況下でさらに政保債をどんどん出していいかということになりますとおのずから限度がございますし、また市場の消化能力等もございます。また政保債は一般的には運用部資金よりはコストが高いという点もございますので、余り政府関係金融機関なり財投機関が政保債に頼るのもこれまた問題であるということもございまして、おのずから原資につきましては限度があるわけでございまして、その点につきましては、資金調達につきましては今後十分いろいろなことを考えながら対処していかなければならない面があると思います。  また同時に、量的な面のみならず質的な面におきましても、金利が自由化されてくるに従いましてどうしても資金調達コストが高くなってくるという状況があるわけでございますので、この点につきまして、どういうふうに資金調達コストを薄めていくかというふうな点があるわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましても、こういう問題につきましては十分前広に勉強しておく必要があるということで、現在、理財局に財投研究会というものを設けまして、今勉強中でございますけれども、場合によりましてはもう少しオフィシャルな場で幅広く検討していただくことが必要ではないかと考えております。
  130. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 こういうことを考えますと、輪開銀の資金調達の面、さっき坂口委員が指摘されましたけれども、それを多様化していくということも必要かと思いますけれども、それとともに、これからの運用がもちろん公共性と収益性と両にらみでいかなくてはいけない、今までのように好況であるからどんどん使ってしまえということにいかないということが大きな問題になると思うのでございますけれども、今回の開銀の出資を認める、これはある意味からいうと、民間資金を集めるために中核になるという、非常にプラスの面があるわけでございます。  ただ、一面、出資というと固定化してしまって、融資であればほかの銀行もございますから、横並びでおのずから一つのルールがあって、めちゃくちゃな貸し方はできないが、出資となりますと、ほかのものがないものですからついつい、ついついといっては言い方が悪いけれども、固定化された資金、本当に収益を生んでくるのかどうか、あるいは収益も生まないままにずっといってしまうのかどうかというおそれがあるわけでございますけれども、こういった収益を生まない投資が累積する可能性がある。それにどう歯どめを設けるかということが一番大きな問題になるのではないかと思うのでございますけれども、この点、どういう歯どめを設けられる御予定であるかということでございます。
  131. 吉田正輝

    吉田(正)政府委員 このたびお願い申し上げております開銀の出資機能の整備でございますけれども、これは先生も御指摘いただきましたとおり、やはり国民経済的緊要な課題であるという認識でございまして、こういうものは初期段階におきましてはリスク性もございますし、低収益性もある、民間だけでは適切な対応が困難であるという分野でございますので、例示をいたしまして、例えば技術開発都市開発等の分野で民間を補完誘導して、このような分野における政策的緊要性の高いプロジェクトを適切に遂行するという観点で行うものでございます。  このような誘導あるいは補完するような分野は、おのずから限度があると考えられるわけでございます。     〔熊谷委員長代理退席、熊川委員長代理着席〕 そういう意味ではおのずから限度があるという意味でも歯どめはあるわけでございますが、先生の御指摘のような点もございますので、出資対象は麻薬種類ごとに政令で定めるということにしておりますし、また、実際の出資に当たりましては、個々に大蔵大臣の認可にかかわらしめるということにしているわけでございます。  それから、そのようなチェックは質だけには限りませんで、規模の面でも、もともと開銀の基本業務は当然のことながら融資にあるわけでございますので、出資総額も現在の開銀の収益構造を変更しない範囲という基本的プリンシプルを守りながら、開銀の財務の健全性を損なわないように運営してまいりたいというふうに考えておるわけであります。  確かに最初に申し上げましたとおり、高リスク、低収益性の克服ということを考慮いたしますると、御指摘のような収益性の問題についても、固定して収益を阻害するのではないかという点はあるかと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、これによりまして民間資金が誘導されてプロジェクトの円滑な推進が図られる、それからリスクの点につきましても、開銀の審査能力というのはこれは相当の長い経験を積みまして充実しておりますので、長期的な回収可能性も十分識別判断することができるというふうに確信しておるわけでございます。  したがいまして、そういうようなことから、全体を通じまして開銀の健全な財務基盤は損なわないという範囲で対応可能というふうに私どもは今回の御提案について考えているわけでございます。いずれにいたしましても、御指摘の点は十分踏まえまして、今後の出資制度の運営に当たってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  132. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 それでは、個々のプロジェクトについては個別に認可をするということであるという点でも、二重チェックということかと思います。  技術開発の問題につきましては私はまことに賛同するのでございますけれども、都市開発、これも必要なんですけれども、ただ私、ちょっと心配なのは、この前補助金のときにいろいろ論議したのですけれども、大体地方税なんか、メガロポリスにほとんど集中してしまっておる。例えば東京都なんというのは、人口が一〇%以下なのに地方収入一七%も入ってきている、法人住民税は二五%入ってきているというようなことでございまして、今横浜のいわば計画が俎上に上っておるようでございますけれども、私は、本来こういったのは、そういうメガロポリスに財源が集中している以上、地方自治体が自分でやったらいいんじゃないか。要するに、国の資金をつぎ込むとますますいわば地方の格差と申しますか、そういった問題がクローズアップするのではないか。  特に、都市開発、地域開発というのは、政治家たちが一生懸命自分の選挙区にそれを取り込もうとする。それも連れてきた先生が、今や地方財政は火の車でございますし、国もなかなか苦しい、そうなると国の資金をこういった形で持ってきたものがえらいプラスになるというので、いわば政治的な引っ張り合いになる可能性もあるのではないかなということでございまして、先生方、いい先生も悪い先生もいらっしゃると思いますが、票が大切なことは皆さん同じでございますので、どうしても自分の方に引っ張り合う。となりますと、この都市開発というものは、さっきちょっと人によっては議論が違ってくると思いますけれども、ちょっと問題ではないかな。ますます自治体の格差を拡大するのじゃないか。よほど慎重に扱わなければいけないんじゃないかという気がいたしますけれども、この点、大蔵大臣あるいは総裁、どうお考えであるかお答え願いたいと思います。
  133. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 まさに御指摘のような問題あるわけでございまして、私どもも、核都市の拠点整備というような種類のことで、あるプロジェクトに対応する場合にも、開銀法の基本精神でございまして、他のものができないときに開銀が出ていくという原則は貫こう、こう思っております。  また確かに、ある地域は財政力のあるいは若干豊かな都市を含むかもしれませんけれども、プロジェクトそのものはやはり懐妊期間が長く、なかなか収益が期待できないというよなもので、そういうものに開銀が投資を出資することによりましてプロジェクト全体が将来収益性を確保するということを目途としているわけでございます。  ただ、御指摘のようないろいろな意味の、それが乱に流れるというようなことは、私ども厳に慎みたい、こう思っております。
  134. 竹下登

    竹下国務大臣 かつて私ども地方からいえば、いわゆる地開枠といいますか、地域開発枠、あれは大変ありがたいものだなと思いました。そういうことから見ますと、今安倍さん御指摘都市開発というと比較的裕福な自治体というふうに見られがちでございますけれども、しかし現実問題としてそう不交付団体ばかりあるわけでもございませんし、その辺やはり開銀が、他の金融機関が直ちに出動できない収益性の問題も、長期にわたる見通しというものも立てなければいかぬというところで、適切に対応していかれるべきものだし、またそうあることを私も信じておるところであります。
  135. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 東京都にしても、かつては震災の後は外債などを出したこともあるわけでございますし、それぞれの大きな地方自治体ではそれなりの財源調達能力もあるわけでございますから、やはりこういったものは、国は、開銀は最後に出ていくという言い方は悪いけれども、彼らが十分準備をした後に、添え物といった言い方は悪いけれども、むしろそういったような姿勢でもいいのではあるまいかな、本当にそのプロジェクト、プロジェクトが国の全体から見でぜひ必要であるかどうかという点は、やはり十分考えてやっていただきたいと私は考えるのでございます。  この点私も、さっきの坂口委員のように、だんだんと違う形の、財投じゃない形で資金を調達していけば身軽になるかと思いますけれども、やはり財投を中心の公共性というものである以上は、政治家の食い物にされないようにということを私は本当に心配するわけでございます。  主な開銀についての論点はその辺かと思いますけれども、今度輸銀法の関係で、これはさっき部分的に問題としても出たわけでございますけれども、今度、輸銀が現地法人に直接融資することのメリットと申しますか、従来は親会社に、あるいは外国の政府機関等に貸していた。この点は非常に安心であったわけですね。例えばイランなんかの場合も、親会社に貸しておった。だから、向こうがだめになっても、結局親会社からちゃんと払ってくる、向こうの政府機関から払ってくるということで、貸し倒れもなしで済んだ。ところが現実問題として、今度は現地法人に直接融資するという話になりますと、よほど慎重に調べなくてはいけない。親会社に保証させるというような手段も講じるのじゃないかと思いますけれども、しかしそれはそれなりに十分調べるネットワークが本当に輸銀に備わっているかな、そんなことを言っては申しわけないのですけれども。親会社ならしょっちゅうづき合っているわけですからその辺は心配がないけれども、直接融資することが、どうしてもそういう手段を講じなくてはいけないのかな、むしろ今までどおりでもよくはなかったかなということと、それだけ調べる、別にアビリティーをどうのこうのじゃないですけれども、ネットワークを持っていらっしゃるかという点をひとつお答え願いたいと思います。
  136. 大倉真隆

    ○大倉説明員 御高承のとおり、今までは日本におります親会社が海外子会社に出資をしたり海外子会社に長期資金を貸したり、そういう資金需要を親会社に対して私どもが提供しておったわけでございます。今回新たにお認めいただこうとしているのも、実はそういう伝統的な手法を必要があると認められる場合には補完することができるようにしようという考え方でございまして、今回のやり方が主流になるというふうには考えておりません。  じゃその補完するというのはどういう場合だということになりますと、やや大げさに言いますと、長い目で見れば現地法人が一人前に育ってくれる、自分の信用力で現地の市場で資金調達ができるようになる、これが将来的には一番望ましい姿である。いつまでも親にぶら下がっているというのじゃぐあいが悪い。そういった育っていく過程で、ある程度現地の金融機関からは調達できるというようなことになってきておる。しかし、まだ現地の資本市場そのものがなかなか育ってないというようなケースはあり得るわけでございます。そういうときに、日本側の資金調達部分についていつまででも親会社スルーでしか調達できないというのじゃない、子としての資金調達の一つ方法に日本の金融機関から直接借り入れる、それが場合によっては輸銀である。民間金融機関はもちろん今でも貸せるわけですが。そういうふうな、いわば育っていくプロセスで親会社からだんだん離れていくことが現実的に妥当だし、子会社としてそれなりの担保力もついてきておるというふうなケースを想定してあらかじめ用意をいたしたい。あくまでも補完的なものとして考えております。  ただ、そういう経過的な局面で、御心配のような、今までどおりだっていいじゃないかということももちろんありましょう。今までどおりのやり方の方がよければもちろんそういたします。それから、信用力になお若干問題があるといたしますれば、親会社から保証をとるということも考えております。  第二番目の御質問で、そういうのを一体ちゃんと調べられるのかという話で、これは一生懸命調べなくてはいけないわけでございますが、実は今まででも親会社に貸すときに、その貸す金はどこに使うのですかという話で、当然現地の事業体の内容なり現地企業の資産内容、信用力あるいは財務状態というものは調べておるわけでございます。駐在員がやれるケースもございますし、なかなか駐在員だけでは手に負えない場合にはこちらから人間が現地に参りまして、ある程度時間をかけて実査をするということもいたしておりますので、少ない人数で大変ではございますが、そういう点ではできるだけ遺漏なきを期してまいりたい、そう考えております。
  137. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 それでは、当面はそれほどの需要はないというぐあいに見ていらっしゃるということと、もう一つは、いつもいつも親会社に保証させるわけではないが、心配なときには親会社に保証させるというぐあいに理解してよろしゅうございますね。まあそれはそれとして、やはり非常に慎重に扱っていただきたいと思います。  それとともに、さっきも問題になりましたけれども、いわゆるカントリーリスクのある国に民間が貸すときに保証してやる、それはそれなりに非常に意味があるかと思いますけれども、逆に本当にカントリーリスクがあると、その分しょい込んじゃう可能性は十分あるわけです。ですから、そのカントリーリスクのある国に融資するというのは非常にいい面もあるけれども、万が一それが膨大になったときに、それは国が一国というか輸銀が全部しょってしまうことになるのではないかな。その辺のバランスというか、プラスの面もあるけれども、逆に危ないところだから保証しちゃうんだ、こういう話になるわけでございますが、民間銀行が割合と気楽にどんどん貸してしまって、最後にはツケが輸銀に回ってくる可能性もなきにしもあらずじゃないかなということが一つの心配でございます。  もう一つ、これは一緒にお聞きしたいのですけれども、さっきもちょっと出たかもしれませんけれども、最初考えたときは恐らくそういったことでなかったんじゃないかと思うのですけれども、今回の措置は貿易摩擦解消策という、もともとそういう意図があってこういう改正になっておるのかどうか。それは貿易摩擦の解消に実際に役立つとお思いであるかどうか。この二点についてちょっとお伺いしたいと思います。
  138. 大倉真隆

    ○大倉説明員 民間金融機関ももちろん同様でございますが、私どものように海外取引を主体で仕事をいたしておりますと、カントリーリスクと言われるものをどう判断して運用するかというのは確かに大変大事な問題でございます。相手の国のあることでございますから、公表いたすようなことはいろいろまた影響が出ますけれども、やはり部内としてはその問題は真剣に勉強をいたしております。  安倍先生非常によく御承知なんで、ややテクニカルな用語を使って恐縮でございますが、結局ソルベンシーの観点から、例えばAからEにランクづけをしてみたらどうなるだろうか。その場合のソルベンシーは、単純に経済的なファンダメンタルズのみならず、その国の置かれた地政学的な地位も入れて考えてみる。一方でリクイディティーの面から現状いかん、今後数年間どうなるだろうというので、例えばAからEにランクづけをしてみる。そのマトリックスの中で、ある国に問題というか懸案が出てきたときに、この国は例えばCのCにいるなとか、EのEにいると幾らこれを思ってもちょっと手が出ないわけでございます。しかし、今問題になっている国は、いわばCのDであったりあるいはCのCであったりという岡が割合多いわけであります。そういう国に今後与信をどう考えるかということは非常に慎重に考えなくてはいかぬ経営上の一番大事な問題でございます。  ただ、今回法の改正をお願いしておりますことについて御説明いたしますと、そういう国でも、今の金融危機は一応乗り切ったけれども、やはりかなりの時間をかけてみんなが一緒になって協力していかないと、もともとが全部パアになってしまうということも十分予想できるわけでございまして、そのためには新しい資金というものも、国際的に見てそれぞれの国とその国との関係に応じてそれなりの国際協力をしていくということが必要な時期が必ず来る。そのときに日本の相応の金額というのは幾らかというのは、もちろん全体としていろいろな議論の積み重ねの中からおのずから見当がついてまいりましょう。その見当の中で民間資金に純粋にどのくらい出してもらうというふうに考えるか、あるいは政府資金がみずからどのくらい出せると考えるか、あるいはその中間で、政府機関の保証で誘導して民間資金を動員することを考える、そういう枠組みの中で私実は考えておりますので、保証機能ができたら幾らでも保証してあげますよ、幾らでも貸してください、私の方は仕事があればあるほどうれしいのですというふうな乱暴なことを考えておるつもりはございません。全体としての法律的な与信限度枠ももちろん規定されておりますから、与信限度枠の中で具体的には個々の国の実情に応じて判断を重ねてまいりたい、そう考えているわけでございます。
  139. 竹下登

    竹下国務大臣 今度の法律は貿易摩擦の問題を意図してやったわけではございません。それは今御指摘なさったとおりでございますが、現実的な対応の仕方によっては結果としてそういうことになり得ることは十分あるというふうに私は思っております。法律改正の目的がそれであったわけではないということでございます。
  140. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 それじゃカントリーリスクの問題について、ある程度危ない国に対しては総枠このくらいとか、そういう程度一つの枠を設けて考えられるのかどうかですね。特に日本の銀行は国というものに対してやはり絶対的な信頼を持っていますから、なかなか日本の銀行も大銀行ですけれども、やはり最後は政府が見てくれるわというような感じになりますと、日本の政府ほど面倒見のいい政府はないものですから、ほかの国がどうであるかわかりませんけれども、ある程度今のカントリーリスクのある国に貸すという一つのあれであれば、それなりの大枠でこれ以上は貸さぬとか、シビアにやっていく。CCとかEとかその辺になってくれば、本当に最初からもう総枠を決めるくらいの一つの歯どめが要るのではあるまいかな。今の法律そのものが、最初の貿易摩擦についてはさっき大臣が言われたことと同じだと思いますけれども、その問題はそれでよろしゅうございますが、今の歯どめの問題をある程度、枠としての一つの総枠で抑えていくおつもりがあるのかどうか、ちょっとお聞きしたい。
  141. 大倉真隆

    ○大倉説明員 非常に、どう申しますか、完全に知恵が発達いたしますと、金額を決めてかかるということもあるいはできるようになるかもしれません。今のところ、先ほど申し上げたソルベンシーの判断も、実は中で議論いたしますと人によってかなり違ったりいたしまして、なかなかこちらの知恵の方がうまく実態に追いつかないという面もございます。     〔熊川委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、そういった中で議論したものを私どもなりに一応判定基準にしまして、与信総枠としてはこの辺がなという部内での見当を一応づけたいと思います。  ただ、それが絶対にそこから一億でも超しちゃいかぬとか、あるいは余っているからもっといいとか、そういう運用をいたすつもりはないのでございますけれども、とにかく関係部門いろいろに分かれておりますから、私ども銀行としての運営の基本的な考え方として、何か数量的なものまでたどりつければそれにこしたことはない。仄聞いたしますと、民間銀行も銀行によりましてはかなりきつ目に数字で決めている銀行もあるようでございますし、とてもそこまでは新しいデータの入れかえが間に合わないという銀行もあるようであります。その辺の知恵もよく聞いてみながら私どもとして遺漏なきを期してまいりたい、そう思っております。
  142. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いずれにしましても、冒頭でお話しいたしましたように、これから財投の資金調達もいろいろ限定されてくる。公共性とともに収益性をやはり考えていかないと困るだろうという点で、開銀の出資の場合もやはり歯どめが要るだろうし、今度の輸銀の方の保証の問題もこれは相当大きな、ちょっと見た目はそうでもないけれども、協調融資での分を保証するのと、全く民間がやるのを保証するのとでは、ある意味からいうと大改正ではないか。出資の面においても大改正だし、保証の面においても大改正であるというような感じがいたします。特にそういったのが現在の、先細りといっては言い方は悪いけれども、財投がこれからどうなるのかという時期になされるわけでございますから、これはよほど歯どめの面を両方ともきちっとしておかないといかぬのではないかと思うのでございますが、この点についてはまとめて大蔵大臣の御意見を承りたいと思います。
  143. 竹下登

    竹下国務大臣 これは輸銀、開銀によらず、いわば資金調達の面においては、おっしゃるとおり、なかなかかつてのごとく期待しがたい環境ばかりであると思っております。したがって、まさに量より質への転換、こういうことも必要になりますし、資金自体の問題におきましても、今後の検討課題として国際化時代に対応していく問題もあろうかと思っております。  したがって、今度は保証業務ということになりますと、今おっしゃっいましたように、また大倉総裁からもお答えしましたように、よく我々先進国の会合へ出ますと国によっていわゆるランクづけみたいなものをいろいろしてございますが、そういうことももとより念頭に入れながら、いわゆる償還確実性の原則ということですか、それに基づいてきちんと対応されるべき問題であるというふうに私も考えております。
  144. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今のこの問題はそれといたしまして、最後にちょっと例の登記特会でございますけれども、これの趣旨コンピューター化ということで、一応大義名分と申しますか、進められたわけでございますけれども、ある意味からいいますと、我々は今度の行革という意味特別会計をできるだけ減らそうという動きをしてきたわけでございます。この前あへんの特会かなんかを廃止いたしましたが、今度新しくつくるこれは、さっき大臣説明だと悲願であったというわけでございます。これから特別会計にした場合にきちっとなるのか、逆にルーズといっては変ですけれども、例えばコンピューター化すれば人は要らないと思いますけれども、どんどんと人間が削減できると思いますけれども、往々にして独立しちゃうと何となくそれなりに——いろいろ一般会計であれば定員の削減とかなんとかぎしぎしやっていくわけでございましょうけれども、特別会計の場合そういったのがおろそかになっては困るんだ。そうすると、コンピューター化が一段落した時点でまたそれをいわば廃止していくのかどうか。今の時点でなかなか言い切れるかどうかわかりませんけれども、その辺の感じをお答え願いたいと思います。
  145. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 登記特別会計の新設につきましては、先ほども御議論がございましたように、登記の申請あるいは登記簿謄本の請求件数が急激に増加しております。その結果といたしまして、現在例えば登記申請等の処理日数が四日ほどかかるとか、それから謄抄本の交付等の処理時間が四時間かかるとかいうようなことで、いろいろ各方面に不便を与える、あるいは国際的な関係でもいろいろ問題を生じているというようなことが背景に一つあるわけでございます。そのためには、やはりコンピューター化することによってこれを効率的なものにしていくという必要があるわけでございます。  ところが、今委員おっしゃいますように、コンピューター化には恐らく十年以上の歳月がかかると思うわけでございますけれども、しかしコンピューター化が終わりましても、この登記特会を設けました趣旨は、結局受益と負担の関係を明確にする、いわゆる手数料を取ってそれをいろいろ登記事務等に充てていくということを明確にしていくという目的も大きな設置の理由であるわけでございますし、そのほか、今申し上げましたようなことをやっていこうといたしますと、やはり特別会計制度の剰余金繰り入れ制度というようなものも使っていって弾力的にやっていく部分も必要ではないかというようなことも一つ理由になっております。あるいは、施設を整備していくということになりますと、長期借入金ができるというようなことも必要であります。いずれもそういう場合には特別会計を設置してやる方がより目的に合致した仕組みになるということ等々を考えましてこれをつくりましたので、コンピューター化が終わった後におきましても、そういう仕組みは残していく必要性は依然として残るのではないかというふうに考えているわけでございます。  しかし、いずれにいたしましても特別会計の設置その他については臨調等でこれを厳しく見直していくべきであるというお話も伺っておりますので、その段階においてまた改めて見直す必要は十分にあるというように考えております。
  146. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 大体お聞きすることはお聞きしたわけでございます。若干時間も余らしましたけれども、ひとつ大臣、輸開銀法の改正について、それぞれの歯どめをよく考えていただきたいということが第一点でございまして、また、もとへ戻って貿易摩擦の問題につきましても、きょうは本会議でずっといろいろ各党のいわば質問など、特に農業関係の問題が出てきましたけれども、私の感じとしましては、やはり日本の場合も主張すべきことを主張しておかないとアメリカというのはかさにかかってくる連中ですよというような気持ちがございまして、その点ひとつ、筋を通した論議はあくまで貫いていただきたいと考えるわけでございます。  最後にこの点を念を押しまして、大臣のお気持ちを伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  147. 竹下登

    竹下国務大臣 一つは輸銀関係、開銀ももとよりでございますが、いわば歯どめ、これは確かにきちんとやっていかなければならぬ問題だと思っております。  そして、輸銀の議論でございますから、それについて、貿易摩擦問題に対する政府が言うべきことは言うという基本的な態度というものは、おっしゃるようにいつでも堅持していなければならぬ問題だという問題意識は私もひとしくいたしております。
  148. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 どうもありがとうございました。
  149. 越智伊平

    越智委員長 正森成二君。
  150. 正森成二

    ○正森委員 最初に、昨年のある新聞の報道によりますと、「今回の輸銀法改正は、六十年度予算編成の過程で、日本開発銀行日本輸出入銀行に対し、産業投資特別会計への資金拠出積み増しを求めることになったことが、直接のきっかけ。」である。「開銀法、輸銀法では貸付残高の千分の七を準備金として積み立てることを義務づけているが、これをそれぞれ千分の三に引き下げることで、産業投資特別会計への資金拠出額を増やそうというもので、これにより両行で六十年度は二百八十億円拠出することになる。 この資金拠出の一部を通産、郵政両省の共管による技術開発新法人(ハイテク法人)設立のための資金にあてる。」これから後が大事ですが、「この見返りとして、開銀に対し出資機能を拡大するとともに、輸銀には信用保証業務をはじめとする業務範囲の拡大が認められることになったものだ。」こういうように書いてあるのですね。  もちろんこういう単純なものではないとは思いますが、こういう考え方に対して、大臣の御意見をまず承っておきたいと思います。
  151. 竹下登

    竹下国務大臣 別にいわゆる産投会計の問題との兼ね合いであったというふうには私ども理解しておりません。しかし、そういう論評がなされておりましたのは、あるいは正森さんの御質問にもあるかもしれませんけれども、言ってみれば開銀の使命というものはある意味において達成されたてばないか、だから、むしろそれだけに新しい仕事をふやすことによって生き延びているんじゃないかとか、そういうふうな批判を受けておった事実は私は承知しておりますが、それとこれとは別の次元の問題であります。
  152. 正森成二

    ○正森委員 そこで伺いたいと思いますが、最近輸銀、開銀の財政投融賢の使用残というのが非常に言われておりまして、例えば、大分古い資料でございますが、昭和五十四年では日本輸出入銀行についていいますと五千六百四十億円もあり、そのうち翌年度繰り越しが千九百億、不用額は三千七百四十億とか、日本開発銀行でも昭和五十三年は二千二百五十億ございまして、翌年度繰越額が千六百五十億で、不用額が六百億というような時期がございます。現在ではこれがどういうようになっているかということについて両総裁から伺いたいと思います。  同時に、新聞でも報ぜられましたが、どうも貸出先がないものだから、あるいは旅館、ホテル、それから百貨店、スーパーというところに開発銀行が非常に貸し出しをして、しかもそれが北海道東北開発公庫と融資合戦になっておるというようなことまで言われたことがございますが、そういう点はどうなっているかについても開銀総裁からお答え願いたいと思います。
  153. 吉田正輝

    吉田(正)政府委員 輸銀、開銀の財投資金の使用状況、特に繰り越し、不用についてのお尋ねでございます。  先生、五十四年、五十三年を引用なさいましたが、私の手元にただいま五十五年からの数字がございますので申し上げさせていただきますと、開銀につきましては五十五年に繰り越しが三百五十億円ございますが、五十六、五十七、五十八年はございません。それから不用につきましては、五十五年以降ゼロでございます。  それから、輸銀でございますが、輸銀は五十五年に繰り越しが千八百億、五十六、五十七年はゼロ、五十八年度千五百五十億でございます。それから不用は五十五年二百九十億という数字になっておるわけでございます。  それから、族館、ホテルについてのお尋ねでございます。  開銀と北東公庫の族館、百貨店に対します五十五−五十八年度の融資状況は、まず開銀について申し上げますと、五十五年度が六十一億円、五十六年百五十七億円、五十七年百三十二億円、五十八年九十一億円とそれぞれなっております。それから、北東公庫でございますけれども、五十五年が百五十八億円、それから五十六年百八十八億円、五十七年百三十五億円、五十八年百十五億円でございます。
  154. 正森成二

    ○正森委員 それではもう一点お聞きいたしますが、貸し付けによる民間設備資金供給に占める政府資金のウエートがどのくらいかについてお調べ願いたいということで言っておきましたが、私どもの手元によりますと、昭和五十三年は五〇%を超えるという高い率を占めているという数字になっておりますが、少し高いようにも思うのですが、五十五年から五十八年についてはどうなっているか、おわかりならお答え願いたいと思います。
  155. 吉田正輝

    吉田(正)政府委員 委員のお持ちになっておられます資料、恐らく「国民のための財政百科」に出ておる数字でございますが、それは五十三年五六・六%になっておるわけでございます。お尋ね民間設備資金供給に占める政府資金の五十五年度以降の数字を同様のものについて申し上げさせていただきますと、五十五年度三四・〇、五十六年度三五・〇五十七年度三〇・一、五十八年度三〇・八、それぞれパーセントでございます。
  156. 正森成二

    ○正森委員 今いろいろな資料を言っていただいたのですが、最後の貸し付けによる民間設備資金供給に占める政府資金のウエートについて言いますと、これは昭和四十五年には一四・九%くらいだったのですね。それが随時伸びまして、昭和五十三年の五六・六%というのは随分高うございますが、現在でも三〇%を超えておる。  これは、開銀総裁、民間の一部から開銀クラウディングアウトなんという言葉がございまして、開銀がいろいろな方へ投資をするために優良貸出先を奪われて民間の金融機関が困っておるとか、あるいは今回の法改正についても、たしか私の手元にございます新聞では、都市銀行や長信銀などから反対の意見書が出ていたというようにも聞いております。こういう点について御所見を承りたいと思います。
  157. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 設備資金の新規供給の中に占めるウエートでございますけれども、全体として株式とか民間金融機関とかいろいろな調達手段があるわけでございますが、五十八年度は私ども開発銀行その他で四・四%でございます。これはいろいろな統計のとり方で、また純増ベースとかいろいろあるわけでございます。  それで、開発銀行の資金民間と競合するという議論は、確かに私ども聞いておりますが、しかし私どもといたしましては、御承知と思いますが、昭和六十年度におきましてはむしろ総融資額を六百億円減らすとか、そういう点で私どもは、資金過剰の時代には開発銀行の資金量を余りふやさないという形で運営してまいりたいと思います。むしろ政府系金融機関らしい、リスクの大きい——これにつきましては、リスクの大きいのはまた問題だという議論があるかもしれませんけれども、例えばエネルギーの安定供給とかあるいは技術開発とか、そういう点につきましてむしろウエートを置いて運営してまいりたいと思います。  それから民間資金との競合でよく出る議論でございますけれども、これは民間資金の間の競争がいろんな点で開銀がウエートを増したというような批判になって、むしろ民間機関相互間の競争が開銀に対する御批判としてはね返っている面もございまして、その点は私ども一概には言えないんじゃなかろうか、こう思っております。  それから、正森委員御指摘都市銀行、十五行ですか、確かに御意見伺っております。その一つ一つの大前提としては、財政投融資の中の政府金融のあり方を今研究しておる際だから基本論をまずやれとか、あるいは細かいことになりますが、資金の運用につきましては財投全体の中で考えるとか、あるいは開銀がその当時企図しておりましたユーロ円債の導入など、これはどうかとか、いろいろ一つ一つがごもっともな議論でございまして、その一つ一つにつきましては、例えばユーロ円債の取り入れにつきましては、資金調達の多角化で、やってもよかろうじゃないかとも私ども思いましたけれども、そういう御批判があるのである程度のルールができてからこれを実行しようかとかいうように、そういう声は聞いております。  それから前半の御議論を拝聴しておりますと、政府金融機関らしいことをやれと、まさに私どもとしては当然の議論として受けとめているわけでございます。
  158. 正森成二

    ○正森委員 輸銀関係について伺いたいと思いますが、今度海外合弁企業に対して直接海外投資資金貸し付け得ることになりましたが、今までだったら、先ほどの質問にもございましたように親会社に貸す。親会社の場合には日本の法律の規制に従うわけですから、いろいろこれはお調べもできる。先ほどの御答弁では、親会社を通じて海外の子会社へ行く場合には何に使うのかということをよく調べるんだという御答弁もあったように横で伺っておりましたが、しかし海外の会社は海外の法律に基づいて設立されるので、日本の法律でもって直接コントロールできない。例えばこの二月でございましたか、予算委員会の質問でございました京セラですね。あの武器輸出三原則に反するようなことをやったというような場合も、なかなかチェックできないというようなことが起こってくるのではないかというように思います。  そこで、輸銀総裁及び会計検査院からもお見えいただいていると思いますのでお伺いしたいのですが、従来も政府系金融機関に対して会計検査院が検査ができるようにということが言われておりまして、これは私、ロッキード事件にも関係したのですけれども、そのときから国会でたびたび決議されておる。それに対して、たしか昭和五十六年七月二十三日付で、官房副長官の翁さんでしたか、「会計検査院の検査機能の充実について」というのが出たと思います。ところが、これに対して輸銀、開銀というのは、書類提出するというようなことでは協力するけれども、いわゆる肩越し検査というのですか、そういうものについては御協力をなさらないということがございまして、今度改めて予算委員会でも質問がありましたが、六十年二月十三日に内閣官房副長官の藤森さんのお名前で大蔵事務次官あてに、一定の要件のもとに協力するようにという連絡がございまして、それに対して銀行局長名で応分の協力をするようにという通知がなされたやに承っております。  そこで、二点伺いたいと思います。  輸銀、開銀はなぜ今まで翁通達に対して御協力をなさらなかったのかという点が第一点であります。  それから第二点は、これは会計検査院に伺いたいと思うのですが、会計検査院としてあくまで会計検査院法の改正を求めておられたと思います。国会でもそういう趣旨の決議でございました。今回通達が出されましたが、あくまでこれは行政的な指導といいますか、措置でございまして、これでは不十分な点があるのではないかというように私どもは考えております。  例えば、会計検査院法の二十三条一項七号では、「国又は公社の工事の請負人及び国又は公社に対する物品の納入者のその契約に関する会計」というのは調べることができるようになっているのですね。ところが、ソウル地下鉄事件というのがございまして、私も予算委員会で質問させていただきましたが、これなどは政府の借款が韓国なら韓国に行われました。それで結局、日本の企業に対して莫大な発注をする。そこから不正なリベートが出されて、非常に不明朗であるということになりましたときに、これは一たん借款ということで外へ出ておるので検査ができないということがありましたので、いろいろ法律上も措置する必要があるのではないかということが国会でも論議をされた次第であります。  そこで、こういう行政通達と法改正との関係について、会計検査院の率直な御意見を承りたいと思います。  まず第一に、輸銀、開銀総裁からお答えを願います。
  159. 吉田正輝

    吉田(正)政府委員 両機関にまたがることでもございますし、当方の監督機関でございますので、まず最初にまとめてお答えいたしますと、会計検査院法の改正問題は長年国会でも御論議の対象であったわけでございますけれども、それにつきましては、一つは、自由主義経済体制中で公権力が過剰に介入するのはいかがかという基本的問題が一つございます。それから、政策金融を円滑に運営するためにいたずらにこの借入人に畏怖心を与えるようなことは回避しなければならぬというような重要な問題をまず踏まえておった背景があるわけでございますけれども、輸銀、開銀の場合には、その個別の融資案件一件ごとに厳格な事前審査が行われる、それから事後管理もかなり執拗にやっているということでございまして、先ほど申しました基本的な問題点以外にも、十分にこの問題につきましては対応できるという認識が各機関にあったわけでございます。  そこで、今委員が御引用になりました翁通達が出まして、そういう場合に、「検査上肩越し検査を行うべき合理的な理由があり、かつ、他の手段では事実の確認等が行い得ない場合には、肩越し検査に応ずるものとする。」というのが翁通達でございまして、これは実は当時の銀行局長から協力をさせておったわけでございますけれども、実際上はそういうことがなかったということで今日に至り、再び藤森副長官の通達が出たというふうに承知しておるわけでございます。
  160. 吉田知徳

    吉田会計検査院説明員 お答え申し上げます。  先生、先ほど御指摘ございましたように、本年の二月、官房副長官から「会計検査院のいわゆる肩越し検査に対する協力について」という新しい通達が発せられております。これは先ほどお話ししました五十六年に発せられました翁通達の延長線上にあるものと考えられますけれども、その後、また昨年の三月及び四月にも参議院予算委員会におきまして、院法改正問題についての論議が行われたわけでございます。  それ以来、実際の検査に際しましての私どもの資料提出でございますとか、あるいは説明につきましては、従来に比べまして非常に積極的に提示をいただけるし、説明もしていただけるということで非常に改善されてきておりまして、検査上、特に肩越し検査を要求しなければならないというような事態はなかったわけでございます。  それで、今回さらに通達が発せられたわけでございますけれども、前回の翁通達におきましては、肩越し検査をする場合の範囲でございますとか、あるいはその肩越し検査が必要であるかどうかということの判断をだれがするのかというような点で不明確な点がございました。今回、この通達によりますと、そういった肩越し検査を必要とする場合が具体的に例示されております。そしてまた具体的なケースが起こりましたときに、監督官庁におきましても協力方を指導する、こういう内容になっておりますので、私どもといたしましては、この通達が出されましたことによりまして、今後、肩越し検査の必要が生じました場合には、十分協力していただけるものと期待しているところでございます。  それで、院法改正との関係での考え方はどうかという点でございますけれども、私どもといたしましては、国会におきましてたびたびの御決議がございました。そして御論議もございました。それからまた、私どもといたしまして十分な検査を実施していきたいという立場から申しますと、院法改正は必要であるという考え方は従来と変わらないわけでございますけれども、片やこの内閣におかれましては、現段階においてはいろいろな立法政策上あるいは金融政策上の観点から改正することは困難である、こういう御判断が示されまして、そして肩越し検査の協力ということでそれをやっていこうという今回の通達が出されることになりましたので、当面私どもといたしましては、この通達によりまして可能な限りの検査を実施してまいりたい、このように考えておるところでございます。  それからもう一点、最後になりますけれども、ソウル地下鉄のような事件が起きた場合に検査できるかどうかという御指摘でございますけれども、これは御承知のとおり、現在の会計検査院法、今お示しいただきました第二十三条一項の七号でございますけれども、これによりますと、国または国鉄の工事の請負人または物品の納入者となっておりまして、日本国または日本の公社の工事の請負人、それから物品の納入者に限定されておりますので、外国または外国法人によりますところの工事の請負人または物品納入者に対しましては、権限は及ばないわけでございます。このように、外国の政府あるいは外国の法人からすれば日本国内の法人との契約の関係でございますので、これは会計検査院のいわゆる国内法としての権限の範囲からいきますと、それを越えるものであって検査の対象にならない、このように考えておるわけでございます。  以上でございます。
  161. 正森成二

    ○正森委員 時間がございませんのでもう一問だけで終わらしていただきますが、開発銀行と輸出入銀行の自己資本、それが現在どうなっているか、そして期末の貸付残高に対する割合、それがどうなっているか、おわかりならお答え願いたいと思います。そこまで答えてください。
  162. 吉田正輝

    吉田(正)政府委員 両機関の自己資本の額及び自己資本比率でございますけれども、五十八年度末だけを申し上げさせていただきますると、輸銀につきましては一兆一千二百三億円、開銀が七千百三十六億円でございます。  それから貸付残高に対する比率ということでございますけれども、通常自己資本比率と申します場合には、総資産を分母といたしまして、ただいま申し上げました自己資本が分子になる数字で申し上げさせていただきたいと思いますが、その場合の自己資本比率は輸銀が一七・九三%、開銀が九・八二%でございます。
  163. 正森成二

    ○正森委員 輸銀、開銀は、事柄の性質上貸出先は大きな企業が多うございまして、例えば開発銀行の場合には、一位から申しますと東京電力、関西電力、九州電力、中部電力、東北電力、日本郵船、北海道電力、四国電力、大阪商船三井船舶、中国電力というようになりまして、これだけで総貸出高の三四・二%を占めているはずであります。日本輸出入銀行の場合には三菱商事、三井物産、丸紅、伊藤忠商事、日商岩井、三菱重工業、住友商事、石川島播磨重工業、トーメン、東京電力、こういう順番になっておりまして、貸出高が一兆七千五百四十六億円、二八・五%を占めております。これは、この両行が主として世に言う大企業の融資に重点を置く性格の銀行であることを示しているんです。  国民金融公庫、これは零細企業に対して貸し出しをしているんですが、五十八年以来三年連続、政府出資が全く行われていないという状況でございまして、国民金融公庫の政府資金は二百六十億円というままでとまっているわけであります。したがって、調達資金がゼロの、政府資金が非常に少ないものですから、私の方の資料では、貸出総枠に占めるこの政府資金の割合は〇・五四%、あるいはそれより低いかもしれませんが、非常に低い割合であります。そのことがまた貸出金利を高くしているという関係になっていると思います。  今、仮に輸銀や開銀と同じ割合の自己資金があるということになれば、国民金融公庫の貸出金利がどれくらい低くなるか、あらかじめ計算をお願いしておきましたが、もしおわかりでしたらお答え願いたいと思います。  そして大臣には、財政上非常に厳しい折ではありましょうけれども、国民金融公庫に対しても政府資金をさらにふやすとかいうことで、その経営状況や貸出金利が安くなるようにぜひ御配慮をお願いしたいと思います。  以上で質問を終わらせていただきます。
  164. 吉田正輝

    吉田(正)政府委員 ただいま御質問の、要するに輸開銀並みの自己資本が国民公庫にあれば金利をどの程度引き下げられるかということについてお答えさせていただきますと、自己資本が輸開銀並みとして、その増加額が資金運用部からの借入金に振りかわることによるコスト軽減額ということで平均利回りの引き下げの効果を単純計算いたしてみますると、輸銀並みとした場合は約一・七%、開銀並みとした場合は一・一%の引き下げとなるわけでございます。  しかし、この国民公庫の貸付金利の水準は、これは政策上の判断から基準金利は民間の長期最優遇金利と同水準に決めたわけでございまして、これが自己資本があるから、あるいは自己資本が充実して収支が改善されたとしても、公庫の貸付金利の水準は変更されるものではない。つまり別の政策判断で行っているわけでございます。  それで現に、これは輸開銀がともに独立性、自主性がございますので、収支相償の原則ということで、みずから賄ってみずから貸すというような責任が逆に課せられているということも私どもの方から指摘させていただきたい。それだけ厳格な自己責任原則によって経営が行われている。それによりまして利益が生じるときには、みずから自己資本を留保しつつ、国庫納付金を納めながら経営を行っている。したがって、今度の場合にも厳しい財政事情を考慮して法定準備金積立率の引き下げを図ったわけでございます。  さらに、開銀について申し上げますと昭和三十一年度以降、輸銀につきましては五十八年度以降、政府出資は行っておりませんが、六十年度においては別の政策目的、それぞれの政策判断によりまして、厳しい財政事情がございましたけれども、本年度は商工中金に対して百億円、中小公庫に対しては二十億円の政府出資を行っておりますし、国民公庫等に対しても所要の補給金を交付しまして、それぞれの政策目的に従って政策機関として業務の円滑な運営が図れるようにしておると私どもは考えておる次第でございます。
  165. 竹下登

    竹下国務大臣 輸銀、開銀は、今も答えにありましたように、いわゆる収支相償の原則ということに立っておるわけです。国民金融公庫の場合はまさに政策金融そのものであって、そして利子も言ってみれば政策金利とでも申しましょうか。したがって、中小公庫二十億円、それから商工中金が百億円、それで国民金融公庫についてはいわゆる収支差補給金という形でこれは対応しておるわけでありますから、その政策目的が十分達せられるようなそれらの所要措置は、財政状態はいかに厳しかろうとも、適切な対応をしていかなければならぬある意味において宿命があるのではないかな、こんな感じで私はいつでも見ておるところであります。
  166. 正森成二

    ○正森委員 銀行局長答弁には私からも申したいことがございますが、時間が過ぎておりますので、これで終わらせていただきます。
  167. 越智伊平

    越智委員長 蓑輪幸代君。
  168. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 私は、登記特別会計法案について二、三お尋ねをしたいというふうに思います。  まず最初に、登記特別会計制度を設けることによって、登記関係職員及び国民にどのような利益があるのか、これを最初にお答えいただきたいと思います。
  169. 稲葉威雄

    ○稲葉政府委員 まず、登記の従事職員の関係でございますが、登記の従事職員が現在コンピューター化によって特に改善しようとしているのは、いわゆる謄抄本の交付あるいは閲覧の関係の事務でございます。この事務については現在非常に機械的な要素が強いわけでございますし、またブックシステムということで、登記簿の搬出入あるいはコピーというようなことに伴い騒音、臭気、ほこりというようなものが非常に出てくるというふうなことで、職場環境が非常に劣悪だということがございます。そういう点でそれが改善されるということになるわけでございます。  それとともに事務処理の適正迅速化が図られるということになりますが、それに伴いまして国民の方は、先ほど大蔵省からも申し上げましたように、登記の謄抄本を申請いたしますと、平均でございますが、四時間待たなければいけない。地方によっては二日、次の日に来てくださいというような地方もあるというようなことでございまして、そういうものが改善されるということで、迅速に情報が得られるということになるわけであります。  さらにデータが二重三重に保護されるということになりますので、そういう意味でも国民の権利保全が図られるということになろうかと思います。
  170. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 私がお聞きしたのは、登記特別会計制度を設けることによる利益ということなんです。ところが、今御答弁いただきましたのは、コンピューター化による利益というような考え方のようです。利益というふうに私がお尋ねしたわけですけれども、今お答えいただいたものは、利益というよりは効果ですね。こういうことをやるとこういう効果が生まれるということであって、それが利益と言えるのかどうかというのは、これは非常に問題だというふうに思います。  なぜなら、今お聞きした登記関係職員に関する部分なんというのは、劣悪な労働条件を当たり前の労働条件に改善するというようなことであり、また国民に対する謄抄本の交付時間の短縮の問題につきましても、当然の行政サービス、今までがかえって悪化していたものをもとどおり当たり前の行政サービスを受けられるように戻すだけのことでありまして、それを効果ということで言うならば効果ですけれども、国民にとってあるいは登記関係職員にとって利益であるというふうに受けとめられるかどうかというのは非常に問題だというふうに思うのです。  私がお尋ねしているのは、コンピューター化の効果ではなくて、登記特別会計制度を設けるということ、このことの効果なんです。ですから、大蔵省の方が特会制度を設けられるわけですから、その点でどういう効果というか、国民にとっての利益があるとお考えなのか。大蔵省からも御答弁いただきます。
  171. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 登記特別会計を設置するメリットでございますけれども、その経理一般会計と区分して行うということにより、一つは登記関係手数料収入が登記関係事務コンピューター化とか、それからその他もろもろの経費に充当されるということが明確になる。要するに、受益と負担の関係を明確化するということが一つのメリットでございます。  それから二番目といたしましては、若干技術的になりますけれども、特別会計における剰余金繰り入れ制度ということが可能になるわけでございます。そういたしますと、長期的な展開を踏まえた安定的な登記関係手数料の設定がその結果可能になるわけでございます。といいますのは、年度によって手数料がある部分たくさん入ってきたときに、それを翌年に剰余金でずらしていくことによって、平準化していきながらやっていくことができるというメリットがございます。  それから、この特別会計におきましては長期借入金をできることにいたしましたので、その借入金によって施設費の財源に充てるということから、施設整備促進を図ることができるという点がございます。  それから四番目といたしまして、特別会計予算総則に弾力条項を設けることといたしましたので、例えば歳入予算を超える収入があった場合に、事務費等の増加に充てることもできるということ等を考えまして、特会を設置いたしたわけでございます。
  172. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 ただいまお答えいただきました中で、最初に受益と負担の関係が明らかになるというふうに言われましたけれども、最初に申し上げましたように、これが受益であるのかどうかというのは、まず非常に問題があるわけです。何か事がされればそれが受益であるというふうに感覚的に受けとめられがちですけれども、果たしてこれは国民にとって受益と言えるのかどうか。そして、その受益ということとの関連で負担をしなければならないようなものなのかどうか。  基本的なこれらの事務というのは一般行政事務でありますから、これを受益者負担とすべき必然性というのは必ずしもないと私は思うのです。今回コンピューター化を進めるということと特会制度を設けるということは、何ら論理必然性がないと私は思うわけです。数々、特会制度にすればこういうことがあるんだということを言われましたけれども、これらのすべての事柄は、一般会計の中で必要に応じて優先的にやるという判断がされれば何も無理なくできることでもあります。例えば施設の整備等につきましても、必要ならば一般会計の中からやればよろしいわけですし、そういう点について何ら特会制度を設けなければならないという合理性がないというふうに私はお聞きしていて思ったわけです。  結局特会制度を設けて一体どういうことになってくるのかというのを見てみますと、受益と負担というような形で現実に出てくるものを見てみますと、何のことはありません、手数料の値上げだけなんですね。そして、この手数料の値上げというのは、例えば今回謄抄本の交付の手数料が三百五十円から四百円に上がる。これは、合計約四千六百億円もかかるというコンピューターシステム導入の十五年間の移行経費、ハード面その他さまざまな運用費等々含めて莫大な経費がかかるわけで、その経費をこの登記利用者の手数料負担によっていくという考え方ではじき出されてきているようですけれども、それにしても四百円でとどまるものなのかどうか。十五年間という展望の中で、四百円で終わらずにこれが五百円になりあるいは千円になりということの歯どめというものは何もないわけです。これを見ますと、政令で物価の状況その他実費、一切の事情を考慮して決めるのだというわけですから、どこまでこれが上がっていくだろう。何のことはない、結局国民に、本来国がきちんとしなければならない一般行政事務にかかわる経費を国民負担として押しつけていく、税の負担とともに、こういう受益者負担という形での論理を使いながら手数料負担を押しつけていくということで、二重の負担を強いることになるのではないかと思うのですね。果たしてこの手数料、今回の四百円は、十五年計画の中でこれでおさまるとお考えかどうか、その辺をちょっとお尋ねしたいと思います。
  173. 稲葉威雄

    ○稲葉政府委員 この四百円という数字は必ずしも十五年間を見通した数字ではございませんで、一応三年程度を考慮した数字というふうに御承知願いたいと思います。
  174. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 そういうわけで、この見通しは大変不安定ということになるわけで、こういう形での受益者負担という論理をさまざまな分野に導入していきますと、まことに無責任なことになりかねない。国の責任を放棄して結局利用者に負担を押しつけるということになりかねないと思いますけれども、こういう考え方についての大臣の御見解をちょっとお尋ねして終わりたいと思います。
  175. 竹下登

    竹下国務大臣 この登記特会、議論しましたときに私の念頭にありましたのは、昨年でしたか通していただいた特許特会ですね。あれと私は非常に性格的に似たものがあるなという考え方でありました。コンピューター化によるメリットというのは先ほど来申し上げているとおり、仕事が単一的なものから近代的なものになるとかそういうものはありますが、登記特会そのものをつくるということは、私の念頭にあったのは、素直に申し上げますと、特許特会の経験というものが私の下敷きには大いにあったことは事実であります。  それで、基本的な問題は、受益と負担の関係よりも国そのものの問題として解決すべきだという議論もございます。したがって一般会計部分もそれなりに残っていくなということは考えながら登記特会、いわゆる特別会計のメリットというのを私なりに感じましてこういう決断を下した。大体臨調からいえば特別会計をつくってはいかぬということになっているわけですから、数はあへん特会とでちょうど合うことになります。これは機関車と乳母車ぐらい違うかもしれませんけれども、その問題はその問題として、やはり受益と負担ということに視点を持っておったことは事実であります。
  176. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 時間がないのでもう申し上げませんが、特許特会と登記特会とは一律に論じられないということを申し上げて終わりたいと思います。
  177. 越智伊平

    越智委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十六分散会      ————◇—————