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1985-04-02 第102回国会 衆議院 大蔵委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年四月二日(火曜日)     午前九時三十一分開議 出席委員   委員長 越智 伊平君    理事 熊谷  弘君 理事 熊川 次男君    理事 中川 秀直君 理事 堀之内久男君    理事 上田 卓三君 理事 沢田  広君    理事 坂口  力君 理事 米沢  隆君       糸山英太郎君    大島 理森君       加藤 六月君    金子原二郎君       瓦   力君    塩島  大君       田中 秀征君    中川 昭一君       東   力君    平沼 赳夫君       藤井 勝志君    宮下 創平君       山崎武三郎君    山中 貞則君       伊藤  茂君    川崎 寛治君       渋沢 利久君    戸田 菊雄君       武藤 山治君    石田幸四郎君       古川 雅司君    宮地 正介君       矢追 秀彦君    安倍 基雄君       玉置 一弥君    正森 成二君       簑輪 幸代君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 松永  光君         厚 生 大 臣 増岡 博之君         自 治 大 臣 古屋  亨君  出席政府委員         内閣法制局長官 茂串  俊君         臨時教育審議会         事務局次長   齋藤 諦淳君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         経済企画庁調整         局審議官    丸茂 明則君         外務省経済局次         長       恩田  宗君         大蔵政務次官  中村正三郎君         大蔵大臣官房審         議官      大山 綱明君         大蔵省主計局次         長       平澤 貞昭君         大蔵省関税局長 矢澤富太郎君         文部省教育助成         局長      阿部 充夫君         厚生大臣官房総         務審議官    北郷 勲夫君         厚生大臣官房会         計課長     黒木 武弘君         厚生省薬務局長 小林 功典君         厚生省社会局長 正木  馨君         厚生省児童家庭         局長      小島 弘伸君         厚生省保険局長 幸田 正孝君         林野庁長官   田中 恒寿君         自治大臣官房審         議官      土田 栄作君  委員外出席者         通商産業省機械         情報産業局航空         機武器課長   伊佐山建志君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ————————————— 四月二日  昭和六十年度の財政運営に必要な財源の確保を  図るための特別措置に関する法律案内閣提出  第九号)  国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律  案(内閣提出第一〇号)  産業投資特別会計法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一一号) 三月二十九日  所得税課税最低限度額引き上げ等に関する請  願外一件(伊藤茂紹介)(第二四二八号)  同(戸田菊雄紹介)(第二四二九号)  同(石田幸四郎紹介)(第二四七八号)  同外一件(川崎寛治紹介)(第二四七九号)  同(中川利三郎紹介)(第二四八〇号)  同(林百郎君紹介)(第二四八一号)  同(林百郎君紹介)(第二四九六号)  同(蓑輪幸代紹介)(第二五〇三号)  同(蓑輪幸代紹介)(第二五二六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会に関する件  国の補助金等整理及び合理化並びに臨時特例  等に関する法律案内閣提出第八号)      ————◇—————
  2. 越智伊平

    越智委員長 これより会議を開きます。  国の補助金等整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案を議題といたします。  これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川崎寛治君。
  3. 川崎寛治

    川崎委員 補助金一括削減法案の大変重要な法律審議でございますが、私は、本題に入ります前に、当面しております大変重要な課題について、総理に二点お尋ねをしたいと思います。  第一点は、日空電信電話株式会社がきのう発足いたしました。高度情報社会というものの中における国際企業として、この今後というものは大変重要な課題を持っておる、こういうふうに思います。ところが、この新電電が発足するに当たりまして、週刊誌や新聞や雑誌やテレビをにぎわしたのは、人事をめぐっての問題であります。財界主流がどうの、あるいは電電ファミリーがどうのとか、さらには与党の中の元総理がどうの、幹事長がどうのあるいはさらには中曽根総理がどうだとか、そして電電の中の役員の諸君云々、こういうことが騒がれております。大変利権の巣窟としてそうしたものがにぎやかに言われておることは、百十五年にわたって今日の電電にいたしますために努力をしてきた三十数万の労働者、職員の諸君、あるいは参加をしてまいりました四千万の国民、その国民共有財産だということは、法案審議の際にいろいろと議論されてきたところであります。経営の自主性、そういうものからいたしますならば、民間になりました企業についてとやかくということではありませんけれども公共性確保という法の修正までいたした過程もあるわけでありますから、唯一の株の保有者としての政府という立場もございますので、こうした今日のいろいろと週刊誌等をにぎわしました問題について、総理としてどうお考えになるか、見解を伺いたいと思います。
  4. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 旧電電公社国民の貴重な財産でございます。それを引き継いだ電電株式会社も、同じように国民の貴重な財産を引き受けておるわけでございます。そういう意味において慎重の上にも慎重、公正を期して、それが運営が行われるように念願もし、また、そういう意味準備委員会も発足いたしまして、いろいろお願いをしたところでございます。  その間においていろいろな雑音がジャーナリズムに報道されましたが、必ずしも全部真実とは言えない面があると思います。政府といたしましては、その準備委員会の選考の過程を冷静に、慎重に注目しておったところでございますが、大体それらの意見も受けて公正に決定した、そのように考えております。  今後も法の趣旨を生かしまして、民活と公共性、それから国民全体のサービス享受という、そういう面において遺憾なきを期して監督していきたいと思っております。
  5. 川崎寛治

    川崎委員 今、全部とは言えないがということは、大部分は認めておる、こういうことになりますが、これは大変重要な発言だ、こういうふうに思っております。  第二点は日米通商摩擦でございますけれども、この点について、けさのNHKの七時のニュースを見ておりましたら、シグール・アメリカ大統領特別補佐官が急遽参りまして、総理外務大臣郵政大臣等とお会いになったわけでありますが、帰ったその報告を受けて、けさの報道によりますとアメリカ側の新たな提案、そして日本側総理の新たな約束、こういうことが報道され、満足をしておる、こういうことでございます。政府対外経済問題諮問委員会の座長をしております大来佐武郎さんのインタビュー記事を見ますと、「相当苛だちがたまっているのは事実。一月の中曽根レーガン会談で、日本は相当、対策を進めるだろうという期待があったですからね。」そういうふうに言っておるわけでありまして、第一問でお尋ねをしました電電公社民営化という問題、四月一日というものと絡んで来ておるわけであります。  新たな提案、そして新たな約束というものが何なのか。国会最高議決機関でありますから、政府政策発表の前は言えない、こういうふうなことではなくて、日米間で、つまりロン・ヤスという関係がかえって今日の貿易摩擦の問題についてはマイナスになっておる、こう思いますので、私はこの貿易摩擦の問題についてはこれはこれだけでまた論議しなければならない重要な課題だと思いますけれども、本日は時間がございませんので、けさ報道されましたものを見て、大変重要な問題だ、こう思いましたから、総理のこの点についての御見解を伺いたいと思います。
  6. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 アメリカ側は、三月末におきまする米上院満場一致決議が通過いたしました。九十二対〇という満場一致で、課徴金そのほか必要な措置大統領がやれ、四十五日以内に措置を決めろ、九十日以内に実行せよ、そういうような、今までないような、主として日本を目当てにした上院決議が成立いたしたものですから、アメリカのホワイトハウスとしては非常に苦慮した面があるように思います。  四月早々にその法案がまた提出される、審議される、そういうことになりますと、これがもし万一通過いたしますれば、大統領が仮に拒否権を使ったところで、三分の二でまたその拒否権は議会で敗れてしまう。そうなると必ず法案が成立するという危険性が出てきた。それでアメリカとしては非常に驚いて、もしそのような課徴金に類するような法案ができたら自由貿易主義者の大敗北になるし、アメリカ日本ニューラウンドを推進しておるという手前からニューラウンドの推進にも重大なる障害が出てくる。そういうことを懸念して、急遽シグール特使を派遣したものと私は考えております。  参りまして、いろいろ話をいたしましたが、主として電気通信の部門におきまして、小山郵政事務次官先方のオルマー氏あるいはスミス氏との交渉の中でいろいろデッドロックに乗っていたと思う面がございます。そういう部分について先方が要請をし、私がそれに対して答えた、そういうような筋で話をしたということでございます。  中身については、今交渉している最中あるいは整理しているところでございますから申し上げるわけにいきませんが、日本市場開放という基本方針に沿って、ある程度現在の状況に対応し得るようなことを国益を踏まえつつ私は処置した、そういうことでございます。
  7. 川崎寛治

    川崎委員 論議いたしたいのであります、討論をいたしたいのです。あなたは、この間の日曜日のあれを聞いておりますと、国会討論がない、こり言っておりまして、言って、しまったなという顔をしたのを私よく見ておりましたが、本当はしたいんですよ。しかし、わずかな時間ですからきょうはできませんけれども、いずれまたいたしたいと思います。  本題に入りまして、補助金一括削減法案についてお尋ねいたしたいと思います。  私は立法過程というのは大変大事だと思うのです。民主主義というのは手続が大事でありまして、国会というのは最高議決機関でありますから、議案の立案提案、そして審議、そういうすべての過程が大変大事でありますが、この法律ではそういうものを非常に省略をしてきている危険性というものが立法の仕方として非常にあるわけです。  そこで、委員会審議という、つまり戦後の常任委員会制度でできてまいりましたその五十九本の法律というのが積み上がっているわけですね、それを一括法補助率削減ということでくるわけでありますけれども、その中には、生活保護の問題にしましても義務教育費国庫負担の問題にしましても、そういう大変重要な戦後の過程が全部入っているわけです。それは衆参の予算委員会における同僚諸君議論を振り返ってみましてもあるわけです。  そこで大蔵委員長お尋ねをいたしますが、当大蔵委員会任務は何でありますか。
  8. 越智伊平

    越智委員長 法案を十分審議することにあります。
  9. 川崎寛治

    川崎委員 そうじゃないんですよ、法案じゃないんですよ。あなたは国会法なり衆議院規則なり、読んだことあるんですか。委員長理事を何遍もやっているんだから……。
  10. 越智伊平

    越智委員長 読んだことがあります。
  11. 川崎寛治

    川崎委員 読んでいるというならそれでいいんだ。  そこで、これは「大蔵省所管に属する事項予算委員会及び決算委員会所管に属する事項を除く。)」こういうふうになっているわけですね。いいですか。憲法なり国家行政組織法なり内閣法なりで大臣任務というのもそれぞれ決めているのですよ。個々に各省法律を見ますと、文部省に関する法律主任大臣はだれですか、総理大臣
  12. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず文部大臣だろうと思います。
  13. 川崎寛治

    川崎委員 そのとおりですね。そういたしますと、運輸省にいたしましても農林水産省にいたしましてもずっとここに出てきている五十九本の法律は、大蔵大臣関係法律は一本もないんです。大蔵大臣関係の一本もない法律改正するわけです。それをなぜ大蔵大臣提案をするんですか。そしてこの大蔵委員会審議をするのか。これを大蔵委員会に付託をするということについては、野党がこぞって反対をしてまいりました大変大きな課題だと私は思うのです。内閣法で、もめたときは内閣総理大臣調整することになっておりますけれども、なぜ大蔵大臣大蔵省に一本も関係のない法律改正提案者になるのか。総理大臣、説明してほしいと思います。
  14. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 補助金処理が中心でございますが、補助金処理というのは財政処理の非常に重要な部分でございまして、財政処理というのは大蔵大臣がやはり責任を持ってやることであります。そういう面で共通の性格を持っているものを一括した、そういうふうに解釈いたしております。
  15. 川崎寛治

    川崎委員 私はそう言うだろうと思いました。それじゃ、国家行政組織法の上で、大蔵省にそういう権限がありますか。総理大臣どうですか。
  16. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 財政処理大蔵省仕事であろうと思います。
  17. 川崎寛治

    川崎委員 財政処理じゃないでしょう。義務教育国庫負担にしましてもあるいは生活保護の問題にしましても、例えば生活保護議論をしますとき、竹下大蔵大臣昭和二十一年以来と言って、くどくど言っているわけですよ。単なる補助率削減じゃないんですよ。つまり、社会労働委員会がずっと積み上げてきた経過がある。それを補助率という問題で勝手にできるということなら、(「各省大臣要らないよ」と呼ぶ者あり)本当に今言うように、各省大臣要らないんですよ。  それじゃお尋ねをいたしますが、ことしの補助金は十四兆四千三百一億円、これの根拠法が何ぼありますか。
  18. 平澤貞昭

    平澤政府委員 十四兆の補助金のうち約八割が法律に基づいておりまして、残りの二割が予算補助というふうになっております。
  19. 川崎寛治

    川崎委員 いや、法律は何ぼありますかというのですよ。十四兆四千三百一億円の補助金根拠になる法律は何ぼありますかと……。
  20. 平澤貞昭

    平澤政府委員 補助金等に関する法律の数でございますけれども、一応取りまとめましたところによりますと二百五十四法律ございます。
  21. 川崎寛治

    川崎委員 そうですね。私が大蔵省整理してくれと言ったら、一生懸命やってきのう持ってきたのですよ。本来なら、これは全員に配ってもらって、この補助率削減という法律性格、そういうものを議論しなきゃならぬと思うのですよ。  それじゃ、この二百五十四本の法律の中に、大蔵大臣主任大臣として管轄しております大蔵省関係法律は何本ありますか。
  22. 平澤貞昭

    平澤政府委員 この中に三本ございます。
  23. 川崎寛治

    川崎委員 総理、三本ですよ。しかも、それは国家公務員等共済組合法とか、あるいは旧令による共済組合等からの年金云々という法律と、もう一本、それは昭和二十九年の補助金等臨時特例等に関する法律という、これの前例になっている法律です。この二十九年のときには、保守の、あのときは何党ですか、自由党か民主党か、その保守側諸君も、憲法違反というか憲法議論をやっているのです。それくらい、そのころはまだ戦後の民主主義というものの立場で、国会の権威にかけて法律議論をしているのです。こんなむだな議論をするなという与党の声もあるようでありますけれども、私は戦後の民主主義はそうじゃなかったと思う。そうしますと、大蔵大臣が今言う五十九本の法律提案者になれるという根拠については、私は先ほどの答弁は大変不十分だと思うのですね。  これは法制局長官に聞きましょう。法制局長官大蔵大臣大蔵省関係のない法律改正提案責任者になるということについての根拠を明確にしてもらいたいと思います。
  24. 茂串俊

    茂串政府委員 お答え申し上げます。  ただいま委員仰せのとおり、この今回の補助金等一括法の中に盛られております法律関係につきましては、いわゆる各省所管法律が多数あるわけでございますけれども、もともとこの法律案は、国の財政収支の改善を図るという見地からとられる財政上の措置でありまして、また六十年度予算編成に当たって大蔵大臣予算調整権限に基づいて取りまとめられた措置でもありますので、大蔵省において取りまとめたものと承知しております。  なお、ただいま言われました法律的な根拠でございますが、大蔵大臣は、大蔵省設置法の三条一号によりまして、国の財務に関する国の行政事務及び事業を一体的に遂行する責任を負うことが任務として規定されておるわけでございまして、また、かたがた同法の五条一号により、国の予算決算及び会計に関する制度を統一することの権限を有するものとされております。さらに、財政法十八条によりまして、歳出等の見積もりを検討して必要な調整を行うこととされておりまして、予算編成過程の中で、予算調整権限に基づいて予算全体を調整するという立場にあられるわけでありまして、その意味大蔵大臣がこの一括法取りまとめるのは適当であるというふうに政府としては考えまして、そうしてこのような運びになった次第でございます。
  25. 川崎寛治

    川崎委員 そういう答弁をするだろうと思っておりました。それなら、十四兆円の根拠法が二百五十四本ですが、その立場でいきますならば、これは全部財政調整ということでいきますと、大蔵大臣にこの二百五十四本の法改正提案者になれる権限がある、こういう議論になりますね。まさにこれは大蔵授権法ですよ。  総理はかつてヒトラーを大変尊敬されたということを私は聞いておりますが……。(中曽根内閣総理大臣「そんなことはない。それはうそだ」と呼ぶ)いやいや、そう言われておる。そのヒトラーが一番やったのは何かというと、国会を眠らせたのですよ。政権をとったときに国会授権法というのをやった。だから、二百五十四本の法律というのを各省全部の財政という名前で全部やれるというならば、社会保障制度審議会とかそういうものでずっと積み上げてきたものが、財政調整ということで全部改正修正ができる。そうなら大蔵授権法ですよ。だから、私は先般の参考人に御出頭願っていろいろお尋ねをしましたときも、財政制度審議会委員をしておられる先生一人を除いて、異常だ、絶対反対だという人と、異常だが、まあ財政上やむを得ぬなという人たち、みんなやはり異常だという感じを持っているのです。  そうしますと法制局長、二百五十四本の法律は、財政調整ということであるならば、大蔵大臣が全部各省大臣を越えて法の改正者になれる、そういう議論ですか。そういう論拠ですか。大変じゃないですか。
  26. 茂串俊

    茂串政府委員 お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたのがいわば法的な根拠でございますが、今回大蔵大臣立場でお取りまとめになりました法案、これは所管は確かに先ほど申し上げましたように大蔵省以外の各省所管法律で占められておりますけれども、しかしながら、先ほども申し上げましたような大蔵大臣立場からすれば、その法律案取りまとめて、そしてこれを国会に提出する、本来はこれは内閣総理大臣権限に属するわけでございますが、それを設置法上の権限から、大蔵大臣がいわば総理大臣の命を受けまして取りまとめて、そして提出するという、いわば取りまとめという形で大蔵大臣責任を負っておられるわけでございます。  したがって、大蔵大臣取りまとめ提案されたからといって、各省大臣所管する法律大蔵大臣に全部移ってしまうというわけでは毛頭ないわけでございまして、その立案に当たりましては当然各省大臣責任を持って、いわば内容を固めるに当たりましては意思決定なり判断をされておる、こういうことでございます。
  27. 川崎寛治

    川崎委員 法制局長官というのは、憲法や戦後の民主主義、そしてその制度、そういうものを守る立場からの法制局長官でなければならぬのですよ。だから、政府の都合のいいような法解釈をし整理をするというのが法制局長官仕事だとしたなら、これは私は大変問題だと思うのですね。  前の法制局長官がかつて予算分科会内閣委員会等で言っておるのは、いろいろな整理の仕方をしておりますけれども、つまり「関連を持って国会委員会でできるだけ円滑に審議していただくという見地から、原則としては一つ委員会所管に属する範囲内のものでまとめる。」ということが原則だ、こう言っておるのですよ。これは幾つの委員会ですか。国土庁なんか、一つじゃなくて、まだ三つ、四つに分かれるわけですから。そうしますと、十を超します委員会のものを一本で持ってきたのですよ。妥当ですか、法制局長官
  28. 茂串俊

    茂串政府委員 お答え申し上げます。  従来からたびたび答弁を申し上げておるところでございますけれども二つ以上の法律改正一つ法律案としてまとめて、いわば一括化して国会提案するということは、従来からしばしば行われているところでありまして、枚挙にいとまが。ないほど多数の事例があることは、御承知のとおりであると思います。したがいまして、一般論としましては、一つの技術的な立案方式として一般的に認められているということが言えようかと思います。  ただ、一本化と申しましても、無制限あるいは無制約に行われていいというわけではもとよりないわけでございまして、この点につきましては、従来から私ども一つ基準と申しますか、方針と申しますか、そういうものを決めまして処理しているところでございます。  この点につきましては、委員承知のとおりであると思いますが、まず第一には、法案に盛られた政策が統一的なものであるとか、その結果として法案趣旨目的一つであるというふうに認められる場合、あるいは内容的に法案の条項が相互に関連して一つ体系を形づくっていると認められるような場合、こういった場合にまさに一本化にふさわしいということで、私どもとしては審査の段階でこれを一本化するということを御了承申し上げておるところでございます。  ただ、それ以外に今委員がおっしゃいましたように、法律案委員会別の問題があるわけでございまして、この点につきましては、いわば実際上の配慮と言っていいかと思いますけれども、先ほど申し上げた二つ基準を適用する場合に、むろん例外はありますけれども原則として、できる限りは一つ委員会所管範囲でまとめるというような態度を我々としてはとっておるところでございます。  もっとも、法律案具体的内容によっては、これを一本化した方がとろうとする政策趣旨目的がかえって明確になるようなものがあることは否定できないわけでございまして、このようなものにつきましては、同一の委員会所管に属しないものであっても複数の法律改正案を一本化するということは、従来からしばしば行われておるところでございまして、今回のいわゆる一括法案におきましても、十分慎重に検討を重ねた上でこれは一括化する方が適当ではないかという判断のもとで、ただいま御提案申し上げておるような形の法案としてまとめた次第でございます。
  29. 川崎寛治

    川崎委員 それを一つ一つ議論しておりますと時間がありませんので、本質論を少しいたしたいと思います。  相関連をする、つまり目的一つである、それから一つ体系を形づくる、こういうふうなことを言っておるわけでありますけれども、それなら生活保護法の問題であるとか義務教育費国庫負担法の問題であるとか、これは単なる数量的な問題ではないのです。制度の根幹に触れる補助率の問題がこの一括法案の中で処理されようとしておるわけであります。でありますから、今長官が答弁をしております。そういう整理の仕方というのは、私はこれはなじまないというか、不当だ、こういうふうに思います。  それで、大蔵大臣いなくなっちゃったのでなかなか議論がまたしにくいのでありますけれども大蔵大臣のいないところで審議をするというのは、大変この法律については私残念なんですよ。ずっと大蔵大臣に聞くというわけでもないのですが、かなめかなめを聞かなければいかぬわけですから。ところが大蔵大臣いないわけですから、総理にすべての責任を持ってもらわなければいかぬわけです。  文部大臣義務教育費国庫負担の一部を地方財政法の十条からドロップする、廃止する、こういう法律ですね。そうしますと、これは昭和二十八年以来の制度の根幹に触れる。それは、文部省の「国と地方の文教予算」の中を見て、今度外しました教材、旅費も教材ですが、この教材の中でも教材費について言っておりますのは、これの五十二ページ「義務教育費国庫負担金(教材費)」のところで「「義務教育費国庫負担法」第三条に基づき、国は毎年度義務教育諸学校を設置する」云々となっておるわけでありまして、「この教材費に対する国庫負担制度は、昭和二十八年度に創設され」云々ときまして、「学習指導要領に示された指導内容を実施していくうえで基礎的に必要とされる教材の基準を設定するとともに、この基準を基に昭和四十二年度を初年度とする第一次教材整備十か年計画が策定され、」進んでいるわけです。その長期計画も壊すことになるわけです。としたら、単なる数量的な問題じゃないのです。文部大臣いかがですか。
  30. 松永光

    ○松永国務大臣 義務教育費国庫負担制度というのは、先生もよく御承知と思いますが、義務教育について全国的なレベルで教育の機会均等、教育水準の維持向上を図るために必要な経費を国が負担するという制度でございまして、この制度の根幹をなすものは教職員の給与費であると私は理解いたしております。そして、地方財政事情等を考慮してその後旅費、教材費等が追加をされて今日に至っておるものであります。  今回の措置は、地方財政計画で財源措置を講じながら処置をするわけでありますので、私は、義務教育費国庫負担制度の根幹をいじるものではないと考えております。
  31. 川崎寛治

    川崎委員 給与が根幹だなんということはどこにも書いてないのですよ。そしてこの法律は、まさに法三章ですよ。今までは義務教育費国庫負担制度だ、こう言ってきたわけです。文部省はそういう姿勢でなかったのですか。これは制度の周辺部分だという考え方だったのですか。そうじゃなくて、これもやはり義務教育費国庫負担制度を構成する一つの大きな基本だ。柱がいっぱいあるわけです。いつからそういうふうに変わったのですか。大蔵省義務教育費国庫負担制度改革に対する案が出された、それに対して文部省が反論をした、そのときには旅費や教材費に対しても改正反対という態度をとっておったのです。そうじゃないのですか。
  32. 松永光

    ○松永国務大臣 教材費は、先生も御承知のとおり、当初は義務教育費国庫負担の中に入ってなかったわけでありますが、終戦後、教材費について一括割り当て的な形で父兄の負担に転嫁されて、父兄が大変な負担をしているという状況がございましたので、昭和二十八年から国庫負担の対象になったといういきさつがあります。  今日におきましては、教材費につきまして先ほど言ったような父兄に負担させるということはなくなりまして、公費で負担するという制度が定着をいたしておる。そしてまた、今度の改正につきましては財源措置を地方財政計画できちっとしていただいておるということもありまして、教育水準の維持向上に反することでもないということから、財政状況を考えればやむを得ない措置だということで我々も了承したわけであります。
  33. 川崎寛治

    川崎委員 それで教材整備の十カ年計画は、今進捗度はどこまで行っておるのですか。
  34. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 お答えいたします。  先生御案内のように、教材整備につきましては、昭和四十二年度から五十一年度まで第一次教材整備計画、それが済みまして現在第二次整備計画進行中という時期であったわけでございます。ただ、近年の国の財政事情が非常に厳しいという状況から、当初の計画がかなりおくれを見ておりまして、これまで十カ年計画のうち七カ年を経過いたしたわけでございますが、達成率が約五〇%というところでございます。
  35. 川崎寛治

    川崎委員 総理、お聞きのとおり、国庫負担制度に教材費を入れましたときに、旧制度とどう違うかということも文部省は一生懸命言ったわけです。経過はずっとあります。経過を今言ってそれぞれ議論する時間はありませんけれども、第二次の長期計画の達成率は今五〇%なんです。  そこで大蔵大臣お尋ねしますが、それならばこの国庫負担制度から外されて、あとの達成に何年かかるのですか。その計画は従来どおり狂わぬで全部満たされる、こういうことを断言できますか。
  36. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 教材整備第二次の十カ年計画は、国庫負担制度、国庫補助金と申しますか負担金にかかわる仕組みといたしまして十カ年計画を持っておったわけでございますので、今回一般財源化に切りかえることによりまして、従来の計画はそれ自体としては形式的にはなくなると言わざるを得ないと思います。  しかしながら、せっかく進めてきた計画でございますし、私どもといたしましてはこれを念頭に置きながら各市町村に指導し、あるいは地方財政当局に対しまして財源措置についての御要望等もその状況等を見ながら行ってまいりたいということでございまして、いつまでに達成できるという形にはなっておりませんけれども、できるだけ早くその程度の水準に達したい、かように考えているところでございます。
  37. 川崎寛治

    川崎委員 総理、このとおりに、補助率のいじり方だということでない。つまり、義務教育の基本として進められてきた一角が、こういうぐあいに大きく崩れてくるわけなんです。としますならば、単なる手続法的な問題ではなくて、制度の根幹にかかってくるし、義務教育全体の問題にかかってくるのですよ。そういう認識がなければならない、こういうふうに思います。ですから、先ほど法制局長官答弁をしたような整理の仕方というのは大変不当だ、こういうふうに思います。  そこで、文部大臣、この義務教育費国庫負担制度を変える、三条を削除するのですからやはり変えることになるわけです。大蔵省側はもっと広範な改革案を出してきておったわけでありますが、それに対しまして——中教審なり臨時教育審議会なり、例えば臨時教育審議会も、制度の改革であるとか教育条件の整備であるとかということを具体的な検討課題というふうに例示されておるわけですね。そうしますと、それは任務だろう、こういうふうに思うのですが、この財政当局から出された問題、義務教育費国庫負担制度の改革という問題について、文部省の中のどういう機関でどういう御検討になったのでありますか。
  38. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 文部省内の審議会等といたしましては、こういう問題を直接所管する審議会をただいま持っておらないわけでございますので、省内では事務的な検討を重ねた上で結論を出したということでございます。  なお、関係いたします地方公共団体の都道府県あるいは市町村の教育委員会関係の団体等とは何度か相談を重ねながら結論を出したということでございます。
  39. 川崎寛治

    川崎委員 これは文部省の教育立法というのが、私は立法過程を少し洗ってみまして、文部省というのは厚生省や労働省とやはり大分違うな。つまり総理審議会を大変お好きで、私的な審議会、諮問機関をたくさんつくってどんどんやっておられますけれども文部省法改正については自分のところだけでやるのです。つまり、戦後の民主主義というのは、行政府の独走をチェックしようということで、国会常任委員会制度になりましたし、各審議機関をつくって、それに国民の参加を求めてくる、こういう形が戦後の民主化過程でやられてきたわけですが、文部省はそれがないのです。なるほど文部省というところはやはりちょっと変わった役所だなということを私は大変痛感をしました。  そうしますと、この法律をここで議論をする、つまり教育制度全部を議論するには、当然これは文教委員会でやらなければいかぬ。文教委員会で徹底的にやらなければいかぬ議論が、財政整理ということで一括法で出てくるのでしょう。これは私は大変恐しい問題であると思うのです。  そこで、文部大臣の方は今おっしゃられたとおりですが、厚生大臣はまだですね。それでは厚生省にお尋ねをしますが、生活保護法の問題について、社会保障制度審議会にかけましたか。
  40. 正木馨

    ○正木政府委員 お答え申し上げます。  ことしの一月十八日に社会保障制度審議会が開催されまして、その際、厚生省関係予算を説明すると同時に、高率補助の引き下げの問題につきましても御説明をし、御議論いただき、御意見を承っております。
  41. 川崎寛治

    川崎委員 政府予算案が決定になったのは年末です。予算案が決まった後、審議会にかけて事後承諾、制度審議会というものがこういうぐあいにないがしろにされているわけです。これは最後のところでまた今後の問題として議論をいたしたいと思いますが、大変私はそういう意味でこの法律には無理があると思います。  総理お尋ねをしますけれども文部大臣の方からも、義務教育の問題についてのいろいろな悩みがあったと思います。教材費と旅費にとどまったということを、私は文部省としては随分頑張ったなというふうにある程度の評価はしたいと思うのです。学校の事務職員や栄養職員の給与までぶった切ろうとしたわけですから、それをとめたということについては文部省としては頑張った方だなと思います。大変制度の根幹にかかわっておりますから残念ですけれども、頑張ったなと思うのです。教育というのは、大蔵省は教壇に立つ教員だけ給与を保障すればいいのだ、こういう考え方があるのですけれども、私はこれは間違いだと思うし、文部省も同じだと思うのです。  そこで総理、学校教育は今日大変危機の状況に置かれておりますから、学校教育を発展させていくためには、義務教育を発展させるためには、教壇に立つ教員はもとより、事務職員、栄養職員、そうしたみんなの分業、共同、そういうものの上に義務教育制度が維持をされ、発展させられておると思うのです。それについての総理の御見解を伺いたいと思います。
  42. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 おっしゃるとおりであると思います。教育が成果を上げていくためには、これを支えている各方面、各要素というものが調和ある協力関係をなし遂げることが必要であると思います。
  43. 川崎寛治

    川崎委員 そうしますと文部大臣、これは六十一年度の予算議論にこれからまたなってくるわけでありますが、大蔵が改革案を出してまいりました義務教育費国庫負担制度について、今後この制度を維持発展させることについての文部省としての、文部大臣としての決意といいますか見解を伺いたいと思います。
  44. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほども申し上げましたように、私は、義務教育費国庫負担制度の中核をなすもの、根幹をなすものは教職員の給与費であると認識いたしております。したがって、先ほど先生の申されました事務職員あるいは栄養職員は学校の基幹的な職員でありますから、文部省としては、これを義務教育費国庫負担の対象から除外することは極めて困難なことである。私どもはそういうことにはならないように最大限努力をしてまいる、こういう決意でございます。
  45. 川崎寛治

    川崎委員 その総理の御見解並びに文部大臣の決意といいますか、そういうものは次の六十一年度の予算の編成に向けての最高責任者としての御決意並びに主任大臣としての決意だというふうに私は受けとめておきたいと思います。  これは、大蔵大臣がいないので問題なかなか難しいのですけれども、ちょっと後先になりましたが、参議院の予算委員会で、今度の教材費、旅費を外すという議論根拠は何か、これに対する大蔵大臣答弁は大変問題だと私は思うのです。  ということは、これは臨教審などとも絡むわけでありますけれども、三月十四日の参議院の予算委員会で、我が党の久保亘君の質問に対して大蔵大臣は、「強いてよりどころを求めますならば、先ほど申しました第三次の臨調答申の中の「義務教育国庫負担金については、地方財源の総体の在り方を含め、今後、検討を行う必要がある」というので、年々これが検討をして、御審議いただいているような結論に到達したわけであります。」こう言っております。つまり予算編成予算調整過程でと、こうなっております。そうしますと、教育制度の根幹というものが予算編成予算調整の際になされる、そして臨調の答申で教育の制度が変えられる、これは私は大変な問題だと思うのです。そういう点について総理いかがでございますか。  これは、臨教審にしてもそうでありますけれども、そういう御議論なしに、予算の編成、予算調整、そういうところで教育制度を変えるんだ、事実上こうなっているんですよ。私はこの危険性というものを思うのでありますが、いかがでありますか。
  46. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府は、臨調答申に対しましてはこれを尊重して推進するという閣議決定をいたしておりまして、その臨調答申の内部に今のような内容はあるわけでございますから、これを検討する必要はある。そういう検討の結果、大蔵省は今のような一般財源化ということを図ったのであろうと思います。やむを得ない措置ではないかと思う次第でございます。
  47. 川崎寛治

    川崎委員 やむを得ない措置だということで教育制度の根幹が変えられていくんです。私はこれが危険だと言うのですよ。だから今度の法律は全部ばらしなさい。各省ごとに議論しなさい。各委員会ごとに議論すべきだ。単なる財政の問題として進められない危険性というものを私は感ずるわけです。大蔵大臣各省の上に財政調整ということで法改正を進められる、こういう中曽根内閣の法律改正法律修正制度改正のすべての権限を大蔵に与えるとするならば大変危険だ、こういうふうに思うわけです。  そこで、残り時間が大変少なくなりまして残念でありますけれども大蔵大臣は参議院の予算委員会で「増税なき財政再建」の「増税なき」というのは六十年度、六十一年度だ、こういうふうに答えておるのであります。「増税なき財政再建」は六十五年という目標を持っておりますけれども、その期間はいつまでなのか。六十五年までだよ、こう言われると思う。それならば、補助金削減あるいは補助率削減というものの進め方、いつまでやるのか。つまり、今日貿易摩擦財政再建ということで補助金削減がなされている中で、被害を受けておるのは福祉や教育の面なんです。農業なんです。外からと内側からと、両方から来ているわけですね。これをいつまでやるのか伺いたいと思います。
  48. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今回提出しております法案は、六十年度ということで御審議をお願いしておるところでございます。しかし、臨調答申の線にも沿いまして歳出歳入の見直しというものはずっと続けていくべきものでございましょう。その中で補助金の見直しということも引き続いて努力さるべき問題ではないかと思っております。
  49. 川崎寛治

    川崎委員 最初の「増税なき」は六十年度、六十一年度という大蔵大臣の参議院予算委員会における答弁、これは総理と意見というか考え方が一致した中曽根内閣の考え方、こういうことで受けとめてよろしいですか。
  50. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大蔵大臣がどういう答弁をされましたか、私速記録を読んでおりませんのでよくわかりませんが、年限を余り限って言ってないんではないかという気がいたします。その辺もよく調べて検討いたしたいと思います。
  51. 川崎寛治

    川崎委員 一年限りの補助率カット、そうして生活保護法などを見直すということになっておるのでありますけれども大蔵大臣、自治大臣、厚生大臣関係閣僚会議というのをいつ発足させて検討に入らせるのか、そしていっその見直しの結論を出させようとしておるのか、総理の御見解を伺いたいと思います。
  52. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは本年度予算が成立し、また本法がおかげで成立しました以後におきまして、予算編成の状況、予算処理の状況等も見まして、来年度予算を踏まえて適当な時期に考えたい、そう思っております。
  53. 川崎寛治

    川崎委員 厚生大臣お見えになりましたが、生活保護法の問題、これは衆参の予算委員会で随分御議論があったわけです。制度審議会には事後承諾を求めておるという事務当局の御答弁がございました。  そうしますと、厚生省に関する一年限りという問題については、今度はやむを得ぬということになったわけでありましょうけれども、大変抵抗もしておったが厚生省は割に簡単に早くギブアップしておるわけであります。厚生省としては、一年限りというものをどう受けとめ、今、総理が言われた関係閣僚会議議論というものに対してはどういう姿勢で臨もうとしておるのか、伺いたいと思います。
  54. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 この問題につきましては、終始一貫私どもは、このような措置によって福祉が後退をすることのないように、という気持ちから折衝に当たったわけでございます。したがいまして、今後も国と地方との役割分担あるいは負担というものを、今総理からお話がございましたように、この予算終了後真剣に討議していかなくてはならないと思うわけでございます。関係方面とも十分意見交換をしてまいりたいと思います。
  55. 川崎寛治

    川崎委員 自治大臣は、地方六団体の反対という意見も受けて大変強く反対をしておったわけでありますが、予算編成上やむを得ぬ、こういうことでのんだと思うのでありますけれども関係閣僚会議に対して自治大臣としては、一年限りでバックという受けとめ方、そうさせるということで一年限りの問題として理解をしておるのか、あるいは大蔵大臣が言っておる恒久的なもの、本委員会でもいろいろ議論があるわけでありますが、その点は一年限りでバックという強い姿勢で臨むつもりなのかどうか、伺いたいと思います。
  56. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 今のお話は、国と地方の役割分担あるいは費用負担の検討に際しまして自治大臣としてどういう見解を持って今後臨むかということだと思いますが、行政が果たすべき役割あるいは国と地方との機能分担の見直しを行いまして、地方自治の確立と地方財政の健全化を図る方向を基本としてやっていきたい。特に社会保障関係につきましては、国の基本的な責務が貫徹されることを基本として検討さるべきものと私は考えております。
  57. 川崎寛治

    川崎委員 細かな議論をすればまだあるし、特に社会保障の点について今後、自治大臣、厚生大臣、それぞれ見解を問わなければならないたくさんの問題がありますが、私の持ち時間がもうなくなりましたので議論は詰めるわけにまいりません。  そこで総理、沖縄はいまだに戦後を引きずっておるのです。それから奄美は戦後しばらくして復帰してきたわけです。それぞれ特別措置で特別のかさ上げをしてやってまいりましたが、沖縄とか奄美はやはりいろいろな条件の中で非常に苦悩しておると私は思います。それを一律カットで切ってくるということは大変問題だと私は思うのです。沖縄の復興なり奄美の復興なりというものについて、総理としての基本的な考え方を伺いたいと思います。
  58. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 沖縄及び奄美等につきましては、特別措置法をもちまして復帰後の事態に対処しようというので政府もいろいろ配慮もし、また現地でも御努力を願ってきたところでございます。ある程度成果を上げたと思っておりますが、一般論といたしまして、やはりほかの地域に比べまして、開発度合いと申しますか、まだ我々としてもよく考えなければならぬ要素があると思っております。そういう意味におきまして、一般論といたしまして、我々も重大関心を持っていくべき地域である、そう考えております。
  59. 川崎寛治

    川崎委員 大蔵委員長大蔵委員長が内閣委員会理事当時、許認可法の修正をやったことがあるんですね。これは非常に異質の問題だということでやったことがあるのです。私はその議事録を見て、内閣委員会理事当時の越智大蔵委員長は立派だったなと、こういうふうに思います。  そこで、今もそれぞれ御議論ありましたように、義務教育費国庫負担法であるとか生活保護法の基本である一例えば私、これは大変問題だと思いますことは、その生活保護費については本来なら社会保障制度審議会にかける、そして御議論いただく、それを踏まえなければいかぬのに、財政が先に走ったわけですね。財政制度審議会法改正を要求したわけです。そうしますと、この一年限りというのがもしも恒久化——厚生大臣、よく聞いておいてくださいよ。ひとつ自治大臣文部大臣もよくお願いしたいんですが、一年限りというのが恒久化ということになりますと、基本的な議論、つまり国と地方の役割分担であるとか制度がどうあるべきかという議論をきちんと踏まえないで、財政調整、こういうことでまず量的な走りをいたします。進む。それが制度改正に進んでいくということになりますならば、戦後この四十年間、常任委員会で積み上げられてきたいろいろな問題というのが、冒頭申し上げましたように大蔵省財政調整ということで法改正がなされていく、こういうことになるわけであります。でありますから、あくまでもこの法律は各常任委員会に論議を分けるべきだという意見を私は変えません。  それから特に、この各省にまたがる法律は、中川君もかつてはおかしいと憲法違反議論までしているんだ。中川君が新自由クラブにおるときはやったわけ。それが自民党に入ったら途端にそういう精神を失っている、大変済みませんけれども。だから、恐ろしいことだと思うのですよ。  そこで、大蔵大臣文部大臣、自治大臣がつまり一年限りということで進んだやつが、関係閣僚会議の間で議論をされて、そして恒久化、こういうことになりましたら、制度審なんか要らぬわけだ。法律の基本、制度の基本というものを財政の都合で全部変えていくということになる。だからこれはファッショだと言うのです。だから私は、この法律全部をばらすべきだ、常任委員会でやるべきだ。常任委員長がなぜそれを最初に、この委員会審議のあり方で大蔵委員長としての権威でやらなかったか。残念に思いますが、各大臣は、特に義務教育国庫負担という問題と生活保護という社会保障関係の問題についてはそういう過ちを犯してはならぬ、こう思います。としますならば、この法律からせめて削除すべきだ、こういうふうに私は思います。  でありますから、この一括法というものの危険性というものを私がるる申し上げましたが、あなたが言う戦後制度の見直しであるとかあるいは戦後政治の総決算であるとかいう考え方がこの法律に端的に出てきておると私は指摘をせざるを得ないのです。その点については大変内外ともにいろいろ問題があります。それだけに総理としての、最高責任者としての苦悩も多いと思いますけれども、しかし私は、民主主義というものは過程が大事だ、手続が大事だ、そういう立場から、最後に総理見解を伺って終わりたいと思います。
  60. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 お答えを申し上げます前に、川崎さんのお話の中で、何か私がヒトラーを尊敬しているというような御発言がありましたが、そういう事実はございませんので、念のために申し上げておきます。  それから、今回の措置に関して、特に教育及び生活保護の問題あるいは奄美大島等の問題についていろいろ御指摘をいただきましたが、御意見として謹しんで拝聴した次第でございます。しかし、政府は、やはり今まで御答弁申し上げたような見解を持っておる次第でございます。これらの措置につきまして将来どうするかということは、ことし一年限りとしてこれは法案提出しておるわけでございますが、これらにつきましては、適当なときに関係方面でよく相談をいたしまして、将来の措置については検討してまいりたいと思っております。  しかし、いずれにせよ教育とかあるいは生活保護というような問題は国政の重要な部分をなすところでございまして、我々といたしましても慎重に考えていくべき問題であると思います。
  61. 川崎寛治

    川崎委員 終わります。
  62. 越智伊平

    越智委員長 沢田広君。
  63. 沢田広

    ○沢田委員 総理大臣にお伺いをいたしますが、補助金というものについて私の方から若干回答を加えて申し上げれば、戦後長年の補助金行政で補助金がだんだん膨れ上がっていくことは財政の硬直化を来す、だからある時期においては必ず見直しを行う。あるいは、その補助金によって自立体制をどうつくるかということについて援助をする、同時にまた、恒常的に補助金を出す団体なり事業もあり得るであろう、その選別がやはり政治家の力によってゆがめられて今日のような補助金体制というものが生まれてきたのではないのか。本来スタートするときには、やはりそういう一つ目的意識を持って補助金というものができている、私はそう思うのでありますが、総理大臣はどう考えておられますか。
  64. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国が支出するお金の中には、補助金とか交付金とか、あるいは連帯支弁金であるとか、いろいろな性格のものがあると思います。  補助金の場合には割合に、インセンティブを与える、そういうような意味で民間やあるいは地方公共団体に中央政府から支出する場合が多いと思います。しかし、ある時間をたちますと、そのインセンティブの必要がなくなったものとか、あるいはほかにいろいろもっと新しい要素を加えなければならぬという問題も起こったりいたしまして、やはり常にこれを見直し、見直し、最も有効適切に行われるように改善していくということは、行政として心がけなければならぬところであると思っております。
  65. 沢田広

    ○沢田委員 そうしますと、今度のこの法律案も、今述べられたような意図といいますか希望といいますか、そういうものを秘めながら提案をされている、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  66. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 臨調の答申は、そういう趣旨補助金の見直しが行われ、また我々に提議しているところもございまして、我々はそれを受けて実行しているという面もあるのでございます。
  67. 沢田広

    ○沢田委員 それじゃ、またもとへ戻りますけれども、その財政再建に関係してちょっとほかへずれますけれども、先般も私たちこの委員会で関税を議論いたしまして、我々も賛成をいたしました。その後、今川崎先輩からも指摘がありましたが、アメリカから、これじゃとてもどうにもならぬ、しかもまだ議会も、これはとにかく報復手段を考えなければいかぬというような決議も出した。政府の行政部、大統領の方は、そうはいかぬ、こう抑えているようでありますけれども、いずれにしてもアメリカとの関係だけを中心に今貿易摩擦が考えられているようでありますが、総理大臣が理解を示した、あるいはそういう方向で協力するということを言ったか言外に示したかは別として、その内容というものはどういうものであったのか。やはりこの際、日本の経済に影響すること大きいものがありますので、お答えをいただきたい。
  68. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 アメリカ側が重視しているのは通信機器、それからエレクトロニクス、医薬及び医療機器、それと木材、紙、こういうようなものが先方の関心事でございます。そのほか、EC及び発展途上国がそれぞれまた日本に対して関心を持っている部分もございまして、これらも忘れてはならぬと思っております。  アメリカとの関係におきましては、特にそれらの問題に関しまして最終段階においては基準・認証の問題、それから透明性の問題、これらが非常に大きな関心事として登場してまいりまして、特に電気通信分野におけるその問題がいろいろ折衝の対象になったわけでございます。それらの中で、ある程度詰めが行われなかった部分について私が私の判断を示した、そういう点がある次第でございます。
  69. 沢田広

    ○沢田委員 そのある判断を示したということは、私らが聞きたいことは、それがまた日本の経済にどういう影響を及ぼしてくるのであろうか。私はある意味においては開放主義者なんであります。やはり競争に勝てる力をみずからつくっていく必要があるという意味を持っているからなんであります。だから、今の示したということは、国内の産業だけを考えて日本が成立するものでもないし、やはり諸外国との友好を保たなければならぬ、そういう立場においては、ある意味において我々は理解をしているわけであります。しかし、今言われた、総理大臣が理解を示したのと私どもが理解を示したのとでは、もう現実的政策にあらわれる現象は違うわけでありますから、大臣アメリカにどういう理解を示したか、その中身は公表できるものなのかできないのか、あるいはこういう方向で検討しているんだという概略は示されないのかどうか、その点ひとつお伺いいたします。
  70. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 アメリカ日本は歴史も違いますし、習慣も違います。日本は二千年にわたる国を持っておりまして、それで律令体制とか、あるいは国や政府というものが護民官的色彩を持っておるわけです。つまり政府責任において国民を保護していくという形で国のあり方が決められて、特に明治以来そういう体制をとってきておるところです。ところがアメリカは契約国家でありますから、国民が中心になって動いておって、政府は小さい政府で必要最小限のことをして、あとは国民責任においてやる。ですから自動車のような場合でも、日本は自賠責というようなもので国が関与してきて、そのほかいろいろな規則をつくって、もし事故が起きたり何かした場合には国の責任に関するというような面が多少あるわけです。     〔委員長退席、熊谷委員長代理着席〕 ところがアメリカは、それらはみんな消費者、ドライバーの責任でやることで、それはドライバーは好きなことをやればいいんだ、そういうことになっています。ですからアメリカは五十五万人も弁護士がいるが、日本は一万五千人しか弁護士がいない。そういう国の差があります。  ですから、例えば電気通信分野においても、これこれのことは政府がいろいろ責任を持ってカバーしてやって、そして事故や故障や文句が起きないように責任を持つ、そういう形になっておる。医療の分野においてもそういう面があるわけでございます。ですから、時々政府責任ではないかといって訴訟を起こされる場合が非常に多い。しかしアメリカの場合は、そんなものは消費者の選択でやることであるから、消費者が自分でやることです、弁護士を雇ってやりなさい、会社相手にやりなさい、そういう形でアメリカ処理できる問題であります。ですから、電気通信の分野におきましても、これこれの性能という問題について政府はあくまで確保しようとする、向こう側はそれはもう消費者が自由に選んでいいことじゃないですかという問題が出てくるわけです。そういうような問題が残っておりまして、しかし公共性という問題がありますから、ですから政府はこの程度はどうしてもやらなければならぬという分野は確保するが、消費者の選択に任せていいという分野はもうアメリカ流に消費者の選択の方向に切りかえたらどうか、そういう部分が実はあったということであります。  それから透明性の問題については、法律や政令や省令をつくるという場合において、アメリカの場合はまず原案を示して、そして意見を聞いて手入れをさせる、そういうやり方でできている。日本の場合は、まず意見を聞いてからそれから案をつくっていって、そしてできてからもう一回意見を聞いてみる、そういう過程を通っている。アメリカ側は最初にともかく政府が先に案をつくって示す。日本はそうじゃなくて、みんなの意見をいろいろ聞いてみて、それから案をつくって示す、そういう手数の込んだやり方もやっております。それを、最初から政府が案を示して、そして政府がどういう考えを持っているかということを先に示さなければ意見も言えないじゃないですかというのが向こう側の考えのようです。しかしこっちは、案をつくる前にまず意見を聞いて、その意見を入れた案をつくるというのが順当ではないかという、そういういろいろ行政の習慣の差というものもあるのですね。そういうような問題を妥当に解決していくという点もあったわけであります。
  71. 沢田広

    ○沢田委員 いみじくも言われましたけれども補助金なんかは、今どっちの方法をとったつもりでおられるのですか。今の話でいくとどうも聞かぬでやった意向の方が強いんで、アメリカ方式をとったんじゃないかという気がするのであります。その点は非常に明快な御答弁をいただいた割に、どうも補助金の方は実態と合わないなという印象をより深めたのでありますが、大臣、もう一言哲学的にお答えいただきたいと思います。
  72. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 補助金アメリカでも随分ありまして、スタンプ制度であるとか食糧補助であるとか、あるいは医療補助であるとか社会福祉の補助、いろいろやっておるわけです。それは世界じゅうどの国でもやっておるわけで、日本も同じようにやっておるので、その差は余りないと思いますけれども、しかし基本的には、アメリカは自分のことは自分でやる、自分の責任でやったことは自分で責任を負う、そういう原則のようであります。そういうニュアンスの差は、補助金性格においてもある程度あるだろうと思います。  そういう意味において、日本の場合は十四兆四千億円というそういう性格を持った補助金あるいは補助金類似の費用が出ているということは、国のカバレージの範囲がかなり広い。そういう性格を持っておるので、これはある意味においては日本のそういう性格であるから、いいとか悪いとかという問題ではないと思います。
  73. 沢田広

    ○沢田委員 将来の赤字がなくなった段階における予算といいますか、政治の状況から見て、こういう補助金というものは総予算の何%ぐらい、あるいはゼロが望ましいのか。あるいは、ある一定の制限のもとに補助金というものは使われて、言うならば地方に財源を譲って自主的にシビル、ミニマムなりナショナルミニマムなり、それぞれの基準をある程度示して、その基準を合意をしたものに近づけるようにそれぞれの自治体に努めさせる、あるいは努めてもらう、そういう一つの枠の中で行政を進める、そういう方法もありますが、いわゆる縦割り行政でやっておるという現状もあるわけです。総理大臣がそこまでやれるかどうか、ちょっと時間的な問題がなくはないと思うのでありますが、将来の展望としてあるべき補助金というものは、どの程度が補助金の限界と考えておられますか。一応お伺いをいたしたいと思います。
  74. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 教育とか福祉とか、そういうような問題については、ある程度補助金というものは必要であるだろうと思いますが、現在のこの日本制度自体を見ますと、やはり地方の側からいうと国の干渉、制肘が多過ぎる、だからこれを一般財源化してほしいとか、あるいは地方に財源を与えてそれはもう地方に任せなさい、地方の身辺の問題、住民の身辺の問題はそこを担当する地方の機関がやるべきである、そういう原則がちょっと足りな過ぎる、私はそう思います。  そういう意味において、補助金のメニュー化とか一般財源化とか、あるいは地方に自主財源を与える方向で中央の関与を減らしていく、そういうことは賛成なんです。ですからこれは、官の持っているものを民に移すということがあるし、あるいは中央の持っているものを地方に移すということがある。両方が我々のこれから行くべき方向であると思っております。
  75. 沢田広

    ○沢田委員 その限りにおいては私も同じ意見でありますが、今度の一律カットが果たしてそういう方向へ進む糸口になり得るかどうか、その辺の保証がちょっと、言うならば子供のしつけじゃありませんけれども、細かいことだけに注意がいって、そして人格形成その他に対する配慮が足りなかったというような、若干細かいことにだけ、お金だけに注意がいったといった印象は免れないんですね。今総理が言ったことと、私も今考えている中央、地方のあり方というものが今後の日本一つの大きな課題だと思っているわけですね。だからやはり、憲法で保障された地方自治権というものがどう強化され充実されるかということが日本民主主義一つの大きな柱になる。そうなるためには、補助金というものは一般財源に転化されながら、その中で有効に生かされる、そういうことはその自治体の見識を高めていく、こういうことにもなるわけでありますから、その意味においての一般財源化はぜひ必要だというふうに私も思うのです。  ただ問題は、そのスケジュールは総理大臣としては今頭の中にあるだけなのか、具体的にどこかの機関でそれを検討させようとしているのか、その点は今どうお考えですか。
  76. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは臨調答申の中で盛られている部分が既にございますし、行革審において機関委任事務とかあるいは国の権限、許認可の地方に対する移譲であるとか、そういうことを今やっていただいておりまして、それが出たらそれを拝見して、検討した上で実行したい、そう思っております。
  77. 沢田広

    ○沢田委員 それは事務の、許認可事務とかそういうものであって、財政的な分野まで及ぶのかどうかという点はちょっと私も答申の中から拝見し切れないのでありますが、総理大臣としてはそれはどう受けとめておられるか。
  78. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 シャウプ税制以来の基本的な大改革を税制においてもやろうとしておる。それを課題として受け取っておりますが、その中にはやはり、中央と地方の税源配分調整とか、そういう問題も当然出てくべきである、そう思っております。
  79. 沢田広

    ○沢田委員 また若干時間の関係で寄り適しますが、きょうの新聞にも出ておるんですが、「高級官僚 補助金付き天下り 二百十五人、交付額八百七十八億円」と、こう出ているのですね。これは大臣、こういう報道についてどうお考えになられますか。
  80. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 公務員がそういう公益法人に行ったからといって、そのために補助金をお土産に持たせてやるという性格はないと私は思うのです。その法人はその法人特有の大事な仕事をしておるので、それで補助金を出す必要があるということでやっておるので、人間が行くから補助金を出すという、そういうものではないと思います。  ただしかし、天下りを抑制するということは行革の方針でもございまして、政府としては人事院とも協力をしていろいろ努力してきているところでございますが、今後とも努力してまいりたいと思っております。
  81. 沢田広

    ○沢田委員 補助金を一方では減らされて泣く国民がいると思えば、一方ではそういう天下りによって補助金がふえていくのだという形は、国民にどう映ると総理は思いますか。生活保護費も削られたそうだ、あるいは身体障害者も削られたそうだ、こう言われている中に、こういう報道が国民に映る目として、政治の信頼度あるいは自分が今享受している政治の中身あるいは自分が要求している今の政治のあり方、そのことに対してどういう反応を示すとお考えになりますか。
  82. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今回の措置は、国民の皆様方には直接的にサービスや給付の劣悪化という問題はないのでありまして、中央と地方の財源配分調整の問題があるだけで、国民の皆様方には変化はない、そういうことでございます。  また、一方において補助金政策というものは、ただいま申し上げましたように常に見直す、あるいは中央、地方の調整も行う、そういう筋で実行してまいりたいと思っておるところです。
  83. 沢田広

    ○沢田委員 今言われたことは、今聞こうと思ったのです。私も、本会議で急に出たものでありますから質問の中身と答えの中身がすれ違ったことがあったわけでありますが、今言われたことは、総理のこの補助金カットについてのイメージで言われていることなんではないでしょうか。実際にそれが担保として地方に行った場合、それは地方の自治権である、だから総理としては、こういう考え方でカットしたけれども住民には一切影響ありません、それは総理として保証できます、こうおっしゃったわけですね。間違いありませんね。
  84. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 中央と地方の負担区分が変わってきたということで、直接生活保護を受けている方々やあるいは補助金を受けている方々については影響はない、そう思っております。
  85. 沢田広

    ○沢田委員 その影響はないというのは、影響させないという答弁にしていただきたいと思うのです。地方では総理の思惑とは違った現実が、やはりカットは現実には選択といいますか選抜、例えば今まで十人生活保護者がいたとすれば、一割カットされれば一人削る、こういう形で、適正な審査を行うという名目のもとに現実には選別が行われつつある、こういうことを私たちは地元でも見ているわけです。ですから、総理はそういうことはさせない、これはひとつ各省に、総理の考えたこの法律の精神なんですからその精神は生かしていただくということが必要だと思うので、これは住民に転嫁をさせたり支障を与えるものではないし、それはさせません、そういうことにひとつお答えをいただきたい。
  86. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 住民に支障を与えるとか、そういうようなことは起こさせない趣旨で今回の法律もできております。  ただ、不正受給とかあるいは不当な受給とか、そういうようなものはこれは取り締まらなければいけない、行政の公正な執行という面はやはり実行していかなければならない、そう思います。
  87. 沢田広

    ○沢田委員 くどいようでありますが、不正の受給とかあるいは間違った支給をされているものについては、これは平常業務として当然常時行われなければならないことである。そのことは常時行われていくであろうが、この法律によって選別をして、今まで受給された者が受給されない、そういう差別は行わない、こういうふうに確認してよろしゅうございますか。
  88. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そのとおりでございます。
  89. 沢田広

    ○沢田委員 続いて、これは外務の関係のことなんですが、総理は外交の面においては大変活躍をされ、お顔も広く、それぞれいろいろな国々との関係で交渉をお持ちになっておる。  これは私の一つの考えてありますが、いろいろな武力の問題も交渉の中に入っておりますが、いわゆる戦力といいますか——これからはやはり国連においてどう多数を得るかということが一つ日本の方向ではないかというのが私の主張なのであります。ソ連とアメリカを比べますと、アメリカは割合にどうしても武力によって征服をしていくし、いよいよになればそれに従ってくるであろうと考えている。ソ連は、自分の国民の生活を犠牲にしてもそれぞれの未開発の国なり第三世界へ援助をしながら、ソ連との友好国をどうふやそうかと努力をしている。その票は国連のそれぞれ採決の票数に徐々にあらわれてきておる。その傾向については総理はどのように今現在お考えになっておられますか。
  90. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 沢田さんの今のお言葉の中で、アメリカが武力で制圧するという言葉がありましたが、その言葉は私は適当でないと思っております。いわゆる大国主義ということはいろいろ発展途上国等から批判されているところであって、超大国というものはそういうような批判を受けやすい性格を持っていると思いますが、しかし、アメリカの方だけがそういう性格を持っていると決めつけることはどうかと思います。最近のいろいろなケースを見ればそのことは理解されるのではないかと私は思います。  しかし、やはり日本も経済的には大国になりましたから、ややもすると、こっちは善意でやっておったりこれは当たり前のことであると思っていることが、実は発展途上国や経済的に困っている国々から見れば非常識なことをやっておる、あるいは大国主義をやっておる、そう言われかねまじきことも多々あるのではないかと反省をいたしております。やはり強くなった国というものは、善意でやったことでも片っ方からはそういう判断を受けるということをよくわきまえて、常に反省をしてやっていく必要がある、そう思います。
  91. 沢田広

    ○沢田委員 武力というか、割合力に頼ると言った方がいいのかもわかりませんがね、その表現は。しかし似たり寄ったりのようなスタイルがレーガンさんのスタイルですから、ストロングアメリカ、こう言っているのですから、やはり力に頼るということなんでしょう。その辺のことはここでいさかっても、内輪の話ですからそれはどちらでも構いませんが、とにかくそういう方向がユネスコの二の舞に日本アメリカがなっていくという今の世界の流れというものをどう見詰めているか。今このままでは、第二次大戦が起きたときの国連の脱退と同じような傾向がだんだん強まっていく。そういう傾向について総理の認識を実はお伺いしたいわけです。
  92. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ユネスコの運営というものは、やはり常識のある国から指弾されているように、私は非常識な部分が最近は非常に多いと思うのです。ほかの機関がやっていることに、またユネスコが本来目的としてやることを逸脱していると思われる部分がある。ユネスコというのは、やはり各国がみんな共通に理解もし、支持するということをやるのが望ましい。教育なら教育、文盲の征伐とかあるいは文化の保存とか、各国がみんな共通に賛成してやることをやるのが望ましいので、政治的対決をやっていくことは、ほかの安全保障理事会とか国連総会とかあるいは軍縮委員会とか、そういうことでやればいいのであって、そのユネスコの本旨自体を考え直さなければいかぬ部分が出てきておる、そう私は考えておるわけです。
  93. 沢田広

    ○沢田委員 非常識も多数は力なりという、今の国会もそういうこともあるわけです。やはり正義は力なりで、自民党のやっておられることは今は正義になっているわけであります。それはやはり力によって支えられているものなのであります。例えばこの補助金カットも、そのうちの一つだろうと私は思うのです。ですから、非常識であろうと、ユネスコの場合にあるいは行き過ぎがあろうと、多数になればそれが世界の一つの潮流であり正義になる。私はそのことが今の国連の中に流れている一つの方向に対して危機を感じなければいけないのではないかということで、この前は、三、四年ぐらい前ですか、アフリカ対策を総理に言って一課、二課ができたそうですが、そういうことで申し上げたつもりであります。  ですから、第三世界に対して日本が果たすべき役割、これはきょうの議題の中では直接関係がないようでありますが、これから関係してくるわけなのですが、そういうことで、この世界に対する我々の考え方というもの、あるいは孤立感をどうなくしていくかという役割というものを果たす必要がある。そのためには海外援助があるのだということでしょうけれども、私は、今度は国内の武装というものはやはり極度に削減していくということが必要だ。もうだんだん話をそっちへ持っていってしまいますがね。本当は、ユネスコのことで国連の問題の傾向を総理から——後でちょっと教えてください。それはまた言ってもらいます。そうなってからでは手おくれになる。  だから同盟国を日本がどうより多く得るようにするか、支持者をどうやって得ようとするか、多数は方なのですから。総理もいみじくも非常識がまかり通ると言うけれども、やはりそれが多数であれば方なのですから。これは今の国会も同じですからね。ですから、そういうことでこの世の中が変わってくるのですから、やはり同盟を多くしなければならぬ。アメリカとだけ仲よくしておっても、結果的に少数になれば、それは国民を悲惨のどん底に陥れる、こういうことになるわけです。これは簡単にお答えいただきます。もう時間がなくなってきたので、総理の哲学はまた改めてお伺いしますが、簡単にその点だけ触れてください。
  94. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり憲法で「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」そう前文に書いてあるので、日本も世界の国々から尊敬され、親愛感を持たれる国になる、そのためには多数の国々からそのように考えられる国になる、そういうことは大事であると思っております。
  95. 沢田広

    ○沢田委員 私は、後で大臣などと話し合って、これからできるだけこの補助金のカットの部分を適正な運用に転換できるように地方自治体の肩がわりを考えてもらおうと思っているのですが、その意味においては、私はこれで四回目になるのですが、総理大臣に聞いたのはきょう初めてなのです。  三十八トンの戦車、長さが七メートル、幅が四・五メートルぐらいですか、そういう戦車をなぜ日本で八百両も九百両も置いて、専守防衛でどういう使い道があるのだろうかというのが私は長年の疑問なのです。私、四回聞いているのですが、最悪の場合——最悪の場合だけなのです。そうすると、沖縄であれだけ国民が苦しんだ本土決戦が考えられるのかどうか。それは考えられるはずはない。そうなれば、そういうものは必要ないじゃないかというのが私の主張だし、一般の国民を巻き込む。そうしたら、この間新聞を見たら総理が、これからはそういう陸上よりも海だ、空が大切だ、こういうふうに言われた。ある意味において似たのかな、困ったことか、いいことかどっちかわかりませんけれども、そう思いましたが、そういう意味において戦車は、どういう目的があるにせよ、私は少なくともなくしてしまっていいのじゃないか。もしどうしても置きたいのなら装甲車ぐらいで十分間に合うのじゃないか。水まきぐらいなものですから、そんな戦車が日本の国土を歩いて撃つなんということは、幾ら何でもあり得ない。だからそれはやめて、その分を補助金のカットと比べてみたときに、動きもしない戦車、観閲式ですかに使うぐらいの戦車を置いておくのと補助金がカットされるのを比較したときに国民にどう映るだろうか、こういうふうに私は思うのです。  それで、あえてそこから話を持っていったわけですが、総理もひとつそういうむだなと言っては悪いですが、実際に動けないでしょう。だからそれは最小限度もう要らないので、もしかえるのならミサイルにかえてしまった方がそれはずっと防衛に向いているわけです。戦車をがたがた国内で動かしても破壊が続いて建設はない。ぜひ総理、これはひとつ思い返してもらって、国民に映る目から見ても、本土決戦だとか最後上がってきたときは戦車で撃つんだとか、そんなことを考えている防衛思想というものはなくしていただきたい。御再考を心から願うのですね。お答えいただきたいと思います。
  96. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 防衛というものは侵略を受けたときの保障でありまして、万一の際という保障なんですからそういうものはやはり必要である。一見むだなように見えるけれども保険金を掛けておく。人間の生活にもありますけれども、国も万一の際を考えてそういう保障措置をとっておくということが大事なことではないかと思っています。防衛の体系についてはいろいろ今度は人により、党によって考え方は違うと思いますが、そういう基本的な考え方というものはぜひ一致させたいものだと思います。  それから、戦車というものはある意味における抑止力としての機能を果たしていると私は思います。ただ、どの程度要るかという問題になりますと、科学の進歩あるいは武器の発達、その流動性に応じて対応していくように変化していかなければならない。そういう意味において私は、洋上撃破あるいは海空重視、そういう面に重点を入れるようにということを防衛庁長官と話しておったということでございます。
  97. 沢田広

    ○沢田委員 だから、だんだんそういうのは減らしていく方向に総理も考えているというふうに理解していいですか。
  98. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一般論として、海空重視あるいは洋上撃破、そういう面に重点を入れていくようにという考えております。
  99. 沢田広

    ○沢田委員 私が戦車の話をしたから必ずしも全部それを容認して言っているわけじゃないのでありますが、これは考えの違いがあると思いまして、私はさっき言った同盟国をどうふやすかに日本は最大の重点を置くべきであって、この小さいところへそういうものを置くことがすべてではないというふうに基調を——基調というのはとうといという意味じゃありませんよ、基本の理念を持っている。  続いてもう一つですが、この一年延ばしに延ばしていくのは、約束をする、三年ならこの法律は三年、さっき私は補助金をある時期に見直すという説を言いましたが、三年ですと言う、それを延ばす。これは政治家として国民に公約をすることである。特別の事情がない限りその法律は一年なら一年で一たんは切る、節度をつける、総理と同じように節度をつけて改めてまた議会で審議をする、こういうことが必要なんだろうと思うのです。これはその意味においては改めて出しているんだ、こういうふうに総理は言うかもしれませんが、五十九本をまとめてやっていくという形、あるいは行革をその中に一本含めてしまってそれで延長ですという出し方、出し方は別として考え方ですね、それは政治家としての公約なり約束なりというものをこれからどう考えていくかという一つの疑念を持たざるを得ない。  確かにその必要性は、これは一年で効果が上がりませんよ。これは予算が通ったとしても、これから実際に行われるのは九月なり十月なり、その様子を見て翌年度考えるわけですから、恐らく政府はそういう考え方でもう一年考えてみなければ、実効性を見なければ判断がつかないと言うだろうと思うのです。私がその立場になれば私もそういくだろうと思う。それならそれで、二年で責任政党としては出すべきであって、一年だけとりあえずちょっぴり、毒じゃないけれどもちょっぴりなら薬になるというので飲ませる、それでそのときになったらまた一年延ばすといったやり方は、これはちょっとひきょうじゃないか。言葉がいいかどうかは別問題として、これはひきょうだという感じを持たざるを得ない。国民はそう思う。だからそれを一年なら一年で切って、あと一年置いてからまた提案をするとか、そういう発想が必要なのじゃないのかと思いますが、いかがでしょう。     〔熊谷委員長代理退席、委員長着席〕
  100. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 沢田さんのおっしゃることは一つの御見識であると思います。政府の側から見ますと、今の財政状況その他を見ましてまことにやむを得ざる処置であります。しかし、民主的なことを考えますと、国会にいつもお考えを相談する、そういう場を多くする方がやはり民主的なやり方ではないか、そういう点もあるわけでございます。
  101. 沢田広

    ○沢田委員 それならば、その中身の論議をする社労なら社労、文教なら文教に、政府としては大変やりにくいでしょうけれども、これは一年延ばすのだがどうだ、その反省はどうだ、プラスはどうだ、そう議論させていくのが——これは財政の分野で国と地方の肩がわりの法案にしたんだ、そういうことをさっきおっしゃったのですが、それならばそれぞれの成果を見、反省を見、直すべきものを直していく、その努力を惜しんではいけないのじゃないかと思うのです。総理、ちょっとさっきの言葉は総理の考えとは違うのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  102. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 また一面におきまして、許される範囲でいろいろ国会側のお許しをいただいてできるだけ能率的に審議もするし、政府としても説明をさせていただきたい、そういう形でこういうやり方を選んだわけでございます。
  103. 沢田広

    ○沢田委員 では、中身については十分審議する必要性は持っておる、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  104. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そのように考えております。
  105. 沢田広

    ○沢田委員 時間の関係で……。  負担の公正というのが今日ほど求められているときはないと思うのです。今、苦しみを分かち合い、民間も公の機関もそれぞれ苦労をしながらこの危機を乗り越えようとして努力しておる。幸い今は景気の方は、失業者等は多い、倒産は多いけれども、生産率やその他はそれぞれ円安によって一応支えられておる。このことはどう変わるかは別問題として、負担の公正ということについて総理はどういう一つの哲学をお持ちでしょうか。  この前の答弁で、アメリカ提案の様子を見てこの三段階制等については大いに考慮する余地がある、こういうふうに予算委員会でお答えになりましたが、これは堀先生の質問かと思いますが、その考えは変わっておりませんか。
  106. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 負担の公平ということはやはり非常に大事なところであると思います。これは税の問題におきましてもそうでありますし、あるいはそのほかの部面につきましても、行政としては一番考えなければならぬポイントであると思います。
  107. 沢田広

    ○沢田委員 それを具体的にどうこれから考えるかという意味で、もう一つお伺いします。  国民が持つ苦痛の平均化といいますか公平という意味、苦痛の方の面における、暗い面といいますか、それの平等化、そういう点については総理はどういうふうにお考えになっておりますか。
  108. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 喜びも悲しみも分かち合うというのが理想ですから、やはり苦痛も同じだろうと思います。
  109. 沢田広

    ○沢田委員 だとすると、苦痛の公平、これは福祉の一つの基本になりますが、総理としての哲学というか、苦痛の公平、分かち合うということはどういう意味だと思っておられますか。
  110. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 例えば余裕のある者はお金を出して、それが課税上の累進というような形にもなるでしょう、そして困っている方々の面倒を見る。そういう意味の所得の再配分機能というようなものは、苦痛の公平化というものの一つのあらわれではないかと思っております。
  111. 沢田広

    ○沢田委員 もう時間の関係であれですが、それを今度は少し盛り上げていきますと、やはり富める者と貧しき者と、それをどういうふうにバランスをとっていくか、こういう仕組みになるわけですね。ですから、そういう意味においては富める者の方の側の負担がある程度重くなり、それから貧しき者の方の暮らしをよくしていくという平均運動をこれは行政の力で行っていかなければならぬ。それはこれから行っていくが、今の状況においては総理としては、やはりひずみの方がより多い、あるいは弱い者への思いやりの方がやや少ない、そういうふうに思われておられますか。
  112. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これはやはり福祉の部分、例えば障害者の皆さんとか難病とかあるいは生活費の問題とか、そういうものはその人にとっては絶対的なものを持っておるものであって、量的に外から客観的に測定できるものではないと私は思うのです。しかし、政治、行政の分野といたしましては、お金とかそういういろいろな面、あるいは機会とかいろいろな面を通じて平等に持っていくように努力する、分かち合うという形で持っていく、そういうことが適当である。しかし、また一面において、働く意欲を失わさせるようなところまでいってはいけない。これもやはりパイを大きくするという意味において大事なことではないかと思います。
  113. 沢田広

    ○沢田委員 あと大蔵大臣関係ですが、これも総理に聞いておこうと思うのです。  六十五年度までに赤字をなくしていくというために補助金もカットをしていく、一つのそういう意味じゃないですかな。この補助金のカットは、痛みを分かち合う、公平感を確保するための方のウエートが高いのですか、それとも財政再建の方のウエートが高いのですか。基本に返ってちょっとどちらのウエートが、同じだと言われれば同じかもしれませんが、どちらを目的とされていますか。
  114. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 精神的には今の公平感というものもあるでしょう。またしかし、財政の融通という面から見ると、大蔵省立場に立てはやはり財政処理のための一つの緊急的な措置という意味もあるのではないかと思います。
  115. 沢田広

    ○沢田委員 時間が来たようですが、総理、さっき言ったように、この法案はそれほど重要なものがあるのだから、このわずかな時間の中でなかなか論議は尽くせませんので、それぞれの連合審査その他もあって、運営のことは総理は触れられないでしょうけれども、十分慎重な審議を行う必要性はあるということについては同意をする、こういうふうに解釈してよろしいですね。
  116. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 重要な法案ですから、審議に時間をかけておやりになることは当然でございますが、それらはいずれも与野党でぜひ御相談を願うことである、そう思っております。
  117. 沢田広

    ○沢田委員 最後に特に、もう四月になってしまいまして地方にはそれぞれ若干の影響はあるでありましょうが、これは十分に時間をかけて、会期が二十幾目ですが、少なくとも会期閉鎖前に十分に対応するようにすれば地方としてもそれで満足をするというふうに理解をするわけでありますが、大体総理もその辺をめどに置いてお考えになっておられる、こういうふうに解釈いたしましてよろしゅうございますか。
  118. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この事務を執行する地方公共団体の皆さんの御迷惑にならぬ範囲内で、できるだけ早期にそういうことができるようにお願いできればありがたいと思っております。
  119. 沢田広

    ○沢田委員 時間ですから、以上で終わります。ありがとうございました。
  120. 越智伊平

    越智委員長 古川雅司君。
  121. 古川雅司

    ○古川委員 本日は総理大臣が御出席でございますので、せっかくでございますから、議題になっております法案に触れる前に、一、二当面する課題についてお伺いを進めてまいりたいと思うのです。  最初に、市場開放要求、日米通商摩擦、そしてそれに伴う国内対策についてでありますが、先日本委員会で関税特例措置法案審議がございました。その際に、大蔵省にお伺いをしていたわけでございますが、きょうは総理御本人にまず若干お伺いを進めていきたいと思います。  日本市場の開放度は、欧米に比べて決して遜色がないというふうに、我が国の政策担当者も自信を持って主張をしているわけであります。確かに大蔵省の調べによりますと、主要国の関税負担率の推移を見ましてもそのとおりであります。なのに、どうして海外から日本はこのように非難をされ続けるのかというのが、国民の率直な疑問だと思うのでありますが、その点どうお考えになっているのか。特にまた、最近の米国の主張は、まるで諸悪の根源が日本にある、日本の市場の閉鎖性にあるというふうに決めつけてかかってきているわけでございますが、総理として、これは米国側の一方的な誤解、先入観に基づいているとお考えなのか、あるいは日本の対応が非常に小刻みで進まないためのアメリカのいら立ちだというふうにお考えになっているのか、まずその点から御答弁願います。
  122. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず、世界的に見て常識的に考えますと、やはり一国が三百七十億ドルにわたる貿易の黒字を出すということ自体が脅威の対象になるだろうと思います。ある外国の人は、OPEC以上のドルを集積した、そういうことも言って、毎年こういうふうになるというと、もうOPECも顔色なしだ。それはOPECの場合には数カ国が集まってそういう現象が起きるわけですけれども日本の場合は一国だけで世界じゅうのドルを集積してしまう。これが世界経済に変調を来す、そういう指摘をしている向きもあるわけであります。  そういうように、日本にこれだけ貿易黒字が出てきているということが、世界の人々に対してショックを与えている。そういうことからいろいろな感情問題が出てくるだろうと思います。そういうものにも触発されて、日本基準・認証制、透明性、そういうようなものがアンフェアであるというような声も出てくる。しかし、私らはそれはやはり文化ギャップといいますか、制度ギャップといいますか、そういうものが基本的にはかなりある、そう思っておるのです。  しかしまた、日本側自体を検討してみますと、やはり先ほど申し上げましたような律令国家の体制というものがまだ残っておって、そういう面から我々としても考え直す面もあるのではないか。そういう点はどしどし直して、公共性確保というものは、政府は最小限堅持すべき点は堅持するけれども、それ以上は国民責任に任せて、国民の選択あるいは選好性に思い切って開放するということが必要な時代に入ってきた。これが国際国家という意味で、世界的スタンダードに日本も持っていくということになるのではないかと思います。
  123. 古川雅司

    ○古川委員 特に日米通商摩擦問題につきましては、例年になく厳しいという感じを受けるわけでございます。古くて新しい「保護主義の妖怪」と言われているいわゆる輸入課徴金という問題もアメリカの中で取りざたをされておりまして、その辺の事情を総理はどうとらえていらっしゃるか。特に先日来シュルツ国務長官の発言であるとか、マンスフィールド駐日米大使の発言も、そういった意味で、とりようによっては日本に対するおどしてはないかととれるような厳しさがあるわけでございます。  こうしたアメリカの報復的な相互主義立法であるとか、保護貿易ムードの高まるその原因についてでありますけれども、これは最大の原因は、一つには、一月に総理日米首脳会談でおとりになった姿勢、とりようによっては非常に格好のよさが目立った。そしてまた、必要以上に物わかりのよさを示されたということがあるわけでございますが、この点については米側は、総理の発言、総理のこうした姿勢を両国間の一つの公約として受け取って、その上に立ってこうした厳しい強烈な日本に対する対応の迫り方をしているんじゃないかというふうに感じられるわけでございますが、総理はいかがお感じでございますか。
  124. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、一月の会談で、非常に事態が切迫しているということを前から知っておりました。昨年は大統領選挙がありましたから、対日貿易問題というものを大統領選のイシューにすることは適当でないということで、共和党も民主党もセーブしておったわけです。特に、民主党側がこれを出してこようという気配があったときに、もしそれを出した場合には、労働組合の御機嫌をとり過ぎるとモンデールさんは一般市民から批判される、そういうような面からも、民主党も自粛して選挙には出さなかったのです。選挙が終わったら、日本のドルがこれだけ蓄積されておるという現象が出てきたので、それでどっちかと言えば論議が解禁になったという性格が去年の十二月から出てきております。  私はそれを見まして、これは一月以降相当大事なことになるという予測がありましたから、それでレーガン大統領にも会い、この問題の打開に関する方法をまず話し合おうということで、四つのセクターに関するMOSS方式という方法を決めたわけです。内容については、これは両国のそれぞれの当事者が談判し合うことであり、また商品自体の競争力にもかかってきていることでありますから、我々としては、国際水準あるいは両国の関係で必要と思われる妥当な開放は行う。行うが、それ以上入ってくるか入ってこないかということは向こうの努力であって、どれくらい競争力があるか、あるいは向こうの売り込みがどの程度熱心であるか、そういう問題にかかっておるので、そこまで我々は責任を持つわけにはいかぬということも言ってきておるのであります。  そういう意味でMOSS方式という方式を決めたのでありますが、その折衝が始まって、そしてこういう状況になってきた。私は、去年の十二月以来のものをどう打開するかという方法を決めなければ、これはもう大変なフラストレーションをアメリカ国内に起こす、そういう考えがありまして、そして、そういう道で誘導しつつこの問題を解決しようということを考えてやったのであります。いいか悪いかは、それは御批判を受けなければならぬと思いますが、私の考えでは、それ以外に方法はない、そう思ったわけです。これは行政当局者が責任を持って許認可とか、そういうことはやるわけでありますけれども、行政当局者のチャネルをつくってそのメカニズムをつくった、あとは交渉能力とか競争力とかいうものにかかってくる、そういう形でやったのであります。  それで四月一日というのは、電電公社が今度は会社として発足する、その会社として発足するについては政令、省令、法律をつくる、そういう政令、省令の段階になっていますけれども、そういうような段階で四月一日というものが一つの時期的なめどにも登場してきたわけなのであります。そういうことで、向こうは上院がいろいろアクションを起こしてきたということも、政治的には理解されるところで、政治家ならわかることであります。そういうような過程を経て、この問題を必死になって今解決すべく努力している過程である、そういうふうに御理解願いたいと思うのであります。
  125. 古川雅司

    ○古川委員 ところで、このたびレーガン大統領がシグール特別補性官を特使として日本に派遣をされました。その信書を総理はお受け取りになりまして、この特別補佐官との会談を通していろいろと相手方に対して理解を迫ったようであります。会談の内容は、総理の決意を高く評価するということで終わったというふうに伝えられておりますが、そのとおりでありましょうか。そしてまた、この会談の結果総理がレーガン大統領にお示しになった内容について、非常に高く評価するということがけさの報道で伝えられております。アメリカが高く評価するということは、国内的にはまた一面に不安を覚える面もあるわけでございますが、どういう内容をお伝えになったのか。  先ほどの質問では総理は明快にされなかったわけでございますけれども、これも伝えられるところによりますと、四月九日に総理国民向けの声明を出されて、市場開放への協力を求めるというふうに言われておりますが、その点は事実でありましょうかどうか。その九日というのはどういうことなのか、あわせて御説明をいただきたいと思います。ちょうどこの九日には対外経済問題閣僚会議が予定をされているはずでございますので、ここでいわゆる事後の了承を得なければその内容が発表できない、国民に説明ができないという意味にもとれるわけでございますので、そういう点も含めて御答弁を願いたいと思います。
  126. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私がアメリカ側に話しましたことは、私が国会で今までしゃべって報告したことの線において話しているということで、それ以上別に逸脱したものではございません。ポイントは、基準・認証の問題と、それから透明性の問題でありまして、その点については先ほど御答弁申し上げたところであります。要するに、日本政府、政治、為政、行政のあり方、国民に対して政府責任を持つカバレージが多い。アメリカの方はそれに対して消費者が責任を持ってやることが多い。その調和点をどこにするか。必要最小限の公共性確保しつつ、それ以上は原則として消費者の選択に任せよう、そういう方向でこの問題を解決すると私は言うたわけです。そういうことをまた郵政省にも指示したわけであります。  それから、透明性の問題につきましても、外国人の企業家の意見もよく聞いて、いろいろ法律や認証制度をつくる。向こうが疑念を持たないように、こちらが何かこすっからいことをやるのではないかというような、そんなくだらぬ疑念を持たぬように、正々堂々と意見を聞くべきものは初めから聞いてやるように、そういうことで指示したということでございます。  それから、別に御心配をかけるようなことはありませんが、今の内外の情勢を見ますと、アメリカ、特にアメリカの議会におけるフラストレーションの高揚という問題は、政治として絶対これは黙視できないところで、やはり処置しなければならない問題なのでございます。いろいろ誤解もありましょう。また向こう側の一方的な感情もあるでしょう。しかし、現実としてこれだけのドルが日本に一方的に集中的に蓄積されているという事実、それからアメリカ議会においてそれだけのフラストレーションができておるという事実は事実なのであって、解決しなければならぬ問題であるわけであります。それを具体的にいかに解決していくかという方策を、苦労して今やってきておるということです。  九日というのは、たしか十一日、十二日にOECDの閣僚理事会があるわけです。その前にやるならやはり方策をやった方がよろしい。そういうことでタイミングを見て、九日というのは、大体七閣僚、今九閣僚協議会になりましたが、それの諮問委員会が中期的展望、政策を勧告するときになるわけです。それと時期を同じくして当面の問題の処理も出そう、そういうので九日という時点が選ばれたということなのであります。(「ドル高をやればいいんだ」と呼ぶ者あり)
  127. 古川雅司

    ○古川委員 その点、もう一つ重ねてお伺いをするわけでございますが、レーガン大統領にお伝えになったその内容については、いわゆる新たに前向きにという内容が盛り込まれているというふうに伝えられているわけでございますが、今御答弁をいただいたそういう内容に加えて、これまでにない新たなものさらに積極的な前向きなもの、そういうものが含まれているのではないかという点が一点。それはすなわち、今の米議会の動きに対して一つの鎮静作用を果たすような、そういう内容のものであるのかどうか、その点いかがでございますか。
  128. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは電気通信の分野において、小山次官と先方との交渉の中で停滞しておった部分があるわけです。その停滞している部分について、今申し上げたような原則に基づき、日本側としての公共性確保しつつ、しかも消費者の選択に任せる、よろしい、そういう部分の調和点を、私は別に具体的にどのポイント、どのポイントと、我々電気通信分野というのは難しくてわかりませんけれども方針として指示した、そういうことを意味しているのではないかと思っております。  それから、ドル高というお話がありましたが、もちろんそういう話も私はしておるので、これはこの間来たときにも、日本の商社はアメリカへ行っていろいろ売り込みや何か努力しているが、みんな英語をしゃべる、しかしアメリカの商社で日本へ来ている諸君がどれくらい日本語をしゃべれますか。まずこういうところから解決しなければだめですよ。それからドル高の問題も、世界じゅうで言われているとおりで、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストすら書いているところです。もし円がこれくらい強くなれば、ドルがこれくらい下がれば、大体この程度くらいまでは解消すると試算をしている向きもありますよ。そういう話も現にしておるのであります。
  129. 古川雅司

    ○古川委員 今後この市場開放を進めてまいりますと同時に、国内の救済策が問題になるわけでございまして、特にその規模と内容についていろいろ話が飛び交っております。三月八日の閣議で総理の発言として、摩擦解消に当たってはある程度の出費を覚悟で国内産業対策をやることが必要であり、資金は大蔵省に出させるというようにお述べになったように伝えられておりますが、そういう内容でございますか。
  130. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは、合理的調整をやっていくためには、ただというわけにはまいりません。やはりお金のかかる部分もあるでしょう。そういう部分政府として面倒を見させていただくことは当然でありますから、大蔵省にも話してありまして、よく関係各省と話をして調整するようにということにしてあるわけであります。
  131. 古川雅司

    ○古川委員 この総理の発言を受けた結果だと思いますが、河本対外経済問題担当相が、予備費や財政投融資、民間資金などいろいろある前向きの検討を表明しております。大蔵省はこれに対して簡単に金を出すわけにはいかないと、かなり反発があるように聞いておりますが、この辺の閣内のそうした意見の調整はどうなっているのか。  また、木材問題に絡む林業対策につきましても、佐藤農林水産大臣がこの林業の振興について触れまして、これもいわゆる百億なんというそんな単位じゃない、一千億というような単位で、しかもこれは口約束ではだめだ、ちゃんと担保も必要だ、そういう対策がなければ市場開放には応じられないというような発言がありました。もっともこれは大蔵省に確認をいたしましたら、大蔵は聞いていないというようなことでございまして、さきに挙げましたこの総理の閣議での御発言、資金は大蔵省に出させるということが尾を引いて、こうしてあちらこちらで話が広がってきているんじゃないかと思いますが、その辺はいかがでございましょうか。
  132. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大蔵大臣は了解しております。それで関係各省がそういう案を持ってくることを待っており、そして話し合ってみる、そういう態度でおります。
  133. 古川雅司

    ○古川委員 では、先般の委員会大蔵省がまだ聞いていないという答弁になったのは、その時点では誤りであって、その後各大臣総理からお伝えになった、このように理解してよろしゅうございますか。
  134. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私の言うことに間違いはありません。
  135. 古川雅司

    ○古川委員 同じく経済摩擦に関連してもう一つ伺うわけでございますが、報道によりますと総理は、通産省に対して、鉄鋼、自動車、電気機器、そうした非常に輸出額の多い企業を対象にして、いわゆる対米輸出の見返り策を検討しるというように指示されたと聞いております。メーカーに対して見返り策をとらせるということは初めてではないかと私は思うのでございますが、その内容がいわゆる企業ごとに、メーカーごとに輸入の増大策を回らせるということだそうでありまして、発案をなさったのは総理だというふうに伺っておりますが、これはどういうことであるか、ひとつ御答弁いただきたいと思います。     〔委員長退席、堀之内委員長代理着席〕
  136. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、一般的に通産省に対して、輸入増大策を検討せよと前から言っている。特に製品輸入について指示しておるわけです。通産省は今までは輸出省であったけれども、今や今度は輸入省になれ、ジェトロというものは今までは輸出の機関であったけれども、今は輸入の機関にスイッチを変えろ、そういうことを指示して、当面必要なことはそっちの方だから、別に輸出を軽視しているわけではありません、輸出は生命線であると思いますが、これだけ超過した部分を当面解消するということは貿易省の仕事である、貿易というものは輸出と輸入の両方でバランスがとれていなければいかぬ、しかもそれは拡大発展していくべきものである、拡大発展していくという面からは輸入をうんとふやさなければできない、そういう意味で通産省には指示しておったのです。通産省はあらゆる面からそれを検討しておりまして、それでその一つの案として今の新聞に報道されたようなものが試案として検討されておる、そういうことでございます。別に決めたわけではありません。
  137. 古川雅司

    ○古川委員 しかし、これは非常に大きな問題だと思いますので、総理がこれは別に決めたものではないというお答えでございますけれども、本気なのか、真意のほどをもう少し伺っておきたいと思いますし、そしてまた、果たして経済摩擦の問題についてこうしたことが実効を上げることができるとお考えなのかどうか。それは単なる総理の思いつきというようなことではないと思うのでありますけれども、その点、もう少し詳しく御答弁いただきたいと思います。
  138. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは私から出た案ではないのでありまして、私は、輸入策を検討せよ、あらゆる可能性を勉強せよ、そう指示しておる。それに対して通産省がいろいろアイデアを出して、その一つにそういうものもあるようです。しかし、それは決めたわけじゃないので、幾つもいろいろなことを考えておる中の一つにそれが試案として載っておるということで、通産省もこれからいろいろ実現性その他について検討していくのでしょう。新聞は何でもかいで、においのするものはみんな書きますからね。しかし、その中のどれをやるかということは検討中なんです。そういう段階だと御了承願いたいと思います。
  139. 古川雅司

    ○古川委員 この対米輸出の見返り策というのを総理御自身はどうお考えでございますか。検討をさせると言うだけではなくて、総理自身はそれを実施の方向で進めていけというふうに指示をなさっているのか、あるいは単なる検討で終わらせるのか、その辺はいかがでございますか。
  140. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一つの着想だろうとは思います。こういうときですから、あらゆる可能性を検討して全力を注がなければならぬときでありますから、そういう一つの着想が出てきたことは検討してもいい、そういうふうに言ってあります。
  141. 古川雅司

    ○古川委員 では二つ目の問題として、これも議案からちょっと離れますが、所得減税の問題。これは本日の本会議でも私、御質問申し上げようと思っておりますけれども予算修正の要求の段階で、野党と自民党の間で、いわゆる政策減税も含めて所得税減税について検討をするという結果になりました。これは私たちが所得税減税というのを強く要求をしておりますし、これがもし実施されないということになりますと、いろいろ申し上げたいことはありますが、究極的には、まじめで勤勉な国民性あるいは勤労意欲を阻害することにもなりかねないということを非常に心配しているわけでございまして、総理御自身の六十年内の実施についての御決意のほどをひとつ伺っておきたいと思います。  さらにこれに関連をいたしまして、先日、いわゆるサラリーマン税金訴訟がございまして、最高裁の判決があったわけでございますが、この判決の内容を見ますと、必要経費が存在をするということ、そしてまた所得捕捉率に格差があるということを認めているわけでございます。やはりこれは租税公平主義の見地から是正の努力が必要であるというふうにもとれるわけでございますが、この判決を踏まえて、サラリーマンの所得に対して、また所得税に対して総理はどうお考えになっていられるか、特にこの判決を受けての総理の御所信を伺っておきたいと思います。
  142. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず先般、与野党書記長・幹事長会談において合意を見ました諸点につきましては、それぞれの手続を経た成果につきましては尊重してまいりたい、そう思っております。  それから、先般の最高裁の判決でございますが、判決について行政府の長が論評することは適当でない、そう思っております。
  143. 古川雅司

    ○古川委員 判決は総理も当然ごらんになっているわけでございますから、その判決そのものの論評というよりも、むしろサラリーマンに対する課税のあり方、今後どう取り組んでいくかという、そういう見地という面からひとつお考えをお示しいただければ結構だと思います。
  144. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり所得の把握という問題は公正に行われるようにしなければいけない。これは判決にかかわらず、税の理論からして当然行われるべきことでありまして、今後とも努力していかなければならないと思います。
  145. 古川雅司

    ○古川委員 その点については、具体的に政府税調なりにはっきりした形で検討を求めるというようなことをなさいますか。
  146. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これはもう政府税調は前から指摘もし、またいろいろ検討もしているところでありまして、今さら改めてやる必要もない、今までの諮問で足りる、そう考えております。
  147. 古川雅司

    ○古川委員 今までのたび重なるそうした税調の答申に対して、それを実施していない面、取り上げてない面、そういったことについて、今後積極的に現在の制度の改革という方向でお取り上げに、なる、不公平是正のために何かをなさるということをおやりになりますか。
  148. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 適正な所得の把握ということは、これはもう税執行上、当然大事なことでありまして、今さら言うまでもないことで、税務当局をして努力させたいと思っております。
  149. 古川雅司

    ○古川委員 ではここで、本日議題になっております補助金整理合理化一括法案について、お伺いを進めてまいりたいと思います。  この法案、既に本大蔵委員会に付託をされているわけでございますが、先日来の議論を聞いておりますと、やはり審議の場としては、大蔵委員会一本に絞ったということはふさわしくないのじゃないかという感じがいたします。本来、政策制度を変更する話でございますから、これは問題ごとにその該当する委員会議論をするのが筋でございまして、その大筋を今回大きく崩したということ、しかも、私たち野党が特別委員会審議をすべきである、あるいは問題ごとに各常任委員会審議をすべきであるということを強力に要求したにもかかわらず、こうした結果になってしまいました。これは非常に不思議なことであると思うわけであります。今まで大蔵省答弁も、議会で決めたのだから仕方がないと言わんばかりの答弁でございました。しかし、これはもう、こうした一括法案大蔵委員会に付託するということは、提案をする政府自体にそういう意図が既に十分あったわけでございまして、けさほどの総理答弁を伺っておりましても、この点はまだまだ明確ではございません。むしろ、これは一たん撤回をして、そして審議の場を考え直す、それほど重要なことではないかと思うのでございますが、総理の明確な御答弁をひとつお願いいたします。
  150. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 本法案のまとめ方あるいは国会審議に関する野党の皆さんの御発言は、それなりに一つの御見識であると我々も考えております。ただ、政府がとってきました態度も、これは今のような状態のもとで許していただける範囲内のことである、そう我々は解釈をいたしております。そして、審議につきましては、やはり議会でいろいろ、特に議運等においていろいろ考え、折衝願った結果でございまして、政府としてはそれに従っておるという次第なのでございます。
  151. 古川雅司

    ○古川委員 ただいまの総理答弁も、最後は議会で決めたことだからということに落ちついてしまったわけでございますが、そもそも提案の発端は政府でございまして、その責任者は総理でいらっしゃいます。こうした非常に不自然な、むしろ国会審議権を阻害すると私たちはとらえておりますし、こうしたことがもし今後、国会で続けられていくということになりますと、ゆゆしき事態になるわけでございますが、こうした一括提案というようなことは、特に本法案については極端でありますけれども、今後もこういうことは続いていくのでありましょうか。これは今回限り、こうした異常なことは今後一切しないというふうにお考えなのでしょうか。
  152. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 法制局長官もお答え申し上げておりますように、これは許される限度内のことである、そういうことでございますから、そのように御了承願いたいと思うのであります。
  153. 古川雅司

    ○古川委員 そうしますと、これは最初に私が申し上げた政策とか制度を変更する場合にはそれぞれ所管の常任委員会で、あるいはまた特別委員会を設置してそこで十分に審議をするという、そのこと自体があやふやなことであるのか、こうした今回の提案の仕方そのものが正常であると考えなければならないのか、その点はいかがでございましょうか。
  154. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほども答弁申し上げましたように、本法案に関する限りは、財政処理という観点から共通の仕事についてこのような処理は許される、そう考えて提出した次第なのでございます。
  155. 古川雅司

    ○古川委員 この大蔵省からの御説明で、本法案立法趣旨をここに要約してございますが、昭和六十年度の予算編成に当たり、一つには国の財政収支の改善を図る見地からである。二番目に、累次の臨調答申の趣旨を踏まえて、財政資金の効率的使用を図った。三番目に、国の負担、補助等について見直しを行い、所要の措置を講じた、というふうに言っているわけでございますが、ここはあえて政策制度の変更ということには当然政府としては触れていないわけでございます。この点は、この立法趣旨からは欠落しているんではないかと思いますが、いかがでございますか。
  156. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 中央と地方との負担区分の変化という面だととらえておるわけであります。それから、補助金整理統合というような面からの財政処理という面で、大蔵省所管にもこれは入ってきておるわけでございます。特に、財政処理という面からは、大蔵大臣がやるべき大事な仕事の中にも入ってきている、そういうふうに政府は考えておるわけでございます。
  157. 古川雅司

    ○古川委員 その点、私はどうしても納得をするわけにいかないわけであります。特に、この法案を今提案しておりますけれども、これは昭和六十年度の予算案で既に全額金額を決定した上で、いわゆる日切れ的な法案という形で成立を迫っている。この点も、国会に対しては非常に無礼な提案の仕方ではないか。これはいわば人質をとった巧妙な必殺仕掛け人の手法ととれないこともないわけでございますが、この点はいかがお考えでございますか。
  158. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府としては、財政処理の一環として、予算関連法案の中でも重大法案でございますので、できるだけ早期に成立を期しておる、こういう考えに基づいておるものであります。
  159. 古川雅司

    ○古川委員 これは当初、自治省を初めといたしまして地方自治体はかなり強烈に抵抗をいたしておりました。それは、一律削減等によりまして、負担を一方的に地方に押しつけるものであるということが反対の大きな原因であったわけでございますけれども、それが今の段階になりますと、この法案の成立がおくれることによっていろいろな支障が生じてくる、そのためには、内容については必ずしも賛成ではないけれども、何とか成立させざるを得ないという考えに至っているようでございますが、この辺、いわゆる制度面また政策面で、十分時間をかけて、もっと審議を尽くして、その上で決定をしても決して遅くはないという感じを受けるわけでございますけれども、その点、いかがでございますか。
  160. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、予算案と一体になっておる予算関連の重要法案でございますので、やはりできるだけ早期に成立されることが望ましいと、政府としては熱望しておる次第なのでございます。
  161. 古川雅司

    ○古川委員 ですから、その辺につきましては、内容については納得はできないけれども、時間的に成立させざるを得ないというとらえ方に一つ大きな問題があると私は思うわけでございますが、その辺をもう少し丁寧に御答弁をいただきたいと思います。
  162. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 内容についてはいろいろ御議論もあると思いますけれども予算の執行という面を見ますと、ただいま申し上げたようなことになるわけでございます。そういう点については、いろいろ不本意の点があるかもしれませんけれども予算執行という面からも考えまして、できるだけ御協力をいただければありがたいと思う次第なのであります。
  163. 古川雅司

    ○古川委員 この一律削減等によって地方自治体に負担だけを押しつけるということ、こうした不満や不安がありますと同時に、いわゆる国と地方との責任分担がいかにあるべきか、こうした制度論議が後送りにされてしまっているという感じも一つあるわけでございます。行政事務の再配分であるとかあるいは財源の再配分、こういった国と地方自治体の間のあり方、これはもっと時間をかけなければならないし、今回財政的な措置だけを先行させてしまうというのは非常に問題があるのじゃないか。この辺には先日来随分議論が高まっているわけでございますけれども、今後の問題として、国、地方の責任分担を初めとする地方行財政の改革について、どう取り組んでいかれる御決意でございますか。
  164. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 臨調答申にも盛られておりますが、やはり中央、地方の仕事及び費用負担の再調整ということは必要であると思っております。今、行革審におきまして、機関委任事務あるいは権限の移譲、そういうことについてまとめていただいておりますので、それが出ましたら、検討の上、ぜひ実施したい、そう考えておる次第でございます。
  165. 古川雅司

    ○古川委員 この新年度予算政府案でありますが、今回のこの補助金削減一括法案を見ましても、これは、政府にはいわゆる地方財政富裕論、地方財政が非常に豊かであるという考え方が下敷きになっているのではないかという指摘がございます。これは、一つには国の責任回避ということにもつながっていくおそれがあるわけでございますが、いわゆる地方の行財政のレベルに対してどういう認識を持っていらっしゃるのか。地方が今、借入金残高をどれだけ抱えているか、あるいはまた地方の自治体の間でどれだけの格差があるか、そういうことを考えますと、国と地方との費用分担、そういった点で何かちぐはぐな一面が出てきているのじゃないかと思いますけれども、いかがでございますか。     〔堀之内委員長代理退席、委員長着席〕
  166. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 中央、地方の事務並びに費用の区分につきましては、行革審におきましても今鋭意検討していただいておるので、ただいま申し上げましたように、答申が出てまいりましたら、政府としては検討の上、これを実行してまいりたい、そう思っておる次第です。  また、地方財政につきましては、三千に上る市町村とかあるいはそのほかの各地方公共団体によって、みんな差があるだろうと思います、富裕団体という名前のところもあるぐらいですから。しかし、みんな一般的に見れば、財政的に苦しい中で一生懸命やってくだすっている、そういう状況ではないかと思います。
  167. 古川雅司

    ○古川委員 自治大臣がおいでになりましたので一つお伺いいたしますが、一応大臣は、補助金整理合理化には賛成だ、そのためには補助金の対象になっている事務事業そのものを廃止、縮減しなければならない、一方的な補助率だけの引き下げは国と地方の信頼関係を失わせるのでこれは認められない、そういう御発言をしていらっしゃいますか。
  168. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 補助金の一律カットにつきましては、自治省としてもいろいろ検討し、一律カットについては私どもは思わしくない、ただ、補助金整理合理化は必要であるといったてまえで進んでまいりまして、予算編成直前まで、国の立場と地方の立場は残念ながら一致することはできなかったわけでございます。編成直前になりまして、非常に厳しい財政状況だから、一年限りで、しかもその不足額と申しますか、地方へ転嫁する分は国で全部見る、御承知のように交付税と地方建設債で補てんをしたのでございますが、私どもは、一年限りということで、厳しい財政状況ということでこの措置をとらざるを得なかったというのが実際の現状でございます。
  169. 古川雅司

    ○古川委員 総理にお伺いをいたしますが、大蔵大臣、自治大臣、厚生大臣三者の間で、この一年限りについて確認をしていらっしゃるわけでございますが、これは総理としてはきちんとお認めになっていらっしゃいますか。
  170. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 法律にも明示してありますように、昭和六十年度の措置としてこれを行うと心得ております。
  171. 古川雅司

    ○古川委員 この補助金関係法並びに行革関連法につきましても単年度限りとされているわけでございますけれども、六十一年度以降のその取り扱いについては明確ではないわけであります。自治省としてもその点には非常に不満と不安を抱いていらっしゃいまして、一年限りということで、それを確認して話し合いをつけたということでございますけれども、先日、三月二十日に開かれました衆議院の本会議での本法案趣旨説明に対する質問の答弁で、一年限りの措置ということに対して、今後とも財政改革を推進するとの考えに基づいて対処するという言い方、これは一年限りではなくて、引き続いてこうした措置を考えていくということを十分示唆しているわけでございますが、総理、この点はいかがお考えでございますか。
  172. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 本法案に明記してありますように六十年度の処理、そういうふうに心得ております。将来のことは、将来、党やあるいは関係閣僚でいろいろ相談をして決めていくことである、そう考えます。
  173. 古川雅司

    ○古川委員 今、将来のことに対する総理の御答弁でございますが、将来のことは将来でまた決めていくということは、また引き続いてこうした措置をとるということも含めて考えていくととってもいいのかどうか、その辺はいかがでございましょうか。まず、その点を伺います。
  174. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 将来のことは白紙の状態でおるわけです。ともかくこれは本年度の処置として我々は考えておる、そういうことであります。
  175. 古川雅司

    ○古川委員 これは自治大臣に対して直接ではないと思うのでありますが、今回のこの補助金に対する措置の折衝の中で、大蔵省は昨年の予算編成の早い段階から、三年間の措置としてくれと申し入れてきたと自治省の幹部が語っていると伝えられておりますが、その辺の感触はいかがでございますか。
  176. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 今の問題につきましては、その当時の状況を知っております審議官からお答えして、後、私の考えを述べさせていただきます。
  177. 土田栄作

    ○土田政府委員 ただいまの委員の御指摘は、その論議の過程の問題であろうかと思います。  私ども承知しております範囲では、社会保障関係費を中心といたします非公共関係補助率の一律引き下げ、こちらの方の問題につきましては、私どもといたしましても、論議の過程でも一年限りという以外の考え方は全くなかったわけでございます。ただ、公共事業関係につきましては、論議の過程で、一部に御指摘のように三年という考え方もあったわけでございますけれども、最終的には非公共部門と同様一年ということでまとまりまして、そういうことで法案審議をお願いしている次第でございます。  以上が過程でございます。
  178. 古川雅司

    ○古川委員 行革関連法の一年限りにつきましても、政府の御説明では「現下の厳しい財政事情等にかんがみ、所要の特例措置につき一年の延長」をしたというふうに述べられているわけでございます。先ほどの自治大臣の御答弁でも、非常に厳しい財政事情を考えればやむを得なかったという御答弁であったわけでございますが、一年限りとしていることについて厳しい財政事情をお述べになる以上、来年になればこの厳しい財政事情が変わるとお考えになって一年とおっしゃっているのか、来年も相変わらずこの厳しい財政事情が続けば、来年もまたこうした措置を繰り返さなければならないと暗に考えていらっしゃるのか、その点、いかがでしょうか。
  179. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 来年につきましては、白紙の状態でございますと申し上げておるとおりでございます。
  180. 古川雅司

    ○古川委員 そういたしますと、これは今年一年限りと区切っていること自体、この法案提案していらっしゃるのが非常に不自然であると感ずるわけでございます。来年から先は全くわからない。しかも本会議での大蔵大臣の御答弁が、今後も引き続きということを既に示唆していらっしゃる。こうしたことになりますと、今回のこの法案提案自体が私たちの判断を狂わせる、正当な御提案ではないかというふうに受け取るわけでございますが、いかがでございましょう。
  181. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど来申し上げておりますように、財政上の状態から見ましてやむを得ざる措置として、こういう措置もやっておる次第でございます。そういう意味において、六十年度の仕事というふうに限っていろいろ御審議願っておるところでございます。来年に至る話につきましては、申し上げましたとおり、白紙の状態でおるということでございます。
  182. 古川雅司

    ○古川委員 その点は、御提案者としての御発言としては非常に不明確でございまして、繰り返すようでございますが、「現下の厳しい財政事情等にかんがみ、」ということでございますから、何といってもこれは財政事情によってこうした措置をとられたと私たちは当然判断をするわけでございます。それが一年限りということは、来年はこうした厳しい情勢を考えていないのかということ。非常に幼稚な聞き方ではございますけれども、これは極めて大事なことだと思います。来年以降は知らない、白紙だ。中曽根政権としては知らない、白紙だとお答えになるのか、日本全体としては来年も考えなければならない、大蔵大臣の示唆されたとおり、そういう方向に行くとお考えなのか。一年限りと提案されていることについては、こうしたあいまいさを残すわけにはいかないと思うのでございますけれども、いかがでございましょう。
  183. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 両方の見地から白紙でおります。
  184. 古川雅司

    ○古川委員 それでは言葉をかえてお伺いいたしますが、六十年度以降も継続の見通しがあるととれる大蔵大臣答弁に対して、どうお考えでございますか。
  185. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大蔵大臣も私と同じ考えを持っていると思います。ほかの場所での答弁を聞いておりますと、白紙である、そういう考えをやはり表明していたことがあります。
  186. 古川雅司

    ○古川委員 これについて幾らやりとりをしておりましても、これ以上先に進まないかと思いますが、来年度以降もこうした措置をとることもあり得る、白紙という意味はそういう意味でありましょうけれども、その点を確認しておきまして、一年限りと今回御提案になっておりますので、来年もしこうした措置提案されてくるとすれば、これは白紙ということの答弁だけではおさまらない責任があると思うのでございますが、その点はいかがでございましょう。
  187. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 白紙と申し上げているのですから、色がついていない状態であります。そういうふうに御理解願いたいと思います。
  188. 古川雅司

    ○古川委員 今のところはわからない、おわかりにならないというふうに受け取ってもよろしゅうございますか。
  189. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 つまり、将来のことにつきましては将来のこととして、改めてそのときに考えてみる、そういうことでありましょう。
  190. 古川雅司

    ○古川委員 そういたしますと、先ほど申し上げた三大臣の確認の内容というのが非常に空虚なものになってくると思います。また、地方自治体にありましても、内容についていろいろ不平不満があるけれども、今年限りであるならばということを付してこの法案の成立を一面では待っている。時期的におくらせてはならないという懸念もあるようでありますが、これはあくまで白紙であると答弁を通されることは、この三大臣の確認の内容、そして地方自治体における懸念というものに対してどうお考えでございますか。
  191. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ともかくこの法案は本年度限りの仕事として、法案として提出しているということで、申し上げたとおりであります。
  192. 古川雅司

    ○古川委員 法案は、伺うまでもなく本年限りでございます。先ほどから私がくどくどお伺いしているのは、来年度以降においても継続して、これに類した御提案をなさるお考えはあるのかと伺ってきたわけでございまして、それに対して総理は白紙だとお答えになったわけでございます。そうしますと、一年限りと今回御提案なさったことについては、納得のいかない、非常に不自然さを残したまま審議を進めることになると思います。  時間になりまして、最後に、高率補助金の一律削減、これが実質的には福祉あるいは文教政策の後退につながるというように私たちは懸念をいたしております。政府の御説明によりますと、それをそのまま読み上げますが、「それぞれの分野における国民との関係の行政サービスの仕組みまで立ち入った法案ではなく、国の財政的持分についての法案である。従って、社会保障の給付水準や社会保障制度そのものは、何ら影響を受けることはない。」というふうに説明をしていらっしゃいます。しかし実際には、最初に申し上げたとおり、実質的に福祉、文教政策の後退につながっていく。直ちに給付の内容やサービスの内容に影響が出るというのじゃなくて、今後そうした方向に政策が誘導されていくのじゃないか。あるいは地方自治体の負担の問題にいたしましても、非常に大きな問題が残るのではないか。一律削減、この一律という点について、政府の御提案は非常にあいまいではなかったか、配慮を欠いているのではないかと思うわけでございますが、この点、いかがでございますか。
  193. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど来申し上げておりますように、これは中央と地方との負担区分の調整ということでございまして、これを受けられる受給者につきましては変化はないのでございます。したがって、後退とは我々は考えておりません。
  194. 古川雅司

    ○古川委員 後退をしていく、そういう心配が残るというふうにはお考えになっていないかどうか。実際、現在行われている福祉、文教政策、あるいは公共事業についてもそうでありますが、今回の措置を手始めとして、将来大きな後退に結びついていくという心配。今はない。今はないけれども、今後そういうことが、この法案が成立することによって起こってくるのではないか。そうはお考えになりませんか。
  195. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この法案によって後退するとは考えておりません。
  196. 古川雅司

    ○古川委員 例えば生活保護費であるとか児童保護費あるいは老人保護費、そうした社会福祉関係費あるいは公立学校の施設整備費、道路、港湾、治水、漁港、そういったものについても、少なくともこの法案が成立することによって、それを引き金にして後退への道を歩み始めるということはないというふうに総理は御答弁になったわけでございますから、ないというよりも、そういうことはさせないというふうに決意を御披瀝いただけますでしょうか。
  197. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この法案によってそういうことが起こることはないと思いますし、また、あるべきでないと思います。
  198. 古川雅司

    ○古川委員 この法案によらないほかの要因によって後退をした、それはこの法案の成立が一つのきっかけになったというとらえ方を将来されたときに、これは明らかに福祉、文教政策の後退という結果につながっていくわけでございますが、そうはお考えになりませんか。
  199. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この法案がきっかけになってそういうことが起こるとは考えておりません。
  200. 古川雅司

    ○古川委員 では、この法案以外で、先ほど来申し上げている政策の後退があり得るとすれば、どういうことを想定していらっしゃいますか。
  201. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは一般的な政治経済情勢、国民の選択、そういうものによりまして前進も後退も考えられるでしょう。しかし、我々としては、後退なきように心がけていきたいと考えておるわけです。
  202. 古川雅司

    ○古川委員 時間がなくなりました。この点につきましては一律削減という、その一律という点が福祉、文教政策の後退につながっていくという懸念を私たちは今後も持ち続けるわけでございまして、その点はひとつ総理も厳重に見守っていただいて、そういったことのないように要望いたしまして、私の質問を終わります。     —————————————
  203. 越智伊平

    越智委員長 この際、連合審査会開会に関する件についてお諮りいたします。  ただいま審査中の本案について、内閣委員会、地方行政委員会、文教委員会社会労働委員会、農林水産委員会、運輸委員会及び建設委員会から連合審査会開会の申し入れがありました。これを受諾するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  204. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、連合審査会の開会日時につきましては、関係委員長間で協議の上、追って公報をもってお知らせいたします。  この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十五分休憩      ————◇—————     午後二時十八分開議
  205. 越智伊平

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。米沢隆君。
  206. 米沢隆

    ○米沢委員 私はまず、ただいま上程されております補助金一括法案とは直接関係ありませんが、せっかく総理質問の時間をいただきましたので、目下日米間の最大の懸案問題に発展しております日米経済摩擦問題に関し、現状に対する政府の認識と見解を伺ってみたいと思います。  最近、日米経済関係をめぐる米国内の対日批判は日に日に悪化しており、とりわけ議会のいら立ちは日増しに強まっていると聞いてはおりましたが、ついに三月二十八日、米上院会議は、日本の不公正な貿易障害を除去するために、レーガン大統領に対し、輸入課徴金、緊急輸入制限、関税上乗せなど報復措置の発動を迫る対日決議案を九十二対ゼロの全会一致で可決したと言われております。決議は、今後四十五日以内に、大統領が決定した行動の中身を議会に報告、官報に公表することを求め、九十日以内にその実行を迫るもので、アメリカ議会の対日批判が沸騰点に近づきつつあることを示しました。もちろん議会の決議でありますから、法案の採択とは違い、法的な拘束力はありません。その意味では、大統領はこの決議を黙殺することも可能なわけであります。  しかし、大事なことは、自由貿易主義者の多い上院、知日派が多い上院において、史上初めて経済に関する対日強硬決議案が全会一致で採択された事実の持つ重みであると言われております。それどころか、アメリカ議会には対日制裁法案が続々提出され始めており、ハインツ上院議員は、日本だけを対象に向こう三年間二〇%の輸入課徴金をかける法案を、マーカウスキ上院議員は、過去三年間の対米貿易黒字が百六十億ドルを超える国からの輸入品に、向こう一年間二〇%の輸入課徴金をかける法案を、チャイルズ上院議員は、日本に対する相互主義法案を、さらにラファルス下院議員は、日本を念頭に、貿易不均衡拡大防止のための法案を提出したと伝えられており、まさに対日批判のオンパレードであります。  その上、ヨーロッパの対日批判は依然として強く、アジア諸国の対日本満もその極に達する感ありという状況でありますが、こういう状況に対して、総理はどういうような認識を持っておられますか。
  207. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 貿易摩擦に関する海外からの反応につきましては、極めて憂慮しておるところでございます。特にアメリカ上院が九十二対ゼロであのような決議を成立させたということは、今までにないことでございまして、我々は深刻に受けとめる必要があると思っております。あの調子でいきますと、法案がもし出て成立しますと、大統領拒否権を使ったところで、三分の二でまたやられてしまう可能性がありまして、拒否権が生かされない危険性がある。アメリカのホワイトハウスは、それを非常に憂慮したようでございます。  私もそういう事態をよく見まして、深刻に受けとめて、日本としてもやるだけの努力はしなければいけない。しかし、我が国には我が国の国情もありますし、また、海外からの競争力というものが基本になければ、こういう話はまともに進行するものではないのであります。そういう意味におきまして、公正競争が確立されるという、そういう環境をできるだけ速やかに整備をして、日本としての責任は果たすべきである、そう考えて努力しておるところであります。
  208. 米沢隆

    ○米沢委員 これまで日本が、こうした対日本満を解消するための手だてを全然講じていなかったならばいざ知らず、数次にわたる是正策を積み重ね、そしてまたそれ相応に努力を重ねてきておるにもかかわらず、依然として対日批判はおさまらない。かえって不満の火は拡大しつつあるように見えますのは、一体なぜなのかという問題でございます。今までよほどずる賢く対応してきたというふうに見られておるのか、それとも今までの対応策が余りにもこそくなものであり過ぎたのか、それとも欧米諸国、東南アジア諸国の無理解なのか。総理は、過去の日本のとってきた貿易摩擦解消策をどういうふうに評価されておるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  209. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 我が国の国情が十分理解されていないという点もあると思います。  午前中も申し上げましたけれども、公正という問題について、アメリカ側はすべてそういうものは消費者の選択に任せて行うべきで、政府が余り介入すべきでない、そういう考えがあるわけです。しかし日本のやり方は、律令国家以来、政府は護民官的な立場をとって、そして国民を保護していくという、そういう考えを持っておりますから、いろいろな面において、規制その他をもって注意をしておるところであります。日本はしたがって一万五千人しか弁護士はいないが、アメリカは五十五万人もおって、すべて自分の、個人の責任処理したことは裁判へ持ち込むという思想で、弁護士も多いわけであります。  そういうような文化ギャップと申しますか、そういうものもありまして誤解を受けているという点もあると思いますが、しかし、いろいろ調べてみれば、日本がいろいろな面で規制とかそういうものを設けておって、もう余分ではないかと思うようなものが必ずしもないとは思わない。日本人の行政に対する親切心あるいは完全性を要求するという、そういう性格も多少はあると思うのです。そういうような点は、世界の流れに合うように改革すべきものは改革していかなければならぬ、そう思いまして、努力もしておるところであります。
  210. 米沢隆

    ○米沢委員 アメリカ側の統計によりますと、昨年一年間のアメリカの対日赤字は三百六十八億ドル、アメリカ全体の赤字千二百三十三億ドルのほぼ三分の一に当たると言われておりまして、ことしに入りましても、一月が三十七億ドル、二月が四十二億ドルと赤字が続いて、商務省の見通しては、ことし一年間の赤字額は四百億ドルに達するものと見られておる、こり言われておるのでありますが、この数字の信憑性は日本として確認できておるものかどうか。同時にまた、アメリカにとって、この赤字幅をどれぐらい縮めたらアメリカは納得すると思われておるのか。アメリカ政府高官等の発言等を勘案して、一体赤字幅をどれぐらい縮小するという感覚で我々に対して物を言ってきておるのか、その点、わかったら教えてもらいたい。
  211. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府の調査によりますと、アメリカとの日本の貿易は、アメリカ側の統計では三百六十八億ドルの非とありますが、日本側の統計では三百三十一億ドルの黒という形になっております。この差はCIFで計算しておるものですから、そういう意味における誤差が出てきているのではないかと思われます。  それから、どれぐらい伸びるかという問題でありますが、対米輸出を調べますと、昨年の五月がピークで、対前年比五七%増、驚くべき増加があったわけです。それがことしの二月ごろになると、三・五%増ぐらいにずっと傾向的に落下してきております。そういうような傾向がこのまま続いていきまするならば、四百億ドルというようなことはあり得ないと思いますが、しかし経済は生き物でありますから、予断も許さないし、よく注意していく必要がある、そう思っております。
  212. 米沢隆

    ○米沢委員 私がお尋ねしたのは、アメリカ側の意思として、一体どれぐらい対日赤字を減らしたら納得するのかという、そういう感覚みたいなものがわからないのかということでございます。
  213. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それはよくわかりません。アメリカは数字よりもむしろ原則を言っているのでありまして、自由貿易の原則を貫くあるいは公正競争を行える環境を整備してくれ、そういう原則を言っておるのでありまして、数字のリミットをどうというふうなことは、聞いたことはありません。
  214. 米沢隆

    ○米沢委員 最近、日本は御案内のとおり鉄鋼、自動車につきまして対米輸出自主規制実施を決定いたしました。いま一つ、現在電気通信機、エレクトロニクス、医薬品・医療機器、木材製品など四分野における市場開放策について精力的に協議が重ねられておる今日でございます。問題は、この交渉が全般的に進みぐあいがはかばかしくないこと、また、そのことが貿易赤字の累積とあわせましてアメリカのいら立ちを増幅させていることは想像にかたくないところであります。  私は、日米関係の重要性、貿易立国として立っていかねばならぬ日本立場、自由貿易主義の大事さ等について、いささかも否定するものではありません。しかし、アメリカ議会の動きを見ておりますと、何かアメリカのみずからの貿易不均衡の責任、例えば巨額の財政赤字による高金利、ドルの異常高、売り込み不足、さらにはアメリカ製品の競争力の低下などなど、何かそのあたりの責任を棚上げして、すべて日本のせいにする。アメリカから物を買わないのはけしからぬ、アメリカの言うことを聞くのは当然だといったような態度はまことにもっておかしいし、理不尽だ、そんな感じを私は持っておるのでございます。まるでこういう動きというのは、一種の恫喝外交みたいなものだというふうに感ずるわけでございますが、総理は、それでも日本政府としては、先ほどおっしゃいましたような気持ちで、アメリカさんのおっしゃることは基本的にはむべなるかなという態度で対応されようとなされるのかどうか、その点ひとつお伺いしたいと思います。  それと同時に、理不尽なものでないものもあるかもしれませんが、理不尽なものもたくさんある。理不尽なものがこのまま通れば、それにまた妥協することによりまして、日本はやはり何か後ろめたいところがあった、そういうふうに他の国々にも思われ、ますますかさにかかって対日批判を強めて、そしてまた日本はそれにずるずると押しまくられていく、こういう動きにつながっていくのではないかなということを危惧いたします。そうなりますと、日本の国内産業は、競争力のある分野は結構だと思いますが、競争力のない、例えば構造的な不況業種等々、大変なダメージを受けることになっていく。  そういう意味で、総理市場開放策のあり方について、基本的な物の考え方みたいなものを教えていただきたいと思いますし、同時に、アメリカ責任について、ロン・ヤスの大変親しい間柄の中で、どのような意見開陳が行われてきたのか、そのあたりをあわせてお聞かせいただきたい。
  215. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 アメリカ側が言っていることは、公正競争ということなのであります。競争力はおのおの企業によって違うであろうが、少なくとも機会均等、そして扱いが公正であるということ、それを強く要請してきておる。ところが、商慣習や社会慣習や政治制度等の相違から、そういう点で違うところがあるということは、けさから申し上げたとおりであります。そういう点に対する理解の不十分が向こう側にもあり、また、日本側としても、国際水準等から見まして、必ずしも全部澄明ではない部分、あるいは基準・認証制度等において、日本側に落ち度が必ずしもないとは言えない。落ち度というよりも気がつかない、そういう水準があるということもないとは言えない。そういうところなのでありまして、どっちがいいとかどっちが悪いという問題で決めつけるべき問題ではない、お互いに。こういう話は、相互主義でありますから、両方で話し合って、そうして誤解を解き、公正、澄明が貫かれるように打開していくべきもので、すべて話し合いで解決していくべき問題である。そういう考えに立って、せっかく努力しておるところなのであります。
  216. 米沢隆

    ○米沢委員 確かに自由貿易主義を擁護していくためには、公正競争という原則がぴしっと守られることが必要であろうと思いますが、やはり、今アメリカ日本に対して赤字を拡大しておるというのは、何といいましてもドル高ですね。あるいはまた、商社の人力に聞きましても、製品を売り込もうとする努力不足。確かに日本の市場の閉鎖性みたいな、あるいは言葉の障害、あるいは商慣習の障害等があるかもしれませんけれども、それを乗り越えてもまだ売り込もう、そういう努力は余り見られない。あるものは当然買うものだという感覚でしか商売が行われていないようなところが多くあるのではないか。そういう点について、特にドル高というものに関して、言うべきことは言う。言っていらっしゃると思いますけれども、もっと声を高くして言わなければならぬのではないかと私は思いますが、いかがですか。
  217. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本の電信電話業界というものは、大体四兆円の市場とか言われております。ところが、アメリカは広大なところですから、大体十八兆円ぐらいの市場であると言われておる。したがって、小さい方の市場から大きい方の市場へ突っ込もうとする場合には、非常に弾みもあるし、異常な努力をするわけです。大体大きい市場の方が優位性を持って、単価も安いし、生産性も高いという点があるわけですから。したがって、小さい方の市場、日本のような市場からアメリカへ売り込むという場合には二倍、三倍の努力をしなければならない。そういうことで日本企業は努力をしたんだろうと思います。ところが、十八兆円の大きな市場があるアメリカの側としては、ほっといても売れるわけですから、それが小さい方の市場に削岩機で入るように入ろうという努力は、人並みならそうやらぬものなんです。恐らくそういう面がアメリカ側企業にはあるのだろう。日本企業アメリカ側企業との環境の差というものがあるのだろう。  そのほかに、アメリカ自体が広大な、大きな自立市場ですから、外へ売らぬでも自分たちだけで処理できるというところがあったのです。ところがアメリカのATTですか、これがたしか七つか八つに分解された。ATTの場合は、ウエスタンユニオンとかそういうものがくっついておって、電話機というものはそれがほとんど一本で今まで売ってきておったわけです。それが分割されたものですから、その結合が崩れて、できた幾つかの会社はもう自由に世界から買うという形になって、それで日本の商品がずっと入っていった。日本の商品は割合きめの細かい売り方や性能を持っておるわけですから、ぐっと入っていってしまった。それでアメリカ側はびっくりしたわけです。今度は日本の方へ入ろうとすると、日本の場合は電電公社というものが一本ででんと控えておってなかなか入りにくい。さっき申し上げたような十八兆円と四兆円の市場の差がある。そういうところで向こうは非常に不公正だと感ずるし、非常なフラストレーションがたまったのだと思うのです。  そういうような事情をも踏まえつつ、アメリカ側に説明すべきは説明し、また、日本として公平、公正にやるべきものは改める、そういう態度で、両方が良好な環境をつくるように努力してまいりたい、そう思っている次第なのであります。
  218. 米沢隆

    ○米沢委員 ところで、我が国の関税率は、輸入全品目で見る限り、関税負担率をとりましても、平均関税率をとりましても、国際的には最低位に属しておる、こう言われておりますが、各国はそのあたりの事情というものは理解した上で、いろいろとまた文句を言ってくるということになっておるのでしょうか。その理解の度合いみたいなものは、一体どういうふうにとっておられますか。
  219. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 工業品についてはそうなんです。たしか三%——二、三%ぐらいですね。それは我々もサミットの場合におきましても、対外交渉の場合におきましてもよく言っておるのであります。それはまた先方も知っておるようであります。しかし、関税率の問題以外に、今申し上げたアクセスの問題というものがありまして、これがまた大きく感情的な要素をなしてきておる、そういう面もあるのであります。
  220. 米沢隆

    ○米沢委員 この前の関税法の議論をした際、我が党の安倍委員の方からも問題提起をいたしましたが、関税を議論する場合に大変大事なことは、変動相場制のもとでは関税制度の効果そのものが絶対不変のものではない、相対的に弱まっておる状況にある、そういう認識をしなければならぬのじゃないか、こういう話を先般いたしました。例えば円の対ドルレート一つをとりましても、それが例えば年間平均で最近最も円高をつけた一九八一年、二百二十円五十銭と、月間平均で最安値をつけた五十九年の九月、二百四十五円五十銭とを比べますと、この間に円はドルに対して一〇・二%減価しておることがわかります。もしこの間に同一価格の同一商品がアメリカから対日輸出されているとすれば、この円の減価分は新たに一〇%強の関税がかけられたのと同じ効果を持つことがわかるわけでございます。そういう意味で、円安のときに関税を下げたならば、円高になったとき、その分逆にマイナス関税をかけられるような格好で、ダメージは大変大きくなるんじゃないか、そういう危惧の念を我々は持っておるのでございます。  特に今、木材製品の関税の引き下げの問題等が大きな議論になっておりますけれども、今でさえ大変厳しい木材業界が、もしドルが安くなって円が高くなった状況を想像しますと、今以上に、少々の救済対策を打ったところで間に合わないような壊滅的な状況になるのではないか。そのあたりをやはりある程度配慮すべきだ、そういうふうに我々は考えておるのです。そういう意味で、先ほど申しましたように、何といいましてもドル高を是正する、これが何にも増して先決なのでございまして、その後の議論は後でするという一ぐあいに、やはり木材の関税引き下げ等については言下に断るというような態度が総理には必要でなかったのか、そう思うのでございますが、いかがでございますか。
  221. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 変動相場制のもとにおける関税の効用度というものは、おっしゃるとおりの面があると思います。特に、最近のアメリカのドル高の情勢を見ますと、相当優秀な企業でも日本に入りにくくなってきておる状況下にあるということは、よく皆さん御存じのとおりであるだろうと思います。したがいまして、日本のいろいろな対外政策については、その点もよく注意する必要があると思います。木材についても、我々は非常に慎重にこれを扱ってきている。相手側に対しては、木材は困難である、木材は今やれと言ったって無理だと常に言ってきておる。この間もモスコーでブッシュさんに会いましたときにも、木材は困難ですよ、そういうことを私はまず冒頭から言ってきておるのです。  一方でそういうことは言っておるけれども、しかし永久に何もしないというのでは、これは対外折衝にならない。何かの努力はしていくべきである。そういう意味において、ある程度時間をかけて、そしてその間に諸般の施策をやって、抵抗力をつくりつつ、ある程度国際的調和を得るような政策を打っていくのがやはり政治ではないか、そういう観点に立って今党内でもいろいろお願いをして、検討を願っているところなのであります。
  222. 米沢隆

    ○米沢委員 当面、この四つの分野における市場開放策が問題になっておるのでありますが、通信機器につきましては、御案内のとおり、さきのシグール・アメリカ大統領補佐官とオルマー商務次官と総理との会談で、いわゆる日米通信摩擦は当面回避されたというふうに報道されておりますが、問題は、やはり先ほど申しましたような木材製品だろうと思います。  そもそもこの話の発端は何かといえば、ことし一月の日米首脳会談で、レーガン大統領から、アメリカの関心品目として電気通信機器、エレクトロニクス、医薬品・医療機器、木材・同製品の四分野を指摘されて我が国の市場開放を要請された。それに対して総理は、私自身がチェックして市場開放を進める、こう公約されたというふうに聞いておるのでございますが、そこが何といいましても物事の発端でございます。しかし、それが一向に発展しない、進展しない、そういうことから、アメリカ議会のいわゆる暴走を許しておるような状況がつくられておるわけでありまして、総理責任はやはり重大だと言わなければなりません。  朝日新聞の「天声人語」子がこういうような文章を書いております。  レーガン大統領との会見で、中曽根首相はそとづらがよすぎたのではなかったか。通信機器や木材製品の開放を迫られて、首相は「私自身が目配りする」と答えた  会談後、米高官は「あれほど首相がいうのなら、きっと約束をはたすだろう」といったそうだ。いえ、あれはそとづら外交というもので、といっても通用しまい  木材の話は、日本の山林の将来にかかわる問題がからむだけに、難航している。首相はあの時「努力するが、木材製品にはきわめて難しい問題があるので約束はできない」と、きちんというべきではなかったかこう書いておりますが、総理の外交あるいは日米会談、ロン・ヤスの会談等を見ておりますと、この木材製品の問題だけに限らず、何か総理は安受け合いされるような傾向があるんじゃないか、そういう気がしてなりません。そういう意味では、この日米会談においてどんな約束の仕方をされたのか、再度伺ってみたいと思っております。
  223. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 木材の問題については、今「天声人語」が言ったとおりのことを私は言っておるのです。今初めて私それを聞かされまして、あのレーガン大統領とのロサンゼルス会談で、安倍外務大臣も隣に一緒におったその席で、四つのものが出たときに、まず木材は難しいですよと前から言っているとおりだ、それを冒頭に私は言っておるのであります。  それから、この問題の処理の方法については、先ほど来申し上げているように、去年の十二月大統領選挙が終わって、そして各党が発言の自由を回復してから、これは相当なことになる、これは皆さんもそういうことはおっしゃっておりました。そういう情勢で、これを解決する方法を早く講じておかないと、土壇場に行くと大変なことになる、そういう予感がしたものですから、そういう解決のメカニズムをつくっておこう。そういう考えに立って、アメリカ側も理解したのは、大場・スプリンケル、竹下・リーガン、この間における円ドル問題、日本の金融の自由化の問題の交渉なんです。あれは事務次官レベルです、大場・スプリンケル。それから閣僚のリーガン・竹下。こういう四人組の組み合わせで、そしてかなり円ドル、自由化というものが進んで、アメリカも満足したわけであります。  そういう先例があって、今度ホワイトハウスのキャップにはリーガンがなったわけであります。これは恐らく円ドルの功績を相当認められたんじゃないかと私は思います。そういうリーガンさんがそこでキャップになりましたから、これはその例を引いて、ああいうふうに成功したんだから、そういうメカニズムをこの四つの品目についてつくって話し合いをしていこう、そういうことでこれを詰めていく。そういう交渉、話し合いの方法を私は提議をして、向こうもそれに賛成をしてやったというので、中身をどうするというところまでは請け負っておるものじゃありません。  中身の問題で一番大事なのは、双方が国際水準とか透明政策ということと同時に、商品の競争力というものが非常にあり、売り込み努力という問題も出てくるものだ。そんなところまで責任を持てるものじゃないのです。したがいまして、やはりやるべきことはやっておく。そして日本人がフェアでないという、こういう間違った発言を是正したい。そう思って、前から言っているように、その取り組みの方法をお互いで合意をして、そして取り組みが始まって実行しておるということだ。もしこういうチャネルや話し合いの場がなかったらどういう結果になったろうか。最後の土壇場になって大騒ぎが起きたんではないかとすら考えられます。こういうようなチャネルがあるから、どういうようにこれを解決していくかという手筋がちゃんとわかって、そしてお互いが努力し合う、その焦点が出てくるから問題は解決に向かえるのだろう、私はそう思っておるのであります。
  224. 米沢隆

    ○米沢委員 ところで、総理はさきの政府与党連絡会議におきまして、木材については三年程度をめどに段階的に引き下げを実施したいという意向を明らかにされたと聞いておりますが、この木材製品の関税引き下げについては、一体どういう決着を頭の中で想像されておるのか。あるいはまた、本当にノーと言えないのか。もう既に関税引き下げはやるということを既定の事実として、その着陸の仕方を考えておるのか。そのあたりはいかがですか。
  225. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は前から、日本の林政について非常に欠陥があるな、政治の場における目配りが足らぬなと、農林省に対して林政を充実してくれということは言ってきておりますけれども、必ずしも十分な案が出てきたと思わぬし、また、財政当局がそれに十分協力をしたとも思われない。そこで、この段階で林政をしっかりやらないと、戦後植えた木がもう二十年、三十年になってきて、いよいよ伐採期を迎える。そういうときになっても林政が十分でないという形になると、今のように間伐もできない、間伐をやったら損になる、そういうような状態だったら、これはもう大変なことになる。この林政の停滞というものを打開しなければならぬと、かねがね思っておったところであります。  今回こういう問題も起きまして、林政の根本的な改造、改革というものもやりたい。それと同時に、合板やその他についても生産性を高めて、抵抗力も強めて、そして国際競争ができるような基盤を早くつくり上げる。また、合理化すべきものは合理化する。何にもしないで、そしてのんべんだらりんと時間が過ぎていって、その安易な情勢だけで推移するというような政治はないわけであります。やはり努力する目標を与えて、国際並みの水準にはい上がっていくというのが、企業の指導精神でなければならぬと私は思っておるわけです。そういう方向に物事を持っていきたいと思って、党に今御検討をお願いしておるということなのであります。
  226. 米沢隆

    ○米沢委員 昨日佐藤農水大臣が自民党の金丸幹事長を訪ねられて、この合板の関税引き下げとの見合いとして、国内林業の救済対策として林業振興のための森林五カ年計画をつくって、約三千億円程度の仕事をしたいというふうに、農水省の構想みたいなものを説明されたと聞いておりますが、その構想は一体どういう中身になっておるのですか。農水省、御説明ください。
  227. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 林野庁長官でございますが、具体的な数字、年数等につきまして、農林水産大臣の方からお話を出したのではないというふうに伺っております。
  228. 米沢隆

    ○米沢委員 農水省として、林野庁として、かかる関税の引き下げが行われた場合に、一体どういう対策を打った方がベストであるというふうに考えておるか。少なくとも、細かな数字は別にしまして、物の考え方ぐらいは発表できるのじゃないかと思いますが、その点いかがですか。
  229. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 林業、林産業の置かれておる状態、問題点については申すまでもないと思いますけれども、これらの基本的問題を根本的に解決するという問題と現在いろいろ取り組んでおるところでございまして、総理からも大臣、次官を通じましていろいろなお話を伺っておるところでございます。
  230. 米沢隆

    ○米沢委員 その中身はないということですか。
  231. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 現在まだそういう検討の方向、中身につきまして申し上げられる段階にはございません。
  232. 米沢隆

    ○米沢委員 政府方針として、木材製品等の関税引き下げをやろうという既定事実の中で走っておられるわけでありますから、少なくともそれに関連する業界の皆さん方は、まさに一体どういうふうに決着されるのか、どういう程度になるものか、これは本当に毎日毎日心配でたまらないというのが業界の実情じゃないかと思うのです。そういうときに、まだ、総理から指示されて今検討しておりますという、そういう完全に薄のろ的なやり方で、果たして業界の皆さん方が納得しておるだろうか、そんな感じがするのです。今総理が、ただ単に木材製品の関税引き下げに伴う業界の救済対策だけではなくて、この際いわゆる森林行政といいましょうか、林を、森林を守っていくという、そこまで輪を広げて対策を打つべきだというような話をされましたが、私は、まさに林野庁としてはそれぐらいのことは既に用意されて、この際何は大蔵省から金を取るか、それぐらいの戦略を練る段階に今はなくてはならない、こう思うのですが、どうですか。
  233. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 今回の関税に関する問題につきましては、大変な困難な問題が関連しておりますので、慎重な対応をしておるところでございますけれども、基本的にはやはり林業、林産業が活力を取り戻す、さらに活性化する、その後でなければこれに対処はできないという考えで対応しておるところでございます。
  234. 米沢隆

    ○米沢委員 それでは、まだ農水省としては、総理の指示があるにもかかわらず、できれば関税引き下げはやりたくないという態度で今は処理しておる、対応しておる、こういうことですね。
  235. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 現在、関税の引き下げにつきましては、大変困難であるという認識でございます。
  236. 米沢隆

    ○米沢委員 総理お尋ねしますが、もし既定の事実でアメリカの関税引き下げを実施するということになりますと、それと横並びでよく言われておりますように、問題になりますのは、インドネシアやマレーシアなど東南アジアの合板の取り扱いをどうするかという問題に発展するだろうと思います。それで、東南アジアの関税だけは据え置くというわけにはいかぬと思いますが、その点、どういうふうに総理は対処されていこうとされておるのか。  同時に、合板業界が大変恐れておりますのは、アメリカからの針葉樹合板というより、日本の合板とまともに競合しておりますインドネシアやマレーシア産の広葉樹合板、このあたりであると言われておるのでございますが、そういう意味では、将来合板業界というのは、もしアメリカの関税の引き下げと同様に東南アジア産の合板の関税引き下げということにつながっていきますと、今三千億とか何千億とか言われておるようなものでは問題にならないくらいの壊滅的な打撃が与えられ、逆に生き残ることさえできないのではないか、そういうふうに我々は考えるのですが、その点、本当にただ救済対策を打つことによって生き延びていけるような策があるというふうに、そんなに安易に考えていらっしゃるのかどうか、この二点を総理にお伺いしたいと思います。
  237. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり貿易はグローバルですから、インドネシアにも目を配らなければならぬと思います。それから、アメリカ側との問題については、針葉樹とそれから広葉樹、濶葉樹との差があるようであります。それらの問題の状況については、今農林水産省及び党においていろいろ検討していただいておるところであります。
  238. 米沢隆

    ○米沢委員 ところで政府は、四月九日に、我が国の当面する市場開放策を、対外経済対策としてまとめて発表すると伝えられております。その中身は、経済摩擦を回避するための中長期的な経済目標の基本方針、それから通信機器などアメリカ向けの四分野の市場開放策、そして輸出手続の簡素化など、欧州、いわゆるEC、東南アジア向けも含めたその他の市場開放策、これを三本柱にして対策を発表される。そして、それまでに具体策の整わない問題が残った場合には、九日の対策で今後の日程を示し、いわゆるボン・サミット直前の四月末をめどに追加方針を打ち出す方針だ。その中身は、四月九日に発表されるいわゆる基本方針を受けて、農産物や工業製品の関税引き下げ、通信機器などの製品輸入の拡大貿易黒字減らしのための内需拡大策等々が考えられておるというふうに報道されておりますが、その概要に間違いはないのかどうか。  それからもう一つは、現在通信機器、エレクトロニクス、木材製品、医薬品・医療機器につきまして精力的に交渉が重ねられておりますけれども、その妥協点みたいなものが今度の四月九日に発表されるのだと思いますが、現在盛り込まれるであろうと思われる内容について、郵政、通産、農水、厚生の責任者の方から、確実なもので結構ですから御説明をいただきたい。  もう一つは、EC向け、東南アジア向けの市場開放策で、目玉は一体何を考えておるのか。この三点、お聞かせいただきたいと思います。
  239. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 四月九日を目途にしておるというのは、十一日からOECDの閣僚会議がありますから、その前にやった方が適切であろうというので、その日が選ばれておるわけであります。  それから、大体出すという予定は、一つは中期的見通しの問題、中期的施策に対する勧告、これは閣僚協に対する経済諮問委員会の勧告、意見書、そういう形で出していただく予定で、今最終の詰めをやっておるところであります。  それから、当面の課題に対する政策、これは四部門。そのほか、今後の貿易政策等々に関するものであります。まだ四部門に関する問題については交渉中でございますから、その内容をここで出すということはしにくいであろうと思っております。省によって、今向こうと盛んにネゴをやっている部面もなきにしもあらずであります。そういう意味において、事前にそういうものを出すことは、相手に対する信頼にもかかわる問題もありますから、その点はひとつ御理解願いたいと思う次第であります。(米沢委員「FC向けと東南アジア向けの目玉は」と呼ぶ)  先ほど来申し上げましたように、貿易はグローバルですから、アメリカばかり見てやるべきものではありません。やはりECあるいは東南アジアも念頭に置いて行わなければならない、そういうことで今いろいろ作業していただいておるところであります。中身はどうであるかということは、まだ申し上げる段階ではありません。
  240. 米沢隆

    ○米沢委員 最後に、いわゆる最終的な基本方針になるのだと思いますが、例の大来さんが座長でいらっしゃいます対外経済問題諮問委員会が報告書をまとめて発表されました。その中身は今まで議論したようなものがたくさんございますが、特に週休二日制の普及とか、土地利用規制の見直しとか、貯蓄や住宅に関係する税制の改善を提言して、もっと内需を拡大しろというような提言がなされているわけでありますが、総理として、その点についてどういうふうに具体化されていくおつもりなのか、基本的な考え方をちょっと示していただいて、質問を終わりたいと思います。
  241. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 対外政策を行うと同時に、内需の拡大を図るということは大事な点であると思います。ただ、日本財政状況が、財政を使って内需の拡大を図るというところまではなかなかたどり着きにくい情勢にあることも事実であります。しかし、内需の拡大をいかなる形でやるか、これはいろいろ考えていかなければならぬ問題であると思います。そのほかの問題につきましては、今交渉中の問題やらその他ありまして、具体的な内容についてはひとつ御理解をいただきたいと思う次第であります。
  242. 米沢隆

    ○米沢委員 終わります。
  243. 越智伊平

  244. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 いわゆる補助金カット一括法案についてお尋ねをいたします。  今回の法案の中で、補助金一律カットによる地方負担増というのは五千八百億円にも上っております。これに対して総理は万全の措置を講じて、地方公共団体の財政運営に支障を来さないように措置しているというふうに言われておりますが、果たして万全の措置が講じられたかどうかということが大変問題だと思います。まず、その万全の措置というのは一体どういう中身なのかということですが、国から地方への補助金、それから負担金というものも入っておりますけれども、これがカットされて、結局それでも国民、住民には直接影響がないという意味なのか、あるいはまた、地方自治体の財政に負担をかけずに国がきちんと始末をするという意味なのか、万全の措置という意味についてどちらなのか、最初にお尋ねしたいと思います。
  245. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 両方であります。
  246. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 そうしますと、本当に万全の措置ということで、地方自治体に負担がかからず、国がちゃんと責任を持つかどうかということが問われるわけですね。特に、とりあえず社会保障等経常的経費について見てみますと、これが二千六百億円のカットになっております。これは考えてみますと、本来国が負担するべきものであるということだと思うのですけれども、これは国が責任を持って負担すべき経費と考えておられるか、あるいはもう地方が負担すべき経費ということで考えておられるのか、どちらなのでしょうか。昭和六十年度に限ってですけれども
  247. 中曽根康弘

  248. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 時間もありませんので、政府委員からの答弁は結構です。総理がお答えになれないということなのかどうか。やはり肝心なところだと思うのですね。国が責任を持つものなのか、それとも地方自治体が負担すべきものなのか。このことは、さっきお尋ねをした、まさに万全の措置ということになるのかどうかという問題と絡んでくるわけなんですね。ですから、地方自治体の財政に負担をかけず国がきちんと始末しますということなら、これは本来国が負担すべきだという当然の前提に基づいてお答えになったと思っているんですが、違いますでしょうか。
  249. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 地方には迷惑をかけない、そういう原則でいろいろ処理しております。  政府委員から答弁させた上で、私からお答えいたします。
  250. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今総理から御答弁がございましたように、地方財政全体といたしまして、その行財政の円滑な運営に支障を生じることのないよう措置しているということが一つでございます。  それからもう一つは、それでは個々の国民との関係ではどうかということでございますけれども国民生活にかかわる個々の施策の水準に影響を与えることのないよう措置しているわけでございます。
  251. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 聞いていることに答えていただけないんですね。二千六百億円について、これは本来国が負担すべき経費と認識しておられるのか、それとも地方自治体が負担すべき経費なのかどうなのか、このことを端的に答えていただきたいと思うのです。総理はいかがですか。——じゃ、もう結構です。お答えになれないということでございますので、結構です。  私がさっきからお尋ねしていることは、物すごくはっきりしていることなんです。この二千六百億円カット部分は、国が責任持つ経費なのかあるいは地方自治体が責任持つ経費なのか、二つ一つを答えていただくということなんです。ですから、これは総理の政治的な答弁をいただかないと、事務方では私は無理だと思います。
  252. 平澤貞昭

    平澤政府委員 地方と国とは車の両輪でございますので、この問題につきましても、国と地方が責任を持って措置しているわけでございます。しかし今回の場合は、特に国としては地方財政計画全体の中で財源不足が出ますが、それを完全に補てんするように措置しているわけでございます。
  253. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 これはもともと国が負担すべき経費であるということが明らかであるわけですから、その点で、そういう認識があるからこそ、今回地方にそれを負担させる、ついては国が万全の対策を立てましょうということに論理必然的になるわけです。昭和六十年度に限ったとしても、本来地方が負担すべきものというならば、国は何もしなくてもいいわけなんですね。だから、その点についての基本的認識を伺っているのに、総理がお答えにならないということは、私は実に遺憾だと思いますが、続いて進めていきたいと思います。  これは本来国が負担すべきものであるというふうに考えて、そのために地方に迷惑をかけないようにいろいろ措置をしようというふうに組まれているわけなんですね。したがってこの二千六百億円の補てんをする義務というのは、当然国にあるというふうに私は思うわけです。  ところで、この万全の措置というのを見てみますと、具体的には昭和五十九年十二月二十二日の大蔵、自治両大臣の覚書というのがございます。ここで二千六百億円のうち一千億円は六十年度に一般会計から地方交付税交付金に加算して交付税特会に繰り入れる、そしてさらに一千億円は建設地方債等を増発して、暫定的に昭和六十六年度以降地方交付税交付金に加算されるというふうに覚書の中で書かれているわけです。そして六百億円については交付税不交付団体としてそこに吸収させるという計算になっております。六十年度特例加算の一千億はともかくといたしまして、建設地方債分の一千億、これは昭和六十六年度以降確実に交付税交付金に加算されるだろうか。これは大変不安になってくるわけですね。  総理は、昭和六十六年度以降確実にこれは国の方で責任持って加算して精算させていただきますというふうに約束できるのでしょうか。そのことを地方自治体も非常に心配しておりますので、お尋ねしたいと思います。
  254. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 閣瞭で相談したものは、内閣としても実行しなければいかぬと思います。
  255. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 ただ、実際問題として、これまでの各委員会の論議などを聞いておりますと、建前として昭和六十六年度以降精算をいたします。ですから、昭和六十年にいろいろ話し合ってみた結果、これが結局もう帳消しになってしまって、精算されない危険もあるということが、これまでの審議の中でも明らかになってきているわけです。ですから、私は、こういう点について、真に万全の措置というふうにならないということを名言しなければならないと思うのです。  ことしの特例加算の一千億円についても、昭和五十九年度の特例加算の一千七百六十億円よりもはるかに少ないわけですし、また、本来昭和六十年に加算すべき一千三百五十五億円を昭和六十六年度以降に延ばしてしまって、そのうちの一千億だけ手当てしますというやり方、非常にこそくなやり方をしているわけですね。結局六百億円は不交付団体に押しつける。それから建設地方債一千億円は、昭和六十一年度以降の補助率のあり方の見直しの結果、例えばことしの措置を恒久措置にしてしまう、あるいはそれよりももっと国の負担を少なくしてしまうという結論になった場合には、これはもうほったらかしにされてしまうということになるわけですね。  だから結局、何のことはありません、一千六百億円は丸ごと地方自治体に押しつけてしまう。特に経済力や財政力の弱い自治体に借金して決着をつけろというやり方は、国の責任を放棄する許しがたいことであって、到底万全の対策とは言えないのじゃないかと私は思います。総理は、これでも全部国が責任を持って万全の対策を立てましたとおっしゃれるのでしょうか。
  256. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 三大臣で話し合ったことは、政府としても責任を持って実行しなきゃなりません。それで、最初申し上げましたように、地方には迷惑をかけない、そういう原則を申しておるのでありますから、迷惑をかけないという結論が得られるようにいたしたいと思っております。
  257. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 いたしたいとはおっしゃいますけれども、今申し上げた数字だけ見ても、万全の措置でないことは明らかになっていると思います。地方への負担転嫁を禁じた地方財政法の二条にも明白に違反する今回の措置は、私は到底認められないということをあえて厳しく申し上げておきたいと思います。  同時に、補助金カットという、こういう事態に立ち至りながら、一方で補助金がたっぷりと措置されているところが山ほどあるわけですね。  お尋ねするわけですけれども、民間輸送機YXX、民間航空機用ジェットエンジンV二五〇〇の開発補助金について見てみますと、YXXは一九八一年度三億五千百万円、一九八二年度十四億八千八百万円、一九八三年度二十二億五千万円、一九八四年度十四億一千万円、一九八五年度予算案では十三億六千七百万円ということになっております。  またジェットエンジンでは、XJBからV二五〇〇と変わってきておりますけれども、これも各年度十七億八千五百万円、四十七億二千万円、五十三億二千万円、四十七億円、四十億二千万円、それからことしの予算案では三十八億二千七百万円というふうになっています。  通産省にお尋ねいたしますけれども、一九八〇年度から一九八三年度まで、それぞれこれらの補助金の使い残しがあって繰り越している部分があると思いますけれども、それが各年度幾らになっているでしょうか。
  258. 伊佐山建志

    ○伊佐山説明員 申し上げます。  五十六年度のYXX民間輸送機開発費補助金につきまして繰り越しいたしました額は六千四百万円、五十七年度は七億一千万円、五十八年度十五億八千二百万円でございます。それからV二五〇〇ジェットエンジンの方の繰越額は五十五年度ゼロ、五十六年度六億二千二百万円、五十七年度三十一億三千七百万円、五十八年度五十四億七千五百万円となっております。  今先生御指摘のように、これらはいずれもアメリカ、ヨーロッパの国々と共同してやっているものでございます結果、共同プロジェクトを進めております間での市場の見方あるいは商品にするための技術の使われ方、どの技術を使うかといったことについてコンセンサスを得ることに時間を要することもございます。あるいはユーザーでありますエアラインが購入するタイミングを決定するずれを生ずる、機体にどういうものを要求するかということについて時々変更があるということもございまして、実態に合わせた形で我々プロジェクトを進めたいということから、予算額と支出額に差が生ずるケースが非常に多くございまして、当初から繰り越しをお認めいただいております。その結果こういう数字が出ているわけでございます。
  259. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 続いてお尋ねします。YXXについて開発の見通し、それからYXX、V二五〇〇の開発を担当している企業名は主にどこでしょうか。
  260. 伊佐山建志

    ○伊佐山説明員 申し上げます。  YXX機体開発の方は主に三菱重工、川崎重工、富士重工という三社が主体になっております。エンジンの方は石川島播磨重工、三菱重工、川崎重工という会社が中心でございますが、それ以外にもあまたの企業の参加を得て技術開発に取り組んでいただいております。
  261. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 YXXについての開発見通し。
  262. 伊佐山建志

    ○伊佐山説明員 機体の開発は、日本では必ずしも十分な技術を持っていないということもございまして、国際的な有力な企業とペアを組んでやっておるわけでございますが、機体の開発に当たりまして幾つかの基本的な条件がございまして、条件が整ったときに初めてゴーアヘッドする、本格化するというのが通例でございます。市場がある、あるいはエアラインが購入することが前提となりましてメーカー側がそれをつくるということになるわけでございますが、今の段階ではその条件がなかなか整ってないため、はっきりといつゴーアヘッドするか、来月なのか再来月なのか、この辺については全くわからない状況でございます。
  263. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 総理、今お聞きいただきましたように、このYXX及びV二五〇〇、莫大な開発補助金が出されているわけでございますけれども、いろいろお述べになりましたような事情も含めてたくさんの使い残し、そして繰り越しがされているわけです。今お聞きいただきましたように、YXXにつきましては開発の見通しも明確でないという段階でございますが、また今年度莫大な予算が計上されております。一方で、こういうふうに零細な、本当に隅々まで補助金カットというふうにやられていながら、片一方でこうやって巨大企業に対する補助金をたっぷりと予算化していくことについては、私ども国民感情としても到底納得できないものだと考えております。  そこで、こうした特定大企業への補助金の見直しというのをまず真っ先にやりながら、こういう補助金問題を考えていくという姿勢でなければならないと思いますが、その点についての総理の御見解をお聞きしたいと思います。
  264. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 YXXあるいはジェットエンジンあるいはコンピューターの五世代物、そういうものは先端技術の開発を行っているもので、国民経済の発展のために私は重大な、必要なものだと思っております。
  265. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 国民経済のためにというのですけれども、何はともあれ生活保護にしても文教にしても、国民一人一人が生きていくために最低必要な補助金、それから生きていくために、あるいは教育という基本的な施策のために必要な部分、ここのところが削られているわけですから、そういう点での重要性の判断から考えましても、総理のお答えは私は到底納得できないということを申し上げたいと思います。  あわせて、今回小中学校の教材費に係る国庫負担の規定が削除されようとしているわけですけれども、これは決して暫定的、一時的な措置ではないのですね。恒久措置ということで出されてきております。この措置は、義務教育費国庫負担法という法律の根本的な部分を変えようとするもので、私は大変な事態だろうというふうに思います。義務教育費国庫負担法の第一条を見てみますと、「義務教育について、義務教育無償の原則に則り、国民のすべてに対しその妥当な規模と内容とを保障するため、国が必要な経費を負担することにより、教育の機会均等とその水準の維持向上とを図ることを目的とする。」ということで、二条で教職員給与費等の国庫負担、そして三条で教材費の国庫負担ということで掲げられておりまして、ここに、いずれも法律目的から考えて決して優劣があるわけでなく、両方相まって、この義務教育の基本的な精神に資するために措置が講ぜられていると私は思うわけですね。したがって、教材費の問題につきましても、この義務教育費国庫負担法の根幹を崩すものと言わなければならないというふうに私は思うのですけれども総理はこの点について、いかがお考えでしょうか。
  266. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一般財源化したということでありまして、経費の所属が変わっただけで、そういう大きな変化であるとは思いません。やはり精神は変わっていないと思うのです。
  267. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 一般財源化するということで、国はそれなりに措置をするんだから、精神は変わってないというんなら、この教職員給与についても同じことが言えるとお考えでしょうか。
  268. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 多少性格が違うように思いますけれどもね。
  269. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 どのように違うのでしょうか。
  270. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 旅費とか教材費というようなものは、どっちかというと事務的性格を持っていると思いますが、給与となると、やはり生活を維持していくメインの性格を持っている、そういう感じがいたします。
  271. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 そうしますと、メインの方は義務教育費国庫負担法で措置するけれども、事務的な方は一般財源でよろしいのだということで、これは優劣をつけたことになるのでしょうか。
  272. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 財政処理上の区分の変化だろうと思います。
  273. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 これまで同じ法律で、国庫負担二分の一ということで、義務教育をその目的に沿ってきちんと効果あらしめるためにやられてきたものですから、その辺のところで、財政的に特別の取り扱いをしなければならないという、その理由が少しもわからないのですね。優劣をつけたとおっしゃるならわかるのですけれども、そうではないのでしょうか。重ねてお尋ねします。
  274. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 経費負担区分の変化だ、そう申し上げたとおりです。
  275. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 何かにつけて率直にお答えをいただけないのですけれども、私はやはりここのところは憲法、そして教育基本法、それを受けて義務教育費国庫負担法というのが定められているわけですので、この精神を今回根本的に改めていく、変えていくということに受けとめざるを得ないわけですね。同じ国で措置するというのなら、どちらでも構わないんだということなら、これまでどおりにやられればよいわけですので、それが結局のところ一般財源化されて、きちんとそれが保障されない、国から二分の一の負担が行われないということは、地方自治体にとっても、あるいは教育の現場にとっても大きな問題だというふうに言わざるを得ません。  この問題については、予算編成過程で、大蔵省財政制度審議会の意見を踏まえて、例えば学校事務職員、それから学校栄養職員の人件費も同時に外してしまおうというような見解だったようですけれども、最終的にはこれは対象とされないことになりました。先ほどもこの論議がありましたけれども、学校栄養職員とか学校事務職員については、総理はいかがお考えでしょうか。もしこの学校栄養職員、学校事務職員の給与の問題を国庫負担から外すということになると、これは義務教育費国庫負担法の根幹に触れるというふうにお考えでしょうか。
  276. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 負担区分が変わるだけですから、私は別に根幹に触れるとは思っておりません。
  277. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 そうしますと、栄養職員とか事務職員については、ことし昭和六十年度は、これは国庫負担を削減するという対象にはされませんでしたけれども、来年にはそういうことがされるのではないかと大変な心配がされるわけですね。そういうことは絶対にやらないんだというふうには明言していただけないものでしょうか。
  278. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 臨調の答申でも、また野党の皆さん、与党の皆さんの御質問でも、やはりメニュー化とか一般財源化という御主張はよく耳にするところであります。そういう面から、特に教育費だけを目当てにする意味でなくして、一般的にそういうような方向に政策を推進していくという考えは、臨調答申の線に沿い、あるいは一部の野党の皆さんのお考えにも沿うゆえんではないかと思うのであります。
  279. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 そうしますと、総理は、来年度以降この栄養職員あるいは事務職員について国庫負担の対象から外すということは、臨調の精神にかなうものである、そういう方向を目指してやるというようなお考えでしょうか。
  280. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは今一般論として、一般的にと申し上げたとおりであって、今の教育費の二つの問題を目当てにして申し上げておるのではありません。
  281. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 私はこの二つについてお尋ねをしているわけですから、それについてお答えをいただきたいと思います。
  282. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その問題をやるかやらぬかも全く白紙の状態ですから、特にここで言明するのは差し控えた方がいいと思います。
  283. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 総理のそのお考え方をさらに敷衍していくと、まあ白紙だから、来年はそれをやらないとは明言できないということだけれども、逆に言えば、来年はやるかもしれないというふうにも理解できるわけですね。  そして、さらに先ほどの論議では、学校のいわゆる先生だけではなくて、教育というのは事務職員やら栄養職員やら全体でもって子供を教育していくんだという認識に立っておられるように伺いましたけれども、そういたしますと、この学校の先生、あるいは教壇に立つ先生だけではなくて、事務職員や栄養職員、こういう人たち全体について今の総理のお考えが適用されるということになりましょうか。
  284. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 費用の負担区分が変わったからといって、精神が変わるものではないと思います。
  285. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 そうしますと、費用の負担区分を変えるだけだから、今回は教材をやったけれども、来年度、栄養職員とか事務職員にはそれが及ぶかもしれないし、さらに心配をしているいわゆる学校の教員、そこにもそういう国庫負担の対象から外す危険さえあるというふうな論調に伺いましたが、そのように理解してよろしいでしょうか。
  286. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 全く白紙でおります。
  287. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 白紙ということは、そうではないというふうには断言されないわけですね。
  288. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そうであるとも断言しないわけです。
  289. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 これは大変な問題だと思うのです。本当に義務教育というものをどのように受けとめるのか。そして国がどういう責任を果たすのか。教員を含め、栄養職員や事務職員を含め、教材を含め、教育の国庫負担を充実させて、義務教育の真の充実を図るために頑張ってきたこれまでの経緯から考えてみて、単に費用の負担区分だけだから、今後は全くフリーハンドである。ひょっとしたら、学校の先生に対する給料の国庫負担も絶対やらないとは——国庫負担の対象から外すということを絶対にやらないのだと総理が明言されないと、私はこれは大変なことだと思うのです。少なくともこれだけは絶対に守ってまいります、そういう総理の決意がないことには、こうなりますと、義務教育における国の責任は果てしなく免れて、国庫負担はなくなっていく道じゃないか、そんな不安さえぬぐい去ることができないのですけれども、どうなんでしょうか。教員の給与についての国庫負担のあり方についてはどうなんでしょうか。
  290. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 個人の約束と違って、政治の場合には「絶対」という言葉は余り使えない言葉ではないかと思うのです。
  291. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 「絶対」という言葉を使うか使わないかの問題ではなくて、総理が本当にそういう気持ちで政治を担当していかれるのかどうか。憲法、教育基本法にのっとって子供の教育に責任を持つ最高責任者としての総理大臣がどういう姿勢かということが問われるわけですから、絶対かどうかということを聞いているわけではありません。教員の給与における国庫負担の問題、あり方について、いま一度お尋ねしておきたいと思います。
  292. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 義務教育の重要性、国家が責任を持っているということはよく認識しておりますし、政治の根幹にかかわる重要な問題であると思っております。義務教育にかかわる先生方の給与の問題は、直接それと関係する非常に重要な問題であると心得ております。
  293. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 重要な問題であるという認識がおありならば、私は、この点について国庫負担をどんどん削っていくというやり方にはならないはずだと思いますので、それを強く求めておきたいと思います。  まだまだお尋ねしたいことが山ほどございましたけれども、時間が参りましたので、終わります。
  294. 越智伊平

    越智委員長 次回は、明三日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十三分散会