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1985-03-27 第102回国会 衆議院 大蔵委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年三月二十七日(水曜日)     午前九時三十分開議 出席委員   委員長 越智 伊平君    理事 熊谷  弘君 理事 熊川 次男君    理事 中川 秀直君 理事 堀之内久男君    理事 上田 卓三君 理事 沢田  広君    理事 坂口  力君 理事 米沢  隆君       糸山英太郎君    大島 理森君       加藤 六月君    金予原二郎君       瓦   力君    工藤  巖君       笹山 登生君    塩島  大君       関谷 勝嗣君    田中 秀征君       中川 昭一君    中村喜四郎君       東   力君    平沼 赳夫君       藤井 勝志君    宮下 創平君       山崎武三郎君    伊藤  茂君       川崎 寛治君    渋沢 利久君       戸田 菊雄君    武藤 山治君       渡辺 嘉藏君    石田幸四郎君       古川 雅司君    宮地 正介君       矢追 秀彦君    玉置 一弥君       正森 成二君    簑輪 幸代君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君         厚 生 大 臣 増岡 博之君         自 治 大 臣 古屋  亨君         国 務 大 臣 後藤田正晴君         (総務庁長官)   出席政府委員         総務庁行政管理         局長      古橋源六郎君         総務庁行政監察         局長      竹村  晟君         外務省経済局次         長       恩田  宗君         大蔵政務次官  中村正三郎君         大蔵大臣官房審         議官      角谷 正彦君         大蔵省主計局次         長       平澤 貞昭君         大蔵省関税局長 矢澤富太郎君         大蔵省理財局長 宮本 保孝君         大蔵省国際金融         局長      行天 豊雄君         文部省教育助成         局長      阿部 充夫君         厚生大臣官房総         務審議官    長門 保明君         厚生大臣官房会         計課長     黒木 武弘君         厚生省生活衛生         局長      竹中 浩治君         厚生省社会局長 正木  馨君         厚生省児童家庭         局長      小島 弘仲君         社会保険庁年金         保険部長    長尾 立子君         林野庁長官   田中 恒寿君         労働大臣官房審         議官      白井晋太郎君         建設大臣官房長 豊蔵  一君         建設大臣官房会         計課長     望月 薫雄君         建設省都市局長 梶原  拓君         自治大臣官房審         議官      土田 栄作君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部保安課長  清島 伝生君         厚生省年金局年         金課長     山口 剛彦君         通商産業省機械         情報産業局自動         車課長     黒田 直樹君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ――――――――――――― 委員の異動 三月二十七日  辞任         補欠選任   糸山英太郎君     関谷 勝嗣君   山岡 謙蔵君     工藤  巖君   山中 貞則君     中村喜四郎君   野口 幸一君     渡辺 嘉藏君 同日  辞任         補欠選任   工藤  巖君     山岡 謙蔵君   関谷 勝嗣君     糸山英太郎君   中村喜四郎君     山中 貞則君   渡辺 嘉藏君     野口 幸一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国の補助金等整理及び合理化並びに臨時特例  等に関する法律案内閣提出第八号)  あへん特別会計法を廃止する法律案内閣提出  第五三号)  関税暫定措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第五六号)      ――――◇―――――
  2. 越智伊平

    越智委員長 これより会議を開きます。  国の補助金等整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田卓三君。
  3. 上田卓三

    上田(卓)委員 国の補助金等整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案、この法案審議にきょうから入るわけでございます。  先般、大蔵事務当局から、この法案につきましての概要を御説明をいただいたわけでございます。その中で、この「立法趣旨」ということで、「昭和六十年度の予算編成に当たり、国の財政収支改善を図る見地から、累次の臨調答申趣旨を踏まえ、財政資金効率的使用を図るため、国の負担補助等について見直しを行い、所要の措置を講ずることにより、国の歳出縮減に資するものとする。」こういうことで、国費削減額は、法律部分で八千四百二十億円、それから政令等部分で一千六十億円、計九千四百八十億円になる、こういうことでございます。  その法律中身については、まず一番目に「補助金の廃止」というのがありまして、これが十二の法律があるようでございます。国費削減額は三百八十億円。二番目に、「補助金交付金化」ということで七つの法律、これは国費削減効果はない、こういうことのようでございます。また三番目は、補助金臨時特例法措置恒久化、こういうことで、六つの法律があるわけでございまして、これも国費削減効果はない、こういうことのようでございます。四番目には「行革関連特例法の一年延長」、こういうことでございまして、これが国費削減は三千五百六十億円、こういうことで、一番最後には高率補助率引き下げ特例、これは法律が四十本あるようでございまして、法律関係、この高率補助引き下げについては四千四百八十億円の国費削減額、こういうことの内訳になっておるわけでございまして、臨時行革特例法を除いてでも六十五本の法律になっておるようでございます。  また、関係省庁は九省庁にまたがっておるんじゃなかろうか。あるいは国会委員会ということになりますと、特別委員会ども入れまして、十四ぐらいになるのじゃなかろうか、こういうふうに思うわけであります。これらの法律一括大蔵委員会におりてきたということに対して、国会運営上あるいは国会法手続等の上においても、相当大きな疑義があるのじゃなかろうか、こういうように思っておるわけでございまして、この大蔵一括でこの法案がおりてきた、その趣旨というものを、まず大蔵大臣から答弁をしていただきたい、こういうふうに思います。
  4. 竹下登

    竹下国務大臣 今上田さん御指摘になりましたように、この法律をつくりますとき、どのような形で国会提出を申し上げるか、こういうことで、部内でもたびたび議論をしたところでございます。大ざっぱに申しますと、三つ理由とでも申すことができると思います。  一つは、いわゆる六十年度予算、この編成に当たりまして、国の財政支出改善を図るということからとられました、いわば国の歳出縮減に資する措置である。ことごとくが、いわば歳出縮減という問題で一つの同じ性格を持っている。  それから二番目には、これは補助率の問題でございます。財政資金の効率的な使用を図るということで、負担補助等についての見直しを行った、この負担補助見直しという措置であります。  それから三番目は、これを大きくくくりまして、いわば累次の臨調答申等趣旨に沿いました財政上の措置である。こういう三つ目的を有しておるということが一つでございます。  そういうふうに立法趣旨目的が共通しておるという場合、一括法として立法するということが、その立法趣旨を明確にする上で、また立法趣旨を総合的に把握する上でも、ばらばらにするよりも適切であろう、こういうことでいたしたわけであります。したがいまして、これは大蔵省がいわゆる予算調整権限に基づいてまとめたということになるわけであります。  これが委員会付託という問題につきましては、これは国会国会法に基づいてお決めになることでございますから、その限りにおいては、私の答弁の外側にあることではなかろうかというふうに考えます。
  5. 上田卓三

    上田(卓)委員 この法律は、臨時措置とそれから恒久措置をごちゃまぜにした法律でもあるわけです。また行革関連、こういう意味では所管省総務庁になるのではなかろうか、こういうように思うわけでございます。また、行革関連法の一年延長というものも安易にくっつけておるという意味では、今大蔵大臣答弁がありましたけれども、大変大きな問題を含んでおる、こういうように言わざるを得ない。特に一九五四年、昭和二十九年の補助金臨時特例法の場合は、文部、厚生、農水、通産、運輸、建設にわたる二十一本の法律一括処理をされた、こういうことでございます。このときは特別委員会が設けられたわけでございます。それから一九八一年、昭和五十六年の行革特例法の場合も、臨調の第一次答申を受けて三十六本の法律一括処理する、こういうことでございまして、このときも特別委員会審議されておる。  こういうことを考えますと、我々は当然九つの省庁にまたがる法律でございますから、各常任委員会なりあるいは特別委員会等で、やはり当該の委員会慎重審議をするということが一番いいというふうに思っておるわけでありますが、さらにそれができなければ、やはり先例に倣って特別委員会で、本当にそういう意味では予算委員会並み特別委員会並みのそういう慎重なる討議というものが当然あってしかるべきだ、こういうように思うわけでございます。幾ら財政理由からといえども、こういうような広範多岐にわたる、そして国民生活に、とりわけ弱者と言われる方々に大きな生活影響を及ぼすこの法案審議するということにつきまして、やはり本当に大蔵省はどれだけの権限を持ってやっているのかと言わざるを得ない、このように思っておるわけでございます。その点についてもう一度大蔵大臣の明確な答弁をいただきたいと思います。
  6. 竹下登

    竹下国務大臣 基本的なお話は先ほどお答えいたしましたが、これは種々議論をいたしました。私どもの方といたしましては、大蔵省設置法第三条第一項「国の行政事務及び事業を一体的に遂行する責任を負う」ということ、それから国の予算、決算及び会計に関する制度を統一すること、それから財政法第十八条、歳出等の見積もりを検討して必要な調整を行うこと、調整権限と俗に言っておるわけでございますが、そういうことを考えますと、私どもがその取りまとめに当たるわけでございますから、このような一括法として出すのが適当ではないかという判断の上に立ったわけであります。  ただ、私もちょうどかつての行革特例法の際特別委員の一人でございましたが、今行政府にありますので、審議あり方について国会でお決めになったということまでは、感想としてもやはり述べるべきではなかろうと思います。
  7. 上田卓三

    上田(卓)委員 各委員会審議権を拒否するものでもあり、国会のルールを無視するものである、我々はそう断罪せざるを得ないと思うわけでありまして、今後このような法案の取り扱いというものを厳に戒めなければならぬだろう、こういうふうに思うわけであります。  そこで、きのうのこともございます。この法案審議に当たりましては、その所管省である大蔵大臣は当然でございますが、総務庁長官あるいは厚生大臣自治大臣、この法案にかかわる重要な所管を受け持つ大臣がやはりまじめに出席して、そして連合審査も含むところの慎重審議に応じていただくということを、この一括法案を受け持った大蔵委員会の権威にかけてもしなければならぬだろうということを強く委員長に申し上げまして、法案中身についての質問に入りたいと思うわけでございます。  そこで、法案名称、「名は体をあらわす」という言葉もありますが、この中身を見ますと、当然補助金整理というものもあるわけでございますが、国庫負担金に類するものが圧倒的というか多数、予算上においても多くを占めているのではなかろうかと思うわけでございます。地方財政法によると、国庫支出金の中に、国の仕事でありながら実際地方にやっていただく、こういう形で国庫委託金というものがあるようでございます。それから地方財政法の十六条によりますと、国庫補助金というのがあります。これは、地方仕事だけれども、国が地方自治体財政上特別の必要があると認めたときの財政援助的な補助金と、国がその施策を行うため特別な必要があると認めるときの奨励的補助金、こういう形で国庫補助金というものがあるようでございます。その次に国庫負担金というものがありまして、これは国の仕事でもあると同時に地方仕事でもある、こういうことで、社会保障関係が多いわけでございますが、例えば生活保護費とか老人保護費などの部分については、法律によって全額または一部を国が負担する、補助金ではなしに負担金、こういうことになっておると思うのでございます。  そういう点で、何か国が市町村に補助をしておるんだ、それを整理するんだ、この法案名称だけ見るとそういうような印象を与えるのですけれども中身からいうと、補助金整理と言うよりも負担金整理と言った方が正しいんじゃないか。そういう意味では、この名称について、国の国庫負担金等整理及び合理化案と言った方が本当によくわかるんじゃないかと思うのでありますが、その点について大蔵大臣の見解を述べていただきたいと思います。
  8. 平澤貞昭

    平澤政府委員 国と地方の間のいわゆる財源の関係の問題におきまして、今委員指摘のように、負担金あるいは補助金、その他補給金とかいろいろな名称のものがあるわけでございます。その場合に、負担金の額の割合はかなり高いわけでございますけれども、従来から法令上は補助金等ということで、今私が申し上げたものをすべて一括してくくって定義しておりますので、今回もそのような法令上の従来の慣行に従いまして補助金等ということで、中に負担金その他も含めているということで名前に書き入れているわけでございます。
  9. 上田卓三

    上田(卓)委員 「名は体をあらわす」というように、この法律中身が、多くは国庫負担金削減部分でありますから、やはり一般的に新聞紙上等あるいは国民のなじみとしては補助金という形がなじみやすいのかもわかりませんが、補助金といいますと、先ほどの地方財政法趣旨から見ても、地方自治体がやる仕事に対して国が奨励的とか援助的にやる、こういうような形になっておるわけでありますから、そこにごまかしがあるんじゃないか。本来国が負担しなければならぬ部分削減するんだというのと、地方自治体に奨励的、援助的に特別に財政上で援助してあげているものを、今国が苦しいから減らすんだ、こういう形、私は根本的な趣旨の違いがあるんじゃないか、こういうように思いますので、その点大臣から一言。
  10. 竹下登

    竹下国務大臣 おっしゃいますように、過去からの歴史をひもといてみましても、上田さんのおっしゃっている指摘は、感覚的には間違っているとは私は思いません。特に、社会保障関係ということになりますと、憲法の条項に基づき、そして昭和二十一年にこの大議論が行われまして、社会保障は国の責任である、公共事業は言ってみれば地方責任において実行するものに対する国の補助である、こういうようなある意味における思想が整理されてきておることは事実であります。したがって、これについてもその後のいろいろな推移を見ますと、いわば国と地方との財政力の相違によって公共事業なんかは変化してきておるが、例えば社会保障は少なくとも昭和二十五年の新しい法律以来ずっと一貫してきている、こういう議論でございます。  しかしながら、このたびはいわば国庫負担金によらず補助金によらず、慣例上は法律等では補助金等、こういう言葉にずっと長い間なっております。したがって、ここのところもいろいろ議論をいたしまして、昭和二十一年あるいは二十二年の議論等も踏まえて、このたびは恒久的な結論の出なかったものがございます、それをいわゆる暫定として法律上お願いしておるということでありますので、上田さんが議論を展開なすっておるそういう経過というものは私どもも承知をいたしまして、国、地方役割分担等々の問題を議論し合って、今回はこのような形で御審議をいただくことになったという経過をたどったわけであります。
  11. 上田卓三

    上田(卓)委員 中身に入りますが、今回の一括法の、特に我々関心が深いのは、あなた方が説明すると高率補助率引き下げ、こういうことになるわけですけれども地方財政法の第十条から十条の三にわたるもの、これは国庫負担金引き下げという形の方が法律的には正しいことであります。慣例というのは勝手につくっているわけでございますから、正しい呼び方がいいのではなかろうか、こういうように思うわけであります。  そこで、厚生大臣、時間の関係もおありだと思うのですが、この中でやはり社会保障費の国の負担金の率の引き下げ、こういうことが非常に大きな問題ではないか、こういうように思うわけであります。特に生活保護法は一千五百十億円ですね。それから児童福祉法関係で五百四十二億円、それから義務教施設国庫負担法によると、これが六十四億円、あるいは公立養護学校特措法、これが十億円、あるいは身体障害者福祉法が七十億円、精神衛生法が七十四億円、結核予防法四十三億円、こういう形で社会保障関係を合わせますと、全体が五千四百八十八億円でありますが、その中で社会保障関係が二千五百五十億円ということで半分近くあるわけでございまして、担当大臣として――これははっきり申し上げて、生活保護法生活保護費などは、ある時期は十割国庫負担というような時期もあったと思うわけでございまして、本来、国庫負担金というものは国が大方見るんだ、こういう趣旨ではなかっただろうか、こういうふうに思うのですね。  そういう点で、厚生大臣として本当に国庫負担法あるいは憲法あるいは生活保護法というものを考えた場合、国の財政事情によって、財政が苦しいから負担率を減らすとかというようなことではなしに、どういう状況があろうと、こういう国庫負担に類する、特に社会保障関係については、やはり一定の基準があってしかるべきだと思うのですね。そのときの財政、国の運営方式によって負担率が減るというようなことは、私はあってはならないことだと思うのでありますが、その点について厚生大臣の明確なお答えをいただきたいと思います。
  12. 増岡博之

    増岡国務大臣 御指摘の御趣旨のように、私どもが今回の措置をとるに至りました経過におきましては、確かに福祉の後退があってはならないという観点からいろいろ折衝いたしたわけでございます。しかし、今回の措置は一応国と地方負担区分変更でございまして、地方自治体に対します財政措置もとられておることでございます。現実の給付水準には影響がないということに考えておるわけでございまして、現に生活保護費につきましても、生活扶助基準アップでありますとか、男女間の格差の解消でありますとか、ある程度の改善措置もいろいろ講じられておるところでございます。御理解をいただきたいと思うわけでございます。  なお、御指摘のように、国民生活を守るためには社会保障に必要な予算の確保が必要でございますので、今後とも最大限に努力をしてまいりたいと思います。
  13. 上田卓三

    上田(卓)委員 国と地方自治体負担が変わるだけであって、給付内容とかそういう点について影響はないんだ、あるいは逆に改善されておるのだ、こういうような趣旨のようでありますが、私が申し上げているのは、将来そういう社会保障関係受益者というのですか、そういう方々に対してやはり影響があると私は思っておるわけでありますが、その前提に、例えば国が十分の八を持っておった、それを一割カットで十分の七、こういうことでありますが、逆に地方自治体からいうと、今まで二割持っておったやつが今度三割になるわけでありますから、五割アップということになるわけですね。だからその負担だけ見ると、負担額をそのまま維持しようと思ったら、給付対象者を五割カットしなければならぬ、こういうようなことにも逆に――いや、三分の一のカットですか、というような形にならざるを得ないというようになるわけでありまして、給付内容等には直接今関係ないと言いながら、地方財政が非常に苦しくなってくると、やはりその分どうしても対象者を絞っていく、給付内容についても問題にしなければならぬということになってくるのじゃないのですか、大臣
  14. 増岡博之

    増岡国務大臣 生活保護の問題につきましては、これは私は福祉政策の中でも基本的に一番大切な事業であると考えております。したがいまして、負担区分変更等のいわゆる財政上の理由だけで、先生が今御指摘のようなことがもし仮にあるといたしましたならば大変でございますので、そのようなことがないように十分指導してまいりたいと思います。
  15. 上田卓三

    上田(卓)委員 私たちは、この臨時措置が一年限りでなく、恒久化されるのじゃなかろうかということを非常に懸念をいたしておるわけでありまして、昨年の十二月の大蔵厚生自治の三大臣の申し合わせでは、この引き下げは一年間の措置である、今後の補助率あり方については政府部内で検討し一年以内に結論を出す、こういうことになっておるようでございますが、厚生大臣のこのことに対する決意というのですか、そういうものをひとつ述べていただきたい、このように思います。
  16. 増岡博之

    増岡国務大臣 今回の措置は一年限りということでございまして、その間、国と地方との負担の問題につきまして、あるべき姿を三省間で協議をするということでございますので、先生指摘趣旨を踏まえて十分努力して、その結果にまちたいと思います。
  17. 上田卓三

    上田(卓)委員 大蔵大臣が今おられないということでございますから、これはこういうことのないようにしてもらわなければならぬと思いますし、また、主計局長が出てないわけですね。主計局次長ということでありますが、やはりこういうこともいかがなものであろうか、こういうように思います。  そういう点で、今厚生大臣決意もあったわけでございまして、一年限りということでありますが、大蔵省はこの臨時的な措置を突破口にして恒久化を図ろうとしているのじゃなかろうか、大蔵大臣の今国会での答弁を見ますと、どうしてもそういうような意向がうかがい取れるわけでございまして、五四年の補助金臨時法が一年延長、一年間ということがいつの間にか三十年間も延長され、そして今回それを、もう三十年間やってきたんだから恒久化するのだ、こういうような開き直りがあるわけでございます。そういう点で、これは行革特例法の一年延長というものも軌を一にするものだ、こういうように思うわけでございますが、あくまでもこれは一年限りの措置であるということで大蔵当局は考えておるのかどうか、明確に答弁をいただきたい、このように思います。
  18. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今回の措置を六十年度における暫定措置として法案で御提案申し上げている趣旨につきましては、この補助率の問題について累次にわたり臨調答申あるいは行革審の意見等々で、高い補助率についてはこれの引き下げを検討しろということをいただいているわけでございます。しかし、他方におきまして、その後、やはり補助金整理合理化、特に補助率引き下げ等を行う前提といたしまして国と地方役割分担、さらにはその費用負担あり方をあわせて十分検討する必要があるのではないかという御意見等も出てまいりましたので、これらの答申、御意見等を踏まえて今後さらに検討するということで、今回の措置は六十年度における暫定措置としたわけでございます。  したがいまして、委員の御質問の、それでは六十一年度以降という点につきましては、国、地方役割分担、費用負担見直し等々も含めて、そういう中で補助率の問題をどう考えていくかということを検討する必要があるわけでございますので、そういう検討を行って、その結果を踏まえて適切に対処していくということになろうかと思うわけでございます。
  19. 上田卓三

    上田(卓)委員 国それから地方自治体とのそういう関係についての見直しという場合、むだな補助金、特定団体とか利権に基づく、あるいは隠れた補助金と言われる租税特別措置法とか、そういうようないわゆる世間で言われているところの補助金見直しをしないで、本来国が主として責任を分担しておるところの、社会保障費を初めとするそういう国庫負担金にまでメスを加えていくということに大きな問題があるのではなかろうか、見直す内容が間違っているのではないか。  それからもう一つ、本来ならば国がする仕事で既に地方自治体が請け負ってやっている部分、実際は地方自治体が既にやっておる、それならもう地方自治体権限を移譲してはどうかというようなものもあるわけでございまして、全国知事会とか全国市長会とか、地方六団体などでは、現在機関委任事務が五百以上もある、そのうちの少なくとも百八十ぐらいは地方権限の移譲をすべきだ、こういうふうなことも言っていると思うのですね。こういうことこそ、国と地方とのそういう今までの関係についての見直しに類するものではないかと私は思うのですが、きょうは総務庁長官もお見えでございますので御答弁いただきたい、こういうふうに思います。
  20. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 行政改革をやる場合には、やはりその基本はお互いの守備範囲の見直し、つまり国、地方それから民間に任すべきもの、こういった基本の見直しに始まって、そしてそれの財政負担をそれではどういうふうにしていくか、こういう筋道にいくべきだろうと私は思いますね。第二臨調なり行革審の御答申の、そういったことを基本にしながら今日の補助金等の基本的な見直しをやるべきである、こういった御提言を受けながら、累次にわたる補助金等整理合理化を進めておるわけです。  その際に、やはり第一番に考えなければならぬのは、補助金については、補助役割が既に終わっておるではないか、あるいはまた零細な補助金で効率を上げてないではないか、あるいは既得権化してしまっておるではないかといったようなものは廃止なり縮小をする。残すべきものについては、機能分担を踏まえてどのような補助率が適当であろうか、こういうことを考えなければならぬと思います。と同時に、今上田さんおっしゃるように、補助金といわゆる負担金、これについては法律においても既に性格がやや異なっておりますから、その場合にも、これは見直しをすべき面はあると思いますけれども補助金とは多少原理原則を異にした立場においてやるべきであろう、こう思います。  こういったことがございまして、今回の法律案をまとめる段階においても、政府部内においても党内においてもいろいろな議論をしまして、今回の措置については、これは主として財政上の観点からとられたものである、こういうことでございますので、社会保障負担等については、この一年間で三省庁で十分そういった基本を踏まえながら議論をしていく、こういうことになっておるように私は承知しておるのです。いずれにいたしましても、補助金等整理合理化ということは、機能分担ということを踏まえながら今後も進めていかなければならない、かように考えておるわけでございます。     〔委員長退席、中川(秀)委員長代理着席〕
  21. 上田卓三

    上田(卓)委員 国と地方の機能分担とか役割分担見直しというものはぜひとも必要ではないか。しかし、その場合、一番大事なことは、地方団体に対して十分な財源手当てですか、そういうものがない、仕事だけを押しつけられるということがあってはならぬだろう、こういうように思っておるわけでございまして、そういう点で移譲すべきものは移譲する、そして財源手当てする、こういうことで、そういうものをこそ真っ先に手がけていただかなければならぬだろう、こういうように思っておるわけであります。  また同時に、むだな補助金、こういうものについて余り整理しないで、非常に大事な社会保障関係を含むところの、当然国が負担すべき国庫負担金、そういうものを見直していくということ、一般的見直しは何でもいいんだというような形で、大事なところを逆に改悪されていくということに対して、我々は絶対反対であるということを申し上げておきたい、こういうように思います。  次に、この法案の中でいわゆる行革特例法の一年延長。これは三年間の時限立法で五十九年度に赤字の脱却、それができないということでもう一年ということになっているのですが、この点について後藤田総務庁長官は、赤字脱却ということになりますと六十五年というようなことも、果たして六十五年にできるのかという問題もあるわけですから、三年の時限立法でやって、もう一年と言っておるけれども、ちょっと延ばすんじゃないかという疑いがあるわけでございますので、その点についてはっきりと答弁をしていただきたい、このように思います。
  22. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 先般のこの行革特例法、五十九年までの三年の時限立法ということで、我々としてもそのつもりで努力したわけでございますが、一年延ばさざるを得なくなったということはまことに遺憾なことである、かように考えております。今回の措置は主として財政上の措置からとられたのでございますが、いずれにいたしましても一年間ということで我々としてはやっていきたい、かように考えております。
  23. 上田卓三

    上田(卓)委員 もっといろいろ突っ込んだ話をしたいわけですけれども、時間の関係がありますので、すっと通り過ぎるような形になっているかもわかりませんが、他の同僚議員からもさらにあると思います。  そこで、このいわゆる高率補助金、我々は高率負担金――高率ということ自体、私、いいのかどうかというふうに思うわけでございまして、私は決して高率だと思っていないので、まだ低い国が一〇〇%見るべきだというふうに思っておるわけでありますが、この関係で、こういうことを大蔵省の文書では言っております。「なお、この引下げ措置の対象となる地方公共団体に対し、その事務・事業の執行及び財政運営に支障を生ずることのないよう財政金融上の措置を講ずるものとする。」こういうことですね。ここに「財政金融上の措置」という形で、この中身が一体何か、こういうことになるわけでありますが、要するに、地方財政計画土地方財源に不足が見込まれる五千八百億円、国の方の削減措置は四千四百八十億円ですが、地方自治体は実際は五千八百億円の不足が見込まれる、こういうことになるわけでありまして、これに対して交付金の特例加算が一千億円、こういうことでございます。この一千億円の交付金と言っても、その交付金の総額がふえるのじゃなしに、その分が食い込むわけですから、逆に地方自治体からいえば、その分一千億円減った、こういうふうにこれはとらまえられるべきであって、この特例加算一千億円を何か特別に追加したのだということではないわけでありますから、その点は財源手当てになってない、我々はそういうふうに思わざるを得ないのであります。  そういう点では、負担金として出す方が、市町村、府県にとってはもっとありがたいのではないか。何か交付金化をするという美名のもとで、実際土地方自治体を苦しめている、こう言わざるを得ないし、それからもう一つ、残りの四千八百億円については、建設地方債の増発を認める、こういうことになっておるようでございますけれども、これについても、この五千八百億円の中身について、二千億円ぐらいしか実際元利償還の時点での手当てが見込まれてないんじゃなかろうか、こういうふうに思うわけでありますが、この点について、大蔵当局はどのように考えていますか。
  24. 平澤貞昭

    平澤政府委員 まず第一の千億円の特例加算でございますけれども、これはいわゆる交付税は御存じのように三税の三二%になっておりますが、その額にプラスして千億円交付するということになっておりますから、これは現金として確実に交付されるということになります。  それから第二の点でございますが、委員が今おっしゃいましたように全部で五千八百億円、いわゆる財源不足額が結果的に出るわけでございます。このうち、今申し上げました特例加算で千億円引きますと、四千八百億円になるわけであります。その四千八百億円につきましては、これも先ほどおっしゃいましたように、建設地方債の発行で満席見るわけでございますが、そうしますと、その元利償還をどうするかというお話になるわけであります。これにつきましては、元利償還金については交付税で措置する、一般財源の面で措置するということになります。  そこで、さらにそれを砕いて申し上げますと、そのうち二千億円は将来二分の一国が交付税に加算して措置する。二千億円のうちの二分の一ということになっております。これは、例の六分の一の地域特例カットの際の財政金融上の措置と同じやり方でございます。  そうしますと、残りの分はどうなるかということでございますが、これにつきましては、不交付団体の部分が含まれているのと、それからさらにこの中には、公共事業につきまして、いわゆる補助率削減することによって国費が浮きます。その国費が追加的に事業費の増となる部分、これは予算をプラスして配るわけでございますから、通例の事業のプラスになるというのと同じ考え方に立つわけでございますので、それについては、先ほど申し上げたように、建設地方債の増発で賄うことで、十分に地方の財源面では問題がないのではないかというふうに考えて措置しておるということでございます。
  25. 上田卓三

    上田(卓)委員 交付金の特例加算一千億円、わかりました。また、建設地方債の二千億、こういうことで、これも元利償還の時点で処理しよう、こういうことのようでございますが、何をいいましてもやはりこの残りの二千八百億円が、今説明されましたけれども、どうしても財源手当てが十分見通しがつかない、実際そうならないのじゃないか、こういうことで不安を来しておるわけでございますので、完全なる財源手当てというものをいずれともやっていただきたい。  特に今回のこのカット法案地方自治体が大変苦しい状況にあるわけでございまして、例えば私、地元といいますか、全国で一番大きな影響のある大阪市などは百五十億円、それから東大阪市で十四億六千万円、それから大阪府自身で百四億円、府下の全市町村全体で二百六十六億円、こういうことで、当面起債でごまかしても、結局負担増はいずれ返ってくる、こういうようなことでございまして、自治体によってその負担能力はやはりまちまちであろう、こういうように思います。全国の三千三百の地方公共団体のうち、公債負担率が二〇%の危険水準を超しているのが相当あるやに聞いておるわけでございます。また、生活保護の受給率の高い地域もあるわけでございまして、やはりそういう点で本当に地方自治体にしわ寄せがくる。国の方のそういう負担率を変える、あるいは見直しをするというだけで、国の今回の措置地方自治体が大変な迷惑をこうむっておる、こういうことでありますので、そういう点でやはり今のようなやり方じゃなしに、もっと抜本的に地方自治体の今の困難さを解決する、こういう方策について大蔵当局のもう一度の御答弁をいただきたい、このように思います。
  26. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今、委員のお話は、特に社会保障関係生活保護費関係でおっしゃっておられると思うわけでございますが、先ほど申し上げましたように、全体の地方財政対策の中で、地方負担の増については十分の措置をとっているわけでございますけれども、さらに生活保護費関係では、地方団体によっていろいろ実情に差があるということも十分我々としては念頭にございまして、そういうことで先般の予算編成に当たりましては、特に生活保護費については激変緩和措置として、新たに生活保護臨時財政調整補助金というものを二百億円計上しております。この二百億円につきましては、生活保護制度の円滑適正な運用が確保できるように、配分について現在厚生省でいろいろ検討しておりますので、そういう意味では政府としてもきめ細かい配慮を加えているということでございます。
  27. 上田卓三

    上田(卓)委員 要するに、地方自治体負担が絶対かからない、こういうことにならなければならぬわけであります。特に補助金の廃止とか、この場合は一般財源化するんだ、こういうことであります。また補助金交付金化、こういうものもあるわけでありますが、歴史的なそういう役割を終えたものとか、あるいは地方の事務に定着したものを整理して、地方自治体の自主性を拡大しながら見直しが進められるということであればいいわけでありますが、実際そうじゃなしに、一般財源化をするということで、国税三税の三二%が地方交付税である、その地方交付税の全体の枠が広がらないで、今までは補助であった部分が一般財源化される、交付金に切りかえるということ。  こういうことになりますと、先ほど特例加算の場合はわかりましたが、今私が申し上げている部分については、補助金部分カットされたけれども、その部分は別に特例加算されているということじゃなしに、結局他の一般交付税の部分をその部分が占めてしまうわけでありますから、他の部分が減らされる、こういうことになります。また同時に、例えば今回の一括法案で余り影響を受けない地方自治体もあろうと思うのですけれども、その自治体も、結局全体の交付金の中でその部分が占められることになって、しわ寄せを受けるというようなことも大いにあるわけでありますから、その点についてどのように考えておられますか。
  28. 平澤貞昭

    平澤政府委員 六十年度の地方財政全体の状況につきましては、いわゆる地方財政計画というものを策定して見るわけであります。そのときに、今回の補助率引き下げ等措置を行わない場合には、六十年度の地方財政は全体としてほぼ収支とんとんになるということが見込まれたわけであります。そして、先ほど来御議論がございますように、今回の措置を行うことによって地方負担が五千八百億円ふえることになりますから、ちょうど地方財政全体として五千八百億円が財源不足額になるというふうに見込まれたわけでございます。そして、その五千八百億円について、先ほども申し上げましたように、まず千億円を地方交付税を増加して一般会計に乗せて出す、残りの四千八百億円については先ほど来申し上げましたような財源措置をとって、結果として地方財政全体としては財政運営に支障がないように措置した、こういうことでございます。したがいまして、交付税の千億円については……(上田(卓)委員「それを聞いているんじゃない、補助金の廃止と補助金交付金化の問題」と呼ぶ)はい。  そして次に、その補助金の廃止及び交付金化につきましては、これは今回の法案の中にも、先ほど中身が五つあるとおっしゃった一と二でございますように、いろいろ行っているわけであります。それに対する地方財政面での措置は、先ほど申し上げた全体の地方財政の収支の中で遺漏なきように見ているということでございますので、財政運営上は問題がないというふうに考えておるわけでございます。
  29. 上田卓三

    上田(卓)委員 そんなことはないでしょう。あなた方が言っているいわゆる高率補助の問題については、五千八百億円については云々ということで説明があったわけですが、先ほど申し上げたように、補助金の廃止というようなこと、それから補助金交付金化、これは定額ですか、という形ですが、これについても、例えばいろいろの予算がふえていくという場合に、率であればそれに見合って率でふえていく。定額ということになれば、予算の全体が上がっても定額で抑えられるということになりますから、率でいうと下がってしまうというようなこともあるわけであります。  そういう点で、私が申し上げているように、ひもつきの補助金よりも自主財源として、よりフリーハンドなそういう一般財源化がいいというように言われておりますが、その裏では、結局タコが自分の足を食べるような形で、全体の交付金の額が決まっているわけですから、自然増によってことしは予算ではふえているということはあるにしても、これはもともと地方自治体の取り分であります。その中の使い道なんですから、その点が一つ大きな問題があるのじゃないか、こういうふうに思っております。  特に補助金の廃止の場合、文部省の方もおられると思うのですけれども、義務教育費のうちの教職員の旅費及び教材費の補助の一般財源化、こういうことであります。これだけじゃありませんが、こういうものは結局調整財源になってしまうということで、結局ほかに流用されて、実際旅費とか教材費に回されない。回さなくても、これは地方自治体の独自性なんだというような形で、現実にここらあたりが締め上げられてしまうということは大いにあり得ることではないか、私はこういうように思います。  また、補助金交付金化についても、補助金の廃止の場合と違って、使い道がさらに限定されるといいますか、そうしうものがあるにしても、やはりこれについても実際減らされる、その目的に使われておっても全額は使われないというようなことになるのではなかろうか、こういうように思うのでありますが、その点についてはどのようにお答えいただけますか。
  30. 土田栄作

    ○土田政府委員 補助金の廃止に伴います地方団体に対する財政措置の問題でございますけれども、マクロ計算、全体の計算といたしましては、地方財政計画の中で、その分で過不足がどれだけあるかという計算をいたしまして、もし足りない分がありますれば、交付税なり地方債というもので手当てをして、収支均衡を保つというふうにいたしているわけでございます。  それから、個別の団体ごとの財政措置の問題でございますけれども、これはあるべき財政需要ということで基準財政需要額を普通交付税で計算いたしまして、それと基準財政収入額の差というものを普通交付税で補てんするということで、交付団体に対する財政措置を行っているわけでございますけれども、その場合、補助金の廃止分というのは、基準財政需要額をふやすということ、増額算入するということで対応いたしております。  それから、ただいま御質問のありました族費でございます。これはたしか単価は、普通の交付団体は五万八千八百円くらいの単価であろうと思います。世に交付税単価という言葉がございますけれども、各県はこの交付税単価を参考にいたしまして予算を組んでおりますので、これにつきまして、補助金が廃止されるということに伴いましてその分が減るとかという状態は生じてこないと思いますけれども、なおかつよく実態を調べまして指導してまいりたい、このように考えております。
  31. 上田卓三

    上田(卓)委員 今の出張旅費、一人五万八千八百円。しかし、これ、実際はそれ以上要っているわけですね。そういうことだけじゃなしに、この二分の一の国庫負担金が廃止される、こういうことでありますから大変だと思うのですね。それだけでなしに、これが一里塚であって、やはり義務教育費の国庫負担制度のさらに改悪があるのではないかということで心配しておるわけでございまして、文部省の方お見えですか。答えてください。
  32. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 お答えいたします。  義務教育費の国庫負担制度、先生御案内のように明治二十九年以来という大変古い歴史を持った制度でございますが、沿革的に見ましても、金目その他の実態状況から申しましても、教職員の給与費関係のものがその中核を占めておるということになるわけでございまして、ただいま御指摘の旅費と教材費は、戦後、昭和二十年代から三十年代にかけて新たに取り入れられたものでございますけれども、当時の地方財政事情が大変苦しかった、あるいは父兄負担にそれが転嫁されるというような状況もございましたので、こういう問題を解決したいということでやってまいったものでございまして、現在ではかなりこれは実態的に地方公共団体で必要な額を計上するという措置が定着したというようなことで今回のような措置を講じたわけでございまして、文部省といたしましては、そういうような過去の経緯から申しましても、義務教育費国庫負担制度の基本となる部分につきましては、今後ともこれを堅持していくという姿勢で対応したいと思っております。
  33. 上田卓三

    上田(卓)委員 この法案審議に対して、私は三時間の要求をいたしておるわけでございますが、一時間経過したということで、きょうはこのぐらいにしておきたいと思いますが、いずれにいたしましても、やはり今回の一括法案によって地方自治体、ひいてはそういう対象者に対して甚大な影響を及ぼす、こういうことで私たちはこの法案に絶対反対である、こういうことを申し述べまして、私の質問を終わりたい、このように思います。
  34. 中川秀直

    中川(秀)委員長代理 渋沢利久君。
  35. 渋沢利久

    ○渋沢委員 私も上田委員同様三時間程度の質問の要求を持っておりますが、きょうはとりあえず、おおむねお昼近くまで時間をいただきまして若干のお尋ねをしたいと思います。特に大蔵大臣厚生大臣に質問をしたい点が多うございますが、きょうは何かまだ御出席がおくれているということでございます。せっかくおいでいただいた後藤田長官、行革的な視点で、本法案との絡みでお尋ねをしながら質疑を進めていきたいというふうに思います。  まず、この法案中身、幾つかの内容がございますけれども、特にどうにもわからないのは高率補助率引き下げ部分であります。補助金を廃止していく、恒久的にそういう処置をとっていくという部分については、それはそれなりに理解ができるわけでございますけれども、今現に生きている事業、必要と認められている事業について、一律にこの補助率を下げるという思想がよくわからないわけであります。質問には、ようわかっておってする質問と、本当にわからなくてする質問がございますが、私も幾ら考えてもこの思想がよくわからないわけで、それでお尋ねしないわけにはいきません。その補助率など、予算というものの中には、減額、増額いずれであれ、それはそれぞれ正当な減額の理由があります。増額の理由があります。目的があって理由があるのです。すべてそうだと思います。ですから、一応改めてお尋ねいたしましょう。  例えば厚生省。大臣にまたお尋ねしますけれども厚生省関連の十一法、これらのそれぞれ国が補助率を下げる理由目的というものは何なのか。それはすべて、減額、増額、予算処置の場合、明確な理由目的がなければならぬわけであります。臨調も、その答申の言っておるところは、むだなものは削れ、そしてむだな仕事はやめなさい。結果として財政縮減に寄与するということは、これは財政論としてあるかもしれませんが、根本は、行革臨調後藤田本部長的な役割で指揮をとっておられるが、まさにそういうことに尽きると思うのであります。  まず厚生省から伺いましょうか。あなたの関連の事業の中で十一法、それぞれ一律に国の補助を減額するというその事業約な理由、根拠、目的、何なのか、まずそこからお尋ねをしていきたいと思うのです。     〔中川(秀)委員長代理退席、熊川委員長代理着席〕
  36. 長門保明

    ○長門政府委員 お答え申し上げます。  私ども所管しております補助金補助率削減につきまして、これは厚生省固有の発想でこれを削減するというわけではございませんで、これは行革審等の答申に基づきまして、各省が足並みをそろえまして補助率二分の一を超える高率の補助金につきまして原則一割の補助率引き下げを行うという方針にのっとりまして、私どももそれに該当する補助金につきまして補助率引き下げを行った次第でございます。
  37. 渋沢利久

    ○渋沢委員 そんなことを聞いているのじゃないのです。あなたたちだけがやっていると言っているわけじゃないのです。例えばあなたの省は、いずれにせよこのような処置をとった理由は何なのか、事業的にその削減をする、国の補助を減らす理由があるのか、そういう条件や事情があるのか、ないのか、ないのならなぜお減らしになるのか、その理由は何なのかということを伺っているわけです。
  38. 長門保明

    ○長門政府委員 先ほども申し上げましたように、これは今日の財政事情下において、財政事情の現状を踏まえまして各省足並みをそろえて行うということで、私どもも同調した次第でございます。
  39. 渋沢利久

    ○渋沢委員 各省が足並みをそろえるから減らすのだなどということは、国の責任事業としてやってきた高率の国庫補助削減理由に、あなたなりますか。そんな話にならぬ答弁をしてはいけませんよ。各省がおやりになるから、その音頭でよいしょと一緒にやっているだけでございます、そういう話はないでしょう。そんなことを聞いているのじゃないのですよ。
  40. 長門保明

    ○長門政府委員 やはり厚生省も政府の一員でございますので、政府としての統一方針に従うということでございますが、その際に、私ども非常に気にいたしておりますのが二点ございまして、一つは、これによりまして福祉の水準を落とすというふうなことがあってはならないということでございます。これは維持できた、物によりましては何がしかの改善を行っているものもございます。これが第一点。それから、これによりまして地方財政の方に御迷惑をおかけすることがあってはならぬということでございますが、これは地方財政対策の方で所要の手当てをされるということでございますので、私どもも政府全体の方針に足並みをそろえまして、これに従ったわけでございます。
  41. 渋沢利久

    ○渋沢委員 政府全体の方針にというなら、これは後藤田さん、あなたは今の課題についてはお答えいただけますか。後藤田さん、これは私の言葉じゃないのですが、こういう言葉をちょっと申し上げます。あなたの意見を聞きたいのです、行革的な視点で一体どうお受けとめになるか。補助金等の総額の抑制を図るにあたっては、事務事業ごとの効果、重要度等を十分勘案して必要な補助金については地方団体の所要額について確保を図る一方、事務事業として緊要度等が劣るものはその事務事業自体を廃止縮小した上で補助金等の抑制を図るべきである。 一律的にどの補助金縮減して薄まきをするといったその場しのぎの安易な対応は厳に排除されるべきである。非常にすかっとした文章ですね。私読んで、ああこれは短い言葉だけれども、核心に触れた、行革というものの観点から見ての補助金の対応の仕方が非常に整理された言葉だと思って、これは自分の言葉じゃないんですが、切り取って申し上げたわけです。今の文面のこの考え方です。これをどうお考えですか。
  42. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 補助金整理合理化、それをやる場合に基本的な考え方はどうだ、こういうことでございます。今お読みになったのは、本筋的な物の考え方であろう、私はかように考えます。
  43. 渋沢利久

    ○渋沢委員 あなたは賛意を示されるんですね。それはそうだと思います。この論理に異論を差し挟む者はなかろうと私は思うのですね。私は特に厚生省に、あなたのところはどうして、理由があるんでしょうと聞いたら、いや、とにかく政府が政府としてよいしょと、こうやろうというからやっているんです、こういうまあひどいお答えだったから、政府を代表して物を言っていただけるのなら、ここにお座りになっているのはあなたしかいないと思ってあなたにお尋ねをして、それを受けて、今私が申し上げたことにあなたも賛意を示した。これは当然のことだ。中曽根さんがお答えになっても、それはおっしゃるとおりです、こうおっしゃると思います。しかし、実際に出てきた法案は、後藤田さん、これはちょっと違うんじゃないですか。今あなたがそのとおりだとおっしゃった、その思想と物の考え方と全く相反するものが、ここで言うところの、まさに「一律的にどの補助金縮減して」というような扱い方は排除されなければならないと言われているそのものがこの法案じゃないんでしょうか。  ですから、常識的に考えて、ある事業については廃止、ゼロ、ここに出てきますね、結構です。それから、ある事業については国の負担割合を、八割であったものを今度は七割にするということもあるかもしれない。二割下げるということもあるかもしれないですね。あるいはここにもあるように、緊急度等によって「事務事業自体を廃止縮小」。あるいは逆に増額して、所要額について確保を図る、つまり必要なものをふやすということもある。トータルにおいて一割国の補助金の支出が減ったということは、結果論としてあるかもしれないけれども、行政改革の視点に立ては、これはまさにあなたもお認めになったように、この思想でやらなきゃならないのですね。ここに出ているのは全く違うじゃないですか。あなたはこの趣旨に賛成だと言っておきながら、まるでその性質を異にするような法律案を出して審議をする、こういうことですから、これはおこがましい話じゃないですか。  いま一度、なぜあなたもお認めになった思想と全く相反する一律カットなどという法案をお出しになったのですか、その理由を篤と御説明願いたい。
  44. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 私は、補助金等削減は先ほど言ったような基本の考え方が適切である、こう思うのですが、さらに一つお考えいただきたいと思うのは、国全体の現在の統治の組織、これは国それから地方それぞれが、現在の組織というのは絡み合って行政というものが行われておる。そこは機能の分担を背景にしてそうなっておる。それについて、それならば国がその際の財政負担はどの程度やるのか、地方がどの程度の負担をやるのか、こういうことで今日の組織が決まっておるわけですね。  そこで、その割合を決める際には、そのときどきの財源といいますか税源とでもいいますか、それらを基本にしながら一応の割合が決まっておると私は思います。それで時には、私も長い間地方行政をやりましたが、地方が非常に苦しいときには、最初に決まっておったときでも、それじゃやはり国がこれだけ負担をしようといったようなことで割合が上がっていく。同時にまた、国と地方と比べて、双方苦しいにしろ、苦しい度合いというのはそれぞれ違いますから、その際に比較論として、国が窮屈であって地方が豊かであるというときには、これはまた地方の方にももう少し荷物を担いてくれという時期も私はあると思いますね。したがって、一定の決まった負担の割合、補助の率というものは別段固定化したものではなかろう。これはそのときどきの状況に応じてこの措置をすべきものであろう、こう私は考えるのです。  そこで、今日の補助金等の制度について、先ほど御質問にありまして私もそのとおりだと言ったのですが、ともかく同化してしまった事業であるとかは一般財源化したらいいではないかとか、あるいはまた、今行政改革をやっているときに、人件費の補助が出ていますね。そうすると、その人間を地方は減らしたいと思っても、補助金が出ているから減らされない。ならばその補助金はやめたらどうだ。これは大きく見れば行政改革になるんだというようなこともあろうと思いますね。  こういう点についての第二臨調なり行革審からの意見というものが出ておる。それと同時に、今日の高率補助というもの、これは第二臨調としてはいろいろ議論の結果、先ほど言ったような大きな観点に立って見直しをすべき時期が来ておるのではないか、こういう御答申があるわけですね。だから、そういう答申を受けて今回の措置、もちろん主としては、先ほど言ったような財政事情というものがお互いの背景になって高率補助見直しをしなさい、それに応じて政府としてはやりましょう、こういうことで今回の措置が出ているわけですから、高率補助の一律カットがそもそもいけないんだといったことは、ちょっと私はその点は理解がしがたい。やはりそこらは、今日の財政事情から見て、それ相応の措置をするということは一向に差し支えないことであろう、私はかように考えておるわけでございます。
  45. 渋沢利久

    ○渋沢委員 今のあなたの答弁の中にもやはり問題が幾つかある。地方財政が豊かになってきたから、国と地方との財政事情によって変わるものだ、それがまるで主たる理由のようにおっしゃる。これは国の補助金といいましても、先ほど上田委員も言われたように分担金と表現するのが適切なものが多い。むしろ補助的な、恩恵的な、つけてやるという式の補助金、いわゆる補助金補助金もあるけれども、本来国が負うべきものという、あるいは国と他の団体との間の責任区分を財政的に明確にするという意味で分担というものを明示しておる分担金的な性格のもの。高率補助金なんというものは、おおむね分担金といっていいような、負担金といっていいような、そういう性質の補助金ですね。そういう事業の内容の性格とか国が持っている立法趣旨とかいうことから離れて、ただときどきの国と地方財政バランスだけで、この補助金負担割合がいろいろ動くなんという性質のものじゃないんじゃないでしょうか。  そういう要素もある。時によっては、これはフィフティー・フィフティーで国と地方負担すべき事業だ、しかし事の経緯からいって国の負担がやや高いものを、地方財政がよくなったからその部分について事業の割合を若干変えるということはあるでしょう。そのこと自体は否定しませんよ。しかし、一律というか、押しなべてというところに問題がありはしないか。あなたが今おっしゃった、その臨調答申の「見直し」というのは、みそもくそも一律に切るということを言っているんじゃないのですよ。制度、仕組み、事業の持っている事業効果というものを厳しく点検をして、不必要なものは整理しなさいと言っておる。これは臨調の大精神でしょう。そこから考えたら、単に地方と国とのそのときどきの、二年たてば、三年たてば変わるかもしれない財政事情で、法律で定めた国の負担割合が簡単に動く、また変わるというようなことがあっていいんですか。あなたの趣旨で言うと、それはいいんじゃないですか、こうおっしゃる。いいんですか。  私どもが問いたいのは、生活保護費影響ないなんて言っていますが、そんなことはありませんよ。この社会福祉社会保障事業についても一割、新国際空港の補助、これは何に使うかよく知りませんが、これも一割、この発想がわからないのですよ。臨調はこういうことを言っているのですか。違うんじゃないですか。一割カットがおかしくないという理由がどこにあるのですか。先ほど私が申し上げた趣旨からいえば、ますますおかしいのですよ。これはやはり理由になりませんね、後藤田さん。いかがですか。地方との事情で年じゅう変わるものなんですか。負担金の性質について、区分について、そういうものだと政府を代表してあなたはおっしゃっていいんですか。
  46. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 この点は先ほど上田さんにお答えしましたように、いわゆる補助金負担金、これは若干性質が違います。そこらは、この案を提出するまで、政府部内でも、また政府・与党の間でもいろいろ議論があったわけでございます。しかし、今回の措置は主として財政上の理由から一割カットということを政府としては決め、同時に、負担金の問題についてはいろいろございますから、三省庁間で一年の間に議論をするということになっているわけです。今あなたのおっしゃったようなことも一つ理由として、そういう主張をする人はたくさんおるわけですから、そこらを頭に置きながら一年間検討しよう。私は別段、年がら年じゅう変えていいなんて言っているわけじゃないのですよ。しかしながら同時に、これは固定化したものではない。ここらはそのときどきの事情で真剣に検討して、改正すべきものは改正したって、これは差し支えないであろう、私はかように申し上げておるわけでございます。
  47. 渋沢利久

    ○渋沢委員 それは納得できる答弁にはなっておりません。聞きたいことがいろいろあるので、余りここだけで物を言っているわけにもいかないのですが、とにかく金の話が先に行って仕事が後からついて、これは逆さまだということですね。この思想はやはりおかしいですよ。  ちなみに、先ほど私が読んだ文章、あなたも、それはそのとおりだとおっしゃったのは、これは自治省の役人さんの論文ですね。これが常識なんですよ、何省であろうと。私は社会党の機関紙から抜いてきたんじゃないです。自治省の重要な仕事をしておられるこの人が特殊な意見を吐いておるというんじゃなしに、これが常識なんだ。ここから言えば、こんな一律カットなんということはあってはならないんですよ、臨調の立場から言えば。やはり事業の精査が先なんですよ。それを減額のための減額、目的は何だ、減額のため、それ以外にない。そんなものはないでしょう。これはまさにあなたがやっておられる中曽根内閣の一枚看板である行革、臨調行革の答申や精神に反することじゃないですか、まさにこの法案は。財政的に言えばやってもいいことだ、とんでもないこと言っちゃいけないですよ。そんなことじゃないでしょう。  先ほど上田委員からいろいろお尋ねがございましたように、地方への財政区分の転嫁については、財政金融上の措置を講じて万全を期してある、そう言っていますね、この政府からいただいた文書によると。「地方財源に不足が見込まれる約五千八百億円に対し、」云々、「この引下げ措置の対象となる地方公共団体に対し、その事務・事業の執行及び財政運営に支障を生ずることのないよう財政金融上の措置を講ずるものとする。」最後に、「今回の引下げ措置によって地方財政の健全化が損われることはない。」こう断定的な歯切れのいい文章で、地方転嫁への影響が出ない、こう説明をしているわけであります。  これは大蔵大臣に尋ねたいところですけれども大蔵省言葉はやはり正確に読み取らなければなりませんし、説明していただかなければなりません。これらの措置によって、転嫁による財政困難に万全の措置がとれる、全く何の影響もない、こう言い切れるんですか。
  48. 平澤貞昭

    平澤政府委員 先ほど上田委員の御質問にもございましたが、この補助金等整理合理化に伴う地方財政への影響につきましては、政府としては所要の地方財政対策を講じ、地方財政の円滑な運営に支障を生じないようあらゆる措置をとっておるということでございます。
  49. 渋沢利久

    ○渋沢委員 あらゆる措置をとっているなんということはここに書いてあるんだよ。そのことを読んでくれと言ったんじゃなくて、今回の引き下げ措置によって地方財政の健全化が全く財政的に損われることはない、こう言い切れるんですかと聞いているんです。
  50. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今の御質問でございますが、地方団体の数は多々あるわけでございますので、その中では財政上どういう効果、影響を及ぼすかということまで、我々としては今の段階で一つ一つ予想できないわけでございます。しかし全体といたしましては、先ほど来申し上げておりますように、地方財政の運営に支障がないよう措置をとっているということでございます。
  51. 渋沢利久

    ○渋沢委員 個々の問題によってはいろいろ経過も出てきて、それは心配がないとは言い切れないけれどもと、そこが問題なんじゃないですか。今地方団体が危惧しているものも、あるいは役所の事業を通じて恩恵を受けるさまざまな階層の人たちも、そこを危惧しているんじゃないですか。野党も一番それを問題にしているんじゃないですか。あなた方は党利党略でこの問題が扱われていると思ったら大間違いですよ。先ほど意見もあったように、特別委員会をつくれとか、ばらばらに分けて、委員会で専門の視点でやってもらうのが本筋じゃないかと言っているのは、このことの与える影響国民的な影響国民生活への影響が大きい課題だから、それは所管委員会でそれぞれ精査して審査をする、そういうことが大事だと我々は考えて、それが不可能ならせめて特別委員会ということを野党が要求して、食い下がってきたんでしょう。何も邪魔して延ばすために言っているんじゃないですよ。大蔵委員会厚生行政も建設行政も地方財政の問題も、その諸君にかわって全部やるというのは、これは大変な負担です。十分にその責任を果たせるとはだれも思えない。これはやはり、せめてこういう機関が必要だということを野党はみんな要求してきている。それは、その影響を考えている。地方自治体事業執行上出てくるであろう、想定されるさまざまな具体的なマイナスの影響を考えている。だから、その心配がないような手だてを、国会審議を通してやろうという判断でやっておるんです。それを、あなたも良識があれば、こんな簡単な一言で言い切れるものではない。  おっしゃったように、事を進めていく過程では、個別的にはさまざまな不安がないとは言い切れない、こう言わざるを得ないのです。正直な話、そのとおりだと思うんです。じゃ、ここで言っていることと違うじゃないですか。ここでは、財政金融上の措置があって、地方へ転嫁するけれども、この法律そのものは、なるほど国から地方へ、八、二を七、三にするという転嫁だけれども、そのことによって出てくる負担割合が多くなった地方のマイナスは、このとおり財政金融上の措置で万全を期してやります、何ら健全な地方団体の運営に支障がありませんと、こう言う。普通なら、そう努力をするとかおっしゃるんだけれども、これにはもうだれが見ても、ああこれは心配はないと思わしめるような文章で表現されておられるわけであります。だから、それならば尋ねる。具体的に何らの影響がない、こう言い切れるんなら、それを具体的におっしゃっていただきたい。
  52. 平澤貞昭

    平澤政府委員 先ほども答弁申し上げましたように、地方財政への影響、これをなくするようにあらゆる措置をとっているわけでございます。それは仕組みとして、そういう措置を我々は考えて、御提案申し上げているわけでございます。したがいまして、今後予算が成立し、あるいは法案が成立した後、具体的な執行に当たっては、これは各省庁自治省も含めましてでございますけれども、この場で御議論ございましたようなことを十分念頭に置いて、個々の地方団体においても、財政上困難な状態にならないように、あらゆる措置をとっていくということでございます。そういう措置をとれるような仕組みは、我々としては今回御提案申し上げているということでございます。
  53. 渋沢利久

    ○渋沢委員 それは大部分を例えば交付税で補う、補てんするというなら、ちょっとこういう言い方もわかるのですよ。借金でやれというわけです。それもちゃんと始末をつけますよという説明はあるだろうけれども、だれが考えたって、現金で仕事をするのと借金で仕事をするのと同じで影響がありませんなんという話は、この世の中で通じないはずですよ。だから、これは財政影響がないというのは、もう時間でそれだけやっているわけにはいかないけれども上田さんも先ほどいろいろお尋ねになったけれども影響がないなどということを言い切れるものではないと思うんですよ。どうですか。
  54. 平澤貞昭

    平澤政府委員 先ほど自治省の方から答弁がございましたように、地方交付税法上この地方負担の増につきましては基準財政需要額に算入しております。したがいまして、全体としては個々の地方団体ごとに需要額と収入額の差額は交付税で交付を受けるわけでございますから、財政上運営に当たって問題がないように措置されているということでございます。
  55. 渋沢利久

    ○渋沢委員 自治省もお見えだと思うのですけれでも、日本の地方を代表する地方六団体というのが、この法案が出る過程でいろいろ政府や国会にも陳情があったと思うのですが、一番懸念しているのはその部分です。地方六団体というのは、例えば全国知事会あるいは全国市長会、全国町村会、おおむね自民党公認、推薦の知事さんが主流の地方。しかしそういう党派的なことを別にして、まさに地方自治体地方議会総ぐるみである地方六団体が強い懸念を表明している部分も、やはりこの財政的な地方への負担影響を懸念をしているわけです。  しかも、今回のことだけではなくて、さまざまな文書を読んでみますと、それは積年の地方への財政転嫁、しわ寄せというものに加えて、このような措置をとられることの懸念を強く表明しております。私も今ここに文書が、探せば下の方にあると思いますが、その正式な文書の中に、平たく言えば、こんなことをやられてはもう国と地方との相互信頼というのはなくなる、財政規律も乱れる、混乱が起きますよ、随分地方団体、六団体の陳情文書、意見書のたぐいでは荒っぽい、かなり強烈な、もうこれ以上我慢ができませんという表現で、強く国に対して、あるいは議会に対して、地方の不安、不満というものをぶっつけていると思うのです。ここまでくると、自治省もそういう立場だけでは物が言えぬのかどうか知らぬけれども地方団体がこのような措置で満足している、納得しているというふうにお考えですか。
  56. 土田栄作

    ○土田政府委員 まず、今回の問題に対応いたしました私どもの基本的な考え方について申し述べさせていただきたいと思います。  国庫補助負担率引き下げの問題につきましては、地方側、また自治省といたしましても、地方制度調査会の御答申にございますように、国庫補助金等の整理合理化は、国、地方を通ずる行財政の簡素合理化地方団体の自主性、自立性の尊重の観点から、まず、事務事業の廃止とか縮減ということを行うということを基本にいたしますとともに、本来地方の自主性にゆだねるべきものは一般財源に移行するということを基本として進めなければならないというふうに考えた次第でございます。したがいまして、国と地方との間の機能分担とか費用負担あり方というものを根本から見直すことをしないで、国庫補助負担割合を一律に引き下げるというようなことは行うべきでないというふうに考えていた次第でございます。  しかしながらこの問題につきましては、御存じのように、現在の危機的な国の財政事情理由として補助率の一律引き下げの正当性を主張なさいます国の財政当局側と地方の考え方とは大きな食い違いがあったことから、予算編成のぎりぎりの段階まで平行線ということにならざるを得なかったわけでございます。  しかし、このままでは国の予算編成そのものができなくなってしまうということから、昭和六十年度の国の予算編成の内示のぎりぎりの段階におきまして、まず一つは、今までの御議論にございましたような厚生大蔵自治大臣、三大臣の覚書によりまして、今回の補助負担率引き下げ昭和六十年度限りの暫定措置として行うということ。それから第二には、社会保障に関する国庫補助負担率あり方については、国と地方の間の役割分担、費用負担見直しなどとともに、政府部内において検討を進めまして、今後一年以内に結論を得るものとすること。それから第三に、補助負担率引き下げに係る地方負担の増加につきましては、万全の地方財政措置を国において講ずるということを前提としてこれを受け入れ、協力するということにいたした次第でございます。  そういうことでございまして、いわば予算を組みますためのやむを得ない措置であったというふうに私どもは存じております。     〔熊川委員長代理退席、熊谷委員長代理着席〕  それから財政措置の問題でございますが、マクロ的には五千八百億ということで地方財政計画上の対応をいたしておりますが、個別団体につきましては、地方交付税の算定を通じて対応するということになろうかと思います。そういう場合におきまして、今回の対応は、大蔵のペーパーでは、地方財政の健全性を損なうことがないと書いてございますけれども、そこまでは私どもとしては言えるかどうか自信がございません。私どもとしては、個々の地方団体の財政運営に支障を生ずることがないような措置というものはきちんとやってまいりたい、こういうふうに考えております。  現に四十七都道府県それから十指定都市というものは予算を組み終えまして、大体議会の御議決をいただくという段階になっていると思いますが、これらの団体からは、予算が組めなかったという報告は今のところ聞いておりません。それから、個別の団体につきましては、市町村の段階につきましてもまだ情報が入ってきておりませんけれども、これからいろいろ情報を集めまして、財政運営上困りますところにつきまして地方債の配分、あるいは厚生省にお願いいたしまして、今度の臨時の配分等を通じまして的確に対応いたし、個々の地方団体の財政運営に支障が生ずることがないような万全の措置をとってまいりたいと存じている次第でございます。
  57. 渋沢利久

    ○渋沢委員 自治省の立場で言えば、政府が出した法案であるにもかかわらず、全くこれは納得のできる法案中身ではない、しかし、予算編成に間に合わぬから、やむを得ず泣く泣くこれは同調したんだ、こういうお話です。一体こんな話がありますか。法案を出している政府、自治省が、これは本当に胸を張って説明できるものじゃありません、本来補助金の扱いは、先ほど私が指摘したようなああいう趣旨でやるべきものだ、そう言っているじゃありませんか。内容は、これは決して自治省としては賛成できる中身じゃない、こう言っている。しかし、予算編成に間に合わないから、やむを得ずこれは大臣レベルの関係大臣の協議で押し切られた、こういうことを言っておると思うのです。政府の態度、法律を出している政府がここまで違う。もう一つ違う。重要なところで違う。  私が大蔵省に聞いた。あなたは本当に五千八百億だ――僕は五千八百億という数字にも問題がある、きょうは時間がないから言わないけれども。三時間の要求からいうとまだありますから、いずれ改めて細かい質問をいたしますけれども、五千八百億という決め方にも私は問題があると思っている。仮にそこは別としても、五千八百億については地方財政の健全化に全く支障がないように処置ができている、こう大蔵省は文書を出し、そう説明するが、自治省としては、それは幾ら心臓が強くても、そこまでは言えませんと。これは正直な話、言えるはずがない、重大な懸念を持っているからです。そういう支障のないような努力をするというのが精いっぱいの答弁です。  これは後藤田さん、これだけ自治省と大蔵省が、この段階、法案国会審議に付する段階でも、ここまでニュアンスの違う受けとめ方をし合う、対応の違う法律案を出してきているということがまざまざとしている。醜態ですね、これは。本当に醜態。ここまでやらなければ、中曽根総理の一枚看板、臨調行革、「増税なき財政再建」はできないという状況を浮き彫りにさせているのですね。生活保護までひっぱたかなければ国はどうにもなりません、予算編成もできませんというような泣き言を言うようなところまで、我が臨調内閣、行革内閣は追い込まれているという姿を印象づけられますね。後藤田さん、これは何ともひどい話で、腹立たしい話でありますが、それじゃ先に少し進めましょう。  仮に今大蔵省が言うように、これは心配ない。だとしても、今まで私が質問をいたしましたことを整理してみると、仮に百歩譲って、五千八百億の地方の財源不足は十分支障のない処置がされているということで理解をいたしますと、結局この法案というのは何かというと、一つは国と地方を合わせた公的な支出、これは国家的な支出といいましょうか、公的な支出ですね。国と地方を分けるから区分がありますけれども、全体としてその総支出、公的支出は変わらない。変わらないのです。支出削減と言うけれども、それは国の財政帳簿の上で減額があるけれども、それが地方の帳簿に移ったということで、事業そのもの、制度そのもの、システムはさわらないわけですから。行革はそれをさわって金の調整を後からやれ、こう言っているのに、それはさわらないで一律カット、こっちの箱からこっちの箱へ転嫁ですから、役所の説明どおりで言えば、公的な総支出は変わらない、この法案は。そういうことなんですね。仕事の進め方も変わらない。公的な財政支出も変わらない。ただ、結局国の懐、財政帳簿から地方の懐勘定に負担を変えただけだ、そういう特徴的な法案だ、こう理解する以外にないんですね。率直に言えばそういうものですか、後藤田さん。
  58. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 行財政改革といえば、やはり最後は納税者の負担の軽減、あるいは負担の増加の抑制、これにつながらなければならぬ、これは本筋だろうと思います。  そういうことで、お尋ねの問題については、議論の過程においては、これは単なるツケ回しではないか、こういう議論地方団体、自治省の諸君もやはり一部言っておったと思います。しかし私は、先ほど申し上げましたように、それも一つの理屈である、しかしながら、国全体の統治機構ということを考えた場合に、お互いの負担なり何なりの割合というものは、そのときどきの状況によって――負担金は慎重にやらなければなりませんよ、一般の補助金とは性格が違いますから。しかし、それはやはり固定的に考えるべきものではないではないか。ならば、そこでこの問題について、私は大蔵省当局からも説明を聞き、自治省の財政局長からは何回も説明を聞いたわけでございます。  これで一体地方団体を納得させることができるのか。それから地方財政に支障はないのか。あるいはまた、おっしゃるように、個々の三千三百の団体の財政事情は違うよ、それに対する措置はどうするのだということを私はつぶさに説明を聞き、ともかく財政上の措置は今回それなりにとってもらうことになっております、同時にまた、本年度の地方税収の伸び、交付税の伸び、これは二けたになっていると思いますよ、そういう点を考えますと大体心配がないようにいたします、私は自治省当局からこういう説明を聞いたわけでございます。  しかしながら、同時にこの措置については、負担金の問題ですからいろいろな議論があります、そこで一年間検討します、こう言っているわけですから、政府部内にこの点についてとかくの議論があってこの法律案を出したということはありません。これは政府一体となって閣議で決定をして、自治省当局も納得の上で出したものである、かように御理解願いたいと思います。     〔熊谷委員長代理退席、委員長着席〕
  59. 渋沢利久

    ○渋沢委員 今までの質疑を通して明らかに私なりに理解することができたのは、これは今、後藤田長官にも聞いたんですが、後藤田さんは全く違うことを答えて出ていきましたけれども、要するに、今度の法律によって国と地方を合わせた公的な支出は変わらない。この高率補助率引き下げる分について事業も変わらない。ただ国の懐からその負担地方に移しただけだということが明らかになっているわけです。それが特徴である。それにはそれなりの理由があるというお話は言っておりましたけれども、要するに法案の性格としてそういうものであるという話であります。  大蔵大臣、今まで私が後藤田さん相手にお尋ねしたことを一言で言うと、臨調行革の答申が言っていることは、むだな事業はやめなさい、整理しなさい、見直しなさい。それは言っている。それを受けてと、この文章には書いてある。したがって、ある事業についてはこれを廃止し、カットする。必要に応じてはふやすものもある。一割減らすものも二割減らすものも出てくるかもしれない。本来そういうものでなければならないはずだ。一律カットという思想は間違っている。これは許せない。これはまさにツケ回しだ。国が地方財政負担を転嫁したにすぎない。こんなことを臨調答申のどこに書いてあるのか、こういうことなんであります。これはおさらいの意味で、まず大蔵大臣にぜひお尋ねをしておきたい。     〔委員長退席、熊谷委員長代理着席〕
  60. 竹下登

    竹下国務大臣 この一括法案の中で、なかんずく高率補助引き下げ、そして公共事業等で例を見ますならば、事業費は若干ながら結果としてふやしておる。そして社会保障等は、いわゆる末端の人々に対する措置としては従来と変わらない。もとより中身として、ベースアップ等に連動した上昇分は別といたしまして、そういう趣旨であるので、国の負担すべきものを地方負担に転嫁したではないか、だから予算の単純なつじつま合わせじゃないか、こういう御批判でありますが、予算というのはいずれにしてもつじつまが合わないことには予算にならないわけでございますけれども、その前提として、国と地方のいわゆる負担分任あるいは費用負担あり方、これをとことん議論をいたしてきたことは事実であります。  ただ、そういう議論を積み重ねてきたならば、公共事業等であるならば、従来もその都度都度の国と地方財政力に応じて多少の変化があった。が、社会保障ともなれば、一応昭和二十六年以来一定の水準で来ておる。それが一律という形のところには哲学がないじゃないか、こういう意味だろうと私も思うのであります。その哲学というのは、例えばこれは何割、これは何割と一つ一つ議論を積み重ねらるべき性格のものだ、基本的にそういう議論をすべきものだという基本認識は私にもございますが、この現下の厳しい状態の中で、その基本認識の上に立った将来のあり方というのは、一年かかってしっぽりと議論をしようではないか。今日はその哲学の上に立ったものを多少、八割が七割とか三分の二が六割とか、一つ一つが必ずしも一律とはなっていないにいたしましても、そういうふうな形で措置をしたということも事実でございます。したがって、そういう意味において基本的な議論をやれとおっしゃることに対しては、私どももその趣旨を体して、基本的な議論を一年かかってやらなければならぬということで、結果として暫定措置ということでお願いをすることになったという経過であります。
  61. 渋沢利久

    ○渋沢委員 その基本的な議論部分にもかかわることですからお尋ねをしておきたいと思うのでありますが、厚生大臣がお見えでありますので、大蔵委員会厚生大臣答弁を聞くというのも大変まれな機会でありますから、ぜひひとつお願いしたい。時間がありませんので、私も簡潔に尋ねるから、答弁も簡潔で要領を得た御答弁をまずお願いしておきたいのです。  特に私どもが今度の高率補助率引き下げについて関心を持たざるを得ないのは、やはり厚生省の所管の十一法律の関連であります。とりわけ、例えば改めて生活保護法を読んでみますと、この第一条で「この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。」と言っております。この法律は、日本国憲法の重みというものをずしりと踏まえた法律であるということが非常に明らかだと思うわけです。したがってこれは、先ほど上田委員の質問に関連して竹下大蔵大臣、さすがに、本来この種の社会保障、社会福祉的な事業についての国の明確な責任というものは、憲法に照らして明らかだという趣旨のお答えを言っておりましたけれども、この点は言うまでもないことだと思うのであります。これは強いて言えば、一〇〇%国が責任を持つべきだと言っていいほどの、国の責任ということで言えば責任の重い事業であるという位置づけをこの法律はしているというふうに思うわけでありますが、いかがでしょうか。
  62. 増岡博之

    増岡国務大臣 御指摘のように、生活保護制度は最低生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とするものでありますから、国民の生存権を具体的に保障する最後のよりどころとして、極めて重要なものであると認識をいたしております。
  63. 渋沢利久

    ○渋沢委員 ですから、国の財政事情云々と言われましても、みだりにこの法律が定めた国の負担割合というものを動かす性質のもので本来ないというふうに思うのです。特に地方財政法の第十条には、「地方公共団体又は地方公共団体の機関が法令に基いて実施しなければならない事務であって、国と地方公共団体相互の利審に関係がある事務のうち、その円滑な運営を期するためには、なお、国が進んで経費を負担する必要がある左の各号の一に掲げるものについては、国が、その経費の全部又は一部を負担する。」と書いてある。ここで言う「全部又は一部」というのは法律用語で入れていますけれども、まさに「国が進んで経費を負担する必要がある左の各号」、この「進んで」という法律の文言は、これはどの法律にもやたらとあるものではないと心得るわけです。この意味は非常に重いと思うのです。これはまさに憲法の意を受けた、憲法二十五条の意を受けた生活保護法その他の諸法がありますけれども、それらの諸法の重み、国の負うべき責任の性質というものをこれほど明確に、鮮明に表現しているものはないと思うのです。「国が進んで経費を」と、そういうふうに受けとめるわけでありますが、これは厚生大臣いかがでしょう。
  64. 増岡博之

    増岡国務大臣 御指摘のようなことでございますので、私どもこの措置をとりますに当たりまして、実際の生活保護の水準が後退をすることがないようにということが中心として考えられたわけでございます。したがいまして、そういう観点から、従来から地方負担していただいておりましたものが、行革審等の御意見でこういうことになりまして、政府全体としての整理合理化の一環となったわけでございます。  そういう中でも、生活保護の問題は、個々の地方公共団体によっていろいろ事情が異なっております。そういう観点からその影響を考えた結果、生活保護臨時財政調整補助金を創設をすることにいたしました。これによりまして被保護者に対しましての影響が出ないように、今後も十分留意してまいりたいというふうに考えております。
  65. 渋沢利久

    ○渋沢委員 私は、このことで影響が出るとか出ないとかいうような議論は、実は大臣がおいでになる前に一時間近くやってきたことなので、そのことを尋ねたわけじゃなくて、生活保護法地方財政法憲法をにらみながらこの法律を考えると、まさに地方財政法十条が言うところの、これこれの事業については国が進んでその経費を負わなければならないものと特に法律に明文化して、しかも負担割合も政令に任せるのじゃない、法律で明文化しているというような処置をとっているこの一連の流れというのは、これはまさに国が全面的に責任を負うもの、つまりこの負担割合というようなものは本来みだりに動かしていいものではないということではないのかということをお尋ねをしたわけなんです。そのことについて厚生大臣、簡潔にその部分について、つまり財政処置がしてあるからいいとか悪いとかいう議論をしているんじゃないんです。この負担割合にさわることに問題があるんじゃないか、これは本来あってはならないことじゃないのか。これは地方財政法の問題ですから、自治大臣にも大蔵大臣にも、この一点でひとつ伺いたい。
  66. 増岡博之

    増岡国務大臣 御指摘のように、生活保護の問題は最後のよりどころでございますから、その扱い方につきましては十分慎重な配慮が必要であることは当然のことでございます。しかしながら、補助率そのものにつきましては、社会経済情勢の推移等によって、そのことを踏まえて考える必要もあろうかと思うわけでございまして、今回そのような立場からこのような措置に同意をいたしたわけでございますけれども、今後も御趣旨を踏まえて、生活保護事業につきましては十分な対策を講じてまいりたいと思います。
  67. 土田栄作

    ○土田政府委員 国庫負担金負担割合でございますけれども、これは軽々に動かすことができないという趣旨から法律で決まっているというふうに承知いたしております。ただ、絶対に動かせないということはないわけでございまして、社会経済情勢の変化等に伴いまして十分な議論をし、関係者の納得というものを得た上で動かすということは十分可能であろうと思いますけれども、軽々に動かすべきものではないというふうに存じている次第でございます。
  68. 竹下登

    竹下国務大臣 渋沢さんの立論の根拠を踏まえまして、この法律をつくるに当たって私どもも部内で議論をいたしました。これは蛇足でございますが、昭和二十一年、現行憲法が制定された折、そして二十二年、いわゆる生活保護。それまでは生活保護費とは言っておりませんが、地方と国とが五分五分であった。しかし、やはりこういう憲法の精神にのっとっていった場合に、これは見直すべきだ。その中で当時の、もうお亡くなりになりました安井誠一郎元東京都知事が厚生事務次官だったときの文献等を見てみますと、その中で、最初進駐車の間接統治下にある時代でございますから、したがってどうも財政当局は二億ぐらいを予定しておった。そうしたら、厚生省はやはり少なくとも八億ぐらいを予定しておった。ところが、占領軍から三十億という数字がいわば内示された。命令でございましょうか、当時でございますから。したがって、この議論がまたもとへ返りまして、されば八割二割というような議論がそこから展開して定着したというような経過もあるわけであります。  今地財法等の立場からの御説明もございましたが、したがって今日までそれが動かないで続いておったというのは、やはりそれなりの重みというものがあったからであろうと私も思います。それを見直していただこうというわけでございますから、私どもも本来は十分な議論をして決めるべきものだという議論と、いや、今日の現状から言えば、とりあえずは暫定措置として一年で、その間にきちんとした基本にかかわる議論をしようというような議論経過を経て、今日このような形でお願いをしておる。だから、私は、渋沢さんのおっしゃっている、本来十分の十であるべきであるという議論とは別に、いわば国の責任に非常な重みを感ずるものであるということは、私も認識は大きく変わってはいないというふうに思います。
  69. 渋沢利久

    ○渋沢委員 見直しということで言えば、それはそれなりの筋の通った話だと思うのです。ところが、一律でカットするという、ここが暫定的であっても問題だ、こういうことだと思うのです。これはもう大臣も認めざるを得ない。まさにこれはツケ回し、国から地方への財政上の転嫁という性質のものでしかないわけで、これははっきりしている。どうただしても、それ以外のものは出てこない。マイナスの結果をどう補てんするかしないか、それが十分か不十分かというのは、これはまあいろいろ議論のあるところ。そこを離れて、その問題じゃないんですね。性格として地方転嫁だということは明らかです。それは、竹下登さんが家の前に捨てたごみを、増岡さんか自治大臣の家の前へほうり出しただけの話なんです。まさに地方転嫁なんですよ。ですから、ここがやはり問題であるというふうに思うのです。  その転嫁については、これももう言うまでもありませんけれども、地財法の第二条の二項では、国は地方団体に負担を転嫁するような施策を行ってはならぬということを明確に言っておるわけです。「国は、地方財政の自主的な且つ健全な運営を助長することに努め、いやしくもその自律性をそこない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を行ってはならない。」と明確にこれを表現しておる。これは、先ほどの「進んで」などというような法律の文言に比べて、さらに明確な表現であります。自律性を損なう処置であることは間違いありませんが、これは議論が分かれるかもしれない。いや、それは自律性を損なわないように財政を手当てをしてやる、しかし、これが国の負担地方に転嫁するというものでしかないことは明らかです。これは地財法の違反じゃありませんか。これは自治大臣、いかがですか。(「定足数が足らぬ」と呼び、その他発言する者あり)
  70. 土田栄作

    ○土田政府委員 法律解釈の問題でございますので政府委員から答弁さしていただきますけれども、今回の措置が五千八万億という負担を転嫁したままで、つまり切りっ放しということであれば、まさに地方財政法の二条の違反になると思いますけれども、それに対します地方交付税及び地方債の措置をしたということによりまして必要な財源措置がされておりますので、地方財政法の二条の違反にはならないというふうに考えております。(「休憩」と呼び、その他発言する者、離席する者多し)
  71. 熊谷弘

    ○熊谷委員長代理 ちょっと待ってください。すぐ戻りますから、ちょっと待ってください。  速記をとめて。     〔速記中止〕     〔熊谷委員長代理退席、委員長着席〕
  72. 越智伊平

    越智委員長 速記をお願いします。  次に、宮地正介君。
  73. 宮地正介

    ○宮地委員 このたびの補助金削減一括法案、これは国民が大変に注目をし関心を持っている、今国会における重要法案一つであります。それだけに、当大蔵委員会に付託されたその責任とまた国民に対する義務、使命というものは大きいと思います。  しかし、きょうの午前中の審議、また当委員会の対応を見ておりますと、もう少し政府・与党、自民党の諸君もしっかりとこの審議に対しては対応してもらいたい。少なくとも、渋沢委員の質疑のときに二名の委員しかいない、こういうふざけた態度は改めていただきたいと、最初に強く要請をしておきたいと思います。  そういう中で、きょうは、大蔵大臣も参議院の予算委員会等の関係で、私の九十分の時間の中で頭に三十分だけ、こういう限られた時間でございますので、まず大蔵大臣に率直に質問をしてまいりたい、このように考える次第でございます。  まず、補助金削減一括法案、この問題について基本的な問題として、大蔵大臣は率直に言って、この法案審議するに当たりまして、私たちは国の今までの財政運営、約百三十三兆円に上る国債残高を抱えた財政危機、こういう中の財政運営、これは財政当局の財政運営の失政のツケ、これが補助金カットという手法によって地方公共団体にその負担を転嫁する、これはやはりだれが見ても、今回の法律案の内容を見ていけば明らかであろう。特に八〇年代後半は、これからは地方の時代というところにスポットを当てた、新しい時代に向けての対応をしていかなければならない。国はそういう点においてむしろ逆行する手法をとっているんではないか、このように私は率直に感じている次第でございますが、この点について竹下大蔵大臣はどのように考えておられるのか、まず所見を伺っておきたいと思います。
  74. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに、地方の時代という言葉が使われて時間もたってまいりました。で、この基本というのは、いわば経済であろうと、福祉であろうと、あるいは教育であろうと、すべて国が基本的に行政に対する考え方をまず決めて、それが地方の中にどう生かされていくか、まだ地方財政が充実していない間はこういうような傾向にあったと私は思うのであります。で、いわゆる国の持つ水準が、先進国の中でそれ相応な地位を占めてきたということになると、これからは本当に住民自治の原点に立つ地方自治というものが本当に住民に直結したサービスを提供するものであるので、そこにきめの細かい配慮が行われるべきであるというのが、地方の時代というものの考え方の基本であろうと私は思っております。その考え方は今でも当然持つべきものであって、言ってみれば公経済を支える国と地方は車の両輪でございますから、そのときの財政事情等を勘案して、それぞれの役割分担、費用負担あり方というものがそこに生じてくるというふうに私は思うわけであります。  したがって、大事なことは、それによって対象になる方々のサービスそのものが低下するということがあってはならぬということをまず念頭に置きながら、まさに役割分担と費用負担あり方ということからして位置づけた法律が、今御審議をいただいておる、いわゆる一括法ということになろうというふうに基本的な認識を持っておるわけであります。
  75. 宮地正介

    ○宮地委員 特に、先ほど来もお話が出ておりましたが、今回のこの補助金削減一括法案、約五千八百億円のカットの問題は、不交付団体の六百億円は切り捨て、その他については建設地方債あるいは特例加算などによって財政的には確かに手当てをしている。その努力についてはある程度我々も理解できるわけでございますが、地方財政法第二条の本旨から見た場合に、この本旨に抵触するのではないか。特に第二条二項の「国は、地方財政の自主的な且つ健全な運営を助長することに努め、いやしくもその自律性をそこない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を打ってはならない。」この精神が形骸化されてきている、このように見るのが常識ではないか。  また、今大蔵大臣地方と国との費用負担の問題を言っておりますが、先ほど来総務長官からもお話が出ましたが、費用負担の問題と車の両輪の一つは機能分担である、この両輪が同時進行して初めて国と地方との分担役割というものが明確になると私は思うのであります。  特に、「昭和六十年度の地方財政についての意見」昭和五十九年十二月十八日の地方財政審議会におきましては、御存じのとおり、「国と地方との間の機能分担のあり方を見直すことなく国の補助負担割合を一律に引き下げることは、国の支出する補助金等の金額を減少させるだけにすぎず、国・地方を通じた行政の減量化につながらないので、厳に行うべきではない。」このように、国と地方との間の機能分担のあり方見直しが車の両輪の一つの大きな役割として回転していなければ、単なる費用負担の分担だけで突っ走ることを戒めているのであります。  また、同じ地方財政審議会の「第三」の「国庫補助金等の整理合理化の推進」の中の第二項におきましても、「補助率等の見直しは、国と地方との機能分担及び費用負担見直しとあわせて行うべきであり、単に高率の故をもって国の補助負担率を一律に引き下げるようなことは、単なる地方への負担の転嫁にすぎず、国と地方の間の適正な財政秩序を乱すものであるので、整理合理化の方策としてはとるべきものではない。」と明快に述べているのであります。この地方財政審議会の考え方は、今回のこの補助金削減一括法案の中でどのように受けとめ、検討されてきたのか。これは自治大臣の諮問機関ではあるにせよ、政府としての諮問機関であろうと私は思います。この点について、大蔵大臣は財務当局としてこの問題を無視して対応されたのか、その点について伺いたいと思います。
  76. 竹下登

    竹下国務大臣 地方財政審議会で今まさに宮地さん御指摘になりましたような指摘がなされておることは、私どもも十分承知しております。地方財政審議会というものは、自治大臣の諮問機関であるとはいえ、たしか国会承認人事、あるいはその点は異なっておるかもしれませんから、その答弁のところは取り消させていただきますが、そういう権威のある審議会でございますので、私どもとしては政府全体として尊重すべき御指摘であるという受けとめ方をしなければならないということはもとよりのことでございます。したがって、それだけに私ども、この法律を御審議いただきますまでには種々苦労をいたしまして、言ってみれば整理合理化の一環として社会、経済情勢の変化、これらを踏まえながら、補助率見直したという角度からこれについて議論を掘り下げてきたわけでございます。したがいまして、これが合意に達するまでには種々の経過を経まして、大蔵厚生自治の三大臣合意という文書を交わしましてやっと法制化の作業に入り、国会で御審議をいただくという状態になっておるという経過であります。
  77. 宮地正介

    ○宮地委員 この法案が先行して、そしてそこに覚書をつくって、これから一年以内、この暫定期間の間に機能分担の問題については検討機関を設けて検討する、こういうふうになっておりますけれども、基本的には逆じゃないか。ましてや、高率補助金一〇%一括して切っていく。費用負担の方ばかりが先行して、機能分担については後から一年かけてこれから検討いたします、こんな本末転倒なやり方はないんじゃないか。明らかにこれは財政当局のシーリング優先方式、これがまかり通っているんじゃないか。私は、これはまさに地方財政審議会の無視ではないか、こう思いますが、この点についてはいかがでしょう。
  78. 平澤貞昭

    平澤政府委員 この機能分担の問題につきましては、御存じのように第一次臨調答申以降常に指摘を受けておりまして、それはそれでずっとやってきておるわけでございます。したがいまして、今回御提出し御審議を願っておりますこの法案の中にも、そういうものの中で恒久措置が必要な部分恒久措置として中に入っている部分もございますし、他方、それ以外にも、行革審その他で現在機関委任事務の問題とか必置規制の問題とかいろいろ御検討いただいておるわけでございます。直接絡む部分とそうでない部分もございますけれども、片方でそういうことをやりながらということでございます。
  79. 宮地正介

    ○宮地委員 大蔵大臣の時間は三十五分まででございますので、大臣に直でお願いしたいと思います。  そういう点で今回の機能分担の問題は、今主計局次長がおっしゃっておりますが、確かに微々たる、また段階的に努力はしているにしても、今回は機能分担と費用負担という問題については両輪の同時進行の形で決着がついていない。むしろ費用負担先行、財政当局のシーリング方式先行の形でこの補助金カットが進んで今回の法案が出された。これは私は事実であろうと思っておる次第でございます。  そこで、時間もありませんので、今お話の出ました覚書の問題についてでございますが、昨年の十二月二十二日に大蔵大臣厚生大臣自治大臣、三大臣による覚書が交わされております。特にその中で、「社会保障に係る高率の補助率の引下げ措置を講ずるに当たりこの覚書で、「昭和六十年度における暫定措置とする。」こうまず第一項目なっておりますが、最近の大蔵大臣予算委員会等のいろいろなお話を議事録等で見ておりますと、どうもこの一年限りの暫定措置としている覚書が果たして守られるのかどうか。大蔵大臣は国と地方役割分担見直しなどを検討した上で判断したい、こういうことを常々おっしゃっておりますが、今後この覚書が厳守されるのか、あるいは見直しがまた行われて、むしろ半恒久化されていくんじゃないか、こういう懸念もあるわけでございますが、大蔵大臣にしかとその真意をこの衆議院大蔵委員会でまず明快にお伺いしておきたいと思います。
  80. 竹下登

    竹下国務大臣 これは結論的に申しますならば、この六十一年度以降の補助率あり方につきましては国と地方との間の役割分担、費用負担見直し等とともに、政府部内において検討を進めて、一年以内に結論を得る、読んでまさに字のごとくということであります。言ってみれば、今宮地さんおっしゃいましたように、役割分担と費用負担見直しで、個々の問題についての恒久的な結論というものは出ていないわけであります。したがって、私どもはおおむね一割ということでお願いして暫定、こういう措置にしたわけでございますから、これから一年かかってこの議論は詰めていかなければならぬ問題だ。いろいろな議論が行われるでありましょう、いろいろな歴史的経過についての議論も詰めていかなければならぬ課題だというふうな認識をいたしております。
  81. 宮地正介

    ○宮地委員 逆の立場で伺いますが、その議論の中で例えば暫定措置が取っ払われるという議論が出た場合に、半永久的に恒久化する考えも大蔵省は持っている、こういうふうに理解してよろしいのですか。
  82. 竹下登

    竹下国務大臣 これは法律でございますから、暫定措置ということでない方がいいんじゃないかなという考え方ももとよりございますが、それらも含めて、やはり議論の結果出てくるものではないだろうかなというふうに考えておるところでございます。
  83. 宮地正介

    ○宮地委員 特に、第二項の「昭和六十一年度以降の補助率あり方については、国と地方の間の役割分担・費用負担見直し等とともに、政府部内において検討を進め、今後一年以内に結論を得るものとする。」こうなっておるのですが、この具体的な今後のスケジュールといいますか、そういう点について、大体いつごろをめどに結論を得ようとしているのか。また、検討機関をこれからつくっていくわけですが、いつごろ設置をしていくのか。この予算が通り、またこの国会が終わりになろうとすれば、もう次の概算要求の問題が出てくるわけですから、これは、一年以内と言っても、そうもたもたしていることはできない。夏ごろからはもう六十一年度の予算の問題に取り組んでいかなければならない。当然そういうスケジュール等も検討されていると思うのですが、その点についてはどうなんでしょう。
  84. 竹下登

    竹下国務大臣 宮地さんおっしゃるとおり、お互いの常識からすると概算要求基準というものを決めなければいかぬ、そして概算要求は法律に基づいて行われなければいかぬということになりますと、おのずからそういうことが我々の念頭にあることは事実でございますが、法律が通ってからということと、そして法律審議に当たっての貴重な意見というのは国会論議でございますから、そういうものを踏まえて、検討の具体的方法はどういう形でやった方がいいかということも国会論議等を踏まえながら、毎日毎日が検討中であるというふうな認識の上に立ちまして、強いて言えることは、今日の段階では、今後できるだけ早い機会に政府部内で検討の場を設けてということが、きょうのところは限界ではなかろうかな、やはり国会議論がいろいろ出てくるのを絶えずお聞きしながら、その具体的検討の場所等も詰めていかなければならぬ課題だというふうに思っております。     〔委員長退席、熊谷委員長代理着席〕
  85. 宮地正介

    ○宮地委員 今回のこの法案の内容を見てみますと、一つ建設地方債の増発によって財政的に手当てをしておる。この手法は、一方でカットして、それで地方債の増発でこの穴埋めをした。財政当局はそれについて、何とか対応したということで言っておりますが、建設地方債の増発という問題は、ちょうど今好転してきている地方財政に冷水をぶっかけて、まさに地方行革の意欲を損なう。今回のこの手法というのは、これからの地方公共団体の財政改革あるいは行政改革というものに大変大きなデメリットといいますか、非常に悪影響を与えていくものとして将来に禍根を残すのではないか。この点についてまず大臣、どういうふうに考えておられるのか。  今、政府が地方公共団体に対応するのはそういった手法ではなくして、むしろ自主財源の確保とか国から地方への権限の移譲の促進とか、こういう根本的な問題に優先的に取り組む時期ではないか。ただ国の財政が大変だからといって地方にそれを転嫁したり押しつけたり、そういうことが今度は日本国全体の国、地方財政改革、地方行政改革ということに冷水をぶっかけていくことになるのではないか。私はむしろこういう点で大変危惧しているわけでございますが、大蔵大臣はそれをどういうふうに考えておられるのか。
  86. 竹下登

    竹下国務大臣 原則的に言って宮地さんのおっしゃっている論理というのは、私はそれなりに通ずる論理だと思っております。しかし、基本的に財源分担をどうしていくかというような問題に今日の時点で触れていくのはなかなか難しい問題もございます。したがって、いわば建設地方債というもので充当するという措置をとったわけでありますが、この建設地方債の後年度におけるそれに対する対応の仕方というものも、地方財政計画の中できちんとした対応策が行われるような協議を自治省との間においてもいたしたわけでございます。  そこでいま一つ、これは釈迦に説法でございますが、六十年度における建設地方債のいわゆる増発額、これは国はなお多額の特例公債を抱えておりますが、地方におかれては、前年度に比して約六〇%減と大幅に減少していること等を考慮してみますならば、この点は妥当な措置として御理解いただけるものではないかというような気持ちでこのような措置をとったわけであります。あくまでもいわゆる機能分担と費用負担が車の両輪であるごとく、公経済全体から見た場合に、国と地方はまた車の両輪であるという考え方の上に立って措置をさせていただいたということになろうかと思われます。
  87. 宮地正介

    ○宮地委員 それから、今回のこの一括補助金削減する中で、特に五千八百億円のこの補助金カット、そういう中で特に非公共部門、経常経費系統の二千六百億円、これは厚生省の中でも大変苦労したと思うのですが、率直に言って大蔵大臣、いろいろ理由があろうにしても、我々一市民、一国民から見ますと、弱い立場と言われる生活保護世帯あるいは身体障害者あるいは児童措置費、老人対策費、国民の中でも比較的弱い立場と言われる、むしろ国家的見地から対応しなければならない、その部分にいわゆる一律一〇%カットで切り込んだ。私は後ほど厚生大臣からも伺いたいと思いますが、大蔵省の手法の中に、果たして本当にそうした人たちに対する行政のぬくもり、政治のぬくもりというものがあるのか。言うならば血も涙もない、何か財務当局の財政優先的な対応によって切り込んでいる、こういう感じを率直に受けるわけでございますが、こうした弱者救済、対応、これは憲法第二十五条の基本的な生存権の問題にも触れてくる問題でございますので、こういう点についてはどういう考えを持って天下の竹下大蔵大臣は対応されたのか。私は、竹下大蔵大臣の人間性から見て、ここを切り込んだということは断腸の思いではないかと思っておりますけれども、それをしゃあしゃあとやったのか、その点の神経、大臣としての心境を率直に伺いたいと思います。
  88. 竹下登

    竹下国務大臣 今宮地さんがなさった議論というのは、基本的な議論として我々もやってまいりました。したがって、我々としては、本当に社会保障関係の末端の給付水準そのものに影響を及ぼしてはならぬということがまず基本にございまして、しかし、それをお願いするにしても、生活保護臨時財政調整補助金二百億円でございますか、これらも含めて、今日の時点でこれを適正な措置としてお願いすることにした。したがって、しゃあしゃあともしない、といって断腸といいましても、大蔵大臣をやっていると毎日断腸の思いをしていなければならぬようになりますので、強いて言わしていただくならば、極めて正常心を持って一応の理解を得ながらこの措置を行わざるを得なかった、こういうことではなかろうかと思われます。
  89. 宮地正介

    ○宮地委員 時間が来ていますが、最後に一問だけ大蔵大臣に伺っておきたいと思います。  先日来、私も大型間接税の問題を税制論議のときにやったのですが、最近この大型間接税導入問題にひっかけて、一つは所得税減税の問題あるいは法人税減税、これが大型間接税導入の増税とのワンパッケージ、こういう一つの手法が今後とられるのではないか。そういう中にもう一つ、いわゆる今回のこうした補助金削減一括の問題に絡めて地方消費税(仮称)を検討して、地方のこれからの交付税の手当てなどにやっていくのではないか、こういう論議がいろいろマスコミ等の間からも出てきておるわけですが、この点については、大臣、何か御見解を持っていますか。
  90. 竹下登

    竹下国務大臣 今宮地さんの積み立てられたような論理を、あるいは参考人の方とかで吐かれる方もいらっしゃるようでございます。国会でもその種の議論は出ておりますが、今の場合は国会で、今の御発言も含め、これらの議論を正確に整理して、税調で大所高所から議論をしてもらうことではないか。ましてや地方消費税ということになりますと、具体的にまだ税務当局としてこれが検討に入ったとかいうような事実は全くございません。
  91. 宮地正介

    ○宮地委員 今集中的に大蔵大臣といろいろ論議をしてきたわけでございますが、本当は厚生大臣自治大臣と並行論議をしたかったわけでございます。話がまた戻ったり行ったりで、当委員会、なかなかこの法案はやりにくいのですが、自治大臣、先ほど来、私、大蔵大臣といろいろ論議をしてまいりましたが、まず今回のこの補助金削減一括法案、率直に言って、先ほどは担当の審議官は何かいろいろ言っておりました。財政的に手当てをしたから地方財政法第二条には抵触しない、こういう言い方をしていますが、根本的な精神からいけば、第二条は率直に言ってその精神は形骸化された、こう見るのが国民の常識だと私は思うのです。大臣、その点どう思いますか。
  92. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 地方財政の健全なる発達を期するための地方財政法でございます。したがいまして、先ほど審議官から、補てんしたから一応あれしているというような説明があったわけでございますが、これは先生、その当時のいきさつを申し上げますと、予算編成のぎりぎりまで、地方の側から私どもは一律カットに反対、国の方はどうしてもこれをやりたいということで、予算編成のもうほとんど直前になりまして、非常に厳しい財政状況だから、何とかしてこれを、地方の立場というものを考え直さないかということでございましたので、私はいろいろ私の方の事情を述べてお断りいたしましたが、国の予算編成上どうしても必要だということで、私どもとしては、じゃ一年限りの措置といたします。特に福祉関係の経費については、自治大蔵厚生の間で協議をして、六十一年度に間に合うように十分な検討をする。そうしてこの不足分の五千八百億につきましては、完全に国が補てんする約束を覚書でいただきましたので、私はそういうような観点からこの措置を了解したわけでございます。  なお、五千八百億の内容につきましては、特別交付税が一千億、建設地方債が四千八百億でございますが、そのうち二千億は臨時特例債と同じような措置をして、半分交付税から出すということになっております。残りの三千二百億につきましては、これは交付税をもって元利を見るということになっておりますので、私は、暫定的、一年限りの措置として、そういうことは国の財政が厳しい折から、地方も非常に厳しいことは御承知のとおりでございますが、やむを得ずこれを了解したというところでございます。
  93. 宮地正介

    ○宮地委員 三千三百に近い地方公共団体の大半が反対をしている。その頂に立っている自治大臣が余り甘い顔をしますと、大蔵大臣が先ほど答弁していたように、今後半恒久化されるおそれもありますよ。ましてや、先ほど申し上げた地方財政審議会、あなたの諮問機関です。あなたの諮問機関が明確に、補助率見直しについては、機能分担と費用分担同時進行で、両輪できちっと決着をつけなければやっちゃいかぬぞ、こういう厳しい答申をあなたの方にしておりながら、押し切られておる。私は大変に残念だと思うのです。三千三百の地方公共団体の頂に立っている大臣として、もっと強い腰で臨まないと、何といいましても今の日本の大蔵の官僚の皆さんというのは強いですから、これはよほど腹を据えて、ふんどし締めていきませんと、押し切られてしまうと私は思います。  あなたは、先ほど申し上げた「昭和六十年度の地方財政についての意見」、昭和五十九年十二月十八日の地方財政審議会、この答申をどう受けとめて、今回のこの法案作成についてどういう決意で臨まれたのか、その点について伺いたいと思います。
  94. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 先ほど申し上げましたように、十二月の予算編成の直前まで、この問題で私ども地方の立場を強く主張してまいり、また、地方制度調査会におきましても、今先生お話しのような答申がありました。やむを得ない措置として最後に認めざるを得なかったというような状況でございますが、先生の今の御意見等を承りまして、そういう点は地方の立場に立ちまして、御意見のあるところを十分私の胸に刻んで今後頑張っていきたいと思っております。
  95. 宮地正介

    ○宮地委員 後藤田総務長官に伺いたいと思います。  総務長官、「行政改革に関する第一次答申」、昭和五十六年七月十日、臨時行政調査会、これにおきまして、特に補助金の中の生活保護費の問題ですね。これについては御存じのとおり、「補助金等で、本答申においてその具体的な整理合理化方策を個別に明らかにしたもの及び生活保護費等を除き、各省庁の自主的、積極的な判断によることが適当なものについては、各省庁ごとに総枠を設定して整理合理化を進める。」ここで「生活保護費等を除きこということで、生活保護費については、やはり補助率一括削減の中から一つのただし書き、歯どめがかけられていると私は思うのです。これが、今回の補助金一括削減がされるときに、単にシーリング枠優先で、一〇%でどんと落とされた。そこでは「生活保護費等を除きこという部分もまとめてどんと落とされてしまった。これがこの法案として今度出てきたわけですね。これについては、長官は政府部内で調整するとき、どういうふうに対応されたのでしょうか。
  96. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 補助金整理合理化といいますか、見直しといいますか、これは第二臨調がしばしば提言をしてきておることでございます。ただ、その中で、今おっしゃったように、従来から補助金と、一くくりの議論がありますね。しかし、その過程で、どうも補助金というのは性悪なものだといったような一般の風潮が若干見られる。これは私は大変な間違いである。補助金はそれなりの政策課題も果たしておりますし、それから同時に、負担金等については、先ほど来、午前中議論がありましたような多少の性格の違いもありますから、そこらはよくかみ分けて対処しなければいけない、こう思います。  それで、第二臨調答申も、いわゆる負担金というものについての物の考え方、基本的な考えで、今お述べになったのは恐らくそれじゃないかなと思いますが、これはそれ以外の補助金とはやはり別の扱いで慎重にやらなければならない。これはもうはっきりしていることでございますから、私どもとして、政府で仕事を進める場合には、もちろんそういう観点でやっているつもりなんです。ただ、第二臨調も、最終の答申でございましたか、どれか忘れましたが、いずれにいたしましてもいわゆる一くるめにした補助金等について、やはり高率なものは見直すべしと、こういったようなこともございまして、それらを踏まえて、政府としては今回の措置は、財政上の厳しい状況もございますから、こういった一律の削減ということになったわけでございます。  いずれにいたしましても、補助金中身というものを私どもも、第二臨調も、当然十把一からげの議論としては受けとめないで、やはり慎重な配慮を加えつつやっておる、こういうように御理解をしていただきたい、こう思います。
  97. 宮地正介

    ○宮地委員 そうなりますと、総務長官、この「生活保護費等を除きこという部分については、大蔵大臣あるいは厚生大臣、この辺と具体的にどういう調整をされたのか。いわゆる一律一〇%削減大蔵省のシーリング枠の中でセットされてきたから、やむを得ずそれに乗ってしまったのか、その点についてはどうなんでしょうか。
  98. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 いや、別段そう簡単な議論ではなくて、生活保護費等については、本当に厳しい議論が続いたのです。つまり、これはいわゆる負担金であって、しかもその基本は憲法に基づいた国の仕事ではないかといったような厳しい議論が続きまして、その結果、各省の協議、そして政府・与党の協議の上で、ともかく一年の措置として今回はこれでいこう、しかしながら根本問題があるから、一年間三省庁で十分論議をした上で結論を出そうではないか、こういうことになったわけでございまして、おっしゃるような、大蔵省が出してきたから、まあしようがないじゃないかといったような簡単な議論でこの結論が出たものではない、かように御理解をしていただきたい、こう思います。
  99. 宮地正介

    ○宮地委員 総務庁長官に伺っておりますので、あわせて総務庁から、簡単で結構でございますが、漁業補助金のむだ三億円ということで、これはことしの一月、総務庁行政監察局が「周辺水域の漁業振興に関する行政監察」ということで発表しているわけでございます。竹下大蔵大臣がいなくて残念なんですが、竹下さんの島根県のある漁協の軽油タンク装置のケースとして、漁船向けの燃料タンクが設置されてから九年間近くも全く使われていなかった、放置されていた、こういうことも含まれた監察報告が出ているわけでございますが、この点について、まず事務当局から概要を説明していただきたいと思います。
  100. 竹村晟

    ○竹村政府委員 ただいまお尋ねの監察につきまして、これは沿岸漁業と沖合漁業を中心に調査したものでございます。その中で、例えば漁港の整備でありますとか、あるいは最近の養殖漁業の関係で魚礁の整備とか、そういったものを見たわけであります。その観点の一つに、今の補助金の効率化の問題、こういうものもありまして、御指摘のように、漁港の施設の中でいろいろタンクの問題とかそういう効率を上げてない問題、こういうものを指摘しております。
  101. 宮地正介

    ○宮地委員 総務庁長官、先ほどの「生活保護費等を除きこの問題もそうですが、総務庁としては、この補助金のむだ遣い、こういう実態も、皆さんの監察の中で漁業補助金一つの例として出てきたわけですね。私は、やはり心ある国民の皆さんの中には、この補助金というものが、ある意味では政治家のひもつきといいますか、選挙を有利にするというのか、そういう嫌いの中で補助金がづけられてきた、そういうものもある。あるいは今申し上げたように、この漁業補助金なんというのは、これは今はっきり言って魚が余りとれないのですよ。ですから、倉庫をつくったり、いろいろなタンクをつくっても、漁業者の皆さんは持っていって魚を中に入れられない。そういう状況もはっきり申し上げて、あるのですよ。ところが一部の政治家、一部のボスがそこに予算をつけて、そして自分の選挙に有利にしようとか、はっきり言ってひもつき資金、そういう補助金に対する疑いといいますか疑問というか、国民の一部にはそういうものを持っている方が多いのです。そうした例の一つの端的な実態がこの漁業補助金のむだ三億円、総務庁監察ということで出てきた。  私は、今回の補助金削減一括法案審議するに当たって、財政当局が、日本の財政が大変危機だ、そういう中で地方にも役割分担を、少し費用負担もしてもらおう。ところが一方では、洗い直せばどんどん出てくるようなむだな補助金というものはまだ相当あるのです。今までの国会の論議の中でも相当これが暴露されてきたのも、総務長官御存じだろうと思うのです。この辺をやはり本格的にメスを入れて対応していかないと、一方でどんなにきれいごとを言っても国民は納得しないと思うのですね。私は、この漁業補助金のむだ三億円問題は、皆さんが監察して、調査して明らかにした資料ですから、それをもとにお話ししているのですが、こういった問題について、長官は今後どういうふうに厳正に対応しようと考えておられるのか、お伺いしておきたいと思います。
  102. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 補助金をめぐるいろいろな御批判があることは事実でございますが、私どもとしては補助金整理というのは真剣に取り組まなければならぬ、こういうことで行政の監察あるいは調査、これもしばしばやり、同時にまた各種の事業の監察をやりますが、その際に当然その補助制度についても監察をやるということで、是正すべきものは本当に今日まで随分やっているつもりでございます。  ただ、御指摘のような意見が依然としてあることは大変残念でございますが、私どもとしてはおっしゃるような趣旨も踏まえながら、補助金整理すべきものは今後とも整理をしていくという見地に立っての行政監察なり行政の調査、こういうことをやっていきたい、かように考えております。
  103. 宮地正介

    ○宮地委員 こうした補助金見直し、洗い直しの過程の中においても、補助金のこれからの整理合理化を進めていく中においても、ぜひ国民の納得のいくような、国民の信頼を得るような対応を、特に総務庁長官には、力ある長官でございますので、強く要望をしておきたい、このように思うわけでございます。  そこで、厚生大臣にちょっと伺っておきたいのですが、何といいましても、今回の補助金一括削減の中の非公共部門の中心は……(発言する者あり)
  104. 熊谷弘

    ○熊谷委員長代理 速記をとめて。     〔速記中止〕
  105. 熊谷弘

    ○熊谷委員長代理 速記を起こして。
  106. 宮地正介

    ○宮地委員 厚生大臣がまたどこかにお消えになったようで大変残念なんですが、事務当局責任者の方でも結構でございます。やむを得ません。(発言する者あり)同僚の諸君から厳しいおしかりもきているのですが、私は優しいですから、その辺ちょっと対応は今後にお貸ししておきたいと思います。  それで、ともかく厚生省、今岡の補助金削減一括について、特に非公共部門の二千六百億の中の二千億以上が厚生省の関係で切り込まれているわけでございますが、聞くところによりますと、大蔵省のシーリングの厳しさの中で厚生省が洗い直して、むしろあなたの方が洗い直して出してきたものがいわゆる生活保護費、老人対策費、児童措置費あるいは身体障害者の措置費、こういう国民の皆さんの比較的弱い立場、弱者、こういうところをむしろ大蔵省が指定をしたんじゃなくて、そのシーリング枠の中であなた方がいろいろ苦労して出してきた中にこれが出てきたというような感じを私たちは受けておるわけですが、厚生省は、皆さんの自主的な判断によって、特にこの四者、弱い立場の方々に対しての補助金カットの対象を選択されたのかどうか、その経緯を伺っておきたいと思います。
  107. 正木馨

    ○正木政府委員 先生指摘生活保護を初めといたしまして、社会保障関係について今回の補助率引き下げの対象になるものが多いわけでございますが、先生おっしゃいますように、生活保護国民の生存権保障の最後のよりどころであるということで、極めて重要である。また、老人とか児童とか身体障害者とか、これらの社会福祉諸施策、社会保障諸施策も社会保障の重要な柱で、国の責務が非常に重要だと思います。そういった意味で、高率補助というものが行われてきたわけでございますが、今回の補助率引き下げというのは、先ほど来の答弁にもありましたように、行革審等の意見を踏まえまして、二分の一を超える高率補助金について、政府足並みをそろえて見直しを行うということで措置をとられたということで、厚生関係も例外ではたかったわけでございます。  ただ、私どもとしましては、先ほど厚生大臣がお答えになりましたように、これだけ大事な社会保障対象者に対する水準を下げることは、何としても避けなければならないということが一つと、それから、やはり厚生行政は地方団体を通じて行われているということで、地方団体に対する財源措置というものが行われることが非常に重要である。そういう二点が行われるということを踏まえまして、今回の補助率引き下げについて政府全体の中でこういう措置をとったわけでございます。  ただ、今後の問題につきましては、政府部内で機能分担、国と地方役割分担を踏まえまして、今後の費用負担あり方について政府部内で十分検討していきたいというのが厚生省の基本的な姿勢でございます。
  108. 宮地正介

    ○宮地委員 私が厚生省に言いたいのは、やはり基本的な憲法第二十五条、国民の生存権、国の社会保障的義務、こういうものの精神が、今回の補助金削減一括法によりまして形骸化されてきている。これはもう否めない。ただ給付水準が維持された、あるいは建設地方債で財政的には手当てされた、これだけでは済まない問題ではないかまして社会保障のミニマムの、国民のミニマムの問題を考えたとき、そんな悠長なことを厚生省自身が言っていいのか。私は国民の一人としても大変情けなさ過ぎる、こんな感じがするわけでございます。特に、先ほどからお話をしておりますところの地方財政審議会の昭和五十九年十二月十八日の最後に、「特に、生活保護等の社会保障に係る事務は、基本的な国の責務に基づくものであるので、現行の国と地方との負担割合は堅持されなければならないものである。」こういうふうに、費用負担の問題においても変えてはいかぬ、こういう厳しい指摘がされているわけでございますが、厚生省はこうした精神というものを踏まえて、今回の財政当局の一括削減という問題に対してどこまで抵抗され、対応されたのか、国民の前にしっかりと説明をしていただきたい。
  109. 正木馨

    ○正木政府委員 厚生省の関係の諸施策の中でも、先生指摘生活保護、これはなかんずく生活保護法第一条の目的規定にもございますように、憲法第二十五条に規定する理念に基づいて、国が生活に困窮するすべての国民に対して必要な保護を行い、最低生活を保障するとともに自立を助長する、極めて重要な役割を持っております。この生活保護というものの重要性にかんがみて、今回の補助率引き下げに当たりましても、先ほど申しましたように、生活保護対象者に対する水準自体を下げることは何としても避けなければならない。また、地方団体を通じての行政が円滑に行われるような措置というものを十分見きわめた上で、私どもとしてはこの措置をとったわけでございます。  なお、つけ加えて言わせていただきますと、生活保護基準につきましては、現在の生活扶助基準についての二・九%のアップが行われる、また長年来の懸案でございました男女間の格差の解消といったような水準面での改善も行われるということでございます。私どもとしても、生活保護を初めとする社会保障、社会福祉施策の重要性というものにかんがみまして、そういった面での努力というものは今後とも続けていかなければならない。また、費用負担あり方という問題につきましては、政府全体で機能分担の問題を含めまして十分検討して、御心配のないような努力を続けていきたいと思っております。
  110. 宮地正介

    ○宮地委員 あなたは給付水準ということを言っておりますが、先ほどから言っておりますのは、給付水準もちろん大事です。しかし、この地方財政審議会の精神というのは、国と地方との負担割合は堅持されなければならない、負担割合を変更しちゃいかぬ。あなたの論理だと、給付水準さえ維持されれば、国の負担割合が変わって、地方の方の負担がふえても構わないじゃないかと。そんな論理がありますか。
  111. 正木馨

    ○正木政府委員 補助率引き下げの政府予算の決定に際しまして、各審議会でいろいろな御議論があったわけでございます。これは臨調、行革審の高率補助見直しというものを受けて閣議決定が行われたわけでございますが、その間におきまして、先生の御指摘のように、地方制度調査会におきまして国と地方負担割合の問題についても御指摘があるということは、私どもも十分承知いたしております。そういった各方面の御意見というものを踏まえまして、今後の国と地方役割分担、費用負担あり方について、政府部内で十分検討していこうということになっておるわけでございます。
  112. 宮地正介

    ○宮地委員 例えば具体的に私、埼玉県の場合をちょっとあなたに教えてあげたいと思うのです。  埼玉県の場合は、社会保障関係補助削減が、ざっと見ますと、今回は約二十億なんです。公共部門が約四十億、合わせて削減が約六十億です。その中で特に生活保護補助費、これが大体二十億の中、四分の一なんですね。約五億二千九百万、これが実際に削減をされる。要するに、今回の削減で、そのままストレートに県の負担が、生活保護補助費五億二千九百万というものがどんとふえてくる。埼玉県の場合はさらに生活保護費の県負担というのがそのほかにあるのです。独自で埼玉県は三億六千六百万出しておる。これは要するに国の負担以外に県が独自に、全く影響を受けない部分でこの三億六千六百万、今回の五億二千九百万が来ますから、ざっと八億九千万くらい一挙に生活保護関係でどんと負担がふえてしまうのですよ。負担ですよ、水準じゃない。  あなたは、給付水準さえ維持されれば、あとは暫定措置の一年間でもって検討して、機能分担と費用分担でやりますから、国の方にお任せいたします、こう言いますけれども、現場の地方団体というのは財源を捻出するのにどれだけ苦労しているか。そのことに対してあなた方は全然、今度はこれは自治省の問題だ、大蔵省の問題だ、これじゃ通らない。だから、根っこのところの厚生省がしっかりと踏ん張らないと、その影響が多大なものだということをもっと深刻に受けとめて、この問題に対応してもらいたい。まずその決意を伺いたい。
  113. 正木馨

    ○正木政府委員 今回の補助率引き下げに伴います生活保護関係影響額というのは、全体で千五百十億円程度でございますが、先生御案内のように、生活保護は県と市で実施をしておる、それでこの保護率というのも、全国平均で申しますと一・二%強でございますが、地方によって非常に大きな開きがある。それから、生活保護費歳出規模に占める割合というものも違いがあるということで、地方公共団体によって影響の度合いというものは違ってまいります。そこで、全体としては地方財政計画で総体としての措置がとられるということでございますが、生活保護につきましては臨時財政調整補助金というものを二百億円計上させていただいて、その急激な財政負担影響緩和といった措置をとっていきたいということで、生活保護の円滑適正な実施というものに支障のないような配慮を十分していかなければならないというふうに思っておるわけでございます。
  114. 宮地正介

    ○宮地委員 ぜひ厚生省も、きょうは大臣がいなくてちょっと残念なんですが、その辺の精神を酌んで、断じて暫定一年覚書が大蔵省に押し切られないようにしっかり頑張っていただきたい。特に。私は要望しておきたい、こう思っております。  そこで、建設省から見えていると思いますが、公共部門についても今回は三千二百億が削減されるわけでございます。これも建設地方債等で補てんされるわけでございますが、特に我が埼玉県のように首都圏の人口急増県というのは、はっきり申し上げまして人口急増のあおりによって土木の関係、治水の関係、下水の関係、大変な対応が必要なところなんですね。ところが、今回ばっさりと四十三億二千三百万カットされた。建設地方債で手当てをしているといいますが、四十三億二千三百万、そのまま県負担がふえてきているわけでございます。こういう人口急増県などについても特例を設けるということにはいろいろ異論があろうかと思いますが、やはり一括削減というこの枠の中ではさっとやられますと、肝心の、特に住宅下水道のこうした文化的な生活を営む最低限のところが、四十三億の中で二十一億六千百万と、約半分の割合を占めているのですね。こういう実態を建設省はどういうふうに見ておられるのか、この点をまず伺っておきたい。
  115. 豊蔵一

    ○豊蔵政府委員 お答えをいたします。  私ども建設関係仕事公共事業関係が中心でございますが、公共事業にかかわります高率補助率引き下げにつきましては、御案内のように、そのことによりまして縮減されます国費を全額公共事業費に充てるということで、結果的に地方に若干の御苦労をおかけしますが、事業量をある程度ふやすというようなことによりまして、おくれました社会資本の整備を計画的、積極的に進めてまいりたいと思っております。  その際、ただいまお話がありましたように、人口急増地帯あるいはまた住宅宅地等の整備に関連いたします関連公共施設の整備につきましては、御案内のとおり、別途一千億円強の関連公共事業費等を持っておりますので、そういったようなものによりまして適時適切に対処しまして、整合性ある公共施設の整備を図ってまいりたいというふうに考えております。
  116. 宮地正介

    ○宮地委員 じゃ官房長、埼玉県やこうした人口急増の大変なところについては、特段のお手当てをいただけるんですな。
  117. 豊蔵一

    ○豊蔵政府委員 六十年度の予算が無事に成立いたしまして我々の執行段階に入りますれば、各地域の公共施設の整備状況あるいはまた地域のニーズ、そういったものを総合的に考えまして、必要なところに適切に対応できるように努力いたしたいと考えております。
  118. 宮地正介

    ○宮地委員 官房長、先ほどから私が取り出しております地方財政審議会の最後に、「基幹的な社会資本の整備は、長期的計画に基づき国と地方責任を分担して進めているものであり、国の財政負担地方に転嫁する形で変更することは、基本的に問題がある。」社会資本整備には国がきちっとやりなさい、こう書いてあるのですよ。埼玉県のみならず、そういう人口急増とかで特段の対応をしなきゃならない県はたくさんあると思うのですが、この精神を生かして対応してもらいたい。特に下水なんかまだ三〇%の普及率ですから、あなた御存じのように。  私の地域、例えば荒川右岸流域公共下水道なんかも、大動脈がやっとできたけれども、先の状況というのはまだまだ非常に進んでないために、現実に家庭の台所と直結していないところはたくさんある。三区といいますと糸山先生の秩父方面なんかもそうなんです。沢田先生の左岸の方もそうなんです。こういうところがこの際はさっとやられますと、さらに五年、十年おくれちゃう、現実問題として。これは深刻なんですよ。笑い事じゃない。官房長、もう一度この精神を生かして特段の配慮をしてもらいたい。
  119. 豊蔵一

    ○豊蔵政府委員 公共施設の整備につきましては、今お話がありましたように、国と地方公共団体が和協力して進めていくべきであろうかと考えておりますが、ただいまお話がありました公共下水道につきましては、従来から終末処理場等の整備に力を注いでまいりましたが、最近の状況では、それに伴う管渠の整備が相対的におくれているといったような実情にございますので、六十年度は特段に管渠の整備にも力を入れることといたしまして、自治省とも御相談しまして、地方債の充当率等の引き上げ等もお願いして、格段に事業量の増加を図っていくというようなつもりにいたしております。
  120. 宮地正介

    ○宮地委員 ぜひ御期待をしたい、こう思います。決して私は無理を言っているわけではないと思いますので、対応していただきたい。     〔熊谷委員長代理退席、中川(秀)委員長     代理着席〕  文部省もきょうは見えておりますから、文部省に伺っておきたいと思います。  特に今回の非公共部門の中で義務教育関係、これにやはり補助金削減が対応されてきているわけでございます。特に義務教育費国庫負担金削減の中で、教材費百二十三億円が今回国から地方負担に肩がわりになっている。これはやはり私は非常に大事だなと思うし、また、注意しなくてはならないことは、今回の教材費の問題、百二十三億円がカットされて国から地方に肩がわりされる、こうなりますと、今まででも政府部内で、憲法第二十六条で保障されているいわゆる教科書無償化の対応問題というのが、毎年予算編成のときにはいろいろ議論されておる。これが今後カットされていく一つの導入部門にされてはかなわない。私はそういう点でこの問題は非常に監視をしているわけでございますが、まず文部省、今回の教材費削減問題については、どういうようなお立場で大蔵省あるいは政府当局に対してこの問題の対応に努力をされたのか、その点について伺いたいと思います。
  121. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 義務教育費の国庫負担制度の中で、御指摘の旅費と教材費につきまして、今回いわゆる一般財源化を行ったわけでございますが、この二つの経費につきましては、人件費を主とする義務教育費国庫負担制度の中で、戦後昭和二十年代から三十年代にかけて地方財政が大変厳しい時期に、父兄負担等の弊害をなくすというような見地から取り入れられたものでございます。その後、当時とはかなり事情が異なってまいりまして、現在では各地方公共団体が必要な財源措置をするという事情が定着をしてきているというようなこともございますし、また他方、国の財政事情が大変厳しいというようなことを総合的に勘案をいたしまして、自治省、大蔵省、文部省それぞれ協議をいたしました結果、地方財源化を図るということにいたしたものでございまして、地方財源化に当たりましては、旅費、教材費とも、前年度と同等あるいはそれ以上の単価上の措置をしていただくというような配慮も願ったところでございます。  教材費、旅費につきましては、ただいま申し上げたような経緯によりまして措置をいたしたわけでございますけれども、教科書につきましては、これとは事情が異なると私ども考えておりまして、教科書無償の制度は、文部省としては今後とも堅持をしていきたい、かように考えているところでございます。
  122. 宮地正介

    ○宮地委員 確かに教材費の百二十三億円の国から地方への負担、これと先ほど申し上げました教科書無償化とは性質が異なります。しかし、やはりなかなか財政当局というのは巧妙でございますから、油断をしてはならない。特に憲法二十六条で保障されている義務教育の無償化、この問題については今後とも存続をさせていかなくてはならない。この歯どめとして、主計局からちょっと意見を聞いておきたいと思います。
  123. 平澤貞昭

    平澤政府委員 この義務教育費国庫負担の問題につきましては、先ほども答弁がございましたように、臨調答申等でも、この負担金については、地方財源の総体のあり方を含め、今後検討を行う必要があるという指摘等もありまして、そういう中からこれを取り上げて、今回法案としてお出ししているわけでございます。今後この義務教育関係補助金あるいは負担金あり方についてはどうするかというお話でございますが、今回は少なくともこの二つに限ってお願いしているわけでございまして、さらにどうするかについては、必要があらばまた検討を加えていくということになろうかと思います。
  124. 宮地正介

    ○宮地委員 政務次官、出番がないので、ちょっと退屈でしょうから。  この義務教育の教科書の無償化の問題は、憲法第二十六条の精神にのっとって、今後とも存続をしていく非常に大事な問題であろうと私は考えております。主計局次長は非常に微妙な発言をされましたが、政務次官、この問題についてあなたどうお考えですか。
  125. 平澤貞昭

    平澤政府委員 教科書の問題は委員も御高承のとおり、これまでの経緯がございます。その経緯の中で、この問題について我々としても取り組んでいきたい、そういうふうに考えます。
  126. 中村正三郎

    ○中村(正三郎)政府委員 大変難しい御質問でありまして、大臣から御答弁させていただくのが適当かと思いますが、財政当局として言えば、財政資金効率的使用等の観点から、義務教育教科書の有償化を図るべきだという基本的な考え方はあるわけでございますが、今主計局次長からも御答弁しましたように、これからも慎重に検討していかなければいけない問題であろうかと思います。
  127. 宮地正介

    ○宮地委員 政務次官、やはり副大臣の立場なんですから、もっと自信を持って頑張っていただきたい。これ以上は申しません。ぜひ私が注意を喚起しておきたいのは、こうした教材費の削減というものを導入にして教科書無償化の方向の問題を形骸化し、なし崩ししないように、私は特段の要求、要望または注意をしておきたい、こう思うわけでございます。  そこで、時間が迫ってまいりましたので、最後に総務庁に伺っておきたいのですが、昭和五十五年度四月から六月にかけまして、補助金整理合理化に関して、総務庁、当時の行政管理庁が調査していますね。これの概要は私、資料を持って読んでおりますから大体わかりますが、ポイントだけ簡単に御説明していただいて――この調査から既に約五年を経過しているわけでございます。この調査に基づいてこの五年間どのような改善作業に取り組んでこられたのか、また、この補助金削減一括法案を機に、昭和六十年度以降についてはどういう決意で臨まれようとしているのか、長官の御意見を伺っておきたいと思います。
  128. 竹村晟

    ○竹村政府委員 ただいまお尋ねになられました昭和五十五年度の監察の調査の概要でございますけれども補助金等の積算内訳等で八十九件の補助金を対象にしております。その中で補助金等の廃止、終期の設定あるいは減額、運営改善、こういったものの検討を行いました。その改善状況でありますけれども、廃止するもの十二件、減額したもの二十五件、終期を設定したもの六件、それから運営改善を図ったもの四十一件ということになっております。  その後の対応でございますけれども、いろいろ個別の施策の監察をしております。そういう中で、補助金がありますものはやはり補助金の効率化を図る必要があるという観点で、補助金を通じての体系的なものではございませんけれども、そういったことで改善を進めてまいっております。  それから、これから以降のことでございますけれども、来年度はとりあえず地方行革を進めるという観点で、手続の簡素化の問題を重点に取り上げてまいりたいと考えております。それから一般的な補助金の問題につきましては、先ほど大臣から御答弁がありましたように、個別の事業見直しの中でその辺を見てまいりたい、こういうふうに考えております。
  129. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 今日三十二兆数千億の経費の中で十四兆五千億が補助金でございます。この補助金も、やはり絶えざる見直し改善措置を講じなければならぬと思います。したがって、補助金というものは絶えざる見直しの過程の中で、補助目的を達成しておるとか、いろいろなふぐあいなものとかいうものは廃止なり縮小するし、また現にある補助金でも、効率化の観点から見直して縮小すべきものは縮小する。しかし同時に、新しい仕事がどんどんふえますから、それに伴う補助金は毎年毎年ふえるわけです。これだけ厳しい措置をしながらも、実はネットで補助金が減ったのは去年どことしが初めてでして、去年がたしか四千三百億でしたか、ことしは千三百億ぐらいでしょう。これはそのままにおきますと雪だるまのようにふえる性格のものでございますから、やはり納税者の負担ということを考えまして、絶えざる見直し改善合理化を進めていきたい、かように考えております。
  130. 宮地正介

    ○宮地委員 総務庁長官、せっかくの機会でございますので……。  先ほど来お話がございました費用負担の問題が、今回の行政改革の中でも、特に補助金削減問題については先行した、こういうふうに私は率直に言って理解しておりますし、恐らく国民の皆さんも常識的にはそう思っていると思うのです。ですから、これからはやはり機能分担の問題が非常に大事であろう。この機能分担の問題になると、その主管大臣としての責務を、一番中立的立場といいますか公平な立場で対応できるのは後藤田長官のところではないかと私は思うのです。今回の覚書などを見ましても、大蔵大臣自治大臣厚生大臣、そして政調会長までが中に入っているようでございますが、いろいろその経過と内容、そういうものを見てまいりますと、やはりはっきり言って大蔵省主導型で押し切られておる。  こうなりますと、費用負担の問題についてはそういう感じになっておりますが、この暫定措置の一年限りという問題において検討する事項は、今度は機能分担の問題が非常に大事だと私は思うのです。ここを踏ん張れるのは、竹下大蔵大臣と丁々発止できるのは、私ははっきり申し上げてあなたじゃないかと思っているのです。あなたの責任というのは、検討機関を設けてこれから対応するという大きな責務、また国民の期待というものもあると思うのです。それだけに、この機能分担問題と一年間限りという措置、この問題について、大臣の職務をかけて相当な決意で取り組んでもらいたいと思いますが、最後に大臣決意を伺って終わりにしたいと思います。
  131. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 おっしゃるように、機能分担をどう考えていくかということが基本であろうと思います。そういった中で、地方行革等、国がやることはやらないと地方はできません。許認可の問題であるとかあるいは機関委任事務の問題であるとか、こういうものにも踏み込んでやっていきたい。これが実は行政改革で一番抵抗の多いところでございます。御質問のような点については、私は別段大蔵省に味方するわけでもないし、自治省に味方するわけでもありませんし、行革担当の大臣として、公正な立場で処理をしていきたい、かように考えております。
  132. 宮地正介

    ○宮地委員 終わります。
  133. 中川秀直

    中川(秀)委員長代理 米沢隆君。
  134. 米沢隆

    ○米沢委員 大蔵委員会にかけられた重要法案審議します際に、大蔵大臣がいなくて審議するのはとても奇妙きてれつでございますが、尊敬する後藤田さんや自治大臣に来ていただいておりますので、私は今提案されております法案に関連して若干の質問をさせていただきたいと思います。  この法律案は御案内のとおり補助規定の削除、補助規定の交付金規定への改正、補助金臨時法措置恒久化行革関連特例法の一年延長、二分の一を超える国の負担または補助の割合の引き下げ措置等から構成されて合計六十六項目、五十九の法律の改正を要するものでありますが、これらの措置によりましてその財政効果としては、高率補助率引き下げによるものが四千四百八十一億円、政令等による措置を含めると五千四百八十八億円、一般財源化等によるものが三百七十八億円、政令等による措置を含めると四百二十八億円、行革関連特例法延長によるものが三千五百六十一億円、同様に政令等による措置を含めますと三千五百六十三億円、トータルで八千四百二十億円、政令等による措置を含めますと九千四百七十九億円という膨大な財政効果が算出されておりますが、ただこの財政効果、補助金削減額を数字で言う場合に、さきに挙げた八千四百二十億円の減といい、また整理合理化の状況等の表を見ますと、金額にして五千二百八十九億円だといい、あるいは大蔵省提出しました資料の補助金等の増減の内訳を見ますと八千二百一億円だといい、どうも数字の関連性がはっきりいたしません。したがって、一体この財政効果はどのように読めばいいのか、まず具体的に明らかにしてもらいたいと思います。
  135. 平澤貞昭

    平澤政府委員 財政効果につきましては今委員がおっしゃったとおりの数値でございます。その場合、一つございますのが、この法律に基づくもののほか、政令等により行うものがございます。それが場合によっては効果の中に入ってくる数字で出ていることがあるかと存じます。  それからもう一つ、おっしゃるように少し混乱を招きますのが高率補助率等の引き下げに伴う地方団体への影響額、これがまた別途ございます。この方と国の削減額との間でいろいろ入り繰りがございまして、その間の錯綜がありますので御理解いただくのに困難な点がいろいろあろうかと思います。  いずれにいたしましても、最初におっしゃいました数字が財政効果の基本になる数字でございます。
  136. 米沢隆

    ○米沢委員 今のお話と同様、地方自治体に与える影響額はどのように算定されたのか、これも具体的に説明してもらいたい。
  137. 土田栄作

    ○土田政府委員 地方財政に与える影響額でございますが、実はこれは国の予算の内示前に計算したものでございますので、実際に内示がありまして予算が確定する段階では数字の若干の異同がございましたけれども、私どもはそういうふうなことから百億単位で一応地方財政対策を講ずるということにいたしたわけでございます。  具体的に申し上げますと、まず生活保護費等を中心といたします非公共関係でございますけれども、非公共関係での国費カットして地方負担となるものが二千六百億冊でございます。それから公共事業関係でございますが、これにつきましては国費カット額が二千億でございますけれども、この国費カット相当額はまた事業費化して事業に回すということになります。そうしますと、そのために地方負担が千二百億伴うということになりますので、それを合わせますと公共事業関係は三千二百億、合わせて五千八百億という数字になるわけでございます。  なお、そのほかに下水道等の公営企業がございますけれども、公営企業関係で約六百億影響額がほかにある、こういうことでございます。
  138. 米沢隆

    ○米沢委員 高率補助率引き下げに伴う地方財政への影響額、いわゆる今おっしゃいました五千八百億ですね。これは地方財政計画では収支計算をするととんとんであって、新たに五千八百億円の赤字といいましょうか、財源不足になる、こういうふうな計算ですか。
  139. 土田栄作

    ○土田政府委員 昭和六十年度の地方財政計画を策定するに際しましては、今回の国庫補助負担率の一律引き下げ問題を除外いたしまして、つまり五十九年度と同じような法制で財政収支の見通しを立てるという形でいきますと、これは昭和五十年代の後半に非常に歳出削減努力をいたしたことと、それからある程度景気が回復いたしまして説とか地方交付税が伸びるという形になりましたので、この一律カットの分を除きますと収支が均衡する、収支差がゼロになるというところまで一応財政構造の健全化が進んだわけでございます。  そこで、地方財政対策を要しますのは、今回問題を提起されました国庫補助負担率の一律引き下げに伴います地方負担増五千八百億、これだけが財源不足額ということになりましたので、これに対して地方財政措置を講じたということでございます。
  140. 米沢隆

    ○米沢委員 さて、六十年度の予算編成に当たりまして、行財政改革を強力に推進するという立場から政府は、一言で言えば一般歳出の対前年度額減額の達成、それから公債の一兆円減額の達成、この二つが至上命題であった、こう言ってもいいと思います。このためにねらわれたといいましょうか、浮上してきたのが高率補助率引き下げではなかったかと思われるのでございまして、その是非につきましては、先ほどからも議論がありますように、政府内でも予算編成の最後まで大きな争点となったことは御案内のとおりでございます。  しかし、この高率補助金の引き下げの問題は、八月の概算要求の段階で既に盛り込まれておりまして、影響をこうむる地方自治体に対しては有無を言わせぬ強引なやり方が大変印象に残りましたが、概算要求段階におけるその間の経緯は一体どういうものであったのか。例えば高率補助金の引き下げを持ち出された背景と、自治省あたりとの最初の詰めは一体どうなっていたのか、この点はいかがですか。
  141. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今回の法案提出に至るまでの経緯についてということでございますので、少し長くなりますが。  今回の問題でございますけれども、御存じのように国の財政は非常に厳しい状況にあるわけでございます。したがって、それを改善していくためには歳出削減一つの大きな柱とせざるを得ないわけであります。そうなりますと、歳出の中で四割強を占めます補助金整理合理化、これにどうしても積極的に取り組んでいかざるを得ないことになるわけであります。  そこで、その補助金整理合理化に取り組みます場合に、いろいろな取り組み方があるわけでございますけれども補助率につきましてもその一環として取り上げていかざるを得ないのではないかということでありまして、これも御存じのように、累次の臨調答申あるいは行革審の意見等でも、この補助率について見直ししていくべきであるということを言っておられるわけであります。特に高率補助率についてこれを取り上げるべきであるということが言われておったわけでございます。  したがいまして、そういうようなもろもろの背景の中で、昨年、予算の概算要求に当たりましても、政府といたしまして概算要求の閣議決定、どのように基準を設定するかという際の閣議で決めていただいものの中でもこの問題に言及しているわけでございます。そういうような中で各省はあのような補助率削減を織り込んだ概算要求を提出してきたということが、これまでの概算要求に至るまでの経緯でございます。
  142. 米沢隆

    ○米沢委員 確かに高率補助率引き下げの問題はたび重なる臨調答申においても指摘をされていたことは事実でありますが、今回のように余りに強引なやり方は、単なる国の財政のつじつま合わせ、地方自治体にツケを回すという印象が大変強いわけであります。国と地方の機能分担あるいは費用負担見直し、そういうものは全然詰めないままに先送りした点などでもわかりますように、これは余りにも自治体を無視したものではないか、そう言われても仕方がないのではないか、そういう御批判に対してどうですか。
  143. 平澤貞昭

    平澤政府委員 国と地方との間の機能分担あるいは費用負担あり方については、これも累次の臨調答申等々で御指摘がございまして、それはそれでこれまでも各般の措置をとり、そのある部分については立法をお願いし、行ってきたわけでございます。したがいまして、この問題が最近急に高率補助率との絡みで出てきたというわけではないのでございまして、従来からもこの問題には取り組んできているということでございます。そういう中で、あわせて高率補助率の問題も補助金整理合理化の一環として今回取り上げたというのが事実でございます。
  144. 米沢隆

    ○米沢委員 私が申し上げたいのは、このような高率補助率引き下げる場合には、先ほどからも指摘をされておりますように、国と地方の機能分担の見直しとか財政費用の負担見直しとか、そういう諦めが行われて初めてなされるものであって、そういうものを棚上げにして、今から議論しますから金だけは削減させてくれ、こういうやり方はおかしいのではないか、こう言っておるのです。
  145. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今、委員がおっしゃいましたような御意見につきましては、地方制度調査会からも昨年末に答申があったわけでございます。しかし、片方におきまして臨調答申その他等においては、やはり補助金整理合理化のためにその一環として高率補助率も手をつけるべきであるという御意見もあったわけでございまして、そういうようなもろもろのことを総合的に勘案いたしまして、今回の法案では、そのような基本的な問題もこれあり、それを今後検討していく、しかし、補助率引き下げ問題も行うが、それらのこともあるので暫定的な措置としてとりあえず一年間ということで、法案提出しているということでございます。したがいまして、委員が御指摘のような点も我々としては十分念頭に置いているということでございます。
  146. 米沢隆

    ○米沢委員 そういうことで政府としては、例の大蔵自治厚生省の三省と自民党の間での申し合わせということで、これから一年間にわたりまして特にこの社会保障費等の負担の仕方等について検討がなされるというふうに聞いておりますが、この際、厚生省はこういう議論をするということ自体に何か反対だったというような報道もありますが、これはどういう理由ですか。
  147. 正木馨

    ○正木政府委員 先生のおっしゃいました反対というのはちょっとわかりかねるわけでございますが、厚生省も六十年度予算案の編成に当たりまして、非常な厳しい財政状況の中で非常に苦慮をしたわけでございます。そういった中で、臨調、行革審の答申を受けまして、政府全体として高率補助、二分の一を超える補助金について一割引き下げを行うということ、このことによりまして社会保障水準というものの引き下げは行われない、また、その引き下げに伴う地方負担については所要の財源措置がなされるということでございますので、厚生省といたしましても今回の予算案の中でああいった措置をとっておるわけでございますす。
  148. 米沢隆

    ○米沢委員 この見直し議論は、これから一年かけてやるんですよね。ところが、例えば大蔵大臣だって中曽根総理だって、いわゆる次の年、六十一年度も社会保障費の国の補助率は今提案されておるような格好でやりたいというようなことを再々述べておりますね。これは検討した結果の議論であって、検討する前からもう国はそのままやるんだということであれば、検討することなんかないんじゃないですか、大蔵省
  149. 平澤貞昭

    平澤政府委員 この問題につきましては、今厚生省の方から御答弁がありましたように、三大臣の合意もございます。したがいまして、その検討を行い、その結果に従って今後大蔵省としても政策をとっていきたいというふうに考えております。
  150. 米沢隆

    ○米沢委員 余り時間がないから、的確に答えてほしいんですがね。今から検討されて、見直しをした結果整合性を持って補助率決めよう、こういうふうにしているのでしょう。ところが、まだそういう見直しを見ないままに実際は予算に組んだ、だからその議論を今から一年かけてやりましょうというんだね。そういうことを言いながら、既にもうことし削減したような格好で来年もやらしてもらいたいというような話が出てくるのは、大蔵省としては不謹慎じゃないかと言っておるんだ。
  151. 平澤貞昭

    平澤政府委員 そのような発言を大蔵省の方でしているということはございません。検討の結果を踏まえて、我々としては六十一年度以降を考えていくということでございます。
  152. 米沢隆

    ○米沢委員 この高率補助率引き下げで一部地方財政負担を転嫁する、こういう問題につきましては、御案内のとおり、発表されて以後直ちに地方自治体から猛反発を受けましたし、自治省も大変反対の論戦をされてきたわけでありますが、自治省として、このような大蔵省案に対する対案というような格好でみずから補助金削減案みたいなものをつくられましたよね。これは新聞にも報道されましたが、その自治省独自の補助金削減案というものを支えている哲学といいましょうか、物の考え方といいましょうか、それは一体どういうことであったのでしょうか、自治大臣にお尋ねします。
  153. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 私の知っている限りお答えいたします。  国庫補助金整理合理化につきましては、地方制度調査会あるいは臨時行政調査会で答申がなされておるのでありますが、私どもはこれを踏まえて、整理合理化の方策としては、自治省の財政局の考え方をメモといたしまして昭和五十九年九月に取りまとめたところでございます。  その基本的考えでは、国の補助金等整理合理化は、国、地方を通ずる行財政の簡素合理化地方公共団体の自主性及び自律性の尊重の観点から、事務事業の廃止、縮減を行うとともに、本来地方の自主性に任すべきものは一般財源に移行することを基本として推進すべきであるということとしておるのであります。  また、国と地方との間の機能分担のあり方を見直すことなく国庫補助負担割合を一律に引き下げることは、国の財政負担地方に転嫁するにすぎず、国、地方を通ずる行政改革の基本的理念にもとるものであるというふうに考えたところでございます。
  154. 米沢隆

    ○米沢委員 今自治大臣がおっしゃった補助金整理合理化するに当たっての方針というものは、まさにそういうやり方でなければならぬ。私もそれは賛成です。  総務庁長官は、こういう考え方についてどういう御見解ですか。
  155. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 国と地方との間のいろいろな論議、これは古くて新しくて、しょっちゅう続いておる問題でございます。  ただ、補助金削減といった場合に、これはやはり見直してやらなければなりませんが、基本は納税者の立場だろうと私は思います。だから、それをやることによって納税者の負担が軽くなる、あるいは軽くならないまでもふえるものを抑えることができる、こういう観点でやるのがこれは本筋であろう、かように思います。  しかし補助金そのものは、これはいろいろな国の施策なり地方の施策を進める上で非常に重要なことですから、世の中がどんどん変わっていけばおのずから削減といっても限界があるし、だんだんふえていく性格を持っているものである、こう考えておるわけですが、いずれにいたしましても補助金を見直すといった場合には、やはり機能分担、そしてそれに伴う国あるいは地方財政負担をどう考えていくか、こういう基本認識の上に立って、今自治大臣がお答えになったような考え方、これは有力な、考えなければならぬ方針だと思いますが、それらを踏まえてやるべき筋合いのものであろう、かように考えます。
  156. 米沢隆

    ○米沢委員 そこで大蔵省にお伺いいたしますが、そういうような考え方で自治省としては、ほぼ大蔵省が提案したのと同額ぐらいの削減案をつくられました。ところがそういうのをすべてだめにして。大蔵流を固執されたわけでありますが、その自治省が出してきた補助金削減案の何が問題であったのか、なぜそれをほごにしたのか、それをほごにしてなぜ大蔵流のものを押しつけたのか、その理由をはっきりしてもらいたい。
  157. 平澤貞昭

    平澤政府委員 予算編成の段階におきまして、自治省から正式にそういう案が出てきたわけではございませんが、自治省としての考え方は我々としても自治省から伺ったところであります。  したがいまして、その考え方のうち六十年度予算編成の際にとれるものはできるだけとろうということで、今回提出いたしました法案の中に、いわゆる自治省のお考えの中で例えば人件費補助見直しとか、あるいは同化定着したような補助金の廃止あるいは一般財源化とか、それから統合メニュー化とか終期の設定とか、そういうものについてはできるだけ採用しておるわけでございます。そのうち、法律的な手当てが必要なものは今回の法律案にも入れているということでございまして、自治省案を頭から大蔵省として否定したということではございません。
  158. 米沢隆

    ○米沢委員 国と地方負担率見直し自治体により大きな財政負担を求めようとするこの背景には、やはり泥沼状態だと言ってもいいような政府の借金財政に比べて地方財政はまだそれほど悪くないという大蔵省の認識があるんだと言われておりますが、自治省としては、うらやましがられるほど財政状況が好転をしておるのかどうか、その点について大臣にお伺いしたいと思います。  私は、地方財政がかなり余裕があるというこの認識がある限り、六十一年度以降も高率補助率引き下げ地方に迫るであろう、こういうふうに考えざるを得ないわけですね。そういう意味では、地方財政が豊かであるとか余裕がある、ゆとりがあるという、イコールこれは、今から一年かけていろいろな負担議論をする以前に、当然のごとくに高率補助金の引き下げを今度は定着化させる、そういうものにつながっていくんじゃないかな、こう思うわけでございます。いわゆる国と地方財政の比較というものが即このような高率補助金の制度を定着化させるか否かという、そういうものにダイレクトにつながっておるような感じがしないわけでもありません。だからそういう意味では、自治省としては財政も結構うまくいっておりますなんということを、そう認めればそのまま六十一年以降もこのような措置が続いていくと見なければならぬのじゃないかな、こう考えるのでございまして、今から大臣がおっしゃる地方財政の状況というものに関する考え方は、もっと具体的にかなり細かな議論をした上で私は見解を述べてもらわねばならぬのじゃないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  159. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 国が非常に厳しくて、地方が今先生がお話しのように豊かであるというような議論が一部にないことはないと私は思っておりますが、実際上私ども担当している者といたしまして考えてみますと、現在、今日までに地方債というものの借り入れで残って、今後返していかなければならないものが五十数兆ございます。同時に、昨年から地方交付税の借り入れ――今まで借りていた、それを制度を改めたのでありますが、それによる交付税を借りたのを返していかなければならぬお金が五兆程度あるわけでありまして、五十七兆以上のマイナスを今実際地方としては背負っておるというのが数字でございます。  それで、現実に今地方財政状況を三千有余の市町村について見ますと、いわゆる赤信号と言われる公債負担率二〇%以上というような団体が、三千余のうちの四分の一近く、八百二十団体あるという現実でございまして、そういうことから考えまして、私は地方財政も極めて厳しい。  ただそこで、一部の地方のうちには、給与と申しますか年末の手当、年度末の手当を上げるというような例もあるのでございますが、これは私ども大変厳しく対処して、個別指導をしておるところでございますが、いずれにしろ今地方財政は非常に厳しい。だから国と同じように行政改革を進めていかねばならぬ。  現実に相当行政改革を進めておるところもありますが、まだまだ住民からいろいろの批判を受けているところもあるのでありまして、こういうのをバランスをさせてどんどん節約を中心に進めていくために、私どもは本年の一月二十二日に地方行革大綱というものをつくりまして、地方も非常に厳しい財政状況にありますので、できるだけ今のような節約、緊縮、合理化というものを図ってまいっているところでございます。
  160. 米沢隆

    ○米沢委員 今自治大臣からお答えいただきましたように、自治省がつくられた公債費負担比率の分布状況、この一覧表を見ますと、大変地方自治体も、トータルでは確かに今回はとんとんのような状況であったかもしれませんが、中身を見ますとかなり問題があるような気がしてなりません。  特に、おっしゃいましたような危険ラインといいます公債費負担が二〇%以上のところは御承知のとおり地方債の発行を禁止されるようになっておりまして、そこらが急激にこの十年ぐらいの間にふえておりますね。あるいは一五%から二〇%ぐらいの黄信号と言ってもいいと思いますが、ここらの地方団体もこの十年間に相当ふえておりまして、全国の自治団体のうちの約四五%ぐらいは黄信号か危険ラインに到達しておる、こういう状況でございます。  そういう意味では日本の景気判断と同じでございまして、日本の景気はよくなったよくなった、こう言っておりますけれども、いいところではとてつもなくいいが、悪いところは全然どんよりして薄日さえ差さない、あわせてみればよくなった、こういうような状況と同じで、地方公共団体の中身も、いいところは物すごくいいが、悪いところはとことんだめだ、こういうふうに両極に分化しておるような感じがしますね。そういう意味では自治省としては、やはり疲弊せる地方経済みたいな、そういう立場に立って、このような一律カットがどういう影響を与えることになるのか、そういう判断を強く主張してもらわねばだめなんじゃないか、私はこんな感じがしてなりません。  と同時に、地方公共団体間の財政が、余りにもいいところと悪いところと極端になり過ぎる。私はこれは、それなりに自治省としても公平にするといいましょうか、バランスをとらせるような方法論を考えてしかるべきだと思いますが、今何かそういうような議論でもありますか。
  161. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 今お話しのように、裕福な県と、つまり財源のある県と、非常に貧困と言ったらあれでございますが、貧しい県、地方団体があることは事実でございまして、実は地方財政の問題も、国の制度と同じように、相当これは改革していくべき点も税の面でもあると思います。  そういう意味で、地方交付税という制度はあるわけでございますが、しかしそれは富裕県とそれから貧乏な県との国税における調整でございまして、実際、例えば神奈川県とかそういうところは相当裕福である、宮崎県のような、失礼でございますが相当こうだということはよくわかっておりますから、そういう点はひとつ今後、どうせ早晩地方税制あるいは地方財政という問題を検討すべき時期が来ると考えておりますので、そういう点もあわせ含めて検討すべき極めて重要な問題であるという認識を私は持っております。
  162. 米沢隆

    ○米沢委員 そこで、このような高率補助率カット措置をやると同時に地方財政の面倒を見た、こういうふうに言われておりますね。  先ほどから議論になっておりますが、一千億円は地方交付税の特例加算で行う、その他の四千八百億については建設地方債で賄う、こういう議論でございますが、先ほど申しましたように、まさにどん底にある地方自治団体にとって、こういう財政の援助そのもので果たして財政はうまく回るような措置であったのかどうか。十分であるのかどうか。そのあたりは自治省としてどういうようにお考えですか。
  163. 土田栄作

    ○土田政府委員 マクロ的には地方財政計画で五千八百億の財政措置をいたしますが、個別の団体につきましては地方交付税の算定を通じまして財政措置をする、こういうことになるわけでございます。  したがいまして、その場合に、地方団体によりましては、例えば生活保護世帯が非常に多いために生活保護費が余計かかるというような市がございますけれども、そういうふうなところにつきましては、生活保護費に係ります単位費用を上げますとか需要算入をふやすということでの財政措置をいたします。  それから、建設地方債につきましては、投資的経費に見合った配分をいたすわけでございますが、これの元利償還につきましても地方交付税に算入するという措置を講じますので、当面と申しますか、昭和六十年度につきまして、それぞれの地方団体につきましては直接持ち出しになるような財政負担というものに出てまいらないわけでございますけれども、四千八百億という借金をさらに積み増すということになりますから、その分だけまた元利償還費というのは将来かさんでくる。その分は地方財政の圧迫要因になるということでございますので、私どもとしても将来的な対応といたしましては、地方財政の健全化のために、できるだけ地方債を抑制して地方財政の健全化を図るという財政運営をするように地方団体を指導したいと思いますし、それから地方財政計画の立て方にしても今後十分配慮してまいりたい、そう存じております。
  164. 米沢隆

    ○米沢委員 今度の財政措置が五千八百億円についてそれぞれなされた。そして一年間やってみて、それ以上に地方財政がおかしなことになったとなれば、これは清算されるたちのものですか。
  165. 土田栄作

    ○土田政府委員 五千八百億円はそこの部分についての計算でございますので、五千八百億の分につきましては清算ということはないわけでございます。そのほかの、本体になります地方財政計画は一応収支の均衡ということを見込んでおります。  ただ、例えば非常に景気が悪くなりまして税が落ち込むというようなことで地方財政計画自体に穴があく、あるいは特定の団体につきまして税の減収が起こるというようなことでごございますれば、その場合は例えば減収補てん債の発行を許可するとか、そういう形での必要な地方財政対策を講じてまいるということでございます。     〔中川(秀)委員長代理退席、堀之内委員長代理着席〕
  166. 米沢隆

    ○米沢委員 次に、義務教育費国庫負担金等における旅費及び教材費の一般財源化の問題について簡単に御質問いたしますが、文部省の方、来ておられますね。この旅費と教材費を一般財源化した理由はどういうものですか。
  167. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 義務教育費の国庫負担制度は、先生御案内のように、明治二十九年以来という長い歴史を持っておるわけでございますが、教職員の給与費を中心にその整備が年々図られてまいりました。こういった中で、旅費と教材費につきましては、昭和二十年代あるいは三十年代に地方財政が大変苦しかった時代、そしてそれが父兄負担に転嫁されるというような実態がございました時代に、その問題を解消するためにということでつけ加えられたものでございますが、その後の最近の状況等を見てまいりますと、相当額のものを各地方公共団体が整備をするという状況が定着してまいっておりますし、また一方、国の財政事情が大変厳しい状況になってきておるというようなこともございますので、そういった点を総合的に勘案をいたしまして、地方財政措置の方で適切な御配慮をいただくということで一般財源化をするということになったわけでございます。
  168. 米沢隆

    ○米沢委員 旅費及び教材費を一般財源化するということは、教材費だとか旅費等についてはもう既に地方公共団体で措置できるということを前提にして一般財源化されたわけですね。族費、教材費あたりは一般財源化に従って即大体似たようなものが計上されておればまさに文部省のおっしゃるとおりでございますが、お聞きしますと、各地方の今年度の予算なんかを見ますと、実際は減額計上されたりあるいはつけてないようなところがある、こういう実態も個々にはあるんですね。そういうものに対して一体文部省はどういう責任をとるのか。  同時にまた、もしそういうものを地方公共団体で何とかして捻出しろということになれば、これは父兄負担あたりにはね返ってくるたちのものじゃないか、そのあたりを考えた上での一般財源化なのかどうか。もし父兄負担あたりにはね返ってくるような状況があるならば、またもとに返すような用意があるのかどうか。その点文部省の見解を聞いておきたいと思います。
  169. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 先ほど申し上げましたように、各地方自治体におきまして毎年同じ程度の額が計上されているということが既にかなり長い期間続いてきておるわけでございますので、いわば定着化をしてきたという判断でこういう措置をとったわけでございますが、この点につきましては、この法案の成立を見ましたような暁にさらに各地方公共団体に対しまして十分その趣旨等を徹底をし、適切な額が確保されるように指導を行ってまいりたい、かように考えておるところでございます。
  170. 米沢隆

    ○米沢委員 願わくばこういうものが父兄負担にはね返ってくるようなことにならないように十分の指導をいただきたい、こういうふうに思います。  それから今度は、行革関連特例法の一部改正の一年繰り延べについて簡単に質問したいと思います。  厚生省の方にお伺いしますが、厚生年金保険事業等に係る国庫負担金の繰り入れ等の特例関係、それから児童手当の支給要件に係る特例関係ですが、どういうような決着を見込まれておるのか簡単に説明いただきたい。
  171. 長尾立子

    ○長尾政府委員 お答えを申し上げます。  今回の行革関連特例法によります厚生年金保険の国庫負担の繰り延べの措置につきましては、極めて厳しい国家財政の状況ということを勘案いたしまして、一年間この特例措置延長するという形の措置をとったわけでございます。  この特例措置の今後の扱いでございますが、この点につきましては、行革関連特例法趣旨に沿いまして、すなわち将来にわたります年金財政の安定が損なわれることのないよう、特例適用期間経過後におきまして、国の財政状況を勘案しつつ、できる限り速やかに繰り戻しに着手するというのが政府の考え方でございまして、私どももそのような方針に沿いまして努力をしてまいりたい、と思っております。
  172. 小島弘仲

    ○小島政府委員 児童手当制度につきましては、特例法におきましても、特例法の期限切れまでの間に抜本的な見直しを行うよう規定されておるところでございます。  この改革問題につきましては、昨年十二月、中央児童福祉審議会からの意見具申をいただいたところでございますので、現在この意見具申を参考にいたしまして改革案を策定し、今国会に提案すべく検討を急いでおるところでございます。  何分にも御提案の改革の内容が大幅でございますので、六十年度はいわば実質的な経過期間として、改革案は六十一年度から実施したいというふうに考えておるところでございます。
  173. 米沢隆

    ○米沢委員 今それぞれお答えいただきましたが、例えば厚生年金の繰り入れの特例措置は、五十七年度から始まって七の六十年度でトータルで九千四百七十億円にも上りますね。これを元利合計して返してくれるということになっておりますから、一兆円を超えるような膨大なこれは繰り延べになっておるわけでございます。一体この金を、行革特例法案のときにもいろいろ議論になりましたけれども、どういう格好で返していくのか。これも今からの協議だと言われればどうしようもありませんが、大蔵省としてどういうような方針を持っておられるのか、その点を聞きたいと思います。
  174. 平澤貞昭

    平澤政府委員 この問題につきましては、五十八年九月三十日の衆議院の行革特別委員会でのやりとりがございまして、その際に林厚生大臣からお話し申し上げているわけでございます。要するに、「特例適用期間経過後において、国の財政状況を勘案しつつ、できる限り速やかに繰り入れに着手する」ということでございます。  したがいまして、この際の方針に従いまして、繰り入れ減額分については財政当局としても返済してまいりたいと考えておるわけでございます。
  175. 米沢隆

    ○米沢委員 それから、文部省の方にお尋ねしますが、例の公立小中学校の学級編制の標準等に関する経過措置特例、ことしは従前に返ったような措置がなされましたが、これはこれから先ももう全然関係ない、そのままこれは除いて特例法は考えていい、こういうことでしょうか。
  176. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 四十人学級についてのお尋ねでございますけれども、現在の標準法におきましては、四十人学級につきまして昭和六十六年度までに達成するということが法律措置をされておりまして、それに至るまでの経過措置を、毎年完成に近づけるようにということで政令措置で講ずるということになっておるわけでございますが、これに対しまして行革関連特例法の第十三条の規定は、このような経過措置を定める政令につきまして「特に国の財政事情を考慮」してやるべきだということが法律上義務づけられているという性格のものでございます。  現在御審議をいただいております昭和六十年度の予算編成に際しましても、この趣旨を体しまして、国の財政事情を十分考慮しながら、教職員定数の自然減が相当数毎年ございますので、その自然減の範囲内で四十人学級を実施するということで、昭和六十年度に関しましては児童減少市町村というものに限りましてこの措置を行うというような状況でございまして、今回の御提案申し上げております法律におきまして、同じ行革関連特例法の十三条につきましてはそのまま同様に、他のケースと同様に一年間延長ということでお願いしておるものでございます。
  177. 米沢隆

    ○米沢委員 大蔵省に確認しますが、この行革関連特例法はまさにことし一年であって、それから再度また何とかお願いしますということには絶対なりませんね。
  178. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今回提案しました法案の中に入っております行革部分の中でも既に制度的に恒久化したものにつきましては除いて、一年延長をお願いしているわけでございます。  今後を考えますと、例えば厚生年金とか共済につきましては六十一年度から本格的な制度に改革が予定されております。それから、児童手当の問題につきましても予定されているわけでございます。あるいは地域特例の六分の一につきましても、補助率引き下げ全体の中で今後検討が行われるわけでございます。したがいまして、そのような各般の改正が行われることになるわけでございますから、現状のままの姿で延長ということはあり得ないということでございます。
  179. 米沢隆

    ○米沢委員 最後の言葉がちょっと引っかかるんだけれども、現状のままでは延長はしないけれども、新しく国民年金法が改正される、児童手当が改正される、あるいは公共事業の高率なんかも今から見直しが行われる、その後新しくできた制度の中でもう一回またこれと似たような制度をするという、今の御答弁は、するかもしれないという可能性を秘めた答弁ですか、それは。
  180. 平澤貞昭

    平澤政府委員 若干舌足らずでございましたけれども、この行革関連特例法の六十一年度以降の取り扱いにつきましては、その対象となっているそれぞれの制度の先ほど申し上げましたような改革実施の状況等を見きわめた上で考えていきたいということでございます。したがいまして、その中には例えば補助負担等の問題、これはいろいろ検討するわけでございますからその検討の中でどう取り扱うかということもあわせて検討することになりますので、その検討の結果に従って行うということになるわけでございます。したがいまして、現在のまま、そのまま単純に延長するということはございません。恐らく大部分のものはいろいろの制度の改革の方向が決まりまして、そちらでそれぞれの措置が行われるということになろうかと考えております。
  181. 米沢隆

    ○米沢委員 例えば厚生年金の問題に限って言いましても、今、国民年金等の改正法案が通るだろう。新しい制度になりますね。ですから、制度そのものが新しくなるんだから、また金を貸してくれという措置はそのまま続けたとしても、制度そのものが変わったんですから現状のままでは延長しないという言葉になってしまいますね、それは。私が申し上げますのは、新しい制度になった後、またぞろこれと同じような趣旨で金を貸せなんという議論はしないんでしょうねと言っておるんだ、これは。はっきりしてくださいよ、するならすると、しないならしないと。
  182. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今お挙げになりました厚生年金、それは当然共済も含まれるかと思いますけれども、六十一年度より根本的な制度改革が予定されているわけです。そういたしますと、厚年あるいは共済に対する国庫負担の仕組みも基本的に変わってまいります。したがいまして、そういう変化、改革が行われますので、その改革の中に当然のことながら取り込まれてしまうということが予想されるわけでございます。そういう意味で申し上げているわけであります。
  183. 米沢隆

    ○米沢委員 制度が改革されるなんというのはもうみんな御存じのところで、そんなのを聞いておりはしませんよ。制度が改革された後もこのように金を貸してくれという議論をするのかしないのか、それをはっきりしてくれというのであって、そんなごまかした議論をするといかぬな。もしそれであれば、そのまま延長するような気持ちがあるならば、一年間だけ何とか再延長さしてくれなんというのはこれはごまかしだね、そんな法案は。はっきりしなさい、それは。
  184. 平澤貞昭

    平澤政府委員 御存じのように年金、共済は長期の年金計算に基づいて行われておりまして、(米沢委員「わかっている、わかっている、そんなものは」と呼ぶ)そういうものの中に取り込まれてくるわけでございますから、制度そのものとしては問題がなく改革されていくというわけでございます。
  185. 米沢隆

    ○米沢委員 だから、制度はスムーズに改革される、その際に大蔵省としてはまたぞろ繰り入れの措置あたりをさしてくれと言うのかどうか。はっきりしたらどうですか。
  186. 平澤貞昭

    平澤政府委員 その制度の改革の中で国庫負担あり方そのものが議論されるわけですから、その中で当然この問題も取り込まれてくるということであります。
  187. 米沢隆

    ○米沢委員 制度改革に伴って国庫負担が変わるのはわかっていますよ。その問題と、つまり制度改革されて国庫負担あり方が変わるその問題と、ためている金から貸してくれという議論は別じゃないですか、こんなのは。一緒なの、それは。
  188. 平澤貞昭

    平澤政府委員 この厚年、共済の場合は繰入額についてのものでございますので、そのものとしてはためておるものからお借りするということではないわけでございます。  しかし、いずれにいたしましてもこの問題は今後の検討の中で考えていくわけでございますので、その検討の結果を見て、我々としては措置していきたいということでございます。
  189. 米沢隆

    ○米沢委員 大蔵省が来年も何らかの形で行革特例法案に盛り込まれておるような措置を頼みたいという意向が非常に色濃くにじみ出ておるような答弁だと理解をしなければなりませんが、私はそれはおかしいと思うのですね。これはことし一年延長というのをやって、それから制度改革が行われるにせよ、またぞろこの措置をそのまま続けようなんという議論は余りにも無責任だ。そうであればこんな提案の仕方自体おかしいですね。制度が変わりますから再延長さしてくれという趣旨ならわかるよ、そうあなたが言うならば。これはそういうことじゃないでしょう。そういう繰り入れ措置を残念ながらさしてもらいたいというのを延長しておる。繰り入れ措置そのものを延長しておるのであって、制度そのものが変わっていきますから、だから延長さしてくれという議論じゃないですよ。これ、はっきりしてくださいよ。そういう気持ちもあるならあるでいいじゃないですか。いつも、検討だ検討だ、今からの議論だと言って、最終的には決めてしまってからこうなりましたと。そうなれば、我々こんな議論は何にもなりませんね。いつも大蔵省のやり方はみんなそうだよ。検討します検討します、ある日ぼっと決めました、そんなやり方はおかしいよ。答弁をやり直しなさい。
  190. 平澤貞昭

    平澤政府委員 くどいようでございますけれども、これから制度が本格的に改正されるわけでございますから、その改正の中でこの問題を考えていくということでございます。
  191. 米沢隆

    ○米沢委員 水かけ論ですからもうやめます。  次は、六十年度予算における補助金等の交付先別の区分を見ますと、地方公共団体へ十一兆二千九百五十八億円、これは全体の七八・三%、その他へ三兆一千三百四十三億円となっておりますが、このその他の部分は、いわゆる特殊法人、認可法人、公益法人、民間企業、個人等で構成されていると思われます。  ここで問題にしておきたいことは、特に特殊法人、認可法人に対する補助金等整理合理化がどのような方針で行われ、どの程度の見直しが実現したかという問題でございます。この際、この六十年度予算におけるその他の仕分けはどうなっておるのか、それから、特殊法人、認可法人への補助金等はこの数年間でどのように変化しておるのか、数字を挙げて説明してもらいたい。そして、この特殊法人、認可法人への補助金等について、今回どういうような方針で見直されて、どのようなメスが入れられたか、特に具体的なものを挙げて御説明いただき、その結果、どういう増減になったのか。この点、事務レベルの問題でございますからさっさとお答えいただきたいと思います。
  192. 平澤貞昭

    平澤政府委員 まず特殊法人等に対する補助金の推移でございますが、五十七年から申し上げることといたします。  五十七年は二兆五百六十六、それから五十八年が二兆七百十二、それから五十九年が二兆三百六、六十年が二兆六百九十九というふうになっております。それから、続きまして認可法人でありますけれども、五十七年が四百八十二、五十八年が四百七十四、五十九年が四百六十一、六十年度が四百四十六ということでございます。それから公益法人に対するものでございますけれども、ちょっと五十七年の数字が今ここに入っておりませんが、五十八年度から申し上げますと、千百八十一、五十九年が千二百八十、六十年度が千百六十ということでございます。  そして、次の御質問でありますけれども、これらの法人等に対する補助金につきましても、地方団体向けあるいはその他民間団体向けと同様に厳しく削減その他について措置してきているところでございます。
  193. 米沢隆

    ○米沢委員 これは余り減ってませんね。具体的には特に目玉があったのですか。それともほかの補助金と同じように精査した結果だけだ、こういうことでいいのですか。
  194. 平澤貞昭

    平澤政府委員 この場合、例えば特殊法人等につきましては、国鉄に対するもの、これが最近大幅に減額してきております。しかし他方、住宅金融公庫に対する補給金等が例えば五十九年から六十年で五百五十億円ふえているというように、減ってきているものとともにどうしてもふやしていくものもあるわけでございます。それから、日本私学振興財団に対するものは五十八年から五十九年に三百三十一落ちておりますが、五十九、六十は御存じの横ばいというようなこと等々がございまして、数字としては、そういう特殊要因が大きいものですからかなりの振れがある。しかし方向としては、先ほど申し上げたように、そういう特殊要因を除けば、厳しく査定してまいっておるということであります。
  195. 米沢隆

    ○米沢委員 今後も特殊法人とか認可法人とか公益法人とか、行革の大変大きな問題の目玉になっておるところでございますから、厳しく査定をされて、補助金があったらがったがったと切っていくようなことで、結果的には特殊法人あたりの行革に資する、こういうことで頑張ってもらいたい、こう思います。  次は、補助金行政といいましょうか、補助金等を取り巻くいろいろな問題点について質問をさしてもらいたいと思います。  六十年度の一般会計予算に計上されております補助金等の総額は、御案内のとおり十四兆四千三百一億円で、一般会計歳出総額に占める割合が二七・五%、この五、六年大体三割強ぐらいをずっと続けております。それから、一般歳出に占める割合が四四・三%、これはもう四、五年大体四五%前後で推移いたしております。ことしは補助金の総件数は、一般会計分だけとりましても二千四百六十四件、また、この補助金等のうち法律補助が八三・一%、地方公共団体に交付されるものが七八・三%、約八割、また社会保障、文教、公共事業の三主要経費に属するものが八割、こういうように補助金等に関して基本的な数字が示されておるわけでありますが、補助金に関するこういう数字を見てどういう理解をされますか、大蔵省
  196. 平澤貞昭

    平澤政府委員 まず第一の一般会計に占める補助金の割合が二七・五、約三割、しかも一般歳出ではこれが四割強という非常に大きなウエートを占めているということでございますので、財政収支改善、特に歳出の節減合理化のためにはどうしても補助金整理合理化に取り組まなければいけないというふうに考えるわけでございます。そのことは四四・三という方も同様でございます。  次に、地方公共団体向けの補助金の割合が七八・三、八割を占めているわけでございます。このことは、やはり補助金整理合理化は同時に地方団体との間の事務事業あり方がどうか、それに基づく費用負担あり方がどうかということをあわせ検討しつつやっていく必要がある、先ほど来の委員のお説を数字の上でも裏づけているのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  197. 米沢隆

    ○米沢委員 この補助金が占めておる基本的な位置づけみたいなものをこういう数字で読みますと、今御答弁がありましたように、補助金と言えば、何か言葉意味からして大変余計な金だというふうにとられがちでございますが、やはりこの数字を見る限り、補助金というものが国と地方公共団体の財源配分に重要なかかわり合いを持って、そして社会保障とか文教とか公共事業等の数多くの国の基本的な施策を遂行していくための大変重要な手段になっておるということはよくわかります。それゆえにまた、今おっしゃいましたように、補助金等合理化をしていく場合には制度、政策そのものに踏み込んでいかないとだめだ、こういうこともよくわかります。同時にまた、そのためには、地方公共団体と国との関係で言うならば、補助金の背景にあるいろいろな事務分担とか費用負担あり方にも踏み込んで議論した上で補助金合理化がなされていく、こういう理解をすることに私もやぶさかではありません。  しかし、立場を変えてこの数字を見ますと、それにしても補助金と言われるものが国の一般会計歳出総額に占める割合が大体三割にも上り、また一般歳出に占める割合が四五%前後にも上るということは、いかに日本の政治が補助金行政の最たるものであるかという証明にもなるのではないか。同時にまた、中央から地方公共団体に交付されるものが七八・三%にも上ることは、いかにも日本の政治が、口で地方分権だとか地方の自主性とか言われながらも、実際は中央集権性が大変強い、また、この補助金行政を通じて地方自治の原則あるいは地方の自主性が少なからず侵食されている証明になるのではないかな、そう思うのでございますが、総務庁長官自治大臣、両大臣の御見解を聞かせてもらいたい。
  198. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 確かに補助金財政支出の大きな割合を占めておる。だからこれは中央集権だというのは、私はそういう御意見には遺憾ながら賛成しがたい。やはり、日本の国の行政の仕組みというものは、私は割合よくできているのではないかと思うのですよ。これが仮に、国は国で末端まで全部やってしまう、地方地方でこれまた自分のところだけでやるということになると、これこそ私は二重の組織になると思うのです。やはり、国の仕事を団体委任でやるなりあるいは機関委任事務でやるなりすることによって、かえって合理的な行政が行われているのではないか。ただその間に残念ながら、これは占領時代に地方制度が百八十度転換したものですから、従来から国と地方との間に信頼感に欠ける点がある、これは非常に残念なんですね。しかし、制度の仕組みとしては、日本は非常に賢い方法をやっているだろう。  そこで、この両者の間にある弊害をどのように除いていけばいいのか。一例を言えば、補助金行政によって国が余りにも地方に対して差し出がましい、はしの上げ下げまで文句を言う、こういったような弊害面を除去するということが基本ではないのか、私はかように考えるのです。だから、今の日本の制度は私は大変賢明な選択であった、かように考えております。
  199. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 補助率の一割カットについて地方へのマイナス要因、自治省としてどういうふうに認識しているかという御質問でございます。  本年度につきましては、先ほどから申し上げておりますように、極めて厳しい財政事情下におきまして、国庫補助負担率引き下げに伴う地方負担の増加に対しましては、交付税、それから建設地方債というものによりまして一応地方団体の財政運営に支障を及ぼすことがないようになっておると考えておりますが、一方、国庫補助負担金整理合理化の方法につきましては、地方の側からいいますと、やはり国、地方を通ずる行財政の簡素合理化、それから地方公共団体の自主性、自律性の尊重、こういう観点から事務事業の廃止、縮減を行いますとともに、本来地方の自主性に任すべきものは一般財源化すべきものであるということを基本として考えております。  したがいまして、昭和六十年度の措置はあくまでも暫定措置とすべきであるという立場におきまして、六十一年度以降に向けまして、地方団体の意向を踏まえた補助金整理合理化に取り組まなければならないと考えております。
  200. 米沢隆

    ○米沢委員 総務庁長官にお尋ねしますが、まあそれなりの見解を述べられました。しかし、補助金行政といいましょうか、あるいは先ほどちょっと触れましたように、どうも見ておりますと、中央が地方を信用してない部分が非常にあるような気がしてなりませんね。そういう関係からかもしれませんが、行政は全国的に公平で統一的な行政水準を確保しなければならぬ、そういう名分やあるいはまた自治体を行政指導するという名分のもとに、各省庁が過去において競って何段階重ねもの地方出先機関をつくったんではないか。結果的にはそれが膨張して、まさに今それが行革の一番頭の痛い問題に発展しておるのではないかな、そう理解する方が今日の問題としては的確ではないか、私はそう考えるのでございます。  そういう意味では、今日の中央集権的なコントロール体制、あるいは出先機関による統制といいましょうか、行政指導といいましょうか、あるいは地方自治体に対する細かな介入ですね、こういうような政治のあり方を国と地方の税源配分を含めて抜本的に変えない限り、単に補助金を削ったとかふやしたとかいう議論だけでは逆に矛盾を拡大していって、行革そのものに反するような議論になっていくのじゃないかな、そういうことを危惧するがゆえに、今総務庁長官に御見解をお尋ねしたようなわけでございます。その点、いかがでしょうか。
  201. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 確かに、現状を見ますと、補助金制度あるいは各種の法令にもありますが行政指導、こういったことで国が地方に過剰介入あるいは過剰な関与をしておる面がございます。  したがって、行政改革を進める際に、国の関与あるいは必置規制、こういうものの見直し、これは今国会法案を御審議願うことにしておりますが、同時に一番厄介な問題は、機関委任事務の整理でございます。この機関委任事務の整理、これも六月ごろ行革審から意見が出ますから、これに従って従来のいろいろな問題点をできる限り解決をしたい、かように考えております。  もう一点御質問の国の出先機関、これはかえって行革に反するのではないか、こういう御意見、これは確かに、終戦後のいろいろないきさつの中で国の出先機関が多くなり過ぎたということは率直に認めざるを得ません。現在、府県の中だけで出先機関が大体七千あるわけですよ。こういったことを改めるのには、今日通信、交通手段が非常に発達したからブロック機関をまず整理しなさいという御意見が一方にあります。もう一つは、そうじゃないんだ、やはりブロック機関というのは、日本が南北に非常に長いし、災害常襲の国だ、そうなりますと、日本のように経済から政治から文化、社会、すべてが東京一点集中は非常に危険だ、だからやはり分散をして中央の権限もブロック機関に委任をして、ブロック機関がそれなりの活動ができるようにしなさいという考え方ですね。ところがもう一方は、そうじゃないんだ、ブロックを先にやらなければいけないんだが、今言ったように、いや、そうじゃない、そこに置くべきであるという議論がある。そのときには、ブロックを残す場合には都道府県の中の出先機関の整理をすべきであろう。出先機関の整理は、私はやはり府県内の国の出先機関はできる限り簡素合理化整理すべきものは整理をしていく、これが順序であろう。幸い第二臨調答申も、最終答申では、その方針にのっとってやれ、こういうことになっておりますから、政府としてはこの方針に従って府県内の出先機関はできる限り整理をしていきたい、かように考えておるわけでございます。
  202. 米沢隆

    ○米沢委員 要するに補助金等整理合理化に当たっては、やはりその整理合理化の推進と同時並行的に、地方の分権化とか地方自治の自主性、自律性の強化策とか、あるいは国の事務の地方公共団体への移譲とか必置規制の廃止とか許認可権の合理化とか、中央官庁の物の考え方を変える等々の総合的な施策が行われなければその実行は期しがたいという立場で今後も補助金等合理化に当たっていただきたいということをお願いするわけであります。  さて、こういうような補助金行政の中で、非常に地方公共団体との関係でトラブルが起こっておるといいましょうか、自治体行革をしようとしても国の方にいろいろな要因があってできないというようなことがるる指摘をされておる今日でございます。  ちょうど五十九年、昨年の十月に地方自治経営学会というところが「自治体行革を阻害する国の側の要因その実態と改革の方向」という報告書を出しました。私はこれを見て、本当にそうなのだろうか、そんなに乱れておるのだろうかというような感じの――乱れておるというのはおかしいですね。国と地方関係が今、少しうまくいっていない、本当にこんな実態があるのだろうかと、あいた口がふさがらないというような例がたくさん指摘をされております。そこで、私はこの報告書に基づきまして、実態が本当にそうなのかどうか、実際改革が加えられようとしておるのかどうか。ひょっとしたら、ここに書かれておる例がもう既に過去のものであるかもしれません。しかし、五十九年といいますから、昨年のことでございますからそう過去の話ではない。そういう気持ちで、ちょっと各省庁の意見を聞いてみたいと私は思っております。  例えば多目的な複合施設、これは国の縦割り行政で大変なむだがあるという指摘がございます。このごろ各自治体でも、各種の施設の設置をする際に、それをできるだけ一カ所にまとめて複合施設として、そしてコストを下げようとする試みが数年かなり進んでおります。複合施設といいましてもさまざまなものがありますが、大きく分けますと、文化教育施設、公民館、コミュミティー施設、福祉施設、保健施設、スポーツ施設などの複合等、あるいはこれらの住民利用施設と市町村の支所や出張所などの行政機関とを一体にする場合、大きく分けてこの二つがあるのだそうでございますが、やはり複合施設は単独施設に比べまして土地が有効に利用できるとか、共通部門、玄関とか廊下とか事務室などを共同利用にすれば建設費も割安になる、あるいはまた、各施設相互間であいた時間帯を相互乗り入れで利用できれば施設の効率的な利用も図れる等々のいろいろなメリットがあって、市町村もそういう方向に動いておるのでございますが、しかし、こういう施設の建設国庫補助金がつくものについては、各省庁の規制や関与が加わるために、各自治体で複合化によるこのようなメリットが発揮できないというような愚痴がたくさん出ております。例えば、複合施設をつくる場合に、玄関とか出入り口をそれぞれ別に設けよと指導されるとか、事務室、図書室、料理室、トイレ等も共用が認められない。それぞれ専用施設として重複して設置させられるとか、さらに管理運営主体も別々に置くことが求められて、館長もそれぞれに設置せざるを得ない等々の不合理があるというような声が上がっております。  例えば例を挙げますと、これは縦割り行政はっとに有名でございますから、省庁間の協議はできないにせよ、同じ省内で非常にばかげた話がたくさんありますね。本当かどうかわかりませんが、例えば労働省ですが、働く婦人の家と勤労青少年ホームを同じところに設置しようとしたら、事務室、談話室をそれぞれ重複してつくれという指導がなされた、これは一体本当なのかどうか。何でこんなばかげたことを指導するのか。それから厚生省ですが、児童館と老人福祉センターをつくろうとしたら、図書室をそれぞれに重複してつくれと言われた。あるいは老人福祉センターと心身障害者福祉センターを同時につくろうとしたら、運営管理は別々にやれと、こう言われた。あるいは養護老人ホームと特別養護老人ホーム、心身障害者センター内の各種精薄者授産施設等々、みんな栄養士を別々に置けというような指導がなされた。保育所と児童センターをつくったら、玄関は別々にせよと指導された。何でこんなばかな話をするのですかね。よっぽど暇なんですかね、厚生省や労働省というのは。答えてください。
  203. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 それぞれの省でそれぞれ目的が違いますから、いろいろなそういった施設があることは事実でございます。しかし同時にまた、御指摘のような入り口を別にしろだの、どれを別にしろだのと、いろいろなことがある。これは従来会計検査等の立場もあってそうなっておったと思いますが、これは改めましたから、私はこれから先そんなべらぼうなものができるとは考えておりません。政府としては十分指導しまして、そういったむだのないように、また複合施設あるいは共同利用、こういったようなことで改革措置を講じていきたい。  なお、この点については、私どもの役所でことしの監察の対象にもいたしておりますから、改革をいたしたい、かように思います。
  204. 正木馨

    ○正木政府委員 厚生省の関係でございますが、確かに地方自治経営学会でいろいろ御指摘がございますが、私どもとしては、御指摘はありますが、事実とちょっと違っておるのもあるわけでございます。  社会福祉施設について申しますと、整備に当たりましては、利用者の便を考慮しなければなりませんが、できるだけむだを省いて効率的にやらなければいかぬ。出口は一つであっても効用を果たせればそれでいいわけでございます。例えて言えば、老人用の施設で老人用のリハビリテーションの施設と子供の遊び場を一緒にするというわけにいきませんので、それぞれの施設の機能に即した設備というものは必要でございますが、補助金が別だから別な設備を全部つくらなければいかぬというようなことは言っておらないわけでございます。確かに以前はそういうことがあったわけでございますが、その点はっきり基準の上でも示しまして、五十六年には各センター類の設置運営要綱におきましても、お互いに共用できるものについては効率的な設備をつくってよろしいということをはっきり言っております。  それからもう一つ、御指摘のございました栄養士の問題でございますが、例えば特別養護老人ホームと養護老人ホームが併設されておるといったときに、栄養士等の兼務は認めております。ただ、寮母さんであるとか直接処遇職員につきましては、それぞれ収容者の数がふえるわけでございますから、それ相応のものを置いてもらわなければなりませんが、共用できる分については共用して、兼務してもらって効率的な運営が図られるようにということを指導しておりますし、今後ともその面の徹底を図ってまいりたいというふうに思っております。
  205. 白井晋太郎

    ○白井政府委員 お答えいたします。  御御指摘のような問題もありましたところから、先ほど答弁がございましたように、労働省におきましても、五十六年から勤労青少年ホーム等と各種公共施設との合築を行っているところでございまして、この場合、ホームと各種施設との娯楽談話室、図書室等の設備につきましては共用する、また事務室、玄関等の重複設置を避けるように指導を進めているところでございます。
  206. 米沢隆

    ○米沢委員 先ほどからの答弁で、大体このあたりは改革されるやにお伺いしましたが、あとは、今度は省庁が違ったときの問題ですね。例えば文部省と厚生省の何か施設を一緒につくる。そのときに市町村では、文部省が来たら文部省の看板をかける。厚生省が来たら厚生省の看板をかける。笑えない話が実際あったんだから、そういう意味で、じゃ一つにしようといったときに、例えば厚生省は文部省の表札をかけてもいいというように割り切れるような余裕ができてきたということですな。
  207. 正木馨

    ○正木政府委員 厚生関係の社会福祉施設、例えば老人の施設とか身障の施設あるいは老人福祉センターと、他省、文部省とか労働省の関係の施設が一緒になる場合がございます。で、それぞれ補助金が出ている場合に、厚生部分についてはどうなのか、共用部分について補助金の適正効率という面でどういうふうに案分するかという問題はございます。  ただ、先生おっしゃいましたように中身厚生省の施設が入っておるわけですから、厚生省の施設が入っておるということはわかるように、社会福祉施設が入っているということは明らかにしていただかなきゃなりませんが、その辺は合理的に効率的に判断をして臨んでまいりたいというふうに私ども思っております。
  208. 米沢隆

    ○米沢委員 国の縦割による重複行政の中で、コミュニティー施設あたりを利用する場合、例えば婦人とか青少年と限られておればその人たちしか使えないとか、あいておってもほかのグループは使えないとか、そういうことがある。あるいは児童健全育成事業と青少年健全育成事業、これは厚生省と文部省の管轄ですが、扱うことは大体同じことをしながらそれぞれ別にさせられる。あるいはこれは総務庁も入っていますが、青少年健全育成が縦割でばらばらだ。例えば労働省、総務庁、警察庁、法務局が所掌する青少年福祉、青少年健全育成、青少年非行防止等の施策は、市町村の段階では重複することが多く、委嘱された委員事業の実施等で混乱を来しておる。毎年七月一日から七月二十一日までの間は総務庁では青少年を非行から守る強調月間、法務省では同じこの期間に社会を明るくする運動を展開するというように、同じ趣旨でありながら各省庁がそれぞれの事業をやろうとして、逆に自治体に御迷惑をかける。そういうものは、金目の問題だけではなくて、ある程度各省庁で合い議をされて一つにして一緒にやる、乗り込んでやるというような感じの行政指導みたいなものを総務長官としてもぜひやってもらいたい、こう思うわけでございます。  で、これは大蔵省にお聞かせいただきますが、起債許可申請事務の重複という点で、現在市町村からの起債申請には県の地方課、県の保険年金課、大蔵省財務部の三者に同じ説明をして、同じヒアリングをそれぞれから受けなければならない、窓口は県地方課に一本化できないのかというような話があるのですが、確かにそうですね。同じところへ行って同じ話をして、決めるのはどこかわからない、これはおかしいですね、大蔵省
  209. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 御指摘の点につきましては、地方債の発行につきましての許可事務に当たりまして大蔵省と協議をするという制度があるわけでございますが、その点についてだと思うわけでございます。  この点につきましては、協議を受けるということもございまして、都道府県知事に市町村が書類を提出いたすときに大蔵省の方にも書類を提出いただきまして、それの内容の説明を実は受けているということなわけでございます。これは、協議の許可事務を適切に行いますのに起債事業の実態を踏まえた上で判断をいたしたいために、実は市町村から直接にお聞きしているわけでございます。  ただ、このことによりましてその市町村の事務的負担が過大となるということがあってはなりませんので、例えば全額民間資金による分につきましてはこの手続を省略するというようなこともやっておりますし、また一般的に説明日を同じ日にするというようなことなどの措置をとりまして、できるだけ地方負担にならないように簡素化を図りながらやっておる次第でございます。
  210. 米沢隆

    ○米沢委員 今後できれば窓口を県の地方課ぐらいに一本化して、県レベルで自治大蔵厚生省あたりとの協議を進めるというような簡素合理化を徹底してもらいたい。これは要望だけいたしておきます。  それから、国庫補助金によるむだとか不合理という面で指摘されているものもたくさんありますね。申請事務の手続、手間の事務量がまさに膨大である、補助金をもらうために相当量のエネルギーを使わねばならないという問題ですね。必要書類、添付書類が膨大で多過ぎる。申請から実績報告まで十回以上も書類の提出、説明、そのための上京、陳情という金を使わねばならない。公立文教施設整備費国庫負担金なんというのは、同じ事業で十八回も各種書類の作成、提出が求められる。こんなのは本当に合理化できないのでしょうかね。あるいは費目別、品目別、課程別、系統別、箇所別に申請書作成、それごとに審査がなされる。補助金の額に関係なく、少額補助金でも申請書類は同じである、また変更申請の際には当初申請のときと同じ手続、手間をかけなければならない、こういうようなことで、国庫補助金申請に係る事務量はまことに膨大であり、各自治体とも非常に大きな負担となっておる、この悲鳴を上げておるわけでございます。  そういう意味で、臨調あたりにもこのあたりの簡素化、合理化みたいなものが提起されておりますけれども総務庁としてもこのあたりの隠れた事務量というのでしょうか、特に自治体としては中央官庁には、これ簡単にしてちょうだいなんて文句言えないですね。そういうことを考えた上で、もっとお上の方からそこらは簡単にしてやるという措置をとらないと、補助金を幾らカットしても、地方行革をやろうとしても、結果的には補助金業務をやるために人間を抱えねばならぬなんて、まさに矛盾じゃないか、そう思うのでございますが、長官の総括的な御答弁をいただきたい。
  211. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 確かに補助申請の事務が余りにも膨大で、やっかいで時間がかかるということは事実でございます。ただ、この際に一言つけ加えて言いたいのは、地方も考えてもらいたい。地方にも甘えの考え方があり過ぎる。ここらはやはり双方が考え直す点がありはせぬか。  しかし、いずれにせよ中央の側から地方に膨大な書類を要求したりやっかいなことを言っているということは事実でございますから、これはことしの補助金行政についての監察の対象として、事務手続の簡素化を目的にした監察をいたしたい、かように考えております。
  212. 米沢隆

    ○米沢委員 まだ膨大な質問が残っておりますけれども、時間が来ましたのでここらでやめたいと思いますが、最後に、ことしも大変御苦労なさって補助金整理をされました。昨年に引き続いてマイナスというのを達成されたのですから、皆さんの御苦労も大変多としたい、私はこう思っております。  そこで、今度はまた来年の話になってくるわけでありますが、今後どういう方針で補助金等整理合理化に取り組まれるか、従来の路線の延長線なのか、それとも、また新しい感覚で整理合理化と取り組むという何か新しいビジョンみたいなものがあるのかどうか、その点について総務長官にお伺いをしておきたいと思います。  それからもう一つ補助金ですから公平に、適正に使われねばならないというのは当たり前の話ですね。ところが、お聞きしますところ、例えば生活保護だとか児童扶養手当とかでどうも適正さを欠くような支給があるという話もある。それでは、貴重な税金を使うということでございますから、単なる補助金カットだけではなくて、補助金をやった場合にはそれが大切に、公平に、そして適切に使われる、そのことも同時並行的に求めていかなければまじめな者が損をする、こういうことになるわけでありまして、その点、特に厚生予算は六割くらいが補助金行政と言ってもいい中身でもございます。そういう意味で、生活保護費、児童扶養手当、この不正受給等についてどういうふうに対処しておられるのか。既に臨調等の指摘によってかなり努力をしておるとは聞いておりますが、その実績と今後の方針について最後にお伺いをしたいと思います。
  213. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 補助金整理合理化もだんだんその幅が窮屈になってきておることは事実でございますけれども、まだまだ補助金合理化、改革の余地はある、私はかように考えておりますが、いずれにいたしましてもやり方としては、事務事業見直し、機能分担、こういったような観点に立ちましてやっていきたい。  ただ、この点については、まだ先のことで何とも言えませんが、行革審等におかれましても御意見があるのではないか。場合によれば、また行革審から御意見が出るかもしれません。これはわかりませんが、出れば出たで、その線に沿って私どもとしてはやっていきたい、かように考えます。  なお、補助金を公正に使って効率を上げろというのはごもっともな話ですから、これは十分趣旨を体してやりたい、かように考えます。
  214. 増岡博之

    増岡国務大臣 御指摘のように、福祉政策は必要な人に適切な対策を講じることが肝要でございます。したがいまして、生活保護につきましても不正受給対策を厳正な態度で図っておるところでございます。  まず、暴力団関係者のケースがございますけれども、これには厳正な態度で臨まなければならぬ。あるいはまた長期入院患者の場合のレセプトの点検等、あるいはまた収入、資産の的確な把握、あるいは稼働状況等の調査を図ってまいりたいということでございます。また児童扶養手当につきましても、まず申請の支給事由の確認の適正化、並びにその後毎年受給資格の継続の資格があるかないかという有無の確認をいたしておるところでございます。また、昭和五十七年からは特別の監査を行っておるところでございます。
  215. 米沢隆

    ○米沢委員 まだいろいろと質問したいことはありますが、時間が参りましたので、きょうお呼びして質問のなかったところはまた次にやりますから、御了解いただきたいと思います。どうもありがとうございました。
  216. 堀之内久男

    ○堀之内委員長代理 この際、暫時休憩をいたします。     午後三時十三分休憩      ――――◇―――――     午後五時二分開議
  217. 越智伊平

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。正森成二君。
  218. 正森成二

    ○正森委員 日本共産党・革新共同を代表して質問させていただきますが、大臣の御出席との関係で質問の順番を変えざるを得ませんでしたので、多少おわかりにくい点があるのは御容赦願いたいと存じます。  まず、大蔵省に伺いたいと思います。  我が党は、一括法審議に際しまして、議院運営委員会で、「政府は「国の補助金等整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案」を撤回のうえ、各法律ごとに原案を作成し再提出すべきである。」という動議を提出いたしました。残念氏がら、各位の御賛同を得られませんでしたが、このような動議を提出いたしました理由は、本法案は、政府が地方自治自治体行財政をも臨調行革の対象として、国の負担補助率引き下げを内容とする改悪法案五十九本を一括して提出しているものであります。この中には、三年前に三十六本の法律一括してつくられた行革関連特例法延長案も一本として数えられております。これらを重複を避けて整理すると、合計七十五本の多数の法律改正が一括提案されているのであります。  この一括法は、社会保障、文教、農林水産、生活密着型公共事業関係を中心とするもので、所管省庁も厚生、文部、自治、農水、建設など九省庁にわたっており、いずれも長年にわたって血のにじむような国民の声と闘いを反映して築き上げられてきたものであり、国会においては、社会労働、文教、地方行政、農水、建設など八常任委員会、沖縄、災害など五特別委員会審議され、制定されてきたものであります。  しかるに、これほど広範多岐にわたる多数の法律を、国の負担補助率等の整理合理化という一点で一括し、補助金削減一括法案として提出するというやり方は全く前代未聞でありまして、関係委員会での制度改正のための必要な審議も不可能にするものであります。このようなやり方は、国会審議権を著しく制約するものであり、断じて容認できません。というのが我々の考えの基本であります。  そこで伺いたいと思いますが、昭和五十六年にこの法律案の中に入っております行革一括法案審議されましたときに、供託法の改正案というのが出てまいりました。これは主計次長は御存じだろうと思いますが、私は弁護士でございますからなじみが深い法案ですが、裁判所に民事事件の仮処分の保証金等で供託をいたしますと、それにはわずかながら利息がついておったのですね、二%とか三%とか。それを、財政が苦しいからという理由で勝手に利息は付さないということで、国民の利息のピンはねをしようということを提案した法案であります。これは明らかに行革関連法案でございました。ところが、これは三十六本の中に入れなかったのですね。独自に法務委員会に提案をされました。  そのときに、この点について、社会党の小林進委員であったと思いますが、質問に対しまして、奥野誠亮国務大臣は、  当初、法務省といたしましては、供託法の改正案を一括法案の中に入れてもらおう、こう考えたわけでございました。しかし、法制局の見解として、別建てが望ましいということでございました。一括する取り扱いは、国会運営からいうて例外でございます。常任委員会制度をとっておりますので、それぞれの法案には関係委員会があるわけでございます。でありますから、私は常道に従って、法制局がそういう見解である  ならば、法務委員会へかけることが筋だ、また、野党の皆さん方もそういう御主張をなさっておったわけでございまして、したがって例外措置はとらない、本道を行くということで供託法の改正案を別建てにさせていただいた、こういうことでございます。 こういう答弁ですね。社会党の小林進委員は、「いみじくもいま法務大臣のおっしゃった答弁は、私の言わんとするところなのです。おっしゃったとおりです。」こういうように褒め上げているわけであります。私自身も小林委員と全く同じでございまして、奥野誠亮法務大臣の、これが常道であるとか本道であるとか筋であるとかいう意見は、全くそのとおりだと思っております。  こういうように、政府部内でも同じ性格の法案について立派な見解があるわけですが、本法案については、我々は七十五本というように考えておりますけれども、こういうものを一本にして提出したことについて、奥野誠亮国務大臣の見解と対比して御見解を伺いたいと思います。
  219. 平澤貞昭

    平澤政府委員 まず私の方から御答弁申し上げます。  今回、五十九本、計算のしようによってはさらに多い数の法案一括化いたしました理由は、本日の委員会大臣からも先ほど申し上げたような趣旨でございます。法律立法趣旨目的が共通しているということで、従来法制局がたびたび各委員会等で御答弁したその趣旨に合致している範囲で拾い上げて一括化したということでございます。  それでは供託法の場合はどうか、こういうお話でございますけれども、あのときは、臨調答申が出ました際に供託法の部分はその答申の中に入っていないわけでございまして、当時行革特例法としてまとめましたのは、やはりその臨調答申を軸といたしましてまとめたという趣旨だと私は了解しておるわけでございます。  そういう意味で、今回の法案は、財政収支の観点その他大臣が申し上げたような趣旨から、一括して御提出しているというわけでございます。
  220. 正森成二

    ○正森委員 今、一応主計局次長から答弁がありましたが、これは供託法だけではないのですね。本会議でも出ましたが、電力用炭販売株式会社法等の一部を改正する法律案について、かつて昭和四十九年に石炭対策特別委員会審議されましたときに、「本法律案は別個の三法律案一括して提出しております点に問題があるように思われますので、この際その説明を求めます。」こういう委員長からの発言がありましたときに、当時の中曽根国務大臣が、「ただいま述べられた委員長の御意見、各委員がお述べになりました御意見につきましては、今後の法案国会提出にあたって十分考慮させていただきたいと思います。」というように、委員長発言の正当性を認める発言を当時の中曽根氏がしているわけなのですね。  それで、上田委員等に対する答弁の中で行革一括法案として提出された理由三つくらいにわたって大臣がお述べになりましたから私も伺っておりましたが、その伺った上でなおかつこういうように聞いておるわけですから、政治家としての政務次官の御答弁をお願いして、次に移りたいと思います。
  221. 中村正三郎

    ○中村(正三郎)政府委員 また大変難しい御質問でございまして、私の答弁では御不満かもしれませんが、私も大臣の御答弁を伺っておったのでございますが、三つばかりの共通項がある。国の財政収支改善を図るという目的で、国の歳出縮減を図るということ、それから財政資金効率的使用を図るために負担補助等見直しを行う、累次の臨調答申を踏まえての財政上の措置であるというような、このような共通のものを持っているわけでございまして、こうしたものはこの措置を総合的に把握していただく上でも、また御審議していただく上でも、一括して御提出した方がいいのではないかということがあるわけでございます。  また、行革関連特例法をどうして一括に取り込んだかということでございますが、今回の補助金整理合理化は、累次の臨調答申趣旨を踏まえてその実施を図るため、財政上の措置であるということにおいて行革関連特例法と同様の趣旨を持っている立法であるということと、やはり行革関連特例法の一年延長は、六十年度予算編成に当たり国の財政収支改善を図る見地から必要とされるという点で、高率補助引き下げと軌を一にするところである。しかも、同法の中にある地域特例のほとんどが高率補助率引き下げ措置に包摂されることとなるために、地域特例について重複適用を排除する規定が必要であり、これらが連動して適用されるようにするためにも一括法案として措置した方が適当であるということで、一括して御提出させていただいた、こういうことでございます。
  222. 正森成二

    ○正森委員 同僚委員の質問に対して大蔵大臣が御答弁になったのと同趣旨のことを述べられたわけですが、しかし、財政縮減とか効率的利用とか補助率の一律カットとか、共通点はありますけれども、そのもとをたどれば制度そのものの根幹に触れ、制度のあり方の問題になるわけですから、それはやはり長年この問題を手がけてきた当該委員会で実情を踏まえて慎重な論議をされることが望ましいということは言うまでもありません。  したがって、私は委員長にお願いしておきたいと思いますが、理事会等において連合審査の御要望も出ておるようでございますから、そういう点を踏まえて実情を踏まえた十分な審議がなされるように心から希望しておきたいと思います。委員長、いかがでございましょうか。
  223. 越智伊平

    越智委員長 はい、努力いたします。
  224. 正森成二

    ○正森委員 それでは、大臣がおられませんので、順序を変えて、厚生省来ておられますね。実情に関連することについて二、三お伺いをしたいと思います。  これはことしの一月末に、秋田の生活と健康を守る会というところから我々国会議員団のところへ参った訴えでございますが、同僚委員もお聞き願いたいと思います。  昨年の十一月十五日に、住所も名前もわかっておりますが、プライバシーの関係で姓は申さずに名前だけを申し上げますが、明子さんという三十四歳になる方だそうでございますが、生活保護を受けておられる方が妊娠をしたという事案であります。  この方は御主人が古物の回収等の仕事をしておられる方で、大体月六万円足らずの利益しかない。奥さんは、御主人が回収してこられた新聞や雑誌やその他を利用して古本屋を開きまして、家計を支えておられる。利益が五万円ぐらい出るのですが、古本屋の家賃が二万二、三千円かかりますので、実際の収入は奥さんが働くことによって二万数千円であるということで、子供を入れまして三人の生活ができないので、上積み部分生活保護をもらっているという方のようであります。  その方がお医者さんへ行きまして、どうやら妊娠しているということになって、ケースワーカーから何か変わったことがあればすぐおれのところへ言ってこいというようなことを言われていたものですから、電話をしたらしいのですね。その電話の録音テープがございまして、非常にリアルに出ておりますから、私は秋田弁はできないのですけれども、お聞き苦しいところはお許しいただいて、ちょっと再現してみたいと思うのですね。  ケースワーカーが、「産むんだったら生活保護から抜けてもらわなければ、あのよ」、「あのよ」とは語りかけですな。「これからきちんと母ちゃんと二人の稼ぎで頑張っていくから、何月何日付で生活保護を辞退しますってな、はっきり生活保護と、手、切って、それからだば産んでいいども、前にも話したように、今、生活保護を受けて親子三人の生活でもやっていけない人がたよ、保護もらってる人がよ、できてしまったと言ってしまえばそれまでだども。ただ、それだからといってそのままうちの方で認めてしまえば、後、際限がなくなってしまう。歯どめきかなくなってくるわけよ、なあ。」こう言って堕胎しろということを勧めているわけなのですね。  そしてその次に、いろいろ頼みましたら、「こういう状態を認めてしまえば、せば、まるっきり生活保護さ依存して子供産むという形になるべ。確かに腹の中にいることだから、確かに命だから、おれも本来ならば言うことではないけれども、自分たちで賄えない状況の中で、生活保護なければ、福祉から出してもらわないといけない状態だとすれば、福祉に頼り切って子供産むということは、これは、ちょっとうちの立場としては、認めるわけにはいかないし、おたく方もそれくらいの強い気持ちでいてもらわないと抜け出れない、生活保護から抜け出されないべ。そこ考えてもらいたいのよ。」こう言っているわけですね。  それでいろいろやりとりがございまして、省略いたしますが、「うん、今の段階ではね、うそでも何でも親戚、身内から月々何ぼの援助をもらえると――という書類を出して、そういう援助もらえるし、生活保護は何月何日で辞退するということであれば、うちの方としては、根本的に生活保護を打ち切れるが……。今の収入だけでよ、あだがだがやめたいという意思だけでは生活保護打ち切るということはちょっと難しいと思う。そういう考え方でよ、(産むことを)あきらめた方がいいと思うどもなあ。」と、こう言いまして、最後の電話の部分では「あきらめて、今後も生活保護継続するか、あるいは産まれる前に、半年前に、生活保護を辞退してその後で子供を産むか、どっちか一つだ。」こういうように言っているのですね。結局結論は、この人もこういうことを言ってきて、生活保護は切れないということは知っているのですね。だから、生活保護を切ろうと思ったら、うそでも何でもいいから親類から物をもらえるし収入はもっとふえるという書類を出してこい、そうすればそれを理由生活保護を切るということを言い、そして、それでも何でも産むというのならこっちは生活保護を切らにゃしようがないなあ、どっちにするかということを言っているのですね。  私がこの方の事情を調べてみますと、五年前に。長男の友一郎ちゃんという人が、当時三歳ですが、用水路にガードレールがついていなかったために水の事故で死亡したということで、ぜひとも一人欲しいということだったようで、それもぶらぶらしているのじゃなしに、御主人は古物回収で、本人は古本屋で一生懸命働いて、その足りないところを生活保護を受けているという人が妊娠したのに対してこういうことを言うということが起こっているのですね。これはやはり、昨年概算要求でこの一括法案が出まして生活保護基準が厳しくなるというようなことが出ておる中で、ケースワーカーが先を読んでこういう事件を起こしてきたというように思わざるを得ないわけであります。  これは記録を見ますと、水沢という課長がおるそうですが、さすがにこの課長は、今まで聞いたことのない大変なこと、担当者から確認し、所長とも相談しておわびの御返事をしたいというのが新聞に出ております。果たしてそういうような御判断なのか。それとも、名前を言って失礼ですが――ケースワーカーの名前はわかっておりますが、言わないことにいたします。このケースワーカーのような判断でこれからどんどん生活保護をお切りになるのか、そこら辺をちょっと伺いたいと思います。
  225. 正木馨

    ○正木政府委員 ただいまの御指摘のケースでございますが、実は予算委員会の際に松本先生から御質問がございまして、私どもそういったケースはあり得ないのではないかと率直に申しまして思ったわけでございます。しかし、御指摘がございましたので私田県を通じまして事実関係を調べさせていただきました。  先生から大体お話がございましたが、本ケースは五十九年の五月に保護を開始しまして、先生おっしゃいますように、御主人が病気、一歳のお子さんを抱えておるといったことで、奥さんも一生懸命働いておられた。ケースワーカーも、先生に申し上げるまでもないことでございますが、生活保護は最低生活の保障と同時に自立助長ということでございますから、できるだけ早く生活保護から脱却してもらうように指導することは当然のことだと思うわけですが、御相談があったときに、子供さんが産まれたならばということでやはり自立指導を強く進めたいということ、あるいは母体の健康のことも考えたのかもしれませんが、結論から申しまして、私ども適切を欠く指導であったということを思うわけでございます。それで、そのケースにつきましては上司の課長もあるいは所長もいろいろ配慮をいたしまして、担当者につきましては他の部署にかえるということで、その後のケース指導に支障のないようなことをいたしたわけでございます。  ただ、私どもこの点についてどういった点を反省してみなければならぬかと申しますと、このケースワーカーは熱心であったと思いますけれども、ケースの指導に当たって、査察指導員とか課長とかそういう人がおるわけですから、難しいケースについてよく相談するという措置をやはりとるべきではなかったか。それから、およそ本人の体にかかわることですから、もしそういう母体の健康とかいうことを心配するのであれば、お医者さんに相談するとかそういったような措置をとってやるべきなんで、個人的な判断だけでやるということはどうも適切を欠いたということであります。私どもとして、こういったケースが起こるということは生活保護の適正実施というものの趣旨を逸脱したということにもなりますので、これはやはり注意をしなければならぬということで、秋田県に対しまして注意をしますと同時に、その後全国課長会議もございましたので、個別ケースを余り具体的に申すのもなんだと思いますが、その事例を挙げつつ、やはり適切なケースワーク指導をするようにという趣旨の徹底を図ったわけでございます。  なお、あえて申し上げさせていただきますと、先生の先ほどのお話の中にありましたように、今回の補助率引き下げといったようなものが契機となってこういったケースが生まれたのではないか、そう思われるのは私どもとして非常に残念至極でありまして、今回の補助率引き下げに伴う問題についても、これは所要の財源措置地方に講ずるということで、やはり生活保護ですから、漏れがあってはならないと同時に乱れがあってはならないということで適正な実施指導はやってまいりたいと思っておるわけでございます。
  226. 正森成二

    ○正森委員 今御丁寧な答弁がございましたが、この方は母体には健康上問題がございませんで、ここに調べておりますが、かかりました医者が逆に憤慨して、こういうぐあいに健康な体なのに産んだらいかぬというようにケースワーカーが言うのはもってのほかだというように医者自身が言ったということが、私のところへ報告が来ております。  それから、私がこういうことを聞きましたのは、国と地方との負担区分調整の問題で、国民には直接影響がないというのが政府の公式の答弁なんです。しかし、上の方はそう思っておりましても、親の心予知らずと言いますが、あるいは先取りをして国民にはいろいろの影響があらわれてくるであろうし、既にもうあらわれてきているということが申し上げたかったわけであります。  もう一つ伺いますが、これもやはり先ほど取り上げた問題でございますが、前橋では母子家庭が生活保護を受けているのが全部で二百二世帯あるそうです。そのうち住居が判明している扶養者が百四十四名でございますが、これに郵送でアンケートを行いまして、母子家庭ですから、中には生別あるいは離縁または別居している男性がおるわけですが、そこに対して「あなたは離縁(または別店)していますが、次の事項について答えて下さい ①できるだけ早く復縁したい ②できることなら復縁したい ③全くその考えはない」こういうことについてアンケートをしているのですね。  これは生活保護を受けている母子家庭のお母さんにケースワーカーが聞いたというのじゃなしに、もうとっくに離縁している相手方の前の夫に対してこういうことを聞いておるというケースでありまして、これも前橋において弁護士その他から、これはプライバシーの侵害であり憲法二十四条の個人の尊重に違反するものではないかということで、非常に問題になっておるようであります。これに対して前橋市の青木という民生部長が「一部の質問に妥当性を欠くものがあった。福祉事務所では、両親のもとで子供が暮らすのが最適と、純粋な気持ちから質問内容を考えたのだと思う。しかし、人権やプライバシーに対する配慮がなかった。」こういうように答弁して、今後の調査のやり方を改めることを一応明らかにしたようであります。  そこで、厚生省に伺いますが、こういう問題について、私どもが既に質問しておりますので、把握しているかどうか、また、どうお考えになっておるか、あるいはどう処置されたか、伺っておきたいと思います。
  227. 正木馨

    ○正木政府委員 前橋市のケースでございますが、先生からのお話がございまして、この事実関係を私ども調べたわけでございます。  生活保護を受けておられる方の中には母子世帯もかなりあるわけでございますが、生活保護は当然のことながら補足性の原則というのがあって、その利用し得る資産、能力、あらゆるものを活用する、扶養義務の履行等々十分調査をする、こういうことになっておるわけでございます。  母子世帯の事例につきましては、非常に残念ながら、一部に離婚はされたけれどもなお事実婚関係にあられるとか、偽装離婚という言葉が適当かどうかわかりませんが、そういったケースがないわけではないわけでございます。そういったことがありませんようによく実情を調べるということは、私ども、不正受給の防止ということでこれはやって当然だというふうに思っております。  それから、前の別れた御主人は、別れておっても子供さんに対する扶養義務はあるわけですから、できるだけ扶養義務を履行してもらうように扶養義務の条件はどうかといったような調査もやる、これも適正実施という面で大事であると思います。  ただ、御指摘のケースは、先生おっしゃいますように、その扶養義務の関係についての調査をすると同時に、復縁する気持ちがあるのかどうかといったような意識調査もやっておるわけでございますが、これは個別のケースで訪問してそういったことを聞かれるということはあるいはあるかもしれませんが、アンケート用紙を配ってやるというのは調査の方法としてもいかがであろうと思いますし、生活保護の適正実施という面から、扶養義務の状況等あるいは現実にどういった状況にあるのかということを中心にやはり調査をすべきではないというふうに思います。本ケースにつきましては、前橋市自体におきまして、復縁の意識調査的な項目については除外をいたしまして調査をしたということでございます。
  228. 正森成二

    ○正森委員 ほかに二、三事例がございますが、時間が残りましたらまたさせていただくことにいたしまして、別の問題に移りたいと思います。  政務次官に伺いたいと思いますが、これまで政府が言明しておりましたことが再々変わっておるというケースがあるのですね。今一括法案が出ているわけですけれども国民に対してあるいは地方自治体に対していろいろ負担を求める、あるいは、言葉はどうかわかりませんよ、負担を転嫁するというような場合には、政府が言ったことは必ず守られるというか、守られてきたというか、そういう信頼が非常に大事だと思うのですが、残念ながら、最近の財政再建の過程でしばしば破られているということを指摘しないわけにはまいりません。  例えば、赤字国債を昭和五十年に発行いたしましたが、この昭和五十年のときには、御承知のように、赤字国債の借りかえはしないということは法律に明記されていなかったわけですね。大平蔵相が国会答弁の中で言っておるだけであります。  それを念のために、どう言われておるか読み上げますと、昭和五十年十二月三日の大蔵委員会の議事録でありますが、   それから国債の借りかえの問題でございますけれども、これは先ほどの御答弁にも申し上げたわけでございますけれども、国債管理の問題は政府の責任で行政権の問題としてやらしていたたきたい、政府を御信頼していただきたいということを私ども申し上げたわけでございます。  「御信頼」という言葉を使っているのですね。したがって、借りかえはいたさないで、十年満期の公債でございますので、十年たちまして昭和六十年ごとしですね。に現金償還いたしますということを国会にお約来いたします、予算の説明書にもそのようにうたってあるわけでございますので、御了承を賜れますまいかということをお願いいたしておるわけでございます。   それを立法化するつもりはないかということでございますが、立法する、しないの問題は国会の管轄の問題で、私からとやかく申し上げられませんけれども、私といたしましては、政府の国債管理という問題につきまして、これは行政府に信頼をもってお任せいただきたいということをこの際お願いをする次第でございます。こういうように「信頼」という言葉を二回にわたって使われております。  あるいは別のところで、   政府といたしましては、たびたび申し上げておりますように、この公債につきましては借りかえを途中で行わずに、満期のときに現金償還を一括して行うという方針で、そういう決意で当たっておるわけでございます。 中略いたしますが、   政府がお約束いたした以上は、六十年度借りかえなく全額現金償還を行うということを財政運営の基本といたしましてやってまいる決意でございますので、その点は十分御信頼をいただきたいと思います。 ここでも「御信頼」ということを言っておられるわけであります。そして昭和五十一年度の公債の発行の特例に関する法律案では、御承知のように国債整理基金特別会計法第五条の規定による償還のための起債は行わないものとするということで、ここで法律になったわけですね。  あるいは今度の一括法案の中に入っております厚生年金等の国庫負担減額分についても、特例後列恩をつけて返すという約束について、当時の鈴木内閣総理大臣あるいは村山厚生大臣はどう言っておられるかといいますと、昭和五十六年十月十二日の行財政改革に関する特別委員会議事録でありますが、鈴木内閣総理大臣はこう言っておられます。   この問題につきましては、先ほど来、大蔵大臣並びに厚生大臣からるる申し上げておりますように、これは保険財政に支障を来さないように必ず返す。金利はもとよりのこと、運用益につきましても適正な運用益を加算をして返済をする、こういうことを明確に申し上げておるわけであります。こういう国会の正式な委員会で速記をとり、明確にいたしておるわけでございますから、御心配のないように措置してまいる方針でございます。 速記をとるから大丈夫だということを言うておるのですね。速記を何ぼとっても、あかん場合はあかんのですな。村山国務大臣も、  いま森井委員の御心配の点でございますが、この法律ではっきり書いてありますように、これは三年間の特例措置でございます。 つまり、それ以上延ばさぬ。  したがいまして、昭和六十年度からはもとどおり二〇%国庫負担をいたしてもらうことに両省一致しているのでございます。 こう言っているのですね。渡辺国務大臣も、必ずお支払いをするということは申し上げて差し支えありませんということを言っておられますし、挙げればきりがないのですね。  最後に、十月二十八日にもう一度鈴木内閣総理大臣が出てまいりまして、   ただいま数点にわたりまして、本特例法案審議の過程において問題点として特に取り上げて御論議をいただいた問題につきまして、政府に対して答弁を要求されました。関係閣僚から明確にお約束を申し上げたところでございますが、私も最高の責任者といたしまして、ただいま各担当閣僚から申し上げたことは、誠実にこれを実行してまいることをはっきりお約束申し上げます。 こういうように二度、三度と大見えを切っておるのですね。それがことごとく実行されないということで今日の事態を招いたのですね。竹下大蔵大臣などの答弁を聞いておりますと、初めはそういうつもりだったのだけれども、第二次オイルショック等があって非常に難しいことがあったのでやむを得ずこういうことになったので御理解を賜りたい、中村政務次官の御答弁の要旨にもそう書いてあると思うのですが、それはもう既に承知しておるわけです。  しかし、こういうように御信頼を賜りたいと大平国務大臣、後の総理ですね、それから鈴本当時の総理大臣が二度三度とおっしゃったことが、借りかえの問題でも行革一括法案の問題でも、あえて昭和五十九年までに赤字国債から脱却するとおっしゃったことが六十五年に延び、それがまたどうやら危ないというようなことまでは言いませんが、本法案に関連のある部分でもそういう状況なんですね。御感想を承ります。
  229. 中村正三郎

    ○中村(正三郎)政府委員 委員指摘のとおり、例えば特例公債の問題をとりましても、借りかえは行わないこと、五十九年度までに特例公債から脱却することを政府の方針としてまいったわけでございます。  特例公債の発行は本来望ましくもなく、残高もできるだけ早く減少させることが望ましいという基本的考え方に立ってやってまいったわけでございますが、さっき委員にお答えの方まで言われてしまいましたので極めてお答えがしにくいのでございますが、その間大変な経済情勢の変化があったということでございまして、それが第二次石油ショックに伴う世界経済形態であったわけでございます。  五十四年に発生したわけでありますが、例えて言いますと、五十六年には見込みよりか三兆円の税収減があった。五十七年には六兆円の税収の減がございまして、中期展望に対して約十兆円の減少というものがあったわけでございまして、それぞれの方々がお答えになったときはそれを将来間違いなくできるであろうということでお答えになったのでございますが、その後のこうした世界経済の激変という中で、やむを得ずこうなってきたというふうに解釈しているわけでございます。
  230. 正森成二

    ○正森委員 昔のことを蒸し返すわけではございませんけれども、中村政務次官、五十六年の予算ですか、三兆円くらい赤字ができ五十七年に至っては六兆円というのも、私が予算委員会の総括質問で質問し指摘したことでございますが、それも天災ではないのですね。人災なんですね。  昭和五十六年度の予算につきましては、私どもが、税収の見込みを大蔵省が毎月の初めに出しますから、それで統計をつくってずっと線を伸ばしていったら、こういう状況では必ず三兆円前後の税収欠陥が出るということを指摘しまして、そして補正予算を組まなくてはならないようになるであろう、しかも五十七年度予算に至っては、そういう三兆円くらいの税収欠陥が出るだろうという予算をそのまま収入があるということに考えて、しかもそれに、新しい経済成長率に租税弾性値を掛けて、そしてさらに税収がふえるという約束をして提出したのですね。  私どもは、これは明白に粉飾予算であるということを言いまして、私が質問の中で申しましたが、財制審の会長である桜田武氏などは既に九月段階で、これは大変な赤字になるということで渡辺大蔵大臣財政当局に言うたというのですね。ところが、それをそのまま国会で言いますと大変なことになって、五十七年度予算が通らない、赤字国債の五十九年度までの脱却というのも通らない、これは内閣にとって大変なことだということで、うそであると知りつつそういう税収の見込みを出し、予算案を提出したということになったのですね。これがひいては、ほかにいろいろ田中角榮氏との難しい問題もあったでしょうけれども、鈴木内閣が退陣せざるを得ない政策上の大きな問題になったのですね。  ですから、中村政務次官が何か五十六年は三兆円、五十七年は六兆円ほど税収欠陥があってやむなくそういうぐあいにいたしましたというふうに受け取れる答弁をされましたが、それはある意味では自分で自分の首を絞めておる答弁であって、いかに政府が不誠実なことをやってきたか、税収まで国会をごまかして粉飾予算提出したかということにも絡んでくる問題なんです。これは国民の信頼をつなぐ上で非常によろしくない。  つかぬことを伺いますが、中村政務次官は漢学がお得意であり、「論語」「孟子」などはお読みでございましょうか。
  231. 中村正三郎

    ○中村(正三郎)政府委員 そちらの方はさっぱりだめでございます。
  232. 正森成二

    ○正森委員 お顔を拝見すると、教養豊かでそういう方面にも御造詣が深いと思いますが、御謙遜の答弁であろうと存じます。それで、大蔵省にはほかに学のある方がおられると思いますので、「論語」の中からひとつ伺いたいと思います。  私は孔子の教えを書きました「論語」のすべてがいいと言っているのではありません。ありませんが、「論語」の顔淵編というのがあります。その中でこういうことが書いてあるのですね。読ましていただきますと、  子貢政を問う。子日く、食を足し、兵を足し、民これを信ずと。子貢日く、必ず已むことを得ずして去らば、この三者において、何をか先にせんと。日く、兵を去らんと。子貢日く、必ず已むことを得ずして去らば、この二者において何をか先にせんと。日く、食を去らん。方より皆死有り、民情無くんば立たずと。 こう書いてあります。これはどういう意味か御存じでありましょうか。下手に申していろいろ支障があってはいけませんので、大蔵省及び政務次官においてはよく御存じと思いますが、私から便宜申し上げます。  これは子貢という孔子の高弟が問いまして、極限の問題を問うているのですね。政治の要請としては、兵、つまり軍備ですね。それから食、つまり食事その他民生の安定の生活関係ですね、それから信、つまり民の政府に対する信頼、この三つが絶対に必要なものであるということを前提にいたしまして、どうしてもこの三つというのは必要なんだけれども三つのうちでどうしてもそのうちの一つをまずやめるとかあるいは削減しなければ財政がもたない、国がもたないという場合には、三つのうちにどれをやめたらいいだろうか、こう聞いたのですね。そのときに孔子が、兵を去らん、その場合には軍備を縮小すべきである、こう言っているのですね。その次に、残った食と信のうちどれをやめたらいいだろうかと言うたときに、これは極限の問題ですね。そのときには、食、衣食住あるいは生活ですね、それを削減すべきである、こう言いまして、人間というものはいよいよとなれば皆死ぬのだ、しかし人間が人間である以上は、信頼というものがなくなったらこれはもう人間の社会ではないということを言っているのですね。     〔委員長退席、中川(秀)委員長代理着席〕  だから、そういう点から見ますと、失礼な話でありますが、中村政務次官の属される自民党政府は、もし孔子の教えが正しいとして、大分相隔たっておるのではないか。つまり、まず第一に兵を去ると言っておるのに逆に兵はどんどんと増強しておるのですね。今年度の予算でも六・九%ふえまして三兆一千三百七十一億ということになっておりますが、昭和五十六年度の行革が始まりましてから現在まででは三〇%以上ふえているのです。これを社会保障並みに八・三%に据え置いたとすれば、今年度の自衛隊に関係する軍事費は五千三百七十九億円削減することができます。文教費並みにこの四年間で二・一%の上昇に抑えたとすれば、六千八百六十七億円縮減することができます。もし農林漁業並みに五十六年度に比べて一一・四%マイナスであるとするならば、一兆百七億円削減することができます。中小企業はマイナス二二・五%でありますが、これと同じように切り込むとすれば、軍事費は一兆六百十一億円切り込むことができます。つまり、兵を去らんというような観点でいけばこういうように予算縮減することができるので、このように一括法案など出さなくても十分にやっていくことができるのですね。ましてや五十六年の行革一括法案のように、これは三年間だ、六十年には必ず、こういうことはやらないだけでなしに利息をつけて返す、少なくも返し始めるという約束を破って、つまり「民情無くんば立たず」という信をともかく破っておる。それも、兵をある程度去り、縮減し、そういうことをやってなおかつやむを得ないというならいいけれども、兵の方はどんどんふやしておるということになれば、政府・与党にも「論語」については大いに、今まで自分の愛読書というように思っておられた方がおられるかと思いますが、そういう観点から見ては甚だ遺憾な事態であると言わなければならないと思うのですね。私は共産党でございますから、孔子様が全部いいと思っているのではないのですよ。しかし、この顔淵編に書いてある兵と食と信という関係を見ますと、それは信にもいろいろあるでしょうけれども、人間関係あるいは人間と政府との間に何らかの関係での信がなくなった場合には、それは近代的な法治社会ではないというように言っても差し支えがないと思うのですね。  これは本当は竹下大蔵大臣に伺うべきであったかもしれませんが、審議の順序で六時までおいでになりませんので、将来は竹下大蔵大臣にまさるとも劣らぬ立派な政治家になられると思って、中村政務次官の率直な「論語」感想を承りたいと思います。
  233. 中村正三郎

    ○中村(正三郎)政府委員 まさに大蔵大臣が御答弁されるのが大変適当な御質問ではないかと思いますが、先生の今おっしゃられましたことは、極限状態における選択ということで何を選んでいくかということだったと思うのでございますが、現在私どもが実際に経済に対面し、政治的にどう経済状況を打開して国民生活をよくしていくかということを選択していく場合とは、ちょっとその選択の場面が違うのではないかというふうに思うわけでございます。現在考えますと、先生今、共産党とおっしゃいましたが、私、自民党所属議員でございまして、今政務次官でございますが、それと、それぞれの政治主張によってどういうことをやっていくのがいいかという考えはおのずと違いがあるわけでございまして、そういったことで、先生のお考えと私どもの考え方が違ってもそれはやむを得ないところではないかと思うわけでございます。  それから、先ほどの第二次石油ショックに当たりましての予算の問題でございますが、その予算をどういうふうに編成していってどういう数字が出るかということも先生指摘のとおり重要なことだと思いますが、やはりそれだけの税収が減った、収入が減ったということが、今までの政策を続けられなくなる原因になるわけでございまして、その収入の絶対値が減ったということが非常に重要な要素であり、今まで我々が望んで考えてきたことがうまくいかなくなったというので、やむを得ずああいう格好が出たということだと存じているわけでございます。
  234. 正森成二

    ○正森委員 中村政務次官の政治的な御見解をお述べになったわけですが、率直に言いましたら、やはり私は中村先生とはいささか見解を異にする。決して孔子を褒めるわけではありませんが、これは確かに極限状態を言っておるのですが、極限状態になった場合でもなおかつ信をとって兵を去らなければならないとすれば、極限状態になっておらないときは一層そうであるというのが普通の人が考えなければならないことなんですね。極限状態には食を去っても信は残さなければならない、こう言っておるのですから。今はまだ極限状態でないとすれば、兵を去るどころか、兵だけは増強しよるという状況はいかがなものであろうか。今言われた税収が減っているという中でこういう問題が起こったというのですが、税収が減っておる中で兵だけは三〇%以上伸びておるというのはいかがであろうかというのが、私どもが「論語」を読み、そして今の日本の政治の運営を考えるときに、やはりどうしても考えておかなければならない哲学上の問題であるというように思って、あえて申し上げたわけであります。多分、学生時分には御造詣が深かったというように信じておりますが、これからも哲学的な見地について御研さんを深められることを心から希望したいと思います。  それで、主計局次長に伺いますが、この三年という行革関連法一括法案ですね、三十六本分。これは一年が限度だということで、それ以上はもう延長しないというように受け取れる大蔵大臣のこれまでの答弁でありました。しかし、その内容自体についてどうするかについてはなお検討の余地があるというように予算委員会等で答弁されているようであります。  その意味は、今、年金法案が衆議院は通過して参議院で審議されておりますが、私の資料で誤りがなければ、今度年金法案が改正されますと、私どもは改悪であると思っておりますが、厚生年金や国民年金に対する国の負担割合が変わってくるわけですね。それで、今までは国庫負担というのは国民年金の三分の一、厚生年金の二〇%、こういうことになっていたのですが、それが全部基礎年金だけの三分の一の負担ということになるので、この法案が通過すると国の負担は大幅に削減されるというように承知しております。  私どもの資料では、もしこの法案が通りますと、来年、昭和六十一年度では国の負担削減分は年金法案等が通らない場合に比較して千二百十四億円、昭和六十五年度の負担削減は四千四百五十一億円、もし紀元二〇〇〇年、昭和七十五年をとりますと実に一兆六千九百八十九億円、昭和百年、二〇二五年をとりますと国庫負担削減額は四兆五千二百四十七億円、こういうぐあいになるはずであると思いますが、いかがですか。
  235. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今手元に数字を持っておりませんが、制度改正が行われれば何らかの国庫の負担削減があるということだと思います。
  236. 正森成二

    ○正森委員 厚生省はわかっていませんか。
  237. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 年金法の改革に伴いまして、年金に対する国庫補助のシステムが変わるわけでございますけれども国民年金につきましては従来の三分の一がそのまま三分の一で変わりません。厚生年金につきましては、報酬比例部分の二割、それから定額分の二割が張るのですけれども、今回は基礎年金に三分の一ということでございます。したがって、国庫補助のトータルとしては変わらないというふうに私どもは理解をいたしております。     〔中川(秀)委員長代理退席、委員長着席〕
  238. 正森成二

    ○正森委員 今の答弁、重大な答弁ですけれども、本当ですか。基礎年金に対して三分の一だけになるのに、年金法案が改正になっても国の負担分は変わらないのですか。今の改正にならない前でどんどんふえていくというのに比べて、改正しても変わらないのですか。本当にもしそうだったら、今まで社労なんかで答弁していることと全然違ってくるんじゃないですか。
  239. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 どうも大変舌足らずの答弁で御迷惑かけたわけでございますが、年金制度改革に伴いまして基礎年金の方へ変わって、国庫補助が変わっていくわけでございます。基礎年金部分が将来ともにどうなるかによって国庫負担が将来どうなるかということは決まるわけでございますが、基礎年金部分がそれぞれの制度の持ち寄り等で財源調達等が行われることもございまして、長期的に見ると先生指摘のように国庫負担は低減するということは紛れもない事実でございます。
  240. 正森成二

    ○正森委員 そんなものは当たり前の話で、そのために年金法を改正するわけじゃないですか。それを変えても国庫負担は減らないなんて、そんないいかげんなことを言って、もし社会労働委員会でそんな答弁してごらん、えらいことになるよ。あなた方も資料出しているけれども、その資料をもとに我々は計算したわけですからね。将来になればなるほど、基礎年金部分の三分の一を国が持つのだから、そんなもの減るのは当たり前の話なんですよ。そうでしょう。それを今さっき、初め減らないみたいなことを言ったね。後の方で、僕が言ってから取り消したみたいになったけれども、減るんでしょう。長期的に見ればなんて言って、年金法案が通過すれば来年から減るのでしょうが。来年から減るから、それを当て込んで、この一括法案でも一番大きいのは厚生年金等に対する二〇%を一五%で当面堪忍してもらおうということで、この負担額というのは非常に大きいのでしょう。ことしだけで三千億超えているのでしょう。それが来年になったらうんと減るのでしょうが。だから、もう一年だけ延長してもらったら何とかなるというのが厚生省や大蔵省の考えじゃないですか。(「大臣来ないから、六時という約束だ」と呼ぶ者あり)六時という約束で大臣に対する質問を残して待っているのですよ。それでほかのことを聞いておるのです。――主計局、それぐらいのことわからないのですか。
  241. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今数字を取り寄せておりますので……  私は直接担当しておりませんのであれですが、委員のおっしゃいますのは、現行で改正しないまま行った場合の国庫の負担額と、改正法案が通った後の負担額との差、それがどうなるかという御質問だと思いますが、ちょっと具体的な数字を今手元に持っておりませんので、また改めまして御答弁したいと思います。
  242. 正森成二

    ○正森委員 私は六時に大蔵大臣自治大臣がおいでになると言われるので、本当は総務庁長官でもお見えになっているかと思いましたけれどもおられないのを特に、中村政務次官は立派な政務次官ですからそういうことでやってまいりましたけれども、六時五分になってもお見えになりませんし、答弁自体が十分な答弁ではございませんので、おいでになるまで暫時待たしていただきたいと思います。
  243. 越智伊平

    越智委員長 それでは、参議院の予算委員会がちょっとおくれておりますので、しばらくお待ちいただきたいと思います。  ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  244. 越智伊平

    越智委員長 速記を入れてください。  暫時休憩をいたします。     午後六時十一分休憩      ――――◇―――――     午後六時四十二分開議
  245. 越智伊平

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。正森成二君。――厚生省山口年金課長
  246. 山口剛彦

    ○山口説明員 御質問にございました年金の国庫負担でございますけれども、六十一年に私ども年金法の改正ということで国庫負担についても大幅な変更をいたしますが、変更前後でどういうことかということを五十九年度で申し上げますと、現行法のままでいきますと、厚生年金、国民年金合わせまして約二兆六千六百億でございます。改正案でまいりましても、切りかえ時には国庫負担にほぼ変更がないという方針でやっておりますので、二兆六千九百億でございます。  ただ、将来の国庫負担につきましては、給付水準について適正化をしていくということが今回の年金改正の主眼になっておりますので、その適正化をしていく分に相当する国庫負担分は、将来に向かって現行より減るということは事実でございます。
  247. 正森成二

    ○正森委員 それでは、続けます。大蔵大臣に伺います。  この一括カット法案は一年限りの措置ということになっておりますが、同僚委員からも本日質問がございましたが、昭和五十九年十二月二十二日付の大蔵大臣厚生大臣自治大臣の覚書を拝見すると、冒頭に、「社会保障に係る高率の補助率の引下げ措置を講ずるに当たり、次の通り申し合わせる。 一 この措置は、昭和六十年度における暫定措置とする。」こうなっております。したがって、この覚書の効力の及ぶのは社会保障に係る高率の補助率引き下げ措置ということになるはずでございまして、それ以外のものも、法案中身昭和六十年度において二分の一を超える地方公共団体に対する国の負担又は補助の割合の引下げ措置を次のとおり講ずるということになっておりますからまさに昭和六十年度でございましょうが、社会保障に係る補助率以外は「六十年度における暫定措置とする」という覚書から外れておる。したがって、これは将来、昭和六十一年度、六十二年度というように事実上単年度ごとの法律延長されても別に政治的にどうというわけではないというようにも読めるわけですね。その点はいかがでしょうか。
  248. 竹下登

    竹下国務大臣 おっしゃいますとおり、予算編成の過程におきましていわゆる三大臣合意というのをやりました。これは社会保障関係でございます。担当の厚生大臣、それからもとより自治大臣と私、こういうことになっております。  他の分野についても必要に応じて同様に協議して検討を加えていくということは、これはもちろんのことであると思っております。したがって、これから検討をした場合どういう結論が出てくるか。ときによってはまた一年ごとのものも出てくるかもしれないという感じもしないわけでもございません。それだけにことしの法案は、初めて出して御審議いただくわけでございますから、将来のことも念頭に置いて議論を詰めた結果がこういう法案になったわけであります。
  249. 正森成二

    ○正森委員 私が今大臣答弁を理解するところによりますと、この十二月二十二日付の覚書は社会保障に係る高率の補助率引き下げ措置についての覚書である、したがって、それ以外については、これは検討はするけれども、六十年度だけでなしに六十一年度以降に引き継ぐ可能性があり得るように伺ったわけであります。しかも、社会保障に係る補助率暫定的なものかといいますと、これもまた必ずしもそうはなっておりませんで、「国と地方の間の役割分担・費用負担見直し等とともに、政府部内において検討を進め、今後一年以内に結論を得るものとする。」そして予算委員会の御答弁によれば、一年以内に検討して結論を得たものをできたら恒久化したいという答弁でございますから、その一年以内の検討の結果によりまして、もう一割カットはやらないとなるかもしれないし、あるいは一割を続けることになるかもしれないし、五%になるかもしれないし、悪くするとふえるかもしれない。その決まったものが恒久化されるということにならざるを得ないと思いますが、そういうように理解してよろしいですか。
  250. 竹下登

    竹下国務大臣 原則的にはおっしゃるような理解で間違いないと思いますが、ただ、恒久化の中に、物によっては暫定が一年でない暫定とか、あるいは当分の間とか、そういうものもできてくるのかな。まことに未熟なお答えでございますけれども、そういう可能性は申し上げておいた方がより安全なような気がしたものですから、あえて申し上げさせていただきました。
  251. 正森成二

    ○正森委員 自治大臣がお疲れでございますのにおいででございますので、伺いたいと思いますが、このもう一つの覚書を拝見いたしますと、経常費の二百六十億のうち「一千億円を一般会計から法定の地方交付税交付金に加算して交付税特別会計に繰り入れる。」これについては「精算を行わない」となっておりますから、この一千億円が財源措置であるということは非常に明白だと思うのですね。ところがその第二のところに、「昭和六十年度における建設地方債の増発額のうち、一千億円に相当する額については、昭和六十年度における補助率が検討期間中における暫定措置であることに鑑み、暫定的に、昭和六十六年度以降に精算すべき地方交付税交付金の額に加算されるものとし、検討の結果を踏まえ、その取扱いについて両省間で調整するものとする。」というようになっておるのですね。  これについては、御答弁を省略する意味地方行政委員会の二月二十一日付の議事録を拝見して、自治大臣の御答弁並びに花岡政府委員答弁を読ましていただきました。その答弁を見ますと、花岡さんは、「一応とりあえず六十六年度以降加算するものは今年度におきましては国が持つということにしておりますが、この一年間の検討の結果を踏まえて、もし動くようなことがあるならば、これは大蔵省自治省の間で改めて協議をしようということになっております。」こう答弁されておるのですね。  そうすると、万全の対策をとったと言われますけれども、富裕団体、不交付団体は二千六百億の経常費のうち六百億は自分で始末しなければいかぬ、それから、交付団体の二千億のうち、一千億はもらえるけれども、残る一千億は一応昭和六十六年度以降ということになっておるけれども、今後一年間の話し合いのいかんによっては、その結論によっては国が面倒見ないこともあるという答弁だと思うのですね。そうすると、もし私の理解が正しいとすれば、万全の対策をとったことにはなかなかならないのじゃ一ないかと思うのですが、自治大臣いかがですか。
  252. 土田栄作

    ○土田政府委員 お答え申し上げます。  この覚書の趣旨は、まず一千億はもらいきりでございますけれども、残りの一千億につきましては、国庫補助負担率のあるべき率は幾らであるかということを昭和六十年中に議論いたしまして、そこで十分の八というのがそのまま持続されるということになれば一千億は昭和六十六年度以降もらいきりにする、あるいは、見直しの結果十分の八という率を動かさなければいけないということになりますれば、そのとき三省間で合意した率に基づいてこの一千億をどうすればいいかを協議して決めるという趣旨でございます。
  253. 正森成二

    ○正森委員 大蔵大臣、そういう答弁でございますから、社会保障関係の一年限りの措置につきましても、一年の検討の結果動くことがあるから一年限りとは断定できない。動けば、当面建設地方債で手当てしているものについてもまた地方自治体負担になるものもあるということになりますと、本会議等で万全の財政対策を講じた、財源措置を講じたと言っておりましても、結局地方自治体負担になるものが出てくるのではありませんか。  自治大臣、伺っておりますとどうも必然的にそういうことになると思うのですけれども、いかがでしょうか。
  254. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 今土田審議官から説明いたしましたように、六十年度の間に検討いたしましてどっちになるかによって、もし率があれするなら六十六年度以降の交付税に加算するということを今言ったわけでございまして、そのどっちかによって決まるわけでございます。
  255. 正森成二

    ○正森委員 ですから、どっちかによって決まるから、そのどっちかの決まり方によっては国が面倒見ないことも十分にあるということにならざるを得ないと思うのですね。  さらにお伺いしたいと思いますが、投資的経費が三千二百億円ございます。その三千二百億円につきましても、補助率引き下げによる分については臨時特例地方債で約二千億円を措置する。それについては、この覚書を見ますと「昭和五十六年九月十八日付及び昭和五十九年一月十九日付大蔵自治大臣覚書の例によるものとする。」これはここに持ってまいりました。  なかなか難しゅうございますが、私の理解で正しければ、これはともかく地方債を出しまして、それは交付税の財源措置の対象とはするけれども、元利合計金はどうするかといえば、二分の一は国が繰り入れるが残り二分の一については地方が面倒を見るということに結局はなるのではないでしょうか。そして、事業量の増大による千二百億円については国が全く面倒を見ないということにならざるを得ないのではないかと思うのです。  そういたしますと、これは昨年十一月二十日の我が党の経塚議員の質問に対する財政局長答弁のやりとりでございますが、そこではこういうやりとりになっております。  いわゆる交付税の基準財政需要額に算入するという問題については、私はこれはどのような理由があろうとも現行の三二%を引き上げない限り基準財政需要額へ改めて算入するということについてはその余地はない、そういう状況じゃないかと思うのです。つまり、三二%が制度化されました四十二年以降、費目にいたしますと十一費目が新たに需要額へ算入されておるわけですね。これは五十八年度の額にいたしますと七千二百億円に上っているわけですね。もしここで三二%の率の引き上げを横に置いておいて新たに需要額に算入するということになれば、他の需要額に対して影響を与えるという問題も出てくるわけですね。   したがって自治省の見解としては、生活保護法で十分の八という制度があるという問題と同時に、今日の三二%の率を引き上げない限りにおいては新たに需要額に算入する余裕も余地もないのだ、この点をやはり大蔵に対しても明確にすべきだし、局長答弁もまたそういう趣旨も入っておるかと私は思うのですが、その点はいかがでしょうか。 それに対して花岡さんは、  現在の交付税の率の中で補助率カットによる影響措置するということになりますれば、結局地方団体それぞれ共有の財源でございます自分たちの財源を食うわけでございますから、これは行革につながるものでも何でもない。地方団体が非常に苦しくなる、それ以外の何物でもないというふうに考えております。 こういうように明確に答えておるのです。  そこで、私が本日伺いたいのはこの点についてでありますが、この昨年十一月二十日の答弁のとおりなのか、あるいは見解が変更したのか、御説明願いたいと思います。
  256. 土田栄作

    ○土田政府委員 私どもは、社会保障関係経費等の非公共事業に対する補助率カットの問題と、その後に出てまいりました事業規模拡大のための公共事業補助負担率カットの問題とを別に考えているわけでございまして、ただいまの委員の御指摘に対して私ども局長答弁いたしましたのは非公共関係補助率カットについての基本的な考え方でございまして、この面については、私ども局長答弁を守りまして財政措置をいたしました。不交付団体の議論はあろうと思いますけれども、そういうことでございます。  それから、公共事業関係でございますけれども、とにかく公共事業はマイナスシーリングで事業費が伸びないということで、補助負担率を一部落としても事業費拡大をしたいという声が非常に強くなってまいります。そういたしますと、生活保護行政みたいなものでございますと地方団体がやるかやらないかについては選択の余地がない、そこに世帯があれば必ずやらなければならぬ行政でございますけれども公共事業関係は、地元の住民が受益すると申しますか地元の住民がやりたいということでやるということでございますから、これにつきましては一部相応の地方負担があってもいいというふうに考えまして、国と地方とが折半で元利償還について負担する。これは六分の一カット法の前例もございますが、それに従ってそういう制度をとった次第でございます。  そういう意味におきまして、局長答弁は変わっておらないということでございます。
  257. 正森成二

    ○正森委員 今の答弁でも明らかなように、局長答弁は変わっておらない。つまり、「結局地方団体それぞれ共有の財源でございます自分たちの財源を食うわけでございますから、これは行革につながるものでも何でもない。地方団体が非常に苦しくなる、それ以外の何物でもないというふうに考えております。」という局長答弁は、この部分については維持せざるを得ないということになると思うのです。  そういたしますと、経常費の部分と投資的経費の部分とは違うでございましょうが、投資的経費については大臣答弁でも、これは一年の暫定措置ということに三大臣の合意でなっておる。対象外であるということでございますし、それから、最近公共事業事業量をふやしたいということで、補助率カットをある意味では事業量の増大の方に使うという傾向が非常に多いという点を考えますと、この点はむしろ恒久化される可能性が非常に多く、そして恒久化されれば、これは自治体の財源を自分でタコの足のように食べていくということになって、他の行政需要に対して一定の圧迫とか影響が出ることは必然であると言わなければならないのじゃないかと思うのですが、大蔵大臣の御意見はいかがでしょうか。
  258. 土田栄作

    ○土田政府委員 あるいは私の説明が舌足らずであったかと存じますけれども、非公共事業補助率カットの分については実は私どもも三二%の枠の中で処理するということではございませんで、一つは、一千億臨時特例交付金ということで地方交付税に加算してもらうということでございます。それからもう一つ建設地方債を増発いたしますけれども、非公共事業の交付団体分につきましては一応昭和六十六年度以降の地方交付税に加算する、これは補助率見直しの結果変わることはあり得るわけでございますけれども、そういうことで対応したいと考えておりますので、私どもとしてはタコ配と申しますか三二%の枠の中でこれを処理したという考え方は持っていないわけでございます。三二%の中で、自己財源の中で処理したということではございませんで、まず一千億特例加算で交付税を積み増ししてもらいました。それからもう一つ一千億、これは交付団体分につきましては建設地方債を増発して、その償還に要する経費につきまして昭和六十六年度以降に加算する。ただ、この分につきましては六十年度の補助率見直しの結果また再検討するという留保条件がついておりますけれども、そういうことで財政措置をしておりますので、つまり三二%には一応迷惑をかけないという形で処理しているという意味におきまして財政局長答弁が守られている、そういうふうに私は申し上げている次第でございます。
  259. 正森成二

    ○正森委員 それは経常関係でしょう。建設関係は。
  260. 土田栄作

    ○土田政府委員 建設関係については、先ほど申し上げましたように、十一月時点ではこの問題は起こっていなかった問題でございます。その後十二月の段階になりまして、事業費拡大のために国庫補助率を一部カットしてそれを渡したらどうだろうか、こういう御議論が出てきまして、これはやはり、これだけ事業費がふえないということでありますれば、地方側の要請もありましたので、これの分については国と地方の折半負担財政措置をするということにした次第でございます。  この折半負担と申しますのは、国費カットに見合う二千億につきまして建設地方債を発行する、そのうち元利償還の半分は三二%の交付税でもらいますけれども、半分につきましては将来交付税に加算されます臨時地方特例交付金というものでもらうということでの折半負担ということにいたしているわけでございます。
  261. 正森成二

    ○正森委員 今るる御説明になりましたけれども、経常的経費と投資的経費で違いますけれども、経常経費につきましても、一千億は確かに措置されておりますが、残る一千億はこの一年間の検討の結果わからないのであって、そうなれば結局自分の財源を食べていくより仕方がないということになる。それから、建設関係の投資関係についてもそれはやはり同じ理屈になるということであって、財源措置が将来にわたって十分にされておるということにはならないのではないかと私としては思わざるを得ないということを申しておきたいと思います。  今、採決の関係で、七時が過ぎたのでなるべく結論を急いでほしいという紙が回ってまいりましたので、残念ながら質問の途中でやめさせていただきますけれども、私どもとしては万全の財源措置をしたとは言いがたいというように思います。そしてその結果が、大臣のおられないところで質問したのでございますが、実質上生活保護の問題等についても影響があらわれてきておるというように思わざるを得ませんし、大臣のおられないときに「論語」などを引用しましたが、「信無くんば立たず」といり言葉がありますけれども、今まで政府が赤字国債の借りかえはやらないとかあるいは行革の一括法案は三年限りだと言ったことが次々と変わるというような点から見まして、国民の信頼を得ていかなければこういう大きないろいろの事業は決して円滑に行い得ないものであるということを、細切れの大臣のおられないときに申したこともございますので御答弁がしにくいと思いますので、締めくくりの言葉として一応申し上げまして私の質問を終わらせていただきます。     ―――――――――――――
  262. 越智伊平

    越智委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま議題となっております本案につきましては、参考人の出席を求め意見を聴取することとし、その人選、日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  263. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  264. 越智伊平

    越智委員長 あへん特別会計法を廃止する法律案及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。戸田菊雄君。
  265. 戸田菊雄

    ○戸田委員 大臣に冒頭に、これは予定しておりませんでしたが、一点だけお伺いしておきたいと思うのであります。  これは毎日新聞の夕刊でありますが、「サラリーマン税制合憲 最高裁初判断」こういう見出しが出ております。中身は詳しくは私も検討しておりませんから、今どうのこうのということは言えませんが、新聞によりますと、判決は、「捕捉率の格差も認められるが違憲ではない。租税公平主義の見地から是正のための努力が必要だが、税務行政の適正な執行により正されるべき」、要約すればこういうことを言っております。それに対して原告側の代理人は、これは山田近之助弁護士の話でありますが、 「給与所得者に必要経費を認めるなど、一、二審に比べ我々の主張が認められた判決で評価する。」こういう談話が載っております。森田衛国税庁審理室長の話は、「判決理由の中で所得の捕捉の不均衡が指摘され、税務行政の適正な執行によって是正されるべきなどの方向が示されていることから、国税庁としては引き続き税法の適正執行に努めていきたい。」こういう談話を発表いたしております。大臣の感想、どうでしょう。
  266. 竹下登

    竹下国務大臣 ちょうどきょう参議院の本会議中に判決が出ましたので、その後ずっと委員会でございますので、私も骨子を斜め読みしただけでございます。  大島先生のこの裁判でございますが、合憲性をもって争いを提起した訴訟について合憲の判断が示された。したがって、判決の内容については申し上げましたようにまだその詳細を検討するに至っておりませんので、現段でこのコメントをすることは差し控えたいが、現行の給与所得控除制度の合憲性ないし合理性が司法的には是認された、まず原則的にはそう受けとめるべきでございましょう。  今度、補足意見の問題になるわけです。この捕捉率の問題については引き続き今後の課題として謙虚に受けとめていかなければならない。給与所得者の必要経費の概算控除と実額控除との選択制、これはたびたび議論のあるところでございます。これは税調の答申でも「給与所得控除の水準を維持する限り、実額控除との選択制を採用する実益も乏しいため、当面、現行制度を維持するのが適当である。」とされておるところでございますので、基本的には給与所得控除の水準とも関連して、この答申の考え方に沿って検討していくことになろうというふうに考えるわけであります。そうして大事なことは、この判決文を含めて我々の方でも精査しますが、税制調査会へお送りすることは必ず行わなければならぬことだろうと思っております。     〔委員長退席、熊川委員長代理着席〕
  267. 戸田菊雄

    ○戸田委員 関税定率の本題に入る前に、当面する日米貿易交渉の問題について若干質問をしてまいりたいと思います。  紙製品を含む木材製品、エレクトロニクス、電気通信、医薬品・医療機器の四分野をめぐる日米ハイレベル協議の概観と現状について、外務省から説明をしていただきたいと思います。
  268. 矢澤富太郎

    ○矢澤政府委員 外務省が来ておりませんので、便宜御説明させていただきます。  ただいま御指摘の四分野の交渉につきましては、本年一月二日のロサンゼルスでの日米首脳会談で取り決められた話でございます。その後一月末に米側の代表団が参りまして、大体の交渉のスケジュールを決めまして、二月から三月にかけまして各分野におきまして精力的に交渉が続けられているという状況でございます。私どもとしては、各分野の交渉の成果を見守っているという段階でございます。
  269. 戸田菊雄

    ○戸田委員 外務省、まだ来てないのですね。  ちょっと来るまでの間、関税定率の問題について、関税の機能について若干質問したいと思うのです。  関税の職務執行ということになりますと、財政収入の確保、国際競争力の弱い国内産業の保護、国内消費者の利益擁護、国際的な協調配慮等を勘案し対応してきたと思うのでありまするが、現在国内産業保護のためにどのくらいの品目が対処されているのか。それから、今後の職務執行の視点というものは、ウエートはどの辺に置いて執行していくのか。その点をまず伺いましょう。
  270. 矢澤富太郎

    ○矢澤政府委員 関税の機能につきましては、ただいま委員指摘のとおりでございます。  国内産業の保護という点につきましては、関税のほとんど全品目がそのためにあると考えてもよかろうかと思います。ただ例外的に原重油関税がございますが、これは石炭対策の特定財源に充てられるということで、むしろ財源確保という観点が強いかと思います。それ以外の関税は、大体国内保護のためにあるというふうに考えてよろしいかと思います。  今後の私どもの関税行政の進め方でございますが、御承知のように、最近関税収入の一般会計に占める比率は次第に低下をいたしております。そういう点から、税関の仕事も大分暇になったのではないかというような御意見を持たれる方もあるわけであります。しかしながら、輸入量の増大とか、有税品でございます製品類の輸入増大等によりまして、税関におきまして審査、検査すべき輸入件数はむしろ過去に比べて増加傾向にある。したがいまして、従来の税関の歳入確保を目的とする審査、検査、適正な課税を目的とする審査、検査も、依然として重要な役割を占めておると思います。  さらに、最近におきましては、例えばけん銃ですとか覚せい割といったいわゆる社会悪物品を水際で防圧するという仕事も大変ふえておりますし、また政治的、国際的な要請から、武器、戦略物資に対する輸出規制への関心も非常に高まっております。さらにはワシントン条約を的確に実施するという税関のいわゆる関所的な機能ということについても、国民の要請が高まっている状況でございまして、私どもとしてはこういった時代の要請にも十分に対応できるように努力をしてまいりたいと考えておるわけでございます。
  271. 戸田菊雄

    ○戸田委員 関税関係制度についてお尋ねします。  関税の基本は関税法、それから関税定率法、これは本文延べ三十二条を基本税率として設定をされております。それから関税暫定措置法というものがある。これは言ってみれば、産業ないし経済の変動等に伴って、短期的に暫定的に設定をするものということになっておりますね。そのほかに譲許税率というものがある。これは条約に基づいて約五十あります。そういうものについて優先的に適用されるということになりましょうが、等々を通じて関税定率というものを制定をされておるわけであります。  しかし、最近の状況を見ますと、大蔵省の資料でもそうなんですが、年次別で見まして、五十九年の基本税率は二千二百四十九品目、暫定税率は三千三百七十一品目、譲許税率は二千六百九十四品目、こうなっております。暫定税率が圧倒的に多いのですね。それはやはり時の世界的な経済動向、産業動向、こういった情勢の変化その他によっていろいろと変わってくると思うのですが、今暫定税率が本則になりつつあるのですね。そうすると、基本税率その他の定率法とその関連で抜本的に制度改善をすべき状況にあるのではないか。暫定税率ということで、一年間とか二年間とか、時限立法でずっといけるような今の状況でないと思いますね。法律的な立場と比較しまして、こういういわば不備状況が出ておりますから、こういった問題については、現下の時期において抜本的見直し、適正な制度の改善というものを図るべきではないかと思いますが、その点はどうですか。
  272. 矢澤富太郎

    ○矢澤政府委員 関税率の各種の構成、それから暫定税率で大変古いものがあるといった御指摘は、まさにそのとおりでございます。  現在の基本税率が設定されましたのは昭和三十六年でございまして、輸入自由化後の産業構造を想定して設定されたわけでございますが、ある程度産業が輸入自由化に対応した段階で見直す予定で設定をされております。しかしながら、その後、例えばケネディ・ラウンド交渉があるとか変動相場制への移行とか、さらには石油ショック、そして現在は東京ラウンドの合意にのっとった段階的な関税の引き下げが進んでいるというようなことで、大変に流動的な事態が続いておりますために、何分にも約三千品目に近い関税率を全体的に見直すというには、時間的な余裕がないと申しますか、環境が落ちついていないというようなことがございまして、現在まで見直しが行われなかったわけでございます。  しかしながら、現在の関税率の設定の仕方が大変複雑になっている、中には使われないものも随分あるということは事実でございます。ちょうどたまたま現在、国際的に関税の分類を変更する作業が行われております。ハーモニゼーションシステムということで、早ければ六十二年一月一日から実施をするということで各国で今作業中でございますので、この機会に、その中で基本税率の見直しをどの程度行えるか検討して、対応してまいりたいと考えております。
  273. 戸田菊雄

    ○戸田委員 例えば開発途上国等々の東京ラウンド合意の関税引き下げ繰り上げ措置対象品目例の輸入額を見ますと、エビなどが三千百八十五億円もインド、インドネシアから来ている。これは一年や二年で解消ということにはいかぬと思うのです。それから木製家具、これも台湾、韓国等から約百八十三億程度入っておる。これもすべて開発途上国では特恵関税でやっておるわけでしょう。それを一年や二年で廃止するようなことはできないと私は思うのです。やはり前途五年なり十年は継続されるということになっていくのじゃないか。時間がありませんから多くは言いませんが、そういう点で、ぜひ抜本的制度改善というものをやらなければいけない、そういう時期に来ていると思うのです。そういう点を一つ要望して、次に移ります。  それからもう一つは、税関主要事務等の推移、税関定員の推移を見ますと、業務量が始終ふえているにもかかわらず、要員は減少傾向。これは適正配置と言えないのじゃないかと私は思うのです。私は、国税庁等の職員の配置についてもそのたびにいろいろやっているのですが、やはりそういった特殊的な――それでも足らないのですけれども、三名とか四名とか漸次ふえている。ところが、関税収入一つ見ましても、六十年の見込みですが、八千百二十五億円ありますね。それから、特別会計で千二百四十五億円ございますね。それから、税関主要事務等の推移を見ますと、五十九年で外国船の入港隻数は九万五千隻、貿易機入港機数は五万二千機、輸出許可件数は五百六十六万八千件、輸入許可件数は二百四十七万三千件、入国旅客数は、五十年の三百三十一万一千人が五十九年には六百七十五万三千人、このように物すごくふえている。それに対して税関定員の推移を見ますと、五十年に八千六十名いたのが、五十九年になって七千八百九十二名。同数と思ったけれども、やや減っている。六十年の見込みは七千八百十三名。若干の機械システムその他を入れて機械化したとは思いますが、そのほかに防犯事件、その他いろいろ考えますと大変じゃないかと思うのですよ。こういう点についてはどう考えますか。
  274. 矢澤富太郎

    ○矢澤政府委員 業務量の増大、それから定員の減少、まさに御指摘のとおりでございまして、大変温かい御理解をいただいておりますことに厚く御礼を申し上げたいと思います。  私どもといたしましても最大限、定員の確保に毎年努力をしているところでございますが、国全体で厳しい行政改革が進められているという中で、なかなか思うに任せない状況が続いているわけでございます。今委員からもお話がございましたように、機械化を進める、あるいは事務の外注委託を進めるというようなことを図ると同時に、総務管理部門等の人間はなるたけ減らして、輸入部門あるいは監視部門等の第一線にできるだけ手厚く配置するというようなことで対応しておるわけでございますが、今後とも定員の確保については、私どもといたしましても一層努力をしてまいりたいと考えております。
  275. 戸田菊雄

    ○戸田委員 殊に要請しておきたいのは、品目分類の関係の皆さんのことです。私の理解では三十六名くらいと思っているのですが、今国際関係で、品目を選定するにしても、関税定率の関係のものは三千品目を超えるのですね。そういう膨大なものを三十六名。これはもう不可能じゃないかと私は思うのですね。だから、こういう点については一回見直しをしまして、その結果について、後でいいですから資料を私に提示してください。
  276. 矢澤富太郎

    ○矢澤政府委員 御趣旨に沿いまして、資料を提出させていただきます。
  277. 戸田菊雄

    ○戸田委員 それでは別問題に入ります。  先ほど大蔵省に説明をいただきましたが、外務省に伺います。  紙製品を含む木材製品、エレクトロニクス、電気通信、医薬品・医療機器、この四分野の日米ハイレベル協議が今やられているのですが、その概観と現状について説明していただきたい。四分野の中で木材製品についてだけ、メカニズムと協議日程の説明を受ければいいですから。
  278. 恩田宗

    ○恩田政府委員 こちらへ参上するのがおくれて、大変御迷惑をおかけしたことをおわび申し上げます。  四分野に関する日米協議の模様でございますが、一月二十八日、二十九日に第一回の次官レベル会合がございました以降、二月十四日、二十五日、それから三月に入りまして六日に電気通信、十二日に医薬品・医療機器、十三日、十五日はまた再び電気通信、それから十五日にハイレベルをやりまして、十八日にエレクトロニクス、こういうことで四分野についてそれぞれの次官レベルでの協議が行われてまいりました。  ただいまは電気通信関係につきまして、四月一日より施行しなければならない政令の関連がございますので……(戸田委員「次長、時間がないから、木材製品だけでいいから」と呼ぶ)  木材製品につきましては、二月二十五日に会議がございまして、その際米国側からは、合板を中心とする関税の引き下げの要求がございました。私ども日本側としては、この問題は極めて難しい問題である、かようなことで議論が始まったわけでございますが、そのほかの問題につきましては、実はこの問題での対立がそのままでございましたので、議論が進展せず、その会合は一応終了いたしました。しかし、この問題については事務レベルで引き続き連絡をとり合う、かようなことになっております。
  279. 戸田菊雄

    ○戸田委員 これは八五年の三月二十六日の毎日新聞でございますが、政府・与党首脳会議が行われた。そこで今の四分野の会議等の模様が問題になったようでございます。中曽根総理は前途三年ぐらいの見通しの中で本問題を調整してほしい、こういう要請を関係者に話した。それを受けて金丸幹事長は記者会見で、「三年で順次関税を下げることで米国の理解が得られると思う。国内業界対策費にいくら出すかは、政調で詰めることになる」。同時に、国土保全の立場で抜本的に林業に対する対応策というものを考えなければいけない、こういうことであります。それに対して竹下大蔵大臣は、金を出して助成等で事が済むならば、それはまあ大体いいんじゃないだろうかという趣旨の発言をやられたということが、これは朝日、日経にも出ておるわけであります。これは、大臣としてはどういう見解を持っておられましょうか。
  280. 竹下登

    竹下国務大臣 ちょっと話が長くなりますけれども、総理から三年という話はございませんでしたが、中長期的に見なければいかぬだろうな、こういう趣旨の御発言がありましたら、金丸幹事長が、大蔵大臣、おまえも森林組合連合会長をやっていたから、ひとつ私見でも皆さんに披露しろというようなことを言いまして、したがってそもそもの林業対策というのは川上対策と川下対策であるんだ、これも私がつくった言葉でございますから何となくわかりやすうございますけれども、専門的な言葉ではございません。それで、川上対策というのは要するに薪炭、木炭、みんなだめになるし、間伐材にしたところで、建築材等が木材以外のものが出てきて、いわば林業として成り立つということになると、そもそもが基本的に考え直さなければいかぬ時期が来ておる。  したがって、あくまでも国土保全とか水資源涵養とかそういう点で一つ考える面と、そして川下対策は、今合板というのは、かつて繊維は日本が余り強くて向こうへ出ますからという問題でございましたが、そもそも弱い。したがって、川下対策というのは、関税問題があろうとなかろうと、いわば足腰を強くしなければならぬ。そういう態勢をとる必要が川下対策にはある。それで、昭和五十四年に、金額をまた忘れて申しわけありませんが、たしか十数億、川下対策で出した。出したというより、これは中小企業関係の高度化資金か何かでございました。残る人が最終的には負担して、無利子の金でやめる人に転廃業資金を出したというような仕組みでございましたが、そういうことをやったことがあるという趣旨の私の経験談を話したということであります。  金丸幹事長は、それならば大蔵大臣、銭出す気かな、こうアバウトにお考えになったかもしらぬなと思います。それが各紙に報道されておる。まだ関税を下げるための対策として議論したという意味ではございません。もとより原局の農林水産省なり林野庁なりで御検討なさって、我々素人がそんな変なことを言ってもまた物議を醸すだけでございます。ただ、一般論としてそういうことを申し上げたことは事実であります。
  281. 戸田菊雄

    ○戸田委員 結局、政府・与党首脳会議では、本問題については結論は出しておりません、意見交換程度であった、こういう理解ですか。
  282. 竹下登

    竹下国務大臣 それで、政府は政府として今MOSS方式というのですか、四分野でやっておる。したがって、党においてもこれについては政調会中心にいろいろな議論を進めてみようというような、最終的には単なる意見交換ではなくて、お互い一生懸命でやろうというところまでは合意したというふうに見ていただいて結構ではないかと思います。
  283. 戸田菊雄

    ○戸田委員 これは大臣、マンスフィールド大使等の意見をかりれば非常に強硬ですね。そんな状況では乗り切れませんよ。それでなくても、アメリカの議会等では大変な保護主義体制が出てきまして、真の自由貿易体制というものは崩れるのではないか、ことに対日の貿易収支その他を見ますと赤字で大変な状況だ、こう言っておる。だから、恐らくこれは中曽根総理が正月にアメリカを訪問して、レーガン大統領から、従前の包括的な対策では市場開放は進まない、我々の輸出も増強しない、こういうことで個別的協議でもってやっていこうということを提案されて、中曽根総理自体がそれを受けて帰ってきて、各省の関係者にそういうことを言っているんだと思うのですね。  そういう一連の経緯から見れば、アメリカが今四分野協議設置、こういう中で殊に見逃し得ないのは、現在日米鉄鋼協議会というのが常設委員会としてある。資本・金融市場等については日米円ドル委員会というのをつくってやっている。今回の四分野についても個別協議機関を設置してやっていこう、こういう意向のようですね。自動車自主規制は三月で切れるわけですが、改めてまた日米自動車協議会というようなものを常設してやっていこうじゃないか、そういう見解でしょう。これは通産省、どうですか。
  284. 黒田直樹

    ○黒田説明員 お答え申し上げます。  先生指摘のように、現在行っておりますアメリカ向けの乗用車の輸出規制は三月末をもって終了することになりますが、一九八五年度、つまり四月以降の乗用車の輸出の取り扱いにつきましては、諸般の情勢を見きわめまして、現在慎重に対応を固めていくべく検討中でございまして、現時点ではまだ対応は固まっていないのが現状でございます。
  285. 戸田菊雄

    ○戸田委員 いずれにしても各種協議会でがんじがらめにしちゃって、いわばアメリカの日本貿易に対する対応というものは、日米共同管理でがっちり押さえていこうというような状況じゃないかと思うのです。こういうことになるなら、日本の主体的な自主性といいますか、そういうものは全く失われていくんじゃないか、こういう気がいたしますが、この辺についてはどういう見解を持っておりましょう。  もう一つは、今回の電電公社の民営化に伴って、ガット、関税、貿易の一般協定でありますが、これを政府調達コードに基づいて実施されているわけですが、電電公社の資材調達、こういうものについては協定をさらに延長する、合意を見ているというようなことを聞いているのですが、この点はどうでしょう。  もう一つは、日本側の各分野ごとの輸入目標を決めさせるべきだ、こういう意向ですね。いわばターゲットを設定して、でき得れば四分野で百億見当の貿易体制をしきたい、こういう考えを持っていると聞いているのですが、こういう点についてはどういうお考えを持っていましょうか。
  286. 恩田宗

    ○恩田政府委員 お答え申し上げます。  二国間の経済関係につきましては、先進国の場合は必ずといったように協議機構が設けられておりまして、例えば今回の四分野問題の前にも、日米間にはハイレベル事務協議のようなものがございまして、相互に問題を出し合って協議していくという体制はございます。これはまたアメリカとヨーロッパとの間にもそのような機関が設けられております。したがいまして、このように国際化した社会におきまして、諸国の間で貿易問題につきまして協議をする場を設けるというのは、必ずしも制限的な意味合いであるとか、あるいは先生のおっしゃった締めつけとかいう意味合いでなくて、むしろ生じた問題をお互いに解き合おうという積極的な意味があるのではないかというように私ども考えております。  この四分野につきましては、たまたまこの時点において米国政府が、米国の商品で特に競争力が強いにもかかわらず、また日本の市場が、例えば電気通信とかエレクトロニクスのように十分発達する余地があるにもかかわらず、十分な市場機会を得ていないというふうに感じているものだけをとらえまして、特にこの四つの分野について協議をしたい、こういう申し出があったわけでございまして、これに対して日本側も、日本は特に米国側に対して市場を閉ざし、自由な競争を拒否する意図はないわけでございますから、両国政府のハイレベルでこの問題を協議しよう、かようなことでスタートしたものだと承知しております。したがいまして、私どもは、この協議機構というか協議のメカニズムというか、こういうものができ上がったことは、むしろ日米間の貿易問題に関する意思疎通と解決の手段ができたという意味において積極的な意味合いもあるのではないか、かように考えております。  それから、電気通信の政府調達の問題でございますが、これは調達の有効期間が終了した段階におきまして最終的には決定さるべき問題であろうと私ども考えておりますが、米国側の希望は政府調達を続けてほしいということでございましたので、私どもはそれを十分心得た上で対処したい、かように伝えてある段階でございます。
  287. 戸田菊雄

    ○戸田委員 もし仮にここ一年間ぐらいで関税定率の引き下げもしくは免除体制、こういうことになったとして、総理が指摘をするように、基本的な林野政策の対応策を考えろということであれば、これは農林省、きょう大臣は来れないそうですが、きのうの読売の夕刊によりますと、農林大臣は四月九日までにその対応策を決定しますと言っている。これは本当かどうか、本人がいませんから確かめられない。新聞報道によるとそう言っている。どういう対応策を考えて四月九日までに案を出すと言っているのか、その辺は林野庁長官、わかりますか。
  288. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 お答えいたします。  我が国の林産業界の現在置かれております大変困難な情勢につきましては御理解いただいていると思いますけれども、そういうふうな情勢でございますので、この木材製品の対外問題につきましては、関係国との友好関係にも配慮しながら、我が国林業を生かすという観点に立ちまして、その健全な発展との調和を図って対応するということが基本的に重要であると考えておるところでございます。したがいまして、その関税引き下げにつきましては極めて困難であると考えておりまして、慎重に対処してまいる所存でございます。いつ幾日の期日とか具体的なことにつきましては、まだ全くその辺にまでいっておるところではなく、慎重に対処をしておるところでございます。
  289. 戸田菊雄

    ○戸田委員 もしそういうことで対応策を考えるということであれば、基本的に国有林対応がどうなるかということが一番問題だと思うのですね。  これは六十年度の国有林野事業特別会計財政一覧ですが、六十年度は自己収入が三千四十二億円、それから一般会計より受け入れ百五億円、長期借入金が二千三百二十億円、計五千四百六十七億円という歳入。それから歳出はいろいろありますが、いずれにしてもこれを見ますと、とにかく財投からの長期借り入れ、四二%を占めているのですね。今国家財政は、昨年は二六%国債依存、ことしようやく若干縮めまして二二%、こうなっているのですが、それでも大変だと言っている。百三十兆円を超す借金を国庫は持っている。ところがこれは四二%。こんな状況で一気にずっとやってきたら、再建できないのじゃないですか。どう考えますか、長官。
  290. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 国有林は基本的に独立採算制をもって運営してまいりまして、五十一年ごろまでは全くの自己資金のみをもって運営できたわけでございますけれども、その後いろいろ木材市況の低迷等もありまして、借入金に依存せざるを得ないということから長期借入金が入るようになったわけでございます。  林業経営でございますので、その投資的経費が実ってまいりますには大変長期間を要するわけでございますけれども、その途中途中の一断面を切りますと、やはり借入金に大きく依存しなければ投資的経費を賄い得ない時代もございます。あるいは人員の構成等から、退職者の急増等によりまして、どうしてもそういう手当てをせざるを得ない期間もありまして、先生指摘になりましたような今日の財務内容になっておるわけでございますけれども、現在の資産内容は、これは日々成長、生育しているわけでございまして、この資産を守り育て、立派な経営を確立することによりまして、最終的にこういう借入金依存をなくしてまいりたいということで、現在経営の改善計画を進めておるところでございます。     〔熊川委員長代理退席、委員長着席〕
  291. 戸田菊雄

    ○戸田委員 これは今長官、そういう一般論でやっておりますが、そんなことじゃ、とてもじゃないが財政再建などはできない。第二の国鉄になっていきますよ。それはそうでしょう。例えば償還利子、財投から借りた利子払い、これは五十三年、百三十九億あったものが、六十年は九百二十億返さないといけないでしょう。今まで払ってきた借金の利子だけでも三千八百五十二億円。一兆円を超すのですよ、もう既に借金が。そういう状況なんです。それに対して国は若干の利子補給その他はやっておりますが、六十年度だけで見れば、時間がないから細かく言いませんが、百五億円しか出してない。F15重爆戦闘機一機分ですよ。これしか見てない。あとの四二%は全部財投の借り入れでやっている。利子がかさむ。そういう状況で林野がやっていけるはずがないと思うのです。これは大臣、どうでしょう。
  292. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに私も国有林野の経営というのは大変だなという認識はございます。いろいろやってみますと、本来は今の状況と全く違いますが、独立採算制、こういうところから企業的に経営すべきであるというこの柱は全くおりておるわけではございません。しかし、御案内のように、昭和五十三年に国有林野事業改善特別措置法、あの法律で造林、林道開設に要する事業施設費に一般会計から、こういうことになりまして、それから、五十八年からは林道災害復旧に要する経費を一般会計から、いわゆる国有林野内治山事業をすべて一般会計負担によって治山勘定で行う。さらに五十九年では、この改善計画の期間の延長を行うほか、急増します職員の方の退職金の財源の借り入れとその利子相当額への一般会計からの繰り入れ、こういうような一般会計の繰り入れの増額を、財政事情を見ながら今日まで行ってきておるわけです。しかし、私がよく川下だ、川上だと言いますが、完全に従来の物の考え方ですべて対応できる環境にはない、厳しい環境だという認識は私にもございます。
  293. 戸田菊雄

    ○戸田委員 ですから、私は国有林野の事業特別会計については抜本的に見直しをしていかなければいけないと思うのです。借金で半数以上の財源措置をとっているなんという事業は、これは恐らく倒産じゃないですかね。  だから、そういう面からいけば、それにふさわしい一つの対応策――私は歴年のいろいろな借財関係をずっと見てみますと、これは大臣、単年度決算で持っていったらどうでしょう。そしてその年に五千億なら五千億借金があるというなら、政府が何ぼ持つ。それは基本的には緑、森林の育成強化なんですから、国家百年の大計にかかわる問題。そういうことからいけば、単年度で決算をして、赤字その他累積債務が残らないように全部単年度で処理してしまう、こういうことを採用してやっていったらどうかという気がするのですが、これはどうでしょう。
  294. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 国有林の会計仕組みにつきましては、現在は造林等に要した経費を積み立てておきまして、それを原価とし、伐採をいたしましたときにその売り上げと対比するというような、長期的な経営管理の結果が財務計算上あらわれるような仕組み、経営の成果もそれによって判断できるというふうな仕組みをいたしておりますので、私どもといたしましては、現在の会計の仕組みが一番林業の実態に合ったものだというふうに考えておるところでございます。
  295. 戸田菊雄

    ○戸田委員 そんなのんきなことを言っている状況じゃないと思いますが、時間がないから、いずれ時間をかけてやります。  延納金問題ですね。これは例えば五十七年で見ると、延納金は千五百二十四億円。大蔵大臣と農林大臣の協議の上で、手形交換所加入銀行または日本木材信用協会の保証、こういった場合においては、減額利率として原則七・一%を五・六四%にする。一・四六%軽減する。そういう運用によって約七億円軽減されているのです。一方、財投からの長期借入金約一兆一千億円は年率七・一%で返済しているわけですから、借りる方が高くて貸す方が低いのですから、これで経営が成り立つはずないでしょう。この延納金問題はどういうように処理しますか。我が党の矢山代議士が予算分科会でこれを質問して、検討いたしますということになっている。その検討結果についてひとつ答弁してください。  もう一つ、五十八年度の林野等の売り払い処分を見ると、時価約六十五億円のものを公共用等のために約二十三億円減額して約四十二億円、六四%の収入しかないわけです。それからもう一つは、貸付地について、収入の側面から見れば時価約七億円の林野等をわずか二億円で貸し付けをしている。さらに時価約二十二億円の土地を無償貸し付けしているのですね。それから道路用地の貸し付けの実態、これは全くひどいものだと思うのです。殊に道路公団その他が対象なんですが、こういうものに対して、総延長約一万二千キロメーター、推定面積約六十万ヘクタール、これに対して貸付料はわずかに一億五千万円等々になっている。このような使用料、貸付料、これは御存じのように明治四十年に発足をして、戦後若干手直しをして今日に至っている。その間、産業や経済や貨幣価値、こういったものは大いに変化している。こういうものに絶えず即応して、適合した改正をやはりやるべきだと思うのですね。これはどう思いますか。
  296. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 最初に、延納金利の件につきましてお答えいたします。  国産材の顧客と申しますか、国産材を扱っております木材業界は、大変零細な業界が地域的に多いわけでございまして、そのために、定期預金等を担保として出せるような資金的な余力に乏しい業界が多く、そのために第三者の保証を担保とする零細業者が多いわけでございます。したがいまして、買い受け人の負担する保証料を考慮いたしましてそういう減額措置をとっているわけでございますが、これによりまして国有林材、国産材のそういう市場の確保ということもあるわけでございます。したがいまして、これが上がりますと、現在外材に比べまして国産材というのは市場性において非常に不利な点もございます。これの有利販売のために、そういう零細な業界といえども、私どもとしては健全な発展のために、販売政策としてこのような延納の金利を設定しておるわけでございます。  なおまた、財投の金利につきましては、国の財政施策の中から定められ、これらの販売の延納につきましては、国有林材の販売の施策としてこれを定めているところでございます。直ちに比較することにつきましては、いささか問題があるのではないかと思うわけでございます。  なお、二番目の問題で、国有林野を貸し付ける場合の貸付料の問題でございますが、これまで公共の利益の増進あるいは国有林野が所在する地域におきます産業の振興等のために、必要な要件を具備するものにつきましては減額あるいは無償という取り扱いを、先生お話ございましたようにとってきたわけでございますけれども、現在このような国有林の財政事情のもとにございますので、今後国有林野の活用に当たりましては、この国有林の厳しい財政事情から、収入の確保を図るという方向で、そういうものは売り払いあるいは貸し付けも含めまして適切に対処をしてまいりたいと思っておるところでございます。既にそのような減額の規定があるものにつきましても、ここしばらくはいわば停止した形をとっておりまして、地域の皆様には大変御不満の出る向きもあるわけでございますけれども財政事情から、そういう規定につきましてもいわば凍結、停止のような運営を最近はいたしておるところでございます。
  297. 戸田菊雄

    ○戸田委員 大臣、明治四十年に土台法がつくられて、それで戦後若干の手直しをやって今日に至っているわけです。いろんな状況が全部変わっている。だから見直しをして、やっぱり時代に即応した適正な貸付料もしくは使用料もしくはそういった延納問題、これをやるべきだし、今長官は、延納問題については中小の木材業者が多いから、こう言っているけれども、担当課にいろいろ聞いたら、これは介在をするいわば手形交換所を持っている銀行とか日本木材信用協会とか、そういう保証するところに全部ストレートでやるというのです。言ってみればマージンじゃないですか。業界には行ってない。担保を入れるときに、その保証金としてその金は全部そっちへ行っちゃった、こういう金ですよ。中小企業への補てんでもっていろいろやっておると思っているようなことはちょっと認識違いじゃないですか。これどうですか、大臣。これは抜本的に改善する必要があると思うのですが。
  298. 平澤貞昭

    平澤政府委員 先ほど林野庁長官がお話ししましたように、片方で財投から七・一%で借りていて、それから片方でそれより安い延納金利でやっているわけでございます。その理由づけといたしましては、その安い分だけが保証料相当額であるということでございまして、先ほど長官がお話ししましたように、それでは延納金利を上げますと、今国産材の消費を伸ばそうというときに、それに若干なりともマイナスの方向に行くという問題がございますし、かといって財投金利を安くするというわけにもいきません。そういうことで先ほどのような答弁になったのではないかというように考えるわけでございます。
  299. 戸田菊雄

    ○戸田委員 それから、今民有林における初回間伐が必要な人工林面積は大体どのくらいありましょうか。それから最近二カ年の、五十七年、五十八年、これを区分けでちょっと説明してくれませんか。
  300. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 民有林におきます、早急に間伐を必要とする――早急と申します意味は、ここ五年くらいの間にはぜひともやりたい、やらなければならないという面積が約百九十万ヘクタールというふうに把握をいたしております。最近の実行数字を申し上げますと、大体年に二十五万ヘクタールでございますので、六〇%程度の実行率ということになろうかと存じます。
  301. 戸田菊雄

    ○戸田委員 それから、国有林の森林資源の現況ですが、面積で人工林が二百二十六万ヘクタール、天然林が四百七十五万ヘクタール、除地が六十三万ヘクタール、総数七百六十四万、こうなっていますね。施業計画では、七十二年度まで伐木をした場合には、それに対して入植をしていくというようなことで計画はやっている。やっているけれども、現況を見ますると、七割近いものは天然林なんです。人工林は二百二十六万ヘクタールしかないですから。計画を見ると、確かに順調に年平均を出してそれぞれやっておるわけですけれども、そういった天然林が非常にふえてきている。山は非常に荒廃している、こういう実態があるのです。だから、こういう問題がなぜ生じているか、克服策としてはどう考えているか、その点をひとつお願いしたいと思います。  それから、時間がありませんから、警察庁から来ておりまするが、禁制品密輸入、なかんずく麻薬、銃砲等々が年々増大をしているわけですが、殊に麻薬等覚せい剤、これは九十二・五キログラムですか、銃砲は四百五十二、前年は百七十八、膨大なんです。捕捉率が向上したという、熱心に苦労している点はよくわかりますけれども、こういった大量のいわば麻薬、銃砲等の密輸入の押収件数があるわけですけれども、これらの総体的な防犯措置、これはどのように考えておられるか、その点をひとつお伺いしたいと思います。
  302. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 国有林で戦後最大の伐採をいたしましたのは三十年代でございまして、その当時は、現在の伐採量の倍近い伐採も行ったわけであります。  もちろん、伐採をいたしまして、そういう社会の需要にこたえたわけでありますけれども、跡はどうしても植えなければならぬということで、いわゆる拡大造林という造林を行ったわけでございますが、やはり土地の選び方、樹種の選び方等に、今日考えますと、いろいろ問題もございます。その後の生育経過から、造林した木よりも、むしろその後に入りました天然木の方が成長がよろしい。今後は造林地として管理するよりも、そういうその後に入った天然木をあわせて育てる方がよろしいというようなことから、地籍と申しますか、国有林の林地の戸籍を人工林から天然林に振りかえると申しますか、変更する、そういうふうな措置もとっているところでございますが、山の取り扱いとしては、やはり今後はその方がいいというものについてそういう扱いをしておるわけでございます。
  303. 清島伝生

    ○清島説明員 まず、覚せい剤密輸入事犯の現状について簡単に申し上げますが、昭和五十九年中に覚せい剤の押収量は百九十八キログラムございます。前年と比較しまして九十九キログラムの増加となっております。  このうち、仕出し地が判明したものについて見ますと、台湾からのものが全体の九二・四%、次いで韓国の五・五%等々となっております。検挙事例から見る限り、台湾、韓国あるいは香港というのが主な供給地となっています。  麻薬事犯につきましては、ヘロインが六・八キロ、乾燥大麻七十キロ等々でございます。フィリピン、タイ等の東南アジア諸国からの密輸入でございます。  次に、けん銃についてでありますが、昨年中密輸入事犯の検挙は三十三件、三十七名で、四百十九丁押収しております。フィリピンが大半でございます。あと南米あるいはアメリカ等となっています。  次に、対策でありますが、以上のような状況を踏まえまして、密輸入事犯の水際での検拳というのを最重点に取り締まりを行っておりますが、例えば供給地となっておる関係諸国の捜査機関との協力が不可欠でありますので、ICPOを通じて、あるいは捜査官の派遣によりまして、情報交換や捜査協力を行っております。また、国連のいろいろな会議などにも参加して、国際協力の強化に努めておるところであります。  国内におきましては、税関等々関係取り締まり機関と連携をいたしまして、監視体制の強化を図るとともに、情報交換を積極的に行いまして、全国警察が一体となって対処しているところでございます。
  304. 戸田菊雄

    ○戸田委員 最後に、大臣決意を一言聞きたいのですが、合板その他の外材の輸入はこれ以上やらない、関税定率も、免税その他税率引き下げ等はやらない、これは国内における林業の関係者の死活問題ですね。そういう意味で、そういう決意でひとつ言ってもらいたいと思うのですが、その決意を伺って終わりたいと思います。
  305. 竹下登

    竹下国務大臣 この問題につきましては、直接所管ということになりますと、やっぱり農林水産省そのものであろうと思いますので、そういう今戸田さんの御指摘なさったような背景というものを十分踏まえて、農林水産省との協議がある場合には対応するということが、お答えの限界でございましょう。
  306. 戸田菊雄

    ○戸田委員 時間がなくて、関係各省で待っておられて申しわけなかったのですが、どうもありがとうございました。
  307. 越智伊平

    越智委員長 大蔵省以外の方は結構であります。  これにて両案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  308. 越智伊平

    越智委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  まず、あへん特別会計法を廃止する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  309. 越智伊平

    越智委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、関税暫定措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  310. 越智伊平

    越智委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  311. 越智伊平

    越智委員長 ただいま議決いたしました本案に、対し、堀之内久男君外三名より、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者より趣旨の説明を求めます。上田卓三君。
  312. 上田卓三

    上田(卓)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、提案の趣旨を簡単に御説明申し上げます。  御案内のとおり、この法律案につきましては、審議の中で、市場開放に対する政府の取り組み方などについて、熱心な議論が展開されました。  この附帯決議案は、これらの議論を踏まえ、政府において特段の配慮を要する事項を取りまとめたものであります。  なお、個々の事項につきましては、案文で尽きておりますので、その朗読により、趣旨の説明にかえさせていただきます。     関税暫定措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、左記事項について配慮すべきである。  一 関税率の引下げに当たっては、国内産業への影響を十分考慮し、特に農林水産業、中小企業の体質改善を併せ考えつつ、開発途上国等との協調を進めるとともに、国民生活の安定に寄与するよう努めること。  一 世界経済の中における我が国の立場を踏まえ、自由貿易体制の維持強化、世界経済の活性化に貢献するため、新しい多角的貿易交渉の推進に今後とも積極的役割を果たすよう努めること。  一 税関業務の増大、複雑化にかんがみ、通関制度等の一層の見直しを行うことにより、その効率的、重点的運用に努め、特殊な職務を考慮して税関職員についてその処遇の改善に努めること。 以上であります。  何とぞ御賛成くださいますようお願い申し上げます。(拍手)
  313. 越智伊平

    越智委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  お諮りいたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  314. 越智伊平

    越智委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  本附帯決議案に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。竹下大蔵大臣
  315. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。ありがとうございました。     ―――――――――――――
  316. 越智伊平

    越智委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  317. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  318. 越智伊平

    越智委員長 次回は、来る二十九日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時十一分散会