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1985-03-08 第102回国会 衆議院 大蔵委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年三月八日(金曜日)     午前十時三十分開議 出席委員   委員長 越智 伊平君    理事 熊谷  弘君 理事 熊川 次男君    理事 中川 秀直君 理事 堀之内久男君    理事 上田 卓三君 理事 野口 幸一君    理事 坂口  力君 理事 米沢  隆君       糸山英太郎君    大島 理森君       加藤 六月君    鍵田忠三郎君       金子原二郎君    瓦   力君       笹山 登生君    塩島  大君       田中 秀征君    中川 昭一君       東   力君    平沼 赳夫君       藤井 勝志君    宮下 創平君       山岡 謙蔵君    山崎武三郎君       山中 貞則君    伊藤  茂君       川崎 寛治君    沢田  広君       渋沢 利久君    戸田 菊雄君       武藤 山治君    山中 末治君       石田幸四郎君    古川 雅司君       宮地 正介君    矢追 秀彦君       安倍 基雄君    玉置 一弥君       正森 成二君    簑輪 幸代君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         大蔵政務次官  中村正三郎君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       松原 幹夫君         大蔵大臣官房総         務審議官    北村 恭二君         大蔵省主計局次         長       平澤 貞昭君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省理財局次         長       中田 一男君         大蔵箱証券局長 岸田 俊輔君         大蔵省銀行局長 吉田 正輝君         国税庁税部長         兼国税庁次長心         得       冨尾 一郎君  委員外出席者         防衛庁防衛局防         衛課長     宝珠山 昇君         労働省労働基準         局賃金福祉部賃         金課長     伊藤 庄平君         自治省税務学府         県税課長    前川 尚美君         日本専売公社総         裁       長岡  實君         日本専売公社理         事       遠藤  泰君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ————————————— 委員の異動 三月七日  辞任         補欠選任   矢追 秀彦君     神崎 武法君   玉置 一弥君     大内 啓伍君 同日  辞任         補欠選任   神崎 武法君     矢追 秀彦君   大内 啓伍君     玉置 一弥君 同月八日  辞任         補欠選任   山中 貞則君     鍵田忠三郎君   藤田 高敏君     山中 末治君   玉置 一弥君     吉田 之久君 同日  辞任         補欠選任   鍵田忠三郎君     山中 貞則君   山中 末治君     藤田 高敏君   吉田 之久君     玉置 一弥君     ————————————— 三月七日  あへん特別会計法を廃止する法律案内閣提出  第五三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一五号)  租税特別措置法及び所得税法の一部を改正する  法律案内閣提出第一六号)  入場税法の一部を改正する法律案内閣提出第  三三号)      ————◇—————
  2. 越智伊平

    越智委員長 これより会議を開きます。一法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法及び所得税法の一部を改正する法律案及び入場税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤茂君。
  3. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 同僚委員の時間をいただきまして若干質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、一昨日の当委員会における大臣の御答弁に関係をしてお伺いをしたいと思います。  去る六日の本委員会で、私の先輩議員である川崎さんの質問に対して大臣の御答弁がございました。五十四年十二月の衆参本会議における財政再建に関する決議という内容であります。それに関しまして大変な文言の答弁がございまして、一般消費税仮称)について国民理解が得られないので否定をされた、国民理解が得られるならば今後導入検討の対象となり得る、恐らくは仮定のお話だと思いますし、国民理解が得られたという今日段階での確たる証拠物件はないわけでありますから、全くの言葉論理として述べられたというふうなことではないかと思います。  率直にこれは大臣のお気持ち伺いたいのでありますが、実は私は、それらの議論予算委員会以来の議論を伺っておりまして、非常にやりきれない思いがいたします。本年の大蔵委員会にも数数の法案が付託をされておりますし、審議に当たっておりますが、それ以上に税制の大きな転換期になっているわけでありまして、それにふさわしい、あるいはまた国民に語りかけ、国民に納得を得られるような議論をするのが今国会における大蔵委員会議会の使命であろう、ひとしくこれは私ども思っているところであります。ところが、今までの税制に関する議論でも、いろいろなところから御批判もこうむっておりますが、総理から、シャウプ以来の抜本的見直しをやりたい、税制プリンシプルは公平、公正、簡素、選択であるというふうな大上段の話がありまして、しかし、それから後は総理の言われる多段階、包括的、ほか、ほか、投網をかけるようなという全くあいまいもことした発言、また竹下さんの今までの御説明でも、肝心なこと、具体論になりますとそれは権威ある政府税調に御審議を願います、国会のさまざまな御意見は予断を交えずそちらの方に報告をしたいというところで実は全部終わっているわけであります。そういうことの繰り返しで来ているわけであります。私は、今の段階で税の専門委員会である我が大蔵委員会議論がそんなせこい話でいいのだろうかということを実はこのところ思わざるを得ないわけでありまして、この際、大臣に大所高所に立った御見解伺いたいのでありますが、その前に実は二つ申し上げたいと思います。最近読みまして関心を持った文章がございまして、二つ申し上げたいわけであります。  その一つは、かつて答弁席にも何遍も座っておりました福田幸弘君が「税とデモクラシー」という本を出しています。内容には私ども賛成、反対いろいろあります。本をばっと本屋で読みましたら、英語の図案が書いてあります。TAXANDDEMOCRACYという言葉がずっと並んでいます。そんな装丁になっています。彼らしいなと実は思ったところであります。  その冒頭のところに、「われわれ国民が「税」を考える場合の基本は、「税は民主国家一体である」ことを認識することである。」「この思想は一二一五年のマグナ・カルタまで遡る。国が何をやるのかということと、それに必要な財源とは、国民が選んだ代表者による国会で定めなければならない。予算以上に国は金を使えないし、税法によってのみ国民に税を課すことができる。」ということからこの本が始まっております。中身はいろいろありますが、私はそういう発想は大変大事なことだろうと思います。  そして、その中でこういうことが書いてあります。「歴史的にいって、現在ほど、税金問題が国民各階にわたって活発に論議された時代はなかったのではなかろうか。」「先進諸国のように国民の間に、税と一体となった真の民主主義を根づかせなかったといえよう。税の不平、不満が世上がまびすしい今日こそ、民主主議の原点としての税の本質を、国民全体がはじめて認識することになる好機であり、そういう意味で、現在、日本の歴史になかった民主革命が、税を通して静かに進行していると理解すべきであろう。」こういうことが冒頭部分に言われております。これは、大臣もそうでありますし、主税局長もそういう哲学は常に念頭に置かれていることだろうと思います。  私はそういうベースで考えますと、今この国会でも最大の問題が税の将来というときに、さっき申し上げたようなあいまいもことした内容、あるいは言葉じりをとらえられないようにガードを固める、少しずつ本音を出していく、一昨日の御答弁はまさしくそういうことだと思いますが、そんなことでいいのだろうかというふうな気がするわけであります。  もう一つ申し上げたいのでありますが、これはアメリカのことであります。総理大変関心を示されていたようでありますけれどもアメリカの昨年暮れの財務省報告税制改革についてのレポートが出されております。それを、全部は無論読めませんので総括部分だけ読んだわけでありますけれども、読むと、非常にこれは率直であります。その書き出しが、「現在の米国の税制は、緊急に簡素化改正を必要としている。複雑であり過ぎるし、不公平である。また、貯蓄投資経済成長を妨げている。」この財務省の「提案は、全国的に行われたいくつかの公聴会で示されたたくさんの国民の声を反映している。」云々というようなことが書いてあります。要するに、現状は不公平であり、金持ち優遇であり、直さなければならない、単刀直入にそういうことを言っておるわけであります。  また、内容は全部賛成でありませんが、先般二月の初めにアメリカ大統領一般教書が発表されました。その税制のところを見てみますと、例えば「税制改革であり得べからざることの一つは、それが姿を変えた増税であってはならないということである。」云々と書いてあります。あるいはまた、「ともに本年、公平と簡素と成長を目指す税制法案を成立させ、わが国経済をわれわれの夢の原動力とするとともに、アメリカ世界投資中心地とするようにしたい。さあ、ともに始めようではないか。」まあレーガン流ですね。内容の是非はともかく、私は非常に率直に事態を語っていると思います。  大臣、そういうことを考えますと、私は、この国会決議言葉の位置づけあるいはとらえ方という問題でも、言葉論理学の問題ではないと思います。やはり率直に政治家として今国民に将来をどう語るのかということが必要な段階ではないだろうかと思うわけでありまして、そういう意味でいいますと、今までたくさんの波乱と、あるいは大平さんの時代を含みましたさまざまの大きな税に関する大変な論議時代がございます。そういうことの経過をきちんと踏まえながら、そうして現状問題点を明確にしながら、国民に向けてどのようにしていくのかということを語っていく、それが今日問われなければならないことではないだろうかと思うわけであります。  そういう気持ちでおりますと、先般の御答弁の言い方その他についても、聞いておりましてけしからぬということと同時に、私は非常にやりきれない思いが実はするわけであります。そういう意味で、きちんと経過をとらえ、国民全体は忘れていないわけですから、そういう厳粛なる事実認識の上に立って将来を考えるという角度からの大臣のとらえ方があるべきであろう、言葉論理の問題ではないというふうに思うわけでありまして、そういう意味で、せこい意味ではない御見解財政再建に関する決議につきましてまずお伺いをしたい。     〔委員長退席中川(秀)委員長代理着席
  4. 竹下登

    竹下国務大臣 私も伊藤さんの、税は民主国家そのものである、そうした物の考え方賛成でございます。  そこでまず最初に、先般私が川崎委員にお答えいたしましたことについて、テレビ、ラジオの報道あるいは一部新聞報道につきまして大変な誤解を与えた点があると思いますので、その点についてまず申し述べます。  詳細に速記録を取り寄せて読んでみますと、五十四年十二月の国会決議について「いわゆる一般消費税仮称)は、その仕組み、構造等につき十分国民理解を得られなかった。従って財政再建は、一般消費税仮称)によらずこという趣旨が書かれてあるわけであります。そして、それにこたえて政府税調等においても、十分の理解を得られなかった、したがって、財政再建歳出歳入に当たり幅広い観点から、というようなことが後追いして意見として申し述べられておるわけであります。したがって、当時本委員会で、当時の我が党の山中税制調査会長を初めとしてここで例の決議をおつくりになりましたときに、時々顔を出させていただいておりましたので、ここから正確に読み上げますと、「国民理解を得ることができなかった、よって、この手法はとらない、いわゆる一般消費税仮称)はと、こういう決議であるわけでございますから、あれは読み方によっては国民理解を得られたらやってもいいじゃないかという読み方にもなりますので、したがってその辺は、社会経済情勢において税制というのは国民ニーズ変化してきますから、随分いろいろなことを考えて本当はあの決議案はつくってちょうだいしたものだなというふうに、私自身は当時印象を持っておりましたがこここのところが問題でございます。  したがいまして、私もまず反省をしてみまして、既に一般消費税仮称)の手法はとらないということの国会決議が生きており、また、総理もこのような答弁をされておりますので、私が当時の印象を申し述べましたことも誤解を与えることとなれば、後日協議して、このことは川崎委員の了解も得て、取り消したが適当だと思われるところは取り消したがいい、こんな感じを率直に持っております。  それからもう一つ、やはり国会議員として私いけなかったなと思いますのは、どうも議員であり行政府立場にありますと、その立場を混交する嫌いがございます。あくまでも国会決議有権解釈国会にありますから、それを政府の一員の私が、当時の印象としたといたしましても申し上げるというのは、私の節度を越したことではなかろうか、この辺は遺憾の意を表すべきであるというふうに、大体きのうから整理をしてまいりました。  そこで、今度は伊藤さんの政治哲学に関するアメリカと比較しての問題でございますが、私は、その手法はいずれが可ということは、これはあるいはいろいろな評価のあるところであろうと思います。すなわちアメリカの場合は、いわゆる一般教書あるいは提言というようなものが国会においてそのまま取り上げられて制度化していくということは、日本国会よりもはるかに少ないわけであります。あるいは各党で投票の自由が個人にあるということもあるわけでありましょう。だから日本の場合は、国会議論等を正確に審議会等にお伝えして、そこで出た結論に対して採択すべきかどうかという判断政府が下して、そしていわゆるかなりの根回しを行った後国会に提出していくという手法をとっておるわけであります。したがって、いずれが民主主義のあり方としていいかということになりますと、私は評価の分かれるところではなかろうかという感じは持っております。  ただ、私どもも今伊藤さんがおっしゃったように、いわゆる言葉じりをとらえた議論をいたしますと、国民に呼びかけておるという印象がなくなって、このハウスを構成するプロ同士の話、問答だけに終始していくという印象は、これは私も国会議員の一人として気をつけなければならぬことだという認識はひとしくいたしております。  以上、先般の答弁に対する私の考え方並びに協議いたしまして、誤解を与えた点はあるいは理事会お願いして速記録を見た上で削除させてもらいたいという気持ちを持っておることを申し上げたわけであります。
  5. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大臣の御答弁の前半分の方は、また委員長お願いでありますが、当委員会理事会その他ででも、国会機関にふさわしい取り扱いをきちんとするようにお願いをしたいと思います。  後半の部分の方は、率直な気持ちお話はございましたが、何も私ども野党大臣要求するだけというふうには私は思っておりません。先般も申し上げましたが、大変な大きな転換期であります。ですから、税の専門審議機関である政府税調、これも国民意見を聞き、国民の合意を形成し、そして立派な政策論をつくる、あるべき、やはり今日の時代にふさわしい、あるいは三十五年前のシャウプ使節団以上のさまざまの御努力をしなければならぬと思います。それにふさわしい行動も必要だと思います。政府の方でもあいまいもこではない率直な御意見の御披瀝があって当然でございましょうし、私ども議会人として、国民の意向を代表したそういう論議の場でどのようにプロダクティブな議論をし、完全に一致するのは難しいと思いますが、何か新しい形の努力をしなければならないということもいつも感じているところであります。  もう一つ、これは大臣にお伺いしたいのでありますけれども大局的観点に立ったときに、こういうことも必要だろうと私は思います。というのは、シャウプ以来の抜本的見直しが必要であるという御見解と、税制改革四つプリンシプルとして公平、公正、簡素、選択というものが提起をされております。それから先はあいまいもことしているというのが世上論評をされているところであります。私は思うのですけれども、その上にもう一つ政治家として、政府として加えるものがあるべきじゃないだろうかと思うわけであります。アメリカ報告の場合も、単純に日本と比較する問題ではないと思いますけれども経済成長のためのということが三つのうちの一つの標語になっております。そして、その解説あるいはレーガン大統領一般教書などを見ましても、そういう政策的あるいは社会の将来に向けてどうするのかという判断ベースになって税制の問題が論じられているという状況につながっているわけであります。  私は思いますけれども税負担をどうするのかということは大事な一つ分野であります。しかし、それだけでは国民全体が納得されないと思います。その分野だけの議論では国民はついていかないと思います。高齢化社会広域化社会世界日本の責任、いろいろ大きな変化が起きます。その中で、どのような社会が必要であり、どのような社会ニーズがあり、そのためにはどのような公平な負担が必要なのか、そういう前提としての社会目標というのかビジョンというのか政策的な判断というのか、そういうものがあって、その上に立って税制議論がされる、そうでなければ国民はついていかないと私は思います。そういう点が欠落しているということではないかと思います。  政治家の大先輩竹下さんには大変恐縮なんですが、正月に新聞を読んで、この間は言語明瞭でいきますというところを申し上げましたが、もう一つ、読みましたらがっかりしたのですけれども、ことしの抱負はと記者団に聞かれて、大蔵大臣をやめることという何かお話をなさったそうでありまして、今非常に重大なときに立たれている大蔵大臣竹下さん、政治家竹下さんが、大蔵大臣をこの時代にふさわしいように目覚ましく立派にやって次の大きな発展ということではないだろうかということも実は個人的には思うわけであります。税制を狭い意味で語る前提に、そのような政策的視点というものを政府として研究され、国民に語られるべきではないだろうかと思うわけでございますが、いかがでございましょうか。
  6. 竹下登

    竹下国務大臣 およそよって立つ政党基盤の相違はございましょうとも、将来の我が国はいかにあるべきかということは、それぞれ政治家として胸の中に持っておられるであろうと思います。ただ、現在私が担当しておる分野はその中のいわば大蔵行政であり、そして大きな課題として税制改革というものを抱えております。その際、税制は、中曽根総理言葉をかりますならば、公平、公正、簡素、選択という四つの柱で、それも長い間行われてきた我が国税制の中に、長いだけにいろいろなひずみができてきた、したがってこの際、抜本改正検討すべき時期に到達しておるという税制調査会の異例の答申を受けて、そのような決意を内閣全体としてしたわけであります。  そうなりますと、かつての一般消費税仮称)の際の議論にもございましたように、いかに立派な政策といえども国民理解と協力を得なければ実行に移すことはできない。したがって、国民のコンセンサスが那辺にあるかということの国会論議、そしてさらには各方面の議論、これらを専門門機関である政府税調に正確にお伝えし、そこでまずは議論をしていただくというのが一番穏当な筋ではないかという考え方に立って、できるだけ私どもとしてはみずからの考え方を表に出さないように気をつけて対応しておるというのが偽らざる私の心境でございます。
  7. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 内閣の中で大蔵大臣という分野の職責ということもわかります。同時に、注目のニューリーダーでありますから、大きな抱負国民に語ることもどうぞおやりになるべきではないだろうかという気持ちであります。  主税局長に、今後の所得税制について、二、三点お伺いいたします。  政府が、また総理が出されている税制改革の方針の中にも、簡素という言葉がございました。それに関連をして、所得税制簡素化あるいはフラットと申しましょうか、現在の累進税率の刻み、十九が十五になりましたが、それが五がいいのではないか、あるいはまた、きょうのある新聞を見ますと八ということで大蔵省は具体的な作業、検討をしているという報道もございましたが、大体今までの議論でも前向きにそれらの議論が進められてきたという印象であります。  ただ、私ども考えますと、幾つか論点を明らかにしなければならぬと実は思うわけであります。  例えば、歴史的に振り返ってみますと、三十五年前のシャウプ税制スタートのときには、望ましい方向として総合課税、そして直税中心所得税累進、これが公平、公正な制度であるということで今日まで参ったわけであります。刻みを少なくしてフラットにするという議論が、我が国だけではなくて西欧の方でも今行われているというわけでありますし、総理の御答弁の中でも、リーガンレポートには関心を持つということでございまして、何か肯定的なお話でございます。そういたしますと、シャウプ税制スタートのときの公平であったと考えられてきた方向と今日と、社会経済状態その他を含めましてどのように変化をしたのかという視点一つあってもいいんじゃないかと思います。その辺をどう御認識になるのかということが一つ。  それから私は、アメリカの場合には貯蓄投資、その分野を強化をするという政策的意味合いが非常にあると思います。日本の場合には一七%でしたか、貯蓄率は非常に高い。この間の利子・配当課税問題についての見解の中でも、一律課税をしても貯蓄率は下がらないという意味のこともレポートにあったと思いますが、そういうことを含めて見ますと、アメリカと同じように高額、高率部分を大きく下げて、例えば七〇を五〇とかにする必要性日本の場合にもあるのだろうか、金持ち優遇みたいな世論の反響の方が大きく出るのではないだろうかという気がいたします。  それからもう一つ、例えば所得税税収総額を大幅に引き下げるというようなことは難しいと思いますが、現在の所得税の収入、国税における比率、総額をそう変えない、そういう範囲で大胆に五とか八とかフラットにするという場合には、当然ながら今最低一〇・五でしたか、それが一五になるとか一七になるとか、最高の方が五〇に下がるとか、別の意味でのアンバランスが起きる。それに対して、もし大型間接税導入をされれば、低所得者の方は二重の負担になるという現象が起きる。大型、大幅な減税の時期にどう可能な改正をしていくのかということであろうかなという気もいたしますし、アメリカと違って日本の場合に最重点に累進構造を変えなければならないという場合に、その最重点は、これも政府の御答弁でも肯定的であったと思いますが、大臣のいつも言われる熟年こじき層でしょうか、例えば年収五百万から一千万とか、その層のところをどうするのかということが政策の焦点ではないだろうかという感じがするわけであります。  三点ほど一緒に質問いたしまして恐縮でありますけれども所得税、それから累進、フラット、それらについての見解伺いたい。
  8. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 多岐にわたる御指摘があったわけでございますけれども、五十九年の税制改正所得税の数年ぶりの基本的な見直しをお願いしたわけでございますが、一昨年の十一月に政府税制調査会の答申がございまして、そこに示された「基本的考え方」に沿って五十九年の所得税制改正お願いしたわけでございます。  その答申に述べられております線に沿いまして、ただいま委員が御指摘の点について若干私ども考え方を申し述べさせていただきますと、現在、所得税制を見直す場合に、その基礎にあります我が国社会経済構造の変化に即応することが主要な眼点になるわけでありますが、具体的にどういった点が問題なのかということでございます。一つは、やはり高度成長期以降今日まで我が国の所得水準が非常に上がってきておる、所得水準が上昇する中で所得の平準化が進行しておるということが第一点であろうかと思います。第二点は、産業就業構造の変化に伴いまして、いわゆる給与所得者の数が非常にふえておる。今日我が国所得税の納税人員の九割以上が給与所得者ということになりますと、我が国所得税制はすぐれて給与所得者所得税問題であるというふうにとらえることは非常に大事な視点である。それから第三点は、特に昭和五十年代に入りまして財政の、特に歳出面における所得再配分機能が非常に拡大をしておる、そういった構造変化の中で所得再配分の機能をどう考えるか、それが問題であろうかと思うわけでございます。  従来こういった点につきまして、我が国所得税制についていろんな問題が指摘されておるわけでございますけれども一つは、我が国所得税の累進構造が先進諸国に比べましても際立って急であるという点、それから、それと不可分の関係にあるわけでございますけれども、税率構造の刻みの数が非常に多い。これは五十九年の改正で十五という刻みの数にしたわけでございますけれども、この刻みの数自身もう少し縮小してもいいのではないかという議論もあるわけでございます。  ただ、ただいま委員が御指摘になりましたように、所得再配分機能というものを考える場合に、アメリカのような大胆なフラット税率への修正といったような考え方がいいのかどうかということはこれからの議論になろうかと思いますけれども、一般論として申し上げますれば、所得税の再配分機能というのは、その国の財政全体が持っている所得再配分機能をどう評価するか、それと同時に、それぞれの国におきます所得の階層分布に適応した再配分機能というのはあるわけでございまして、アメリカが三つにしたから日本も三つにするというふうな考え方議論さるべき問題ではなかろうと考えるわけでございます。  それから、累進構造の刻みの教との関連で、いわゆる簡素化ということを御指摘になりましたけれども、私ども総理がおっしゃっている簡素化というのは、いわば古典的に租税原則で述べられておる、つまり納税者に非常にわかりやすい、それからもう一つは、わかりやすい税制である以上は税務行政が恣意に流れないという意味でも簡素化という観点が非常に大事である、そういう基本的な考え方が述べられておると考えておりまして、簡素化即税率構造の刻みを簡単にするというふうな発想ではなかろうと考えておるわけでございます。
  9. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 主税局長、申し上げました中でもうちょっと共外的に、もしフラットにする、刻みを少なくする、これを現在の所得税総額という中で考えれば、新たな不公平が起きる、それに大型間接税というものが加わった場合には二重の負担になる、これは自明のことではないかと思いますし、それらの内容というものはさらに、大まかな概念論ではない、緻密なさまざまの税負担に関する分析が前提となって議論さるべきであろうと思いますが、それはよろしゅうございますか。
  10. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 五十九年の所得税改正の場合に累進構造を若干なだらかにするという考え方に至ったわけでございますが、これは、当時の税制調査会の答申にもございますように、所得階層で見ますと中堅所得階層、それから世帯類別で見ますと多人数世帯の税負担の緩和と申しますか軽減と申しますか、そういうところに主眼があったわけでございます。  いずれにいたしましても今後所得税制に対する議論が深まっていきます中で、先ほど私が申し上げました所得再配分機能をどのように考えるかという問題が提起されるわけでございますけれども、税体系の議論は、ただいま委員が御指摘になりましたように、あらゆる税目を総合した結果国民負担構造がどういうふうに変わるかということが最後の問題になるわけでございまして、その意味では所得税制のみならず、間接諸税も含めましての税制全体が持つ所得再配分機能の姿が一体どうなるかという観点を入れて、委員がおっしゃいますように、精密と申しますか慎重な検討が行われなければならないということは御指摘のとおりかと思います。
  11. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 これは主税局長よりも大臣の方にお伺いしたい気持ちでありますが、もう一つ税制に関して伺いたいのは、先般、税調会長の小倉さんにお越しをいただきましていろいろと見解伺いました。その中の一つに、これから議論される場合には、特に大型消費税に関連してでありますけれども、従来の一般消費税議論のときに、一般財源、赤字埋めという形に実はなったわけでありますけれども、その後、今の段階議論は違った点があると思います。それは福祉財源とか目的税ということを検討するという話題が起きております。それから、国と地方ということで、ある新聞には、大蔵省は二割だと言い、自治省の方は半分だと言っているなんて出されておりましたが、それは別にいたしまして、国と地方という観点、それから大型減税とセット、これも自民党の相当の首脳部の方もいろいろと語られているようでありますが、そういうことが前とは違った論議になっているようだがということを私の方から申し上げましたら、小倉さんの方から、いやその議論はずっと前からございました、ただこの前はそういうことを具体化するお話はありませんでした、しかしこれからの議論ではそれらの点も含めて包括的な協議を、審議をしなければならないと思いますというふうなお話でございましたが、それらの点についてはどう政府側の方はお考えになっておりますか。
  12. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに本委員会等の議論におきましても、目的税の問題でありますとか、あるいは国と地方との問題でありますとか、そういう議論はあったこともございますし、税調でもかつても議論としてはあった議論だそうでございます。が、そういう議論がさまざまなところで行われておることを税調会長も御承知でございますから、そういうものも包括して論議の対象になるだろうという私見を述べこられたのではなかろうかと私は理解をさせていただいております。
  13. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 これは理事の方に言うべきことかもしれませんが、委員長お願いでありますけれども、私は、ことしの大蔵委員会というのは、さまざまな法案審議も十分やらなければなりませんし、それ以上に大きな税の転換期でありますし、実はさまざまな議論国民的に行われるわけであります。そういう意味で申しますと、形式的に言えば小委員会でしょうか一般質問でしょうか、いろいろな意味で、法案が終わったから大体おしまいということではない議論の時間をとられるべきではないだろうかと思うわけでありまして、そういう御配慮も今後ぜひ尊敬する各党で御相談をお願いしたいと思います。  次に移らしていただきたいと思いますが、長岡総裁にお越しをいただきまして、ありがとうございました。  四月一日、いよいよ日本たばこ産業株式会社への移行ということで、これは世紀的な大きな転換になるわけでありますが、総裁初め、また大蔵省側も、誠実に国会審議を踏まえた御努力をいただきまして、その面では非常に敬意を表しているところであります。また、一昨日も同僚の戸田議員からさまざま質疑がございまして、繰り返しはやめたいと思います。ただ、大きな転換期に当たりまして、特に例えば職員、私ども心がかりな点をどうしていくのかということを二、三点ほど総裁にお伺いしたいわけであります。  その一つは、四月一日から大きな転換に入る、いろいろな意味で将来についての不安もありますし、これから先の見通しを考えれば厳しい船出でありますから、いろいろな不安もあるのも当然でございましょう。あるいは、何か将来に希望を切り開くような努力をどうしたらいいのかという意味での戸惑いなり懸念という気持ちも、三万数千の職員の皆さんにはあると思うのであります。職場に参りますと何かそんな気持ちをいろいろと伺うわけでありまして、最初が肝心でありますから、スタートのときにさまざまのそういう努力をしなければならないと思うわけであります。  今は総裁でございますけれども、新社長になったおつもりでお答え願いたいと思うのですが、そういう時点で、将来に向けて懸命にまた精力的に努力していこうという気持ちをみんなに持っていただく、そういうアクションが当然必要だろうと思います。また、私は思いますが、これからはさまざまな意味で参加の時代とも言われております。民間の産業でも膨大な職員からの提言などを常時間いて、それを大きなパワーにして発展をするということも、日本の中ではそういう例がたくさんあるわけであります。  こういうときにやはり職員の提言、職員の気持ちども率直に聞き、大胆にそれをくみ上げてやっていく。そういう中には、今すぐできることもできないこともあるでありましょう。ただ方向としては、例えば雇用問題、厳しい合理化の問題にぶつかるわけでありますから、今後の雇用問題が大きな不安の一つだと思います。何か事業開発本部のようなものをスタートのときからおつくりになるようなことも伺っておりますけれども、そういうところにさまざまな意見やアイデアその他も含めて集中する、その部分を今後の運営の中で重視をしていく、そういう構えが非常に大事ではないだろうか。それは一年後にできることもあれば五年後に具体化しなければならないことも当然あるでありましょう。スタートに当たって、さまざまそういうことがなければという気持ちがするわけでございますけれども、その点、総裁、いかがお考えでしょうか。
  14. 長岡實

    ○長岡説明員 お答え申し上げます。  四月一日から株式会社組織に移行する時期も迫っておるわけでございますけれども、何と申しましてもスタートが肝心であるということで、私も実はその準備の仕事がいろいろございましてなかなか地方へは出られないのでございますが、機会を見つけては出かけてまいりまして、工場その他第一線の職員全員を集めて私の気持ちも率直に訴え、また数人を集めて意見を聴取するといったようなことで、意思の疎通も十分に図っておるつもりでございます。  やはり、何と申しましても職員の将来に対する不安を除去する必要がある、そして希望を持って新しい仕事に取り組んでもらわなければならないわけでございます。将来の不安除去という点につきましては、私どもは、何と申しましても新会社の事業の本体はたばこ事業でございますので、たばこ事業については、厳しい国際競争が展開される中にあって外国の企業に負けないようないいたばこ、そしてその消費者であるお客様に喜んで選択していただけるようなたばこを開発し、市場に投入し、それを売っていくということに全力を傾けようということを呼びかけておるわけでございますけれども、ただ、喫煙と健康の問題その他もございまして、率直に申しまして、たばこという商品そのものが将来非常に業容拡大の余地があるかどうかという点になりますと、これは私どもも相当冷静に考えていかなければいけない。そうなりますと、職員全体が将来夢が持てるような新規事業の開発というのは、新会社の経営者として最大の責務の一つであろうかと考えております。  そのような意味で、ただいま伊藤委員おっしゃいましたように、発足のときから原料本部、製造本部、営業本部といったような事業本部制と並びまして事業開発本部的な機構をスタートさせて、そこで第一線職員の知恵まで全部吸収しながら、社を挙げて新規事業の開発に取り組んでまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  15. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 四月一日に向けてほぼ順調に作業が進んでいるというふうに伺っておりますが、これは監理官と総裁と両方簡単に伺いたいのですが、最終的な政省令その他を含めました、政省令は公布されておるようでありますけれども、進捗状況、それから最終設立委員会、定款が決定されるでありましょうし、資本金はほぼ固まったように報道では伺っておりますが、資本金あるいは役員の数その他を含めた概括、最終仕上げの見通しはどうなっておりますでしょうか。また、公社側の方で新会社への準備、特に何か新会社移行への準備、何か大きな問題が残っているとかいうことではないかとは思いますけれども、その辺の状況、概括いかがでしょう。
  16. 長岡實

    ○長岡説明員 新会社移行に当たりましての準備の状況、監理官の方からお答え申し上げる事項が多いと存じますけれども、私から申し上げますと、株式会社組織になりますから会計の仕組み、会計制度も変わります。したがって予算の面でも、収支を管理する予算から損益を管理する予算へ変わっていくわけでございまして、こういったような問題は相当早目に準備を進めてまいりませんと事務の執行に混乱を来すわけでございますけれども、この点につきましては、おかげさまで法案を早く通していただきまして準備の期間もございましたので、十分に部内で取り組みまして、移行が円滑に進むように準備は順調に進んでいると申し上げてよろしいと存じます。  また、四月一日からは新製品でございますたばこの表示の中に新しい会社の名前であるとかマークの表示等が行われることになるわけでございますけれども、そういったようなものの準備の方も順調に進んでいると申し上げてよろしいかと存じます。  資本金あるいは役員の数、政省令関係等につきましては、監理官の方からお答えを申し上げたいと思います。
  17. 松原幹夫

    ○松原(幹)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま会社の方の準備状況につきましては総裁の方からお話がございましたので、私の方からは政省令の準備状況あるいは設立委員会の作業の状況と審議の状況等についてお答え申し上げたいと思います。  政省令の準備状況につきましても、準備作業が現在のところ順調に進んでおりまして、既に三月五日に政令五本、省令三本の公布がされております。政令につきましては、たばこ事業法施行令、日本たばこ産業株式会社法施行令、それから塩専売法施行令、整備政令、たばこ事業等審議会令が五日に公布されております。それから省令につきましても、たばこ事業法施行規則、塩専売法施行規則、それから整備省令が公布されております。ただ、新会社の事業計画の認可手続等を規定いたします会社法の施行規則関係の制定がおくれておりますが、これにつきましては現在公社あるいは関係当局と鋭意調整中でございますので、四月の会社発足までには十分間に合うように作業を進めたいと思っております。  それから、新会社の設立関係につきましては、昨年の十一月に十三名の設立委員の方を任命さしていただきまして、その委員の方々による設立委員会が既に二回持たれておりまして、先生御指摘のような定款の審議が進められております。その定款の審議の中で一番重要な点は、資本金と役員の数であろうかと思います。この点につきましては、審議会で具体的な数字というものはまだ上がっておりませんが、現在のところ、資本金につきましては、新会社の財務の健全性の確保とかあるいは他の民間企業とのバランスあるいはたばこ事業の特性、それから国会での審議の状況等を総合的に勘案いたしまして、おおむね一千億円程度になろうかということで設立委員会のところで御議論願っております。  それから、役員の数につきましては、現在、行政改革の一環としての新会社の設立でございますので、そういった点を踏まえて、現状からどの程度の役員の数をふやすことが適当であろうかといったような審議が設立委員会でされておりまして、この点につきましては、最終的には三月の十九日に第三回の設立委員会が予定されておりますので、そこで決定される予定になっております。  以上でございます。
  18. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 順調なスタートになりますように、最後の御努力お願いしたいと思います。  日本たばこ産業株式会社に開運をして、一言だけ大臣伺いたいのでありますが、春闘の季節に入ってまいりまして、ことしはかつてない状況で、スタートは公労協——電電、専売ですね、決着のときには民間ということに実はなるわけでありますが、やり方をどうするのか。さまざま労使ともに御苦労もあると思いますけれども、ちょっと心配なのは、国会審議の過程での政府見解の中でも、会社の自主性を拡大をするようにやっていく、また、労使ともに新しい資格にふさわしい交渉をして決めていくということに実はなっているわけでありますが、長年の間、公労協の問題は国会承認案件であるとか議決案件であるとか年末まで持ち越しとか、大蔵省給与担当の皆さんが一生懸命何か働いたりというようなことなどがあったわけでありまして、ついついその癖が出まして、全株名義人である大蔵大臣が従来の惰性で口を出してどうとかというふうなことはまさかないだろうなという気がするわけでありまして、先ほど総裁からも、スタートのときが、最初が肝心というお話もございましたが、スタートのときには大いに希望を持ってやってもらうように労使がいい協議をしてもらうということだと思いますが、大臣が口出しするような心配はなくてよろしゅうございますね。     〔中川(秀)委員長代理退席、委員長着席〕
  19. 竹下登

    竹下国務大臣 新会社におきましては労働三法が適用されるわけでございますし、また、私どももいわゆる給与統制ということは行わないことになっておりますし、確かにこれは今まで、あるいは国会議員として、あるいは大蔵大臣として時に——時期から言うとちょうど今のいわゆる年度末の期末手当問題なんかの時期でございますけれども、今も質問を受けながら私も、ああそういう時期だなあという印象を持っておりますが、いささかも従来の——癖が別にあるわけじゃございません、関心はそれは持ってもいいわけでございましょうが、今までも口をはさんだわけじゃございません。本当に円熟した労使関係、今もあると私は思っておりますが、将来もますますそういう環境の中で自主的に行われていくであろうということをむしろ大変期待して見守ってみたいと思っております。
  20. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 もう時間でございますから、一つだけ最後にお伺いしたいと思いますが、ちょっと通告なくて恐縮でございますけれども、国税職員の将来の問題であります。  この間、参考人の意見聴取のときにも、初めての例でしたか、国税職員の組合の代表として国税会議の議長にお越しをいただきまして、さまざま職場の状況や生の声を伺ったわけであります。それを伺っておりましても、今までも毎年議論をいたしまして、十回にわたって附帯決議税法改正のときには付する、また予算編成のときにはさまざまお願いをするというようなことで来たわけでありますが、今までの数年間どこれからの状況と、大分状況が違うと私は思います。今後五年間で恐らく一万二千人ぐらい退職をなさる。従来よりもちょっと急テンポにそういう状況が具体化をするだろうと思いますし、年に二千人以上というふうな状態になると思います。果たしてそれをどうカバーできるのかということになるわけでありまして、採用したとしても、職員の研修の問題とか、今の収容能力でできるのかとか、問題があると思います。  したがいまして、これから今までとは違った対応というものが必要だ。アメリカの場合にも大規模な採用予算化というものがあったようでありますし、先般の参考人の御意見の中でも、西ドイツの場合には日本の五倍とか六倍とかいうようなお話もございました。やはり私は、それらについて今まで毎年議論してまいりましたが、これから先数年を考えますと、今までとは違ったペースで対応がされなければならないということだろうと思います。その辺の、具体論は別にいたしまして、姿勢として御見解はどうかということ。  それからもう一つは、ほかの国と比べてももっとふやしてもいいのじゃないか。同時に私は、当然でありますが、福田君の「税とデモクラシー」ではありませんけれども、より民主的であり、より国民に対するサービスがあり、そしてタックスペイヤーの理解を得られるような仕組み、そういう方向努力と相ともなって、やはり言うならば民主的な税務署として、クロヨン問題その他の世論の御批判に対応するような増強された組織というものがあるべきだろうと思います。  私の感じなんですが、毎年当委員会でも議論をいたしまして、それから附帯決議をいたしまして、年末になると予算編成のときにいろいろとお願いがあるというふうなこと、そして大蔵省としては自分自身のことなんで処理は一番最後というふうなパターンで来ているわけでありますけれども、いい意味でやはりそういうことがより世論化されてもいいのじゃないだろうか。これらの問題について、税調でも議論は今までもあったと思いますけれども、やはりこれから公平な税制の一環としてちょっと今までとは違ったペースに税調でもひとつ話題として御議論を願って、世論にも提起をしていただくというようなことも大事ではないだろうかというふうに思うわけでありますが、それを最後にお伺いしたい。
  21. 竹下登

    竹下国務大臣 今の御意見につきましては、これは正確に御意見として政府税調にもお伝えすべきことであろうと思っておりますが、毎年毎年応援をいただきまして、本当に行政改革の時期でございますからまず最初に言われるのは隗より始めよ、こう言われながら、この税務職員の皆さん方のことを考えますと、その応援の背景があるからそれでも二けたに乗った、と言っても十一名でございますけれども、純増というような結果をもたらしました。これから今おっしゃいましたような年齢構成の問題等もございますので、それらを十分念頭に置いて対応していかなきゃならぬ。また給与関係のことになりますと、毎年人事院勧告が出る時期を想定しながら、人事院に対して私からもお願いをし続けていく、こういうことになっておりますので、今後ともの御支援を心からお願いをいたします。
  22. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 終わります。
  23. 越智伊平

    越智委員長 米沢隆君。
  24. 米沢隆

    ○米沢委員 私は、昭和五十四年に、正式には五十一年から始まったと聞いておりますが、いわゆる一般消費税導入が企画をされて、それが最終的に撤回せざるを得なかった経緯を顧みて、今、当局の本格的な税制改革を前に当時を振り返ってどういうような反省がなされているのか。これからの税制改革方向を見出す上で大変興味がありますので、この点について当局の見解を承ってみたいと思っております。  御承知のとおり、昭和五十年代に入って深刻化してまいりました財政赤字を背景に、シャウプ税制以降長い間政策課題となり得なかった新税導入財政再建の重要な決め手として提起されましたが、これがいわゆる一般消費税でありました。しかしそれは御承知のような経緯でひとまず撤回を余儀なくされたのでありますが、当局は、五十四年のこのいわゆる一般消費税導入が挫折してしまった理由や背景につき、どのような見解を持たれておりますか。総括的に大臣の所見を求めたいと思います。
  25. 竹下登

    竹下国務大臣 まずやはり、昭和五十四年十二月の本院の財政再建に関する決議に述べられておりますように、「その仕組み、構造等につき十分国民理解を得られなかった。」という御指摘をそのまま私どもちょうだいして、理解の基本に置くべきものであるというふうに考えております。  それから、その反対論を整理してみますと、昭和五十三年の九月、税制調査会から一般消費税特別部会試案というのが出されました後に、各方面から一般消費税仮称)に関する意見が出されました。その主なものを挙げますと、いわゆる新税の性格に関する点、これはいわば転嫁の問題が一つ、それから二番目が税負担の逆進性の問題、三番目が物価に与える影響、四番目が経済に与える影響。それから大きな二といたしまして、新税導入時期等に関して、一番目が歳出の節減合理化を図ること、二番目は不公平税制の是正を図ること。それと大きな三としまして新税の仕組みに関して、一つは、仕入れ控除方式はインボイスがないため、課税仕入れと非課税仕入れを区分経理する必要性から事務負担が大きいという批判、二つは、各業界から非課税範囲の拡大要望などが出されたというような点が整理してみると言えることであるというふうに思うわけであります。  それで、それらから来る反省とおっしゃいますと、非常に難しい御質問でございますが、昭和五十五年、すなわちあの決議後の最初税制調査会の中期答申を見ますと、「避けて通ることのできない検討課題であり、引き続いて論議を重ねることが適当である。」と指摘されますと同時に、「昭和五十四年度の税制改正に際してとりまとめた一般消費税大綱については、昭和五十四年末、国会決議が行われ、また、各方面から批判や指摘が寄せられている。こうした諸点については十分配意し、今後、新たな観点から、諸外国の立法例や沿革等も参酌しつつ、課税ベースの広い間接税について我が国の経済取引の実情に即した仕組みを具体的に検討していくことが必要とされよう。」五十五年にはそういう改めた答申をちょうだいしておるという経過になろうかと思います。
  26. 米沢隆

    ○米沢委員 その当時、今大臣がお答えいただきましたように、その導入については替否両論があったと思います。今反対論の主なものについて御説明いただきましたが、賛成論の主な議論はどういうものであったのか。導入は必要なりと主張された当局の要旨もありましょうし、あるいは積極的に導入はすべきであるというような外野席からの応援もあったと思うのでありますが、賛成の要旨はどういうことでありましたか。
  27. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 五十二年に実は五十四年の「一般消費税大綱」がまとめられます前の中期答申があるわけでございまして、そこにいろんな議論が掲記されておるわけでございますけれども、基本的には、当委員会でもしばしば御議論がございましたように、所得税が税体系の基幹であるということは容認しつつも、所得税の基本的な性格としていわゆる納税者の負担感というもの、これは税制全体に対する信頼性につながる問題でございますので、納税者の負担感というものが非常に重くなってきたといいます場合に、一つ選択肢としてやはり間接諸税という考え方検討するに値するのではないかといった考え方もございます。  それから基本的には、我が国の所得水準の上昇、生活水準の上昇に伴いまして消費が非常に多様化してきておる、しかも所得の平準化によって消費が均質化してきておる。そういうものに対して我が国の税体系、特に間接税の体系が今後適応していけるかどうかといった観点もございまして、課税ベースの広い間接税というものが検討の俎上に上ったという経緯でございます。  そういった経緯を踏まえまして、五十四年にいわゆる「一般消費税大綱」なる一つの具体的な税目として提案されたという経緯でございます。
  28. 米沢隆

    ○米沢委員 今のお話を聞いておりますと、所得税我が国の税体系の中ではウエートがちょっと大きくなって、納税者の負担感が重い、したがって、間接税を入れて直接税を減らすというような議論があった、あるいはまた消費が多様化し、均質化して、どうも税体系そのものがそういう経済の変化に対応できていない、したがって、課税ベースの広い消費税みたいなものを入れて対応するのが適当だろう、そういうことが言われた。今言われていることとほとんど一緒ですね。結局その場合、いわゆる一般消費税導入が企画された時期は、これは少なくとも今現在の段階では政府の方は決して増税のためではないとおっしゃっておりますが、その当時はまさに増収のための一般消費税というのがもう明確にあったわけでございますから、どうも導入しなければならないと言われておる理由がその当時と一緒。何かそういうことを聞きますと我々としては、いわゆる一般消費税はやめたけれども、しかし大型間接税を入れねばならないという裏には増収、増税をねらっておるというふうにダイレクトに思わざるを得ないような感じがするのでございますが、大臣の御見解はいかがですか。
  29. 竹下登

    竹下国務大臣 おっしゃいますとおり、当時財政再建のとるべき手法一つとしてこの物の考え方があったということは、私も否定するものではございません。  今日は、言ってみれば異例の答申としていただいたのは、戦後今日まで来たいろいろなひずみ、ゆがみというものを、この際、直接税、間接税を問わず、抜本的に検討をすべきである、こういう答申でございますので、その答申そのものを正確に読んでみましても、いわゆるまず税体系ありきで、増収措置という問題、それをどのような組み合わせで行うかというのはその後の問題になっておる。したがって、今御指摘のありましたいわゆる基幹税たる所得税を否定しないわけでございますが、それからくる重税感等というようなことは、増収措置とは別の意味で述べられておる基本的な一つ議論ではないかと考えております。したがって、まず増収ありきという形の、増収対策としてどうしたらいいですかという諮問をするという考え方はございません。
  30. 米沢隆

    ○米沢委員 私が申し上げたいのは、昭和五十年代の財政赤字を前にして財政再建策としていわゆる一般消費税導入が図られた、そのときの理由と、今は増税、増収のためではないと言われながらも同じ理由で大型間接税を入れようとするということを眺めてみますと、どうもその当時と同じようなことが画策されておるような感じがするという私の感想を述べたわけであります。  それから、今その当時の反対の理由あるいは背景みたいな問題について細かく御説明がありましたけれども、この反対論を大まかに分けますと、今さっきも大臣は新税の性格論、導入の時期についての批判、新税の仕組みについての批判、三つに分けていただきましたが、私はこれと同じような分類だろうと思いますが、一つ日本型付加価値税と称されたその税金の内容そのものに対する批判、それからいわゆる一般消費税が持っておる性格に対する批判、もう一つ財政再建策に使われることの批判、こういう三つに分けられたのではないかと思います。  そこでお尋ねしたいのでありますが、まず今広く一般消費税の持つ欠陥への批判として、景気に与える影響とか、逆進性で不公平をもたらすとか、導入が物価上昇をもたらすとか、納税義務者の事務負担が増大する、こういうような批判だったと思うのでございますが、しからば、もし今回も大型間接税導入するということになりますと同様な批判が出てくる、現にこの国会でもいろいろと同様の批判が出ておるのでございますが、これらの批判を今度は克服できるという自信を持っておられるのでしょうか。もしそうであればどのような手法が考えられるのか、お聞かせいただきたい。
  31. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 最初にお断りしておかなければならないわけでございますけれども税制当局なり税制調査会におきましていわゆる新しい間接税なるものについて具体的な検討は一切やっておりませんので、そういった角度からお答え申し上げるという趣旨ではなくて、一般消費税議論がされたときにいわゆる逆進性とか物価に対する影響、転嫁の問題についてどういう議論が行われたかということを御紹介申し上げる意味でお答えさせていただきたいと思うのでございますけれども、逆進性の問題につきましては、当時の税制調査会等での考え方は、生活必需品のようなものを非課税にするということで逆進性が緩和される、同時に逆進性の問題は、結局税体系全体なかんずく所得税の再分配構造も含めたところで、全体として税負担が逆進的なのかあるいは累進的なのかという議論がされるべきではないか、さらに議論を広げますと、先ほども申し上げましたけれども、財政のなかんずく歳出面が持ちます再分配機能、つまり財政全体の再分配機能を考えて議論されるべきであって、そこの一部分的な税目の一つの局面だけをとらえた逆進性の議論はいかがかというふうな議論が当時なされております。  それから物価の問題でございますけれども、これは導入時期との関係もあるわけでございますけれども、ヨーロッパ等においても導入時期を誤った結果、物価のスパイラル現象を起こしたような国もございます。したがいまして、導入の時期、その選定は非常に大事な問題であるけれども、理論的に言えば、あるいは諸外国の例を見ても導入の前後において物価の大きな攪乱現象が起こってないというのが一般でございますから、消費税であります以上一回限りの物価へのはね返りというものはあるわけでございますが、それは物価現象と考えるのか、あるいは極端に言えば、それは所得税税負担を課する場合に可処分所得に影響が起こる、同じように一般消費税なるものを導入した場合の物価の現象も、それは可処分所得に対する影響という面から見れば物価問題と直ちに考えるのはいかがかというふうな議論が行われた記録がございます。  それから事務負担等の問題でございますけれども、当時の議論としては、ECタイプのインボイスというのは我が国の取引慣行にはなかなかなじまない、むしろ仕入れ控除の方が事務負担等が軽減されるというような観点からあの税目が選ばれた。これも、当時の議論経過をたどってみますとそういう議論が行われたということでございます。あくまでも当時の議論の御紹介ということで申し上げました。
  32. 米沢隆

    ○米沢委員 今はその当時の御紹介ということでございましたが、次の税制改革の中で大型間接税なるものが入ってきた場合には、やはり当時のそのあたりの批判を踏まえながら新しいものを考えていく、そういう手法に立たれるのは当然だろうと思います。  そういう意味で、今その当時の話の中でいろいろ述べられましたけれども、今後大型間接税導入される場合やはり気をつけねばならぬというのは、逆進性が起こらないように配慮するとか、時期についてはやはりかなり検討をした上で導入時期は決めていくとか、あるいは事務量の問題等の反対論に対しては事務量がかからないような方向で間接税が導入できるような方法は何かないかどうかとか、そんなものをいろいろ検討されながらこれから政府税調でも議論し、最終的には税務当局が決断を下すことになると考えていいわけですね。
  33. 竹下登

    竹下国務大臣 導入されるという前提はさておきまして、この議論の展開というものは、今おっしゃったような点が問題点となって展開されていくであろう。私どももあの当時のものをいろいろ読んでみますと、物価の問題等の中においては、非常に安定したときにこれが入れば物価に対する影響はいわば一回きりじゃないか、が、しかしながらその問題は物価だけでやはりとらえるべきではなく、全体の可処分所得の中でとらえるべきだとかいうようないろいろな議論がありますし、今日もなおございますし、それからもっと基本的な議論の中には、すべての国民に比して日本人はいわば教育水準あるいは勤勉の度合いが高いけれども、どうもいわゆるまけてくれという習性だけは日本人の体質にまだ残り過ぎておるのではないかとか、こんな問題等がいろいろな形で議論をされましたので、その議論はやはり今導入前提に置いた議論としてでなく、今米沢さんの構築されたような形で議論はなされていくであろうという印象は私もひとしくします。
  34. 米沢隆

    ○米沢委員 その当時、また先ほども話がありましたが、一般消費税導入を即財政再建策に使ってもらっては困るというような批判もやはり強かったのではないかと思いますが、要するにそれをまとめれば、新税による増税を行う前に現行税制における不公平の是正がなされるべきであり、同時に財政支出の削減合理化もすべきだ、それらの措置が不徹底のままの新税導入国民理解を得られるはずがない、こういうような理屈があって、そういう形でこんなことを反省されて最終的には撤回をされ、そして当面の財政再建に当たってはまずは歳出の削減でいこうということになり、鈴木内閣の「増税なき財政再建」につながり、中曽根内閣の「増税なき財政再建」につながり、それで今日まで営々と歳出削減の努力をされてきた、こういうことになるわけです。  その努力は我々も多とするところでありますが、もし今回もまた大型間接税導入がなされることを前提にするといたしますと、このような批判はもう言われなくても済むような状況になっておるといいましょうか、大蔵大臣自身として、不公平の是正とか財政支出の合理化をやっているという自信は今の過程ではないかもしれませんが、大型間接税導入される時期については、ちょうどそのタイミング、導入する時期ぐらいのときには胸を張ってすべて不公平税制もあるいはまた歳出合理化の徹底もできる限りやりましたと言えるような段階導入の時期だというふうに考えてよろしいのでしょうか。
  35. 竹下登

    竹下国務大臣 これも導入前提に置いたという議論でなく、いわゆる財政再建手法として、初めに増税ありき、増収ありきと言ったならば、既にその段階においていわば歳出圧力に対して抗し切れなくなるという批判と、それからその前にやらなければならない公正、公平の確保という問題があるのじゃないか、こういう批判は過去もそして今日もなおあります。したがって、私どもとしごては、やはり歳入歳出両面にわたっての合理化、節減努力をなお、していかなければならぬ。  いつも私考えますのは、ヨーロッパがすべてそうという意味ではございませんけれども、いわゆるヨーロッパの間接税というのは、それなりに国民にいわゆる痛税感をある意味において失わせ過ぎたのではないか。そこで歳出圧力というものに抗し切れなくて、言ってみれば今日の経済問題等が惹起されている一つの遠因にはなっておるのではないかという感じもいたしますので、慎重な上にも慎重に対応すべき、一般論として、課題であると思っております。
  36. 米沢隆

    ○米沢委員 そこでもう一つは、日本型付加価値税とされるいわゆる一般消費税そのものの内容に対する批判もいろいろあったというふうに今さっき話がありました。しかし、最善だと思われて出されたものが批判を受けて、そしてまた次に同じような大型間接税を考える場合にまた同じようなことを議論しながら新たな設計をしていかねばならぬわけでございますが、私は、その当時いろいろ日本型付加価値税に対して与えられた批判そのものは、現在に至るも、似たような批判がどんな大型間接税を持ってきても同じような調子でやられてくると思うのです。そういうものを考えたときに、果たして実際国民の納得できるようなものができるだろうか、そういう危惧の念を持つわけでございます。  そういうところでぜひお聞かせいただきたいのでありますが、例えば今までの論議の中では、大型間接税といえばEC型が理想だろうと税制調査会長もおっしゃいましたし、どうも皆さん方のお答えもそういうところでございます。日本の事情、いろいろな政治的なあるいは税務行政上からの配慮を加えてそれを変形させていく、それがまた日本型付加価値税になっていく、こういうことになると思うのであります。しかし、政治的な事情だとかあるいは税務行政上の事情は、今日に至るまで当時と全然変わらないと思うのです。私は大蔵大臣にお尋ねしたいのは、いわゆる大型間接税導入できるような環境は、その当時と現在に比べてどういうふうになったと御理解いただいておるのか、そのあたりをお答えいただきたいと思うのです。
  37. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる所得の均質化等からいたしまして、当時も間接税議論というものはございましたが、今日と当時とどう違うかといえば、よりそういう問題が各方面の議論になってきたということは言えるではなかろうか。その各方面の議論を集約されたものが、税調で正式にそういう直接税、間接税というような言葉が使われたり、あるいはちょっと古うございますけれども、臨調でも直間の比率というようなものが使われたりするようになったということは、国民がそれだけ理解を示したという意味で言っておるわけではございませんが、これに対してより当時よりも関心を持っておられるということは言えるのじゃないかと思います。
  38. 米沢隆

    ○米沢委員 時間がありませんので、最後にお尋ねしますが、今から政府税調を開かれていろいろと大型間接税の是非とかあるいはその内容等について御検討がなされていくわけでありますが、今までの議論経過からして、どうもEC型の付加価値税にちょっと味つけを加えるというものに落ちつきそうな感じが私はするのです。でき上がるものは、そういう意味では五十四年当時棄却されたいわゆる一般消費税とちょっとの色合いが、色の違いはありますけれども、大体似たようなものに落ちつくような気がするのです。そういう意味でいわゆる一般消費税あたりも全然検討の対象外ではないんだという答弁になったのではないかと思うのでございますが、先ほどから私言いますように、五十四年当時棄却されたいわゆる一般消費税と、今度政府税調が最終的には落ちつくであろういわゆる一般消費税的な大型間接税は大同小異ではなかろうか。そして事情そのものも環境的にもそう変わっていない、私はそう思っておるのでございまして、そういう意味大蔵大臣がこの前、国民の意識は変わる、したがって、その当時の批判も現在の批判では即あり得ないというような趣旨のことをおっしゃっておりますけれども、本当にそんな感じでございますか。
  39. 竹下登

    竹下国務大臣 前回お答えいたしましたことがいろいろな報道を生みましたことにつきまして、先ほど伊藤委員の御質問にお答えしたところでございますけれども、私が反省しておりますのは、一般的に国民理解と協力を求めなければ、税制と言わずあらゆる政策は行われるものでないということはよく言っております。が、この前、正確に速記録を読んでみますと、当時この場所、向こうの場所でございましたけれども、あの決議案をおつくりになるときも私も首を突っ込ませていただいて、なるほどな、いわば経済社会の推移の中で国民考え方も変わっていくというようなことを前提に置きながら、そういう可能性もありながらうまくつくられたものだなという当時の印象を述べましたのが誤り伝えられました。したがって、やっぱり今大蔵大臣国会決議の中身に感想を述べるというのは、有権解釈国会に存在する限りにおいてはいけないことだなと思いまして、それはいま少し読んでみますけれども質問者たる川崎さんのお許しをいただいて、削除すべきところは削除をさしていただいた方がいいのかな、こう思いました。ただ、経済社会の推移の中で税制のみならず国民ニーズはいろいろ変化していくというようなことは、よく政治の文言の中に書かれておる言葉であるということは私も承知しております。
  40. 米沢隆

    ○米沢委員 終わります。
  41. 越智伊平

    越智委員長 午後一時より再開することとし、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ————◇—————     午後一時四分開議
  42. 越智伊平

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。坂口力君。
  43. 坂口力

    ○坂口委員 おくれまして申しわけありません。  予算委員会並びにこの大蔵委員会を通じまして、直間比率の問題並びにもう少し立ち入った大型間接税等の問題が連日議論の的になってまいりまして、今日を迎えたわけでありますが、この議論に入ります前に、現在の税制の中でさらに改革を加える点はないのであろうか。とりわけ、現在の税制の中でサラリーマンは一〇〇%捕捉をされておりますけれども、しかし捕捉されがたい部分も存在することは確かでありまして、その部分一体どうするかという議論もまた一方でまことに大事な議論ではないかというふうに思うわけでございます。きょうは大蔵委員会でございますから、ほかの省庁の方はお呼びはしてございませんけれども、これはやはり大蔵省としても一つの方針を持つべきではないかと思うわけでございます。  そこで、まず最初大蔵大臣にお聞きをしたいわけでございますが、今までも徴税ということにつきましては努力もされてまいったと思いますし、また、とりわけ直接担当しておみえになります国税庁の方はいろいろと努力をしておみえになったと思います。しかし、これは国税庁だけにお任せをしていい筋合いの問題ではなくて、もっと幅広く国民に訴え、理解を得、そして国民の義務としての自覚を持ってもらわなければならない問題であるというふうに考えているわけであります。  そこで大蔵大臣に、今までの問題点、それから、これからこういうふうな方向にもっと持っていかなければならない点があるというようなお考えがございましたらまずお示しをいただいて、議論に入りたいと思います。
  44. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる申告納税制度、このもとでございますと、課税の公平を図っていきますためには、やはり国民一人一人にいわゆる租税に対する正しい理解をいただかなければならないわけでございますので、したがって今でも国税庁で、児童生徒を初め国民各層に租税教育、こういうようなことでいろいろなその立場を利用いたしまして努めてきておりますが、今おっしゃいますように、いわゆる国税庁のみでなく、言ってみれば学校教育の中で租税教育がさらに充実されていく必要があろうかと思いますので、機会あるごとにそういう主張を関係方面へ繰り返していかなければならぬ、こんな認識をいたしております。
  45. 坂口力

    ○坂口委員 国税庁、ありますか。
  46. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 お答えをいたします。  基本的には、ただいま大臣の御答弁がありましたとおり、申告納税制度のもとでは一般の納税者の方々に何よりも適正な正しい申告をしていただくということが第一でございまして、私どもはこの方向に向けまして、御相談、それから広報その他を実施しておるわけでございます。  しかし、一方で、不誠実な申告をする納税者のいることも事実でございまして、このような納税者に対しましては、私どもといたしましては、適正な課税負担を求めるために、税務調査を的確に実施をして申告漏れを捕捉し、追加納付をしていただくということで、これを両輪として申告納税制度のもとでの適正公平な負担の実現を図るという方向で対処してまいってお力まずし、今後ともこの方向で一層努力してまいりたいというふうに考えております。
  47. 坂口力

    ○坂口委員 国税庁が非常に少ない人数の中で非常に御努力をなすっていることも十分に承知をいたしておりますが、しかし、先ほども申しましたように、これは国税庁だけにお任せをして達成のできる問題ではないと思います。  先ほど大臣から学校教育の中でのお話もございましたし、これからもぜひそういうふうにしていただきたいと思いますが、しかし、現在までもまあ細々ではありましたがそのことが言われてきたわけでありますが、十年一日のごとくと申しますか、この方面の教育もなかなか進んでいないと申し上げた方がいいのではないかと思うわけでございます。確かに、租税教育に対する教材の内容を見てみましても、小学校の六年生ぐらいから中学校、高等学校と、それぞれございます。あることはありますけれども、ほんのわずか部分的に租税のことが、そしてまたそれが義務であるということが載っているだけでありまして、教育の中で、本当にこれが大事だということを認識させるまでの教育がなされているかどうかということは甚だ疑問であります。いつも税金を取られるという言葉に象徴されますように、どういたしましてもそういう感覚で国民が受け取りがちであることは言うまでもないわけであります。この現状を打開いたしますためには、現在行われておりますことよりも一歩進んだ何かが必要ではないだろうか、そんなふうに考えておりますが、先ほどの大臣の御答弁で、現在の学校教育、これをさらに進めていくということでございますので一応それをよしといたします。しかし、ただ単にこれが今までと同じような程度の運動の起こし方では進まないのではないだろうか。新しい運動を起こしますことが日本の財政事情に対しましてもより大きな力を与えることは間違いないと思うわけでございます。  そこで、この議論が出ましたついでに国税庁の方にお伺いをしておきますが、脱税行為といいますと非常に言葉が過ぎる嫌いもございまして、中には、脱税をしようという意思はなくても、認識が非常に甘かったがためにあるいはまたいろいろのことを知らなかったために結果的には脱税ということになったという例もあろうかと思いますが、国税庁がお調べになった中で、最近の状況というものをかいつまんでもしも御報告をしていただくことができれば御報告をしていただきたいと思います。
  48. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 私ども国税庁といたしましては、申告納税制度のもとで適正な納税をお願いしてございますが、中に一部過少申告を行う不誠実な納税者がいることも事実でございまして、誠実に申告していただいている大多数の納税者の方のためにも、私どもとしては調査を徹底して行う必要があると考えております。  最近の所得税、法人税の調査状況につきましてかいつまんで申し上げますと、これは昭和五十八年度というふうに御理解いただきたいと思いますが、所得税につきましては十五万五千件ほど実地調査をいたしておりまして、その調査事績は、その十五万五千件のうち約九五%につきまして申告漏れが見つかっておりまして、増差所得が五千二百九十億円ほどでございます。申告漏れ割合といたしましては、調査後の正しい所得から逆算をいたしますと二三%程度になろうかと思っております。この結果、増産税額としては加算税を含めまして千二百二十億円ほど追徴ということになっております。  また、昭和五十八年度中の法人税の調査も合計で十九万八千件実施いたしておりまして、このうち約八二%に当たります十六万三千件につきまして申告漏れがございました。申告漏れの増差所得の合計額は一兆八百四十九億円でございまして、これに対しまして加算税を含めまして三千八百億円の追徴をいたしておる。このような調査状況でございます。
  49. 坂口力

    ○坂口委員 今御指摘いただきました数字が、先ほど申しましたように、すべてが悪意があってそれが累積されたものであるとは私考えたくはございません。しかし、この辺の教育がより徹底されましたならば、それが日本の大きな財源になることは言うまでもないと思うわけでございまして、ひとつ一層の御努力お願いしておきたいと思います。  さて、現在の税制の中で、徴税という面におきましてもいろいろ問題がございますが、先日来いろいろとお話が出ておりますような直間比率、そして大型間接税の新たな税制の問題も一方におきましてはあるわけでございます。予算委員会やこの大蔵委員会におきましても連日その問題が取り上げられましていろいろな議論が交わされるわけでございますが、だんだんと議論が袋小路に入っていくと申しますか、いろいろと議論が重ねられれば重ねられるほど内容がわかりにくくなってきているわけでございます。一方では有名になりました中曽根総理の多段階、包括的、網羅的、普遍的、大規模なものは行わないという、これ以上形容詞を探すのが困難だというほどの形容詞を続けられまして、こうしたものはやらないという議論が一方であります反面、他方では、EC型の付加価値税は検討対象になるけれども一般消費税仮称)というのはならないという議論もまたそこから派生をしてまいっておるわけです。EC型付加価値税と一般消費税とは名前は違いますけれども、これは双子の姉妹のようなもので、片方にほくろがあって片方にほくろがないという程度の違いしかないと言う人もあるわけでありまして、そうした議論をいたしますと、今度は一般消費税も条件が変われば検討対象になるのではないかというような議論もまた出てきているわけでございます。一昨日のこの委員会におきますところの川崎委員質問に対するお答えにおきましては、その条件の問題等が出されまして今までとは一味違った御答弁になっております。まだ議事録ができておりませんので正式のものではございませんが、議論内容を一部見せていただきましたが、確かに読み方によりましては、新聞紙上に出ておりますように大蔵大臣の御発言の中にはそうともとれる発言があるわけでございます。  改めてここでお聞きを申し上げたいと思いますが、衆議院におきます決議の中で、国民理解が得られなかったからという前提のもとにあの決議は成り立っているのであって、国民理解を得られたらやってもいいじゃないかという読み方は、これは情勢によって国民考え方変化ありと、これはまあどういう方向でこれを見るかということも問題でございますけれども大蔵大臣判断されたときには検討対象にいたしますというふうに正確におっしゃったものなのか、あるいはそうでなかったのか、もう一度改めてここでお聞きをしたいと思います。
  50. 竹下登

    竹下国務大臣 大蔵大臣は三月六日の大蔵委員会で、国会決議で否定されておる一般消費税検討課題になり得るとの示唆をした、一方、予算委員会では一般消費税検討課題に入らないことが再三確認されておる、一般消費税について、委員会が異なると全く異なる答弁が出てくるのはどういうわけか、これでは予算委員会での審議が何だったのか疑問が出る、どう考えるか、これではまじめに審議はできなくなるではないか、これは、ちょうど予算理事会で今聞いてきたところでございます。  そこで、正確にお答えいたしますが、川崎先生と私と問答いたしましたときに、川崎先生の方でお読みいただきましたものの一つといたしましては、去年の三月一日の予算委員会で、社会党の稲葉委員質問に対して私が「国会決議のいわゆる中身については国会自身でお決めになるべき問題で、政府国会決議を勝手に決めたりしたらこれはいけません。」  私としては、やはり一番気をつけなければいかぬのは、午前中もちょっと申しましたが、当時、上の、いわゆる旧館の大蔵委員会の部屋で、自民党の税制調査会長でありました山中先生を中心にあの決議をおつくりになりました。ちょうど私もそこへ顔を出しておりまして、そのときの印象を私が述べておるわけであります。これは「国民理解を得ることができなかった、よって、この手法はとらない、いわゆる一般消費税仮称)はと、こういう決議であるわけでございますから、あれは読み方によっては国民理解を得られたらやってもいいじゃないかという読み方にもなりますので、したがってその辺は、社会経済情勢において税制というのは国民ニーズ変化してきますから、随分いろいろなことを考えて本当はあの決議案はつくってちょうだいしたものだなというふうに、私自身は当時印象を持っておりました」、こういうことに速記録を見ますとなっておりますので、私も、やはりすべての政策、施策は社会経済情勢において変わっていくということ、その中で国民理解もあり得るというようなことを一般論として考えておって、そして当時の印象をここで申し上げたわけであります。  したがって、やはり考えてみますと、今私は大蔵大臣でございますから、政府側が国会決議の中身に対して、有権解釈は当然国会にあるわけでございますから、感想を述べること自身もやはり不謹慎じゃなかったかなと思いまして、川崎委員の御了解を得てこの速記録は削除してもらおうというふうに思いました。で、委員部と話してみますと、削除する以上に私がここでその削除の意思を表明することがなお的確であろうということのようでございます。が、印象を述べたこと自身も私としてはやはり少しオーバーランしたなという反省と遺憾の意を表すべきだというふうに、これを読みながら、言葉を選んで言っておりますけれども、やはりこれは言うべきことでないことを言っておるという意味で、削除に値すると私自身が表明したわけでございます。  したがって、一般論として申しますならば、いつ見ましても、税制調査会の答申等を見ますと、社会経済情勢変化の中で国民ニーズ変化してくるという前提でいろいろなものが書かれてありますが、今、国会決議自身が変更になったとすれば別でございますけれども、現存している間私どもはやはり、総理からもたびたび申し上げておりますように、この五十四年十二月の財政再建に関する決議におきましてこの手法はとってはならないと言われておるこのいわゆる一般消費税仮称)というものについては、私どもはこれを政策手段としてとるというわけにはいかぬというふうに私も考えます。
  51. 坂口力

    ○坂口委員 今、大臣から削除というお話がございましたが、この速記録を読んでみますと、確かに印象を述べられたというふうにもとれないことはないわけでございます。  先ほども読まれましたが、もう一度読みますと、「いわゆる一般消費税仮称)はと、こういう決議であるわけでございますから、あれは読み方によっては国民理解を得られたらやってもいいじゃないかという読み方にもなりますので、したがってその辺は、社会経済情勢において税制というのは国民ニーズ変化してきますから、随分いろいろなことを考えて本当はあの決議案はつくってちょうだいしたものだなというふうに、私自身は当時印象を持っておりましたが、その議論は別として、多段階類型のという意味においては、EC型付加価値税といわゆる一般消費税仮称)は多段階であるという点においては全く一緒だと私は思っております。」  非常に難解な御答弁でございまして、シェークスピアか竹下蔵相かと思うほどの難解な面もございまして、この初めの方の議論は、そういう「印象を持っておりましたがこと、こう述べておみえになりまして、「その議論は別として、多段階」云云というふうに、最終のところにおきましてはこの川崎議員質問に対してお認めになっているようにも受け取れるわけでございます。  いずれにいたしましてもそれは本意ではなかったというお気持ちでありますれば、この問題につきましてはこれ以上申し上げることは差し控えさせていただきたいと思うわけでございます。ただ、国民の側から見ましたときには、この大型間接税に関する議論が非常にわかりにくくなっている、本当のところは一体どうなのであろうか、ただ単なる言葉の遊びになってはいないだろうかという印象国民の側は持っていることもまた事実でありまして、ぜひひとつその辺のところは明確に、こういう考え方はあるならばあるということを明確にしていただければよろしいのではないかと私は思う一人でもございます。  なぜ私がこの問題をあえてここで申し上げたかと申しますと、その竹下大蔵大臣のお考えよりも、そういうふうに判断をなさる尺度というのは一体何によってなされるのであろうかということに疑問を持ちましたので、私はあえてここでこのことを取り上げさせていただいたわけでございます。  そこでついでに、国会決議なるものがあるわけでございますから、これからのこともございますのでもう一つだけ聞いておきたいと思います。  国会決議というものの持つ意味と申しますか、国会決議の重さと申しますか、重さの程度と申しますか、そうしたものについてどのようにお考えになっているのか、これもひとつお聞きしておきたいと思います。
  52. 竹下登

    竹下国務大臣 具体例で申し上げますと、財政再建に関する決議に対して、そのときの大蔵大臣であります私が発言しておりますことは、「ただいまの財政再建に関する決議に対しまして、政府の所信を申し述べます。 政府といたしましては、ただいま採択されました御決議の趣旨に十分配意して、歳出、歳入両面にわたり、幅広い観点から財政再建を進めてまいる所存であります。」ということを述べておるわけでありますが、国会決議というのは委員会決議とか本会決議とかございますでしょうけれども、何としても議会民主主義、なかんずく新憲法のもとに国会は国権の最高機関たると書いてあります、したがいまして最高機関の御決議というものは大変に重いものであるというふうに受けとめるべきものだと私は考えております。
  53. 坂口力

    ○坂口委員 今さらここで申し上げるまでもないと思いますが、昭和四十五年六月十一日の商工委員会におきまして、時の真田説明員から国会決議に対する考え方が披露されております。  これを読みますと、「御承知のように憲法には七十三条に、内閣は法律を誠実に実施しなければならないという義務が書いてございますので、法律についてはもとより法的な効果といいますか、政府に対する拘束力があるわけでございますが、決議につきましては、特にそういう意味の法的な効果はないというふうにいわざるを得ないと思います。ただ、国の最高機関の一翼である議院、衆議院なり参議院が決議案を可決されました場合には、その趣旨を十分尊重して、なるべくその実現に沿うようにできるだけの努力をしなければならぬという政治的の姿勢は当然ある、尊重しなければならぬという政治的な要請は働くというふうに考える次第でございます。」こう述べておりまして、さらに、「仮定の問題といたしまして、全然決議内容を尊重しない、一顧だに与えないというようなことがあれば、それは当然政治的な責任の問題になると思います。ただ、それが違法だとか無効だとかという法律問題ではないということだけは、先生も御了解いただけるだろうと思います。」こういうふうに述べておりまして、国会決議なるもののよって立つところに触れているわけでございます。したがいまして、どうかひとつこの決議の重さということを理解をいただいてこれから対処していただくことを切にお願いをする次第でございます。  自治省はお越しいただいておりますか。  法人税や租税特別措置法と同じに入場税の問題が取り上げられておりますが、この入場税につきましても、芸術性というものがどこにあるかということが一つ議論になったことがございます。映画は比較的はっきりいたしておりますけれども、演劇になりました場合に、いずれの点までを演劇とするか、芸術性ありとするか、これは非常に難しい線引きの問題があろうかと思います。それと同じように地方税におきましても同様なことが実はございまして、大蔵省管轄からは若干外れますけれども、きょうはあわせて地方税の問題につきましても議論をさせていただきたいと思います。  ここで定義を申し上げておりますのは実は事業税でございまして、事業税のかかります中にいろいろのものがございますが、例えばデザインでございますとか、最近はイラストレーションという言葉がございます。あるいはまた、それをかく人をイラストレーターという言葉がございまして、用語的にも範囲が非常に複雑でございますけれども、そうした範囲は課税の対象になるのかならないのかということがございます。  例えば、絵をかかれます画家は事業税の課税対象にはならない。漫画家もならない。これは、こういう絵だとか漫画というものに対する芸術性を認められたということだろうと思うわけであります。それならば、イラストの中にも、本の挿絵でございますとか、そうした非常に芸術性の高いものもあるわけでございます。そうした芸術性の高いものでございましても、例えばそれが挿絵とかイラストという名のもとであれば、それをかく皆さん方に対しましては事業税の対象になるという解釈もございますし、いや、そこはやはり一線を面して、たとえ挿絵といえどもそれは非常に芸術性の高いものだからかけてはならないのではないかという議論もあるわけでございます。ただ、各地方におきましてそのことがかなり混乱をしているようにもお聞きをするわけでございますので、きょうはそのことにつきましてお聞きをしたいと思うわけでございます。まず、自治省の方から基本的なお考えにつきましてお聞きをしたいと思います。
  54. 前川尚美

    ○前川説明員 お尋ねの問題でございますけれども、個人事業税につきましては、御指摘ございましたように課税対象事業を法律で事業、業種という形で一々掲記をさせていただいておるわけでございまして、その事業を行う方の事業の内容が地方税法に掲げてある事業に該当する場合に個人事業税として課税をするということでございます。  御指摘ございましたように、デザイン業という業種が昭和五十六年度の地方税制改正によりまして個人事業税の課税対象事業として新たに取り入れられたわけでございます。昨今のように非常に社会経済が複雑な仕組みのもとで動いておりますし、また価値観も非常に多様化している中で、いわゆる自由業と言われるビジネス、事業でございますが、これもまた非常に複雑多様化、多岐にわたっている面があるわけでございますが、そうした中から私ども、デザイン業と言われる範疇の事業につきまして、一つ課税対象事業として五十六年に新たに導入させていただくことになったわけでございます。  その際にいろいろ議論がございました。デザイン業とは一体どういう範囲の事業を指すのかということでございましたが、私どもそれ以来一貫して申し上げておりますのは、継続して対価の取得を目的としてデザインの考案及び図上における設計または表現を行う事業、こういう形でデザイン業というものをある意味では定義づけ、その範囲を明確にさせていただいているということでございます。これを基本にいたしまして、具体的に地方公共団体に対しまして通達等によりましてこのデザイン業の中身を指導をいたしておるわけでございますが、その基本的な考え方は、所得税におきましても、これは源泉徴収義務とのかかわりでございますけれども、こういった関連の事業が挙がっておりまして、私どもは国税と地方税で同じ事業を対象にする分野で大きく取り扱いが異なるのはいかがかという配慮もございます。そういう意味で、おおむね所得税でデザイン業と言われておりますものの範疇に属するものを頭に描きながら個人事業税の課税の対象であるデザイン業というものを決めさせていただいておるわけでございます。  実際に事業を行っていらっしゃる方々あるいは何とかデザイナーとみずからおっしゃったり、あるいは今御指摘がございましたようにイラストレーターというふうにおっしゃる方もございます。私どもは、この個人事業税の課税に当たりましては、その事業を行う方がおっしゃっている肩書きによって課税対象になるならないということを判定するよりは、むしろその方が実際に行っていらっしゃる事業の中身によってそれに当たるかどうかというふうに具体的に判定すべきであるというふうに地方団体には指導させていただいているところでございます。
  55. 坂口力

    ○坂口委員 今、中身によって課税をしているあるいはそうしょうと思うというお話でございましたので、少し安心をいたしましたが、中にはイラストをかいておみえになります方の中には、いわゆるイラストレーターという肩書きをつけますとこれは課税の対象にされるので、挿絵画家あるいはまたただ画家というふうに名刺に書きますと対象にならないというような話が流れたりもいたしますほど非常に混乱をいたしておりまして、挿絵をおかきになります皆さん方の中には非常に芸術性の高いものをおかきになっている方もあるわけでございます。  私ここに挿絵の画集を持ってまいりましたが、中には非常に立派な挿絵をおかきになっているものがある。むしろ文章よりも挿絵によって引き立てられたというものもあるわけでございます。したがいまして、この挿絵につきましてもひとつ中身によって御判断をいただく、そして名前によって課税をすることのないように配慮していただきたいと思います。その点もう一度重ねてお伺いをしたいと思います。
  56. 前川尚美

    ○前川説明員 個人事業税におきましては、御指摘ございましたようにいわゆる芸術活動によって創作される作品、これは含まないということを基本にいたしております。イラストレーターという肩書きをお使いになって実際に仕事をなさっていらっしゃる方、その方の作品といいますか事業の状況によってこれは具体的に判定すべきものと私どもも考えておりますので、地方公共団体におきましても基本的にはそういう考え方でいろいろ課税の事務を取り扱っていると思っております。     〔委員長退席、堀之内委員長代理着席〕  なお、問題がある点がございますれば私どもも地方公共団体に対して、このデザイン業を課税対象とした趣旨ないしその範囲等も含めて十分に指導をしてまいりたいと考えております。
  57. 坂口力

    ○坂口委員 イラストをかかれます皆さん方も、税金がどういう形になるかということよりも、挿絵等が芸術として認めていただけるかどうかということをより重要視しておみえになるわけでありまして、その結果として税金がどうなるかは、言うならば一つの別問題として考えておみえになるわけでございます。したがいまして芸術性ありという認識をしていただけるものであるならば、それはぜひひとつそのようにしてもらいたいという強い要望がございます。今お聞きいたしまして一応了といたしますので、どうかひとつこれからよろしくお願いを申し上げたいと思います。また、各都道府県に対しましてもそうしたお考えをひとつ周知徹底をしていただきますようにお願いを申し上げたいと思います。国税庁ありがとうございました。結構でございます。  次に、マル優の問題に移らせていただきたいと思います。  これは先日米沢議員からも質問がございましたし、一、二回ここでも議論になったことでございますが、前回のグリーンカードのときにいわゆる銀行預金から郵便貯金への大量の資金シフトが起こったという話があるわけでございます。これは現実には本当にそうであったかどうか。そう言いがたい点も十分あろうかとは思いますが、この日銀の経済統計月報を見ますと、確かに昭和五十五年に年度中の増加率が四五・二%郵便貯金の方は増加をいたしまして、その増加額は十兆を若干超えているわけでございます。また、全国銀行の個人預金の方は伸び率がマイナス一五・六%になりまして、五兆二千七百六十二億円の年度中の増額にとどまっているわけでございます。銀行協会等は大体一兆四千億円程度流出をした、こう申しておりますが、しかしこれが本当にそうなるかどうかということにはもう少し詳しい検討も必要ではないかと思います。  これは国民の皆さん方が選択をされることでありますし、そのことがいいとか悪いとかということは言えない問題でございまして、私もそのことにつきましてよしあしの議論はやめたいと思いますけれども、しかしこうした銀行預金から大量に移行するということが、グリーンカードのときと同じようなことがもし起こるといたしましたら、それは経済社会に与える影響はいろいろ出てくるであろうということは想像にかたくないわけでございます。そうしたことがもし起こったとしたらそれはどんな影響があり、そのことがいろいろな影響いかんによっては非常に困ったことになることもあるのではないかと思いますが、その辺につきましてどのようにお考えになっているかをまずお聞きをしたいと思います。
  58. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 グリーンカード当時の事情でございますけれども、昭和五十五年の所得税法改正でグリーンカード制度の成立を見たわけでございますが、ちょうど今から考えますと、五十五年の春でございましたが、金利の先行き天井観というものがございまして、郵便貯金、なかんずく定額貯金の高利回り性に非常に関心が集まりました。そういった事情と、やはり当時の新聞報道等を見ますと、連日グリーンカードとの関連でそういった報道がなされたものでございますから、結果的に五十五年秋になりまして鎮静したかと思いますけれども、いろいろな市中のいわゆる金融シフトと言われるものがグリーンカードと事実問題として無関係であったとは言えなかったと思います。いろいろな誤解もありましたでしょうし、新しい制度でございましたので、いろいろ不安感等が増幅されましてそういった面もあったかと思うわけでございます。  その議論はさておきまして、ただいま御提案申し上げております非課税貯蓄制度、郵便貯金も含めまして新たに本人確認を厳重にいたしますと同時に郵便貯金につきまして限度額を超えますと主観的要件の有無を問わず課税にする。それから、課税郵貯を支払われた場合には税務官署に対して新たに通知制度を設けるということで、現状よりも限度管理の強化を図る。私どもはこれによってかなり事態は改善されることを期待しておるわけでございます。  その場合に、ただいま御指摘がございましたように民間のマル優と郵貯、これは制度が違いますので、すべての面について商品の種類も含めましてイコールフッティングというわけにはいかないわけでございますけれども、なるべくグリーンカード当時のような事情といいますか世の中に混乱が起こらないというために、今回の制度の具体的な手順を詰めます場合にも郵政省それから民間金融界とも十分入念な検討協議を重ねて、ただいま最終の詰めに入っておるわけでございます。したがいまして、現在民間金融機関の一般的な見方といたしましても、今回の場合はいわゆる民間のマル優から郵貯にシフトが起こるというふうなおそれはないというのが民間金融界の一般的な観測というふうに私どもは受け取っておりまして、またそういう事態が起こらないということを私どもは確信をいたしておるわけでございます。
  59. 坂口力

    ○坂口委員 ひとつ十分に配慮をした態度をおとりをいただきたいと思います。いずれにいたしましても、片や郵便貯金の方はまあ国がやっております範疇に入るわけでございますので、一般の方からかなり厳しい見方があるわけでございまして、それだけにやはり同じ国として、いろいろと民間金融機関から言われることのないようにひとつできるだけ配慮をしていただきたいと思います。  それからもう一つ、郵便貯金の方は、定額貯金は六十一年の一月一日に始まったといたしますと、最長十年間の預け入れ期間があるわけでありまして、それに対して民間金融機関はわずか三年しかないというこのことに対しましても、いろいろ民間金融機関の方からは議論の出ているところでございます。そこで、公平な立場と申しますか、両者のどちらにもつかない立場から考えましても、この民間金融機関の三年間の預け入れ期間というのは、片や十年に対しましては少しやはり差があり過ぎるな、そんな感じがするわけでございますが、この辺につきまして、このままでこれはもういかざるを得ないのだというふうにお考えになるのか、それともそこは若干何かやっぱり考えていかなければならないというふうにお考えになるのか、その辺のお考えもひとつ聞かせていただきたいと思います。
  60. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま御審議いただいております新たな非課税貯蓄に対する限度管理のシステムでございますけれども、今御指摘のありました点は、恐らく六十一年一月一日以前に預入されましたいわゆる既往分の限度管理をどうするかという問題かと思います。  これにつきましては、考え方としましてはある時点に一斉に既往分を洗いかえるというやり方も考えられるわけでございますけれども、今回の場合はそういう一斉に洗いかえるという考え方をとらずに、やはり貯蓄者の便宜も考えまして、基本的な考え方といたしましては従来の非課税貯蓄申告書、郵貯の場合でございますと従来の通帳によって新たに店に来られて預入される時点で既往分について限度管理と申しますか、本人確認をし、新たな申告書に切りかえるというやり方をとったわけであります。  これは専ら貯蓄者の便宜を考えまして、税制で一斉に制度が切りかわるということについての混乱を避けるということでのやむを得ない経過措置というふうに私ども考えておるわけでございますが、その場合に郵便貯金の場合は最長十年の定額貯金があるということで、実質上は、民間にはそういう商品はございませんから、経過期間の取り扱いでアンバランスが生じるということを指摘する向きがあることも私どもは十分承知をいたしております。ただ、この点につきましては、既往分の定額貯金も、制度移行後限度を超えているものについては従来と違いましてきちんとした課税処理も行われるということで、従来よりはこの点は非常に改善されるという点に御留意いただきたいと思いますと同時に、先ほども申しましたように、このアンバランスによって現在、グリーンカード当時のような世上混乱が起こるということを予測する向きもございませんし、私どもはそういうことがないことを期待しているわけでございます。  したがいまして、この辺のアンバランスは、制度上あるいは商品上の違いがございまして経過措置としてやむを得ない事態ではあると考えておりますけれども、万が一そういう事態が悪用されるというような事実なり事態がもし将来生じました場合には、やはりその時点で制度上何らかの措置を手当てすべきかどうかということを検討はしなければならないと考えておりますけれども、今はそういった点の危惧は私どもは一般的には持っておらないということでございます。
  61. 坂口力

    ○坂口委員 銀行局、何かございましたらひとつ……。
  62. 吉田正輝

    吉田(正)政府委員 先生の御質問は、恐らく税制上のイコールフッティングとの関連で、やはり民間についても商品上、例えば定額郵貯などのような商品の導入を考えられないかという御質問かと思われます。  御承知のとおり、ただいま私どもは金融の自由化の流れの中でその行政を推進しているわけでございますから、金融の自由化の流れの中で自由化商品等につきましては積極的に前向きに受けとめていきたいというふうに考えておるわけでございますけれども、例えば郵貯の持っております定額郵貯のような商品を導入することにつきましては、税制上の観点のほかに、長短分離の問題あるいは金融機関の経営に及ぼす影響、それから臨調の方針など、種々留意、配意すべき点、慎重にすべき点があるわけでございます。  もうちょっと敷衍して申し上げさせていただきますと、戦後の民間金融機関の中で、普通銀行と長期信用銀行の業務につきましては制度的な分野調整を行っております。これは言うなれば長短分離という制度でございますけれども、普通銀行は主たる資金調達手段は定期預金、これは二年物、それから期日指定定期預金などを入れますと三年物までになっておりますけれども、こういうものを長期化いたしますと、長短分離制度問題に及ぼす影響というものがあるわけでございます。この制度問題につきましては、私ども時代の流れに沿いまして漸次実態に合わせてこれを改めていくということになると思っておりますけれども、時々大臣ども申し上げておりますとおり、我が国の金融制度、金融慣行の有する長い歴史と伝統あるいは日本の土壌を踏まえて漸進的に対応していくという姿勢でおるわけでございます。それが長短分離制度にかかわります問題でございます。  それから、定額郵便貯金そのものについて申し上げさせていただきますと、これは長期にわたって預入時の金利体系が保証されている、こういうことになっておりますので、民間金融機関がかようにこの長期固定の金利商品を扱う場合には、その経営にどのような影響を及ぼすかということも検討をする必要があると思っております。  それからもう一つは、臨調の最終答申でございますけれども、定額郵便貯金の商品性そのものについて御議論がございまして、「個人預貯金の分野における官民のバランス維持及び事業の健全性確保の観点から、その見直しを行う。」必要があるということが指摘されておるわけでございます。  以上のような留意すべき点、検討すべき点等があるということでございます。  私どもとしては、一般的には、民間金融機関が預金者のニーズあるいは創意工夫を生かした商品の多様化に前向きに対応するつもりでございますけれども、本件につきましてはかような問題があるということを御説明させていただきました。
  63. 坂口力

    ○坂口委員 銀行協会は少しこうした問題に対して神経質になり過ぎているというふうに私は思っている一人であります。主税局長さんから先ほどお話がございましたように、私も、いろいろ難しいグリーンカードのときのようなことは起こらないであろうと期待をいたしております一人でありますし、そうなることを願っている一人でございます。また、今銀行局長さんからもいろいろお話がございましたが、そうした新しい対応の仕方も考えていただいておりますので、そうした心配なことはそう起こらないだろうと思っているわけでございます。  しかし、確かに、銀行関係の方にお会いをいたしますと、我々が考えております以上に、この新しい制度の中で非常に銀行にとりまして不利な状況が生まれるのではないかという心配をしておみえになる。我々から見ると、これはかなり取り越し苦労だなと思われる向きがあるわけでございます。しかし、皆さんがそういう心配をしておみえになることもまた事実でございますので、やはりきちっとさせておかなければならないというふうに思うわけでございます。  そこで、先ほど国税庁にはもう帰ってもらっていいと言ってしまいましたが、この調査の問題にいたしましても、銀行につきましては国税の方がこれは全部把握をされるけれども、郵便貯金の方は、これは郵政省の方がきちっと把握をして、そうして国税の方に報告をするという、そういう手順の違いがあるということから、その辺も心配をかなりしておみえになる向きもあるわけであります。今度は制度が変わるのですからそんな心配は要りませんよと申し上げるのですけれども、何度申し上げましてもなおかつそこに疑問が残るというのが銀行の皆さん方のお考えのようでございます。  そういう考え方があります以上、それを、それはもう取り越し苦労ですよと言ってそのまま捨てておくわけにもいかないところでございますので、あえてこれは御貿問させていただきますが、これは国税にお聞きをした方がいいのか、あるいは大蔵省の方にお答えをいただいた方がいいのか、よくわかりませんけれども、郵貯なるものが的確に推進をされますためには、これはもう当然郵政省の方できちっとおやりをいただくのが筋でありますし、今回の制度もそのようになっているわけでございますが、そこに国税庁なら国税庁がもし関与をするとすれば、どういうときが一体あるのか。これは両方とも心配な点ではないかという気もするわけでありまして、その辺、もしお答えをしていただくことができれば、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  64. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 郵便貯金の税務調査に関連をして、現状と、それから現在御提案を申し上げております新しい制度につきましてのあれと両方申し上げたいと思いますが、現在私どもとしては、納税者の所得の調査をいたします際に、その反面調査といたしまして郵便貯金の調査をいたしております。現実には、郵便局なり地方貯金局に参りまして臨場して調査をしたり、文書で照会をしたりということをやっております。ただ、郵便貯金の利子につきましては、先生御承知のとおり源泉徴収の対象になっておりませんので、金融機関のような源泉所得税の調査の問題は起きておりません。  なお、新しい改正法によりまして、今後、郵便貯金につきましても課税になる場合がございます。本人確認をした証印のないものとか、それから限度を超えたものにつきましては課税になるということでございますが、そのようなものにつきましては、郵便局の方から私どもの方に的確に通知をいただける、このように私どもとしては考えております。
  65. 坂口力

    ○坂口委員 善意に解釈をしていただいているようでありますから、私もそれ以上申し上げません。ひとつそういうことでお願いを申し上げたいと思います。  最後に、大臣に一言だけお聞きをしまして終わりたいと思います。  グリーンカード以来、利子課税の問題はいろいろいわくつきの問題でございますだけに、今回の制度が順調に推移をしてくれることを願う一人でございます。また前回のような繰り返しをすることがございましては、これは国会の権威にもかかわりますし、また国民に対しましても非常に申しわけないことになると思うわけでありまして、自重しながら、そしてより公平な課税のためにこの制度が順調に前進することを私は期待いたしますが、今後の前進について、担当の大臣としての御決意をお聞きして終わりたいと思います。
  66. 竹下登

    竹下国務大臣 グリーンカードの際は法律を通していただいた後、これこそ国民理解と協力が得られないという判断の上に立って長い時間をかけ議論され、このたびはそれが廃止される、こういうことになるわけであります。したがって、いわゆる利子・配当課税問題については大変な御議論をいただいた上で今度とった措置でございますので、これは国民理解と協力を得ながら、法の精神に照らしそれが適正に機能していくように私どもも注意深く対処していかなければならぬ課題だという認識の上に立って、御鞭撻に対応して私どもも対処したいというふうに思っております。
  67. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。
  68. 堀之内久男

    ○堀之内委員長代理 沢田広君。
  69. 沢田広

    ○沢田委員 引き続きまして大変御苦労さまでありますが、それぞれ多くの国民が期待をしているわけでありますから、疲れにめげずまた御回答をいただきたい。  なおもう一つ申し上げれば、私たちの方はそれぞれ地元の要望等をもって臨んでいるわけでありますが、事前に質問は通告し、答える方はそれを事前に予期し、材料は調べ、しかも答弁するわけですから、禅問答のような回答ではなしにそのものずばりで余裕を持ってお答えいただけるものだろうと思いますから、そのとおり御回答をいただきたい。我々は孤独なる闘いでありますが、そっちは集団なのでありますから、その辺のよさを答えの上に生かしていただきたいと思います。  まず最初に、今質問もございましたが、五十七年、五十八年、五十九年と財政再建を続けてまいりました。ここまで続けてまいりますと我々野党も、それ今度は膨張予算を組めというのはなかなか言いにくい。言いにくいというよりも、財政の安定ということを先に考えますから、建設国債を五千億程度組んでやったらどうかというような提案はされるにしても、それぞれが犠牲を負っている状況の中にそれを一部だけ解放するということはなかなか難しい政治判断になります。  そこで、六十一年もこの状態を続けるのかどうか。大型間接税の問題、消費税の問題、今までいろいろ議論されておりましたが、私の受け取り方は、国民に討論を求める、政府としてはこれを池に投げてどんな波が出てくるか様子を見るという一つの打診、悪く言うと策謀というふうにもなるわけでありますが、六十一年度の予算編成は、現段階において考えてみれば、もう一年程度現状のような厳しい状況の中で編成をしていかなければならないのではないか、そう推定するわけであります。ですから、今いろいろ増税論を議論していることは、その先を展望しての話、あるいはもう一つは、国債償還等の問題を想定しての話というふうに判断をするわけであります。  今までとは質問ががらりと変わっております。なるべくしゃべりたいのでしょうけれども大型間接税はこうだとか一般消費税はこうだとか言いたいところなんでしょうけれども、私はあえて、それは投げかけられた課題である、国民議論を求めているものである、現段階はそういう時期であるというふうに判断をするわけであります。その点の見解はいかがでありましょうか。
  70. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに、今年度に限らず、予算審議の手がかりとしていただくために試算でございますとか仮定計算とかいうものを提出いたしております。これはまさに国会議論を通じ国民との問答を私の方がこいねがっておる、その問答の資料を提出しておる、こういうことが共通の現状認識ではないかというふうに私も思っております。
  71. 沢田広

    ○沢田委員 ですから、財政再建方向としては、できれば現状の圧縮をしていく、あるいは国民に耐乏を求めていく、もう一方の景気の方の問題はもう一回後の段階で聞きますが、経済の状況は今のところはそういう条件に幸いたえる状況にある、だからできれば六十一年度ももう少し詰めて、ぜい肉落としといいますかそれ以上の耐乏といいますか、厳しさをあえて国民に求めながら六十一年度も予算は組みたいな。これはどうなるかは別としても、大蔵大臣としては、財政再建を考えてみたときにはそういう発想の原点といいますかそういう展望に今のところは立っておるのではないだろうか、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
  72. 竹下登

    竹下国務大臣 振りかえってみますと、昭和五十五年度予算がいわば一〇%までは概算要求枠がございますよ、こういうことでございます。それから五十六年が七・五%までは概算要求基準がございますよ、それで五十七年になっていわばゼロでございますよ、それからがマイナス予算、こういうことになるわけであります。したがって五十八年、五十九年、六十年と一般歳出を前年度以下に抑えてきたのは、国民の皆さん方の協力のたまものであると同時に、予算編成作業に当たる諸君にしてみれば大変難儀な仕事であったと思います。したがって、私も予算概算閣議が終わりました十二月三十日でございましたか、一体六十一年度予算というのはこれ以上こういう方針が引き続いて通せるものなんだろうかという幾らかの弱味を感じました。と同時に、待て待て、せっかくここまでやってきて、ここでたがが緩んだらまた後戻りしてしまうということを自分自身に言い聞かせながら今日に至っておるわけでありますが、私はやはり、まず歳出面において政府と民間の役割分担、また国と地方の機能分担、費用負担、これをさらに見直すという連年の努力は続けていかなきゃならぬ、これは六十一年度予算編成の方針を決めたわけではございませんが、今そういう認識の上に立っております。
  73. 沢田広

    ○沢田委員 そうしますと、大型間接税一般消費税、いろいろ言っていますが、国債管理の面から、これも後の質問になりますが、それを考えると、一般会計の予算だけの問題ではどうも議論し尽くせない。どうしても償還財源というものが必要になってくる。そのときには何らかの負担国民に求めなければならないかもしれぬ。それが六十二年であるか六十三年になるかは別として、その当時にそういう増加、とりあえず今増加の分と言っておきますが、種類は別です、そういう財源が必要になってくるであろう。こういう意味において国民に一応その問いかけを行っておるというふうに、そこに時間差を置いて考えればそう解釈してよろしゅうございますか。
  74. 竹下登

    竹下国務大臣 必ずしもタイムスケジュールを立てておるわけではございませんが、ただおっしゃいますように、国民に問いかけて問答するというのが、いつまでも問答だけで終わるものではない、逐次問答の資料も少しずつでも明瞭なものにしていかなければ議論はさらに進みませんし、そういう努力を積み重ねながら今後取り組んでいかなきゃならぬ課題だ。  ただ、第一期、二期と決めておるわけではございませんが、まずは六十五年度赤字公債依存体質から脱却しようということに今全力を傾注し、そして公債残高を減らしていこう、こういう第二段階と申しますか、そういう方針でありますので、それらもこの議論の中に逐次、今度は六十五年度以降の問題あるいは残高の問題、あるいはいわゆる償還期限が大量に来る時期が到来するわけでございますから、そういうことになればさらに議論が深まっていくであろうというふうな期待は持っております。
  75. 沢田広

    ○沢田委員 じゃもう一つ、その中を因数分解しますと、今、六十年度の予算の三十八兆ぐらいの中で、直間比率を変えていくという一つの処方がありますね。現段階の中においての直間比率を変える、枠は広げない、枠は広げないけれども現在の負担の中での比率を変える、こういう一つの方法があります。これは非常に幼稚な因数分解なんです。それで、その次には今度は全体的な、今言われた要望の六十五年度いわゆる赤字国債ゼロ、こういう目標に向けて、五兆円なら五兆円、四兆円なら四兆円というある一定の財源を両方に求める、こういう方法がありますね。  直間比率の割合が幾らであるか、過去の例によれば今の七対三が悪い、四対六がいいかどうか、これはまた別の議論。だから、今の枠内において公平というか直間比率の是正を図る、これが一つあります。その段階はもう通り過ぎちゃって、そういう方法はとらないで、次の五兆円なら五兆円を取るときに、四兆円だか五兆円だかわからぬが、赤字国債ゼロにするときに直間比率も考え合わせて取っていく。それが何であるかはこれはまた別問題でありますが、そういう発想というものがもう一つあるわけであります。  我々から見れば、わかりやすく、今、じゃ直間比率を変えてもらって、そしてその上に二階建てに今度は赤字国債の分ですよと、それで国民に信を問うというのが一つの筋道だと思うのです。その点はどちらを今とりたいと思っておられるのか。その点はいかがでしょうか。
  76. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆるどちらをとりたいかということになりますと、税制調査会に対して政府があらかじめ希望を述べながら諮問するということになりますので、いわばこういうような議論があったという前提の中でお答えをいたすといたしますならば、恐らく沢田さんのお考えというのは、とにかく直間比率というのは結果ではあるが、現在結果として七対三とかいうものが存在しておる、したがって経済成長の伸びによるところのいわゆる自然増収は別として、およそその中で、この税体系の見直しで結果として直が下がって間が上がっていくというようなものをまずとって、その次の段階で今度はそれのさらに拡大した増収措置をとる、もっと具体的に例示すれば、現在の枠内で間接税の占めるシェアが上がっていって、すなわち所得減税が伴っていって、そしてトータルは成長率をかけたもので一緒になって、そしてさらに、国民理解を求めながらその状態の中で今度はそれを相対的に膨らまして要調整額を埋めていく、こういう手法のことをおっしゃっておると思います。これは私どもが考えておる手法とは申しませんが、そういう議論も行われる議論であろう。現実行われたわけでございますから、それらを正確に税調にお伝えして、こなしていただく問題かな、税調に正確に報告する一つの貴重な資料かな、こんな感じで承っておりました。
  77. 沢田広

    ○沢田委員 理想的というか、数字的にはその方がいいのでありますが、政治的には若干これは困難な面がある。  一つは、これをやるためには、一たん直接税を下げてしまうというマイナス面があるわけですね。一たん直接税を国民に下げちゃう、そして間接税を取るわけですが、総体は変わりませんよといったワンステップ置くわけですから、この次には今度は直接税も上げるかもしれぬし、間接税も上がるかもしらぬという、こういう二段階になるわけですね。そうすると、一回下げたものをもう一回上げるのですからこれは大変抵抗が多いというととが一つのデメリットとして出てくるだろうと思うのです。  そこで問題なのは、図式としては、今の形のままにおいて直間比率を直すんだから間接税で取っていくんですよ、そして結果的には直間比率は是正された格好になるんですと、こういう意味一般消費税なりあるいは大型間接税なりというものがかかっていくという、一段階省略の方法が果たして国民の納得を得られるかどうかということが今度は問われるのではないのかと思うわけです。  だから、どちらにも若干のデメリットはあるわけです。一たん下げたものをまた上げるということは、直接税の場合は極めて国民の抵抗を強めることだけは間違いないと思いますね。ですから、そのことを、その困難を乗り越えて理解を求めていくか、しらばっくれてそれはそのままにしておいて間接税だけで勝負をかけていくかということの選択がその次に迫られてくるということなんです。  今の段階ではどうも、これは大蔵大臣もそうでしょうが、大蔵省関係としては、その二段階方式はとらないで一段階で、できれば早いうちに間接税を取って六十五年の目標に近づくようにまとめて投網を打ってしまおうと、それがさっき言われているようなものになっていくのかな、こういうふうに私は——大体自民党さんというのは正直そうに見えて正直でないですね。国民に向けて真っ正直そうなことを言いながらそうではない結果が出てくる場合も多いわけです。これは竹下大蔵大臣がそうだと言うのじゃないですよ、組織的なものですからね。組織的なものですから、それぞれのプラス・マイナスを考えていった結果としては、いやその方が国民に対して、悪く言えばだましやすい、よく言えば理解を得やすい、こういう判断が出てくる要素がある。  もう一回申し上げますと、ワンクッションは省略して。今のままでいって直間比率の是正をしながら結果的には六十五年の赤字国債の分まで含めてできるだけ早く提案したい。だけれども、私は来年の提案は絶対ないと思っているのです。私はそう思っているのです。財政再建をやっていくという立場に立ったならば、その論理からいってもあるいはその哲学からいっても、少なくとも来年やるということは若干問題があるのじゃないかというふうに思っているわけなんです。その点は、二つに分かれましたけれども、御見解を承りたいと思います。
  78. 竹下登

    竹下国務大臣 私どもは、税調の御議論の末いわゆる直間比率が結果的に変わってくるような答申が出るという前提でもって議論をするわけにはまいらないわけであります。が、今沢田さんのおっしゃった識論というものは、直間がどう変わっていくかということを前提にすると非常に答えにくい問題でありますが、まさに議論を進めていくための、いろいろな人がいろいろなことを考えておる中の一つの大きな検討対象とでも申しましょうか、参考意見とでも申しましょうか、そういうことになり得る問題かな、こんな感じで承っておりました。
  79. 沢田広

    ○沢田委員 今、圧縮の予算を組んで今日の景気が、若干国内の一この前総括質問で私は申し上げましたから、重複しますからそのことは省略しますが、今日の景気が保ち得ているその原因はどこにあると今思っておられましょうか。今の二百六十一円の円相場あるいは貿易の収支、失業率、鉱工業生産指数その他の諸要素、ただ建設なんかは落ちておりますけれども、そういういろいろな要素から見て、今の景気というものはどういう水準に置かれていると考えておりますか。
  80. 竹下登

    竹下国務大臣 現在の景気動向の問題でございますが、かつての高度経済成長時代と比較するわけにはまいりませんが、もろもろの指標を見てみますと、我が国経済は、収益の好調、技術革新の進展あるいは生産の増加、これを背景に設備投資が大幅に拡大するという状態でございますので、いわゆる民間需要とでも申しますか、これを中心とした自律的な拡大局面にあるというふうなのがいわば経済企画庁等の総評でございます。  六十年度につきましては、アメリカの景気拡大のテンポのスローダウンも、最近の指標を見ますとそれほどまでにスローダウンしないじゃないか、こういう議論も行われておりますが、幾らかのスローダウンに伴って、輸出の伸びが鈍化することを主因に成長率は若干下がるのじゃないか。五・三%が四・六なんということを言っているわけでございますから、若干下がるのじゃないか。しかしながら一方、物価の安定と収益の堅調等の景気拡大を支えます要因は持続すると見込まれますので、まさに安定的な成長は持続するというふうに考えられるわけであります。  したがって、今の場合、世界経済の中でインフレなき持続的成長という意味においては、優等生という表現が適当であるかどうかは別としまして、先進国の中では、安定成長の中では一番順調な状態にあると理解をすべきではなかろうかと思います。しかし、もとより規模別、地域別、業種別間格差というものが存在しておるということは前提にございます。
  81. 沢田広

    ○沢田委員 それに加えて地域差がある、こういうことだと思いますね。それはそのとおりでいいと思うのです。  それで、今の状況を背景として、今までこの席を通じて消費税、間接税、言葉は網羅的とかいろいろな言葉が使われておりますが、けさの新聞によればまた小倉さんが余計なことを言っているようなんでありますが、結果的にちくちくちくちく国民に刺激を与える目的は何なのだろうか。さっき申し上げたように、そういう用意があるぞ、そろそろ往生せい、おまえらそうがたがた騒いでも結果は実施するんだと、嫌がらせにも聞こえるし、私の質問みたいなものかもしれませんが、とにかく嫌がらせにも聞こえるし、あるいはちょっとおどかしにも聞こえるしというふうな税調会長の新聞報道も散見するわけです。  これは大蔵大臣政府も、予算委員会質問答弁を聞いていてもそうなんだ。絶対やるとは言ってない。また竹下大蔵大臣答弁書を全部読んでみましたが、逃げておるところはよう逃げておる。しっぽはつかまえられないような答弁をしていますね。そこへいくとほかの大臣なんというのは、底抜けバケツみたいにすぐしっぽをつかまえられるような答弁をしている。こういう点は敬意を表しますよ。敬意を表しますけれども、実際に、今まで野党が言われた、来年はやらないのだろう、再来年に向けてこの一年間勉強をして、来年の予算編成のときにそのまま最後に党高政低でどうなるかということになるわけですが、最後には六十二年に持っていくようになっていくのではないか。そのときのスタイルはこうなりますというのをまた一年間議論していく、そのくらいの準備を重ねなければ実現はしないだろうと判断されているだろう。私が立場を変えても、そのくらいの準備を持たなければ国民理解してくれないだろうと考えますね。ですから、ちくちくちくちく総理大臣から大蔵大臣から小倉さんまで、これは共謀しているかしていないかわかりませんけれども、大抵の紙面を通じて国民にアピールをしている。そういう情勢にも来ているんだぞ、こういう段階が来ているんだぞ、我々もそれに乗っかっちゃって、こうやって物を言って答えさせる、こういう形が出ている。言うならば政府ベースに乗っちゃっていることにもなるわけなんで、私も率直にそれは認めます。  そういう意味大臣としては、大体そこまでの深謀遠慮はないかもしれぬけれども、その段階ぐらいが大まかの線だ、あとは税制調査会判断をしてもらう以外にはない、こういうふうに思っておられると解釈していいですか。
  82. 竹下登

    竹下国務大臣 あらかじめ財政改革のスケジュールを念頭に置いて税調で審議してもらうべきものではないじゃないかな。今度やはり税調の答申自身が、そういう財政再建のためとか増収措置のためとかということでなしに、戦後の今日に至るまでの税制でもろもろのゆがみ、ひずみができてきたから、異例のことだから検討する時期に来たぞよという答申をいただいて、それを受けて、では税調の先生、もう一遍議論をしてみてください、こういうことを行うわけでありますから、先に増収ありきとか先に財政再建の手段ありきという形ではないことになろうと思うのであります。  したがって、国民の側で見れば、六十五年に赤字公債依存体質から脱却するためにサービスはかく切ります、この辺の増収はかく願いますとかいういわゆる具体的な計画が出ないじゃないか、こういういらいらを十分私どもも承知いたしておりますが、今は、まずは問答する中で国民と一緒になってその方向を模索し、結論を出していこうということで、十年一日のごとく問いかけを続けておるという状態でございます。  やはりいま一つは、いわゆる一般消費税仮称)が国民理解を得られなかった理由が幾つかあります中に、財政再建手法としてという考え方があったから、国民の方ではまだ削減すべき余地があるじゃないか、こういうことも理解を得られなかった一つの理由ではないか。だから税の体系としての審議を一方で行っていただき、そして財政改革の姿は引き続き国民の皆様方と問答を繰り返す中にその方向を見出していこうというのが今日とっておる手法でございます。だから、沢田さんの御意見というものも、その手法に対する一つ考え方として我々は承らせていただいておるということになるではなかろうかと思います。
  83. 沢田広

    ○沢田委員 問題はちょっとずれますが、今の答弁に関連して、今度の国債の特別会計が、そのうち法案がかかってくるわけであります。あれの速記録を全部拝見させていただきました。  大蔵大臣が一緒の店もあったのかどうかわかりませんけれども、いわゆる電電の方の関係を担当した委員会速記録を見ますと、大臣は奥田さんですから、とにかく去年、赤字国債の返済に充てることはしません、それから一切そういう意図のものではありません、これは電電の今日まで築き上げた財産であるから赤字国債に向けたりというようなことは絶対にしないのです、こういう答弁をされているわけです。大蔵大臣もやや似たようなことを言いながら、これはそういう御意見を承りながら国民の皆さんの御意見も聞いて対処しますと、やはりどこか逃げちゃっている答弁が続いてきました。だから、結果的には閣議では赤字国債の償還に充てる、こういう決定をされたんだと思うのです。  その際に大臣の責任はどうなるのかなということが、これはきょう大臣を呼ぼうかと思ったのですが、余りかわいそうだからこれは逓信部会に任せよう、こういうことできょうは呼び出しはしませんでした。しかしながら、若干大臣としては軽率な発言だなということを感じるわけです。やはり電電の株の売却をどうするかということに対して予断を持って答弁をして、その予断を持って答弁をしたことに責任を負わないということは、これは政治家としては許されないことだと思うのですね。  大臣の方も、随分細かく見たのですが、どうも最後は逃げちゃっているので余り首を取るまでにはいかない。しかし、一方の答弁は完全に赤字国債には充当しません、少なくとも閣内に二つの意見が出てきた、こういう状況は間違いのないことなのであります。  時間の関係があると思いますから、これは急な質問ですから一番当初にやろうと思ったのでありますが、逓信部会の方の関係もあって大臣は呼ばなかったために大蔵大臣関係だけの質問になりましたけれども、結果的には閣内にそういう二つの意見があった、それを一つ法案で出してきた、このことは我々としてはそう簡単に認めがたい。ですから今大蔵委員会におりてこないわけだ。やはり政府の責任というものの所在を明らかにする必要がある。そんな勝手なことをあっちこっちで言っておいて、いざとなったらこうです、それで全然それに責任を負わない、こんなことが許されていたのでは今までの答弁も何にもならなくなってしまう、こういうことで一応現在は国対の預かりということになっているわけです。大蔵大臣、このことは先に言ってありませんから、若干ごらんになっていただく間に梅澤博士に今度は聞きましょう。  今までの税制調査会でという答弁じゃなくて、今までの段階論に対して、技術的な立場に立って、大蔵の省という技術的な公務員としての立場に立った場合に、直間の問題とかあるいは大型の間接税の問題とか、税制調査会をリードしていく立場に立ってどういう方法でこれから臨もうとあなたは考えておられるわけですか、これは一応担当当局としてお答えいただきたい。
  84. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 当面大きな財政改革が検討課題になっておるわけでございますけれども、言うまでもなく財政は歳出と歳入の実は両面で構成されておるわけでございますから、税制調査会の六十年度の答申を見ましても、歳出の節減合理化と並んで歳入について、その基幹である税制について安定的な税収を確保するための検討が必要であるというふうな基本的な考え方が述べられておるわけでございます。ただ、当面財政改革の一環としての税制改革の位置づけといいますものは、同じくその答申にも書いてあるわけでございますが、現在の我が国の税体系は社会経済構造の変化に伴っていろいろなひずみが指摘されておる、また部分的な手直しては税制がますます複雑化していくという懸念も表明されておるわけでございます。  したがいまして、そういった観点から、今後税制の抜本的な見直しという作業がいつの時期か税制調査会で行われるということの予測を持っておるわけでございますけれども、ただその場合に、沢田委員がおっしゃるような二段階論でございますか、そういった観点からの考え方というものを、税制当局として現時点で具体的にそういうスケジュール的なものは持っておりませんし、そういった方向で将来の方向づけを選択するというふうな問題意識も持っていないわけでございまして、基本的に税制全体を税制固有の立場から御議論いただくことがまず先行されるべき作業過程ではないかと率直に考えております。
  85. 沢田広

    ○沢田委員 また別な場面で改めたいのですが、今度政党レベルでいろいろな減税が決まりました。どなたかの委員質問にも出てきましたが、若干私の方で述べますから、それについてイエスかノーかお答えいただきたいと思います。  最初に、順不同になりますけれども、単身赴任の減税というのが出ていました。単身赴任というのは、幾つか私の方で例示いたします。     〔堀之内委員長代理退席、中川(秀)委員長代理着席〕  家を持っておって、家を空き家にして奥さん、子供を連れて赴任をするということはどうもおっくうだ、だから一人で赴任をする、これが一つあります。それから、子供の学校の関係で移動するというのが、県立とかそういうところへ行く場合には難しいから本人だけで赴任をする。それから、おじいちゃん、おばあちゃん等がいて奥さんを残さなければならぬという立場で赴任をする場合もある。あるいは逆に、赴任はしたけれども奥さんが通っていくという場合もある。あるいは、どの程度の距離をもって——二時間の通勤距離か五時間の通勤距離があるいは一日を要する距離をもって単身赴任というのか。あるいは、会社がそれぞれその固有に認定して手当を出しているものを単身赴任というのか。あるいは、偉くなりたいという立場で栄転で動かざるを得ない、おれは偉くならなくてもいいからここに居座るといった場合、前者の単身赴任は単身赴任というのか。  この単身赴任という解釈にも、私らも考えてみますとその程度、まだあるでしょうけれども、いろいろ出てまいります。大蔵当局としては、決まったものの、これらについてどういう見解をお持ちですか。
  86. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 いわゆる単身赴任問題は、先般の政党レベルのお話し合いがございまして、そこでしかるべく検討されるということでございますので、当面私どもはその作業を静かに見守るという立場にあるわけでございます。  今おっしゃいましたのは、単身赴任の定義づけのような問題を投げかけていただいたのかと思いますけれども、私ども、この単身赴任問題について厳密な定義を中で検討したということはございませんが、社会の常識と申しますか、今問題にされておる単身赴任というのは、有配偶者、奥さんがあって、ただ職務上の人事異動がございましてその奥さんと別居して単身赴任をする、これは同語反復みたいな話になりますけれども、そういったことが今問題になっているのではないかというふうに考えております。
  87. 沢田広

    ○沢田委員 それは、今のいろいろな解釈で、まだそこまで及んでないということのようです。  続いて、寝たきり老人という言葉が使われました。これは大蔵ではないわけですが、これも政党レベルでつくられた言葉です。寝たきりというのは、一週間のうち例えば二日起きているのは寝たきりに入るのか、あるいは足の方が悪くて動かないから寝たきり、だけど半分は散歩ぐらいはできるという状態は入るのか、また、寝たきりと判定をする機関はどこなのか、そういう疑問が出てくる。  税法上で特に問題になるのは障害者との区分、それから同居減税との区分、障害者との同居の場合の減税との区分、こういうのが出てくるわけですね。同居障害者である配偶者の場合、それから同居特別障害者である扶養親族の場合、それから障害者の控除の場合、この場合のいずれにも該当しない部分で寝たきり老人控除というものを考えるというふうに理解をせざるを得ないのでありますが、その辺は重複するのかあるいはその中で別個に考えるのか。今の段階の回答でいいです。今きれいな回答をもらおうと思っていませんから、そこまではまだいってないだろうと思っていますから、大ざっぱな、アバウトな話としてどういうふうに考えておられますか。
  88. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 今の所得税の特別障害者控除という制度がございますが、現在問題になっております寝たきり老人と言われるのは、まずその特別障害者の範疇に入る問題であると思います。  税法上は年齢によってその特別障害者を区別しておりません。若い方であろうとお年寄りであろうと特別障害者の対象にしておるわけでございますが、その特別障害者の内容は、例えば身体障害者で重度の方とか、いろいろな定義がございますが、寝たきりというところの範疇に入るものとしては、常時就床、つまり常時ベッドにおられる必要がある、かつ日常複雑な介護、ひとりで便所へいらっしゃれないとかおふろへ入れないとか、だれかが付き添って介護してあげる必要のある方、恐らく寝たきりというのはそういう概念に受けとめております。それに老人という言葉が入るわけでございますから、それでそういう方の老年者、これは税法上六十五歳の場合と七十歳の場合、いろいろございますけれども、そこは定義の仕方であろうかと思います。  いずれにいたしましても、これも政党レベルでいろいろ御検討も賜るわけでございますから、私ども静かに見守るという立場でございます、
  89. 沢田広

    ○沢田委員 もう一つ、教育の関係ですが、教育は高校の入学金、これもいろいろ我々意見をまた聞かされるわけです。じゃ行かなかった人は損しているんじゃないか、こういう意見もありますし、私立学校はべらぼうに高いところだし、公立の場合は安い。その辺の差も出てくる。どの程度の額に決まるかは、まだ二十万で決まるか三十万で決まるかわからないけれども、個人の減税というふうにすると、逆に今度は学校がその分をげた履いてその上に上げてしまうんじゃないか。五十万と言ったらば、三十万の入学金で八十万に引き上げられてしまう、結果的にもうけるのは学校だけになってしまうんじゃないかという心配の発言もある。その辺は税務当局がどういうふうに判断をされているか。私はこの前は、小中学校の生徒の経費控除、これは実質十七万ぐらいだからそれは認めてやったらどうかという提言もしましたけれども、高校と今度は限定されていますので、若干そういう問題が起きるのではないかと危惧しております。この点はいかがですか。
  90. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいまおっしゃいました教育費を、入学金でございますか、税法上何らかの手当てをすべきである、恐らくそれは所得控除のような形の問題の御提起かと思いますけれども、先ほど来お挙げになりましたいわゆる政策減税としてただいま議論されております問題は、率直に申し上げまして税制上私どもは非常に大きな問題がそれぞれにあるというふうに考えておりますけれども、いずれにいたしましても、これは政党レベルでの御検討が始まるわけでございますので、これ以上私どもの方で現段階ではいろいろ意見を申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  91. 沢田広

    ○沢田委員 まあ我々のような素人というか、我我の程度において考えてもなかなかこれは難しい中身だなというふうに思うのでありますが、税務当局で考えても、そうするとやっぱりこれは難しいな——難しいなというのは、解決できなくて難しいんじゃなくて内容の規定が難しいな、今はそういう段階にある、こういうふうに理解していいんですか。
  92. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 これは毎度大臣なり私どもがお答え申し上げているところでございますけれども、この種の特別控除の問題につきましては、六十年度の税制調査会の答申にも書かれておりまして、特定の条件なり特定の家計支出の中からいろいろ抜き出して税制上の手当てをするということは、税制を複雑化させるあるいは広い意味での公平上の問題があるということと、もう一つは、その基準のとり方が非常に難しいという問題が指摘されておるわけでございます。  ただいま、その入学金の問題等につきまして、内容の限定とかあるいはどういう範囲のものを取り上げるかという点につきましては、事柄によりましてはやはりこの税調答申に書いてございますように基準のとり方が非常に難しい、技術的側面としてはそういう問題がございますし、税制全体として果たして全体が公正であるかどうかという大きな問題もあるわけでございますが、いずれにしてもこれは政党レベルでのお話し合いといいますか、検討の結果を我々としては静かに見守るべき立場にあるというふうに申し上げたいと思います。
  93. 沢田広

    ○沢田委員 いろいろなこういう特徴を持っているものを包括的に考えてみますと、もっと大きな分野で見ますると、要すれば弱い人の立場である、そして皆扶養の条件を持っている者である、こういう立場の者が共通の条件になっています。だとすれば、これらの人々の事情の若干の差、あるいはおれの方が余計欲しかったとか少なかったとかという思惑の差はあるにしても、扶養控除を引き上げていくことによって包括的にこういう弱い立場の人が共通の問題として救われていく、こういうことにはなるのではないかというのがまず一つ。それからもう一つは、確定申告その他を扱っていく場合の取り扱い、しかも年末調整で処理するというようなことを言っているのを考えますと、税法で扶養控除の額を引き上げることによって考えていくことの方が、より普遍的に、また合理的になっていく可能性もなくはない、こういうふうな気もしないでもない。どれもこれも皆難しいといってもしもだめになるよりも、より合理的に、そしてより事務的に解決できるという方がプラスになるのではないかという気もしないでもありません。  その点は、そのプラスとマイナスはあると思いますが、これは大臣に答えていただかなければならないだろうと思うのですが、大臣も答えにくいでしょうね、今のところ政党段階で決めることですから。例えば、今の段階でそういうふうな難しさのものを乗り越えるならば、私のような者が提案したのですけれども、アバウトにこういうことでまとまればその方が大蔵当局としてはより広範に、そして国民にプラスになる、これだけの分野でとらえればそういう結論が出るのではなかろうかという気がするのですが、いかがですか。
  94. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 繰り返して申し上げますけれども、現在問題になっております政策減税の問題につきまして、税制当局として、あるいは私、行政府の一員である者がいろいろコメントを申し上げるということでお答えできる立場にはございませんので、一般論としてお答え申し上げますと、これも先ほど来たびたび引用しております税制調査会の答申におきましては、今問題になっておりますいろいろな手当に関する問題ではございませんで、現在所得税の中にいろいろな特別控除がございますが、これについても基本的な将来の方向としては、今委員がおっしゃいました、まさにそのとおりの方向が出ておりまして、でき得れば税制簡素化するという観点からも基礎的な人的控除の中に吸収していくべきである、全廃しろというふうな御議論ではございませんけれども、なるべくそういった基礎的な人的控除の中に吸収していくというのが税制簡素化とか公平の観点からは望ましいという御指摘はございます。
  95. 沢田広

    ○沢田委員 では、この問題はちょっとおいておきまして……。  大蔵大臣いろいろお調べいただいたと思うのですが、電電の法案のいろいろな大臣の食い違いについてどういうふうに御認識になっておられるか、お答えいただきたいと思います。
  96. 竹下登

    竹下国務大臣 電電法案はいろいろな問題がございましたので、まず、「新電々の株式売却収入の使途についての政府見解」、これは五十九年の七月十九日に合意したものでございます。   今回の電々公社の民営化は、将来の高度情報社会に向けて、事業の公共性に留意しつつ、民間活力を導入し、事業経営の一層の活性化を図ることを目的としている。   この趣旨からみれば、政府がいつまでも全株式を保有するのは望ましくないので、政府としても漸次株式売却を行いたいと考えている。 その次からですが、   株式売却収入の使途については、種々議論があることは承知しているが、いずれにしても国民共有の資産であることに鑑み、国益にかなうよう、今後、予算編成の過程を通じ、政府部内において慎重に検討してまいりたい。   いやしくも国民に疑惑を抱かせることは断じて許されない こういう政府統一見解。  したがいまして、私の答弁は、まさにこの、種種議論があることは承知しておりますが、国民共有の資産であることにかんがみ、国益にかなうように使います、こういうことを基礎に置いて終始一貫繰り返しておりました。  そこで、食い違いというものを今ちょっと見てみますと、どちらかというと大蔵委員会予算委員会等では、政府はこの売却による利益というものは、いろいろな方の御議論がございますが、三十年、四十年も後代に借金を残すよりは、むしろこういうものを使って後世に残す借金をできるだけ少なくする、そういう考え方がいいではないかとかいう、その意見が多いわけであります。それに対しても、私も注意して申し上げておりますのは、「財政当局としての、一般会計に帰属するものであるだけに、財政需要全般に充当さるべき筋論というものを申し上げ、その中で今お話のありましたこの財政需要の中の大きな部分を占めるところの公債償還財源ということは十分検討に値する御提言ではなかろうかというふうに考えておるわけであります。」というようなトーンでずっとやってきました。  それで、私と郵政大臣との違いがあったといたしますならば、こういうのが一つございました、ある委員質問で。「最初は局長は絶対にこれは株を現物でもってこちらへいただいて、それを原資としてやるんだということをまず打ち出されているわけですよね。しかし、それがどうも見通しが暗くなってきている。大臣も株の売却益を向けるというのも一つの手段であると考えるというふうに、もう既に退歩なさっているわけですよ。」最初は絶対に譲らないという決意があったが一体どうですか、どうも私の見るところ、一般会計に入ることの方がいいような気がしますがね、こういう意見がありまして、だから、この七月十九日の統一見解以来大きな乖離はないようになっておるのではなかろうか。いろいろなのをまだ読んでおりませんけれども……。  その後これが、そういう国会議論等をいろいろ聞きまして予算編成の中でまさに合意を行ったのが、いわゆる三分の二は国債整理基金特別会計に直入しようということになったわけであります。三分の一が、言ってみれば、当時郵政等でいろいろ議論しておられました技術開発等に使われる、産投会計の中へ入れる、こういうことになったわけでございますから、経過段階でニュアンスの相違は確かに古い答弁書を見てみますとございますけれども、結論からいって、今の左藤郵政大臣になりましてからのトーンはだんだん私のトーンに近づいてきておるんじゃないか、こんな感じでございます。やはり国民全体の財産であって、したがって国民全体の借金に充てようじゃないかというごく素朴な議論というのが結果としてこの合意に達したのではないかというふうに考えられると思います。
  97. 沢田広

    ○沢田委員 大臣は合意に達したように思われておりますけれども、現実はそうではないのでありまして、やはり大臣としての答弁の責任というものは、これは前であろうと後であろうと——議員の場合は別、委員で発言していたときは別でありますが、大臣になってからの発言については、これは政府としての共同の責任であり、今言われているような点、私はわざと今持ってこなかったのは、その点について後で逓信部会の方で処理するのを待って行う、こういうことになっておりましたので省略するわけでありますが、そういうことですから大臣としても、今の答弁で了解されたものではない、あくまでも相違は残っておる、大蔵の方もそうでありますけれども国会全体としての問題もこれからの問題に残されているということを一応念頭に置いてその対応をしていただきたい。また、その言われた言葉に対して、大蔵大臣がと言っているわけじゃありませんが、政府の閣僚の一人としての責任の所在を明らかにしていただく、そういう必要性があるんだということを念頭に置いていただきたいと思います。  続いて、今回出されました法人税法法律案、特に今回の法律案では公益法人なり協同組合をねらい撃ちしたみたいに挙げてきた。従来でも一般の法人関係の税率と比較をすると、いわゆる営利事業ではないのでありますからその比率としては極めて厳しく反映する。営利事業の方では相当な利益を上げても同じ比率でありますけれども、こういう公益法人その他について見れば——営利を社団法人、財団法人、学校法人、社会福祉法人、宗教法人もやって、この間の脱税の報告その他を見まするといずれもなかなか信用しがたい、こういう状況も出ていることは事実でありますけれども、しかし、そういうものをねらい撃ちして税率を引き上げてきたということは、かえって脱税に拍車をかけることになりはしないか、こういう心配があるわけであります。公益法人という言葉は、これは公の利益に寄与する、こういうことが言葉の中から生まれてくる一つの概念で、また協同組合は組合員の相互の利益を維持する、これが念頭に出てくる概念である。でありますから、その中の役員が悪いことをするしないの問題は別問題として、社団法人、財団法人、学校法人、宗教法人、社会福祉法人というようなものは公共の福祉に寄与している、そういう目的の方向に指導していくことがいいのではないのかというふうに思われますが、税務当局として、そういうところにねらい撃ちをするということは時期として妥当ではないのではないか、こういうふうに思われますが、いかがですか。
  98. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 委員がおっしゃることと私ども考え方、やや見解を異にするわけでございます。  そもそも公益法人とか協同組合の税率は、昭和二十七年当時までは普通法人と全く同じ税率であったわけでございますが、二十七年の法人税率引き上げ後、この格差が非常に拡大してきた。したがいまして、現在の公益法人とか協同組合に設定されております軽減税率というのは、言うまでもなく政策的な観点から設定されたものと見るべきであろう。  その点は私どもも異論がないわけでございますけれども、問題は、公益法人といえども課税対象になっているのは、収益事業を行った部分課税対象になっているわけでございます。しかも収益事業で利益を上げた分については、一定割合でそれを公益事業の財源に移した場合は非課税になっている。さすれば、残った部分の収益事業の所得なるものは、特に収益事業でございますから、民間のいわゆる普通法人がやっておられる事業と業種等を見ましても競合しているわけでございます。そういたしますと、本来はむしろそういう公益事業財源に移された後の所得については普通法人と全く同じ税率であってもおかしくはないという考え方がございます。  協同組合につきましても、相互連帯の組織で行われる協同組合の性格につきましてはまさしく委員の御指摘のとおりでございますけれども、この点につきましては、協同組合の場合は組合員に対しまして事業分量配当を認めております。事業分量配当は当該協同組合の損金として課税の対象から外されておるわけでございますから、留保所得につきましては、先ほど公益法人のところで申し上げましたと同じく、本来は税制固有の考え方としては普通法人の税率と全く同じであってしかるべきであろうということでございます。  したがいまして、今般この税率の引き上げをお願いしておりますのは、税制全体の中での公平性、適正負担という観点から見るなれば、現在の普通法人の基本税率と公益法人なり協同組合の軽減税率の格差は余りにも開き過ぎているという観点で、今回その適正化の第一歩として二%ポイントの引き上げをお願いしているわけでございます。
  99. 沢田広

    ○沢田委員 原資がそういう目的でなくて、例えばきょうの新聞に出ておりましたスト準備金、対策費というようなものの預金が百億、二百億あった、それに金利が生まれた、それを収益事業と見ることについてはいかがなものか。それは利益を得ようとした意図はない。それは言うならば貸倒引当金みたいなものですね。ですから、その中から生まれる金利というものを意図したものでもない、あくまでもそれは非常の場合に備えて積み立てた預金である。そういうものも収益の一部であるという解釈はあなたの方にありませんか。それは要するに利益が上がったんだという解釈をあなたの方は持っていませんか。  例えば会館にしてもそのとおり。会館の利用についても同じように、つくった目的は組合員の共通の利益、あるいは隣接する中小組合の利益等々を考えてそれぞれ会館をつくった。ただ会館にしたというのとも、組合が持っているものとも違う。それはあるいは宗教法人も同じかもしれません。お客が多いからうんと泊めてもうけようと思ったのではない。お参りする人が多いから、その便利を図ろうと思ってつくったのであるというものもあるいはあるかもしれぬ。例を挙げるのがいいかどうかは別にして、善光寺なら善光寺さんにうんとお客が来る。その必要性に迫られてできたものについて、それが収益だという認定を下すことはどうか。それは建物のもとの位置づけによって変わってくるのではないのか、こういうふうに私たちは理解するわけでありますが、その点はいかがでしょう。
  100. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 公益法人の何が収益事業がということでございますが、これは委員御案内のとおり、現在は法人税法の施行令で業種を個別に制限列挙してあるわけでございます。その場合の基本的な考え方は、たまたまそれが公益法人で営まれておりますけれども、世の中を広く見渡した場合に営利を目的として同じ事業が行われておるというふうなものを実は列挙しておるという考え方が背後にあるわけでございます。したがいまして、例えば宗教法人が駐車場を経営する。これは一般の駐車場の事業もあるわけでございますね。それから不動産の貸し付けとかあるいは会館の運用、それから金銭の貸し付け等も営利事業として普通の法人でも営まれておるわけでございますから、現在でもこれは収益事業として指定をされておるわけでございます。この収益事業から上がった利益につきまして、先ほど申しましたように、一定割合は公益事業財源に回してその後課税するという構成に、なっておるわけでございます。  問題は、現在の収益事業の対象となっておりません金融収益を一体どのように考えるかという問題でございます。沿革的に見まして、金融収益を収益事業としてとらまえていないのは、そもそも公益法人というのはそういう一つのファンドを設けて、そういう運用益でもって公益事業本来の活動財源になっておるという考え方が背後にあったと思います。それはそれなりに全面的に否定される考え方であるとは私ども思っていないわけでございますけれども税制調査会の一昨年の中期答申のときの御議論では、その金融収益といえどもただいま申し上げました例えば金銭の貸し付けとか財産運用の利益等、経済的実質においては類似した側面もある。したがって、この辺は、いわばボーダーラインの問題でございますが、どう考えるべきか、六十年度の税制改正に当たりましても、この問題について私ども検討させていただきました。  ところが、非常に難しい問題がございますのは、公益法人にもいろいろな業態、態様があるわけでございまして、例えば専ら組合員に対する年金給付を行っているようなファンドについては、金融収益は即年金の給付財源でございまして、この辺の課税に手をつけますと結局掛金にはね返ってくるという問題もございます。そういったことで、公益法人の金融収益についても一律に議論するというのはもう少し慎重でなければならぬであろう。もう少し各法人ごとの態様をいろいろ考えて、しかし、一般の財産運用の収益と経済的性質が類似しているという側面もあるわけでございますけれども、六十一年度以降の検討課題として私どもは引き続き検討されるべき問題であると考えております。
  101. 沢田広

    ○沢田委員 いずれにしても公益法人、公のための利益である、憲法で保障された権利に基づいて活動されている諸団体。それはすべてそうでありますけれども、特に公益法人であるとか協同組合とか、そういうものはそういう目的で動いているわけでありますから、その目的を阻害しないように、角を矯めて牛を殺すという言葉に該当しないように、税務当局の熱心な余りにその本来の目的を阻害するというような事態の生じないよう十分の配慮を求めたい、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  102. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 この問題についての検討経過は先ほど申し上げたとおりでございますが、委員の御指摘の点も踏まえまして、今後の検討に当たりましてはあらゆる角度から慎重に検討を続けたいと思います。
  103. 沢田広

    ○沢田委員 続いて、入場税関係で今までに触れられなかった点で若干お伺いいたしますが、予告がなかったから、答えられなければ若干時間を置くことにやぶさかではありません。  現在、競輪、競馬、地方団体がやっているものもそうでないものも、オートレースも含めて非常に収入が悪く、景気が悪くなってきている。この点は、一時は第二、第三の予算、財投に次ぐ第三予算などという言葉も出たのでありますけれども、今日そういう状況になっておるというふうに聞いております。大蔵省としてはどのように把握をされているか、その点お伺いしたいということが一つ。  それから、入場税の免税点を修正していって、一般の庶民が文化を享受するということは本来我我も無料で扱うことが筋道だろうと思っているのであります。ところが、興行主の中には、ときには暴力団などいかがわしい者が興行主になって行われて、あるいは脱税あるいは全くアングラマネーとなって動いていってしまう、こういうものも広告やその他の中からは見てとれる場合があるわけです。きょうは警察は呼んでおりませんけれども、税務当局としては、こういうものの割合、こういうものが現在の段階においてどの程度はびこっておるか、あるいは取り締まりの対象がどのくらい把握をされているか、そういう点についてどういう認識を持っているかということをひとつ。  これは予告してなかったから、若干時間を置いてお答えをいただく余裕はやぶさかでありません。ですが、そういう点がこれによってアングラマネーになっていってしまったというようなことがあったのではいかぬので、その点は確認しておきたい、こういうふうに思いますが、今お答えできますか。
  104. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 第一の点でございますけれども、先年ギャンブル課税検討の課題になりましたときに、この問題について税制調査会で御議論をいただいたことがございます。そのときに、結局公営競技の収入をどう考えるかという問題は、当面むしろ主催団体とそうでない団体との財源配分の問題が一番大きい問題であろうという結論になりまして、したがいまして、税制調査会ではそれ以降この公営ギャンブルについての具体的な議論はいただいておりません。総理府にこの問題の協議会がございまして、その協議会で引き続き検討作業を進められているわけでございます。  したがいまして、現時点におきまして、税制当局といたしまして公営ギャンブル事業についての現状分析あるいは税制の面からの具体的な検討論議をしておりませんので、御理解を賜りたいと思います。
  105. 沢田広

    ○沢田委員 アングラは……。
  106. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 今先生御指摘のような、入場税関係の興行主の中にいろいろあるではないか、そういうものの把握はどうなっているかということでございますが、私どもの今のいろいろな統計の中で、そういう興行主体の関係でどのような状況かということは手元に資料がございませんが、一般的にそういう暴力団絡みの興行的なものにつきましては、私どもとしては警察の方からもいろいろと情報をいただいておりまして、申告漏れというような状況がございましたら、私どもとしてはその情報に基づいていろいろと調査をし、現実に課税も行っている状況でございますので、御理解賜りたいと思います。
  107. 沢田広

    ○沢田委員 私が聞こうとしているのは、我々も本来こういう文化的なものについては税を取らないで、無税でいってもいいとは思っている。しかし、もし現在あるような暴力団その他がさらにふえて世の中の治安なり秩序なりが乱れて、アングラマネーとして動いていく金になっていったのではいかぬ、そういう危惧があった。率直な話としてそういうものがあった。そういうものをチェックする機能があなたの方に存在するならば、純粋に文化が守られていくという立場に立ては、それはより助長するためにこういうものは取らない方がいいということにもつながる。なかなかその区分がしがたい、取り締まりが難しい、こういう声も我々聞かないわけではないので、当面の措置としてこういうことならばということが意見として述べられたわけであります。  その点もう一回お答えをいただいて、例えば税を全然取らなくてもそういうものの取り締まりは確実に担保できる、こういうことが言えるのかどうか、その点お伺いいたしたいと思います。
  108. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 先ほど国税庁の方から御答弁申し上げたわけでございますけれども、取り締まりの問題になりますと警察御当局の問題でございますので、警察御当局から資料をいただいて課税の適正化を図っておるとお答え申し上げたわけでございますけれども、私どもも執行におりました経験から申しますと、この辺の問題は税務当局でも難しい局面の問題もございます。     〔中川(秀)委員長代理退席、委員長着席〕 したがいまして、入場税との関連でこの問題がすっきり行われているかどうかということになりますと、国税庁としては大変な努力を傾注しているわけでございますけれども、その辺は万全でございますというふうには必ずしも申し上げられない。警察当局とも御協力申し上げて課税の適正化についてなお努力していかなければならない面が多々あると考えております。
  109. 沢田広

    ○沢田委員 そうしますと、今申し上げたような点で文化が保護されることを前提としつつ、もしそういう暴力団とかいかがわしい主催者ではないということが完全に担保になっていけば、さらに免税点は引き上げられ、将来は当然無税で国民はそういう文化を享受する方向が展望できる、こういうふうに考えられるわけでありますが、これは警察当局の答弁を若干聞かなければ言えませんけれども、理用としてはそういう方向に進む、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  110. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま御指摘になりましたような点につきましては、課税の適正化について一段と努力しなければならない問題でございますが、入場税の免税点の問題は、私どもは直接それとの関連で考えておるわけではございませんで、やはり高額な入場料金の背後にある担税力というものに着目しました場合に、かなりの高価なサービスを購入される場合には応分の御負担をいただくというのが入場税法考え方でございますので、入場税を将来撤廃する方向で考えておるということはございません。
  111. 沢田広

    ○沢田委員 そうなるとまた議論が若干時間がかかるわけですが、高価か高価でないかはまた極めて難しい物差しが必要になってくると思うのです。  例えば租税特別措置法の中だってそれぞれ、新築貸家の四十五年物については百分の六十五に下がるとか、耐用年数が四十五年未満のものについては百分の四十二というような優遇措置も講じている。では文化と新築家屋、住宅とが、どちらがどれだけウエートが高く国民生活に必要かといえば、そのウエートの差をつけるということはなかなか困難になりますよ。どちらも大切だということになるだろうと思うのです。ここではただ住宅政策があるからそういうふうに特別償却を認めていくということになるんだと思うのでありますが、だからそういうような立場でいけば、これはまた今後議論していきますけれども、我々としては文化というものは国民がひとしく享受できる条件が理想的である。もし特別の奢侈的なもの、奢侈的だと思われるようなもので行われたと考えるならば、それはそれで一定の線を引くことはやぶさかではないかもしれぬ。しかし文化そのものは、あるいは無形文化財に属するようなもので貴重なものになれば、いずれにしても高い料金を取らざるを得なくなる、そういうことになるので、そのことが今言った理屈には該当しない。本来あるべき姿は、そういうものの危険性がなければ無税で享受できるのが理想である。この原則はそのとおり理解されるのじゃないのですか。
  112. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 おっしゃるように、何が高価であるか、具体的には今入場税法の免税点の引き上げを御提案申し上げておるわけでございますけれども、絶対的、客観的な基準はないということは御指摘のとおりだと思います。そこで、担税力を求めるためのラインとして免税点がどうあるかというのは、結局はそのときどきの社会情勢に応じまして妥当な水準を模索するということになるわけでございますけれども、ただいま御提案申し上げております映画につきましては、免税点二千円ということになりますとロードショーの指定席が課税になる。一般的にロードショーは恐らく入場税の課税対象にならないだろうという水準と御理解賜りたいと思いますし、演劇につきましては一流劇場の上級席、もちろん高価なディナーショーなんかは当然対象になる水準でございますけれども、五千円という水準はそういう水準でございますので、私どもは五十年来据え置かれたこの免税点を引き上げるに当たりまして、一応妥当、適正な水準であろうということで今回御提案申し上げておるわけでございます。
  113. 沢田広

    ○沢田委員 具体的な例は挙げていいものかどうかわかりませんが、先般「桜の園」でしたか、あれは七千円ぐらいだったと思います。劇場は帝国劇場だったと思いますが、それが果たして今の状況において課税されるべき水準のものであったかどうかということを考えてみると、これはちょっと該当しないのではないかというふうにも思われました。  これで時間をとっていると時間がなくなりますから、なお今後検討して、これは言うならば大蔵委員会あるいは大蔵大臣の文化の水準も問われることにもなるわけでありますから大蔵委員会としての一つの問題にもなるわけで、その意味においてはやはり前向きに今後検討をしていく、そうして文化の薫り高いものに近づけるように努力をするということで検討をしていただきたい、こういうふうに思いますが、これは大臣からでしょうな。税務当局からでは同じ答えしか来ないでしょうから、お答えをいただきたいと思います。
  114. 竹下登

    竹下国務大臣 引き続いて妥当な水準というものはやはり検討すべき課題だと思います。
  115. 沢田広

    ○沢田委員 大蔵大臣の発言の重さは大変重いですから、それが実現されることを期待してやみません。  続いて、これは前にも我が党の同志から言われたのですが、大蔵大臣にお伺いをするわけです。  今のこの税制の状況の中で、特三ばかりつくることを全力投球してきた今までの経緯を考えると、言うならば年齢層は相当道ピラミッドになってきている、国税当局の税務職員はそうなってきている。その経緯を考えてみると、やはり幾らか若い血を輸血せぬとこの後穴があく時期が来る。ですから、そういう状況から見ると、いわゆる定足といいますか、常に充足をしていくという条件というものは技術の継承です。  我々よく技術の継承ということを言うのでありますが、徴税も一つの技術の継承なんですね。物の見方、それから物を見る場所あるいはどこを見ればどこがわかるかという、お医者さんじゃないけれども判断する手法、これは一つの技術なんですね。直観でわかる。我々も、パスなんかも同じですね。3を8に直したなんという人は必ずそこに親指を当てて定期を隠して通るなんというのが大体常識で、態度でわかってしまうというのと同じであります。  ですから、国税職員の年齢層に断層をつくらぬ、断層をつくらないという配慮、これは竹下大蔵大臣のときのみではありません、総理大臣になろうがだれが大臣になろうが、それは継続されるべきものである。そういうものが継承されていかないと、要すれば徴税能力にたくさんの穴があいてしまうことになるわけでありまして、やはり国税職員の定足をずっと継続的に持続のできる体制をとる、こういう必要性があると思う。これは若干の投資であるときもある。だけれども、一人入れてなれてきますと、結果的には四千万ずつ増収されてくるわけですね。これは国税庁当局から聞きましたけれども、実調していた平均は、一年間四千万くらいずつ税金がふえていくわけですから、そういう意味において職員の充足というものは図っていかなければならないし、これは国策の問題としてもそういう措置が必要であると思いますので、御答弁をいただきたいと思います。
  116. 竹下登

    竹下国務大臣 私ども、国税職員問題といえばまず三つのことをすぐさま考えます。  一つは、いわゆる処遇の問題であります。これは年々人事院勧告が出される。これにタイミングを合わせながら、人事院の方へ御連絡申し上げたり私からじかにお願いをしたり、こういうことを続けて今日に至っております。  二番目は、いわゆる増員問題であります。これはいつでも申し上げますように、大蔵省といいますと、行政改革、人員整理、まず隗より始めよ、こういう立場にございますので、時に大変言いにくい立場になることも私なりの体験の中にございます。したがって、たびたびの附帯決議で応援をしていただき、また本委員会等で鞭撻をしていただく、それが支えとなって、それは二けたといっても純増十一じゃないかと言われればそれまででございますが、それなりの増員が実現しておるということも、これはおかげさまであるというふうに思うところでございます。  三つ目は、先ほどおっしゃいましたように、税務職員は昭和四年から六年生まれの人が多くおりまして、昭和六十四、五年には一年に二千人もの人が定年となるというような年齢構造からくるところの特殊性であります。これにつきましては、今おっしゃいましたようないわゆる技術の伝承、継承あるいはノーハウの伝承とでも申しましょうか、そういうことに十分留意をしながらこれに対応していかなければならぬということは、常日ごろから、今の時期から考えていかなければいけない問題であるという認識の上に立っております。
  117. 沢田広

    ○沢田委員 続いて、租税特別措置法の中の住民票と生年月日の問題ですが、これは今からでも考えて——それは考えた方がいいというサゼスチョンもあったのでありますが、マル優をほとんど使わない人も多いのであります、サラリーマンその他では。使えない、おっくうだということもあるのでしょう、またそんなに預金がないという。それで住民票を集めて歩いたらどうですか、こういう言い方もある。投票用紙を集めるわけじゃないのだけれども、住民票を使わない、マル優を使わない人が大勢いる、郵便局は使っても銀行は使わない、こういう人がたくさんいるのだ、だから住民票を、千円でもらうか五百円でもらうか、ずっと借りて歩いたらどうだと。やはり世の中というのは、法律がつくられるとすぐその網の目をくぐるようなものを考える人がいるのだなということを感じたわけであります。  もしそういうことが行われたと仮定すれば、今までのマル優の条件は変わっていかない。それは幾らか減るだろうけれども、もしそういうことが行われた場合、どういう機能でそれはチェックしていくつもりでいるわけでありますか、お答えいただきたいと思います。
  118. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 証憑書類を的確に利用される担保として何を考えるかというのは非常に難しい問題がございます。一番端的に考えれば、これは我武内部でも議論したわけでございますけれども、顔写真の入った証票というのはなかなか他人が利用しにくいという面があるわけでございますが、厳正を期する意味で住民票に写真を張っていただくということも、これはまた税制の公平という観点からそこまでお願いするのは問題であろうということで、今回限定はいたしておりますけれども、住民票のほか幾つかの、生年月日、住所、氏名の入った公的書類を本人確認の証憑書類として規定させていただくということをただいま御審議賜っておるわけでございます。このチェックの問題というのは、事実問題として非常に難しい問題がございますけれども、ただ、仮にこれを不正に利用した場合には当然所得税法上の脱税犯を構成するものでございますから、その意味で最終的な担保はあるということでございます。  いずれにいたしましても、この問題につきましては、今後の執行あるいは利用の状況を見まして、何らかの手当てをする必要があるとすればまたその時点で検討しなければならない問題かと考えますけれども、そういう不正利用の問題につきましては、税法上の担保はあるということは申し上げたいと思うわけでございます。
  119. 沢田広

    ○沢田委員 これはすべての場合に担保はあるのですよ。ただ、そういう言葉がさっと出てくるくらいに、そこまで利用者は限定されているということだと思うのですね。それが六億もの数になっている。特定の人が物すごくたくさん使うという傾向は、恐らくこれをやったからといって変わらないだろう、だから今これは一つの例を言ったわけですが、それは隣近所ばかりでない、その辺のおばあちゃん、どうだい、使っているかい、住民票貸してくれるかいと言って、使っていくことは不可能じゃないのじゃないか。そうすると、せっかくこういうふうに難しくしてみても、結果的に底が抜けちゃうのじゃないかという危惧がされるわけですね。ならば、前の法律の方が、グリーンカードの方がやはり正しかった、こういうことになりはしないか、すぐそう気がつくような穴があるのならグリーンカードでやっていくのが筋道じゃないかというふうに言われるわけですが、どうですか。
  120. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 別にお言葉を返すわけではございませんけれども、グリーンカードも、申請すれば国税庁長官は交付をするという制度になっておりましたから、これも悪用するという考え方に立ては、他人のグリーンカードを利用してそういう不正行為が行われるという余地はやはりあり得ると思うわけでございます。  たまたまこの議論は、グリーンカードのときにも私ども内部で議論したわけでございますけれども、もちろん不正利用の危惧が全くないかというと、おっしゃるような危惧もあるわけでございます。もう一つは、これは金融資産の名義にかかわる問題でございますので、うかつに人のものを借りて、後、私法上の問題が起こる、その意味での心理的抑制と申しますか、その辺の担保というものもあるのではないかということをかつて議論した記憶がございます。  いずれにいたしましても、この利用状況を見ながら、なお制度的に手直しをすべきものであるとすればそれは今後の検討課題として、この実施の状況をしばらくは注意深く見守りたいと考えておるわけでございます。
  121. 沢田広

    ○沢田委員 現在八十五兆ぐらいの預金が郵便局でありますが、銀行も同じようにあるわけですが、これによってどこへ金は逃げていくと考えておられるでしょうか。それとも、三五%の分離課税でもいいやとあきらめて、そこで預金をしていると考えられますか。郵便局は少なくとも逃げるだろうというふうに考えられるわけでありますが、三十兆逃げると言う人もいる。じゃあ、その三十兆は今度どこへ動いていくであろうか、そういう点ほどのように考えておられますか。
  122. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 これもたびたび議論の対象になるわけでございますけれども、現在不正利用をされておる預貯金の量というのは計量的につかみがたい点がございまして、おっしゃるように何十兆円という規模の資金シフトが果たして起きるのか起きないのか、この辺を私どもは留保してまずお答え申し上げなければならないと思うわけでございます。  ただ、これは金融資産の各個人の運用の問題でございますから、仮にタックスシェルターとして現在働いておったものが、そういうところがなくなったという場合に、いろいろな金融資産がございますから、それがどちらの方へ逃げるのか、あるいは金融資産以外のところへ逃げるのかどうか、またそれだけ大量のシフトが果たして起こるのかどうかということも、これもしばらく状況を見ませんとなかなかお答えしにくい問題かと思います。
  123. 沢田広

    ○沢田委員 これ以上は追い詰めませんけれども、少なくともそういう傾向が出てくることは間違いない。予想されるものもほぼ出てくる。そしてそれがどこかへ行く。例えば金なら金の情報で見て、この間、一日で七十トン動いた。今二千五百円、六百円ぐらいですから、言うならば、金なんかにも動く。この半年の間に大体五千六百億から一兆円ですね、金、銀、プラチナを入れますと。一兆二千億ぐらいが大体動いている。これからもまだ、金は二千六百円見当ですから、それぞれ動いていくだろうと思うのであります。もう一つは株へ行くだろう、こり言われているわけであります。しかも安定した株だろうと思います。そうするとダウ平均はもっと上がっていく、こういうことにもなる。  いずれにしても金融の動きが出てくるということになるわけでありまして、一つは金の動きというものがこれからどう変わるだろうか、そういう点に対してはどういう管理をするのか、あるいはそのまま自由に任せていく、これは本人の投機であるからあくまでも本人の投機の意思に任せる、こういうつもりでおられるのかどうか。それだけ見解を承っておきます。
  124. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 これも大変難しい御質問でございますけれども、かつて貯蓄増強中央委員会貯蓄者の意識調査をやったことがございますが、貯蓄者が預貯金を選好される第一の眼目というのは、元本が保証されていること、それから確定利付で利回りが非常にはっきりするという点でございます。したがいまして、今委員がおっしゃるように、仮にそういったシフトが起こった場合に、今までタックスシェルターの中に入っておったお金が預貯金以外のところへ動くということは当然予想されるところではございますけれども、ただ金の市場といいましても相場が非常に動きますし、株式等もそうでございますので、預貯金の格好であったものがそういう投機的な金融商品に全部シフトしてしまうというふうにも一概には言えないのではないかというふうに考えております。
  125. 沢田広

    ○沢田委員 なかなか言えるとは言えないでしょうから、しかし注意すべき材料であるということだけで、もう時間がなくなりましたから次へ急ぎます。  続いてゴルフの会員権の問題であります。  妹とそれから金、これは利益に課税されない。金は、例えば一キロ買って、それが今度五千円になったからといってもそう課税はされない。それからゴルフの会員権も、法人の場合は、法人で買っていけば金庫といいますかロッカーを借りてもプレー費を払っても皆交際費として持つ。交際費の額は決まっていますが、交際費として認める。なお、一つの会社で、同じ役員で、いわゆる隠し法人、幽霊法人、そういう会社を五つも持っていて、そして社長の家を建てたらどこかの一番しまいの会社が社宅で貸している、こういう例もあるわけであります。そういうことを考えると、今ゴルフの会員権はべらぼうに上がった。なぜこんなに世の中が安定しているのにこれだけ上がったのだろうか。ひどいのは四倍、五倍、六倍という金額になっておる。ゴルフ場がもうかるのかといったらもうからない。だから、それはいわゆるゴルフの会員権屋がつり上げてもうかっているというだけにすぎない。そういうところの調査は実際に行われているのかどうか、行ったことはあるのかどうか、その点ひとつお伺いをしたいと思います。
  126. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 先生御指摘のゴルフの会員権でございますが、これは所得税法上、株式形態をとりましても譲渡所得に対しては課税になるということでございます。したがいまして、私どもとしては、このようなゴルフの会員権の移動につきましては従来から関心を持って資料の収集に努めておりまして、例えば、五十九年中に私どもとしてはそういうゴルフの会員権の移動資料を全国で一万枚以上実は集めておりまして、これらに基づいて課税の適正化に努力をしているところでございます。  ただ、ゴルフの会員権につきましてどの程度の課税事績があるかにつきましては、譲渡所得の中に全部入ってしまいますので、これだけを抜き出した資料というものは私ども把握してございません。
  127. 沢田広

    ○沢田委員 このごろの値上がりでは、一番大きな土地に次いで、あるいは株以上に上がっている一つのものでありますし、そういうところも正確を期す、こういう意味において御努力を要請いたします。  あと五分ですから、次を急ぎます。  それから、わざわざ私のところへ細かい資料を送っていただいて、商法第三十三条第一項、第二項についての取り扱いが複式簿記の中の利益を非常につくり上げる、変えていく、こういうことで細かい資料をいただいて問い合わせがございました。きょうは時間がありませんから、後で税務当局の方へこの資料はお渡しをいたします。そして、別の機会にその回答を求めたいと思いますが、これは企業会計原則といわゆる真の利益というものが何なのか、それから棚卸資産と損品、商法三十三条第一項、第二項、あわせて三十六条に影響する取り扱いについてであります。時間が四時までということでありますから、これも時間が少なくなりましたから、この点は追ってお渡しをしますので、後で文書で御回答をいただきたい。よろしゅうございますか。——首を縦に振っていますから、時間の関係で、いいです。それでは後でお願いいたします。  それから、労働省おいでをいただいております。きのう分科会で退職給与引当金がどうあるべきかということで聞きました。今どうお考えになっておりますか。御回答いただきたいと思います。
  128. 伊藤庄平

    伊藤説明員 お答えいたします。  退職金の保全措置の問題かと思いますが、退職金の保全措置につきましては、賃金の支払の確保等に関する法律に基づきまして、金融機関の保証措置とか中小企業退職金共済制度、そういうものへの加入を勧めまして、できるだけ保全措置を広げていこうということでやっておるわけでございますが、正直申し上げまして、現状、保全措置の普及状況はまだまだ不十分でございまして、現に昨年の八月に労働基準法研究会から、現在の保全措置についてはまだまだ不十分だという指摘をいただきまして、その研究会で引き続き効果的な保全措置のあり方について検討が進められているところでございます。その検討結果がことしの夏ごろには出るという予定でございますので、私どもそれを受けまして、適切な施策といいますかそういうものをひとつ煮詰めていきたい、こういうふうに考えております。
  129. 沢田広

    ○沢田委員 不足ですが、後でさらに努力されることを要望して次にいきます。  最後に防衛庁来ていただきまして、大蔵大臣、これは余計なことのようですが、予算を査定される場合に、二分ぐらいの間に、ぜひひとつどういうふうに検討されたのかということを実は聞きたいのです。  戦車は、日本で専守防衛の場合どこで使うのだろうかということで、いろいろ戦車も調べてみたのでありますが、専守防衛の場合、日本のまさか東京の真ん中をがたがたと戦車を走らせて、戦争の場合は映画じゃありませんからね、とても東京の中で動き回るわけにいかないだろう、こういうふうに山のある日本で、山も川も越えるのでしょうけれども、果たして本土決戦というのは専守防衛の中には含まれるのだろうか。でなければ、どこかへ行って、海の中で戦車を使うのかというと沈んじゃうだろうし、これもそうじゃない、空へは飛ぶわけでもない。そうすると、戦車というのは果たしてどういう条件の中に使われるのであろうか、なぜ予算がついたのだろうか、見せかけかなというふうな気もするわけであります。観閲式用に使っているのかな、こういうふうにも考えられる。これは防衛庁の答弁じゃない。我々平凡な国民が、戦車は果たして専守防衛でどこで使われるのだろう、水際作戦という中の戦車はどこで働くのだろう、我々国民はそのときにどうあるのだろう、巻き込まれないのだろうか、その保証は何なのだろうか、こういう疑問に突き当たるわけです。  時間になりました。ひとつ大臣の明快な御答弁をいただいて、国民がなるほど戦車というのはそういうふうに使うのかということがわかるようにお答えいただいて、私の質問を終わりたいと思います。  以上です。
  130. 竹下登

    竹下国務大臣 今おっしゃいましたように、我が国は四面海に囲まれた島国でありますから、国土に対する侵略は、必ず海か空を通ってこなければできません。したがって、国土防衛に際してはまず洋上で侵攻部隊を撃破し、国土に戦火が及ばないようにすることが望ましい。しかし、洋上で完全撃破することは言うべくして困難であると考えられておって、万一着上陸した侵略部隊を早期に排除する最後のよりどころとしてのいわゆる陸上防衛力の必要性、こういうことであります。  そこで、やはり抑止力という考え方が基本にございますから、侵略側に対しましてこうした防衛力を持っておるということは、洋上における戦闘で仮に勝利できたとしても、なおかつその先に強靱な陸上の抵抗力が存在するということは事前に侵略を断念させるための抑止力として存在するということでございます。いま一つは、議論する人の中には、そういう陸の装備というものが国民全体に国土を守る気概を与える一つの要因にもなると言う方もございます。  したがいまして、私どもは抑止力という面からしてもその必要性があるということで、六十年度予算案では七四式戦車六十両、これは二百二十九億六千三百万円を計上いたしたということでございます。ただし、これはいわゆる後年度負担でございますから、初年度のことしは予算額そのものはゼロでございます。
  131. 沢田広

    ○沢田委員 より水際における、国民を巻き込まないという方向で、大臣もそのとおり読むだけじゃなくて、今度は頭で考えてもらって、現実にそれが可能なのかどうかを考えてお答えいただけるように。防衛庁の書面を持ってきて読まれただけでは困ってしまうのですよ。それを大臣自身が考えて、果たして実現がされるのかどうか、東京湾に上がってきたときに本当にそれが実現できるのかということを考えて——その分減ると、大概一%ずっと減るのですね。助かるのです、千六百両くらいありますから。それが要らなくなってしまうわけですから、そういう意味においても大変な財源だ、こういうふうに思いますので、若干過ぎましたが、以上で終わりたいと思います。
  132. 越智伊平

    越智委員長 防衛庁に一言言わせます。防衛課長
  133. 宝珠山昇

    ○宝珠山説明員 先ほど大蔵大臣からお答えいたしましたとおりでございますが、防衛力を整備いたしますのは侵略を未然に防止するということが中心でございまして、戦車もその一環でございます。そういう体制をとることによって、御指摘のような事態が起こらないようにするということで、国民の被害を最小限に食いとめるという努力の一環でございます。陸上防衛力の中核として必要だと考えておるものでございます。
  134. 越智伊平

  135. 矢追秀彦

    矢追委員 私は、きょうは租税弾性値についてお伺いをしたいのですが、「財政の中期展望」や租税負担率の計算で税収弾性値を一・一、こういうふうにしておられますが、まずこの一・一の根拠はどこにあるか、お伺いしたいと思います。
  136. 竹下登

    竹下国務大臣 これは「中期展望」等におきまして、弾性値につきましては、去年と同様、要するに単純に過去の平均的弾性値一・一をそのまま採用した、こういうことでございます。     〔委員長退席、堀之内委員長代理着席
  137. 矢追秀彦

    矢追委員 今、過去十年の平均値を言われましたが、過去十年といいましてもいろいろ差がございますので、今回一・一とされたのは何年から何年までの十年の平均ですか。
  138. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 昭和四十八年から昭和五十八年までの平均でございます。
  139. 矢追秀彦

    矢追委員 過去十年を振り返りますと、経済状況あるいは社会の状況は非常に変化をしておるわけでございまして、高度経済成長から低成長へという変化がこの十年間の中にあるわけでございます。そういう非常に変動の多い中での平均値が果たして実情に合っておるのかどうか、その辺、私は、弾性値というものを勉強すればするほど、果たしてこういう単純な十年平均をしておっていいのかどうか、非常に問題があると思うわけでございます。  私なりに過去十年間の数字を計算をしてみました。そこで実際との開き、そういったものも出してみたわけでございますが、昭和五十四年の実際の弾性値は一・九五です。違っていたら直してくださいね。十年間の平均値は一・一四。したがいまして、実際の弾性値とこの前の十年間、これをやりますとマイナス〇・八一の差が出ております。昭和五十五年の実際の弾性値が一・二八、十年間の平均値は一・二〇、差はマイナス〇・〇八、実際よりも平均値の方が下回っている。昭和五十六年は実際の弾性値は〇・五七、十年間の平均値は一・一七、プラス〇・六〇。五十七年は〇・八〇、実際です。十年の平均は一・〇九、これはプラス〇・二九。五十八年は一・四〇、十年間の平均値は一・〇三、これはマイナス〇・三七になります。六十年は実際はまだ出ておりませんので、過去十年の平均は一・一、これはどれだけの差が出るか、これからになるわけです。  かつて、私、参議院の予算委員会で渡辺大蔵大臣当時、この弾性値を一つのもとにして論争したことがございますが、そのとき、私は五年平均をとりました。五年の平均と十年の平均をこれまた対比をしてみますと、昭和五十四年は五年平均値は〇・七五、実際との差がマイナス一・二〇。五十五年は〇・九六、実際との差がマイナス〇・三二。五十六年は五年平均一・二九、プラス〇・七二。五十七年は五年平均が一・二〇、プラス〇・四〇。五十八年は五年平均しますと一・一三、マイナス〇・二七。六十年は、今政府は一・一と言っておられますが、五年にしますと一・二と、〇・一高くなるわけです。十年平均と五年平均と、あのときは水かけ論だということで終わってしまいましたが、こうやって見てますと、十年平均にしろ五年平均にしろ、要するに、予測という面で見ますとこれは余り当てにはなっていない、こういうことが言えると思うのですね。しかも、この弾性値がたとえ〇・一でも差が出ますと、相当大きな差になってくると思うのです。  六十年度の弾性値一・一と想定されておるのが仮に〇・一差が狂った場合、私の言う一・二に伸びた場合、あるいは減る場合もありますけれども、〇・一になりますと税収はどれくらい変わってまいりますか。
  140. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 申すまでもないことですけれども、弾性値というのは事後的にGNPと税収の伸び率ではじき出されるものでございまして、六十年度の税収見積もりは各税目の積み上げでやっておるということをまずお断りしておかなければならないのでございますが、今おっしゃいましたように、全く機械的に〇・一ポイント弾性値が上がるとすれば、六十年度予算ベースでおよそ二千億円程度かと思います。
  141. 矢追秀彦

    矢追委員 〇・一で今言われた二千億ですから、〇・五になりますと一兆円になってしまうわけです。そういうことで、確かに弾性値というのは終わった後ということですが、現実には弾性値一・一ということで、「財政の中期展望」もこれで計算が行われておりますし、先日予算委員会で租税負担率の計算にも一・一というのを当てはめてされておるわけでございまして、収支試算——試算ですから、比べるものがないからということできているのかもしれませんが、〇・五違っただけでも一兆円というふうに実際に相当変わってくるわけです。だから、さっき私が申し上げたように、十年の平均値と実際の弾性値の一番大きい差がマイナス〇・八一あるわけですね。そういうふうなことを考えますと、弾性値というものは予測値としては甚だ不的確である、このように言いたいのです。〇・五の差が出たら一兆円、こういうふうな大きな差というのは、要するに、悪いのですが、何か弾性値を一・一とするより、むしろどうしてもやりたいのは、理想というのは一・〇がいいのでしょう。その点はいかがですか。  その前に、実際に予算編成において税収の見積もりはどうされるのですか。積み上げ方式なのか、この弾性値を掛けてやっておられるのか、その辺はいかがですか。
  142. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 委員がおっしゃいますように、各年度の事後的に出てまいります弾性値は非常にぶれがあります。実はこれは当然のことでございまして、その基礎には景気循環があるわけでございますが、税収はそれに一定のタイムラグを伴いまして年々非常に変動するわけでございます。  ただ、先ほど委員が、五十年から六十年まで過去十年間さかのぼった数字でおっしゃいました。恐らく委員の御計算は算術平均でなさっていると思いますけれども、いわゆる加重平均、機械平均でやりますと、五十年から六十年の間の過去十年間の弾性値は大体一・一前後で動いております。したがいまして、必ずしもこの一・一というのが十年間移動平均でとって非常に大きくぶれているというわけではございません。一・一前後で最近は動いておる。  それから税収の見積もりは、先ほども申し上げましたけれども、弾性値でもって六十年度の、あるいはそれぞれの予算年度の税収見積もりをはじいておるわけではございませんで、これは税目別に積み上げ計算をやっているわけでございます。  それから、もう一言申し上げさせていただきたいのは、確かに各年度によって弾性値はぶれます。ぶれますけれども、経済循環の長いタームでとった場合に、先ほども申しましたように、最近の十年間の移動平均を見ても、十年間でならしますとそんなに大きくぶれないということは、やはり経済の循環局面を一わたり通りました後の時点におきます中長期的な税収の動きを的確に反映している一つの指標ではなかろうかということでございます。したがいまして、中期予測をする場合には、弾性値を使うということはそれなりの意味があるということで、毎年「中期展望」でGNPと弾性値の機械計算で私どもは御提出申し上げておるわけでございます。  ただ、現在弾性値が一・一と申しましても、では六十一年度が弾性値一・一かということを意味してないわけでございます。つまり五年なり十年、ずっと延ばしたところで、傾向として一つの展望の検討資料になるということで、毎年毎年が一・一であるという意味ではないわけであります。
  143. 矢追秀彦

    矢追委員 それでは伺いますが、この弾性値がこのように変動する、もちろん経済の変動ですが、その変動の要因というのはどこにあるのか。直接税、間接税、法人、所得、それから酒税、こういうのも表として出ておりますね。こういうのを見ておりますと、間接税の方は割合に弾性値が低い、直接税の方は高いというのが大体の傾向になっておりますけれども。その中で酒税も、高いときもあるし低いときもありますが、こういったことを見ましたときに、弾性値を上げたり下げたりする要因というのは何なのか。具体的にどういったときに上がる、どういったときに下がるのか。ただ経済の推移とか、そういうことじゃなくて、もう少し具体的に言っていただきたい。
  144. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 税目別に見ますと、所得税と法人税が全体の七割を占めておるわけでございますから、所得税、法人税の動きというのが税収の動きを大きく左右する。そのほか間接税ということがあるわけでございます。  一番変動をいたします要因は、何と申しましても法人税でございまして、これは四十九年以降第一次オイルショック、第二次オイルショックの調整過程という経緯がございまして、大変ぶれております。大きく伸びますときは、例えば四十八年がその典型でございますけれども、オイルショック直前、税収ではまだオイルショックの状況が出ていない時期でございますけれども、大変物価が上がりました。したがいまして、主として法人の在庫評価益が非常に大きく出てくる。不況の局面になりますと、それが全く逆の方向に出てくるわけでございまして、法人税収としてはむしろ前年度を絶対額が下回る。これは昭和五十年度に経験しているわけでございます。  一方、所得税につきましては、税制改正が行われません限りにおいては、累進税率の構造を持っておりますから、名目所得に対しましてかなり安定的な弾性値で税収は変動する。五十年代に入りましていろいろな景気の循環局面がございましたけれども、雇用者一人当たりの所得というのは、毎年順調と申しますか、法人の利益のように波を打ちませんで、一定の率でふえておりますので、その限りにおいて弾性値がプラスの方向で出てきておる。  間接税につきましては、従量税率の税目もございますので、傾向としては一を下回る。特に我が国の場合は個別消費税の体系になっておりますので、必ずしも国民所得の伸びと同じ方向で、つまり一の方向よりはむしろ下回る格好で従来動いてきておるということでございます。
  145. 矢追秀彦

    矢追委員 今かなり詳しく言われたのですけれども所得税、法人税あるいは間接税という単純な形だけなら今言われたようになると思いますが、我が国の場合、それ以外に租特とか、そういったことが非常にあるわけでありまして、そういった意味で、ただ単純に弾性値が今昔われたようなことだけではもういけないんじゃないか、もっといろいろな要素がもう少しあるんじゃないかと私は思うのです。一つ税制のあり方ですね。減税をやったときはどうなるか、増税をやったときはどうなっていたのか。それから、例えば直間比率が変われば、これも変わってくるわけです。今言われたように、間接税の比率がふえた場合は、やはり弾性値は下がらざるを得ない。しかし、何年かたって所得税が伸びてくれば、これはまたもとへ戻る、こういう傾向だと思います。何か方程式みたいなものが計数的にもう少しきちんと出てくるのではないかと思うのですが、その点いかがですか。
  146. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 弾性値の性格は先ほど来申し上げているとおりでございまして、むしろやはり十年なら十年の移動平均で現実の統計値として出てくる数字から何を読み取るかということでございまして、定理式のようなものをつくって弾性値を予測するということには必ずしもなじまない性格のものであると思います。  それから、ただいま委員がおっしゃいました問題といたしまして、税制改正が行われます場合に、当然税収に大きな影響が出てまいるわけでございますけれども、弾性値を分析いたします際は、その当該年度で税制改正が行われたものはむしろ除去いたしまして、自然増収ベース議論をしておる。実はここに非常に弾性値の意味があるわけでございます。  それからもう一つおっしゃいましたのは、弾性値の傾向を左右するものとして、そういう景気循環だけではなくて、税制上に内在するものが反映されているのではないか。それはそのとおりだと思います。ただ、我が国の場合、先ほど法人税の動きというのが非常にぶれておると申しましたけれども、いわゆるタックスエロージョン、課税ベースの浸食という形でいわば税の減免が行われている部分というのは、我が国の場合は法人税に関する限りそのウエートは非常に小さいわけでございまして、昭和四十年代は法人税収のほぼ一割近くまでが企業関係の租税特別措置の減収額でございましたけれども、現在は三%ぐらいの水準になってきております。したがいまして、影響なしとはいたしませんけれども、租税特別措置のタックスエロージョンが税収の弾性値に非常に大きな影を落としているというふうには、少なくとも法人税については言えないんじゃないかというふうに考えております。
  147. 矢追秀彦

    矢追委員 その次に、これは仮定の問題ですが、例えばこの前計画された一般消費税が仮に導入された、あるいはEC型の付加価値税が導入されて、結果として直間比率が少し上がってきた。同じ間接税でも、弾性値に影響を与える、伸びる方へ行くのとそうでないのとあるように私は思うのですが、その点はいかがですか。
  148. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 そういう新しい間接税を想定いたしまして税収動向を分析しておるということはございませんので、あくまで一般論としてお聞き願いたいと思うわけでございますが、消費一般に広く課税ベースを求める、しかもそれが従価税の比例税率であるというモデルを考えますと、恐らくその税体系から出てきます弾性値は一に限りなく近い、理論的には一で動くというふうに考えてもいいんじゃないかと思います。
  149. 矢追秀彦

    矢追委員 ということは、今言われたように、過去に出ておりますようないわゆる間接税における弾性値よりは高いというふうなことになろうかと思いますが、それも年度によって、今までの間接税でも、昭和五十四年は一・六八、酒税でも一・一八という高いのもありますし、また五十年でも一・〇二、酒税に至っては一・二三、こういうふうな高いものもあるわけですから、私は別にこれの導入を意図されて弾性値を上げることを考えておるというふうには、まだ仮定の問題ですから申し上げませんけれども、要するに先ほど来主税局長しばしば、これ以外に数字がないし、長い目で見れば一・一、したがってこれを「中期展望」の試算に使っておるんだ、こう言っておられますが、私はきのうからこんな計算をいろいろやってみたり、そういうデータを見るにつけ、弾性値という名前自身も何となく弾性値でないみたいで、一体弾性値とは何なのか。ただ、さっき言われた計算方法は決まっておるわけですけれども、何か言葉の上から出てくるニュアンスと実体とが、実際と予想とは余りにも違いがある。  そういうことから考えまして、弾性値そのものの定義、それからあり方、こういったものをもうちょっと、ここまでいろいろ数学も進んでおるのですし、特に所得税の公平性をはかる物差しとしてはジニ係数というような、これも非常に面倒くさい、方程式はそう難しくありませんが、計算は大変時間がかかる計算になりますジニ係数だってあるわけですから、弾性値というものにももうちょっとしっかりメスを入れていただきたい。どうもこれで計算しているといろいろ狂ってくるし、「中期展望」一つにしたってまた狂ってしまう。租税負担率にも影響が出て、この間私と大蔵大臣議論しているように、租税負担率の目標も出せない、そういうようなことにもなるんじゃないか、こう思いますが、大蔵大臣はこの弾性値をどう認識されておりますか。今までの局長との議論の中で、私の主張で間違っておるところがあったら指摘をしていただきたいし、もうちょっとこれは何とかならぬのかと思うのですけれども、いかがですか。
  150. 竹下登

    竹下国務大臣 おっしゃいますように、確かにいわゆる租税弾性値というのは短期的にはかなりのぶれを示しております。それをできるだけ安定して求めるとすれば、やはり平均値ということにならざるを得ないわけであります。中長期的な税収を推計するために、他の推計方法がないかなと思って私もいろいろな勉強をしていますが、他に適切な方法が見出せない。非常に消極的な理由になりますけれども、それがやはり基本にありますから、「中期展望」においても、今申しましたような弾性他を求めて税収推計を行ったということになるわけであります。一つには、推計の基礎となります経済諸指標についての動向が的確に見定められないということももとよりあるわけです。結局六ないし七%の中間値をとった六・五ということで、そしてまた数学の世界では、平均値というものはその数が多ければ多いほど出るということになりますので、十年というところかなと。  ところが、十年についても、本当はいろいろ疑問を感じますのは、四十八年からですと、ちょうど四十八年の暮れが第一次石油ショックでございますから、そういう世界経済の中で余り類例を見ないような第一次石油ショックが含まれ、そしてその後の第二次石油ショックが含まれ、また税収面においては、例えば五十六年、七年といったような世界同時不況のときが含まれております。それにしても、単年度よりはやや長期の方が、平均値といって参考にするならば妥当ではなかろうか。だから、他に立派な根拠となる数値というものがあれば、我々もいわゆる租税弾性値の平均値をいつも使うという方法以外の方法もあろうかと思いますが、なかなかこれは難しい問題であると率直に思います。
  151. 矢追秀彦

    矢追委員 何か重ねて聞くようですけれども、弾性というのはばねというような意味でしょう。物理でも弾性というのは出てきますよね。経済が成長したらどれくらいのばねをもって税収を押し上げるのかというようなところから始まったのかと思うのですけれども、そういうことからいくとどうも私もすっきりせぬわけでして、最初に申し上げた弾性値というものの意味というか定義というか、そういったところからもう一回掘り起こされて再検討される必要があるのではないかと思うのです。その点いかがですか。
  152. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 弾性値の考え方は、今委員がおっしゃったとおりだと思います。その基本的な考え方前提といたしましては、経済変動に応じて税収が動くという一つの想定、これは恐らく実態の想定としても正しいのだろうと思うわけでございます。恐らく委員がおっしゃるのは、そういう単純な十年間の平均じゃなくて、税目別にもう少し弾性値を分析してみて、それを合成して何か理論的なものが出てこないのかといったような御示唆かと思いますが、私どもも常にそういう問題意識は持っておりまして、いろいろやっておりますけれども、結局は、先ほど申しましたように、現在の極めてマクロ的な手法でございますけれども、十年間の移動平均で弾性値を出すということで、そう結果としては大きな狂いは出てこないのではないかということでございますが、せっかくの御指摘でもございますので、なお内部で引き続きいろいろな勉強はしてみたいと考えております。
  153. 矢追秀彦

    矢追委員 それでは、さきにちょっと触れた租税特別措置法について、この際ですからちょっとお伺いしておきたいと思います。  総理はしばしば、簡素、公平、公正、選択、こういう税制改正をしたいと言われておるわけでして、戦後簡単であった、シャウプ勧告によってできたのから見ますと、いわゆる租特というものが入ってきて、さっき弾性値の問題にも少し触れましたが、非常に日本独特の税制として出てきたわけでして、これが不公平税制の最たるものであるとしばしば指摘もされてきたわけでございます。     〔堀之内委員長代理退席、熊川委員長代理着席〕 かなり整理をされたり縮小されたりしておりますが、依然としてまた新しい時代の要請に応じてつくられている面もございますが、やはり租税特別措置法というもの、結局これもさっきの議論に関連しますように、税収にしても、国民総生産の伸び率との相関関係がなくなってくるのもこういったものにあるのじゃないか。先ほど主税局長が少しお認めになったわけでございますけれども、非常に複雑になっておる、だから税理士さんでも大変だと思うのですね。素人では全然わからない。こういうようなことになってきておるわけですが、この租特に対する先ほどの総理の基本的な方針からいって、これからどうされていくのか、これはいかがですか。
  154. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに御指摘になりますように、租税特別措置が日本税制の中ではたくさんございます。租税特別措置というのはいずれにしても政策税制でございますから、税体系の中だけから見ますと、その都度政策需要に基づいていわばゆがみを生じさせておるわけでございますから、これを絶えず見直していかなければいかぬことは事実であります。  総理が申しております公平、公正、簡素、選択というのも、今矢追さんの考え方と同じような考え方が基本的にそこにあると思っておりますが、特に総理が先般から申しております中に、先般のアメリカのリーガン財務長官の提案等は、フラット税制という感じはいたしますけれども、私も一つの流れかなと思いますのは、アメリカの法人税もかなりの租税特別措置がありました。それを実際実現されるかどうかわかりませんゆれども、少なくとも全廃するような形の法人税の体系でそれを大統領に申し出ておるわけでございますから、したがってやはり参考になる問題ではあるというふうに思っております。租税特別措置が多ければ多いほど、いわば弾性値そのものもフラットにいかない要因の一つであるというように私も思います。
  155. 矢追秀彦

    矢追委員 したがって、今言われたように、そういう弾性値がうまくいかない要因でもあるし、いろいろ複雑なんで整理をしなければならぬ。整理もされてきたわけですけれども、まだまだだめなわけでして、今後どういう方向政府はこれに対して方向づけをされようとしているのか。税制調査会の答申を見なければわからぬなんて言われると思いますが、方向性としてはやはり整理をしていく。ただ将来の景気、経済の動向といいますか、新しい問題についてはある程度は必要な面もあろうかと思いますけれども、その辺を含めて今後の方針はいかがですか、重ねてお伺いしたいと思います。
  156. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる租税特別措置の問題になりますと、毎年度の税調答申で必ず見直しということは指摘されております。したがって、今度の場合におきましても、どの問題から見直していくかという税調の審議をあらかじめ予測するわけにもまいりませんけれども国会等で出た議論等一つの中心になって検討、見直し作業が進められていくのではなかろうかというふうに私は思っております。
  157. 矢追秀彦

    矢追委員 そこで、これも大蔵大臣と前に議論した蒸し返しで恐縮でございますが、きょうは最終的に税の法案については終わりでございますから、今後の問題として確認という意味で幾つかお伺いをしておきたいのです。  この間は租税の負担率について議論をいたしまして、これもなかなか方向を出してもらえないのは非常に残念でございますけれども、私は、いずれは租税負担率のきちんとしたある程度の目安は出していただけると確信をしておるわけです。これは要望程度にとどめますが、これが一つ。  次に、直間比率の見直し、これもしばしば言われてきておりますが、これはもともと決めてかかるものではないことはもう大臣もよく御承知のとおりです。それでございますけれども、じゃどれぐらいまでになったら見直しをやっていくのか。現在はもう余り開き過ぎているのかどうか。先ほどの弾性値との絡みもございますし、いわゆる言われているところの大型間接税導入等の問題もございますから、間接をふやすことは即そうだと、私はそこまでは言いません、それはしないとおっしゃっているのですから。この直間比率というのは、結果論として今のような姿が望ましいのか、大体これぐらいで今後日本経済はいっていいものなのかどうなのか、やはり今の時代の流れというか方向としては、結果論として間接税がふえた方がいいのか、その辺はどういうお考えなのか。  ただ、それよりもまた別に、いわゆる所得税、法人税、もう一つの柱としての今の間接税では足りないから、もっと大きな、前に考えられた一般消費税という強力な三本柱で、景気の動向に関係なく税収が取れる、そういうことまで考えておられるのか。  その前に、直間比率の理想的な姿というのはどうなのか。結果論ですからなかなか言いにくいと思いますが、この辺ですね。その次は、今申し上げたそういう三本柱をあくまでもお考えになっておるのかどうか、これをまずお伺いしておきたいと思います。
  158. 竹下登

    竹下国務大臣 一つは、矢追さんとたびたび議論しております租税負担率、この問題は確かに七カ年計画のときには二十六カ二分の一というものがございました。ただ、あれはいわゆる一般消費税仮称)が導入されるという前提で積み上げたものでございます。したがって、今日定量的なものが出せない一つの要因としましては、これからいわば税の抜本改正の位置づけをやろうというわけですから、二十六カ二分の一といったような目標値がなかなか出せないということで御理解をいただきたいと思います。私も、あの七カ年計画のときの企画部会でございましたか、最後に出かけてみまして、あのときの私の素朴な感情としては、こういうものはあった方がいいなという感じがしたことは事実でございます。  それから次の直間、これは御意見にもございますように、結果として出るものでございますが、臨調でも直間比率という言葉を使っておられます。税調ではさすがに使っていらっしゃいませんが、結果であれ、そういうものがある種の不公平感の一つになっておるという議論をなさる人もございます。直接税に偏り過ぎておるということが、このいわゆる不公平感の一つの基礎になっておるという議論もございますが、これも結局今度やってもらいますのを見ますと、要するにこの戦後税制の中でゆがみが生じて、いわば所得、資産、消費、これらの段階でどのようにしてこのバランスをとっていくかということを含めて、まずこれから議論をしていただこうということでございますので、どれくらいがいいかということはなかなか難しい問題でありますが、いつの場合でも、いわば所得が平準化して、そして税の重みを感ずるようになった場合には、間接税論議が出てくる環境というのはそういうところにあるということは、財政再建手法として議論された、昭和五十二年から議論されておりますが、そのときもやはりそういう直接税の持つ所得の段階に着目をして担税力を求めるということに対する重圧感というものが、消費の段階に対するという議論の方へ移行していった一つの要因ではなかったかと私は思っております。結論はやはりこの所得、資産、消費、その段階にどのような形で議論がされていくかというのは、今後の税調の論議の進みぐあいによって明らかになってくる問題であろうというふうに考えております。  それから、御案内のとおり、どちらかといえば、間接税というのは従量税が多うございますと、負担率の問題は、従量税と従価税との議論もまたございますが、必ずしもこの所得税のような形にはいかないといういろんな問題をも含めて御議論をいただけるのではなかろうかというふうに思っております。
  159. 矢追秀彦

    矢追委員 最後に、もちろん、直間比率の見直しといいますか、これはしばしば言われてきていることで、今政府はどうしても大型間接税導入したいというのはもう前から非常に強い御意向でございますが、先ほど、直接税というのは不公平感が出てくることが多いという意味の発言をされました。今国民が願っているのはやはり不公平の是正だと思うのですね。この不公平感というのは、トーゴーサンとかクロヨンとかいろいろ言われておりますが、そういうところに非常に強いものがまず一つありますし、それから最近新聞紙上をにぎわしておりますいわゆる脱税、ちゃんとまじめに納めてくれればもうちょっと税収も伸びるのに、そういった点の脱税が横行している。そのためには、もうしばしばここでも議論されております税務署員をふやす問題もございますが、そういった不公平感をまずなくすこと、それから不公平税制と言われるものを是正する、そしてまず不正もちゃんとするということを含めて税収が上がってくるのかどうか。税収が上がってくれば今度は減税ということも考えられますし、そう大きな増税をしなくてもいいわけですから、やはり直接税の中のまず不公平税制というものを、あるいはまた不公平な状況というものをなくさなければいかぬわけでして、それは今まで言われている割にはなかなかされていないわけですね。まずこれは本気になって取り組んでいただきたい。これが第一点。  それから第二番目に、税収を上げるための努力一つとしての税務職員の問題、これは先ほど来も出ておりましたからわかった答弁でございますが、そういった努力をした上で、なおかつまだ重税感がある、だから間接の方をもう少し、直接税の方はもう少し減らす、こうなればいいのですけれども、やはり最初段階努力をもう少しやっていただきたいと私は思うのですが、その点お伺いして終わりたいと思います。
  160. 竹下登

    竹下国務大臣 財政再建考え方の中にも、まずは歳出削減、そしてその次は何としても公正な感覚を持つような税の仕組みであらなければならぬ、そしてさらにそれがためにはいわば徴税体制というものを、税務職員の方の増員等も含めて、また研修等も含めてこれに対応していかなければいかぬという御趣旨は、私どもも拳々服膺しなければならぬ考え方だと思います。
  161. 矢追秀彦

    矢追委員 以上で終わります。
  162. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 武藤山治君。
  163. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大蔵大臣に心境や方針、今後の決意などを冒頭にちょっとお尋ねをしたいと思います。  竹下大蔵大臣は、既に大蔵大臣を三十九カ月経験をいたしているベテランであります。予算編成を三回担当いたした大蔵大臣でもあります。私は、水田大蔵大臣以降、随分多くの大蔵大臣意見の交換をしてまいったのでありますが、それぞれの大臣には大臣の思想があり、手法があり、大変特徴を持った大蔵大臣もおりました。  そこで、竹下大蔵大臣の蔵相としての経験から、今大蔵大臣として一番困難だな、しかもやらねばならぬという最大の、至難であり、課題とも言うべき問題は何と何と何だと心得ておるのか、大蔵大臣として見て、この点だけは難儀だがやらねばならぬし、また私の力ではどうにもならぬ、困難だなと思うような課題を幾つか挙げてみてください。
  164. 竹下登

    竹下国務大臣 私は、やはり今の私に当面課せられておる問題は、いわゆる財政改革というものを軌道に乗っけ、そして国民理解と協力を得る環境をつくり上げることではなかろうかというふうに大局的には考えております。  さらに、具体例を挙げろとおっしゃいますならば、やはり歳入歳出、そして念頭に絶えずありますのは、その構造の中にいわゆる後世へのツケ回しが余りにも多いという問題と、そして今年度予算に見られるごとく、社会保障の予算を利払い費が既に超してしまった。言ってみれば、予算というものは富の再配分機能の一つとして存在するものが、富の行方がそういう再配分という行方でないところに、利払いという形で行っておる、これを何とか直したいな、こういうことで精いっぱいであります。
  165. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 財政学の基本では、予算編成の基本的理念は出るを図って入るを制する、家計の場合は入るを図って出るを制する、逆であります。ということは、「増税なき財政再建」という言葉は財政原則には沿った理念でありますが、出るをできるだけ図って、金を取る方はできるだけ制限をするというこの原則でいく場合に、一体今の歳入状況でそういうことが可能なのか。不可能を可能にするのが政治だとするならば、来年度は一兆五千億から二兆円くらいの歳出の削減をしなければこの理念は貫徹できない。もし「増税なき財政再建」で予算編成をするとしたら、来年度一兆五千億程度何とかカットせねばならぬと思うのでありますが、そういう手法が通用する環境であるのか。そういう見通しについては、大蔵大臣はどんな感触でございましょうか。
  166. 竹下登

    竹下国務大臣 今日、現行税制、現行の施策そのままを前提にした場合、今武藤さんがおっしゃるように、一兆数千億というものを歳出の削減によって行わない限り、いわば私どもの計画は成り立たないということになるわけであります。が、それが可能かどうか、こう言われた場合、私は一つ考え方としては三年——私は、厳密に言うと五十五年予算がございますから、予算案を四回組ましていただいて、特に五十八年、五十九年、六十年は一般歳出を前年度以下ということでやってまいりまして、毎年とてもやれぬなと思いながらその次またやれた、そしてまたやれた、こういうことからいたしますとやれないことはないな、こういう思いがいたしますものの、容易なことではないという事実認識は十分ございます。
  167. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 やれないことはないなという感じも少し持っている、そういう感じから、実は間接税の増徴問題は六十二年度あたりから——六十一年度はそこまで慌ててやらなくとも、何とか予算編成の方法はある、こう考えて、実は新聞報道に言われるような、六十二年度あたりにあるいはEC型付加価値税あるいは何らかの非常に範囲の広い新しい税目をという考えなのか、それとも主税局長がしゃべっていることがよく新聞報道されておりますが、国民の合意を得る準備期間がことし六カ月間ぐらいでは不可能だと考えての発言なのか、どちらにウエートがあるんでしょうか。
  168. 竹下登

    竹下国務大臣 いずれにいたしましても、課税ベースの広い間接税をいわゆる安定的歳入源として検討しろということは、五十五年以来ずっと引き続き税制調査会等でも指摘されておるところでございます。その不断の勉強をしていかなければいかぬわけでございますが、私は、お亡くなりになりました大平総理が言われた言葉で非常に印象に残っておりますのは、財政家として取り返しのつかないことをしたという表現をなさいました。それは恐らく五十年度予算を組まれましたときに、赤字公債を発行したときの大平大蔵大臣であったという意味のことであるというように承りました。表現力はアーウーが多いから、なかなか私も正確につかめませんでしたけれども、しかしながら、日本人は賢明だから必ず理解してもらえる時期があるはずだという趣旨のことを言われたのが一般消費税じゃなかったかな、こんな感じが率直にしておりました。これは五十四年、大蔵大臣になった当初、そういう会話を繰り返したことがございます。したがって、そのとき痛感されておったのは、いかなる施策といえども国民理解と協力なくしては実行に移せるものではないということを政治家として重く感じて、そういう表現のお話をなすったと思うわけであります。  したがって、いろいろなことを考えてみましても、国民理解と協力を得ながら物事を進める場合は、私は、これはいささか話が長くなりますが、まず竹下財政はかくあるというものがあるのは危険な思想じゃないか。むしろ国会等でいろいろな資料を提示しながら問答を繰り返す中に、国民のコンセンサスが那辺にあるかを見定めていくということの方が——日本人は知識水準がどこの国よりも高いわけでございますから、いわゆる財政民主主義というものもそんなものじゃないかという気がいたしておりますので、極めて冷静に我慢強く、個性を出さないように、ときには意味不明と言われるような答弁を繰り返しておる自分ではないかな、こういう自己反省をいつでもいたしておるわけであります。したがって、竹下財政とかいう言葉が仮にできたとすれば、後世の史家が論評してくれればもって瞑すべきものではないかな、そう思いますだけに、今武藤さんの財政通としての理論の中にだんだん引き込まれて、まず税制調査会へ諮る根底に大型間接税導入ありき、さればその時期はいつか、こういうペースに引き込まれた議論もまた避けなければならぬな、こう思っておるわけであります。
  169. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 竹下先輩の意向は、百家争鳴、万機公論に決せよ、大変古い言葉思い出すような今のお答えで、それも一つ民主主義政治のあり方としてさもあろうと思います。きょうはそういう論争をする場所ではありませんので、本委員会に付託されておりまする具体的な法人税、所得税あるいは租税特別措置法改正、これらの点について、大変細かいお話になって恐縮でありますが、三、四点論争してみたいと思うのであります。  特に今回の改正の中でグリーンカード制を廃止するという措置でありますが、せっかく竹下大蔵大臣のときに万機分論に決してできたグリーンカード制を、今度は同じ大臣の任期中に廃止をするとは一体どういう理由なのか、その積極的な廃止の理由をまず承りたいと思います。
  170. 竹下登

    竹下国務大臣 今の御質問について、私は政治家として一番悩み多い問題でございます。確かに今御指摘なさいましたように、五十五年度の国会におきまして、日本共産党を除く各党賛成していただいてグリーンカード制というものが国会を通過をいたしました。その後、これを延期するための政令も、今度はたまたま二年間間を置いて私大蔵大臣になりましたので、その政令も出し、その次は今度は延期する法律を出し、そして今度はぽしゃらす。ぽしゃらすという言葉は適当でありません、廃止するための法律を御審議いただいておるわけでありますから、本当に、寝覚めがいいとは決して思っておりません。これはある意味においては国会がその間切れておりますからというエクスキューズはあるかもしれませんが、不信任を出される課題ではないかというぐらいな自覚は持っております。  そこで、前置きはさておきまして、このグリーンカード制度問題というのは、課税貯蓄とそして非課税貯蓄の双方を通じます課税の適正化を確保するための有効な方策として導入された制度でありますが、それが、これまた制度ができた後に、いわば意図せざるいろいろな議論がなされて国民理解を得ることができなかったので、延期するのやむなきに至ったということが一つあろうかと思うのであります。  そこで、その後いろいろな議論をしていただきまして、税調でも特別部会等を設けていただいて長い間議論をしていただきまして、「その後今日に至るまでの経緯に照らしてみると、この制度について各層の理解と受入れ体制が十分に整っているとは必ずしも言い難い。また、法的安定性や税制に対する国民の信頼感を確保する見地からすれば、本制度の実施を再び延期することは適当でないと判断せざるを得ない。」という答申を六十年度答申としてちょうだいしたわけであります。したがって、私どもとしては、今回グリーンカード制度を一たん廃止することとしたものでありますが、この点について、答申でさらに「廃止するという措置を講ずることは、やむを得ない」となされておるところでありますので、そのように御理解をいただくしかないなという感じでございます。
  171. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大臣国民の合意を得られなかったことが大きな理由のように挙げておりますが、国会で大多数の政治家で決めた法律は、国民の合意を得たからできたのであって、間接的な民主主義なのですから、これは合意はできたのですね。合意ができたものを、途中で、この合意は気に食わぬというがむしゃらな反対運動が起こって、多数派与党の中で署名活動が起こって、そういう圧力にまた金融機関が便乗してあらゆる方面に反対運動をやった。零細貯蓄者や国民の大多数は、ああいうものによってきちっと管理されることはやむを得ない、当然だ、当時大半の庶民大衆はそう思っていたと思うのですね。だから、これは大蔵省がごり押しに負けたのじゃないでしょうか。それで、負けたのをかぶとを脱ぐのがなかなか難しいものだから、税調べかけて体裁のいい言葉で何とか今回廃止だという理屈を並べているので、率直なところはそういう大きな圧力に屈服した、これが私は素直な理解のような気がしますが、その辺はどうなのでしょうか。これは主税局長大蔵大臣、どちらが答えたらいいのか。やはり大蔵大臣でしょうね。
  172. 竹下登

    竹下国務大臣 私から最初にお答えすべきだと思っております。  武藤さんおっしゃったとおり、国会で可決したのでございまして、国民の代表の多数のお方で合意されたわけでございますから、その限りにおいて国民の合意はあったと私は思います。が、結局、私も言葉を選んでおりますが、その実施の段階について理解を得られなかった、合意を得られないのじゃなくして理解を得ることができなかったということを言わざるを得ない。実際あの当時を思いますと、ゼロクーポンなんというものにシフトするとか、あるいは、金が売れるくらいならわかりますが、そのうち出てきた議論の中では、何かたんす貯金がふえて金庫が売れるようになったとか、いろいろな議論がございましたが、そういう議論がかまびすしくなされたということそのものは、結局理解を得るに至らなかったというふうに判断せざるを得ないのかな、こう考えます。
  173. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 国家を経営する最高指導者の一人である大蔵大臣、社長は総理大臣で、経理会計を担当する専務取締役が大蔵大臣だと思うのですが、その大蔵大臣が決めた決意を民意によって賛成して決めたそのグリーンカードが、今度は廃止になるということでは、国民は朝令暮改、信用しなくなる。法律というものを軽く見る。そういう感覚を国民に与えてまことに、好ましくない。  しかし、そうは言っても、政治というのは尾高朝雄先生の論によれば、「法の究極にあるものは政治である。政治は法律をつくる力であり、法律を破る力である。法律を廃止する力を持っているのが政治である。」尾高朝雄さんの「法の究極」の中に書いてあります。ですから、議会民主主義である限り、多数派で法律を廃止したりつくったりできる力を持っていることは否定しません。しかし、その多数で法律をつくったり破ったりすることは、常に理の通る、納得のいく合理性がなければいかぬと思うのであります。そういうものがなくて、いろいろな圧力団体や資金力の強い者や選挙に集票活動で協力する集団、そういう特定なところの大きな力に右顧左べんして、法を廃止する力を軽々に行使するという政治は、私は正しい政治だとは思わない。こういう政治の姿勢でこういう力の行使というものが頻繁に行われたときに、法秩序は一体どうなるのか、法制定に対する国民の冷厳な信頼性は一体どうなるのだろうか、そういう点の心配をするのであります。  その点について、やがて国家経営の最高責任者を目指す竹下大蔵大臣として、今回の措置に反省の心があるのかないのか、今後こういうことが起こらぬようにするのが政治家としての大きな務めだと感じないのかどうか、心境のほどを聞きたい。
  174. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる一般消費税仮称)という問題につきましては、これが法制定される事前に、国会決議で、財政再建手法としてとるべきものではないというふうになったわけです。したがって、そのことを考えてみますと、一方、このグリーンカード制は、一度は成立したわけですから、そして五年間のうちに延期されながら、今度はこれが廃止されるということでございますから、それなりの反省はもとよりあってしかるべきだ。だから、こういう反省からして、税制改正に当たっても時間をかけて国民意見を聞きながら、コンセンサスが那辺にあるかを見定めてやらないことには、このような失敗をすることになるではないか。もとより「過ちを改むるにはばかることなかれ」という言葉がございますけれども、国権の最高機関賛成、それも絶対多数をもって議了されたものの措置ということに対する反省が、ある意味において、私が国会で問答しながら意見を聞く姿勢を貫いておる一つの要因でもなかろうかという自己反省をいたしております。
  175. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 次に、グリーンカード制を廃止した後、利子・配当問題の取り扱いをどうしようか、今回は限度管理の徹底化を図るという措置で法案を一応出したわけでありますが、この管理を徹底するということは恒久化していくのか。それとも、税調の中にあるような、低い一定率の税金を全部の預金利子にかけるという低率課税の発想が一方にあります。あるいはまた、利子・配当はやはり総合課税化しなければいかぬのだ、こういう発想もあります。今回とる措置の、限度管理を強化するという考え方は、この法律は恒久法として、今後これでずっとよろしいという発想になるのか、その辺をひとつきちっと御説明いただきたい。     〔熊川委員長代理退席、中川(秀)委員長代理着席
  176. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 利子・配当課税の問題につきましては、税制調査会でさまざまな意見がございまして、その一端が答申にもあらわれておることは、ただいま委員御指摘になりましたとおりでございます。  そこで、現在御提案申し上げておりますものは、現在の郵便貯金を含めました非課税貯蓄の利用の実態、現状を放置することはできない、現状を少しでも改善するという格好で、ただいま御提案申し上げておるわけでございますが、たまたま税制全般についていろいろな議論が起こってまいりまして、我が国の税体系の中心を占めております所得税制につきましても基本的な見直しを行うという方向で、議論が近い将来行われることは当然予想されるわけでございます。そういたしますと、利子・配当課税はやはり所得税制の中の非常に重要な部分を占めている問題でございますので、必然的に今後の利子・配当課税のあり方について、所得税全般の見直しの中で再度議論が行われる、検討が行われるということを私どもは予測をしておるわけでございます。  ただ、現在御提案申し上げておるものは、いわゆる時限立法として御審議を願っておるわけじゃございませんで、少なくとも近い将来、また新たな観点からの議論なり結論が出るにいたしましても、とにかく現状を少しでも改善するという観点から、ただいまこの法案を御提案申し上げておるというふうに御理解願いたいと思います。
  177. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 低率一律税率課税、あるいは総合課税化のために、また特別な何らかの方法、そういうものも検討の余地はある、しかし今回の措置は暫定的ではない、かなりの期間これでいくという意味も表明されました。現在のこういう方法で本当にフェアに、公正に限度管理が行われると考えるのか。グリーンカードを廃止するために何かほかのものを、代案を出さないとまずいということで、こういうつけ焼き刃的な発想で今回の法律が出たんじゃないのか、私はそんな感じがしてならない。こういう限度管理をきちっとやって、郵便局も銀行もフェアに、本当に公正に預金集めができるという状態になるのか。大体、大蔵省はその辺はどのように感じていらっしゃるのでしょうか。
  178. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 先ほども申し上げましたように、ただいま御提案申し上げておりますのは、現在よりも本人確認を厳正に行う、入り口においてまず厳正に行う。それからもう一つは、長年議論になってまいりました民間のマル優と郵便貯金の取り扱いを少しでも等しくするというふうな観点から、郵便貯金につきましても本人確認を厳正にするとともに、出口のところで、従来でございますと、限度をオーバーした分につきましても、貯金をする人の故意、重過失という主観的要件が課税要件の一つになっておりましたけれども、今回はそういった主観的要件は外しまして、限度を超えた場合には即課税利子とする。また、本人確認ができないものも当然、郵貯といえども課税扱いとする。同時に、そういう課税利子を郵政官署において支払われた場合には、それを税務官署に通知をしていただくということで課税の適正化を期する。入り口、出口のところで、現状よりもこの限度管理を厳正に行うということで御提案申し上げているわけでございまして、私どもとしては、現状よりも一歩、二歩事態が改善されることをこいねがっておるわけでございます。  ただ、しからば、この制度の改正によって、完全な意味での限度管理というのが、法が適用されます六十一年一月一日以降直ちに実現するかということになりますと、私どもは、率直にいいましていろいろ問題があると考えております。それは、一つは、制度の問題というよりも、むしろ限度管理の技術のシステムを一体どういうふうに考えるのか。この点につきましては、六十年度予算において措置をされておりまして、郵政省、国税庁におきまして、しばらく時間をかけてこの技術面の勉強をする。そういった技術システムが仮に何らかの格好で実ってまいるとすれば、限度管理の実も伴うであろう。したがいまして、この限度管理の技術システムの研究開発の状況を、私ども税制当局としては、しばらく時間をかけて見ていかなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  179. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 今、利子非課税貯蓄が約六億口座あるわけですね。そうすると、人口一億二千万、人口の五倍。ということは、三百万限度だけれども、平均すると大体五十万ぐらいの貯金通帳ということですか。六億枚の貯金通帳があることになるのですが、実際にそんなあれでしょうかね。マル優は五十万程度の小口ばかりというわけじゃないでしょうね。これは実際にはかなりダブって、一人で河口もマル優を持っている、あるいは非課税貯金を持っているという数字に見受けられるのですが、当局としては、この数字はどう見ていますか。郵便局が三億七千四百四万、金融機関二億二千五百七十一万件でしょう。合わせると約六億あるんですよ。それ以外にまだ別な扱いの、証券会社の少額公債、財形貯蓄がありますけれども、郵便局と普通金融機関だけを合わせても六億あるんだ。そうすると、これはそれぞれが一億二千万、一億二千万、二億四千万口ぐらいにおさまるべきが正しい管理になるのですが、まあ五十万、四十万というのもあるから、このぐらいはしょうがないのかなと当局は見ているのか、かなりダブりがあると見ているのか。大ざっぱに、その辺はどのような認識をしているのか。
  180. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいまおっしゃいましたように、民間のマル優と郵便貯金を含めまして、口座枚数合計でおよそ六億口座枚に近い利用件数になっておるわけでございます。  ただ、このうち郵便貯金につきましては、この三億七千万というのは口座数ではございませんで、口座の数であると同時に、郵便貯金の場合は定額貯金証書一枚一枚を合わせた数字でございますので、必ずしも口座という観念でこの郵便貯金の三億七千万を考えるということには問題がございますので、その点はお断りしておかなければならないと思います。  ただ、マル優の場合でございますと、この二億二千万口座の一件当たりの金額が五十九万四千円でございます。それから郵便貯金の場合は、口座枚数当たり一口で申しますと二十三万一千円という数字でございまして、これは貯蓄の残高でございます。したがいまして、これで見る限り、マクロ的に非常におかしいということは必ずしも言えないかとは存じますけれども、今おっしゃいましたこの利用件数なり枚数から見ますると、大変おびただしい数字でございますので、この辺については、やはり何がしかの問題なしとしないというふうに私どもは考えております。
  181. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 今回の改正で、来年一月一日から貯金をする人は本人確認をきちっとする、ことし貯金をする人は構わないことですね。そうすると、本年じゅうに駆け込みで定額貯金を郵便局にする人は、十年後でなければ本人確認がないのですね。税金の脱税時効が七年。十年後ならちょうど脱税した資金などは全部時効になってしまうのですね。銀行は三年定期だから三年後ということになりますと、脱税資金は定額貯金の方にシフトしていく可能性があるのじゃないか。どこまでも公正、公平、フェアに金融機関の競争をするという立場からいけば、十年と三年は余りにも不公正ではないのか、イコールフッティングじゃないのじゃないかと私は感じる。大蔵大臣、どう感じますか。
  182. 竹下登

    竹下国務大臣 いわば十年後でなければチェックされないということでありますが、今度私どもといたしましては、民間マル優、特別マル優、郵便貯金ともに、おっしゃるように一月一日以降、最初の預入時に洗いかえることを原則としておりますが、そういういわば今次の税制改正の趣旨にかんがみた場合に、既往分についても、それ以降、従前に出された少額貯蓄及び少額公債に係る申告書に基づく最初の預入の際、所定の本人確認とか、新たな申告書の提出を行うということになっているわけであります。  私が概念的に感じますのは、一方はイコールフッティングに二つの面があると思います。一つは、そういう十年後でなければチェックされないという問題、一方は三年定期制度でございますから、洗いかえも十対三になる。そして一方は、いわば商品自体の問題のイコールフッティング、両面のイコールフッティングというのがあるのではないか。したがいまして、これらの点については、そういう趣旨を踏まえながら、私は検討させていただかなければならぬ問題であるという問題意識は持たせていただいております。
  183. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 きょうは銀行局長お見えになっていますね、吉田さん。  大蔵省は銀行行政も監督をしているわけでありまして、郵便局の問題は大蔵省じゃないから除きます。いずれにしても郵便局は十年後本人確認、普通の金融機関は、労働金庫も含め、大体短期の三年預金ということで、この差から、やはりこの九カ月でかなりシフトするのじゃないか、郵便局の方へだあっと定額貯金が行くのじゃないか。そういうことについて、一体銀行局当局としては、いや、それほど心配するほどじゃない、大したことはないからこのままでいいと考えているのか、やはり金融機関側にももうちょっとサイトを長くしてやらぬと公正でないなと感じているのか。  これは銀行行政としてなかなか難しい問題があることは私も承知しています。日本の金融行政というものは、長短金融分離の方針が長く続いてきていますから、貸し出しも普通銀行は短く、あるいは信託銀行は長く、いろいろそういう垣根があるのは承知していますが、今や金融自由化の問題で、国際的なあらしの中でどんどん金融は自由化されていく時代ですから、そういう商品をつくってもいいのか、郵便局に大体匹敵するような商品の開発を銀行行政として認めていくのか、それとも何か便法で、じゃ三年を六年ぐらいまでに持っていってやろう、片方十年なら六年後に本人確認ということで、できるだけ郵便局と近づけてやろうという配慮があるのかないのか。あるけれども、どういうことが障害でできないのか。銀行局がやろうと思えば、私はできるのじゃないかと思うのですが、その辺はいかがなのでしょうか。
  184. 吉田正輝

    吉田(正)政府委員 最初に御指摘になりました、今度の制度によります資金のシフトの問題でございますけれども、これは郵便貯金もございます。それから民間金融機関もございます。中小の中もある。源泉分離課税もいろいろございます。というようなことでございますから、その間の中で資金がどのようにシフトするかについては、私どもとしてはあらかじめ予測することは不可能だと存じております。したがいまして、それは今後の推移も見守りながら、あるいは金融秩序に激変が生じないように、主税当局とも御相談していくという課題でございますが、いずれにしても予断は不可能でございますので、成り行きを見守りたい、かように考えているわけでございます。  それから、ただいまお話がございましたような自由化の流れの中で、例えばこの税制改正に当たって、それにも適応できるような新たなる商品を考えたらよいのではないかという御指摘かと存じますけれども、まず、先ほど申しましたように、どのようなシフトが生じるかどうか、どちらがどちら側に生ずるかどうかについては、私どもまだ現実の問題としてははっきり予測することは不可能だと思っております。そこで、仮に郵貯と同じような商品をつくるかということになりますと、郵貯と同じ商品といいますと、例えば期間を長くするとか、あるいは定額複利方式にするとかというようなことでございましょう。そこで、定額郵貯のようなものを導入するかということでございますけれども、私ども基本的には、先ほども先生御指摘のとおり、大臣もたびたび申しましたとおり、自由化は必然の流れでございますので、新しい自由化商品については前向きに、民間の創意などもございましたら受けとめてまいりたいというようには考えております。  しかし、この定額郵貯を導入するにつきましては、税制上のイコールフッティングだけではなくて、長短分離や金融機関の経営に与える影響など検討すべき要素があるわけでございます。御承知のとおり、戦後長短分離制度ということで、普通銀行と長期信用銀行の資金調達手段も長短に分かれているわけでございます。三年物もありますが、長期の銀行につきましては金融債が最長五年、信託銀行が最長五年というような形になっておるわけでございます。この長短制度自体について申し上げますと、やはり時代の流れに沿いながら、しかし金融制度でございますから、慣行も尊重しつつ、漸進的に対応していきながら考えていくべき問題があるわけでございます。  それからもう一つは、定額郵貯のような長期にわたり預入時の金利体系が保証されるという商品を民間金融機関が扱う場合には、そういう経営にどういう影響が生ずるかということを検討する必要があるわけでございます。それから、この定額郵貯自体につきましても、臨調の最終答申では、「官民のバランス維持及び事業の健全性確保の観点から、その見直しを行う」必要があるということで、問題点が提起されているような状況でございます。全体といたしましては、なお慎重に留意すべき点あるいは検討すべき点、配意すべき点があるというふうに考えておるわけでございます。
  185. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 その配慮し、検討する必要がある、それはこの九カ月間に間に合わなければ、この不公正さは解消しないのですが、この九カ月間は現状のまま。そうすると郵便局は十年、銀行は三年、こういうことになってしまうのですか。それとも間に合うように早急に検討して、三年後の本人確認を六年ぐらいまで持っていってやろうと考えるのか、それはどうなのですか。九カ月しかない。リミットが決まっているのですよ。
  186. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 今回の制度を御提案申し上げるときに、今委員がまさしく問題にされております既往分を一体どうするかということを私ども内部で検討したわけでございます。  考え方といたしましては、一定時点で全部洗いかえるというやり方が、ある意味では非常に正確なやり方だろうと思います。しかし一方、貯蓄者の立場に立ちますと、ある一定の時点で一斉に洗いかえをされるということは、結局、金融機関の方から貯蓄者を呼び出していろいろなことをやらなければならぬということになった場合に、逆の意味の混乱が起こるだろう。そういった点を考えまして、貯蓄者が昔の、つまり六十一年一月一日以前に設定された申告書なり、郵貯の場合でございますと通帳で、新たに店に来られて預金をされるときにチェックをさせていただこう、これが非常に無理がないやり方である。同時に、民間のマル優等でございますと、自動振替とか自動継続のようなものも一定の猶予期間を置いてこれを認める、洗いかえをしないというふうな措置も金融界とも話し合いまして、それから郵政省とも個別に議論をいたしまして、一定の経過期間を設けるということで今細目の詰めをいたしておるわけでございますが、その場合に、定額貯金は十年でございますから、おっしゃるような民間のマル優と商品が違いますので、取り扱いに若干の差異が出てくるということは仰せのとおりだと思います。  ただ、私ども、今回の作業を進める過程におきまして、金融界の一般的な観測といたしましても、グリーンカードの当時のような大きな動揺とか混乱は恐らく起こるまいという一般的な観測であると受けとめておりまして、また、そういう混乱は起こらないということを私どもは確信をいたしておるわけでございますけれども、万一不幸にしてそういう事態が起こるとすれば、これは改めて税制上きちんとした手当てはしなければならない、しかし、恐らくそういう事態にはならないのではないかというふうに私どもは確信をしておるわけでございます。
  187. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 次に、最近の税収状況を見ますと、直間の差ばかりではなくて、直直の中でも大変な開きが出てきている。例えば、所得税と法人税の状況をずっと過去十年ばかりを見てみましても、かつては所得税と法人税というのは大体同額ぐらいの金額でざっと推移をしていたのです。昭和五十三年度は所得税が七兆七千、法人税七兆二千六百二十、五十四年から今度は所得税が八兆三千、法人税は六兆五千、その後ずっと所得税がぐっと大きくなってきて、五十七年では所得税が十四兆九千に対して法人税が十一兆九千。ここで逆転をしたことがあるのです。これは法人税の増税をしている。それ以外のところを見ていくと、前と同じような金額で推移してきたのが、どうも法人税の方が軽くなってきた。五十七年では所得税が十四兆九千、法人税十一兆九千になってしまっているのです。三兆円開きが出てきてしまっておる。その前の五十六年は二兆六千億円の開きです。実額で見るのは正確な議論ではありませんけれども、前は大体所得税と法人税は同額ぐらいの徴収だったのです。それがどうも所得税ばかりどんどんふえてしまって、法人税の方がかなり低くなってきている。これは景気が悪いからと一口に言えばそれまでですが、法人税制の仕組みそのものを、この辺で少しきちっと洗い直して検討する必要がある、こう私は感じるのです。  どうも直間比率の問題ばかり議論をして、同じ直接税の中における手入れがおろそかになっているような感じがしてならない。法人税で、特に大企業と中小企業の間の格差、四三・三%という一律税率の是非、そういうような問題をきちっともう一回洗い直す。あるいは、受取配当の益金不算入制度、配当軽課措置。とにかく八百五十万ですか八百八十万ですか、今中小企業低率税率は。一千万の所得があると中小企業は四三・三、トヨタ自動車のように四千五百億も利益が出ても四三・三。金融機関は押しなべて五、六百億の利益を出している、これも四三・三。中小企業の九百万、一千万も四三・三というのは、どうも国民感情から見てもちょっといかがなものか。こういう点は直さなければいかぬ。恐らく主税局は、いや、法人擬制説をとる限りそれはいいんだ、実在説じゃないからそうなるのだという弁明をすると思うのだけれども、今財政がこういう事態のときに、みんな頭を抱えているときに、こういうような格差が広がっていくような税制の仕組みというのは、やはり速やかに検討し、改善をする必要があると思うのですが、その辺については大蔵大臣はどう感じますか。
  188. 竹下登

    竹下国務大臣 今武藤さんがおっしゃった法人擬制説というものを基本的にとる限りにおいては、税制は法人に対して中立であるべきであるという論理がやはり正しくて、したがって、たび重なる御意見に対していつでも出てくる税制調査会の答申というものは、法人税における累進税率は適当でない、こういう答申になって出てくるわけであります。したがって、かってやりました臨時利得税であるとか、そうした性格のものは別でございますが、やはり私は税制の上では法人税率のいわゆる累進税率をとるということは、これは税制上くみすることはできないではないかというふうに考えております。
  189. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大蔵大臣、ほかの国では、アメリカなんかだって法人税は段階税率になっているのですよ。日本は大資本に有利なために、法人擬制説だけが唯一絶対だという前提に立っているのですよ。これはやはりいけないと思うのです。例えば中央大学の富岡幸雄先生の書いた論文を見ても、イギリスなんかでも、年間の利潤に応じて三〇あるいは三五、八五年度は三〇、四〇、そういうように大きいところは税率を上げているのです。それからアメリカ連邦所得税における法人所得税率だって、一九八三年一五%が一番下で二万五千ドル以下、五万ドルから二万五千は一八、さらに三〇、四〇、四六、こういうようになっているのですね。日本は四三・三の税率一本で、法人擬制説でこれは動かしができないのだ、こういう発想自体では財政再建なんかできないと思うのですよ。結局取りやすいところから税金を取れという一般消費税論に行ってしまうんですね。  一般消費税に行く場合は、その前になすべきことがたくさんあるのじゃないか。これは法人税ばかりじゃない。宗教法人に対する課税の問題、あるいは医師課税、あるいは今の事業所得の無申告。七百万軒もある事業で申告は二百万しかしてない。五百万の事業は申告してない。あるいはまた、百七十五万の企業のうち半分が赤字決算だ。しかし税務署は職員が足りなくて、その赤字会社全部を調査する力がない。そういうような状態のもろもろの問題をきれいに一回この辺で洗い直す。もうこれ以上どうにも改善するところはありません、だから国民の皆さんEC型をというんならわかる。こういう不公平、格差、不平等というものをそのまま放置しておいて、次の新しいものへと言ったって、なかなか万機分論に決せよと言っても決しられない。  こういう点を大蔵主税当局はもっと勇気を持って——今政治や行政に求められている最大のものは何かといえば勇気ですよ。勇気と決断がない限り、ずるずるとこの財政再建は先へ延び、そしてとどのつまりは世界インフレーションでも待つ以外に解決策はない。昔なら戦争によってごちゃごちゃにして処理ができたかもしれない。今こういう問題を処理できる方法は、やはり戦争を避け、インフレを避け、新しい発明、発見に求めて産業の活性化を図るという一点しかない。財政論からいうなら、財政の中のあらゆる従来の慣行、惰性というものを断ち切る。そして新しい発想に立った租税制度、言うなれば租税哲学を貫徹できるそういう勇気、これが今大蔵当局に求められているのだと思うのです。よほど勇気のある主税局長、その主税局長を支える大蔵大臣が出ない限り、国民は納得せぬと思う。今そういう状況にあるのじゃないのかなと私は感じるのです。ですから、余り過去の因襲にとらわれない、前向きの勇気ある決断を求めたいのです。  今新聞を見ると、やれ宗教法人の調査をしたら何十%が脱税だ、弁護士先生も九十何%脱税だ。新聞見たらサラリーマンは嫌になっちゃうよ。一銭も税金ごまかせない、所得一〇〇%洗いざらい取られる人から見れば、税務当局一体何しているんだという怨嗟の非難ですよ。そして個人事業者とサラリーマンを比較したら、さらにこれもひどい。大法人と中小企業を比較したら、大企業では内部留保はどんどんふえちゃって、もう銀行をやっているような企業だってあるわけだ。銀行へ金を貸す、そういう企業も続出をしている。片方は生きるための糧の賃金、片方は企業競争における内部留保を大きくしていくという、同じ所得でも使い道が違うんだな。そういう点をもっと、税制の抜本的改革ということに前向きに取り組む気持ちはないのかどうか。  今時間がないから、幾つかの問題をだだっと項目を挙げてみたけれども、本気でそういうものを解決をしようとするのかしないのか。大蔵大臣、どうですか。まだ一年ぐらい大蔵大臣をおやりになるのだと思うので、ひとつこの辺をきちっとしてから総理大臣になってもらいたいものだと思うのでありますが、どうですか。
  190. 竹下登

    竹下国務大臣 今のような意見をそれこそ正確に我々も分析し、税調等で議論をいただくところの糧にしなければならぬ、基本的にはそう思っております。しかし、それによっていわば答申を受けたものに対しては、あるいは抵抗もあるでしょう。そうした問題については、心構えとして、勇断を持ってこれに当たらなければならぬ課題であるという問題意識は私も持っております。ただ、中に御指摘がありました、いわゆるこの現実問題、現象としてあらわれているもろもろの問題については、現在の陣容で精いっぱいの努力をいたしておりますが、さらに国民理解を求めるような姿勢で我々も臨まなければならない問題も数々あるという事実認識はございます。
  191. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 税務調査の結果の脱税の数字だけ新聞に出る。国民は、こんなにも税金をごまかしているやつがいるのかとびっくりしている。しかし、それは氷山の一角にすぎない。全部調査はなかなかできない。税務当局の今の実説率はどのくらいになっているのですか、主税局長国税庁が。
  192. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 現在国税庁で税務調査を行っております実調率につきましては、法人税の場合に一番新しい年度の五十八年度で一〇・五%でございます。また、所得税のうち申告所得税につきまして、同じく五十八年度の数字は約四%、このような状況でございます。
  193. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大臣、お聞きのように、法人税で一〇・五、所得税で四・一、その程度しか調査ができない。しかし、調査の件数はどんどんふえている。国税職員の数はそうふえていない。昭和四十年の定数が五万一千百五十一、二十年前。現在が五万二千三百六十三。二十年前と比べて千二百人しかふえていないのですね。そして調査の状況は、当時から比較するとかなり調査件数がふえている。ということは、調査が手抜き、簡単、疎漏。そうしなければとても、人間がふえないでこれだけの調査件数をふやすということになれば、そういう調査をせざるを得ない。満足な調査ができない。あるいは納税者に対する指導行政、そういうようなものが手抜きになる。私はそんな心配があるのですが、国税庁としては、監督の立場からどう認識していますか。
  194. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 ただいま先生御指摘のように、納税者の数というのは、この十年くらいの単位をとってみますと大体一・五倍程度の増加で、法人なり申告所得税については一般的にふえているという状況でございます。  ただ、税務職員がこの間約一%程度しかふえておりませんので、確かにおっしゃったようなギャップは生じておりますが、私どもといたしましては、できるだけ職員のいわば調査効率を高めるという見地から、例えば電子計算機の導入その他によりまして内部事務の効率化を図りまして、職員が外で調査ができる、いわゆる実地調査をやれる日数をできるだけたくさんとれるようにという方向でいろいろと事務のやり方を工夫し、また調査日数の配分につきましても、特別調査という非常に日数をかけた調査、それから一方では簡易な調査、その中間のいろいろな調査という形で、納税者の規模、業種その他に応じまして日数の配分を適切にやっていくということで、できるだけ実調率を維持するという方向努力をしてまいったところでございます。  ただ、これにも限界はあろうかと思いますが、今後とも税務の、特に負担の公平を維持していくという見地から、私どもとしても引き続き運営上、行政上のいろいろな努力はさせていただきたいと思いますが、税務職員の増員等につきましても、できる限りの御配慮を関係方面にお願いしてまいらなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  195. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 本当は大蔵大臣に決意のほどを聞きたいのですが、余り細かい話になるからちょっと国税庁とやりとりしますが、今の国税職員の年齢別構成を見ますと、昭和四年、五年、六年生まれの職員、これが、昭和四年生まれが二千人現在おる、昭和五年が二千二百人、昭和六年が二千三百人。昭和十四年が二百五十名と、がぐっと減るわけですね。昭和六十四年度、六十五年度、六十六年度、一年に定年になる人が二千人、二千二百人、二千三百人と出るのですね。これを、出る前の年になってから補充したのじゃ、とても税務調査もできなきゃ仕事もできないですね。この三年間で六千五百人定年になる昭和六十四年度、五年度、六年度に対応した準備を今からしないと、これはどうにも対応できないですね。  一体どういうスケジュールを立ててこの人員の抜けたときに補充をしようと考えるのか、そのときに心配のない体制がつくれるように何年から準備するのか、その辺のスケジュールはどうなっているのですか。     〔中川(秀)委員長代理退席、委員長着席〕
  196. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 国税職員の年齢構成につきましては、先生御指摘のように、五十歳台の職員が約四分の一を占めている。ところが、その次に続きます四十歳台の職員が一一%ということで、非常に断層がございます。したがいまして、私どもとしては、これらの五十歳台の職員が今後大量に退職した後の税務行政の水準をいかに維持するかということが非常に大きな課題であるということは、極めて強く認識している次第でございます。このため、私どもといたしましては従来から、資質の高い税務職員の確保、それから研修によります職員の資質の向上、さらには高年職員、五十歳台の職員でございますが、この職員の退職時期の分散化などに努めておりますし、さらにはADPの拡充等によります内部体制の充実、さらには納税環境の整備という方向でいろいろと努力してまいったところでございます。  今後とも、適正公平な課税を進めるためにも、事務の合理化、効率化ということにつきましては引き続き今以上に努力をしてまいりたいと思いますが、国税職員の増員につきましても、厳しい行財政事情のもとではございますけれども、先ほどから申し上げております年齢構成の特殊性を踏まえまして、中長期的な観点から、関係方面の御理解を得て、実態に即して必要な措置がとられるようにさらに努力してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  197. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうすると、国税庁次長、昭和六十四年度に二千人定年がきてやめますね。やめるのがわかった前の年に二千人新規採用すればいいという発想なんですか。それとも、教育訓練期間があるから、その二、三年前から、税務大学を終わる期間、一年三カ月前に既に二千人、退職する人員を補充するということになるのか。一挙に二千人も退職者が出るというのが三年間続くわけですが、今までのような物の考え方では、この年数は処理できないのでしょう、六十四年度、六十五年度、六十六年度は。これをどう具体的に今から準備するかという質問なんです。その質問に答えてくださいよ。今からそれにどう準備するのか。
  198. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 先生御指摘のように、昭和六十四年、五年あたりになりますと、二千人台の職員の退職が予想されるわけでございます。ただ、現行の職員数というのは、いわば定員法のもとで決まっておるわけでございますので、この枠の中で、先ほどから申し上げておりますが、それだけの大量退職が予想されますので、これをいかにしていくかということにつきまして、私どもとしては、単年度の話ということではなくて、中長期的な見地からどういうふうに対応していかなければいかぬか、例えば研修にいたしましても、高等学校を卒業して採用した職員につきましては、一年三カ月の研修期間が現在のところ必要でございますし、これらのことも踏まえまして、関係方面と十分御相談をしながら、私どもとしても最大の努力を続けてまいりたいというふうに思っております。
  199. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 次長、意外とのんきに構えているようでありますが、心配ないのですか。今の行政改革のこの雰囲気の中で、そうして人員が大変厳しく統制されているときに、六千人の専門家の五十歳過ぎのベテラン職員がばっと抜けた後の税務署というものを考えたら、よほど今から緻密にやっておかぬことには、専門家の職業なんで、新しい頭数だけばっとそろえたって、税務行政なんというものはできるものじゃない。そういう点で全く心配ないのですか。それともこれは閣議の問題で、徴税業務に携わる者には、行革からは別枠でやってもらわぬことにはだめだということを、大臣を通じてきちっとやっておかなかったら、これはその場になって大慌てだぞ。あなたが安心なら構わぬけれども、私はもと税務署にいたから、税務署の様子をよく知っているからこういう質問をしているのですよ。
  200. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のように、確かに税務職員の養成という問題は一朝一夕にできるものではございませんし、そういう年齢的な断層がございますので、先生御指摘の点も踏まえて、私どもとしては今後十分に勉強させていただき、対応策を関係方面にお願いしてまいりたいというふうに思っております。
  201. 竹下登

    竹下国務大臣 この問題につきましては、国税庁の問題、なかんずく税務職員の問題というと、いつでも三つ考えます。一つは処遇改善、一つは定員の問題、一つは今御指摘なさった問題。  第一の問題につきましては、いわゆる人事院勧告が出される以前、人事院当局へ、私自身もいろいろお話をしました。  それから二番目の点については、いつの場合でも応援していただいて、附帯決議等をいただいておるから、今日でもすぐ、まず隗より始めよと言われる立場にありながらも、税務職員についてはそれなりの、二けたといっても小さい二けたでございますが、実増の成果をもたらしております。  それで、今の三番目の問題でございますが、国税庁次長、今後の問題としての真剣な取り組み方について申し述べましたけれども、私どもといたしましても、いかに予算が単年度主義とはいえ、この問題は一時期に集中して起こる問題ですから、この問題については御心配がないように、まず部内での体制をちゃんと議論を固めて、そうして中長期的な観点からこれに対応する具体的な計画も組みながら、今後御理解を得て関係方面と折衝しなければならぬ課題だという問題意識は、本当に十分持っておることを申し上げておきます。
  202. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大蔵大臣はひとつ問題意識を心にしっかり固めていただいて、閣議やあるいは行管庁とも交渉の際に本気でひとつお願いをしたいと思います。  きょうは大蔵省の皆さんに七項目の質問通告を出しておいたのでありますが、二項目で時間がなくなってしまいました。あとの五項目は後日に譲ります。きょうは自民党の方も長谷川峻先輩のレセプションで大変そわそわしているようでございますので、サービスをして三十分割愛をして、私の質問を終わりたいと存じます。ありがとうございました。
  203. 越智伊平

    越智委員長 これにて三法案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  204. 越智伊平

    越智委員長 これより法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法及び所得税法の一部を改正する法律案の両案を一括して討論に付します。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。大島理森君。
  205. 大島理森

    ○大島委員 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表いたしまして、ただいま議題となりました両法律案に対しまして、賛成意見を表明するものであります。  御案内のとおり、我が国の経済は、物価の安定のもとで着実な成長を達成してまいりましたが、一方、我が国の財政は依然として厳しい状況にあり、その中にあって、歳出の徹底した見直しと、あわせて税制面においても、前年度に引き続き税負担の公平化、適正化に努めるとともに、二十一世紀へのたくましい高度先端技術産業社会への誘導策として、技術開発研究の推進あるいは民間活力の活用等、最近の我が国社会経済情勢にも最大限に配慮された政府努力に対しまして、私はこれを極めて高く評価するものであります。  以下、その内容を見ますと、まず、法人税法の一部を改正する法律案は、公益法人等及び協同組合等の各事業年度の所得に対する税率を二%引き上げるとともに、協同組合等の清算所得に対する税率について所要の調整を行うことをその内容としております。これらの措置は、公益法人等及び協同組合等の法人税の負担水準の現況にかんがみ、適切な措置であると考えます。  次に、租税特別措置法及び所得税法の一部を改正する法律案について申し上げます。  第一は、既存の租税特別措置の整理合理化であります。  企業関係の租税特別措置について、連年にわたる厳しい見直しに引き続き、昭和六十年度におきましても、株式売買損失準備金制度を廃止するなど、特別償却制度及び準備金制度等の整理合理化が図られております。これらは、税負担の公平確保のための努力として、高く評価されるところであります。  第二は、利子・配当等の課税の適正化であります。  利子・配当等の課税につきましては、郵便貯金を含む非課税貯蓄制度の限度額管理の適正化を図る観点から、本人確認制度の厳正化を中心とした措置を講ずるとともに、総合課税の対象となる利子・配当等につきましても、本人確認制度の整備を図る等の措置が講じられております。これら諸施策の実施に伴い、利子・配当課税の適正化が推進されることとなり、まことに適切な措置であると考えます。  第三は、試験研究促進のための措置であります。  技術研究開発を推進するため、試験研究費の額が増加した場合の特別税額控除額に加えて、基盤技術の開発研究用資産について取得価額の七%相当額の特別税額控除を認めるとともに、中小企業者等の試験研究費について、その六%相当額の特別税額控除を選択的に認めることとされております。いずれも、今日の厳しい財政事情のもとにあって、民間における試験研究の促進のために精いっぱいの措置を講じたものであり、急激なハイテク時代への流れの途についた今日において、極めて意義のあるものと考えます。  このほか、土地、住宅関連税制の整備や法人の利子・配当等に係る所得税額の控除の特例措置が講じられるとともに、特定外国子会社等に係る所得の課税の特例制度の整備等が図られる一方、交際費等の損金不算入措置、揮発油税及び地方道路税の税率の特例措置等、適用期限の到来する租税特別措置について、実情に応じその適用期限を延長する等、所要の措置が講じられることとされております。これらの措置は、いずれも、最近における社会経済情勢と現下の厳しい財政事情に顧み、時宜を得た適切なものと考えます。  以上申し上げました理由により、両法律案に全面的に賛成意見を表明し、討論を終わります。(拍手)
  206. 越智伊平

    越智委員長 渋沢利久君。
  207. 渋沢利久

    ○渋沢委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となりました租税特別措置法及び所得税法の一部を改正する法律案並びに法人税法の一部を改正する法律案に対し、反対討論を行います。  今国会での税制改革論議で最大の焦点となりましたのは、言うまでもなく大型間接税の問題であります。政府大蔵省は既に国会審議の始まる前から、いわく八七年四月実施説、所得税減税との抱き合わせ実施説、目的税説などなど、あたかも大型間接税導入が既定の事実であるかのごときキャンペーンを露骨に展開してまいりました。国会審議が始まりますと、一般消費税型の大型間接税導入しない、多段階、包括的、網羅的、普遍的で大規模な消費税で投網をかけるようなやり方はとらないなどと、一見否定的と見える言明を繰り返したかと思いますと、そのすぐ後から、七九年の国会決議で否定されたのは一般消費税仮称)だけだ、EC型付加価値税にもいろいろな態様があり、そのすべてを否定するものではないなどと、まさに言葉をもてあそび、あくまで導入の構えを崩そうとはしていないのであります。  最近では、七九年に一般消費税が否定されたのは、当時国民理解が得られなかったからで、今日、条件が変わればこれも検討対象になるとまで言い出す始末であります。まさに居直りであります。大型間接税の具体的中身については何の説明もないままに、導入のレールだけを巧妙に敷こうとするがごとき中曽根内閣の姿勢は、全く国民を愚弄し、国会決議に挑戦するものと言わざるを得ません。  大型間接税の最大の問題は、低所得者ほど税負担が重く、不公平を助長する逆進性にあります。さらに、中小零細業者にとっては税の価格への転嫁が困難で、納税の煩雑な事務と相まって、経営を著しく圧迫することは必至であります。端数切り上げによる便乗値上げも起こります。消費の全般的な低下による景気への悪影響も避けられません。まさに大型間接税は弱い者いじめの大悪税であり、私はその導入に強い反対の意思を改めて表明するものであります。  また、予算修正問題で我々は、所得税、住民税の課税最低限の引き上げ、教育費、寝たきり老人、単身赴任などの政策減税、利子・配当課税の強化など不公平税制の是正、社会保障関係補助金の一律削減撤回など、国民の切実な要求を中心に共同修正要求を政府・自民党に提示し、その実現を強く迫りました。しかし、先般の与野党合意において、政策減税については今年中に実施することとはなったものの、所得税減税の実施時期はあいまいなままであり、その他多くの国民要求を政府・自民民党が無視したことを極めて遺憾とするものであります。新聞報道によれば、早くも大蔵省政策減税の実施規模やその範囲を圧縮せんとする動きに出ているがごときことは、もし事実とすれば断じて許しがたい問題であります。この際、政府・自民党が所得税減税、政策減税の実施を誠実に実行されることを強く求めておくものであります。  現行税制のゆがみ是正の名のもとに、税制改革が声高に叫ばれております。これまで我が国の戦後税制の根幹を支えてまいりました民主主義的な藤則——最低生活費非課税原則、応能負担原則、総合累進課税制度、申告納税制度をゆがめ、骨抜きにしてきたのは一体だれなのでありましょうか。利子・配当所得の分離課税、各種引当金、準術金制度などの大企業、大資金家優遇措置などなど、不公平税制を放置し、温存していることこそ、ゆがみの最大の原因ではありませんか。  今回の改正案でも明らかなように、利子所得の総合課税を目指して創設されたグリーンカード制がついに実施されぬまま廃止されようとしているのであります。今回わずかに引き下げられる貸倒引当金の繰り入れ率は、しかし実際の損失率との間にいまだ二倍から三倍の開きがあるのであります。退職金引当金の残高は、八三年度、資本金十億円以上の企業で七兆七千億円に達し、膨大な運用利益を大企業、大法人に与えております。これに対して、勤労者、サラリーマンは源泉徴収制度で最初から申告納税の権利を奪われ、課税最低限の据え置きによる自然増税でいや応なく税金を吸い上げられておるのであります。記帳義務の法制化と過酷な税務調査の横行のもとで、中小零細企業は青息吐息で徴税攻勢にさらされているのであります。  今回、税制改革論議とともに出されてまいりました所得税の最高税率の引き下げ、法人税の軽減、利子所得への一律低率分離課税大型間接税導入などの一連の方向は、戦後税制民主主義的諸原則に真っ向から逆行し、これを最後的に形骸化させるものと言わなければなりません。大企業、大資産家優遇の不公平税制をまず正し、戦後税制民主主義的諸原則を骨抜きにする制度上、運用上の抜け穴をふさいでいくことこそが、税制改革の基本方向でなければなりません。このような基本方向を欠いた今回の改正案に、到底賛成することはできません。  最後に、重ねて、大型間接税導入は税の不公平をより一層助長し、国民経済の停滞と深刻な社会的混乱を招くものであるということ、今日国民は内需拡大を中心とする経済の回復を心から求めており、不公平税制の是正と大幅所得減税こそが国民の要求する税制改革の道であり、日本経済の再活性化への道であるということを申し上げて、私の反対討論といたします。(拍手)
  208. 越智伊平

    越智委員長 古川雅司君。
  209. 古川雅司

    ○古川委員 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となっております法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法及び所得税法の一部を改正する法律案について、反対の討論を行うものであります。  最初に私は、予算修正問題の中で取り扱われた減税問題の関係について一言申し述べておきます。  我々は、社会経済情勢変化によって生じている負担のひずみを是正し、国民生活を守る観点から、所得税課税最低限の引き上げ及び政策減税の実施を、日本共産党を除く四野党で共同して要求してまいりました。しかし、政府・自民党は、寝たきり老人介護、教育、単身赴任などの政策減税については、一定の前進と評価できる回答を示したものの、昭和六十年中の所得税減税の実施については、ついに確約するに至っておりません。  率直に言って、こうした政府・自民党の対応の姿勢は、国民生活を軽視するものと言わざるを得ません。また、私は、予算修正問題の経緯にかんがみ、政府・自民党が政策減税を速やかに実施するとともに、昭和六十年中の所得税減税も誠実に取り組み、実施することを、改めて強く要求いたすものであります。  以下、議題となっております法案に反対する主な理由を申し上げます。  反対理由の第一は、所得税減税が見送られ、国民、殊にサラリーマンに対する実質増税が猛烈な勢いで進展していることであります。  所得税減税については、我々の長年の要求によって五十九年度に実施されたものの、その内容が規模、方法ともに十分でなかったため、サラリーマンの家計における負担の実態は、政府資料によって昭和五十二年度に比較しても、税金の伸びが所得の伸びを二倍から三倍も上回っております。その上に所得が伸び悩み、個人消費が停滞している状況下にあっては、六十年度においても所得税減税の実施が不可欠なことを証明するものであります。したがって、所得税減税を見送る税制改正は、到底認めがたいのであります。  反対理由の第二は、政府がこれまでの税の公平化に関する姿勢を翻し、不公平税制を温存しようとしていることであります。  政府は、我々の減税要求に対し、殊さら財源難を強調しておりますが、逆に不公平税制の是正による財源確保には極めて消極的な姿勢をとり続けていると言わざるを得ません。特に、つい最近まで所得税の公平なあり方は総合課税化にあると公言しておきながら、利子・配当所得に対する課税は、少額貯蓄の非課税制度に関する限度額管理もあいまいなままにグリーンカード制度を廃止し、分離課税制度の存続によって不公平を野改しにすることは、到底認めがたいのであります。  また、政府が不公平税制の是正を糊塗的な対策にとどめていることは、国民税制に対する不信感をますます助長するものと申し述べておきます。  反対理由の第三は、中小企業、公益法人、協同組合など、経営基盤の弱いところへの配慮が欠けていることであります。  盛り上がりに欠ける内需とハイテク化ブームの中にあって、中小企業を大企業との競争から守り、格差を是正するためには、中小企業に対する設備投資減税の拡充がどうしても必要でありました。しかし、この措置を小幅にとどめたことは納得できません。  また、公益法人、協同組合などは、それぞれ正当な政策目的があって税率を軽減されてきたものであります。にもかかわらず、政府が二年連続で増税を強行することは、経営基盤を無視した財源あさりと言わざるを得ないのであります。  以上をもちまして、私の反対討論を終わります。(拍手)
  210. 越智伊平

  211. 玉置一弥

    玉置(一)委員 私は、民社党・国民連合を代表し、ただいま議題となっております法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法及び所得税法の一部を改正する法律案に対し、一括して反対の立場の討論を行います。  我が党はかねてより政府に対し、内需拡大を図ることが財政再建の足がかりとなるとして、六十年度予算を「増税なき財政再建」を目指す拡大均衡型予算とするよう強く主張してまいりました。  しかるに政府は、来年度においても、大幅な所得減税、投資減税の見送りや公共事業の抑制などに見られるように、相変わらず縮小均衡型予算をなおも踏襲しようとされていることは、まことに遺憾であります。  このような経済運営を続ける限り、国民生活の安定向上はもとより、内需主導による適正成長の実現も、大幅な税の自然増収の確保も望めず、中曽根内閣最大の公約である「増税なき財政再建」の方針は、早晩大増税を余儀なくされることは必至であろうと考えます。  これまで中曽根内閣は、臨調答申に求められた行政改革の推進と「増税なき財政再建」を公約の柱とし、これが実行のために政治生命をかけるとまで公言されてまいりましたが、最近の国会内における発言では、行政改革の行き詰まりから、財政危機を乗り切るための新たな税制度の導入の雰囲気づくりさえ行われていると言っても過言ではありません。  現行税制度は、クロヨン等で言われるように、課税、把握の不公平があることは、政府も認めるところであります。大蔵、自治両省が国会に提出した資料によりますと、六十年度は所得税、住民税を合わせた増収額は一兆八千九百八十五億円にも達するとありますが、その内訳を見ますと、サラリーマン一人当たり前年対比二・五万円の税負担増となるのに対し、自営業など申告所得者は一段と節税対策が進み、平均で三・六万円の税負担減となり、ますます不公平は拡大されることになっています。  税制度の改革は、本来、社会経済の変化に対応して、そのあるべき姿を求めていくのが筋でありますが、最近の傾向を見るとき、政府の考える税制改正は、まさに増収を得るためだけを目的としているのではないかと疑わざるを得ないのであります。その結果、逆に不公平税制の拡大につながっているのではないでしょうか。この不公平感が残っている間は、国民に新税のお願いをすることなどは、政府が考えている以上に難しいのは明らかであります。国民の税に対する認識が欧米と大幅に異なっていることは御承知のとおりであり、国民お願いをするならば、納得のいく理由と背景が必要だと思います。  今回の各法案は、現在各企業が置かれている状況、サラリーマンがここ数年にわたって置かれている状況の把握も不十分で、全くそれを無視したものであると言わざるを得ません。不公平税制是正の面から考えていけば、軽減税率、租税特別措置等一切廃止すべきでありますが、政策面からの保護を考えると、もっと優劣を明確につけるべきだと考えます。  これからの金融自由化、貿易、特に輸入拡大等の動きの中で、国内企業の体質強化等も重要な課題でありますし、野党の統一要求として出された政策減税等についても、国民にとっては切実な問題であり、本来ならば政府みずからが提案してきて当然のようなものであります。  政府は、これらの問題を放置したままで安易な増税を行なおうとされているわけで、我々は納得できません。  よって、今後政府は、来るべき抜本的な税制度改革の中で、真に公平で公正で簡易な税制度確立を図られるとともに、さきに与野党間で合意いたしました所得税減税の検討については、今年中に結論を得られますよう注文をつけまして、反対の討論を終わります。(拍手)
  212. 越智伊平

    越智委員長 正森成二君。
  213. 正森成二

    ○正森委員 私は、日本共産党・革新共同を代表し、ただいま議題となっております法人税法の一部改正案、租税特別措置法及び所得税法の一部改正案の二法案につき、反対の討論を行います。  反対する第一の理由は、大企業に対する不公平税制の是正が不徹底である上、その拡大がメジロ押しでなされている点であります。  今改正案では、現行税制の見直しとして、金融機関以外の貸倒引当金の見直しや株式売買損失準備金の廃止など、わずかばかりの縮減が見られるだけで、ほとんどの大企業優遇措置は延長されております。重大なのは、その上に政策税制の名のもとに、いわゆるハイテク減税やテレトピア減税、さらに都市再開発減税などが軒並み実施されようとしていることであります。  もちろん、資源小国である我が国が技術開発に力を入れることは重要です。しかし、今回のハイテク減税は、負担能力のある大企業に対して、将来の独占的利潤が保障されている分野に、しかも従来の特別措置と重複適用を認めるなど、二重、三重の恩典拡大を与えるものであります。また、民間活力論に基づく都市再開発減税も、再開発による莫大な集積の利益を得る大手開発業者に恩典を加えるものにほかなりません。  七年ぶりにいわゆるタックスヘーブン対策税制部分的見直しがなされました。これは課税回避の新しい手口の穴をふさぐものとして当然の措置であります。しかし、我が国の多国籍企業が租税回避策として公然と利用している外国税額控除制度の抜本見直しや移転価格税制の創設は今回も見送られているのであります。  反対する第二の理由は、利子・配当課税制度の見直しの問題についてであります。  最大の問題は、政府がこの制度の検討最初から総合課税化という大原則を放棄し、最大の不公平である大資産家優遇の低率の源泉分離選択制度を恒久措置としてしまったことであります。今回の非課税貯蓄制度の見直しでは、限度管理のうち本人確認の面ではかなり正されると思われますが、名寄せについては現行と変わらず、全くの不十分さを残しております。これでは仏つくって魂入れずと言っても言い過ぎではありません。  本日、この利子・配当課税制度について大蔵省が、現行の総合課税方式を廃止し、一律源泉分離課税一本に見直す方針との報道がされております。もしこれが本当なら、不公平拡大の最たるものとなることは明らかであり、極めて重大なことであることをこの際付言しておくものであります。  反対する第三の理由は、国民の多数が要求する所得減税が見送りになり、中小企業その他への増税、増徴措置が進められていることであります。  赤字法人に対する利子・配当源泉税の還付繰り延べ措置は、圧倒的多数を占める中小赤字法人の申告を当面チェックし、将来の本格的な赤字法人課税への地ならしを進めるもので反対であります。また、法人税法改正による公益法人、協同組合等への二年連続税率アップは、非営利法人であるこれら法人の経営困難と活動低下をもたらすものと言わなければなりません。  我が党は、不公平税制の是正などを財源とする一兆円規模の所得減税、その他国民各層へのきめ細かな政策減税の実施をあくまで要求し、政府が六十一年あるいは六十二年にもねらっている最悪の大衆課税である大型間接税導入には断固として反対し、今後とも国民とともに闘うものであります。  以上で、両法案に反対する私の討論を終わります。(拍手)
  214. 越智伊平

    越智委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  215. 越智伊平

    越智委員長 これより採決に入ります。  まず、法人税法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  216. 越智伊平

    越智委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)、次に、租税特別措置法及び所得税法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  217. 越智伊平

    越智委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)     —————————————
  218. 越智伊平

    越智委員長 次に、入場税法の一部を改正する法律案について議事を進めます。  本案に対して、正森成二君外一名より修正案が提出されております。  この際、提出者より趣旨の説明を求めます。蓑輪幸代君。     —————————————  入場税法の一部を改正する法律案に対する修正   案     〔本号末尾に拠載〕     —————————————
  219. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 ただいま議題となりました入場税法の一部を改正する法律案に対する修正案について、日本共産党・革新共同を代表し、提案の趣旨並びに内容について御説明いたします。  もともと入場税法は、昭和十三年四月に支那事変特別税法一括法として、中国侵略のために戦費調達を図る目的で設けられたものです。この経緯から見ても、戦後直ちに廃止されてしかるべきもので、私たちは従来から廃止するよう強く主張してまいりました。  ところが政府は、第四十回国会衆議院の大蔵委員会で、当時の水田大蔵大臣が、私はこの種の演劇その他の入場税というものは、実際は税としては悪税で、これは将来撤廃すべきものだというふうに考えています、と答弁しているにもかかわらず、間接税体系の合理化を図るためとか、あるいは同種のサービス課税である通行税や娯楽施設利用税等の均衡を保つためとか、サービス消費が急増しているところから、さらに物品、サービス課税を強化してもよいのではないかなどという理由で、入場税の廃止に反対してきました。  この結果、日本国民の芸術、文化、スポーツの自主的多画的な発展に強い抑制的役割を果たし、同時に芸能実演家等関係者の生活の困窮をももたらしてきたことは明らかです。  憲法第二十五条にうたわれるとおり、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」をすべての国民に真に保障するには、国民社会教育を充実し、芸術、文化、スポーツの豊かな発展を図ることこそ重要であり、また、すべての国民に芸術、文化、スポーツ等に接する機会を十分に保障するためにも、芸能、文化関係諸団体及び国民各層の強い要求にこたえ、入場税を撤廃することが肝要であると思います。  一九七七年には、文化庁が発表した「文化行政長期総合計画について」と題する報告書でも、芸術活動を活発にするために公演にかかる入場税の廃止について検討を求めており、また、一九八〇年のユネスコの、芸術家の地位に関する勧告では、最も広く定義された芸術が生活の不可欠の部分であるとして、すべての人々が芸術に接することができることを確保すべきであるとの勧告を行っているのです。政府は、入場税の撤廃はもとより、その自主的な発展のために十分な助成措置を講じ、芸術、文化、スポーツの豊かな発展を願うすべての国民の期待にこたえるべきであると思います。  欧米先進諸国においても、イタリアに興行税があるほかは、入場税課税を行っている国は見受けられず、むしろ大半は公費助成が行われています。我が国のように、経済大国にありながら、極めて貧困な文化予算、文化政策を持つ国は、先進諸国には見当たりません。今日、入場税存続の特別な理由はないと思われます。  ただ、競馬粉、競輪場への入場料金に対する課税につきましては、芸術、文化、スポーツとは異質のギャンブルとしての性質にかんがみ、当分の間存続させることとしています。  今回政府から提出された入場税法の一部を改正する法律案では、高価な催し物への入場料金に対する課税の存続措置が図られていますが、これはむしろ担税力に着目するというよりも、現在政府検討しているEC型付加価値税等大型間接税導入対策であり、到底認められるものではありません。  さきに述べましたように、今日の日本国民の芸術、文化、スポーツ要求の高まりと、先進諸国との比較に見られる貧困な文化政策等に照らしても、この際、国による積極的な文化政策が必要であり、その一環として入場税を撤廃するのが適切であると思います。  以上が日本共産党・革新共同の本案提出の理由です。なお、本修正案による減収額は、昭和六十年度において約四十億円と見込まれます。  何とぞ速やかに御審議の上、満場一致の御賛成をいただきますようお願い申し上げます。
  220. 越智伊平

    越智委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  この際、本修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣において御意見があれば発言を許します。竹下大蔵大臣
  221. 竹下登

    竹下国務大臣 内閣意見要旨を申し述べます。  ただいまの修正案につきましては、修正案どおりの改正を行いますと、サービスに対する課税のあり方として問題があるとともに、昭和六十年度予算にも影響を及ぼすことになるので、政府としては反対であります。     —————————————
  222. 越智伊平

    越智委員長 本案については討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  まず、正森成二君外一名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  223. 越智伊平

    越智委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。  次に、原案について採決いたします。  原案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  224. 越智伊平

    越智委員長 起立総員。よって、入場税法の一部を改正する法律案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  225. 越智伊平

    越智委員長 ただいま議決いたしました三法律案に対し、熊川次男君三名より、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者より趣旨の説明を求めます。野口幸一君。
  226. 野口幸一

    ○野口委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、提案の趣旨とその内容を簡単に御説明申し上げます。  御案内のとおり、三法律案につきましては、大蔵大臣及び政府委員に対して質疑を行うとともに、参考人から意見を聴取する等、慎重に審議を進めてまいりましたが、これらの審議の中で、各委員から、さまざまな問題について議論が展開されました。  この附帯決議案は、これらの議論等を踏まえ、今後、政府において検討あるいは配慮を要する事項を取りまとめたものであります。  なお、個々の事項の趣旨につきましては、案文で尽きておりますので、案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。     法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法及び所得税法の一部を改正する法律案並びに入場税法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について所要の措置を講ずべきである。  一 税体系のあり方については、国民理解と信頼を確保し得るよう一段と公平化に努め社会経済情勢変化に即応した幅広い意見を聴取し見直すこと。なお、所得税負担のあり方についても、社会経済情勢変化に応じて、適宜見直しを行うこと。  一 退職給与引当金、貸倒引当金等の繰入率等について引き続き検討すること。なお、退職給与の保全措置についても引き続き検討すること。  一 準備金、特別償却等各種の租税特別措置については、その整理合理化に更に努力すること。  一 利子・配当課税のあり方については、利子・配当所得の特異性等に留意しつつ、更に検討すること。  一 変動する納税環境、財政再建・財源確保の緊急性及び業務の複雑化にかんがみ、高度の専門的知識を要する職務に従事する国税職員については、年齢構成の特殊性等従来の経緯及び税務執行面における負担の公平確保の見地から、処遇の改善はもとより中長期的見通しに基づく定員の一層の増加等につき格段の努力をすること。  一 入場税の減税効果が入場料金に反映されるよう、適切に配慮すること。 以上であります。  何とぞ御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  227. 越智伊平

    越智委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  お諮りいたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  228. 越智伊平

    越智委員長 起立総員。よって、三法律案に対し附帯決議を付することに決しました。  本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。竹下大蔵大臣
  229. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。ありがとうございました。     —————————————
  230. 越智伊平

    越智委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました三法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  231. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  232. 越智伊平

    越智委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十七分散会      ————◇—————