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1985-02-22 第102回国会 衆議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年二月二十二日(金曜日)     午前九時三十一分開議 出席委員   委員長 越智 伊平君    理事 熊谷  弘君 理事 熊川 次男君    理事 中川 秀直君 理事 堀之内久男君    理事 上田 卓三君 理事 野口 幸一君    理事 米沢  隆君       糸山英太郎君    大島 理森君       加藤 六月君    金子原二郎君       瓦   力君    笹山 登生君       塩島  大君    田中 秀征君       中川 昭一君    東   力君       平沼 赳夫君    藤井 勝志君       宮下 創平君    山岡 謙蔵君       山崎武三郎君    伊藤  茂君       川崎 寛治君    沢田  広君       渋沢 利久君    戸田 菊雄君       武藤 山治君    石田幸四郎君       古川 雅司君    矢追 秀彦君       安倍 基雄君    玉置 一弥君       正森 成二君    簑輪 幸代君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         大蔵政務次官  中村正三郎君         大蔵大臣官房総         務審議官    北村 恭二君         大蔵省主計局次         長       平澤 貞昭君         大蔵省主計局次         長       的場 順三君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省理財局長 宮本 保孝君         大蔵省証券局長 岸田 俊輔君         大蔵省銀行局長 吉田 正輝君         大蔵省銀行局保         険部長     加茂 文治君         国税庁税部長         兼国税庁次長心         得       冨尾 一郎君         国税庁調査査察         部長      村本 久夫君  委員外出席者         経済企画庁総合         計画局計画課長 谷口 米生君         通商産業省通商         政策局通商調査         室長      大津 幸男君         通商産業省産業         政策局産業資金         課長      坂本 吉弘君         通商産業省産業         政策局企業行動         課長      中川 勝弘君         郵政省貯金局経         営企画課長   山口 憲美君         郵政省貯金局第         一業務課長   神岡 篤司君         自治省税務局固         定資産税課長  鶴岡 啓一君         参  考  人         (税制調査会会         長)      小倉 武一君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第一五号)  租税特別措置法及び所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第一六号)  入場税法の一部を改正する法律案内閣提出第三三号)      ————◇—————
  2. 越智伊平

    越智委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法及び所得税法の一部を改正する法律案の両案につきまして、参考人出席を求め、意見を聴取することとし、その人選、日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 越智伊平

    越智委員長 法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法及び所得税法の一部を改正する法律案及び入場税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  この際、お諮りいたします。  ただいま議題となっております各案につきまして、本日、参考人として税制調査会会長小倉武一君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  6. 越智伊平

    越智委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渋沢利久君。
  7. 渋沢利久

    渋沢委員 大蔵大臣、お久しぶりでございます。竹下に明けて竹下に暮れるような毎日で、大変世間をお騒がせになっております。竹下総理などと呼んで質問をする日も遠くないような気もいたしますけれども、せっかく御健闘を祈りたいと思います。  何か大臣予算委員会関係余り御在室の時間がないようでありますので、少しはしょって端的なお尋ねをまず大臣に申し上げたいと思いますので、簡潔で中身の濃い御答弁をひとつお願いを申し上げたいというふうに思うのであります。     〔委員長退席熊川委員長代理着席〕  本会議で伺いました蔵相財政演説を聞いておりまして、大変気迫のこもった演説をされたなというふうに思います。あそこの結びの中でも、勇断をもって眼前にある課題の解決に取り組む必要がある、とりわけ財政改革の推進こそは、我々の子孫に重荷を残すことのないよう、ぜひとも解決せねばならない課題であると、並み並みならぬ決意を披瀝しておられたと思うのであります。特に、政府税調も改めて指摘をし、総理決意を述べておられるように、本格的な税制改正へ向けて、所管大臣として少なくとも竹下蔵相在任中に御自身の手でまさに本格的な税制改正をやり遂げる、そういう決意がひたむきに見えたと私は受けとめたわけでありますが、いかがなものでありましょう。
  8. 竹下登

    竹下国務大臣 小倉会長を前に置いて非常に失礼でございますが、六十年度の税制改正に関する答申をちょうだいいたしましたときに、「既存税制部分的な手直しにとどまらず、今こそ国民各層における広範な論議を踏まえつつ、幅広い視野に立って、直接税、間接税を通じた税制全般にわたる本格的な改革検討すべき時期にきていると考える。」「極めて異例ではあるが、当調査会としては、以上のことを指摘し、更に、この問題については、国民に十分な理解協力を求める努力を尽すことが是非必要であることを付言しておきたい。」こういうまさに異例答申をちょうだいいたしたわけであります。  したがいまして、私といたしましてもこの線に沿いまして、まさに租税負担公平化適正化を推進する観点に立って広範な角度からまず論議検討を行う必要がある、今おっしゃいましたが、在任中に法律のことごとくを改正し、そしてそれの執行に至るというようなところまで考えておるわけではございませんが、少なくとも今の考え方で当面論議を尽くし、検討を開始する時期に来たという認識は持っております。
  9. 渋沢利久

    渋沢委員 在任中に関連するすべての法律を完璧に整備をするということまでは言い切れないにしても、その税制改正の主要な改定実施について、責任を持って在任中にも果たしたいという決意をお述べになったと思うのであります。これは大変強い御決意だと思うのでありますが、お示しいただいた「財政中期展望」などを見ましても、もう六十五年度と言わず来年度の予算編成考えただけでも、その歳入歳出の要調整額というものから想定をいたしまして、これは大変な状況になっているということを物語っておるように思うわけであります。  政府として本格的な税制改正をやるということであれば、これはかなり急がなければならぬ、そういう事情にあるというふうに読み取れるわけでありまして、今の蔵相決意というのは、できれば来年の予算編成に向けてもその主要な部分実施が可能であるというようなタイムスケジュールでお考えになっておるというふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  10. 竹下登

    竹下国務大臣 まず総理から予算委員会お答えをした中に、従来は三年の任期、先般は半年の延長をしていただきましたが、新しい税調ができますと、簡単な表現で言えば、国税、地方税全体についてのあり方についてという大変広範な諮問をいたすわけであります。したがって、一つ一つスポット物とでも申しましょうか、そんな感じ諮問を申し上げるという性格の調査会ではございませんが、総理から特に今回は、予算委員会大蔵委員会を初めとする国会論議等を踏まえて、改めた形で政府税調諮問を申し上げて、それで御検討いただくというところまでのお答えがあっておるところであります。  ただ、私は、従来からとっておりますのは、その国会論議等ににじみ出る問題を税制調査会で勘案してもらうわけでございますだけに、いつまでとかということは税制調査会の高度な論議を制約することになりはしないかという意味で、特に期限を付すとかというお願いは形の上ではやらないで、税制調査会の自主的な判断の中で可能な限り早い機会に私どもも諮問申し上げて、御論議をいただくという姿勢で対応したいと思っております。
  11. 渋沢利久

    渋沢委員 それは税調は、総理から諮問を受ければ、それをいつまでにどうこなすかというのが税調のお仕事であることは言うまでもないのだが、税調総理諮問機関だから、総理タイムスケジュールを含めてその内容について希望を付して諮問をするということは当然のことなんであって、総理といいましても、ましてそれは担当所管省である大蔵大臣判断というものがやはり大切。  今私がお尋ねしているのは、税調諮問を受けてどうこなすかということをお尋ねしているのじゃなしに、税調諮問するに当たっての大蔵大臣としての判断、それは、この税制改革はまさにシャウプ勧告以後の税制の、総理がひずみとかいろんなことをおっしゃっているが、ともかく抜本的な見直し、再検討、洗い直しをやろう、こういう話であり、しかも蔵相自身もおっしゃるとおりに、国会を含めて各方面意見を十分吸い上げて、こうおっしゃっておるんだが、我々物を考え議論するにいたしましても、やはり時期のめどというのを政府自身がどう考えているかということを抜きにしてそれは判断のしようもないというところもあって、これは非常に重要なことであるわけであります。少なくとも今のお話は来年の予算編成に間に合わせるなどという、そんな早急なスケジュール考えておるのではないということに受けとめてよろしいのか。できれば、やはり諸般の状況からいってこれは審議を早くお願いして、そして来年度予算編成にもその姿があらわれてくるような形でこの税制改正についての骨組みづくりをしたいという決意であるかどうか。これは大臣の所感をお尋ねしているわけであります。
  12. 竹下登

    竹下国務大臣 やはり今日までの政府税調あり方等からいたしますと、現段階検討作業の進め方、内容ということであらかじめ予断をお与えするような諮問の仕方は避けるべきだと思っております。作業につきましてはできるだけ早く進めてもらいたいというのが政府としての希望ではございますが、何分相当大がかりな検討作業になると考えられますので、審議タイムスケジュールについて条件を付すということは、希望を述べるというような範囲にとどめるべきではないかと思っております。したがいまして、答申とか中間報告とか、年内にいただけるかいただけないかといったようなことを諮問に先立って最初からタイムスケジュールを提示するということは、私が今日まで税制調査会に対応する姿勢としては、だんだんあうんの呼吸でいろんな議論が進むことはわかりますが、私の方からいつまでということは申し上げないでいこうと思っております。
  13. 渋沢利久

    渋沢委員 税制改正に本格的に取り組もうという決意だけは伺ったわけでありますが、そこで、どういう税制改正についての理念、どこに主たる眼目を置いてこの改正を行おうとするかということについて幾つかのお尋ねをしようと思うのですが、その前に、今までの状況の中で特に私が大蔵大臣のお考えを伺っておきたいことが一つ、二つございます。  一つは、財政危機を克服していくというこの積年の重大な課題について、今まで何らかの形で増収を図るチャンスというものを政府は持っておったわけです。例えばグリーンカード実施一つである。これは非課税貯蓄累積元本が、つい数日前の、これは大蔵省の資料だったと思いますが、新聞にも報道されておりましたが、二百五十兆、まあ二百四十五兆とか二百五十兆とか言われるわけですが、個人貯蓄のこれは六割。これに六%の利子をかけて計算して、年十五兆円の利子所得というものが非課税になっているという事態は異常なことなんです、言うまでもありませんが。この把握のためにグリーンカード制というものを提案がありながら、細かいことはもう御存じのことですから繰り返しませんけれども、主として自民党内の皆さんの御奮闘などによって、結局これは失敗に終わったわけだ。重大な税捕捉課題を、政府みずからが失敗をして、そして今度の国会には限度管理強化などということで、まさにお茶を濁すと言うほかないような形で、それもせっかくの税調分離低率課税という御提案を退けて、限度管理強化などということでお茶を濁そうというありさまであります。これは、政府がとらえられる税の課題をもって具体的に提案をしておきながら、それが失敗に終わったという事実は、非常に重大なんであります。これだけ財源探しに躍起になって財政危機を訴え続けておるこの政府のもとで、この事実はやはり非常に重大な事実だ。そういう認識が、そういうことに対する反省構えがなくて、そこを素通りにしてこれから税制改正の本格的な根っこからの洗い直しだ、大改革だなどということをおっしゃっても、我々はこれはどうも余り説得力がないように思う。  それだけではありません。法人税率の問題にしてもしかりであります。あるいは退職給与引当金繰り入れ率改定の問題にしてもそうです。これは大臣がお出かけになった後で局長さんなどにお尋ねするようなことになるでしょうけれども、いずれも財界の抵抗で増収チャンスをみずから失っておるんです。これは私は非常に遺憾にたえない事実じゃないだろうかというふうに思うのでありますが、大蔵大臣がどういう受けとめ方をしておられるのか、お尋ねをしておかなければならぬことだろうと思うのです。
  14. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに、利子配当所得につきましても包括的な総合累進課税対象とすることが望ましいとの考え方は、基本的に今後とも維持されてよいとする意見税調でも多く述べられた と報告されておりますし、私もその考え方は維持されてよいという意見を今でも持っております。グリーンカードの歴史をひもといてみましても、確かに総合課税対象とするという物の考え方から、それを正確に把握するという思想で取り入れられたものであり、そして厳粛な事実としてとにかく国会を共産党の反対のみで通過したという事実があります。その国会でクリアされたものを、その後意図せざる問題とか、いわば国民に十分理解されない状態の中で、その問題をまず政令でもって延期し、法律でもって凍結し、そしてこのたびはこれを廃止する、こういうことになるわけであります。  しかも、いつも思いますのは、いわゆるグリーンカード制提案者大蔵大臣竹下登でありましたし、政令、そして法律改正、全部同じ大蔵大臣がやって、今度また廃止の大蔵大臣をやるわけでございますから、これは本当に罪万死に値すると言うとちょっと表現が大きいんでございますけれども、確かに私は大変な不信任を受ける要因の一つとしてあってもいいぐらいの気持ちで本当におります。  しかしまた、考え方によりますならば、そういう国民世論の中でその方策を模索しながら次善の策をとっていくのも、また一人の者の継続の中で行うのにもあるいは意義があるのかな、踏みとどまって引き続き御協力お願いをしておるところであります。  これはグリーンカードの一例でございますが、いつも思いますのは、いかなる立派な政策といえども国民理解協力なくしてはそれが実行に移すことができないということを思い出しつつ、みずからもこれから反省の糧として持っていかなきゃならぬというふうに考えております。
  15. 渋沢利久

    渋沢委員 竹下さんが出して竹下さんが引っ込めたという話を私は言おうかと思ったけれども、まあこれはやめようと思って削っておったら御自身がおっしゃるので、あなたらしいけれども、控え目なポーズが売り物の構え竹下さん時代のことで、今度はその殻を破っていこうというのですから、過去のことは過去のこととしてこれから大いに期待をしたいと思う。しかし、やはり自民党政府としては、私が申し上げたことはしかと受けとめてこれからの税制改正に取り組んでもらうということでなければ困ると思う。  そこで、時間がないので大蔵大臣税制改正を本格的に進める上で、予算委員会等審議新聞等でかいま見るという程度で正確でないかもしれませんけれども、印象としては、どうも税制改正の焦点は短絡的に大型間接税の導入問題に集中して議論がされているように思うのです。あの型かこの型かというファッション選びのような議論も大変あったし、もちろんそれも非常に大事な議論でございますけれども、私は、むしろ今大型間接税、新税を考える以前の課題が、税制改革の抜本的な見直しというならばまず検討する最初課題、入り口だろうというふうに考えておるわけであります。  それで、大臣、時間が余りないようですから私は多く指摘ができないことが残念なんですけれども、まず現行税制を徹底的に洗い直す、グリーンカード問題の反省がもしあるというならば、まさにそこで今まで捕捉できなかった部分についてどうつかみ直すかということを含めていま一度出発点に立って再検討する、こういう姿勢がなければならぬ。今どこを見ても搾りようがないということを前提にして、ただ大型間接税あり方だけに目を向けるということは、これはすりかえだと思う、例えば利子配当課税を含むキャピタルゲイン課税をどうするのか。税負担の公正を期するということをまともに考えるなら、世界に例のないようなこういう税のあり方というものを本気で洗い直すということをしなければ、これは何が税の公正だ、何が税制の根本的な検討だということにならざるを得ないと思うのです。これをどう考えているのかということを指摘をして、お尋ねをしたいわけであります。  所得税累進税率、確かに中曽根さんおっしゃるとおりひずみだというのはあの部分で、簡素化というのもそこから出ているのだろうと思います。七〇%の所得税は高過ぎると思うからアメリカに倣ってこれを三段階だとか下げるとか言っているけれども、アメリカが下げるというのは、すべての特別措置を外して、そしてそのすそ野を広げてそのかわり税率を下げるという構造だ。こっちはキャピタルゲイン課税はもう野放しで、高額所得者には所得税率が高いけれども、一方では株や配当利息じゃ野放しに資産収益というものに対して過保護の仕組みを保障しているわけですね。ここに触れないで税制議論はないというふうに私は考えておるわけです。  時間がというメモが入っておりますから、大臣、まず私は新税問題以前の課題をきちっとすべきだと考えており、例えばということで幾つか申し上げたけれども、この辺の大蔵大臣としての姿勢お尋ねしておきたいと思うのであります。
  16. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに中曽根さんは公平、公正、簡素、選択、こういう言葉で抽象的な表現をされておりますが、いわゆる見直しという問題については、当然のこととして現行税制あり方についてのもろもろの反省というものが前提にあることも、私もそのように理解をいたしております。したがって、例えばということでキャピタルゲイン問題等の御議論もございましたが、それらも含めてまさにこれから公平化適正化という点からいろいろ国会においても御議論をいただくであろうと思っております。  幾らか気になりますのは、時間も参りましたが、私個人大型間接税という言葉を実は使ったことはございません。非常に注意して今日まで来ましたが、何だか大型間接税という言葉がひとり歩きしたような感じがしないでもございません。しかし、私もきのうまでの集中審議等を含めた反省の中に、記者会見で談話を求められましたが、まず国民方面意見を聞くというのが、私はいつでもそれの機会がまず国会ありきということで考えております。従来からの体験からしても、国政全般の一部としての位置づけをされる税制問題が予算委員会議論され、それが専門委員会である大蔵委員会の方へつながれていく、そこでより濃密な議論が行われていくであろうということを期待して、それを念頭に置きながら、正確に税調等にもお伝えして御審議をいただくという手法を冷静に私もこれからとっていこうと思っておるところであります。
  17. 渋沢利久

    渋沢委員 小倉税調会長にお忙しい中をお出ましをいただきましたので、最初会長幾つかの点をひとつお尋ねをして御意見を伺いたいと思うわけであります。  昨年の暮れに自民党税制改正大綱政府税調答申が出ておるわけです。マル優、郵貯などの非課税貯蓄改革をめぐって非常に議論があった。これは私を含めての世間の予想のとおり、党の税調が決めた方向で決まってきたわけであります。  これは今回に限らず、ここ数年、いわゆる自民党税調政府税調というものの動きといいますか答申の中で、いつも党の税調方針というものが高さにあるのですね。そして政府方針を決めさせているという流れになっていると思います。これはマスコミが、党高政低、まさに党税調こそ高いところにあり、政府税調は低きにあるという表現で、これが常用語になるような傾向というものは、私はこれは非常に残念で遺憾千万なことだと考えておるわけであります。  これは私が申し上げるのもおこがましい話なんでありますけれども、こういうことを通して最近の政府税調に対する信頼度というものはかなり欠くような傾向がある、不信感もある。税制専門誌などを読んでみましても、税制にかかわるさまざまな専門家の中でもそういう批判なり不信感というものはかなり出ておる。最近特にそういう傾向を私は感じるわけであります。  政党はいろいろ方針を持って政府影響を与えるということは当然あるでしょう。いろいろな陳情団体利害関係者の要請を受けて方針を出すということはある。しかし、まさにそういうものも含めて政府税調は、その種のところから離れたところで、総理の唯一の日本税制についての最高の専門調査機関答申機関として、やはり何物にも影響されない、権威のある方針というものを出してほしい。まさに党高政低なんということが出てくるような状況を何とかして私はなくさなければいけない、日本税制が一政党影響によって振り回されるというような傾向はいいことじゃないというふうに感じておるものですから、これは一度機会があれば小倉会長にお伺いしたい。お伺いしたいといいますよりは、ぜひ今後ひとつ、そういう願いがあるということを受けて、御努力を願いたいというふうに思っておるわけです。特に、税調答申でも、先ほど大臣が披露されたお話を聞くまでもなしに、異例とも思えるような異常な決意でこの税制改正に向かっての根本的な再検討というものの必要性を強調されておる、そういう大事な時期であります。このことを私の意見として申し上げて、会長の御意見を伺ってみたいと思います。
  18. 小倉武一

    小倉参考人 御意見でございますので、特にとやかく申し上げることもないと思うんですけれども、政府税調の役割というのはどういうふうに考えていいのか。余りそういうことを税制調査会論議したこともございませんので、税調全体の雰囲気を踏まえてお答えといいますか私の感想を申し上げることにはなりませんが、したがって非常に個人的な感想でございますが、これは一つ政府税調との関係と、もう一つ政府と与党との関係、こう両方ございまして、政府と与党との関係は、我々政府税調のみならずほかの調査会皆同じだと思いますが、私どもの関与しないところですから政府税調だけに限ってみれば、政府は従来どおり税調を非常に重んじておられるということには私は変わりないと思います。世の中の方がどうお感じになっておるか知りませんけれども、大分長い間税調に席を汚しておりまして、感じでは、政府税調をたんたんと軽んじてくるというほどではないので、その点、党と政府といいますか、与党と政府との関係については私がとやかく申し上げることもないかと思います。
  19. 渋沢利久

    渋沢委員 そのことについては、それ以上お尋ねしようとは思わないんですが、これはしかし、非常に強いそういう目があるということだけは心にとめておいていただきたいということを申し上げておきます。  さて、先ほど大蔵大臣にも尋ねましたけれども、これから税調税制改正について本格的な議論をされるという場合に、先ほど申しましたように、間接税、直間比率の是正という言葉も党の大綱などの中には出ておりますけれども、単にそういうことではなしに、キャピタルゲイン課税を含めてまず既存の税制の徹底的な洗い直し、徹底した究明というものが行われるということが望ましいと私は思っているわけで、不公平税制の現状というものについて——不公平税制という言葉はどこでもいろんな形で使われておるわけですけれども、しかしその中身は非常に雑多なわけで、いろんな側面を持って言われておるわけであります。その中身を、原因を徹底的にやっぱり究明する。そして、現行税制のどこに欠陥があるのか、ゆがみがあるのか、不公平とは何だ、改革を必要とするものはどの税法のどこの部分だということについて、やっぱり国民にわかる形で議論をしていただき、まとめ上げていただく、そして国会もあわせて、まさに抜本的なシャウプ勧告以来の税制改正見直しというなら、大臣国会意見を求めたいとおっしゃっておるわけでありますから、国会も進んでこの議論に参画をしていくということが望ましいというふうに考えているわけであります。当然のことながら、税調においてもそういう観点で審議がされるというふうに考えているわけでありますけれども、いかがでございましょうか。     〔熊川委員長代理退席、委員長着席〕
  20. 小倉武一

    小倉参考人 大体と申しましては失礼になるかもしれませんが、御意見でお述べになりましたようなふうに私どもも考えております。  巷間、よく直間比率の見直しであるとかあるいは大型間接税の導入の可否とか、何か今後の税制あり方論議がその辺に焦点が移ったような感じ議論されておるようですけれども、税制についていろんな御批判もあり、そういうことも全部踏まえて今後の税制あり方を討議するということが当然であると思うのです。  先ほどの御意見の中にありましたように、非課税貯蓄に対する対策あるいは方針というようなものは、まかり間違って方針を誤りますと、今後の税制の抜本的改正に非常に大きな支障を与えると私は常々感じておりますし、今も感じておる次第です。
  21. 渋沢利久

    渋沢委員 せっかく小倉会長がお見えなので、ひとつ専門家の御意見として伺っておきたいのです。私も不勉強なものですから。  直間比率の問題が、この新聞の社説等を読みましても、比較的、直間比率の不均等の是正はもう当然である、これは天の声であるというような風潮が国会議論の中にもあるわけでありますが、税制を合理的に改正した結果として間接税の比率が高くなるということはあり得ることかもしれませんけれども、あたかも直接税の比率が高いということそれ自体が何か間違っているとか悪いとかということに立った考え方というのは、これは全くおかしいと私は考えているわけなんですが、そういう理解でよろしいかどうか。高い高いと言いますけれども、中曽根さんの大変常に模範とされるアメリカの場合も日本より高いわけでありまして、この高い低いの問題ということでこの議論をするということは、これもナンセンスだというふうにさえ考えているわけであります。こういう受けとめ方について会長の御意見は……。
  22. 小倉武一

    小倉参考人 直間比率の問題につきまして論議することを特にナンセンスだとも思いませんけれども、仮に日本の終戦後から今日までの直間比率の移り変わりを見てみますと、非常に直接税に偏ってきているというか、直接税に重きを置いてきている。結果的に恐らくそうなったということなんでしょうが、しかし考え方によりますと、あるいはそっちの方面の学者の先生方その他によりますと、直接税に重点を置く税制の方がいいんだという主張が従来非常に強かったと思うわけです。そういう主張の方から見れば、非常に日本税制はいい傾向をたどってきたということになるのだろうと思うのです。  ところが、どうも横並びに見てみますと、今アメリカのことをお話しになりましたけれども、アメリカ地方税というか州税をあわせて見ると、日本よりは直間比率がむしろ軽くなるというか、州の取引税がありますからね、取引税というのは相当ウエートがありますから、必ずしも日本ほど間接税が軽いとは言えないんじゃないかと思いますけれども、とにかくヨーロッパと比べれば日本は直接税に非常に偏り過ぎておるという、横並びに見れば当然そういうことになりまして、重い国では間接税が五割を超えているというような国もありますし、逆に直接税は四割という国もあります。そういう国と比べると日本はどうも間接税が少し軽く過ぎるのじゃないかというように見て、そこから物事を考えるという考え方も別に批判すべきものでもないし、それもいいかと思うのですが、しかし、そのことから直ちに個々の税制がどうあるべきかということには必ずしも結びつきませんので、お話しのように、いろいろ税制考えてみて、どういう税制がいいかということを個々に考えてみた結果の上で直間比率が出てくるというようなものだという大筋は、私どももそういうように考えているわけです。  したがいまして、これはまだ税制調査会を昨年の暮れ以来開いておりませんので、どういう審議になるかわかりませんが、国会でのいろいろの御意見の御開陳とか政府当局の意見の表明とか、そういうものも十分参考にさせていただきまして、漏れなく問題点を検討して、あるべき税制の姿を描く、こういうことになろうかと思います。
  23. 渋沢利久

    渋沢委員 特にこの機会に要望しておきたいと思うのでありますが、政府税調答申を読みましたときには、そこでは、抜本改正という方向性の中でやはり税体系論というか税制のゆがみをどうするかという観点で表現されているように思うんだけれども、自民党税調のあれを見ると、これは一にも二にも財政事情、財源の問題ということから出発をして、この税制改正の方向性というものが直間比率の云々ということに合わせた骨組みになっておる。これがこの二つを見て一つの特徴だというふうに私は印象を持ったわけですけれども、税収規模として増収が生まれるというような財源を間接税の増税に求めるという意味でのこの直間の見直しというような観点というのは、明らかに税の体系論からは外れた議論だというふうに私は思うわけであります。願わくは、税体系そのものが財源論のためにゆがめられるというようなことはあってはならないのではないかという希望を申し上げて、せっかく税調の御検討お願いしたいというふうに思います。  それから、これもぜひお願いを申し上げておきたいと思うのですが、やはりどうも税制というのは国民から見ていかにも密室的である。いつか申し上げた、なぜ政府税調というものが尊重されないか、総理大臣がみずからの直轄の諮問機関として諮問をしておきながら、しかもその答申が尊重されない、そうして自民党税調だけが大手を振って歩く。五役会議があってみたり、それがすべてを左右する、五役会議の秘密覚書がこの事態をつくっていく、こういうような趨勢は、やはり税に対する国民の不信を買うだけなんですよ。だから、たまには税調というのも一度オープンで、傍聴人を入れると公開というのは圧力団体の場になっていかぬというようなことでなかなかそういうことをおやりにならぬようですけれども、せめてマスコミぐらい入れて、どういう税調委員がどういう議論をしているのかというようなことをやはりわからせるような状態でやることが、税に対する認識、税の何が問題かということを理解してもらうという上からも、税調自身のとかくの批判を退けて税調の権威を認めていただくためにも私はそのぐらいのことがあっていいと常々思っておりましたので、会長にそんなことを御提言申し上げ、お願い申し上げて、私、小倉会長への質問はこれで終わらしていただきます。今のことで何か御意見があれば……。
  24. 小倉武一

    小倉参考人 簡単に申し上げますが、マスコミの一部の方といいますか大方といいますかを審議会に出席を求めてということは、確かに一つの方法かと思います。そういうことを論じたこともありますが、どうもうまく話が折り合いませんで実施はいたしておりません。ただし、総会は、終わりますと必ず役所の方から詳細に総会での議論あるいは質疑応答等をマスコミに公表するということにいたしております。  それからもう一つ、これは今後もそういうことをできるだけしたらいいんじゃないかと思いますが、特に重要な中長期の税制あり方等につきましては、途中で一遍、中で締めくくりをして中間報告的なことをやって、一般の御批判を請うた上でさらに審議を進めていくといったようなことも一つの方法ではないかと思っております。そういうことをやった例も一、二ございます。
  25. 渋沢利久

    渋沢委員 会長、せっかく大変いい御意見を言っていただいたのだが、議事録の公開などもないのですね。ああいうことも本当はおやりになった方がいいと思うのですよ。私は、少なくともマスコミには公開して、後のまとめた記者会見なんというのじゃなしに、それは全部が全部そういうことをやらないまでも、かなり大事な部分ではそういう措置をとるとか議事録を公開するとかという形で、開かれた税調——税制問題は、これに国民の信頼があるかないかというのは民主主義に対する国民の信頼をそのまま問われているというほど重要な問題だと思いますので、これはぜひそういう運営について心がけていただきたいということをお願いしておきたいと思います。どうも恐縮でした。  あとは、次官、局長がおいででございますので、せっかく政府が提起されております幾つかの課題についてお尋ねを続けさせていただきたいと思います。  最初に、貸倒引当金の法定繰り入れ率の引き下げに関する件について若干お尋ねをしたいと思います。  当初大蔵省は、退職給与引当金も法定繰り入れ率の引き下げをやるという方針であったはずなんであります。そうじゃなかったですか。これはどこで消えちゃったんですか、どこで沈没しちゃったんでしょうかね。これは、マスコミの、どの時期に財界がどういう方針を決めて、どういう働きかけをして、どういう物の言い方をした、自民党税調がそれを受けてどう対応したとか、いろいろ正確にあの流れをきちんと追っていくと、一つちゃんとリズムのある動きが鮮明になってくるわけでありますけれども、とにかくどうして消えたんだろうということですね。御説明いただきたい。
  26. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 退職給与引当金に限りませんで、私ども毎年度の税制改正作業は、夏ごろから実際の検討作業が始まり、政府税制調査会でも御審議を賜るわけでございますが、その段階におきましては、各種の現行制度についてのその時点での見直しをテーマにして検討するわけでございます。六十年度の税制改正に当たりましても、当然のことながら、これは五十九年度からの懸案になっておりましたから、退職給与引当金の繰り入れ率の問題について入念な議論をしたわけでございます。     〔委員長退席、熊谷委員長代理着席〕  退職給与引当金の問題に限定をいたしますと、これは御案内のとおり、企業の確定債務を、所得計算上どのように毎年度の額を位置づけるかという問題でございます。具体的には、企業の経理あるいは雇用状態の実態から見まして、退職予定年数等から、これは五十五年度改正したものでございますが、現行の四割の基準がいいかどうかということを議論したわけでございます。で、確かにこの問題につきましては、定年制の延長、それから特に安定成長期に入りまして従業員の安定度が非常に高くなっておりますので、退職予定年数が長期化する傾向にございます。したがいまして、現行の累積限度が適正かどうかというのは、絶えず見直していかなければならないということで見直したわけでございます。  六十年度の問題といたしましては、特に大規模企業の場合その予定年数の増加傾向が見られるわけでございますが、この点につきましては、別に財界からどうのこうのということじゃございませんで、関係省庁といろいろ議論をいたしました。その過程におきまして、これは外部引き当てじゃないものでございますから、企業に内部留保されてその運用利回りでもって究極的にはやはり従業員の退職金水準にも影響するという問題で、単に経済界のみならず労働組合の方からも、この問題については慎重に扱っていただきたいという問題提起のあったことも事実でございます。したがいまして、六十年度におきましてはこの問題につきまして現行の水準をもう少し見ようという経緯になっておりますけれども、委員が御指摘のように、この問題につきましては六十一年度以降も絶えず見直しを行って、引き下げられるべきものは引き下げるという方向で検討すべき問題だと考えております。
  27. 渋沢利久

    渋沢委員 政府委員室に引当金関係の資料を頼みましたが、どういうわけか、はいはいと言ってナシのつぶてでありましたので、私は自身で少し調べてみました。  この退職給与引当金と仮に貸倒引当金というものを二つ考えてみますと、退職給与引当金というものの利用状況は、例えば一億円以上の法人というのは全体の法人の約一%というふうになっておりますが、その一%の法人が八二%以上の利用状況になっておる。資本金五十億円以上の法人がこの制度の全体の五〇%以上の利用率を占めている。圧倒的に大企業利用の非課税措置という性格を持っておりますね。むしろ貸倒引当金の方は、この利用状況は、例えば資本金で見ましても、五百万円以下の法人の利用率が二一%、一千万以下の法人の利用率が三二・六%ある。一億以下で言うと四八・二%というふうに、これは利用率の状況からいうと、まだ貸倒引当金の方が中小企業もかなり利用しているという部分があるけれども、退職給与引当金の利用状況というものを見ると、これはもう圧倒的に大企業のための制度になっているという事実があります。労働者の立場から見ても、しかも外へ出して積んであるわけじゃないのです、内部留保ですから、まさにこれは利益留保という実体を実態として持っておるわけで、必ずしもそれは退職金として支払われるという担保になっているわけではないのです。現に、この委員会でも問題になりましたが、福島交通などは仕組みの上でこれを存分に利用して、留保しているけれども、退職金を首を切った者にも払わないで、未払いで紛争を起こしておるという例もあったくらいのことでありまして、やはりこういう問題になっているわけであります。  税財源ということで考えた場合、これは正確じゃありませんけれども、しかし専門家の試算によると、五%これを下げるというだけで四千億ぐらいの増収が見られるのじゃないか。経過措置を見たって、二千億から三千億の増収が見込まれるというふうに言われているものではないかと思うわけです。ですから、これは手をつけなかったと言うのはどうも私は納得のいく理由ではない。どこからの陳情があるとかないとかいうことは全く別な問題として、税制上やはり捕捉すべきものは捕捉するということでなければならぬというふうに思うわけです。  貸倒引当金の中身にいたしましても、金融保険業についてはこの前高過ぎたのでさわっているから、今度はさわらないということで触れずにいるわけですけれども、新しい改定によって特に低過ぎるわけでもないのです。むしろ高い。なおかつ、一番高いところでランクされているという状況であります。金融保険業なんというのは、幾つかの業種に分かれて貸し倒れ引き当てがありますけれども、担保を一〇〇%押さえて、引当金の必要なんかほとんどないと思われるような業種じゃないですか。これが一番高い。この前さわったから今度はさわらぬ、これも私は余りまじめな取り組み方じゃないという感じがするのです。こういうのはどういう根拠でこういうことになっておるのか、ひとつ教えてもらいたい。
  28. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま委員から退職給与引当金、貸倒引当金について幾つかの問題点の御指摘がございました。利用状況については、ただいま委員が御指摘になったとおりでございます。  ただ、一つ一つ申し上げますと、退職給与引当金と申しますのは、冒頭に私申し上げましたように、企業が労働者に負う確定債務を当期の損金としてどれだけ繰り入れるのが適当かという問題でございます。ところで、確定債務でございますので、退職給与引当金は、それぞれの企業が労働協約なり就業規則できちんと債務を負っておるということが前提になるわけでございます。私ども先年中小企業についてサンプル調査したわけでございますが、中小企業が相対的に大企業に比べてトータルとして利用状況が少ないと申しますのは、中小企業の場合、多くは労働協約とか就業規則で退職金を決めているのではなくて、例えば労働省が所管しております中小企業の共済事業団に事業主が掛け込みを行っておる。あるいは非常に小さい企業になりますと、退職規定がないというふうなこともございまして、結果的に大企業の利用状況が多くなるという事実でございます。ただ、これは大企業について非課税措置をとっておるのじゃございませんで、企業の所得計算上損金算入をどういうふうに認めるかということでございますから、税制上は優遇措置という問題ではないわけでございます。  ただ、もう一つ、これは委員が御指摘になりましたように、そういうふうに利益留保じゃございませんけれども、適正な内部留保として引き当てながら、実際に企業が倒産した場合に労働者に支払われない、つまり支払い保全の措置が講じられていないという問題は、従来から御提起がございます。私どもはこの問題につきましては、やはり民事法とか労働関係法との関係で整理をしていただきまして、それを税制上どう受け入れるかという問題であろうということを従来から考えておるわけでございますが、従来の経緯を見ますると、そういう外部積み立てになりますと運用利回りが下がるものでございますから、必ずしも事業主だけじゃなくて、従業員の方からも、それは結果的に退職金の水準を下げるおそれがあるという問題が提起されておるということを申し上げたいと思います。繰り返しになりますけれども、私どもは今後ともこの適正な累積限度、繰り入れ率については絶えず見直していかなければならないと考えております。  一方、貸倒引当金につきましては、中小企業も御指摘のとおりおよそ全体の四分の一くらい利用されております。業種の問題でございますけれども、今回はと申しますか、六十年度におきましては、金融保険業以外の業種につきまして、実績水準から見ましておよそ二割くらいの水準まで下げるという措置を予定しておるわけでございますが、金融保険業につきましては、五十八年度に見直しを行いました。これは四十七年の時点では千分の十五の水準にあったわけでございます。その後逐次引き下げてまいりまして、現行の水準になっておるわけでございますが、ただ、諸外国の例を見ましても、金融保険業の法定繰り入れ率というのは、他の業種に比べましてかなり税制上もその金融業の実態に即しまして慎重な配慮をしているようでございます。イギリスはここにございませんけれども、それ以外の先進国を見ましても、現在の各国におきます金融保険業の法定繰り入れ率の水準は、我が国の千分の三よりもおおむね上回っております。もちろん先進諸国の例に別に倣う必要はございませんけれども、私どもは現行の時点で金融保険業の千分の三というのは、これは経済変動で実績率も非常に変動いたしますので、一応適正な水準にあるんではないかということで、六十年度の改正ではこれに手をつけてないわけでございます。
  29. 渋沢利久

    渋沢委員 中小零細企業は確かにお話にあったように退職金規定もない、退職金の準備もできない、こういう状況ですね。ですから、そういう実態から見て、そういう零細な国民の目から見て、やはりこの制度がどう映っているかということを忘れちゃならぬということだけは申し上げておかなければならぬと思うのです。  時間がありませんから、利子配当課税限度管理の問題で若干のお尋ねをしたいというふうに思います。  これは、先ほど大臣への質問の中でもちょっと触れたんですけれども、少額という名の莫大な非課税貯蓄の制度でありまして、それ自体がまさに資産所得優遇の制度になっていると思うんです。この限度管理は本人確認と名寄せが勝負だ、決め手だ、こう言われているわけでありますけれども、本人確認については若干強化をされて、きめ細かくただすということが提起されておるようでありますけれども、この名寄せという部分については、これは一〇〇%間違いない名寄せのシステムができるというふうに理解をしてよろしいのですか。
  30. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま御提案申し上げております租税特別措置法、それから所得税法の一部改正法案におきましては、ただいま委員が御指摘になりましたように、非課税貯蓄、課税貯蓄を通じまして本人確認を現状よりも厳正化するという御提案を申し上げておるわけでございますが、ただ、この限度管理をパーフェクトにやるというためには、これも御指摘のとおりでございまして、本人確認と名寄せというものがきちんと行われないとできないわけでございます。  ところで問題は、大変大量な所得の発生でございますので、名寄せを行います場合には、非常に技術的な問題がございます。というのは、結局コンピューター処理をしなければならない。コンピューター処理ということは当然番号で処理をするということでございまして、先年提案申し上げましたグリーンカードは実はそういう考え方に立っておったわけでございますが、グリーンカードのその後の経緯等にかんがみまして、今回、本人確認を強化するという形での御提案を申し上げておるわけでございます。したがって、この提案に関する限りは、委員のおっしゃる意味でのパーフェクトな限度管理、名寄せというものは技術的な側面でやはり欠けるところがあると私どもは考えておりますが、現状より一歩でも前進したいという提案であるということを御理解賜りたいと思います。
  31. 渋沢利久

    渋沢委員 これは局長もお認めになるように、限度管理強化するということであれば、本人確認だけでは意味がないわけなんだ。意味がないとは言いませんけれども、これは極めて不十分なわけであります。やはり名寄せがあって、初めてそれが枠をどう超えたかということでの検討が出てくるということだろうと思うのであります。これはやはり、本人確認をちょっぴり強化するという程度にとどまらざるを得ないと率直にお話があったとおりだろうと思うのであります。これじゃ何の限度管理がというふうに思うわけです。  郵政省は来ていますね。——これは郵政の方は今度の方針の中でどういう対応をやろうとしているのか。  それから、これは大蔵省の方に聞きますが、例えば三百万の枠を超えた場合には、超えた部分だけではなしに本体を含めてその利子を課税対象にする、民間金融機関の場合は、そういう形であったと思うのです。郵貯の場合は、これはふえた部分だけということになっている。このやり方は踏襲されておるということで理解していいですね。そのことを含めて、郵政の方の名寄せなどの処理はどう的確にできるのかということについて説明してほしいと思います。
  32. 山口憲美

    ○山口説明員 御説明を申し上げます。  ただいま先生、それから主税局長からもお話がございましたように、限度管理には二つの側面がございまして、本人確認と名寄せ、この名寄せにつきましても、私どもの場合は枠が三百万というふうに内訳がございませんので、枠の名寄せというのは必要ございませんけれども、その枠の中での個々の預金が三百万の中におさまっているかどうか、この二つの問題につきまして対応しなければならないということでございます。  本人確認につきましては、現在のところ基本的には本人確認のための資料の提示を求めるということで対応しておりまして、郵便貯金法の二十五条の中にもそういったことで預金者にも御協力をいただくというふうな規定があるわけでございますが、ただ利用の実態といたしまして、郵便局は地域と比較的密着をしているというふうなことがございまして面識者が多いということから、例えばお隣にお住まいの方にまで資料の提示をお求めするというふうなことはいかにも不自然だということから、面識者については面識者であるという形で本人確認をした記録をとらせるというふうな形で現在やっておりまして、これでも不審な場合にはあいさつ状あるいは訪問をするというふうなことにしているわけでございますが、今回の措置によりまして、今申し上げましたような面識者でございましても、お隣に住んでいるような明らかに本人であることが確認できるような方でありましても、公的証明資料の提示を求めるというふうな形になっておりまして、そういった意味では、先生が御指摘の本人確認という意味では非常に内容が充実されてきているというふうに私どもは考えております。  それからまた名寄せの問題でございますが、名寄せにつきましては、私どもは全国どこの郵便局でも預金をしていただくことができるわけでございますけれども、必ず一人の方は一カ所に集中をして管理をしておりまして、一つの貯金センターに集中して管理をしておりまして、現在のところ氏名と住所をキーにいたしまして管理をさせていただいております。おかげさまで全国オンライン化というふうなことも完成をいたしまして、コンピューターでの処理もできるようになってきているというふうなことで、効率化も図られてきております。そこで、今回の税制改正の中では、生年月日を預金者から求めるというふうなことの措置が所得税法改正の中にありましたので、この生年月日がもしいただけるということでありますと、これは非常に不変の要素ということになります。一生変わらないというふうな要素でございますので、こういったものをさらにキーに加えますと重複して預金をされるというふうなことがしにくくなるということがございますので、この生年月日というのも一つの有力なキーとして名寄せをしていくということで、私どもといたしましては今回の措置でかなりの限度管理の実は上がるというふうに考えております。  具体的な実施に当たりましては、このやり方というのは、マル優の名寄せ、枠名寄せというふうなものともかなり共通の手法でやれる部分というふうなものがございます。そう私ども考えておりますので、マル優のやり方というふうなことにつきましてのアイデアもいただきながら、あるいはまた私どもも考え、アイデアのようなものも持っておりますので、そういったものの情報を交換しながら、ひとつぜひ限度管理の厳正化を図ってまいりたい、こういうふうに現在のところ考えているということでございます。     〔熊谷委員長代理退席、委員長着席〕
  33. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 民間のいわゆるマル優の限度額を超えた場合の課税処理と、それから郵便貯金の場合との問題でございますけれども、これも委員がおっしゃいましたように、郵便貯金につきましても三百万円を超えますと全部課税対象にする、その意味で民間とイコールフッティングを図るという考え方もございます。そういう議論もいたしました。  ただ、今回郵貯の場合は、先ほど郵政省からもお話しございましたけれども、民間と同じように本人確認を厳正にしてもらえる、そこはイコールフッティングにしていただく。それから、限度を超えました場合、従来は故意、重過失という預入者の主観的要件が入っておりましたけれども、今回はそういう主観的要件なしに、限度オーバーすれば即課税の事態として判断するという客観的な基準といたしました。  同時に、限度オーバーのいかんを問わず、本人確認の書類で証印のないものについても課税処理をする。その場合に、郵政官署がその種の利子の支払いを行われた場合には税務官署に通知をしていただくというふうな、いわば課税の強化と申しますか、適正化の措置も講じております。  それともう一つは、郵貯の場合は民間と違いまして、ただいまもお話のありましたように、郵便貯金という一つのシステムの中で限度管理が行われるという建前になっておりますので、今回の場合は、郵貯につきましては限度をオーバーした部分についてだけ課税処理をするということで一応御提案を申し上げておるわけでございます。  名寄せの問題につきましては、先ほども問題がございましたけれども、私どもは、国税庁、郵政省ともに名寄せの適正なあり方についてやはりいろいろ勉強していかなければならない問題があると思います。現状のままでいいとは私どもは考えておりません。
  34. 渋沢利久

    渋沢委員 どうも郵政と大蔵省の名寄せの部分なんかも際立ってニュアンスが違う。郵政省の今の話を聞くと、名寄せもきちんとやります、両方やらなければいけません、本人確認もこれは前よりよくなりました、これならやれます、しかし、マル優さんの方のやり方といろいろ交流していかなければ本当のものはできませんというニュアンスで言っておるように聞こえたのだが、先ほど局長が正直に、率直に言われるように、本人確認はちゃんとやるようにはしたけれども、名寄せの部分まで民間金融機関を的確に駆使してやるだけのシステムづくりはこれは正直言ってできない、そこまではできないという形のものになっておる。これはニュアンスも考え方も違うし、同時に、政府税調でも言っておったと思うけれども、民間と郵貯がイコールフッティングにならなければ何の効果もないということ、それはそのとおりだろうと思うのですが、その辺のところでこれは大変適当なところの方針になっておるなという印象しか受けないわけです。  郵政省がせっかく見えているからちょっと聞くけれども、税務調査ということについて私、自民党の五役会議の文書がちょっと頭にあるのだけれども、五役会議ということは別にしても、今まであなた方の局でおやりになってきた対応、これを継続していく、これをよりきちんとしていくというか、そういう形で受けとめているということですね、この部分については。
  35. 山口憲美

    ○山口説明員 御説明を申し上げます。  税務調査につきましては、現在、いわゆる反面調査という形での税務調査を受けておりまして、これは今御指摘のように継続して受けていく、こういうことでございます。
  36. 渋沢利久

    渋沢委員 どうもこれは、「税経通信」で福田さんという前の国税庁の長官ですか、「全く徹底しない限度管理に終わった」、彼の言葉をそのまま言うと、そういうことを言っておりますけれども、まさに今の説明を聞いておってもそういうことだろうと思うわけであります。  それで、今平均的に世帯の貯蓄というのは四、五百万、五百万から六百万とか、最近少し上がってきているというようなことで言われていますけれども、しかしいずれにしても三百万、三百万、三百万で九百万、それから郵便貯金の場合は住宅積み立ての五十万というのもあるのだな。財形がある。一人でしょう、これは。四人世帯の家族なら、四つ掛ければ、それは大変なものが非課税対象になっている。こういう資産所得の優遇措置なんですね。ですから、わずかな税で苦労している、あるいは勤労所得のサラリーマンの立場から見ても、これは今までの政府の対応あるいは今回の措置というものは全くおざなりに過ぎる。福田さんが言うように、全く徹底を欠いた限度管理だということになっているわけであります。非常にこれは遺憾と言うほかはない。  しかし、これが精いっぱいだというのが正直な局長の説明だろうと思いますが、これじゃほとんど変わってないですね。ほとんど変わらない。税務調査という部分についても、今郵政省が率直に言うとおり、あの五役会議やさらにその秘密覚書で解説されているように、新聞を通して世間にもこれは明らかになっているけれども、これはまさに慌てないで細かいところは適当にやるということで、大体従来どおりの方向で、ただ形ばかり本人確認を強めるという措置に終わっているということのように思います。  この件はもう時間がないので終わりますが、最後に、これは局長でも次官でもいいですからちょっとお尋ねをしておきたい。  実は大臣と少し時間があれば議論をしたかったというか、意見を聞きたかったところなんですけれども、私は先ほど、税制改正に取り組む観点について、それは新税以前、大型間接税以前の課題にこそ責任を果たすべきだという意見を申し上げたわけでありますけれども、しかし、いずれそれは税調あるいはその他の検討の中で出てくるという心配を持っているわけであります。ただ、考えなければならないのは、一体近い将来に大型間接税を導入するような経済的な環境なのかどうかということについては大変疑問を持っておる。わからない部分もありますので、最後にそれをひとつお尋ねをしておきたいと思うわけです。  今の経済の状況で、輸出は非常に伸びておる。世界の状況アメリカも非常にいいと思います。輸出が伸びるということの中で、例えば中国の関係も非常に伸びている、いい。鉄もいいというような形で、設備投資も非常に伸びている。今の景気回復はまさに輸出、設備投資主導の景気という状況になっていることは言うまでもないと思うのでありますが、しかしそういう中でも、業種間のばらつきが依然として残っているということと、あわせて中小企業の史上最高の倒産、これは前年比八・八%増、この一月も同じ状態です。千四百二十件、まさに史上最高という数値を出しておる、今こういう特徴がある。景気回復景気回復、輸出は伸びた、こう言われながら、一方では史上最高の中小の倒産が進んでいく、こういう状況があるというのが今の特徴だろうというふうに思うのですね。  この一月の倒産なりここ数カ月の状況を見ましても、倒産の業種で見ると、トップが建設で二番が繊維で三番目が食品で四番が不動産なんですね。衣食住なんだな、どういうわけだか。衣食住四業種が倒産の中で四六・五%、半分近くを占めているという形になっている。専門の機関が分析したところによれば、その倒産理由の大部分は、やはり個人消費が低迷しているというこの影響。公共事業が圧縮されている、住宅建設が多少伸びてきたという部分があるけれども、しかし流れとしては伸び悩んでいるという、これがそれぞれ複合した形であらわれている、倒産理由になっている。放漫経営でおかしくなったという例はほとんどない。去年、大沢とかリッカーでしたか、比較的大型世間を騒がすような倒産がありましたけれども、技術革新にちょっと乗りおくれた、そういう特殊な失敗といいますか経営不振というような形のものがありましたけれども、おおむねやはり個人消費の低迷ということを下敷きにしてこの史上最高の中小倒産が進んでいる、こういう状況があるわけですね。  ですから、これは今の日本経済の中で政策課題としても最大の問題である。個人消費をどう伸ばすか。内需をどう伸ばしていくのか。輸出依存型で、そしてこれがますます甚だしくなって、これで保護貿易でも出てきて輸出が参ったというようなことになると、これはえらいことになるんじゃないかということはだれしもが心配しているのであります。どうしてこの内需喚起、個人消費を暖める手だてが必要かということが、やはり今の政策課題の主要な部分だろうというふうに思うのです。  これはずうっと悪くなってきている。厚生省が去年の九月に出した一世帯平均所得を見ましても、前年比の伸びが、五十六年が六・九、五十七年は三・四、五十八年は二・九、こういうひどい落ち込みである。ことしも春闘がありますけれども、どこまで伸びるかということで、やはりなかなか難しい課題もある。こういう状況の中で、こういう経済状況はかなり続くと見なければならぬ。いや必ず伸びます、伸びますということを政府は言ってきたけれども、実際はここ数年伸びていないというこの状況の中で、私は、近い将来大型間接税、消費税をこの財政の危機を乗り切る主要な手だてとしていくというこの感覚、こういう政策の選択というのは、こういう経済状況の中で何をもたらすんだろうか、デフレ傾向、効果を招く以外にないという状況の中で、第二臨調以降冷え切っている個人消費の低迷をさらにひどい状態にしていくというふうな心配があるわけであります。やはり経済的な状況というものを見て税制というものは考えられなければならない。税制が体系的に理屈が整った、あるいは財政的なバランスが数字の上でとれたといっても、それで日本の経済や景気というものがおかしくなったんではどうにもならぬということがあると思うわけであります。こういう状況認識に立って私は、これからの税制改正議論の中でも、大型の消費税、間接税というようなものの扱い方は、これは極めて慎重な配慮が必要だというふうに思っているわけでありますが、次官あるいは局長の御見解を伺っておきたい。    〔委員長退席中川(秀)委員長代理着席〕
  37. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 最初にお断りしなければならないわけでございますが、これは先ほど大臣も御答弁申し上げましたように、今後の税制改正に当たってどういうふうな税体系の御議論になるかということはこれから税制調査会で御議論いただくわけでございまして、ただいま委員が新しい間接税を導入した場合という想定のもとで議論をいたしますと、いろいろ税制当局として世の中に予断を与えるという問題でもございますし、私どもは全く白紙の状態でございますので、そういう前提ではなくて、一般的に租税政策を展開する場合の委員の御注意という点で申し上げさせていただきますと、当然のことながら、税制というのは経済に対して中立でなければならない、それが基本でございます。ましてや、経済社会の順調な発展に対して税が干渉するあるいは阻害するということは極力避けなければならない、これが要請でございます。  その場合に、今御指摘のありました国民の消費支出も含めまして、その税体系がどういうふうな影響を与えるかというのは、個々の税目だけの議論ではなくて、直接税、間接税を含めて一体個人の可処分所得がどうなるのか、あるいは消費選択にそれぞれの消費税がどういう干渉を及ぼすのかという点から議論さるべきものでございます。究極的にはやはり国がとります総合的な経済政策の中で租税政策というのが適当な役割を果たしているかどうかという観点は、もちろん御指摘のとおり重要でございます。そういった観点も含めて、今後税制調査会でいろいろ御議論になるということを私どもは期待をしておるわけでございます。
  38. 渋沢利久

    渋沢委員 せっかく中村次官が座っていらっしゃるので、手持ちぶさたでございましょう。残された何分かの時間ですから、出番はちゃんとつくってお尋ねをしておきたいと思うのであります。  「増税なき財政再建」ということは中曽根内閣の一枚看板であるわけでありますが、最近十年間の税負担の伸びというものを見ますと、これは十年着実に、確実に増税が続いておるんですね、続いておるわけであります。五十六年、これは第二臨調が発足した年ですけれども、ここで二二・八、六十年には二五・二というふうにきちんと伸びておる。まさに十年連続増税の歴史を刻んでおるということなんですよ、「増税なき財政再建」という大看板のもとで。そしてまた、例えば五十六年と六十年というもので国債費とそれから地方財政費と一般経費を見てみますと、地方財政費は五十六年には一八・七だったものが、六十年には一八・五というふうに減っておる。一般経費は六七・一%から六二・一%というふうに、当初予算で見て減っているわけです。ところが、国債費は一四・二から一九・五というようにふえているわけですね。  増税は着実に行われておる。国債費は確実にふえておる。これじゃ「増税なき財政再建」はまさに失敗の巻であったというものでしかないように私には読めるわけなんでありますが、どういう認識にお立ちになるか。これから税制改正の問題をいろいろ議論していく上で、先ほど私は経済環境のこととかいろいろ申しましたけれども、いろいろな角度で物を十重二十重に見て、そしてひとつ考え方を整理していかなければならぬということで考えてみますと、残念ながら「増税なき財政再建」というのはもう既に失敗をしている、まずこう言わざるを得ないというふうに思います。  で、財界の方も大変近ごろおかしいのでありまして、「増税なき」こう言っておったけれども、それは法人税など企業利益を損なう部分についての増税に反対なんであって、大衆消費税的なものはこれはやむを得ないんじゃないかというような言い方を最近の財界筋は大胆におっしゃるような風潮になってきているということでありますが、「増税なき財政再建」について、その進路についていかにお考えかということを最後に伺いまして、私の質問を終わることにしたいと思うのであります。
  39. 中村正三郎

    ○中村(正三郎)政府委員 大変難しい御質問でございますが、臨調の言う「増税なき財政再建」ということの定義でございますが、渋沢先生御案内のとおり、税制上の新たな措置をとって増税を図るということだと定義をされております。でありますから、税の自然増収でございますとか、それから不公平税制の是正でございますとか、あらゆる税体系の不公平の是正だとか合理性の追求だとか、そういったことによって税収がふえてきたものについては、「増税なき財政再建」に反しないというふうに考えるわけでございます。こういうことにつきましては、臨調の瀬島龍三氏も国会において、「歳出の合理化、削減ということが一つの柱で、もう一つの柱が、将来のわが国の経済社会の情勢に即して公平かつ適正な税を検討する、この二つの柱が税調中期答申の柱になっておりますが、この線につきましては私どもの臨調が考えました方針と基本的には矛盾をしておりませんし、認識はおおむね共通しておる、」というふうに答弁をしているわけでございまして、この臨調の「増税なき財政再建」ということは基本路線として考えながら財政再建に当たっていくべきであろうというふうに考えております。
  40. 渋沢利久

    渋沢委員 終わります。
  41. 中川秀直

    中川(秀)委員長代理 上田卓三君。
  42. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 今国会大型間接税をめぐる首相なりあるいは大蔵大臣の発言を聞いておりますと、どうも字句の解釈によるところの言葉遊びというのですか、一種の詭弁を弄して大型間接税の導入のレールを強引に敷こうとしているように思われて仕方がないわけであります。  一月の三十一日の予算委員会での我が党の田邊書記長の質問に対する首相の答弁では、この流通の各段階に投網をかけるような消費税は考えておらず、一般消費税型の大型間接税は導入しない、こういうふうにおっしゃっておるわけです。そして二月の六日の首相の再答弁では、多段階、包括的、網羅的、普遍的で大規模な消費税を、投網をかけるようなやり方はとらない。この時点では流通の各段階にわたる一般消費税は、EC型付加価値税、取引高税、そして七九年に大平内閣が導入しようとした日本型の一般消費税のいずれも導入しない、こういうように我々は受けとめておったわけであります。  ところが大蔵省は、何が何でも大型間接税を導入したい、こういう意図であろうと思いますが、その後、EC型の付加価値税は相変わらず検討課題である、こういうように強弁をいたしておるわけであります。大蔵大臣は、六日の首相答弁にはEC型の付加価値税は含まれていない、あるいはまた、多段階、包括的などの制約条件が一つでも欠ければ検討の余地がある、あるいはまた、EC型付加価値税にもいろいろな態様があり、多段階だからといってすべてを否定するものではない、こういうような論法は、全く言葉をもてあそぶというのですか、言い逃れでありまして、大型間接税の導入、税制の大改革という全国民的な大問題をまじめに議論する姿勢とは言いがたい、こういうように思うわけであります。  この流通の各段階に投網をかけるような消費税とは、まさに物品税などの個別消費税に対して税理論上の一般消費税を指しているわけでありまして、EC型付加価値税は当然この中に含まれておる、このように我々は解釈をいたしておるわけでありますが、その点について、大蔵大臣の明確な答弁をいただきたい、このように思います。
  43. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに多段階、こういう意味におきましては、EC型付加価値税というのはそのとおりでありますから、多段階という限りにおいては、私はそのとおりであろうというふうに思っております。  ただ、私も最初は解釈に困りましたが、網羅的、包括的、大規模ということになりますと、そしてその上に投網をかけるということになりますと、やはり物としては感覚的におっしゃったものじゃないか。これはふまじめという意味じゃなく、まじめに最初は漢和辞典を引いてみて、そうすると、大体同じことに、例外なくというような意味になります。例外なくということになると、一方に例外のないルールはないということわざもある。投網ということになると、網の目によってはまたというようなことになりますと、実際これはまじめに考えてみてなかなか難しい問題だな、だから、やはり観念的におっしゃった問題であろうというふうにこれは理解せざるを得ないなというふうに私は考えております。  したがいまして、今御意見を交えての中にございましたように、私みずからを反省してみますと、あの五十四年の国会決議をちょうだいしますときに、いわゆる一般消費税(仮称)という手法は国民理解を得られなかったから、これはとらない、こういう決議になっております。あのときに、私も大蔵大臣でございましたからここへ来ましていろいろ話し合いをして、そのときの僕の頭にあり過ぎたのは、消費一般にかかる税制全部が否定されたら大変だというふうなのが先行しておって、そこで局限しよう局限しようというふうにお願いをしたという、私のある意味における反省もございます。したがって、観念的に言った場合の多段階、網羅、包括、大規模、投網というようなものが、EC型がそれずばりのものであると言うこともできるでございましょうし、それはずばりそうですということも態様の異なり方がございますから厳密には言えないんじゃないか、こんな感じがしております。
  44. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 漢字辞典ですか、国語辞典でもいいと思いますが、それを引いてみますと、包括的というのはひっくるめて一つにまとめる、それから網羅的というのは残らず取り入れること、それから普遍的というのは広く行き渡るあるいはすべてのものに共通に存在すること、こういうふうに説明されておるわけですが、これらは、個別的なものあるいは特殊なものに対してすべてに共通なもの 一般的なもの、こういうふうにあらわした言葉ではないか、こういうふうに思うわけであります。つまり、多段階あるいは包括的、網羅的、普遍的で大規模な消費税とは税理論上の一般消費税あるいは大型間接税にほかならない、私はこういうふうに思うわけでございます。そういう点でEC型の付加価値税というのはまさしく典型的な一般消費税である、こういうふうにとらざるを得ないわけでありまして、そういう点で、大蔵大臣はこのEC型の付加価値税というものを本質的にどのようにとらまえられておるのですか。これは消費税ではない、一般消費税ではないというふうにお考えですか、どうですか。
  45. 竹下登

    竹下国務大臣 これは消費一般にかかる税制でございますから、私も消費税であるというとらまえ方はそのとおりだと思います。EC型といった場合はそれに多段階というものがくっついて、単段階の消費税じゃなく多段階の消費税だというふうには私も認識をいたしております。
  46. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 EC型の消費税というのは多段階である、こういうことでありました。要するにEC型の付加価値税、これは先ほども申しましたように各国ごとにいろいろな形があるのは当然ではないか、私はこういうふうに思っておるわけで、問題はその基本的な性格が問題ではないか、こういうように思っておるわけであります。  一昨日の予算委員会の集中審議で、我が党の稲葉誠一代議士の質問で、投網をかけるようなものでないところのEC型付加価値税の具体例を示せ、こういう質問がありまして、それに対してまともに総理なり大蔵大臣が答えられない、こういうようなことがあったと思うわけであります。一般消費税であれば、いわゆる投網をかけないようなそういうEC型付加価値税というものは考えられない、私はこういうように思うわけでありまして、そういう点で、七九年十二月の国会決議で否定されたところの一般消費税(仮称)というのはそれではどういう税なのか、その定義について、大蔵大臣、明確にひとつ御説明いただきたい、こういうように思います。
  47. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 五十四年の税制調査会が大綱としておまとめになりましたあの一般消費税(仮称)というのは、まず類型からいいますと、ただいま委員が御指摘になっておりますように多段階の課税ベースの広い間接税の一類型でございますが、その場合に、各段階の累積を排除するための前段階の控除方式がいわゆる仕入れ控除という計算方式によって行われるという仕組みのものでございますが、かつ、あの大綱に示されておりますように、納税義務者、免税点、非課税範囲、それから納付方法、それから大事なものは税率でございますが、それから各個別税目との調整という具体的に提案された税目であるというふうに私ども税制当局は理解をしておるわけでございます。
  48. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 EC型付加価値税はいわゆる多段階の一般消費税である、そして国会決議で否定されたところの一般消費税(仮称)、これは単段階である、こういう一単段階になるのかどうかは別にいたしましても、いずれにしてもこれは一般消費税であることは私は間違いないと思うのですね。多段階であろうと単段階であろうとこれは一般消費税であることには間違いないわけでありまして、税法上の本質は同じだ、こういうように思うわけでありますが、いわゆる国会で否定されたところのこの一般消費税(仮称)といわゆるEC型の付加価値税、これは多段階とそうでない、それだけですか。区別をどこに置かれておるのですか。
  49. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 先ほど申し上げたとおりでございますが、五十四年の一般消費税(仮称)につきまして国会決議がございました。その後税制調査会では、用語が非常に紛らわしいものでございますから、「課税ベースの広い間接税」という言葉を使っているわけでございますが、これは学問上の議論としては、今委員がおっしゃったように一般的消費税と規定しても構わないと思います。その類型の中で、先ほど申しましたように、五十四年の税制改正大綱でお示しになったものは、納税義務者とか非課税範囲とか税率、納付方法、他の個別消費税との調整という具体的な中身を持った税目として提案されておる。その意味で、一般的に議論します場合に、五十四年に提案されたものはああいう具体的なものでございますから、いわば個別具体的なものと一般的な概念との差である。  御質問の趣旨が、類型としてEC型とそれから五十四年の型とはどこが違うかとおっしゃいますと、税の類型としては、先ほど申しましたように、前段階を控除するやり方が仕入れ控除という計算方法でやるのか、あるいはEC型の場合でございますと仕送り状を発行し、それから受けた方はこれを保存する、つまりインボイスによって前段階の税額控除を行うというところが基本的に違うというふうに言われております。
  50. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 そういう点をさらに、政府税調の一般消費税のいわゆる特別部会試案ですか、そういう中にそういうものが述べられておるわけでありますが、その中で、新税の「具体的仕組みの検討に当たっての基本的考え方」、こういうところで、「当特別部会が提案する新税は、仕入控除方式の採用等により税額計算や申告手続等が大幅に簡素化されていること、また、小規模零細事業者をEC諸国に比べてかなり広範囲に除外することを想定していること等の点で、EC諸国で実施されている付加価値税とは異なっている。」こういうふうに述べられておるわけであります。  つまり、我が国ではこの一般消費税の経験に乏しい中小零細企業が多いという経済的な事情もあるので、EC型付加価値税よ力いわゆる手続を大幅に簡素化し、適用対象を広範囲に除外する、そういう案ではなかっただろうか、こういうふうに思うのですね。そういうことになりますと、一般消費税としてはより簡素な日本型一般消費税すらだめということになっておるのに、いわんやより徹底した、完備されたEC型が検討に値するというのは、どうも我々国民にとって理解がしがたい、こういうふうに思うわけでありますが、そういう点について論理的な矛盾はないのかどうか、大臣にひとつお答えをいただきたい、このように思います。
  51. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 今おっしゃいましたように、五十四年の一般消費税(仮称)は、当時の時点で税制調査会として課税ベースの広い間接税日本の経済取引なり社会に適合するという形で提案されたということは事実でございますし、当時の答申等にもそのように書いてございます。御案内のとおり五十四年の十二月に国会決議がございまして、そのちょうど一年後になるわけでございますけれども、もう一度五十五年の十一月に、国会決議を受けた後、政府税制調査会答申が行われておりますが、その中では、国会決議があったということ、それから社会一般の受け入れ態勢といいますか理解が整わなかったということ、その時点で事実を謙虚に反省し、もう一度原点に戻って、外国の制度、沿革等を踏まえながら今後の検討課題とするという審議の経過を税制調査会はたどっておるわけでございます。  ただ、この答申が出ました後今日まで、具体的ないわゆる課税ベースの広い間接税について税制調査会では審議が行われておりませんけれども、こういう税制調査会審議経過から見まして、仮に課税ベースの広い間接税というものが研究、検討対象になるとするならば、もう一度諸外国の制度、沿革にさかのぼって、原点から考えるというふうな経過をたどっておるわけでございます。
  52. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 今度は大臣お答えいただきたいのですけれども、EC型に比べてより簡素で、そしてEC諸国に比べて日本は中小零細企業が多い、そういうことから、そういう広範囲に除外することを想定している。そういう意味では、EC型の方がより完璧で、より大型である。だから、より簡素で、中小零細企業を広範囲に除外している、それでも否定されているのに、それよりも複雑で、それよりも大型な、完備されたEC型付加価値税を検討するということに対して、私は今の梅澤局長の答弁はなっていないと思うので、そういう点で明確に、端的にお答えいただきたいと思います。
  53. 竹下登

    竹下国務大臣 やはり五十五年の答申を中心にしまして、いわば五十五年答申というのは、国会決議があった後の税制調査会答申でございますが、それを中心にして今梅澤局長お答えをしたわけであります。  やはり、あのものが国民理解を得られなかった、だから財政再建の手法として使ってはいけない、こういう決議でございますから、したがって、やはりもう一度、EC型——EC型という一つの学問的類型はございますが、そういう諸外国の例をも含めて、原点に返って研究、検討をやり直そうという精神が、現実問題としてその審議はありませんでしたけれども、今日続いておる。だから、それらをやはり検討議論対象から除外するということには私はならないではないかというふうに考えます。
  54. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 言葉のあれこれの言い回しやあるいは形式論理で黒を白と言いくるめるとか、問題をそういうようにごまかしてしまうのではなしに、そういうことを言うこと自身がますます国民の政治に対する不信を募らせるばかりである、私はそういうふうに思うのです。一般消費税は導入しないという国会決議がありながら、このEC型付加価値税は含まれていないと言うことは、つまり先ほども申し上げたように、日本型一般消費税のような中途半端な増税はしない、やるからにはEC型のより徹底した大型間接税で大増税だ、こういうように言っているに等しいと私は思うのです。だから、それならそれでEC型付加価値税をモデルにした大型増税を導入したいとはっきりと言って、国民に審判を仰ぐことが一番正しいのではないか、こういうふうに私は思うのですね。問題をはぐらかして、ごまかしたような形でこそこそするのではなしに、先ほど言ったようにEC型の完璧な大型間接税を導入するんだということを堂々と言った方がすっきりしていいんじゃないか。そういう意味で亡くなられた大平総理の方が、そういう意味では敗れた、また亡くなったとはいえ、政治家として立派じゃないか、それなりの見識があったのではないか、私はそういうふうに思わざるを得ないのであります。少なくとも、大胆にも次の座をねらう政治家として大蔵大臣は、やはりこれに対してはっきり物を言う必要があるのではないか、こういうように思うのです。そういう意味で、何か国民の反発を食らいそうな大型間接税の導入は中曽根総理に任せて、いやなことは中曽根総理にさせて後は自分と、そういうように我々国民としては映らざるを得ないわけでありますが、その点について、ひとつ総理の——いや総理じゃないですね、将来総理になるかもわかりませんが、大蔵大臣の答弁をいただきたい、このように思います。
  55. 竹下登

    竹下国務大臣 大平さんのときには、五十四年度の税制改正に関する答申をもらって、それでそれを表題に掲げたわけじゃございませんが、そこで選挙があったわけです。私はそこのところをいつも思い出しますのは、ちょっと話が長くなったら申しわけありませんが、大平さんが言っていらしたのは、要するに、おれは税金の先取りをした。恐らく赤字公債のことを——昭和五十年に発行されたとき大平先生が大蔵大臣でありました。それに対して、非常に財政家としての心につかえたものを持っていらしたと思うのです。そういう経過の中で、国民理解してくれるんだという考え方税調答申に基づいてそれを取り上げようとして、たまたまそこに選挙があった、こういうことであります。  私は、おれは大型間接税をやるんだ、あるいはおれはこういう税制をやるんだと言うのは、私どもにとっては少しくおこがまし過ぎるのではないか。やっぱり国会論議等を正確に伝えて、専門家の集まりであります税制調査会でいろいろ煮詰まったものを採用するかしないかという判断は、これは最終判断はしなきゃならぬわけですから、そういう手法をとっていくのが、大体、税のみに限らず、民主主義政治のあり方じゃないかな。だから国民の皆さん方が一体何じゃろうかという形で国会論議等を通じながら徐々に勉強していかれ、そしてどんな政策でも国民理解協力がなければできるもんじゃございませんから、したがって、国会論議、これは国民の代表の意見です、それを専門家の場に報告し、そこで煮詰めていただくという手法の方が、とるべき手法としては民主主義政治の一つの仕組みとして一番いいんじゃないかな、こんな感じがしております。私自身が税の専門家であるわけでもございませんし、そういうものではないかなというような感じです。  それで、そこのところまで中曽根総理にやらせておいて云々というような話もございましたが、別にそんなおこがましいことも考えておりませんし、それは現段階におきましては、少なくとも政策の立案、最終的には内閣一体の責任でやるにしましても、政策立案の責任者は私でございますだけに、そんなおこがましいことは考えておりません。
  56. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 いずれにしても、EC型の付加価値税はEC諸国の国々によっていろいろな態様があるということはわかりますが、しかし、いわゆる日本型の一般消費税よりも先ほど申し上げたようにより完備した、より大型間接税であることは間違いないと私思うのです。だから、それを研究するということ自身国会決議があるにもかかわらず、それよりももっと悪質な大増税を意図するというように我々は考えざるを得ない、このように思います。後でまた具体的なことでその点について述べていきたい、このように思うわけであります。  次には、中曽根首相の言うところの税制改革の目的であります。  この目的はあくまで現行のゆがみ、不合理の是正であって、増収やあるいは財政再建のためではない、公平、公正、簡素、国民による選択の原則を中心に検討していく、こういうことでありますが、この公平、公正、簡素、選択の四原則について具体的にひとつ説明をしてもらいたい、こういうように思うわけであります。現行税制の不合理、ゆがみを是正するという名のもとに、最高税率の引き下げや累進税率の刻みの縮減あるいは法人税率の引き下げなどが論じられているわけでありますが、それが公平、公正ということの意味なのかどうかということであります。  戦後確立された我が国の税制の根幹とも言うべきところのシャウプ税制、このシャウプ税制は応能負担原則に基づく直接税中心でありまして、総合累進課税により税負担の公平を目指す極めて民主的な税制ではないか、こういうように思うわけであります。そういう意味で、大臣は税の公平ということをどのように考えておるのか。これまで税の公平という問題を論じる場合、応能負担の原則あるいは総合累進課税をいかに徹底するかという角度で議論がなされてきておるわけでありますが、ところが今回のこの税制改革の動きというものは、本当にそういう意味では今までのそういう民主的であると言われておったシャウプ税制見直して改悪するというように我々は考えざるを得ないわけでありますので、そういう意味で、公平とか公正というものについての概念をひとつ説明していただきたい、こういうように思います。
  57. 竹下登

    竹下国務大臣 私も、今上田さんのおっしゃいましたように、シャウプ税制というものは、包括的な課税ベースと所得再配分機能を基本とする所得税日本の税の体系の中心に置くという考え方、これは今日においても税制の基本的考え方として評価されるものを含んでおるというふうに考えます。しかし、社会経済の構造変化に伴って種々の問題が指摘されるようになってきました。例えば、最高税率はシャウプ税制最初は五五でございますが、いろいろな問題がその後構造変化に対応してまいりまして、国民各層にやはり公平かつ適正化を推進する立場に立って、幅広い視野から税制全般にわたる改革をこれから課題として検討することが必要であるというのが、税制調査会答申に見られるがごとき一つの世論ではないかというふうに私は思います。  そこで、具体的な問題になりますと、公平、公正、簡素、選択の中で、一番説明のしやすいのは簡素だろうと思っております。簡素ということになりますと、要するに国民にとってわかりやすい明瞭なものということが言われるわけでありますが、刻みが十九段階から十五段階になり、今度アメリカのリーガンさんの提案は三段階というのが出ておりますが、今アメリカは十四でございますが、それが刻みが少ないというのも簡素の一つではあろう。ただ、リーガンさんの分は、私は国会が通るとかいうことを前提に置いてはおりません。まだ大統領のところまで上がっただけの段階でございます。あるいはまた選択というのも、財政民主主義の理念からいえばこれも説明が比較的しやすいことではないかというふうに考えております。したがって、選択をしていただくためには、その内容国民一般にとってわかりやすいものであること、すなわち簡素なものであること、同時に公平、公正なものであらなければならぬ。  今おっしゃいました公平、公正という問題につきましては、公正の前に公平ということになりますと、これは今御指摘のありましたいわゆる応能主義の問題も、公平の一つの概念だと私も思います。等しい能力を持つ人々の間では税負担は異なるべきではなく、また能力の高い人が能力の低い人よりも重い税負担を負うべきであるという意味の、いわゆる水平的公平と垂直的公平と二つあるというふうに言われております。この公平に関して、能力すなわち経済力を基準とする考え方のほかに、今度は社会から受ける利益というものの大きさに応じて税を負担するというのがいわゆる応益主義というものでございます。したがって、応能主義による公平と、いま一つは応益的な意味で公平というもの、これをどういうふうに組み合わせていくかということが、私は国民の選択に当たってメニューを提出すべきものではなかろうかというふうに考えております。  公正ということになりますと、それにもう少し倫理観を入れまして、したがって、まず公平であることが前提でありますが、すべての納税者が正しく取り扱われるとか、経済の各分野に対して不当な干渉をしないという意味における中立性とかいうようなものが具備されることでございますから、公平であるということは当然でありますが、公正とは、さまざまな基本的な要請をそれこそ包括的に含んで公正という言葉が使えるのかな。が、公平と公正とは重複する概念でございますが、税制にとって公平が最も基本的な原則と考えられますところから、あえて並列して申し上げておる。公平、公正は若干の倫理観みたいなものが言葉の上で入りますが、大体は並列的に使っておるというだけのものではないかな、こんな感じがしております。
  58. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 公正の方が公平よりも少し概念が広いのじゃないかというように、私は思うわけですが、いずれにしても公平、公正ということは、シャウプ税制の根幹であるところの総合累進課税あるいは応能負担の原則、大臣は所得の再配分、これは当然のことでありますが、私はこういうものが根幹であると思うのですね。それを変えないということですね。その根幹は変えない。見直すというのは、それじゃどこを見直すのか。  私たちが言うならば、この根幹が十分に守られていない。だから、総合累進課税あるいは応能負担というものをさらに徹底するという意味で見直しをするというのなら、私はそれはわかるのですよ。しかし、公平、公正あるいはシャウプ税制を見直すということは、その根幹にかかわるものを変えようとしているのじゃないのか。いわゆる民主主義的な税制を改悪しようとしているのではないか、こういうふうに考えざるを得ないわけですので、その点について明確にお答えいただきたいと思います。
  59. 竹下登

    竹下国務大臣 やはり私は、公平、公正の基本は変わってはならないと思いますし、そういう意味において、我が国の税の基幹的税制としての応能主義に基づく所得税というのは当然きちんと存在をする問題だと私も思っております。  そこで、今、ではそれがどういうふうな経済的社会の変化によって変わってきたか、どんなところが指摘されるかということで税調等議論を選び出してみますと、結局一つは、「所得水準の平準化の動向等にかんがみ、中堅所得階層の負担の緩和にも配慮しつつ、全体として、若干なだらかな累進構造とする方向で見直しを行うことが適当である。」これに基づいて五十九年度税制、十九が十五になったわけでございますけれども、それが所得再配分機能ということで一つ指摘される点じゃないか。  それから二番目には、所得の捕捉でございます。いわゆる「所得課税については、これまで、執行面で把握差が生じやすく」、まあクロヨンとかいう言葉は私も知っておりますが、必ずしもクロヨンそのものという意味じゃございませんが、「執行面で把握差が生じやすく実質的公平確保の面で問題があるとの批判が少なからず見受けられ、とりわけ、個人が稼得した所得に対して直接に負担を求める所得税及び個人住民税においては、制度及び執行の両面にわたり実質的公平確保のための工夫が強く要請されてきているところである。」これが二番目。  それから、それを所得の捕捉面からいって法人に当てはめてみますと、「最近の法人の申告状況をみると、全法人の約五〇%が赤字申告を打っている。これらの法人についても公共サービスを享受していること等から何らかの応益的負担を求めてもよいのではないか」、これも中期答申の中にあります。  その他、課税ベースの浸食の問題がございます。すなわち租税特別措置政策税制だ。それは「税負担の公平その他の税制の基本原則をある程度犠牲にして講じられているものである。したがって、常時、個々の政策目的と税制の基本原則との調和を図る見地からそのあり方について」、吟味という言葉が使ってありますが、「吟味を行う必要がある。」  それから、今度も御議論をいただきます非課税貯蓄残高の総額は個人貯蓄の六割を占めておる、これの利子配当課税あり方検討するに当たっては、郵貯を含む非課税貯蓄制度の取り扱いが大きな比重を占めている問題であることは論をまたない、こういう指摘があります。  それから、間接税に移りまして、「我が国の間接税は、酒、たばこ、自動車、揮発油等の特定の物品に対する課税が大宗を占めており、しかも、従量税率によるものが多いため、消費態様の変化や物価の上昇に伴って課税ベースの相対的縮小や税負担水準の低下が生じやすく、」これは、従量税が多ければ当然でございます。従価税ではございませんとしますと。「また、サービスについて近年その消費が急増しているが、国税としてはほとんど課税対象になっていないという問題がある。」というようなこと。  それから、ちょっと長くなりますが、最近よく言われます酒税についてでございます。「所得水準の上昇、平準化等を背景に酒類消費が多様化、均質化するに伴い、これまでのいわゆる「高級酒」、「大衆酒」といった分け方のもつ意味が弱まり、現実にも、低価格酒の伸びが相対的に大きくなる傾向がみられる。」そういう「税負担格差の縮小を図ることが適当である。」という答申もございます。  また、俗に直間比率とよく言われる問題としては、税体系が、結果ではあるが近年直接税に偏り過ぎているのではないかとか、そういうことがいろいろ指摘されておるような問題が、やはり広範な論議をしていただく課題じゃないかなというので、一応整理をして申し上げたわけであります。
  60. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 どうも納得できないわけです。いずれにしても公平、公正ということでシャウプ税制を見直すということでありますが、先ほど私が申し上げたように、やはりその根幹になるところの応能負担あるいは総合累進課税を置きながらといいながら、これが徹底されてないところに大きな問題があるわけですね。今、公平、公正じゃないのですよ。それは、今言ったそういうシャウプ税制の根幹が徹底されてないところにあるわけでありますから、これを徹底しないで公平、公正にしなければならぬということから何かいろいろな理屈を言っておりますが、結局は一般消費税とか大型間接税というものを導入していくのではないか、そういうふうに我々は感じとられるわけであります。  そこで、大蔵大臣にお聞きしたいのは、いわゆる一般消費税あるいは間接税というものの最大の欠陥は、低所得者ほど税負担が重く不公平を助長する、こういう逆進性があるということでありますが、このことについてどう思っておられるのですか。逆進性のない一般消費税あるいはそういう大型間接税というものがあると思っていられるのか。そういう意味で、一般消費税の持つ逆進性、不平等性というものについて一言お聞かせいただきたい、このように思います。
  61. 竹下登

    竹下国務大臣 あるいは正確を期すために梅澤さんに補足してもらわなければいかぬかもしれませんが、私は、一般消費税というか間接税というそのものがもう既に、松下幸之助先生がこのたばこをお吸いになりましても私が吸いましても同じだけ税金を払うわけでございますから、それはその限りにおいての逆進性と申しますか、そういうものは本質的に存在しておると思います。いわゆる社会政策的な問題、免除とかいろいろな問題が時には別途あろうと思いますけれども、対象を絞ったりしないで本質的に間接税とは、こういうことになった場合には、例外規定を設けない限りそういう意味における逆進性は存在するものであるというふうに思います。間違いないかな。——間違いないようでございます。
  62. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 いずれにいたしましても、先般の本会議でも私申し上げたように、いわゆる一般消費税というものが仮に導入されることになりますと、八六年、昭和六十一年のGNPを三百三十兆円、仮にこういうように仮定して、そのうち民間の消費支出が五八%としますと百九十兆円ということになるわけでありますが、この三〇%相当の非課税分を控除して一律に五%の税率を掛けたとすると、六兆七千億円、四人家族一世帯当たりで年間十八万円の大増税ということになるわけであります。先ごろ住友信託銀行の発表した資料では、税率五%の付加価値税を導入したとして八兆三千億円の税収になるとしておるわけで、これなら一世帯当たり年間二十二万円の増税、こういうことになるわけでありまして、たとえ抱き合わせに大幅な所得税減税を行ったとしても、課税最低限以下の低所得層には丸々この負担が直撃することになるわけであります。ましてや、生活保護世帯あるいは独居老人あるいは母子家庭にもほぼ平等に・悪平等でありますが、税負担がかかる、こういうことになるわけでありまして、こういうものが果たして公平、公正と言えるのかどうか、こういうように思うわけであります。  それだけじゃなしに、こういうような大型間接税が導入されるということになりますと、特に中小零細業者あるいは個人業者に対して極めて大きなしわ寄せとなることは火を見るよりも明らかだ、こういうように思うわけであります。売り上げ、仕入れにかかる税額の仕分けであるとか、あるいは記帳と帳簿の整理など、本当に事務負担は飛躍的に増大する。現在でも申告納税者の半数程度までが青色申告を導入せずに、記帳していないいわゆる自営業者が非常に多い、こういう実態にあるわけでありまして、大型間接税の申告の手続まで押しつけられる、こういうことになりますともう大変なことだろう。それだけではなしに、税率分だけ値上げされると商品の売り上げが悪くなる、勢い税額を価格転嫁できずに、マージンを、利益を削ってまで商売せざるを得ない、こういうことになるわけであります。本当にそういう意味で、インフレにつながるだけでなしに、景気後退に大きな影響を及ぼすことになるわけでありまして、こういう逆進性の強い悪平等な一般消費税あるいは大型間接税、どのようなものであろうとこれは絶対問題があるのではないか、こういうように思うのです。  一昨日、総理は、羊の毛をむしり取るときに羊が鳴かないように上手にするのが名人である、こういうような例を出しておられましたね。羊の毛をむしる、これはむしるでいいのだろうと思いますけれども、これが税の例えになりますと、税金をむしり取る、こういうことになるわけでありますが、そうすると国民が反対する。そういうことで、反対できないような、取られても取られているような税痛感のないやり方、こういうことを意味しておるのではないか、こういうように思うわけでありますが、いかにも表現が問題じゃないか、私はこういうように思っておりまして、今国民が非常に関心の深い問題でそういう表現はいかがなものだろうか。そういう点で大蔵大臣考え方もお聞かせをいただきたい、こういうふうに思うわけであります。  私は、本会議でも申し上げたように、一般消費税あるいは大型間接税というものは麻薬みたいなものである。一回これを利用すると、どんどん増税が図られてもぴんとこない。税痛のないところのそういう税制というものは悪法である。本当に民主主義的な税制、いわゆるシャウプ勧告税制に言われている根幹をなすものは、やはり税金をどれだけ支払っているのだということがはっきりわかる、税の痛みがはっきりわかって初めてその税金がどのように使われておるのかという国民の政治に対する関心が高まってくるわけでありまして、税金が取られているのか取られていないのかよくわからぬという税痛のないやり方であれば、それは政治を堕落させるものだ、こういうように我々は考えざるを得ないわけであります。そういう点で、大臣、税痛というものに対して、税痛のない取り方が賢い取り方なんだということになるのか、そういうものは麻薬的で国民を愚弄するのだ、民主的でないのだというふうに思うのか、その点の基本的な問題についてひとつお聞かせいただきたい、このように思います。
  63. 竹下登

    竹下国務大臣 これもあるいは政治家上田さんに対して政治家竹下が答えるということで、私も税の専門家ではございませんが、確かに日本の商習慣というのは、いわゆる末端のセールスタックスに対しては、なれておりません。税ぐらいまけとけや、こういう体質もあろうかと思います。確かにヨーロッパは、そういうまけとけやという思想だけは割に長い間でなくなっておるというふうに思います。そういう問題点はございますし、はっきりわかるわからぬの問題ということになりますと、ある見方からすれば、選択の自由があるし、タックスというものを念頭に置けば、むしろ間接税、消費税の方がわかりやすいという論議も一方にございます。  そこで、それからずっと来て、税痛あるいは痛税感とでも言った方がいいかもしれません。どちらでも結構でございますが、むしり取るというのは、これは羊の毛は結構でございますが、やはりよく言われますタックスペイヤー、いわゆるタックスを支払う、そういう感じにならなければいかぬと思っております。痛税感の議論ということになりますと、私もこれは何回かそういう感じを持ったところでございますけれども、例えば、私の主観かもしれませんが、去年、おととしてございますか、たばこ一本一円上げさせていただいて、それで大変な痛税感というものは余りないじゃないか。そうしますと勢い、痛税感がないと、今麻薬という表現をなさいましたが、従来から言われておる言葉でありますが、勢いイージーに率がどんどん上がっていって、そしてそれに見合う歳出もイージーに伸びていく。所得税はみずからが痛みを感ずるから、したがって、あそこにむだがあるのじゃないかという監視の眼が行き届く。ヨーロッパの先進旧病とかいうような問題も、ある意味においては間接税依存度が余りに高いとそういうことになりはしないか。この考え方は私はいつでも持っていなければならぬ考え方だと思っております。間接税、直接税のそれぞれのメリット、デメリットの問題は、税体系上のメリット、デメリットの問題は別といたしましても、政治家としての見方の中に、痛税感が失われたら、監視の眼がなくなっていくという考え方は基本に持っていなければならぬ問題だ。税体系の中で申し上げたわけではございませんが、政治家としてはそのことはいつも心得ていなければいかない問題だというふうには、私も同感の点が多うございます。
  64. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 その問題についてさらに突っ込んで話したいわけでありますが、まあ基本的にそうだ、こういうことでありますから。  そこで、直間比率の見直しという問題であります。大ざっぱに言って、三十年代は五対五、あるいは四十年代は六対四、あるいは五十年代になって七対三、そういうようなことが言われておるわけでありますが、直間比率というのは結果であって、それでは、直間比率が何ぼであったら正しいのかという理論的なものはなかろうと私は思うわけであります。それと同時に、近年なぜ特に直接税の比率の方がずっとパーセントが上がってきたのか。なぜ上がってきたのかというところにひとつメスを加えていただく必要があるのではないか。その明家をどのようにとらまえておるのか、あるいは今後これがどのように推移をするとお見通しなのか、その点についてお聞かせいただきたいと思います。
  65. 竹下登

    竹下国務大臣 これもあるいは正確を欠くかもしれませんけれども、直間比率というのは、今上田さんおっしゃったとおり、あれは結果として出てくるものであります。私が初めて国会に出ました昭和三十三年、大蔵委員会におったときの議論で、ちょうどお酒の税率アップがありましたが、そのときの議論をいたしましたら、三分の一は酒税で国の税源を賄わなければいかぬ、こんな議論でございました。なるほどそのころはそうだったんだな。だから一つは、三十年代、四十年代の推移をお話しになりましたが、いわば対象となる所得が低くて、そして結果として、酒も嗜好品でございますから、嗜好品課税なんかの比率が結果として高かったんだなという感じは私も持っております。だから、絶対というものはなかなかないというふうに思います。  そこで、なぜ変わってくるかといいますと、これは先ほどの税調答申でもちょっとございましたが、確かに五十八年の中間答申でございますが、我が国の間接税はどちらかと言えば従量税でございますから、量に対して何ぼ。したがって、片方は、所得は上がってまいりますから、しかも刻みがたくさんございますからどんどん上の刻みへ入っていくということになりますと、仮に最初フィフティー・フィフティーといたしましても、年ごとに直の方が結果としてずっと上がっていって、間の方は、特に従価税もございますけれども大宗を占めるものが従量税でございますから、やはりそれは消費の若干の拡大はありましても所得の伸びについていけませんから、結果として直間比率というのは、ずっと据え置いて考えれば従量税に依存しておる間接税体系の多い我が国の税制はうんと低くなって、トータルとして結果としては直の方がうんと高くなっていくという一つの仕組みにあるな。  だから、従価税の問題も時に出ます。この前御議論いただきましたときにも、従量税と従価税どっちがいいかというような話がありまして、お酒は一升に何ぼかかっているじゃ悪い、やはり価格に何%の方がいい、こういう議論。これはどっちの議論もございますが、結局答えようがないから、酒は一升くださいとか一杯飲むとかは言うけれども、千円酒をくださいと言うことはないから、やはり一杯飲むから量に対してかかるんじゃないか、こういう議論をしてみたこともございます。そういうところに、従量税が大宗を占めておるから、据え置けばどうしても所得の方が必ず比率は高くなってくるという仕組み、構造的な要因があるのじゃないかなと思っております。
  66. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 大臣、私の手元にこういう数字があるのです。昭和四十九年から昭和五十八年、この十年間の所得税、法人税、これは直税ですね、それと間接税の数字があるわけですが、昭和四十九年には所得税は三四%、それから法人税が三六・九%、間接税が二九・一%であったわけです。ところが、その十年後、昭和五十八年になりますと、所得税が三四から四〇・二になっているのですね。所得税が四〇・二、これは非常に伸びていますね。法人税が何と三六・九から二八・二になっているのです。これは大幅に下がっていますね。間接税余り変わらずに二九・一から二九・二です。そうして、昭和四十九年を一〇〇としてその後どれだけ税がふえたかという率を見ますと、所得税が二五三・二%、約二倍半になっているのです。法人税は一六三ですから一・六倍。それから間接税は二四〇ですから二・四倍。こういう数字が出ているのですね。  この数字を見て、これをどのように解釈しますか。
  67. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 我が国の税体系で直間比率の長期的な趨勢といいますか、どういう性格を持っているかというのは、先ほど大臣が御答弁になったとおりてあると思います。  ただ、今委員が御指摘になりました昭和四十九年から昭和六十年なら六十年までの経緯を見ますと、非常に特殊な要因があるわけでございます。というのは、五十年に第一次オイルショックで法人税の大減収がございました。それからもう一つ、これは第二次オイルショックの過程で五十六年に法人税の弾性値が落ちております。したがいまして、これは構成割合の話でございますから、どうしてもそういう特殊な二つの契機がございまして、四十九年時点と現在を比べますと確かに仰せのようなとおりでございますけれども、基本的な問題点というのは先ほど大臣が御指摘になったとおりだと思います。
  68. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 私が申し上げた数字、確かにこのオイルショック以後に景気が低迷した、こういういうことですけれども、それは法人税が割合が減ってきているということです。これは数字で明らかになっているわけです。  これを見てわかることは、景気が悪くなって法人税の伸びは一・六倍で、比率が三六・九から二八・二%に減っているにもかかわらず、法人税に比べて所得税は逆に三四%から四〇%に、そして倍率で言うと二・五倍に上がっているということですね。それから、景気の動向にもかかわらず間接税余り影響されてない。商売がもうからないから給料が少ない、収入が少ないから消費税の方に、消費に回るお金は余りふえないということがここではっきりしているのじゃないかと私は思うのです。  だから、ここで言えることは、企業は税金を余り納めてないけれども、勤労者といいますか、そういう所得税を納めている人間が税金を余分に取られているということが一つ言えるということと、それから、全般的に間接税は伸びてないというものの、やはり三〇%しかないということになりますと、この間接税部分を三〇%を四〇%に上げようと思ったら、とりもなおさず法人税が、所得が上がるような景気対策というものも当然必要になってくるでしょうが。特に私がここで申し上げたいのは、所得税が七年間も課税最低限を抑えられてきた、こういうことで消費が伸びなかったというように見るべきではないだろうか。もっと言えば、景気対策をし、それと同時に、物価は上がるが給料は上がらない、あるいは給料は上がっても課税最低限が抑えられているという実質的な増税によってやはり消費が伸びてないということにも読み取れるのではないか、私はこういうように思うわけであります。  この直間の見直しということになりますと、消費を伸ばそうと思ったら当然働く者の懐ぐあいを大きくしない限り消費は伸びないわけでありますから、懐ぐあいをふやさないで、労働者の生活の向上じゃなしに、かえって労働者の生活を苦しめておいて消費が伸びない、消費税が上がらないというような言い方は大変問題ではないか、私はこういうように思うわけであります。そういう点で大臣考え方というものをここで述べていただきたい、このように思います。
  69. 竹下登

    竹下国務大臣 今統計的に数値をお話しになりましたが、確かに昭和四十九年というのはいわば第一次石油ショック、四十八年の薄れからでございますけれども、いわゆる狂乱物価があったときでありますが、要するにそのときのいわゆる給与政策とでも申しましょうか、労使間において決められるべきことではございますが、これは比較的そういう物価の急上昇に対応するだけのベースアップも当時あっております。したがって私は、所得が、名目賃金が上がってまいりましたから所得税はふえてきた。ただいま一つ、可処分所得の問題がありまして、可処分所得でいみいろな議論をされた時期もその間にはございました。  私は結果的に見て申せますのは、法人はいわゆる第一次、第二次の石油ショックによって確かに減益いたしましたが、いわゆる賃金というものはそれなりに、途中で可処分所得の点で議論されたことはございますものの、まずまずのところで上がっていった。したがって、今四十九年とおっしゃいましたが、大体五十年から今日の先進諸国の賃金水準と日本の賃金所得を見ますと、他の先進国よつば日本の方がいわば実質所得は上がっております。したがって、やはり日本人が賢明であったし、企業も減量経営をされましたし、そして政府が何としても公債を発行するだけの国民の貯蓄力に支えられておったというようなことで、第一次石油ショックも第二次石油ショックも相対的に言えば他の先進国のどの国よりもいち早く脱出したではないか、こういうのが、我々が多角的サーベーランスと申しまして、先進国同士のいわば監視、サーベーランスという言葉余りよくありませんけれども、監視機構の中で評価されるところは大体そんなことだな、こういうふうに思います。     〔中川(秀)委員長代理退席、委員長着席〕  ただ、それ以前と比べてみますと、高度経済成長というものは世界全体にもうあり得ないという状態でございますだけに、私は、そういう高度経済成長のときに比べれば、賃金の上昇率というようなのが安定成長の姿と同じ状態になっておるということは、まさにそのとおりだ。  それから消費税の問題でございますと、今の場合、消費が伸びないというのは、消費税のかかっている税目が、景気によってうんとふえるというようなものに日本は必ずしも消費税がかかっておらないわけでございますから、いわゆる省エネで原油の節約をしましたり、そんなものもございますし、それから例えばお酒にいたしましても、一合飲むものがすぐ二合飲むようにもなりませんし、その辺はございますが、相対的に見てますます、いわゆる世界の先進国といえば計算のしようはございますが、私は二十三カ国ぐらいかなと思っておりますけれども、人口にして七億人ぐらいの中では一番いいところへ来ておるな、こんな感じを持っております。これは自民党政策がよかったからなどというおこがましいことを申し上げません。日本人が賢明であったという一語に尽きると思います。
  70. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 企業の努力もあったと思いますけれども、やはり五十年度以後大幅な赤字国債を増発して、そのツケが今回っているということでありますから、そのことを考えていただきたいし、今大企業の繁栄、輸出関連企業は非常にもうかっているわけですけれども、しんどいときは赤字国債等でいろいろ国の手厚い保護があったわけでありますから、今そのツケを国民に回すのじゃなしに、大企業に負担してもらうということは、私は当然のことではないかと思います。  また同時に、この所得税の伸び等、それは間接税の伸びというのは、所得税が伸びたからといって間接税が大幅に伸びるということはそうない、また逆に、それが所得税が減ったからといって間接税が極端に減るということもないというような関係はあるにしても、やはり可処分所得が少ないがために消費が伸びないということにもなるわけでありますから、もっとこの時点でそういう課税最低限を引き上げるなど、やはり可処分所得を大きくする、そういう大型の減税を、やはり増税に見合う部分を減税という形で対処されておったならばこの直間の比率というものは私はもっと違った形になっておったんじゃないかと思うし、去年一兆円減税されたとはいうものの、増税との差し引きでもあったわけでありますし、特に本会議でも申し上げましたように、酒類の税率が上がったためにそういう酒類の売れ行きが頭打ちといいますか、あるいは下がるというような現象もあるわけでありますから、大型間接税を導入すれば増収につながるんだというような短絡的な考え方じゃなしに、かえってそれが消費の低迷というのですか、そういうものにもつながるんだという因果関係をやはり政治家であれば考えていかぬと、大型間接税を導入したらそれだけ国に余計税金が入るのだ、そういうようなものでは私はなかろう。特に企業の圧倒的部分を占める中小零細企業がこのことによって大きな打撃を受けるということもあわせて考えなければならぬのではないか、こういうように思うわけでありまして、そういう意味で、社会党を初めとする各野党は一兆円規模、社会党は一兆一千五百億を要求しておるわけでありますが、こういう要求に対してやはりまじめにこたえていく必要がある、私はこのように思いますので、その点についてお答えをいただきたい、このように思います。
  71. 竹下登

    竹下国務大臣 これは私は極めて慎ましやかに申しておりますが、総理言葉を借りますならば、私も所得税の減税がしとうございますが、しかしやはりそれの財源を赤字公債をもって充てるわけにはまいりません、そして去年やったばかりでございますから、今はその余力がございません、税制改革の中において中長期的にそれはしたいと思っておりますという言葉総理表現になっておりますので、そのまま申し上げておくべきだろうというふうにお答えをいたします。
  72. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 そこで、現行税制のゆがみや不合理というようなことでありますが、やはり先ほどから申し上げておりますように、シャウプ税制の根幹であるところの総合累進課税あるいは応能負担というものを守っていく、現在はそれが非常に傷だらけといいますか、実際守られてないということを申し上げたいわけであります。  所得税の最高税率が七〇%である、こういうように言いましても、実際適用されているのは一人もいないんですよね。おれは言っていただきたいと思うのですけれども、利子とかあるいは配当所得のいわゆる源泉分離課税三五%という抜け穴によって、高額所得者の実効税率が実際は四〇%程度の低い水準にあるということは、これはもう天下周知のことではないか、こういうように思っておるわけでありまして、そういう意味で、やはり利子配当所得に対する分離課税を初め現行制度のそういう抜け穴をふさぐ作業が一番大事ではないか、私はこういうように思っておるわけであります。  今回、グリーンカード制の廃止とともに、政府大蔵省総合課税そのものをあきらめるような、そういうような雰囲気がただよっているということについて非常に遺憾に思っておるわけでありますが、そういう点について梅澤主税局長から答弁をしていただきたい、このように思います。
  73. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 その前に、事実の問題でございますけれども、税務統計から見まして、改正前の七五%の税率の適用者の納税人員もおられます。最高税率の適用を受けている納税人員がないということでちょっと最初に申し上げたいと思います。  仰せのとおり利子配当課税につきましては、五十五年に完全総合課税ということでグリーンカード制度を御提案申し上げたわけでございますが、その後、御案内のような経緯がございまして、再度税制調査会で御議論をいただきまして、昨年暮れ、答申をいただき、現在御審議を賜っているわけでございます。今回の税制調査会での御議論を私ども拝見いたしておりまして、やはり利子・配当につきましてはグリーンカード制度を見送らざるを得なかったという経緯の認識、それと関連するわけでございますけれども、同時に金融の国際化あるいは自由化を控えて、今の時点での特に利子に対する税制あり方につきましてはよほど慎重に考える必要がある。税制調査会の委員の少なからずの委員の方から、やはり将来展望としては市場に中立的である一律分離課税であるべきだという議論もかなり有力になってきております。したがいまして、今回の税制調査会答申でも、基本的に原則としては総合課税は維持するけれども、現行の源泉分離選択制度を併置して六十年度はお願いする、ただし、非課税貯蓄制度につきましてはいろいろ御批判があろうかと存じますけれども、現状のラインを少なくとも一歩でも二歩でも是正するために、ただいま本人確認並びに郵貯に対する課税の強化という御提案を申し上げておるわけでございます。  いずれにいたしましても、利子配当課税を今後どうするかというのは、ただいま御議論の俎上に上っております今後の税制全般見直しの中でやはりどうあるべきかということを、もう一度私ども税制調査会で御議論を賜らなければならない課題であるというふうに考えております。
  74. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 いずれにしても、総合累進課税というものをやはり維持していく、それを徹底していくということであるにもかかわらず、この分離課税が認められることによってやはり実効税率が実際に四〇%程度になっているということ、これについてはどうですか。
  75. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 分離選択の税率が三五%でございますので、いろいろ所得の態様によるかと思いますけれども、他の所得に対して七五%も適用されますが、利子配当課税でしかも分離選択を選択されております場合は、総体としての所得に対する実効税率が下がる場合も当然これは考えられるわけでございます。
  76. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 数値にもよると思いますけれども、やはり実際その程度だと我々は解釈をいたしておるわけです。  非課税貯蓄でありますが、こういうものは国民の圧倒的多数は枠内にある、こう言って私はいいんじゃないか。問題は課税貯蓄の方にある。そういう大口のものとかあるいは問題のあるもの、渋沢代議士も申し上げたように、そういうものに限って名寄せするということはそう難しい問題ではないのではないか、こういうように私思っておるわけでありまして、そういうことも含めて、やはり分離課税あるいは選択課税というものを本来は廃止していくということが一番問題ではないか。ここにやはり、税の回避を手助ける、そういうシャウプ税制そのものを抜け穴にするような、崩壊させるような、そういう手だてがあるというふうに我々は考えざるを得ない、こういうように私は思っております。そういう点で、総合課税を堅持するというだけじゃなしに、それを徹底させるというように考えているのか、いや、もう今の程度であって、あと問題は分離課税の問題をどうするかということだ、このようにお考えですか。
  77. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 全体としての利子配当課税を今後どうするかということは先ほど申し上げたとおりでございまして、私どもといたしましては率直に、今後税制調査会での御議論を見守りたい。ただ、利子所得につきましては、昨今、利子所得の特異性という面に着目した議論も行われておりますので、にわかに完全総合課税であるべきであるということを税制当局として今日の段階で申し上げるということは適当ではないのか、すべてこれからの御検討にゆだねたい。  それから、非課税貯蓄の問題につきましても種々御議論があるわけでございますけれども、長年我が国に定着した制度でございますし、低所得者の貯蓄を大事にするという観点からこれを存置すべきであるという議論があります一方、先ほど来委員がおっしゃっておりますように、所得税の包括的な課税ベース、その上での所得再分配というのが最も公平な税制であるとすれば、個人貯蓄の六割以上も非課税貯蓄になっておるこの課税ベースの浸食をどう考えるかという議論も片方であるわけでございます。したがいまして、こういうもの全体をひっくるめまして、やはり今後の検討課題であろうというふうに考えております。
  78. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 もっと突っ込んだ質問をしたいんですけれども、時間の関係もありますので、次に行きます。  昨年の夏、経団連は「先進諸国の企業税制税負担」というパンフレットを出して、日本の法人税は実質税負担率で五一・五七%と先進国中一番高い、こういうように主張したわけですね。それに対して大蔵省は「企業税制をめぐる論点」こういう資料を出して、まだ税負担はそれほど重くない、こういうように反論しておるわけでありますが、しかし、それがいつの間にか途中で論争が終わっているということで、我々国民は非常に奇異に思っておるわけであります。  特にこのときの論争で、大蔵省側は法人税の国際比較は実効税率でやるべきだ、こう言っただけで、経団連の主張しているところの実質税負担率ではどうなるのかという批判には何も答えていない、こういうように思うわけであります。大蔵省日本以外の国については実質税負担率を出しているが、このとき日本の負担率は出していないのですね。日本の企業の実質税負担率は幾らかということについて、外国のはわかっているわけでありますから、日本の数値についてなぜ出していないのか。数値があるはずですから、それをぜひとも出していただきたい、このように思います。
  79. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま委員の御指摘の点でございますけれども、私どもは、その前提といたしまして、仮に各国の法人税負担を比較する場合に、理論的用具と申しますかそういうものとしては、従来大蔵省なり税制調査会が伝統的に用いております、所得に対して適用される標準的な税率議論をすべきである。実質負担率という御議論があることは私ども承知をいたしておりますけれども、またその計算の過程でいろいろ計算上問題があるということも、ただいま委員が御指摘になりましたパンフレットで私どもも指摘をいたしておるわけでございますが、いわゆる実効税率と区別される意味での実質税負担率というのは、我が国の税制面で当てはめますとその計算は、大蔵省が言っております実効税率にいわば租税特別措置の減収額を減額いたしまして再計算するという単純な方法をとっておられるわけでございます。  私ども、これが法人税負担議論する場合の理論的用具になじまないと申しますのは、各国によりまして租税特別措置というのはいろいろな態様がございます。それから、それを受ける企業の業種、それから企業の規模、企業の事業年度によっていろいろ企業の実際の税負担が違うわけでございますね。それを単純平均して高いとか低いという議論をするのは、租税政策議論する場合には私どもはなじまない。したがいまして、あくまで私どもは従来申し上げております、国際的な税制議論をするならまず実効税率を中心に置いて、その租税特別措置等のそれぞれの政策がそれぞれの国に適合しているのか、あるいは企業に対して公平であるのか、そういう議論をすべきであるということを申し上げておるわけでございます。
  80. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 それはおかしいと思うんですね。経団連が実質税負担率というものを日本を初め各国出していますね。それに対して、今局長がおっしゃったように大蔵省は、各種の特別措置がある、非常に複雑である、各国によってまちまちである。しかし、例えばイギリスでは三〇%強である、西ドイツでは五四%程度である、フランスは四八%程度である、アメリカは三七%程度である。  この難しい、何ぼだということがなかなかわかりにくい外国のやつが全部ある。程度でありますけれども、イギリスは三〇%強ですね。ところが、肝心の日本はないじゃないですか。程度でいいんですよ。イギリスとかフランスとか西ドイツ、アメリカのように、ここでちゃんと「程度」と書いてありますよ。コンマ何%まで出てない。それはいいですよ。何%程度なんですか、日本は。
  81. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 私どもが経団連と議論をいたしました場合に、今委員がおっしゃいましたような、経団連が概念規定されているような意味での我が国の税率水準と申しますかそういうものを提示しなかったのは、別に他意はないわけでございまして、私どもの文書の意図は、経団連のおっしゃるような計算方式によっても少しおかしいではございませんかという計算を差し上げただけでございまして、私どもは、そもそもこの実質税負担率という概念を我が国の法人税制に適用するということ自身に問題を持っておるわけでございます。したがって提示しなかっただけの話でございまして、あえて経団連並みの計算をすれば五一%前後になろうかと思います。
  82. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 ああそうですか。それではこの空白になっているところは経団連並み。 そうじゃないでしょう。それじゃ、例えば我が国の分だけが経団連並みになるわけですか。他の国は、例えば経団連はイギリスについては一八・〇六、西ドイツについては四九・八四、フランスについては四五・七〇、アメリカについては三二・二八ということで、実質税率を目安として発表しているんですね。それに対してあなたのところの方は、そうじゃないんだ、イギリスは一八・〇六じゃないんだ、三〇%強である、西ドイツは五四%程度である、こういうふうにあなたのところは言っているんですよ。ところが自分のところの我が国のことについては、いや、そういうことは我が国ではやってないんだ、強いて言うならば経団連が目安としているところの五一%だろうというのはおかしいじゃないですか。我が国の分になると経団連の目安を参考にして、他の国の場合はそうじゃないんだ、しかじかかくかくだということで数値を一応出しているじゃないですか。これは納得できないですよ、委員長
  83. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ちょっと先ほど私の説明が舌足らずであったかと思いますけれども、それは委員の誤解だと思うんですね、文書を読んでいただきますと。経団連の計算方法をとってもこういう疑問があるという数字で、各国を修正している数字であるわけでございますね。  そもそも我々は実効税率と実質税率議論をするのは余り意味がないという立場でございますので、我が国の法人税率について仮に経団連がおっしゃるような実質税率で計算し直せば、これは単純に法人税収から租税特別措置の減収見込み額ということで、我々が国会に提出申し上げてある数字で単純計算されたものですから、計算自体としては経団連の数字を修正する必要はない。ただし、そういうベースで議論をするのは意味がないということで私どもはこの文書を作成したわけでございます。
  84. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 意味がないと言ったって、それはあなた方の思っているだけのことで、経団連自身は意味があるということで発表しているんだろうし、我々自身も、経団連の言っておるところの実質税負担率というものについて、やはりそういう角度で、それがどれだけの効果があるかどうかは別にして、算定することは当然のことですよ。各国についてはできているんだから、自分の国のことについてはしてないということはおかしいということが一つ。私はこれについては納得できません。  それと、外国は日本の貿易黒字については、やはり日本の法人が税負担が少ないんではないかというようなことを言っているんですね。ところが、そのときは日本政府は、いや、そうでもないんだというようなことを言っているんですよ。だからそういう点で非常に納得できないというように思います。  ただ……(「納得できないんだから、実際の数字を出してもらうようにして」と呼ぶ者あり)それでは委員長、納得できませんから、もう時間も来ておりますから、ちゃんとこの数字は出してもらう、各国が出ているんだから、そういう点でひとつ出していただくということでお願いしたいと思います。
  85. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 出すまでもなく今ここで申し上げますが、単純計算をいたしますと五一・一八でございます。ただし、これは私ども実質税負担率として、大蔵省として日本の企業についての負担率という概念で申し上げているわけではないということはお断りしたいと思います。
  86. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 一応自信を持っておっしゃっているんですが、これは非常に問題があるんじゃないかと私は思います。各国の場合は経団連が目安としたところの実質税負担率を相当修正しているんですね。ところが我が国については、あえて発表するということで発表された五一・一八は経団連が発表した数字と余り変わらないということで、これについてまだ私も具体的な数字を持っておりませんから、後ほどまた機会があればこのことについて追及したい、このように思います。  まだ若干質問が残っておりますが、時間が参っておりますのでこれで終わります。
  87. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ちょっと私、数字の読むところの欄を間違えまして、五一・一八と申し上げましたのは五一・五七でございます。訂正いたします。
  88. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 わかりました。
  89. 越智伊平

    越智委員長 古川雅司君。
  90. 古川雅司

    ○古川委員 ただいま議題になっております法人税法租税特別措置法及び所得税法のそれぞれを改正する法律案に関連をいたしまして質問をいたします。大臣が御出席可能な時間が二十数分ということで限られておりますので、質問が前後いたしますが、ひとつお許しをいただきまして、最初大臣に集中的にお伺いを進めてまいります。  税制論議が盛んに行われておりまして、既に予算委員会等議論が出尽くしている感も若干ございます。ただ、問題提起は出尽くした感じでありますけれども、政府の御答弁がまだもう一つ明確でない、この点が大いに問題であります。大臣も、この税制に取り組むに当たりましては非常に謙虚な姿勢をお示しになりまして、議論を吹っかけるとか議論を挑むというのではなくて、ひたすら謙虚に国民の声を聞こうという姿勢を貫いているようでありますが、どうもこれまでの論議を聞いてまいりますと、俗に言う「おやじの小言にゃ頭が下がる、小言頭の上通る」という感じで、この国民の声、国会論議が通り過ぎていくのをじっとお待ちになっているんじゃないか、そういう感じすら最近持ってきたわけでございますが、この点いかがでございますか。
  91. 竹下登

    竹下国務大臣 やはり税の論理というのは、私はもちろん専門家でもございませんし、大蔵大臣就任以来、いわゆる政府税調というのにすべてをこなしていただく、そしてそれを採用するかどうか、これが最終的な決断であろう。そうすると、政府税調はやはり税制度の専門家はいらっしゃいましても、今度はまた別の意味におきまして、国民の世論とかということになりますと、それは何が一番正確かといえば国会論議じゃないか。したがって、国会論議を承りながら、それを政府税調に伝えて、そこでこなしていただいて、そして採用するか採用しないか、国民のコンセンサスは那辺にあるか、これを見て、そして法律案として国会でまた審議をいただくという手法が、日本人全体の知識水準が高いだけに、やはりそれが一番妥当じゃないか。我かく思うというようなのが一番危険じゃないか。万事控え目でそうやっております。
  92. 古川雅司

    ○古川委員 先ほど申し上げました「おやじの小言」というのは、もちろんおやじは国民という意味で申し上げているわけでございまして、特に新税導入、大型間接税の導入の問題などにつきましては、むしろ国会論議をずっと重ねながら導入への一つのレールづくりを着々と進めているのではないか、そういう論調もかなり最近明確になってまいりました。あるいは大臣自身、そういう感想を持ちながらこの国会論議を見ていらっしゃるのじゃないか、そういう感じも受けるわけでございますが、この点はいかがでございますか。
  93. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに、特に今度税調から答申をいただいたのも、そういう世論が背景にあるから答申をいただいたわけでございますだけに、税につきまして国会論議というのも随分活発になってきた、そんな感じは持っております。したがって、率直に言って、総括質疑とかそういう中で税の論議というのがこれほど行われたことは過去にないであろう。しかし、しょせん歳入委員会でそれがまたこなされていって、そしてそれらを総括して税調へ報告していく、こういう筋になるんじゃないか、こんな感じがしております。
  94. 古川雅司

    ○古川委員 では、これから数点にわたりまして具体的に見解をお伺いしてまいります。  最初は法人税についてでありますが、これは法人税のあり方の基本的な問題になりますけれども、最近の我が国の法人税の税負担は、先ほども少々議論がございましたが、先進国の中でも最も重くて、このままではいわゆる国際的な競争力に負けてしまうのではないかという意見もかなり強くなってきております。この内容につきましては後ほど局長にお伺いするといたしまして、我々は昭和五十五年以前、この時点にありましては法人税の実効税率日本は四九・四七%に対して、先進国は、例えばアメリカが五一・一八、英国が五二・〇〇、西ドイツ五六・五二、フランスが五〇・〇〇となっておりまして、日本の法人税はもう少し引き上げてもいいのじゃないかというふうに主張してまいりました。しかし、それに対して政府は、大幅に引き上げますと企業の国際競争力を弱めるおそれがあり、景気や雇用の面でも国民生活に悪い影響を及ぼしかねませんと、このように当時の私たちの主張に対しては極めて消極的な態度を示してこられたわけでございます。  ところが、このたびになりまして、政府は手のひらを返すように引き上げに転じているわけでございまして、冒頭に申し上げましたいわゆる国際競争力という点が非常に心配になってくるわけでございまして、どういう観点からこの考えを改められたのか、国際競争力を弱めるということについて心配がなくなったのか、多少弱まってもやむを得ないという判断をなさったのか、税収という面でどうしてもこうせざるを得なかったのか、あるいはその他のお考えがあればお示しをいただきたいと思います。
  95. 竹下登

    竹下国務大臣 基本的に変わりませんのは、税調の中期答申にもございますように、我が国の法人課税の負担水準が、主要諸外国と比較してかけ離れたものとなることは、国際競争力の観点から見て好ましくない、この基本認識は今日も一貫しております。  なお、最近の経済情勢を見ますと、設備投資が大幅に拡大しておりますほか、個人消費、住宅投資等も緩やかながら増加を続けて、景気は順調な拡大を続けておるという認識を持っております。特に輸出におきましては、御案内のとおり相当の伸びを示しておりますほか、企業収益も順調に増加しておりまして、現時点で政府として、国際競争力と税負担との関連について憂慮する状況にはないという考え方一つございます。  確かにそういうことではございますが、五十九年度の税制改正におきましても若干引き上げられて今日に至っておるわけでございます。これは確かに、今もちょっとおつけ加えになりました所得税等の減税を実施しながら、財政をこれ以上悪化させないために、若干の負担増を求めるのもやむを得ないという考え方に基づいて、五十九年度税制でも上げさしていただいたということであります。
  96. 古川雅司

    ○古川委員 くどいようでございますが、もう一度念を押してお伺いいたします。いわゆる国際競争力という点で、景気であるとかあるいは雇用の面とか国民生活に実際に影響があらわれてくるという、そうした憂慮は全然お持ちにならないで、この引き上げに方向を転換してこられたのか。今の大臣の御答弁では、余りその点御心配をしていらっしゃらないという印象を強く受けるわけでございますが、これは日本の経済にとりましても今後非常に重大な問題になってまいりますので、改めて御答弁願います。
  97. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに景気、雇用等から申しますと、他の先進国に比してみますと、日本はかなりいい水準にあるというべきであろうと思っております。ただ、物によりまして国際競争力の問題が出てまいりますが、最近アメリカでも租税歳出という言葉、いわゆる税金で払うべきものを払わなかったというのは、しょせんは払っておった金を補助金としてもらったと同じではないか、こういう議論でありますが、そういう議論の中で、特に国際競争力のみを前提に置いた税制等につきましては非常に批判的で、ある意味において監視的な感じがいたすのが現状でございます。しかし一方、基礎研究でございますとか、なかんずくそれが中小企業に関係する問題等々の問題についてはそれなりの措置を、国際的に見ても、いわゆる貿易黒字拡大のための故意な施策でないという範疇のものは、やはりその都度対応していかなければならぬという考え方でございます。
  98. 古川雅司

    ○古川委員 さらに、法人税の増税につきましては後ほどまた細かくお伺いをいたしますけれども、いわゆる中小企業、弱い者いじめという感が非常に強いのじゃないかということが盛んに言われてまいりました。この点は大臣はどうとらえていらっしゃいますか。
  99. 竹下登

    竹下国務大臣 その場合、いわゆる法人税に対しての累進税率問題などという問題がよく議論されますが、やはり大法人、中法人、小法人、いずれにいたしましても法人という人格においては等しいものである。ただ、その中にあって中小企業対策としての措置というものは、それなりに経済社会の推移に応じて、今日までもとってきておるというふうに、私どもは認識をいたしております。
  100. 古川雅司

    ○古川委員 その点は、また後ほど細かく質問を進めることにいたします。  所得税等に関連をいたしまして、現大蔵大臣のお立場としてやむを得ないのでありましょうが、増税に最も熱心な大臣という感じを私たちは非常に受けるわけでございまして、増税をしなければ財政再建はできないとお考えなのか、増税をすれば財政再建はできるとお考えになっていらっしゃるのか、この点はいかがでございますか。
  101. 竹下登

    竹下国務大臣 これもなかなか難しい問題でございます。やっぱり私どもの財政改革に対する基本的考え方といたしましては、まずは歳出面において、政府と民間とのいわゆる役割分担並びに国と地方との機能分担と費用負担、これの見直し、そして、連年の努力を踏まえて、節減合理化というものにはさらに積極的に取り組んでいかなきゃならぬな、この旗はやっぱりおろせぬなと思っております。毎年予算編成をやりまして、私も四回目の予算編成でございますが、昨年十二月末に予算編成が終わりましたときに、もう本当にこれ以上搾っても一滴も水が出ないんじゃないかと、こういう感じを瞬間的に持ちました。瞬間的に持つと同時に、その考え方に立ったら、直ちに節減合理化の手が鈍ってしまうぞという自己反省をまた瞬間的にいたしまして、この点はさらに厳しく対応していかなきゃならぬ問題だというふうに考えました。  それと、一方は歳入面でございます。ただいまの税の問題になるわけでございますが、やっぱり既存税制の枠内での部分的な手直しにとどまる限りは、税というものは、しょせんは所得に着目するか、資産に着目するか、消費に着目するかしかないわけでありますから、それらの税負担のバランスを図るという観点からは、税体系にもゆがみが生じておるから、それこそ本格的な改革が必要だなと思いました。しかし、それもやっぱり広範な議論の中で行われるべきものであって、その税制改正は、初めに増税ありきという考え方でやってはいかぬなということを心に言い聞かしておるわけであります。しょせん、最終的には国民の皆さん方がどう選択されるかという問題でございますので、いわゆる財政改革の第一期目標とでも申しましょうか、昭和六十五年度までに特例公債依存体質から脱却するということは容易じゃないけれども、やっぱりこれに対しては、安易な増収措置ばかりを考えていってはいかぬなということで、毎日自問自答しておるという感じが自分なりにしております。
  102. 古川雅司

    ○古川委員 これまでのいわゆる増収、すなわち増税論議につきましては、大臣は御心境、お心の方と、それから実際に心の底で意図していらっしゃる、目指していらっしゃる方向との間で、非常に苦しんでいらっしゃるという印象も受けてきたわけでございます。往々にして衣の下のよろいを見ることもあちらこちらであるわけでございまして、これは既に予算委員会でも一度出た質問ではありますけれども、繰り返すようになりますが、十二月三十日の新聞のインタビュー記事を拝見をいたしました。その中で大臣は、「福祉などに使う目的税として(大型間接税の)議論が進むことはあり得る。」このようにおっしゃって、さらに「結果として、(大型間接税の導入と所得減税が)重なることもあり得る。」こういう発言をしていらっしゃるわけでございます。  これも非常に気になるところでありますが、福祉の目的税というのは、これは大臣がどういう意図でおっしゃったのか。単純に言うと、福祉財源を確保するために増税することもやむを得ない、あるいは必要だ、あるいはそう考えるということなのか。前段として、その福祉の目的税ということについて、大臣の本当のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  103. 竹下登

    竹下国務大臣 本当は税金というのは、いわば全く色のつかない税金をちょうだいいたしまして、その資源を適正に配分していくというのが本来のあるべき姿でございますので、色のついた税金、すなわち目的税は資源の適正な配分をゆがめますし、財政の硬直化を招く傾向を持つから好ましくないというのが、私は議論としてあり得る議論だということは十分承知をしております。  ただ、三十日といいますと、ちょうど二十九日に予算編成を終わりまして、予算編成の間に、これは与野党といわず、あるいは先ほど来の議論の経団連もございましょう、また労働組合の方もございましょう、いろんな人にたくさん会いました。そういう中にやはり一つの目的税、特にそれは年金の問題に対しての御意見が多うございましたけれども、まあリタイアして二十二万もらっておって、現役の十万円の人が七千幾ら年金を払っておるということになると、世代間のまたいろんな不愉快な問題も出るから、そういう基礎年金部分だけは目的税で賦課方式でやった方がいいじゃないかとか、そんな意見もございました。二階建ては企業年金であり、三階建ではみんなが工夫していろいろやっていけばいいじゃないかとか、そんなような意見がたくさんありましたことは事実でございます。したがって、いわゆる福祉目的税というのは、あれは審議会、正確には忘れましたが、でも、一遍答申のあったことがございますので、まあそういうものを指しておるのではないかなというふうな感じで、皆さん方の御意見を聞いておったということでございます。  その際にまた、そのいわば間接税というのは、やはり所得税減税と抱き合わせでやるべきだとかというような意見もいろいろ聞かされておりまして、私、大体自分の意見を出さないように出さないようにしておりますが、こんな意見があったというのじゃ記事になりませんので、私が言ったというようにとれるような形で記事にしていただいたのかな、こんな感じでございました。
  104. 古川雅司

    ○古川委員 大臣はこれから予算委員会に出発をされるそうでございます。そう簡単に一言でお答えになれるような問題と問題が違いますので、これ以上詳しく申し上げませんが、今のことでちょっとつながりがございますので……。  その福祉の目的税を検討していくという、その結果として、その延長線上にいわゆる所得減税と間接税を含めた大型新税の導入が時期的に重なることもあり得るという御発言がこの新聞記事には見えるわけでございますが、その点のお考えを一言述べていただいて、予算委員会の方に移っていただきたいと思います。
  105. 竹下登

    竹下国務大臣 そういう意見の人もたくさんいらっしゃった、こういう意味で申し上げたわけでございます。できる限り予断を示さないようにしております。
  106. 古川雅司

    ○古川委員 順序が前後いたしますけれども、引き続いて政務次官、そしてまた局長にお伺いを進めてまいります。  最初法人税率の国際比較でございますが、これは国際的に比較して日本が二度も引き上げを行ってきた。それは一体何だったのか。先ほどの大臣の答弁にひとつ補足をして、その点御説明をまずいただきたいと思います。     〔委員長退席、堀之内委員長代理着席〕
  107. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 先ほど大臣の御答弁にもありましたように、我が国の法人税の実効税率が諸外国、なかんずく先進諸国と余りにかけ離れたものになることは、国際競争力上等から好ましくないという基本的な認識は、従来から税制調査会なり私ども大蔵省一貫して、そういう認識は持っておるわけでございます。  ただ、税でございますので、ときどきの財政事情に即して、やはり必要な財源確保という観点は当然あるわけでございますが、その場合においても、国際競争力等の観点を忘れてはいけないということでございます。特に五十九年度の税制改正におきまして、これは二年間の時限措置としておりますけれども、一般の法人につきまして一・三%ポイントの引き上げをお願いいたしました。その結果、これも事実問題といたしまして、我が国の法人税率の現在の水準が戦後一番高い水準にある。それから、諸外国と比較いたしましても、ドイツに次いで高い部類に属するという水準に達していることは事実でございます。  ただ、五十九年の税制改正のときにも、税調答申にも述べられておるわけでございますけれども、所得税の減税財源といたしまして、財政全般の観点から法人税に若干の負担の引き上げの余地があるという考え方に立って、この引き上げを提案し、国会で成立させていただいたわけでございます。しからば、今の法人税の実効税率の水準が、我が国の現時点での投資とか、あるいは企業の国際競争力等から見まして、それを著しく阻害するような水準になっているというのも、また遮断ではないかというふうに考えております。
  108. 古川雅司

    ○古川委員 国際競争力、雇用とか景気、国民生活に悪い影響を及ぼす、その懸念は、さっきも申し上げましたとおり、昭和五十五年までは大蔵省の方にそういうお考えが強かったわけでございまして、むしろ今逆転をして、私たちがその心配をしているわけでございます。御答弁によりますと、好況を反映して多少法人税収が好調であるということを考えますと、むしろ六十年度で期限を切って、六十年以降はこれを取りやめる方がいいんじゃないかというふうに考えるわけでございますが、その点はいかがでございますか。
  109. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 先ほども申し上げましたように、税は一般財源として、財政運営全体の中で必要な税源を確保するという観点で租税政策を展開してまいるものでございますし、現時点での我が国の財政事情を見ました場合に、特に五十九年は所得減税の減税財源という観点から引き上げをさせていただいたわけでございます。ただし戦後一番高い実効水準にあるわけでございますから、この辺はよほど慎重に事態の推移を見なければならないということもございまして、二年間の時限措置でお願いしておるわけでございますが、期限が参ります六十一年度どうするのかという問題になりますると、これはやはり国の財政事情、その間の経済情勢を見ながら、改めてその時点で判断をするということになろうかと思います。
  110. 古川雅司

    ○古川委員 その点は十分納得のいかないところでありますが、先へ進みます。  法人税のあり方につきましても、これは所得税同様にいわゆる税源をあさる、そういう傾向が非常に目立つわけでございまして、非常に批判が強いのであります。そうした政府政策選択につきまして、以下お伺いを進めていくのでありますが、この六十年度の税制改正で、貸倒引当金の法定繰り入れ率の引き下げで約二千億円程度の増収を図っておりますね。これは当初は、退職給与引当金の繰り入れ率を引き下げて、やはり二千億円程度の増収を図るということが有力視されていたと思いますが、税制改正政府決定の直前になって変更をした、そういう感じがぬぐえないわけであります。こうした法人の負担をふやしていくという傾向——限界であるとはお答えになっておりますけれども、まだまだねらい撃ちの対象を残しているのではないか、そういう心配を持つわけでございますが、この点いかがでございましょう。
  111. 中村正三郎

    ○中村(正三郎)政府委員 法人税の改正が財源あさりではないかという御指摘でございますが、六十年度の法人税関係税制改正において、今お話ございました貸倒引当金の法定繰り入れ率の引き下げ、公益法人及び協同組合等の軽減税率の引き上げ、租税特別措置法の整理合理化等を行ったわけでありますが、今御指摘の貸倒引当金にいたしましても、実際の貸し倒れ発生から考えますと、今の引当率が約三倍ぐらいになっておるということで、実体との乖離があるということでこれを合理化していこう、実体に近づけていこう、しかし、一どきに大きなことをやらずに、激変緩和ということも考えつつ、二割程度の引き当ての縮減を行ったところでございまして、これらいろいろな措置は、最近における社会経済情勢と現下の厳しい財政事情に顧みて、税負担公平化適正化の一層の推進を図るという観点から行うこととしたものでございまして、御指摘の財源あさりのような趣旨で行ったものでないことは御理解を賜りたいと思うわけでございます。  また、弱い者にと申しますか、税負担にいろいろな配慮をいたしまして、中小企業関係の措置では中小企業の技術基盤強化税制というようなものも新たにつくりましたし、中小企業の技術開発促進臨時措置法というようなものもやりましたし、また中小企業者等の機械の特別償却制度の特別措置を延長するというようなこともやって配慮もいたしておるわけでございまして、決して財源あさりではないことを御理解いただきたいと思うわけでございます。
  112. 古川雅司

    ○古川委員 財源あさりでなければ、では一体何なんですかというお伺いをしなければならないわけでございますが、一方で、実態に即応してということも一つには言えると思います。それから、弱い立場のところへの負担の押しつけではない、これこれの手当てをしているという御答弁も一面からは言えるかもしれませんけれども、今回のこの貸倒引当金の問題一つ、この選択一つ考えましても、やはり弱い者への負担の押しつけはさらに強くなったなという感じは否定できないわけであります。  その理由は、貸倒引当金、退職給与引当金の金額を、資本金別にその利用状況を見てまいりますと、貸倒引当金は資本金一億円未満の中小企業が二五・八%利用している。退職給与引当金は、同じく中小企業の利用率は一六・二%になっております。逆に資本金百億円以上の企業の利用率では、貸倒引当金の二九・三%に対して退職給与引当金は四三・二%である。中小企業に配慮すれば、これは別の選択になっていたのではないか。この状況、この数字から見る限り、これは所得税と同じようにかなり弱い立場のところへ押しつけになっていると言わざるを得ないのでありますけれども、この私の見方は間違いでありましょうか。この点ひとつ御説明をいただきたい。
  113. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 引当金、特に六十年度で予定しております貸倒引当金の繰り入れ率の引き下げの考え方につきましては、先ほど政務次官が言われましたとおり、実績率等から見まして、これは負担の公平、適正の観点から引き下げるという考え方に立っておるものでございます。  ただ、ただいま委員が御指摘になりました、これは先ほどの別の委員にもお答え申し上げたところでございますけれども、退職給与引当金と貸倒引当金では中小企業の利用割合が相対的に退職給与引当金の方が高いということでございますけれども、これは別に引当金の性格そのものが大企業に優遇になっているとか、あるいは大企業に偏っているというものではございませんで、性格上、どうしても中小企業の場合は内部留保の引き当ての方法よりも、外部拠出をして退職金に充てるという道を選んでおられるものですから、結果的にそういうことになるということでございます。  なお、貸倒引当金につきましては、中小企業につきましては特別の繰り入れ率、一般の企業に比べまして、引き当て率につきましては優遇をされておる、政策上の配慮が行われておるということは御案内のとおりでございます。
  114. 古川雅司

    ○古川委員 中小企業全般にわたって、今回のこの法改正の措置によって非常に増税に対する不安、そしてまた不満が強くなっていることは事実でございまして、さらにこの点につきましては、今後ともその推移を見守っていかなければならないのでありますが、先ほどの国際競争力の問題といい、またこの税負担強化といい、これは今後非常に大きな問題であるということを改めてはっきり申し上げまして、さらにもう一点お伺いしてまいります。  先般、大蔵省税制の抜本改革の一環として、六十一年度から新たに赤字企業にも一種の法人税を課するという方針を固めたということでございますが、その点についてひとつ御説明をいただきたいと思います。
  115. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 赤字法人の税負担の問題につきましては、これも六十年度の税制改正に当たりまして税制調査会でいろいろ御議論いただきまして、赤字法人といえども公共サービスを受けているわけだから、応分の負担を求めてしかるべきであるという考え方もあるわけでございますけれども、現行の所得課税たる法人税制の中でその種のものを考えるということは、税制上もいろいろ問題がございます。したがいまして、ただいま御提案申し上げておりますように、利子・配当それから割引債の源泉徴収税額の還付についての特例を実はお願いをいたしておるわけでございますが、今委員が御指摘になりました、六十一年度から赤字法人についての何らかの新しい課税をするということを大蔵省が決めたという事実はございません。いずれにいたしましても、この問題は今後の検討課題であるということでございますけれども、そういうものを決めたという事実はございません。
  116. 古川雅司

    ○古川委員 正式に決定をして公表したということではないにしても、既にそういうお考えを持って検討を進めているのかどうか。これは非常に御答弁がしにくいと思いますけれども、それを重ねてお伺いをいたしますし、全国百六十万企業のうち、いわゆる赤字企業は、欠損企業と申しますか、約五五%を占めている。そのほとんどがいわゆる中小零細企業である。こういう実態でございますけれども、そういうところに対して、中小企業の設備投資であるとか、あるいは特別償却、税額の控除など、対象をむしろ広げていく方向をとらなければならないのに、こうした弱い立場のところにさらに締めつけを強化していくということは考えられないのでございます。その両方を含めてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  117. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 赤字法人の問題について世上議論がありますのは、先ほど私が申し上げました、赤字法人といえども何らかの公共的サービスを受けている以上、応分の負担を求めてしかるべきであるという考え方一つと、もう一つは、これも世上いろいろ議論があるわけでございますけれども、税捕捉上、税が適脱されているんではないかという観点からの御議論もあるわけでございます。現実にフランスでは、そういった観点を踏まえまして特別の税制を持っておるわけでございます。  ただ、先ほど来繰り返して申し上げておりますように、六十一年度から、大蔵省といたしまして、この問題について何らかの具体的な方針を決めたという事実は一切ございません。ただ、税制調査会の六十年度答申でも問題として提起はされておりますので、今後、税制調査会の御議論がどういうふうに展開するか、私どもとしてはそれを見守るということでございます。
  118. 古川雅司

    ○古川委員 法人税につきましては、残る質問は同僚議員に譲ります。  次に、先ほど大臣にもお伺いした、いわゆる福祉の目的税であるとかあるいは所得減税と新税、大型間接税等の導入、その時期を同じゅうする心配はないかという問題。この点について大臣は、御自身の見解としてではなくて、そういう議論がたくさんある、それを大臣のお考えであるかのように表現をしたんだ、そういう意味にお答えになったわけでございますが、この点につきまして大蔵省内部ではどういうお考え検討を進めていらっしゃいますか。
  119. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま御指摘になりましたような問題につきまして、私ども税制当局で具体的に検討を進めておるということはないわけでございます。  ただ、一般論として申し上げますと、これは先ほど大臣も触れられたわけでございますけれども、いわゆる目的税というのは、御案内のとおり一定の財政支出経費に対して、特定の税目でその財源を調達する。一般的には受益者負担的な構成をとっておるものが多いわけでございますが、現在、福祉目的税として議論されているものは、その福祉の範囲を年金に限定するのか、あるいは広範な福祉に広げるのか、定かでない面もございますが、一般論といたしまして、目的税というのは財政の硬直化を招く、資源の効率配分を阻害するという観点からなるべく避けるべきであるというのが、財政の基本的な方針とされておるわけでございます。なかんずく、年金の目的税という議論になりますと、我が国の社会保険制度というのは既に定着をいたしておりますから、そういった事実から、やはり保険料の方がいいという議論もあるわけでございます。  そういった各種の広範な議論がありますので、これも先般の予算委員会小倉税制調査会長が、今申し述べましたようなことをお述べになりまして、ただ税制調査会でいろいろな議論が出るかもわからない、当然議論はされるだろうけれども、大蔵省なり税制調査会が現時点で福祉目的税の可否を論ずるというふうな段階にはない、今後の検討課題だ、ただし、よほど慎重に扱うべき問題だろうということになろうかと思います。  それから、後段の所得減税とかあるいは新しい間接税の話は、これはもう当国会総理大蔵大臣がしばしば述べておられますように、現段階政府といたしまして、そういう具体的な税体系のあり方について予断を持っておるということは一切ございませんで、白紙の状態で今後の広範な議論にまつということでございますので、私のお答えもその程度の域を出ないということでございます。
  120. 古川雅司

    ○古川委員 次に移ります。  五十九年度に所得税減税が実施されたのでありますけれども、その後の意識調査や世論調査の結果を見ましても、依然として税金が高い、不公平だ、もっと減税をしてほしい、そういう国民の声はますます強くなっているわけでございます。特にサラリーマン、いわゆる勤労所得者層からそういった声が強いわけでありますけれども、今国会に入りまして、六十年度の所得税減税につきましては、政府は、総理を初めできないという答弁を繰り返していらっしゃるわけでございますが、本当にできないものなのか。財政当局としてはこの点についてどうお考えか、まずあらあらお答えいただきたいと思います。
  121. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 所得減税につきましては、五十九年度、これは数年ぶりに課税最低限の引き上げ、税率構造の手直しという本格的な税制見直しをさせていただきまして、住民税を含めますと初年度一兆一千八百億円の減税を実施したということでございます。特に、家計調査なんかを見ますと、昨年の六月以降実収入よりも可処分所得が上回るという形で、それなりに減税の効果はあらわれ始めておる。ただ、この可処分所得が消費支出に向くかどうかという議論は種々ございますけれども、それなりの効果は出てきておるというふうに私どもは考えておるわけでございます。  六十年度の所得税の減税問題につきましても、税制調査会で御議論をいただきました。五十九年、数年ぶりの本格的な減税を行ったところであるということと、もう一つは、所得税はもちろん税制の基幹でございますから、特に名目所得に対して累進構造を持った税率が適用されるという意味で、納税者の負担感も非常に強い税であるということもかねがね税制調査会は留意をされておりまして、やはり何年かに一遍見直しをしなければならないというふうに言っておられますが、五十九年所得税減税を行ったばかりでございますし、ただいま委員のおっしゃいましたように、現下の財政事情から見まして、減税が後代の負担のツケになる特例公債の増発によって賄われるということは、これは世代間の公平という観点からも非常に問題である。したがって、税制調査会での御結論は、結局のところ六十年度は所得税減税を行う余地がない、これを国民に御理解いただかなければならないということで、本年度はその面での所得税法改正の問題は御提案をしていないわけでございます。
  122. 古川雅司

    ○古川委員 これは、一生懸命働いて税金を納める方の立場と、税収を図って税金を集める方の立場とはおのずから違うのは当然でありますけれども、国民は昨年度の減税をやってなおかつまだ税金が高いと言っている。まだまだ不公平があると言っている。その点はひとつ財政当局として、税金を出す方の立場になって考えてみると、どういう御判断をなさいますか。
  123. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 これは非常に大きな政策問題でございますから、これも先ほど大臣がおっしゃいましたように、所得税減税をやりたいという気持ちはあるということでございますけれども、やはり現在の財政事情から見て、特に赤字公債の増発に財源を求めるというような形での所得減税は見送らざるを得ない。  ただ、五十九年度の税制改正におきまして、税率構造の見直し、なかんずく中堅所得階層の負担の軽減ということで、現在の我が国の所得水準なり所得分布に少しでも適合するような税制ということで五十九年度の改正を行ったばかりでございますので、御理解を賜りたいということになろうかと思います。
  124. 古川雅司

    ○古川委員 大蔵省の資料をしばしばいただいて拝見いたしますと、どうも増税の実態が低目低目に出ているものですから、やはりもう一つサラリーマンの意識のとらえどころに何か不満を感ずるわけでございますけれども、勤労所得税のふえ方を試算してみました。これはかって昭和五十六年十月二日の予算委員会におきまして、総理府がお示しになりました家計調査報告に基づいて、サラリーマン家計の勤労所得税の課税状況を試算いたしました。それに基づいて減税の必要性を主張したわけでございます。今回同じく総理府の家計調査報告に基づいて、サラリーマンの家計において、減税によってどの程度の負担を和らげているのか、そういう観点から、昭和五十二年の九月と減税前の五十八年の九月、それから減税後の五十九年の九月を比べたわけでございます。  五十九年度に減税が実施されたものの、勤労所得税の伸び率は、五十二年度を基準にした場合、全く同じ一一六%の増加であって、負担感を和らげるには至っていない。今局長は、これから徐々にそういう効果もあらわれてくるという見解をお示しになったわけでございますが、これは金額的に見ても、五十八年度分が一万一千三十八円に対して、五十九年度分も一万一千四十八円と、ほとんど同じでありまして、もう一つの大きな特徴は、平均のふえ方は一一六%でありますけれども、所得階層別に見ると、最も所得の多い第五分位は一二七%のふえ方でありますけれども、最も所得の低い第一分位は三〇五%もふえている。特に実収入や非消費支出のふえ方が、階層別に見て大きな格差はないのに、勤労所得税のみがいわゆる低所得層の方に非常にふえ方が多いというのは、これは異常と言わざるを得ない。その辺に不公平感が強調されるわけでございまして、この点、今お示しをした実態についてどのようにお考えになっていらっしゃるか、大蔵省のお考えをお示しいただきたいと思います。
  125. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 委員が御指摘になっておりますが、先ほど私も申し上げましたように、所得税は名目所得に対して累進構造の適用がされるものでございますから、数年に一度はやはり見直しをして、負担感の軽減あるいは公平感の維持に努めなければならないということは、そのとおりでございますが、ただいまお示しの数字の点につきをしては、若干私ども異見があるわけでございます。  と申しますのは、所得税は、サラリーマンに例をとりますと、サラリーマンの収入から非課税部分として一定額の、各世帯に共通の額の人的控除を行った後、給与所得の場合は給与所得控除も適用した後、税率が適用されるものでございますから、これは論理式といたしまして、収入が低くかつ定額の控除がある限りは、その増加分の税率は低い方が必ず高くなるわけです。  そこで、問題の分析は、むしろそういった税が課された後の可処分所得が、収入の伸び率に対しまして一体どういうことになっているのか。これは累進構造を持っておりますから、どのような税モデルをとりましても、賃金の伸びが一定といたしますと、高収入のところほど可処分所得の伸びが低くなります。所得税はそういう性格を持っておるわけでございます。したがいまして、五十二年と五十八年なり五十九年を比べますと、やはり税額の限界部分の増加じゃなくて、可処分所得の面でいろいろ御検討も賜りたいと考えております。
  126. 古川雅司

    ○古川委員 では、実態に即して現状がどうなっているかをお伺いしておきたいのであります。  ちょうど今五十九年度の所得税の確定申告が受け付けられております。盛んに行われております。この確定申告について、昨年度の例で結構でございますので、実態はどうなのか。大蔵省当局が期待しているような実態なのか。大蔵省みずから問題点をお示しいただければ幸いでございます。  補足いたしますと、大蔵省が期待しているような申告が進んでいるのかということでございます。ことしも非常に幅広く強力に確定申告を進めている、呼びかけをしていらっしゃるわけでございますが、実態はどうなのか。いろいろ問題が指摘されておりますけれども、その点大蔵省としてはどう受けとめていらっしゃいますか。
  127. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 五十九年分の所得税の確定申告が、去る二月十六日から始まっておりまして、まだ私どもとして計数的なところは何も把握してございません。ただ、私ども担当者が既に幾つかの税務署を回っております状況では、ことしも納税者の申告においでになる出足はよろしいように承知しておりますが、ただ、計数的にどうこうということは、まだ私どもとして、まさに確定申告進行中でございますので、ちょっと申し上げるようなデータは持ち合わせてございません。(古川委員「昨年度の実態では」と呼ぶ)そうしますと、去年の五十八年分の申告状況ということでございますが……。
  128. 古川雅司

    ○古川委員 お調べいただいている間にもう一つ加えてお伺いいたします。  いわゆる勤労所得者、サラリーマンの必要経費の問題がずっと昔から議論されてきているわけでございますが、この点、大蔵省としてはなかなかお認めになれないということで、古い議論でありますけれども、今後この問題をどうとらえていくお考えか、局長にひとつ御答弁いただきたいと思います。
  129. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 御指摘のとおり、いわゆる給与所得者の必要経費の議論は、非常に長く議論されてきておる問題でございます。で、これも私どもしばしば申し上げるところでございますが、勤労者にとって何が必要経費かという基準が非常に難しいものでございます。  ただ、総理府の家計調査等で、衣服とか身の回り品とか小遣いとか、そういうものをずっと拾い出しまして、総収入に対する率を連年検証いたしておりますが、ほとんど変わらない傾向といたしまして、おおよそ年のグロスの収入に対して一〇%程度の水準になっているわけでございます。一方、御案内のとおり、現在我が国の給与所得控除は、必要経費の概算部分以上に給与所得が持つ担税力の調整というような観点も踏まえまして、概算的な率で設定されておりまして、収入段階ごとに控除率が逓減する方法をとっておりますけれども、今一番最低で四〇%、全給与所得者を平均いたしますと大体三〇%ぐらいの水準で給与所得控除が適用されておる。したがいまして、いわゆる必要経費論の観点からいえば、我が国の給与所得者に適用される給与所得控除は、先進国の税制の中でもかなり高い水準であろうというふうに言えると思います。これはもう税制調査会答申でもそういう御指摘がございます。  一方、諸外国の税制議論になりましたので申し上げますと、諸外国では、必要経費と概算控除の選択という方式をとっております国もございますけれども、その場合でも、必要経費の幅というのは非常に小そうございます。  したがいまして、むしろ現在の給与所得控除の水準を、給与所得者の担税力を勘案しながら検討すべきであって、必要経費の物差しは非常に難しゆうございますし、仮にそういう物差しをつくったとしても申告ということになりますから、そういたしますと、その必要経費の立証のうまい下手でかえってトラブルが起こったり、負担の不公平が起こるのではないかという議論がございます。したがいまして、税制調査会は従来から、給与所得者に適用される必要経費を含む控除としては、現行の概算控除の方法が一番いいのではないかということでございまして、私どももやはりそういう方向で今後とも対処したいと考えておるわけでございます。
  130. 古川雅司

    ○古川委員 これは非常に小さな事例かもしれませんし、まだ一般化はしておりませんけれども、例えばこういうことがあるのですね。最近、いわゆるリース制度というのが非常に普及をしてまいりました。これがいわゆる洋服、それが高級紳士服にまで及んでまいりまして、これをリースで会社に貸し付けるわけです。会社はそれを会社の従業員に支給をして着用をさせる。これは当然会社の、法人としての必要経費として落とすわけでございます。本人がそのうちの何%かを会社に対して負担をするという形。これは回り回って、形とすれば、日常着て歩く服が必要経費として間接的に認められているという格好になるわけでございます。こういう傾向が今後普及していった場合、税務当局としてはこれはどうお考えになりますか。
  131. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 御指摘の事例、あるいは私、受け取り方が不正確かもわかりませんが、委員がおっしゃるのは、使用者が雇用者に対してユニホームを支給する、それは会社の経費で落ちる。それで……(古川委員「作業服じゃなくて、ふだん着て歩く背広です」と呼ぶ)それで、従業員の方は負担をしないわけでございましょうか。(古川委員「いや、します、一部は」と呼ぶ)一般に背広を従業員に支給した場合、これは給与になりますから、事業主としては当然経費制で経費として認められるわけでございますけれども、受け取った方にとっては現物給与ということでございますから、所得税の課税問題が起こる。  経費を負担しておられる部分は——背広が必要経費かどうかという議論は、先ほど私申し上げましたけれども、そういうものを全部包括しまして給与所得控除というのが適用されておるということでございますから、それだけがはみ出して必要経費を認めているとかどうとかいう議論にはならないのではないかと思います。
  132. 古川雅司

    ○古川委員 支給しているのではないですよ、リースなんですよ。会社もリース会社から借りているわけです。そのリース料を払って、従業員はそれを着て仕事もするし、通勤もする。
  133. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 委員の御指摘は、それだからこそ背広が必要経費として認められているという、そこのつながりがちょっと私わからないわけでございますけれども、基本的には、それはリースであろうが新調服を調達しようが、これは現行の税法の中では家事の中の経費という区分になっておりまして、そういうものを全部包括して給与所得控除というものが適用されている。そういうふうに分けるわけですから、リースであろうと背広を新調する場合であろうと、余り事柄に変わりがないのではないかというふうに考えますが……。
  134. 古川雅司

    ○古川委員 じゃ、その御答弁によりますと、サラリーマンはこれからそういう形をとっていけば非常に助かるということ。リース会社というものが間に入りますけれども、そういう形態がこれからふえていくということになりかねません。その点はいかがですか。
  135. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 会社の法人税の話と、受け取る側の従業員の話とございますが、従業員の税負担ということから見ますと、そういうリースを払ったからといって税金がまかるわけじゃございませんですね。ということになると思いますが……。
  136. 古川雅司

    ○古川委員 最近そういう傾向が出てきたということは、サラリーマンにとっては非常に負担の軽い服を着るということについては変わりない。ただ、自分のものであるか、会社から借りたものであるか、会社はリース会社から借りたという形をとっているだけであって、そういう傾向が一部に出てきているということ、それが税法上どうなるかということを伺ったわけでございます。そしてまたそういう考えは、洋服も、背広も、サラリーマンとしての必要経費として認めていい一つ考え方をそこから引き出せるのではないかということをお伺いしたわけであります。
  137. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 先ほど来申し上げておりますように、給与所得控除という概算控除で、包括的に収入からいわば控除されるわけでございますから、洋服を新調するのではなくてリースで安く利用されるというのは、それ自体大変結構な話でございますけれども、税の問題と余り関係がない。ただ、誤解のないように申し上げますけれども、事業主から無料でそれが支給された場合は、当該リース料相当部分はこれは所得になるということでございますが、今委員のお示しになりました例では、その分を、実費をいわば従業員が負担しているということでございますから、その限りでは、新しい所得税の課税上の関係は起こらないということになろうかと思います。
  138. 古川雅司

    ○古川委員 では、次に進みます。  同じように、サラリーマンの問題で、単身赴任の減税について、これはまた最近一つの社会問題になって取りざたをされておりますが、先般の予算委員会でも、我が党の委員から質問がありました。極めて消極的な御答弁であったと記憶いたしますけれども、単身赴任の勤労者の実態について、労働省の方から資料が提出をされております。その内容は、大蔵省としてはもう既に御検討済みの上で、この単身赴任者に対する減税問題についての結論をお出しになっているわけでございましょうか。その点を伺っておきます。
  139. 中村正三郎

    ○中村(正三郎)政府委員 いわゆる単身赴任減税問題でございますが、これに対しまして要望がいろいろなところから出されていることは承知しているわけでございます。  ただ、これは大蔵省として考えますと、単身赴任の手当や帰宅旅費、こういったものもやはり給与の一部というふうに存ずるわけでございまして、扶養手当だとか僻地勤務手当、いろいろな手当がございますが、そういったものと税制上分けて特別な取り扱いをするということは大変問題があるのではないかと思うわけでございます。それと、これらの手当を非課税とすることになりますと、手当の支給のない企業、こういった対策がされてない企業でございますとか、それから出稼ぎ労働者等、この減税の恩恵を受けられないところが出てまいります。そういうところとのバランスを欠く結果となるという問題も出てこようかと思うわけでございます。  また、そういうわけで、六十年度の税制改正答申におきましても、「税制上しん酌するには限界があり、また、しん酌する場合の客観的基準を定めることは困難であること等を考慮すれば、新規の特別控除等を創設することは適当でない」という税調答申も出ているところでございまして、これは大変難しいというふうに考えているわけでございます。
  140. 古川雅司

    ○古川委員 時間がございませんので、単身赴任者の実態、その問題点についてここでさらに詳しく申し上げるつもりはございませんが、かなりデータはそろってきていると思います。税制上で考慮するということについては、いろいろ技術的にも難しいという御答弁も一面理解できるわけでございますけれども、実態から考えますと、これはやはり税制措置に限らず、何らかの対処をすべきではないか、そう考えますので、これはもう全く検討対象にもならない、問題にならない、そういう答弁というふうに印象を強くしたわけでございますから、きょう改めてその点を重ねて伺ったわけでございます。やはりこれは、今後の課題として、大蔵省部内でも何とか実現の方向はないかということで御検討いただきたいと思うのでございますが、いかがでございますか。
  141. 中村正三郎

    ○中村(正三郎)政府委員 今お答えさせていただきましたような趣旨によりまして、大変困難であるというふうに再びお答えする以外ないのでございますが、これは、私どもがこういうことを申しまして適当かどうかはちょっとお許しをいただきたいのでございますが、転勤に伴う負担の問題をどう解決するかというような問題は、基本的には労使間の対応でなされるべき事柄ではないかと思うわけでございます。先ほどの税調答申にもございましたように、税制上でしんしゃくするには限界があるということではないかと存じております。
  142. 古川雅司

    ○古川委員 では、その点はまた後日さらに別な観点からお伺いすることといたしまして、租税負担率についての問題でございますが、租税負担率は、納税者の立場から見まして、租税負担の軽重あるいは課税の限界、担税能力などを測定する指標とされていることは言うまでもありません。いわゆる「増税なき財政再建」という考え方総理国会答弁、公約の中におきましても、基本的に租税負担率に変化を及ぼさない、そういう範囲内において、新しい税目を起こすとか、新しいそういう措置をやらない範囲において変動があることは、これは認めること、しかし国民所得に対する租税負担率を変えないという、それが「増税なき」という意味であるというふうに明確にお答えになっているわけでございますが、今日の実態に照らして、総理の答弁、公約を大蔵省としてはどう受けとめていらっしゃいますか。
  143. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 「増税なき財政再建」というのは、これは臨調の答申にも明確に書いてございますように、当面の財政再建に当たっては、まず歳出削減の努力をする。税の面では、全体として国民所得に対する租税負担率の引き上げをもたらすような新たな税制上の措置をとらない、つまり安易な増収措置によってこれをやるということを強く戒めている考え方でございまして、ここ二、三年来の我が国の財政運営は、まさにそのとおりで運営させていただいておるわけでございます。  租税負担率の実際の数字を見ますると、二、三年来上がっておりますけれども、これは子細に見ますと、ほとんどがいわゆる自然増収によってもたらされる部分で、臨調答申が示しておりますような安易な増税に依存した結果ではございません。  それともう一つは、税制調査会では、税制の問題といたしまして、税負担公平化ということを強く指摘されております。例えば租税特別措置等の整理合理化、あるいは税負担の公平適正化という観点から税制改正をお許し願いますと、その結果増収効果が生じる。これは臨調答申で戒めている、いわゆる安易な増税という意味での租税負担率の上昇をもたらすような新たな税制上の措置ではないというふうに、一般的に御理解をいただいているところでございます。
  144. 古川雅司

    ○古川委員 五十四年度決算から五十八年度の補正分まで含めまして、国民所得、それから所得税、法人税、酒税、こういった推移から見ましても、このまま租税負担率を押し上げていくという構造がビルトインされてしまって、六十年度はますますこの負担率が上がっていくことになってしまうのではないか。この六十年度予算というのは、要するに租税負担率の上昇をビルトインした、そういう形であると認めざるを得ないんじゃないかという感じを持つわけでございますが、この点はいかがでございますか。
  145. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま御審議願っております六十年度の税制改正におきまして、増収効果をもたらすような改正内容もあるわけでございますが、これはいずれにつきましても、先ほど来申し上げておりますように、税負担の公平適正化という観点からの提案を申し上げておるわけでございまして、全体としての租税負担率の引き上げをもたらす、増収だけをねらうという意味での税制改正、いわゆる増税ということにはなっていない。したがいまして、六十年度予算なり税制改正が増税をビルトインしておるという性格のものではなかろうというふうに考えております。
  146. 古川雅司

    ○古川委員 時間が迫りましたので、最後にこの不公平税制の是正というテーマで、いわゆるマル優貯金など少額貯蓄の非課税制度の見直しについて若干お伺いをいたしておきます。  政府は、まずこのマル優預金など少額貯蓄非課税制度の見直しということを選択されたわけでございますが、今回グリーンカード制度が廃止をされるということも踏まえて、この措置を不公平税制の是正という上では恐らく前進ととらえていらっしゃるのだと思いますけれども、これはむしろ後退であるという意見も間々あるわけでございます。  最初にお伺いいたしますのは、今回の限度額管理の適正化でどの程度の増収を見込んでいらっしゃるのか、それがまず第一点であります。
  147. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま御審議をいただいております来年度の税制改正におきまして、いわゆる民間のマル優、それから郵便貯金につきまして、本人確認を厳正にするという措置のほか、郵便貯金につきましては限度額のオーバーになりました部分、それから本人確認のできない部分については新たに課税の措置を講ずる、しかもその部分について郵政官署から税務官署に通知をいただくということで、私どもは現状よりも一歩二歩前進する効果があると考え、かつ期待はしておるわけでございます。  ただ、これによりまして、世上言われるいわゆる不正部分が課税部分に浮き上がりまして、どれだけ税収効果を生じるかということは、今の時点でなかなか計量的にお答えしにくい問題であります。
  148. 古川雅司

    ○古川委員 今回廃止が決定的になりますグリーンカード制度を採用する議論の過程では、グリーンカード制度を導入すればどの程度の増収が見込まれるのかということに対して、御答弁があったんじゃないかと記憶しておりますが、その点いかがでございますか。
  149. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 手元に資料がございませんが、あの当時、当大蔵委員会での御質問に対しまして、国税、地方税を通じまして約二千億弱の増収が見込まれるというふうに私ども申し上げたと記憶をいたしております。あのときの増収効果と申しますのは、いわゆる非課税貯蓄の不正利用部分が課税部分に浮き上がったという部分は入っておりませんで、グリーンカード総合課税をやるものでございますから、分離課税になっております利子・配当部分の減収額がそれだけ国庫に入ってくる。これは計数的に予測がかなりはっきりできますので、その数字を申し上げました。  それから、地方税につきましては、分離課税になっておりますものは現在住民税は非課税になっておりますが、これは総合課税にいたしますとその分の増収が生じます。これも計量的に予測可能でございましたのでそういう数字を申し上げたわけでございますが、グリーンカードのときにも、グリーンカード制度の厳正な適用によって、乱用されておる非課税扱いになっているものが課税になった結果どれだけの増収になるかという数字は差し上げていないわけでございます。
  150. 古川雅司

    ○古川委員 これは、限度額管理を採用されてこの法案が通れば実施段階に入っていくわけでございますから、増収について全く事の性格からしてつかめない、非常にわかりにくいというのはわかりますけれども、制度を採用する以上は、大体このくらいの見当じゃないかということは大まかにつかんでいらっしゃるのじゃないかと思いますが、その辺のお考えをお示しになれませんか。
  151. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 税制調査会でも、委員がおっしゃるような御疑問なり御指摘、数々私ども受けたわけでございますけれども、事柄の性格上、現在不正部分が一体計量的にどれくらいあるのか、限度額オーバーの郵便貯金が一体幾らあるのか、民間貯蓄について幾らあるのかというのは、なかなかつかみにくい問題でございます。もし仮にそういうものがあるとすれば——あると私どもは考えておりますけれども、この制度によってどれだけ出てくるかというのは、やはり現段階では計量的になかなか申し上げにくいということでございます。
  152. 古川雅司

    ○古川委員 限度額管理ということに関連して御答弁いただくのがふさわしいかどうか、それはともかくといたしまして、国税庁がまとめられました五十八事務年度の源泉所得税白書と言われる報告では、全国の金融機関の一割を調査した結果、ほとんどの店舗でマル優制度を悪用した不正預金が見つかり、その額は六千七百億円、追徴税額は二百億円にもなったというふうに伝えられているわけでございますが、本当にこういう実態なのかどうか、この実態の内容について。そしてまたその詳細、中身について既に分析はしていらっしゃると思いますけれども、いわゆる勤労世帯の貯蓄について、どの程度なのか。あるいは一般世帯、商売人であるとかあるいは法人経営であるとか、自由業者であるとか、その辺の分析もしていらっしゃるのであれば、このマル優制度の悪用、その実態が発覚をしたその内容について御報告をいただきたい。今後これにどう対処していかれるお考えなのか。相変わらずこういう事態は今後とも続いていく傾向なのか、その点もあわせて御答弁いただければ幸いです。
  153. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 今先生が御指摘になりました源泉所得税白書とおっしゃいましたのは、私どもが毎年源泉所得税の事務に関しまして新聞の方に公表しております資料ではないかと拝察いたしまして、それに基づいてお答え申し上げます。  昭和五十八事務年度、五十八年七月から五十九年六月までの一年間におきまして、私どもが金融機関の全店舗の約一〇%に相当いたします三千八百店につきまして源泉所得税の調査をいたしまして、この際少額貯蓄非課税制度の悪用はないかという点も含めまして調査をいたしたわけでございますが、その際大部分の店舗におきましてマル優の不正利用を把握しております。その結果、金融機関の各店舗から、合計いたしまして約二百億円を追徴いたしております。この二百億円というのが、私どもとしてはマル優の不正に関しますデータとしてはただ一つのものでございますが、ただ、先生先ほどおっしゃいましたように、では元本はどの程度かということにつきましては、私どもとして正確なデータとしてではございませんが、一応の推計といたしまして、その元本の遡及期間であるとか税率であるとか金利等で割り返しをいたしますと、元本といたしましては約六千七百億円程度のことになるのではないか、こういう推計をいたしております。  なお、私どもとしては部分的な調査の結果をこのように把握しているわけでございまして、これが全体としてマル優の利用の中でいかほどの割合になっているのか、またそのマル優貯蓄がどのような階層によってどのように占められているかという全体の数字につきましては、持ち合わせた資料がございませんので、その辺につきましてはお答えできるところはございません。その辺につきましては、総務庁の方で貯蓄動向調査というのがございますので、全体の数字としてはこの辺を御参考にしていただくほかないのではないかと考えでございます。
  154. 古川雅司

    ○古川委員 時間がなくなりましたので、最後に、今の質問をまず最初に繰り返しまして、国税庁当局として、また大蔵省として、こうした事項に対して分析であるとか対応がどうもあいまいであると思うのでありますが、今回マル優預金の限度額管理の問題も出てまいりました。そういうことも含めて、今後こうした問題に対して大蔵省としてはどう取り組んでいかれるのか、もう少し明確におっしゃっていただきたいと思います。  それから、先ほど資料を調べていただきまして、御答弁を保留しておきましたが、いわゆる所得税確定申告の実態、状況、今年はまだ進行中でありますけれども、昨年においては、もう一度言い直しますと、大蔵省として満足のいく結果であったのか、そのように推移したのか、どういう問題が残ったのか。時間がありませんから、ひとつ簡単で結構でございますが、御答弁をいただいて、私の質問を終わります。
  155. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 少額貯蓄非課税制度の問題につきましては、私どもとしては今後とも金融機関に対しまして、本人確認義務を履行していただくようにお願いをいたしたいと思います。なお、本年度六十年度の税制改正におきまして本人確認の規定が強化をされることになりますので、これによって今後とも、仮名預金等の問題につきましてさらに前進が図られるのではないかというふうに考えております。私どもとしても、これらの制度を十分に生かしながら、金融機関の調査ないしは非課税貯蓄申告書の名寄せ等のチェックを通じまして、制度の適切な運用にさらに努力してまいりたいと考えでございます。  それから、先ほど御答弁ができませんでした、昭和五十八年分の申告所得税の確定申告状況でございますが、これは納税人員で合計約七百万人でございまして、所得金額で二十七兆五千億円、納税者一人当たり約三百九十万円、申告納税額は二兆六千七百億円、納税者一人当たり三十八万円でございます。これは前年に比較いたしますと納税人員で六%、所得金額で七%、申告納税額で五%の増加でございます。なお、五十九年分につきましては、御承知のとおり所得税の減税が行われておりますので、本年の見込みについてはどのようになるのか、なかなか見通しの難しい状況でございます。
  156. 中村正三郎

    ○中村(正三郎)政府委員 税制調査会答申におきましても、非課税貯蓄残高が個人貯蓄残高の六割を占めるに至っていること、非課税貯蓄限度管理の問題は、もはやそういうことを踏まえて放置し得ない状態にあること等の問題が指摘されているところでございますが、今回の本人確認制度等の措置が講じられたわけでございますが、そうした措置、また午前中いろいろ論議になっておりました名寄せの問題、こういったもの等の今回の改正による実効性を見きわめつつ、さらに六十年度の、先ほど申しました税調答申の趣旨も踏まえて、引き続き検討を進めていく必要があると存じておるわけでございます。
  157. 古川雅司

    ○古川委員 終わります。
  158. 堀之内久男

    ○堀之内委員長代理 午後三時より再開することとし、休憩いたします。     午後二時二分休憩      ————◇—————     午後三時間議
  159. 越智伊平

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。玉置一弥君。
  160. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 休憩がありましたので、元気よくいきたいと思います。  今回、法人税の改正並びに租税特別措置所得税、それぞれ従来と違って、財源確保のための税改正のにおいが大分強いような感じがいたしました。もともと税制の中での背景というものは、まず政策があり、それをいかに実現していくかということに力点を置いて、それに応じた税収を図るということにあるわけでございますけれども、どうも昨今の税務当局の動きを見ておりますと、予算と税制関係がかけ離れてしまっている。各省ともに、概算要求では逆に政策を後回しにして、いかに財源の中に組み込んでその場をしのいでいくかということが特に目立つわけでございます。そういう意味で見ていきますと、今確かに財政再建の途上であるという非常に苦しい時期でございますけれども、やはり国が政策を忘れたのでは人材が要らないわけでございますから、頭を使わなくて、ただ体力のある人だけでやっていけるわけです。そういう意味で、頭のいい方々がおそろいの政府当局におきましても、ぜひ頭を使ったやり方を十分考えていただきたいと思うわけでございます。  今回の法人税改正は、我々としてもまだ態度は決めておりませんけれども、私個人といたしましては、一つは公平さを求める意味において、いろいろな準備金、引当金というものはできるだけなくなった方がいいのではないかと思っているわけです。しかし、時と場合によるわけでございまして、そういう意味で、今の状況をよく認識して考えていかなければいけないのではないか、こういうふうに思うわけでございます。経済に活性化がなければ財政再建の原動力になり得ないということも事実でございますし、世界の各国を見ておりますと、企業関係の特に投資減税あるいは開発減税というようなことで、いわゆる促進をしていこうといういろいろな制度を実施しております。そしてまた、これが景気回復につながり、さらには国際競争力の強化ということにつながってきているわけでございまして、こういう状況を見ても、我が国がいつまでも高度成長時代の夢を追って、今諸外国から風当たりが非常に強くなってきておりますけれども、まだまだ技術力なり企業体力というものに余裕があるということで考えているのでは、大変な問題になるというふうに思うわけでございます。  一つには、長期にわたる不況といいますか低迷、この中で投資がやりたくてもなかなかできない、こういうことも続いてまいりましたし、またそれが設備の老朽化を引き起こしてきた、そして逆に今の企業にとっての収益性悪化というものにつながってきたわけでございまして、我々としても、この辺を大変心配しているわけでございます。  まず、産業政策の面から見て、通産当局の方にお聞きしたいのでございますけれども、今私が申し上げましたように、欧米の先進諸国が設備拡大あるいは体制を整えるということでやってまいりました。これからの日本に対してより具体的な、いわゆる製品別に至るまでの輸入拡大の申し入れなり、あるいは逆に資本交流とか金融の自由化とかいうのが非常に盛んになってくると思うのですけれども、その辺をとらえて、今までと今後と比較してどのように変わっていくのか、また、政府当局としてどのような対応を予定されておるのか、その辺についてお聞きしたいと思います。
  161. 大津幸男

    ○大津説明員 ただいまの御質問でございますが、通商問題の観点から、最近の貿易摩擦の問題に対しては非常に重要な問題と考えでございます。  貿易摩擦に対して、基本的には世界経済の一割国家としての責任を自覚し、貿易の拡大均衡を通じた世界経済の安定的発展の観点から対応すべきものと考えております。具体的には、内需を中心とした経済成長の達成を今後とも図るとともに、産業協力の推進、これは今先生から御指摘ございましたように、従来はどちらかというと日本から向こうへ出ていったのでございますが、最近は外国から日本に投資もたくさんしていただく、そういうことでお互いに投資の交流を進めるという観点でございます。そういう意味の産業協力の推進。それから、あとは日本が最近諸外国から言われております我が国市場の一層の開放あるいは輸入促進等に努めることが非常に重要であると考えております。  このため、我が国としましては、これも既に先生御存じと思いますが、五十六年十二月の第一次の対外経済政策から昨年十二月十四日の六次の対外経済政策まで、数次にわたって政策を決定しまして、現在その政策実施に努めているところでございます。
  162. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 六十年度予算を見ましても、具体的な経済政策の中で必ず出てまいりますのは、国内産業を伸ばして輸入の拡大を図るというお話が出るわけでございますけれども、具体的に効果が出るような感じを一向に受けないというふうに思うわけです。私も、ことしは輸入拡大の要請が非常に強くなるだろうというふうに予測しておりますけれども、具体的に今まで予算上はほとんど変わらないような内容で来ているわけでございまして、果たしてこのままでいいのかどうかというふうに思うわけです。  それと、時代の流れといたしまして、最初は資本の自由化に対する対応でありますとか、いわゆる貿易の自由化、この辺に向けての国内企業の体力強化、それから輸出拡大ということでやってこられたと思います。ですから、まず政策の根底として流れているそういうものについて、従来の例えば成長期、成熟期とこれからの、今混乱期ですけれども、さらにそれに向けての先行き、流れとして変わるのかどうか、その辺についてお伺いしたいと思います。
  163. 中川勝弘

    中川説明員 お答え申し上げます。  今後の日本経済のあり方、対外問題等関係もあわせましていかに進めていくべきかという御質問かと思いますが、経済の基本は民間の経済活動でございますので、民間の経済活力を最大限生かしながら、我が国の企業体質の強化を図っていかなければならないことは当然のことだと思います。     〔委員長退席、熊谷委員長代理着席〕 そのために、非常に厳しい財政事情でございますけれども、予算、それから民間の活力を活用いたします際に極めて有効かつ重要な手段だと私ども考えておりますが、政策税制の活用も図りつつ民間経済活動の後押しを進めていきたいと思っておりますし、そういう中で、先ほども御答弁ありましたように、対外経済関係をにらみつつ、一割国家としての日本の国際的な責任をあわせて果たしていかなければならない、かように考えております。
  164. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 結局、今の話ですと、要するに活力を増してそれを活用していくということになるかと思いますけれども、活力というのはやはり経済活動が活発になる、あるいは体力をつけていくということになるかと思います。そういう意味で、政策税制を十分配慮しながら実施をしていただきたいと思うわけでございますけれども、ただ、流れとしては一種の不平等化といいますか、そういう方向で、ごく一部の限定したものについての政策というふうに、特に際立って焦点が絞られてくるというふうに思うわけでございます。  そういう意味で、後でまた話が出てまいりますけれども、いわゆる設備減税とか、この辺各国を比較いたしますと、大変大きな設備減税というのが出ているのですけれども、日本の場合には、研究開発費のいわゆる増加分でありますとか、金額的にはまさに数百億ですか、そのぐらいにしかならない。数百億にもならないか——五百十億等、いろいろ全部合計して四千億ぐらいにしかならないということでございます。この辺を見て、例えば五十九年と六十年度で設備投資減税が四百億も伸びる、政策的にやっていくんだというので、特に今までと流れ、要するに目玉が変わるといいますか、竹下流でいきますとめり張りをつけるとかいろいろあるのですけれども、その辺で考えていきますとどういうところが変わっていくのかということをお聞きしたいと思います。
  165. 中川勝弘

    中川説明員 政策税制、いわゆる企業関係の租税特別措置でございますが、先生御指摘のように、累次の縮減合理化を重ねてきておりまして、不必要なものについては廃止あるいは償却率の引き下げ等の合理化を行ってきております。その中でも、私どもといたしましては、産業政策の展開を図っていきます上で必要不可欠な措置は維持をしてきておりまして、例えば従来から資源エネルギーの安全確保あるいは中小企業の育成、また技術開発の促進等々の政策的な措置については、必要な減税措置を維持してきておるところでございます。  六十年度におきましては、合理化の流れとして一部項目の廃止あるいは償却率の引き下げ等、合理化を行っておりますが、厳しい財政事情の中で、既に申し上げましたような必要不可欠な政策税制につきましては、これを延長すると同時に、六十年度につきましては特に設備投資の牽引力にもなります技術開発に重点を置きまして、新たに基盤技術研究開発促進税制及び中小企業の関係でやはり同様の技術基盤強化税制の創設を図るということになっておりまして、これらの政策税制を十分に活用して産業政策を展開してまいりたいと思っております。
  166. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 今の設備の関連でございますけれども、先ほども申しましたように、日本の設備の老朽化率というのは非常に置くなってきているということが言えると思います。欧米も若干悪くなってきているのですけれども、例えば経済企画庁の資料で日米製造業の設備年齢というのがありまして、七〇年に日本の場合は年数で七・〇というのが一応の数字でございます。アメリカの場合九・八という数字でございまして、アメリカの方がはるかに古かった。ところが八〇年になりますと、日本の場合八・四年になりまして、アメリカが九・一と大分接近してまいりました。八二年までしか出ておりませんけれども、日本の場合が八・六、アメリカが九・一。大体アメリカの場合横ばいになっている。ところが、日本の場合は毎年〇・一くらいふえてきておる、こういう数字が出ております。  こういうところから比較をいたしますと、日本の設備そのものがかなり老朽化の道をたどってきているというふうに思うわけでございますし、また、この老朽化が今度設備更新というときに大変大きな負担になるということで、技術革新が今非常に盛んでございますから、特に設備のいわゆるライフサイクルというんですか、それも非常に短くなってきているという状況から見て、体質強化というのは非常に難しいと思うのですけれども、今の設備の現状等も含めて、今後の企業体質を強化していくための方策といいますか、こういうものについてどういうふうに考えておられるか、お答え願いたいと思います。
  167. 坂本吉弘

    ○坂本説明員 ただいまの御質問、企業の設備年齢の問題でございますが、ちょっと私ども手元に、これまでの実績についての日米の比較の数字しかございませんが、確かに先生御指摘のように、一貫して日本の設備年齢がやや高くなりつつございまして、アメリカの方は、一般的に見ましても、また先端的な一部産業を除いて、業種的にも確かに若返りつつあるという状況はおっしゃるとおりでございます。ただ、日米の比較をいたすと申しましても、統計のとり方あるいはその手法その他で、一概にこれで比較するというわけにもいかないのでございますけれども、一般的には確かにそういう傾向がございます。  設備投資を行うに際して、どういう要因で行うかという点につきましては、制度の問題のほかに、経済の実体から各企業がどういう判断をしていくかということにもかかわっております。現在私どもの方でいろんな調査その他に基づいて、設備年齢が古くなりつつある顕著な例としましては、基礎素材産業というものが考えられるものでございますけれども、これらの産業において、少しでも将来へ向かっていわゆる活性化を行ってもらうという点からいたしますと、製品の需要の変化に応じて設備を更新していくとか、あるいは既存の製品ではもうなかなか需要もついてこないというような場合には、新しい製品分野というところにむしろ企業の方向を向けて、新しい技術開発とか製品開発とか、そういったところにこれを誘導していくのが一つの方向ではなかろうか、こんなふうに考えておりまして、税制では、先ほど御答弁申し上げましたとおり、基盤技術研究開発促進税制というものをお願いしてございますし、また税直接ではございませんけれども、例えば財政投融資の中で基盤技術研究促進センターといったような新しい制度を今お願いをしておる、そういったことで対応していきたい、こういうふうに考えております。
  168. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 日本の企業とアメリカの企業を比較いたしますと、設備のやり方が、アメリカの場合には高い低いが非常に極端にあるわけですね。それと、見てみますと、不況時に若年層から解雇するというような形で身軽になる。ところが、日本の場合には終身雇用制という形をとっておりまして、なかなか人員の縮小というのができないということから、大体ふだんの設備投資もかなり低目になっているわけです。  収益率も、アメリカの場合と日本の場合と極端に違うわけですね。日本の場合、ここに予算委員会に出された資料がございますけれども、ここ十年くらいずっと収益率低下というような形になっておりまして、特に第二次産業の収益率低下というものが大きいわけでございます。  その辺から見て、資本の自由化、金融自由化等で外部資本が入ってきたり、あるいは技術的な交流とかいろいろなのが非常に頻繁になってくるというところで、どこまで対応できるかという心配があるのですね。昔の資本自由化みたいな、そういうような形で、ちょうどこれからの時期に差しかかると思うのですけれども、そういうふうに考えますと、欧米の企業と日本の企業が体質的に違う、体力的にも違う、この辺がどう影響していくのかというふうに心配するわけです。その辺について、通産省としてはどういうふうに見ておられるのか、お聞きしたいと思います。
  169. 坂本吉弘

    ○坂本説明員 非常に広範な問題でございまして、産業政策全般にかかわるような話でございます。  一般的には低成長時代と申しますか、需要がある程度一巡をいたしまして、そして過去の非常に大きな、例えば自動車とかあるいは電機とか、そういった日本経済全体を押し上げるような新しい革新投資の機会というのが比較的少なくなってきているという状況がございます。特に、従来基幹産業、こう言われておりました鉄鋼とかあるいは石油化学、石油、そういったところでは需要が低迷しているというのが実情でございます。ただし、一方におきまして、先生御承知のとおり、マイクロエレクトロニクスを中心といたしまして新しい電気製品、それから電子、そういったものが我が国としては今かなりの勢いで伸びているというところがございます。この辺につきましては、日々技術革新を積み重ねていくことによりまして、端的に申しまして日米毎日のようにしのぎを削っているというのが実情でございます。  私どもといたしましても、単に国際競争力の強化というにとどまらず、やはり我が国の社会的なニーズの変化と申しますか、端的に申せば、例えば情報化社会を実現していくとか、新しいニーズを見つけまして、それに対して産業が活発に対応してもらうということで、一部の産業が衰退というわけではありませんが、ある一定のところで足踏みをするという状況があるのに対応して、一方では、先進的な部門でこれをできるだけ伸ばしていくというようなことで、一口に申せば、産業構造政策といったようなものを今後とも進めてまいりたいというふうに考えておりますが、企業も低成長下におきまして、今日までエネルギーや人員その他の面でかなり徹底した合理化をやってまいりまして、あとは技術革新というものをいかに先取りしてこれを体化していくかということが大きな課題であろうかと思います。  通産省といたしましても、六十年度施策の最重要の柱にこの技術開発の政策を取り上げまして進めてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  170. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 結局、政策として新しい分野を開くというのと、それから体力づくりと両方あるわけですけれども、やはりそれぞれの分業という形がこれから進んでくるかと思うので、その中でも日本の企業がより大きな力を持つといいますか、有利な立場になるように、その辺をぜひお願いをしておきたいと思います。  一応予定をいたしております内容は終わりでございますので、通産省の方は引き揚げていただいて結構でございます。どうもありがとうございました。  引き続き法人税のことでございますけれども、今お話し申し上げましたように、各国が投資減税というものをかなりやっているということ、またこれが景気回復の非常に大きな力になったし、これが逆にそれぞれの国の財政再建の大きな原動力になっているということでございます。これも通産省の資料でございますけれども、日本の場合の設備投資減税というのは、エネルギー関係だけでございますけれども、それと特別償却、いろいろ合わせて、先ほども申し上げましたように約四千億円というような金額でございます。  ちなみにアメリカが、設備投資減税が六兆九千億円、加速度償却が六兆三千億円、西ドイツが三千億円、それからイギリスが二兆九千億円の減税のうち二兆五千億円が投資減税であるというふうに、いろいろな結果が出ているわけでございます。我々もびっくりしたのですけれども、やはり設備投資がいかに景気回復に大きな力を持っているかということ、そして将来の企業体力というものにつながっていくか、こういうことをよくお話を聞くわけでございまして、そういう意味で、内部留保拡大で加速度償却というものもございますし、やはり平均的な生産能力あるいは生産性を確保するという意味からも非常に大切なことではないかと思います。  何度も申し上げますけれども、いろいろな準備金だとか引当金というのは、大蔵省の方もそう思っておられると思いますけれども、これは使い方によって非常に不公平になるということで、できるだけない方がいいわけでございます。しかし、内部留保を厚くしないと、企業はやはり浮き沈みが、最近は社会的な問題というところまで来ておりますから、それなりの施策というものが必要かと思います。  そういう意味で、まず大蔵大臣にお伺いをいたしたいのでございますけれども、我々野党の方の要求の中にも投資減税というものが入っていたと思います。それに加えて、いわゆる加速度償却、こういうものを本当は今すぐやってもらいたいけれども、なかなかそうはいかないと思いますので、やはりそういうふうな金融の自由化なり、経済が国際交流を始めた時期には考えていかなければいけないと思うのですけれども、これについていかがお考えでございますか、御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  171. 竹下登

    竹下国務大臣 投資減税、加速度償却の問題であります。  我が国の設備投資を見ますと、国際的に見てかなり高い水準にございます。これは最近の経済情勢を見てみますと、設備投資が大幅に拡大していますほか、個人消費とか住宅投資も緩やかながら増加傾向にある。したがってまた輸出も増加傾向にありますので、景気は順調な拡大を続けておる、こういう分析であります。そこで、六十年度予算におきます公債発行が十一兆六千八百億円、そういうことで、予算そのものは引き続き厳しい状況にあります。  そこで、投資減税の問題では、いつも議論になりますのは、要するに設備投資というのを左右をするのは何かといえば、企業家の将来に対する売り上げとか受注などの見通しとかそういうものでありまして、投資減税とかまた加速度償却等によりましてコストの引き下げを行うことが、いわゆる投資マインドの改善に大きな影響があるかというと、費用と効果の点から見ましても、これはまさに先の見通しを立てて設備投資したものか、そういう制度によって投資マインドを刺激したものかというようなことを見きわめることは、これは非常に難しい制度であります。したがって、私どもとしては、一般的な投資減税とか一般的な加速度償却とかを講ずるということは、今年度税制改正等におきましても、それは取り上げていないわけであります。だから、基盤技術研究の開発促進でありますとか、あるいは中小企業技術基盤の強化に資するために、現行の増加試験研究費の税額控除制度を拡充する、そういうようなところで、諸外国からも、言ってみれば、特に輸出奨励のためにいろいろな措置をとっておるというような批判もございますが、そういうことにはおよそ抵触しないであろうというところに考え方を持っていったわけであります。  それから、耐用年数の短縮もいつも議論になるところでありますが、要するに法定耐用年数というのは、これはあくまでも物理的な寿命と経済的な陳腐化というものを加味して客観点に定まるものであって、確かに技術的進歩による陳腐化の状況というものは絶えず配慮していかなきゃならぬわけでございますので、そういう点に着眼をいたしまして見直しを行って、今日も来ておるわけであります。そもそもの減価償却制度の目的というのは、期間損益を適正に計算するために、固定資産の取得価額をその使用期間に応じて費用として配分することにあるわけでございますので、税調の中期答申でも、この問題については、資金の早期回収等の政策的観点から見直しを行うことは、法定耐用年数の考え方にはなじまない、このように言われております。だから、法定耐用年数というものがいわば政策の上で取り上げられるよりも、いわゆる物理的な寿命とその陳腐化とを勘案して決めらるべきものであるということが本旨であるということであります。が、しかし、六十年度税制改正におきましては、印刷設備等について、使用実態に応じて所要の見直しを行う、こういうことでございます。  我が国企業は、現行の法定耐用年数のもとで、よそから見れば強い国際競争力を保持しておりまして、GNP比で民間設備投資を見てみましても、主要諸外国と比較いたしまして高い水準にあるという状態であります。そうしてまた、もちろんまだ実行されたわけではございませんが、アメリカにおいても、いわば今度の税調の提言を見ましても、やはり本論の方へ返るべきだという主張のように見受けられるというふうに、私は最近理解をいたしておるところであります。
  172. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 かなり御答弁が詳しかったので聞くことがなくなったのですけれども、当局の方にお聞きをしたいのですが、先ほど申しましたように、ここ十年ぐらい企業収益が非常に低下をしてきている。法人税そのものは、十兆円という非常に大きな金額に伸びておりますけれども、個々の企業で見ていきますと、確かに収益性が低下をしている。特に第二次産業ですね。この辺の、先ほどのお話にもございましたけれども、素材産業なり、電機なり自動車というものが落ち込んできているということが言えると思います。この辺をまずどういうふうに認識されているのか。  それから、続いて申し上げますけれども資金調達、これを今税だけに頼って、税と国債でやっております。私が先ほど申し上げましたけれども、準備金だとか引当金というのは、これはない方がいい。逆に、不測の事態といいますか、長期的に何年か続いて赤字になってくる。こういうときに、やはり切り崩しをやって、内部留保を食いつぶしていくということで企業を存続させていくわけでございますけれども、一つの案として、例えば利益が出ている会社に対して国債を買ってもらって、その幾らかを減税するというような形ができないか。そして、それを逆に内部留保という形で不動産のかわりに、あるいは有価証券というような形で会社が保有する、こういうようなことができないか。今お金が入るわけですね、国に国債という形で。そして、将来返していくというような形にもなると思いますし、企業にとってみれば、有価証券と同等のもので持っているわけでございますから、税金分だと思えば非常に安いということも言えると思いますけれども、こういういわゆるただ単に手も足もとってしまうということではなくて、不測の事態に対応できるような内部留保を相手に持たせることも必要じゃないかと思います。  ですから、今の収益性の低下に対するお考え判断といいますか認識、そして今申し上げましたような内部留保を厚くするための何か方策といいますか、私、今国債を買ったらどうだということを言いましたけれども、この辺についてどうお考えになっているか、お聞きしたいと思います。
  173. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 企業の収益の状況でございますが、傾向的に収益率が下がってきておるというふうにあるいは見るのかどうか、私どもは疑問であると思っておりますけれども、五十年代に入りまして、第一次オイルショック、第二次オイルショックを契機といたしまして、経常利益が年ごとにかなり変動しておるというのが昨今の情勢でございます。  ただ、これも先ほど通産省からお話もございましたけれども、あるいは委員も御指摘になっておりますけれども、業種別にいわゆる構造不況産業と言われるようなものがございます。そういう構造的な部分を含みまして、少なくとも五十八年、五十九年と利益は上向いてきておるわけでございまして、税制の立場から申しますと、法人税というのはあくまで企業活動の結果得ました利益に、包括的に原則として比例税率税負担お願いするわけで、赤字になった場合には当然税の負担もないわけでございますから、率直に申し上げまして、現在の法人税制の運用上、委員が御指摘になります内部留保をさらに充実を図るために、現時点で全般的に何らかの措置を政策的にとるという環境には必ずしもないのではないか。  過去の歴史を振り返ってみますと、昭和三十年代から四十年代にかけまして我が国の経済がテークオフし、それから開放経済に向かう段階では、かなりそういう内部留保とか企業の基盤の強化という観点からの政策税制を運用してまいりましたけれども、現時点におきましては、先ほどこれも通産省からお話がございましたけれども、エネルギーとか技術とかあるいは資源とか、そういった国全体から見ての産業政策上の重点的な分野に政策税制を適用する。もちろん財政の制約がございますけれども、内部留保の充実というような観点よりも、企業税制政策税制としては、むしろそちらの方へ志向していくという方向ではないか。率直に私どもの考え方を申し述べれば、そういうことになろうかと思います。
  174. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 企業というのは営利企業でございますから、自分たちがもうけるためにやる、もともとはそういうことで始めたのだと思いますけれども、今いろいろな動きを見ておりますと、やはり社会的なかなりのウエートがありまして、今の社会の一つの構造の中に企業が存立をするというようなことにもなってきておりますので、そういう意味で、個々の問題じゃないかというふうなとらえ方をしてやっていくというのは、非常にこれから難しいと思うのですね。ですから、そういう意味で一つの公共性を持たせたような企業というか、とらえ方をこれからしていかなければいけないんじゃないかというふうに私は思いまして、できるだけ永続的に発展をしていくというような形を一番理想とするわけでございますから、そういう方法がないかということで今申し上げたわけです。  それと、当初は税制そのものが政策実現のためという、いわゆる政策というものが背景にあったわけでございますけれども、今は政策というものであるとすれば財政再建だけだということで、ついついその方向を見失いがちになりまして、本来税制のあるべき姿といいますか、こういうようなものが非常に薄れてきているというふうに思うわけです。大臣の時間の関係もございますので、せっかくでございますから、いつも余り聞かないのですけれども、いろいろ質問をしたいと思います。  ちょっといろいろ入り乱れますけれども、まず、所得減税を昨年もいろいろお願いをいたしまして、皆さん方の努力でかなり一つの形ができ上がったわけでございますけれども、それができたために、逆に不公平感が出てきたというような問題がございます。  具体的に申し上げますと、いわゆる主婦労働者、内職だとかあるいは販売外交を業としておられる方でございますけれども、こういう方々が要するに同じように家計を助けるという意味で働いておられる、そして金額的にも八十万から百万ぐらいの間をうろうろとあるわけですけれども、片方では、年間九十万円までいわゆる配偶者控除が受けられるということになりました。ところがもう一方の方は、年間で四十七万までしかだめだというふうなことで、非常に大きな差ができてきたというようなことが話題になってきております。私の地元の京都の新聞にも書いておりますし、またそういう内職だとかあるいは販売外交をされている方々から具体的なお話も来ておりました。今までは私たちも両方を同時にということで、昨年も若干申し上げたのですけれども、内職だとか販売外交の人たちの規定といいますか、業種の規定といいますか、そういうのが難しいというお話でございましたけれども、条件的にほとんど同じような条件でございますから、その辺をぜひ御配慮を願いたいというふうに思うわけでございます。これについて、まず大臣のお考えを聞きたいと思います。
  175. 竹下登

    竹下国務大臣 昨年、俗に言いますところのパート減税、これは当初税調等のクリアもした形で理論的に積み上げたものが八十八万ということであったわけであります。そして本委員会等で議論をされ、それが九十万に上げられた。私は、この問題はやはり八十八万という一つの理論的根拠があって、さらに二万というものにも理論的根拠がつけ得られたから、各党合意ができたものではないかと思っております。それでそのときも、御参加なすった玉置さん初め皆さん方も、さて内職の問題をどうするかということを最後まで心のわだかまりとして残しながら、二万円アップにこぎつけられた。  そこで、この内職問題というのは、言ってみれば、お互いの観念の中では継続しておると思います。これの実態的な取り扱いについては、今税務署でいわゆる大変な不満とか抗議とか、こういうものがあっておるわけじゃございませんが、やはりこれは議論してみればみるほど、いわゆるパートとは何ぞや、あるいは内職とは何ぞやという定義そのものがきちっとしていない。そして、もちろん勤務の実態も区々でありますから、まず、主婦のパートや主婦の内職を雇用政策上、また労働法制上どういう位置づけをするかというところからやはり引き続き議論をしていかなきゃならぬ問題だな、そういうふうに思うわけであります。したがって、配偶者控除のあり方や課税単位といった所得税制の基本的枠組みのあり方との関連において、やはり慎重に検討が続けられるべき課題である。  したがって当時、私も政治家の一人として、また参加された皆さん方もわだかまりを残しながら、卒業じゃありません、一つの結論を出された。それらは、国会議論等を正確に伝えながら、税制調査会等でも恐らく引き続き議論検討していただける課題じゃないかというふうに感じております。
  176. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 ずっと携わっておられるので、非常に御理解ある御答弁をいただいたと思うのですけれども、先ほどお話も出ましたように、要するに労働政策上の法制化というものが必要であるということも、確かに今までの論議の中で出ておりました。ぜひ大臣の方からそういうことを逆に示唆していただいて、具体的な動きがより進展するようにお願いしたいと思うのですけれども、いかがでございますか。
  177. 竹下登

    竹下国務大臣 これはもとよりそういうことは関係方面へお伝えしなければならぬ問題だと思っております。と同時に、実態としての取り扱い方でございますが、いわゆる雇用契約に基づくパートでない方々のその問題についても、これは徴税当局自体でいろいろ工夫をしていただいておるというふうに私も理解をいたしております。
  178. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 ついででございますから、所得減税の方でまたお話を申し上げたいと思いますけれども、昨年も申し上げましたように単身赴任減税。これはもう中身は昨年重々御説明を申し上げましたけれども、各社でいろいろな調査をやりまして、原因はどうも教育問題と住宅問題というふうにかなりウエートが絞られてくるというようなことがございます。  教育問題の方は、文部省内でも具体的な論議が始まっておりまして、文教委員会でも論議をされるというふうに進んでまいりました。ただ、住宅問題は、これはなかなか難しい問題でございまして、家ごと移すわけにはいかない。そういうのもありますし、一回家を買うと、必ずまた買いかえることができるかどうかというのも確信ができない。大体、昔から言い伝えで、家を建てると転勤があるよというようなことをよくサラリーマン仲間で言うのですけれども、そういうふうに特に際立って目立つわけです。そういう意味で、いわゆる帰宅族費とかの非課税扱いですね、この辺についてもぜひこれからの論議の中で、野党統一要求か何か、別々に出るか、知りませんけれども、また出てくると思いますので、ぜひその中でお考えいただきたい。  それからもう一つは、これまた毎年申し上げておりますけれども、いわゆる中間層といいますか、この辺の税負担の問題。一昨年のときに一応決断をいただいて、若干の救いがあったというふうに思いますけれども、我々の目から見ますと、まだ今も同じ教育費問題、そして住宅費問題。答弁を聞かなくても大体わかるのです。結局、学校に行く人と行かない人との差、あるいは家を建てる人と建てない人との差というものがあるという答弁が多分返ってくると思いますので、先に言っておきますけれども、実際に特に大都市周辺においては、かなり苦しい状況にあるということは間違いない事実でございます。     〔熊谷委員長代理退席、委員長着席〕 労働組合に入っておられる方は労働組合という形でやりますけれども、また、中間層というのは管理職もおりまして、労働組合になると幹部になっていて、自分たちから言えないというような非常に弱い立場といいますか、でございまして、それを一応代弁して、何とかその辺についてもぜひこれからの論議の中で御配慮賜りたいと思います。  というのは、これまた後の間接税問題で申し上げますけれども、やはり所得税見直しの時期が来ているのではないか、こういう気持ちも持っておりますので、その時期に合わせてぜひそういう内容を一応検討項目としてお考えいただきたいと思うわけでございます。この辺についてお考えをお伺いしたいと思います。
  179. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる所得税全般の問題について申し上げますと、五十九年度税制改正におきまして十九の刻みを十五というような形で、家庭を持つ中堅のサラリーマンの方の税負担の緩和に配慮した形で本格的な減税が行われたという状態であります。中曽根総理言葉をそのまま申し上げますならば、私も所得減税をやりたいが、しかし、現在の財政事情の中で、税調からも所得税の減税を行う余地はないということを指摘されておる今日、赤字公債を発行してそれを財源に充てるようなことがあってはならぬ。したがって、中期谷中にも「所得水準の平準化の動向等にかんがみ、中堅所得階層の負担の緩和にも配慮しつつ、全体として、若干なだらかな累進構造とする方向で見直しを行うことが適当である。」とされておりますし、そして今度の税制全般見直し論議の中で、所得税制のあり方というものは当然議論されるべき問題であろうというふうに思っております。その中で、玉置さんの意見というものを私どもは正確に税調にも伝えて、その論議の糧としてもらいたいというふうに考えておるところであります。具体的に税調に御諮問申し上げる前に、いや何段階がいいじゃろかというようなことは予断、予見に類することになりますので、私どもの立場からは今申し上げる時期ではなかろうと思います。  それから、単身赴任と教育減税。いわば中堅の、大体教育に最も金がかかるであろうというようなところの方が、相対的にいわゆる減税対象として厚くなるということは、これはだれも非を打つ者はいないわけでありますけれども、いわば個別事情をしんしゃくしての税制上の控除というものは、税調答申にもありますごとく、これは困難であるし、その基準をつくることは非常に難しいということを言われておるところであります。  それからいま一つは、お話のありましたように、学校へ行かないで今働いている方が、社会保険料控除等入れて九十六万でございましたか、以上の人は幾ばくかでも税金を払っているわけでございますから、そこに問題があるというのは今御指摘なすったとおりであります。全体としてそういう方々のところが厚くなることが好ましい姿ではないか。  それから、単身赴任減税もいろんな議論がございますが、いわば、おっしゃいますような帰宅旅費にいたしましても、結論から申しますと、僻地手当、寒冷地手当も同じように給与の一部であるという限りにおきましては、やはりこれを特別な取り扱いをするということには問題があるわけであります。それと、その場合はやはり雇用政策の中でそれぞれある程度解決してもらわないことには、全部がばらばらな体系になっておりますので、一人一人の個別事情をしんしゃくするということには非常に難しい問題があります。  失礼しました。独身者の課税最低限は九十六万七千円でございました。
  180. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 何か五十五分に出られるということで、ちょっと十秒過ぎていますけれども、一言だけ、これから入る間接税の話で……。  それぞれ中曽根総理大臣竹下大蔵大臣が発言をされておりまして、若干ニュアンスが違うような感じを我々も受けるわけでございますけれども、どちらとも最近統一されてまいりましたのは、中曽根さんの場合には、大規模な消費税というのはとらない、しかし税制見直しは早くやるべきだ、こういうようなことを言われております。大蔵大臣の方は、税調答申を踏まえてやりたい、来年からも改正案が出される可能性がある、こういうことを言っておられます。小倉税調会長は、ごく最近の予算委員会では、EC型付加価値税が一番適しているのではないかというようなことを言われておりますけれども、書簡単にそれらの話をまとめて大臣のお考えをお伺いしておきたい。簡単で結構ですから。
  181. 竹下登

    竹下国務大臣 小倉税調会長お答えを私聞いておりましたが、EC型付加価値税というのには非常に理論性があるという意見の人が最も多かったというふうな表現でございました。私どもとしては予見を挟むことはやめよう、しかし、再々申し上げておりますし、また予算委員会におきまして各党の方々の議論の集積で統一したお答え総理からもいたしておりますが、総理とされましても、いわば網羅的、包括的、大規模かつ投網をかけるという表現、これはなかなか難しい問題でございますが、そういうものは自分としてはとりたくない、そういう発言をしていらっしゃいますし、国会議論等を税調へお伝えしたときに、そういう国会議論総理の答弁に大きく反するような答申というのは、普通の場合出てこないのかなと、それもまあ予見のうちに入るかもしれませんけれども、そんな感じがいたしております。  だから、あくまでも間接税を主体として論議するのだとか増税が目的であるのだとかいうことではなく、いわばシャウプ勧告というその根幹は立派なものだと私も思いますが、その後できてきたいろいろなゆがみ、ひずみ等があるわけだから、直接税、間接税を問わず本格論議をやって、それを税調へ——いつもは諮問はいたしません。三年に一遍諮問しているから、あうんの呼吸でやってもらっているのを、今度は正式に諮問しようというのが中曽根総理の御意思でございます。  なお、その中で時期の問題でございますが、できるだけ早くということは、私もそんな認識を持っておりますが、六十一年度税制あり方までに答申くださいとか、あるいは中間答申にしてくださいとか、それはいま少し税調の御審議の中で自主的に審議を開始されることを当面は見守るということではなかろうか。  必ずしもどすんと腹にこたえてわかったという答弁ではなかったと思いますが、元来その傾向がございますので、お許しいただきたいと思います。ありがとうございました。
  182. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 ちょっと戻りまして、先ほどの中で設備の話のことでございますけれども、自治省の方にお伺いしたいと思います。  これまた第二次産業の話になるわけでございますけれども、二次産業がいわゆる体力増強といいますか、自由化のためとかいろいろなことで追い込まれて、結局何をやってきたかというと、合理化、合理化ということで一生懸命やってきたわけです。その結果、一部には巨大な装置産業ができ上がりましたし、また、普通の会社でもかなり合理化をしている。逆から見れば、一人当たりの設備高、労働装備率が非常に大きく上がってきているということが言えるかと思いますけれども、第三次産業が、今、産業構造としては非常に大きくなってきている。それに対応して、逆に、第二次産業では固定資産税が非常に割高に感じるようになっているということでございます。この辺を従来の産業構造なりあるいは企業の体質というものから比べてみて、現時点では、設定された当初からかなり様子が変わってきているというふうに思いますので、それをどういうふうに受けとめておられるのかということと、いわゆる装置産業と呼ばれるような労働装備率の高い産業についての固定資産税のいわゆる減免という方法はとれないのか、この二つについてお伺いしたいと思います。
  183. 鶴岡啓一

    ○鶴岡説明員 先生御案内のように、固定資産税は土地と家屋と償却資産を課税客体としておりまして、この税の性格につきましてはいろいろ御意見もあるところでございますが、私どもは、いわばその資産を所有することに担税力があるのではないかということで、価額を課税標準として税負担お願いしている税でございます。そういうような税の性格で、これは市町村の行政サービスとの受益関係からいっても、市町村税としてなじんでいるということで、基幹的な税目として、ずっと税負担お願いしてきております。  それでございますので、これはおよそ資産を所有している人たちについて広く税負担お願いするという性格の税でございますので、従来から、産業政策との関連でこの税をいろいろやるのは非常に難しい問題があるということで、特に私どもが今までやってきていますのは、例えば公害防止施設のような、あの時点で企業としては収益そのものは全く変わらなくて、いわば余分な負担があるのではないかというようなのとか、電力事業であるとかガス事業であるとか、非常に公益性が高くて、料金の規制もあるというような、特殊な幾つかの観点からのいわば産業政策的な税制というのがありますが、一般的にはできておりません。  こういうような税の性格から考えますと、私どもは、これは今言いましたように、直接その収益であるとか所得とリンクしていない税ですから、元本に食い込むほどの重い税負担になるのは決していいことではないし、大変なことなんですけれども、そういうことにならないように配慮しながら、いわば広く税負担お願いしておりますので、装置産業とか、そういう形で一定の軽減措置を考えるのは非常に難しいのではないかというように考えております。
  184. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 もともとは設備のウエートというのはそう高くなかったのもあるわけでございますし、装置産業の場合でも人が多かったから、いわゆる時間単位に分けますと、設備費の比率が非常に少なかったということも言えると思いますけれども、人が減りますと、それだけ設備ウエートというのは非常に高くなってくるわけで、それに付随する税率も、いわゆる時間当たりに換算をいたしますと高くなるだろうということで、原価の中でもかなりウエートが出てくるわけですね。そういうことで、時代が変わってきたんじゃないか。  ただ、例えば一万坪の土地がありまして、一万坪の土地に何を建てようと固定資産税は同じだということではなくて、ある一定限度を超えたときには軽減措置がとれないかという話ですから。というのは、設備が非常に値段が上がってきておるわけですね、今。今というか、大体昭和四十年代ぐらいから、かなり技術革新なりあるいは能力アップということでやっておりますので、そういうのが出てくる。同じ機械を同じ値段で買えるというのはまず絶対ないわけですから、能力に対してまずかけるべきだというのでいくのか、あるいは値段でいくのかということで考えていきますと、両方の間をとったような形もやはり考えてほしい。いろんなやり方があるのですけれども、ただ難しいので、ある限度を超えたらちょっと落としてくれというのが一番簡単じゃないかというふうに思ってお願いをするわけですけれども、今のお話を聞くと一回しゃとても無理みたいなので、いずれにしても時代に合ったような税制度というものもやはり必要であると思いますし、もともと物に対してというか、固定資産に対して均等にかけるということでやっておられますけれども、果たしてそれでいいのか、今までこうだったからということじゃなくて、そういう目で一回物を見てほしいというふうに思うわけです。  そういう意味で、お願いもありますし、これから特にいろんな競争が激しくなって、設備を持っているところが大変リスクが大きくなるということもございます。その辺、幾らになるかということを考えてみますと、そんなに大した金額じゃないと思いますけれども、その辺も企業にとっては大変重要なところでございますから、ぜひお考えをいただきたいということでございますので、一言お答えをいただいて、お帰りをいただきたいと思うのです。
  185. 鶴岡啓一

    ○鶴岡説明員 大変難しい問題だと思いますが、先ほど言いましたように、固定資産税の性格とか仕組みからいきますと、例えば大規模という場合に、どういう規模の場合に税負担との関係をどういうふうに考えるかというときに、なかなか難しい問題があるのではないかと思います。  先ほどから言いますように、私どもの方のこの税の考え方でいきますと、過去におきましても、いろんな時代に好況の産業もあったり不況の産業もあったり、新しい産業が出てきたりしているわけですけれども、比較的それに対しては、個々にそういう特定の産業なりに税負担をどうこうするということなしに、それぞれの時代で同じような税率で、同じような資産価値ですと同じような税負担お願いしてきているわけでございまして、それ自体の基本的な御疑問も今あったのですが、私どもとすれば、税制としまして、そういう税制も今後ともひとつ大切にしていってもいいのではないかという気がしておりまして、十分研究はさせていただきたいと思いますが、非常に難しいのではないかというふうに考えております。
  186. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 時間をかけてまたお願いしたいと思いますので、きょうは結構でございます。どうもありがとうございました。  またちょっと戻りまして、民間設備投資が五十八年度で三十六兆五千億円ぐらいというふうに言われておりますけれども、それに比べて民間貯蓄は二百七十七兆円ぐらいということで、非常に大きな貯蓄があるわけです。いろんな減税問題とか論議をしておりますときに、生活が苦しくなったと言いながら、貯蓄率がふえてきているということもございます。いわゆる本当の純貯蓄というのは一七・三ぐらいだと思いますけれども、いろいろ総計いたしますと二十何%、二四・幾つですかね、という数字に上がってきている。昔は民間の設備投資というのはやはり民間の金融機関からの融資を大変当てにして、そのお金を何とか貸してくれということで拝み倒して設備投資をしてきた。ところが、今見ておりますと、三十六兆五千億円しか使わないのに二百七十七兆円もありますよということで、大変なアンバランスが出てきている。  そこでお聞きをしたいのは、貯蓄率が年々上昇しているのは、これはどういうふうにとらえているのかということ。そして、要するに投資と貯蓄のアンバランスというのは金融政策上の問題が生じないかということ。それから、日本国内で使えないということになりますと、当然海外に出回ってまいりますから、そのときに非常に危険度が高くなる。こういうことについての問題がないのか、この辺についてお伺いしたいと思います。
  187. 北村恭二

    ○北村(恭)政府委員 今貯蓄率についてのお尋ねがございまして、計数的にはただいま委員のお話しのとおり、国民経済計算ベースで見まして、貯蓄率が五十八年度で一七・三%という水準でございまして、過去の推移を見ますと、この貯蓄率は、かつて高度成長期にかなり所得の上昇傾向につれて上昇いたしましたが、その後第一次オイルショック後の推移を見ますと、若干は低下しているような現状にございます。  それで、貯蓄と投資のアンバランスという問題がございましたけれども、全体といたしまして、我が国の国民経済計算上は、国内、国外を通じまして事後的には貯蓄と投資がバランスしている形になっておりまして、現在国内の貯蓄の一部が海外の投資に向かっているという面があることも、先生御指摘のとおりでございますけれども、国内の投資水準そのものをまた見ますと、これは諸外国に比べましてかなり高い水準にございます。したがいまして、むしろ現在の国内の民需中心の成長が、民間の設備投資にかなり依存していると申しますか、そういう面があるわけでございます。  それで、なぜ我が国でこういう貯蓄率が高いのかということでございますが、これは非常にいろいろ議論がございます。例えば、よく言われることでございますけれども、老後に備えた貯蓄に対する高いインセンティブがあるとか、あるいは住宅取得とか、子女の教育のための資金を確保するとか、ためのものであるとか、あるいは我が国では非常にボーナスの比率が高い。変動的な所得という分野だと思いますけれども、そういうものが高いというようなことから、諸外国に比べて高いんだといったような説明がされております。突き詰めて申しますと、どうも質素とか倹約をとうとぶ日本国民性に由来するんだといったような説明にもなるわけでございまして、どうもこういった要因のうちどれが決定的に重要なのかということは、ちょっと見きわめがたい面がございます。全体として、今申し上げたようなことが総合的に働きまして、我が国の高い貯蓄率の原因になっているんじゃないかというふうに分析している次第でございます。
  188. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 非常にお金がだぶついているという感じを最近よく受けるのです。昔は確かにお願いをして金を借りに来た。今は銀行が回ってきて、借りてくれ、借りてくれと言うような時代だというお話を聞きますが、先ほども申しましたように、要するに金融政策というか——きょう銀行局は来ておられませんけれども、もし銀行局の立場を代弁して考えるならば、本当にこのバランスがこんなに差があっていいのか。需要がよくなったといっても三十六兆しかないわけですね、一応統計上あらわれているのは。これもサービス産業も含めて先端産業と、要するにサービス関係が強いということですから、本来やるべきところがやってないじゃないかというような気もするわけです。企業の立場からいって非常に借りにくい状況になっているというのは、将来的に不安がある。先ほども、将来の企業の見通しというものについての設備投資の動機といいますか、これが非常に大きく動くという話がございましたけれども、そういうところから考えていきますと、やはり企業がまだまだ設備投資を怖がっているというような感じがするのです。片方ではお金がだぶついているということですね。この辺がちょっとアンバランスになっているんじゃないかと思うのです。  確かに実勢としては六%から八%ぐらいの伸びで設備投資がうろうろしているわけです。大体上期よりも下期が落ちるという異常事態が最近目立っていますから、このことを見ても、やはり上期は随分前評判で上がってきて、後ろへいくとやっぱりだめだというのでみんな逃げちゃうというのが実態じゃないかと思います。そういう結果から見ても、やはりもっと考えていかなければいけないと思うのです。ただ、設備投資を考えるのは大蔵省じゃないですから、その辺難しいのですけれども、ただ、どういうふうにつかんでおられるかということをお聞きしたい。
  189. 北村恭二

    ○北村(恭)政府委員 大変難しい御質問でございますけれども、今の金融的な側面のお尋ねにつきましては、一般的には現在金融は緩和した状態であるということではございますけれども、何か資金が非常にだぶついていて、アンバランスになっているといったようなことではないんじゃないかと思います。  全体の我が国の経済の姿というのを見ますと、そういうやや金融が緩和された中で、例えば設備投資であるとか住宅建設であるとか、そういった投資的な経費が順調に伸びているといったような関係にあるわけでございますし、貯蓄と投資のバランスというような広い国民経済的なバランスから見ていくと、国内の貯蓄の一部が、先ほどちょっと申し上げましたように、海外への投資という形で使われている面もあるということは申し上げられますけれども、それはあくまでも国民経済計算的に、事後的に見たときのバランスという問題でございまして、現実に何かそれが経済的に非常に大きな問題であるということではないんじゃないかというふうに認識しておるわけでございます。
  190. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 大体わかったような、わからないような感じですけれども。確かにいろいろなところへ出回っていて、全部つかむのは非常に難しいと思いますが、逆に今心配するのは、今のお話にもありましたように海外に出回って、国内で資金不足になるというようなことにならない歯どめですね、これもちょっと考えていただかなければならぬじゃないかというふうに思うわけです。そういう意味で、だぶついているというか、設備投資と資金、預金との差ですね、これがどこへどういうふうに出回って、それを本当に統制できるのかというようなことも若干心配するわけで、その辺はぜひこれからの検討お願いしたいというふうに思います。  時間がありませんので、次に移ります。  きょうは、間接税をしっかりやろうと思ったのですけれども、時間も余りないので、大まかにお聞きをしたいと思います。  先ほど大臣にお聞きしましたように、小倉税調会長が、EC型付加価値税というものの意見が非常に多い、日本に合うのではないか、それがすっきりしているというか、日本的だということを言っておられましたけれども、大蔵当局としてのお考えをまずお聞きをしたいと思います。
  191. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 先般の予算委員会小倉税制調査会長が、いわば学問論として、学者の間では課税ベースの広い間接諸税の中ではEC型付加価値税の合理的な側面を強調する人が多いというふうに言われたのを私どもも拝聴いたしております。  ただ、この問題につきましては、総理大蔵大臣もこの国会でたびたび言明されておりますように、そもそも新しい間接税を我が国に導入するのかしないのかというような問題一切合切含めまして、これからの税制調査会なり広範な国民議論を待つ。したがって、税制当局といたしましても、当然のことながら、現時点におきましては、将来の具体的な税体系のあり方も含めまして、すべて白紙の態度で臨んでおるという状況でございますので、ただいまの御質問に対しまして的確に御答弁を申し上げる用意はただいま全然ないということで御理解賜りたいと思います。
  192. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 それでは具体的に、個別の間接税体系というのがあるそうでございますから、それについてどういうふぐあいがあるか、あるいはないかということをお聞きしたいと思います。  というのは、さあ間接税やりなさいという形で言われて、今すぐできるわけがないと思うのですね。少なくとも具体的な内部検討が始まってもう三年くらいたっていますから、いろいろなパターンを研究されていると思うのです。大体税率は五%と想定をしてこのくらいになるといういろいろな計算データも出ていますから、その辺からどういうことになるかを考えていきますと、これは採用するとかしないとかじゃなくて、学術的なというか、研究の成果として発表していただければいいわけでございまして、まず一般消費税、これがなかなか不評なものでございましたけれども、日本の国の今の商習慣で見た場合に、果たしてどういう結果になると予測されるか、その辺についてお伺いしたいと思います。  一番、一般消費税、二番目、付加価値税、三番目、製造者消費税、四番目、小売売上税、五番目、卸売売上税、以上五点お願いします。
  193. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 委員のせっかくの御指摘でございます。つまり、税制当局としてどういう政策意向を持っているかということは抜きにして、一般的にどういう議論があるかということを御紹介申し上げるという形で申し上げますと、いわゆる課税ペースの広い間接税に比べまして、個別消費税のその対比におけるいわば欠点と申しますか、デメリットとして言われますことは幾つかあるわけでございますが、大きな点は、特に消費が非常に拡大してまいりますと、個別の限定された対象の消費支出だけについて税負担を求めるというのは、その意味で広く消費に負担を求めるという観点からは偏りが出てくる。つまり公平面で、個別消費税と、課税ベースが広いということになれば、課税ベースの広い方が公平という点にかなうという議論をされる向きが一つございます。  それから、経済に対する影響というのは非常に大事なわけでございますけれども、税制というのは本来市場経済に中立的でなければならない。それが一番好ましいわけでございますが、個別消費税になりますと、課税対象になった部分についてそれだけ税負担が加重されるわけでございますから、流通あるいは価格面、あるいは広く言えば産業面で差別的にその分野だけに働くという意味で、むしろ広範なものの方が経済の中立性にはかなうという議論は一般的に行われております。  それから、今幾つかの税目を例示なさったわけでございます。大きく分けて多段階と単段階に分かれると思いますが、これも共通して言われますことは、単段階につきましては、文字どおりその段階だけに税負担を求めるわけでございますから、税負担という形でのインパクトが集中する。その意味で、先ほど申しました個別消費税と課税ベースの広い間接税ほどのことはないかもしれませんけれども、経済に対する中立性という観点からいえば、やはり偏りが出てくるという問題が指摘されております。  それから、単段階の中でも卸売、製造段階、小売と、ちょっと順序があれになりましたけれども、川上へさかのぼりますほど、やはりインパクトが大きくなるだろう。それから、卸売と製造段階では、サービスという消費支出が漏れてしまうというふうな問題が指摘されております。  では、小売が一番いいのかといいますと、ここになりますとまた別の問題が起こってまいりまして、納税者が非常に多くなりますから、その意味で納税者の事務負担等も含めて、一体これをどう考えるかという問題が指摘されております。  それから、一般消費税(仮称)とEC型でございますと、多段階という点では共通はいたしておりますけれども、これは課税範囲をどう置くか、免税点をどういうふうにするのか、いろいろな態様が考えられるわけでございますけれども、インボイスがあった方が価格転嫁が非常に明確になるという利点を言われる反面、取引慣行として、そういうものに習熟しない場合、取引に対する干渉とか、これは納税者のインボイスを保存しておかなければなりませんから、そういった意味での面倒さ。つまりあらゆる税目につきまして、税の形につきましてメリット、デメリットがあるということが言えるのではないかと思います。
  194. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 今のお話を大体まとめますと、これからは物だけじゃなくて、サービスにも税金をかけなければいけない。そして多段階であっても、いわゆる簡素化したものでなければいけない、こういうようなことだと思いますけれども、こういうようなことでいきますと、だんだん焦点が絞られてくるような感じがするのですけれどもね。いつも申し上げておりますけれども、日本人の税金に対する考え方、欧米人の税金に対する考え方、これがかなり違うので、来年からやろうといったって、これはなかなか難しいと思うのですね。そういう意味で、もっと早くからいろいろなことをやった方がいいですよという話をしていたのです。余り言うと、何か間接税やれやれということになるので言いませんけれども、その辺でかなり難しいんじゃないかというような感じがします。  今お話がございましたいわゆる個別消費税の税負担というのは、これはウエートがかかってくると、担税力を超えてしまって物も売れなくなるということにもなるわけでございます。例えば現行の物品税や個別消費税というものがある。これが、大型間接税がもし導入をされる。これはあくまでも仮定でございますけれども、そういうときに税制度の現行のものがどうなるのかということ、これまた、それぞれ非常に心配しておられる方が多いわけでございますから、その辺についてどういうふうにお考えになっているのか、お伺いしたいと思います。
  195. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 これもくどいようでございますけれども、私どもそういう将来の新しい間接税を中心にしてどういう税体系にするかというふうな議論を、具体的には一切やっておりませんので、ただ、五十四年の「一般消費税大綱」がまとめられました段階では、いわゆる物品税につきましては、それぞれ吸収されるものあるいは調整されるもの、検討されております。それから、その他の例えば砂糖消費税とかの小さな税目の消費税につきましてはこれを吸収するとか、いろいろな検討がなされておりますけれども、いずれにいたしましても、これは具体的にそういう議論がされる段階で、一体その辺をどう整理をするかという観点から議論されるべき問題でございますので、この問題につきましても、委員の御質問に的確にお答えできる用意は現在ないわけでございます。
  196. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 いつも法律案が出されてくるときに、長い時間議論をし、また検討してきたという言葉が言われておりますけれども、きょうもう一回確認しておきます。現行税制に対しての論議は別として、これからの新しい形の税制についての論議は、きょう時点では一切していない、これを約束していただいて議事録に残していただく。これをまた、次の間接税がもし出てきたら、それの日数も見て、これからの論議の一応の基準ということにしたいので、ここでもう一回局長の方から、今こういう間接税論議を内部で一切検討していないということで確約を願いたい。
  197. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 間接税というのは、今委員がおっしゃいました新しい間接税という意味にとらせていただいてよろしゅうございますか。
  198. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 いや、間接税というのは別に新しいも古いもないわけでしょう。
  199. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 わかりました。  これは、現行税制は直接税と間接税の体系からできておりまして、私どもはそういうものを通じて絶えず見直しをし、それから検討すべき点は検討いたしております。ただ、課税ベースの広い間接税ということになりますと、これは五十五年の中期答申で将来の検討課題とされておりますけれども、税制調査会の中でも一切具体的な審議は行われておりませんし、税制当局としても、例えば具体的な導入を予定するというような具体的な検討は、今日まで一切行っておりません。
  200. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 委員会で、一切検討していませんというのが、こういうことをやっていますと中身として新聞によく出るのですよ。前回も申し上げましたけれども、国会を軽視するということが非常に甚だしいときがあるわけでございます。  今も申し上げましたように、私は別に大型間接税という話をしているわけじゃなくて、例えば間接税の新しいタイプを導入されるとき、現行税制がどうなりますかという話をしているだけで、そういう検討がなされてないということであれば、やはり早急に検討してもらわないと困るわけですね。というのは、今の税制度に対していろんなひずみがあるということを中曽根さんも言っておられますし、竹下さんも最近は言うように変わってきたということですから、それを受けて税務当局が全然動いてないということは、むしろ行政として非常に怠慢であるというような感じがいたします。そういう意味で、何も無理やりしゃべれということを言っているのではなくて、一般的にどういうふうに論議をされているかということを知りたいわけですから、そういうことを的確に答えてもらいたいと思うわけです。そういう意味で申し上げただけで、一応きょうのことは、後日間接税が出てきたときにもう一回じっくりと、どういう御検討をされて、答弁が合っていたのか間違っていたのか、その辺もまた追及していきたいと思います。  以上で終わります。
  201. 越智伊平

    越智委員長 正森成二君。
  202. 正森成二

    ○正森委員 私は、まず最初に、入場税の問題について伺いたいと思います。  今回久しぶりに免税点が引き上げられましたことは、多くの関係者にとって非常に朗報であるとされておりますが、私どもは、この問題の経緯からいって、本来入場税というのは撤廃されるのがしかるべきではないかというのが考えてあります。  そこで、最初に伺いますが、この法律、税金が国税として制定されましたのは、いつごろの話であり、いかなる経緯によるものであるか、御答弁願いたいと思います。
  203. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 御説明を申し上げます。  国税として入場税が制定されましたのは昭和十三年でございますが、沿革は非常に古いようでございまして、大正八年に地方税として、法定外普通税で豊橋市が当時観覧税、これは木戸銭とかいうものを課税標準にして、階級定額のような税率で始めたというふうになっておりますが、その後、地方税として漸次定着してまいりまして、ただいま申し上げましたように昭和十三年に制定になったわけでございます。  ごく簡単にその後の経緯を申し上げますと、昭和十三年に支那事変特別税法という一括法で、通行税、物品税の拡大などとともに国税として制定された。当時は映画館、劇場、舞踏場、ゴルフ場、競馬場等の入場料金に対しまして、たまたま現行税率と同じでございますが、一〇%で課税されたということであります。  昭和十五年に至りまして単独法として入場税法が制定されまして、以後、戦争末期の十九年、二十年のころになりますと税率段階も複数段階になりまして、最高税率二〇〇%という時期がございました。  二十三年に地方税に移管されておりますが、昭和二十九年に、入場税の税収が大都市を中心とする少数の都道府県に偏在するという観点から、再び国税に移管されております。ただ、その場合に、当時の入場税の第三種として課税されておりましたマージャン場、ゴルフ場等につきましては、むしろ地方の実情に応じて課税することが適当であると考えられ、それが現在の娯楽施設利用税として地方に残されたということであります。  その後税率は逐次引き下げが行われまして、昭和三十七年に現行税率の一〇%とされております。そのときに、博覧会等の入場料金は課税対象から除外されたということでござ、います。その後、御案内のとおり、昭和五十年度の改正で免税点の大幅な引き上げが行われました。そういうことでございます。
  204. 正森成二

    ○正森委員 今非常に詳細に経緯の御説明がございましたが、今の答弁でも明らかなように、本来これは地方自治体の非常に零細な興行税という形でございましたものを、昭和十三年の支那事変特別税で、前年の昭和十二年の七月七日にシナ事変が始まりましたので、翌年にこれを国税にするということで始まったものであります。  ちなみに、これは昭和十三年二月二十八日の会議録でございますが、それを見ますと、当時の川崎という委員がこういう質問をし、またそれに対して賀屋国務大臣が答弁をいたしております。長いので一々は読みませんが、その一部を読みますと、こう言っております。  「殊ニ今回ノ如キハ、私達其芸ノ余リニ細カ過ギルノニ驚入ルノデアリマス、例ヘバ是ハ余計ナ話デアリマスガ、従来ノ地方ニ於ケル興行税、観覧税、之ヲ入場税、或ハ特別入場税トシテ国税ニ取上ゲル、其御注意ノ周到ナルコト、洵ニ私ハ敬服ノ至リデアル、」これは皮肉で言っておるわけであります。その次に、「此地方ノ僅ニ残サレテ居ル所ノ雑種税ノ財源マデモ取上ゲテ、マルデ其ヤリ方ハ、洵ニ汚イ比喩デアリマスルガ、豚ガ残滓ヲ漁ルヤウニシテ取上ゲテシマッテ、而モソレニ対シテ附加税ハ課スナト云フ、期ウ云ッタヤウナ義理モ人情モナイ、自分サエ宜ケレバ地方団体ハドウデモ宜イト云フヤウナ其ヤリ方ハ——私ハサウ云フコトハ言ヒタクハナイガ、吾々下賤ナ者カラ申シマスレバ、サウ言ハザルヲ得ナイヤウナ有様デアリマス、」云々と、こう言っているのですね。つまり、豚が残滓をあさるように税金を取り立てておる、こういうわけであります。  それに対して賀屋国務大臣は、「今ノ御発言ニ対シテハ一言申上ゲテ置カナケレバナラヌ、二百億、三百億ヲ賄ハウト思ヒマスルト、一銭一厘カラ出発シナケレバナリマセヌ、大キナ事ヲヤル為ニサウ云フ大キイ考デハ決シテ戦時ノ財政ト云フモノハ賄ヘルモノヂャアリマセヌ、是ハ私ハ確ニ申上ゲテ置キマス、細カイ所カラ気ヲ配ルカラヤレルノデ、此時ニ大キイ気ニナッテヤッタラ、五十億デモ六十億デモ戦費ノ調達ハ困難ヲ来ス、其点ハ確ニ申上ゲマス、」こう答弁しております。つまり、当時の戦時下の国会でも、この法律はまことに汚い言い方であるが、豚が残滓をあさるように税金をかき集めるていのものである、こう言ったら、戦時の財政を賄うためには一銭一厘を集めていかなければならないのだというのが、当時の大蔵大臣のお考えであります。  そこで、今は形が変わりまして国が財政危機であるということを理由になさるのではございましょうけれども、しかし、戦争が終わってから四十年たっておるという状況のもとで、確かに免税点を引き上げたというのは進歩でありますが、先ほどの御説明のときに、昭和三十七年に法律改正されたときに、時の大蔵大臣は水田さんだったと思いますが、この入場税というのは悪法であり、撤廃さるべきものであるということも、たしか答弁されておるという記憶があります。  そこで、文化の薫り高き政務次官にお伺いしたいと思いますけれども、単に入場税の免税点引き上げにとどまらず、将来はやはり撤廃していくという方向に踏み切っていただきたいわけであります。  例えば、日本芸能実演家団体協協議会、芸団協といいますが、五十団体でつくる舞台入場税対策連絡会議は、「悲しいね、文化に税金」の標語で約百五十六万人の署名を集めて、昨年の十二月十一日、国会に請願しましたが、この署名の七割、百七万人分を集めた全国子供親子劇場連絡会は、会員が四十万七千人、うち六割が子供たちでありますけれども、この団体の委員長は、国の台所が厳しい中で好意をもってこたえてもらい感謝していますと語る一方、文化に税金がかかっている事態に変わりはありません、入場税が撤廃されるまで運動は続けます、こういう決意を表明しております。これは文化を愛するすべての国民の願いであります。入場税は、税額においてはたしか五十億に満たないんですね。この際、きっぱりと撤廃をされるべきではありませんか。
  205. 中村正三郎

    ○中村(正三郎)政府委員 今御指摘がありましたように、私も議事録を見たのでございますが、税務当局というか、国を豚という表現にはこれはいささかびっくりしたのでございますが、先ほどから主税局長から御説明しましたように、非常に特殊な事情のもとに地方税から国税に移されたというのが出発点になってはおりますが、御説明いたしましたように、その後多くの経緯を経まして、今このできたときとの関連というのはもう薄れるというか、ない状態で考えるべきではないかと思うわけでございます。  入場税は、映画だとか演劇などの空ものへの入場者の入場料金の支払いに示される担税力に着目して課税をするものでございまして、今回大変厳しい財政事情のもとでございましたが、大きな国民各層の御要望がございまして、免税点を持ち上げたわけでございます。そして、税調答申にも示されておりますが、物品税等間接税は従量税が多いために、そうしたものの比重がだんだん減っておる、そういうときに、サービスについてはその消費が急増しているが、国税としてはほとんど課税対象になっていないという問題があるという御指摘もございます。そして「間接税体系の合理化を図るため、物品、サービス等に係る課税ベースの拡大等について検討を続けることとすべきである。」これは税調答申でございますが、こういう答申もあるわけでございまして、私どもといたしましては、担税力を求めてもいいのではないかと思うわけでございます。  それと、税収全体が非常に額が少ないというお話でございましたが、確かにそうでございますが、税金は税収が少ないからつくる、やめるという性質のものではないというふうに考えるわけでございます。  また、今度の改正によりまして例えばどういうところが課税されるかということでありますが、映画ですと、超一流の松竹セントラル(洋画)S席というのが二千五百円で、これは課税になります。札幌松竹遊楽館(邦画)特別指定席二千四百円、これは課税になります。また一流劇場ですと、帝国劇場の指定席A八千五百円、芸術座指定席Aが六千八百円、また相撲ですと、国技館の升席、ボックス席、いす席の非常にいいところが課税される。レスリングですと、後楽園ホールの特別リンクサイドというのが七千円でございまして、ここいらが課税される。ここいらには担税力を求めてもよろしいのではないかと存ずるわけでございます。
  206. 正森成二

    ○正森委員 大分お調べになったようでありますが、担税力に着目して税金を課するというのは、しかし当事者から言わせると、必ずしもそうは言ってないのですね。  ここに昭和五十九年九月十七日の朝日新聞の夕刊がありますが、そこに日本フィルハーモニー交響楽団の運営委員長の田辺稔さんという方が、「むしろ入場税撤廃を」という見出しで「わたしの言い分」を書いておられます。この方はみずからコントラバスの奏者でありますが、全部は読みませんでさわりだけを申しますと、こう言っているのです。  「演奏会場で聴衆に用紙を配ってアンケートを集めるのですが、一昨年秋、「演奏会に出かけるのに何か妨げになることがありますか」と質問しました。定期演奏会の聴衆では「料金が高い」が「仕事で時間がとれない」に次いで三五・五%と、小差の二位。定期よりややポピュラーな演奏会だと、名曲コンサートが四〇・三%、ファミリー・コンサートが三八・四%と、「料金が高い」が断然トップでした。」こういうように言っておられますね。それから続きまして、「アンケートの結果を見ると、値上げは出来ない。でも、われわれが長年主張しているように入場税が撤廃されれば、いまと同じ程度の入場料でも、音楽家が人並みに近い生活をすることが出来るようになるのです」、こう言っているのです。  そこで記者が、人並みに近い生活といって本当に低いのですかという意味の質問をしたら、それに答えて、「音楽大学を出て、高額の物品税を払って自費で楽器を購入して、オーディションに合格して、初任給が十万五千円。三十四歳で十四万九千円です。退職金はありません。人並み以下、ではないでしょうか」、こう言っておられるわけであります。そして、「七十五人編成のオーケストラが千五百人収容のホールを満員にしても、楽団員一人当たりの聴衆はわずか二十人と、極めて小産性が低いのです。だから諸外国でも国や自治体の補助が当たり前なのです。日フィルが今年度納める入場税は予算上は千二百万円ですが、文化庁から受けとる助成金は千百三十万円と、入場税より少ない。以前は助成金の方が多かったのですが……」、こういうことを言っているわけですね。  そして、その免税点の問題などに関連して、こういうように入場税が続くと確実に音楽水準が低下するでしょうということで、「著作権の生きている作曲家には著作権料を払わなければならないから、どうしてもとり上げにくくなる。ストラビンスキーの「火の鳥」をやれば、著作権料と楽譜の借用料を合わせて十数万円もかかります。いつもいつもベートーベンやシューベルトなど、著作権の切れた古典名曲ばかりの安上がりのプログラムを組まざるを得なくなるでしょう」、こういうように言っておられるわけであります。  私は、今度のこの点に対する法案は、巷間伝えられたような入場料の免税点を千五百円からさらに千二百円に下げるとかいううわさが去年の夏ごろ一時出ましたが、そうじゃなしに引き上げるということで減税でございますから、この財政難の中で中村政務次官を初めとしてよくおやりになったと思いますけれども、百尺竿頭一歩を進めて、将来は撤廃に向けてぜひとも御努力を願いたいということをお願い申し上げておきたいと思います。よろしゅうございますか。文化程度の高い方から答えてください。
  207. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 先ほど中村政務次官が申し上げられましたことと同じことになるわけでございますが、今回の免税点の引き上げによりまして、私も余りそちらの方に参りませんけれども、日本フィルとかそれから宝塚の少女歌劇とか、ああいうものは一切非課税になるはずでございますし、かなり高額な料金に対して課税を求めるというものでございます。  それから先ほど税制調査会答申も引用されましたけれども、今国税で数少ないサービスに対する消費税の一つである入場税でございますが、今後のサービス化時代を考えますと、やはりこの入場税を、文化的な配慮というものは個々に免税とか何かいたしておりますけれども、これを全部税制当局として将来廃止すべき税目であるというふうには私ども考えていないわけでございます。
  208. 正森成二

    ○正森委員 それでは、そういう御答弁ですから次に移らせていただきます。一部は、もう既に他の同僚委員がお聞きになったことと重複する点があるいは一、二問出てくるかと思いますが、お許しを願いたいと思います。  今度グリーンカード制が、今までのように延期ではなしに、これは実行しないということになりまして、その上租税特別措置では源泉分離選択制度が期限なしに存置されるということで、総合課税化を事実上放棄されたというように考えてもよろしいかと存じます。やはり所得に対してできる限り総合課税を実現することは、応能主義からいいましても当然のことでありますし、そうあるべきであると思うのですが、それを断念するに至った事情を考え、断念したにしても源泉分離選択の税率が三五%のまま据え置かれているのはいかがかというように思いますが、その二つの点についてお答えを願いたいと思います。
  209. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 この問題は、正森委員十分御案内のように、昭和五十五年の所得税法改正でいわゆるグリーンカードによる利子・配当の完全総合課税というものを御提案申し上げ、国会で成立いたしましたが、その後脚案内のような事情で凍結する事態になったわけでございます。この事態を踏まえまして、税制調査会で足かけ二年にわたりまして特別部会を設置し御議論を願ったわけでございます。  今回の特別部会での御議論を通じまして申し上げられることは、一つは、やはりグリーンカード制度を凍結せざるを得なかった事情、今回の答申にも書いてございますけれども、国民理解あるいは受け入れ態勢が必ずしも十分ではない。まだ実施されていないにもかかわらず若干の混乱が見られたというふうな事態。それから、それとも関連するわけですけれども、前回グリーンカード制度を御議論いたされました税制調査会の雰囲気と若干異なった意見が少なからず出てまいりましたのは、グリーンカードの経緯と同時に、昨今におきます金融の国際化あるいは金利の自由化、金融市場が非常に流動的な状況でございます。したがいまして、そういった点を考えると、将来の展望として、むしろ市場に中立的という観点から一律分離課税も検討に値するのではないかという意見が数多く出てまいりました。これも報告なり答申に書いてございますが、そういった状況を踏まえまして、結局現時点におきましては税制調査会としては、原則総合課税とする現行制度のもとで源泉分離選択課税制度を併置することは、ある立場の委員からはやむを得ない、ある立場の委員からはそれなりの評価がされる、いわばそういうところで、現状を余り動かさないという形の結論になったわけでございます。ただ、そういう経緯でございますので、私どもも、利子配当課税あり方につきましては、今回のただいま御提案申し上げている問題も含めまして、これですべて終わったとは考えておりません。今後の税制全体の見直しの中で再度これはやはり議論されるべき問題であると考えております。  そういった経緯もございまして、分離選択税率の三五%についても、この答申に書いてございますように、各種の源泉徴収税率とのバランスを図りながら現行水準よりも引き上げるべきであるという意見を表明された委員もいらっしゃいますし、ただいま申し上げましたような経緯で、現行の水準もかなり高いから、しかも金融市場への不測の影響という点を考えると、この引き上げについては慎重であるべきだ、いわば両論併記の格好になっておるわけでございます。  そういった経緯を踏まえまして、課税貯蓄たる利子配当課税につきましては、私ども、税制調査会のこの答申を踏まえまして六十年度の税制改正に臨んだわけでございます。ただ、そういうふうに骨組みは大きくは変わっておりませんけれども、やはり適正、公正な課税という観点は大切でございますので、非課税貯蓄のみならず、課税貯蓄たる利子・配当につきましても、記名、無記名を問わず、本人確認は現行よりも厳正なものにするという形で御提案申し上げているわけでございます。
  210. 正森成二

    ○正森委員 先ほど調査室から私の前の委員の質問事項をもらいましたら、既にお聞きになった方がおられるようですので、ごく簡単で結構でございますが、私は、今回の改正で本人確認は一応できるのではないかと思いますが、一番肝心な名寄せが非常に不十分にしかできないのではないかと思われます。将来磁気テープをどうするとか、いろいろな考え方新聞紙上でも出ておるようでありますけれども、名寄せができなければ、結局、仏つくって魂入れずでありますから、国税庁あるいは大蔵及び郵政省の方から、それぞれについて御見解を伺いたいと思います。
  211. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 少額貯蓄の利子非課税制度の運用を厳正にいたすためには、先生御指摘のとおり、本人確認と名寄せの充実双方が必要でございます。このための非課税貯蓄限度管理システムにつきましては、私どもといたしましても、非常に多数の非課税貯蓄申告書等を対象にするものでございますので、コンピューターの利用による名寄せの方法など、いろいろな方法を中心に実効のある具体的な案を関係当局とも早急に協議をしてまいりたいと考えております。  また、郵政当局における郵便貯金の限度管理システムにつきまして、私どもとしても、厳正な課税を行うという観点から、必要に応じまして御意見を申し上げたいと考えております。  なお、当面の問題といたしまして、金融機関の店舗間の限度超過額の把握及び是正につきましては、このための名寄せにつきましては現在手作業でいろいろやっておりますので、人員、予算ともにいろいろ制約がございましていろいろ困難な問題がございますが、私どもとしては一層工夫を凝らしまして、やり方にも効果的な方法を取り入れて、少額貯蓄非課税制度の運用の適正化に一層努力してまいりたいと思います。  それからまた現在行っておりますが、金融機関などの店舗に臨場して、いわゆる借名の預金であるとか限度超過をしたもの、こういうものの不適正なマル優の扱いにつきましてその把握と是正を行っておりますが、この金融機関の調査につきましても引き続き一層の努力を続けてまいりたい、このように考えております。
  212. 神岡篤司

    ○神岡説明員 郵政省でございますが、お答え申し上げさせていただきます。  郵便貯金の名寄せにつきましては、昨年の三月二十六日に全国のオンラインのネットワークが完成いたしまして、これによりまして、ただいまでも名寄せにつきましては全国一本で名寄せをいたしておるところでございます。また、このたびの税制改正の問題、本人確認の厳正化ということも踏まえまして今後さらに、ただいま国税庁の方からお答えがございましたように、大蔵省国税庁とも寄り寄り御相談をさせていただきながら、より一層厳正化に努めてまいりたい、こう思っておるところでございます。
  213. 正森成二

    ○正森委員 今両方から型どおりの答弁があったのですけれども、名寄せというのができなければなかなか国民の間での不信はなくならないし、逆に、そのことによってまじめなマル優利用者が白い目で見られるということもありますので、こういう問題について将来展望も含めて努力をしていただきたいと思います。やはり不公平な税制といいますかそういうものは、だんだんなくしていかなければならないと思います。  二、三伺っていきたいと思いますが、次に割引債の問題について伺います。  割引債は我々の承知しているところでは一六%の源泉税率を取られるわけですけれども、そもそもこれは現金で買えばだれが買ったかわからないということで、最初に源泉税率で取られているから売ったときは別に税の問題は起こらないということで、脱税資金の温床になっておるというようなことも言われております。  これは大阪の十二月十日付の朝日新聞でございますが、東京の新聞には載りませんでしたが、大阪国税局の調べということで、五十六年度から本格的に調査を始めたら「五十八年度までに十件の大口脱税事件を摘発し、うち九件を告発に持ち込んだ。ごまかし所得の総額は五十三億四千万円。このうち割引債を買い込んで所得を隠していた分は約三十億円で、全体のほぼ六割に達した。」ということでございまして、例として、奈良市内のコンクリート製造会社社長は約八億円を銀行の貸し金庫に隠していたとか、大阪市の総合病院の理事長は、東京で買えば大阪国税局に見つかるおそれが少ないだろうと、妻を新幹線で定期的に上京させて一億円単位で購入して、計約八億円も自宅の喫茶室に隠していたとか、いろいろ例まで挙げられております。  そうしますと、割引債というのはそもそも、最初に二八%の源泉税率というのが格安であるということのほかに、原資が脱税資金でそれを隠すのに使われておるということになりますと、二重に問題があると思うのですね。こういう点についてどういうぐあいに把握し考えておられるか、御見解を伺いたいと思います。
  214. 村本久夫

    ○村本政府委員 ただいま先生の方から御指摘のございました大阪の朝日新聞に載りました記事については、私どもも承知をいたしているところでございます。  あの記事につきましては、大阪局管内で最近三カ年間に脱税の摘発をいたしましたもののうち、割引債等の大きいもの、こうしたものを中心に書かれているようでございますが、一応全国ベースの数字を申し上げておきますと、昭和五十六年から五十八年度までの三年間に国税犯則取締法に基づいて査察調査を行って、検察官に告発をいたしました脱税事件が全部で五百二十八件ございます。  そのうち、その件についての脱税資金の留保の状況がどういうぐあいになっているかということを見てみますと、今御指摘の割引債と利付債、恐縮でございますけれども私どもこれを分けた統計はとっておりませんが、それを見てみますと、五十六年度が二十一億円、五十七年度が五十九億円、五十八年度が十四億円、年度によってかなりの変動がございますが、三年間の合計で九十四億円。この間の御指摘の告発事件にかかわります脱漏所得を全部合計いたしますと、千二百七十九億円になりますが、その中に占めます割合が約七%、こういうような状況になっております。  査察事件の調査等に当たりましては、当然のことながら、そういった資金がどういうところへ流れているかというようなことにつきましては十分な調査を行っておりますし、また、そういった割引債等につきましてもいろいろ問題がございますけれども、最近のような状況でございますので十分な関心を持ってそういったものの把握に努めている、そういうような状況でございます。
  215. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 割引債は、御指摘のとおり転々流通する金融商品でございますから、税務当局から所得源の捕捉を免れるために容易にそういう隠匿手段として使い得るという可能性を持っている商品であるということは私どもも否定しないわけでございますが、同時に、金融市場における商品として流通しているものでございますから税の対応としては非常に難しい対応があるわけでございますが、発行時に償還差益相当分をいわば転々流通する前に源泉徴収で取ってしまうという、これも税制上の唯一の対応でございます。しかもこの二八%という税率は、先ほど申しました三五%の分離選択の税率あるいは一般の二〇%の税率とのバランスで構成されておるものでございますから、六十年度の税制改正におきましては、引き続きこの一六%の現行の源泉分離税率を維持するということで御提案申し上げているわけでございますが、これも先ほど申し上げましたように、今後、利子・配当だけではなくて、こういう金融収益全般に関する税制全般あり方検討する中でどうするかという問題であろうと思います。  ただ、このような商品につきましては税制上の対応は分離課税しか対応ができないのかなというふうに考えておりますけれども、いずれにしてもこの二八%の水準そのものも今後の検討課題一つであるというふうに私どもは考えております。    〔委員長退席中川(秀)委員長代理着席〕
  216. 正森成二

    ○正森委員 次に、今回自民党の中の税制改正作業の中でも話にだけは出たようでありますが、大きな企業だけが運用している金融商品である譲渡性預金、CDの取引への課税化をやはり急がなければならないんじゃないか、こう思います。  そこで、CDの急成長に対して債券の現先が非常に圧迫されているというように聞くわけですが、もし資料がございましたら現先の取引残高、CDの取引残高あるいはCDの一カ月の取引高といいますか、そういうようなものを簡単に御説明願えればありがたいと思います。
  217. 吉田正輝

    ○吉田(正)政府委員 割引債の発行残高につきましては今ちょっと手元にございませんですが、CDについて申し上げますと、CDの発行残高は昨年一月時点では六兆円強でございましたけれども、一年の経過で見てまいりますと漸次増加いたしまして、昨年十二月末では八兆四千億円強ということになっております。これは、一つは金融自由化の中で発行枠の増加ということと、一単位当たりの発行額面を五億円から三億円に引き下げたということもあるわけでございますけれどもいずれにしてもそのような形で増大しております。  それから、月商売買高でございますけれども、これは短資会社取り扱い分だけしかわかっておりませんけれども、昨年の一月時点で見ますると六兆七千億円強、これは往復でございますが、同じく往復で一年経過した後の十二月時点では七兆一千億円強ということになっております。
  218. 岸田俊輔

    ○岸田(俊)政府委員 債券の現先について御報告いたしたいと思います。  現先の残高は五十六年三月末で五兆七千二百八十八億円でございまして、これをピークにいたしまして減少傾向になっておりまして、本年の一月末では三兆三千七百二十三億ということで、大分下回ってきておるというような状況でございます。  月間の売買高でございますが、最近では大体十ないし十五兆台で推移をいたしておりまして、一月の実績で見てまいりますと十三兆六千億ということでございます。  この傾向の原因でございますが、一つには、やはりCDが市場を拡大してきたということと、それと関連をいたしますが、金融機関の資金調達の手段が非常に多様化してきたり、また資金の運用者側にとりましてもいろいろCDの現先とか外貨預金、政府短期証券等の運用先が多くなってきているというようなこともこの原因かと思っております。
  219. 正森成二

    ○正森委員 CDが預金証書でございまして、これが有価証券であるかどうかということが理論的な問題点だろうと思いますが、しかし巷間でも言われておりますように、CDが預金証書であるということから取引税は全くかからない、あるいは印紙を張る場合にもたしか二百円ですか、これが有価証券を発行すると二万円であるとか、あるいは約束手形の場合には十万円であるとか非常に差があるということで、税の中立性という点から考えても——CDが最初発行されたときから見まして残高がたしか四倍ぐらいになっていると思います。そういうように非常に流通性の高いものであるという点から考えますと、これは預金通帳という形にとらわれるのでなしに、やはり有価証券というような性格も経済学的には非常に持っておるわけでございますから、こういうものに対しては、経済に対する税の中立性という点から考えても一定の課税を行う必要があるのではないか。特にこういうぐあいに国の税制財政が非常に厳しいというときには、こういう問題を考える必要があるのじゃないか。  たしか去年の三、四月ごろですか、大臣もそういう御意向を漏らされたときがあるやに記憶しておりますし、この点についてのお考えを伺いたいと思います。
  220. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 一般の有価証券とCDの場合、これはただいま委員が御指摘になりましたように、税法上取り扱いを異にしているわけでございます。  その考え方は、有価証券取引税に言う有価証券というのは、証券取引法に規定している有価証券である、これはそもそもが、一般の投資家が投資目的あるいは投機目的のために投資されるものについては、それを保護する建前から有価証券という概念がつくられておるわけでございますが、一方CDの場合は、法律上の性格は、これは委員御専門でございますけれども、いわば指名債権ということで、一般の預金と同じ性格のものである。したがいまして税法上は、一方は有価証券取引税がかかりますし、一方のCD証書の場合は定額の二百円で済んでおる。ただ、もう一つ、税法上の取り扱いの違いといたしましては、有価証券の場合はいわゆるキャピタルゲイン非課税になっておりますけれども、CDの場合は譲渡利益は課税対象でございますし、これは譲渡の都度、税法上、発行の金融機関を通じまして税務署の方へ調書が参る仕掛けになっております。  彼此勘案いたしまして、このバランスをどう考えるかという問題はあると思います。ただ、特に現先との対比で流通コストに非常に差があり過ぎるのではないかという問題があることは、私どもつとに承知しておるわけでございまして、内部でもいろいろ議論しておりますし、税制調査会等でもいろいろ御議論をいただいておりますけれども、現在までまだ結論を得る状態になっていないわけでございますが、これも先ほどの割引債などのところでも申し上げましたように、今後、金融市場、証券市場を通じて、直接税、間接税を通じて税の中立性といいますか、そういう観点からやはり将来の——将来といいますか、今後の大きな検討課題一つであるという認識は持っております。
  221. 正森成二

    ○正森委員 次に、最近企業の中で財テクと呼ばれる現象が非常に起こっておりまして、一部上場の企業でも従前は自分の本業以外の金融取引で黒字だなどというのは十社に一社もないぐらいでしたが、このごろでは、伝えられるところでは三社に一社ぐらいが黒字になっておるというようにも言われております。  そこで、もし資料がございましたら、最近の一部上場企業における金融収益、その推移、特に上位二社と言われておりますトヨタ、日産、松下等について、最近の数字を答弁していただきたいと思います。
  222. 岸田俊輔

    ○岸田(俊)政府委員 東証一部上場の八百六十三社、これを平均をしてみますと、金融収支はマイナスになっておりますのですが、確かに先生御指摘のように、主要な企業をとりますとそういう傾向があるのかと思っております。  ただ、残念ながら私ども、その主要な企業だけのを取り出した数字は取っておりませんものでございますので、ちなみに御指摘のトヨタ、日産、松下、これは最近の五年間の推移をちょっと見てまいりますと、トヨタが五十五年では金融収益が六百三十四億円でございます。五十八年が九百九十四億、五十九年が八百三十三億円でございます。それから日産でございますが、五十五年が二百四十三億、五十八年が四百八十一億、五十九年が五百三十四億円でございます。それから松下でございますが、五十五年で三百四十八億、五十八年で四百七十七億、五十九年で五百七十六億円という状況でございます。
  223. 正森成二

    ○正森委員 今三社についての答弁がございましたが、和光経済研究所の昨年五月二十一日ですかのまとめですと、東証一部上場企業八百九十九社、金融、保険、証券を除きますが、そのうち二百三十三社が金融収支で黒字会社になっておるという報告を、和光経済研究所は言っているのですね。  それで、こういうところが金融収益を上げる態様を見ますと、本業の製造業で大いに利益を上げて、それを現先その他で稼ぐというのももちろんあるでありましょうが、それだけにはとどまらないで、みずからが、株式の時価発行だとかあるいは転換社債とかそういうもので割とコストの低い資金を入手して、それを運用するということが非常に広まっているようであります。  それで、例えばトヨタ自動車を例にとりますと、昭和五十六年七月末の払い込みで七千万株を時価発行いたしましたが、一株が五十円のものが千四百十五円ということになっておりまして、一晩で九百九十億五千万円の資金を手に入れた。あるいは東芝の場合は、その年の九月末払い込みで二億株、一株四百八円で時価発行を行って、八百十六億円の資金を手に入れたというようなことでございます。あるいは株式転換社債の場合も似たようなものであります。  そこで伺いますが、最近は転換社債が急速に伸びておるようでありますが、株式の時価発行と転換社債の発行の額の推移ですね、これがおわかりになりましたら、ごく簡単に御説明を願いたいと思います。
  224. 岸田俊輔

    ○岸田(俊)政府委員 ちょっとアバウトな数字でございますけれども、五十九年のこれは年度でございますが、四−一月でございますが、国内で、株式で六千八百十五億円調達いたしております。それから転換社債では一兆六千三百でございます。  それから海外でございますが、これはちょっと丸めたドルのあれでございますので、申し上げますと、株式ではごくわずかでございますが、転換社債は約一兆二千ぐらいというのが実績になっております。
  225. 正森成二

    ○正森委員 これは大蔵省予算委員会の資料要求で以前に出したもので、若干数字は、非常に小さいところは違っておりますが、昭和五十二年から五十九年の五十九年から六十年だけは四月から六十年の一月ですね、それが出ておりますので、経緯を見ますと、株式の時価発行については、五十二年が四千六百六十億だったのが、五十五年が九千六十三億、五十六年が一兆二千七百九十九億とふえまして、五十七年にがたんと下がって七千七百五十九億、それから五十八年が五千五百六十九億、五十九年が六千百六十四億というように私どもが大蔵省からいただいている数字ではなっております。  この五十七年にがたんと落ちましたのは、新しい商法で、五十七年十月から株式の時価発行をしたうち二分の一は資本に組み入れなければならないという制度ができたからであろう。その前は駆け込みの時価発行増資で、五十七年に落ちたのは二分の一資本組み入れを敬遠したためであろう、こう言われております。  一方、転換社債はどうかといいますと、五十二年は千六百二十五億くらい、これはいずれも国内市場です。それが五十六年、七年の、株式の時価発行が五十七年十月から二分の一資本に組み入れなければならないとなったころから急増いたしまして、五十七年は四千百七十五億円、五十八年八千六百十億円、五十九年は一兆六百五億円というのが大蔵省からいただいた私どもの数字であります。  これはやはり企業の資金調達として、かつては株式の時価発行というのが非常にコストの安い資金調達方法であった。それが五十七年に商法が改正されて、二分の一は資本に組み入れなければならないから、今までのように資本準備金にしておいた場合には配当しなくていいけれども、資本に組み入れると配当しなければならないからそれだけコストが高くなるということで転換社債に目をつけたんだろうというのが、多くの識者の言うところなんですね。  転換社債というのは、従来はスイス市場が非常に安かったわけですね。このごろは国内市場も安い。むしろスイス市場が上がっておるというようなことが出ておりますが、国内市場では大体二%台だと言われるのですね。そうですか。もしそんなに安いとすれば、その原因は何ですか。
  226. 中村正三郎

    ○中村(正三郎)政府委員 御指摘のとおり、転換社債について、利回りが普通社債に比べて相当低いのは御存じのとおりでございます。このように利子の低い転換社債の売れ行きがよい最大の理由は、転換社債を発行する企業の株式が値上がりした場合には、その利益を転換社債の取得者が得ることができる、株式に転換できるということでございます。しかも株式と異なって、株価が値下がりしても社債であるがゆえに元本が保証されているということでございまして、いわゆる株に転換できるということにおいて、利回りは低いけれども売れるということだと思います。
  227. 正森成二

    ○正森委員 次官から明快なお答えがございまして、それはそれで答弁としては間違いのない、よくできた答弁でございますが、えらい失礼な言い方ですが、それをさらにもう少し経済学的に御議論お願いすると、転換社債の場合には元本が保証されて、将来は時価で株に変更できるという見込み利益があるということなんですけれども、結局それは株式の時価発行、それと同じことになるわけですが、それでは企業にとっては、株式に転換されるときになぜ額面よりはるかに高い額になるんでしょうか。
  228. 岸田俊輔

    ○岸田(俊)政府委員 それは、社債部分につきましての金利負担が、要するに発行されます残りの部分の金利負担が安いというところがやはりその理由の一つになるんではなかろうかなと思っております。(正森委員「それは企業から見てね」と呼ぶ)はい。
  229. 正森成二

    ○正森委員 企業から見ればそのとおりです。私が言っておりますのは、買う方の側から見て、なぜそんなに高く売ることができるんでしょうか、こう聞いております。
  230. 岸田俊輔

    ○岸田(俊)政府委員 それはやはり企業の成長性を投資家が買うということになろうかと思っております。
  231. 正森成二

    ○正森委員 証券局長お答えになったとおりですが、成長性という非常に漢とした表現でございますが、それをもう少し分析しますと、例えば額面は五百円なら五百円株であるということにいたしましても、これまでの利益の配当しない社内留保分がある、あるいは退職引当金というようなことで、ほとんど四〇%いっぱいの限度額まで積み立てておるとか、一株当たりに換算いたしますと、株主資本というような表現をされる方もおられますけれども、額面以上の実力といいますか資産といいますか、そういうものをいろいろ企業が持っておる。その上に例えば電電なら将来のVAN事業に対して有望であるとかそういうものがプラスアルファされるわけですね。それで額面よりははるかに高くなる。ですから、時価発行の場合にはそういう値段で発行することができるし、転換社債の場合には六年先とか七年先でありますけれども、それと同じ理屈が働くということで、逆に言えば、そういう将来の利益を見越しているから、現在は低い利率でも、買うことによってペイすることができる、こういうことになると思うのですね。  私はたしか三年ほど前の三月に、渡辺大蔵大臣で福田主税局長のときに、株式時価発行について税体系をあのままにしておいてもいいんだろうかという質問をしたことがあります。それはなぜかといいますと、私は、転換社債というのは形を変えた株式の時価発行と経済的には同じ意味を持っておるというように思うわけです。つまり、その企業に内在する値打ちですね、それは額面が五百円であっても決して五百円ではなしに、実際は二千円であるとか二千五百円であるということで、その企業が今は盛大に企業として活躍している人ですが、もし清算するとすればそれだけの値打ちがある、あるいは清算しないで継続して、さらにもうけるからさらに値打ちが出るという面はもちろんありますけれども、そういう形のものでもある、こう思うのですね。それはある意味ではキャピタルゲインなんですね。株式が五百円だけれども、それを売却して本当は一株二千円の値打ちがその企業にあるんだというキャピタルゲインに相当する部分が含まれているから、時価発行の場合にはそういう高い値段で公募することができるあるいは売ることができる、あるいは転換社債の場合にはかくも低い利率で引き受けさせることができる、経済学的にはそういうぐあいに考えてしかるべきものではないかというように思うわけであります。  そうしますと、株式の時価発行の場合にはそういう性格のものであるのに、商法が変わってからは二分の一までは資本に組み入れて、その分については配当ということで株主に還元をする、そして株主に還元された配当には一定の、十分な総合課税ではありませんけれども、税が課されて国に税金の形でやはり返ってくるということがございますけれども、そうでない資本準備金として留保されている部分は、これは元手要らずの金なんですね。人から、銀行から借りた金じゃないから利子は払わぬでいいし、株主に対して配当を払わなくてもいいということで、税として払うものは結局もうかったものに対する法人税等だけであるということになるわけであります。  これは、ある意味ではキャピタルゲインとして本来なら貫徹されたものを会社が株主に還元しないで、それを株主からある意味では無償で借りて、そしてそれを運用しておるということになるわけです。これは逆の言葉で言えば、株主が売却をしたら、そのキャピタルゲインに対して課税されて国庫に入るべき資産所得といいますか所得税を、国に還元をしないで企業がほしいままに利用しておるという勘定に経済学的にはなるのではないかというように私は思うのですね。ですから、こういうものに対して何らかの方法で一定の課税を考えるということが税の公平という意味からいってもしかるべきではないかというのが、私が前に申し述べた考えてあります。  現に、この前の質問のとき申しましたが、戦前から昭和二十五年ごろまでは、プレミアムは利益と観念されて課税されていた時期もありました。また、我が国の税制の中では、資本に対する課税という観念で、二%とか三%とかいう低い税率で課税した経緯すらあります。外国ではスイスなどもそういうことをやっております。ですから、私は、ある意味では非常に低利の転換社債を発行して、企業がそれで財テクをやる、あるいは株式の時価発行をやり、しかも株主には、株に組み入れないで、配当をしないで非常に高い収益を上げるということに対して、何らかの方法で付加的な課税を行うということも公平の観点からいったらしかるべきではないかというように思うのですが、この点について、気楽な意味での御論評を政務次官にお願いいたします。
  232. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 政務次官がお答えになります前に、税制当局としてこの問題に対しての率直な考え方を申し述べることをお許し願いたいと思うわけでございますが、時価発行された場合のプレミアムというのは、やはり株主が直接拠出した資本そのものであるということでございます、税制上の考え方といたしましては。したがいまして、利益課税あるいは所得課税たる法人税の課税対象とするということはなじまないという伝統的な考え方をとっております。戦前にプレミアム課税を行われた事例もございますし、当時行政訴訟なども、いろいろ問題のあったところでございますが、現時点におきましては、資本課税というのは好ましくないという考え方をとっておるわけでございます。  経済学的に言えばキャピタルゲインのようなものではないかという御指摘がございましたけれども、別の観点に立ては、これも先ほど委員が展開された御議論でございますが、株式の時価がどんどん上がっていく、それは一体何かということになりますれば、先ほども御指摘になりましたように、これは配当水準とかその企業の生産性、設備あるいはノーハウ、そういうものを総合した将来の収益力というものがそういう価格を生むわけでございますから、やはり自由な資本市場あるいは自由な市場における企業の活動を制約しないという観点からしますれば、そういうプレミアムに対して税制上何らかの関与をするということは、これは観点の相違かもしれませんけれども、やはり市場に対する中立性という観点から見て私は相当問題があるのではないか。同時に、そういう時価発行という仕掛けを通じまして旧株主と新株式の利益の調整ということも行われておるわけでございます。  ただ、おっしゃるように、時価発行によるプレミアムが株主に還元されてないという問題は別途あろうかと思います。これは税制上の問題ではなくて、別の観点からむしろアプローチすべきであって、プレミアムにいきなり課税するという問題は、資本市場あるいは自由なる企業活動という点から見れば非常に大きな問題を呼びはしないか。経済学的にはそういう問題があろうと思います。
  233. 正森成二

    ○正森委員 政務次官、どうぞ。
  234. 中村正三郎

    ○中村(正三郎)政府委員 これで尽きております。
  235. 正森成二

    ○正森委員 この問題は三年前にもいろいろ議論として出たところでありまして、このごろは株式の時価発行が転換社債という方向に変わってきているように思われますので問題提起をしたわけですが、また別の機会にゆっくり議論をさしていただきたいと思います。     〔中川(秀)委員長代理退席、委員長着席〕  大臣がお見えになりましたので、資料を、恐れ入りますが、委員長
  236. 越智伊平

    越智委員長 どうぞ。
  237. 正森成二

    ○正森委員 お配りいたしました資料は、経済企画庁が本日予算委員会に提出された資料でございまして、松浦委員の、「一九八〇年代経済社会の展望と指針」の中に六つの類型に分けて社会保障負担やあるいは租税負担率について勉強した数字があるはずである、それをぜひとも出してもらうようにという要請がございまして、それに基づいて提出された資料であります。ここには、非常に勝手でございますけれども、そのときに経済企画庁が出しました上段の部分、それをちぎりまして、そこに企画課長がおられてえらい申しわけないんですが、その下の方に私が計算しました数字をつけ加えて、これから議論をするための素材にさしていただくということでつくりました数字であります。  まず最初に、議論に入ります前に、経済企画庁が来ておられるようですから、この数字が出てまいりました経緯と、それから若干の説明をしていただきたいと思います。
  238. 谷口米生

    ○谷口説明員 今、正森先生の方から御指摘ございましたが、本日私ども予算委員会に松浦委員の御要求の資料として出しましたものには、まず前段に「松浦委員御提示の前提条件に基づき「一九八〇年代経済社会の展望と指針」策定時点における予測値を試算すれば、以下のとおりである。」という一行が入っておることをつけ加えさせていただきたいと思います。  私どもは、今の二行に尽きますように、本日提出いたしました資料につきましては、前提条件につきまして松浦委員から幾つかの、六ケース御指示いただきまして、「展望と指針」策定当時、もう二年くらい前になるわけでございますが、当時の想定としてこのような前提幾つがあり得るだろう、そういう前提のもとでいろいろ数字をはじいたものと理解しておるわけでございますので、よろしくお願いしたいと思う次第でございます。
  239. 正森成二

    ○正森委員 今計画課長から答弁がありましたが、なかなか苦しい答弁で、実際にはもっといろいろあったんだろうと思いますが、それをここでは申し上げないことにいたします。松浦委員が一定の前提をつくられて、それに基づいて御作成になったというように聞こえましたが、そういうように一応は理解しておきます。  ただ、そういうことだといたしましても、大蔵大臣、環境改善型とか環境停滞型とか六つほどいろいろの前提がございますけれども、この中で、租税負担率というのが六十五年度国民所得比というので出ております。これは松浦委員からと言ってもよろしゅうございますし、松浦委員の前提に基づいて作成した経済企画庁の責任者からという言い方に直してもよろしいわけですが、この租税負担率はどういうぐあいにして出てきたんですかということを私があらかじめ聞いておきました。そうしますと、昭和五十七年を起点にして、大型間接税等の導入を考えずにおおむね現在の仕組みを延長していけばどういうぐあいになるであろうかという数字を出してみたところが、こういう数字が出てきたのであるということなんですね。  もちろんこの数字は、厳密に言いますと国民所得計算ベースの租税負担率であります。私はよく存じませんが、主税局長、何か租税統計ベースの租税負担率というのもあるんだそうですね。日銀納付金を入れるとか入れないとか、あるいは相続税を入れるとか入れないとか、そういうことでございまして、大蔵省が私どもに出してくれました数字は私の見るところでは租税統計ベースの数字で、それだったら大体〇・七ぐらい低く出るというように聞いておりますが、それは前提が違うわけですからよろしいということにしておきたいと思います。  そういう前提で計算してみますと、これは松浦委員の前提としてもあるいはその前提に基づいて経済企画庁が作成したとしても結局は同じことでありますが、おおむね租税負担率は二七%台になる。この支出趨勢型の二八というのを除いて大体二七%になるというのは、これは間違いのないことであるというように思います。  それからもう一つ、社会保障負担というのは毎年額にして九%の伸びを示すということになっておるわけですが、それはこれからの高齢化社会なとを考えればそういうことになるという前提を置かれたものだと思います。  非常に失礼でございますが、下の方の私が秘書に頼んでつくってもらいました数字の社会保障負担と同負担率というところを見ていただきます。  これは、昭和五十七年度の社会保障負担は約二十二兆円、率にして一〇・四%でございますが、これを機械的にこの数字にございますように毎年九%ずつふえるということでその実額を出しまして、それをもとにして、名目成長率がこの経済企画庁が出しました——実は私が皆様に資料として出さなかった原本の方には六つの類型がございまして、そのうちの中間型—1というのをとったのですが、六・三%ずつ名目GNPがふえるということになっております。その数字をとらしていただきました。そうしますと、国民所得というのはそれに〇・八を掛けるわけですから、数字が出てくるわけですね。  それに基づきまして社会保障負担率はどの程度上昇するであろうかというのを見ますと、その下段を見ていただいたらわかりますが、五十七年度一〇・四が六十年には一一・一になり、以下順次伸びまして、六十五年には一二・六になるという数字が出てくるわけであります。この一二・六と租税負担率の二七・三を足しますと三九・九、約四〇になるということになります。これは我々が二年前に、この資料のない場合に経済企画庁の関係者から聞いたということで、経済企画庁は大体昭和六十五年の数字として租税負担率はほぼ二七前後、社会保障負担はほぼ一三前後、合わせて国民負担は四〇前後ということを考えておるのではないかというのが、大体において当たらずといえども遠からずで、当たっているわけですね。私はきょう提出されました資料に基づいてそういう感じを持ったわけです。  大蔵大臣に伺いたいと思いますが、もちろんこれは政府がこうするという政策ではありません。こうするという政策ではありませんが、六つも型を決めて、そしておおよそ現在の施策を中心にしてこれを六十五年に延ばしていけば、租税負担率あるいは社会保障負担率合わせた国民負担率はこの程度であるという姿はどういうようにごらんになりますか、御感想と御見解を承りたいと思います。
  240. 谷口米生

    ○谷口説明員 恐縮でございますが、この姿は五十八年の「展望と指針」策定当時ということでございまして、このケースを見ていただきますと、環境改善型といいますのは、五十八年から世界貿易がかなり急速に伸びるであろうという非常に明るい見通しに立ったものでございます。環境停滞型と申しますのは、オイルショックの後遺症がまだ根強く残るであろう、こういう前提に立っております。そのほか中間型、支出抑制型は、海外状況については環境改善型と環境停滞型の中間を想定という私どもは理解でおるわけでございますが、その中で何が違うか、私どもなりの理解を申し上げますと、恐らく松浦委員の御念頭には、国内の財政あり方が違えばどうなるのであろうかというのがこの四つの類型の差であろうかと思っておるわけでございます。  先ほど先生から御指摘ございましたが、例えば社会保障負担の九%増ということは、極めて恣意的に、恐らく支出趨勢型が一〇・六でございますので、これを一けたにとどめようという程度の置き方ではなかろうかと私考えるわけでございます。例えば一けたに置けばどういうものであろうかというような感じでございまして、恐らく与件が若干古いものでございますので、なかなかこれから結果を即断することにはいろいろ問題があるのではないかと考えるわけでございます。
  241. 竹下登

    竹下国務大臣 私も七カ年計画のときに、公共事業二百四十兆、租税負担二六カ二分の一のときの、あれは企画委員会というのですか、企画委員会というのが経済審議会の中にありまして、それに勉強させていただいたことがございます。その体験からして、「展望と指針」にはそれはなかなか出せぬなという感じを持っておりました。  今の正森委員御指摘の点に対する感想を述べよということになりますと、一つだけ僕も感想としてあり得るかな。前提とかモデルはよくわかりませんけれども、瀬島委員でございましたか、ヨーロッパよりかなり低い段階にと言うときに、多くの方々が四〇とか四五とかを頭に置いて議論されておったのではなかろうかというような何か話があったような気がいたしますので、私も何となくそんな感じでこれをけさから見せていただいたというのが、感想とおっしゃればそういう感想でございます。
  242. 正森成二

    ○正森委員 私も、かねてから風の便りに大体国民負担が四〇前後、あるいは瀬島さんでございましたか、四五というようなことを言われた方もおられたようですが、大体四〇から四五というのに符合しておりますので、前提はいろいろ違うけれども、そういうものかなという感じで見たわけでございます。  そこで、時間がございませんので、大臣あっちこっちでお疲れでございましょうから、一問だけで終わらせていただきたいと思いますが、今度の予算の総括質問や経済の集中審議等で、大型間接税や「増税なき財政再建」ということが大分議論になりました。これは五十七年七月二十日の「行政改革に関する第三次答申」の中に出てくる言葉でございます。大臣はもちろんよく御存じですが、ここで「増税なき財政再建」の定義があるのですね。「ここで「増税なき財政再建」とは、当面の財政再建に当たっては、何よりもまず歳出の徹底的削減によってこれを行うべきであり、」その後ですね、「全体としての租税負担率(対国民所得比)の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらない、ということを意味している。」これは有名な言葉でございまして、当時の新聞などにはさまざまの論評が載った言葉であります。  さらに、時間の関係で、私が節約して申しますが、大蔵大臣その他関係大臣は、このことは新たな税制上の措置をとらないで自然増収で若干の租税負担率が上がること、あるいは不公平税制と言われるものなどをでこぼこ調整して、そのことによって若干の租税負担率が上がることまでも禁ずる措置ではない、ここで禁じておるのは、全体としての租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらないということであって、従来の税制での自然増収や不公平税制のでこぼこ調整による若干の租税負担率の上昇というものまで禁ずる趣旨ではないという答弁が繰り返しされてきたと思うのです。  そこで、この経企庁提出の資料、松浦委員前提に基づく資料を見ますと、これは税制上の新たな措置を基本的にはとらないでこの予測は大体二七%前後になっているわけですね。そこで、結局二七%になっても、これは税制上の新たな措置をとっていないんだから許されるという範囲に、やはりあなた方の定義の解釈ではなるのではないか。  そして、さらにきょうはもう一つ聞いておきますが、中曽根総理大型間接税についていろいろ御定義になりましたが、その定義は別にいたしまして、仮に、国会決議にも反しないような、大型間接税に近いものを導入したとしても、そのときに所得税や法人税を大幅に同じ年に減税をいたしまして租税負担率が全体として変わらなければ、そういう税制上の新たな措置は臨調の定義からいえば許されるのではなかろうか。そして今度は第三段階で、もう既に大型間接税は導入されてしまったんだから、それから一年、二年たって大型間接税税率を若干変えるとかいうようなことをいたしましても、これは税制上の新たな措置を基本的にはとらないんだから、それは税収増として許される、こういう御解釈をおとりになるのではなかろうか。そうすれば、結局、租税負担率が今よりは相当高い二七に上がるということと大型間接税の導入ということとは、税調の定義に反しないでできるということになるのではなかろうかというのが、私がこの資料等を見て感ぜざるを得なかったことであります。  国民の関心とするところもそういう点にあろうかと思いますので、こういう点について率直な御意見を承りまして、時間でございますから質問を終わらせていただきたいと思います。
  243. 竹下登

    竹下国務大臣 正森委員が今おっしゃった論理というのは、私も、本当は成り立つ一つの論理だなというふうに今承っておりました。  問題は、まだ全く仮定の事実でございますが、俗に言う課税ベースの広い間接税とでも申しますか、そうしたものも、恐らくでこぼこ調整という——公平化適正化というのが本当の言葉でございますが、私、でこぼこ調整とよく言ってしまうのですが、その範疇になった場合は、私はその論理は成り立ち得る問題だな。ただ、それを前提にして、さらにその後税率がどんどん上がることによってというところまでいきますと、いわゆる所得税等直接税と、間接税の持つ、何といいますか、自然増収差が当然出てきますから、その辺まで議論するには、少し前提等いろいろなモデルということからすると私がお答えをする限界をちょっと超したような感じがして、素直に聞いておりました。
  244. 正森成二

    ○正森委員 そうしますと、私が第一段、第二段、第三段というように先走って申しましたが、少なくとも第三段はお答えの限りでないということで、考えていないというようにおっしゃったと思います。  国民としては、いろいろな形で大型間接税が導入されて租税負担率が上昇するとかあるいは逆累進制になるということで非常に危惧しておりますので、こういう点についてはあくまで慎重な御対処をお願いしたいということで、時間でございますので、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  245. 竹下登

    竹下国務大臣 やはり予算委員会でありますと総括的、国政全般。本委員会はまさに歳入委員会でございますから税制そのもの。今の御意見も正確に税制調査会へ伝えさせていただきます。
  246. 越智伊平

    越智委員長 次回は、来る二十六日火曜日午前十時二十分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時五十九分散会