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1985-03-27 第102回国会 衆議院 商工委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年三月二十七日(水曜日)    午前十時二分開議 出席委員   委員長 粕谷  茂君    理事 浦野 烋興君 理事 田原  隆君    理事 森   清君 理事 渡辺 秀央君    理事 後藤  茂君 理事 城地 豊司君    理事 長田 武士君 理事 宮田 早苗君       甘利  明君    尾身 幸次君       奥田 幹生君    加藤 卓二君       高村 正彦君    椎名 素夫君       仲村 正治君    野田  毅君       原田昇左右君    奥野 一雄君       上坂  昇君    浜西 鉄雄君       水田  稔君    横江 金夫君       和田 貞夫君    渡辺 嘉藏君       木内 良明君    草野  威君       西中  清君    福岡 康夫君       横手 文雄君    野間 友一君  出席国務大臣         通商産業大臣  村田敬次郎君  出席政府委員         公正取引委員会 厚谷 襄児君         通商産業政務次         官       与謝野 馨君         通商産業省通商         政策局次長   鈴木 直道君         通商産業省産業         政策局長    福川 伸次君         工業技術院長  等々力 達君         工業技術院総務         部長      荒尾 保一君         郵政省通信政策         局長      奥山 雄材君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      秋山 昌廣君         大蔵省主計局主         計官      日高 壮平君         大蔵省理財局資         金第一課長   寺村 信行君         商工委員会調査         室長      朴木  正君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  基盤技術研究円滑化法案内閣提出第三八号)  貿易研修センター法を廃止する等の法律案(内  閣提出第四三号)      ————◇—————
  2. 粕谷茂

    粕谷委員長 これより会議を開きます。  内閣提出基盤技術研究円滑化法案及び貿易研修センター法を廃止する等の法律案の両案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田原隆君。
  3. 田原隆

    田原委員 我が国は戦後、技術革新を原動力として急速な経済発展を遂げ、今日の繁栄を享受することになりました。しかし我が国技術開発は、どちらかというと海外の導入技術に多く依存しておりまして、これをもとに発展してきたというのが特徴であると思います。言いかえれば、短期的な採算性を重視して企業化に近い段階での技術開発に力を入れるという対症療法的なアプローチが支配的であったと言えます。一九八〇年代も半ばに至った今日、世界経済は二十一世紀に向けての新たな技術革新胎動期を迎えております。またベルサイユ・サミット以来、技術開発推進は停滞した世界経済活性化への活路であることは主要先進国首脳共通認識でもあります。国土が狭く、また資源にも乏しい我が国が将来の発展基盤を確保し、また世界の一割国家として国際社会に貢献していくためには、唯一の財産とも言える人的資源言葉が多少よくないかもしれませんが、人的資源を生かしつつ長期的視野を踏まえた新たな創造的技術開発に積極的に取り組んでいくことが不可欠であると考えます。  二十一世紀はもう間近であります。欧米諸国が既に国を挙げて技術開発政策強化に邁進していることを考えると、我が国としては一刻の猶予も許されないと言うべきであります。今や大いなる決意を持って、みずから基礎研究段階からの技術開発を抜本的に強化していくための体制を整えていかなければなりません。これは喫緊の課題でもあります。本法案こそはこれを可能にするものと私は考えております。したがって、私は基本的に本法案に賛成するものでありますが、本法律が的確に運用されて十分な成果を上げていくことを願う立場から、以下質問を行いたいと思います。  まず通産大臣にお聞きしたいのですが、技術開発の意義、重要性について大臣はどういうふうに認識しておられるか。また我が国技術開発現状をどういうふうに把握しておられるか、お伺いしたいと思います。
  4. 村田敬次郎

    村田国務大臣 田原委員にお答え申し上げます。  田原委員も御指摘になりましたように、技術開発はこれから本当に日本の大きな財産であろうかと思います。まさに世界の千分の三以下の国土を持ち、そして世界の百分の三の、この国土に比すれば過密人口を持ち、そして世界の一割の生産を上げる、いわゆる一割国家としての日本の将来というものを考えてまいりますと、まさに技術革新というものが非常に大事である。そしてまた情報化に対応することが一番大事であるという観点から、技術革新は、例えば通商産業省にとっても一丁目一番地であって、この問題の振興によって今後の産業社会への対応をしていきたいという考え方でございます。  そういった観点から考えますと、現在は技術革新胎動期であって、技術開発は、産業構造就業構造高度化を通じて我が国経済社会発展基盤の確保に資するとともに、国際経済社会へ積極的な貢献を果たすためにも極めて重要である。今後我が国創造性に富む技術力充実強化を図るためには、これまで欧米諸国に比べて取り組みがまだ十分とは言えないと思います。そういった取り組みが十分と言えない基礎応用研究段階中心とする技術開発、とりわけ波及効果も大きい基盤技術分野技術開発に格段の努力を払うことが重要であるということを考えておりまして、この法律案をお願いし、これによって、田原委員も御指摘いただきましたように、我が国技術開発にさらに大きなプラスを加える、前向きの施策を講じてまいりたい、そういった考え方でございます。
  5. 田原隆

    田原委員 先ほども私、申しましたけれども、諸外国では積極的な技術開発政策が展開されておると常々聞いておりますが、欧米諸国技術開発政策の動向について御説明願いたい。そしてまた欧米諸国に比較して我が国技術水準技術開発特徴はどうであるかということもあわせて、簡単にお答えいただきたい。
  6. 福川伸次

    福川政府委員 最近、欧米諸国でも御指摘のとおりに先端技術には大変力を入れておりまして、特にアメリカレーガン大統領科学技術政策大変力を入れておりまして、予算について言いましても五百九十七億ドル、約十四兆円の予算を八六会計年度に計上しておりまして、日本は一・五兆円ということでございますから、アメリカ技術開発大変力を入れております。そのほか、増加試験研究費税額控除制度実施いたしておりますし、またナショナル・サイエンス・ファウンデーション、全米科学財団を通じまして産学官連携強化ということにも力を入れておるところであります。  ヨーロッパにつきましても、従来比較的技術政策への力の入れ方が少ないのではないかと言われておりましたが、最近ではEC、特に西ドイツイギリスあるいはフランス中心に、例えば情報関連技術で申しますとECエスプリ計画と称します情報関連技術政策をやっておりますし、最近西ドイツでも情報関連技術開発計画というものをつくりまして約二千八百億円に相当する補助金を支出するということになっております。イギリスマイクロエレクトロニクスにも力を入れておりますし、フランスバイオテクノロジーあたりに力を入れておるわけであります。  我が国技術水準でありますが、日本は従来ややもすれば外国技術に依存をいたしまして、企業としても主として開発段階技術開発に力を入れてまいりました。商品化企業化に力を入れてまいったわけでありまして、日本技術水準を見ますときに、いわゆる基礎研究あるいは応用研究といったものについては欧米諸国に比べるとむしろおくれておるというのが私ども認識でございました。今後とも基礎研究応用研究に大いに力を入れ、むしろ外国からの技術導入に依存できない状況を考えますと、みずからの創意と工夫というようなことで創造性のある技術開発という点に重点を入れていくべきものと考えております。
  7. 田原隆

    田原委員 技術開発に当たっては国と民間が、それぞれ自分らの持っておる責任を果たさなければならないと考えておりますけれども、国の技術開発についてはどういう措置を講じておられるか伺いたい。特に先端技術分野における国の研究開発役割現状、それから見通し等について簡単にお答え願いたい。
  8. 福川伸次

    福川政府委員 国及び民間役割分担でございますが、従来も国が力を入れるべきものと申しますと、社会的なニーズが高いにもかかわらずリスクが高い、あるいはコストが大きい。また、開発段階懐妊期間が長いというような観点から、民間だけで十分な技術開発が困難なものというものについては、国が積極的に取り上げるべきであるというふうに考えております。今後チャレンジすべき技術分野は大変広いわけでありまして、今後もまた政府は、そのような民間でできない部分は十分続けていきますと同時に、民間についても基礎研究応用研究を順次分担していくという組み合わせを考えていく必要があるというふうに考えております。  国といたしまして、特に私どもでは十六の工業技術院傘下試験研究機関において、みずからの研究開発を進めていくということと同時に、またその民間の力もある程度使うという意味では、例えば次世代産業基盤技術研究開発制度、あるいは俗に大型プロジェクトと言われますような大型工業技術開発制度というものを推進をいたしまして、今後技術開発充実強化に努めてまいりたい、かように考えております。
  9. 田原隆

    田原委員 本法案は、技術開発政策の中で一体どういう位置づけになっておるのか。本法案を既存の技術開発政策との関係で説明していただきたい。  それから、私今聞いておるところでは、中小企業技術開発促進臨時措置法案を出されると聞いておりますが、これとの関係は一体どうなのかということ。  それから、この行革時代に普通の財団法人ではなくて特別認可法人として設立されるわけですが、その理由といいますか、それと行革時代ですから、当然よく言われるスクラップ・アンド・ビルドということで何か考えておられるのか。そのことについても、貿易センターが廃止されると聞いておりますけれども貿易立国として、また世界で非常に大きな経済国家となっておる日本貿易センターをやめていいのかというようなこと。もしこれを、何か聞くところによると、格下げという言葉は穏当でないかもしれませんが、特別認可法人から財団法人に切りかえると言われておりますけれども、その場合に何か恩典的なものがなくなるのではないか、特に税制について私は心配しておるわけです。  これらについて総合的にかいつまんで、簡単にひとつお答え願いたいと思います。
  10. 福川伸次

    福川政府委員 まず、この法案位置づけでございますが、従来国が実施をしてまいりますのは、基礎研究応用研究中心であったわけでありますが、民間技術開発力、これが従来開発研究中心でございましたが、これも順次応用研究あるいは基礎研究基礎研究のうちでも、例えば目的基礎研究というようなことで、順次その根源にさかのぼった方向に持っていこう、こういうことでございまして、今後ともこの基礎研究民間政府とで共同分担してやっていこうということになります。  特に、リスクが極めて高いものということになりますと、国がやるということにならざるを得ないと思いますが、しかしながら、ある程度の助成をすれば民間でやっていけるような基礎研究あるいは応用研究というものは、この法律案で考えております助成手段を用いまして民間にやっていってもらおう、それでできないものを国がさらにやっていこう、かように考えておるわけであります。  中小企業との関連でございますが、今回別途、中小企業技術研究開発促進臨時措置法案を御提案申し上げまして、御審議を煩わしたいと考えておるわけであります。  この基盤技術研究円滑化法案でも、もちろん中小企業中堅企業も大いにやれる、活用の余地はあるわけでありますが、この中小企業技術新法の方は、中心をまさに中小企業に置きまして、中小企業者に限りましてこの信用保険法特例等追加措置規定するといったような格好で、まさに中小企業技術振興そのものを焦点に置いたものでございまして、これはその試験研究段階について見れば、もちろんそれも対象にもなりますが、それにとどまりませんで、試験研究の結果得られた成果を利用して行う企業家までも含めて、この中小企業新法の方では施策対象にしていこうということでございます。  今御審議いただいております基盤技術研究円滑化法案の方は、これは大企業中小企業を問わず、広く基盤的な技術、これを基盤技術についての試験研究を促進するということを目的に置いているところであります。  また、行革時代にこのようなセンターをつくるのはいかなる意図によるものであるかというお尋ねでございますが、私どもとしては臨調答申、これも十分尊重をいたすことは当然でございまして、特にこの臨調答申の中でも緊急の課題として、民間活力を活用した技術開発政策ということは強調されておるわけであります。もちろん新しい特別法人あるいは特殊法人あるいは特別認可法人については、厳に慎重にやるべしという御趣旨もございますが、この民間活力の発揮というのは、臨調答申の底に流れる精神であろうと思います。  私どもといたしましては、その精神を酌み取りながら、しかし一方、行政機構肥大化を防ぐという意味で、スクラップ・アンド・ヒルドでこの研究センター設立を考えておる次第でございまして、そのためには、今回もお諮りをいたしております貿易研修センター法律を廃止するということを考えておるところでございます。これについては担当部局の方からお答えさせていただきたいと存じますけれども、これは私どもとしては、この機能は発足後かなりの時間も経過をいたしておりますので、むしろ民間法人として、この機能はさらに充実強化をしてまいりたいと思います。  なお、税制その他の点については担当部局の方からお答えさせていただきます。
  11. 鈴木直道

    鈴木(直)政府委員 貿易研修センターの廃止の関係につきまして、御報告申し上げます。  貿易研修センターは、昭和四十二年設立以降、国際経済人を養成するという我が国国際化という方向を担った重要な役割を果たしてまいりました。今回は、その辺につきまして新たな民間法人化方向を出しているわけでございますが、最近の国際経済情勢を見ますと、貿易問題のみならず投資、技術、いろいろな面におきまして、多様な国際経済関係が発生しております。そのような多様なニーズに対応いたしまして、私どもといたしましては、より民間活力を生かした形で、従来の国際経済人の養成をますます発展をさせていかなくちゃいけないんじゃないか、このような考え方から今回の措置、すなわち貿易研修センター財団法人化を可能とする措置を内容といたします法案を出したわけでございます。  今回の財団法人化に当たりまして、組織変更以降におきましても、研修事業そのもの重要性はますます高まっておりますので、その辺につきましては、私どもといたしましても遺憾なきように対応していきたい、かように考えている次第でございます。  それから税制上の問題でございます。貿易研修センター民間法人になりました以降におきまして、税制上の不利な扱いを受けるのではないかという御指摘でございます。  民間法人に移行した以降、民間が持っておられます創意工夫等重要な点につきまして十分生かしてまいりたいと存じますけれども、同時に、御指摘のように資金の面につきましても十分民間資金導入を図ってまいりたいわけでございますが、従来、貿易研修センター自身特別認可法人といたしまして特別の措置を受けてまいりました。すなわち、民間からの資金導入につきましては税制上の特典があったわけでございますが、今後、民間法人化になりますと、その辺につきまして確かに従来よりは、扱いにつきまして、ほかの民間法人と同様な形になるわけでございます。しかし先ほど申しましたように、民間からの資金導入が必要でございますので、従来どおりの措置の継続というものを私どもといたしましてはぜひ続けてまいりたいと思っております。  その点につきましては、財政当局と鋭意努力しているわけでございますし、来年度の税制要求過程でも最善を尽くしたいと思っております。先生方からの御指導、御支援も得たいと思っております。よろしくお願いいたします。
  12. 田原隆

    田原委員 いろいろ御答弁いただきましたが、今の税制の問題についてもひとつ大蔵省に直接聞くべきであったかもしれませんけれども通産省としても責任を持って従来以上の措置を考えていただきたい。税金の時期などにその要求をしていただきたい。  それから、答弁は要りませんが、中小企業との関係につきましても、中小企業法律は全体の技術をカバーしていると思うのですね。ですから、この法律基盤技術ということになると、中小と大と分けていくと、中小技術についてはダブる部分ができる、それから大企業については穴あきができる、地図で、絵でかくとそうなりますね、それらについて二重にカバーされる部分については二重の恩典を与える、これは中小企業対策上十分必要だと思いますので、この点はお答え要りませんが、ぜひやっていただきたい、こういうふうに思います。  それから、本法案対象となっている基盤技術範囲通産、郵政の所管分野に限られるということが明記されておりますけれども、これで一体、観念的に見て基盤技術がどの程度カバーされるか。両省所管分以外でも、国民ニーズの高い、民間開発ポテンシャルの大きい分野研究開発分野があると思われるけれども行政がアンバランスにならないか。例えば、食品医薬品関係バイオテクノロジーなどは一体どういうふうに扱うのか。それから、本法案対象にならない技術にはどんなものがあるのか、あるいは今後各省庁がそれぞれの所管する技術分野について予算措置等を講じて、本法と同様の手法をもって試験研究を促進しようとするような場合には、本法対象技術を拡大するというようなことがあるのか、それとも、別途に法律をつくるのか。それらについてごく簡単に考え方を御説明いただきたいと思います。
  13. 福川伸次

    福川政府委員 基盤技術の要件でございますが、御指摘のように、鉱工業、電気通信事業等技術両省に関するものを所掌いたします、そういう視点が一つ、もう一つ国民経済及び国民生活基盤強化に相当程度寄与するもの、こういう定義を与えて御提案申し上げているわけでございます。  今回ここで考えました趣旨は、主として民間活力を発揮させる、それが今申しましたような基盤的な技術開発民間活力を発揮させる、こういう手段基盤技術というものを組み合わせて考えた政策でございます。  基盤技術は今申しましたような定義になっておりますが、やや砕いて申しますれば、基盤技術と申しますのは、産業に広範に横断的に使われるような技術あるいは特定産業においても革新的に技術が進むような、そういった分野技術ということでございまして、言ってみれば影響度あるいは波及性の大きい技術、そういう基盤的な技術ということを考えておりまして、例えば超微細加工技術でありますとかいうようなものがその例になると思いますけれども、最近特にハイテク技術と言われておりますいわゆるマイクロエレクトロニクス、新素材、バイオテクノロジーといったようなものに属します技術がこういう基盤技術ということになろうか、かように考えておるわけであります。  そういう技術分野において民間活力を発揮させる、こういうことの手段にふさわしいものは何かということで考えたのが今回の考え方でございまして、私どもといたしましては、大体両省の間で、今申したような基盤技術民間でやっていけるものということになりますと、大方これがほとんど網羅できるのではないだろうか、かように考えて、両省において予算要求等をして予算の編成の過程でそれが実現をしてきた、こういう考え方でございます。  もちろん、今御指摘のように、食品あるいは医薬品でも特にバイオの分野関連であるのではないか、こういうようなことでございます。それらの農林省あるいは厚生省の分野においては、それぞれの省庁がその政策手段としてふさわしいものを選択をされているいろ要求をお考えになっておられるわけでありますが、私どもの方が外から見ていて感じますものでは、もちろん農林水産省においても大変技術開発に力を入れておられますが、農業試験場等の国の試験研究機関中心になってお進めになっておられるわけでありますし、また、医薬については、例えばがん対策等医療関係については国立病院とか予防衛生研究所といったような国の試験研究機関実施をしていらっしゃるわけであります。  今後各省ともそれぞれ新しい技術開発というのはそれぞれのふさわしい手段選択をしていかれる、かように考えておるわけでありますが、私どもとしては、当面はこの基盤技術民間で進めていくということでは、この両省の、今御提案申し上げている範囲で大方網羅できるのではないだろうか、こういうふうに思うわけであります。ただ、将来の技術開発政策につきましては、各省とも今後さらに鋭意検討されていかれる、かように考えておる次第であります。
  14. 田原隆

    田原委員 その辺のところはもうちょっと詳しく本当はこれから畳み込んで聞きたいところでありますが、時間の関係がありますので、また一般質問かなにかの機会にお聞きしたいと思いますので、よろしくお願いします。  それから、国有施設廉価使用ということが考えられておりますけれども、小さい話になりますけれども使用対価は一体どのくらい安くなるのか、使用料はどうなるのか、あるいは手続はどうなるのか等が聞きたいわけです。要するに決めたとおりに決まるでしょうけれども、できるだけ安くなるように、そしていわゆる法が目的としておるインセンティブを与えられるようなものになるように、そして煩雑にならないように、そういうことをお願いしたいと思いますので、一言その辺の決意を……。
  15. 福川伸次

    福川政府委員 国有施設廉価使用の点につきましては、今御指摘のように、私どもとしてもその手続が煩瑣になるというようなことにならないように、十分努力をしてまいりたいと思います。
  16. 田原隆

    田原委員 第四条の国際共同研究に係る特許発明等実施規定基本的考え方をお伺いしたいと思います。  政令で定める特許権等相手方範囲についての考え方の根本、要点をお伺いしたいと思います。第四条の国際共同研究に係る特許発明等実施規定基本的考え方、それで、政令で定める特許権等相手方範囲についての基本的な考え方要点
  17. 福川伸次

    福川政府委員 第四条でございますが、国際共同研究におきまして各パートナーが相互に同様の条件でその国際共同研究成果たる特許権等無償または低廉実施を許諾する、こういう国際的な慣行我が国が対応しようということでございます。例えばアメリカヨーロッパなどの例をとりますと、国際共同研究実施いたしました場合に、そこで得られました成果たる特許権は、今申しましたように相互無償または低廉相手国政府あるいは特定の指定する人にこれを供与するというのが国際慣行になっておるわけであります。日本はそのような制度になっておりませんために国際研究協力がやりにくい、こういうことになっておるわけであります。  したがいまして、今ここの条文では二つの政令が予定されておるわけでありますが、特にこの対象となります特許権範囲という問題と、それから相手方範囲ということがここで政令にゆだねられているという立て方をお諮りをいたしておるわけでありますが、これもその国際共同研究、どういうような形態でやっていくかということによって異なってくると思いますけれども、それぞれその政令におきましては、国際共同研究のパートナーたる双方が国際的な慣行に合わせて相互に同様の条件で国際共同研究成果を取り扱うということができるようになると思うわけでありまして、そういう意味では、対象となります特許権等範囲あるいはその政令ということもそれぞれの国際共同研究の内容に合わせて行うことになりますが、通常の例で申しますと、相手方対象範囲といいますのは、相手国政府あるいは相手国国民ということが慣例になっておるわけでありますが、それぞれの形態に合わせましてその特許権等範囲相手方政令を決めてまいりたい、かように考えております。
  18. 田原隆

    田原委員 第二臨調や産構審等で国の委託研究に係る特許権等の取り扱いについては受託者にインセンティブを付与するとの観点から改善を図るという指摘があったわけで、この法案をつくる当初は何か法文に明記されるような感じを私ども受けておったわけでありますが、どうも漏れておるような感じがしますが、これはどうなったのですか。どういうお考えなのか、お聞きをしたい。
  19. 福川伸次

    福川政府委員 御指摘のように第二臨調あるいは産業構造審議会におきまして、国が委託研究をいたしました場合の成果たる特許権の取り扱いについて、受託者にインセンティブを付与すべきではないかという御指摘があったことは事実でございます。私どももその考え方あるいは答申を受けましていろいろ検討をいたしたわけでございますが、この現行法制等をいろいろ子細に検討をいたしたわけでありますが、国の委託研究の成果として国有となりました特許権等につきまして、受託企業の研究意欲を高めるために、この国有となりました特許権等の一部を受託企業に譲渡することによってこの特許権を共有にする、こういうようなことが現行法律で可能であるというふうに思うわけであります。これをひとつ実施面でどういうふうにしていくかということについては、今後実施段階での法令によりまして対処し得るということでございまして、今回の条文の中には組み込まないことにいたしたわけでございますが、既存の法律改正によりませんで、実施政省令の段階でこれが実現可能であるということでございますので、今申しましたように受託企業特許権を共有にするという格好で、このインセンティブを付与するという方向で私どもとしては財政当局と今後御相談してまいりたいと考えております。
  20. 田原隆

    田原委員 その辺は非常に重要なところでありますので、ひとつ十分検討して詰めてやっていただきたいと思います。  センター民間活力を最大限活用し、生かした法人であるべきでありますから、役員や評議員には積極的に民間人を登用しなければならないと私は考えております。それからセンターの自主性を損なわないようにするためには、センターに対する政府の関与はできるだけ少なくして、必要最小限度にとどめるべきであると考えております。  この法案については、これらについて十分な配慮がなされておるかどうかについてもお伺いしたいし、また今まで例がある他の特別認可法人と比べてこのセンターがそういうことを配慮されていると聞いておりますけれども、どの点がそういう点なのか、一つだけイグザンプルとして例を挙げていただきたい。  それから、このセンターについては通産、郵政両省が関与するわけですが、両省間の連絡調整が円滑に行われないとセンターの運営に支障を来しますが、それらについて、もちろん円滑にやっていただけるというお答えがいただけると思いますが、改めてここでその決意をいただきたいということと、その技術分野両省にまたがっておりますので、それらのことによってこのセンターができて縄張り争いで民間に逆に迷惑をかけるということがないような点についても配慮願いたい。それらのことについて御決意を聞かせていただきたい。
  21. 福川伸次

    福川政府委員 御指摘のように、このセンター民間活力を最大限に生かしていくべきであるということでございます。私どもとしてもそのような態勢をとるべく、今後もしこの法律が成立いたしました暁には、運用においては十分その点は考えてまいりたいと思うわけであります。特に発起人あるいは評議員等についてはこの基盤技術について学識経験のある人を選ぶことになっておるわけでありますが、特に今御指摘のように民間活力が十分発揮できるような運用に考えたいと思っております。  また、センターの運用について自主性を損なわないようにすべきではないかという御指摘でございまして、まことに私どもとしてもそのとおりであろうと思います。このために、例えば一例を申しますと、法案の第三十三条におきまして、今後このセンターの自主性を尊重すべしということを明文で規定をいたしておるわけであります。そういう意味で私どもとしてもこの運用については御指摘の点に十分配慮してまいる考えでございます。  また、今通産省と郵政省とが関与するセンター、こういうことになるわけで、各省庁が縄張り争いで民間に大変迷惑をかけることがあってはならぬという御指摘でございます。私どもとしても大変ごもっともな御指摘でございます。この運用に当たりましては両省十分緊密な連絡をとって作業を共同で進め、しかもまだセンターの運営をできる限り自主性を尊重していくということを基本に置きながら、両省間で十分密接な連絡調整を図ってまいりたいと思います。いやしくも縄張り争い等で民間に御迷惑をかけることのないよう、その点は御指摘を十分踏まえて運用に当たりたいと存じます。
  22. 田原隆

    田原委員 センターが出融資業務を行うことになっておりますけれども、その仕組みの根本について簡単に要点だけ、例えば出資業務と融資業務の使い分けなどについてお伺いしたい。  それから出融資の対象特定の地域に偏らないように、公平の原則で全国を眺めて、あるいは業種その他全部公平にひとつやっていただきたいと思うわけです。その辺のところについてお考えを伺いたいと思います。
  23. 福川伸次

    福川政府委員 まず、センターの出資及び融資の仕組みでございますが、出資業務に関しましてはまず二つ運用を考えておりまして、一つは、二以上の企業が共同して行うプロジェクトであるということを前提にいたしまして、まず第一が基礎研究または応用研究段階から実施する技術開発のプロジェクトということでございます。そういう意味では、この二以上の企業がやるという意味は、むしろ異業種間の連携と申しましょうか、技術開発がかなりユーザーサイドとそれから供給サイドと双方の協力関係を軸に展開すべきである、こういうような技術開発が多くなってきております。特に基盤技術ということになりますとそういった性格のものが多いわけでありますが、そういう基礎研究あるいは応用研究段階で二以上の企業が共同してやる、こういうものをまず第一に取り上げたいと思っております。もう一つは、技術開発要素に富む基盤的、先導的プロジェクトで、公共性を有し、収益の懐妊期間が長いものというようなもので、例えばニューメディアコミュニティー推進法人あるいはテレトピア推進法人を含めましてそのようなプロジェクトを考えてまいりたいと思っておるわけであります。この出資の業務と申しますのは、そういう意味ではリスクの高い、いわゆる基礎研究段階からやっていくようなものを対象に取り上げたいと思っております。  融資の業務でございますが、これは融資という形態から御想像がつきますとおりに、この融資業務の対象というのは主として応用研究段階から実施するプロジェクトを考えております。そういう意味では基礎研究ほどのリスクはないわけでありますが、応用研究としてのリスクがある、こういうことで、これを融資の対象にしていこう、こういうことでございます。これにつきましては、いわゆる成功した場合には資金運用部の長期貸付金利相当の金利をいただくというようなことにいたしておりますが、失敗した場合にはその金利はいただかないという格好での融資ということで、言ってみれば条件つきの無利子融資ということでございます。これはそういう融資の、応用研究からの段階ということで、そういう意味では出資のものから比べますとややリスクが低い、リスクは高いけれども相対的にはリスクのやや少ないものを対象にしていこう、こういうふうに考えておるわけであります。  いずれにいたしましても、この出資あるいは融資というものを、このようなリスクマネーの供給方式を新たにつくるということで、リスクマネーの供給を多様化することによりまして民間基礎研究応用研究を誘導してまいれるというふうに判断をいたしておるわけであります。  また、この運用に当たって特定の地域に偏る、あるいは特定分野に限るというようなことがあってはいかぬという御指摘でございます。私どもとしてもこのプロジェクトの選定に当たりましては、それぞれのプロジェクトの具体的内容に基づきましてその重要性、熟度等を考えて選定してまいるということでございますので、センターができました設立趣旨にもかんがみまして、この運用についてはセンターの自主性を尊重しながらこのプロジェクトに応じましてその採択を考えていくということで、少なくともその運用が偏ることのないように十分考慮してまいりたいと思います。
  24. 田原隆

    田原委員 次に、大蔵省にお聞きしたいのですが、このセンターと産投会計とは深いかかわりを持つわけですが、六十年度の産投会計の規模、六十一年度はどの程度予想されるか。それから新電電の株式の三分の一を政府が保有して、その配当金が投入されると聞いておりますけれども、難しい話でしょうが配当はどのくらいを一応想定されるか。それから、配当金が入る場合、全くひもつきで直入されて技術にそのまま使わせてもらえるのか、あるいは色を薄めてお出しになるのか、その点答えにくい点が多いと思いますが、一応大蔵省のお考えをお聞きしたいと思います。
  25. 寺村信行

    ○寺村説明員 まず六十年度の産業投資特別会計の規模でございますが、歳入歳出規模五百八十六億円でございます。そのうち産業投資支出として貸し付けもしくは出資に充てられます金額が三百十四億円でございまして、一般会計の繰り入れが二百六十億円、こういうことになっております。それから六十一年度につきましては現段階ではまだ全体像がちょっとわかりませんのでお答えができないわけでございます。  それから第二番目の御質問の、来年度の電電あるいはたばこ産業の株式の配当収入がどの程度見込まれるかということでございますが、本日の設立総会で日本たばこ産業株式会社の資本金が確定するはずでございまして、それによりますと資本金の額が一千億円でございますから産業投資特別会計に帰属いたしますのはその二分の一で五百億円になります。それから、明日日本電信電話株式会社の資本金が確定する予定でございますが、約七千八百億円と現段階で見込まれております。そのうちの三分の一が産業投資特別会計に帰属いたしますから二千六百億円でございます。そういたしますと、電電とたばこと合わせまして三千百億円ということになりますので、仮に一割配当ということになれば三百十億円でございますし、五%配当ということになると百五十五億円、その程度のものが見込まれているわけでございます。  それから三番目のお尋ねでございますが、こういった産業投資特別会計に帰属することになります電電あるいはたばこの配当金収入については、ほかの産業投資特別会計の歳出と直接どういう関係にあるかというお尋ねであろうかと存じますが、産投会計の他の収入、本年度もございますが、日本開発銀行の国庫納付金とか日本輸出入銀行の国庫納付金、それから産業投資特別会計が持っております例えば日本航空株式会社の配当収入といったものの収入と合わせまして、産業投資特別会計の全体の投融資財源に充てるということを予定しておりまして、配当収入だけを区分して取り扱うことにはなっておりません。以上でございます。
  26. 田原隆

    田原委員 出融資の対象プロジェクトの選定というのは非常に重要だと思うのです、技術評価も含めまして。そうすると、それは相当優秀な技術者が要るわけですが、それらは常駐させてやるのか、それとも必要に応じ委員会制度でもつくっておいて集まっていただいてやるのか。それから、そういうことがたびたび行われるとすると学者や技術者の研究の邪魔にならないかというようなこと等が私、心配になるわけですが、これも要点を一言、二言でお答えいただきたいと思います。
  27. 福川伸次

    福川政府委員 今後の運用でございますので、このセンター設立が終わりました段階センターの役員がその辺のことは決めるべきだと思いますが、御指摘のとおりにこのセンターは専門的な技術についての知識を有する人を広く各方面から結集することが必要になろうと思っております。これを委員会組織でするのか専門の職員を置くのか、これはもう少しこのセンターができました段階で考えたいと思いますが、御指摘のように極めて高度かつ専門的な知識を結集して判断しなければならないということでございますので、必ずしも常駐させることが効率的であるのかどうかという点にもいろいろ問題があろうと思います。いずれにいたしましても、専門的な技術に関する判断ができるような体制をつくるように努力をいたしたいと思っております。
  28. 田原隆

    田原委員 センターの二号業務の官民共同研究あっせん事業というのがありますけれども、この仕組みをごく簡単に教えていただきたい。それから大学との関係はどうなるのかということも簡単に要点だけ……。
  29. 荒尾保一

    ○荒尾政府委員 センター業務は第二号業務といたしまして官民共同研究仲介事業があるわけでございますが、これは産官の連携を強化したいということでございまして、そのあっせんを行おうとするものでございます。すなわち官民それぞれの側におきましてどのような共同研究のニーズがあるか、あるいは官民それぞれにどのようなポテンシャルがあるかということを把握いたしまして、その上で共同研究のテーマのマッチングを行う。さらに、これらの共同研究を行います場合の諸手続の代行等を行うというようなことによりまして、どちらかといいますと従来産官の間の連携がそれほど十分でなかった点をコーディネート機能と申しますかリエゾン機能によりまして補おうとするものでございます。これらの共同研究を行っておる過程におきまして、大学等の先生方の御指導をいただくとか参加をいただくということも非常に重要な面があろうかと思います。従来私ども試験研究でそういった御指導等をいただいておりますが、さらにもっとこれを強化する必要があります場合には、文部省その他とまた御相談をいたしまして密接な連絡をとるようにいたしたいと考えておる次第でございます。
  30. 田原隆

    田原委員 次に、三号業務の共同研究事業の仕組みについてお聞きしたい。また、センターはみずから研究をやる考えがあるのかないのか。それからセンター自体に研究者を常駐させる考えがあるのかないのか。もしそういうことがあったりした場合、あるいはその他の場合で国から出向する研究者について、例えば一定期間経過後必ず交代させるというようなセンターにおける人事のローテーションを崩してしまうとセンターの研究実施上マイナスとなる点があるのですが、人事のローテーションとの関係はぜひうまくやっていただきたい。それから出向が逆に余り長期にわたった場合、研究者にとって有利なのか不利なのかということも配慮しなければならぬと思います。そのほかにセンターに国と民間のそれぞれから研究者が出向すると両者に給与格差があるのではないか、あるいは人事管理上いろいろな問題があるのではないか。その辺、私が今言ったことをよく踏まえて運営していただかなければならぬと思うわけですが、単に精神的なものではなくて、事務的にきちんと詰めて人事管理をやっていただきたいと思うのですが、その辺のお考えはどうですか。
  31. 荒尾保一

    ○荒尾政府委員 第三号業務でございますが、これはお話のように民間から委託を受けましてこのセンターで共同研究事業を行うものでございます。その際に国立の試験研究所等から研究者が出向するという場合があるわけでございますが、この研究者が出向で不利な扱いにならないようにその制度を補うことによりましてこういった官民両者の共同研究が推進できるように進めたいと思っております。その際に、お話しのように期間がどうなるかということは研究者にとりましては非常に重要なことでございます。余りきちっとしたといいますか、しゃくし定規な出向規定では研究の成果を得ることができませんし、逆に余り長くなりますと、例えば研究所に今度帰った場合の処遇等問題があるわけでございます。研究の内容、それに要する期間等を考えながら弾力的に期間について配慮をしていく、それから帰りました場合の処遇等につきましても、そういった面を十分配慮して取り扱うということを考えなければならないというふうに思っておる次第でございます。  それから、官民給与格差等につきまして御指摘の点があるわけでございます。これは他の特殊法人あるいは特認法人への出向の例等を勘案いたしながら、不利にならないように、あるいはアンバランスが生じないように配慮してまいりたいと考えております。
  32. 田原隆

    田原委員 この法律案民間試験研究活動の円滑化を図るための諸措置を講じておるわけですが、国の研究者の研究意欲を高めるための研究環境の整備についても十分配慮していかなければ片手落ちと言わざるを得ないのかもしれないと私は考えております。  それから、国有の試験研究施設の減額使用は国立試の業務を妨げ、国の研究者の意欲を低下させるというおそれはないのかどうか。これは老婆心かもしれませんが。さらに、民間における試験研究を促進すると財政難その他を理由に国のプロジェクトが今度は逆に減るとか、そういうトータルで物を考えて、一方がふえたから一方が減るというようなけちな考えを起こしては困ると思うのですが、そこらについてひとつ局長
  33. 荒尾保一

    ○荒尾政府委員 第一番目の国の試験研究機関その他における研究環境の整備の問題でございますが、私ども現在、財政が非常に厳しい状況でございますので、十分な研究費あるいは環境整備のための予算が獲得できない状況にはございます。しかしその中で、例えば工業技術院で申しますと明年度七・六%の予算の増というような形で研究環境の整備に努めておるところでございますが、今後ともその努力を続けたいと考えます。  それから、国有の試験研究設備の減額使用等でございますが、これはあくまでも国立試験研究機関等における研究の妨げにならないといいますか、国立試験研究機関における本来業務の余裕があります場合にこれを認めるということでございまして、研究意欲の低減にならないように、そのような面から配慮をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  34. 田原隆

    田原委員 基礎応用研究段階からの研究開発は、大学を含めたいわゆる産官学がおのおの独立性を保ちつつ連携を進めていくことが必要であると思うのです。しかし、現実には我が国の場合、アメリカ等に比べて産官学連携が進んでおらないと思います。例えば我が国民間企業資金は大部分が海外の大学や研究機関に流出していると聞いております。また、研究者の交流も不十分であります。本法律案においても、研究者の交流、施設の利用等を通じ連携強化を促す措置が講じられることになっておりますが、今後一層連携促進のための環境整備について検討していく必要があると思いますが、それについてのお考えをひとつ。
  35. 福川伸次

    福川政府委員 産学官連携強化という御指摘でございます。これはお話しのように、確かにアメリカ等においては資金的にもあるいは情報提供といった面でもかなり整備されておると思うわけであります。また、日本産業界からもこの辺の改善という御意見が出ているわけであります。この産官学の連携の必要性につきましては、産業構造審議会でもいろいろ御議論をいただきました。またこの法律案の中でも、センターの業務を通じて産官を中心とした連携の強化を図るということも盛り込まれております。共同研究あるいは情報提供といったような業務でかなり幅広い形で産官の連携ができる条件が整うのではないかと期待を寄せておるわけであります。さらにまた、これに大学を織り込んだ格好で連携を強化していくというわけでございます。また文部省におかれましても、それぞれ産学の連携を強化していこう、こういうお話でございますが、私どもにおきましても、この法律の運用の一環として、あるいはまた、さらに広く技術政策の展開という中で産官学の連携を十分深めていく必要があろうと思います。また、このセンターの運用の過程におきましても、必要に応じまして文部省とも十分お話し合いをしながら、この産官学の連携が効果あらしめるように私どもとしても十分意を用いてまいりたいと思っております。
  36. 田原隆

    田原委員 産学、産官、産官学、それぞれ今お答えあったように、これから十分うまくいくようにするとおっしゃるのですが、いろいろ新聞をにぎわした事件もあったりしまして、日本の場合はアメリカ等では問題にならないようなことでも問題になったりするわけです。  そこで、本当は文部省においでいただいて聞くべきであったかもしれませんが、産官でも結構ですが、経理的な仕組みその他で非常にみんなおどおどしながら、少し萎縮しながらやっている面があると思うのです。これは大事なことではあるのですが、しかし一方ガイドラインか何かつくって、これらのことはやっていいですよ、ここまではいいですよというような積極的な姿勢を示さないと、普通は萎縮する方向にいくのですね。その辺について、ガイドラインか何かつくって文部省ともお話し合いをしながら進めていく具体的な手だてをやるお考えがあるかどうか、ひとつ局長にお聞きしたい。
  37. 福川伸次

    福川政府委員 今御指摘のように、確かに一部に新聞で問題になったようなケースがございました点、私も記憶をいたしております。この産官学の連携ということをやっていきます上にはいろいろの制度面の改善、運用の改善といったものが必要になると思っております。センター機能というのもそれに大変大きく役立つものというふうに思っておるわけであります。今後それをガイドラインという格好でやっていくのかどうか、これはまたいろいろと、それぞれの制度の仕組みから問題があろうかとは思いますが、今後少なくともこの法律に関する限りでは、このセンターの運用を図っていく。こういう場合にはどういうようなことをここでやっていくのか、例えば施設の廉価使用をする、あるいは共同研究をやるというようなことになってまいりますと、おのずとそれの運用の方法というのは出てくると思います。その際に、民間ニーズを十分くみ上げながらその運用を図ってまいりたいと思っております。  そのほか、また大学との関係につきましては、今後それぞれ民間ニーズに応じまして関係省庁と十分相談をしながら可能な措置を講じてまいりたいと思いますが、今お話しのように、どうしてもおどおどしながらやるというようなことになったのでは本来この成果が上がりませんので、その点につきましては、運用の面におきまして私どもも微力ではありますが、できるだけの努力をいたしたいと思います。
  38. 田原隆

    田原委員 話はちょっと変わりますけれども、本法案はいわゆるターゲティングポリシーであるとして諸外国から批判を招くおそれはないか。これは聞かないでもいいことかもしれませんが。
  39. 福川伸次

    福川政府委員 これはむしろ基盤技術、各産業に大変使われるような、横断的に使われる技術あるいは特定分野における革新的な技術ということでございまして、そういうものの、特に基礎あるいは応用の段階技術開発をしていこうということでございまして、特定産業分野の競争力の強化ということを考えているものではございませんし、また諸外国、特にアメリカが関心を持っております開発段階、商業化段階企業化段階、こういったものを対象にいたしておるものではございません。むしろ日本というのは基盤的な基礎技術のただ乗り論という批判が出ているくらいでございまして、そういう意味では特に特定産業分野の競争力を強化しようということをねらっているものではございませんで、広く基盤的な技術の、特に基礎、応用段階研究開発試験研究を進めようということでございます。もちろんこの場合には諸外国に対しましても、諸外国から日本に来ているような企業についてもイコールアクセスを認めるというようなことでございますれば、諸外国から批判を浴びるということはいささかもないと私どもは考えております。
  40. 田原隆

    田原委員 ちょうど十一時になりましたが、二分ありますので大臣に最後にお聞きしたいのですが、本法律案の運用を含めて総合的な技術開発政策の積極的推進について、これからの決意をひとつお聞きして、質問を終わりたいと思います。
  41. 村田敬次郎

    村田国務大臣 田原委員の御質疑を先ほど来承っておりました。  現在、世界経済技術革新胎動期でございます。特に、新素材、マイクロエレクトロニクス、電気通信等の基盤技術分野における技術開発は、国民経済国民生活基盤強化に大きく寄与するものであり、このような分野における技術開発を積極的に推進し、その萌芽を将来に大きく開花させていくことが私どもの責務であると思います。  欧米における技術開発の動向等にかんがみますれば、今後とも我が国経済社会活力を維持しながら発展を遂げていくとともに、国際経済社会の有力な一員として、一割国家として広く人類の福祉の向上に貢献をしていくためには、創造的な技術開発に積極的に取り組んでいくことが肝要であります。そのためには、基礎応用研究中心に官民の力を糾合していくことが重要であり、国はその果たすべき役割に万全を期すことはもちろん、民間においても基礎応用研究に格段の努力を払っていく必要があると認識をしております。  この法律案は、まさに基盤技術分野における民間試験研究を促進することを目的とするものであり、その運用に当たりましては、法の実効がしっかり上がるよう十分な配慮を払ってまいる所存でございます。
  42. 田原隆

    田原委員 終わります。
  43. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて田原隆君の質疑は終わりました。  続いて、後藤茂君の質疑に入ります。
  44. 後藤茂

    ○後藤委員 昨日、大臣から基盤技術研究円滑化法案の提案理由の説明を受けまして、基盤技術というものが一体どういう意味合いを持っているのかということが大臣の提案理由の説明の中からも必ずしも十分に私はまだ理解ができないわけであります。  先ほども田原委員の最後の御質問に、新素材、マイクロエレクトロニクス、電気通信などの基盤技術分野における技術開発は、一つ国民経済国民生活基盤強化に大きく寄与するもの、もう一つは、二十一世紀における新技術文明の幕あけを告げるもの、こういうふうな概念で一応くくっているわけでありますけれども、後でまた、その定義の点についてはお聞きしてみたいと思います。  昨年までは、基盤技術という言葉は私どもになじまなかった言葉だと思うのです。新しく基盤技術ということが先に出てきたのか、それとも、後ほどまたお聞きいたしますが、専売あるいは電電等が民営化されてくる、その株式の配当をこれからの、提案されている言葉で言えば、基盤技術を進めていくために有効に利用していきたい、さあそこで一体どういう言葉があるか。これまでも技術に関するいろいろな言葉はありますけれども、それなら従来の制度があるわけですから、その制度を活用するなり、あるいは手直しするなり補強をするなりすればいいじゃないか。そうした財源を有効に使っていくためには、もっとすぐれたいわゆる基盤技術ということが発想の根底にあるのだろうと思うのですが、どうもこの基盤技術というのがまだよく理解ができません。  確かに提案理由の説明の中では、今私が読み上げた点、さらにその後は、民間企業基盤技術分野技術開発に向けてその活力を最大限に発揮し得るような環境条件を整備していくのだということで、そのためにセンターもできるのでしょうけれども、ただ、その本体の基盤技術というものをどう理解をしておいたらいいのか、大臣は席を外されるようでございますから後ほどまたお聞きをしますけれども、最初に、その点についてお伺いしておきたいと思います。
  45. 村田敬次郎

    村田国務大臣 後藤委員の御指摘は、私は非常に重要な基本的な問題だと思います。現在の世の中というのは、産業革命以来近代国家というものが世界的に出現をした。ワットの蒸気機関の発明が一七六五年でありますから、それから二百二十年たっておるわけでございますが、まさに、いわゆる工業国家が地球上にマスプロダクションによって発生をしてから二百二十年、今度はいわゆる基盤技術と申しますか、新しい時代がやってこようとしておる。これは情報化時代であるとか、電子工学時代であるとか、脱工業化社会であるとか、いろいろな言葉が使われておりますが、私どもが本当に何と申しますか予感として感じておるところでは、まさに地球全体に大きな波が押し寄せておる。そして、それがエレクトロニクスやいろいろなものにあらわれておりまして、そういうものに立ちおくれてしまうとこれは大変なことになるのではないかという予感がいたすわけでございますが、そういった意味のいわば中心になるものが基盤技術あるいは技術開発ということであろうかと思います。  今まで私自身、個人でもいろいろ考えましたが、ハイテク元年であるとか、あるいは技術開発であるとか、基盤技術であるとか、いろいろな言葉が出てまいりました。しかし、その根本になるのは今委員が御指摘になりましたようなエレクトロニクスやバイオテクノロジーや新素材、そういったものに象徴をされる新しい時代の到来であろうかと思いますが、それはまさに技術開発であり、そして情報化時代であろうということが感じられるわけでございます。  それでは、政府はどういうふうにそういう技術開発、新しいこれから世界を動かそうとしておるものに対応をしようとしているのか。これは何としてもそういった科学技術技術開発を進めていかなければならない。そのためにこの法律をお願いをしておるわけでございますが、これですべてが足れりというわけではもちろんございません。しかし、通産省としてのことしの対応の中では最も大きな対応の一つではないかと思っておりまして、言うなれば、この新しい時代に対応して通産行政産業振興というものはいかにあるべきか、それは一丁目一番地と言われる技術開発推進をしていくことである。もちろん、これは通産省一省でできることではありませんから、郵政省であるとかあるいは政府全体の力として推し進めていくわけでございますが、そういった趣旨基盤技術ということを理解をいたしております。
  46. 後藤茂

    ○後藤委員 今の御説明でも実はまだよくわからないわけですが、私はこだわるわけではないのですけれども、少し整理をしておきたいと思って実は申し上げたわけです。  昨年の経済白書では、これも基盤技術というような言葉一つもありません。経済企画庁がつくっているわけですから通産とかかわりはないかもわかりませんけれども、今大臣がお答えになりましたような新素材、バイオテクノロジー等々は先端技術という言葉でくくられているわけです。「先端技術革新は、マイクロ・エレクトロニクスを中核とする」というような言葉があり、テクノポリスの法律の審議の際にも高度技術というような言葉があり、あるいは通産にかかわる技術といたしましては、後でまた申し上げますけれども、次世代産業基盤技術、これは基盤技術というものが次世代産業という言葉でくくられているのかどうかわかりませんけれども、そういう言葉が出てまいりまして、そしてその開発制度がもう既に確立をされているわけです。あるいはまた重要な技術研究開発費の補助金制度の中におきましては重要技術という言葉があり、あるいは大型プロジェクトにつきましては大型工業技術というのがある。さらに科技庁関係の方では新技術、そして新技術開発事業団、あるいはまた創造科学技術推進事業というんですか、同じく事業団の創造科学技術、こういうような言葉があるわけです。後で定義のところにも触れてまいりますので、こういったたくさんの技術、これをさらに包括したのが基盤技術なのか。それとも、その中から幾つか基盤技術として考えているものを取り上げて、これまでの各省庁にわたるものと競合しない形で進めていくのか、この辺の整理が実はまだ私にはよくのみ込めないものですから重ねて、大臣十五分くらい出られるようですけれども、その辺の整理をひとつしていただきたいなと思います。
  47. 村田敬次郎

    村田国務大臣 後藤委員の御指摘、よく理解できるところでございます。私も通産省へ参りましてから、この技術の問題を一生懸命考えておりますが、今のお尋ねは非常に厳格な定義づけということについてもお考えになっておられると思います。  ビジョンにつきましては、御承知のように、「八〇年代の通産政策ビジョン」というのが昭和五十五年の三月にできました。それからまた、通産省としては「八〇年代ビジョン」に基づく検討課題として「八〇年代の産業構造の展望と課題」などを作成をいたしておるところでございます。  ところで、この法律で言っております基盤技術ということにつきましては、私は二つの要件に合致するものとして考えております。その一つは、鉱工業、電気通信業等の技術のうちで、通商産業省及び郵政省の所管に係るもの、それから二は、国民経済及び国民生活基盤強化に相当程度寄与するもの、こういうふうに考えております。  また、国民経済及び国民生活基盤強化に相当程度寄与するものというのは何か。これはある技術が製品等に体化をされた場合において、その製品等が有することとなる波及性、利用分野の広がりでございますね、それから影響度、性能、生産性の向上に与える効果でございますが、十分に大きく、その結果として国民経済国民生活基盤の形成に重要な役割を担うに足ると判断をされるもの、具体的に申しますと、例えば超微細加工技術により、高集積度のLSIが生産をされますが、これはコンピューター、工作機械、自動車などの広い分野への応用が可能でございます。波及性が広い。かつ、製品の小型化や信頼性の向上といった面で性能の向上に大きく寄与する、つまり影響度が高いことから、かかる技術基盤技術に該当する。なお、本案は、こうした基盤技術を育てるための試験研究の円滑化を図っていくということが中心になっておるわけでございます。  こう言って言葉を申し上げましても、なかなかすぐにはそうであるかというふうに御理解がいただけないかもしれませんが、私としても目下勉強中でございまして、そういうことで御理解いただきたいと思います。
  48. 後藤茂

    ○後藤委員 大臣は参議院の方に呼ばれておられるようですから、往復の距離がございますから、また後でお伺いをいたしますけれども、ひとつもう少し整理していただいてお願いをしたいと思います。  今大臣がお答えになりました「八〇年代の通産ビジョン」というのを私も読んでみました。この「八〇年代の通産ビジョン」五十五年、今から五年前にできているわけですけれども、これはいわゆる「技術立国への道」という形で、八〇年代の技術開発課題というものを提起している。この中を読んでみましても、九〇年代以降に開花が予想される画期的な技術革新の準備のための重要な時期、想定される次世代技術を挙げまして、その第一にライフサイエンスを挙げているわけですが、そこのところの「政策が重点を置く技術開発分野」の中に、多くの産業技術基盤となる新素材型技術、光ファイバー、ニューセラミックス、アモルファス材料、高機能性樹脂、極限材料、複合材料などの新材料の開発がさまざまな産業基盤となるというような説明がなされているわけです。  それを受けて五十五年十一月に「産業構造の展望と課題」「技術革新に対する要請」の中で、さらに「一九九〇年代のリーディングインダストリーとなる海洋開発産業、新エネルギー産業、バイオインダストリーなどを確立するためにはその基盤となる技術開発推進が重要である。」こういう指摘がされているわけです。これを受けて言っているのか、あるいは新たな構想としてなされてきているのか、後で大臣がお帰りになりましたら、またお聞きをしたいと思いますけれども、この約五年ぐらい前につくられた、大体十年サイドであるいは見直しがされるのかわかりませんけれども、ちょっとビジョンなき——これが生きていると言われるかわかりませんけれども、最近の大変な技術進歩あるいは経済の激変の中で、この通産ビジョンというものについても見直し作業にもう入っておっていいんじゃないかと思うわけです。  それと関連をして、基盤技術というものをどのように位置づけていくのか。この提案理由の説明の言葉でいけば、何かその萌芽を将来に大きく開花をさせていく、まあ大臣、詩人でありますから、非常にロマンと夢を持つということも大切だと思うのですけれども、羅針盤がもう一つはっきりしていないで、少しこれまでの通産の非常に伝統的ないい面、先進的に次代を切り開くということよりも、どうも少し目先のことにこだわり始めてきているんではないかという心配をするものですから、局長どうなんでしょうか。この通産ビジョンとのかかわり、基盤技術というものの位置づけ、その定義、性格、もう一度、大臣の答弁ではもう一つ理解ができませんでしなので、お伺いしたい。
  49. 福川伸次

    福川政府委員 「八〇年代の通産政策ビジョン」との関連で、この基盤技術試験研究の促進、円滑化というのはいかがなものであるかという御指摘でございます。  まず、産業構造ビジョンの点でございますが、このときから確かに技術立国ということを一つの旗に掲げまして、今後、その次の世代を切り開くような産業基盤となる環境条件を整備をしていこうという提案をいたしたわけでございまして、そのために、八〇年代に入りましても幾つかの施策を展開をしてまいったわけでございます。  今回、御提案いたしましたものもその延長線上にあるわけでございまして、確かにここ数年の間に日本技術開発をめぐる環境もかなり変化をしてまいりました。また、諸外国からも、特に日本も石油ショックを契機にいたしまして、新しい技術開発に取り組むという意欲が日本経済の中にかなり息づいてまいったわけでございます。  この際に、政府の従来やってまいりました特に基礎分野技術開発、さらに民間におきましても、これをその分野にも順次その基礎あるいは応用、基礎と申しましても目的基礎研究ということがまず重点になろうと思いますけれども、それに応用研究という段階民間を誘導していく必要性が出てきている。また、チャレンジすべき技術分野というのは大変広がってきているということから、国も力を入れ、また民間の力もここに発揮させていきたいというのが、昨年の秋いただきました産業構造審議会の御答申趣旨でございまして、そういう意味では、この「八〇年代のビジョン」をより深く掘り下げ、より広く展開をしていくというのが今回のこの法律趣旨であるわけであります。  しからば、先ほど先生から大臣にも御質問がございました、いろいろな言葉があるじゃないか、一体どういうことであるのかというお尋ねでございます。私どもといたしましては、今回この法律上、基盤技術という表現を使いますのは今回が初めてでございますが、そのために今回の定義をどう考えるべきかという点は、いろいろ議論をいたしました。その点は大変鋭い御指摘でございます。  私どもも、ここで国民経済及び国民生活基盤強化に相当程度寄与するものを基盤技術と言っておるわけでありますが、これの趣旨は、先ほど大臣が御説明をいたしましたように、影響度あるいは波及性が大きいもの、こういうことになりますが、しからばハイテク技術、ハイテク産業はどうか、こういうことでございますが、私どもは、いわゆる俗に先端産業、今、新素材あるいはバイオテクノロジーあるいはマイクロエレクトロニクスといったような先端産業、こういう先端産業に属します技術、先端産業を支える技術の要素というのが幾つかあると思うわけであります。したがいまして、いわゆる先端技術、先端産業に属する技術という中にもいろいろありますが、その中でも特に基盤強化に相当程度役立つもの、こういうことを考えておるわけでありまして、具体的に、例えばバイオテクノロジーに例をとれば、いわゆる生体の酵素等の要素を使って工業関係技術をするわけでありますが、そこには、例えばDNAの交換の技術でありますとか、細胞の融合の技術でありますとか、あるいはバイオリアクターの技術でありますとか、いろいろなそういう要素にこれが分解されるわけでありまして、そういう意味で、その先端産業に属する技術の中で非常に基盤となるような技術、これをここで基盤技術と称したわけであります。  また一方、先端産業という一つの新しい産業分野ということのほかに、先ほど大臣が超微細加工技術というようなものを例を挙げて御説明を申し上げましたが、この超微細加工技術は先端産業たるマイクロエレクトロニクスにもこれは応用される技術であります。しかし、またそれ以外の既存の産業分野にも応用される、適用されるべき技術でありまして、それだけにこそ波及性あるいは影響度が大きいわけでありまして、先ほど大臣も御答弁申し上げましたように、例えば超微細加工技術をとりますれば、これはもちろん工作機械、自動車といったような既存の産業分野にも適用される、こういうことになるわけであります。  したがいまして、私どもとしては先端産業に属する技術基盤技術という面はかなりの部分でダブるわけでありますが、しかし、それで先端技術だけが基盤技術というふうに考えているわけではありませんで、そういう意味では、各産業を通じまして横断的に使われるような技術あるいは国民経済国民生活基盤の非常に強化になる技術というものを考え、さらにまた、特定産業分野におきましてもかなり革新的になるような技術、こういうものをとらえたわけでありまして、かなりの部分ダブる面はあると思いますが、先端産業技術基盤技術とはかなりダブりますが、ダブらない面もあるというふうに考えておるわけであります。  では、しからば、この「八〇年代ビジョン」と今回の法律とは、少し通産省、ビジョンが最近なくて近視眼的になっているのではないかという御趣旨でございましたが、私どもといたしましては、こうした技術立国ということは今後とも日本の歩むべき道であると思いますし、これから諸外国技術に依存できないといたしますれば、むしろ創造的な技術を、日本としてその力を備えていく、しかも、その技術成果を諸外国に貢献をしていくということが日本に課された課題であるというふうに思うわけでありまして、そういう意味ではこの「八〇年代のビジョン」の延長線上にあるものでありまして、ちょうどまたいろいろな諸環境がこのような施策を講ずるのに熟してきたということから、このような政策手段を用意してお諮りをさせていただいている、こういう趣旨でございますので、ひとつ私ども政策が、私どもとしてはできるだけ長期の視野に立った政策展開をいたしたいと考えておりますので、今後ともよろしく御指導賜りたいと思います。
  50. 後藤茂

    ○後藤委員 大臣もまだ考えているところがたくさんあるというようなことを言っておったのですが、私は、整理をしておきたいと思って、くどいようですけれども概念規定なり、一体何をどうしていくのかということをお聞きしているわけです。  先ほども局長の答弁の中にもございましたけれども次世代産業基盤技術研究開発制度というものが五十六年度から発足して、これが相当機能してきていると思うのですね。この中身、これは通産の方からいただいた解説書ですか、これを読んでみますと「「次世代産業基盤技術研究開発制度」は、九〇年代に発展が期待される次世代産業に必要不可欠な基盤技術として、」以下、新材料であるとかバイオテクノロジーであるとか新機能素子であるとか、また、その中身も相当詳しく書かれているわけですね。そこで、この制度が一応ある、この制度の上にさらに今度またこういったものについて別にセンターをつくって、そして民間の研究を活性化させていきながら、国としての責務を果たしていきたいということになるのだろうと思うのですけれども、こうした制度の上に、さらにこういう法律に基づくセンターが必要であるのだという、その理由づけというものがもう一つ今の説明では理解が必ずしもできないものですから、簡潔にひとつ、まだ質問がたくさんございますので、その点をお答えをいただきたいと思います。
  51. 福川伸次

    福川政府委員 御指摘のように次世代産業基盤技術研究開発制度が五十六年度に発足をいたしております。そこには、今御引用なさいましたようにファインセラミックスでありますとか、その他所材料あるいはバイオテクノロジー、新機能素子といったようなものがございます。ここは委託開発ということで、民間ではまたそのリスクあるいはコストが負担し得ないものを国が負担をして、民間の知恵もかりながらやるということでございまして、その意味ではリスク負担は挙げて国が持つ、そういう分野技術開発でございます。  今回お諮り申し上げております基盤技術研究促進センター、ここでやろうとしておりますリスクマネーの供給の制度は、出資あるいは融資ということでございまして、国がまるまるリスクあるいはコストを負担するというものではないわけでございます。そういう意味では、あるインセンティブを付すことによって民間がそれに挑戦をするような環境をつくる、そして研究開発が行われれば、将来においてこれが事業として収益性につながり得るようなもの、これのリスクを補完をする、こういうことでございます。したがって、次世代産業基盤技術研究開発制度と申しますのは、コストも、あるいはリスクもこれは全く国が負担をしてやる、こういう性質のものであるのに対しまして、今回のセンターでやりますものは、リスクを国が一部負担して、あと民間を誘導してやっていくもの、こういうふうに考えておるわけであります。
  52. 後藤茂

    ○後藤委員 そうなりますと、次の定義で「「基盤技術」とは、鉱業、工業、電気通信業及び放送業の技術その他電気通信に係る電波の利用の技術のうち通商産業省又は郵政省の所掌に係るものであってこという一つの縛り、それからさらに「国民経済及び国民生活基盤強化に相当程度寄与するもの」という縛り、二つの定義がなされているわけです。今の大臣あるいは局長の御答弁をお聞きいたしていますと、基盤技術というものは非常に広いものをとらえているのだろうと思うのですね。ここでなぜ通産と郵政の所掌に係るという形に縛っていってしまうのだろうか、所管の省がどうするということは一応別といたしましても、基盤技術ということである以上、しかもこれからの二十一世紀に向かって花開かせていかなければならぬ、その萌芽を育てていくんだということであるとすれば、通産、郵政の所掌に係るものだというように限定をしなければならないという説明がもう一つ足りないのではないかと思うのです。この点をお聞かせいただきたいと思います。
  53. 福川伸次

    福川政府委員 ただいまの点について、御説明が足りません点は恐縮でございますが、補足して説明させていただきます。  今回ここで考えましたのは、民間における基盤技術試験研究を円滑化しようということで民間が行うべきものということを念頭に置いておるわけでございます。  先ほど申しましたように、基盤技術と申しますのは、国民経済あるいは国民生活基盤強化に相当程度寄与するもの、こういうもののうちで今回考えましたのは、民間における試験研究、いわゆる民間対象にいたしました助成手段、これをここで考えたわけでございます。したがって、そういうのにふさわしいものをここに取り上げた、こういうわけでございます。  そういうことになってまいりますと、もちろん民間でやらせるべきものと国がやっていくべきものとございます。鉱工業の中でも、今まさに後藤委員御指摘のように工業技術院そのものでやるもの、あるいは次世代基盤技術でやるもの、いろいろございますが、また民間でもやるべきものと、こういうものが幾つかございますように、今お話しのように他省の分野におきましても基盤技術に関するものというのはあるいはあろうかとは思いますが、それは各省がそれぞれそれの業種、業態、目的にふさわしい政策手段をおとりになっておるわけであります。例えば、農業のバイオということであれば国の試験研究機関たる農業試験場が力を入れてやられる、こういうのが現在においてふさわしいという御判断をしておられて予算要求をなさっておられるわけでございます。  そういう意味で申しますと、このいわゆる民間がやるような基盤技術、こういうことになってまいりますと、私どもは現段階で判断をいたします限り、鉱工業あるいは情報関連基礎となります電気通信業、こういうことでの所管分野におきますと、そういった今民間でやるのにふさわしい、こういう基盤技術については、私どもとしては現段階においては当面はおおむねそれで網羅しているのではないだろうか、かように考えておるわけであります。  もちろん今特許権等の申請等を見ますると大体九割を超えますものがこの両省分野でございますので、こういった民間試験研究を円滑化するためにこういったセンターをつくる、こういうようなもの、あるいはその円滑化のための措置を講ずる、こういうようなものがまさに民間でやらせるのにふさわしい、そういった分野で考えれば特許権等でいつでも大体九割以上のものがそこに属する、こういうことになっておりますので、私どもとしては現在の判断としては当面、この両省のもので今進めなければならないような民間による基盤技術試験研究の円滑化ということでは、現段階においては大体これで網羅できるのではないだろうか、かように考えております。  もとより、他省におきましても技術開発には大変力を入れておられるわけでありまして、それぞれ医薬の部分あるいは農業の分野、この点についてはそれぞれ各省庁が十分それの実態にふさわしい政策手段をとって研究開発に取り組んでおられる、かように考えておる次第でございます。
  54. 後藤茂

    ○後藤委員 例えば、農水なりあるいは厚生なりというようなところは各省庁が十分にその対策なり手当てをしておる。それでは通産の所管にかかわる部分というものは、今いろいろ幾つか読み上げたり、そういう制度をお聞きいたしましたけれども、これが大変足りなかったから、そこでこういう基盤技術研究円滑化法案を出し、さらにまたそのためのセンターをつくり上げていく。通産所管にかかわる、しかも特許権の約九割以上はそういう分野にあるのだ。そこのところはどうも手が届かなかったのでこれをやるということになるのか。それとも、私の幼稚な理解では、単に農業関係の試験場等を超えて農産物の加工工業あるいは薬品なり生命工学なりバイオテクノロジーなりというようなところの研究というものも今相当進んできているのではないだろうか、こういうふうに思うわけです。  例えば、先ほども例に挙げました「八〇年代の通産ビジョン」の中でも、ライフサイエンスがこれからの新技術シーズとして大変高いということの中に、生命現象を解明し、適切、慎重な配慮を加えながら、医療、食糧、化学などの分野に応用する、あるいは遺伝子操作技術を確立をしていく、さらにはまた、がんの特効薬として期待されるインターフェロン等も大切である、あるいは光合成機能を解明していくとか、生物の感覚機構を解明していくとかというようなことも、これは通産のビジョンの中に言われているわけですね。  私は、この基盤技術ということになると、こうやって非常に範囲の広いところをまず基盤技術としてとらえていきながら、そこで、行政の縦割りという厄介なものがあるわけですから当面はいろいろな障害もあるでしょう、その障害をなるべく少なくしていきながらこの法の運営をより効率を高くしていくというための説明としては、いきなりここですぐに概念でくくってしまって通産と郵政だけの所管、しかも「国民経済及び国民生活基盤強化に相当程度寄与する」というようなことを二重にも三重にもくくらなくても、もっと素直に、基盤技術というものはこれから大変大切なんだということでこれに網をかぶせていくということをしておってもいいのではないだろうか。  これからもっともっと技術というものが進んでまいりますと、通産省にかかわるあるいは工業技術関係にかかわるということを超えた分野での試験研究というのが進みますよ。恐らくこれらは企業秘密の面が非常に強いですからね。だから必ずしもそのアンテナにかかっていかないと思いますけれども、例えば窯業がファインセラミックスで大変な方向に行く、そして貴金属まで、宝石までもつくっていくというような形に入っていっているわけでしょう。特に、国民が今願っているのは、そういったバイオテクノロジー、生命工学といったようなところに対する研究というものは大変な勢いで今進んでいるのじゃないでしょうか。ところが、この基盤技術というところからこれが外れていってしまうということを考えてみますと、少しこの法律に、出発の過程で最初から自己規制をしているのか、あるいはそれは走りながら、発足しながら考えていくということになっているのか、この点が今の御答弁ではまだよく理解ができない。  そこで、そのことについてのお伺いと、それから郵政省見えておられると思うのですが、郵政省にかかわるこの基盤技術というものは一体どういうところ、それからその研究機関というものはどういうものがあるのかもお答えいただきたい。
  55. 福川伸次

    福川政府委員 今基盤技術についての先生のお考え方がございましたが、確かに技術開発は日進月歩でございまして、これはいろいろな分野でも、私どもの鉱工業の分野あるいは電気通信業以外の分野でもいろいろ技術開発は進んでいくと思います。私どもとしては従来、「八〇年代のビジョン」からいきますと、先ほど申しましたように技術立国、この延長線上で考えておるわけでございまして、そういう意味では、技術開発を今後進めていく上において、従来どちらかといえば基礎研究あるいは応用研究は国ということで画一的に政策手段を考えてまいりましたけれども、これもいろいろな最近の諸情勢を考えると、民間活力をそこに発揮させていく助成、環境条件の整備をしていこうということから、今回このような政策を考えたわけであります。  しからば農業関係あるいは医薬関係でそういうことはないか、こういうお話でございました。  先ほど申しましたように、もちろん農業も農業試験場、あるいは医薬関係につきましても国の国立衛生試験所等々でいろいろ検討がなされております。これはむしろ国のベースでそのリスクを負担する格好で今研究が進められておるわけであります。今、鉱工業関係でも開発されました技術は他方面でいろいろ利用されることになるわけであります。例えば、工業関係でつくられました細胞の融合技術、こういうものは製品段階におきます医薬品にも使われることになろうと思います。したがいまして、そういう意味で、この条文の中でも、このセンターが運用いたします際の事業計画等につきまして関係行政機関の長と協議をするという規定がございますが、それもそういった鉱工業あるいは電気通信業で開発されました民間でやることがふさわしい技術が他省庁分野に使われていくという可能性がありますために関係行政機関と協議を図っていこう、こういうことを考えた次第でございます。したがいまして、私どもとしてはこういった基盤技術基礎的な部分についてはこの研究成果がほかの分野にも、と申しますのは通産省、郵政省以外の分野にも使われていく可能性があると思われますので、こういった関係行政機関との連携を図るという措置を講じているわけであります。  したがいまして、基盤技術という面では、先ほどから大変くどいようで恐縮でございますが、私どもとしては、鉱工業あるいは電気通信業の基盤技術民間開発するということにつきましては、当面これで一つ政策の体系としてはなり得るのではないかと考えております。しかし、今、後藤先生御指摘のように、技術は日進月歩でございまして、各省庁もそれぞれの分野研究開発をさらにいろいろ進めていかれると思いますし、また産業の態様も変わってまいると思います。もちろんその問題につきまして関係省庁がいろいろな政策判断をし、あるいは産業界のニーズ等を踏まえて考えていかれるということは将来においてあろうと思いますが、当面におきましては私どもは、今申し上げたようなことで、政策の体系としてはこれで十分な体系がし得るのではないか、しかし将来は、今後とも十分検討すべき余地があろうかと思います。
  56. 奥山雄材

    ○奥山政府委員 郵政省所掌分野にかかわる基盤技術についてのお尋ねでございますが、福川局長から御答弁がありましたように、基盤技術の一般的な考え方については私どもも同じような観点でとらえております。  しからば電気通信業等にかかわる基盤技術とは何かという具体的な案件そのものにつきましては、センター発足後個々のプロジェクトをセンターが検討することになると思われますが、個別のプロジェクトはさておきまして、基本的な考え方といたしまして、電気通信技術あるいは放送技術にかかわる基盤技術とは何かということで一応私どもが考えておるところを御説明申し上げたいと思います。  御承知のとおり、電気通信にかかわるこれまでの基礎技術は電電公社等が中心になりまして開発を進めてまいりましたけれども、公社の民営化に伴いまして、これから先の二十一世紀を展望した場合における電気通信の特に基礎技術分野における進運のおくれということが大変懸念されるわけでございます。これまでも既に光ファイバーの実用技術のように欧米のトップレベルにまである技術もございますけれども、これらはあくまで応用技術、実用技術分野でございまして、基本的、原理的な部分につきましては欧米に比べて現在時点でもはるかにおくれが目立つところでございます。さらに二十一世紀の高度情報社会を考えました場合には、コンピューターと電気通信回線とが一体的、融合的に構成され、組み合わされましてネットワーク社会が実現することが予見されておりますので、そのような中における電気通信技術波及効果影響度は非常に大きいだろうと思っております。  例えば一、二例を挙げますと、光IC技術というものがございます。先ほども申し上げましたように、光ファイバー技術そのものは既に欧米のトップレベルまで実用が進んでおりますけれども、それらの原理的な特許等はいずれもアメリカあるいはヨーロッパ諸国が持っているものでございます。そうしたことを考えますと、これから先さらに大容量の通信あるいは放送等の技術を考えました場合には、トータル的なネットワークを構成する上での基盤技術が通信のあらゆる分野において必要になってまいります。例えば符号あるいは音響を送りあるいは受ける最初の段階から最後の段階まで、つまり伝送から交換から発信から情報処理、通信処理の面に及ぶトータル的なネットワークを通じての電気通信の基盤技術がこれから私どもが考える場合の基盤技術基礎になるのではないかと考えております。
  57. 後藤茂

    ○後藤委員 大臣、お帰りになりまして、往復の過程でさらにお考えいただいたと思うのです。今大臣がいらっしゃらないところで、通産と郵政にかかわる、しかも国民経済国民生活に相当程度という二つの縛りがかかってきているわけですけれども、各省庁それぞれに試験研究機関も持っておりますし、またその所掌分野産業の中でこれからの新しい技術といいますか、あるいは基盤技術の中に加えられるべき分野に対する研究も進んでいると私は思うのです。ただ、それぞれの企業企業秘密もありますから、うちはこういうものを研究して現在こういう状況にあるということがわからぬだけでありまして、先ほど局長の答弁をお聞きしましても、特許権の大体九〇%以上は通産省の所管にかかわる分野だということです。それは現状はそうだと思うのですが、私はこれからはそうはいかなくなっていくのではないかというような感じがいたします。  特に食品産業分野であるとか薬品産業分野での研究開発が、この法律でいきますと、通産あるいは郵政の所管でないから国有財産の利用やセンターの業務の対象範囲外になるということになりますと、これは行政のバランスを欠くことになりはしないだろうか。みずから自己規制するなり、みずから行政機構の縦割りの困難さの壁に頭をぶつけてしまっていくことになると、せっかく基盤技術というような大きな分野をこれから進めていこうとするのに、最初から手足を縛っていくことになる。局長の御答弁をお聞きいたしておりますと、それぞれの分野はそれぞれの省が行政的にいろいろな手当てをしてきているからというような意味の御答弁もございましたけれども、せっかくこういう基盤技術研究円滑化の法律を出して、そのためのセンターをつくる、そして大いに国の研究機関等も相互乗り入れしていこう、利用させていこうじゃないかということを言っているなら、通産と郵政だけに最初から手足を縛ってしまうということはいかがなものだろうか。今申しましたように行政のバランスを欠くことになりはしないだろうか。  特に、先ほども申し上げたのですけれども、「八〇年代ビジョン」の中では、がんの研究であるとかバイオテクノロジー、生命工学であるとかというようなことがこれから非常に国民の大きなニーズとして取り組んでいかなければならぬというのを、厚生省の文書だとかではなくて通産のビジョンの中に書かれているわけです。この点を一体どうするのか。先ほど局長の答弁の中では、将来そういういろいろな問題が起きたときには考えていかなければならぬというような意味のことを言っておられましたけれども、最初にそれが落とされていった、それを対象外に最初に落とした理由。それから、将来といっても必ずこういった問題が起こってくるだろう。そして、行政のバランスを考えでいけば、当然そういったところに対しても利用の道を閉ざしてはならぬと考えているわけですけれども大臣、いかがでしょうか。
  58. 福川伸次

    福川政府委員 今農業関係あるいは薬品関係食品関係、ここらについてもこういった技術が使えるではないか、特に通産省の「八〇年代のビジョン」でもそういうようなことが引用されておるという御指摘でございました。私どもとしても産業構造ビジョンを考えますときには、できるだけ広い視野で将来の産業の展望を試みるわけでございますが、その産業構造ビジョンにおきましても、私どもとしても例えば薬品そのものを通産省でどうこうしようということを考えたわけではございませんで、もちろんそういった基盤となるような幾つかの技術が薬品にも食品にも、あるいは医薬品にも使われていく可能性があるというふうに思うわけであります。例えば工業関係での細胞融合技術でありますとか、あるいは遺伝子組みかえ技術でありますとか、こういったような技術開発されれば、それは食品工業にもあるいは薬品工業にも農業関係にも使われていく可能性は十分あると思っておるわけであります。  それぞれの省庁はそういったいわゆる生産そのもの、あるいは製品そのものについての御所管をなさっているわけでありますが、そこに使われますような技術を眺めでみて、しかも民間にそのような基盤技術基礎研究応用研究をやらせるということを考えますと、先ほど申しましたように大体通産省と郵政省のもので当面カバーできる、こういうふうに考えておるわけでございます。しかし、それの応用編といたしましていろいろな分野、他省庁分野が出てまいるわけでありまして、当面両省のものでカバーするということで今考えております民間による基盤技術は大体十分ではないか、こういうふうに考えた次第でございます。  しかし将来の問題は、各省庁ともこれから二十一世紀を目指していろいろな技術開発重要性ということはお考えになられると思いますし、また工業関係技術をそういったものに使っていこうという分野も出てくると思います。果たして今後おやりになろうとする各省庁のものがいわゆる基盤技術と言われるものであるのか、あるいはむしろ開発段階に重点を置かれるのか、あるいは企業化、商業化という段階であるのか、これはもう少し技術の進歩を見ないと、どういう手段が一番ふさわしいかというのは今後の問題として判断せざるを得ないのではないだろうか、かように考えているわけでございまして、こういったリスクマネーの供給等を中心にいたしました手段民間が分担をすべきもの、こういうふうに組み合わせて考えますれば、今御提案申し上げているような定義で私どもとしては当面十分ではないだろうか、かように考えておる次第でございます。
  59. 村田敬次郎

    村田国務大臣 今福川政府委員から詳細な答弁がございました。また、私が参議院の方のエネルギー特別委員会に出向いております間に後藤委員から非常に詳細な、また精緻をきわめた御質問があったようでございます。  実はこの法案をつくりますまでにいろいろな過程がございまして、郵政省との間で、何と申しますか両者で相歩み寄って両者の共管、そして委員会については商工委員会に提出といったようないろいろなことを決めたわけでございますが、その間において総務庁長官であるとか官房長官であるとか、そういった方々ともよく相談をして、現在この基盤技術研究促進センターを業務ということで考えれば通産省及び郵政省の所管技術に限定をしていくことが適当であろう、そういうことになったわけでございます。民間活力を最大限に発揮させる、また我が国基盤技術行政部門、そして民間活力の重視ということでやっていくということでこの決定をいたしたわけでございまして、私どもは縄張り意識というのは全くないのです。明治以来続いた古い古い縄張り意識を解放していくことに新しい時代があるということを信念として持っておるわけでございまして、しかし、仕事を集中的に行うという意味でこういった整理をさせていただいたということを御了解いただきたいと存じます。
  60. 後藤茂

    ○後藤委員 私が指摘をいたしましたのは、背景をいろいろ言い始めたら、お互い政治家ですからわからぬわけではないのです。しかし、せっかく基盤技術というもの、なお概念の明確になっていない面がありますけれども、そこに積極的に取り組んでいかなければならない、そして技術立国としての道を歩んでいかなければならぬという場合に、行政のいろいろな壁というものを意識し過ぎていきますと、かえって法案なりあるいはセンターなりの運用にも、非常に広い視野に立って、そして柔軟な発想のもとにいろいろな垣根を越えてやっていく運営というものが縛りがかかっていきはしないだろうか。とりわけ腹の中ではと言ったらおかしいですが、ああいう国の研究機関に、ぜひひとつ利用していきたい、あるいは出融資等についても、あるいはセンター対象にもなってやっていくともっといい成果が得られるのではないかということがあったとしても、たまたま通産なりあるいは郵政の所管対象企業あるいは分野ではないということのために、そこでちゅうちょするなりそれに参加していかないということが、基盤技術開発推進の上にとってむしろマイナスになりはしないだろうか。行政のバランスというのはもっと公平にあるべきだ、あらゆるところに開かれていなければならぬというのが私の考えなんです。  大臣、最初からそうやって門戸が閉まって、あなたのところはうちへは出入りができないのですよということをやるのは、私は法律としてはどうも欠陥の法律ではないかという気持ちがぬぐえないのですよ。ですから、こうやって出されておりまして、まだ注文はたくさんあるわけですけれども、これから技術進歩がある。そして基盤技術というものに、一つの枠組みの中に入っていくような分野、それはどの省あるいはどの分野であろうと、ぜひひとつこのセンター対象になって大いに利用していこうではないか、あるいは活力を引き出していこうではないかという方向を、少なくともこの法案審議の中では将来展望として考えていきたいということが必要になる段階にもう既にあると私は思うのですね。科学万博も筑波でやられている。いろんな垣根を越えた技術というものになっていくのではないか、素人目にもそういうように見てきたわけでありますけれども、重ねて、大臣いかがでしょうか。
  61. 村田敬次郎

    村田国務大臣 後藤委員の御指摘の前提に、開かれた体制にしていかなければならない、そしてできるだけそういった意味で、各省間で広く利用できるような考え方が必要ではないか、この御指摘は私はよく理解できます。自由主義経済体制という意味から言えば、先ほど申し上げましたように、縄張り意識とかそういったようなものは非常に行政の壁になるわけでございまして、そういった意味では、現在いわゆる縦糸官庁ではなくて横糸官庁である、先ほど申し上げた内閣官房であるとか総務庁であるとか経済企画庁であるとか科学技術庁であるとか、そういったところの役割が非常に重視をされてきておる。これは原則として当然のことだと思います。  通産省も、通産行政全般についてそういう開かれた通産行政を行うことにつきましては、委員と全く同意見であります。ただ具体的に仕事を行っていくとなりますと、先ほど来福川政府委員からいろいろ申し述べましたように、やはり民間活力をしっかりと活用をする、そしてまた現実に私どもが対応しようとする、行政に十分役立てるということから言えば、現在としては通産、郵政両省に限ることが、かえって能率的に仕事を進めていく上で適切であろう。今後いろいろな進展に応じまして各省との協力体制その他はもちろん非常に重要なことでありますから、しっかりと考えていきたいと思います。
  62. 後藤茂

    ○後藤委員 余りにも大臣いろんな配慮を考え過ぎておりますので、前段の方の答弁は必ずしも私は了解ができないわけですけれども、いずれにいたしましても、そういった行政バランスを欠かないように、開かれたセンターになっていくように、そしてこの法律が十分に、提案の中でも言っておられますように、国民経済国民生活に寄与するような法運営ができるように、もう少し積極的に取り組んでいただきたいと思うわけです。  そこで大蔵省おいでになっておられるので、ちょっとお伺いしたいのですけれども、産投の中身について先ほど田原委員の御質問に対してお答えがございまして、また配当収入予想等についても、一割配当の場合には三百十億ですか、それから五%配当では百五十五億というようなことが言われているわけでありますけれども、この産投への、まあ来年度からになるわけですね、来年度からずっと産投会計へこの配当は入っていくのでしょうか。その点お伺いしたいと思います。
  63. 秋山昌廣

    ○秋山説明員 このたびの産業投資特別会計法の改正によりまして、新電電の株式が産業投資特別会計に帰属することになりますので、この株式の配当金収入があれば、将来ともこの特別会計の収入になるということでございます。
  64. 後藤茂

    ○後藤委員 そうすると、これは法改正がない限りはずっと継続して毎年毎年、配当の率は別といたしまして、産投の資金に運用されていくということですね。
  65. 秋山昌廣

    ○秋山説明員 そのとおりでございます。
  66. 後藤茂

    ○後藤委員 この法律、どちらが先かは一応別といたしまして、通産にしてみれば、「八〇年代の通産ビジョン」からずっと長い間積み重ねてきて、いろいろな技術開発のための制度を確立してきた。しかし、さらに基盤技術という新しい言葉を編み出しまして、そこへ、どちらが先かよくわかりませんけれども、電電、専売の民営化、株式の配当等々も、これはひとつぜひ利用をさせてもらいたいという発想から、一応産投を経由するわけでありますけれども、そこにこの法律案の策定の背景があった。  そこで、いわゆる電電なりあるいは専売なりの配当というものと、これは産投からくるわけですから、直接関係があるのかないのか私はよくわかりませんけれども、これは一体どういう関係があると考えておけばいいのでしょうか。
  67. 福川伸次

    福川政府委員 予算編成の過程におきまして財政当局といろいろお話し合いをいたしました結果、政府全体といたしまして、私どもとしてのこういった新しい出融資の業務の原資として、産業投資特別会計からその資金が捻出されたという御判断、御結論に達したわけでありまして、私どもとしては、現下の財政事情等から考えれば、適切な方向であったと思っております。  産業投資特別会計は、あるいは財政当局の方からお答え申した方がよろしいかと思いますが、これは新電電あるいは新専売の配当金だけでございませんで、そのほかにもいろいろな原資がございます。現に六十年度におきましては、在来の産業投資特別会計の原資の運用の中でこのセンターへの資金が賄われたというわけでございます。  今後、その新電電あるいは新専売、これの配当金は、国が保有する分については産業投資特別会計に入る、こういうことになるわけでありますが、それで、その中のどの割合がこのセンターに使われるか、あるいはほかの財源がこのセンターに使われるかということは、産業投資特別会計の運用の問題であろうと思っております。  私どもといたしましては、技術政策を進める上で、この民間活力を発揮するための出資、融資の財源の確保という点につきましては、今後のニーズに合わせまして財政当局とお話をして、それが産業投資特別会計の運用の中でどのような結論になっていくかということでございますが、私どもとしては技術政策推進する上で支障のない形でこの財源の確保という点について財政当局と十分話し合いをしていきたいというのが私どもの考えであります。
  68. 後藤茂

    ○後藤委員 確かに、電電なりあるいは専売なりのそういう配当金が、それだけで産投が賄われているわけじゃないですし、あるいはまた、そこで潤沢になる資金がストレートにこのセンターにそのまま入ってくるという性格のものではないことは十分に承知をいたしておりますけれども、しかし、では全くそのことが考慮の外にあるのかというと、その辺は、法律では出てまいりませんけれども、そうではないだろうと思うのですね。  そこで、電電三法あるいは専売公社法の民間株式会社移行への法律の審議の過程で私どもも強く指摘いたしましたのは、特に電電の場合等は、国民の一人一人が、電話を架設していく場合に、電話債券というものを買い、高い架設料を払って今日までの電電の会社をつくり上げてきているわけですね。したがって、国民の共有財産だという気持ちは、恐らく全国民もあるいはそこで働いてこられた労働者も、そして、今日の高度な情報技術を確立してきた技術者も同じ思いだろうと思うのですね。それが政府持ち株配当の形で産投に入ってくる。そしてそれが、国民の共有財産として国民に還元してほしい、そのサービスを、ということを越えて基盤技術開発方向に使われていく。内心いろいろな複雑な気持ちを持っておる人々が非常に多いし、また私どもも、国民の共有財産国民に返せという立場で、あの電電三法等についても政府に強く指摘をしてきているわけであります。  そこで、この運用の問題ですね。あるいはこれから直接ストレートにそれがセンターに出融資の形で来ているというわけではないけれども、しかし、大きくこれから世話になっていかなければならぬということになっていきますと、この法律を読み、またこれまでの説明をお聞きをいたしておりますと、やはりその先端技術なり基盤技術なりということで想定をされている分野というものは、なかなか中小企業のところで、なじまないといいますか、利用しがたい、参加しがたいような方向に行ってしまうのではないか。中小企業に対して一体どういう配慮がなされようとしているのか、この点大臣からひとつ。
  69. 福川伸次

    福川政府委員 御指摘のように、中小企業日本経済における大変大きなウエートを占めるものでございますし、日本の特に高度加工産業を支える上で、これからも大きな力を発揮するものであろうと思っております。  今回のこのセンターの運用に関しましては、これは大企業中小企業を問わず、そういった基盤となるような技術というものについては対象として取り上げているわけでございまして、私どもとしても、いささかも大企業に偏重になるということのないように、中小企業の点についても十分その技術開発力が発揮できる方向で運用をしていくべきものということを考えております。また、中小企業技術開発全般につきましては、今回別途新しい法律も御審議いただくべく提案申し上げておりますように、中小企業全体の技術開発という点については、これもまた一つの大きな政策のウエートを置いて今後努力していくべきものと考えております。
  70. 後藤茂

    ○後藤委員 今の私の指摘の中で触れましたけれども、今度の場合は、通産、郵政の所管にかかわるこのセンターができ上がっていく、法律ができ上がっていくわけです。しかし、その資金的な、つまり財源の中におきましては、非常に大きくこの電電の今日まで築き上げてきた財産というものが使われていくわけです。井戸を掘った人のことを水を飲むときに忘れてはならぬという言葉がありますけれども、えてして法運用あるいはセンターのこれからの運営ということになりますと、一体どこでどういう支えのもとにこれができたんだということを忘れがちで、ついつい目先のことだけにとらわれてしまう。そうなりますと、先ほども申しましたように、国民の共有の財産として築き上げてきたものを、いろいろな説明をつけてはおりますけれども一部特定の、将来はそれはもちろん国民経済国民生活に寄与していくという説明は仮にあるにいたしましても、そういう方向だけに使われていくということになってまいりますと、気持ちの点の整理がなかなかできないこともあるだろうと思います。  この法律の運用の面において、あるいはセンターのこれからの運営の面において、産投特別会計というものを経由はしておりましても、今日までつくり上げてきたその基礎というもの、それこそ基盤ですが、その基盤というものをこれからの基盤技術開発の上において十二分に配慮した運営をしていかなければアイデア倒れに終わってしまうという危険性がある、こういうふうに考えるわけです。最後に私はそのことを指摘をして、大臣からこの点に対する考えをお聞きをして、私の質問を終わりたいと思います。
  71. 村田敬次郎

    村田国務大臣 今回、民間活力を活用して民間企業が極めて大きなウエートを持つ分野技術開発を進めるために、今御指摘がありましたように産業投資特別会計の資金の利用を政府としては考えておるわけです。そして、来年度以降は産投会計に新電電、新専売の株式の配当金が入ることが予定をされております。これによって産投会計の一層の充実が図られるものと評価をしておるわけでありますが、これらの資金国民共有の資産であるということにかんがみまして、国民経済の健全な発展国民生活の向上に資する技術開発に有効に活用されるよう、今、後藤委員が御指摘になりました諸点を考えまして十分配慮してまいる所存でございます。
  72. 後藤茂

    ○後藤委員 終わります。
  73. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて後藤茂君の質疑は終わりました。  続きまして、奥野一雄君の質疑に入ります。
  74. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 最初にちょっとお断りをいたしておきますが、昨日通産省の方に私の質問予定の項目をお出しをしてありますが、質問の都合で順序が不同になることもありますので、その辺のところはひとつ御了承いただきたいと思います。  最初に、この法律案基盤技術研究円滑化法、こうなっているわけでありますが、その中身というのは、基盤技術研究促進センター設立をして、そのセンター基盤技術の研究促進に必要な業務を行わせる、こういうことになっているわけであります。この資金面の方を見ますと、基本財産は百二十億、これは産投会計から六十億、開銀から三十億、民間から三十億、こうなっているわけでありますが、六十年度は産投会計の方が間に合わないということで、とりあえず出資二十億円、融資二十億円、計四十億円が六十年度の事業費ということになっているわけであります。問題は、この産投会計からの六十億円でありますが、これは御案内のように、今も議論がありましたように、専売公社あるいは電電公社の民営化に伴いまして政府保有となる株の配当金が財源になるわけであります。  そこで、最初にお尋ねをいたしたいのは、専売公社や電電公社が民営化になりまして株の配当が入ってくる、そういう見込みが立つからこの法律案というものが提案をされたのか、あるいはまた、そういう電電や専売の株の配当などというものはなくてもこの事業は必要だから当然提案をする、そういうものなのかどうか、その辺をまずお尋ねをしていきたいと思います。
  75. 福川伸次

    福川政府委員 私どもといたしましては、昨年の夏以来、産業構造審議会そのほかの関係審議会におきまして、今後の技術開発政策のあり方の御審議をいただいてまいったわけでございます。その御報告を踏まえまして、私どもとしては、この基盤技術についての試験研究の円滑化を図っていく、民間活力を発揮して基盤となる技術開発を進めていくということが非常に重要であるということを産業構造審議会等で御答申をちょうだいをいたした次第でございまして、それに基づきまして、私どもといたしましても、こういったリスクマネーの供給を多様化していく道を開くという意味で、このようなセンターの財源の要求をいたしておったわけであります。それで、予算折衝の過程におきまして最終的に財政当局とのお話し合いあるいは政府全体としての判断ということで、それの財源を産業投資特別会計から捻出をしよう、こういうことになったわけでございます。  そして、そういった予算政府原案の決定に基づくこの今回の法案の形成ということで、政府部内で関係の法制局あるいは関係省庁とずっと議論をしてまいった次第でございます。そういう意味では、こういったセンターをつくってこういった技術開発を進めていこうという構想あるいは国の試験研究施設の廉価使用、こういった問題は審議会等の御答申もありまして、かねてから考えておったわけでございます。成文化いたします過程では、先ほど申しましたような予算の決定の方向と、それから今申しましたような関係審議会の御答申ということを踏まえまして、成案を得て国会にお諮りをいたした、こういう次第でございます。  私どもとしては技術政策の立場で要求をさせていただき、それが財政当局との話し合いで、政府全体の決定で今申しましたようなことに相なった、それに基づきこの今回の法案を提出をした、こういう経緯でございます。
  76. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 ちょっと今お答えを聞いていて私はさっぱりわからないのですけれども、私がお聞きいたしましたのは、端的に言って、この財源はとにかく産投会計の方から来るけれども、その産投会計の方は電電なり専売の株の配当金というものが主たる財源になっているわけです。ですから、もし電電や専売が民営化されなかった、あるいは株が別な方に使われるというようなときには、この法律案というものは提案ができたのかどうかということなんですよ。
  77. 福川伸次

    福川政府委員 私どもとしては、先ほど申しましたように、予算の折衝の過程でこういったリスクマネーの供給をするという要求をいたしたわけでありまして、それについてこのような決定になったわけで、政府の内部で決定をいたしたので、それに基づいて政府は提案をいたしたわけであります。  では、しからば今お話しのように電電が民営化する、専売が民営化する、こういうことがなかったならば一体こんなセンターはできなかったのかどうか、こういうことでございますが、その財源対策、まあこれはむしろ財政当局で御判断になることでございますが、いろいろ財源の問題がありますが、私どもとしては、こういった特別認可法人に基づくセンターによってリスクマネーの供給をする、あるいは技術サービスをしていく、こういう組織は必要であるということを考えて要求をいたしたわけでございまして、財源のやり方が先ほど申したようなことに相なったわけでありますが、もし新電電あるいは新専売の配当がなかったら産投会計から金が出なかったのか、こういうことでございますが、六十年度は、今申しましたようにまだ配当が計上される状況ではございませんわけで、産投会計の固有の財源で今回の予算は計上されておるわけであります。  長期的な観点に立って、それではそれがなければこのセンターが果たしてできなかったかどうかということでございますが、私どもとしては、予算の折衝の過程でこのような格好に決まったのでそうしたわけでありまして、もしそれがなかったら財政当局がどういうふうな御判断になったのかというのは私どもの方でお答えすべきことではございませんが、いずれにいたしましても、政府全体としてそのような方向になったわけで、私どもとしてはいずれにしても、こういったセンターあるいは今回の措置というようなことは政策としては重要なものであった、したがって、提案はいたしたいと考えておりましたが、財政当局との話し合いで今申したような結果になったものを今回反映させていただいたということでございます。
  78. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 後でもまたちょっと触れますけれども大蔵省の方にはこのことについてはお尋ねをするという予定ではなかったのでありますけれども、今のお答えの中では、いや、とにかく財政措置の方は通産ではわからぬよ、それは財政当局が決めることなんだから、こういうことなのですが、財政当局としては、この要求があったときにあらかじめ、初めから電電なり専売の配当というものをそっちの方に回して、それから生み出すというふうにお考えになっておったわけですか。
  79. 秋山昌廣

    ○秋山説明員 最初からそういうことを考えていたわけではございませんが、予算編成の過程でこういう結果になったわけでございます。ただ技術開発等を含めまして、産業投資特別会計は産業開発や貿易の振興という目的でございますが、先ほどから御説明がありましたように、民間活力を活用して基盤的な技術開発をしていくというのが一つの大きな当面の課題であるということからいたしまして、これを産業投資特別会計から、産業投資特別会計というのは投融資でございますから、これは全体として民間活力の活用かつ経済性あるいは採算性ありということでやっている特別会計でございまして、そういった技術開発等に対する需要あるいは大きな課題を解決するためにこの産投会計を活用しよう。そこで、新電電の株式の政府の保有が義務づけられているものにつきまして産投会計に帰属させて、その収入を技術開発等に充当していこう、産投会計で今後技術開発等を拡充していこう、こういう背景があって株式を産投会計に帰属させた、こういう経緯でございます。
  80. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 予算編成の過程でこういう措置が決まったんだということですか。これはいつごろですか。
  81. 秋山昌廣

    ○秋山説明員 御承知のように、新電電の株式の処理につきまして大変大きな議論がございました。いろいろな議論があって、予算編成の過程で我々といたしましても関係省庁と協議を進めてきたことは事実でございますが、こういう形で決まりましたのは予算編成の最終段階でございます。
  82. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 最終段階というと、あれは年の暮れのころでしたか、二十八日ごろでしたかと思っているのですが、そのころで間違いありませんか。
  83. 日高壮平

    ○日高説明員 新電電の株式の処理につきまして、最終的に政府・与党の中で結論が出ましたのは十二月二十一日でございます。
  84. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 そうですね。私も十二月二十一日だというふうに記憶しておるわけです。これはまた後で触れます。  次に、電電株の売却問題についても国会における審議の状況、それから国会の中で中曽根総理大臣及び関係大臣のいろいろな答弁があったわけでありまして、また附帯決議もついておったわけでありますけれども、そのことについてどういうような理解をしておられるかということを、これは大蔵省、郵政省両方から聞きたいわけであります。最初に大蔵省の方からお答えをいただきたいと思うのです。
  85. 日高壮平

    ○日高説明員 電電株式の売却収入の使い道の問題につきましては、国会においても種々議論があったことは先生御指摘のとおりでございます。私どもとしては、政府部内でいろいろ調整したわけでございますが、昨年七月の衆議院の逓信委員会におきまして大蔵大臣から政府統一見解を表明いたしました。その統一見解に基づきまして予算編成過程で検討した結果、今議論が出ておりましたように、国民共有の資産である株式の売却収入につきましては、国民共有の負債である国債の償還財源に充てるのが適当であるという判断に達しまして、売却可能な分、すなわち三分の二につきましては国債整理基金特別会計に帰属させる、それから政府が保有を義務づけられております三分の一の株式については産業投資特別会計に帰属させるという結論に達したわけでございます。で、先般の予算委員会の第二分科会におきまして同じような御質問が先生から大蔵大臣にもなされました。そのときに大蔵大臣も答弁いたしましたように、いろいろな議論、国会における議論なり附帯決議なりといったものが結果としてただいま申し上げたような結論になったというふうに御理解いただければと思います。
  86. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 ちょっと今前段の方で私、聞き漏らしたのだと思うのですが、政府統一見解ができたのは七月というふうに聞こえたのですが、株の問題について今言われたような国債の償還に充てるとか、あるいは産投会計に入れるということは、その七月の段階での政府統一見解で決まったということですか。
  87. 日高壮平

    ○日高説明員 七月の政府統一見解と申しますのは、簡単でございますのでここで該当部分だけ読み上げますと、「株式売却収入の使途については、種々議論があることは承知しているが、いずれにしても国民共有の資産であることに鑑み、国益にかなうよう、今後、予算編成の過程を通じ、政府部内において慎重に検討してまいりたい。」というのが政府統一見解でございます。したがいまして、七月段階での統一見解におきましては、この使い道については予算編成の過程政府部内で結論を出すということになっておったわけでございまして、この統一見解に基づいて予算編成の過程で調整した結果、先ほど申し上げましたように十二月二十一日の段階で結論が出たということでございます。
  88. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 今言われましたように、私も過日の予算委員会の分科会で大蔵大臣の見解をお尋ねしたわけでありますが、時間が少ないということで十分大蔵省考え方を聞くことができなかったわけでありまして、改めてもう一遍聞いてまいりたいと思っているわけであります。  電電株の売却の問題につきましては、御承知のとおり当時の奥田郵政大臣あるいは中曽根総理大臣、そういう方々が国会の中でいろいろ答弁をされてきておるわけでありますが、その答弁は、国の赤字解消のためにだけ民営にするというふうに思われては困る、こういう答えをされたり、また中曽根総理大臣も、国会審議の経過を踏まえて全部国庫が召し上げるというのはいかがなものか、こういうようなことも答えられているわけであります。あるいはまた、売却益等の使途については、その資産形成の経緯や国会審議を十分尊重して結論を出す、こういうふうにお答えになってきているわけです。  それから、現に今の郵政大臣、左藤大臣でありますが、当時逓信委員として逓信委員会の中でも質問をされているわけであります。「電電公社の資産の今の九割以上が通信の利用者が長い間にわたって出したものと私は考えるし、それから形成されているものと思います」こう述べられているわけですし、さらに「六十年の段階において予算措置するということであろうと思いますけれども、基本的には国の一般会計の赤字補てんのために今度の民営化をするんじゃないんだということだけは物の考え方として考えておいていただかなければならないんじゃないか。そして、この資産形成の経緯というようなものも考えた上で、ひとつ電気通信の利用者というものの立場に立った処分というか、そういう方向で検討していただきたいということを私は要望いたしておきたいと思います。」こう言っているわけですね。これは今の郵政大臣でございます。そういう審議経過に基づいて、与野党一致で附帯決議というものが付されているわけであります。  そういう点から考えますと、政府の今回とった措置、すなわち政府保有以外の株は全部売ってしまって国家財政の赤字の穴埋めに使う、あるいは政府の保有株は産投会計の方へ全部回してしまう、こういうやり方というのは、今私が申し述べてまいりました国会審議の経過というものを全く無視したことにつながっているんではないか、どうしてもそう思われてならないわけでありますけれども、もう一遍その辺の経過について、大蔵省としてはどういう考え方を持っているのかを確かめておきたいと思っているわけです。
  89. 日高壮平

    ○日高説明員 今先生が御指摘になりましたように、この電電三法の国会審議の過程におきましては、種々の議論があったことは事実でございます。  確かに、郵政大臣からは、その一部について技術開発等の財源として使うべきであるという議論が出たこと、御指摘があったことも事実でございますし、他方、財政当局といたしましては、こういう国民共有の財産であるから特定目的に使用すべきではないという、いずれにしても、この使い道については予算編成の過程において結論を出したいという答弁をしたことも事実でございます。  そういったいろいろな国会での御議論を踏まえて最終的に政府部内で調整いたしました結果、売却益につきましては、やはり国民共有の資産を売却して得た大事ないわば国としての財源でございますから、それを国民共有の負債である公債の償還に充てるのが一番望ましいのではないかということで結論を得たわけでございますので、私どもとしては、今回、先ほど申し上げたこの電電株式の処理に関する結論は、いわば大蔵大臣も答弁いたしましたように、今までの国会での御議論を十分踏まえたものであろうというふうに考えておるわけでございます。
  90. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 私は衆参の逓信委員会における議事録も克明に実は読ましていただいております。そういう点から考えてみて、予算編成の過程の中でそれは決めるということになっておりますが、その前提として、やはり国会審議の経過というものについては十分尊重する、これが原則になっていると思っておるのですね。  衆議院の逓信委員会の中で、社会党の武部委員の質問に対しまして、奥田郵政大臣の答えでこういうのがあります。「なお、大蔵大臣も各委員会の席上でたびたび表明しておることでございますけれども、できれば財政再建の一部の足しにしたいという期待表明もあったことも事実でございます。」こういう答弁をしているわけですね。それは大蔵省の方からは、できれば赤字財政のために使わせてほしいという期待表明だ、当時の郵政大臣はそういうことを言っているわけなんですよ。  ですから、どこでどう変わったのかということになるとあれなんですが、これは予算分科会で大蔵大臣の答弁の中で、どうも常任委員会で議論しているのと大蔵省との議論というものは時としてやや対立することがある、これは財政を持っているという立場からどうしてもそうなりがちなんだ、あるいはまた、電電の資産が国民の共有財産だというならば、国の借金も国民共有の借金だからここに入れても間違いではないんではないか、こういう意味のことを大蔵大臣も言っておられるわけでありますが、これは私は全く違うというふうに思うのですね。  この前の予算分科会の中でも申し上げてまいりましたが、電電公社の資産の形成というのは、先ほど後藤委員の方からも指摘がございましたように、発足当時というのは、電話を申し込んでもなかなかつかない、あるいは全国の即時網というものを早くつくらなければならないということで非常に高額な設備負担金あるいは債券を買ってもらって、そして一生懸命やってきたということが今日の資産形成の大きな力になっている、こう思うのですね。  そういう面などから衆参の逓信委員会の中では、株の売却益の使途については単に赤字財政ということだけには使ってはならない、やはり利用者、国民に還元をする、あるいはまた、電電公社自体で五兆六千億からの借金を抱えているわけですから、そういう借金の返済にも充てたらどうだ、あるいはこれまで電電公社の技術発展をしてきたということは、技術開発に相当力を入れてきたんだから、そちらの方にも回すべきでないか、こういう議論が衆参の逓信委員会の中でも行われてきたわけであります。しかし、それに対して大蔵省の方では、いや、これは特定財源ということになるというのはまずい、こういうことで大体拒否をされてきたんですね、そういう社会党の議員の方々の要求ということについては。特定財源ということでそういうふうに回してはならないというのであれば、じゃ国債の償還のために充てるということは特定財源にならないのか、ならないということであれば、その理由もまたひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  91. 日高壮平

    ○日高説明員 まず一点、電電公社の資産の形成の経緯にかんがみという附帯決議がございますことは事実でございますが、その資産形成の経緯につきましては、実は確かに先生のおっしゃられたような御意見が出たことも事実でございますが、それに対して私ども考え方としては、その逓信委員会でも議論申し上げましたように、公社の資産が現在のような形で形成された背景には、公衆電気通信法という法体系によってその独占権が与えられている。あるいは、今の公社に対する出資は国だけが行うことができるというような規定もございまして、いわばそういった国の分身としての機能から生まれてきたものであるという考え方を、私ども表明したこともございます。そういう意味におきまして、正直申し上げれば、その資産形成の経緯という考え方についても、これもまた種々議論があったという点については御理解をいただければと思うわけでございます。     〔委員長退席、田原委員長代理着席〕  なお、使い道について最終的に予算段階でこういうふうに決めたわけでございますが、その段階で会社法の審議の際に、株式の処理をどこに帰属させるかということで種々議論があったわけでございますが、最終的に政府部内で調整したところ、今までのような経緯、つまり先ほど申し上げたような資産形成の経緯等も含めて、電電公社が全額現物出資をして得た株についてはすべて無償政府に譲渡されるのが望ましいという判断に立ってこの会社法というものができ上がったわけでございます。  その場合に、政府は、これも逓信委員会において私も御答弁いたしましたけれども、通常であればこれは一般会計になりますということも御答弁したことがございます。それでは、最終的にその一般会計に入りました株をどう処理するかという点で政府部内で調整して、先ほどのような結論になったわけでございますので、それに従って、三分の二は国債整理基金特別会計、三分の一については産投特別会計に帰属がえをするという形で今回両法案を提出している、そういう次第になっておるわけでございます。
  92. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 電電改革の法律案は既に通過をしてしまっておるわけでありまして、そのことについては今私どもとやかく言ったって、これはどうにもならないということになります。  それからまた、電電株の処理の問題については、今度の国会におきましても、国債整理基金だとかあるいは産投会計だとかということは私どもの方の委員会に所属しておりませんで、恐らくそちらの方で慎重な審議がまた行われると思いますけれども、今まで申し上げてきましたような国会の審議の状況というものを考えてみますと、これは悪い言葉になるかもしれませんが、財政を握っている大蔵省の力がまざって、郵政などを抑えつけてしまったんだ、私はそういう認識が非常に強いわけですね。そういうふうに感じてならないわけです。  そこで、ちょっと郵政省の方にもお尋ねをしてまいりたいのでありますが、郵政省の方も遠慮なく私は言ってもらいたいと思うのですね。今はそれは政府で正式に決まってしまって、こういう形になっておりますからあれですが、この経過については、当時はやはり郵政省としては随分やり合ったのではないか、私はそういうふうに思っているわけであります。それは先ほどから申し上げておりますように、衆参の逓信委員会の中でも、ほとんど郵政当局の答弁というのは、株の売却益の使途については単に赤字補てんということだけではなくて、資産の形成の経過というものを十分尊重しながら対応していくということを答弁されてきているわけであります。  しかし、昨年の暮れ、参議院の方でこの電電改革の三法案が一部修正そして附帯決議をつけて衆議院の方に回ってまいりました。衆議院の段階で最終的に決定したのが十二月二十日だというふうに記憶しております。先ほど言われておりましたように、この株の取り扱いが決まったのは十二月の二十一日、もう次の日なんですね。十二月の二十日には衆議院の本会議におきまして、参議院から回付されてきました修正案あるいはまた附帯決議を付したそれがそのまま通っていっているわけなんですよ。そして二十一日にころっと変わってしまっている。これは私は、国会の審議の状況などからいって非常におかしいというふうに思っているのです。  十二月の二十一日には、「電電公社株式の処理と技術開発関連要求扱いについて」ということで、自由民主党の首脳部の方と関係大臣の中で覚書が交わされているのですね。こんなものが一日ででき上がるはずがないと思うのですよ。そうすれば、恐らく、国会ではいろいろな答弁はしてきているけれども、もう事前に国会答弁とは裏腹な行為がその陰で行われてきたのではないかと思うのです。この辺の経過について郵政省の方から、私、聞きたいと思う。
  93. 奥山雄材

    ○奥山政府委員 まず、電電公社を民営化するその目的が、日本の国の赤字を埋めることにあったのではないということは少なくとも申し上げられます。つまり、電電改革三法の趣旨にもありますように、高度、多様な電気通信サービスをより低廉にあまねく国民に普及するために電電公社を民営にするというのがその法の目的でございまして、そのために電電公社の民営を図るという措置がとられたわけでございます。その過程におきまして、先ほど来御議論が出ておりますように、電電株式会社の株式の処理というものが国会においてもたびたび議論になりましたし、また、多角的な観点から多様な御議論があったことも事実でございます。  郵政省といたしましては、予算の編成過程におきまして概算要求を提出する中で、電電公社の民営化に伴う株式の処理といたしまして、六十年度予算一つの目玉といいましょうか最重点の施策といたしまして、政府無償譲渡される株式の一部の現物出資を引き当てにいたしまして電気通信振興機構というものを創設して、この機関を経由することによって電気通信の基礎技術研究開発体制を推進していこうという構想を持ったわけでございます。  そのような概算要求の中身で大蔵省予算の編成過程において折衝を続けてまいった次第でございますが、それとちょうど並行いたしまして、電電改革三法の審議が国会において行われました。先ほど先生が御指摘になりましたように、当院の逓信委員会において附帯決議がなされまして、売却益等の使途については、利用者、国民にとって有益であり、国民各層の納得が得られる適切な方途を確立することということが述べられておりますし、また郵政大臣も、公社の資産の形成過程からいって電気通信における将来の技術開発に資するようなものにこの資金を投入していきたいということを述べたことも事実でございます。また総理も、参議院の逓信委員会におきまして、電電の株式の処分並びにその収入の使途については国会における審議の経過等を踏まえ政府内において詰めさせていくことにしたいという御答弁があったところでございます。そのような経過を踏まえまして、十二月の二十日に電電改革三法が可決成立いたしております。  先ほど申し上げましたように、電電改革三法の審議と並行いたしまして予算の編成が行われまして、財務当局と鋭意折衝してきたわけでございますが、先ほど大蔵省から御答弁がありましたように、現下の国家財政の状況並びに電電改革三法の趣旨、さらには電電公社の資産の形成されてまいりました経緯等を総合的に勘案いたしまして、十二月二十一日に政府・与党連絡会議、つまり政府もそれに参画する形で電電株式の処理についての最終的な意思決定がなされ、さらに予算といたしましては十二月末の段階政府原案にそれが織り込まれたというのが経緯でございます。  その結果、私どもが当初考えました電気通信振興機構という構想は実現いたしませんでしたけれども、少なくとも会社法によって政府の保有が義務づけられております株式、つまり三分の一でございますが、三分の一の産投会計への帰属と、その配当金の収入をもって基盤技術研究促進センターの原資に当てられるという措置が講じられましたので、今後は、私どもが当初目指しましたようなことを念頭に置きながら、かつまた、現下の厳しい財政事情等も十分踏まえまして、民間活力を最大限に発揮させる見地において電気通信の基盤技術の研究促進に資してまいりたいということでございます。今回の措置は、私どもが最初構想いたしましたものとは若干変更になったことは事実でございますけれども、今後の電気通信における研究開発技術開発というものを考えました場合には、一つの有効な解決策であり、また、意義のある方策であるというふうにとらえております。
  94. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 そうすると、郵政の方はもう十二月二十日以前にこういうような方針にするというふうに決めておったと受け取れるのですね。これは事実上はそうでないかと思うのですよ。先ほども申し上げましたように、十二月二十日に衆議院の本会議を最終的に通った、その翌日にもう既に政府・与党連絡会議の中で今のような扱いというものが決まったわけでありまして、そんなに早くに決まるはずがない。先ほど言ったように、私は郵政省が衆参の逓信委員会で答えられてきたことが本音であったというふうに実は理解をしておったのですよ。だから、そんなに早く決まるはずがない。これは、売却益の使途なんかについても慎重に扱うということになっておったし、しかも、そのことについては衆参の逓信委員会にだって一言も報告していないんじゃないですか。それは衆参の逓信委員会の審議の経過からすれば、悪い言葉で言えば、これはだまされてきたということにだってなるのですよ。  国会の中では、そんなことはしません、慎重に扱っていきます、資産形成の経過を十分尊重しながら対処をしていきます、こういうふうな答弁をずっと続けられてきておって、そして十二月二十一日、途端に百八十度くらいの方向転換になってしまった。だから、私が先ほどお聞きしたのは、郵政は初めからそういうことを考えて進めてきたのか、そうでないでしょうということを実は聞いているわけなんですね。今、経緯やなにかについてはるる説明がございました。もし本当に資産形成の経過などを尊重しながら十分対応するというのであれば、これは電電公社の方からは五兆六千億の借金返済の方に幾らかでも回してほしいという要望が出ておったはずです。それから、郵政の方は先ほど言われた通信機構の関係大蔵省の方は国債の方の償還に充てる、この三つどもえくらいになってやられてきたはずだと思う。それが、国会を通ってからたった一日でそんなに急激に変わるのはおかしいということから私はお尋ねをしているわけなんですよ。もう一遍ちょっとその辺のところを説明してもらいたい。
  95. 奥山雄材

    ○奥山政府委員 当然のことでございますが、十二月二十日の電電改革三法が可決成立されるまでの間、郵政大臣が国会で御答弁申し上げたことは、そのまま郵政大臣予算編成過程で最後まで御自分の方針を貫こうということで努力をされたのでございます。しかしながら、他方におきまして、予算政府原案を決定する時日が刻々と迫ってまいりましたこともありまして、恐らく十二月二十一日というような非常に差し迫った時期に、また、逆に考えますと、電電改革三法が通過したその翌日という時期になったのだろうと思われますけれども、その段階関係省庁並びに党も参画した形で先ほど申し上げましたような決定を見たわけでございます。あくまでも郵政省といたしましては、国会で政府委員並びに郵政大臣が答弁されましたことを貫徹する見地から努力をしたことは事実でございますけれども、国全体、政府全体の立場からこのような結末になったということでございます。  なお、逓信委員会に対する報告でございますけれども、その後政府原案が最終的に決まったのが年末でございましたので、年明けの通常国会再開後大臣の所信表明の中でこのことは表明させていただいたところでございます。
  96. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 私はその政府・与党連絡会議なんかに出ているわけじゃありませんから、その様子は全然わからないのですけれども、先ほどから申し上げておりますように、国会の答弁の中では、もう何回も申し上げているように、資産形成の経過というものを尊重しながら対応する、こう言って、そうすれば一番先に出てこなければならないのは、電電公社だって緩くないわけでしょう、五兆六千億の借金を抱えているんだ。もうかっている、もうかっているといっても、それだけの借金を抱えているわけだ。これはこの前、予算分科会の中でも私、申し上げましたけれども、黙ってほうっておいたら十兆ぐらいになってしまうですよ、今の電電公社の負債というのは。そうすれば、当然郵政省とすれば郵政省の立場があるから、通信機構の振興ということで声を大にするということは当然だと思うし、と同時に、その次には公社の負債整理ということについて、資産形成の経過から考えたら主張すべきものであったろうと思うのですね。だから私は、こういう大きな問題が、十二月二十日に国会を法律案が通るまでは黙っておいて、そして次の日になったら変わってしまうというのはどうもおかしいのではないかということを言っているのですよ。郵政省はその辺はどういう努力をしたのですか。
  97. 奥山雄材

    ○奥山政府委員 お答え申し上げます。  先ほど来申し上げておりますように、予算の編成の概算要求過程で、国会での御議論も踏まえ、また、郵政省が概算要求で出しております電気通信振興機構の設立に向けて郵政省としては最大限の努力をしたつもりでございますし、また、郵政大臣も御自分でお述べになりました方策、さらには国会における御議論等も踏まえて、電電公社の資産の形成過程を十分念頭に置いて財政当局、つまり大蔵大臣とも話をされたと伺っております。しかしながら、政府全体としての大所高所の立場から最終的に今回の措置になったということを御理解賜りたいと思います。
  98. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 私は、この問題については、理解をしてくれと言われても、そう簡単に理解ができないのです。時間の関係もありますので、この問題だけずっとやっているというわけにまいりませんからあれですが、大体常識的に考えてみて、一生懸命衆参の逓信委員会の中で議論をしてきて、大蔵省は先ほど言いましたように期待表明ということで、当時の奥田郵政大臣が言っているように、大蔵省からは、これは赤字国債の処理の方にも何とか使わしてもらいたいものだ、国民共有の財産であれば、国民共有の赤字なんだからというような意味のことを大蔵省は言われてきていますよ。しかし、郵政省の場合にはほとんどそういう答弁というのはされていないわけですよ。だから裏切られたのではないか、そういう印象さえ持つわけなんですよね。  こういう点についてはこれからの国会審議の上においても影響する場合もあると思うのですよ。信用できなくなるということになっていくんじゃないですか。何ぼ答弁ではいいこと、うまいことを答弁されても、いやいや、これはあした、からっと変わってしまうんだなということになったら、私どもの方も質問するのに皆さん方の腹の中を考えながら質問しなければならないということになったら、これは思うようなことになりませんし、やはりそういうふうに思わせるということ自体よくないことだと思うのであります。  これは郵政省だけ責めているのではございませんよ、私は大蔵省だって非常に問題があると思うのです。財政を持っているから何か大蔵省が一番力が強いんだなんて仮に思っておったら、これは大きな間違いだと思っておりますので、そういう面は今後十分御留意を願いたいと思うわけであります。  時間の関係がありますから、それでは先の方に進ませていただきますが、次に、産投会計の関係について大蔵省の方にちょっとお尋ねをしたいのですけれども、私も産投会計の方については余りよくわからないのですが、今度、電電会社それからたばこ産業会社の株の政府保有分が入りますね。先ほどもちょっと質疑があったわけでありますけれども、株の配当、大体八%くらいにでもなるのですか。何かそういうふうな動きのようでございます。これは結果を見なければわからないということになりますが、仮に、先ほどから言われておりますように、電電の方が二千六百億、たばこの方が五百億で三千百億、八%にすると二百五十億か二百六十億、そのくらいの金が今度は入ってくる、そういう見通しが一応あるわけであります。  その中で、今度は産投会計の方からセンターの方へ金が回ってくるのだろうと思うのでありますけれども、もちろん今年度は株を売るわけでありませんから六十年度は入ってこないんだが、六十一年度の基本財産を見ますというと六十億が産投から入ってくる、こういうことになっているわけです。これは基本財産というふうに説明資料の中では載っているわけです。これはセンターの方ですよ。センターの方は基本財産が百二十億。そのうちの六十億が産投会計の方から来て、三十億、三十億は開銀とか民間から来る、こうなっているわけなんです。  これは、産投会計の方からは当面、六十一年度には六十億来るということはわかるわけですが、その次はどうなっていくのですか。株の配当全額がこっちに来るのではないのじゃないか、こう思うのですけれども、六十一年度以降のセンターの事業費がどういうふうに動いていくのか、私よくわからないのです。その辺は後でまた通産の方から説明もしてもらいたいと思うのです。  産投会計の方ではセンターの方に出してなお残りがあるのではないかという気がするのですが、この残りについてはどういうふうにされるのか。産投会計の資金として残しておくのか。それと関連をして、産投会計の今度の改正法の中に、四条に、一般会計へ繰り入れるという項目が出ているわけです。一般会計への繰入規定を設けるということになっているのですが、これは、まさかという言葉はあれなんですが、今申し上げましたように電電なり専売の配当益が産投会計に入る、センターの方に何がしか出す、幾らか余る、余ったものを一般会計へ返すということではないのでしょうね。その辺のところがこれを見ただけではちょっとわからないものですから、御説明いただきたいと思うのです。
  99. 寺村信行

    ○寺村説明員 産投特別会計の概要をちょっと御説明させていただきますと、いろいろな資金、例えば余剰農産物資金でありますとかガリオア、エロアの資金というのは産業投資特別会計に入ります。あるいは一般会計からの繰り入れもございまして、そういったものの資金が今一兆七千億ございます。その分の配当収入が現在、先ほど御説明申し上げましたけれども、例えば日本輸出入銀行の納付金でございますとか、あるいは日本開発銀行の納付金あるいは、例えば電発に対しまして貸し付けをやっておりますから、その運用の利子収入が入ってきたり、日本航空の株式を保有しておりますものですからそれの配当金が入ってきたり、そういったことで産業投資特別会計の歳入が成り立っております。  したがいまして、六十年度は日本たばこ産業株式会社の配当収入もございませんし、それから新電電の配当収入もございませんが、そういう技術開発とか基盤技術センターに出資をするということが本来産業投資特別会計に期待されている役割でございますので、要求がございましたので、先ほどお話ございましたけれども、八十億の出資と二十億の貸し付けを予算編成の過程で一応検討いたしまして今御審議をお願いしている、こういうことになっているわけでございます。  そこで、六十一年度がどうなるかということは、これはまた来年度の要求各省から出していただきまして、基盤センターでございますと当然通産、郵政御協議なさって来年度要求が出てくる、その中で私どもが対応していく問題になると思います。  先ほども御説明いたしましたけれども、本年度は産業投資特別会計の歳出規模、特に貸付金と出資金合計で三百十四億の歳出を決めておりますけれども、その中には、例えば情報処理振興事業協会とか、それから日本科学技術情報センターでございますとか、こういったいわゆるセンター以外の技術協力、基盤技術開発のための予算、あるいは商工組合中央金庫に対する出資金百億とか、いわゆる中小企業対策の出資金とか、そういったものの出資も今までどおり、本来の産業投資特別会計に期待されている役割を果たすために行っているという状況でございまして、六十一年度は六十一年度で、要求が出てまいりました段階で全体の歳入規模を見ながらその配分を予算編成の中で検討いたしまして、国会の御審議をお願いする、こういう段取りになろうかと思っております。  以上でございます。
  100. 秋山昌廣

    ○秋山説明員 今回の産投会計法の改正案の中での一般会計繰入規定の御質問がございましたので、私の方から答弁させていただきたいと思います。  今回の繰入規定の創設でございますが、これは、この会計の歳入を産業開発等のための出融資に充てることといたしましてもなお剰余が生じる場合に、一般会計に繰り入れることができるということを目的とした規定の創設でございます。ただ、実態的な背景を少し御説明いたしますと、御承知のように国の財政が今大変厳しい状況にある。このような状況にかんがみまして、財政収支の改善を図り、国の財政の弾力的運用を図る見地から、今回別の法律改正案、すなわち輸開銀法の改正案で輸開銀の国庫納付金の増額、これは産投会計への国庫納付金の増額でございますが、輸開銀の国庫納付金の増額等を図ることによりまして、産投会計に生ずる余裕金があれば同特会から一般会計に繰り入れることを予定するために、今回の産投会計法の改正でこの一般会計繰入規定を創設した、かような次第でございます。
  101. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 そうすると、たばこ産業の株なり、あるいは新電電の株なりの配当がどのくらいつくかということはまだ予測はつきませんが、どちらも成長産業だということで、あるいはどんどんもうかるかもわかりませんね。そうすると、五%配当だとか八%なんということじゃなくて、二割まではいかないかもしれないが、一五%くらいの株の配当があるかもわからない。六十一年度以降は総体の資金需要というものを見なければ判断できないということになりますが、結果的に見て産投会計の方で余裕金が出てきたら一般会計の方へ繰り入れるということになれば、それは込みになってしまうでしょうけれども、形は変わっても政府保有株の分が産投会計の方に移ったということになるけれども、最終的にはその中からまた一般会計の方へ配当益が流れ込むということもあり得るということになるわけですね。
  102. 秋山昌廣

    ○秋山説明員 ただいま先生御指摘のとおり、産投会計に帰属した株式の配当収入金が一体どこに使われるのか、どこに使っちゃいけないのか、そういう特定化された形にはもちろんなっていないわけでございます。  したがいまして、六十一年度以降、例えば六十年度で言えば、先ほども御説明がありましたように、配当金収入がない状況のもとで基盤技術センター等に対する出融資が今回行われているわけでございますけれども、六十一年度以降、これはそのときになってみませんとわかりませんが、産投会計から出融資を行うのにふさわしい技術開発ニーズがどの程度あるのかということにももちろんよるわけでございますけれども、産投会計に帰属した電電株式の配当収入、この配当収入は考え方としてはこの会計における技術開発の促進等に活用するというのが基本ではないかと考えております。
  103. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 それはわかりますが、端的にお答えをいただきたいと思ったのは、この一般会計繰入規定というものができて、先ほどのお答えで私の聞き違いでなければ、産投会計の方に何か余裕ができたら一般会計の方に繰り入れをする、財政もなかなか大変な時代ですからと、こういうお答えがあったわけです。ですから電電株なりあるいは専売株の配当が仮に多くなったりして産投会計の方に余裕ができた場合には、形は変わってもその配当益が一般会計の方に流れ込むということにもなるのでしょう、こういうことなんですが、それは端的にどうなんですか。
  104. 秋山昌廣

    ○秋山説明員 昨年の十二月二十一日に政府・与党で意思決定をした中に、政府保有が義務づけられている株式は産投会計に帰属させ、その配当金収入を技術開発等に活用するという基本的な考え方が出ております。したがいまして、そういう考え方にのっとってこの産投会計の予算編成あるいは運用というものを考えていくということになろうかと思います。  いろいろ国会での御審議もございましたし、電電株式の処理をめぐるこれまでのいろいろな経緯というものもございました。そういうことを十分踏まえて、産投会計の予算編成については適切に行ってまいりたい、こういうふうに考えております。
  105. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 何か、私の質問にぴんと答えていただかなかったような気がするのですが、そうすると、改正の四条の一般会計繰入規定を設ける、こうなっているわけでありますけれども、「予算の定めるところにより、繰り入れるものとしここうなっているのですが、これはそうすると、NTTの株の配当とか、たばこ産業の株の配当についてはそれでは全額今度は技術開発のために使われる、こう理解していいのですか。
  106. 秋山昌廣

    ○秋山説明員 御承知のように産投会計から一般会計への繰り入れは、五十六年度に財確法で、特別な法律に基づきまして輸開銀の法定準備金の積立率というものを本則の千分の七から千分の五に引き下げて、そして増額される産投会計への納付金を財源といたしまして、産投会計から一般会計に繰り入れるというこの特別な法律で、産投会計から一般会計に繰入規定がございまして、それに基づいて五十六年度以降産投会計から一般会計に繰り入れがあったわけでございます。  今回、先ほども御説明をいたしましたように、別途輸銀法あるいは開銀法の改正、これは本則の改正でございますが、改正案の中におきまして、国の財政状況も勘案し、輸開銀の財務基盤を損なわない範囲内で積立率を引き下げるということにしておりまして、財確法では千分の五という臨時特例の積立率でございましたが、これをさらに千分の三、つまり本則の千分の七から今回の改正案で千分の三に下げる、こういうことで輸開銀からの産投会計への国庫納付金は相当の増額が見込まれる、そういったこと等を背景といたしまして、今回産投会計から一般会計に繰入規定を創設した、こういうことが背景でございます。
  107. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 いや、そのことについては今お答えを聞いてわかったんです。  それで確認をしたのは、専売とかNTTの株の配当益については、そうすると全額技術開発の方に使われるということになるのですね。それをひとつ確めたわけですが、それはそのとおりでいいんですか。
  108. 秋山昌廣

    ○秋山説明員 産投会計の予算編成はまだその年度年度ごとにやることになるわけでございますが、産投会計からの出融資を行うのにふさわしい技術開発ニーズがどの程度にあるかということはこれから議論の対象になろうかと思いますが、先ほども申し上げましたように昨年の十二月二十一日の政府・与党連絡会議で決まりました基本的考え方、つまり産投会計に帰属いたします。その三分の一の株式の配当金収入はこの特会において技術開発等に活用する、こういう考え方で今後運営をしてまいりたいということでございます。     〔田原委員長代理退席、浦野委員長代理着席〕
  109. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 それはわかりました。  それでは今度は、センターの方の予算というのは、センターができてからでないと予算はつくらないわけでありますけれども、一応概要の方を見ますと、六十年度の事業資金は四十億円となっているわけですね。それは六十一年度や六十二年度のことについてはわからないよと言われればそれまでだ、こう思うのです。しかしこういうものをつくろうとする限りにおいては、ある一定の構想があると思うのです。大体の大まかな事業資金の規模とか何かいうことはわかるのじゃないかと思うのですが、それではこの四十億円は当面どういうふうに使っていくのか、あるいは来年度以降どのくらいの資金が必要となるのか、わかる範囲内でちょっと教えていただけませんか。
  110. 福川伸次

    福川政府委員 このセンターは、法律がもし成立いたしますれば、その後設立準備に入らせていただくことを考えております。設立の時期としてはおおむね十月に設立、発足をいたしたい、かように考えております。  先ほどから大蔵省からも御答弁ございましたように、事業資金、出資及び融資の事業につきましてはそれぞれ産投会計から出資二十億、貸し付けが二十億ということでございますが、これはしたがいまして半年の予算ということでございまして、合計四十億、こういうことに相なっておるわけであります。  で、六十一年度に入って、しからばいかがなものになるか、こういうことでございます。半年予算でございますから、もし単純に一年に引き延ばせばその倍ということになりますけれども、今後このセンターも、先ほどからもいろいろ御質問がございますように、例えば新素材に役立つようなもの、あるいはバイオテクノロジーに役立つようなもの、あるいはマイクロエレクトロニクスに役立つようなもの、それから例えば新しい通信手段にかかわるもの等々のいろいろなニーズが出てくると思うわけでございます。  私どもといたしましては、今から、六十一年度以降どのような事業規模になるかということをここで明確に申し上げられるわけではございませんけれども、今後このテーマの選定ということにつきましては、私どもとしてはできるだけその重要度と熟度を見てこれを選定をしてまいりたいと思っておりますが、今後そういった技術開発、私どもとしてはかなりニーズは出てくるのではないか、かように考えておりますが、金額が幾らになるかという点につきましては、もちろんセンターの自主性を考えてやってまいりますので、今ちょっとここで申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思いますが、今後できる限りこのニーズを吸い上げて将来の技術開発に遺漏なきを期すよう努力をいたしたいと思っております。
  111. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 センターの自主性というものを尊重するということについては大変いいことだと思うのですが、審議をする我々にしてみますと、センターそのものというのは将来一体どんなふうになっていくのかというものをつかめないわけですね。つかむというのは、大体予算規模だとかどんなテーマを扱っていくのかということが、ああ将来センターというのはこんなふうになっていくんだというふうに我々理解がつくわけですよ。しかし、それはでき上がってみなければわからない。これはセンターの方だって困るのじゃないですか。例えば、資金がどのくらい回ってくるのか仮にわからないなんということになったら、やりたいと思ったってそれはできないということにもなりかねない。だから、本来であれば実際にセンター設立をされてからどんなことをやるかということはセンター自身がお決めになるのですけれども、つくる方の生みの親の皆さん方の方が、いやこの子はこういうふうに育てたいんだというような構想とかなんとかというものが何もなくて、ただセンターが必要だからつくります、あとは全部お任せくださいでは少しひどいんじゃないかという感じがするのですね。  これは今わからないということならしようがないと思うのですが、ちょっとこれに関連しまして、先ほど後藤委員の方からも指摘がございました。これは後で質問しようと思っておりました郵政との共管体制ということとも関連をしてくるわけでありますから、これも一緒に質問しておきたいと思うのでありますが、先ほどからの後藤委員とのやりとりを聞いておりまして、なぜ郵政と通産だけの所管のものにしたのだ、こういうことについて大臣やあるいは政府委員の皆さん方の方からもそれぞれ御答弁はございました。私聞いておりまして、なぜ郵政と通産の所管だけに絞られてきたのか。これはやはり電電株の売却益の使途をめぐっての争いと言っては語弊がありますけれども、そういうやりとりの中から生まれてきたのだろうと私は思っているのですよ。だから、郵政と通産の所管だけに絞られてしまった。  これはきのうの情報処理促進の法律審議の際にも私も申し上げましたけれども、本来であれば例えば情報処理なんていうものについてだって関連各省のものはたくさんあるじゃないか、そういうものをどうして一つにまとめたものをつくらないんだということを実はきのうだって主張したのですよ。これだって同じなのですね。もし本当に基盤技術というものの促進が必要であれば、先ほど後藤委員が指摘したように、それじゃ厚生省だとか農水省だとか、そういうものも含めたものをつくって、初めて国の一つ施策になるのじゃないですか。  こういうのが例えば、いや通産は郵政との関係があって、本来通産だけでつくりたかったのかもわからない。郵政は郵政だけでつくりたかったわけでしょう、電気通信振興機構というような形の中で。それがどうもうまくいかなくて両方が合体した。今度は農水は農水でつくるのだ、厚生は厚生でつくるのだということになれば、国の一貫した基盤技術の整備ということになっていかないのではないか、そういう可能性というのがあるんですね。むしろ行政が複雑になっていく。これはお互いにそういう研究の中でまた生かせるものだって出てくることもあるわけでしょう。そういうものが全然その扱いが違うということになれば、これはやはり問題があると思うのですね。その点が一つあります。そういう中で郵政と通産との共管ということになっているわけです。  お話を聞きますというと、いや郵政とは大変仲よくやっておりまして、決まるまでは随分ごたごたしたけれども、決まった以上は仲よくやって、うまくやっていくんだ、こういうことを前に聞いておるわけでありますが、やはり心配されるのはその点なんですね。ですから、この郵政との共管の関係について、両省の間でこの扱いというものを円滑にしていくためにどういう話し合いというものをされてきているか。あるいはこれからこの法案の中でも、これは郵政、これは通産ということがいろいろたくさん条文の中にもあるわけでありますけれども、それを今一つ一つお聞きする時間もないようですから、総括的にそういう共管の事項についての扱い方をうまくやっていけるということについての考え方をひとつまたお聞きをしたい、それが二つ目でございます。  それからもう一つは、その資金関係や何かについてもどうなるのだかわからないというようなお答えでもあったわけでありますが、そう簡単にいかないんじゃないか。これはもちろんやり方にもよるかもしれません。ただ、「あっせんする」とか、このセンターの業務の内容を見ますと、一つは、「民間において行われる基盤技術に関する試験研究に必要な資金の出資及び貸付け」、これは大した手間暇かからないと思いますね。それから「政府以外の者に対し、」「国の試験研究機関と共同して行うことについてあっせん」ですから、これも大した手間暇かからない。「政府以外の者の委託を受けて、基盤技術に関する試験研究を行うこと。」これはセンターの中では手間暇のかかるということになると思うのですよ。ですから、ここが一番重要なことになっていかなければならないと私は思うのですね。そうすると、この資金計画もわからないということになった場合に、どれほどの研究というものが一体できるのかという心配が一つあるわけです。  電電公社の場合には今の技術世界的にも有数な技術になっているわけですが、もちろんこれは基盤だけでなくていろんな面の技術研究をやっているわけですが、人員だけでも五十九年度は三千七十二人研究要員というものを配置しているわけですね。金額では千二百六十六億円というものをつぎ込んでやっているわけですよ。それくらいやってやっと外国と競争できるという今の技術に到達をしているわけですね。だから、そういう面から見て果たして大丈夫なのか、こういう心配もあるわけですが、その辺も含めてひとつお答えをいただきたいと思います。
  112. 福川伸次

    福川政府委員 幾つが御指摘がございました。  資金の需要の点につきましては工業技術院の方から後ほど答えさしていただきますが、まず第一に他省との関係、この基盤技術定義に絡みまして他省との関係についてのお尋ねでございます。  私どもといたしましては、いわゆる鉱工業の技術あるいは電気通信の技術、これがその基盤的なもので、民間活力を発揮させていくという上においては私どもとしては現段階においては十分そこで効果を発揮し得る範囲ではないかというふうに思っているわけでございます。今郵政省の方からいろいろ予算折衝の経緯等のお話がございましたが、私どもとしては、こういった産業経済、国民経済あるいは国民生活基盤になるような技術ということになってまいりますと、特に私どもの所管しております鉱工業の技術あるいは電気通信という関係が、今後の情報化の展開ということから見ますと基盤となる技術であろうというふうに思うわけでありますが、その技術成果は、企業化あるいは商品化段階で他省も十分御利用、御活用になり得る可能性というものはあるものというふうに思っておりますゆえに、法律関係行政機関の長と協議をするという条文からもお察しいただけますように、他省庁との連携ということは十分考えてまいりたいと思っておるわけであります。  それから二番目に、通産省と郵政省と共管、こういうことになっているのに、どのような話し合いをされたか、こういうことでございます。  私どもとしては、今申しましたように、いわゆる基盤技術開発が必要である、こういうことでその方向が出まして、郵政省とも、その後法律をつくります過程でいろいろと御相談をさせていただきました。条文をつくりセンターの組織をつくります過程で、大蔵省ともともども、郵政省と十分協議をさせていただいておるわけでございまして、今回のこの法律案をつくります過程では、まず郵政省とお話をし、大蔵省ともお話をし、それから関係省庁と調整に入ったということでございまして、まず第一段階で言えば、私どもとしては、郵政省と十分お話し合いの上で合意に達した、その上で他省庁ともお話をしていった経緯があるわけでございます。  もちろんこのセンターは、先ほど先生からも御指摘ございますように、できる限りこのセンターの自主性を尊重しようということで運用を考え、条文にもそのような趣旨を盛り込んでおるわけでございまして、両省庁が縄張り争いというようなことは、私どもとしては、いささかもないように十分努力しなければならないと思っております。その辺の考えは郵政省も同様ではなかろうかと私も思っておる次第でございます。  また、この資金に関する点でございますが、この出融資というのが、今回、この資金助成という中で、私どもとしては重要な業務であるというふうに考えております。これはもちろん、民間活力を発揮させる、こういうことでございますから、そのリスクマネーを供給をするということによって、民間の研究活動を従来の開発中心から応用に、あるいはまた、できればさらにさかのぼって目的基礎研究あるいは基礎研究へ引っ張っていこうということを考えておるわけでございますので、この出資あるいは融資という機能が非常に重要なものであるというふうに考えておるわけであります。  あと、関連の業務につきまして手間がかかる、かからないという趣旨のお尋ねもございましたけれども、この出資、融資という事業は、私どもとしても、その選択いたしますプロジェクトの重要度の選定等においては十分慎重を期してやらなければならない、かように考えております。  また、産官の連携等につきますあっせんの業務あるいは民間の委託を受けてやります試験というものもございますが、これはもちろん民間からの委託を受けてやるわけでございまして、これは私どもとしては、むしろ民間の施設、人を使いながら、それぞれ国の研究機関あるいは民間のポテンシャリティーをここで十分持ち寄って発揮をさせていこう、こういうことを考えているわけでございまして、これも今後の民間ニーズによっては重要な仕事になろうかと思っております。  プロジェクトがどの程度になるかという、資金に関します見通しにつきましては、工業技術院の方からお答えをさせていただきます。
  113. 荒尾保一

    ○荒尾政府委員 六十一年度以降の資金需要といいますか、資金計画がどのようになるかという点でございますが、通常でございますと、このセンターにおきまして原案をつくりまして、その要求と申しますか、それを通産省及び郵政省でよく内容を吟味した上で大蔵省要求する、こういうことになろうかと思います。ただ、六十一年度につきましては、十月発足を予定いたしておりますので、通常の予算要求の期限等から考えますと、センターがまだ発足をしていないわけでございます。  そこで、六十一年度分につきましては、代行と言うとちょっと語弊がございますけれども通産省及び郵政省におきまして、おおむねどのくらいになるだろうかという予測をいたしまして要求をしておくということになるのではないかと思っております。しかしながら、通常、予算要求の期限が御承知のとおり八月末でございまして、現在の状況におきましては、どのくらいになるかというプロジェクトの積み上げ等をしていないというのが実情でございます。  それからもう一つ、三号業務の関係でございますが、これも非常に重要な業務と考えておりますが、これにつきましては、その条文の中にも書いてございますとおり、政府以外の者の委託を受けてこの事業を実施するということで、民間からの委託ということになるわけでございます。したがいまして、その予算要求の中には含まれないものでございます。  以上でございます。
  114. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 この問題はもうちょっと保留しておきまして、郵政の方からおいでになっていただいておりますので、大変申しわけありませんから、郵政の方に一点だけ聞いて、お帰りをいただきたいと思うわけであります。  先ほどもちょっと同じような質疑があったように記憶しているのですが、電気通信技術あるいは放送技術の中で、このセンターで扱わなければならないような、いわゆるおくれているということになると思うのですが、そういうようなものはどんなものがあるのか、できたら具体的にひとつお知らせをいただきたいと思うのです。
  115. 奥山雄材

    ○奥山政府委員 個別のプロジェクトは別といたしまして、基本的な考え方として一般論で御説明をさせていただきたいと思います。  先ほどもちょっと述べましたけれども、これからの高度情報社会における電気通信の発達を展望いたしました場合には、やはり光技術というものが一応基本になろうかと思います。その場合、現在既に光ファイバーの技術というものが開発されておりますし、電電公社が開発いたしました光ファイバー技術、VADというのがありますけれども、これなどは、アメリカのATTが開発いたしておりますMCVDという方式と比べて何ら遜色ございません。例えばキロメーター当たりの損失でとりましても、〇・五ないし〇・八デシベルという非常に低いものでございますので、世界に冠たるものでございます。しかしながら、これの原理特許というものは依然としてコーニング社が持っているというようなことが実情でございまして、応用面、実用面におきましては世界のトップレベルにあると言ってもいいわけでございますけれども基盤的な技術あるいは基礎的な技術面におきましては、光の面におきましても諸外国にはるかに水をあけられているのが実情でございます。  電気通信回線とコンピューターが接合、融合された社会を考えますと、光というものが最初から最後まで、つまり、発信から伝送、交換、コンピューターにおける処理等を含めて、トータル的に光で一貫して行われるような社会になるはずでございます。このようなものは、素材技術あるいは素子技術あるいは処理技術、伝送交換技術全般にわたりますので、その意味におきましては、波及性といい影響度といい非常に大きなものがある、つまり基盤技術に相当するのではないかと思います。  また、現在、放送衛星並びに通信衛星が打ち上げられ、また、近く六十三年、六十四年にさらにCS3、BS3というものが打ち上げられる予定になっておりますが、これらも、例えば六十三年に打ち上げられる予定の通信衛星ではもう八、九割方国産技術になります。そういった応用面においては衛星放送技術世界のトップレベルにあると言っていいわけですけれども、二十一世紀における衛星通信あるいは放送衛星といったようなものを考えました場合には、現在の放送衛星技術あるいは通信衛星技術とは不連続の技術発展になることが予見されております。つまり、宇宙のベースを拠点といたしまして、そこにおいて衛星を組み立てるような技術開発される予定でございますので、これらはアメリカが最先端ではございますけれども、宇宙における衛星通信の組み立てから始まって、その発出、それから、実際の通信のシステムとしての構築に至るまでの非常に幅広い、また日本産業開発並びに衛星技術に資するすそ野も非常に広いわけでございますので、このような宇宙衛星における技術開発といったようなものも、これからの通信分野における基盤技術の最たるものの一つになるのではないかというふうに考えております。
  116. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 私の認識が間違っていれば別ですけれども、例えば通信衛星だとかあるいは衛星放送の関係について、衛星自体のものについてはまだ日本で研究しなければならないなどいう点はあると思うのです。しかし、それ以外の関係ではそんなにおくれていないのではないかという感じを私は持っているんですね。光通信の関係についてもそうだと思うのです。そして、例えば通信衛星なり放送衛星なりというものをそんなに使う関係が、これから出てくるかもわかりません、日経連ですか、第二電電の形で通信衛星を打ち上げて何とかというのはありますけれども、国内の企業の中で、今言われたようなことを直ちに必要とする企業というものがそんなにたくさんあるのだろうか。一般的に基盤技術というものを利用しなければならない程度のことであったら、今の、例えば電電の技術だとかNHKの技術なんかでもってやっていけるのではないのかなという気がするのですね。  私は技術の方はそんなに詳しくはございませんから、いやいやこういう点がたくさんおくれているのだということであれば別でありますけれども。それで私は、例えばこういう面ということで本当は具体的に指摘をしてもらいたかったのですが、時間がなくなってきたものですからその点についてはいいのですが、疑問としては残っているんですよ。私は電電公社の方にもいろいろ聞いてみましたけれども、さあそれは、基盤的なものはほとんど電電で賄えるのではないですかということを言っておりましたのでちょっと疑問に思ったのですが、その点はよろしゅうございます。  わざわざお忙しい時間、おいでいただいてありがとうございました。郵政の方は終わりますのでどうぞ御退席なさっても結構だと思います。  時間がなくなってまいりましたので少しまとめて聞いてまいりたいと思います。  簡単に聞いていきますが、一つは、民間から委託を受けて行う試験研究機関というのは、当面センターみずからが共同研究して、施設とか設備を持たないということで考えられているようなんですが、民間から委託を受けて行う試験研究というものが仮にどんどん出てくるといったことになった場合に、独自のそういう施設というものを持たなくて、国立の方々のところを借りて歩くというのですか、そういうふうな形でやっていけるのかどうかということなんですが、その点をお尋ねしておきます。  それから、日本基礎研究というものがどうしておくれてきたのか。これは研究費との関係もあると思うのですが、政府基礎研究開発費というものは、いただいた資料などによりましてもほんのわずかだ、こういう状態になっているんですね。これは後の方にも関係してまいりますが、国の研究者、私の聞いている範囲内では日本の優秀な研究者というものはどうも海外へ流出をしていっているのではないか。頭脳の海外流出なんということが何か言われておったような気もするわけでありますけれども、そういう面について何か把握しておられる点があるかということですね。  それから、これからこの基盤技術開発というものをどんどん促進していくということになれば、研究者の処遇改善ということも非常に必要になってくるのではないか。これは先ほど同僚議員の方からも指摘がございましたが、研究する環境というものをよくしてやらなければならないだろう、そういうものが一体になって進められていかないとなかなかうまいぐあいにいかないのではないか、こういう気がするわけでありまして、その面も含めてお知らせをいただきたいと思います。
  117. 荒尾保一

    ○荒尾政府委員 第一番目の三号業務につきまして、センターみずからが試験設備等を持つかどうかという点でございますが、私どもこの三号業務につきましてはプロジェクトベースと申しますか、そのときそのときのニーズに応じまして弾力的に研究を実施していくということを考えておるわけでございます。したがいまして、固定的な非常に大きな設備を持ったり、あるいは人を固定して投入するという形ではなかなか需要に応じ得ないのではないかと思っております。したがいまして、当面はプロジェクトごとに、例えば施設につきましては民間等の施設を借り上げる、そこで共同研究を行うというふうな形を考えておるわけでございます。その後非常に大きなニーズが出てくるというような事態におきましては、また再検討するということもあろうかと思いますが、当面はそういうことを考えておる次第でございます。  それから、日本技術の状況、特に基礎的な技術等の状況でございますけれども、これは一般的におくれておるというふうに言われておりますし、私どももまたそういうふうに認識をいたしております。  その原因でございますが、これは非常に歴史的な長い経緯の中で考えなければならないと思いますけれども、非常に端的に申し上げてしまいますと、何といいましても欧米へのキャッチアップということを中心に考えた、その結果技術導入を行う、その導入技術をもとにいたしまして主として開発あるいは企業化商品化というところに力を入れてきた、しかも日本の場合には、研究開発の大宗が民間支出に依存をしておるということから、民間における基礎研究費支出あるいは応用研究費支出といったところが手薄であったというところが大きな原因ではないかと考えるわけでございます。  その中で、それじゃ政府はどれぐらいの支出をしておるかということでございますが、政府全体の支出につきましての統計はございますが、政府支出の中で基礎研究に対してどれくらいのものであるかというのはなかなか的確な資料がございませんけれども、総務庁が科学技術研究調査報告というのを出しております。これによりますと、昭和五十八年度におきまして、政府全体の使用研究費の三三・七%、四千百五十四億円であるというふうな統計になっております。この政府関係基礎研究費と申しますのは、国公立の研究機関あるいは国公立大学、特殊法人の研究機関の合計でございまして、このほかに、例えば午前中出ておりました次世代の委託費等は含まれていないわけでございます。したがいまして、これらの研究機関自身が基礎研究のために使いました費用は今申しましたような数字になるわけでございますが、基礎的な部分について政府支出ということで考えますと、若干これを上回るのではないかというふうに考えております。  それから、研究者についての処遇の改善ということでございます。この関係で国内から頭脳流出といいますか、海外への頭脳流出がどのくらいあるかという点につきましては、いろいろ調べてみたのでございますけれども、どれくらいの人が頭脳流出しておるかという数字等はちょっと明確に把握をできなかった次第でございます。しかし現実に、確かに海外へ日本人の優秀な方々が研究に出ておられるということは事実でございますが、これは必ずしも頭脳流出とだけは言えないのではないか、海外での国際的な共同研究といいますか、そういう面で裨益している面もあろうがと思います。しかし、我が国の研究環境が十分改善されていないという面は御指摘のとおりではないかと思います。財政状況等非常に厳しい状況でございますので、潤沢な研究費とかあるいは研究環境の整備がなかなか困難な面もございますが、そういう厳しい状況の中で、できるだけこういった面について今後とも配慮をいたしていきたいと考える次第でございます。
  118. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 評議員会の役割関係についても少しお聞きをしたかったのでありますが、もう時間がございませんので、最後に一つ貿易研修センターの今後の運営についてお尋ねをしておきたいのです。  今度、貿易研修センターは、この技術開発の方の、こちらのセンターができることによって、今まで特別認可法人であったのが財団法人に変わるということになるわけでございます。当然国としても貿易研修センターの方は後は構わないよということにはならぬとは思うのでありますが、何たってそれは新しくできるセンターの方がうまくいかないと、これは大変なことになるわけですから、恐らく新しくできるセンターの方には相当な力は入れられると思うのですね。そういうことによって、今までせっかく貿易研修センターの方が一生懸命やってこられて、国際協調だとか、あるいは世界経済発展に寄与するとか、そういうことをやってこられた方がだめになってしまうということではこれまた困ると思うのでありまして、そちらの方については今後どういうふうな扱いをされていくのか、最後にお尋ねをして終わりたいと思います。
  119. 鈴木直道

    鈴木(直)政府委員 先生御指摘のとおり、我が国の国際経済化が進展するのに対応いたしまして、貿見人、特に国際貿易人の育成の必要性はますます高まってまいると思います。  今回御提案しております法律に基づきまして、貿易研修センター特別認可法人から民間法人へ移行するという道を開くわけでございますけれども、それ以後につきましても、ますますその役割は高まると存じます。民間の方々の知恵をいただき、その創意工夫を生かしながら民間法人化して自立をしていく、ますます役割を果たしていく、こういう方向で私どもとしても指導助言は続けてまいるつもりでございます。
  120. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 時間ですので終わります。
  121. 浦野烋興

    ○浦野委員長代理 以上で奥野一雄君の質疑は終了いたしました。福岡康夫君。
  122. 福岡康夫

    ○福岡委員 私、基盤技術研究円滑化法案質疑を行うに当たって、いろいろ関係者にお尋ねいたしましたのですが、まず最初にお尋ねした方、これは産業政策について関心を持っておられるお役所の幹部にお聞きしたところ、そもそも現在このような法案を提出する必要性があるだろうか、現行の諸制度で十分賄えるのではないか、欧米諸国にこのような内容の法律はあるのだろうかというような非常に消極的な御意見があったわけでございます。  そこで、民間の方に聞いてみようと思いまして、私、ある中小企業の経営者の方にこの法案の内容についての御意見をお聞きしました。やはり消極的な発言でございまして、大企業の優位につながって利権の温床になるおそれがあるのではないか、そして、基盤技術促進センターは中央官庁のお役人の天下り先となるのではないだろうかとの御意見でございました。  私、我が党の基本姿勢といたしまして、調査なくして発言なし、この基本姿勢に基づきまして、まず私、自分の目で、耳で確かめてみたいと思いまして、とにかく民間企業において技術研究はどのように進められておるのか、こういうことで先日東京の近郊の大手企業の研究所を御訪問させていただきまして、関係者にいろいろお話をお聞きし、また、いろいろ実態を見さしていただいたわけでございます。研究所の部長さんらのお話によると、結論的には、今後我が国企業が国際競争に打ちかつためには基礎研究に先行投資するような状況になってきているのだ、先生、この点はこれからの日本産業政策推進に非常に大事なことだという御意見を伺ったわけでございます。  また、その研究所でいろいろ見学させられた時点におきまして、直接私、新素材の開発であるファインセラミックスを自分の手で持って、いろいろ関係者の御意見を伺いましたところ、やはり非常にこの政策は必要だというような感じを徐々に持ちつつあるわけでございます。  私は、本法案の提案理由は説得力はあると思います。問題は、法施行後の運用が公正かつ適正になされていくのかどうか、小資本、少人数かつ企業経歴の短いベンチャー企業助成面において不利な取り扱いがなされるのではないか、また、センターの出融資に当たって中小企業の方々が制約を受けて、せっかくの助成が受けられぬのではないかというような心配が私はあるのでございますが、この点について通産省の御所見を総括的にお伺いしたいと思います。
  123. 与謝野馨

    ○与謝野政府委員 先生にお答え申し上げます。  技術開発は、将来におきます経済社会の発展基盤の確保、新たな雇用の場の創出等に大きな役割を果たすわけでありまして、その促進は大変緊急、喫緊の課題であるわけでございます。特に我が国におきましては研究開発支出の大宗を民間が占めておりまして、民間における技術開発が積極的に促進されますように、環境条件の整備を図ることが不可欠であると考えているわけでございます。  本法案に定められております試験研究円滑化のための規制緩和的措置基盤技術研究促進センターの業務は、このような認識のもとに、規模の大小を問わず広く民間における試験研究を促進するためのものでございます。  なお、国有の試験研究施設の減額使用、また、センターを通じた出融資事業等につきましては、みずから技術開発実施しようとする中小企業にとって十分利用可能な制度と当省としては理解をしているわけでございます。  一方、中小企業が全体として活力ある成長を遂げていくためには、中小企業技術革新の進展に即応しつつ技術開発推進していくことが重要であると考えております。このため、通産省といたしましては、中小企業技術開発力の抜本的な底上げを図るための中小企業技術基盤強化税制を創設するとともに、従来の技術向上対策にいわば上乗せする形で、最近の技術革新の進展に即応した技術で著しい新規性を有するものの開発を行う中小企業に対し特別の対策を講ずることとし、その根拠となるべき中小企業技術開発促進臨時措置法案を本法案に加えて国会に提出しているところでございます。
  124. 福岡康夫

    ○福岡委員 この法案は、私考えてみるに、民間企業技術開発を促進するためその基盤を整備しようという目的を持っておる、その実施の仕方いかんによっては競争政策上の問題も生じてくるのではないかと思うわけでございます。  次に公正取引委員会にお伺いいたしますが、先般公正取引委員会は、民間企業研究開発について実態調査を行われたとのことでございますが、その調査の趣旨目的、概要について御説明をお願いしたいと思います。
  125. 厚谷襄児

    厚谷政府委員 お答えいたします。  近年、企業活動におきまして研究開発活動というのは非常に重要になってきておりまして、国内におきましては企業研究開発戦略が市場構造に大きな影響を与えるようになってきております。また、これを海外について見ましても、アメリカECでは民間研究開発推進するために共同研究開発に対する考え方、取り扱い、それを明確にするという動きが出てきておるわけでございます。  先生御案内のことと存じますが、公正取引委員会としましても、今後の重要な課題技術の問題である、このように考えておるわけでございます。そこで私どもとしましては、研究開発の実態と問題点、課題というものをこの際競争政策観点から整理しておく必要があるのではないかということで調査したわけでございます。  調査は昨年一月に実施いたしまして、業種は、電機、通信、自動車、その部品、化学及びその他の素材工業ということで、対象としましては原則として上場企業対象としましてアンケート調査によって行ったところでございまして、回答をいただきました企業は二百四十二社に上っております。  以上でございます。
  126. 福岡康夫

    ○福岡委員 次にお伺いしたいのは、民間企業研究開発活動には、みずから研究開発を行う場合と、他の企業開発した技術の供与を受ける場合とがあると私は思うのでございますが、公正取引委員会は、この調査で民間企業がみずから研究開発活動を行っているものの実態についてどのように把握しておられるのか、御説明をお願いしたいと思います。
  127. 厚谷襄児

    厚谷政府委員 研究開発活動をみずから行っている企業の実態につきましては私ども調査して、ごくかいつまんだ結論だけお答え申し上げますと、何分にも対象が原則として上場企業でございましたので、ほとんどの企業がみずから研究開発活動を行っておるわけでございます。  それじゃ一社当たりどのくらいの金額かというと、昭和五十七年度で約六十億円でございます。これをほかの調査と比較してみますと、総務庁統計局の科学技術研究調査報告というのがございまして、それによりますと一社当たりの研究開発費が二億九千百万円でございましたから、私どもが調査いたしました対象企業はその約二十一倍ということでございます。最近も非常に増加しておるということが言えると思います。これは、上場企業でございますので、研究開発活動が大規模になり活発になっておるというふうに評価できるのじゃないかと思っております。
  128. 福岡康夫

    ○福岡委員 では、一方の、他企業から技術の供与を受けるいわゆる技術取引の実態について、御調査されておればその実態を御説明願います。
  129. 厚谷襄児

    厚谷政府委員 近年、技術取引というものが非常にふえてきておるというふうに私ども認識しておるわけでございまして、それも調査の対象にさせていただいたわけでございます。それを件数で見てまいりますと、昭和五十七年度に契約を締結した企業は回答企業数の六七・九%でございまして、一社平均で九・九件技術取引契約を結んでおるということでございます。  その内容について見ますと、契約締結件数が毎年約九%ぐらい増加してございますし、特に資本金が百億円以下の企業の増加率が目立っておるということが言えます。二番目に、契約の相手企業が同種の企業、同業種の企業、これが三分の二を占めております。国内企業が相手の場合には、同業種の企業と異業種の企業というのは半々になっておるということでございます。それから、企業の系列あるいは下請企業を相手としているものが多いのかというと、これは割合に少ないということでございます。三番目に、契約の対象とします技術を見てまいりますと、特許が過半を占めておりますが、そのほかに、ノーハウ、技術指導というものが多くなっております。それで、海外企業を相手といたしますときにはノーハウ、技術指導の方が特許よりも高い割合になっておるということでございます。契約条項について見ますと、若干でございますが、対象技術の改良、応用開発というようなものについて制限条項といいますか、こういうものが含まれている例も見られるわけでございます。  以上でございます。
  130. 福岡康夫

    ○福岡委員 研究開発の活動のうちでも他の企業と共同で行ういわゆる共同研究開発については、特に市場における競争に与える影響も非常に大きいと私は思うのですが、我が国現状における共同研究開発の実態なりこれについての競争政策上の問題について、お調べになっておれば御意見をお伺いしたいと思うのです。
  131. 厚谷襄児

    厚谷政府委員 先日行いました調査におきましては、私ども共同研究開発につきましても対象にしたわけでございますが、昭和五十七年度におきましてそのような共同研究開発に関する契約を締結した企業は回答企業の五四・九%でございまして、一社当たりにいたしますと八・七件ということになっております。これはかなり活発に共同研究開発が行われているんじゃないかということが言えるだろうと思います。  その特徴としまして、約五点ほど指摘できるのじゃないかと思います。  第一点は、共同研究開発は国内、海外を問わず大規模企業において特に活発に行われてきておりますが、最近の傾向としましては、次第にその実施企業が拡大してまいりまして、比較的規模の小さい企業においても活発に行われてきつつあるということでございます。  第二点は、共同研究開発を性格別に見ますと、研究開発の形には基礎研究応用研究開発研究というようなタイプがございますが、そのうちの開発研究に属するものが過半数を占めておるという点が特徴でございます。  第三点に、共同研究開発に参加する企業の数を見てまいりますと、二社で行うというものが大部分でございます。また、同業種企業間の共同開発というのは比較的少のうございまして、異業種企業間の垂直的な共同研究開発が大部分を占めておるということでございます。  それから四番目には、鉱工業技術研究組合によるものは全体の五・五%と少のうございますが、その中で共同研究をやります構成員が六社以上の場合にはほとんどがこの法律に基づく技術研究組合を利用しておるということが言えると思います。  それから五番目の特徴といたしましては、共同研究開発の契約条項の中に参加者の事業活動の制限や成果の利用の制限を内容とするものが見られたという点が指摘できるかと思います。  そこで、先生から御懸念がございましたように、競争政策上問題があるのかどうかという点でございますが、まず共同研究開発というのは、研究開発の費用の大きさ、成果を得ることが非常に不確実なもの、あるいは単独企業では実施困難なもの、こういうものについて行うということで、これは競争政策からいってもメリットが大きいのじゃないかと考えております。また一方、異業種間の共同研究開発によりまして、新しい業際分野と申しますか、そういうものに進出して競争が活発になるというような可能性も評価できる面かと思っております。しかし一方では、製品市場に直結するような製品開発などの共同研究開発、あるいは参加企業が非常にシェアが大きいというような場合には、製品市場に影響を及ぼすおそれがあるのではないかということを若干私たちは注目しておるところでございます。  それから、共同研究開発に際しまして締結される契約等におきまして、参加者の事業活動が不当に制限せられるというようなことがありましても、これは競争に悪影響を与えるおそれがあると考えておりまして、この辺、私どもの大きな関心事である、このように言えると思います。
  132. 福岡康夫

    ○福岡委員 今までのお話をお聞きしますと、いろいろ影響を及ぼすことも考えられるような点が指摘されておりますが、この点について、公正取引委員会は基本的にどのような姿勢でこれに臨んでいくつもりでございますか、ひとつ御所見を御披露願いたいと思うわけです。
  133. 厚谷襄児

    厚谷政府委員 今もお答え申しましたようなことで、競争と研究開発活動というものについて、まず私どもは回答企業がどのように考えておるかということで見てみますと、その大部分は、市場における競争が激しいということがかえって研究開発活動を活発化するというふうに答えてございます。それから、多くの企業は新規分野の開拓をねらった研究開発につきましては非常に積極的である、こういうふうに答えでございます。事実もそうでございます。  こうしたことから見てまいりますと、我が国の場合は、どちらかと申しますと製品市場の競争が研究開発努力を促し、それがまた新たな事業分野の開拓をもたらすというようなことで、競争を活発にする傾向が強いというのが今の私どもの基本的な考えでございます。  先ほどから申し述べましたように、技術取引とか共同研究開発についても、一般的には研究開発期間を短縮する、あるいは費用を節減するというような効果がねらいとして行われておるということもございますし、異業種企業の持つ技術を利用する、そのことによって新しい技術開発して新分野への進出を図るというようなことを見ましても、競争促進的側面というものはやはり強いのではないかというのが私たちの基本的な観点でございます。  しかしながら、先生また御質問の中で御懸念がありましたような研究開発の持つ競争制限的な影響と申しますか、あるいは技術取引に際しまして、特許法によって保護されておるその権利の行使を逸脱するようなこと、それによりまして取引の相手方の事業活動を不当に制限するということになりますれば、これは独占禁止法上の問題が生じてくるのではないかということでございます。したがいまして、公正取引委員会としましては、独占禁止法に違反する行為に対しては厳正に対処していかなければいけない。それと同時に、研究開発活動や技術取引に対して、今後一層活発化するという状況を踏まえまして、競争政策上の問題点ということとその実態ということについては引き続き注視し、できる限り競争促進的機能が十分に生かされ、弊害が出ないように十分に関心を払っていかなければいけないというのが私どもの基本的な考え方でございます。
  134. 福岡康夫

    ○福岡委員 次に、通産省及び郵政省の方にお尋ねいたしたいと思うのですが、本年の三月十一日付の日本経済新聞の記事に科学技術庁が本年一月にまとめた日米の科学水準研究開発力を比較した報告書の解説が出ております。  これによりますと、我が国が米国より科学技術水準研究開発力ともに上回っておると言われておるのは、ファクシミリ、複写機、磁気浮上列車、都市防災の四つにとどまっておるわけでございますが、「基礎研究の蓄積が問われる分野で米国の実力はずばぬけている」と言われております。  この研究円滑化法の施行によって将来の展望が開け、先端技術分野等で米国のレベルにどの程度近づくことができるようになるとお考えになっておられるのか。通産省及び郵政省の御見解をひとつお願いしたいと思うのです。
  135. 等々力達

    ○等々力政府委員 ただいま御指摘ございましたように、基礎研究分野あるいは応用研究分野で米国が世界で断然一番であるという御意見のとおりの実情だと思います。非常に大きな開きがございます。それじゃどうやってそういう分野における力を日本がこれからつけていかなければならないかという点でございますけれども、これは研究費ばかりではなくて研究を行う人の能力あるいは人数、そういうようなものも全部影響してまいります。我が国では今研究者の数が三十七万くらいおるそうでございますが、その大部分、三分の二以上は民間会社の研究者でございます。  そういうことから申しましても、民間の方で今後基礎研究あるいは応用研究をかなり推進していかなければいけない。そうしなければ、日本全体の基礎研究分野あるいは応用研究分野のレベルが上がらないということであると私ども考えております。  そういう意味で、今回のこのセンター法案、円滑化法案によりまして、こういう分野民間企業における研究のやりやすさというか、そういうようなものが円滑に行われれば、遠からずといいましょうか、そういう段階で相当のところまで日本も進み得るのではないか、そういうふうに考えております。
  136. 奥山雄材

    ○奥山政府委員 電気通信分野についても先ほどのお答えと同じようなことになると思いますが、確かにファクシミリ等若干の部分につきましては日本の方が優位に立っているものもございますが、おおむね欧米に比べて低位にあるというのが事実でございます。  そこで、電気通信というものの技術を突き詰めていきますと、符号や音響を送ったり、伝えたり、それを処理したりということでございますので、人間の知覚機能あるいは頭脳の機能と非常に似てくるわけでございまして、電気通信技術というものを最終的に左右するのは、人間の脳機能の解明にかかるであろう、あるいは言語機能並びに音声認識機能にかかるであろうと言われております。ところが、これらの基本的基礎的な部分につきましては、彼我の間に相当のギャップがございますので、いつごろまでにキャッチアップできるかということを現時点で明確に申し上げることは困難であろうと思っております。  しかしながら、今回の基盤技術研究促進センター等を通じまして、民間活力をさらに促進しながら、電気通信分野におきましても基盤技術がさらに推進されていくことによりまして、少なくとも日本国民生活あるいは国民経済に必要な部分につきましては、電気通信の部門における技術が二十一世紀のある時点においては欧米先進諸国にまで追いつけるのではないかということを期待しておるところでございます。
  137. 福岡康夫

    ○福岡委員 現在我が国中小企業を取り巻く環境は、消費者ニーズの多様化とか大企業との技術格差の拡大とかエネルギー資源の制約など非常に厳しいものがあるわけでございますが、私、本件の質問に当たりまして、「産業技術開発政策のあり方について」昭和五十九年十一月二十七日の産業構造審議会と産業技術審議会との共著の報告書を読ませていただいたわけでございますが、中小企業がこのような状況を克服し、今後とも発展していくためには技術重要性を十分に認識し、真剣に技術開発に取り組まなければいかぬと私は思うわけでございますが、その点について、この「産業技術開発政策のあり方について」と題する報告書の三十三ページの提言は評価できるものであると私は思うわけでございます。そこには、「中小企業が今後とも技術開発分野において期待される役割を果たしつつ健全な発展を遂げていくためには技術基盤が弱く、かつ、資金調達力にも乏しい中小企業に対して特段の措置を講じ、その技術力の向上を図ることが必要である。」と書いてあるわけでございます。ところで、このたびの研究円滑化法案はこの提言の趣旨がどの程度生かされているのか、通産省の御意見をお伺いしたいと思います。
  138. 福川伸次

    福川政府委員 先生御指摘のように十一月二十七日付の両審議会の報告によりますと、まさに中小企業がこれから多様化するニーズに対応していくために、あるいはまた日本経済を支えている中小企業が持続的な発展を遂げていくためにも、この技術開発力充実強化が非常に重要であるということを指摘しているわけでございます。そのためにこの報告の中では「新たな産業技術開発政策実施するに当たっては、このような既存の政策と有機的連携をとりつつ、それぞれの政策が相まって最大の効果を発揮するよう、十分な配慮を行うことが必要である。」ということでございます。従来から、私ども通産省におきましては技術開発政策はいろいろと重点を置いて財政、税制等に関して努力をしてまいったわけであります。  今回のこの法案についてでございますが、今回はこの基盤技術というものを民間活力を発揮しながら進めていこうということでございまして、今引用なさいました答申趣旨にもかんがみまして、この法案におきましては規模の大小を問わず広く民間における試験研究を促進することとしていくということでございますが、しかしまた、あわせてこの中小企業につきましては、例えば中小企業技術開発促進臨時措置法案を本法案のほかに提出をさせていただいて、今後この中小企業技術強化という点につきましては両々相まって進めていくということを考えております。また、従来増加試験研究費税額控除制度という制度がありましたが、中小企業が比較的この制度に乗りにくいという制約がありましたので、それを配慮いたしまして、試験研究費を支出いたしました場合には、増加分ではなくて開発費そのものについての税額控除を導入するという観点中小企業技術基盤強化税制の創設ということもいたしたりいたしまして、さらにまた地域システム技術開発事業の創設といったような施策をいたした次第でございます。  したがいまして、この法案自身につきましては、もちろん中小あるいは大企業という区別を設けることなく、大企業に偏することなく運用もいたしてまいりますのは申すまでもございませんが、さらにあわせて、今申しましたように中小企業技術開発促進臨時措置法案その他の諸措置と相まちまして、中小企業技術力強化という点につきましては通商産業政策の重点課題として今後も十分意を用いてまいりたいと考えております。
  139. 福岡康夫

    ○福岡委員 しからば、これらの報告書に盛られた提言が法案の中にはすべて消化されていないのでございますが、積み残された提言の中に将来法改正によって盛り込むことを考えておられるものがあるのかどうか、この点について通産省の御見解を御表明願いたいと思います。
  140. 福川伸次

    福川政府委員 ただいま申しましたように、中小企業関連につきましては、この法律のほかに新しい立法を考える、あるいは別の財政、予算あるいは税制、財投といった措置を考えるということで、両々相まって総合的に有機的にやっていこうということでございます。  またそのほか、先生が恐らく念頭に置いておられるかと思います点の中で、いわゆる国の委託研究開発、これについての国有特許権の共有化というようなことがこの答申の中に盛り込まれておるけれどもこの法案には入っていないということがございます。そういう問題につきましては、実はいろいろ私どもでもこれは子細に検討いたしたわけでありますが、今のこの国の委託研究開発によって国有特許が生じました場合に、これを民間に対してインセンティブを与えるという趣旨でこれの共有化を図っていく、こういうことにつきましては、現行法律範囲の中で、いわゆる逆に申せば法律改正を要しないでも政令改正等の別途の措置でその実現が図り得るということでございまして、そういった答申に盛り込まれておりますような御提案という点につきましては、私どもとしてもできるだけこれの実現を図るように、今後の運用の点も含めまして対応してまいりたいと考えております。
  141. 福岡康夫

    ○福岡委員 では報告書の十一ページの「既存の大学、研究機関の枠にとらわれない新たな高等教育研究機関の設立」の検討の必要があると私は考えておるわけでございますが、この設立の問題についてどういうような御見解をお持ちか、ひとつお聞かせ願いたいと思うのですが……。
  142. 福川伸次

    福川政府委員 御指摘のように、この技術開発を進めるに当たりましては人材育成という点が非常に重要でございまして、産業界も大変大きな関心を寄せているテーマでございます。この問題につきましては、今例えば臨教審の場でいろいろ議論になっておるところでございます。私どもとしては、そういった議論の動向を見据えますとともに、同時に民間ニーズがどのように動いていくのかというようなことで、中長期的観点に立っていわゆるこの研究者の育成の施策方向という点につきましては、今後鋭意検討してまいりたいと考えております。
  143. 福岡康夫

    ○福岡委員 報告書の二ベージには次のとおり記載されております。「財政再建の重要性自体は十分理解しうるものであるが、国による技術開発基盤の確保は、将来にわたる我が国発展基礎を築くものであり、かかる意味において技術開発に係る国の負担を拡大していくことが喫緊の課題であることについて疑問の余地はない。」と書いてありますが、そこで基盤技術研究に使用されている国の負担について、米、英、西ドイツとの比較の御説明をひとつお願いしたいと思います。それとともに、昭和六十一年度以降の国の負担の規模はどの程度が適当であるのか、通産省の御見解をお願いしたいと思うわけです。
  144. 荒尾保一

    ○荒尾政府委員 まず最初に技術開発費の中で政府負担がどのくらいの割合になっておるかという点でございますが、一九八三年におきまして米国は四六%でございます。英国は一九八一年でございますが、ほぼ五〇%ということでございます。西独は一九八三年におきまして四二%ということになっておりまして、欧米先進諸国は四割ないし五割というような状況になっておるわけでございます。我が国の場合は一九八三年度におきまして二四%でございますので、これに比べますと、これらの諸国の比率が非常に高いわけでございます。この報告書の二ページに今御指摘のとおり書かれておるわけでございまして、今後技術開発におきまして国の期待される役割がますます増大するわけでございますが、これに対して国の負担割合をどのくらいまで上げるべきかということでございます。これにつきましては、今朝来引用されております、昭和五十五年に作成されました産業構造審議会の八〇年代の通商産業政策のあり方に関する答申、いわゆる「八〇年代ビジョン」におきまして、欧米並みに少なくとも四割程度の政府負担という目標を掲げておるわけでございます。財政状況が非常に厳しい状況でございますので、非常に短時間のうちにこの目標を達成するというのはなかなか困難な事情もあるわけでございますけれども、長期的には、今日におきましても、このビジョンで掲げました目標は妥当性を失っていないのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  145. 福岡康夫

    ○福岡委員 次に御質問したいのですが、小資本とか少人数、企業経歴の短いベンチャー企業が、本法の施行後、大企業の場合と同等かつ公平に国有試験研究施設の廉価使用センターの行う出融資の取り扱いがなされるために、どのような配慮を通産省は考えておられるのか、ひとつ御説明願いたいと思います。
  146. 福川伸次

    福川政府委員 本法案措置の運用に当たりましては、対象となります民間企業の規模の大小ということに差があってはならないと考えております。廉価使用につきましても、基盤技術に関する試験研究を行う民間の申し出に応じまして、その試験研究施設の運用状況を見ながら、順次使用を認めていくということにいたしたいと考えております。  また、センターの出融資事業の対象につきましても、今先生御指摘のように、小資本とか少人数のベンチャー企業といったようなものが特に不利益なことにならないように、もちろんプロジェクトの優先度、プロジェクトの熟度、重要度等に応じまして、プロジェクトに即しまして技術的に判断をしてまいりたいと考えておるわけであります。そういう意味で、特に中小企業に対して不公平に取り扱うということは絶対にあってはならぬと思っております。  いずれにいたしましても、技術開発推進のために、中小企業技術力向上に寄与するということを念頭に置きながらこの運用に当たりたいと考えております。
  147. 福岡康夫

    ○福岡委員 現在、異業種の中小企業の組織化が進んでおりますけれどもセンターからのこの出融資が、このような場合にも出融資の対象になるのかどうか、この点ちょっと私わからないのでございますが、ひとつ御説明願いたいと思うのです。
  148. 福川伸次

    福川政府委員 先生御指摘のように、特に中小企業に関しましては、組織化を通じましてその中小企業企業力の充実強化を図っていく、あるいは経営力の強化を図っていくという動きがあるということは申すまでもございません。     〔浦野委員長代理退席、田原委員長代理着席〕 今御指摘のように、この中小企業の過小性等の問題を克服するために、従来から組織化が進められております中で、異業種の中小企業についても、事業の協同組合あるいは企業組合というような格好で企業の組織化が進められているわけであります。  今回のこの措置といいますのは、先ほども当委員会の質疑で申し上げましたが、私どもとしては、異業種に属します複数の企業基盤技術を行います場合に出資を行う、また、応用研究については融資を行うということでございまして、主としてこれは、共同のRアンドD会社をつくっていくというような格好で出資をしていくということを考えておるわけであります。また、融資は個別の企業対象にしていくということを念頭に置いて考えておるわけであります。  この中小企業の組合としての活動ということにつきましては、別途、中小企業の組織対策という中でその充実強化を図っていくということが運用としては適切ではないだろうか、かように考えております。  もちろん、法律的に申しますれば、一般論で言えば、このセンターによる融資の対象としてもなり得るところでございますが、組合は組合という一つの性格がございますので、むしろそういった意味では、この出資の対象ということにつきましては、先ほど申しましたように、ここでは共同のRアンドD会社ということで中心に考えていき、組合は組合としての組織化強化対策ということの中で十分その効果をあらしめるような努力をしていくのがよろしいのではないか、運用上はかように考えております。
  149. 福岡康夫

    ○福岡委員 次に、法案の逐条審議の過程にちょっと入っていきたいと思うのでございますが、法案の第二条の「基盤技術」の範囲についてお聞きいたします。  この二条の「基盤技術」の範囲決定に当たっては、農林水産省、厚生省、建設省、各省から参入の要請があったと聞いておりますが、これをなぜ通産、郵政所管のものに限定されたのか、通産当局の御見解をお聞きしたいと思います。
  150. 福川伸次

    福川政府委員 これは先ほどの質疑で村田大臣からもお答え申し上げたわけでございますけれども一つは、この予算の決定のときの経緯があったわけではございますけれども考え方といたしましては、私どもとしては、いわゆる民間基盤技術を促進をしていくということに焦点を置いているわけでございます。  「基盤技術」と申しますのは、国民経済及び国民生活基盤強化に相当程度寄与するものということで考えておりますが、これをやや敷衍して申しますれば、その技術が各産業に横断的に使われるような技術あるいは特定産業においても革新的な技術、こういうことを念頭に置いて、したがいまして、産業あるいは国民生活関連いたしましてかなり影響度と波及度の高いもので、これが民間で進めるのにふさわしいもの、こういうふうに考えておるわけであります。そういう観点で私どもとしても六十年度の予算要求をし、財政当局とそこの最後の折衝をいたした次第でございます。  本法案におきましては、そういう技術開発推進するに当たりまして、いわゆる当面非常に重要であります民間活力を最大限に発揮させるための環境整備ということに目的を置いておるわけでございまして、そういうことで先ほど申した考え方基盤技術を進めていくということから申しますと、当面、鉱工業及び電気通信業などのいわゆる通産、郵政両省所管分野でこれを取り上げていけば、今の民間における基盤技術推進ということからすれば十分ではないか、かように考えてこのように成文化をいたした次第でございます。  もちろん、他省庁、農林あるいは厚生省を先生は御指摘になられましたが、それぞれの場におきまして、その技術開発にふさわしい手段を選ばれて、それぞれの技術開発は進められておるわけでございまして、例えば農業関係バイオテクノロジーということにつきましては、国立の試験研究機関である農業試験場等がかなり進めておるわけでありますし、また医療関係でも国立病院等が進めておるところでございます。そういったいろいろそれぞれ対応として最も適切な政策手段を各省庁でとっておられるわけであります。  もとより私ども、鉱工業あるいは電気通信業の基盤技術というものも、これが開発されました暁には、いろいろな格好で他の分野にも使われるということは当然好ましいことでございまして、そういう意味では、関係省庁とも十分連絡をとっていくという意味で、関係行政機関とも協議をしていくという条文がこの法律にも入っているのも、そのような政府全体として協調ある技術開発体制を進めていくという一つのあらわれであるわけであります。
  151. 福岡康夫

    ○福岡委員 どうもただいまの御答弁について、私、納得しかねる点もございますが、先ほどの御説明の中に、村田通産大臣も前にお話しした、こういうことで、今通産大臣が御出席になりましたので、通産、郵政所管のものに限定した理由、ほかの省からの参入要請があったにかかわらず、通産、郵政所管のものに限定した問題について、ちょっと私、御説明を受けたいと思うのです。
  152. 村田敬次郎

    村田国務大臣 六十年度の予算政府原案で通産省及び郵政省所管の技術について民間試験研究促進のための基盤技術研究促進センター設立が決定をしたわけでございます。この法律案予算実施するための予算関連法案でございまして、その対象予算的裏づけのある通産省と郵政省の所管技術に限定をいたしております。  それからまた、技術開発を進めていくのに当たりまして民間活力を最大限に発揮させるための環境条件の整備を図ることを目的とするものでありますので、民間が主体となっている技術分野対象とすることが適当でございます。こうした特徴を持ち、かつ新たな技術革新が胎動しつつある技術分野というのは鉱工業それから電気通信業など通産省及び郵政省の所管分野でございまして、現下の状況ではこれを本法案対象とすれば十分であるということで、この法律案対象技術通産省及び郵政省の所管の分野に限定した次第でございます。  なお、この法案対象にならない技術分野につきましても、関係各省がそれぞれの立場からその実態に応じて必要な技術開発促進策を展開していくべきものである、このような理解をいたしておるところでございます。
  153. 福岡康夫

    ○福岡委員 大臣の御答弁によりますと、政府全体としての協議を行うから通産、郵政所管のものに限定をしたんだ、こういうことでございますが、もう少し対話と相互理解の折衝点はなかったのかどうか、この点についていかがでございましょうか。
  154. 村田敬次郎

    村田国務大臣 今、通産、郵政両省に限定した理由につきましていろいろな角度から申し上げたわけでございますが、技術開発ということになれば、当然それは関係各省いろいろあるわけでございます。ただ、この法律案目的としては、当面両省に限定をすることが事務を能率的に進めるゆえんであるという考え方が前提になりまして、例えば政府部内でも大蔵大臣あるいは総務庁長官等とよく御相談をした上でこうした決定をしたわけでございます。  なお、先ほど申し上げましたように、関係各省がそれぞれの立場で技術開発を進めていくことはもちろん重要でありますし、また、この法律案を施行していく際にこういった省にも連絡をとった方がいいということが万一あれば、それはまたそれとして円滑に対応していきたいと思っております。
  155. 福岡康夫

    ○福岡委員 時間がないので次に移らしていただきます。  次に、第三条についてお伺いいたしたいのでございます。  「国有の試験研究施設を使用させる場合」とありますが、中小企業の場合物品管理法の対象となる器具のみ使用させてもらいたいとのニーズがあると私、聞いておりますが、この点はいかなる取り扱いとなるのか、お尋ねしたいと思います。  また、これに「特に必要があると認めるとき」とありますが、だれがどのような判断基準で認定していくのか、また公正なる担保手段を講じようとされるのか、お伺いしたいと思います。
  156. 福川伸次

    福川政府委員 先生御指摘のように、中小企業の場合には、むしろ国有の試験研究施設よりも物品管理法の対象となる器具を無償または廉価で使用したいというニーズがあるのではないかという御指摘がございます。まことにごもっともな御指摘でございます。物品につきましては実は別途、既に物品の無償貸付及び譲与等に関する法律というのがございまして、これによりまして試験研究に用いられる際には貸付料を無償または廉価とすることが法律上可能でございます。したがいまして、今後物品管理法の対象になりますような器具が出てきて、これについて今御指摘のようなニーズがあります場合には、物品の無償貸付及び譲与等に関する法律の運用の中で取り上げてまいりたいと考えております。  また、今の第三条におきまして、国有財産に関しまして「特に必要があると認めるとき」ということについてどういうふうに考えるのかという御指摘でございますが、これにつきましては、民間におきます基盤技術に関する試験研究を円滑に進める上で国有の試験研究施設等を減額使用させることが必要であるということの判断をするわけでございますが、この判断をいたしますのは主務大臣意味するものでございます。  通常この手続がどうなるかということでございますが、このような同種の前例になります制度を見てみますと、この廉価使用を認めるに当たりまして主務大臣の認定を必要とする、こういうことを政令で書くのが通例でございまして、今回も法律が成立しました際には、そのような前例を参考にしながら今後の手続を決めたいと考えております。
  157. 福岡康夫

    ○福岡委員 現在、国有の試験研究施設は、通産省の方でお聞きしましたら、トータルで五十くらいあると聞いております。その中には工業技術院所管のものが十六、郵政省の所管の水戸の電波研究所などが含まれておるのだ、こういうように報告を受けておりますが、これらの施設の所在場所、名称、交通の便、概要等を記載したパンフレットを発行するなどPRする必要があると私は思うわけでございますが、通産省の御見解はいかがでございましょう。
  158. 荒尾保一

    ○荒尾政府委員 ただいま御指摘の国有試験研究施設の開放と申しますか廉価使用でございますが、これはその趣旨から申しまして、本来の使用目的は国の研究所がその試験研究のために使うというものでございます。民間による利用は国の研究業務に支障のない範囲で行うというものでございますので、常に利用できるという性格のものではないわけでございます。あいたときに使える、こういう性格でございます。したがいまして、積極的なPRがいいのかどうかという点は少し検討しなければいけないかと思います。しかし、本来この趣旨産学官連携強化とか、あるいは産と官との共同部な研究を進めていくということでございますので、できるだけこの趣旨民間企業によく伝わっておるということが必要でございます。そういう点から、例えば今回設立されますセンターに聞けばどこに何があるかということがわかるとか、あるいはそのほか適切な手段によりましてできるだけこの趣旨が各企業によく浸透いたしますように措置をとりたいと考えております。
  159. 福岡康夫

    ○福岡委員 次に、第五条についてお尋ねいたしますが、この規定はいわば訓示規定政府努力義務をうたったものと私は見ておりますが、「必要な措置」とは具体的に申してどんな措置が考えられるのか。また、この規定を単なる努力規定に終わらせるのではなくて、産業技術開発政策推進のための重要規定として弾力的かつ機能的に活用すべきものであると私は考えますが、通産省と郵政省の御見解はいかがでございましょうか。
  160. 福川伸次

    福川政府委員 この「必要な措置」でございますが、いま先生まさに御指摘になられましたように、国有の試験研究施設等の情報を一般に提供するということは、これを有効に活用する上で非常に重要なポイントであろうと私どもも考えております。したがいまして、例えば本条の「必要な措置」ということで申しますれば、広報誌等を通じまして、こういった国有の試験研究施設についての情報を一般に提供してその利用の円滑化を図るということも一つの例でございますし、さらにまた、国の委託研究の成果としての国有特許等について、その特許の一部を受託企業に渡すというようなことで当該特許権等を共有化する措置というのは、民間にインセンティブを与える上で有効な手段であろうということは産業構造審議会の答申でも指摘されておるところでございまして、これは現行の法律範囲内の運用でできることでもございますので、そのようなことを「必要な措置」の中で読み込んでまいりたいと考えておるわけであります。  いずれにいたしましても、御指摘のように、民間基盤技術に関する試験研究の促進ということから、本条の趣旨を十分に生かしてまいりますよう運用で努力をいたしたいと思っております。
  161. 奥山雄材

    ○奥山政府委員 ただいまの御答弁につけ加えるものはございませんが、郵政省といたしましても、本条の趣旨が生かされますように広報誌を通じ、あるいは、場合によっては積極的にマスコミ等の手段を通じて、適時適切に民間基盤技術研究の促進が図られるよう努力してまいりたいと思っております。
  162. 福岡康夫

    ○福岡委員 次に、第九条の第二項についてお聞きいたしますが、通産、郵政両大臣の認可を受けさえすれば、資本金の増加は無限にできるのかどうか、上限の設定は考えていないのか、ひとつ御見解をお示し願いたいと思います。
  163. 福川伸次

    福川政府委員 第九条にもありますように、両大臣の認可を受けて資本金を増加させることができることになっておるわけでございます。これは、その民間において行われます基盤技術に関する試験研究を促進いたしますために、出融資事業、共同研究促進事業等の幅広い事業を実施するためのものでございまして、その財源は民間ニーズに十分対応できる額を確保いたすということで適切に対処してまいりたいと思います。  政府からの出資に関しましては、これはまず予算によりまして決められるわけでありまして、その意味では、どのような政府からの出資が必要かということにつきましては、予算との関連におきまして国会の御審議をいただくということになろうかと思っております。
  164. 福岡康夫

    ○福岡委員 次に、十一条の持ち分移転の対抗要件についてお聞きしたいのでございますが、この規定は当事者間の法律関係は有効として、第三者対抗要件を規定したものと解してよいのか、また、死亡に伴う持ち分の相続の問題はどうなっているのか、ひとつ御見解をお示し願いたいと思います。
  165. 福川伸次

    福川政府委員 これは第十一条は出資者の持ち分の転々流通が容易かつ効率的に行われるように、センターまたは第三者に持ち分の移転を対抗するためには出資者原簿への記載を要求する、こういうことにいたしたものでございます。  また、第二点のお尋ねの出資者が死亡したときの持ち分はどうなるかということでございますが、出資者が死亡いたしましたときは、その持ち分は相続されることになると考えております。
  166. 福岡康夫

    ○福岡委員 次に、通産大臣にちょっとお尋ねしたいのでございますが、この第二十五条に関連することでございます。とかくこのような組織は、政府関係者の天下り先と見られる状況が非常に強いわけでございますが、国民世論の上からも、この組織は民間活力を活用して技術研究開発を促進するためのものと私は理解しておるわけでございますが、かかる懸念に対して人材確保をどのように考えておられるのか、大臣ひとつ御見解をお示し願いたいと思うのです。
  167. 村田敬次郎

    村田国務大臣 センターの運営に当たりましては、センターの行う事業の中には、出融資事業などのように企業秘密を含む個々の研究開発活動の内容にまでタッチするものもありまして、公正かつ優秀な人材を確保することが重要であることは言うまでもございません。したがって、適材適所の人材配置が肝要であると考えておる次第でございます。     〔田原委員長代理退席、委員長着席〕
  168. 福岡康夫

    ○福岡委員 次に、条文の三十八条の第二項について御質問いたします。  出資者に対して出資額に応じて分配すると書いてありますが、リスクの多い事業の性格上、分配金を出すことが可能と考えておられるのか。また、このような利益の上がることにつき、不確定な業務に出資する者があるのか。大手企業のひもつきではまた問題が生じますが、この点について通産省の御見解をお示し願いたいと思います。
  169. 福川伸次

    福川政府委員 このセンターの財源といたしましては、産業投資特別会計からの出資、貸付、さらに民間からの出資ということを仰ぐことになっておるわけでございますが、こういった出資ということに対する見合いといたしまして、この利益の分配の規定が設けられておるわけでございます。もちろん、このセンターが出資または融資を行う技術開発プロジェクトでございますけれども、これにつきましては、先ほどもいろいろ、これは確かにリスクが大きいものでございますけれども、ある程度これが成功のめどがつきますれば、事業の収益性ということにつながっていくこともあるわけでございまして、こういった大きな成功につながります場合には、この三十八条第一項で積立金をまず積む、そして、このセンターの財政的な基盤強化をする、その上に利益がある場合にはその利益を分配をしていくということを考えておるわけでございます。  もちろんいろいろリスクのある事業をやってまいります技術に関する出資または融資ということでございますから、今どのくらい利益が出るのかという点についてはにわかに予測はいたしかねますけれども、この事業が円滑に進んでまいりまして、さらにこれが収益につながるような事業に展開をしていくということになりますれば、これは例えば出資であれば配当、あるいは融資であればその返済、または利子の収入といったような格好で、ある程度の利益ということが出ていくことが期待されるわけでありますが、この点につきましては、今後の運用にまつ点が多いと思っております。
  170. 福岡康夫

    ○福岡委員 最後に、第四十五条の第二項一号についてお聞きしますが、出資者たり得る人の要件はいかになっているのか、例えば地方自治体は出資者たり得るのかどうか、その点の御見解をひとつお示し願いたいと思います。
  171. 福川伸次

    福川政府委員 このセンターにつきましては、官民双方から出資を受け入れることができる、政府及び政府以外の者から出資を受け入れることができる、かように考えておるわけでございます。もちろん民間からの出資ということにつきましては、センター目的に合致するものであれば広く出資を受け入れるということが望ましいというふうに考えております。  地方公共団体が果たしてどうかということでございますけれども、条文上では、この法案から地方公共団体の出資の可能性を妨げるものではないと考えております。条文上は可能であるというふうに思いますが、現実の問題として、現在地方公共団体が出資をしようというような御意見は、今のところ見当たりませんので明確な見通しはございませんが、考え方といたしましては、条文上はそれは可能ではございます。  私どもとしては、当面この事業を進めていくに当たりまして、政府以外の者ということの中には、主として民間からの出資ということでこの目的に御賛同いただく出資をできるだけお願いをしてまいりたい、かように考えております。
  172. 福岡康夫

    ○福岡委員 私は、冒頭に本法案の提案理由は説得力を持っておる、こういうように見解を示しましたが、私自体問題は、この法は、法施行後の運用が公正かつ公平に運用されるかどうかが問題点である、かように考えるわけでございます。  私、一時間余にわたりまして、いろいろの問題点をただしてまいったわけでございます。一つは、競争政策上の問題、一つ中小企業対策の問題、これに関連して個々の法律論議をいろいろお聞きしたわけでございますが、十分この中小企業対策及び競争政策の面を生かしまして、この問題の運用をお考え願いたいと思いますが、最後に通産大臣の御決意を御表明願いたい、かように考えます。
  173. 村田敬次郎

    村田国務大臣 今委員御指摘の点はまことにこの法律の、言うなれば、一番大切なポイントであり、また今後の運用、そのことをしっかり確保しなければこの法律目的も達成せられないということでございまして、中小企業対策、また両省にまたがるいろいろな事項の推進、心してやってまいりたいと存じます。
  174. 福岡康夫

    ○福岡委員 以上をもって質問を終わらせていただきます。
  175. 粕谷茂

    粕谷委員長 これをもちまして福岡康夫君の質疑は終わりました。  次に、草野威君の質疑に入ります。草野君。
  176. 草野威

    ○草野委員 私は、貿易研修センター法を廃止する等の法律案につきまして御質問申し上げます。  時間が二十分でございますので、簡潔に御答弁をいただきたいと思います。  この法律案の主な内容は、一、貿易研修センター法を廃止する、二、昭和六十一年三月三十一日までの間に貿易研修センター組織変更して民法上の財団法人化するなどとなっております。ただいま同時に審議されております基盤整備の法案の中で、新しく基盤技術研究促進センターというのができるわけでございます、この貿易研修センター法とはスクラップ・アンド・ビルド、こういうような関係になっておるようでございますが、まず一番初めに、この法律を廃止するその理由についてお尋ねをいたします。
  177. 村田敬次郎

    村田国務大臣 お答え申し上げます。  貿易研修センター昭和四十二年の設立以来、貿易を主とする国際的な経済活動に係る業務に従事する者等に対し、専門的かつ効率的な研修などを実施することによって、我が国国際化に大きく貢献をしてまいりました組織でございます。このような研修は、世界経済相互依存関係の高まりの中で、今日ますますその重要性を増しておるわけでございますが、一方で、複雑化、多様化する国際経済情勢に円滑かつ機動的に対処いたしていくためには、研修の実施等に関し民間活力の一層の活用を図ることが重要であるということが考えられるわけでございます。  このような状況にかんがみまして、政府としては昨今の行政改革の要請をも踏まえながら、今回貿易研修センター法を廃止するとともに、貿易研修センターの民法上の財団法人への組みかえ、組織変更を可能にするための措置を講ずることとしたものでございます。  政府としては、財団法人となった後におきましては、その創意を生かして引き続き円滑かつ機動的な業務遂行が可能となるように指導助言等を行っていく所存でございます。
  178. 草野威

    ○草野委員 この貿易研修センターは、昭和四十四年の開議以来現在まで約四千人の研修生を送り出しているわけでございますが、この十六年間のこのセンターに対する実績の評価、また反省すべき点がございましたら、あわせて御見解を承りたいと思います。
  179. 鈴木直道

    鈴木(直)政府委員 貿易研修センターは、今大臣からも御答弁申し上げましたとおり、我が国の国際経済化に対応いたしまして国際的な貿易人を育成する、こういう役目でスタートしたわけでございます。その後、我が国自身が大幅に国際経済化され、かつまた、海外で活躍する人材も非常に豊富になりつつありますが、それを支える形で従来十分なる機能を果たしてきつつあると思います。特に、我が国自身が従来、貿易の関係から投資、技術、いろいろな多角的な角度で国際経済人の要請が高まっておりますので、そのようなニーズに対応しつつ貿易研修センター自身努力をしてまいっておると思いますが、ますます国際経済関係は多様化しておりますので、今後とも機動的な、そのような経済情勢の変化に対応した貿易研修センターの運営についての期待は高まっている、かように理解しております。
  180. 草野威

    ○草野委員 何か反省すべき点があったらとお尋ねしたのですけれども、ございませんか。
  181. 鈴木直道

    鈴木(直)政府委員 いろいろな企業の中に、大企業から中小企業に至るまで、貿易、経済人の育成の要請は高まっているわけでございますが、そのニーズは極めて多様化しつつあります。このような多様化しつつあるニーズに対応して機動的に貿易研修センター自身の内容を実質的に改善していく、このような点は私どもとしては今後とも十分考えていかなくてはならぬ問題だろうと考えております。
  182. 草野威

    ○草野委員 今後民間法人に移行するに当たりまして何点か確認をさせていただきたいと思います。  まず第一点は、寄附金の損金算入という問題でございますが、この法律が廃止されますと、当然のことながら税制上の特例措置も廃止されるわけでございますが、実際には、非収益事業を営む公益法人になるわけでございますので、非課税の取り扱いを受けるわけでございます。したがって、それほど大きな影響はない、このように思うわけでございます。しかし、その中で法人税法の寄附金の損金算入については法人税法の第三十七条第三項第三号の法人から同項の第二号の法人に移行することになるわけでございまして、大蔵大臣の指定を受ける必要が生じてくるわけでございます。この指定がなければ寄附金の損金算入が認められないことになりまして、特にこの四つの事業のうちの一つであります欧米ビジネスマン研修事業につきましては、事業費の半額を現在民間から寄附金で賄っている、こういうことになっておりますので、もしこれいかんによりましては今後運営に支障を生じかねない、こういう事態も出てくるかと思います。  従来の事業実績等から見まして引き続き同様の措置を受けることは当然でありまして、現在試験研究法人の指定を受けておりますから、まずこれの継続が認められるべきだと考えます。また、六十年度はこの旧法の暫定期間がありますから変わりないとしましても、六十一年度以降どのような取り扱いになるか、この継続及び指定寄附金としての指定の見通し、これらについての見通しはどのようにお考えになっておりますか。
  183. 鈴木直道

    鈴木(直)政府委員 先生御指摘のとおり、今後この法律が通過いたしまして貿易研修センター民間法人に移行した場合に、税制上の取り扱いは、従来の特別認可法人としての取り扱いから民間法人としての取り扱いに移行するわけでございます。その関係で、御指摘のありました試験研究法人としての扱いの問題は、お説のとおり一番大きな問題だと私どもも理解しております。  御指摘のように、海外ビジネスマン研修等につきまして相当の額を民間からの寄附に仰いでおりまして、それを基盤といたしまして実績のある事業を実施しているわけでありますけれども、その手当てにつきまして私どもは、今回この法案を提案する段階財政当局とも鋭意検討を重ねてまいっておるわけでございますが、今後この問題につきましては、六十一年度の段階におきましてさらに財政当局と強い交渉をいたしまして、できるだけ従来どおりの取り扱いを受けるよう努力する所存でございます。
  184. 草野威

    ○草野委員 この点については非常に大事な問題でございますので、大蔵当局ともぜひとも詰めを早急にひとつ行っていただきたい、このように要望しておきたいと思います。  それから、現在、本科コースを初め四つのコースに分かれておりますが、その中で欧米ビジネスマン研修、これは昭和五十九年の三月から開始しておりまして、とりあえず三年間、このようになっているようでございますけれども、これは三年で打ち切るのか、その後またこの研修は引き続き継続していく、そういう御意向であるのか、通産省のお考えをひとつ承っておきたいと思います。
  185. 鈴木直道

    鈴木(直)政府委員 御指摘のございました欧米ビジネスマン研修でございますが、これは四極貿易大臣会合で通商産業大臣が先進四地域の貿易大臣に対しまして提案をいたしまして実現をいたしました研修でございます。  私ども日本経済の実情につきまして、欧米のビジネスマンに理解をいただくこと自身が、長期的に見て先進国との貿易関係の円滑化に寄与する、こういう考え方で、御指摘ございましたように、三年間という前提で百人研修をスタートしております。実は、昨日、第三回の研修がスタートしておりますけれども、私どもこれまで聞いている限りにおきまして、欧米からの評価は大変高いと存じます。一応三年という形でスタートいたしましたが、これまでの評価を基礎にいたしまして、できるだけ長期的な観点で本件は推進してまいりたい、かように考えている次第でございます。
  186. 草野威

    ○草野委員 ただ、研修の期間が一カ月なんですね。せっかく海外から来ていただいて一カ月間で研修を終わらせる、この点についてもう少し検討されたらどうか、このように思います。  それから、本科コースと実務コースでございますけれども、この内容を拝見いたしますと、それぞれ定員割れをしているような現状でございます。本科コースの方は当初百二十名の定員から昭和五十二年ごろから八十名の定員に下がっているようでございますが、その定員に対しましても五、六十名、こういうことで定員割れをしている。実務コースの方につきましても、たしか一回の定員が現在七十名ですか、年三回ということでございますので、二百十名でございますが、そうすると、これもかなり定員割れをしている、こういうような現況でございますが、定員割れをしている原因は一体どういうところにあるのだろうか、また、今後民間に移行した場合に、これらについてはどのような考えでやっていったらいいか、そこら辺のところをひとつお伺いしたいと思います。
  187. 鈴木直道

    鈴木(直)政府委員 本科コースは一応十カ月という期間のコースでございます。私どもといたしましては、立派な貿易人を育成したいということで非常に理想的な研修内容を考えておるわけでございますけれども、たまたまこの数年間経済情勢が余りよくなく、研修に対する希望は実際上あるわけでございますが、いざとなりますと、企業そのもののいろいろな実情から派遣することが難しいというような要因等々あったと存じますけれども、実際上、御指摘のように定員割れではございますが、七、八割の人数は確保しておりますし、傾向としてどんどん減ってまいっておりますと大変問題でございますが、実態といたしましては安定的に推移しております。  景気回復等々の過程、さらにはまた国際化がさらに進展することによりまして、需要自身もふえてまいると思います。今後とも、民間法人に移行した段階民間企業の方々のニーズを十分キャッチいたしまして、それに合ったような研修をさらに充実するということで対応してまいるべきだと考えております。
  188. 草野威

    ○草野委員 ともかく利用しやすいセンターになっていかねばならないわけでございますけれども現状を見てみましても、本科コースの場合、授業料が年間で百五十万円、そのほかに寮費が一日三千四百円ですか、また、貿易実務コースの方も一回の授業料が四十三万円、決して安くない授業料でございますね。そういうところから実際問題として利用する人が減ってきているのではないか、このように考えられるわけでございます。したがって、教科内容等につきましてもぜひともひとつ再検討していただいて、利用しやすいそういうセンターにつくり上げていっていただきたい、このように思います。  それから、もう時間もありません、最後に大臣に伺いますが、ともかく十六年間という長い間、いろんな面で人材を輩出してきた、そういうセンターであろうと思いますが、これからの問題といたしまして、今度民間に移行するわけでございますので、やはり諸外国との信頼関係を持続していかなければならない、こういう問題が一つあろうかと思います。また、日本から海外に研修生を派遣するという制度もあるようでございますけれども、またこれは微々たる実績であろうと思います。この海外研修についてもぜひとも充実強化を図っていただきたい。  それからもう一点は、この法案ができた当時でございますけれども、附帯決議がございまして、その附帯決議の中で、役員の中に中小企業の代表者を入れるべきである、こういうような附帯決議もついております。しかし、いまだにこれは実現していないようでございますけれども、そこら辺を含めまして御答弁をいただきたいと思います。
  189. 村田敬次郎

    村田国務大臣 御指摘の三点につきましては、今後の運営において、草野委員の御趣旨をよく体して進んでいかなければならないと思います。  まず海外研修、留学プログラムの問題でございますが、これは本科コースでは、国際社会の第一線で活躍し得る経済人の養成を目的としたコースでございまして、毎年一回、九カ月にわたって全寮制で英語、地域研究、国際経営経済について集中的に行うものでございます。この本科コースは、研修の実をより一層上げるため、任意参加ではありますが、一カ月の海外研修あるいは七カ月の米経営大学院への留学のプログラムも用意をしておるわけでございます。こうした海外研修につきましては、研修効果を高めるものでございまして、今後とも貿易研修センターがこのような海外研修を充実することを期待をいたしております。  それから、中小企業の役員の選任の問題でございますが、貿易研修センターにおいては、業務運営に中小企業者の意見を反映させることが重要という観点から、設立当初から評議員会に中小企業の代表として全国中小貿易業連盟の理事長をメンバーとして加えられておるところでございます。なお、貿易研修センターは、大企業に比べて人材面等に余裕の少ない中小企業に勤務する者の受講を容易にすることも考慮いたしまして、昭和四十五年から、期間が三カ月間と短く、実務に直結した実践的な内容の貿易実務コースも設置をしておるところでございます。  通産省としては、中小企業が貿易に重要な地位を占めておるという観点から、今後とも中小企業への配慮をますますきめの細かいものにして指導してまいる所存でございます。
  190. 草野威

    ○草野委員 時間が来たから、もう終わりにいたしますけれども、役員の中に中小企業の代表の方が入っておられるということだったですね。そこら辺のところの確認をさせていただきたいと思うのですね。  ついでに伺っておきますが、今回、民間移行に際して役員の異動というものがございますか。それから、例えば資金規模だとか事業内容、こういうものについても大きく変わるような可能性があるのかどうか、そこら辺もあわせてお尋ねいたします。
  191. 鈴木直道

    鈴木(直)政府委員 最初に、中小企業の方々の御意向をいかに反映させるかという点でございますが、役員の数自身が非常に限られているわけでございますので、実際上の業務運営上、重要な物事を決定いたします評議員会の中に、先ほど大臣が御答弁申し上げましたとおり中小企業の代表者を参加させていただきまして、そのような形で中小企業の方々のニーズを積極的にくみ上げる、こういう仕組みが従来できているわけでございます。  それから第二点でございますが、今回の法案の中で業務全体を新しい法人に引き継ぐという規定を設定しているところでございますので、今回の法案を通過させていただきました暁におきましては、従来の法人をそのまま新しい法人に引き継ぐということを、認可した段階で移行するわけでございますので、資産あるいは役員、職員すべてそのままの形で新法人に移行する、こういうことに相なろうと存じます。
  192. 草野威

    ○草野委員 ぜひとも利用しやすい、そして立派なセンターをつくっていただきたい、このことを最後に要望いたしまして、質問を終わります。
  193. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて草野威君の質疑は終わりました。  続いて、宮田早苗君の質疑に入ります。宮田早苗君。
  194. 宮田早苗

    ○宮田委員 最初に通産大臣にお伺いをいたします。  最初に技術開発予算の拡充についてでございます。  リスクの大きい基礎、応用段階中心技術開発におきます国の役割は極めて重要でございます。欧米各国は強力な国家投資を行っておるわけです。研究開発費に占めます政府の負担割合を見ますと、米国が四六・七%、英国が四八・六%、西独が四三・一%、フランスが五七・八%、こうなっておるのに対しまして、日本はわずかに二五・五%にすぎません。このことは、これまでの我が国技術開発基礎、応用段階技術の大半を外国に依存すると同時に、開発段階中心民間企業活力に依拠してきたことを示しておると思います。今後技術輸入が困難になるに伴いまして、自主技術開発に官民挙げて取り組む体制の確立が急務であると思います。  その第一の課題は、民間企業活力にのみ期待し得ない基礎、応用段階において国家投資の抜本的拡充を図ることであると考えますが、大臣の所見をお伺いいたします。
  195. 村田敬次郎

    村田国務大臣 委員御指摘のとおり、欧米に比べて日本研究開発費の政府負担割合が低いということは事実でございます。この分野は、民間のみにゆだねておいたのでは円滑な推進が期待できないものにつきましては、国みずから積極的に技術開発推進することが不可欠であります。通産省といたしましては、新年度予算案において、技術開発予算について昭和五十九年度化的一三%増、千九百三十二億円とその拡大を図ったところでございます。今後とも引き続き技術開発政策の充実を委員御指摘の線に沿って図ってまいりたいと存じます。
  196. 宮田早苗

    ○宮田委員 我が国技術開発資金に占めます政府負担割合を計画的に拡充することが不可欠と考えますが、そのための中期目標を策定する考えはないかどうかということ。もう一つは、工業技術院の研究会が八〇年代末における官民の研究費総額の目標を対国民所得比三%に置いて、政府負担割合を当面三〇%、長期的には欧米並みに四〇%を目指すべきという中期目標を提案したことは評価できるわけであります。これを受けて、政府としてはどのような目標を持って予算の計画的拡充を図っていかれる方針か、お伺いいたします。
  197. 荒尾保一

    ○荒尾政府委員 先ほど先生御指摘のとおり、欧米諸国は非常に高い政府負担割合になっておるわけでございます。我が国としても、こういった状況をできるだけ追いかけていくことが大事なわけでございます。そういう点から、今お話がございましたように、研究会等におきましても当面三〇%、中長期的には四〇%という数字を出しておりますし、また、産構審の「八〇年代通産ビジョン」におきましてもそういった数字を出しておるわけでございます。  ただ、しかしながら、こういった目標を掲げてこれに向かって努力するという努力目標であるわけでございますが、これを中期計画的なものとして取り扱うということになりますと、財政との関係をどのように考えるか、非常に難しい状況があるわけでございます。現実に私ども予算要求し、折衝するという立場で考えてみますと、現実の姿はむしろマイナスシーリングという実態にあるわけでございまして、このような状況の中で政府の中期計画というふうな非常にかたい、リジッドな形の計画を立て得るものかどうかという点につきましては、いろいろ検討しないといけない問題点が多々あるのではないかと思っております。  しかしながら、技術開発重要性につきましては、既にたびたび御説明をしておるとおりでございます。このような点から、国の基礎的研究の役割をいかに高めるかということで、昭和六十年度の予算を一例として申し上げますと、通産省全体におきましては対前年比一三%の増というような形で増加を図っておるところでございます。今後におきましても、財政事情の許す範囲の中でできるだけ技術開発関係予算の拡充に努力をしてまいりたいと考えます。
  198. 宮田早苗

    ○宮田委員 政府の財政収支試算を見ますと、技術開発予算の拡充を図ることは容易ではないとは思いますが、技術開発重要性に照らし、計画的に技術開発予算を拡充していくべきである、こう思います。そのためには財源確保対策が真剣に検討されるべきでございます。産業構造審議会の中間報告は、この点に関しまして「技術開発が公共投資的性格を持つことも考慮しつつ今後の財源の確保のあり方について検討していくことが肝要」と指摘しておるわけであります。政府としてはどのような検討を行っておいでになるか、またハイテク国債といった方策についてお考えがありましたら、お聞かせ願いたいと思います。
  199. 福川伸次

    福川政府委員 宮田委員御指摘のように、現在の財政状況を考えてみますと、財政再建の途上で技術開発予算を拡充していくというのはなかなか厳しいものがあるわけでありますが、他方、今宮田委員御指摘のように、技術開発の進展いかんが日本経済の将来を左右しかねない非常に重要な問題であると思うわけでございまして、そういう意味で私どもとしても技術開発予算の拡充に努めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。  今回御提案申し上げております基盤技術研究促進センターの財源措置としては、産業投資特別会計からの出資、融資が中心になっておるわけであります。今後とも技術開発のための予算というのは質的にも量的にも拡充をしていかなければなりませんし、今回産業投資特別会計からこういった研究開発のための資金が出ることについては、私どもとしては一つの適切な方向ではないかと評価をしているところでございます。  今ハイテク国債という御提案がございました。私どもとしても研究開発を進める上の財源対策というのは今後ともいろいろ検討してまいらなければならないわけでありまして、また産業構造審議会からもその御報告をいただいておるわけであります。今、リスクマネーの一環であります研究開発のための資金が果たしてそういう国債ということになじむのかどうか、公共投資的性格を強く持てば、あるいはそういうことも一つの方法があろうかと思いますが、果たしてこの国債ということになじむのかどうか、なかなかいろいろ難しい問題があると思いますが、いずれにいたしましても、この技術開発日本経済の将来も左右しかねない重要な問題であるという点を私どもとしても肝に銘じまして、今後とも財源対策といたしまして一般会計を含めてこの予算の確保に努めてまいりたいと思います。  また、先生の御指摘のハイテク国債という点につきましてはなかなかいろいろ問題があろうかとは思いますが、その一環の中で今後の問題として検討さしていただきたいと思います。
  200. 宮田早苗

    ○宮田委員 技術開発予算は他省庁にまたがるものが少なくないわけでございます。例えば、バイオテクノロジーは科技庁それから通産省、農水省、厚生省等が推進をしておるわけでありまして、この予算の効率的な実施を確保するため、政府資金の投入に当たって効果を評価するシステムの確立が緊要であると思います。政府の対処方針を持っておいでになるならば聞かせてほしいということと、もう一つ基盤技術研究促進センターの運営に当たりまして、効果を適正に評価するための施策を用意しておいでになるかどうか、この辺もお伺いいたします。
  201. 荒尾保一

    ○荒尾政府委員 先生御指摘のとおり、乏しい予算を効率的に実施をするというために試験評価が非常に重要であるということは仰せのとおりでございます。  私どももそういった方針にのっとりまして、技術開発のための研究を行っておるわけでございますが、例えば一例として次世代産業基盤技術研究の開発制度の例を申し上げますと、この制度はおおむね十年程度を要するような長期間にわたる研究開発実施しておるものでございます。このプロジェクトとして現在、十二テーマが研究開発が行われておるわけでございますが、一回スタートしたらもうそのまま続けるということではなくて、この十年間の期間をおおむね三つのフェーズに分解をいたしまして、非常に基礎的なものを行う段階の第一段階、大体三年から四年くらいたちましたところで第一回目の評価を行っております。この評価におきましては、非常に専門的な先生方の御参加をいただきまして評価委員会を設けまして、そこで次の段階に進めるかどうか、進めるとして今までの状態、そのままの継続でいいのか、場合によっては統合したり、あるいはやめる項目もつくってもいいのではないかというようなことから評価をいたしまして、次の段階に進むかどうかを決定をいたしております。その後六年ないし七年目のところでもう一回評価をいたしたいというふうに考えておる次第でございます。  こういった試験評価をそのほかの大型プロジェクトでございますとか各種の開発制度に適用をいたしておるところでございますが、今後こういった試験評価をできるだけ適正に、公正にやってまいりたいと思っております。  また、基盤技術研究促進センターの運営に当たりましては、特にこのセンターの業務が出資あるいは融資ということでございますし、また原資が産投特会からのものでございますので、このセンターの運営を健全に行っていくためには試験評価といいますか、研究評価というのが非常に重要な意味を持つわけでございますので、専門的な知見をいかに結集するかというような点も含めまして、この評価体制が適切になるように運営を行っていきたいと考えております。
  202. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、産学官連携強化についてでございます。この技術開発推進に当たりまして、産学官連携強化は緊要の課題であるわけであります。  産業構造審議会が昨年の八月にまとめました「我が国産業技術開発現状課題」という中間報告も指摘しておりますように、我が国における産学官の連携は十分には行われていない、こう言われております。この政策課題に対する通産省初め関係省庁の具体的な対処方針をお聞きするわけでございます。  まず第一番に課題一つは、国立の試験研究機関研究員の民間出向を促進をして、官民共同研究を促進することであります。研究者の交流につきましては、現在国家公務員法などで出向に制限が設けられております。給与、退職金についても出向によって不利な扱いを受けないよう制度改革が不可欠であると思います。この研究者の官民交流の障害は撤廃すべきだと考えますが、政府の対処方針はどのようなお考えを持っておいでになるかお聞きします。
  203. 荒尾保一

    ○荒尾政府委員 最近のように特に創造的な技術開発が求められておるという状況のもとでは、産官学が交流する、それによって知識あるいは知見が交流をしていくということで、単にそれぞれが別々に研究したよりもはるかに効果を上げるという点から産学官の連携が必要であるということはよく言われるところでございますし、また私どももそのとおりであると考えております。  その一つの方法として、国立の試験研究所から民間への研究者の出向ということが言われておるわけでございます。かなり長い期間にわたりましてこれは課題になっておるわけでございます。しかしながら、国立試験研究所の研究者といえども国家公務員でございますので、現状では申し上げるまでもなく国家公務員法による職務専念義務がかかるわけでございます。これをどのような場合に解除することができるのか、また、そのことが適当であるのかどうかという点につきましては、いろいろ議論がございます。今までにおきましても政府部内におきまして、あるいは人事院との関係におきましていろいろな議論が行われておるわけでございますが、いまだ結論を得ていないのが実態でございます。     〔委員長退席、浦野委員長代理着席〕  そういう点を考えまして、今回御提案申し上げておりますこの法案におきましては、この第三号の業務によりまして共同研究を行う、このセンターに国立の試験研究所から出向をする、そうしました場合には、国家公務員等退職手当法施行令第九条の二に定める法人にこのセンターを追加をいたしまして、退職金等の不利を生じないように措置をしたいと考えておるわけでございます。  さらにそのほかに、一般的に民間への出向をどうするかという点で、いわば研究公務員の特例法といったような考え方があるわけでございますが、これにつきましては科学技術庁を初め関係省庁と検討を行っておる最中でございますが、結論を得ていないというのが実態でございます。
  204. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、国が関与いたします受委託研究に基づく成果の取り扱いを改善する必要があるのではないかと思うのです。現在、国の受委託研究の成果特許権として確立した場合は国有特許として扱われておるわけです。このことが受委託研究の実績が伸び悩む要因となっておると思いますが、政府の見解をひとつ聞かしていただきたいと思います。
  205. 福川伸次

    福川政府委員 御指摘のように国から受委託を受けた場合のその研究成果特許権の取り扱いでございますが、これは確かに御指摘のように、ここに一つ問題があるという点は私どもも各方面からの御指摘を受けているところでございます。  今大体、現状で申しますと、受託関係で申しますと特に最近では年間一件とか大変少ない額になっております。委託関係は最近予算がある程度ふえておりまして、六十年度では約一千億円を超えるような委託をやっておるわけであります。いずれにいたしましても、この国有特許権の取り扱いというのは一つの大きな問題になるわけでございまして、これをどのように取り扱うかという点は産業構造審議会からも御指摘をいただいたところでございます。  今回御提案しております法律案の中にはこの点の規定は織り込まれておりませんけれども、これが民間へのインセンティブを与える、こういう意味で言えば、国の委託研究の場合に、その国の特許権の一部を民間に渡して、これで共有にするというような格好でインセンティブを与えるという方向は、現行の法律の中で政令等を改正することによって可能であろう、こういうふうな考え方によりまして、今後その問題について財政当局とその改善を図ってまいりたいと考えております。  御指摘の点は確かに一つの重要な問題でございますので、今後その運用、改善という中で取り上げてまいりたいと考えております。
  206. 宮田早苗

    ○宮田委員 関連があるわけでございますが、産構審の中間報告は、米国においては民間企業に特許を帰属させる政策に転換されつつある現状を紹介をしつつ、我が国において民間企業技術開発意欲を高めるためにも、特許の共有制度民間企業への実施権の付与のあり方について見直しを提唱していることは注目される、こう思います。  このたび政府が提案いたしました基盤技術研究円滑化法案を見ますと、国際研究協力におきます特許等の取り扱いを弾力化するという政策が盛り込まれておるわけであります。国内の委託研究については通産省はどのように対応なさるのか。そして、国際研究協力の場合に準じて実施権の許諾を行う場合に弾力的な対応を図るべきじゃないかと思いますが、その点はどうです。
  207. 福川伸次

    福川政府委員 国が民間研究開発を委託いたした場合は、御指摘のように、成果として生じました特許権等は委託者たる国に帰属するというのが現在の建前になっておるところでございます。     〔浦野委員長代理退席、委員長着席〕  今回、民間試験研究を促進いたしますために、産業構造審議会等の指摘も踏まえまして、この法案作成の過程でいろいろな観点から検討を行ってまいったわけでございます。  その過程で、私どもといたしましては、受託企業の研究意欲の向上を通じて委託研究の活性化を図るということは確かに非常に重要な柱になるわけでありますし、また、受託企業の海外企業とクロスライセンスといったような格好で国際的な民間共同研究開発の活発化を図るというようなこと、これも一つ世界経済発展に寄与するという観点から重要であろう、こういうふうに考えておるわけでありまして、委託研究開発成果としての特許権等の一部を受託企業に譲渡をする、こういうことによりまして、当該特許権等をその国と受託者との間で共有化をする、こういうような格好になれば、これは民間への一つのインセンティブにもなり、さらに企業化への道も広くなっていくと考えているわけでございます。  このような措置を講ずるに当たりましては、こういった共有化措置の実現を図るということに対しましては、現在の法律の中で政令等を改正することによってそのように受託者に特許権の共有を認める道を開く。従来のように全く国が持っていて、通常実施権で広くやらせるということではなくて、そういった受託者にインセンティブを与えるという道が現在の法律の中で可能でございますので、今後この点につきましては、政令等の改正を含めまして必要な措置をできるだけ早く講じてまいりたい、かように考えております。
  208. 宮田早苗

    ○宮田委員 産学連携の研究開発を進めるに当たりまして、大学、試験研究法人等に対します寄附金の損金算入制度は注目すべき税制であると考えるわけですが、これまでの実績についてどうなっておるかということと、もう一つは、損金算入の限度額を抜本的に引き上げることを真剣に検討したらどうかという考えでございますが、その点のお考えがありましたらお聞かせ願いたいと思います。
  209. 福川伸次

    福川政府委員 税法の方の建前から申しますと、寄附金というのは損金算入を認めないというのが原則の考え方、建前になっております。ただし試験研究法人等に対します寄附金につきましては、科学の振興といった見地から、特に一般の寄附金の損金算入枠と同額の範囲内で損金算入が認められるという道が開かれておるわけでございます。寄附金の実態あるいは減税額につきましては公表されておりませんので、その額はつまびらかにいたしませんが、対象法人政令で指定されております二十一公共法人等がございますけれども、それに加えまして私どもの所管の公益法人の中では三十三法人試験研究法人等に認定されておりまして、そういうことでの税法上の特例を受けてかなりの程度利用されておりまして、それなりの効果を上げているものと考えておるわけであります。  税法の建前からこの寄附金の損金算入の限度額を改定していくという点にはいろいろ問題がございます。私どもの方の立場で、科学技術振興という観点から見れば、今御指摘のような点も一つの問題点であろうと思っておるわけでありますが、一方、寄附金ということに対する税法上の基本的な立場ということもございまして、この点についてはいろいろと税法の建前からくると問題もあるというふうに思うわけでありまして、私どもとしても慎重な検討が必要であろうと考えております。  いずれにいたしましても、この寄附金の問題につきましては、今御指摘の点を踏まえまして、いろいろ問題がある課題でございますが、今後の問題として検討させていただきたいと思います。
  210. 宮田早苗

    ○宮田委員 通産大臣にお伺いをいたします。  産学官の連携に関する現状と問題点の把握は必ずしも十分でないというのが産構審の中間報告の結論になっております。政府としても早急に関係各方面の意見を踏まえて具体的な対処方針を打ち出すべき、こう思っておりますが、大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  211. 村田敬次郎

    村田国務大臣 先ほど来宮田委員の御高見を承っておりました。産学官の連携の強化が重要であるということは委員御指摘のとおりでございまして、十分認識をしておるところでございます。  例えばアメリカのマサチューセッツ工科大学などは非常によく行われておる例であるということも伺っておるところでございますが、今回設立を予定しております基盤技術研究促進センターも、産学官の連携を強化するための橋渡し的な機能を果たすものである、こういうことを期待しております。今後とも産学官連携の一層の強化を図るために私といたしましても十分検討して対処してまいる所存でございます。
  212. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、基盤技術研究促進センターの運営についてお伺いするわけであります。  基盤技術研究の円滑化を図るため政府は今国会に基盤技術研究円滑化法案を提案しておるわけであります。この中で基盤技術研究促進センターを設置することとしておるわけでございますが、この運営方針について、政府の対処方針をお聞きをしたいわけであります。そのために、まず「基盤技術」の定義についてお伺いをいたします。  「基盤技術」の定義について法案は、「国民経済及び国民生活基盤強化に相当程度寄与するもの」と規定しておるわけであります。我が国産業活性化のかぎが新素材、バイオテクノロジーなど先端技術開発にあることにかんがみまして、できるだけ多くの研究開発のテーマを振興対象とすべきと考えますが、政府基盤技術範囲についてどのようにお考えになっておるか、お聞かせ願いたいと思います。
  213. 村田敬次郎

    村田国務大臣 基本的な問題でございますのでお答えを申し上げたいと存じます。  「基盤技術」というのは法二条に書いてございますが、二つの要件に合致するものだということが前提でございます。その第一は、鉱工業、電気通信業等の技術のうち通商産業省及び郵政省の所管に係るもの。第二点は、国民経済及び国民生活基盤強化に相当程度寄与するものという考え方を前提といたしておるわけでございます。  また、国民経済及び国民生活基盤強化に相当程度寄与するものというのは、ある技術が製品等に体化された場合において、その製品等が有することとなる波及性、利用分野の広がり、影響度、性能、生産性の向上に与える効果が十分に大きくて、その結果として国民経済国民生活基盤の形成に主要な役割を担うに足るというふうに判断されたものでございます。具体的には、例えば超微細加工技術による高集積度のLSIが生産されますが、それはコンピューター、工作機械、自動車等の広い分野への応用が可能であり、かつ製品の小型化や信頼性の向上といった面で性能の向上に大きく寄与することから、つまり前者が波及性で後者が影響度でございますが、かかる技術基盤技術に該当する、このように考えております。
  214. 宮田早苗

    ○宮田委員 バイオテクノロジー研究開発については通産省だけでなしに科技庁、農水省、厚生省等が取り組んでおるわけであります。このように複数の省庁にまたがって研究開発が進められておりますテーマについて、関係省庁間でどのような調整を図っていくお考えを持っておいでになるか、その点もお聞きしたいと思います。
  215. 福川伸次

    福川政府委員 ただいま農林水産省あるいは厚生省の所管するバイオテクノロジーとの関連で御質問がございましたが、そういった両省分野におきますバイオテクノロジーは、農業あるいは医薬品製造業といったようなことが中心であろうかと思うわけであります。現在、農業等に関しましては、農林水産省におきまして農業試験場などの国の試験研究機関中心になって研究を進めておられます。またがん対策等に使われます医療関係につきましても、国立病院あるいは国立予防衛生研究所といったような国の試験研究機関がみずから試験研究実施するという形でやっておるところでございます。  一方、私どもにおきましても工業技術院の傘下の試験所でこのような工業部門のバイオテクノロジー試験研究実施いたしております。そのほか通産省におきましては、いわゆる工業分野で利用されるようなバイオテクノロジーまた細胞の大量培養技術とかDNAの組みかえ技術といったようなことで、かなり各分野に共通する技術通産省の所管の工業関係バイオテクノロジーでは実施いたしております。また、その実施は工業技術院の傘下の試験所もやっておりますけれども民間がやっているのが中心であるわけでありまして、そういう意味民間が進めておるものを今回着目いたしたことになるわけでございます。  いずれにいたしましても、バイオテクノロジー実施いたしております農林水産省、厚生省とも私どもとしては密接な連携をとっておるわけであります。また今後とも各省庁におきまして適切に分担をし、また協力をしながらバイオテクノロジー研究開発が進められていくべきものと思いますし、そのような格好で十分連携を強化して関係省庁ともやってまいりたいと思っておるわけであります。
  216. 宮田早苗

    ○宮田委員 研究開発について国が積極的な役割を果たすべきは基礎、応用段階であると思います。商業化あるいは開発段階については民間活力にゆだねるべきと考えますが、その方針は基盤技術研究促進センターの運営において貫かれるものかどうか、この辺もお聞きします。
  217. 福川伸次

    福川政府委員 この法案民間におきます基盤技術に関する試験研究の促進を目的としているわけでございます。この試験研究と申しますのは、研究開発段階におきますいわゆる基礎研究応用研究あるいは開発研究ということが中心になるわけでございます。従来、民間研究開発におきましては主としてこの中で一番企業化に近い開発段階に重点を置いておったわけでありますが、今後はこれを応用研究あるいはそのもう一つ前の基礎研究民間活力も振り向けていくべく誘導を図っていこうというふうに考えているところでございます。  出資につきましては基礎研究段階から進めていくもの、また融資につきましては応用研究段階から開発研究にいくもの、こういうものを取り上げてまいるわけであります。しかし、この試験研究はあくまでも基礎、応用、開発試験研究になるわけでありまして、商業化あるいは企業化という段階は含めて考えていないわけであります。  今後この基盤技術研究促進センターの運用に当たりましては、いわゆる民間活力を従来の研究開発試験研究におきます開発段階よりもさらに応用あるいは基礎段階というようなところにもだんだん振り向けていくというようなことでこのセンターの運用を考えてまいりたいと思っております。
  218. 宮田早苗

    ○宮田委員 予算の問題ですが、予算省庁別に分けるのではなしに、優良プロジェクトに優先配分するプロジェクト主義を貫いて縦割り行政の弊害が出ないようにすべきだと思いますけれども、その辺のお考えはどうですか。
  219. 福川伸次

    福川政府委員 私どもといたしましては、このセンター民間活力を最大限に活用しながら民間技術開発を促進しようということを考えておるわけでございます。そういうための特別認可法人でございまして、その運営に当たりましては、いわゆる民間の自主性が十分に発揮されるべきであろうと考えておるわけでございます。  対象案件の選定に当たりましては、案件ごとにセンターが自主的に判断していくということで考えておるわけでございます。そういう意味で言えば、原則の立場はプロジェクトの重要度あるいは熟度等を中心にして優先配分を考えていくというのが基本でございます。  今後、このセンターの運営に当たりましては、御指摘のような縦割り行政の弊害は決して出てはならない側面であろうと思いますので、そういった縦割り行政の弊害が出ないように、運用の点につきましては十分配慮して当たりたいと考えております。
  220. 宮田早苗

    ○宮田委員 事業運営に当たりまして民間の自主的運営を十分に尊重すべきであると思います。そのためにも評議員会の役割が非常に大きいと思うわけですが、政府の基本方針を聞かしていただきたい。  もう一つは、マイクロエレクトロニクス関連技術開発の進展は雇用に多大な影響を及ぼすと思うわけであります。このため評議員会のメンバーに労働界の代表を加えてはどうかと思いますが、その辺はどういうお考えですか。
  221. 福川伸次

    福川政府委員 御指摘のように、事業の運営に当たりましては民間の自主性が十分尊重されていくべしということは、私どもとしてもそれを基本に置いて運用に当たるわけでありますが、業務の運営に当たりましては、今お話しのように民間の意向を十分反映させるということのために評議員会というものを設けておるわけでありまして、このために例えば業務方法書の変更とか毎年度の事業計画等、このセンターの運営に関する重要事項をこの評議員会にお諮りをして民間の意向が十分反映できるというふうなことにしてまいりたいというのが基本でございます。センターの運営に当たりましては、この評議員会の意見が十分尊重されるということが必要であると思いますし、また評議員会自身も自主的に運営されていくべきものであろうというふうに考えておるわけであります。  そのためのメンバーの構成でございますけれども、私どもとしては民間の意見が十分反映できるということで、いわゆる基盤技術に関する学識経験を有する方ということを前提に、それでセンターの会長が任命なさる、こういう建前であるわけでございます。したがいまして、評議員会というのは労働組合の代表であるか否かということを問いませんで、基盤技術について学識経験を有する方のうちからセンターの会長が任命して適切な運用をしていただく、かように考えております。
  222. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、ME化の問題についてお聞きをいたします。  最初にお聞きいたしますのは、マイクロエレクトロニクス関連技術革新の進展が雇用に及ぼすインパクトについては、これまでも各種の調査が行われておりますが、労働界には、将来にわたってME化の進展が雇用面の摩擦をもたらすことを懸念する向きが非常に強いわけであります。基盤技術研究促進センターにおいてはME関連技術開発も研究振興テーマとなると聞いておるわけでございますが、ME化の経済社会へのインパクトについて、中長期的にどのような見通しを持っておいでになるかということ、特に雇用面についてはどういうふうなお考えを持っておいでになるかお聞きをいたします。
  223. 福川伸次

    福川政府委員 ME化の経済社会に与えるインパクトというものは中長期的にどうであるかというお尋ねでございます。  私どもとしては、最近のME化といった技術革新の進展と申しますのは、一つには各産業分野におきまして生産性の向上に役立つ、あるいはまた新しいサービス産業、ニュービジネスといったようなものが出てくる、そういったビジネスチャンスが生まれてくるといったようなこと、さらには設備投資がこれで出てくる、こういうことから産業活性化に経済全体として見て大変大きく貢献しているものであるというように考えているわけでございます。  こういったいわゆる技術革新の進展ということは、これは労働時間の短縮にも長期的にはつながるものであろうと思いますし、さらにまた、いわゆる労働災害の防止あるいは単純繰り返し作業の解放といった、いわゆる雇用環境を改善するといった側面からも大きな貢献を果たしているというふうに思うわけであります。  現在のところこういったハイテク化あるいはME化、技術革新の進展といったようなことが、雇用の面についてはむしろ新しい職場が出てくるといったことから、いわゆる配置転換によりまして解雇の発生という問題は今までのところは生じないでやってきたというふうに思うわけでありますが、こういうように職場の構造と申しましょうか、雇用構造と申しましょうか、これはかなり変わってきていることは御指摘のとおりであろうと思うわけでありまして、そういった意味では円滑な職場の配置転換あるいは職業訓練、職業教育の充実ということが非常に重要な問題になっているわけであります。  今後、雇用面についてどういうふうな考え方を持っておるかということでございますが、これも、今後もいわゆるME化がさらに進んでまいりますれば雇用の構造あるいは環境というものにはかなりの影響があろうかというふうに思っているわけでございますが、そういう中でこの雇用面で各企業がどのように対応していくかという点に関しましては、これはいわゆる企業での労使協議制の活用といったようなことで労使の話し合いが行われて、その解決が図られていくということが特に基本であろうというふうに思うわけであります。  いずれにいたしましても、今後経済が適正に成長していくためにはこの技術開発というのは大変重要な分野でありますし、また他方、それが技術革新の進展が雇用に与える影響というのも、これまた十分考慮に入れておかなければならない点でございまして、そういう意味では、今後私どもとしても将来どのような展望を持っていくべきか、その影響につきまして十分把握をいたしますと同時に、労働省を初め関係省庁とも十分協議をいたしまして、いわゆる雇用の不安定化が生じないような対応策ということにつきまして十分考えてまいらねばならないと考えております。
  224. 宮田早苗

    ○宮田委員 ME化を初めといたします新技術革新の進展に伴いまして、中期的に我が国産業構造がどのように変化をしていくか、数量的な見通しを持っておいでになれば、その主要なものだけでもわかっておいでになる分だけを説明していただければと思います。
  225. 福川伸次

    福川政府委員 マイクロエレクトロニクス産業関連で申しますと、これもかなりこれから大きく伸びていくところでございます。マイクロエレクトロニクス産業の規模は一九八一年で約七兆円でありましたが、これが一九九〇年、このころには約三倍にはなるであろう、こういうふうに試算がされておるわけであります。また新素材の関連で申しますと、今新素材と言われますものは、一九八一年前後で申しますと数千億というオーダーであろうと思いますけれども、これが二〇〇〇年には新素材の直接の関連部門で十兆円ぐらいになるであろう、さらに関連市場を含めれば六十兆円を超えるであろうという試算がございます。またロボット加工機産業では、最近大体一・六兆円ぐらいの規模でございますが、数年後、一九九〇年には三ないし四兆円になるであろう、こういった規模を考えているわけであります。  そういう一部の例を申し上げた次第でありますけれども、この技術革新の進展というのは、産業構造高度化、知識集約化に大変大きな影響を与えるものでございまして、過去これまでの展開をとりましても、いわゆる産業構造がむしろ加工産業中心に移行をしてまいっておりまして、これは付加価値額で見ましてもあるいは雇用構造で見ましても、この加工産業というのが大変雇用面、所得面で効果をもたらしております。  また同時に、最近のアメリカの例を見てもわかりますように、またこれが新しい技術革新によっていわゆる第三次産業が伸びてくる、こういうことでございまして、最近のアメリカの景気回復の中で雇用面で大きな力となっておりますのは第三次産業、ニュービジネスと言われるサービス産業分野であるわけでありまして、これもそういったハードとソフト、これが融合をいたしました格好で新しい産業群というのが、これまた出てまいるわけであります。私どもとしては、よくハードとソフトのハイブリッド化ということを申しておりますが、やっぱりこれからもこういった技術革新を通じましてハードの部門の改革が進みますと同時に、ソフトの部門もこれから大きくなっていくというわけでございまして、この技術革新が御指摘のように産業構造に大きな影響を与えていくわけでありますが、それがまた将来の成長力につながっていく、かように考えておる次第であります。
  226. 宮田早苗

    ○宮田委員 多分に要望的なことでございますが、せっかく通産大臣おいでになりますので、技術開発、特にME化の問題については、ただいま答弁にございましたように雇用面に非常に大きな、いい影響力を持つか悪い影響力を持つかということは先の問題ですが、非常に影響力を持つものでありますから、働く人にとりましては、さらには労働組合にとりましては欠かすことのできない問題であるわけでございます。この問題については、今度せっかく基盤センターができるわけでございますから、これを一つの契機に、言うならば技術開発に対します雇用面での対処方針ということ、通産省だけでなしに特に労働省との連携を密にいたしまして、万滞りのないような対策をひとつ考えていただきたいということを特に要望するわけであります。これは要望ですからあれですが、大臣の何か決意がございましたらちょっと述べていただきたいと思います。
  227. 村田敬次郎

    村田国務大臣 お答え申し上げます。  ME化の労働面に及ぼす影響、それからまたME化によってどういった中長期的な見通しが出てくるかというような御質問がありまして、福川政府委員からもいろいろ詳細なお答えをしたところでございますが、私は一つの例としてロボットという問題、非常に興味を持っておるのです。  ロボットは今、全世界で生産をされておる中で日本が四〇%ぐらいそのシェアを占めておるということで、日本は大変進んでおる国でございます。私どもが子供のころに、恐らく宮田委員も私どもと同じような御年配、あるいは宮田委員の方がやや先輩であろうかと思いますが、あのころいわゆる人造人間というような言葉で言われておりました。あの当時はまだSFの世界であったかと思いますが、今ではそれが非常に現実的な姿となって出てきたわけでございます。  しかし、現在通産省等でやっております調査によりますと、なるほど産業用ロボットはプラスチック成形加工だとか組み立てたとかアーク溶接だとか切削加工だとか、いろいろな面で使われておる。非常にプラスの面が出ておりまして、近い将来にこれが雇用の問題に大きな影響を及ぼすことはないであろう、むしろ単純繰り返し作業の防止であるとか災害の防止であるとかいう面から人間にとってプラスになるであろうというような予測をしております。  これは非常に重要だと私は思いますが、広範にME化ということを考えてまいりますと、先ほど福川局長からもお答え申し上げましたように、新素材だとかバイオテクノロジーだとかマイクロエレクトロニクスだとか、いろいろな分野に及んでまいりますと省力作業が非常に進みますために、その意味では労働面に及ぼす影響が大変大きいであろう。人間が、人間のつくったものによって人間を不幸にするようなことがあってはならないというのが私の基本的な認識でございまして、労働面に及ぼす影響については、労働省その他関係各省とも相談を申し上げながら、宮田委員御指摘のいろいろな将来の対応をしてまいりたいと思っております。
  228. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、国有施設の使用の問題についてお聞きをいたします。  民間企業が国有の試験研究施設を廉価に使用できる道を開いたことは大変結構なことと思うわけであります。この制度改正によりまして官民の共同研究体制を強力に推進すべきであると考えるわけですが、そのためには使用の対価を時価よりも低く定める場合の要件を極力弾力化する必要があるのではないか、こう思います。法案では「民間基盤技術の向上を図るため特に必要があると認めるとき」と抽象的な規定が置かれておるわけでございますが、具体的な方針についてまずお伺いする次第です。
  229. 福川伸次

    福川政府委員 基盤技術に関します試験研究に必要な設備と申しますのは、最近の技術革新に応じまして大変高価なものになってきておるわけでありますが、またその割に今度は使用頻度が低いということになりまして、民間ではそういった研究設備を持つということはかなり大きな負担になるわけであります。その意味で、国が持っております。そのような施設を、国の試験研究に支障のない範囲で使わせるということは、その設備の有効利用にも役立ちますし、民間試験研究にも大いに貢献をするものというふうに考えているわけであります。  その場合に、この減額使用ということはまた民間の負担を軽減するという効果がございますし、また民間試験研究を促進する。また国の施設を利用するわけでありますから、その他の部門での運用の改善を図れば産官学の連携にも役立っていく、こういうことでございまして、この運用に当たりましては、私どもとしても民間企業の利用が円滑に進むように配慮してまいらねばならないと考えております。  具体的な手続に関しましては今お尋ねにございますように、「民間基盤技術の向上を図るため特に必要があると認めるとき」ということでございますが、これは他に類似の制度等を見ましても、この必要性につきましては主務大臣が認定をする、こういうことでございまして、今回も恐らく同様の制度一つの参考にして具体的な手続を定めてまいりたい、かように考えておるわけであります。  この運用に当たりましては、いわゆる基盤技術試験研究を円滑化する、こういう視点でございますので、まだ具体的な手続をどのように定めるかは決めておりませんし、今後の問題でございますが、今、宮田委員の御指摘の点は念頭に置いて今後の手続の制定等について考えてまいりたいと思います。
  230. 宮田早苗

    ○宮田委員 最後にお聞きするわけでございますが、もう一度質問の機会を与えていただけるようでございますから、そのときに研究者の養成等との関係についてはお願いするといたしまして、今まで質問した中で特に問題になりますのは産官学の連携ですね。  もう長年にわたって言われておりながらも、なかなかこれが実現できないというところに隘路があるのではないかというふうに思っておるところでございます。この基盤センターをつくるということを一つの契機に、産官学の連携を特に強化されるように大臣に格段の努力をしていただきたい、こう思います。決意のほどをお伺いして終わりたいと思います。
  231. 村田敬次郎

    村田国務大臣 大変重要な御指摘かと思います。  先ほどもお答え申し上げましたが、産官学の完全な連携がなし得れば、技術開発の面において特段の発展が国のために図られるということでありまして、基盤技術研究センターの設置に伴いまして、こういった施設を一つの契機として、委員御指摘の産官学の提携をさらに進めていく。そして民間活力をしっかりと導入いたしまして、基盤技術あるいは技術開発を進めてまいりたいと思います。
  232. 宮田早苗

    ○宮田委員 では、終わります。
  233. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて宮田早苗君の質疑は終わりました。  続いて、野間友一君の質疑に入ります。野間君。
  234. 野間友一

    ○野間委員 通産大臣にまずお聞きしたいと思いますが、ポスト先端技術というような言葉をお聞きになったことはございますか。
  235. 村田敬次郎

    村田国務大臣 私まだ聞いたことがないのですが……
  236. 野間友一

    ○野間委員 工業技術院の関係の研究所に行きまして研究者と懇談をする機会があったのです。そのときに研究者が言うのは、今バイオとか新素材とかMEとかいろんな先端技術のことが言われておる。しかし国立の研究機関の研究者というのは、もっと長いターゲットで基礎やあるいは応用を目指して研究しなければならぬ、だから、今、本当に真剣に、そういう基礎研究の上で必要なことはポスト先端技術の問題だということを言われたわけですね。私はびっくりしました。まさに、国の果たす役割の中で、基礎あるいは応用研究、これを考える場合に、こういう一つの姿勢が必要だろう、こう思いました。  そこで、そういう意味での基礎あるいは応用研究、これは国の果たすべき役割ですね。大臣もこれが非常に大きいということは御認識だと思いますけれども、その点一言だけ……。
  237. 村田敬次郎

    村田国務大臣 私は、技術開発そのものが新しい時代に向かって一番大切なことだという認識をしておりますが、しかし、政治あるいは行政というものは常に先見性を持たなければならない。その意味で、いつも申しておることでございますが、産業革命以来の大きな技術革新というものが全世界を覆おうとしておる、まさに宇宙時代がやってこようとしておるということが言われるわけでありますが、その先に来るものは何か、これは今の段階でなかなか予想することは困難でありますが、今、野間委員の指摘になられた点も、四次元の世界と申しますか、時代を将来にわたって広く見渡すという意味で、非常に必要な御指摘かと思います。
  238. 野間友一

    ○野間委員 今回のこの法案の提案理由の中でも、国の果たすべき役割、これは基礎研究応用研究、こういうものが指摘されながら、「同時にこということで、「民間企業基盤技術分野技術開発に向けてその活力を最大限に発揮し得るようその環境条件の整備」が必要なんだということが本法の提案の理由になっておるわけですね。  しかし、現在の民間あるいは国立なり公立の研究機関の研究体制なり研究の中身、こういうものを考えた場合に、とりわけ研究機関の場合には、今大臣が言われたように、非常に重要な研究すべきテーマを考え、また研究しなければならぬのに、研究者の数はどんどん減らされる、また、金も横ばいないしは減っておるわけですね。ですから、むしろ強化しなければならないのはこういうところじゃないかと私は思うのですね。ところが、提案理由の説明の中では、「同時にこということで民間活力が非常に重点になりましてというか、これが専ら、そして、民間に対する国の機関の利用であるとかセンターの設置ということになってくるわけですね。私はむしろ逆ではないかという感じがするのですけれども、いかがでしょう。
  239. 村田敬次郎

    村田国務大臣 民間活力を最大限利用する、それと同時に、この技術開発、そういったものについては国の資金等もいろいろ活用していく、どちらも両者相まって発展をするものであると認識をしております。
  240. 野間友一

    ○野間委員 私は、ここに産業技術開発長期計画策定研究会の報告を持っております。これは、五十六年十月にできたものです。これを見ましても、企業の中での研究費について分析が出ておりますが、基礎研究が四・六%、応用研究は一九・四%、ところが開発研究は七六%。基礎応用研究というのは、企業の中では、やはり利益の関係がありますからうんと下がっているわけですね、低いわけですね。グラフがずっとありますけれども開発研究はずっと上がっておる。これが民間企業の実態なんですね。  ですから、民活というふうによく言われますが、民間企業よりも基礎応用研究を重視するという本法案の提案の理由から見れば、今申し上げたように、国の機関の充実、拡充ということこそ「まさに喫緊の課題」、この提案理由の説明の表現をかりましたらそういうふうに言わざるを得ない、これは事実が証明しておるというふうに私は思うわけです。しかも、この研究開発のライフサイクルを見てみますと、日本の場合には三・五年。アメリカが七・四年、フランスが七・三年と、これに比べても非常にサイクルが短いわけですね。これは企業の場合にまさにそうなんですね。  ですから私は、どうも何か本末転倒で、最も重視しなければならぬ——総論はよし、国の果たすべき役割と。ところが実際にはそうではなくて、この民間活力のということでこういう法案ができたということを、大変残念と申しますか、本末転倒じゃなかろうかというふうに考えざるを得ないと思うのです。  そこで順次お聞きしたいと思いますが、通産省の資料ももらっておりますが、工業技術院での主な技術開発予算の推移、これはそちらにあると思います。  この中で、次世代産業基盤技術研究開発、それから、大型プロジェクト、サンシャイン、ムーンライト、重要技術研究開発補助金、これらは一体合計が幾らなのか。  それと比較して、国の試験研究所の特別研究費あるいは経常研究費の合計、これを、節々といいますと、昭和五十年、それから五十五年、六十年どこの対比をしてひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  241. 荒尾保一

    ○荒尾政府委員 御指摘の事項を二つに大別いたしまして、次世代、大型プロジェクト、サンシャイン、ムーンライト等の合計、これが昭和五十年度は二百三億円でございます。昭和五十五年度は五百十二億円でございます。それから、昭和六十年度は七百二十七億円ということになっております。  一方の試験研究所の特別研究費及び経常研究費でございますが、昭和五十年度におきまして五十九億円、五十五年度におきまして六十七億円、六十年度は六十一億円ということになっております。  予算上は以上でございますが、この主要事項の中に、研究所の方に研究費として委託と申しますか回される分がございまして、その分、数字が出ておりませんが、そういったものがあるわけでございます。
  242. 野間友一

    ○野間委員 大臣、お聞きのとおりなんですね。しかも、今私は項目を申し上げたのですが、次世代産業基盤技術研究開発等々、これらは六十年度は七百二十七億円と非常に膨大な額ですね。しかも、この大部分民間企業大手に委託として全部回されるわけですね。ですから、工業技術関係予算の中でも、このプロジェクトの中で実際内部で使われる金というのは一〇%前後、こういうことに統計上も出ておりますね。ましてや、固有の研究所の研究、これが六十年度は五十五年対比でむしろ減っておるわけですね。これが実態、大変お粗末なものであります。  私は、こういうふうに見てみますと、申し上げましたように、基礎研究応用研究の重視を叫びながら、実際にはお粗末なものだと言わざるを得ないと思うのですね。研究所の研究者の数もずっと減っておるわけです。こういうところにこそ力を入れるべきであると重ねて私は要求したいと思いますが、大臣の所見を承りたいと思います。
  243. 荒尾保一

    ○荒尾政府委員 基礎研究重要性から考えまして、国における試験研究充実強化すべきだという点は御指摘のとおりだと思っております。  私どももそういった面でできるだけの努力をいたしておるわけでございますが、残念ながら、現在の財政状況は非常に厳しいわけでございまして、全体としましてマイナスシーリングという状況になっておるわけでございます。科学技術関係の中でも私ども予算案につきましてはこの例外になっておりませんで、全体としては、投資的経費についてはマイナス五%、それから、その他の経費についてはマイナス一〇%というような、このマイナスシーリングの対象になっておるというような状況から、非常に必要性がありながらなかなかこれを充実することができないということになっておるわけでございます。  しかしながら、そういう状況の中でできるだけ工夫をするということで、例えば、特別会計等を利用いたしながら、サンシャイン、ムーンライトあるいは大型プロジェクト等々を増額をいたしまして、その中で基礎的な研究部門も国立研究所において担当するというような形で、できるだけ厳しい状況の中で研究内容の充実を図っておるところでございます。
  244. 野間友一

    ○野間委員 厳しい厳しいと言われますけれども、一方では民活に対してはうんと金をつぎ込むわけですよ。今度またこの法律ができますと出資あるいは融資ということで、後でまた触れますけれども、どんどん金がつぎ込まれる。ところが、今申し上げましたように最もサイクルの長い基礎研究についてはお粗末な状態がずっと続いておるわけです。私が申し上げるのは、ですからそういうところにこそうんと金をつぎ込む。厳しければ何で片方には多額の金を使って、片方はこれを厳しく規制するのか。私は、そういう意味でも本末転倒じゃないかと言っておるわけです。  先ほど申し上げたように、試験研究所の研究費、これは特別研究あるいは経常研究合わせましても六十年度は六十一億円、五十年度は五十九億円ですから、この十年間にわずか二億円しか伸びてないわけです。サンシャイン計画等について先ほど部長が言われましたけれども、これもその大部分は委託するわけでしょう。内部で基礎研究をやるのはわずか一〇%前後だと思うのです。こういうことでは困るわけです。  別の資料がありますが、総理府統計局が出しました科学技術研究調査報告、これは最も権威のあるものだと言われておりますが、これを見ましても、民間企業の内部使用研究費総額の中で国や地方公共団体の負担額、さらに国立研究機関の使用研究費総額、この数字をずっと統計上から拾ってみますと、国立研究機関の使用額は非常に少ないわけです。伸び率を見てみましても、これは自然科学関係だけですが、民間の場合には七九年から八二年の間の伸びが一五七・九%、これに対する国や地方公共団体の負担額が二六二・五%も伸びておる。国立研究機関の使用総額は幾らかといいますと、パーセントですけれども、七九年対比で八二年が一一〇・二%、こういう伸びにしかならない。恐らく調査報告は全部ごらんになっておわかりのとおりだと思いますけれども、こういうことなんです。ですから、何で大事だと言いながら厳しい厳しいと言ってこういう非常に重要なところに本当に金を使わないのか。これはどう考えても疑問を持たざるを得ないと思うのです。  今度の法案を見てみましても、民活、民活ということで、しかもこれは単に基礎あるいは応用研究だけに限らず開発研究も含めた民間活力の活用というふうに法律の仕組みがなっております。しかも、試験研究機関等を民間に使用させる問題、それからセンターをつくって出資、融資、あるいは官民の共同研究のあっせん等々、ここにはうんと力を注いでいくということになっております。どうも私は、重視すると言いながら実際やっておられることは逆の方向へ行っておられるとしか考えようがないんです。なぜ基礎応用研究の重視ということでこういう点を重視した立法をなさらないのか、私は不思議に思うのですけれども、再度大臣の御見解を承りたいと思います。
  245. 村田敬次郎

    村田国務大臣 この表は私も拝見をしております。次世代産業基盤技術研究開発あるいはサンシャイン計画、ムーンライト計画等、こういった経費は全体としてはふえておりますが、試験研究所の場合は余りふえておらない、そういった点についての御指摘であろうかと思いますが、自由主義経済体制のもとにおきましては、できるだけ民間活力を利用をして、自由に伸び伸びと研究をしてもらう、そしてそれに政府機関が対応をして進めていくというのが技術開発についてのあるべき形であると私は思うのでございます。その意味で、今回の基盤技術研究促進センターは、そういった活動費その他も含められた非常に重要な機関であろうかと思っております。民間活力それからまた国におけるいろいろな特別研究、経常研究等を合わせて、言うなれば産官学一体としてやっていくということでございまして、この予算はそういった意味で十分考慮されて組まれた予算であると認識をしております。
  246. 野間友一

    ○野間委員 大臣、私はくどいほど申し上げておりますように、この提案理由の説明の中では、基礎研究応用研究は非常に重視しなければならぬ、これに果たす国の役割は非常に大事だということが書かれておりますね。ところが、民間活力云々を何度も言われるわけですが、私が先ほど数字を挙げましたように、民間の場合には営業、営利ですから、それとの絡みでどうしても開発研究に偏るということは否めない事実で、また繰り返しますけれども、統計では今までも開発研究が七六%、応用研究が一九・四%、基礎研究はわずか四・六%、こういう実態なんです。ですから、仮にこの法律ができたとしても、開発研究そのものは法制上もあるいは財政上、金融上さまざまな形で施策をとられますから確かに進むかもわかりませんけれども、しかし最も重要な基礎あるいは応用研究は期待はできない、本当に地道な長いサイクルの中で国の機関がやるべき責務というものを重視するならば、当然ここに力あるいは金を注がなければならぬということを繰り返し私は大臣に申し上げておるわけです。  ぜひその点を御理解をいただきたいと思うのと同時に、まあ法制上の問題については今お答えになれないかもわかりませんけれども、この点について最大限の予算上の措置あるいは研究者の数の確保という点について努力をいただきたい、このことを要望しますけれども大臣いかがですか。
  247. 荒尾保一

    ○荒尾政府委員 基礎応用研究重要性はもう御指摘のとおりでございます。ただ、私どもの行っております例えば次世代産業基盤技術研究制度は、これは開発段階といいますよりも、実体からいいますと基礎段階でございます。大型プロジェクト応用研究段階以降というようなものでございまして、この両者は必ずしも対立をするものではないと私どもは思っております。次世代あるいは大型プロ等々の制度も活用しながら国が行う基礎研究応用研究の拡充に努力をしておるわけでございます。  実は試験研究所の経費は一般会計になっておりまして、特に一般会計が厳しい状況にあるということからこういったことになっておるわけでございますが、先ほど来申しておりますように、特別会計等の活用を通じまして、できるだけ拡充をしたいと思っております。しかし、お話のとおり、この特別研究あるいは経常研究等は非常に重要なものでございます。財政状況が非常に厳しいとはいいながら、その中で、各省庁横並びの問題もございますので、なかなか私どもだけではいかない面もございますが、私どもも最大限の努力をさせていただきたいと思います。
  248. 野間友一

    ○野間委員 工業技術院の方に私は聞いておるのじゃなくて、これはやはり政策施策に直接かかわる問題ですから、通産大臣、最大限の努力をしていただきたい、こういう要求なんです。いかがですか。
  249. 村田敬次郎

    村田国務大臣 今政府委員からも御答弁申し上げたとおりでありますが、私どもは、民間活力そしてまた先ほど来申し上げておりますように産官学の緊密な提携の上で今後の技術開発をやっていきたいということでございまして、野間委員の御指摘は承りましたので、そういった点も考慮をいたしまして、今後努力をいたしたいと思います。
  250. 野間友一

    ○野間委員 どうもかみ合いませんね。答えにくいですか。この法律を見ておりますと、先ほども言いましたけれども予算面でもあるいは研究者も、国の施設、財産も、これはやはり大胆に大企業に開放するということ以外にないと思うのですね。これはいろいろ調べてみますと経過がありまして、経団連の、「技術開発推進に関するわれわれの見解」、これは土光さんが七九年五月に発表されておりますが、その中で、先導的技術開発推進、科学技術予算の拡大、民間への助成、刺激策の強化、それから官学民、すなわち産学官連携強化、こういうものが主張されて、これが産構審の「八〇年代の通産ビジョン」に受け継がれて、その後臨調答申の中でさらに国の施設の規制緩和等の提言が導入されるという経過が実はあるわけで、どうも一貫してこういう財界の要請にこたえてやられたというふうに経過からしても事実からしても言わざるを得ない、私はそう思うわけであります。  ところが一方、私も申し上げたように研究者との懇談も持ったわけですね。実際研究者がいろいろ研究されております姿にも接しましたし、あるいは懇談の場でも聞きましたけれども、本当に生き生きとして、そしてずっと夢を語ってくれるわけですね。ところが異口同音に言われるのは、研究費が非常に少ない、人当割りなんかずっと減っていますね。だから非常に金が少ない。長いサイクルの中で本当に地道な研究をしなければならないのに、こういうことじゃどうにもならぬのだということを切々と訴えるわけですね。  ついでに資料をもらってきたのですが、これは筑波研究学園都市研究機関労働組合協議会が出しております、工業技術関係の各研究機関も全部入った資料ですが、これを見てびっくりしたのですけれども、研究費が少ないということだけではなくて、海外の学会とか研究会への出張がありますね、あるいは国内でも同じものがありますね、こういうところに自腹を切って行かなければならない、あるいは公休でなくて有給休暇をとって行かざるを得ない、こういうのが随分とあるわけですね。  聞きますと、研究者というのはみずから研究した結果を発表するということと同時に、こういう最先端を行く研究の成果を自分の体で直接感ずる、それによって研究意欲をうんと向上させて自分の研究の成果に生かしていきたい、そのためにはどうしても欠かすことができない、こう言われるわけですね。しかし実際、残念ながら機会が非常に少ない。これは通産関係、工業技術関係もいっぱい表がありますけれども、これを見ましても非常に苦労されて欧米あるいは東南アジアヘ行かれる。ところが自費での出張が随分とあるわけですね。それから休暇にしても、これは公務ではなくてみずから休暇をとっていくという人も随分あるわけですね。非常にこれが悩みなのです。自腹を切って行くことは大変だというんですね。しかし、数少ない機会を待っておればまさに機会を逃していく、そうなれば自分の研究に非常に支障を来すんだということで奥さんにねだりながら無理をしていく。この無理がたたって後でいろいろな点で支障が出てくるということまで言われておるわけですね。  こういう実態を、内部をかばうようなことじゃなくて、大臣が一遍みずから事情を聞いていただいて、ぜひ善処していただきたい、こう思いますが、大臣いかがでしょうか。
  251. 荒尾保一

    ○荒尾政府委員 お話しのように特に国内、国外への旅費、特に研究者の場合におきましては、文献になったときでは情報はもう遅い、例えば学会とかあるいは海外で直接情報を得るということから旅費の必要性が非常に重要になっております。しかしながら現実の予算の面で申しますと、これも完全なシーリングの枠の中に入っておりまして、項目別のシーリングの中に入っておるわけでございます。そういう点から、私どもも必要性を十分に認識しながら、現実の問題としましては増額が図れないというのが状況でございます。しかし、これは各研究所、非常に共通の悩みでございまして、そういった点を、我々だけでなくて各省庁の状況も反映しながら、明年度以降さらに努力を続けていきたいと考えます。
  252. 野間友一

    ○野間委員 大臣、この点については、我々は大臣をサポートして予算の獲得にぜひ御一緒したいと思いますけれども、ぜひ努力をしていただきたい、いかがですか。
  253. 村田敬次郎

    村田国務大臣 予算が全般として非常に窮屈であるという事情は政府委員から申し上げたとおりでございますが、今委員御指摘になったような点もいろいろ検討させていただきたいと存じます。
  254. 野間友一

    ○野間委員 委員長もお聞きだと思いますけれども、事ほどさように国の機関で一生懸命研究しておられる方々は苦労しておるということをるる申し上げたわけです。  法案について若干ただしたいと思います。  まず、「試験研究」というのが出てまいりますが、この「試験研究」とは一体何を意味するのか。先ほど同僚議員の質問に対して基礎、応用だけでなくて開発研究まで含まれるやに答弁を聞いたのでありますが、そうなのかどうか。と同時に「基盤技術」というこの概念についても御説明いただきたいと思います。
  255. 福川伸次

    福川政府委員 「試験研究」と申しますのは、一定の技術的条件を満たし得る研究成果を得るために試行錯誤を行いながら技術リスクの解消に努める行為というふうに考えております。一般的に、試験研究段階基礎研究応用研究開発研究といった段階で分かれて行うわけでありますが、その後に参ります企業化あるいは商業化という概念はこの試験研究には入らないと思っております。  次に「基盤技術」ということでございますけれども法案の第二条に定義がございますように、鉱工業、電気通信業等の技術のうち通商産業省及び郵政省の所管に係るものという視点、観点と、国民経済及び国民生活基盤強化に相当程度寄与するものといった二つの要件の合致するものをこの「基盤技術」と考えております。  なお、「国民経済及び国民生活基盤強化に相当程度寄与するもの」というものは、一定の、一つ技術が製品等に体化された場合において、その製品等が有することとなる波及性、いわゆる利用分野の広がりと言ってよろしいかと思いますが、そういった波及性及び影響度、これは性能あるいは生産性の向上に与える効果といったものと解していただいてよろしいかと思いますが、そういった波及性及び影響度が十分に大きく、その結果として国民経済国民生活基盤の形成に主要な役割を担うに足る、こういうものを考えておるわけでございます。
  256. 野間友一

    ○野間委員 そうすると、開発研究も含まれるというような御趣旨の答弁だったと思いますが、開発研究は、基礎研究応用研究及び実際の経験から得た知識の利用であり、新しい材料、装置、製品、システム、工程等の導入、または既存のこれらのものの改良をねらいとする研究、そういう実用化に非常に近い段階の研究、これまで含めるということですね。そうすると、提案理由の説明の中で基礎応用研究を非常に重視されながら、実際にはそういう限定された概念でなくて、法律上は開発研究を含めた試験研究という表現を使われているということはよくわかります。  それから、基盤技術というのは、鉱工業あるいは電気通信等々ということで縛りがあるとしても、ほとんど九〇%ぐらいの産業をカバーできるのじゃないかというふうに言われておりますけれども、恐らく今の局長の答弁からしてもそうじゃないかと思います。  次にお聞きしたいのは、この法案の体系を見ますと、国の財産の利用等というところと、それから促進センターの創設、この二つがありますが、まず三条についてお聞きしたいと思います。  国有試験研究施設の廉価使用制度の創設ですが、これは国有財産法あるいは財政法に例外規定を設けて、民間のため特に必要があると認めるときは国の試験研究施設を時価よりも安く使用させるということになりますね。新聞報道等で見ますと、具体的内容は政令で定めるようですが、例えばその対象と言われます化学技術研究所の高密度エネルギー実験と、それから電総研の非磁性実験施設の場合、現行、一体どのくらいの使用料を取っておるのかということと、どのくらい安く貸すのか、あるいはただの場合、無償の場合もあるのか、そのあたりお伺いしたいと思います。
  257. 荒尾保一

    ○荒尾政府委員 御指摘の高密度エネルギー実験等施設の場合でございますが、三十日の計算で七百五十三万円でございます。それから、電総研の非磁性実験施設、これは三百四十万円ということでございます。
  258. 野間友一

    ○野間委員 この法案ができますと、無償でこれを貸すということもあり得るかどうか。
  259. 荒尾保一

    ○荒尾政府委員 廉価でということになっておりまして、無償は考えておりません。
  260. 野間友一

    ○野間委員 どのくらい安くなるのですか。ついでに聞きますと、電子リニアックというのがありますね、この設備、物品も省令改正で安い料金で民間が使用できる、こういうことは検討中だというふうにも報道がありますけれども、これもそのとおりなのかどうか、あわせてお答えいただきたいと思います。
  261. 荒尾保一

    ○荒尾政府委員 他の制度の例におきましては、減額率が最高限五〇%以内ということになっておりますので、それの中ということになると思います。  今御指摘の施設については、ちょっとわかりかねます。
  262. 野間友一

    ○野間委員 それじゃ、その点については改めてまたお聞きいたしますが、五条の問題です。「政府の責務」、これは章としては「国の財産の利用等」というところに位置づけておるわけですが、この「必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」という規定ですね、これはどういう中身なのか。国有財産の利用等に関して具体的にその「必要な措置」ということはあり得るのかどうか、あるとすればどういうものなのか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。  特許の関係でもついでに聞いておきますが、国の委託研究に係る国有特許権、これについて受託企業に共有化あるいは低廉または無償実施権を供与するという点も、この五条との関係でその「必要な措置」の対象として考えておられるのかどうか、この点もあわせてお伺いしたいと思います。
  263. 福川伸次

    福川政府委員 第五条におきます「政府の責務」でございますけれども、具体的な例といたしましては、一つは、例えば国有の試験研究施設に関する情報を提供し、またその円滑化を図るといったような例、あるいは、今御指摘の国の委託研究の成果としての国有特許権等の一部を受託企業に譲渡することによって、当該国有特許権等を共有化する措置というようなことを考えておるわけであります。  今お話しのように、それじゃ国有特許を廉価とかあるいは無償で出すかということでございますけれでも、現在のところ、今そういった国有の特許を、これは今申しましたように共有化という形でいたしますが、今のところ廉価あるいは無償でそれを受託企業に出すということは考えておりません。
  264. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと、国有特許について言いますと、これは今のお話では、受託企業、事業を受託しますよね、この受託企業を共有化させるという方向ですか、これは可能なんですか、法律上。
  265. 荒尾保一

    ○荒尾政府委員 現行におきましては、国から委託をいたしました場合に、受託企業の職員、従業員等が発明しました技術につきましては、これが特許を受ける権利が国有化されまして、国の特許、国有特許になるわけでございます。  現在、これで考えておりますのは、これを譲渡をするということでございます。法案の上においては特別の規定を置いておりませんが、通常の譲渡の規定に基づきまして、一部を譲渡いたしまして共有化をする、こういうことを考えておるわけでございます。
  266. 野間友一

    ○野間委員 これは例の国有財産法との関係がありますね、この国有財産法の第二条によりますと、「この法律において国有財産とは、国の負担において国有となった財産又は法令の規定により、若しくは寄附により国有となった財産であって左に掲げるものをいう。」として、その一項五号のところに特許権等工業所有権がありますね。これからすれば国の固有の財産になるわけですね、これはそんなことできるのですか。
  267. 荒尾保一

    ○荒尾政府委員 国有のものとなりました国有特許は普通財産になるわけでございます。これにつきましては、正当な対価を支払うことによりまして譲渡をすることができるということでございます。今考えておりますのは、この正当な対価に基づいて国から譲渡をするということを考えておる次第でございます。  その際に、予算決算会計令の臨時特例という政令がございますが、その中で特例を置きまして、随意契約によりまして正当な対価に基づいて譲渡をするということを考えておるわけでございます。
  268. 野間友一

    ○野間委員 この譲渡を認める根拠法は一体何になるわけですか。
  269. 荒尾保一

    ○荒尾政府委員 国から委託をいたしまして、そこに多くの研究者、いわば頭脳資源が活用されておるわけでございまして、この貢献といいますか、これを評価をいたしまして、この譲渡を認めようとするものでございます。こういう形によりまして、委託研究自身の活性化を図っていく、研究マインドを向上させるということをねらいとするものでございます。
  270. 野間友一

    ○野間委員 私がお聞きしておるのは、法律上の根拠は一体何に基づいておっしゃるのか聞いておるのです。
  271. 荒尾保一

    ○荒尾政府委員 会計法の随意契約の規定でございます。
  272. 野間友一

    ○野間委員 そこまで考えなかったので、それはひとつぜひ勉強して、また論議をしたいと思います。  そうすると、この譲渡ということになりますと、これは希望によってフリーハンドで全部民間に払い下げる、いわゆる譲渡するというふうになるわけですか、これはもう自由にやるわけですか。
  273. 荒尾保一

    ○荒尾政府委員 基本的には委託をした企業でございます。したがって、だれでもというわけにはまいらないと思います。委託企業の中でどういう形でこの譲渡をするか、具体的には政令で定めるということになっておりまして、その過程でもう少し検討させていただきたいと思っております。
  274. 野間友一

    ○野間委員 もう一つの問題として、国有施設の使用に関してですが、従来でも基礎研究応用研究、非常に重要だし、研究者は非常に一生懸命やっておるわけですね。ところが今回の三条によりまして、この使用を時価より低くこれを認めるということになりますが、そういうことになりますと、民間の使用の請求なり要求によって、実際には中で今まで研究しておるそういう研究そのものが妨げになる場合も出てくるのじゃないかと私は思うのですね。どんどん外から出てきて、そしてそのテーマを決めてどんどん使用させられる、やられるということになりましたら、ただでさえ非常に窮屈な中で研究しておられる人たちが、もっと障害というか支障を受けるのじゃないかという懸念をするのですけれども、その点についてどうなのかということと、時間がありませんので、ついでにお聞きしますが、その使用を求めてきた場合に、それについて使用させることの責務と申しますか、その拘束力というか、そういうものについてはどのようにお考えになっておりますか。
  275. 荒尾保一

    ○荒尾政府委員 あくまでも国有財産の使用を認めるといいますのは、国の研究所における研究目的に反しないといいますか、それに支障を与えないという範囲の中でございまして、この点につきましては、厳重にチェックをするということを考えております。そのために「政令で定めるところによりこということになっておりますが、主務大臣におきまして認めることがいいかどうかということを認定をするということにしておりまして、今おっしゃいましたような弊害が生じないようにしてまいりたいと思っております。
  276. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと、もし使いたいという要請があった場合も、それぞれの研究所でいろいろ検討して、その研究に支障があるという場合には使用させないということになるわけですか。
  277. 荒尾保一

    ○荒尾政府委員 それぞれの研究所におきまして研究計画があって、一定の期間、ちょうど使用しなくてもいいという期間に限って使用が認められるわけでございまして、常に民間からの使用申し出があった場合に認められるということではないわけでございます。
  278. 野間友一

    ○野間委員 時間が参りましたのでこれで終わりますが、どうもいろいろ聞いておりますと、極端に言いましたら、私は、みんな差し上げますというような、そういう法律のような気がしてしようがないですね。しかも、これによって確かに開発研究は非常に進むかもわかりませんけれども基礎研究応用研究がさらにさまざまの形で障害を受ける、そういうような気がしてしようがないのですけれども、残余の質問については機会を改めてしたいと思います。終わります。
  279. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて野間友一君の質疑は終わりました。     —————————————
  280. 粕谷茂

    粕谷委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  内閣提出基盤技術研究円滑化法案審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選及び日時等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  281. 粕谷茂

    粕谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、来る二十九日金曜日午前十時より参考人から意見を聴取する予定でありますから御了承ください。  次回は、来る二十九日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時一分散会