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1985-04-19 第102回国会 衆議院 社会労働委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年四月十九日(金曜日)     午前九時三十二分開議 出席委員   委員長 戸井田三郎君    理事 稲垣 実男君 理事 小沢 辰男君    理事 丹羽 雄哉君 理事 浜田卓二郎君    理事 池端 清一君 理事 村山 富市君    理事 大橋 敏雄君 理事 塩田  晋君       伊吹 文明君    古賀  誠君       斉藤滋与史君    自見庄三郎君       谷垣 禎一君    友納 武人君       長野 祐也君    西山敬次郎君       野呂 昭彦君    林  義郎君       藤本 孝雄君    箕輪  登君       網岡  雄君    多賀谷眞稔君       竹村 泰子君    森井 忠良君       竹内 勝彦君    森田 景一君       森本 晃司君    小渕 正義君       塚田 延充君    浦井  洋君       小沢 和秋君    菅  直人君  出席国務大臣         労 働 大 臣 山口 敏夫君  出席政府委員         労働大臣官房審         議官      中村  正君         労働大臣官房審         議官      白井晋太郎君         労働大臣官房審         議官      野見山眞之君         労働省労政局長 谷口 隆志君         労働省労働基準         局長      寺園 成章君         労働省職業安定         局長      加藤  孝君  委員外出席者         環境庁水質保全         局水質管理課長 小林 康彦君         通商産業省基礎         産業局化学製品         課長      松井  司君         労働大臣官房国         際労働課長   佐藤ギン子君         労働省労政局労         働法規課長   廣見 和夫君         労働省労働基準         局安全衛生部長 菊地 好司君         労働省労働基準         局安全衛生部長 加来 利一君         労働省職業安定         局雇用政策課長 齋藤 邦彦君         自治省行政局公         務員部公務員第         一課長     紀内 隆宏君         参  考  人         (全日本電機機         器労働組合連合         会政策企画局         長)      阿島 征夫君         参  考  人         (東京商工会議         所理事事務局         長)      小野  功君         参  考  人         (信州大学経済         学部教授)   高梨  昌君         参  考  人         (日本事務処理         サービス協会監         査)      宮川 尚三君         参  考  人         (全日本自治団         体労働組合副委         員長)     山本 興一君         社会労働委員会         調査室長    石黒 善一君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十九日  辞任          補欠選任   橋本 文彦君      竹内 勝彦君 同日  辞任          補欠選任   竹内 勝彦君      橋本 文彦君     ――――――――――――― 四月十九日  育児休業法案糸久八重子君外二名提出参法  第三号)(予)  育児休業法案中西珠子君外二名提出参法第  四号)(予) 同月十八日  食品添加物安全確保等に関する請願井出一  太郎紹介)(第三二七三号)  同(稻村佐近四郎紹介)(第三二七四号)  同(宇野宗佑紹介)(第三二七五号)  同(小渕恵三紹介)(第三二七六号)  同(鹿野道彦紹介)(第三二七七号)  同(梶山静六紹介)(第三二七八号)  同(片岡清一紹介)(第三二七九号)  同(金丸信紹介)(第三二八〇号)  同(倉成正紹介)(第三二八一号)  同(小泉純一郎紹介)(第三二八二号)  同(小宮山重四郎紹介)(第三二八三号)  同(國場幸昌紹介)(第三二八四号)  同(佐々木義武紹介)(第三二八五号)  同(佐藤隆紹介)(第三二八六号)  同(櫻内義雄紹介)(第三二八七号)  同(田村元紹介)(第三二八八号)  同(谷垣禎一紹介)(第三二八九号)  同(玉置和郎紹介)(第三二九〇号)  同(玉沢徳一郎紹介)(第三二九一号)  同(戸井田三郎紹介)(第三二九二号)  同(友納武人紹介)(第三二九三号)  同(中川秀直紹介)(第三二九四号)  同(中村靖紹介)(第三二九五号)  同(丹羽兵助紹介)(第三二九六号)  同(橋本龍太郎紹介)(第三二九七号)  同(原田昇左右紹介)(第三二九八号)  同(福田一紹介)(第三二九九号)  同(吹田愰君紹介)(第三三〇〇号)  同(藤本孝雄紹介)(第三三〇一号)  同(船田元紹介)(第三三〇二号)  同(宮下創平紹介)(第三三〇三号)  同(武藤嘉文紹介)(第三三〇四号)  同(森下元晴君紹介)(第三三〇五号)  同(山崎平八郎紹介)(第三三〇六号)  同(山下元利紹介)(第三三〇七号)  同(若林正俊紹介)(第三三〇八号)  小規模障害者作業所助成に関する請願(小澤  潔君紹介)(第三三〇九号)  男女雇用平等法法制化に関する請願伏屋修  治君紹介)(第三三一〇号)  健康保険本人の十割給付復活に関する請願(東  中光雄紹介)(第三三一一号)  腎疾患総合対策早期確立に関する請願(伊藤  宗一郎紹介)(第三三一二号)  同(森井忠良紹介)(第三三一三号)  医療保険制度改善等に関する請願新村源雄  君紹介)(第三三一四号)  同(森井忠良紹介)(第三三一五号)  公共事業による失業対策推進に関する請願(森  井忠良紹介)(第三三一六号)  児童扶養手当制度改悪反対に関する請願(上  田卓三紹介)(第三三一七号)  健康保険本人の十割給付復活等に関する請願  (東中光雄紹介)(第三三一八号)  労働者派遣法制定反対に関する請願岡崎万  寿秀紹介)(第三三八一号)  同(経塚幸夫紹介)(第三三八二号)  同(工藤晃紹介)(第三三八三号)  同(佐藤祐弘紹介)(第三三八四号)  同(柴田睦夫紹介)(第三三八五号)  同(瀬崎博義紹介)(第三三八六号)  同(瀨長亀次郎紹介)(第三三八七号)  同(田中美智子紹介)(第三三八八号)  同(津川武一紹介)(第三三八九号)  同(辻第一君紹介)(第三三九〇号)  同(中川利三郎紹介)(第三三九一号)  同(中島武敏紹介)(第三三九二号)  同(中林佳子紹介)(第三三九三号)  同(野間友一紹介)(第三三九四号)  同(林百郎君紹介)(第三三九五号)  同(東中光雄紹介)(第三三九六号)  同(不破哲三紹介)(第三三九七号)  同(藤木洋子紹介)(第三三九八号)  同(藤田スミ紹介)(第三三九九号)  同(正森成二君紹介)(第三四〇〇号)  同(松本善明紹介)(第三四〇一号)  同(簑輪幸代紹介)(第三四〇二号)  児童扶養手当制度改悪反対に関する請願(土井  たか子君紹介)(第三四〇三号) 同月十九日  労働時間の短縮促進等に関する請願天野光晴  君紹介)(第三四四四号)  中国残留日本人孤児対策に関する請願天野光  晴君紹介)(第三四四五号)  福島県の最低賃金改定促進に関する請願天野  光晴紹介)(第三四四六号)  福祉予算拡充等に関する請願北口博紹介  )(第三四四七号)  老人医療費無料等に関する請願福島譲二君  紹介)(第三四四八号)  労働者派遣法反対等に関する請願浦井洋君紹  介)(第三四四九号)  同(小沢和秋紹介)(第三四五〇号)  社会福祉充実等に関する請願岡崎万寿秀君  紹介)(第三四五一号)  同(経塚幸夫紹介)(第三四五二号)  同(津川武一紹介)(第三四五三号)  同(中島武敏紹介)(第三四五四号)  同(林百郎君紹介)(第三四五五号)  同(藤田スミ紹介)(第三四五六号)  同(松本善明紹介)(第三四五七号)  国立療養所長寿園存続等に関する請願浦井  洋君紹介)(第三四五八号)  児童扶養手当制度改悪反対に関する請願(上  田卓三紹介)(第三四五九号)  年金官民格差是正に関する請願池端清一君  紹介)(第三四七六号)  同(梶山静六紹介)(第三四七七号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三四七八号)  在宅重度障害者暖房費支給に関する請願(池  端清一紹介)(第三四七九号)  同(梶山静六紹介)(第三四八〇号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三四八一号)  在宅重度障害者介護料支給に関する請願(池  端清一紹介)(第三四八二号)  同(梶山静六紹介)(第三四八三号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三四八四号)  重度障害者終身保養所設置に関する請願(池  端清一紹介)(第三四八五号)  同(梶山静六紹介)(第三四八六号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三四八七号)  労災年金厚生年金等完全併給に関する請願  (池端清一紹介)(第三四八八号)  同(梶山静六紹介)(第三四八九号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三四九〇号)  重度身体障害者雇用に関する請願池端清一  君紹介)(第三四九一号)  同(梶山静六紹介)(第三四九二号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三四九三号)  身体障害者家庭奉仕員の採用に関する請願(池  端清一紹介)(第三四九四号)  同(梶山静六紹介)(第三四九五号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三四九六号)  国公立病院における脊髄損傷者治療に関する  請願池端清一紹介)(第三四九七号)  同(梶山静六紹介)(第三四九八号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三四九九号)  労災被災者脊髄神経治療に関する請願池端  清一紹介)(第三五〇〇号)  同(梶山静六紹介)(第三五〇一号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三五〇二号)  健康保険国民健康保険による付添介護人派遣  等に関する請願池端清一紹介)(第三五〇  三号)  同(梶山静六紹介)(第三五〇四号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三五〇五号)  労災年金のスライドに関する請願池端清一君  紹介)(第三五〇六号)  同(梶山静六紹介)(第三五〇七号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三五〇八号)  身体障害者福祉行政改善に関する請願池端  清一紹介)(第三五〇九号)  同(梶山静六紹介)(第三五一〇号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三五一一号)  脊髄保損傷治療技術研究開発に関する請願(  池端清一紹介)(第三五一二号)  同(梶山静六紹介)(第三五一三号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三五一四号)  労災年金最低給付基礎日額引き上げに関する  請願池端清一紹介)(第三五一五号)  同(梶山静六紹介)(第三五一六号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三五一七号)  労災脊髄損傷者の遺族に年金支給等に関する請  願(池端清一紹介)(第三五一八号)  同(梶山静六紹介)(第三五一九号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三五二〇号)  労災重度被災者暖房費支給に関する請願(池  端清一紹介)(第三五二一号)  同(梶山静六紹介)(第三五二二号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三五二三号)  労働者災害補償保険法改善に関する請願(池  端清一紹介)(第三五二四号)  同(梶山静六紹介)(第三五二五号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三五二六号)  労働者派遣法反対等に関する請願小沢和秋  君紹介)(第三五七二号)  児童扶養手当制度改悪反対に関する請願竹村  泰子紹介)(第三五七三号)  身体障害者雇用対策等に関する請願竹村泰  子君紹介)(第三五七四号)  医療保険制度改善等に関する請願外四件(竹  村泰子紹介)(第三五七五号)  国立腎センター設立に関する請願亀井静香君  紹介)(第三五七六号)  同(嶋崎譲紹介)(第三五七七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月十九日  福祉予算増額等に関する陳情書外五件  (第二九四号)  国立病院療養所充実強化に関する陳情書外  二件  (第二九五号)  国立療養所道北病院存続整備拡充に関する  陳情書(第二九六  号)  国立療養所奄美和光園存続に関する陳情書  (第二九  七号)  医療保険制度充実等に関する陳情書外八件  (第  二九八号)  原爆被害者援護法即時制定に関する陳情書外三  十九件  (第二九九号)  はり、きゆう、マッサージ治療費助成制度に  関する陳情書外一件  (第三〇〇号)  健康保険本人十割給付復活等に関する陳情書  (第三〇一号)  国民健康保険財政改善に関する陳情書外二件   (第三〇二号)  使用済み乾電池及び蛍光管処理対策に関する  陳情書(第三〇三  号)  児童手当制度充実に関する陳情書外二件  (第三〇四号)  年金積立金の運用に関する陳情書  (第三〇五号)  外国残留日本人及び帰国者に対する特別措置法  制定に関する陳情書  (第三〇六号)  中国残留日本人孤児対策強化に関する陳情書  (第三〇七号)  高山公共職業安定所益田分室廃止反対に関する  陳情書  (第三〇八号)  失業対策事業推進に関する陳情書外一件  (第三〇九号  )  季節労働者雇用促進等に関する陳情書外八件  (第三一〇号)  高年齢者雇用安定に関する陳情書  (第三一一号)  シルバー人材センター制度的基盤確立に関  する陳情書外一件  (第三一二号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労  働者就業条件整備等に関する法律案内閣  提出第五九号)  労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労  働者就業条件整備等に関する法律施行に  伴う関係法律整備等に関する法律案内閣提  出第六〇号)      ――――◇―――――
  2. 戸井田三郎

    戸井田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律案及び内閣提出労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律施行に伴う関係法律整備等に関する法律案の両案を議題といたします。  本日は、両案審査のため、参考人から意見を聴取することにいたしております。  御出席を願っております参考人方々は、全日本電機機器労働組合連合会政策企画局長阿島征夫君、東京商工会議所理事事務局長小野幼君信州大学経済学部教授高梨昌君、日本事務処理サービス協会監査宮川尚三君、全日本自治団体労働組合委員長山本興一君、以上でございます。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。両案につきまして、忌憚のない御意見をお述べ願いたいと思います。  なお、議事の順序は、初めに参考人方々から御意見を十五分程度お述べいただき、次に委員諸君からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、まず阿島参考人にお願いいたします。
  3. 阿島征夫

    阿島参考人 ただいま委員長の方から御紹介にあずかりました電機労連阿島でございます。  電機労連及び上部団体であります中立労連の代表という立場から、きょうは率直な意見をまず述べさせていただきたいと思います。  まず、電機関係で申し上げますと、情報処理労働者が今回の法案に非常に大きなかかわりを持っているということでございますので、これを主としてお話を申し上げたいと思います。  情報処理労働者現状でございますが、情報処理労働者と一口で言いましても、システムエンジニア、俗にSE、こういうふうに言われております、それからプログラマー、オペレーター、キーパンチャー、こういうものを一括して情報処理労働者もしくはソフト労働者、こういうふうに呼んでいるわけでございますが、現在、通産省等推定によりますと、確かな数はわかりませんが、国内に約四十万人おる、こういうふうに推定をされるわけであります。また、このうち情報処理サービスだとか、いわゆるソフトウエアハウスで働く人たちは約二十万人ぐらいいるのではないだろうか。また、そのうちの三分の一ないし四分の一が派遣労働者として従事をしているのではないだろうか、こういうふうに私たち推定しておるところでございます。  電機労連加盟大手電算機メーカー工場を見てみますと、ソフトウエア工場というのがございますが、この工場の約半数が派遣労働者で賄っておるわけであります。つまり派遣労働者を受け入れているという現実にあるわけであります。また逆に電機労連は、派遣労働者組合員といたしまして派遣をしているという、こういう労働組合も何社か加盟になっているわけでございます。  こうしたソフト労働者需要については非常に大きな成長があるわけでございまして、大体今後昭和六十五年ぐらいまでに四割以上の増加率でふえるのではないだろうか、こういうように推定をしているところでございます。  ところが、この需要に見合ってこのソフト労働者がふえないというのが現在の状況でございまして、通産省推定で申し上げれば、昭和六十五年度にはこうしたソフト労働者すべてで百六十万人の需要があるだろう、これに対して供給側労働者の数は百万人くらいということでございまして、約六十万人不足をするということが予想されておるわけでありまして、現在もう既に慢性的なソフト労働者不足でございますが、ますますこの傾向がはっきりする、こういうふうに推定しておるわけでございます。  また、こうしたソフト労働者のうちの派遣労働者契約につきましては、大部分が現在請負契約業務委託契約、こういう形態派遣されているわけでございますが、我々が調査したところによれば、実質的には派遣労働者として働いているわけでございます。つまり大多数の派遣労働者は、現在は契約のいかんにかかわらず派遣という形態労働に従事している、こういう現実があるわけでございます。  こうした情報処理労働者現状を分析した上で、電機労連問題点として数点挙げておるわけでございますが、まず第一に、これらの派遣労働者は約三千社とも四千社とも言える中小ソフトハウスの非常に経営基盤の弱いところから派遣されているケースが多いわけでありまして、中には正規雇用契約もない、つまり派遣期間だとか派遣先労働条件の明示だとか、こういった契約のない非常に不安定雇用労働者が多いということが言えるのではないかと思います。私たちはこれを何とか常用労働者に変えさせていかなければならないだろう。不安定雇用から安定した雇用に変えさせるというのが、まず第一の私たちの運動の考え方でございます。  次に、こうした労働者労働条件実態を見てみますと、派遣先における時間外労働が極めて多い。また、この時間外労働手当であります残業手当についてもきちっとした計算で支給されていない、こういうような実態もあるわけでございます。つまり、派遣元派遣先労働時間の差とか労働条件の差、こういうものが非常にあいまいになっている。たまたま電機労連加盟しておりますソフト労働者組合は、きちっとした協定化によってこれを確保しているわけでございます。しかしながら、労働組合のない多数の中小ソフトハウス労働者につきましては、派遣先における労働条件派遣元労働条件と大きな差のある中で働いているのが現状でございます。つまり、こうした派遣先における労働条件を向上させるのが私たちの第二の目標でございます。  三番目に、派遣先における職場環境の悪さ、また安全衛生における十分なる派遣先における使用者責任現状法制下では認められていないわけでございます。具体的に申し上げれば、職場環境でいきますと駐車場とか食堂とかロッカー等での派遣先正規従業員との間の差別、また、そうした差別改善要求派遣先に対して出しにくい、また通りにくいのが現状であります。こうしたことから、派遣先における使用者責任明確化させるということが第三の我々の論点でございます。  四番目に、現在技術革新が極めて激しい状況でありまして、ソフト労働者といいますのは、その職種上こうした技術革新に十分ついていくような教育訓練が施されないとスクラップ化していくという厳しい現実があるわけでございます。ところが、我々の調査、またその他の調査によれば、派遣先における教育訓練はほとんどされていない。また、派遣元における教育訓練においても、なかなか派遣労働者はこれを受ける機会が少ないわけでございます。こういうような第四番目の問題点現実に存在するわけでございます。  こうしたことから、電機労連は、三年前から電機労連独自で派遣労働者に対する対策指針をつくりまして、今のようなことをカバーできるような取り組みをしてまいりましたが、これはあくまでも電機労連傘下組合に対しての対策指針でありまして、今回の法案につきましては、契約内容明確化職場環境安全衛生問題における派遣先使用者責任作業場所の移動にかかわる問題等の協議、派遣労働者の能力、技能向上にかかわる教育訓練問題等電機労連対策指針が盛り込まれておりますので、我々としては早期にこの法案成立をお願いする立場でございます。つまり、現在ソフト派遣労働者が、いわゆる四十四条におきます日陰者扱いから、きちっと法的に認知され、また行政による保護が加えられることが必要ではないかと考えております。  冒頭申し上げましたように、派遣労働者というのは、経済ソフト化サービス化の流れの中で就業形態多様化一環としてとらえられるものでございます。こうした就業形態を否定するのではなく、いかに安定的に労働市場に定着させるかという観点からの対応が必要ではないかと思います。また派遣先企業に対して、安全衛生面における使用者責任というものも法的にきちっと定める必要があると思います。こうした意味からもこの法案につきましてはぜひ早期成立をお願いするところでございます。  ただ、労働者供給職業紹介電機労連及び中立労連は否定するものではないということを一点つけ加えておきたいと思います。逆に、電機労連といたしましても労働者供給事業というものを将来組合活動一環として十分発展させていきたいと考えているところでございます。したがって労働組合労働者供給事業を十分やっていって、ほかの通常の会社との競争力が損なわれないような一定の整備を、今後政府に、また国会にお願いしていきたいと考えているわけでございます。  具体的に申し上げれば、労働者供給事業におきます労働者派遣先健康保険に入らなければなりませんが、現実問題としてソフト労働者派遣につきましては、短い派遣期間では三カ月とか、長いものは三年ぐらいあるわけでございますが、非常に短い派遣期間がございますので、こうしたところでは派遣先健康保険に入ることは非常に難しい状況になっております。したがいまして、労働者供給事業に対する社会保険事務所取り扱い等の一定の整備を今後お願いしていきたいと考えているわけでございます。  以上、簡単ではございますが、この法案早期成立をお願いする立場から意見を述べさせていただきました。ありがとうございました。(拍手)
  4. 戸井田三郎

    戸井田委員長 ありがとうございました。  次に、小野参考人にお願いいたします。
  5. 小野功

    小野参考人 東京商工会議所の小野でございます。  この法律案につきまして私の意見の結論を最初に申し上げますと、私はこの法案に賛成でございまして、その速やかな成立を希望するものでございます。以下、賛成の理由を申し述べます。  第一は、法律実態との間の著しい乖離は解消されなければならないと考えるからであります。この法律案の対象となっております事業は、実態としては既に広く存在し、社会的にも今や定着しております。しかも今日までこれらの事業が存在することによって生じてきた弊害というものはほとんどなかったのではないかと私は思うわけでございまして、むしろ雇用機会の拡大を初め社会、経済の各面で少なからぬ貢献をしていると思われますにもかかわらず、法律的にはその存在が極めてあいまいでありまして、極論すれば、実態はあるのに法的には存在しないという甚だ異常な事態となっておるのであります。したがいまして、今後これらの事業の健全な発展を促し、かつまたこれらの事業に既に従事しておられる非常に多くの労働者の保護と福祉を図るためにも、実態に即した法的整備が急務であるのではないかと考える次第でございます。  賛成理由の第二は、いわゆる労働者派遣事業労働力の需要と供給の二つの面からそれぞれのニーズにこたえて発生し、かつ増加してきているのだという点でございます。すなわち、労働需要サイドから見ますと、御高承のように産業構造の変化やサービス経済化の進展などによりまして企業の営業形態というものが大変多様化してきておりまして、これに伴いまた雇用形態多様化せざるを得なくなってきておりますが、その中には、我が国の伝統的な雇用慣行とされてまいりましたいわゆる終身継続雇用、あるいはこれと裏腹の関係にございます集団一律管理といったものになじまないような業務がふえてまいっております。  例えば、企業がその情報処理システムを大きく変更しようというような必要が生じてきた場合などは、自社内の情報処理技術者のほかに一時的に大量の技術者を必要とするケースもございますし、ビルの管理や警備といった業務にいたしましても、その仕事の性格上一般の従業員が就業していない時間、例えば従業員が帰ってしまった夜間とか、そういう方々が出勤していない休日というものが主たる就業時間になるような場合も決して少なくございません。しかも、警備にいたしましてもあるいはビルメンテナンスにいたしましても、近年は各種の先端技術を使い、とりわけ情報処理機器を活用しながら作業するというケースが非常にふえてまいりまして、当然このためには高度な専門技術、専門知識を持った方たちの協力が必要になってきておるわけです。  もしもこうしたすべての事業を企業がいわゆる自己完結主義的に一貫して行おうということになりますと、その人事管理は極めて複雑化せざるを得ませんし、かつまた経営コストを著しく上昇させることにもなることは明らかであります。  さらにまた、御高承のように今日女子の職場進出が大変目覚ましく、既に全勤労者の三分の一を超えるところまで伸びてまいりましたが、これらの女子の勤労者のうちの六割を超える部分が既婚者でございます。ということは、必然的にこういう女子の従業員を雇用している企業にとりましては出産に伴う産前産後の休暇といったものは避けられないわけでございますし、また最近は、一部の企業で普及を見せつつある育児休業制度というものもございますが、こうした休業中の方にかわるいわば代替要員というものはぜひとも必要になってくるわけでございます。  こうした面からも、即戦力になり得るようないわゆるテンポラリーワーカーと申しましょうか、こういう方々、特に経理部門あるいはOA機器の操作といった面での熟練した臨時あるいは短期の雇用ということが強く求められておるわけでございます。  以上は需要サイドからの要因でございますが、他方供給サイドと申しましょうか、いわば労働者の側にも、近年はいわゆる専門職志向というものが大変強まってきておりまして、この方々にとりましては、常に専門的な技術を生かし、かつまた専門技術を絶えず磨き続ける、そういうことのできるような就労形態を望む傾向が徐々に強まってまいっておるわけでございます。  また、さきに述べましたように、既婚の女子労働者が非常に増加しておりますが、この方々は例えば家庭と仕事、仕事と育児あるいは自分の余暇時間といったようなものの両立を図っていくために自分の希望する日時等に合わせて働きたいという強い願望がございまして、特に過去にそれぞれ仕事をお持ちになっていらっしゃる方々、しかもそこで専門的な知識、技術を身につけられた方々にとりましては、これを生かせる場としていわゆる人材派遣会社といったものへの登録が極めて急速に普及しているようでございます。この点については後ほど宮川参考人などからもお話があろうかと思います。  さらにまたつけ加えるならば、御高承のように我が国は急速に高齢化社会に入りつつありまして、働く意思と能力を持っておる高齢者の方々に適職を与えるということが国家的な急務であろうと私は思うわけでございますが、派遣事業の中には、例えば決算期だけ働く退職経理マンとか新入社員教育だけを引き受ける企業の元教育担当者といった方々が既に派遣労働者として働いているケースもあるわけでございます。今後これがきちんとルール化されるならば、こういう高齢者の方々にとっても働く機会が大変ふえるであろうと私は思うわけでございます。  以上申しましたように、需要供給の両面からの必要にこたえて広がりを見せている労働者派遣事業というのは、こうした意味ではまさに新しい労働力の需給システムの一つではないかと私は考える次第でございます。  本法律案成立施行によって、これまで申し上げましたように新たな雇用機会の創出と企業経営の合理化といういわば一石二鳥の効果を期待いたしますがゆえに、私は本法律案に賛成する次第でございます。  なお、これに関連いたしまして、私は次の二点についての希望を申し上げたいと思います。  一つは、この法律案成立いたしますと、その適用分野とか各種の規制措置の細部について中央職業安定審議会等において審議決定されることになると思います。その際、いわゆる悪貨が良貨を駆逐するということのないような一定のルールを設けることは当然必要だと思いますし、現に法案でも、特に派遣元に対しては各種の規制を講じることがうたわれております。そのことは当然必要だと思いますが、しかしながら、行き過ぎた規制によって民間の創意工夫や企業努力を圧殺してしまうことにならないよう十分な配慮をお願いしたいと思うわけでございます。  希望の第二は、現在労働大臣の許可による民営職業紹介事業がございますが、これらの職種の中には実質的には派遣事業に近いものもあるように私は思われます。この際、民間職業紹介事業につきましても労働者派遣事業との関連で十分な見直しをお願いしたいと思いますとともに、民営職業紹介事業にかかわる各種規制につきましても緩和を図られるように要望いたしたいと思う次第でございます。  甚だ簡単でございますが、以上で私の陳述を終えさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)
  6. 戸井田三郎

    戸井田委員長 ありがとうございました。  次に、高梨参考人にお願いいたします。
  7. 高梨昌

    高梨参考人 信州大学経済学部の高梨でございます。  私は、この政府提案の労働者派遣事業法の立案に当たりまして、労働省に設置されております中央職業安定審議会の労働者派遣事業等小委員会の座長を務めまして、審議会としての意見の取りまとめの責任を負ってまいりました。こういう立場から、この政府提案の法案の中身は審議会の意見をほぼ生かしているという点で総括的には賛成の立場で私の御意見を申し述べたいと思います。  まず、中央職業安定審議会での審議の経過と審議の方法でございますけれども、御承知かと思いますが、昨年の二月に労働者派遣事業問題調査会の報告が政府提出されまして、それを受けまして中央職業安定審議会の中に労働者派遣事業等小委員会が昨年の三月発足いたしました。これは中央職業安定審議会の労、使、公益それぞれ三名ずつの代表から構成された委員会でございます。都合十六回にわたりまして小委員会での審議を経て、昨年十一月に安定審議会の総会に小委員会報告を提出いたしました。審議会総会でそれが了承されて労働大臣に提出されるという、こういうような運びでございました。  さて、問題はこの小委員会の審議でございますが、派遣事業につきましてはさまざまな御意見がございます。強く反対される御意見も一方にございますと同時に、また早急にこの派遣事業法で派遣契約形態の事業についての何がしかのルール規制をしていただきたい、こういうような御希望もございます。そういうようなことで、果たして小委員会で短時日のうちにうまく労使の方々のさまざまな賛成、反対の御意見を集約できるかどうか、正直なところ、私も発足当初にはまだ自信もございませんでした。  まず、そういう実情でございますので、現在日本の産業構造が大きく転換している中で、さまざまな労働力需給システムがございますが、こういうような労働力需給システムというものは実情はどういうような状況になっているのかという、この実態の把握の作業を進めました。とりわけ、派遣契約形態で行われると思われます事業分野につきましては、関係業界の方々、また派遣社員を活用されているユーザーの方々、またそこで働く派遣社員の方々から、この小委員会で事情聴取を行い、同時に関係資料の提出を求めました。  こういうような作業を積み重ねまして、実態として存在する各種の労働力需給システム、これのタイプ分けを行いました。その中から、現行職業安定法四十四条で禁止される労働者供給事業というのはどういう需給システムを想定しているのか。また職安法施行規則四条一項で定めます請負契約事業というのはどういうような需給システムを前提にしているのか。また、とりわけオイルショックの後、企業の雇用調整策ということでできるだけ余剰人員を失業者として投げ出さないように企業が雇用を抱えるために、出向契約事業というものがかなり普及いたしました。政府もこれらの出向契約については助成金を給付してできるだけ解雇しないように努めてきたところでありますが、この出向契約事業、このシステムはどうなっているのか。  それからまた雇用契約に基づく職業紹介という需給システムがございますけれども、この実態はどうなっているのか。それと、新たに労働者派遣契約事業というものは需給システムでどういう実態的な状況にあるのか、こういうような実態把握に努めました。その中で労働者派遣契約事業、こういうものの特徴を浮かび上がらせる、こういう作業を一方でいたしました。  それからもう一方では、これもさまざまな御意見があるところでございますけれども、現行の法律制度、とりわけ職業安定法と労働基準法が問題でございますけれども、これらの法律並びに政令、省令、それから行政通達がいろいろございますけれども、これらを整理、分析し、検討を加えた上で、法制上これらの各種の需給システムはどのように取り扱われているのか、このことを整理いたしました。  こういうような二つの作業を進めまして、この両者を関連づける。その中から浮かび上がってまいりましたのが、労働者派遣契約というのは、派遣元がみずから労働者雇用し、派遣先での指揮命令系統下で働く、こういう形態でございます。これと類似は在籍出向契約がそうでございます。こういうような、派遣労働者を含めれば三者の法律上また指揮命令系統上の関係がございます。こういうようなタイプの契約形態であるということを、このことを私も小委員会で初めて明らかにいたしました。  その上で、そうなればこの労働者派遣契約に基づく事業に対する公的規制の実効ある方法はどういうものか、これを法律案にうたった場合にはどういうように具体化できるか、こういうような作業を進めました。  あわせて、当然派遣契約事業を見直して法的に位置づける場合には、現行法でもございます労働組合のみ例外的に許可されて行える労働者供給事業というものがございます。これについてもさまざまな問題がございます。私などは、労働組合がもっと熱心に労働者供給事業活動をしていただきたいとかねがね労働組合方々にも申し上げたところでございますが、どうも現行の法律や政省令でそれが活動しにくい、こういう部面もございますので、労働者供給事業活動を労働組合がもう少しスムーズに行えるようにこの辺の改定を考えたらどうかということ。それからまた、民営企業が行います有料の職業紹介事業がございますけれども、現在二十八職業ですけれども、これらについてももう少し活性力を持って需給システムとして大いに役に立てるように位置づけたい、こういうようなことで、この検討作業と現行法の整備の問題も検討いたしました。  以上のような作業を小委員会で続けてまいりまして、最終的には十一月に小委員会報告をまとめた次第でございます。  なお、この小委員会の審議を進めるに当たりまして、当然さまざまな御意見もございますので、審議の中途でそれぞれ区切りに応じて安定審議会の総会に御報告申し上げ、そこでの全体の公労使の方々の御意見を伺い、また必要に応じて労使各側の方々にはそれぞれ組織にお持ち帰り願って、そこで御検討いただき、その検討を踏まえながら小委員会の次のステップの議論に進む、こういうようなことで、可能な限り労使双方の方々の合意を図れるように私は努め、そういうような審議を進めてまいりました。そこで、最終的には大筋の合意を得られて小委員会報告としてまとめられた次第でございます。  なお、もちろん労使の各側の方々からさまざまな御意見がございます。これは立法政策上、法律というのは制度的には少なくとも論理的首尾一貫性が必要でございます、そうしなければ法律としてなかなか有効に機能しないという問題もございますので。その筋道に抵触しない限り、それぞれの御意見は最大限私は取り入れてまとめた、こういうように考えておる次第でございます。もちろん、まだ若干の異論が残されておりますけれども、おおむね妥当という、こういうことで労使の同意を得られた次第でございます。  なお、この派遣契約事業とか出向契約事業につきましては、三者の法律関係でございます。派遣元雇用責任、包括的な使用者責任派遣元でございますが、指揮命令という部分的責任派遣先に移ります。こういうような三者の法律関係は、当然労働基準法上の問題も呼び起こしますので、労働基準法研究会にも研究、検討を御依頼申し上げ、その基準法研究会の御意見も踏まえてここで派遣事業法なるものの仕組みを考えた次第でございます。  以上が私どもの小委員会での審議の進め方でございますが、そういうようなことも経まして昨年十一月に安定審議会から労働大臣に報告書を提出し、それに従いまして今年一月、政府法案要綱を作成し、再度安定審議会に諮問をいたしました。安定審議会でもまた小委員会を開いて政府提案の法案要綱、またその法律案なるものを検討いたしました。これについても、その派遣事業等小委員会の報告の筋に従って政府案が起案されている、こういうことでおおむね妥当という意見をまとめた次第でございます。したがって、今回の政府提案立法につきましては、安定審議会の意向を十分反映した立法である、私はこういうように判断している次第でございます。その意味で、この法案について賛成、こういう御意見を申し上げたい。  それからなお、時間もございませんから、もう一つ、先ほど小野参考人阿島参考人からも意見が申し述べられましたけれども、一つだけ最後に補足しておきたい論点がございます。  こういうような派遣事業法を必要とする経済的、社会的背景の問題でございますが、私は三つの点に注目したいと思います。  今日、産業構造、就業構造が非常に高度化してまいりました。第三次産業化とかサービス経済化とか、こういうような産業構造の変動が急激に起きております。これを進めておりますのは、ME技術を中心といたします新しい技術的進歩でございまして、これが日本の経済の活性力を維持し、また経済成長率を高めていく大変な起動因になっておるわけでございますけれども、この過程で職業が大変専門的に分化してまいりました。こういうような専門的、技術的職業の需要が急速にふえてきたということでございます。これをいかに活用するかということは、日本の経済にとって大変重要な問題でございます。そのような専門的、技術的職業、これを中核にして誕生したのが派遣事業形態だと私は思います。私は、これは一種の新しいタイプの対事業所サービス業、こういうような業態であると考えます。これが第一点でございます。  第二点は、企業経営は絶えず効率性を維持し、企業としての活性力を維持することが、まさに企業社会としての、企業人としての最大の使命でございます。この過程で、それぞれ企業が本体事業で抱え込むべき事業分野、業務分野と、そうでない間接業務分野とがございます。これらの間接業務分野はそれぞれ専門の業者に外注、委託した方がはるかに経済効率なり経営効率が高まります。こういうような外注、委託形態の一つとして派遣形態が進んできたということでございます。  また、直接的な事務管理部門にいたしましても、臨時的に仕事がふえる場合がございます。こういうような臨時的、突発的にふえる、例えばプログラム開発とか技術の開発とか、こういう際にプロジェクトチームをつくりますけれども、こういうようなところに専門、技術職を派遣していただく、こういうようなことも企業の活性力、またコストの増加を防ぐ一つの有力な手段でございます。そういうようなことから、派遣契約事業が成長してくる基盤が与えられているということでございます。経済学の言葉で申しますと、まさに社会的分業の利益がこれによって発揮される、こういうことでございます。  それから第三番目は、最後でございますが、今日パート形態で働く方々、また短時間就業の方々がふえております。これらのパートとか短時間就業を希望する女性の方々が大変ふえているという実態がございます。それからまた、高老齢で、フルタイムの労働でなしにパートタイムで働きたいという、こういうような御希望の方々も大変多うございます。  ところが、これらの方々雇用機会は、現状で十分に提供されているかというと、そうではございません。御承知のように、日本の企業は、とりわけ大企業とか公務員が典型的にそうでありますけれども、新規学卒者を新規に採用し、その以後それぞれ企業の中で熟練技能、職業的知識を身につけて昇進昇格していくという、こういう終身雇用、年功賃金制の労使関係がございます。この雇用慣行は私は堅持すべきだと思いますけれども、この雇用慣行のもとでは中途入職は大変困難でございます。  ところが、派遣事業形態というのはこれらの中途入職の機会を提供している。とりわけ、子育てを終わって再度職業戦線に出てきたいという女性がどんどんふえているわけでございますけれども、これらの女性の方々の就業意欲を生かせる雇用機会は必ずしも広うございません。これに十分な機会を提供しているのが、私は派遣事業形態だと思っております。  それから同時に高齢者対策、これは大変重要な問題でございますけれども、高齢者の受け皿会社を各企業はできるだけ失業者として高齢者を投げ出さないために工夫、改善されているところでございますけれども、これらの高齢者に対する雇用機会もこれらの派遣事業が提供している。こういうプラスの面を私は大いに評価する必要があるのではないか。そのためには、これらの事業のルールが必要でございますので、今回、そのルールを定め、派遣元派遣先が負うべき責任、それから派遣社員の賃金、労働条件の維持改善、これに役立つようなルールづくりを私は考えた次第でございます。  以上で、私は、政府提案の立法について総括的に賛成ということで参考人の陳述を終わりたいと思います。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
  8. 戸井田三郎

    戸井田委員長 ありがとうございました。  次に、宮川参考人にお願いいたします。
  9. 宮川尚三

    宮川参考人 ただいま御紹介にあずかりました日本事務処理サービス協会の監査を務めております宮川と申します。  私は、現在、マンパワージャパン株式会社の経営統括マネジャーとして働いております。僭越な表現でございますが、日本におけるテンポラリー・ワーク・サービスの歴史というものは私どもの会社の歴史と重なる点が多々ありますものですから、私の立場、ときどきマンパワージャパンの立場でお話し申し上げた方がよく御理解いただけるのじゃないかと思います。まずはそのことをおわび申し上げます。  まず、この事務処理サービス業の実態をお話しする前に、私としましては、このいわゆる派遣労働者派遣先企業、また派遣元企業の関係をお話ししてみたいと思います。特に派遣労働者につきましてはぜひ皆様に御理解をいただきたい、このように思います。  マンパワービジネスで働くフィールドスタッフ、私どもは派遣労働者をこのように呼んでおりますが、この労働者像がどういうものであるかということを申し述べたいと思います。全く従来の常用雇用型の労働者像と違うのでございます。つまり、フリーワーカーとして、自分の能力を使って、自分の時間管理のもとに、自分に適合した業務を、自分の選択によって労働に従事する労働者なのです。  私どもが八年前から実施していますフィールドスタッフの意識調査から若干例を引いて御説明申し上げたいと思います。  昨年七月に第八回の意識調査を行ったのですが、マンパワースタッフ八千名のプロフィルを申し上げますと、その構成年齢は、二十五歳から二十九歳が三〇%、三十歳から三十四歳が二六・四%、つまりこの層が五〇%強を占めているわけです。そうして平均年齢は現在三十一・六歳になっております。これは第一回の調査から見ていきますと年々高くなっております。  次に、その家族構成というものを見てみますと、未婚が六七・二%、既婚が三二・八%の比率になっています。  さらに、マンパワーで仕事をしようと思った動機につきまして調べてみますと、「希望の時間、期間に働ける」という方が四二・九%、「能力と経験を生かしたい」という方が一三・二%、「年齢制限がない」一二・四%、「再就職まで仕事がしたい」五・五%、「いろいろな職種を経験できる」五・五%、「一つの企業に縛られたくない」五・二%と挙げています。  また、それを裏づけるようなことだと思いますが、マンパワースタッフになってよかったと思うことということで、「時間を自由に使える」ということを三一・八%の方が挙げています。「自分の経験、能力が生かせる」という方が二九・八%、こういうふうに高い比率を示しています。少し変わったデータになると思いますが、「年齢に関係なく仕事ができる」という方が一八・〇%。先ほど高梨参考人の方からもお話がございましたと思いますが、女性の再就職というものは、なかなか日本の現状において年齢の問題というのが大きく存在すると思います。こういう点からもこういうシステムというものは一つの有効なシステムだと考えられます。  もう一つ、当社の宣伝めくと思いますが、「マンパワーはすぐれた事務処理サービス会社である」という項目に五・九%の数字があらわれています。私としては感謝しています。それでは「今後もマンパワースタッフとして仕事を続けていきたいと思うか」という設問に対しまして、六六・九%の人が「思う」と答えているわけです。  さらにもう一つ重要なことは、先ほども申し上げましたけれども、このフィールドスタッフの方々は自分の意思で仕事を選択するということができるわけです。  もう少し具体的に申し上げますと、私どもの支店のサービス担当者が業務の内容とか時間であるとか場所であるとか等を連絡しますと、フィールドスタッフの方は自分の能力、条件に合っているかどうか判断してその業務に就労するかどうかを決められるわけです。例えば晴海の方の倉庫会社というようなところで英文ワープロ、そういう英文の仕事があっても、自分がどうも場所的にそこまで行く時間がないということであれば、それを拒否することも可能なわけでございます。つまりフリーワーカーとして、先ほども申し上げましたように、その能力を使って自分の時間管理のもとで自分に合った仕事を選択していくという新しい労働者像だということです。  次に顧客、つまり派遣先企業実態を申しますと、私どもが、これも毎年実施しておりますが、新規顧客先調査というものをやっております。それの第十回の調査から引用してみたいと思いますが、まずマンパワーサービスを導入した動機につきましては、「社員では間に合わない」ということを四九%の方が挙げております。「社員が退社」したという方が二三%、「社員が休んだ」一〇%、その他一八%となっております。つまり、業務量が一時的に増加したときに社員の方々の負担を減らそうということで導入されるケースが多いわけでございます。  次に、導入したスタッフの数を見ますと、一人というのが七六%を占めております。これも前の理由を裏づけているものではないかと思います。  さらに、サービス期間について見ますと、二日以上一週間未満が二四%と最も多く、次に三週間以上三カ月未満が二〇%、一週間以上三週間未満が一五%、一日が一二%、三カ月以上六カ月未満と、六カ月以上が、同じくそれぞれ九%となっています。  では、今後導入計画はあるのかという設問に対しまして、「時々使いたい」という方が七一%、「計画なし」という方が一七%、「定期的に使いたい」という方が八%となっています。つまり、一時的に事務作業のオーバーフローをカバーするために使われていて、しかも少人数の導入であるということが明確に言えると思います。  そしてマンパワースタッフに対する評価としては、技能、能率、勤務中の態度、社員との協調性、時間を守るなどのすべての点で高い評価を受けています。  また、マンパワーサービスの体制に対する評価も、「必要なときに必要なサービスが得られた」とするものが八一%、「希望したとおりの人数が確保された」と言っている方が九〇%。これは複数回答になっておりますからそういう数字になります。  マンパワーの窓口担当者に対しては、「面倒見がよい」という方が五四%、サービス料金に対しては、「適正」という方が六二%となっております。これは先ほどもお話がございましたように、民間企業のサービスに対する姿勢と経営効率というものが表現されているのではないかと思います。昨今アメリカにおいても地方公共団体の行政の民間委託ということが大きく取り上げられて、その効率が云々されておりますが、形が変わっていても類似のケースじゃないかと思います。  それでは、派遣元である私どもマンパワージャパンのシステムはどういうものかといいますと、単に人を右から左に動かす人的サービスとして把握するのではなくて、労働力の総合的な需給システムとして運用しなければならない、このように思っております。つまり、派遣労働者派遣先企業とが満足するシステムの確立と言うことができるんじゃないかと思います。フィールドスタッフ側は自分の能力、技能の正しい評価、その活用ということが大きなテーマでしょうし、派遣先企業としては的確かつ迅速なサービスが得られるということが条件であると思います。  そういうためには、マンパワーは適正な技術査定方法の開発とかスタッフ教育等の付加価値向上の施策をとっています。一例としまして、アメリカで五千万ドルかけて開発されましたスキルウエアの導入に約三億の費用を投じたり、キャリアパスプログラムの開発に四%の開発費を投入しております。このように、マンパワーとしてかなりそういう管理体制というものに投資をしているわけでございますが、例えば一例としましては、八千名の人の週給をコンピューターを使って給与計算をいたしたりしております。こういうように、管理体制の充実ということがこのシステムの運用上どうしても必要なことだと思います。  また、当然法治国家である日本でこのシステムを運用していくわけでございますから、労働基準法上の施策というものをできる限り取り入れようという遵法精神で臨んでおります。千五百時間を超しますと五日間の有給休暇であるとか、労働保険の適用とか、保養施設の充実等も図っております。  以上が三者のトライアングルにつきましての御説明でございますが、最後に協会の立場としましてお話し申し上げますと、昨年七月に日本事務処理サービス協会が創立されまして、現在二十二社が加入しております。先ほどからございましたように、この協会内部におきまして、この法制化に対して従来の法のはざまにいたところから脱却して、一つの枠づけの中で認識されるということは結構であるという意見が大半を占めております。しかし、中には、その枠づけが余りにも実態からかけ離れて本来のこの需給システムの機能を果たさない法制化ならば、現状のままの方がいいのじゃないか、自由競争の中で一つの需給システムを持っていった方がいいのじゃないかというような強硬な意見を持っていらっしゃる会員もいらっしゃいます。  一例を挙げますと、中職審で審議されました対象業務でございますが、単に名称の列挙で制限するということは、現代の複雑な事務処理に合わないのではないか。例えば事務ということをとっても、現在は事務室の一角にオフコン、パソコンの端末機が置かれ、自分で営業データ、管理データを入力するのが常識ということになっております。  こういうような実態をよく踏まえていただいて、この法制化を御審議いただきたい、このように思います。  ちょっと時間が過ぎまして、大変失礼いたしました。(拍手)
  10. 戸井田三郎

    戸井田委員長 ありがとうございました。  次に、山本参考人にお願いいたします。
  11. 山本興一

    山本参考人 私は、全日本自治団体労働組合に所属します山本です。  私は、先ほど御発言されました高梨先生と同じに、中職審派遣事業等小委員会の末席を汚しながら、労働側の委員としてこの問題に対応してきたものでありますが、現在審議されております労働者派遣法案に基本的に反対する立場をまず明らかにしながら、その理由として、法案成立の暁に生ずるでありましょう心配な点、あるいは問題な点、それらについて以下幾つかの意見を述べたいと思います。  まず第一に心配する点としましては、労働者派遣事業法制化是非に関連する問題であります。言いかえれば、労働者派遣事業を制度上認めることによって生ずる多くの影響であります。  御承知のように、日本の雇用失業状況は、先進諸国と比べて相対的には今よい状況にあるというふうに言われています。日本経済は一九六〇年代後半以降、世界に比類のない高成長を遂げて今日に至っておりますが、このような日本経済を支えてきた要因の一つは、特殊日本型とも言われるいわゆる日本的雇用慣行にあったことは間違いないと考えます。すなわち、年功序列体系、終身雇用制を中心とする慣行があったことが大きく貢献して日本経済を発展させ得たと考えます。  当然のことでありますが、日本的雇用慣行にしても、それは一定不変ではなくて、事実として経済の発展に伴う産業構造の変化あるいは社会的条件の変化に対応して、少しずつ変化していることは当然です。しかし、現状における労使関係を規定している背景を考えてみますと、やはり依然として日本的雇用慣行が存在していると言えます。私は、労働者派遣法がこの日本的雇用慣行にかなり大きな影響を与えるものとして心配するのであります。  具体的に言えば、従来の民間における会社には正社員がいる。そしてその他に一部の臨時の社員がいるという基本型が考えられたと思うのです。もちろん、この中には他社の従業員が請負としてその事業所内で仕事をしているという姿も想定されるでしょう。しかし、基本的な姿はやはりその会社の社員がほとんどであるという形だと思います。  ところが、労働者派遣というものが一般的に行われる、それも事業として広く行われた場合には、会社の基本的な姿というものは変化せざるを得なくなると思うのです。他社の社員が事業所内にかなりいて、そしてその他社の社員に自社の社員同様に指揮命令する者がその他社の社員を使用することになります。さらにこの姿が一般化することになれば、従来の会社の姿はその基本が大きく変わることになるわけです。そうなると、従来の雇用慣行もいや応なしに大きく変化せざるを得ないと思います。事業所内の特定の業務分野については、他社の社員が業務を行うことになるわけですし、同じ職場で同じ人から仕事の指揮命令を受けていながら、実は雇用主が異なる労働者がいるという状態ができることになります。極端な場合では、所属する会社が異なる労働者で構成された職場、寄り合い世帯の職場ができ上がることになると考えられるわけであります。  このような会社の姿、職場の状態というものが想定されるとしても、一挙に一般化するとは考えませんが、従来の雇用慣行なり職場における秩序といった企業経営の支柱となっている分野に対して大きな影響を及ぼす要因が急激に変化することになる、その契機に今回の労働者派遣法がなるのではないかという点をまず強調しておきたいわけであります。  最近、労働者派遣事業といいますか、人材派遣会社が急増してきているという状況があるわけですが、その背景には行政の対応の不十分さがあったことも事実ですし、それと同時に、企業経営の立場でのコストダウン、省力化の追求といったことがあるわけであります。  私が申し上げたい心配な点の二つは、経済合理性の追求が先行され、そしてそれが第一義的に考えられることになると、従来の雇用慣行が持っているいい点が押しつぶされてしまって、結果として、日本経済全体を見ると大きな損失になる、経済合理性の追求とも逆行することになる可能性、危険性があるのではないかという点であります。労働者にとってみましても、雇用不安などの問題に発展することになり、心配であるということであります。  したがって、この労働者派遣法の検討は、慎重の上にも慎重を期してなされなければならないのではないかと考え、提案されている政府原案を拝見して、心配せざるを得ない点が幾つも目につくわけであります。この法律がこのまま制定されることは大きな問題だと考えているところであります。  さて次に、法案上の具体的な問題点につきまして、限られた時間でありますから十分述べることはできませんが、主要な点に幾つか触れてみたいと思います。  問題点の一つは、使用者責任の問題であります。  現行の労使関係法では、使用者と雇用主は同一であることが前提で組み立てられていると理解をしています。労働者雇用主である使用者から仕事について指揮命令を受けて働くことになっていまして、使用者としての責任の所在が明らかに労働者が認識できる形で労働者の保護が図られていると考えています。ところが、労働者派遣事業法案のような規定によって認めるとしますと、雇用主と使用者が別人になることが認められることになり、労働者は自分の雇用主からは就業場所、就業時間、業務内容などの就業の条件については指示されますが、実際の労働についての具体的な指揮命令は、派遣された先でそこの使用者からなされることになります。すなわち雇用関係と使用関係が新たに分離されることになる点です。  労働者の保護、労働者の基本的権利を擁護する立場から見た場合、このような雇用と使用の分離が行われること、実際には労働者を指揮命令する使用者が現行の法律上の使用者としての責任を負わなくてよくなることが労働者にとってはマイナスに作用するのではないかと危惧されるわけであります。  問題点の二つは、労働力需給調整システムと営利事業との関係について触れます。  法案第一条の目的に示されているように、「労働力の需給の適正な調整を図るため労働者派遣事業の適正な運営確保に関する措置を講ずるとともに」云々とありまして、労働者派遣事業労働力需給調整の面で社会的な役割を果たすことが期待されるがゆえに民間事業であっても認めるようにしようということだと思います。  ここで問題になるのは中間搾取との関連であります。現行の労働基準法第六条では「中間搾取の排除」を規定し、「何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。」こととされています。労働者派遣法をめぐっての論議で指摘されていることですが、労働者派遣事業を認めることは中間搾取を容認することであって、労働基準法第六条の空文化につながるという指摘であります。  私は、労働者派遣事業が果たしている労働力需給調整の面での社会的役割を中間搾取の危険を冒してまでも公認すべきものであると評価するかどうかだと考えますが、この点は否定的な立場をとらざるを得ないわけであります。仮に労働者派遣事業が果たしている役割を積極的に評価するとしても、その事業活動を進める上で必要最小限度の範囲での手数料的なものの徴収は認められると考えますが、労働者派遣を事業として営むことによって利益をむさぼるようなことがあってはならないと考えるのが当然だろうと思います。不当な利益を得ることができるような事業はもちろんでありますが、中間搾取を規制できないような制度はつくるべきでないと考えます。  むしろ現行法制のもとにある労働力需給システムの改善などによって需給調整機能を高める行政努力こそが今日重要なのではないかと感じております。率直に申し上げて、法案で言う一般労働者派遣事業につきましては民営職業紹介事業として位置づけるべきだと考えます。  問題点の三つは、適用対象業務に関する問題であります。  法第四条におきまして、一定の要件に該当する業務を政令で限定することとされていますが、第四条で規定してある要件というのは抽象的な規定あるいは一般的な指標であって、とにかく業務を適用対象として限定する場合の客観的な基準とはなり得ない規定であるという点であります。したがって、適用対象業務が容易に拡大される可能性があるということです。この点はあらかじめ中央職業安定審議会の意見を聞くことが義務づけられていますが、それだけでは業務の範囲を限定する方法としては万全なものではないと考えるわけであります。  法案上の具体的な問題点としては、派遣先に対する規制措置として、海外への派遣や特定の企業にのみ派遣を行う事業は禁止されるべきであると考えます。また、派遣期間の制限や、派遣された労働者が請負業務で他の事業所に派遣されるような場合の規制措置などが、以上申し上げた以外にも問題点として指摘できるわけであります。  最後に、どうしても申し上げなければならない問題があります。  それは、この労働者派遣法制定されたとして、この制度の目的に沿って適正な運用をどのようにして確保するのかという問題であります。  派遣労働者の保護、雇用の安定を確保するためには、法の規定に照らして違法な行為は厳格に取り締まりを行う必要があると考えます。もしこのことが不十分であるとすれば、現行の職安法のもとにおける現状よりもっと複雑な労使関係をつくり出すことになると考えられるからであります。  以上、私は、労働者保護の観点から今後における問題点を指摘しい今後における慎重な審議を希望して、私の意見を終わります。ありがとうございました。(拍手)
  12. 戸井田三郎

    戸井田委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  13. 戸井田三郎

    戸井田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷垣禎一君。
  14. 谷垣禎一

    谷垣委員 自由民主党の谷垣禎一でございます。きょうはお忙しいところ貴重な御意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございます。  時間の関係がございますので、早速お伺いいたします。まず最初に高梨参考人にお伺いしたいと存じます。  先生は本法案のもととなるこの構想をお進めいただくに当たって中心的な立場でお取りまとめに御苦労をいただいたわけでございますが、その中で、先ほどお話を伺いますと、現在の派遣業の実態把握あるいは現在の法制の中で派遣業をどう法律的に類型化してくるか、大変御苦労をいただいて貴重な作業をしていただいたわけでございます。その中でいろいろ労使の御意見をお取りまとめいただくこと大変御苦労があったと存じますが、これは長期間にわたりました中で大変議論の応酬があったように伺っております。先ほど山本参考人の御意見の中にも若干そのことがあらわれていたのではないかと思いますが、先生の目からごらんになって労使それぞれの意見はどこが一番根本的な対立点であったのか、それをどのような観点から御集約をいただいたのか、その点をお伺いしたいと存じます。
  15. 高梨昌

    高梨参考人 お答え申し上げます。  まず第一点は、先ほど山本参考人も陳述されましたが、問題は日本のよき雇用慣行である終身雇用、年功賃金、これは非常に雇用の安定した労働施策でございますけれども、この雇用慣行を脅かすのではないか、これは労使各側から提示された御意見でございます。  そこで、その問題につきましては、この派遣事業法の対象業務、これは法律上は原則だけ定められておりまして法案通過後には政令でこれをうたっていかなければならないわけでありますけれども、その際、業務指定については可能な限り安定した雇用との調整を図って限定していくという立場で私は意見の集約を図りました。もちろん私は日本的な雇用慣行を堅持すべきだという点では見解を異にしておりません。ただ、すべての雇用分野を終身雇用、年功賃金で覆い尽くせるかというとそうでない、これも実態でございます。  先ほど申しましたように、専門、技術職の分野というのはどちらかといえば職業別労働市場で横断的に企業間を移動するという性質をもともと持っております。その多くの人は正社員の身分を持っておりますけれども、そうでない情報処理サービス技術者とか、事務処理の中でも専門、技術職の方々は大体そういうような移動をすると思います。この移動を否定するわけにはいかないわけで、それはそれでその線引きを明確にしようということが一つ私が考えた論点でございます。  それからまた、今まで正式なルールがございませんから、正社員のやるべき業務分野と派遣社員なりパートの社員がやるべき業務分野の線引きが、現状はそれほど明確ではないと思います。この法案ができますればその辺の線引きが非常に明確になって、社会的分業の利益はより一層発揮できるのではないか、こういうような判断でおります。  なお、もう一つ、これは先ほど経営者側よりも主として労働側から提示された御意見でございますが、中間搾取の問題がございます。派遣事業というのは賃金のピンはねをしているのではないか、こういう意見が強く出されました。  その実態については、表現上は不当な利益という言葉もございますし、こういうようなことについて、派遣事業は、現状は先ほど申しました幾つかの需給システムのタイプ分けをしていきますと労働者供給事業に類似しているけれども、そうでもない。労働者供給事業の場合には雇用と使用は供給先でございますが、派遣事業の場合には雇用と使用主としての包括的責任派遣元にございます。こういうように形態が違っておりますから、直ちに他人の就業に介入して賃金のピンはねをするというような形態ではないのじゃないか。もちろん、不当な利益かどうかとなりますと、これは現行法では独占禁止法に基づいて独占的行為に基づく超過利潤は法の規制対象、行政の規制対象になります。これは不当な利益になる。  それから、不当な利益を上げるに当たっての賃金の問題ですが、賃金は最低賃金法で定める地域別最賃が最低を押さえているわけですから、これに違反すれば明らかに不当な利益になりますが、それに違反しない限り、市場賃金相場で払う限りは別に違法でございません。それぞれ企業間競争なり労働者との取引なり、組合があれば組合との団体交渉なりでそれなりの賃金相場が決まり、それでそれなりの利潤が得られる。たまたま利潤が多いか少ないかということは不当か正当かとは話の次元が違う、こういうふうに私は判断したわけでございます。
  16. 谷垣禎一

    谷垣委員 そういたしますと、今先生からお答えいただきましたことから判断いたしますと、一つは雇用環境への影響という点につきましては、具体的にこれから政令でどう業種を指定していくかということになると最終的なことはおっしゃれないと思いますが、今の時点でこの法案が日本の雇用の場でどういうふうに機能していくのか、あるいは影響を及ぼしていくのか、どういう見通しを持っていらっしゃるでしょうか。
  17. 高梨昌

    高梨参考人 先ほど申しましたように、業務指定の原則は、法律上書かれているのは専門的、技術的職業ですね、経験を必要とする業務。業種じゃございません、業務。それからもう一つは終身雇用とか年功賃金という人事労務管理なり労使関係になじみにくい業務、これが法律でうたわれた原則でございます。それからもう一つ法律でうたわれておりますのは、港湾運送業務、建設業務。それぞれ港湾労働法、建設労働者雇用改善法がございます。それぞれ請負業務ということで業務をやっています。その他政令で定める、こうなっています。これは適用除外。この原則がうたわれておりますが、それ以外に、法律でうたわれてない、審議会で審議し、その報告でもうたっているところでございますけれども、製造業の直接生産工程業務ですね、これについては業務の範囲に入れないということですね。  これは安定審議会の審議の際、業務指定の際にそれは十分配慮する、といいますのは職業安定法施行規則四条一項の一部改正が昭和二十七年になされましたけれども、それまで造船業とか鉄鋼業、建設業の労務下請、造船、鉄鋼の社外会社でありますが、これは合法的存在でございませんでした。そこで施行規則四条一項の一部改正によって請負事業ということではっきり位置づけたわけでございまして、そういうようなことで製造業の直接生産業務については今社外会社制度が分業の利益ということで定着しているので、この分野には派遣事業の参入を認めないということ、これは審議会での労使の同意のあった事項でございます。  それから、あとさまざまな業務例の表示の問題がございますけれども、これは私も随分派遣事業の実態調査をして、私はもともと実証的研究が専門でございますので、資料は段ボール十箱ぐらいございますけれども、相当精査したつもりでございます。ただ派遣契約事業というものがタイプ分けされておりませんので、政府行政的な統計がないことは事実でございます。これがタイプかけできれば行政的にそこでの数量、どれだけの事業者がいるか、労働者がいるか、また、そこでの賃金、労働条件がはっきり明確に区分して把握できると思います。現状労働条件がよい人もおりますし、当然悪い人もおります。そういうようなことは実態把握していきたいと考えております。  その際、一体、業務の表示を含めてどうしていくか、もう少し詳しく調査して、その上で業務表示は考えたい、この点についてはまだ意見がすっきり一致しておるわけではございません。それぞれ業界の方々も、先ほど宮川参考人から意見がありましたようにさまざまな御意見があることは十分承知しております。  以上でございます。
  18. 谷垣禎一

    谷垣委員 どうもありがとうございました。  次に、小野参考人にお伺いしますが、先ほどもあらわれておりました雇用環境に対する悪影響あるいは常用雇用の代替化を進めるのじゃないかといったような危惧があるわけでございますが、使用者側のお立場から見てそのあたりをどのように判断しておられるか、伺いたいと存じます。
  19. 小野功

    小野参考人 お答えいたします。  先ほど山本参考人も申されましたように、我が国の雇用慣行は、従来一言で言えば終身雇用慣行と申しておりまして、具体的に申しますと、職業上の知識や経験がない新規の学卒者をある一定時期に募集採用いたしまして、これを長い期間かかって育てながらいわゆる定年まで雇用を保障するということでございます。この雇用慣行のよさについては私も山本参考人と全く同じような理解を持っているわけでございます。こういう慣行が日本の労働者労働の質を高め、かつ企業への帰属意識を高め、さらにまた、労使関係の安定に役立ってきたことは申し上げるまでもないことでございます。したがいまして、この終身雇用慣行をできるだけ維持したいというのは、企業におきましては、使用者もまた労働組合も共通の強い願望となっていると思うわけでございます。  しかしながら、実態を見ますと、今日、願望は願望として、事実がそのとおりに行われているかあるいは貫けるかどうかということになると、そうはいかないであろう要因がたくさん出てきております。例えば私どもは幸いに、今極めて少産少死時代になっておりまして、一人の労働者労働生涯もどんどん長くなっております。四十年ないし五十年というふうになっておりますが、一方、雇用の場である企業の方はどうかといいますと、これは史上空前の多産多死時代を今迎えておるわけでございます。私ども東京商工会議所のスタッフがごく大ざっぱな試算をしたことがございますが、それによりますと、全法人企業のうち、年間約四%の企業が姿を消し、ほぼ同じ四%くらいが生まれてくる、つまり四%の新陳代謝率がある。ということは、引き直せば、一つの法人企業の平均寿命はわずか二十五年ということになります。  こう申し上げますと、それは多く中小零細企業のことであろう、こういうふうにお考えになる方が多いと思いますが、例えば東京証券取引所の一、二部に上場している企業、これは日本の企業群をピラミッドに例えれば、まさにその頂点にある企業だと思いますけれども、例えば二十年前の一、二部上場企業と今日の一、二部上場企業を比べますと、この二十年間に約一六%の一、二部上場企業が姿を消しておりまして、逆にまた、今日の上場企業のうちの二十数%、二五、六%だと思いますが、それは二十年前には上場していなかったか、あるいはまだ生まれていなかった企業もある、こういうことが厳然たる事実としてあるわけです。  さらにまた、先ほどもお話に出ておりますけれども、今や非常に多くの女子労働力に日本経済は依存せざるを得ないわけです。申し上げるまでもないことでございますが、従来の終身継続雇用というのは、あくまでも男子労働者を前提にしておるわけでございます。しかしながら、女子は、継続して雇用し、継続して就労、一日たりともあるいは一年たりとも断絶なく続けて雇用し得る条件を満たしているのはごく少数だろうと思います。こういうようなことになりますと、これが通るのは男子だけであるということにもなりかねないと思うわけです。  したがいまして、企業における雇用形態あるいは就労形態と申してもよろしいと思いますけれども、これは今後極めて多様化してくると思います。そういう中にあって、企業としては、もちろん何でもかんでも外の労働力に依存するとか、すべて外注するとか、要するに終身雇用ならざる従業員にすべて置きかえるというようなことを考えている企業は極めて少ないと思います。やはり企業としても、従来の集団一律管理から、複合的なより高度な労務人事管理の確立に今や必死に取り組んでおります。  しかしながら、それをもってしてもなおかつ、先ほど二、三の例を申し上げましたように、この企業の長期雇用になじまない業務、また長期就労を望まない労働力というものはかなりあろうと思います。したがいまして、この法律によってその辺の需給のミスマッチが解消するということは日本の雇用政策上も極めて有効ではないかと私は思う次第でございます。
  20. 谷垣禎一

    谷垣委員 ありがとうございました。  私は、この法案が需給調整システムとして大いに機能していくだろうという立場でございますので、批判的立場山本参考人にもお伺いをしたかったのですが、質問時間が終了いたしましたので、これで終わらしていただきます。どうもありがとうございました。
  21. 戸井田三郎

    戸井田委員長 村山富市君。
  22. 村山富市

    ○村山(富)委員 本日は、お忙しい中を参考人の諸先生方には貴重な御意見をお聞かせいただきましてありがとうございました。  なお多くの問題点もございますので、すべての参考人に御意見を承りたいのですけれども、時間の関係もございますから御了承いただきまして、まず阿島参考人にお尋ねをしたいと思うのですが、情報処理労働者の場合、今受け入れている労働者の数が多いかあるいは派遣されている労働者の数が多いか、実態がおわかりになればお聞かせをいただきたいと思うのです。  それからもう一つは、特に親会社と子会社の関係ですね。子会社の方から親会社に派遣されるといったような場合には、親会社の方はどうしてもやはりすべての支配権を持っていますから、したがって子会社で働いておる労働者がそこで労働協約をいかに立派なものを結んでも、なかなか派遣先では適用されない、こういったような不都合な問題が起こるのではないかと思うのです。これは先ほど山本参考人の御意見にもあったように承りましたけれども、そういう問題についてどのようにお考えになっていますか、御意見をお伺いしたいと思うのです。
  23. 阿島征夫

    阿島参考人 お答え申し上げます。  現実の問題として非常に流動的な労働市場が情報処理産業の中では起こっておるわけでございまして、派遣先に行っている労働者の数、また派遣元の数というものは実態的に正確には我々つかめない立場でございますし、また行政の統計の中にも、大分探したのですが、そういう調査はやっておられないという実態がございます。  それから第二点目でございますが、親会社へ派遣するがためにそういうような特別な会社をつくるということに対しては、我々としても基本的に反対の立場でございます。  現在、実際的な状況電機労連の中で見てみますと、そういう場合には親会社の工場の中に、子会社のソフト会社が同じ構内に工場を持ちまして、派遣という形態ではなくて、親会社は親会社、子会社は子会社、並行的に同じ構内にソフトウェア工場をつくっておる、こういう実態がございますので、今先生がおっしゃったような非常にぐあいの悪い事態というものは電機労連傘下組合の中には起きていない、こういうように考えております。
  24. 村山富市

    ○村山(富)委員 次に、山本参考人にお尋ねをしたいと思うのですけれども、先ほどあなたの御意見の中に対象業務をやはり限定すべきだという御意見があったわけですね。これは今度の法案の中身を見ますと、もちろん中央職業安定審議会の意見を聞きながら、政令事項になっておるわけですね。したがって、もう少しこの手続というものはやはり考えておく必要があるのではないかというように思うのですけれども、もし御意見があればお聞かせをいただきたいと思うのです。
  25. 山本興一

    山本参考人 きょうそれぞれ各側の御意見がありましたように、率直に申し上げまして、この法案成立をした暁に労働者派遣法にかかわっての業務指定が中央職業安定審議会で協議される。私は、先ほど来申し上げてきましたように、そして使用者側の参考人の方もおっしゃっておりましたように、今の日本のよき雇用慣行というものは堅持をするし、それを中心になされるという御意見はあるのですが、果たして具体的な業務限定ということになりますとどのようなことになっていくかということは、率直に申し上げてその見通しは全くないわけであります。私ども労働側としては、でき得る限り限定するように主張してまいりましたし、今後もしていかなければならないというふうには思いますが、その保証は一つもないわけです。  そこで、今後この委員会でどのような審議が進められるか私にはわかりませんけれども、この問題に限っては、国連で言うような拒否権というようなもので少数意見についても一定の保障をさせるようなものがない限り、今後における対象分野の決定に当たっての手続についてはいろいろ問題が生じるのではないか、そういうふうに考えます。
  26. 村山富市

    ○村山(富)委員 続いて山本参考人にお尋ねしますけれども、派遣先派遣元、先ほど御意見もありましたが使用関係と雇用関係が分離される。仮に想定した例を考えてみますと、派遣元雇用関係や労働条件がいろいろ決められておる、派遣先で使用される、そうした場合に、派遣先でトラブルが起こった場合に派遣先には労働団体交渉応諾の義務がない、こうなってまいりますと、トラブルが起こったところで働いておる労働者は大変困るのではないか、身分にも影響するというようなことが起こり得るのではないかという気がいたしますが、そういう関係についてはどのようにお考えになりますか。
  27. 山本興一

    山本参考人 この点につきましては、小委員会の審議の中でその報告書の末尾に労働側の統一意見というものを幾つか述べているわけでありますが、その中でも、私としては団体交渉応諾義務が当然派遣先の使用者にも課せられるべきという主張をしてまいりましたが、全体としては限定された問題についてのみは少なくとも団体交渉の応諾義務が派遣先使用者にあってもいいのではないかという意見を持っているわけであります。  それは、今後この業態がどのような動きをしていくかわかりませんけれども、少なくとも企業間の競合、それによるダンピング、そうした問題は想定されるわけでありまして、その際における派遣元派遣先との派遣契約の中における契約料金、そのことが結果として派遣労働者の賃金、労働条件を規制してしまうということは当然として出てくるわけでありますし、派遣元が倒産をしたような場合に派遣先がどのような責任を負うのか、そのことすらはっきりしていないわけであります。  したがって、この法案で言う派遣先における苦情処理機関の設置という問題は、日常的な就業条件その他については有効でありましょうけれども、労働者の生活の根幹にかかわる問題については、挙げてどちらかと言えば派遣元にその雇用責任を課しているにすぎないわけでありまして、今日、労働法的にいいまして労働者労働条件に影響をもたらす場合はそれは使用者であるといった意味合いの四十七年横浜地裁の判例からいっても、この問題についてはもう一つ突っ込んだ検討がされていいのではないか、こういうふうに思います。
  28. 村山富市

    ○村山(富)委員 次に、これは阿島参考人の御意見の中にもございましたけれども、労働組合労働者供給事業をやられておる、せっかくそういう制度ができているわけでありますけれども、実態を見ますと、それほど効果を上げてないのではないか、あるいは発展をしてないのではないかというふうに見受けられるわけであります。それがそういう状況にあるのは一体どういうところに理由があるのだろうか、あるいはまたこの事業を今後発展をさせるためにはどのような制度の改正なり手だてが必要なのだろうかということにつきまして、阿島参考人山本参考人に御意見があれば承りたいと思います。
  29. 阿島征夫

    阿島参考人 お答えいたします。  労働者供給事業が思うようにいってないということは、一番大きな責任労働組合自体が余り積極的でないということに原因があったわけでありまして、我々もその点は深く反省をしているところであります。今後は例えば私たちの情報処理分野におきましては積極的に労働組合も関与していきたいと考えているところでございますが、現行では、冒頭の意見でも述べましたように、通常の民間のそういった派遣業者との競争力という点を考えてみますと、非常に大きな問題として社会保険の問題がございます。  残念ながら、労働者供給事業をやっているところにおきましては事業所として認められない、したがって派遣先で入らなければならない、これが非常に煩雑な手続であることは御高承のとおりでございます。したがって、派遣先でも、失業保険とか労災というのはともかくといたしまして、健康保険につきましては入ってないというケースが非常に多い。これは、労供事業に応募に来たときに、健康保険ありますかと聞かれれば、それは現行では派遣先で入っていただきますということにならざるを得ないわけであります。そういった点で労供事業が民間のそういった会社と競争力が十分発揮できるような一貫したいろいろな整備をぜひお願いをしたいと考えているところであります。
  30. 山本興一

    山本参考人 私も考え方は阿島さんとそう大きくは変わりませんが、先ほど高梨先生がおっしゃいました労働組合の労供事業にかかわる許認可の規制の問題が一つ。  次には、労働組合が労供事業を行うに当たって社会的な包容力といいますか、そういった問題が我が国の場合まだはぐくまれていない、そういった社会環境というものも一つあるかと思いますが、決定的に労供事業が低位に置かれているのは、労供事業に従事する労働者の社会保険の適用問題だろうと思います。職安法の建前からいって一つは公共職業紹介、二つには有料職業紹介、そして労働組合の労供事業、こういうふうに法令上規定をされている問題が今日このような状態になっているのは、その点に大きな問題があると思います。したがって、でき得ればこの法案審議の過程で労供事業にかかわる労働保険、社会保険の適用問題についてもぜひ御審議をお願いしたい、こう思います。
  31. 村山富市

    ○村山(富)委員 次に、高梨先生に御意見をお尋ねしたいと思うのですが、先ほど来お話しがございましたように、先生はこの法案をつくる過程では委員会で中心的な役割をお果たしいただいたわけです。そういうことも含めてお尋ねしたいと思うのです。  今、派遣先派遣元雇用と使用の分離の問題で若干お尋ねしたのですけれども、労働組合がある場合にはその労働組合がそういう問題についての条件というものをきちっと規制ができる。しかし、派遣される労働者の場合に未組織の労働者が大変多いのではないか。そうしますと、労働者の権利というものはほとんど無視された形で派遣をされる、あるいは派遣先で使用されるというような事例が相当起こるのではないかというふうに考えるわけです。  先ほど賃金の問題については最低賃金制があるからというお話がございましたけれども、御案内のように、最低賃金というのは極めて低い。これは問題にならないくらいに低いわけですから、そういう枠だけで果たして労働者の権利というものが保障されるのだろうかというふうに心配されるわけでありますけれども、そういう点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  32. 高梨昌

    高梨参考人 私は、派遣社員自身が主体的に団結して労働組合をつくって派遣元会社と派遣先での就業条件について大いに交渉、協議していただきたいという希望が大変強いわけですが、残念ながら現状はほとんど未組織でございます。そういうような未組織労働者の賃金、労働条件保護を一体どう図るか、これは大変難しい御質問でございまして、労働組合方々に大いに努力してもらわなければならないわけです。  先ほど阿島参考人山本参考人も申し上げましたように、労働組合職業紹介活動が日本では伝統的にございません。そのために労働者供給事業については唯一例外的に労働組合のみ認めるということで発足したわけですが、この規定を十分に生かしてこなかったという伝統がございます。もちろん生かし切れなかったところにも若干法律上の問題がございますので、今回は労働経合法に定める労働組合以外、例えば地区労とか県評とか地方同盟とか、こういうような地域協議体、連合体についても労供事業活動が行える、それから地方公務員の組合とか国家公務員の組合は職員団体でございますけれども、職員団体についてもそれが行える、こういうように供給事業を行える主体を拡大し、しかもその許可の要件ももっと緩和する、手続も緩和すべきだ、こういうように提言した次第でございます。  労働・社会保険の適用問題は大変難しい問題でございまして、これは労働行政だけでは対応できずに、むしろ厚生行政の縄張りに入ります。今、年金保険法の改正案、それから健康保険法の改正もございますけれども、現状派遣社員の方々の多くは、特に登録型の場合は、国民年金国民健康保険に入っているのが実態だと思います。こういう人たちに常用雇用型の保険を適用するというのは、制度的に大変無理がございます。  私が派遣会社の業者の方々にも要望していることは、たとえ登録型であっても、派遣先が異なっても、それを継続してもらいたい、事実上常用雇用に近づけるようにしてもらいたい、こういうことであります。また、そのことは同時に、大変熟練した技能を持っている優良な派遣社員の方をその会社に定着させなければ派遣会社としても成長しないでしょうから、そういうような定着の仕組みを考えてもらいたい、こういうことなんですが、間接的にしかその辺の賃金、労働条件の維持改善の方策は立たないんじゃないか。  ただ、もちろんこの法案の中でも、派遣元の負うべき責任、それから派遣元派遣社員に事前に就業条件を明示しなければならない、こういう義務を課しています。それぞれちゃんと雇い入れ通知書で雇用契約を文書で締結して、権利義務関係を明確にする。こういうようなことで派遣元にかなりの責任をかぶせていますから、その限りで何とかもう少し派遣社員の方々が団結して就業条件改善の行動を起こしてもらいたいという希望しか、申しわけありませんけれども私は申し上げられません。
  33. 村山富市

    ○村山(富)委員 続いて高梨先生にちょっとお尋ねしたいのです。  先ほど指定業務の問題について若干御質問をしたのですけれども、この法案が出されましてから私どもの耳にも入ってくる声を聞いてみますと、これから法律制定されますと、法律がひとり歩きをしてどんどん派遣業務が膨らんでいくんじゃないか、拡大されていくんじゃないか、こういう心配をされている向きが大変多いわけです。専門的な知識や技術または経験という概念だけで包み切れないのではないか。これは政令にゆだねられておる事項でありますけれども、例えば職業紹介事業と請負事業と派遣事業、こういう区分けが大変難しい。したがって、仮に派遣事業に一番メリットがある、そうすればやっぱり派遣事業の方に衣がえして、そしてどんどん膨らんでいく、こういう心配をされている向きもたくさんあるわけです。  こうした心配に対して、まあこれからの話ですが、先ほど山本さんからはあれは見通しが立たない、こういうお話でもございましたけれども、そういう点については先生はどういうふうにお考えになっていますか。
  34. 高梨昌

    高梨参考人 お答えいたします。  民営職業紹介事業が今二十八職業ございます。それと派遣事業で行われている職業、それから請負で行われている職業、この三つをどう区分けするかということは、それぞれ時代の変化でその辺の線引きが変わってくると思いますけれども、基本的には、これから派遣事業法が通ったときに派遣事業としての業務を指定する際に、派遣契約事業と請負契約事業と労働者供給事業どこの認定基準を定めるということは、政省令、それから通達まで下がって相当細かく定めることになると思いますけれども、大変困難な作業を伴っているということは私十分承知しております。  ただ、その際私申し上げておきたいのは、現在民営紹介で二十八職業ございますけれども、大いに活用されている職業とそうでない職業とございます。家政婦さんとか看護婦さんは比較的活用されておりますけれども、それ以外にほとんど許可を求めてない職業もあるというのが実態でございまして、それの方は民営職業紹介事業独自の問題として少し洗い直す必要があるのではないか。  それからまた、派遣事業で行われているものの実態調査をしますと、民営職業紹介事業の対象職業とオーバーラップしている部分が大変少のうございます。将来これがどう変動するか何とも見当がつかない不確定な要素がございますけれども、その点は派遣事業での業務指定の原則に従ってかなり限定的に業務を指定し、業務の指定に当たっては表示の仕方を大変実情に合うように表示したければならない、こういうように私はさしあたりは考えているところでございます。  それからもう一つ、民営職業紹介の場合には、職業別労働市場がかなり強固に縄張りが決まっております。したがって、民営紹介になじみやすい相手方に雇用され使用される、こういうことにたりやすいわけですが、派遣契約事業の場合には、専門職なり技術職といいましても、必ずしも職業別労働市場がほかから簡単に参入できないというような、参入障壁があるような職業別労働市場ではないという面がございますので、その意味で民営紹介にはなじみにくいんじゃないか。そういうことで、一応線引きはそういう原則でしたいと考えています。
  35. 村山富市

    ○村山(富)委員 重ねてで申しわけないのですが、そういう政令、省令で細かく規制して、そしてできるだけ限定していく、こういうことを前提に踏まえてもなおかつ派遣業務というのは拡大されていくというふうに考えた方がいいか、それともそうではないというふうに考えた方がいいか、その点はこれからの問題ですけれども、どうでしょうか。
  36. 高梨昌

    高梨参考人 お答えいたします。  これは予想にかかわることですからあれですけれども、私の予想は、この十年ほどかなり派遣契約事業というものが膨張してきましたけれども、長い目で見れば、本工、正社員の本体業務でやるべき分野と、それから派遣社員に委託すべき業務分野と、パート等、部品等のような社外に出してしまう下請、この辺の線引きは明確になってくるのではないかという判断を私はしております。だから、この法律が通ったからといって無制限に派遣契約事業がどんどん膨張すると私、予想しておりません。それなりに事業体としても安定してくるだろう。もちろん、中央職業安定審議会の審議を経て業務指定をするわけですから、業務指定に際しては可能な限り業務分野は限定していきたい、私はこういう姿勢で臨みたい、こう考えております。
  37. 村山富市

    ○村山(富)委員 最後に、仮にこの法律制定房された場合、今いろいろ御意見がございましたように、労働者の権利をどう守っていくか。これはもちろん労働組合が強固に頑張ってくれれば一番いいわけですけれども、この派遣事業というのは、一人一人孤立されるような業務が多いと思いますから、したがって、なかなか団結がしにくい、こういう要件もあって困難な問題があると思うのです。  それから、今申しましたように、職業紹介事業と請負事業と派遣事業との線引きといったような問題も、現実問題としてはこれからなかなか難しい問題が起こってくるのではないかと思いますね。  したがって、そうした問題も含めて、この法律制定された場合にどう適正に運用されていくかということについては大変問題があるのではないか。例えば今ある職業安定業務というものとどういうふうにかかわり合いを持っていくのか、あるいはピンはね等々がなされないようなチェック機能というものがどういうふうに効果を上げていくのかとか、こうした法律が適正に運用されていく面でいろいろ考えていかなければならぬ問題があるのではないかと思うのですが、そういう問題についてどういうふうにお考えになっておりますか。山本参考人高梨参考人に御意見を承りたいと思うのです。
  38. 山本興一

    山本参考人 この点はこの間の小委員会の中でも三年後に見直しをしろという主張をいたしまして、この点だけは労使が一致をした問題であったわけでありまして、このままの状態で行けば三年後にはこの事業の洗い直しをしてみよう、それぞれ洗い直しの思惑は違うとは思いますけれども、まあそうしてみょうということにはなっているわけです。  しかし、何といいましても昭和四十年前後から今日までもう二十年近い歳月この事業が実際に行われてきたという経緯を見てみますと、この間、行政サイドでこれらにかかわる実態調査ができ得なかったという点には、私どもも首をひねる面があるのであります。したがって、でき得ればその種の実情調査というものをこの法案成立の暁には直ちに進められるような方法を本委員会でもおとり願いながら、できるだけ早期にこの実情をつかんだ上で、事後の手をどうするかという点、あるいはまたこの事業が今後進められるとするならば法令あるいは省令にかかわっての規制措置の実効がどこまであるかという点についてのチェックができ得るような方法を考える必要があるだろう、こう思います。
  39. 高梨昌

    高梨参考人 私は中央職業安定審議会に長いこと所属してまいりまして、かねて安定審議会からも政府に要望していることですけれども、今日雇用政策が大変重要な国の経済政策の課題になっておりますが、残念ながら総定員法の枠で行政職員は絶えず削減の対象になっております。とりわけ労働行政というのが、大変重要な行政でありますけれども、なかなか職員がふえない。そういうことで、職業安定機関の職員を可能な限り増員してもらいたいということは再三再四安定審議会で要望してきたところでございます。今回の派遣事業法が通りましたら、そのための専門職をそれぞれの安定機関に設置すべきで、それによって事業の適正な運営が図れるようにすべきだということも今回建議しております。  そういうことで、ただ公務員が多いということで一律に定員削減すれば済むということではございませんでして、サラリーマンが四千百万いるのに労働省の本省国家公務員はわずかに二万五千でございます。専業農家が七十万戸で農林水産省が八万一千おるという、随分不均衡じゃないかと思うわけで、その辺の不均衡を是正していただきたいとかねがね私は申し上げているところでございます。
  40. 村山富市

    ○村山(富)委員 少し時間がありますから、大変恐縮なんですが、阿島参考人に、先ほどの御意見の中に派遣労働者教育訓練の問題についてお話がございました。これは、技術や専門的な職能というのは日進月歩変わっていっているわけですから、専門的な知識や技術または経験を持っている方が短期間同じ業務に派遣されてやっておりますと、よほど教育訓練を受ける機会がないとその仕事が終わったらもう使い捨てというようなことになりかねないのではないかという心配もあるというように思うのですけれども、そうした派遣労働者の技術訓練の問題について、何か御意見ございましたらお聞かせをいただきたいと思うのです。
  41. 阿島征夫

    阿島参考人 お答えいたします。  現在のコンピューター業界といいますのは、毎日の新聞を見ていただければおわかりのように、毎日新製品が出ているわけでございます。特に最近は分散型のシステムになっておりまして、オフコン、パーソナルコンピューター、こういったものは毎月もう我々数え切れないほどの新製品が出ておりまして、しかも新製品が出るたびにそのハード自体が非常に大きな進歩を遂げておるわけでございます。そういった業界の中でソフトウエアももちろんそれに対応してさらに進歩をしておる。しかも値段の方は単価はどんどん下がっておる。こういうような非常に激しい動きの業界でございまして、それに合わせた技術、知識というものがどうしても必要でございます。  したがいまして、私どもといたしましては絶えず労使協議の中で教育訓練の問題を取り上げているわけでございます。特にこのソフト労働者に関する教育といいますのはそう簡単にマスターできるような教育訓練ではなくて、むしろこれまでとは違った、いわゆるOJTというようなものではなく、オフJTの、しかも非常に長い期間、三カ月とかそのくらいの教育期間がその労働者の一生働く節々において絶対必要ではないだろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。  そのシステムの方法としては、いろいろございますけれども、一つはリカレントシステムという、これは欧米でよくとっておられるシステムなんですが、労働者に有給休暇を三カ月なり与えまして、その間、その会社では、また企業ではなかなか教育が施せないというような内容につきましては、企業外で専門学校なり大学なりにその労働者が行ってその有給教育期間中に教育訓練を受ける、こういうシステムが諸外国では既に確立されているところもあるわけでございまして、今後はそういったじっくりとした教育訓練が日本の労働者にも必要ではないだろうか、こういうふうに考えるところでございます。
  42. 村山富市

    ○村山(富)委員 貴重な御意見をどうもありがとうございました。  以上で終わります。
  43. 戸井田三郎

    戸井田委員長 大橋敏雄若。
  44. 大橋敏雄

    ○大橋委員 参考人の皆さん、本当に本日は御苦労さまでございました。非常に貴重な意見を承りましてありがたく思っております。  最初に、山本参考人阿島参考人にひとつお尋ねをしたいと思います。  今回提案されております派遣事業法について、山本参考人は反対の立場で、阿島参考人は賛成の立場で御意見を述べられたわけでございますが、人材派遣事業というものは時代の流れであって、企業、労働者双方のニーズにこたえた形でいわゆる労働者派遣事業というものが生まれてきたんだ、こういう認識は私は同じだろうと思うのですね。現在は労働者供給事業あるいは業務処理請負事業の法令や規則に縛られまして、極めて不自由な思いでの事業活動がなされているのではないか。そういう中にありまして、派遣労働者の就労というものはさまざまな不安定な状況にあるので、お二人ともこのままの状態ではよくないんだ、放置するわけにはいかぬ、何らかの措置をとるべきであるという御認識も一緒ではないかと思うのです。  しかし、違ったのは、山本参考人はこの法案といいますか、こういう派遣労働事業というものが伸びていくということは、我が国の労働慣行がゆがめられていくものじゃないか、そういう点で派遣事業というものはこういう労働慣行にはなじまない、調整していくのは基本的には無理じゃないか、このようなお考えなのかどうか。あるいは、そのほかにいろいろと工夫していけば、やはり時代の流れなんだから何とかこれはいけるんだ、いくべきなんだというお考えも裏にはお持ちなのかどうか。  それから、阿島参考人は、今回の法案の内容で大体自分らの思っている目的は達せられるんだ、こういう御認識であるかどうか、簡単で結構ですからちょっとお答え願いたいと思います。
  45. 山本興一

    山本参考人 結論的には二つの点であろうと思います。  一つは、労働者派遣業といった形態を今日まで許してきてしまったという行政あるいは社会的な要因というものがあったのではありましょうが、先ほど来お話しがありますように、職業安定制度の中には民営職業紹介事業というものがありまして、これらに乗っけるような考え方というものがいま一歩ないか、つまり、戦後職安制度の規範の中でこの問題を処理することが一体できないのか、もう一回検討してみる必要があるんじゃないか、つまり常用雇用制度というものを基本に置いた雇用慣行というものを今後も続けていく方向でなお検討ができないか、それが一つ。  それから二つ目には、この問題が所在をしている労働者保護の観点からいいますと、先ほど来申し上げましたように、幾つかの問題があるわけでありますが、我々の主張が弱いのか、あるいは我々の力量が弱いのか、それはわかりませんが、なかなかその辺のところが解明できない、その二点によって私は批判的に反対をしている、こういう点であります。
  46. 阿島征夫

    阿島参考人 私どもの立場でまず申し上げたいことは、この法案につきましては職種が限定されている、こういう前提で賛成をしている立場でございまして、この職種の拡大ということは、これは我々としても望むところではないわけでございます。  次に、この法案についてさらに句点がお願いしたいことがございます。これは既に何回か申し上げましたが、一つは、非常にあいまいな扱いになっております派遣労働者雇用というものが、この法案によってかなり明確になるわけでございますので、現在よく見られるような疑似請負といったような非常に法的にあいまいさを残すようなことは今後は一切なくしてほしい。明らかに請負の形態をとっていながら、その要件を満たさずに労働者供給をしているようなものについては、職業安定法違反として厳しく取り締まる体制を整えていただきたい。これは先ほど高梨先生が申し上げた点と全く同じ点でございます。  次に、海外法人への派遣の問題については反対であるということでございます。いわゆる海外法人への労働者派遣につきましては、派遣先使用者責任が法的に及ばない、こういうことから間接的に禁止されることになると思いますが、しかし、日常的な取り締まりが日本国内でないということで非常に困難ということですね。それからトラブルが発生した場合の把握というものが物理的に非常に難しいということから、禁止規定を法的に明示する必要があるのではないだろうか、こういうふうに考えておりますので、ぜひ前向きに御審議をお願いしたいと思っております。  それからその次に、労組の労働者供給事業につきましては、先ほど述べましたように、今回の法律で積極的に私は評価しておりますのは、地協やそういう地方の団体、労働組合の団体が労働者供給事業を行えるようになった点でございますので、もう一歩進めまして、条件整備等を先ほど申し上げましたように十分行うよう、御審議をお願いしたい。  以上でございます。
  47. 大橋敏雄

    ○大橋委員 時間の関係もございますので、今度は宮川参考人にお尋ねいたしますが、宮川参考人はマンパワージャパンという現実派遣事業を第一線で行ってこられた方でありますが、今回の法案提出ということは、まさにおたくの業界に日が当たってきた状況ではないかと思うのでございます。  しかしながら、現在までは職安法第四十四条や施行規則第四条の厳しい条件の中で事務処理サービスとして派遣事業を行ってこられたわけでございますが、一般には、非常に言葉が悪いのですけれども、派遣事業というのは確かにピンはねの事業なんだ、低賃金で労働者を非常に過酷な状況に追いやって、そしてもうけているんだ、こういう一般的な認識があるわけですね。しかし、きょうのいろいろな陳述の内容を伺ってみまして、私も大きく認識を改めたところでございますが、こういう点、これからはっきりした立場運営をしていただきたいというのが一つです。  そこで、今回の法案で、派遣元派遣先もその使用者責任を明らかにしたわけでございますが、実際は発注元である派遣先企業とそれから派遣元業者との関係というものは対等ではないのではないか、派遣契約というものは派遣先企業が一方的な条件によって決定していくというのが現状じゃないかな、よくこういう話を聞くわけですね。つまり力関係が全然違うんだと。これまでの実例、体験的なものがありますればお話しを願いたい。簡単で結構でございます。要するに、派遣元がこれこれこれだけの条件をのんでくださいと言えば、それじゃ必要ないと一方的に契約を解除されるというようなことがあったんではないかなということですね。  それから、将来同業者がどんどんできて過当競争ということを予想されているかどうか、その点もあわせてお願いしたいと思います。  時間の関係もありますので続けてお尋ねしますが、労働者派遣事業というものは、一口に言えば労働者の持っている技術、経験、技能を欲しがる人に売るという仕事であると思うのですけれども、先ほどもお話しがありましたように、派遣労働者の資質の向上のための教育訓練というものは非常に大事だと思いますし、その設備も必要になってくるわけでございますが、その経費は非常に大きいものとなろうと思うのです。先ほどの陳述の中でもそういう実情が述べられていたようでございますが、その経費を浮かすために労働者に低賃金を強いて、そして経費を浮かしていく、いわゆるピンはね問題が出てくるのじゃないかという感じがするのでございますけれども、以上申し上げました三点についてお答え願いたいと思います。
  48. 宮川尚三

    宮川参考人 お答えいたします。  第一点の中間搾取の論議でございますが、先ほど来この点につきましては論議がされておりまして、高梨先生の方から法的な解釈ということから御陳述があったと記憶しております。私、この立場でこういう論議を聞くのはいささか心外な点があるわけなんでございますが、と申しますのは、先ほど私自身も申し述べましたように、単なる人を右から左と動かすようなシステムじゃなくて、付加価値を高めて、労働力の需給システムの円滑な運営ということにはかなりの経費というものが当然かかってくるわけでございます。それで、それが不当な利益を上げているかどうかということは、この法案の中にも、二十三条だったと記憶していますが、事業報告の義務ということで、事業報告書または収支決算書の提出を求められております。これを見ていただければ、企業としての経営努力というものは当然そこにあらわれてきておりますし、決して不当な利益ではない、このように考えております。  賃金につきましても、先ほど来最低賃金法との兼ね合いなどというような論議もなされましたけれども、実際私どものシステムで働いておりますマンパワースタッフの九%の人は、賃金がよいからというようなお答えもしております。  時間の関係上、次に移らせていただきますが、労働条件の設定という問題でございます。  私ども、十九年間この派遣事業をやってまいりました。法制上の問題で請負契約を結んでまいったのですが、基本的には業務内容の派遣というよりは、いわゆる請負契約に基づく性格の方が、こういう人事の業務処理ということはそちらの方に形態的には、実態的には近いのじゃないか、このように思っています。つまり、委託していく業務の内容をまずチェックしなければいけないわけで、それが完全になされて初めて業務処理ということがなされ得るわけでございます。こちらのマンパワーのシステムでは当然その業務内容のチェックシステムがございますし、どういう能力が要求されるかということがチェックされまして、それに見合うスタッフが先方に出向してその仕事をやっていくわけです。  したがいまして、その条件が一方的になされるということじゃなくて、同じ土壌の中でその業務をどういうふうに処理していくかということがまず前提に話し合われて、マンパワーとしてこれだけの業務委託料金が必要ですということを御提示申し上げて、派遣先企業の了承をいただいております。  次の同業者の過当競争という御質問でございますが、私としましては、この法案成立すれば、当然かなりの企業が参入していらっしゃると思います。現在、私どもの判断では、事務処理サービスを業としていらっしゃる方は、大小合わせれば二百社以上に達しているのじゃないかと思います。ますますふえてまいりますでしょうし、大手の参入も当然予想されるわけでございますが、基本的には先ほど各参考人方々も申し述べられましたように、悪貨が良貨を駆逐してはならないわけでございますし、また、そういう自然淘汰がなされて、システムを正常に、的確に運営できる企業だけが残っていくのではないか、このように思っております。  教育訓練の方法につきまして、先ほど阿島参考人の方からも、日進月歩、特にOA機器の第二の波というものが現代社会において入ってきております。そういうものに対応する教育訓練ということは当然必要なことでございまして、先ほど機械の陳腐化とか、オン・ザ・ジョブ・トレーニングじゃなくてオフ・ザ・ジョブ・トレーニングが必要なんだというようなお話がございましたように、かなりの期間にわたりましてそのトレーニングが必要になっております。  マンパワージャパンも当然、当初各支店においてトレーニングルームということで、ブラッシュアップを中心としたトレーニングを実施してまいりましたが、やはりそれだけでは能力開発ということには追いつくことができません。したがいまして、今から六年前でしたと思いますが、銀座支店に東京トレーニングセンターというものを併設しました。さらにそれでは追いつかずに、渋谷にこの五月から渋谷トレーニングセンターを併設いたします。  主にそこでなされるのは、先ほど申しましたように、OA機器のブラッシュアップまた能力開発、中には二カ月にまでわたるものもございます。幸い私どものシステムですと、オフ・ザ・ジョブ・トレーニングと同時にオン・ザ・ジョブ・トレーニングというか、能力を開発した段階でもう一度仕事に戻ってまた先のスキルに挑戦できるという、キャリアパスプログラムと称しておりますが、永続的なマンパワーでの在籍を高めていただくような教育訓練を考えております。
  49. 大橋敏雄

    ○大橋委員 最後に高梨先生に、簡単で結構です。  当然、こういう派遣労働事業には職種が限定されねばならぬと思うわけでございます。職安法第四十四条の基本精神が生きている以上は、適用対象業務はできるだけ絞るべきだという考えを私は持っているわけでございますが、先生の職種に対する基本的な考え方、あるいはもしこれが今後伸びていくとすれば、どういうことに気をつけなければならないかというようなことをお答え願えればありがたいのです。
  50. 高梨昌

    高梨参考人 先ほど再三申し上げましたように、職種より業務指定の問題ですから、どういうような業務が専門的、技術的経験を要する業務か、それからまた終身雇用、年功賃金という人事労務管理になじみにくい業務か、そういうふうな原則に従ってせざるを得ませんけれども、問題は、再三私が強調していますように、終身雇用、年功賃金の雇用慣行というのは堅持すべきだと思いますので、それでない業務分野で、それが派遣形態で有効に機能する業務について限定的に指定していきたい、こういう考えております。
  51. 大橋敏雄

    ○大橋委員 時間も参りましたので、終わります。
  52. 戸井田三郎

    戸井田委員長 塩田晋君。
  53. 塩田晋

    ○塩田委員 民社党の塩田晋でございます。  本日、参考人として五人の先生方、朝早くから貴重な御意見を賜りまして非常に参考になりました。ありがとうございます。  五人の参考人のうち四人の方は賛成で、多くの方がこの法案を慎重の上に審議をして早期成立させてもらいたいと積極的な御意見を述べられたわけでございますが、山本さんにつきましては、基本的には反対というお考えをお聞きしたわけでございます。  そこで、中央職業安定審議会から二月十五日に出されました答申、これを見まして、高梨先生がこれに深くかかわりを持っておられますことをお聞きしましたので、若干お聞きをしたいと思います。  まず、この答申の本文のところに、「労働省案については、労働委員の一部からこの種の立法には賛成しかねるとの意見も表明されたが、」とございます。賛成しかねるというのは、反対の意見も表明されたがとは違う表現でございまして、反対でないが賛成はしない、賛成は積極的にはできない、こういう趣旨に受け取れるのでございますが、山本参考人の基本的反対というのはどのようにこれを扱ってこのような答申の表現にされたものか、御存じでございましたらお聞かせ願いたいと思います。
  54. 高梨昌

    高梨参考人 今の問題、若干微妙な問題を含んでいまして、小委員会報告の段階では、山本参考人も審議会のメンバーで、参加していただきました。それで、労働側の三委員として小委員会報告の最後に労働三団体共通の意見書がついております。その意見書の段階で、小委員会報告は、公労使三者で一致して安定審議会の総会に報告し、安定審議会でもそれは了承されました。それに従って政府法案作成作業にかかり、二月に安定審議会で、今の、おおむね妥当である、ただし一部から賛成しかねるとの意見があった、こういうことが最後の文案で入ったわけでございます。  小委員会レベルではそれは入っておりませんで、安定審議会総会の最後の段階で入ったということ、私は、それぞれ組織の代表の方々ですから、それは尊重して、そういう表現をそこに加えた、こういうことでございます。
  55. 塩田晋

    ○塩田委員 山本参考人、この点について何か御意見がございましたらおっしゃってください。
  56. 山本興一

    山本参考人 大筋は高梨先生のおっしゃったことに尽きると思うのでありますが、私どもとしては、この問題について、基本的には批判的な態度を持ちながら、実態論的に労働者保護の観点から問題を解明をするという立場で臨んでまいりましたので、そういう点から申し上げますと、我々が要求をし、あるいは主張してきた点まで到達をしていない、そういう点について賛成しがたい、こういうことであります。
  57. 塩田晋

    ○塩田委員 先ほどの最初の意見陳述の中にも今言われましたようなお気持ちが出ておったと思いますのは、基本的には反対するが、本法案成立後に出てくる問題についてこういう問題があるということをおっしゃいましたので、その辺の事情があるいは出ているのかと思ってお聞きした次第でございます。  そこで同じくこの答申の本文の中に「本審議会においてこの制度についての必要な見直しを行う」、しかもその時期につきましては、制度の運用の実情、労働市場の変化、雇用慣行等の変化を踏まえて、法律施行後適当な時期、これはおおむね三年後というふうにただし書きがついておりますけれども、これは本審議会において見直しをするということでございますが、この法律ができましたときに、法律についての見直しの必要はどのように考えておられますか。その実態、それの推移、変化等を見て見直しの必要を認めておられますかどうか、お伺いいたします。高梨先生。
  58. 高梨昌

    高梨参考人 人材派遣法案が仮に成立した暁に、おおむね三年後に見直すというのが審議会の決定でございますけれども、その際どこまで見直すか、その範囲についてはまだ決めておりません。法律そのものの骨格まで変えるかどうか、そういうことまで含んでいるかどうかも決めていないのが現段階でございます。
  59. 塩田晋

    ○塩田委員 今のお考えは、本審議会における見直しの問題だと思うのですが、私がお尋ねしておりますのは、具体的に申し上げますと、この法律の中に見直し規定を入れるということについては、いかがお考えになりますか。
  60. 高梨昌

    高梨参考人 私は、法律の安定性から言いますと、法律の根幹にかかわることの見直しは望ましくないと考えております。運用上の問題か、政令なり省令の見直しか、この程度にとどまるのが望ましいと考えております。  といいますのは、一たんそれで合法的存在になりますから、それなりに事業体は仕事なり商売を始めていくと思いますので、そこまでさかのぼるには大変問題があると思います。むしろ法律事項でなしに、審議会の決定に従って行政的にそういう取り計らいをしてもらいたい。というのは、安定審議会でそれを確認しておりますから、行政がそれを無視するわけにいかないのが実情だと思います。
  61. 塩田晋

    ○塩田委員 次に、阿島参考人にお伺いいたします。  情報処理労働者は約四十万人いると推定される、これが今後どんどんふえて百六十万人にもなり、またこの種の労働力の不足が起こるというお考えを述べられたわけでございまして、そういった観点から今までのような野放しの状態に置くことはできない、日陰者であってはならない、法的に認知すべきだというお考えを述べられたわけでございますが、しかし問題点を四点ほど挙げられました。  この法律案につきましての問題点の四点、これを踏まえまして、今出ておる法案のどこをどう直す必要がある、言うならば法案修正でございますが、修正に係るような部分があるのかどうか、あるとすればどういうところかということを、御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  62. 阿島征夫

    阿島参考人 具体的な修正箇所につきましては本委員会の御審議にゆだねたいと思いますけれども、四点のうち一つ、非常に明確に明示する必要があるのは、先ほども申し上げました海外法人への派遣、これは禁止規定を設けたらどうであろうか、こういう点でございます。  以上です。
  63. 塩田晋

    ○塩田委員 その他、問題をいろいろ言われましたけれども、これは行政運用上あるいは政令、規則の段階で十分に対処できる、こういうことでございますか。
  64. 阿島征夫

    阿島参考人 そのように考えております。
  65. 塩田晋

    ○塩田委員 先ほどもお尋ねいたしましたが、この問題は特に電機産業につきましては非常に影響の大きい法律であると思います。情報化時代が急激に進展しております中におきましてやはり法律の見直しをすべきだとお考えかどうか、審議会もそういう配慮があって、審議会において三年くらいで見直しをするということを言っておられるわけですが、これについてはいかがお考えてありますか。
  66. 阿島征夫

    阿島参考人 私も職安審の中で見直しを行う方が妥当ではないだろうか、こういうふうに考えております。
  67. 塩田晋

    ○塩田委員 山本参考人にお伺いいたします。  使用者責任について言及されまして、使用者と雇用者とが本来同一であるという建前で来ておる労働者保護の観点からの労働各立法がある、それが今度分離することは非常に問題であると言われましたが、その辺の労働者にマイナスになるところをどのようにすればこの問題が解決できるとお考えか、お伺いいたします。
  68. 山本興一

    山本参考人 使用者概念がこの法制化によって分化をされるという点でありまして、今後における事業の遂行がどのような形で行われていくのか予測がつかない点がありますだけに、必ずしも派遣元企業が力関係で優位な立場から派遣先企業労働者派遣するケースばかりではないと思うのです。  その場合に、一つは派遣契約上の問題について派遣元事業主との間で協議あるいは交渉が成立をしない場合、あるいはまた派遣元事業主が派遣先事業主にその責めを課すような場合、そういう事態が今後出てくるのではないかというふうに思います。したがって、私どもとしては団体交渉応諾義務というものをその両者に課していただきたい、そういうふうに考えます。
  69. 塩田晋

    ○塩田委員 終わります。
  70. 戸井田三郎

  71. 小沢和秋

    小沢(和)委員 きょうはどうも御苦労さまです。  最初に高梨参考人にお尋ねをしたいと思いますが、この新しい労働力需給システムを認めることが全体として雇用量の増大をもたらすのかどうかということです。  今のように各企業とも人減らしに必死になっておるときにこのシステムを認めるということになるとどうなるか、私も幾つか調べてみたのですけれども、正式社員である女子の事務職などというのを抱えておくとコストが高くつくというので派遣労働者に切りかえていった方が安い、こういう動きを促進しているように思うのです。だから、全体として雇用量が伸びるのではなく、結局そういう動きが今華やかに伝えられているというだけのことではなかろうかという感じがするのですが、この点いかがですか。
  72. 高梨昌

    高梨参考人 雇用量の増減につきましては、マクロレベルの問題の御質問かと思いますが、マクロレベルの問題はむしろ経済の投資活動とかいうことに専ら依存するわけでして、その総雇用量の中で一体雇用形態がどう分業されていくか、これにかかわる問題で、今のME技術の進歩が雇用を削減されるよりも雇用をふやし、経済成長率を高めていく、私はこういうように予想しています。  そういうことで総雇用量はふえていきますけれども、そのシェアがどうなるかについては、仕事の性質によってそれぞれ本体事業の雇用量と派遣なりパートというここでの雇用量のシェアがどう変わるかというと、派遣事業法ができたからといって派遣社員の分野が急速に拡大するとは、今まで大体拡大し尽くしてきて上限だろうと私は判断しておりますので、今後そう伸びるとは思いません。
  73. 小沢和秋

    小沢(和)委員 続いて高梨先生にお尋ねをいたしますけれども、先ほど製造業への参入は認めないということを言われたわけであります。ところが、私もこの前当委員会で指摘したのですが、現実には新日鉄などで自動車メーカーに、一九七八年ごろから人が余っているといって現場作業要員として派遣をしておる。半年ぐらいでどんどん交代していますからもう既に一千名を超えていると思います。こういうような状況について労働省当局は、これは業としてではないんだというような見解を示されておりますが、これだけ長期にわたってやっているなら業としてとしか考えられないんじゃないかと私は思うのです。  だから、事実上こういうような形で製造業のラインにまで派遣労働者が入り込んできているという実態があるのじゃないでしょうか。この点について、今のままだったら野放しになるのではないかと私は考えますが、いかがですか。
  74. 高梨昌

    高梨参考人 これは労働基準法研究会でも御検討願ったことですが、出向契約事業と派遣契約事業とございます。出向の中にも在籍出向と移籍出向とございます。(小沢(和)委員「これは派遣なんです、私ははっきり調べたのですから」と呼ぶ)ですから、それを派遣とカテゴリー規定するかどうかというところの解釈が分かれるところだと思います。今、法律上は出向を業としてない。今回、国鉄も余剰人員対策で派遣という言葉を使いましたが、あの中身は私は出向だと思っています。そういうようなことで出向と派遣というのは、明確に業とするか否かで区別せざるを得ない、私はこういうように考えているところでございます。
  75. 小沢和秋

    小沢(和)委員 高梨先生ばかりで恐縮なんですが、もう一問お願いしたいと思うのです。  先ほど先生から派遣労働者組合をつくってみずからの労働条件を積極的に引き上げていくことを期待しているというお話がございました。実際、これは本筋のお話ではあると私も思いますけれども、現実は極めて困難じゃないかと思うのです。なぜかというと、短期の労働者がどんどんかわっていく、しかも大体少人数で派遣されるわけでしょう。しかもよそ様に行って働くわけです。絶えず周りに気がねをしなければならないという状況です。  ですから、こういう状況の中では労働者の団結権や団体交渉権などについては特別に配慮をすることが考えられなければならないと思うのですが、残念ながらそういう規定がない。だから、実際上は派遣先が、気に入らない、この人はかえてくれとか、契約が満了したということでそれでおしまいということで首だとか、こういうような危険に絶えずさらされて、結局のところは労働組合が活動して今先生が言われるような方向に行くというのは、もう見通しとしては極めて困難じゃなかろうか。これはやはりどうしてももっと法律的にその点についての保護をしっかり考えなければいけないのじゃなかろうかというふうに私は思うのですが、いかがでしょうか。
  76. 高梨昌

    高梨参考人 日本の企業別労働組合運動というのは、企業内組合であるという大きな特徴があります。しかも企業内の正社員のみしか組織してない。パート社員とか派遣社員とかが同じ職場にいてもなかなか仲間に入れない。今、未組織労働者の組織化が組合運動の大変大きな課題になっていますけれども、今言ったように、職場が転々とするこういう移動労働者をどうやって組織化するかということになりますと、労働組合の人に大いにそのノーハウを開発してもらいたいと思っているのですが、企業内組合では組織できない。地域別原則に立たざるを得ないんじゃないかと思っております。  労働者方々はそれぞれ地域に居住しています。地域単位に居住していく。そのために今回の労働者供給事業についても地域単位の労働組合に供給事業活動を行えるように規制を変えているわけですね。こういう工夫を組合自体が大いに私はやっていただきたい。それでない限りなかなか組織化が進まない。もちろん組織化がしにくいということは私も重々承知していますけれども、今までの組合運動の組織化原則の伝統の上ではなかなか困難であろうと考えております。  それから、先ほどから山本参考人その他から申し述べておりますように、派遣先派遣社員との労使関係の問題でございますけれども、派遣社員から苦情が出る場合が起こり得ると思います。要するに、派遣に際して事前に明示された就業条件と違う場合がある。ですから、一応この派遣事業法の中では、派遣先にも管理責任者を置いてこの苦情の処理に当たらせる、こういうことはそれぞれ派遣元と連絡調整しながら行いなさい、ここまで入っております。  ただ、そこで団交の義務までいきますと、私も中央労働委員会の公益委員でいろいろな不当労働事件の審査その他で苦労をしているところでございますけれども、これは二つの使用者がある。包括的使用者責任はあくまで派遣元でございまして、部分的な使用者責任派遣先にあるのですが、そうするとその際、派遣契約それ自体を団体交渉で変更できるかどうかという問題まで波及いたします。また、労働組合法そのものの骨格にかかわることになりますので、そこまではとても今回は踏み込めない。大変壁が厚うございます。労使関係については、現状では労働組合法でまた別途にいろいろな問題がございます。  そういう点を考えますと、さしあたりは派遣元派遣社員、この労使関係で、団体交渉で派遣に際しての就業条件改善をお願いしたい。これを中心に据えて、ここで決まった協約に従ってその就業条件を明示した派遣契約を締結してもらいたい、こういうことでこの法律は考えております。
  77. 小沢和秋

    小沢(和)委員 では、続いて宮川参考人にお尋ねをいたしたいと思います。  マンパワー社でいわゆる残業についての三六協定をどういうふうな形で結んでいらっしゃるか。先ほどのお話では、一人で派遣をされているという形が非常に多い。そうすると、その場合、労働者を代表する人といったらだれになるのか、これはなかなか難しい問題じゃなかろうかと思いますが、実態がどうかお尋ねします。  それからもう一つは、山本参考人にもお尋ねをいたしたいのです。あなたは地方自治体の労働運動の指導者でいらっしゃるわけですが、地方自治体の分野にも今派遣労働者というのは相当に入り込んできていると思うのです。こういうような実情と、それからどう対処していらっしゃるかということについても簡単にお答え願いたいと思います。  以上で終わります。
  78. 宮川尚三

    宮川参考人 三六協定はその基本になります就業規則の届け出が必要だと思うのですが、就業規則自体は私どもかれこれ八年かけましていろいろ研究して案をつくりました。しかし、実態的に申し上げますと、働く場所、それから人数、その承認ということで実行がなかなか難しくなって、今保留になっております。したがいまして、フィールドスタッフの労働基準監督署への届け出はなされていないということでございます。
  79. 山本興一

    山本参考人 現状はビルメンテナンスの関係と、それから情報処理業務と、この二つが主たるものではないかというふうに思いますが、我々としては自治体に働く関連労働者という観点で、随意契約の内容についてその額を引き上げる中で労働者の賃金あるいは労働条件確保していくような方向をとりたい。現実問題として今参入をしている人を締め出すというわけにはまいりませんので、そういう観点で対応したい。  それからもう一つは、この法案成立をした暁に、これはわかりませんが、あるところによっては自治体そのものが派遣公社を設立をして、そしてそこから自治体が派遣労働者を直輸入するような動きがないわけではありません。しかし、先ほども申し上げましたが、民間もあるいは自治体もそうでありますけれども、派遣労働者を参入をさせることを目的とするような公社あるいは特定企業内部における特定事業、そういうものについてはこの際排除をしたいと思います。
  80. 小沢和秋

    小沢(和)委員 ありがとうございました。
  81. 戸井田三郎

    戸井田委員長 菅直人君。
  82. 菅直人

    ○菅委員 きょうは御苦労さまです。短い質問時間ですので、まとめて質問をさしていただきたいと思います。  高梨参考人に三点お尋ねをしたいのです。第一点は、いわゆる業務の限定に加えて、同一労働者を同一企業に派遣をする期間の限定が必要ではないか、常用雇用に対する影響を考えるとそういうことが必要ではないかと思いますが、この点について見解をお聞かせいただきたい。  第二点は、今回の法案では常用型の場合には届け出でいいということになっておりますけれども、そうしますと、あらゆる一般の企業が派遣業が可能になるということで、先ほど出向の問題等もありましたけれども、ちょっとそれはいいんだろうか。常用型であっても一定の条件を付した許可制が必要なんではないかと考えますが、この点についての御見解を伺わしていただきたいと思います。  第三点は、これは高梨先生と、あわせて宮川参考人にも見解を伺いたい共通の問題ですが、派遣労働者労働条件という問題で、派遣先就業条件を明示するということになっておりますけれども、先ほど来議論がありますように、派遣労働者というのはなかなか組織化されにくい存在ですし、結局のところは派遣労働者本人一人で自分の一種の権利を守る必要性があるという状況が多いと思うのです。そういう意味では、派遣先労働条件ということに加えて、派遣先派遣元契約の内容を派遣労働者に対して開示するということを考えたらいかがかと思いますが、高梨先生の御見解あるいは宮川参考人のそれに対する御見解を伺いたいと思います。  以上です。
  83. 高梨昌

    高梨参考人 お尋ねの派遣期間の限定の問題ですけれども、西ドイツとフランスがそれぞれ派遣期間制限をやっておりますけれども、必ずしもうまくいっておりません。業務によっては短期で業務が済む事業もありますし、若干長期になるものもあるかと思います。その辺は、派遣期間の限定を付した方がよいかどうかは、そこの労働者雇用の保障にかかわることですから、業務の種類によっては、短期業務の場合にはもともと派遣期間を制限してもよい場合もありますけれども、ピルメン業務とか警備保安業務になりますと、あるピルなどでかなり長期的に働くということになりますので、これを切った場合に、一年なら一年で切っても、他にまた一時的に行ってまたもとへ戻す、こういうことが起こりかねませんから、期間限定というのは実効性も余り期待できないのではないか、こういうように私考えております。  それから、常用雇用型は届け出制になっておりますが、常用雇用型でやっておる業務の内容はどちらかといいますと大変請負的性格が強うございます。その中に部分的に派遣が伴う、そういうことで、雇用そのものは常用雇用で安定しておりますので、届け出で足りる、こういうことで、登録型派遣の場合の許可とは若干要件を変えた次第でございまして、もちろん届け出といっても事業がルーズに行われるわけじゃございませんでして、その届け出の要件、それから、それぞれ収支決算その他の企業活動についての報告を求めておりますから、その事業が適正に運営されているかどうかについては、行政的にチェックできる機構はあるかと思います。  それから、派遣契約までの開示の問題でございますけれども、これはある意味では企業秘密にかかわることもございますから、一体どこまで、就業条件以外のことまで示せるか、これは若干問題があると思います。それぞれ派遣先派遣元との問題ですから、派遣先にも労働組合があれば、派遣社員の受け入れについてもう少し組合も団体交渉で派遣契約の条件とか、そちらの方で規制するとか、こういう努力もあわせてしていただければ、そこでうたわれた就業条件改善にも役に立つのじゃないか、こういうように考えている次第でございます。
  84. 宮川尚三

    宮川参考人 派遣条件の開示につきまして、私はこれはあくまでも今申し述べられましたように別だ、かように解釈しております。  と申しますのは、賃金というのは当然その人の能力が査定された段階で決定されておりますし、片やその委託料金というものは、これは企業の経営、営業方針だ、このように解釈しております。また、今おっしゃいますように、企業秘密その他いろいろ附帯的な条件もあるかと思っております。別だと解釈しております。
  85. 菅直人

    ○菅委員 どうもありがとうございました。
  86. 戸井田三郎

    戸井田委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  この際、休憩いたします。     午後零時三十二分休憩      ――――◇―――――     午後二時一分開議
  87. 戸井田三郎

    戸井田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  両案について質疑を続行いたします。多賀谷眞稔君。     〔委員長退席、丹羽(雄)委員長代理着席〕
  88. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 将来の新自由クラブを背負って、しかも将来政界のいわばニューリーダーとして嘱望されております山口労働大臣に質問をいたしたいと思います。  今、日本という国が世界の政治、経済の中でどういう位置を占めておるか、ひとつあなたの所感を承りたい。
  89. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 国際化時代の中におきまして、特に日本の場合には世界の国々との情報あるいは人事、また経済、あらゆる面においての円滑、円満な交流、交換、こういう環境の中で、日本の持ち得る可能性や業績を上げることができておるわけでございますから、やはりあらゆる諸問題につきまして国際的な立場で物を見、考え、そしておくれているものにつきましては、そうした国際水準を達成すべく地道な努力の積み重ねということが今日の日本にとっての一つの大きな責任であろうというふうに私は考えております。
  90. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 日本の非常な急ピッチの経済成長、その面に非常に進んだ面と、また意外におくれておる面、しかもおくれておる面が改善をされつつあるのではなくて、逆に拡大をしていっておる、そういう面がある。実はその一つの問題に現在における日本の雇用の二重構造の問題があるわけです。でありますから、全体的にこれだけ経済が伸びておるのに依然として二重構造が続いておる。今度のいわば労働者派遣事業というのは、その二重構造がさらに進むのではないかという憂慮を我々は非常にしておる一つの問題点であります。  もう一つの問題は、日本が従来の因襲に非常にこだわっている。いわば非常にかたくなな意識を持って労務対策が行われているという面であろうと思うのです。そこで私は後者の問題を主としてきょうは述べてみたいと思います。  先般私は、我々社会党が一回だけ政権についたわけですが、それから長い間政権から遠ざかっておりますから、ひとつ政権に近づこうと思って、この前の秋にヨーロッパの社会党が政権をとっている国並びに長い間経験を持っております国、これらを見て歩いたのですが、その際にいろいろなことを勉強しましたけれども、最近日本の記事というのは、外国のことが日本の新聞に載るよりもいわば日本の記事が外国の新聞に載るのが数倍多いのですね。要するに、今、日本フィーバーというか日本熱というか大変関心を持たれておる。その中で最近、去年ですけれども、一番みんながショックを受けたというのは、労働時間の週四十五時間という記事が新聞に載った。これはいわば日本のレーバー大使という労働省から出ております大使館におります人々はみんなあちらこちらからその質問を受けて大変困っておる、こういうことでしたね。でありますから、こういった問題はやはり早く解消しなければならぬと思いますが、大臣、どうお考えですか。
  91. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 日本に限らず世界の大半の国々は勤労をもってたつとし、こういう一つの基本的な哲学があるわけでございますけれども、わけても日本の社会における一つの個人の可能性、チャレンジの中にやはり勤労に対する姿勢を通じて自分の能力や実力を社会的に発揮でき得る、こういう場面が非常に多いわけでございまして、そういう点からも非常に勤労に対する一つの大きな考え方というものが国民の皆さんに普遍的に普及しておるというふうに私は考えるわけでございます。  特に労働時間の短縮、休暇の拡大、これは私は高齢化時代あるいは技術革新の時代を迎えて不可欠な一つの要素である。そういう環境条件をつくっていくためには、やはり幸いにしてまだ一両年の余裕というものも私自身の認識ではあるという受けとめ方をしておりますので何とかこの一年・二年の間に、そういう今までの長い伝統的な一つの価値感や慣習に対して一つの勤労に対するルネッサンス運動を提唱して、そして労使双方にまた経済的な立場においてもこれを実行していくような環境づくりをしたい。  特に労働時間短縮の問題の中で経営者側の批判、反発は当然ございましたけれども、労働組合は別としまして、一人一人の勤労者、労働者の中にも、おれたちが働こうというのに労働大臣がなぜ休め休めと余計なことを言うんだ、こういう批判もございました。その証左といたしまして、もう既に与えられている有給休暇がなかなか完全消化されておらない、こういう現状もございます。しかし、多賀谷先生のお考えいただいているように、やはり日本の国際的な立場の中で一番重要な部分を占める一つに労働時間の問題、それに対する改善への取り組みということが非常に重要な問題となって今指摘を受けているというふうに私は考えておるわけでございます。
  92. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 日本の労働事情がどうあるかという一つのバロメーターは、やはりILO条約の批准がどの程度にいっておるか、これも一つのバロメーターであろうと思います。  そこで、一体今日まで採択をされた条約は幾つであって、今日日本が批准をしているのは幾つであるか、これをお聞かせ願いたい。
  93. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 これまでILOで採択されました条約は百五十九ございます。そのうち日本政府が批准いたしておりますものが三十七でございます。
  94. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 戦前は、幾つの条約採択のうち幾つ批准していましたか。
  95. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 戦前は、この三十七のうちの十九でございます。
  96. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そのうち、海上と陸上は幾らですか。
  97. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 今、海上とおっしゃいましたのは、船員関係の御趣旨でございますと六条約でございます。
  98. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 戦前にILOの場で非常に貢献したのは海員組合ですね。殊に日本の船員が外国の港に行くものですから、船員についての条約はかなり批准を見ておるのです。  ところが、普通の国内の労働者労働条件の条約については微々たるものであったということですが、それにしても戦前に十九批准しておるのに、戦後これだけ民主化と言われ日本がどんどん成長しておるのに三十七とは何ですか。数字を見ればすぐわかるわけですが、戦後幾らしたのですか。条約の採択の方は、今お話しの百五十九までもう既にいっておるわけでしょう。戦後の批准の仕方の方がぐっと低いのです。これは私は極めて重大な問題だと思うのですね。  そこでお尋ねしたいのですけれども、基本的人権に関する問題、労使の団結権及び団体交渉に関する問題、労働時間、休日、賃金、労働条件に関する問題、さらに社会保障、雇用に関する問題、婦人、母性保護に関する問題、安全衛生に関する問題、大きな類型としてそういうことが考えられるわけですが、条約はどのくらいあって、その条約のうちで批准したものはどのくらいあるのか、これをお聞かせ願いたい。
  99. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 批准したものについて申し上げますと、基本的人権関係では我が国が批准したものは三でございます。労働時間については批准したものがまだございません。労使関係につきましては、団結権の条約等二条約いたしております。婦人労働関係につきましては坑内作業のもの、夜業の関係等の条約を既に批准いたしております。安全衛生につきましては、重量標示、放射線、機械防護、職業がんというようなものについて批准いたしております。雇用につきましては、失業に関する条約、職安組織に関する条約、職業紹介所に関する条約等批准しております。  社会保障につきましては、社会保障の百二号条約をいたしておりますが、これとの関連で、社会保障という分類もできますし、また別途の分類のいたし方もございますけれども、一応職業病、災害補償の条約、職業病については二条約批准いたしております。それから、業務災害給付の条約を批准いたしております。それから、最低年齢につきまして五号、十号、十五号と三つの条約を批准いたしております。最低賃金につきまして二条約を批准いたしております。そのほかに、船員に関しましては先ほど先生御指摘ございましたように大変たくさんしておりまして、十条約いたしております。このほかに五条約を批准しているという状況になっております。
  100. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 戦後の批准が意外に少ない。要するに、戦前と戦後を分けたら、三十七のうち十九が戦前ですから、十八しかしてないということになるのです。ですから、戦前は本当にまじめに取り組んだと私は思うのです。戦後は本当に取り組んだような格好をしておるけれども、しかもアメリカが脱退した今日、ILOでは資本主義国では最大の負担金を払っておる日本がそういう点ではどうも熱意がないように思うのです。  そこで、最近はいろいろな会議があるのですけれども、労働サミットと言われる国においてはどのぐらい批准していますか。
  101. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 英、米、独、仏寺について見ますと、フランスが百七、西ドイツが六十六、イギリスが七十七、アメリカが七というようなことになっております。
  102. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 アメリカとソビエトはちょっと別格ですね。アメリカの方は州法が多いという関係もあるし、おれの方はILOの基準よりもはるかにすぐれた労働条件にあるからそんなものは要らないんだという観念があるのです。ですから、アメリカの批准というのは余り参考にならない。我々が参考にするのは、我々と同じような国、ヨーロッパ、ECがどのくらい関心を持ち批准をしておるかということですが、それを見ても日本は非常に少ないですね。フランスは百七ですから多いにしても、少なくともドイツやイギリス並みには日本も批准すべきではないかと思うのです。  そこで、日本は批准をした条約に自分で解釈をして実行しないという事例があります。いろいろあるわけですけれども、その典型的なものが消防の団結権の問題、これはILO八十七号条約をめぐって批准問題が起きる以前から起こった問題ですね。そうしてよその国に大変御迷惑をかけておるわけです。ILO八十七号条約に軍隊及び警察は除外とするということになっておる、それをなぜ消防を警察の中に入れて団結権を認めないという方針で来ておるのか、御答弁を願いたい。
  103. 紀内隆宏

    ○紀内説明員 お答え申し上げます。  日本政府は、従前から日本の消防につきましては八十七号条約九条に言うところの警察に含まれるという見解を一貫して持っております。  その理由はおおむね三点ございます。  一つは、歴史的沿革でございまして、日本の消防は成立以来一貫して警察の機構のもとにあったということ、また、昭和二十三年に機構上は分離したわけでございますけれども、その前後を通じまして消防そのものの職務権限の性質につきましては変わりがないということ。  二つといたしましては、現在の法制上の業務内容につきましても警察と消防は深い関係にあるということでございまして、やや分けて申し上げますと、一つは、消防と警察はいずれも公共の安寧秩序の保持という使命を同一にしているということ。また、具体的に現場におきまして業務を執行するに当たりまして広範な権限を与えられているという点においても同一であるということ。また、災害現場におきましては、相互に協力して任務の遂行に当たらなければいけないという補完関係に置かれているということでございます。  また最後に、消防活動の実態から申しますと、御承知のように、我が国におきましては、火災でございますとか地震でございますとかあるいは風水害というものが非常に多発するわけでございますけれども、そういう現場で火急の事態に際しまして、その任務を十分遂行するためには、日ごろから高度の規律と統制のとれていることが重要でございますし、また火急の際には迅速果敢な部隊活動をする、そのために日常から訓練を重ねまして厳格な規律を保持しておくということが必要であるわけでございます。  そのような諸点から見まして、我が国の消防は条約九条に言うところの警察に相当するというのが政府の一貫した見解でございます。
  104. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 残念ながら日本政府意見はILOでは取り上げていないわけですね。採用してない。  そこで、結社の自由委員会あるいはまた条約勧告適用委員会、そういうところの見解は報告書で出ておる。これを順を追ってお聞かせ願いたいと思います。そこで毎年のように出ておるのですけれども、大きな点だけ申し上げたいと思いますが、一九七三年、結社の自由委員会の第百三十九次報告ですね、これにはどういう報告がなされたのか、これをお聞かせ願いたい。
  105. 紀内隆宏

    ○紀内説明員 昭和四十八年の条約勧告適用専門家委員会は、日本政府がこの種の労働者についても団結権が認められるよう適当な措置をとることを希望という表明をしております。
  106. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうすると、日本政府は消防について団結権を認めるように希望するというわけですね。この根拠はどういう根拠ですか。あなたの方の根拠は崩れたと見ていいのですか。
  107. 紀内隆宏

    ○紀内説明員 確かに昭和四十八年の専門家委員会の見解は私どもにそのような希望を表明しておりますが、政府といたしましては、その後におきましても引き続きまして我が国の消防の特殊性を説きまして、我が国の消防はこの条約九条に言うところの警察に相当するということを繰り返し表明してございます。  それで、昭和五十八年三月にまた専門家委員会が一般報告を行っております。そこで、消防の職務につきまして、これらの職務は「通常は条約第九条に基づいて団結権から除外することを正当化するものではないであろう。」こういう旨を表明しております。そこで私どもは、この一般報告が「通常は」という限定を付したことは、各国の特殊事情によりまして消防が同条第九条の警察に含まれる場合があるということを示したものというふうに受け取っております。
  108. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 せっかく委員会の方から報告書が出ておるのに、それを殊さらにひん曲げて解釈をしている。これはどうも私は納得できません。  そこで、かつて私どもが大変尊敬しておりました、国際法を学ぶときは必ず横田喜三郎先生の本を読んだんですけれども、その横田先生が、御存じのようにILO条約の勧告適用専門家委員になられて、そして今お話がありました一九七三年、昭和四十八年のこの専門家会議出席をされて、そして帰ってきてからの報告がございます。これは日本労働協会と日本ILO協会でやった合同の例会でされておるのですが、これを見ますとILOの考え方が極めて明快に出ておるのです。それは、すなわち公務員の団結権に関して問題になったのは、最初から言うと、監獄職員、海上保安庁の職員、入国監視官、消防職員である。この四つのカテゴリーが非常に問題になった。  そして監獄職員については、これは結局法違反者に対する刑の執行であって、そして法秩序の維持という面から、これはやはり警察と大体同じような類型と考えてよろしいだろう、こういう結論が最初に出たわけです。今のは一九六九年に既に出たわけですが、それから一九七一年になりますと、入国監視官及び海上保安庁職員については、日本政府がその職務内容について詳細に知らせてこいという、こういうのが出た。しかし、消防職員については当然団結権を認めるべきであるという立場に立って、団結権について政府の考えている措置を知らせてほしい、こういういわば指示があったわけです。  そこで、翌年の一九七二年に政府としてもいろいろ出したわけです。海上保安庁の職員については、その職務が海上警察ということで、警察官と同じような職務であると考えられる点がある。入国監視官についても、不正入国を取り締まるということで、大体警察と同じ職務と考えていいだろう。しかし、消防職員については、「国民の生命、身体、財産に対する危険を実力をもって排除し、公共の安全と秩序を維持するという職務をもっているという職務の目的、その目的を果たすためには厳格な規律を必要とし、即時出動の体制、常時部隊活動をする編成をしていなければならない」というような点を政府は説明しているけれども、しかし、ILOでは消防を警察と同じようなカテゴリーに入れるということは考えられないと言っております。  そこで、一九七三年の報告が出る前にこういうことを言われておるのです。警察と消防の違いというのは、ディフェンス・オブ・ザ・ロー、すなわち法の防御、法律の違反の防止という点は警察は持っておるが、消防はそういう点は持っていない、こういうことを言っておる。そして、今安寧と秩序ということをおっしゃいましたが、法の防御に伴う公共の安全秩序、これを維持する必要があるということであって、消防の場合は、火事があったり地震があったり、要するに犯罪とは関係がなく、自然現象かる起こる秩序の乱れを防止するものでありまして、消防と警察は違うのですということを丁寧にお話しになっているんですよ。でありますから、七三年の結社の自由委員会はその方向で報告がなされるであろうということを言われております。  そこで、横田さんのような権威者が、しかも外国に行って消防と警察は違うんだということを区別をして説明をなさっておるのに、日本政府はなぜ頑迷にこれを一緒だ一緒だと、こう言っているのか、私はその点が理解できない。一体、どういうように考えているのですか。
  109. 紀内隆宏

    ○紀内説明員 お示しになりました横田先生の論文は私も拝見いたしました。そこには違法の場合と自然的な原因によるものとを仕分けして書いてございます。  しかし、私どもが関心を持ちます国民の生命なり財産なり身体の安全というものを救うべき事情というものは、その原因が違法な行為によって行われるか、あるいは物理的な要因によって行われるかを問わないという意味で、私は先ほど安寧秩序の維持ということを申し上げたつもりでございます。
  110. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういう見解は国際的に通用するんですか。
  111. 紀内隆宏

    ○紀内説明員 このこと自体につきましては別にいたしまして、私、先ほど申し上げましたように、昭和五十八年の専門家委員会の一般報告の中におきまして、繰り返しになりますが、「通常は」という言葉を挿入されたのは私どもの積年の主張に対して理解を示されたもの、このように了解をしている次第でございます。
  112. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 次から次へやはり事態は変わっておるのですけれども、最近依然として日本政府の見解については同意しがたいというのが出されておるでしょう。さっきお話しがありました一九八三年の一般調査報告はどういうように書いているのですか。これをまずお示し願いたい。
  113. 紀内隆宏

    ○紀内説明員 昭和五十八年三月の専門家委員会の一般報告はその中で消防職員の団結権問題に関して一般的な言及をなしております。その表現は、かいつまんで一部を申し上げますと、「労働組合を結成する権利から時として除外されている公務員の種類の中に、消防職員及び監獄職員があり、後者は多くの国で団結権に関しては警察と同一のものとされている。委員会の見解では、これらの種類の公務員が遂行する職務は、通常は条約第九条に基づいて団結権から除外することを正当化するものではないであろう。」こう言っております。
  114. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 自分の都合のいいところだけを勝手に解釈しても国際的には通用しないのですよ。  そこで、国際的に公務員関係の会議が開かれ、そして、その結果できた条約、すなわち公務における団結権の保護及び雇用条件の決定のための手続に関する条約、この条約の中で、多くの国において公務活動の大幅な拡大と公的機関及び公務員職員団体の健全な労働関係の必要に留意しというのから始まるのですけれども、その中では、一九四八年の八十七号条約及び九十八号条約の解釈上いろいろ困難な問題があった、一部の政府がこれらの条文を公務職員の大きなグループを条約の対象から除外するという方法で適用してきたというILOの監督機関からのたびたびの意見が出されておる、こういう背景のもとでこの条約はつくられておるのですよ。  この条約がつくられた際にはっきり書いてあるでしょう。この条約は第一条に一、二、三項がありまして、二項はこれはやはり我々が考えなければならぬ問題ですけれども、この条約に定められている保障が、その任務が政策決定ないし管理と通常認められる高いレベルの職員もしくはその職務が高度に機密性を持っておる職員に適用される範囲は国内法規で定める。これは、いつも八十七号条約の公務員という言葉の解釈で、日本はフランスの訳をとらずイギリスの訳をとっているというので議論になるところです。二項はこれをかなり明確にしたのですけれども、三項が、この条約に定められている保障が軍隊と警察に適用される範囲は国内法で定める。やはり消防は入ってないのです。  そうして日本政府はそれに対して修正案を出そうとしたでしょう。結局は日本政府は、その修正案は撤回せざるを得なくなったのですよ。この事実を無視することはできない。日本政府はそういう考え方を出している。そうしてこれを提案をして認めてもらおうとしたけれども、形勢不利として日本政府は撤回をしているんですよ。ですから、もう国際的な場では何もこの解釈についての疑義はないのです。ただ日本政府が認めるかどうかというところへ来ておるわけですね。  ですから、そういう意味においても今一般調査報告の中で――一般調査報告というのは一九八三年の一般調査報告の中で、一体日本のように団結権を消防に与えていない国はどのくらいありますか。どちらでも結構です。お答え願います。
  115. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 消防職員を団結権の対象から除外している国は三カ国でございます。それから、そのほかに公務員一般ということで与えておらない国も十四カ国ございます。(多賀谷委員「名前をおっしゃってください。」と呼ぶ)  国の名前を申し上げますと、まず団結権の対象から消防職員を除外しております国は、ガボン、日本、スーダンでございます。それから、公務員一般に団結権を認めていない国は、ボリビア、ブラジル、チャド、チリ、ドミニカ共和国、エクアドル、エルサルバドル、エチオピア、グァテマラ、ヨルダン、リベリア、ニカラグア、イエメン、ジンバブエでございます。
  116. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 どうも日本の特殊性といいましても、ガボン、日本、スーダン、三つですよ。これは特殊性の中に入らないんですね。なぜこれにこだわっているのか不思議なんですよ。消防は公共の秩序を維持すると言うけれども、法の防御に関係のないものは団結権を認めなければなりません。消防は法の防御と違うのではないですか。だから、警察ではなくても、海上保安庁とか刑務所職員とかあるいは入国監視官とか、そういうのは認めましょう、しかし、消防はどうしても認められませんよというのが今のILOの態度です。  そこで労働大臣、こんなことはいつまでもよその国へ迷惑をかけてはいかぬのです。これこそ山口労働大臣の出番ですよ。あなたはこれをまとめたらいいのですよ。因襲的な、頑迷な、何か団結権を与えるのが罪悪のように考えておるのです。そのことが私は極めておかしい。八四年の条約適用委員会の報告もありましたし、あとは日本政府の態度を待つということでいよいよ総会に臨むのですね。一体、労働大臣はどういうように考えておるのか。これは外務大臣と労働大臣が話したらできるのではないかね。労働大臣に聞いているのだよ。大体政府の言うことはわかっておるのだ。
  117. 谷口隆志

    ○谷口(隆)政府委員 ILOの八十七号条約についての考え方、それから、これに対します国内の消防職員の団結権に関する問題につきましては、先ほど来自治省の方から御説明がありましたが、そういうILOでの過去の一定の経緯をもちまして、現在国内におきましては、ほかの問題も含んでおりますけれども、公務員問題連絡会議というところで検討を進めておるところでございまして、ここでは消防職員の団結権の問題につきまして、これを国内問題として長期的視点に立ちながら慎重に検討しているというところでございます。  私どもといたしましては、こういう場でいろいろな関係者の御意見を承り、また関係省庁で意見の交換をしながらやはり慎重に検討を続けていく必要があるというふうに考えておるところでございます。
  118. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 一体何年慎重にやっているのですか。長期的視点に立って何年やっているのですか。
  119. 谷口隆志

    ○谷口(隆)政府委員 公務員問題連絡会議につきましては四十九年から検討いたしておりますが、先ほど申し上げましたように、ここではこの消防職員の団結権問題だけではございませんけれども、消防職員団結権の問題につきましても五十年代に入りましてからずっと検討をしておるところでございまして、先ほども申し上げましたように、そういう検討の過程で関係者の意見も聞いたりしておるところでございますが、そういう中での関係者の意見につきましてもかなり意見が乖離をしておるというようなこともございますし、その他関連する非常に難しい問題もありますので、検討に時間を要しているということでございます。
  120. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 解釈の問題じゃないのですよ。解釈はもう確定しているのですよ。問題は、言うならば団結権を与えては困るというような勢力に対してどういう説得をするかということですよ。政府がどう毅然とした態度で臨むか。これは国内で考えている以上に影響は大きいですよ。御存じのように、この前の八四年の委員会の取りまとめも、来年の委員会までに懸案事項の解決のため積極的進展が認められたと委員会が記録できるように強く希望する、それから、労働者側の代表、副議長は、来年までに事態が解決しなければ、他の手段、要するにダイレクトの調査団が来るかもしれない、そういうことを提案をする、こう言っておるのですよ。そういう事態である。これは大臣、どういうように処理するつもりであるのか。
  121. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 私もことしの六月には、国会でお許しをいただければ、まあ終わっているかもしれませんけれども、ILO総会にも出席をさしていただきたい、こう考えておりますので、先生からいろいろ御論議いただいておるようなILOの諸問題につきましては、でき得べく国際的な水準、また立場でこれを批准をする、こういう姿勢は基本的には持っておるわけでございますけれども、先ほど来政府委員から再三答弁申し上げておるように、ILOにこれを批准したときの見解とその後の見解との経過の変化等もございまして、今公務員問題連絡会議において検討が行われておる、こういうことでもございます。  特に消防自体が戦前は警察の所管の中に入っておった、こういうような経過もございますし、また、現在は、地方等におきましては職員における消防と民間における消防、ボランティアとの問題等もございます。いろいろそういうような点も含めて、ILOとの関係等も含めて、労働省としてもその辺の経過の意見調整もやはりいろいろな角度から検討しなければならないというふうに私は今考えながら伺っておったわけでございますけれども、私の結論としては、そういった点を留意しつつ公務員問題連絡会議における検討というものをあわせて考えていきたいというふうにお答えを申し上げておきたいと思います。     〔丹羽(雄)委員長代理退席、浜田(卓)委員長代理着席〕
  122. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 公務員問題連絡会議というのは活動しているのですか。これはどのくらい開いて活動しているのですか。
  123. 廣見和夫

    ○廣見説明員 お答えいたします。  公務員問題連絡会議は私どもの方で主宰はいたしておりませんので、正確な開催状況は承知いたしておりませんが、最近ではこの消防の問題に関しましても、消防職員の方々からいろいろ御意見を伺うというような形で活動いたしておりますし、いろいろ消防その他の問題での検討を進めております。
  124. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 消防の方々からいろいろ御意見を承っておると言いますけれども、全国消防職員協議会の代表というのは、政府はお会いになったことがあるのですか。労働大臣。
  125. 紀内隆宏

    ○紀内説明員 お答え申し上げます。  消防職員協議会と私どもとは会ったことはございません。
  126. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それはやはり団結権を認めてないから会わないわけですか。申し込んでも、団結権を認めてないから会わないのですか。
  127. 紀内隆宏

    ○紀内説明員 消防職員協議会との会見につきましては、一つは、この消防職員協議会が勤務条件につきまして当局と交渉する団体の結成を禁止されている消防職員によって結成されている団体であるということ、それから二つといたしましては、この協議会は自治労の全面的な指導と支援を受けている団体でございますので、その意見は自治労の意見に十分反映されているというふうに考えるからでございます。
  128. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 後の議論はどうも納得できませんね、制度上。それは法律家の言う話じゃないですね。  そこで、やはりこれがネックになっておるのですよ、大臣。率直に言いますと、団結権を与えていない、だから会わないんだと思う。はっきりは言わないけれども、その意味ですよ。ですから、もう解釈のところではないのですよ。日本政府がやるかどうか――格好悪いですよ。三カ国しかない団結権を与えてない国の中に日本が入っているという。これはひとつ労働大臣、自治省その他を説得して、今度のILO総会に行くまでにはあなたも立派な演説ができるように、これはぜひ精力的にやってもらいたい。私、わざわざ時間をとって今質問しているわけですから、これをひとつお聞かせ願いたい。
  129. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 今、各政府委員からも答弁申し上げておりますけれども、そのやりとりを聞いておりましても、過去の経緯や今の検討中という問題も含めまして、いろいろな立場における意見調整がおくれておるというふうに認識しておるところでございます。いずれにいたしましても、消防というものの持つ使命は、やはり一朝有事といいますか、火災その他の災害のときに国民の生命と財産を守る、こういう大きな責任を持っておるわけでございますから、仮に職員のそうした団結権が認められたからといって、そういう重大な使命を放棄するということにはならないわけでございまして、私も、今先生の御指摘等を踏まえて、率直に言っていろいろ難しい問題もあると思いますし、政府がそういうことできちっと結論を出すということがどの程度――なかなか難航するのかということはあろうと思いますけれども、ひとつ御指摘に沿って私なりに研究させていただくということで答弁とさせていただきたいというふうに思います。
  130. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 山口労働大臣の手腕に期待したい。  それで、この勤務状態を見ましても、二十四時間拘束勤務なんですよ。そして、給料は十六時間しか出さないのですよ。仮眠といいましても、二十四時間のうちに仮眠があるじゃないかと言ったって、全部装具をつけて寝ておるのですからね。そうしなければ非常事態に間に合わないわけです。普通の寝巻きなんか着て寝ておったのでは間に合わない。仮眠といったってそのまま寝ておるわけです。二十四時間拘束されておるのです。そして、常に緊張しておらなければならぬでしょう。ですから、こういう労働条件の劣悪な中で今一生懸命働いている。それなのにそういう労働時間や賃金を決めるのに何ら職員は参加できない。これも問題でしょう。だから、決められたものを受ける以外にない。これは、私は近代的な労働条件ではないと思いますよ。そういうことをなぜ日本は――これだけ貿易摩擦なんかが起こって日本が問われておるときに、こんな簡単なことはどんどんやったらいいじゃないですか。大臣に所見を承りたい。
  131. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 ただいまの御指摘も含めまして、先ほど御答弁申し上げた立場で、ひとつ関係省庁といいますか、関係者と意見調整を試みてみたい、こういうことで御答弁にさせていただきたいと存じます。
  132. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 では、ひとつ期待しております。関係委員会もありますし、また労働大臣はその関係委員会に呼ばれて、いわばその積極性を問われることになるだろう。ILO総会までひとつ精力的に、団結権が保障される方向に行くように期待をいたしまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  133. 浜田卓二郎

    ○浜田(卓)委員長代理 次に、網岡雄君。
  134. 網岡雄

    ○網岡委員 私は、労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律案、非常に長い法律案でございますが、以下これからは労働者派遣事業法ということで呼称させていただきますので、そういうことで御理解をいただきたいと思います。  この法案の質問をいたします前に、先日の質疑の中でも政府答弁として確定しておるようなことではございますが、以下質問をしていきます前提条件でございますので、まず労働大臣からお答えをいただきたいと思いますが、日本におきます雇用制度の根幹となるものは一体どういう雇用の制度であるのか。先日の委員会審議では、終身雇用というものが雇用における根幹である、こういうふうに政府側の答弁としても出たところでございますが、再度改めて、日本における雇用制度の根幹は一体何かという点について御答弁をいただきたいと思います。
  135. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 こうした多様的な価値観、社会環境でございますので、雇用条件も多種多様にわたってきておると思いますが、やはり主流をなしておるのは日本の終身的な雇用関係というものであろうと思うわけでございます。これは外国からも、むしろ古手の労使関係という批判もございましたけれども、最近ではむしろこれがある意味においては一番近代的な雇用関係ではないか、こういう再評価を得ているような状況もあるようでございますし、特に高齢化時代を迎えて日本の雇用関係としてはこうした立場というものが、景気でございますからいいときもあれば悪いときもある、そういうときの失業の予防にもなりましょうし、それからまた、人を一人育てるということは企業にとってみれば大変な投資ということにもなろうと思います。そういう点におきましても、人材養成にも能力開発にもその会社の熱意を労使双方が安心して注ぐこともできる。いろいろな利点を数え上げますと、やはり日本の雇用関係における一つの主流というものは、終身雇用的な慣行が今後とも伝統的に維持されていくのではないか、かように考えております。
  136. 網岡雄

    ○網岡委員 非常に明確な御答弁があったわけでございますが、さらに重ねて確認の意味でもう一度御質問させていただきたいと思うのですが、終身雇用の制度というのは、今後も長い将来にわたって根幹として一応位置づけられているものであるというふうに私ども認識をしていいかどうか、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  137. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたが、人生八十年時代、こういう高齢化時代における雇用の延長、定年の延長にも今労働省としても最重要施策の一つとして取り組んでおります。こういう点からも、私は終身雇用制度というものはさらに維持され、そしてまた支持される、こういう労働慣行を行政立場からも環境づくりに努力していくということが一つの大きな責任であろうと思います。特に、省力化時代でございますとか女子労働者の職場進出等の中で、雇用の男女における機会均等等も一層促進をされなければならない、こういうことでもございますので、いろいろな職種また雇用形態があろうというふうにこれからは広がりが出てくると思いますが、一つの基本的な流れは、引き続き終身雇用的な慣行というものが維持されるということを行政立場からも非常に期待をしておるところでございます。
  138. 網岡雄

    ○網岡委員 そうしますと、派遣事業法に関連をして御質問申し上げますが、終身雇用が根幹をなす雇用の制度だということになりますと、今審議をしております労働者派遣事業法は、終身雇用の制度を補完していく雇用の一つの制度である、こういう位置づけであるのか。あるいはまた、終身雇用制度というものと労働者派遣事業法の定めるこうした不安定労働というものが、そのほかにもパートだとかいろいろなものがございますけれども、こういう種類の雇用の制度というものが終身雇用と両立をしていく体制というものが今後の日本の雇用体制の中で好ましいものであるか、それが第二のタイプ。もう一つの第一のタイプは、終身雇用の根幹の中でそれを補完していく雇用の一つの制度である、こういうふうにとらえるのか。政府はこの二つのうちのどちらを位置づけておみえになるのでしょうか。
  139. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 大臣からもお答え申し上げましたように、日本の終身雇用制度というものは今後とも維持していくべきものである、また維持していかなければならない、こんな基本的態度でおるわけでございますが、けさほどの参考人の御意見にもございましたように、現実には例えば家庭を持っておる方であるとか、あるいはまた、そういう自分の専門だけを生かして企業のいろいろな人間関係に煩わされないというふうな方もいろいろおられる。それからまた、企業そのものがもともと終身雇用を目指しながらも、例えば倒産するというような形で実際に終身雇用をなし得ないというような場面もある。そういうような中で、しかもまだ今度はニーズの方も、一時的なそういう労働力が欲しい、専門家が一時的に欲しいというようなものもいろいろ出てきておる。そういう意味におきまして、終身雇用制というものを根幹とし、しかもそれをねらって雇用政策を展開していく中におきまして、そういう一部の業務分野あるいはまた一部の労働者においていろいろな就業形態というものがニーズとしてまたあるということも事実でございます。  そういう意味で、この両者が並行といいますと大変片っ方が大き過ぎるわけでございまして、そんな意味ではなくて、終身雇用を基幹としながらも、特定分野においてこういう派遣労働者の問題であるとか、あるいはパートの問題というものが存在をしていくということであろうと思うわけでございますし、またこの制度の運用においても、そういう制度が終身雇用制というものを崩さないような、そういう運用というものを基本に据えた制度運用というものを考えていくべきものであろう、こんなふうに考えておるわけでございます。
  140. 網岡雄

    ○網岡委員 非常に長い御答弁がございましたが、結論的に言いますと、根幹である終身雇用を完全なものにしていくための補完的なものだ、こういうふうなとらえ方をしていいですか。
  141. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 補完という意味がどういう意味かですが、終身雇用というものを基本にしながら、そういう派遣制度というようなもので他の特定分野における需要と供給を賄う、こういうことでございまして、先生のおっしゃる補完という言い方をしてもいいかと思うわけでございます。
  142. 網岡雄

    ○網岡委員 だといたしますならば、質問を続けていきたいと思うのでございますが、それならば本来労働者派遣事業というもののこの雇用形態は、研究会から中央職業安定審議会などそれぞれの審議を通じて明らかになってきているところでございますが、これは請負の状態から職業安定法施行規則の四条の規定に物差しをはめて考えてみた場合に、それは完全にそれが合法ということで合致するものではない、一部労働者供給事業の疑いが非常に濃い、こういう関係のものであるということが、これはそれぞれの審議会の中で言われておるところでございます。  そうなりますと、今の職業安定法の立法の精神からいきますならば、これは御案内のように労働者供給事業というものはあってはならないものでございまして、一部認められておるものとしては、労働組合労働者供給事業というものだけでございまして、それ以外はすべてそれはあってはならないものだ、こういうことになっておるわけでございますから、したがいまして、この状態にある雇用の体系というものを一つの合法な舞台の上に乗せていきます場合には、先ほどからも質問をいたしておりますように、終身雇用が根幹をなし、それをある意味で、日本における雇用体制全般をよりよいものにしていくための一つの補完的なものであるというふうにとらえるといたしますならば、それは必要最小限度にそれをとどめていくという一つの行政的視点というものがないといけないと思うわけでございますが、そういう認識に労働省はお立ちになっておみえになるのでしょうか。
  143. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 終身雇用制度というものを今後とも堅持をしていくべき制度である、こういう基本的認識のもとに、しかしながら今後の高齢化社会の進展あるいはまた女子の職場進出の問題、技術革新の進展に伴いますいろいろな専門的な分野の広がり、そういうような動きが出てまいっておりますし、今後もそれが拡大していく可能性がございます。そういう中で、これらの方々の就業のいろいろのニーズにこたえるあるいはまたそういう人に対する労働需要とのマッチを進めていくことも一面においては重要なことであるわけでございます。  そういう意味におきまして、こういう派遣システムを認めることについて、先生今御指摘のように、労働者供給事業が今まで禁止されてきたという一つのそういう基本的な精神を堅持をしていくという基本的な建前、そしてまた終身雇用というものを派遣事業を認めることによって崩していってはならないという建前、そういうような意味におきまして限定的にこれを認めていく、こういう基本的な建前でございます。また、この法案におきましてもそういう終身雇用との調和ということを留意事項として規定をされておるということでございます。
  144. 網岡雄

    ○網岡委員 それでは具体的に質問に入っていきたいと思います。  今度の法律で政令で定める適用対象事業というものを小委員会があらかじめ検討いたしまして、十四の業務例をそれぞれ挙げられております。この十四業務例は一体政府としてはどういう位置づけをお持ちになっているのか。つまり、この十四例は小委員会で慎重に検討されてきたものであるから、これは一つの妥当な業務例であるということでこれ以上はもうふやさない、こういう感じでとらえておみえになるのか、あるいは午前中の参考人の陳述をお聞きしておりますと、これから中央職業安定審議会において具体的な検討を進めていく場合にはこれがさらにふえるかもしれないというようなニュアンスのお答えがあったわけでございますが、この辺について政府の御見解をお聞きしたいのです。
  145. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 この業務の例示は中職審の派遣事業等小委員会におきまして関係業界のヒアリングをやりました結果を踏まえながら、かつ、一つには専門的な業務、一つにはこれが就業形態あるいは雇用形態の特殊性によって行われておる業務、こういう二つの基準に合致していると思われる業務のうちから、当面対象業務として検討の対象となり得ると考えられるものを公労使の委員の合意が得られたものについて参考として掲げられたものだ、こういう前提の業務でございます。  今後、私どもこの業務を決定するについては、実際に広くいろいろ実態調査を実施いたしまして、そういう中から関係者の意見を十分お伺いし、そして最終的に三者構成の中職審の意見を聞いた上で政令で定める、こういうことであり、しかも、その定めるに際しては、こういう終身雇用慣行を崩すことがないかどうかといったような観点も配慮に入れながら決定していく、こういうことでございます。  そういう意味におきまして、この十四業務は一つの重要な参考例になるとは考えておりますが、これよりも減ることもあるし、ふえることもある、こういうことでございまして、今の段階でどの業務ということを私どもも断定的に固めておるというものではございません。
  146. 網岡雄

    ○網岡委員 仄聞するところによりますと、この業務例の中の警備業務については公安機関などからのクレームがついて、第四条のところにも、具体的に言いますと「政令で定める業務以外の業務のうち、」こういう非常にわかりにくいことが書いてありますが、この中身は、聞くところによりますと、公安関係からのクレームによって警備関係の業務がこの対象から外れざるを得ない、こういう状況だ、これはそのための規定であると聞いておりますが、そうであるかないか、簡単にお答えをいただけませんか。
  147. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 率直に申しまして、政府案を決定いたします段階でこの警備関係の業務につきまして、そもそも警備業法においてこういう教育関係でやっていくということが法律において精神として強く出されておる、また衆議院あるいは参議院の附帯決議等においてもそれははっきりされておるという意味において、これを指定していくということについてはいろいろ論議がございました。そういう論議の中で、最終的には先ほど申し上げましたような実態調査なりあるいはまた関係者の意見を聞いていろいろと検討していくことになりますが、そういう論議の経過を踏まえまして警備業については私ども問題があるという感触を一応持っております。
  148. 網岡雄

    ○網岡委員 そうしますと、第四条に定めてある基準に照らして小委員会は検討して十四の中の一つに挙げたわけですね。これは本来請負の形態については無理だ、こういうことで上がってきた代物なんですね。それが、一つの行政機関からクレームがついて、これはいけない、こういうことになった途端に請負でいける、いくということでこれをカットしていく姿勢、そういう形で請負に戻していくということになるとするならば、私ども社会党は後日一つの態度を示しますけれども、私どもから見ますと、この十四の業務を一つ一つ子細に検討していきますと、民営職業紹介あるいは請負、そして労働者供給事業などの現行の制度を活用していけばかなりの部分が現行で解決することができる、こういうふうに私どもは認識をしております。  例えば①の秘書のところでは、民営でできないことはない。対象を拡大することをやればできないことはない。それから②の部分も、これは有料職業紹介でできる。テレックスも同じ。それから④の場合は請負。⑤の場合は請負。⑥の場合はこれまた有料紹介でいける。「展示会等における商品の説明等によるデモンストレーション」、⑦も有料でいける。⑪の場合は請負。そして⑫は、問題の請負でいくことになっているわけでございますから、問題はありません。それから⑬の旅行の関係はこれまた請負でいける。⑭の場合は有料職業紹介でいける。こういうふうに実際にやろうと思えばできるのじゃないか。しかも各業界の代表も私が言っているのと同じようなことを言っているわけでございますが、こういうことを労働省は考えられたことがないのでしょうか。
  149. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 警備業につきましては、先ほども申し上げましたように、警備業法というしっかりした法律がございまして、その中で警備業をまさに法律的に適正に運営していくためのいろいろな規定があるわけでございまして、そういう警備業法全体での運用の中でまさに請負でやっていくべきものではないだろうかという意見が強く出されておる、こういうことでございます。一つ一つの実態判断でこれを業務として指定するのに適切かどうかということよりも、さらに法的にそういう特別な手当てがされておる業務である、こういう関係において特に問題になっておる、こういうことでございまして、何か圧力があったからこうだ、そういう種類のものではないということは御理解をいただきたいと思うわけでございます。  それから、お示しのいろいろな業務につきまして、これが請負でいけるかどうかにつきましてももう審議会で十分論議がなされ、またヒアリングの過程でいろいろ実情把握もやった上での例示でございまして、請負でやるということについてはなかなか実際の面では難しい面もある、派遣事業という形で認めていった方がより実際的かつ適切に的確にできる、そしてまた労働者の保護の面でも、それをこういう法制のもとに行わせるならばプラスであろう、こんなような一応の判断の上にこの例示があるということで御理解いただきたいと思います。
  150. 網岡雄

    ○網岡委員 これから質問は私も要点をまとめていきますので、今の点につきましてはもう少し質問をしたいと思いますが、時間の関係がありますから、この程度にして後に譲りたいと思います。  問題は、仮に百歩譲って労働者派遣事業法が成立をしたという段階になりますと、今日十四業種のもの以外にも事実上請負、疑似請負の形態というものがかなりあるわけでございます。それからもう一つは、この十四の業務の例に入っている中に二重派遣あるいは三重労働派遣が行われていることが中央職業安定審議会や小委員会でも議論があったところだそうでございますが、その証拠に「構想」などでも、やはり二重派遣の禁止を入れなければならぬ、こういうことで検討案が出ているところでございます。こういうものを一応整理して労働者派遣事業を出発するといたしますならば、疑似請負と二重派遣事業のチェックをこれから一体どういう物差しでやっていくのかということについてお尋ねをしたいと思います。  まず、整理をしていく場合のチェックの物差しですけれども、それは職業安定法施行規則の四条にはめて整理をしていくのだ、物差しの基本はそこにあるのだ、こういう認識をいたしましてよろしゅうございますか。
  151. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 御指摘の二重派遣につきましては、職業安定法の労供禁止規定に触れるおそれの極めて強いものである、四条の面でも触れるものである。たとえこれを派遣形式のものにいたしましても、その中間に入るものについては労供違反であるという基本的な認識を持っております。
  152. 網岡雄

    ○網岡委員 それから、けさの参考人の陳述の中に、この委員会の座長をお務めになりました高梨さんが言われたことでございますが、今後これを整理していく場合に、細かく検討した認定の基準が必要だ、その場合に、小委員会でまとめられた請負、それから労働者供給事業、そして派遣労働、こういう三つの関係についての区分をしていく一定の基準らしきものが二つ出ておりますが、その二つの基準というものと、それから先ほど局長からも御答弁をいただきましたが、安定法施行規則四条という一番基本になる物差しとの関係は一体どういう関係になるのでございましょうか。
  153. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 施行規則四条の関係につきましては、この派遣法との絡みで字句の修正はあり得ましても、内容的な修正はあり得ない、こういう考え方でおります。今御指摘ございましたそういう区分につきまして一応の考え方は審議会においてもお出しをしておりますが、実務を進めていきます上においてはさらに具体的な詳細な基準が必要であるという基本的な考え方に立っておりまして、これは審議会においても、法施行までの間においてそういったものを具体的に策定しよう、こういう予定になっておるものでございます。
  154. 網岡雄

    ○網岡委員 これは大事なところですから改めて確認を申し上げておきますが、具体的な点検をしていく場合の物差しとして今後認定の基準をつくっていくというふうになっておるそうでございますが、その場合に、くどいようですが、改めてその物差しの基本となるものは、職業安定法施行規則四条の基準がすべての基本である、そこからそれを具体的にチェックをしていく場合に必要な具体的な決めをするだけであって、基本のものは職業安定法施行規則四条である。つまり私が申し上げたい点は、新たな認定基準をつくることによって職業安定法施行規則の四条が改正されていくようなことにはならないねということを改めてお尋ねしておきます。
  155. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 この施行規則四条は請負についての基本的な考え方を規定しておるものでございまして、この考え方の基本を変えるつもりは全くございません。あとは、派遣事業というものと請負というものの関係についてのさらに具体的な判断あるいはまたさらに言えば、労供とこれらの関係といったものについてさらに具体的な基準、境界線というものをできる限り実務的に明らかになるような線をひとつつくっていこう、こういう基本的な認識に立っておるわけでございます。
  156. 網岡雄

    ○網岡委員 それでは次に移ります。  これは、今後チェックをしていく場合の一つの反省として、私は一つの事実を挙げたいと思いますが、観光労連という観光関係の労働組合がございます。昭和五十七年にこの労働組合が、ある会社の添乗員の委任業務の中におきまして職業安定法施行規則四条あるいはひいてはこれは四十四条違反だ、こういうことで告発をしたことがございます。それを受けて労働省も点検をおやりになったようでございますが、結果的に言いますと、これは監査の対象にもならなかった、ましてや違反認定にもならなかったわけでございますが、ここに昭和五十七年十月十五日、社団法人日本旅行業協会にあてて運輸省大臣官房観光部業務課長名で出ておりますが、この回答の中に三つ回答が出されています。その三つの回答は、これを外した場合は請負業務ではないんだという物差しが実は出ているわけであります。  その一つの物差しは「事故が発生したときは、添乗員は第一次的に添乗業務請負会社に報告し、その指示を受ける体制とすること。」これが一つですね。それから二つ目には「添乗員に旅行業者の社名の入った名刺を携帯させる等の添乗員が旅行業者の従業員であると誤認させるような行為は行わせないこと。」第三「添乗業務請負会社は、その従業員について雇用保険等への加入についての措置を講ずること。」つまり、このことを言っていることは、雇用保険がやられているならば、事実上の雇用関係が証明されるという点で私は一つの決め手を打っていると思うのでございますが、その三つを回答なさっているわけでございます。  ところが、その後の事実関係でいきますと、第一の問題でいきますと、事故の発生ということはなかったわけでございますが、しかし、日常業務の中では、ほとんど添乗員が外国へ行って帰ってきたときは、この旅行会社に机があって、そこでちゃんと仕事をして、一々、一から十まで細かい指示はその旅行会社の指示を受けている。つまり、委託を請け負っておる会社からの指示は全然ない。直接そういうところの指示をもらっているという実態である。  それから、二つ目の名刺などの問題に至っては、これはそのときも再三、観光労連の人たちは、こういう名刺でやっているということを具体的に出したにもかかわらず、これは不問に付せられている。そして驚くべきことに、名刺などを携帯させるようなことがあってはならない、それはその添乗員が旅行業者の従業員と誤認されるようなことをしてはいけないんだ、こういうふうに明確にこれは否定しています。指示をしています。ところが実際は、さっき言ったように、その旅行会社の名刺でその添乗員はやってきた。  それから第三の雇用保険の問題は、これはやられていない。こういう実態が明らかになっているわけでございます。  そうすると、指示をされた三つの内容の全部、これを事実行為では破ってきたわけであります。ならば、この時点で既に請負業態ではないということでこれは処置ができたのにもかかわらず、今日までこれは何ら処置がされていない。これは監査件数にも入っていないんじゃないですか。こういう状況に置いてきた労働省のチェック体制というものが今日の労働者派遣事業法をつくらなければならない客観条件というものをサボタージュによってつくってきている、こういう実態を私どもは見逃すことができないわけでございます。  そこで、これからの問題として私は申し上げたいのでございますが、さっき言いましたように、疑似請負に対するチェック、それから派遣行為違反に対すもチェック、これは一体どういう方法で、どういう体制でそのチェックをやっていくのか、こういうことについて労働省の決意を含めて明確に、これは具体的な方針を出していただきたい。
  157. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 この派遣法について新たにいろいろ御提案申し上げております以上は、この法律が適正に施行されるように、私どもも当然その実施体制あるいはまた法に規定してあります指導あるいは調査、そういった体制というものを当然つくらなければならぬ、こう考えておるわけでございます。  具体的には、本省においてもそういう体制をつくらなければならぬだろうということで、既にシステム担当参事官というものを発足させておりますし、それから来年度以降におきましては、都道府県レベル、そしてまた安定所レベルにおきまして、この法の指導監督等に当たります職員の増員体制の問題、それからまた、こういう行政組織だけではなくて民間の協力というものを得るための業界内部でのまたそういう自主他なチェック体制をつくっての協力、それからまた例えば中央職安審議会のような三者構成機関でのまたチェック体制、さらにはまた、こういう安定機関と基準監督機関との連携体制、具体的には安定所と監督署との常設的な協議機関というようなものをつくることによってこれらの法の施行に当たっていきたい、こんな覚悟でおるところでございます。
  158. 網岡雄

    ○網岡委員 参考までにお聞きしますけれども、今までの段階でこの請負関係の点検、監査をする部門というのは、一体どういう部門がこれに該当するのですか。
  159. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 本省レベルにおきましては専門の係を置いてございますが、都道府県、安定所におきまして、これは必ずしも、専門の係があるところもございますが、兼務の方が多いのが実態でございます。例えば東京とか大阪におきましては専門の係を置いてございますが、多くのところにおきましてはこれが兼務になっておる、こういうような現状にあることは事実でございます。
  160. 網岡雄

    ○網岡委員 何名あるかということを聞いているのですよ。
  161. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 安定所におきましては専門の担当者は百二人という状況でございます。
  162. 網岡雄

    ○網岡委員 今の定員の中で、例えばことしで結構でございますが、労働省全体の職安事業に携わる職員の数は一体何名ですか。
  163. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 約一万五千人でございます。
  164. 網岡雄

    ○網岡委員 一万五千人の中で百二人、しかもそれは専任でなくて、場合によれば兼務の場合もある、こういう状況か、違法とまで言ったらちょっとあれかもわかりませんが、違法的な疑いがある請負関係の点検というものがほとんどできないような状況に今日まで放置された最大の原因だ、私はこういうように思います。  これは永井さんが質問なさいましたけれども、五十年から五十八年までの監査件数を見ますと、いずれもこれは一一けたしかやられていない。一部、三けたが一つございますけれども。しかも一番問題は、違反認定件数というのは、ひどいところは、昭和五十五年以降は三件、二件、一件、三件ですよ。これは眠っておると言っても間違いないです。先ほど言ったように、あれほど明確な事実があって、はっきりした観光労連というきちっとした所在の明らかなところから指摘があっても、そういうものがあっても、結局これは違反認定もしなければ監査件数にも入ってない、こういう状況になっているというのは、私は今日までの労働省がやってきたその行政の姿勢というものは怠慢以外の何物でもない、こういうことが言えると思うのでございますが、その責任をどうお感じになっていますか。
  165. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 例年五十件ないし六十件といったものについての指導、是正というものをいたし、そして特にそういう指導について是正をしないものについて、明らかにこれが労基法違反であるという認定をして強く勧告をしておるのがそういう数件というようなことでございます。これにつきましては、私どもも終戦直後のような、大きくこういう労供的なものを禁止する、そういうような強力な体制をもってやった時代とは確かに違ってきておりまして、そういう意味におきまして、そういうような体制の時代とまた体制も違う。そしてまた、内容的にもああいう終戦直後のようなボス的な強制労働あるいは中間搾取というような形のものが、これがまた激減してきでおることも事実でございます。  そういう意味で、こういう数の面でも減ってくる。勢いそういう中でまた我が方の体制もよりそういう職業紹介というようなことを重点に人員を配置をしていくというようなシフトを敷いてきたことは事実でございます。しかし、私どもこの法の厳正な実施を担当しておる者といたしまして、こういう違反に対しては、今までのこういうことについてさらに点検を加え、さらに厳正な実施についての努力をしていかなければならぬ、こう思うわけでございます。
  166. 網岡雄

    ○網岡委員 時間の関係がございますから、次に移ります。  ちょっと順序が不同になりますけれども、どうしても質問しておきたいというところがございますので、それを先にやり、時間がありましたら逐次言っていきたいと思います。  まず、今度の労働者派遣事業法を見まして痛感をいたしますことは、これは先ほど原則をお聞きしましたけれども、場合によるとこの法律で主客所を変えて、終身雇用ではなくて、これは派遣労働がその位置を変えていく可能性が非常に高いのではないか、そのための法律の手だてというものが出されているのではないかということを、私、実は心配をするわけでございます。  その一つの例を申し上げたいと思うのでございますが、それはこの法律による三十二条の規定でございます。  まず、労働省に原則といったことをお尋ねをしていきますが、この三十二条の特に二項、これは一体労働省はどういう行政効果をねらってこういう規定をお入れになったのでございますか、まず言ってください。
  167. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 法案の三十二条の規定でございますけれども、本来労働者の同意なしに派遣労働者になるということは問題ではなかろうか。そういう意味で、本人の同意を得た上で派遣労働者になるというのが適当ではなかろうか、そういう意味での原則を三十二条で書いてあるわけでございます。
  168. 網岡雄

    ○網岡委員 表向きの理由は、つまり今課長が御答弁になったように、派遣労働者の他への派遣に移る場合の本人の同意を求める、いわば派遣労働者労働条件の保護規定だ、こういう位置づけだというふうに担当からもお聞きしましたし、今もそういう答弁が出たのでございますが、しかし、これは実際の法律の運用が行われてきますと、問題は逆の方向に行くという可能性があるということを私、指摘をしたいと思うのでございます。  まず、前提条件を私言いますから、これが法律違反だ、こういうことになった場合はだめだ、こういうことであれば言ってください。  一つは、これは常用雇用でいった場合に、特定派遣事業というものの派遣事業を所定の手続をとってある企業が申請をした。そして検討していった結果、全部合格であったということで認定を受けた。内容は、もちろん認定を受けたぐらいですから、一応適用業種の対象だということになっておることはもちろんでございます。そしてその企業がどういうことになるかというと、その企業自身は例えば旋盤をつくる会社のほかに、今度は何々を行う派遣事業というものを一つその会社が余分に持つわけでございます。  そういうときに、この三十二条二項の規定は、「派遣元事業主は、その雇用する労働者であって、派遣労働者として雇い入れた労働者及び」、ここからが問題でございますが、「及び労働協約又は就業規則において労働者派遣の対象となる旨の定めのある労働者以外のものを新たに労働者派遣の対象としようとするときは」ということで、先ほど課長が御答弁になった形で本人の同意を求めるわけです。しかし、問題は、労働協約あるいは就業規則において労働者派遣の対象となる旨が定められておる労働者は、これは本人の同意が要らないということをこの三十二条は規定しているわけでございます。     〔浜田(卓)委員長代理退席、委員長着席〕  そうすると、一のことで申し上げたような手続をとりながら、旋盤をつくる会社が新たな、どれでもいいのですけれども、一から十四の間の派遣事業を請負う。そしてそこへ就業規則の中の一項に、労働者派遣の業務がこれからできるよ、こういうことを定めたといたしますならば、その明くる日から直ちにそこに働く正式な社員、正規の社員、この社員はその指名を受ければ派遣労働者としてこれはどこでも行かなければならないことになる。一万人の従業員があれば、一つの手続をとって特定派遣事業というものをとれば、それは就業規則と労働協約の定めによって派遣労働が対象になりますよということを規定をしたら、それはもういつでも行かなければならないことになる。こういうことになっても、これは三十二条違反にはならないと思うのでございますが、どうですか。
  169. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 この法律の三十二条の二項におきまして、先生御指摘のように、労働協約または就業規則において定めがある労働者の場合には、その旨を明示したり、あるいは同意を得たりする必要はない、逆の意味でそういうふうに読めるわけでございますが、ここに書いてあります趣旨は、労働協約の場合は、使用者と労働組合が合意したものでございます。したがって、改めて組合員の同意を要するというような必要はないであろうという趣旨でございます。  それからまた、就業規則の場合につきましては、その作成ですとか変更に当たりまして、労働組合または労働者の代表者の意見を聞かなければならないということになっておるわけでございまして、そういう意味で、就業規則の場合も、改めて明示したりあるいは同意を得るというような必要はないのではないかということでございます。  しかしながら、この法律二項の趣旨といたしまして、合理的な理由がなくて労働者の意に反して一方的に命令によって派遣労働に従事させるということを予定して書いたわけではございませんので、先生の御趣旨のような場合があるとすれば、その辺は適切な指導をしてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  170. 網岡雄

    ○網岡委員 答弁になってないですよ。私が言っているのは、ある企業が派遣法の手続をとって常時雇用の特定派遣事業の認定を受けた。そして就業規則で定めたら、それは本人の同意がなくても、三十二条の規定のとおりですよ、本人の同意がなくても派遣事業に行かなければならないことになる。これをやって三十二条に違反しますか違反しないか、それだけ答えてください。
  171. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 先生御指摘のケースであればこの三十二条の二項に違反するということではないと思います。ただ、それが先生御指摘のような就業規則がそのまま適用になるかどうかというのは、個別的な具体的な別の判断があろうかというふうにも思います。
  172. 網岡雄

    ○網岡委員 午前中の審議の中でもございましたが、世に法律のひとり歩きという言葉がありますよ。この派遣法の心配点は、対象業務がどんどん進んでいって法律がひとり歩きをするんじゃないかということが実は心配されているわけでございます。ところが、法律のひとり歩きどころか、これは三十二条をそのままはめれば私が言ったとおりのことができるわけでございます。そうすると、初めから派遣労働ということで来た人ではなくて、何々会社の正式な入社試験を受けて正規の社員であったにもかかわらず、ある日突然事業の認定を受けた時期で就業規則ができてしまえば、明くる日からは派遣労働をされなければならぬ、こういうことになる。  従来、こういう形は在籍出向という形でやられたのですよ。しかし在籍出向の場合は、一般的に言って、これは労働基準法研究会、労働省のもとでつくられた研究委員会の中でもあるわけですが、出向は本人の同意を原則としているということが言われているわけでございます。これはもう裁判例でいつでも明確です。  そういうことでありますと、企業の立場でいくとどういうメリットがあるかというと、出向というものであればある時期が来ればもとへ戻ってくるわけです。そして新たなまた違った出向をさせるためには本人に改めて承諾を得なければならぬ、こういう手続が必要です。しかし、この三十二条をはめれば、これは本人承諾は必要ないわけですよ。ないと言っているんだ。要らぬと言っているのですから。除外してあるわけですから、どんどん出向していける、こういうことになってしまうじゃないですか。それをやっても法律違反じゃないのですよ。  法律違反じゃないということが書いてあれば、ひとり歩きをするぐらいの日本で法律違反にならないことがあるとするならば、これはもっけの幸いということで堂々とせきを切って進んでいくということはもう明らかです。こういう規定があるとすれば、この労働者派遣事業法というものは、一般の企業の正社員でも一つ間違えば派遣労働の苦をなめなければならない、こういう事態に追い込まれるという危険性を持っているんだということになるんじゃないですか。
  173. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 まず労働協約で定める場合を考えてみますと、これは労使関係を規律する一つの基本的な協定になるわけでございまして、そこで派遣することができるということを、労働組合もそれを了承した、そういう形で協約を結んだという場合においては、それが規範的な効力を持ってくるという関係においてそういうことができるということになると思います。思いますが、何のだれがしを派遣するということについてまで労働協約で規定することはできないと思っております。したがいまして、派遣させることができるまででございまして、具体的な氏名の特定という段階になればやはりその労働協約の場合であっても最終的には本人の同意、了解というものが必要になってくるであろう。  それから、就業規則の場合について申し上げますと、これは労働組合との間のものではございませんので、手続的にそういう事業所の過半数を代表する者の意見を聞いて、そしてある日突然にそういうものを決めて届けるということが法律的に可能でございます。ただ、そこが、合理的な理由なしにそういう労働条件引き下げの就業規則の改正というものが有効かどうか。これはこれまでの最高裁の判例等におきましても合理的な理由のない不利益変更というものについては無効になる場合もあるわけでございまして、そういう意味で、ある日突然そういう就業規則に変えたからといってそれが直ちに有効な就業規則改定であるということは一概に言えないであろう。そしてさらに、その場合であっても具体的に事ができるということでございますので、一人一人についてやはり最終的には本人の同意なり了解というものが実態の運用においては当然必要になってくる、実情論としてこんなふうに考えるわけでございます。
  174. 網岡雄

    ○網岡委員 局長のおっしゃっていることは甘いですよ。そんなことはやらなくたってこれはできるわけです。現に東京海上何とかサービス、それからいっぱいありますよ。そういうところはこんな形のものじゃないんですよ。もっとひどいんですよ。そういうことが違法というような状態の中で堂々と続けられている。ところが、この三十二条はまさに合法なんですよ。どこからつつかれても文句の言われるものはない。そういう状況のものならば当然やられるに決まっている。  もう一つ申し上げるならば、就業規則というのは、半分以上の代表の人の意見を聞けば、個人個人で当たった場合にはたとえ反対があっても、基準局へ行って所定の手続をとれば就業規則として通っちゃうのですよ。そうすると、このことの書いてある就業規則に反対をしておってもこれは業務命令として行かざるを得ない、こういう状況なんですよ。そういう代物だということでございます。  そこでもう一つ、私は、今、日本の雇用状況の中で一つの大きな流れがあるということを指摘したいと思うのでございます。それは昭和五十九年十月、経済同友会、これはもう御案内のとおりですが、そこが「ME化の積極的推進と労使関係――〝中間労働市場〟の提案――」ということで幾つかの提案をしております。その中で言っておりますことは、中間労働市場の担うべき役割について述べると三つ言っております。  一つは、「情勢変化とニーズに応えて多様かつ高度な技能をもつ新しい人材の需給調整を機動的に行うこと。」これはまあ普通のことを書いてあります。  二つ目、「一般に雇用機会に乏しい中高年や女子労働力に対して技能に応じた雇用の機会を提供すること。」以下が問題です。「とくに、その際、中高年齢者の熟練や経験は途上国での技術指導面で活かし、技術移転を実効あるものにするなど国際的視野での労働移動も重要となる。」これはまさに海外派遣を端的に指定しているのですよ。  それから第三、「各種企業内での余剰人員を各々の技能に応じて他企業・他職種に再配置し、人的資源の有効活用を図ること。」そしてさらに提案は続いて、「当該企業に所属させたまま一時的に預かり他企業に供給するいわゆる応援体制の「人材仲介組織」である。これは、われわれが提案する〝中間労働市場〟のうち最も重要と考えられるタイプである。」こういうふうに経済同友会は昨年の十月提言をしておるのですよ。  この提言の流れからいいますと、中高年の技術を持った人を途上国へ海外派遣させる、あるいは余った労働力を景気のいい足らないところへ移動する、助っ人として移動させる応援体制の人材交流を図っていく、こういうことが経済同友会で提言されているのですよ。まさにそのことはこの三十二条の、くどいようですが、課長も私がさっき言ったことは違法でないということを言っているわけでございますから、このことを使えば大々的に行うことができる。まさに、労働省が故意にやったかやらないかは知りませんけれども、しかし、この提言をはめてここで利用しようとすれば、大々的な人材移動、人材市場というものに活用することのできる実行手段を提供したということになるんじゃないでしょうか。どうですか。
  175. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 この経済同友会の提言につきましては、私どもも見ておりますが、大臣からも繰り返し申し上げておりますように、終身雇用制というものを壊すような雇用政策、あるいはまた、これを大きく崩していくような方向での制度というようなものをやるべきではないし、我々もそれは考えていない、こういうことでございます。  そういう観点からこの提言を見ますと、この提言どおりにやった場合に、そういう日本の終身雇用制度というものについて相当大きな問題を起こすのではないだろうか。また、そういう面からの検討がなされておるであろうか。そういう意味で、この提言については、私どもとしては相当なお慎重な多角的な検討というものを経なければこういったものの提言に簡単に乗るわけにいかないものであるというふうに考えます。  また何度も繰り返しておりますように、今度の人材派遣業というものでそういう終身雇用制を崩して随時どんどんいろいろな企業に派遣をするというような形で、この終身雇用ということで人員が余剰になったときでもできる限りこれをまた職場内での配置転換であるとか、いろいろそういう中で企業が頑張っておる、そういうものを、安易にこれに乗っかっていわば終身雇用制というものから逃避するというような形の運用なり、そういう制度的な仕組みであってはならぬ、こういうことは強く警戒しながら仕組み、また運用を考えておるわけのものでございますので、この経済同友会の考えておるものは私どもが提案しておりますものとは次元の違うものである、こんなふうに考えておるわけでございます。
  176. 網岡雄

    ○網岡委員 私はそういうことは遅きに失していると思いますが、しかし今の局長の発言は、今後の流れを見ましたときに極めて重要な答弁になるかもしれませんので、しっかりと両方の耳で聞いておきます。  それから、次の規定は二十四条、これは職業安定法の中で定められているスト不介入の原則を定めたものでございます。そのことがこの労働者派遣事業法の中に入ったということは当然でございますけれども、ここに一つまた問題がある。考え方によると、これは悪用すればスト破りになるかもしれない、こういう危険性があるということを指摘したいと思うのでございます。  二十四条の規定は、ストライキ、そして作業所閉鎖、ロックアウトしたときは派遣労働者を送ってはいかぬ、こういうことになっているわけでございますが、その中に除外規定があるのですよ。どういうことが書いてあるかというと、「当該同盟罷業又は作業所閉鎖の行われる際」、ここから問題です。「現に」、現にだよ。「現に当該事業所に関し労働者派遣をしている場合にあっては、当該労働者派遣及びこれに相当するものを除く。」つまり、この言っている意味は、例えば十二時からストライキを実施するということになったといたしますならば、十一時五十五分ごろに派遣労働者を、事務部門でもいいでしょう、事務部門の派遣労働者を入れたということになれば、この法律はスト不介入に違反したことにはならないわけですね。「現に」と書いてあるこの「現に」の法律的要件というものはどういうものかということを、この際、明確に解釈として出してもらいたい。  それから、同じことでございますけれども、ストライキが起こるおそれがある、その場合に、地方労働委員会がそのことを認定して、そしてこの事業所に対しては派遣労働者を送ってはいけない、こういうことで職安、それから職安を通じて派遣元に通告があった場合は送ってはいかぬ、こういうことになるのです。ところがここにも除外規定があって、「当該通報の際」、またここで「現に当該事業所に関し労働者派遣をしている場合にあっては、当該労働者派遣及びこれに相当するものを除く。」これも同じ理由でございます。  こういうことになったら、局長、事務部門で行けば――事務部門の業務ですからね。こればどこでも行くのですよ。日本じゅうの企業のところに、注文さえ受ければ行けるのですよ。ですから、ストライキの際に、経理や事務部門がそういうことで押さえられてしまった、やられてしまったということになれば、これはスト行為の重要部分が崩壊するわけでございます。こういうことになったとすれば、これはまさしくスト破りになる、こういうことが言えるのでございますが、今私が説明したような事態というものはこの法律によってどういう歯どめをかわれようとしておりますか。歯どめがかえるのですか。
  177. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 この法案の二十四条におきまして、職業安定法二十条を準用しておるわけでございます。あと必要な読みかえ規定を書いてあるわけでございますが、趣旨といたしましては、そういう行為が行われた場合に新たな労働者派遣をしてはならないように主としてやるべきであるというような小委員会の御提言もございましたので、その趣旨を踏まえてこのような規定を設けたわけでございます。  で、「現に当該事業所に関し労働者派遣をしている場合」ということでございますが、要するに同盟罷業ですとかあるいは作業所閉鎖、そういうようになることが確実となる以前に労働者派遣を始めて、これが争議行為の発生後においても継続して行われるような場合、こういう場合を言っているわけでございます。  そこで、先生御指摘の具体的な例で、例えば十一時五十五分に派遣をした、こういうお話でございますが、これはいろいろ具体的場合によって違う場合もあるかもしれませんけれども、ごく一般常識的に考えてみますと、同盟罷業ですとか作業所閉鎖になるということが確実になった後に派遣を開始したというふうに解釈するのが一般常識的な考え方ではなかろうかというふうに思いますので、そういう意味におきまして、法の二十四条において禁止されておるものだというふうに解して差し支えないだろうというふうに思うわけでございます。
  178. 網岡雄

    ○網岡委員 ここのところは非常に重要でございますので、今言ったような答弁ではちょっと承知できないのでございます。  もう一つのところがございまして、職業安定法の二十条を読みますと、特に関係のあるところ、初めからいきましょうか。「公共職業安定所は、労働争議に対する中立の立場を維持するため、同盟罷業又は作業所閉鎖の行われている事業所に、求職者を紹介してはならない。」「前項に規定する場合の外、労働委員会が公共職業安定所に対し、事業所において、同盟罷業又は作業所閉鎖に至る虞の多い争議が発生していること及び求職者を無制限に紹介することによって、当該争議の解決が妨げられることを通報した場合においては、公共職業安定所は当該事業所に対し、求職者を紹介してはならない。但し、当該争議の発生前、通常使用されていた」云々、こういうことがあるのです。  これで気づかれたと思うのでございますが、職業安定法二十条のスト不介入の規定というもののどこにも、括弧で囲んださっき言った「現に」云々というようなものは一つも入ってないですよ。極めて状況を素直に表現をされている。もう一遍聞きますけれども、「現に」といえば、これは厳密に言うと、私の言ったことは通らぬでもないんですよ。十二時になったらいかぬかわからぬけれども、十二時一分前でも入ったらいいんですよ、法律的解釈からいくならば。だから、「現に」というのは今までの法律の文言によって一体どういうことを具体的に示すのだということをきちっと示してもらわなければいかぬですよ。今言ったような答弁では、そんなことじゃ太刀打ちできないですよ。
  179. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 先ほどもお答え申し上げましたように、この法案二十四条の趣旨は、派遣業におきまして争議行為に対する不介入を実質的に担保しよう、こういう趣旨で設けてある規定でございます。先ほども「現に」という意味の解釈を申し上げましたけれども、こういうような同盟罷業等になることが確実になる以前に派遣行為が開始されたような場合には、争議行為が継続あるいは発生した後におきましても、状態として変わらないようなことにしてもいいのではないか、そういう意味でこの「現に」というのを書いてあるわけでございます。したがって、争議行為等が確実になった後に派遣を開始した、そういうような場合は含まれないだろう、こういうふうに解釈しておる次第でございます。
  180. 網岡雄

    ○網岡委員 それじゃ端的に聞きますけれども、職業安定法二十条は、除外規定は今読んだように全然ないのです。準用のもととなったのは、物差しは職業安定法二十条です。だとするならば、この種の規定をしなくても済むんじゃないですか。準用ですから、重要な箇所を読みかえ、読みかえをやっていけばそれで通用する話じゃないですか。何で「現に」何々ということを入れなければいかぬのですか。
  181. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 職業安定法の場合は紹介の場合でございます。したがいまして、一たん紹介をすれば向こうに雇用されるという形になりますので、一回限りの行為だろうと思います。ところが、派遣という場合は継続した行為全体をとらえて労働者派遣と言っているわけでございますので、争議行為の発生前に派遣をした場合、それがずっと続いている状態はいいんだ、そういう意味をはっきりさせるために、ここで読みかえのために入れたわけでございます。
  182. 網岡雄

    ○網岡委員 ちょっと言いわけのような話になりますけれどもね。これは改めて私どもももう一週やりますけれども、この間の説明によりますと、民営の有料職業紹介事業の規定の中にこの除外規定が入っているから、均衡を保つ意味で派遣労働もこういう規定をしなければならぬという説明が私にありました。そうすると、今の課長の答弁とは全然違っているじゃないですか。  それで、派遣労働を、これは前に契約をしているから契約満了まではやむを得ないんだということであるならば、そういうたぐいのものはこの職業安定法二十条だっていっぱいあるんですよ。しかし、余分なことを書くことによって、本来ストヘの不介入という、労働者の伝家の宝刀であるストを守っていくという姿勢からいうと、これはいろいろな弊害が出てくる。だから、極めて原則的なことを書いて終わっているというのが職業安定法二十条の規定なんですよ。それを括弧、括弧でくくってややこしいことを書くものだから、今言ったような疑問がわいてきますし、これは、やられたら違法と言えないんじゃないですか。違法だと言うのだったら、どこで違法ということができるか、もう一遍明確にしてください。
  183. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 何度も同じことを繰り返して恐縮でございますが、先ほどから何回も申し上げておりますように、この法律の規定の趣旨は、争議行為に対する不介入というものを実質的に担保しよう、その趣旨は職業安定法の二十条の場合と実質的に同じような形にしようではないかということでございます。したがいまして、先ほども再三お答えいたしましたように、同盟罷業とかあるいは作業所閉鎖、ロックアウトに至るようなことが確実となった後に派遣を開始するという場合は当然禁止される、これは法律の規定の趣旨からいって明らかだろうというふうに考えておる次第でございます。
  184. 網岡雄

    ○網岡委員 時間が来ましたから、私は、次の質問を二、三やって、これは簡単な答弁ですからやってもらって終わりますけれども、一つだけ聞いておいていただきたいのですが、ストライキというのは、労使の団交といいますか、あれがあって、そういう段階で入っていくのですよ。したがって、使用者側は労働組合の対応を見ておればいつごろストライキに入るかなということは予測できるわけでございます。したがって、合法的にやろうと思えば、今課長が言われたような措置をとることもできるわけでございます。ところが、「現に」何々というようなただし書きをつくれば、なおのこと事実上ストを無能化していく、無力化していく、そういうことをつくる要因を与える結果になるということを私、申し上げておきたいわけでございます。ぜひこの運用については、実態上そういうことにならないように十分運営をしてもらいたい、やってもらいたいということを申し上げておきます。  それから一つ確認をしておきたいことは、四条のところで建設、港湾というものを派遣労働から外しておみえになりますが、港湾の場合でいきますと港湾労働法のネットにかかる港といいますと六大港でございます。実際は地方の港を入れますと九十二港ということだそうでございますが、港湾労働法は六大港ということでそういう限定があるかわかりませんけれども、しかし、ここで言われている精神というものは業務の態様というものからくる労働力の波動性というものをとらえての規定でございますから、ぜひ地方九十二港についてもこれは外した精神で運用をしてもらうということになると思うのでございますが、労働省側の御見解を示していただきたいと思います。
  185. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 この法律におきまして除外業務といたしまして港湾労働業務を定めておりますけれども、現行の港湾労働法の適用に係る六大港については明文上除外されておりますけれども、港湾における労働力需給調整のシステムのあり方から申しまして、六大港を除く九十二港につきましても同様に派遣業務の対象とすることが適当ではないと考えられますが、具体的にはこれは中央職業安定審議会において対象業務としないという合意に基づくものになると思います。
  186. 網岡雄

    ○網岡委員 それではもうまとめて申し上げて、許可制、届け出制の問題、それから中間搾取の問題、現場における団交権の問題などなど重要な部分を私はきょうは抜かして質問をいたしました。私の質問の中でも明らかになったところでございますが、この法律は一つ運用を過てば日本の雇用関係の根幹をなす終身雇用というものが土台から崩れるかもしれないという危険性を持っていること。二つ目には、一つ運用を過てばこれはストを破るというような、労働者の最も基本的な権利であるそういうものを侵害していくおそれを持っている法案だと言えるということを私は実は真剣に心配をするところでございます。  こういうことからいいまして、私どもはこの法案は慎重にやっていかなければいかぬと思っておりまして、その態度につきましては後刻私どもは社会党としての態度を出すわけでございますが、こういった関係からこの法案について私どもは対応していきたいということを申し上げて質問を終わります。
  187. 戸井田三郎

    戸井田委員長 大橋敏雄君。
  188. 大橋敏雄

    ○大橋委員 本日午前中にこの委員会で五人の参考人の方から意見を聞いたわけでございますが、私はその意見を聞きながら思いを新たにしたといいますか、またある意味では新しい認識を持った感じでございます。確かに、派遣法案というものは見方によっては非常に危険を感ずるし、見方によってはこれはすばらしいものだ、極端な評価が下されるのじゃないかと思われるほどの内容だと感じたわけであります。  しかし、皆さんが一様に主張していらっしゃったことは、いわゆる戦後の経済社会の大きな発展の中に産業構造が変わってきた、また技術革新が目覚ましくて、そういう状況の中で労働環境もかなり変化をしてきた、労働者の意識も変わってきた、また労働行政もそれなりに改善をされてきた、こういう状況が相乗作用といいますか、微妙に作用し合って生まれ出てきたのが労働者派遣事業である、しかしながら職安法の第四十四条だとか施行規則第四条等、すなわち労働者の供給事業禁止あるいは請負事業の関係、そういうものに挟まれまして労働者派遣事業を行っている人が非常に苦慮した状況にあって運用されていった、ここに法律をつくらねばならない状況があったんだ、こういう認識は大体一緒のようでございました。  しかし、きょうの質疑の中で感じましたことは、確かに今言ったような状況のもとで生まれた労働者派遣事業ではございますが、労働省のこうした我が国の労働力需給システムに対する適切な対応といいますか、指導がなかったことにもかなり問題があったのじゃないか。つまり公共職業安定事業あるいはまた民間の有料、無料ともに職業紹介事業があるわけでございますが、そのほかに先ほど申しましたように労働組合による労働者供給事業あるいは請負事業と、もともと労働力の需給システムがちゃんとできているにもかかわらず今回の中央職業安定審議会での協議の中でこうした体制が非常に実態に沿わなくなっているということにも気がついたようでございまして、そういう意味からいくとこれまでの労働行政は怠慢のそしりは免れないのじゃないか。  いろいろと参考人のお話を伺いながら、また質疑の内容を聞きながら非常に重要に思いましたことは、その中央職業安定審議会の中で、この法律がもし成立をして歩き始めたならば、少なくとも三年程度をめどにもう一度この法案ないしは実態を洗い直して見直す必要があるのではないか、こういうことのようでございまして、これに対して労働側の代表で山本参考人はそのことを率直に言っておりました。高梨参考人は中央職業安定審議会の審議の重要な責任者であったわけでございますが、その方も見直しの必要性は言っておりましたが、それが果たして骨格にかかわる部分まで見直すのかどうか、それも含めて見直すということでありました。  そこで労働大臣に、お疲れのようでございますが、非常に重要なことでございますので、ここで大臣の御意見を伺っておきたいんです。審議会の中ですらこの法案は歩き始めたならば三年後には見直さなければならぬぞ、こういうふうにうたわれておるわけですね。今、賛否両論の中でこの法案が審議されているわけでございますが、その大半は時代の流れである、必要なんだという方向にもあるわけでございます。しかし問題はかなり潜んでいるように感ずるわけでございまして、私もこの見直しはぜひともやるべきだと思うわけでございますが、大臣の考えをお聞きしたいと思います。
  189. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 労働省といたしましても、大橋先生が御指摘いただいておるような雇用問題及び労働問題の抱えておる諸課題の中で今回の派遣法というものに派遣労働者の生活権、労働条件改善確保、こういう大きな立場から取り組み、今回の法案を取りまとめさせていただいた、こういう経過がございます。しかし、なお終身雇用が主流をなす中で、派遣的な労働者労働条件、また社会経済的なニーズの中でどう変化、また対応させていかなければならないか、こういう極めて流動的な微調整部分というものは正直残っておると思います。  そういうことで、この中央職業安定審議会においても御論議いただいておりますように、労働省としても、見直しを十分踏まえながら、よりよいもの、より整備されたものに充実をしていく、こういう基本的な考え方の上に立ってこの問題への取り組みを図っていくということが大事なことだ、かように考えております。
  190. 大橋敏雄

    ○大橋委員 この法案の内容を見てまいりますと、確かに新しいこれまでにない労働力需給システムでございますので、疑問が幾らもわいてくることは事実です。  そこで、私自身の確認でございますけれども、業務処理請負業というのは、派遣先労働者を使用する関係にはないのだ――私の考え方に間違いがあれば指摘していただきたいのですよ。請負事業というものは、派遣先労働者を使用する関係にはない。労働者供給事業というものは、供給元と労働者との間に雇用関係はない。それから、労働者派遣事業は、供給元と労働者との間に雇用関係がある、また、派遣先労働者を使用する関係にあるというふうに私は理解しているのですけれども、この理解はよろしいですか。
  191. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 そのとおりでございます。
  192. 大橋敏雄

    ○大橋委員 そこで、私が非常に心配するのは、派遣事業と請負事業、こう見てまいりますと、非常に類似をしている感じがあるんですね。従来、まだ今の派遣事業の皆さんが合法的にやろうとすれば、請負事業という形式をとらざるを得なかったと言われるくらいに、派遣事業と請負事業は類似しているわけでございますが、今回、この法律かもし制定されれば、労働者派遣事業という業者が公認される立場で動き始めるわけでございますが、実際に事業を運営していく上におきまして、あるときは派遣事業法によって動いている、あるときは請負事業によってやったんだということで、適当にそれを使い分けて脱法行為の追及を逃れるといいますか、そういうことになるんじゃないかなと非常に心配するわけでございますが、その点いかがでしょう。
  193. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 先ほど先生も御指摘ございましたように、派遣事業に該当するのは、注文主が労働者を指揮命令して業務に従事させる、そして、受注者の方が業務の遂行に関して事業主としての責任を負わない、こういうことになり、請負の場合には、この逆に、注文主は労働者を指揮命令しない、そして受注者といいますか、事業主としての責任をこの請け負った元が全部負う、こういう形であるわけでございますが、法律概念としては、そういう意味で非常に明確に区分されるわけですが、現実にまさに派遣の問題がここまでいろいろ論議をされてきます過程においては、その区分が実務的にはなかなか載然としない場合があるではないかというようなところも一つの問題であった事情もあるわけでございます。  そういう意味で、審議会の場におきましても、この区分をやはり明確にしようではないか、こういうことでこの労働者派遣と請負の区分につきましての適用基準を具体化していくことについて審議会としても今後法施行までの間にしっかり固めよう、こういう申し合わせになっておる状況でございますので、まさに御指摘ございましたように、今後そういった点についての具体的な基準策定を進めていく、こういう考え方でおるわけでございます。
  194. 大橋敏雄

    ○大橋委員 素朴な質問でございますが、今度の労働者派遣事業法に基づく労働者派遣事業者そのものは、いわゆるその法に基づく事柄しかできないで、今まで言われた請負事業というものはできなくなるのかどうか、その点はどうでしょうか。
  195. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 お答えを申し上げますが、先ほど局長から申し上げましたように、請負と労働者派遣との相違と申しますのは、先が指揮命令をするかどうかによって異なってまいります。  しかし、これは概念上の分け方でございまして、現実の事業主がある場合については請負事業をやる、ある場合には労働者派遣をするということを禁止しているものではない、要するにできるということだろうと思います。
  196. 大橋敏雄

    ○大橋委員 次にちょっと移らしていただきますが、今回の派遣制定の目的の第一義的なものは、労働者雇用の安定とその福祉の増進を図る、いわゆる労働者保護にあると思うんですね。  そこで、派遣元あるいは派遣先とも使用者責任をそれぞれに今度課したわけでございますけれども、私は労働者保護の観点から見れば、これでも必ずしも明確でないような気がしてなりません。派遣事業の健全な発展を望むならば、やはり労使協調といいますか、こういう状況が不可欠なものになるわけでございまして、そのためには働く人々の苦情処理といいますか、これが的確に敏速に行われていく体制といいますか、行政的な体制をきちっと確立することが肝心ではないかと私は思うのでございますが、この点はどのような対応をするおつもりですか。
  197. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 御指摘ございましたように、この派遣元派遣先との密接な連絡調整の上でこういう苦情の的確な処理ということが適切な雇用管理を通じての派遣労働者の適正な就業確保の上で不可欠なものである、こういう基本的な考え方のもとに、この法案では派遣元に対しましてこの苦情処理に当たる派遣元責任者の選任を三十六条で義務づける、そしてこの派遣労働者派遣先における就業が適正に行われるよう必要な措置を講ずる義務を派遣元にも課する、これは三十一条でございます。そういうような措置をいたしております。  また、派遣先につきましては、こういう派遣労働者から申し出を受けた苦情の処理に当たる派遣先責任者の選任を四十一条で義務づけておりますし、また派遣元責任者との連絡調整を行うことを通じて苦情の円満な解決を図るような措置をする、あるいは四十条でございますが、苦情の的確な処理などを図るために必要な措置を講ずる、そういうような法的な措置を講じておるわけでございます。  こういう措置を通じまして、派遣元派遣先双方において適切な苦情処理体制が確立されるような運営を図ってまいりたいと考えております。
  198. 大橋敏雄

    ○大橋委員 午前中の参考人の質疑の中で、何か公共職業安定所における体制整備とともに労使による協力員制度が既に審議会等で明確に打ち出されているというお話を伺ったのですが、そういう点はいかがですか。
  199. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 この法律制定されました後におきます制度の運用、実効確保、違反に対する指導監督、こういうことが大事な点でございまして、この点につきまして、こういう関係行政機関との連携の確保あるいは民間の協力体制の整備が不可欠と考えておるわけでございます。特に、労使のいわば関係団体の代表者等の方々にこの派遣問題についての相談、指導というようなものに当たっていただく協力貝というような形でお願いを申し上げまして、こういう派遣事業の適正な制度運用についていろいろ実態把握、相談、指導ということなど御協力を賜っていく、こういう仕組みをぜひやっていきたい、こんなことで考えておるところでございます。
  200. 大橋敏雄

    ○大橋委員 実は、私いろいろと派遣法の中身についてお尋ねしたいわけでございますが、きょうは同僚議員が関連で質問させてほしいということがありましたので、来週の委員会の質疑に私の質問は譲るとしまして、あと一点だけお尋ねして、同僚議員の関連質問を許していただきたいと思います。  一点お聞きしたいというのは、基準法の適用の特例規定が今度設けられたわけでございますけれども、一口に言って、これは何をねらった内容なのかということです。
  201. 寺園成章

    ○寺園政府委員 現行法のもとにおきましては、派遣労働者に関します労働基準法等の適用につきましては原則として派遣労働者雇用いたしております派遣元事業主が責任を負うことになっております。したがいまして、派遣労働者雇用しておりません派遣先の事業主は責任を負わないということになります。したがいまして、労働者派遣事業の制度化にあわせまして、派遣労働者の保護に欠けることがないように基準法等について必要な特例措置を設けまして基準法の履行責任を明確にしようとするものでございます。
  202. 大橋敏雄

    ○大橋委員 「労働基準法等の適用に関する特例等」の中で(ニ)のハに「派遣先の事業に関しては、派遣中の労働者派遣先の事業者に使用されるものとみなして、安全管理体制、労働者の危険又は健康障害を防止するための措置、作業環境測定等の規定を適用し、派遣元の事業に関しては、当該派遣中の労働者派遣元の事業者に使用されないものとみなして、当該規定を適用しないこと。」というのがあります。それとホの内容についてどのような関連なのか、御説明願いたいと思います。
  203. 寺園成章

    ○寺園政府委員 派遣労働者につきまして、安全衛生関係につきましては派遣先の事業主が設備等の設置、管理等に当たるわけでございます。そういう実態に即しまして今お示しの事項については、派遣先雇用されるものとして、すなわち派遣先の事業主が責任を負うということを明確にしたものでございます。
  204. 大橋敏雄

    ○大橋委員 それでは、派遣労働者がその派遣先で働いているうちに健康障害を起こしたという場合は、あくまでも派遣先の事業主のみの責任になるのか、それとも派遣元雇用主も関連していくのか。というのは、ホの内容を見てまいりますと両方に責任がかぶさるように示されていますので確認したかったわけですが、いかがですか。
  205. 寺園成章

    ○寺園政府委員 派遣労働者につきます健康管理につきましては、一般的な健康管理責任というものは雇用主であります派遣元も負います。ただ作業に伴います、例えば有害業務に従事をするという場合の健康管理の問題につきましては派遣先責任を負うということでございます。
  206. 大橋敏雄

    ○大橋委員 竹内議員の関連をお許し願いたいと思います、
  207. 戸井田三郎

    戸井田委員長 竹内勝彦君。     〔委員長退席、丹羽(雄)委員長代理着席〕
  208. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 同僚議員よりお許しをいただきまして、今御論議がございました人材派遣業という問題、これは人材が派遣されていって作業をしていく、その作業をする場所におきまして労働者が安全に安心して働いていける、そういった体制が確保されなければなりません。そういう中で、最近特に問題になっております有機溶剤、それからフロン溶剤等を使用して酸欠事故とか、有害なものを長期にわたって吸い込んでいったために死亡あるいは中毒、頭痛、腹痛、目まい、嘔吐などを訴える例をキャッチしております。この事故例を主体といたしましてこれの抜本対策というものを立てていかなければならないという観点から、若干御質問をさせていただきます。  まず、金属だとか、あるいはプラスチック、半導体製品、IC、先端技術の機械類の洗浄に使用される有機溶剤にはどんな種類があるのか。全部挙げておっては大変でございますから、代表的なもので結構でございます。それを挙げていただいて、何種類あるのか、その代表例をお示しいただきたいと思います。
  209. 松井司

    ○松井説明員 御説明申し上げます。  有機溶剤の主なものといたしましては、トリクロルエタンとかトリクロルエチレンとかテトラクロルエチレンとかフロンとか、そういうものがございます。
  210. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 何種類あるか聞いておるのですよ。まず代表を言うて、それが何種類あるのか、それからまず答えてください。
  211. 松井司

    ○松井説明員 非常に量の少ないものもございまして、いろいろ種類がございますので、ちょっと数は何種類か申し上げられません。勉強不足でございます。
  212. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 労働省、わかっている範囲で答えてください。
  213. 寺園成章

    ○寺園政府委員 有機溶剤中毒予防規則におきましては、種類を三つに分けまして規制をいたしております。主に有害性が強く蒸気圧が高いものの順に一種、二種、三種という区分にいたしておりますが、第一種の有機溶剤といたしましては、クロロホルム、トリクロルエチレンなど七種類でございます。第二種の有機溶剤といたしましては、アセトン、トルエンなど四十種類でございます。第三種といたしましては、ガソリン等七種類を指定をいたしておりまして、合計五十四種類の有機溶剤を中毒予防規則の対象にいたしております。     〔丹羽(雄)委員長代理退席、委員長着席〕
  214. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 ちょっと労働省に関連してお聞きしますが、今通産省は有機溶剤の中にいわゆるフロンということで入れましたが、中毒にかかわるということで今五十四種類ある、それから一種、二種、三種と分けた中にはフロンは含まれないと考えてよいのですか。
  215. 寺園成章

    ○寺園政府委員 フロンは、溶剤として使われる例もあるようでございますが、有機溶剤中毒予防規則において規制の対象といたしております有機溶剤の中には含まれておりません。
  216. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 そうすると、フロンはどういう系統に入るのですか。それをまず御説明ください。
  217. 寺園成章

    ○寺園政府委員 フロンはその有害性が低いという観点から、有機溶剤中毒予防規則の対象にはいたしておりませんけれども、フロンガスは不活性気体でありますために酸素欠乏症を生じさせることが考えられますので、フロンを入れてあり、また入れたことのあるボイラー、タンク等につきましては酸素欠乏症等防止規則の対象にいたしております。
  218. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 トリクロルエタン、トリクロルエチレン、パークロルエチレン、メチレンクロライド等いわゆる有機溶剤などで洗浄用に使用されているこういった物質は、最近のもの、それも代表例で結構でございますが、まず生産量、それから生産の状況、実績で結構です。それからこれらの物質は何からできておるのか、原料など、そういうものも含めて、全部細かに言っておると時間がございませんから、代表的なもので結構でございますが、御説明ください。
  219. 松井司

    ○松井説明員 御説明申し上げます。  有機溶剤、いろいろございますが、代表的なものとしてトリクロルエタンというものの量でございますが、五十五年ころは八万五千八百三十五トンほど生産しておりまして、その後年々増加いたしまして、最近の五十九年は十一万九百七十七トン、こういうことになっております。あとトリクロルエチレンにつきましては、五十五年が八万二千四百七十一トンぐらいでございますが、その後増減を繰り返しまして、最近の五十九年は七万四千百三十六トンということでございます。それから洗浄剤等に使われますフロンでございますが、これは五十五年が九万四千二百九十一トンくらい生産しておりまして、その後年々増加しておりまして、五十九年は十四万九千七百七十七トン、こういう数字になっております。  こういうものの原料はどういうものかということでございますが、種類によっていろいろ違いますが、例えばトリクロルエチレン、こういうものはエチレン等と塩素と反応させてつくっております。それからフロンは、これも種類によっていろいろ違いますが、クロロホルムとか四塩化炭素とかパークロルエチレン、そういうものに無水弗酸を反応させてつくっております。
  220. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 労働省、先ほどの毒性でもう一度確認しておきますが、毒性で一種、二種、三種と分けましたが、これは一種の方が毒性が強いということで、だんだん毒性は弱い、こんなふうに分類していいんでしょうか。
  221. 寺園成章

    ○寺園政府委員 仰せのとおりでございます。
  222. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 同じく塩素系溶剤というのですか、塩素溶剤というもの、こういうものがあるやに伺っておりますが、これにはどんなものがございますか。
  223. 加来利一

    ○加来説明員 有機溶剤中毒予防規則で決めておりますものとしましては、四塩化炭素、1・2ジクロルエタン、1・2ジクロルエチレン等がございます。
  224. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 先ほど私、有機溶剤という分類で、労働省が中毒性のある、そういったもので規制の対象として五十四種類の中、句点か申し上げて、それの生産量あるいは原料、こういったものを質問いたしましたが、通産省、あなたはフロンも一緒に説明しましたけれども、このフロン、いわゆるフロンガスというものの中にはどんなものがあるんですか。
  225. 松井司

    ○松井説明員 フロンガスの中には、弗素の数だとか塩素の数だとか、それによっていろいろございます。代表的なものとしてはフロン113だとかフロン12とかフロン14とか、そういうものがございます。
  226. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 そこで、このフロンガスの、いわゆるフロンの用途、今フロン112とかフロン113とかいろいろ言われましたが、この後、特にフロン113をちょっと議論してみたいと思うのですけれども、まずフロン全体でフロンの用途、これは冷媒用だとかあるいは洗浄用だとか、私が最初に申し上げましたような先端技術に利用していくあるいはクリーニングだとかそういうものにも利用していく、そのほか金属、セラミック、そういったものの洗浄のために利用していくというように伺っておりますけれども、まずこの用途はどうなっておるのか。それからフロン全体とフロン113の生産量、こういったものをもうちょっとわかりやすく説明していただけませんか。
  227. 松井司

    ○松井説明員 御説明申し上げます。  フロンの用途でございますが、今先生がおっしゃられましたように、冷媒あるいは溶剤、各種洗浄剤あるいは発泡剤、エアゾール、こういうところに使われております。  それから、フロン113の用途あるいは量でございますが、これはそのフロンの中の一つのものでございまして、フロン113の用途は主として電子部品とか精密機器等の洗浄剤用として使われております。  それから、フロン113の生産量の動向でございますが、五年ほど前の昭和五十五年は一万八千六百トンでございました。その後、年々増加いたしておりまして、五十九年には三万九千二百一トンという数字になっております。なお、この数字、政府の統計がございませんので、業界等から聞いた資料でございます。
  228. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 このフロンに関しては無色無臭、そして害はないんだ、こういうことになっております。これはまた後でちょっといろいろと論議をしてみたいのですが、まず有機溶剤、こういう中で危険な溶剤は幾つもございます。その危険溶剤ガス、こういったものを取り扱う場合には人体に多大の影響を与える。おのずとこの取り扱いの規則があるわけでございますが、この規則の状況というものを、どんなものがあるのか御説明いただきたいと思います。
  229. 加来利一

    ○加来説明員 労働安全衛生法では、有機溶剤に関しまして有機溶剤中毒予防規則という規則を定めておりまして、先ほど申し上げましたように、第一種の有機溶剤、第二種の有機溶剤、第三種の有機溶剤というふうに分けまして、それぞれ一般的なものとしましては密閉装置、局所排気装置、全体換気装具等の装置を取りつけることでありますとか、それから、特に第三種の有機溶剤等につきましては、屋内作業場のうち、タンク内等で使用されるものにつきましては特に厳しい規制をしているわけでございます。
  230. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 そこで、有機溶剤の取り扱いに関係しまして、労働安全衛生法の中に有機溶剤中毒予防規則、これがございますが、この中に健康診断の項目がふえ、その結果を所轄の労働基準監督署に報告しなければならない、こうございますね。労働基準局の方ではどのような報告が、最近のもので結構でございますが、どんなものが報告があるのか、有機溶剤によってどんな事故があったのか、これを御説明いただきたいと思います。これはちょっとできるだけ詳しく、全部でなくていいですが、その一つ一つの事故に関してはできるだけ詳しく説明してください、大事な問題ですから。
  231. 寺園成章

    ○寺園政府委員 有機溶剤中毒によります死亡者といたしましては、五十四年から五十八年までの五年間に二十二名、休業者は百三十四名というふうに把握をいたしております。  具体的な事例といたしまして申し上げてみますと、まず一つは、これは五十八年の四月に発生をした事故でございますけれども、洗浄用シンナーを用いまして自動ハンダづけを行ったプリント基板のフラックスをふき取る作業を行っていました労働者一人が気分が悪くなり、診察を受けましたところ有機溶剤中毒と診断された例がございます。  また、これは五十七年五月に発生をいたしましたクリーニング業での事故でございますが、単独で作業をしておりましたために作業の詳細は不明でございますけれども、ドライクリーニング用パークロルエチレン蒸留器の内部でスケールの清掃をしていた労働者が急性中毒にかかり、倒れているのを発見されまして、直ちに救急車で病院に収容されましたけれども、翌日、薬物中毒により急性腎不全で死亡したという例がございます。
  232. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 ちょっと待ってください。今、五年間で二十三名死亡、百三十四名中毒、そういうような形のものの中には、重ねて聞いておきますが、労働省としてはフロンは有機溶剤の中に入れておりませんので、フロンにかかわる事故は入っておりませんね。
  233. 寺園成章

    ○寺園政府委員 フロンに起因するものは入っておりません。
  234. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 そこで、最近アメリカのシリコンバレーにおきまして地下水がかなり広く汚染された深刻な環境汚染が発生して、また工場の関係におきましては何人か死にましたね。そして環境が汚染されていった、地下水がだめになった、周辺の空気が非常に汚れていった、こういった例が報道によればございますけれども、この状況を御説明ください。
  235. 小林康彦

    ○小林説明員 シリコンバレーにおきまして地下水汚染が問題となっておりますことは報道等により承知をしておりまして、環境庁としましては外交ルートを通じまして情報収集に努めているところでございますが、現時点におきましては、米国の環境保護庁の公式の発表が行われたという報告はまだ受けておりません。  私どもが入手しております論文等によりますと、サンフランシスコ湾の南部に位置しておりますサンタクララ渓谷で、一九八一年秋、地下にございます貯蔵タンクから有機溶剤が出まして地下水汚染が発見され、それ以降一九八二年初めまでに二十二件の汚染例が報告されたとされております。  主たる原因は、地下貯蔵タンクからトリクロルエチレン等の漏えいが見られ、それが周辺井戸等を汚染をしたとのことでございます。環境保護庁及び州政府によりまして汚染の調査及びタンクの検査等の対策が行われているというふうに承知をしております。
  236. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 同じように国内におきまして、兵庫県揖保郡太子町にあるある企業の工場からこのトリクロルエチレン汚染、こういったものの実態も私ども伺っておりますけれども、この状況はどうなっておったのか、その後の処理はどうなったのかを御説明ください。
  237. 小林康彦

    ○小林説明員 兵庫県からの報告に基づきまして状況を御説明いたします。  兵庫県の太子町では、五十八年十二月、水道水源の水質調査を実施いたしまして、その結果、水源としております三つの井戸のうちの二つからトリクロルエチレンを検出しております。その後の調査によりまして太子町内の一般用井戸四百二十七本のうち百二十八本の井戸から、世界保健機関が飲料水の暫定ガイドラインとして定めております基準値を超えるトリクロルエチレンが検出されております。  このため、他の水道から応援給水を求めましたり、井戸を水道に切りかえましたり、あるいは水道水源にトリクロルエチレンの除去装置を設置するなどの措置を講ずるとともに、兵庫県環境保全対策会議を中心といたしましてトリクロルエチレンの使用工場、汚染の状況及び原因の追求の調査を実施されております。ボーリング等の調査によりまして、株式会社東芝の太子工場敷地内の一部に高濃度に汚染をされました土壌が存在することが明らかになり、汚染の原因があった場所はほぼ特定できたとしておりますけれども、どのような原因で汚染が生じたかは明らかにすることはできておりません。  なお、同工場におきましては、トリクロルエチレンを1・1・1トリクロルエタンに切りかえるとともに、汚染をされております土壌約一千立方メートルを除去しております。その後の継続調査によりますと、地下水中のトリクロルエチレン濃度に減少傾向が見られますものの、まだWHOの暫定ガイドラインを超える濃度で検出されているものもありますので、引き続き調査を継続している状態でございます。
  238. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 このトリクロルエチレン等の有機溶剤の廃液、これはどうなんですか。地下水に入っていく。井戸水なりあるいは地下水を利用している、そういったものを飲んだりしていくとどういうことになるのですか。何か発がん性の疑いとか、いろいろ聞いておりますけれども、どんなふうになるのですか。
  239. 小林康彦

    ○小林説明員 濃厚に汚染されております場合には発がんの可能性があるという報告がございまして、厚生省におかれまして昨年水道水に係ります暫定的な基準を設定され、指導されておるところでございます。私どももそれに従いまして地下水汚染防止のための指導を強化しているという状況でございます。
  240. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 洗浄用有機溶剤、トリクロルエチレン等に代表されておりますけれども、いわゆるこの有機溶剤の、まずこれはガスもございますし、それから液もございますし、いろいろでございますので、この廃液の処理はどのようになっておりますか。
  241. 小林康彦

    ○小林説明員 一般的にトリクロルエチレンを使用しております工場等では工場内での廃液の処理といたしましては曝気等の処理が一般的に行われております。それから極力回収をして再利用するというルートも開かれ、そのための処理の業も成り立っているというふうに承知をしております。
  242. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 今までこの有機溶剤に関連いたしまして、汚染の実態やら人体への影響やら対策というものに関して若干質問をさせてもらいました。  ここでちょっと整理しておきたいのですが、労働省といたしましてはフロンを有機溶剤の中に入れておりませんので、フロンを中毒の規制という面で入れてないのですが、別にこれは入れたから入れないからというその論議を言おうと思っているのではないのですが、このフロンの安全だと言われている中に実は、フロンを使用することによって――フロンガスは御承知のとおり空気より重いわけです。そうすると、例えば船底などでは、そういうところでフロンを利用して清掃作業をする。そうすると、フロンがずっと下へ沈んでいる。酸素の濃度というものが二一%以上でないと人体に影響がございます。一八%だ、一六%だと、こう下がってきたときには、もう一発で死んでしまうという例も幾つもあるわけですね。  そこで、このフロンに関して若干お伺いしておきますけれども、フロンガス、フロン113の特性というものはどうなっていますか。それから今言った安全性もあわせて……。そして、アメリカにおきましてもフロンの使用状況は相当ふえているように伺っておりますし、外国での利用状況なども含めて、フロンに関しての状況というものをまず御説明ください。
  243. 加来利一

    ○加来説明員 先生御質問のありました中の有害性の部分についてお答えしますと、フロン113につきましては、私どもの承知している範囲では、毒性は極めて少なく、のどに軽度の刺激を与える程度である、このように聞いております。
  244. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 アメリカで結構でございますが、フロン113外国での使用状況、日本は先ほど御説明ありましたように約三倍にふくれ上がっていますね。これまた相当利用しているわけですけれども、外国ではどうですか。
  245. 松井司

    ○松井説明員 まことに申しわけございませんが、日本の使用状況等は調べてまいりましたが、外国の生産量等、ちょっと私、今手元にございませんので、もしそういうものがございましたら、また御報告に参りたいと思っています。
  246. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 じゃ必ず報告してください。いいですか。もしじゃなくて、必ず報告してください。
  247. 松井司

    ○松井説明員 できるだけ努力いたしまして資料を整えたいと思っています。
  248. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 そこで、このフロンに絡んで、今最初に御説明いただきましたように、フロンには毒性がない。毒性が全然ないということは私どもまだ信用しておりませんが、確かに毒性が少ないということはわかります。これを利用しておる、先ほどアメリカのシリコンバレーの状況なりあるいはまた兵庫県の太子町の状況なりを説明していただきましたが、実はそれ以外に、安全だと言われたフロンを利用している、これも冷媒用あるいは洗浄用、幾つもございますね。御承知のとおりです。これが実は大変な事故につながっておる例というものを私ども調査によってキャッチいたしましたが、まず労働省、こういったものは、規則にもあるとおり、労働基準監督署にそういう事故というものは逐一報告があるわけでございますし、死亡例なども幾つもございますし、代表例で結構でございますが、どういうものが事故につながったのか、状況のまず大体の概略を全体的に説明していただいて、その中の幾つかのものをできるだけ詳しく説明してください。
  249. 寺園成章

    ○寺園政府委員 昭和五十五年から五十九年までの五年間にフロンによる災害として私どもが把握いたしておりますのは、酸素欠乏症といたしまして九件でございます。  災害の事例といたしましては、製造工業におきまして、フロン乾燥機の内部に落ちたものを拾うために乾燥機内部に頭を入れて被災をしたというのが、これは五十九年の例でございます。また、五十九年の例でございますが、冷凍運搬船の冷凍機の定期補修工事のため船倉に入ったところ、冷媒のフロンガスが漏えいをして被災をしたという例がございます。
  250. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 もうちょっと詳しく、その中で死亡が何人ぐらいあったのか、それから中毒が起きたのはどうだとか、あるいは吐き気、頭痛、腹痛等いろいろあるわけですから、もうちょっと詳しく説明してくださいよ。
  251. 寺園成章

    ○寺園政府委員 九件の事故で被災されました方は十三名でございます。そのうち死亡は六名、休業は七名ということでございます。御指摘の、被災をいたしました後の症状でございますけれども、手元に資料を持ち合わせておりませんので、調査をいたしまして御報告を申し上げたいというふうに存じます。
  252. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 今のこの九件をもう一度確認しておきますが、被災を受けた人が十三名の中で死亡が六名、それから中毒その他疾病、そういったものが七名。これは五十九年だけですか。これをもう一遍確認しておきたい。
  253. 寺園成章

    ○寺園政府委員 件数は五十五年から五十九年までの五年間でございます。件数としては九件でございますが、被災をされた方は十三名でございまして、十三名のうち死亡された方が六名、休業が七名という被災の状況でございます。
  254. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 そこで労働大臣、よく聞いておいていただきたいのですが、後でまたお伺いしますが、我が党が調査いたしましたフロン溶剤――先ほど有機溶剤の問題を何件か挙げていただきました。そして、今フロン溶剤に関して五十五年から五十九年の労働省がキャッチした分だけを御説明いただきましたら九件、九件の中で十三名が被災を受けた、その中で六名が死んでいる。大変なことですよ、九件で六名死んでいるのですから。これから何件キャッチしてくるか、今後の状況ではこの事故というものは見逃すことはできない。  そこで、我が党がいろいろと調査したものを、大臣、関係者の人に見ていただきたいのですが、委員長、よろしいでしょうか。――そこで、ちょっとごらんいただきたいのですが、「フロン溶剤事故についての状況」ということで、一番左に書いてあるのは件数です。全部で十九企業を当たりました。それから、その横に書いてあるのは調査した日です。それから調査企業、これは製造業なりサービス業なりに分けました。研究所あるいは建設業、それから先ほど労働省から御説明いただきましたものも一緒に含めました。  そうしますと、これをトータルいたしますと、十九件の中で製造業が十五件でございます。サービス業一件、建設業は一件、それから船倉一件、廃品回収業一件でございます。これで十九件。そして死亡は、そこにも全部書いてありますが、三名だあるいは二名だという件数のものもございますが、ちょうど先ほども説明がございましたけれども、例えば新入従業員が、フロン原液槽に物品を落とした、これをとろうとして頭を突っ込んだのですね。フロン原液槽に頭を突っ込んでこれをとろうとして酸欠死してしまっております。酸素がぐっとなくなってしまうのですから。フロンは重いんだから、空気が上へ行ってしまう。結局、酸素がほとんどないのか、そういう状況になる。そして今度はそれを助けようとした人が一緒に死んでいるんだ、これは。第三番目です。  大体のことを申し上げます、これは大事な問題ですから。時間の関係で全部はちょっと言えませんが、その代表的なことを申し上げますと、十九件の中で、今、二名死んだ、三名死んだあるいは一名死んでいった、こういうようなものを合わせますと――私ども調査権というものはございません。企業の中へ入って、そして全部教えてくれ、そんなことはできません。企業秘密の中で、いろいろな状況の中でキャッチしたものだけでこれを合計しますと、死亡十二名。あと中毒だ、頭痛、目まいだ、これはちょっと数えられません。それから、長い間こういうものを吸っている。そこで仕事をしているのですから期間が長いのです。これは無色無臭ですから、そのときは全然感じないんだ。フロンというのは無色無臭、何にも感じないのです。そうすると、知らず知らず吸っている間に慢性の肝臓障害、腎臓障害を起こしている例が私どもの調査でわかりました。  そこで、例えばナンバー一には、これは製造業ですが、フロン生産工程中、塩素ガスのバルブ故障、原液流出、作業員が三名死亡しております。四十日間操業を停止しました。それから、今申し上げました二名死亡。そして、全部は説明しませんけれども、例えば廃品回収業、これは廃船の解体作業において機関室内のパイプ等を取り外していて過って冷凍設備の冷媒、フロンガスの配管のバルブを開いて被災しました。死んでいきます。それから建設業、超音波洗浄機が設置されているピット内、これはその槽の中で水道工事を行っていたところ、槽の中に残留していたフロンにより被災いたしました。亡くなっていきました。それから、チェーンコンベアにより洗浄物を搬送している洗浄機内でチェーンが故障したため、洗浄機メーカーが修理のためフロン溶剤の入ったまま内部に入り点検補修を開始しましたが、間もなく内部で倒れました。そして救出後、病院に収容されましたが、亡くなってしまいました。私ども調べたものだけでも、こういうような実態でございます。  そこでお伺いしますが、労働基準監督署にはこの事故の報告は義務づけられておるでしょうか。そしてまた、報告は入ってきておるでしょうか、御説明ください。
  255. 寺園成章

    ○寺園政府委員 労働者労働災害その他事業所内での負傷等により死亡または休業いたしましたときには、事業者はその旨を所轄の労働基準監督署に報告することを労働安全衛生法において義務づけております。
  256. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 そうすると、労働省は、労働基準監督署よりこういう事故をどのように網羅し、そして集計し、その調査、今後の対策、こういったものをしていくためにどんな作業をしておりますか。
  257. 寺園成章

    ○寺園政府委員 法律によって義務づけておりますことは先ほど申し上げたとおりでございますけれども、休業を要する中毒、配乗欠乏による災害等が発生いたしました場合には、所轄の労働基準監督署がその原因等の災害調査を行うことといたしております。先ほど御報告をいたしましたフロンの災害につきましても、この報告、それから災害調査に基づいて当方が把握したものでございます。
  258. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 あなたは先ほど九件キャッチしたと言っておりますが、私は十九件調査いたしました。これがちゃんと情報をキャッチしておる役人の、国民からその安全を任されて、そうして情報というものをきちっとキャッチし、データを出して今後の対策を立てようというものが、この九件というのはどういうことですか。矛盾しているじゃないですか。
  259. 加来利一

    ○加来説明員 先生からいただきました資料につきましては、後ほど私どもの方と詳細に突き合わせをしたいと思っておりますが、休業しなかったものにつきましては報告が来ておりません。それから塩素ガスのものにつきましては、フロンではないのではないかと考えられますので、それは外れているのではないかと思います。
  260. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 塩素ガスでもあるいは有機溶剤の問題も、すべてを私は最初に入れました。今労働大臣によく聞いておいていただきたいと言ったことは、一番最初に御説明いただいた有機溶剤、これでも何人かの人たちが亡くなっていますよ、今報告いただきました。そして、このフロンに関して報告してくださいと言ったら、六人死んでいますよ、九件ですよと言いました。私どもといたしましては、全部調査していただきたい、そうしてこれの対策をお願いしたいわけでございます。  そこで、この取り扱いについて、産業医の方あるいは企業側への指導監督、これは必要でございますけれども、まず慎重に現場の工事作業者の健康管理、事故の予防に力を入れてこそ初めて労働者を守っていく労働省としての使命というものが果たせると思いますけれども、大臣、この問題は非常に重要な問題でございます。まず最初に、今まで論議を聞いていていただいて、労働大臣の御所見をお伺いしておきたいと思います。
  261. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 竹内先生が先ほど来からお取り上げいただいておりますフロンガスに伴ういろいろな労働災害等の懸念の御指摘がございました。まさに先生がただいま御指摘いただきましたように、労働省としては、労働者の健康の確保、これはもう我々の行政の重要課題でございまして、特に労働安全衛生法により、フロンを含め一定の化学物質等については設備の整備、健康診断の実施、作業主任者の選任等の対策を今日までも推進をしてきているところでもございますし、今後、職業性疾病の予防のための第六次労働災害防止計画に基づき作業環境管理、作業管理及び健康管理を総合的に進め、職場における労働者の健康の確保を図ってまいりたいというふうに考えますし、ただいま先生の御指摘の問題等につきましても、報告に基づきやはり調査をする必要もある、かように考えております。
  262. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 ぜひ実態調査していただきたいと思います。  これらは、今御説明いただいたような、九件でそして六人死んでいきましたというような、そんなものではございませんし、私どもが調査しただけでこういうような事態が起きておるということを御承知いただくのと、それから、時間でございますが、もう一点だけここでお願いしておきたい点は、例えば労働安全衛生施行令の中に別表第六「酸素欠乏危険場所」がございますが、その中で十一として「ヘリウム、アルゴン、窒素、フロン、炭酸ガスその他不活性の気体を入れてあり、又は入れたことのあるボイラー、タンク、反応塔、船倉その他の施設の内部」、このようにその具体例を出しておりますけれども、実は、今私が申し上げておるのは「その他の施設の内部」へ入るのですよ。密閉されておるタンクだ反応塔だ船倉だ、こういうものは注意できるんです。ところが、先端技術、ICだあるいは半導体工業だ、いろいろなもので作業していく、そういう中におきましては、そこで人間が一緒になって仕事をしているのです。フロンガスと一緒になって仕事をしているのですよ。いいですか、したがって……
  263. 戸井田三郎

    戸井田委員長 竹内委員に申し上げますが、重要な問題だと思いますが、お互いの申し合わせ時刻も過ぎておりますので、ひとつ結論を急いでいただきたいと思います。
  264. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 そのものがございますので、ぜひひとつ、この「その他の施設」というようなその取り扱いの中でこの規則を見直していく、そういったものも含めて御検討をお願いしておきたいと思いますし、それと、今労働大臣が調査も含めて検討すると申されましたけれども、その調査をどういうように具体的に行っていく考えなのか。この見直しと、それから調査の問題とをあわせて御答弁いただきまして、私の質問を終わります。
  265. 寺園成章

    ○寺園政府委員 規則におきましては、具体的な規定を置きながら「その他の施設の内部」というような規定をいたしております。事柄の性格として、全部書き切れないときには法令としてこのような規定をする例が多いわけでございますけれども、いずれにいたしましても、「その他の施設の内部」ということが明確でないということは問題でございますので、現在も「その他の施設の内部」というものはこういうことであるということを通達で明確にいたしておるところでございます。  また、実態調査の件でございますけれども、まず監督署に対しての報告の義務づけが義務づけどおり履行されるということが最も重要でございますので、報告の提出の徹底を図りますとともに、その報告に基づきまして実態を今後とも十分把握してまいりたいというふうに考えております。     〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席〕
  266. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 終わります。
  267. 浜田卓二郎

    ○浜田(卓)委員長代理 次に、塩田晋君。
  268. 塩田晋

    ○塩田委員 私は、労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律案につきまして、山口労働大臣並びに関係の局長に御質問を申し上げますので、お答えをいただきたいと思います。  この法律は、言うまでもなく職業安定法と相まって労働力の需給の適正な調整を図るために労働者派遣事業の適正な運営確保するということが一つの目的であり、また派遣労働者の就業に関する条件の整備を図り、それによって派遣労働者雇用の安定と労働福祉の増進に資する、これが目的であるということは理解しておるところでございます。近年における産業構造あるいは職業の大きな構造変革に当たりまして、早期にこの法律成立させなければならないという要望が各方面から寄せられておるわけでございまして、本日の午前中に参考人から意見をいただきました。ほとんどの方が早期成立を望んでおられました。その要望は全国的に広範であり、また強い要望であるというふうに受けとめたわけでございます。  そこで、この法案がどうしてもこの時期に必要であるというその必要性、これについて労働大臣から御説明をいただきたいと思います。
  269. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 やはり日本の雇用関係というものは終身雇用、こういった形態が主流をなしておるわけでございますし、今後ともこうした状況が維持されるということが日本の労働市場立場から考えまして非常に大事なことだという認識に立っておりますが、御承知のとおり非常に多様的な時代でございます。それぞれ労働者の持つ技能あるいは長所、特異性等を考えましたときに、企業に就業するときの労働者側の選択やニーズ、また使用者側のそうしたものをまとめて、また時代に適合する職場の拡大、確保、そういう中で派遣的な事業形態における雇用関係というものが年々増加をしておるということは先生御承知いただいておるところでございます。  そういう中で我々は、高齢化時代あるいは技術革新の時代、さらには女性の職場進出というものが極めて積極的に拡大しておる今日におきまして、何としても今日までと同じような雇用市場の安定維持、また拡大に努めていかなければならない、かように考えておるわけでございます。そういう社会的変化に対応しながらも、日本の労働者雇用市場の安定確保、拡大ということに努めるという中で、いわゆる派遣事業に参加しておる労働者あるいは企業側に対して、通常雇用の企業形態雇用関係と同じような労働者の福祉、生活権の確保労働条件整備等に努めていく、こういう一つの取り組みの中で、いろいろ審議会等の御意見を承りながら派遣事業法の取りまとめを行いまして、国会で先生方にいろいろな角度から御審議、御批判をちょうだいしておる、こういうところでございます。
  270. 塩田晋

    ○塩田委員 二月に出されました中央職業安定審議会の答申の本文におきまして、これを「おおむね妥当」という主文がございますが、しかし労働者の中の一部の方の御意見として、賛成しがたい――反対という言葉は出ておりませんが、賛成しがたい、消極的な反対の意思表示があったと見えまして、その旨が主文の中にも書かれております。その反対の根拠、これもきょうの参考人からもお聞きをいたしましたし、心得ておるところでございますが、やはり心配されますのは、日本の雇用慣行、特に終身雇用制を中心とした雇用関係、これが日本の経済の発展の大きな原動力の一つであったという認識の中におきまして、このような派遣事業というものが一般化してくる場合に、雇用関係にかなり大きな影響を与え、また経済発展にも響くのではないか、こういう御心配の節があったように思います。  そこで、現在の職業安定法節四十四条の労供の禁止規定、ただし書きがございますけれども、これを基本にしながら、現在職業安定法にございます制度、すなわち、この種のものを有料の職業紹介、民営の職業紹介事業、いわゆる民間活力の導入、活用によりましてこういったものを行うことができなかったのかどうか、この点についてお伺いいたします。
  271. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 この派遣事業という形態のものが既存の労働力需給システムでうまくできないのか、こういうことでございますが、例えば一番近いものといたしまして民営職業紹介事業というシステムがございますが、こういう派遣労働者のいろいろなニーズなりについての関係でまいりますと、民営職業紹介所の場合には、自分の好きな時間あるいは日に働きたいという求職者のニーズに対してきめ細かに迅速に雇用機会を確保していく、こういう面ではやはり一つ難しい問題があるではないか。それからまた、求職者について専門的な職業能力を開発向上していくというような点について、職業紹介という面ではずばりそのニーズに適応した形での技能開発という面でやや難がある。  それから、最も問題がございますのは、職業紹介の場合にはこういう細切れの就業というものを幾らつなげても保険の適用という形がなかなか難しゅうございますが、派遣形態の場合にはうまく細切れの仕事をつなげてずっと常用的な形にいけばこれが社会保険の適用が可能になるというような利点が一つあるわけでございまして、こういったような点が既存の労働力需給システムの中では必ずしもうまくいかない、また派遣事業と同じような程度においてこういったものを実現することが難しいというような中で、新しくこういう派遣形態を一定のルール化した上で認めていこうというところが一つ基本的な考え方でございます。
  272. 塩田晋

    ○塩田委員 次に、この派遣労働者につきましては派遣先労働条件、ここに不安がある。いろいろと問題が起こるのではないか、それが雇用の不安定ということになるのではないか、こういう御指摘も反対論の中にあったと思うのです。そして、苦情処理という形でいろいろな問題を処理していくということにはなっておりますけれども、それを徹底させるためにはある種の交渉権を認めてはどうか。これはまた当然労働協約の締結の問題にもなろうかと思いますけれども、雇用主と使用者、直接指揮命令をする者とが離れるというところに問題があるのではないかという御懸念が出ておりました。これらにつきまして、そういった形は、すなわち交渉権等を認めることは我が国の労働法制上なじまない、基本的な変革を迫るものだ、これには賛同できないという御意見もけさほど出ておったところでございますが、労働省としてはこれはどのようにお考えでございますか。
  273. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 現行の労働組合法上の使用者というのは労働条件の決定をめぐる当事者であり、雇用関係上の使用者を意味するものでございまして、この労働条件決定の当事者たる雇用関係上の使用者だけが団交権を負うものと考えておるところでございます。派遣先労働者について雇用関係を持ち、それから派遣労働者労働条件を決定する立場に立つのは法的にもあくまで派遣元の事業主でございます。したがいまして、労働条件を決定するための団体交渉は派遣元事業主と派遣労働者との間において行われるものでありまして、これを通じて労働条件の維持改善が図られると考えておるわけでございます。  なお、具体的な苦情処理的な問題につきましては、派遣先におきましての苦情処理の責任者を置く、あるいはまた派遣元におきましてもそういう苦情処理の責任者を置くということを義務づけておりまして、こういう就労に伴います日常的な苦情処理問題については、そうした苦情処理責任者間における連絡調整という形の中で具体的な解決が図られるような仕組みも加えておるところでございます。
  274. 塩田晋

    ○塩田委員 この問題は非常に重要な問題を含んでおると思いますし、また過去の判例におきましてもいろいろと議論が出ておるところでございます。そして、この法案によりまして交渉権があるのは派遣元である、団体協約も派遣元である、そこでの労働条件明確化ということが明記されておりますので、法律上は割り切っておられると思うのです。  現在の労働法の体系からいってそうしなければならないというところから来ていると思いますが、なお裁判個々のケースにつきましていろいろな判例もあるし、また今後とも問題が出てくる問題じゃないかと思いますので、この辺はなおよく問題として御検討をしておいていただかないといけない問題ではないかと思います。  次に、派遣店員という言葉を御存じだと思いますが、同じ派遣という言葉ではございますけれども、いわゆる派遣店員と言われておりますものはこの法律上の労働者派遣、すなわち「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させる」、この定義とは違うものだと思いますが、この間の実態法律的な関係をどう見ておられるかお伺いいたします。  いわゆる派遣店員というのはデパート、スーパー等でよく見かけるわけでございますが、ここでは今現に重要な役割を担っていると言われておりますアパレルあるいは家電、また食品など数十万の労働者がいると言われておりますけれども、これについてお伺いいたします。
  275. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 派遣店員は大きく分けまして二種類ございまして、一つは食品、繊維関係の販売促進のために製造卸業者から百貨店などに派遣される販売店員、これが卸売業者に派遣店員要員として直接雇用される派遣店員、それから民間の有料職業紹介所から紹介を受けて雇用されるマネキン、この二種類がある、こんなふうに見ておるわけでございます。  それで、この派遣店員についての法律上の概念等がはっきり定義されているわけではございませんのであれでございますが、そういう意味で明確な数字の把握はいたしておりません。例えば五十九年三月末現在でマネキンの有料職業紹介事業を行う紹介所が全国に三百五十四あり、その求職登録者数は約十万人という数字に上っておりまして、このうちの約半数が繊維関係に従事をいたしております。またアパレル業界では二十万人以上の派遣店員がいるというふうに言われておりまして、そういう意味では分業界では数十万人の労働者派遣店員という形で就労しておるのではないか、こんなふうに見ておるわけでございます。  この派遣店員は、今御指摘ございましたように、少なくとも建前としては卸売業者が雇用をいたしまして、あくまでデパートのある一角において自社の仕事をするというふうなことでデパートからの指揮命令を受けないという意味において、あくまで自社の事業所がそこへ行っておる、あるいはまたそのものの販売をあくまで請負ってやっておるというような形になっておると思いますが、そういう派遣先のデパートからの指揮命令的なものを受けるような実態もあるというようなこともいろいろ伺っておりまして、そういう意味ではいろいろ問題のある実態を今後とも解明していかなければならぬだろう。私どもあえて言えば、そういうあくまで請負なら請負、そして雇用した人があくまでそこへ行って自分のまさに店のために働いているという形においてむしろ徹底をすべきものではないだろうか、こんなふうに考えておるわけでございます。
  276. 塩田晋

    ○塩田委員 派遣店員につきまして、今局長が説明された有料職業紹介事業によるものは一応おきまして、メーカー等から事実上派遣されている場合、また本社に雇用されている者がその出店としてデパートなりスーパーで働いておる場合、いろいろなケースがあると思うのです。言うならば、基本的にはメーカーなりあるいは本社に雇用されている労働者の勤務先が指定された先であるということですね。これも配置がえなりあるいは出張販売のような形になっておると見て差し支えない場合もあると思います。  しかしながら、今局長から御説明ありました中にも問題は確かにあるということを言われておりますのは、労働条件の面で極めて不安定な状況にあるという実態があるわけでございます。  例えば残業の場合に、実態として実際の残業の指令をするのは派遣先、例えばスーパーならスーパー、デパートならデパートで残業の指示をする。一般の店員と一緒に並べて同じようにという趣旨だろうと思うのですけれども、各派遣元、本社あるいはメーカーから言うと、短い労働時間であるけれども、そこへ行っておればさっさと閉めて帰るわけにいかぬ、一斉に閉めるまでは働いてもらいたいといったことで、残業がそこで指示される、合わせなければならない、こういう事態が起こっておる。労働時間の問題、これは場合によっては基準法の三六協定等法律違反の問題も起こっておるケースがあるわけでございます。  また、これは基準法等の関係、直接はないかもしれませんが、本社なりメーカーなり派遣されている元から言われるならば、これはそれぞれの関係があるわけですから指揮命令に従うということに一般的になろうと思うのですが、出先の店での横並びで朝礼にも出て、また販売の消化目標、そういったものを指示される。精神的、経済的にかなり負担が出ておる。具体的に申し上げますと、雇用の不安定、労働条件のいろいろな面での問題が出ておる、こういうことでございます。こういった問題についてどのようにお考えでございますか。
  277. 寺園成章

    ○寺園政府委員 派遣店員の法律的な位置と申しますか法律関係につきましては、先ほど安定局長から御説明をしたところでございます。したがいまして、派遣店員の労働条件雇用主である派遣元の事業主との間ですべて決まる、派遣元事業主の責任のもとで履行をされるべきものである、法律関係ではそうなろうかと思います。また、派遣店員の就労も派遣元事業主の指揮命令によって行われるものでありますから、本来、労働条件は明確であると考えられるわけでございますけれども、派遣元事業主と派遣先事業主との関係によっては先生御指摘のようにいろいろな問題を含んでおるかと思います。  いずれにいたしましても、労働条件明確化していくことは大変重要なことでございますので、その点について意を用いてまいりたいというふうに思います。
  278. 塩田晋

    ○塩田委員 かなり深刻な問題として各方面で問題が起こっておるということを御認識いただきたいのでございます。そういった問題につきましては、労働条件明確化、これは当然のことであり、かなりできておるものは多いと思うのですが、問題は派遣期間とか就業時間とか勤務場所、出勤、退勤の管理、あるいは先ほど言いましたように販売の消化金額を押しつける、そういうことのないようにとか、ある場合にはどうするとか、そういった派遣に際しての派遣契約書を明確に作成をして、そして当事者がそれをしっかりと認識する、また、それには労働者意見ももちろん入るという形で派遣契約書を作成すべきだと思うのでございますが、いかがでございますか。  ゼンセン同盟の本年三月の調査によりましても、この派遣契約書を作成したものは半数以下の四八・九%という調査結果も出ているわけでございまして、なかなかその辺が明確にされてない、こういう問題がございます。いかがでございますか。
  279. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 この派遣法が制定をされますと、建前としては少なくとも、この派遣店員という表現は法的に何かちょっと派遣労働者と紛らわしいので誤解を招くかと思いますが、実態から言えば、デパート等の一定の売り場のコーナーを借りておりまして、その借りた自分の店へいわば出張してそこで業務をやる、こういう性格のものでございますので、あえて言えば出張店員という性格のものであろうかと思うわけでございます。しかし、そういういろいろな製造業者から出張してきておる店貝が同じところにたくさんいるということに伴いまして、そういう始業、終業の時間であるとか休憩時間等々、その辺についてはある程度連携関係も要るかと思うわけでございます。  そういう意味で、こういう派遣店員と言われておりますものについての実態について私どもも今後よく調査をいたしまして、そういう派遣店員と言われております方々についてのそういう就業条件明確化問題を含めまして調査し、これらの改善に努力していかなければならぬ、こんなことを特にこの派遣法との絡みで考えておるわけでございます。
  280. 塩田晋

    ○塩田委員 ぜひとも派遣契約書を作成いたしまして契約関係を関係者が明らかにするということにつきまして、強力に行政指導を進めていただきたいということを要望いたしておきます。そしてまた、今言われましたように、実態調査を進めるようにお願いをいたします。  これはいわゆる派遣店員でございまして、派遣事業法が成立いたしまして動き出しましても、この派遣店員と言われるものにつきましてはこの法律の規制対象外になりますので、紛らわしい表現ではありますけれども、この規制の対象外になるというものにつきまして、行政指導その他必要な手を強力に打っていただきますように要望を強くいたしまして、この問題は終わりたいと思います。  次に、労働者派遣事業法案の関係でございますが、海外、欧米諸国におきまして、主要国でよろしいんですが、労働者派遣事業法はどのような制度として制定をされ、また、実態として運用されておるか、主なものにつきまして御説明をお願いいたします。
  281. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 欧米主要国におきます労働者派遣事業に関する対応につきましては、各国の事情等によってさまざまでございますが、国によりまして、全然規制していない国から全面的に禁止している国までございます。  例を申し上げますと、アメリカは全く規制をいたしておりません。それから、イタリア、スウェーデンは全面的に禁止しております。その間に、一定の規制のもとで認めている国が大部分となっておりまして、その規制につきましても、西ドイツはかなり厳しい規制をとっておりますが、イギリスは比較的緩やかな規制をしておるというような状況でございます。  規制の概要を申し上げますと、まず事業規制につきましては、許可制を採用しているのがイギリス、ベルギー等でございまして、フランスは届け出制をとっております。  それから、派遣事業の対象となります職業または業務につきましての制限につきましては、一般的には規制をしておりませんが、ベルギー等におきましては、建設業等の一部に制限等がございます。  それから、契約の内容につきまして申し上げますと、まず派遣元事業主と派遣先事業主の間では、派遣先において従事する業務の内容、就業場所、労働時間等の事項について定めることになっておりますし、また、派遣元事業主と派遣労働者との間では、賃金、就業時間、就業場所等について書面で契約を締結するということを定めております。それから、今回の派遣事業法案にも規定しておりますように、争議行為中の派遣先事業所に労働者派遣をすることは各国とも禁止しているという状況でございます。  そのほか、賃金水準につきましては、フランス、ベルギーにおきましては、派遣先の同種の労働者の賃金を下回ってはならないといったような賃金規制をしている国の例もございます。  そのほか、派遣事由につきまして、フランス、べルギー等において一定の理由に限っているというような状況等がございます。  以上でございます。
  282. 塩田晋

    ○塩田委員 外国の状況につきましてかなり詳細に調査をして今回の法案を作成されたという御努力に対しまして敬意を表するものでございますが、まあ外国の法制は法制としてはつかまえやすい面もあろうかと思うのですが、実態がなかなか把握しにくい面があって御苦労されたと思うのです。今御説明ございましたのは、大体法制度としての御説明だったと思うのですが、実態はなかなか難しいでしょうが、わかる限りひとつ御説明いただきたいと思います。
  283. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 これらの派遣事業制度の運用の実態につきましては、必ずしもデータが得られませんので正確ではございませんが、私どもが把握しましたところで要約申し上げますと、まず派遣元事業所につきましては、イギリスにおきましては約五千事業所、フランスにおきましては二千八百事業所、西ドイツでは千事業所と調べております。  また派遣先事業所につきましては、フランスにおきます派遣先事業所割合について従業員の規模で見てまいりますと、五百人以上の規模の企業のうち約六〇%、また十人以上の事業所全体のうち約一二%を占めておるというふうになっております。  また派遣先事業所の産業別の特徴を見てまいりますと、製造業、建設業等の産業の事業所におきまして派遣労働者を使用している例が多いように把握しております。  また西ドイツにおきましては、派遣先事業所が約三万一千事業所ございまして、産業別には製造業が約過半数、その他サービス業、建設業等が多くなっております。  フランスにおきましては、派遣期間について調べたデータがございますが、これによりますと、平均派遣期間は二・二週間になっているという状況でございます。  また派遣労働者の数でございますが、フランスにおきましては約十一万人、西ドイツでは二万人、ベルギーでは一万人という状況でございまして、労働力人口に占める割合はかなり低くなっている状況でございます。     〔浜田(卓)委員長代理退席、稲垣委員長代理着席〕
  284. 塩田晋

    ○塩田委員 今フランスにおきまして派遣期間が二・二週間という御説明でございました。これはフランスにおきましては、あるいは西ドイツもそうだと思いますが、法制上一定の派遣期間の規制をしているというふうに聞いております。六カ月くらいですか。
  285. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 派遣期間の制限につきまして、フランスでは六カ月でございます。それから西ドイツでは三カ月に制限されておりますが、なお最近西ドイツでは派遣労働者雇用の安定という観点もありまして、ことしの五月一日から昭和六十四年末まで派遣期間を六カ月に延長する予定であるというふうに聞いております。
  286. 塩田晋

    ○塩田委員 かなりよく調べておられると思いますが、賃金水準につきましての規制というものはどのような状況でございますか。
  287. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 先ほど制度のところで申し上げましたように、派遣先の同種の労働者の平均賃金を下回らないようにするという制度を設けておりますのが、フランスやベルギーでございます。  この派遣先労働者の賃金との比較をしているという事情につきまして、今回の派遣事業法におきましてはその点の規定を設けておりませんが、その点につきまして御説明させていただきますと、ヨーロッパ等の場合は社会的に職種概念が確立しておりまして、それぞれ職種ごとに統一的な賃金設定がされるシステムがあるという状況のもとにおきましては、派遣労働者派遣先の同種の労働者との賃金の比較が可能になる状況にあるのに対しまして、我が国の場合は、御存じのように一般的に企業内における労使交渉で賃金が決定され、しかも年齢、学歴あるいは勤続年数等が現在においてもなお比較的高い決定要素となっているという違いがございます。そういう意味で、ヨーロッパの場合は派遣先における同種の労働者との賃金の比較等が行われている例があると理解しております。
  288. 塩田晋

    ○塩田委員 今回のこの法案と比べまして、欧米諸国の業種あるいは職種の限定の仕方ですね、日本の場合は十四とか十三とか、職業安定審議会の意見を聞いて定める、例示としてはこれこれというのを示されておりますけれども、アメリカの場合は、御説明ありましたように、フリーですからどんどんどこでもやれる、こういうことですね。規制がない。規制の厳しいところは禁止している。スウェーデン、イタリア、こういったところは全面禁止ということでございます。その間に散らばっているわけですね。職種、業種の限定という点では日本とどう違っておりますか。
  289. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 派遣の対象業務につきましては、西ドイツ及びベルギーにおきまして一部の職種が制限されているほかは制限がないというのに対しまして、今回の派遣事業法案におきましては対象業務の限定というところに違いがあるわけでございます。この点につきまして、欧米諸国におきます派遣労働につきましては、イギリスの場合は有料職業紹介事業と同じ法律の中で規定されている。あるいはフランスの場合は一時的な労働に関する規制という観点から定められている。あるいは西ドイツの場合は労働力供給法という法律に基づいているわけでございますが、そういった一部におきましては、一時的な労働力の充足という観点がヨーロッパの場合には比較的あることによりまして、対象業務につきましては西ドイツ、ベルギーのほかは制限がない。日本の場合は、従来の労働者供給事業の規制のあり方の観点から今回の派遣事業の制度化という発想が出てきたことと、もう一つは、常用労働者を中心といたします雇用慣行との調和という意味から派遣事業の適用対象業務を限定するという点でヨーロッパの制度の場合と違うように理解しております。
  290. 塩田晋

    ○塩田委員 東南アジアあるいはアフリカ、中近東といった地域は把握しておられますか。
  291. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 遺憾ながら把握しておりません。
  292. 塩田晋

    ○塩田委員 現在、日本の労働者を事実上派遣事業として海外に派遣されているケースがあると私は聞いておりますが、東南アジアあるいは中近東を含めてあると思うのですが、どのように把握しておられますか。
  293. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 最近日本の企業の海外活動が活発になりまして、日本企業の在外支店等における赴任あるいは日本系企業への赴任等がふえてきていることは承知しておりますけれども、それが企業内における配置転換等の形で、出張という形で行われる場合もございますし、あるいはその海外支店への就職という形で行く場合もございますでしょうし、あるいは、私どももまだ把握しておりませんけれども、派遣という形のものも否定はできませんけれども、実態として把握しておりませんけれども、そういう実態もあるのではないかと想像いたしております。
  294. 塩田晋

    ○塩田委員 まだ今のところ想像の範囲を出ていないということでございますから、これはその実態把握をよくしていただきたいと思います。なぜかといいますと、この法案の中身を拝見いたしまして、今言われたように、海外へ本社あるいは本店からの配置がえといいますか、出張あるいは在外勤務という形のものであるならば、これはまず余り問題はないということも考えられますけれども、海外の法人あるいはジョイントベンチャーで現地と一緒に企業をやっているそこに人材派遣という形で国内と同じような人材派遣が行われるということについて、これを禁止する規定はこの法律にないわけですから、これは当然行われますね。この点はどうですか。
  295. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 今回の法案におきまして海外への派遣を明文上禁止している条項はございません。その理由といたしまして、海外で従事することを希望する労働者が最近ふえてきているというようなニーズもございますので、一律に規定で書くのはいかがかという観点もございまして、今回の法文の中には入っておりません。しかし、海外での就労につきましては、労働条件をめぐるトラブル等がございましても国内の関係行政機関がその派遣労働者に対する保護等の必要な救済措置がとり得ない状況でございますので、海外への派遣につきましては派遣労働者の保護という観点あるいは就労をめぐるトラブルの起きるのを防止するという観点から、できるだけ事前に防止するような手だてというものを考えていく必要があるのではないかと思っております。
  296. 塩田晋

    ○塩田委員 そこは非常に重要な点でございまして、国内の場合には労働基準法等の使用者責任明確化することになっておるし、派遣先でなければ履行の確保が困難な労働時間の管理あるいは労働者安全衛生確保あるいは労働福祉の問題等々、派遣先の事業主に使用者責任を負わせることが国内ではかなりできるわけです。  ところが、海外に派遣されて、現地ではどういう基準法なり国内法があるかわからない。そこで今申し上げたような労働条件確保について、行政指導の手も及ばなければ確認もできない、こういう事態が起こると思うのです。思い切ってこれは禁止というような規定を設けられてはいかがでございますか。     〔稲垣委員長代理退席、浜田(卓)委員長代理着席〕
  297. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 先ほど来御説明申し上げましたように、派遣形態で海外への就業を希望する労働者がいるという状況にかんがみますと、一律に禁止することはいかがかと考えておりまして、現在の御提案しました中には法文として定めておりませんけれども、先ほど申し上げましたような海外へ派遣される労働者の保護という観点から、例えば派遣元事業主が海外の事情に詳しい人であること等、海外に派遣を予定する派遣元事業主に対して何らかの通常以上の労働者保護のための手だてを講ずるような措置を運用上考えていくということで処理していくことができるのではないかと考えているわけでございます。
  298. 塩田晋

    ○塩田委員 この問題は今後起こり得るし、起こればどんどん広がるかもしれない、こういう問題だと思うのです。これにつきましては、海外への労働者派遣を禁止するという規定を設けることができなければ、今言われたような何か歯どめをこの法律の中に設ける必要があると私は考えます。これにつきまして、なお検討をお願いしたいと思います。  それから、海外に対してそういった労働者派遣ができるということです。国際関係は相互主義で、特にアメリカは全く自由で人材派遣事業会社があるわけですから、これが日本にどんどん入ってくるということも原則的にはできると考えなければいけないわけですね。その場合に、届けなり規制はどうするか。入国管理法でこれを一々チェックするということも考えられますけれども、入国管理法の関係を調べてみましても、「本邦で貿易に従事し、又は事業若しくは投資の活動を行おうとする者」についてはフリーに入ってこれるという規定もあり、その他技術、技能あるいは熟練の者についてはかなり入ってこれる状況があるわけです。  「産業上の高度な又は特殊な技術又は技能を提供するために本邦の公私の機関により招へいされる者」も入ってこれるという状況ですから、今後起こる問題として、こちらから派遣して出る、と同時に向こうから、海外からも入ってくるということを考えておかなければならない。そういったケースが多くなれば、これに対して法規制あるいは行政指導でどのような歯どめをするかということについてもっと検討して、必要なものは修正なり改正を行うとか、そういうことが必要だと思うのです。  大臣、この法律案は見直しの規定というのが入ってないのです。こういったいろいろな問題がありますし、どのような事態が起こるか、我が国の雇用慣行に大きな変化をもたらすと言われるような問題でございます。また、中央職業安定審議会の答申の中にも、審議会自体は三年くらいで見直すということを言っておるわけです。法律の中にはないのですが、これを見直すという規定はぜひとも入れるべきではないかと思いますが、いかがでございますか。  まだまだいろいろな問題が起こります。第二人事部になるような形にならないか、あるいは雇用の調整策として労働者派遣事業が活用され、場合によっては悪用されるのではないかといった懸念もいろいろありますので、こういった点をなお検討し、また法律施行、運用状況を見ましてこれを見直すという規定を私はぜひとも設けるべきであると思いますが、最後に大臣にお答えいただきたいと思います。
  299. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 派遣法は派遣法としてこれを制度化することによって雇用慣行でございますとか労働市場にどういうような影響を与えるか、そういう実情を踏まえながら一歩一歩前進、改善をしていくということはもう当然のことでございまして、我々もその点は十分考えるべきであるというふうに認識をしておるわけでございますが、この法案法案としてぜひ御審議、御理解をいただければ大変ありがたい、かように考える次第でございます。
  300. 塩田晋

    ○塩田委員 ぜひともよろしくお願いします。ありがとうございました。
  301. 浜田卓二郎

    ○浜田(卓)委員長代理 次に、浦井洋君。
  302. 浦井洋

    浦井委員 我々はこの法案成立を断固阻止ということでありますが、もしこれが成立して施行されますと、少々修正されても、今派遣されておる派遣労働者労働条件が向上して労働者保護、これは労働省の任務ですから、労働者保護がより進むと思われるかどうか、まず山口労働大臣に聞いておきたいと思います。
  303. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 この法案を制度化させていただくことによって派遣労働者労働福祉、労働条件改善にもそれなりの役割を果たす、こう確信をしておる次第でございます。
  304. 浦井洋

    浦井委員 それなりの役割を果たすと言うても、これはプラスとマイナスがあるわけですから、マイナスの役割を果たすということも山口労働大臣としては危慎をされておるのではなかろうかとその発言を受け取っておきたいと私は思うのです。  そこで、労働条件が向上して労働福祉に何がしかの変化が起こるというのですが、一番の問題はやはり賃金問題だろうと思います。こういう法案をどこかがつくってくれということでやいやい言うて労働省はこういう法案を出されたんでしょうけれども、これは、読めば読むほど派遣元というのはもうかるんでしょうね。もうかると言うたら変な表現ですが、かなりな利潤があるんでしょうね、どうですか。
  305. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 企業として現在行われておるものでございまして、これはもうかっているところも余りもうかってないところもあろうかと思います。
  306. 浦井洋

    浦井委員 今、委員が何人おられますか、夜遅くまで無理やり審議を詰めてわざわざこういう法律をつくる必要はないと私は思うわけです。  これは余談でありますけれども、要するに、この法案の根本は、派遣元労働者派遣して、その労働者が働いた対価というか料金として派遣先から派遣元がお金をもらうということなんです。派遣元というのはもう全くと言ってもよいほど生産手段は持っておらない。要る費用というのはごくわずかな必要経費だけで、派遣しておる労働者に賃金みたいなものをとにもかくにも払えばあとは全部利潤になるのと違いますか、どうですか。     〔浜田(卓)委員長代理退席、稲垣委員長代理着席〕
  307. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 派遣元派遣労働者との間で賃金を幾らにするかは、この労使で決められるというものでございます。そして派遣先派遣元との間で幾らでこのサービスを提供するか、こういうことで、これはまた一つの取引としてなされるわけでございます。そういう意味におきまして両者は直接関係をするものではございません。あとは取引においてどううまくサービスを高く売るかということはあると思います。  ただ、いろいろ業種によって、業務によって違いがあると思いますが、例えばきょうの午前中の例にございましたように、その派遣労働者を十分に能力の開発訓練をいたしまして、そして常にまたリフレッシュしながらやっていくというようなことなどは、やはり一つのまたそれなりの費用というものはかかっておるというような説明はあったわけでございますし、それからまた、そういういわば派遣先確保する、あるいは見つける、そういうような関係等についてもまたそれなりの費用はかかるというようなものはあるわけでございまして、何といいますか派遣先からもらう料金と賃金との差額がすべて全く丸もうけだというようなものでは必ずしもないというふうに思います。
  308. 浦井洋

    浦井委員 必ずしもないと言ったらやはりあるわけでしょう。ピンはねそのものではないかと私は思うのです。加藤さん、いろいろなことを言われるわけですけれども。  現に、電算労という労働組合労働者のお話でありますけれども、派遣先は六十万払っておるのに労働者は二十万しか受け取っておらない。四十万も派遣元は要るんですかね。  それから、これは先ほども出ておりましたけれども、観光労連に加盟しておる派遣添乗員、その派遣先である旅行会社は一人一日二万円前後委託料として払っておるわけなんです。ところが、実際に派遣されておる労働者の賃金は七千円からせいぜい一万円ぐらいだろう、こういうちゃんとした数字もあるわけなんですよ。  だから、少なくとも今有料の職業紹介があるように、周旋料なりあっせん料なりというようなもので、それでその上積みをしてそれの上限を決める、せめて法案をつくるならそういう法案を出してきたらどうですか。これは提案ですけれども、どうですか。
  309. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 繰り返しになりますが、賃金を幾ら払うかというのはその労使の間で決めるものであり、それから、取引先から幾らで契約するかというのはあくまで一つの市場原理等によりまして、また取引のいろいろ交渉によって決まる、こういうものでございまして、これは直接関係があるものではないわけでございます。  問題は、こういう職業紹介の場合のように、相手から、紹介先から賃金が労働者に払われる、その賃金の中から幾ら手数料をもらうか、こういうものは、これは法律でぴしっと決めておかなければ、まさに基準法六条の中間搾取になるわけです。そういう意味で、法に定めてそれを合法化し、しかもそれは形の上ではまさに他人の就業に介入しているという事情にございますので、手数料について一定の規制をしておる、こういうものでございまして、この派遣事業の場合におきまして、それぞれ業務の種類等によりましてそういったものが幾らでやるのが適正だとか、そういうような形のものを決め得る性格のものではないだろう、こんなふうに思います。
  310. 浦井洋

    浦井委員 それもわからぬわけです。職安法四十四条があって、基準法の六条で中間搾取は禁止されておる。それだけで、それをきちんと労働省の側で指導監督、行政指導をやればこういう法律は必要ないのではないか、私はあくまでもそう思います。職安局長、いやに苦しい答弁をされておりますけれども。だから、私はそういう主張をしたいと思うのです。私は、現実に電算労とかいろいろなところの労働組合をつくりながら苦労して頑張っておられる派遣労働者に実情を聞いてみたら、皆そういうことになっておるのですね。だから、それを少しでも防止したいということで質問をしておるわけなんです。  そういう意味で、例えばこういうことがある。派遣先派遣元契約する場合に、その人たちの要求でもあるのですけれども、一人当たりの契約料金をやはりオープンにする、明示する、こういう規定をちゃんとこの法案の中に入れたらどうですか。どうです。
  311. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 契約条件の中に、派遣契約の中にそういったものが入れられることは、これはもちろん自由でございますが、その契約料金について、これはまた大変な企業秘密というような問題もあるようでございますし、そういったものは法律で強制するたぐいのものではないであろう、こういうふうに思います。
  312. 浦井洋

    浦井委員 いやいや、だから自民党の政府はだめだと言うのですね、企業秘密だとかなんとかいうのは。その契約内容がオープン化され、明示されておる、それで双方が知っておるというような例は幾らでもあるわけなんですよ。  それで、今度はわざわざ難しい説明をしながら、これとこれとは別ですというようなことを言いながら、派遣元は、これは新しくつくるわけでしょう。今まで労供は禁止されておったのに、これは新しくつくるわけでしょう。そして人を貸すわけでしょうが。そのどこに企業秘密があるわけなんですか。人を探すのに費用が要る、何かノーハウでもあるのですかね、秘密にせねばいかぬノーハウが。全部オープンにして、やはり派遣される労働者派遣元もあるいは派遣先も全部オープンにして、そしてその上できちんとやる。これが当たり前の話じゃないですかね。どうですか。
  313. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 この法律は、労働者派遣に絡んでそこにルールをつくっていくということでございまして、それぞれの取引先である、取引の料金である、そういったものについての介入というものをやることは、この法律にはなじまないのではないかと思います。
  314. 浦井洋

    浦井委員 私はなじむと思いますよ。これは人を貸す人貸し業なんですから、そういうダーティーな企業をあえて一本の法律をつくって公認しようというわけですから、私は、労働者保護をモットーにする労働省であればそういうことを当然オープンにすべきだと思うのですよ。どうですか、もう一遍。
  315. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 この法律はそういう労働者の保護の観点から、労働者派遣先における例えば苦情処理の問題であるとか、あるいはまた派遣先における基準法の適用の問題であるとか、あるいはまた派遣元におきますやはり苦情処理の責任者の問題であるとか、いろいろさらに就業機会の確保の努力義務あるいはまた職業訓練の技能向上のための努力義務等々、その他福祉の向上のための努力義務等も課しておるわけでございまして、そういう形においてその派遣労働者の保護を図っていこう、こういうことでございます。  これはけさほどの参考人意見にもございましたように、賃金をどうするかということはまさに労使で決まる問題でございまして、そういったものに――最低賃金違反ならこれはもちろんアウトですが、それを上回ってどうこうするというものは労使に任されておるということであると思います。
  316. 浦井洋

    浦井委員 最後はいつも労働省は、労使に任されておるということで逃げる。私は、明らかに労働省の責任放棄だと思うわけなんです。  例えばそれなら、先ほど私が申し上げた例なんですけれども、電算労の労働者の例なんですけれども、派遣先は六十万払っておるのに本人は二十万しか受け取っておらぬ。これは明らかに中間搾取でしょう。どうですか。それなら、そこであなた方は、それはそういうことであれば指導するとか改善命令を出すとか、やれいろいろなことを言われておりますけれども、具体的な目安がないわけでしょう、四十八条と四十九条ですか。  それなら、指導に値する中間搾取率、こんな問い方をしたら加藤さんお答えにならぬかもわからぬですけれども、指導に値する中間搾取率の目安というのはどれくらいなんですか。
  317. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 事業計画書であるとかあるいはまた収支決算書を徴収するというのは、その事業経営において労働者の福祉の面でそれなりの努力なり配慮なりが行われておるかどうか、そういったものをチェックするためにとるわけでございまして、例えばそういう労働者の福利のために払われておるようなものと収入とのバランス、他の同種のものとのバランスからいって著しく問題があるようなものについては、そういった点について十分な調査をする、問題があれば事情聴取も行う、こういうような形のものを考えておるわけでございます。     〔稲垣委員長代理退席、浜田(卓)委員長代理着席〕
  318. 浦井洋

    浦井委員 そうすると、著しくというふうに言われたのですが、先ほどの例でいって、派遣先は六十万払っておるのに労働者は二十万しか取っておらないというのは著しくという中へ入りますか。
  319. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 具体的な事情がわかりませんので、それについてどうこう申し上げる立場にございません。
  320. 浦井洋

    浦井委員 ノーコメントですか。著しくと言われたわけでしょう。具体的に向こうは、派遣先は六十万払っておるのに労働者は二十万しか取っておらないというような場合は著しくに相当しないのかどうか。例えばこういう場合に指導するのか、改善命令を出すのかどうか、それを具体的に聞いているわけですよ。それはどうなんですか。
  321. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 私が先ほど申し上げましたのは、他の同種の業務について行われておるものと比較をしてそれが著しくということでございまして、その一社だけの例でどうこう申し上げるというわけにはまいらない、こういうことでございます。
  322. 浦井洋

    浦井委員 そうしたら、他の同種の業者が自分のところの派遣労働者に二十万を出して、そして派遣先は六十万出しているというようなことになれば、ほとんどの同一業種かということになればこれは著しくになって指導しますか。それとも改善命令を出すのか。あるいは一般の場合には三年たったら更新だから、更新の許可願が出たら許可をしないというようなことになるのか。どうなんですか。
  323. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 これは金額が幾らだからどうこうということではなくて、そういう事業の全体の運営なり、そしてまた収支の状況なり、そういったものを見て問題ありという総合的な判断の中での問題でございまして、金額的にどうだったらどうとか、そういうダイレクトに結びつくものだとは考えません。
  324. 浦井洋

    浦井委員 そこがごまかしであり、インチキであるわけなんです。  今加藤職安局長が大分顔を赤らめて言われておるのですけれども、この法案成立をしてもし施行されますと、せっかく職安法四十四条で歯どめをかけ、基準法六条で中間搾取を禁止している、そういうことが結局全部野放しになってしまう。具体的な例を、向こうが六十万払っている、労働者は二十万しか取っておらぬというふうに言うて、それを指導もせぬ、改善命令ももちろん出さない、そういう話なんですね。こんなもの人道的に許せますか。大臣、どうですか。
  325. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 中間搾取であるものを中間搾取でなくするとか、そういうことではないわけです。申し上げておりますのは、基準法の規定では、他人の就業に介入して利益を得るというのが中間搾取でございます。今度の派遣法で定義しておりますのは、まさに事業主が、事業主としての雇用主としての責任を負う者が雇用する労働者を使ってサービスを提供する、そしてそれによって得た利益の中からまた賃金も払うということは、これは他人の就業に介入してということじゃなくて、他人ではないわけです。まさに自分の従業員でございます。そういう意味で基準法六条の中間搾取に当たらないわけでございまして、これは中間搾取でなくするとか、そういう意味ではないということでございますので、御理解いただきたいと思います。
  326. 浦井洋

    浦井委員 大臣、今度は答えていただけますね。私はこれは明らかに基準法六条をざるにするものだと思うのです。だから、今までずっとやっていますけれども、これが通りますと本当に中間搾取は野放しにされるんです。だから、心配だからというので夜遅くまで傍聴に来ておられるわけなんです。大臣、どうですか、この法案は果たして派遣労働者の保護になるんですか。
  327. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 そういう派遣事業に伴う労働者の諸問題に対しては浦井先生初め国会におきましてもいろいろ御論議をいただいて、こうした労働者に対する福祉の問題、労働条件問題等はどうあるべきか、こういう御指摘もいただいて、それを受けて労働省といたしましても労使双方からはもちろん、特に学識経験者とかいろんな皆さんの御参加もいただきまして審議会において七年にわたってあらゆる角度から御審議をいただいて、その答申をもとに政府としてこの案をまとめさせていただいた、こういう経過でございます  先ほどから加藤局長が御答弁申し上げておりますことは、そういう審議会の論議を十分踏まえ、また派遣事業に伴う実態の把握にも努めながら、この法律を今御審議いただいておる、こういうことでございまして、我々としては、こういう派遣事業というものが今先生が御心配のような即中間搾取につながる、こういうような懸念はこの法案によって避けられる、かように考えておるわけでございます。
  328. 浦井洋

    浦井委員 それは簡単に言えばざるにしたわけだから、野放しになるんですよ。大臣の答弁はひきょうですよ。七年間も審議会で審議をした上で、これをまとめていただいて出してきたんだからということですけれども、派遣されておる労働者意見を具体的にお聞きになったんですか。  時間がなくなりますから次に行きます。大臣は時間短縮の問題をしきりに言われるわけです。この時間短縮に関連があるのですけれども、この法律によって果たして長時間労働の規制が可能なのかどうか。これも電算労という労働組合からいただいた資料なんですけれども、最高残業時間だけを読み上げますと、八四年、去年の九月の残業実態ということで、A社では百一時間、B社では二百八時間、C社では百六十一時間、D社では二百十四時間、こういうような格好で、軒並みに物すごい長時間労働になっているわけなんです。これを断ると、今度は派遣元の方にもう労働者をよこさぬとってくれということになりますから、しょうことなしにやっておるというのが派遣労働者実態であります。  そこで、お聞きしたいのです。これは基準局長だろうと思うのですけれども、三六協定は事業所ごとに結ぶということになるわけであるけれども、派遣労働者はどこと結ぶわけですか。
  329. 寺園成章

    ○寺園政府委員 労働者派遣におきましては、派遣先事業主は、労働者派遣契約に基づきまして派遣労働者を指揮命令して実際に就労させることができるわけでございますけれども、当該派遣労働者の就労義務は労働契約に基づきまして派遣元事業主に対して負うものでございます。したがいまして、労働時間等の枠組みの設定等、その際の労働条件労働契約において派遣元事業主との間で定められることになるわけでございます。すなわち、派遣元事業主が派遣労働者との間の労働契約におきまして所定労働時間、時間外労働の有無等、派遣労働者労働時間等の枠組みを設定をいたすことになるわけでございます。
  330. 浦井洋

    浦井委員 それはちょっとおかしいのと違いますか。基準法三十六条、あなた方が出された、労働省労働基準局編著「労働基準法」、この中に「「事業場」とは、第八条の規定によって本法の適用事業として決定される単位であり、したがって数事業場を擁する企業にあっても、協定はそれぞれの事業場ごとに締結されなければならない。」それを、あえてこんな法律をつくって、労基法違反を犯してまで派遣労働者派遣元としか三六協定を結べない、こういうことになるわけですか、休日、夜間。
  331. 菊地好司

    ○菊地説明員 就業規則の締結あるいは三六協定の締結についての規定の事業場につきましては、今度の特例では派遣元事業主に適用するという原則にとどめておりますので、派遣元事業場で締結されることになるわけでございます。
  332. 浦井洋

    浦井委員 けさ参考人質疑があって、マンパワージャパンの方も来られて午後の我が党の小沢議員の質問に答えて、就業規則と今言われたから言うのですけれども、八年間もまだ就業規則がつくれないのが実情でありますと答えたわけでしょう。就業規則もできぬ。まして派遣元と三六協定もできぬじゃないですか。これが実情じゃないですか。労働組合はない。ほとんどないわけでしょう。労働者の過半数を代表する者をどないして決めるわけですか、労働組合がない場合でも。それはどうですか。これは具体的ですよ。
  333. 菊地好司

    ○菊地説明員 労働組合がある場合は、御指摘のとおり労働組合と締結をするわけですが、労働組合のない場合には、適用事業場ごとの現に雇用している労働者の過半数を代表する者と、意見を聞いたり締結をしたりということにしております。
  334. 浦井洋

    浦井委員 文言はそうなっておっても、実際にそんなことが登録型にしてもあるいは常用型にしても可能なのかどうかということなんです。これがもしこの法案成立をすれば、具体的に派遣労働者がこれで苦しめられるわけですよ。今まで一生懸命労働組合をつくって頑張ってこられた。それで派遣元でなければならぬということで、実際に働いておる現場、事業場では何にも物を言う権利がなくなるわけでしょう、原則としてというようなことを言われていますけれども。これでいいんですかね、どうですか、大臣。
  335. 菊地好司

    ○菊地説明員 きょうの午前中の話はつまびらかに承知しておりませんので、事情を調べまして方法については対処したいと思いますが、派遣されている労働者の代表をどうやって具体的に選ぶかという御質問ですけれども、一堂に集まっていただけばそれは簡単な話ですが、仮にそれができない場合としては、投票による選出方法等もありますし、具体的なケースによっていろいろな方策、知恵はあろうかと思います。
  336. 浦井洋

    浦井委員 あろうかと思うって、一堂に集まればそれは簡単でしょう。しかし、集まることが不可能なんでしょう。投票によるといっても、名前も知らぬし、顔も知らぬし、だれが適当かというのはお互いに知らぬわけでしょうが。そんなことで果たして労働者の過半数を代表する者が決められるわけなんですか。これはもう絵そらごともええところですよ。どうなんですか、大臣。もう時間が来ますからね。
  337. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 私は、派遣事業の労働者というものは、本人の技能でありますとか、あるいは個人の自由時間を拘束されないで、なおかつ労働を通じて報酬を得る、そういう志向の中であえて終身雇用的な慣行の企業ではなくて、独自の能力を生かす、こういうニーズの中から生まれている経過もございます。  そういうことと同時に、今局長からも答弁ございましたように、やはり時間外労働の限度設定というものについては、著しい長時間労働ということにはならない、三六協定というものを十分労使が協議の上で締結をして進めるわけでありますから、やはり派遣先労働者が先生の御指摘のような長時間労働にすぐつながる、こういうことにはならないというふうに私は考えておるところでございます。
  338. 浦井洋

    浦井委員 もう終わりますけれども、それは間違っておるわけなんですよね。第一、労使で協定を結ぶことができないということを私は議論をしているわけなんです。それを、結んでできるだけ長時間労働を避けたいというようなことにすりかえたらだめですよ。だから、そこのところを大臣はよく考えておいていただきたい。  それで、最後になりますけれども、こういう事例があるのです。年次有給休暇、これは完全消化をするというのが労働省の方針なんです。これが大臣のいわゆる労働時間の短縮につながると思うのですけれども、これは派遣労働者も変わらないわけですよね。  ところが、これはもうのっけから名前を申し上げますけれども、神戸の川崎製鉄の阪神製造所の葺合地区の葺合工場と俗に呼ばれているところでは、「計画的年休取得の推進について」という通達を企業が出して、四月から実施されておる。この計画によりますと、読みますけれども、「労働者が年休をとるさいには、「事前の変更」「突発年休」は原則として認めず、「事前の変更」をするときは年休をとる前日の終業時間までに届け出ることを義務づけています。そして、「事前の変更」「突発年休」が必要な場合は、「本人病気」のときは診断書、診察券、領収書を、「官公庁呼び出し」には召喚状を、葬式は会葬御礼などを証拠として出させることにしています。また、業務に支障があると会社が判断したときは「子どもの運動会」「地区行事参加」「学校参観」「来客」などを理由とした年休取得は認めない」こういうことになっている。  「「欠勤」も、これまで事後届け出ですんでいた「疲労」「来客」「転宅手伝い」「診断書による病欠期間が切れた」などは無届け欠勤扱いとなり、これらの一回ごとに誓約書を提出させ、三回目になると「懲戒処分」にする」、こういうことが川鉄の葺合工場で現に四月一日から実施されておるわけなんです。  これは恐らくまだお調べになっておらないでしょうから、ひとつ直ちに調査をして、行き過ぎがあれば是正をさせること、これをお約束を願いたいことが一つ。  それからもう一つ、わざわざこれを出したのは、この工場にも派遣労働者がたくさんおられるわけなんですよ。それで、これよりももっと悪いような労働条件で働かされておるわけなんです、私の言いたいのは。正規の職員でさえもこういう、ここに証拠物件がありますけれども、この通達が。だから、そこへもってきてこの法律がもし施行されると、これはもう賃金だけでなしに、休日、長時間労働だけでなしに、派遣労働者のとりたい年休取得の自由さえもこれはとれなくなるわけです。保障できないわけなんです。それを私は言いたいわけなんです。  だから、こういうような法案はむちゃだ。これはもう一週審議会へでもどこへでも返してもよろしいですから、これは我々としては断固として廃案を要求をしたい、こういうことを要求をして私の質問を終わりたいと思います。何か大臣、あれば一言。  それから、その調査の件、調査して是正させるという件。
  339. 菊地好司

    ○菊地説明員 短時間でお聞きしたので正確にわからない点もございますし、初めてでもございますので、よく事情を調べて、必要があれば善処したいと思っております。
  340. 浦井洋

    浦井委員 善処……。  終わります。
  341. 浜田卓二郎

    ○浜田(卓)委員長代理 次回は、来る二十三日火曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時十一分散会