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1985-03-25 第102回国会 衆議院 環境委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年三月二十五日(月曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 辻  英雄君    理事 國場 幸昌君 理事 戸塚 進也君    理事 福島 譲二君 理事 岩垂寿喜男君    理事 和田 貞夫君 理事 大野  潔君    理事 中井  洽君      稻村佐近四郎君    瓦   力君       齋藤 邦吉君    関谷 勝嗣君       田村  元君    中村喜四郎君       平泉  渉君    奥野 一雄君       竹内  猛君    中村  茂君       小川新一郎君    草川 昭三君       坂口  力君    玉置 一弥君       永末 英一君    藤田 スミ君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石本  茂君  出席政府委員         環境政務次官  中馬 弘毅君         環境庁長官官房         長       岡崎  洋君         環境庁企画調整         局長      山崎  圭君         環境庁企画調整         局環境保健部長 長谷川慧重君         環境庁自然保護         局長      加藤 陸美君         環境庁大気保全         局長      林部  弘君         環境庁水質保全         局長      佐竹 五六君         通商産業大臣官         房審議官    山本 雅司君  委員外出席者         科学技術庁原子         力安全局核燃料         規制課長    穂波  穰君         国土庁長官官房         水資源部水資源         政策課長    古澤松之丞君         外務大臣官房外         務参事官    柳井 俊二君         通商産業省産業         政策局国際企業         課長      川口 順子君         通商産業省基礎         産業局非鉄金属         課長      松田 憲和君         通商産業省基礎         産業局基礎化学         品課長     高島  章君         環境委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ――――――――――――― 委員の異動 三月七日  辞任         補欠選任   馬場  昇君     松浦 利尚君 同日  辞任         補欠選任   松浦 利尚君     馬場  昇君 同月八日  辞任         補欠選任   馬場  昇君     矢山 有作君 同日  辞任         補欠選任   矢山 有作君     馬場  昇君 同月九日  辞任         補欠選任   矢野 絢也君     岡本 富夫君 同月二十二日  辞任         補欠選任   岡本 富夫君     吉井 光照君 同日  辞任         補欠選任   吉井 光照君     岡本 富夫君 同月二十五日  辞任         補欠選任   金丸  信君     中村喜四郎君   田澤 吉郎君     瓦   力君   渡辺美智雄君     関谷 勝嗣君   馬場  昇君     奥野 一雄君   岡本 富夫君     坂口  力君   永末 英一君     玉置 一弥君 同日  辞任         補欠選任   瓦   力君     田澤 吉郎君   関谷 勝嗣君     渡辺美智雄君   中村喜四郎君     金丸  信君   奥野 一雄君     馬場  昇君   坂口  力君     岡本 富夫君   玉置 一弥君     永末 英一君     ――――――――――――― 三月十三日  環境保全等に関する請願浦井洋紹介)(第  二二〇〇号)  同(小川省吾紹介)(第二二〇一号)  同(小沢和秋紹介)(第二二〇二号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第二二〇三号)  同(上西和郎紹介)(第二二〇四号)  同(経塚幸夫紹介)(第二二〇五号)  同(佐藤誼紹介)(第二二〇六号)  同(瀬崎博義紹介)(第二二〇七号)  同(田中美智子紹介)(第二二〇八号)  同(辻第一君紹介)(第二二〇九号)  同(中川利三郎紹介)(第二二一〇号)  同(中村重光紹介)(第二二一一号)  同(野間友一紹介)(第二二一二号)  同(林百郎君紹介)(第二二一三号)  同(東中光雄紹介)(第二二一四号)  同(藤木洋子紹介)(第二二一五号)  同(藤田スミ紹介)(第二二一六号)  同(正森成二君紹介)(第二二一七号)  周(三浦久紹介)(第二二一八号)  同(村山富市紹介)(第二二一九号)  同(横江金夫紹介)(第二二二〇号) 同月十九日  環境保全等に関する請願稲葉誠一紹介)(  第二二九四号)  同(工藤晃紹介)(第二二九五号)  同(柴田睦夫紹介)(第二二九六号)  同(嶋崎譲紹介)(第二三七三号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第二三七四号)  同(細谷昭雄紹介)(第二三七五号)  同(岡田利春紹介)(第二四一四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公害健康被害補償法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一二号)      ――――◇―――――
  2. 辻英雄

    辻委員長 これより会議を開きます。  公害健康被害補償法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。戸塚進也君。
  3. 戸塚進也

    戸塚委員 私は、ただいま議題となりましたこの法案に関連いたしまして、大臣初め環境庁当局に若干のお尋ねをいたしたいと思います。  最初に、まず大臣に総論的な意味お尋ねいたしたいと思うわけでございます。  私は、私の前提条件として、この公健法救済措置を講じておられますぜんそく患者さん、そういう方々に対しては、本当に一刻も早く全快していただきたいし、それからまたぜんそくの苦しみということについても本当にお見舞いを申し上げたい、そういう気持ちでいっぱいであることはまず申し上げておきたい。  それからまた、この法案ができた当時、公害という問題に対しての企業の言うならば無責任性といいますか、そういう点もかなりあったということも私は是認する立場でありますが、この法律の精神と申しますか、これを私はこの場で反対したりいろいろ云々するものではありません。  ただ、この法律ができましてから相当年数を経過いたしまして、企業の態度も、今日はまさにもう公害を出さないということが企業の当然の立場であるというような姿勢に変わってまいりましたし、さらにまた、そういったことも影響し、あるいは環境庁もできて立派に指導していらっしゃる、国民も皆気をつけている、こういうことから今の指定地域になっております地域環境状態というものも相当大幅に改善された。もう少し素直に申し上げるならば、この法律で言うようないわゆる環境基準指定条件、こういうものを言うなら下回ると申しますか、これはよい意味でありますが、もう環境が非常によくなってきたというような背景があり、一方、そうではあっても、いわゆるぜんそくという病気で悩む患者さんというものは、時代推移と申しますか、後ほど少しお伺いいたしますけれども、また大臣もその方の御専門でありますけれども、いろいろなぜんそく原因というものが言われておりまして、今の認定患者そのものはそういう環境のよくなった時代背景に反して逆にふえている。一方また、企業の相当な負担が今後も予想される。  こういうことでありますと、かつて二年前に附帯決議にもありましたような、言うなら総合的な法の検討見直しと申しますか、そういうことが必要であるということは、今莫大なお金を負担している企業立場からも、その負担にもうたえかねるのじゃないか、もうこうして法律要件も整っているのであるから、この際はひとつ指定解除してもらえないだろうかというような相当悲痛な声もある。また、これは大企業ばかりではありません。中小企業負担もかなりあるわけでありますから、血のにじむような思いで日夜身を細めて頑張っている中小企業立場からいっても、これはもうそろそろいいかげんにしてもらえないだろうか、考えてもらえないだろうかという切実な声があることは事実であると私は思います。  こういう立場に立って、大臣はこの公健法の今後の取り扱いなり見直し問題等について私と見解を同じくしているのであるか、あるいは違う見解をお持ちであるか、そういう点についてひとつ総論的に伺いたいと思います。
  4. 石本茂

    石本国務大臣 ただいま先生何もかも御承知をいただいての御質問でございますのでお答えしにくいのでございますが、基本的なことを申しますと、この制度民事責任を踏まえました損害補償制度として創設されまして、昭和四十九年の施行以来、公害による健康被害者救済に大きな役割を果たしてきたと思っております。  我が国の大気汚染態様が変わりましたことも今昔言葉のありましたとおりでございまして、この制度の適切な運営を図りますためには、こうした大気汚染態様の変化を踏まえながら、今後の第一種地域あり方検討することが基本的に重要になってきております。このために、五十八年十一月に中公審に対しまして今後における第一種地域あり方について諮問をし、現在環境保健部会専門委員会におきまして審議を重ねているところでございます。  環境庁としましては、中公審結論を踏まえまして適切に対処してまいりたいというのが現在ただいまの心境でございます。
  5. 戸塚進也

    戸塚委員 では、当局にお伺いいたします。  この二年間に、問題点と申しますか、今私が総論で若干指摘もいたしましたけれども環境庁としてこの法の運用をしていくについて、問題点はどういう点であるというふうに認識していらっしゃるか、この点について伺いたいと思います。
  6. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えいたします。  ただいま大臣からお答え申し上げましたように、一番の問題点は、現在の地域指定要件といいますものがSOxを代表としてとらえておる、いわゆるSOxによります地域指定要件が明らかになっておるわけでございますが、それに係ります解除要件といいますものがはっきりしてないというようなところにおいて、先生の先ほどのお話にございましたように、いろいろな面での不都合といいますか問題が顕在化しておるというぐあいに思うわけでございます。  いわゆる大気汚染影響とそれに基づきます疾病の多発というところにつきましては、SOxについては、四十九年中公審答申においてかなり明確にその因果関係というものを明らかにしているわけでございますが、NOx等についてはそこら辺がまだなお検討を要する課題であるというぐあいに、宿題的な形になっておるわけでございまして、それに基づきまして現在の制度が構築されているというような関係から、いろいろな問題点が出ておるというぐあいに理解いたしております。
  7. 戸塚進也

    戸塚委員 問題点についてはもう少し突っ込んでいろいろ伺いたかったのですが、後ほど各先輩委員方々からお話があると思いますから、その程度にとどめておきたいと思います。  そこで、今お話があったような問題点大臣今中公審等審議の中で慎重に審議していただいておるんだというようなお話があったわけでございますが、環境庁独自としては、この二年間においてそうした問題点についてのどういう認識なり研究なりを進めておられたか、この点について伺いたい。
  8. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたような問題点が一番大きな問題であるというようなことにかんがみまして、私ども、五十年以降毎年のようにNOx等影響に関します国内外のいろいろな文献の収集あるいは国保レセプト国保方々医療機関に受診します際のそういう国保レセプトがあるわけでございますが、それによります指定疾病受診率調査、それもいろいろな地域大気汚染濃度の高いところあるいは低いところというぐあいに、全国的にそういう地域を選びまして、それぞれの地域におきます国保受診率調査、さらに、ATS調査といいますもので、学童中心といたしまして、いわゆる指定疾病に関連のある症状をどの程度保有しておるかというような調査を行っておるわけでございます。これも同じように、大気汚染濃度の高いところあるいは低いところというぐあいに、全国的に適当なところをサンプリングいたしまして、その都市におきます学童中心としたATS調査といいますものをいろいろ実施いたしておるわけでございます。  そのような調査を五十八年度に大体取りまとめましたものでございますから、五十八年にそれを取りまとめまして中公審報告いたしまして、それに基づきまして、大臣から御説明ございましたように、ただいま中公審において御審議していただいておるというぐあいに思っておるところでございます。  それ以外に、私どもといたしましては、面接この制度運用の基本にかかわる問題とは別の問題であるかもしれませんけれども、この認定者方々公害患者方々に対します福祉の増進なりあるいは治療の促進というような面に関しまして、いろいろな調査研究を行っておるということをあわせて述べさせていただきます。
  9. 戸塚進也

    戸塚委員 先ほど大臣からお話のございました中公審専門委員会でございますけれども、私なりに新聞その他いろいろなところから伺うところによりますと、近いうちに、答申と申しますか、あるいはそれが完全な答申であるのか中間報告であるのか、あるいは何であるのか、それは私どもわかりませんけれども、ともかく今までの検討結果について一応まとまったものを公表されるというようなことも聞いておるわけでありますけれども、それはいつごろ、そういう一つ結論といいますか答申といいますか、言葉が適切でないかもしれませんけれども、そういう区切りはいつごろつけるつもりであるか、これを伺いたい。
  10. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 事務的な話になりますので、私からお答えいたします。  先ほど大臣から御説明申し上げましたように、今回の諮問事項に対します答申について部会審議を行っているわけでございますが、部会におきましては、大気汚染健康影響との関係は特に医学的、科学的な事項でもあるので、専門委員会を設けまして、専門委員会においてそこら辺の評価をきちっとやっていただきたいというようなことで、専門委員会審議を付託した形になっておるわけでございます。  専門委員会におきましては、先ほど私が御説明申し上げましたような環境庁で用意いたしました資料に基づきまして、幅広い分野の多くの科学的知見につきまして審議をいたしまして総合的な評価を行うということで、現在鋭意審議が進められておるところでございます。現在までに十八回の委員会を開きまして会議が進められておるところでございます。このようなことでございますので、環境庁といたしましては、この専門委員会、さらに部会におきまして十分審議を尽くしていただきたい、そしてなおかつ、速やかに御答申をいただきたいというぐあいに考えておるところでございます。  何分にも、先ほど申し上げましたように、非常に幅広い科学的分野につきましての総合的な審議ということでございますので、なかなか、いついつまでとかあるいはその見通しとかいいますものは申し上げられないということを御理解いただきたいというふうに思っております。
  11. 戸塚進也

    戸塚委員 まあそういうことでありましょうから、それ以上私がとやかく言うことはありませんが、しかし、余り長い審議でそれがベールに包まれているということでは困るのでありますから、これはやはり一刻も早く、それが完全な答申でないにしても、中間の形であってもどういう形であっても、国民の前に明らかにする必要はあるのじゃないか。そういう意味では、私は少なくともことしじゅうぐらいにはそういったような側か一つ公表、あるいはまたアクションがあっていいはずだと思いますけれども、この点についてはいかがですか。
  12. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 繰り返しの答弁で大変恐縮でございますが、先ほども申し上げましたように、非常に科学的、専門的な話でございますので、現在専門委員会で鋭意検討が進められておるという段階にございます。  その専門委員会報告は、いずれかの時点において取りまとめられ部会報告されることになるわけでございますが、その専門委員会報告につきましては、部会でどう御判断されるかということになろうかと思うわけでございますが、従来いろいろな審議会等におきます。そういう専門委員会報告といいますものは、場合によりましては、公表といいますか、広く知らせるということもあり得るわけでございますので、これは部会の御判断にもよるものと思いますけれども、そのような過程がいずれかの時点に起こるということがあり得るというぐあいに思っております。
  13. 戸塚進也

    戸塚委員 大臣、いついつとは申しません。しかし、できるだけ速やかにそうした一つ区切りをつけていただきたい。そういうことを要望したいが、いかがですか。
  14. 石本茂

    石本国務大臣 ただいま部長も申しておりますように、できるだけ早い時期に中間報告なりできるような条件において頑張ります。ありがとうございました。
  15. 戸塚進也

    戸塚委員 それでは、最近、文芸暮秋でありますとか一流の新聞等に、ぜんそく原因、理由といいますか、非常に各般にわたるいろいろな原因があるのじゃないか、アレルギー的な問題でございますとか、そのほかいろいろな、いわゆる公害ということによらない他の原因が相当多いと。毎日新聞には「ユスリカも〝犯人〟」とか書いてありますが、いずれにいたしましても、そうしたぜんそくというものが起こってくる原因について非常に多くの専門学者方々意見を述べられているわけでございます。  中公審の中の専門委員会では、こういうぜんそくの起こってくる原因、そういうものを当然しっかり調査していただいているのだと思いますが、その点も含めていかがでございますか。
  16. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えいたします。  ただいま先生から御指摘ございましたように、気管支ぜんそく原因といいますか、発生要因といいますものはいろいろなものがあるわけでございます。  そういうことにつきましては、現在の公健法対象疾病となっております指定疾病と申しますのは、いずれも慢性の呼吸器疾患である、しかも非特異的疾患であるというようなことから、そういう要因原因といいますものが特に大気汚染だけによって起こるものではないということで、非常に難しい問題を根っこに抱えておりまして、その上でこの制度が構築されているということでございますので、そういう指定疾病大気汚染以外の、先生からお話がございましたようにアレルギーあるいは花粉あるいはダニ等、そんなようないろいろな要因によって起こるということは十分承知されているわけでございますので、そういう面につきましてはいろいろな文献等もあるわけでございますから、そういう文献を踏まえながら、あるいは先ほど申し上げましたような、環境庁調査いたしました資料に基づきまして専門委員会で、そういう要素があることを十分御承知の上でいろいろな議論が進められる、そして大気汚染影響について取りまとめられるというぐあいに考えているところでございます。
  17. 戸塚進也

    戸塚委員 それではちょっと角度を変えまして、こういうことをお尋ねしてみたいと思うのです。  冒頭に申し上げましたように、環境は非常によくなり、しかも法で言う基準も下回ってきたにもかかわらず、公審のいわゆるこの法律による認定患者さんはふえている。こういうような状態の中で、しかも私が非常に問題意識を持っておりますのは、最近、文明が進むに従ってぜんそくというものが、他の原因によるものが非常に多いというような学者意見もあり、それが相当の数、急角度で上回ってくる、伸びてくるというようなことを言っている人もいる。  こういう中で、ちなみに伺ってみたいのですけれども、これから五年間、昭和六十四年度までにもし今の基準をもう下回った地域についてというか、まあ言うなら解除してしまって、しかし解除しても、今までの患者さんは当然救済してあげなければならぬだろうと私は個人的には思う。これはいろいろ議論があるでしょうけれども認定した患者さんを、もう知りませんと言うわけにはなかなかいかぬと思いますがね。そうした場合に、毎年、治癒率とか、不幸にしてお亡くなりになる方もあるわけですけれども、この法律によってもう救済しなくていい方々が出てくる。そういう方々をずっと引き続いて救済し、地域解除を行った場合には、六十四年度には一体幾らぐらいの、今のままで大体平均的にいった場合ですよ、そうした場合には幾らぐらいの費用がかかると考えられるか。  逆に、この法律を全く見直さないで、今の現行のままで六十四年度までずっと自然的に、場合によるとふえていくかもしれない患者さんも含めて、しかしこれはもちろん認定をするわけですから、私の表現は悪いかもしれませんが、今の法律のそのままの形でいったときに、支給総額といいますか、それは一体どのぐらいになるか、その二つを推定して答えてください。
  18. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 ただいま先生お尋ねは、指定地域現行のままとした場合と、指定解除を仮に行った場合に、五年後の費用負担がどうなるかというお尋ねかと存じますが、ただいま先生お話しございましたように、費用負担総額推計の根拠となります認定者数をどう見るか、あるいは補償給付費についてはどう見るかというのが問題になろうかと思います。  認定者数につきましては、その推計については、新規認定者の数とそれから制度離脱、治癒したりあるいは亡くなられたというようなことで制度から離脱される方々がおられるわけでございますが、その両方の方がどのように推移していくのかというのが非常に大きな問題であろうと思うわけでございます。それから、補償給付費については、現在御案内のとおり、補償給付費の中身といたしましては、療養の給付なりあるいは障害補償費等各種給付があるわけでございますので、そういうものの推移をどう見るのか、特に医療費動向をどう見るのか、あるいは賃金動向をどう見るのかというような問題があるわけでございまして、予測が非常に困難であると思うわけでございます。  しかしながら、先生お話がございましたように、何とか割り切って考えろというお話でもございますので、私どもといたしましていろいろ考えておりますのは、例えば認定者の数でございます。五十八年度の数で申し上げますと、約九千名の方々新規認定者でございます。それから、約六千名の方が制度離脱者、治ったりあるいは亡くなられた方で制度から離れられる方々があるわけでございます。そうしますと、五十八年度においては差し引き三千名ぐらいの方が患者数としてはふえておるというようなことでございます。そのようなことで、それが仮にそのまま推移するといたしますと、行ったり来たりで九千名の方々が一応の数になるのじゃなかろうかなと思うわけでございます。  一方、補償給付費関係でございますが、これはまたいろいろな要素が絡んでおりまして難しい問題でございますが、端的に申し上げますと約九万人の認定者がおられます。それから、それに要します補償給付費総額は九百何十億ということで、九百億を九万人で割り返しますと、これも非常に粗っぽい話で恐縮でございますが、そういう形で仮にやりますと、一人当たり約百万円という金額が出てまいります。これも、現在の認定患者方々がだんだん重症の方が少なくなって軽い方々がふえてまいっておりますので、必ずしもこの百万円が固定した形で動くと思っていないわけでございますが、現在の時点で仮に粗っぽく割り切りますと、そういう数字が出てまいるわけでございます。  そのようなことで、それぞれの認定者の数あるいは給付費というものが、いろいろな要素が絡み合ってどういうぐあいに動いていくのかというのは非常に難しい問題でございますが、そのようなことをめどと考えてみますと、その九千人あるいは百万円というものが多い数字であるのか少ない数字であるのか、かなり大き日な数字じゃなかろうかなという感じは持っておりますけれども、そこら辺のところで考えるのも一つの指針といいますか、考える根拠にはなり得るのかなと思っているところでございますが、いずれにいたしましても、先生お尋ねは非常に難しい問題でございますのでお許しをいただきたいと思っております、
  19. 戸塚進也

    戸塚委員 ところで、現在の地域指定SOxの濃度というものを基準にしているわけですが、最近のその地域の濃度の状況はいかがですか。これは本当に一分くらいで答えてください。
  20. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えいたします。  指定地域におきます大気汚染濃度に関するお尋ねでございますが、SOxにつきましては、いずれの地域においてもいわゆる環境基準を下回っているところでございます。それから、NOxにつきましてはかなりのところが下回っておる。それから、SPMに関しましては下回っているところはほとんどないと言っていいくらいのところであろうと思うわけでございます。  これも単年度の成績で申し上げているわけでございますので、それを過去何年かくくられた場合におきましては、さらにその割合が下がると思っておるところでございます。
  21. 戸塚進也

    戸塚委員 答弁は要りませんけれども、そうしてすべて下回っておるというような状況の中でありますからこそ、これは負担をしている人の立場あるいはまた全体の国民から見た立場、こういうことも考えて十分対処していただきたいということを申し述べているわけであります。  さて、先般のある新聞でございましたか、ぜんそく認定患者さんの中に現在もたばこをのんでいらっしゃる方が二割だか二五%だかおるという話でございます。もちろん私もたばこを吸っておりまして、医者様からたばこをやめろと言われたら私も死ぬ思いがするわけでありますから、たばこを吸ってはいけないとか、私がそんなことを言うのは越権至極だと思います。しかし、この法律に基づいてやっている患者さんに対しては、お医者さんは、あなたはぜんそくだからたばこはやめなさいよという指導をし、そして苦しいけれども、死ぬ思いをしてでもやめる患者さんもいるし、やめない患者さんもいる。  そうなってくると、やめた患者さんの立場から見たら、やめると医者様が言ったのにやめないのはおかしいのじゃないかという感じが多少するのでありますけれども、そのあたりに多少差をつけてもいいのじゃないかという声もあるわけでございますが、その辺はいかがでございますか。
  22. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えいたします。  認定者方々がたばこを吸うということにつきましては、療養上非常に好ましくないということで、私どももかねがね県市区を通じて指導いたしておるところでございます。  先般、そういう実態を十分踏まえた上でさらに対策を強化しようというようなことで、実態を調査いたしまして、各県市区の方に、その実態を踏まえて、従前やっておりました患者さんに対する療養指導のほかに、主治医とも十分連携をとりながら、主治医と一緒になって、先生お話がございましたように、非常に苦しくともたばこをやめて療養に専念して早くもとの体に治っていただきたいということの対策を強化したいと考えておるところでございまして、そういう面での指導をさらに強めてまいりたいと思っておるところでございます。
  23. 戸塚進也

    戸塚委員 私も大変冷たいお尋ねをしたようで、患者さんに本当に申しわけない思いがするわけです。ただ、医学的に見てそういうことをお医者さんが勧めたりしていて、しかもまだ、苦しくてもやめている患者さんもいるということを考えてみると、そうした指導はさらに徹底した方がいいのじゃないかと思います。  最後になりますが、指定地域の中でも東京とか大阪とか、同じ日本国の中であってもその給付額が大変違っている。私なりに調べてみると、これは計算が違うかもしれませんが、倍ぐらい違うのじゃないかという感じがございます。そういうあたりはやはり問題意識を持たざるを得ない、このように思うわけでございますが、そういう点についても現在検討がなされているのか、あるいは改善される余地があるのか、最後にその点を伺いたいと思います。
  24. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 医療費に関するお尋ねかと存じますが、医療費についての地域間格差があるということにつきましては、公害医療にも御指摘のとおりの傾向があるわけでございますが、これは公審医療に限らず、いわゆる健保の医療費についても同じようなことが言われているのが実情でございます。  それぞれにつきましては、年齢構成だとか疾病の程度等によっての差がある程度あることはわかるわけでございますが、いずれにいたしましても、こういう点で地域間格差があるということにつきましては、その理由がはっきりしませんけれども、余り好ましい形と思っていないところでございますので、厚生省の健保の関係ともあわせながら相談してまいりまして、さらに適正化に努めてまいりたいと思っております。
  25. 戸塚進也

    戸塚委員 時間が参りましたので、以上で質問を終わりますけれども、今まで申し上げたような角度から、申分審はもちろんのこと、環境庁当局も十分問題意識を持っていただいて検討した上で、できるだけ早い中公審見直し答申等もいただけるように要望して、質問を終わります。
  26. 辻英雄

  27. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 最初に、NOxの環境基準の達成問題に関連いたしまして質問をいたしたいと思います。  私は、二月二十六日の本委員会環境庁に質問をいたしました。それは、総量削減計画に基づく窒素酸化物の環境基準達成の期間である昭和六十年三月三十一日が迫っているけれども、東京や大阪や川崎や横浜など、この達成が困難であるという地方自治体が発現している、だから環境庁はこの問題についてどのように考えているのかという所見を求めました。  その機会に、環境庁長官の御答弁を代理して林部大気保全局長言葉を濁した、つま方そのことを素直にお認めになりたくないような、しかしそれにもかかわらず、傾向としてはそれを全く否定することができないような、ちょっとあいまいな御答弁をいただきました。それから数日後に、環境庁長官が記者クラブとの懇談の中で、その達成が困難であるということを発言をなさったようでございます。  私は、日本の今の報道機関が社会的にも政治的にも非常に大きな役割を果たしているという重要性にかんがみて、議会政治をないがしろにしているなどということを申し上げるつもりはございません。ございませんが、それにもかかわらず、国会でのやりとりで質問に対して素直に答え切れないで、しかも、それを代理した林部大気保全局長が、どちらかといえばあいまいな答弁をして、その後、長官がそういうお言葉を吐かれたということは、何とも私、気持ちの上ですっきりしません。この問題について御所見を承りたいと思います。
  28. 石本茂

    石本国務大臣 先生のお言葉にお答えをさせていただきますが、環境基準の達成状況につきましては、非常に厳しい状況にある地域があるということは私も十分認識をしているところでございますけれども局長の申しましたこととの食い違いがあるというふうには私は考えておらないところでございます。  私といたしましては、今後とも環境基準の達成に向けまして全力を尽くして続けていかなければならないのだという自覚を今新たにしているところでございます。申しわけございません。
  29. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それでは大気保全局長に伺いますけれども、最近のデータ、これは五十八年のピンク本で結構ですが、データを前提にして、しかしその後の五十九年度の速報ベースというものも全く環境庁が持っていないはずはないと思いますので、それをあわせて考えまして、達成地域と非達成地域というのをはっきり明らかにしてください。
  30. 林部弘

    ○林部政府委員 達成地域と非達成地域ということでございますので、五十八年のデータしか確定したものがございませんので、総量規制地域の状況につきまして申し上げますと、環境基準の非達成の測定局の数で申し上げますと、東京特別区等の地域では、一般局が二十三局中五局、自排局が二十六局中十七局、横浜市等地域におきましては、これは川崎、横浜、横須賀というところでございますが、一般局二十九局中の八局、自排局につきましては十八局中の十二局、大阪市等の地域におきましては、一般局が四十二局中二局、自排局が二十二局中十五局、五十八年度の確定いたしましたデータではそういうことになっております。
  31. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私、この機会ですから、実は余り明らかになっていないのではっきりさせておきたいという意味で質問をしたいのですが、環境基準の維持達成の評価の方法なんです。  これはまず第一に伺っておきたいのは、地域の判定方法なんですけれども、測定局を設置する設置基準みたいなものはあるのですか、ないのですか。簡単に答えてください。
  32. 林部弘

    ○林部政府委員 具体的な定めをしたものはございません。
  33. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 測定局を設置したい、しかし地域の住民の協力を得られない、したがって、例えば自排局にしても道路からかなり離れたところへ置かざるを得ないという実態があるわけです。それから、配置それ自身もそうです。住民の協力が得られなければ、設置する場所について一つのルールがなければ、あっちこっちヘアンバランスに置くということを申し上げるつもりはございませんけれども、必ずしも正確なデータの反映ができない形になっていることを御承知おきいただきたいと思います。  その次にお伺いしますけれども環境基準を緩和したときに実は通達が出ております。これは林部さんに私は申し上げましたから御存じだと思うのですけれども、私も実は改めて読み直してみてちょっとびっくりしたのですけれども、この際聞いておきたいのですが、一般、自排測定局一局でもという判断なのか、あるいは上位三局の算術計算なのか、いずれですか。
  34. 林部弘

    ○林部政府委員 お答えいたします。  通達は大分背のものなんでございますが、当時の判断といたしましては、一般局の上位三局で判断をする、そういうように記されているのはもう先生ごらんのとおりでございます。
  35. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そうしますと、環境基準を判断するときに今問題になっているのは自動車の問題が非常に多いわけですけれども、それはもう外れてしまって、一般局の上位三局で一つの数字を出してくる、それで環境基準をクリアしたかしないかという通達が出ているのです。NOxの緩和のときの通達、これにはっきり書いてあるのです、数字まで入れて。これは測定の実態が果たして正確なものかどうか、こういうことも尋ねておかなければいかぬ。  この点は私、注意を喚起する意味指摘だけしておきたいと思います。つまり、実態に合っていない。通達自身が今日の事態というものを予測していたかいなかったかは別として、つまり一般測定局だけの上位三局で算術平均で出して、その結果として環境基準をクリアしたかしないかという判断の基準にしかなっていない。自排局が落ちている。この実態だけ私は申し上げておきたいと思います。  それから、ゾーン内地域の悪化、非悪化の原則というのがございまして、これも通達の中にきちんと載っかっています。これは、例えば〇・〇六ppmに決めたから、だからそこまでは汚してもよろしいんだ、こういう意味ではないのだということを言って、あえて強調しているんです。もっとはっきり言うと、〇・〇四ppm以下でも今よりもっとひどくしてはいけないんだということを通達の中ではっきり書いているのです。  この非悪化原則といいましょうか、このゾーン内の問題について環境庁はどういうとらえ方をしておられるのか、御答弁をいただきたいと思います。――何もやっていないのです。やっていないと答えてください。
  36. 林部弘

    ○林部政府委員 お答えいたします。  ゾーン内の問題につきましては、一日平均値が〇・〇四ppmから〇・〇六ppmまでのゾーンということになるわけでございますが、二酸化窒素濃度の動向を見るということで、当該地域内の一般環境大気測定局の一日平均値の年間九八%値の上位三局の平均値によって評価をする、こういうことになっております。
  37. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 評価をなすった上で、よくなっていますか悪くなっていますか、一般的に御答弁いただきたいと思います。
  38. 林部弘

    ○林部政府委員 お答えいたします。  これはたしかピンク本に載っていると思うのでございますが、五十二年当時の水準で区域分けをしてございますから、その五十二年当時の数字と、五十三、五十四、五十五、五十六、五十七、五十八ということで、各年度と比較しております。  それで、五十八年の分については昨年の十二月のピンク本に数字がございますが、これを見ますと、五十二年と五十八年度を比較をいたしますと、全部で十八カ所のうち一カ所だけが上回っている、こういう数字になっています。ですから、おおむね良好な状況ではないかと思います。
  39. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 非悪化原則というのはこれ以上悪くしてはいけないという水準なんですが、今あなたがおっしゃったのは一般局が中心なんです。自排局は落ちているんです。それで、おおむね横ばいという状態でしょう。そんなによくなっていませんよ、私の知る限りにおいて。そういう意味においては、どう考えたって――あなたは五十八年で言われたけれども、速報ベースでは環境基準達成は非常に困難になっているということを素直にお認めになったらいかがですか。
  40. 林部弘

    ○林部政府委員 さっき大臣がお答えをいたしましたように私も感じております。
  41. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 大臣も必ずしもお認めになっていらっしゃらないんですよ。新聞記者と懇談をなすったときの言葉というのは、私、聞いていませんから細かくは知りません。  しかし問題は、今私が言ったように、通達から今日に至るまでの測定方法それ自身をとらえてみても矛盾があるのです。当時、通達のままでやったのでは実態に合わない結論が出ることもはっきりしました、自排局その他の問題に対する測定の体制を含めて。それから、非悪化原則という点でも、それらを含めて言えばむしろひどくなっている状況というのはあちこちにあるわけです。しかも今私は五十八年ベースで数字を伺いました。やはり長官、これは無理なんです。  私、こんなこと言いたくないのですけれども、例の九八%値ということになれば、四月一日から四月七日まではかってすぐ結論が出てしまうのです。しかしそれは実は科学的な見方とは必ずしも言えないと私も思っていますから、八日の日にどうしますかということを申し上げるつもりはありません。しかし、今申し上げたように、五十八年、五十九年の速報の状況、五十八年のピンク本と五十九年の速報ベースで見ますと、これは困難になっていますということをおっしゃるのが素直な道だと思うのです。だから、私は長官がおっしゃったことは責めない。責めないがどうもすっきりしない点がありますよ、その点についてどう思いますかと伺ったわけです。素直にお認めになったらどうですか、長官。
  42. 石本茂

    石本国務大臣 先生のお言葉を拝聴いたしておりまして、私自身は非常に厳しい状況にあるということ自身は、素人でございますがわかりますけれども、現在ただいま必死に、もがく思いで各自治体が何とか基準にのっとりたい、その中に入りたいというので努力をされている実態をも見たり聞いたりしておりますので、この問題はやはり来年の十二月と申しますか、その時点までは何とも言えないんじゃないかなというふうに今現在思っているところでございます。
  43. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 長官、緩和のときに私は環境庁と随分やりとりをいたしました。それはかなり厳しい言葉遣いを含めてやりました。そのときに、この環境基準の緩和で一番の問題は、国が地方自治体に総量規制という形の責任を押しつけて、そして結局その場限りの、その場しのぎの状態をやっていくということが問題だよと申し上げました。  今、地方自治体は議会をおおむね、終わったところもございますが、開いております。どこの議会でもこのことが追及されています。そして、関係の市長や知事やあるいは関係部局の人たちが責められています。責められているのです。こういう状態をお考えいただきたいと思うのです。国はこれから一年間、困難だということを言いたくないから、わかっているけれども口をふさいでいる。自治体も同じなんです。自治体に車両の交通規制の上乗せ規制を指導をしたことがありますか。私はこれから申し上げますけれども、何もやってないじゃないですか。そして地方自治体に責任を負わして、それでできない。しかしできないと言ったんじゃ今気の毒だから黙っている。こんなものが行政ですか。これが人の生命や健康を預かる行政ですか。きょうはそんなこと私言いたくなかったのですけれども、そんなことでお頑張りになるなら、私はあえて言いたいと思う。  例えば、私は申し上げますけれども、率直なところ、あの環境基準を緩和したときにやりとりをしたことがございますが、結局あのときから困難だということはわかっていたのです、七年後を予想して。その実態を私言いましょうか。問題点は自動車排ガスにあるということをみんなわかっていたのです。なぜなら、例えばいわゆる移動発生源の寄与分、NOxの場合です。東京、大阪では七〇ないし八〇%です。横浜、川崎では六〇%程度があのとき既に把握されていたのです。それだけの汚染源があるのに、その問題について何かやったことがありますか。多少やってきたかもしれない。しかし、この問題を抜かしておいて、つまり移動発生源の抜本的な対策が実施されなければ環境基準というのはクリアできない、わかっていたのですよ。ところが、それに対する対応というものが不十分なまま今日まで来てしまった。  しかし、環境基準の改定のときには、環境庁は通達で、総量規制はすべての地域または場所におけるNO2環境濃度が日平均値〇・〇六ppmを確保する濃度とするとたんかを切っているのです。こうするから緩和してもしようがないじゃないか、そういう言葉を実は言っているのです。これは詐欺ですよ、はっきり。  こういう結果、環境基準緩和の政治的な責任というのはどこにあるのですか。私は、環境庁はその意味では二重の責任を負っていると思うのです。達成しますから緩和することを御勘弁いただきたい。しかし達成できなかった。そうしたら、そのときの約束はどうなるかという意味で、言ってしまえば環境庁は二重の政治的な責任を背負っている。このことについては長官どう思いますか。御答弁をいただきたいと思います。
  44. 林部弘

    ○林部政府委員 初めに、私から今まで私どもの方で講じました対策につきまして御説明をさせていただきまして、それから、大臣から御答弁をいただくということにさせていただきたいと思います。  今先生の御指摘のように、五十三年の環境基準改定の際に、すべての測定局でもって基準達成をしなければいけないということはおっしゃるとおりでございます。私どもも毎年のブルー本、ピンク本の発表の段階でも、すべての測定局での環境基準との適合状況についての成績を発表してきておるわけでございまして、自排局につきまして達成できない限りは環境基準は達成されていないということになるわけでございまして、そのことはもう御指摘のとおりでございます。そういうようなこともございまして、固定発生源対策と移動発生源対策ということで施策が重ねられてきているわけでございます。  先生十分御承知のことと思いますけれども、ちなみに申し上げれば、固定発生源対策につきましては、五十四年八月にNOxの第四次規制を行っておりますし、五十六年六月には先ほど御指摘のございました総量規制の制度の導入もいたしました。そして、五十七年三月神奈川県が総量削減計画を公告をいたしまして、続きまして大阪府が五十七年十月に総量削減計画の公告をいたしました。五十七年十一月には東京都が同じように総量削減計画の公告をいたしております。また、その後五十八年九月には工場、事業場に対します固体燃焼ボイラーの規制強化ということで、NOxについての第五次規制というものを行っておるわけでございます。  それから特に、先生指摘の移動発生源対策につきましては、五十四年一月に、五十四年規制ということでトラック、バスのガソリン車、軽貨物車についての規制の強化をいたしておりますし、それから自動車排ガスの五十四年規制で、ディーゼル乗用車、トラック、バス、これはいずれもディーゼルでございますが、それの規制強化も手をつけております。それから五十六年一月には、五十六年規制ということで軽量ガソリンのトラックとバスの規制の強化もいたしておりますし、五十六年十二月には中量ガソリンのトラックとバス、それから五十七年一月には、ディーゼル乗用車、軽貨物車、重量ガソリンのトラックとバスの規制もやっております。それから五十七年十月には、自動車排ガスの五十七年規制ということで副室式ディーゼル車のトラックとバスの規制もやっております。それから、五十八年八月の規制、それから五十九年十月の規制というようなことで、まだ御指摘のような十分な効果が出てきていないことは事実でございますが、逐年、五十三年のNOxの改定以来移動発生源につきましても段階的に規制をやってきております。  ただ、そういう規制の効果の及ぶはずの車にまだ十分な代替が行われていないということが現状であろうかというふうに考えております。
  45. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それでは通達の当時と今日のいわゆる結果の落差といいましょうか、目標と現実で結構だけれども、それがどうなっているか、三地域についてお示しをいただけますか。
  46. 林部弘

    ○林部政府委員 お答えいたします。  今年に入りましてから三地域と何回か協議をしてきておるのでございますが、五十八年のデータが一番新しい交通関係のデータになるのだそうでございまして、それがまた確定していないというようなこともございまして、各地域とも計算中ということで、私どもまだ結果をいただいておりません。しかし、これは恐らく夏までにはある程度の見当のついた形のものを示していただけると思っておりますし、私どもも、近い将来自治体側とそういう点についても十分すり合わせをし、将来に向かって対策を進めるための検討もいたさなければいかぬ、こういうふうに考えております。
  47. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 参考までに伺っておきますが、一日平均値と短期指針の達成はどんな関係になっているか、御答弁をいただきたいと思います。
  48. 林部弘

    ○林部政府委員 先生お尋ねは指針値でございますから、クライテリアの中の問題かと思いますが、環境基準といたしましては、短期的なものは長期的なものを達成すればその中で達成できるということで、短期的なものは環境基準が定められていないのは先生御存じのとおりでございますが、専門家のお示しになりましたレポートの中では、一時間値の〇・一ppmないし〇・二ppmというような数値を短期暴露の場合の数値として掲げておられます。
  49. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 その場合は、一日平均値でよくて、あとの短時間暴露の問題というのは切り捨てているというふうに考えていいですか。何か自動的になると書いてありますけれども、その理論的な因果関係が実は余り論理的ではないのです、私の承知している限りにおいては。その点はどうなっていますか。
  50. 林部弘

    ○林部政府委員 お答えいたします。  確かに論理的でないと言われるとちょっとなにですが、これはあくまで毎日、毎時間出てきたものが一日平均値として出てまいりますから、それは三百六十五日積み重なる。当然一日の中には二十四個の一時間値が入っているわけでございますので、そういうような数値と今申し上げましたレベルとの関係を統計的に処理をいたしますと、一時間値の一日平均値でゾーン内またはそれ以下に設定されておれば短時間暴露が高い確率で確保できる。高い確率でということを先生方よくおっしゃるのですが、これは十分安全を見込んでそういうことが言えるというように統計的には言える、こういうふうに言われておることでございます。
  51. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それはだから傾向値でございまして、WHOなどの数字を考えてみても必ずしもどうも科学的でないような感じがしますが、それはそれで結構です。  今、局長言われましたけれども、対策は一生懸命やってきた、しかし到達をしていない。それは総量規制に盛り込んだ対策が不十分であったとお考えなのか、あるいは総量規制そのものに欠陥があったのではないだろうか、私はむしろ総量規制そのものに問題があったということを言わざるを得ないのです。さっき自動車の例を言いました。自動車の例はまだたくさんございます。その意味では、総量規制そのものに欠陥があったのかなという感じ方を持たざるを得ないのです。その点についてはどのような御所見を持っておられますか。
  52. 林部弘

    ○林部政府委員 お答えいたします。  かなり高い水準にあるところの環境を改善するためには、当然のことながら全国の一律的な基準というものでは不十分でございますし、自治体が自治体の立場で条例等で上乗せをされても、それはその自治体の地域だけしかカバーできないというようなことも考えられるわけでございますから、その意味では総量規制の考え方そのものは私は間違ってはいないと思います。  問題は、その中に大きく分けますと固定発生源と移動発生源というものをどのように見込むかということになるわけでございますし、その見込みというのは、もう御案内のように、平たく申せばシミュレーションモデルを使ってのこれはあくまで当てはめでございます。したがって、その時点その時点で入手されますデータのうちで精度の高いものをできるだけ用いるというようなことでやってきているわけでございますが、御案内のように、これは年平均値レベルのものでないとその細部まではシミュレーションができないということは、もうモデルを扱っている専門家の中の現在の段階では共通の認識になっているということがございまして、限られたインプットデータというもので果たしてどこまで正確なものが出てくるかということにかかるわけでございます。  その点では、先ほど先生指摘ございましたように、なるべくならば目標年次が到来する前に、中間点に十分な予測をしておくべきではないかということになるのでございますが、固定発生源のデータと違いまして、交通量の方は三年置きでございますか、調査はそうしょっちゅうございませんので、先ほど私が五十八年のデータはまだコンファームしていないということをちょっと申し上げたのもそういうかかわりがございまして、五十八年の前が五十五年、その前が五十二年でございますか、東京は五十一年にどうも調査されているようでございます。  そういうようなことがあって、見込みの根拠になっているものの伸びをどう見ていくのかというような問題も一つございますし、それから、先ほど申し上げましたように、単体規制が必ずしも見込んでいたような形で代替が進んでいないというようなことになれば、それはそれで一つの問題になります。  それから、交通量そのものが人口の集中しておりますような大都市圏においての伸びが大きくなるとか、交通の渋滞の問題とかといったような問題が出てまいりますと、なかなかあそこの見込みがはかばかしく適合しないというようなことがあるかもしれません。ですから、フレームとその中に考えられている要素、考えられている対策についての質的な議論としてはそう大きな誤りはないのじゃないだろうか。問題は、量的な見込みというものが必ずしも現在持っておりますシミュレーションモデルの中できわめ切れなかった。  それから、これはもう御承知と思いますが、NOxは、SOxと違いまして、最終的に安定したNO2に変わっていくんだけれども、そのプロセスがなかなかいろいろ難しいというような問題もございますので、SOxの場合のモデルのようにうまくいかない。  それから、先ほど先生から御指摘ありましたように、モデルというのは地域をメッシュに切って、それで拡散計算をいたしますので、沿道のすべての測定局がうまく適合するような予測というのは技術的にある程度限界があるというようなことがございます。したがって、私は面的な予測としてはかなりいいところをとらえていたと思うのですが、そういう沿道の局地的なところはどうも先生の御指摘のように十分にいっていないことがもろに出てきているというのが現在の状況になるのではないか。  だから、総量規制という考え方、総量削減計画という考え方そのものは、基本的な考え方としては私は間違っていないのではないかというふうに考えております。
  53. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 総量規制という考え方というものが進んだ対応として出てきたことはわかります。しかし、その総量規制のあり方自身についていろんな問題を含んでいる。しかも、NOxの環境基準緩和のときの通達が、正直なところを言うと、例えば七年後とか五年後とかいうことを見越して通達を出されるよりも、いわば緩和と言われることに対する責めをいかにして逃れるかという言いわけのために、かくかくしかじかこうなりますよといういわば計算上の数字を並べたという面が非常に多い。私は一々きょうは読みません。読んだら環境庁は恐らく本当に恥ずかしくなります。  でも少し触れてみますと、例えば総量規制の問題、本気で自動車対策をやる気があったら、それは憩いけれども、自動車の排ガスの対策とその効果と、そしてその総量規制の結果というものを逐次、逐年でいいじゃないですか、きちんと押さえて、そしてこの点でどうも六十年の三月三十一日には間に合いそうもないぞ、お互いにしっかりやろうじゃないかということを御指導なさるのが環境庁のあの通達の筋だと私は思うのです。  例えば、あの通達の中にこういう文章があります。「まだ環境基準を達成していない、一口平均値が〇・〇六ppmを超える地域は、東京都、横浜市、大阪市、名古屋市などの大都市及びその周辺地域であって、人口、交通、工業等が著しく集中している。これらの地域の最高汚染地点において七年以内に〇・〇六ppmを達成することは、容易ではない。また、交通量の多い幹線道路に面した地域においても同様である。しかし、上乗せ規制や総量規制を含む最大の努力をすれば、おおむね達成は不可能ではない。」以下「環境基準のゾーン内にある地域であっても、」云々と、さっき私が申したことが書いてある。最大の努力をもってすれば不可能ではないと言い切っているのです。  ところが、私に言わせれば、環境庁は地方自治体に対して、例えば上乗せ規制の御指導をなさったことがありますか。地方自治体はそれに対してどういう努力ができるのですか。法律を持っていない以上、交通の規制ができますか。そういうことは環境庁がきちんと努力をなすって認めていかなければ、努力をしていかなければこれはできっこないのです。地方自治体の努力にまちますというようなことを言ったって、言うだけの話であって、地方自治体に苦労をかけるだけじゃないですか。その点、私は恐らく答えがないと思うのです。  あるいは、これは私も余り専門じゃないのですけれども、例えばあの環境基準の設定緩和にかかわるときのテンモードのとり方、そんな状態に今合ってないこともお認めいただけると私は思うのです。それをどう見るのか、見直すのかという議論もなされなければならぬ。  それだけじゃございません。例えば新車への代替率、当時五年と見ましたね。今、七、八年になっているでしょう。それが使用過程車の問題となって総トータルで影響を及ぼしていることは事実ですよ。計算の基礎が違っているじゃないですか。これだってもう時の流れで、ちょっと不景気だったからそのうちによくなってきて何とかなるというような勘定では済まないはずです。  まだ言いたいことがある。例えば、今の状態でいうと二割五分が違反車だと言われている。二割五分じゃまた少ないんじゃないかとさえ言われている見方もある。数字のことはおいておきましょう。しかし、使用過程車が相当の数にわたって実際問題として違反を繰り返している危険性というのはあるのです。それをチェックする機能がありますか。何にもないのです。私に言わせれば、本当にやる気があったら、例えば自動車の整備工場に使用過程車のチェックをするような、これは余り金がかからない施設が、機械があるそうです。そういう形でチェックをしていく、そしてお互いに気をつけようということを努力していく。チューインガム一つでもって何とか処理ができるみたいな、そういうことも、やられているかどうかは別として、いろいろ問題があるのです。こういうことに対して何にもやっていないのです。  また、さっき局長は、ディーゼルとか大型革のことをおっしゃった。極端にふえていますよね。最近は宅急便というのですか、本当に路地まで入り込んできて、いろいろな形で地域の、狭い路地の大気にまで影響を及ぼしているということも事実なんです。率直なところ、そういうことをお調べになったことがありますか。むしろこれからでしょう。  こういうことを挙げればまだ切りがないのですよ。だけれども、そんなことを言ったって始まらないから言いませんけれども、少なくとも通達のときの初心がまじめであれば、このぐらいのことは努力していたはずです。環境庁が地方自治体にハッパをかけてやっていく努力をなさったはずです。地方自治体も自発的にいろいろなことをやれたはずです。環境基準の緩和の後そのままなんです。  率直に言うと、国会でもこれらの問題について、私も緩和のときには随分やったが、ちょっと委員会を離れていた関係もありまして国会でやる機会がございませんでした。そのままになっているのです。さっき林部さんは、やりましたとは言った。それがどれだけの効果が上がっているかということについての、いわばアフターケアといいましょうか、フォローもまだまだ十分じゃないのです。そういうことを無視しておいて――無視してというか黙っておいて、今日、達成が難しゅうございますというようなことを言ったって私は始まらないと思うのです。これからどうなさるおつもりですか。率直に環境庁長官、答弁してください。
  54. 林部弘

    ○林部政府委員 お答えいたします。  いろいろな問題点の御指摘をいただきました。そのすべてにとてもお答えをできるだけのものを持ち合わせてはおらないわけでございますが、テンモードの問題につきましては、これはそれぞれの都市の交通の実態というものをもう少し見きわめる必要があるのではないかというようなこともございますし、自治体からのいろいろな指摘等も踏まえまして、これはもう先生御案内のように、五十九年度から予算化をいたしまして調査に入っておりますので、そういう走行モードそのものは規制の原点に位置される問題でもございますから、その意味では十分な検討をこれから加えてまいる、こういうことでございますが、まだ検討に入った段階ということでございますので、今の先生の御指摘からいえば、大変遅いのではないかというおしかりを受けるかと思いますが、ともかく今調査に入っている段階でございます。  それから使用過程車問題、これもしばしば指摘されているところでございます。この問題につきましては、過去の運輸省サイドの研究等によりますと、NOxの問題は、車が少しぐらい古くなっても、よほど整備が不良の状況でなければ劣化は余り起こさないというような過去の研究成果を踏まえまして、COとかハイドロカーボンについては比較的簡単なチェックをしているけれども、NOxについてはなかなか適当な検査法がないということで不十分な状況にあるわけでございますが、その点についてはいつも指摘されている問題でもございますし、運輸当局もこの点についてはかなり意識を持っておりまして、車の点検整備ということについては毎年力を入れておるようでございますし、私ども、この点につきましては将来の方策の一つとして十分に協議もし、強化していくような方向でお願いもしようと思っているところでございます。  それから、自治体との関係でございますが、確かに御指摘のように自動車対策、まあ私どもの手でできることというのが単体規制ということになっております歴史的な経緯がございまして、前回も御答弁申し上げましたように段階的に規制をやってきた、これが必ずしも十分でないというようなことがございます。  実は先ほど先生指摘がありました見込みの大きな違いがあるのじゃないかということの中に、五十一年、五十二年を原点にして数字をはじきました。そうしますと、この後に五十三年規制という、これは世界的に見ても非常に厳しい規制が行われておりまして、これがいわゆるガソリン乗用車になっておりますので、三都市の自動車からの排ガスの見込み量が、基準年に五十三年規制以前の数字を使っているということで、これがかなり大幅に減るのではないかという見込みを立てたということが一つあろうかと思います。  それから、あとはディーゼルあるいはトラックといったような大型車に対しては、二段階規制の後半のものが六十年までにはかなり進むという前提で当時作業をしたということのように思われます。もちろん、モデルに基づく計算そのものはそれぞれの自治体が主体性を持っておやりになっておりますから、私どもは細部まで十分に承知しているわけではございませんが、そういった単体規制の効果というものを非常に大きく見込んだということはあろうかと思います。  それから、その余の交通政策と申しましょうか、それにつきましてはどこの自治体でも苦労しながらいろいろなことが進められておりますが、そういう点につきましては、今こういうことを申してはなんでございますけれども、かねてからいろいろと協議もしてきておりまして、四月以降に、できるだけ早く自治体側ともそういった関連施策を効率的に進めるための協議あるいは対策についても御相談をして、今まで自治体が取り上げているようなものを私どももできるだけ関係省庁の方とも連携をとって御支援してまいるということが必要であろうかと考えております。確かに先生指摘のように、環境庁の今までの努力が不十分であったということは十分反省をしておるところでございます。
  55. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私は林部さんだけを責めても仕方がないと思うのです。あなたは、なってからまだ余り長くないのですからね。しかし、環境庁自身の責任はやはり問わなければいかぬ。  あなたはさっき自動車のことで、五十一年、五十二年で見込みという数字を言いましたね。これは実は固定発生源でも、あるのですよ。水質の問題のときに問題になりましたね。負荷量のいわばげた履きというか上乗せみたいなことがあって、それでもって数字を合わしたといういきさつがあるのです。実はこの場合でも、あるのです。例えば固定発生源について言えば、工場生産額及び原燃料の伸びと現実との乖離、これはやはりげたを履かしているのですよ。そして計算上の要削減量が事実上多くなっているのです。  その上に、言いましょうか。この二、三年、三、四年の例えば鉄鋼の操短の状況、新日鉄でもどこでも五割操短と言われる時代がありました。景気の落ち込みとそして燃料の使用量の低下というのがあるのです。したがって、環境庁がそのげた履きをした、上乗せをした、見込みをした、その数字よりも減って、また減っているんです。にもかかわらず、環境基準がクリアできないという実態なのです。  私は、正直なところを言うとその数字を明らかにしてほしいと思っているくらいですが、それは、景気が落ち込んだときの鉄鋼の操短が二分の一になったというようなときの原燃料の使用量などについて、どのくらいで、それがどういう因果関係でというようなことまで資料をいただきたいけれども、それは簡単になかなかできないと思うから、そこまでは言わない。言わないが、そういう、つまり実態よりも景気の動きやあるいはその後の推移というようなものをとらえてみて、やはり見込みというものがあったはずだ。あったにもかかわらず、まだなおかつそれがクリアできないという実態があるということだけはお忘れなきように、御理解を願っておきたいと思うのです。  じゃ伺いますけれども、例えば今局長言われました走行モードの調査とか排出係数の調査とか、あるいはその発生源の寄与率の検討だとか交通の量の監視だとか、いろいろなことを自治体がこれからおやりになる。環境庁もこれから予算を組んで、自治体に委託されている分もある。これが調査されて、そしてその結論が出てきて、解析をして、政策の選択をして、そしてそれを具体的に実施に移すには、率直に言ってこれから調査しようとしているデータを見込めば五年くらいかかりますよ。個々の対策はできるかもしれませんが、主要なものが五年おくれるのです、これはまごまごしていると。いや、それでもできないかもしれない。調査がとにかく何とか行われて、政策の選択が行われて、実施に移すのが五年後というようなことになりかねない。  一〇〇%、全部五年後とは言いませんよ。しかし、かなりの部分にわたって五年後くらいでないと、今言われたデータの収集整備、そして解析、そして政策の選択、そして実施に移すということのためには、恐らく昭和六十四年とか五年とかなってしまうのです、物理的に見ても、どんなに急がれても。そこまで環境基準のクリアができないという状態が続くと私どもは考えざるを得ない。それより前に解決をすればいいけれども、それは物理的に無理だと思うのです。  そういうことを頭に置いていただいた上で、どんずばり、今からさまざまなことを努力して、達成の期限、目標というのは、例えば二、三年後にできますか。
  56. 林部弘

    ○林部政府委員 いつできるかということについては、率直に申し上げまして、今、私はここでお答えはできません。  ただ、確かに先生おっしゃるように、非常に精密なシミュレーションをやるということになれば、答えが出てくるのにかなり時間がかかるということは御指摘のとおりでございます。  先ほどもちょっと申しましたように、シミュレーションモデルそのものの手法の中にまだ未熟な問題がございますから、そういう意味では、予測というものをかなり正確に行えということも同時にこれは要請されますので、私は今、直ちにお答えすることは難しいのではないかと申し上げたわけでございます。  今、私どもが考えておりますことは、三自治体が総量削減計画をお立てになるときに掲げられたいろいろな施策がございますから、そういうようなものをどういう形でより効果的に進めていくか、できることを少しでも進めることによって改善ができないかという問題が一つございますし、それから、先ほど先生の御指摘のあった速報レベルの数字で大まかな予測と申しましょうか、分析と申しましょうか、そういうものをできるだけ急いで、一度、自治体側あるいは一部専門家も御参加いただかないといけないかもしれませんが、そういうことで、そこら辺の検討というものを急いでまずやってみる必要があるのではないか。  そう申しますのは、三地域については三月三十一日がもうやってくるわけでございますが、五十三年から七年たちました期日がこの七月にやってまいります。そういうこともございますので、できるだけ早急にそこら辺のところを私ども、自治体側が中心になりましてよくすり合わせをしてみて、総量削減計画の中に盛られたものについて、もう少し効率的にあみいは効果的に進められるものをどういう形でやっていくかということについてよく検討する、そこをやった上でないとなかなかお答えが難しいのではないかと思っています。  確かにおっしゃるように、完全にすべての測定点でみんな丸になるのはということになりますと、環境基準達成は、これは試験でいいますと百点をとらないと落第でございますから、その意味では百点をとるということは非常に厳しいかもしれない。ただ、将来データが確定いたしましてはっきりする時点におきまして、仮に落第であっても、できるだけ百点に近い落第ということに終わるように努力はしていかなければいけないということで、現在いろいろなことを考えておるということでございます。
  57. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 やはり林部さんで正直な人だと思います。いつクリアできるかと言ったら、めどがつかぬ、そのことを申し上げる自信がないということは、当面それは難しかったということをお認めになったと同じでございますから、それ以上言いませんけれども、交通規制をするといったって自治体が勝手にできないのですよ、御存じのように。中小のボイラーの規制をやるといったって、これは地方自治体だけでできるものではないのです。それは環境庁なり国の行政というものがかかわって努力をなさらなければいけない。  そこで、私はお尋ねじゃなしに提案をいたしますが、やはりNOxの問題について関係省庁が協議をして、どうするかということを相談すべき時期に来ていると思います。もちろん、今五十八年のデータで云々ということはというようなことをおっしゃるかもしらぬけれども、例えば、五十九年のデータが出てきた、速報が出てきた段階で、関係省庁がこの問題について環境庁中心になって協議をする、そして対策を講ずる、そのことの歯切れのいい御答弁をいただきたいと思うのです。そうでなければ、のんべんだらりと何年待っているかわかりません。それができたって、いつだれが実現に移すかわからない状態なのですから、せめてその対策を示すための政府の英知を結集する、そういう受け皿をつくっていただきたい。長官の御答弁をいただきたいと思います。
  58. 石本茂

    石本国務大臣 先ほど来、先生の当時の御提言、ただいまのいろいろな首言葉、何か身にしみて私は受けとめさせていただきました。  ただいまのお言葉でございますが、今この場でお約束するということは非常に困難でございますが、できるだけ先生のおっしゃるような方向に向かって努力をいたします。いずれにいたしましても、関係の深い省庁と十分協議をしてまいりたいと思っておりますので、しばらくお時間をおかしいただきたいと思います。ありがとうございました。
  59. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 この問題というのは、これは環境庁だけでもできないのです。だから、政府全体が取り組まなければならぬ課題なのです。これは今交通のことを言いました。警察も運輸もございます。通産もございますでしょう。そういうことを含めて、ぜひひとつ――それをやらなかったら、また、環境庁は何をやっているんだ、そして、いつまでたっても環境基準はクリアできませんよ、という責めをずっと背負わなければいけませんよ。  私は率直に申しますけれども、今地方自治体の、環境庁の予算などを含めてこれからデータを集めて調査してというようなことを言っていらっしゃる。これは本当に解析して実施に移していくためには五年かかるのです。僕は五年でも間に合わない部分が多いと思うのですよ。だから、そこのところをまじめに本当にやっていただきたいと思うのです。  NOxの環境基準緩和のときの積み残しが、そしてまたそのツケが実は今ここに来ているのですけれども、私はその現場に立ち会ったものですから、橋本さんとかなりいろいろやりとりしたものですから、そのときに勉強させてもらったものですから、及ばずながら思い起こしてこんなことを素人なりにやっているのですけれども、私どもは素人でも、こういうことを言われたら専門家である諸先生も、あるいは局長も素直に答えられない。出発点が外れているからそうなるわけです。  ところが、この間のNOxの環境基準緩和のときもそうなのです。〇・〇二が生まれてきた背景が、根拠がなかったからというようなことをおっしゃるけれども、それでは、それで地方自治体が一生懸命で苦労していた努力はどうなるのだ、公害防止協定はどうなるのだというふうに詰めなければならぬのです。だから、そのことをぜひ御配慮いただきたいと思います。  それから林部さん、愛知、兵庫、北九州はどうなさるのですか。
  60. 林部弘

    ○林部政府委員 お答えいたします。  先ほど先生から鉄鋼その他の操業度の御議論等についても御指摘がございましたが、先生御記憶のとおり、六地域が五十二年のデータに基づいて取り上げられていたわけでございますから、その意味では、総量削減計画、総量規制というものは法的には三地域しか適用になっていない。結局、残り三つのところはそれぞれの自治体のその後の調査あるいは見通しなどから要綱ベースでやってまいりたい。要綱でも十分に、特に固定発生源関係につきましてはやっていけるというようなこともございまして、私どももそういうようなことを、当然それぞれの地域もそれぞれの地域審議会等にお諮りもし、地域での意見の御調整も十分なさった上で御相談を受けておるわけでございますし、私ども具体的な削減計画のスケジュールがおくれるということを考えますと、少しでも改善に向かって努力をするためには、次善の策かもしれないけれども要綱ベースでやっていただくということも、それもまた一つの方法であろうということで、私どもはそういう方向でやることについて賛成をいたしております。  先ほどの東京、大阪、神奈川の三地域につきましても、先ほど先生指摘のような問題はありますが、固定発生源の比較的大き目なところについては、この三月三十一日に既設のものも全部予定でいけるというふうにすべての自治体が申しておりますから、その限りでは、次善の策かもしれないがやはり要綱ということもいい。というのは、先生先ほど申されましたように、公害防止のための歴史というのは、私ども環境庁はまだ十年ちょっとの歴史しかございませんけれども、自治体はそれぞれ私どもよりも長い歴史を持っておりますので、そういう意味では、自治体が主導権を持ってそういうことでやれるということであれば、お任せをしていっても、十分経験もおありだからいいのではないかというように考えておるところでございます。
  61. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 環境庁はあきらめが早いという感じがしてならないのですが、本当に大丈夫ですかということだけ私から申し上げておきたいものだというふうに思います。  これは、今もう時間が余りないものですから、私はお願いだけしておきますが、例の通達の実施状況と環境基準達成の寄与率、林部さん、一生懸命でやっていたとおっしゃったのですから。それともう一つ環境基準設定以後いろいろな施策を講じてこられたわけだけれども、その効果の把握、これは今の私の申し上げたものと同じですが、できたらこれは地方自治体のものまで含めて、多少時間がかかって結構ですから、資料を私ぜひいただきたいものだと思います。その点、委員長にお願いをしておきたいと思います。
  62. 辻英雄

    辻委員長 わかりました。理事会で協議します。
  63. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私、こんなことも余り言いたくないのですけれども、あえて言わなければなりませんが、環境基準達成による諸行政施策の点検と見直しを求められているわけですね。御存じのように港湾計画、道路を含む都市計画、それは目標と削減見通しにおいて、環境アセスメントでこのことを前提として進めてきています。東京のかの有名な北区の王子線などという問題がありました。東京港の港湾計画の問題は、港だけに関して言えば問題は余りないかもしれませんが、近隣地域を含めてさまざまな問題が出ております。  御存じのように、建設省というのは〇・〇六を一番大きなマキシマムとして見ているわけでありますから、そういう意味を含めてこれは大変問題を起こすのです。もっとはっきり言うと、環境庁環境基準見直しの後に関与した開発計画のアセスメント、例えば発電所立地、公有水面埋め立てに関する計画、これも環境基準がクリアできないという前提に立ては、一体今まで何のかんばせがあってそれに対して認可をしてきたかという議論も出てくるのです。  行政責任というものは、そういう意味では非常に大きな責任を負っているのです、環境基準がクリアできないという事態のもとでは。だって、できることを前提にして組んできたわけでしょう。港湾計画にしてもあるいは道路の計画にしても、これは自治体ですが、環境庁でいえば発電所立地、公有水面埋め立ての計画の認可をおろしてきているのです。こういう問題はストレートにかかわる部分と間接的にかかわる部分でございますけれども、いずれにせよ、環境庁が判こを押す問題にかかわって、自分が決めたルールが守られていないという事態が起こっているわけであります。これらの点も重大な問題として受けとめていただきたい、そのことをぜひひとつお考えをいただきたいと思います。  それから、この間、林部さんが、私は自動車排ガスの対策の強化というので、浮遊粒子紛じんの問題もあるしいろいろな問題があると思うのです。NOxだけではなくていろいろあると思うけれども、ディーゼルの黒煙をもう少し進めていく方向が大事だという御答弁をおっしゃっておられるので、これはせめて一つくらいここで具体的に何をしているということをおっしゃったらどうですか、世の中には余り知られておりませんから。
  64. 林部弘

    ○林部政府委員 初めに、先生からいろいろと資料の御要求がございましたが、大分お時間をいただかないと用意ができませんので、これはまた別の機会に先生の方へお伺いをいたしまして、内容をお聞きした上で整えさせていただくということでお許しいただきたいと思います。  それから、ディーゼル車の黒煙対策でございます。このディーゼル車からの黒煙問題につきましては、五十七年度から低減技術の研究開発について調査を進めてきております。また、技術開発の促進をも図ってきているところでございますが、今の段階で申し上げられることとしては、やはり技術的なめどがつきませんとできないということがございますので、できるだけ早くめどをつけて現行ディーゼル黒煙の規制強化を図ってまいりたいということでお許しをいただきたいと思います。
  65. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 さっきの行政的な諸施策、とりわけ環境庁の例の発電所立地や公有水面埋め立てに対するゴーの問題というのは、環境庁長官どう御処理なさるつもりですか。
  66. 石本茂

    石本国務大臣 先生のおっしゃいますことがちょっと確認しにくかったのでございますが、いろいろな御提言を拝しまして、そして環境庁だけでできるものもあるかもわかりませんが、さっき申しましたように各省庁間の連携を保たなければできないものがほとんどでございますので、できるだけ早い時期にそうした省庁と十分な話し合いの機会を持ちたいということで、先生、御了承いただきとうございます。
  67. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これ以上申し上げてもあれですが、どなたかに聞いてください。  私の言った意味は、やがて、環境庁がとってきた諸措置と環境基準がクリアできないという現実との間に、アセスその他のことを含めて問題が残りますよ、そこでは行政的責任が、自分でやったことを自分で否定せざるを得ないようなことになる面がございますよということを申し上げたわけでございます。それはここでは余り申し上げるつもりはございません。ぜひ御配慮をいただきたいと思います。  それから、林部さん、大型車の規制や物流対策全体を含めてこれはやりませんとだめですから、さっき関係省庁と言った意味は、私はそういうことを含めて言っておりますので、その点を頭に置いていただきたいと思います。  それからもう一つは、総量規制制度あり方というようなものも、制度それ自身について私は申し上げるつもりはないけれども、例えば上乗せ規制の強化などについて、これは固定発生源を含めて言わなければならぬときが出てくると私は思います。そんなことも頭に置いていただきたい。  それから、中小ボイラーの規制の具体化というようなことも、確かに中小企業は大変だけれども、やはりこのままにしておくわけにはいかないぞということを注意を喚起しておきたいと思います。  そこで、また通達のところへ戻るわけですが、林部さん、この通達をごらんになっていただいたと思うのだが、これは五十三年七月十七日の大気保全局長の通達、あなたの前任者の通達です。一番最後に(3)と書いてありまして、「なお、公害健康被害補償法に基づく第一種地域については、今後も認定患者及び住民の不安を招来することのないよう特に留意しつつ、環境基準のゾーン内において対策の推進に当たられたい。」こう書いてある。書いてあることの意味が私はよくわからぬ面もあるのですが、何でこういう文章が加わったかというと、一種地域、つまり地域指定を受けている患者の皆さんがあるいは住民の皆さんが、このNOxの緩和で不安に感じてはいけないのでという注意書き、ただし書きのような感じがするのです。しかし、見ようによっては局長、これはSOxだけではなくてNOxについても影響があるということ、つまり無関係ではないということをお認めになった証拠ではないか、裏の方から。これはちょっと私の解釈が素直でないのかもしれませんけれども、しかしあえてこの中に最後に加えてある文章の意味は、私はどうもそんな感じがするんだ。  そこで、もう時間がなくなってしまいましたから和田さんの時間を六、七分いただくことにしましたけれども法律の問題についても少し御質問したいと思います。  SOxはともかくとして、さっきから議論しておりますように、NOxを含めた大気汚染が改善されない地域について汚染源の新増設などというものは少しチェックして、健康被害の防止に努めるべきではないかと思いますが、これはどなたの答弁になるのですか、御答弁をいただきたいと思います。
  68. 林部弘

    ○林部政府委員 私がお答えするのが適切かどうかわかりませんが、環境基準の達成ということに関しましては、これはかかって大気保全局でございますので、今御指摘のような点につきましては、そういう問題の提起されております関係自治体と十分に協議をいたしまして対処してまいることになろうかと思います。
  69. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 NOxの環境基準緩和の際に、かの有名なクライテリア論争がございました。もうそれは読みません。読みませんけれども中公審専門委員会答申の中にも、指針の中にもいろいろ書いてございまして、これらの点から、結局、安全係数というのは切り捨てられたわけでございます。  いわゆるクライテリアと言われる言葉遣いも含めてさまざまな論争があったことは、林部さん、ぜひ頭に置いてほしいのですが、もう時間がありませんから細かく言いませんけれども、これはNOxですが、環境基準が達成されないで、クライテリアの言葉遣いで言うと「健康な状態からの偏りが見出された」と。そのときにはNOxを含めて当然地域指定が行われるべきだと考えますけれども、この因果関係について御答弁を煩わしたいと思います。これは中公審検討中ですからという答弁では済まないですよ。
  70. 林部弘

    ○林部政府委員 今、先生の御指摘のありました環境基準と、それから専門委員会の指針値と申しましょうか、その間に安全係数を掛けるべきかどうかということで大変激しい議論があって、その議論の当事者間では議論は平行なままで終わっているということでございます。  そういう点で申し上げますと、今私は当時の橋本局長の何代か後の局長立場でございますし、先生はまさに橋本局長と論争された立場におられます。その後、環境庁の責任において現行環境基準国民の健康を守るために適切なものであるということで定められておるわけでございますから、私は、環境基準国民の健康を保護し維持していく上で望ましい基準であるという以上は、環境基準を少しでも超えたら直ちに病気がどんどん出てくる、そういうレベルでは恐らく決めていないと思います。  ですからその意味では私は、お答えになっていないかもしれませんが、先生が今御懸念になっているような議論をすべきであるというサイドと、そこまでは影響は及ばないのではないかという見方と、分かれるような気がいたします。今申しましたように私の立場で申しますと、結局争い合っている当事者間で現実には法廷にまで持ち込まれているような問題までございますから、その意味では私はその環境基準を是とした立場に今は立っております以上、現在の環境基準国民の健康を守っていく上で十分安全を見込んで定められたものであるというようにお答えをさせていただこうと思います。
  71. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私の質問したのはまさにあなたが答えたその後を伺いたかったのです。つまり、環境基準だけでという議論もあるが、あのときは環境基準を超えて、なおかつ健康への偏りという言葉を使ったわけです。そして要するに結論を出して、環境基準を新しくつくったわけですわね。健康への偏り、つまり被害ですね。  ではもっとはっきり言いましょう。例えば有症率がきちんとされて因果関係が明らかにされれば、指定をする条件に合いますねということを言っているのです、それならいいでしょう。これはそちらの方から……。
  72. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えいたします。  指定地域あり方につきましては現在審議会で御審議いただいておるわけでございますが、その中におきまして、先生お話しのようにNOxと有症率といいますものが相当説得性のある因果関係があるということが明らかになりますれば、SOxと同様にそういうものが規制されるということは理論的にはなり得るというぐあいに考えております。
  73. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私は川崎ですから少しくどく大きな声を出して申しわけなかったのですが、やはりぜんそくで苦しんでいる皆さんに日ごろお目にかかっておりますと、それは何とかしなければいけないと私ども感じている一人です。  その意味で、最後の質問ですが、これは保健部長で結構です。川崎などのようにいまだに新たな公害被害者が発生しているという状況のもとで、しかも複合汚染の原因一つであるNOxの面でもかなり厳しい状況が続いているという状況のもとでは、地域指定解除というようなことが行われることはあり得ないと判断してよろしいか。
  74. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えいたします。  私どもといたしましては、公害健康被害補償法という法律を主管している立場におきまして、この法律を適正に運用することを絶えず心がけていかなければならないと思っておるわけでございます。そういう面で、現在この公健法運用につきましてはいろいろな御意見があるわけでございますので、その御意見に対して、私どもやはりそれぞれの時点におきまして現在の科学知識を十分踏まえた上での答えといいますか、あり方についての答えを持っていなければならないというぐあいに思っておるわけでございます。そのようなことで、特に問題になっております大気汚染健康影響という関係につきましては、私ども資料も取りそろえまして現在中公審の御審議をいただいておるということでございますので、その審議の結果を踏まえながら私ども対応していかなければならない。  先ほどの話の補足になるのかもしれませんけれども、そういう面では大気汚染と健康被害との関係といいます問題につきましては、いろいろな分野のいろいろなデータ、知見があるわけでございますので、それらがお互いに理屈が通った形で組み立てられる、構築される必要があるだろうと思うわけでございますので、そういう面での審議の結果を見守ってまいりたい。その審議の結果を得ましたら、私どもとしてはそれに適正に対処してまいりたいというぐあいに考えているところでございます。
  75. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 この法律はある意味で時限立法という性格を持っていますから、とにかく三月いっぱいに参議院を含めて処理をしなければならぬという立場に私どもは立ちます。立ちますが、しかし、今私が申し上げましたように、公害被害と言われるものが健康や生命に及ぼしている実態は、単にSOxだけではなしに、NOxも含めてさまざまな問題が複合汚染という形で提起されている、とりわけ大都市においてはその事態は深刻である、そのことはお認めいただけると思うのです。  その中で、私があえてNOxの問題でかなりしつこく緩和にさかのほってあのときのやりとりを踏まえながら御質問を申し上げた意味は、NOxという点についての対策が極めて不十分なままで、しかも私に言わせれば、あの基準緩和のときのいわば言いわけということのために書かれた通達を含めてのさまざまなやりとりというものが、今日まで七年の歴史の中で決してまじめに取り組まれていない。だから総量規制の問題を考えてみても、その環境基準さえクリアできない。あのときに私は何遍か環境庁の側の御答弁をいただきました。いかなる地域でも〇・〇六ppmを超えることはない、そのために誠心誠意やります、困難があります、しかし最大の努力をしてなし遂げますという答弁を何遍か担保として受けとめています。にもかかわらず、そのことがないがしろにされているとすれば、私が一つ一つまだ取り上げたいことがございます。しかし時間がございませんからそれ以上言いません。  しかし、私の言わんとする意味は――何ぼでもありますよ、努力がおろそかにされてきた足跡をたどってみれば。そういうことを含めて、ぜひひとつ緩和などという議論について、財界が言ったから、臨調が言ったから、そこでそれに従わざるを得ないという形で事柄が進むのではなくて、生きとし生き続けているということを私いつも言いますけれども、本当に苦しんでいる患者立場、民事の立場でということを長官はおっしゃいました、これは本当のことを言うと損害賠償です、そういう立場に立ってこの法の精神を生かしていただきたいし、見直しなどという議論についてもそこを原点にして、被害者と加害者の関係、その立場を原点にして御配慮あらんことを心からお願いをして、質問を終わります。
  76. 辻英雄

    辻委員長 和田貞夫君。
  77. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 今の岩垂委員の質問に対する御答弁をずっと聞いておったわけでございますが、どうも歯切れの憩い御答弁が繰り返されておるわけでございまして、この環境庁というお役所は、本来、私の言い分から言うならば、企業が社会的な責任をきちっと果たすということによって環境というのは極めて浄化されて、それの被害者も出てこぬというようなことになることを願った役所である、私はこういうように思うわけでありまして、そういう意味では、いい意味環境庁という役所は一日も早くなくなった方がいいというように思っているのですね。  ところが、今の岩壁委員の発言に対する御答弁をお聞きいたしますと、例えば、NOxの環境基準の未達成につきましてもなかなか将来的に見通しが立たないというような印象を受ける御答弁でありました。言うならば、環境基準をいわば大幅に緩和したことによってこの基準達成というものができなかったんだということをやはり環境庁は素直に認めるべきでありまして、その上に立ってその未達成を達成に持っていくためにはどういうようにしていくのだということを考えてもらわないと、大阪府自体も、このままでは環境基準のクリアというのは不可能だというように言っているぐらいで、他の自治体も同じことであるわけです。極端な言い方でございますけれども、私は一日も早く、環境庁という役所がなくなっても国民が安心をして生活できるような環境の達成になるように環境庁はひとつ頑張ってほしい、まじめにひとつ取り組んでもらいたいというように思うのですが、その点についてひとつ長官のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  78. 石本茂

    石本国務大臣 先ほどの岩垂先生の御提言、それからまた、ただいまの先生のお言葉、いろいろ拝聴いたしておりまして、本当に公害の被害を受けて健康を阻害されました人々が幸せになっていただきますために私どもは努力をしているわけでございますので、今申されましたような御期待にお沿いできる対策に真剣に今後とも取り組んでいかなければならないというふうに私は思っております。
  79. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 改めてひとつ、先ほども議論されておったわけでございますが、中央公害対策審議会への諮問を行われたその背景と趣旨についてもう一度この場でひとつお述べいただきたい。
  80. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えいたします。  中公審諮問した背景及び趣旨というお尋ねでございますが、まず、我が国の大気汚染の状況を見ますと、先生御案内のとおり、硫黄酸化物によります汚染が著しく改善される一方におきまして、窒素酸化物及び浮遊粒子状物質によります汚染はほぼ横ばいに推移するというような態様の変化が見られているわけでございます。環境庁といたしましては、こうした大気汚染態様の変化を踏まえまして、大気汚染と健康被害との関係検討に資するために各種の調査を実施してまいったところでございます。五十八年の十一月にこれらの調査のデータを取りまとめましたもので、その結果を中公審に御報告いたしますとともに、我が国におきます大気汚染態様の変化を踏まえ、今後における第一種地域あり方に関しまして諮問したものでございます。  現在、環境保健部会に設置されております専門委員会において鋭意審議が行われておるところでございます。
  81. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 答申の時期がいつごろか、その見通しがつかぬわけですね。先ほども意見が出ておりましたように、中間報告を求めるというようなお考えはないのですか。
  82. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えいたします。  中間報告ということに関するお尋ねでございますが、先ほども御説明申し上げたわけでございますが、中公審に出しました資料につきましては、世界各国のNOx、SPMの文献あるいは国保受診率調査あるいは学童に対しますATS調査といいますものを、いろいろ私ども調べたものを中公審報告いたしまして、それに基づきまして中公審でいろいろ御審議いただいておるわけでございますが、いずれも非常に専門的、科学的なことでございますので、そういう面で、専門委員会におきまして専門方々、臨床家、医学家の方々という構成から成っております専門委員会におきまして現在鋭意審議が進められておりまして、十八回ほどの会合を重ねて審議が進められておる段階でございます。  そういうことで、中身が非常に専門的、科学的な話でございますので、それにつきまして中間報告を出すのが非常に難しいということであるわけでございますが、いずれにいたしましても、現在、専門委員会におきましていずれかの時点におきましてそういう大気汚染と健康被害との関係につきます評価といいますのは取りまとめが行われるものというぐあいに考えておるところでございます。そういう取りまとめをされましたものにつきましては部会報告されまして、部会でさらに御審議が進められるというぐあいに思っておるところでございますが、そういう専門委員会の取りまとめました報告書というものは、部会の御判断にもよることになろうかと思いますけれども、従前のいろいろな審議会等の例におきましても、公表するという形じゃございませんが、明らかにされるというようなこともあるわけでございますので、そういう形での中間報告と申しますか専門委員会報告といいますものが明らかにされる可能性は高いというぐあいに考えておるところでございます。
  83. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 私の希望したいのは、この答申がなされるまでに、専門家の皆さん方だけでこのことを考えるというだけじゃなくて、この機会に、答申に当たって、例えば専門家以外の現実に今悩んでおられる患者さんの意見医療機関意見、あるいは自治体の意見患者さんとは逆の、今SOxだけに主要物質が置かれておる中で特に小さな企業の賦課金の額というのは極めて急上昇してきておりますので、そういうような発生源の意見、そういうようなものを聞くために、中間報告を求めて、最終的な答申が出るまでにその患者さんなり、その地域で取り組んでいる自治体や医療機関意見も聞く場を持ってほしいという意味で私は言ったのですが、そういうような取り組みで環境庁としては申分審の方に臨んでもらうというような意思はないですか。
  84. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 中公審審議が行われております過程におきまして、いろいろな分野患者さんあるいは費用負担者の御意見を聞く場を設けるべきじゃないかというお尋ねかと存じておりますが、私どもは従前から各方面の御意見を聞いておりまして、その意見は私どもの責任におきましてそれぞれの部会の方に御報告申し上げ、部会審議の参考にしていただいておるところでございます。特に患者さん方の要望と御意見といいますものにつきましては、昨年も部会の場におきまして一回そういう機会を設けまして、患者さんの代表の方々から患者さんの現実の姿等につきましての御説明をしていただいたところでございます。こういうことで、今後とも部会におきまして、必要があればそれぞれの関係者の御意見を聞く場を設けることもあろうかと思いますけれども、私どもといたしましては、できるだけいろいろな機会に承っております御意見部会にお伝え申し上げたいというように思っております。  なお、専門委員会は特に専門家のお集まりでございますし、大気汚染と健康被害との関係の医学的評価ということでございますので、そういう面でのいろいろな御意見を伺うということとは別に、あくまでもデータ、文献に基づきます評価をきちっとやりたいという御意見でもございますので、その場におきます。そういう各方面の御意見というものはできるだけ差し控えて進めていただいておるところでございます。
  85. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 中公審答申をするまでに、患者等の意見をぜひともひとつ多く求める機会をつくってもらいたいものだと思います。  そこで、先ほどからも議論が繰り返されておりましたが、これは当初この法律ができる段階でSOxを主要物質として割り切ってこられたということはやむを得なかったと思うわけですが、今、法の運営をする中で現実の問題としてなかなか環境基準が達成できておらないという状況であるにもかかわらず、SOx以外のNOxやSPMその他の物質が大気を汚染しておるのだということが現実の問題として指摘されるならば、速やかにこの問題の解決を図らないと、誤った方向で、SOxの排出量が少なくなった、ところが患者がふえてくるということで、まるで患者の方に責任をなすりつけられるような議論に発展してくるということにもなるわけでございますので、これはぜひとも早い機会に、NOx及びその他の物質の汚染の影響というものを考えたときに、地域指定の中にこれらの問題を考える時期は今をおいてないというように私は思うわけであります。一方では、今申し上げたように、患者がよくなっている、SOxの排出量が少なくなっているのに患者がふえているということを議論される方もありますけれども、また逆に、SOxの排出量が少なくなるように企業企業なりの努力をしてきたということも事実であります。  そこで、私は、極めて零細な企業の労働組合から一つ要請というよりも陳情を受けているわけです。資本金が一億三千五百万円程度の企業です。従業員の数が四十五名なんです。事務所に働いておる者を除きましたら、現場で働いている労働者は三十人足らずなんです。そういうささやかな企業が、昭和四十九年度のSOxの排出量が一万八千九百六十四で賦課金が百四十六万六千百、それだけの賦課金だったのですが、五十八年度になりますと、SOxの排出量を三千七百二十八に減らす努力をこの小さな企業企業なりにしてきた、ところがこの賦課金が千百四十二万というような金額を納付しておるということであるわけです。そういうような小さなところでございますが、小さなところでも発生源であるという自覚は持っておりますが、これだけの努力をしてきた。  ところが、この間に大きな企業の場合は燃料転換等を終えて、賦課金を払う必要がなくなったところがある。大企業はそれだけの資本力もあり、資金力もあるわけですから、賦課金を払わなくてもいいような改善、燃料転換等ができていくわけですが、小さな企業になればなるほどそういうことができていかない。あるいは過日の国会でも指摘されたわけでありますけれども大気汚染防止法の規制対象外の小型ボイラーの多缶設置ということでこの法の網をくぐって賦課金を払わないというような悪質な企業もある。  ところが今申し上げましたように、資金不足の中でもSOxの排出量を減少するために会社も労働者もまじめに努力していく。私が今例に挙げております会社なんかは、現場の労働者は三十人足らずです。食堂に行きましたら、飯を食う机さえもがたがたです。これでも労働者は辛抱して頑張っているのですよ。そういうような労働者の施設あるいは食堂の改善をしないで、それだけの努力の中で頑張っておるのだけれども、今申し上げたように、大きな企業は抜けられていく、あるいは悪質な企業は賦課金を払わないような手だてを講じるということで、この十年間に十倍も賦課金が上がった。そのためにそこの労働者の福祉は犠牲になっておるというようなこと。確かに今排出量が少なくなったとしても発生源には違いないわけですから、これはやむを得ないと思います。しかし、その金額がそれだけ大きくなってきておるのに抜けているところは抜けていく、そういう不公平なことがあっていいのか。悪質な企業あるいは大きな企業が抜けていくというようなことになりますと、今までは大気を汚染した原因者が平等にこの賦課金を徴収されていたのに、今は公平に割り当てられておらないというような気がしてならないわけです。  こういう現実の一つの例を踏まえて、もういつまでもSOxだけを主要物質に当てておると、このことがだんだんと矛盾が出てくるということであろうと思うのでありますが、そういうような問題について、まじめに努力してきた小さな企業あるいはそこに働く労働者だけに、原因者が負担する費用負担によって犠牲がいかないように手当てを加えるためにはどうすべきかというようなお考えがあるかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  86. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生の方から、企業がいろいろ努力をいたしましてSOx排出量をどんどん減らしておっても賦課金額はどんどんふえておるということに関するお尋ねであるわけでございますが、先生御案内のとおり、本制度を組み立てる場合におきまして、費用負担は全国一本、全国プール制でお金を集めましょうというような大きな割り切りをやって組み立てているわけでございます。  そういうことで、個々のSOx単位当たりの料金と申しますのは、その年間に給付を必要とします総費用を分子に置きまして、分母に年間出されますSOx排出量、それを割り返しまして、いわゆる単位当たりのSOx量の賦課料率というのを定めておるわけでございます。したがいまして、分子にございます。その年間に必要とします補償給付に必要とする経費、これが増加の傾向にありますれば当然単位当たりの賦課料率も上がってくる。一方におきまして、分子が仮に固定されましても、分母のSOx排出量、これは全国的に年々減少しておりますから、そういう面で分母のSOx排出量が減少いたしましても単位当たりの賦課料率は上がってぐるというような傾向にあるわけでございますので、そういうことから企業全体としては、SOx排出量については非常に努力いたしまして減らしておる関係もあるわけでございますので、当然賦課料率は上がってまいっております。  ですから、ただいま申し上げましたように、総費用、必要とする経費、あるいはSOx排出量といいますのがそれぞれプラスとマイナスの方に響きまして賦課料率が年々上がってまいっておるということでございますので、先生からお話のございましたある企業が非常に努力いたしました場合におきましても、そのSOx排出量が全体的なSOx排出量の割合と同じ程度であれば、賦課料率は分子の部分に絡んでの上がり方だけになるわけでございますが、特に、全体的に分母のSOx排出量が非常に減っている場合におきましては、そこでの減り方の差によりましては、SOxを減らしても賦課金額はふえる傾向になるわけでございます。こういうことで、全国的な必要経費の伸びあるいはSOxの減り方と個々の企業におきますSOx排出量の減少の組み合わせによりましてそれぞれの比率の差が出てくるということも、実態的にはあり得る話であろうというぐあいに思っておるわけでございます。  基本的には、ただいま先生からお話がございましたように、現在の賦課金のかけ方をSOxにかけておるだけであるから、逆に言ったらそういう傾向になるのじゃなかろうかなあというお尋ねもあるわけでございますが、これは当初、四十九年の中公審答申におきましても非常に議論をされまして、固定発生源におきますNOxの排出量を的確に把握するにはいろいろ技術的に困難な問題がある、操業条件によりましてNOx排出量は変わってくるというようなこともあるわけでございますので、そういう面ではNOxの排出量を的確に把握することは困難であるということから、SOxに着目して賦課金をかけるという仕組みに割り切ったという形になっておるわけでございます。そういう面では、個々の企業におきますNOx排出量を的確に把握することは非常に困難だというような点から、SOxに着目して賦課金をかけるという仕組みを現在もとっておるところでございます。  いずれにいたしましても、ただいま先生からお話のございましたような問題は、負担金に関します非常に大きな問題でございますので、今後とも費用負担者側のいろいろな御意見を伺いながら、そのコンセンサスを得ながら、私ども長期的な課題という形で検討してまいりたいと思っております。
  87. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 私は誤解を生んだらいかぬので申し上げておりますが、おれのところの企業も発生源なんだということは労働者自身も自覚しているわけです。自覚しておるのだけれどもSOxだけを主要物質に置いてきたために、今も御答弁があったように、このようになってきた。NOxの排出量を計算するのはなかなか難しいのだというようなことで延び延びになっていけばいくほど矛盾がやはりずっと続いていくわけでありまして、大きな企業であればそれだけの能力があるのですよ。労働者を犠牲にしてまでもこの負担金を納付しなければならないという企業のことを考えるならば、やはりいつまでもSOxSOxということだけで主要物質にして賦課金を取っていくというこの矛盾性を考えてもらう必要があると思います。  私は元地方議員をやっておりましたが、その当時は、二十四、五年ぐらい前は、とにもかくにも信号機を設置してくれという陳情が非常に多かった。ところが最近は、信号機をとってくれ、とにかく信号機の前で自動車に並んでとまられて排気ガスをまかれるのは付近の皆さんにしてみたら甚だ迷惑である、信号機をないようにしてくれ、こういうような陳情を受けるぐらいに、自動車の排気ガスによる地上の環境破壊、大気汚染に対する寄与率は非常に高いということを、日常生活をされておる市民からやかましく言われておるわけなんです。にもかかわらず、依然としてこの法律は、もう二年延長、三年延長、二年延長と繰り返されて、いつまでたっても自動車による負担金が二〇%、そして発生企業、固定発生源の方から八〇%ということが、今回もまたそれを改めようとしないでずっと続いてきておる。だから先ほどの問題が出てくるわけです。いつまでも二〇%ということにこだわるのじゃなくて、これを三〇%、四〇%ということにしてくれば、これまた一つの改善策、解決策にもなっていくわけなんです。それをのんべんだらりと十年この方八対二、そういう負担の割合というものをこれからもなお続けていこうとするのですか。
  88. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えいたします。  固定発生源と移動発生源の八対二の負担割合に関するお尋ねかと存じますが、この固定発生源と自動車、移動発生源の負担割合につきましては、四十九年の中公審答申によりましても、環境汚染の寄与度の大きい、先生お話にございましたSOx、NOxといいますものを算定の対象といたしまして、これらの物質の全国におきます総排出量をもとに算出するというぐあいに中公審答申にも普かれておるわけでございまして、この考え方をもとにしまして、固定発生源と自動車の負担割合をSOx、NOxそれぞれに推計いたしますと、それを平均いたしますと、全体的には固定発生源が八、自動車の分が二ということになっておるわけでございますので、これを八対二という形で大きな割り振りをやっておるわけでございます。  なお、この八対二の比率につきましては、中公審環境保健部会の中で御議論賜ったわけでございますが、総体的な比率がそう大きな差はないということで、引き続き明年度におきましてもこの八対二の負担割合で行ってよいのではなかろうかという御意見をいただいておるところでございます。そういうことから、私ども、固定発生源八割、自動車に係る分を二割というぐあいに割り切りまして明年度以降の準備をしてまいりたいというぐあいに思っておるところでございます。
  89. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 そうすると、八対二という割合はずっと続けていくということですか。割り当てを改めるというような考え方は今のところはないということですか。
  90. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答え申し上げます。  NOxとSOxの寄与度の関係でございますが、これも中公審答申におきまして、総体として見た場合にそれをほぼ等しいという割り切りをいたしておるわけでございます。そういうことから、NOxの全国推計量あるいはSOxの全国推計量というものを出しまして、それを固定発生源、移動発生源というぐあいに分けてやっておるわけでございます。  ちなみに、四十八年で申し上げますと、固定発生源が八一・九プロで自動車が一八・一プロというようなところから、それを八対二という形で割り振っておるわけでございます。なお五十八年度の数字で申し上げますと、その比率が固定発生源が七七・二プロで自動車の分が二二・八プロという形で、漸次自動車の分が若干ふえつつあるわけでございますが、総体的に見ました場合におきましては、八対二の割合といいますものを変えるまでに至ってないということでやっておるわけでございます。今後ともそういう面で毎年毎年それぞれの分の排出量というものを推計いたしまして、この比率についての見直しといいますか、検討は続けるところでございますが、基本的な考え方は従前と同じ考え方で進めさせていただきたいというぐあいに思っております。
  91. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 これは、先ほども申し上げたように、金のいといもせぬような企業は賦課金のかからぬようにしていきよる。国会がそうでしょう、この国会が。国会は、国立図書館以外は燃料を灯油に転換しているから賦課金を払っておらぬ。国立図書館は今なおA重油を使用しておるから賦課金を年間約六十万円くらい払っておるのですかな。ところが、衆議院も参議院も、金にいといはせぬから賦課金なし。かからぬようにできていっているわけです。  大企業の場合は金にいといはせぬからそういうように燃料転換をやっていけるのですよ。あるいは設備も改善することができるのですよ。小さなところはそれさえもできない。金を貸すといったかて、借りたらこれまた利子も払っていかないかぬ。それはそれなりに労働者を犠牲にしてでもやっていっておるのだから、これはもうやむを得ぬのじゃ、逃げるところはどんどん逃げていきよる、逃げていけば小さいところばかりにだんだんと費用負担が重なっていってもいたし方ないのじゃというようなことでは、私はどうも納得することができないわけなんです。そこらはやはり、これからもずっと続けていくということになりましたら、これは今のような考え方であれば、つぶれてもしようがない、犠牲になってもしようがない、そういうことにも通ずるわけでありまして、余りにも零細企業なり零細企業に働いている労働者にとってはかわいそうだと思いませんか。
  92. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えいたします。  大気汚染を出しております事業者からそれぞれの排出量に応じまして拠出していただくという制度の割り切りがあるわけでございますので、先生お話のように小さな企業が大変苦労しておられるということも十分わかるところでございますが、この制度の円滑な運営のためにはぜひ御協力をいただきたいというぐあいに思っておるわけでございます。  先生お話にございましたように、最近では大企業のみならず中小企業もかなり低硫黄重油への切りかえあるいはLPGに使用燃料を転換するというようなことをやっているわけでございまして、そういう面では、数字的な話になって恐縮でございますけれども、資本金で一億円未満の企業負担額の割合といいますものを見ますと、施行以来大体二%ぐらいで推移しておるというような数字的なものもあるわけでございますので、先生が非常に御懸念なさっておりますような、大企業だけがそういう面での、本来大企業負担すべきものを中小企業に転嫁しておるというようなことは、この先ほど申し上げました数字から見ますと、そういう事実も余りないのじゃなかろうかなというような感じを持っておるところでございます。  いずれにいたしましても、こういう面でいろいろな企業、大企業中小企業におきましても、そういう汚染物質を排出しておる企業方々には、この制度の円滑な運営のために、出されましたSOx量に応じました拠出といいますか、お金を徴収さしていただいておるわけでございますので、この制度のことを十分御理解いただくよう、私ども今後ともPRといいますか、そういう面でのあれをしてまいりたいというぐあいに思っております。
  93. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 しつこいようですが、現実の問題として、燃料転換によって、過去に賦課金を払っておっても賦課金はもう払わなくていいようになった企業があるわけでしょう、大企業であるいは先ほども申し上げたように大気汚染防止法に抵触しないような小型のボイラーによってこれをもぬけの殻にしておる、責任を免れて賦課金をかけられておらぬという企業があるわけですよ、そういう悪質な企業が。そういう企業がある以上は、その分がやはり中小企業の方にかかってくるじゃないですか。零細企業になればなるほど資金力がないため、改善の努力はしておってもできる限度がある、限界がある。言うなれば、そういう燃料転換をしたところも設備を改善したところも過去に大気を汚したのだから、そういう大企業に対しても当分の間賦課金をかけていくというようなことも考えるべきだという極端な意見を私は持っているのです。
  94. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 先生御案内のとおり、この公害健康被害補償制度といいますものが、そういう民事責任を踏まえた損害補償制度ということで成り立っておるわけでございますし、その補償給付に関しましては、汚染物質を排出している事業者からお金を集めて補償給付をやるということで、その汚染物質を排出している方々につきましては全国一本で、指定地域、その他地域との区分けはいたしてございますが、全国の固定発生源から、あるいは自動車に係るものは自動車からということで負担をしていただいておるところでございます。  そのような制度の大きな組み立て方の中におきまして、先生お話にございましたように中小企業方々に対する対策をどうするかということでございますが、基本的には汚染物質を排出している方々すべてからそれぞれの排出量に応じて拠出をしていただくということになるわけでございますが、実際問題といたしましては、それを集めるためにいろいろな面でのコストもかかるわけでございますから、そういうコストを勘案しながら、一定のところである程度大きなところだけからお金を出していただいておるという仕組みになっているわけでございます。そういうことで、個々の企業におきましてはあるいは先生お話のようなことがあるのかもしれませんけれども、全体的に見ました場合には、この制度の仕組み、物の考え方から、それぞれのところで御協力していただくといいますか、費用を徴収させていただいておるということでございますので、ひとつ御理解いただきたいというぐあいに思っております。
  95. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 時間がありませんので、そう余りしつこく物を言うことをやめますが、もう一つ、私は、この法の運用についてちょっと理解しにくいのが患者認定ですね。認定あるいは更新、認定の取り消し、等級の決定、これは医学的な検査のもとに公害健康被害認定審査会、これがそれぞれの地域で決める、こういうことになるわけですね。確かにこの認定のための基準というのはあると私は思うのですが、その審査会にかけるまでの医学的検査の方法、それは各政令市でまちまちですね。あるところでは、例えば横浜、川崎市が共同で独自の検査機関を設けておられる。ある町では保健所を検査機関にしている。あるところでは国公立の病院を検査機関にしている。あるところでは民間の医療機関も含めて検査機関にしている。そして、あるところでは全く指定しないで、申請者が持参した検査結果によって審査する。どうもアンバランスがあると思うわけですね。だから、同じ疾患を持っておられる患者さんが、ある地域では認定されるが、同じ指定地域でありながらあるところでは認定ができない、こういうような矛盾が起きてくるんじゃないですか。この点についてどう思われますか。
  96. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 医学的検査機関に関するお尋ねでございますが、医学的検査機関の指定につきましては、先生お話にございましたように、各県市におきまして、その検査機能だとかあるいは病院等の立地条件といいますものを考えまして、実施の観点から公立、私立を問わずに適当と認められるところを医学的検査機関というぐあいに指定いたしておるところでございます。  そういうことで、それにつきましては、当然その地区にございます認定審査会の御意見もいただきながら、先ほど申しましたような観点において指定いたしておることでございますので、それぞれの県市におきまして、先生お話のように保健所なりあるいは特定の医療機関、あるいは国立病院あるいは私的な医療機関というようなものをそれぞれ指定いたしてやっておるわけでございます。先生お話の中でも、それぞれの県市におきましていろいろな問題等はあるのかもしれませんけれども、私ども、こういう審査会の意見を聞いて特定の検査指定機関におきまして検査を受けていただきまして、その検査結果あるいは主治医が出されました診断報告書その他の関連の資料といいますものを集めまして、それぞれの認定審査会においては十分医学的所見を踏まえながら審査していただいておる、適正に行われておるというぐあいに理解いたしておるところでございますが、今後とも、先生からそういうような御指摘もございますので、さらに適正な審査が行われますよう県市の方に指導してまいりたいというふうに思っております。
  97. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 これらの患者さんに対する主治医の意見というのは、これはやはり尊重してもらわなければいかぬですね。主治医の意見は尊重してもらうんだけれども医療機関がそれぞればらつきがあるので、その主治医の意見がある地域では認められるがある地域では認められぬというようなことが起こらぬか、こういう気が私はしているわけです。そういうことがないということであればなんですけれども、先ほど申し上げたようにこの指定医療機関を設けているところも設けていないところもあるから、その設け方もばらついておるから、法のもとに平等に扱われておるのかどうかということを私は懸念しておるわけなんです。そういう点、そういうように地域によって不平等な扱いを受けないように、ぜひともひとつ善処方を検討してもらいたいと思うわけであります。  時間がありませんので最後に一つ申し上げておきたいと思いますが、冒頭申し上げましたように、中公審答申に当たって、自治体の意見あるいは医療機関意見、特に患者さんの意見というものはぜひとも十分ひとつ尊重してもらって答申が出てくるように、ぜひとも御配慮いただきたいということを最後に要望させていただきまして、長官の御答弁をいただいて質問を終わりたいと思います。
  98. 石本茂

    石本国務大臣 先生の御提言、賦課金の問題、患者認定の問題、いろいろ本当に私なりにごもっともだと思ってみたり、制度というものは厳しいものだなというような印象を受けたりしながら聞かしていただきました。今申されておりますように、あらゆる条件等を背景にいたしまして、十分にそれらを勘案しながら今後の対策を立ててまいりたいというふうに考えます。ありがとうございました。
  99. 辻英雄

    辻委員長 草川昭三君。
  100. 草川昭三

    ○草川委員 公昭党・国民会議の草川昭三でございます。  私は、前回のこの委員会で一時間半ぐらい時間をいただきまして、本法案の問題についての議論をさしていただきました。しかし、長時間にわたる議論ではございましたけれども、率直なことを申し上げまして議論はかみ合わなかったわけであります。かみ合わなかったところに実は今日の問題点があるのではないか、こう思います。そういう意味で、本法案が成立後も、フォローアップというのでしょうか、問題点等について解明ができるようにぜひ当局の方に要望を申し上げておきたい、こういうことを申し上げます。  その上に立ちまして、きょうは少し観点を変えまして、日本の企業、多国籍企業とでも言うべきなのでしょうか、それが東南アジア等において環境汚染をしておるという問題を取り上げたいと思うわけであります。  アジアに御存じのとおりマレーシアという国があるわけでありますが、このマレーシアに、日本の三菱化成という企業と現地の企業とで法人をつくりまして、エーシアン・レア・アース社という会社をつくりました。ここで、蛍光灯やカラーテレビあるいはブラウン管等の製造に使用される希士鉱石、モナザイトというのでございますが、この鉱石の採取及び製錬を行いまして、その製品は全量日本に輸出をされているわけであります。  この廃鉱石には放射性物質のトリウムというのが含まれているわけでございまして、これが非常に簡単な露天掘りの最終処分場に投棄をされていることが問題になっております。現地の住民も非常にたくさんの方々が反対運動に参加をしておるわけでございますし、操業停止などを求めて裁判所に訴訟を提起している。さらにこの問題はエスカレートをいたしまして、排日、日本商品ボイコットにまで高まっている問題があるわけでございます。私はこれは非常に重要な問題だと思うので、関係当局の態度を、説明を求めたい、こういうわけでございます。  そこで、この合弁会社についての問題点をもう少し申し上げておきますと、現地の法人は、工ーシアン・レア・アース社ということを今申し上げましたが、これは一九八〇年、昭和五十五年でございますが、三月にマレーシアのイポー市という町の郊外に設立をされました。現地の企業は希土鉱石を選鉱する業者でべー・ミネラルズ社という会社でございますが、そこと合弁をしたわけでございます。私の承知をしておる限りでは、三菱化成は三五%、それから現地の企業でべー・ミネラルズ社が三五%、その他現地企業が三〇%、資本金八百万マレーシアトル、約八億円で設立をされたと言われております。この会社は、ARE社と略称で申し上げますけれども、先ほど申し上げましたように、カラーテレビの赤色蛍光体原料あるいは石油精製の触媒原料等の中間原料、あるいは原子炉等にも使われる材料になるわけでございますが、このモナザイトの年間の処理能力は約四千トンだと言われております。  この原料のモナザイトに放射性物質トリウムが含まれておるわけでございますが、放射能が半分に減る長さ、すなわち半減期と言うわけでございますが、この半減期は百四十億年という気の遠くなるようなものでございまして、理論的というのでしょうか、非常に重要な環境破壊をするのではないか、こう思います。ところが、現地のマレーシア政府は将来このトリウムというものを原発の燃料に使うということを考えているようでございまして、この廃棄物のトリウムについてはマレーシア政府に引き渡せ、こういうことを言っておるわけでございます。  そういうところから、この廃棄物の処理というのが、現在会社から約十六キロ離れましたパパンという田舎町にその投棄場が選ばれておるわけでございますが、住民にも相談がない、あるいはまた、地域の住民は農業だとかいろいろなことをやっておみえになるわけでございますけれども環境汚染を非常に心配してみえるわけでございます。その廃棄物の投棄場というのは、もう本当に三メーター程度の溝を掘った露天になっておるわけでございまして、コンクリートの覆い等も破壊をされている、こういう状況にあるわけであります。  そういう前提のもとに、私が今御指摘を申し上げました点等について、そういう企業があるのかないのか、あるいは現地でどういう状況になっておるのかという概要について、まず外務省から答弁を願いたい、こう思います。
  101. 柳井俊二

    ○柳井説明員 お答え申し上げます。  基本的な事実関係につきましては、ただいま草川先生から御指摘のとおりでございまして、ただいまお話がございましたように、エーシァン・レブ・アースという会社を三菱化成と現地の会社との合弁で設立いたしまして、ただいま御指摘のような製品の産出をしているわけでございます。この件は、もとよりマレーシアという外国におきまして操業しているという案件でございますので、基本的にはマレーシアの国内の問題ではございますけれども、私どもといたしましても、ただいま御指摘のような公害問題ということが伝えられてまいりましたので、昨年来これを関心を持って見守ってきているわけでございます。  事実関係につきまして、若干重複する面もございますが、確認の意味で申し上げますと、次のような状況でございます。  このエーシアン・レア・アース社は、すずの精製後の残滓から得られる、先ほどもお話しございましたようなモナザイトという物質からイットリウムというような物質などを、これは希土類と言われておりますが、これを抽出することを目的といたしまして、日本の企業が三五%、それから現地の企業が六五%出資いたしまして、合弁形態で一九八〇年の春に設立されたものでございます。  この設立認可の条件といたしまして、これも先ほど草川先生から御指摘がございましたとおり、マレーシア政府は、この抽出の過程で発生いたしますところの一種の廃棄物でございますが、低レベルの放射性物質と言われておりますトリウムをマレーシア政府に引き渡す、それから、このトリウムをマレーシア政府の指定する備蓄場に持ち込むということを同社に義務づけたというふうに聞いております。  それで、マレーシア政府としては、マレーシアの国内の関係機関の調査をもとにいたしまして安全性を確認した上で、これも先ほどお話しございましたように、イポー市という町の近郊のパパンというところに備蓄場の場所を選定いたしまして、昨年の中ごろまでこの備蓄場の建設が行われていたそうでございます。ただ、これも御指摘のように、この周辺の住民の不安がいろいろな形で表明されまして、この関係で、マレーシア政府としては第三者的な機関でございますところの国際原子力機関、通称IAEAと略称しておりますが、このIAEAなどに依頼いたしまして安全性の再確認調査を行ったそうでございます。その結果、安全性には問題がないという答えが出まして、これを踏まえて、マレーシア政府としてはこのパパンの備蓄場を予定どおり建設するということを再度決定した由でございます。  これに対しましてやはり関係の住民から非常に強い不安が表明されまして、種々検討した結果、この一月二十日に至りまして、マレーシア政府は、各種の調査結果を考慮して、住民側の要望にこたえまして、備蓄場を当初の予定地の隣接の町から四・八キロメートルほど離れた地点に移転するということを決定したというふうに発表されております。  なお、この移転先の近辺にも住民がおりまして、新たな備蓄場予定地と工場の双方に隣接する形となりましたブキット・メラという地区がございますが、このブキット・メラ地区の住民八名が、去る二月一日にこのレア・アース社を相手取りまして放射性廃棄物の生産、貯蔵の禁止を求めましてイポー市の高等裁判所に訴えを起こしたというふうに承知しております。裁判のことでございますので、今後の裁判の展開についてはまだよくわかっておりません。  大体概要は以上のとおりであります。
  102. 草川昭三

    ○草川委員 今外務省の方から概略的な御説明がございましたが、現地の貯蔵倉庫というのは、私ども常識的に考えますと、何か堅固なコンクリートの建物を思い浮かべるわけでございますが、先ほど触れましたように野天でございまして、幅三メートル、深さ四・五メートル、長さが五十から六十メートルの三本の溝になっておりまして、内壁はコンクリートで覆われておりますけれども、それがまだらになって穴もあいている、こういう非常にずさんな管理になっている。しかもそこに牛が入り込んできておる。埼玉大学の市川という教授が現地まで行かれまして線量計等で被曝量をはかっておるわけでございますが、換算をいたしまして、少なくとも国際的な基準である五ミリレムですか、それを超すのではないか、こう言っておるわけでございます。  もし日本でこのような管理をするならばどういうことになるのかということを、簡単に科学技術庁にお答えを願いたいわけでございますが、少なくとも日本では核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律があるわけでございまして、使用の届け出、技術基準の遵守が必要になるのではないか。同時に、そういうことでどのように管理をされておるのか、あるいはそういう施設がある場合に出入り管理は厳重なのかどうか、こういうことをお答え願いたいと思います。
  103. 穂波穰

    ○穂波説明員 御説明申し上げます。  ただいま先生指摘のとおり、当国におきましては核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律というものがございまして、この中で、モナザイト石等トリウムあるいはウランを含むような鉱石につきましては核原料物質という規定になっております。  これを日本で使う場合には、ある一定量あるいはある一定濃度以上の場合には、今先生指摘のとおり、使用の届け出あるいは技術上の基準の遵守ということをこの法律によって規定されているわけでございます。それで、この一定濃度と申しますのは一グラム当たり〇・〇一マイクロキュリー、一定量と申しますのは九百グラムでございます。  今先生指摘の、例えば年間四千トンも使うとか、エーシアン・レア・アースが使っているような鉱石はこの一定濃度をかなり上回っておりますので、当国におきましては核原料物質の使用に当たります。この使用に当たりましては内閣総理大臣に使用の届け出をしなければいけない。と同時に、核原料物質の使用に関する規則に従いまして、技術基準の遵守ということが行われなければなりません。  この技術基準の中には十三項目ございますが、今簡単に、先生が御指摘の出入管理等はどうなるのかということを御説明いたしますと、まず核原料物質は使用施設の中において使用しなければならないというのが一点ございますが、被曝管理のために、そもそもある程度以上の濃度になるとか汚れるおそれのある区域を管理区域として設けなければなりません。それから、この管理区域に入る従業員あるいは随時入る方々に対しましても、被曝管理、被曝の低減化を図らなければいけませんが、一応許容線量といたしましては、日本におきましては三カ月三レム、これは従業員に対して規定いたします。それから、この管理区域の外側に一般公衆の方々の安全を図るために周辺監視区域というのを設定していただくことになっております。周辺監視区域にしましても管理区域にいたしましても、みだりに無用の方が入って無用の被曝をすることのないように、さく等を設け厳重に管理する。  あらましこういうような形の規制が行われることになっております。
  104. 草川昭三

    ○草川委員 どうもありがとうございました。  今お話がございましたように、日本の国内だとすると非常に厳重な管理になるわけです。  それから、先ほど年間の被曝量五ミリレムと言いましたが、それは年間の被曝量五千ミリレムでございますから、訂正を申し上げておきます。  いわゆる国際放射線防護委員会、ICRPでも非常に厳格な基準があるわけでございますが、市川教授の現地のレポートによりますと、それをかなりひどくオーバーをしておる。また、現地住民からも、外務省から御説明がございましたように非常に反対運動が起きておる。  そこで、日本の企業に対する批判が出てくるわけであります。それで、日本は日本の国内では厳重だが、一体マレーシアならいいのか、それは合弁会社でも問題だという反日運動が起き、商品ボイコットも起きておる。  通産省にお伺いしますが、こういう企業にどのような指導をなされるのか、なされていないのか。簡潔で結構です。
  105. 川口順子

    ○川口説明員 御説明申し上げます。  我が国の企業の海外事業活動が円滑に展開していくためには、受け入れ国の環境保全等も含めまして現地社会との協調及び融和が不可欠だと存じております。  現地の環境問題につきましては、第一義的には現地政府による規制等にゆだねられるべき問題でございますけれども、通産省といたしましても、必要に応じ、投資を行っている親企業を通じまして現地の規制等に適合していくように指導する所存でございます。
  106. 草川昭三

    ○草川委員 じゃ外務省にお伺いをいたしましょう。  今のような事実で、特に東南アジアというのは日本にとりましても非情に重要なところでございますし、このような多国籍企業の行動規範ということについては国連でも今議論が出ておるところだと思います。そういう中で、現地でもし反日運動がこれ以上広がるということになりますとゆゆしきことだと思いますが、外務省としてどのような御指導をなすっておみえになるのか、お伺いしたいと思います。
  107. 柳井俊二

    ○柳井説明員 お答え申し上げます。  ただいま草川先生指摘のとおり、日本の企業が海外に進出していきまして、そこでこのような問題が起こるということ、さらにそれを契機として反日運動のような問題が起こるということはぜひとも避けなければならないというふうに私ども外務省としても考えております。したがいまして、先ほど通産省から答弁がございましたように、日本の企業が合弁等の形で東南アジアその他に出ていくという以上は、外国においていわば客人として活動するわけでございますから、そこの政府はもとより、また地域社会との融和、協調のもとに事業を進めるべきであるというふうに考えております。  本件のマレーシアの件につきましては、そのような観点から、私どもといたしましてもマレーシアに大使館を持っておりますので、現地の大使館を通じましてマレーシア政府、それから三菱化成の役員の方も行っておられますので、そういう関係者を通じまして、昨年の春ぐらいから事実関係を聴取してまいりました。  そのような過程を通じまして、第一義的にはもとより現地の規制等に従うべきであるということではございますけれども、先ほど申し上げましたような外務省としての関心を伝えてきております。また、今後とも必要に応じてそのような関心を伝えていきたいと思います。関係者は私どもの考え方は十分承知をしているというふうに理解しております。
  108. 草川昭三

    ○草川委員 外務省はただいまのような御答弁でございますが、通産省として、この三菱化成に以上のような観点で御指導をされるのかどうか、お伺いします。
  109. 松田憲和

    ○松田説明員 お答えいたします。  私ども、現在、三菱化成から現地での操業状態あるいは備蓄場の建設の状態、そういったものについて事情を聴取しております。従来から三菱化成は現地政府の規制及び指導のもとに操業しておったわけでございますが、今御指摘のような問題が生じておりまして、さらに我々としては詳しく事情を聞きまして適切な指導を行っていきたい、そのように考えております。
  110. 草川昭三

    ○草川委員 では、最後になりますが、ひとつ環境庁長官に、このような重要な企業が国外で公害たれ流し等の批判を受けて反日行動の対象になることは決して好ましいことではないと思うのですが、長官の見解をお伺いしたいと思います。
  111. 石本茂

    石本国務大臣 先生の御指摘の問題も含めまして、現在開発途上国が抱えているさまざまな環境問題につきましては関心を持っております。  開発途上国の環境問題は、まず当該国の責任で処理することが基本でありますが、進出した日本企業環境対策が不十分などの批判を招いでいるとしたら、これはまことに残念なことだと思います。関係者の慎重な配慮を心から期待いたします。
  112. 草川昭三

    ○草川委員 続いて環境庁、どなたが答弁になるかわかりませんけれども、今お話がありましたように、現地の法律というのを守ることは当然でありますけれども、大変失礼ですけれども、現地では環境対策を熟知していない場合も多いと思われるわけでございます。環境庁として、発展途上国に対するいわゆる環境行政のノーハウを移転をしていくことが必要ではないかと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  113. 岡崎洋

    岡崎政府委員 先生おっしゃるとおりでございまして、私どもも、かねがね国際協力事業団を通じましていろいろな環境協力を発展途上国に対してやってまいっております。  態様は大きく分けて二つございまして、向こうの職員をこちらに招聘いたしましてこちらで研修を行うということが一つ、それからもう一つは、私ども調査団を向こうに派遣する、あるいは専門家を派遣して向こうでいろいろ指導を申し上げる、こういう二つの態様がございまして、過去十年この方かなりの実績を上げてきておると思います。今後とも引き続きこれをさらに充実させていきたい、かように考えております。
  114. 草川昭三

    ○草川委員 時間が来ましたので最後になりますが、今取り上げましたのは外国の例でございますが、ひとつ国内でも――たまたまきょう私ども、新素材、いわゆる先端技術の勉強会をやるのでございますけれども、新しい材料というのはどんどん出てくる。ところが、将来それをどのように廃棄をするのか、処分をするのかというようなサイクルの問題が並行して全く出てきていないわけでありまして、非常に問題だと思っております。  そういう意味で、今後新しい物質等が使われていく、先端技術の利用の拡大も多くなってくるわけでございまして、新しい環境問題の未然防止ということを事前にやることが必要だと思うのでございますが、その点、環境庁としてどのような御見解が、お伺いしたいと思います。
  115. 山崎圭

    ○山崎(圭)政府委員 先生指摘のとおり、私どもも同じような問題意識を持っておりまして、特にエレクトロニクスでございますとか新素材でございますとか、あるいはファインケミカルあるいはバイ才テクノロジー、こういう新素材、先端技術、大変花盛り的な状況にあるわけです。未然防止という観点から、こういう開発利用の分野が拡大するということにつきましては、私どもまず実態の把握が必要である、こういうふうに考えております。そういうことを通じまして環境とのかかわり、これを手がけていかなければならないという認識を持っております。  なお、今後の課題でもございますが、そういうものの中で、場合によっては環境改善への利用ということもあるいは可能性があるかもしれない、そういうこともあわせ考えつつ、今後、調査検討を継続してまいりたい、こういうふうに考えております。
  116. 草川昭三

    ○草川委員 以上で終わります。
  117. 辻英雄

    辻委員長 坂口力君。
  118. 坂口力

    坂口委員 久しぶりに質問をさせていただきますが、まず最初に、公害健康被害補償法の一部を改正する法律案につきまして質疑をさせていただきたいと存じます。  先ほどからいろいろの角度から質疑がされておりますので、できるだけ重複を避けたいと思いますが、最も核心と思われるところだけひとつお聞きを申し上げたいと思います。  一つは、皆さんからちょうだいいたしましたパンフレットを読ませていただきますと「現存被認定者数推移」というのがございますが、これを拝見いたしますと、地方工業都市におきましては認定患者数は減少ないし横ばいの傾向にあるわけでございますが、東京、大阪あるいは京阪、阪神といった大都市圏におきましてはなお増加の傾向にあるわけでございます。この原因が何かということはこれをちょっと見せていただきましただけでは非常にわかりにくいわけですが、環境庁の方としてはこれをどういうふうに認識をしておみえになるのかということをまずお聞きをしたいわけであります。と申しますのは、それをどう考えるかということによりまして今後の対策にも大きく影響をいたしますし、また、今諮問されております中公審議論にも大きな影響を与えるものであるというふうに思うからでございます。まず、お伺いをしたいと思います。
  119. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答え申し上げます。  各地域認定状況を見ますと、先生の御指摘のとおり必ずしも一様であるとは言えないわけでございまして、今、大都市あるいはその他の都市と分けたときにかなり差があるのじゃなかろうかという御指摘でございますが、私どもその理由についてはいろいろ考えておるところでございますが、非常にいろいろな要因が絡み合っていて難しいというぐあいに思っておるところでございます。特にその理由といたしましては、各地域におきます汚染の態様の差、あるいは地域指定以降経過した期間の長短などの要因も絡まっているだろうというぐあいに思っているところでございまして、こういう面におきまして、それぞれの推移を見ただけにおきましてそれぞれの地域の差をどう理解するのかについてはなかなか難しい問題であるということでお許しをいただきたいと思っております。
  120. 坂口力

    坂口委員 難しいことはよくわかるのですね。しかし、先ほどから議論が出ておりましたように、例えばNOxの問題がございますし、SPの問題がございます。現在のこの認定患者数というものが今までのSOx中心としたものであると考えるか、あるいはそうではなくて、最近の状況はもう少しNOxなりSPなり複合したものの結果であると考えるか、私はいろいろ考え方があるだろうと思うのです。また、その考え方によりまして今後の取り組み方というのもかなり変わってくるのではないかと思うわけです。NOxの問題につきましても、皆さん方が中公審に提出されました資料、「窒素酸化物の健康影響に関する文献調査」という分厚いものがございまして、こうしたものも見せていただきましたが、しかしなおかつはっきりしない面もあるわけでございます。私はこのNOxにつきまして、これを見せていただきまして概略こういうことかなと思ったわけでございますが、私の認識に誤りがございましたらどうぞ言っていただけば結構でございます。  それは、NO2ないしNOxなるものが生体に影響を与えるということは、動物実験だとかあるいは生体に対するいろいろな影響からわかってはいるけれども、その濃度がどの程度になればそれが起こるかということがいま一つはっきりしない、したがって、この法律の第二条にありますところの著しい大気汚染と多発する疾病という二つの条件を満たすのはどの点であるかがいま一つはっきりしないというのが現状ではないのかなという認識で実は見せていただいたわけでございます。  今NOxのことを申し上げましたけれども、こうしたことも含めて、現在大都市圏において認定患者がほかの地域に比べてなおかつ増加をしている原因をもう少しはっきり環境庁としてつかみながら資料を提出するということが大事ではないだろうか、そう思いますがどうでしょう。
  121. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えいたします。  現行指定地域指定要件につきましては、先生お話にございましたように、著しい大気の汚染と健康被害の多発という要件をそれぞれそろえまして、その要件に合致した場合においては指定地域という形をとっておるわけでございます。その大気汚染要件といたしましてはSOxによる濃度で決めているわけでございますので、そういう面では、現行指定地域は全部一応SOxの濃度と健康被害の多発という現象において地域指定をしております。その指定地域におきまして一定の期間暴露要件を満たし、なおかつ指定疾病に罹患しております場合においては公害による健康被害とみなすという大きな割り切りをやっておるわけでございます。  指定疾病と申しますのは、気管支ぜんそくぜんそく性気管支炎、肺気腫、慢性気管支炎という慢性の非特異的疾患でございまして、これらの疾患それぞれにつきましては大気汚染のみで発病する疾病ではございません。いろいろな要因がございまして、いずれの地域においても発生する病気でもあるわけでございますが、先ほど申し上げました指定疾病、暴露要件指定地域という三つの要件で現在の制度を組み立てておるわけでございますから、その中におきましての患者さんの推移が現在あるというぐあいにお考えいただきたいと思っております。  なお、先生からお話ございましたように、現在諮問いたしておりますことにつきましては、四十九年の中公審答申におきましてもSOxと健康被害との関係については因果関係がかなり明らかであるということに基づきまして、先ほど申し上げましたようなSOxによります大気汚染の程度それから疾病の多発の程度というものの基準を設けているわけでございますが、NOx、SPMに関しましては当時まだ知見が不十分である、十分でないということから、NOx、SPMに関しましてはそういう基準的なものは中公審では判断できない、宿題事項であるということで答申をいただいているわけでございます。そのような過程におきまして推移してまいっておるわけでございますが、現行ども運用に当たりましては、申分審答申に示してございますようなSOxそれから疾病多発という要件に基づいて地域指定をいたしております。  ただ、大気汚染態様が変わってきた場合においてこのNOx、SPMの影響をどう考えるかという点が非常にはっきりしないところでございます。定性的にはNOxにつきましては健康被害があることが明らかであるということは確かだろうと思うわけでございますけれども、定量的な関係におきましてはまだはっきりしないところが非常にございますので、そういう面につきましては、環境庁は従前からいろいろな知見、文献あるいは調査といいますものを取り集めまして、現在、それを中公審に提出いたしまして諮問、御審議をいただいておるところでございます。  したがいまして、先生お話にございましたように、NOx等の量的な問題と健康被害との関係を明らかにすることが確かに一つの大きな課題であるわけでございまして、そういう点を現在の文献なりいろいろなデータに基づきまして先生方の間で医学的、科学的にきちっと評価していただきまして、地域指定指定要件あるいは解除要件を明らかにしていただきたいということで現在諮問いたしておるところでございます。
  122. 坂口力

    坂口委員 気管支ぜんそくや慢性気管支炎というような疾病が非特異的な疾患であることは私も存じております。非特異的な疾患ではありますけれども、しかし、現在までの経過を見ますと、SOxならSOxの濃度とは必ずしも並行しない面もある。非特異的な疾患ですから、ほかのいろいろな要因もあることは当然ですが、SOx中心にして見ると、SOxだけでは理解しがたい面も確かに出てきているわけであります。  今申しましたように地方都市においては減少傾向にあるのに大都市圏においてはなかなかこれが減っていかない、むしろ認定患者数は増加している。それじゃ大都市圏はSOxの濃度がだんだん高くなってきているかというと、そうでもない。これは地域によって差がありますけれども、必ずしもそうではない。ということになれば、SOx中心にした見方は改めなければならない時点に来ているのではないか。そういうことになりますと、SOxの次に考えるべきものとしては、ほかにいろいろあるのでしょうし、いまだわかっていない要因もあるのかもわかりませんが、しかし、はっきりいたしておりますものの中ではNOxが一番見なければならないものの一つであることは間違いないと思うわけです。それから、SPの問題もあると思うわけです。  そのNOxやSPの問題につきまして、今までのいろいろな研究機関でやられましたデータを集めて提出して、そして今、中公審での審査の議論の中の一つに提出しておみえになるわけです。ところが、各研究機関あるいは各大学とかこの問題にいろいろ興味をお持ちになっている皆さん方の研究というのは、それぞれの研究目的がありまして、必ずしも環境庁が一番欲しいと思っております方向に一致しているとは限らないわけなんです。ですから、環境庁が今最も欲しいと思う、すなわちどの程度の濃度になったらそれが多発という問題に結びつくのかという、その濃度と疾病多発というところに焦点を合わせた研究が提出された中にたくさんあるのか、それとも、それはないのだけれどもいろいろの問題があるから出されたのか、その辺はどうですか。
  123. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えいたします。  NOxと健康被害との関係をいろいろ判断する場合におきまして、かなり量を薄いところから高いところに順次上げていった場合にどういう被害が起きるのかというのを判定すれば、先生お話しのように一番大気汚染と健康被害との関係を明らかにするデータが得られるということは十分わかるわけでございますけれども、実際問題といたしましてはそういうのも、人体実験という形はなかなかできない面もあるわけでございます。そういう面で、私ども調査、国内外の文献におきましても、かなり動物を使って大気汚染濃度影響、それの影響の中には病理学所見なり血液所見なりいろいろの所見があるわけでありますが、そういう動物実験によるデータ、あるいは人の場合におきますとボランティアによります影響、これもおのずから限度がございまして、かなり高濃度あるいは長時間というものはできないわけでございますけれども、ボランティアを使った人体実験データ、それからそれ以外に疫学的なデータでございます。これは御案内のとおり広い地域におきます濃度と健康影響といいますか症状との関係について疫学的な調査手法があるわけでございますが、そういうものをいろいろ調査しまして、それを中公審にお出ししているわけでございます。  でございますから、これらの三つの調査がそれぞれお互いに理論が統一された形で組み立てられる、確かにいろいろな御意見といいますかデータが出るわけでございますから、全部が全部一致すると思っていないわけでございますが、それぞれの専門先生方がお集まりになりましてこれらの文献が全部同じような考え方で一つの考え方にまとめられる、大体こういうことになれば、それぞれの文献が整合性がとれるというようなところのおまとめの議論はできるのじゃなかろうかと思っておるわけでございます。そういうことで、それに必要な資料は私ども用意してお願いしておるということでございます。
  124. 坂口力

    坂口委員 そうしますと、今のお話は、今回申公審に提出をされておみえになります資料で、その専門先生方がNOxに対する考え方をおまとめいただける資料が大体あるというふうに環境庁としてはお考えになっていると理解してよろしゅうございますか。
  125. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 環境庁といたしましては、そういうことでお答えをおまとめいただきたいという観点に立ちましてできるだけの資料を取りそろえたと思っております。それ以外に先生方がそれぞれ新しい文献、新しい情報等もお持ちであろうと思うわけでございますが、それらにつきましては、それぞれの専門委員会の中での御議論の中に随時提出をしていただきまして、議論をおまとめいただきたいと思っております。
  126. 坂口力

    坂口委員 中公審のメンバーの皆さん方がいろいろと雑誌等でお書きになっているものを読ませていただきますと、今申しましたように、NOxにつきましては、動物実験だとかあるいは少数の人間に対する影響というものの研究はあるけれども、それが広く大気汚染という形で存在したときにどの程度になれば疾病の多発に結びつくかということについてがなかなか理解しがたいということを言っておみえになるわけであります。ちらっと見せていただきましただけで恐縮ですけれども、何かその辺のところがいま一つ、個々の詳しい研究データはございますけれども、そうした疫学的な立場での研究というのが非常に少ないのではないだろうか、その辺のところがもう少しあればというふうに皆さんも思っておみえになるのではないかなと私は感じた一人でございます。  したがって、私が言いたかったのは、もしそうであるとするならば、環境庁が今まであります研究所やあるいは大学等のデータを集めるだけではなくて、環境庁としてそうしたチームを組むとか、あるいはまた先生方にそれをお願いするとかというふうな、もう少し積極的な対策はできないのであろうか、そんな考えを持ったものですから今御質問を申し上げたわけでございます。  長官にひとつお聞きをしておきたいと思いますけれども、今までいろいろの研究もございますが、しかし、中公審の皆さん方も今までの研究結果ではなかなか判断しがたい点が多いと言っておみえになるわけでございますし、今その辺を解明しないことには新しい制度というものもなかなか生まれてこないという状況にもあるわけでございます。したがいまして、できればその辺に環境庁としてもう少し積極的に取り組むという姿勢を示していただくことが必要でないかというふうに思うわけですが、ひとつ長官の御意見を伺わせていただきたいと思います。
  127. 石本茂

    石本国務大臣 先生の御提言を心いたしまして、今後、将来に向かいましての時点を踏まえながら検討させていただきたいと思います。
  128. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 少し補足させていただきたいと思います。  先生お話にございますように、動物実験あるいは少数の人体のデータから多数の地域社会におきます健康影響といいますものを考えるということは非常に難しい、かなりそこにはステップを踏み越えた議論、割り切りというのが必要になるだろうというぐあいにどもも思っておりますし、先生からお話ございましたように、専門委員会先生方もそのようにお考えで、非常に難しい問題を環境庁から諮問されたというぐあいに思っておられるのも事実でございます。  なお、環境庁といたしましては、先生も御案内のとおり、文献調査のみならず、全国の地域におきまして大気汚染の高いところ低いところを選びまして学童中心にしました疫学調査というものを実施いたしておるわけでございます。私どもかなりの例数についての調査をやっておる。これで大体地域における現在の大気汚染の濃度と有症率の関係というのは十分把握できるというぐあいに考えておりまして、このデータと人体実験あるいは動物実験との間の理論の構築を、ひとつ専門先生方で十分御議論して積み重ねていただきたいというぐあいに思っておるわけでございます。  なお、大臣から御答弁ございましたように、私ども引き続きこの問題については関係文献等も集めることは必要であろうというぐあいに考えておるところでございます。
  129. 坂口力

    坂口委員 その最後に言われました関係文献を集めることだけではなくて、環境庁として積極的にチームでも組んでやられたらどうですかということを私は提言したわけです。今までのデータを集めるだけではちょっと物足らぬのじゃないですか、それでは前進しないのじゃないですかということを申し上げたわけです。  国保のレセプトのお話だとか質問用紙のお話をされましたが、それもちょっとついでですので質問しておきたいと思いますけれども、今御指摘になりましたように国保レセプトによります新規受診者数ですとか受診件数についての調べられたものがございます。あるいはまた学童に対する質問票を用いての調査結果もございます。これも見せていただいたのですが、特に国保のレセプトの方を拝見いたしますと、指定地域と非指定地域の差というのが余りないんですね。これを見まして結論を出すということははなはだ難しい。むしろこの結果を見ますと、指定地域と非指定地域との区別がなかなかつきにくくなって、この法律がより後退をするのではないだろうか、私はそういう気持ちがしてならない。この結果からもう少し何かはっきりとした結論が得られるというのならばそれはよろしいかと思いますが、この結果を見せていただきますとどうもはっきりしない。中公審先生方の頭の中は余計混乱するのではないだろうか、私はそういう気持ちがしてならないわけですが、いかがですか。
  130. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 国保の受診率の調査につきましては、専門委員会の場におきまして私ども報告申し上げまして、それをどのように評価するか、把握するか、先生のおっしゃるように指定地域、その他地域という形で区分けをして把握をする考え方もあるわけでございますし、あるいはそれぞれの地域ごとにおける大気汚染濃度との関係において見る見方もあるわけでございまして、そういう問題については専門委員会でいろいろ御議論をしていただいておるところでございます。  そういうことで私どもといたしましては、先生お話のようになかなか判断がつけられないという点もあろうかと思うわけでございますが、そういう面では、国保のレセプト調査ATS調査、あるいは動物実験データ、人体ボランティアの実験といいますものをそれぞれ御議論していただきまして、そういうものを全部お互いに整合性のとれる形で整理していく、その素材の上に先生方にどういう御結論をお導きいただくか、これにつきましては私ども先生方の御議論を見守る、と言ったら大変失礼に当たるわけでございますけれども、そういう形での御議論をお進めいただきたいというぐあいに考えておるところでございます。
  131. 坂口力

    坂口委員 局長さん、何遍も申し上げて恐縮ですが、中公審の皆さん方もやはりもう少し確たるものがあれば非常にわかりやすいわけですけれども、NOxの問題一つをとりましてもなかなか結論を出しにくいデータしか提出されていないということになれば、余計に難しくなるのではないかなという気がするわけです。こうしたデータだけでは中公審の明確な結論を得るということは非常に難しいのではないかというふうに私は思いますが、そういう意味で、環境庁としての姿勢を明確にした研究というものをもう少し進めていただく必要はないかということを、もう一遍ちょっと念を押して聞いておきます。
  132. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 環境庁といたしましては、大気汚染態様の変化を踏まえて、いわゆるNOx、SPMと健康被害との関係について現在の考え方をおまとめいただきたいということで、そのための材料をいろいろ集めておったわけでございます。その過程におきまして私ども国内外の文献国保受診率調査あるいはATS調査というものを取りそろえましてお願いいたしておるところでございます。  これ以外に何か当初の目的に沿った形での集め方があるかどうかという問題でございますが、私どもいろいろ考えた上で、そういう議論を進める上に必要な材料ということで取りそろえたつもりでございます。専門委員会の御意見の中でも確かにそれ以外の資料というようなことでのお話もあるわけでございますが、具体的にこういう観点の資料ということで御請求がございましても、あるものについては結構でございますが、ないこともあり得るというようなことでございまして、私どもとしては考えられる最大限の資料を取りそろえたというぐあいに思っておるわけでございます。  いずれにしましても非常に難しい問題でございます。大気汚染と申しましてもいろいろな物質がある中で、SOx、NOx、SPMと健康被害との関係でございます。この健康被害といいましても、現在の四疾病につきましては、先生御案内のとおりの非特異的疾患であるというようなことから、そういう面では大気汚染の方も非常に難しいし、疾病の方も難しいということで、その関連性をどう理論づけるか、そのための材料をどういう形で集めたらよろしいのかという問題も、いずれも難しい問題であろうとは思うわけでございますけれども、私どもといたしましては最大限の資料を取りそろえた、これで十分先生方に御議論していただけるというぐあいに思っておるところでございますので、ひとつ御理解いただきたいと思います。
  133. 坂口力

    坂口委員 これで十分な議論をしろというのは甚だ難しいと私は思いますが、そういうふうにおっしゃるのですから、これは認識の違いでしょう。それはこのままにしておきたいと思います。  時間がなくなりましたので、ついでで恐縮でございますが、もう一つ地盤沈下の問題についてやらせていただきたいと思います。  昭和五十六年十一月に地盤沈下防止等対策関係閣僚会議というのが設けられまして、以後いろいろと検討が続けられてきたところでございます。各地域の中でとりわけ濃尾平野と筑紫平野の部分がまとめやすいということから、この二カ所については早急に要綱をつくろうではないかということになりまして、五十六年から五十七年にかけまして地域部会というのがつくられたわけであります。そして、大体二回地域部会が開かれて検討された、そして五十七年以降事務レベルのお話し合いが続いてまいったというふうに聞いております。  昨年の予算委員会の分科会におきまして、私は通産大臣にこの地盤沈下につきましての質問をいたしました。通産省としても、今までいろいろと意見を言ってきたが、濃尾平野については尾張工業用水の水道事業が六十年の八月に完成を見る手はずなので、それが完成さえすれば要綱をつくることに異論はございません、概略こういう答弁であったというふうに記憶をいたしております。また、建設省の方も、そういう事態になれば異論はございません、こういうことでございました。  そこで、ようやく六十年が参りまして、ことしの八月に水道事業が完成の予定だそうでございますが、そうなりましたならば、今まで障害になっておりましたもの、代替用水の障害は取り除かれることになるわけでございます。したがいまして、この濃尾平野につきましては、早急に地域部会が持たれて、そして要綱の作成に入られてしかるべき問題ではないかと思うわけでございます。  まず、今までの経緯とこれからの進め方等につきまして、事務局を担当していただいております国土庁の方からひとつお聞きしたいと思います。
  134. 古澤松之丞

    ○古澤説明員 お答えいたします。  地盤沈下対策等要綱につきましては、環境庁の御協力をいただきまして国土庁が庶務を担当させてもらっておるところでございます。五十六年十一月に閣僚会議におきまして要綱の策定の方針が決まっておるわけでございまして、その後鋭意関係九省庁におきまして御相談し、地方公共団体とも御相談して現在作業を進めておるところでございます。各省庁おおむね話し合いが進んでおりまして、近くまとめたいということで検討を進めておるところでございます。
  135. 坂口力

    坂口委員 近くまとめたいというのは地域部会を早急に開くということですか。
  136. 古澤松之丞

    ○古澤説明員 対策案要綱につきましては、原案を地域部会を開きまして決定いただき、その後各省協議会がありまして、それから閣僚会議で決定するという手続になっております。そういうことで、まず地域部会の開催が必要だと思っておりまして、その開催の準備ができるべく関係省庁でお話し合いをしておるところでございます。
  137. 坂口力

    坂口委員 余り細かなことを申し上げてもお答えしてもらいにくいかと思いますけれども、代替用水の方は一応八月に完成ということなんですが、準備会の方は八月までにやられますか、それともこれは八月に代替用水が完成した後になりますか。
  138. 古澤松之丞

    ○古澤説明員 現在関係省庁でよく話し合いを道かているところでございますが、できるだけ早く開催したいということで考えておりまして、八月よりは前にしたいというふうに作業を進めているところでございます。
  139. 坂口力

    坂口委員 そうしますと、閣僚協議会の合意が得られればということでございますが、スムーズにいけば年内にも要綱ができ上がるという見通しもあるというふうに思いますが、いかがですか。
  140. 古澤松之丞

    ○古澤説明員 先ほど申しましたように、関係各省及び自治体とよく御相談を申し上げて進めているわけでございまして、スムーズにいけば年内には十分できるのじゃないかというふうに考えております。
  141. 坂口力

    坂口委員 環境庁の方にお聞きをしたいと思います。  環境庁の方もこの問題は当然のことながら最初から非常に熱心に取り組んでいただいてきたわけでありますが、やはり環境庁の持っております立場というものもありまして、事務局を国土庁に譲り渡したという経緯もございます。しかし、いずれにいたしましても、現実的にはやはり環境庁がイニシアチブをとって頑張ってもらわなければならない問題の一つであろうかと思います。環境庁がどのようにお考えになっておるのか、ひとつお聞きをしたい。
  142. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 地盤沈下につきましては典型七公害一つでございまして、環境庁としてもこれに対しては深い関心を持っているところでございます。  先生指摘の濃尾平野の地盤沈下につきましては、昨年六月に工業用水法に基づく地域指定を一次的に行ったわけでございます。しかしながら、これだけでは当然その規制対象の範囲が限定されている等の問題がございまして、先ほど国土庁から御答弁申し上げましたように、現在要綱の策定に向かって各省協議を進めているところでございまして、環境庁といたしましては、私どもがかねてから調査してまいりました地盤沈下広域対策調査に基づく調査データ等を国土庁に全面的に提供いたしまして、一刻も早くこの要綱が策定されるように私どもなりに努力してまいりたい、かように考えている次第でございます。
  143. 坂口力

    坂口委員 この地盤沈下の問題は、一つ法律でもってくくることができればそれにこしたことはないと思うわけでありますが、なかなかそういかないところに難しさがあるわけなんですね。各地域別にこの要綱をつくって、そしてそれをだんだんと広げていって、最終的には一つ法律でという方向に持っていかなければならないだろうと思うのですが、その第一歩として今濃尾平野の問題があるわけでありまして、積極的に環境庁としても取り組んでいただきたいと思うわけです。  五十六年、五十七年に地域部会が二回持たれたままで、それからこちらは地域部会も全然ないというのはいささか寂しい気がいたしますし、環境庁は奮起をしていただきたいと思うわけです。長官にこの地盤沈下に取り組みます姿勢につきましてお聞きをして最後にしたいと思いますが、ひとつ積極的な御意見を賜りたいと思います。
  144. 石本茂

    石本国務大臣 ただいま事務担当をされております国土庁からのお話もございましたし、我が方の局長からも話がございました。この問題は非常に重要な問題でございますが、九つの省庁が関係をいたしておりまして、この九省庁によりまして策定作業が非滝に急いで進められております。我が序としましても全力を挙げまして協力してまいりたいというふうに考えております。
  145. 坂口力

    坂口委員 では最後に、長官、今年中に要綱ができ上がりますように長官の御努力をお願い申し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。
  146. 石本茂

    石本国務大臣 御期待にお沿いいたしますように努力をさせていただきます。
  147. 坂口力

    坂口委員 ありがとうございました。
  148. 辻英雄

    辻委員長 午後三時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時三十五分休憩      ――――◇―――――     午後三時十九分開議
  149. 辻英雄

    辻委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  公害健康被害補償法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を続行いたします。藤田スミ君。
  150. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 今回のこの自動車重量税の引き当ての措置というのは、これで五回目の延長になるわけなんです。前回も私、この問題についてお尋ねをしておりますが、当時、これは今後の大気汚染動向推移を見きわめつつ自動車に係る費用負担あり方について検討する必要があることから、二年間の暫定措置としたというふうに答えておられるわけです。しかし、その暫定措置というのはもう名ばかりで、政府の本当の腹は、この制度が続く限りこの矛盾に満ちた重量税の引き当てという措置を継続しようとしているのはもう見え見えである、こういうふうに言わざるを得ません。  まず、この点について、政府は我が党などが提案をする他の徴収方法についていろんな問題点を並べておりますけれども、まさにそれも十年一昔、十年前から同じことを言ってきているわけです。政府は、この制度が続く限りこの方法を変える気はないと私は断ぜざるを得ませんけれども、どうなんでしょうか。
  151. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えいたします。  自動車に係ります費用負担あり方につきましては、私どもといたしましては従来からいろいろ考えておるところでございますけれども、汚染者負担の原則を踏まえていかにあるべきかという観点からいろいろ中公審の場においても御議論いただいておるところでございますが、現実的、合理的な方式として、自動車重量税収の引き当て方式をとることが現在の段階においては一番望ましいという結果もいただいておるところでございまして、これを受けまして、私どもといたしましては、自動車重量税に係る暫定税額の延長期間に合わせて三年間延長ということを本法案でお願いいたしておるところでございます。  この法案で三年間の延長をお認めいただきました以降、六十三年以降の自動車に係ります費用負担方式につきましては、汚染者負担の原則を踏まえ、発生源の公害防止努力の反映なり徴収面における現実性、合理性等を十分念頭に置きつつ、負担あり方についてなお検討を続けてまいりたいというぐあいに考えておるところでございます。
  152. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 そういうふうに答えられると思ったのですが、この重量税の引き当てという措置にはいろんな問題がありますけれども、その最たるものがNOxとの関係なんです。これもずっと言い続けてきたわけですが、補償費の負担割合、すなわち固定発生源を八割とし、移動発生源を二割とした根拠については、OECDのレビュー会議に政府が提出しました「日本環境政策」というパンフレットの中でも、「SOxとNOxの被害発生に対する寄与度は総量として等しい」ということを前提にして「八割、二割という数字を出した」と書いてありますが、これに間違いありませんか。簡単にお願いします。
  153. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 四十九年の中公審答申におきましても、先生お話にございましたNOxとSOxの健康被害に対する影響については、まだよくわからない。ただ、その時点におきまして、NOx総量とSOx総量はほほ同じような健康被害に対する寄与があるという割り切りをするというのも一つの理屈があるなどいう考え方を示されておるところでございまして、そういう面では先生の御指摘のとおりでございます。
  154. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 長官にお伺いしたかったのですが、政務次官、一方で今言われたようにSOxとNOxの被害発生に対する寄与度は同じだと言っておるんです。そして、補償費の二割を事実上重量税という公費負担にしておきながら、他方でNOxと被害発生との因果関係についてはまだ十分数量的に把握されていないんだということを言って、いつまでたっても地域指定の対象物質としていかないわけです。これは大変矛盾しているわけなんです。  言葉が悪いですが、言いかえてみれば、国会とか大蔵省向けには、NOxはSOxと同程度の被害を発生させている物質だから補償費の二割を重量税から負担させてくれ、こういうふうに言いながら、国民、被害者、公審患者に対しては、NOxの被害発生との関係はまだよくわからないからというふうに言い続けるわけなんですが、これはもうだれが聞いてもおかしな話だ、私はこの点が一番おかしな話だというふうに思うのですが、政務次官いかがですか。
  155. 中馬弘毅

    ○中馬政府委員 おっしゃるように、NOxとSOxの健康に及ぼす影響というのはまだまだ解明されていないところが非常に多うございます。特に、NOxがどの程度そういった気管支その他の被害に影響があるのかというのはいろいろまだ議論のあるところでございますが、しかしそこは、一つ民事責任として何かの形でそれを補償しないといけないという中にあって、その費用負担のことにつきましての割り切りが半々という形になったのじゃないかと思っております。  詳しいことは事務当局の方から説明させますけれども、そういう中で二対八という、今度発生の方から見たときの総量としての割合として二割を自動車の重量税から、こういう形に現実になっているわけでございまして、その点の御理解を賜りたいと思っております。
  156. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 これはどんなに弁解をされても非常に大きな矛盾だというふうに思います。  そこで、問題はこのNOxの問題なんですが、特に、NOxによる大気汚染の実態とその評価、さらには総量規制などの問題について立ち入ってお伺いをしていきたいわけです。  経団連は、大気汚染は大幅に改善されています、しかし公害病の認定患者はふえ続けている、おかしなことだ、こういうふうに言うわけです。私に言わせれば、大気汚染はまだ改善されていない、だから公害認定患者はふえ続けているのです、これからもふえ続けていくでしょう、こういうふうに言わざるを得ないわけです。ここで決定的に違うのが、NOxの汚染の評価の問題なんですね。経団連は、緩和された今の日本の環境基準よりもさらに緩い欧米の環境基準と比較をして、汚染は改善された、こう言っている。  これは論外としましても、環境庁は現在のこのNOxの汚染の傾向についてどういうふうに評価されておられますか。これからはずっと事実確認ばかりですから、できるだけ簡単に御答弁ください。
  157. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 NOx汚染の傾向というお尋ねでございますが、私ども制度発足以来全般的には横ばいであるというぐあいに考えております。ただ、指定地域におきましては、そのNOxの汚染の程度につきましても漸次減少、改善の傾向も見受けられるところもあるわけでございますが、指定地域全体で見ました場合におきましては横ばいの傾向にあるというぐあいに押さえているところでございます。
  158. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 その見解は非常に安易だと私は言わざるを得ないわけです。確かに、白書を見ましても、一般測定局では横ばい状態、グラフで見る限り横ばい状態という線になっています。しかし、今のこの状態は単なる横ばいではなくて、実は高濃度汚染が続いているという状態で、そういう状態の横ばいなんだという認識が必要じゃないかと思いますが、この点はいかがですか。
  159. 林部弘

    ○林部政府委員 お答えいたします。  今、改善の傾向が認められるということを保健部長の方から申し上げましたが、確かに一般局も自排局も傾向としては改善の傾向にあると思います。  ただ、大都市圏におきましては、特に自排局を中心に依然として改善を要するような状況が続いておるという状況でございまして、その意味では、大阪の場合を年平均値で申しますと、五十年から五十八年までの推移は、一般局は、いずれも単位はPPbでございますけれども、五十年が一般局が一六から五〇の範囲、五十一年が一七から五二の範囲、五十二年が一六から四二の範囲、五十三年が一六から四一、五十四年が九から四一、五十五年が一二から四一、五十六年が一三から三九、五十七年が一四から三九、五十八年が一三から三七ということでございます。  自排局の方は、同じく年平均値でございますが……
  160. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 ちょっと、ずっと後でまたそれは尋ねていきますから、簡単にしてください。私は今、高濃度の汚染が続いているという認識が必要じゃないか、こう言っているのです。
  161. 林部弘

    ○林部政府委員 それでは自排局について、最大の方のPPbだけを申し上げますというと、五十年が四九、五十一年が五四、五十二年が五八、五十三年が五七、五十四年が五九、五十五年が五六、五十六年が五五、五十七年が五六、五十八年が五七ということで、これはいずれも自排局の大阪市等地域における最大のNO2の値で、単位はPPbでございます。
  162. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 私、ここに今グラフをつくりまして、そちらの方にお渡ししました。ごらんください。  一般測定局ですが、政府の方は環境白書などで、この十五年間の年平均をした値のグラフをつくっておられるのです。それで見ますと、昭和四十五年に〇・〇二二、それが昭和五十八年に○・○二五ですから、幾らも増加していない、こういうことになるわけですが、しかし、この十五局の中には、松江のように、昔も今もそんなに大都市のように汚染がひどくなっていない、汚染程度の低い測定局というのが四局入っております。そこで、それを取り除いて、つまり全体の三割弱がこの四局なのですが、その十五局を平均するということじゃなしに、補償法による地域指定ごとに見てみたのがこのグラフなのです。ごらんいただいていますね。  別に勝手につくったのと違って、環境白書から取り出しているのですが、これを見ますと、東京、川崎は既に相当の汚染が進行し、年増加率は、東京、川崎は初めから汚染が進行していましたので、余りびゅうっと上がったようには見えません。しかし、大阪、尼崎の汚染は、この当初から見ますと倍増しているということが、このグラフを見たら一目瞭然なのです。  しかも、この数値は年平均値になっていますが、環境基準の月平均の対応で言えば、東京、川崎は〇・〇四から〇・〇六ppmのゾーン内からゾーン上限を突破していっております。それから大阪、尼崎は、環境基準以下であったものがゾーンの上限ぎりぎりというふうに悪化をしていっているわけです。NOxの測定体制の整備が非常におくれたために、四十三年、四十四年というころのデータしかないわけですけれども、四十三年、四十四年以降においても、汚染は非常に悪化して、四十九年、五十年ごろから高濃度汚染の状態が継続しているというふうに見る方が正当な評価じゃないか、正確な評価じゃないか、こういうふうに考えるわけです。  これをお渡ししましたので、これに基づいて御見解をお聞かせください。時間が限られていますから、できるだけ早い答弁をお願いします。
  163. 林部弘

    ○林部政府委員 今、先生お示しくださいました資料でございますが、これは継続十五局の中から東京、川崎、大阪、尼崎といったようなところを抜き出してカーブをかかれたわけでございます。私がさっきお答えをいたしましたのは、それぞれの地域、時間の都合で大阪だけしか申し上げませんでしたけれども、一般周と自排局との年平均値につきまして、これは数が変わってきておりますから、大阪で申しますと、一般周が五十年当時の三十六局が五十八年には四十二局になっておりますし、自排局は十五局が二十二局というふうにふえてきておりますので、先生おっしゃるように、確かに白書の中で示されております昔からはかっている十五局の数字としてはこういうようなカーブになるかと思いますが、私が先ほど申し上げましたのは、大阪の例でたまたま申しましたけれども、たくさんの中での傾向としては、さっき申し上げましたような最大値について言えば、五十年当時よりは年平均値としては一般局については五〇前後から三〇台にまで下がってきている。自排局については、ここ数年の経緯を見ますと、ピークが五九ぐらいになっておりましたけれども、今は少し下がってきているのではないか。そういうように、これは最大の数値だけでございますけれども、すべての対象になっておる測定局で言えば、さっき申し上げたようなことになるのではないかということでございます。
  164. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 率直に言いはったらどうなんですか。このグラフは何も私が勝手にでたらめの数字でつくっているのと違うのですわ。一般測定局も結局高濃度でずっと推移しているじゃないかということを言った、それに対する御答弁だけでいいのですよ。それを一番ピークのところから見たらこんなふうになっているなんてわざわざ弁解しはらぬでもいいわけですわ。少なくともSOxのような形での汚染の改善傾向は全く見られない。高濃度が続いているというのが現状なんでしょう。そのことはお認めになるでしょう。これは白書から出てきた数字を機械的にグラフにしただけですから、その傾向についてはそういうふうに評価をしても間違いじゃないわけでしょう。はいとかどうとか、それぐらいで結構です。
  165. 林部弘

    ○林部政府委員 お答えいたします。  見方にもよりますが、改善の傾向にあるという見方もできると思います。
  166. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 本当に残念なことです。そういう姿勢だからいろいろ行政がうまく進まないのですよ。実際それは確かにグラフを見ると上がったり下がったり多少しています。しかし、何でこれ落ちてるんやと言って川崎に聞いたら、これは景気が悪いからやと言い、大阪の方も、何でこれ五十八年落ちたんやと聞いたら、これはことし先生景気が悪かったからですわ、現場ではそない言うんですよ。そして、全体としては高濃度でずっと移行しているんだ。何で率直にそれぐらいのことは認められないんですか。  自排局の方もそうなんです。これは次のページにありますが、グラフをごらんください。これも非常に危機感が不足をした見方をしておられるじゃないか、先ほどのお話からも私はそう思います。確かにこの白書で見ますと、昭和四十六年から五十七年までの二十六測定局の年平均した数値を見ると、当初微増、近年横ばいというふうなことをこの中でも言っています。しかしそれも、指定地域ということで東京と大阪市を見ると、非常に汚染が進んでいます。  このグラフをよくごらんください。東京はそのゾーン内であったのがゾーンをはるかに突破し、大阪市でも〇・〇三八から〇・〇四七と非常に悪化をして、当初微増とあるというような生易しいものじゃないわけです。自動車の沿道のNOxの汚染も、深刻な高濃度汚染が続いていると見るのが正しい見方じゃないでしょうか。この点が一点です。それはイエスかノーか、それだけで結構です。
  167. 林部弘

    ○林部政府委員 先ほどお答えいたしましたように、近年の傾向としては、先ほどのお答えのような見方も可能で保はないかと思います。
  168. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 この自動車排ガスは過去のデータが非常に少ないわけです。そこで、環境庁が継続二十六測定局としてデータを掲げている昭和四十六年、この時点はもう相当自動車のモータリゼーションが進んで、そして主要道路の交通量というのはほぼ飽和状態になっているわけです。にもかかわらず、その後、汚染が進行しているのです。  そこで私は、もっと前から見るとどうなのかということで、一生懸命資料を探してみました。そうしたら、東京の霞が関と板橋の国設の測定局で、昭和三十九年からのデータが見つかったのです。その三十九年のデータで見ますと、霞が関は〇・〇一一ppm、板橋は〇・○一二ppm、同じく四十年に霞が関は〇・〇一六ppm、板橋は〇・〇一四ppm、こういう状態にあったのが、昭和四十年代に急速に汚染が悪化をしていって、そして東京二十三区や大阪市内の自排局は環境基準をオーバーし、あるいはそれに近い状態の中で少しもよくなっていかない。だから、昭和三十九年、四十年当時から比べますと、まさに汚染は二倍半から三倍というふうな膨らみ方をしている。これでも少しずつよくなっているんだとか、あるいは横ばいだとかいうような評価しかできないわけですか。高濃度汚染が続いているという見方、そういう見方に立つべきじゃないですか。
  169. 林部弘

    ○林部政府委員 おっしゃるように、東京霞が関、板橋におきましては三十九年から計測が行われていることは御指摘のとおりでございます。当時の数値が現在よりは非常に低いレベルであったということはそのとおりだと思います。
  170. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 政務次官、私がいまさっきから一生懸命力を入れて――そのグラフをごらんになったら、こんなのは子供が見てもわかるわけですよね。そんなのんきなことを言ってたらあかぬ。そんなのんきなことを言ってるから、かえってやりにくくなっているのです、環境庁は。だから、やはり評価評価として真っすぐ見なければいけないということで私はこのグラフをつくったのです。
  171. 中馬弘毅

    ○中馬政府委員 局長の方の答弁は答弁として事実でございます。  ただ、少し議論が外れているようだと思いますのであえて申し上げますが、せっかく藤田委員おつくりいただきましたこのグラフ、これはまさにこのとおりでございましょう。しかし、三十年代、四十年代の初めまではそういうことに配慮なしに行われてきたいろいろな行政であり、それが、企業のこれの一つの反省から環境庁ができ、そうした基準をつくり、そしてこの対応を一生懸命やってきたわけですね。したがいまして、例えばこの公健法ができました四十九年あたりからの数字を見ますと、今局長が申しましたように、確かに高原状横ばいではございますが、傾向的には若干下がってきていることもこれまた事実として読み取れるわけでございます。  まだまだ十分とは申せませんが、今後こういうことも踏まえてひとつ環境庁として一生懸命やっていきたい、このように願っているような次第でもございます。
  172. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 言ってみればNOxの汚染は高値安定というのでしょうか、そういう状態で大都市なんかは続いてきたわけです。  大臣お見えになりましたので、今まで言っていたこと、グラフを見ていただければ一目瞭然なんです。NOxの方も一般測定局ではSOxのように改善されないままにずっと推移をしてきた。そして自排局に至るや、四十年当時に比べると非常に増加をしてしまっている、こういうような状態になっているわけです。  そういう深刻なNOxの汚染が続いている中で、NOxの総量規制、ことしの七月に総量規制、環境基準の達成を目標にして進められてきたわけなんですが、長官は記者会見でこの目標達成を断念する発言を行ったというふうに報道されておりますけれども、どうなのでしょうか。
  173. 石本茂

    石本国務大臣 断念するというような言い方はしませんで、三つの特別地域については大変難しいかもしれないというふうに私申したわけでございますが、いずれにいたしましても、環境基準の達成につきまして引き続き努力をするとともに、六十年度に入ってからの推移を見守りながら、何らかの対策を早目に打ち出すべく、そのための手順を目下担当局長検討させているところでございます。
  174. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 断念するとは言わなかったのだということなんですが、この総量規制によって目標が達成できるかどうかという以前に、総量削減計画には非常に大きな問題がある。それは、この総量規制の実質的中身は固定発生源に対する総量規制基準をかけることであって、自動車の方は、言ってみれば成り行き任せというようなことになっているわけですね。  この実質的な意味となる大規模固定発生源に対する総量規制基準の適用ですね、削減していくという意味で適用する、それはもちろん既設の発生源に対する総量規制基準の適用なんですが、東京、神奈川、大阪はみんな一緒だと思いますが、いつから総量規制基準適用ということになるのですか。
  175. 林部弘

    ○林部政府委員 お答えいたします。  本年の三月三十一日から総量規制の基準が適用になります。
  176. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 要するに、総量削減計画で固定発生源の削減目標量を定めながら、ことしの三月三十日までは計画に基づくNOxの削減というのは行われていないわけです。言いかえれば、少なくともこの三月三十日までは環境基準を達成する気はもともとなかったのじゃないか、こういうふうに言いたいわけですね。それがこの総量規制なんです。  だから、先ほど述べたように、NOxの高濃度汚染の実態からすれば、この総量規制にかけた国民の期待、そういうものから考えたら、とてもこういう措置は納得できないのじゃないか。みんな国民が錯覚を起こしていたと言ったらそれまででしょうが、しかしこの計画に基づく削減は、計画の最後の一日で初めて実施されるわけですから。既設は六十年三月三十一日で初めて実施されるのでしょう。それまでは新設でしょう。新設については一定の規制をするけれども、既設については最後の一日、三月三十一日で初めて実施されるわけですから。そういうことになってくるわけでしょう。
  177. 林部弘

    ○林部政府委員 三月三十一日というのは、既設の工場は三月三十一日までのいつでも準備ができて適用を受けるということは構わないわけでございますから、自治体の方はいろいろと努力をいたしまして、できるだけ三月三十一日までに計画的にやってきている、これは固定発生源の問題でございますが。その意味では、三月三十一日までにやっと間に合うというようなところもあろうかと思いますが、それは法の適用という意味からいうと、三月三十一日が固定発生源については待ったなしである、特定工場については待ったなしということでございます。当然それまでには既設のものもいろいろ努力をして減らしてきている。  ただ、自動車の問題につきましては、現実の見込みと実態との間に見込みの違いが出てくるということになれば、そこは固定発生源の場合とは若干様相が変わってくる、こういうことでございます。
  178. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 完全実施は三月三十一日からということで、だけれども既設の企業も事実上三月三十一日からの完全実施を目指しているわけなんでしょう。だから、最後の一日が来ればよくわかるというのはそういうことで言われているわけですからね。今まで指導に基づいて実施してきたところも、それはないとは言いませんよ。しかし、事実上は三月三十一日に総量規制基準を実施する、こういうことで推移をしていくわけですから、三月三十一日が来れば完全実施しているのだ、こういう考え方で来ているわけでしょう。
  179. 林部弘

    ○林部政府委員 お答えいたします。  建前の議論はそういう形になっておりますが、現実には現場を持っております自治体の努力によって既に削減が行われてきておるわけでございまして、そういう数値は御指摘の自動車排ガス局の方にはなかなかきれいに効果は出てきているように思いませんけれども、一般局の方を見ますと、例えば大阪の場合ですと、五十三年から見るといたしますと、当時の三十八のうちの十四が六超えであったものが現在は四十二のうちの二つになっている。それから東京について言いますと、これは一般局でございますが、五十三年当時は二十三のうちの二十二が六超えだったものが現在は二十三分の五になっておる。それから、横浜、川崎でございますが、磯浜市等の地域では、五十三年当時の二十五分の十一が五十八年では二十九分の八ということで、五十三年から五十八年の五年間を見てみますと、一般局の数値は確かによくなってきているわけでございます。  これは一般局でございますから、当然面的な意味で考察をいたしますと、やはり総量削減計画に基づく総量規制の考え方というものは、現場においては、自動車についてはいろいろ御議論があろうかと思いますけれども、一般局の数値では自治体の側もかなりこれはいけるということで自信を持っておるようでございますし、私どももこれはやはり改善してきているというふうに考えていいのではないかというように現在予想をいたしております。
  180. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 建前としてはそうなっている。その建前が現実にそういうふうに行われて、建前が現実には建前じゃなしに事実として行われているということで申し上げて、矛盾を感ずるということを言っていたわけなんです。  それで、一般測定局の方が非常に状況がよくなっているということは一概に言えませんよ、それは景気の悪さなどが大いに関係をして、むしろ六十年度の特定工場の窒素酸化物の排出量を大阪市内なんかは年間七千百八十トンに抑えましょう、そういうふうに言っていたのが五十七年で既に六千二百トンになっているのです。これだったらもうほとんど問題ないなというふうに尋ねましたら、特にその特定工場は七千百八十トンを目標にしているのが六千二百トン、五十七年で既にそうなっていますから、これはいいぐあいかと聞いたら、これはやはり景気が悪いさかいにそうなっているので、今のところでこれは何とも言えませんというようなことを現場では言っているわけです。  そこで、この話を進めるために聞きますが、自動車排ガスのNOxは、総量削減計画ではどのように削減されていくようになっているのですか。削減量と削減率をお伺いをしたいと思います。
  181. 林部弘

    ○林部政府委員 お答えいたします。  総量規制三地域の削減計画で自動車からの排出量の削減壁、それから削減率でございますが、東京都特別区等の地域では、数字を丸めて申し上げますが、昭和五十一年度の排出量であります約五万九千トン・パー年を六十年度には約二万八千九百トン・パー年とする予定でございまして、削減率は五一%となっております。それから横浜、川崎市等の地域では、五十二年度の約一万九千百トン・パー年を六十年度には約一万一千四百トン・パー年とする予定でございまして、削減率は四〇・三%でございます。それから大阪市等地域では、五十二年度の約三万九百トン・パー年を六十年度に約一万五千三百トン・パー年とする予定でございまして、削減率は五〇・六%。つまり削減率だけで申しますと、東京は基準年の五十一年から六十年までに五一%、横浜、川崎市等では五十二年から六十年の間に約四〇・三%、大阪では基準年の五十二年の数値を六十年に五〇・六%削減する予定になっているということでございます。
  182. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 これはもう非情に大きな数字なんですね。このとおりに削減が実際に進んでいれば、ことしはもうその目標の年になってきているわけですから、自動車排ガス測定局で見る汚染の度合いというのはもっと改善されていてしかるべきなんです。ところが実際はどうなっているか。これは実際はどうなっているんでしょうか、自排局は。
  183. 林部弘

    ○林部政府委員 お答えいたします。  自動車の場合には、モデルで申しますと、これはいわゆるメッシュの計算からいいますと、沿道のすべてがモデルの中で再現されるということにはなりませんので、直ちに連動したお答えにはならないのでありますけれども、先ほどお答えをいたしましたように、三地区はいずれも自排局につきましては、東京から申しますと、五十三年と比べてみますと、二十二分の十九あるいは二十二といったようなものが五十八年に二十六分の十七というようなことでまだ改善されてないものが残っておりますし、それから横浜市等の地域で申しますと、九分の八あるいは十一分の八といったような数字が、五十八年にはかなり改善をされてきておりますが十八分の十二、それから大阪について言いますと、十七分の十二といったような状況が五十八年では二十二分の十五ということで、一般局のようには改善はされておりません。
  184. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 この図を見ていただいたらよくわかるんです。長官、恐れ入りますが、これをごらんになってください。これは総量規制区域内に限ったデータをつくってみたわけです。五十一年、五十二年を基準年として六十年、ことしには東京、神奈川、大阪とも自動車のNOxは、先ほどの数字でもありましたけれども、ほぼ半分に削減するということになっているんですね。ところが、自動車の場合は固定発生源と違って、そうはなっていないとさっき御答弁ありましたが、一挙に改善するということ、一挙に減るということはないわけです。計画どおりであれば、五十八年には少なくとも自動車測定局でこの汚染が相当改善されていなければならないはずなんですね。  ところがそういうふうになっていないで、私はこの一番上に汚染の状況をppmで出しておりますが、こういうふうに、先ほどの御説明にもありましたように東京も神奈川も大阪も汚染はひどくなっているわけです。この汚染が本当はずっと斜めに下を向いて移行せねばいかぬのが、逆に上へ向いてしまっているわけですね。逆に汚れてしまっているわけです。そういう点では、三都府県とも全く計画どおりにはなっていないわけですね。この点では、総量規制の計画というのはまさに今断念したというふうに断言してもいいわけなんですよ。長官、その点はどうなんでしょうか。このグラフをごらんになったらよくわかるでしょう。
  185. 石本茂

    石本国務大臣 おくれましたが、ただいまここに入ってきまして、合いただいて見ているところでございまして、やはり十分に検討いたしました上でないと、ここで明確なお答えがちょっとできかねます。申しわけありません。
  186. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 この自動車排ガスの昭和六十年度までのNOxの削減量、これは固定発生源も含めた総削減量と比較をしてみましたら、それぞれ東京は九三%自動車が削減をしていく、神奈川は二五%、大阪は七七%というふうに、NOxの総削減量の中で車の削減量というのが非常に大きい比重を占めているわけです。そういう点では、東京などはもうほとんどが車と言っていいくらいなんです。だから、当然計画どおりであれば一定の改善が見られていいのに、逆に、東京も〇・〇四二が〇・〇四四と汚染が進んだように、全く計画どおりになっていかなかったじゃないか、このことははっきりしているじゃないかということを言っているわけです。
  187. 林部弘

    ○林部政府委員 配付されました資料を拝見させていただきました。  削減計画は、先ほど私御説明いたしましたように、総量削減計画の中での削減分の数字かと存じます。ただ、この上の方の二十六局平均実測値とこれを直に比べることができるかどうかというところにつきましては、これは先生と私と物の見方の分かれるところかもしれませんが、確かに、特に東京の場合で申しますと、交差点近傍のような非常に自動車の影響を直接強く受けるようなところに自排局が設置されている状況でございますと、必ずしも改善のほかばかしくないような測定局が相当出てくるということはあると思います。そういう意味では、先生指摘のようにこの三地区で改善のほかばかしくない自排局があるではないかという御指摘はごもっともだと思います。  ただ、この削減計画との関係というのは必ずしも――これは先生が非常にわかりやすくアレンジされたものだというふうに私は理解いたしましたけれども、削減計画と個々の測定局と申しますかそれぞれの地域の幾つかの測定局との比較というのはなかなか評価の難しいところでございまして、先ほど御説明いたしましたように、総量削減計画の中で自動車が非常に大きなウエートを持っているということも御指摘のとおりでございます。  これはずばり申しますと、基準年次を、五十一年とか五十二年当時資料がなくて、自動車は三年置きでございますか、五十八年のデータはまだ全部出ていないのか私ども手に入っておりません。五十八年の前が五十五年、その前が五十二年、東京都は五十一年に調査をしたのかと私記憶いたしておりますが、そういうことで、実は五十一年、五十二年の資料をもとにしてはじいた。ところが、御案内のように五十三年規制という一般乗用車に対する非常にシビアな単体規制が行われたというようなことで、それをかなり大幅に見込んではじいたという要素一つあるようでございますし、それから、トラック等につきましてもディーゼルにつきましても、その後の第二段階規制が六十年までにかなり進むであろうという、その辺の見込みと実態との関係、つまりそれは代替率の問題もございますし、それから、実際に車の量がふえたというような問題、あるいはディーゼルで申しますと直噴型と副室型の比率の問題とか、いろいろなその辺の当時としては最も精度の高い資料ということでそれを使って見込みを立てたわけでございますが、それが必ずしもそういうふうにいっていないのではないか。  ただ、現在、いずれの自治体も五十八年の数字を使って試算をしている段階のようでございまして、私どもまだその数字をいただいておりません。今後その辺の数字が出てくると思いますが、そういうものが明らかになってくれば、実際に総量削減計画に基づく今までの一辺の施策というものが個々の施策とうまくバランスがとれて、成果が上がったか上がらなかったか、どこがはかばかしくなかったかといったようなことが次第に明らかになってくるのではないか。  我々としては、そういうことを全部精緻な数字が出てくるまで手をこまねいて待っているということではなしに、現在自治体が何年かかかって取り組んできているような問題について、私ども国の立場で協力もし、御支援もし、関係の省庁とも十分連携を強めて、少しでも削減計画の中に盛り込まれた内容というものを前向きに進めていくことによって、自動車沿道の排ガス局の測定値の改善に努めてまいりたいというように考えているわけでございます。
  188. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 私は、もう今事実が非常にはっきりと物語っている、そういうふうに思うのです。だから、細かい数字が出てきて総括されないと物が言えない、あるいは次の対策について考えるというのもその総括を待たなければいけないというような時期じゃない、そういうことを言いたいわけなんです。  今の制度は、実質総量削減計画の中身は固定発生源に対する総量規制の基準を適用していくということになっているけれども、そういう今の総量規制の制度の枠組みを含めて見直すことも必要じゃないか。それを、もう少し時期を見てからということじゃなしに、早く見直しに取り組んでいくべきじゃないか。現在の事実が子供でもわかるような結果になっている中で、なおかつまだ五十八年のデータが出てからとか、あるいは来年の春にならなければよくわからないとか、こういうことを言っていたのじゃ環境庁が笑い物になってしまいますよ、こういうことを言いたいわけなんです。  したがって、今の総量規制の制度の枠組みを含めて見直す必要、自動車排ガスの規制も実質総量規制の計画に取り込んでいく必要があるのじゃないかというふうに考えますが、その点はいかがでしょうか。
  189. 林部弘

    ○林部政府委員 お答えいたします。  自治体と私どもとの間では、特に総量削減計画の問題につきましてはしばしばすり合わせをしているわけでございます。冒頭に先生から御指摘がございました固定発生源の問題につきましては、自治体側も、三自治体いずれも計画の達成は十分いけるということでかなり自信があるようでございますが、自動車の問題につきましては、先ほどるる申し上げましたけれども、現実に見込みと実態というものが、シミュレーションということになりますと――私がさっき五十八年の数字と申しましたのは、交通量の絶対量を推計するために必要な建設省サイドの調査でございます。それが出てこないとできるだけ直近の時点での交通量というものを正確にはじくことができない、こういうことでございます。  そういう数字を踏まえて三自治体が今試算をやっている途中でございまして、恐らく先生も大阪の方からその辺の試算をやっている途中であるということをお伺いになっているかと思いますが、これはそう遠くないうちに出てくるのじゃないか、秋までかかるということはないのじゃないかと私どもは予測をしておりますが、実際にいろいろと修正があって答えが出てくるのは遅くなるかもしれませんけれども、ともかく少しでも早い時点に私どもと自治体側とが持っているデータを持ち寄って、実際に総量削減計画の中で項目として取り上げて、既に自治体が苦労して取り組んでいるような一つ一つの施策について、最も効果的、効率的に進める可能性の大きいものを少しでも伸ばしていくというような取り組みは、私どもとしては別に来年まで待っているということではなしに、来月以降からでもできるだけ早い時期に具体的なそういうような作業にかかっていきたいというように考えているところでございます。
  190. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 そういうことはよくわかっているのです。だけれども、なかなか効果的な自治体の取り組みだけでは限界が来ている。そこで私は、自動車排ガス規制を実質的にも総量規制の計画に取り込めるようにしていく必要があるのじゃないかということを申し上げているわけなんです。  この点はそんなに日にちを待たなくても、例えば、四月末になればかなりのことがはっきりしてくるのじゃないですか。四月末になれば、つまり、例えば五十八体の自排のこのデータを見ましても、四月だけで日平均が〇・〇六ppmを超える日がたくさんありますから、そういう形で四月一日からずっと一つ一つ追いかけていったらはっきりしたことが出てくるわけですから、だからその時点環境庁として、政府として積極的な取り組みをしていくべきじゃないか、そのときにはぜひとも削減計画の中に自動車も実質的に取り込んでいくべきじゃないかということを私は言っているわけなんです。
  191. 林部弘

    ○林部政府委員 お答えいたします。  総量削減計画の中には自動車問題は当然今までも含まれているわけでございますから、私が今申し上げましたのは、既に自治体がそういうものを取り上げまして今まで取り組んでいるもろもろの施策について、現実に少しでも前に進められるものから少しでも前に進めていくという考え方でございまして、総量削減計画そのものを全部なしにしてしまうということではなくて、四月以降もその削減計画は削減計画として踏まえながら、その中の自動車関連の諸施策についてさらに進めるというような努力をお互いにいろいろと知恵を出し合ってやっていこう、こういう考え方でございます。
  192. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 それじゃ一つだけ聞きましょう。政府としては何をしようと思っているのですか。自治体の問題ではなしに、政府としてはそのときに何をしなければならないと思っているのですか。
  193. 林部弘

    ○林部政府委員 お答えいたします。  自治体がそれぞれ今まで取り組んできているたくさんある施策のうちのどれを特に取り上げてやりますということは、今日の時点ではまだ正確にお答えをすることはできません。
  194. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 それが非常に無責任だということを言っているわけです。地方自治体と協議をしてと言いながら、政府自身の責任をちっとも見せないじゃないかということを私は言いたいわけなんです。だから、この総量削減計画がうまくいかなかったということが事実でもって明らかにされるのは――今もう既に明らかにされていると私は思いますが、なおかつ実態を見てとおっしゃるなら、百歩譲って、それでも四月一日から追いかけていけばすぐにその事実というものがはっきりしてくるわけですから、それはもう遠からずあるわけなんですから、その時点では政府としては次の対策をはっきりと考えていかなければ、これ以上地方自治体と協議をして云々ということで過ごしていったのじゃ、いつまでたってもよくならないじゃないですか。その点で長官はいかがお考えですか。
  195. 石本茂

    石本国務大臣 先生の御提言を承っておりまして、今局長が申しておりましたように、六十年度、と申しましてももう旬日しかございませんが、六十年度に入ってからの推移というものもございますので、そうした時点をとらえながら対策を早目に打ち出していかなければならない、そのことを今当局とともに真剣に検討し、考えている最中でございます。
  196. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 NOxは非常に高濃度のままで都市部は汚染が継続をしている、そして総選規制の方もうまくいかなかった、そういう状態の中で公害健康被害補償法地域指定の対象物質になっていないNOxと、それから対象になっているSOxとの関係なんですが、このSOxと入れかわりにNOxの汚染が進行をしてきた、それを私はどういう形になってくるかなと思って、これも東京の三つの測定局でグラフにしたのが最後のこのグラフです。  そうすると、完全にXで交差をしながらNOxの方の汚染がずっと上回って、今日ではどう見てもNOxが主役になっているというふうに考えざるを得ない。これは別に何も東京の三つの測定局でとらなくてもはっきりしていることですが、こういうふうに考えるのが妥当じゃないかと思いますが、この点はどうなんでしょうか。
  197. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えいたします。  公害健康被害補償法の成立の時点におきましては、先生からただいまお話があったわけでございますけれどもSOxが非常に高かったという事態におきまして、それに伴います患者さんの発生が非常に多かったということに着目いたしましてこの制度を組み立てておったわけでございます。その後、大気汚染態様の変化がございまして、先生がおつくりになりました資料にもございますようにSOxは非常に減少してまいりました。NOxはいずれの時点かによりましては、横ばいと言ったらよろしいのか、あるいは増加と言ったらよろしいのかわかりませんけれども法律制定以降におきましては大体横ばいの傾向というような態様にあるわけでございます。  このような状況を踏まえまして、私ども大気汚染物質と健康被害との関係をもう一回きちっと評価見直しをした上で地域指定あり方についての要件を明らかにしたいということで、現在審議会で御審議いただいているところでございます。
  198. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 大変時間が限られてきましたので、一番大事に思っていたところをはしょるのは大変残念ですが、思えばこの十年間ずっとNOxの汚染が続いていって、私は実に大規模な人体実験が続けられてきたというふうに思わざるを得ないのです。SOxは改善されてきた主君うけれども、NOxの方が主役に座ってきた、そして公害患者は依然として減らない、公害患者はふえていくばかり、この事実は実に壮大な人体実験によって示されている事実だ。だから、この十年間いつまでも同じことで、それを早く科学的に数量化を明確にしたいということを言っているということは、私は実に人道的な行為にも反すると思うのです。  そこで、日本科学者会議の方は、SOxとNOxを大気汚染の総合指標とするために具体的にSOx濃度にNOx濃度の一・三三倍をプラスして、持続性せき、たんの有症率、こう調査をしていくと非常に相関関係がよいということがはっきりしたので、やはりNOxとSOxを総合指標としていくということで、SOxプラスNOx掛ける一・三三倍という指標も示されて提案をされているわけです。  この点について、日本科学者会議のこういう提案をどういうふうに考えておられるかということをお伺いしたいのと、それから科学者会議のこの提案はぜひとも専門委員会に提供をしていただきたいということが一つです。
  199. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えいたします。  科学者会議で取りまとめました提言につきましては、私どもよく承知いたしております。先生お話しございましたように、NOxとSOxの複合指標というふうな形での御提言もあるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、私どもといたしましては大気汚染と健康被害との関係、特にNOxと健康被害との関係につきましては科学的にきちっと議論をし解明する必要があるということで、従来からいろいろ資料を集めまして、それを取りそろえまして現在中公審の中で御審議いただいているところでございます。  今お話しございましたNOxの評価あるいは複合指標といいますものにつきましても、大気汚染と健康被害との評価の中におきましてどういうぐあいに位置づけをするか、どういうぐあいに考えるかということであろうと思うわけでございます。そういうことから、先生お話しございました科学者会議の提言につきましても、これは、いろいろなデータがあるわけでございますから、専門委員会の中で議論をされ、それぞれに位置づけをされ評価されるものというぐあいに考えております。  なお、科学者会議の提言につきまして、専門委員会にというお話でございますが、私ども専門委員会に必要に応じてお配りして御参考に供したいというぐあいに思っております。
  200. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 これで最後にいたしますが、私ここに中公審答申を持っております。この四十九年の中公審答申を見ますと、「指定解除要件としては「著しい大気の汚染」がなくなり「その影響による疾病が多発」しなくなることが考えられる。」こういうふうにきっちり書いてあるわけです。そしてその後続けて、「(例えば五年程度)にわたり大気の汚染の程度が一度か環境基準を満たす程度に改善され」たときに解除もあり得る、こう書いているのですね。しかしこの汚染物質というのは、SOxだけに限られたものじゃないということは文章を読んでいたら非常にはっきりしています。ところが現在ではとてもそういう状態になっているわけじゃありません。  私は、きょうここに私の地元堺市の公害患者が散らばっている地図を持ってまいりました。この幹線が阪神高速道路といいまして非常に自動車の数の多いところなんです。そこでどういうふうに公害患者が散らばっているかというふうに見ましたら、この黒い点々だけを見ましても、やはり道路のわきは患者がいっぱいいるわけです。そういう点では、ぜひともこの幹線道路の周辺を新たに指定地域にしていくべきじゃないか、そのことも含めて検討を進めていくべきじゃないか。残念ながらきょうはもう時間が来てしまいまして、この沿道の公害については詳しく触れておりませんけれども、命を非常に尊重される大臣です、命を守るという立場で、この幹線道路の周辺に新たな指定地域を進めていくようにと私は考えますが、長官の御所見をお伺いして終わりたいと思います。
  201. 石本茂

    石本国務大臣 ただいま長谷川部長も申しておりましたように、先生の御提言ももちろんでございますし、科学者会議から出てまいりました書類等もございますので、それらをも専門委員会に提供いたしまして、そして、本当に適当な、みんなが納得していただけるような結論に導いていただきたいというふうに私は願っております。
  202. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 終わります。
  203. 辻英雄

    辻委員長 中井君。
  204. 中井洽

    ○中井委員 環境庁お尋ねをいたします。  今回の改正法案は、昭和六十年度から昭和六十二年度までの間、今行われております公害健康被害補償法をそのまま延ばしていく、こういう法案でございます。私自身も、この委員会へ所属しましてから五回目ぐらいの同じ形での法案提出であり、質疑でございまして、何をどういうふうにお尋ねをすればいいのかといろいろ思うわけであります。その中で、御承知のように年々委員各位の中からも、この法案の持っておる矛盾の多さ、こういったものについて鋭い御指摘がございますし、環境庁も、初めは割り切りでつくった法案だから、こういうことでお答えを終始されておったのでありますが、なかなかこのごろは苦しい御答弁をなさっておるように聞かしていただいております。  ところが、去年ですか、中公審の方へこの公健法見直しといいますか改正といいますか、こういった点を諮問をなすった、今鋭意御協議を専門委員会等でいただいておると私ども聞かしていただいておりますが、しかし出されました法案は三年間ということでございます。この三年閥は中公審においては結論が出されない、あるいは結論が出ても環境庁としてはこの法律をこのまま三年間やっていく、こういうことで法案をお出しになっていると理解をしてよろしゅうございますか。
  205. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えいたします。  今回審議をお願いいたしております法律案につきましては、これは自動車に係ります負担分を公健法給付に要します財源として取り入れるという、その枠組みについての議論でございまして、この問題につきましては、私どもも従前からこの自動車に係る負担分についてはどうあるべきかということをいろいろ検討してまいりましたし、申分審においてもいろいろ御議論賜りまして、現実に合理的な形としては当面自動車重量税収を引き当てる方式がよろしいということの御答申をいただいて、それに基づいてこの自動車に係ります費用負担の仕組みについては三年延長をお願いいたしたい、三年延長と申しますのは、租税特別措置法の自動車重量税に係ります延長期間に合わせまして三年延長という形でお願いいたしておるわけでございます。  一方、先生お話の中にございましたこの公健法を取り巻きます諸問題についての検討といいますか、見直しにつきましては、これとはまた別に、と言っては語弊があるのかもしれませんけれども、それはそれできちんと対応していかなければならない。ただいま中公審諮問し、御審議していただいておりますのは、この大気系疾病の第一種地域あり方に関する問題でございまして、この公健法の仕組みといたしましては、御案内のとおり指定地域、暴露要件指定疾病の三つの組み合わせにおいて認定するという仕組みになっておるわけでございますが、この基本的に一番重要なところであります指定地域あり方ということにつきましては現在のところまだ不分明なところもあるわけでございますので、大気汚染態様の変化を踏まえまして、この指定地域あり方がいかにあるべきかということについて御審議いただいておるところでございます。  そのようなことで、この法律でお願いいたしておりますことと現在中公審で御審議していただいておりますことは、その趣旨、内容がおのずから異なるということでございますので、その点は御理解いただきたいと思います。
  206. 中井洽

    ○中井委員 過般の私の質問に対しまして、長谷川さんは、諮問の中で第一種の地域指定あり方、これについてが一番重要な諮問である、このように御返事をいただきました。午前中の同僚議員の方の質疑の中で、NOxのいろいろな集積がかなりできたのでそれのデータ等を挙げておるのだ、こういうこともお答えになりました。それだけで推測をするのは大変おかしいかもしれませんが、そういったことを考えますと、SOxにおける地域指定あり方というものを少し見直して、NOxというものを取り入れた地域指定あり方というものを中公審諮問をしているのじゃないかと思わざるを得ないわけでございます。どういう答申が出るか、私ども専門家の方にお任せする以外にはありませんけれども、しかし、もし出てきたとしたら、自動車だってNOxということに関しては大変影響を持っておるわけでございます。SOxだけの移動排出源ということではないと思うわけであります。にもかかわらず今の御答弁は、この法案の枠組みと諮問をしたのとはちょっと違うのだ、こういうお答えのように承りますが、そこのところをもう一度御答弁をいただきます。
  207. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えいたします。  現在の公健法におきまして地域指定いたします場合におきましては、先生のお言葉の中にございますし、十分御案内のことでございますけれどもSOxにおける汚染濃度といいますものをベースにいたしまして、それに患者の多発という状況もがみ合わせまして、それで地域指定いたすわけでございます。一方におきまして、費用につきましては、固定発生源あるいは自動車に係る分ということで費用を徴収するわけでございますが、当初から中公審におきましては、大気汚染の……
  208. 中井洽

    ○中井委員 済みません、簡単に答えてください。要するに三年間これでいくのか、中公審答申が出たらまた考え直すというのか、どっちかで答えてください。
  209. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 基本的にはこの法律の延長問題と現在諮問いたしております事柄につきましては、趣旨、性格がおのずから異なるというぐあいに考えておるわけでございますので、本来なら別ものというぐあいに思うわけでございますが、現在審議をしていただいております中公審答申のお答えいかんによりましては、場合によりますと現在の自動車に係る費用負担あり方、仕組みについても波及することが全くないというようには断言できないというぐあいに思っているわけでございます。あくまで基本的には別の問題であるかもしれませんけれども、この諮問の、答申の答えいかんによりましては、あるいは関係することもあり得るというぐあいに思っております。
  210. 中井洽

    ○中井委員 それからもう一つ、お答えにくいかもしれませんが、いろんなことを前提でありますが、お答えを賜りたいと思います。  過般、この第一種の地域指定解除要件の問題で議論をいたしました。私は、解除要件というのはきちっと決まっていないじゃないか、科学的にそういったものを決めることが先決だということを申し上げましたところ、環境庁の方は、いや決まっておるのだ、こういうお答えでございました。その決まっておるというのは、四十九年に出た中公審答申を言われるのだ、こういうことでございます。決まっておるということであるならば、この答申に基づいて考えざるを得ない、こう思うわけであります。  そこには「具体的には相当期間(例えば五年程度)にわたり大気の汚染の程度が一度か環境基準を満たす程度に改善され、かつ、その地域における新しい患者の発生率が自然発生率程度に低下することが要求される。」このように書いてございます。今ございます数十の地域の中でこれに当てはまる地域は、どことどことどこですか。この要件に当てはまる地域はどこですか。単純にこれだけで考えてください。
  211. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えさしていただきます。  四十九年の中公審答申で「地域指定解除要件」という形で中公審の御意見が載っておるわけでございますが、御案内のとおり、この四十九年中公審答申時点におきましては、いわゆるNOx等健康影響については非常にはっきりしておらない、なお調査研究をする必要があるんだという前提のもとに、地域指定要件なり解除要件が書かれておるというぐあいに理解いたしておるところでございます。そういう面では、この地域指定解除要件につきましては、NOx等影響がわからない時点において書かれた、SOx等の影響をかなり主体に置きましてこの地域指定解除要件をお書きになられたというぐあいに思っているわけでございます。そのような観点から、この地域指定解除要件を実際的に動かしますといいますか、この答申を踏まえて行政を進めます場合におきましては、基本的にはNOx等健康影響というものをきちっと評価をしてはっきりさしておいてから、その後の行政手続を進める必要があるだろうというぐあいに考えておるところでございます。そのようなことで、現在中公審NOx等指定要件あるいは解除要件の明確化をお願いいたしておるところでございます。  なお、先生が端的にこの条件について、機械的に現在の四十一の指定地域についてこの条件に当たるところがあるのかないのかというお尋ねでございますが、これは例えば「五年」という表現をなされておるわけでございますが、この五年ということで考えてみます場合におきましては、四十一の指定地域の中では一カ所だけがこの条件に、本当に機械的に当てはめた場合におきましては該当するところがあるというぐあいに考えております。しかしながら、先ほど申し上げましたように、NOx等健康影響をやはり現在の時点におきましてきちんと評価をした上で、この地域指定解除要件条件につきましても発動させる必要があるだろうというぐあいに考えておるところでございますので、この点につきましては、中公審で現在御審議を進めているということで御理解をいただきたいと思います。
  212. 中井洽

    ○中井委員 僕は余り裏を割って、揚げ足とった質問をするつもりはありません。もう少し端的に答えてください。  あなたはこの閥、僕の質問に対して、「SOxに関しましてはほとんどの地域環境基準といいますか、その基準を下回っておるという状況にございます。」こうお答えになっていらっしゃる。今は一カ所だと、こう言う。同じことを聞いたのですよ。回りくどいことを言わずに――よくわかります、私どものこういう質問が患者に対してどういう情けない思いをもたらしておるか、よくわかります。たびたびおしかりをいただきます。しかし、やらざるを得ない面があるのです。この法律というものの矛盾、新しい法律に早く移る、そしてさらにまた出てくる患者さんを有効的に救っていく、健康を回復してもらう、そういうためにいつまでも今の法律でいいのかということを質疑をしているわけであります。もう少し考えて御答弁をいただきたい。  通産省おられると思います。通産省のところへは日本じゅうの商工会議所あるいは産業界から現行公健法の改正あるいは矛盾、こういったものについてのいろいろな要望が来ておると思います。どんな点の要望が多いのか、お答えをいただきたい。
  213. 山本雅司

    ○山本(雅)政府委員 現在、公健法運用につきましては、御指摘のように賦課金を徴収される側の企業の方からいろいろの意見が参っております。その代表的なものを分類いたしますと、二つに分けられると思います。  第一点は、現在の運用が、今先生も御指摘ございましたように、SOx中心にして地域指定をしているということでございます。さらに、賦課金の徴収はSOx中心にして徴収されているということでございます。この両者を基本にいたしまして、SOxは御案内のように既に五年以上も前から全部環境基準を満たしておるわけでございます。したがって、こういう制度のもとに、なぜSOxをもとにして賦課金を徴収されなければならないのか、これはどう考えてもわからないというのが基本的な疑問点でございます。  それから第二点でございますが、これはその後の大気汚染態様が変わってまいりました点もございまして、地域指定地域指定外でございますが、当初と比べまして地域指定外の企業方々が非常にたくさんの負担をしておるのが実情でございます。その地域指定外と申しますと、遠くは北海道、沖縄の企業の方が負担しておりますし、しかも中小企業が食うや食わずに、自分たちの従業員には何もできない、あるいは税金も納められないのにこの公健法の賦課金は取られてしまっている、こういうのは何とかならないものかというような声もございます。  いずれにいたしましても、大きく分けますとこの二点でございますが、このような点、いろいろ複雑な要素があるかとは思いますが、私どもといたしましても、十分根拠を確かめ、しかるべく対応はしたいと考えております。
  214. 中井洽

    ○中井委員 私どもも各地域に行きましたら、大変な疑問あるいはおしかりをいただくわけであります。私はそのときに常に、国会も皆わかっておる、しかし、それでは患者さんの負担金をどこが持つのだ、だれが持つのだという合理的な制度がなかなかないから、今の制度で私ども、やむを得ず賛成をしておるのだ、こういうことを言わざるを得ないのであります。しかし、この矛盾の点がどんどん拡大をしておるのは事実なわけであります。地域指定、これはここに書いてあります解除要件という亀のを、本当にこれだけで解除要件がいいということであるなら、私はやれると思うのであります。しかし、それをやってしまったら、本当に患者さんの補償あるいは生活、健康回復、だれが責任を持ってお金を出すのだ、そういったことは一切明らかにされていないから、こういう矛盾だらけの法律をまた続けていかざるを得ない、このように思うわけであります。初めにありました割り切りがだんだん大きくなっておる、そして、社会も変化しておれば、公害に対する対応も思い切って進んだ、こういったときに、いつまでも同じことでいいのだろうか、この法案に賛成であっても、このように疑問を投げかけざるを得ないのであります。そういった意味で、もう一度御答弁いただきます。
  215. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えいたします。  ただいま先生からお話ございましたように、いろいろな問題点指摘されておるわけでございますので、この公健法を適正に運用していくためには、一番基本になります指定地域あり方指定要件あるいは解除要件の明確化がやはり大事であるというような判断のもとに、環境庁といたしましては従前から資料を集め、現在中公審で御審議いただいているところでございます。この御審議の結果を見ながら、指定要件あるいは解除要件が明らかになりました時点におきましては、それを適正に実施してまいりたいというぐあいに思っておるところでございます。  なお、先ほどの御質問に対します答弁で舌足らずの点がございましたので補足させていただきたいと思っているわけでございますが、「地域指定解除要件」と書いてございます中におきまして、濃度の関係だけで、SOxの濃度だけをとらえてみました場合におきましては、現在の四十一地域が全部いわゆる環境基準をクリアしておるという状況にございます。しかしながら、それ以外の物質について、環境基準との比較がそれだけでよろしいかどうかという疑問もあるわけでございますが、単純に比較してみた場合におきましては、四十一地域のほとんどがクリアをしていない、しかも「五年」ということが書いてございますが、クリアをしていないという状況にあるわけでございます。  なお、ここに地域指定解除要件といたしましては、いわゆる濃度の問題と自然発生率の問題が載っているわけでございますが、ここら辺の問題につきましても、どう把握をするのか、どう評価するのかについても問題があるわけでございますし、このような問題もあるわけでございますので、現在、中公審におきまして、指定解除要件の明確化をお願いいたしておるところでございます。
  216. 中井洽

    ○中井委員 そうしますと、地域指定をするときにはSOxの濃度だ、しかし、解除のときには、SOxの濃度がきちっとなったということじゃなしに、しかも科学的にきちっと決められていない大気汚染という全体の濃度で考える、こういうことですか。そういう御答弁ですか。だから、法律運用にちっとも矛盾はない、こうおっしゃるわけですか。
  217. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えいたします。  SOxのみならずNOx、SPMに関しましても、大気汚染への影響はないということの見きわめが必要であろうというぐあいに思っておるところでございます。
  218. 中井洽

    ○中井委員 だから、指定をするときには、それではNOxから全部、それもちゃんとデータをとって指定をされたのですかと聞いているのです。指定のときと解除のときと違う感覚で考えております、運用します、そういうことなんですかと、こういうことです。  今、各地域でいろいろと賦課金をお払いになっておる地域指定のところの産業界の方々は、SOx指定をされた、そしてSOxの濃度は国民全体の努力の中でうんと下がったじゃないか、実に単純なんですね。だから解除したらいいじゃないかと。片一方には、それは患者さんの自然発生率の問題があります。しかし、そういうことでみんなが思っておるのを、あなた方は、そういうときは大気の汚染だよ、こう言われる。そこに説明不足があるのじゃないか、こういうことを言っているわけです。おわかりになりますか。どっちなんですか。
  219. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 法律の制定時点におきましては、その時点におきましてもNOx、SPM,SOxという三つの物質が健康被害に影響があるということは言われておったわけでございますが、当時の大気汚染態様を見ますと、SOxが非常に著しく高い濃度で汚染されておったというようなことから、SOxを代表的な指標という形でとらえまして、なおかつSOxによる健康被害といいますのが明らかであったという点を踏まえまして、SOxによる濃度要件を示されておるわけでございます。その後、大気汚染態様の変化があったわけでございますので、現時点においてそれ以外の物質についての健康影響、健康被害についての解明をいたしたいというぐあいに考えておるところでございます。
  220. 中井洽

    ○中井委員 そうしますと、今までこの委員会で僕が何回か質問したことの御答弁がおかしくなると私は思うのであります。私は何を申し上げたかといいますと、本当に、北海道とか遠く離れた地域指定じゃないところの、しかもどんどこどんどこSOxの量、濃度を下げておるところから患者さんがふえ続けるという形で賦課金をどんどん上げ続けるよりも、そして矛盾をつかれるよりも、逆にたばこから、専売公社からお金を取れるような制度を考えなさいとたびたび申し上げました。そのたびに、いやNOxはこの患者さんのこれの賦課金を取る場合には全然関係ないのです、こういうふうに終始答弁をされてまいられました。  しかし、今のお話で言いますと、もう初めからNOxも考慮して地域指定をしているんだ、解除をしないのはNOxのこと亀考えてやっておるんだ、全体として考えておるんだと。科学的なデータとか科学的にレベルを決めるということじゃなしにNOxも入っているんだ、こういうことであるなら、当然たばこもそういう割り切りの中で入れて、今度からたばこからたくさん税金をいただくのですから、自動車と同じ、たばこからもぐっとこの制度の中へお金をつぎ込んでもらう、こういうことがあってしかるべきじゃないでしょうか。私はそう思いますが、いかがですか。
  221. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えいたします。  本制度につきましては、事業活動に伴いまして相当範囲に生ずる著しい大気汚染公害によります健康被害の救済を図るという制度であるわけでございます。このため、補償給付等に要する費用につきましては、汚染者負担の原則を踏まえまして、大気汚染原因物質等を排出いたします工場等の固定発生源それから自動車に負担を求めているところでございます。  たばこの問題につきましては、いわゆる公害としての大気汚染の問題ではないというぐあいに考えているところでございまして、したがいまして、たばこによります健康影響に関しましてたばこからの基金を集めることにつきましては、民事責任を踏まえた本制度の趣旨、性格からいってもなじまないものというぐあいに考えておるところでございます。
  222. 中井洽

    ○中井委員 だから、その民事責任も踏まえてSOxでやってきたわけでしょう。それもSOxだけということに関したら、ほとんど各地域でレベルを完全にダウンさせてやっているわけでしょう。だから、その地域外の企業、賦課金を払っているところはどうなっているんだ、こう言って、わんわん言っているわけです。私どもはこれに対して、各地域へ行ったら、患者さんに対してお払いする、これはまた新しく出てくる患者さんだっている、これに対して、リーズナブルな原因負担のものが見つからないから今までどおりSOxでお払いをいただいているんだ、こう説明しているわけです。  ところが、あなたのお話でいけば、地域指定解除をしないのはSOxの面じゃないんだ、NOxやらを含めた大気の汚染の問題だ、こういうお話。それならば、そういう割り切りでお話しなさるのなら、もう何にもNOxのことで中公審諮問せぬでいいわけです。専門委員会に語らずに、NOx部分についても賦課金を持ってもらう。個人に対してあるいは大気に対してNOx的に一番影響のあるものといったら、それはたばこですよ。こんなことわかっておることじゃないですか。ppmで瞬間的にはかれば、たばこの煙というのはすごい量になるわけであります。これに賦課金をかけて、そして、いわゆる中小企業やらそういったところの軽減をしていく。地域指定にあるところは、それはまだまだ責任をとってもらわなければなりません。しかし、それ以外のところのものも考えてもらう、そういうことを当然やってもいいじゃないですか。こう申し上げたら何かまた――僕の言っておることおかしいですか。僕は、僕の言っている方が矛盾がないと思うのです。どうもあなたのおっしゃっておる方が割り切りが多過ぎて、患者さんにも御説明できなければ、お金を出していただいている、賦課金を払っているところにもなかなか説明がしにくい、そんなふうに私はここ数年間の質疑を通じて思います。  大臣、余り御存じないと言うのは失礼ですが、お聞きになっていかがお思いですか。
  223. 石本茂

    石本国務大臣 先生の御提言を拝聴いたしておりまして私なりに、この役所に参りましてまだ全部を承知しておりませんけれども、かつて硫黄酸化物によりまして健康の被害を受けられたその方に対しては、これは未来永劫、仮にその会社の出している煙の中に硫黄酸化物がなくなったと仮定しましても、これは補償していかなければなりません。新しく年々増加いたします方々につきましては、果たしてSOx影響しているのか、あるいは今問題になっておりますNOxが影響しているのか、これは二道があるのだろうと私は思うわけでございます。そうした意味で、今回は日切れ法案でございますので、どうしてもこの月中に御審議いただかなければなりません事態に追い込まれておりますので従来のままの御提案を申し上げているわけでございますが、部長が申しますように、窒素酸化物の問題も大きく問題になってきておりますし、あるいは浮遊粒子物も問題になっておりますので、これは二道の中の一つ条件として目下審議会でも検討しておりますというふうに申しておるんだと私は理解しております。
  224. 中井洽

    ○中井委員 大臣の御答弁で了解をして、先に進みます。  たばこのことを申し上げたついでに、患者さんの喫煙の問題についてお尋ねをさせていただきます。  過般、データを発表なさいまして、二〇%ぐらいの患者さんが喫煙をされておられる、こういうことでございます。承りますと、これは現在お吸いになっている方、こういうことのようでございます。これについて環境庁は、去年の十二月に「禁煙指導の充実について」という形で各都道府県関係へ保健部長さんのお名前で書類を出されておられます。その中で、「従来から、各県市(区)における公害保健福祉事業の一環として、禁煙指導が行われているところであるが、」というお言葉がございます。過般データをお届けをいただきましたときにいろいろ承りますと、患者さんの診断書の中には、かつて喫煙しておったとか今喫煙しておるというのがいつも書かれておる、こういう御返事をちょうだいをいたしました。  ところが、今まで私がこの委員会で西風ぐらい、患者さんの喫煙のデータを一遍出してください、こうお願いをしましたら、いやそれは調べられないのです、ありません、このように環境庁はお答えになっておったわけであります。それでは、今の時点でなぜこういうことを覆されてもともとわかっておるデータというものをお出しになったのか、あるいはどうして今まで喫煙のデータを私どもが言ったときにお出しにならなかったのか。どちらの面からでも結構でございます、御答弁いただきます。
  225. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えいたします。  環境庁といたしましては、これまでも認定者に対します有効な禁煙指導の方法についていろいろな研究を進めてまいったところでございますが、これらの研究が大体取りまとめられたという段階に来ているわけでございますし、さらに、この禁煙指導が認定者方々の腐状の回復に非常に有効であるというぐあいに思うわけでございますので、さらにその禁煙指導対策を強化したいというような観点から、この実態についての調査をいたしたいというぐあいに思っておったところでございます。  その実態の調査につきましては、先生お話もございましたように非常に実態の把握が難しゅうございます。主治医診断報告書は、その月に受診した場合におきます患者の喫煙状況を書いておるわけでございますので、そういう面では必ずしも認定患者の皆さん方の喫煙の実態というものを正確にとらえておらない、時点が多少ずれますとその数字も多少変わってまいるわけでございますので、そういう面での実態把握は非常に難しいという問題があるわけでございますが、さしあたり、そういう主治医診断報告書に基づきます喫煙の状態を把握をした上で、さらに有効適切な禁煙指導対策を実施してまいりたいということで調査をし、部長通知をもって各県市区に先般指導したところでございます。  なお、先生のお言葉の中にございましたが、従前、環境庁の方ではなかなかそういうものをつかめないのだということにつきましては、先ほど申し上げましたように、たばこを吸っている実態といいますものの把握が非常に難しいというようなこともありましてなかなかお答えできなかったということであろうというぐあいに思うわけでございます。ただ、主治医診断報告書につきましてそういうたばこを吸っている実態といいますか、状況についての欄は従前からあったわけでございますので、そういう面におきまして先生に大変失礼なことを申し上げたというぐあいに思うわけでございます。
  226. 中井洽

    ○中井委員 公害問題、とりわけ患者さんの健康に関する問題は、私らみたいな乱暴者が言いますと大変誤解を招く場合がございます。非常にデリケートなことでございます。したがって、デリケートであるがゆえに、何もかも伏せ込んでしまうのだ、何もかも発表しないのだ、こういう形が逆におかしな印象を与え、あるいはマイナスの行政をせざるを得なくなる面が出てくると私は思います。公害問題についてはあくまでも科学知識、これにのっとってどんどん進めていく、変化をさせていく、もう当たり前のことであると考えております。したがって、地域指定の問題も、新しい形で地域指定をやるというならどんどんそれに向かって科学的に進めていく、患者さんの健康回復だって、科学の力で本当に少しでも一日でも早く回復するために、いいことであるならば幾らでもやっていただく、こういうことは当たり前のことであろうかと考えております。  この禁煙の問題なんかでも、今ごろこんな禁煙の指導なんて何をやっているのですか。気管支系統の障害がある人はたばこを吸うたらいかぬのはだれでも知っています。なるべくやめてくださいとか、おやめになった方がいいですよとか、パンフレットや映画を見せる、そんなばかなことありますか。直ちにお医者さんに言ってやめてもらってください。健康の問題じゃないですか。私だってもう二年半前からやめています。もっとも三回目ですからなかなか一遍にはいきませんけれども。しかし、患者さんにとっては命の問題じゃないでしょうか。これをやめさせないお医者さんがおかしいですよ。認定の問題とか、あるいは患者さんがたばこでなったとか、そんなけちなことをだれも言いません、私はそのように思います。そういった意味で、もっと強く禁煙を実施してもらうように環境庁は約束をしていただきたい。
  227. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 呼吸器系疾患の患者さんがたばこを吸うということは非常によくないことだというのは、先生お話もございましたように国民の皆さんも、あるいは医師である方々も十分御承知のわけでございます。その中において、やめられないという方あるいは多少は吸っておられる方も現実問題としてはあり得る語であろうというぐあいに思っておるわけでございます。そういう面で、私ども、療養の心頭からたばこをやめるようにという療養指導をさらに徹底させる必要があるというような考え方に基づきまして、従前の一般的なPR、教育という形でなくて、それぞれ主治医の方々と十分連絡をとりながら禁煙指導、たばこをやめるような指導といいますものをさらに徹底していく必要があるという考え方のもとに先般の部長通知を出したところでございます。  ただいま先生からも、さらにもっと強くやれというおしかりを受けたわけでございますので、今後ともそういう面での指導をさらに徹底してまいりたいというぐあいに思っております。
  228. 中井洽

    ○中井委員 これまた四、五年前に御質問を申し上げたことでありますが、補償ということも大事なことであります。取り返しのつかない患者さんの健魔というものを補償していく、一番大事な制度の根幹をなすものでありますが、それと同時に健康回復を少しでもしていただく、このために国も地方自治体もお医者さんも御努力いただくというのが一番大事なことであります。きれいな大気というものを取り戻す、そして同時に健康体を取り戻していただく、この二つのことが完成しなければ公害は解消したと言えないと思うのであります。  そういう意味で、福祉事業というものはもっと充実させるべきであると考えるわけであります。ところが、残念なことにこの制度の中でいつまでたってもふえない、毎年二、三億という形の使われ方しかされていないのがこの福祉事業費であります。これをどういうふうに充実させていただくのか。九万数千人いらっしゃる患者さん、四十一カ所の地域指定されておる患者さん、それに対して二億三千五百万円です。ことしなどはそういう形になっております。これではもう何もやってないと一緒である。私は素人考えでわかりませんが、転地療養を含め、あるいは今のたばこをやめてもらう運動を含めてもっともっと充実をさすべきである。また、患者さんにも御協力いただくべきである。あるいは地方自治体が自分のところもこれは負担しなければならないものですから、財政難で余りやりたくないという空気があるのかもしれません。一生懸命お取り組みいただいておる地方自治体には申しわけないのですが、もしそんなことであるならば、環境庁もこれを十分御理解いただいて、もっともっと前進をさせていただかなければならない、このように考えますが、環境庁いかがですか。
  229. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 保健福祉事業をもっと充実させてやるべきであるという先生の御提言、私どももまことにさように考えております。  ただ、実際問題といたしましては各県市区におきますいろいろな保健福祉事業というのがあるわけでございますので、そこら辺の調整の問題等もあるわけでございますが、私ども患者さんの方々の健康が一日も早く回復できますように、この保健福祉事業の充実につきましてはさらに努力してまいりたいと考えております。
  230. 中井洽

    ○中井委員 もう十年以上になるわけでありますから、一度具体的にどんな福祉事業をそれぞれの地域でやっておるのか、あるいはそれらを患者さんがどのくらい御利用いただいておるのが、データをお出しいただきたい、このように思います。お約束いただけますか。
  231. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 はい。
  232. 中井洽

    ○中井委員 それでは時間がありませんので、最後に、この矛盾点、第一種の矛盾と同時に第二種のチッソの問題で一問だけお尋ねしたいわけでございます。  県債をいろいろな議論の中で発行してチッソのバックアップをし、あるいはまた通産省等もチッソが生き延びて患者さんにお金を払い続けられるようにということで御努力いただいているわけであります。過般の委員会の質問でも、去年は少し利益が上がったのだなんというお話もいただいておりますが、しかし、チッソ自体の累積赤字というのは五十八年でもう八百二十億というところまで来ておるわけでございます。従業員が千百九十六人の会社でございます。原因はこの会社にある、責任はこの会社がとらなければならない、これもわかりますけれども、国と県とで何か補償費を払わすためだけに生かしていくというようなあり方そのものも大きな矛盾であろうか。これにかわる制度があるとはなかなか言い切れませんが、何かもっと思い切ったチッソ救済というものを考えないと、この制度もおかしな形が出て、結果的には患者さんが大変な迷惑をこうむる、こういう事態になりはしないか、私は心配をいたしております。  大変思いつき的な発言で恐縮ですが、例えばこのチッソが大半のお金を持っておるのですか、幾らか割合で持っておりますヘドロの処理、これのためのお金が既に百二十億くらい累積いたしております。このチッソがまあ汚したと言えば言える海底のヘドロでありますけれども、チッソだけではないわけでありますし、このヘドロが回収されるということは、チッソだけがあるいは特定の人だけが恩恵を受けるのではなしに、その地帯全体の海を使われる方々が恩恵を受けるわけでございます。そういう意味で、国がこの分だけでももう少し持つというようなことを検討する、このような考えができないものか、通産省と環境庁からお答えをいただきます。
  233. 高島章

    ○高島説明員 先生指摘のとおり、基本的にはチッソが経営を非常に改善いたしまして、いかにして患者救済が全うできるかという点にあるわけでございます。通産省の一番のポイントは、チッソの今経営の中心になっております汎用品からもっと付加価値の高い分野にいかにスムーズに転換していくかということでございまして、その転換の過程におきまして、我々のできますいろいろな施策を活用いたしまして収益の生まれるいい体質の企業により発展していくように、我々としては精いっぱい努力をしたいと思うわけでございます。
  234. 山崎圭

    ○山崎(圭)政府委員 お答え申し上げます。  チッソの置かれている現状につきましては先生指摘のとおりでございます。なかなか大変な苦境にあることも十分関係者は認識の上で、一体どういうふうに打開していくかという問題だと思っております。  今、通産省からも答弁いたしましたように、汚染者負担の原則ははっきりと持ちつつも、なお例えば先生指摘のような点も含めまして関係者いろいろと相談した上の結果が昨年末の一つの方向であったわけであります。この方向は五十三年以来、県債発行方式といいますか、こういう路線の上で大きな変更を加えたものではございませんけれども、例えば県債の引受比率を国のベースで少し引き上げる、そのかわりと申しますか、その関連性は余りございませんけれども、新しい投資に対する道を民間からさらに援助してもらう、こういうことでチッソの活性化を図っていく、この原則を踏襲してまいりたい、こういう気持ちでおるわけでございます。
  235. 中井洽

    ○中井委員 私がいつも感じますことは、公審問題で何か議論いたしますと、申分審に答申中だとか中公審に聞いてという言葉が入ってまいる、あるいはまた逆に四十七年当暗の公害の悲惨さがゆえに、いろいろな問題を何か質疑すると、患者さんの足を引っ張ることだという形での論議に対する封じ込めみたいなものも見られる。そういうのが徐々に変わってきて、本当に前向きに科学的に患者さんを救い、公害をなくしていく、こういう形での議論が行われるようになったというのは大変うれしいことだと私は考えております。しかし世の中の変化のスピードは速いわけでありますから、もっともっと環境庁自体も、従来のことにこだわらず科学知識にのっとってどんどんと変化をさせていく、そうして柔軟に環境行政を前進させていく、こういった姿勢を強く望んでいきたい。  この公健法なんかも矛盾だらけだというのは環境庁自体がよく御承知だと思うのです。ただ、徴収の費用というのが一番安いし一番簡単だ、こういったことも含めて、あるいは十数年間やってきた制度だからこのままで行こうじゃないかというようなことだけではなかなかおさまらなくなっておるのだ、そういうことを十分認識いただいて、そういう時代に対応して変化することによってより環境庁の存在価値というのは高まっていく、私はこのように考えております。そういったことを強く要望いたしまして質問を終わらせていただきます。
  236. 辻英雄

    辻委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  237. 辻英雄

    辻委員長 委員長の手元に、藤田スミ君より本案に対する修正案が提出をされております。  提出者より趣旨の説明を求めます。藤田スミ君。     ―――――――――――――  公害健康被害補償法の一部を改正する法律案に   対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  238. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表いたしまして、公害健康被害補償法の一部を改正する法律案に対する日本共産党・革新共同の修正案の提案理由を説明申し上げます。  原案は、自動車重量税の税収見込み額の一部を第一種地域における公害被害者への補償費等の一部に充てるという制度創設以来の暫定措置を、昭和五十八年に続き五たび延長しようとするものであります。  日本共産党は、当初から、この暫定措置は自動車排ガスによる大気汚染の真の原因者である自動車メーカーの責任を免罪するとともに、公害健康被害補償費の公費による肩がわりであることを指摘し、これに反対してまいりましたが、今日、この暫定措置の誤りはますます明らかとなっております。  その第一は、この暫定措置が自動車排ガスによる大気汚染の改善に全く役に立っていないということであります。ことし三月を目標に進められてきた窒素酸化物の総量規制は、自動車排ガス測定局で逆にその汚染が悪化するなど完全に破綻していますが、自動車メーカーの責任を免罪するこの暫定措置が、自動車メーカーの公害防止努力を怠らせる一因となっていることは明らかであります。  その第二は、自動車重量税、すなわち公害健康被害補償協会交付金として公費から支出されることによって、これが補助金の整理合理化という名目で臨調行革の対象とされていることであります。環境庁は臨調の最終答申に基づき、地域指定解除を中央公害対策審議会に諮問しましたが、一般の補助金とは本質的に異なるこの公害補償費に対する臨調や行革審の不当な干渉を許さないためにも、この暫定措置は是正されるべきであります。  以上の理由により、我が党は原案に反対するとともに、自動車メーカーの被害補償責任を明確にし、あわせて当面の焦点である窒素酸化物を地域指定要件に加えることなどの点を含む修正案を、前回どおり断固として提出するものであります。  次に、その修正案の概要について説明させていただきます。  第一は、補償費等の一部に充てるため、輸入業者を含む自動車メーカーから賦課金を徴収することとし、その賦課金の額は、自動車の種別、総排気量、汚染物質の排出量等を勘案して政令で定める金額に出荷台数を乗じて算定するという点であります。  第二は、ばい煙発生施設等設置者に対する汚染賦課対象物質に硫黄酸化物とともに窒素酸化物を法定することにより、窒素酸化物が被害発生の原因物質であることを明確にし、これを地域指定要件に加えるという点であります。  第三は、公害保健福祉事業費、自治体の補償給付費及び公害健康被害補償協会の事務費にある公費負担を全廃し、これを企業負担にするという点であります。  以上でありますが、委員各位の御賛同を心からお願い申し上げまして、提案理由の説明といたします。
  239. 辻英雄

    辻委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。     ―――――――――――――
  240. 辻英雄

    辻委員長 これより本案及び修正案を一括して討論に付するのでありますが、別に討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  公害健康被害補償法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。  まず、藤田スミ君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  241. 辻英雄

    辻委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。  次に、原案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  242. 辻英雄

    辻委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  243. 辻英雄

    辻委員長 次に、ただいま議決いたしました本案に対し、福島譲二君、和田貞夫君、大野潔君及び中井洽君より、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者から趣旨の説明を求めます。和田貞夫君。
  244. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 私は、ただいま議決されました公害健康被害補償法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につき、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・国民連合を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     公害健康被害補償法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に当たって、次の諸点につき適切な措置を講ずべきである。  一 昭和六十三年度以降における費用徴収方法については、固定発生源と移動発生源の寄与を考慮し、汚染の原因負担の原則にのつとるとともに、発生源の公害防除の努力が十分反映されることを重点においた方策の確立に努めること。  二 幹線道路周辺における環境の改善を図るため、バス・トラック等の自動車に係る騒音、排出ガス等の規制を含め、総合的な交通公害対策を推進すること。  三 大都市圏における二酸化窒素に係る環境基準の達成が急務である現状にかんがみ、窒素酸化物総量削減の実効性を確保するため、地域の実情に応じた関連諸施策を推進するなど環境改善に一層努めること。  四 最近における都市型複合汚染に対処するため、窒素酸化物等についても健康被害との因果関係を究明し、その結果に基づいて地域指定見直しを行うこと。  五 大気汚染の改善が進んでいない指定地域等における工場・事業場の新増設に際しては、特に汚染防止に十分配慮し、健康被害の防止に努めること。  六 補償給付の改善を行うとともに、転地療養事業等の公害保健福祉事業の充実、強化を図ること。  七 国立水俣病研究センターについては、なお一層体制の整備に努めるとともに、研究成果をふまえて水俣病の治療体制の充実についても検討すること。  八 将来の健康被害の発生を防止するため、新親の健康被害物質に対する監視と継続的調査を行うとともに、公害健康被害に関する調査研究については、その結果を公表し、本制度の適正化に資すること。  九 本制度の対象となっていない騒音、振動等による健康被害及び財産被害についても、その実態の把握に努め、被害者の補償措置を早急に確立するよう検討すること。 以上でありますが、その趣旨につきましては、案文中に尽くされておりますので、説明を省略させていただきます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。  以上であります。
  245. 辻英雄

    辻委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  246. 辻英雄

    辻委員長 起立総員。よって、本動議のとおり本案に附帯決議を付することに決しました。  この際、石本環境庁長官より発言を求められておりますので、これを許します。石本環境庁長官
  247. 石本茂

    石本国務大臣 ただいまの決議に対しまして、その趣旨を体して最大限の努力をいたします。どうもありがとうございました。     ―――――――――――――
  248. 辻英雄

    辻委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  249. 辻英雄

    辻委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  250. 辻英雄

    辻委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十一分散会      ――――◇―――――