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1985-06-19 第102回国会 衆議院 外務委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年六月十九日(水曜日)     午前十時九分開議 出席委員   委員長 愛野興一郎君    理事 奥田 敬和君 理事 北川 石松君    理事 野上  徹君 理事 浜田卓二郎君    理事 土井たか子君 理事 玉城 栄一君    理事 渡辺  朗君       上村千一郎君    大島 理森君       太田 誠一君    鯨岡 兵輔君       佐藤 一郎君    中山 正暉君       仲村 正治君    町村 信孝君       松田 九郎君    綿貫 民輔君       小林  進君    渡部 一郎君       木下敬之助君    岡崎万寿秀君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         外務大臣官房審         議官      都甲 岳洋君         外務大臣官房審         議官      斉藤 邦彦君         外務大臣官房領         事移住部長   谷田 正躬君         外務省北米局長 栗山 尚一君         外務省経済局次         長       恩田  宗君         外務省条約局長 小和田 恒君         郵政省郵務局長 塩谷  稔君  委員外出席者         防衛庁防衛局運         用課長     大野 琢也君         防衛施設庁施設         部連絡調整官  森山 浩二君         外務大臣官房審         議官      松浦晃一郎君         外務大臣官房審         議官      木幡 昭七君         外務委員会調査         室長      高橋 文雄君     ――――――――――――― 委員の異動 六月十二日  辞任         補欠選任   石川 要三君     山中 貞則君   木下敬之助君     玉置 一弥君 同日  辞任         補欠選任   山中 貞則君     石川 要三君   玉置 一弥君     木下敬之助君 同月十九日  辞任         補欠選任   石川 要三君     太田 誠一君   鍵田忠三郎君     松田 九郎君   西山敬次郎君     大島 理森君   山下 元利君     上村千一郎君 同日  辞任         補欠選任   上村千一郎君     山下 元利君   大島 理森君     西山敬次郎君   太田 誠一君     石川 要三君   松田 九郎君     鍵田忠三郎君     ――――――――――――― 六月十一日  核兵器全面禁止実現等に関する請願大出俊  君紹介)(第五四三四号) 同月十二日  核兵器全面禁止実現等に関する請願伊藤茂  君紹介)(第五五九四号)  同(伊藤茂紹介)(第五六九七号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第五六九八号)  同(大出俊紹介)(第五六九九号) 同月十四日  核兵器全面禁止実現等に関する請願伊藤茂  君紹介)(第五八三二号)  核兵器全面禁止等に関する請願正森成二君紹  介)(第五九〇一号) 同月十七日  米軍基地内に働く第四種日本人従業員のパス取  り上げ反対身分保障制度確立に関する請願  (岡崎万寿秀紹介)(第六二〇三号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第六二〇四号)  同(三浦久紹介)(第六二〇五号)  同(玉城栄一紹介)(第六二〇六号)  核兵器全面禁止等に関する請願正森成二君紹  介)(第六二〇七号) 同月十八日  米軍基地内に働く第四種日本人従業員のパス取  り上げ反対身分保障制度確立に関する請願  外一件(上原康助紹介)(第六四八六号) 同月十九日  核ミサイル・トマホークの持ち込み反対等に関  する請願中林佳子紹介)(第六六五五号)  核兵器全面禁止実現等に関する請願外六件  (富塚三夫紹介)(第六六五六号)  ILO未批准条約批准に関する請願外五件  (富塚三夫紹介)(第六八三一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 六月十四日  核兵器廃絶等に関する陳情書  (第四四〇号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  万国郵便連合憲章の第三追加議定書締結につ  いて承認を求めるの件(条約第七号)(参議院  送付)  万国郵便連合一般規則及び万国郵便条約締結  について承認を求めるの件(条約第八号)(参  議院送付)  小包郵便物に関する約定締結について承認を  求めるの件(条約第九号)(参議院送付)  郵便為替及び郵便旅行小為替に関する約定の締  結について承認を求めるの件(条約第一〇号)  (参議院送付)  郵便小切手業務に関する約定締結について承  認を求めるの件(条約第一一号)(参議院送付  )  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 愛野興一郎

    愛野委員長 これより会議を開きます。  万国郵便連合憲章の第三追加議定書締結について承認を求めるの件、万国郵便連合一般規則及び万国郵便条約締結について承認を求めるの件、小包郵便物に関する約定締結について承認を求めるの件、郵便為替及び郵便旅行小為替に関する約定締結について承認を求めるの件及び郵便小切手業務に関する約定締結について承認を求めるの件、以上五件を一括して議題といたします。  他に質疑申し出もございませんので、これにて各件に対する質疑は終了いたしました。  これより各件に対する討論に入るのでありますが、別に討論申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  万国郵便連合憲章の第三追加議定書締結について承認を求めるの件、万国郵便連合一般規則及び万国郵便条約締結について承認を求めるの件、小包郵便物に関する約定締結について承認を求めるの件、郵便為替及び郵便旅行小為替に関する約定締結について承認を求めるの件及び郵便小切手業務に関する約定締結について承認を求めるの件、以上五件を一括して採決いたします。  各件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  3. 愛野興一郎

    愛野委員長 起立総員。よって、各件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 愛野興一郎

    愛野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  5. 愛野興一郎

    愛野委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。土井たか子君。
  6. 土井たか子

    土井委員 きょう、私は数点にわたって質問を申し上げたいと思いますが、まず、この十一日にアメリカ上院会議で可決されました対日防衛要求決議案一般に言われておりますあの決議について、あらましの概要を御説明願いたいと思うのです。
  7. 栗山尚一

    栗山政府委員 御説明申し上げます。  御指摘決議案と言われているものは、具体的には国務省予算権限法案に対します修正案という形で提出されまして採択されたものでございますが、ポイントだけを申し上げますと概略二つ部分に分かれておりまして、前段におきまして、議会認識といたしまして若干の点を述べております。  具体的には、第一は、「防衛計画の大綱」の見直しが必要であるという点が第一点。それから第二点といたしまして、いわゆる五六中業の策定及び実施、それとの関連継戦能力強化継戦能力強化との関連におきましては、毎年二〇%ずつ継戦能力不足分を充実させていくための予算増を求めておるわけでございます。それから第三点といたしましては、在日米軍関連経費負担増。具体的には、アメリカ軍施設関連日本予算の増加、それから地位協定のもとでの在日米軍労務費関連負担増内容としては、そういうものが必要であるというのが議会認識であるということを述べました上で、後段におきまして、毎年報告書を出してほしいということを二点ほど行政府に対して求めておるわけでございます。  行政府に対して求めております報告書内容に盛られるべき点といたしましては、五六中業実施との関連でのアメリカ政府の詳細な評価、特にシーレーン防衛能力との関連でのアメリカ政府評価。それから、さらにそれに関連いたしまして最後に、日本防衛能力の向上が遅延する場合に、その遅延の原因についてのアメリカ政府評価、こういうものについての行政府報告書を今後毎年出してほしい。第一回目につきましては、遅くとも来年の二月一日までに出してほしい。以上のような内容のものでございます。
  8. 土井たか子

    土井委員 ただいまは概要を御説明いただいたわけですが、昨日、私はこの決議について外務省資料要求をいたしましたら、これはファックスにかけられていて非常に読みづらい。余り読みづらいものですからその原文をということでもう一たび要求をしまして、これもまた字が小さくて、私のように老眼鏡をかけなければ読めないような目で見ますと非常に読みづらい中身でありますが、これを見ますと、「ジ アメンドメント イズァズ フォローズ」と書いてあって始まるわけです。「アメンドメント」というのは修正でしょう。先ほど御説明にございましたとおりに、これは国務省予算歳出権限法というものの上院審議の過程で出ているアメンドメントなんですね。この決議それ自身は、本会議であっと言う間にかかって、あっと言う間に多数で可決をされた決議案であるということは、我々もよくニュースで承知しているわけでありますけれども、何でこれはアメンドメントですか。
  9. 栗山尚一

    栗山政府委員 お答え申し上げる前に、一点だけ。先ほど私から答弁申し上げましたときに、五六中業と申し上げたようでございますが、五九中業の誤りでございますので、訂正させていただきます。  この「アメンドメント」の性格につきましては、先ほど申し上げましたように私ども理解しておりますところでは、国務省予算権限法案というものが上院にかかっておりまして、その予算権限法案に対します修正案として民主党のバード上院院内総務提案をした。そういう意味におきまして、形式的には予算権限法案に対する修正法案と申しますか、修正案という形で提案をされて、その予算権限法案の適当なところにこの内容を挿入する、手続的にはそういう形で提案をされ、採択されたものであるというふうに承知をいたしております。  そういう形で採択されました国務省予算権限法案が、今度は下院との関係等におきましてどういうふうに最終的に処理されるかということにつきましては、私どもまだ情報を得ておりませんので、今後どういうことになるかということについては、ちょっと現段階ではわからないということでございます。
  10. 土井たか子

    土井委員 そうすると、法に対する修正という形でこれは決議されたわけですから、法の一部をなすということになるわけなんですね。それをまず前置きとして確かめさせていただきました。  外務大臣、この中身については先刻御承知のとおりでありますが、これは日本に対して内政干渉にわたる中身とまずお考えになりませんか、いかがでございますか。
  11. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカ議会はいろいろな形で、日本だけではなくて各国に対してそういういろいろの趣旨の要請をしておりますし、日本に対しても防衛努力を促すいろいろな決議とか、今出ましたような形の要請をしておりますから、私は、これはアメリカ議会一つ意思表明であろうと思いますけれども、しかし日本自衛については、日本自身が基本的に自主的に決めるものでございますから、アメリカ要請要請として受けとめるわけですけれども、これに拘束されるという立場では私はない。ですから、アメリカ議会一つの期待の表明だ、こういうふうにとっています。
  12. 土井たか子

    土井委員 議会表明にとどまると大臣はおっしゃいますけれども、だから先ほど私は質問したのです。法の一部になると、それを立法するのは議会ですけれどもアメリカの国を拘束するんですよ。国の政治を拘束するんですよ、法は。アメリカ国内法ですから。したがって、議会意思であって、向こう向こう、こっちはこっちということで、関知せずということで知らぬ顔して済む問題ではどうもなさそうでございます。外務大臣とされては、今の御答弁を承っておりますと、アメリカ上院決議というのは、いわばアメリカ議員のガス抜きみたいなものであって、日本側は一切これに対して関知せずということなんですか、無視するということなんですか、いかがでございますか。
  13. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本防衛については日本自身が決めることですから、アメリカ議会がどういう決議をするとしても、それが政府に対してどういう拘束力があるか、私自身アメリカ議会の今の授権法審議に当たる、付加された議決の内容がどういう拘束力を持つものか知りませんけれども、しかし、アメリカ政府日本に対してそういう要請はしても、日本自身防衛に対して介入するということはできないわけですから、これによって日本防衛の自主的な努力が拘束されることはない、こういうふうに思っております。
  14. 土井たか子

    土井委員 しかし、こういうことがアメリカ国内法という形で決められていくということに対しては、やはりこれは黙っているというのもおかしな話だと私は思うんですね。今後アメリカがいろいろ行政サイドにおいても、一たんできました法律に対しては、この法律がこのとおりになるかどうかはまだわかりませんけれども、しかし上院段階においては、こういう修正内容とした法律を立法するという格好になることは明々白々でありまして、こういうことに対して黙って、何も関係ない、私たちは私たちなんだ、どうぞ御勝手におやりくださいで済む問題ではどうもなさそうに思います。  大臣、ちょっとお尋ねしますけれどもシーレーン防衛というのは公約なのでございますか、いかがでございますか。
  15. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 公約というものではない、一国の総理意図表明ということで、それなり重みはある、こういうふうに解釈しております。
  16. 土井たか子

    土井委員 それなり重みはあるけれども公約ではないというふうに大臣は今おっしゃいましたが、今回のこの「アメンドメント」の中身を見ますと、これは非常にいわく微妙な書き方がしてあるんですね。「ザ センス オブ ザ コングレス」と書いてありますから、これをアメリカの国として、あるいは政府として、公式の見解とか意見とか判断とかいうふうなことに置きかえて考えるということは難しいかもしれませんが、しかし、法律の中の一部を形成するアメンドメントの中にこれは書かれている問題ですから、先ほど来言うように、非常に意味は重大であるということを言わなければならないと思うのです。  それで、ここにありますシーレーンに関する部分、特に外務省の方ではもちろんお手持ちでいらっしゃるそのアメンドメント中身を見てまいりますと、これは項目は分かれておりますが、大きく(a)について八項目あり、(b)に対してさらに続いて書かれていっている、その(b)の項目の始まりの部分からずっと読んでいかれて、これはシーレーン防衛について公約であるというふうに、読んでみると認識できる表現である、こう思われますが、その点はどのように外務省としては受けとめられていますか。
  17. 栗山尚一

    栗山政府委員 委員指摘の点は、(b)の冒頭におきまして、日本総理大臣が一九八一年五月に宣明した国の政策ということで、シーレーン防衛のことに言及をしているくだりを御指摘になられたものであろうというふうに思いますが、この点につきましては、従来から鈴木総理が、ナショナルプレスクラブであったと思いますが、ここで言われたいわゆる千海里の航路帯防衛の問題については、従来から日本政府がそういうことを防衛力整備一つ目標として掲げて、そういう方向に向かって防衛力整備を行っておるという、そのことをナショナルプレスクラブにおいて改めて触れられたということでありまして、従来何もなかったところを新たにアメリカ政府に対して、あるいはアメリカ議会その他アメリカ一般に対して公約をしたという性格のものではないということは、当時から累次、当時の鈴木総理を初めといたしまして、政府の方から御説明申し上げておるところだろうというふうに思います。
  18. 土井たか子

    土井委員 今の局長の御答弁というのは経緯についての御答弁でございまして、ここに書いてある文意についてこれは何らさわっていらっしゃらない、その御答弁は。私はやはり見てまいりますと、今外務大臣は、公約というわけにはいかないという御答弁でありました。以前は、公約ではございませんと、非常にきっぱり幾たびとなく国会で鈴木総理自身は当時御答弁になりましたし、また、私自身が今手持ちの当外務委員会における五十七年三月十九日の会議録を見ましても、当時の淺尾局長はここで「昨年鈴木総理が訪米されまして、その後でナショナルプレスクラブで記者の質問に応じて、日本としては憲法の範囲内で、周辺数百海里、航路帯にする場合は約千海里を防衛範囲として努力していくということでございまして、公約ではございません。」ときっぱり言われています。  それからすると、きょうの安倍外務大臣の御答弁というのは、そのきっぱりしたところがだんだんちょっと欠けてきているんですね。陰りがあるのです。何か御配慮をなさる必要があるのかなと思いながら承っていたわけですけれどもシーレーン防衛というのが公約でないのだったら、今回のこのアメンドメント中身に対しても、アメリカ側に、この表現というのはどうももう一つ適正と言うわけにはいかないという意思表示をなさる必要があると私は思うのです。リスポンシビリティー・アズ、それからずっと書いてありますよ。どういう責任なのかということが日本に対して問われる中身ですよ。  したがいまして、そういうことからすると、こういう問題に対しても、記述の上の、勝手にやったことだからと言って知らぬ顔して済ますわけにはいかないだろう、こういう認識向こうは臨んでくるということですから。具体的記述に従って日本としてはこの記述を見た限り、我々は公約をしていないならしていない、そういうことのしっかりした、はっきりした認識を持ってもらわねばならないということを向こうに申し述べるべきだと思います。外務大臣、いかがでございますか。
  19. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今北米局長が言いましたように、また私が言いましたように、約束とか公約といったものではないということはこれまでの答弁でも明らかでありますし、これはアメリカ側も十分承知しておることです。ただ、日本責任において、このシーレーン防衛については、これから努力していくということをプレスクラブにおいて言っているわけですから、日本責任という意味における日本側立場というものは、このプレスクラブ表明したわけでありまして、今さらアメリカに対して、公約であるとかないとかいうことを言う必要はない、もう既にアメリカ十分承知済みである、こういうふうに理解しております。
  20. 土井たか子

    土井委員 アメリカは既にどういうふうに承知済みなのですか。この文意を見ますと、アズ・アグリードと書いてある。あとずっと状況説明がありますよ。何によってアグリーされたか。どういうふうにアメリカ側承知しているのですか、既に日本側から説明しなくたって。約束だと承知しているんじゃないですか、この文意からすれば。
  21. 栗山尚一

    栗山政府委員 私、この決議と申しますか修正法案と申しますか内容は、余り弁護するつもりはないわけです。ただ、今御指摘の点だけについてあえて申し上げますと、前段安保条約に基づいて日本自衛力を、セルフディフェンス・リスポンシビリティーと書いてありますが、そういう自衛責任を引き受けるということになっておるということと、それからその後の千海里のシーレーン防衛の問題とは、一応別に書き分けてありまして、一般的な安保条約に基づく自衛力増強責任の問題と、それから鈴木総理が一九八一年の五月に言われたシーレーン防衛のお話と二つ書き分けて、それを実行していく関連で、以下のことが議会認識である、こういうふうになっておりまして、千海里のシーレーン防衛そのものがアグリーされたものであるというふうには書いてないということは、申し上げられるだろうと思います。
  22. 土井たか子

    土井委員 それは、英文法に従っていろいろおっしゃるけれども、これは文章を見ると、そういうふうに文意は読めないですよ、幾ら読んでも。  それはそれとして、粟山局長とその問題についていろいろやっていくという時間の方が私は惜しいです。外務大臣は、いろいろ説明しなくたってアメリカの方は承知していると先ほどおっしゃったのです。何をどのようにアメリカ側承知しているのですか。
  23. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、鈴木総理ナショナルプレスクラブにおける演説ですから、その点については、アメリカ側も十分鈴木総理意図表明について承知しておるということであって、千海里防衛いわゆるシーレーン防衛について、アメリカ側との間で約束をしたりあるいは公約をして鈴木総理がそこで発表したものではないということについて、アメリカ側も十分承知している、こういうふうに言っているわけです。
  24. 土井たか子

    土井委員 鈴木総理自身はそうでしょう。また、日本側認識もそうでしょう。そして、今外務大臣は、アメリカ側もそのように認識しているというお答えでしょう。ただいまはいかがですか。アメリカ側は、日本側とこのシーレーンの問題に対して、約束になっているというふうに理解しているかどうか。
  25. 栗山尚一

    栗山政府委員 シーレーン防衛の問題につきましては、防衛庁におきましても、それから私どもにおきましても、累次、誤解のないようにアメリカ側には話をしておりまして、国務省国防省当局は、この日本シーレーン防衛というものが日本自衛力整備一つ整備目標である、しかも、それを何年までに航路帯を設ければ千海里というところまで十分な防衛ができるという、そういう状況を達成するということをアメリカに対して約束をしておったり、コミットしたりしているという性格のものではないということは、十分承知しておるわけでございます。  それから議会に対しましても、私ども日本防衛力整備の方針あるいは日本の基本的な防衛政策がどういうものであるかということにつきまして、アメリカ議会ができるだけ正しい理解をしてもらうように、あらゆる機会をとらえて説明をしておるところでございまして、その点につきましては、もちろん議会のことでございますのでいろいろまだ十分理解が得られてないという面があろうかと思いますが、少なくともアメリカ行政府自身につきましては、日本のいわゆる千海里シーレーン防衛というものの性格がどういうものであるかということについては、正確に理解してもらっておるというふうに考えております。
  26. 土井たか子

    土井委員 議会の問題ですから、議会人としてお互い議会人同士誤解のないように、正確に事実を理解する方向での努力をするためには、我々もそれは問われている努力であると思います。アメリカ議員に対して問いかけていく、ただすという努力は問われていると思いますけれども、今御答弁にあるように、議会側に対してはこういう理解不足というのがある向きを答弁の中で出されました。そうすると、理解不足であるとか誤解があった場合、外務省としては黙っていらっしゃるのですか。やはりそういう理解不足誤解というのは解いていく、事実を事実として認識する、正しく認識させていくということは、どっちにとっても大事なんです。  今の御答弁からすると、外務省としてもその御努力をこれは払わなければ、外務省としての立場というのは正確に向こう理解をしてもらうということにならないと私は思うのですがね。外務大臣、どうですか。これはやはり、努力は必要ですよ、こういうことを私は見でおりますと。これは、このまま黙っているわけにいかない中身ですよ、読めば読むほど。外務大臣、いかがです。
  27. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは私も、加藤防衛庁長官にこの問題でちょっと話を聞いたのですけれども、ワインバーガー長官も、こうした議決ですかが行われるということを全く知らなかったということを言っておるようでありますし、どういう経緯で議会の中で突然行われたのか、その辺のところは詳細にはわかりませんが、アメリカ政府としましても、日本との関係につきまして、先ほどから北米局長が言ったようなことについて正確な認識を持っておりますから、まだこの法律が成立するということになっておるわけではございませんし、そういう状況の中で正確な日米間の防衛に関する認識議会側に伝えてもらわなければならぬと思っておりますし、またそういう努力は恐らくするのじゃないだろうか、こういうふうに思っております。  ただ、日本政府がストレートにアメリカ議会に対してそういうことを言うかどうかということについては、議会のことですからこれは検討しなければならぬと思いますが、いずれにしましても、私もこの日本議会を通じまして、今申し上げましたように日本アメリカとの、特にシーレーンの問題については決して約束しているわけではない、公約ではないということを明確に言っておるわけですから、その限りにおいては日本立場は明らかになっておる、こういうふうに思います。
  28. 土井たか子

    土井委員 シーレーンの問題については、アメリカとの約束ではないということを今までも言ってきているし、これからも外務大臣としては、その旨をはっきりさせていく御努力を払われるであろうという今の御発言です。  ところで、そうすると今度は、加藤防衛庁長官がアメリカに行かれましてワインバーガー長官との間での会談で、新聞で伝えられるところによりますと、五九中業内容について話し合われたということが伝えられております。その中に、シーレーンの洋上防空能力を強化するためにいろいろ措置が考えられるのでしょうが、おおよそ出ているのは大きな三つの問題でありますが、そのうちの一つに、超長距離用のOTHレーダーの導入の方針をお互いが合意したというふうなことが書かれているのです。このOTHレーダーについて導入するというのは、これは公約なんですか、公約と受けとめていいのですか。これは、はっきりしておいていただかないと、シーレーンのような問題だって、約束約束でないか、公約公約でないか、ずっと国会の中でも問題になりながら、ずるずる怪しげな問題の方向になってきております。このOTHレーダーは、いかがです、公約ですか。
  29. 栗山尚一

    栗山政府委員 OTHレーダーにつきましては、私ども承知しておりますところでは、今回の加藤長官の訪米に際して、導入について合意をしたというようなことは全くございませんで、このOTHレーダーにつきまして今後引き続き検討をしていく、それに関連して必要な資料をアメリカ側から提供してほしいということを加藤長官から要望された、そういう段階であるというふうに承知をしております。
  30. 土井たか子

    土井委員 このOTHレーダーの導入について、引き続き検討していこうというのが公約ですか。
  31. 栗山尚一

    栗山政府委員 別に公約というようなことではないと思います。要するに防衛当局の方において、このレーダーが日本防衛力整備との関連において、果たして導入する価値があるものかどうかということについてなおよく検討する必要がある、したがってアメリカ側から必要な情報提供を受けたい、そういう性格の話であるというふうに理解をいたしております。
  32. 土井たか子

    土井委員 しかし、それは引き続き話を進めていこうということでのお互いの合意でしょう。これは、やはり約束事というふうに考えてよかろうと思われますが、外務大臣、どのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  33. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も内容をよく承知しておりませんが、検討するということですから、検討するということが約束になりますかどうですか、検討してイエスの場合もあるし、ノーの場合もあるのじゃないかと思います。
  34. 土井たか子

    土井委員 そうすると、イエスもあるしまたノーもある、まだその結論に到達していない、検討することを約束して、検討の結果については検討した後に結論を得るという段階である、このように理解をすることが正しい理解なんですか、どうなんですか。
  35. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 そのとおりであります。
  36. 土井たか子

    土井委員 そうすると、政府間のそういう話し合いについては何らかこれから検討していこう、それはそうですねというふうな話し合いというふうに今御答弁なんですが、議会の方は非常にきっぱりと、しかも性急ですね、先ほどのアメンドメントの物の言い方というのは、見ておりますと。例えば、五九中業と言われる中身について日本ではどういうふうに呼んでいるのですか。日本の五九中業に対して、防衛白書なんかも恐らく英訳されていると思いますが、どういうふうに、ディフェンス・プランと呼んでいるのですか。
  37. 栗山尚一

    栗山政府委員 中期業務見積もりにつきましては、ミッド・ターム・エスティメートというふうに呼んでおります。国防省当局もそういう言葉を使っております。
  38. 土井たか子

    土井委員 ところが、今回のこのアメンドメントを見ると、そういう表現になっていないのですね。ミッド・ターム・ディフェンス・プランとちゃんと書いてありますよ。プランというのとエスティメートは中身は違うでしょう、英語で言うと。私は英語はよくわからないけれども、恐らく違うと思いますよ。大変に違うのじゃないかと思う。わざわざエスティメートと言うのは意味があるのじゃないですか、日本で。いかがでございますか、局長
  39. 栗山尚一

    栗山政府委員 中期業務見積もりにつきましては、従来から、日本の制度、政策というものを必ずしも十分理解してない向きにおきましては、委員指摘のように、今回の上院決議にプランという言葉を使っておりますが、プランでありますとかプログラムでありますとか、日本語で言いますと計画というような言葉に置きかえられるような性格のものとして受け取る向きがございます。それに対しまして私どもは、従来から、中期業務見積もりというものは必ずしもそういう性格のものではないんだ、これは防衛庁が「防衛計画の大綱」に従って防衛力整備を行っていく上での一つ防衛庁の見積もり資料であって、それによって例えば予算が拘束されるとかそういう性格のものではないということを、機会あるごとに説明をしておるわけでございます。  行政府当局は、その点はきちんと理解をしておりますが、議会でありますとかアメリカのマスコミ等におきまして、必ずしもそういう中期業務見積もりの性格について正確に理解をしておらない場合があるということも、これまた事実でございます。そういう誤解が生じませんように、大使館等におきまして従来からも努力をしておりますが、今後とも努力を続けてまいりたい、こういうふうに考えております。
  40. 土井たか子

    土井委員 これは、プランなのかエスティメートなのかという表現の上の問題ではございませんで、認識上の違いがあるということが、はしなくもこういう表現の上にあらわれていると言わざるを得ないのです。そうすると外務大臣、これは勝手におやりになった決議で、その決議というのもここに書いてあるとおりアメンドメントなんですけれども法律の一部にこれは修正として入る、それはアメリカのことであって、日本日本で独自にやればそれはいいことであるというふうに済まして終わらせてしまう問題じゃどうもなさそうですよ。これは今後の問題ですからね。必ず向こう認識はこういう認識で迫ってきますよ。五九中業に対して、中身を具体的にプランとして厚かましく指示しているんですからね。これは黙っているわけにいかないと思うのですが、外務大臣いかがですか。
  41. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かにいろいろと問題はあるようでありますし、アメリカ議員認識といいますか、そういう点に誤りがある、間違っておる、こういうことになれば、これはやはり今後の日米関係を考えるとき、その認識を正していかなければならぬ、そういうように思いますし、アメリカ政府政府なりの対応をすると思いますが、日本としましても、直接現地の大使館等で大使を初めとして議員等に接触をしておるわけでございますから、その接触の中で、今後とも今ここで指摘されましたような問題点について日本側の正確な意図を、あるいは日米の政府間での正確な認識をこれらの議員の人に伝えるように、アメリカの大使館を通じて努力さしたいと思います。
  42. 土井たか子

    土井委員 そのことは、外務大臣として指示なさいますね。
  43. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、やはり指示しなければならぬと思っています。
  44. 土井たか子

    土井委員 そこで、具体的中身については、さらに回を改めてお聞きしていかなければならないことに恐らくこれからどんどんなっていくと思いますが、私は今回のこのアメンドメントを見ておりまして、「防衛計画の大綱」を正式に再検討するという問題であるとか、五九中業を発展——日本側は、一応五年計画ということを見積もっているわけですが、それを実行する中で、アメリカ側の負担が年に二〇%ずつ減少をするような十分な財政措置を講ずるとか、これは一体どういう意味なんでございますか。  さっきもちょっと御説明のような、御説明でないような、御説明らしきものがあったわけですが、アメリカの負担を二〇%ずつ減らしていくということになると、五九中業も五年計画ということを少なくとも日本としては考えているわけですから、五年かかったら二〇%ずつでついにはゼロになるわけですよ、年ごとに二〇%ずつ減らしていけば。一体、これは何をどうしようというふうに考えていると外務省としては受けとめていらっしゃいますか。
  45. 栗山尚一

    栗山政府委員 御指摘の(b)の(2)項につきましては、これはまた相当粗っぽい議論であろうとは思いますが、一応書いてあることをそのまま理解いたしますと、要するに議会認識として、あるいはこの修正案を起草した人の認識として、日本継戦能力が相当不足している、その継戦能力の不足を便宜上一〇〇といたしますと、五九中業実施していく過程において、五九中業が五年計画であるという前提がそこにあるわけでございますが、五年間でその一〇〇の継戦能力の不足をカバーするだけの予算上の手当てをしてほしい、したがいましてその一〇〇を五で割れば、年間二〇%ずつ継戦能力の水準が上がるような予算上の手当てをすべきである、これが議会認識であるということが、この法案を起草した人の認識であろうというふうに思います。
  46. 土井たか子

    土井委員 今お答えの、これを考えた人の立場というのはアメリカ側立場ですから、したがってアメリカが負担している中身について、年二〇%ずつ減少するような財政措置を問題にされているということは、言うまでもないわけですね。違うのですか。いかがなんですか、これは。
  47. 栗山尚一

    栗山政府委員 私は、起草者の意図を余り推測する立場にないわけでございますが、ここに書いてありますことは、(b)の(2)項に関する限りは別に肩がわりを求めておるということではなくて、先ほど申し上げましたように、一般的に日本自衛隊が弾薬の備蓄等継戦能力が不足しておるから、その継戦能力を今後五九中業実施していく過程において段階的に強化してほしい、そうすれば観念的に申し上げれば年に二〇%ずつ継戦能力を上げていけば、五年たてば一応必要な継戦能力の水準に達するであろう、ここに何もそういうことは書いてございませんが、一例をもって申し上げますと、例えば弾薬の備蓄が一月分必要であるということであれば、毎年二〇%ずつ弾薬の備蓄水準を上げていけば、五年後にはその一月分の備蓄を達成することになるであろう、これは一つの例として私申し上げたわけでありますが、そういう考え方であろうというふうに推察いたします。
  48. 土井たか子

    土井委員 そうすると、これは要らぬお世話と言いたいような中身ですね。アメリカに、いろいろとやかく言われる筋合いの中身じゃなさそうですね。今おっしゃった継戦能力云々の問題というのは、どこまでも日本日本のことを考える問題であろうと私は思います。したがって、そういうことからすれば、弾薬の備蓄がどれほど必要であるか、兵員の増強がどれほど必要であるか、ひいてはそういうことで防衛費をどのように考えていくかという問題は、本来どこまでいっても日本独自の問題です。  しかし、今の局長のお答えというのはどうもおかしいので、なぜおかしいかといったら、二〇%ずつ負担を減少するような財政措置を講じると言っている、今おっしゃっていることと矛盾するからであります。継戦能力を充実させようとすると、むしろ二〇%ふやせということが理にかなうわけでありまして、ここは減少させるように努力してもらいたいと言っているのですよ。
  49. 栗山尚一

    栗山政府委員 土井先生は英語を非常によく理解されるので、私から申し上げるのは大変申しわけないのですが、そこの点は誤解だろうと思います。そこに書いておりますのは、継戦能力、弾薬の備蓄、それからロジスティック及び継戦能力のショートフォール、すなわち不足をレデュースするように毎年十分な予算措置を講じていけ、こういうことが書いてあるわけでございまして、すなわち前提になっているのは継戦能力にショートフォールがある、そのショートフォールを減少させるために、すなわち私さっき申し上げましたような言い方で申し上げれば継戦能力強化する、そういうために十分な予算措置を講じていけ、こういうふうに書いてあるんだろうというふうに私は理解しております。
  50. 土井たか子

    土井委員 そうなってくると、いよいよこれは外務大臣、ちょっとこんなことまで言われる必要はないという話になってきやしませんか。いかがでございますか。
  51. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろん、そんなことを言われる必要はないと私も思います。私もアメリカとの関係で、貿易摩擦の問題でもよくあるのですが、アメリカ議会は随分何か日本に対して誤解、それから理解の足らないところもあります。そういう意味では、随分粗っぽい議論をするものだなという感じもしばしば持っておるわけであります。しかし、現地でも日本の大使とかいろいろ努力して、説得とか理解を深めるように努めておるのですが、一たん思い込んだらそういう考え方をなかなか捨てないという傾向もありまして、そういう点が貿易摩擦だけでなくてこの防衛問題についても、そうした今の議決というような形になってあらわれたのだろうと思います。ですから、中身は先ほどから北米局長が言いましたように随分粗っぽいものであるようにも思いますし、これは日本政府としましても、できるだけアメリカ議員の正確な理解を深めるようにこれからも努力していかなければならない問題だと思いますが、中身についてはそれはまさに要らざる日本に対しての問題提起であろう、こういうふうに思います。     〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席〕
  52. 土井たか子

    土井委員 このことについては、要らざることを中身に披瀝されているという点も外務大臣としては御認識ですから、先ほど外務大臣が御答弁されたとおり、さらにこのことを正確に理解を求める方向日本としても黙っていないで対応を進める、そういうことを私もここではっきり確認をさせていただいて、さて経済援助の問題に移りたいと思うのです。  第二次中期目標がODAの五年倍増計画としてございまして、もうことしで終わりで、そして来年度から第三次中期目標中身が決められて始まるわけでありますが、この第三次中期目標に対しての見通しはどのように考えたらよろしゅうございますか。
  53. 木幡昭七

    ○木幡説明員 第三次中期目標につきましては、今関係方面とその内容等についてどのような内容にすべきか鋭意打ち合わせている、こういう現状でございます。ただ、第三次中期目標をつくるということにつきましては、既に政府部内で意見の一致を見ていることは先生の御案内のとおりでございます。したがいまして、いろいろな事情を勘案しながらも、できるだけ国際的にアピールするような内容をどういうふうにしてつくっていくか、その辺、財政事情等をも勘案しながらもそういう配慮で今鋭意努力している、こういうことでございます。
  54. 土井たか子

    土井委員 ODAの問題は、日本の置かれております立場、特に国際的に平和同家として貢献していくというふうな側面からすると非常に大切な分野であります。これはもう申し上げるまでもないことでありますけれども、今までのODAの倍増の問題に対して、これからの第三次についても緩めずにやっていくという御所信を外務大臣としてはお持ちなのでありますか、いかがでありますか。
  55. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 実はこの点につきましては、OECDの閣僚理事会及びボン・サミットにおきまして、一九八六年以降も新たな中期目標を設定し引き続きODAの着実な拡充に努める、その際、無償資金協力及び技術協力を拡充するとともに、国際開発金融機関に対する出資等の要請に対し積極的に対応する等により、あわせて質の面でも可能な限りの改善に努める、こういう方針を発表いたしまして、各国から積極的な評価を受けたわけでございます。これは、いわば日本として国際的に約束をしたことでございますし、日本の平和国家の理念からいたしましても、今日の世界情勢から見ましても極めて重要な分野であろうと思いますし、この中期目標についてはできるだけ早く決定をしたい。今、財政当局とそういう面で折衝もしておるわけでございますが、この第二期の中期計画の達成状況とかそういうものも見ながらこれは早く決めなければならない、こういうふうに思っております。
  56. 土井たか子

    土井委員 御所信のほどは今承りましたけれども、財政当局の方の財布のひもが大分かたいようであります。恐らくはそういうことのただいまの御所信を具体的に実行なさるのには、かなりの努力が問われてくると思うのですが、これは相当の決意を持って臨まれないと、御所信のとおりにはなっていかないのではないかなと私たちは思っております。  さて、今まで大変な努力の結果、倍増ということを計画として立てて、年を追って努力の積み重ねというのがそれなりにあったわけですが、しかし、一方で、援助の額ではなく質を見てまいりますと、質を示すグラントエレメント、これは贈与の比率などから算出をするらしゅうございますが、八三年の支出を見ますと、日本は援助先進国十七カ国の中では、十六位ぐらいなところをうろうろしているような格好であります。やはり、中身について問いただされていくことが大事であるというのを、これは明確に指摘していると申し上げていいのですが、例えば対アフリカの援助について見てまいりますと、これは大変な飢饉であって、毛布や一時しのぎのいろいろな対策をこぞって協力してやっていこうというふうな運動も展開されております。  それは非常に大事だと私は思うのですが、特に外務省では飢餓ランチというのを提唱されて、アフリカに大きく目を向けるという国民に対しての機運を盛り上げられたという方もいらっしゃいますから、それは大変評価をされるべきだと私は思うのですけれども、しかし、そういうことだけではなくて、基本的に、あすに向かって具体的な対策が細めるという援助のあり方が考えられなければならないのではないかと私は思うのです。そういうことからしますと、アフリカを重視する経済援助のあり方について、外務大臣はどういうふうなことをお考えになっていらっしゃるか、あらましをまず承りたいと思いますが、いかがですか。
  57. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アフリカに対しましては、実は私も去年アフリカに参りまして、アフリカ援助というものを痛感をいたしたわけでありまして、政府の追加的な援助も支出をいたしましたし、国民に協力も求めてまいりました。非常な協力を得たことに対して、心から感謝をいたしておるわけでございますが、このアフリカ援助は短期的なものでなくて、今後とも長期にわたっての援助を継続して、増大して行っていかなければならないというのが基本的な考えでございます。  そういう意味で、例えば本年度のアフリカ援助については、緊急性の高い食糧援助及び食糧の貯蔵、輸送手段に対する援助に加えまして、アフリカの農業開発、食糧増産体制確立に資するため、無償資金協力及び技術協力をあわせた二国間贈与として、総額約六百億円を目指すこととしております。また、円借款につきましても、世銀等国際開発金融機関等々の協調に留意しながら、一億ドルを目途として弾力的に対応したいと考えております。さらに、最近対アフリカ支援を強化している国連開発計画等関係国際機関に対しても、前年度比七%程度の増額を自発的に拠出したい、こういうふうに考えております。
  58. 土井たか子

    土井委員 外務省の方から六月十八日付で出されている「対アフリカ援助実績」というのを見てまいりますと、これは有償資金協力というのが八三年から八四年にかけてがっくりと落ちているのですね。大変落ち込んでいるのです。贈与の無償資金協力というのは、八三年から八四年少しふえていっておりますけれども、両者とも含めて、有償なんかの場合は特に低利にして、利子補給の手だてを講ずるという必要があるのじゃないかなという気がいたします。  というのは、援助を約束しながら、相手国が負担する資金不足のために実際問題支出がおくれていくというふうなことが、事実、ここの額に書いてある中身として引き続き起こってくる。したがって、こういうことも今後、どんどん減ることはないであろうということも予想されますから、有償を低利にして、利子補給ということに対しても手だてを講じていくという措置が問われていると、再度申し上げますけれども、思われますが、いかがでございますか。
  59. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アフリカ、特にサハラ以南のアフリカ諸国に対しましては、各国ともやはりそれらの国の現状から見まして、主として無償資金が中心になっておるようであります。支払い能力というようなことを考えますと、基本的にはやはり無償というのを大きな柱にすべきじゃないかと思っておりますが、日本の幅の広い今の援助政策からしまして、ここに無償をすべて集中するというわけにもまいりませんので、有償資金、有償援助もあわせて行わざるを得ないと思うわけですが、やはり相当無償に重点を置く必要があると思います。  それから有償につきましては、もう既に金利もいわば利子補給というような形で低く抑えておるわけですが、相手国の立場というものを踏まえながらさらにもっと低利的なものにするのが、アフリカに対する真の援助につながっていくのじゃないか、こういうふうに考えておりますけれども、こうした問題等もあわせてこれから、やはり財政等の問題もありますし、日本も、質もよくしなければならぬけれども量全体もふやしていかなければならぬという立場もございますから、そういうこともいろいろと踏まえながら、とにかく前向きに無償を増額していく、あるいは有償についても低利で有償という形に向かって努力をしていきたい、こういうふうに思います。
  60. 土井たか子

    土井委員 フィリピンについてお尋ねをしますが、商品借款の消化率はどれくらいになっているのですか。
  61. 木幡昭七

    ○木幡説明員 今、正確な数字、何十何%までは、後ほど調べてお答え申し上げますが、二、三〇%程度と存じます。
  62. 土井たか子

    土井委員 非常に低いのですよね、これ。それだけの条件が向こうにないということだろうと思うのです。こういうことなんかを考えてまいりますと、これはいかがなんですか、アジアに対して二国間援助の率というのを見てまいりますと、大体七割近いでしょう。これは、七割ということの前提でODAは考えられていますからね。アフリカはいかがです、二国間援助の率というのは。
  63. 木幡昭七

    ○木幡説明員 年によって違いますが、全体としましては一一・八%ぐらいでございます。
  64. 土井たか子

    土井委員 一一・八%。日本もアジアの一国でございますから、アジア重視で臨むということは大事だと思いますけれども、しかし、計上したけれどもそれに対しての消化率が非常に悪いという問題に対して、それは仕方がないで済む問題でもどうもなさそうです。それをこっちに回せばいいのにという方向にどんどん回していくということが、やはり考えられていいのではないか。したがって、特にフィリピンの場合なんかは消化率が非常に低いわけですから、そういうことからすれば、計上されているその部分をアンタイドな形でもって考えることも必要ですけれども、アフリカ等々の方に振り向けていくということも一つの大事なあり方であると思われますけれども外務大臣はどうお考えになりますか。
  65. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 商品借款の場合、確かにフィリピンにおいては低いわけですが、聞いてみますとただフィリピンだけではないようです。ほかの国でも初めのうちの消化率は低い、しかし、最終的には達成しているという状況にあるわけですから、今これをよその国に切りかえるということはちょっと困難じゃないかと思っております。  商品借款等について達成率が低いというのは、フィリピン援助についてはこの議会でもいろいろと問題になりましたし、私も、これは注意深くきちんとした形で行われなければならないということを厳重に指示にいたしました結果、そういう中で具体的な案件等についての審査その他で、相当おくれておるという点もあるのではないかと私は思っております。やはり商品援助といえども大事な援助でございますから、非常に注意深くやっていかなければならぬということでございますが、もう少し様子を見て、フィリピンがどの程度達成できるのか、見通しは早く立てたいと思っております。
  66. 土井たか子

    土井委員 第三次のODAの計画を組まれる場合にも、今考えられております基本的な策定計画というのは、アジアに対して十のうち七くらいを充てるということであったはずでありますが、相変わらずそういう認識でお臨みになりますか。その辺は、策定の段階で考え直していく必要もあるであろうとお考えなんですか。これは大まかなことを聞くようでありますけれども、政治問題ですからちょっと大臣の方から……。
  67. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 やはりアジアは重要ですし、大体七割ということでやってきております。その中でASEANは大体三割というふうなことになっておりまして、基本的な一つの大きな枠を変えることは考えておりませんけれども、しかし国際情勢も流動しておりますし、特にアフリカというような深刻な地域等が生まれておりますから、そして日本には援助の枠はあるわけでございますから、大きく変更することは困難だとしても、ある意味においては弾力的に考える必要があると思います。
  68. 土井たか子

    土井委員 いずれにしても、これは今度は財政当局との交渉にかかっていくわけでありましょうが、かなり難航が予想されます。外務大臣としては、どんなことがあっても、我が国にとって国際社会に生きていく道につながる大切な問題であるということを御認識になって、その問題に当たられると思いますが、いかがですか。
  69. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まさにそのとおりでありまして、非常な決意を持ってこの中期目標の策定に向かって努力を続けておるわけであります。
  70. 土井たか子

    土井委員 そしてその中で、アンタイドな形で低利で長期にわたる裏づけの援助というものも考えていきたいというお気持ちももちろんお持ちになっていらっしゃると思いますが、これも努力していくという決意でいらっしゃいますね。
  71. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この点につきましては、OECD等でもいろいろと議論も出ておりますし、最近の状況等も判断をしますと日本の援助というのが、今後ともできるだけアンタイドという方向を目指してやっていかなければならぬのじゃないかなという感じは持っておるわけであります。
  72. 土井たか子

    土井委員 その感じとおっしゃっているところが、具体的になるときに大抵おっしゃっていることの中身がだんだん違ってくるので困るので、そっちの方向努力の積み重ねをこの節、私どもとして提唱したいと思います。  さて、またテーマが違うわけでありますが、武器輸出問題です。  最近、私は新聞を見ておりまして一つの驚きだったのですが、それは何かというと、中立国であるスウェーデンが、法律では交戦国への武器輸出を禁じているわけでありますけれども、それにもかかわりませず、イランに対して弾薬を輸出していたという事実が報道されていたことであります。中身を見ていきますと、中東へ地対空ミサイルを輸出した疑いがあるというようなことも記事の中に出てくるわけでありますけれども、どうもこういう中立国までも含めて武器輸出というのがふえていっている、武器輸出競争が世界に拡散し蔓延する傾向がどんどん強められていっている、こういうことに対して外務大臣はどのようにごらんになりますか。
  73. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も今回スウェーデンに行きまして、いろいろと首脳部の方たちとも懇談をいたしましたし、あるいはスウェーデンの実態等も聞いてきたわけです。あそこは自衛中立の立場をとっておりますが、スウェーデン自体の軍事力の強化には相当熱心でありますし、非常に優秀な武器を自分の力で製造していて、これが各国との競争で外にも出ておるということも聞いたわけでございます。  全体として見て、こうした武器の輸出競争がどんどんエスカレートすることは、地域紛争をさらに拡大する、またさらに深刻なものにするということで、決して好ましいことではないと思います。そういう中で日本が、平和国家として今の武器輸出についての三原則という原則を持っておるということは、日本が世界平和に貢献していくためこれからいろいろと努力していく上において、日本は非常に大きな発言力を持った立場に立っておるということを私は痛感しておるわけでございます。
  74. 土井たか子

    土井委員 今の大臣の御認識とは別に、国際収支の改善のための非常に手っ取り早い方法として、この武器輸出輸入政策というのが一つあるのです。  最近、これも報道によりますと、中曽根総理が首相官邸で政財界人で構成する日仏クラブメンバーの方々と懇談されたときに、フランス側から武器について買ってもらえる可能性がありますかというような質問があったのに対して、それは性能次第という条件つきでフランス製軍用ヘリコプター購入の可能性があることを示されたという記事が載っております。こういうことを外務大臣ももちろん御存じだと思いますが、外務大臣としてはどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  75. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も、フランスとかヨーロッパの諸国に参りますと、フランスだけではないですが、イギリスにおいてもそうですが、日本に対して優秀な武器を売りたいとしばしば要請されるわけであります。日本としても、日本自衛力を保持するという立場から優秀な武器はもちろん買っておるわけで、ただアメリカだけではなくてその他の国々からも買っておるわけで、この点につきましては、日本日本自身自衛立場からの必要な武器については購入していかなければならない、優秀な兵器については限られた範囲で購入していかなければならぬことはもう当然のことだ、こういうふうに思います。
  76. 土井たか子

    土井委員 しかし、貿易不均衡を解消することのためには、最も手っ取り早いのは兵器の購入なんですよね。消費物資、これは総理も一生懸命に百ドルを国民に宣伝して、家庭の主婦が家計についての切りかえをそのために迫られるような格好になっても、どうも買う品物は余りありません。これはやはり、消費物資よりも手っ取り早いのは兵器という格好になっていくのです。安易にこの問題を考えると、大変なことになると私自身は思っております。必要とあらば、性能がよければ武器も購入していいじゃないかという安易な気持ちのために、貿易摩擦の解消というのは兵器の輸出輸入という、兵器購入問題にどんどん歩を移していくという気配すら最近はございますが、これは禁物だと私は思っているのですが、外務大臣、この辺に対してどう考えていらっしゃいますか。
  77. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 貿易摩擦の解消のためとかいうことだけで必要でない武器までも買うわけにはいかないし、それは日本の財政の問題だけではありません、自衛自身の問題ですから、必要な限りの武器は、これは防衛力のために、貿易摩擦は別としても購入しなければならぬと思いますけれども、そういうことでひっかけて必要でないものまで買い込むということは当然、まさに必要のないことだと思います。
  78. 土井たか子

    土井委員 その必要であるか、必要でないかという判断は、国民がするのじゃなくて政府がするという格好になりますから、ここが大変問題なんですね。一体、何によって判別の基準があるのか、一体、何によって不必要なものに対する歯どめが用意されているのか、その辺は国民の目から鮮やかにわかりません。この辺が大変不安定要素と申しますか、危険な要素としてあるということが常に問われ続けて今日に及んでいるのです。  そういうことからいたしますと、この輸入の問題もさることながら、日本立場からしますと、輸出については先ほど武器輸出三原則もこれありということを、スウェーデンの例を私が挙げたときに外務大臣はお答えになりましたが、その武器輸出三原則について国会で、アメリカに対する武器技術輸出の問題を取り上げて追及したときに、アメリカは他の国と違う事情がある、何かと言ったら日米安保条約が相互間にあって、したがってアメリカに対して他国と同じように考えるわけにはいかないという条件が一つ。それと同時に、さらに追及をいたしますと答えられていわく、いや、それに対しては大丈夫です、日米間の協議機関として武器技術共同委員会つまりJMTCが用意されるから、ここでふるいにかけられて、これに対してはしっかり一つの歯どめになるので大丈夫という、再三再四の御答弁があったのです。  このJMTCなのですが、事実会議をやっているのですか、やっていないのですか。どういうふうな機能を今発揮しているのですか。どうなんですか。
  79. 栗山尚一

    栗山政府委員 JMTCにつきましては、昨年の十一月に第一回会合を行いまして、今後具体的にアメリカ側からの要請が出てきました場合に備えて、一応委員会の体制を整えておこうという意味で会合をいたしました。その後、アメリカ側からの具体的な要請待ちということで、会合を開いておりません。
  80. 土井たか子

    土井委員 そうすると、余り熱心に会合が開かれているということでもないんですね。アメリカから言ってこないと、この会合を開く必要はないという現状でございますか。
  81. 栗山尚一

    栗山政府委員 御承知のようにこの委員会は、交換公文にも書いてございますが、現実にアメリカから武器技術についての供与の要請がありましたときに、当該具体的案件に基づきまして日米間で協議をするという機関でございますから、そういう状況に至らない限りにおいて、特に委員会を開くという何か特段の事情がない限り開くことはない、こういうふうに御理解いただいてよろしいかと思います。
  82. 土井たか子

    土井委員 それで、この武器技術供与というのが今までにございましたのですか、どうなんですか、日本からアメリカに対して。
  83. 栗山尚一

    栗山政府委員 まだございません。
  84. 土井たか子

    土井委員 つまり、ないということは、JMTCの許可を求めに来たケースがないということなんですね。そういうふうに理解していいのでしょう。
  85. 栗山尚一

    栗山政府委員 そのように御理解いただいてよろしいと思います。
  86. 土井たか子

    土井委員 JMTCの許可を求めに来たケースはないけれども、現実においては、アメリカに武器技術供与が民間の手からなされていることがあるというのがどんどん記事としてありますよ。私は、当時やはりJMTCについて質問をいろいろ展開した中で、これが果たして歯どめになり得るかどうか。大体武器そのものならだれの目にもわかりますけれども、技術となるとこれはよくわからないのです、どこからどこまでを技術というふうな範疇に入れて考えていいか。  このJMTC自身の機能という点からすると、その肝心かなめのABCのAの部分だと思いますけれども、その点がはっきりしないために、JMTCというのはいわば隠れみのみたいなものになって、トンネルみたいなものになって、それはお墨つきをもらわなくたってJMTCが置かれていることのために、そこにかけなくてどんどんどんどん、もう限りなく灰色であって、むしろ黒に近い灰色に至るまで、アメリカに対して技術が流れていくという可能性もここにありますよと。なぜか。これは、どこからどこまでを技術の範疇に置いて考えていくことができるかという、だれにもわかるような基準がないからであるということを私は申し上げたのです。  答弁なんかをこの節、見てまいりますと、答弁の中には「個別的に審査をして決めるわけでございます。決して包括的に全部野方図に通す、そういうことではございません。」という答弁がありますが、個別的に決めるとしても、それが武器技術の範疇に当たらずと言ってしまえば、これも検討する対象から外されるのじゃありませんかと言ったら、どうもあやふやな御答弁のままなのです。  現に、具体的に申しますと、シャープの電子表示装置というのが武器技術輸出として、米陸軍がこれを利用するということで採用を決めまして、そうしてこの軍事利用の技術がアメリカに輸出されるということになっているわけでありますが、これは武器技術輸出に当たらないのですか、当たるのですか。これは、れっきとした武器技術輸出だというふうに考えなければならないと思いますよ。
  87. 栗山尚一

    栗山政府委員 武器技術につきましては、御案内のように交換公文に別表がついてございまして、具体的な我が方の現行制度に基づいた武器の定義というものを掲げまして、それを専らつくるための技術ということで、日米間に明確な合意がございます。  他方、そういうものに該当しない、いわゆる汎用技術と一般的に言われておりますが、そういう汎用技術につきましては、原則として制限を課されていないということで、関係当事者の発意に基づき、かつ相互間の同意により実施される防衛分野における技術のアメリカ合衆国に対する供与は政府としては歓迎しますということは、また他方、交換公文に明記されておることでございます。政府といたしましては、そういう交換公文の内容に従いまして、アメリカ側との間の防衛分野における技術の交流を図っていく、こういうことが基本的な方針でございます。委員指摘の新聞報道につきましては、私ども、現実にアメリカ側関係企業との間にそのような話が行われているかどうかということは、承知しておりません。  しかし、いずれにいたしましても、日米間で交換公文に基づいて合意されておりますような武器技術に該当する可能性がある技術供与の問題につきましては、これは当然のことながらこの取り決めの枠内、すなわちJMTCの協議を経て、それが武器技術に該当するものであれば武器技術として扱われるということになるというのが政府の考え方でございます。
  88. 土井たか子

    土井委員 これは事前協議と同じような格好になっていくのですが、武器技術として認識するのはいずれですか。アメリカ側認識しないと、このふるいにかけるJMTCの対象にならないのですか。いかがです。
  89. 栗山尚一

    栗山政府委員 そういうことではございません。アメリカ側としては、武器技術であるかどうかわからない、こういうものについて関心がある、しかし、これが日本の定義で言う武器技術がどうかわからないという場合には、これは当然日本側の意見を求めてくる、こういうことであろうと思います。
  90. 土井たか子

    土井委員 日本から、情報があった場合に問いただすということも当然しなければならないと思いますよ。今の私が指摘いたしました電子表示装置について、アメリカ陸軍の方が利用しようとしているという実態については、そういうことをまだ外務省としては知らないということを言われましたけれども、しかし、やはりニュースとして流れているという実態については、こちらから問いただすということをするということも、これは私は必要だと思うのですね。そういう努力はされますか、されませんか、どうです。
  91. 栗山尚一

    栗山政府委員 必要があれば、アメリカ側に照会するということもあると思います。ただ、これは委員も御承知のようだ、いずれにせよ相手がなければできない話でございまして、相手というのは、すなわちそういう技術を保有している日本の民間企業ということになろうかと思いますが、そういう民間企業がアメリカ防衛分野の技術交流につきましてどういう話をしているかどうかということにつきましては、当然関係省庁、すなわち具体的には通産省ということになろうと思いますが、日本側におきまして十分、情報収集する手段方法があろうかというふうに考えております。  いずれにしましても、外務省を中心といたしまして、防衛庁、通産省とは常時密接に情報交換を行っておるところでございますので、そういう段階におきまして、日本側の国内の情報につきましては、政府として一応把握できる体制にはあるであろうというふうに考えております。
  92. 土井たか子

    土井委員 非常に回りくどいことをおっしゃるのですが、アメリカ側日本に求めている対米武器技術供与リストというのがあるでしょう。どういうものを武器技術供与として関心を持っているかというものがあると思います。これは要求してきている中身に対して、国会にひとつ、要求があった場合には提示していただきたいと言ったら、それはそうしますというふうなことに当外務委員会ではなっているのですが、現実、武器技術供与に対して関心を持っている、または期待をしているリストというのがあるのかないのか。これはいかがです。言ってきていると思いますよ、大きく新聞には記事として載っているのですから。むしろ、それがないなどとおっしゃるならば、新聞記事がこれは事実に相違した記事になるのかどうか、そういうことになってまいります。どうですか。
  93. 栗山尚一

    栗山政府委員 国防省の調査団が昨年日本に参りましていろいろ調査をいたしまして、一般的に関心を持っておる分野といたしまして、例えば光データディスクでありますとか光ファイバー関係、あるいはガリウム砒素関係、十一分野というようなことを言われておりますが、そういう関心分野があるということは私ども承知しております。しかし、その中で、具体的にいかなる技術についてアメリカが供与をしてほしいかどうかという点につきましては、まだアメリカ側から具体的な話がないというふうに聞いております。
  94. 土井たか子

    土井委員 具体的に話をしなくたって、現実の問題の方がどんどん進んでいるという可能性が非常にあるように思いますよ、今の御答弁を聞いておりますと。昨年の、今の十一分野とおっしゃるリストアップがあって以後は、全くことしに至るまでは中身に対しての変更もなければ、話し合いの中で十一分野とさっきおっしゃったことに対して、全然変わらずに今日に至っているのですか、いかがなんです。
  95. 栗山尚一

    栗山政府委員 御質問の趣旨が、十一分野の中で具体的なこういう技術を欲しいのだという意味アメリカ側からその要請がないのかという御質問であれば、そのような要請は今までない、こういうことでございます。
  96. 土井たか子

    土井委員 そうすると、五月末に日米装備・技術定期協議というのがありましたよね。そこではどんなことが話されたのですか。
  97. 栗山尚一

    栗山政府委員 これは防衛当局間の協議でございますので、私ども必ずしも詳細承知いたしませんが、いずれにいたしましても、この武器技術供与につきましてのチャネルは、交換公文で明記してございますように外交経路ということでございますし、日米間で協議をする場としてはJMTCというものが設けられておるということは、アメリカ側も十分承知をしておりますので、装備・技術の定期協議の場におきまして、具体的な技術供与について防衛当局と米側との間で話し合いがあったということはないというふうに理解をいたしております。
  98. 土井たか子

    土井委員 昨年来アメリカが関心を持っている十一分野という問題について、最近に至ってアメリカの国防総省が日本の軍事技術動向についてまとめました、日本における光電子工学とマイクロ波の技術と題する報告書の全容が発表されているのですがね。それからいたしますと、その中身を見てまいりました場合に、これはもはや十一分野ではございませんで、三十八分野に及ぶ問題がここに披瀝されているという格好になるわけですが、こういうことも全然連絡がないわけでありますか。国防総省の方が軍事技術動向についてまとめた中身なんですよ。
  99. 栗山尚一

    栗山政府委員 報告書中身、まだ公表されておりませんので、ちょっと具体的に申し上げられる段階にございませんが、いずれにいたしましても、その中でアメリカが非常に高い関心を持っておるというのは、さっき申し上げました十一である、その基本的な状況というのは変わっていないというふうに理解をいたしております。
  100. 土井たか子

    土井委員 そうすると、この十一というのを再度国会に出してください。それを出しておいていただいて、これは後に必ず大事な資料になっていくと私は思っています。  それは委員長要求をしたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  101. 浜田卓二郎

    ○浜田(卓)委員長代理 はい、理事会において……。
  102. 土井たか子

    土井委員 いや、そんなもの、この前出したのです。だから、もう一度出してください。
  103. 栗山尚一

    栗山政府委員 十一分野の現状につきまして、その公表、不公表の問題につきまして若干検討の必要があると思いますので、この場で差し上げられるかどうかということについては確約できませんけれども、そういう性格のものであればもちろん委員にお出しすることはいたします。
  104. 土井たか子

    土井委員 それはぜひ提出をしていただきたいと思うのです、国防総省の方の伝えられる報告の中身と大分ギャップがありますから。国防総省の今回まとめられた軍事技術動向についてという中身は企業名も明記されておりますし、そして分野についても十一分野ではありません、三十八分野という技術を詳しくこれは述べられていると伝えられておりますよ。したがいまして、その点は外務省認識としたら、向こう日本に対して考えておる思惑と非常にずれがある。その中でのJMTCですから、これはとんでもない、事実上もうJMTC自身が機能も何もあったものじゃないと思うのですよ。どんどんかご抜けですよ。  したがって、武器輸出の問題でいろいろと貿易摩擦の解消あるいは格差の是正などを図っていくという基本姿勢というのは間違っているということを言ったと同時に、日本としては、最初に外務大臣がおっしゃったとおり武器輸出三原則というものがあるわけですから、アメリカだけは別枠だというふうに考えられても、これが野方図になったときには、アメリカ以外の国に対してアメリカからどのような形で流れていくかわからない、そこまでは日本としてはとやかくできません。したがって、日本からの武器輸出が全世界に、極端に言えば間接的輸出になりますけれども、その方向を食いとめるわけにはいかないという問題もはらんでいる。  もちろん私どもからいたしますと、アメリカに対する武器輸出並びに武器技術輸出も許されてはならないと思っている立場であります。したがいまして、そういうことからすれば、今回もう一度この問題に対して再点検を迫られているというふうに考える。JMTCについての機能というものも、どうも最近は見ておりますと真っ黒以外、つまり限りなく黒に近い技術まで自由に横行するというふうなことに対しての、むしろお墨つきをあのとき用意してしまったのではないかというふうな懸念を非常に強く持っている、こういう格好であります。外務大臣自身のこれについての御所信を承って、私は米ソ関係の問題に移って質問を終えたいと思いますが、いかがですか。
  105. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカに対して道を開いたのは武器じゃなくて武器技術だけでありますし、これはあくまでも日米安保条約の効果的運用という立場からこの道を開いておるわけでございます。もちろん、日本の武器技術を輸出する場合においては、これまで国会でしばしば議論をされましたし、政府立場も明らかにしておりますように、日本の基本的な原則というものもあります。個々の武器技術について十分日本の自主的な判断で審査をするということになっておりますし、第三国移転等につきましても歯どめもいたしておる、こういうことでございますから、日本全体の立場としての今の武器あるいは武器技術の輸出政策、金融政策という基本は崩れていない、こういうふうに私は思っておりますし、やはりこういう考え方、基本というものは今後とも貫いていきたい、こういうふうに思います。
  106. 土井たか子

    土井委員 この問題について、今御答弁を承っておりまして確認をしておきたいのですが、富士通だけだということを今おっしゃいましたが、新しく米国防総省が出している資料によりますと民間八社の名前が明記されております。今までこういうことはなくて、これが初めてだというふうにされています。そして、この光データディスクなんかを含めまして関心技術分野が今まで十一であったのが、これも随分ふえまして、研究開発から生産段階に至るまで含めまして三十八分野というものが関心技術として指摘されておる。こういう連絡は、外務省には今までのところ全くないのですか、どうなんですか。
  107. 栗山尚一

    栗山政府委員 全く話がないかというのは、そのアメリカの国防総省の調査団の報告内容については、私ども外務省としましてもアメリカ側から話を聞いておるわけでございます。  私がないと申し上げましたのは、そこから今度は、そこで関心が表明されています十一分野の中で、具体的に特定の企業が持っているこういう技術をアメリカに供与してほしいのだ、そういう具体的な話については、私ども承知していないということを申し上げた次第でございます。
  108. 土井たか子

    土井委員 ちょっとまた、すれ違い答弁みたいになっておるのですね。今、十一分野の中身についてという答弁なんですが、そうじゃないんで、新たに今度は三十八分野ということに関心がある。そして、今までは企業名を言わなかったけれども外務大臣は富士通だけだというふうなことを今も御答弁の中でおっしゃった。それが八社というのが、今度は明確に民間企業としては名前が出ているわけですよ。だから、そういうことについて何らかアメリカ側から、いろいろな会議の席上でも結構です、文章の中身についてでも結構です、意思の通達がなかったか、あったかということを尋ねているのです。
  109. 栗山尚一

    栗山政府委員 国防総省の報告の中には、確かに具体的な企業名も上がっておるわけです。そういう形において、報告書自体の内容については、私どももちろん、国防総省から報告書内容を入手いたしまして承知をいたしております。ただ、これはまだあくまでも現段階において、アメリカ一般的な関心、こういう技術、こういう企業が持っているこういう技術について関心があるという段階にとどまっておりまして、さっきの繰り返しになりますが、そこから具体的な技術を欲しいという段階までまだなっていないというふうに、私ども理解をしておるわけでございます。アメリカ側説明がまさにそういう説明でございますので、そういうふうに理解をしておるということでございます。
  110. 土井たか子

    土井委員 そうすると、その十一分野ということを局長は先ほどからしきりに繰り返しおっしゃいましたけれども、もはや十一分野ではなくて、国防総省の関心の対象になっている三十八分野ということの中で、今後は具体的に指摘をされる問題について検討をしていくという可能性が非常にある、現段階はそこまで来ているというふうに考えてよろしゅうございますね。
  111. 栗山尚一

    栗山政府委員 私ども承知しておりますところでは、アメリカ側もそこまで詰まっておるという感じは必ずしもありません。さっき申し上げましたように、その中で特に関心があるのが十一の分野であるという言い方でございますので、まあ一般的に考えれば、具体的な話が出てくる確度が高いのがその十一の分野であろうというふうに、これは想像でございますけれども、推測の域を出ないことしか申し上げられないわけでございます。
  112. 土井たか子

    土井委員 このように、まことにかすみがかかったような問題になっていくのです、武器技術輸出というのは。知られては困るという部分が武器でございますから、秘密を常に保たなきゃならないという要件が問われる問題が武器でございますから、そういうことに関係する問題がすべてかすみがかかる、いわばそう言えるでしょうけれども、しかし、日本というのは本来平和憲法の国であり、したがって、武器輸出三原則というものがそれをもとにしてできている国であるという、この決め手を外されちゃ困るのですよ。外されちゃ元も子もないということ、これははっきりしていかなければならないと思います。したがいまして、きょうのところは、幾ら聞いてものれんに腕押しみたいなことばかりを答弁として言われますけれども、ひとつ十一分野について、特にアメリカ側が具体的に関心を持っている分野であるという意味で資料として御提示を願いまして、さらにその問題に対しては私は改めて質問をしたいと思います。  さて、最後に、アメリカとソビエトの首脳会談の可能性というのを、外務大臣も先日来少しおっしゃった機会がおありになるようでありますが、どのように見ていらっしゃいますか。
  113. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、いろいろの情報を集めた結果、私のいわば推測を交えた見通しを述べておるわけでありますが、米ソ首脳会談は行われるであろうと思います。しかし、今の状況でいけば、いろいろと報道等で伝えられておりますような国連総会前後という時期はないのではないか、もっと先になるのじゃないか、こういうふうな見通しといいますか、判断を持っておるわけでございます。
  114. 土井たか子

    土井委員 そうすると、当初いろいろと問題にされました国連出席というのは、可能性としてはまことに薄いというふうにまず考えられていいのではないだろうかと私も思いますが、ゴルバチョフ書記長の国連出席がなければ、外務大臣としては国連に赴かれるのかどうか、中曽根総理については、国連に出席される御予定をそのまま予定として推し進めていらっしゃるのかどうか、この辺はどうなんですか。
  115. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私の場合は、ゴルバチョフさんと全く無関係に参ります。中曽根総理の場合は十月の四十周年の総会、私の場合は九月の通常総会でございまして、中曽根総理の場合もまだ最終的に決まっておるわけではない、こういうふうに思います。もちろん、ゴルバチョフ氏が国連総会に出るか出ないかということまでは、私としても承知はいたしておりません。
  116. 土井たか子

    土井委員 中曽根総理が国連に赴かれるということは、ソビエトの方の書記長の出席か欠席かというふうなことに一切がかわりない、関係ないというふうに読んでいいのか、それはやはり少し考えていく要因になるというふうに考えなければならないのか、これはいずれでございますか。
  117. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 十月のいわば四十周年の記念総会ですか、これに対して中曽根総理の演説は一応ブッキングしておるわけでありますが、しかし最終的に出席かどうかということは、これは中曽根総理自身が決めるわけでありますし、また、中曽根総理自身がゴルバチョフさんとの関係でどうするかというのは御本人が判断されるわけで、まだ何とも聞いておりません。
  118. 土井たか子

    土井委員 グロムイコ外務大臣日本に来られるということについての可能性は非常に濃いということが種々伝えられてまいっておりますが、この感触の方はどうでございますか。
  119. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これもまた見通しをつける段階にないわけでありまして、これはグロムイコさんが来るべきであるというのが私どもの主張であります。そのためのいろいろな日ソ間の関係改善、来た場合の成果、実りというものがなければいけませんし、その場合のいろいろの条件整備というものを大体進めておりまして、先ほどから御承知のような文化協定も既に日本案をソ連側に提示をいたしております。まだ向こう側から反響がないわけでございますが、こうした反響等も見ながら、グロムイコさんがもし日本に来られるといってもこちらの日程もあるわけでありますし、ですから、ことしじゅうというようなことになれば、日程はもうそろそろ詰めておかなければお互いの立場がありますから困る、こういうふうに思っておりまして、この点については、文化協定等の話とも絡めてということではありませんが、文化協定に対する向こうの反応もそのうち出てきましょうし、そういう中で日ソ間の接触もあると思いますから、日程等についてもそろそろ打ち合わせをする必要があるんじゃないかな、こういうふうに考えております。
  120. 土井たか子

    土井委員 今はおぜん立ての段階でして、文化協定に対してソビエト側がどのように考えられるかということの話も詰めるということが、そのおぜん立ての一つとしてお考えの中にあるというのは今の御答弁でよくわかります。ただ、いよいよ訪日というときにどういうふうなことを議題にし、どのような対応をこちらが持って臨むかというのは、恐らくはもう今ごろから胸のうちとかテーブルの上で外務省としてはお考えになっていらっしゃらないと、実はグロムイコ外相についての訪日を要請するということにもならないであろうと私は思うのですが、巷間伝えられるところによりますと、アジア安保についての協議というのもそこで問題になるのではないかというふうなことが言われておりますが、この点はいかがでございますか。
  121. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 グロムイコさんがまだ来るとも来ないとも言わないうちから、今どうだこうだと言うのもちょっとどうかと思いますが、やはり二国間の問題、さらに国際情勢全般について広範な立場からの率直な協議、議論をしたいと思います。もちろん、このアジア安保につきまして、ゴルバチョフ書記長が一つ提案をしておりますから、そういうソ連側の考え方が示されるかどうか、これはソ連のグロムイコさんの考え方次第だろうと思います。こういう問題が出ました場合は、日本としてのそれなりの対応はしなければならぬ、そういうふうに思います。
  122. 土井たか子

    土井委員 日本なりの対応ということをおっしゃいましたが、外務大臣としては、この既に伝えられておりますソビエト側の構想に対してどういうふうに考えていらっしゃいますか。つまり、アジア安保会議開催ということに対してですね。
  123. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは実は、ブレジネフ構想とどういうふうに違うのか、その辺のところはちょっと問題があるのですが、やはりアジア安保はいわゆる欧州安保と対比して出されておるのじゃないかと思いますけれども、アジア安保が行われるに当たっても、アメリカ側がこれに出席しないということでは意味をなさないと思いますし、そしてまた日本にとって一番基本的な問題としては、領土問題について、これが凍結ということを前提としてのアジア安保ということになれば、これは到底日本としてこれを認めるわけにもいきませんし、アジア安保ということになれば、今の米ソ会談、ジュネーブで行われている会談が進捗するということがその前提にもあるのじゃないか、こういうふうに概論的に考えておりまして、まだまだその詳細等をもう少し見きわめながら日本の態度は決めていきたい、こういうふうに思います。
  124. 土井たか子

    土井委員 最後に、グロムイコ外相の訪日の準備というのは、どうもいろいろ報道から察するところ、ソビエト側は進めておられるようであります。具体的な日程は、確かに今外務大臣としては決まっていないとお答えのとおりでありますけれども日本を訪問したいという向こうのお気持ちというのは、はっきりしているというふうに考えていいのではないかというふうにも私は思っておりますが、これは外務大臣の感触としてはどういうふうに受けとめていらっしゃるかをお伺いして、終わります。
  125. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 最近数カ月のソ連の要人等の言動からすれば、今までよりは訪日に対して積極的であるような感じを受けております。日本としても、今日の世界情勢、あるいはまたアジア情勢の中にあって、このグロムイコ外相の訪日を歓迎したい、こういうふうに思っております。
  126. 土井たか子

    土井委員 終わります。
  127. 浜田卓二郎

    ○浜田(卓)委員長代理 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十九分休憩      ————◇—————     午後一時四分開議
  128. 愛野興一郎

    愛野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、午前中の土井委員質疑に関し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。粟山北米局長
  129. 栗山尚一

    栗山政府委員 けさほどアメリカとの間の武器技術の交流問題につきまして、土井委員から種々御質問がありました際の私の答弁で、あるいは言葉が足らなかった面があろうかと思いますので、一言補足さしていただきます。  いわゆる十一分野について種々御質問がありましたので、この分野との直接の関連において、アメリカ側との間で具体的な技術の要請がないということを申し上げた次第でございますが、最近になりまして、十一分野とは必ずしも直接関係がなく、武器技術供与につきまして、アメリカ側から交換公文で定められております外交経路によりまして要請が参っております。要請内容につきましては、目下検討中でございますし、それから具体的内容につきましては、アメリカ側はこれを明らかにすることを望んでおりませんので、この場で申し上げることは差し控えさしていただきたいと思いますが、日米間で全く武器技術の供与につきまして動きがないかのごとき印象を私の答弁で与えたかという感じもいたしますので、その点補足答弁をさしていただきたいと思います。
  130. 愛野興一郎

    愛野委員長 質疑を続行いたします。玉城栄一君。
  131. 玉城栄一

    玉城委員 粟山さん、私きょうは一時からの質疑なんですけれども、そういう大事な御答弁をちゃんと土井先生の質疑のときにおっしゃらないで、今そんなことをぽつんとおっしゃられても、こっちも戸惑うし、土井先生も今のその御答弁についてお伺いしたい点が多々あるわけですね。そういう答弁の仕方はよくないですな。問題ですよ。  そうしますと、じゃお伺いしますが、今の十一分野以外にも来ているということは、今後もそういうアメリカ側の我が国に対しての武器技術の要請というものは、あり得るというふうに受けとめておいてよろしいわけでしょうね。
  132. 栗山尚一

    栗山政府委員 もちろん、アメリカがいろいろ武器技術を含めました防衛技術の分野で日米間の相互交流を図りたいということは、従来からそういう関心を持っておるわけでございまして、一昨年一月の官房長官談話に基づきます政府の方針、それからその方針に従いまして結ばれました日米間の取り決めは、そういうアメリカ側要請にケース・バイ・ケースでこたえるというためにつくられたものでございますので、今後具体的なアメリカ側からの要請というものは、十分あり得るであろうというふうに考えておる次第でございます。
  133. 玉城栄一

    玉城委員 これは非常に重要な問題でありますので、今の質問は、これはまた後日土井先生からも御質疑があろうかと思います。  大臣にお伺いいたしますが、きのうの参議院外務委員会におきまして、いわゆる臨時行政改革推進審議会内閣機能等分科会の提唱による外政調整室を新設すべきであるというような報告書について、報道で知る限り、安倍大臣は強く反発をしておる。いわゆる外交一元化を崩しかねない、崩すおそれもあるというような趣旨のお答えをしておられるやに伺っておるわけでありますが、改めてその点についてお伺いいたします。
  134. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 またこれは、正式な行革審の答申が出ておりません。いわば途中の段階の発表であろうと思いますが、しかし、そういう方向審議は進められておると思うわけであります。答申が出た段階におきまして、私自身としても、外務大臣としてこの答申につきまして十分検討もさせていただかなきゃならぬと思いますが、日ごろから私が言っておりますことは、基本的には外交というものは一元化でなければならない、それがやはり諸外国の信用を確保するゆえんにつながっていくわけでありますし、特に、こういうふうに相互依存関係あるいはまた外交が非常に多様化しておる段階においてこそ、まさに一元化の精神というもの、趣旨というものが貫かれなければならない、こういう立場で、もし何かできるとしても、これはやはり一元化というものを踏まえた形でやってもらわなければ困るというのが私の意図するところであります。  総理大臣をいろいろと助けていくという意味における補佐機関の強化ということなら、それはそれなり意味がある、私も官房長官をやっておりまして、こういうふうに思っておりますが、しかし、そういうことが一元化を非常に阻害をするというふうなことになれば、これはやはり問題であるという私の一つの判断といいますか、基本的な認識を示したわけでありまして、これからの審議もあるわけでしょうし、恐らく委員の皆さんも外交の一元化についてはもちろん異存はない、こう思っておりますので、これを見守ってまいりたい、こういうように思います。
  135. 玉城栄一

    玉城委員 おっしゃるように、内閣の機能を強化するということは、それはそれなりに意義があると思うのですが、外務省という外交専門の立派なお役所もあり、外交一元化ということは、ばらばらな外交が行われたらこれは国民もえらい迷惑しますし、混乱するわけであります。ただ現実は、例えばワシントンとかニューヨークとかロスとかパリとかロンドンとか、そういうところには各省庁の方々がどんどん出向していきまして、経済外交というものを実質的にどんどんやっていらっしゃる。また外務省の方々というのは、アジアとかアフリカ、中近東とか、そういうところで大変御苦労していらっしゃる。そういう中で、今のようにさらに外交の重要な部分を内閣に引き上げる。  ただでさえ外務省は、地盤沈下しているのではないかと一般的に言われているわけです。そういうものができますと、さらに外務省はその陰に隠れて、そういう機関の一分野ということになると、私は外務委員会の一人として、これはそういうことでいいのかな、そういう屋上屋を重ねるような、果たしてそれはいかがなものであろうかという感じがするわけであります。  ただ、反省すべき点も、外務省御自体にはたくさんあると、私思います。これも一般的に言われておりますが、外務省というのは、いわゆる国内音痴であるということをよく言われます。確かに各省庁は、それぞれ国内の産業とのいろいろな結びつき等で国内産業を擁護するという大義名分で、ところが外務省はどちらかというとそういうことはない、したがって国内の問題については音痴である、こういう言われ方が一般的にはされている。これは外務省にとっては、不幸とまでは言いませんけれども、非常に問題だ。ですから、やはり今後は外務省御自体とされても、通産省であるとかいろいろな省庁にどんどん出向される形でやっていく必要があるのではないか。  したがいまして、安倍外務大臣は、長い間外務大臣もされまして内外から大変大きく評価をされておられるわけでありますし、非常に有力な政治家でありますが、例えば予算も、外務省予算はふえたといいますけれども、これは従来少なかっただけでありまして、人員の問題にしましても何もふえていないわけです。ですから、この際、大臣とされても、御在任中に思い切って予算の問題、人員の問題等、外務省自体を強化あるいは拡充していくというあり方がやはり必要ではないかと思うわけですが、大臣のお考えをお伺いいたします。
  136. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、全体的に見て、外務省が沈下したとは思っておりません。外務省は依然としてその権威をちゃんとっておる、こういうふうに思いますが、しかし、最近の外交と内政との結びつきはこれまでになく広く深くなってきておりますから、そういう意味で、やはり外交に携わる者も内政の分野というものを深く見詰めていくといいますか、検討、研究、勉強していかなければならぬと思います。そういう面での各省との交流というのは大事だと思います。今でも多少やっておりますが、これからの外交の広がり、あるいは内政と外交とのつながりの広さというものを考えますと、これからさらにそういう面は積極的に努力をしていかなければならない、こういうふうに思います。  予算、人員につきましては、努力をしてまいります。非常に厳しい財政再建の中でありますが、そして各省ともマイナスシーリングという中で、少なくとも外務省につきましては、いささかでもプラスの予算、プラスの人員を確保できたことは、これはこの外務省の役割というものに対する国会の皆様方とか、あるいはその他世論の非常な御支援があったたまものであろう、こういうふうに思っております。こうした御支援を軸にいたしまして、これからも外務省のいわゆる外交機能、外交基盤を充実していくために、さらに一つ努力を重ねてまいる決意であります。
  137. 玉城栄一

    玉城委員 そこで、重ねて大臣にお伺いいたしますが、私もこれまで何回もこの委員会大臣にも申し上げてきたわけでありますが、我が国の安全保障というかかわり合いの中で、国内的にトラブルが常に起こるのは沖縄ですね。そこに外務省の適当な方を置いたらどうでしょうかということについては、その必要はないではないか、検討はしてみましょうということで、極めて消極的な考え方しか示しておられないわけであります。  実は、これは大臣も御存じのとおり、沖縄の知事が訪米して、沖縄の基地問題等いろいろなことをアメリカ政府に直接訴える。外交権のない知事がそういうこともせざるを得ないという状況もあるわけです。さらに私、沖縄にいるアメリカの総領事に時々向こうからも呼ばれ、またこちらもということで、ついこの間もお会いしましたけれども、その話をしましたら、やはり外務省の方が沖縄に来てくださることは非常にいいことであるという感じのことも話しておりました。さらにまた、沖縄の知事にしましても、外務省にそういう御意向があるならば、部屋も用意してもいいというようなこともあります。  ですから、外務省の方が沖縄に行かれて、今急にすべてのものがどうのこうのというわけじゃありませんが、あれだけの大きな基地を抱えて、いろいろ交流もあるわけですし、いろいろなパーティーもあるわけですし、そういうところに外務省の代表の方が一人おられればいろいろな話も聞かれるでしょうし、肌で感ずるものもあると思うわけですね。それだけに、私は非常に効果も出てくると思うのですが、この際、ひとつ前向きに考えてみる御用意はございませんか。
  138. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは前々から玉城さんの持論といいますか、非常に強い御要請がありました。外務省としても、いろいろと検討はしていると思います。沖縄に外務省から人を派遣しても、それが決してマイナスになると思いませんし、むしろプラスの面に働いていく、こういうふうに思うわけなんですが、しかし人材、人員の問題もあります。それから沖縄では、沖縄の米軍との関係等については、防衛施設庁もありますし、沖縄開発庁等もあるわけであります。それから、米軍とのいろいろの問題についての協議をするには、やはり東京でやらなければ本格的な解決には結びつかないという画もあるわけであります。もちろん、外務省から局長とかあるいは課長その他の責任者をしばしば沖縄に派遣する、これは今後とも続けていきたいと思いますが、根本的に問題等が起こったときには、東京での合同委員会その他の交渉、そういうことでございますから、今直ちに派遣をしなければならないというふうな状況でもないように私は思っておりますが、しかし、今後の課題として検討は続けてまいりたいと思います。
  139. 玉城栄一

    玉城委員 先ほど申し上げました国内音痴ではないかということとも関連するわけですが、例えば、おっしゃいました施設庁なり開発庁というところはやはり出先の機関を持っていますから、何か起こりますとファクシミリとかそういう情報が入ってくるわけですから、本庁の方はその日にわかるわけですよ。ところが外務省は、二、三日前の古新聞をあさるというように、こういう情報が非常にスピーディーに流れる時代に、外務省だけはおっとりとして東京サイドでやればいいじゃないか、そういうことではなかなかスムーズにいかないのではないか、そこら辺を私は申し上げたかったわけでありますが、ぜひ御検討をしていただきたいと思います。  それで、今度は安倍外務大臣に変わった御質問でお伺いしますが、今ハワイ移民百年祭で、我が国からも多数の方々が参加をされて盛大にその催しが行われております。一八八五年の二月八日に百四十四名の方々が初めてハワイのホノルルに着いて以来百年間、それはもう御苦労は筆舌に尽くしがたいものがあると思いますが、今は知事も誕生するように、日系社会というのは大変な大発展を遂げているわけですね。ひとつこの機会でありますから、大臣の御所見をお伺いします。
  140. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今、盛大にハワイで官約移民百年祭が行われておりまして、我が国からも宮様がお見えになるし、特にハワイに移民をたくさん送り込んでおるところの関係の知事さんとか議員の皆さんとか、いろいろと今行っておりますし、山口県の知事なんかも今行っておるわけであります。盛大にいろいろな行事が行われておりまして、まさにこれは日本あるいは日米の歴史の上においても画期的なことではないか、こういうふうに思っておりますし、今のハワイの州知事も日系のアリヨシさんでありますし、こうしたハワイでの移民の皆さんの大変な御苦労の結果が、今日のハワイのあれだけの発展をもたらしたわけでありますし、また日米を結ぶ一つの大きなきずなになっておる、こういうふうに思っておるわけでございます。  今後とも、こうした百年を記念をして、これからの日本とハワイとの関係の発展、あるいはまた日系人のこれからのいろいろな意味での地位の向上発展のために日本としても努力をしてまいらなければならない、こういうふうに考えております。
  141. 玉城栄一

    玉城委員 今、大臣もおっしゃいましたけれども、ところが、いわゆる日系人に対する目といいますか、機構上の問題ですが、外務省として政策が総合的なものが欠けている、こう言われているわけですね。例えばブラジルとかアルゼンチンとか、そういう中南米にいらっしゃる方々は中南米局とか、ハワイも含めて北米にいらっしゃる日系人に対しては北米局とか、あるいは移住部とか、いろいろ何とそういう関係する課が二十もあるというのですね。後でもお伺いしますけれども、そういう状態では、非常に重要な段階に来ている中で肝心の外務省の機構そのものが対応し切れない。ですから、その辺について、基本的な問題として外務大臣とされて、外務省の機構のあり方についても検討する重要な時期に今来ている、このように思うわけです。
  142. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは移民といいますか、日系人問題については領事移住部が全般的に責任を持っていろいろとお世話をしておるわけでありまして、もちろん多少の重複というものはあるわけですが、主力はあくまでも領事移住部でございますから、その点においては行政上の混乱はない、私はこういうふうに思います。
  143. 玉城栄一

    玉城委員 領事移住部長さん何かおっしゃりたいようでありますが、この前おたくは、この委員会でこの移住問題についてお伺いしましたときに、従来の狭い移住行政からもう我が国は脱皮しなくてはならぬ、新しい時代に即応した、幅の広い、多岐にわたる対策あるいは政策というものが必要である、こういうこともおっしゃっておるわけで、それを外務省として今具体的にどういうことをやっていらっしゃるのか、御説明いただきたいと思います。
  144. 谷田正躬

    ○谷田政府委員 移住を取り巻く内外の状況の変化に伴いまして、新しい移住政策というものが求められているということは、我々も極めて強く認識いたしておりまして、臨調の答申を待つまでもなく、我々といたしましても、従来からの狭い意味での移住行政を脱皮いたしまして、広い、今後の二十一世紀を目指してと申しますか、国際化の中における日本の地位を向上するという意味での新しい移住政策というものを考えておるわけでございます。  具体的に申しますと、まず一つは、移住、海外渡航の形態というものが戦後大幅に変化してきておる。昔はどちらかといいますと、集団農業移住というようなものを中心にしての施策を進められてきたわけでございますけれども、最近の状況は、技能、技術を備えた人たちの個人ベースでの移住が行われておりますし、また、長期滞在という形で海外渡航された方々がそのまま移住されるというような、こういった量的、質的な変化が見られてきておるわけです。  それからもう一つは、渡航者そのものの数は現在減少はいたしておりますけれども、やはりこの百年来行われてきました移住の成果として、海外に形成されてきた日系社会に対する新しい対処というものが一つあるわけでございまして、今委員指摘のとおり、海外における日系社会に対する総合的な新しい積極的な施策が必要とされている。この二つが大きな基本的な考え方でございます。  それに基づいて、具体的にそれじゃどういう施策が行われているかということを若干御説明申し上げますと、何分にも現下の厳しいいろいろの財政上の制約のもとにございますので、新しい制度の発足ということは大変困難でございます。我々といたしましても、こういった限られた中におきましてできるだけ努力はしてまいっておりますが、その一つとして挙げられるのは、六十年度の予算から始まります海外開発青年制度というのがございます。  これは、一言で申しますと、日系人としてのアイデンティティーの保持とかあるいは日系人社会に活力を与えるという目的で新しい血を日本から外に出すということで、後継移住者という形で前途有為な技術、技能を有する若者を海外に送り出しまして、これが日本人移住者や日系人が多数存在している諸国に渡航して三年間現地活動に従事していただき、そしてその結果、こういった青年たちが現地の事情やあるいは自己の海外生活への適応性というものを確かめた上で、希望するならばその移住先国にそのまま定着するという、そういった新しい制度でございます。  そのほか、先ほど申し上げました現在既に向こうに行っている人たちの自立、安定、発展というものを助成するための措置といたしましては、例えば中堅企業育成の融資制度の新設、それから上級の技術研修の制度を新しくつくる。これは、従来は、普通の意味での技術研修というものは非常に広く行われているわけですが、今回考えておりますのは、大学卒業以上の学歴を有する移住者子弟を対象といたしまして、我が国におきまして大学院の修士課程を修めるという、二年間の研修期間を持つ新しい制度でございます。  それから、一般的に日系人社会から非常に強く要望されております日本語教育の拡充という点につきましても、日本語教師のコースを延長したり、あるいは派遣する講師の数を増員するということで、これは新しい制度ではございませんが、従来からあるものを一層拡充していきたい、これが具体的な施策の若干でございます。
  145. 玉城栄一

    玉城委員 これは、この前の委員会でも要望申し上げたボリビアの、今おっしゃいました子弟の教育援助、教育のいろんな、言葉の問題とかこういうことについても特段の関心を持っていただいて、対策をぜひやっていただきたいと思います。この前もおっしゃっておられましたけれども、移住政策というものは発想の転換が必要である、量よりも質の時代であるということもよく言われておるわけでありますし、そういう我が国を取り巻く新しい国際的な環境の変化等を踏まえて、具体的にはそのためには、さっきも申し上げました外務省自体のいわゆる機構の問題であるとか予算の問題であるとか等についても、当然真剣に配慮をしていただきたい、このように思うわけであります。  今度は質問を変えますが、経済摩擦の問題についてお伺いしたいのですけれども、サミット後、特に最近、アメリカ側からもEC側からも、非常にかまびすしく鳴り響いているわけです。  それで、具体的な問題としてお伺いしたいのは、対日でなくして対米輸出が、今六月ですが、一月から五月、昨年に比べてどういう状況にあるのか、それとアメリカの貿易に占める対日赤字、これはどういう状況になっているのか、まずその点を御報告いただきたいと思います。
  146. 恩田宗

    ○恩田政府委員 日本の通関統計でございますが、本年一月から五月までの我が国の対米貿易の黒字は百三十四億ドルでございまして、対前年同期に比べまして二十億ドル増加している、こういう状況になっております。  それから、アメリカの貿易収支に占める日本のシェアでございますが、アメリカの統計は四月までしかできておりませんが、アメリカの貿易収支全部で、本年一月から四月までマイナスの四百四十六億ドルでございます。日本に対しては百五十一億ドル、これは日本の統計より多くなっておりますが、これはいろいろな関係でございますが、日本に対する赤字は百五十一億ドル、全体に占めるシェアは三三・八%、こういう状況になっております。
  147. 玉城栄一

    玉城委員 昨年よりも、同期比では我が国の輸出が伸びていると言うし、また向こうの対日赤字部分は、昨年よりもさらに割合としてふえている、こういうことになりますと、そういうことを踏まえて、今具体的にはアメリカ側は、対日批判ということでどういう動きがあるのでしょうか。
  148. 恩田宗

    ○恩田政府委員 いわゆる日米経済摩擦という問題でございますが、御存じのとおり、先般四月九日には我が国は対外経済対策というのを発表いたしまして、それから以後も、いわゆるMOSS協議それからまた現在、貿易委員会等も行われておりまして、本年二月、三月に見られたような激しい対日批判、不満というものは、やや鎮静化しているという感じはございます。もちろんその基本には、先生御指摘のように、依然として改善を見ていない日本との貿易収支のインバランスの問題がございますので、アメリカ側としては、日本が対外経済対策に盛られているアクションプログラムがどのようなものになるか、また、日米貿易収支がどのようになっていくかということについて見守っている、こういう状況であろうかと思います。  したがいまして、現在、米国議会においては予算審議でございまして、焦点は財政赤字との関連での予算、税制改革の方に向かっているわけでございますが、アクションプログラムのつくり方、あるいはその後に、現在行われている日本との間の二国間の協議等がどのように展開していくかによっては、いろいろな対日批判の雰囲気が再燃しかねない、こういう状況でございまして、私どもとしては、米国議会においてどのような動きがあるかということは十分見守っていきたい、かように考えております。現在、特に表立った形で、日本に対する法案なり何なりの提出あるいは審議なりを行おうという形が浮上しているということではないと見かけられます。
  149. 玉城栄一

    玉城委員 大分鎮静化しているとかなんとかいうこと、しかし私は、そういう関係の切り抜き新聞を見ましても、それはそういうのんきなことを言っておれない感じがしますね。いわゆるEC、OECD関係を含めてこれも大きく報道されていますから、どういう状況でしょうか。
  150. 恩田宗

    ○恩田政府委員 もちろん、私が申し上げましたように、アメリカの国内においても日本は思い切った市場開放をしてほしいという要求、またするべきであるということは強く残っているわけでございまして、いろいろな機会においてそのようなことは表明されております。現在、貿易委員会が開催されておりますが、米国代表もそのような趣旨を申しております。また、ECも日本との先般行われました貿易拡大委員会あるいはOECDの貿易委員会等においても、日本の市場開放の進展が遅い、できるだけ画期的なことをしてほしいということを表明しております。  したがいまして、日本としてはのんびりしているとか、先生の御指摘のようなそういうことはできないわけでございまして、そのような客観的な状況を踏まえて、アクションプログラムを鋭意作成、検討中である、こういう状況でございます。
  151. 玉城栄一

    玉城委員 イギリスのサッチャー首相なんかは、総攻撃をするのだというような大変物騒な言い方までしておるわけですが、今大臣、もうよく御認識だろうと思うのですが、そういう状況を踏まえて、来月はアクションプログラムということで、どうしても外務大臣とされては矢面に立つということで、今後の対応はどういうふうにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
  152. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本としては、まず当面、アクションプログラムをつくってこれを内外に発表して、日本のいわゆる市場アクセス改善のはっきりした努力を示す必要がある、こういうふうに思います。  さらにまた、全般的にはやはり保護主義が台頭する機運にありますから、ニューラウンドの準備を一日も早く急いで、来年からニューラウンドの交渉開始というところまで持ってまいりたい、こういうふうに思っております。
  153. 玉城栄一

    玉城委員 アメリカを含めて世界の我が国に対する対日批判というものが、すべてそのとおりだとは決して思いませんけれども、やはり我が国としてもこれから国際社会の中で生きていくためには、相当な決意を持った対応が当然これは必要であろう、こう思いますので、ひとつ御努力をよろしくお願い申し上げます。  次に、大臣、さっきも申し上げましたけれども、沖縄の知事が沖縄のいろいろな問題を抱えてアメリカに行って、アメリカ政府が非常に異例な厚遇といいますか、そういうことだったようですし、その知事の言い分についてよく理解する、大変前向きであったというように聞いておるわけです。いろいろ具体的な問題については、日米政府間で今後話し合いをしていきたいというようなことであったようであります。沖縄の知事がそういう基地問題を抱えて直接訪米して訴え、アメリカ側としては、いろいろ理解を示して今後日米間で話し合いをしたいということでありますが、外務大臣としてはどういうふうに受けとめていらっしゃいますでしょうか。
  154. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 沖縄の西銘知事は、まことに御苦労さまであると思います。沖縄もあれだけ大きな基地を持っておるだけに、いろいろと問題を抱えておるわけでございますし、それだけに知事自身の御苦労も多いわけでございますが、今回沖縄の知事として沖縄の実情を踏まえてアメリカに乗り込まれて、アメリカ政府要路と忌憚のない意見の交換をされたということは、大変有意義ではなかったかと思うわけでございます。  沖縄では、米軍との関係でいろいろと問題が起こっておりまして、こういう点につきましてもアメリカの、特に米軍の規律の強化等強く要請をされたようで、アメリカとしても、この点については十分反省もし、留意もするということを答えたようでございますが、このような問題が、いろいろと国会でも指摘されたような不祥事件等がこれから起こらないように、引き続いて政府としてもアメリカ側に善処を求めてまいりたい、こういうふうに思っております。
  155. 玉城栄一

    玉城委員 具体的に、いろいろな沖縄の米軍基地の地名を挙げまして米側に訴えておるわけですね。そのことについて大変理解もするし、日米間で話し合いをしたいというようなことですが、そういう具体的な話し合いについて、外務省としてどういうふうな対応をされるおつもりですか。
  156. 栗山尚一

    栗山政府委員 従来からも申し上げておるところでございますが、大きな問題としては二つあろうかと思います。一つは、かねてから日米間で話し合われております基地の整理統合の問題、これは委員承知のように、基本的な合意は日米間でできておるところでございまして、これに従いまして整理統合、返還が可能なものについては従来から逐次進められておるところでございます。  若干の大きなものにつきまして、代替の施設、リロケートする適当な場所についてのめどが立たないということのために、基本的な合意がなされているにもかかわらず、現実の整理統合が行われてないというものがあるということは御承知のとおりでございますが、こういうものにつきましても政府としましては、これは防衛施設庁が中心になるわけでございますが、外務省といたしましても引き続き政府防衛施設庁と一緒になりまして、整理統合が少しでも促進されるように努力をしていくということであろうと思います。  西銘知事からアメリカ側に申されましたもう一つの問題、これは加藤防衛庁長官も訪米時にワインバーガー長官に申されたことでありますが、米軍の事故防止、規律の維持という問題につきましては、これも先般委員には申し上げたとおりでございますが、外務大臣の御指示もありまして米側に強く申し入れているところでございまして、米側も具体的な措置につきまして私どもの方に、中間的ではございますが、いろいろ言ってきてまいっておる次第でございます。こういうことにつきましては、今後外務省といたしましても、全力を挙げてフォローアップをしていき、具体的な成果が上がり、少しでも県民の方々が安心をして、基地の存在というものに対して御理解が得られるような方向に引き続き努力をしていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  157. 玉城栄一

    玉城委員 局長さんも御存じだと思いますが、一つは那覇軍港の施設の返還、それからキャンプ・シュワブ、キャンプ・ハンセンでの小銃弾を含む一切の演習の中止、三番目に普天間飛行場の移設、四番目に伊江島補助飛行場の返還、五番目に五・一五メモの公開、それから北部読谷での訓練中止、嘉手納飛行場での航空機騒音の解決、B52戦略爆撃機飛来の中止等訴えておる。このように、報道でありますけれども、そういう問題につきましても、ひとつ誠意ある日米間の解決のための御努力をお願いをするわけであります。  そこで、防衛施設庁の方にお伺いをいたしますが、防衛施設庁は、先ほど私、大臣にお伺いしました、あれだけ基地を抱えている沖縄の知事が訪米して直接訴えたということについては、どういうふうな受けとめ方をしていらっしゃいますか。
  158. 森山浩二

    ○森山説明員 私どもといたしましては、知事さんがお帰りになりましてから県当局と十分協議いたしまして、その上でしかるべき対処をしていきたい、そういうふうに考えております。
  159. 玉城栄一

    玉城委員 そこで、非常に具体的に、これは知事の要請の中にもあるわけでありますが、実際に米軍が使ってないところというのは相当あるのですね。そういう意味で、そういうものの一つに陸軍給油施設いわゆるパイプライン、これについても返還してない部分が相当あるわけですね。これは当然返してもらう、いろいろな都市計画とかそういうものに障害になっているわけですから、それの返還については、どういうふうに施設庁としては米軍側と話し合いを進めていらっしゃるのでしょうか。
  160. 森山浩二

    ○森山説明員 パイプラインにつきましては、第十六回安全保障協議委員会で返還される部分が合意されておりますが、その部分につきましては逐次返還されてきておりまして、来る六月三十日にも那覇市—浦添市間のパイプラインが返還されることになっております。
  161. 玉城栄一

    玉城委員 今おっしゃった那覇市−浦添市間のパイプライン返還ということは、距離はどのくらいなんですか。それから、そのバルブボックスというのがありますね、そういうものはどういうふうに施設庁としては処理されるのか。
  162. 森山浩二

    ○森山説明員 パイプラインの延長は約一万メートルでございます。その敷地の面積は約九万五千平方メートルでございますが、バルブボックスにつきましては、返還後これを撤去するという方針で処理しております。
  163. 玉城栄一

    玉城委員 今おっしゃったのは浦添と那覇間の一万メートル、たしかその部分につきましては、現地の知事のアメリカ要請の中には浦添と宜野湾市のものも含まれておりますが、その部分はどうなるのか、これが一つ。  それから、那覇市とおっしゃいましたけれども、那覇市の那覇港湾施設、その中には当然使わないパイプライン、それからタンク、これはもう全然使ってないわけですからその部分はどうなるのか、その辺はいかがでしょうか。
  164. 森山浩二

    ○森山説明員 委員がただいま御指摘になりましたパイプライン敷、要するにバルブボックス二十号以北のパイプラインでございますけれども、これにつきましては、以前米側に返還について協議したことがございます。その際、米側から必要であるということで、返還できないという旨の回答が来ております。しかしながら、知事さんの御要望もございまして、今後県と協議した上で、また米側との調整をしていきたい、そういうふうに考えております。  それから、もう一つの御質問のPOLの区域でございますが、これは米側の方で、那覇港湾施設と一体に使っている施設ということで、ただいま返還するというような意向は米側から示されておりません。  以上でございます。
  165. 玉城栄一

    玉城委員 これはもう御存じのとおり、中間のパイプライン一万メートル返還しますね。これは従来から使ってないわけですよ。それは返還する。それではその施設内、那覇港施設にあるパイプライン、それからタンク、これはもう当然使いようもないわけですからね、パイプは途中で返されるわけですから。そういうところは、沖縄に行かれて、御存じのとおり、飛行場からおりて、那覇市内に入る道路を挟んで右側なんですね。これも相当の面積をそのまま、今おっしゃると使っているから返せないということですけれども、そういうところは返すべきではないか、このように思うわけですね。今、施設庁とされてどういうところを返還交渉、あるいは可能性のあるところというのはほかにどういうところがあるのでしょうか。
  166. 森山浩二

    ○森山説明員 ただいま沖縄において返還の見通しのある施設及び区域としましては、先ほど申し上げました陸軍徴用施設のパイプライン敷及び牧港住宅地区がございます。
  167. 玉城栄一

    玉城委員 このキャンプ瑞慶覧内の泡瀬ゴルフ場ですね、これはアメリカさんは全然使っていませんね。これは前にも国会でも質問があったわけですけれども、その利用状況は現在一体どうなっているのでしょうか。
  168. 森山浩二

    ○森山説明員 御指摘のゴルフ場は、キャンプ瑞慶覧の一部として使われておりまして、コースの面積は約四十五万平方メートルでございます。それで、十八ホールのゴルフ場でございます。このゴルフ場は、主として米国の軍人が使っておりまして、米側が管理運営しているということで、施設庁としてはその利用状況については承知しておりません。
  169. 玉城栄一

    玉城委員 その利用状況はわからないということですけれども、このゴルフ場というのは、実際はほとんど米軍関係者は使わずに、地元の沖縄の人とか、本土から来る、そういう方々がほとんど使っているわけですよ。年に一人か二人、米軍さんが使っている場合もあるいはあるかもしれませんけれども、これはほとんど全くと言っていいぐらい使っていません。  ですから、こういうゴルフ場などについては、返して、そして県のいわゆるパブリックなゴルフ場として、もし米軍側が使いたいという場合は、これは当然優先的に使わせてもいいと思うのですね。皆さん、あれだけの地料を払っているわけですから、あれをちゃんと一応県の方に返して、県のゴルフ場として、アメリカさんが使いたいというなら優先的に使えますよとかなんとかという話し合いもしておけば、土地の部分も有効に活用できると思うのですけれども粟山局長さん、いかがですか。
  170. 栗山尚一

    栗山政府委員 ゴルフ場の利用状況が、果たして今委員のおっしゃられたような利用状況がどうかということは私どもも必ずしも把握しておりませんので、今この場でどうこうということは残念ながらちょっと申し上げられないと思います。今、委員御提起になられた問題を含めまして、今後検討はさせていただきたいと思いますが、今この段階で、委員の御示唆のありましたような方法が可能かどうかということについては、一概に申し上げられないと思います。
  171. 玉城栄一

    玉城委員 整理統合ということを、沖縄の米軍基地については皆さんの所信表明の中でいつもちゃんとおっしゃる割には、整理統合がなかなかされないわけですね。ですから、いろいろチェックしてみますと、そういう不用な部分、使っていない、いわゆる遊休ですね、そういうものがあって、防衛施設庁は相当の地料を払っている。この際、外務省とされても、防衛施設庁とされても、私たち調査をしますけれども、そういう部分をもう一回調査をしてみる必要がある。あるいは中には、米軍ももっと必要な部分もあるかもしれません。それは、私がここでどうというわけにはいきませんけれども、せめて使っていない部分については、やはり整理統合という中でちゃんと返してもらいたいのです。そして、地元の振興ということが非常に大事だと思うのですが、施設庁はそういうことを実際に調査をしていらっしゃるのでしょうか。
  172. 森山浩二

    ○森山説明員 沖縄の米軍施設につきましては、現地にあります那覇防衛施設局が、状態については常時把握しておると考えております。
  173. 玉城栄一

    玉城委員 これは返してもらいたいと言っても、那覇サービスセンターというのもありますし、これもひとつ念頭に置いていただいて、ぜひ検討していただきたいと思います。  そこで、時間もございませんので、今度は外務省の方にお伺いしますが、これも報道にあったのですが、「三沢に核支援施設」ということで、アメリカの専門家の出した著書の中にそういうことがいろいろ出ていまして、その中に「嘉手納基地が米核戦略上、極めて重要な位置を占め、第三一三航空師団が核兵器に関する命令を受信できる「緊急行動コンソール」」これは日本語で「操作台」と書いてありますが、その「「緊急行動コンソール」を保有している」というふうな報道でありますが、この緊急行動コンソールというのはどういうことなんでしょうか、お伺いいたします。
  174. 栗山尚一

    栗山政府委員 報道されました文献につきましては、我が方もコピーを入手いたしまして、太平洋の関係日本関係に関する記述については一応目を通した次第でございますが、今委員指摘の具体的な問題については、今ちょっとこの場で必ずしも私、記憶しておりませんし、それから御質問の、これがどういうものかということにつきましては、私ども、具体的な知識を持ち合わせておりません。
  175. 玉城栄一

    玉城委員 ですから、私、それをお伺いしているわけですが、この前のこの委員会で他の同僚委員からも御指摘がありましたけれども、AFSATCOMという嘉手納にある通信施設、いわゆる軍事衛星から核戦力の部隊との間の一般的な通信、指揮、統制のための通信システムの一つとして、AFSATCOMというのが嘉手納にはあるのだというお答えをしておられたわけですが、そのAFSATCOMと今申し上げました緊急行動コンソールとはどういう関係があるのか、お伺いいたします。
  176. 栗山尚一

    栗山政府委員 AFSATCOMにつきましては、先般、別の委員会で御質問がありまして、私の方から、先ほど委員が御指摘のような趣旨の御答弁を申し上げた経緯がございますが、今御指摘の文献の嘉手納航空基地の関係について記述した部分を私、ざっと目を通させていただいたわけでございますが、具体的に御指摘のようなコンソール云々というようなことはそこには出てきておりません。AFSATCOMのターミナルが嘉手納にあるということは確かに書いてございますが、そういうような記述は嘉手納のところにはございません。ほかの部分にあるいはあるかどうかということをちょっと子細に検討しておりませんので、この場では申し上げかねます。
  177. 玉城栄一

    玉城委員 今の問題で、具体的に三一三航空師団というものが極めて重要な核部隊としての位置づけとこの本の中には書かれているということですが、そういう認識は北米局長さんとしてもやはりお持ちなんでしょうか。
  178. 栗山尚一

    栗山政府委員 先ほどちょっと見当たりませんということを申し上げましたが、大変失礼申し上げました。  読み直してみますと、確かに嘉手納に、核攻撃命令ということだろうと思います、ニュークリアオーダーズと書いてありますが、核攻撃命令を受領するための、かぎ括弧つきでエマージェンシー・アクション・コンソールというものがあるという記述はございます。その点ちょっと訂正させていただきます。
  179. 玉城栄一

    玉城委員 今おっしゃいましたね。核攻撃命令を受領するための、とあります。核攻撃命令を受領するための施設がある、そういうことは事実なのですか。後は横文字でおっしゃいましたから、私よくわかりません。
  180. 栗山尚一

    栗山政府委員 これは、従来から私は累次御答弁申し上げていることでございますが、まずこの著者がどういう権威を有する者かということも承知しておりません。したがいまして、ここへ書かれていることの一々具体的な点について、これはこうであるとかこうでないとかということを申し上げる立場にございませんし、それからエマージェンシー・アクション・コンソールが何かということについても知識を持ち合わせておりませんので、私ども説明できないわけでございますが、従来から申し上げておりますことは、嘉手納を含めまして、これは本土でも同様でございますが、御承知のようにアメリカは、いろいろな通信施設を本土に施設、区域として日本が提供しておりますところに置いております。その通信施設の中には、従来からこれも申し上げておりますが、アメリカの海外にあります核戦略部隊、核戦力部隊とアメリカの、ナショナル・コマンドーオーソリティーという名前を国防省がつけておりますが、大統領、国防長官あるいはまたその代理の者、具体的にはいざ有事という場合に核攻撃命令を出す権限を与えられている者、こういうことでございますが、そういう最高指揮官と出先の核戦力部隊との間の通信を行うシステムがある、それでいわばその中継施設的な機能を日本にある米軍の通信施設が一部持っておるものがこれは当然あるであろうということは、従来から申し上げておる次第でございまして、AFSATCOMというものにつきましてもそういう性格の通信システムであるということは、先般御質問がありまして御答弁を申し上げた次第でございます。
  181. 玉城栄一

    玉城委員 そうしますと、私が先ほど申し上げましたアメリカの専門家の書いた本の中に記述されているものは、今局長さんのおっしゃるような背景からすると事実である、こういうふうに理解せざるを得ないわけですね。
  182. 栗山尚一

    栗山政府委員 この文献に書いてあることが一一事実であるかどうかということは、私ども確認をする立場にございません。  AFSATCOMというものが、さっき申し上げたような機能を有する通信システムであるということは、累次アメリカ側に照会いたしまして、アメリカ側説明として私ども承知しておるということは申し上げております。  嘉手納にそういうAFSATCOMの電話番号、ステーションターミナルの電話番号があるか、あるということで御質問がございましたので、確かに電話帳にそういう電話番号が載っておるということも、外務省としては確認できるということを申し上げました。それ以上に、嘉手納の基地に具体的にどういう通信施設があるかということにつきましては、これはアメリカが公表いたしておりません。公表いたしておりませんので、私どもとして、具体的にこういう機能を持った通信施設が嘉手納にあるということを確認できる立場にございません。その点は御理解いただきたいと思います。
  183. 玉城栄一

    玉城委員 時間が参りましたので、以上で質問は終わります。
  184. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、木下敬之助君。
  185. 木下敬之助

    ○木下委員 米上院会議は去る十一日、日本に対し、「防衛計画の大綱」の改定等、四点についての要請を盛り込んだ対日決議を行いましたが、その背景は何か、また、これが今後の日米関係にどのような影響を与えると考えられるか、外務大臣はこの対日決議をどのように受けとめておられるのか、お伺いいたします。
  186. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 米上院会議は六月十一日、一九八六年度国務省予算授権法案審議に際しまして、議会として、我が国が一層の防衛努力を行うべきであるとの認識を有している旨の条項を同法案に追加することを議決をいたしました。  米議会は、従来より種々の形で、我が国の防衛努力について関心ないしは期待を明らかにしているところでありまして、今次修正案も、加藤防衛庁長官訪米の機をとらえて、改めてその期待を表明したものと考えられます。  安保条約上我が国を防衛する立場にある米国として、かかる期待を有することは自然なことと考えておりますが、我が国の防衛努力は、我が国自身の平和と安全を確保するため、あくまでも我が国の自主的判断に基づいて行うものであることは、今回の加藤防衛庁長官の訪米の機会も含め、累次の機会に米側に伝えてきておるところでありまして、このことは米政府十分理解しているものと考えております。
  187. 木下敬之助

    ○木下委員 今大臣も言われましたように、加藤防衛庁長官が訪米されて、シュルツ国務長官、ワインバーガー国防長官との会談を終了して記者会見で訪米の成果を表明した直後、すぐに米上院会議でこの対日決議が行われた、こういう状況でございます。  この決議は、我が国の防衛大綱の見直しを求めておりますが、アメリカ政府も、この上院決議の影響を受けて日本防衛大綱の見直しを求めてくる可能性がある、このように考えられるかどうか、この政治的重みをどのように理解しておられるのか、お伺いいたします。
  188. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカ議会は、内容からすると相当粗っぽい認識を持った議決をしておるわけでありますが、アメリカ政府日本立場をよく理解しておると思います。もちろん、アメリカ政府が累次にわたりまして日本に対する防衛努力要請しておることは、今度の加藤長官の訪米の際も明らかでございますが、しかし、それは安保条約を縮んでいる同盟国としてのアメリカ立場から当然のことであろう。しかし、日本日本の自主的な判断で防衛を行うことは、日本もこれまでも申し上げているとおりでありますし、今後もそういう方向で進むということは、今度の加藤長官のアメリカ訪問の際も明らかにいたしております。
  189. 木下敬之助

    ○木下委員 米政府からそういう要求があることはないというふうにお考えになっている、こういうことでございますか。見直しの要求とかが政府から来ることはない、そのようにお考えですか。
  190. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカ政府からも、やはり防衛力の増強とかあるいはまた五九中業の進展についての要請はもちろんあると思いますが、しかし、それはあくまでもアメリカ要請であって、これに対して日本日本なりの自主的な判断で防衛の問題については取り扱っていけばいいのだ、こういう姿勢であります。
  191. 木下敬之助

    ○木下委員 従来から米議会には、貿易摩擦と防衛問題をリンクさせようとの底流があると思いますが、この米上院の本会議決議は、貿易と同じく防衛でも日本努力不足であるとする対日本満を改めて鮮明にして、日本の市場開放の促進を求めているのではないか、このようにも考えられますが、どうお考えでしょう。
  192. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは防衛に関する議決でありますから、防衛問題に対するアメリカ上院議員認識を示したものであろうと思います。しかし、そうした背景には、もちろん貿易問題に対する不満も存在しているであろうということは、推察するにやぶさかでないわけでございます。しかし、防衛問題はあくまでも貿易摩擦とは異質の問題でありますから、それはそれ、これはこれとして、取り扱っていかなければならぬと我々は考えておりますが、アメリカ議会にはそういう空気があることは事実だろうと私は思います。
  193. 木下敬之助

    ○木下委員 重ねてお伺いしますが、そういう決議が貿易摩擦を再燃させていく火種になるおそれはないかどうか、お伺いいたします。
  194. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 こういう種類の決議等は、アメリカ議会日本防衛についてはしょっちゅう言ってきておるわけでありますし、そしてまた、日本日本なりの自主的な努力も重ねておるわけでございまして、この点については、これからもアメリカ議会理解を求めていかなければならぬと思います。  貿易問題については、アクションプログラムを近く発表しまして、アメリカ政府あるいは議会理解を求めたいと思いますが、全体的に日米関係をうまくやっていこうという立場で我々も言っていかなければなりませんし、また、アメリカ政府議会にもそうした立場を強く求めたいと思います。
  195. 木下敬之助

    ○木下委員 貿易摩擦の解消に対する努力が相当急がれておると思うのですが、マンスフィールド駐日米大使は十七日の記者会見で、「米国議会での対日批判の動きは急を告げており、日本製品の締め出しにつながる保護貿易主義法案は日本側一般に予測されている九月よりも早く提出、可決されることもありうる」、このような強い警告を表明されております。我が国は、こうした米国議会の動向に十分な注意と配慮をしていかなければならないと考えますが、外務大臣はどのようにお考えか、お伺いいたします。
  196. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、マンスフィールド大使の日米間の貿易問題に対する憂慮を端的に示されたものであろうと思いますし、議会を最も知っておる大使として、アメリカ議会の動きというものがそう楽観できないということを表明されたのであろうと思います。私も、まさにそういう状況にあるのではないか、ですから、日本としましてもアクションプログラムを策定して、これでもってアメリカ議会あるいは政府に貿易アクセス改善に対する日本努力と決意を評価してもらわなければならない、そのことによってこうした一挙に保護主義にいくという動きを抑えていかなければならないと思っております。
  197. 木下敬之助

    ○木下委員 今言われましたアクションプログラムですが、これを実施するための立法措置を講ずることが必要でないか、このようにも言われておりますが、どうお考えになりますか。
  198. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アクションプログラムをつくるということになりますと、関税の引き下げ等ももちろん出てき得るわけでございます。また、基準認証制度の見直し等もあるわけでございますから、その中には国会にかけなければならない問題も当然出てくるのではないだろうか。今これは作業しておりますから、同会にかけなくても済む場合もあるでありましょうし、また、同会にかける必要があれば、国会にかけて承認を求めなければならないと思います。
  199. 木下敬之助

    ○木下委員 その国会にかけての実施時期というものをどのように考えておられますか。
  200. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今ちょうど検討を進めておりまして、最終的に閣僚間とか党の幹部との間の細部的な詰めを行っておりませんから、そうした時期等については、例えば関税引き下げの時期についてはそのときでないと確定できない。今のところは、各省間でまだまだ調整がつかない状況でございますから、見通しはちょっと言えないわけであります。今のアメリカの先ほどからお話のあったような動き、あるいはECとかASEAN等の動きを見ると、時期についてもはっきり明示することが大事ではないかというふうに私は思っておるわけでございます。
  201. 木下敬之助

    ○木下委員 この国会はもうすぐ終わるわけでございますが、そういったことも含めて秋の臨時国会をどうするかといった問題が今言われておりますけれども、こういう立法措置等のことも含めて、大臣としては臨時国会の召集の必要があると考えておられるかどうか、お伺いいたします。
  202. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この通常国会が終わりました段階で、まだ全体的に残っておる法案もありましょうし、これから先ほど申し上げましたようなアクションプログラムの実施といった問題もあるでしょうし、その他全般的な立場で判断していかなければならない政治課題でもあるわけでありまして、今ここで私が臨時国会があるとかないとかいうことを言える段階にはありませんけれども、いずれにしても、こういう問題に対しては判断を下さなければならない時期も国会が終われば来るのではないかと思います。
  203. 木下敬之助

    ○木下委員 次に、去る十四日に米国防省当局者は、防衛庁が策定を急いでおります次期防衛力整備五カ年計画が達成されれば日本防衛力は戦略的戦力となる、このように位置づけていることが伝えられております。我が国は、憲法のもとで班守防衛に徹し防衛力大綱の水準に達するための努力をしておりますけれども、その水準に達した場合に米側は、世界戦略の一環として我が国の防衛力を役立てたい、このような米側の発言を外務大臣はどのように受けとめておられますか、お伺いいたします。
  204. 栗山尚一

    栗山政府委員 六月十六日付の朝刊で、そのようなことを国防省当局者が言ったという報道がございます。五九中業「「その達成によって、日本防衛力は戦略的な力を持つことになる」」とがき括弧で書いてありますが、そもそも「戦略的な力」とはどういうことを意味するかということ自体がよくわからないわけでございます。  私ども承知しておりますところでは、防衛庁長官が訪米されました一行の方で、こういう報道がなされたことから国防省側に何かこの種のことをコメントした経緯があるのかということを照会されたようでございます。それに対しまして国防省側から、必ずしもこういう言い方をしたことはない、あくまでも日本防衛力整備というのは日本の自主的な努力によって達成されるものであるというふうに国防省としては考えておる、記者に話をしたときに、日本という国が戦略的に重要な位置を占めておるというような言い方をしたという経緯はあるけれども、別にここに書いてあるような何か世界戦略の中で云々というような意味で話をしたことはないというふうに先方は説明したと、私どもは今度防衛庁長官に同行いたしました一行から聞いておる次第でございます。
  205. 木下敬之助

    ○木下委員 その報道がそういう覚えはないということですけれども、せっかく戦略的戦力という言葉が出たのですから、これはどういうふうに解釈するかと言われますが、日本は専守防衛で他国に脅威を与えない。戦略的に意義があるということは、やはり他国に影響力を発揮する、こういうふうにとれるということでございましょうか。戦略的戦力というのはどういうふうに考えておられるのか、お伺いいたします。
  206. 栗山尚一

    栗山政府委員 国防省当局を含めましてアメリカ行政府は、我が国の憲法の建前というものはよく承知しておりますし、我が国の自衛隊が専守防衛であり、我が国自身防衛のためという任務のみを負ったものであるということは、十分承知しておるわけでございます。したがいまして、自衛隊の性格ないし憲法の建前そのものを変更して、より広い意味でのアメリカの戦略と申しますか、グローバルな戦略というものに日本防衛力が貢献をするというようなことは考えておりませんし、また求めてもおらない、こういうことであろうと思います。
  207. 木下敬之助

    ○木下委員 しかし、我が国は西側の一員としての責任と役割を果たしていく、こういう位置にあると思います。我が国が独自に専守防衛としての防衛力をつけていく、そのこと自体が西側の一員としての役割を果たす、このことはグローバルな戦略的意義がある、こうもとれると思うのですが、そういった点も否定なさるということですか。
  208. 栗山尚一

    栗山政府委員 我が国自身が専守防衛という立場に立って我が国自身防衛のために必要な努力をする、そういうことによって我が国に対する侵略を抑止する力を備える、さらにグローバルに見れば、このこと自体が当然西側全体の抑止力の維持につながる、そういう認識アメリカは当然持っておるだろうと思います。
  209. 木下敬之助

    ○木下委員 次に、外務大臣は、ストックホルムで開催されました国際貿易問題に関する十八カ国協議グループ閣僚会議に出席されたわけですが、新ラウンド交渉に開発途上国が参加することを確認し、来年の東京サミットで新ラウンド交渉開始宣言を行える見通しがついた、このように考えてよいか、お伺いをいたします。
  210. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ストックホルム閣僚会議の結果、途上国を含め九月までに準備会合を開催するとの方向性が出たことは、大きな成果であったと思います。開発途上国の中では、ニューラウンドについて相当否定的な感じの国があるわけでございます。そういう中で主要な国が来て、とにかく方向性が出たということは、それなり意味があったと思います。しかし、まだまだ時間もありますし、今後若干の紆余曲折はあろうと思います。しかし前進はした、こういうふうに考えておりまして、我が国としましてもこうした一つ方向性をさらにはっきり進めるために、七月にはガットの正式な会議がありますし、そこでさらに九月の準備会合をはっきりと打ち出すように努力をしてまいりたい、こういうふうに思います。
  211. 木下敬之助

    ○木下委員 その新ラウンド交渉の議題はどういったものになると考えておられるか、お伺いいたします。
  212. 恩田宗

    ○恩田政府委員 新ラウンドの対象項目は、いろいろなアイデアが出ておりまして、まだはっきりした方向というのは固まっていないわけでございますが、少なくとも各国の関心表明されている分野を総合いたしますと、繊維、熱帯産品、農業、関税、セーフガード、サービス等、先進国、開発途上国双方に関心のある問題がバランスのとれたものとして配合されていくのじゃないか、かように考えております。
  213. 木下敬之助

    ○木下委員 そういう議題がはっきりと明らかにされるのは、いつ、どこの場においてと考えられますか。
  214. 恩田宗

    ○恩田政府委員 この前の東京ラウンドのときもそうですが、交渉が長く続くわけでございますので、途中でいろいろな項目が入ってくるということはあり得るわけでございます。ただ、新ラウンドの交渉に入る前に、一応大まかな合意がなければならないわけでございまして、それは新ラウンド交渉開始を決定する過程において決まってくる。したがいまして、先ほど大臣の申し上げました七月のガットの理事会、それから九月に開催することを目指して今努力しております準備会合等等を通じましておのずから方向が出てくる、かように考えております。
  215. 木下敬之助

    ○木下委員 次に、SDIに関連して質問いたします。  ここのところ、新聞の報道で、企業の研究参加も政府の決定前でも可能とか、SDI研究への参加に国会の承認は必要ないとかいった記事が大分出ておるので、少し確認していきたいと思います。  まず、このSDIへのアメリカからの研究参加要請について、中曽根総理は四日の内閣委員会で、今まで明らかになっている範囲では国会の審議を必要とするものではない、行政の範囲でやり得るのだ、このような見解を明らかにしています。これは、総理に直接お開きするといいのですが、そういうわけにもいきませんのでお伺いしますが、国会の審議を必要としないというのは具体的にどういうことを言っておられるのか、お伺いいたします。
  216. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 SDIの研究参加問題につきましては、御承知のとおり我が国としても対応ぶりをまだ決めておりません。SDIの研究に参加するかどうかという点についての政府としての政策的判断に関しましては、国会におけるこれまでの御審議等を踏まえつつ、あくまでも行政府が行うべきものである、こういうふうに考えております。したがって、御指摘のそういう答弁もこの趣旨を述べられたのではないか、こういうふうに思います。
  217. 木下敬之助

    ○木下委員 これまでの審議を踏まえてというと、何かもうこれまで相当審議が尽くされて、判断できる状態にあるようにも聞こえます。ところが、私もこの問題を相当取り上げてまいりましたけれども、満足のいくような、説明できる状況で会話のできたことがほとんどございません。そういう中で今の話を聞いておると、国会の審議というものをどのように考えておるのだろうかと、非常に疑問を持つわけでございます。  特に総理表現の中で、今までで明らかになっている範囲では——随分明らかになっているような表現なんですね。まことに心配なんですが、本当にそういう感覚でおられるのか。この七月のASEAN拡大外相会議を機に行われる安倍外務大臣とシュルツ国務長官の会談で、我が国のSDI研究参加、不参加の方針が回答し得るほどに問題点の整理は終わっている、このようにとらえておられるのかどうか、お伺いいたします。
  218. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 SDIに対する政府立場、これは基本的にはSDIの研究を理解するというのが今日の日本立場であることは明らかです。今アメリカから要請があるのは、この研究に参加するかどうかという点でございますが、これに関して今実は政府としても、いろいろと検討をいたしておるわけであります。アメリカから第一回の専門家の来訪がありまして、政府関係当局はこの専門家の意見を聞きまして、これの評価といいますか、そういうものを今煮詰めておるところでありますし、あるいはまたNATO等においても、同様な立場でNATOの中でいろいろと議論が煮詰まっておりまして、その点の状況については私たちもよく情報等を得て承知をいたしております。  国会でもいろいろの角度から議論があったことは事実でございますが、今ここでお答えするだけの自信を持った形で我々としてもSDIについてはわかっておらないということもそのとおりでございますので、これはさらに検討をしながら、あるいは各国の対処ぶりも見ながら、日本として慎重に、自主的に決めたい。これはあくまでも政策判断でございますから、政府責任において決めるべき問題であろう、こういうように思っておるわけでございますが、今お話しのように、例えば七月にそれじゃ結論を持って私がシュルツさんに会えるかというと、そういう段階にまで至っておるというふうには私もまだ判断をいたしておらない状況であります。
  219. 木下敬之助

    ○木下委員 もう二つほど、この点で詰めさせていただきます。  七月はあれだと言いますけれども、一説によりますと、このSDIへの参加問題はことしの秋までに他の西側諸国の対応も踏まえながら態度を決定する方針、このようにも漏れ聞いておるのですが、それは事実でしょうか、またアメリカもそれで了解しているのかどうか、お伺いいたします。
  220. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、いつという期日を切って今ここで申し上げる状況にないわけでございます。しかし、いつまでもほうっておける問題でもありませんし、政府としても非常に重要な問題ですから、これから真剣にこの問題にも取り組んで、そして方向は出さなければならない。夏になるのか秋になるのかいつになるのか、これは検討次第ということでございます。
  221. 木下敬之助

    ○木下委員 もう国会での審議は尽くされておって、この研究に参加するかしないか、我が国の態度決定に当たってはいつでも政府が判断できる状態にある、このように言われるわけですか。
  222. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 国会の審議といいますか、国会でのいろいろ各党の御意見等々も聞いておるわけでございます。もちろん、十分に判断材料がないじゃないかと言われればそれまでの話でありますが、しかし、いろいろと伝わっておるところのSDIというものについての認識の中からの意見は、相当出ておるのじゃないかと思います。これだけで十分であるか、十分でないかということはまた別の問題でございますが、こうした意見等も我々は聞いておるわけでございますし、またこの問題については、あくまでも政府が独自に政府責任において決断をすべき課題であろう、こういうように思っておりますから、国会のそうした御審議あるいは各国の反応、あるいはまたこれが一番問題ですが政府自体の検討、それによって最終的な決断は下したい、判断はしなければならぬ、こういうように思います。
  223. 木下敬之助

    ○木下委員 大変疑問がございます。これは私、予算委員会で最初に取り上げて、機会あるたびに聞いてまいりましたが、聞いてもそんなことはまだわからぬから答えられないと当然言われるであろうようなことは今までも聞いておりませんよ。聞きたいけれども、こんなことを聞いたってどうせ何にも答えられないだろうと思って聞かずにいる質問がたくさんございます。そういう状況で、今までもわかってないからといって答弁ができないままでいながら、もう相当に話題が出ているから、その内容であとは政府で決定できるという考え方には全く納得できません。  まして、ただ細かく全部の今までの論議があったものの議事録をひっくり返して詰めてはおりませんけれども、一度は必ずきちっと過去の答弁の整合性——整合性のないものもありますよ。一度はこう言ったけれどもその次違うようになっているのとか、たくさん詰めなければならない点があるのを、今のような状況で、いつかはわからないけれども政府でもう決断できるというふうに言われるのは全く国会の審議を無視しておるし、国会の審議のやり方が誠意あるやり方でない、私はこのように申し上げます。  後で、私としてぜひこういった点を知りたいという点をお伝え申し上げたいと思いますので、今それだけの判断材料があるなら、きょうの場でその質問に答えていただきたいと思っています。  まずは、これは国会の了承というか、承認の手続まではしなくてもいい、政府で独自で判断できるというふうに言われますが、専守防衛とか宇宙の平和利用の国会決議に対してどうかとか、非核三原則に対してどうかとか、武器技術供与の問題とか、それぞれに国会がこの問題をどう判断するか、それに抵触するかしないかを判断しなければならない問題を随分たくさん含んでおります。そういった意味で、この状態でそういう問題に対する、なぜ専守防衛であり得るのか、なぜ宇宙の平和利用の国会決議に反しないのかとか、技術的なものも含めてはっきりとした答弁をいただかないままにするということは、私は全く国会無視だ、このように思います。  そのうちの一つになるでございましょうこの武器技術供与との関連について、企業の研究参加は政府の決定前でも可能、こういう記事がございましたので、質問いたします。本当に、日本企業の光電子工学、コンピューター、レーザーなどの技術を米側はSDI研究に活用したい、このように言われておると思いますが、我が国の態度決定が必要なしに企業が参加することができるのかどうか、これをお伺いいたします。
  224. 栗山尚一

    栗山政府委員 これは従来から申し上げていることでございますけれども、今の日本の制度というものを前提として申し上げれば、御承知のような日米間の取り決めによりまして武器技術というものが定義されておって、その範囲に該当するものにつきましては武器技術供与取り決めの枠内で、ケース・バイ・ケースで日本側が判断をして供与の決定をする、こういう枠組みができております。それ以外の技術、一般的に汎用技術と言われているものでございますが、汎用技術と言われているものにつきましては原則的に規制が存在していないというのが現行制度でございますから、その現行制度を前提とすれば、企業とアメリカ側との間に同意ができれば、いわば商業ベースと申しますか、そういうことで民間ベースで話し合いが行われて合意ができれば、そういう技術についてはアメリカに供与することが十分可能である、そういう今の制度を前提といたしまして、SDIへの研究参加問題については政府の方針というものを目下検討中である、これを従来から申し上げているところでございます。
  225. 木下敬之助

    ○木下委員 もっと簡潔にお答えいただけませんか。新聞報道にあるように、政府の決定がなくても、決定前でも、企業の研究参加は可能なのですか。
  226. 栗山尚一

    栗山政府委員 研究参加、どういう具体的な対応があり得るかということについては、これは木下委員から、この前アメリカのチームが来ましたときにどういう話があったかということで御質問がありまして、そのときに私からお答えしたように記憶しておりますが、先般来日しましたときのアメリカ側説明では、これが民間であろうと政府であろうと、日本側でどういう形で研究参加というものを考えておるのかということについては、必ずしも明らかでございません。先ほど大臣からも御答弁がありましたように、まずそのような点につきまして、今後まだまだアメリカ側といろいろ話し合ってアメリカ側の考え方をよく見定める必要がおろうかと思います。したがいまして、現状で先ほどの委員の御質問に端的に、可能であるとか可能でないとかいうことをお答え申し上げるわけにはいかないだろうと思います。
  227. 木下敬之助

    ○木下委員 このSDIの技術というのは武器技術なのですか。
  228. 栗山尚一

    栗山政府委員 SDIでアメリカがいろいろ研究しようとしている技術は、この前アメリカのチームが参りましたときの説明によれば、一つはICBMを探知、捕捉そして識別する関連の技術、二番目は捕捉した目標を破壊するための照準それから追随、そういう関係のシステムの技術、三番目は直接の破壊手段に関連する技術、それから四番目はコンピューターでありますとかそのようなものが中心でありましょうが、そういう全体のシステムを統制していく関連で必要な技術と、大ざっぱに申し上げましてその四つの分野に属する技術、こういうことでございまして、武器技術であるか否かというのは、その具体的な技術に即して判断しなければ一概に申し上げられないと思います。常識的に考えますれば、今申し上げました範疇の中でかなりのものは、いわゆる汎用技術に属するものが多いのではないかということは一般論として申し上げられると思いますが、具体的に武器技術であるかどうかということを今、断定的に申し上げられる材料は、持ち合わせておりません。
  229. 木下敬之助

    ○木下委員 断定的に言われないと言いますが、技術的に細かいところがわからないから言われないというのでしたら、我々の質問に全部答えられる。答えた上での疑問であれば、これは見解の相違ということで政府の判断が下せる時期が来るでしょうが、答えられないままで政府が判断されるということには反対だという意味で、この武器技術という問題でも問題点がまだまだたくさん残っている、このように思います。  あと私の方が、このSDIの研究参加、それに我々自身賛成するのかしないのかを判断するためにも、ぜひともその判断材料として知っておきたいことがございますので、そちらはもう相当に資料があるという前提のもとにちょっと聞いてみたいと思うのです。  まず総理は、これは核廃絶につながる、核廃絶を目指すものだからということで理解を示して今日まで来ていると思いますが、このSDIがどういう論理によって核廃絶につながるのか、お教えいただきたいと思います。
  230. 栗山尚一

    栗山政府委員 これは従来からアメリカ政府の公式資料、それから例えばこの問題に相当深く関与しておりますし、米ソの軍縮交渉に顧問として参画しておりますニッツェ大使が、ロンドンその他の場所でアメリカ政府のSDIに関する考え方、いわば公式見解、統一見解的なものを述べております。  そこで、アメリカ側が従来から明らかにしておる考え方をごく簡単に申し上げますれば、現状のまま放置しておくのでは米ソ双方とも核戦力増強が行われて、しかもその中でMIRVでありますとかそういう第一打撃能力が高い核戦力の増強が行われて、米ソ間の核戦略のバランスが非常に不安定なものになる傾向が出てきている。そういうものを安定的な関係に戻す一つの手段として、防御的なシステムを導入するということを考える価値があるのではないか。そういう防御的なシステムとの組み合わせによって、従来必ずしも可能ではなかった戦略核の戦力の大幅な削減が初めて可能になるであろう。米ソ双方がそういう物の考え方を受け入れて核戦力の大幅な削減に着手をすれば、そういう方向が徹底するに伴って本当の意味での核軍縮が可能になって、究極的にはこれが核の廃絶に結びつく可能性があるであろう、ごく簡単に申し上げますと、こういうことがアメリカのSDIの背後にある考え方ということに申し上げられるだろうと思います。
  231. 木下敬之助

    ○木下委員 このままではしようがないから、こういうことを研究してみようか。しないよりはいいのですけれども、プラス面とマイナス面と相当に出てきておるし、これは大変な天文学的数字に近いようなお金もかかるような計画でございます。そういう中で、今言われたような範囲でこれが核廃絶につながっているから賛成するということは、全く言えないのではなかろうかという感じがいたします。これだけのものに取り組むのに、もしかしたら可能かもしれないからやってみるというのでは根拠不足である、確実にこのようにつながるという論理の組み立てが必要でなかろうかと思います。今聞いた範囲では、核廃絶につながるような実感は全く受けませんでした。  次に、これは核抑止力となる、このようにも伺っておりますが、核抑止力となるというこの論理はどういうことですか。
  232. 栗山尚一

    栗山政府委員 これは先ほど申し上げましたことの延長線上の話でございますが、一般的に一九七〇年代の後半からアメリカにおいて非常に強く意識されるようになりましたのが、核のバランスの不安定化という問題でございまして、この不安定化という問題の背後には、ソ連の非常に大型のICBMが存在し、そのICBMが非常に多数の弾頭を積む能力を持っている、そういう大型のICBMで非常に精度の高いものが多数の弾頭を積むことによって、アメリカの核報復能力が非常な脅威にさらされて、その結果、戦略的なバランスが非常に不安定になる傾向が出てきているということが強く意識されておるわけでございます。  そういうバランスをより安定したものにするためには、核軍縮、そういうICBM等の大幅な削減を実施していく必要があるということで、アメリカは従来からSTART交渉等におきまして、そういうソ連の大型ICBMの大幅な削減に非常に力を入れて交渉してきておるわけでございますが、ソ連にはソ連の事情があって、なかなかそういうものが達成できないというのが現状でございます。  そういう戦略的に非常に不安定な状況にあるものを改善するためには、米ソ双方が持っておる核戦力の水準を大幅に下げる必要があり、下げるための一つの有効な手段として考えられるものが防御手段の導入であるというのが、ニッツェ大使の考え方として非常に強く出ておるわけでございますが、そういうことによって核の先制政撃という可能性を少なくするということを通じて今度は核の抑止力が強まるであろう、より安定的なバランスというものが東西間に生まれるであろう、これが基本的な戦略面でのアメリカの考え方でございます。
  233. 木下敬之助

    ○木下委員 アメリカの報復力を弱められることは抑止力がなくなる、だから報復力を温存するためにこのSDIが役に立つ、だからそれによって抑止力があるのだという論理で今言われたわけですが、それでは核廃絶につながるという意味では全く矛盾しておる、このように思いますし、また先制使用ということを申しましたが、私もこの先制使用の誘惑というのは大変な恐怖であると思います。そういう意味で、このSDIが設置されてしまってそれが相当に完全な能力を持っておれば、先制使用の誘惑は相当に減ってこようかとも思いますが、その設置をする前に先制使用したいという誘惑に対しては、より強い誘惑を起こさせるだけであろうかと思いますが、この点はどうお考えになりますか。
  234. 栗山尚一

    栗山政府委員 今、国際的にSDIが論議されておりますときに言われておる一つの問題は、まさに今木下委員の御指摘のような問題でございます。それに対しまして、これは中曽根総理もこの前ボンの会談のときにレーガン大統領に確認をされたところでもありますし、サッチャー首相はその前に訪米しましたときに、やはり同じようにレーガン大統領との間で確認をしているところでございますが、そういう防御システムというものを一方的に展開するという場合には、これは相手方に対して一方的な優位を追求するというものに受けとられて、したがって委員指摘のような問題も生じる可能性があるということでございますので、アメリカとしてはあくまでも米ソの話し合いによって、お互いにそういう攻撃兵器の大幅な削減と防御兵器の導入というもののプロセスを積み重ねていくことによって核兵器の大幅な削減、ひいては最終的には核兵器の全面的な廃絶という方向に持っていく、これはあくまでも米ソの合意に基づく協力的な過程というものを通じて、東西間の戦略的な安定というものを達成していこう、そして究極的には核の廃絶に持っていこう、こういう考えでございます。
  235. 木下敬之助

    ○木下委員 核の廃絶を目指しておるという観念については私も賛成いたしますが、それにどのように具体的に結びついていくのか、プラスの要素、マイナスの要素というのがまことにあいまいであると思います。  もう一つ最後に、SDIは核兵器なのか非核兵器なのかというこの問題も、私、相当に質問いたしましたがまだ全く答えが出ておりません。この間NHKでやりましたテレビ放映等で見ましたら、発射されたのがわかるとすぐにそれに合わせて打ち上げて、空中で核爆発させてそれを多数の核弾頭に向かってレーザー光線で撃ち落とす、こういうテレビでの仮想の場面も見ましたが、そのときのエネルギーはそこで核爆発を中で起こさせる、それによって打ち上げた本体もそこで吹き飛んでしまう、こういう状況でございます。そのもの自体が即宇宙で核爆発をさせて吹き飛んでしまっているという状況が、テレビの画面等を通じてよくわかりました。こういったことも含めて、もっともっと判断までに材料がいっぱい要ると思いますが、きょうも時間切れでございます。私としましては、政府の決定前にもっともっと質問いたしたいことがたくさんございますし、答弁十分だとは言えないと思います。  最後に外務大臣、この問題で理解を示したということで、今参加、不参加を決める、そういう状況にだんだん入ってくるんだと言われておりますが、これは不参加とか不支持とかいう決定もあり得るという状態に今あるのですか。もうそれはないという状態に今現在あるのですか。
  236. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今のところは理解を示しておる、こういうことでありまして、これからの答えはいろいろさまざまな答えがあるだろう、こういうふうに思います。
  237. 木下敬之助

    ○木下委員 確認します。さまざまなということは、不参加ということもあり得るということですか。
  238. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今、予断を持ってそういうお答えをする段階にはない、とにかく研究に対する理解は示しているわけですから、後これからどうするかということについては、確かにおっしゃるようにこれからまだ検討しなければならぬ課題もあると思っていますから、そういうものを見た上で政府自身の自主的な判断を下さなければならぬ、こういうふうに思います。
  239. 木下敬之助

    ○木下委員 時間切れですけれども、お逃げになることないじゃないですか。理解というのは理解であって、参加もあれば不参加もある、こういう現在の状況ですかとお聞きしておるのですから、両方ある、参加も不参加もある状態であるとお答えいただいたらもう終わりになりますが、どうぞ。
  240. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ですから、いろいろさまざまな答えがある、こういうふうに……
  241. 木下敬之助

    ○木下委員 そのさまざまに、今の二つを中に入れることはできませんか。
  242. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まあ、幅広く考えればそういうことですね。
  243. 木下敬之助

    ○木下委員 終わります。
  244. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、岡崎万寿秀君。
  245. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 私は、まず、五月二十二日にアメリカ国務省が公開をしました、一九五二年から五四年までの外交文書について質問をいたします。  その中には当然日米行政協定をめぐる交渉の経過、その文書があるわけでございますけれども、そこに、日本有事の際に日米統合軍を編成をしてそして米軍司令官が指揮権を握る、そういうことをアメリカの方が強く要求したことが書かれていますが、こういう交渉経過事実があったかどうか、その点に関してのみ御回答願います。
  246. 栗山尚一

    栗山政府委員 行政協定交渉の過程におきまして、アメリカ側から有事の際に対処するために統合司令部を設ける、そしてその統合司令部で指揮をするための司令官と申しますか、そういう者を任命する、そういう規定を行政協定の中に設けたいという要求があったということは、そのとおりでございます。
  247. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 当時の吉田茂総理の著書、きょう持ってきましたけれども、「回想十年」の中で、この問題が行政協定交渉の一番の難関であったというふうに述べているわけです。そして、行政協定二十四条には「日本区域の防衛のため必要な共同措置を執り、」こういう表現で、吉田氏自身も、やや漠然とはしているがと述べているような解決を見ています。また、当時交渉に当たりました西村条約局長も著書の「安全保障条約論」の中で、「先方の強い意向があって……妥協案で解決された」というふうに書いています。  そこでお聞きしますけれども、行政協定のこの部分は漠然とした妥協案であったこと、これはお認めになりますね。端的にお願いします。     〔委員長退席、野上委員長代理着席〕
  248. 栗山尚一

    栗山政府委員 妥協案という表現がよろしいかどうか、必ずしもよくわかりませんが、交渉の過程におきまして、吉田総理の回想録にも出ておりますが、日本側が、先ほど私が申し上げましたようなアメリカ要求に対して終始これは受け入れられないという立場を一貫してとりまして、最終的にこの二十四条にあります規定でもって合意をした、こういうことでございます。  ちなみに、ちょっと正確に御理解いただきたいと思いますので補足いたしますが、二十四条の規定は、「日本区域の防衛のため必要な共同措置を執り、且つ、安全保障条約第一条の目的を遂行するため、直ちに協議しなければならない。」ということでございまして、共同措置をとることをあらかじめ二十四条で約束をしたという内容のものではございません。
  249. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 漠然としていることはお認めになるでしょう。  そこで問題は、日米行政協定が発効して以後なんです。これは、調印されたのは五二年の二月二十八日だったのですが、その後が問題なんですね。今回公開された一九五二年七月二十四日付のマーフィー駐日大使から国務省あての極秘文書によりますと、マーフィー大使とクラーク極東軍司令官は、その電報を打った前日の二十三日の夕方、吉田首相と岡崎外務次官と非公式に会談をして、有事の際に日米両軍の統合司令部を設ける件、あるいは調整の件などについて、日本側がまだ明確な理解が欠けているという懸念を伝えられているわけです。また、一九五四年二月八日のアリソン駐日大使のメッセージには、同じ問題で吉田首相と会談したことが述べてあるわけです。  お聞きしたいのは、行政協定後も、こうした日米統合司令部の設置やあるいは米軍による指揮権の問題で、アメリカの方から強い要請とそれに基づく交渉があったかどうか、その事実だけをお答え願います。
  250. 栗山尚一

    栗山政府委員 アメリカ側の発表した文書に、岡崎委員指摘のようなアメリカ側の文書があることは承知しております。これに対応する日本側の文書につきましては、目下調査中でございますので、いかなるやりとりが当時日米間にあったかということにつきましては、現段階においては確認できません。
  251. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 私は、三月に日本の外交文書が発表されたときに、この部分が欠けているから出すように要求しましたが、まだ膨大な資料なのでということで報告されなかった。アメリカ側は既に発表しているのですよ。  重要なことは、一九五二年七月二十四日付のマーフィー駐日大使の報告でも、そして五四年二月八日のアリソン駐日大使の報告でも、吉田首相が、日本有事の際には日米統合司令部の設置と米軍司令官の指揮権を、これは秘密にしておく必要があるということを述べながら、その点では疑問の余地なしとして再確認している点なんです。アリソン駐日大使は、メッセージを書いた直後の二月十七日のアメリカ下院外交委員会の秘密聴聞会でも同様の証言をしていますし、その議事録は公刊もされています。  そこで、この二つとも現職の駐日大使の報告なんですよね。この事実をまさか否定なさるわけにはいかないと思いますが、どうですか。
  252. 栗山尚一

    栗山政府委員 アメリカ側の記録自体について、私どもはこれを積極的に否定するものは持ち合わせておりません。ただ、いずれにいたしましても、そういう会談がいつ、どういう形であったか、その中でどういうやりとりがあったかということにつきまして、目下我が方の記録を調査中でございますので、アメリカ側の今回公開されました資料について、外務省としてその内容を確認できる状況にございません。
  253. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 これが日本の方に伝えられたのは五月二十三日なんですよ。これは日本の軍事力の指揮権が外国によって握られていた、こういう非常に重大な問題なんで、当然国会でもマスコミでも論議されることでありますし、さかのぼって資料を調べれば、できないわけじゃないと思うのです。これを否定なさるのでしたら、当然否定するだけの日本側の資料を発表する必要がある。それもされようとしないで、同会で何回聞いても、まだ事実がはっきりしないというふうにしてお逃げになる。よろしくないと思います。  安倍外相に聞きますけれども、そういう態度では日本の国民は納得しないし、歴史をどう正確につづるかという問題にもかかわるわけなんですね。そういう点で、これにかかわる日本側の交渉の資料を速やかに公開する、その約束をしてくださいますか。安倍さん、お願いします。資料公開の問題です。
  254. 松浦晃一郎

    ○松浦説明員 先生御指摘の外交文書公開の全体の問題につきましては、御承知のように昭和五十一年より逐次公開してきておりまして、前回もちょうど三月に公開したばかりでございますが、その中に、御指摘のように、日米行政協定関係は審査作業がまだ終了しておりませんので入っておりませんで、先生の御指摘は、これをできるだけ早く公開すべきであるということかと思いますが、その点に関しましては、今関係文書につきまして、私どもの基本的な公開制度の原則に従って検討中でございます。
  255. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 検討中ということはいつまで続くのか知りませんが、安倍さん、こういう非常に重大な、国の中枢的な問題についての文書がアメリカによって公開されているわけです。日本政府が、これに対して調査中ということでいつまでも態度を明らかにしないということは、正しくないというふうに思うのですね。どんなに日本に都合が悪い文書であっても、この部分に関して速やかに公開する、こう約束なさいますか。
  256. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今政府委員から、検討中だと申しておりますから、検討した結果、日本の公開に関する諸原則を踏まえて対応したい、こういうふうに思います。
  257. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 検討して、発表しないことがあり得るということでは困るのですよ。少なくとも、この部分アメリカは公開しているわけなんで、どっちが真実なのか、当然国民は知りたいし、今後にもかかわるわけですね。ですから、この部分は不都合であっても公開すると、約束をお願いしたいと思うのです。
  258. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今申し上げましたように、随分検討しなければならぬと思っております。外交記録公開に当たっては、我が国は我が国として独自の判断に基づいて公開の適否を決定しておるのでありまして、米国政府が米国の判断に基づいて公開した日本関係文書と我が国の公開文書は、必ずしも一致しない場合も当然あり得ると考えております。いずれにいたしましても、今回の米側の文書公開の実態も検討した上で、我が方の記録公開のための準備作業を急ぐことといたしたいと思います。
  259. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 一般論はそうなんでしょう。しかし、事一国の軍事力の指揮権を外国にゆだねた、憲法違反の事実を口頭了解で密約していたということなんですよ。この密約の事実を相手国の公開資料によって明らかにされながら、日本の方はそれをはっきりするかどうかも示さないというのはひきょうだと思うのです。国民に対してこれは許されないというふうに私は思います。  そこで、報道によりますと、外務省は「仮に密約めいたものがあったとしても、日米行政協定が六〇年の安保条約改定の際に日米地位協定へと変わった時点で、もはや存在しなくなったと考えてよいだろう」というふうに、五月二十三日付夕刊に載っていますが、そういうふうに発言されているのですが、そう見てよろしいですか。
  260. 栗山尚一

    栗山政府委員 御指摘の新聞報道については、私全く記憶がありません。しかしながら、従来からもこれは申し上げていることでございますが、有事の場合の日米間の指揮権につきましては、従来から政府といたしましては、日米それぞれが独自の指揮権を持って共同対処をするということで、この点は明確でございますし、それから、より具体的には、そういう考え方に基づいて、昭和五十三年に「日米防衛協力のためのガイドライン」というものがつくられまして、そのガイドラインの中でも明確に、日米の指揮権は別々であるということが確認をされておるわけでございますので、この問題については何ら日米間には誤解がないということは、明確に申し上げられるだろうと思います。
  261. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 密約があったことをお認めにならないから、結局旧行政協定のころから変わりがないというおかしな答弁になってしまうのですよ。当時は、はっきりとアメリカの資料によっても、アメリカ軍が指揮権を持っているというふうになっているわけですね。それを変わりないとなれば、とんでもないことなんですよ。変わっているわけですね。変わっていることを認めないというのは、これは歴史の偽造だと思うのです。  あなたがガイドラインをお挙げになったから、ガイドラインに関して言いますと、元統幕の事務局長であった左近允尚敏さんが一九八二年八月十七日自民党の安全保障制度調査会で、これはその現物がございますが、ここで「日米防衛協力のためのガイドライン」に基づく共同作戦研究について、第一回研究会の中で次のように述べられています。「例えばアメリカのP3Cが潜水艦を見つけた。そして近くにいたのが日本の護衛艦であって、その現場にかけつけたといった場合ですが、そのアメリカのP3Cの機長と日本の護衛艦の指揮官が並列でやっているのでは何もできませんので、その場合には手続的にこれはもう護衛艦の艦長が飛行機をですね、コントロールしていいというふうになっております。」こういうふうに述べておるわけです。つまり、共同作戦中は並列的でない統一指揮、これがコントロールという形であり得る、こういうふうに述べているが、このとおりですね。
  262. 栗山尚一

    栗山政府委員 私は、実際の共同対処の場合の細かい日米双方の調整につきまして御説明をできる立場にございません。しかしながら、非常に明確なことは、安保条約五条の事態で日米共同対処ということになった場合に、先ほど申し上げましたような、例えば単一の司令部を設けて単一の指揮官のもとに日米が行動をする、こういう考え方は、日本側ももちろんのこと、アメリカ側も持っておりません。「防衛協力のためのガイドライン」に書かれましたことは、先ほど私が申し上げましたように、あくまでも基本的に指揮権というものは、自衛隊の指揮権と米軍の指揮権は別々である、そういう前提で、しかしながら有事に効果的に共同対処するためには、お互いの緊密な協力、調整というものは必要であろう、そのための研究はいろいろあらかじめしておく必要がある、こういうことでガイドラインができておるということでございますので、指揮権の統合、単一の指揮権のもとに、あるいはアメリカの指揮権のもとに自衛隊が置かれる、こういうことは全く考えられていないわけでございます。
  263. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 緊密な調整という中に問題があるわけですね。事は戦闘行為ですからね。当然指揮権、命令系統というのは単一でなくてはいけませんし、あなたが言うような並列的であるならば、一つ一つの事態に対してもうまく対処ができないわけです。ですから、手続的には、そういういろいろなコントロールという形で部分指揮も認められているわけですね。これはあなたの答弁じゃなくて、本当は防衛庁答弁すべき問題だったのですよ。そうしたら、もうちょっと明確だったのです。ただ長々とおっしゃるから、ちょっとこの次に答えてください。  ここで使われているコントロールというのは、アメリカの統合参謀本部の「最新軍事用語辞典」によりますと、「全面的な指揮より小さな権限で、指揮官により隷下あるいは他組織の活動の一部に対し行使される権限」と書いてあるわけです。米軍でもいいのです、今日ですからね。自衛隊でもいいわけですが、そのいずれかが調整という形でコントロールするということ、現実にこれは今の共同作戦や共同訓練であるわけですね。調整の中にコントロールが含まれているということ、これはお認めになりますね。
  264. 大野琢也

    ○大野説明員 お答えいたします。  具体的な調整のあり方については、現在研究を進めているところでありますが、この分野については余り研究が進んでおりません。現時点ではっきり申し上げることはできませんが、いずれにいたしましても、日米が共同して対処する場合に、指針に書かれてあるとおり、自衛隊と米軍というのは「それぞれの指揮系統に従って行動する。」ということになっておりまして、そのとおりやっております。
  265. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 用意してきた答弁をお読みになるので、それでは国会の審議にならぬわけですよ。左近允さんの例を挙げながら、現実にコントロールという形で指揮権が一元化している、そういうふうに自民党の方でちゃんとレクチャーされているわけですね。日米調整機関というのもガイドラインに書かれていますし、また日米共同作戦研究もありますので、必ずこの中には調整の名のもとにコントロールという形で指揮権の一元化が進んできている、このことは非常に重要だろうと思うのです。こういう問題については、かつて行政協定のときも外務省が掌握していましたので、安倍外相、こういう問題についても正確に掌握されていますか。日本自衛力、軍事力の指揮権の問題というのは、国政にとっても外交上にとっても非常に重要な問題でありますので、どういうふうに掌握されていますか、一言御見解を願いたいと思います。
  266. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、先ほどから北米局長とか防衛庁当局が答弁したとおりに理解しております。
  267. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 これ以上聞いてもお答えにならないでしょうから、核持ち込み問題について質問いたします。  ここに、アメリカ議会図書館の専門官であるロバート・G・サッター氏が議会に提出した「米・ニュージーランド関係の危機」、この報告書を持ってまいりました。この報告書には、「米海軍の原子力推進および核兵器能力艦船」という付録がつけられています。簡単に紹介しますと、核兵器能力は、潜水艦のうち戦略ミサイル潜水艦は一〇〇%、攻撃型潜水艦は九十八隻中八四%、空母は十四隻中一〇〇%。主要洋上戦闘艦では、船艦は二隻中一〇〇%、巡洋艦は二十九隻中一〇〇%、駆逐艦は六十八隻中一〇〇%なんです。これは、アメリカ議会に対する議会図書館の報告書ですから、大変権威のあるものなんですね。  そこで、ここで新しい点は、駆逐艦と巡洋艦が一〇〇%、核積載能力を持っているという点ですが、これはそのとおりですね、端的にお答え願います。
  268. 栗山尚一

    栗山政府委員 端的にお答えできる立場にございません。
  269. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 北米局長としていろいろなことについて御存じのはずなのに、しようがないと思います。そのとおりなんです。調べてもらいたいと思います。  そこで、一〇〇%の積載能力を持った米艦船、例えばカール・ビンソン、エンタープライズとかロサンゼルス級の原潜とか、こういうのは日本の横須賀、佐世保等にはどんどん入港していますが、一〇〇%核積載能力を持ったアメリカの巡洋艦や駆逐艦は、これらの軍港だけではなくて、日本一般港にも寄港しているわけですね。昭和五十七年以降で結構ですけれども、こういう駆逐艦、巡洋艦が寄港した港と、その回数をお答え願いたいと思います。
  270. 栗山尚一

    栗山政府委員 私どもが把握しております数字、すなわち施設、区域外の一般の港への出入について申し上げますと、昭和五十七年から五十九年までの間に一般港に入港いたしましたのは、駆逐艦が延べ十二隻、巡洋艦が五隻でございます。
  271. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 時間がありませんので、私は含めて申し上げましょう。舞鶴一回、佐賀関二回、大分二回、鹿児島三回、別府三回、下田一回、呉二回、こういう形で一般日本の港に一〇〇%核積載能力を持ったアメリカの駆逐艦、巡洋艦が入港しているわけです。核持ち込みの危険が非常に国民の不安となっている中で、このことは軽視できない問題であるということを指摘しておきたいと思うのです。  時間の都合で先に進めまして、日米行政協定に関しても大変秘密外交くさい密約問題があるわけですが、それに関連もしまして、自民党議員が国会に提出しました国家機密法というのは、スパイ防止の名のもとにその保護対象として防衛機密とともに外交機密も挙げているわけですが、安倍外相、これは事前に相談を受けましたか、もし受けたとするならば、どういう御意見をお述べになりましたか。
  272. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは自民党独自で十分検討されて、国会へ提出というところに踏み切られたと思います。私自身は、相談を受けておりません。
  273. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 安倍外相は直接関係されてないということですね。よろしゅうございますね。  では、直接は関係されてないのですけれども外務省には相談したというふうに報道されています。この中で、「国家機密」として「外交に関する事項」が挙がっているわけですが、「外交上の方針」や「外交交渉の内容」などをいろいろ挙げているわけですね。これらは国会でも大いに論戦をし、あるいはマスコミでもどんどん報道してきたことなのですが、この中で、だれが何を基準にして「国家機密」だと決めるのですか、どこからどこまでが機密だというふうに区分をするのですか。     〔野上委員長代理退席、委員長着席〕
  274. 松浦晃一郎

    ○松浦説明員 先生御指摘の点にお答えします前に、先生が最初、報道によれば外務省が協議されたということがあるということをちょっとお触れになりましたけれども、安倍大臣が先ほどお話しになりましたように、大臣自身も協議を受けておられませんが、私ども外務省としても、これに関しましては協議を受けておりませんので、最初に念のため申し上げたいと思います。  したがいまして、私、今ここに、今回自民党でお決めになりましたスパイ防止法案の全文を持っておりますけれども、個々の点に関しまして、具体的にこれがどのように解釈され、どのように運用されるかというのを、今から国会でぜひいろいろ御議論いただきたいところでございまして、まだこの法案につきまして、提案理由の説明もされてないと承知しておりますので、現段階で私どもがこれをどう考えるかということを申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思いますが、私の手元にございますこのスパイ防止法案の第二条によれば、「国家機密」とは防衛と外交が入っておりますけれども、外交に関しましても、我が国の防衛上秘匿することを要するという限定がかぶさっていると承知しております。
  275. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 説明のようないきさつは、一応お聞きしておきましょう。しかし、外交上の機密があるということですけれども、これを判断するのは政府なんですね。この法案等をよく検討しますと、政府が一方的に判こ一つ押せばこれで「国家機密」になり、国民の知る権利や国政の調査権、審査権さえも、いろいろ重大な制約を受けかねないような中身になっているわけですが、特に外交方針が挙がっている点が私は重要だと思うのです。外交方針というのは、国の進路にかかわる重大問題で、当然国会で十分に論議すべき問題だと思うのですね。  お聞きしますけれども、この法案で「国家機密」とされるような「外交上の方針」は、現在どんなのがあるのですか。
  276. 松浦晃一郎

    ○松浦説明員 先ほど申し上げたことの繰り返しになりますけれども、この法案に関しましてはまだ提案理由の説明もされておりませんので、私どもから、この法案の一条一条についてどう解釈するかというのを申し上げるのは適当でないと考えますけれども、念のため、先生御指摘の点に絞ってちょっとこの法案に即してどう書いてあるかということだけ申し上げますと、先生御指摘のように「外交上の方針」というのは、確かに別表の三に「外交に関する事項 イ 外交上の方針」というのがかかっておりますけれども、私がこれを一読した限りでは、外交上の方針すべてがこのスパイ防止法案の保護法益となっております「国家機密」に入るということではなくて、先ほどちょっと御議論申し上げました第二条で防衛と並んで外交が「国家機密」の中に入っておりますけれども、あくまでも我が国の防衛上秘匿することを要するという限定がかかっていると了解しております。  いずれにしましても、先生御指摘のような国政調査権なり知る権利なり、さらに言えば表現の自由というものがこういうことで制約を受けるということは、私どもも決して好ましいと思っておりませんので、この法案については広く国会で御審議いただきたいと考えております。
  277. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 今言われました防衛上秘匿を要するという外交方針、これは今日本にあるんですか。
  278. 松浦晃一郎

    ○松浦説明員 また繰り返しになって申しわけありませんけれども、具体的な点は、現段階では私どもから申し上げることは差し控えさしていただきたいと思います。この具体的な点については、まさに国会でいろいろ御議論いただいて、その結果を踏まえて私どもとしても考えていきたい、こういうふうに考えております。
  279. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 私が言っているのは、そういう御答弁をなさるから法案について言っているんじゃないんですよ。防衛上秘密を要するような外交方針が現にあるのかどうか、聞いているんです。なければないでいいんですよ。
  280. 松浦晃一郎

    ○松浦説明員 一般的に申し上げますと、先生御承知のように国家公務員法というのがございまして、その百条におきまして「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。」ということで、これは先ほどのスパイ防止法案の「国家機密」とは離れますけれども一般に秘密というものはございまして、これに従って外務省としても対応を考えており、先生の御指摘一般論として我が国の防衛上秘密を要するようなものがあるかどうかという点は、具体的な点に触れますのでなかなか申し上げにくいと思いますけれども、私は概念的には、スパイ防止法案のいわゆる「国家機密」という点から離れますけれども一般的には存在すると考えております。
  281. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 あなたと余りやり合っても時間のあれですけれども、安倍外相、外交上の方針が国家機密にされるということは大変な問題だと思うのですね。外交上の方針こそ、国会で大いに論議すべきことじゃないかと思うのですね。これを同法案は国家機密だということでいろいろの刑に処すことになっておりますけれども、こういうことはあってはならないことだというふうに思いますけれども、外相はどうでしょう。
  282. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは法案が出てから、もっと具体的に我々も研究してお答えした方がいいんじゃないかと思います。ですから、非常に一般的な議論になってしまいますけれども、これは、非常に制限された形での防衛上秘匿しなければならない国家機密、外交機密ということでかぶせてあるわけですから、外交方針の中でも例えば安保条約、これは日米間において安保条約を守っていくということはまさに外交上の基本方針でございます。そうした安保条約の運営に関して、あるいは機密的なものがないとは言えないわけです。あるかもしれないわけですから、そういう外交方針というのは、幅広く考えれば、安保条約関係というものはあると思います。その安保条約関係には、機密というものが存在していることは事実であろうと思います。
  283. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そこが、私は非常に懸念を感じるわけですね。広く外交方針から考えて、あるかもしれないし、ないかもしれない、その区別がはっきりしない。これは、同法案が実際に論議になってからの問題だというふうにお逃げになるわけですけれども、ここに非常な危険性があると思うのですよ。本来、外交上の方針というのは国の方針、進路ですから、公にして深く論議しなくちゃいけない問題を勝手に隠しておく、そして、それを調査しあるいは取材し公にするとそれが罪になる、そういうことはあってはならないことだというふうに私は思うわけですね。  現在外務省には、どのくらいマル秘の件数がございますか。時間がないので端的にお願いしますよ。
  284. 松浦晃一郎

    ○松浦説明員 恐縮でございますが、私、今ちょっと資料を持っておりませんので数字は申し上げられませんが、かなりございます。
  285. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 これも報道ですけれども、約九万件あるというのですね。私の方が知っているようではしようがないと思います。  それで、核持ち込み問題につきまして、私たちも随分追及してきましたし、また国会でも論議され、いろいろな資料も提出され、マスコミ等でも盛んに事実あるいはいろいろな資料を公表し、暴露したわけですけれども、こういう問題についても、やはりこれは国家機密として今後は対象になるということになってくるわけですけれども、これはあれですか、法案に即さなくてもいいのですけれども、外交上の何にひっかかるというふうにお考えなのですか、こういう核持ち込みの問題につきましては。
  286. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 核持ち込みはありませんから問題はありません。
  287. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そう言い切ってしまえば問題はないでしょうけれども、いろいろ疑念があるからこそマスコミも調査をし、私たち調査して、国会で論議があるわけなんですよ。  では、これを、事実に近いのをいろいろ暴露する、そういうことがあっても決して問題はありませんね。国会で暴露しても、あるいは新聞等でスクープしても、これに関しては問題ないということを言い切れますか。
  288. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 暴露とか暴露でないとか——核持ち込みの場合においては事前協議の対象になるわけですから、国会でしばしば答弁したのと同じことで、そういう場合は日本の場合はノーであるということを言い続けておりますし、日米間の信頼は非常に堅固なものがあると確信しております。
  289. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そういう答弁でしょう。  さきの行政協定交渉に関する公開文書の中で、一九五二年六月十六日付の極秘文書によりますと、当時の吉田首相と岡崎外務次官が米軍の指揮権の密約合意について「その合意を公表することは不可能である。なぜなら、それは政治的に重要で、自由党にとっては死の鐘声」、弔鐘ということでしょう、「鐘声となりかねず、来るべき総選挙で政府の確実な敗北を意味するからだ。」と述べた旨が証されているわけです。これは国益じゃなくて、まさに党益であるしあるいは政府益、そのために国民の批判を恐れた密約となっているわけですね。  私は、同法案には触れずに、行政協定のこの部分について聞いているわけですが、もしここに書いてあるような事実であるならば、外相、こんな密約まで国家機密というふうにお考えになりますか。非常に重要な内容です。しかし、これを公表すると政府がつぶれる、自由党が選挙で完敗する、そういう理由で秘密にしているわけですね。こんなことが国家機密になりますか、お答え願いたいと思います。
  290. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私、今そういう専門的な立場といいますか、専門的知識もありませんから、そうした仮定の御質問に対してはやはりお答えできません。
  291. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 きょうは、いろいろ聞いてもお答えにならないようです。しかし、これが国民の知る権利やあるいは国会の審議権や調査権に対して重大な影響をもたらすことは、見れば見るほど明らかであります。これは外交機密も入っておりますので、私は、外相に撤回を強く要求するものであります。  そこで、最後に一問だけですが、レーガン大統領は、十三日に米議会に提出した化学兵器に関する報告書、ここで、在日米軍にも化学兵器を早急に配備することを提唱しています。しかし、化学兵器の日本への持ち込みについては、例えば昭和四十七年十一月七日の衆議院予算委員会で、当時の大平外相が次のように述べています。「このことは、安保条約にそういう規定があるかないかを越えた、もっと高度の政治の問題といたしまして、わが国は、非核三原則その他毒性のガスが国土にあってはならぬという態度をとりまして、」「今後もこの態度は厳粛に貫いていかなければならぬ」そういうふうに答えながら、持ち込まれるようなことがあったら頑強に拒んでいく、こう言明されているわけです。また最近、昭和五十七年六月三日参議院外務委員会でも、外務省は同じような態度を再確認しておるわけですが、このレーガン報告、在日米軍へ化学兵器の配備、安倍外相ははっきり拒否なさいますね。これは国会でもしばしば答弁されておりますので、そのことはしかとお答え願いたいと思います。
  292. 栗山尚一

    栗山政府委員 まず、事実関係について私から御答弁申し上げますが、大統領に提出されました報告書につきまして、私ども入手いたしまして読みましたが、新聞報道で言われておりますような、日本を含めまして早急に海外に配備を必要とするというようなことは全く書いてございません。したがいまして、化学兵器の生産を再開した場合においても、その生産した化学兵器を海外に配備する必要はないというのが従来からのアメリカ政策でありますが、その政策が変わったということはないのであろうというのが私ども理解でございます。  大統領自身がその報告書を受けまして、議会にどういうコメントを出したかということについては、まだ大統領のコメント自身は入手しておりませんので、最終的にこういうのが大統領の意見であるということは現段階では申し上げられませんが、私どもアメリカのそういう基本的な政策が従来から変わったということは、何ら承知をしておらない次第でございます。
  293. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 アメリカ政策じゃないのです。安倍外相、まだその報告書のコメントは入手されていないということでございますけれども、化学兵器の配備は、日本は断固拒否するということが従来からの政府の方針なんですね。これは確認されますね。
  294. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この点については、政府は、一九二五年の毒ガス等の使用禁止に関するジュネーブ議定書の精神にもかんがみまして、使用禁止の化学兵器の我が国への持ち込みは認めないとの立場をとっておることは、御承知のとおりであります。
  295. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 以上で終わります。
  296. 愛野興一郎

    愛野委員長 次回は、来る二十一日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十九分散会