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1985-05-22 第102回国会 衆議院 外務委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年五月二十二日(水曜日)     午前十時三十二分開議 出席委員   委員長 愛野興一郎君    理事 奥田 敬和君 理事 北川 石松君    理事 野上  徹君 理事 浜田卓二郎君    理事 井上 普方君 理事 土井たか子君    理事 玉城 栄一君       石川 要三君    北川 正恭君       鯨岡 兵輔君    中山 正暉君       仲村 正治君    西山敬次郎君       町村 信孝君    松田 九郎君       山下 元利君    綿貫 民輔君       小林  進君    渡部 一郎君       木下敬之助君    岡崎万寿秀君       瀬長亀次郎君    田中美智子君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         外務大臣官房審         議官      斉藤 邦彦君         外務大臣官房領         事移住部長   谷田 正躬君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省北米局長 栗山 尚一君         外務省中南米局         長       堂ノ脇光朗君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省中近東ア         フリカ局長   三宅 和助君         外務省経済局次         長       恩田  宗君         外務省経済協力         局長      藤田 公郎君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         大蔵省国際金融         局次長     野崎 正剛君  委員外出席者         防衛施設庁施設         部連絡調整官  森山 浩二君         外務委員会調査         室長      高橋 文雄君     ――――――――――――― 委員の異動 五月二十二日  辞任         補欠選任   鍵田忠三郎君     松田 九郎君   佐藤 一郎君     北川 正恭君   田中美智子君     瀬長亀次郎君 同日  辞任         補欠選任   北川 正恭君     佐藤 一郎君   松田 九郎君     鍵田忠三郎君   瀬長亀次郎君     田中美智子君     ――――――――――――― 五月二十日  ILO未批准条約批准に関する陳情書(第三四七号)  人種差別撤廃条約早期批准に関する陳情書外二件(第三四八号)  婦人に対するあらゆる形態の差別撤廃に関する条約早期批准に関する陳情書(第三四九号)  韓国における金炳柱氏に関する陳情書(第三五〇号)  アフリカ飢餓救援拡大等に関する陳情書(第三五一号)  核兵器の廃絶と恒久平和の確立に関する陳情書(第三五二号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  米州投資公社を設立する協定締結について承認を求めるの件(条約第六号)  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 愛野興一郎

    愛野委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土井たか子君。
  3. 土井たか子

    土井委員 きょうは大きく三点にわたって質問をさせていただきたいと思うのですが、まずホットなところからお伺いいたしたいと思います。  ニュースによりますと、昨日イスラエル門田大使イスラエル外務省の高官に会われまして、日本赤軍岡本公三をイスラエル釈放したことについて日本政府の遺憾の意を伝えられたということでありますが、この遺憾の意の中身はどういうふうな意思表示をされたのかを御説明願いたいと思います。
  4. 谷田正躬

    谷田政府委員 門田大使イスラエル側に申し入れました遺憾の意の内容といたしましては、一つは、岡本公三の釈放ということはテロリストを野に放つことになるということ、それから、あの地域に存在しております日本赤軍を中心といたします国際テロリストグループの活動を今後勇気づけるという結果になるおそれがあるという点、それからさらに、この釈放については国際法上の疑義があるという点を申し入れたにもかかわらず、イスラエル側はこの釈放ということの態度を変えなかったということに対する遺憾の意の表明でございます。
  5. 土井たか子

    土井委員 今お答えになりました国際法上の疑義があるという点なんですが、国際法といいましても、どういう国際法にどういう疑義があるということに相なるのですか。
  6. 谷田正躬

    谷田政府委員 国際法上の問題点でございますが、これは一般国際法上、我が国日本人たる岡本に対しまして人的な管轄権を有しておりまして、同人が行った行為、つまりロッド空港襲撃事件で行った行為我が国刑法の適用の対象になります。それで、イスラエルがこの岡本イスラエル国内法に基づき刑に服せしめている限りにおいては、我が国としてこれに異議を差し挟むものではございませんが、今申し上げました我が国同人の人的な管轄権にかんがみまして、イスラエルがこの岡本を強制的に第三者に引き渡すことができるとは考えない、こういう点でございます。
  7. 土井たか子

    土井委員 今、一般国際法上と言われましたが、一般国際法上といっても抽象的でわからないのです。人的管轄権というのは、国際慣例とか国際慣習とか事実たる慣習とかいうふうな上で考えていくことはあり得るかもしれませんが、一般国際法というのはこれは何ですか、よくわかりません。
  8. 小和田恒

    小和田政府委員 ただいま領事移住部長一般国際法と申し上げましたのは、土井委員のお言葉で説明いたしますれば、慣習国際法ということだと御了解いただきたいと思います。申し上げました趣旨は、土井委員承知のとおり、国際法上は国家がそれぞれいろいろなことについて管轄権を持っておるわけでございますけれども、その管轄権が地理的な属地的な意味での管轄権人間に関する属人的な意味での管轄権とございますが、そういう見地から見ましたときに、岡本公三が確かにイスラエルにおってイスラエル国内法に違反するような犯罪を犯したという限りにおいて、イスラエルがこの岡本公三に対して属地的な意味での管轄権を行使して刑法対象にするということ、これは国際法上認められる。他方我が国は、依然として岡本公三が日本国籍を持っている日本人でございますから、その日本人である岡本公三に対して人的なつながりからくる一定管轄権を持っておる、その点から問題があるのではないかということを申し上げたわけでございます。
  9. 土井たか子

    土井委員 それで、非常に微妙なところなんですが、イスラエル側はそれを容認されましたか、いかがですか。
  10. 谷田正躬

    谷田政府委員 この国際法上の問題点に関しましては、先方は確かに国際法上問題があるということを一応容認いたしました上で、しかしながら、本件は極めて高度の政治的な問題——イスラエルにとっての国内政治的なという意味だと思いますが、問題であり、ともかく、この交換協定によってイスラエル人捕虜三名を取り戻すということをイスラエル政府としては最重要事項考えているので、残念ながら日本側の今度の申し出には応じられない、こういう反応でございました。
  11. 土井たか子

    土井委員 今度の対応には応じられないというふうに言われても、現実はもう動き始めて足を生やして歩いてしまっているわけですね。外務大臣、遺憾の意を表明されて、後、それはそれでもうぶち切りでありますか。何らかイスラエルに対して、交渉なり物を申すなり対応考えられているのですか。いかがですか。
  12. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 我が国から正式に外交ルートを通じまして遺憾の意を表明して、これに対してイスラエルから部長が今申したような形で、日本に対して申しわけなかった、しかし、イスラエルとしての高度の政治的な立場からこれを釈放せざるを得なかった、ひとつ日本イスラエル関係に悪い影響を及ぼさないようにしてほしい、こういうふうな、むしろイスラエル側当局としてのいわば謝罪に近いような回答がありました。日本イスラエル関係においては、これでもって外交的にはそれ以上の措置をとるという考えはありません。
  13. 土井たか子

    土井委員 今、日本イスラエル間においては、それ以上の外交的にとやかく言う問題はなかろうという趣旨のことを外務大臣おっしゃっているのですが、一九七二年の五月三十日に例のテルアビブ空港乱射事件というのがあったわけであります。そのときに、岡本公三は逮捕されて裁判にかけられたという経緯があるわけですが、日本政府に当然のことながら法的責任はございませんけれども、しかし人道的見地からイスラエル政府イスラエルの国民に遺憾の意を表明するために、当時たしか福永健司議員特派大使としてかの地に赴かれているわけです。そのときに各国の犠牲者弔慰金見舞い金として、大変多いですよ、総額百五十万ドルを日本赤十字を通じて贈っておられるという事実があるわけですが、これはそのとおりですね、どうですか。
  14. 谷田正躬

    谷田政府委員 そのとおりでございます。
  15. 土井たか子

    土井委員 総額百五十万ドルを贈られたということと同時に、当時イスラエルとの間に日本政府は何らかの取り決めをしていますね、どうですか。
  16. 谷田正躬

    谷田政府委員 ただいま委員指摘取り決めというようなものは、存在しないと了解しておりますが……。
  17. 土井たか子

    土井委員 岡本の身柄について、取り決めというものは存在しないと言われるけれどもイスラエルとの間に当然のことながら話し合いがあったでしょう。これはなきゃおかしいですよ、あるはずです。いかがですか。
  18. 谷田正躬

    谷田政府委員 岡本取り扱いについて話し合いがあったという御指摘でございますが、私どもはちょっとその事実は思い当たるところがございませんが、調べた上で御返事申し上げたいと思います。
  19. 土井たか子

    土井委員 外務大臣、これは非常に大事な話じゃないでしょうかね。そうすると、当時事件直後に福永代議士イスラエルに赴かれて、どういうことをかの地において物申されたのでありますか。そして、当然のことながらこれは岡本公三に対する問題でありますから、日本政府は直接関係がない話でありますけれども、わざわざ赴かれた以上は、日本政府イスラエル政府との間での話し合いというのがあるのです、ここであるはずです。いかがですか。これは調べた上でとおっしゃっていますけれども、お調べになる時間を待っていないと、次にこのことについて質問なり答弁を続行させていく意味を持ちませんから。どうですか。
  20. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私が聞いた範囲では、当時間本公三だけではありません、日本赤軍派ロッド空港事件を起こして多数のイスラエル人を殺傷した、こういうことで、日本政府としましても、やはり日本人であるということから、イスラエル政府に対して謝罪をしなければならぬということで、特使という形で当時福永代議士を派遣して、イスラエル政府に対しまして謝罪をいたしたわけです。これに対してイスラエル政府は、この犯罪日本国家が関与しているものでもないし、あるいは日本政府がこれに関与しているものでもないということは十分承知しておる、あくまでも個人がやった、日本人であるけれども日本人個人が犯した犯罪であるということで、政府とかあるいは日本国家に対して賠償を求めるとか、あるいはまたその責任を追及するということはしないというふうに、イスラエル政府がこの福永さんの謝罪に対して回答された。そして、この岡本公三の処断についてはイスラエル政府国内法に基づいてこれを行う、こういうことが言われた、こういうことまでは私も承知しておりますが、それ以上のことはないと思います。
  21. 土井たか子

    土井委員 そうすると、そのイスラエルの方の国内法にゆだねるというのは当然の話でありますけれども、しかし、そのことに対して日本としては何も注文つけをしないで、よろしくお願いしますという格好だったわけでありますか、いかがですか。
  22. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは当時の状況からして、よろしくお願いしますとかしませんとかいうふうな状況ではありませんで、イスラエル政府が、あれだけの市民の殺傷を受けたわけですから、イスラエル国内法によって処断をするということを言われれば、それ以上のことは日本政府としては言う立場にはなかった、こういうふうに思います。もちろん、日本刑法に違反していることは当然のことであります。
  23. 土井たか子

    土井委員 今、部長の方はさらに少し調べてということをおっしゃっていますから、それはぜひ調べていただかなければなりません、この点は恐らく一つ問題点であろうと私はにらんでいますから。  さて、今外務大臣は、日本国内法からしても刑法に抵触するということをはっきりおっしゃっているわけでありますが、ICPOを通じて所在を確認した上で岡本に対しての逮捕状をとって、そしてそれを実行するということが昨日来伝えられておりますが、犯人引き渡し条約というものは、日本はアメリカとの間には締結をいたしておりますが、それ以外の国との間に締結をいたしておりますか、どうですか。
  24. 小和田恒

    小和田政府委員 日本条約締結しているのは、米国だけでございます。
  25. 土井たか子

    土井委員 そういたしますと、これから岡本公三の行方がどういう方向にどういうふうに行くかというのはわかりません。一説によりますと、朝鮮民主主義人民共和国に行くのではあるまいかなどというふうなことを言われたりいたしておりますけれども大臣の感触としてはどういうふうにお考えになりますか。
  26. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私が得た情報では、今リビアのトリポリにおりますが、これは一時的なものであって、恐らくシリアダマスカスに向かうのではないか、こういう情報を得ております。
  27. 土井たか子

    土井委員 シリアダマスカスですね。これは犯人引き渡し条約というものが日本との間にはないのですが、しかし、逮捕状を持って出て話し合いをするということは、条約があるなしにかかわらず事実有効なんですか。そして、相手としてはこれに応ずるという義務がございますか、どうなんですか。
  28. 小和田恒

    小和田政府委員 全くの一般論としてお答え申し上げたいと思いますが、犯罪人引き渡しにつきましては、委員が御指摘のとおり、条約がある場合には、条約規定範囲内において両締約国犯罪人を引き渡す義務があるわけでございます。他方条約がない場合におきましては、それぞれの国が相手国の要請について自主的に判断をして、引き渡すかどうかを決めるということになると思います。
  29. 土井たか子

    土井委員 そうすると、自主的に決めるということでありますから、まことにそこのところは不確定要素というものがあることははっきりいたしております。それは日本として要求をしても、相手が拒否するということは十分に考えられますね。そういうことになりますと、これはさたやみという格好になるわけでありますか、いかがですか。
  30. 小和田恒

    小和田政府委員 ただいまの具体的な事件につきましては、まだ相手国も特定しておりませんし、相手国態度もわかっておりませんので、そのことについて答弁することは差し控えたいと思います。  ただ、一般的に申し上げますれば、相手国引き渡し要求に対して応じない場合には、それ以上それを強制することはできないというのが実情でございます。
  31. 土井たか子

    土井委員 さてこれは、中東問題というのは非常に難しゅうございまして、私たちからすると、どうも事実関係について見てまいりましても、複雑に絡み合っておりましてなかなか理解することが難しい、情勢が常に動いているというふうに言わざるを得ないのでありますが、テロというものが一つ戦争状況であるというふうな認識を持って、この戦争を行っている間の犯罪者捕虜というふうにお互い認識をしている部分があるようであります。今回この岡本公三に対して、捕虜という認識取り扱いがあったのかどうかという部分はいかがでございますか。
  32. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 門田大使イスラエルキムヒ外務次官に面会をいたしまして遺憾の意を伝えた、ところ、これに対して先方から、今回の捕虜交換に際しては国際赤十字が一切取り仕切り、イスラエル側釈放すべき者のリストにつき何ら選択の余地を与えられなかった、イスラエル側において捕虜の救出が国家的至上命令となっている状況下で、PFLP・GC側国際赤十字を通じて釈放要求してくるものを結局受け入れるほかはなかった、岡本釈放することについても極力反対したが、同人リストから外すことはできなかった、こういうことを言っておるわけでございますが、イスラエル側判断では、やはり捕虜交換というパッケージの中で、岡本もその一人ということで判断をしておるのじゃないか、私はそういうふうに思っております。
  33. 土井たか子

    土井委員 そうすると、刑法上の犯罪人であると同時に捕虜であるという、非常にややこしい問題になるわけでありますが、今回は、今の外務大臣の御答弁からすると、刑法上の犯罪人ということよりも捕虜という方向に重きが置かれた取り扱いであったというふうに考えられるが、この辺はどうでしょう。
  34. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 恐らくイスラエル側認識では、やはり捕虜交換の一環という立場岡本を扱ったというふうに私は判断をいたしております。
  35. 土井たか子

    土井委員 そうすると、一般論として、捕虜交換捕虜釈放するというふうな状況下にあった岡本公三に対して、刑事犯罪者として令状を発行して逮捕するというふうなことは矛盾はしないのですか、どうなんでございますか。
  36. 小和田恒

    小和田政府委員 先ほど外務大臣が御答弁申し上げましたとおり、イスラエル側は、大臣が申し上げましたような考え方ないしは立場をとっていることは事実でございます。  他方、これは実態的な問題と法的な問題とを少し区別して申し上げたいと思いますけれども実態的にイスラエル岡本公三を、イスラエルが押さえております。その他の捕虜一緒にいたしまして、その捕虜の中には過去の戦争において捕虜になった本当の意味での、法的な意味での捕虜も含まれていることは事実でございます。そういう者と一緒にいたしまして、捕虜交換対象としたという事実がございます。  他方、法的に見まして、これが国際法で言うところの捕虜になるか、捕虜に相当するかということになりますと、これは若干疑問でございまして、御承知のとおり捕虜というものは、国際法一定の基準を満たすものをもって捕虜としているわけでございます。例えば、一九四九年のジュネーブ条約の中で捕虜規定がございますけれども、そういう規定趣旨から考えまして、岡本公三が国際法に言うところの捕虜に当たるかということになりますと、ああいうテルアビブロッド空港におきまして、自分の身分も明らかにせず、武器を携帯していることを隠した形で、一般民衆に対して武器を乱射して、その結果一般人を多数殺害した、こういう事態でございますので、これが国際法上の捕虜に相当するという考え方は、少なくとも法的に見る限りとることはできないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  37. 土井たか子

    土井委員 そうすると、法的に見ることができない実態について、これは捕虜というふうな認識をしているという事実がある、こういう格好なんですね。そのように理解していいのですか。
  38. 小和田恒

    小和田政府委員 先ほども申し上げましたように、実態の問題と厳格な法的な問題とを区別して申し上げたいと思いますが、イスラエルが、イスラエル捕虜三名と交換イスラエルが押さえておるところのアラブ側敵対性の、敵性を持った人々を解放する、こういう約束を結んだわけでございます。そういう意味におきまして、これを非常に一般的な意味捕虜交換というふうな表現をしているのではないかと思います。  他方岡本公三は、先ほど申し上げましたような状況の中におきまして、国際法で言うところの捕虜というものに該当するかということについては、非常に疑問があるというのが私どもの見解でございます。したがいまして、私ども立場といたしましては、イスラエル国内において何らかの形でイスラエル国内法令に触れるような犯罪を犯した岡本公三という人間に対して、あくまでもイスラエルが属地的な意味での管轄権を行使することは国際法上許される。他方日本日本として、この岡本公三に対して属人的な意味での人的な管轄権というものを一定の限度において有しておる、こういう考え方イスラエルと対抗してきたわけでございます。
  39. 土井たか子

    土井委員 そうすると、この今後の取り扱い方についても、イスラエルに対して日本としては、その間の事情についての日本側認識というものをるる伝えられているはずであろうと私は思いますけれども、この辺はどうなんですか。
  40. 小和田恒

    小和田政府委員 先ほど領事移住部長からお答えいたしましたように、日本側本件についてイスラエルに申し入れましたことは幾つかの要素から成っております。特に日本が重視いたしましたのは、岡本公三というような国際的なテロ行為を行った人間を野に放つことになるということが、国際的な秩序、テロ防止立場から見て非常に問題であるということが非常に大きい理由になっておりまして、国際法上の疑義があるという点も、そのこととあわせてイスラエル側に申し入れをしているわけでございます。  そういう見地から、イスラエルが今度とろうとしている行為日本側から見れば極めて望ましくない行動であるということを主眼にいたしまして、イスラエルにこの問題を再検討するようにということを申し入れることに主眼があったわけでございますので、私の承知している限りにおきましては、国際法上の問題点イスラエル側に提起しておりますけれども、非常に具体的、技術的な問題にわたって詳細な考え方について相手側との間でやりとりをしているというところまでは行っていないと思います。
  41. 土井たか子

    土井委員 今も承っておりますと、捕虜に対しての概念も必ずしも国際法上で言うところの捕虜ということに当てはまらないというふうな経緯もございますから、今日本側からイスラエル側に対して、国際法疑義があるからというふうなことで遺憾の意を表されるその国際法上と言われる国際法概念についても、イスラエルがきちっと日本側の言うことを理解されているかどうかということは非常に問題になってくると思うのですよ。したがって、日本国際法疑義があるので遺憾の意を表したという、きょう私が質問させていただいたときの当初の答弁からいたしまして、その中身についてはそごがないようにイスラエル側意思が通達されているかどうかというのは、後々引っかかっていくと思いますよ。幾ら日本が、これは国際法疑義があると言われ、国際法上に問題がある、違反行為であるというふうなことで遺憾の意を表されても、国際法ということに対しての認識が一致していなければ、遺憾の意の表示意味をなさないのです。この辺、大丈夫なんですか。
  42. 小和田恒

    小和田政府委員 事実関係の詳細にわたりましては、私よりも領事移住部長からあるいは御説明した方がいいかと思いますが、私が承知しております限りにおきましては、基本的な我が方の考え方は、今土井委員が御指摘になったようなことも含めてイスラエル側に伝わっていると思います。ただ、私がさっき申し上げましたのは、今ここで提起されましたような、例えば一九四九年のジュネーブ条約との関連であるとか、そういう技術的な法律論相手側との間で交わしているわけではないということを申し上げたわけでございます。
  43. 土井たか子

    土井委員 その技術上の問題というところまでいかなくても、そういう一般国際法というのが存在しているということを認識している人でないとお互い話の土壌がないわけであります。向こうのイスラエル側は、日本が言うような一般国際法について、そういう一般法の存在を認識した上でのその日本の遺憾の意を受けているということになっているのですね。なっていませんか、なっていますか。どうですか。
  44. 谷田正躬

    谷田政府委員 この岡本の件が起こりまして、私どもがまずイスラエル側と折衝した段階、それからもう一つは、釈放が行われた後に再度門田大使からの遺憾の意の申し入れ、この二回の機会にいずれもこの国際法上の問題点というのは提起いたしております。  それに対しまして、先ほどもお答えいたしましたように、先方は、一応国際法上の問題のあるということは意識しつつも、政治的な観点というものを重視いたしまして、日本としてはイスラエルのとるこういう措置を了承してほしいというのが基本でございますが、御指摘のこの国際法上の問題点につきましては、これまでの二度の過程におきまして我が方から申し述べておりますし、先方も理解していることと存じます。
  45. 土井たか子

    土井委員 そこで外務大臣、今まで質問をいたしまして答弁をしてこられたことの一つの脈絡というのを考えていきますと、国際法は存在しているのです。国際法に対する認識も存在しているのです。でも、高度の政治判断の方がそれを上回るのです。高度の政治判断が万事を決するのです。こういうことになってまいりますと、日本国内法、つまり刑法によって国際手配を岡本に対してなし、そして岡本の行き先を突きとめ、さらに逮捕状を出し、逮捕をやるといっても、これは法に基づく行為でありますが、政治的判断の方がそれを上回るということが考えられる。岡本逮捕は望み薄であります。いかがですか。
  46. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本政府としては、もう逮捕状を出したわけですから、これに基づいて逮捕するための政府としてのあらゆる努力をこれから重ねていかなければならぬと思います。
  47. 土井たか子

    土井委員 大臣としてはそうお答えになるであろうと思います。それは教科書どおりの答弁しか言いようがない。しかしこういう問題というのは、国際法でどう取り決めがあろうと、国内法でどういう法があろうと、それを乗り越えて政治判断の方が先行するわけでありますから、非常に扱いとしたら難しい。非常に難しいがゆえに、日本も政治的判断を非常に強いられるという格好にもなってくるであろうと思うのですね。  さあそこで、中東問題というのは非常に複雑微妙であります。いろいろな動きを見ておりますと、本音と建前というのをきちっと分けていないと、常に何が動いているかという本質を見失うという特徴があるように私は思います。今のお答えというのは、私は恐らく大臣はそれ以外にお答えのしようがなかろうと思う御答弁をいただいているわけですが、いつもいわく微妙であり、複雑であり、しかし外交的に考えると重要な問題に対して質問をいたしますと、紋切り型の、いわば教科書的な御答弁しか出てこない。当外務委員会で、一体質問している意味がどの辺にあるのかなと自分で思いながらも質問を続行しなければならないということがしばしばあるわけでありますが、この中東問題についても、これからお尋ねを進めてみますと、恐らくは本音の答弁というのはなかなかなさらないだろうと思います。しかしこの岡本公三の問題というのは、本来日本政府にとっては法的責任はないとはいうものの、日本に国籍を持つ日本人である人物が赤軍というものを構成しましてテロ行為を外国において行って大変多大な迷惑をかけるということに対して、知らぬ存ぜぬというわけにはいかない。したがって、中東の和平についても日本としては政府を挙げて力を入れて努力をするということも問われてくるわけであります。そうでしょう。そういうことから、私はひとつ本音の御答弁というのをぜひ聞かしていただきたいと思うのです。  イスラエルに対しまして、今回の釈放問題に対しての外務大臣の談話の中に、岡本釈放するということは国際テロを鼓舞するものであるから遺憾であるというふうなことをおっしゃっている向きがございます。これについての真意というのをいま少し聞かしていただいて、さらに中東の問題についてのお尋ねを進めます。
  48. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 岡本のようなああした過激犯といいますか、多くのイスラエルの市民を殺傷した、こうした行為というものは許すことができないわけでありますが、しかし岡本を擁しているところの日本赤軍派にとってはいわばこれは英雄でもあるわけですね。その英雄を奪還したということになればこの赤軍派というものに非常な力を与えるといいますか、この士気を鼓舞するということにもなりかねないというおそれを私は強く感じたものですから、率直に言ったわけであります。
  49. 土井たか子

    土井委員 その岡本公三のことなのですけれども、これは今おっしゃったように赤軍の中では英雄視されているという向きがございますが、一部新聞、それからマスコミの情報によりますと、精神状況がまことに不安定であって、そして精神医の方の鑑定ということも必要ではないかとさえ言われるような向きが伝えられてきているわけでありますが、この辺の事情というのは把握なすっていらっしゃいますか、どうですか。
  50. 谷田正躬

    谷田政府委員 岡本が終身刑に服して拘置所におりました間に、私どもは、一般在外邦人に対する保護に係る領事事務の一環といたしまして、館員がこれまで大体年に一度ぐらいの頻度で面会をいたしておりました。その際、この二、三年ぐらいに会ったときからの報告によりますと、非常に岡本の状態に精神的な不安定の状況が見られるという報告は受けておりました。またさらにイスラエル側からの話といたしましても、岡本状況は、肉体的それから精神的な状況は決していいものではないという話も聞いておりました。
  51. 土井たか子

    土井委員 精神状況が不安定であるということになると、身柄についての取り扱い日本国内法に従って考えていくと違ってくるのですが、これはそれといたしまして、岡本公三が釈放されるということに従って、中東和平に何らかの影響があるのではないかという向きも考えられるのでありますが、外務大臣はその辺はどういうふうにお考えになりますか。
  52. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 イスラエルはこうした捕虜交換ということをこれまでも何回かやってきておるわけでありますし、このこと自体で中東問題が大きく変わるとかあるいはイスラエルの政策が変化をするとか、私はそういうふうには考えておりません。
  53. 土井たか子

    土井委員 これは、大きな目で見てまいりますと、今後の成り行きというのは予断を許さないであろうと私は思いますけれども、武力対決ということに固執しているシリア、リビアの強硬派があることは周知の事実でありますが、この強硬派と話し合いをエジプト、ヨルダンの側が目指しているようでありますが、これに対しての見通しといいますか、評価と申しますか、これについては大臣はどういう御認識をお持ちでいらっしゃいますか。
  54. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、エジプト、ヨルダンは最近では大体考えを一にしておるわけですが、これに対して今おっしゃるようにシリア、リビア、そういう国々が、いわば同じアラブの中で対決的な姿勢をとっておるわけでありまして、エジプト、ヨルダンとイスラエルの間では話し合える素地というものは十分あると思うわけでありますが、肝心のリビアあるいはシリア、そういう国々との間には断絶状況が続いておるわけですし、アラブ世界がいわば分裂しているという状況ですから、なかなかこれは、今の中東の和平というものを実現をしていく上においてもそう簡単にいかないのじゃないか。アメリカという存在もありますけれども、しかし、リビアとかシリアに対する影響力というものはないわけでございまして、そういうことを考えますと、中東和平は、今の状況が続いておる限りは、少なくともやはりアラブが統一するとかアラブの合意ができるということでないと、イスラエルとの問題はそう簡単には解決できない。残念ながら、むしろ今そういう分極化している方向で進んでおる。PLOそのものも、今のアラファト勢力とPFLP・GCとの間では全くの対決状況にあるということですから、問題は非常に厄介になってきているという感じを率直に持っております。
  55. 土井たか子

    土井委員 そのパレスチナの解放機構の中でも、今おっしゃったように、穏健派と一般的に言われるのと武闘派と言われる、中がなかなか複雑であります。その動きと赤軍との関係がどのようなものに考えられているか。これは外務大臣の御認識というのをひとつ聞かしていただきたいと思うのです。
  56. 三宅和助

    ○三宅政府委員 まずファクト関係を申し上げますと、ただいま先生御指摘のとおり、同じPLOの中でも、いわゆるアラファト派と反アラファト派と分かれておりまして、その中にまた複雑に分かれております。その中で、赤軍派が多分べッカー高原にいるだろうということが現在言われておりますが、そこを現在支配しているのが、PFLP・GCとPFLPといういわば過激派がそこにおりまして、そこにシリアの軍隊が約四万、五万コントロールしているということで、シリアとの関係も非常に深いということで、いわば過激派のグループに属した中に赤軍派が現在いると一般に言われております。
  57. 土井たか子

    土井委員 ことしの二月あたりから三月、四月にかけて、中東和平について一連の動きがあったことは周知の事実であります。エジプトのムバラク大統領がアメリカ、イギリス、フランス訪問の途につかれて、そしてその中で、レーガン大統領と会談をされた中身も中東和平工作に対しての再開を要請するということでありましたが、しかしこれ、究極どういう形になるかということは別として、国連決議の二百四十二というのが認められるか認められないか、これを基本原則として承認するのかしないのか、この辺はどこまでいっても問題の焦点になっていくわけであります。この焦点の国連決議の二百四十二に対して、日本としてはどういう考え方を持っていらっしゃるか、そしてこれを承認するということは、パレスチナの民族自決権の死亡宣告というふうに認識されているかどうか、これはいかがでございますか。
  58. 三宅和助

    ○三宅政府委員 安保理決議二四二につきましては、これに対しては日本は賛成投票をしておりまして、PLOがその後反対の態度を表明しております。これは御承知のように、すべての中東問題のかぎがこの安保理二四二を認めるか認めないかということにかかっておりまして、この前のヨルダンとPLOの合意に関しましても実は複雑な要因がありまして、認めるような認めないような状況になっております。その後執行委員会におきまして、果たしてこれは認めたのかということでPLOの中で詰められたわけですが、認めないという解釈のもとでその合意を認めるという話し合いがあったわけです。  ところが、文面上見ますと、すべての安保理国連決議を尊重する、その中には当然二四二というものは常識的に含まれるだろう、それはイスラエルとのいわば平和共存である、その一点をめぐりまして、アメリカ、イスラエルは二四二を認めない限りPLOはだめだ、片やPLOといたしましては、現在の政治的な構造から見て、これを認めることがなかなか合意を得られないというようなところに非常に難しさがございまして、先生御指摘のように、安保理二四二を認めるか認めないか、これに対するどういう妥協を図っていくかということが、すべての中東和平のかぎになっております。
  59. 土井たか子

    土井委員 安保理決議の二四二の中で、PLOがこれを承認できないということを言っている理由の一つに、自決権がここで認められていないという問題があるわけですね。  そこで、日本はこの安保理決議の二四二に対して賛成をしている立場にあるわけですけれども外務大臣、どうなんですか。この決議内容というのは、パレスチナ民族の自決権を否定している決議だとお認めになっていらっしゃいますか、この自決権を否定はしていない決議であるというふうにお認めになっていらっしゃいますか。いかがですか。これは大事なところだと思いますよ。
  60. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは自決権は否定していない、こういうことです。
  61. 土井たか子

    土井委員 そうすると、自決権は否定はしていないけれども、そのことを二四二の中では明確に規定していない、こういうことになるわけなんですか、どうなんです。
  62. 三宅和助

    ○三宅政府委員 安保理二四二は自決権を否定しておりませんが、ただ、その部分がいわばブランクになって十分でないというのがよく言われる点でございます。すなわちPLOがなぜこの二四二を認められないかと申しますと、難民扱いにしている、難民問題としてPLOを取り扱い、PLOの自決権というものを明確に規定していない。したがいまして、これにプラスアルファがなければいけないということで、御承知のように日本立場は、二四二を超えましてPLOの自決権、それからさらには新しいパレスチナ国家の建設を含む自決権のところまで日本立場はいっておりますが、いわば二四二は否定しておりませんが、そこのあたりが不十分でブランクになっているということでございます。
  63. 土井たか子

    土井委員 この不十分でブランクになっている部分というのに、何らか積極的な歩み寄りを期待しようといたしますと、日本のそれなりの努力というのがやはり問われてくるという部面もあるであろうと私は思うのであります。  外務大臣、今後アラブの和平について、日本として一定の役割があると思うのですが、どういうことを大臣としてはお考えになっていらっしゃいますか。
  64. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはやはり二四二の決議に基づいて、日本としての基本的な立場というのは、パレスチナの自決権を認める、あるいはまたパレスチナ国家の建設をも認めるということでありまして、そういう考え方のもとに、アラブ諸国に対しましても日本の外交の姿勢を明らかにして、アラブの諸国の平和努力を日本としても強く求めておるということでありますし、あるいはイスラエルとの間におきましても、イスラエルに対しましても平和的なアラブ問題、中東問題の処理、そしてパレスチナ国家の建設、自決権というものを認めるべきである、あるいは西岸ガザといった地区からもイスラエルは兵を引くべきである、こういうこともイスラエルに対して申し入れもしばしばしておるわけであります。  日本はそうした基本的な立場で、例えばフェズ憲章なんかについてもこれを支持するということで、全体的な日本の構想はあくまでも中東問題については平和的解決、そしてそれはパレスチナ自決権というものを認めた平和的解決でなければならないということで、これまでも外交努力は続けておる、こういうことであります。
  65. 土井たか子

    土井委員 そうすると、その辺はアメリカ側と認識がちょっと違うと思うのです。アメリカ側は姿勢はかたくなくて、だんだんこの問題についていろいろと話し合いの途次、少しニュアンスが違ってきているような向きもかいま見るわけでありますけれども日本としてはやはり今おっしゃったような大臣の意をどういうところで具体的に努力を払おうとなすっていらっしゃるか、これはいかがですか。
  66. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、やはりアメリカの中東和平における動きというのが非常に重要だと思っております。したがって、アメリカがイスラエルを説得する、イスラエルを説得する力を持っているのはアメリカだろうと思うわけで、日本とアメリカとの間でも中東和平問題についてはしばしば意見の交換をしておりますが、その際に、やはりアメリカが積極的に前に出てイスラエルとの話し合いを進め、さらにアラブ諸国との間の話し合いも進めるべきじゃないか、やはりアメリカのイニシアチブというのが非常に大事であるという認識で、アメリカに対してもそうした日本立場を何回か説明をして、アメリカの善処を求めてきておるわけであります。
  67. 土井たか子

    土井委員 それはアメリカの力というのは、この問題に対しては大変大きいということは紛れもない事実でありますが、既にフセイン・ヨルダン国王とアラファトPLO議長が中東和平交渉のための五項目の共同行動の枠組みということをアメリカに伝えたという報道がこの二月でしたか、ございました。そのときに、五項目の合意の中身というのがアメリカ側が今まで講じてきている中東和平問題に対する姿勢と大分隔たりがあるということも言われております。  日本としては、今外務大臣がおっしゃったようなことを努力するということからすると、かなりの決意というのを強く持って臨まないと、事に対しては流れに流されていってしまうという格好にも相なるわけでありまして、和平というのはおのずと自決権ということのもとにかの地においてかの地で解決していく問題であることと同時に、それならば日本にとっては全く無関係であるかといえばそうもまた言えない。この点についてさらに大臣の御所信のほどを承りまして、その際、不確定要素として赤軍の活動というのが影響としてはないことはないわけであります。したがって、日本としては赤軍活動に対してこれからどういうふうに考えていかれようとしているか、これはいかがですか。
  68. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本の中東問題に対する基本政策については先ほどから申し上げておるわけですが、そうした基本的な立場に立って日米でも中東問題に対する協議を行っておりますし、あるいはまた日ソ間でも中東問題に対する協議も行っておるわけでございます。同時にまた、アラブの諸国あるいはまたイスラエルにも日本立場を率直に表明して、平和的な解決を強く要請をしておるわけであります。そんな中でなかなか問題は、先ほどからお話がありましたように極めて困難ないろいろ複雑な状況があるわけですから、そう一挙に解決ということも難しい面もあると思うわけであります。  しかし、中東和平の問題は中東だけの問題ではなくて、まさに世界の和平にもつながっておる大きな課題でございますから、日本の外交のあり方としては一つの焦点としてこれに取り組んでいきたい、こういうふうに思っております。特に厄介なのは、今お話がありました赤軍派の存在でありまして、これは日本人のグループでございます。これがべッカー高原にあって過激な活動を展開しておる。これがベッカー高原だけにとどまっておるならいいですけれども、世界的なテロ事件につながっていくということになれば日本のイメージを損なう大変なことになるわけでありますから、何とか赤軍派に対しても、これは捜査当局としても重要な関心を持ってこの状況を見守っておるし、あるいはまたいろいろの手段を講じてこれが逮捕に踏み切るために努力しておりますが、しかし、今の日本の力でなかなか困難な面もあるわけでございます。  しかし、これからまた今の岡本公三が釈放されるということになって、これがまた赤軍派に合流するということになればまた何が起こるかわからぬということですから、これまで以上にひとつ緊張して、彼らの勢力をこれ以上拡大しないあるいは彼らが外に向かって活動を展開しないように、これは日本自体の努力とともに国際的な協力も求めていかなければならぬと思います。そういう意味ではシリアあるいはまたその他関係のリビア、日本が外交関係を持っているあらゆる国々との間にも率直にこうした問題について話し合う必要がある、私はそういうふうに思っております。
  69. 土井たか子

    土井委員 まだこの問題については種々お伺いをしたいこともございますけれども、さらにまた井上代議士の方からも質問がございますし、時を改めまして質問をする機会もあろうと思います。  さて、次の問題は、日本国憲法というのは、人類普遍の原理に立って人権というのを保障しておるわけでありますが、在日外国人に対して基本的人権というのは憲法で保障されていますかどうですか。——それより前に、ちょっと谷田領事移住部長さん、お昼が終わりまして午後また時間がある間に、ひとつ先ほどの例の一九七二年の五月段階のイスラエル日本政府から何らかの話し合いをしたかどうかという点、お調べいただきたいと思います。  日本国憲法で、在日外国人の基本的人権というのは保障されているというふうに認識されていますかどうですか。まず、この点はいかがですか。
  70. 小和田恒

    小和田政府委員 憲法の問題でございますので、正式には法制局から御答弁申すべき点かと思いますが、とりあえず私なりの考え方を申し上げますと、憲法には御承知のとおり第三章に国民の権利義務に関する規定がございます。第三章は国民の権利義務ということになっておりますけれども、しかしながらその中の非常に基本的な人権に属するものにつきましては、国民のみならず何人に対しても適用があるべき規定であるという考え方が存在しているというふうに理解しております。
  71. 土井たか子

    土井委員 そうすると御認識は、まず第三章の基本的人権の内容というのは、日本国民は言うまでもなく、在日外国人に対しても国民の権利及び義務というのを、どうおっしゃいましたか、準用すべきであるとおっしゃったのですか。
  72. 小和田恒

    小和田政府委員 第三章の規定は、それ自体としては国民の権利義務に関して規定しているものでございますので、日本国民に対しては当然それがすべて適用があるというふうに考えております。他方、それすべてではございませんけれども、その中には当然基本的人権に属するものとして日本国籍を有しない者に対しても適用されるべき規定が存在しているというふうに理解しております。  ただ、これは当然のことでございますけれども、国籍に基づいて国民だけに与えられるような権利とそうでないものとございますので、前者につきましては、たとえ基本的人権というようなものに属するものであっても、これは基本的人権の定義にもよると思いますけれども、例えば公民権のごとき性格のものにつきましては、当然のことながら日本国籍を有しない者は享受ができないということはあると思います。
  73. 土井たか子

    土井委員 そうすると、今の御説明ではちょっとわかったような、わからぬような話なんですが、原則として基本的人権は認められるけれども部分的に認められないものもある、こうなるのですか。よくわかりませんが、そこのところを……。
  74. 小和田恒

    小和田政府委員 憲法の権威である土井委員に対して、私がいろいろ申し上げるのは必ずしも適当でないかと思いますが、私が申し上げました趣旨は、第三章の規定の中で日本国民に対してのみ適用がある規定と、それから何人に対しても当然保障されるべき内容の権利を定めているものとあるというふうに理解をしているということでございます。
  75. 土井たか子

    土井委員 憲法の九十八条の二項で、日本国が締結した条約及び確立した国際法規はこれを誠実に遵守するという規定がございますね。そうすると、日本といたしましては、この憲法の九十八条に従いまして国連憲章、世界人権宣言、国際人権規約、これを遵守しなければならないということになると思うのですが、この取り決めによりまして在日外国人の基本的人権というものが保障されていかなければならないというのは当然のことだと思いますけれども、この観点はいかがでございますか。
  76. 小和田恒

    小和田政府委員 御指摘の点は、そのとおりだと認識しております。
  77. 土井たか子

    土井委員 この指紋押捺の経緯を見てまいりますと、一九四九年に全国民に指紋登録を義務づけるいわゆる国民指紋法というものの導入が考えられたということが一時ございます。結局これは成立しなかったのです。なぜかといったら、人権侵害だというごうごうたる国民の声からこれは見送りになったというふうないきさつがございます。これは、国民に対して指紋を押捺することを義務づけることが見送られた理由として、基本的人権に反するからというふうに考えていかなければならないと私自身も思いますが、これはどのようにお考えですか。
  78. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 アジア局長の私がお答えすべきものかどうか、これは法務省の問題かと思いますが、今の先生の御指摘につきましては、そういう経緯があったということは私は承知しております。
  79. 土井たか子

    土井委員 その経緯について聞いているのではなくて、基本的人権に反すると思われるがいかがでございますかという質問に対する答弁はいかがですか。
  80. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 お答えいたします。御返事おくれて申しわけございません。  基本的人権に反するものではないと存じますけれども、外務省の見解として私が定見的な御返事をいたすということは差し控えさせていただきたいと思います。
  81. 土井たか子

    土井委員 それでは、外務省の見解ということでなしに、局長個人としてどうお思いになりますか。
  82. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 私個人といたしましては、法の前の平等という点が一方にあると思います。他方、いわゆる日本人といわゆる一般外国人の立場ということがあろうと思いますので、例えば国際人権規約等、私も今想起しつつ考えますと、法の前の平等はあらゆる差別待遇を絶対的に禁止するものではなくて、そこに合理的な一つの理由によっては日本人と外国人とにおいて待遇の差が出てくるということはあり得ると思います。
  83. 土井たか子

    土井委員 私はそういうことを承っているのではないのであって、指紋押捺について国民すべてにそれを義務づけるということを考えた法案が結局成立しなかったんです。なぜかといったら、人権侵害であるというごうごうたる非難があってこれは成立しなかったといういきさつがあるのですが、これを人権侵害というふうに受けとめてよろしいか。私は人権侵害と思うけれども、そのようにお思いになりますかということを聞いたら、外務省としては答弁を差し控えさせていただくと言われたので、個人としてどうお考えになりますかとお伺いしたら、それに対する答弁は何だか変な聞きもしない答弁になったわけであります。どうですか。
  84. 小和田恒

    小和田政府委員 先ほどアジア局長がお答えいたしましたように、この問題について有権的な解釈を私ども立場から申し上げるわけにはまいりません。したがいまして、委員が御指摘になりましたように、それでは個人的な意見としてどうかということになるわけでございますけれども委員が御承知のとおり、外国人の指紋押捺に関連して事件が裁判に持ち込まれたことがございます。例えば東京地裁の五十九年の判決等を見ますと、憲法十三条に規定する基本的人権に反するのではないか、こういう議論がございまして、その点につきまして裁判所の判断といたしましては、これは、内外人平等という問題は今一応別にいたしまして、内国人といえども憲法十三条との関係でどうかということが問題にされ得るわけであろうと思います。その観点におきまして、これは憲法十三条の規定に違反し、あるいはその類推によって認められる私生活上の自由の保障に違反し、無効であるとは解されない、こういう判示があるわけでございます。  もちろんこの判決は、先ほども申し上げましたように、外国人指紋押捺との関連において出された判決でございますので、それが直ちに日本国民の権利との関係において当然に適用がある判示であるというふうに言うことはできないわけでございますけれども考え方としては、裁判所としては憲法十三条に規定するところの個人の基本的人権に違反することではないという考え方をとったように考えられます。その辺が私どもとしては、参考にすべき点であろうかというふうに考えております。
  85. 土井たか子

    土井委員 今の判決というのは、一例をお挙げになったわけでありまして、その判決の中身について、それをここで御答弁の根拠にすべてされてしまうということはまた正しくないし、どうも不適切であるというふうに私は思います。また、日本の国民に対して、憲法違反になるかならないかという判例はまだ一例もございません。したがって、その辺もはっきりはしない。だから、今の御答弁からすると、説得力は余りないというふうに私は考えられるのです。  先日、これは外務大臣も御承知のとおり、私は当外務委員会でこの問題を取り上げて質問を申し上げて、後、五月十四日に法務省の方は通達を出されました。この通達自身に対して、どういうふうに考えられるかという取り扱い方は法務委員会で審議が進んでおります。私自身は、この今の通達自身が外国人登録法違反であるというふうに考えておる一人なのですが、この通達の中身をごらんになりまして、外務大臣自身は画期的な変更だというふうにお思いになっていらっしゃいますか。
  86. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私はやはり、法務省が中心になりまして関係各省庁で集まってその結果行われた改善措置であって、法務省としてはいわゆる考えられる最善の改善措置をとったものである、こういうふうに理解いたします。
  87. 土井たか子

    土井委員 法務省としては最善の措置でしょう。しかし、外務大臣からお考えになる要素というのは、法務省すなわち法務省の中で法務大臣がいろいろお考えになった結果を披瀝なさるのとは、おのずと違った分野からの取り組みもあるわけであります。そうでなければ外務大臣でない。そういうことからいたしますと、在日外国人から屈辱的であるという強い反発が今あるわけですね。外交をつかさどられる外務大臣とされましては、指紋押捺制度というのは屈辱的であると見られているのですか、見られてないのですか。在日外国人のこの問題に対して屈辱的であると言っている立場というものは、理解をされますかされませんか、いかがでございますか。
  88. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、指紋制度というのは別に屈辱的とは思っておりません。これは、各国においてもそういう指紋制度を採用している国もあるわけでございますし、また、外国人に対する措置として指紋制度というのがあったって、それは何ら屈辱を与えるものではない、こういうふうに思うわけでございます。しかし、この指紋制度については、外国人の立場日本における在留しているという立場をやはり十分考えて行わなければならない、こういうふうに思いますし、もし、改善の余地があるならば、これはやはり改善をしていく必要がある。特に、日本における外国人の中では、いわゆる韓国人あるいは朝鮮人と言われる方が八十四万のうちの八割を占めている。そしてそれは、歴史的にも日本との大きなかかわり合いを持っておるわけでございますから、そうした方々の立場というものを、日本の指紋制度の場合においては十分配慮する必要があるのじゃないか。そして、これは外交上の問題として、日韓関係で改善をしましょうということで意見を交換して合意もできている課題でありますから、やはり改善の余地があればこれに対して政府として積極的に改善を進めていくという基本的な立場は必要である、こういうふうに私は思います。
  89. 土井たか子

    土井委員 在日朝鮮人の方々が数では在日外国人の中で圧倒的多数であって、その問題の経緯も歴史的経緯としてあるという事実関係がございます。したがって、その点は外務大臣おっしゃったとおりでありますけれども、先日、科学万博の賓客として李公報相が韓国から来日をされたようでありますが、その際安倍外務大臣と会談をされて、この指紋押捺問題についても話し合われたということが伝えられておりますが、どういうことがその中で話し合われたのでございますか。
  90. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 李長官から、日韓関係がより長期的に安定していくためにはやはり在日韓国人の地位の改善をできるだけ図ってほしい、こういうお話がありまして、私から、今指紋問題等も起こっておるけれども、日韓首脳会談において法的地位についての改善をこれからも進めていくという合意がなされておる、こういうことから見ても、私自身としても在日韓国人の地位の改善のためには今後とも力を尽くしてまいりたい、こういうふうに思っておる、日韓関係あるいは日本におけるいわゆる朝鮮人の日本との歴史的な関係からいけば、やはり日本人と同じ扱いをしていくということを基本的な原則にして、それに対して日本としても努力をしなければならぬというのが私の考えである、そのために指紋問題等についても、今改善措置としては日本としてはできるだけのことをして、これは評価していただかなければならぬと思うけれども、今後の課題として、もし改善の余地があるならばこれに対して我々は積極的に努力をいたす所存である、こういう趣旨のことを伝えたわけであります。
  91. 土井たか子

    土井委員 今回の法務省の方の通達という取り扱い方で、理解と評価が得られるというふうに外務大臣としては考えていらっしゃいますか、どうなんですか。
  92. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 残念ながら国内的にもあるいはまた国際的に見ても、国際的といいますか日韓関係から見ましても、残念ながら期待しておるほどの評価は得られなかった、こういうことです。
  93. 土井たか子

    土井委員 そうすると、これはこのままではおさまりはつかないはずでありますし、日本がどうするかということが問われているわけであります。ソウル大学に、日本問題研究所が設置されるという予定があったのが白紙になったということが伝えられているわけでありますが、韓国側の報道によりますと、指紋押捺問題で対日感情が微妙になったからだというふうな理由が挙げられているようでありますが、それは事実なんでございますか。この点はいかがなんでございますか。
  94. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 お答えいたします。  ソウル大学に日本語研究所を設けるという話は、実はかなり前からありました。私が韓国に在勤しておるときからもございました。これにつきましては、いろいろな理由で時間がかかってきておるというように私は理解してきましたけれども、その一つは、ソウル大学というのは、先方の言い方をしますと日本では東京大学みたいなところで、率直に申し上げてなかなか誇りの高い学校でございますので、ソウル大学に日本語研究所を設けるならば、やはり東京大学にも同じような韓国研究所を設けるべきであるということで、必ずしも東京大学はそういう事態に至っていないということもありまして、ずっと延び延びになってきた。確かにそれが一つの理由かと思います。また、教科書の問題のときにもそういう問題が一つの理由としてなったということも、私はそのときおりましたからよく想起しております。  今何も、新聞報道でそういう報道があるのも、韓国の内部の一つの見方としてはあり得ると思います。ただ、正式に、それだけで延期になったというような報告は必ずしも私ども受けておりませんけれども一つの理由として、一部の見方としてそういうことは十分あり得るだろうとは思います。
  95. 土井たか子

    土井委員 ただいまのままでいくと、この問題はどんどんエスカレートすると思うのですね。第二の教科書問題に発展するというおそれもなきにしもあらずでありまして、これはそうしちゃいかぬと思うのです。この問題に対して、日本国内で人権の取り扱いがどういう取り扱いになるかということが問われているというふうに私自身は思うわけであります。  指紋制度は、世界の各国の中でもとっている国があるという御趣旨のことがさっきの御答弁の中にも出ましたけれども、見てまいりますと世界では少数派であります。しかも、そう言っちゃ悪いのですけれども、指紋制度をとっている国の中身を見ますと、ほとんどの国がどうも人権水準が高いとは到底言えない。日本のように経済大国だということを自他ともに許すような水準に到達している国であり、民主主義も成熟しているとみずから考えている国が、人権問題ではまだまだ国際水準に達していない低い国に合わしていくというのはいかがかと思うわけであります。  指紋問題というのが、国際社会で、日本という国は野蛮で閉鎖的な国であるというふうなイメージと結びついて、日本に対してある一定の先入観を与えるような方向で事がどんどん進んでいくということは、決して好ましくないということは言うまでもありません。むしろ、日本という国は人権水準においても非常に高い国であるということを、イメージとしてはっきりしたものがどこの国から見ても認識できるようなものでなければならないと思うわけであります。  こういうことからすると、先ほど外務大臣は、今のままで理解と評価が得られるとはお考えになっていらっしゃらないようでありますが、そうなると、私はすべての在日外国人に対して、原則的には指紋をとるのはやめるべきだというふうに考えておりますし、指紋押捺の義務を外国人登録法から削除する方向に努力をするということが問われていると私自身は思っておりますけれども、法務省との間に話し合いをお進めになって、何らかの外務大臣からのお立場を披瀝されて、夏に予定される日韓閣僚会議に臨まれる御用意がおありになるのかどうか。このままでは、恐らくは先ほどおっしゃったとおり、理解もそして評価も得られないであろうということについてはおっしゃっているわけでありますから、やはり今後努力をしていかれることがどうしても問われてくるわけであります。どういうふうになさいますか。
  96. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、基本的には、指紋押捺制度というのが人権に反する、それが閉鎖的な日本の国の象徴であるというふうには全く受け取っておらないわけであります。それはそれなりの国の主権に基づいて行えばよいわけで、日本も近代国家として、それなりの制度を持つのは当然だと私は思っておるわけですが、ただしかし、日韓の関係等を考えると、大半が朝鮮の人であるということを考えるときに、改善できるものがあるならばこれは積極的に改善をすべきじゃないかと思っております。そして、今日とられた改善措置も私はそれなりに評価されてしかるべきじゃないかと思っておりますし、韓国も、十分の評価は得られておりませんが、しかしそうした日本の努力というのは評価するということは外交ルートを通じて言ってきておるわけでございます。  しかし、もちろんこれでいいと言っているわけではございません。私は、日本もこれだけのことをしたわけですから、とにかく今の制度について、そして改善措置について在日外国人の人も理解をして協力していただく、今は残念ながら評価は得られておりませんが、その協力と理解を求めるための努力を日本政府としても重ねていかなければならない。何とかこれで、これから行われる指紋押捺についても円満に進むことを期待いたしておるわけでございますが、それは日本の法律ですから守ってもらわなければならぬと思うわけです。しかし、これですべてが解決したというふうな認識はしないわけで、これは日韓関係の合意の問題として法的地位の改善というのがあるわけですから、これからまだ改善する余地があるということならば、これは今後の課題として改善に取り組む必要はあるというのが私の考えであります。
  97. 土井たか子

    土井委員 韓国の問題を念頭に置いて、外務大臣は御答弁を展開されているように私は受けとめるわけですが、原則的にはすべての在日外国人に対してこれは問われている問題でありますから、どういうふうに取り扱いを進めるかというのは、すべて在日外国人に対する問題であるということに相なります。ひいては日本国民に対する問題でもあります。しかし、これは国際間における国際的判断というのは非常に関係してくる問題でありますから、そういうことからいいますと、先ほど、在日外国人の中で特別の歴史的な経緯を持つ朝鮮の方々に対しての取り扱いをどうするかという問題もあるのでという、非常にニュアンスのある御答弁をされておりますから、これはそういう定住している外国人の中でもいろいろな条件があって、その条件別に考えを進めていくという御用意がおありになっての御披瀝でありますか、御答弁でありますか、いかがです。
  98. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今、私が申し上げましたのは、外務大臣としての立場からいえば、指紋押捺制度は、日韓関係あるいは日本におるところの朝鮮の人々の日本とのこれまでの歴史的な関係を念頭に置かざるを得ないわけでありまして、そういう意味でそこに重点を置いてお答えをしたわけでございますが、制度としては、在日の朝鮮の人だけじゃなくて外国人全般にかかわる問題でありますし、制度全体としては、そうした外国人の取り扱いということに関連した形で制度の改善等についても行われるのが筋ではないだろうか。これは法務省が主管しておりますが、法務省も恐らくそういう立場であろう、こういうふうに思っております。
  99. 土井たか子

    土井委員 それは法務省のお立場はそうでしょう。しかし、外務大臣とされては、昨日もそうでありますけれども、きょうの御答弁のニュアンスの中にも、戦前戦中からの歴史的経緯があって、強制連行の中で日本にその後第二世、第三世と住んでおられる朝鮮の方々に対しての取り扱いというのは、協定で何らかの措置が、他の在日外国人と違った取り扱いというのがあるのであるから、この点についても取り扱い方を、その条件ということを勘案して考えていかなければならないような向きの御答弁があったやに私は受けとめておるわけですが、この点は外務大臣のお考えをそのとおりに受けとめていいのですか。
  100. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今の指紋押捺制度全般を論ずるということになりますと、私の立場からちょっと問題だと思いますけれども、しかし外務大臣としての立場政府の閣僚としての立場からいいましても、これは制度全般として論ずるべきであろうと思うわけですが、その全般を論ずる場合においても、日本における外国人の大半が朝鮮の人々で占められておる、その朝鮮の人に対しては、特に法的地位の改善を図っていくということが日本政府としての基本的な趣旨でありますし、そうしてそれは日韓間でも合意ができておることでもあるわけでございますので、制度を考える場合には、そうした大半の人が朝鮮の人々だということを踏まえた中で取り扱っていかなければならないのじゃないか、そういう面でまだまだ改善の余地があるとするならば、これは改善するのがこれからの日本と韓国との関係の将来を考える上においても、あるいは日本に居住しておる多くの朝鮮の人々の立場考える上においても大変重要なことであろう、こういうふうに思うわけです。
  101. 土井たか子

    土井委員 他の質問がございますが、次の課題に移るのに中途半端になりますから、十二時までにあと五分ございますが、この五分を後回しにさせていただいて、十二時ということでお昼の休みに入っていただくことをお願いしたいと思いますが、委員長、いかがですか。
  102. 愛野興一郎

    愛野委員長 結構です。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十六分休憩      ————◇—————     午後一時三分開議
  103. 愛野興一郎

    愛野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。土井たか子君。
  104. 土井たか子

    土井委員 外務大臣、午前中、私、指紋押捺の問題について質問を申し上げた中で、ちょっとひっかかりますから、もう一度はっきりさせておきたいと思う点がございます。  それは、在日外国人の中で、特に日韓基本条約に基づいて在日韓国人の法的地位協定がございますね、この対象になる人だけは他の在日外国人とは別扱いにして考えていくような御趣旨を私はかいま聞いているわけです。きょうの午前中の御答弁の中にそういうニュアンスが出ているわけですが、それはそのように考えていいのですか。
  105. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、そういう趣旨で言っているわけではありません。在日しておるところの朝鮮の人々というような表現で言っておると思います。
  106. 土井たか子

    土井委員 そうすると、それは在日朝鮮の人に対しては特別に、いろいろ政治的に考えていくと歴史的な経緯もあるので、在日朝鮮の方々に対してどのように取り扱いを進めるかということを当面具体的に絞って考えていきたいという御意思なのですか。
  107. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはこれまでもいろいろとやってきたわけです、法的地位の改善ということで。ただ、指紋押捺問題に関しては、外国人全体ということで取り扱っているわけでありますが、しかしその取り扱う場合に当たって、やはり朝鮮の人々が主力であるということを我々は指紋押捺制度を考える場合にも忘れてはならないと思うわけで、そういう観点から、改善すべき余地があるならば、積極的に改善をする努力をすべきだというのが私の考えてあります。
  108. 土井たか子

    土井委員 そうすると、これは日韓基本条約に基づく法的地位協定対象になる人だけをまず特別に考えてみようという姿勢ではないというふうに理解しておいていいんですね。
  109. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは別の問題としてありますけれども、しかし、少なくとも指紋押捺制度という立場考える場合においては、別に扱うということではありません。
  110. 土井たか子

    土井委員 さて、そうすると、これもまた後々具体的なことについてお尋ねをさせていただきたいと思うのですが、次に、少し日ソ関係についてお尋ねを進めたいと思うのです。  先日、東海大学の松前重義総長が毎日新聞のインタビューに対しまして、日ソ関係打開のため、福田内閣当時に福田首相の了承と外務省の要請を受けたという前提で、松前私案というのをソビエト側に提案して合意が得られたということの経緯をお述べになっておられるわけでありますが、これは外務省も御承知ですね。そして事実だと存じますが、それは事実ですね。いかがでございますか。
  111. 西山健彦

    西山政府委員 お答え申し上げます。  福田内閣当時、松前氏が訪ソした際に、コスイギン首相等と日ソ関係改善のため話し合ったことは、私ども承知いたしております。しかしながら、政府としてこれに関与した会談ではなく、その内容もよく承知しているわけではないので、会談の中身についてはコメントすることを差し控えさせていただきたいと存じます。
  112. 土井たか子

    土井委員 外務省の要請があったというふうになっているんですがね。これは、外務省はそういう中身について御存じないのですか。
  113. 西山健彦

    西山政府委員 私が承知している限りにおきまして、外務省がそういうことを要請したということはないと了解しております。したがいまして、中身につきましてもいろいろとそういうことがあったということを、松前氏自身が当時新聞記者会見などで言っておられますので、それを通じては存じておりますけれども、それ以上のことを存じてはおりません。
  114. 土井たか子

    土井委員 そうすると、外務省というお立場では、その経緯に対して御承知はないというふうに今おっしゃっていると理解していいのですか。外務省は経緯は御存じでしょう。どうなんです。
  115. 西山健彦

    西山政府委員 先生のおっしゃいます経緯ということが、松前さんが行かれてそういうふうな話をされたということであれば、我々もいろいろ新聞情報等を通じては承知しているということでございます。ただ、その中身につきまして、事前に協議を受けて、したがって外務省がそういうことでやってほしいというふうな形で外務省がこれを承知しているということはないということを申し上げたわけでございます。
  116. 土井たか子

    土井委員 当時、安倍外務大臣は、五十二年の十一月段階から五十三年の十二月までの間というと官房長官でいらっしゃった時期なのでございますが、安倍外務大臣は御存じだったでしょうか。いかがでございますか。
  117. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 正確には私も存じておりませんが、松前さんが日ソの関係でいろいろと動かれたことについては、私も多少は承知をしております。しかし、これはいわばアヒルの水かきといいますか、今でもやっておることですが、そういう形での松前さんの御努力の一環じゃないか、こういうふうに思います。
  118. 土井たか子

    土井委員 アヒルの水かきとおっしゃいますけれども、具体的に新聞紙上では、仮に当時の福田内閣が続いておるならば、条約締結に成功したかもしれないというふうな発言をされているのです。だからこれはかなり具体的に、公式な政府政府という話し合いではないけれども、話が進んでいたというふうにこれは読み取れるわけでありまして、そういうふうに理解するのが常識的な理解であろうと思われるわけですが、それは、話はその辺まで行っていたというふうに考えてよろしゅうございますか。
  119. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 当時は園田外務大臣でもありましたし、その点は多少は話したような覚えもありますけれども、話がそこまで進んでいたというような記憶は私は持っておりません。特に領土問題については、これは新聞紙上にも出ておりますが、棚上げという形での日ソ間の条約締結というようなことはあり得ないことですし、そういうことを当時福田総理もあるいは園田外務大臣考えられたことはあり得ない、私はそういうふうに思っています。
  120. 土井たか子

    土井委員 そうすると、当時の福田総理がおっしゃっていることは当時の園田外務大臣はどの程度御存じであったか、それは今にしてわかりませんけれども、しかし、中身の重点になっている、新聞紙上にあるところの領土棚上げ方式というのは日本としてはとり得ない、こういうことなんでありますか。  そうすると、福田総理が、もしまだ福田内閣が続いていたならば、これは恐らく条約締結という可能性が非常にあったというようにおっしゃっている中身は、今外務大臣のおっしゃったことと矛盾いたしますけれども、その福田総理の御発言というのは事実無根である、こういう格好になるわけですか。
  121. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 少なくとも、当時の福田総理も今もそうですが、領土を棚上げして日ソ間に条約を結ぼうというお考えは全くなかった。ですから、領土を別にして日ソ間で条約を結ぶ、確かにソ連からは日ソ善隣友好条約とかいろいろな働きかけがあったことは事実でありますが、その際も園田外務大臣もはっきり言っておりますし、また私も、たしかソ連の当時ポリャンスキー大使だったと思いますが、福田総理に面会を求めた席に立ち会っておりますが、その際も、領土問題について福田総理の発言は実に明快であったように私は記憶いたしております。  ですから、領土を棚上げするというようなことは、当時政府の基本方針としてそういうことをとり得るはずはありませんし、今日もあり得るはずはないわけですから、そういうことで条約を結ばれるということはあり得ないと思います。その他違った、我々が知らない面での動きがあればそれはまた話は別ですけれども、少なくとも領土問題については、そういうことははっきり言えます。
  122. 土井たか子

    土井委員 そうすると、それ以外の経済協力とか文化とか漁業とか科学技術交流等々、領土問題も含めて十一項目、中身としては考えられているように報道がございますが、その領土問題については、今外務大臣が御答弁になったということが一貫して日本政府の姿勢であり、政府レベルでそういう話し合いはするはずがないというふうに外務大臣としては御認識をなすっていらっしゃるわけですか。
  123. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 少なくとも政府レベルにおいては終始一貫している。領土問題を棚上げして条約を結ぶという考えは全く政府にはこれまでもありませんでしたし、今後もあり得ないわけでありまして、あくまでも領土問題を解決して平和条約を結ぼう、こういう基本方針は日本政府として不動の今の考えであります。
  124. 土井たか子

    土井委員 いろいろ日ソ交流、それから日ソの関係をより改善させて促進していくという方向での努力というのはあるわけでありまして、それをどのように生かしていくかということは非常に課題として問われているわけですから、その中の一つとしてというよりも、それは大変主なる動きとしてあったということを私たちは理解をする必要があると思うわけであります。  外務省はこの日ソ関係の改善ということを大前提として、グロムイコ外務大臣日本訪問とその際の領土問題の話し合いが不可欠であるということを常々主張してこられておりますし、また当外務委員会における答弁としても外務大臣がお答えになっていらっしゃるわけです。しかしそれは、領土問題ということになると、いつもどういうことになるかという定型が決まったような格好になっているわけであります。そこの問題に到達しますと、そこから先には話が何にも進まない、またもとに戻って振り出しから始めなければならないということを、繰り返し繰り返しやってきて今日に至っているわけなんですね。何らかの打開策を考えなければならないということを思いますと、今回はグロムイコ外相の訪日前に何らかの努力が問われているのじゃないか。例えば、その前に文化協定を結ぶとか実務関係を前進させるとかいろいろなことがございますけれども、そういうことに対してのお心づもりはおありになりますか、いかがでございますか。
  125. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 領土問題について日本考えは変わらぬわけですが、少なくとも我々が話し合いの前提として田中・ブレジネフ会談ですね、あのときの共同声明は、ソ連も一緒になって出した声明ですから、そこの線まで行くことが一つの大きな前提じゃないかと思っておるわけです。  それから、日ソ間にはそうした大きな問題はありますけれども、同時に、隣国としてのこれまでの戦後の歴史の中でも相当幅広い交流をしてきた時代もあるわけですから、私は、これからだって国際情勢の変化の中で日ソの交流はもっと幅広い形で進めることができるし、また進めなければならないと思うわけであります。  その中の具体的な問題としては、今まで滞っておりました文化協定締結する。これは、もう既に政府として案文を用意しておりますから、ソ連側に近く提示いたしたいと思います。それから、租税協定とか支払い協定も切れますからこれも更新をしなければなりませんし、あるいはまた、その他のいろいろな日ソの政府間レベルの対話あるいはまた議員交流、民間交流、さまざまな交流の幅広い道が開ける可能性は今は十分あるのじゃないか、そういうふうに認識しております。ですから、この機を逸せずに我々としては努力を傾けたいと思います。
  126. 土井たか子

    土井委員 東海大学の松前総長が大変な努力を払われた当時に比べますと、日ソ関係の環境もよい方向に進んでいるということが考えられていいと思うのです。ですから条件とすれば、当時に比べて日本としては、十分なる努力に対して報いられるということが考えられていい。  そういうことを考えてまいりますと、日ソサケ・マスの漁業交渉が既に十日を経過してしまっているのですが、どうも進展を見ていないように私どもには聞こえてまいります。非常に難しいようでありますが、合意の見通しはどういうふうになっているのですか。
  127. 西山健彦

    西山政府委員 この問題につきましては、今月の去る十三日に日ソの漁業協力協定を極めて迅速にお認めいただきまして、直ちにその日から実態交渉に入ったわけでございますけれども、先週いっぱい、十八日に至るまでは昨年の実績についての評価、それからそれに対するコンペンセーションの額等々をめぐって、話がそれ以上に進まないという状況でございます。  幸いに今週に入りましてからは、一応その問題はペンディングにして、今年の漁獲についての諸条件について議論をしようというところまで来たわけでございますが、我が方が希望しております漁獲の量と先方が提示しております漁獲の量の間に非常に大きな開きがあるというのが、現在わかっております双方の立場でございます。したがいまして、この交渉は非常に難航がまだ予測されまして、ただいまのところで、何日には確実に終わるというふうにまでは申し上げる状況にはなっておりません。
  128. 土井たか子

    土井委員 これはなかなか、先行きがわからないようなわかったような、交渉に大変な精力をかけてやることだけは必要だというのがはっきりしているわけですが、日ソ漁業交渉というのは年々厳しい対応が迫られているわけです。  基本的な原因というのをいろいろ考えていきますと、日ソ間に原則的な合意の枠組みがこの問題についてないのですよ。原則的な合意の枠組みがあるのとないのとでは、全然話が違うであろうと思うのです。そういうことからいたしますと、この際前向きな——先ほど来条約締結に対して努力をすることを外務大臣はおっしゃっておりますけれども、漁業関係についても、原則的な合意の枠組みを用意した前向きな条約締結なんかを考えていくという必要があるのじゃないかと思いますが、これはどのようにお考えですか。
  129. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日ソの関係、いろいろと変化はありましたし、大変厳しい時代もあったわけです。しかし、漁業問題に限って言えば、日ソ間では非常に実務的にスムーズに今まで交渉が行われ、交渉が妥結してきたと思うわけですが、最近いろいろと難航しております。これは、いわゆる新海洋法時代といいますか、二百海里時代に完全に入って、そういう中でソ連の幹部会令等も出て、二百海里内は主権だ、主権の管轄権だという、これはソ連だけではなくて各国のそうした海洋法によるところの新しい時代認識、解釈というものが生まれたために、これまでは比較的円満にいっておった日ソ間の漁業問題が大きなデッドロックにも面した、こういうことであろうと思います。そういう中で、日ソ間で努力をして、いわゆる長期的な協定、毎年毎年行うというものを、今度も三年間に限っての協定がとにかく生まれたというのは、一応の基本的な枠組みが、日ソ間では漁業に関してはできたということじゃないかと思います。  今行っているのは実態交渉で、公海あるいは日本の二百海里以内のサケ・マスの漁獲量を三万五千トンにするとかあるいは四万トンにするとか、そういう全くの実態交渉でございまして、この点については確かに難航はしておりますが、しかし日ソ間で必ず決着はするものである。ソ連も案は提示されておりまして、日本はこれを今受け入れるわけにはいかないということで突っぱねておりますけれども、またこれまでの交渉の経過等から見て、最終的には決着をするのじゃないか、私はこういうふうに思います。  したがって、漁業関係について言えば、非常に日ソ間では実務的にこれは取り扱われてきているし、今後とも取り扱われるだろう、そしてその基本的な枠組みとしては、協定というものができ上がっておるということであろうと思います。ソ連が指摘しておるのは、例えば違反操業が非常に多いということ等も実態交渉の中で指摘されております。あるいはまた、ソ連の寄港ですね、小名浜港等に対する、今釜石ですか、の寄港における日本取り扱いといったものがソ連のクレームの一つ対象になっておるようで、これは我々、約束した以上はやはりそれなりに約束を果たしていくということが日本側としても必要じゃないか、こういうふうに思います。
  130. 土井たか子

    土井委員 先ほど来、松前総長のいろいろな努力に対して質問をいたしましたら、両国政府間で公式に話し合われたものではないという御答弁でございました。しかし、これは当時の福田総理もお認めになって、しかもそれが、条約締結の可能性が非常にあるところまでいった、成功しそうなところまでいったという事実も認めていらっしゃいますし、その後、これは大平総理時代、鈴木総理時代、外務省とも連絡があって、松前総長は訪ソされるということもありますし、五十六年の九月には、チーホノフ首相と会談された席で、ソビエト側の党中央で、ブレジネフ書記長を初め協議をしたけれども、合意は継続しているということも、これは発言として確認をしておられるわけであります。こういう事情に対しては、何ら外務省はあずかり知らないとお答えになるのですか。
  131. 西山健彦

    西山政府委員 先ほど申しましたように、その中身それ自体について外務省がいろいろ御相談にあずかったり、あるいはこれはこうしたらどうかというふうなことを申し上げたり、そういうふうなことは一切なかったということでございます。そういうふうな動きがあったということは、先ほども大臣が申し上げたとおり、我々もぼんやりとながらは知っておりました。
  132. 土井たか子

    土井委員 まことにこれは無責任な言い方でありましてね。ぼんやりじゃなくて、実ははっきり御存じだろうと思うのです。ただ、それはどのように対応されますかと聞くと非常にお困りになるのであろう、したがって煙幕を張ったような答弁をなすっていらっしゃるのじゃないかと私は思っているわけでありますけれども、しかし、これはやはり貴重な努力だと私は思う。そういう点からすると、外務大臣だって評価をされるであろうと思うのですがね。どうですか。
  133. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 やはりそうした努力はしなければならぬと思います。私は、当時をいろいろと回想して思い出しているのですが、例えば、日中平和友好条約締結するという寸前でいろいろと動きがありました。ソ連は、それに対して今大変な関心を示した。同時にまた、日本に対するソ連のアプローチもあったことは事実でありますし、そうしたいろいろな、当時の日本をめぐるところの日ソ間あるいは日中間の動きもあったわけでございます。  私は、日ソ間においても、今後ともいろいろな面でのお互いの腹の探り合いとか打診とか腹を打ち明けての話し合いとか、そういうものは大事だろうと思いますし、そういう中で実るものがあれば、そうした政府の基本方針というものにそれが合致すれば、それは我々として一番大事な問題ですから、積極的にこれを取り上げるという度量といいますか、そういうものはやはり必要じゃないかと思っております。  ただ、政府の基本方針というのは、それは先ほどから申し上げたとおりであります。そういう中でいろいろと腹の打ち明けを政府間ではなかなかできない、あるいは場合によってはその他のルートで、もっと腹を打ち明けた話し合いができるかもしれない、そういう面を我々取り入れるということになれば、それは取り入れることにやぶさかであってはならない、それがやはり外交だろうと思います。これからも日ソ関係の中でいろいろと動きがあると思うのですけれども、そういう動きがあっても大変結構じゃないかと思うのです。
  134. 土井たか子

    土井委員 質問時間が終了しましたから、これで終えますけれども、午後の冒頭にも申し上げました指紋押捺の問題に対しては、外務大臣外務大臣として、法務大臣とこの対応に対しては大分違うお立場をお持ちのはずであります、外務大臣というお立場で。この指紋押捺の問題に対しての改善、むしろそれは外国人登録法に対して、これは改正するという方向が終局的には考えられなければならない話でありますけれども、法務大臣とやはり話し合っていただくということでなければならぬと思いますが、これをお約束願えますね。
  135. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは今後の課題として、私も改善すべき点があるならば積極的に取り組んでいくべきだという姿勢を持っておりますから、主管しております法務大臣あるいは法務省とも今後の推移によっては十分話し合っていかなければならない重要な問題だ、こういうふうに認識しています。
  136. 土井たか子

    土井委員 終わります。
  137. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、玉城栄一君。
  138. 玉城栄一

    ○玉城委員 私は、最初に、国連海洋法条約の現在の状況我が国対応についてお伺いをいたしたいわけでありますが、四面海に囲まれた我が国にとって、海の秩序を定めた国際法はあくまでも必要であると思います。この間の日ソ漁業協定におきましても、国連海洋法条約の条文が引用されておったわけでありますが、国連海洋法条約の現在の批准状況についてお伺いをいたします。
  139. 小和田恒

    小和田政府委員 国連海洋法条約批准した数は、今日までで十八でございます。それから昨年の十二月九日に署名の期限が終了いたしましたが、それまでに署名した主体の数は百五十九でございます。
  140. 玉城栄一

    ○玉城委員 国連で十年余もかかって作成された国連海洋法条約に対し、アメリカ、イギリス、西ドイツなど主要国が署名をしていないようでありますが、その署名していない理由についてお伺いをいたします。
  141. 小和田恒

    小和田政府委員 主要国の中で、今玉城委員が御指摘になりました米国、英国、西独等が署名していないことは事実でございます。その理由につきましては、一番明確にそれを述べておりますのは米国でございまして、公式な立場で理由を説明しておりますが、それによりますと、この海洋法条約の中で特に深海海底の開発に関する部分が国際社会全体の利益という立場から十分バランスがとれていないということが主要な理由になっております。  それから西独と英国については、私の承知しております限り、公式な形でその署名をしないという理由について発表を行ったことはないと思いますが、ただ私どもが仄聞しておりますところでは、理由は米国の理由と大同小異、すなわちこの条約が全体として国際社会のいろいろな国々の利益というものを、十分にバランスして反映していないということのように承知しております。
  142. 玉城栄一

    ○玉城委員 このアメリカ、イギリス、西ドイツ、今署名しない理由についてお話がありましたけれども一つは海底のマンガン開発を国際海底機関の手にゆだねる、この海洋法条約のその条項について反対をしている。それならば、これらの国々は世界の多くの国が参加して国連で十年余もかけてつくられた条約を、署名はもとより批准する考えももうないというふうに理解しておいてよろしいわけですか。
  143. 小和田恒

    小和田政府委員 その点につきましては、今の段階で私ども確定的な見通しを申し上げることは差し控えたいと思います。  と申しますのは、さっき申し上げましたように、米国につきましては、かなり明確な形で、現在の米国としては、現政権としては、この条約については基本的な立場の違いがあるということを明確にしておりますので、これは既にかなり早い段階で、条約が採択された間もない状況におきまして、そういう姿勢をはっきりしておりますので、少なくとも当分の間米国については、そういう態度を変更するという可能性はないと思います。  他方、英国と西独につきましては、先ほども申し上げましたように、この条約の署名の期限が昨年の十二月九日に終了したということとの関連におきまして、その署名の期限までに署名をしなかったということでございます。しかし、署名の期限までに署名をしなくても、この条約にはその後加入という形で参加することは可能でございますので、今後そういう国々がどういう態度をとるのかということについては、私ども今のところ明確な見通しは持っておりません。
  144. 玉城栄一

    ○玉城委員 はっきり言えますことは、アメリカはこの国連海洋法条約についてはもう参加をしない。イギリス、西ドイツについては署名はしないが、加入ということはあるいはどうなるかわからないということのようでありますが、そうしますと、我が国としてはこの条約批准する、しない、どちらの方でしょうか。
  145. 小和田恒

    小和田政府委員 御承知のように、この条約が一九八二年の暮れに採択をされまして、我が国はその後直ちに八三年二月七日にこの条約に署名をいたしました。この条約に署名をするということは、基本的には我が国としてはこの条約が目指している方向に反対はない、基本的にはこの条約方向に積極的に対処していきたい、こういう意思があって署名をするわけでございますので、そういう姿勢で今後も対処をしていくということでございます。  他方条約は六十カ国の批准がございまして初めて発効するということになっておりまして、現在のところ十八の団体が批准をしたという状況でございます。正確に申し上げますと、六十番目の批准書または加入書が寄託されてから一年たって発効する、こういう規定になっております。  そこで、今の状況では、この条約が一体いつごろ発効するのかという見通しが非常に立てがたい状態にございます。かたがた、この条約は世界の海洋秩序、国際的な海洋秩序というものを安定させるという目的を持っている条約でございますので、世界の大多数の国々がこれに参加するというような条約でなければ意味がないという問題もございますので、我が国としては、基本的にはこの条約批准するという方向で準備を進めておりますけれども、各国の動向も見守りながら、慎重に対処する必要があるというふうに考えております。
  146. 玉城栄一

    ○玉城委員 まあ基本的には、積極的に対処していきたいという意思を持って署名はした、またそういう姿勢でこの条約には対応したい、他方、また各国の動向も見ながら慎重にしたいということで、両方向を並べていらっしゃいますので、どっちを受け取っていいのかわかりませんが、いずれにしてもはっきりお伺いしておきたいのは、アメリカははっきりこの条約には参加をしない、イギリス、西ドイツについても加入するかどうかは今後の問題だ。例えばこの主要三カ国がこの条約に参加をしないという場合に、我が国としてはどう対応されますか。
  147. 小和田恒

    小和田政府委員 最終的に我が国対応がどうなるかということにつきましては、その時点におきましてどういう状況が展開しておるかということをにらんで判断するということになると思います。  ただ、先ほどの御答弁を補足して申し上げますと、実はこの条約が採択されました後、この条約を実際に実施していくに当たって必要な具体的な規則について討議をするために、海洋法会議準備委員会というものが開かれております。これは原則として毎年二回ずつ開かれて、定期的に審議を行っているわけでございますが、この過程におきまして、この条約をできるだけ多くの国に受け入れやすいものにするために、各国の間の利害の調整ということも、この準備委員会の作業の過程において行われているわけでございます。我が国といたしましては、この準備委員会に積極的に参加をして、なるべく多くの国々の利害が調整できるような形で積極的に努力をするという方向で臨んできておりますので、将来の見通しといたしましては、そういう形でこの条約が世界の大多数の国々によって祝福されて発効するという形になることを期待しておるわけでございます。
  148. 玉城栄一

    ○玉城委員 いやいや、私がお伺いしているのは、あなたのおっしゃるとおり、それを期待しているわけですけれども、主要国であるアメリカ、イギリス、西ドイツが参加しなくても、この条約については我が国としては批准する、しない、どちらなのですか。はっきり簡単に短くやってください。
  149. 小和田恒

    小和田政府委員 一番最初に申し上げましたように、この点については、その時点においてどういう事態が展開しているかということを見てから確定するということになると思います。
  150. 玉城栄一

    ○玉城委員 まあ、はっきりしないということですね。この深海海底に眠っている海底資源は、この条約によれば、人類共同の財産であると位置づけられているわけですが、我が国としても当然そういう考え方を持っている、そういう考え方に間違いない、このように理解してよろしいわけですね。
  151. 小和田恒

    小和田政府委員 深海海底の資源につきましては、この条約に明確な規定がございます。我が国としては、基本的にそういう考え方に立っております。
  152. 玉城栄一

    ○玉城委員 ところで、この深海海底で、この条約に先ほど申し上げましたアメリカはもう基本的に反対である、イギリス、西ドイツについても署名はしていないということなのですが、その我が国はハワイの南東海域の深海を開発する協定にこの国々と署名をしておるというふうに聞いておるわけですが、そのとおりなんでしょうか。
  153. 小和田恒

    小和田政府委員 今、委員が御指摘になりましたのは、恐らくは昨年の八月に署名をされましたいわゆる暫定了解というものであろうかと思いますが、暫定了解というものの性質は今委員がおっしゃいましたこととちょっと違う点がございますので、一言御説明したいと思います。  この暫定了解というのは英、米、西独、日本その他先進八カ国の間で取り決められたものでございまして、深海海底を開発するに当たりまして、各国が開発したいと思う鉱区が重複をしている可能性がございます。重複をしておりますと、現在の国連海洋法条約の制度のもとにおきましても、それを調整しなければ鉱区の開発が認められないという規定になっております。したがいまして、鉱区の開発に関心があると思われる先進八カ国が集まりまして、その間に鉱区の重複がないようにするということを民間の事業体の間で話し合いをいたしました。その話し合いの結果を尊重しようという趣旨取り決めが結ばれたのが、昨年の八月の暫定了解でございます。
  154. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、ちょっと奇妙な感じを受けますのは、海底資源というのは人類共同の財産である、この条約にもそういうふうに位置づけられているわけですね。ところが、片やこの条約には反対している、あるいはまだ署名もしていないという国々と、今おっしゃるような暫定協定我が国が署名をする、何か矛盾をしているような感じがするわけですね。  時間がありませんので、私はこの問題はこの程度にして次の質問に移りますが、移住の問題についてお伺いをしたいわけであります。私は、先日の米州投資公社設立協定の審議の際にもお伺いをいたしたわけでありますが、きょうもさらに中南米の我が国からの移住者の方々の問題についてお伺いをさせていただきたいわけであります。  中南米諸国は我が国から距離的に極めて遠い国でありますが、逆に非常に近い国々でもあると思うのですね。中南米諸国に親日的な国が非常に多いですね。それは、我が国からの多くの移住者の方々が中南米諸国で大変苦労して、成功していらっしゃる。その子孫の方々も、二世、三世それから四世というのは、その国の発展、繁栄に大変貢献をしていらっしゃる等々の理由もあると思うのですね。そういう意味では、中南米に対する我が国の政策というのはこれから非常に重要視をしていかなければならない、こう思うわけでありますが、現在の外務省は移住政策にどういう考え方を持って臨んでおられるのか、移住政策についての基本的な考えをお伺いいたします。
  155. 谷田正躬

    谷田政府委員 移住を取り巻く最近の内外の状況の変化を踏まえまして、我が国として基本的に考えております移住政策について概要を申し上げます。  今後の海外移住のあり方につきましての基本的な考え方は、我が国が今後ますます国際化を進めていくためには、経済交流のみならず人的、文化的な交流を質、量ともに一層充実していく必要があるということでありますが、これまで移住を通じて、この面で移住された方々が果たしてこられた役割、それぞれの移住先国において行ってきた貢献ということを考えますと、今後の我が国の新しい行き方の中での移住者、あるいはその子孫の方を含めての日系社会の果たす役割というものは大変大きいものがあると考えるわけでございます。そして、今後の国民の海外発展と定住のあり方を考えるに当たっては、従来のような狭い意味での移住行政からもひとつ脱皮するということで国民各層の海外志向というものを助長し、また他面、海外定住を容易にするための支援の措置が政府としては必要であると考えます。  これをもう少し具体的に申しますと、戦後の移住政策というのは、主として集団的な農業移住を中心にした政策が取り進められてきたわけでございますが、今後はもっと広いカテゴリーの移住というものを対象にする、つまり技術移住でございますとかあるいは文化交流、経済交流の一環として外国に長期滞在される、それがすなわちそのまま移住につながるというような形態のものもございますが、そういった海外へ行かれてそこで定住される方々をも含めた非常に広い、多岐にわたる対策というものを考えてまいる必要があるかと思います。  それからもう一点は、従来日系人といいますか、移住された方の子孫の方々に対しましては、ただ移住者の自立安定の延長として子弟に対する対策を行ってきたわけでございますけれども、既にこの日系人の存在というものがそれぞれの居住先国において大変繁栄して大きな役割を果たしているという事実、特に中南米諸国におきましてそういった日系社会が大変に貢献しているということも踏まえまして、今後は居住国での日本文化の紹介とかあるいは対日理解の促進の媒体となるという意味、それを通じてさらに国と国との間の友好関係の維持、醸成ということにも寄与するという認識から、日系社会に対する総合的な対策を検討する必要がある、これが移住政策の基本的な概要でございます。
  156. 玉城栄一

    ○玉城委員 我が国としての移住政策につきましては、時代の変遷あるいは内外の環境の変化に応じた新しい時代に即応した移住政策というものが当然確立されていかなくてはならない、そういうことだと思うわけでありますが、今部長さんがおっしゃいましたことに私は一言、今の日本の置かれた立場からしまして移住という問題は国際協力の極めて重要な基幹である、根本である、あるいは原点である、あるいは国際協力の延長線、延長そのものである、こういうふうに私は考えますが、いかがでしょうか。
  157. 谷田正躬

    谷田政府委員 御指摘のように、移住の面で移住者の方がいろいろと果たしておられる役割は、国際協力、これは経済協力あるいは文化協力という面も含むかと思いますが、国際協力という観点から見て大変大きな役割を果たしておるというのが我々の認識でございまして、今後は狭い意味での移住行政というものと、それから国際協力、経済協力というものとをできるだけ結びつけていく、これは行政的に縦割りになっておる面も若干ございますけれども、そういうものを関連づけて、両方相まって機動的に効果を発揮するという政策を実施していきたいと考えております。
  158. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは基本的な問題でありますので、大臣にお伺いしたいわけであります。  移住政策は、先ほどからも御説明ありましたけれども、いろいろな時代の変遷に応じて、あるいは内外の環境の変化に応じてつくられなければならないと思います。今置かれている我が国立場からして基本的には国際協力、我が国が問われている国際協力の根本である、あるいは原点である、あるいは国際協力の延長線上である、延長そのものである、そういう基本的な認識を私は持つわけでありますが、大臣の移住政策に対する基本的なお考えをお伺いいたします。
  159. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 移住政策といいますか、日本人が海外に出ていきまして、その国の人間になって、その国のために活動するわけでございますが、しかし日本との関係はもちろん切れるものではありませんし、そういう意味において、その国において活動する移住者の活動というのが日本との協力関係あるいはまた日本人との友好関係、そういう面との結びつきは極めて大きいものがございます、文化の面においてもそうでありますし。そういう意味では、今おっしゃるように、いわば移住という問題は、まさに日本の国際的協力の大きな一面であるということははっきり言えると思います。
  160. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、これは外務省の方に伺いたいのですけれども、最近外務省、これはそういう移住行政を執行するJICAも含めてなんですが、移住問題に非常に熱意がないような感じを受けるわけですね。いかがでしょうか。
  161. 谷田正躬

    谷田政府委員 先生が今移住についての熱意がないという御印象を持たれたとすれば、これは一時期、二、三年前になりますか行政改革の一環といたしまして、一部に国としての移住政策はもう縮小ないしは廃止してもいいのではないかという議論が起こったことがございます。これに対しまして外務省といたしましては、そういう考え方は基本的に間違っているということで移住の持つ意義というものを大変強調いたしまして、行革審の方にも働きかけ、関係方面ともいろいろと移住問題についての御理解を求めるということをやりまして、国としての移住行政は存続する必要がある、ただその内容といたしましては、これを統合化し合理化していく必要がある。これは、先ほど来お話ししております内外の情勢変化にかんがみて、行政の内容が変わるということは当然でございますけれども、そういったことを経てまさに新しい移住行政のあり方を鋭意検討いたしておる段階でございます。ですから、先ほど申し上げました移住行政について不必要論と申しますか、そういったような議論が一時あったことは事実でございますけれども、これに対して外務省といたしましては強く反対するという態度で、ただ、もっと積極的に新しい意味での移住を推進していくということに努力しているということでございます。
  162. 玉城栄一

    ○玉城委員 外務省自体も、移住という問題に対する評価が部内においても低いのではないか。移住問題については非常な御苦労も多いわけですが、報いられることが少ない、そういうことで予算的にも恵まれてないのじゃないかというような気がするのですね。今おっしゃいましたJICAにしても、従来移住部門に二つの部があったのが一つの部に統今されているとか、あるいはそういう皆さん方の姿勢が地方の自治体にも反映していまして、地方のいろいろな県あるいは市町村等におきましても移住部門の機構がどんどん縮小されていく傾向にありますね。したがいまして、これはこれだけが理由ではないのでしょうけれども我が国からの移住者の数が非常に減ってきている。最近の移住者の数の推移はどうなんですか。
  163. 谷田正躬

    谷田政府委員 過去五年間の移住者数の推移について申し上げますと、昭和五十五年には三千六百五十三、五十六年三千五百十七、五十七年二千八百二十二、五十八年二千三百四十九、五十九年二千四百四十五となっております。
  164. 玉城栄一

    ○玉城委員 我が国として一番多かった時期はどれぐらいの数ですか。
  165. 谷田正躬

    谷田政府委員 私の記憶によりますと、昭和三十二年に一万六千人というのがたしか最高であったと記憶いたしております。
  166. 玉城栄一

    ○玉城委員 移住関係予算は現在どうなっておりますか。例えば、JICAの総予算の中における移住部門の予算の割合というものはどういう状況ですか。
  167. 谷田正躬

    谷田政府委員 移住予算でございますが、これは外務本省が持っております行政費、それから国際協力事業団への交付金、出資金がございますが、これをひっくるめた全体の数は三十五億三千万円でございます。ただこれは本年につきましては、大変厳しい財政状況の折にかかわらず前年度比におきましては二・五%増ということになっております。  それから、御質問のJICA全体の予算と移住部門予算との比率につきましては、経済協力局長が参っておりますので、その方からお答えいたします。
  168. 玉城栄一

    ○玉城委員 それでは一緒に。経済協力局でやっていらっしゃる中南米に我が国から移住している国々に、重立った国でよろしいですが、外務省として経済援助していらつしゃるその状況ですね。
  169. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 まず、JICA全体の予算から申し上げますと、ただいま領事移住部長が御説明申し上げました六十年度の政府原案では交付金、出資金及び受託費等、全体を含めまして九百五十三億三千八百万円でございます。そのうちの海外移住の事業費、これは交付金に入りますが二十億余りということになります。それから、出資金のうちの移住投融資資金が十二億五千万円ということになっております。  それから第二の御質問でございますが、中南米の我が国からの移住者の方が多い地域に対する経済協力がどういうふうになっているかという御質問だと思います。  中南米全体は、御承知のとおり我が国の全世界に対しますODAの大体一割が中南米地域に向けられております。一番最近の例ですと、五十八年でございますが九・九%でございますので約一割ということでございます。そのうち我が国からの移住者、日系人人口が多い上位五カ国、ブラジル、ペルー、アルゼンチン、メキシコ、ボリビアを便宜とってみますと、この五カ国に対します我が国のODAの実績額が八二年で一億八百万ドル、八三年が一億五千九百万ドル、対前年比で四七%増でございますが、この額が対中南米ODA全体に占める割合はどのくらいかと申しますと、八二年で六〇%、八三年で六六%ということでございますので、中南米全体におきまして、この上位五カ国がかなり大きな分野を占めているということは申せると思います。  これは数字の話でございますが、もし具体的に移住者に関連のあるプロジェクトでどういうものがあるかということでしたら、御説明いたします。
  170. 玉城栄一

    ○玉城委員 その局長さん持っていらっしゃる資料、後ほどまたどなたかに届けていただければよろしいと思います。  一つ、ここでお伺いしておきたいのは、例えば移住地に、パラグアイ、ボリビアなんかで診療所がございますね。その診療所の運営費等につきましては、移住予算からJICAの方が出しているということですが、相当の数やはり現地の方々が診療を受けるというようなこともあるということからして、その移住予算だけでそういう診療所の運営等をするのではなくして、いろいろな経済協力費とか技術協力費とか無償協力とか、予算もそういうところにやはり振り向けながら潤沢にそういう診療所の運営ができ、現地人の診療にも対応できる体制をやはりとってもらう必要があるのではないかということもあるのですが、いかがでしょうか。
  171. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 確かに、御指摘のとおり、移住地におきます診療所というのは、移住者の方々の自己資金ないしは移住の方の関係の経費で見るということにならざるを得ないかと思いますけれども、その国に対します経済協力という形で実際上ないしは間接的に移住者の医療に裨益するということを目的にしまして、例えばパラグアイの例でございますと、アマンバイというところの総合病院を日系人が割と多く住んでおられるところに建設をいたしまして、日系の方々及び現地の一般の方々双方の医療に裨益するということで建設を行っております。  それからまた、もう一つ典型的な例は、御承知のボリビアのサンタクルス総合病院でございますけれども、これもボリビアにおきますサンファン及び沖縄両移住地でいろいろ診療所がございますけれども、その診療所の中心的な病院というような感じで二百床、実際には四百床分の規模がございますけれども、四十二億円の無償資金協力ということで現在建設中でございます。このような形で実際上行っているということでございます。
  172. 玉城栄一

    ○玉城委員 この間、私委員会で、ボリビアは超インフレで学校がずっと休校続きで子供たちの学力低下が非常に憂慮されているということで、日本側から教材だとかスポーツ用具等を送付するときに向こうで多額の税金がかかる、何とかその免税措置は講じられないかという話をいたしましたら、検討するというお話だったのですが、それはいかがでしょうか。
  173. 谷田正躬

    谷田政府委員 この件につきましては、直ちに私どもといたしましては、まず一つは在ボリビアの我が方大使館に訓令いたしまして、その大使館から先方当局と折衝をさせ調査をさせたわけでございますが、その結果によりますと、ボリビア移住地の学校へ贈与する学用品は、在ボリビア我が方大使館がボリビア外務省に対し無税通関の申請を行うことにより、関税の免除を受けることは可能ではあるということです。  それで、具体的にはどういう手続になりますかといいますと、当該贈与品に沖縄移住地の学校向けという表示を行いまして、それから在京のボリビア大使館の領事査証を取りつけた上で在ボリビアの我が方大使館あてに送付し、我が方大使館がボリビア側に無税通関の申請を行うことという手続になるかと思います。それで、これによって通関の際の税金は免除になりますが、ただ通関のための諸掛かり、通関手数料等、これは受取人が負担してもらわなければならないということでございます。およそそういう手続によって、一応関税免除によって送ることが可能であるということの回答が参ってきております。
  174. 玉城栄一

    ○玉城委員 今御回答があったように、ぜひそういう措置をとっていただきたいと要望いたします。  大臣、この移住問題について最後にお伺いしたいわけでありますが、この移住行政はこれから長い目で見て本当に国際協力の実を上げる非常に大事な問題である、そのためにはやはり予算等につきましても、あるいは行革ということもありましても、ただ多いからいいというのではないでしょうけれども、そういう重要な政策として位置づけられて手当てをしていただきたいわけであります。  それで、このJICAの人事の問題等についても、これから本当に機動的にJICAが現地においてもあるいは国内においても効果を上げていくためには、人事の問題についても考える必要があるのではないか。今、大変御立派な総裁がやっていらっしゃるわけですけれども、それはそれで結構ですが、あるいは民間の有力なそういう方々を総裁にするとか、今そういう時代になってきておりますし、そういうこともやはり今後の課題として検討してみる必要があるのではないかという意見もあるわけであります。JICAは、外務省あるいは各省庁からも出向していらっしゃるわけです。それは決して悪くはないと私は思うのですが、とかくそういうことによって、もう役所と全く同じスタイルになりまして全然身動きがとれない、縦割り行政で柔軟な対応ができないというような批判も相当あるわけです。そういう点も含めて、大臣、この移住行政についての考え方をお伺いいたします。
  175. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 最近ではこの移住者が非常に少なくなったということで、何か移住政策が大変軽くあしらわれておるのじゃないかというふうな声も上がっておるわけでございますが、やはり現在は移住者は少なくなっておりましょうけれども、しかし今移住しておる人たちは大変苦労しておられて、その国と日本との友好関係あるいはまたその国の経済社会に対する貢献等で大変大きな努力をしておられるわけでありますから、こうした移住者に対して政府が常に温かい手を差し伸べていくということは極めて大事じゃないか、こういうふうに思います。ここで何か政府と移住者の間の糸がぷつっと切れたような形になってしまうと、それは日本そのものの信用にもかかってくることになるわけですから、移住政策は今後とも大事な外交の部門の一つといたしまして、移住者の方の生活の安定、経済の安定と、そしてまた日本との関係を密接に続けていくという立場から、いろいろな面でも協力を惜しんではならない、こういうふうに思っております。  これからも、いろいろの御指摘等あるいはまた移住者の声も聞きながら、現地の声も聞きながら移住政策についてはきめ細かく配慮をいたさなければならない、そういう気持ちでございまして、今お話しの点は十分念頭に置きましてこれからの移住政策を進めてまいりたいと思います。
  176. 玉城栄一

    ○玉城委員 この移住問題は私は非常に大事だという考え方でありますので、また機会を見てこれからもお伺いしてまいりたいと思います。  次は、質問を変えますが、これは栗山さんの方にまた、もうたびたびで私も恐縮で言いにくいのですが、去る十九日にまた米軍の攻撃用ヘリ、シコルスキーCH53スーパースタリオン二機が燃料補給を理由に宮古島民間空港に緊急着陸をしているわけですが、その事実関係を御説明いただきたいと思います。
  177. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 今、委員の方からの御指摘がありましたように、事実関係といたしましては、十八日の午後、フィリピンから沖縄の嘉手納に向かう目的を持った米海軍のヘリ二機が、給油目的のために宮古島の空港に着陸をいたしました。私ども承知しておりますところでは、当初の予定では、直ちに給油を済ませてそのまま嘉手納の方に直行する予定でありましたところ、給油機の方の都合によりまして、やむを得ず一夜明けまして次の日に給油を行って、一日おくれで嘉手納に向かった、こういうことであったというふうに承知をしております。
  178. 玉城栄一

    ○玉城委員 たまたま私は、この日にこの空港におりましたのでよく状況はわかりますが、これは着陸五分前に管制塔に突如として連絡してきておりてきた。そして、どかどかとアメリカの兵隊さんがその二機からおりてきて、ターミナルに入ってきたわけですね。そして、この空港内の給油会社と強引に交渉しているのですが、これは拒否されるわけですね。その日は土曜日ですから、嘉手納の方に連絡をして、なかなか連絡がつかないということで、この二機は空港で一晩とまっているというようなことで、一体フィリピンから沖縄まで来ると、このヘリというのは満杯なのか、とにかく途中で緊急燃料補給だ、こうくるのですが、どうなんでしょうか。フィリピンの基地から沖縄の嘉手納基地まで燃料を途中で補給しないと飛べないのか。補給しなくちゃならぬのか。非常に疑問を持ちますのは、このヘリ以外にもこれはたびたびなんです。燃料補給だということで小さな民間空港におりてきて、周辺の人はみんなびっくりするわけですよね。そうすると、やはり実質的にこの民間空港は給油基地化しているのじゃないか、こう思うのですね。いかがでしょうか。
  179. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 給油基地化しているということではございませんし、アメリカの方もそういう目的を持っておるということではございません。  他方、これは委員、過去におきましても米軍の観測機の宮古空港の使用との関連で御質問があったと承知しておりますが、その際にも政府側から御答弁申し上げましたように、やはりその当該航空機の人員を含めまして荷物を積んでいる状況、その重さ、それからそのときの天候状況等によりまして、最良の状況であれば沖縄からフィリピンまで無着陸で飛べるというようなこと、飛行機の性能上そういうことでありましても、ただいま申しましたような要因によりまして、やむを得ず給油のために宮古に立ち寄らねばならないという状況は時たま起こるということでございまして、今回のヘリの着陸の場合も、そういう事情によるものであるというふうに私ども承知をいたしておるわけでございます。  したがいまして、そういう目的のための空港への出入りということであれば、これは委員承知のように、地位協定の五条に基づきまして条約上米軍に与えられておる権利でございますので、その限りにおきまして、米軍が今申し上げましたように単発的に空港を使用するということは、これは地位協定の枠内のことであるというふうに理解をいたしておる次第でございます。
  180. 玉城栄一

    ○玉城委員 単発的とおっしゃいましても、こうたびたびこういう小さい民間空港に給油のためということでおりてくるということは、これはもう提供もしていないのに実質的に給油基地化している、そういうふうに受け取らざるを得ないのではないかと思うのですね。  そこで、このヘリ二機、三月にまたここへおりてきて、今度は給油ホースを集水池にほったらかして、それはガソリン入っていますよ、そういう事件もあるわけですね。そういう危険なガソリンなんというのは、空港内において厳しく消防法等によって規制されているわけですけれどもね。空港内でそんなものをほったらかして、もしこういうものに火でもついたら大変なことになるわけです。これはそういう国内法を当然守るべきだと思うのですが、こういう今申し上げていることは私は許されないと思うのです。いかがでしょうか。
  181. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 ただいま御指摘の件につきましては、私どもも新聞報道によりまして承知いたしました事案でございますので、アメリカ側に照会をいたした経緯がございます。その際、私どもがアメリカ側より得ました情報によりますれば、給油の際給油ホースの中に残った燃料を再び給油機に戻すということが不可能であることから、現場におきまして空港当局とアメリカ側が相談しました結果、地元の消防署員の監督下においてその残余の、ホースに残った燃料を集水池に捨てるということになった、こういう経緯であったというふうに承知をしております。
  182. 玉城栄一

    ○玉城委員 こういうガソリンとか危険物取り扱いについては、消防法などで厳しく規制されているわけですよね。当然米軍といえどもそれは守るべきではないのですか、栗山さん。
  183. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 一般的には、委員指摘のとおりだろうと思います。本件の場合におきましては、ただいま答弁申し上げましたように、したがいまして、地元の空港当局及び消防当局と相談の結果とった措置であるというふうに承知をしております。
  184. 玉城栄一

    ○玉城委員 相談の結果とおっしゃいますけれども、ガソリンを空港内における集水池に捨てたという、これはちょっとおかしな話で、これは極めて危険きわまりないのですが、もう一つ、今度はまた二、三日前、これもまたたびたびこの委員会で取り上げているのですが、読谷の落下傘降下訓練で大きく目標を外れて、これは沖縄県の監視車両にそのおりてきた兵隊が激突して重傷を負うという事件が起きているわけですね。これは御存じですか。
  185. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 そのような事件があったことは承知をしております。
  186. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、非常に危険なんです。これは民間の住宅とかあるいは人とかいうことだと、これまた大変な惨事になるわけですが、それで、夜間訓練もやっているんですが、これは地域住民は夜間訓練だけはやめてくれ、もちろん昼のこういう訓練も何とかやめてもらいたい、いつ自分の頭上に落下傘が落ちてくるかわかりませんからね、風向きぐあいによりましたらですよ。それを夜間もやられたら、もう寝ることができない。最低、夜間訓練だけは中止してくれという強い要望があるのですが、外務省も防衛施設庁もそんなことは全く無視しているという話ですが、全くけしからぬ話ですよ。これはどういうことですかね。
  187. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 今の御質問にお答えする前に、一点だけ事実関係で補足させていただきますが、先ほどの落下傘の降下訓練の事件は施設、区域内で起こって、目標より若干外れたということはそのとおりでございますが、あくまでも施設、区域内で起こったケースでございますので、そのように御理解いただきたいと思います。  読谷村の降下訓練の問題につきましては、私も現地の事情はある程度承知をいたしておるつもりでございます。飛行場周囲に非常に近接したところに住宅地域があって、降下訓練との関連で地元の方々にいろいろ御迷惑、不安をおかけしておるということはそのとおりであろうと思いますが、他方におきましてやはり訓練を行う必要がありますので、かねてからアメリカ側に対しましては、十分注意を払って、過去に施設、区域外におりてしまったというようなケースもありますので、そういうことが起こらないように十分注意を払いながら訓練を実施をしてほしいということを、常日ごろから米軍側に言っておるところでございまして、米軍の方もそれなりに十分注意を払ってやっておる訓練であるということでございますので、やはりこれを中止させるというわけにはまいらないのではないかというふうに考えております。
  188. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、せめて夜間の落下傘降下訓練についてはどうなんですか。
  189. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 夜間の訓練につきましても、やはり最小限度の訓練を行う必要は政府としても理解をいたさなければならないと思いますので、夜間訓練を全面的に中止せよという申し入れをアメリカ側に行うというのは適当ではないのであろうというのが私ども判断でございます。
  190. 玉城栄一

    ○玉城委員 ここで怒ってもらちが明きませんが、せめて夜間の落下傘の降下訓練のあり方についてはもう少しそういうふうにおっしゃらないで、施設庁ともあるいは米軍側とも、何とか訓練の方法はないかどうかくらいはぜひ話し合いをやっていただきたいですね。それも嫌ですか。
  191. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 もちろん、改めて検討するにやぶさかではございませんが、どうぞ誤解していただかないようにお願いしたいわけでございますが、地元の状況というものが非常に問題があるということは、私どもも十分認識はしておるわけでございます。したがいまして、そういう地元の方々に不安を抱かせないように十分注意をして訓練を行ってほしいということは、常日ごろからアメリカ側に言っておるところでございます。夜間訓練の問題につきましては、せっかくの御指摘でございますので、また改めて検討はしたいと思いますが、しかしこれを全面的に中止させるというのは、やはり非常に困難であろうということは御理解賜りたいと思います。
  192. 玉城栄一

    ○玉城委員 もう時間がありませんので、防衛施設庁さん来ていらっしゃいますが、リロケーション、いわゆる移設を前提とした合意の決まった地域をちょっとおっしゃっていただきたいのです。
  193. 森山浩二

    ○森山説明員 お答えいたします。  安全保障協議委員会において移設を条件に全部返還されることが了承されております施設、区域でございますが、これは第十四回におきまして那覇空軍・海軍補助施設、それから第十五回におきまして牧港住宅地区、那覇港湾施設、那覇サービスセンター、それから第十六回におきまして伊江島補助飛行場、これらの施設でございます。
  194. 玉城栄一

    ○玉城委員 この那覇港湾施設ですけれども、これは第十五回の日米安保協といいますと昭和四十九年ですから十一年、移設を条件に返還という合意がされておるわけですが、これは十年にもなるのですからどこか候補地とか予定地とか、そういうことは全く検討されてないのですか。
  195. 森山浩二

    ○森山説明員 那覇港湾施設は特別な機能、性格を持った施設でございますものですから、鋭意移設先を検討しておるのでございますが、非常に選定が困難でございまして、ただいまのところは残念ながら見通しを得るに至っておりません。施設庁としましては、努力を続けたい、こういうふうに考えております。
  196. 玉城栄一

    ○玉城委員 今のこの施設と似たような機能を持つ既存の米軍の施設も含めて検討をしているわけですね。
  197. 森山浩二

    ○森山説明員 沖縄にございます米軍施設について、検討しておるわけでございます。
  198. 玉城栄一

    ○玉城委員 実はこのことについて外務省の方にお伺いをいたしますが、これは大臣も所信表明でもおっしゃっておるわけですね。「沖縄県における米軍施設、区域の密度が特に高く、その整理統合について」云々ということで、「米側との協議を通じその整理統合の推進に努めてまいりました。」というような、常にそういうふうなことをおっしゃっているわけです。  実は大臣、私、この前も委員会でもお伺いしましたけれども、日米貿易摩擦解消策として、いわゆるフリーゾーンという考え方、これは今の那覇の港、片側を米軍が使って、片側を民間が使っているわけです。片側のこの周辺がそのいわゆるフリーゾーンの設置場所として最適であるということを、県側もあるいは地元の経済界側もあるいはまた専門のコンサルタントの方々の報告書にも、その場所が非常に適当であるという意見があるわけです。私たちも、これは空港とも近いし、いろいろな条件からしてそう思う。そういうことで、これは十年も前に移設ということで返還が合意した。その移設先が見つからないからということですけれども、やはりこの際真剣に、大臣もおっしゃっております整理統合ということからしても、こういう問題も含めて——私は整理統合という意味では、既存の米軍の施設の中で今の機能を落とさないようなものは十分あり得ると思うのです。やはり考えてみる時期に来ていると思いますが、大臣いかがでしょうか。
  199. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 沖縄に自由貿易地区を設けることの、我が国全体の輸入促進、貿易摩擦解消という角度からの検討はさらに必要でありますが、その設置により、沖縄における企業の立地を促進するとともに、国際交流の促進に資することの効果をもたらすとも考えられますので、先般のお話の趣旨もあり、関係省庁にも検討を依頼したところであります。ひとつ十分検討してみたい、こういうことであります。
  200. 玉城栄一

    ○玉城委員 もう時間が参りましたので、以上です。
  201. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、木下敬之助君。
  202. 木下敬之助

    ○木下委員 ちょっと前のことですが、新聞報道によりますと、ASEAN歴訪中の自民党の藤尾政調会長が今月六日に、インドネシアのスハルト大統領との会談で、日本が国連安保理事会の常任理事国になることへの支持を求めた、このように伝えられておりますが、外務大臣はこの事実を確認いたしておるでしょうか、お伺いいたします。
  203. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 藤尾政調会長は五月六日、スハルト大統領との会談において、我が国がアジア諸国の同意を得て安全保障理事会の常任理事国になれば、AA会議の精神を国連の場で世界に敷衍させる機会が与えられ、世界の平和と繁栄のため貢献し得るとの趣旨を発言されたと承知しております。
  204. 木下敬之助

    ○木下委員 そのような藤尾政調会長の発言は、外務省が関与した発言であるのかどうか、お伺いいたします。
  205. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは外務省としては関与しておりません。藤尾政調会長自身の考え方に基づいて発言されたと承知しております。
  206. 木下敬之助

    ○木下委員 しかし、政権党の政調会長の発言である以上、外務省としては全く無関係、こう言うわけにはいかないと思うのですが、どうでしょうか。
  207. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 国連の安全保障理事会は、国際の平和と安全の維持に必要な責任を有する国連機関でありますが、これまで安全保障理事会に付託された紛争の解決に当たりまして、遺憾ながら憲章に規定されている機能は必ずしも有効に発揮しておるとは言えないわけです。安全保障理事会が有効に機能するためには、常任理事国がその責務に対する自覚に基づいた協力を行うことが重要であり、我が国としては安全保障理事会が本来の機能を果たし得るよう、常任理事国の構成及び拒否権の行使の対応についても再検討すべき旨を主張しておる次第であります。
  208. 木下敬之助

    ○木下委員 今言われたことの趣旨はわかりますが、藤尾政調会長がそこで発言されたということを外務省は事前に全く関与してなかったのかというところをもう少し詰めてみたいのでございますが、どうでしょうか。
  209. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  先ほど大臣から御答弁ございましたように、藤尾政調会長が今回御発言されるに当たりまして特に外務省と、外務省の方から御協議申し上げてあのような結果になったということではございません。これは大臣が関与していないとおっしゃった趣旨でございます。ただ、政調会長の御発言の内容、これも今大臣から御答弁ございましたように、我が国としては安全保障理事会の強化ということは必要だと考えております。  それからまた、今回の藤尾政調会長の御発言は、安保常任理事国の問題もございますが、それと同時により広い観点から、我が国が戦後四十年間国際協力を国是としてやってきた、そして日本も国力が出てきた、したがってアジアのためにももっともっと政治的にも経済的にも大きな役割を果たすべきであると思うという趣旨の御発言をしておられます。これは私ども、国連外交を推進するに当たりまして常日ごろ心がけておることでございますので、政調会長が言っておられますことと私ども考えておりますこととは、内容的には非常に近いことであろうと考えております。     〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席〕
  210. 木下敬之助

    ○木下委員 しつこいようですけれども、もう一つ確認させてください。新聞報道ですけれども、出発する前にこういったことを発言することを中曽根総理に伝えて同意を得た、このような発言もございますので、外務省としては藤尾政調会長がこういう発言をするということは事前に承知しておったわけですか。
  211. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 その点については、私ども承知いたしておりません。
  212. 木下敬之助

    ○木下委員 その問題はこのくらいで、その反応についてお伺いいたしたいと思います。  この藤尾政調会長発言に対するインドネシア側の反応、あるいはASEAN諸国の反応はどのようになっているか、お伺いいたします。
  213. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  先ほど申し述べました藤尾政調会長の一般的な、日本がもっと国際的に寄与すべきである、こういう点につきましては、会談されました相手方の御理解を得られたことであろうというふうに私ども承知いたしております。ただ、安保常任理事国の問題につきましては、これは公式の反応はございませんが、御訪問先の報道関係に載りましたところでは、何と申しますか、非常に難しい問題である、懐疑的な趣旨の調子が相当数目立っております。
  214. 木下敬之助

    ○木下委員 そういう難しいという反応、これはどうですか、外務省とほぼ同じような趣旨で発言されたというか、趣旨を持った上で藤尾政調会長の発言と思いますが、それに対してこういう難しいという発言というか反応があったことをどうとらえておられますか。
  215. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたように、私どもとしては日本が国連でもう少し大きな役割をしたいという立場から従来からやっておるわけでございますが、その過程におきまして、特に安保常任理事国の問題のような国連憲章の改正を伴う問題、これについては現状を動かすことが非常に難しいということは、私ども常日ごろ感じておることでございまして、今回のASEAN各国での報道の反応もある程度予想し得るという感じがいたしております。
  216. 木下敬之助

    ○木下委員 我が国の国連外交は、ASEAN諸国を軸とし、アジアの支持を基盤にすべきことは当然でございますが、その果たすべき政治的役割についてはASEAN諸国との間にはおのずと違いがある、我が国考えている我が国の役割とASEANの方が考えている我が国の役割とではおのずと違いがある、このように考えるのです。そのことをASEAN諸国との間で相互に確認しておく必要がある、そうすべきじゃないかと思うのですが、この点、どう考えられますか。     〔浜田(卓)委員長代理退席、委員長着席〕
  217. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 我が国とASEAN諸国とは、その政治的、経済的状況に応じましておのおの果たすべき役割があると考えております。このような考え方については、ASEAN諸国との間でも一応共通の認識があるわけでありまして、我が国としては、個々の案件においてもできるだけ密接にASEAN諸国との協議を行って、我が国の外交の基盤であるASEAN諸国との協力関係を重視をしてきております。国連の場においては、多くの場合、我が国とASEAN諸国との協調が図られてきておるわけであります。私も国連に行く場合におきましては、必ず国連においてこれまでASEAN諸国の外相と十分な打ち合わせをいたして、これに臨んでおるということでございます。
  218. 木下敬之助

    ○木下委員 デクエヤル国連事務総長の八三年度年次報告によりますと、国連の平和維持機能の強化の必要性を訴えられ、安全保障理事会における全会一致の決定さえ尊重されないことがあると加盟国に反省を求められておりますが、我が国はこの点をどのように認識しておられるか、お伺いをいたします。
  219. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 先生御指摘ございましたように、事務総長の第三十八回総会への報告の中に、みずから参加した決定を遵守しない国が見受けられるのは遺憾である、したがって、国連機能強化のためには、すべての加盟国が国連憲章の原点に立ち返ることが大事であるという点が強調されております。この点につきましては、この報告が提出されました一昨年の国連総会におきまして安倍外務大臣の一般演説の中で、まさにそのとおりである、国連の現在の問題というのは加盟国の問題である、したがって加盟国が原点に立ち戻って国連をよくするための協力をすべきであるという趣旨の演説をされております。本年、まさに国連創立四十周年に当たりまして、国連の四十年の歩みというのを反省する時期でございますので、この機能改革、機能強化の問題については積極的に対応してまいりたいと考えております。
  220. 木下敬之助

    ○木下委員 本年一月守帰国中の明石国連事務次長は、デクエヤル国連事務総長の見解を引用しながら、国連への信頼が危機に瀕している、そういった旨を日本記者クラブで明らかにされております。その中で、国連の無力化、非力化は加盟国自身の姿勢にかかっている旨を強調しておりますが、今も申されましたように、我が国は国連の機能強化のために、具体的にはどのような努力をしていく方針であるのか、お伺いをいたします。
  221. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 現在の国連が、創立当初予定されましたような機能を十分に発揮しておらないというのが実情でございます。したがいまして、国連の基本的な役割でございます平和維持機能の強化、これを我が国は強く求めておるわけでございますが、先生御指摘の具体的な方策といたしましては、例えば紛争が発生する場合、紛争発生のおそれがあるような場合の国連事務総長の役割の強化、これは調査それから仲介案を出すような役割でございますが、その役割の強化、それから安全保障理事会の機能の強化、これは例えば先ほど大臣が申しました、基本的には安全保障理事会の常任理事国の構成の問題等もございますが、もう一つの点といたしまして、やはり大国の拒否権の問題がございます。実質事項につきまして拒否権を行使しないというのは非常に難しいと思いますが、紛争が発生いたしました場合の国連の安保理の調査権限、これは憲章三十四条にございますが、これに対しても拒否権が行使されて調査ができないというふうな事例が過去にございます。こういうふうなものについては拒否権の行使を慎むような慣行をつくっていけばよろしいのではないか。また、現在国連が果たしております平和維持機能の中心的な役割をいたしております平和維持活動がございますが、この活動の強化策、こういうものを考えていきたいと思っております。
  222. 木下敬之助

    ○木下委員 国連のあり方の問題点として、人口十億の国も人口数万人の国も同じ一票として表決がなされることに対する根強い批判がある、このように思いますが、我が国としてはこの点についてどう考えておられるか、お伺いいたします。
  223. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 先生御指摘のように、非常に人口が多く国力も大きな国と一方では数万人のいわゆるミニステーツ、この問題が確かに国連の中においてはございます。一九六〇年代に新しい独立国家が国連に加盟してまいります場合にこの議論がある程度あったのでございますが、現実の問題といたしましては、これらはすべて対等の一国ということで加盟が認められまして、現在の体制が成っておるわけでございます。一国一票というのはやはり一つの原則でございまして、この原則に正面から挑戦するのは非常に難しいことであろうと思います。むしろ国連の諸決定をするに当たりまして、対話と申しますか、コンセンサスと申しますか、そういう方式を多用することによってこの大小格差のある国の間の一国一票の問題を解決するのが、現実的な方途ではないかと考えております。
  224. 木下敬之助

    ○木下委員 アメリカ等の大国はどういう考えを持っているか、おわかりならお伺いいたしたいと思います。
  225. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 米国も、先生御指摘のように非常に大きな国が、そして国連の運営経費の非常に大きな部分を負担しておる国の意向が尊重されない機構というものに、非常に疑念は抱いております。ただ、先ほど申しましたように、アメリカ自身もこの一国一票制度に手をつけるということは考えておらないと思います。むしろこの問題は、実際的な運用において、それぞれの意見を尊重し合うという形での解決を図りたいというのがアメリカの真意であろうと理解いたしております。
  226. 木下敬之助

    ○木下委員 我が国は、国連の機能強化の努力の一環として、日本は安全保障理事会の常任理事国としての資格を有する旨の主張はしているのか、しているとすればどういう形でしているのか、また我が国の主張に対する国連及び各国の反応はどうか、お伺いいたします。
  227. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  国連の場において公式にこの問題を取り上げましたのは、過去、第二十五回の総会、昭和四十五年でございますが、それと第三十一回の国連総会、昭和五十一年でございますが、このそれぞれの外務大臣演説でこの点に触れております。ただ、その触れ方と申しますか、これは先ほど大臣が申しましたように、安保常任理事国の構成の再検討ということでございまして、我が国が安保常任理事国になるという直截な形での触れ方ではございません。各国の反応でございますが、米国は、第二十七回の国連総会及び第二十八回の国連総会におきまして、それぞれ国務長官が我が国が安保常任理事国になる資格のある国だという趣旨の発言をいたしております。また、フィリピンのロムロ外相が昭和五十九年に国連の場において、常任理事国となるべき資格のある国だという発言を行われておりますが、その他の国の公式の発言というのはございません。
  228. 木下敬之助

    ○木下委員 我が国は、国連の活動に積極的支持を与え、国連に協力していくことをその外交の基本政策の一つとしていると思います。しかし、米ソの対立、南北問題の対立の雰囲気の中で、最近はいわゆる国連疲れを強めている、こういう感じが日本の現状ではないのかと考えますが、どう受けとめておられますか。
  229. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 先生御指摘ございましたように、国連疲れと申しますか国連離れと申しますか、そういう機運が生じておることは事実でございます。特に、アメリカ等の世論の中にそういう意見が相当見られるように思います。ただ、加盟国全体が国連離れを起こしておるかということでございますと、必ずしもそういうことではないと思います。加盟国の多くの中に、先ほど来申し上げますように、国連が所期の機能を果たしていないという不満はもちろんあるわけでございますが、例えば昨年の国連総会等を見ますと、アフリカ問題等について各国協調して取り組もうというコンセンサスの機運が非常に出ておりますし、対決場面も昨年はやや少なくなっております。こういう各国の対話を進めていく機運というものは、存在するのであろうと思います。
  230. 木下敬之助

    ○木下委員 国際社会における我が国の政治的役割の拡大を中曽根内閣は唱えておられますが、その役割の一つは国連の場にあるのではないかと思います。国連の無力説をはね返す改革のための独自の意見と行動を我が国としては積極的に示す必要があるのではないかと考えますが、外務大臣としてはこの点についてどのような見解を持っておられるのか、お伺いいたします。
  231. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 やはり私は、国連の場というのは非常に大事だと思っております。  確かに最近、国連無用論といいますか、あるいは国連離れという空気もなきにしもあらずであります。しかし、戦後の平和の枠組みというものはこれを堅持していく、さらにそして、国連の機能をもっと強化して、世界の平和維持あるいはまた安定のための大きな役割を果たさせていくということでなければならぬと思います。日本は、それなりに国連では役割を果たしておりますし、また国連に対する協力も、世界の中では日本は最もしておる国の一つであろう、こういうふうに思っておるわけでございますが、そういう立場からこれからも国連の場を大いに活用して、日本の外交を幅広く展開をし、さらにまた国連の機能を強化するために日本がその力を大いに活用していくということが必要であろう、こういうふうに思っておるわけでございます。私も、実はこれまでの国連の演説の中で、こうした国連の機能強化ということを強く訴えておりますし、日本もまた、民間の研究者の答申をいただきまして、国連の機能強化のための日本としての考え方も打ち出しておるわけであります。
  232. 木下敬之助

    ○木下委員 我が国としては、国連の平和維持機能に対する貢献として改めて国連の停戦監視団などへの人員派遣を真剣に検討すべきではないか、このように考えますが、いかがでしょう。
  233. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 国連の平和維持機能、これは先ほど来大臣の御答弁もございますように、私ども非常に重視いたしております。ただ、既存の国連の平和維持活動、いわゆるPKOと申しております平和維持軍でございますが、これにつきましては、紛争が行われております間に割って入るというふうな軍事的な機能もございますし、また監視軍の場合にも、これは武器を携行しておらない場合もございますが、これらについての我が国の協力というのは従来財政面の協力に限られていたわけでございます。  このものに我が国が財政以外の協力をする点につきましては、もちろん私ども積極的に検討いたしたいと思っておりますが、先ほど来述べましたようなものにつきましては、やはり我が国の国情から見ていろいろ問題がございます。現在私どもが、要員の派遣ということで国連の平和維持活動に寄与し得る可能性が最も大きいのは、ナミビアが独立いたします場合の国連の独立支援グループの民政部門の選挙管理部門ではないかと考えております。この点につきましては、まだナミビアの独立が残念ながら達成される事態に至っておりませんが、この事態が具体化して我が国が寄与できるような経過をたどります場合には、何らかの形で積極的な貢献を考えていきたい、このように考えております。
  234. 木下敬之助

    ○木下委員 日本国内問題があるというふうな御発言でございましたけれども武器携行でない、非武装で派兵というか、非武装の状態なのに人員派遣することもやはり問題があると考えておられるのですか。
  235. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  非武装の場合も国連平和維持軍、国連監視軍というのは、やはり紛争に巻き込まれる可能性のあるものでございまして、現在のこれらの構成要員は主として軍人でございます。したがいまして、その点から国内的に問題がある、こう申し上げた次第でございます。
  236. 木下敬之助

    ○木下委員 国連の通常予算は、加盟国の国力に応じて配分が決まる分担金で形成され、平和維持活動に要する経費も同じ比率で各国が負担することになっていますが、我が国の分担金と分担率はそれぞれどのようになっているのか、お伺いいたします。
  237. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 先生仰せのとおり国連の予算の分担率、これは主として過去十年間の国民純生産を基礎にいたしております。ただ、一人当たりの国民所得、これを二千百ドルのところで、少ない国については微調整をする等その他の微調整がございますが、そのような調整をした上で定めました分担率、これは現在我が国につきましては一〇・三二%でございます。一九八五年の国連の通常予算に対しまして、この分担率に基づきます我が国の分担金は六千七百九十二万ドルでございます。また、平和維持活動につきましては、現在ございます三つの平和維持軍のうちサイプラスは自発的拠出でございますのでこれを除きますと、レバノンの暫定軍とそれから同じ地域の兵力引き離し監視軍がございますが、これは設置が決まったり延長された期間ごとの経費に対して、先ほどの分担率を掛けて負担するわけでございますが、この分担金について申しますと、国際連合レバノン暫定軍につきましては、一九八四年から八五年の駐留期間分について我が国が負担いたしましたのは千四百四十万ドルでございます。他方、国際連合兵力引き離し監視軍に昨年の六月から本年の五月末までの期間で分担いたしますのは、約三百六十万ドルでございます。
  238. 木下敬之助

    ○木下委員 加盟国による分担金の不払い、滞納によって国連の平和維持活動が阻害されているようなことはないのか、そうした事実があるとすれば国連の累積赤字はどのようになっておるのか、お伺いいたします。
  239. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 国連の平和維持活動の経費につきまして、これが加盟国の義務的経費であるか、そうでないかについての意見の不一致がございます。そのために、これを義務的経費と認めない国の分担金の不払いがございます。このために国連の財政に赤字があるということ、さらに平和維持活動が所期の目的を遂行するのに阻害を受けておるというのは現実の実情でございます。  分担金不払い、それから滞納等によります国連の予算全体の累積赤字につきましては、昨年末現在で約三億五千六百万ドルに達したものと思われます。
  240. 木下敬之助

    ○木下委員 そういう赤字のようでございますが、国連憲章十九条で「この機構に対する分担金の支払が延滞している国際連合加盟国は、その延滞金の額がその時までの満二年間にその国から支払われるべきであった分担金の額に等しいか又はこれをこえるときは、総会で投票権を有しない。」このように規定されていますが、投票権を剥奪される該当国はいないのか、またその可能性がある国はどうか、お伺いいたします。
  241. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  現在までに、国連憲章十九条が先生御指摘のように適用されまして、総会での投票権を停止されたという加盟国はございません。ただ、先ほど申し上げましたように、平和維持活動の経費については加盟国の間に見解の相違がございます。このために、この平和維持の費用の不払いに対して十九条の適用があるかないかということが過去に問題になったことがございますが、これを現在は棚上げにした形で国連の運用が行われております。  ただ、南アフリカについて申しますと、現在滞納額が二千五百万ドルございます。これは、南アフリカの分担金が年約六百六十万ドルでございますから、二年以上の滞納があるわけでございます。ただ、南アにつきましては、この十九条の適用で投票権が停止されているということではなくて、南アのアパルトヘイト政策のたかに加盟国の南アの国連総会出席に対する反対の意向が非常に強く、総会議長の裁定で南アが総会には出席できず投票権を行使できないという事態が生じておることがございます。  そのほか滞納額の非常に大きな国といたしましては、ソ連がございます。これが約一億八千万ドルに達します。
  242. 木下敬之助

    ○木下委員 あくまで支払う義務がないとして突っぱねて拒否しているところは、この十九条に当たるか当たらないかという判断の答えがまだ出ていないということでございますか。
  243. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 先ほど申し上げましたこれが問題になりましたのは、第十九回総会でございます。そのときに、実は平和維持の活動費が義務経費になるかどうかということを、勧告的意見を国際司法裁判所に求めまして、国際司法裁判所の見解は、これは義務経費に該当するという勧告的意見が出ておるわけでございますが、総会といたしましてはこの問題について決着をつけることができずに、棚上げになっておるというのが現状でございます。
  244. 木下敬之助

    ○木下委員 そういう趣旨でソ連に相当の滞納があるということでございますが、ソ連はこの十九条に該当する可能性が出てくるのは、あとどのくらい、どういう模様でございますか。
  245. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 お答えいたします。  これは義務経費の範囲をどちらに考えるかによって変わってくるわけでございますが、平和維持活動の部分義務経費であるというふうに含めて考えますと、極めて近い将来に再びこの問題が発生すると思います。
  246. 木下敬之助

    ○木下委員 こういう形の支払いの拒否が認められるということになると、国連の機能は非常に果たしにくくなると思うのですが、外務省はどう考えておられますか。
  247. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 先ほど、平和維持機能が現在三つありますうちに、二つが義務経費の扱いにして一つが自発的拠出の扱いにしておると申し上げましたが、実は両方についても問題があるわけでございます。と申しますのは、自発的経費の方につきましても、例えば国連サイプラス平和維持軍に我が国は拠出いたしておりますが、全体の必要額の拠出が集まらないために、実際には部隊派遣国に相当の負担が行っておるという実情がございます。したがいまして、この問題は、基本的に国連の平和維持活動というものを強化していく場合には、財政的基盤がしっかりしないといかぬわけでございますから、この問題として別途に慎重に各国の間での合意を形成する努力をする必要があると考えております。
  248. 木下敬之助

    ○木下委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
  249. 愛野興一郎

  250. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私、AFSATCOMシステムについてお伺いいたします。  AFSATCOMの英語のフルネームは何と言うのか。エーエフサットコムと言うのか何かわかりませんが、フルネームは何と言うのか。それから日本語では何と言うのか。通信衛星関係は難しいですから、それからひとつ解説してもらいます。
  251. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 御質問のAFSATCOMというのは、フルネームはエア・フォース・サテライト・コミュニケーション・システム、これの略称としましてアフサットコムと呼ばれておるというふうに承知しております。日本語では、今申し上げましたエア・フォース・サテライト・コミュニケーション・システムというのを訳せば、空軍衛星通信システムというふうに申し上げて差し支えなかろうと思います。
  252. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 その機能ですね、どういう機能を持っておるか、どういうステーションであるか。機能とどういう任務を持っておるか、これを説明してもらいます。
  253. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 私も専門家でありませんので、必ずしも十分に御説明できるかどうかわかりませんが、国防報告等のアメリカの資料によりますれば、AFSATCOMというのは主としてアメリカの核戦力部隊との間の一般的な通信、指揮、統制のための通信システムであるというふうに説明されております。
  254. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 一般的にというのはどういう意味ですか。
  255. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 一般的にと申し上げましたのは、アメリカのそういう通信システムとして、大統領または国防長官によって代表されますナショナル・コマンド・オーソリティーというものがあって、そのナショナル・コマンド・オーソリティーから統合軍司令部を通じまして、末端の各部隊に対していろいろ通信を行うための通信システムというものが幾つかあって、その中の一つとして空軍が運用しておる通信システムとしてさっき申し上げたAFSATCOMというものがある、こういうことでございます。
  256. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 このAFSATCOMは、在日米軍基地のどこにあるのですか。
  257. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 AFSATCOMと申しますのは、通信手段としてのハードウエアのシステムでございますので、要するに衛星を利用した通信システムであるというふうに御理解いただけばいいのだろうと思います。端末と申しますか、通信を中継するステーションが日本国内のどこにあるかということについては、私ども必ずしもつまびらかにしておりません。
  258. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 それでは私の方から説明しましょう。  これは嘉手納だけにあるのです。横田にもありません、三沢にもありません、嘉手納基地にあります。委員長、これを大臣に渡していいですか。——今、大臣に渡しましたのは、嘉手納基地にある一九八四年版の沖縄地域在日米軍電話簿なんです。これは八三年、八二年にもありません。八四年版から載っております。  このAFSATCOMターミナルは、これはごらんになればわかりますが、左側はこっちで翻訳したもの、右側は英文そのものなんです。これがAFSATCOMのターミナルで、このビルが一五九ビル。ちゃんと番号が書かれております。二番目のこれに丸が入れてありますね。場所はここら辺に一五九ビルがあります。もちろん電話番号は、そのビルの通信所が六三四−四三一四。上に行きまして通信・電子運用部門、これは九〇号ビルですが、責任者の電話番号が六三四−一五三一、管理者、管理も同じです。それから下部の方、これも書いてあるとおりでありますが、これを見ますと、もう既に嘉手納基地にこのAFSATCOMが置かれているということがはっきりわかります。我々は嘉手納基地に入れませんから、写真を写すわけにいかないのですよ。いろいろ調査した結果、こんもりした森の中に隠れておるものだから写真を写せません。したがって、ここまではっきりすれば、嘉手納にAFSATCOMのステーションがあるということは極めて明らかなんです。沖縄にだけあるのは一体どういうことかという問題なんです。局長、どう思うのですか。
  259. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 電話番号につきましては、私どもも別途電話帳によりましてそういう電話番号があるということは承知をいたしておる経緯がございますが、ただいま資料を拝見いたしましてどういうふうに考えておるかということにつきましては、委員の御質問の御趣旨が必ずしも私わかりませんが、従来から種々の機会に、アメリカの海外におきます核戦力部隊とさっき申し上げましたナショナル・コマンド・オーソリティーとの間を結ぶ通信システムの一環として、在日米軍の通信施設が利用されておるのではないかという観点からの御質問が他の委員からもございました。それに対しまして政府といたしましては、安保体制を通じましてアメリカの核の抑止力に我が国の安全保障が依存している以上、日本にあります。アメリカの通信施設がそういう関連の機能を有しているということはあり得るであろう、これは先ほど申し上げました安保体制の意味というものからいって、当然あり得ることであるというふうに御答弁を申し上げておる次第でございます。
  260. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 先ほどは、嘉手納のことは何もわかってない、ところが電話帳を見せたら、この電話番号はわかっていると言う。これはどういう意味ですか。
  261. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 電話帳にそういう御指摘のような名前で記載がされておるということは承知をしておりますが、その実態については、私ども承知をしておらないということを申し上げておる次第でございます。
  262. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 この任務は、国防報告に極めて明確に書かれております。これは米空軍を構成する各種コマンド、例えば戦略空軍SAC、輸送空軍MAC、電子セキュリティー軍ESC、こういった一般用のものではないんだ。AFSATCOMとは、地上と空中の指揮所を戦略核戦力に連結する世界的規模の通信をもたらすものであるということで、この施設、受けるところはどこどこかということが、この国防報告及び、これは一九八三年五月十一日の下院歳出委員会の国防総省の回答、それともう一つは今の戦略空軍の司令官、さらにその他の資料を集めてみますと、これは実に驚くなかれ十五カ所に設置されている。  いわゆるAFSATCOMターミナルの施設は、一番目はE4B国家空中指揮所(ABNCP)、二番目はSAC司令部の指揮所、三番目はSAC第八空軍司令部、同じく第十五空軍司令部の指揮所、四番目にSAC第三航空師団司令部(グアム)の指揮所、五番目にSAC爆撃機航空団指揮所、六番目にSAC(ICBM)ミサイル航空団指揮所、七番目にICBM発射管制センター、八番目にICBM空中発射管制センター、九番目にSAC偵察機指揮所、十番目にEC135太平洋空軍空中指揮所、十一番目にC130海軍TACAMO航空機、それから十二番目が核兵器貯蔵所、十三番目が戦略爆撃機(B52G、B52H、FB111)、それから十四番目がKC10空中給油機、十五番目がRC135戦略偵察機、こういうふうになっております。この国防報告では、これを今申し上げました八三年末までに完了する予定だという問題。これは決して一般の空軍用のものではなくて、SAC関係のもの。  特にここで説明しなくちゃいけないのは、今申し上げましたのはICBMはある、それからB52爆撃機はある、残るのはいわゆるSLBM、潜水艦から発射するもの、これが十一番目に申し上げましたC130海軍TACAMO航空機。これは一万メートルぐらいの上空から飛んで、五千ないし六千ぐらいのアンテナをつるしてそれで潜水艦に通信するというのがこのTACAMOであります。そうなりますと、SACの管轄下にあるほとんどのものがこのAFSATCOM、この施設になっておるということがはっきりするわけです。  それで問題は、なぜ嘉手納だけかという問題なんです。局長はどう解釈するのですか。なぜ嘉手納だけか、なぜ横田にないのですか。いわゆるジャイアント・トークは両方にありますね、あなた方は認めた。横田にも嘉手納にもある。なぜ嘉手納だけにこれがあるかという問題です。
  263. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 AFSATCOMが主としてアメリカの核戦力部隊のための通信網、通信システムであることは冒頭御説明いたしましたとおりで、まさに御指摘のようにアメリカの国防報告等の資料によれば、そういうことであると私どもは理解をしておるわけでございます。  何ゆえに嘉手納の電話番号簿にそういう番号が載っておるかということにつきましては、私ども格別の理由として承知しておることはございません。
  264. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは私の方で説明します。  今読み上げた十五の中で、もちろん横田も中枢基地で非常に重要な基地であるが、この嘉手納だけが今申し上げました戦略空軍の実動部隊の第一線なのです。今KC10給油機が頻繁にやってきております。もちろんKC135給油機も常駐しております。このKC135とKC10は、アンダーソン基地におるB52と結びついて初めて核戦力になる。ほかの基地にはそれがないのです。RC135、スパイ機、これも管轄はSACです。そういったような特徴があるものだから、アメリカは嘉手納を指定して——電話番号は知っておりますじゃないですよ。事実これに示したとおりあるのですよ、一五九号、番号も打たれて。これをおろそかにしてはいけない。この点を徹底して調査してこの委員会に報告してほしい、そう私は思いますが、いかがですか。
  265. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 先ほど御答弁申し上げましたとおりに、アメリカの通信施設、在日米軍の通信施設というもの、これは嘉手納基地も含めましての一般的なことでございますが、日本の国外にあります。アメリカの核戦力部隊との間の指揮統制のために使われる機能を持っているということは十分あり得ることでございまして、政府としてそれを格別否定するということはないわけでございます。そういうものが存在するということにつきましては、先ほど申し上げましたように、安保体制というものの性質からいって、そういうことは十分あり得ることであるということが政府認識でございますので、今御指摘のような点につきまして、具体的にこういうビルの中にこういうものがあるかどうかということにつきましてアメリカ側に照会をし、調査する必要は格別なかろうと考える次第でございます。
  266. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 電話番号だけじゃないですよ、これほどはっきり建物番号もここにあるのですよ。これを調査する。我々には調査できないが、政府調査できるのです。実に危険なのです。だって核戦力。SACでしょう。今言ったように、あれが出動すると全面核戦争になるのですよ。これは限定核戦争じゃないのですよ。ICBM、SLBM、B52爆撃機、これが全部動き出す。これに通信をする世界的なセンターの一つがまさに嘉手納にある。嘉手納は、今言ったように、アンダーソン基地にあるB52、給油しなければB52が爆撃機としての能力を発揮できないというKC10、これは常時はいません。KC135は常時おります。これは直結する。さらにRC135、スパイ機がまだおる。私はKC10を見た。迷彩を施して真っ黒なのだ。これが重要な点を指摘したのにかかわらず、今言うようにアメリカの施設に何を置いてもいいのだ、調査の必要はない。調査の必要がないということは——わからぬのになぜ調査して報告せぬのか。国民をだますにもほどがある。あなたは電話番号は知っているが、あることを知らなかったじゃないか。これをはっきり指摘されてもなお、アメリカを信頼するからでしょうが、調査する必要がない、それが言えますか。なぜ調査して、ここにありました、建物の一五九でありますとはっきり言えないのか。問題はそこなのです。
  267. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 米軍が、安保条約関連取り決め規定に従って我が国の中において活動しておる限りにおいて、これは当然条約上許容されることであります。他方、それに反する活動をしているのではないかというような疑義が生じました場合にアメリカに照会をする、その事実関係を確認するということは必要でありましょうし、そういう場合に政府としてアメリカ側に照会をし、事実の確認をするということは、従来からも行っておるところでございます。  本件につきましては、先ほどから繰り返し御答弁申し上げておりますように、アメリカの通信施設がそういう機能を果たしておるということは安保条約の枠内のことでありまして、これは政府として従来からあり得ることとして予想しておるわけでございますし、それから先ほど委員指摘のKC135給油機等につきましても、これは従来から嘉手納の基地に常駐しておるものでございまして、安保条約上格別問題があるというものでもございませんので、政府として、先ほど委員指摘のような調査をするという考えは持ち合わせておりません。
  268. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これほど戦略核に結びつくような施設がある。しかも知らなかった。指摘して、ああ、そうですかというごとでまた官僚的なごまかしを、抑止力、何やかんや言うのだ。初め、あるということを知らなかったじゃないか。しかも、建物の番号もわからなかったじゃないか。電話番号を見て、ああ、これはわかっています。うそなのだ、それは。電話番号がわかっておれば、電話番号の中にちゃんと書いてあるのですよ、あるということが。AFSATCOMの施設がここにあるのだということが書いてあるじゃないか。これを調査して報告しない、何をつくってもいいのだといったような外務省の姿勢は——ICBMでもSLBMでもB52爆撃機でも、これが始動する、発動すると全面核戦争なのですよ。そういった全面核戦争の一翼を担っているのがAFSATCOMなのだ。  私、大臣に最後にお聞きしますが、今申し上げたようにこれは全面核戦争。ICBMミニットマン、SLBM、B52、これが発動するのですよ。これは今言ったように各軍司令部に対して全部発信する。これが嘉手納基地にある。私は、本当に国民の安全を念願する、平和を念願する外務大臣であれば、当然のことながらこんな危険な、全面核戦争に直結するようなAFSATCOM、これは撤去すべきであるということを要求する必要があると思うのだが、どうなんですか。
  269. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この点については先ほどから北米局長が答えましたが、我が国は基本的にこの安保条約によりまして、核を含む米の抑止力に安全保障を依存しておるわけです。米軍がかかる抑止力の効果的維持のために、例えば国外の核戦力部隊との通信機能も含め、高度な指揮、統制、通信能力の保持に必要な施設を我が国に置くことは当然のことだと考えております。安保条約上、これに基づく我が国における米軍の存在は、そもそも我が国が巻き込まれ得るような紛争の発生そのものの抑止を目的とするものでありまして、政府としましては、米軍や米軍通信施設等の存在ゆえに、核戦争であると否とを問わず我が国戦争に巻き込まれるとの認識は有しておりません。
  270. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 時間が参りましたので締めますが、実は沖縄タイムス、琉球新報、きょう届いたものの中にこれがあるのですよ。読谷補助飛行場、ここにアメリカの飛行機が墜落したのです。それでその墜落した場所は、何と沖縄県の監視車におっこちてしまって、米兵がけがしておるのです。  沖縄の基地は、今外務大臣が言っているような安保条約に基づいてこうだああだ——安保条約に基づいて基地を置いてあるからこそ、いつ天から何が落ちてくるかわからぬ。実に不安と恐怖です。この不安と恐怖は全国民を覆うている。核戦争になる通信施設なんですよ。これを調べるということもやりませんと言う。わけがわからぬ。局長もわからぬくせに調べる必要はありません、さらに大臣も、これは安保条約に基づいて置いているのは当然だなどと言っておる。これでは沖縄県民を初めとする不安、米軍基地から重圧として押しつけられている不安と恐怖からの解放はできないんだ。だから私は、これを強く主張する。そして、このAFSATCOMの撤去を求めて、時間が参りましたので終わります。      ————◇—————
  271. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、米州投資公社を設立する協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土井たか子君。
  272. 土井たか子

    土井委員 前回、当委員会におきまして、この協定内容について私が質問申し上げたことに外務省としてはお答えがはっきりいたしませんで、それを留保したままで今日に及びました。改めて私はお尋ねをいたします。  ただいまの武器輸出三原則、並びに当委員会でも昭和五十三年、五十六年、決議をいたしております経済協力に関する決議、これはいずれも申し上げるまでもなく憲法の前文、憲法第九条に基づくものである、このように御理解なすっていらっしゃいますね。当然だと思いますが、いかがですか。
  273. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 憲法に基づいて、いわゆる平和国家としての日本の基本的理念に基づくものである、こういうふうに理解しております。
  274. 土井たか子

    土井委員 その平和国家ということについては、基本法である憲法というのが無視し得ない。それは法体系からいったら根本法であり、基本法であり、無視し得ない。だから、外務大臣は今その点をきっぱり、はい、さようでございますとはおっしゃいませんけれども、もう一たびそれをはっきりおっしゃっておいてくださいませんか。
  275. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 平和国家であるという日本の基本理念に基づくものである、こういうふうに考えております。
  276. 土井たか子

    土井委員 その基本理念というのは、よって来るところは憲法でしょう。憲法の前文並びに第九条でしょう。これは、質問をして御答弁いただくまでもない話だと思いますが、それはそのとおりですよね。
  277. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 ただいまの御質問、昭和五十三年及び昭和五十六年の国会決議に、平和国家に徹する我が国としてはと書いてございますように、まさに今委員の御指摘のとおりだと思います。
  278. 土井たか子

    土井委員 そういたしますと、この武器輸出三原則は、武器そのものを輸出する、武器技術を輸出するということでございませんでも、日本が外国の企業に融資、投資をして武器を製造するということも禁じられている、してはならないことである、このように理解をしなければならないと思いますが、いかがですか。
  279. 恩田宗

    ○恩田政府委員 武器の製造を目的とする直接投資につきましては、我が国企業が武器を直接輸出するかわりに海外で武器を製造する等の事態は、武器輸出三原則の趣旨にももとるものであると考えられますので、武器輸出に関する政府方針に準じて扱う、かように考えております。
  280. 土井たか子

    土井委員 準じて扱うじゃなくて、実質的にはずばりそのものであって、武器輸出三原則がある限りはしてはならない、日本政府としてはできない、こういうことであるというふうに理解をしなければならぬと思いますけれども、余り歯にきぬを着せたような答弁でなしに、きっぱり言ってください。どうです。
  281. 恩田宗

    ○恩田政府委員 この問題はしばしば国会等の場でお答え申し上げておりますとおり、武器製造を事業目的とする場合には、内容変更、中止の勧告または命令等により、武器輸出三原則の精神にもとることのないように厳正に対処する、かようにお答えしておるとおりでございます。
  282. 土井たか子

    土井委員 それはもう無意味なことをおっしゃっているのであって、結論からいうと、実質的にはこれは武器輸出三原則にもとる行為であるから、外国において武器を製造する企業に日本としては投融資はできないということだと思うのです。そうでしょう。はっきりそこをおっしゃればいいのです。
  283. 恩田宗

    ○恩田政府委員 我が国が投資する場合にはそういう趣旨で厳正に対処する、こういう方針でございます。
  284. 土井たか子

    土井委員 この米州投資公社を設立する協定という協定日本が署名をされるまでの段階をまずお尋ねします。よろしゅうございますか。この協定を署名されるまでに、今おっしゃったような趣旨をどのように努力し、生かされましたか。この協定の条文には、今おっしゃったようなことをはっきり確認できる条文は一カ条もないのですよ。どのような努力を日本の外務省としては払われましたか。
  285. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 ただいま先生御指摘のとおり、本協定の条文におきまして、兵器生産云々ということは条文にあらわれておりません。  また、本協定の設立交渉の過程においてどうであったかというお尋ねでございますけれども、これまで存在しておりました同種国際金融機関等が経済開発を目的にするということをその目的として協定上掲げてございますけれども、その経済開発というものの中には兵器生産とか軍事的な目的というものは含まれないということが、世銀グループでございますとか世銀の業務の案内書でございますとか、そういうものに明記してございますものですから、それはむしろどちらかというと、当然の兵器生産等は除かれるということが、交渉三カ国の共通の認識であったということで、議論には特にならなかったというふうに理解をいたしております。
  286. 土井たか子

    土井委員 世銀の問題を今とやかくおっしゃるけれども、何の関係もないのですね。今回の公社では、むしろ米州銀行の方が直接関係をいたします。世銀ではそうであったから、それは問題にならなかったとおっしゃるので済むのですか、日本としては。署名までの間の、その点における努力は何もなかったということでしょう。確認もしなければ……。日本としてはやれることとやれないことがございます、やれないことはこういうことであって、その点がはっきりしないと日本としては投融資はできないのでありますというふうな努力は、何らなかったのでしょう、署名までの段階で。正直に言ってください。
  287. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 特に交渉の過程で問題にもなりませんでしたし、私どもとしても、特に提起はしなかったということでございます。
  288. 土井たか子

    土井委員 つまり、何も言わなかった、その点は何も努力はなかったということですよね、今の御答弁からすれば。  この南米の方の、ブラジルにしろ、チリにしろ、アルゼンチンにしろ、大変な対外債務を抱えている国々であります。この対外債務をそれぞれ抱えている国々は、兵器を製造し、兵器を輸出することによって債務を返済するという傾向が、最近非常に顕著であるという事実。ブラジルのごときは、八三年は兵器輸出が五億ドル、八四年は十五億ドルから二十億ドル、八五年は二十五億ドルと、抜群にふえてきているのですよ。ただいまは既に、第三世界随一の兵器輸出国に相なってきているという実態を御存じですか。これは御存じであろうと思います。
  289. 堂ノ脇光朗

    ○堂ノ脇政府委員 委員指摘のとおり、中南米諸国は累積債務問題で苦しんでおりまして、特にブラジル、アルゼンチン、メキシコ、ベネズエラが大口債務国でございます。その中にございましてブラジルが確かに兵器輸出を行っているということは、私ども承知しております。
  290. 土井たか子

    土井委員 チリもそうであります。チリも高性能の爆弾や装甲車を輸出して、対外累積債務に対してこれを充てるというふうなことを一生懸命やってきたし、またやりつつある。アルゼンチンの場合もそうであります。アルゼンチンの場合は、新鋭戦闘機に重点を置いた量産を計画中である。具体的にこういうのは全部、外務省としては把握されているのでしょう。御存じでしょう。いかがです。
  291. 堂ノ脇光朗

    ○堂ノ脇政府委員 ただいま詳しい数字は持っておりませんが、承知しております。
  292. 土井たか子

    土井委員 片や外務省は、そういう実態をまず御存じなのです。そうして一方では、中南米に対してのアメリカの軍事的てこ入れというのが非常に世界からも非難を浴びるわけでありますけれども、アメリカからのこういう軍事援助並びに軍事てこ入れによって内戦が激化して軍事費増大というのは、各国の、これは大体ニカラグアを初めとして、エルサルバドルもそうです、ホンジュラスもグアテマラもコスタリカも、それぞれの状況を見たら、例に漏れずにこういう問題が指摘できる。経済困難が、さらにその中で何がどう起こっているかと言ったら、軍部の発言力が強まっていっているという実態があるのです。こういうことも御存じでしょう。これも御存じでしょう。
  293. 堂ノ脇光朗

    ○堂ノ脇政府委員 国により、いろいろ事情が違うと思います。しかし、全体的な傾向から申しますと、むしろ軍事政権から民主政権への移行が最近顕著でございます。
  294. 土井たか子

    土井委員 そういう実態を御存じであって、そうして今、署名をするまでの対応としては、日本政府としては何もなかった。何も物を言わず、それに対しての努力も何もなかった。これは異常であるとしか言いようがないです。あるのは、国会決議に対して無視する姿勢しかない。国会決議をいかに軽く見ておられるか、国是というものをいかに軽んじられているかということがそこには出てくるわけです。  この協定の終わりの方には、アルゼンチンにしろ、ブラジルにしろ、メキシコにしろ、ベネズエラにしろ、それぞれが注記というところでそれぞれの意見を付記いたしておりますが、日本としては何の発言もなかったというのが、この協定を見ても、その注記にも何も出てきませんから、協定の中では何ら日本のそういう意思は反映されていないです。何も出ていない。それでは、これに対してどういうふうに日本意思を具体的に生かそうというおつもりでありますか。協定では、これはだめですよ。協定そのものからしたら、日本としてはこれは抑えがきかぬですよ。
  295. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 ただいままさに委員指摘のとおり、本協定締結交渉の過程におきましては、中南米、特に域内の諸国の出資のシェアをどういうふうにするかということが実は最大の論争点でございまして、特に大国と自他ともに自負しております四カ国と、それから中型国のチリ、コロンビア、ペルー及びその他の域内の小さな国という、合計二十四カ国の出資のシェアをめぐりましての非常に大きな論争対立というものが主たる議論でございました。その結果として、まさに委員指摘のとおり、注記という形で非常に異例な形ではございますけれども、各国の立場が参考として掲げられたということでございます。  それから、何ゆえに非常に大事な武器の問題を主張し、かつ記録にとどめなかったのかという御指摘かと存じますけれども、確かに、米州の諸国で兵器の生産及び輸出という状況が国によっては存在するということは、委員指摘のとおりかと存じまずけれども、この親銀行であります米州開発銀行自体の今までの融資の活動等を見ましても、農林漁業でございますとかインフラ部門、エネルギーという、言うなれば民生の安定、経済開発というものをほとんど対象にして——ほとんどといいますか、全部対象にして融資活動が行われておりますので、また、各国の交渉の過程におきましても、特に兵器云々ということが対象になるという議論も起こらなかったということから、我が国としても特に本件を提起する必要性を認めなかったというのが実情でございます。
  296. 土井たか子

    土井委員 言いわけがましいことをここでるる言われても、これは無意味であります。状態はいよいよ悪くなる。この協定は、新たに設立する米州投資公社に関する協定でしょう。今までのいきさつについて私は聞いているのじゃない。これは新たに今度設立したのですよ。これからの話なんです。中小企業の、具体的な企業に対して投資をする、融資をするという問題なんです。日本のシェアがどれだけかという問題じゃありません。その投融資の中身について、日本としてはできないことがあるということをはっきりさせておくということが、これから問われている問題なんです。  それは、この協定には何らないわけです。協定の付記にも何もないわけです。署名するまで、日本意思表示を何らしていないわけです。この協定に対して取り扱い方をどうお進めになるか、これは外務大臣にひとつ聞きましょうよ。
  297. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 政府の基本的な考えとしては、この公社に加盟した場合には、同公社の業務が同公社設立の目的であるところの米州域内開発途上加盟国の経済開発を促進するものとなるよう努力し、平和国家としての我が国の基本的な理念を踏まえて行動することは当然のことであると思います。  なお、先ほどから、規約にないのじゃないかというお話がございますが、同種の業務の目的を有する国際復興開発銀行及び米州開発銀行、これは公社の親会社になるわけですが、この米州開発銀行について調査したところでは、武器関連企業に対する融資等は、その活動には含まれておりません。これまでもこういう実績はない、こういうふうに承知をいたしておるわけでございます。  なおまた、今、藤田局長からも答弁いたしましたが、この協定の作成の過程におきまして、武器を製造するための資金的支援が検討されたことはありませんが、そのような支援は想定されていないという点で各国の共通した認識がある、こういうふうに考えております。そうした理由から、公社においても、国際復興開発銀行、米州開発銀行と同様に、武器の製造のための支援は行わないとの政策がとられるもの、こういうふうに考えておるわけであります。
  298. 土井たか子

    土井委員 今の御答弁を聞いておりますと、各国は、武器製造並びに関連の企業に投融資できないというふうに認識されておりますなんておっしゃいますが、そういうことに対しては何ら討議したことがないということを先ほど来はっきりおっしゃっているのですよ。各国がそういう意思をはっきり持っているということがどうして確認できるのですか。これは何の確証もないのです。大臣の御期待でしょう、夢のような御期待ですよ。具体的にどうするかということをはっきりしておいていただかないと、これは何も示しがないのです。日本としては意思表示を何もやってないのですし、これから投融資するのに対して、国会決議や武器輸出三原則に対してこれはどう取り扱いを進められるのですか。
  299. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほどから答弁しましたが、親会社であるところの米州銀行等は武器関連の企業等には一切投資してない、これは活動していますからはっきりしておるわけですね。  なお、今の点につきまして、米州開銀筆頭副総裁のマイケル・カーティン氏は、我が方の藤川米州開発銀行理事あてに五月二十日付でメモランダムを発出をいたしまして、米州開銀としてはその活動において、軍事活動のための施設建設・装備ないし武器の製造、売買のためにその資金を使用することはできない旨の米州開銀法律顧問の意見書を添付の上、公社が米州開銀の姉妹機関であり、経済社会開発のため米州開銀を補助することを目的とする機関である以上、米州開銀同様、公社も、武器産業に投融資することは許されないことになる旨を表明いたしております。
  300. 土井たか子

    土井委員 それは日本側からの問い合わせに対して、むしろ日本からの意思表示に対してそういうふうに答えてこられたということですか。
  301. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 そのとおりでございます。
  302. 土井たか子

    土井委員 そうすると、あとこの公社については、理事国が具体的に内容を討議をして、どれだけの投資をどういう企業にしていくかという格好になるわけでしょう。そうすると、理事国の会議が今度は問題になってくるわけです。日本理事国になるか、ならないかは別として、その理事国の会議にただいま外務大臣がお答えになった米州銀行の副頭取——副頭取というのは、実権がどれほどあるのか私は知りませんけれども、頭取でないというのが気にかかりますが、副頭取の発言が拘束性を持つのか持たないのか、そういう中身がこの理事会議においてどういうふうな意味を持つのですか。そこのところをはっきりしておいていただきましょう。
  303. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 本協定上明記されておりますように、米州開発銀行の総裁がそのまま自動的に本公社の理事会議長という資格で理事会を主宰することになります。したがいまして、米州開発銀行の総裁が、本公社の行います投資ないし融資を決定します機関である理事会を統率する責任者であるということが申せるかと思います。その資格におきまして、その資格と申しますか、そういう資格を持っております米州開発銀行の総裁にかわりまして筆頭副総裁が、我が方理事に対しまして米州開発銀行としての法律的な正確な定義及び解釈を正式に申し越したというのが、ただいま外務大臣が御説明を申し上げました覚書、メモランダムの内容でございます。
  304. 土井たか子

    土井委員 そうすると正式に向こうからの回答は、公社が設立されて後、理事会の席で、理事会議の席において、その発言、日本に答えてこられた中身が拘束性を持つ、そういうことで理事会議は主宰されるというふうに理解していいのですね。
  305. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 ただいま委員がおっしゃったような姿になるものかと思います。
  306. 土井たか子

    土井委員 なるものかと思いますというのもあいまいな話なんでありますけれども、まあ信用しないわけじゃないのですよ。そこまで外務省は骨を折らないと困るとお思いになっておやりになったことですから、信用しないわけじゃないのですが、もし理事会議においてそこまでやっても、なおかつ武器製造並びに関連の企業に対して投融資をするということが枠として決められた節、日本としてはその公社に参加をする国ではあるけれども、その部分の投融資に対しては遠慮する、それを拒否するというところまで考えていらっしゃいますか、どうですか。それ、できるのですか、できないのですか。
  307. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 御承知のようにまだ公社自体出発もいたしておりませんが、一般論として申し上げますと、先ほど申し上げましたように、理事会の議長たる米州開発銀行の総裁にかわりまして筆頭副総裁がそのような解釈を行ってきたということは、それだけの重みのあることかと考えます。  私ども日本が本公社に参加いたしますのは、まさにそのような解釈によって裏打ちされました本公社の設立協定が経済開発を目的とするということをうたっておりますので、経済開発を目的とするというこの目的がまさに国会の諸決議及び我が国の平和主義にのっとったものであるという考え方に沿って参加するわけでございますから、ただいま委員の御指摘のような事例が起こることは万ないと考えますけれども、そのような状況が起こったときにどう対処するかということはそのときの状況に即して考えませんと、今の段階ですぐどういう措置をとるということは、ちょっと申し上げかねるのではないかと思います。
  308. 土井たか子

    土井委員 そのとき考えると言ったって、兵器を製造する企業に対して投融資はできないということを、きっぱり大臣はおっしゃったのですよ。そういうことが具体的になったときに、そのときに考えるなんということじゃないでしょう。これははっきりしているのじゃないですか。藤田さん、あなたの答弁はくどくどと前置きとかまくら言葉が多過ぎる。端的に簡明に答弁してくださいよ。そのとき態度とすればはっきりしているでしょうが、どうするかということは。
  309. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 そのような事態は万起こらないと考えますし、そのようなことが起こらないように我が国としても、参加国として最大の努力を払うということかと存じます。
  310. 土井たか子

    土井委員 もし起こったときということを尋ねても、それはまたそのときに考えますなんというふうな答弁局長はされると思いますから、それはもう時間の方も切迫しておりますので、大臣、そういうときには日本としては武器製造の企業に投融資できない立場なんですから、それを周知徹底させてそこまで努力されたということでありますので、先ほどのメモランダムをひとつきちっと議事録に残すためにも読んでおいていただいて、そうして、もしそういう事態が起きたときには、日本としては投融資をしないという姿勢で臨むということをここではっきりしておいていただく、これがまず一つ
  311. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 それでは申し上げます。  米州開発銀行筆頭副総裁マイケル・カーティンは、我が方の藤川米州開銀理事あてに五月二十日付でメモランダムを発出し、米州開銀としてはその活動において、軍事活動のための施設建設・装備ないし武器の製造、売買のためにその資金を使用することはできない旨の米州開銀法律顧問の意見書を添付の上、公社が米州開銀の姉妹機関であり、経済社会開発のため米州開銀を補助することを目的とする機関である以上、米州開銀同様、公社も、武器産業に投融資することは許されないことになる旨表明をいたしておるわけでございます。  確かに、公社はいまだ業務を開始しておりませんので、形式的には業務に関する条件等は決まっていないとの指摘もあり得るわけですが、世銀グループ諸機関、米州開銀のいわゆる国際開発金融機関は、いずれもその協定上、公社を設立する協定同様経済開発を目的とし、その決定は経済上の考慮のみに基づいて行われる等々の規定を置いておりますが、これら規定上、武器産業への資金支援はできないとの運用が確立されており、当然公社についても同様と解されるべきであります。  かつ、かかる見解を今般、右に述べましたとおり、公社の親機関たる米州開銀を総裁とともに代表する立場にある副総裁が文書にて公式に支持をしており、また、米州開銀総裁は公社設立協定上、当然に公社の理事会の議長となるところであります。以上のごとき米州開銀の方針は、理事会議長たる米州開銀総裁を通じても公社の業務に確実に反映され、確保されることになるわけでございます。  以上の理由から、右申し上げました米州開銀副総裁のメモランダムは、公社において武器産業に投融資が行われないことになることを示すものである、こういうふうに考えております。
  312. 土井たか子

    土井委員 それにもかかわらず、武器製造の企業に対して投融資ということが具体的に問題になった節、日本はどういう姿勢ですか。
  313. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 それにもかかわらずとおっしゃいますけれども、これはもう当然今私が申し上げたことで尽きておるわけでそういうことはあり得ないわけなんですが、日本はそういう中にあって、あくまでも日本立場は先ほどから申し上げましたような平和国家としての我が国の基本理念というものを踏まえた上で行動をしなければならない、こういうふうに思っております。
  314. 土井たか子

    土井委員 あと一問外務大臣に。  こういう協定を審議いたしましてつくづく思うことは、署名までの間にその点において手落ちがあった、不十分な対応であったということを認めざるを得ないと思いますが、この点は大臣、そのように今回は御認識をなさるであろうと私は思うのです。  そこで、政府みずから、また我が国の加盟する国際金融機関が投融資をする際に当たって、その資金が軍事目的に利用されることがないということのために日本は自国の立場を鮮明にして対処する、こういうことを今後約束されますね。
  315. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、不行き届きであったというふうには私は思いませんが、これまで日本が出資しているいろいろの機関等において、当然これまで武器産業等に融資しないということを建前として日本も出しているわけですし、また、機関そのものが経済の開発という中でそういうものを含めてないというこれまでの確実な業務の運営があったわけですから、それに基づいて、この公社の融資もそういう建前で行われるものであるという基本的な理解もあって、今申し上げたような具体的な詰めまではしなかったわけでございますが、今回改めてこういう決めをして、そしてメモランダムではっきりしたわけでございますから、我々としては、そうしたメモランダムの趣旨が今後の公社の運営には完全に生かされなければならないと思っておりますし、そのために日本としても、日本考えに基づきまして全力を挙げて努力をしてまいらなければならない、そういう趣旨を踏まえて努力をしたい、こういうふうに思います。
  316. 土井たか子

    土井委員 終わります。
  317. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、渡部一郎君。
  318. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ただいまの同僚議員の御質疑に対する外務大臣の御答弁は、重要なポイントを含んでおったと思うわけでございます。先日の御議論以来、私も、この委員会に至るまでの事前の外務省との交渉において、このような投資あるいは融資に対する我が国自身の規制というものは、諸外国に周知せしめ、あるいは諸外国に対して十分な納得の得られるような何らかの方針を樹立することが必要であると思いまして、述べ立ててきたところでございますが、ただいま米州開銀の副頭取のマイケル・カーティン氏の言葉によりまして、ともかく米州開銀とそれに付随して設立される投資公社については、これが保証されたことは喜びにたえないところであります。これだけの文書をわずか短期間の間に当委員会に提出された関係各位の御努力に対し、私はまず敬意を表したいと存じます。  しかしながら、これは米州開銀並びに米州投資公社についてのみ言われているかのごとくに、私は応答の中で感じられるわけでございまして、今後マルチな交渉に取り組む場合、こうした原則が確立されて、我が国態度として表明されなければいけないのではないかと思うわけでございますから、その意味で、今後こうした問題に対してまとめてどういう態度でお取り組みになるか、述べていただきたいと存じます。
  319. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今お話しの筋はわかりました。政府としましては、今お話しのような国際機関に加盟した場合におきましては、こうした機関の業務が設立目的であるところの開発途上国加盟国の経済開発を促進するものとなるよう努力をし、平和国家としての我が国の基本的な理念を踏まえて行動しなければならないと思っておるわけでございます。これまで同種の機関の業務をいろいろと調べてみたところでは、武器関連企業に対する融資等はその活動に含まれておらない、これまでもかかる実績はない、こういうふうに承知をしておるわけでございますが、今後とも我々が同種の機関等に参加する場合には、注意深く今の国会の審議等の趣旨を踏まえて行動しなければならない、こういうふうに思います。
  320. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 同種、趣旨を踏まえてというのはよくわかりませんが、武器禁輸三原則であるとか、あるいは経済協力に関する昭和五十三年四月五日、五十六年三月三十日の決議を踏まえられて行われる、こういう意味でございますか。
  321. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、国会の決議は尊重しなければならぬと思います。もちろん、国会の決議の有権的解釈というのは国会にあるわけでございますが、尊重していくというのが政府の姿勢でございますし、そうした国会の決議あるいはまた武器輸出三原則、そういうものを踏まえて政府が行動していくというのは、これは当然のことであろうと思います。
  322. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 このたびの米州投資公社を設立する協定の説明書の中に、中南米地域の経済開発を促進するための国際開発金融機関として米州開銀が昭和三十五年以来存続したと説明されておりますが、対象は明らかに加盟国政府及び政府機関にほとんど限られておるようでございまして、その実態は明快ではございません。当委員会に対しても、その実態に対して資料が提出されておりません。これでは、同開銀の実務をむしろ補強し拡充するという意味で投資公社が設立されようとしているわけでございますから、その投資公社の必要性をここで論ずることが難しいわけでございます。私は、先週から既に質問状を提出しているわけでございますから、これに対して米州開銀はどう役立ってきたのか、それでどの点が不十分であったのか、改めてでございますが御説明をいただきたいと存じます。
  323. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 第一点の、米州開銀の活動実績等についての御説明が不十分であるというおしかりをいただきましたが、米州開銀につきましての十分な御理解が得られますように、資料の提供、御説明等につきまして、今後とも万全を尽くすように努力をいたしたいと思います。  第二番目に、米州開銀の活動の不十分さがどこにあって、何ゆえにこの公社の設立が必要とされたのかという御質問でございますが、米州開銀は御承知のとおり、最も古い地域開発銀行として最大の資金量、融資額を誇っております。しかしながら、今委員が御指摘になりましたように、融資の対象がほとんど政府ないし政府関係企業ということで、民間に対する融資の道もございますが、政府保証というものを実際上要求されるということからなかなか民間には向かない、特に中小規模の民間に対する融資の道が狭いということと、それから投資活動ができないというこの二点から、本件公社の設立の要望が域内諸国を中心に非常に強まってきたというのが現状でございます。  第三点の、米州開銀の活動についての非常に大ざっぱな姿というものを申し上げますと、昨年末現在で融資承諾累計で二百七十七億程度に至っております。主な借り入れ国としましては、ブラジル、メキシコ、アルゼンチン、コロンビア、この四カ国が大体半分ちょっと欠ける程度の融資を受けております。部門別の状況ということで見てみますと、エネルギー、農林漁業、それから鉱工業、運輸、通信という部門がほとんどのシェアを占めて、融資の対象になっているという状況にございます。
  324. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、大臣に同じ政治家としてちょっとお尋ねするわけでございますが、中小企業育成のためには、多国間で設立された巨大銀行が必ずしも適切な資金供与あるいは投資をできるとは思われない。我が国においては、中小企業金融公庫とか国民金融公庫とか住宅金融公庫とか商工中金とかあるいは農協の各機関であるとかが、零細企業に対しては相当重層的なまた有機的な投資あるいは融資、企業育成活動を行っているわけでございます。これに例えば外国人がたくさん入っておって、どうしてこんな企業に融資しなければならないかというような事態になりましたら、非常に円滑を欠くだろうということはもう直観してわかるわけでございます。  したがって、私が第一に思いますのは、この投資公社という仕掛けが中小企業育成をテーマにするということそれ自体、非常におかしなことなのではないのだろうかという強烈な疑問であります。  それから、むしろいろいろなうわさやら何やらを集めてみますと、明らかにこの開銀の中で中小企業に対する融資をできないわけはなかったし、特別勘定の形でそれを実行することもできたし、そういう枠をつくればいいという議論も相当あったようでございますから、そういうこともあったのだろうと思うわけでございます。  また、これも仄聞するところによりますと、結局米州開銀は、当時世界的な諸銀行がデッドデット、すなわち返済不能の債務を肩がわりするために設立されたという悪口が存在しましたように、世界的な銀行が中南米あるいは南米の諸国政府の返済不能の債務を肩がわりするために使われて、必ずしも有効な融資活動とはならなかったという批判があるわけであります。  こうしたことについて、我が国から出ている役員あるいは職員は的確な報告を行われたのかどうなのか、私ははなはだ疑問なのであります。こうしたことについて、ある部分そういったことがあるのかもしれないが、ともかくアメリカがこれだけ言い、中南米諸国や米州諸国が言うのだから、おつき合いで入っていくのだというならそれも一つ判断かと思いますけれども、私はこうした問題に対して、日本政府として覚めた目で評価をした上で取り組むのでなければ、単なるおつき合い金だけが膨張していって投資効果としては薄いものになるのではないかと思うわけでございまして、この辺はどうお考えか、見識のあるところをまず局長からお聞かせいただきたい、次いで大臣にもお聞かせいただきたいと思います。
  325. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 ただいま委員指摘のとおり、本公社設立に至ります間には、米州開発銀行の中に多目的信託基金を設けるという構想もございました。結果的にはそのような構想ではなく、本日御審議をお願いいたしております独立の公社という姿で、主として中小規模の民間金融、民間部門に対する投資及び融資を対象とする本公社の設立に至ったわけでございます。  このような多国的、多数国間の機構が、果たして民間中小企業の支援に役立つものかどうかという御疑問でございますが、御承知のとおり、本公社は総資本が二億ドルという割と規模の小さなものでございます。それからこの公社の運営にしましても、通常の理事会というものに加えまして執行委員会という四名制の機構ができておりまして、通常はもちろん社長という職員もございますけれども、執行委員という四名の執行委員会が投融資の決定を行って、それが問題が起こったときには理事会にいくという、割と機動的な活動ができるような形をとっているということで、御疑問のような中小規模の民間に対する投資ないし融資ということにも、ある程度は機動的に対応していけるのではないかと考えております。  それから、第三点の米州開発銀行に関連して不良債権の肩がわり的なうわさがあった、そのようなことの報告を入手しているかというお尋ねでございますが、私どもはそのような報告等は今まで入手しておりません。ただいま大蔵省の同僚にも照会いたしましたけれども、大蔵省でもそのような情報は、報告等は受けていないということでございましたので、あわせここで御報告申し上げます。
  326. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 恐らく米州開銀でも、中小企業に対する融資の道はあると思いますが、しかし、どうしても中小企業部門は隅の方に追いやられてしまう。しかし、南米の経済の安定をしていくためには、零細なそうした中小企業を育成をしていくことが大きな意味を持つわけであって、これは中小企業金融部門を独立させて、そこでもって直接中小企業に対する育成を手がけていかないと南米の経済の発展には資することができない、こういう判断で結局独立した形で、もちろん姉妹機関でありますが、独立した形でこの公社を設立するに至った、こういうふうに思っております。さっきお話しのような、日本で言えば中小企業金融公庫といったそういう形の公社であらねばならない、そういうふうに思いますし、そういうふうに理解をいたしておるわけです。
  327. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 やってみなければわからぬところも確かにあるわけではありますけれども、事前に予測してみて、これほど能率の悪い機構を堂々とつくろうということ自体に私は余りいい感じを持てない。特に米州開銀の方では、ブラジルとかアルゼンチンとかメキシコとかベネズエラだとか、巨大債務国の債務返済に事実上お金がどかっと行き過ぎておる。先ほどの御説明でも、約五〇%以上がブラジル、メキシコ、アルゼンチン、コロンビアでしたか、そうしたところに大型の融資が行われたというような御報告があったように聞こえたのでございますが、結局巨大債務国に集中する、開発のために役に立ったのかという疑問に対して甚だ疑問である。  したがって、こうした問題について一回の委員会答弁を求め、そして問題を決着するには余りにも巨大な問題であろうし、今後随時こうした問題については、当委員会に御報告を求めるという形にしておくのが妥当なのではないかというふうに私は思っておりまして、今後においては時々御報告をちょうだいしたい、この点をお願いするわけですが、いかがですか。
  328. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この投資公社が設立されれば南米の中小企業の育成には非常に効果的である、こういうふうに私は考えております。しかし、今後の公社の経営あるいはまたこれが融資の実情等については、日本も融資をしておるわけでございますから、その経緯等につきましては国会にも報告をさしていただきたいと思います。
  329. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 少なくとも、日本の国会が単年度予算制をとっていることでもありますから、一年に一回ぐらいはきちんと報告していただきたい。こうしたことについて今まで当外務委員会は、多国間に対するこうした投資行為に対する報告を求めることについて、余りきちんとしていなかったという反省がなければならぬと私自身思うわけであります。また、予算委員会の席上でも、こうしたことに注目されなければならぬと思うのでございます。この点は、ひとつよろしくお願いしたいと思います。  さて次に、我が国が今度は妙なことになるわけでございますが、先ほどの兵器あるいは軍需産業に対する投資公社の関与というものに対して、いろいろな心配が委員会の席上表明され、大臣からも御答弁がきちんとあったわけでございますが、こうした我が国の主張を今後確保していくためにどういう措置が必要なのかなと思って、このペーパーを見てみますと、まことに妙なことが二、三書いてあるわけであります。  それはどうしてかと申しますと、このペーパーの中に、明らかに「政治活動の禁止」、第八項にあるわけでございますが、「公社及びその役員は、いずれの加盟国の政治問題にも干渉してはならず、また、いかなる決定を行うに当たっても、関係加盟国の政治的性格によって影響されてはならない。」とされているわけであります。これを見ておりますと、明らかに、日本国の政府の方針であるところの武器禁輸三原則であるとか、あるいは日本国国会の経済協力に関する決議というようなものは、加盟国の政治的性格に基づくものではないのかと字義どおり感ずるわけであります。そうしたことを先ほどからお約束もしていただいたのだし、また、そういうふうにも頑張るぞという御意見の表明もあったわけでございます。  そうすると、論理が今度逆さになってくる、逆になってくる。この第三条第八項の「政治活動の禁止」の項目を準用するならば、投資公社の幹部はこうしたことのために逆になってしまうのではないか、今度はそんなことは守れないのではないか、こういう疑いを生ずるわけです。そういうふうに思わせるというものは、結局この条文自体のつくりが極めて不良なことを意味する。不良ではあるけれども我が国として一定の見解をこの問題に対して表明しておかなければ、後々重要な障害になることは明らかである。軽いものであるなら、当委員会で意見を表明されるだけで十分であろうし、重要な問題であれば、署名、捺印の際に、これは諸外国に対して我が国側の見解を述べることが必要である、こう思うわけなのであります。この見解について、この問題についてどう意見を明らかにされるか、まず伺いたいと思います。
  330. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 ただいま先生御指摘の第三条第八項「政治活動の禁止」の項でございますが、前段の「公社及びその役員は、いずれの加盟国の政治問題にも干渉してはならず、」と、この点が内政不干渉ということかと思います。それから「いかなる決定を行うに当たっても、関係加盟国の政治的性格によって影響されてはならない。」これは、いずれの国際金融機関にも委員御高承のとおり出ております決定は、経済上の考慮のみに基づいて行われるべきであるという、この後段につながる規定でございまして、いわゆる被援助国の政治制度、政体によって融資ないし投資の決定が左右されてはいかぬということを規定しているものでございます。  したがいまして、我が国が先ほど来、兵器の生産等に本件公社が関与しないようにという我が国の国会の決議、及び我が国の平和主義に背馳しないように確保するという我が国立場は、本公社の第一条第一項に「目的」として掲げております域内開発途上加盟国の経済開発促進ということをきちんと確保しようという意図に出ているものでございまして、特定の政治的な立場を公社の運営に持ち込もうということではないと私ども考えております。むしろ、本公社の目的に純粋に役立つように本公社が運営されるべきであるというのが我が国立場でございますので、第三条第八項の「政治活動の禁止」というものと、我が国が国会の決議等、我が国の平和主義に基づいて本公社が運営さるべきであるという立場をとることは直接関係はないのではないか、抵触はしないのではないかと考えております。
  331. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 大臣、これは論理的に言うと一種の解釈問題になってしまうわけでありますから、局長がお答えになるだけではなく、大臣御自身がお答えにならなければいけないと思います。  ただいまの局長の御答弁は、我が国の非核三原則であるとか、武器禁輸三原則であるとか、経済協力に関する原則であるとか、憲法上の問題であるとか、こうした平和に徹する考え方というものは、この公社の目的であるところの域内開発途上加盟国の経済開発を促進するために有益なのであって、むしろ第三条八項の「政治活動の禁止」の項目に触れるものではないということが日本政府の方針であると言っていただかなければならぬわけですな。そうおっしゃらなくなったら、これはつぶすしかないんだけれども、それを大きな声でひとつ言っていただく必要がある。その点をもう一回お願いをいたします。
  332. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今度できます公社におきまして、我が国の総務及び理事が、我が国の経済協力に関する基本的考え方、平和国家としての我が国の基本的理念を念頭に置き、本件協定に従い同公社設立の目的が実現するよう行動するとの意味を言ったものでありまして、特定の政治目的のために公社に影響を与えるために行動をするとの意味では全くありません。いずれにいたしましても、我が国の経済協力の基本的考え方、平和国家としての我が国の基本的理念は、国際間の協力により経済社会開発に寄与するとの公社設立の趣旨、目的等と軌を一にするものであるので、これを踏まえて行動したとしても、「政治活動の禁止」を決めた第三条第八項を含め本協定に抵触するというような問題は生じないと考えております。
  333. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、その説明を承認します。そして、承認されなければならない。そうしないと、我が国は、この機構に参画するに当たって極めておかしなことになるからなのであります。  ついでに言っておきますと、こうした条約のつくり方が余り適切でないと私は思う。というのは、これは日本で六法全書を解釈するような厳密さを持たないとしても、公社が「関係加盟国の政治的性格によって影響されてはならない。」と言いますが、公社の活動は一条三項によって、理事会が承認した規則において詳細に定める業務、財務、投資、それぞれの政策に従って行われることになっておる。これらの諸政策は、理事会の承認、決定されたものでなければならないことから、これら諸政策は、関係加盟国の政治的性格の影響を強く受けたものにならざるを得ない。つまり、わざわざこの一条三項によって、理事会は業務、財務、投資政策をつくるんだと言っているわけですね。そのつくる政策というのは理事会が承認するわけですけれども、その理事は全部加盟国を代表して乗り込んできているわけでありますから、関係加盟国の政治的性格の反映になることは、これは当たり前なんですね、普通で言えば。当たり前なのに、影響を受けてはならないなどと一発で書くから、これは全く何を言っているんだか、一足す一は二じゃないと急に言うみたいなものであって、非常につくりが悪い。もう本当に何と言っていいかわからぬくらい、つくりが悪い。  だから、まさに今外務大臣が述べられたようなまことに妙な、ある意味では、文章上からいき、法令解釈上からいったら奇妙な解釈を、我が国の正当な解釈として押し切らなければならなくなってしまう。これは今後、交渉の条理に当たって、法学部卒業の方もおられることだろうし、弁護士資格をお持ちの方もお役人の中にたくさんおられることであるから、遠慮しないで、中南米の話だからといってこんないいかげんなものをどんどん判こを押してこないで、もうちょっとちゃんと直していただけぬものか。これは、本条約の質疑というよりも、ちょっと枝道に入っているのでありますが、もう少し読みやすい文章にしてもらいたい、こう思うのですが、いかがでございますか。
  334. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 一般論といたしまして、多数国間条約をつくります会議におきまして我が国代表は、でき上がります文章が論理的に矛盾がないようなものにすること、それからわかりやすいようなものにすること、その点につきまして最大限の努力を払っております。  ただ、何分にも多数国間条約の案文というのは、多数決で採決されたりあるいは筋の通った議論になかなか耳をかさない空気が多いというようなこともございまして、我が国の主張が一〇〇%通るということは確保されていないわけでございます。しかしながら、我が国といたしましては、できる範囲内での努力は今後とも払ってまいりたいと思っております。
  335. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 もう一つ、ひどいのを言っておきます。  協定四条の第四項の(1)「加盟国は、自国に特に影響がある事項について審議が行われている間、理事会の会合に代表者一人を出席させることができる。」と規定しておりますが、これは普通に読めばそのとおりですが、「この代表者を出席させる権利は、総務会による規制を受ける。」という規定が後ろにくっついておる。  まず、前の方から言うと、加盟国は、自分の政治的影響を行使するために代表一名を送り込んでいるとしか見えない。第二番目に、代表者を出席させる権利を寄ってたかって総務会で、おまえのところはやめておけとか、おまえのところはだめだよとか払いのけるということは、今度はその総務会側の方が自国の政治的な影響力を行使したということになるのではないかと思うのですね。これは一体何を言って、どっちに向かっているのか。こうした奇妙な条項が次から次へとついている。私の判断によれば、政治的性格の極めて濃厚なものが、政治的性格を排除するという言い方のもとでこの協定文になっておる。これはもう本当に、どちらを向いて議論していいかわからないようなお粗末なものができ上がっていると言わざるを得ない。  だけれども、これ以上、一生懸命稼いだ我が国の外交官たちを締め上げたりいじめたりしても、これは仕方がないことだろうと思うから、この部分は黙っていてあげるとしても、今後はもう少しちゃんとしてもらいたい。こんなものを我が衆議院外務委員会に持ってきて審議しろなどと言うのは、我が委員会の知性に対する甚だしい挑戦であるとしか考えられない。もうちょっとしっかりしてもらいたいと思うかどうか。ここのところは、どうかと言ったって答えようがないだろうから、どうもこうもないけれども、今後頑張って交渉していただきたい。——君はいいよ。君が言うとおかしなことになるから言わぬ方がいい。大臣、お願いします。
  336. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 条約は、条約のいろいろな形式があると思います。私は専門家じゃありませんけれども、それなりに多数国間いろいろと難しいところもあるし、素人の我々が見てもなかなか難解な面もありますけれども、しかし、それなりに国際的に成り立っておるわけでありますし、日本もそれの一員として加盟をし、署名した以上は、この条約に従って行動しなければならぬと思うわけでございます。しかし、日本立場条約の中で生かしていかなければならぬわけでございますから、その点については、これからも十分日本立場条約に反映されるように努力をしていかなければならぬと思っています。
  337. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私はきょう、留保をつけてこれは再交渉せよと言いたいところでありましたけれども、人柄が優しいのでこの辺でただし、先ほど提起された問題は重要でありますので、最後にもう一回確認をさせていただきたいと思います。  対外経済協力に関する件は、外務委員会におきまして五十三年四月五日、五十六年三月三十日、全会一致で決議されたところでございます。先ほどからの御答弁を聞きますと、この精神、及び武器禁輸三原則の精神、及び日本国憲法の精神、あるいは非核三原則等の精神に基づき、我が国政府としては、多国間協議の場合においても我が国立場を十分に宣明し、あるいは主張し、あるいは交渉し、相手国政府に周知徹底せしめ、その結果として、これらの精神に盛り込まれたように紛争当事国に対する経済技術協力を禁止するとともに、武器あるいは軍事的用途に充てられるような協力を行わないように努力し、成果を上げる、そういうことであると私は理解しましたが、それでよろしゅうございますか。
  338. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本として当然憲法を守り、そしてその基本原則に従った武器輸出禁止三原則とか非核三原則とかそうした諸原則、さらにまた国会の決議は十分踏まえまして、これからの条約締結条約交渉に当たっていきたいと思います。
  339. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 多国間協議においても、こうした原則は今回の交渉では十分に表明されなかったようでございますけれども、多国間の経済協力に関する投資、融資についてもこうした原則は厳に守っていく、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  340. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本の持っております基本的な諸原則は踏まえて、あらゆる交渉に臨まなければならぬと思っております。
  341. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ちょっとずつお言葉をおかえになりますので、私は理解が非常にのろいものですからもう一回伺わせていただくわけでございますが、私の言い回しのとおりでよろしいのでございますか。
  342. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今私が申し上げましたように、国の諸原則あるいは国会の決議は当然政府として守って、また尊重して、あらゆる条約の交渉、国家間の交渉には当たらなければならない、これは当然のことであろうと思います。
  343. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それでは今後、多国間の投資、融資に関する問題を含む交渉においても、こうした原則を明らかにした上御努力いただきたいと存じます。  そして最後に、先ほど嫌みを申し上げましたけれども、私は外交官諸君の御努力を軽視しているのではなく、こうした結論になってしまう国際的な交渉の難しさをあれこれ言っているわけでもないけれども、もう少し形のいい条約をつくって本委員会に提出されるよう心から望みまして、私の質問といたします。
  344. 愛野興一郎

    愛野委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  345. 愛野興一郎

    愛野委員長 これより本件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  346. 愛野興一郎

    愛野委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  347. 愛野興一郎

    愛野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  348. 愛野興一郎

    愛野委員長 次回は、来る二十四日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十五分散会