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1985-04-19 第102回国会 衆議院 外務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年四月十九日(金曜日)     午前十時三分開議 出席委員   委員長 愛野興一郎君    理事 奥田 敬和君 理事 北川 石松君    理事 野上  徹君 理事 浜田卓二郎君    理事 井上 普方君 理事 土井たか子君    理事 玉城 栄一君 理事 渡辺  朗君       石川 要三君    鍵田忠三郎君       鯨岡 兵輔君    中山 正暉君       仲村 正治君    西山敬次郎君       町村 信孝君    山下 元利君       岡田 春夫君    河上 民雄君       小林  進君    日野 市朗君       渡部 一郎君    木下敬之助君       岡崎万寿秀君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         外務大臣官房審         議官      有馬 龍夫君         外務大臣官房審         議官      斉藤 邦彦君         外務大臣官房領         事移住部長   谷田 正躬君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省北米局長 栗山 尚一君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         海上保安庁次長 岡田 專治君  委員外出席者         環境庁自然保護         局鳥獣保護課長 佐野  弘君         外務大臣官房審         議官      松田 慶文君         外務大臣官房外         務参事官    瀬崎 克己君         外務大臣官房外         務参事官    木村 崇之君         水産庁海洋漁業         部遠洋課長   今井  忠君         水産庁海洋漁業         部参事官    島  一雄君         水産庁研究部資         源課長     菊地 徳弥君         通商産業省貿易         局輸入課長   奈須 俊和君         海上保安庁警備         救難部参事官  辻  宏邦君         海上保安庁警備         救難部管理課長 茅根 滋男君         海上保安庁警備         救難部警備第二         課長      西山 知範君         海上保安庁警備         救難部救難課長 草薙 博文君         外務委員会調査         室長      高橋 文雄君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十九日  辞任          補欠選任   八木  昇君      日野 市朗君 同日  辞任          補欠選任   日野 市朗君      八木  昇君     ――――――――――――― 四月十八日  ILO批准条約批准に関する請願阿部未  喜男紹介)(第三二二二号)  同(井上泉紹介)(第三二二三号)  同(井上一成紹介)(第三二二四号)  同(伊藤茂紹介)(第三二二五号)  同(伊藤忠治紹介)(第三二二六号)  同(上田卓三紹介)(第三二二七号)  同(小川省吾紹介)(第三二二八号)  同(小澤克介紹介)(第三二二九号)  同(岡田利春紹介)(第三二三〇号)  同(加藤万吉紹介)(第三二三一号)  同(金子みつ紹介)(第三二三二号)  同(上西和郎紹介)(第三二三三号)  同(木間章紹介)(第三二三四号)  同(左近正男紹介)(第三二三五号)  同(佐藤徳雄紹介)(第三二三六号)  同(島田琢郎紹介)(第三二三七号)  同(清水勇紹介)(第三二三八号)  同(新村勝雄紹介)(第三二三九号)  同(鈴木強紹介)(第三二四〇号)  同(田中克彦紹介)(第三二四一号)  同(田中恒利紹介)(第三二四二号)  同(田並胤明君紹介)(第三二四三号)  同(多賀谷眞稔紹介)(第三二四四号)  同(竹内猛紹介)(第三二四五号)  同(土井たか子紹介)(第三二四六号)  同(中村重光紹介)(第三二四七号)  同(野口幸一紹介)(第三二四八号)  同(馬場昇紹介)(第三二四九号)  同(日野市朗紹介)(第三二五〇号)  同(藤田高敏紹介)(第三二五一号)  同(細谷治嘉紹介)(第三二五二号)  同(松前仰君紹介)(第三二五三号)  同(水田稔紹介)(第三二五四号)  同(村山喜一紹介)(第三二五五号)  同(元信堯君紹介)(第三二五六号)  同(八木昇紹介)(第三二五七号)  同(矢山有作紹介)(第三二五八号)  同(山口鶴男紹介)(第三二五九号)  同(山中末治紹介)(第三二六〇号)  同(山本政弘紹介)(第三二六一号)  同(渡部行雄紹介)(第三二六二号)  同(渡辺嘉藏紹介)(第三二六三号)  同(五十嵐広三紹介)(第三三五八号)  同(上田哲紹介)(第三三五九号)  同(小川国彦紹介)(第三三六〇号)  同(岡田春夫紹介)(第三三六一号)  同(川崎寛治紹介)(第三三六二号)  同(川俣健二郎紹介)(第三三六三号)  同(河野正紹介)(第三三六四号)  同(串原義直紹介)(第三三六五号)  同(小林進紹介)(第三三六六号)  同(後藤茂紹介)(第三三六七号)  同(佐藤誼紹介)(第三三六八号)  同(渋沢利久紹介)(第三三六九号)  同(城地豊司紹介)(第三三七〇号)  同(高沢寅男紹介)(第三三七一号)  同(武部文紹介)(第三三七二号)  同(辻一彦紹介)(第三三七三号)  同(堀昌雄紹介)(第三三七四号)  同(前川旦紹介)(第三三七五号)  同(松浦利尚君紹介)(第三三七六号)  同(松沢俊昭紹介)(第三三七七号)  同(武藤山治紹介)(第三三七八号)  同(吉原米治紹介)(第三三七九号) 同月十九日  ILO批准条約批准に関する請願天野等  君紹介)(第三四一五号)  同(石橋政嗣君紹介)(第三四一六号)  同(稲葉誠一紹介)(第三四一七号)  同外一件(岡田利春紹介)(第三四一八号)  同(金子みつ紹介)(第三四一九号)  同外一件(上西和郎紹介)(第三四二〇号)  同(木間章紹介)(第三四二一号)  同外二件(串原義直紹介)(第三四二二号)  同(児玉末男紹介)(第三四二三号)  同外一件(上坂昇紹介)(第三四二四号)  同(左近正男紹介)(第三四二五号)  同(新村源雄紹介)(第三四二六号)  同(関山信之紹介)(第三四二七号)  同外一件(辻一彦紹介)(第三四二八号)  同外一件(野口幸一紹介)(第三四二九号)  同(村山富市紹介)(第三四三〇号)  同(山下洲夫君紹介)(第三四三一号)  同(渡部行雄紹介)(第三四三二号)  同外一件(阿部喜男紹介)(第三五四六号  )  同(井上泉紹介)(第三五四七号)  同外一件(伊藤茂紹介)(第三五四八号)  同(伊藤忠治紹介)(第三五四九号)  同(池端清一紹介)(第三五五〇号)  同外一件(川崎寛治紹介)(第三五五一号)  同(小林恒人紹介)(第三五五二号)  同(左近正男紹介)(第三五五三号)  同外一件(佐藤徳雄紹介)(第三五五四号)  同(沢田広紹介)(第三五五五号)  同(嶋崎譲紹介)(第三五五六号)  同(新村源雄紹介)(第三五五七号)  同(竹村泰子紹介)(第三五五八号)  同(細谷治嘉紹介)(第三五五九号)  同外一件(武藤山治紹介)(第三五六〇号)  同外一件(元信堯君紹介)(第三五六一号)  同外一件(矢山有作紹介)(第三五六二号)  同外一件(山中末治紹介)(第三五六三号)  同(横山利秋紹介)(第三五六四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月十九日  アフリカの飢餓救援に関する陳情書  (第二八四号)  核巡航ミサイル配備反対非核三原則の厳守に  関する陳情書  (第二八五号  ) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際原子力機関憲章第六条の改正受諾につい  て承認を求めるの件(条約第二号)  千九百七十九年の海上における捜索及び救助に  関する国際条約締結について承認を求めるの  件(条約第三号)  大西洋のまぐろ類保存のための国際条約の締  約国の全権委員会議(千九百八十四年七月九日  から十日までパリ)の最終文書に附属する議定  書の締結について承認を求めるの件(条約第四  号)  北太平洋のおつとせいの保存に関する暫定条約  を改正する千九百八十四年の議定書締結につ  いて承認を求めるの件(条約第五号)      ――――◇―――――
  2. 愛野興一郎

    愛野委員長 これより会議を開きます。  国際原子力機関憲章第六条の改正受諾について承認を求めるの件を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。土井たか子君。
  3. 土井たか子

    土井委員 前回に引き続き、国際原子力機関憲章についての質問をさせていただきたいと思います。  一九七六年に我が国は、核兵器拡散に関する条約参加をいたしました。当時の国会論議というのは、私も鮮明に覚えているわけですが、いろいろな角度から賛否両論が述べられまして、やっとのことで国会承認が得られたという形になったことは、皆さん覚えていらっしゃるところだと思うのですが、そのときに私たちが少なくとも一致したことは、核戦争脅威にどう立ち向かうかという問題だったはずなんです。  このNPT条約は、非核保有国にとって非常に不平等な、問題の条約であるということは周知の事実だと思います。しかし、これ以上世界核保有国が増加するということ、いわゆる水平拡散をさせないという目的のために、私どもは勇を鼓して賛成をしたといういきさつがございます。また、核保有国は五カ国でありますけれども核兵器貯蔵量の増加、いわゆる垂直拡散をさせてはいけないという目的が達せられるということに期待をかけて、賛成をしたということでもあります。  そういうことからすると、今申し上げた水平拡散であるとか垂直拡散という目的を達成するということを考えてこの条約我が国賛成したのですけれども条約が成立しまして既に十五年たっておりますが、外務大臣ごらんになりまして、現在、政府がこの条約をどう評価されているのか、どのような感想を持っていらっしゃるのか、あらまし承りたいと思います。
  4. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 このNPTは、世界から核というものを最終的に廃絶していくという一つの理想のために、その現実的な段階としてまず拡散を防ぐという意味でつくられたものでありましょうし、また、おっしゃるように、核を持っている国々が核の拡大をさせないというところにも目的があったと思いますが、残念ながら核保有国、特に米ソ両国核兵器がどんどんそれ以来増量されておるということは極めて遺憾であると思いますし、これはやはりNPT加盟している国々不満でもあるわけであります。  幸いにいたしまして、核が拡散をする、おっしゃるような水平的な核拡散は行われてないということは言えるんじゃないかと思います。しかし、所期の目的の方向に世界情勢が進んでないということは残念でありますし、今度再検討会議も開かれるようでありますから、日本も積極的に参加をいたしまして、このNPTのあり方につきまして基本的なこうした目的達成のための論議展開をしなければならぬと思いますし、同時にまた、この条約にまだ入ってない国々がたくさんありますから、そうした国々に対しまして加盟を求めて、大きな国際的な世論というものに持っていかなければならぬ、こういうふうに思っております。
  5. 土井たか子

    土井委員 原子力平和利用の発達というのは飛躍的なものでありますが、既にIAEA監視能力を超える規模で増大しつつあるというふうに見ていいのではないかと思います。その結果は、保障措置制度を定めているこの核防条約NPTの第三条の規定の十分な実施基盤というものを、技術的な側面からどんどん崩していくというおそれがありはしないか。非常に懸念されるところでありますけれども、そういう点からいうとどうなんでしょう、NPTに入っていなくて今のIAEAに入っているという国がどれくらいありますか、そして、今申し上げたような保障措置制度を定めているNPTの三条の規定の十分な実施基盤をどんどん崩していっているというふうなおそれがありやなしや、この点はどうです。
  6. 松田慶文

    松田説明員 御案内のとおり、ブラジルアルゼンチンインドパキスタン、イスラエル、南ア等先生の今御指摘のような問題国幾つかがあることは、そのとおりだと存じております。
  7. 土井たか子

    土井委員 今の御答弁について、ちょっと私が言っていたことにお答えになっていらっしゃらないと思うのですがね。どうなんですか、NPTの第三条の規定中身というのは崩していっているというおそれがありはしませんか、その点については一言もお述べになっていらっしゃらない。そして、片やNPTに入っていなくてIAEAに入っている国に対しても、いいかげんな答え方です。そんないいかげんな答え方では容赦しませんよ。
  8. 松田慶文

    松田説明員 お答え申し上げます。  確かに、NPTに入っておりません私がただいま列挙をいたしましたような国々には、フルスコープ・セーフガード、すなわちすべての平和利用施設IAEA査察がかかるという実態はございませんが、他方、これらの国々も多くの原子力推進国との間に二国間の協力関係がございまして、それを通してのIAEA保障措置は受けている次第でございます。したがいまして、IAEAに入っているがNPTには入っていない先ほどの国々が全く査察対象となっていないということはございませんので、それなりにIAEAがワークしているということは事実と存じます。  また、御指摘になりましたIAEA保障措置能力等々につきましては、現状におきましては、予算、人員両面において、査察保障措置のための仕事は適正に行われているものと理解しております。
  9. 土井たか子

    土井委員 教科書みたいな答弁を幾ら聞かされたって、実際問題に対してそれはお答えになっていらっしゃることに、なかなかならないということはよくあるのです。  IAEA加盟して核防条約に非加盟の国があるでしょう、先ほど御答弁になった。そういう国に対しては、どういうふうな仕組みと方法で保障措置をとっているのですか。
  10. 松田慶文

    松田説明員 さっき申し上げましたこれらの国国、すなわちインドパキスタンアルゼンチンブラジル等々も、第三国例えば米国あるいはカナダ等々から協力を得るに当たりましては原子力協定を結んでおりまして、その関係上、当該部分に関する、すなわち輸出機材燃料等については、IAEA保障措置を受けるということがすべての場合の条件となっておりますから、かかる二国間関係を通じてIAEA保障がかかるというふうに申し上げている次第でございます。
  11. 土井たか子

    土井委員 それで、今おっしゃったような保障措置で、平和利用ということに対しての保障措置が十分果たされているかどうか、核兵器転用のおそれがないのかどうか、これは非常に気にかかることですよ。今おっしゃったような程度のことで、保障措置というのは具体的に実効性を持ち得るのかどうか。  四月四日だったと思いますけれども、新聞を見ますと、アメリカが八六年度のパキスタンに対して援助することに関して、「パキスタンが核を保有していないこと」それからまた「援助によって、パキスタン核開発の危険がむしろ遠のくこと」、この二つの保障条件として援助するということが報じられているのです。こうなってきますと、パキスタン核保有疑惑がくすぶっているということが現実にあるものだから、こういうことをわざわざ言わなければならないということにもなってくるわけですね。  それで、ちょっとお伺いしますけれども、今二国間でそういうことに対する保障措置をやっているというお答えですが、パキスタンはどんな国と原子力協力協定を結んで、どの程度技術水準を持っているのですか。それでどういう保障措置がなされているのですか。いかがですか。
  12. 松田慶文

    松田説明員 御指摘のとおり、当該原子力利用可能国が外国からの機材燃料等輸入に頼らず、自国でみずから開発し能力を持った場合には、IAEA保障措置査察がかからないという点がございまして、この点は先生の御指摘危険性可能性のものかと思います。  なお、パキスタンにつきましては、米国その他と原子力協定を結んでおりますが、どの国がすべて網羅的であるかということはただいま手持ち資料がございませんので、早速調べさせていただきたいと存じます。
  13. 土井たか子

    土井委員 そうすると、それは調べて早く中身を出していただくというふうにお願いします。委員長よろしゅうございますか、きちっとさせてください。
  14. 松田慶文

    松田説明員 手元の資料では、米国との間に協定がある、そして協力関係がある、カナダとの関係は現在サスペンドされていると理解いたしますが、直ちに調べまして、できれば本日中に御報告させていただきたいと思います。
  15. 土井たか子

    土井委員 米国との関係というのがあって、その中で米国は先ほど言ったような注文つけをやっているわけですから、これは奇異なことであります。そうでしょう。だから、ちょっとそこのところをはっきりさせていただかなければ困ります。
  16. 松田慶文

    松田説明員 御説明申し上げます。  米国協定に従ってみずから輸出する機材燃料等は、当然に査察対象となります。ところが、完全にパキスタン自主開発した技術ないしは施設、これは対象外でありますが、その中間に、直接の機材供与ではないが間接的な技術等自主開発の根源となって、第二次的に自主開発に利するような技術等々につきましては、米国は慎重たらざるを得ないわけでございます。明らかに原子力施設そのものに使える技術機材等は、査察対象となります。しかし、そうではないが、間接的においおいそれを土台にして展開していけば、将来に原子力関係自主技術のもとになるようなものについては、当初の供与のところから、直接は現在査察対象にならないが、将来どうなるかということを懸念するのは当然だと思います。  そういう点が、米国であれ、あらゆる原子力先進国が、米・パキスタン関係のみならず、現在各国が共通して持っている一つ問題点でございます。
  17. 土井たか子

    土井委員 こういう程度じゃ、保障措置というのは心もとない限りですよ。  それで、ちょっと大臣にお尋ねしますが、核保有国NPT加盟しないでIAEAにのみ入るという姿勢に対して、どうお思いになります。
  18. 松田慶文

    松田説明員 いずれ大臣の御答弁がございましょうが、その前に、一般論といたしましては、それはIAEAの問題というよりも、むしろNPTにより多く入ってもらいたいという私どものこの分野における姿勢といたしましては、御指摘のような状況、NPTに入らない原子力国が多々あるという実態は遺憾に存じております。
  19. 土井たか子

    土井委員 外務大臣いかがです。
  20. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 IAEAというのは、原子力平和利用を中心とした国際機構でありますから、やはりそれに入った国はNPTに入るということを我々としては推進をしていかなければならぬ、そうあってもらわなければならぬ、こういうふうに思っています。
  21. 土井たか子

    土井委員 推進をしていかなければならぬとおっしゃるその推進に対して、どういう御努力を払っていらっしゃるかというのは実は聞きたいところですが、まず、このNPT条約については、非核保有国締約国核兵器を持たないということを約束させられているのですね。そしてさらに、原子力平和利用から核兵器が生じないように査察まで受ける義務を負うているのですね。それに対して核保有国、特にアメリカソビエトというのは、非核保有国に対して核軍縮をする約束をしているわけですね。しかし、この十五年間見てまいりますと、米ソはその約束を履行していないのです。履行しないところか、核兵器の増強を行ってきているのが現実なんですね。そうすると、米ソ条約違反だということが言えると思うのですが、これは大臣いかがです。
  22. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 おっしゃるとおりだと思います。  現実的に、米ソ両国がとにかく核をどんどん増幅していることは事実でありますから、この点については我々は極めて遺憾に思っておりますし、米ソもそうした限界をだんだん知って、このジュネーブ会議等の再開というものにつながっていったのだろうと思いますし、この会議が成功して、核兵器の縮小というところに持っていくことを我我としては期待をしておるわけで、そういう意味ではこのジュネーブ会議というのは、我々は非常に重要視をしておるわけであります。
  23. 土井たか子

    土井委員 米ソ核戦力がどんどんふえる一方の中で、非核保有国というのはどのようにすればいいのです。いろいろな手だてを講じなければならぬと思うのですよ。ただこれは、指をくわえて見ているだけの話ではなかろうと思いますし、NPT条約自身現実にあるわけですから、この条約の中で一体どういうことをしなければならないかというのも問われてくると思うのです。大臣は、どういうふうにお考えになりますか。ひたすら米ソ両国に対して、両首脳に対して核の廃絶を信仰みたいに願うだけなのか。いかがです、大臣
  24. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 NPT加盟している国はこの事態を大変憂えておりますし、我が国もやはりそうした事態に対して大変憂慮を持っておりますから、この九月にNPTの再検討会議というのがありますし、特に第三世界は大変な不満が高じておりますし、そういう中で我々NPT加盟国で声を大にして米ソに対しましても、あるいはその他の核保有国に対しましても、核の縮減というものを積極的に強く求めていかなければならない、こういうふうに思います。
  25. 土井たか子

    土井委員 中曽根総理がことしの一月に南太平洋諸国を歴訪された際に、オーストラリアのホーク首相核防条約の見直しについて意見一致を見たということが報ぜられておりますが、我が国としてどんな点について見直すということに意見一致したのですか。どういうことをここで問題にされたのです。いかがですか。
  26. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 中曽根総理ホーク首相との間でNPTの問題が論議されまして、核の拡散を防ぐ、あるいはまた核保有国の核が増強されることを防ぐために、まずNPTに対する加盟国をふやしていく、さらにまたNPT参加国が再検討会議を開いて、そしてこれら核保有国に対しましての核の縮減を積極的に強く求めていこう、こういうことで意見一致をいたしたわけであります。
  27. 土井たか子

    土井委員 それはいろいろ問題点があると思うのですが、アメリカの国務省が昨年、ソ連のSS20の極東配備が百三十五基になったというような発表をしております。これは大臣、御承知のとおりなんですが、このソビエト核兵器日本自身外務大臣自身脅威とお感じになっていらっしゃるのですか、どうなんです。
  28. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 極東におけるSS20の展開は、アジアの平和と安定というものに対して潜在的な脅威を与えておる、こういうふうに我々としては認識せざるを得ないわけです。
  29. 土井たか子

    土井委員 潜在的脅威というのは、いわく大変微妙な日本語でありまして、日本語というのはそういうときには便利なものだと思うわけですが、つまり潜在的であるにしろ、脅威というふうに大臣自身が感じておられるということにおいては変わりはないわけなんですね。また、日本政府としては、そういう考え方だと理解しておいていいわけですね。そうなんでしょう。
  30. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはやはりアジアの平和と安定のためには好ましくない、こういうふうに思います。
  31. 土井たか子

    土井委員 そうすると、そういうソビエトの核の存在に対しまして、我が国は今度はアメリカの核抑止力に依存しているというふうに一般には言われているし、政府自身もそういう説明を再々言われます。この米国の核の抑止力というものは、一体どんなものなんですか。どういうふうに考えたらいいのです。
  32. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 残念ながら今の世界の平和というのが、核の抑止力といいますか、そういうものによって現実的には保たれておる。そういう意味においてアメリカの核の抑止力というものも、世界現実的な平和あるいは日本自身の平和と安定のために存在をしておる、こういうふうに我々は認識いたしております。
  33. 土井たか子

    土井委員 そういうことを言い始めると、これはとどまるところを知らないわけですね。ソビエト脅威に対抗するための措置として、アメリカの核に依存をして核使用もできる、ソビエトを爆撃するところの能力もあるF16戦闘機の三沢の配備もそういう意味日本としては認めた、こういう関係に相なるわけでありますか、どうなんですか。
  34. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本全体の平和と安定のためには、日米安保条約によりましてアメリカの核抑止力というものに依存しているわけでございますし、そうしてまた核抑止力ではなくて、もちろん通常兵器も含めたアメリカの抑止力というものもあるわけでございますから、今の三沢基地のF16等の存在もやはりアメリカのそうした抑止力に安保条約上依存しておる、こういうことでございます。
  35. 土井たか子

    土井委員 つまり、安保条約に依存をして安保条約の中でその抑止力ということを問題にしていくと、とどまるところを知らない軍拡論になる、軍拡そのものを認めることになるというのが、現実の問題としてはもう動かしがたい事実だと思うのです。アメリカソビエト両国が核軍縮、特に目に見えて核兵器を削減していくということをしない限りは、世界核保有国五カ国以外の核を持たない非核保有国が核の脅威から逃れることはできません。核の脅威から逃れるために、何らか行動を起こさなければならないときが来ているというふうに私は思うのですよ。外務大臣は、その点どうお思いになりますか。これは幾ら何でも、核の抑止力ばかりに頼っておったってだめなんです。
  36. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 核が世界から廃絶されるということは日本の理想ですし、世界の国民が一番求めておるところじゃないかと私は思います。日本は、そういう中で核実験の全面禁止を初めとしまして、軍縮会議等では核削減というものを強く主張しておりますし、全体的に見て現在の姿というものは、残念ながら核の抑止力によって平和が保たれておるわけですが、拡大した形の核均衡じゃなくて、縮小均衡といいますかそういう方向へ進みながら、最終的には核をなくしていくということでなければならない、こういうふうに思っておりますし、ジュネーブ会議等はそうした立場で米ソ両国会議を行っておるのじゃないか、またそうなければならない、こういうふうに私は思っておるわけです。
  37. 土井たか子

    土井委員 ねばならないという今の大臣の御答弁というのは、希望でしょう。希望的観測をただここで披瀝されたにすぎない。それを何万通繰り返し言われたって、現実がそうなるか、どうなるかということは何の保証もないですよ。現実の問題というのは、核軍拡が米ソ間において続けられているという現実なんです。事実はそれ以外に何もない。この核軍拡が続けられている限り、世界各地域に可能な限り非核地帯を設置していくという一つの構想があります。そのことは、核を持たない国を核から守るというところの安全保障だとも考えて、これに対して熱意を燃やしておるという地域が世界各地にあります。  そこで、まず基本的なことについて大臣にお尋ねするのですが、非核地帯が設置されるということは現在の核の均衡に変化が起こるという認識をお持ちになっていらっしゃるかどうか、この辺どうですか。
  38. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 それは、そういう考え方も世界の中であっていいんじゃないかと私は思います。やはり核が縮小していくということが大事なことですから、そういう一つ目的のために非核地帯が場合によっては推進されるということは、その地域として現実的にあり得てもいいんじゃないか。例えば、今のオーストラリアとかニュージーランドとかあの辺のところで、南太平洋地帯でもそういう非核地帯構想なんというのがあるわけでありまして、そんな問題も我々は検討の対象として考えなければならぬわけですが、そういうものを考えながらも、しかし実際には現在の米ソの核の均衡といいますか、そういうものによって残念ながら今のバランスがとられて、平和が保たれておるということは、基本的な前提としてやはり我我は見逃すことができないわけで、現実問題としてその辺に我々は一つの理想を求めながらも、現実的にはやはりいろいろな問題も抱え、またそれなりに悩みも抱えて、これから取り組んでいかなければならぬ問題じゃないか、こういうふうに私は思っております。
  39. 土井たか子

    土井委員 それは言うことは易しいのですけれども、核均衡論の中で核の脅威というのはどんどん増大していっているのです。核を持たない非核保有国からすると、この現実の問題に対しては、手をこまねいているわけにはいかないということがはっきり問われてきているのですね。我が国は、言うまでもなく非核三原則を国是といたしておりますし、それを内外に宣明してきているというふうに、当委員会でも質問をいたしますと今まで再々の御答弁であったわけです。そうすると大臣、これは我が国に関する限り、完全な非核武装地帯だというふうに言えると思いますが、どうですか。     〔委員長退席、野上委員長代理着席〕
  40. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 我が国に関する限りは、我が国自身非核三原則を守っておるわけですから、これはもう非核地帯であるということは明らかじゃないかと思いますね、現実的に。ただしかし、我が国の平和と安全というのは安保条約によってアメリカの核の傘のもとにあるということは、これは今の日本の安全のためにとられた政策でありますし、また措置であるということは否めない事実であります。
  41. 土井たか子

    土井委員 しきりに安保条約を強調されるのでありますけれども、しかしその安保条約があるとしても、先ほど明確に言われたとおり、我が国非核三原則を守っている、非核武装地帯であるという現実の問題があるわけです。そうすると、その非核三原則という立場、我が国非核武装地帯であるという立場からすると、アメリカの核艦船が寄港したり核を持ち込むという場合は、そういうことは一切許されないということが非常に強い問題として問われて、事前協議のことが常に問題になるわけであります。  もし、我が国に米核艦船が寄港することがある、核を持ち込むことがある、こういうことになってくると、言葉をかえて言うと、それ自身は核の均衡が崩れるということになるのですか。これは許されてないことなんです。なぜ許されてないかというふうなことは、核の均衡が保たれているということは一つ大事な問題だと言われた。日本アメリカが核を持ち込むということは核の均衡を崩すことになるのか、こういう質問を私は今しているのです。
  42. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、日本の国是として非核三原則があるのですから、それに基づいて我々は国家の政策を進めておるわけですし、そうした観点に立って安保条約というものも実行されるわけで、そのための事前協議制度というものがあるわけでありますから、核が持ち込まれるということはあり得ないわけですから、そういう議論というのは現実的でないように私は思います。
  43. 土井たか子

    土井委員 これはお伺いしていても、現実離れした答弁というのがきょうは相次いでいますから、聞けば聞くほど御答弁意味というのが、事実とだんだん遊離していっているという感じがしてならないのですけれども、それだけに大臣がおつらいお立場だというのもわかります。  ちょっとお伺いいたしますが、国会では非核地帯構想の推進決議というのを何回かやっているのですが、何回この決議をしているのか、御存じですか。
  44. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 ちょっと回数は、手元に資料がございませんので、早速調べさせていただきます。
  45. 土井たか子

    土井委員 余りこれを重視して考えておられないという姿勢がありありと出ているように思われます。  それでは、政府非核地帯構想について現在どういう考え方を持っていらっしゃるかというのをちょっと外務大臣にお伺いしますから、大臣、ひとつお答えくださいませんか。
  46. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、先ほども申し上げましたけれども、適切な条件というものがそろっている地域におきまして、その地域の国々の提唱によりまして非核地帯が設置されるということは核拡散防止という目的には資するものではないか、こういうふうに思っております。そういうことで、我が国としても、基本的に国連における非核地帯関係決議等にも賛成をしているわけでございます。
  47. 土井たか子

    土井委員 国連におけるそういう決議にも賛成ということを今言われているのですが、例のニュージーランドのロンギ政権の非核政策というものを見てまいりますと、今のロンギ政権のあの政策自身中身は、ニュージーランドは非核地帯であるということになると思うのです。これはいかがです。そのように理解してよろしいですね。
  48. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ロンギ首相もニュージーランドだけではなくて、あの辺一帯の非核構想というものを持っておられるように私はお話しして受けとめておるわけですが、そういう中で少なくとも自国ニュージーランドについては、ロンギ首相の背景であるところの労働党の基本的な主張に基づいて核艦船の入港を認めないということでありますから、これはニュージーランド自身は明らかに非核地帯にしたいという決意の表明であろうし、今それが実行されておる、こういうふうに私も見ております。
  49. 土井たか子

    土井委員 そうすると、いまだに非核地帯構想に対しての国会決議が何回だったかという御答弁は出てきていないのですが、実は日本国会で決議しているのは一回、二回じゃないですよ。そういう日本の立場からして、政府はニュージーランドのロンギ政権の非核政策を支持すべきである、これは当然のことだと思うのですが、外務大臣はどのように思われますか。
  50. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 支持するとか支持しないとかという問題とは別に、ニュージーランドが自分の国の主権において決定されたことでありますから、それはそれなりに日本としても理解をいたしておるわけです。
  51. 土井たか子

    土井委員 理解をするという表現も、また大変日本語としては都合のよい言葉なんですが、このニュージーランドの政策に対しては少なくとも好ましいと思われますね、どうですか。
  52. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 他国の政策でありますから、これが好ましいとか好ましくないというふうなことを今私が言う立場にはないわけでありますが、少なくとも現実の姿としてニュージーランドがそういう政策をとっておるということは日本としても認める、認めざるを得ないことは当然のことだと思います。
  53. 土井たか子

    土井委員 その認める認め方というのが問題なんですね。国会決議というのは、だてや格好づけのためにやっているわけではありませんで、切実にそのことに対して、国民の立場から考えるとどうしてもこれは大事であるということを全会一致で決めている決議ですから、あだやおろそかに考えてもらっては困るのです。しかも、政府はこの国会決議に縛られますね。政府はこれを遵守しなければならないという義務がありますね。そういうことからすると、現実にそういうロンギ政権の政策があるということに対しては理解をする、そしてそれが存在していることも認める、その理解と認め方というのは、これが果たす役割は非常にあるというふうな評価をして、認めるとか理解をするとかという格好に相なるわけだと私は思いますが、国会決議に縛られている内閣なんですから、そこのところ、意のあるところを大臣、ちょっともう一言言ってください。
  54. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本は、とにかくロンギさんのあの政策がニュージーランドの国会の合意を得て行われているということは、ニュージーランドの主権に基づくことですから、これは認めるも認めないもないのであります。ただ、ニュージーランドはANZUS条約とかそういうものに入っておりますし、そういう中でニュージーランドあるいはその周辺の安全と平和がどういうふうな形で進んでいくかということにつきましてはいろいろの議論もあるんじゃないか、私はこういうふうに思いますが、ニュージーランドのとられておる政策を我が国が云々する立場ではない、私はそういうふうに思っております。
  55. 土井たか子

    土井委員 これは国会決議を何回やったって、そして国会決議を受けた形で、当委員会ではそれを遵守する努力をいたしますということをはっきり今まで宮澤外務大臣当時も答えられておりますし、鈴木首相は第二回軍縮国連総会に出向かれるに当たりまして、国会決議に対してはこれを誠実に遵守する旨というのをるる述べておられるわけです。口先で幾ら言ったってだめなんですよね。どういうことをやるかが問われているんじゃないでしょうか。事こういう具体的なことを聞くといつも消極的で、何だかむにゃむにゃとわけがわからぬような答弁になってしまうんです。これでは何をやっていることか、さっぱりわけがわかりませんよ。  安倍外務大臣、少しここらあたりでこういう問題に対してきっぱりした姿勢で臨むことくらい考えていただきたいと思います、次期総裁候補なんですから。そういう点からすると、国民が安倍外務大臣というのはそれだけの値打ちがあるなということがわかるのは、こういうときの外務大臣姿勢だと私は思うのですね。どうですか。これはロンギ首相とそれぐらい話をするとか、あるいは日本国会決議からすると当然こういうロンギ政権の今の政策に対しては、単なる事実があるということを認めるだけではなくて、それに対して積極的な意味を評価するとか、表現は何でもいいですよ、少し意のあるところをちょっと言ってください。いかがです。
  56. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 とにかく、日本の理想とするところは核の廃絶でありますし、世界じゅうが非核地帯になればそれが一番結構な話ですから、そういう中で日本自身としてまず決然として非核三原則を守るということが大事ではないか、こういうふうに思っておるわけであります。     〔野上委員長代理退席、委員長着席〕
  57. 土井たか子

    土井委員 独善的と言われれば本当に独善的であって、そういう姿勢を持つ限りは、外国に対してもその姿勢を貫いて対応していくということが問われるであろうと思うのですね。そうすると、昨年の八月の第十五回南太平洋フォーラムで南太平洋の非核地帯を設置することが合意されまして、私もニュージーランド、オーストラリアに昨年の暮れに参りましたけれども、ことし条約案が提出されるということが向こうでの専らの話題でございました。政府は、条約案が提出されれば、これに対してどういうふうに対応することを考えておられますか。
  58. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も、ことし中曽根総理と訪問しましたとき、非核地帯構想というのがある、ロンギ首相なんかも非常に熱心に提唱されておるということを聞いておりますが、果たしてそういう合意がこの南太平洋地帯の国々の間にできるかどうかはこれから見守っていかなければならない、そういうふうに思っております。
  59. 土井たか子

    土井委員 できるかどうかを見守ることも必要ですけれども、予定どおりにいくと、これはことしできるんですよね。できることを予期して、努力をずっと積み重ねて今までこられたし、またそれを目指して、ことしは一踏ん張りも二踏ん張りもやるという意気に昨年の暮れは燃えておりました。昨年聞いた限りでは、八月にはこの条約案は具体化するということも聞かされているわけであります。したがって、そういうことに対して、政府とすればどういうふうに対応を考えられますかということをここで承りたいのです。
  60. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、南太平洋地帯の国々の考えによるものだろうと思います。オーストラリアも含まっておりまして、そういう国々の間で完全に合意ができれば、それはそれなりに日本としても具体的なそうした事実というものは、もう認めるにやぶさかでないわけですね。そういう国々の全会一致の合意によって非核地帯構想というものが実現するということは、それなりに日本としても認めることは当然のことだと思います。
  61. 土井たか子

    土井委員 ことしはさらに問題がございまして、ASEANの常設会議非核地帯設置について合意をさせていくということでずっと動いております。これに対して、基本的には政府ももちろん賛成でおありになるはずだと思いますが、いかがですか。
  62. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私はASEANの拡大外相会議に毎回出ておりますが、まだASEANでそうした非核地帯構想というのが現実化しているというふうには受けとめておりません。
  63. 土井たか子

    土井委員 私どもの察知している限りでは、これは大分具体的に動いていっておりますよ。だから、外務大臣、少しその点について、今様から紙を渡されているけれども、今の問題についてもし何かさらに御意見を述べられるのであれば、どうぞお聞かせをいただきたいと思います。
  64. 後藤利雄

    後藤(利)政府委員 ただいまの大臣の御答弁をちょっと補足させていただきます。  現実に非常に具体的には動いておりませんけれども、今先生指摘のようにかなり前からアジア平和中立自由地帯構想というのが出ておりまして、その中の一環として、東南アジア非核地帯構想というのはかなり前にマレーシアとかいうところから出されたことはございます。ただ、現実に、今大臣のお話にありましたように、具体的に最近これがどうであるかというような動きはございません。ただ、昔からそういうお話があることは事実でございます。
  65. 土井たか子

    土井委員 もちろん、そういう話が具体化されるということになってくると、大臣とされては賛意を表されますよね。いかがですか。
  66. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはもちろん、ASEANのそうした国々が自主的に決定をされることであって、そういうことが最終的に決定されるということになれば、これは我々もNPTに入っているわけですから、非核世界的に進んでいくということはそれはそれなりに評価できると思いますが、しかし、今の国際情勢あるいはアジアの情勢の中で、果たしてそういう構想が現実的に具体化するかどうかということについては、私もちょっと疑問を持っておりますし、なかなかそう簡単にはいかないのじゃないかと思います。
  67. 土井たか子

    土井委員 国際社会の動きというのは、順当に動いていって実を結ぶときもありますけれども、いろいろな条件というのが絡み合って、予期したよりも早くこういう問題は動くときもございます。したがいまして、今外務大臣がおっしゃったように、今ただいまのことを言うと、それに対しては今の御答弁の限りでしょうけれども、しかし政府とすれば、これに対しては評価をする方向で臨まれるというふうなことを私は御答弁の中で酌み取りまして、さらに次に参ります。  総理がインドに行かれて、インドで核軍縮を提唱されて、向こうで話し合いの中で合意をされたというのは新聞で読んで私は知っているのです。しかし、インドも国連で提案をされる、例えば三十七回も三十八回も国連総会の場合そうなのですけれども核兵器凍結の案件であるとか核不使用条約に対しての案件などに対して、日本は反対をしたり棄権をしたりしてまいっておりますよ。これはどういうわけです。
  68. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、ただ口先だけで非核であるとか核不使用であるとかいうことを言ったところで、検証というのが伴わなければ現実的なものになってないわけで、日本はそういう点で核不使用条約案等が提案されたときに、そうした検証措置というものが果たしてあるだろうか、具体的に、現実的にそういうものが実行される余地があるかどうかという観点から我々はいろいろと判断をいたしまして、反対をする場合もありますし、あるいは棄権をする場合もありますし、あるいはまた賛成をする場合もあるわけでありまして、それはそのときどきの、現実的なものであるか、実効的なものであるか、検証が伴っているかどうか、そういう面からこれに対して判断を加えているわけで、日本としては核を漸減していって、縮小していって、そして廃絶に持っていく。日本姿勢は不動ですから、日本はまずそのためには核実験の全面禁止というものを強く訴えて今日に至っておるわけであります。
  69. 土井たか子

    土井委員 検証の問題に入りますと、核実験についてもこれはつきまとう問題でありまして、それを言うとどういう決議にも、全部その理由において反対や棄権をしていかざるを得ないという格好になるのです。中には、賛成をしている問題も日本にはあるのですけれども核兵器の不使用条約なんかは一貫してこれは反対だった。こんなばかな話はないというので、例の第二回軍縮総会の機会を目前にして当外務委員会ではぎりぎり詰めまして、そして棄権から今度は賛成にまで一たん行ったのですが、賛成をするということから少し後退をしましてまた棄権という、あいまいなこういう姿勢なんです、日本の場合は。  どうして核兵器を使用しないということに対して、日本賛成はしかねるという態度をとってみたり棄権をしたりするのですか。どんどんこれは賛成国がふえて、反対をする国はどんどんなくなっていっているのですよ。世界でも唯一の被爆国だということで注目を浴びる日本が、この問題に対して非常にいいかげんなあいまいな態度だというのは、私は恐らく物笑いの種だろうと思います。噴飯物だと思いますよ。いかがですか、大臣
  70. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 核兵器が使用されてはならないというのは、当然なことだと思います。日本もそれを心から願っておるわけですが、政府としまして核不使用決議が述べている核不使用という約束につきましては、核兵器の削減といった具体的な軍縮措置、具体的な措置がない限り、実効性というものは先ほど申し上げましたように確保することができないし、こうした実効性についての保証のない単なる約束をすることは、やはり抑止力維持という点において、国際的な安全保障上問題があるというのが基本的な立場であります。  日本の今提案しております全面核実験禁止につきましても、これは全面禁止といっても理想的なものになっていくわけですから、やはり具体的な実効性というのはなければならぬし、あるいはまた検証組織がなければならぬということで、私は去年、今までの日本の政策を変更いたしまして、いわゆるステップ・バイ・ステップによるところの核実験禁止のための日本の提案をいたしたわけであります。
  71. 土井たか子

    土井委員 そのときにも、今と同じようにいろいろと、なぜ日本としては反対であったのかというふうないきさつを聞きましたが、聞けば聞くほどこれは奇怪な出来事であるということになって、賛成に反対から変わるということが答弁の中で一回出たのです。結局、賛成という立場を貫くことができないで棄権ということに相なってきたのですが、これはさらに一考を要する問題だと思いますよ。そういう保障措置がない限りは賛成できない。でも、賛成している国がどんどんふえてきているのが現実の問題です。核は使用しないということが、これはだれしも望むところでありますし、そうでなければ困るのであって、このことを日本が外国よりももっともっと強く率先して、こういう問題に対してはむしろ提唱すべき国であると思うわけです。外国の提唱に際して賛成どころか反対をやるに至っては、これはもう何をか言わんや、お話にも何もなったものではないというふうに私自身は考えておりますから、大臣のさらなる努力をここで要求をいたします。  さて、昭和五十七年七月二日の外務委員会で私は、原子力発電所に対しての通常兵器によるところの攻撃の防止に関して質問をいたしました。まず、ジュネーブ条約の追加議定書、これは御案内のとおり第一議定書と第二議定書の二つがあるわけですが、あの質問を私が昭和五十七年七月二日にいたしましてから後、我が国は署名をいたしておりますか、どうですか。まだであるならば、その理由はどういうことでありますか。いかがですか。
  72. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 ジュネーブ条約の追加議定書一、二につきましては、いまだ署名いたしておりません。ジュネーブ追加議定書全体につきまして、先生よく御承知と思いますが、採択の場合に、必ずしも作成交渉に参加いたしました国々の合意ができずに、表決に次ぐ表決という形で採択された経緯がございます。そのようなものが、果たして一般国際法になり得るかという疑念がございました。  ただ、最近の状況を少し申し上げますと、加盟国が徐々にふえてまいっております。ジュネーブ条約加盟国に比べますと、まだ非常に少ない数でございますが、第一議定書には四十五カ国程度、第二議定書には三十五カ国程度、こういう状況も踏まえて、この条約について日本としてどのように取り扱うべきか、真剣に検討させていただきたいと思っております。
  73. 土井たか子

    土井委員 真剣に検討ばかり続けておられる間に、何十年かたってしまうのです。そして、大分時間がたってからお伺いしても、まだ慎重に検討いたしておりますというのが慎重に検討の大体通常の姿なんですが、五十七年の七月二日に質問したときに、第二議定書の第十五条を私は引き合いに出しました。第二議定書の第十五条というところを見ますと、条文は、「危険な威力を内蔵する工作物又は施設、すなわち、ダム、堤防及び原子力発電所は、それらの物が軍事目標である場合でも、それに対する攻撃が危険な威力を放出せしめ且つその結果一般住民の間に重大な損失を生ぜしめる場合には、攻撃の対象にしてはならない。」というふうに規定しているわけですね。つまり、通常兵器による攻撃でも、原子力発電所を対象にして攻撃することはまかりならぬということをこの議定書の中では、はっきり規定をしているわけです。  そこで、この中身について具体的な一つの提案として、私は国連において日本が提案国となることを要望して、その当時外務大臣は櫻内外務大臣だったのですが、外務大臣は、発言の趣旨は全く同感である、したがってどのような具体的な貢献を日本としてなし得るか、積極的に検討すると答弁をされているのです。また、積極的検討という御答弁だったわけです。これは積極的検討なんですから、その後どういうふうな検討をされ、具体的にどういう行動をとられてきているか、ここではっきりさせていただきたいと思います。どうですか。
  74. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 原子力施設に対する攻撃を禁止するために何らかの国際的取り決めが必要ということ、先生がおっしゃるとおり、私どももそのように思っております。一九八二年の第二回の軍縮特別総会でこの点を触れたわけでございますが、先生お尋ねのその後の態度でございますが、一九八二年九月二日にジュネーブの軍縮委員会、当時まだ軍縮委員会と申しておりましたが、軍縮委員会に我が方は原子力施設攻撃禁止議定書案骨子という作業文書を提出いたしました。その趣旨は、国際原子力機関の保障措置の適用を受けている原子力施設を攻撃の禁止対象とするという趣旨を規定した四カ条の骨子でございますが、案を提案いたしました。  この作業文書は、現在のジュネーブの軍縮会議の放射性兵器禁止に関するアドホック委員会の枠組みの中で議論されることになっておりますが、ただまことに残念なことは、私どもがこの提案をいたしました後、まだその議論が入り口のところと申しますか、どういう趣旨でこういうことをやるのかというふうな議論があった程度で、まだ余り進展が見られておりません。ただ、この件は私ども非常に重要な案件と心得ておりまして、ジュネーブの放射性兵器禁止に関するアドホック委員会の中で、できるだけこれを推進するように努力してまいりたいと思っております。
  75. 土井たか子

    土井委員 それは、できる限り推進していきたいということを言われておりますが、ジュネーブで提案をされれば、なぜこういう提案をするかという入り口のところでの議論があったということも今答弁の中で出されているのですが、具体的事実を見ても、たしか一九八一年だったと思いますが、夏にイスラエルがイラクの原子炉を爆撃した事件がございましたね。それからまたことしになりまして、三月にイラクが、イランのブシェールに建設中の原子力プラントを爆撃したということも、ニュースでまだ真新しいところです。  いずれも、放射能漏れなどの被害は幸いにしてなかったものの、もしも稼働中の原子炉であるならば、放射能汚染なんかは当然のことながら、地域住民に与える影響ははかり知れない甚大なものだということを言わなければならないと思うのです。地域のみならず、広範に被害は及ぶということも考えねばなりません。そうすると、いかなる場合でも原子力施設に対する攻撃は行わないという国際的約束を行う必要は、こういう具体的な事例をまつまでもなく、ますます高まっているということも考えなければならないと私は思うのですが、大臣、どうお思いになりますか。
  76. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 おっしゃるように、そうした原子力施設を攻撃するということは、先ほどの政府委員答弁のように、国際的にこれをしないということで合意されなければならぬ。そして、その約束が守られなければならぬと思いますが、今お話しのような例は、これはただ、平和目的のための原子力施設であったかどうかということは我々よく承知しておりませんが、この原子力施設がいわゆる核兵器製造の方向へ向かっているんじゃないかというふうな疑いを持って、例えばイスラエルの攻撃になったとも言われておりますし、あるいはまたイラクの攻撃になったとも言われております。被害のほどは明らかでありませんけれども、幸いにいたしまして大きなものでなかったようにも聞いておるわけでございます。  こういうことは、それなりに理屈があってやったことでしょうけれども、そしてまた我々が一番恐れることは、原子力施設平和利用目的で建設されておるということなら、それはそれに対する攻撃の理由というものは全くないわけでありますから国際的に大きく批判されなければならぬわけですが、これが核兵器に使われるというふうなことになると、これはNPTとの問題もありますし、世界の平和との関係において、あるいは地域の平和というものにも致命的な影響を与えるわけでありますから、その辺のところは、我々としては解釈にはもちろん苦しむわけでありますけれども、しかし、当事国がどういうことでやったのかということはもっと調べてみる必要があるんじゃないか。  しかし全体的に見て、原子力施設に対しまして、特に平和施設というものに対して攻撃を行うということは、これは国際約束として遵守されなければならないし、その方向でお互いにこれが実行されるような保障措置が実現されることを念願しておりますし、日本もそうした方向で提案もいたしておるわけであります。
  77. 土井たか子

    土井委員 平和利用をされている限りは、これは平和施設というふうにみなさなければならないという繰り返し今の御答弁だったわけですが、しかし、平和利用をされていても、ある施設というのは原子力発電所であり原子炉なんですよ。これに対して一発の通常兵器で攻撃がなされると、一発の爆弾がここに落とされるとどういうことになるかということを考えることは非常に大切なんじゃないですか。平和利用している平和施設であるけれども、そこに落とされる爆弾、そこに撃ち込まれる一発の砲弾によって、核攻撃がなされたと同じような効果がその結果引き起こされるということは、考えなければならぬ話なんです。  したがって、原子力発電所並びに施設に対する攻撃を禁ずるというジュネーブ協定議定書があるわけであって、これはあくまでこの点に対しては私は、政府としては率先してジュネーブ条約、第二議定書の十五条の中身を具体的な措置として提案されるように再度要望するわけでありますが、これはよろしゅうございますね。さらに、これに対しては努力方を要求せざるを得ません。
  78. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 先生おっしゃいましたように、ジュネーブ議定書にありますのは発電所だけでございますが、先ほど申しました私どもがやっておりますのは、それを範囲を広げまして原子力施設全般についてにいたしたいと思います。この問題については、ジュネーブの軍縮会議で積極的に進展が図られるよう努力いたします。
  79. 土井たか子

    土井委員 どこまでもそれは、はっきりさせていただく必要が私はあると思います。  最後に、今回の国際原子力機関憲章第六条の改正中身というのは、中国の加盟というのが問題であります。特に、中国がIAEA理事国としての地位を占めるということが中身となっているわけですが、中国は核兵器保有国でもあります。今回のIAEA加盟するに至った理由、そしてNPTには加盟をしないという理由、その背景はどういうことなんですか。
  80. 松田慶文

    松田説明員 中国は従来よりNPTにつきましては、これが不平等条約であって、中国自身の考え方に合致しないという立場から、一貫して否定的な考えをとってまいりましたが、他方IAEAにつきましては、その実体が原子力平和利用を中核とするものでありまして、中国が現在進めております近代化計画の中でエネルギー事情改善のためには、諸外国の協力を必要とする実態が近年出てきたことを受けて、その協力推進するためにはかかる国際的な平和利用の枠組みに入る必要性を生じたという認識から、IAEA加盟してきたものと理解しております。
  81. 土井たか子

    土井委員 中国がIAEAの最先進理事国となるということについては、我が国政府はどういうふうに評価をされていますか。そして、IAEAの今後の活動について、これがどういう影響を与えていくと考えておられますか。
  82. 松田慶文

    松田説明員 中国の現在までの国内における原子力利用の実態から見て、国際的にそれが原子力先進国の立場にあるということは普遍的な認識でございまして、私ども日本政府としましても同様の認識を持っております。したがいまして、中国の加盟に伴い、原子力先進国の立場から理事国の議席を供与するということは当然に望ましいことであり、また、かかる措置はIAEAの普遍性の充実のためにも望ましいことと理解しております。
  83. 土井たか子

    土井委員 何だか、まだはっきりしない御答弁が続いたようでありますけれども、最後に、さっきの非核武装地帯構想について国会決議を何回やったか、もう調べがついたと思いますから、それを言ってもらって私の質問を終わります。
  84. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 私どもが当委員室に持ってきておりました資料の中からえり出したところでございますが、衆議院で三回、参議院で三回の決議と手元にございます。
  85. 土井たか子

    土井委員 終わります。
  86. 愛野興一郎

    愛野委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたしました。  ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  87. 愛野興一郎

    愛野委員長 速記を起こして。     ―――――――――――――
  88. 愛野興一郎

    愛野委員長 これより本件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  89. 愛野興一郎

    愛野委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  90. 愛野興一郎

    愛野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  91. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、千九百七十九年の海上における捜索及び救助に関する国際条約締結について承認を求めるの件、大西洋のまぐろ類保存のための国際条約締約国全権委員会議(千九百八十四年七月九日から十日までパリ)の最終文書に附属する議定書締結について承認を求めるの件及び北太平洋のおつとせいの保存に関する暫定条約改正する千九百八十四年の議定書締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中山正暉君。
  92. 中山正暉

    ○中山委員 今委員長から御提案になりました条約協定に対しまして、特に海難救助の問題について御質問を申し上げたいと思います。  私は、個人的なことを申して大変恐縮に存じますけれども、大久保武雄労働大臣のときに政務次官を務めたことがございます。田中内閣のときの大久保大臣のお話に、自分が海上保安庁の初代の長官であったというお話で、海上保安庁が設置された当時のいろいろなお話を聞きました。  まず、質問を申し上げる前に、長いその歴史の中で災害救助のためにいろいろと御活躍をなさり、そしてそのために殉職をされていかれたとうとい犠牲者に心から哀悼の意を表し、御冥福をお祈り申し上げて、質問に入りたい、かように存ずる次第でございます。  まず、この条約は、十五番目の国がこの条約批准することによってその一年後に発効するということでございますが、この条約日本加盟をいたしますことの意義をお伺いいたしたいと思います。
  93. 瀬崎克己

    ○瀬崎説明員 お答え申し上げます。  この海難救助に関する協定でございますが、今まで海難救助につきましては国際条約があったわけでございますけれども、その実施は主として主権国家が自国の制度として実施していたわけでございます。そこで、専門家の方々が、海域というのはつながっているわけでございますので、一カ国でやるということよりもむしろ国際的な協力体制を考えることが好ましいということで、この条約の審議が一九七一年の政府間海事協議機関で初めて提案されまして、その後五カ年間かけまして審議して条約ができたわけでございます。  先ほど申し上げましたように、国際協力ということが一つの大きな目的になっているわけでございますが、日本といたしましては、やはり四面を海洋に囲まれております大きな海洋国家でございます。そして、漁業と経済的な資源につきましても海洋に依存しているわけでございますが、この条約締結ということは、海難救助という条約の人道的な目的にかんがみて非常に重要であるということだけではなくて、捜索救助のために国際協力推進するという非常に大きな意義があるというふうに考えておるわけでございます。
  94. 中山正暉

    ○中山委員 おっしゃるとおり、日本というのは、この間総理もテレビのニュースの中で「我は海の子」という歌を歌っておられましたが、私ども四面海に囲まれた海洋国家、シーパワーと申しますか、ランドパワーを背景にいたしましたシーパワーの国家といたしまして、隣接国とのいろいろな問題があるわけでございますが、隣接国はこれにどういう対応の仕方をいたしておりますでしょうか。ソ連、中国、北朝鮮、韓国それからフィリピンの北側、千二百海里でございますとフィリピンの北からベトナムの北部までが含まれるように思います。そのあたり、隣接国の対応。日本加盟をいたしまして、その後ほかの国々はどういう対応をいたしてまいりますのか、その予測を伺いたいと思います。
  95. 瀬崎克己

    ○瀬崎説明員 外務省側から国会にお出しいたしました説明資料の中に、これまで締約国は十五カ国であるというふうにお書きしたわけでございますけれども、その後、最近事務局に照会いたしましたところ、一カ国ベルギーが加わっておりまして、現時点では十六カ国が締約国になっております。その点、訂正させていただきたいと思います。  それから日本の近接国でございますが、既に加盟、加入の手続を終えている国といたしましてはアメリカカナダがございます。  それから中国がこの条約に署名しているわけでございますが、今年中に批准のための手続を完了するということを既に国際会議において披瀝しておりまして、私どもといたしましては、中国は今年中にこの条約加盟のための手続をとるんではないかというふうに考えております。  それからいま一つの近接国のソ連でございますが、署名は終えておりますが、批准のための手続がどうなるのかということに対する照会に対しては、特に答えてございません。  それから韓国、フィリピン等につきましても意向を照会したわけでございますが、現時点では、その加盟をいつにするかということについては明確な説明は受けてないわけでございます。
  96. 中山正暉

    ○中山委員 この千二百海里という範囲、丸い地球をいろいろとその隣接区域を決定いたしておりますが、その責任の海難救助の範囲を決定をいたしました原則と申しますか、日本の場合には八百七十万平方キロ、国土の二十三倍という大変大きな範囲の責任が日本に課せられるようでございますが、その原則はどういうことになっておりますでしょうか。
  97. 岡田專治

    岡田政府委員 我が国がこの条約に入りましたときに、今お尋ねのございました捜索救助区域をどのように決めるかにつきましては、関係締約国と話し合いで決めていくことでございまして、現状のところまだ確定したものはないわけでございますけれども、実質的にはアメリカ・コーストガードとは、私ども救難担当官庁としていろいろと話し合いを進めておるわけでございます。  その中で、今おっしゃられました千二百海里という数字が出ておるわけでございますが、私どもといたしましては、現実にその付近で私どもの海難救助の実績がまずあるというようなこと。それからさらに、海上交通の実態から見まして、日本船舶及び日本に出入する外国船舶の交通が非常に多いというようなこと。さらに、私どもとコーストガードとの救助勢力の実態といいますか、そのようなことでありますとか、あるいは、例えて言えば、ホノルルにコーストガードの基地がございますけれども、私どもは最大の基地を、第三管区海上保安本部を横浜に置いておるわけでございます。非常に単純に言えば、ほぼ真ん中ぐらいがちょうど百六十五度ぐらいの線になるわけでございます。そういう意味合いにおきまして、おおむねその百六十五度ぐらいの線が私どもとコーストガードとの間において、いわゆる中部太平洋区域においてどの辺で線を引くかなということを考えるときに、まあまあ妥当な線なのではないだろうかと今事務的には思っておるところでございます。
  98. 中山正暉

    ○中山委員 海上保安庁の出しております白書なんかを見てみますと、日本の飛行機の足が短い、YS11のA型、五百海里しか飛べないということでございますが、そういうことになってきますと、その責任の範囲千二百海里というものを決められて、アメリカの対応の仕方とは全く実力の差があるわけでございますが、その辺についてのこれからの整備計画、特に海上保安庁の業務内容というのが海難救助のほかにもいろいろあるわけでございますが、それに対応してこれから海上保安庁には、五十二年の海洋二法の後の整備計画にまた上乗せしていろいろな負担がかかってくるわけでございますが、海上保安庁はその点についてどういうふうに見ておられますでしょうか。
  99. 岡田專治

    岡田政府委員 私どもといたしましては、今後かなり長距離の海難救助について国際的にも責務を負うということになりますと、やはり航空機と巡視船艇との組み合わせによる機動力のある救助体制を整備しなければならぬ、かように考えております。  私どものところで今一番足の長い航空機はYS11でございまして、これはいろいろ高度とかの条件にもよりますけれども、海難現場で二時間半ぐらいの捜索をすることを前提にしますと、大体五百海里というところが現在の能力の限界と言って差し支えないかと思っております。  足の長い航空機のことでございますけれども、広大な海域でございますので、アメリカのコーストガードはかなり足の長い航空機を有効に活用しております。私どもも、この必要性は十分認識しておるわけでございますが、一方ではヘリコプター搭載型の巡視船を中心とした海難救助体制も大変有効なものでございますので、両方相まって効果を十分期待できる、かように考えております。  したがいまして、私どもも今適正なる航空機について検討を進めるとともに、いろいろ制約要因もございますので、それらをあわせて考慮しながら航空機と巡視船、バランスのとれた整備を進めるように努力いたしたい、かように考えております。
  100. 中山正暉

    ○中山委員 外務大臣、きょう対米関係の経済摩擦の本部が設置されたということを伺っておりますが、いかがでございましょうか、日本では昭和四十七年でYS11の生産が停止されており、その上に日本では飛行機のことをしゃべるとどうも余りいいことにならないような事件が起こったりしておりますが、日本の場合は特に足の短い飛行機しかないわけでございますから、そういう千二百海里に適応する長距離の足を持ったものを外圧解消のため、アメリカとの経済摩擦解消のために、アメリカだけが対象ではありませんが、そういう飛行機を輸入されるようなお考えはございませんでしょうか。  この間アメリカの下院議員が参りましたときに、私は、アメリカが余り日本に無理を言うのもちょっとおかしいのではないか、私は沖縄に行くときにも北海道に行くときにも、ジャンボジェット機というアメリカの大きな飛行機に乗っているではありませんか、日本じゅうを飛び回るためにあなたの方のコンピューターを使っているではありませんか。その上、アメリカあたりに新婚旅行だとかツアーを組んでの団体旅行で行く。これなどは、いわゆる貿易外収支でございますから勘定に入っておりません。そのために日本の白浜なんか、旅館がどんどんつぶれたりしているわけでございます。  そんなことを思いますと、飛行機の問題というのは、特に救難という人道上の立場から、まだ余り実力もないのにこういうことに加盟するという決断を下しました以上は、行政改革、財政再建という大きな枠がはまっておりますけれども、大蔵省と交渉してひとつこれに適応するような足の長い外国の飛行機を――この条約の第一条で、国内体制をすべて整えてこれに万遺漏なきを期すというような考え方が書いてございます。外務大臣のその点のお考えを伺いたいと思います。
  101. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この条約加盟をすれば、それだけ日本の国際的な責任も重くなると思います。海難救助等で各国との間の協力をして、日本の責任を果たしていかなければならぬ。今おっしゃるように、日米間で協力する場合は、アメリカは足の長い飛行機を持っているけれども日本は非常に足が短いということでは、十分な協力体制もできないわけでありますから、条約を忠実に実行していく、日本の国際的責任を果たすという意味においても、そうした飛行機等について体制を整え、充実するということは私も必要だと思います。  海上保安庁が、これからそうした面で充実を図っていくと思いますが、外務省としてもそうした国際責任を果たすという意味からも、そうした努力をするに当たっては我々も協力するにやぶさかではございませんし、飛行機につきましては、ただそうした海難救助というだけではなくて、例えばイランのああいうような事件でテヘランから日本人が急遽避難をしなければならぬというようなときは、日本政府自体が飛行機を持っておればかなり機動的に脱出を助けることができるわけです。海難救助とともに、日本のそうした危機管理体制といいますかそういうものを推進する上においても、もっと国際的な国家としての日本の体制を充実しなければならぬ、そういうふうに思っております。  財政が甚だ厳しいですから、そう簡単にはいかないと思いますけれども、今の国際摩擦の面もありますし、私もひとつ努力してみたいと思います。これを一つのお考えとして政府・与党の会議にも出してみたい、こういうふうに思っております。
  102. 中山正暉

    ○中山委員 ありがとうございました。  私どもは、F15イーグルという戦闘機もアメリカから買っている。アメリカで買うと、正確な値段は覚えておりませんが七十億ぐらい、日本が買いますと百三十数億、いわゆる研究開発費ということで知恵に金を出しておるわけですから、貿易摩擦解消に大変意義があると思いますので、今申し上げたわけでございます。  海上保安庁に伺いたいと思います。  この間も奄美の方で、追突をされたという事故がありました。そのテレビのニュースを聞いておりますと、海上での当て逃げというのが昨年度だけでも八十八件起こっておるということを言っておりましたが、海難というのは年間どのくらいの数で起こっておりますでしょうか。
  103. 草薙博文

    ○草薙説明員 我が国周辺で発生しておる海難は年間約二千件で、昨年は千九百二十件発生しております。
  104. 中山正暉

    ○中山委員 どこの国のが何隻ということがわかっておりましたら、ちょっと伺いたいと思います。
  105. 草薙博文

    ○草薙説明員 昨年の海難の発生件数から見ますと、日本船が千七百七十四隻ですから、外国船は約二百隻ということになります。正確には韓国船が五十六隻、パナマ船が二十八隻、中国船が二十三隻、リベリア船が七隻、その他となっております。
  106. 中山正暉

    ○中山委員 海難で外国の船を救助した後は、その外国との間でどういう処理がなされるのか、その内容について、例えば費用の問題などはどうなっておるのか。
  107. 草薙博文

    ○草薙説明員 海上保安庁が救助した海難については、日本船であろうと外国船であろうと、救助費用は取っておりません。
  108. 中山正暉

    ○中山委員 千二百海里に延びますのに経済水域というのが二百海里、沿岸水域と捜索救助区域というのはどんなふうに分かれているのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  109. 岡田專治

    岡田政府委員 海上保安庁は、庁法によりまして、我が国の沿岸水域における諸種の任務を遂行しておるところでございますが、この沿岸水域の考え方につきましては、海上交通の実態とか、そういうような面からある程度可動的なものと考えておりまして、中部太平洋あるいは赤道の付近に至るまで私どもの庁法上の業務を執行する意味では沿岸水域と、かなり広範囲に考えておるところでございます。  おっしゃいました捜索救助区域の方は、これから外国との話し合いで決まるところでございますので、いわばそれの内側の概念になることが通常多いのではないだろうかと思っております。
  110. 中山正暉

    ○中山委員 外国の救助隊が我が国に入ってまいる場合、特にソ連の潜水艦が沖縄の沖で突然浮上してまいったり、いろいろなことがあるわけでございますが、外国の軍艦の事故があった場合、日本の中に外国の軍隊ないしは外国の救助艦艇が入ってくるようなときには、どういう話し合いをするのでしょうか。
  111. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 この条約は軍艦の適用を特に除外しておりませんので、軍艦の遭難の場合にも、通常の船舶の場合と同様の扱いになると考えて差し支えないと存じます。
  112. 中山正暉

    ○中山委員 ということは、外国の艦艇に対して、向こうからの要請があれば日本が救助に赴くということですか。
  113. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 そのとおりでございます。
  114. 中山正暉

    ○中山委員 日本の周りで、私もこの日曜日に大阪港に入りました「かとり」という自衛艦に呼ばれて行ったわけでございます。そうしましたら、すぐ横にソ連の客船が着いている。そしてまた、その翌日には北朝鮮の船が入っているという、非常に異様な感じがしたわけであります。北朝鮮の船が、どうして国交がないのに日本に入っているのだろうという奇異な感じがしたわけでございますが、今申しましたような国交のない国家との船の出入りについては、どういう申し合わせがあるのでしょうか。
  115. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 御質問の趣旨を十分理解していないかもしれませんが、国交のない国との間で船の出入りについて、特別にあらかじめ取り決めているということではございません。一般論といたしまして、外国船舶は、我が国の領海に入ってまいりますときは、これは無害通航という入り方がございますが、それであれば何も沿岸国の事前の了解というのは必要ないわけでございます。  他方、港に入ってまいります場合には、これは当然沿岸当局の許可が要るわけでございますが、その際に、日米間の条約に基づきます入港の場合のようにあらかじめ合意がない場合、国交のある国とない国との間で特別の差異があるというふうには考えておりません。
  116. 中山正暉

    ○中山委員 例えば日本では、領海法には罰則がないということを伺っておりますので、そういう法律の外国との差異も伺ったわけでございます。
  117. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 諸外国がどのような罰則規定を持っているかという点につきまして、ただいま手持ちの資料がございませんので、後日調べたいと思っております。
  118. 中山正暉

    ○中山委員 その辺が私、大変気になるところでございまして、海上保安庁の諸資料を見ていますと、日本の領海内で不審船というものが考えられているわけでございます。海上保安庁の業務というのは、領海警備、外国漁船の取り締まり、国際捜索救助体制、海上紛争にかかわる警備、この四つだということでございますが、不審船、例えばこの間もフランスの調査船がフィリピン海溝あたりを調査いたしましたり、そういうことがあるわけでございますが、領海内に入ります。そういうものに対する、もし不審船が違法行動を起こしました場合、特に日本の海上保安庁は武器を携行していない、機関砲のようなものしか持っていないと思いますが、例えば海上保安庁の警備態勢に対する抵抗があったような場合にはどういう対応をなさるのか、伺ってみたいと思います。
  119. 西山知範

    西山説明員 日本海沿岸では、諜報活動を目的とした工作船を密出入国させるために、日本漁船に偽装して夜蔭に乗じて行動する国籍不明の高速小型船がおります。これらを我々不審船と呼んでおりまして、これらが出没する可能性の高い海域に、特に日本海でございますが、重点を置いて巡視船艇、航空機により警戒に当たっております。
  120. 中山正暉

    ○中山委員 先般もあるところから情報をいただきましたら、小名浜に寄るソ連の船、二十三回来ております中で、十六回は魚のにおいがしない船があったというようなことも聞くわけでございます。その意味で、この新しい範囲の広がった海域に対しまして日本が万全の措置をしていただきたいと思うのですが、最初に申しましたように、五百海里以上、足の長い飛行機がないときには当然自衛隊に協力を要請されると思うのですが、自衛隊と海上保安庁のそういう要請関係、どういう連係動作をとられるのか、その辺を伺いたいと思います。
  121. 辻宏邦

    ○辻説明員 お答えいたします。  自衛隊と当庁との関係につきましては、海難救助の関係につきましては通常密接な連絡をとっておりまして、災害派遣の必要のある場合には、長距離の航空機等、災害派遣の要請をいたしまして、必要なときに飛行機を飛ばしていただいております。
  122. 中山正暉

    ○中山委員 時間がありませんので……。  これからは海の時代だと思います。その意味で、最近ニュージーランドのロンギという総理大臣アメリカの核艦船の寄港に反対をするということが話題になっておりましたが、これから私が大変気になりますのは、そのロンギ首相の議論を聞いても、いわゆる南極条約というのは一九九〇年までしかございません。この間アルゼンチンの紛争が起こりました際にも、アルゼンチンの向かい側、南極のパーマー半島の間の海域を押さえられると、パナマ運河が爆破された場合にはあそこしか通るところがない。そこで、サッチャー夫人が五千億円の金をかけたフォークランド紛争というのは、南極大陸とアルゼンチンの間の海峡を確保するためであったという説があります。  もう一つは、アルゼンチンの沿岸を封鎖したのは、ブンゲ・アンド・ボーンというアルゼンチンにある会社、不思議なことにアメリカの多国籍企業でございますが、これがフォークランド紛争でソビエトに小麦を輸出した、アルゼンチンから三五%のプレミアムをつけてソ連に小麦を輸出したのを、海上で封鎖する目的があったということも聞いております。  これから、南極が大変世界の焦点になってくるようであります。北極海は氷で閉ざされております。アルゼンチンの問題もさることながら、ニュージーランドと南極大陸の間の海というのが、これから地政学的に大きな価値を持ってくると思います。この条約日本でも論議されるときに、いわゆるシーレーン問題と絡まれていろいろな問題が、野党の方々の御質問にもこれから出てくるのではないかと予測するわけでございます。その意味で、いろいろな海面の割り振りを決める意味を私は最初に伺ったわけでございますが、この際その象徴として南極大陸の周辺の海というのが大きな戦略的価値を持つと同時に、この条約の中に含まれたいろいろな意味にも関連をしてくると存じますので、その辺のことをもし外務大臣からお答えがいただければお伺いをいたしまして、私どもは海に対する新たな時代に入ったという認識を持ちつつ、大変短い時間でございましたが、質問を終わりたいと思います。
  123. 松田慶文

    松田説明員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり南極条約は一九六一年に発効しておりまして、一九九一年にその三十年目を迎えます。ただし、条約それ自身には期限の定めがございませんで、無期限条約となっております。十二条二項(a)で、三十年後に協議国が集まってこの条約の運用を協議すべしと規定しております。したがいまして、一九九一年には協議国十六カ国が集まりましてこの条約のその後のことを定めるわけでございますが、現状ではこの南緯六十度以南をカバーする条約実態、すなわち軍事利用の禁止、領土権の凍結、そして科学調査の促進という実効ある内容をどの国も支持しておりまして、現状では三十年の協議以降もそのまま継続するというのが大方の雰囲気でございます。ただ、まだあと五年もございますので、具体的な協議を始めるのは大分先かと思いますけれども、御懸念のようにこの条約がなくなって、現在安定的に進められておりますレジームに問題が生じるという事態はないものと考えております。
  124. 中山正暉

    ○中山委員 そういうことでございますなれば、これから日本が南極問題に対応するとき特に気になりますのは、南極という大きな大陸の八カ所、全方向にソ連が自分の基地を持っておるようでございますので、外務大臣、南極に対してひとつ日本としても対応の仕方を協議しておいていただきたいとお願いいたしまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  125. 愛野興一郎

    愛野委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十四分休憩      ――――◇―――――     午後二時五分開議
  126. 愛野興一郎

    愛野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。日野市朗君。
  127. 日野市朗

    日野委員 きょうは外務委員会まで出張させていただきました。余りこの委員会の雰囲気にもなれておりませんが、よろしくお願いいたします。  このSAR条約でございますね、この条約そのものを見ますと これは海に囲まれている我が国としては、こういう条約にはイの一番に加入国となるという努力をすべきであったろうと思うのでございますが、かなりおくれたようでございます。特にそのおくれた理由として、この条約によって我が国が担当する海域が余りにも広大であるということもその一つの原因であったというふうにも伝えられておりますが、外務省の御見解としてはこのおくれた理由は何であったのか。それから、いわゆる広大な管轄海域でございますね、これが余りにも広大だったということを言う人もいるようでありますが、この点についてのお考えはいかがでございましょう。
  128. 瀬崎克己

    ○瀬崎説明員 お答え申し上げます。  この条約は、一九七一年に条約の必要性を認めまして、専門家グループを開催して作成しようという話がまとまりまして、七三年から七八年にかけまして五年間いろいろ審議の結果、七九年に五十一カ国が集まりまして条約を採択したわけでございます。その後数年たったわけでございますが、この条約の発効の要件となっておりますのは、十五カ国が加入した後に、加入して一年後ということが定められておりまして、各国ともいろいろ国内の法制であるとかほかの国の出方とか、特に近隣諸国と二国間の条約を結ぶことになっておりますので、そういった近隣諸国の動向等見きわめていたわけでございます。  日本も同じようなことでございまして、国内法との整合性、それから国内体制の整備、各国の出方等見きわめておりましたところ、昨年の六月に十五番目の国が批准書を寄託いたしまして、本年の六月二十二日に発効するということが明確になったこともございまして、今国会にお諮りいただくことになったわけでございます。  それから、広域であるからという問題につきましては、私どもは海上保安庁から実態的には特に障害はなかったということを聞いておりましたので、この点はこの条約批准の手続を進めるのがおくれた理由とは考えておりません。
  129. 日野市朗

    日野委員 この管轄海域でございますが、これは中国、ソ連、こういった国々が加入することによって変更され得るのかどうかという点はいかがでございましょう。
  130. 瀬崎克己

    ○瀬崎説明員 この条約の附属書の2の1の4というところに、「捜索救助区域は、関係締約国間の合意により設定しなければならない。」ということがございまして、この締約国になった国と国との間でこの区域を定めることになっております。  そこで、今まで日本の近接国で加盟しておりますのはカナダアメリカ。それから、先生の御指摘ございました中国等につきましては私どもいろいろ情報を集めておりますけれども、中国につきましては今年じゅうに批准の手続を進めるというふうに聞いております。それからソ連は、条約に署名はいたしておりますけれども批准のめどについては特に明らかになっていないようでございます。それからあと、日本の近隣国でございます韓国、フィリピンにつきましては、特に現時点でこの条約加盟するかどうかについては、つまびらかになっておりません。
  131. 日野市朗

    日野委員 私が伺いたいのは、現在のこの管轄海域というのは、アメリカカナダが加入したという状況のもとで定められているわけでございますね。ほかの国が加入した場合、ソ連とか中国、それらが加入した場合、この海域が変更され得るかということでございます。
  132. 瀬崎克己

    ○瀬崎説明員 先ほど御説明いたしましたとおり、この条約に加入した後にその区域を設定する話し合いをするわけでございます。したがいまして、今これから日本は入る手続をお諮りしているわけでございますけれども、入った後に、既に入っております例えばアメリカと話し合うというようなことになるわけでございますが、例えばソ連につきましては、現時点でいつこの条約に加入するかということははっきりしてないわけでございまして、今後の検討課題ということでございます。
  133. 日野市朗

    日野委員 日本アメリカで話し合いの結果、この海域を設定したということでよろしゅうございますね。
  134. 瀬崎克己

    ○瀬崎説明員 日本の近隣国といたしましては、アメリカカナダ、それからソ連、韓国、中国、フィリピン等が考えられるわけでございますが、現時点では少なくともアメリカが加入しているということでございますので、今後アメリカとどのような話し合いをするかということでございます。
  135. 日野市朗

    日野委員 じゃ、次に海上保安庁に伺いますが、外務省からの説明によると、保安庁側は、この海域は広いけれどもこれは十分にカバーできるのだというふうに考えておられるということですが、それでよろしゅうございますか。
  136. 岡田專治

    岡田政府委員 先生が今おっしゃられました千二百海里というような海域の近辺で考えてみますと、私どもが昭和五十五年の一月から五十九年の四月までの数字でございますが、大体五百海里から千二百海里前後、多少ぶれがありますが、そこで約三十二件の海難について直接または間接にタッチしております。
  137. 日野市朗

    日野委員 それで、現在の海上保安庁における諸装備でございますね、これについては細かく一つ一つ伺いません。海上保安庁で出しておられる、海上保安庁広報室発行の「海上保安庁」、副題でありましょうか、これに「マリタイム・セーフティー・エージェンシー」こう書いてある冊子がございますね、これによって一応質問をさしていただきますが、これの「新海洋秩序時代への対応」、(2)として「広域哨戒体制及び海洋情報システムの整備」というページがございますが、ここに図示されているとおりであるというふうに伺ってよろしゅうございますね。
  138. 岡田專治

    岡田政府委員 この図の解説にございますように、現実にあるものと、それから私どもとして希望といいますか、計画といいましょうか、まだ実現はしておりませんが、このように進みたいものだと考えておるものとを両方含めている意味では、このとおりでございます。     〔委員長退席、野上委員長代理着席〕
  139. 日野市朗

    日野委員 この図によりますと、希望はしているがまだ備わっていないというものは、白塗りの図形で表示されておりますが、これはいつごろまでを目途にした装備の計画でございましょう。
  140. 岡田專治

    岡田政府委員 私どもとしては、できる限り早期にということは考えておりますが、明確に具体的な年次を設定しておるわけではございません。
  141. 日野市朗

    日野委員 そこで、これらの、特に船を見てみますと、これらの船には全部、二隻を除いて、具体的に言えば「おじか」「のじま」という旧定点観測船であったもの以外は、全部銃器類の装備がございますね。それで大体、銃器類は四十ミリ機関砲及び二十ミリ機銃、こういうものが警備救難業務用船には装備されている。それから、ヘリコプターを二機搭載する型の巡視船には、三十五ミリ機関砲それから二十ミリ機銃、これが装備してございますね。
  142. 茅根滋男

    ○茅根説明員 御指摘のとおりでございます。海上保安庁では、治安の維持というようなことを任務にしておりますので、業務遂行上のため武器を装備することにしておりますけれども対象が海上における船舶というようなことで、威嚇砲火というようなこともございまして、機銃といたしましては十三ミリそれから二十ミリ、それから他といたしましては四十ミリ機関砲、三十五ミリ機関砲というものをそれぞれ、全然持っていない船もございますけれども、二門ないし一門装備しております。実際使用したことは残念ながらといいますか、幸いにいたしまして、ございません。
  143. 日野市朗

    日野委員 これは銃器類ですが、これについての訓練はどのようにいたしておりますか。
  144. 茅根滋男

    ○茅根説明員 年に二回ないし三回、実際に実弾を撃つ訓練をしておりますけれども、何せ、予算の関係がございますので、一分間に五百発も出るような銃で、一回に八発というような大変少ない弾薬でございますけれども、訓練はいたしております。
  145. 日野市朗

    日野委員 これらの銃器類ですね、これの装備をしているわけでありますが、その根拠となる法規、それは何によるものでございましょうか。
  146. 岡田專治

    岡田政府委員 私どもとしましては、いわゆる機銃につきましては、海上保安庁法第四条で規定しております、「海上における治安を維持し、」云々とございますけれども、そのために適当な設備を有する船舶でなければならないという、海上保安庁法の四条の規定を根拠としております。また、けん銃も持っておるわけでございますが、これにつきましては十九条によって、私ども根拠があるものと考えております。
  147. 日野市朗

    日野委員 海上保安庁法第四条の規定によりますと、海上保安庁の船舶――航空機も書いてありますが、それは除きましょう。船舶は、「航路標識を維持し、水路測量及び海象観測を行い、海上における治安を維持し、遭難船員に援助を与え、又は海難に際し人命及び財産を保護するのに適当な構造、設備及び性能を有する船舶及び航空機でなければならない。」こういう規定になっておりますですね。  これはどうも、そのまま読みますと、これは船舶の構造のように読めます。銃器等は、これは船舶とは別のものではないか。それが船体に固定されていたにしても、これは船体本体とは別個のものではないか。そうすると、第四条をもってそのような武器を装備することはいかがなものか、このようにも読めるのですが。
  148. 岡田專治

    岡田政府委員 私どものその点についての解釈といたしましては、これまで一貫いたしまして、先生のおっしゃいました機銃につきましては船舶に固着されております設備の一つである、かように考えておる次第でございます。
  149. 日野市朗

    日野委員 もちろんそう読まなければ、機関砲、機銃等を搭載するということはできないわけでございますね。  それでは、この十九条を見てみますと、保安官等は「その職務を行うため、武器を携帯することができる。」こういうように書いてある。ここに言う「武器」というのは、いわゆる小火器、けん銃、小銃、こういったものというふうに読んでよろしいのでございましょうね。
  150. 岡田專治

    岡田政府委員 そのような解釈と考えております。
  151. 日野市朗

    日野委員 ところで、保安庁法によりまして、海上保安庁は、武器は武器とはっきり言うわけですね。そして二十条には、武器を使用する際の条文が書いてあるわけですね。これによると、「警察官職務執行法第七条を準用する。」ことになっております。ここに明らかに「武器」と書いてある。こういう条文の書き方からすると、この二十条は、十九条を受けて「武器の使用」、こういうふうに書いてあるように読めるわけですが、第二十条に言う「武器」、これには機関砲それから機銃、いわゆる皆さんが船と一体をなすものである、こういうふうに解釈されるそれらの武器も含むのですか。どうでしょう。
  152. 岡田專治

    岡田政府委員 私どもは、含むと考えております。
  153. 日野市朗

    日野委員 警職法に言う「武器」というのは、警察の武器は小銃、けん銃、そういったたぐいのものでありまして、大砲のようなものは本来予想されていないのですが、その点、矛盾を感じませんか。
  154. 岡田專治

    岡田政府委員 海上保安庁の船艇に固着されております機銃は、確かにけん銃あるいは小銃等に比べますと一つの大型のものでございまして、かつ船舶に固着されておるという特性を持っておるわけでございます。したがいまして、私どもも、本庁法二十条によりまして、武器の使用については警察官職務執行法の七条を準用し、この精神に基づいて使用するというふうになっておるわけでございますけれども、我が方の船艇は、海上におきまして多様な種類の違法、虞犯性のある船舶と遭遇するわけでございますので、理論的には、この警察官職務執行法七条の規定を準用して、当該機銃等を使用する場合も皆無ではない、かように考えております。
  155. 日野市朗

    日野委員 巡視船等に搭載してある設備について若干伺います。  いわゆるソナーは搭載いたしておりますか。
  156. 茅根滋男

    ○茅根説明員 ソナーを持っております巡視船は一隻もございません。
  157. 日野市朗

    日野委員 レーダーは必須のものとして常に積んでございますね。そのほかに、海中を探索するような設備としてどんなものを備えでございますか。
  158. 茅根滋男

    ○茅根説明員 いわゆる航海計器の一種でエコーサウンダーというのがございまして、音波を出しまして海底の深さとか障害物なんか簡単なものはわかるようになっておりまして、ほとんどの商船、漁船等は持っております。漁船なんかは、魚探というようなものも持っております。そういうものは、全巡視船はほとんど持っております。その他、水中のものを何か捜せるものというのは、巡視船では特に持っておりません。
  159. 日野市朗

    日野委員 音波等によって海底の模様を知る。つまりこれは救援活動、救助活動などの際には、いわゆる沈船などを捜索するということに用いる非常に有効な設備でございますね。
  160. 茅根滋男

    ○茅根説明員 実は、五十七年の予算要求当時に、今持っております普通のエコーサウンダーを若干改良いたしまして、超音波を、水深五百メーターぐらいのところまでならばある程度沈船等の形状まで出てくるようなものを、海難救助というような面からも積みたいということで予算要求した経緯はございます。しかしながら、当時の財政事情でぜいたくだということになったのかもしれませんけれども、約千九百万程度の要求をしたわけですが、認められませんで、それ以降は要求をしておりません。
  161. 日野市朗

    日野委員 エコーサウンダーというのだそうですが、そこまではまだ持っていない、こういうこととして伺っておきます。  ところで、ソナーというのは非常に広い概念だそうでございますね、概念といいますか、ソナーと呼ばれる機械というのは、いろいろな種類があるのだそうでございますね。
  162. 茅根滋男

    ○茅根説明員 私ども、ソナーを特に研究しておるわけではございませんけれども、自分自身が船乗りで、巡視船に乗っておりました関係上そのようなことを勉強したことはございますけれども、大きく分けまして二種類あるのだそうでございます。いわゆるパッシブ型というのとアクティブ型と申しまして、要するにアクティブというのは、自分の方から音波を出して、そのはね返った速度によって、返ってくる時間によっていろいろな形のものが出てくるというのと、自分の方の船の音を小さくして、ひたすら相手の発する音を聞くということで向こう側のものを捜すという、要するに音波を利用して物を捜すというものを広くソナーというふうに言う、私、船に乗っておりますときに勉強したわけでございます。
  163. 日野市朗

    日野委員 今海上保安庁が持っているのは、こちらから音を発してそれが返ってくるのを待つという形ですか、それだけですか。
  164. 茅根滋男

    ○茅根説明員 そのとおりでございます。
  165. 日野市朗

    日野委員 昭和五十六年にアメリカのコロラド州のアスペンというところで、アスペン・日米関係セミナーというのがあったそうでございます。これはフジサンケイグループが日米両国の政財界、学者などの指導者層を集めて開いたものだというふうに言われておりますが、ここで、大型巡視船を日本はつくって、これにソナーを装備しようという構想があるとして、これは日本側から示されたというふうに報ぜられておりますが、このことについては御存じですか。
  166. 茅根滋男

    ○茅根説明員 ただいまの件は、ヘリコプター搭載型の巡視船に先ほど申しましたアクティブ型のエコーサウンダーの一種の開発型のものを積もうとして、五十七年に予算要求をいたしましたときに、これが当時の朝日新聞等に大きく載ったことがございます。恐らくその辺が英訳されて、向こうの新聞に伝わったのではないかと想像するわけでございますけれども、正確なところは承知しておりません。
  167. 日野市朗

    日野委員 その記事の解説によりますと、今審議している条約ですよ、海上遭難救援に関する国際条約、これに署名をして、そしてこの条約に基づいて行動をする巡視船にソナーを装備しよう、そのことによってアメリカからのシーレーン防衛計画等の圧力にこたえていこうというような発想があったらしいのですが、大体このような発想そのものについて、これは何か運輸大臣の発想だ、当時の運輸大臣の構想であったというふうにも述べられておるのですが、こういう問題についての御検討はなさったのでございましょうか。
  168. 岡田專治

    岡田政府委員 私どもが知る限りにおきましては、海上保安庁及び運輸省としてそのような発想を行ったことはございません。
  169. 日野市朗

    日野委員 海上保安庁としても、いわゆるシーレーン構想というものに対しては、自分たちも積極的に役目を担おうとしたようなことがあったのじゃございませんか。
  170. 岡田專治

    岡田政府委員 私どもは、このSAR条約につきましては、あくまでも海上における遭難者の迅速な救助ということを目的としたシステムづくりというふうに考えておりまして、いわゆるシーレーン防衛というようなことと関係づけて考えていることは毛頭ございません。
  171. 日野市朗

    日野委員 ここに海上保安の現況がございます。これは白書でございますね。これの昭和五十七年八月を見てみますと、その十六ページにこんなことが書いてあるのですよ。「国際的な協力・連携の強化の動きのなかで、我が国の海上輸送ルートの航行安全確保に大きく寄与する捜索救難体制の確立を図る」、こういうことが書いてあるのでございますが、これはいわゆるシーレーン構想と大分かぶさり合うような書き方ではないのかなというふうに思います。これは抑えて書いてございますよ。救難捜索ということを前面には出しておられるけれども、その当時から喧伝されてきたシーレーン防衛構想、これとかなり大きくかぶさり合うような、交錯するといいますか、そういうものにどうも読めてしようがないのですが、どうでしょう。
  172. 岡田專治

    岡田政府委員 私どもは終始一貫いたしまして、海上交通の安全の確保、積極及び消極二つの意味があると思いますけれども、常にそういう観点から、この海上捜索救助体制の充実及びこの条約への加盟という問題に取り組んでおるところでございます。
  173. 日野市朗

    日野委員 それでは、今度は海上保安庁と自衛隊との関係について、ちょっと組織的なことについて伺いますが、まず海上保安庁法の二十七条に共助の規定がございますね。「海上保安庁及び警察行政庁、税関その他の関係行政庁は、連絡を保たなければならず、又、犯罪の予防若しくは鎮圧又は犯人の捜査及び逮捕のため必要があると認めるときは、相互に協議し、且つ、関係職員の派遣その他必要な協力を求めることができる。」この規定の中には当然防衛庁との共助関係、これも入ると解すべきでございましょうね。
  174. 岡田專治

    岡田政府委員 条文にございますとおり、相互に協議を行い、協力をし合うように考えております。
  175. 日野市朗

    日野委員 さらに、今度は自衛隊法を見てみましょう。  自衛隊法の第八十条によりますと、自衛隊法の七十六条第一項または七十八条第一項の規定による自衛隊の出動命令があった場合、保安庁の全部または一部、これは内閣総理大臣の指揮下に入ることになりますね。こういうような場合は、完全に指揮下に入ったら、これは海上保安庁そのものも総理大臣の指揮下に入った軍隊の一部として行動することになる、そういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  176. 岡田專治

    岡田政府委員 おっしゃいますように、一定の要件下におきましては、内閣総理大臣が特に必要と認めるときには、我が海上保安庁が防衛庁長官の指揮下に入るわけでございますけれども、しかしこの場合におきましても、海上保安庁法二十五条の規定にございますように、軍隊の機能を私どもは営むことはできませんので、したがいまして、そういうような規定の許される範囲内におきまして、海上における人命、財産の保護、犯罪の取り締まり等の業務を行うというふうに考えております。
  177. 日野市朗

    日野委員 確かに、海上保安庁法によりますと、これはどんな意味でも軍隊ではないのだ、軍隊として読んではいかぬのだ、こう書いてあるわけで、私も全くそのとおりでなければならないと思いますから、あえて心配しながら聞いているのですよ。  さらに、自衛隊法の百一条を見ますと、自衛隊と海上保安庁等は「相互に常に緊密な連絡を保たなければならない。」となっているわけですね。そして、その「自衛隊の任務遂行上特に必要があると認める場合には、」海上保安庁等に対して自衛隊は常に協力を求めることができて、「海上保安庁等は、特別の事情のない限り、これに応じなければならない。」と書いてあります。現在までの海上保安庁と自衛隊とのこういった協力関係、具体的にどんなことをしているのか、かいつまんで説明をお願いできませんか。いわゆる後方支援ということも含めて、今まで保安庁側としてはどのような協力をやってきたかということです。
  178. 茅根滋男

    ○茅根説明員 捜索救助業務につきましては、もうほとんど海上保安庁でやっておりますけれども、大規模な事故とか遠距離な海難事件の捜索、捜索範囲が非常に広いというような場合には、海上保安庁船艇、航空機も出しますけれども、もちろん対処できないというときには、自衛隊法の第八十三条の規定によりまして、長官または管区の海上保安本部長から、自衛隊に対して災害派遣という形で応援を求めております。  現実に最近では四月七日、この委員会でも御審議になりました沖縄沖の第一豊漁丸の事件でございますけれども、このときも南西諸島、先島群島周辺からトカラ列島海域にかけての広い捜索海域を設定いたしました関係上、巡視船も七十六隻、それから航空機も二十九機という勢力を我が方もつぎ込んだわけでございますけれども、那覇にあります自衛隊の方からも八機の捜索機が応援に出ていただきました。  そのようなことで、現実に、海難救助等におきましては、現地レベルで連絡窓口を設定いたしまして、応援を頼むというようなときはいつでも出ていただいておりますし、そのような形で海難救助につきましては、少なくとも現実にいろいろなケースで相互に協力体制がとられておるということでございます。
  179. 日野市朗

    日野委員 自衛隊側、防衛庁側と言ってもいいでしょうが、そこと常設の連絡窓口というものは設けていないのでございますか。今、ケース・バイ・ケースという話がありましたが、これは防衛庁側はきちんとした連絡窓口を持っておりますね。
  180. 茅根滋男

    ○茅根説明員 特に常設の、ホットラインとかそういうものはやっておりませんで、電話等による窓口ですけれども、ただ、だれか担当官がいきなりまず電話をしても通じませんので、例えばこういう海難救助関係は海上保安庁側当直はこういう番号でどういう体制をしいている、防衛庁側では例えばどこどこの基地隊ではこういう当直体制で担当官はこんな者がチーフでいるとか、その程度の連絡、例えば当直室のところに連絡の電話番号等が書き出してあるという程度のことでございます。
  181. 日野市朗

    日野委員 その程度のことだとおっしゃるのですが、たしか防衛庁は用度課というところがその窓口になっているはずでありますが、この条文の書き方からすると「常に緊密な連絡」、これは恒常的な、いつでも連絡がとれるような体制ということを予定している、私から見ればこういうふうに読めるのでございますが、そういうきちんとした連絡窓口を持っていないということになると、これは非常におかしなことになりはしないのでしょうか。
  182. 茅根滋男

    ○茅根説明員 こういう現在までの業務の範囲の中では、そういうことで機能してきたというふうに私は理解しております。特段の業務の需要が相互になかったということで、海難救助等あるいは災害派遣等では、これで十分機能してきたというふうに理解をしております。
  183. 日野市朗

    日野委員 防衛庁側、海上自衛隊の方は、災害派遣の規定に従って今まで後方支援をしてきた。それはそれで非常に結構だと私は思うのですね。ただ、これから管轄海域が広い海域に設定をされてまいります。そういうことになりますと、もちろん装備そのものも非常に充実しなければならない。これは、保安庁そのものも、装備そのものも充実することになるわけでありますが、それと同時に連絡の緊密さというものへの要求も強まってくるのじゃないですか。つまり、海上自衛隊と保安庁との間の連絡です。
  184. 岡田專治

    岡田政府委員 先生の申されますように、これからも国際的な捜索救助の期待、私どもに対する期待というものが大いに高まります。したがいまして、海難救助等について、防衛庁初め関係省庁とますます連絡を密にするシステムをつくらなければいけないというようなことで、私どもといたしましては、関係の省庁で連絡会議を設けることを協定をいたしておる次第でございます。
  185. 日野市朗

    日野委員 それで、海難救助のための海上保安庁の果たす役割というのは非常に大きくなってくると思うのでございますが、この条約の第五章の「活動手続」の中に「緊急の段階」という規定がございまして、その「緊急の段階」には「不確実」「警戒」「遭難」というような段階に区別をしてそれぞれ対処をする、こういうふうになっておりますね。  この「緊急の段階」ということによって、それぞれ対応の仕方があるわけでございますけれども、よくわかりにくいのは、それぞれ「不確実」「警戒」「遭難」、こう書いてあるのですが、まず「遭難」というのはどういう段階を言うのか。これは、例えば気象とか衝突であるとか、そういうことによる遭難というのはよくわかるのですが、この「遭難の段階」ということについては定義がございますね。附属書第一章の11に「遭難の段階」とはことして規定されているわけでありますが、例えば海賊に追いかけられている、こういう場合が遭難に当たるのか、いかがでございましょう。
  186. 瀬崎克己

    ○瀬崎説明員 この条約の用語及び定義につきましては、先生指摘のとおり第一章にいろいろ規定がございまして、11のところに「遭難の段階」と書いてございます。ここで「船舶又はその乗船者が、重大なかつ急迫した危険にさらされていること及び即時の援助を必要とすることについて合理的な確実性がある」ということが「遭難の段階」でございます。  そこで、条約審議の際にいろいろ議論があったわけでございますけれども、ここで言う「遭難」と申しますのは、いわゆる天候が悪いとか衝突事故が起こりましたとか、あるいは船舶の機関が故障いたしまして航行不能になった、そういうような状態のもとで船またはその乗船者が危険にさらされ緊急に援助を必要とするような、いわゆる通常の遭難ということが議論されたようでございます。  したがいまして、例えば海賊に襲われて今申し上げましたような状態になれば、それはここで言う「遭難の段階」というふうに認定されると思いますけれども、海賊に襲われたという事態だけで直ちにここの「遭難」の対象にしているというふうには考えていないわけでございます。そこで、海賊の抑止につきましては別途の条約がございまして、これは公海条約でございますが、その第十四条に「すべての国は、可能な最大限まで、公海その他いずれの国の管轄権にも服さない場所における海賊行為の抑止に協力する」ということで、遭難とはちょっと違いますけれども、海賊の抑止につきましては別途条約規定しているということでございます。
  187. 日野市朗

    日野委員 海賊の抑止については別途あることはわかりますよ。海賊に襲われた、そして、そのまま放置したなら遭難をする、沈没の危険があるとか、そういう事態についてはどうでしょうか。また、国籍不明の艦船から攻撃を受けるというような場合はどうなります。
  188. 瀬崎克己

    ○瀬崎説明員 先ほど申し上げましたとおり、海賊に襲われた結果として、その船舶または乗船者が危険にさらされている、こういうようなときには遭難ということでございますけれども、海賊に襲われたという事態そのものを遭難の対象としているというふうには、認識していないわけでございます。
  189. 日野市朗

    日野委員 例えば、私さっき言いました、国籍不明、どこの船だか全くわからぬ船から襲撃を受けそうだ、こういう状況はどうなります。遭難には当たりませんか。そして、そのような場合は、保安庁としてはどのような処置をとることになるのでしょうか。
  190. 瀬崎克己

    ○瀬崎説明員 この条約の解釈のことだけ外務省から御説明させていただきますと、お手元のテキストの二十一ページ、2の1の10でございます。ここに「締約国は、海上におけるいずれの遭難者にも援助を与えることを確保しなければならない。締約国は、遭難者の国籍若しくは地位又は遭難者の発見されるときの状況にかかわりなく」云云ということが書いてございますが、ここで言っているのは先ほど申し上げました通常の遭難ということを考えているわけでございます。
  191. 日野市朗

    日野委員 そうすると、どっちにしても海上保安庁は、それに対応するような行動をとらなければならないということになりますね。
  192. 岡田專治

    岡田政府委員 例えば日本国民の船というふうに仮定いたしますと、大変急迫不正な侵害がなされようとしているような状況でありますれば、当然私どもはそれを保護すべく、しかるべき行動をとらなければならないと思っております。
  193. 日野市朗

    日野委員 今まで伺ってきたのは、まず一つは装備について伺ってきたわけですね。ソナーが高性能かどうかは別として、一応備わっている。それから、銃器類も大変立派なものを積んでいるようですね。四十五ミリ機関砲というのはかなりの高性能でございますし、私どもも先ほどの「海上保安庁」というパンフレットを見せていただいて、その堂々たる雄姿。船の前方には機関砲が、砲座、砲塔と言うのですか、据えつけられていて先をにらんでいる。後ろの方にはヘリコプターを積んでいるわけですが、二機ヘリコプターを搭載する巡視船も今建造中である。こういうもの。それから各規定ですね、有事のときには完全に内閣総理大臣の指揮下に入って防衛出動の一翼を担う。  こういう状態を見ると海上保安庁というのは、海上保安庁法には軍隊ではないと書いてあるけれども、かなり軍隊的なものではないかなという感じを私持ちますね。いかがでございますか。まさか海上保安庁の方が、おれたちは軍人だと思っているわけではないと思いますけれども、装備の面でもそれから組織の面でもかなり軍隊的である、こういうふうに見ざるを得ないと思うのですが、いかがでしょう。
  194. 岡田專治

    岡田政府委員 軍隊的な組織というお言葉の意味を私、必ずしも正確に理解していないかもしれませんけれども、何にいたしましても海上というものは、一般的な、自然的な、物理的な危険性のあるところでございます。そこにおきまして船艇を運用して一定の任務を遂行するということから、規律を重んじるそれなりの組織原理をもってつくられておる官庁でございますので、それをある意味で軍隊的という表現をなさるならば、その限りにおいては妥当かと思うわけでございます。  しかしながら、庁法にございますようにあくまでも軍隊の機能を営んではならない、また、軍隊の構成員のような訓練をしてはならないという規定は厳然として生きておるわけでございまして、そういう意味で私どもとしましては、我が海上保安庁はいわゆる軍隊とは明確な一線を画した組織である、かように考えております。
  195. 日野市朗

    日野委員 先ほど引きました「海上保安庁の装備」を見てみますと、これはかなり立派なものでございます。本当に人命救助のために使われるものとして、これだけの装備をしてもらわなければならぬと私は思っているのです。ただ、余計なものがあると思うのです。この機関砲、余り立派過ぎやしないか。この写真、意識的に格好よく撮っているのかもしれません。しかし、余りにも立派過ぎるし、威嚇的過ぎやしないかという感じも持つわけであります。  そして「新海洋秩序時代への対応」の「我が国の管轄海域・哨戒海域」という図を見ますと、御丁寧にシーレーンまでちゃんと書いてあるのです。これは北アメリカ方面のシーレーンでございます、これは南アメリカ方面のシーレーンでございます、これはオーストラリア方面のシーレーンでございます。これは中近東・東南アジア方面のシーレーンでございますと、図にもちゃんと入っているのです。何もこんなことまで書かなくてもよかったのではないかと私は思うのです。シーレーン防衛構想に対する思い入れが海上保安庁の方にあって、それがこの図面になっているとしたら大変だなと私は思うのですが、いかがなものでしょうか。
  196. 岡田專治

    岡田政府委員 私どもは、海上交通の安全、海難救助を担当しております関係上、船舶交通の頻繁なところといいますか、海の一つのハイウエーとでもいいますか、そのようなところが私どもの業務にとっても一般的に注目をしなければならないところでございます。  そういう意味合いにおきまして、今先生の御引用なさいましたパンフレットにおいて「北アメリカ方面」とか「中近東・東南アジア方面」と一定の図柄が明示されておりますが、それはあくまでもそういう海上交通の重要性に着目した、私どもの業務の地域的な重要性の高いところを意味するというふうにお考えいただければ幸いでございます。
  197. 日野市朗

    日野委員 確かにここいらは船舶、特に商船、貨物船、コンテナ船とかの運搬は頻繁でございましょう。しかし日本には、何もこれらのレーンばかりではなくて、大小の漁船がいっぱい遊よくする海域、もっと重要性がある海域がいっぱいあるでしょう。そういうところは表示されないで、何で時の話題になっているシーレーンばかりをこういうふうに表示されてくるのか、私は納得に苦しむのです。どうですか。
  198. 岡田專治

    岡田政府委員 私どもの作図上のあるいは不備かとも思いますけれども、しかしながら、今先生が御引用なさっております冊子の当該ページにおきましても、例えば二百海里漁業水域等についても明確な表示はしておりますとか、その他冊子全体についても漁船の救助等についてはウエートを置いた構成になっておるわけでございまして、私どもが遠洋漁業等の保護について等閑視しているつもりは毛頭ございません。
  199. 日野市朗

    日野委員 私も、そうであってはならないし、シーレーンにばかり目を奪われないようにしてもらいたい、それが海上保安庁の役目だと思っているわけです。皆さんも、軍人と見られたくはないでございましょう。  そこで、私は、皆さんに釈明を求めておきたいことがあるのです。イギリスのIISS、国際戦略研究所というところがございまして、そこでは「ミリタリー・バランス」という本を出しております。これはそんなに軽い本ではございません。非常に権威を持った本とされております。これによりますと、日本の海上保安庁に対する一定の評価が出ております。これは原文では「パラミリタリーフォース・コーストガード」、こう書いてございますね。これは防衛庁でお訳しになった訳を読むと「準軍隊」、こういうふうにやっております。準軍隊というよりも、パラミリタリーフォースというのはもっと別のニュアンスがあって、準ではなくてほとんど軍隊組織と並行しているような組織、こういう書き方になっているのですが、御感想いかがでしょうか。
  200. 岡田專治

    岡田政府委員 残念ながら、当該雑誌については私は存じ上げておりませんけれども、恐らく誤解のありますところは、アメリカのコーストガードの位置づけと私どもの庁法上の位置づけとは違いまして、私どもはあくまでも海上保安庁法によりまして、いわゆるある種の警察機関として規定されておるところでございまして、防衛機関では全くないのでございますけれども、その辺についての何かの誤解があったのではないだろうか、かように考えております。
  201. 日野市朗

    日野委員 それじゃ次長さん、今防衛局長が見えましたので、防衛局長の時間が余りないようですから、ちょっと防衛局長の方に話をさせていただいて、後でまたいろいろ伺わせていただくということにします。  どうも防衛局長さん、お忙しいところを無理にお願いして申しわけありませんでした。  今、実は、海上保安庁と自衛隊との関係についての話をしていたわけなのです。私は、今ここで問題にしている海難救助条約、これが一歩間違うと、いわゆるシーレーン防衛構想なるものに海上保安庁自体が巻き込まれて、本来は平和的な条約であるはずのこのSAR条約が、非常にきな臭いものになってしまったりなんかしては大変だと思いますので、ちょっと自衛隊、特に海上自衛隊と海上保安庁との関係、このところを整理しておきたい、こういうふうに思っているところでございます。  海上保安庁というのは、非常に自衛隊と密接な関連を法規上持たされているわけでございますね。まず、海上保安庁法によりますと共助の規定、これは国家機関同士でございますから共助規定があるのは当たり前よということになるかもしれませんけれども、ここで自衛隊との協力関係にある。それから自衛隊法八十条によりまして、これは防衛出動がある場合、それから命令による治安出動がある場合、これは内閣総理大臣の指揮下に入ることになりますね。海上保安庁の行動というのは、そういう指揮下に入ることになります。  しかも、ちょっと物騒なことに、防衛出動には外部からの武力攻撃という文言の下に括弧があって、「外部からの武力攻撃のおそれのある場合を含む。」こういうふうになっているわけでございますね。そうすると、海上保安庁というのは、どのような場合に内閣総理大臣の指揮下に防衛出動の一環として組み込まれるのかということについて、明確な基準を立てておく必要があるのではなかろうか、このように考えるわけでございます。どのような基準によって内閣総理大臣の指揮下に組み込まれていくのか。これは外敵からの武力攻撃という場合にも、いろいろな段階があろうかと思います。しかも、外部からの武力攻撃のおそれある場合という、非常に多義的な概念まで含んでいるわけですね。その基準は、防衛庁としてはどのようなものを考えておられるのか、そこを説明していただきたいと思います。
  202. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生指摘のように、自衛隊法の八十条で、防衛出動あるいは命令による治安出動があった場合に、「特別の必要があると認めるときは、海上保安庁の全部又は一部をその統制下に入れることができる。」ということを規定をいたしておるわけでございます。この「特別の必要があると認めるとき」ということにつきまして、これが個々具体的にどうかということについてはなかなか難しい問題でございまして、これは事態を見ながら、その際に判断をすることになるのではないかと思います。  ただ、先生も御承知のとおり、仮にこういった規定に基づきまして海上保安庁が内閣総理大臣の統制下に入りまして、防衛庁長官の指揮を受けるというふうになった場合でございましても、海上保安庁法に定めます海上保安庁の任務あるいは権限には、何ら変更がないわけでございます。そういうことでございまして、海上保安庁が行う行動というものは、自衛隊が行う防衛行動というものとは全く違う分野の行動が行われるということでございまして、この点は、自衛隊と全く一体となるというふうな御理解でもしあるとすれば、そういうことではないということを申し上げておきたいと思います。
  203. 日野市朗

    日野委員 今、観念的には非常にわかるお話を説明していただいたわけですね。しかし、防衛出動ということになっていろいろ作戦行動がとられるということになると、これは警察行動とそれから実際の戦闘行動との区別というものはなかなかつきにくい。特にこれは、海上においてはつけにくかろうと思うんですね。そういう場面になった場合、海上で一つの船団を組んでいるなら、それはもちろん攻撃の的にもなりましょうし、それから離れていれば離れていたで、それはまた独自に攻撃の対象にもなり得ることですから、それでは具体的に海上保安庁の行動というのはどのようなものになるのだ、どのようなものでなければならないのだということを、ここで明示できたらしていただきたいんですがね。
  204. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 海上保安庁の任務といたしましては、これは海上保安庁法の第一条にありますように、「海上において、人命及び財産を保護し、並びに法律の違反を予防し、捜査し、及び鎮圧するため、運輸大臣の管理する外局として海上保安庁を置く。」ということがございまして、第二条に、各種の権限等も具体的に細かく書いておるわけでございますが、要するに、海上におきます人命及び財産の保護並びに治安の維持を目的としている組織であるというふうに理解をいたしておるわけでございます。  したがいまして、先ほどの自衛隊法八十条によりまして、海上保安庁が内閣総理大臣の統制下に入りました場合でも、そういった基本的な枠組みの中での行動になるわけでございます。具体的には、これはまた事態に応じまして異なるわけでございますから一概には言えないとは思いますけれども、例えば密輸、密航等の海上における犯罪の取り締まりでございますとか、漁船の保護とか船舶の救難などの海上におきます人命、財産の保護等の業務が行われるのではないかというふうに私どもは想定をしているわけでございます。
  205. 日野市朗

    日野委員 若干の議論をしますと、それは海上保安庁法そのままを適用すればいいので、八十条によって、何も内閣総理大臣の指揮下に入れなければならないということ、統制下に入れなければならないということは何にもない、そういうことになりませんか。今、あなたが説明なさったとおりであれば、海上保安庁法をそのまま運用すればいいわけですね。それがわざわざここに「内閣総理大臣は」として、「その統制下に入れる」、こう書いてあるわけでございますから、あなたが今言われたのは、海上保安庁の通常の業務を通常の形でやっていればいい、戦時下であろうと平時であろうと、それは変わりはないということをおっしゃっているわけでしょう。ところが、わざわざ自衛隊法で内閣総理大臣が海上保安庁の全部または一部を統制下に置くことになるわけですから、変わったことが何か出てくるはずです。どうなんでしょう。
  206. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 その点につきましては、やはり海上という一つの大きな土俵の中でのいろいろな治安維持活動という分野を、いかに効率的に進めていくかという問題ではなかろうかと思うわけでございまして、防衛出動等が命ぜられた場合におきます事態というものを考えますと、やはり海上において活動をする組織といたしまして海上自衛隊の部隊もあるわけでございますし、他方において海上保安庁のいろいろな組織に属する船舶等もあるわけでございますが、そういったような活動が、できるだけ効率的に整合性を持ってできるような体制を保有しておくということが望ましいことではないかというふうに考えておるわけでございまして、自衛隊法八十条の規定は、そういった海上というものの特性を踏まえて考えられた仕組みであるというふうに私は考えておるわけでございます。
  207. 日野市朗

    日野委員 あなたも時間がないので余りここのところ深入りもできませんが、私は、ここの自衛隊法八十条による内閣総理大臣の統制下に入った海上保安庁、それがどのような基準で指揮下に入れられるのか、入った場合にやるべき仕事、そういったのはちゃんと基準を立てて整備をしておかないと、これは海上保安庁も海上自衛隊もごちゃまぜになってわけがわからなくなって、海上保安庁の諸君が非常に危険な業務にも従事させられるようなことになりかねないのではないかという、非常に強い心配を持っているということを表明しておきたいと思います。  それからもう一つ、海上保安庁との関係で百一条という規定がございますね。ここでも「自衛隊の任務遂行上特に必要があると認める場合には、海上保安庁等に対し協力を求めることができる。」こう書いてありますね。この「任務遂行上特に必要があると認める場合」とはどんなことですか、どんなことというふうに解しておられますか。
  208. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 御指摘の点は、自衛隊法百一条二項の規定に関する御質問であると思います。自衛隊法百一条の規定は、自衛隊の任務遂行の円滑化を図るということを目的といたしまして、自衛隊と特に関係が深いと考えられます公共機関との間で常に緊密な連絡を保つという百一条の第一項の規定を置くと同時に、特に必要がある場合にそういった機関に対して協力を求めることができるということを規定したものでございます。  この協力要請というものが一体具体的にどういうことになるかということは、やはりその場、その場に応じて決まってくることでございまして、事態は千差万別であろうかと思うわけでございまして、基準をあらかじめ具体的に申し上げることはなかなか難しいというふうに思うわけでございます。ただ、例えて言えば、物資の輸送面でありますとか必要に応じた燃料の補給の支援をしていただくとか、そういったようなことはあり得るのではないかなというふうに思います。実際にどういうふうな御協力をいただくかということについては、あくまでもそのときどきの状況に応じて適切に判断をする必要があると思います。  それからまた、これは海上保安庁として当然のことながら、協力できる範囲での御協力をお願いするわけでございまして、そのことはこの百一条の二項の中におきまして、「この場合においては、海上保安庁等は、特別の事情のない限り、これに応じなければならない。」というふうに書いてございます。したがって、相手方の海上保安庁等の業務の事情というものはもちろんそこで十分御検討をいただいて、対応をしていただくことになるのではないかというふうに私どもは考えているわけでございます。
  209. 日野市朗

    日野委員 局長のお話を聞いてみると、その事態、その事態によって千差万別という言葉を何度もお使いになるのですね。しかし、これは法律の文言に表現されていることでございますから、今私は法律についての説明を求めているので、そもそもがそんなに千差万別であっては困るのですよ。そうでございましょう。海上保安庁というものがあって、それから自衛隊法の八十条があって百一条があってこういうふうになっているので、それはその事態事態によって千差万別に防衛庁の方が海上保安庁にお願いしていいのか。あなたが言われるとおり、まさにこれはそれぞれの役所同士の事情もあります。業務の内容、業務の性質という本来の制約もございます。  しかし、百一条を見ますと、「特別の事情のない限り、これに応じなければならない。」今あなたがおっしゃったとおり、特別の事情がなければこれに応じなければならないという、非常に防衛庁側が優位に立った規定になっているわけですね。それで千差万別、ケース・バイ・ケースでございますでは困るのであって、ここでもきちんとどういうことができて何ができないのか、「特別の事情」に当たるものは何なのか、ここらがちゃんと整理されていなければならないと思うのですが、これは法文を読んだだけでは出てまいりません。そういうことについて、今まで協議をなすったことはないのですか。今まで防衛庁の側で、それはどういう場合が「特別の事情」なんだというようなことを検討されたことはないのですか。
  210. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 今御指摘の「特別の事情」と申しますのは、やはりその具体的な事情に応じまして、個々に判断をせざるを得ないのではないかなというふうに考えておりまして、一概にこうだというふうに申し上げにくい分野ではないかと思います。  ただ、この規定に基づきます協力関係と申しますのは、ただいま先生からも御指摘ございましたように、協力要請を自衛隊の方がいたしまして、それに対して、海上保安庁等の相手方の組織におかれまして御検討をいただくという仕組みにはなっておるわけでございますから、そこはあくまでもその都度、その都度十分に御協議を申し上げて、適切に対処をしていくということではないだろうかと私は考えております。
  211. 日野市朗

    日野委員 私はそれでは困ると思うのですが、きょうは余り時間もありませんので、ずばり最後に矢崎さんにお願いをしたいのですが、このSAR条約における海上保安庁の管轄海域というのは御存じですね。ここは、いみじくもシーレーン防衛構想なるものとかなりよく一致するのですよ。あなた方防衛庁の立場として、このシーレーンを防衛するために海上保安庁も幾らかでも役に立ってほしいという願望はありますか。
  212. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 今回の条約の趣旨は、まさに海上における救難活動の円滑、適切な実施目的とするものであるというふうに理解をしておるわけでございます。他方、防衛庁が防衛力整備を進めておりますのは、まさに日本の防衛のための活動でございます。両者は、別の問題ではなかろうかというふうに考えておるわけであります。
  213. 日野市朗

    日野委員 例えば、この海域内で他国との間で国際的な紛争が生じたりなんかした場合、防衛庁側としては海上保安庁に何かの協力を要請する、百一条でもよろしいでしょう、そういうことは絶対にあり得ない、よろしいですか。
  214. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 先ほど来御議論いただいております百一条の問題というのは、従前から置かれております自衛隊、防衛庁と海上保安庁等の政府関係機関との間の協力関係を定めたものでございます。したがって、その協力関係ということは、SAR条約締結される前からあった仕組みでございまして、これは、自衛隊がその任務を適切に遂行するために必要な規定として設けられているわけでございます。また、この規定は、自衛隊が直面します場面、いろいろな場面があるわけでございますが、有事であれ平時であれ、いろいろな場面がございますが、そのいずれを特に限定をして設けられている規定ではございません。したがいまして、一般論として申し上げれば、有事の場合におきまして、こういう規定に基づいて協力要請を関係の官庁に申し上げるということはあり得ることではないか、これはもう従来からそういうふうになっているわけであります。
  215. 日野市朗

    日野委員 では矢崎さん、お忙しいようですから、矢崎さんの方はこれで終わります。  ではまた、海上保安庁の方に戻りますが、さっきの「ミリタリー・バランス」の話でございますね。あなたは、「ミリタリー・バランス」という本についてよく御承知ないかもしれませんけれども、この「準軍隊」――防衛庁の訳によれば準軍隊という訳にしておりますけれども、これにはノート、注釈がついているのですね。これは「ミリタリー・バランス」そのものが読者のために注解をつけるということで、わざわざリーダースノートという形でつけているわけですが、そこにこんな記述があるのです。  「何が準軍隊で何が準軍隊でないかを厳密に区別することは容易ではない。」「準軍隊とは、その装備と訓練が通常の警察任務の遂行に必要なもの以上となっており、かつ、その機構と指揮系続からみて正規軍に対する支援部隊として、またはそれに代わる部隊として使用できる戦力をいう。」こういうふうにリーダースノートには注解がしてございます。  そして、現実に「ミリタリー・バランス」の中に出てくる船の数を数えてみますと、皆さんが発表しておられる数よりも少ないのです。はるかに少ない。つまりIISSは、戦力としての海上保安庁の勢力と戦力に当たらない海上保安庁の勢力とを区別してこう記載しているのですね。こういうような記載について皆さん、何か異論ございますか。  私はさっきも言いましたように、これは過ぎたものだ。四十五ミリ機関砲というのは、通常の警察行動なんかには必要ないんだと私は思いますよ。皆さんは、実際に経験されて今まで使ったことがない、こう言うのでしょう。使ったことがない、それは幸せなことだ。本当は要らないのではないかと私なんか思っております。まあ、非常に乱暴な連中もいるから、威嚇射撃程度の機銃ぐらいはなあと私なんかも思わないではないが、機関砲までは要りませんわね。皆さん方の感想はどうですか。     〔野上委員長代理退席、委員長着席〕
  216. 岡田專治

    岡田政府委員 感想とのお尋ねでございますが、私ども、確かに三十年代以降使った事例がございません。したがいまして、そういう意味ではいわば無用のものと、現実的にはあるいは言い方によっては言えるのではないかと思うわけでございますが、しかしながら、やはりそのようなものの存在が一定の抑止的な効果を、海というものはまさに国際性そのものでございますから、私ども日本人的な心情のみでは律し切れないものがあろうかと思うわけでございまして、いろいろな外国の漁船の取り締まり等におきまして、やはり一定の心理的な抑止的な効果も発揮しておるのではないだろうか、かように考えておる次第でございます。
  217. 日野市朗

    日野委員 私に言わせれば無用の長物だし、次長さんが今おっしゃった、使ったことはない、ただ抑止的な効果程度ではないかというふうなお話でございますが、現実にそれはあって、世界的にかなり権威のある筋がこれは戦力だと見ているのですよ。戦力としてこれを防衛費に加算しますと、防衛費GNP一%どころではない。まさに隠れたる戦力として急浮上していく。  アスペン・セミナーについて書いてある新聞記事も、その点はこんなふうに述べていますね。「わが国では海上保安庁の予算は米国の沿岸警備隊のように防衛費には加算されないので、国民感情を刺激するような防衛費の突出を避けることができる」。こういうことから、海上保安庁の船にソナーをつけたり大きな砲を載せたりして、隠れた戦力、隠し戦力としてこれを持っているのではないか、こういう疑念が非常に強いわけですね。しかも管轄水域、これは非常に広範にわたり、シーレーンを含んでまいります。そうするとこれは、ちょっと見るとシーレーン防衛構想なるもの、これを海上保安庁が肩がわり的にやらされる、やるというような間接事実はいっぱいあるんだ、間接事実として見れば。私は、そういう点は率直に疑問として呈さざるを得ないのです。  私は、皆さんが海上自衛隊の身がわりになっていろいろな危険を冒すことを望まない。皆さんには皆さんに課せられた非常に重大な役割があるはずなので、それにあくまでも徹してもらいたい、こういうことが私の強い希望であります。でありますから、皆さんとしても本条約によって非常に幅広い海域について、かなり今までとはさま変わりの哨戒体制をしくことになるわけでありますから、決して軍隊の肩がわりというようなことにはならないように、自分たちでもひとつ気をつけていただきたいと私は思うわけでございます。  最後に、外務大臣に一言伺っておきたいのですが、これは外務大臣の職務から離れるようなことでちょっと聞きにくい感じもするのですが、私が今言いましたように、シーレーンと本条約の管轄海域というのはかなり重なります。これは、シーレーン防衛などということと全く関係ない海上保安庁の仕事がそこで予想されているんだ。これはもう、シーレーン防衛と海上保安庁のやっている仕事、それから外務省が条約の署名から今こうやって国会に提出しておられる業務というのは、全く関係ないんだということを一言念のために伺っておきたい、こういうふうに思います。
  218. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この条約は、海難救助等国際的な協力を進めなければならぬということ、そういう中で我が国が四面海に囲まれた国であるということから、我が国としての国際的責任を果たそうということでこれまでの検討の結果、この条約加盟をするということを決定をしたわけでございますし、これはあくまでやはりまさに海上保安庁の仕事であります。シーレーンというのは、我が国が有事の際の自衛隊を中心とするところの我が国の海上安全を確保するための、いわば我が国防衛そのものの問題でございますので、こうした条約とか海上保安庁の仕事とかそういうものとは基本的に違うものである、こういう認識を持っておるわけでございます。
  219. 日野市朗

    日野委員 終わります。
  220. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、玉城栄一君。
  221. 玉城栄一

    ○玉城委員 三つの条約、御質疑をさせていただきます。  まず最初に、大西洋のまぐろ類保存のための国際条約についてお伺いをいたします。この議定書は、EECがこの条約加盟するために改正したと聞いておるわけでありますが、EEC加盟国中この条約加盟している国はフランスだけだと思うわけであります。なぜ、今回EECが加盟しようというのか、その理由についてまず最初にお伺いをいたします。
  222. 木村崇之

    ○木村説明員 お答えいたします。  EEC、欧州経済共同体は農業、これには漁業も含みますが、農業の分野における共通政策をその活動分野の一つとして挙げているわけであります。実際に、漁業に関する権限をその構成国から共同体の方に移譲するという決議も行われておりまして、この共同体がその構成国を代表して条約締結することが適当であると考えられたためであります。
  223. 玉城栄一

    ○玉城委員 そうしますと、この条約にEECが加盟することは、EEC加盟国の他の九カ国も当然加盟したと同様になるのかどうか、その辺はいかがでしょうか。
  224. 木村崇之

    ○木村説明員 先生指摘のとおりでございます。EECは、条約に加入するに際して必要な規則を制定し、決定及び命令を行うことになりますけれども、これらはその構成国全体を拘束するものでございます。したがって、フランスのみならず他のEEC構成国も、EECを通じて条約によって規律されることになります。
  225. 玉城栄一

    ○玉城委員 次に、マグロのとれる地域は大西洋に限らないわけです。太平洋だとかインド洋でもとれるわけでありますが、我が国のマグロの地域的にとれる比率、どういうふうになっているのか、御説明いただきたい。
  226. 今井忠

    ○今井説明員 お答えいたします。  我が国のマグロ漁業につきましては、漁船の大きさによりまして漁業の許可が二つに分かれております。一つの方は、二十トン以上八十トン未満でございます。大きい方は八十トンから上でございますが、小さいクラスの二十トン以上八十トン未満の船につきましては、最近の情勢では約六百三十隻ございます。漁業の許可の面では、いずれも太平洋で操業しておりまして、農林水産省の漁業養殖業生産統計によりますと、漁獲量は約八万トンということになっております。  次に、八十トンを超える漁船につきましては遠洋マグロはえ縄漁業と言っておりますが、船が約七百六十隻ございます。例えて申しますと、これらの船は大西洋まで行くわけでございますが、その途中に太平洋を通りましてインド洋を通ってずっと行きますから、太平洋、大西洋、インド洋というふうに操業してまいります。その結果、大西洋に何隻、太平洋に何隻というふうに厳密に区分はできませんが、概況を申し上げますと、太平洋に操業しているものは大体五百隻から六百隻、漁獲量は約十四万トンでございます。インド洋におきましてはおおむね二百から三百隻操業しておりまして、漁獲量は約三万トン、大西洋ではおおむね二百から二百五十隻操業しておりまして、約六万トンのカツオ・マグロを釣り上げているわけであります。まとめて申し上げますと、これら遠洋のマグロはえ縄漁業におきましては太平洋での漁獲割合が六一%強、インド洋が一四%弱、大西洋が二五%見当でございまして、金額の比率で見ましても大体同じ傾向になっております。
  227. 玉城栄一

    ○玉城委員 今お話ありましたとおり、マグロの漁獲量が太平洋は六一%強です。それから、大西洋が二五%というようなお話でございます。大西洋には大西洋のまぐろの保存に関する条約があるけれども、太平洋についてのこういう条約はないと伺っておるわけですが、なぜ太平洋には現在ないのか、あるいはこれからそういう条約ができるのか、見通し等を含めて御説明いただきたいのです。
  228. 木村崇之

    ○木村説明員 太平洋及び大西洋は、マグロ資源の重要な漁場であることには変わりがないと存じます。太平洋についても、東部太平洋において漁獲されるキハダ及びカツオ等を対象とした全米熱帯まぐろ類条約というものが存在いたします。また、中部及び西部太平洋のマグロ資源につきましては、南太平洋委員会及び国際連合食糧農業機関のもとに設立されたインド太平洋漁業委員会のもとで調査が行われておりますが、現在までのところ、資源管理のための国際条約が作成されるという具体的動きはございません。
  229. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、その理由をお伺いしているわけです。
  230. 木村崇之

    ○木村説明員 現在のところ調査については行われておりますけれども、資源の管理の必要性についてまでは進んでいないということでございます。
  231. 玉城栄一

    ○玉城委員 では、水産庁にお伺いいたしますが、一九七七年以降日本の漁業を根底から揺さぶり続けている沿岸国の二百海里水域設定が、我が国の遠洋漁業に与える影響は極めて大きいのでありますが、遠洋漁業は最盛期に我が国の全生産量の四〇%に相当する約四百万トンを生産していたものが、現在最盛期の二分の一にまで激減しております。二百万トンの維持さえおぼつかないと言われていると伺っておるわけであります。  今国会提出された漁業白書を見ますと、「我が国漁業は従来にも増して困難な局面に立たされている。」と述べているわけであります。そして、その対策として、  このような状況の下では、科学的根拠に基づい  た資源量把握及び余剰資源の利用を前提として  いる国連海洋法条約の精神に沿いつつ粘り強い  国際交渉を進めること、操業に当たって信頼を  失うような行動は厳に慎むこと、水産資源の有  効利用について関係国際機関との協力関係を深  めること、新漁場の開発及び諸外国との国際協  力に更に努めることが一層肝要となっている。このように漁業白書には水産庁はおっしゃっているわけです。  このような国際環境の困難な時期こそ、もっと具体的に我が国の漁業のなすべき姿を明確にしていかなければならないと思いますし、そういう立場からしても、太平洋におけるこういう条約というものは当然必要性が出てくるのではないか、このように思うわけでありますが、いかがでしょうか。
  232. 島一雄

    ○島説明員 お答えいたします。  先生の御指摘のとおり、ただいま我が国は二百海里交渉で非常に苦しい立場に立たされております。ソ連、米国を初めといたします各国の二百海里水域は、ますますその沿岸国の資源ナショナリズムというのを強化いたしてまいりまして、我が国の漁業外交は非常な困難な立場でございます。しかしながら、適切な決め手というのはすべてに共通するものがないのでありまして、それぞれの場合、場合に応じてきめの細かい漁業協力や、あるいは我が国の伝統的漁獲実績の理解を求める、こういう情理を尽くして相手国に説明していく以外にはない、こういうふうに考えるわけであります。  ただ一つ、太平洋におきます漁業機関の設立というお問いでございますけれども、これにつきましては、部分的にはその地域間、例えば南太平洋の沿岸諸国だけでそういう機関を設立する、そのような動きは見えておりますけれども、それにおいては特に遠洋漁業国は排除するんだというような傾向が非常に強うございますので、そのようなことのないように我が国は、遠洋漁業国も一緒になって、沿岸国と資源を管理しながらやっていく、こういう姿勢には変わりはないわけであります。
  233. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは報道なんですが、大西洋海域マグロ操業、我が国が違反操業しているというような報道があるわけですが、そういう事実があるのか、あればその取り締まりについてはどういうふうなことをやっていらっしゃるのか、それをお伺いいたします。
  234. 今井忠

    ○今井説明員 お答えいたします。  大西洋におきまして、我が国のマグロ漁船が操業している関係上、それに伴います取り締まりも実際に行っております。具体的に申し上げますと、地中海でも大西洋に隣接する区域ということで操業している関係上、漁期が地中海は非常に早うございますので、つい先ごろ水産庁の監視船を出航させまして、五月の半ばから六月いっぱい地中海の取り締まりをいたしまして、その後大西洋に出まして、大西洋における日本のマグロ漁船の取り締まりに当たっております。これは、ことしだけの例ではございません。去年までもずっとやってまいりました。今後も続けていきたいというふうに考えております。
  235. 玉城栄一

    ○玉城委員 とかくいろいろな面で我が国は、非難を受ける場合が最近非常に多くなってきているわけであります。ですから、国際的な約束あるいは他国とのそういう約束については、やはりきちっと守っていくという体制はぜひやっていただきたい、そのことを要望いたしまして、次に、北太平洋のおつとせいの保存に関する暫定条約についてお伺いをいたします。  外務省から出されております条約説明書によりますと、「議定書が発効した場合には、おつとせいが漁網等に絡まる問題を含めおつとせいの保存に関する調査を実施する」とありますが、この綱に絡まる問題とはどういうことか、御説明いただきたいと思います。
  236. 木村崇之

    ○木村説明員 この問題は、オットセイが漁網片あるいは海上に投棄された合成物質等に絡まって多数死亡しており、これがオットセイ資源の状態の悪化の大きな要因となっているとして、近年米国より提起されている問題でございます。しかし、漁網片等がオットセイに絡まることが、オットセイ資源にいかなる影響を及ぼしているかについてはまだ明らかでございませんので、北太平洋おつとせい委員会で調査研究が進められているところでございます。
  237. 玉城栄一

    ○玉城委員 この条文に、海上捕獲が許容されるかどうかの研究という条文があるわけですが、この調査も含まれるという解釈でよろしいわけですね。
  238. 菊地徳弥

    ○菊地説明員 お答えいたします。  現在オットセイの猟獲は、繁殖島においてのみ認められているところでございます。海上猟獲が資源状態に悪影響を与えることなしに許容されるかどうかということを明らかにするために、本条約に基づく調査が実施されてきておりまして、特に海上におきまして雄だけが集中的に分布するという海域があるとかないとか、また、海上における雌雄の識別の可能性などにつきまして調査を行ってきているところでございます。  一方、近年ベーリングにございますプリビロフ諸島系群のオットセイの数が減少しているという事実がございまして、米国はこの原因の一つとして、北洋海域での漁業の操業に伴う混獲とか、漁船が喪失いたしましたあるいは投棄いたしました綱にオットセイが絡まる、そこで死亡するということを挙げているわけでございます。この海域におきましては、日本漁船も多数操業していることから、この米側の指摘の妥当性につきまして、当該海域における投棄網の分布とかサケ・マス漁業などの流し網による混獲の状況、また繁殖島における網に絡まったオットセイの状況等につきまして調査を実施するとともに、飼育の状態のもとにおきますオットセイを用いまして、これは水族館でやっておるわけでございますけれども、浮かんでいる漁網などにオットセイが絡まったその場合にどういう行動をするか、そういった程度の状態などにつきまして実験を進めておるわけでございます。  海上猟獲の許容性につきましての調査につきましては、条約の本来の目的にかかわる調査がございまして、また、網絡まりについての調査も、オットセイの資源の減少の要因を突きとめてその維持管理を図るという目的のものでございますので、本条約のもとに実施されるものであるというふうに考えております。  以上でございます。
  239. 玉城栄一

    ○玉城委員 今おっしゃいましたけれども、この問題は、アメリカの学者がオットセイの五%は網に絡まる事故で死んでいるという論文を書いたのがきっかけだったとも聞いておるわけですが、この論文を受けてベーリング海に出漁している日本漁船の捨てた網が原因と日本が非難されるようになり、日本としても黙っていられなくなったといういきさつではないかと思うわけでありますが、こういう問題を伺いましても、この問題は本当に鯨についての日本への非難の話等を思い出すわけでありまして、すべてやることなすこと非難をされるという状況、これは非常に好ましくないと思うのでございますが、これは外務省の方、いかがでしょうか、こういう問題についても我が国が非難をされるというあり方、お伺いいたします。
  240. 木村崇之

    ○木村説明員 先生指摘の点は、確かに米国は五十七年の北太平洋オットセイ委員会会議において、プリビロフ諸島のオットセイの五%が北洋で操業する漁船から投棄ないし流出した漁網片等に絡まって死んでおる、これが資源悪化の大きな要因になっているという一つの論文を発表いたしたわけでございます。  これに対して我が国といたしましては、まず、漁網片等に絡まっているオットセイが発見されていることは事実でございますけれども、これが資源にいかなる影響を及ぼしているかは不明でございますので、十分な調査が必要であるということを言っておるわけでございます。また、我が国の漁業者に対しては、捨て網の禁止について周知徹底させる等必要な措置をとっていくということを説明しております。ソ連もカナダも、我が国と同様な態度をとってきたわけでございます。  米国は、その後も毎年委員会でこの問題を提起しておりますが、こういう米国の主張は、海産哺乳動物の捕獲に反対している米国内の環境保護団体の意向を反映している点もあると思いますので、この点については我々としては今後とも積極的に調査研究を進めるということと、もう一つは、捨て網禁止について漁業者に周知徹底させるということが必要だと考えているわけでございます。
  241. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは、オットセイが漁網に絡まってかわいそうな状況を大写しにした写真なんですけれども、それは日本がやっているのだという非難なんですよ。ですから、調査、調査というのも結構ですけれども、そうではない、指導徹底すべきものは徹底するということをきちっとやっていかないと、こういうことまで一斉に日本が非難を受けるという状況は、極めて好ましくないと思うわけですね。  そこで、昭和五十八年のワシントン条約締約国会議で、ミンククジラなど四種類のクジラが国際的取引を禁止する附属書のIに格上げされたのであります。一方、アメリカの環境保護団体グリーンピースは、鯨の次にオットセイに活動の目標を置き、去年のこの条約の改定交渉でも米国政府に強く働きかけたとも聞いておるわけですが、将来オットセイもワシントン条約の取引禁止対象に加えられるおそれはないかどうか、お伺いをいたします。
  242. 瀬崎克己

    ○瀬崎説明員 ワシントン条約の正式の名称は、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約でございます。  そこで、この条約で規制しておりますのは大まかに言うと二つございまして、絶滅のおそれのある種で取引により影響を受けるものにつきましては、原則として商業上の取引は禁止されておるわけでございます。それから、現在必ずしも絶滅するおそれはございませんけれども、取引を厳重に規制いたしませんと絶滅するおそれがあるという種類、この種類につきましては商業上の取引は許されているわけでございますが、輸出国の輸出許可書ということでかなり厳格に規制しているわけでございます。  それで、この条約対象にするかしないかというのは、今申しましたように絶滅するおそれがあるかということと、第二は、現時点で絶滅はしないけれども取引を自由にすることによって近い将来絶滅するおそれがある、こういうものに限られるわけでございます。  そこでオットセイでございますけれども、確かに一部の団体がオットセイも規制すべきだというような御意見を持っていることは承知しておりますが、少なくとも国際会議の場におきましてそれは必ずしも定説になっていないわけでございます。現時点では、資源の状況から見ましてこれが直ちに絶滅するとか、あるいは商業取引を厳格にしないと絶滅するというような御意見は、まだ定説として固まっておりませんので、今後もしそういう事態になれば国際会議等の場におきましていろいろ議論が出てくるかと思いますが、現時点ではオットセイを条約対象にするということは必ずしも適切でないという考え方でございます。
  243. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、そういう動きがあって、そのことの原因が、オットセイがそのように五%も死んでおるのは漁網によるのだという、ここに写真もありますが、だからこれはワシントン条約にも入れるべきだ、その言わんとすることは日本はひどいということだと思うのです。ですから、そういう点は非常に注意してやっていただきたいと思います。  今、我が国は国際社会において、貿易問題を含めていろいろな部面において世界の非難を浴びておるわけです。端的に言うと、それは日本が基本的原則である国際ルールを守っていない面もあるのではないかと思うわけでありますが、その代表的なものが今お話のありました絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約、つまりワシントン条約の遵守の問題についてでありますけれども、この問題についてお伺いしておきたいと思います。  昨年十月ごろから、野生動物の国際保護に関する問題について日本に対する風当たりが強くなり、ワシントン条約の地域セミナーで対日非難決議がなされたり、さらに英国のエジンバラ公フィリップ殿下が訪日の折に苦言を呈され、中曽根総理は大変恥ずかしいと頭を下げたと言われておるわけでありますが、先日も私がこの委員会でこの問題をお伺いしたときに安倍外務大臣は、言うべきことは言い、守るべきことは守っていかねばならないとおっしゃっておられたわけであります。  私は、そういう考え方の一環として、四月一日から野生動植物の日本への輸入については、輸出国の証明書を義務づける措置をとったと思うわけでありますが、この措置であらゆる野生動植物の保護が十分厳守できることになるのかどうか、重ねて伺っておきたいと思います。外務省と通産省、まず外務省の方からお答えいただきたい。
  244. 瀬崎克己

    ○瀬崎説明員 昨年十月、マレーシアにおけるこの地域の専門家の会合におきまして、日本が不在のままに日本を非難する決議が採択されたのは事実でございます。  これにつきまして私どもは、手続的には非常に遺憾であるということでございまして、もちろんこの条約で守らなければならない義務を守るということで、姿勢を正すことは我々として努力するところでございますが、この国際会議の手続については非常に遺憾な点があったわけでございます。  他方、四月二十二日からブエノスアイレスにおいて第五回締約国会議が開かれますが、それまでに日本政府としてこの条約を遵守する措置をとってほしいということが、いろいろ要望されているわけでございます。  そこで、関係省庁の連絡会議を開催いたしまして、何回かの会合を重ねて、今先生指摘のとおり、原産地証明書をこの条約で義務づけられております輸出許可書に切りかえたということ、それから、従来は全国で二百二十二カ所くらいの税関からこういったものが入ってきたわけでございますけれども、その窓口を大幅に規制して三十五カ所に絞ったわけでございます。  ということで、国内の受け入れ態勢としては、この条約を厳格に守る体制はかなり整ったわけでございますが、輸出国側におきましても、例えばにせの輸出許可書あるいは原産地証明書を出すということがございまして、これについては外交ルートで従来以上に厳しく先方の発給機関に問いただしまして、にせものであればその取引をとめるというようなことをやっているわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、国内の体制を各省庁にお願いして御協力いただいて、いろいろ規制の強化をしているわけでございますが、外交ルートを通じまして、輸出国側にもこの条約を守るように強く要請していきたいと考えております。
  245. 奈須俊和

    ○奈須説明員 ただいま御紹介にありました当面の対応策によって、マレーシア等で出されました非難の対象になった問題が解決されるのかどうかということでございます。  従来の非難の原因といたしまして、ワシントン条約では輸出許可書がなければ輸入を認めてはいけないとなっておるにもかかわらず、輸出国の原産地証明書があれば認めておった、したがってかなりルーズな輸入管理になっておったという点があったわけでございます。この点につきましては、輸出許可書がなければだめだというふうに仕組みを改めた次第でございます。  こういうふうに仕組み自体を改めまして、次にはその仕組みが十分に運用できるよう、ただいまも御紹介がありましたように輸出許可書を提出されるわけですけれども、その真偽が若干疑わしい場合等につきましては、輸出許可書を出した相手国政府にきちんと確認するというふうなこととか、通関時におきますチェック体制を強化するというふうなことでこの仕組みを完全に運用していく、こういうふうに決定されたわけであります。そういう意味で、従来非難された点についても対応ができているというふうに存じております。
  246. 玉城栄一

    ○玉城委員 対応ができているということですが、その点についてはこれからちょっとお伺いしておきたいのです。  我が国においてパンダが人気者になり、コアラが人気者になったと同様に、昨年はエリマキトカゲが爆発的なブームを呼んで、たくさんのエリマキトカゲが日本に持ち込まれ、ある週刊誌には「やがて悲しき宴の後、屍累々、見世物に持ち込まれひた隠しにされたエリマキトカゲの末路」と題する記事が載っておったわけですね。日本に持ち込まれたエリマキトカゲは、七十匹から八十匹とも言われておるわけであります。現在、そのエリマキトカゲはほとんど生きてはいないと思うのですが、このエリマキトカゲはワシントン条約で言う保護されるべき動物なのかどうか、お伺いいたします。
  247. 奈須俊和

    ○奈須説明員 エリマキトカゲは、ワシントン条約の規制の対象とはなっておりません。
  248. 玉城栄一

    ○玉城委員 そうしますと、ワシントン条約で保護されていない動植物は今度の措置では保護されないわけですね。保護されるのですか、いかがですか。
  249. 瀬崎克己

    ○瀬崎説明員 先ほど御説明いたしましたが、いわゆる絶滅するおそれがある動物あるいは植物を規制の対象にするということでございますので、特に絶滅のおそれがないものについては規制の対象外でございます。
  250. 玉城栄一

    ○玉城委員 アメリカは、野生動植物の輸入国としては第一位でありながら、ワシントン条約を運用するために早くから法律の整備をしており、原産国が輸出を禁止している動植物は輸入を禁止するレーシー法という厳しい法律があると聞いておるわけです。この法律は、違反者に対する罰則も厳しく、最高懲役五年、罰金二万ドルを科しているものでありますが、当然エリマキトカゲも輸入できないはずであります。ところが我が国は、原産地国が輸出を禁止していても、動植物をひそかに持ち込んでしまえば現在の法体制からすれば違法ではないということになるわけでしょうか、いかがでしょうか。
  251. 奈須俊和

    ○奈須説明員 私ども、ワシントン条約の管理当局としまして、ワシントン条約対象となっています動植物及びその加工品についての輸出入規制をやっておるわけでございます。外国で輸出を禁止しているものについても、同様の規制をすればいいじゃないかという先生の御指摘でございますが、すべての輸出国といいますか、すべての国のそういう国内規制の内容は一体どういうものを対象にしているか、それからその取引を認める場合にどういう書類が必要か、そういうふうなことを熟知した上でなければ、輸出国が禁止をしているから日本でとめるというふうなことは技術的にかなり難しいのではないかと思っております。  逆に申し上げますれば、ワシントン条約というのは、こういう各国の扱いの違い、ばらばらの問題、こういう技術的な問題を解決するという意味もむしろあるわけかと思います。世界的にこういう規制の仕方を統一してやっていこうじゃないかという趣旨かと思います。その動物を保護すべきかどうか、一次的にはその動物を産する国の判断に仰ぐベきかと思います。もし、そういう国々がワシントン条約対象にしてほしいということであれば、直ちにアクションがとれるという仕組みになっておりますので、やはりワシントン条約の活用というのが基本ではないかと存じております。
  252. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、さっきもオットセイの条約のときに申し上げましたとおり、いろいろな意味我が国が非難の対象になっているわけです。御存じのとおりでありますが、これは大きな問題です。ですから、この間の措置で十分だということでありますけれども、今の問題から見ましても、現行の法体制からすれば、我が国では大手を振ってこのエリマキトカゲを持ち込むことができるわけです。そういう状態では、その動植物を保護している国が日本を非難するのは当然なことであると思うのです。米国のレーシー法のような法律がなぜ日本ではできないのか、お伺いいたします。
  253. 瀬崎克己

    ○瀬崎説明員 先般の各省連絡会議に基づいてとりました措置は、原産地証明書を輸出許可書に切りかえるとか、税関の窓口の数をほぼ十分の一に減らすとか、外交ルートでいろいろな書類の真偽を確かめるというような規制措置を強化したわけでございますが、もちろんこれだけで十分であるとは私ども考えてないわけでございます。  そこで、この間とりました措置というのは当面の措置でございまして、中長期的に何をすべきかということについては、今後さらに各省の連絡会議で詰めていくということになっておりますので、第五回の締約国会議でどのような意見が出るかわかりませんけれども日本としては、ワシントン条約を今後さらに遵守するためにいろいろな措置を検討していきたいということを考えておりまして、もちろんその中には今後日本の法体制をどうしていくかということも含まれているわけでございます。
  254. 玉城栄一

    ○玉城委員 ぜひ前向きに、積極的に早い機会にやっていただかないと、いろいろな点からも日本というのはけしからぬという非難を受けているわけですからね。  それで、さっきの対日非難決議についてもう一回伺っておきたいわけですが、この決議は野生生物保護運動に関係している方々に聞きますと、昨年十月クアラルンプールのアジア・オセアニア地域セミナーでなされたようでありますが、さっき手続的に非常に遺憾であったというお話もあったのですけれども、多分そのことだと思うのです。  聞くところによりますと、昨年四月、ワシントン条約事務局長ユージン・ラポイント氏が来日して、この地域セミナー参加を通産省、環境庁などに要請されたが、当初日本は、参加しないということを在スイス日本大使館を通じてワシントン条約事務局に通知されたと聞いております。その後、欠席はまずいということで、在マレーシア日本大使館の館員が出席され、そのときに対日非難決議が出されたはずでありますが、そのとおりですか。その決議の内容を言ってください。
  255. 瀬崎克己

    ○瀬崎説明員 先生指摘のとおり、このセミナーの開催の案内がございましたときに、管理当局の出席者ということでございましたので、日本で管理当局に指定されております通産省にお諮りしたわけでございますが、この動植物の専門家がたまたま別の国際会議に出張している期間でございましたので、日本としては出席できないということを事務当局に通報したわけでございます。その後事務当局から、日本は非常に重要な国なのでやはりぜひ参加してほしいということでございましたので、クアラルンプールで開催されたということもございまして、マレーシアの大使館員を出席せしめたわけでございます。  会合は全部で十二回ございまして、十二回の会合のうち四回出ております。それで、最後の会合で決議案が採択されたわけでございますが、その決議案が採択される二時間前に大使館員が事務局に電話をかけまして、決議案等何か文書を採択するのかという照会をしたところ、先方は、そういうことは一切ないんだ、これは専門家の会合で、技術的な問題を意見交換をする場であるということを言いまして、たまたま当該大使館員が別途の用事がございまして行かなかったわけでございます。  ところが、ふたをあけてみますと、日本を非難するような決議案が出ていたわけでございまして、もちろん私どもといたしましては、条約で求められております輸出許可書にかわりまして原産地証明を代行せしめていたというような点については、非難されても仕方がないという面がございまして、これは今回改正したわけでございますが、非難をされる国から照会したにもかかわらず、事実として会議の主催者が、そういうことは一切ないんだと、弁明の機会を一切与えずにやったということについての手続的な点につきましては、私どもとしては、国際会議の事務当局のやり方としてはいささか異常ではないかということで、その後先方に注意をしたわけでございます。  それから、決議の内容でございますが、日本条約を十分に遵守していないという点について遺憾の意を表するとともに、第五回の締約国会議までに何らかの措置をとるように求める、もし措置がとられないときには、どういう措置をとるかについて検討しようという内容でございました。今回、四月二十二日の会議に際しましては、日本がとった措置を十分説明して各国の理解を得るとともに、また今後日本として何をすべきかということにつきまして、事務当局あるいは各国の意見を聞いてまいりたいと考えております。
  256. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは非常にけしからぬですね。私も非難したくなるぐらいです。どういうふうにあなたが釈明しようとも、結果としてこういう対日非難決議がされているわけです。ですから、その結果日本はもう何といいますか、アニマルギャングであるとか、これは外務省としては重大問題です。しかも、中曽根総理がこのことで恥ずかしいと。あのフィリップ公も日本はひどいじゃないかと。決議の内容も大変な対日非難決議ですよ。このことを外務大臣、どのようにお考えになりますか。
  257. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに、野生動物保護につきましては、日本が何か積極的でないような批判をいろいろと受けたことは残念でありますし、野生動物を保護するということについては日本も国際的な、一般的な感覚を持っておると私は思っておりますし、こういう点はこれから、そういうそしりを受けないように努めてまいらなければならないと思っております。何か日本が鯨をとっているからということでいろいろと批判を受けているわけですが、これなんか私たちは到底了承できないので、これはそうした野生動物の保護とつながっているものじゃないというふうに思うわけですが、何かそうした印象で、世界的に日本が特別な国だというふうなことを言われるのは非常に残念に思います。
  258. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣のおっしゃるように、言うべきことは言う、守るべきことも守るとおっしゃいますし、やるべきこともきちっとやっていただかないと、例えばさっきの問題のように大事なところに、いや参加しないんだ、途中から出ていって一言も発言しなかった、いやさせなかったんだ、結果としてこういう非難決議をされる。非常に何というか、そういう事態そのものが私は非難されるのではないかと思うのです。  そこでこの問題に関連しまして、エリマキトカゲの次はウーパールーパー、大臣御存じですか。珍獣だと言われておりますが、このウーパールーパーは福田元首相がお持ちだそうであります。科学万博群馬パビリオンに出ておると聞いているわけでありますが、このウーパールーパーはワシントン条約対象になっているのか、あわせて、ラッコについてはどうなのか、そしてこれはあわせて通産省、ラッコは輸入してもよいのか。
  259. 佐野弘

    ○佐野説明員 まず、ウーパールーパーについて私の方からお答えさせていただきます。  ウーパールーパーは通称でございまして、英名ではアホロートルという動物でございまして、これは両生類でございますからカエルのたぐいなんですが、非常に珍しいのは、成熟過程で両生類はだんだん変態していくわけでございますが、幼生の形のままで成熟してしまうということで、最近何かテレビなんかにも時々出てきまして世間の関心をあおっているようでございます。原産はメキシコでございまして、現在日本輸入されている輸出国はオーストラリアが主と聞いております。  実は、これは附属書のⅡに入っている種でございますので、当然、正式にオーストラリアの輸出許可書を持って輸入しているということで、輸入手続そのものは正規でございまして問題はないわけでございます。非常に、人工飼育が容易であるというようなことでございまして、例えば上野動物園なんかでも人工飼育でふえているというような実績もございます。したがいまして、オーストラリアからのものも多分人工飼育下のものであって、野生生物という範疇には入らないものだろうと私どもは理解はしております。  しかしながら、エリマキトカゲ等に見られるように、私ども鳥獣保護行政をやっている立場から申し上げますと、商業目的で過度に興味をあおり立てるというような動物の扱い方については、決して好ましいことではないと考えておるわけであります。
  260. 奈須俊和

    ○奈須説明員 ラッコについてお答えいたします。ラッコの一部の種につきましては対象になっておりますが、それ以外のものは対象外ということでございます。
  261. 玉城栄一

    ○玉城委員 いわゆる対象外ということは、輸入できるということですね。
  262. 奈須俊和

    ○奈須説明員 ワシントン条約の規制の対象外になっているラッコは、ワシントン条約の規制なしに輸入できるということであります。
  263. 玉城栄一

    ○玉城委員 その対象外について、いろいろな珍獣類が自由に出入りができるというあり方。ですから我が国も先進国並みに、アメリカのようにそういうものを厳しく規制するレーシー法のような法律が必要ではないかと思います。  最後に、環境庁にお伺いいたしますが、我が国内においても、このワシントン条約に入っていないもので当然この条約の中に入れて保護すべきものがたくさんあると思うのですが、世界我が国姿勢を示す意味でもワシントン条約の中に入れた方がよいものがどれぐらいあるのか。一つはイリオモテヤマネコ、それからヤンバルクイナ、それからヤンバルテナガコガネ、こういうものも含めてお伺いいたします。
  264. 佐野弘

    ○佐野説明員 お答えいたします。  我が国に生息します野生鳥獣あるいは野生生物全体を見ますと、今先生の御指摘のような世界的に非常に珍しい種がたくさんございます。その中でも、既に附属書Ⅰなり附属書Ⅱに登載されているものもあるわけでございますが、これから私どもがそういう対象として考えるに足るようなものということになりますと、例えばノグチゲラあるいはヤンバルクイナ、それから奄美にしかいませんアマミノクロウサギといったようなたぐいのものが、対象として考えてもいいのじゃないかということは考えております。  ただワシントン条約そのものは、先ほど外務省の方から御説明ありましたように、過度な国際取引によって野生生物の絶滅を起こさないように世界各国が協力していこうという趣旨の条約でございますので、今申し上げましたようないろいろな珍しい動物につきましては、私ども鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律とかあるいは文化財保護法とか厳格に規制しておりまして、今のところ国際取引によって絶滅のおそれがあるというものには該当していかないのではないかというような実際的な感じは持っております。しかし、先生指摘の、世界に対して前向きの姿勢を示すという意味合いについては、大変御示唆に富んだお考えと思いますので、私ども、外務省なんかと相談しながら今後十分勉強させていただきたい、かように考えております。
  265. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、先ほどから申し上げておりますように、日本というのはひどいじゃないか、動物を虐待しているじゃないかという非難があちこちからあるわけですから、我が国は決してそうではないんだという姿勢を示す意味でも、当然検討していただきたいと思います。  SAR条約については、ちょっと時間がございませんので次の機会にします。以上です。
  266. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、木下敬之助君。
  267. 木下敬之助

    ○木下委員 SAR条約に関して質問いたします。  最近における我が国周辺の海域の海難発生状況とその救助体制はどうなっているか、お伺いいたします。
  268. 草薙博文

    ○草薙説明員 お答えします。  昭和五十九年に、我が国周辺海域で救助を必要とする海難に遭遇した船舶は千九百二十隻でありまして、その海難に伴いまして死亡、行方不明者は二百五十二名となっております。これを距岸別に見てみますと、十二海里未満の海域では千六百四十九隻、十二海里から二百海里では二百二隻、二百海里以遠では六十九隻となっております。この救助状況でございますが、千九百二十隻のうち自力入港の二百五十七隻を除き、千三百十四隻が救助されて、救助率は七九%となっております。
  269. 木下敬之助

    ○木下委員 特に事故の多い海域とか、救助率の悪い海域とかはございますか。
  270. 草薙博文

    ○草薙説明員 特に海難の多い海域と申しますと、まず大部分が湾内や陸岸に近い沿岸部において発生しておりますが、遠距離の海域における海難も後を絶っておりません。この遠距離における海難のうち多数の人命の損失を伴う海難は、商船におきましてはアメリカ航路それからオーストラリア航路という航路筋に当たります本州の東方海域、漁船におきましては北海道から千島列島沿いの北洋海域ということになっております。
  271. 木下敬之助

    ○木下委員 そういった事故の多い危険な海域は、今のままの体制で十分と考えておられますか。
  272. 草薙博文

    ○草薙説明員 海上保安庁では海難救助に当たりましては、遭難の状況を迅速に把握して、遭難船に対しましては自救措置を講じてもらうとともに、有効な勢力を迅速に魂場に投入するというようなことで救助をすることをしております。このため海上保安庁におきましては、沿岸の二十二カ所の海岸局におきまして、遭難通信を常時聴守するとともに、全国二十四カ所の方位測定所におきまして、方位を測定する体制をとるとともに、管区本部それから保安部署におきましては、二十四時間の当直体制をとっております。  また、全国百四十五の基地に巡視船艇三百四十六隻、航空機五十九機及び特殊救難隊を配備して、即応体制をとっております。特に、先ほど申しました海難の多いところというところにつきましては、気象それから海象の状況、船舶の交通のふくそうの状況、漁船の出漁状況等を勘案し、あらかじめ巡視船艇を前進配備して緊急事態に即応できるよう努めております。
  273. 木下敬之助

    ○木下委員 このSAR条約日本が入ったとしまして、それを効果あるようにするためには、日本としては救助体制整備をより充実させる必要が生じてくる、このように考えておられるかどうか、お伺いいたします。
  274. 辻宏邦

    ○辻説明員 お答えいたします。  我が国条約に加入いたしました場合、条約規定されております捜索救助区域は、今後関係締約国と話し合いによって決めていくことになりますけれども、現在の締約国となっております、当面関係いたしますのは、米国との関係においてでございますが、これは米国との関係におきまして、我が国の分担いたします区域は、太平洋側で本邦から千二百海里にも及ぶ広大な海域になることが予想されております。  私どもといたしましては、この海域をカバーいたしますために、ヘリコプター搭載型の巡視船、それに航空機を中心といたします広域的な機動力にすぐれました哨戒体制を確立することにしております。現在ヘリコプター搭載型の巡視船は、二機搭載型が建造中でございますが、一隻ございます。それから、一機搭載型が七隻ございまして、海難救助活動等に従事しておりますが、広大な海域におきまして常時捜索救助活動を的確に行っていくためには、さらにヘリコプター搭載型の巡視船を増強してまいりたいと考えております。  また、航空機につきましては、遠距離救難に対応するための体制整備を図りますとともに、各基地におきます常時出動できる体制の確立を目指しまして、引き続き航空機も増強してまいる計画でおります。
  275. 木下敬之助

    ○木下委員 一つのアィデアとして申し上げるのでございますが、SAR条約の趣旨に沿って効果的な捜索救助活動を行うためには、航続距離の長い、例えばUS1救難飛行艇、こういったものも活用すべきと思いますが、どうでしょうか。今は必要な場合、防衛庁に協力を求めていると思いますが、海上保安庁でこれを装備すべきではないかと思います。この点、どうお考えでしょうか。
  276. 辻宏邦

    ○辻説明員 ただいま御質問のございました遠距離用の救難機につきましては、私どもとしても整備してまいりたいと考えておりますけれども、US1の点につきましては、御承知のとおり、海上自衛隊の救難飛行艇として開発された機材でございまして、現在おりますのは海上自衛隊の第三十一航空群、岩国にございますが、これに八機配備されておると承知しておりまして、海難救助等に従事しております。  私ども海上保安庁がこのUS1を採用するに当たりましては、離着水訓練の海域の確保、この訓練海域を確保するためには多額の漁業補償等を要しますし、また、海に臨みました航空基地の整備をしていかなければならない、そういった整備費、さらに、普通の陸上機に比べますと補給用品の保有、これが大変多量になる、こういったようなことで大変多額の経費を必要といたします。また一方、離着水に伴いまして補用部品の交換でありますとか船体の洗浄、防錆、さびどめの措置の作業を要する、こういったようなことで大変多数の人が必要でございます。  そういったことでございまして、現段階では、同機を購入することは私どもとしては大変困難な状況であると考えております。しかしながら、こういったような飛行艇を必要とするような海難の場合につきましては、現在も防衛庁の御協力をいただいておりますが、引き続き防衛庁の御協力をいただき、災害派遣を要請する等によって適切に御協力をいただいて対処してまいりたいと考えております。  以上でございます。
  277. 木下敬之助

    ○木下委員 いろいろと検討の上、効率のよい役に立つものを充実されていかれることと思いますが、そういったものの予算的裏づけはどうなっておりますか。
  278. 茅根滋男

    ○茅根説明員 お答え申し上げます。  海上保安庁は、このSAR条約の採択後にこの条約への加入の方針を固めまして、遠距離海難等に即応するために五十七年度から広域哨戒体制と我々は呼んでおりますけれども、巡視船艇、航空機の整備、それから船位通報制度を実施するために海洋情報システム、コンピューターシステムでございますけれども、このようなものを導入するために、五十七年度から鋭意いろいろな予算をつぎ込んでおりますけれども、これを丸めましてざっと概数で申し上げますと、巡視船艇、航空機で申し上げますと約三百六十三億、それからコンピューターの導入、いわゆる海洋情報システムの導入で約二十四億という予算を使っております。
  279. 木下敬之助

    ○木下委員 次に質問いたしますが、この条約によって負うこととなる我が国の義務の範囲をお伺いいたしたいと思います。
  280. 瀬崎克己

    ○瀬崎説明員 この条約に加わることによって負う義務でございますが、条約テキストの十八ページ、「自国の沿岸水域における遭難者に対して適切な捜索救助業務を実施するために必要な措置をとる」これが第一でございます。それから第二といたしましては、まだこれから締約国どのようになるかわかりませんけれども締約国との合意によって捜索救助区域を設けるということでございます。
  281. 木下敬之助

    ○木下委員 その両方の区域は、どのように考えておられますか。
  282. 瀬崎克己

    ○瀬崎説明員 今申し上げましたとおり二つのカテゴリーの水域があるわけでございますが、第一の沿岸水域でございます。これにつきましては、条約の文言上、特にその沿岸水域をどのように決めるということについての定義はございません。それから条約の審議の際の記録を読みましても、これをどのように決めるかということについても明白な手がかりはないわけでございます。そこで私どもといたしましては、この沿岸水域の範囲につきましては、条約の趣旨、目的、自国周辺の船舶交通の実態などを勘案いたしまして、各国が合理的に判断するものというふうに考えているわけでございますが、日本政府といたしましては、この沿岸水域につきましては領海の範囲と解釈しております。  それから第二のカテゴリーの近接締約国との間で取り決めます救助区域の範囲でございますが、これにつきましては、当初この条約の草案では飛行情報区域にしようというような話があったわけでございますけれども日本側がいろいろ提案したことを踏まえましてこの条文が修正されまして、最終的には私どもといたしましては、この捜索救助区域の範囲につきましては、飛行情報区の区域、それから両国間の捜索救助能力、通信能力、海域利用状況、海難発生状況などを勘案いたしまして、できるだけ船舶にとりまして単純な区域にするようにということで考えております。
  283. 木下敬之助

    ○木下委員 その第一の方でお伺いいたしますが、領海ということで言われました。念のためにお伺いしますが、北方領土、竹島、尖閣列島、こういったところの周りはどのように考えて実施するように整理されておられますか。
  284. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 北方領土及び竹島は我が国固有の領土でございまして、この周りの水域がこの条約に言います我が国の沿岸水域に該当することは当然でございます。しかしながら、残念ながらこの北方領土及び竹島は、今それぞれソ連及び韓国が実効的な支配を及ぼしている次第でございます。しかしながら政府としては、仮にこれらの北方領土ないし竹島の沿岸水域で遭難が発生しました場合には、人道的な観点から、捜索救助活動ができる限り円滑に行われるよう適切な措置を講ずることとしたいと考えております。  尖閣諸島につきましては、これは我が国固有の領土であり、現に我が国がこれを有効に支配しておりますので、その沿岸水域におきまして我が国がこの条約に基づいて捜索救助活動を実施することには、何ら問題はございません。
  285. 木下敬之助

    ○木下委員 第二の観点でお伺いいたしますが、その捜索救助区域を、条約が成立すればアメリカと話し合って決めていくと思うのですが、これはある程度話し合いが進んでいると思いますが、どのような話になっておりますか。
  286. 瀬崎克己

    ○瀬崎説明員 この条約につきましては、ただいま御審議いただいているわけでございますが、もし、今国会中にこの条約が御承認いただけるということでございますと、加盟のための手続をとるわけでございます。  それから、この条約自体は本年の六月二十二日に発効するということでございまして、現時点ではまだ発効してないわけでございまして、発効後日本加盟することになれば、既に加入手続を進めているアメリカとの間で話し合いを進めていくということでございます。
  287. 木下敬之助

    ○木下委員 そのアメリカとの話し合いで、大体どのくらいのあたりを分け合おう、こういった話がある程度あった上でこれを判断するんじゃないですか。お聞かせ願えませんか。
  288. 辻宏邦

    ○辻説明員 アメリカのコーストガード、沿岸警備隊というのがございますが、現在、この沿岸警備隊と私どもは事務的なと申しますか、実務的な話し合いを実はさしていただいております。この場合、我が国の場合には、広大な太平洋のどこまでの範囲を我が国の捜索救助区域とするかが大きな問題でございますが、我が国の立場から申しますと、世界でも有数の海運水産国であることを考え、船舶交通の実態でありますとかアメリカとの地理的な関係、それから私どもアメリカの沿岸警備隊との持っております捜索救助勢力の能力、こういったこと等を考えまして、かなり広大な範囲をアメリカ我が国とが相当程度カバーせざるを得ないと考えております。  一応、今のところ実務的な話し合いの中では、東側につきましては東京とハワイのほぼ中間の東経百六十五度の線、また南側につきましては、一部で重複するかもしれませんが、一応北緯十七度の線で限られた区域を我が国の捜索救助区域とすることについて現在話し合いをしているところでございます。この海域ですと、本邦からおよそ千二百海里の海域を太平洋側では考えております。
  289. 木下敬之助

    ○木下委員 これと並行して、これを実効ならしめるためにするのでしょうが、我が国の船位通報制度についてお伺いいたします。  これはこのパンフレットを見ましても無料である、このようにうたわれておりますが、テレックスの使用はなぜ負担免除とならないのか、お伺いいたしたいと思います。
  290. 茅根滋男

    ○茅根説明員 お答えいたします。  このシステムを準備いたしますときに、できるだけたくさんの船舶から情報をいただきたいということで、今最も普及しております無線通信によることが最適だというふうに判断いたしまして、海上保安庁では、現在持っております通信所、さらに東京に短波通信所を、先ほど二十四億と申し上げましたけれども、その中で整備いたしまして、この方法でぜひやっていただきたいということでお願いしておりまして、こういうふうにしますとただでございますので、ぜひたくさんの船がこの方法でお願いしたいと思っております。
  291. 木下敬之助

    ○木下委員 無線が一番普及しているからそれの受け入れを準備する、これは当たり前のことでありまして、無線しか積んでないところがいっぱいありますから当然ですが、テレックスで送っても構わないわけでしょう。テレックスの方も受け入れるわけでしょう。
  292. 茅根滋男

    ○茅根説明員 テレックスは、いわゆる国際電電の回線でございまして当然有料でございますけれども、そのための国の予算というのは特に準備しておりませんので、これで送っていただけばもちろん受けますけれども、それは送った方の御負担になるということでございます。
  293. 木下敬之助

    ○木下委員 受け入れるとしたときに、これはする方は無線で送るのとテレックスで送るのとどっちが気楽に送れるか、気持ちや作業の負担が少ないか。そのときにテレックスの方が楽だからということで送るところがあったとしたら、それもやはり無料にしていく方向が、できるだけ任意な方にたくさん入って負担なくやってもらうということになるのじゃないかと思いますが、どうですか。これはできるだけ無料であるべきだと思われませんか。
  294. 茅根滋男

    ○茅根説明員 この船位通報制度は、本来が船舶の相互救助、援助をすることを目的にしております任意の制度でございまして、利用船舶の多数が装備しておりますものによるのが一番いい。何回も申し上げておりますけれども、そういうものを準備いたしましたので、今当面当庁といたしましては、先生の御期待には沿えないと思いますけれども、その辺は検討課題だと思います。
  295. 木下敬之助

    ○木下委員 検討課題ということで余りつっついてもあれなんですが、最後に一言だけ。先進制度であるアンバーの方は今どのようになっておって、こっちは無料化を考えているのではないかとも伝わってくるのですが、この辺は何か情報でもございますか。
  296. 茅根滋男

    ○茅根説明員 お答えいたします。  アンバーにつきましても日本と同じような制度をしいておりまして、アンバーのユーザーズマニュアルというものの中では、特にテレックス番号等を付記しておりませんので、恐らくテレックスは予想してないのであろうというふうに我が方は考えておりまして、今無料化の動きがあるというのは特に承知しておりません。
  297. 木下敬之助

    ○木下委員 できるだけやりやすくしていただきたいと思います。だめなときは、半額でも国が負担することを考えていただきたいと思います。  今申し上げましたように、この船位通報制度を円滑に進めるためには、船側の負担をできる限り軽減する必要がございます。これは、金銭的な面からも当然のことですが、手続、労力、その他の負担もできる限りなくすようにしなければなりません。その一つと考えられますものに、気象通報と船位通報制度との整合を図り、重複が避けられるようにすべきと考えますが、どうでしょうか。気象通報をすればそれが船位通報につながったり、船位通報のときに一緒に気象通報を海上保安庁でも取り扱うことができる、こういったことはできないものでしょうか。
  298. 辻宏邦

    ○辻説明員 船員の方の労力をできるだけ軽減するという御趣旨は、全くそのとおりでございますので、御指摘の点につきましては、現在事務的に検討を行っておるところでございます。ただ、制度の違い等がございまして、いろいろ解決すべき問題がかなりございますので、御趣旨を体しまして検討を継続してまいりたいと思います。
  299. 木下敬之助

    ○木下委員 いま一つ考えられますことに、船位を知らせることが自分のマイナスになる船の存在することでございます。密漁船のことはおくとしましても、正規の操業でも、魚のいるところは企業秘密としてそれを他に知らせることになる船位通報はしない、このように思われる漁船について、どのような対策を考えておられるでしょうか、お伺いいたします。
  300. 茅根滋男

    ○茅根説明員 漁船の方は確かにそのような傾向がおありのようでございますので、現在漁船の方と一緒になってどういう方法で通報していただくかを詰めておりまして、例えばおおよその位置だけを言っていただくというようなことでも詰めております。
  301. 木下敬之助

    ○木下委員 どうぞ、十分に配慮をされてやっていただきたいと思います。  この問題の最後に、二、三点確認させていただきますが、ちょっと前に中国の魚雷艇が漂流しているところを韓国が助けたような例もありましたが、このSAR条約は軍艦にも適用するのか、お伺いいたします。
  302. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 この条約には、特定の種類の船舶の遭難についてのみ適用するというような規定がございませんので、軍艦を含みますすべての船舶の遭難に適用されると考えられます。
  303. 木下敬之助

    ○木下委員 戦時にはどのようになりますか。このSAR条約そのものと船位通報制度、これは戦時どんな感じになりますか。
  304. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 前段について外務省からお答えいたしますが、この条約には武力紛争が発生した場合に関する特段の規定はございません。武力紛争の場合は適用しないというような規定はない次第でございます。しかしながら、武力紛争が現実に発生しておりまして、この結果捜索救助活動に著しい危険が伴うというような理由から捜索救助機関がこの条約の定める手続に従いまして活動を実施することが実態的に困難な場合、そのような救助を行わないことが仮にありました場合、それをもって直ちにこの条約の義務違反ということにはならないと考えております。
  305. 木下敬之助

    ○木下委員 船位通報制度の方は。
  306. 茅根滋男

    ○茅根説明員 当然、この制度は任意でございますので、恐らく軍艦が自分の船が今ここにいるぞというようなことを言ってくることはないと……
  307. 木下敬之助

    ○木下委員 いや、軍艦じゃない。戦時の一般の船位通報。
  308. 茅根滋男

    ○茅根説明員 御質問の御趣旨は、戦時の場合に一般の船が海上保安庁の方に位置を言ってくるかどうか……
  309. 木下敬之助

    ○木下委員 では、もう一度言いましょう。この船位通報制度は平時も戦時も同じですかという意味です。
  310. 茅根滋男

    ○茅根説明員 海上保安庁としては、海難救助という責務上、一般の船から通報は受け付けます。
  311. 木下敬之助

    ○木下委員 この条約は、我が国から千二百海里あたりの海域の捜索救助は、アメリカと分担し合ったり協力し合ったりして行うと思いますが、千海里のシーレーン防衛と混同されたりすることのないよう、当然人命救助一筋でやるべきと考えますが、この点をどう考えておられますか、お伺いいたします。
  312. 瀬崎克己

    ○瀬崎説明員 この条約につきましては、大臣より提案説明の際に申し上げたわけでございますけれども、海上における遭難者の敏速かつ効果的な救助のために沿岸国が国内制度を確立すること、それから関係国間で協力を行うことを定めるものである、これがこの条約の根幹でございます。それから、この条約を審議した際の記録を調べましても、防衛問題についての言及というのは一切どこの国からもなかったわけでございます。したがいまして、この条約については、シーレーンを含めまして防衛問題というものは、一切念頭に置いてないということでございます。
  313. 木下敬之助

    ○木下委員 時間がなくなりましたので、オットセイとマグロの方につきましては、それぞれこの条約は何年かたってやってまいっておりますので、成果は上がっておるのか、そして今後の見通しはどのようになっておるかをお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  314. 木村崇之

    ○木村説明員 北太平洋のおつとせいの保存に関する暫定条約に関しましては、この条約は、オットセイ資源を毎年最大の猟獲が得られるような水準にまで到達させ、維持する、そのためにどのような方法でどの程度の猟獲を行ったらよいかという問題等について、科学的知識を得るために共同調査を行うこと等を目的としているわけでございます。昭和三十二年のこの条約の発効以来、四カ国の協力体制が確立され、その後もこの体制が維持されているということは、オットセイ資源保存の見地から意義があるものと考えております。  大西洋のまぐろ類保存のための国際条約につきましては、この条約は、国際協力により大西洋のマグロ類の資源を最大の持続的漁獲を可能にする水準に維持するところにあります。この条約目的の遂行のために設置されている大西洋まぐろ類保存国際委員会は、マグロ類の資源に関する情報の収集及び分析、最大の持続的漁獲及び効果的な利用を確保する水準にその資源を維持するための方法の研究等を行うとともに、マグロ類に関する種々の保存措置を勧告してきております。これらの活動を通じまして、大西洋のマグロ類資源についての科学的知識が深まりまして、この知識を基礎として同資源の適切な保存と有効利用が図られているということは、大西洋における我が国マグロ漁業の長期安定的操業を確保するために意義があるというふうに考えております。
  315. 木下敬之助

    ○木下委員 ありがとうございました。
  316. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、岡崎万寿秀君。
  317. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 私は、SAR条約について、それに関連する質問をしてみたいと思います。  先ほどから海上保安庁とシーレーン防衛とのかかわりについては、何人かの質問がありました。その上に立って御質問をいたします。  関係がないようなお話でありましたけれども、しかし、これは一九八一年の五月、当時の鈴木総理の訪米でシーレーン防衛の問題について約束が行われた後、自民党政府の中で、海上保安庁とシーレーン防衛との関係をつける方向の意見がかなり積極的に出されていることなどが資料としてあります。私は、ここに新聞の切り抜きを持ってまいりましたが、これは一九八二年四月二十三日、総合エネルギー対策推進閣僚会議での発言なんです。自民党の当時の田中総務会長の御発言ですが、「海難救助の国際協定であるサラ協定加盟し、海上保安庁が相当な能力の船を持てば、シーレーン防衛の任務も果たせる」このように言っていますし、同じ会議で小坂運輸大臣は「五十七年度予算編成時にもその問題は議論となった。海上保安庁として、かなり大型の船舶を持つ必要があるわけだが、実現しないでいる」こういう発言もあります。  その後、五十八年度三千二百トンのヘリ搭載型の巡視船六隻が現に保有されていますし、五十九年度は四千五百トンのヘリ搭載型、これは二機ですが、巡視船一隻が追加されていますし、聞くところによりますと、あと五隻ほど欲しいという話なんでございますね。そういう点などから見ますならば、それから千二百海里という責任分担区域の方向だというふうにも聞きましたし、いろいろな点でシーレーン防衛に関係を持たせたいという政府・自民党筋の意向に接近する方向で事態は動いているように思いますけれども関係がないというふうにはっきり言い切れますか。
  318. 岡田專治

    岡田政府委員 私どもは、海上保安庁法の規定に基づきまして組織を運営しておるわけでございまして、ただいま先生の御指摘になりましたような議論の経緯については私自身つまびらかではございませんけれども、いずれにいたしましても、警察機関としての海上保安庁法の任務規定を越えることはできないし、またそのようなつもりも全くございません。
  319. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そのような方向で行くべきであるというふうに思いますけれども、しかし自衛隊法によりますと、有事の際には先ほど議論があったように、海上保安庁は防衛庁長官の指揮下に入ることになっているわけですね。シーレーン防衛に際して自衛隊がその防衛作戦活動に入った場合、その指揮下にある海上保安庁がこれと無関係でいられるはずはないというふうに思うのです。海上保安庁法によって直接の軍事機能は持たないにしても、広い意味で例えば広域捜査とか、あるいは物資、燃料等の補給とか、あるいは情報収集とか、いろいろな意味でこのシーレーン防衛の体制に組み込まれることがないというふうにはっきり言えますか。
  320. 岡田專治

    岡田政府委員 ただいま御指摘がございましたように、自衛隊法の八十条の規定発動があった場合におきましては、御指摘のような海上保安庁も防衛庁長官の指揮下に入るわけでございますけれども、かねがね本委員会におきましても申し上げておるところでございますが、海上保安庁法第二十五条は厳然と生きておるわけでございまして、私どもがいやしくも軍隊のような機能を営むことは全くできないわけでございます。したがいまして、当庁として本来持っておりますいわゆる警察機関的なことあるいは救難機関的な業務、このようなことに専心することによりまして、そういう状況下においてこの組織が機能する、かように考えている次第でございます。
  321. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 軍隊機能を持たなくても、本来持っている機能でシーレーン防衛に参加するということですね。どうですか。
  322. 岡田專治

    岡田政府委員 私はただいまの答弁におきまして、シーレーン防衛に参加するとかそのようなことを申し上げたつもりは毛頭ございませんので、もしさように御理解いただいたとするならば、私どもの発言が不適切でありますので、申しわけないと思っております。しかしながら、私が申し上げたかったことは、そのような防衛庁長官の指揮下に入りましても、あくまでも我が海上保安庁が行うことは、海上における人命、財産の保護、海上における犯罪の取り締まりあるいは救難、航路標識の管理、水路の維持、そのような海上保安庁が現に持っている機関としての所掌事務の範囲内で仕事を行う、こういうことでございます。
  323. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 同じことを繰り返さなくて結構です。  それでは、絶対にシーレーン防衛の枠組みに入らないというふうに約束できますね。端的にお答え願います。
  324. 岡田專治

    岡田政府委員 シーレーン防衛の枠組みという言葉の中身が、私、まだ十分には理解できていないのかもしれませんが、いわゆる軍事的な意味でのシーレーン防衛という意味であるならば、私どもはそれに参加することができません。
  325. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 まだちょっとあいまいさが残っていますけれども、時間がありませんので、また別の機会にやりましょう。  昨年十二月に日米共同作戦研究ができまして、これについては外務省に署名以前に話がなかったということで、外務省筋からは、これはシビリアンコントロールとのかかわりで遺憾の意を表明されたことなどが国会でありましたけれども、今シーレーン防衛の日米共同の研究が行われているわけでありますが、この研究についての説明は受けていますか。
  326. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 本件につきましては、委員御承知のように、日米間で設けられております安保協議委員会の下部機構としての防衛協力委員会、これに随時報告するということにもなっておりますし、また、昨年ホノルルにおきまして安保事務レベル協議が行われました際に、シーレーン防衛共同作戦計画の研究の進捗状況について報告を日米間で行い合ったという経緯もございます。したがいまして、外務省といたしましても、その間におきまして、防衛庁当局より適宜研究の進捗状況につきまして説明を受けておる次第でございます。
  327. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 説明を受けている、それならば、その点についてお聞きしたいのですが、この国会でもしばしば、公海上での核兵器を積載する米艦船と自衛隊との共同対処の問題があり得る、また核積載艦の護衛もあり得る、さらに共同作戦中に米軍の核使用を排除できない、こういう答弁等がありましたが、これらは今研究中のシーレーン防衛の中に包含されるものでありますね。
  328. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 米軍の核兵器の使用の問題につきましては、従来から防衛庁の方より御答弁申し上げておる経緯がございますが、安保条約五条事態における日米共同対処の関連の問題といたしまして、従来から行われております共同作戦研究、それからこのシーレーン防衛の研究、このいずれにおきましても、核兵器の使用という問題は想定されておらないということでございます。
  329. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 核兵器の使用はシーレーン防衛研究の中に想定されていない、そういうことですね。  それでは、核兵器搭載艦との共同対処も想定されていませんか。
  330. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 研究の具体的な内容につきまして私どもの方から申し上げる立場にございませんが、一般的な考え方として申し上げますれば、共同対処に当たるアメリカの軍艦につきまして、核を搭載しているかいないかということについての区別は、特段に考えておらないということであろうと存じます。
  331. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 あるかないかははっきりしないにしても、公海上においては既に核搭載艦が行動し、これらの共同対処はあり得るというふうにしばしば答弁されているわけですよ。そういうことは、今度のシーレーン防衛研究の中には包含されていないのかどうかということなんです。あいまいでなく、はっきりしてもらいたいのです。
  332. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 私が御答弁申し上げました趣旨は二点ございまして、一点は、公海上における米軍の核兵器の使用そのものの問題は、シーレーン共同研究の中で想定されておらないということでございます。第二点は、共同対処に当たる米国の軍艦が核兵器を積んでいるかいないかということは、日米間のそういう研究の過程におきまして特に問題になる性質のことではないということでございます。
  333. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 積んでいるかいないかが、問題にならぬということにはならぬと私は思いますけれども。  それでは、研究は今おっしゃったような中身でいいとしましても、実際のシーレーン防衛の中にしばしば私が挙げました公海上での、もちろん日本有事とか個別的自衛権の範囲とかいろいろな前提がありますけれども、そういう形での核兵器搭載艦との共同作戦とかあるいは共同作戦中の核使用とかということは、研究は別ですよ、一般的にシーレーン防衛の中に包含されるものですか。そのことをはっきりお答え願いたいと思います。
  334. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 これも、従来から総理の御答弁等におきまして政府が申し上げておることでございますが、公海上我が国が武力攻撃を受けている、すなわち安保条約第五条の事態というもとにおきまして、我が国の領域外におきます我が国の防衛のために必要な、真にやむを得ざる状況が生じた場合の核兵器の使用をあらかじめ一切排除してしまうということは、安保条約の根幹でありまするところのアメリカの抑止力というものを損なうということになりまするので、そういうことは申し上げられないということで従来から政府が御答弁申し上げているところでございます。
  335. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 答弁になっていないです。シーレーン防衛とのかかわりを言っているのです。シーレーン防衛の中に今おっしゃったことは入るのか入らないのか、どうですか。
  336. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 先ほどの繰り返しになりますが、シーレーン研究の中におきまして核兵器の使用は想定されておらないということは、もう一度繰り返し申し上げさせていただきます。  一般論として、シーレーン防衛でありましょうとあるいはその他の事態でありましょうと、安保条約五条の事態における米国我が国の領域外における核兵器の使用をあらかじめ一切排除してしまうということは、核の抑止力に依存をしておる我が国の安保条約、安保体制というもとにおきましては、そういうことは好ましくないというのが政府の基本的な立場でございます。
  337. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 シーレーン防衛であろうとなかろうと、排除してしまうことは望ましくないと思うというのでしたら、シーレーン防衛の中に入ることになりますね。しつこいようですけれども、それでよろしゅうございますね。
  338. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 先ほどから一般的な形で申し上げておりますので、それ以上のことは私から申し上げることは適当ではないと思います。
  339. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 一般的でも、とにかくシーレーン防衛の中に核兵器の使用の問題あるいは核積載艦との共同対処の問題が入るということは重大なんですよ。こういうシーレーン防衛と海上保安庁とのかかわり、これは私は非常に大きな問題をはらんでいると思いますが、先ほどははっきり否定されたような形になっていますのでそれ以上はやりませんけれども、この種の問題は引き続き論議していく、そういうテーマであろうというふうに考えております。  時間がありませんので、最後に、けさの新聞に外務省筋の情報として載っておりましたので、SDIへの研究参加が国際法との関連で大きな問題点がある、このことだけ、外務省筋の話ですので、直接聞いておきたいというふうに思います。  きょう、衆議院の決算委員会でも論議があったようでございますけれども、当然のこととしてSDI本体の研究というのは、ABM条約第九条、そしてそれに関連する附属文書G項によって、これはABM条約違反と見るというふうに外務省筋は確認されているようでありますが、それでよろしゅうございますね。
  340. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 委員指摘のように、本日の午前中別の委員会でも、本日の新聞記事に基づきまして御質問がありまして、私から御答弁申し上げました。  そこで御答弁申し上げました趣旨をもう一度、委員の御質問に対する答弁として申し上げさせていただきますと、私が御答弁申し上げましたのは、第一点としまして、現在の米ソ間に有効でありますABM条約の第九条、ここにおきまして、米ソがこの条約によって制限されておるABMシステム及びその構成部分を他の第三国に移転しないという約束をしている。そしてこの第九条の解釈といたしまして、別途米ソ間に行われております合意声明というものにおきまして、その意味するところとして、米ソがABMシステム及びその構成部品というものを特に製造するために作成された技術的な記述または青写真、ブループリントを提供しないという義務を含んでいるんだということが条約九条の解釈として合意されている、こういう事実があるということを申し上げました。  それで、結果としてそういう条約違反となるような形の、すなわちABM条約第九条で禁止されておりまするところのそういうアメリカ技術的記述、青写真というものの提供を受けたような形で共同研究が行われる、これは日本でありましょうとその他の第三国でありましょうと、アメリカとの間で共同研究が行われるということはあり得ないであろう、すなわち、そういうことになることはアメリカがみずから条約違反を犯すということになりますから、そういうことはアメリカは考えないであろう、したがって、そういう形の共同研究というものはあり得ないであろうということを御答弁申し上げました。それが第一点でございます。  それから第二点としまして、しかしながら、どういうものがこの条約アメリカあるいはソ連が規制を受けておるものであるかということにつきましては、これは我が国はわからないわけでございます。したがいまして、今後アメリカから専門家が来ます等のいろいろな機会に、アメリカがこの条約規定あるいは合意声明のもとでどういう規制を受けていることになっているのかということについてアメリカの考え方を十分聞きたい、聞いていきたいということを申し上げた次第でございます。
  341. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 非常に丁寧な説明で、時間が経過するのが大変心配でございますが、それとあわせて、けさの新聞によりますと、アメリカがSDIの日本の研究参加について求めているのはそのシステムの中の識別・追尾部分だというふうになっていますが、これはかなり具体的な研究参加の要請なんですね。これは新しい情報でもあるわけですが、本当にこういう情報が入ったのですか。
  342. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 そのような情報はございません。
  343. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 きょうの新聞は外務省筋だということですが、情報がなかったということですからこれ以上言わずにおきましょう。  しかし、いずれにせよ、冒頭でおっしゃいましたように、これはABM条約によって相当厳しい規制があるわけなんですね。ですから、これに安易に協力参加すべきでありませんし、安倍外相自身も、三月二十九日の予算委員会で「SDIの研究への参加協力可能性について予断をしているものではございません」というふうに言われていますので、この識別・追尾部分でも、これは安倍さんお答え願いたいのですが、やはり外務省筋の報道とはなっておりましたけれども、この部分においてもはっきりと十分これまでの条約、そしてまた日本の諸協定あるいは非核三原則等々との関連を踏まえた上でやる、これはよろしゅうございますね。
  344. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まだこれから専門家の意見を聞きまして、日本として自主的に判断する、こういうことです。
  345. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 時間が来ましたので、残念ですが、これで終わりましょう。
  346. 愛野興一郎

    愛野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十二分散会