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1985-04-10 第102回国会 衆議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年四月十日(水曜日)     午前十時三十四分開議 出席委員   委員長 愛野興一郎君    理事 奥田 敬和君 理事 北川 石松君    理事 野上  徹君 理事 浜田卓二郎君    理事 井上 普方君 理事 土井たか子君    理事 玉城 栄一君       石川 要三君    鍵田忠三郎君       佐藤 一郎君    中山 正暉君       仲村 正治君    西山敬次郎君       町村 信孝君    山下 元利君       岡田 春夫君    河上 民雄君       小林  進君    八木  昇君       渡部 一郎君    木下敬之助君       岡崎万寿秀君    田中美智子君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      竹内 黎一君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房審議官   雨村 博光君         外務大臣官房審         議官      斉藤 邦彦君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省経済局次         長       恩田  宗君         外務省経済協力         局長      藤田 公郎君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         外務省情報調査         局長      渡辺 幸治君  委員外出席者         科学技術庁原子         力局調査国際協         力課長     加藤 康宏君         科学技術庁原子         力局政策課原子         力調査室長   青江  茂君         科学技術庁原子         力安全局防災環         境対策室長   千々谷眞人君         科学技術庁原子         力安全局核燃料         規制課核燃料物         質輸送対策室長 荒木 慎介君         外務大臣官房審         議官      松田 慶文君         資源エネルギー         庁長官官房エネ         ルギー企画官  寺田 範雄君         資源エネルギー         庁長官官房国際         原子力企画官  片山登喜男君         資源エネルギー         庁公益事業部開         発課長     関野 弘幹君         運輸省航空局技         術部運航課長  赤尾 旺之君         外務委員会調査         室長      高橋 文雄君     ————————————— 四月五日  女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関す  る条約の締結について承認を求めるの件(条約  第一二号) 同月四日  核巡航ミサイル・トマホーク積載艦船日本寄  港反対等に関する請願外一件(河上民雄紹介  )(第二六四三号)  核兵器全面禁止等に関する請願経塚幸夫君紹  介)(第二六四四号)  同(経塚幸夫紹介)(第二六九八号)  核巡航ミサイル・トマホーク米太平洋艦隊艦  船への配備、日本寄港反対等に関する請願(梅  田勝紹介)(第二六九七号) 同月十日  核トマホーク積載艦船日本寄港反対等に関す  る請願馬場昇紹介)(第二七九九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際原子力機関憲章第六条の改正受諾につい  て承認を求めるの件(条約第二号)      ————◇—————
  2. 愛野興一郎

    ○愛野委員長 これより会議を開きます。  国際原子力機関憲章第六条の改正受諾について承認を求めるの件を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土井たか子君。
  3. 土井たか子

    土井委員 きょうは、IAEA関係条約について質疑をさせていただく日でありますが、外務大臣は、きょうの夕刻日本を立たれましてOECD会議に臨まれます。その場所アメリカブッシュ大統領とも会見をされるという御予定でおありになることは、周知の事実でございます。  ちょうど昨日、政府からは「市場開放包括的対策」ということの中身が出されまして、それで私どもも、政府があらましどういうふうな対応をこれにされるかということを知ったわけでありますけれどもアメリカは即物的と申しますか、非常に具体的にやるべきことを現実行動で示さないと問題にしないという特性があると私は思っております。昨日のは、三年内に実現を目指すという中身なのでございますが、こういう中身をお持ちになって、OECDヨーロッパ諸国、またアメリカブッシュ大統領会見をされる節御説明をされて、納得が得られるというふうにまず外務大臣はお考えになっていらっしゃるかどうか、そのあたりを承ります。
  4. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 昨日の我が国対外経済対策につきましては、今各地から、政府議会あるいはマスコミ等反応が続々入ってきております。  アメリカは、大統領を初めといたしましてアメリカ政府筋要人は押しなべて、日本努力というものは評価する、しかし問題はこれからだ、こういうことであります。アメリカマスコミの方も、比較的中立的にこれを見ておる。日本努力しているということはこの対策の中でもうかがわれるけれども、やはり果たしてそれが守られていくかどうか、今後を見なければわからないということであります。  議会筋の方は、例えばダンフォースさんを初めとしましていろいろな議員反応が入っておりますが、押しなべて消極的といいますか、日本はいつも約束はするけれども実行が伴っていない、今度三年という約束で、また約束倒れになるのじゃないか、余り信用できないというのがどうも議会筋評価のようでございます。  ASEAN諸国は、この対策にはASEAN諸国に対する対策も含めておるわけでありますが、今のところは反応が鈍いといいますか、全体的に見て日本が我々の要請にこたえてくれていないというふうな感じを持っているようなわけでありますし、ECの方は、イースター等関係もあってほとんど反応がないということであります。  日米関係につきましては、アクションプログラム等は三年ということになっておりますが、しかし四分野についてはアメリカは非常に関心を持っており、また、日米間で折衝しましたこの四分野については、通信機器分野が大きな前進を見たし、その他の分野につきましても道筋ができたということで、アメリカに対しては、私も、日本のこれまでの努力というものを評価させることができるのじゃないかと思っておりますが、全体的に見て、その他いろいろ問題があります。今度参りまして、果たしてどれだけのことになるか、これから行ってみなければわからない。  ただOECDも、閣僚会議でありますが、恐らくこの市場開放の問題がそのとき具体的に話に出てくると思いますし、OECD全体の空気としては、やはり日本黒字がこれまで巨大になっているということを言挙げして、これをOECD議題一つの焦点にしよう、そしてまた、コミュニケ等でこれを強く押し出そうというような動きがあるわけであります。  日本もこれに対しては、もちろん大きな黒字というものを持っていることは事実でありますが、しかしまた反面、アメリカの高金利であるとかあるいはドル高という問題も見逃せにできない問題であるし、同時にまた、ECの抱えておる構造調整の問題あるいは失業の問題、これまたEC自身の大きな課題ではないかということを私は強く述べたい、こういうふうに思っております。日本だけがいわばスケープゴート的になるような、そういうことだけは避けなければなりませんし、また、そういうことは我々も受け入れることはできない、そういうふうに思っておりますし、そうした姿勢で臨みたいと考えております。
  5. 土井たか子

    土井委員 大臣大変御苦労さまなのでございますけれどもアメリカの方の議会の雰囲気というのは、ことしに入りまして二月に私どもも参りまして、異常という一言に尽きると思うのです。過熱もいいところでありまして、理屈はもうとても通用するような相手ではないという実感を私自身も持っております。ただ、中には冷静に、日本だけにこういう問題を集中砲火を浴びせるように、今大臣がおっしゃったスケープゴートのような格好にしていくことは好ましくないという発言議員の中にはありますけれども、大勢は申し上げるとおり、非常に過熱して異常というふうな空気でどんどん迫ってまいっております。  ただその中で、安受け合いをして、アメリカ注文取り外交みたいな姿勢で何でもかんでもオーケーオーケーじゃこれは困るので、日本としてはどういうふうな立場をとるかということを鮮明にして、はっきり言うべきことは言うというのがこの節、非常に問われていると私は思うのですね。昨日の政府発表中身を見ましても、依然として相変わらぬ姿勢であるというふうな評価がおよそ出てこようと私は思います。同じように、三年内に実現を目指すとか七月中に行動計画をひとつ考えてみたいとか、こういう考えることばかりやっていて、具体的に何がそれじゃされるのかということになると、またまた約束約束として守られないのではないかというふうな意見も当然出てまいっておりますから、今までどおりのやり方じゃだめ、これからどうするかということが新しく日本姿勢として打ち出されなければならない、このように私は考えるわけであります。外務大臣はこういう中身に対して、これを持っていって納得してもらえるとか納得してもらうことのために理解を得るとかいうことばかりじゃなくて、もっと積極的に、日本としてこうやりたいという何かがなければ困るなと私は思うのです。  アメリカ議会があれだけ過熱である中で、日本のこの国会、特に外務委員会に対しての責任というのは非常に私は問われていると思いますから、日本立場を当外務委員会も鮮明にするということをしっかりやらなければならぬときだというふうに考えております。これは、何らかの意思表示をする必要がどうしてもあるわけでありますが、外務大臣、御苦労でございますけれども、きょう御出発に当たりましてのもう一たび御所信を承って、条約中身に入ります。あと、この問題については、小林議員からもさらに御質問があると思いますから。いかがでございますか。
  6. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本としては、今回も、政府全体相協力いたしまして今回の対策を打ち立てたわけで、これは日本として現在考えられるベストと言われる対策であろうと私は思っております。また、諮問委員会皆さん方も非常に苦労していただいて、あれだけの答申をしていただいたわけでございます。  今回の対策は、具体的には四分野についていろいろと前進が見られたわけでございますが、同時に今後の問題については、アクションプログラムという形で早急に日本が具体的に措置を講ずるという決意内外表明するわけでありますから、私は、これをもってどうしてもアメリカあるいはその他の国々理解を得て、同時にまた、日本決意というものを知らしめることが必要であろうと思います。  また反面、今お話しのように、日本だけが努力したって問題が進むわけではありませんし、貿易の当の相手であります。アメリカやその他の国々努力ももちろん求められなければなりません。あるいはまた、今日の黒字の背景になっておるところの原因というものを日本だけがひとり負わなければならぬという理由はないわけでありますから、そういう点についてもはっきりと言うべきことは言いまして、そしていずれにしてもこの問題を、例えば日米間において日米の大きな亀裂を生じさせるような事態を避けなければならぬ。冷静にこれから事に処していくという方向に進めなければならない。今恐らくこの対策でもってどれだけ鎮静化するかわかりませんが、私は、アメリカ政府もこの対策に対しましては評価もいたしておるわけでございますから、議会に対しましてもそれなりの反応が今後出てくるんじゃないか、また我々もそういう努力をしてまいりたいと思います。  いずれにしましても非常に難しい問題ではありますが、お互いに頭を冷やして、そしてお互い責任をそれぞれ明らかにして、問題の解決を冷静に詰めていくということが必要じゃないか、こういうふうに思っておりますし、そういう中で政府政府として言うべきことは言い、またやるべきことはやるわけでございますから、アメリカ等を見ておりますとやはり議会が大きなウエートを持っておりますので、日本議会動きあるいは日本議会発言というものも、こういう状況においては特に大事な意味を持つのじゃないか、私はこういうふうに思っております。そういう意味におきまして、日本国会貿易摩擦に対する一つ考え方というものが内外に明らかにされる必要があるということを、私は痛感をするわけであります。
  7. 土井たか子

    土井委員 問題は、これからいよいよこのことに対しては質疑を続行していかなければならない大事な段階でございますから、あとはその場所に譲りまして、IAEA先進理事国に中国がなるという今回の条約に対して、当外務委員会審議を行うわけであります。本体に入ります前に、実はこれは後でと思っておりましたけれども科学技術庁長官のお時間をせっかくとっていただきまして、わずか二十分くらいしか御出席をしていただくことができないようでございますから、先に関係する質問に移りたいと私は思います。  それは、昭和五十九年三月に総理府の方から「原子力に関する世論調査」というのが出ておりますけれども、その総理府世論調査結果を見ますと、原子力発電所に対して不安と思うとする者の約三〇%がその理由として、「廃棄物保管処理処分などから」というふうに挙げているわけであります。放射性廃棄物処理処分対策というのは、国民の重大な関心事であることは言うまでもありません。また、その安全な対策をどう考えていくかという点からいっても、これは避けて通ることができない問題なんですね。  そこで、放射性廃棄物の一年間に発生する大体の量と現在までの日本における貯蔵累積量貯蔵方法貯蔵能力、予想される今後の発生量、低レベル、高レベル分野に分けていらっしゃいますが、それを分けて御説明をまず賜っておいてから、大臣に御質問いたします。
  8. 雨村博光

    雨村政府委員 お答え申し上げます。  放射性廃棄物は、御承知のように低レベルと高レベルがございますが、低レベル廃棄物の現在たまっております量でございます。保管量でドラム缶、これは二百リットルに換算するわけでございますが、現在約五十五万本の、これは昨年九月末の数字でございますが、保管量になっているわけでございます。それから高レベルの方でございますけれども、これも同じ五十九年九月末現在の数字でございますが、これは百六十立米でございます。以上、たまっております。
  9. 土井たか子

    土井委員 今の御説明では、これは不十分の最たるものだというふうに私は考えるわけです。今の御答弁というのは、質問に対して的確な御答弁とは言いがたいのですが、大臣のお時間、急がれるでしょうから、これは後でまた資料として出してもらいます。よろしゅうございますね。委員長、お願いします。  それで大臣原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会というのがございますね。ここで放射性廃棄物対策に関して今後の推進方策というのが、調査審議を行った上で昨年八月に中間報告として出されていますね。その原子力委員会に提出された中間報告中身を見てまいりますと、低レベル放射性廃棄物と、さらに極低レベル放射性廃棄物と、放射性廃棄物として扱う必要のないものと、これを三つの分野に区分しておられるわけでありますけれども、低レベル放射性廃棄物海洋投棄処分についてこの中間報告は全く触れられていないのですが、触れられていないというのはどういうわけでございますか。
  10. 竹内黎一

    竹内国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま、低レベル放射性廃棄物海洋投棄の点が全然触れていないということでございますけれども、実はその前に原子力委員会といたしましては、放射性廃棄物長期計画というのを出しておりまして、その長期計画というのは、陸上処分海洋処分の二本立てを基本方針にする、こういうことになっております。そして、その後において先生ただいま御指摘のような検討をまた行いまして、低レベルのものにつきまして、さらに極低レベルのものについては、従来の方針よりも新しい対処をした方がいいのではないかという新しい考え方検討しているわけでありまして、いわば海洋処分方針がそれによって否定されたとかあるいは放棄されたとか、こういうことではないとひとつ御理解をいただきたいと思います。
  11. 土井たか子

    土井委員 そうすると、五十一年十月のあの原子力委員会基本方針に変更がないというふうな読みで今日に臨んでおられるという格好なんでありますか。
  12. 竹内黎一

    竹内国務大臣 お示しのとおりでございます。
  13. 土井たか子

    土井委員 そこで、昭和五十八年の二月に開催されました、大臣も当時は外務委員会に御所属で、たしか外務委員長でいらした時期だと思いますが、海洋汚染防止条約について当委員会審議をいたしました。いわゆるロンドン条約であります。その条約締約国会議において、海洋処分について科学的な検討を行う、その結論が出るまで海洋処分の一時停止を呼びかけるということを内容とする決議案が採択されたのは、大臣承知のとおりなんです。これに基づいて我が国科学的検討を迫られているわけですが、それがどのように進められているか、また対応はどのように考えていらっしゃるか、その点はどうなんですか。
  14. 千々谷眞人

    千々谷説明員 お答え申し上げます。  ロンドン条約締約国協議会議におきまして、昭和五十八年二月、科学的検討を行うということが決まりました。この科学的検討につきましては、第八回の締約国協議会議におきまして、専門分野及び地域的バランスを考慮いたしまして二十二名の専門家が指名されました。この二十二名の専門家によりまして、現在報告書がまとめられつつあるところでございます。さらに、この報告書は、ことしの六月に開催される締約国協議会議専門家を含めた拡大専門家パネルというところで検討されまして、最終的に九月に報告されるということになっております。この二十二名の専門家の中に、我が国の放射線の専門家及び海洋関係専門家が二名参加しておりまして、我が国の専門的な知識をそこに集約しつつあるところでございます。
  15. 土井たか子

    土井委員 それは何人で、そのうちに日本は何人出ているという数字だけをおっしゃった中身なんですが、一向に日本姿勢というものがどういうものかというのはそれでは聞こえてまいりません。  さて、この一月の中曽根首相太平洋四カ国訪問のときに、太平洋諸国から非常に反対が強い低レベル放射性廃棄物太平洋投棄計画について、関係国意思を無視して実施しないという方針を各国に対して表明されたというふうに伝えられています。今私は、一月十六日のオーストラリアのナショナル・プレス・クラブにおける総理の御発言外務省の方から海洋処分関係部分としていただいているわけですが、これを見ましても、「南太平洋諸国我が国の低レベル放射性廃棄物海洋処分計画に対し懸念を有することを十分に承知いたしております。この機会に我が国は、本件については安全と関係諸国地域理解が必要と考えており、これら諸国地域懸念を無視して海洋処分を行う意図のないことを表明したいと思います。」こう述べておられるのですね。首相に同行された安倍外務大臣から、こういうことは事実であったかどうかというのをまず承りたいと思います。
  16. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 演説で総理大臣が述べられたとおりであります。
  17. 土井たか子

    土井委員 おっしゃるとおりだとすると、これは一国の首相発言なんですね。言明なんです、これは。この首相表明は、海洋投棄計画の事実上の凍結ということを太平洋諸国に公式にお約束をされたものというふうに受け取ってよろしゅうございますか。かの地の人たちはそのように理解をしておられるようであります。いかがでありますか。
  18. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、総理が何回も南太平洋諸国の首脳にもはっきり話しておりますが、このとおり、地域懸念を無視して海洋処分を行う意図はないということを言っておるわけで、私も、その後こちらに帰りまして南太平洋諸国要人の方にも会いましたけれども、こうした日本意思を明確にお伝えしておるわけであります。
  19. 土井たか子

    土井委員 そうすると、公式な約束だという格好になるわけです。           。  さらに、ことし、去る三月一日に、核廃棄物太平洋投棄計画反対をしてわざわざ来日をいたしました北マリアナ連邦下院議長なんかを中心に、代表団安倍外務大臣にもお会いをされましたし、また、竹内科学技術庁長官にもそれぞれ会見をされました。両大臣はその節、海を核物質で汚すことは許せない、直ちに投棄計画を撤回してもらいたい、さらに永久に投棄しないということを我々は希望しているので、この意思にこたえてもらいたいというふうな訴えをお聞きになったはずであります。  委員長、これは特にお許しをいただきたいと思いますが、私がきょうここに持ってまいりましたのは、その当日両大臣にもお会いをしました十一歳の子供のかいた絵であります。私もこのポスターを一枚もらいまして、私の議員会館の部屋にこれを張っているわけでありますけれども、これはやはり切なる願いがこの子供の絵の中にも込められているわけであります。  南太平洋のそれぞれの場所に参りますと、低レベル核物質海洋投棄、それから核実験、命に対する危険、生活を脅かすというこの問題に対しまして、将来核戦争があるなしという差し迫った問題もさることながら、現実のただいまの問題として、これは黙っていることはもはやできないという大変重大な切実な問題だということを、私も会いましていろいろと意見交換をする中でもさらに切実に感じたわけであります。  学生代表も、「海は私たちの母です。生命の源です。核廃棄物投棄はぜひやめて下さい」と、非常に切々たる訴えをしたわけでありますが、両大臣も非常に真剣にお耳を傾けていただきました。現場にも私は同席をいたしておりました。私は、もはや海洋投棄計画というものは中止すべきだと思うのですが、両大臣の御所見をひとつ承りたいと思います。
  20. 竹内黎一

    竹内国務大臣 先ほども申し上げましたように、私ども原子力委員会では、低レベル放射性廃棄物につきましては陸上処分海洋投棄の二本立てにするわけでありますが、その海洋投棄に関しましては、ただいま先生お取り上げの中曽根総理の御意向の表明がございまして、私たちもそれを守っていくつもりでございます。  ただし、先ほどちょっと政府委員の方から御説明申し上げましたように、ロンドン条約締約国会議の安全に関する国際的な検討が行われておりまして、ことしの九月以降にはその検討結果も出るのではないかということで、私たちとしては一応それにまた注目もしなければなりませんので、私個人の考えとしても、当分海洋投棄処分凍結という考えでございますけれども、理論的な選択としてオプションとしては、まだ海洋投棄もまた検討の余地はあるというのが私の考えでございます。
  21. 土井たか子

    土井委員 どれほど安全対策を講じても、核物質海洋投棄するという厳然たる事実というものは、現状を変えるという意味においては、これはもうだれしも否むことのできない大変深刻な新しい状況をつくり出すということでもあります。したがって、これは安全対策に対して検討を進められるという方向を放棄はされていないという点が非常にやっぱりひっかかってくる。外務大臣どうですか、このロンドン条約会議において、日本としては、やはりこの南太平洋海洋投棄ということに対して、やめたいという気持ちで臨まれるか、それとも安全対策の模索の方に重点を置いて臨まれつつ、現状は今科学技術庁長官が言われましたとおり、当分の間これを凍結することもやむなしというふうな姿勢で臨まれるか。ここのところの基本姿勢というのは非常に大事であります。かの地からは、将来にわたって永久に投棄しないことを希望すると、切々と言ってこられているのですよ。我々の海ですよ。これは全人類の海と申し上げていいと思うのです。しかし、目前にその海を持っている南太平洋の方々からしたら、これはもう黙っているわけには絶対いかない問題ですよ。この点についてどうお考えになっていらっしゃるかを承ります。
  22. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まずその前に、お話が出ました核実験我が国としてはもう反対であります。いかなる国の核実験についても絶対反対だということで、各国にその都度厳重に申し入れております。  それから、今の低レベルの放射性物質の海洋廃棄につきましては、先ほどから私が申し上げましたように、地域懸念を無視してこれを海洋処分を行うことはないというのが日本政府の公式な考え方でありまして、私はそれで十分じゃないかと思っております。
  23. 竹内黎一

    竹内国務大臣 先ほども申し上げましたように、ロンドン条約の締約国の間における安全の検討が九月には一応結論が出るかと予想しております。しかし、仮にそのロンドンの検討の結果が海洋投棄の安全について問題なしという回答であっても、そういう答えが出たからといって直ちに得たりや応とばかりに次のアクションをとることは、私は今のところ考えておりません。当分の間の凍結やむなしという方に傾いています。
  24. 土井たか子

    土井委員 それでは条約中身について、さらに残余の問題、これはもう本体についての質問でありますから、実はメーンの部分だと私は思いますが、後にこれを譲らせていただきます。それで小林議員からの質問がございますので、この質問席を交代いたします。
  25. 愛野興一郎

    ○愛野委員長 次に、小林進君。
  26. 小林進

    小林(進)委員 私は、外務大臣質問に入ります前に、外務委員長に二つのことを要望いたしたいと思います。  一つは、アメリカの両院に対する当衆議院の外務委員会として抗議文を打っていただきたい。そのことの決意をひとつこの委員会でやっていただきたい。ほかでもありません、それはお気づきのとおり、今アメリカの上院、下院ともに日米貿易の問題に関連して大統領に向かって、日本に対して報復措置を行うべきであるという意味の三百一条の決議を行っている。上院は九十何対ゼロ、下院は何か反対は十九票で賛成が三百何ぼか四百何ぼかという、実に驚くべきそういう決議が行われている。これは大変重大問題である。これは日本に対する経済的宣戦布告じゃないかと思っている。そういう布告を受けるような、一体我々日本はそんなに悪いことをしたのか、あるいは経済の原則を踏み外したとか、あるいは不当な貿易行為をやったとか、あるいはやみ行為をしたとか、武力で経済的な侵略を行ったとか、そういうようなことが一体あるのか。  私は、後でこれは外務大臣にお聞きしますけれども、時間がないから内容は別として、アメリカの両院議会のこういう恐るべき決定事項を、日本にも両院があるのですから、日本議会がこれに対して何らかのモーションを起こさないということは、世界に対して意気地なさをあらわしていると同時に、日本国民に対しても大変申しわけないことじゃないか、一体何のために我々は国民代表としてこの議会に臨み、外務委員会に籍を置くのか、そういう点を私は恥じなければならぬ、と思う。  そこで、私は具体的に提案いたしますけれども外務委員長の名前で打っていただければいいが、できないならば外務委員会でもいいと思う、日本国衆議院外務委員会。それでアメリカの両議院に対して、電文の内容といたしましては、日米経済に関する貴院——貴院というのは上院も指し下院も指しますが、貴院の決議は事実と相違しており、日本国民に対する不当な強圧であると考える。まことに遺憾にたえない。直ちにこれを撤廃されたい。こういう抗議文をひとつ打っていただきたいということが提案の第一です。  これは私の提案です。残念ながら私は、我が社会党の党議にかけるいとまもありませんでしたし、また理事でもありませんから、理事会へ出てこれを決めていただくという立場もない、か弱い身の上でもありますから、したがって、この委員会で個人の資格で発言するよりほかはないのであります。しかし、個人の資格であったって、委員長、軽べつしないでください。アメリカだってけさあたり、ああやって中曽根さんが汗水垂らしてやったことに対して上院の何がしから、個人の資格でちゃんと彼らも声明なり発言をしているのですから、日本国会だって私の発言をそう軽視することのないように、重要視してひとつモーションを起こしていただきたい。これが一つです。  いま一つは、きのうからきょうのマスコミを通じて見ますと、政府政府で動いている。中曽根さんあたりは本当にだらしがない。アメリカが強く出れば引っ込んでいる、猫のずきんと同じだ。まるでアメリカに言われれば後退するのが日本国の政府のあり方であるような、そういう形しか国民に映らない、残念ですが。それを受けたのか知らぬけれども、自民党も政調会長のお名前で何かアメリカ議員日本に招待をして、この問題で懇談をするような措置をおとりになるかというようなことも出ておりましたが、どういう措置をおとりになるのかは知りませんけれどもアメリカ議員を呼ぶより我々が行ったらどうですか。これほどの大きな問題がアメリカの両院で決議されているのだから、日本のこの衆議院の外務委員会も直ちにひとつ決議をして、派遣議員団をつくってアメリカの上院なり下院なり関係議員と直ちにアメリカへ行って懇談をする。これは懇談でありますけれども内容は抗議です。こんなばかなことをやるな、日本議員はこんなあなた方のような程度の悪い者はいませんよ、この辺のことは言ってきてもいいと私は思う。  どうもアメリカは、民主主義というのがいいか悪いか知りませんけれども地域の住民の意向だけを余り重視し過ぎて、特に下院議員あたりの動きを見ますと、いつでも自分の選出された選挙区の方だけを見て問題を措置しているようであって非常に不愉快。これはやはり日本であろうとアメリカであろうと、上院、下院というなら国政全般を審議する議員でなくてはいけないと思う。余りにもやり方がこそくだと私は思わざるを得ないのでありまして、どうか外務委員会でもひとつ、委員長、直ちに理事会などを開いていただいて、旬日を待たず我々がアメリカの両院へ経済問題で調査に行く、話し合いに行くということをお決めいただきたい。  以上、二つのことを私はまず外務委員長に御提案をいたします。
  27. 愛野興一郎

    ○愛野委員長 ただいまの小林進君の御要望の件につきましては、後刻理事会においてその取り扱いについて協議をいたします。
  28. 小林進

    小林(進)委員 委員長の御答弁は従来どおりの御答弁と同じでございますが、私はその底には、委員長の脈々たる御決意があるものと判断をいたしますから、早く処置してこれが行動に移されることを再度お願いをいたしまして、質問に移りたいと思います。  外務大臣質問いたします。  今も言うように、きょうは条約審議の日でありまして、国際原子力機関憲章第六条の改正条約審議かと思いますけれども、あなたは今晩立って、先ほど質問がありましたOECDへ行かれて、それからまたアメリカへ回ってシュルツ長官にお会いになるというのでありますから、もはやこの問題に対してあなたとお話しする機会はこの時間しかないのであります。原子力の問題はちょっと後にしまして、アメリカに行かれるあなたの姿勢、態度をまずお伺いしておきたいのです。  私どもが、日本政府がこれほど貿易、経済の問題でアメリカに屈服をしなければならぬ理由は一体どこにあるのでございますか。私どもの経済がオープンでない、あるいは自由経済に立していないと言うけれども、世界のどこへ行っても一〇〇%いわゆる開放経済をやっている国がありますか。アメリカも、我が日本にそれほど言えるくらい、アメリカの経済政策は世界に向かって開かれておりますか。まず、これから私はお伺いいたしたいと思います。いかがでございましょう。
  29. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今度OECD閣僚会議に行きまして、それからワシントンでシュルツ国務長官と会うわけですが、これはロサンゼルスの首脳会談で、日米お互い努力をして自由貿易体制を守るための対策をいろいろと講じようという合意がなされまして、その結果、その作業の進捗については両国の外相間で相談をする、こういうことが決まっておるわけでございますから、それに基づいてワシントンを訪問するわけでございます。もちろん、両国の外相間の会談でございますから、今日の国際情勢、特に米ソ間の軍縮の問題であるとか、あるいはまたボン・サミットに臨む両国の考え方についての意見の交換であるとか、あるいはまたアジア情勢、朝鮮半島の問題等も話し合うのは当然でございますが、さらに、今申し上げましたような日米間に横たわっている経済摩擦をいかに解決していくかということについても、日本の今日までやってきましたその努力というものをアメリカにも十分伝えまして、アメリカ理解を求めなければならぬ。  同時にまた、アメリカに対しても我々言いたいことがあるわけでありまして、こうした日本黒字であるということ、そのことは、アメリカ議会等では短絡的にひとり日本責任であるということが言われておりますけれども、この原因というのは、日本だけがひとり負うものではなくて、アメリカドル高等にも大きな要因があるということ等についても、やはり言うべきことはちゃんと言わなければならぬ、こういうふうに思っておりまして、日本としてはこれまでも、自由貿易体制を守っていくためにいろいろな努力もしてまいりましたし、あるいはまた今日もさらに大きな努力をし、また犠性も払っておるわけでございます。これはひとえに、日米間の関係を正常、友好に保つと同時に、世界の中で保護主義というものが台頭しておりますから、これを抑えて自由貿易の体制を守っていくことが、世界のためだけでなくて日本のためにも必要だ、あるいはアメリカのためにも必要だ、こういう認識に基づいてこれからやってまいるわけであります。
  30. 小林進

    小林(進)委員 アメリカ日本市場開放を求めてくるが、しかし、アメリカも全都市場は開放されているのか、それが一つなのです。自分を棚上げして日本だけを攻撃してくる。まず市場開放がいかぬと言うならば、自分の国の市場開放がどうなっているか、それをひとつアメリカに反省を求めてください。これが一つ、時間がないから言うのだけれども。そういうところへくると、あなたのそばにいる外務官僚などは腰がないものだから、まず官僚から震え上がっているが、向こうが経済の開放を求めてきたら、あなたのところはどうですか、こういう要求を出して、両方でオープンでいくのならひとつ全部オープンでやりましょうというところまで、対等の競争をしてもらいたいというのが一つ。これは今あなたの答弁がなかったけれども、後から外務省からアメリカの経済が一〇〇%オープンかどうかという資料を出してください。出たらこれをやりますから。決してそうじゃない。  それから第二番目は、何でも日本が市場を開放しないといって、今電信電話機の問題、通信問題が中心になっているけれども、通信問題だって、アメリカに言われてあれほど日本は三年前か四年前か開放して、この前の委員会で井上委員が質問したが、アメリカに殉じてああいう電話機などを買ったけれども日本では全く使えないじゃないか、倉庫の中へ入れっ放しじゃないか。そういう入れっ放しでごみにもならぬようなものまでも日本は買わされているという、この実情も明確に言ってもらわなくちゃいけない。力で通信機器通信機器と言って抑えてきて、とうとう日本は役に立たないものを三万個も五万個も買わされて倉庫の中で死蔵している、この実態をなぜ一体明確にアメリカに言えないのか。日本に売りたいならば、日本人が心から欲しがるものをつくればいいじゃないか、売ればいいじゃないか。何もない。  それは農産物だって言えますよ。飼料でも、物で日本が必要なら、世界一にアメリカから買っているじゃないですか。必要なものを買うのです。それに便乗してオレンジを買えの、肉を買えのと言って、オレンジなんか何トン買え、何トン買えと力で押してきたけれども、うちの子供だってアメリカのオレンジなんか食いませんよ。それよりは日本のミカンの方がずっとうまいと言うのだ。みんなミカンは日本のミカン。ミカンには手を出すけれども、オレンジなんか要らないと言う。うちの豚にくれようと思ったら、豚も要らないと言った。ブーと言ったよ。その実情をなぜ一体アメリカに明確に話ができないかということです。肉だってそのとおりです。神戸牛にまさるような立派な牛の肉を持ってくれば、喜んで買いますよ。靴の革みたいな肉を持ってくるから、こっちは買わない。その実情を言っていただきたい。  私はきょうの新聞なんか見て、感情的になるわけじゃないけれども、中曽根さんが何かグラフを出して説明したというのだが、こんなものはナンセンスだ。ECは個人で三十二万円も外国製品を使っている、どこかは十何万円も使っている、日本の国民は平均六万何ぼしか舶来品を使わないから、もっと外国の品物をうんと使わなくちゃいけないなどとグラフを出して一国の総理説明する、何とみみっちいやり方だ。いいものなら買いますよ。外務大臣、これもアメリカのシュルツさんに言ってくださいよ。日本人ほど舶来品が好きな者はいないのです。この中だって、見なさいよ。体につけているのはみんな舶来品です。あなた方だってみんな舶来品でしょう。私だってちゃんと舶来品だ。けれども、頭の上からつける香水から下にはく靴下から靴までアメリカのものが一つありますか。日本人や外国人が使えるようなものをアメリカ一つもつくらないんだよ。  香水と言えばパリだ。どうですか、あなたの着ている洋服と言えば英国物でございましょう。ワイシャツからネクタイだってみんなEC諸国、ヨーロッパとかパリを中心にするフランス物。靴だってイタリアがいいとか、アメリカの靴なんか義理でも履けませんよ。ネクタイだって、アメリカで我々ができるようなネクタイが一本ありますか。洋服だってそのとおり。アメリカ製品で我々の体につけられるものがありますか。みんな、ここらにいる日本人ほど、まだまだ日本の国産製品より舶来品にあこがれているのですよ。その舶来品を欲しいという日本人の体につけるもので、アメリカ製品は一つもないじゃないですか。  あなた言ってください。あなたの服装をシュルツの前に見せて、私はこれほど一切、パンツまで全部外国物を使っているけれども、残念ながらアメリカ物で使いたいと思うものは一つもありません、そこら辺からひとつアメリカは反省してくださいということを一体なぜ言えないのですか。どうですか、外務大臣。問題は、まず隗より始めよですよ。私も何回もアメリカに行きましたから、かつては買ってきましたよ。買ってきたけれども、今役に立つものなんかないのです。そんなものは全部廃品です。靴下と言えばもじもじした靴下。ネクタイなんて、とてもここらにやってこれるようなネクタイじゃありません。セーターしかり、下着しかり。そういうような実情を反省しないで、日本だけは力で抑えればよろしいというのですか。  どうです、今の私の言っていることについて。あなたはアメリカに行って、一体何を買ってこようというのですか、一体アメリカから我々は何を輸入するのか、それを教えてください。今の通信機だけは対等につき合いができるだろうと言うけれども、きょうあたりも聞いてみれば、アメリカから買う通信機なんというものは総合したって二十億か三十億だろうと言っている。その二十億か三十億でも、来てすぐ日本の通信機材に間に合うかといったら間に合わないのです。義理で買って、また押し入れの中か倉庫の中にぶち込んでいくしかなかろうというのが大方の専門家の見方です。こういう実情をきちっと言わなければ外交になりません。どうですか、この問題。何を買っていらっしゃるのか、ひとつお聞かせいただきたい。
  31. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かにおっしゃるように、アメリカ日本に製品の輸入を強く求めるなら、アメリカなりに工夫もしてもらわなければならぬし、あるいはまたアメリカも輸出の努力をしてもらわなければ、これは高い物、品質の悪い物を買えと言ったってそれは買う人はいませんから、日本人に適した、日本人が買う意欲を持つようなものを売ってもらいたいし、またその努力をしてもらいたいということは、我々もしばしば言っておるわけであります。  しかし、残念ながら今の日米間の貿易というものは、八百六十億ドル以上あるわけでしょうが、その中でアメリカから買うものは、今のところは飛行機であるとか、あるいはまた通信衛星であるとか、さらに大型のコンピューターであるとか、工業製品といったようなものはそういうものに限られて、ほとんどが農産物ということになっておるわけであります。あるいはまた、石炭といったようなものになっているわけでございます。しかし、今余りにも貿易の格差が激しい。そこで、アメリカから言わせると、我々としてはもっと売りたいものがあるのだ、売りたいものがあるけれども日本が市場を開かないということで、具体的に四分野に限って今アメリカがその市場を開けと言ってきているわけでございます。  日本も、自由貿易というものを建前にしないと日本自身が生きていけないわけですから、アメリカさんの言うことならそれはそれなりに日本人としても努力しましょうということで、今通信機器の問題にしても、これはとにかくECなんか到底やらない通信機器についての改善を日本は行って市場を開いたわけで、アメリカは十年かかっているのを三年間でやろうというわけですから、大変な革命的な努力をしてきているわけであります。あるいはまた、エレクトロニクスの分野につきましても、医療機器の分野についても、彼らは日本が非常に閉鎖的である、それなら我々はこれをあなた方の要望も生かしてできるだけ改善しましょうということでやっておる。  そこまで日本が国を開いてやる以上、あとアメリカ努力するかしないか、アメリカ日本に適するようなそうした製品を送り込むかどうかということにかかっておるわけですから、日本としましては、とにかく国を開いてアメリカさんと公正に競争しましょう、こういう体制をつくることはそれなりに、日本がとにかくこれだけ大きな黒字を抱えておりますし、そうして日本自身が輸出競争力を持っておる今日でございますから、これはやはり自由貿易体制を守るためには日本自身としてやるべきことじゃないか。日本はそういうふうに責任を果たす、しかし日本責任を果たすだけで問題が解決するわけじゃなくて、やはり相手さんがそれだけの輸出努力もしてくれなければ成果が上がらないわけですから、問題はあとアメリカ側の努力にかかってくるんじゃないか、私はこういうふうに思っておりまして、何でもかんでも買えと言ったって買えるものじゃありません。そこのところはアメリカとの間で、我々は言うべきことはちゃんと言ってこなければなりませんし、私もそういう決意でもって今回も臨みたい、こういうふうに思っておるわけであります。
  32. 小林進

    小林(進)委員 ひとつ大臣も腹を決めて、筋の通った外交交渉をしてもらいたいと私は思うのであります。三百七十億ドル、これは確かにありがたいですよ。これはありがたいが、しかし、ただもらったわけじゃありません。それは戦後のガリオアとかイロアとかという物資と違って、あなたのおっしゃる自由経済の中で日本がいい品物をつくって安く売ったから、アメリカの国民がついてきただけの話であって、これは正当な我々の売買の結果生まれた貿易の格差であって、それはありがたいが、そのありがたさというものは我々の努力の結果なんであります。  だからこの問題については、アメリカの識者は全部言っているのです。アメリカマスコミなんかも冷静だ。日米貿易議会がわんわん言っているけれども、これだけの貿易格差の原因は八割から九割はアメリカ側にあるのだ、そんな日本のアンフェアなどという問題はアメリカの赤字財政を物語る材料ではないということを、アメリカ人の識者はみんな知っている。そのアメリカの公平な識者に正しい理論を訴えようとしないで、気違いのようになってわんわん言っている議員やらあるいは町の声に日本総理大臣以下外務省の官僚まで踊って、わっしゃわっしゃと慌てふためいているその姿がいかにもみっともないから、やめたらどうかと私は言っている。そんなものに踊らされたら、いつまでたっても日本の正しい姿勢というものが反映することはありませんよ。  きのうだって言っているじゃないですか。中曽根談話に対して、政府閣僚会議に対して、ヨーロッパ、ECはどんな反応を示したかといったら、だめだろう、何も効果はないだろう、問題の原因はアメリカのいわゆる高金利にあるのだから、あのアメリカの高金利政策を改めない限りはこの問題は解決しないだろう、こう言っておる。私もそう思う。これは中曽根さんがあんなに四つの問題だ、やれ三年間で関税を下げると言ったところで、ちっとも問題の解決になりませんよ。あなた、なると思ったら間違いだ。なりません。ならなければなおさらアメリカは、日本という国はたたけば頭を引っ込める国だといって、しゃにむにさらに不当な要望が重なってくるだけであって、この問題の解決の処置にならないから、ここら辺でひとつ腹を決めてきちっとした交渉姿勢を持ってもらいたい。  まだアメリカは、日本という国をアメリカの州だと思っておる。ハワイは五十番目の州ですか、日本は五十一番目の州だとさえ思っておる。何でも日本に物を言えばそれが通ると考えている。我々日本国民はそう見ている。まして中曽根内閣になったらなおさら弱くなって、アメリカさんが右と言えば一日でも右を見ている、左と言えば一日でも左を見ている姿勢としか我々には見えないのです。もしあなたが行って、また今までの閉鎖経済をやめましょう、市場の開放をいたしましょう、何とか木材物でも少し早めて買いましょう、薬もオーケーだ、みんな持っていらっしゃい、こうやって問題が解決するとお考えになりますか。解決するなら私はそれでいい。くどいようだが、さらに相手アメリカの感情を高ぶらせるだけであって、ちっともそれは効果にならない。ここらで腹を決めて、いわゆる交渉の姿勢を持っていかなくちゃいけないというのがあなたに対する要望なんです。  原子力の問題もありますから余り言いませんけれども日米の歴史を思い出してください。最近はどうも、戦後から何かアメリカの大変お世話になっているような錯覚に日本人は陥っているけれども、長い日米の歴史の中には、アメリカは随分日本に不当なことをしているんですよ。それほどありがたい国でもなければ神様でもない。思い起こせば、あの排日移民の問題から始まっているんです。あれもやはり経済問題ですよ。日本人が働き過ぎるからというんだ。アメリカ人より働き過ぎるからけしからぬといってあの排日移民問題を起こして、我々の先輩は泣きの涙で引き揚げてきた、その歴史から始まっているんですよ。今もこれは移民問題の裏版ですよ。日本人は経済力があって能力があって、いい品物をつくって安く売っているから。なぜそれが悪いんだ。それが欲しいから、買ったから日本へドルが流れてきた、そんなことは自然の流れだ。これは経済の原則じゃないですか。それをこんな、両院の議会まで決議をして日本品の排撃をやるというのは、排日移民運動の裏版ですよ。そこへまた日本政府が腰をぶらぶら振って、はい、ごもっとも、はい、ごもっともと言って、何でもあなたの言うことはもっともですよと言ったら、一体我々国民の立場はどうなるんですか。そういう国民の気持ちもひとつ考えてください。  私は、この前もここで言いましたよ。戦争に負けて、そして今日本が一番血みどろを上げて北方領土、北方領土と、ソ連が北方領土を取ったのはけしからぬと言っているけれども、私はこの前も申し上げました。北方領土を取ったのはソ連ばかりじゃない。ソ連にくれてやったのはアメリカじゃないか、ヤルタ協定で。ソ連を日本への参戦に入れるために、あのときのルーズベルトがヤルタ協定の中に千島を、ソ連、おまえにやりますと言って契約しているじゃないか。だから今、あなた、グロムイコいらっしゃいと言って、そしてグロムイコを呼んで北方領土の交渉をするというならば、まずアメリカからその言質をとっていらっしゃい。なぜ日本の領土をくれたんだ、なぜ日本の固有の領土を断りなしにくれたんだと。まずアメリカ交渉から始めなければ、グロムイコ交渉は最後の仕上げになりませんよ。  グロムイコさんは、もう決まったんだ、決まったんだと言っているのはそのとおりだ。サンフランシスコ条約へ行ったって、グロムイコは声を大にして、おれはこの北方領土を取ったのは、千島をもらったのは、ヤルタ協定できちっと決まっているんだ、ヤルタの協定で決まったのだと、サンフランシスコ条約でヤルタ協定の有効性、国際性を声を限りに叫んでいるけれどもアメリカの代表もイギリスの代表も、ヤルタ協定はやみ協定なんて一人も言っていないじゃないか。ごもっとも、ごもっともだ。そのヤルタ協定に基づいてアメリカも、ちゃんとおまえに千島をくれたんだと無言の中に承認しているじゃないですか。それをあなた、日本が今ここに来て、ヤルタ協定はやみ協定だから了承しないなんて言ったって、それはだめだ。そういうふうに、アメリカという国から我々が受けている被害というのは多いのです。日米安保だってそのとおり。安保条約に藉口して金も出せ。今、アメリカ軍のために出している金は西ドイツより多いんでしょう、日本は。アメリカ駐留軍のための負担金は、NATO諸国よりも日本の方が負担金は多いんだ。それほど金を取られて、港を開放せいの、やれシーレーンでございますの、不沈列島になれの、不沈艦になれのと、言いたいほうだいのことを言われているのだ。一体だれが被害者です。  それからさかのぼってきて、今経済問題では、この前井上さんが言ったように、やれ繊維はどうの、鉄鋼はどうの、自動車はどうのと言って、一つ一つこれはみんな日本を抑えつけてきて、そして今ここへ来たら今度は部分問題から総括的に、日本の経済全体を抑えつけようというやり方ですよ。こんなことを一々黙って聞いていられたら、我々は一体何のために外務委員になり、何のために日本国民のために外交を論じているのか、私は国民に対して顔向けできませんから、どうかひとつきちっとした交渉を続けてもらいたい、これだけはお願いしておきます。ひとつ決意のほどをお聞きして、次に原子力の方に行きたいと思います。
  33. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 小林さんから今いろいろとお話を承りまして、本当にあれだけ言えてうらやましいなと実は私も思っているわけであります。しかし、日本としましては、アメリカとの間にいろいろの歴史的な関係はありましたけれども、今の日本立場、これからの日本立場ということを考えますと、やはり日米対等という立場で、あくまでも日米関係が友好発展をしていくということが、日本のためだけではなくて、アジアの発展のためにも必要であるという確信を我々は持っておりますし、また、市場開放も何もアメリカのためにやっているのではなくて、日本のためにやっているのだという確信に基づいて我々は努力をいたしておるわけでございます。  さらにまた、今の市場開放は、結局これは、日本もやはりやるだけのことをちゃんとやらないと、アメリカに対しても、あるいは諸外国に対しても、言うべきことが言えない。ただ、今の状況を、全部アメリカが悪いんだ、あるいはECが悪いんだということでは済まないというのが、今の世界の情勢であります。また日米関係でございまして、アメリカに対して強いことを言うには、日本がそれなりのことをやはりしなければならぬ。こういうことで、今日の状況の中で日本としても最大限の努力をして、今回のこの対策になったわけでございます。この対策をひっ提げましてアメリカに参りまして、日本としてはベストを尽くしたんだ、アメリカもこれに対してベストを尽くして、日本に対する製品輸出の実績を上げてもらわなければ困る、そして、ともに手を握って自由貿易体制を守っていこう、日米間の大きな関係に、こうした経済摩擦でもって亀裂を起こすようなことは避けなければ、お互いのためにならないということを大いに力説してまいりたい、こういうふうに思っております。
  34. 小林進

    小林(進)委員 いや、私は安倍外相に非常に期待しているから、こんなにくどく言うんですよ。  中曽根発表に対してあなたは賛成かということを聞けと今言われています。  それじゃ今お聞きしますよ。中曽根発言に対して、あなたはやはり賛意を表しておられますか。きのうの閣議後の新聞談話に対して、あなたは完全にこれを支持されますかどうか。
  35. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、中曽根さんの声明というのじゃなくて、閣議全体で、全部が協力して作業をして閣議決定として打ち出されたものでありますから、もちろん政府の一員としては、これを心から支持しているわけです。
  36. 小林進

    小林(進)委員 ああいうグラフまで出してアメリカさんに迎合するような態度は、ひとつあなたのこれからのアメリカ交渉の中ではやめていただきたいというのがお願いの筋で、御無理ごもっとも、御無理ごもっともよりは、今私が申し上げました、日本国民の中にも、アメリカの従来の歴史の中にこれほど反感はあるんですよ、やはり国民には、アメリカに対してこれほど鋭い批判の声があるんですよということもあなたに主張してもらいたいから私は申し上げた。これだけは忘れないでくださいよ。  そして、私は非公式にも申し上げるが、本当にアメリカは自由経済で、日本のアンフェアが気に入らぬ、閉鎖市場が気に入らないと言うのなら、あなたの方もやめて、おれの方もやめて、全部が開放経済でひとつ勝負しようじゃありませんか、その前提としてECがある、ECのように域内貿易でやる中には関税障壁もない、域内では自由にやっているのだから、ああいうモデルを日米の間でもやって、カナダも仲間に入れたら日、米、カナダ三国の間で、あるいは豪州も必要なら入ってもいいが、そうしたEC方式の域内開放経済体制をひとつつくろうじゃないか、それぐらい積極的にあなたは提案をして、この問題を処置してください。いつでも頭ばかり下げるようなことじゃない。というのは、繰り返して言いますが、私は外務大臣に期待する。  あなたの最近の記事を見た。うちの何とか先生も、これで胸がじんとしたというふうにあなたの談話をおほめになっているけれども、私は何でもじんとしたわけじゃない。あの中で一つ私が感心したのは、あなたが自分の父を論じておられる。その私の父は少数派に所属したけれども、軍縮、平和のために時の権力と闘った、この父を私は尊敬した、あの言葉が私は大変気に入ったんですよ。あのあなたの父に対する批判をそのまま安倍外交の路線に持ってくれば、あなたは立派な外務大臣だ。それは、歴史に残る総理大臣としての実績を残し得る価値のある人だ。ところが最近は、どうもあなたの父の尊敬すべき動き、その路線をやや外れているようだから、その点をひとつ反省をしていただいて大いに頑張っていただきたい。  それで、国際原子力機関憲章第六条の改正の問題に入りますけれども、この原子力最先進国、それから地域先進国、その原子力最先進国が現在九カ国あるのでしょう。この中に中国を入れて十カ国にしよう、これだけの内容ですね、簡単に言えば。けれども原子力理事国は現在一体何カ国あるのですか。
  37. 松田慶文

    ○松田説明員 お答え申し上げます。  国際原子力機関の理事会は、憲章上指定されました国と加盟国によって選出されます理事国と二種類ございますが、現在は三十五カ国が理事国となっております。
  38. 小林進

    小林(進)委員 私は、勉強が足りませんから率直にお伺いするのですけれども、会員から選ばれる理事国が二十二、先進国が九つ、それから地域の先進国が三つ、この区別は、一体どういう必要があってこういう三段階に区別するのですか。
  39. 松田慶文

    ○松田説明員 御説明申し上げます。  戦後、原子力の平和利用ということが国際的に認知されまして、これを規制、総括する国際組織をつくるに当たりまして多々議論がございましたが、この議論を経て国際原子力機関が発足いたしましたのは一九五七年でございます。その五七年の段階では、既に幾つかの国が原子力の平和利用すなわち発電等の事業を進行させておりまして、世界の加盟国の中で既に原子力を十分に利用しているいわば先進国とこれからそういうふうに発展しようという国々の、大きな意味での二つのグループがございました。他方、国際機関といたしましては、一部の原子力先進国だけがリードするというよりは、広く世界的に公平に理事を分配するという必要もございました。したがいましてこの二つ、原子力の事情に進んでいる国々を中核とすると同時に、あわせて広く世界的な地域の代表も合わせて理事会を構成するという二つの考えを合わせまして、ただいま先生御指摘のような構成と相なった次第でございます。
  40. 小林進

    小林(進)委員 加入している国は百十二国かな。これは中国は含まれていない、含まれて百十二ですか、ちょっとひとつ。
  41. 松田慶文

    ○松田説明員 昨年一月に中華人民共和国が加盟いたしまして、その結果百十二となっております。
  42. 小林進

    小林(進)委員 ここで、順序不同でお伺いいたしますけれども、中国の原子力協定に関連をいたしまして、現在中国と協定を結んでいる国はどことどこでございますか、この平和協定。——ちょっと失礼しました。これは違います。私は核防条約と問題がこんがらかりましたから、これは後回しです。  そこで、今この皆さん方の概説書を見ますと、「早期国会承認が求められる理由」というのがどうも私はわからない。「今回の改正は、中華人民共和国に対してその原子力技術の先進性に見合った地位を理事会において与える上で必要と考えられたものであり、我が国としてもその発効に貢献することが望ましい。」とだけあって、なぜ早期にこの問題を、しかも外務大臣がこれから外国へ出発される前にも、この問題を早くに国会を仕上げておきたいと言ってばかに焦っておるけれども、この早期性というのはどこから出たのか、お教え願いたい。
  43. 松田慶文

    ○松田説明員 中国という国が現在国際社会で占めております立場、力、なかんずく原子力分野において占めております発展段階にかんがみまして、昨年中華人民共和国が加盟するとともに、全会一致で理事会はその中国に理事国の地位を与えることが妥当であるということを決めたわけでございます。これは西側、東側、北、南問わず、すべての国がこれに同意した次第でございます。そして、そのような理事会の決定を経まして所要の憲章改正手続を昨年来やっておりますが、当初のこの中国を理事国とする共同提案国は、我が国を含め二十八カ国がこれに加わっているということが示すとおり、いわば国際社会における一つのコンセンサスとなっております。したがって、我が国としてもこのような地位を中国に早く与えて、原子力機関の安定的運用に資すること、さらには隣国として日中友好の本旨にものっとりこれを推進することが妥当である、このように考えまして、今回の国会の御承認を仰いだ次第でございます。
  44. 小林進

    小林(進)委員 どうもわからぬね。日本と中国は大変隣国であり友好国であるから、中国に入っていただくのは非常に結構だ、いいことだということはわかるけれども、それを早期に急いでと言う。早期という言葉は、何月何日までに入れないとこういう反対現象が生まれるとか被害が生ずるとかいうことがあって、初めて早期とか短期とかいう問題が出てくるのであって、今この加入の問題については何もそういう原因は見当たらないのに、あえて早期早期と銘打って、いかにも我々国会議員がこの条約審議に日をかして、これを承認しないことが何か悪いことかのような説明文なものでありますから、また一丁、外務官僚一流の人をちょちょくるような、恫喝するようないたずらをやってきたなという感じを受けるわけだ。それ以外に考えられない。だから私は、今も聞いたのだけれども、さっぱり今の理由では納得するわけにはいかない。  あえて一つ申し上げますが、これは平和利用の問題だけれども、核防条約とこれは裏表だな。何で中国は核防条約に加入しないのですか。していますか。しているなら結構です。もうしているのなら、手を挙げなくたってよろしいわ。
  45. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 中国は、核拡散防止条約に加盟いたしておりません。私ども承知いたしております理由といたしましては、中国が公に申しておりますことは、中国の立場からすると、この条約は米ソの核独占を維持するための陰謀である。この条約のもとでは、米ソの軍備拡張が自由である反面、非核兵器国が自己防衛のため核兵器を開発する権利を奪い取る、こういうことを言っております。ただ、最近の中国の公の発言から承知いたしておりますところは、このように条約自体には批判的姿勢をとっておりますけれども、しかし、核の拡散を主張もしなければ核拡散の協力もしないということを言明いたしております。(発言する者あり)
  46. 小林進

    小林(進)委員 どうも与党から御声援いただきましてありがとうございます。どうもあなたの声援と私の質問がまた違いますから、どうぞひとつお静かに、お静かにお願いしたい。  ちょっと今の回答で聞こえないところもあったのだけれども、私は、中国が核防条約に加盟しない端的な理由は、米ソ超大国が何の核軍縮も約束どおりやらぬじゃないか、むしろ自分たち二つの国の突出した核保有、核拡大を増進させるような方向でしか進んでない、これは全く約束と違っているから、そういう不公平な核保有国の仲間入りをしてみずから縛られることは好ましい現象でない、こういうことで入らないのだろうと思う。言いかえれば、米ソ超大国が、この核防条約約束したとおりまじめに核軍縮、核の平和利用の方向で正しい道を歩んでくれれば、その時点において中国も考えよう、こういう意向だと聞いているのだが、どうかね、いま一度この辺明確に言ってもらえぬかね。
  47. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 中国の核軍縮に対する態度は、今先生御指摘のように、核兵器の大半を所有しておる米ソがまず核兵器の削減を図るべきであるということでございますので、そのとおりでございます。日本政府といたしましても、核軍縮については、まずやはり米ソ両国が核軍縮を推進してほしいということでございますが、それはそれといたしまして、やはり中国にも核防条約に入ってもらう必要があると思います。折あるごとに中国にはその意向を要請いたしておりますし、昨年の軍縮会議におきましても、安倍大臣から中国、フランスを名指しで核防条約に入るようにということを呼びかけております。
  48. 小林進

    小林(進)委員 そうですか。安倍外務大臣が中国に対して核防条約に加入するような勧誘をおやりになったということは、初めて私は聞きました。何しろ、私は世間に疎いものでありまするから初めて聞いたのですけれども、それをおやりになるからには、やはり今中国が核防条約に持っている不信感というものを払拭するように、日本自体も努力すべきじゃないかと私は思うのです。安倍さんが無条件で中国に、あなた入りなさいということであったならば、私は、少し言葉は舌足らずじゃないかと思うのです。私は実際は、社会党ですけれども、この核防条約を結ぶときには党は大変苦悶をいたしましたが、私はそのときに終始反対だった。私は大変反対いたしました。こんなのを結んだところでみずからの手足を縛るだけであって、何にも世界の平和や軍縮には通じない、むしろこれは超大国の核保有をわがままさせるだけの話だぞと言って私は反対したのだけれども、大勢に及ばず。  大体党内というのは、私の言うことはみんな少数派になってしまってなかなか通らない。通らないのでありまするけれども、今でも実は私の言うことはみんな正しいと思って、多数派の党の決定はみんな間違っていると、こういう自信を持っているのでございますけれども、しかし、現実はやはり私が党内で叫んだとおり、米ソの核軍縮なんか一歩も、核防条約といったって成功しない。むしろ飛躍的に、不当な核の保有が超大国によって伸びておる。  参考までに聞きますけれども、世界にある核兵器の総数の中で、米ソが占めている比率は一体何十%ですか。こんなこともわからぬのかな。
  49. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 正確な数字はなかなかわかりにくいのでございますが、核弾頭で申しますと、九十数%を米ソが保有しております。
  50. 小林進

    小林(進)委員 九九%。
  51. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 九十数%でございます。
  52. 小林進

    小林(進)委員 九十数%。少しは私の耳にもはっきり聞こえるようにひとつ答弁してくれよ。何もお座敷の中で秘密話をしておるわけじゃない、速記をつけてやっているんだから。こっちにいても聞こえるように答えてもらいたい。  私は今岡田先生にも聞いたんだけれども、おととい中国の前の副総参謀長の伍修権さんと軍事問題のディスカッションをやったんだけれども、そのときに中国は、この二つの国が持っておる全世界の核の保有量は九五%だと明確に数字を言った。君たちのように数%だなんて、いつでも人の言葉をちょろまかすようなことは言わない。いま一度答弁してくれたまえ。君、いま一度。
  53. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 中国が、米ソの核保有のパーセンテージが九五%であるということを言っておるのは事実でございます。ただ、核弾頭の数が現実に幾らあるかということにつきましてはいろいろ推定がございまして、戦術核まで入れますと三万から五万ということで非常にずれがございますので、正確な数字はちょっと私どもとして申し上げ得る立場にございません。
  54. 小林進

    小林(進)委員 そこで、私は外務大臣にお尋ねしたいのだが、こういう核の保有状況の中で、核防条約をこのまま存続しておいて、そしてこの中に加入しておって、一体日本にどれだけの利益があるんですか。どれだけの利益があるのかと私は思う。むしろ今、世界の人民も日本人も挙げて求めていることは、この世界の九五%の核を独占している二つの国に反省と軍縮を求める以外に平和はないんだ、だから我々は核防条約に入った。その理由も、入ることによってこういうような独占的核の保有が緩和されたり縮小されたり、平和に道が通ずると思ったからこそ入ったんでありまするから、その意味においては、あなたが中国に仲間に入りなさい、こんな勧誘をすることよりは、日本も出ますから、中国と日本と一緒になってこういう不当条約を粉砕するために努力しましょうと言うのが、平和を愛するあなたの父上の軍縮への血を踏む外務大臣としては、むしろ正しい姿勢じゃないかと私は思うのでありますが、いかがでございましょうか。一体、どういう意味で中国をこんな不当条約の中に加入するようにあなたは勧誘されたのか、事のついでに承っておきたいと思うのであります。
  55. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今の世界の情勢の中で、核を持つということは比較的昔より容易になっておる、そういう時代ですから、やはりそうした核の拡散を防止するということは極めて大事なことじゃないかと思いますね。日本も核を持っていない、持つ意思もない。そういう世界において、特に核の拡散を防止するということは必要であります。それと同時に、今おっしゃいましたように、核をほとんど、九〇%以上持っておる米ソが軍縮交渉を行って軍縮を実行させなければ、それは世界の平和のためには意味のないことですから、我々は、核の拡散を防ぐと同時に、米ソの核軍縮を何とかして成功させたい、こういうことで、いわば世界の平和を何としても推進をしていかなきゃならぬ、軍縮を推進していかなきゃならぬという日本決意といいますか、日本の熱意が核防条約に賛成させて、そしてこれを推進せしめておる、こういうことであります。
  56. 小林進

    小林(進)委員 結論は同じです。あなたのおっしゃるように、米ソの核の拡散を防止するのが世界の平和に通ずる唯一の道だ。おっしゃるとおりだが、それをやるために、言うように核防条約の中に入って、条約のその中で、あなたのおっしゃる理想に向かって努力をした方がいいのか、一たん飛び出して、外部からひとつ力を合わせてこれを平和の道に通ずる方にやった方がいいのかどうかという、一つの方法論の問題だが、私は、言うように、日本なんかもうばかばかしい、約束が違うから飛び出して、そしてその外部にいる中国等とむしろ手をつないで、こういう核防条約というものを悪用する、悪用すると言ってはなんだけれども利用して、二大国の力を伸ばしているようなこういう野心を粉砕するためには、飛び出して外部からやった方がよろしい、こういう私は主張でありますが、あなたは内部でその主張を続けるとおっしゃるならば、これはひとつ平行線ということにしておきましょう。あなたの主張の成功を私は祈りますけれども、ただ黙って入って、そしてアメリカの言いなり次第にしっぽを振っていくような、そういう加入の仕方ならばおやめになったらどうか、こういうことであります。  なお、この問題に関連してお聞きしたいということは、この原子力協定の問題なんです。この協定の問題に対しても、日本とお隣の中国との間でまだどうも話が続けられているけれども、決定に至らないということでございますが、その交渉の経過について承っておきたいと思います。
  57. 松田慶文

    ○松田説明員 御説明申し上げます。  中国はその近代化の歩みの中で、エネルギー事情の改善のために各国と原子力協定を結び、原子力資機材の輸入を得るという方針を近年とっておりまして、この観点から我が国にも原子力協定締結の話がございまして、一年余にわたって交渉を続けてきております。最終回は、昨年十二月に東京において協議を行った次第でございますが、平和利用担保の方法、その他まだ重要事項につきまして協議を続けるべき点が幾つか残っておりますので、なお今後とも協議を進め、早期に締結するよう努力を払いたいと思っております。
  58. 小林進

    小林(進)委員 今協定を詰めるという問題点があるという、その問題点は何ですか。
  59. 松田慶文

    ○松田説明員 ただいま申し上げましたとおり、平和利用の担保の方式を中心として、幾つか詰めるべき点が残っている次第でございます。
  60. 小林進

    小林(進)委員 その平和利用の担保の点というのはどこの点が、ちょっと具体的に……。
  61. 松田慶文

    ○松田説明員 原子力国際協力の分野ではこれを保障措置、セーフガードと申しておりますが、これ以上詳細な点は交渉途中のことでもございますので、控えさせていただきたいと存じます。
  62. 小林進

    小林(進)委員 こういうところに来ると、何か人をめくらにしておまえには教えてやらないわ、こういうことを言うのだ。そんなにおまえは偉いのか。おれは悪いけれども国民の代表なんだ、国会議員というのは。主権者を代表しているんだ。主権者の前に言えない話なんて、そんな難しい問題があるのかね。外務官僚が物も言えないような、そんな大きな秘密があるのかね。原子力というのは、安全、民主、公開というのが平和利用の原則じゃないか、君。何が言えない。君、いつからそんなに偉くなった。
  63. 松田慶文

    ○松田説明員 言葉足らずで御無礼いたしました。私が申し上げておりますのは、交渉の最終段階でございまして、案文に即して今協議しているわけでございますが、相手方のあることでございますし、外交の常識といたしまして、今懸案となっていることを交渉途次で詳細触れることは、通常控え目にさせていただくということで申し上げた次第でございます。  さらに言葉を続けさせていただきますと、私どもは、中国が核兵器国であっても、私どもが輸出する機器その他のものは平和利用に限定してもらう必要がございます。それは、中国は原則的には約束してくれておりますが、その約束をどのような条文の形で、どのように条約上規定し合うかというところを詰めている次第でございます。
  64. 小林進

    小林(進)委員 この問題はちょっと後へ延ばすということにして、じゃ今中国がこの原子力の平和利用で協定を結んだ国はどことどこですか。
  65. 松田慶文

    ○松田説明員 お答え申し上げます。  現在までに原子力協定という形で締結いたしておりますのは、まず西ドイツ、これは昨年の五月に協定が署名されております。第二にブラジルでございまして、これは昨年十月に原子力協定が署名されております。第三に米国でございまして、これは昨年四月に原子力協定に仮署名しておりますが、まだ手続中でございまして発効するに至っておりません。なお、今後近い将来に一、二の国とさらに原子力協定ができるという動きはあるやに聞いておりますが、既にでき上がっておりますのは、繰り返しますとドイツとブラジルのみでございます。
  66. 小林進

    小林(進)委員 それでは、もう中国との協定を結んだ国は西ドイツ、ブラジルということをあなたはおっしゃった。これは正式に協定が成立したわけです。この中には、今日本が対中国との交渉の中でネックにしているような問題がちゃんと解決するのかどうか、ちょっと聞かせてください。今あなたたちが問題にするような問題が、西ドイツ対中国、ブラジル対中国の間においては一体問題にならなかったのかどうか。
  67. 松田慶文

    ○松田説明員 お答え申し上げます。  まず、ブラジルとの間にできました昨年十月の協定の中では、保障措置の適用を中国、ブラジルともIAEAすなわち国際原子力機関に要請するということに同意しております。したがいまして、若干いろいろと我が国とは違うのでございますが、概略申し上げてブラジルとの間には保障措置についての取り決めがございます。  西ドイツとの間にはございません。西ドイツとの間には、平和利用を行うというだけの規定がございまして、具体的な保障措置の規定はございません。  それから第三の米国につきましては、先ほど申し上げましたとおり、仮署名はいたしましたがまだ公表されておりませんので、その内容についてはつまびらかにしておりません。
  68. 小林進

    小林(進)委員 米国の仮調印のことは、また別に聞くつもりで問題を残しておいたのだ。何も問わないことをぺらぺらしゃべる必要はないのだよ、私の問うたことをしゃべればいいのであって。  そこで、私は今聞きたいのはこの保障の問題なんです。担保の問題。西ドイツもやはり平和利用協約の中へ入っている。ブラジルも入っているのでしょう。もちろんアメリカも入っておる。その同じく入っている国が国際原子力への要請に基づいて中国と協定を結んでいる、日本のようなやかましいことを言わないであっさりと西ドイツあたりが協定を結んでいるというのは、これはどういう意味なんだ。これは国際協力関係の違反にならないのですか。西ドイツの態度も違反にならない、ブラジルはちょっと西ドイツよりも厳しいようだが、これも違反にならないのかどうか。
  69. 松田慶文

    ○松田説明員 お答え申し上げます。  我が国も西ドイツもともにNPT、核防条約の加盟国であり、もちろん原子力機関の加盟国でございます。その意味では、御指摘のとおり立場は同じでございます。  核防条約の上からは、加盟国の義務といたしまして、核兵器を保有しない国に原子力機器を輸出するときはいろいろな定めがございますが、既に核兵器を持っている国については特段の義務は課されておりません。したがいまして、既に核兵器を持っている中国に対して、西ドイツが協定を結び機器を輸出するということを考えるに当たりまして、保障措置を取り込まなかったことそれ自身は、核防条約上の違反ではございません。しかしながら、ここがドイツと私ども立場の違いでございますけれども、私どもは、相手方が核兵器国であれ非核兵器国であれ、原子力機器を輸出するに当たりましては、それが平和利用に限定されることを絶対の条件としたいと考えております。これが国の内外を問わず、私ども原子力平和利用を行うときの鉄則だと信じておりますので、この点の物の考え方が西ドイツと私どもといささか違う点でございます。
  70. 小林進

    小林(進)委員 どうもそこが、そういう平和利用に限定して、核兵器にそれが利用、応用されないことを絶対的な条件にしている、だれがそれを条件にしたの。それほど日本は核兵器に敏感であり峻厳であるということならば、私は結構だと思うのだ。非常にいいが、それはだれが決めたの。だれが決めたのでも、それはあまねく全兵器に対して活用されなくちゃならないが、それは一体だれが決めたのだ。どこにその規定がある。
  71. 加藤康宏

    ○加藤説明員 お答えいたします。  原子力委員会昭和三十七年、「原子力基本法と原子力関係物資の輸出について」という委員会決定をしておりますが、その原子力基本法第二条におきまして、我が国による原子力の研究、開発及び利用が平和の目的に限られることを明らかにしております。この考え方は、我が国が外国の原子力利用に関係する場合にも、その精神が貫かれるべきであるということを決めておるわけでございまして、この場合の外国と申しますのは、非核兵器国も核兵器国も含めた外国でございます。したがいまして、先ほど外務省から説明されましたように、日本の場合は西ドイツと違いまして、相手国が核兵器国であれ非核兵器国であれ、平和利用に徹するということを担保したい、こう考えておるわけでございます。
  72. 小林進

    小林(進)委員 そうすると、今の科学技術庁の君が答えた、原子力基本法の第二条に基づいて今政府がそういう峻厳な対中国交渉をやっている、こう解釈してもいいわけですな。問題はそこだな。
  73. 加藤康宏

    ○加藤説明員 お答えいたします。  原子力基本法自体は、国内の原子力開発、利用を規制するための法律でございますので、外国に関係した場合は原子力基本法が直接適用されるわけではございませんが、その精神を外国にも適用するという考えでございます。
  74. 小林進

    小林(進)委員 外務省聞いたかね。これは明確な規定はないのだな。対中国、対外国との原子力協定には、これこれのきちっと、そういう担保をとるとか査察をするとかという国際法もないけれども、今科学技術庁の彼が言ったのは国内法だ。国内法には、そういう平和利用に峻厳でなければならないという、彼が言ったのはこの原子力基本法の精神だ。その精神を持って、対中国との交渉をシビアにやっているのだという説明だな。それでいいんですか。
  75. 加藤康宏

    ○加藤説明員 御指摘のとおりでございまして、基本法は国内の事案に対処されますが、その精神を持って国外の仕事もやるようにということが原子力委員会の決定としてなされておりまして、政府はそれに従いまして処置をしているところでございます。
  76. 小林進

    小林(進)委員 私は日本という国よりは、この原子力そのものに対して、今の基本法の精神、実にあいまいもこたるものだが、その精神を適用しているのは今中国だけ。他に日本が、外国交渉にそういう精神を使っている国はありませんか。
  77. 松田慶文

    ○松田説明員 お答えいたします。  私どもが、既に原子力協定を締結しております多くの国との間では、すべてそのような安全保障措置の取り決めがなされております。現在、新規に交渉中のものはただいま御指摘の中国との協定だけでございますので、懸案はこれ一つでございますが、既にでき上がっているものの中にはすべて取り込んでございます。
  78. 小林進

    小林(進)委員 ちょっと参考までに、このでき上がっている国を教えてもらいたい。
  79. 松田慶文

    ○松田説明員 既に持っております原子力協定は五つございまして、米、英、仏、加、豪州、以上五カ国でございます。
  80. 小林進

    小林(進)委員 アメリカも入っていますね。
  81. 松田慶文

    ○松田説明員 もちろん米国との原子力協定も、私どもが申し上げたその五つのうちの一つでございますが、米国を含めまして私どもの今まで持っております原子力協定は、どちらかといいますと、機材、燃料を含めまして我が国が受領国として供給を受ける方の立場、したがいまして、輸入した機器に保障措置がかかるということが仕事の流れとしては大筋になっております。しかしながら中国に対しましては、現在の実態は、この協定ができますれば、さしあたりは私どもが輸出するという立場になろうかと存じますが、基本的には、保障措置が輸入の場合も輸出の場合も同等にかかっていくのが筋であるということには変わりございません。
  82. 小林進

    小林(進)委員 私は、何もそんな細かい説明を聞いているのではないのだ。アメリカも入っているかどうかだけ聞いている。君は、質問していることに都合の悪いときは答えないで、都合のいいときは聞かないことまでしゃべっている。これが外務官僚の一番悪いくせなんだ。アメリカは入っているかどうか聞いているのだ。  それほど原子力の平和利用に対して君たちが峻厳で、規定もない、それは国内法の精神だと言って、その精神を持ち出して、それほど核兵器にシビアならば、何で一体アメリカ原子力潜水艦やらトマホークやら、あるいは原子力搭載の危険あるようなものを日本の港へどんどん入れていて、そっちの方は何でシビアにやらないのだ。同じこの原子力の問題についても、ニュージーランドのあのロンギ首相のごとき、まさに核兵器の搭載なしという明らかなる保障がない限りは、そんな怪しいものは自分の港にも入れない、空も飛べない。それほど君たちが精神論で説くのならば、一体どうしてそこまでいかない。おい、聞いているのか。なぜそこまで、その精神論で日本の国の政治を動かさないのだ。  一方で、そういう原子力平和利用の問題だけは、どこの国もやっているようなことまでも日本は特別でございます、日本は、その国が核を持とうと持たざるとこの精神に終始一貫しますという、まるでヒステリックなそういう細かいことの針を出しながら、片一方で、原子力を積んだ船が自由に出入りしたってそっちの方は手もつけません、見もしません、ないと言うのだからないでございましょうと、のほほんと過ごしている。そういうような形で一体国民を説得をすることができますか、納得させることはできますか。一体、できるとお考えになるのかね。この両者の関係は一体どうなってくるんだ。さあ、教えてくれ。
  83. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 ただいままで松田審議官の方からお答えしておりましたことは、原子力の平和利用に関する問題でございます。その平和利用に際しまして、日本政府がどのような姿勢で臨んでいるかということを御説明したわけでございます。  他方、ただいま小林委員御指摘の原子力船の入港その他の問題は、これは原子力の平和利用の分野とは異なる分野でございまして、日米安保条約をいかに効果的に運用するか、こういう異なる話でございます。  したがいまして、私どもといたしましては、原子力の平和利用の分野でこの平和利用が確保されるということを最大の目的としている方針ともう一つの安保条約関係のお話、これは別のものでございますので、互いに矛盾するものではないと考えている次第でございます。
  84. 小林進

    小林(進)委員 これを私は官僚答弁と言うのだよ。原子力は、原子は一つなんだ、君。原子力の安全性や危険性や、兵器に変貌することを防ぐために、平和利用さえもそういうような危険な形に陥らないように神経を悩ますというならば、兵器そのものに対してはなおさらシビアでなくちゃならぬじゃないですか。何か聞くというと、君は宮澤何がしのおいっこだそうだな。宮澤君も、白を黒、黒を白と言うくらい詭弁学者の親方みたいなことだったが、君の言っているのも詭弁なんだよ。  おれの持ち場は平和利用だから、核の平和利用だけは厳格にやりますけれども、それが日米安保で核を日本に入れるか入れないかの問題は私の守備範囲と違いますから、問題は全然別個です、そんなことは君の頭の中は別個だろうけれども、国民の側から見れば別個ではないのだよ、それはみんな一つなんだよ。核兵器が日本の中でどれほど危険なものであるかということは、国民から見れば同じなんだ。だから平和利用さえも、それが兵器に悪用されないように、外国へ輸出する場合でもあるいは輸入する場合でも、これほど厳格な規定を設けています、精神論で立っておりますと言うなら、それよりも明らかに恐ろしい核兵器の入ったり出たりする問題に対しては、もっと国民が安心をするような査察方式あるいは立証方式をとるのは当たり前じゃないか。それが別個の話とは一体何事だ。国民から見れば別個ではない、これは同じだ。
  85. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 私が先ほど申し上げましたことを多少補足させていただきますけれども、別個の分野だと申し上げました安保条約分野におきましては、核の平和利用がどうでもいいということを申し上げたつもりはございません。これは小林委員よく御承知のとおり、核兵器の分野におきましては非核三原則というのを我が国は遵守しておりまして、これが我が国の国是でございます。しかしながら、私が申し上げたかったことは、原子力推進の軍艦が我が国の港に入ってくるというのは安保条約の運用上の問題でございまして、原子力の平和利用の問題に関する我が政府姿勢が、それによって害されるという性質のものではないということを申し上げたかった次第でございます。
  86. 小林進

    小林(進)委員 こういうばかな答弁を聞いていると、腹が立つばかりで話にならない。それは言いわけだよ、君。核の問題は非核三原則がある、君に言われなくたってわかっている。非核三原則の問題も核の平和利用の問題も、帰するところは一つなんだ。それを君たち官僚の頭というのは、平和利用はこっちの方、非核三原則の問題はこっちだといって分けているけれども、国民の側から見ればそんなものは同じなんだ。核が日本に持ち込まれたり出したりするような危険なことは避けてもらいたいという考えは同じなんだから、平和の利用さえもそんなに厳格に峻厳に歯どめをかけるようなそれほどの根性があるのならば、同じ非核三原則と平和利用の精神に基づいて、日本に核兵器が入ってくることに対してもそういう精神論で国民が納得するようにきちっと処置したらいいじゃないか。  これは君に聞いているのじゃないのだよ。おまえ、外務大臣になったつもりで返事しているけれども、おまえみたいな官僚にそういう重大な問題を聞いているわけじゃないのだ。けれども、私の質問の要旨はそうなんだ。核の平和利用さえも、そんなに厳格にシビアに査察行為を要求する日本であるならば、もっと恐ろしい核兵器やそういう輸出入に対しても、日本政府としてはもっとシビアになっていいじゃないか、せめてニュージーランドのロンギ首相のような崇高な姿勢があってもいいじゃないかということを、これは外務大臣、あなたに言っているのですよ。そして、そのそばにいる官僚どもも、そういう精神論に立脚して国の行政を処置していいではないか。何遍言ったってわからないだろうから、君の方にはもう質問しない。  質問しないが、また本論に返るけれども、今中国に対してはそれだけだ。西ドイツも、中国が核を持っているということを前提にして協定を結んでいるし、ブラジルも、核兵器の問題を国際協力機関に何か要請するという若干の条件はつけているけれども、協定を結んでいる。ならば、日本だってお隣の中国だ、それほど急いで入ってもらいたい中国であるならば、それぐらいの線まで緩和をしたところで、将来の被害は出ないじゃないか。もっと繰り返して言えば、アメリカやイギリスやその他の国と既にもう日本は協定を結んだのだ。そんな国々と結んでいる協定ぐらいは、中国と結んだ方がむしろ危険性も、将来悪用される懸念もないから、ここら辺でこそいま少しフランクに協定を結んだらいいじゃないかと私は言っている。  一番日本に危険なものを持ち込んでくる、それは平和利用と話が違いますと言えばまた水かけ論になるけれども、平和利用の原子力ではないがもっと恐ろしい核兵器までもどんどん遠慮なしに、安保条約がありますということを盾にして日本に持ち込んでいるアメリカとも協定をちゃんと結んでいる日本であるならば、そのアメリカよりもうんと危険の少ない中国と早く結んだらいいじゃないか。それを原則があります、精神論でありますと言って、そこだけ突出してこういう問題を協定に至らないでがちゃがちゃ言っている、その官僚的行政のやり方が私は気に入らないのだ。どうだ、この問題は。
  87. 安倍晋太郎

    安倍外務大臣 いろいろと御意見が出ましたが、私も日中原子力協定というのは早く結びたい、こういうふうに思いまして事務当局に指示いたしまして、これまで鋭意努力してまいりました。何とか今回この国会に提出したいというのが私の念願でしたけれども、今事務当局から説明がありましたように、日本は五つの国と原子力協定を結んでおりますが、中国だからといってその協定よりも突出するというわけにいきませんで、やはり横並びということで中国とも結ばなければならぬ。中国も精神においては、お互いに平和利用ということでよく理解しているわけですが、日中の原子力協定を結べば日本から原子力機器等が輸出されるわけでございますから、特にその点は、ほかの国と結んだ原子力協定ともきちっと整合性がとれたものでなければならぬということで今苦慮しておるわけでございまして、この次は北京で交渉をやるということでありますが、中国側と話し合って何とか歩み寄って早くこの協定が結ばれることを期待しております。  原子力艦船の寄港問題については、これは小林さんと幾らやっても水かけ論になりますが、安保条約で事前協議という立派なものがありますから、これによって非核三原則というのはちゃんと守り通せるというのが我々の考えてあります。
  88. 小林進

    小林(進)委員 外務大臣、あなたの原子力協定を中国と積極的に結びたいという考えは、私ども——私どもじゃないですよ、私は賛成なんです。賛成だけれども、この問題になりますと社会党もまだ態度が決まっておりませんから、私個人はと申し上げておきますよ。日本社会党がどう出ますか。あなた方がうまく協定を結んで、いよいよ私ども承認してくださいというときには、あるいは我が社会党がその条約に対して賛成と出るか反対と出るか、まだ決まっておりませんが、ただ私個人としては早く結んでもらいたい。もしも、兵器などをうようよ日本へ持ってくるような危険なアメリカともちゃんと協定を結んでいるならば、お隣の信頼する中国にはそんなやかましいことを言わないでちゃんと結ぶべきではないかというのが私個人の見解です。  しかし同時に、私は問わないけれども、あなた方は非核三原則があるということをおっしゃってアメリカ擁護のことをおっしゃったけれども、国民はだれもそんなことは信用していません。本当にアメリカ日本に、そういう核兵器を搭載している潜水艦やら飛行機やら軍艦やらを持ってこないというならば、どうぞごらんくださいと言ったっていいじゃないですか。これはアメリカの重大なる国際戦略上の問題だから、そんなことは言えない。言えないようなものはあると見なければだめだから、私の方は御免こうむりますとちゃんとロンギ首相はおっしゃった。なかなか立派ですよ。日本国民はみんな言っているのだ。中曽根さんも安倍さんもそれほどアメリカは信頼に足る、入ってないのだ、積んでいないのだからとおっしゃるなら、オープンに、国民の納得するように、あなた、入っていって見てきたらどうですか。これこそ査察をすべき問題じゃないですか。  単なる原子力の平和利用だけで、査察をさせなければ中国との協定は結ばないと言って、資源のない我が日本原子力に対してそれほど厳格な姿勢をお持ちになるならば、アメリカの潜水艦や軍艦も査察をおやりになったらいかがですか。それは国民の疑惑を一発で解決しますよ。さすがに安倍さんは立派だ、これでアメリカの兵器、弾薬を積んだ軍艦がいかに日本の港へ入ってきておるかわかる、我々は安心して寝ていられますといって、国民は次の日から寝過ぎるぐらい熟睡いたしますよ。それをあなた方は何にもやらないじゃないですか。何にもやらないで、アメリカが入ってないと言っているのだからこれは安心だろう、心配は要らないだろうと言う、これは単なる言葉の遊戯です。決して一国の国民の生命及び身体を背負っている、責任ある首相外務大臣答弁ではありません。これは私が言うのじゃないのです。国民が全部そう思っているのだから。また、政府一流の詭弁が出ているとしか考えられないのでありますから。もし、どうしても中国との平和利用の問題について査察が必要であるとおっしゃるなら、それを条件に、非核三原則に基づいてアメリカの軍艦の核搭載の問題も査察をする決意だ、どうですか、それを一声出していただくわけにはまいりませんか。
  89. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 こればかりは、イエスと言うわけにはいきません。我々としては、条約というのはやはりお互いの信頼性がなければいけませんし、国家と国家の約束ですから、非常に高い信頼性に基づいてこの安保条約というものは存在している、そういう背景がありますから、その必要もないという判断であります。
  90. 小林進

    小林(進)委員 いや、外交は信頼性だからアメリカを信用するとおっしゃるなら、中国も信用したらどうですか。こっちは単なる平和利用だけの問題ですから。しかも、もう西独などちゃんと前例の国もあるのだから、中国も信用して、おまえのところは査察するよ、さもなければ協定を結ばぬよなんと言わないで、さっとお結びになったらいかがでございましょう。
  91. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ですから、これはほかに日本が結んでいる条約との整合性もあるわけですから、中国側も、日本との原子力の平和利用で特に協力関係を持ちたいという非常な熱意を持っておりますし、そういう点で整合性を持たせながら、日本としても、これまでのほかの条約との関係から、新しく変わった立場でその条約を結ぶというわけにいきませんから、その辺で今苦労しているわけでございます。日中間は信頼関係で結ばれておりますし、そして中国も、平和利用以外には使わないということを言っているわけですから、その辺のところを交渉で詰めて、そうして何とかひとつ締結したい、こういうふうに思っております。
  92. 小林進

    小林(進)委員 大臣、御立派です。アメリカは積んでこないと言っているから、これは信頼して、やらない。中国も平和利用以外には使わないと言っているから、同じだ、こっちも信用している。それなら、査察だなんて言わないで、お結びになったらいいと思います。それをひとつあなたに言っておきます。中国の言葉もちゃんと信頼されて、あなたはもうそこまで答弁されたんだから官僚に任せないで、ちゃんと協定をお結びになるもの、私は今の返答でそう推測いたしておきます。  ただ、整合性の問題で一言私が言っておきたいのは、この整合性というものは、あなたはどういう意味で整合性とおっしゃるのか知りませんけれども、ニュージーランドのことを出しては申しわけないけれども、ニュージーランドは、日本とは内容は違ってもANZUS条約、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ、そういう中の信頼関係で、日米安保条約にやや似通ったANZUS条約というものを結びながら、しかしその条約の中でも——ニュージーランドというのはいかにアメリカを信用しているか、日本よりも信用しているかもしれませんよ。関係はもっと深いかもしれません。これから私は暇があったら、直接ニュージーランドまで行きたいと思っているのです。ロンギさんにも会って、彼の崇高なる論理をひざを交えて聞いてきたいと思っているのです。立派だと思っているんだが、しかし、その信頼関係の中にも、彼は核兵器に関する問題は、友好国アメリカの言うことでも無条件に受けるわけにはいかない、お隣のオーストラリアの意思に若干反するところがあるかもしれないけれども、やはり平和のためには、ニュージーランド国民の要望のためには、この問題は査察をさせてもらわなければ、核兵器搭載の疑いのある軍艦は入れるわけにはいかないという、この方がむしろ整合性があると私は思うのです。ANZUS条約とニュージーランドの核兵器に対する態度の方が、対米関係においてもむしろ整合性があると私は思いますが、いかがでございましょうか。  ここまで来ると、どうも日本政府アメリカ合衆国日本州みたいな形になって、一歩も二歩も後退されるのですね。せめてANZUS条約におけるニュージーランド、日米安保における日本国、そういう立場でひとつ私は核の問題を扱ってもらえないかどうかと思うのでございますが、いかがでございましょう。
  93. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本日本立場がありますし、ニュージーランドはニュージーランドの立場があります。そういう自主性に基づいてそれぞれが国の政策を推進しているわけでありますし、幸いにいたしまして日本の安保条約は事前協議制というものがございますから、これでもって我々の考え方は貫かれておる、こういうふうに確信をしております。
  94. 小林進

    小林(進)委員 それでは、もう時間が来たそうでございますから、残りの問題はまたいつかの機会にやらしてもらうことにいたしまして、私は、きょうは外務大臣には基本的に二つのことを御質問いたしました。  一つは、何といっても対米の経済交渉において、今までのような日本政府の卑屈な態度はやめてもらいたい。何でもアメリカが物を言えば、はい、はいと一歩も二歩も下がってくる、こういう情勢では問題の解決にならない。一歩下がれば二歩、二歩下がれば三歩と、必ずまた追い込まれてきて、いつまでたったところでこの問題の解決にはならない。仮に中曽根さんが言われたように、きのう新聞発表されたようなああいう形で、また三年の間にASEAN諸国に対しても減税措置を講ずる、いろいろなことを言われたが、それで問題が解決するかというと、解決しません。  また、アメリカの現在の経済体制、高金利あるいは赤字財政、これはアメリカの国内の体制が改められない限りは、今三百七十億ドルとおっしゃるけれども、これはもっとふえていくと私は思う。ふえますよ、これは。だから、アメリカでも何とかという上院議員も言っているが、ペーパープランじゃ何にもならぬ、実績が上がるか上がらぬかわからぬけれども実績を見てからだ。実績を見るという実績は何でもないんだよ。それは協定や何かをどうすることではなくて、日本の輸出が減って、アメリカ日本へ売ってくる品物がふえてこの格差が狭くなれば、彼らはそれを実績と言うのです。  しかし、先ほどから言っているように、アメリカの品物が日本へ入ってくるためには、日本国民が飛びつくようないい品物をつくればいいじゃないかと言うのです。その原則をアメリカはやらない。それで経済が全部失敗している。その原因はあなたも御存じのとおり、不当に軍事力を拡大して、やれSDIだの、やれ何でございますと言って軍事拡大予算だ。それで農業のいろいろな補助金を切ったり社会保障の補助金を摘んだり、アメリカの内政なんかめちゃくちゃだ。そのヒステリックな声が今日本に向けられておるときに、そのアメリカのヒステリックな国会議員の要望に唯々諾々とついていかれたのでは、我々は丸裸になったところでこの問題の解決にならない。だから、ここら辺でしゃんとひとつ腹を決めて、アメリカに言うべきところは言ってください。先ほども言っているように、古くはいわゆる反日移民排斥事件から私どもは何十年、一体アメリカのために屈辱を忍んできたかということを今、ここで反撃に移っていただきたい、これが第一です。  それで第二番は、原子力協定の問題は、これは中国が加入することに対してはいささかも反対することはありません。九カ国が十カ国になることも私は心から賛成をいたしますけれども、この協定に関連する周辺の問題には、まだ私どもはなかなか腑に落ちない問題がたくさんございますので、もろもろの問題を留保いたしまして私の質問を終わりますが、いよいよ午後からお立ちになるそうでありますけれども外務大臣、御成功をお祈りいたします。質問を終わります。
  95. 愛野興一郎

    ○愛野委員長 午後一時十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十四分休憩      ————◇—————     午後一時十六分開議
  96. 愛野興一郎

    ○愛野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。玉城栄一君。
  97. 玉城栄一

    ○玉城委員 国際原子力機関憲章改正条約審議をさしていただきますが、その前にきのうのきょうでもありますし、外務大臣出席されております当外務委員会であります。また、大臣、今晩OECDにお立ちであるということも伺っておりますので、きのう発表されました対外経済対策、そして日米経済摩擦の問題について、二、三お伺いをさしていただきたいわけであります。  午前中もこの問題は質疑があったわけでありますが、私もきのう総理のテレビを拝見さしていただきましたけれども、また雑談でも出ておりましたけれども、一国の総理大臣が国民に向かって外国の製品を買いなさいとああいうふうに訴える、これは前代未聞ではないか。買い物というのは、必要性があり、また好みもあり、いろいろ問題があって買うわけでありまして、いまだかつてそういうことはなかったのではないか。今よりも一万円分多く外国製品買いなさいというお話もあったやでありますが、そういうことは国民の目から見まして非常に奇異に感ずるわけで、その苦衷はわかるわけでありますけれども、そういう中で外相が今晩お立ちになって、それからブッシュ大統領とも会談をされる、まさに火中のクリを拾う、大変御苦労されることではないかと思うわけであります。  そこで、私も党の立場からこの問題についてお伺いをいたしますが、安倍外務大臣、今私が申し上げました、一国の総理が国民に向かってテレビで外国製品を買いなさい、そういうことをされたことについてどのようにお考えでしょうか。
  98. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 外国製品をできるだけ買いましょうというのは、総理声明としては出したこともあります。これは鈴木内閣のとき、私、通産大臣をしておりまして出しましたけれども総理大臣がみずからテレビに出演したということは初めてだろうと思います。私は、残念ながらちょっと忙しくて見ておりませんが、それだけに中曽根総理決意といいますか、この問題を鎮静化したいという一つの意欲のあらわれであろうと思います。
  99. 玉城栄一

    ○玉城委員 私たち立場から申し上げますと、一国の責任者として、外務大臣も含めて、結果的にこれまでの我が国の経済、外交政策の大きな失敗であったと批判を受けても返す言葉はないと、私はあえて申し上げたいと思うわけであります。  そこで、アメリカの巨額な貿易赤字に関し米国、なかんずく米議会における対日報復要求、あるいは一方的な日本責任論は、貿易収支是正に関する限り冷静さを欠き、正しい判断とは言えないと思うわけであります。今回の政府対外経済対策が果たして実行できるのかどうか、またこの対策をもって、厳しさを増している日米経済摩擦を鎮静化させることができるのかどうか極めて疑問が多く、不安視する向きも多々あるわけでありますが、外務大臣は今後の見通しをどのように考えていらっしゃるのか、お伺いをいたします。
  100. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今とりあえず、日本のとった措置についての外国の反響を集めておりますが、アメリカ政府日本の措置に対して評価をする、その努力は十分認める、非常に自分たちを勇気づけるものだ、こういうことを大統領以下言っております。ただ、問題はこれからだということも同時に言っておるわけでありまして、全体的に見れば評価をしておるということでしょう。そして、アメリカ政府としても、ここで状況を鎮静化したいという気持ちが強く働いているように思います。ただ、議会の方はいろいろとはね返っておりますが、満足していないというのが実情であろうと思います。  さらにまた、ECは、今のところははっきりした反響が出ておりません。恐らく、私がきょうOECD閣僚会議に参りますが、その際いろいろとこれに対する各国の反応というのが出てくるであろう、こういうふうに思います。  ASEANは、ASEAN対策を含めておるわけでありますけれども、まだまだそういう三年というような期間ではなまぬるいじゃないか、こういうふうなむしろ意向のようでございます。これも漸次反響が出てくるであろうと思います。  いずれにしても、日本としては最善の努力をしたわけでありますから、そしてこの努力を十分アメリカを初め各国にこれから説明をするわけであります。したがって、後どう出るか、各国のその後の反応を待つ以外にないわけであります。いずれにしても、私もベストを尽くして努力をいたしまして何とかひとつ鎮静化をいたしまして、日米両国とも頭を冷やすといいますか冷静になって、これからのやはり自由貿易体制を守っていくためにどういうふうにしたらいいか、日本だけの責任じゃなくて、アメリカ責任等も含めたこれからのやり方というものを相談をしていかなければならぬ、そういうふうな事態になることを心から念願をしております。
  101. 玉城栄一

    ○玉城委員 この措置でこれから関係方面からの反応が出、内外からある意味では大きな批判も出てくると私は思うわけでありますが、きのうの対外経済対策、そういう措置でこの問題が解消されあるいは鎮静化されるというふうには、私はちょっと見ていないわけであります。  そこで、サミットが五月二日に開催されるわけでありますが、このままでは日本が孤立化するのではないか、あるいは集中砲火を浴びるおそれがあるという懸念もあるわけでありますが、今回の措置でこうした批判が回避される見通しはあるのかどうか、大臣の率直な御意見を承りたいと思います。
  102. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 OECD閣僚会議その他、これから日本出席する国際会議等で日本に対する批判といいますか、そういうものが、特に黒字問題についての批判が集中するということは覚悟しなければならぬと思いますが、その場合において日本の態度というものは、黒字現実に大きくたまっていることは事実であります。しかし、その黒字をもたらした原因というのは、日本だけにその責任があるということは日本としては到底承服はできないわけでありまして、我々としてはやはり日本自身市場開放努力が、これまでもやったしこれからも続けていくが、同時に黒字問題については、やはりマクロ経済的にアメリカの高金利であるとかあるいはまたドル高であるとか、またアメリカの大変高い経済の成長、そういうところに日本の輸出が大きく伸びていった要因がある、黒字がふえていった要因があるということ等も、率直に指摘をしておかなければならないというふうに思っております。  またヨーロッパの経済につきましても、ヨーロッパの経済が依然として構造調整の問題で多くの問題点を抱えておるし、あるいはまた失業が依然として回復されてない、ヨーロッパの経済がなかなか克服されてないというところにも、やはりヨーロッパ自体の内蔵している問題点を解決してもらわなければならぬということも主張しなければならぬ、こういうふうに思っております。
  103. 玉城栄一

    ○玉城委員 今の問題で、今大臣がおっしゃられましたように、やはり貿易摩擦の多くの原因の一つは米国のドル高であり、高金利であります。その背景には財政赤字があるわけであります。レーガン政権が、国内の経済的批判の矛先を日本に向けたとの見方もあるわけでありますが、そういう認識はお持ちでないでしょうか。
  104. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 殊さらにそういうことではないと思います。レーガン政権も、やはり日米関係を安定した形で進めていきたいという強い期待を持っておるわけでありますし、アメリカ政府全体としても、どちらかというとやはり冷静な形で日米の経済摩擦を解決しようという姿勢であります。ただ、問題は議会でありますが、議会の方はなかなか容易ならざる情勢であるということであります。
  105. 玉城栄一

    ○玉城委員 この問題の要望を最後にいたしまして、我が国としては国益に立って主張すべきことは当然主張していただいて、そうでないとこの問題は常に日本は被告席に立たされかねないと思うわけでありますので、大臣の御健闘をお願いを申し上げておきます。  次に、本題の国際原子力機関、IAEA憲章第六条の改正について順次お伺いをいたしてまいりたいと思います。  一つは、我が国IAEA発足当初から常任的理事国として参画していると伺っておるわけでありますが、我が国IAEAにおける協力や役割の現状について概略御説明いただきたいと思います。
  106. 松田慶文

    ○松田説明員 お答え申し上げます。  我が国は、国際原子力機関の設立以来、原子力技術の先進国の立場から終始その活動に積極的に協力してまいりました。特に、IAEAの組織の実体を強化してその活動を一層強力なものにすることについては、積極的にそれに協力してきた次第でございます。現在、同機関の事務局には千六百人の職員がおりますが、私どもとしましては、各レベルにおける邦人職員の派遣あるいは我が国における各種会合の主催、またアジア各地における原子力科学技術に関する協力に対する参加等々の形で協力してまいってきております。  なお、IAEAに対します私どもの予算分担は、比率にいたしまして約一〇・七%、分担金にして約九百五十万ドルとなっております。
  107. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、このIAEAの現在の職員の数は先ほど千六百名とおっしゃられたわけですね。その中で査察等に従事する職員の数、それから我が国からの派遣職員数及びその役職、これは全部というわけにいかないでしょうが、おおよそで結構です。今、分担金につきましては一〇・七%、九百五十万ドルというお話がございましたが、今申し上げましたことの御報告とその分担金と職員の数、総体千六百名から比率としてどういう状況になるのか、これもお伺いをいたします。
  108. 松田慶文

    ○松田説明員 御説明いたします。  先ほど申し上げましたとおり、職員は千六百と申しましたが、千七百と訂正させていただきたいと存じます、千七百人の職員がございます。その中で査察に従事している職員は、約二百七十名だと承知しております。  全体として我が国から参加しております邦人職員は二十六名でございますが、高級職員といたしましては、保障措置局の開発支援部長、モナコの海洋研究所所長、アジア原子力科学技術地域協力調整官といった重要ポストを占めてございます。ただ、御指摘のとおり、分担金一〇%の加盟国といたしましては、なお邦人職員の参加の程度は低うございまして、これをふやしたいというのは従来からの私どもの懸案でございます。
  109. 玉城栄一

    ○玉城委員 これはこの機関に限らず、国連等こういう国際機関における我が国の、いわゆる日本人職員の数がその分担金に比較して少ないではないかという指摘は、今に始まったことではないわけであります。一概にこの率どおりにはいかないにしましても、分担金が一〇・七%で千七百名中二十六名というのは、確かに非常に少ない感じがいたしますね。ですから、何とかしたいということですが、抽象的でなくしてどういうふうにしたいのか、お答えいただきたいのです。
  110. 松田慶文

    ○松田説明員 IAEAに対します職員の派遣は、専門知識の問題、語学の問題、それからアベイラビリティーの問題等々、複雑な要素がある次第でございますが、にもかかわらず、私どもは、科学技術庁等々の御協力を得て随時努力してまいっております。  実は、先週来、国際原子力機関の事務総長であるブリックス氏が我が国に見えていたわけでございますが、同氏と我々とのいろいろな協議の主要項目としましても、私自身から、日本人職員のより多くの採用について強く求めた次第でございます。     〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席〕
  111. 玉城栄一

    ○玉城委員 質問を変えますが、かねがね開発途上国は、IAEAにおいて憲章を改正し、理事国の議席数を拡大するよう要求していると聞いておるわけです。今回、中国の加盟に伴う最先進理事国数一名増の憲章改正については、開発途上国からは何の問題提起もなく、調整がついていると理解していいのかどうか。
  112. 松田慶文

    ○松田説明員 玉城委員御指摘のとおりでございまして、従来より、IAEA理事会構成におきまして、LDC側からLDC側代表の数の増については一般的に御希望が出ておりますが、このたびの中国の理事国指定につきましては、LDCすべての国を含むコンセンサス、全体の賛同を得て、何ら問題なく調整の上決定された次第でございます。
  113. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、IAEAにおいて、最近、どういう問題が課題となっているのか、そして、そういう課題について、我が国としてはどういうふうに対応していこうという考え方を持っていらっしゃるのか、お伺いをいたします。
  114. 松田慶文

    ○松田説明員 国際原子力機関は、世界の平和、保健、それから繁栄に対する原子力の貢献を促進していくこと、さらにはこの原子力機関の活動がいかなる意味でも軍事目的に利用されないように確保していくこと、このような二つの大きな柱を持っているわけでございまして、これらを適切かつ効率的に推進していくということをIAEAは本来の課題として進んでまいってきております。  このような課題に直面いたしまして、当面問題とされておりますのを一、二申し上げますと、第一には、この機関が原子力の平和利用という意味での技術機関でございますので、政治的要素をできるだけ排除するということが当面の課題の一つでございます。第二には、平和利用の問題と核の不拡散確保のための保障措置の確保という、この二つの側面のバランスを図った活動を続けるということがさしあたりの大きな問題でございまして、我が国といたしましてもこれらの課題につきましては、その克服及び発展のために従来より積極的に協力してまいってきている次第でございます。
  115. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは午前中の御質疑にもあったわけでございますが、この問題に関連をいたしまして、日中原子力協力協定締結交渉、これは今国会中に政府としては国会に出されてという話も当初あったわけでありますが、午前中の質疑を伺いあるいはまた政府側のお話を伺っても、今国会中にこの日中原子力協力協定というものが国会に出されるかどうか、見通しがちょっとはっきりしなくなってきているわけですが、いかがでしょうか。
  116. 松田慶文

    ○松田説明員 中国との原子力協議は、一昨年以来一年以上にわたりまして協議を続けてまいりまして、昨年の十二月に最後の協議を行いました。そのときの進展ぶりから判断いたしまして、もし中国側の対応が早くなされるならば、あるいは一、二月にも妥結の運びとなり、今国会に御承認をいただくための手続がとり得るかと期待いたしておりました。しかしながら、中国側の内部検討が非常におくれておりまして、現状ではまだ次の協議を開くに至っておりません。したがいまして、この段階におきましてかかる事情を前にいたしますれば、私どもといたしましては遺憾ながら、今国会での御承認を賜ることを求めるような仕事の進め方は、まことに困難になったかと考えておる次第でございます。
  117. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、松田さんもおっしゃっておられた平和の担保の問題ですね、平和利用。率直に言って、やはりそれが原因というふうに理解しておいていいわけですね。
  118. 松田慶文

    ○松田説明員 中国は、昨年の一月にIAEAに加盟いたしまして国際社会へ入ってきたわけでございますが、去年の夏ごろに至りまして、保障措置は受けないという従来の立場を変更いたしまして、我が国との原子力協定が締結される場合にIAEAの査察、すなわち保障措置を受けることは原則としてよろしいということを言うに至りました。実はその段階から、急速に協定交渉の進展が見られたわけでございますが、中国側において保障措置を受けるという御方針は決められたとしても、それをどのように条約事としてまとめていくか、どのように実体を固めるか、表現をするかというところが当面の問題であることは、午前中御答弁申し上げたとおりでございます。
  119. 玉城栄一

    ○玉城委員 私も午前中の質疑を伺っておりまして、私の立場から、日中原子力協定は、我が国原子力分野で初めて供給国として協力をする協定であり、さらに、友好国とはいえ、核兵器保有国である中国に対する原子力協力ということから考えますと、慎重でなければならぬと思うわけであります。特に、唯一の被爆国である我が国は、原子力の平和利用に徹しており、他国に対する原子力協力においても、原子力基本法の精神にのっとり平和利用の確保を担保することは必要だと思うわけであります。  そこで、さらに今の問題に関連をいたしまして、昭和五十二年九月にロンドンにおいて非核兵器国への原子力輸出に際して適用されるガイドライン、いわゆるロンドン・ガイドラインが合意され、その中で「供給国は受領国においてIAEA保障措置が適用される時に限り規制対象品目を輸出する。」となっているわけですが、中国は核兵器保有国でこのガイドラインの適用は直接受けないとしても、このガイドライン協議に参加しているアメリカ、フランス、西ドイツは、このガイドラインの精神に沿った何らかの平和利用の担保をとるべきではないかと考えるわけでありますが、外務省のお考えはいかがでしょうか。
  120. 松田慶文

    ○松田説明員 ただいま御指摘のとおり、核兵器国に対する原子力物質等の輸出につきましてはこのガイドラインは適用されない次第でございますが、私どもといたしましては、原子力の平和利用につきましては核兵器国、非核兵器国を問わず、平和利用に徹するという立場を貫く覚悟であることは、以前より申し上げておるところでございます。ただいま先生より、その他の国々も同様な精神で進むことが望ましいのではないかというお言葉がございましたが、私どもまさにそのように考えております。したがいまして、西ドイツといえども中国との協定を結ぶときには、この協力は平和利用に徹するのだという大原則を打ち立ててございます。ただ、保障措置の詳細が規定されてないという手段上の問題はございますが、精神においては、どの国もそのような立場をとっていることは御指摘のとおりでございます。
  121. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで通産省に伺いたいのですが、現在まで原子力分野における民間ベースでの協力は、中国に対してどの程度行われているのか。
  122. 片山登喜男

    ○片山説明員 お答え申し上げます。  現在までのところ、我が国と中国との原子力分野での協力につきましては、社団法人でございます日本原子力産業会議が中心となりまして、専門家の交流とか公開情報の交換等が行われております。また、動力炉・核燃料開発事業団におきまして、中国のウラン資源の共同調査が行われておりますし、民間企業といたしましては、中国の秦山原子力発電所への圧力容器の輸出につきまして成約を見ております。
  123. 玉城栄一

    ○玉城委員 日中原子力協定が締結をされた後は、日中間の原子力関係で相互に協力し得る分野というのはいろいろあると思うのですが、今おっしゃった範囲というふうに受けとめておいてよろしいわけですね。例えば、中国側から我が国への協力というのは、今調査しているウラン等そういう原料というようなことだけですか。いかがでしょうか。
  124. 片山登喜男

    ○片山説明員 主として貿易の観点から考えてみますと、我が国としては、平和目的に限って使われるということを十分確認の上、貿易を認めるという考え方をとっております。したがいまして、圧力容器の輸出案件はございますけれども、同様の具体的な協力案件が出てまいりました場合には、平和利用に使われるということが十分確認できるかどうかを審査した上で、判断していきたいというふうに思っております。
  125. 松田慶文

    ○松田説明員 ただいまの答弁を補足させていただきますが、この協定が締結されますと、非常に範囲の広い原子力分野での相互協力を取り決めることになります。今御答弁があった貿易分野はもちろんその中核となりますが、それ以外にも、研究分野での交流あるいは人物交流、情報交換、こういった分野でも幅広い交流が可能となります。この枠組みの中で具体的にどういう案件が進行するかは、協定締結後の個別案件でございますので、ただいま予断を持って申し上げる段階にございません。
  126. 玉城栄一

    ○玉城委員 松田さん、そこでちょっとお伺いしたいのですが、今後の問題ですけれども、中国がIAEAの保障措置を受け入れることで日中原子力協定が締結されたと仮定した場合、中国は日本から輸入した原子力機器類に限って、保障措置を受け入れる協定をIAEAと締結することになるのかどうか、その辺はどうなんでしょうか。
  127. 松田慶文

    ○松田説明員 そのとおりでございます。  つまり、輸入した機器に保障措置を受ける方法としましては、輸出国の査察を受けるという二国間の関係と、この中立的なIAEAの保障措置を受けるという方法とが理論的にはございますが、現状では、世界のすべてが原則としてIAEAの査察を受けるという方式になっておりまして、中国も、IAEAと協定を結んで、そして必要な査察を受けるということに基本的に同意してございます。
  128. 玉城栄一

    ○玉城委員 もう一つ。こういうふうに日中原子力協定がずれ込みますね。そのことによって、我が国と中国とのいろいろな商談というものは当然影響を受けますね、ほかの国に比べて。いかがでしょうか。
  129. 松田慶文

    ○松田説明員 おくれ方の度合いにもよろうかと思いますが、ただいま現在中国の幾つかの場所で進行中の個別プロジェクト、これは既に進行が始まっておるものがあるやに聞いておりますが、そのものにつきましては、御指摘のとおり若干の出おくれはあり得るかもしれません。しかし、この協定は、何年になりますかまだ確定はしておりませんが、非常に長期的な取り決めてございますので、長期的な日中の原子力協力という広い視野に立ては、私どもとしては特に心配している次第ではございません。
  130. 玉城栄一

    ○玉城委員 通産省に伺いますが、この日中原子力協定に伴って、我が国サイドではどれぐらいの金額というふうに我々は理解しておいたらいいのでしょうか。
  131. 片山登喜男

    ○片山説明員 現在までのところ、具体的な商談につきましては、個別に全部話を聞いているということではございませんので何ともお答えいたしかねますが、発電所のプラントということで考えてみますと、一基数千億円という単位のものになろうかと考えております。
  132. 玉城栄一

    ○玉城委員 一基数千億円、一般的に大体そういう感じということですね。プラントは大体何基になるのですか。
  133. 片山登喜男

    ○片山説明員 今お答え申し上げましたのは発電所プラント全体でございまして、日本に仮に商談として話がある場合でありましても、全体のプラントとして発注が来るということでは必ずしもないと思います。先ほど申し上げました秦山発電所への圧力容器は、そのうちのごく一部でございます。  中国におきまして計画されております原子力発電所は、秦山発電所も含めまして三カ所ほどというふうに承知しております。
  134. 玉城栄一

    ○玉城委員 この場で余り細かく金額的なことを言うのはなにですから別な機会にお伺いしたいと思いますが、いずれにしましても、原子力の平和利用ということは絶対的条件だということを外務省は盛んにおっしゃっておられるわけですから、そういうことを大前提にして、我が国と中国の発展のために、ひとつ早い機会にこういう協定が結ばれることを要望しておきます。  次に、我が国原子力発電問題について、お伺いをいたしておきたいのです。  現在、原子力発電は最も有力な代替エネルギーとして、その建設推進が先進諸国の共通の対策となっているのでありますが、しかしながら、原子力発電に対する総理府世論調査を見ても、原子力発電に対する不安は強いのであります。世界各国においても、なお多くの反対運動が行われているのも事実であります。さきのアメリカのスリーマイル島原子力発電事故は多くの人々に不安を与えましたし、原発の技術は国際的に見ても完成された技術には至っておらないし、いまだに試験研究の段階にあると考えられる面もあるわけであります。このことは、再処理放射性廃棄物処理、廃炉といった原発の下流部分の技術が確立されていないことでも明白であると思います。その意味で、原発についてはもっと地道な研究を続け、もっと国民的合意の形成に努め、国民の信頼を得ることが必要ではないかと思うわけであります。  そういう認識に立ちまして、科技庁の方に御所見を伺いたいのでありますが、さっきもちょっと申し上げました昨年五月に総理府が実施した原発に関する世論調査の結果についてどのように受けとめ、今後の行政にどのように反映される方針か。  私の方から総理府世論調査数字をちょっと申し上げたいわけでありますが、これは昨年五月の総理府の「原子力に関する世論調査」で、「原子力発電所に対する不安感」が、五十五年が五六%、五十六年が五九%、五十九年、去年の場合は七〇%とずっと上がってきています。また、「原子力発電所に対する不安の理由」について、「廃棄物保管処理処分などから」二九%、「放射線(能)が人体や子孫に影響を与えるから」三五%、「事故や故障などで放射線(能)が漏れるから」四六%、こういうふうに数字的にもちょっと高いし、「原子力発電所安全対策は十分行われているか」ということに対して、五十五年は二三%、五十六年は四五%、五十九年はちょっと下がって三八%、こういろいろあるわけですね。ですから、それについて科技庁はどのように受けとめていらっしゃるかということをお伺いしたい。
  135. 青江茂

    ○青江説明員 お答え申し上げます。  まず、原子力発電所につきまして心配に思う、不安に思うというふうにお答えになった方が七〇%近くに達しておるという点でございますけれども、この点に関しましては私どもは率直に申しまして、やや意外の感を否めなかったというところでございます。と申しますのは、この世論調査が行われましたその前の世論調査、五十六年に行われました調査におきましては五九%であったわけでございますが、その調査は実は、例の日本原子力発電株式会社の敦賀炉の放射性廃液の漏えい事故の直後に行われたわけでございますが、その段階におきまして五九%であった。その後大きなトラブルもございませんで、稼働実績というのが非常に良好な状態で推移をしたということを考えますれば、今回の調査におきましては不安感を持っている方というのは、数値的には若干下がるのではないかというふうに私ども考えておったのでございますけれども、さっきも申し上げましたように逆に上昇したということで、やや意外の感を否めなかったというところが率直なところなんでございます。  ただ、いずれにいたしましても、国民のかなりの方が原子力発電所に対しまして不安に思っていらっしゃる、これは数値としまして厳然と出ておるわけでございまして、それにつきましては私どもとしましても真摯に受けとめまして、それに対しまして適切に対応していくということが必要なんだろうと思ってございます。  それに対しまして、何と申しましても第一には安全運転の実績を積み重ねることが基本であろうというふうに思ってございまして、所要の施策を講じてまいりたいというふうに思っているわけでございます。それに加えまして、今先生も御指摘ございましたが、不安に思うというふうな理由に幾つかございますけれども、それの中には例えば「放射線(能)についてよく知らないから」とか「原子力発電所のしくみがよくわからないから」というふうな、やや漠然とした不安感を持っていらっしゃる方が相当な数に上っているということも調査の結果として出でございます。したがいまして、こういった観点から、原子力につきまして正しい理解を国民の方々に持っていただくための広報活動、普及活動につきましても、積極的に取り組んでまいりたいというふうに思ってございます。
  136. 玉城栄一

    ○玉城委員 原子力発電、いわゆるエネルギーの必要性というものは認めつつも、安全性に対する不安感は常につきまとっているわけでございますが、今おっしゃるようなこと、やはり安全性の実績の積み上げということは大事だろうと思うわけであります。  そこで、通産省の方にお伺いいたしたいのですが、現在我が国で運転中の原子炉の数、発電量、全発電量に占める割合、稼働率等、原子力発電の状況並びに長期エネルギー需給見通しに立った原子力発電の適正な規模をどの程度と考えるか、概略ちょっと御説明いただきたい。
  137. 寺田範雄

    ○寺田説明員 お答え申し上げます。  まず、我が国の長期エネルギー需給見通しにおきます原子力の位置づけですが、これは一昨年の十一月に長期エネルギー需給見通しが策定されたわけでございますが、それによりますと、原子力発電というのは今後着実な伸びを示しまして、昭和七十年度には発電設備規模で四千八百万キロワット、それから電力の供給量につきましては、総発電電力量に対しまして、五十七年度は二〇%程度であったところでございますが、七十年度にはこれが三五%に達するという見通しになっております。
  138. 玉城栄一

    ○玉城委員 原発推進の大きな理由として経済的優位性が挙げられてきたわけでありますが、最近は石炭火力の発電コストと原発のそれと余り差がなく、ウラン濃縮や再処理費用の値上がり、放射性廃棄物処理処分費用を勘定に入れますと、石炭の方が原発の方より安くつくと言われているが、そういう点の数値を示していただきたい。
  139. 関野弘幹

    ○関野説明員 通産省では毎年モデル的なプラントを想定いたしまして、五十九年度前後に運転開始をいたしました場合という想定のもとに電源別の発電原価の計算を行っております。五十九年度の計算によりますと、一キロワットアワー当たり原子力は十三円程度、石炭火力は十四円程度、LNG火力、石油火力は十七円程度、一般水力は二十一円程度ということになっております。
  140. 玉城栄一

    ○玉城委員 いや、ですから、ただいま原子力が一キロワット当たり十三円、石炭が十四円、水力が二十一円、石油が十七円ですか、この原子力の一キロワット当たり十三円というのは、今申し上げました廃炉の処理費とかそういうものもコストの中に入れているのか、いかがでしょうか。
  141. 関野弘幹

    ○関野説明員 御説明いたします。  当省のモデル試算では、原子力の発電原価にウランの精鉱、濃縮、加工、再処理等核燃料にかかわるコストは算入されておりますが、廃棄物の最終処分及び廃炉に伴う費用は含まれておりません。これらの未算入費用につきましては、廃棄物の最終処分に関しては、実用化に際しまして今後の技術開発に依存する部分があること、また廃炉については、最終的に具体的な方法が決定されていないこと等の事情があるわけでございます。ただ、現段階でこれらの諸費用につきまして、諸外国での知見等を参考にいたしまして推定いたしてみますと、おおむね発電原価の一割程度になるのではないかというふうに私ども考えております。これらの費用を考慮いたしますと、原子力発電と石炭火力発電の経済性はほぼ同程度になるのではないかというふうに私ども考えております。
  142. 玉城栄一

    ○玉城委員 原子力の場合一キロワット十三円、それに一割アップということは十四円三十銭ですね。そういうふうにおっしゃらないと、一割というだけだとちょっとこちらで計算しなければならないものですから、計算が間違っているかどうか、もう少し親切に……。お答えは、石炭と原子力は同じくらい。今後の見通し、長期的にも中期的にも原子力の経済的優位性というのは、では石炭と同じだということで理解していいわけですか。
  143. 関野弘幹

    ○関野説明員 御説明いたします。  先ほど申しました数字は運転開始の初年度の原価の比較でございますが、これが長期的にどうなるかということにつきましては、化石燃料価格がどうなるかという見通しにかかわっているわけでございます。ただ、一般に化石燃料の価格は、長期的には上昇するものというふうに私ども考えておりまして、一方資本費の大きい電源ほど、減価償却に伴いまして資本費の低減の程度が大きくなるわけでございます。したがいまして、運転開始後年を経るごとに、燃料費の割合の大きい化石燃料電源に対して原子力発電の経済的な優位性はさらに高まるというふうに私ども考えております。
  144. 玉城栄一

    ○玉城委員 次は科技庁の方にお伺いしたいのですが、さっきの安全性の問題で、最近原子力発電の経済性向上を図るため、電力業界は建設費の引き下げや稼働率の上昇に懸命であり、そのために例えば原発の稼働率を上げるため、従来三カ月の定期検査の期間が二カ月に短縮されていると聞いておるわけであります。その努力自体はよいといたしましても、安全論議を置き去りにして進められている面もないとは言えないと思いますが、安全性の面ではこういうことで大丈夫かどうか、お伺いいたします。
  145. 青江茂

    ○青江説明員 お答え申し上げます。  原子力の開発利用は、先生御案内のとおり、従来より安全性の確保というものを大前提に進められておるわけでございます。片や原子力発電のコストにつきましては、先ほどもお話出てございましたように、近時徐々にではございますが上昇してきておるということでございますが、原子力発電のウエートが高まるに伴いまして、そのコストが国民経済全体に与える影響というものも大きくなってくるということで、そういう状況にかんがみまして、各方面におきまして原子力発電の一層の経済性の向上を求めるための活動というものが積極的に進められておるところでございます。  いずれにいたしましても、その経済性の向上というものも、あくまでもさきに述べましたとおり安全性の確保というものが大前提でございまして、安全性の確保を損なうような形でもって実施されることは絶対にあってはならないというふうに考えておるのでございまして、現在進めてございますコスト低減のためのさまざまな方策といいますものは、あくまでもこの原則をベースにいたしまして、その枠内でもって進められておるというふうに理解をしてございます。
  146. 玉城栄一

    ○玉城委員 先ほどから申し上げておりますとおり、原発の安全性の問題に対する不安感が非常に高い中で、企業サイドで努力は当然としましても、そういう大事な部分まで侵すような形でのコストを下げるというやり方については、科技庁とされては非常に厳しく指摘もし、指導もしていただきたいと思うのです。  そこで、同じく皆さん方にお伺いしたいのですが、一昨日、日本原子力研究所の研究施設でJT60でプラズマを発生させることに成功したと大きく報道されておったのですが、科技庁とされて、その成果についてどのように評価をし、今後我が国のエネルギー開発にどのような貢献をすることになるのか、御説明をいただきたいのです。
  147. 雨村博光

    雨村政府委員 お答え申し上げます。  先生お話しのように、四月八日に日本原子力研究所が開発を進めておりましたJT60が、本体を完成いたしました直後に、ショットと申しておりますが、最初のショットでプラズマの点火というものを首尾よく成功させたわけでございます。これは極めて順調に研究が進展してまいりましたので、私ども非常に満足しておりますし、今後の成果もそういう意味では大いに期待しているところでございます。  先生承知のように、このJT60は核融合の一つの第二段階と称しておりますけれども、その第二段階の実験をねらっているものでございまして、核融合の科学的原理の実証というものをしたいということでございまして、臨界プラズマ条件と申しておりますが、そのものを達成するのを確かめるためのものでございまして、これは今後この実験を順調に進めてまいりまして、六十二年度にはこの条件を無事達成されるというふうに期待するものでございます。
  148. 玉城栄一

    ○玉城委員 今、六十二年とおっしゃいましたですね。その六十二年までに何が達成されるのか、これが一つ。こういう研究というのは世界的にはどういう状況にあるのか。それと、我が国のエネルギー開発に今後こういう成果がどのように貢献し得るのか。三つお願いします。
  149. 雨村博光

    雨村政府委員 お答え申し上げます。  先日の日本原子力研究所の成果でございますけれども、これを国際的に比較いたしますと、現在ほとんど同レベルにあると思われますものが、アメリカとそれからヨーロッパ共同体、ECでございます。それぞれ装置の名前は、TFTRあるいはJETという装置の名前でございますけれども、そういったもので臨界プラズマ条件、先ほど私が六十二年度に達成したいと申しましたその条件をねらいまして、それぞれが今実験を行っているところでございます。現在、率直に申し上げまして一線に並んでいるというような状況でございまして、日本原子力研究所も最初にこの条件を達するという可能性もあるというふうに思っているわけでございます。
  150. 玉城栄一

    ○玉城委員 私素人で、この核融合、これが今後我が国のエネルギーにどういうふうな貢献をしていく可能性があるのかどうか、その辺いかがでしょうか。
  151. 雨村博光

    雨村政府委員 核融合の実用化と申しますものはかなり先でございますけれども、これが実用化されました場合には極めて豊富なエネルギーの供給を可能とするものでございまして、人類の未来を担う有力なエネルギーと言われているようなものでございます。したがいまして、この実現というものは世界的にも非常に望まれておりまして、特に我が国といたしましてはエネルギー資源が乏しいわけでございますから、その実現に向けて一生懸命研究開発を進めてまいりたいと思っておるわけでございます。現在原子力委員会におきまして、長期計画におきましてこの点を述べられておりまして、今後とも長期的に、時間はかかりますけれども、計画的に着実に進めてまいりたいと思っておるところでございます。
  152. 玉城栄一

    ○玉城委員 我が国の科学技術水準が極めて高いということを内外へ示した一つの大きなものではないかと思うわけであります。  次、質問を変えます。  この国際原子力機関憲章改正ですが、中国が理事国として加盟するわけでありますので、こういう機会に中ソ関係についてちょっとお伺いしておきたいわけであります。  中国とソ連との間の関係改善が行われるとするならば、国際政治に大きな変化が起こるだろうと思う一人でありますが、昨年暮れ、ソ連首脳としては十五年ぶりに訪中したアルヒポフ第一副首相との間で中国と経済技術協力協定、科学技術協力協定、経済・貿易、科学技術に関する中ソ合同委員会設置の議定書の三協定が調印されたようでありますが、さらに本年一月、五カ年貿易協定を結ぶことに合意しているようでもあります。このような長期経済協定を結ぶのは一九五〇年代の中ソ蜜月時代以来のことであり、中ソ関係は新局面を迎えることとなったと思われるわけであります。そして、この長期協定の最終年度の一九九〇年ごろには中ソ貿易は、現在の米中貿易量に匹敵する往復五十億ドル規模に達するのではないだろうかと言われてもいるわけであります。  しかし、新聞等で知る限り、これらの協定の中身がいま一つはっきりしておりません。もし外務省で、これらの協定の具体的内容を御存じであれば教えていただきたいし、特に、ソ連から中国は原子力発電設備二基を購入する計画が含まれているとも言われておりますが、そういうことも事実であるのかどうか、お伺いをいたします。
  153. 渡辺幸治

    ○渡辺(幸)政府委員 お答え申し上げます。  委員御指摘のとおり、中ソ関係貿易、経済、人的交流、文化交流等の面で改善が図られておりまして、昨年の十二月中国を訪問いたしましたアルヒポフ第一副首相と中国側との間で、委員御指摘の三つの協定に署名されました。一つは、中ソ経済技術協力協定、二つ目は中ソ科学技術協力協定、三番目は中ソ経済・貿易、科学技術協力委員会設置に関する協定でございます。  その内容について、詳しく承知しているわけではございませんけれども、中国側の発表についてその概要を御説明いたしますと、中ソ経済技術協力協定はほぼ三つほどの内容でございまして、一つは、両国は生産技術ノーハウを研究、交換する。それから、企業やその他のプロジェクトを設計、建設、改造する。それから、相互に技術を提供し、技術者養成を行うというものでございます。  二番目の、中ソ科学技術協力協定については、両国は科学者、技術者、学者、専門家の交流を図る。それから、科学技術情報、データを交換する、共同研究及び共同成果の交換を行うというものでございます。  三番目の、中ソ経済・貿易、科学技術協力委員会設置に関する協定でございますけれども、その主要な任務は、第一に、両国間の経済・貿易、科学技術協力に関する協定の履行状況を監督すること。二番目に、これらの貿易における強力な着実な発展を促進すること。三番目は、かかる協力をさらに拡大するための措置を共同研究することということになっております。  御指摘のとおり、来年から五カ年にわたって中国とソ連との間に長期貿易取り決めが締結される見通してございまして、その締結の時期は、ことしの六月、その締結のために姚依林副首相がモスクワを訪問するというふうに伝えられておりますし、その貿易の規模については大体五年間で二百億ドル、最終年一九九〇年には、委員御指摘のとおり、五十億ドルから六十億ドルというように想定されているようでございます。その中には、ソ連から中国が原子力発電機二基を購入したいということが含まれているというように伝えられているということでございます。
  154. 玉城栄一

    ○玉城委員 ただいまおっしゃいましたようなことからいたしますと、実態的には中ソが非常に接近しているということから、新しい局面を迎えているというふうにやはり認識していらっしゃるわけですね。
  155. 渡辺幸治

    ○渡辺(幸)政府委員 中ソの関係が改善されつつある、少なくともその雰囲気が改善されているということは、御指摘のとおりでございます。  他方、東西関係における中国の位置づけ等に対して申し上げれば、例えば米中の関係でも、かなり昨年一年あるいはことしを通じて着実な進展がございました。私どもとしては、中国の外交が活発化しているというように規定することが、より適当ではないかというように考えております。
  156. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、ソ連の方なんですけれども、ソ連は原子力発電設備を数多く輸出していると思うわけでありますが、どこへどのくらい輸出しているのか、その際査察はどのようになっているのか。これは外務省の方にお伺いいたします。     〔浜田(卓)委員長代理退席、委員長着席〕
  157. 松田慶文

    ○松田説明員 お答え申し上げます。  実は、ソ連のこの分野での活動につきましての詳細は承知し得ない次第でございますが、現状までで一応こうであろうと考えておりますのは、フィンランド、ブルガリア、チェコスロバキア、東独、ハンガリー、ポーランド及びキューバに対しまして、原子炉を輸出した実績があるものと承知しております。  また、これらソ連が供給いたしました原子炉に対しましては、すべてIAEAの保障措置が適用されております。そのように承知しております。
  158. 玉城栄一

    ○玉城委員 このように、中ソのいろいろな協定は先ほど結ばれたという御報告もあったわけでありますが、このような経済関係の協定を結ぶことは、ソ連側から見れば、対米関係をにらんだ戦略的判断に基づくものではないかとも思われるわけでありますが、一方中国にとっても、ソ連、東欧諸国との経済関係の拡大を通じて、西側諸国への一方的な依存体制を是正したいねらいもあるのではないかと想像もできるわけであります。  外務省とされては、中ソのこれらの協定の調印を国際政治上からどのように見ていらっしゃるのか、お伺いいたします。
  159. 渡辺幸治

    ○渡辺(幸)政府委員 お答え申し上げます。  中国といたしましては、委員御承知のとおり、現下の最大の国家目標は現代化を実現するということでございまして、そのために平和な国際環境を必要とするということと、開放政策によって外部世界の技術、資金を導入するということでございます。  平和な国際環境を必要とするという意味でソ連との関係も緊張緩和をしたい、改善をしたいということだろうと思いますし、開放政策の主たる対象は、日本であるとかアメリカであるとか西側諸国であろうと思いますけれども、開放政策の対象を何も西側諸国に限る必要はないということは中国の指導者の最近の発言でございますから、ソ連あるいは東欧との関係でも、中国の現代化のために利益となるものについては大いに発展させていきたいということだろうと思います。  国際政治における影響につきましては、御案内のとおり、中国は三つの条件あるいは障害というものを提起してございまして、中ソ間の政治的な関係基本的に改善するためにはその三つの問題点、すなわちソ連がベトナムのカンボジア侵略を支援しているということ、アフガニスタンにおけるソ連の状況、さらには中ソ国境におけるソ連軍の増強、そういう三点について中国はソ連と話し合わざるを得ないということでございます。それに対してソ連がいかに対応するかということが、国際政治においても大きな意味を持ってくるもの、かように考えております。
  160. 玉城栄一

    ○玉城委員 そういう意味では、ソ連の側にも新しい政権も誕生いたしておりますし、今おっしゃるように、これらの中ソの協定調印は、実質面でも大きく改善されていくと見るべきではないかと思うわけでありますが、同時に、今もお話がありましたとおり、中国外務省高官は、中国が自主独立外交を進める上で、二つの超大国の一方にだけ偏った外交は好ましくない、バランスのとれた外交が必要と指摘もしているわけでありますし、今後中国は、米国、ソ連とバランスのとれた外交関係を進めていくというふうに理解しておいてよろしいのか、重ねてお伺いいたします。
  161. 渡辺幸治

    ○渡辺(幸)政府委員 お答えいたします。  委員ただいま御指摘のとおり、中国は、一九八二年以来自主独立の外交を標榜してございまして、東西関係、米ソの関係において両者を十分念頭に置きながら、自主独立外交を展開しているということでございます。かつ、先ほど申しましたように、かなり活発な外交をしているということは御指摘のとおりでございます。
  162. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、姚依林副首相が六月に訪ソする際、また新たな協定を締結するという報道もありますが、そのような予想になるわけでしょうか。
  163. 渡辺幸治

    ○渡辺(幸)政府委員 先ほど申しましたように、中ソ間の長期貿易取り決め調印のために姚依林副首相が六月にモスクワを訪問するということまでは承知してございますけれども、その際に新たな経済協力協定を締結するということについては、新聞報道では承知してございますけれども、その正確な内容については承知しておりません。一応推測できますことは、現在、昨年十二月に締結されました経済協力協定の補足協定的なものができる、そういう可能性はあろうかと思いますけれども、新聞報道以外に承知していないということでございます。
  164. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、もう一回中国の経済の近代化ということについてお伺いしておきたいわけでありますが、経済の近代化のため経済改革という名の自由化に弾みをつける中国に対して、あるいは内外から一部批判もあるわけです。確かに八四年の中国貿易は、往復五百億ドルの大台に乗り、日中間も百三十億ドル余と前年比三〇%を超える伸びとなっております。実際、八四年工業生産一つを見ましても、前年比一三・六%伸び、二年連続二けた成長というハイペースを記録しております。経済自由化によって農村も万元戸はさらに出現、村全体の年間収入が一億元を超える億元郷が出現したとも報ぜられておるわけであります。  今までの中国から比べると、振り子が大きく振れているような感じもするわけですが、経済の急激な改革は、それなりにあるいは副作用を生ずる面もあるかもしれないと思うわけであります。特に、インフレについての懸念はどうなるのか。北京で、昨年十一月半ばだったと思いますが、小売商品が一斉に値上げになるといううわさが流れたところ、百貨店やマーケットには買いだめに走る市民の長蛇の列ができたと報ぜられているわけであります。中国のインフレ、財政赤字、外貨準備高等、現在どういうふうになっているのか。こういうときには、冷静な目で改革テンポの速まっている中国経済を見なくてはならないと思うわけでありますが、現在の中国経済、将来の中国経済を外務省は一体どのように見ておられるのか、お伺いをいたします。
  165. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 お答えいたします。  ただいま先生御指摘のように、最近中国の経済に若干過熱の部分があるのではないかということでございます。昨年の後半、特に第四・四半期に御指摘のような外貨準備の減少、あるいはインフレが若干高くなったのではないかというような報道がなされておりますし、現にこの三月の末から開催されました、第六回全国人民代表大会第三回会議におきます冒頭の趙紫陽総理政府活動報告を見ましても、あるいはその他の中国側の発表あるいは報道を見ますと、八四年の小売物価の上昇率は前年比二・八%、それから財政赤字は当初予算のときには約三十億元というものを見込んでおったようでございますけれども、決算時には二十億元ふえまして大体五十億元ということになっておるようでございます。また、昨年末の外貨準備も同じ年の九月末に比しまして、二十二億五千万米ドルというようにあったと理解しております。そして昨年末の外貨準備は、百四十四億二千万米ドルというように承知しております。  このようにインフレあるいは財政赤字、外貨準備の減少等が発生しました要因は、年末における賃上げあるいは銀行貸し出しが、若干コントロールできなかったためではないだろうかというように聞いておりまして、そのために約八十億元に上る通貨の増発を余儀なくされた。それによりまして、財政赤字を二十億元も当初予算に比べまして増大させた。また、この八十億元の通貨増発が、ただいま先生の御指摘のような生鮮食品を中心とする物価上昇をもたらしたというようなことがあると承知しております。  この点につきましては、一部物資の市場への放出によって余剰通貨の回収に既に着手されていると聞いておりますし、さらに二十数億ドルの外貨準備の減少は、余剰通貨回収のため、外国商品の輸入のためと説明もされております。これら一連の事象は、多分に年末に向かった事象、あるいは季節的な一時的な性格が強いものではないだろうかというように私どもは見ております。  中国経済の最近の動向は御指摘のように、今私も指摘いたしました趙紫陽総理政府活動報告でも指摘されておりますように、過熱ぎみのところがあることは事実であろうと思います。八五年計画では、農業、工業とも前年比六%増、八%増と、それぞれ前年実績の半ばくらいに抑えるというように言われておりますし、また固定資産投資の規模も適当に抑えるというように承知しております。  最後に、これからの中国経済の将来でございますけれども、もちろん対外開放政策一般の帰趨、あるいは経済体制改革の今後の成否いかんによるところは大であろうかと思いますけれども、そういう人民大会等におきます中国指導者の着実な政策運営あるいは反省というものが堅持されるであろうというように私ども思っております。その結果、今世紀末には農工業総生産額が八〇年比四倍増に達しようという目標は、多分達成され得るのではないだろうか、かように思っております。
  166. 玉城栄一

    ○玉城委員 またほかにこの条約に関連してお伺いしたいことがありますが、時間が参りましたので、きょうはこれで終わります。
  167. 愛野興一郎

    ○愛野委員長 次に、木下敬之助君。
  168. 木下敬之助

    ○木下委員 まず最初に外務大臣に、貿易摩擦関係について幾つか質問いたしたいと思います。  この問題に関して、アメリカ政府アメリカマスコミ等は比較的冷静であると思うのですが、それにもかかわらず、なぜこの時期に議会を中心に感情的とも言える対日批判が噴出したのか、その原因をどうお考えになっておられますか、お伺いいたします。
  169. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 議会の方が今急に盛り上がったことについて、いろいろの原因があると思います。  大統領選挙が終わるまでは、どちらかというと議会筋も対日問題を政争には供したくないということで抑えてきた。また、大統領選挙は、どうしても論点がその他の点で絞られてきたということもあったでしょうが、そうした中にあってアメリカの景気がずっと伸びてきて、その間に日本黒字がどんどん膨大になってくる、アメリカの輸出がそれに対応してふえない、アメリカの赤字も増大するというふうなことで、アメリカ議会にそれでなくてもあった対日批判の空気がそうした情勢を機会に、アメリカ政府の対日交渉とも相まって一遍に噴出してきた。  アメリカ議会には、強硬な分子もかねてからあったわけですが、それは対日制限法案等どんどん出しておったわけですが、相当の部分がやはり知日派といいますか、穏健派だったわけです。その穏健派議員までも強硬派と一緒になりまして、どうも日本は、いろいろと約束し改善するなどと言っているけれどもちっとも実が上がっていない、対日輸出も伸びていない、それから対日赤字も増大するだけだ、日本は信用ができない、だからこの際、これに対して一挙に報復を加えなければ日本という国は前へ進まないのだ、こういうことで、急進派から穏健派まで一緒になって盛り上がった。  ですから、今ちょうどアメリカ政府日本政府のやっておる交渉というものを横目で見ながら、この交渉もなかなか行ったり来たりというような状況で、それに今申し上げたような背景があって一挙に議会としては盛り上がったのじゃないだろうか、こういうふうに見ております。
  170. 木下敬之助

    ○木下委員 きのう発表されました対外経済対策について、現時点における米国政府や米国議会、また他の諸国反応はどのようなものであるとお考えでございますか。
  171. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今、続々反応が出ておりますから、結論的に申し上げることはちょっと早過ぎるかもしれませんが、しかし、アメリカ政府は、全体的に見ると冷静に受けとめているといいますか、むしろ日本対策評価しておる、勇気のある行動だ、こういうことを言っておるわけですが、反面、しかしこれは実行されなければ意味はない、こういうこともつけ加えております。議会の方は押しなべて、ちっとも新しいものはない、こういうことで非常に冷ややかであります。さらにASEAN諸国も、今いろいろと反応が返ってきておりますが、どうも少し日本政府は悠長だ、我々はもっと早急に日本政府対応を求めたいという空気のようでございます。  日米に関する限りは、アメリカ政府は四分野における交渉が比較的順調に進捗したという認識は持っておりまして、そしてまた今回の対策をてこにして、何とかこの際日米間の摩擦がさらに拡大することを防いで、ボン・サミットに足並みをそろえて乗り込みたい、こういう感じのように私は見受けておるわけでございますが、しかし、状況は決して油断はできないといいますか、アメリカ議会動き次第でまたどうなるかわからぬ、こういう面もあるわけであります。
  172. 木下敬之助

    ○木下委員 その中身でありますアクションプログラムの骨子の作成を七月中とした理由は何であるか。できれば、五月のサミットまでに作成することが望ましいのではないか、こう考えますが、どうですか。
  173. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは三年以内にアクションプログラムを確立して、これを推進していくということでありますが、しかし三年という期間は相当長いわけで、なかなか今の国際情勢の中で日本が三年という期間を区切ったんじゃ評価が期待できないわけですから、やはり早くやらなければならぬということで七月、そしてそれは、どちらかといいますとこのアクションプログラムにある程度予算も伴うわけですから、概算要求の前までにはやっていこう。ボン・サミットの前ということになりますと、それができれば一番いいわけですが、これまでの経済対策をつくるのに全力投球をしてきたわけで、中期的なものになりますと、やはりそれだけ政府部内その他の関係方面との調整等もかかるだろう、こういうことで非常に急いでということで七月、それも概算要求の前、こういう一つ考え方がそこにあるというふうに私は受けとめております。
  174. 木下敬之助

    ○木下委員 基本的な考えについてお伺いいたしますが、このアクションプログラム諮問委員会の報告を踏まえて作成するとしていますが、例えば工業製品に関する関税は原則としてなくすということも盛り込むのか、お伺いいたしたいと思います。
  175. 恩田宗

    ○恩田政府委員 諮問委員会政府に対して、工業製品の関税をゼロにする用意がある、諸外国との協調のもとに、こういうことを書いてありますのはニューラウンド推進の関連ということでございますので、政府としては、これはニューラウンド推進との関連において考えるべきだろうというふうに考えております。アクションプログラムは、むしろ日本自身が今後三年の間にとるべき行動をできるだけ具体的に計画的に作成する、かようなことではないかと思います。
  176. 木下敬之助

    ○木下委員 この摩擦の解消には、我が国としての市場開放努力とともに、貿易摩擦の大きな原因となっていますアメリカの高金利の是正や対日販売努力の不足に対し、その是正を強く求めるべきではないか、こう考えます。特に、総理日本国民に向かって、テレビ等を通じ日本努力をアピールするだけでなく、米国の新聞、雑誌、テレビなどを通じ日本の主張を強くアピールすることが大事で、そのために必要な予算措置を講ずるべきではないかと考えますが、どうですか。
  177. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 考え方としては、おっしゃるとおりだと思います。やはり日本としてこれだけのことをやったわけでありますし、そして、黒字の原因が日本だけに帰せられるべきではありません。やはり今アメリカに存在しているドル高というものにも大きな要因があるわけでございますし、また、おっしゃるようなアメリカの販売努力にも大きな問題があると思っております。そういう点は率直にアメリカに対しても言うべきであろうと思います。また、私がきょうから参りますOECD等でも、いろいろと議論の中でそうしたことを主張しなければならぬ場合もあり得る、こういうふうに思っております。特にアメリカに対しましては、日本努力を明らかにするという立場から、またアメリカ側にも努力を求めるという立場から、積極的な広報活動をこの際やる必要があるということも痛感をいたしております。
  178. 木下敬之助

    ○木下委員 大臣が、毅然として日本立場を主張なさることを期待したいと思います。  それでは条約審議に入ります。  昨年一月、中国が国際原子力機関のメンバーとなり、中国がIAEA理事会においてのふさわしい地位が得られるよう、九月のIAEA総会において改正憲章が採択されました。IAEAに中国が加盟することは意義深いものがありますが、外務大臣はこれをどのように評価しておられるか、お伺いいたします。
  179. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 IAEAは、原子力の平和利用促進及び核物質等の軍事転用防止を主たる任務としているところ、中国がIAEAに加盟したことにより、IAEAの普遍性が高まり、原子力の平和利用促進及び核不拡散体制強化上、我が国が重視しているIAEAの活動基盤が強化されるものと期待しております。我が国は、中国との原子力協定は平和利用に限定するとの基本立場を踏まえつつ、協定交渉を行ってきております。中国がIAEAに加盟することにより、原子力の平和利用及び核不拡散の国際的体制に関する理解を一層深め、そのことにより原子力の平和利用に関する日中間の協定締結が間接的に促進されることになろう、こういうふうに期待をいたしておる次第であります。
  180. 木下敬之助

    ○木下委員 核兵器保有国であります中国がIAEAのメンバーとなり、その理事国となることを求めていますが、中国は、原子力の開発、その平和利用についてどのような態度で国際協力を進めようとしていると見ておられるか、お伺いいたします。
  181. 松田慶文

    ○松田説明員 中国が核兵器不拡散条約につきまして、この条約が核兵器国、非核兵器国を差別するものであるとして参加していないことは御案内のとおりでございますが、その平和利用につきましては非常にはっきりとした態度を持っておりまして、核の拡散には強く反対し、他国のその分野での開発は全く援助しないということを明確にしております。したがいまして、各外国との原子力分野での協力関係も平和目的に限って行うという立場を堅持しております。
  182. 木下敬之助

    ○木下委員 そういう中国は、今後NPT加盟の方向に動いていくと見られますか。
  183. 松田慶文

    ○松田説明員 率直に申し上げまして、中国が直ちにNPT加盟の方向に動くということは、可能性としては大きくないと存じますが、にもかかわらず私どもといたしましては、NPT体制強化の見地から、今後とも機会あるたびに、中国に対してはその加盟方を訴えていく考えでございます。
  184. 木下敬之助

    ○木下委員 中国のIAEA加盟は画期的なことであるというばかりでなく、原子力最先進国として中国がIAEA理事会に加わることは、IAEAの今後の運営に影響するところが大きいと思いますが、我が国は、原子力の開発、平和利用の分野で、中国とどのように国際協力を進めていく考えか、お伺いいたします。
  185. 松田慶文

    ○松田説明員 原子力分野での中国との協力は、まず第一に、国家間におきましてこの協力の枠組みを設定する必要がございます。原子力の利用が核の拡散につながるものである以上、どの政府も他国との協力関係は、条約できちんと処理する建前になっております。したがいまして、一昨年来、私どもも協定締結交渉を進めている次第でございますが、仮にこれが締結実現となりますと、中国との間では、第一に研究分野での協力、第二に機材等の貿易分野での協力、さらには人物、情報等の交流、交換という分野での協力が可能となります。  これらの枠組みの中で、例えば研究等につきましては、政府機関相互の協力もございましょうが、貿易分野では、これは当然のことながらコマーシャルなお話ということになります。
  186. 木下敬之助

    ○木下委員 中国の原子力の平和利用に積極的である背景、現状についてお伺いいたします。  中国は、一九八〇年から今世紀末の二十年間に農工業総生産を四倍増にするという壮大な経済計画を提示しておりますが、中国の経済発展を促進していくためには、必要なエネルギーの確保が緊急な課題となっているのではないかと考えますが、中国のエネルギー部門の現状はどうなのか、お伺いをいたします。
  187. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 中国のエネルギー部門の現状についてのお尋ねでございます。  中国のエネルギー供給の現状について申し上げますと、石炭、石油、天然ガス、電力が主たるエネルギーでございまして、これを一次エネルギー供給で見ますと、その七〇%余が石炭で占められております。  原子力発電につきましては、今世紀末までに合計一千万キロワットに上る原子力発電所の建設が予定されていると承知しておりますけれども、まだその建設はほんの一部、わずかに緒についたばかりで、この原子力発電の問題はまだ将来のことであろうというように理解しております。  エネルギー資源は、例えば石炭を例にとってみますと、七千八百億トンと極めて豊富な埋蔵量を持っておりますけれども、エネルギー生産の伸びは、ほかの工業生産等の伸びに比しまして、どうも中国ではまだ低いということで、先生御案内かと存じますけれども、エネルギー部門、交通部門の調整あるいは改善が、今お話しの中国の近代化にとっての問題点であり、その改善が望まれているという現状だと承知しております。このためエネルギー開発は、現行の、この八五年で終わります第六次五カ年計画に続きます第七次五カ年計画におきましても、引き続き重点施策の一つであるというように理解しております。
  188. 木下敬之助

    ○木下委員 中国は、石油、石炭などエネルギー資源開発に力を注ぎ、我が国もこれに積極的に協力しているのが現状であると思いますが、このような在来型のエネルギー協力はどうしていくつもりなのか、また、原子力発電について我が国はどのような協力をしていく方針なのか、お伺いしたいと思います。これは外務省並びに通産省に、両方ともお答えをいただきたいと思います。
  189. 片山登喜男

    ○片山説明員 お答えいたします。  我が国といたしましては、これまで中国に対しましてエネルギー関係で、第一次、第二次の輸出入銀行のローンによりまして、石炭開発それから渤海湾の石油開発等に協力をしてきておるわけでございますけれども、今後とも中国側の要請を踏まえまして、中国の資源開発を初めとしまして、エネルギー分野の協力について積極的に進めたいと考えております。  また、原子力につきましては、今後原子力発電を中心としまして、中国としては原子力開発を積極的に進めたいという計画を持っておりますので、我が国としても、発電所の建設、運転、運転の管理、そういった面等におきまして積極的に協力を進めたいと考えております。
  190. 松田慶文

    ○松田説明員 先ほどの御説明にもございましたが、中国は、その近代化達成のためには、今世紀末までに一千万キロワットの原子力発電を必要とする事情がございます。いかに豊富な化石燃料を奥地に持っておりましても、臨海の工業地帯の開発のためには、長距離送電ないしは燃料輸送というところで問題がございまして、どうしても原子力発電所を上海、広東等に建設しなければならないという中国の事情につきましては、私どもも十分理解するところでございます。したがいまして、我々の協力が平和利用に限定され、それが確保されるという前提のもとで、これらの原子力発電所の建設には可能な限りの協力をいたしたい。そのためには、原子力協定を早期に締結いたしまして、その枠組みのもとで、我が国関係民間企業が中国との商談に進み得るように努力したいと考えております。
  191. 木下敬之助

    ○木下委員 中国のIAEA加盟により、日中間の原子力協力分野が拡大するものと期待されますが、西欧諸国、フランス、西ドイツと比べ日中間の協力関係は立ちおくれていると考えますが、これはどのような理由によるものとお考えですか。
  192. 松田慶文

    ○松田説明員 中国がIAEAに加盟いたしましたのは昨年の一月でございます。中国がこのような決定をするに至りましたのは、近代化計画の進行の中で外国との、他国との原子力協力が必要だという認識があったものであろうということは疑いを入れません。しかしながら、IAEAに加盟するというところまで踏み切った中国といたしましても、外国から輸入した機材につきまして査察を受けるというところまでは当初なかなか決定いたしませんで、その最終決定ができましたのはそれから半年おくれた去年の夏以降でございます。したがいまして、それまでに協力の話が先行しておりましたフランスであるとか西ドイツは、中国がIAEAの査察を受けるという決定をする以前に大体の話を取り決めまして、その過程では、これらの協力が平和利用に限られるという原則を確認しただけで仕事を始めております。したがいまして、御指摘のとおり、中仏あるいは中・西独という関係が若干先行しておりますので、ただいまの時点に着目いたしますならば、御指摘のとおり我が国の仕事が少しおくれていることは事実でございますが、今世紀末までの長い期間の大きな仕事という点に着目いたしますれば、私どもといたしましては、今後協定が締結された暁には、十分諸外国に伍して中国との協力が進展できるものと確信しております。
  193. 木下敬之助

    ○木下委員 ところで、中国は核兵器保有国であるわけですが、中国は四つの近代化を実現することを目標として掲げて、八二年末に採択した新憲法によれば、軍の性格実従来の党の軍隊から国家の軍隊へと移行をさせ、国防力の強化を目指しています。我が国はこの中国の核兵器政策をどう評価しているのか、お伺いいたします。
  194. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 相手が私どもじゃありませんで中国でございますので、中国側の説明、趙紫陽総理内外における発言、あるいはその他随時の私どもに対する説明によりますると、中国の核戦略は、自衛及び核恫喝に対する対抗を目的として、限定された規模の核兵器を保有するという考え方であるというように私ども理解しております。同時に、中国は、先制不使用、それから非核保有国に対する不使用、核不拡散、他国の核兵器開発への非協力等の独自の立場を明らかにしております。  もう一つの、中国の核抑止力に対する考え方でございます。この点は、必ずしも明らかではないのでございますけれども、私ども理解する限りでは、右の核戦略の発想は、たとえ小規模でも、少数の核報復力であっても、それが抑止力になり得るという考え方に立っているのではないだろうかと理解しております。
  195. 木下敬之助

    ○木下委員 中国は、国内経済建設を最重要課題として意欲的に取り組んでいますが、その実現を可能にするため、平和な国際環境づくりにも積極的な姿勢を示していると思われますが、中国の軍縮に対する基本方針我が国はどのように理解しているか、また核軍縮について、中国の主張を我が国はどのように受けとめているのか、お伺いいたします。
  196. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 中国の軍縮についての考え方でございますが、主として核軍縮でございますが、先ほどアジア局長からの答弁にもございましたが、まず米ソ両国が率先して軍縮及び核軍縮を行うべきである、中国の核兵器というのは他国に脅威を与えるためではないものであるという立場でございまして、特に一九六〇年代、七〇年代の軍縮交渉につきましては、米ソの独占体制を守るものであるというふうな主張から参画をいたしておりません。したがいまして、部分核停条約でございますとか核不拡散条約等にも参加いたしておりませんし、軍縮交渉にも参加いたしておらないわけでございますが、一九七〇年代から変化の兆候が見られております。一九七九年にはジュネーブの軍縮委員会に参加してまいりました。それからNPT、核不拡散につきましては、先ほどアジア局長答弁申しましたように、条約には入っておらないけれどもその趣旨を守るというふうに変わってきております。また、核実験につきましては、従来核実験停止の交渉に参画しないということでございましたが、最近は、ジュネーブの軍縮会議で、核実験禁止のアドホック委員会ができる場合には従来の不参加の立場を再考するというふうな態度を表明いたしております。  我が方といたしましては、中国が主張いたしておりますように米ソが率先して軍縮をやるべきというのは当然でございまして、それを強く要望はいたしますが、他方、中国自身も、やはり核軍縮を初め軍縮には熱心に取り組んでもらいたいという気持ちを強く持っておりまして、核不拡散条約、部分核停条約等への参加を慫慂し、その他の軍縮交渉にも中国が積極的に参加するよう要望しておるところでございます。
  197. 木下敬之助

    ○木下委員 次に、アジア諸国との国際協力関係についてお伺いします。  アジア地域原子力分野における国際協力関係についてですが、アジア・太平洋地域原子力関係の協力を目的として、国際原子力機関にアジア原子力地域協力協定、RCAが設けられ、我が国昭和五十三年にこれに加盟していますが、このRCAの活動の状況、また我が国はRCAにおいてどのような協力と役割を果たしているか、お伺いいたします。
  198. 松田慶文

    ○松田説明員 ただいま御言及のとおり、アジア原子力地域協力協定、すなわちRCAにつきましては、我が国としても五十三年以来積極的に協力してきております。現在、このRCAのプロジェクトといたしましては、工業、農業、医学、生物学等の分野におきますアイソトープ、放射線利用を中心としてプロジェクトが進められてきておりますが、特に我が国は、これら途上国の緊急課題でありますところの工業、医療等の分野における協力プロジェクトに、技術、資金の両面から積極的な協力を行ってきております。現在の時点でこのRCAに加盟しております国は、東南アジアを中心に十三カ国でございますが、私どもは、一九八〇年以来、本年度を含めまして約百五十万ドルの拠出を行い、また、RCAが必要とする専門研修員の受け入れ等も逐年実施しております。
  199. 木下敬之助

    ○木下委員 アジア諸国は、従来原子力の利用について、ラジオアイソトープ、放射線など地味な分野であったが、二度の石油危機を契機として、原子力開発利用の推進に強い意欲を持ってきており、アジアで唯一の原子力先進国である我が国に対し、協力の要請が高まりつつあると聞いています。  そこでお伺いいたしますが、どこからどのような分野での協力要請がなされていますか。
  200. 松田慶文

    ○松田説明員 アジア諸国におきます原子力の開発状況は、国によりましてその発展段階及び態様を異にしておりますことは、御指摘のとおりでございます。概観いたしましても、原子炉を既に三基持っております韓国、あるいは一基の建設を完了したばかりのフィリピンというような、実際に稼働の段階に来ている国もございますれば、研究炉、実験炉を持ち基礎的研究を進めておりますインドネシア、マレーシア、タイといったような国もございますし、将来に向かっての発電を目指して、研究開発基盤の整備に取り組んでいる国々がございます。それぞれの国は、例えば中国は先ほど申し上げましたとおり、今世紀末までの十五年間における一千万キロワットの原子力発電についての協力を求めてきております。これには積極的に対応する覚悟でございます。また、インドネシア等々の研究開発基盤整備の段階の国々に関しましては、二国間の協力関係を通し、あるいはRCAの協力を通して、それぞれに対応する考えでございます。  なお、科学技術庁におかれても、最近その分野の協力を進められておりますので、御説明ができることと思います。
  201. 加藤康宏

    ○加藤説明員 御答弁申し上げます。  昨年十二月原子力委員会が、「原子力分野における開発途上国協力の推進について」の決定を行ったところでございます。その決定におきましては、「原子力分野における開発途上国協力は、原子力基本法第二条にいう「進んで国際協力に資する」との精神にかなったものであり、原子力先進国となった我が国の国際的責務であるとの認識のもとに、今後積極的に協力を推進すべきである。」としております。そのような基本的な決定のもとに、科学技術庁といたしまして、今年度研究者の交流を積極的に進めようということで予算の手当てもいただきまして、それに従いまして今後その分野の協力を進めていこうという考えでございます。
  202. 木下敬之助

    ○木下委員 そういうことで、我が国原子力先進国として協力していくというのは当然ですが、それぞれの国の開発テンポ、実力に応じたきめ細かい配慮が必要であり、また、原子力の平和利用に徹する我が国基本立場の堅持と、国際的にも核不拡散の体制整備に積極的に貢献するとの方針のもとに対応することが重要と思いますので、この点に関する政府の御所見をお伺いいたします。
  203. 松田慶文

    ○松田説明員 まさに先生御指摘のとおり、アジア諸国その他開発途上国で我が国に対して原子力分野での協力を求める国々に対しましては、その発展段階、必要な対応に応じまして、積極的に原子力の平和利用ということを進めますが、あわせてその際、核の不拡散という大原則をも確保することは先ほどから申し上げているところでございます。
  204. 木下敬之助

    ○木下委員 次に、プルトニウムの輸送問題についてお伺いいたします。  昨年八月には、フランスからソ連へ向け六弗化ウランを積んだモン・ルイ号がベルギー沖で沈没するという事故が起き、また十月には、我が国の使用済み核燃料をフランスで再処理したプルトニウムを日本に運ぶについて、国際的な環境保護団体グリーンピースと英全国海員組合の移送阻止の運動が起こり、核ジャックを警戒し米仏艦船が護衛し、衛星を使って監視を続けながら運搬されるということがあって、核燃料物質の輸送について改めて世界の注目を集めました。日本は、英仏に使用済み燃料の再処理を委託していますが、これは今までにどのくらいの量を委託しているのか、また再処理して回収されたプルトニウムは、過去日本に運ばれた量は何回でどのくらいか、お伺いいたしたいと思います。
  205. 雨村博光

    雨村政府委員 お答え申し上げます。  まず初めに、海外再処理委託契約によりまして英仏両国に引き渡しました使用済み燃料の量でございますが、昭和五十九年度末までに軽水炉燃料で約千四百トン、ガス炉燃料で約八百トンでございまして、これらの輸送回数は約六十回でございます。一方、この海外再処理委託によりまして得られましたプルトニウムのうち、昭和五十九年度末まででございますけれども我が国に返還されましたものは、分裂性のプルトニウムの量ではかりまして合計約八百五十キロでございまして、輸送回数は約十回でございます。
  206. 木下敬之助

    ○木下委員 今、分裂性の何とかと言われて、まだほかにもありそうな空気でございましたが……。
  207. 加藤康宏

    ○加藤説明員 プルトニウムの中には、核分裂をする核種と核分裂をしない核種がございまして、全体で申す場合もございますが、通常は分裂性の場合で言うこともございまして、ただいま申し上げた数字は分裂性のものだけの数字でございます。
  208. 木下敬之助

    ○木下委員 その合計はどうなりますか。
  209. 加藤康宏

    ○加藤説明員 先ほど八百五十キログラムと申し上げましたのは、日本から再処理を委託してそこから抽出されたプルトニウムでございまして、それ以外に研究等に利用するためのプルトニウムを約四百八十キログラム購入しております。
  210. 木下敬之助

    ○木下委員 今回はフランスから日本まで、政情不安な中近東を避け、パナマ運河を経由して長い日数をかけて運搬されましたが、運搬の距離が長ければ長いほど核ジャックの危険もふえます。核ジャックを防ぐには、航空機による輸送がより安全と考えますが、万一飛行機墜落の場合の不安も残ります。原子力安全委員会においては、プルトニウムの航空機輸送に関し安全基準の検討に入ったと聞いておりますが、どういったことをいつごろの実施を目標に検討されているのか、お伺いいたします。
  211. 荒木慎介

    ○荒木説明員 お答えいたします。  プルトニウムの航空輸送につきましては、今後の有力な輸送手段の一つといたしまして国際的に関心が高まっているところでございますけれども原子力安全委員会におきましても、このような情勢に対応すべく、安全の確保という観点から種々検討を開始してございます。ただいままでの検討状況といたしましては、昨年九月に放射性物質安全輸送専門部会の下に新型輸送分科会という分科会を設けまして、プルトニウム航空輸送容器の安全評価基準について種々検討されているところでございます。  具体的に申し上げますと、米国などの外国におけるプルトニウム航空輸送容器の基準の調査あるいは事故時におきます輸送客器の挙動の分析、そういうものを中心といたしまして検討作業が進められている段階でございます。これらの検討を経た上で、今後二ないし三年を目途に、プルトニウムの航空輸送容器の安全評価基準の作業を進めていきたいと考えております。
  212. 木下敬之助

    ○木下委員 IAEAは、プルトニウムの航空機による輸送について規制なり基準を設けているのかどうか、お伺いいたします。
  213. 赤尾旺之

    ○赤尾説明員 お答えいたします。  IAEAにおきましては、陸海空のすべての輸送モードに共通なルールといたしまして、放射性物質安全輸送規則を定めております。これは、航空輸送について特別の基準という形で設けているのではございません。また、プルトニウムにつきましても、他の放射性物質と特に区別しておらず、一般の基準を適用していると承知しております。
  214. 木下敬之助

    ○木下委員 何であると特定してない基準ということは、航空機によるプルトニウムの輸送にも適用される、こういうことでございますか。
  215. 赤尾旺之

    ○赤尾説明員 お答えいたします。  放射性物質の航空輸送につきましては、航空法に基づきまして安全を担保する措置を講じているところでございますけれども、これは一九七三年の国際原子力機関、IAEA規則に準拠いたしまして基準を定めているところでございます。プルトニウムの航空輸送は、IAEAの基準によりますと必ずしも不可能ではございません。しかし、我が国におきましては、プルトニウムの特殊性及びアメリカにおきまして輸送規制を行っておる、こういうことにかんがみまして、輸送の確認を行う際に事故のときの措置が確立されていることが最も必要なことと思われますので、この点で現在の容器では十分な保障が得られないため、現在のところプルトニウムの輸送を認めてはおりません。
  216. 木下敬之助

    ○木下委員 それでは、核物質防護条約についてお伺いいたしますが、核は安全が第一であり、事故があったときの安全等も厳重にしなければなりませんが、同時に、核ジャックを防止するという意味でそういった内容を要するものと聞いております。実際、どのようなことを規定しているのか。そしてこの条約は、一九八〇年三月から署名のために開放されていますが、我が国はまだ署名していません。その理由は何か、明らかにしていただきたいと思います。
  217. 松田慶文

    ○松田説明員 核物質防護条約は、本文二十三条と二つの附属書から成る条約でございますが、その中心的規定といたしましては、一つには、核物質の輸出入許可に際しまして、国際輸送中一定のレベルの防護措置が講じられることを保障することを義務づける、第二に、核物質に関する犯罪を特定いたしまして、締約国に対しては、これらの犯罪のすべてについて適当な刑罰をもって臨むことを義務づけてございます。  御質問の第二点の我が国の態度でございますが、我が国のように核燃料物質の海外依存度の高い国においては、このような物質の国際輸送が非常に重要でございまして、それが一定の国際基準に従って安全かつ円滑に行われることを確保することは極めて大きな意義がございます。この認識から、従来より条約への参加について政府部内で検討を行ってきたところでございますが、まだ法制面での検討を下しておりません。他方、締約国も現在はまだ十一カ国でございまして、条約発効の見通しが立っていないという実態も踏まえまして、さらに慎重に検討を進めていきたいと考えております。
  218. 木下敬之助

    ○木下委員 この発効の見通しについて、お伺いいたしたいと思います。
  219. 松田慶文

    ○松田説明員 この条約は、昭和五十五年の三月に署名のために開放され、自来五年を経過したわけでございまして、本日現在で三十九カ国及びユーラトムが署名いたしましたが、締結手続を下しましたのは、米ソを含めて先ほど申し上げた十一カ国にすぎません。条約の規定上は、二十一カ国の締結を必要としております。したがいまして、私どもの現状の認識におきましては、予見される将来これが直ちに発効に結びつくということは見通しておりません。
  220. 木下敬之助

    ○木下委員 時間が参りましたので、終ります。
  221. 愛野興一郎

    ○愛野委員長 次に、岡崎万寿秀君。
  222. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 きょうは、短時間でありますので、IAEAの問題に絞って質問をしたいと思います。  IAEAが、原子力の平和利用の促進と軍事化転用を防止する機能を果たしていることは言うまでもありませんけれども、問題の一つとして、これが核不拡散条約、NPT体制の保障措置を実施する機関になっている点にあると思うのです。このNPT自身が、いわゆる水平拡散を防止するという任務を持ちながら、当然核保有国が核軍縮と核廃絶に向けて努力すべきところを、十五年にわたってほとんど、あるいは全くと言っていいほどこの努力が放棄されている、一路軍拡になっているという問題があるわけなのです。  そこで、ことしは九月にNPTの第三回目の再検討会議が開かれるわけでございます。こういうNPT問題につきまして、核を持たない国々、特に非同盟の国々から厳しい批判や不満が出ているわけでございますけれども、安倍外相、これはどう御認識されていますか。
  223. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 我が国は、NPTが核拡散防止と原子力平和利用を両立させる主要な国際的枠組みであるとの考えから、一九七六年六月同条約に加盟するとともに、それ以来同条約体制の維持強化に積極的に貢献をしてきております。  同条約の第三回再検討会議は、本年九月、ジュネーブで開催予定であるわけでございますが、我が国は、同会議がNPT体制の維持強化の上で重要であるとの考えから、同会議に積極的に参加いたしまして、同条約体制の強化のために、第一に未加盟国の加盟促進、第二に同条約が求めている核兵器の核軍縮促進、第三に原子力平和利用の推進等を訴えていく考えでございます。
  224. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 外相、私は、非同盟諸国の不満、批判についてどうお感じか、そのことについて御質問したわけです。
  225. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 非同盟諸国もそうでありましょうけれども我が国も、核不拡散条約体制を推進するとともに、肝心の米ソの核軍縮が進むということが最も好ましいことでありまして、そういう点で思うような前進が見られないということが非同盟国の不満でもあるわけでありまして、最近、米ソの交渉が再開され、また前進する可能性も見えてきたことは好ましい現象であると思います。
  226. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 米ソを中心とする核保有国の軍縮が進まないことに不満を持つのは当然であるし、また、核軍拡一路になっている現状がIAEAやNPTそのものをいびつなものにしているということは、共通の認識であろうと思うわけです。  この原子力の開発、平和利用という問題ですが、これは核物質と核技術が蓄積されていくと同時に、容易に軍事に転用される危険を持っているわけです。  第二回の検討会議のときでも、日本代表の大川さんも、新たな核兵器国の登場という問題、つまりIAEAの保障措置のもとでも水平拡散の危険を指摘されているわけですが、核保有国が拡軍拡競争を野放し状態でやっているという状況があるわけでございますから、こういう状況のもとでは、IAEAの目的が有効に機能していないということも言えると思うのです。真の原子力平和利用のためには、何よりも核の軍縮、そして廃絶が必要であると思いますが、外相、どうでしょうか。
  227. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 そのとおりであろうと思います。やはり核の最終的な廃絶に向かって、軍縮が進められるべきだと思います。
  228. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そうしないと真の平和利用ができないということは、安倍外相も今言われました。  そこで、今回の改正というのは、昨年一月に加盟した中国が理事国になるという問題です。これは核保有国でございますので、先ほどからもいろいろな論議があったわけです。IAEAの普遍性を高めるとか基盤を強化するとか御答弁になっていました。  この中国の核問題に対する姿勢は、昨年の三十九国連総会で呉学謙外相が演説しているわけでございますが、核の先制不使用の問題とか非核兵器国に対する不使用あるいは核兵器廃絶を基本とする、こういう姿勢を持っているわけです。こういう国が理事国になることは、今後のIAEA方向についてどういう影響を持つと判断されますか。
  229. 松田慶文

    ○松田説明員 IAEAが平和利用を促進するための技術機関であることに着目いたしますれば、ただいま委員御列挙の最後の平和利用の確保という点で中国の積極的な貢献を期待しているところでございます。
  230. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 それでは少し角度を変えまして、IAEAの保障措置システムによりますと、核爆発を起こさせることのできる核物質の最小量、これは臨界量というふうに呼んでいますが、その基準値をウラン235の場合は二十五キログラム、プルトニウム239の場合は八キログラムというふうに決めています。これはもちろん、平和利用の場合の臨界量なんです。これが核兵器の臨界量になりますと、中性子をよく反射させる材料で核物質の周りを包むとか、あるいは点火用の火薬の爆発力を利用する爆縮、こういう方法によって臨界量はさらに低下する。ウラン235の場合には四キログラム、プルトニウム239は一キロから二キロ。二キロの場合ですと、テニスボールよりか小さい量だそうですね。核兵器というとばかでかいものを連想しがちですが、その中で本当の核爆発を起こす部分というのは、テニスボールよりかちょっと小さいぐらいの大きさのものだというのですね。  この小さな核物質を取り外せば核兵器でなくなるわけですけれども、現在世界には米ソを中心に五万発の核兵器があると言われているわけですね。そうしますとプルトニウム239、これがほとんどですが、これの臨界量を二キログラムとして計算しますと、五万発というのは百トン程度になるのです。五・四立方メートルなんです。臨界量を一キログラムにしますとわずか五十トン、臨界量は二・五立方メートルなんです。四畳半に入るくらい。もちろん、一カ所に集めるということはできるわけはございませんが、それぐらいの量なんですね。  核兵器の廃棄処理というのは、技術的には極めて容易だといういろいろな研究が発表されておりまして、私きょうここに、飯島宗一さん、豊田利幸さん、牧二郎さん編著による「核廃絶は可能か」という岩波新書を持ってきましたが、この種のものを見ましても、核兵器の技術的処理というのは比較的簡単であるという研究が多くなされているわけですね。問題はその役なんですけれども、少なくとも技術的に見るならば、人類の念願である核兵器の廃絶というのはそう難しい問題ではないのだということが、いろいろな研究によってもなされているわけです。政府はこの点についてどういう御認識をお持ちか、お答え願いたいと思います。
  231. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 我が国には核兵器の技術がございませんので、正確に申し上げる立場にはございませんが、一般的な考え方といたしましては、今先生まさに御指摘になりましたように、核弾頭の中に装備されておる核物質を取り出しそれを廃絶するということ、これは技術的には可能なことであろうと考えます。
  232. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 一般的でも、核兵器の弾頭を取り出し廃絶することは技術的には可能であるという政府委員答弁であったわけですが、このことは私は非常に重要だろうと思うのです。日本政府も核廃絶ということは口にしておりますけれども、まだまだこういう問題については多くの国民も知らない状況で、核兵器を前に、五万発もあるんだからとても廃絶は不可能だ、そういう絶望感さえもあるわけです。しかし、技術的には可能だということ。  問題は、何よりも核兵器保有国が政治的に廃絶する合意をつくることだ。これは協定であるわけですね。検証問題も当然それに含まれるでしょう。こういうことをもっと多く宣伝していく必要があると思うのです。取り外した核物質、これは当然IAEAにおいて厳重に保管することも必要ですが、この安全な管理方法も技術的には可能だと言われています。つまり、分裂連鎖反応を困難にする物質をまぜればよいということなんですね。こうなると、IAEAが目標にしている平和利用に対しては、巨大なエネルギーを提供することになるわけなんです。そういう点で、技術的には廃棄は容易である、問題は政治にかかっている、こういう認識は、現代の政治家として、特に国の政治を預かっている被爆国日本の外相として当然お持ちだと思いますが、御見解をお聞きしたいと思います。
  233. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 先ほども申し上げましたように、技術的には可能な問題であろうと思います。それをどのように実現するかということは、まさに国家の政治的意思の問題であろうと思います。
  234. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 安倍さん、同じように御認識なさいますか。これは非常に政治的な問題ですので、政府委員ではなくて、日本を代表する外相としての御認識を聞きたいと思うのです。
  235. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今、政府委員答弁したとおりです。
  236. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 技術的には容易である、しかし問題は政治にある、そういうふうに安倍外相も認識されたと理解をいたします。  角度をさらに変えまして、昨年の第三十九回国連総会に我が国も加わりまして、「核戦争の気候上の影響−核の冬」という決議が賛成百三十、反対ゼロ、棄権十一で採択されています。この「核の冬」の問題については、世界の科学者たちあるいは国連その他の関係機関でも研究され、レポートも出され、多くの警告が発せられているところです。  昨年ワシントンで開かれました「核戦争による長期的、全世界的、生物学的影響にかんする科学者会議」の研究結果についての国連報告をここに持ってきておりますが、その末尾の「要約」のところで次のように書いています。   少なくとも北半球では、大規模な熱核戦争によってひきおこされる生態系への影響だけで、今日の文明を絶滅するに十分であろう。これらの長期的効果が、爆発の直接の災害と結合するとき、北半球は究極的には人類生存者が皆無という事態が示唆される。南半球の人類および他の動植物も深刻な影響をこうむるであろう。   今日の世界の、また近い将来に予想される核兵器貯蔵量にもとづけば、ここに記述されたシナリオは、起こりうる最悪のものではけっしてない。 これは、国連広報局発行季刊誌一九八四年春季号に載っているものです。  また、一九八三年のアメリカ下院科学技術委員会報告書、これもかなり長い報告書ですが、その中で、小委員会が、九月十五日の公聴会でおこなわれた証言から発見したことは、核戦争の代償が、ワシントン(そしてモスクワ)にとってだけでなく、さらには全人類にとっても、まさに禁制的なものだということである。 このように述べています。  最後に私は、スウェーデン王立科学アカデミー編「核戦争とその結末」という本から引用したいのですが、これはこんな立派な本となって日本でも発売されております。この中の「最後に……」というところで、「いずれにせよ、私たちが今日知っているような社会は、ほぼ確実に存在しなくなるだろう。」と言っておる。これが「最後に……」という警告なんです。  私は、我が国の賛成した「核の冬」決議の内容について、国連やアメリカ議会、あるいはスウェーデン王立科学アカデミー等の研究の報告の一部を紹介いたしましたが、この「核の冬」の問題につきまして外相はどういう御認識をお持ちなのか、お聞きしたいと思います。
  237. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 国連で決議されました「核の冬」、これはやはり核爆発によってそうした世界の気象条件が変わるということは地球にとって大変な問題でしょうから、こうした認識というものが世界に広がって、核廃絶の方向へ全人類が動いていくということは極めて大事である、こういうふうに思います。
  238. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そうしますと、核軍縮、外相の望むところですが、その核軍縮を進められる外相の立場としまして、核戦争によって人類は生き残ることができるかどうか。生き残れるというお考えでしょうか、それとも生き残れないというふうにお考えでしょうか。
  239. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 それは全面的な核戦争ということになれば、恐らく地球が絶滅するという可能性すらあるのではないか、こういうふうな恐れを持っております。
  240. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 限定核戦争でも、全面的な核戦争に発展する可能性は大いにあるわけです。そうしますと、今外相言われたように、人類が生き残れない可能性が十分ある、こういうこともはっきりしてきたわけですね。  それでは核兵器廃絶というのは、そういう立場に立ちますならば、人類の死活にかかわるまさに世界政治の中心課題だということになるわけでございますけれども、外相、そのように御認識でしょうか。
  241. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 我々は、そうした認識を持って核廃絶に向かわなげればならぬと思います。
  242. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 人類の死活にかかわる世界政治の中心課題であるという認識を持っている、そういう外相の答弁でございますが、そうしますと安倍外相、この間も私の質問について外相は余り愉快じゃなかったような答弁でございましたけれども、愉快じゃなくてもこれは人類の死活にかかわる問題ですので、やはりはっきりしなくてはいけないわけです。  つまり、核抑止論という立場から核の先制使用を認めるということは、一たん核兵器が使用されれば、先ほど言ったように人類の死滅にかかわるような大問題を引き起こすわけですね。どうしてもこれは両立しないわけです。核使用が「核の冬」につながることにならないというふうにお考えなのか。核をもって核を制するというのは、これは実際上あり得ないわけなんですよ。抑止力論については、前回の外務委員会で外相自身、前提があるなしとおっしゃいましたから、これはまた見解の違いがありますからそれは抜きにしましょう。しかし、核の使用というのが「核の冬」につながる危険性について、やはりつながる可能性を外相としてお認めになるでしょう。
  243. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 核については、今米ソを中心に、中国であるとかあるいはフランス、イギリス等が核を保有しておりますが、そうした核を保有しているというのは、核抑止という観点から保有しているということでありましょうし、残念ながらそうした核の抑止と均衡という姿が、現在の世界の平和を保っておると言わざるを得ないわけでありますが、そういう中にあって、実際に核が使われるということは人類にとっても極めて危険なことでありますし、そういうことは避けていかなければならないと思います。
  244. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 核が使われるということは人類にとって危険なこと、その危険なことの中には「核の冬」も入るわけですよね。それを先制的に使うということは何としても避けなくてはいけないし、使うべきでない。持っていることと使うということにはかなり距離がありますので、そういう姿勢をはっきりしてもらいたいと思うのですが、この「核の冬」の問題については全人類的な共通認識だと思いますので、こういう立場に立って安倍外相、先制使用は当然避けなくてはいけないし、そういうことが「核の冬」につながるのだということ、そういう御認識をもう一度はっきりしてもらいたいと思います。
  245. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは基本的には、そうした核を使用するということは避けていかなければならない、それが必要なことであるということを私は前々から言っておるわけであります。ただ、核というものが抑止力という立場から、今の世界の平和は残念ながらそうした抑止力の上に立った、また均衡の上に立って存在しているという現実の姿を我々は見詰めざるを得ないわけであります。そういう中にあって、我々は日本の道義的な立場として、核の攻撃を受けた立場として、核というものが使われるべきでないということは、全人類だれもが思っておることであろうと思いますし、そういうことを期待するわけであります。
  246. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 この問題をやりますと、かなり時間がかかるわけであります。つまり、「核の冬」を招来するような核使用を前提にしているそういう抑止力論が、果たして人類にとって容認し得る理論であるかどうかという問題があると思うのです。抑止と均衡によって保たれていると言いながら、核軍拡一路だということははっきりしているわけなんですね。この問題は、また引き続きやりたいと思います。  先ほど言いました「核の冬」の国連決議です。この主文の第二項ですか、すべての国、政府間組織並びにこれらの仲介を通じて、非政府組織が「核の冬」を含め、核戦争の気象への影響に関する関連資料を七月三十一日までに国連事務総長に伝達するよう要請されているわけでございますが、これは日本は賛成しましたし、その前に日本は幾つかの国と共同決議を出そうという努力もありましたね。肝心のこの決議について、何らかの努力をなさっていますか。
  247. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 「核の冬」決議につきましては、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、どのような影響を気象に与えるかということを世界の人々が知るべきである、こういうことで我が国も賛成したものでございます。  先生御指摘の、本年七月末までに日本として何をするかという御質問でございますが、現在のところ日本政府機関におきましては、特に気象庁でございますが、この問題には非常に関心を持って見守っておられますが、特にこれについての研究と申しますか、それが行われておるとは承知いたしておりません。ただ、いずれにいたしましても、期限内に日本国内から国連に提出するに値するようなものが出てまいりました場合には、この決議に沿って処理したいと考えております。
  248. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 この分野では、先ほど私が紹介しましたように、国連でもアメリカ議会でも、そして核を持たないスウェーデンでさえも、かなり膨大な報告書が出ているわけですね。あるいは、ソ連ももちろん、WHO、世界保健機構なども研究し、報告書が出ているわけです。被爆国日本でありながら、こういう問題について、出すか出さぬかわからぬような状態というのは残念だと思うのです。日本学術会議日本科学者会議等でもこの種の問題の研究者はいますので、これに委嘱をして、そういうことを含めて研究報告書をつくって国連に提出するように努力をすべきであるというふうに思いますが、どうでしょう。
  249. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 先ほど先生御指摘ございました三つのものも含め、一九八〇年代になりまして本件に関する多くの仮説が世界じゅうで発表されております。この「核の冬」決議は、そういうもの全体を取りまとめて一つの形でみんなに見えるようにしよう、こういうことでございます。今、先生御指摘ございましたような研究が日本で行われますためには、相当程度の期間を要するものであろうと思います。  いずれにいたしましても、本年七月末までにはそういうことは間に合わないのではないかと思いますが、この問題については、我が国としては非常に関心を持っておりますので、世界じゅうの研究なども参考にしながら検討してまいりたいと思います。
  250. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 私は、今度のIAEAの問題について一週間ばかりで集中して勉強しましたけれども、非常に困ったのは、所轄官庁がはっきりしないということなんですよ。非常に部分的な知識はそれぞれでおっしゃいますけれども、肝心なことについては余りなさっていない。特に「核の冬」の問題とか核兵器廃絶の技術的問題等になりますと、全然まともなレクチャーを受ける機会がなかったわけですが、日本は被爆国なんですよね。先ほど努力するとおっしゃいましたけれども、やはりこういう問題についてははっきりした所轄官庁を決めるべきだと思うのですよ。これは多くの国がそうやっているわけです。これは安倍さんに言ってもだめでしょうが、どなたかやはり所轄官庁をはっきりして、こういう問題について系統的に追求する必要があると思いますが、どうでしょうか。
  251. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 この国連決議の趣旨から申しますと、我が方の国内官庁では、気象庁が一番関係があるところだと思います。外務省と気象庁とでよく話し合ってまいりたいと思います。
  252. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 この国連決議によりますと、政府としては、非政府組織、ここが研究し報告書を出せば、政府は仲介してこれを国連事務総長に提出することになっているわけですが、非政府組織の方から提出されれば、当然政府責任を持ってこの決議の方向に沿って国連事務総長の方に出すようになさいますね。
  253. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 国連に提出を要請されておりますのは、非常に科学的な分析に基づく報告であろうと思います。政府に仲介を要請されますものがそのような性質のものであれば、国際的にそれを提出して何らおかしくないようなものであれば、提出について当然前向きに検討したいと思います。
  254. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 出す以上は、国際的に出して恥ずかしくないものであるのは当然でありますので、今おっしゃったように非政府組織の方から提案があれば、これは仲介してこの決議の実行に当たってもらいたいと思うわけです。  いずれにせよ、この種の問題について政府姿勢は、被爆国日本政府としてはまだまだ不十分であると思います。今度のIAEAの憲章改正問題を通じて、この種の問題などについてももっと意欲的に取り組むことを強く要望しまして、ちょうど時間でございます。私の質問を終わります。
  255. 愛野興一郎

    ○愛野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十三分散会