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小林(進)委員 ひとつ
大臣も腹を決めて、筋の通った外交交渉をしてもらいたいと私は思うのであります。三百七十億ドル、これは確かにありがたいですよ。これはありがたいが、しかし、ただもらったわけじゃありません。それは戦後のガリオアとかイロアとかという物資と違って、あなたのおっしゃる自由経済の中で
日本がいい品物をつくって安く売ったから、
アメリカの国民がついてきただけの話であって、これは正当な我々の売買の結果生まれた
貿易の格差であって、それはありがたいが、そのありがたさというものは我々の
努力の結果なんであります。
だからこの問題については、
アメリカの識者は全部言っているのです。
アメリカの
マスコミなんかも冷静だ。
日米貿易で
議会がわんわん言っているけれ
ども、これだけの
貿易格差の原因は八割から九割は
アメリカ側にあるのだ、そんな
日本のアンフェアなどという問題は
アメリカの赤字財政を物語る材料ではないということを、
アメリカ人の識者はみんな知っている。その
アメリカの公平な識者に正しい理論を
訴えようとしないで、気違いのようになってわんわん言っている
議員やらあるいは町の声に
日本の
総理大臣以下
外務省の官僚まで踊って、わっしゃわっしゃと慌てふためいているその姿がいかにもみっともないから、やめたらどうかと私は言っている。そんなものに踊らされたら、いつまでたっても
日本の正しい
姿勢というものが反映することはありませんよ。
きのうだって言っているじゃないですか。中曽根談話に対して、
政府の
閣僚会議に対して、ヨーロッパ、
ECはどんな
反応を示したかといったら、だめだろう、何も効果はないだろう、問題の原因は
アメリカのいわゆる高金利にあるのだから、あの
アメリカの高金利政策を改めない限りはこの問題は解決しないだろう、こう言っておる。私もそう思う。これは中曽根さんがあんなに四つの問題だ、やれ三年間で関税を下げると言ったところで、ちっとも問題の解決になりませんよ。あなた、なると思ったら間違いだ。なりません。ならなければなおさら
アメリカは、
日本という国はたたけば頭を引っ込める国だといって、しゃにむにさらに不当な要望が重なってくるだけであって、この問題の解決の処置にならないから、ここら辺でひとつ腹を決めてきちっとした交渉
姿勢を持ってもらいたい。
まだ
アメリカは、
日本という国を
アメリカの州だと思っておる。ハワイは五十番目の州ですか、
日本は五十一番目の州だとさえ思っておる。何でも
日本に物を言えばそれが通ると
考えている。我々
日本国民はそう見ている。まして中曽根内閣になったらなおさら弱くなって、
アメリカさんが右と言えば一日でも右を見ている、左と言えば一日でも左を見ている
姿勢としか我々には見えないのです。もしあなたが行って、また今までの閉鎖経済をやめましょう、市場の開放をいたしましょう、何とか木材物でも少し早めて買いましょう、薬も
オーケーだ、みんな持っていらっしゃい、こうやって問題が解決するとお
考えになりますか。解決するなら私はそれでいい。くどいようだが、さらに
相手の
アメリカの感情を高ぶらせるだけであって、ちっともそれは効果にならない。ここらで腹を決めて、いわゆる交渉の
姿勢を持っていかなくちゃいけないというのがあなたに対する要望なんです。
原子力の問題もありますから余り言いませんけれ
ども、
日米の歴史を思い出してください。最近はどうも、戦後から何か
アメリカの大変お世話になっているような錯覚に
日本人は陥っているけれ
ども、長い
日米の歴史の中には、
アメリカは随分
日本に不当なことをしているんですよ。それほどありがたい国でもなければ神様でもない。思い起こせば、あの排日移民の問題から始まっているんです。あれもやはり経済問題ですよ。
日本人が働き過ぎるからというんだ。
アメリカ人より働き過ぎるからけしからぬといってあの排日移民問題を起こして、我々の先輩は泣きの涙で引き揚げてきた、その歴史から始まっているんですよ。今もこれは移民問題の裏版ですよ。
日本人は経済力があって能力があって、いい品物をつくって安く売っているから。なぜそれが悪いんだ。それが欲しいから、買ったから
日本へドルが流れてきた、そんなことは自然の流れだ。これは経済の原則じゃないですか。それをこんな、両院の
議会まで決議をして
日本品の排撃をやるというのは、排日移民運動の裏版ですよ。そこへまた
日本政府が腰をぶらぶら振って、はい、ごもっとも、はい、ごもっともと言って、何でもあなたの言うことはもっともですよと言ったら、一体我々国民の
立場はどうなるんですか。そういう国民の気持ちもひとつ
考えてください。
私は、この前もここで言いましたよ。戦争に負けて、そして今
日本が一番血みどろを上げて北方領土、北方領土と、ソ連が北方領土を取ったのはけしからぬと言っているけれ
ども、私はこの前も申し上げました。北方領土を取ったのはソ連ばかりじゃない。ソ連にくれてやったのは
アメリカじゃないか、ヤルタ協定で。ソ連を
日本への参戦に入れるために、あのときのルーズベルトがヤルタ協定の中に千島を、ソ連、おまえにやりますと言って契約しているじゃないか。だから今、あなた、グロムイコいらっしゃいと言って、そしてグロムイコを呼んで北方領土の交渉をするというならば、まず
アメリカからその言質をとっていらっしゃい。なぜ
日本の領土をくれたんだ、なぜ
日本の固有の領土を断りなしにくれたんだと。まず
アメリカ交渉から始めなければ、グロムイコ交渉は最後の仕上げになりませんよ。
グロムイコさんは、もう決まったんだ、決まったんだと言っているのはそのとおりだ。サンフランシスコ
条約へ行ったって、グロムイコは声を大にして、おれはこの北方領土を取ったのは、千島をもらったのは、ヤルタ協定できちっと決まっているんだ、ヤルタの協定で決まったのだと、サンフランシスコ
条約でヤルタ協定の有効性、国際性を声を限りに叫んでいるけれ
ども、
アメリカの代表もイギリスの代表も、ヤルタ協定はやみ協定なんて一人も言っていないじゃないか。ごもっとも、ごもっともだ。そのヤルタ協定に基づいて
アメリカも、ちゃんとおまえに千島をくれたんだと無言の中に
承認しているじゃないですか。それをあなた、
日本が今ここに来て、ヤルタ協定はやみ協定だから了承しないなんて言ったって、それはだめだ。そういうふうに、
アメリカという国から我々が受けている被害というのは多いのです。
日米安保だってそのとおり。安保
条約に藉口して金も出せ。今、
アメリカ軍のために出している金は西ドイツより多いんでしょう、
日本は。
アメリカ駐留軍のための負担金は、NATO
諸国よりも
日本の方が負担金は多いんだ。それほど金を取られて、港を開放せいの、やれシーレーンでございますの、不沈列島になれの、不沈艦になれのと、言いたいほうだいのことを言われているのだ。一体だれが被害者です。
それからさかのぼってきて、今経済問題では、この前井上さんが言ったように、やれ繊維はどうの、鉄鋼はどうの、自動車はどうのと言って、
一つ一つこれはみんな
日本を抑えつけてきて、そして今ここへ来たら今度は部分問題から総括的に、
日本の経済全体を抑えつけようというやり方ですよ。こんなことを一々黙って聞いていられたら、我々は一体何のために外務委員になり、何のために
日本国民のために外交を論じているのか、私は国民に対して顔向けできませんから、どうかひとつきちっとした交渉を続けてもらいたい、これだけはお願いしておきます。ひとつ
決意のほどをお聞きして、次に
原子力の方に行きたいと思います。