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1985-04-03 第102回国会 衆議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年四月三日(水曜日)     午後三時六分開議 出席委員   委員長 愛野興一郎君    理事 北川 石松君 理事 野上  徹君    理事 浜田卓二郎君 理事 山下 元利君    理事 井上 普方君 理事 土井たか子君    理事 玉城 栄一君 理事 渡辺  朗君       鍵田忠三郎君    鯨岡 兵輔君       佐藤 一郎君    中山 正暉君       仲村 正治君    町村 信孝君       岡田 春夫君    河上 民雄君       小林  進君    八木  昇君       渡部 一郎君    木下敬之助君       岡崎万寿秀君    田中美智子君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         外務省北米局長 栗山 尚一君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省中近東ア         フリカ局長   三宅 和助君         外務省経済局長 国広 道彦君         外務省経済局次         長       恩田  宗君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君  委員外出席者         通商産業省貿易         局輸入課長   奈須 俊和君         参  考  人         (日本電信電話         株式会社常務取         締役)     山口 開生君         参  考  人         (日本電信電話         株式会社技術企         画本部国際調達         室長)     加田五千雄君         外務委員会調査         室長      高橋 文雄君     ————————————— 四月三日  理事山下元利君同日理事辞任につき、その補欠  として北川石松君が理事に当選した。     ————————————— 四月三日  米州投資公社を設立する協定締結について承  認を求めるの件(条約第六号)  万国郵便連合憲章の第三追加議定書締結につ  いて承認を求めるの件(条約第七号)(予)  万国郵便連合一般規則及び万国郵便条約締結  について承認を求めるの件(条約第八号)(予  )  小包郵便物に関する約定締結について承認を  求めるの件(条約第九号)(予)  郵便為替及び郵便旅行小為替に関する約定の締  結について承認を求めるの件(条約第一〇号)  (予)  郵便小切手業務に関する約定締結について承  認を求めるの件(条約第一一号)(予) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  参考人出頭要求に関する件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 愛野興一郎

    愛野委員長 これより会議を開きます。  理事辞任及び補欠選任についてお諮りいたします。  理事山下元利君から、理事辞任申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 愛野興一郎

    愛野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、その補欠選任を行いたいと存じますが、先例により、委員長において指名するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 愛野興一郎

    愛野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  それでは、理事北川石松君を指名いたします。      ————◇—————
  5. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  国際情勢に関する件調査のため、本日、参考人として日本電信電話株式会社常務取締役山口開生君及び技術企画本部国際調達室長加田五千雄君の出席を求め、意見を聴取することといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 愛野興一郎

    愛野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  7. 愛野興一郎

    愛野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上普方君。
  8. 井上普方

    井上(普)委員 私は、日米経済摩擦の問題につきましてまず伺いたいと存じます。  先般も同僚の浜田君から、一見識としては立派な御意見をここで述べられたと思うのであります。しかしながら、私は観点を変えまして、この問題について少しく御質問をいたしたいと存ずるのであります。  日本アメリカとの関係は、これは友好でなければならぬというのはもちろんのことであります。しかしながら、ここ近々の日米外交を見てみますというと、アメリカからの非常に理不尽なる要求が次から次と出てきておるように思われてなりません。戦後の歴史を見ましても、昭和四十四年に、鉄鋼輸出規制を強く要求せられましてこれに屈服し、アメリカの言うとおりになりました。続いては四十六年で、繊維交渉が行われ、日本中小企業は大打撃を受けたことは御存じのとおりであります。  さらにはまたその次には、かのニクソンショックなるむちゃくちゃな政策ニクソン政権のもとで行われ、一大打撃日本はこうむったのであります。日本国民は、時には大きなインフレに見舞われました。これは政府などは、石油ショックによってあのインフレが起こったように言われますけれども、今ではニクソンショックによるところのインフレであったことは、経済学的にもはっきりといたしておるのであります。これでもまだ黙って聞いてきた。  その次には、キッシンジャーの中国への訪問、我々日本国民にとりましては、これまた大きなショックを受けさせられた。友好国である日本に対しましては、何ら相談もなしにやられたことは御承知のとおりであります。  その次には、経済摩擦という名のもとにアメリカから次から次へと要求がなされ、自民党政権はこれに従って——従うというよりはびほう策で糊塗してまいったのであります。五十一年には特殊鋼輸出規制、五十二年にはカラーテレビ輸出規制、ビデオの輸出規制、さらにはこの間に開発援助をふやせという要求のもとに、アメリカ戦略開発援助にまで我が自民党政権は手をかしてきたのであります。さらにはまた関税の前倒し等々、アメリカの一方的な要求に対しましては、自民党政権は次から次へとこれを認めてまいりました。農産物の自由化ということで牛肉あるいはオレンジ、さらにはまた金融の自由化というような問題にまでアメリカ要求に屈してきたのであります。  電電公社に対しましても、電電資材の調達問題をこれまた強くアメリカから要求してまいりました。当時電電公社首脳部は、アメリカから電電資材として買うのはバケツとぞうきんであるとまで言ったことは御存じのとおりであります。ところが、これまた資材調達のためということでこれを容認してまいりました。続いては、五十六年からは自動車自主規制もやってまいりました。しかもその間に、アメリカはこれらの産業の保護のために、今自動車産業鉄鋼産業あるいは繊維産業などは非常に弱っておるのだから、これが回復の時期まで日本自主規制をしてくれ、こういう要求のもとに、自民党政権はこれを認め、要求に妥協してきたのは御存じのとおりであります。  しかし近ごろになりますと、日本貿易出超である、こういう名のもとに厳しい要求を次から次へと出しておることは御承知のとおりでありまして、特に自動車自主規制のごときにつきましては、アメリカのクライスラーにいたしましてもフォードにいたしましても、史上最大黒字を計上しておるにもかかわらず、日本に対しましては自主規制要求すると日本政府は受け取っておるのであります。しかも、政府自体自動車輸出自主規制をいたしましたら、スピークス副報道官はこれまた不満の意を表明いたしておるのであります。  いずれにいたしましても、次から次へと要求が出てくる。しかも、これに対して中曽根総理大臣は、本年の一月にレーガン大統領と会見せられて、何かわけのわからぬ密約らしき約束をせられておるやに承っておるのであります。これが、三月の末までに解決するというような約束をしておるそうでございまして、ここ十日、十五日前から、厳しいアメリカからの要求が出てきておるように承ります。このままいけば、アメリカ議会が保護主義的な法制をつくるかもわからぬ、だから日本は譲歩してほしい。常にアメリカ議会を盾にして、恫喝的な外交を展開しておるのがアメリカ外交政策ではないかと私は感じられるのであります。  外務大臣は、このような事態について基本的にどういうようにお考えになるか。先般も浜田委員から申されましたように、このままいけば、これは引っ込めたけれども依然として日本貿易黒字は存在する、どこまで妥協したらいいんだということは、自民党のみならず国民全体が持っておる不安だろうと思うのです。ここらで我々は、毅然とした態度をとらなければならないと考えるのでありますが、外務大臣の御所見を承りたい。
  9. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 戦後の日本アメリカの長い歴史の中では、いろいろと対立もありましたし、摩擦もありました。また、今おっしゃるような、アメリカの強引ともいうべき要求等もあったことは、これは私もそういうふうに思います。しかし、そういう中にあって、日米関係は着実に発展をしてきたことも基本的には事実でありますし、沖縄の返還も実現もいたしましたし、また日米貿易は非常な伸びを示しておりまして、今御指摘のように、今日では三百四十億ドル以上の出超というふうな事態になっておりますし、日本経済もそうしたいろいろな問題を乗り越えて発展をしてきたという事実は否めないと思います。  そして日本アメリカとの関係も、基本的には非常に強化をされておるということも言えるのではないかと思うわけでございますが、そういう中で今日一番大きい問題はやはり経済摩擦貿易摩擦の問題でございまして、これにつきましてはひとり日本だけの責めに帰せられるものではない、やはりアメリカ側にも大きな責任があるということは、アメリカ自身も認めていただかなければなりませんし、日本も強く主張しなければならないわけであります。  今回のこの一連の経済摩擦につきましてアメリカ議会が非常に強い姿勢を示した、そしてその原因がまさにすべて日本にあるというふうな無理解主張というものは、我々としては納得ができない。まさに、日本に対する差別であると言ってもいいと思いますし、日本に対する態度は全く無理解であると言わざるを得ないわけでございます。  今回も上院財政委員会で、十二対四で対日貿易規制法案が可決をされるということになりました。下院におきましても、圧倒的多数で上院と同じ趣旨日本に対する決議が採択をされておるわけでございます。こうした点につきましては、到底私たちとしても納得できないし、アメリカ議会も、日米関係日米の今日のこうした黒字問題等原因についてひとつ冷静な判断を示してもらいたいものである、こういうふうに思っております。  私どもは、この貿易摩擦、特にその根底にありますところのアメリカの対日赤字、これはそれぞれに責任がある。一つは、アメリカ財政赤字あるいは高金利、それに伴うところのドル高というものが大きな要因ではないかと思っております。同時にまた日本におきましても、確かに彼らが言っているように、日本輸入障害というものに対して一つの問題があることも、日本自身として認めていかなければならぬと私は思っておるわけでございまして、日本も累次にわたりましてこうした市場開放については血のにじむような努力をしてまいったわけであります。これに対して全く評価されないということは我々も遺憾でございますし、今回もまた四分野につきまして、特に今テレコムの分野につきましては、アメリカに次いで日本が世界で最も開けた市場としてその措置を実行する、こういうことをいたしたわけでございますから、アメリカ政府は満足しているということでありますが、議会日本のこのような努力は正当に評価をされなければならないと私は思っております。  こうした事態で、これから日本は、九日にはさらに対外経済対策閣僚会議日本としての市場開放の包括的な対策を発表することになっております。アメリカ議会はこれからイースターの休暇に入るわけでございますが、この日本の九日の対外経済対策を見て、恐らく十五日以後に開かれるアメリカ議会で、この上院財政委員会で可決された法案を本会議でどうするかというふうな扱い等も決まっていくであろうと思うわけでございます。いずれにいたしましても、相当噴き上がったような空気の中にあるわけであります。  私は、アメリカ政府は、レーガン政権としては全体的には日本努力を評価しておると思います。きょう我々のところに入った情報によりましても、レーガン大統領の発言その他として、日本努力を評価する、日本のとった措置を歓迎するという姿勢が出ておりまして、アメリカ政府は何とかこの問題を大きく拡大しないで処理したい、アメリカ議会にも良識を求めるという姿勢であります。アメリカマスコミ等も、ただ原因日本にあるだけでなくて、アメリカ側にもその大きな原因があるということを率直に指摘もしておりますので、我々としては、こうした状況の中でさらにアメリカ側に対しましても十分日本立場を説明いたしまして、アメリカの特に議会理解を示してもらいたいと思っております。  今ここで、非常に厳しい状況にありますが、我々は、何としても日米の基本というものを守っていくという立場からいろいろと努力をなさなければならない、同時にまた日本としても、言うべきことはきちっと言わなければならないと考えております。
  10. 井上普方

    井上(普)委員 安倍大臣考え方はわかりました。しかしながら、今までの日本外交というのは、アメリカに対して日本主張を十分に述べていないのじゃないかという感が私はしてならないのであります。およそアメリカ外交というものは、戦後の外交をずっと見てみますと、カナダ、近隣外交は全部失敗している。中南米政策もこれまた失敗歴史、あるいは対中アメリカ外交もまた失敗歴史東南アジアに対しても失敗、欧州においてもしかり。対ソ外交政策においても失敗しておることは御存じのとおりであります。唯一成功しておるのは、対日外交政策だけだろうと私は思う。向こうから見てですよ、我々には不満はうっせきしている。ここをひとつお考え願いたい。  例えて申しますならば、対日貿易収支は、日本では経済企画庁によると三百三十億ドル、アメリカは三百六十億ドル——七十と言っていますか、こういうふうに差がある。それはともかくといたしまして、しからば台湾のアメリカとの貿易はどうかというと、百億を超えているのでしょう。これに対しては文句を言わない。日本に対してだけは文句を言っている。まことに我々は納得がいきかねるアメリカ政策であります。これは日本外交が強いものには巻かれろということで、アメリカ無理難題唯々諾々として屈服してきた姿ではないかと私は思うのであります。ここらは言うべきことはきちんと言って、日本主張主張として頑張る必要があったのではなかろうかと思うのであります。  一つ具体的に、先般も朝日新聞の「論壇」に出た文章でありますが、アメリカ通信機器はいかにも故障が多い、使い物にならぬということを専門家が書いております。  そこで、お伺いするのでありますが、アメリカ資材調達アメリカから厳しく要求せられ、当時の電電公社は泣く泣く不良なる資材をお買いになったと思うのであります。のみならずほかにも、技術も注文するときに外に出さざるを得ないという事情があったと私は思う。どんな物をどれぐらい買っておるのか、残っておるのが今どのくらいあるのか、お伺いいたしたいのであります。承るところによると、アメリカ製電話機日本で買って、これが倉庫に残っておる、あるいはこれを東南アジア輸出しなければならぬというような事態に陥っているということをうわさとして承っておるのでありますが、それは本当かどうか、そしてその数量、金額はどのくらいになっておるのか、電電会社にお伺いするのです。
  11. 山口開生

    山口参考人 お答えいたします。  ただいま先生お尋ね米国から電電が、一昨日の電電公社でございますが、五十六年一月から四年間、日米協定ができましてから四年間かかっておりますが、その間に購入いたしました状況につきましては次のとおりでございます。  品名で申し上げますと、たくさんございますので代表的な品名だけを申し上げさせていただきますが、ポケットベル、スーパーコンピューター、磁気テープミニコンピューター、エコーキャンセラー、高機能回線多重化装置電話機、その他でございまして、この購入価格は総額で四百二十八億円になっております。  なお、まだ購入済みではなくて、契約が済んでおりまして今後納入されるものもございます。これはトラフィック総合管理システム、新電報疎通システム、小容量ディジタルPABX、その他とございまして、この金額は総計で約三百億円であります。  特にお尋ねにございましたまだ在庫になっているものにつきましては、電話機在庫になっておりますが、これは現在約五万五千台でございます。  この電話機につきましては、昨年十一月から、購入いたしましたのが全体で約六万台と数が少のうございますので、東京、関東、東海、近畿地域地域を限定して販売を開始しております。今申しましたように、数も少のうございます。電電株式会社が現在年間に購入しております電話機はおよそ三百万台でございますので、その中で六万台というのはそんなに多い数ではございません。したがいまして、この販売については特に地域を限定したということと、特にPRもやっておりませんで普通のお客様の選択に任せておりましたので販売状況が鈍かった、こういうふうに考えております。  なお私どもは、今後この販売については、これから販売PR活動をすれば売れていくものと思っておりますし、特にこれを海外に売ろうとまでは考えておりません。
  12. 井上普方

    井上(普)委員 電話機一つを取り上げましても、日本人の手とアメリカ人の手とでは大きさが違うのですが、非常に大きい電話機だということを私は承った。自動車にしましても、左ハンドル自動車日本に来て売れるわけはないのです。電電会社は、日本人に合わない、気配りの整ってないものを輸入しているのじゃございませんか。
  13. 山口開生

    山口参考人 電話機も非常に多数ございまして、私ども米国を初め外国から購入する場合には、必ずそのサンプルといったものをちゃんとチェックいたしまして、特に技術的な条件等も十分に吟味いたしまして購入いたしております。したがいまして、今先生がおっしゃいましたように、特段に大きくて使い勝手の全然悪いものを無理やりに買っているということはないと、私たち承知いたしております。
  14. 井上普方

    井上(普)委員 三月二十七日に電子工学専門家が出された「故障多い米国製通信機器」という論文を拝見いたしました。その中にも、IC関係において非常に事故が多い、これらを買わされておるというようなことがあります。今承りますと電電会社は、こういうようなポケットベルであるとか、日本が一番発達しておると思われる機器まで購入されておるようであります。不要のものといいますか、そう必要ではないものまでお買いになっておるのじゃございませんか。我々は、電電会社の内部の諸君からそういう話を盛んに聞かされるのです。ここらあたりどうなんですか。
  15. 山口開生

    山口参考人 お答えします。  先ほどの新聞記事につきましては私、詳しくはございませんけれども、一般的に、数年前IC関係技術につきましてアメリカでシンポジウムがあったときに、日本ICアメリカICが比較されまして、日本ICの方が品質がいいという議論があったことは私も聞いております。そういったICから超LSIに移ります技術につきましては、日本でも今非常に進んだ技術を持っておることも事実でございまして、現在アメリカ日本がどっちということは私も詳しくはございませんが、日本技術も相当進んでおるものと思っております。  なお、私ども機器購入につきましては、IC等アメリカから購入しているわけではございません。そういったものはほとんど国産でございます。それから購入する場合におきましては、全くむだになるとかあるいは使えないものを購入する、こんなばかげたことは私たちもやってはいけないと考えておりますし、現在電電株式会社研究開発をする余裕がないので、できればアメリカを初めとしました外国でいいものがあって、日本でも使えるものがあれば、これはユーザーのためにも役に立つという考え購入しておりまして、決してむだなものを購入しているというふうなことではございません。
  16. 井上普方

    井上(普)委員 株式会社になったのだから、そのくらいの努力はしなければここでは話になりますまい。しかしながら、今もお話を聞きますと、ミニコンピューターども買いになっている。ミニコンピューターと言えば、我々の常識からすれば日本が一番いいものをつくっておると理解している。いいものでありましたら、国産品だからといって日本のものを使う必要は決してないと私は思う。しかしながら、故障が多いもの、あるいは政治的圧力によって買わされるということは、これから断じてやらないように電電会社にお願いしておく次第であります。  先般、特にこの通信機器が大きな問題になりまして、どうも中曽根さんは全面的にアメリカの言うとおりになっておるようでありますが、その経過について外務省から承りたいのであります。
  17. 恩田宗

    恩田政府委員 先生の御質問、私十分理解したか、必ずしも自信がないのでございますが、米国側通信機器の問題について非常に要求しておりましたのは、近い将来登録制を撤廃してほしい、独立した苦情処理システムを確立してほしい、すべての端末機を審査する独立した認定機関を創設してほしい、技術基準をネットワークへの損傷防止に関するものに限定してほしい等々でございます。  特に問題として残りましたのは、技術基準をできるだけ簡素なものにして、米国において日本企業がエンジョイしていると同じような自由な競争を日本においてもさせてほしいという要求でございまして、これに関しましては、先般シクール大統領補佐官がお見えになったときに総理外務大臣、また郵政省当局の方とお会いになりまして、今後六十日以内に専門家同士で作業してさらに簡素化する方向で協議しようということになっておりますので、この点につきましては方向として日米間で了解ができている、かように考えております。  その結果として、米国国務省、商務省及びUSTR共同でステートメントが発表されておりまして、事態は進展を遂げている、我々としては満足している、かような内容であったというふうに私どもとしては承知しております。
  18. 井上普方

    井上(普)委員 なぜ、アメリカ大統領特使日本へ来なければ解決ができなかったのですか、この点をお伺いしたいのです。
  19. 恩田宗

    恩田政府委員 私の承知しておりますところでは、現在アメリカ政府日本との間で合意ができている内容につきましては、一応先般小山次官米国で協議された内容の延長線上にある、ただ、シクール補佐官日本おいでになった御趣旨は、全般として日本考え方、基本的な方針について改めてハイレベルから確認をし、双方においてそれを確認するということでおいでになったというふうに考えております。
  20. 井上普方

    井上(普)委員 考え方と言いますが、なぜ、こういうような大統領特使が来なければ解決できなかったのか。これは、日本外交の下手さにも原因があると私は思う。譲るべきものは、ばしっと初めから譲ればこんなことにならない。しかも、アメリカ大統領特使が来て考え方を一致させたとかなんとかおっしゃいますけれども、我々にとりましてはどうも不可解であります。これまた中曽根政権は譲ったのではないか。だから、中曽根総理大臣外務大臣を飛び越して、あるいは各省の大臣を飛び越して事務次官を呼びつけて、これの解決に当たったというような新聞記事が出ている。ロン・ヤスといって気安くつき合っていただくのも結構なんでありますが、ロン・ヤスでなくてロン・タカになっている、日本にとっては。高い買い物になっているのじゃないかという気がしてならないのであります。  時間がございませんのでこの程度にしておきますが、日本輸出規制、まだ残っておるのは一体何なんです。鉄鋼にしましてもまだ残っておるのでしょう。繊維にしてもまだ残っておるのでしょう。あるいは特殊鋼にしても、カラーテレビ、ビデオもまだ残っておるのでしょう。輸出規制がまだ残しておるのは一体何なのか、どれだけ品目があるのか、お伺いしたいのです。
  21. 恩田宗

    恩田政府委員 品目の数ということになりますと、ちょっと私あれでございますが、一、二分お時間をいただければすぐわかると思います。先生の挙げられた品目のほかにあるかどうか確認させていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  22. 井上普方

    井上(普)委員 アメリカ自主規制日本要求した際には必ず、そのアメリカの業界がだめになるから日本輸出をとめてくれ、こういう要求のもとに、日本はそれでは自主規制をしましょうということで自主規制してきたはずだ。ところが、鉄鋼にしましてももう回復した、自動車産業にしても電機産業にしても回復した、にもかかわらず依然としてこれらの品目につきましては、日本自主規制を強要しておるのが今の姿じゃございませんか。私はこういう面からいいますと、アメリカ要求に理不尽に屈服してきた日本外務省の罪は大なるものがあると思うのであります。しかも、アメリカに対する主張は、これから多くこそなれ少なくなる情勢じゃない。このときに当たって、一体日本外交はどうあるべきかということを真剣に考え直さなければならない時期ではないかと私は思う。外務大臣、いかがでございます。
  23. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本としましては、基本的には、自由貿易体制を世界の中で維持発展をしていくということが、世界の平和、経済の安定あるいは繁栄というものを続ける上に絶対不可欠な要件だ、同時にまた、日本がこれから生存し、発展をするためにも不可欠だということで努力を重ねております。したがって、輸出につきましても、集中豪雨的な輸出ということは保護主義を招くことになりますから、日本自身で節度のある輸出を行うために、アメリカあるいはヨーロッパ諸国等とも相談をする場合もありますし、相談しないで行う場合もあります。ヨーロッパ諸国等に対しては、天気予報と言われるような形で節度のある輸出をしておりますし、対米輸出では、今の鉄鋼自動車等はこれまでアメリカと相談して規制をしておる、あるいは電気製品その他いろいろとやっておるわけでございます。  これはあくまでも、日本自身が自由貿易体制というものを続けていかなければならぬ。これ以上、日本の生産力あるいはまた精度の高い、競争力の強い製品がどんどん自由に出ていくと全く集中豪雨的になるということで、みずから節度を保ち、規制もしておる産品も随分あるわけでございます。これはあくまでも、自由貿易体制というものを保っていきたいということでございます。  しかしそういう中で、貿易は自由ですから、じわじわとアメリカに対しましてもやはり力が強いという形で黒字がふえておる。これは背景として、アメリカ自身にもドル高という大きな原因があるわけで、例えば日本なんか恐らく円にしましても二百五十円前後と言われておりますが、もっともっと高くても、二百十円や二百二十円あるいは二百円でも、日本輸出するだけの力を持っているんじゃないかと私は思っております。アメリカドル高によりまして、そうした点でさらに日本輸出力というものをつけてしまった、これが大変大きな貿易黒字になったわけでございますし、これはただ単に日本市場の閉鎖をしておるということではない。アメリカから製品の輸入がふえないじゃないかと言いますが、これはドル高が大きな原因にあります。また先ほどいろいろとありましたが、アメリカ輸出努力にも問題もないわけではないと私は思っております。これはヨーロッパについても、そういうことが言えるのではないかとも思うわけでございます。  いずれにいたしましても、日本外交の特に経済外交の基本というものは、自由貿易体制をいかに守っていくかということであります。それには日本としても、アメリカやその他の国々から日本自身市場を閉鎖しているのではないかという批判を受けないように努力をし、そういう指摘があればこれに対して積極的に改善を図っていくということは当然ではないだろうか、こういうふうに思いますし、また各国との間の十分な理解を深めて、各国、特にアメリカの保護主義というものが今議会を通じて翕然として起こっておりますが、この保護主義というものが具体的な法律となってこれが実行されるというようなことになりましたら、これはもう自由貿易というものが、アメリカが保護主義になってしまえばヨーロッパもさらに保護主義の勢いを加速するでしょうし、ブロック経済的なものになるかもしれない。あるいはまた、保護主義が蔓延した世界の経済の形ということになりますと、日本自体の受ける打撃というものもまたはかり知れないものがあるわけですから、そういう中で日本としてもできるだけのことはしながら、しかし同時に、世界の理解を求めて保護貿易というものを排して自由貿易を守っていく。ですから、ニューラウンド等を日本主張しているのも、こうした観点に立っているわけでございます。  大変難しい事態ですが、日本としても自由貿易体制を守るためにベストを尽くしていかなければならぬ、私はそういうふうに思っております。
  24. 恩田宗

    恩田政府委員 先ほどの品目でございますが、先生のお挙げになった繊維品、鉄鋼、乗用車のほかに、陶器類と工作機械、二輪車でございます。
  25. 井上普方

    井上(普)委員 今も安倍大臣は、自由貿易体制は守らなければならないとおっしゃる。自由貿易体制をやれやれと言ったのはアメリカなんです。はいはいと言って自由貿易体制に、日本は苦しい中から犠牲を払いながらそれに努力をしてきた。ところがアメリカ議会は、この自由貿易体制に逆行する姿勢を示し、もし日本努力をしなければというよりは日本輸出を規制しなければ、あるいは日本アメリカの製品を買わなければ自由貿易体制を損なうというのでは、アメリカもいいかげん無理を言うなと言いたくなるのであります。  しかも、ドル高あるいは金利高がアメリカに対する日本貿易黒字の大きな原因であるということはここ数年来言って、それでどうするのだと言えば、アメリカには十分伝えてございますと言いながら今日まで及んでおるじゃございませんか。日本の言うことにつきましては耳をかさず、アメリカの言うことばかり聞いてきたのが今の日本の経済外交ではないかと私は憂えるのであります。こんなことをすれば、恐らく日本国内において従順なる日本国民アメリカのこの無理難題に対しまして反発し、反米の空気がさらにさらに高まるであろうことを私は憂えるから言うのであります。この点十分御留意になって、日本の言うべきことは十分に言い、アメリカの言うことに耳を傾けなければならないことは我々は聞かなければならないと思います。しかし、日本主張は十分に主張し、アメリカに聞かさなければ、日本アメリカとの外交が悪くなることは覚悟すべきであるとアメリカ当局に十分に伝える必要があると私は思うのであります。外務大臣、いかがでございます。
  26. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も、今日の事態というのを非常に憂えております。ここでアメリカ議会の勢いがとまらないで保護主義的な法律が議会を通る、それも圧倒的な勢いで通るということになりますと、たとえ第一回目に大統領が拒否権を使ったとしても三分の二でまたひっくり返されるということになるわけでございますし、そんなことになればこれはアメリカ自身が自由貿易の道をふさぐことになってしまう。アメリカにも大変大きな影響が出てくるでしょうが、この勢いというのはアメリカにとどまらないで、ECその他の国々にすぐ波及するということになるわけでありまして、そうなってくれば世界の経済が大変な混乱に陥るのではないか。そういう面で、貿易によって非常な利益を受けておるところの日本が一番打撃を受けるのではないか。これは経済の打撃だけではなくて、今おっしゃったように日米の基本的な関係というものが大きく狂ってしまうということになりまして、政治、外交の面においても大変な相克、対立というものが生まれてくるわけで、これもまた日本にとっては非常に憂うべきことではないかと思うわけで、こうした事態だけは何とか避けたい。  しかし、今の空気は決して経済、貿易だけの面で食いとめられない、もっと大きい広がりを持つかもしれない、そうした空気すら見えるわけでございますから、何とか我々も、日本としても言うべきことはもちろん言わなければなりませんが、日本としてもやっていることの実態、実情、ありのままの姿を世界に知ってもらわなければならぬ。日本は決して努力していないわけじゃないわけですし、そうした努力の姿あるいはまた今日やっておるそうした努力というものは、これはアメリカとかに知ってもらわなければならぬ。どうもそこら辺で理解が足らないところがありますし、あるいはまた誤解という面もあるように思っております。  言いたいことはうんとあるわけでございますが、しかし、全体を損ねてしまうと日本自体が大変な打撃を受けるということで、それは何としても避けていかなければならない。ですから日本としても、そういう中でやるべきことはやっていかなければならない。何か今の状況では、理屈、議論というものを超えて、一つの大きな動きというものが出てきておるように思うわけでございますが、やはり両国とも冷静な立場に立ち返る必要があると思います。アメリカ政府もそうですが、議会も冷静になってもらいたいし、これでまたアメリカに火がつけば日本に火がついてくるのは当然ですから、日本国民も黙っていないでしょう。報復されればまた報復せざるを得ないということになるわけですから、そういうことのないように冷静に、経済、貿易の問題は経済、貿易の面でとどめて処理していくという姿が非常に大事じゃないか。これは外交責任を持っている私としましても、そうした立場からひとつベストを尽くしてみたい、こういうふうに思っております。
  27. 井上普方

    井上(普)委員 今の外務大臣のお話では冷静に対処しなければならない、これはそのとおりであります。日本は今、冷静というよりもむしろ卑屈みたいな形になっているのじゃないかと憂うるのであります。高飛車に出ているのは向こうだ。しかも、言いたいことがたくさんあるとおっしゃいます。言いたいことがたくさんあるのならたくさん言ったらどうですか。そして、それの正当性を彼らに知らせる、そのことによって真の友好が出てくるのだと思う。言いたいことは腹の中にしまっておいて、アメリカの言い分をはいはいと聞き、それを柳に風と受け流してきたのが、今までの日本外交の姿ではなかろうかと私は憂うるのであります。堂々と、言いたいことはたくさん言い、日本の正当性を彼らに知らせる、その努力が足らなかったのではないか。  今後、そういうような外交を展開していただきたいことを強く要求いたしまして、私は質問を終わります。
  28. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、河上民雄君。
  29. 河上民雄

    ○河上委員 安倍外務大臣お尋ねをしたいのでありますが、今、井上委員の方から日米経済摩擦に関する交渉についての御質問がありまして、また大臣からそれぞれ所見が述べられたわけでございます。大臣は先ほど、電信機器に関する非常に基本的な日本側の対応を説明されたのですけれども、今回レーガン大統領の方で満足の意を表明したのは、いわゆるシグール、ガストン・シガーと言ってもいいのじゃないかと思いますけれども、シグール特使中曽根総理と会談した結果、その報告に基づいてああいうステートメントが出たやに報ぜられておるわけであります。  そこで、外務大臣は、中曽根さんとシグールとの会談の内容について十分報告を受けておられますか。
  30. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は立ち会いませんでしたけれども、中身については報告を受けておりますし、その後シグールさん、オルマーさんとも、夜十分話し合っておりますからよく承知しております。
  31. 河上民雄

    ○河上委員 けさのジャパン・タイムズにワシントン・ポストの記事が転載されております。それによりますと、中曽根総理は二つの重要な譲歩をした。その譲歩によって、レーガン大統領が非常に満足の意を表明されたわけでありますけれども、その第一は、そのまま訳しますと、電信に関する政策について政府に勧告を与え得る有力なる審議会アメリカ系の会社に雇われている日本人を一人ないしそれ以上加える、こういう個人的な保証があった。第二には、日本の電信のネットワークで用いられる電信機器技術的な基準の数を近い将来減らす。この点については、先ほど経済局次長の方からお話があったのでわかるのでありますけれども、この二つを中曽根総理がシグール氏に約束した、その点が向こうに大変高く買われたとワシントン・ポストには報道せられておるのであります。  外務大臣は、この点御承知でいらっしゃいますか。
  32. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 中曽根総理とシグールとの間でいろいろと議論があったことは、私も承知しております。いずれにしても、透明性あるいは公平性というものを確保していくという点について中曽根総理からの発言があったわけで、小山次官アメリカにおける折衝の結果を確認したという基本的なラインではないか、私はそういうふうに承知しております。
  33. 河上民雄

    ○河上委員 外務大臣、今二つのうちの後者の方は次長からお話があったので、それはわかっているわけです。第一点のことについては、外務大臣、報告を受けておられるのかどうか。ワシントン・ポストによりますと、恐らくIBMジャパンの重役が入るのではないかと書いてありますが……。
  34. 恩田宗

    恩田政府委員 技術基準を作成する電気通信審議会への外資系企業代表の参加の問題でございますが、この問題は既に小山次官と先方との間でワシントンでずっと話し合いができておりまして、大体の方向は話し合われていたところだと思います。  私ども承知するところでは、総理のところでも一般的な形でこの問題には触れられ、総理としては一般的な形で小山次官のお話をエンドースされた、かようなことだと私は承知しております。
  35. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほどから、シグール特使の派遣についていろいろと質問がありましたけれども、これは率直な話ですけれども、わざわざこうしてシグールさんを大統領が派遣したということの背景としては、アメリカ議会で大変盛り上がってきた法案成立への勢い、これを大統領も何とか抑えなければならないという気持ちを強く持っていたことは事実であります。特に二日から三日にかけて山場を迎える、そういうことでアメリカ政府としては、小山次官アメリカ政府との間の交渉を相当評価をしておるわけです。しかし、小山次官アメリカの担当者との間の合意だけでは、今の盛り上がったアメリカ議会というのはなかなか説得ができない。やはり一つの見せ場というのですか、そういうものをつくっていく。同時にまた、そうした点について中曽根総理の確認を得るということが大統領として必要だ、大統領議会に対して働きかける上においても必要だ、こういうことを考えられたんじゃないか、そういう背景は私はあるように見受けました。ですから、技術的な問題について総理大臣とシグールさんとの間で具体的にどうだこうだというふうなことよりも、背景としてはそうで、ですから基本的には小山さんが向こうでやってきたことを確認をした、そしてさらに透明性、公平性について総理から積極的な発言を得た、これが今回の大統領特使の派遣、そしてその効果というものが今生まれてきておるんじゃないだろうか、こういうふうに私は見ておるわけであります。
  36. 河上民雄

    ○河上委員 今のお話ですと、基本的には確かに郵政次官との技術的な話し合いの延長線上ということでありますけれども、しかしどうも外務大臣ですら、中曽根・シグール会談の内容については必ずしも詳細な報告を受けていない。両方から受けていない。しかもそのニュアンスというような点になりますと、十分伝えられてないんじゃないかという心配がございまして、最近中曽根総理が大いにハッスルするのは結構なんですけれども外務大臣が後からしりぬぐいばかりしているような格好でも、外務大臣としては大変御本人も不本意だろうと私は思いますし、単にそれだけではなくて、首脳外交とはいえそうした専門家の話し合いというもので詰めたものを著しく超えるということは、逆に首脳外交一つの欠点にもなるんじゃないかというふうに大変心配をいたしているわけで、せめて政治家同士の総理と外相との間の呼吸がきちっと合っていることが必要だと思うのであります。その点をちょっと心配をいたしておりますので、シグール氏との会談の内容について、外務大臣並びに外務省はどの程度報告を受けているのかを確認したかったわけです。もう余り時間がございませんので、この問題はこの程度にいたします。  先般、ソ連のチェルネンコ前書記長の死去に伴う国葬に中曽根総理と安倍外務大臣一緒に行かれたわけでございまして、新書記長のゴルバチョフ氏に会う機会が得られたということも大変結構でございますが、ここで、外務大臣として今回の一連の弔問外交の中で、全般的に見て何が一番注目すべき点だ、こういうふうに考えておられたか、伺いたいと思います。
  37. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、去年のアンドロポフさんの葬儀のときも出席をいたしました。今回は中曽根総理とともにチェルネンコさんの葬儀に出席をしたのですが、去年と比較してみますと、随分モスクワの空気が落ちついておったように思います。同時にまた、ゴルバチョフ新書記長の態度等を見ますと、相当な自信にあふれたように見受けられましたし、また非常に若々しさがみなぎっておったということは、これは五十四歳という若さですから当然のことかもしれませんが、そのように今度のゴルバチョフ政権の登場というのは、チェルネンコ前書記長の逝去を前提にして相当準備が進んでおったのじゃないだろうか、こういうふうに私は拝察をいたしたわけでございます。  恐らくこれからゴルバチョフ政権が、超大国ソ連の最高責任者として対米外交その他世界に対するソ連の外交を推進していかれるわけでしょうが、例えば今懸案の米ソの核軍縮交渉等については、相当弾力的な姿勢で出てくる可能性はあるのじゃないか。ですから、米ソの首脳外交をやってもいいんだという回答をきのうも行ったのであろう、こういうふうに思っております。基本的に、ソ連の外交がしからば大きく変わっていくかという状況ではないと私は思いますけれども、しかし全体的に見て時代も流れてきている、移ってきているという中で、そうした雰囲気が徐々に出てきておるのじゃないか、そういう感じを率直に持っております。
  38. 河上民雄

    ○河上委員 今回の一連の弔問外交の中で私どもが非常に注目すべきこととして、もちろん日ソの首脳がああいう形で会ったということもその一つではありましょうけれども、中ソの首脳の会談が二十一年ぶりに行われたというようなこと、あるいは東西ドイツの首脳がモスクワで弔問を機会に会談をした。これは昨年、東西ドイツの会談がかなりのところまで進みながら、ソ連の横やりで流れたというような経緯もあるだけに、そのモスクワで東西ドイツ首脳が会ったということは、私は、今回の一連の弔問外交の中でも非常に重要な意味があると思うのでありますけれども、こういうようなことにつきまして外務大臣はどういうふうに評価されておりますか。
  39. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 モスクワで中曽根総理とともにコール西ドイツ首相に会ったとき、コール首相は、ちょうど今ホーネッカー議長に会ったばかりの後であるということを申しておりまして、私が見ますと、コール首相も相当高揚した気持ちにあったように私は見たわけですね。やはり同じ民族で東西分裂している、そういう二つの国の最高首脳がモスクワで久しぶりに会ったということについて、コール首相の気持ちもいろいろな点で相当盛り上がっておったのじゃないかと思いますし、このことは、ホーネッカー議長が西ドイツに行くということで、ソ連から非常な圧力を受けて行けなかったというこれまでの事実等がございまして、ですからまさにコール首相とホーネッカー議長との会談は、これからの両独関係一つの新しい流れといいますか空気を醸成する上において、大きな一つのステップになるのかなというふうに私は思ったわけでございます。
  40. 河上民雄

    ○河上委員 私の個人的な経験ですけれども、昨年の秋に社会党の理論センターの招待で日本に来られた方ですけれども、東ドイツの党の理論面の責任者ラインホルト博士とお話をしたことを思い出したのでありますが、そのときにちょうど東西ドイツ首脳会談が流れた後であったにもかかわらず、そのラインホルト博士が非常に東西ドイツの対話の必要性を強調しておられたのであります。その一つとして、もし核戦争が起こったら、もう東ドイツも西ドイツもないんだ、そういうことを大変強調しておられたのが印象に残っておるのであります。  こういう東西ドイツの首脳会談、コール首相が大変高揚した気分でおられたということでありますが、この背後にはどうも核の問題について米ソだけに任せ切れない、いわば同盟国と言われているような国々の間についていっただけではどうも心配だという気持ちが次第に強くなってきた一つのあらわれではないかというふうに私は感じているわけでありますが、外務大臣、こうしたいわゆる分裂国家が話し合おうという、信頼関係をつくろうという空気に関しまして、どのような見解を持っておられますか。
  41. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 不幸にして分裂して、体制は違ってきておるわけですけれども、しかし同じ民族ですから、長い歴史の中でともに進んできたドイツ民族ですから、やはり気持ちの中では両国が、お互いの国民が相寄る気持ちを持つということは、これは自然の勢いではないだろうか、こういうふうに思います。
  42. 河上民雄

    ○河上委員 ことしは、実は神戸でユニバーシアードという大学生のオリンピックがあるわけですけれども、これにどういう国が参加しているかという報告を受けますと、東西ドイツ、それから朝鮮半島の場合、朝鮮民主主義人民共和国、韓国、それぞれチームを派遣することを通告してきておりまして、これからまだ八月まで若干の時間はありますけれども、何か特別なことがない限り、オリンピックは二回にわたって片肺を余儀なくされましたが、今回初めて東西、特に分裂国家同士がそれぞれ一堂に会するということになるわけで、これはスポーツに限定されていることでありますけれども外交という点、平和という観点から見まして、こういうスポーツの交流の動きというものも、私はやはり外務大臣としては重視すべきではないかと思うのでありますが、その点いかがでございますか。
  43. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 神戸におけるユニバーシアードが成功するように祈っておりますし、外務省としてもできるだけのお世話をしなければならぬと思います。やはりそうした東西分裂国家とかいろいろと対立しておる国が集まるには、日本という舞台は大変いい舞台ではないか、こういうふうに思っておりますし、そういう中でお互いの気持ちがどこかで通じていくということは、また世界の平和のために大変喜ばしいことである、こういうふうに思います。
  44. 河上民雄

    ○河上委員 そういうような際に、外務大臣、ただ場所を提供するというだけではなく、何か外務大臣としてそういう機会に、そういう緊張緩和の方向の助けになるような動きを可能ならばしたいというふうなお気持ちというふうに伺ってよろしいでしょうか。
  45. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 事がスポーツですから、余り政治がこれに入っていくというのは問題があると思いますが、しかしそうした世界のいろいろの国、特に対立している国々の選手団が、お互いにスポーツを通じて交流の機会に恵まれるということは大変いいことだと思いますし、外務省はどういうお手伝いができるか、その辺のところはまた市の方の御要請等も踏まえて十分検討してみたい、こういうふうに思っております。
  46. 河上民雄

    ○河上委員 きょうは余り時間がありませんので、これ以上余り新たな問題を提起するのは大変難しいのでありますけれども一つだけ、SDIにつきまして、これはもう各委員会でかなり論議されていることではありますが、私は、SDIの一つの登場の本質というのは、これまではお互いに一たん核戦争になれば両方滅びてしまう、それが核抑止力になるのだ、そういう判断であった、理解であったと思うのでありますが、今度は討議されておりますSDIによれば、核攻撃を加えられてもそれを全部非核的な技術、手段によってこれを撃ち落とすことができるということで、核戦争になっても自分だけは生き残れる、勝ち残れるという思想がそこにあるのではないか、このように思うのであります。  そこでSDIについて、アメリカはこれで勝ち残れる、勝ち残れる兵器があらわれたという判断に立っておりますけれども、同盟国と従来考えられてきたところは、これは勝ち残れないと判断して、したがってアメリカから協力を求められても、もう既に外務大臣承知のとおり、皆即答はできない、反対あるいは見解の表明は留保したい、こういうふうにしているわけでありまして、特に西ドイツなどでは、六十日以内に回答を迫るというのは、これはもう一種の恫喝ではないかという意見が、先ほどの外務大臣がお会いになったコール首相の与党の中からさえ出ておる。  こういう際に、日本政府はSDIの専門家を呼んでそれから答えを出す、こういうようなことでありますけれども、一体これについてどういうふうにお考えになっておるのか。私はその辺何か、今SDIの登場によって非常に重大な核というものについての考え方の思想的な変化が起きようとしているときに、日本政府がただ西側の一員だから何となく反対の答えは出しにくいというようなことではなく、ここははっきりしていただきたいと思うのであります。
  47. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 SDIの基本的な考え方についてアメリカ側の説明を我々は受けたわけですが、これは何もアメリカだけが生き残れるということではなくて、我々がある程度理解を示したというのは、SDI構想が実行せられることによって核兵器、核を持つことが無意味になってしまう。ですから、核の廃絶にこれがつながっていく、そういう構想であるということで理解を示したわけですが、しかし、これからどうなっていくかというのはこれは情報とかを得なければわかりませんし、日本としても最終判断できない。非常に重要な問題ですから、日本としては慎重に考えて自主的に判断をしなければなりません。日本日本の国の基本的な考え方があるわけですから、それも踏まえて、専門家意見も聞いて、そして何もおっしゃるように六十日の期限だとかなんとか言ったって急ぐことじゃないわけですから、非常に長期的な構想ですから、じっくりとこの辺は検討してみたいと思います。
  48. 河上民雄

    ○河上委員 今の外務大臣の御答弁ですと、六十日以内の期限つきということについては、必ずしもそれが絶対とは考えないという御答弁と承ってよろしゅうございますか。
  49. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 どういうことで六十日という期限を付されるか、そういういわれはないと私は思いますから、私たちは何もそういうものにこだわる必要はない。日本の判断で、そういう申し入れがあったら日本考えてこれに対してお答えをすればいいので、期限つきということはちょっと我々も問題があるように思います。
  50. 河上民雄

    ○河上委員 今度のSDI構想というのが、宇宙条約の批准のときにも宇宙戦争という問題で論議になったのですが、そのときに、SDIという考え方は防御兵器だというようなことを当時外務省の遠藤さんが答えておるのですけれども、これも大変おかしな話で、もしこれが防御兵器体系だという解釈に立ちますと、ソ連がこういうものをつくってもやはり防御兵器体系だと考えるわけですか。
  51. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 基本的な考え方について私ども理解しているところを御説明したいと思いますが、御承知のように、従来から言われておりますいわゆる核抑止力というものの考え方は、攻撃的な核兵器というものの破壊力、そういうものから生じますところの抑止力に東西の戦略関係の安定を求める、こういう考え方で従来一貫してきておったわけでございます。  それに対しまして一つ考え方として、そういう攻撃的な核兵器の破壊力というものに抑止を依存するかわりに、そういうミサイルを無力化するあるいは破壊するという防御的兵器によって、従来の相互確証破壊とかそういう名前で呼ばれました抑止力の概念を、新たな防御兵器の体系によって新たな抑止の考え方をいわば探求する、そういう考え方レーガン大統領の言っておるSDI、戦略防衛構想の基本的な考え方である、こういうふうに理解しております。  したがいまして、先ほどの委員の御質問にお答えすることになりますが、アメリカ考え方は、少なくとも現在言っておりますところは、一方的にこれを配備するということではなくて、あくまでもソ連との話し合いによって、米ソのいわば平衡配備というような言葉も使っておりますが、そういう考え方によってお互いに防御的なシステムを持つことによって抑止をしていこう、そういう可能性があり得るのではないか、こういうことだろうと理解をしております。
  52. 河上民雄

    ○河上委員 今の話ですと、従来の核兵器は攻撃的な兵器であって、その破壊力の恐ろしさによって抑止力が生まれる、こういうように考えてきたのを、今度は撃ち落とすというか防御することが可能だということである種の抑止力をまた生み出すんだ、こういうことでありますけれども、しかし、核兵器ができましてから約四十年の歴史の中で、抑止力理論というものは結局破綻しつつあるわけであって、次の一層危険な新しい段階に入ろうとしていることでありますので、そういう抑止力理論をこの際捨てないと、特に核戦争の体験を持つ我々として、このあたりでひとつ外務省も抑止力という考え方そのものを捨てるように対応を切りかえていただきたい、このように私は心からお願いいたしたいと思います。  もう時間が来たということでございますので残念でありますが、また改めてSDIの問題につきまして時間をいただいて、もう少し明確な政府の対応を伺いたいと思います。ただ、外務省としてはアメリカ専門家を呼ぶという場合に、先ほど大臣が、六十日というような期限つきで答えるというようなことはゆめないように希望をいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  53. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、玉城栄一君。
  54. 玉城栄一

    ○玉城委員 私も最初に安倍外務大臣にお伺いいたしたいわけでありますが、アメリカ上院、下院のいろいろな委員会で、一連の危惧されていた対日法案が可決されたりあるいは決議がされたりしておるわけであります。安倍大臣の御所見をまずお伺いいたします。
  55. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 昨日、上院財政委員会を通過しました本件法案は、日本に対する差別であるのみならず、自由貿易自体に対する脅威でもありまして、その成り行きを極めて憂慮するものであります。日米両国関係と世界貿易のために、これが法律として成立しないことを強く希望いたしております。  我が国としましては、電気通信市場の開放に全力を傾けてきました結果、四月一日より米国市場と対比できるところまで開放されるに至ったわけであります。これは、米国において過去十年にわたって行われてきた自由化を三年程度でなし遂げんとするものでありまして、米国に次いで世界で第二番目に導入された抜本的な自由化である。政府としましては、内外無差別、簡素、透明を旨として、法律の運用に万全を期することといたしております。このような努力と成果を米国議会が十分理解することを強く求めるものであります。
  56. 玉城栄一

    ○玉城委員 この法案並びに決議、詳細に私たちは存じていないわけでありますが、期間を区切りまして、日本側が実効ある措置をとらないと云々というふうに、極めて厳しい。今、大臣も差別ということもおっしゃったわけでありますけれども。ここまで来まして、ある意味では抜本的な対策を我が国としては持たなくてはいけないのではないか。その抜本的解決策というのもいろいろな意見がありますけれども、今おっしゃるようなことだけで対抗してやっていけるのかどうか。その法案、決議の中身も含めて、これに対抗していけるような考え方、どのようにお持ちであるのか、お伺いいたします。
  57. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 なかなかアメリカ議会の今噴き上げているようなそうした主張日本がのむというわけにはいかないです。アメリカ議会は、三百三十億ドルにも上る——アメリカから言えば三百七十億ドルと言っておりますが、そういう日本貿易黒字責任はすべて日本にある、日本は幾らやっても信用できない、だから制裁するのだというのがアメリカ議会の基本的な主張でありまして、それに対してあれだけの議員がみんな賛成している、そういう意味では、どうもアメリカの議員の良識というものに対して私は一抹の疑問を持つわけですが、私はこれは公平に見て、アメリカの新聞なんかも指摘しているし、あるいはアメリカ政府そのものすら認めておりますし、お互いさまの問題なんですね。  これだけの貿易黒字、これは厳としてあることは事実です。ですから、日本が優位に立っていることも事実でしょう。そしてまた、アメリカ輸出がなかなかふえないということ等も事実なんですね。それはやはり一つは、貿易黒字アメリカドル高というところに大きな原因があるわけです。これは世界が認めておる、世界がそれで一番困っているわけですから。特にヨーロッパなんか、アメリカドル高というものに大変な圧力を受けておる。ですから、この背景にあるところのアメリカの高金利だとか財政赤字の早い自制を強く求めておるわけで、この辺のところに七割ぐらいの原因があるのじゃないかと言われても仕方がないと思うのですね。  あとは確かに彼らが言っているように、輸出がふえない、日本のこれまで努力してきたことがなかなか効果を上げない、そういういら立ちがあることも事実。彼らから言わせれば、日本市場開放に問題があることも事実でしょう。日本もそれはできるだけやらなければなりませんので、今四分野でやっているわけです。しかし、今四分野で完全にやったとしても、アメリカが言っているような百億ドルなんということには到底なり得ないわけですね。どれだけになるか全く予測がつきませんけれども、そう大きなものじゃないわけですね。しかし日本は、これをやらなければならぬということで、四分野も含めて今対外開放対策を進めようといたしております。  これは、日本も自由貿易体制を守っていかなければなりませんから、日本なりの苦しい努力をしていかなければならぬということでやっているわけですけれども、しかし、今アメリカ議会が言っているようなことで、全部それは日本責任がありますよということは到底納得できないわけで、この辺は、これからアメリカ議会日本努力を見てどういうふうに評価するかわかりませんが、日本日本としてアメリカに対してやはり主張するところはこれからも主張し、説明をして理解を求めていかなければならぬ、こういうふうに考えております。どこまでやれるかわかりませんけれども、しかしこれはやるだけのことはやらなければならぬ、こういうふうに思います。
  58. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは結果からしましてアメリカもいら立っているでしょうけれども、私たちもだんだんいら立つ。しかし、これは総理あるいはまた外務大臣も含めまして、ここまで結果を招いた責任というのは、またそういう過剰な期待を向こう側に与えたということ、これも指摘がありましたとおりでありますけれども外務大臣として、我が国の外交責任者としてこの結果については重大な責任を感じていただいて、ぜひ今おっしゃったようなこと、向こうはもう上院、下院、いろいろな委員会法案を可決し、決議をしておるわけですから、ぜひ我が国の立場というものを理解をさせていただきたいということを要望いたしまして、次の質問に移ります。  実は前回の委員会でも申し上げたわけでありますが、日ソ関係関係修復の問題についてですが、米ソ首脳会談もいよいよ実現するという明るい方向に来ておるわけであります。そういう中で、この間は日ソ首脳会談、そしてソ連のグロムイコ外相の訪日が年内にも実現するやの感じを受けておるわけであります。片や我が国は、日米関係を基軸ということは非常に大切ですし、そのとおりだと思いますが、しかし、これはまた軍事的にアメリカと戦略的に全く一体となっていくということではない。我が国は我が国の立場があるわけでありますから、そういうことでやはりせっかく、日ソ関係の冷え切ったものを雪解けの方向に持っていく一つ一のチャンスが来ていると思うわけですね。そういうことについて外務大臣、いかがお考えでしょうか。
  59. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日ソにつきましては、全体の世界の情勢が少し緩和の方向にあるので、いろいろと期待できる点もなきにしもあらずだ。特に、米ソで首脳会談が行われるという可能性が生まれてきたわけですね。ゴルバチョフ書記長が肯定的な姿勢を示した、核軍縮の再交渉が始まっている、そんなことで全体的には日ソ関係にもいい影響を与えてくるのではないか。  しかし、そうはいっても、日ソ関係の基本がこれまで以上にそう大きく変わっていくわけではない。日本は、あくまでも領土問題を解決して平和条約を結ぶという基本姿勢は変わっていないわけですし、またソ連も、グロムイコ外相を日本によこすと言いながらも、まだその辺について具体的な折衝に入っていないということでございまして、そう大きな——期待だけが先行するということは非常に危険でありますし、私は、ゴルバチョフ政権の登場というものは、それなりに世界に一つの明るさを与えたことは事実ですけれども、しかし、ソ連外交の基本がこれでもって変わっていくというふうな考えを持つことはちょっと行き過ぎになるし、また、日ソ関係がこれでもって大きく前進していくということも、今ここで甘い考えを持つことは少し行き過ぎの面もあるのじゃないか。我々としてはとにかく腰を据えて、今までの主張を踏まえて辛抱強く、粘り強く対ソの対話を図っていこう、こういうことであります。
  60. 玉城栄一

    ○玉城委員 おっしゃるとおり、領土問題という大変困難な問題もあるわけですが、だからといいまして、対ソ関係、隣国の関係が悪化していくということ、またそういう要因をできるだけつくらないように努力することは、これまた非常に大事だと思うのですね。  そこで、昨日でしょうか、実は青森県の三沢の方にアメリカのF16が配備されたわけであります。私は冒頭に申し上げておきたいのですが、こういうことも今後の日ソの関係を修復していこうというのには、一つの大きな障害になりかねないという懸念から、これからちょっとお伺いしてまいりたいわけであります。  まず、このF16はきのう何機配備されたのか。それから、この性能、今後の配備計画、それを概略御説明いただきたいと思います。
  61. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 F16の三沢配備でございますが、まず配備の目的は、従来から申し上げておりますように、ソ連の極東における軍事力の増強というものを念頭に置きながら、この極東における軍事バランスの改善に努めて、米国の対日防衛コミットメントの意思を明確にすることによって日米安保体制の抑止力の維持向上を図る、これが基本的な配備目的であるというふうに、従来から政府は御説明申し上げておるところでございます。  具体的な配備計画につきましては、先ほど委員指摘のとおりに、昨日、三機三沢に配備されたということでございまして、このうちの二機は整備訓練用の目的のため、一機はパイロットの訓練用というふうに説明を受けております。今後の配備計画につきましては、御承知のように従来から申し上げておりますように、最終的には二飛行隊、約五十機ということでございますが、本年におきましては、夏以降、すなわち七月から九月ごろにかけて、一飛行隊二十四機前後が三沢に配備されることになるというふうに承知をいたしております。
  62. 玉城栄一

    ○玉城委員 今の配備計画ですが、これは報道等によりますと、六十二年の七月までに今おっしゃる約五十機、二飛行隊ですか、そのように理解しておいてよろしいのですか。
  63. 愛野興一郎

    愛野委員長 北米局長委員長に発言を求めてください。——栗山北米局長
  64. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 来年以降の配備計画につきましては、具体的にまだ、いろいろアメリカ側の事情もあるようでございますので、最終的にどういうふうになるかということにつきましては、確定的なことはまだ申し上げられません。一応、基本的なアメリカ考え方としては、昭和六十二年に残りの一飛行隊を配備したいというふうに考えているということは承知しておりますが、最終的にどういうことになるかということはまだ未確定でございます。
  65. 玉城栄一

    ○玉城委員 このF16の性能と申しますか、いわゆる攻撃戦闘機としての能力、非常に高いものがあるということでありますが、性能を栗山さんはどのように理解していらっしゃるのですか。
  66. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 一般的に公表されております資料によりますると、対空及び対地能力を有する多目的戦闘機ということでございまして、航続距離につきましては三千八百キロ以上、こういうふうに承知をしております。
  67. 玉城栄一

    ○玉城委員 三千八百キロはわかりますけれども、非常に行動半径が広いということで、このF16はソ連領土もその射程距離に置くことができると言われておりますが、そのように理解しておいてよろしいでしょうか。
  68. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 どの程度の武装をするかということによって多少違うと思いますが、行動半径が約九百キロということは言われておりますので、それによって円を描けば、ソ連領土の一部ももちろんそれに含まれることになるということでございます。
  69. 玉城栄一

    ○玉城委員 非常に行動半径が広いし、対地攻撃能力のある、そういう性能を持つF16という飛行機が、ソ連に非常に近い三沢基地に今回配備され、しかも、約五十機内外とおっしゃられましたけれども、それだけ増強されていくという、そのねらいはどのように理解しておけばよろしいのでしょうか。
  70. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 これは、先ほど申し上げましたとおりに、ソ連の極東地域における海空の軍事力の増強というものを念頭に置きながら、その軍事バランスの改善を図る、それから対日防衛義務のコミットメントを一層明確にする、こういうものを通じて日米安保体制の抑止力の向上を図る、これが基本的な配備の目的でございます。
  71. 玉城栄一

    ○玉城委員 といいますのは、今回のF16の三沢への配備、そして今後の増強ということは、我が国の安全のためなのか、それともアメリカの極東戦略の一環としての配備、増強なのか、いかがでしょうか。
  72. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 これは当初から、アメリカが配備計画につきまして我が方に話を持ってきました段階から、政府といたしましてはこれにつきまして十分検討を加え、やはりこういう米空軍の新たな配備というものが、安保体制の強化と申しますか安保体制の抑止力の向上というもののために必要であるということで、日本政府といたしましても、その配備につきましてこれに協力をするということを決めた次第でございます。
  73. 玉城栄一

    ○玉城委員 先ほどの栗山さんの答弁は、このF16というのはソ連の領土の一部も射程距離に置くことができる、そういういわゆる攻撃能力を持つ、我が国にとってこういう飛行機の配備は必要であり、協力するのが望ましいということで理解しておいていいわけですね。
  74. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 ソ連の領土に到達できる能力があるということで、何か非常に挑発的なことをやっているんじゃないかというふうに委員が御指摘になっておられるやに理解いたしますが、私どもは決してそういうふうには思っておりません。あくまでも日米安保体制というものは防衛的なものであり、抑止を旨とするものでございますので、アメリカの個々の、今回の場合F16でございますが、F16がそういう行動半径を有し、ソ連の領土に到達できる能力を有するということをもって、これは非常に挑発的なものであるというふうには毛頭考えておりません。
  75. 玉城栄一

    ○玉城委員 いや、ですから、私が冒頭に申し上げましたとおり、米ソ首脳会談も持たれよう、あるいは日ソ首脳会談も持たれ、向こうの外相もあるいは年内に来るのではないか、これから日ソ関係を修復していかなければならない、こういう時期に、ソ連の領土の一部に攻撃能力を持つそういうアメリカの戦闘機が配備、強化されていく、増強されていくということは、今後の流れについて障害になりやしないかという懸念があるから申し上げているわけでありますが、大臣、今申し上げましたことについて何かお考えありますか。
  76. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは局長が答弁しましたように、やはり軍事バランスとか今の日本の防衛のコミットメントとか、いずれにしても安保条約というものが厳然としてあるわけですから、これは安保条約を効果的に運用するという姿勢を貫かれておる、こういうことであろうと思います。
  77. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで北米局長さんにお伺いいたしますけれども、このための関連施設整備費、およそどれくらい今までかかっているのか、そしてさっきおっしゃられた、五十機内外が配備されるまでにどのくらいの経費を我が国として負担するのかですね。
  78. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 三沢のF16関連の経費でございますが、とりあえず歳出ベースの数字で申し上げますと、五十九年度予算におきましては六十五億円でございます。それから、政府が国会の御承認を求めております昭和六十年度予算におきましては、歳出ベースで百五十三億円という数字が計上されております。それから、契約ベースの数字で申し上げますと、五十九年度予算で百八十二億円、六十年度予算におきましては百三十一億円ということになっております。
  79. 玉城栄一

    ○玉城委員 アメリカの下院歳出委員会の軍事建設小委員会の資料によりますと、昭和六十二年までに八百九十五億二千万円が必要とされる、関連施設整備費がですね。そのうちの六百六十億円、実に七四%を日本政府が負担する、こういう意味のことが書かれているのですが、そのとおり理解しておいてよろしいのですか。
  80. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 全体の数字につきまして日本側の負担を幾らにするかということにつきましては、そういう今おっしゃいましたような数字が日米間で合意されている、決まっているというようなことはございません。
  81. 玉城栄一

    ○玉城委員 それはございませんといっても、そういうことを言ってどんどん——では、六十二年までにかかる関連施設整備費総体の七四%は日本政府が負担するのだということについては、これもあずかり知らないということでいいのですか。
  82. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 アメリカ側がいろいろ期待を持っているだろうということは、私ども承知しております。ただこれは、当然のことながら予算は単年度制度でございますし、我が方といたしましては、毎年次の年の予算につきまして、防衛施設庁の方でアメリカ側の要請を踏まえまして、こちら側の財政事情等個々の細かい施設につきまして、どういう施設について日本側がその経費の負担をするかということをアメリカ側と折衝いたしまして、それを次年度の予算の政府原案に計上する、こういう仕組みでございますので、六十一年度以降の数字につきましては、まだ日本政府として具体的にこうということはないということでございます。
  83. 玉城栄一

    ○玉城委員 時間がありませんので、アメリカは、おおよそその三分の二は日本政府が負担するという考え方ですね。そのように何か話し合いというか、アメリカ考えどおりになっていくというふうに我々受け取っておいていいわけですか。
  84. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 三分の一とかそういう大ざっぱな数字につきましても、日米間で合意をしているというようなことはございません。
  85. 玉城栄一

    ○玉城委員 質問を変えます。  F16は、我が国に初めて配備されるこういう戦闘機は、当然事前協議の対象になると思うのですが。
  86. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 事前協議につきましては、従来から累次御答弁申し上げておりますように、配備における重要な変更ということで、事前協議の対象になるのは一個師団程度、空軍の場合もそれに相当するものということでございます。今回のF16の配備につきましては、全体として二個飛行隊、約五十機前後ということでございますので、事前協議の基準として日米間に了解されている先ほど申し上げました一個師団程度という規模には到底達しませんので、事前協議の対象にはなりません。
  87. 玉城栄一

    ○玉城委員 一個師団程度から事前協議の対象ということになりますと、その一個師団程度というのは、どれくらいの飛行機の数を一個師団程度と言うのですか。
  88. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 これも従来から申し上げておるところでございますが、一個航空師団というのは、アメリカの編成の場合には二ないし三航空団、英語ではウイングと言っておりますが、二ないし三ウイングによって構成される。それで今申し上げましたその一ウイングというのは、二ないし三飛行隊によって構成される。今回の三沢に配備を予定されておりますF16につきましては、先ほど申し上げました二個飛行隊によってその一航空団を編成するというふうに承知をしております。したがいまして、事前協議の対象にならない、こういうことでございます。
  89. 玉城栄一

    ○玉城委員 そうしますと、一個航空師団というのは、大体計算しまして百機あるいは百二十機前後になりますね。ですから、一挙に百機以上もこういう戦闘機が我が国に入ってくるということは、その段階から事前協議ということですから、これは滑走路の問題とか飛行場のいろいろな規模の問題からして、そんなことは現実的にちょっと考えられないですね。ですから、こういう米側の航空機の配置につきましての事前協議というのはほとんども考えられない、現実にあり得ないというふうに考えざるを得ないわけです。いかがでしょうか。  例えば、日本の三沢、横田、嘉手納にそれぞれ、合わせでいわゆる一個航空師団程度がばらばらに来ました場合、これは事前協議の対象になりますか。その場合はどうなりますか。
  90. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 事前協議の対象になりますのは、我が国への配置における重要な変更ということでございますので、別に日本の国内の一カ所だけというものが対象になるわけではないので、その我が国への配置という場合に、先ほど委員がおっしゃいましたように日本の国内数カ所に分散して配置をされるという場合でありましても、それが全体として我が国への配置になるという場合に、それが一個師団以上であれば当然事前協議の対象になるということでございます。
  91. 玉城栄一

    ○玉城委員 なるということで理解いたしますが、実はさっきも申し上げましたとおりこういう時期に、日ソ関係を修復していく、そういう障害というのは今はできるだけ避ける時期に来ているのではないかということから、私この問題をお伺いいたしておるわけであります。  もう一つは、実は私も昨年から何回もこの委員会で申し上げた例のアメリカの特殊作戦部隊、いわゆるグリーンベレー、この特殊作戦部隊が北海道で雪中訓練を予定しておるわけです。北海道でこういう特殊な部隊が訓練をするということ、これまた私は、ある意味ではソ連側を刺激しかねないということを考えるわけです。そこで、その訓練計画は中止になりましたね。その中止の理由をおっしゃってください。
  92. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 中止の理由については、特に承知いたしておりません。
  93. 玉城栄一

    ○玉城委員 いやそれは、そんなふうにおっしゃられたら困るのです。中止したのですよ、この特殊部隊が北海道で予定した雪中訓練を。場所は北海道のニセコ地区です。なぜ、ここで予定していて訓練中止になったか、理由はわかりませんということでは、ちょっと済まされないと思いますね。——全然聞いていない、全然わからない。
  94. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 そもそも、そのおっしゃられるような雪中訓練について、米軍の方でそういう計画があるという話は私ども非公式に聞いたことはございますが、その後中止になったということで、中止になった具体的理由については私ども別に聞いておりませんので、承知していないということを申し上げた次第でございます。
  95. 玉城栄一

    ○玉城委員 それは一つは、ニセコ地区は米軍への提供施設区域ではないわけですね。それともう一つは、これはスキー場ですから非常にスキー客が多いわけです。地元の反対が非常に強かったということですが、いかがですか。
  96. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 具体的な場所、どういう態様で訓練をしようとしていたかということについても、私どもは具体的に承知をしておらないわけでございます。アメリカ側がそういう考え、北海道で訓練をする計画があるということでごく非公式に話がありました段階で、私どもの方としては、もし訓練をするのであれば当然地位協定に従って行われるべきものであるということは、ごく一般的に話をしたことがございますが、それ以上、アメリカ側がどういう事情で訓練を、そういう計画を進めなかったかということについては、繰り返しになりますが、私ども承知をしておりません。
  97. 玉城栄一

    ○玉城委員 そういう提供施設区域外での訓練そして演習を一つの理由で中止した。同時にまた、地元の反対が非常に強かったからそういう訓練を中止した。これは、実は、沖縄においてもそういうケースはたくさんあるわけですよ、提供区域外での訓練というものあるいは地域住民の反対が非常に強いということ。だから、そういう理由で北海道の場合は演習、訓練が中止され、沖縄の場合にはそういうのを振り切ってどんどんやっていく。ここら辺はちょっと異様な感じがするものですから、その点をお伺いしているわけなんですが、どうなんでしょうか。あなたは理由がわからないと言うのですが、私はそのとおりと断言して、あなたにお伺いいたしますよ。
  98. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 率直に申し上げますが、アメリカ側が北海道で訓練をしたいということで、その態様について具体的に我が方に協議があれば、政府といたしましても、そういう訓練というものが行われるのであればそれは地位協定に従って行われるべきであるということで、いろいろ具体的に演習の場所、態様等についてアメリカ側と当然話し合ったであろうと思います。しかし、正直に申し上げまして、現実そこまで話がいかないうちに中止になったということでございますので、アメリカ側との間で、そういう具体的にどこでどうというような協議は一切なかったわけでございます。
  99. 玉城栄一

    ○玉城委員 今この問題で、時間がございませんので、いつかまた改めてお伺いしたいのです。  もう一つ、きょう環境庁と通産省の方、せっかく来ていただいておりますので、あと四分ぐらいしかありませんが、せっかくですから例のワシントン条約、絶滅のおそれのある野性動植物の国際取引の規制ですか、実は一昨日、相手国の輸出許可証がないと我が国に入れないということですが、問題は、ワシントン条約の中にいろいろ明記されているそれ以外、条約外のものについてはやはりフリーパスになるのか、その辺をお伺いいたしたいのですが、いかがでしょうか。
  100. 奈須俊和

    ○奈須説明員 お答えいたします。  先生指摘のように、私ども、ワシントン条約の管理当局として、ワシントン条約の対象になっている動植物の輸出入を規制しております。したがって、ワシントン条約の対象外のものにつきましては、私ども、規制外になっております。  ワシントン条約におきましては、その動物なり植物の存在する国の政府が、ワシントン条約の対象に加えてくれというアクションを起こせばワシントン条約の対象になるわけでございまして、例えば一番簡単な手続で申し上げますと、国を限った規制でございますが、これは締約国がいつでもワシントン条約の事務局に申し出て、ワシントン条約事務局がそれを加盟国に送付する、そうしますと九十日で発効する。ワシントン条約というのは、こういう国際規制を容易にする仕組みということかと思いますが、まさにこういう仕組みを動物の存在する国、政府が活用することが重要かと存じます。
  101. 玉城栄一

    ○玉城委員 時間がありませんので、この問題につきましては、大臣、さっき経済摩擦の問題も含めまして、こういう絶滅のおそれのある、そういうワシントン条約で保護されている、あるいはそれ以外のものについて日本は非常にルールを守らないということで、昨年、日本に対する非難決議もありましたし、あるいはイギリスのエジンバラ公も苦言を呈する、中曽根総理は大変恥ずかしいことだというようなことなどもあって、一昨日のああいう措置がとられたのではないかと思うわけですね。  ですから、やはり我が国もそういう守るべきものはきちっと守っていく、こういう姿勢をちゃんと示していかなければならないと思う。アメリカではレーシー法という、そういう非常に厳しく規制する法律があるわけです。今回、我が国はそういう措置だけでありますけれども、やはりそういう根本的な法律を我が国としてもちゃんとつくりまして対応していかないと、日本はますます非難をされていくのではないかと思うのですが、最後に大臣のお考え、いかがでしょうか。
  102. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 おっしゃるとおり、きちっと言うべきことは言い、やはり守るべきことは守っていかなければならぬと思います。
  103. 玉城栄一

    ○玉城委員 終わります。
  104. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、木下敬之助君。
  105. 木下敬之助

    ○木下委員 SDIに関連して質問いたします。予算委員会総理にいろいろ質問しまして、そのときにどうしても疑問点が残っておりますので、続けてただしていきたいと思っております。  まず最初に確認いたしたいと思いますが、SDIの最も主要な部分を受け持つレーザー兵器は、核爆発のエネルギーを集めてそれをレーザーとして使う可能性もあるわけですが、こういった兵器は核兵器ではない、このように言われるわけですか。
  106. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 予算委員会で私、答弁いたしましたので、もう一度御説明いたしますが、まず、エックス線レーザー兵器がSDIの中でどういう——今、中核的ということを委員おっしゃいましたが、果たしてそういうものになるかどうかということにつきましては、現段階ではわからないということだろうと思います。  それから次に、核兵器であるかどうかということにつきましては、予算委員会で私、御答弁申し上げましたが、そういうものがアメリカで研究をされておるということは承知しておりますが、これがいわゆる核兵器の定義に該当するものであるかどうかということについては、やはり今後その研究の進展を見て最終的に判断をしなければならないものであろう、したがって、現段階において断定的なことは申し上げられないと思うというふうに私、御答弁申し上げましたので、その点を確認させていただきます。
  107. 木下敬之助

    ○木下委員 それで、最終的にでき上がっていないから決まってからしかわからないという、それは一つ考えでわかりましたが、もう一つ、その爆発の直接のエネルギー、放射能や熱をそのまま殺傷に使うものを核兵器とするのだ、こういう定義も言われたと思うのです。それで考えれば、こうやってレーザーとして集めて使うのはそうではないという考えも示されたように記憶しておりますが、この点、どうですか。
  108. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 従来から種々の機会に、非核三原則等との関連で核兵器とは何ぞや、核兵器の定義はいかん、こういう御質問がありまして、それに対して政府が御答弁申し上げていることは、非核三原則に言う核兵器とは、核分裂または核融合によって生ずる放射エネルギーというものを殺傷力、破壊力として使用する兵器である、こういうことが核兵器の定義として政府が御説明しておるところでございますので、そういう定義に照らせば、今文献等に出ておりますエックス線レーザー兵器というようなものは、必ずしも核兵器に該当しないということも考えられるのではないか、そういう趣旨を私は御答弁申し上げたわけでございます。
  109. 木下敬之助

    ○木下委員 その定義をもとに考えを少しお伺いしたいと思います。核兵器であるかないかの判断ですね。ちょっと例を言いますから、こういったのはどうなるのかということを答えていただきたいと思います。  直接にその放射能や熱でしなければいいのなら、例えば火山、噴火する火山の中に撃ち込んで中で爆発させて、今度はその火山の爆発を誘発させる、こういった場合は、別に核爆発を直接使ったわけではないんだから、それは核兵器ではないのですか。     〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席〕
  110. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 どうも仮定の問題で余りよくわかりませんが、いずれにしても、核爆発を物を破壊するあるいは人を殺傷するという目的で使う場合には、それは核兵器であるということが申し上げられるだろうと思います。
  111. 木下敬之助

    ○木下委員 レーザー兵器の場合、核爆発を起こしてそのエネルギーをビームに変えて、レーザーに変えて使う。では、これが人を殺傷しなければ核兵器ではなくて、ぴかっと光るのかどんなのになるのかわかりませんけれども、それがちょうど人に当たったときには、人を殺傷したから核兵器になる、こういうことですか。
  112. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 私も技術専門家でございませんので、必ずしも権威を持って申し上げるわけではございませんが、私が予算委員会で御答弁申し上げましたときは、先ほど申し上げましたような核兵器の定義というものに照らしまして考えた場合に、核爆発というものをエネルギー源として使う、そこから出てきたエックス線レーザーというもので物を破壊しようという兵器というふうに基本的に考えれば、必ずしもこれは核兵器というカテゴリーには当てはまらない可能性があるのではないかということを申し上げたわけで、繰り返しでございますが、しかしそこのところはあくまでも、このエックス線レーザー兵器というのは現実に存在しない兵器でございますから、今後の研究の進展を見て判断をすべきものであろう、こういうふうに考える次第でございます。
  113. 木下敬之助

    ○木下委員 私が火山の爆発と仮定のような話をしましたけれども、火山の真ん中辺で仮に核爆発をしたとして、それがもとになって溶岩か何かが流れてくるわけですよ。その溶岩は、別に核爆発のエネルギーではない。だから、その溶岩で殺傷する分には、今の同じ理論で言うと核兵器ではないわけですかと聞いておるのですから、これは答えてください。
  114. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 今の御設定のような形でもって兵器を使う事態というのはどうも余りよく考えられないわけで、今委員がおっしゃいましたように、例えば核爆弾というものを火山なら火山に投下しまして、それでその爆発を利用して云々ということになりますが、しかしそのもとになっているものはあくまでも核爆弾でございましょうから、それはそれで核兵器であるというふうに考えてちっとも差し支えないことであろうというふうに思います。
  115. 木下敬之助

    ○木下委員 ちょっとしつこいようですけれども、では、レーザーの一番もとの核爆発を起こさせるところが核爆弾と同じ構造、同じ形でやっていれば、それはやはり核兵器ですか。
  116. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 そこら辺のところが技術的によくわかりませんので、私はまさに断定的なことは申し上げられないということを御答弁申し上げた次第でございます。
  117. 木下敬之助

    ○木下委員 核兵器であるかどうかの定義やその他は、物さえはっきりすれば、はっきりとできるような核の基準なんですか。その基準そのものも、幾らか新しいものが出てきたらわからないものなんですか。
  118. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 今まで存在しない兵器でございますので、そういうものが現実に研究が進み、開発段階になって、場合によってはそれが実戦配備が可能であるという段階になったときには、そういうものを一体どういうふうに従来の概念の中で規定するかということは、これは考えなければならない問題だろうと思いますが、現在の段階では、先ほど申し上げましたように何とも断定的なことは申し上げられないということでございます。
  119. 木下敬之助

    ○木下委員 では、これはちょっと私不勉強で悪いのですが、簡単なことを一つ聞かしてください。核弾頭がありますが、あれは起爆装置がないと爆発力はないのですが、起爆装置を外した核弾頭というのは核兵器なのですか、そうじゃないのですか。
  120. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 この点につきましては、過去におきまして念のためにアメリカ側にも確認をしたことがございますが、別に起爆装置がついておらなくても、核兵器の構成部分のうち、核爆発を生ぜしめる核分裂物質または核融合物質が含まれている部分は、これは核兵器と観念されるということでございます。
  121. 木下敬之助

    ○木下委員 起爆装置の方は別に核兵器ではないわけですか、起爆装置のみは。
  122. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 起爆装置が本体から全く切り離されて起爆装置だけというものであれば、それは核兵器ではないだろうと思います。
  123. 木下敬之助

    ○木下委員 それではちょっと確認したいのですが、中曽根総理が予算委員会での私の質問に対する答弁で、核兵器の定義は各国で違う、このように言われたのです。これはどこがどんなふうに違うのかをお伺いしたいと思うのです。日本アメリカはどう違うのですか、御説明をお願いいたします。
  124. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 核兵器の定義について、別に一般的に日米間で定義が違うというようなことはないだろうというふうに思います。総理が御指摘のような答弁をされたのは、まさに御質問がありましたエックス線レーザー兵器との関連で、このような現在存在しない兵器というものをどういうふうに観念するかということになれば、厳密な意味で国際間にいろいろな意見があり得るだろう、こういうことで御答弁になられたのではなかろうかというふうに私ども理解をしております。例えば、安保条約の事前協議との関連で、核兵器というものについて日米間に定義の相違があるというようなことは、これはございません。
  125. 木下敬之助

    ○木下委員 そういうことですと、私はあのときは、レーガン大統領が非核兵器と言うなら非核兵器じゃないか、非核三原則との関係は云々することはないのじゃないかと質問したのに対して、総理は答えられたのですから、アメリカと核の定義が変わらないと言うなら、またもとにさかのぼって話し合わなければならない点も出てきますので、どうぞよく検討しておいてください。きょうは総理じゃないですから、同じ質問を繰り返してもしようがありません。  三月二十六日に、NATO国防相会議アメリカのSDIへの参加要請書簡が公表されましたが、こういう形で外交書簡が発表されることは極めて異例なことだと思うのですが、二国間の正式なものはもう届いているのでしょうか。いつ、だれから、だれあてに来ているのか、お伺いいたします。
  126. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 我が国に対しましては、三月の二十七日付でワインバーガー国防長官から安倍外務大臣に、NATO諸国に対して発出されましたのとほぼ同趣旨の書簡が接到いたしております。
  127. 木下敬之助

    ○木下委員 これは政府部内のどこが扱うようになりますか。
  128. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 外務大臣に対して参りました書簡でございますので、外務省が中心になって対応を検討いたします。
  129. 木下敬之助

    ○木下委員 その中身について、お伺いいたしたいと思います。  先ほどちょっと大臣の話の中にも出ましたが、六十日以内に返事をすることを求められているという報道もありますが、これはどうなっておりますか。六十日以内に返事をすることを求められているわけですか。
  130. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 その点につきましては、NATO諸国に対して出されました書簡と同じように、関心があれば六十日以内に関心分野についての示唆をしてほしいということが書かれております。
  131. 木下敬之助

    ○木下委員 それで、六十日以内に何を答える必要があるわけですか。具体的に、どういった返答を六十日以内にしなければならないのですか。
  132. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 書簡に書かれておりますことは、SDI研究計画への参加についての関心の有無、それから研究に参加する場合に、SDI計画にとり日本が最も有望と考えられる研究分野について示唆をしてほしい、こういうことでございます。
  133. 木下敬之助

    ○木下委員 この対米回答は、検討に着手なさるのですか。
  134. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 この点につきましては、先ほど来累次御質問に対して外務大臣から御答弁申し上げましたとおり、まずアメリカ側から専門家に来てもらいましてもう少しいろいろ話を聞く、その話を聞いた上で対応ぶりを検討する、こういうことにしております。
  135. 木下敬之助

    ○木下委員 話を聞いた上でというのは、検討を始めて、その検討の中身として話を聞くわけですか。そういうことですか。
  136. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 はい。
  137. 木下敬之助

    ○木下委員 その検討は、六十日以内に回答することを目標として検討するのですか。
  138. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 大臣も申し上げましたが、六十日という期限と申しますか、そういう日数は、厳格な意味での期限ということではないであろうというふうに私ども受けとめておりますが、いずれにしましても、そういう書簡が来た次第でございますので、一応六十日というものをめどにして、アメリカ側に対して何らかの回答をするということにはなろうかと思います。
  139. 木下敬之助

    ○木下委員 その回答は、だれがどのようにして返事をなさるのか、お伺いいたします。
  140. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはワインバーガー国防長官から私あてに来ましたから、私からワインバーガー国防長官に出したいと思います。     〔浜田(卓)委員長代理退席、委員長着席〕
  141. 木下敬之助

    ○木下委員 大臣、恐れ入りますが、その返事は外務大臣として御自分でなさるのですか、日本国の代表である外務大臣として日本考えとしてなさるのですか。
  142. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカ国国防長官ワインバーガー氏から来たのですから、日本外務大臣安倍晋太郎として出すわけであります。
  143. 木下敬之助

    ○木下委員 当然なことを聞いて失礼いたしました。  それでは、参加するとかしないとかの判断は、どこでどなたがなさるわけですか。
  144. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは非常に重要な決定といいますか判断でございますし、ロサンゼルスの会議においても総理大臣みずから理解を示したわけでございますから、政府部内で十分検討の上、総理大臣とも御相談の上、政府としての最終意思としての決定になる、全体としての意思の決定、こういうことでしょう。
  145. 木下敬之助

    ○木下委員 日本アメリカ関係でございますから、このような重要な問題の決定を、日本国としてその時点でする、これは相当長期にわたる、しかも国防の、世界平和のための大変重要なものです。これをこの短い期間で、そういった皆さんだけで判断なさることでいいのだろうか、国民の合意というものは要らないのだろうか、このように思います。  ことしの初めに総理が聞いてこられて理解を示して、そして我々は予算委員会等を通じて相当の論議をしましたが、中身はわからないということで、相当の時間を使っております。今後も我々には、その中身を知らせていただいて論議をするという場がないまま、皆さんだけで判断されたのが日本姿勢として、日本はそういう形で動くんだ、全世界でこういうふうに判断されるというのは、少しおかしいのではないかと私は思うのでございますが、どうでしょうか。
  146. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 最終的には、政府責任において回答するということになるわけでございますが、その回答に至るまでの過程においては、国会の論議であるとか各方面からのいろいろの意見等も踏まえ、また政府自身もアメリカからの専門家等の意見を十分聞き、政府みずから研究をして、その上に立って慎重に決定をしなければならぬ、こういうふうに思います。
  147. 木下敬之助

    ○木下委員 専門家の来日を要請されて話を聞いたりして、それから国会での論議のその中身まで踏まえて決定するとなりますと相当の期間が必要と思われますが、それは六十日以内に答えを出されるつもりですか。それとも六十日以内に出す答えは、その時点で出せる範囲でのことを答えられるつもりですか。
  148. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いずれにしても、回答の対応にはいろいろあると思います。今おっしゃるように、最終的な決断のなかなかつかない場合もありましょうし、それだけまだ理解が進まない場合もありましょうし、それはそれなりのことで判断しなければなりませんが、基本的には六十日ということで期限を一応切られていることになっておりますけれども、これを我々は六十日以内に必ずやらなければならぬというものでもないのじゃないかと私は思います。これからの政府の検討の結果を踏まえて、六十日というものにそうとらわれないで判断しなければならぬと思います。
  149. 木下敬之助

    ○木下委員 我々は、当然そうあるべきだと思います。ただ、五月の初めにあると思いますサミット、ここで話題に出て、共同声明でも出そうというような誘いがある可能性もある。そのためには、そのころまでに相当のものを煮詰めていなければならぬと思いますが、二カ月はたってない、半ばぐらいでしょうけれども、そこで共同声明の呼びかけ等があったときにはどうなさるおつもりですか。
  150. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 そういうことは今のところ全く予測しておりませんが、首脳会談のことですから何が飛び出るかわからない。SDIも世界的に非常に注目を集めておるから、今私が軽率に予測はできませんけれども日本日本立場というものがあります。それまでに専門家意見を聞くということもありましょうけれども、しかし、日本立場というものは踏まえて対処していかなければならぬと思います。
  151. 木下敬之助

    ○木下委員 急ぐ必要はないと思いますが、ただ今、日米経済摩擦やらをめぐって対日感情はいろいろ問題のあるときだと思います。そういう中で、このSDIへの参加の回答いかんでは、雲行きにいろいろな影響もあろうかとも思われるのですが、また、そんなことを考えておられないほど長期的な重大な問題であるとも思いますが、大臣、これには幾らか経済摩擦等の対日感情ということも勘案した回答の時期とか回答の中身とか、そういったものが絡んでくると思われますか。
  152. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは私は、SDIはSDI、経済摩擦経済摩擦ということで、この問題は絡めて考えるというのはいかがか、こういうふうに思っておりますし、そういう考え方は私自身は全く持っておりません。
  153. 木下敬之助

    ○木下委員 時間も大分来ましたので、最後に、専門家の来日の要請をどんなふうになさるのか。したのか、いつするのか、その来日された専門家の説明はだれがどこで受けるのか、そしてその中身を我々にはどういう形で知らせてくれることになるのか、こういった点をお伺いいたしたいと思います。
  154. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 専門家の派遣の要請は、できるだけ早く外交チャネルでやりたいというふうに思っております。それから、先ほども申し上げましたように、本件は外務省が中心になって関係省庁と一緒になって対応するということでございますので、そういうことを念頭に置いて、向こうから人が来た場合にはそういう形で対応したいというふうに考えております。
  155. 木下敬之助

    ○木下委員 その中身を我々にはどういった形で知らせていただけるのですか。
  156. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 アメリカ側から説明を聞いた話で公表できるものについては、しかるべき形で公表をするということは考えております。
  157. 木下敬之助

    ○木下委員 これほど重要な問題ですから、公表できない部分があったら、国会の論議も十分なものではないところか、何をやったのかわからないことになります。そんな上でこんな重大な問題を、日米関係のこの後の相当長い将来、一度そこで協力すると言ったら中途半端なことでは引っ込めないようなものを、我々に十分なことを教えていただけなくて、国会論議も通過せずに簡単に答えを出すということがないように強く申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  158. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、岡崎万寿秀君。
  159. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 私は、核兵器の使用問題について質問したいと思うのです。  二月十九日の予算委員会での私の質問に対して中曽根総理は、公海上、日本有事、いろいろ限定つきでしたけれども、核兵器の使用を排除し得ない、そういう答弁をされて、マスコミでも大きく報道され、波紋を呼びました。そこで、マスコミなども総理にそういう防衛問題などで言わせっ放しでいいのかという指摘もありました。私もそう思います。きょうは外務委員会ですので、安倍外相にふさわしい形でこの問題をお聞きしたいと思うのです。  まず、こういう核兵器の使用問題について、日本政府は従来どういう態度をとってきたのか、このことを振り返ってまた確認してみたいと思います。  昭和四十三年四月二日の参議院予算委員会での、当時の三木外相の答弁でございます。これはプエブロ号のときでございましたが、米軍司令官が「もし三十八度線を越えて攻撃してくるならば、韓国駐留米軍の戦術核兵器を使用するよう勧告する」こう発言したことに対して、我が党の春日正一議員が「そういうことけっこうですと言うか、やめてくれと言うか、」こんな質問をしています。これに対して当時の三木外相は、「それは当然にやめてくれと言うべきで、核兵器を使ってけっこうですという者は世界じゅうにいない。核兵器は使ってはいけない。」こういう明快な答弁をされています。朝鮮半島での米軍の核使用においてさえもやめてくれ、こういうふうな態度をとるということが当時の三木外相の姿勢なんです。被爆国日本の外相として当然の姿勢であると思いますが、安倍外相はアジアでの米軍の核使用について、三木外相と同じようにやめてくれという姿勢をおとりになりますね。
  160. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろん、日本としましては、核の廃絶ということを最終的な目標にしておりますし、核兵器を使用するということがいかに多くの犠牲を発生するかということ等も考えまして、核兵器の使用はやめるべきである、行わないというのが基本的な考え方であります。
  161. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 やめるべきであるというその姿勢、やめてくれというのと少しニュアンスが違うように思いますけれども、やめるべきである、使うべきではない、そういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  162. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 世界じゅうで核兵器は使うべきではないと思います。
  163. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 続けて質問しますが、これは昭和四十三年三月の予算委員会です。当時の佐藤総理が、我が党の松本議員や社会党の山本議員に対する答弁の中でこう言っています。米軍が核兵器を日本の「国内で使うとか、こういうことはございません。」「私は、そういうことはないということは、ただいまはっきり申し上げておきます。」これは日本の国内、領域内での使用はございません、はっきり申し上げておきます、こういうふうに言明されているのです。もちろん、核抑止力について強調される立場でありますけれども日本の領海や領空や領域内での核兵器の使用は絶対に認めないという態度を当時おとりになっているのです。安倍外相、この政府姿勢は外相としておとりになりますね。
  164. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今のお話のごとく、日本の領域内で使うということはあり得ない。あってはならないということでもありますし、あり得ないということでもあります。
  165. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 あり得ない、あってはならない。そうしますと、日本の領域内での核兵器の使用というのは、日本国民の生死にかかわる大問題ですから、当然あってはならないし、あり得ないということだと思いますけれども、この間の中曽根総理の私への答弁、これは日米共同作戦の際に米軍の核使用について、日本側で排除する立場にないというふうに述べられました。引き続いて、二十一日の予算委員会で我が党の東中議員の質問に対して、日本に上陸してきている敵の部隊に対しては核兵器使用についてこういうふうに言っています。「そのときの情勢で大局的に判断をすべきもの」、これは明らかに否定されてないわけです。あり得ない、あってはならないという今の安倍外相の答弁とは、大きく矛盾するというふうに思います。  安保条約の解釈上と言われましたけれども、この中曽根総理の発言というのは極めて重大な内容を含んでいると思うのです。こういう点から見ますならば、今、外相が言われたように、日本の領域内での米軍の核先制使用は認めない。あり得ない、あってはならないというだけではなくて、認めない、こういう態度をかつての佐藤総理と同じようにおとりになりますね。
  166. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろん、日本国内における特に核の先制使用なんということは、これはあり得ないことであります。今いろいろとお話しになりましたけれども中曽根総理の発言とも関連しますが、中曽根総理が言いましたのは、あくまでも我が国への武力攻撃の発生といういわゆる五条事態のもとで、米国が国連憲章に認める自衛権の行使として、我が国を防衛するために真にやむを得ざる状況において、米国が公海上で核兵器を使用するという可能性を一切排除するということは、抑止力の維持という見地から不適当であるという趣旨を述べたものであると私は思います。
  167. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 それと今の安倍外相の答弁とは矛盾しませんか。抑止力であっても、日本の領域内では核兵器を使うことはあってはならないし、あり得ないというのと、公海上だったら日本が侵略されてほかに方法がなかったら、核兵器を使うことは排除し得ないという中曽根総理の答弁には、明らかに矛盾があるのですよ。そう思いませんか。どういう事態であっても——しかも中曽根総理は、私への答弁、その後の答弁を聞きますと、相手国が先制使用した場合ではないのですよ、通常兵器による侵略に対して、先制使用という形での核使用をおっしゃっているのです。中曽根総理がそれを取り消すか、それとも、安倍外相の今おっしゃったこととはかなり矛盾があると思いますが、重ねてそういう米軍の日本領域内での核の先制使用は認めない態度だ、日本政府態度はこうだということを明言願いたいと私は思うのです。
  168. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、通常兵器対核ということになりますれば、やはり核の使用はあってはならないと思います。これは核を使用することによって、戦争が全面的な核戦争というものにつながっていくわけです。ですから、今お話しのような対通常兵器あるいは先制使用という形の核兵器の使用というものはあってはならないのじゃないか。核兵器自身の抑止力は我々は認めておりますし、このことによって世界の平和が保たれておる、抑止力の均衡によって保たれておる、これは現実の事態であると思いますし、もし万一、核が使われた場合に世界が壊滅するというところに核の抑止力というものが存在するわけでございますから、そういう意味で抑止力というものが言われておるわけです。しかし、先制攻撃とかあるいはまた通常兵器対核という場合に、核を使うということはあってはならないことであろう、そういうふうに私は思っております。
  169. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 私はここに、二月十九日の私への中曽根総理の答弁、二月二十一日の東中議員への答弁、二つ持っていますけれども、これはすべて通常兵器による、つまり核によるということは一言も触れない侵略行為に対する核使用なのです。したがって、中曽根総理のお考え、発言というのは、核の先制使用を日本の領域内においてもはっきりと認められているわけです。今の安倍外相のお言葉とは大きく矛盾する。  これは閣内不統一だと私は思うのであります。どっちかにしないといけないと思うのですが、これについてここで余りやっても、安倍さん困りますね。この問題については、安倍外相は先制使用を領域内においてははっきりと否定されている、あってはならない、そのことをきっちりと確認し、そして中曽根総理は先制使用もあり得ると言われている、この矛盾はただではおかない、日本国民立場に立ってはっきりと詰める必要がある、このことを申し上げたいと思うのですが、よろしゅうございますね。
  170. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本の領域内で核の使用ということはあり得ない。日本は非核三原則を持っているわけですから、これは今さら私が申し上げるまでもないと思うのです。今、いろいろと議論が出ておるのは公海上の問題である。これについてはあくまでも、核兵器をいかなる場合においても使用しない、こういう立場をとることは抑止力という観点から問題があるわけでありますが、私が先ほどから申し上げるのは、核対通常兵器という形あるいはまた先制攻撃という形で核を使うということは好ましくないことである、基本的にそういうことは避けるべきである、こういうふうに思うのです。
  171. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 安倍外相の態度、御発言と中曽根総理の発言は、はっきり矛盾があります。これは明確にしておきたいと思うのです。  ただいま安倍外相は非核三原則とおっしゃった。私もそう思います。非核三原則は、持たない、つくらない、持ち込ませない、これは被爆国日本国民の願望が反映していると思うのです。独自に核武装しないばかりではなくて、同盟国の持ち込みも許さない、日本が核戦争の拠点になることについてもノーだ、核戦場化することについてもノーだ、こういう願いが込められていると思いますが、安倍外相もそうお思いですね。
  172. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 我々は、核の抑止力に依存をしているわけです。しかし、非核三原則という立場を堅持しておる。核の持ち込みによって有事といえども核が使用されるということは、我々としては認めないという立場であります。
  173. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 非核三原則の精神からいいましても、また持ち込みを許さないという立場からいいましても、日本の領域内での米軍による核使用、これははっきり排除されていると思いますが、安倍外相、そうお思いになりますか。
  174. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 領域内における核の使用というものは、我々はこれを認めることができない、こういう姿勢です。
  175. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 非核三原則によって排除されている、そういうふうに理解されますか。
  176. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 核の持ち込みを認めないわけでございますから……。
  177. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 核の持ち込みを認めない、したがって使用も認めないということでしょうから、排除されているということですね。よろしゅうございますね、それで。
  178. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほどから私が申し上げたとおりです。
  179. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 じゃ、私が言ったとおり、非核三原則によって排除されていると言われたと理解していいと思いますが、私は時間の都合がありますので、この問題、矛盾については、また後日はっきりさせることにします。  領域内だけではなくて日米共同作戦中においても、日本も関与、加担する形で米軍の核使用を認めるべきじゃないと私は思うのです。これについて、中曽根総理も私への答弁の中で排除する立場にないと述べた後、「そういう場合にどういうふうに対処するかということは、いろいろ大局的に見て、これは日米両方で考えること」と言っているわけですが、これは安保四条の随時協議ということですね。簡単にお願いします。
  180. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今お話のありましたような米艦船の核使用の問題について、我が国への武力攻撃の発生といわゆる五条事態のもとで、米国が国連憲章の認める自衛権の行使として我が国を防衛するために行動しているというのが基本的前提でありますが、この場合に、我が国防衛のために真にやむを得ざる状況において、米国が公海上で核兵器を使用するという可能性を一切排除することは、抑止力の維持という見地から不適当であると考えておりまして、この点は私は総理と同じ考えでございます。右の政府立場が非核三原則と矛盾しないということは、従来より説明をしているとおりでございます。  なお、当然のことながら、五条事態のもとでも核兵器が現実に安易に使用されてはならないということについては、日米双方とも共通の認識を有しております。ですから、岡崎さんの御質問は前提のない質問が多いですから、私の答弁は非常に詳細に精密に答えておりますから、その辺を無視してただ言葉じりだけで言わないでいただきたいと思います。
  181. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 どちらが詳細でどちらが前提がないか、これもはっきりしましょう。いずれにせよ私は、議事録をはっきり読み、その上に立って質問しているのです。ですから、はっきりそれは随時協議がどうかを答えてもらいたいのです。時間が少ないので、大臣、恐縮ですけれども、随時協議なら随時協議であるとはっきりおっしゃっていただければ、それでよかったのですよ。
  182. 小和田恒

    ○小和田政府委員 岡崎委員承知のように、これは第五条のもとにおける共同対処の事態でございます。したがって、共同対処の事態のもとにおいては日米双方でいろいろ協議することは当然あり得るわけで、他方第四条に定めております随時協議というものも、いわゆる随時協議と言われておりますけれども、必ずしも一つの制度として存在しているわけではございませんので、日米安保条約の第五条のもとにおける事態に対する条約の運用として協議をするというふうに御理解いただきたいと思います。
  183. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 随時協議であろうが日米双方の運用上いろいろと協議があるということ、少なくともその協議があるということが前提になったら、そこではっきりと日本の意思が反映できるはずなんですね。中曽根総理は、安保条約の建前上これはもう排除できる権限がないとおっしゃった。しかし、協議の場ではっきりノーと言う、そういう権限があるんじゃありませんか。
  184. 小和田恒

    ○小和田政府委員 先ほど来申し上げておりますように、第四条のもとにおけるいわゆる随時協議と呼ばれるものにいたしましても、五条の共同対処の場合における日米双方の作戦の調整のための協議にいたしましても、これは事実上いろいろ協議をすることがあるという意味で申し上げているのでございまして、先ほど来大臣が申し上げておりますように、今想定されております事態は五条の共同対処のもとで米軍が公海上においてどういう行動をするかという問題でございますので、日本側として、いろいろの意見を申し述べたりするということはもちろんあり得ると思いますけれども、それぞれの国の立場というものはまた当然前提になるわけでございます。
  185. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 これにも一つの前提が——安倍さん前提とおっしゃいましたからね。前提というのは、第五条というのは日本有事、しかも個別的自衛権の発動という範囲内ですね。日本を防衛する目的だというふうに総理もおっしゃったのです。こういうふうに日本防衛を目的とした場合の核使用、これはそう簡単に容認すべきじゃないと思うのです。その着弾地が日本の領域外におきましても、それは日本を必ず核戦場に巻き込むことになるのですよ。ですから、そういうときにおいては、はっきりとノーという日本の意思表示をすべきではないか。意思表示をする権限も場所もなければ仕方がないのです。しかし、双方協議する場所があれば、そういうことはやめてくれ、日米共同作戦のときにおいては私たちが加担するような形での核使用はやめてくれ、こういうことが言えるんじゃありませんか。それは言いますか、言わないか、お答え願いたいと思います。
  186. 小和田恒

    ○小和田政府委員 先ほど来外務大臣がるる申し上げましたように、中曽根総理大臣の今議論になっております発言というものは、仮定の問題として、想定の問題としてそういう事態になったときにはどうなるのかという御質問に対しまして、答弁がなされたものでございます。そこで、先ほど来これも外務大臣が御答弁いたしましたように、あくまでも核の抑止力が信頼性を持つものであるためには、そういう核の使用の可能性というものを一切排除してしまうということは適当ではないという立場から、総理は御答弁になっているわけでございます。  そこで、では仮に現実の事態になってどういうふうに対処するかということについては、総理がその場合は「いろいろ大局的に見て、これは日米両方で考えることでありましょう。」ということを述べておられるわけでございまして、そのときの具体的な状況というものがどういうものであるのかということは、今の段階で判断することは極めて難しいと思いますので、これに対して一般的な形でお答えをすることは適当ではないと思います。
  187. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 大局的な判断ということですが、当然日本の判断が入るわけですね。私は入るか否かを聞いているんですよ。どうでしょう、それ。
  188. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろん、いろいろ前提がありますが、日本の防衛ということに関しては、これは日本意見というものは当然入る、こういうことです。
  189. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 今の外相の発言は極めて重大だと思います。というのは、アメリカが勝手に撃つのは、それは排除する権限がないから仕方がないんだ、こういった趣旨総理は答弁されていましたけれども、しかし今お聞きしますと、その間日本はノーと言うこともあるいはイエスと言うことも意思を反映することができる、これは大変なことなんですね。たとえそれが抑止力という名目であったにせよ、日米共同作戦のときに日本が協力する形で、離脱しないということもおっしゃいましたから、核兵器使用についてイエスと言う立場、これはやはり私たちは真剣に考えなくてはいけない事態に来ているというふうに思うのです。ことしは被爆四十年でありますし、安保があるから結局核使用についてノーと言えない、安保は日本を守るためと言いながら、事実上日本を核戦場に巻き込む足かせになっているということを示していると思うのです。  時間が来ましたが、私は、こういう日米安保条約の核軍事同盟化の問題につきましては真剣に考える必要がある、安保条約についてノーと言う政治、核兵器廃絶のそういう政治へ大きく転換を求められているときではないかということを、今の論議を通じても指摘できるというふうに思います。  時間が参りましたので、以上で終わります。
  190. 愛野興一郎

    愛野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十七分散会