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1984-12-12 第102回国会 衆議院 外務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和五十九年十二月一日)(土曜 日)(午前零時現在)における本委員は、次のと おりである。   委員長 中島源太郎君    理事 石川 要三君 理事 野上  徹君    理事 浜田卓二郎君 理事 山下 元利君    理事 高沢 寅男君 理事 土井たか子君    理事 古川 雅司君       愛野興一郎君    鍵田忠三郎君       北川 石松君    鯨岡 兵輔君       佐藤 一郎君    田中 六助君       中山 正暉君    仲村 正治君       西山敬次郎君    町村 信孝君       岡田 春夫君    河上 民雄君       小林  進君    八木  昇君       玉城 栄一君    渡部 一郎君       木下敬之助君    渡辺  朗君       岡崎万寿秀君    田中美智子君     ————————————— 十二月一日  中島源太郎委員長辞任につき、その補欠とし  て愛野興一郎君が議院において、委員長選任  された。 ————————————————————— 昭和五十九年十二月十二日(水曜日)     午後一時開議 出席委員   委員長 愛野興一郎君    理事 石川 要三君 理事 奥田 敬和君    理事 野上  徹君 理事 浜田卓二郎君    理事 高沢 寅男君 理事 古川 雅司君    理事 渡辺  朗君       鍵田忠三郎君    北川 石松君       鯨岡 兵輔君    佐藤 一郎君       中山 正暉君    西山敬次郎君       町村 信孝君    岡田 春夫君       河上 民雄君    小林  進君       島田 琢郎君    斎藤  実君       吉浦 忠治君    渡部 一郎君       木下敬之助君    岡崎万寿秀君       田中美智子君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省経済協力         局長      藤田 公郎君         外務省条約局長 小和田 恒君         水産庁長官   佐野 宏哉君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      山下新太郎君         外務大臣官房審         議官      都甲 岳洋君         外務大臣官房審         議官      斉藤 邦彦君         外務委員会調査         室長      高橋 文雄君     ————————————— 委員の異動 十二月一日  辞任         補欠選任   中島源太郎君     奥田 敬和君 同月十二日  辞任        補欠選任   岡田 春夫君     島田 琢郎君   玉城 栄一君     吉浦 忠治君   渡部 一郎君     斎藤  実君 同日  辞任        補欠選任   島田 琢郎君     岡田 春夫君   斎藤  実君     渡部 一郎君   吉浦 忠治君     玉城 栄一君 同日  理事河村勝君十一月三十日委員辞任につき、そ  の補欠として渡辺朗君が理事に当選した。 同日  理事石川要三君同日理事辞任につき、その補欠  として奥田敬和君が理事に当選した。     ————————————— 十二月十一日  日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政  府との間の両国地先沖合における漁業分野  の相互関係に関する協定締結について承認  を求めるの件(条約第一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  国政調査承認要求に関する件  日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政  府との間の両国地先沖合における漁業分野  の相互関係に関する協定締結について承認  を求めるの件(条約第一号)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 愛野興一郎

    愛野委員長 これより会議を開きます。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  このたび、私が外務委員長の重責を担うことになりました。  今日の国際情勢は、米ソを中心とする東西緊張関係、南北問題あるいはアフリカの飢餓問題等々、多くの難問、難題が山積をいたしております。こうした情勢の中で、極めて重要な使命を有する本委員会委員長選任されまして、その責任の重大さを痛感いたす次第であります。  何分にも微力な私でございますが、幸い委員各位におかれましては、外交について練達堪能な諸先生ばかりでございますから、皆様方の御指導、御鞭撻、御愛情を賜りまして、ひとつ誠心誠意、公正円満なる委員会の運営に努める所存であります。  何とぞよろしくお願いいたします。(拍手)      ————◇—————
  3. 愛野興一郎

    愛野委員長 理事辞任についてお諮りいたします。  理事石川要三君から、理事辞任申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 愛野興一郎

    愛野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  ただいまの理事辞任に伴う欠員のほか、理事でありました河村勝君が委員辞任されておりますので、現在理事が二名欠員になっております。その補欠選任につきましては、先例によりまして、委員長において指名することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 愛野興一郎

    愛野委員長 御異議なしと認めます。それでは、理事に       奥田 敬和君 及び 渡辺  朗君を指名いたします。      ————◇—————
  6. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  国際情勢に関する事項について研究調査し、我が国外交政策の樹立に資するため、関係各方面からの説明聴取及び資料の要求等方法により、本会期中国政調査を行うため、議長に対し、承認を求めることにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 愛野興一郎

    愛野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  8. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の両国地先沖合における漁業分野相互関係に関する協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  まず、政府より提案理由説明を聴取いたします。外務大臣安倍晋太郎君。     —————————————  日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政   府との間の両国地先沖合における漁業の分   野の相互関係に関する協定締結について   承認を求めるの件     〔木号末尾に掲載〕     —————————————
  9. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ただいま議題となりました日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の両国地先沖合における漁業分野相互関係に関する協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  ソ連邦の二百海里水域における我が国漁船による漁獲及び我が国の二百海里水域におけるソ連邦漁船による漁獲は、従来それぞれ昭和五十二年五月二十七日に署名されたいわゆる日ソ漁業暫定協定及び同年八月四日に署名されたいわゆるソ日漁業物協定に基づいて行われてきました。これらの協定については、昭和五十二年以来、毎年末にその有効期間を一年ずつ延長してきたところであります。この間我が方は、日ソ間の漁業関係をより安定したものとするため、これらの協定有効期間長期化ソ連邦側に繰り返し提案してまいりましたが、ソ連邦側は、本年九月の山村農水大臣訪ソの際に、国連海洋法条約の採択、経済水域に関するソ連邦最高会議幹部会令の採択等新たな状況を踏まえて、これらの協定にかわる新たな協定締結する用意があるとの意向を示すに至った次第であります。  よって政府は、日ソ漁業暫定協定及びソ日漁業暫定協定にかわる新たな協定締結すべく、本年十一月初旬からソ連邦側交渉を行い、その結果、本年十二月七日に東京において、我が方本大臣先方パブロフ在京ソ連邦大使との間でこの協定署名を行った次第であります。  この協定は、日ソ漁業暫定協定ソ日漁業暫定協定にそれぞれ規定されていたものを一つ協定に規定するもので、八カ条から成っておりますが、従来の枠組みを基本的に変更するものではありません。この協定は、両政府自国の二百海里水域における他方の国の漁船による漁獲を許可することのほか、相手国漁船のための漁獲割り当て量等操業条件決定方法許可証の発給、申請及び料金の徴収、漁船の取り締まり、日ソ漁業委員会設置等事項を定めております。協定有効期間は、一九八七年十二月三十一日までとされ、その後は一年ずつ自動的に延長されることとなっております。  なお、昭和五十二年の日ソ漁業暫定協定締結交渉の際に問題となりました北方四島周辺水域の取り扱いに関しては、この協定において日ソ漁業暫定協定及びソ日漁業暫定協定と同様の留保条項が規定されており、領土問題に関する我が方の立場が害されないことが明確となっております。  この協定締結により、明年以降のソ連邦の二百海里水域における我が園の漁船による漁獲及び我が国の二百海里水城におけるソ連邦漁船による漁獲がより安定的な枠組みのもとで確保されることとなります。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。何とぞ、御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  10. 愛野興一郎

    愛野委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     —————————————
  11. 愛野興一郎

    愛野委員長 これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。島田琢郎君。
  12. 島田琢郎

    島田委員 今御提案のございましたように、五十二年以来の懸案でもあり、また我が国水産関係者からも強く協定長期化期待されておりましただけに、大変御同慶でございます。  ただ、五年を主張しておりましたが三年、実質的には一年ずつ自動延長されるということで、余り内容に変わりはないんだという説明もございますけれども、この協定協議は、新聞報道その他によりますと大変スムーズにいった。従来の日ソ漁業交渉というのは、相当難儀をするというのが常識でございますが、この協定の段階でかなりスムーズにいきましたから、今後の実務面協議はまたさらに友好裏に促進されるものというふうに私は期待したいのでございますが、この際、この長期協定の任に当たられました外務大臣から、直接の責任者おられますけれども外務大臣からこの協定の感想といいますか、またお考えがあればそこを含めてひとつお聞かせをいただいて、中身に入ってまいりたい、こう思います。
  13. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今御質問がございましたが、確かに今回の協定は、もちろん多少の問題点についての論議はありましたけれども、長い間の懸案でありましたし、両国とも積極的に取り組んでまいった。そして全体的には、これまでの日ソのいろいろな面、条約等あるいはその他の交渉等の中ではスムーズにいったものである、こういうふうに判断をいたしております。  御承知のように、我が国漁業関係をより安定した基礎に置くために、漁業協定有効期間長期化を主張してまいりましたし、これに対してソ連が、本年九月の山村農水大臣訪ソの際に日本側長期化提案を検討した結果、ソ連側のこれに対する考え方を示しまして、本年十月に具体的な案文を我が国に提示したわけでございまして、十一月初旬より東京において交渉が行われまして、十二月七日に署名を行ったわけですが、この協定現行日ソソ日協定二つ協定を一本化したものであり、その内容としては、前述二つ協定枠組みを基本的には踏襲したものとなっておるわけでございます。  現行日ソソ日漁業暫定協定との比較で特に明記すべき点としては、前述二つ協定が一年限りの有効期間しか持たず、七七年以来毎年末に両協定有効期間延長を必要とする暫定的な性格のものであったのに対しまして、本件協定が一九八七年十二月三十一日までを当初有効期間とし、かつその後は、いずれか一方の政府他方政府に通告しない限り、引き続き一年間効力を存続するという自動延長の規定が置かれまして、この結果、ソ連との懸案である日ソ両国漁業関係安定化が促進をされた、これがこれからの日ソ漁業問題を考えるときに最も銘記すべき点ではないか、こういうふうに思っております。
  14. 島田琢郎

    島田委員 今お話の中にもありましたように、前農林大臣が九月に訪ソされた時点で、ソビエト側のこの協定に取り組む姿勢というのが明らかになったわけであります。しかし、他面では大変大事な、四月に決めることになっておりますサケ・マス漁業協定あるいは漁業協力協定、こういうものが事実上なかなか進展しないままに今日に至っているというもう一方の状況もこれあり、この協定がこのように進んだという背景をしっかり政治的な立場でも踏まえていかなければならない状況というのは、一向に変わっていないのではないかという認識を私は一つ持っています。  それで、外務大臣お話しされているような期待どおりにいくかどうかというのは、まだまだ大変問題が、これから本番を迎えるという点では厳しいものが予想される。この協定が発効いたしましても、一月一日果たして出漁できるかどうかというのは、これからのいわゆるクォータを初めとするその他の条件の話し合いがどう進展していくかにかかっているわけでありますから、まさに正念場はこれからと言ってもいいわけであります。  そういう場合に、我が国暫定措置法ソ連幹部会令経済水域におけるお互い漁業というものが、実務面で果たしてうまくかみ合うかどうかというのは、これから初めての問題として取り組むわけでありますが、その点の見通しなどについてはどのように持っていらっしゃるか。  それから、この際、ちょっと私は注文をつけておきたい。水産庁長官がお答えになるのだろうと思いますけれども、ことしのこういう大事な時期には、農林大臣がやはり外務大臣一緒にここにお出になるというのが常識ではないかと私は思うのです。昨年は、山村大臣はこの席にいらっしゃったのであります。ことしは佐藤大臣、お見えになっておりません。信頼できる水産庁長官がおるから出なくてもいい、こうなのかもしれませんが、長い懸案がここで実を結んだのでありますし、確かに責任省庁外務省外務大臣でございますけれども漁業にかかわります問題は農林水産大臣がこれをしっかりと責任を持っていってもらわなければ困る、私はこう思いますので、私の方から出席を要請しなかったということもありますけれども、しかし当然のことながら、ここに農林水産大臣もお出になるのが常識ではないか、私はここに少し注文をつけておきたいと思います。
  15. 斉藤邦彦

    斉藤説明員 前段の御質問について私からお答えいたします。  この今度の協定におきましては、我が国漁業水域暫定措置法に基づく漁業に関する管轄権と、それからソ連経済水域に関する幹部会令に基づく生物資源探査開発保存及び管理のための主権的権利、これを前提として締結されるものでございます。この協定の上で我が方が認めておりますソ連主権的権利というものは、あくまでソ連幹部会令に基づきます生物資源探査開発保存及び管理のための主権的権利ということでございまして、経済水域そのものを認めるとかあるいは経済水域に関する幹部会令そのものを認めるということではございません。  で、この生物資源に関する主権的権利と申しましても、あるいは漁業に関する管轄権と申しましても、これはいずれも主権そのものを意味するものではございませんので、漁業に関する限度で行使する権限をいう概念でございまして、この両者の相違というものは表現の相違にすぎないわけでございます。したがいまして、今島田議員指摘のかみ合いとおっしゃったかと思いますが、そういう食い違いのおそれと我が方が不利になるのではないかということはないというふうに考えております。
  16. 佐野宏哉

    佐野政府委員 お答えいたします。  確かに先生指摘のとおり、具体的な漁獲割り当てとか操業水域とかそういう事項につきましては、新協定の第二条に基づきまして、今後日ソ漁業委員会において行われる協議を経て決定をされるわけでございます。本協定を御承認いただければ、直ちに日ソ漁業委員会の仕事にかかるわけでございますが、私どもといたしましては、本協定締結の過程が異例の迅速さで処理された、そういう経験に甘えて来るべき日ソ漁業委員会での協議について安易な気持ちでいるというようなことは毛頭ございません。昨年の交渉の経緯などから見ましても、来るべき日ソ漁業委員会における協議というのは、大変難しい協議になるであろうということは十分覚悟をいたしておるわけでございまして、臍下丹田に力を入れて取り組みたいと思っております。
  17. 島田琢郎

    島田委員 昨年に限らず、毎年このクォータの問題で交渉が大変難航するのでありますが、特に昨年は随分長期間を要しまして合意に達した。しかも、七十五万トンが七十万トンあるいはまた五百メートル以浅問題、これとまた両国寄港地の問題、これらが随分激しく議論された中で、結論的にはそういう手当てが行われた、こういうことでございます。昨年の当委員会におきます岡田委員質問も、そこら辺のところに大変集中いたしておりまして、政府側としてもこの面について大変交渉の厳しかった経過が発言の中にも出ておりますし、また当時の渡邉水産庁長官の苦悩の色も私どもはよく伺っていたのであります。それだけに大変御苦労の多いことではありますけれども、少し昨年の当委員会において議論されましたてとを、もう一遍ここで確認をしておく必要がある面がございます。  例えばクォータの問題でありますけれども、連年、問題になりますのは消化率であります。七十万トンにしろ六十四万トンにしろ、これが一体どの程度消化されるのかというのが、実務的な交渉に当たってお互いのやはり譲れない一線といいますか、譲ってはいけない点なども含めて、ここが大変ポイントになるだろうと私は思います。ところが、残念ながら七〇%程度消化率を持っておりましたソ連は、消化率が連年大変落ちてまいりました。多分、私の記憶に誤りがなければ、ことしは最も低い消化率になっているのではないか、こう思うのです。この辺のところの経過をちょっと御説明いただきまして、昨年の岡田委員質問の中でもその点が大変強く議論になっていたわけでありますので、まずここ二、三年の両国消化率の推移について御発表いただきたい、こう思います。
  18. 佐野宏哉

    佐野政府委員 お答えいたします。  先生指摘のとおり、八〇年代に入りましてからソ連漁獲割り当て量消化率は相当低下をいたしております。ソ連側漁獲割り当て量消化率は、一九八一年三二%、八二年二九%、八三年三一%ということでございます。本年は十一月までで一五%の消化率でございますが、昨年は十一月までで二六%消化しておりますから、本年の場合ソ連側消化率はさらに低くなるものと考えられます。  一方日本側は、八〇年代におきましても七〇%ないし五〇%の上の方の水準消化率を維持しております。
  19. 島田琢郎

    島田委員 今お話にありましたように、現在で一五%程度でありますから、恐らくことしは二〇%台に達するかどうかも心配されるというソビエト側消化率であります。我が国も八二年あたりが大変低いのでありますけれども、七〇%程度を消化すればある程度、昨年渡邉長官考えを述べておられます点からいえば、まあアローアンスというのは二、三〇%ないと窮屈でやりにくくてかなわぬというお話がございまして、その点は私どもも理解ができるのでありますが、いつも心配されますことは、高値安定ならいいのでありますが、ソビエトの一五%や二〇%のような低い水準で我が方のいわゆる消化率を問題にされたのでは大変困る。昨年も当委員会岡田委員が同じことを言っているわけでありますが、後ほどちょっと申し上げますけれども、私は、まずこうした低い歩どまりをどうやって上げるかという点についてもっと真剣に両国議論をしてもらわなければ困る。これは同じようなことを毎年言っております。しかし、期待をするという方向だけではもはや解決をしないのではないか。具体的に消化率を上げるために我が方として協力し、あるいは一緒に何かやらなければいけない点があるならば大胆にそこに踏み込んで、やはりソビエト側消化率を向上させるということに力点を置かなければいけないのではないか。  さらに、五百メートル以浅問題というのは、昨年寄港地等の問題との引き合いでこれは一応のおさまり方はしたのでありますが、同じような問題がまた出てこないという保証はどこにもない。たまたまクォータも含めて、我が国における福島県小名浜への寄港を認めたわけであります。これは、また後ほどこれだけで御質問したいと思っておりますが、そのときに、恐らく消化率もかなり向上するのではないか、またそれを最大の理由にされて譲歩されたと私は当時承りました。ところが現実には、寄港地を認めて、ソビエト側我が国経済水域内で大いにひとつ漁獲をしてほしい、そういう門戸開放を行ったのに逆にクォータ消化率は減ってしまった。これは大変ことしは特徴的に、議論をそこに集中してやらなければならない問題点を含んでいるのではないか。ですから我が方も、かなり言ってまいりました寄港地を認めてやればクォータ消化率は今の水準よりもうんと上がるだろう、こう見ていたのが逆に下がってしまった。そういたしますと、寄港地を認めたということは正しかったのか、正しくなかったのかという議論にも発展しかねない、こういう問題をはらみますから、この際、本年の実態について、水産庁長官で結構でありますがどのように認識をされていらっしゃるのか、そこをまずお聞きしたいと思うのです。
  20. 佐野宏哉

    佐野政府委員 本年につきましてもそうでございますし、それから七〇年代との対比において八〇年代の一般的傾向としてもさようでございますが、いずれの場合につきましてもソ連側クォータ消化率低下しております主要な原因は、漁獲努力量が大幅に減少をしておるということでございます。  ソ連漁船に対して課しております操業上の制約は、若干なりとはいえ緩和したことこそあれ、制限を厳しくしたということはかつてございません。したがいまして、私どもとしては、かつて七〇年代と同じような、あるいは七〇年代よりも有利な操業条件ソ連側に提供しておるわけでありまして、そういう操業条件ソ連側に提供しておるにもかかわらず、ソ連側漁獲割り当て消化率が低いことがあたかも日本側責任であるかのごとき議論をして、我が国沿岸水域における操業条件緩和を求めようというのは、とんでもない理屈に合わない議論であるというふうに私は考えております。  それで、また沿岸漁業サイドから見ましても、我が国沿岸水域は、先生つとに御高承のとおり、大変多数の漁船が込み合って操業しておるわけでございまして、そういう中で現実的な問題としても、そういうことは問題になり得ないというふうに思っておりますし、それから事柄の経過から見ても、ソ連側自国漁獲努力量低下ということを棚に上げて、我が国操業条件緩和を求めるべき何の道理もないというふうに私は思っております。
  21. 島田琢郎

    島田委員 私は一つ提案でありますけれども漁業の問題ですから漁業範囲で、例えば漁獲割り当て量消化率を向上させるという点で、今長官からお話のあったような点の努力は必要だと思うのでありますけれども、ただその範囲だけではなかなかこの問題は解決しないのではないか。恐らく今後の交渉でも、相互等量主義というのはソ連側考え方の基本に据えられるのでありましょうから、我が方としてもこの等量主義に沿って七十万トンがさらに引き下げられるなんということになりますと、我が国漁業の今日的な実態から申しましてゆゆしきことになりかねない。  したがって、この割り当て漁獲量の問題というのは大変重大な関心事なんでありますが、それだけに等量主義であるなら、相互主義に基づいてソ連側にも努力を願うことはもちろん大事ですけれども、もう少し幅を広げて、範囲を広げて考えるということも必要じゃないかと思うのです。例えば、シベリア開発の問題にも油田の開発の問題とか、漁業とは直接かかわりのない部分でも広げて、我が方が技術的にあるいは経済的に協力できるところはする、こういう姿勢があってもいいのではないか。私のこの考え方に対して、外務大臣どうですか、お考えがあれば聞かしてほしいと思います。
  22. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今御審議いただいている協定については、これはあくまでも漁業でありますから、やはりこうした漁業の問題は、基本的には漁業分野で解決していくというのが適当であるし筋ではないか、こういうふうに思います。もちろん、こうした漁業関係のより協力的な面を促進していくためには、その背景としての日ソ関係が改善されるということは当然必要でもあるわけでありますし、今、ちょうどきょうから日ソの民間の経済委員会も開かれているわけでございますから、そうした中で今おっしゃるようなシベリア開発等の問題も将来問題として取り上げられる可能性もあるんではないか、そういうふうに私は思っております。そういう面では、基本的にはやはり日ソ関係が改善されるということがより漁業関係を安定させるということにつながると思いますが、今具体的な問題はやはり漁業分野であくまでも解決をされるべきじゃないか、こういうふうに思います。
  23. 島田琢郎

    島田委員 大臣、今いみじくもおっしゃいましたけれども、やはり日ソ間の親善といいますか、友好的なムードというものが基本的には大事だという点では私も同感であります。しかし、実際はどうなっているかといえば、なかなかこの雪解けムードは期待どおりに進んでいかない。大臣も大変一生懸命取り組んでおられることは、私もよくわかります。しかし、まだ応ぜられるような段階には立ち至っていないという向こう側の事情にあるわけであります。何よりも日ソの外相会談が早急に開かれてこうした懸案事項に積極的に取り組む、こういう姿勢が私は非常に必要だと思います。重ねて、我が国外務大臣としては、これに真剣に取り組んでいただきたいと私は期待を持っているのでありますが、その見通しと御決意はいかがでありましょうか。
  24. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日ソ関係は、昨年は非常に冷え込んでおったわけでございます。特に、大韓航空機撃墜事件等がありまして冷たくなっておったわけでございますが、ことしに入りまして政府あるいは民間、いろいろな面での対話が進みましたし、人的な往来、クナーエフ政治局員の訪日とかあるいはまた今回の民間の経済委員会の訪日とか、さらに私とグロムイコさんとの間では二回にわたりまして会談を持ったわけでございます。あるいはまた文化の交流等も進みまして、全体的にはことしは対話が相当進んだんじゃないか。きょうも私、日ソの経済委員会で、日ソの対話元年である、その締めくくりがきょうの委員会であるとあいさつしたのですが、そういう対話は進んだわけです。  しかし、残念ながら日ソ間に横たわっておる肝心の根本的な領土問題において前進が見られなかったということは、やはり本格的な日ソの友好親善の基本が進まなかったということで、今、日ソ間に大きな隔たりがありますけれども、しかし我々としてもこの基本方針を変えることはできませんで、あくまでもこれは腰を据えて取り組んでいきたいと思うわけでございます。  それと同時に、やはり隣国同士でありますから、そうした領土問題では見解の相違は基本的にありますけれども対話は進めていくということで、これまでも戦後日ソ関係では、特に国交回復して以来日ソ関係はいいときもあったし悪いときもあったわけですが、基本的には何とかいい関係を続けながら、そして最終的には平和条約締結に持っていきたい、こういうふうに思っております。  特に、来年は米ソのいわゆる軍縮交渉も始まる可能性もありますし、私は、そうした東西関係米ソ関係が緊張緩和の方向へ進む、軍縮が進むという状況が生まれてくれば、日ソ関係にもまたいろいろのさらに一歩前進した改善の兆しも可能になってくるんじゃないか、そういう方向で努力をしていきたいと思います。そういう中でソ連外務大臣グロムイコさんが日本を訪問する。順番ですから、グロムイコさんもそういうことを言っていますから、何とかそうしたことも実現をしたいものだ、こういうふうに考えています。
  25. 島田琢郎

    島田委員 あなたがモスクワへ行って連れてくる手もあります。お出かけになる気持ちはありませんか。
  26. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日ソの外相会談というのは、これはいわゆる定期外相会談で約束しているわけで、そしてあくまでも相互主義というのが原則なんですね。これは国際間で当然で、日本の外務大臣が行ったその明くる年はソ連外務大臣がやってくる、これは国際慣例あるいはまた外相定期会議の筋道から見れば当然至極のことでありまして、そういう中では今度はあくまでもグロムイコさんの訪日の番です。これはグロムイコさんもみずから認めているわけですね。ですから、私が行って連れてくる必要はないので、おいでになるのが当然のことだ、そういうふうに思っています。
  27. 島田琢郎

    島田委員 いや、ほかならぬ安倍外務大臣、世界各国気軽にどんどんお出かけになっているし、今や外交の安倍というのが国際的にも大変有名になっていますから、それくらいのことをやったっていいじゃないかと私は思っているのであります。メンツその他があって、なかなか私ども考えのようにはいかないのかもしれませんが、しかし何としても日ソ間の冷たい風の吹いている状態は早く解消したいものだ、してほしい、そのことを強く期待しておきたいと思います。  ところで、時間が余りなくなってまいりまして、通告どおりの質問がなかなかできませんが、大事なことだけちょっとお聞きしておきます。  さっきの小名浜寄港の問題、これはまだ協定が現在も続いているわけでありますが、しかし現地の実態は大変でした。何しろソビエト漁船寄港した途端に、全国から千二、三百人の右翼が押し寄せて不必要な騒ぎを起こしてくれた。福島県も地元として、大変迷惑をこうむった、大変な苦労をしょい込まれたという印象が強くあるようでございます。ことしはどうするのかはこれからの交渉なんでありましょうが、しかし寄港というのは、簡単なようで実際に具体的になってまいりますとこれは大変なものだということを、私自身も実感として強く今持っているわけであります。伝え聞くところによりますと、警備に要した金額も少なくないものがある、一億数千万になったとやらうわさがされているわけであります。ですから、交渉に当たる出先の長官責任も非常に重くなるわけでありますが、この初めての相互寄港という問題、とりわけ我が方の小名浜港に対します寄港問題は、今後の交渉一つの大きな参考になっていくんだろうと思いますが、お考えがあれば長官から聞かせていただきたいと思います。
  28. 佐野宏哉

    佐野政府委員 お答えいたします。  今後、ソ連側日ソ漁業委員会協議をやらなければいけない今の段階でございますので、これからのやり方について一々立ち入ったことを申し上げるのは御容赦いただきたいのですが、いろいろな事情を慎重に考えて対処すべきものと心得ております。
  29. 島田琢郎

    島田委員 交渉を前にしてでありますから、言えることと言えないことがあるのは私もよく理解ができるのでありますけれども、しかしこれは相当慎重に取り組みをなさらないと大変だなという点で、一つのサゼスチョンをさせておいていただきたいと思います。  ところで外務大臣お話し中のようでありますが、先般九日でしたか、海洋法条約というのが署名の期限が切れましたね。幸い、我が国もこれには署名をいたしました。しかし、今後批准という、またもう一つの海洋法条約の問題の解決に向けて取り組まなければならない我が国の問題がございます。この署名の段階で、大事な先進国が二、三カ国抜けている。とりわけ、アメリカの姿勢に国際的な注目が集まっておりました。しかし、レーガン政権はこれを拒否して署名をいたしておりません。御承知のとおりでございます。しかし、実際にこの海洋法、これは、七つの海は決して広いと言えない状態に入りました。それぞれやはり秩序を持って考えなければならないのがこの地球上の海の問題だ、私はそう思います。  そういう意味で、ある新聞の社説が取り上げておりますが、アメリカ自身が不参加というようなことになればこの条約は全く骨抜き同然になるというふうに断じております。私も、一面ではそういうことが言えるのではないかと思う。来年のお正月に中曽根総理が訪米なさる、こういうふうに伺っております。アメリカに、海洋法条約の先導的役割を果たしてもらうということが、これからの海洋の秩序を図っていく上で大事だと私も思っています。軍拡路線だけ話し合いに行かれるのでは意味がない。むしろ、こういう大事なことをレーガン大統領にお会いになったときに我が方から持ち出して再考を促すというくらいの話し合いがあって、初めて日米の大事な懸案の処理になると私は思っているのです。そのお考えはありませんか。
  30. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 海洋法条約については、実はアメリカからも特使が来て、むしろ日本に署名を待ってもらいたい、こういうふうな話し合い、要請もあったこともございますが、我が国としては、海洋国家として積極的にこれに署名をし、さらに批准を行う考えであるということをアメリカ側にも篤と申した次第であります。この点については、アメリカとは基本的に見解が異なっております。  しかし、アメリカの話を聞いてみますと、アメリカも、反対する理由は深海底開発の面のみでありまして、その他の条約内容についてはすべて賛成だ、こういうことでございます。ですから、深海底開発についての問題が解決をされれば、これは全体的に海洋法に取り組んでいく可能性もあるのだと私は思いますが、この辺が先進国の間でまだいろいろと解決ができていないということでございまして、したがって日本としては、これまでも少なくとも私とシュルツ国務長官との間においてもこの海洋法については論議もいたしまして、日本はアメリカに対して、これは署名すべきであるということを重ねて主張してきておるわけでありますが、残念ながら、アメリカの考えは今申し上げましたように、深海底開発制度というものをめぐってアメリカが納得ができない、こういうことでございます。したがって、これは今後とも話し合いは続けてまいりたいと思います。  ちなみに、国連の事務当局によりますと、十二月八日現在、署名数は百五十七、批准数は十四、こういうことでありまして、同条約は、六十番目の批准書または加入書が寄託された後一年で発効することになっておりますが、発効の見通しにつきましては、各国の批准の見通しについていろいろの見方がありまして、その時期を予測することは困難である、こういうふうに聞いておるわけでございます。  なお、アメリカのほかに西ドイツそれから英国、こうした主要国が不署名でございまして、今後本条約が円滑に発効し機能することは難しくなったのじゃないか、こういう考えもあるわけでございます。しかし、日本としては、今後とも各国に対しまして積極的に署名を行うように説得はしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  31. 島田琢郎

    島田委員 今お挙げになりました西ドイツ、イギリスを入れると、これはサミット参加国ばかりでありますから、サミットでも、海の憲法の署名、批准はみんなでやろうというぐらいの呼びかけを我が国がすべきではないでしょうか。ぜひひとつこの点、お考えを願いたいと思います。  そこで外務大臣我が国の批准についてはどうお考えになっていますか。時間がもう一分しかなくなったから、簡単にお話し願いたいです。
  32. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは各国の、今申し上げましたようないろいろの問題がありますから、そうした署名状況等を見まして、我が国としましても、日本が批准した以上はやはりこの制度が発足するということでなければならぬと思いますし、そうした各国等の状況も見ながら慎重に判断をしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  33. 島田琢郎

    島田委員 ごちゃごちゃおっしゃっているというのは、余り気乗りしていないというふうに私は受け取らざるを得ないのでありますが、これはひとつ積極的にやってほしいと思います。  それから、最後になりましたが、水産庁長官、先ほどもちょっとお話ししましたが、一月一日、もう目と鼻の先に来ました。この元旦出漁はできるでしょうか。できるように努力願いたいと思いますが、御決意のほどを承って私は質問を終わりたいと思うのです。  これは大変期待の大きい、今注目していることであります。去年までは十一月中に決まっていた。それが十二月のこれから、この協定の国会承認というようなことが前提になければならないという主張があるようでありますから、そうしますと二十日過ぎにもなりかねない。そうしたら、もうわずかですね。それで話し合いがつくかどうか、非常に注目しております。御決意を伺いたいと思います。
  34. 佐野宏哉

    佐野政府委員 私も関係漁業者の皆様方から、元旦には間違いなしに操業を始められるようにしてくれということは繰り返しお話を伺っておりますので、私どももその期待にこたえるようにやりたいという決意でおります。それにつきましても、速やかに御承認をいただきたいものと念じておるところでございます。
  35. 島田琢郎

    島田委員 頑張るよう、ここで激励をしたいと思います。これで終わります。
  36. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、吉浦忠治君。
  37. 吉浦忠治

    吉浦委員 時間の関係でなるべく簡潔にお答えをいただきたいと思いますが、あと残った分というと大変失礼でございますけれども、国際問題等の時間の設定が、我が党の場合にごく少なくなっておりますものですから、きちんと委員部の方でその計算を間違わないようにお願いをしたいと思っております。  日ソ地元の沖合漁業協定についてお尋ねをいたしたいのですが、一九七七年に締結をされました日ソ、ソ日の漁業暫定協定は、両国が二百海里漁業水域を設定し、困難の中で締結されたわけでございまして、その際に最も意を払われたのは、いわゆる北方四島とその周辺海域について、我が国立場をいささかも損なうことのないようにすることであったわけであります。この点について、新たな協定ではどのような立場にあるのか、また、従来と変わらない点であるのかどうか、改めて外務大臣に確認をしておきたいと思います。
  38. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 お答えいたします。  本件協定は、従来同様、漁業に関する協定でありまして、今回の交渉では領土問題は全く問題とされることなく、従来同様の留保条項を入れることで合意をされました。すなわち、本件協定においては、北方四島周辺水域における我が方漁船操業の安全を確保するための実際的取り決めを行いつつ、領土問題に対する我が方の立場を明確に留保しておるわけであります。
  39. 吉浦忠治

    吉浦委員 このたびの協定長期化についてでございますが、この新しい協定では、関係者の希望のとおりにいわゆる協定長期化が実現されたのでありますが、さらに漁獲割り当て長期化など、いわゆる操業条件長期化が望まれているわけでありますけれども、この実体面の長期化についてソ連側交渉する考えはあるのかどうか、この点大臣からお答えをいただきたい。
  40. 佐野宏哉

    佐野政府委員 お答えいたします。  漁獲割り当て量の実体面について長期固定化するという問題でございますが、この点につきましては、資源量その他毎年変動するような事情もございますので、これを長期固定化するということは必ずしも現実的ではないという面もございまして、本協定におきましては、毎年決定をするということにしておるわけでございます。ソ連以外のいろいろな漁業協定を見ましても、漁獲割り当て量等は毎年決めるということを例としておりまして、御希望は御希望としてよく理解はできますが、今回はこれにて御理解を賜りたいと思っている次第でございます。
  41. 吉浦忠治

    吉浦委員 先ほども質問が出ておりましたけれども消化率と実体交渉に臨む姿勢についてお尋ねしておきたいのです。  五十九年の漁獲枠は、それぞれ対日七十万トン、対ソ六十四万トン、こういうふうになっておるわけであります。しかしながら、その消化率を見ますと、日本の場合は七十万トンのうち大体六割程度ソ連の場合は一四、五%、こういうふうに聞いておるわけでありますが、ソ連消化率がこのように低い理由というものは、本年は日本近海の冷水温等による影響が強いものというふうに私は思いますけれどもソ連側漁獲努力の不足が主な原因ではないかというふうに思うわけです。日本側は、我が国底びき漁業にも開放してない水域までソ連側に提供しているのでありますから、こういう状態から見て漁場開放はもう我が国としてはできないというふうに考えるわけです。特に漁民の要望も強いわけでありまして、現在程度漁獲割り当て量は、北洋漁業の継続のためにぜひとも確保しなければならないというふうに考えるわけであります。  そこで、本協定の国会承認の後に直ちに実体交渉に入られるわけでありますが、この点について、交渉に臨む基本的な態度をどのようにお考えなのか、決意も含めてお伺いいたしたい。
  42. 佐野宏哉

    佐野政府委員 お答えいたします。  ソ連側漁獲割り当て量の消化実績が低い原因につきましては、私どももただいま先生指摘のとおりの認識を持っております。したがいまして、先ほど島田先生の御質問にも最後に申し上げたことでございますが、ソ連側クォータ消化実績の低い主たる原因が漁獲努力低下に起因するものでございますから、クォータの消化実績が低いことを論拠にして日本側に向かって日本沿岸水域での操業条件緩和を求めるということは、とんでもない筋違いであるというふうに私ども考えております。  それからまた、外国漁船操業との関係におきます沿岸漁場の秩序維持という点につきましても私どもは重大な関心を持っておりますので、沿岸漁業者の皆様に御迷惑のかかることのないように対処する決意でおります。
  43. 吉浦忠治

    吉浦委員 寄港地の問題で出ておりましたけれども、昨年末の交渉の結果、一年を限ってソ連漁船の小名浜寄港というものを認めたわけでありますけれども、現地ではソ連漁船の入港のたびに右翼団体等が妨害運動をして、特にいわき市の商店やらあるいは代理店に嫌がらせをするなどの不穏な状態にあったわけであります。いわゆる国際約束については、これが穏当に守られるように対処するのが政府責任であるわけでありますけれども、これらの混乱を避けるためにも、我が国へのソ連漁船寄港は好ましくないというふうに私は考えるわけでありますが、来年の操業確保に当たっての政府の対処はいかようにお考えなのか、お答えをいただきたい。
  44. 西山健彦

    西山政府委員 お答え申し上げます。  先ほども大臣からお答え申し上げたことでございますが、やはり今次交渉においても基本的には漁業の問題は漁業分野で解決すべきである、こういうふうに基本的に考えております。したがいまして、その立場を踏まえた上で対応していく、そういうふうに私ども考えております。
  45. 吉浦忠治

    吉浦委員 日ソ漁業委員会の構成について、意見を含めて質問をいたしたいのです。  日ソ漁業委員会の構成、運営、任務についてこれを定めるというふうな第六条の規定がございますが、この日ソ漁業委員会漁獲割り当て量とか操業区域等についての決定を毎年行う、こういうふうになっておるわけです。いわゆる協定長期化は行われましたけれども、実際問題、漁業委員会は毎年毎年開かれるわけでありまして、中身については何も変わってないような形でありますから、私はこの提案とともに意見を申し上げたいのです。  ソ連の場合にはメンバーが変わらないで、毎年毎年その魚類の分布状態なり生息状態なりあるいは海流の問題なり、事細かに専門的な立場の人がこの交渉に臨んでくるのに、日本の場合には、安倍さんは大臣のいすに長く座っておられますけれども長官なりあるいは役人の場合には毎年毎年変動して、その構成メンバーも変わってくるわけであります。外交が上手でないと言えばそうかもしれませんが、やはり長期的な点に立ってこの構成メンバーというもの、せめてキャップを三年なり五年なりかえないような形で交渉に臨む方が好ましいのじゃないか、なかなか機械的には難しいかもしれませんが、そういう意味でどういうお考えをお持ちなのか、お答えをいただきたい。
  46. 都甲岳洋

    ○都甲説明員 お答え申し上げます。  今回の漁業協定のもとで新たに委員会という場が設けられまして、そこで毎年の操業等が話し合われるわけでございますけれども、この委員会の場におきましては、漁船操業条件のほかにこの条約の実施についてのいろいろな問題が広く討議されるということになりますので、そういう見地から政府としましては水産庁を初め関係省庁とも十分に協議した上で、こういう話し合いの場に適当な方に委員をお願いするという形で今後考えていきたいと思っております。  この委員会の場では、政府代表たる委員それから代表代理が二名ということで、その三人が中核となって、それに団員として大勢の方々が加わるわけで、当然のことながら団員には専門的な知識を持たれた方々が大勢これに参加していただくということになると考えております。
  47. 吉浦忠治

    吉浦委員 長官、なるべく私の要望はお聞きいただいて、その構成メンバーのときに、長官だけでそういうことをどうということもできませんけれども、できる範囲内の考慮を続けていくべきじゃないかと思いますが、要望いたしておきます。  日ソサケ・マス協定について最後にお尋ねをいたしておきたいのですが、北洋のサケ・マス漁業は、日ソ漁業協力協定に基づいて操業されてきたのでありますが、現在この協定は、六月末のソ連側の一方的な破棄通告によって中断の状態にあるわけであります。この協定が再締結されないと、来年五月からのサケ・マス漁はできないことになるわけでありますが、早期締結が望まれていながら、この協定締結交渉の現状というものをどのようにお考えなのか、その対処方針をお伺いいたします。
  48. 斉藤邦彦

    斉藤説明員 ただいま御指摘のとおり、ことしソ連側からこの協定の終了通告がございまして、本年末をもって終了することになっております。政府といたしましては、ことしの五月の下旬から、鋭意ソ連側と新たな協定締結すべく交渉を行っているところでございます。  交渉内容は、現在交渉中でございますので、詳細な御説明は差し控えさせていただきたいと思いますが、今度の交渉の最大の焦点は、我が国漁船によるサケ・マスの漁獲の取り扱いでございます。国連海洋法条約中の遡河性資源、これはいわゆるサケ・マスでございますけれども、この取り扱いに関する条項の規定ぶりを念頭に置きながら、この考え方を新しい協定の中でどういうふうに規定するかという難しい問題がございます。したがって、交渉は今のところ必ずしも順調に進んでいるとは申せない状況でございまして、見通しも楽観はできない状況でございます。しかしながら、この協定締結の時期は、明年のサケ・マス漁獲の開始という日程と直接に関連しているわけでございますので、政府といたしましては、できる限り交渉を早急に再開いたしまして、我が方に納得のいける内容を持った新協定締結努力を続けていきたいと考えているところでございます。
  49. 吉浦忠治

    吉浦委員 最後に要望だけで終わりますが、新しい両国地先沖合における漁業分野相互関係条約でございますけれども、現在これが明日本会議で通り参議院で通っても、一月一日に間に合うことは大変難しいのじゃないか。なるべく漁民の立場に立って、こういう状態を早期に事務的な問題では解決をして、一月一日からの操業ができるように努力をしていただきたい、お願いを申し上げて質問を終わります。  以上であります。
  50. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、斎藤実君。
  51. 斎藤実

    斎藤(実)委員 今回の日ソ地先沖合漁業協定締結によりまして、日ソ双方の二百海里水域内での安定的操業への道が開かれましたことについては高く評価するわけでございまして、関係当局者の御苦労は多とするものでございます。  さて、今回の新協定第一条では、自国の二百海里でと明記をしておりますね。日ソ、ソ日旧協定ではここのところは「海域」となっておりましたが、今回「二百海里水域」を新協定で明記をした理由を伺いたいと思います。
  52. 斉藤邦彦

    斉藤説明員 この協定は、日本側に関しましては漁業水域に関する暫定措置法に基づきます管轄権、それからソ連に関しましてはソ連邦の最高会議幹部会令に基づく生物資源探査開発保存及び管理のためのソ連主権的権利、これを基礎として成り立っているものでございます。  我が国漁業水域に関する暫定措置法におきましては、我が国が距岸二百海里の水域まで漁業に関して管轄権を有すると規定されております。ソ連側の最高会議幹部会令におきましても、ソ連の距岸二百海里水域内におきまして一定の主権的権利を行使するというふうに規定されております。  この協定におきましては、この日ソ双方それぞれの国内法で決められておりますこのような水域を「二百海里水域」と呼んだわけでございますが、実態の上では、この二百海里水域という表現が使われておりませんでした従来の日ソ、ソ日両協定、これと何ら変わるところはございません。
  53. 斎藤実

    斎藤(実)委員 旧協定では二百海里水域の運用は定着をしてきた、運用してきたということで「二百海里」と明記をしたということですね。  お尋ねいたしますが、ソ連経済水域に関する最高会議幹部会令第一条では、ソ連邦の海洋区域に二百海里の経済水域を設定し、と、その主権的権利を新協定でも認めているわけですね。そうしますと、我が国固有の領土である北方四島周辺の水域ソ連の二百海里経済水域として認めたということになると思うのですが、いかがですか。
  54. 斉藤邦彦

    斉藤説明員 この協定のもとでは、あくまでソ連幹部会令に基づきます生物資源探査開発保存及び管理のためのソ連主権的権利を認めたにすぎないわけでございます。これはこの協定の前文にも書いてあるところでございます。したがいまして、我が国がこの協定におきましてソ連経済水域に関する幹部会令そのものを認めたとか、あるいはこの幹部会令ソ連が設置したとしております経済水域そのものを認めているわけではございません。この協定我が国ソ連主権的権利として認めましたのは、あくまで漁業に関する主権的権利ということでございますので、その点、現行日ソ協定と違いはないわけでございます。
  55. 斎藤実

    斎藤(実)委員 今の答弁は、漁業問題と領土問題を切り離して協定で措置をしたというふうに私は理解するのですが、北方領土は我が国固有の領土であるという立場外交的に強く主張してまいりました。  そこで、今度の協定で「二百海里水域」と明記をしたということになれば、我が国の従来の立場上、影響を与えるおそれはないのかということを心配するのですが、いかがですか。
  56. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この協定は、審議官も答弁しましたように、これまでの日ソ、ソ日両暫定と同様に、北方領土問題とは切り離して締結されたものであります。したがって、今後の我が国の北方領土返還の要求についてもいささかも障害を来すものじゃない、こういうふうに思っております。我が国は、これまでもソ連と粘り強く交渉を行っておりますが、ソ連側は依然として領土問題は存在せずというかたくなな姿勢を崩していないことは極めて遺憾でありますし、今後とも息長く我が国の主張を踏まえてソ連側との対話を重ねる考えでございます。そして、日ソの間の領土問題を解決して平和条約締結する、そのことが真の日ソの友好のゆえんであるという姿勢を持って貫いていきたいと考えております。
  57. 斎藤実

    斎藤(実)委員 大臣ソ連もこの協定で日本国の管轄権、二百海里を認めておるわけです。我が国の法律が北方四島水域にも適用されている、されたというふうに考えますと、北方領土問題に対する我が方の立場が今回の協定締結により前進したというふうに考えていいのかどうか。大臣、いかがですか。
  58. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、留保しておるわけですから、別に日本が得をしたということにもならぬと思いますし、領土問題と漁業問題と切り離し形で、領土問題については先ほど申し上げましたように、今までの基本姿勢は日本としては崩すことはできない、こういうふうに考えております。
  59. 斎藤実

    斎藤(実)委員 確かに大臣、領土問題と漁業問題は切り離す、これはもう当然だと思うのです。大臣も、国連その他各国で北方領土返還について粘り強く主張されておることについては私も伺っておりますが、ソ連との交渉におきまして、幅広い日ソの交流、経済とか外交とか文化とか学術とか、これらがやはり私は大事だろうと思うのです。確かに大臣おっしゃるように、息の長い領土問題でございますが、今後どういうところに力点を置いてこの北方問題解決のために努力されるのか、大臣からお答えいただきたい。
  60. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日ソというのはお互いに隣国同士でありますし、そして戦後国交回復して今日に至っておるわけでございます。基本的な領土問題は解決していないわけですけれどもソ連は世界の超大国であるし、また日本も世界に対して大きな発言権を持っておる。この両国が、基本的な問題は基本的な問題として解決していかなければならぬと思いますが、その他の、例えば世界の平和と軍縮の問題にいたしましても、アジアの安定と平和の問題にいたしましても、あるいは両国間の経済、文化、人的交流、あらゆる問題にしても、幅広い対話といいますか交流を持つことが必要じゃないかというふうに、私は基本的に考えております。  しかし、何といっても肝心の問題は領土問題であります。私は、それらの問題を本当に解決する基本的な決め手というのは領土問題を解決することであろうと思いますが、しかし今ここでやろうといったってできないわけでありますから、そうした領土問題も含めながら、そうした立場であらゆる面での交流を活発にしていく必要がある。そして、それがまた領土問題解決にも御益するといいますか、プラスにもなるのじゃないか、そういう考えも持って腰を据えて取り組みながら、一方ではいろいろな面で改善そして対話を進めていきたい、こういうふうに思います。
  61. 斎藤実

    斎藤(実)委員 ぜひ大臣、ひとつそういう姿勢で取り組んでいただきたいと思います。  今度の協定日ソ漁業委員会が設置されるわけですが、この委員会の構成メンバーについてどのように今準備を進められているのか。特に私は、具体的に漁業問題に精通をした専門家をメンバーにすべきだろうと考えておるのですが、いかがですか。
  62. 都甲岳洋

    ○都甲説明員 お答え申し上げます。  今回の協定のもとでは、委員会という枠組みの中で実態問題についての話し合いが行われるわけでございますけれども、当然のことながら、その主たる話し合いの内容は双方の漁船操業条件についての話し合いであると思いますけれども、その他この協定の実施につきましては広い事項も関連しておりますので、そういうことも全体的に考えながら、私どもとしては水産庁とも密接に御協議しつつ、また他の省庁とも諮りつつ適当な方にお願いしたいということで、目下一生懸命努力しておるところでございます。そういうふうに御理解いただきたいと思います。当然のことながら、委員及び委員代理のほかに、交渉の代理人の中には専門家の方々も大勢参加するという状態になることを申し上げられると思います。
  63. 斎藤実

    斎藤(実)委員 本年の交渉は、従来十一月下旬に開催されますが、新協定の調印のおくれから現在大幅におくれているわけでございます。昨年の交渉は、御承知のようにソ連側がスケトウダラの大幅な削減や、大陸棚資源のカニ、ツブに対して割り当て量をゼロにするという強い要求を最終段階まで譲らなかったわけですね。さらには、日本漁船操業違反を強く指摘して難航した経緯があるわけでございますが、本年においてもより一層厳しい交渉になるだろうと思うのです。  そこで、来年一月から出漁できるように、物理的に非常に私は厳しい日程になろうと思うのですが、一体一月一日に間に合うのかどうか、この点をしかとお伺いしたいと思います。
  64. 佐野宏哉

    佐野政府委員 お答えいたします。  一月一日出漁の問題につきましては、関係漁業者の皆様の切実なお話を私も十分お伺いをいたしておりまして、その関係者皆様方のお気持ちを体して、私どももぜひ一月一日に間に合わせるという決意で協議に当たりたいと思っております。
  65. 斎藤実

    斎藤(実)委員 長官、国会で承認をされる、交換公文の署名、それからソ連に行って許可の申請をしなければならぬ、モスクワに行くかナホトカに行くか知りませんが、それで今度許可をもらって許可証を積んで出漁する、こういう仕事が残っておるわけです。きょうはもう十二日ですね。あと半月の間でこういう手続ができるのか、もしこれができなければどういう対応をするのか、長官、お尋ねしたいと思います。
  66. 佐野宏哉

    佐野政府委員 今回の協議は、話がまとまりますれば、従来の場合と異なりまして協議が済んだ時点で国会の御承認をいただくということは不要でございますので、その点は従来のシステムに比べますと、協議が済んだ後の所要日数は大幅に短縮できるはずでございます。  それからもう一つ先生御心配になっておられます許可証受領の問題につきましては、従来から関係漁業者の皆様方がナホトカで許可証を受領するというのは大変不便で困るというお話がございまして、昨年の場合は、かわりにモスクワで許可証を受領できるというふうな便宜をソ連側に図ってもらった経緯がございますが、ことしもそういう点は御希望に沿うように工夫をしてまいりたいと思っております。
  67. 斎藤実

    斎藤(実)委員 長官、大事な点が一点あるのですが、ことしは漁獲量が七十万トンに減らされましたね。今後の交渉では七十万トンを上回るような漁獲割り当てが、これは交渉ですからここでは答弁できないかもしれませんけれども、これは大きなポイントになるだろうと思うのです。見通しとしては、この七十万トンを上回る線で妥結するのか、あるいは現状維持で妥協するのかどうか、この見通しについて。
  68. 佐野宏哉

    佐野政府委員 ただいまはしなくも先生御自身が御指摘なさいましたように、その点について真正面からお答えをするということはちょっと御容赦いただきたいのでございますが、先ほど来繰り返し御議論がございますように、ソ連側漁獲割り当て量の消化実績が低いということをめぐる論点が、重大な御懸念の対象になっているということから御賢察いただければと存ずる次第でございます。
  69. 斎藤実

    斎藤(実)委員 ソ連側への許可申請でございますが、日本の漁船ソ連の二百海里内に入って操業する場合にはソ連の許可が必要になってくるわけです。この許可申請とそれから操業途中の代船ですね、操業中に沈没したとかあるいは古くなって新しい船にかえるという場合の代船許可申請、これらについてはその都度訪ソして、モスクワあるいはナホトカへ行って手続をする、そして許可証を受領しているわけですが、これは大変時間もむだでございますし費用もかかる。そこで、日本国内において、例えば在京のソ連大使館への申請、交付ができるような体制の道を考えるべきではないかと私は思うのですが、いかがですか。
  70. 佐野宏哉

    佐野政府委員 お答えいたします。  先生指摘のような、手間のかかり方についての漁業者の皆様方の御不満は私どももよく伺っておるところでございますが、元来、いかなる手続で許可を発給するかというのは基本的には沿岸国側の権限に属することでございまして、なかなかこちらからつべこべ言いにくいという事情もございます。その上もう一つ御理解を賜りたいと思いますのは、そういうことになれば当然日本側も、水産庁が行っております許可発給事務を日本の在モスクワ大使館でやっていただくというような、相互主義的な取り扱いをしなければいけないという問題が生ずるわけでございます。その点についても、どうも実際問題として処理は難しいというふうに存じておりますので、先ほどちょっと申し上げましたように、ナホトカではなくてモスクワにしてもらいたいというくらいのところが、現実的に考えれば精いっぱいではないかと思っている次第でございます。
  71. 斎藤実

    斎藤(実)委員 以上で私の質問を終わります。
  72. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、渡辺朗君。
  73. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 まず先に、外務大臣にお聞きしたいと思います。  このたびの有効期間を三年とする日ソ漁業協定締結に当たって、関係者の御努力には大変感謝を申し上げたいと思います。ところで、現今の日ソ関係の中でこの漁業協定締結されたこと、これをどう位置づけ、どういうふうに評価したらいいものだろうか。そういう日ソ間の政治情勢なりあるいは風向きなりというものと全然関係ないものとして考えたらいいのか、あるいはまたソ連側の対日姿勢に何らかの変化があることを期待しているわけでありますけれども、それとの関連でどのように見ることができるのかということを私はお聞きしたいと思います。外務大臣、いかがでしょう。
  74. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日ソ間の漁業関係は、従来より非常に厳しい日ソ関係の中で安定した実務関係を維持してきておりまして、今回の新協定締結も、このような安定した実務関係を強化するものとして歓迎すべきものと考えております。一方、サケ・マス漁獲に関する現行日ソ漁業協定にかわる新協定締結に関する日ソ間の協議は、本年五月以降四回にわたり行われているわけでありますが、まだ妥結に至りません。交渉が難航しておりますし、今後の見通しについても楽観できない、こういう状況でございます。  したがいまして、御指摘のように、今回の協定締結をもって直ちに日ソ漁業交渉がすべて好転すると判断することはできませんが、しかし、このような日ソ間の実務レベルの接触の増大は広い意味での日ソ対話の強化でございますし、日ソ関係安定化に好もしい影響を及ぼすことを期待いたしておる次第であります。
  75. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 さて、それでは協定交渉経過について少しくお聞きしたいと思います。  当初この問題について、日本側では三年ではなくて五年を主張しておられたようにも聞いておりましたが、そこら辺の交渉経過についてお聞かせいただけませんか。
  76. 斉藤邦彦

    斉藤説明員 ただいま御指摘のとおり、我が方はできるだけ長期間にわたりまして安定的な操業を確保するという見地から、有効期間を当初期間五年という主張をいたしました。これに対してソ連側は三年という主張をしたわけでございます。理由は必ずしもはっきりいたしませんけれども、一説によれば、ソ連は何か新しい協定を結ぶときは一応三年でやってみるのが原則なんだというような話もございました。  いずれにいたしましても、我が方は粘り強く五年を主張したわけでございますけれども、漁期との関係もございますし、それから自動延長の規定が入っておりますので、当初の期間を三年にいたしましても、長期安定的操業の確保という見地からは必ずしも支障がないであろうと判断して、三年という期間に合意した次第でございます。
  77. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 今お話を聞きますと、日本側の主張五年が三年になり、しかしながら自動延長が入れられたというような点、従来の交渉からいうともうちょっと難航しそうな気がしていたのですが、案外スムーズにいったのかというふうにも思います。  そういう中で、先ほど大臣にどのように見たらいいのかということをお聞きいたしましたら、おっしゃったように、直ちに何か好転していく、日ソ関係が大きく変わる、こういうこととは結びつかない、しかし実務レベルでの対話の積み上げの重大さというものが評価されるということを言われましたが、そういう点で当事者の方から、交渉の中でお感じになったようなことがございましたらお聞かせいただきたいと思います。
  78. 都甲岳洋

    ○都甲説明員 一九七七年にこの協定が初めに締結されましたときには、三カ月という期間をかけた、領土問題も絡んだ非常に厳しい交渉であったことは先生も御記憶のとおりでございますが、今回の交渉に当たりましては、この何年かの経験もございますし、お互いに入り会っているということもございますし、それから制度がかなり確立してきたということもございますし、ソ連側は初めから実務的な交渉で片づけたいという気持ちを非常に強く示しておりまして、交渉の初めから問題の点につきましてはお互いにテーブルの上にのせ合って、実務的な交渉をした結果がこういう形でおさまったということでございますので、そういう意味では、過去の貴重な経験を参考にしながら実務環境をより安定化したいというソ連側考え方がここに反映されたと私は考えております。そういう点が、この交渉に当たりまして私どもが一番強く感じた点でございます。
  79. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 次に、漁業協力協定の方についてお尋ねをしたいと思います。  本年の六月に、ソ連側の方から協力協定の失効が通告されました。これについてその当時の新聞などを引っ張り出してみますと、まず水産庁の方は、ソ連側の突然のこのような通告に対して、真意をはかりかねる、情報収集を急ぐというようなことでございました。どのような理由があって、ソ連側の方はこれを通告したとお考えでございましょうか。
  80. 都甲岳洋

    ○都甲説明員 日ソ漁業協力協定につきましては、ソ連側といたしまして新しい経済水域に関する幹部会令が採択されたこと、それから国連海洋法条約が採択され日ソ双方ともこれに署名したことという事実を踏まえて、新しい協定をつくりたいということを言っておりましたので、そういうことで新しい情勢に対応するための協定をつくるためには、やはり次の年からはこの枠組み日ソのサケ・マスの問題をできれば取り扱いたいという強い希望があったようでございまして、そのようなことを背景として六月に廃棄通告したものと私どもは了解しております。
  81. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 それはわかりますけれども、しかしその当時は、日ソ間で漁業協力協定の見直しをソ連側が求める、それでモスクワにおいては五月に第一回の協議を開き、東京で第二回の協議をしようというやさきに一方的に通告したわけでしょう。つまり、交渉している最中にそのようなことを行うというのは、何かちょっと普通では考えられないんですけれども、だからその突然の一方的な通告というようなものが一体何を意味していたのか、そこら辺を少し掘り下げて聞かせていただきたいのです。
  82. 都甲岳洋

    ○都甲説明員 ソ連側が六月に廃棄通告をしてきた背景には、やはり新しい枠組みでこの問題を取り扱うということについてのソ連側の指導部における非常に強い要請があったということで、そのソ連側の強い姿勢を示すために、協定の廃棄通告ということで新しい協定枠組みをつくるための一つの刺激を与える必要があったという事情がどうもあったように私どもは感じてわります。
  83. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 これは、水産庁長官にちょっとその点お聞きしたいのです。  ソ連は協力協定を一方的に失効することを通告してきた、このねらいは一体どこにあったのですか。例えば、ソ連側はずっと主張してまいりましたが、沖取りを中止させるとか禁止するとか、あるいはまたソ連側にこういうふうなショック療法的なものを日本に与えて有利に展開するとかいう意図があったのかなかったのか、そこら辺は専門家としてどのようにお考えでございましょう。
  84. 佐野宏哉

    佐野政府委員 お答えいたします。  私どもも、ソ連側国連海洋法条約なりあるいは新しい幹部会令、そういう現実の中で現行日ソ漁業協力協定をそのまま存続させるわけにはいかないという考え方を持っておるということは承知をしておりました。日本側も、ソ連側のそういう考え方にアコモデートする用意はあったわけでございまして、だからこそ協定の改定の協議を行っておったわけでございます。したがいまして、現行のままの協力協定が存続すべきものではない、新しい協定によって取ってかわるべきものであるということについては、日本側も十分アコモデートする用意をして協議に応じておったわけでありますから、その段階で特に廃棄通告をしなければならない必然性はそれ自体からは生まれてこない。そういう意味で、先ほど先生が引用なさいました新聞報道に見られるような反応を恐らく私の前任者が示したのだろうと思います。  ただ、今になって振り返ってみますと、新協定に移行させるという共通の認識は持っておりましても、協議がだらだらと続いておればそのまま現行協定は生きていくわけでありますから、ソ連側としては新協定に移行させるということについての不退転の決意を示すという意味で、失効の通告をするということが有効な手段であると考えたのではあるまいかというふうに私は今思っております。  それから、新協定へ移行することについてのねらいという点につきましては、当然のことながら国連海洋法条約あるいは新幹部会令ということを念頭に置きまして、母川国の立場が一層強化されるということをソ連側期待をして新協定問題に取り組んでいるのであろうということは、容易に想像されるところであります。
  85. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 それでは、今新しい協力協定をつくろうとしておられるわけでありますけれども、聞くところによると交渉は難航している。どういうところが今問題点なんでしょうか、どこが今難航しているのでしょうか、そこら辺をできるものならば聞かせていただきたいと思います。これはどちらにお聞きすべきでしょうか、外務省でしょうか、水産庁でしょうか。
  86. 斉藤邦彦

    斉藤説明員 何分にも交渉中のことでございますので詳細な御説明は控えさせていただきますが、最大の焦点となっておりますのはサケ・マス漁業の取り扱いでございます。  今度の協定は、海洋法条約の採択という新しい事態を踏まえましてできるものでございまして、この点につきまして日ソ間に認識の差はございませんが、海洋法条約のサケ・マスに関する規定をいかにこの日ソ間の関係を規定いたします協定に反映させるか、どういうふうな具体的な規定を置くかということに関しまして意見が合わない次第でございます。  当然のことながら、ソ連ソ連の川で産まれますサケ・マスについてのソ連の権利をできるだけ多く獲得したい、海洋法条約の規定もそのような観点から解釈したいという立場でございますし、他方日本側といたしましては、この海洋法条約上、母川国の権利、これはもちろん一定の権利は認めているわけでございますけれどもソ連の主張するような形で母川国の権利をそのまま認めるわけにはいかないという立場がございますので、そこの調整が非常に手間取っているということでございます。
  87. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 この締結の見通しというのは、いつごろでございましょう。
  88. 斉藤邦彦

    斉藤説明員 交渉の見通しが楽観できない状況にございますので、いつごろということを申し上げるのは大変難しいのでございますけれども、来年のサケ・マスの漁期には間に合うように交渉を終え、協定を発効させたい、これが我々にとって最低限度の要求であるというふうに考えております。
  89. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 それではもう一遍漁業協定の方に返りますが、ソ連の方は最高幹部会令を布告いたしまして経済水域に関する布告をいたしました。それは従来の漁業専管水域にかわるものであるわけでありますけれども、これに対して我が国政府としては、これは国際的に慣習法化したものと考えていいのでしょうか。そのようにお考えでございましょうか。この経済水域についてのお考えを聞かしていただきたいと思います。
  90. 斉藤邦彦

    斉藤説明員 御承知のとおり、経済水域は海洋法条約の中に書かれているわけでございますけれども、既に多くの国が、約六十カ国になりますが、この海洋法条約内容を先取りした形で経済水域の設定を行っております。したがいまして、我が国としては、排他的経済水域というものは一般国際法上の制度として確立していく方向にあるというふうに考えております。しかしながら、これが既に全く問題のない、例えば漁業水域の設定の権利と同じような意味で一般国際法上の制度として確立していると言えるかと申しますと、この点は我が方はまだそうは考えておりません。
  91. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 時間もなくなりましたので、もう一つ二つだけ聞かせていただきたいと思います。  実体交渉に入るわけでありますが、従来日ソの間でいろいろ漁獲量を決めてこられました。それの消化率を見ると、どうもソ連側はどんどん落ちていっている。となると、交渉の中でソ連側としてやがて出てくると思われるのは、総漁獲量のクォータを減らすという動きではなかろうかと思うのです。これからの交渉に入る際に、そういうものが出てくることに対してどういうふうに対応していくのかということは非常に大事なことだと思うので、そこら辺どのような姿勢で臨んでいかれるのか、それについての御意見を水産庁長官に聞かしていただきたいと思います。
  92. 佐野宏哉

    佐野政府委員 お答えいたします。  私ども認識といたしましては、先生指摘ソ連側漁獲割り当て量の消化実績が近年特に低くなっておりますことの主たる原因は、ソ連側漁獲努力量水準が低くなっているということに起因をしておるというふうに認識をいたしております。したがいまして、私どもとしては、かつてソ連漁船団が相当の漁獲実績を上げておった当時に比べまして、操業規制を緩和したことこそあれ厳しくしたことはないわけでございまして、ソ連漁船団に提供しておる操業機会というものは、かつてソ連側が日本とほぼ匹敵するクオータの消化実績を上げておった当時と変わらないわけでございます。  日ソ間のギブ・アンド・テークというのが、漁獲実績のギブ・アンド・テークではなくて操業機会のギブ・アンド・テークであるというふうに考えれば、最近の漁獲割り当て量の消化実績の低下にもかかわらずソ連側に与えている操業機会というものは、むしろ七〇年代当階よりは若干ではございますがよくなっておるわけでありますから、そのことを踏まえてソ連水域での日本側操業機会を擁護していきたいというふうに考えておる次第でございます。
  93. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 最近、アメリカの対日漁業政策を見ておりますと、どうも日米友好関係とは裏腹に、米国の北太平洋の二百海里水域内での対日漁獲量制限などというふうな動きが出てきているように思われます。あわせてソ連側からもそのような動きが出てくるとなると、日本は大変困ることになってまいるわけであります。その点ひとつ、対ソ交渉の中において関係者の皆さんの大きな御努力をお願いしたいと思います。  さてもう一つ漁船寄港問題があります。日ソ両国間で取り決められたこのような寄港問題。小名浜港へソ連漁船が入ってきたのは、海員組合の方に聞いてみましたら、本年は年間寄港予定隻数七十隻のうち、本日現在で二隻だということでありますが、そういう数字だったのでしょうか。これは確かでしょうか。  また、ここら辺も教えていただきたいのでありますけれども、少なくとも政府協議で決めた、そして閣議で決定した日ソ、ソ日の漁業協定に基づく漁船寄港でありますから、これは当然政府責任において安全を保障していかなければならぬだろうと思います。それについて政府のとられた措置はどのようなものであったのか、来年度はどのようにされるのか、ここら辺についてお聞かせをいただきたいと思います。
  94. 都甲岳洋

    ○都甲説明員 お答え申し上げます。  小名浜におけるソ連漁船寄港実績でございますけれども、現在までのところ二十一隻のソ連漁船が小名浜に寄港したというふうに承知しております。当然のことながら、寄港に伴ういろいろな安全確保の問題等々ございますので、私どもとしては関係方面と十分に協議をし、そういう点で問題がないようにいろいろな方面の御鹿力を仰いで今まで来たということでございます。  来年のことにつきましては、漁業の問題につきましては漁業範囲でこれを解決するというのが基本的な考えだと思いますので、そういう基本的な考えを踏まえながら、今後の交渉において慎重に対処していくということにしたいと考えておる次第でございます。
  95. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 漁業交渉についてのお話を聞かせていただく御質問を幾つかさせていただきました。今、魚の問題を取り上げていろいろやっておりますけれども外務大臣、魚も大事ですが、それ以上に大事なものとして、領土に対する主権的な要求というものはおろしてはならないと私は思います。その点で、領土より魚だという考え方が万が一出てくるとするならば、これは非常に危険なことだと思います。戦後四十年の節目を迎えようとしている今日であります。領土問題について、大臣の決意のほどを聞かせていただきたいと思います。
  96. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今、日ソ間で最大の問題点はやはり領土問題であります。日本は、歴史的にもあるいは条約の上からも、名実ともに日本の固有の領土である北方四島の返還をソ連側に強く求め続けておるわけでございますが、残念ながらソ連はこの要求に対して耳をかそうといたしておりません。私どもは、真の日ソ関係が発展をしていくためには、やはり領土問題が解決をして、そして平和条約締結するということでなければならないと思っておるわけでございまして、この基本的な問題を解決すべく、我が国としては今後とも腰を据えて対ソ外交に取り組んでまいりたいと思います。  同時に、日ソ関係では領土問題以外にも、今の魚の問題その他種々の問題がございます。こうした問題につきましても対話を進めていくということは当然のことでございますし、また、そういうことを行うことによって領土問題の解決にも資することになるであろうというような考えを私は持っておるわけでございますが、何はともあれ領土問題は最大の懸案であります。我が国としては、これに対して今後とも決意を新たにして取り組んでまいる考えは変わっておらないわけであります。
  97. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 一層の御努力期待いたしまして、これで質問を終わります。ありがとうございました。
  98. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、岡崎万寿秀君。
  99. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 今度の協定で従来の暫定協定長期化したということは、これはかねてから我が党が要望し、主張したのと同様でありますし、漁民にとっても望ましいことであるというふうに考えます。しかし同時に、長期化したことによって伴う問題点、疑問点もありますので、一、二質問したいと思うのです。  操業条件等については、これまでは協定とセットで当委員会等でも論議し、国会で承認したわけですが、これからは日ソ漁業委員会において、つまり実務レベルで協議されることになるわけですね。そうなりますと、これまでは国会をバックに交渉し、強力に日本漁民の立場を主張されたわけでございますが、これからは実務レベルでやられるとなりますと、今でさえも毎年減少しています漁獲割り当て量においても大丈夫でしょうか、あるいは一月一日操業ということについても保証ができるでしょうか。そういう点について多くの疑念がありますので、明快なお答えを願いたいと思います。
  100. 佐野宏哉

    佐野政府委員 お答えいたします。  従来交渉に携わってきた者の経験として申し上げますと、日本の国会の御審議ということを念頭に置いてソ連側が譲歩してくるということを、どうも私はそれほど実感としては感じませんでしたので、今後の協議のやり方でも従来の協議の場合でも、日本の国内の世論なり関係漁業者の声をバックにして交渉するという意味では共通でございますので、その点は特に御心配をいただくべきことではないというふうに思っております。
  101. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 今心配しないでもいいとおっしゃいましたが、心配しないでいいようにしっかりやってもらいたいと思います。  この協定が領土問題と漁業問題とは切り離しているということ、これは賢明だろうと思うのです。また、大臣もお答えのとおり、この協定によって日本の領土に対する主張については明快に留保しているということ、これは必要であろうと思いますが、長期協定だけにやはりはっきりこの問題を詰めておきたいと私は思うのです。  漁業水域に関する暫定措置法がございますが、歯舞、色丹などいわゆる北方水域については、日本の二百海里水域として線引きされていると思いますけれども、そう確認してよろしゅうございますね。
  102. 都甲岳洋

    ○都甲説明員 お答え申し上げます。  我が国漁業水域に関する暫定措置法は、当然のことながら、我が国の領土である北方四島周辺にも適用されているというふうに御理解いただいて結構でございます。
  103. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そうしますと、今度の漁業協定は幾つか問題を感じるわけなんです。我が方も二百海里水域として線引きをしている。ソ連ももちろんしている。きょうの話によりますと、我が方はこの暫定措置法を基礎として成り立っているし、もう一方はソ連の新しい幹部会令を基礎として成り立っている。二百海里という点では双方重なっている地域なんですね。ところが、今度の協定では前文の方にはっきりと、「幹部会令に基づく生物資源探査開発保存及び管理のためのソヴィエト社会主義共和国連邦の主権的権利を認め、」云々となっていますが、これは二百海里についてソ連漁業主権を認めたことになるわけですね。そうしますとどうなりますか、日本の二百海里でありながら日本の漁業主権はないのですか。
  104. 斉藤邦彦

    斉藤説明員 ただいま御指摘のとおり、我が国はこの協定の前文におきまして、ソ連幹部会令に基づきます生物資源探査開発保存及び管理のためのソ連側主権的権利を認めております。しかし他方、同じく前文によりましてソ連側も、日本国の漁業水域に関する暫定措置法に基づく日本国の管轄権を認めている、こういう形になっているわけでございます。
  105. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 これはおもしろい問題ですね。そうなりますと、双方の二百海里水域は双方が線引きし、双方が漁業に対する発言権を持っているとなりますと、現実においてはソ連の一方的な拿捕や抑留が行われていますが、それはこの協定違反になりませんか。
  106. 斉藤邦彦

    斉藤説明員 北方四島が我が国の領土であるという我が方の立場にはいささかの変化もございませんけれども、残念ながらソ連側が北方四島に事実上施政を及ぼしているというのが現実でございます。  我が方といたしましては、我が国漁船の同島の周辺水域での操業の安全を確保しようとすれば、この領土問題に関する我が方の立場が害されないことを確保しながら、同島周辺水域においてソ連漁業に関する規制を行っているという事実を考慮に入れた上で、取り決めを行わざるを得ないわけでございます。したがいまして、ただいまの御質問の最後の点でございますけれどもソ連側がこの協定に基づきましてソ連としての主権的権利を行使して、この四島の周辺水域で日本漁船の取り締まりをするということにつきましては、我が方としては抗議をするとか、そういう立場にはないわけでございます。
  107. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 では、確認したいのですが、我が方は暫定措置法によって歯舞、色丹等いわゆる北方水域については二百海里の線引きを行っている。それについては漁業主権もはっきり主張できる。しかし、ソ連の不法占拠によってその実体支配が行われていることを認めざるを得ない、そういう実態の上に運用している、このように理解してよろしゅうございますね。
  108. 斉藤邦彦

    斉藤説明員 そのとおりでございます。
  109. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 安倍大臣にお伺いしたいのですが、それでいいかどうかという問題なんです。つまり、漁業協定というのは相互主義の立場に立って結ばれているわけでございまして、領土問題と漁業問題を切り離すというのは賢明な措置ですけれども、切り離したと言いながら、実際的には不法占拠を容認した上での切り離しなんですね。ですから私たちは、そういう点からいうならば、絶えずこの問題については双方の主張が大きく食い違っておりますので、重なっている二百海里水域についてはお互いに共同の線引きが必要じゃないか、また共同で管理する必要があるんじゃないか、こういうふうに交渉もし、進むことが国際的な道理のある方向じゃないかというふうに思うのですね。  そうしますと、一方的な拿捕や抑留ということも解決することになりますので、もうしようがないというふうにあきらめずに、この共同線引き、共同管理の方向ではっきり交渉することが必要だろうというふうに私は思うのですね。これは切り離した上でもなお必要であるというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。
  110. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今、岡崎さんのおっしゃるようなことで交渉しますと、これは領土問題に直接つながっていきますし、日本とソ連との関係決定的な点で相反しておりますから。そうなると、この漁業条約までも領土問題で結べないということになるわけです。ですから、この際は現実的にお互いに領土問題と漁業問題は切り離して、そして留保をつけて、そういう中で処理をするというのが賢明な方法だと思うし、またそれによって日本の主権といいますか、領土問題に対する日本の主張は害されていない、我々はこういうふうに解釈しております。
  111. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 暫定協定でしたら一年でよかったのですが、長期協定になるわけですね。そうなった場合に、我が方の領土主張は害されてないというふうに言われますけれども、実体的な支配を認めて、本来主張すべき二百海里に対する主権も行使できないし、逮捕、抑留が相変わらず続いている状況について手の打ちようがない、これはちょっと情けないのじゃないでしょうか。やはり魚にいろいろひっかけてはいかないということは必要でしょうけれども、この辺のところは言うべき点は言って、双方の線引きや共同管理の方向に努力する姿勢が必要だろうというふうに思います。  同じ回答だと思いますから、時間がもったいないので私は再度答弁は求めませんけれども、いずれにしろそういう弱腰の姿勢でなくて、切り離しながらもはっきりした自主的な立場ソ連交渉することは必要だろうと思いますし、そうしないと実務レベルの日ソ漁業委員会でも結局ソ連に押されて、日本の漁民の利益を守ることにならないのじゃないか、そのことを懸念するわけなんです。  また同時に、先ほど同僚委員質問にもありましたけれども、こういう問題を根本的にというか大きく解決する道というのは、日ソ関係、その政治的条件をもっとよくすることだと思います。特に、北方水域では米ソの軍事緊張が非常に高まっていますし、また昨今ではこれに対する日本の軍事コミットが相当進んでいますので、そういう側面からも日ソ間の緊張状態が生まれていると思うのです。これとの関係を抜きにしては、日ソ漁業の好転的な打開はあり得ないと思うのです。そういう点などで、先ほど答弁もありましたけれども、日本の漁民の立場に立って交渉する上で政治的条件をよくするには、やはりこういう軍事関係においても緊張状態をつくらないように努力する必要がある、そういう点で大臣、いかがでしょう。
  112. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 やはり日ソ関係は、国家の体制は違いますけれども隣国同士でありますし、お互いに友好親善を進めていくということは当然であると思いますし、そのために努力お互いにしていかなければならぬ。しかし、残念ながら今のところは、領土問題という基本的な問題で対立しているということでございます。そして我が方は、断固としてその主張を変える考えは持っておりませんし、この主張を貫きながら平和条約を結ぶためにこれからも腰を据えてやってまいりたい。しかし、領土問題とともに日ソ間にはいろいろ問題もあるわけですから、そうした問題に対しても対話を進めて、できるだけ友好関係の道を探ってまいる努力は今後とも続けてまいる考えであります。
  113. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 領土問題だけではなくて、日米軍事同盟関係日ソの緊張関係をあおっているのは言うまでもないわけです。この問題についても、漁業問題を漁民の立場に立って解決する上で軽視できないということを指摘して、私の発言を終わります。
  114. 愛野興一郎

    愛野委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  115. 愛野興一郎

    愛野委員長 これより本件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  116. 愛野興一郎

    愛野委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  117. 愛野興一郎

    愛野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  118. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。高沢寅男君。
  119. 高沢寅男

    高沢委員 私は、まず大臣に、先ほどの漁業協定の審議の中でも随分御議論がありましたが、日ソ間の関係の正常化あるいは対話の進め方、こういうことについて御所見をお伺いをしたいと思います。  率直に言って、ここ数年来、日ソ関係というのは非常に冷たい関係、こういうような状態にあったわけですが、これからは言うならばできるだけ温かい関係にしていかなければいかぬというふうに考えるわけです。先ほど決定されました漁業協定のあの締結にも関連して、大臣も、ことしは日ソ関係で言えば関係回復のための元年であるというふうな表現も使われましたが、関係改善のためのこれからの進め方について、まず総論的な大臣の御所見をお伺いをしたいと思います。
  120. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ことしはいろいろと対話が進められまして、私とグロムイコさんの会談もありましたし、あるいはまた事務当局の高級事務レベルの会談も行われました。中東に関する協議であるとか国連問題についての協議であるとか活発に行われましたし、また映画祭を初めとするそうした文化交流等も多少進みましたし、あるいはまた民間では円卓会議、今行われておる経済委員会等、今までにない活発なものがありました。あるいはまた、クナーエフ政治局員の来日といったようなこともあったわけでございます。私は、それはそれなりに一つの実りが出てきたのではないかと思います。  したがって、こうしたせっかくの対話の兆しが出てきたわけですから、来年はむしろ国際情勢も好転していくのではないかというような判断を私は持っておりますし、そうした状況の中で日ソの対話というものをより一層具体的に進めてまいりたい、そういうふうに思います。外交としては何とか、グロムイコさんも日本に行く番だというようなことを言っておりますから、グロムイコ外相も来年にも日本に来てもらいたいものだ。こちらがお願いするわけではありませんが、外相会議というのがあるわけですから、そうしてまたグロムイコさんの来られる順番でありますから、ひとつぜひとも日ソ関係をより一層発展をさせるためにおいでをいただきたいものだ、こういうふうに思っております。来年になれば来年でいろいろの面で対話を進めるために、これはお互い努力をしないと、一方的に努力をしたってしようがないですから、お互い努力をしていかなければならぬ、こういうふうに思います。
  121. 高沢寅男

    高沢委員 たまたまきょうから、五年ぶりの日ソ経済合同委員会が開かれているわけです。大臣もこれに出席してごあいさつをされてきたというふうにお聞きをいたしましたが、私はこの経済合同委員会の結論として何か具体的な成果が出てくるというようなことが、今言われた日ソ関係の前向きの前進のためには非常に有益ではないか、その点では政府ベースからもきょうから始まったこの会議に成功できるようなバックアップをひとつお願いいたしたい、こう思うわけです。     〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席〕  それとの関係で、聞くところによれば、今までの日ソのそういう経済協力の形として、コンペンセーション方式というようなことでやってきた、それを今度はソ連側からはターンキー方式というようなものを提案してくるというふうに伝えられているわけでありますが、この方式はどういうことをやろうとするのか、またこれを日本の政府としてどういうふうに評価し対応されるお考えか、その辺をお尋ねをしたいと思います。
  122. 西山健彦

    西山政府委員 お答え申し上げます。  私どもは、まだ具体的にそういうことがソ連側から出てきたというふうには必ずしも伺っておりませんが、確かに新聞あるいは業界の一部でそういうふうなことが伝えられていることは承知いたしております。  そこで、ターンキー方式ということでソ連側が具体的な提案をしてきたと仮定いたしました場合に、これは第一義的にやはり我が方、民間の当事者との間で話し合われることだと存じます。その結果、具体的にそういう案件がまとまってまいりまして、例えば信用供与等の問題にまでそれが発展してまいりました場合には、政府といたしましては、具体的な案件ごとにケース・バイ・ケースで慎重に検討をいたしまして対処してまいりたい、かように考えております。
  123. 高沢寅男

    高沢委員 今、局長の言われました、例えばそういうことが進行して金融というような話になってくれば、これは輸銀とかいう問題にもなってきますが、この辺の場合に、従来の制裁措置でこれはだめだ、そこでストップしてしまうというふうになるのか、今度の場合には、そこをもう一歩今までよりも踏み出すという方向もあり得るのか、この辺はいかがでしょうか。
  124. 西山健彦

    西山政府委員 いわゆるアフガンに関連いたしました措置といたしまして、政府の信用供与につきましては、これを慎重にケース・バイ・ケースに検討いたしまして対応していくということになっているわけでございます。従来からそういう方針のもとに対応してまいりまして、現実にはそういう形で認めてきているわけでございまして、今後も同じ姿勢で臨んでまいりたい。ということは、従来と同じように、その案件ごとに検討いたしまして、十分なメリットがあればそれに即して考えてまいりたい、こういうことでございます。
  125. 高沢寅男

    高沢委員 こういう点はもう申すまでもなく、イギリスなり西ドイツなりフランスなり、西欧諸国とソ連とのこういう経済協力関係というのは、日ソ関係よりも相当前へ進んでおるという実態もあるわけでありますし、そういう点においては、今言ったような例えば輸銀の資金というふうな問題が出てきたときは、ひとつ今度は大いに前へ一歩踏み出すということをぜひお願いしたいと思います。これは御要望として申し上げておきます。  そこで、今回の民間の日ソ経済合同委員会、こういうものを踏まえて、いずれ今度は日ソ政府ベースの貿易協議というふうなものが当然出てくるということになりますが、この辺の見通し、あるいはまた政府としてのお考えはいかがですか。
  126. 西山健彦

    西山政府委員 政府間の貿易協議につきましては、これはポーランドに対するソ連の態度ということと関連いたしまして、今までこれをやらない、やってもそのレベルを下げて事実上の単なる意見交換のようなことにしてきたわけでございますけれども、今回これをもとへ戻すということで、これはさきに大臣とグロムイコ外相が会見されるに当たって、我が方としては既にそういう態度を明らかにしてきたわけでございます。したがいまして、まだ時期につきましては具体的に決まっておりませんけれども、この後、来年早々にでもそういうふうな政府間の協議を復活いたしたい、かように考えております。
  127. 高沢寅男

    高沢委員 これまた大臣一つお願いをしたいのでありますが、先ほど大臣も触れられました、今度はグロムイコ外務大臣が日本へ来る、こういう番になっておるわけですね。さて、その番になっておるわけですが、大臣とグロムイコさんの会談などのあれをニュースで見ると、どうも何か成果がないと行ってもしようがないというような言い方を先方はされておる。では成果とは何だ、こういうふうになっていったところで、最近、それはソ連側一つの所見でありますが、せっかく日本へグロムイコ外務大臣が行くなら、そこで例えば経済とかあるいは文化とか何かそういうふうな協定締結される、サインされるというようなことがあれば、それは大変な成果で、それならば行く、こんなようなことがニュースで出てきておりますが、こういうことについての大臣の御所見はいかがでしょうか。
  128. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはいわば定期的な外相会議ですから、条件をつけて、成果があれば行くとか行かないとかいうのは、これはちょっと筋違いじゃないかと私は思うんですね。外相会談をやった結果、成果が出るということはあり得るし、また私は、日ソの場合においてはそういう可能性は十分あるのじゃないか、そういうふうに持っていきたい、こういうふうに思っておりますけれども、しかし初めから、条件が満たされるならば行くんだということは、これはちょっと筋が違うように思いますし、その辺はひとつグロムイコさんも考えていただいて、気軽に日本に来ていただきたい。歓迎もしますし、十分対話もして、そうしてその結果として、領土問題は領土問題としてありますけれども、しかしそのほかにいろいろと問題があるわけですから、そうした問題で成果、実りというものも十分考えられる、私はそういうふうに思っております。そのために日本も努力はしていかなければならない、こういうふうに思います。    〔浜田(卓)委員長代理退席、委員長着席〕
  129. 高沢寅男

    高沢委員 私は、例えば今度の漁業の、これはサインは東京外務大臣とパブロフ大使との間で行われたということでありますが、先方がそういうふうな希望を持っているならば、今度は断るわけにはいかない、今度はもう行かなければならぬ、あるいはまた、喜んで行きましょう、こう言えるような環境をむしろこちらから出してやったらどうかな、こんなふうに私としては考えたいわけです。  そこで、一例として言われましたような、例えば文化協定であるとか、あるいは日ソの間でもいずれ租税協定というふうなことも必要になるでありましょうし、そういうふうなことを少し実務ベースで詰めて準備をして、そして日本へ来たとき、東京へ来たときにサインをしましょうというような形にひとつ環境をつくってあげる、こういうことが日本側からあってもいいのじゃないのかな、私はこういうふうな感じがするわけですが、この点、大臣いかがですか。
  130. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ことしに引き続きまして、来年もやはり対話路線を進めてまいりたいと思いますし、そうしてそういう中で実務的に話し合いを進める問題はどんどん進めていきたい、こういうふうにも思っております。また客観情勢も、米ソの外相会談を初めとして米ソの核軍縮に関する会談も始まる可能性もありますし、東西関係も、おととしよりは去年、去年よりはことし、ことしよりは来年というふうに、だんだんとやはり緩和をする可能性は出てくるのじゃないか。そういうふうないろいろな状況を見ますと、いい方向に行く面というのは十分予想できるわけであります。またそのために、日本も日本なりに努力をしていきたいと思うわけであります。  そういうことで、グロムイコさんも気楽に日本に来てもらいたい。クナーエフさんも政治局員として日本にお見えになって、そしてそれなりに日本の訪問というのは実りがあったということで大変評価をされておったわけでございますから、グロムイコ外相もそういう意味では日本に来られることによってそれなりの成果は上げることができる。しかし、それまでの間に対話、実務的な話し合いはいろいろな面で進めてまいるということは、はっきり申し上げておきたいと思います。
  131. 高沢寅男

    高沢委員 私としては、今申し上げましたように、せっかくおいでになるなら、そこで何かサインができるというふうな来方がいいな、こう思いますが、それは今、大臣からもお答えがありました。  そこで、それとの関連でちょっと念のためにお聞きしておきたいのですが、例えばそういう文化の協定であるとかあるいはまた租税の協定であるとか経済の協力協定であるとかというふうなものを詰めていって、そして、やりましょう、サインしましょうというふうに進んでいく。その際に、いや、領土問題はまだできていないのだからそういう協定はだめなんだというようなことになるのか。今度の、先ほど決めた漁業協定もそうですが、この漁業協定というのはそうした領土問題というのを、あの第七条の中で、この協定のいかなる規定も、相互関係における諸問題について、いずれの締約国政府立場または見解を害するものとみなしてはならない。そういう点においては大変弾力的な、また賢明な措置によって、領土問題はまだあるけれども、しかし、漁業漁業締結というふうな道は現にとられておるわけで、そういう意味においては例えば文化とか経済とかあるいは租税とかというような、そういう実体的な、実務的な協定というものも同じような処置でもっておやりになる、それはできるしまたそうすべきだ、こういうふうにも考えるわけですが、この点は大臣、いかがでしょうか。
  132. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まだ未解決のいろいろな問題があるわけですが、基本的には、やはり領土問題を解決して平和条約締結するというのが日本の基本方針でございますし、その基本方針を貫くに当たりまして阻害要因となる、そういうことは避けていかなければならぬ、こういうふうに思います。そうした基本というものをにらみながら、日ソ間の対話をいろいろな面で具体化していくということは、我々は弾力的に考えております。しかし、この基本に大きな障害を与えるということになれば、これは考えざるを得ないわけでございます。そうした判断で対話をしていく考えです。
  133. 高沢寅男

    高沢委員 私は先ほども言いました、さっき我々が承認をした漁業協定のそういう前例から見ても、例えば文化や経済や租税というふうなものは阻害要因にはならぬ、むしろ逆に言えば、それによっていよいよ対話が進んで基本問題の解決へそれだけ接近する、こういうふうに評価すべきだ、これは私の見解として大臣にお聞き取りをいただきたいと思います。  そこで、もう一つ日ソ関係ということに関連して、私はある外務省の先輩の方からこういうことをお聞きしたことがあるのです。それは要するに、中ソというものがある。この関係も、今盛んに話し合いをしている最中であるが、どの辺まで改善が進むか。それと一方、我々とソ連との日ソ、この関係というものが要するに事実上絡んでいる関係にあるので、日ソ関係がずっと先行してしまって、そして中ソの方はまだだというような状態の中で、はね返って日中がそのためにまずくなるというふうになっては困る、こういうふうなある外務省の先輩の御見解を聞いたことがありますが、そういうふうな絡みの点を大臣もお考えなのかどうか。  あるいはまた、私自身の見解で言えば、中とソの関係も、ああやって次官の会談を重ねて、今度はこの十二月にアルヒポフ第一副首相も中国へ行かれるというふうなことから見ると案外進んでいるのではないか、こういうふうな感じもいたしますが、そうすると日ソ関係も今度は逆に立ちおくれてはいかぬ、こういうふうなことも思います。この辺のところは一つの姿勢という問題になりますが、大臣の御所見をお聞きしたいと思います。
  134. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、やはり基本的に日ソ日ソ、中ソは中ソであろうと思いますし、また米ソ米ソであろうと思うわけでございますが、日ソ関係もただ単なる二国間の関係じゃありませんで、国際情勢、周辺の状況というのが日ソ関係にも響いてくるわけでございます。したがって、日ソ関係が改善されるためには、やはり米ソ関係が進むということも必要であろう、あるいはまた、中ソの関係が改善されるということもそれなりに一つの大きなメリットになっていくのじゃないか、こういうふうに思います。やはり全体的な日本を取り巻く国際情勢といいますか、アジアの情勢といいますか、そういうところが緩和される、対話が進んでいく、関係が改善されるということが日ソにもプラスになってくる、私はそういうふうに思っております。
  135. 高沢寅男

    高沢委員 ぜひ、来年はそういう年になるように御努力をお願いしたいと思います。  そこで、次にカール・ビンソンの問題に質問のあれを移したいと思います。  きょう、既にカール・ビンソンは横須賀を出ていったということでありますが、入れかわりに今度は母港としているミッドウェーがまた入ってきた、こういうことでございます。そこで、このカール・ピンソンの入港を控えて、十月七日に社会党の神奈川県選出国会議員団が大臣にお会いした。そのときに大臣はこういうことを言われた。これは私は新聞でも見ましたし、またお聞きもしたわけですが、カール・ビンソンはトマホークは積んでいないのですよ、こういうふうにおっしゃった。ということは、つまりトマホークがないからカール・ピンソンはいいのですよ、こういう意味で大臣はおっしゃったのかどうか、その辺はどうなのでしょうか。
  136. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も専門的な知識はないのですが、カール・ビンソンにトマホークは積んでいないと聞いておるわけです。実はこれは、戦艦ニュージャージーの問題と関連があるので私は言ったわけです。ことしの予算委員会でニュージャージーの問題、ニュージャージーにトマホークが装備されるということでいろいろと議論がありまして、そのトマホークを積んだニュージャージーが日本へ来たときはどうするのだ、こういうことで総理大臣にも私に対しましてもいろいろと質疑がございまして、そういう中で我が国としては、国会でそれほどの大きな議論を巻き起こし、また国民が大変な注目を払うということになれば、一般的に非核三原則を守っていくという日本の立場をはっきりさせるためには、やはりアメリカと話もしなければなりません、こういうことを答弁したわけです。  これはニュージャージー。ニュージャージーの議論の発端がトマホークから始まったわけでございまして、そのときはこういうふうにしますよと言ったわけであります。そのことに対応して、カール・ピンソンは巨大な原子力空母であるわけですが、国会で議論になったあのトマホークというのは積んでいないのですよ、こういうことを言ったわけでございまして、何もカール・ビンソンがニュージャージーと比べると能力が劣っているとか劣っていないとか、そういうことを言っているわけではございません。
  137. 高沢寅男

    高沢委員 今、大臣は非常にトマホークというところを一つのポイントにしてお話があったわけですが、そういたしますとあれでしょうか。私は、いずれ将来、今度は戦艦ニュージャージーが横須賀へ入ってくるというふうな事態が出はしないかと大変心配をしております。そういうものがもし来たときには、仮定の問題と言わずにお答えいただきたいのですが、そういうときには今おっしゃったようにトマホークがないかどうかということをちゃんと確認される、あるようだったら入れない、こういうふうなお立場が当然出てくると私は思うのですが、この辺はいかがでしょうか。
  138. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 将来ニュージャージーが入ってくるかもしれないわけで、その辺は私も確言できないわけですが、その際日本政府としてアメリカ政府に対しまして話し合いをするのは、要するに、私が昨年マンスフィールド大使を招致いたしまして、三沢のいわゆるF16の配備の問題、さらにエンタープライズの佐世保入港の問題、そういう問題を踏まえて一般的にマンスフィールド大使に日本の立場説明をし、そして、非核三原則を守っていくという日本の姿勢をアメリカにも理解を求めたわけでございます。その際にマンスフィールド大使から、日本の国民の感情というものはよくわかっておるし、日本の非核三原則を守るという考え方も十分理解をしておる、アメリカとしては日米安保条約をちゃんと守っていきます、そしてその関連規定というのはちゃんと守っていきます、事前協議も遵守します、こういうことでございました。それはもう既に発表いたした次第でございます。  そういう意味でのニュージャージーの入港の場合には、アメリカとの話し合いはしたいものだ。これだけ予算委員会等で、あるいはまた国民が関心を持っておるということならば、その程度のことといいますか、それはやらざるを得ないでしょうということを国会で言っておりますし、国会での総理大臣の発言あるいはまた外務大臣の発言というものはきちっと貫いていかなければならぬと思いますから、もしニュージャージーが入ってくるという時点におきましてはそれなりの政府立場をとりたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
  139. 高沢寅男

    高沢委員 大変詳細に御説明がありまして、ありがとうございました。今言われた、ニュージャージーの来るような場合には政府としての対応をとる、こういうことですが、それはさらにもっと素人にわかりやすく言えば、つまりトマホークはあるかないかということをはっきり確認をする、こういうことですね。
  140. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いや、そういうことではありません。トマホークは、あのときの国会の議論にもありましたように核、非核両用の能力を持った兵器でありますし、そういう中でトマホークが核を持って入ってくる、核つきトマホークという場合は、これは今さらアメリカと改めて相談するまでもなく、アメリカは事前協議の条項によって日本に対して事前協議を求めなければならぬ。これはアメリカの義務があるわけでございますから、あり得ないわけでございます。  ですから、もしニュージャージーが事前協議なしに入ってきてトマホークを積んでいる場合は、それは核抜きのトマホークであるわけでございますが、しかし、国会の段階あるいは国民の段階で、これに対して核抜きか核つきかというふうなことでいろいろと疑問がわき出ておるということになれば、一般的な立場でアメリカ政府に対しまして、念には念を押すということで日本の非核三原則を説明し、あるいは事前協議条項の遵守をお互いに確認し合うということが、安保条約を有効に機能せしめる上においても大事なことである、私はそういうふうに思っておるわけでございます。  しかしまた、カール・ビンソンの場合も、これは要するに核を持つことができる、核を搭載できるかどうかという能力はもう我々としては、それはその軍艦の能力としてあるわけですから、それを言っているわけではなくて、核を持ち込む場合には要するに事前協議の対象になるわけでございまして、その場合は日本の対応はノーであるということでございますし、カール・ピンソンが事前協議なしに入ってきたということは核を積んでいない、こういうことであるということであります。
  141. 高沢寅男

    高沢委員 要するに、いろいろ言われましたけれども、結局この帰着するところは、事前協議がなしで来ればないんだ、だからオーケーなんだと。何だかどうもあれですね。ニュージャージーも非常に重要だから何とかするとおっしゃったけれども、よくよく聞いてみると、事前協議がなければ核はないはずだ、トマホークはあっても非核トマホークだ、それじゃオーケーというようなことに結局なってしまう。こういうことですと、私は、さっき大臣のおっしゃった国会の非常な疑惑がある、国民は不安があるということに対して答えることにはちっともなっていないのではないだろうか、こんなふうに思うのです。  例えばカール・ビンソンは、これは確かにトマホークはないかもしらぬが、今おっしゃったその搭載している飛行機は皆核攻撃ができる、ヘリコプターは皆核攻撃のできる、そういうものを積んでいるわけですね。それから、アメリカの元提督のラロック氏などは、大体アメリカの航空母艦というのは今どれをとっても百発程度の核兵器はみんな積んでいるんだ、こういうふうに言っています。  そういたしますと、このカール・ビンソンが入ってくるときに、満身核の動く基地と言われるものが、どこかへそっくり核を置いてきましたということはだれが見てもあり得ないことであって、しかもそれがいわゆるフリーテックス85というソ連に対する大デモンストレーションの演習をやって、わざわざ日本海を通ってウラジオストクをにらみながら横須賀に入ってくる。このカール・ビンソンが、全く裸になって入ってきましたというふうなことはだれが見ても信じられない。  こういう状況の中で、トマホークがないにしても非常に重要なものが入ってくるときに、さっき大臣説明された、エンタープライズが佐世保に来るときには私は随時協議をやりましたと言われました。三沢にF16が来るときはマンスフィールド大使と随時協議をやりました、こう言われたけれども、今度のカール・ピンソンではなぜそういう随時協議ということをおやりにならなかったのか。これは一体どういうわけですか。
  142. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは安保条約の運用について、私と高沢さんの基本的な認識の差だと思うのです。我々は安保条約を日米間で結んだわけでありますし、条約というのはお互いの国の信頼の上に成り立っておる。その信頼が一方的に破棄されるということになれば、条約の意味をなさぬわけでございます。  そういう中で、最も大きなポイントは核問題。特に事前協議条項があるわけですが、この事前条項においては、アメリカは核を持ち込む場合には相談しますよ、事前協議にかけますよということを約束しているわけでございますし、アメリカはそういう意味では義務があるわけで、日本としては核を持ち込むというときには権利があるわけですね。ですから、アメリカがそれをしないということはあくまでも持ち込まない。これはお互いの信頼の問題ですね。ですから条約に対する信頼、その問題で我々はアメリカが事前協議にかけてないときは持ち込んでない。そしてこれは、アメリカが日本の港に入ってくる安保条約上の一つの権利であるわけでございます。  したがって我々としては、個々の艦船について一つ一つこれを確かめるということは、もちろん考えてないわけでございます。そういう意味でカール・ビンソンについても、我々は事前協議の申し入れがないという場合において、これに対して何だかんだ言う筋合いはないのじゃないかということで話し合いもしていないというわけでございます。  ただ、ニュージャージーの場合は非常に議論になったし、トマホークについても大変議論になった。ですから、国民がいろんな面で疑問を持つということもあり得るわけですから、これは念には念を押すという意味で、ニュージャージーの場合は日本として、マンスフィールドと去年話し合いをしたようなことをもう一回やりましょうというようなことをお約束したような次第でございます。
  143. 高沢寅男

    高沢委員 ことしの八月一日、当外務委係員会でそういう事前協議関係あるいは四条の随時協議関係、随分議論をいたしましたが、その際大臣は私に対する答弁で、今のような安保条約、事前協議制度という政府立場をずっと説明しながら、しかし国民に非常に不安を与えるというようなことを排除するには、そういう重要な場合にはちゃんと随時協議をやりますということを答えておられるのです。佐世保にエンタープライズ、そのときはなさった。今度は横須賀にカール・ビンソン、私はもっとなすべき重さを持っておる、こう思いますよ。それからその議論についても、カール・ビンソンについては大変な議論があったし、またマスコミの報道においてもこれは重大なことだということがあったわけで、したがって、佐世保のエンタープライズで随時協議やった、今度は横須賀のカール・ビンソンはしなかった、このことの説明は今の大臣の御説明じゃちっとも説明にならぬ、私はこう思います。そこまで言っちゃ失礼ですが、大臣、怠慢じゃなかったですか。当然やるべきじゃなかったか、こう私は思いますが、どうですか。
  144. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いや、私は今回、もちろんそうしたことをやる必要はないという判断でございます。私は、去年初めて外務大臣になりましたときは、やはり安保条約というものをお互いに忠実にこれを遵守して進めていくという、日米両国とも初心に返る必要もときどきある、そのために、新しく外務大臣になったときは、そうした安保条約問題点について確かめ合うということは必要であろうと私は私なりに考えて、ああしたマンスフィールドさんとの話し合いをいたしたわけでございます。しかし根本的には、条約についての日米間の信頼関係があるわけでありますし、したがってその信頼関係に基づいて安保条約、その関連規定を運用しているわけですから、そういう中でのカール・ビンソンについて今さらそうした必要はない、こういうふうなことであったわけであります。
  145. 高沢寅男

    高沢委員 横須賀は、既にミッドウェーの母港ということで来ているわけですね。そして、今度カール・ピンソンが入ってきた。しかしこの今度の入り方、政府はオーケー、オーケー、こういうふうに入れるわけですから、こういう入り方が、またこの次も入ってきた、またその次も入ってきた、だんだん回数を重ねてきて、そしてそういう既成事実の積み重ねの上に結局横須賀も、横須賀は今度はカール・ビンソンの母港になるというようなことになりはしないか、これを大変私も恐れるし、あるいは恐らく長洲神奈川県知事なり横山横須賀市長も大変そういうことを心配されている、私はこう思います。  まあ新聞で見るところでは、何か母港にはしないというふうなことを政府は言っておられるようですが、もしそれが本当でしないということならば、少なくも今後はこうしたカール・ビンソンなりエンタープライズなりというようなものは、入港はお断りをするというふうなことをきちんとひとつしてもらう必要があるんじゃないか、私はこう思いますが、どうでしょう。
  146. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今後とも、日米安保条約が続く限りは安保条約、その関連規定というものを日本は守っていかなければならぬわけでございますから、したがって今後のアメリカの艦船の寄港等もこれを認めるという姿勢を貫いてまいりたい、こういうふうに思います。
  147. 高沢寅男

    高沢委員 私は、ここで今までも言ったことでありますが、結局この事前協議がないから核は入っておりません、こう政府は言われる。しかし、その政府の言われる説明をそれでは日本の国民がどれだけ本当にそう思っているかと言えば、これはいろいろな世論調査で出ているとおり、日本の国民の多くの人はそうじゃない、政府はああ言うけれども実は入っているんだ、こういうふうな考え方をみんな持っている。疑惑を持っている。それが今度のカール・ビンソンとかいうようなことでもってますます拡大されていく。一方では、日本は非核三原則が国是として厳然としてあります。非常に立派なことです。非常に立派な国是があるが、しかし実際はそれと違うことがどんどん既成事実で行われている。国民はそのことをちゃんと見抜いておる。政府はうそをついておる。こういうふうなことがこれからさらに拡大していくことは大臣、一体これでいいとお考えですか。私は、ここをひとつ大臣の御所見をお聞きしたいと思います。
  148. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに国民の一部には、おっしゃるようなそういう疑惑があることは事実であると思います。ですから、国会での御質問ともなってきておる。長い安保条約ができて以来の論議に私も参画しておりますが、問題であることはこれはもう事実でございます。しかし、政府としての立場もまた一貫をしておる。これは条約があるし、事前協議条項があるわけですし、そしてその根底には日米の信頼関係があるわけですから、さらに日本の非核三原則というものが儼乎としてあるわけですから、核の持ち込みは事前協議なしにはあり得ないという日本の立場は明快でございます。  しかし、国民のそういう疑惑があるわけですから、私も外務大臣になったとき、一回はそうした国民の疑問に対しまして日本政府としての立場を、安保条約を効果的に運用する上においても、信頼性をさらに確保する上においてもアメリカとおさらいをしなければならぬ、こういうことで実は去年話し合いをしたわけでございますが、これはあくまでも根底は信頼性にあるわけでございますから、そしてこれは安保条約上個々の艦船についてそういうことをやる立場にはないわけでございますし、我々としてはあくまでも安保条約、その関連規定を忠実に実行する、それが日本の平和と安全を確保するゆえんであるという考え方に基づいてこれからも対応してまいりたい、こういうふうに思っています。
  149. 高沢寅男

    高沢委員 アメリカの国務省がこの十二月六日に「米国の外交関係一九五二年−五四年、国家安全保障問題編」、こういうふうな外交文書を公表した、これは大臣も当然御承知だと思います。その中で、当時のアイゼンハワー大統領は、ソ連に対する核戦争、これをどうしても勝ち抜く体制をとる、そのためには同盟国の基地を対ソ核戦争の基地に使う、そしてその場合には同盟国の同意のあるなしにかかわらず核戦争を発動する、こういうふうな内容を持った基本的国家安全保障政策をアイゼンハワー大統領の当時には策定されていた、こういうことが公表されているわけです。  これは今から三十年前の話だということですが、これは三十年前の話じゃ済まぬ、こう私は思います。今のアメリカのレーガン大統領、政府当局はこのアイゼンハワー時代と全く同じ、あるいはそれ以上の、対ソ核戦争の勝利の可能性を追求するというような立場を持ち続け、それで政策を推進しておるということではないかと思うのですが、この点は大臣、御所見いかがですか。——これは大臣だな、この問題は。山下さん失礼ながら……。それでは基本問題ですから、山下さん答えたら、大臣また所見を。
  150. 山下新太郎

    山下説明員 今先生指摘の点でございますが、確かに先般の新聞等で三十年前の外交文書、アメリカ政府が公表したという事実自体は、私ども承知している次第でございます。そのものがどういうものであるかということを実は私どももまだ照会中でございまして、詳細を承知していない次第でございます。  これ以上あるいは申し上げるのはちょっとあれでございますが、私ども考え方といたしましては、従前来申し上げておりますとおりアメリカの国防政策の基本は抑止にあるわけでございまして、アメリカとしては、どんな攻撃があった場合におきましてもこれに対応し得る体制をとるということ、それによりまして抑止力の信頼性の維持強化に努めているという政策だと思っているわけでございます。ちなみに、ことしの初めでございますが、レーガン政権が出しました年頭教書にしましてもあるいは国防報告等におきましても、核戦争をやった場合にはそこには勝者はいないんだということを明確に指摘している次第でございまして、アメリカの立場は、先ほど申し上げましたように抑止を基本にしているというふうに理解をしている次第でございます。
  151. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカもソ連も確かに核軍拡を行っておるわけでありまして、世界に大変危険な空気を与えておることは事実であります。そういう中で、しかしそれでは戦争を欲しているかと言えば、レーガンさんもチェルネンコさんも決して核戦争を欲しているわけではない。戦争で核戦争になれば、米ソ両国だけではなくて世界の終わりだというのは、一番超大国の当事者同士が知っているのじゃないかと思います。したがって、両国ともそういうことは避けなければならぬという努力は、今後とも続けていく状況になりつつあると私は思っております。また、そうでなければ世界は困るわけでございます。日本も、そういう立場で何らかの協力をしていかなければならぬと考えております。  アメリカも、確かに今のお話のように、軍備の強化等を行っておりますが、これはあくまでもアメリカの国防政策に基づいて行っておるわけでありますし、同時にまた、日本との関係においても条約があるわけですから、その他の関係においてもアメリカは条約を持っております。条約を守るということが先決であって、条約を無視して何かやろうということになれば、これはお互いの同盟関係、信頼関係というものを根本的に崩すことになりますから、私は、今のアメリカが世界の同盟国と結んでおる条約の裏をかいて、あるいはそれを無視して事を行おうというふうなことはアメリカとしては考えていない、そういうふうに思っております。
  152. 高沢寅男

    高沢委員 来年の一月早々に中曽根総理、また外務大臣もアメリカへ行ってレーガン大統領と会談されるわけですから、私としてはさっき言いましたように、アイゼンハワー大統領時代と同じあるいはそれ以上の戦略というものをアメリカが追求しているのじゃないか、こういう心配もします。したがって、できますならば、これはひとつ大臣、その際はレーガン大統領に、まさかあなた、アイゼンハワー時代のようなことを考えているわけじゃないでしょうねというような念を押すぐらいの話はしてほしいと思います。  さらに具体的には、核戦争というのはどっちかが撃つ、そうしたら撃たれた方は撃ち返す、これで後はバババと、もうむちゃくちゃです。そういうふうに核戦争は始まると私は思います。どっちかが撃つ、それに対して撃たれた方が撃ち返すからそれでもう世界は終わり、こういくわけですから、このどっちかが撃つということがないようにしなければいかぬ。それには、例えばソビエトや中国は先に使わぬと言っておる。これと同じことを、アメリカも先に使わぬということを明らかにすることが、さしあたり非常に危ない中で核戦争を防ぐ第一歩だ、こう私は思いますが、今度ひとつレーガン大統領に会ったらそういうことも含めて見解をただす、日本政府の強い要求として、そういうことをレーガン大統領に申し入れるということをやっていただきたいと思いますが、どうでしょう。
  153. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろん、今回の首脳会議におきましての最大のテーマは、来年に入ってからの会談になるわけですが、一九八五年からの世界の平和と軍縮の問題、さらに米ソ関係あるいは東西関係、それらの問題についてアメリカの所信を聞いてまいる、そしてお互いに平和と軍縮に努力をしていこう、こういうことを積極的に話し合うということが基本になる、私はそういうふうに思っています。
  154. 高沢寅男

    高沢委員 まだいろいろありますが、もうあれですから、最後に経済協力の問題の方にひとつ移りたいと思います。  一九八一年、当時鈴木総理であったわけですが、日本のODA予算を八一−八五の五年間に倍増する、こういうふうなことを政策として決定された。また、こういうことはサミットやその他の国際的な会議の場でも繰り返して約束されておりますから、一種のこれは日本の国際的な公約になっているわけです。しかし、来年度の予算編成が今進行しておりますが、その中でこのODA予算が対前年比二一%増、こういう大きな増が実現できればどうやら倍増というところへいくかと思いますが、大変困難だ、こういうふうな状況にあるようですが、この辺の見通しはいかがでしょうか。
  155. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに、我が国としましては世界に対して、一九八一年から五年間でODAを倍増したいということを言っておるわけで、世界では公約としてとられてもやむを得ないと思っております。したがって、そのために努力もしてきております。そうして、残念ながら経過を見ますと、一九八一年、二年というのはむしろマイナスであったわけですね。予算は伸びておりますが、実質がマイナスであった。これは円の為替レートの問題であるとか、あるいはまた世銀だとか第二世銀だとかいうものに対する出資がおくれたとか、いろいろとそういう問題もあるわけでありますが、マイナスでありました。しかし、一九八三年は著しく伸びまして、二四%以上伸びたように聞いております。したがって、あと四、五とことしがどれだけ伸びますか、来年どれだけ伸びますか。実質によって世界は判断するわけでございますから、あと二年残っておりますし、我々としてはそういう中で実質を伸ばしていく。いろいろと客観的に日本だけの責任でない問題もありますけれども、しかし実質的に今後倍増できるように日本としては努力していきない。  一面、その裏づけは予算でございますが、予算の方も、こういう財政再建の状況ではございましたけれども、このODAについての予算は、常に予算の中ではトップランクで伸びてきたわけでございます。概算要求でも、防衛予算七%、そしてこのODAは一一・四%という要求を財政当局は受け入れたわけでございますが、我々としては、そうした要求も踏まえながら何とか予算面においても倍増を達成すべく、今年中に予算は決まるわけでございますが、今後とも最後の力をひとつ振り絞ってみたい、こう思っております。
  156. 高沢寅男

    高沢委員 その御努力は大いにやっていただきたいと思いますが、何分そこには大蔵省というものがいるわけですから、これはお聞きするところでは非常に抑えよう抑えようとかかっておるというふうなことの結果、来年度予算は決まったが、さてその決まった段階で五カ年間で倍増にいかなかったというような場合、今度また次の五カ年というのは来るわけですが、そういうところでその分をさらに上積みして、多少時間はずれるけれども、ちゃんと国際公約を果たしていくというふうなことでおやりになるのかどうか。この辺はどうですか。
  157. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まず、来年度予算を全力を挙げて目標どおり獲得するために、これから力を尽くしていくということでございます。その結果を見て判断はしなければなりませんし、同時にまた世界が見ているのは実質ベースですから、実質ベースで一九八四年がどうなるのか、来年になればこれはわかるわけであります。さらに八五年の問題。この実質ベースの努力もその後の課題として残されておるわけですから、これに向かって努力をしていくことは当然のことであります。とにかく、旗はおろさないで我々としては頑張っていきたい、こういうふうに思っております。
  158. 高沢寅男

    高沢委員 最後に、一つだけで終わります。  今のアフリカの飢餓問題で安倍大臣も大変積極的な対応をされております。そういう政府としてのこのアフリカ飢餓問題に対する援助、それから民間でも非常な世論のアピールの中で非常にボランティアのお金を出し合って援助しよう、こういうふうなものの援助が出ていく、そして届くというルートの点においては万々間違いないのかどうか、これをひとつお尋ねしたいと思いますが、どうでしょう。
  159. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今おっしゃるようなことは非常に大事なことであると思います。せっかく国民の税金で援助するあるいはまた国民の善意でもって協力をするといっても、その物資やお金が本当に難民といいますか罹災者の人たちに届いていくということでなければ、これは意味がないわけでございます。私も実はエチオピアに参りますとき、そういうことも心配でありました。最後の外務大臣との会談で率直にその話もいたしました。日本としてはこれだけの協力をしているのは、あくまでも日本の国民のとうとい税金であるし、そしてまた全国民の善意でつながっておるわけであります。そして、これに対して国会という存在もある、ですから政府としてはこれは見届ける責任があるのだ、これをひとつ見届けることができるようにあなたの方も配慮してほしいということを率直に言いました。  エチオピア政府は、これは当然のことでありますということで、それじゃ援助機関の中へ日本の外務省の代表を送ってください、そして我々受け取ったものがちゃんと届くというところまでひとつ見届けていただきたい、こういう御返事でございましたので、私はエチオピアに関する限りはいろいろと不安があったわけでございますが、最後までこの点はきっちりできるというふうに考えております。また、そういうふうにこれからちゃんと、きちっとやっていくことが必要であろうと思います。これはエチオピアだけではなくてアフリカ、日本が援助するそうした国々に対しても、もちろんこうした見届けるということは大事なことですからきちっとやってもらいたい、こういうふうに思っております。
  160. 高沢寅男

    高沢委員 大変御苦労さまでした。その線でひとつしっかりやっていただきたいと思います。終わります。
  161. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、古川雅司君。
  162. 古川雅司

    古川委員 私は、米原子力空母カール・ビンソンの横須賀寄港問題に関連をいたしまして、安倍外務大臣に若干の質問をいたします。  カール・ビンソンの横須賀入港断行は、日米軍事協力関係の緊密化を一層鮮明にしたと思います。国民の声は、核持ち込みの疑惑にもかかわらず寄港を認めた政府責任は重大であるとするもの、あるいは日本の核基地化につながる危険があるではないかというもの、あるいはやむを得ないじゃないかという声も聞かれましたし、さらにまた、機動隊出動をもたらす反対行動に目を奪われて、わからないという声も随分ふえてまいりました。こうした事態を踏まえて、まず大臣の所感をお伺いしておきたいと思います。
  163. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本の平和と安全を守っていくために、日米安保条約というものがあるわけでございます。それはやはり、日米安保条約を有効に作動させなければならないということが必要であります。そのために、アメリカの艦船の日本への寄港も認めておるわけでございます。そういう見地に立って、カール・ビンソンを初めとするアメリカの艦船の日本の港への寄港は日米安保条約の効果的な運営のためから当然のことである、こういうふうに考えております。
  164. 古川雅司

    古川委員 これは、大臣御存じかどうかひとつお伺いしておきたいのでありますが、ストックホルム国際平和研究所、SIPRI、ここが八四年版として発表いたしました「軍備競争と軍備管理」ということに関するレポートによりますと、コンパクトで隠しやすい巡航ミサイルが核か非核か識別できないので、米ソが大量に海洋配備すれば、ほとんどあらゆる種類の船舶が潜在的な核攻撃基地となり得ると警告をいたしております。これは既に定説になりつつあるわけでございます。大臣は、この点についてどういう認識を持っていらっしゃいますか。
  165. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今その問題について、具体的に私、知識を持ち合わせておりませんから、政府委員から答弁させます。
  166. 古川雅司

    古川委員 じゃ、もう少し大臣に御理解いただけるようにつけ加えますが、巡航ミサイルを技術的に検証することは不可能である、その点について大臣はどうお考えになっているか。そういたしますと、これはもう米ソの核軍拡というのは完全に野放しになるわけであります。そういう危険性に対して、一方にはまたその危険性を認めようとしないで、核トマホーク配備によって日本周辺の核抑止力が高まるじゃないかという言い方も出てきております。  あるいはまた、これはどなたかお名前は存じませんけれども外務省の高官のコメントとしてこの事実について、それは確かに問題で、何とか解決の道を見出さなければならない、本当は日本にとって核トマホークは要らないのだが。そういうコメントがなされたかどうかはともかくとして、こうした核か非核であるか、その検証が非常に不能だという事態が既に出てきているわけでございまして、この実態についてどういう認識を持っていらっしゃるか。
  167. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今、米ソ間で、INFにつきましてもあるいはSTARTにつきましても交渉が中断をいたしております。そういう中で、米ソ両陣営で核軍拡がどんどん進んでおること、これはもう事実であります。ヨーロッパにおける巡航ミサイル等の配備もそうですし、あるいはまたソ連のSS20の配備等も御承知のとおりでございます。そういう意味においては、残念ながら野放しと言えば野放しといいますか、そういう状況にある。だから、これに早く歯どめをかけなければならぬ。それにはやはり米ソが一日も早く話し合いのテーブルに着くということが大事であろうと私は思うわけでございますし、また、そうした核兵器についての研究開発が盛んになれば、確かにおっしゃるようになかなか検証の難しい核兵器も出てきておると思います。巡航ミサイル等も検証が非常に難しい、こういうふうに言われておるわけでございますし、それは否定できないお話ではないか、私もそういうふうに思います。
  168. 古川雅司

    古川委員 これは先ほど申し上げましたこのレポートが指摘しておりますとおり、あらゆる種類の船舶が潜在的な核攻撃基地になり得るということは、これは漁船であっても十分巡航ミサイルを積んで隠しおおせるという、裏を返せばそういう指摘になるわけでございます。今、大臣の御答弁を伺っておりまして、このレポートの指摘によるいわゆる巡航ミサイルについても技術的に検証することは不可能だというこの現実、これはもう認めざるを得ないということでございましょうか、重ねてひとつ御答弁をお願いします。
  169. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは検証の技術も進みますから、私は地下核実験等についてもジュネーブで提案したのですけれども、日本の地震探知技術なんかを大いに活用すれば、もっと小さい核実験等も検証できるようになるのじゃないかということを言ったわけでございまして、今の巡航ミサイル等でも、技術的には検証はなかなか難しいと言われていますが、しかし、検証の技術が進めばそれは必ずしも不可能ではないと思いますが、一般的には、だんだんそういう検証の難しい核兵器が開発をされつつあるということはあながち否定もできないのじゃないか、そういうふうな感じもいたすわけであります。
  170. 古川雅司

    古川委員 そこで、今回のカール・ビンソンの寄港につきまして、いわゆる核持ち込みの疑惑——疑惑なんですね、それに対して政府は、いちはやく非核三原則は堅持しているんだということを表明されたわけでございます。先ほど高沢委員の御指摘にもございましたが、横須賀市長、神奈川県知事の声明もあったわけでございます。そこには非常に大きな不安もございましたし、今後に残す問題を数多く残しているわけでございます。今回のこのカール・ビンソンの寄港という事実、これが一つの今後の反復寄港の端緒になるのではないか、そういう既成事実を一つつくってしまったのではないか、こういう指摘に対してはどうお考えになりますか。
  171. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは反復寄港になるかどうか、やはりアメリカのこれからの演習だとか保養だとか、そういうものを踏まえてのアメリカの作戦の中の一つでありますから、即断はできないわけでございます。しかし、アメリカの艦船の寄港は、アメリカからの要求があればこれを認めなければならないというのが日米安保条約上の建前である、これはこれまでしばしば申し上げたとおりであります。
  172. 古川雅司

    古川委員 その反復寄港がこれからあり得るということを、大臣はあえて強く否定をなさらなかったわけでございますが、神奈川県知事あるいは横須賀市長の御心配も、いわゆる核持ち込みの疑惑ということにももちろん重点がございますし、さらにその母港化ということも、県民そしてまた市民を代表する立場で強く懸念を表明しているわけでございます。この点については大臣、いかがでございますか。
  173. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 米軍がカール・ビンソンの将兵を横須賀に居住させる、そういう計画を持っておる、こういうふうには聞いておりません。
  174. 古川雅司

    古川委員 大臣、先ほど来安保条約上の立場から答弁を繰り返しておられるわけでございますが、今回のカール・ピンソンの寄港について、なぜ事前協議の申し入れをなさらなかったのか。随時協議という方法もあるということは、既に先ほどの大臣の御答弁でもはっきりしているわけでございますが、今回なぜそれをおやりにならなかったのか。その理由がはっきりしていれば、この際お示しをいただきたいと思います。
  175. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本政府としましては、安保条約、その関連規定の建前から、アメリカの艦船の日本への寄港はこれを認める、こういう大前提があるわけでございますし、そういう中で日米安保条約の中のいわゆる事前協議条項で、核の持ち込みの場合はアメリカが日本に事前協議をかけてこなければならぬ、これもまたアメリカの義務となっておるわけでございます。したがって、アメリカが事前協議を求めてこないという以上は核を持ち込んでない、これはもう日米安保条約の信頼性に基づいて、我々としてはそういうふうに判断をするわけであります。
  176. 古川雅司

    古川委員 米側が、この艦船については核は搭載しておりません、核は持っていないんですよ、そうはっきり言えばこれは持っていないんだということで、信頼関係上とおっしゃっておりますけれども、そう認めざるを得ない。持っているか、持っていないかわからないという点についても、日本の政府がそれをあえて検証する手だてがない以上、これは明確にすることができない。そうしますと、米艦艇の寄港のたびに、核持ち込みの疑惑というこうした不安はずっと続いていくということになるわけでございます。これも日米間の信頼関係の上でやむを得ないとお考えになっているのか、こういう実態はこれから今後ずっと続いていくのか、その辺はどうお考えでしょうか。
  177. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはこれまでも続きましたし、今後とも続くと思います。これは日米安保条約が存在する限り、アメリカの艦船の日本人港というものは当然のことでありますし、我々もこれを認めておるわけでございます。  ただ、核の持ち込みについては、事前協議があるわけですから、アメリカが核の事前協議をかけてこない限りは核の持ち込みはあり得ないというのが、日本政府の基本の考え方です。
  178. 古川雅司

    古川委員 米側が米艦船の日本寄港について、この艦船については核は持っておりません、しかし疑惑はまだ続いているわけでありますから、疑惑はあるわけでございます。日本の政府が、米側が核は持っていないと言っても持っているかもしれないと判断をして、これは非常に極端な仮定の話でありますけれども、日本がその艦船について核を持っているかどうかということを検証する技術的な力はあるのでしょうか。あるいは、国際法上アメリカの艦船が核を持ち込んでいるかあるいは非核であるかということを検証するということはできるのでありましょうか。その点いかがでございますか。
  179. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日米安保条約、そしてその運用というのは、お互いの信頼に基づいてやっているわけですから、したがって、我々はその信頼関係というのを特に大事なものであると考えております。その信頼関係が崩れてしまえば、これはもう条約の基礎というものが崩壊するわけでありまして、意味をなさなくなるわけですから、あくまでも信頼関係条約の基本であろうと思うわけです。そうした信頼関係の上に日米関係は立っております。したがって、アメリカが事前協議をかけてこない限りは、アメリカは核を持ち込んでいないというのは当然のことだ、こういうふうに思っております。
  180. 古川雅司

    古川委員 私は、強い仮定という立場で申し上げたわけでございますが、アメリカがもし、では疑惑の晴れるように思う存分、心行くまでお調べくださいと言ったときに、それをきちんと検証する技術的な力が日本にはあるのか、そういうことはもう国際法上全くそういう事態はあり得ないのか、その点についてはいかがでございましょうか。
  181. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今のは日米安保条約から見まして、アメリカが、さあどうぞお調べくださいなんということはあり得ないと思いますし、我々もそんなことを求めているわけではなくて、その信頼の上に立って、アメリカが要するに事前協議をかけてこない以上は、これはお互いにその立場というものを尊重するということが当然のことだ、こういうふうに思います。
  182. 古川雅司

    古川委員 もう一度伺います。  国際法上はいかがですか。
  183. 小和田恒

    ○小和田政府委員 御質問の意味を正確に把握したかどうか、ちょっと自信がございませんが、御承知のとおり、一般に国際法上軍艦は不可侵権というものを持っておりますので、他国がその中に立ち入って立入検査をするというようなことはできないという建前でございます。
  184. 古川雅司

    古川委員 技術的に検証をするということ自体、非常に難しい問題でありますし、国際法上もそれは不可能であるということは、私も実は存じております。であればこそ、米艦艇の入港のたびごとに核持ち込みの疑惑が繰り返されて、混乱を繰り返しているわけでございます。  政府としては、あくまでもこの日米間の平和外交路線を堅持していきたい、あくまでも日米間の信頼の上に立ってこの問題を見詰めていきたい、そういう態度を変えていないわけでございますから、国民の核持ち込みに対する疑惑、持っているとも持っていないとも——持っていないとはっきり検証することもできないその実態に対して、米政府はまだまだ非常にふまじめである。日本の国民が核持ち込みに対してこれだけ神経をとがらせて、そしてまたそれを拒否しているということがアメリカにはわかっていない。それが長年繰り返されてきたし、また先ほどの大臣の御答弁にもありましたとおり、今後も繰り返されるであろうということが十分考えられるわけでございます。  日米の外交路線を堅持して、今後ともその信頼関係を保っていく以上、日本国政府としてはもっと強い姿勢で、米側に対して非核であるということを日本の国民にはっきり納得をさせる、そうしたすべての裏づけがここで必要になってくるのじゃないか。これまで随分長年の間議論が続いてきたわけでございますけれども、今日このカール・ビンソンと相次ぐ米艦船の寄港にかんがみまして、そのことを痛感するわけでございます。  最後に、大臣にお尋ねをいたしておきます。  こうした既成事実が今後もさらに積み重ねられていくわけでございますが、それが日本の将来にどういう影響を残していくとお考えになっているか、その一点を伺って私の質問を終わります。
  185. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 我々は、先ほどから何回も繰り返しておりますように、日本の平和と安全を確保していくには、日米安保条約を堅持していかなければならぬということであります。その日米安保条約がある以上は、アメリカの艦船の日本寄港はこれを認めることは、日本の条約上の責任でもあるわけでございますし、同時にまた、核についての疑問が国民の一部にあるわけでございますが、これは事前協議制度というものが日米間のこの安保条約の中に確固としてある以上は、政府としては事前協議にかからない以上は核の持ち込みがない、こういうふうに判断するのは当然のことじゃないか、こういうふうに思っておりますし、こうした基本的な日米安保条約の運用の姿勢というか、あるいは解釈といいますか、そういうものは今後とも変わらないということを申し上げておきます。
  186. 古川雅司

    古川委員 終わります。
  187. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、木下敬之助君。
  188. 木下敬之助

    ○木下委員 米原子力空母カール・ビンソンは、けさ無事出港したことと思いますが、今回の横須賀寄港の目的は何であったと考えておられますか。正味二日半程度寄港では、休養とレクリエーションになり得ないのではないか。今回の寄港は、アメリカの太平洋重視、日本重視を内外に示すためのデモンストレーションではなかったかと考えるのですが、政府のお考えをお伺いいたします。
  189. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今般のカール・ビンソンの横須賀寄港の目的は、乗組員の休養とレクリエーションであると承知しております。また、横須賀に寄港することとなったのは米軍の運用上の都合によるものであり、それ以外に特に理由はないとも承知をいたしております。  なお、政府としましては、米国は太平洋地域における抑止力の確保に努めておると承知もいたしておりますが、今回のカール・ビンソンの本邦寄港は、日米安保体制の信頼性の維持強化に資するものと考えておる次第です。
  190. 木下敬之助

    ○木下委員 意図してデモンストレーションをしたのではないかもしれませんが、こういう行為が内外にいろいろな影響を与えていると思います。そういった影響が結局我が国の安全保障上有意義であった、こう判断されますか。
  191. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日米安保条約の運用を確保していく上においてもあるいはその信頼性を確保していく上においても、今回のカール・ピンソンの入港はそれなりの意義があった、こういうふうに思います。
  192. 木下敬之助

    ○木下委員 今回の寄港は、カール・ビンソンの横須賀への初めての寄港でありました。その意味で、住民の核持ち込みへの不安を解消するためにも、政府は改めてアメリカに対し、核搭載の有無を確認すべきではなかったかと残念なわけですが、これを行わなかった理由をお伺いいたします。
  193. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日米安保条約上、艦船によるものを含めまして、核の持ち込みが行われる場合はすべて事前協議の対象となり、政府としましては核持ち込みに係る事前協議が行われない以上、米国による核持ち込みがないことには何ら疑いを有しておりません。また、核の持ち込みについての事前協議が行われた場合に、政府として常にこれを拒否するということはこれまで申し上げたとおりでございますし、我々はそうした立場で、そして安保条約の効果的な運用という立場で、カール・ビンソンの入港というものは、我々としてもこれを認める責任がむしろ日本にはあるというふうに考えております。
  194. 木下敬之助

    ○木下委員 この問題で、そういった答弁がずっとなされてまいっております。結局不要だ、こういうことでおっしゃられるわけですが、納得がいかないわけです。住民の気持ちというものを、もっと大事に扱ってもいいのではないかと思います。なまじ変な問い合わせをするのは日米の信頼関係にもとるかもしれない、こういうことを言われるのでしたら、国民と政府との信頼関係、はっきりと核があるのかないのか聞いてもらいたいという住民の願いを考えたときに、この信頼関係についてどんなふうに思われますか。
  195. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカから核の持ち込みについての事前協議がないわけですから、政府としては、はっきりと国民の前に核の持ち込みはありませんよ、これは日米安保条約の運用上そういうことになっておりますから、声をからして国民に理解を求めておるところであります。
  196. 木下敬之助

    ○木下委員 同じ答弁を何度繰り返しても国民は納得がいかない。それでなおかつ聞いてほしいという国民の願いを無視するというのは、政府と国民との信頼関係に問題があるのではないか、このように私は申し上げておるのでございます。  同じような観点からお伺いいたしますが、将来トマホーク・ミサイルを装備した戦艦ニュージャージーなどが寄港することになった場合にも、アメリカに対して改めて核搭載の有無を確認する考えはございませんでしょうか。
  197. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 本件につきましては、ことしの三月十三日の衆議院予算委員会において総理が答弁したとおりでありまして、最初のトマホーク搭載艦であるところのニュージャージーの本邦寄港については、既にこれまで種々の国内的議論が行われていることにもかんがみまして、念には念を入れるという観点から、かつ全くの特例として、仮に将来同艦が我が国寄港する場合には、その時点において米側に対し改めて我が国の関心を伝え、我が国としては当該寄港に当たり安保条約、その関連取り決めに従って厳格に対応する、すなわち核持ち込みの事前協議が行われた場合には政府としては非核三原則に従って対処する、こういうことを明らかにしていく所存であります。
  198. 木下敬之助

    ○木下委員 一般論としてそこまでやろう、そこまでできるとお考えならば、もういっそのこと、ずばりと国民の知りたいことを確認されたらどうかと思うのです。国民の信頼を取り戻すためにも、国民の聞いてほしいとおりに聞かれたらどうでしょうか。
  199. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 個々の艦船については、日本政府として一々これを取り上げて核の有無をただすというふうな考えは全くないということは、もう何回も申し上げたとおりでございますし、今後もその方針でございます。
  200. 木下敬之助

    ○木下委員 また実際に問題が持ち上がったときに論じたいと思います。  話をカール・ビンソンに戻しますが、カール・ビンソンは今後とも横須賀に寄港する可能性はあるのか、また横須賀、佐世保以外の港に寄港する可能性もあるのか、お伺いいたします。
  201. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今後のカール・ビンソンの寄港については、今のところ日本政府としては全く承知しておりません。
  202. 木下敬之助

    ○木下委員 現在横須賀を母港としているミッドウェーはかなり老朽化しており、いずれは新鋭空母と交代することになると思います。そうなれば、カール・ビンソンやエンタープライズでなくても、原子力空母をもってこれに交代させる可能性があると思います。その場合政府は、原子力空母であるという理由だけでその母港化を拒否することもあり得るのか、この点をお伺いいたします。
  203. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 政府としましては、アメリカ政府はミッドウェーを今世紀末まで就役させる旨計画しているものと承知をしております。また、米政府がミッドウェーを他の空母と交代をさせる、あるいは原子力推進の空母の乗組員の家族を我が国に居住させる等の計画を有しているとは承知をしておりません。いずれにしても、これは仮定の問題でございますし、この段階で判断する、お答えをするという段階ではない、こういうふうに思いますが、今感じとして申し上げた次第です。
  204. 木下敬之助

    ○木下委員 今判断する問題ではないかもしれませんが、原子力空母であるということ、それだけの理由で母港化を拒否するというのは日米安保条約上大問題であると思いますが、どうでしょうか。
  205. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 仮定の問題として言わせていただくならば、原子力空母だからといってその乗組員、その家族の居住を断るということにはならないと思います。
  206. 木下敬之助

    ○木下委員 最後に、もう一問お伺いいたしたいと思います。  核搭載可能な米艦船の寄港に対するニュージーランド政府の対応がさまざまに報じられていますが、外務省の掌握している状況をお聞かせください。
  207. 西山健彦

    西山政府委員 ことしの七月に発足いたしましたロンギ・ニュージーランド労働党政権は、核艦船寄港反対という立場を明らかにいたしております。目下この件につきまして、御承知のようにANZUS協定というものがございますので、米政府と話し合いが行われているというふうに私どもは承知いたしているわけでございます。ただ、その話し合いの詳細につきましては、私どもよく承知いたしておりませんし、また、本件は基本的に米国とニュージーランドの間の問題である、かように考えているわけでございます。  ただ、ロンギ政権は非常にはっきりと、安全保障政策に関連しまして、ニュージーランドは米国及びオーストラリアの最良かつ最も強い同盟国であることを続ける、こういうことを言っております。このことは、さきに九月、安倍外務大臣がロンギ首相にニューヨークでお会いになりましたときに、そういうふうにロンギ首相みずからがはっきり言われたことでもございます。
  208. 木下敬之助

    ○木下委員 もう一つ詳しくお聞きしたい。わかっていたら教えてください。  私、新聞で見ましたときには、何かニュージーランドの政府の方がアメリカと話し合うのじゃなくて、自分の方で独自に核を搭載しているかどうかの決断を下すような、そういった報道を読んだと思うのですが、これはどういう考えでやっておられるのか、わかるようでしたら教えてください。
  209. 西山健彦

    西山政府委員 これは新聞報道でございますけれども、十二月四日付のドミニオンという新聞がございまして、これはウェリントンで出ている新聞でございますが、その前日の三日に行われましたニュージーランド政府の閣議の後の記者会見で、ロンギ首相が次のように述べたと伝えられているわけでございます。  それは第一に、この問題を打開するためにニュージーランド側から米国に提案を行う予定だ。ところが、その提案内容については一切何も触れなかった。これが第一点でございます。それから第二点といたしましては、米国から明年における艦船の入港計画リストがまだ提出されていないけれども、今後二週間の間に提出されるものと理解しているというのが第二点でございます。それから第三点といたしまして、ただいま先生から御指摘がございましたように、入港しようとする艦船がニュージーランド政府の核政策に違反するものか否かの判断は、ニュージーランド国防当局の提供する情報及び当該艦船の能力に関する評価によりニュージーランドが独自に決定する、こういうふうに言ったと伝えられております。
  210. 木下敬之助

    ○木下委員 そういったニュージーランドの姿勢の変化に対して、米はどのような対応をしておりますか。また、今後どうすると思われますか。
  211. 西山健彦

    西山政府委員 その点につきましては、ニュージーランド側が申しておりますとおり目下まだ話し合いが継続中で、いかような形でこの話が進められているか、実は私どもも承知いたしておりません。
  212. 木下敬之助

    ○木下委員 時間が参りましたので、これで質問を終わります。
  213. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、岡崎万寿秀君。
  214. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 カール・ピンソンの問題について質問します。先ほどからどうも同じような答弁が繰り返されておりますので、余り生産的じゃないと思います。ずばり聞きますので、ずばり回答してほしいと思います。  まず、各紙の報道によりますと、「外務省首脳」ですからどなたかおわかりになると思いますが、七日の日に、アメリカの原子力艦船の日本寄港に関しては、この二年間に日本側の要請でアメリカの計画を変更してもらったケースがある、そういうことでしたけれども、どんな事実か簡潔にお答えください。
  215. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、これまで日米間では安保条約をめぐって、その運用あるいはその他いろいろと話し合いをしたこともありますし、また具体的にいろいろと日本が要請もし、そのとおりになったこともある。しかし、一々そういう事実を明らかにすることはできないわけです。ただ、そういうふうなことがあったということは、これはもう日米間の関係から見てあったって当然のことであろう、私はそういうふうに思います。
  216. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 事実はあったということをお認めになって、その事実を言えないというのもちょっと国会に対して誠実な態度でないように私は思いますが、これは事実がもう書いてありますね。国内政治上の都合でいろいろやったということで、その一つのケースとして、昨年十月にカール・ビンソンが佐世保に入港しましたが、その際アメリカ側は初め横須賀を希望してきた、そういう意向だった、しかし、総選挙含みの政治情勢から結局佐世保にしてもらった、そういうふうに報道されているわけですが、これはそのとおりですね。
  217. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 そういうことは聞いておりません。
  218. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 安倍外務大臣が聞いていなくても、これは外務省首脳が言っていますので、どなたか聞いている人いませんか、山下さん聞いていませんか。うそを言っちゃだめですよ。
  219. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 首脳というのは私もその一人なんですが、私はそういうことを言った覚えはありません。
  220. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 首脳はあなた一人じゃないでしょう。安倍さんじゃない首脳が発言されることもまたありますし、これは複数の新聞記事に載っていますから、そんなうそを書くはずないですよ。この場でうそを言わずにはっきり言ってくださいよ。
  221. 山下新太郎

    山下説明員 私、その首脳がどなたか存じませんし、それからその首脳がおっしゃった内容をそこにいて聞いていたわけでないわけでございまして、したがってどうも、簡単に申し上げますと確認も否定もし得ない状況でございます。  そこで、考え方をちょっと申し上げたいと思うのでございますが、確かに大臣がおっしゃいましたように、日米間におきまして、そのような問題につきまして何らかの話し合いが行われることがあり得るということは事実ではなかろうかと思うわけでございます。それは言うまでもなく、安保体制というものの円滑な運用を言うならば確保するためでございまして、それが可能であるのは、大臣もおっしゃったとおり、日米間の信頼関係が基礎にあるからであるということだと思うわけでございます。そういう趣旨で行われるものでございまして、そういう性格にもかんがみまして、まさに一々申し上げることは控えさせていただきたいというのが私ども考え方でございます。
  222. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 言えないわけですね。とにかく、今言われた何らかの形で話があったことはお認めになっているわけですね。だから、個々のケースは言われないというのですから、これはこれでまことにけしからぬ話ですが、しかし、とにかく原子力空母などの寄港に関しては日本側に事前に通告があり、そして何らかの話し合いが行われているということはお認めになったと思うのですよ。そうしますと、今回のカール・ビンソン、その寄港に際して先月二十日ぐらいに非公式の申し入れがあったと聞きますけれども、そのとおりですね。
  223. 山下新太郎

    山下説明員 アメリカ側の通報に関しまして、事実関係だけを御説明申し上げたいと思います。  御指摘のとおり、十一月二十日の夜分に、カール・ビンソンが十二月の前半ぐらいに本邦に寄港する可能性があるという一般的な形での話があったのは事実でございます。
  224. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そこで問題になるのは、これを通報してくるのはアメリカの大使館ですか、軍筋ですか。そして電話でしょうか、テレックスでしょうか、それとも直接面談でしょうか。その方法について、どのレベルかということも含めてお願いします。
  225. 山下新太郎

    山下説明員 お答え申し上げます。  通報のチャネルでございますが、通常の場合は、特にこの十一月二十日の夕刻の件でございますけれども、在京アメリカ大使館から外務省に対して連絡があったということでございます。それがいかなる形で、いかなるレベルであったかということは、私よく承知していない次第でございます。
  226. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 日本はどのレベルが受けるのですか。少なくとも変更の要求をした事実があるとおっしゃいますから、相手にそれが折衝できるレベルでしょう。含めてお願いします。
  227. 山下新太郎

    山下説明員 レベルの問題でございますが、先ほど申し上げましたように、私その辺の詳細、自分が実は受けておりません。それだけは明確に申し上げることが可能でございますが、いずれにしても、米国大使館が米国政府ということで言ってきている次第でございまして、私ども外務省がそれを受けますのは日本政府という形で受けているわけでございます。
  228. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 堂々めぐりになりますので先に進みますが、今の答弁によりますと、過去三回日本側の要請も働いているようでございます。日本側の意思も働いて原子力空母が佐世保に寄港したわけであります。しかし、今回は米側の要請どおり横須賀に寄港しているわけですね。首都圏の横須賀です。なぜこの時期に、これまでのように計画変更等について話をしないでそのまま受け入れたのか、その間の事情を御説明願います。
  229. 山下新太郎

    山下説明員 先ほど来いろいろ御説明がございましたように、カール・ビンソン、これは原子力推進の空母でございますけれども、これがこの時点で横須賀に来ました理由は、米海軍の運用上の都合以外の何物でもないというふうに承知いたしております。  ちなみに、御承知のとおり、原子力推進の艦艇につきましては一種の取り決めがあるわけでございまして、寄港し得るところは横須賀、佐世保、それから形の上では沖縄のホワイト・ビーチ、この三カ所になっています。
  230. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 運用上の都合というふうにおっしゃいますね。しかし運用上の都合は、昨年十月のカール・ピンソンも同じでしょう、日本側が認められませんでしたけれども。政治情勢の話をして、横須賀じゃなくて佐世保の方に回ってほしいという要請をして計画変更をやったでしょう。単に、米海軍の運用上の都合をそのままそっくりやっているわけじゃないのです。日本政府の意思が働いているのです。今度はどういう意思でお受けしたのですか。そのことを端的にお願いします。
  231. 山下新太郎

    山下説明員 先ほども申し上げましたことの繰り返しで恐縮なんですけれども、昨年の十月あるいはつい先般、本日出ましたケースを含めまして、これはアメリカ側の運用上の都合ということで、佐世保なり横須賀に入ったということでございます。  昨年の十月に日本側の都合で横須賀に回したといったことに関して、新聞報道でそういう趣旨のことがあったかと存じますけれども、最初に私が申し上げましたように、ちょっと確認し得る立場にないということでございます。
  232. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 確認しないというだけで、否定できないでしょう。日本の都合で計画変更したことはあり得るというふうに、先ほど具体的には述べられないがということで安倍外相が言われましたね。そうしますと、寄港先については日本の政府の意思が働いているのですよ。今回も日本の政府の意思が働いていること、ノーと言えますか。これは安倍さんどうぞ、お願いします用意思が働いていないと言えますか。
  233. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 意思が働いて、どうぞと言ったわけです。
  234. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 じゃ、意思が働いてカール・ビンソンは横須賀に寄港したというふうに認識してよろしゅうございますね。それでよろしゅうございますね。
  235. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろん、そういうことです。
  236. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 じゃ、日本政府の意思も働いて今回は横須賀に入港さした。そうなりますと、今度の横須賀寄港というのは、過去三回全部佐世保に集中したのをわざわざ首都圏のアメリカの海軍根拠地となっている横須賀に入港さしたということは、日本国民に対する核ならしてはないか、新たに横須賀の母港化の方向を目指すものではないかという懸念が国民の間に非常に広がっているわけであります。これに手をかすことになるのではないかというふうに私たちは考えるわけですけれども、意思が働いているんでしたらどういう意思であったのか、その点について御答弁願いたいと思います。
  237. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 横須賀への入港を認めるという意思です。
  238. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 その意思の中身を聞いているんですよ。言えないでしょうから、じゃ先へ進めましょう。  そうしますと、それだけアメリカ側と、意思が働くだけの折衝がされているわけですね。折衝されているんだったら、なぜそのときに——先ほどから繰り返し質問もありましたけれども、日本国民の大多数が、先ほど大臣は一部にとおっしゃいましたけれども、新聞の世論調査では七〇%の人々がアメリカの艦船が日本に入港する際は核を積んでいる、そういうふうに思うということを答えているんですよ。国民の大多数が核兵器を積んでいる、そういうふうに言っているときに、核積載の有無をその折衝の場でなぜ確かめないのか、念を押さないのか、その辺のところを日本国民の立場に立ってなぜやらないのか。マンスフィールドさんと会った話なんか、もういいですよ。そういう折衝の場でなぜやらないかについて、御答弁願います。
  239. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 安保条約で事前協議条項がありまして、事前協議にかけてきてないのですから核は積んでない、こういうことです。
  240. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 わかりました。それじゃこうなりますね。なぜ念を押せないのかということは、安保条約があるためだ、そういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  241. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろん、安保条約お互いに忠実に守っていくということです。
  242. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 これは重大な問題ですね。結局、念を押せないのは安保条約があるためだ、そのことをはっきり確認して進めたいと思いますが、母港化の問題について多くの質問がありました。これは七二年にミッドウェーがいわゆる横須賀を母港化する際に、当時長野市長に対して政府自身が、北米局長の大河原さんだったそうですが、原子力空母の横須賀寄港考えていないというふうに約束しているということなんですね。同じ趣旨のことが七三年の十月九日の衆議院の内閣委員会の国会答弁でもなされています。なぜこの約束を破ったのかということです。これは山下さん、あなたは事情が変わったからというふうに釈明されていますが、これは釈明にならぬですよ。事情は絶えず変わりますよ。約束というのは、事情が変わっても守るのが約束でしょう。そういうことで済むかどうか、こういう重大な変更についてこんな答弁で済むかどうか。これは安倍外務大臣責任ある答弁をお願いしたいと思うのです。
  243. 山下新太郎

    山下説明員 今、先生、約束を私どもが破ったという趣旨で御発言になったと思いますが、私どもが理解しておりますところでは、四十七年十一月のその当時のアメリカ局長の長野横須賀市長に対する手紙があるわけでございます。そこに書いておることは約束ではないわけでございまして……(岡崎委員「文書でしょう」と呼ぶ)文書でございます。文書でございますが、そこに書いてあることは約束ではないわけでございまして、その当時の時点における見通しを申し上げたというものでございます。そういうものと私ども理解している次第でございます。
  244. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 横須賀の市民たちは、みんな約束だと思っているんですよ。言葉巧みにごまかして、約束したものだと思って渋々横須賀の母港化についてやむを得ないというふうに言ったのを、今になって約束じゃないと言うのはひきょうだと思うのですね。時間があれば、文書を読んでもらってここで検討したいのですけれども、少なくともその態度は、国会に対しても国民に対しても許せないと私は思います。  それで、昨年から既に三隻の原子力空母が横須賀や佐世保に入ったわけですね。これは異例のことなんですよ。なぜそうなっているかは、アメリカの戦略そのものが柔軟作戦といいまして、西太平洋に空母の二隻体制、空母機動部隊が絶えず遊よくしているという対ソ戦略から来ていることは言うまでもないわけです。フリーテックス85にも五隻の原子力空母等が加わっていますし、そうなりますとこれからもたびたび寄港することになるわけですね。先ほど、即断できないというふうに大臣は答弁になりましたし、それからまた、将来の仮定の論議としてでございましたけれども、原子力空母というだけで母港化を拒否する理由とはならないというふうに言われていますが、そうなりますとこの母港化の問題についても、寄港することになるとはっきり言えないまでも、ならないというふうにはっきり断言できないでしょう。そうでございますね、安倍さん。
  245. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはこれからの問題です。しかし、原子力空母であるからといって、将来においてその乗組員の家族が横須賀あるいは佐世保に居住するということまでを今ここで政府が否定をすることはできない、こういうふうに思っておるわけです。
  246. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 今はできない。先ほどもそうなんですよ。今はできないといって後でやっちゃったでしょう、そういうのが困るのですよ。今はできないのは今は言ってきてないからなんで、これは我が党の上田副委員長質問主意書に対する答弁でも、「乗組員の家族を」「我が国に居住させる計画を有しているとは承知していない。」というふうに逃げています。今は承知されていないでしょう。しかし将来、それも近い将来だと思いますが、後でその申し出があった場合は認めない、断るというのははっきりここで断言できますか。もう一回、安倍外相お願いします。安倍外相の責任ある答弁を求めます。
  247. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろんこれは将来の問題として、そういうときはそういうときでちゃんと考えます。
  248. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 私は、考えますということを聞いていないのですよ。断るかどうかということを詰めているわけですね。  横須賀の母港化という問題は、単に横須賀だけの問題じゃない。艦載機の離発着訓練という問題で厚木にもかかわってくるのですよ。今、厚木の市民は本当に困り切っていますね。その代替基地であなた方も困っているでしょう。そういう問題があるときに、絶対に母港化を許しちゃいかぬと思うのですよ。しかし、今は柔軟作戦によってその危険性が非常に強まっている。アメリカは早晩要求してくるでしょう。この際、国民の立場に立ってはっきり断るということをもう一回安倍外相、ここで明言してほしいと思うのです。国会ですよ、ここは。
  249. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 我々は、あくまでも日米安保条約を忠実に守っていくという基本姿勢に立っておるわけでございます。そういう角度からこの問題は判断をしていくわけでございますが、そういう立場からいきますと、先ほどから答弁をいたしましたように、仮定のことではありますが、そうした要請があったというときにそれを断るという結論にはならない、こういうふうに思います。
  250. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 断るという結論にならないというのは、日本語で言いますと断らないということなんですよ。だからこれは、母港化になることがあるということを今大臣は別の表現で言われたというふうに理解することになります。つまり、はっきりは言われませんでしたけれども、しかし、母港化を要請されたときは認めるというふうに——これは重大な発言ですね。そういうふうにはっきり言われたと理解しますが、よろしゅうございますね。
  251. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いずれにしても、政府としては安保条約を忠実に守っていく、こういうことです。
  252. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 今の答弁ははっきりと、母港化を求められたときは断らない、したがって、横須賀等のカール・ピンソンやエンタープライズの母港化があり得るというふうに、この外務委員会で答弁されたと理解いたします。よろしゅうございますね。回答がなければ私はそう理解します。
  253. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、先ほどから申し上げましたように、安保条約というものがありますし、我々は日本の平和と安全のためにこれは必要だと考えておりますし、この安保条約を誠実に守っていくというのが日本の基本姿勢だということです。
  254. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 母港化するのも安保条約のためだということを念を押しておっしゃいました。安保条約がそのように、横須賀の母港化も政府が断らない、認めるということをはっきり内容的に含んでいるということを示していると思うのです。きょうの発言は極めて重大な中身を持っておると思います。多くの発言、それから報道にもあるように、国民の大多数はこのカール・ビンソンの横須賀寄港を通じて、日本がアメリカの核戦略の体制に組み込まれるのじゃないか、まかり間違えば核戦争の基地になるのじゃないか、そのことを強く懸念しているわけです。そういう国民の意思についても、やはり真剣に耳を傾けてみる必要があるのじゃないかということを念を押して、私の発言を終わりたいと思います。
  255. 愛野興一郎

    愛野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十五分散会      ————◇—————