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1985-10-08 第102回国会 衆議院 安全保障特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十月八日(火曜日)     午後零時三十分開議 出席委員   委員長 森下 元晴君    理事 小渕 恵三君 理事 玉沢徳一郎君    理事 三原 朝雄君 理事 上田  哲君    理事 前川  旦君 理事 渡部 一郎君    理事 吉田 之久君       大村 襄治君    中川 昭一君       丹羽 雄哉君    森   清君       天野  等君    加藤 万吉君       神崎 武法君    山田 英介君       藤原哲太郎君    東中 光雄君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 加藤 紘一君  委員外出席者         防衛庁参事官  古川  清君         防衛庁長官官房         長       宍倉 宗夫君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁教育訓練         局長      大高 時男君         防衛庁人事局長 友藤 一隆君         防衛庁経理局長 池田 久克君         防衛庁装備局長 山田 勝久君         防衛施設庁長官 佐々 淳行君         防衛施設庁総務         部長      平   晃君         防衛施設庁施設         部長      宇都 信義君         防衛施設庁建設         部長      大原 舜世君         外務大臣官房審         議官      渡辺  允君         外務大臣官房外         務参事官    柳井 俊二君         海上保安庁警備         救難部長    宗形 健壽君         特別委員会第三         調査室長    鎌田  昇君     ————————————— 委員の異動 八月八日  辞任         補欠選任   石原慎太郎君     中川 昭一君 十月三日  辞任         補欠選任   東中 光雄君     柴田 睦夫君 同日  辞任         補欠選任   柴田 睦夫君     東中 光雄君     ————————————— 六月二十五日  一、国の安全保障に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の安全保障に関する件      ————◇—————
  2. 森下元晴

    森下委員長 これより会議を開きます。  国の安全保障に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中川昭一君。
  3. 中川昭一

    中川(昭)委員 私は、先般決定されました計画、そしてまたそれに関連する問題につきまして、御質問をさせていただきたいと思います。  まず、先月十八日に決定されました、中期防衛力整備計画というふうに伺っておりますけれども、この内容、概略、ポイントにつきまして、お伺いをいたしたいと思います。
  4. 加藤紘一

    加藤国務大臣 政府は去る九月十八日、国防会議及び閣議におきまして、昭和六十一年度から昭和六十五年度までを対象といたします中期防衛力整備計画決定いたしました。この計画につきましては、政府として近く機会をとらえて国会に御報告することを考えておりますけれども、御質問でございますので、概要を申し上げると次のとおりでございます。  この計画は、「防衛計画大綱」これは昭和五十一年十月二十九日閣議決定したものでございますが、それの基本的枠組みのもと、これに定める防衛力水準達成を図ることを目標とするものであって、作成に当たっては次の諸点に留意いたしております。  まず第一は、国際軍事情勢及び諸外国の技術的水準動向を考慮して、陸上海上及び航空自衛隊のそれぞれの各種防衛機能について改めて精査し、資源の重点配分に努めること。第二に、さらに各自衛隊有機的協力体制の促進、統合運用効果発揮につき配意することという点でございます。  また、具体的事業の推進に当たっては、本土防空能力海上交通安全確保能力我が国地理的特性を踏まえた着上陸侵攻対処能力の向上に努めますほか、正面後方の均衡のとれた質の高い防衛力整備を図るという点を重視いたしております。  この計画の実施に必要な経費は、昭和六十年度価格でおおむね十八兆四千億円程度をめどとすることが決定されております。この経費規模は、今後五年間の防衛関係費の総額の限度を示すものであり、各年度ごと予算編成に際しましては、一層の効率化合理化に努め、極力経費を抑制するよう努めるとともに、そのときどきの経済財政事情等を勘案し、国の他の諸施策との調和を図りつつ、これを決定することとされております。  なお、政府としましては、計画期間中において極力経費節減合理化に努め、当面の防衛力整備について昭和五十一年十一月五日閣議決定の趣旨を尊重するよう努めてまいる所存でございます。  また、この計画については、中期的な防衛力整備を効率的に実施し得るよう随時必要に応じ見直しを行い、三年後には、その時点における経済財政事情国際情勢技術的水準動向を踏まえ、新たに作成し直すことについて検討することといたしております。  以上でございます。
  5. 中川昭一

    中川(昭)委員 今の長官お答えの中に、この計画は「防衛計画大綱」の基本的枠組みのもとで、これに定める防衛力水準達成を図ることを目標とするとございますが、今回の計画によりまして、この大綱に定められる防衛力水準にどの程度まで近づく、あるいは同じになるかということについてお伺いしたいと思います。
  6. 加藤紘一

    加藤国務大臣 もしこの計画どおり実施することができますならば、私たちは、昭和五十一年に定めました「防衛計画大綱」の水準に到達し得る金額であろう、そういう計画内容であろう、こう思っております。
  7. 中川昭一

    中川(昭)委員 今のお答えの中でも軍事情勢を考慮しということがございますが、この計画は今のお答えにもありますように今から約十年前の大綱に基づきということになっております。最近の軍事情勢をどのように評価してこの計画をつくられたのか。計画というのは十年前の基本的な枠組みの中ということでございますけれども、十年前と今とを考えますと随分と国際情勢が変わっておると私は理解しております。日本の近海、特に北方ではこの前の大韓航空機撃墜事件でありますとか、極東ソ連軍がどんどん増強されておるという十年前とは違った情勢が現実に起こっておるわけでございますけれども、こういう情勢の中で今回の計画が果たして今の時点での防衛というものに適切な水準になっておるのかどうか、十年前と今との国際情勢変化をお伺いし、そしてまた今御質問したような形で実際に合っているかどうかということをお伺いしたいと思います。
  8. 加藤紘一

    加藤国務大臣 中川委員指摘のとおり、昭和五十一年から比べますと、現在の国際軍事情勢は厳しさを増しておると思います。それは、グローバルな意味におきましても、自由主義陣営特にアメリカ中心とする防衛力は、ソ連の六〇年代、七〇年代におきます防衛力増強のあおりを受けまして、バランスの面においてより追い込まれている状況であることは事実であろうと思います。また、ソビエトの方は、その力強い軍事力を背景にしまして第三世界の方に勢力を伸長しようとしている動きが顕著であることも事実であります。  一方、私たちアジア地域極東地域に目を転じてみますならば、御承知のように極東ソ軍配備はその後増強されておりますし、それから北方領土におきます一個師団陸上戦力配備等、私たちの国の近辺をめぐっても国際軍事情勢は厳しくなっているということは事実であろうと思います。  ただ一方、大きな基本的な国際政治枠組みがその当時に比べてどういう変化をしているかという点につきましては、いろいろな御議論もあろうかと思います。当時、大綱は大きな国際政治枠組みとして、グローバルな意味におきましては、ソ連アメリカのいわゆる東西対立は厳しいものがあるが、相互の核抑止力が働いていてすぐに大きな軍事的な衝突には至らない状況のもとに緊張緩和とか緊張激化とか一張一弛しながら進んでいくであろうということを想定しております。その点については現在も変わりないのではないか。過去十年の中により緊張緩和が崩れた時代もありますし、また、より話し合いを通じていこうとする最近のジュネーブのような動きもあるわけであります。  一方、私たちアジア地域情勢について見ますと、当時朝鮮半島における分裂は相変わらず続き、そしてかなり激しい緊張関係にはあるけれども、それが双方の軍事的な衝突をすぐ起こすようにはならぬだけの抑止力が働いているだろうということを想定しておりましたし、それは現在も変わりないのではないか。一方、日本アメリカとの間の日米安保条約も十分に機能して、日本については抑止力が十分効いている状態にあるのではないかということも現在変わりないのではないか。そういった意味で、基本的な国際政治枠組みは変わらないけれども、軍事情勢は厳しくなっている。だからこそ、私たちは平時から保有しなければならない基盤的防衛力構想に基づいた大綱水準だけはいっときも早く達成しなければならないと考えておるわけでございます。現在私たちはそういうことを目標にし、いわゆる大綱の大きな枠組みをここで見直すつもりはありません。その水準を早く達成したい、こんなふうに思っております。
  9. 中川昭一

    中川(昭)委員 今回の計画決定に当たりましては、GNP一%問題との絡みということが大変に大きく取りざたされたわけであります。一%問題については後で別に御質問させていただきますけれども、GNP一%問題ということで、日本政府は特にアジア諸国との間の関係をかなり配慮をなさったというふうに私は理解をしております。アジア諸国の誤解とか不安を解消するために我が国防衛力整備あるいは現状についてよく説明をしていかなければならないということは私も当然のことだと思いますけれども、ただ、アジア諸国が反対するからといって我が国の安全にとって必要な防衛力だと思うものについてまでもおくらせるとかあるいは減らすということは、私は正しいことではないと思っております。過去の例もありますし、アジア諸国につきましても日本軍事大国になっては絶対に困るということはこの時期に我々にも伝わってきますが、日本自分の国の安全保障のために必要な限りで防衛力整備することすらけしからぬというような声は、私の知っている限りでは届いてはいないわけでございますけれども、今回の一連のGNP一%絡みといいますか、日本防衛力整備するということに対して何か具体的にアジア諸国から反応なりあるいは反発がありましたかどうか。  それからまた、我が国が今後防衛力整備を進めていくに当たりまして、やはり特にアジアとの関係に留意していかなければならないわけでございますけれども、それと同時に、根本的な我が国自身防衛の問題が軽視されることになってもいけないと思います。外務省といたしましてはこのことについてどのようにお考えになっているのでしょうか。
  10. 柳井俊二

    柳井説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生指摘のように、本件につきましては、我が国近隣諸国でございますアジア諸国反応あるいはアジア諸国に対する説明というのが大変に重要でございます。そのような観点から、実は外務省といたしましては平素から、我が国防衛政策基本というようなものにつきましては、アジア諸国にあらゆる機会をとらえて説明してきております。すなわち、我が国といたしましては必要最小限度防衛力を保持するとともに、米国との安全保障体制を維持することによりまして我が国安全保障を確保するという点、また我が国防衛力整備につきましては、平和憲法のもとで専守防衛に徹しまして、また軍事大国とならない、こういう基本方針にのっとったものでありまして、近隣諸国脅威を与えるものではないという点につきまして平素からアジア諸国に対しては説明をしてきておるわけでございます。このような説明につきましてはアジア諸国からも十分な理解または支持が得られておるというふうに私ども考えております。  また、今般の中期防衛力整備計画政府決定に当たりましても、御指摘のようにアジア諸国に対する説明というのが重要でございますので、私ども改めてこのような防衛政策基本説明いたしまして、またこの計画が従来からの我が国基本的な防衛政策を何ら変更するものではないという点も説明してまいりました。このような理解を得るための努力をしてまいりましたところ、おおむねアジア諸国の方からは、我が国防衛努力を評価するあるいは理解するという反応が得られております。ただ、自衛の範囲を超えないようにしてほしいというような期待あるいはコメントをする向きもございました。  私どもといたしましては、今後ともアジア諸国の一層の理解を深めていくようにさらに努力してまいりたい、このように考えております。
  11. 中川昭一

    中川(昭)委員 今後ともぜひよろしくお願いいたします。  それではアメリカとの関係につきましてお伺いをいたします。  今回の決定につきましてアメリカ側関係者は、これを称賛するというステートメントを出しておるそうであります。しかし、アメリカが称賛をすると言っておるのは、五年で十八兆四千億という計画を決めたことを称賛するのではなくて、実際に五年たって計画どおり実行されていることを期待して称賛するという意味が込められているのではないかというふうに思っております。今、日米関係は、経済摩擦中心にしていろいろな関係があるわけでございますけれども、アメリカ政府には、多分にアメリカ内部の議会あるいは日本に対する特別の配慮が今回あったのではないかという気もいたします。そういう意味で、今後のこの計画実行に当たりまして、アメリカからの期待以前に我々が実行していかなければいけないわけでございますが、特に対米関係におきまして長官は、この計画実行に当たりましてどのような御決意をお持ちになっておるのでしょうか。
  12. 加藤紘一

    加藤国務大臣 今回の一%の問題それから新中期計画等の問題につきまして、我が国防衛政策アメリカとの関係についていろいろ論じられていることは私たち承知いたしております。ただ、アメリカ政府が私たちに申しておりますのは、GNP一%をどうしてほしいという問題ではなくて、我が国政府がみずから設定した防衛力整備目標を、みずから設定した目標であるからできるだけ早期にそれを達成する努力をしてもらうことが望まれるという態度でございました。私たちは、米国日米安保条約に基づいて、有事の際には私たちの国を防衛のために共同対処してくれる国でありますから、米国政府我が国防衛力整備につきいろいろ関心を持つことはごく当然のことだと思っておりますが、私たちとしては、自分らの政策自分たち決定するという基本的枠組みは今後ともしっかりと維持してまいりたいと思っております。その意味でここで重要なのは、今度決定いたしました中期計画を単に計画に終わらせないで防衛力整備として現実化していく、それが重要な我が国の務めなのではないのかなと、私たちこんなふうに思って全力を挙げてまいりたいと思っております。
  13. 中川昭一

    中川(昭)委員 この計画の中では、三年後に見直しを行うということが書かれております。一方、先ほどの長官お答えでは、基本的には大綱の線を今後も守っていくのだ、つまり五年間の計画中は大綱基本的な枠組みの中で行くのだというふうに私は理解をしたわけでございますけれども、国際情勢は御承知のとおり大変目まぐるしく変わっておる。これから三年先にどういう事態にもなるかわからないということでございまして、三年後の見直しのときにいわゆる抜本的なあるいは大綱水準をも見直すような形での検討も含めた意味でその見直しというものを考えておるのか、あるいは基本的な枠組みはそのままで、細かいといいますか、具体的な数字の変化だけで終わらせるのか、その辺についてはいかがでしょうか。
  14. 加藤紘一

    加藤国務大臣 国際情勢及び国際軍事情勢変化の中で将来大綱をどう考えるか、いろいろな御議論がございます。ある御議論は、厳しい軍事情勢等から見て、このような防衛力水準でいいのかという御議論もございます。また一方において、このように科学技術が進歩し、そして世の中のいろいろなシステムも変わっていくときに、十年前に設定されたシステムにむだはないか、そこの中に根本的にメスを入れるべきではないか。仮にそのメスを入れることによって変更しなければならない事態大綱の枠の中でできないならば、そういう意味効率化合理化意味でのメスを入れるべきではないかといういろいろな御議論大綱見直し問題についてはあることは、私たち承知いたしております。しかし、現在私たちは、今回五九中業を基礎にした中期計画の中で、我々のできる限りの合理化をやったつもりでございますし、ぜひこの委員会でも御批判、御審議いただきたいと思っております。そして、私たちは現在のところ、三年後にそれを見直すというような具体的な構想を現在の段階で持ってはおりません。この大綱水準をできるだけ早期達成していくことが、私たちの現在の急務でなかろうかなと思っております。
  15. 中川昭一

    中川(昭)委員 計画の具体的な内容についてお伺いをしたいと思います。  今、日本防衛体制についてはいろいろと批判指摘があるわけでございますが、その中の一つに、いわゆる自衛隊継戦能力というんでしょうか、抗堪性といいますか、戦いを持続していく能力というものが大変に弱いのではないかという指摘がなされております。  今回、いろいろと大きな予算を使って、またいろいろな兵器をそろえても、それが万が一のときに一度も使われずにやられてしまうというのでは、これは全く宝の持ちぐされたと思います。そういう意味で、今回の計画の中で具体的に継戦能力あるいは重要な兵器、重要な施設あるいは備蓄等について、例えば地下に隠すとかあるいはシェルターとかいろいろなことを言われておりますけれども、そういう継戦能力、そしてまた抗堪性につきまして、具体的にどのような計画をお持ちになっているのかお伺いしたいと思います。
  16. 西廣整輝

    西廣説明員 先生指摘のように、継戦能力あるいは抗堪性というのは、我が国防衛能力をはかる上で非常に重要な要素でありますが、従来、ともすると正面装備整備ということに力が行くというか、ほかにまだ手が回らないということで、ややおくれがちたなっておったことも事実であります。そういうことも考え合わせまして、今回の計画では、例えば継戦能力につきましては、弾薬あるいは各種整備用補給品とかそういったものがいろいろあるわけでございますが、特に弾薬につきましては、過去、昭和三十年ごろ一時ピークがありまして、その後どんどん使い減らしてきたということで、五十二年ごろにボトムになりまして、以後上向きにはなっておりますが、まだ三十年代の状況にも達しないというのが現状であります。  そういうことで、今回はその種の施策に非常に力を入れまして、例えば陸上自衛隊弾薬につきましては、この計画によりまして一部の弾薬、まだ造成中の新しい装備品とかあるいは近々リタイヤしていくものについては別でございますが、主要な装備品の一部については一カ月の戦闘備蓄ができるというところまで持っていきたいということで計画を組んでおります。そのほか、海上自衛隊航空自衛隊についても引き続き弾薬備蓄に力を入れていくということであります。  さらに、御指摘の抗堪性、例えば航空基地であるとかレーダーサイト、そのほか重要な指揮通信施策等の防護につきましても、これまた非常に防衛能力発揮のために重要な施策でありまして、従来これもまた微々たるものでございましたけれども、今回は各航空基地あるいはレーダーサイト防空能力をそれぞれ付与すること、さらには航空機シェルターをつくる、あるいは飛行場の応急復旧の資材を備蓄する、さらに加えて、重要な指揮通信施設地下化を推進するというようなことで、これは全基地ということにはまいりませんが、北部の方から逐次やっていくということで、従来に比べると格段の施策ができるというように計画をいたしております。
  17. 中川昭一

    中川(昭)委員 今回の計画大綱水準にまで戦力的にも増強されるというふうに考えておりますが、日本も国土的には狭いわけでございますけれども、限られた戦力をどのように配分していくかというのも、これは国を守る上で非常に重要なことだと思います。  そういう意味で、今もお話しありましたように、まず北部からということで、やはり北方脅威というのは日本の周りを見回して一番高いわけでございますが、そういう中で北部というか北に向かっての防衛という意味で、特に具体的に今回特別な配慮がなされておるかどうか。特に戦車ですとか、あるいは航空機、それから人員の面も含めまして、ひとつ北の方に対してどのような防衛の充実がなされておるのか、できるだけ具体的にお答えをいただきたいと思います。
  18. 西廣整輝

    西廣説明員 御指摘のように北部日本防衛というのは、非常に近間によその国があるということ、あるいは北海道ということで本土と離れておるというような問題、いろいろな面を含めまして北部日本防衛というものが我々、防衛施策をするために非常に難しい地域であることは御承知のとおりであります。そのために今回の計画におきましても、北部日本防衛をより向上するという意味でいろいろな施策を講じております。  陸上自衛隊からまず申し上げますと、陸上自衛隊については、防衛の本質からいえば、侵略を抑止する、万一、侵略があった場合にもできるだけ国土に入れないで水際まででこれを撃退するということが望ましいわけでございます。これはなかなか言うはやすくして行うはかたいわけでございますが、しかし将来の防衛、特に陸上防衛の方向としては、それを追求していかざるを得ないということで、今回の計画では国産のSSM、地対艦ミサイルでございますが、これを三隊、部隊をつくるべく準備をするということで、これらが道北あるいは道東に配備をされるというようなことになろうかと思います。  さらに加えまして、従来、師団というようなものは余り種類がございませんで、内地にある師団北海道にある師団も同じようなタイプでありましたけれども、できる限り有事状況に合わせるという意味で、例えば戦車等機甲打撃力のあるもの、重い装備というものは、その多くをできる限り北海道の方に配備をするといったような措置も考え、さらには各種編成につきましても、もう少し多様性を持たして、それぞれの地域特性に合った配備にしていくというようなことを考えております。  御指摘人員につきましては、今回例えば七千人師団を九千人師団にするとか、そういったような措置は特に念頭に置いておりませんけれども、今申し上げたように各種装備品等地域特性に合った配備ということに関連をして、当然ながら人員の若干の移動も出てくるということであります。  いずれにしましても、これは五カ年間の計画で完成するというものではなくて、引き続き北部日本重視のための施策を推進していかなくてはいけないということになろうかと思います。  そのほか、航空自衛隊等の例えばナイキのペトリオットへの転換とか、あるいは早期警戒機配備といったような事業もございますが、主体はやはり陸上自衛隊中心になるということであります。
  19. 中川昭一

    中川(昭)委員 今回の五年間で十八兆四千億という金額を、ひとつ内訳で、つまり正面後方糧食人件費ですか、こういう内訳でどういうふうになるのか、その構成比金額、それからその構成比が、それぞれが例えば六十年度と、あるいはまた五年前とどのような伸び率になっておるかというのをお伺いしたいと思います。
  20. 西廣整輝

    西廣説明員 十八兆四千億円の内訳でございますが、いわゆる航空機、艦艇あるいは戦車、そういったミサイル等の正面装備品を購入する経費が四兆七千五百億円ということで、シェアとしては二六%になります。  なお、後方と申しますのは燃料であるとか修理費、あるいはまた通信関係経費とかそういったものが三三%、六兆五百億円、人件費及び糧食費が七兆六千億円で四一%という比率になっております。  これは正面について言いますと、総金額につきましては、三年前に作成をいたしました防衛庁限りのものでございましたが、五六中業というものがございました。当時の正面経費と総額においてほぼ同じであるということで、どちらかといいますと、正面経費についてはやや控え目な数字であろうかというように考えております。  それに対して、後方経費には従前以上にその分だけ力を入れたということになろうかと思いますが、人種につきましては、三年間の経過がございますので若干の増額がございますけれども、この十八兆四千億円という数字は実質ベースで考えておりますので、六十一年度以降のベア等は含まれておりませんので、そういう点では全体のシェアとしては低下傾向にあるということで、御質問の六十年度予算のシェアと比較いたしますと、六十年度予算では正面が二三%、後方が三一。九%、人件糧食費が四五・一%というような形になっております。
  21. 中川昭一

    中川(昭)委員 人件糧食費が四五%から計画では四一%ということで、この数字だけを見ると人件糧食費、つまり隊員の生活で一番関係のある部分の数字が若干低下をしておるというふうに見られるわけであります。  長官は、六十年度予算編成に当たりましても、隊員の皆さんの生活向上ということに大変御努力をなされてきたわけでございますけれども、まだまだいろいろな御希望があり、してあげたいことがいっぱいあるわけでございますが、今後この計画の中で、また隊員の皆さんの長官に対する生活向上という意味でも期待というのは大きいと思いますけれども、この点についての御決意をひとつお願いいたしたいと思います。
  22. 加藤紘一

    加藤国務大臣 人件糧食の方は人員とそれから現在の俸給水準から、ある意味では機械的に出てくる問題であろうと思います。七兆六千億ですが、これには将来の六十一年度以降の人件費アップは入っておりません。  問題は後方でございます。先ほど局長が申しましたように、後方の中には一番大きいものとして装備品の修理費約一兆五千億前後が入っているかと思いますけれども、それ以外に油代それからそれぞれの施設費が入っておりますが、その中に金額は小さいとしても隊員の処遇の問題がかなりございます。  例えば、まだ九・五坪の住宅に入っております隊員家族もかなり、千数百ございます。特にその地域から、余りにもみすばらしいから、コミュニティーの美観を損なうから何とかしてくれと言われているような地域もございます。また現に、最近の若者がそれぞれ個室を持っている段階で私たちの隊舎におります隊員は、個室どころか一つの部屋に十数人入って、かつ二段ベッド、こういうことになっておりますので、この辺につきましても大いに配慮しなければならぬと思っております。  また、現実に各駐屯地で隊員が体を鍛えるための屋内体育館がないというようなところもかなりございまして、町の体育館を借りているというケースもありまして、ある意味ではお恥ずかしい話でございます。こういうものも今度の六兆五百億の後方経費が十分に実質的に単年度予算で確保できれば、かなりのことをやれる金額でございますので、単に正面装備だけでなく隊員の士気が上がってなければいけませんので、処遇面の予算を単年度ではしっかりととるように決意を固めていきたい、こう思っております。
  23. 中川昭一

    中川(昭)委員 ぜひとも隊員の生活向上の面でも御努力をお願いしたいと思います。  今回の十八兆四千億円で、随分新聞では一%突破とかいう形での取り上げられ方をしたわけでございますが、政府の見通しとして、経済の今の状態での見通しとして、この五年間の十八兆四千億というのは結果的にGNPの何%になるというふうに予想をされておるでしょうか、数字だけで結構でございますのでお願いいたします。
  24. 加藤紘一

    加藤国務大臣 将来のGNPがどうなるかということはだれも確定的に言えませんけれども、現在政府が持っております見通しというのは、昭和五十八年度に経済企画庁が提出され、閣議決定された「展望と指針」だと思います。これは実質成長率四%程度と書いてありますので、それをもとに昭和六十年実質価格等々の計算をいたしてみますと、一・〇三八%が五カ年の平均でございます。
  25. 中川昭一

    中川(昭)委員 新聞紙上等では、政府は各年度の予算では防衛費のGNP一%以内ということをできるだけ守りたいというふうに言っておるそうであります。  一方では、この今回の計画達成というのは、これは大綱水準を実施するのだという先ほどの御決意にもありまして、これは一方ではまた大変に重大な約束事項であると思います。  この二つが、ある意味では矛盾をしておるというふうに私は理解をするわけでありますし、国民の皆様にはとにかくよくわからない、政府の言っていることが、一方では一%を守ります、一方では大綱を、計画実行するということになれば、当然一%は、今の見通していけば突破をするというふうに考えるわけでございまして、国民から見ても非常にわけのわからないことになるわけでございます。  防衛というのは、基本的に何を何からどのようにして守るかということから始まると私は思いますけれども、今回のGNP一%議論、特にここ二、三年の一%という数字というのは、防衛政策GNPの一%だけで考えられているというのが現実であったのではないかというふうに思います。逆に言えば、一%以内であれば何をしてもいいのだというふうな理屈にもなりかねない。つまり、シビリアンコントロールという意味からも、これは逆の意味で非常に危険な考え方ではないかという気すら私はするわけでございます。  そういう意味で、国民に対して安全保障を確保するという義務を政府、特に長官は負われておるわけでございますけれども、このGNPの一%といった枠にとらわれることなく、あくまでも日本安全保障にとっては何が必要なのかという観点から考えたときに、今回の計画もあるいはそのもとになる大綱もあったわけであると思います。  今回のその計画に当たりまして、一方では一%が突破される予想である、一方では一%内で予算編成をしていきたいということで、これはどちらを優先するのか、そしてまた、いずれは一%枠を突破する予定というか、御覚悟があるのかどうか、この点についてお伺いをしたいと思います。
  26. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私たちはその一%の閣議決定というものは、当時防衛力整備のある種のスピード、めどを示すものとして昭和五十一年度に閣議決定されたものだと思っております。しかし、その後、これが国民の防衛についてのいろんな意識、安心感を与えるという機能も果たしたことも事実でございますので、できる限りこれを守っていきたいと思っておりましたが、先ほど申しましたように、五カ年計画等の関係で超えることが予想されるという段階で私たちは新しい問題を提起いたしたわけでございます。よりすっきりと、禅問答でないようにすべきではないかなということで問題を提起したわけでございますし、また新しいその歯どめといたしまして五カ年計画というものを出して、そして、その計画内容を、特に国防会議閣議、そして最終的にはシビリアンコントロールの一番の最後の歯どめたるこの国会で御議論していただくということが防衛論議をより深めるものになるのではないだろうかなと思って問題提起したとことは事実でございます。  しかし一方、国民世論の中で一%というものが非常に重く存在しているのだから、できるだけこれを尊重していくべき宅ないかという、自民党を中心とした有力な御議論、また世論を背景とした御議論もありましたので、私たちはできる限り単年度で守っていく努力をしてまいりたい、こういうふうに思っております。  先生指摘のように、一%の関係で、それを超えるというような事態が現在の中期的な見通しでないとも限りません。数字的にはそうなっておりますので、GNP動向によってはそういう場合もあり得るかと思いますが、その段階になりましたら、また国会等の御議論を踏まえながら最善の処置をとっていきたいと思っておりますが、いずれにいたしましても私たちは、防衛計画水準達成というものをやはり防衛庁としては基本に考えていかなければならない、こう考えております。
  27. 中川昭一

    中川(昭)委員 どうかひとつ、防衛というものを国民も期待しておりますし、隊員の士気という意味からも、また諸外国に対する責任という意味からも、一日も早い計画達成を心からお願いをいたしまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  28. 森下元晴

    森下委員長 上田哲君。
  29. 上田哲

    ○上田(哲)委員 GNPの基準の改定が行われまして、五十八年度までの改定GNPが示されました。その後の名目経済成長率、五十九年度六・七%、これは速報値、六十年度六・一%、これは政府見通しを掛けて試算していくという世間一般常識的な数字の中で、まず六十年度でありますが、名目GNPが約三百二十一兆四千億円。改定前でありますと一%まで八十九億円の余裕しかなかった幅が大きく広がった。七百六十九億円に広がった。人事院勧告とおり五・七四%の完全実施をしてもまだ十分、百三十九億円の余裕がある、こういうふうに見られているわけであります。こういう立場で、六十年度はお約束どおり、人勧を完全実施しつつ一%枠は守れる、こういう見通しに立っておられますか。
  30. 加藤紘一

    加藤国務大臣 確かに、経済企画庁の方から基準の改定によりまして五十八年度につきましては数字が出ましたけれども、それで五十九年、六十年の名目GNPがいかがな金額になるか。これにつきましては、やはり経済企画庁の方で専門的な計算をしないとそれを言い得る段階ではないそうでございまして、まだ現実に私たちが問い合わせをしても答えは得られておりません。しかし、常識的な感じでいきますと、六十年度につきましてもGNP一%の中におさめる、こういう問題につきましてはかなり弾力性が出てきたのではないかな、こう思っております。
  31. 上田哲

    ○上田(哲)委員 言うまでもなく私どもは、今年度当初予算予算委員会における総理のお約束を重視しておりますし、たまたまこういう基準改定という、実質的には変わらないんだけれども操作が一つ生まれたわけでありますから、名目的にそうした形がすっきり守られるということの意味をやはり重視しなければならないと思います。防衛庁長官の決意を伺っておきたいと思います。
  32. 加藤紘一

    加藤国務大臣 本年度の通常国会でも総理が申しましたように、また私たちも累次立場を明らかにしておりますように、GNP一%については、その趣旨を尊重してできるだけ守ってまいりたいと思っております。そういう意味で、今後のGNPにつきまして、六十年度のGNPにつきましてどのような数字が出ますか注目をいたしておりますし、できるだけ守ってまいりたいという方針に変わりはございません。
  33. 上田哲

    ○上田(哲)委員 もう一歩言いますが、一%を守るということに強い見通しや決意をお持ちであるというふうに理解してよろしいですね。
  34. 加藤紘一

    加藤国務大臣 GNP一%につきましての五十一年度の閣議決定につきましては、その趣旨を尊重しながら、できるだけ守ってまいりたいと思います。
  35. 上田哲

    ○上田(哲)委員 数字は十二月の末に出るわけでありますから、そこでひとつ具体的に数字の上で、判断をさせていただきたいと思うのであります。  九月十八日に出ましたいわゆる新防衛計画、これは正式な呼称は何と言うのでありますか。
  36. 西廣整輝

    西廣説明員 中期防衛力整備計画と申しておりますが、ただ、時限をはっきりさせるために呼び出す場合には、昭和六十一年度から昭和六十五年度までの中期防衛力整備計画というように申しております。
  37. 上田哲

    ○上田(哲)委員 一次防、二次防あるいは四次防と段階を追っていく継続的な整備計画では、その年度あるいはその段階を示す呼称があったわけでありますが、今回はただ中期云々ということでありますと、これ一回だけということになりますか、それとも、同じ名前で今後継続することになりますか。
  38. 西廣整輝

    西廣説明員 そこまで論議をしてお決めいただいたということではございませんけれども、当然防衛力整備というものは継続的に努力を図っていくものということで、今後も引き続きつくられていく。ただ、かつての五年計画は五年ずつ直列に並んでおりましたので、一次、二次というような形で呼称いたしておりましたけれども、今回の場合は、まだ確定はいたしておりませんが、場合によっては三年後にローリングをする、さらに五年計画をつくるというようなことになりますので、そういった形で一次、二次、三次というようなことにはならないで、何年から何年までの中期防衛力整備計画というようになっていこうかと思っております。
  39. 上田哲

    ○上田(哲)委員 当然、見直してありますとか、それから、この計画の中に述べられている趣旨からすると、この整備計画は続いていくものだというふうに理解するのですが、それとこの呼称の関係がどうも私どもにはしっくりいたしません。また、薪防衛計画というような言葉だけで議論していくことも大変なじまない感じがするわけでありまして、その点はちょっと議論するのに抵抗を感ずることを申し上げておきたいのであります。その上でわかりやすく私どもは、新防衛計画あるいは新計画という言葉できょうの議論を進めさせていただきたい。  さて、実際にはこの新計画は童九中業の表紙を張りかえたというふうに言われているわけだし、私はそうだと思っております。そのことにこだわるわけではないのですが、今日まで五三、五六ときた、それが政府計画に格上げをされた、その意味づけはともかくとして、これまでの五六中業と今回の新計画との違いがどこにあるのか。まず、手続としてはどういう違いがあるのか。
  40. 西廣整輝

    西廣説明員 先生御案内のように、従来の五三中業あるいは五六中業と言われております中期業務見積もりは防衛庁部内の執務の参考資料という性格のものでございましたが、今回の中期防衛力整備計画政府レベルで御決定をいただいたということで、国防会議決定され、さらに閣議決定をされたという性格でございます。また、そういうことでございますので、従来の防衛庁限りのものと違いまして、国防会議のメンバーである各省庁、例えば財政当局なりあるいは外交当局、そういった面の御審議も経た結果のものであるという点で非常に変わっておるのではないかというふうに考えております。
  41. 上田哲

    ○上田(哲)委員 五六中業も国防会議に報告はされていたと思うのですけれども、今のお話のように、国防会議のかけ方、そしてまた閣議決定という点はこれまでの手続、形式とは違うというふうに理解をいたします。内容の違いなんですが、いろいろな内容の違いがあると思いますが、これを端的に言えば「防衛計画大綱」を達成する、目指すとか願うとかということじゃなくて、「防衛計画大綱」をこの新計画によって達成するという点がこれまでと違うというふうに理解してよろしいのですか。
  42. 西廣整輝

    西廣説明員 御案内のように、先ほど申し上げました防衛庁限りでつくっておりました五三中業あるいは五六中業につきましても、いずれもこれは閣議決定されております大綱の枠内でそれをどこまで進めていくか、あるいは達成を図っていくかという計画であった点につきましては、今回の政府計画になりました中期防衛力整備計画も同じように大綱という枠組みの中でつくっていくということについては変わりはございません。
  43. 上田哲

    ○上田(哲)委員 いや、だから五六中業と今回の新計画との表現の問題を細かく比べてみてもいいのですが、私どもの理解では、繰り返すようですが、今も言われるように大綱の枠内でというのと大綱達成を確実にするという点の違いがあるのではないか、こう理解していいのかどうかですね。
  44. 西廣整輝

    西廣説明員 大綱の枠内であり、かつ今回の中期計画におきましては政府として大綱達成目標にするということでつくられたものだというものであります。
  45. 上田哲

    ○上田(哲)委員 もうちょっとまだニュアンスがよくわからないのです。文言を一々やってもいいのですけれどもね。五九中業はそういうものでありました。表現が違っておりました。それイコールであるかないかは、言葉の小さな問題は別にして、表紙を張りかえたという表現には抵抗があるかもしれないが、とにかく新計画というのは政府の格上げされた形式というものも踏まえた上で、これは内容的には大綱水準達成を確定するということが、これまで枠内、目指すということがあったのとは違った位置づけであるというふうに理解しなくていいのですか、そういうふうに理解していいのだと私たちは思っていたのですが。
  46. 西廣整輝

    西廣説明員 そのように御理解いただいて結構だと思います。
  47. 上田哲

    ○上田(哲)委員 わかりました。  そこで、この新計画については二つの閣議決定を背負っているわけですね。一つは五十一年十月二十九日閣議決定である大綱であり、そして五十一年十一月五日閣議決定である一%である。これは九月十八日の官房長官談話の中にも明確にされているわけであります。この二つの閣議決定、この二つのどちらかに優位性がありますか、長官
  48. 加藤紘一

    加藤国務大臣 御質問意味がちょっと理解不足の点があるかと思いますが、私たちはそれぞれの閣議決定は重要なものであろうと思っておりますし、九月十八日の閣議決定も五十一年に行われました大綱についての閣議決定の枠の中で行われているものだと思っております。
  49. 上田哲

    ○上田(哲)委員 この意味がわからないのじゃ困るのですね。これは国民の最大の課題なんでありまして、大綱水準達成するということとそれを一%の範囲でやるということが背馳するのではないかということが今一%論議の中心なわけですよ、おわかりですね。この二つの閣議決定を守るということを政府が言われておるわけです。その二つの閣議決定を守ることについてどちらかに優位性があるのですか。
  50. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私たちは、十八日の官房長官の談話にもありますように、一%の閣議決定の趣旨はできる限り尊重してまいりたい、こう思っております。一方、大綱水準達成するということも累次国会等で防衛庁長官、もちろん総理大臣も公約してきたことでございますので、そちらも大切だと思っております。そういう意味で私たちは一%の閣議決定をできるだけ尊重しつつ「防衛計画大綱」の水準達成基本として考えてまいりたいと思っております。
  51. 上田哲

    ○上田(哲)委員 これじゃ議論にならないのです。ずばっと答えていただきたい。二つのうちどっちかに優位性があるかと聞いているのであります。あるかないか。
  52. 加藤紘一

    加藤国務大臣 閣議決定はそれぞれ重要なものだと思っております。
  53. 上田哲

    ○上田(哲)委員 同じ重みだと思って受けとめていますか。
  54. 加藤紘一

    加藤国務大臣 先ほど中川委員にも申しましたとおり、私たち大綱水準達成基本としつつ一%の閣議決定は今後できる限り守ってまいりたいと思っております。
  55. 上田哲

    ○上田(哲)委員 日本語で聞けば、これは明らかに優位性があるわけであります。一%よりも大綱が大事だ、これは中曽根総理がこの春、委員会で何遍か繰り返された論法なんでありますが、それではいけないだろうということを私たちはあなた方のこれまでの約束事として議論をしているところなんでありまして、素直にひとつ国論に向かってお答えをいただきたいのであります。  先ほどお尋ねしたGNPの基準改定によってことしの末か来年の初めには六十年度までの数字が出るわけでありまして、今の一般的なやり方で計算をいたしますと、先ほど申し上げたような今回の新計画の十八兆四千億円というのは五年間のGNPの総額の一・〇一六%になる、こう言われているわけであります。大体そのようにお考えですか。
  56. 加藤紘一

    加藤国務大臣 その点につきましては、先ほども上田委員お答えいたしましたように、六十年度の実質GNP値が幾らになるかということは経企庁まだ発表しておりませんので、防衛庁としてはその分母が出ない限りコメントは差し控えさせていただきたいと思います。
  57. 上田哲

    ○上田(哲)委員 官僚答弁でなくて、せっかくの休会中の論議でありますから、ぜひひとつ新防衛庁長官らしいすっきりしたお答えをいただきたいと思っているのですが、どう計算しても、簡単に言うならば、いかに改定した数値といえども六十一年ないし六十五年のGNP総和に対する十八兆四千億円は一%を超えるだろうというのが常識の数字であります。したがって、その常識の上でずばりとお答えいただきたいのだが、それを通していくことになると期間内には一%を守るという方の閣議決定は破らなければならぬことになるという事態もあり得るのですか。
  58. 加藤紘一

    加藤国務大臣 新しいGNP値が六十年度価格でどの程度になりますかは、繰り返しますが、まだわかりませんし、幾ら休会中の国会でもその辺につきましては正式にお答えしなければいけないことではないかと思いますので、その辺はお許しいただきたいと思います。  ただ、現在のGNP値、「展望と指針」のGNP値から見ましても、期間内での平均がそういう一・〇三八になりますから、中期的に見ましたならば、一%を超える可能性が現在のところある数字であるということは、計算上そういうことが言えると思います。
  59. 上田哲

    ○上田(哲)委員 内閣にさまざまな任務があるわけでありますが、国論注目の新計画の発表に当たって内閣のそれぞれの要路が見解を発表されており、国民はそれをまじろぎもせず見ておるわけであります。言葉じりでない、ひとつまじめな御答弁をいただくのでありますが、官房長官は、十八兆四千億円は上限堅持の数字である、一%も尊重するということを明言されておるわけであります。大蔵大臣は、十八兆四千億円は上限の目標値である、また、一%は尊重すると言われているわけであります。防衛庁長官はいかがですか。
  60. 加藤紘一

    加藤国務大臣 十八兆四千億円は上限値であると私も思っております。一%につきましては、その趣旨をできる限り守ってまいりたいと思っております。
  61. 上田哲

    ○上田(哲)委員 あなたはそう言っていないのですね。この新計画が発表される前の日の十七日には、大綱達成目標である、つまり二つのうち、一%が期間中突破することがあり得るということを示唆しておられる。しかもアメリカは一%を守れとは言っておらぬ、大綱達成してくれと言っておるんだというところにニュアンスを置いて、あなたは明らかに一%の期間中突破があり得るということをその前日も言っておられるわけであります。それが変わったのですか、それとも変わらないのですか。変わらないとすると官房長官、大蔵大臣とあなたの見解は違っていることになります。
  62. 加藤紘一

    加藤国務大臣 十七、八日前後の私の申したことと現在の気持ちとは変わっておりませんし、また私たちと官房長官の発言はそごのないものだと思っております。連絡をとりながら、答弁については統一性があるようにいたしております。
  63. 上田哲

    ○上田(哲)委員 これはあなた、話になりませんよ。そうすると、官房長官は一%を守ると言った。大蔵大臣も守ると言った。あなたも一%を守る方にウエートをかけるのですね。
  64. 加藤紘一

    加藤国務大臣 単年度につきましてはできる限り守っていくようにしたい、こう思っております。
  65. 上田哲

    ○上田(哲)委員 私は単年度のことを言ってないのです。五カ年全体としてのGNP総和に対する一%を超えることがあるかということとあわせて聞いています。そこはいかがですか。
  66. 加藤紘一

    加藤国務大臣 若干時間がさかのぼりますけれども、私たちとしては確かに五カ年間のGNPの実質見通しが「展望と指針」によりますと十七兆七千二百億になる、そして私たち大綱水準達成を期するとするならば、その数字は十七兆七千二百億の中でおさまり切れないであろうということで、たしかこの安保特で私は初めて、期間内五カ年間で一%の中でおさめることは難しいだろうという答弁をことしの夏にいたしました。現実に私たちがいろいろ計算いたしましてそして折衝した金額でも十八兆四千億になりまして、十七兆七千二百億を超していることは事実でございます。  そこで私たちは、GNPの将来というのはなかなかわからない、特に実質四%程度というわけですから、その点につきまして若干の予想できないところもあるけれども、より整合性をすっきりとするならば、この一%の枠の問題を新たに考えていただけないかということの問題提起をしたことは事実でございます。  しかし、非常に有力な自民党内の御意見その他の中から、その理論的な整合性という問題は確かにあるのだけれども、GNPの見通しが単年度でどうなるかは不確定なことである、これは経済の発展があればまた大きくなるかもしれない、したがって、確かに整合性の方も重要であるけれども、一%をできるだけ守ってほしいという国民の気持ちにより重点を置いてできる限りの期間努力してみるのがやはり防衛問題について現在の国民世論に合致することではないかという有力な御指摘がございました。したがって、私たちはそれを受けまして単年度につきましてできる限り守ってまいりたい、こんなふうに思っております。それでGNPにつきましても、先ほどの基準改定の問題がありましたように、いろいろ今後変化も予想されるわけでございますので、そういう状況の中でできる限り単年度につき守ってまいりたい、こう思っております。
  67. 上田哲

    ○上田(哲)委員 あなたは十九日の参議院の決算委員会で、各年度ごとに一%枠を守りたい、しかしそのようにできなくなる場合も予想される、こう言っておるわけです。さっきから議論は錯綜しておるところがありますからちょっと整理しておきますが、五年の総和で一%を超えるのと単年度で超えるのと、この場合ちょっと分けておりまして、まず単年度分に絞りますけれども、十九日の参議院決算委員会で、各年度ごとに守りたいが、そのようにならないこともあるというふうに言われているのですが、今はそれよりはかなりな決意を示されたと理解はしたいのですが、その十九日段階の考え方よりも各年度ごとに一%を守るということについては今一層強い決意に立たれたというふうに理解していいですか。
  68. 加藤紘一

    加藤国務大臣 十九日答弁したときと現在とで私たちの考えは変わっておりません。十九日も申しましたけれども、五カ年間のGNPについての面積総和を分母とし、それから十八兆四千億というものを分子とするならば、それが一・〇三八になる以上、初期の段階の単年度で一%を守る努力をしていって、しかし中期的に見るならばそれを超える数字が理論的にあり得るということは当然計算すれば出てくることでございます。もちろんそこには今後二年後、三年後のGNPがどうなるかという問題があるわけでございますから不確定な要素が多いわけでございますけれども、私たちとしてはとりあえずできるだけ長い期間単年度ごとに守る努力を続けてまいりたい、こう思っております。
  69. 上田哲

    ○上田(哲)委員 お話を聞いていると、これは明らかに二つの閣議決定を一緒に守ろうじゃなくて、大綱達成のためには一%枠は守り切れまい、こういうことをもっと率直に言っておられるように思います。これは大変私どもにとっては許容しがたいところであります。  お説のように、幾つか政府が挙げておられる論理について私たちが危惧するのは、例えば今回、総額明示方式になればいいじゃないか、総額明示方式になっても、実は二次防から四次防まで総額明示方式そのものでありましたけれども、これは財政当局が十分承認した政府計画であってもぐんぐん、いわゆる倍々ゲームになったというのは数字が示すところであります。また今回は、そうした過去の防衛力整備計画と違って三年後の見直しということでありますから、これは明らかに三年後また膨張するという可能性が強いわけであります。さらにまた十八兆四千億円は六十年度価格でありますから、価格の高騰によってさらに上方改定されることはまず常識的でありましょう。そういう面ではあなたのおっしゃるのは正直なのかもしれない。しかし、政府方針を守るという政策決定に対する遵守の立場があるならば、そうした状況の上に立ってなおどのような政策選択をするかということでなければならないのであって、私は今のお話を聞いていると、かなりその点について危惧を持つということをこの段階ではまず表明しておきます。  もう一つ、さっき分けたわけでありますが、単年度ではなくて政府は五カ年総額をもって明示方式として歯どめとしようということを言っておられるのですから、この総額の問題でありますが、ちなみに、十八日に発表されました政府・与党首脳会議なるものの今後の防衛力整備の方針というものは政府にとってどういう拘束力を持つのでありますか。
  70. 加藤紘一

    加藤国務大臣 政府・自民党の首脳が集まって確認された事項ですから、それは尊重しなければならないと思っております。
  71. 上田哲

    ○上田(哲)委員 政府は与党に遵守義務を負うのじゃなくて、これは国民に公表されているわけであります。その公表されている文言もあるわけで、「右の計画は「防衛計画大綱」の基本的枠組みの下、これに定める防衛力水準達成を図ることを目標とするものとし、国防会議及び閣議においてこれを決定し、国会に報告するものとする。」こうなっているわけであります。「国会に報告するものとする。」と政府・与党首脳会議決定して発表しているわけでありますから、国会にこの審議をゆだねる、こういう意味として理解していいわけですね。
  72. 加藤紘一

    加藤国務大臣 先ほど中川委員の質疑の際に申しましたように、機会を見て国会に御報告申し上げたいと思います。
  73. 上田哲

    ○上田(哲)委員 ちょっと確かめますが、まだ国会に報告してないのですか。私たちは報告されて今論議をしているつもりなのですが、機会を見てというのはどういう意味なのですか。
  74. 加藤紘一

    加藤国務大臣 そこは機会を見て正式に御報告を申し上げることになると思います。現在、中川委員の御質疑に答えて私たちはその概要を予備的に御報告申し上げた次第でございます。
  75. 上田哲

    ○上田(哲)委員 これは委員長にお伺いしますが、政府国防会議閣議を経て決定されて、そして政府・与党首脳会議が公表された。その方針も決定された。正規の安全保障特別委員会が開かれた。これは国会に対して、我々が、審議を託されているというふうに理解するが至当と思いますが、いかがでございますか。
  76. 森下元晴

    森下委員長 この件につきまして先般官房長官談で、臨時国会が始まった場合には正式に国会に報告いたしますというような趣旨の報告は新聞等で見ております、また聞いております。当委員会においては、これに絞って委員会は開いておりません。たまたま中川委員から質問の形で防衛庁長官にただした、防衛庁長官の方からその経緯をお答えしたということでございまして、メーンテーマではないことは事実でございます。ただ、先月の十八日に新聞等でも大きく出ましたし、これはもう周知の事実でございまして、上田議員はその前提に立って御質問をされておるということは認識はしております。そういうことと官房長官の発言とは多少のずれはあるように私は思います。
  77. 上田哲

    ○上田(哲)委員 手続は問わないことにいたします。国民注視の問題ですから、手続を抜いて趣旨をひとつしっかり確認しておきたいのです。つまり、国会にこの論議をゆだねるということは間違いないわけですね。
  78. 加藤紘一

    加藤国務大臣 先ほど委員長がおっしゃいましたように、政府としては国会に報告する方針であることに変わりないと私は思っております。いかなる場所でやりますか、例えばそれを本会議でやるのかということにつきましては、恐らく首相官邸の方とそれぞれの党との方で今いろいろな御調整があるやに聞いております。そういう意味で、いずれ正式に国会に御報告申し上げ、そしてシビリアンコントロールの観点からいろいろ御議論いただくということは当然だろうと思います。
  79. 上田哲

    ○上田(哲)委員 国対の面倒まで見てもらわなくてもいいのでありまして、私は筋目をしっかりしておきたいのであります。政府・与党首脳会議決定をもち、そして国民にあまねくこれを公表したという重大な政府計画でありまして、これを国会にゆだねるのは民主主義の原理そのものにすぎないのでありまして、これに注釈をつける理由は何一つありません。私が申し上げたいのはそんな手続ではないのです。どこの委員会でやるかなんてことを言っているのではないのであります。つまり、この五カ年計画というのは二つの閣議方針、大綱の問題と一%の問題を二つながら尊重するんだという政府の方針に基づいて、単年度だけの問題ではなくて五カ年計画そのものを国会の論議にゆだぬべきものである、つまり一%というものを守るという閣議決定を尊重するというのであれば、それは単年度だけではなくて五カ年計画それ自体についての論議を対象とするのであるということをしっかり確認しておけると思うわけであります。この点は問題ないですね。
  80. 加藤紘一

    加藤国務大臣 今後五カ年、私たちの国の防衛力整備はどういう方針でどういう内容で、そして金額の上限が昭和六十年度価格でいかなるものであるかということを御報告し、御審議いただくことになるだろうと思います。その際に、私たちは今度の計画は従来の単なる防衛庁内部資料、中期業務計画ではなくて、政府計画として、より政府が責任を持って提示するわけですから、これによって政府の意図もより明確になるわけでございますし、また、それによって国会の場やいろいろ御意見を伺う機会はより多くなると思いますし、それはシビリアンコントロールの面におきましても、また、国民に防衛についての御理解政府防衛政策についての御理解をいただく意味におきましても有益なことであろうと思っております。
  81. 上田哲

    ○上田(哲)委員 結構であります。  この際、委員長にもひとつ御確認をいただきたいのであります。  二つの政府方針、政府が明快に二つの閣議決定を守ると言われた大綱の遵守と一%枠の遵守、この守るという枠は、係りは、単年度ごとに提出する政府決定のみならず、この政府・与党首脳会談の決定に基づき当然五カ年計画総額についても論議の対象となるのであるということを委員長においても御確認をいただいて、先へ進みたいと思います。
  82. 森下元晴

    森下委員長 上田議員の発言に委員長としても了解いたします。
  83. 上田哲

    ○上田(哲)委員 さてそこで、防衛庁長官に伺っておきたいのは幾つかの一%枠についての認識であります。私は先ほど来の御答弁を大変不満としておりまして、二つの方針を守るというのではなくて、明らかに大綱達成の方にウエートをかけて、そのためには一%の期間内突破あり得るという御表現であったことについては甚だ不満と不安を持つのでありまして、このことについては後に我々の立場をさらに鋭く研いで臨時国会にも向き合いたいと思っておりますから論議は後に譲りますけれども、この際、防衛庁長官に一%枠についての基本的な認識の幾つかを問うておきたいと思います。  その一点は、かつてこの一%問題が国会の論議ともなり確定されていく経過の中で、四十七年秋、日中国交回復のために。訪中された田中総理が、北京で中国首脳を前にGNP一%以内の防衛力を守るのであるから今後とも中国への脅威にはならないという演説をされました。私どもはこの見解を支持してきたのでありますが、もし期間中一%を超えるということになれば、中国に対して一%以内を守ることがまさに今後とも侵略脅威にならないと言われていた当時の総理大臣の認識を覆すことになるのではないか。いかがお考えですか。
  84. 加藤紘一

    加藤国務大臣 東南アジア諸国に限らずアジアの国々が我が国防衛力また防衛力整備の方針、方向につきまして多大な関心を持っておることは事実であろうと思いますし、それは戦後、現在まで四十年経過いたしておりますが、一貫してそのようなことであったと思っております。  そういう中で私たちは、近年東南アジア諸国の私たち防衛力整備についての理解はだんだん深まってきておりますけれども、その中心となりましたものはどういうことなのか。御指摘のように一%問題につきましては、過去十年間そういう原則がありましたから、それも一つの要因にはなっていると思いますが、やはり一番重要なことは、新憲法の精神を守り、専守防衛に徹し、そして非核三原則を厳守しながら近隣諸国脅威を与えない、こういった私たち昭和三十年代前後以来からの基本的な政策というものがだんだん理解されてきたことなのではないかと思っております。GNP一%は昭和五十一年以来からの原則でございますが、私たちは、東南アジア諸国がそれのみで私たち防衛のあり方、姿勢について安心感を持っているのではなくて、それ以外の、専守防衛近隣諸国脅威を与えない、こういった姿勢というものがだんだんだんだん理解されてきているのだと思っております。
  85. 上田哲

    ○上田(哲)委員 ひとつできるだけ端的にお答えいただきたい。私は、田中元総理の発言をあなたは覆されるのかどうかということを伺っているのであります。  五十七年七月には、当時の宮澤官房長官が、一%枠の許容範囲というのは一%ぴたりまでであるという名句を吐かれているのであります。一%を超える可能性があるとすれば、この当時の宮澤官房長官見解を覆すということになるわけですか。
  86. 加藤紘一

    加藤国務大臣 この間、藤波官房長官が、今度の中期計画決定する際に閣議決定の趣旨はできるだけ尊重してまいりたいと申しております官房長官談話を出しましたけれども、その精神に従って私たちは対処してまいりたいと思っております。
  87. 上田哲

    ○上田(哲)委員 どうもよくわかりませんな。  大蔵大臣は、この七月二十六日に、例の概算要求の決定時に当たって七%の伸びとなったときに、これは他の予算費目とのバランスや安全保障上の要請などを総合したぎりぎりの調和点であると言われております。私たちにとっては七%がぎりぎりどころか大変大き過ぎると思っておりますが、大蔵大臣はそう言われた。今回、十八兆四千億円は、単純な試算によりますと名目七・九%の平均伸び率でなければならない。大蔵大臣が七%をぎりぎりの調和点とすれば、七・九%はぎりぎりでないことになりますが、あなたはいかがですか。
  88. 西廣整輝

    西廣説明員 今先生七・九%という数字を言われましたけれども、これは名目の話であろうかと思いますけれども、私ども、今回の防衛力整備計画は実質五・四でございますが、これが名目的にどうなるかということについては今後の物価の値上がりその他わかりませんので、果たして七・九になるのか、あるいは七以下になるのか、その辺お答えすることができないということを御了解いただきたいと思います。
  89. 上田哲

    ○上田(哲)委員 まあとにかく答えがまるっきり出てこないから、勉強しておいてください。やはり多少の答弁の整合性がないと国会の議論はむだになりますから、そういう問題は全部省きましょう。  防衛庁長官、ひとつぜひ端的に答えてもらいたいのですが、政府調査も含めて各種の世論調査は一%支持が多数であります。一%支持の世論が多数であるということについてあなたはどうお考えでありますか。
  90. 加藤紘一

    加藤国務大臣 世論調査を見ても感じるのでございますけれども、防衛力というのはできる限り少なくあってほしいと思うのは、いかなる人の希望でもそういうことなのではないかなと思います。そういう中で私たちは、国際的に厳しい状況の中で日本防衛力はいかにあるべきか、防衛政策当局として考えながら、そのときどきの防衛力整備につき案を出し、御提起申し上げ、御議論いただくことなのだと思っております。
  91. 上田哲

    ○上田(哲)委員 これも答弁になりませんから全部やめます。  一つだけ最後に伺っておきたい。  私は、定量的な歯どめというものは非常にわかりやすい、有効性があると思っております。そこで、一%というものが果たしてきた意味合い、今日も果たそうとする意味合いを高く評価するのでありますが、もしあなたがお考えのように一%を突破された事態を想定されたとき、一体定量的には一%突破後の歯どめはあるのでしょうか。あり得るのでしょうか。これぐらいはしっかり御見解を承っておきたい。
  92. 加藤紘一

    加藤国務大臣 これはそれぞれの御議論、御主張によっていろいろ違うと思います。私たち、今回、一%枠突破が先にありきではなくて、六十年度予算につきべアを実施すれば超えるかもしれない、また五カ年について整合性を求めるとするならば一%の問題は見直ししていただかなければいけないかと思って問題を提起し、そしていろいろの案を調べました。それは民間の研究所の意見谷ございました。そういう中で定性論、それから一%程度論、そして五カ年計画総額明示案、この三つが有力な案として私たち俎上に上せましたけれども、五カ年計画がいいと思って議論していただいた過程は御承知のとおりであります。  定量的にどういう案をすべきかということにつきましてはいろいろな意見がありますし、その中で私たちは……(上田(哲)委員「定量的なことだけ聞いているのです」と呼ぶ)私たちはここでのコメントは差し控えさしていただきたいと思います。  定量的な案としてはいろいろな御議論があったことは私たち承知しておりまして、例えば防衛費プラスODAプラスエネルギー対策費を足してGNPの何%にしたらいいだろうかというのも定量案だと思います。それから一般歳出の何%以内にしたらいいというのも定量案だと思います。それからもう一つ、例えば防衛経費の中から防衛施設庁絡みのものを抜いたもので一%を守るべきだというのも一種の定量だろうと思います。
  93. 上田哲

    ○上田(哲)委員 私が聞いているのは、定量的な歯どめはこの後あり得るのか、そのことを端的に答えてください。
  94. 加藤紘一

    加藤国務大臣 政府としては現在のところ一%をできる限り守ってまいりたいと思っております。定量的な案の幾つか、いろいろありますけれども、それについて理論的には全部可能性があるわけですが、政策妥当性ないしまた政府がどう思っているかということにつきましてはコメントする立場にはないと思っております。
  95. 上田哲

    ○上田(哲)委員 シビリアンコントロールを口にし、国民の理解を訴えるというのであれば、やはりもうちょっと踏み込んだ議論をしないとこれはまずいですよ。もうこれ以上のこんにゃく問答になることは時間を節約していきますから避けますけれども、それは後の議論にゆだねましょう。  この十八兆四千億円を決定したについてアメリカ側のワインバーガー国防長官は大変高い評価をした。翌日、防衛力増強のための積極的なステップである、この計画が遂行されればシーレーン防衛目標達成のために大きな前進となろう、毎年の予算の伸びはすばらしい業績となろうと評価されたというのであります。ワインバーガー国防長官が従来月本に向かって要請していたものは、二日で言うならばシーレーン防衛の八〇年代達成であります。つまりそういうような目標に大きく前進したというふうにとらえていいのでしょうか。
  96. 西廣整輝

    西廣説明員 かねがね申し上げておりますように、防衛計画大綱水準の中には、当然のことながら海上自衛隊中心となって担当いたします海上交通の保護、シーレーン防衛についての能力水準というのもございまして、これは、今回の計画によりまして大綱水準達成されますと、確かに今までに比べますとはるかにシーレーン防衛についての能力が向上するとお考えいただいて結構だと思います。  ただ、一つお断り申し上げておきますが、シーレーン防衛の問題については幾つかの問題がございまして、対潜水艦能力ということについては所期の水準というものが期待できると私どもは考えておりますが、近年、洋上におきます航空機からの脅威といったこともクローズアップされておりまして、この点に関しましては、なおこの五カ年の計画では研究あるいは将来の方向に向かっての一歩を踏み出すということで、必ずしもそれに対応する対策がとられるものではないということは御理解いただきたいと思います。
  97. 上田哲

    ○上田(哲)委員 ワインバーガーが九月十九日には大変評価をした、こう言うのですけれども、実はその十九日の前後を見ると、前もっての揺すぶりというのは実に違った傾向が流れているわけです。例えば九月九日に、つまりこのころは中曽根総理が一%枠を撤廃することをあきらめたという情報が流れたときに、アマコスト国務次官が公然たる不満を表明しておる。あるいは九月十二日には、そのほかならぬワインバーガー国防長官が民社党の塚本委員長に対して、一%撤廃が適切ではないかという表現をされたと伺っております。どうも振り回されている感じがする。それで十八兆四千億円が出たら結構、結構というのでは、どうも相手の鼻息をうかがって、お気に召すような数字を懸命につくったと言わざるを得ないのではないか。実は、この十八兆四千億円の中にベア分四千億円が加算されているのは、防衛費総額は六十年度価格であるのに、人件費だけが伸び率を加算しているというのは大変ちぐはぐな積算でありまして、つまり十八兆四千億でもアメリカに余計多く見せようといういじらしい気持ちだったのかもしれない。これらは答弁を求めても、違うと言うに決まっているのですから。私どもは、そういうものの帰結としてアメリカ戦略に大きく組み込まれていくのだということを懸念せざるを得ないのであります。  ということを申し上げた上で、さて、この今回の新計画にいろいろな兵器の充当であるとか新計画が含まれているけれども、基幹となる情勢分析が欠落しておる。一体日本防衛に何が役に立つのか、何が必要なのかという根本的な情勢分析を欠いたまま兵器増強計画等々が述べられるというのは甚だ当を得ていないものであります。何で情勢分析が抜けているのか。
  98. 西廣整輝

    西廣説明員 お答えいたします。  今回の計画策定に際しましては、当然のことながらここ数年間、最近における各国の軍備の動向なりあるいは軍事技術の動向、さらには将来に向けての展望といったものも踏まえた計画になっておることは申すまでもないわけでございますが、最初にお断りしておりますように、今回の計画というのは大綱の枠内で考えておる。それでは大綱の枠内とは何かと申しますと、若干長くなって恐縮でございますが、国際情勢全般につきましてはグローバルに、あるいは地域的にも、軍事的にあるいは政治的にかなりの枠組みというものが確定をしておる。そういった状況の中で軍事力というものによって、その若干の優劣によってすぐ軍事力を用いた現状変更が行われるといった情勢にはないんだというような世界情勢全般の認識に立って大綱そのものがつくられておるわけでございます。そういった認識については、今回の中期計画につきましても同様な考えの中でつくられておるということを御理解いただきたいと思うわけであります。
  99. 上田哲

    ○上田(哲)委員 これは非常に重要であります。そこのところをひとつぜひ具体的に伺いたい。  私は、年々数兆円の軍事予算を使う防衛庁あるいは外務当局がこれほどの新計画を策定するに当たって情勢分析を全く持っていないなどとは信じたくないのであります。いかにへんぱなものであれ、少なくともそれは国民の前に開陳すべきものでありまして、当然それなりの御見解がおありでありましょう。その基本がもし「防衛計画大綱」に描いたような状況と根本的に違っているというのであれば、これはさらにまた別の次元の論議を展開しなければいけない。今の防衛局長の答弁は、基本的には変わっておらぬということでありますから、そのことを踏まえた上で、いま少しく極東情勢北方領土情勢、あるいはカムランから東シナ海に至るさまざまな情勢分析がどのように展開しているのかという分析について、概観でやって結構ですから、御開陳をいただきたいと思います。
  100. 西廣整輝

    西廣説明員 先ほどお答え申し上げましたとおり、国際情勢基本的な枠組みというものは変化をしておらないという認識に立っておると申し上げました。また、そういう枠組みというものが変わっては困るというように私どもは考えて防衛力整備をしておるわけでございますが、個々の具体的な我が国周辺なり世界情勢の軍備の動向等を見ますと、必ずしもそれは大綱作成当時と同じではない。この九年間にかなりある意味では悪い方向に向かっておると言えるのではないかと思います。  例えば、極東にありますソ連軍の軍術、軍事力を見ますと、大綱作成当時は陸軍については極東に師団が三十一個師団駐留いたしておりましたけれども、それが現在は四十一個師団までふえておる。海軍力につきましては、正確な数値が私手元にございませんが、当時百二十数万トンと言われておったと思いますが、それが百七十数万トン、百八十万トン近い数字ということで、約四割方トン数においてはふえておるという状況でありますし、また航空機につきましても、二千機強が二千二百機ぐらいにふえたということで、これまた一〇%近い増強をしておるという状況がございます。  さらに、個別に申しますれば、大綱作成当時には、例えば北方領土にはソ連軍の陸軍部隊はおらなかったわけでございますが、現在は一個師団規模のものが存在しておる。さらに、当時ミグ17クラスのものが二十機程度おったものがミグ23といったような近代的な航空機が四十機近く存在しておる。あるいはまたカムラン湾等においても当時ソ連軍はいなかったものが、ある程度航空機がそこに配備をされておる。さらには南シナ海に二十数隻のソ連艦艇が最近は活動しておる。若干遠くなりますが、御承知のように、アフガンについてもソ連が侵攻したといったような幾つかの状況がございまして、大綱作成当時に比べますと、全般の軍事情勢としてはよくない方向といいますか、厳しい方向に変わってはいるということであろうかと思います。
  101. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そうした数字を承っていまして、例えば新計画で本州北方戦車を大きく北海道に移すとか、対ソ態勢というものが非常に強化されているということが著しい特徴でありますけれども、それにしても基本的な枠組みとしては変わっておらぬ、大綱当時の情勢分析を変更する理由はないということでありますね。もう一遍確認しておきます。
  102. 西廣整輝

    西廣説明員 おっしゃるとおりでございまして、そういった基本的枠組みというものが変わらないように、あるいは我が国そのものが力の空白になってそういった枠組みが崩れるもとにならないようにということで防衛力整備をかねがね続けておるわけでございますし、今回の五カ年計画においても同様な考え方に立っております。
  103. 上田哲

    ○上田(哲)委員 私どもは、こういう対ソ敵対姿勢というもの自身もうべなうところではありませんけれども、それにしても、対ソ軍事力増強ということを誇大に述べて日本の緊張なり軍備増強を促す動きがあるわけでありますから、そうした立場ではなくて冷静に事態を把握して、少なくとも大綱の線から逸脱しないだけの認識は持っていただかなければならない。となると、今回の新計画を流れる防衛構想基本はあくまでも従来どおりの基盤的防衛力構想であって、対ソ所要防衛力構想ではないということは確認することができますね。
  104. 西廣整輝

    西廣説明員 繰り返すことになるかと思いますが、私どもの防衛力整備というのはあくまで現在の枠組みなり体制というものを維持するためのものということで、ソ連軍事力がふえたからといって、それに直接的にリンケージして防衛力をふやすとかそういったものではない。したがって、先生指摘の所要防衛力論は多分そういうものだろうと思いますが、そうではないということでございます。
  105. 上田哲

    ○上田(哲)委員 くどいようですが、基盤的防衛力構想を貫くという一言でいいですね。
  106. 西廣整輝

    西廣説明員 おっしゃるとおりでございます。
  107. 上田哲

    ○上田(哲)委員 さて、そういうことになりますと、そういう中で今回の新計画について数点の懸念を表明し御解明をいただくことにしたいと思うのであります。  その第一は、新計画策定が将来に向かって目指すものは結局大綱の改定ではないか。これはちょっと論理だけで言いますが、今度の新計画というのが大綱達成を果たすものである、しかも同じ中期計画が後へ続くんだということになると、大綱達成した後まだ伸びるということになれば、これは大綱を超えるということになりますな、極めて単純な言い方になってくる。こういう非常に素朴な懸念もまた一%を超えてはならぬという国論の一つの要素ではないかと思うのです。  そこで、大綱を変えることがもくろまれているのかどうか、この点は一つ繰り返して確認しておかなければならないことであります。今回の新計画は、その次の次への将来像において大綱改定を射程内に置いている、考え方の中に含んでいるということが全くないと言い切れるのかどうか。
  108. 加藤紘一

    加藤国務大臣 現在私たちは、大綱の改定、見直しは考えておりません。なお、繰り返して申しますけれども、大綱水準に今回の五カ年計画達成したい、こう考えております。  上田委員前段の御指摘でございますけれども、よく今回の五カ年計画大綱水準達成されたならば、その後の五カ年計画は当然のことながらその大網よりも数の多い、例えば航空機だとか船舶を予定するものにならなければ論理が合わないじゃないかという御議論があります。この点はなかなか御理解いただけないところでありますが、大綱水準達成されましてもそれぞれの自衛隊人員はちゃんと維持していかなければなりませんし、訓練もいたさなければなりませんし、その所要防衛経費というのは大きな金額になるわけでございます。極めて単純に申しますと、人件費、糧食費というのが四〇%台でありますし、正面装備についてもその現状を維持するためにかなりの金額がかかるのだろう、こう思っておりますので、大綱達成後は防衛関係費がゼロでいいという筋合いのものではないと思っております。
  109. 上田哲

    ○上田(哲)委員 大綱改定を考えないということを確認しておきます。  大綱改定は考えないんだが、私が素朴な形で申し上げた大綱達成してまだやるんだったらふえるじゃないかというのは、これは私も長官よりは長くやっていますから、その辺のところはよくわかっています。わかっていますが、だからといってだまされないぞというのは、例えば同じ大綱の名前の中で、五十一年十月に大綱が決まって、五十二年十二月二十八日にP3Cが四十五機、F15が百、五十七年七月二十三日にP3Cが七十五のF15が百五十五、六十年九月十八日には百機と百八十七機になった。これは総機数で言えば実は四百三十機が四百十五機になるのだからふえてはいませんよという数字合わせにはちゃんと長官が答弁できるようになっている。これはそうなんです。しかし、それは性能が違う、飛行機が違う。そういう理屈で言うなら護衛艦は二隻ふえるのです。断固としてふえてはいけないんだと言うならやはり二隻ふえるというのも問題じゃないかという議論もある段階ではしなければならない。  私はそういう議論をここでようじでつつくような議論はしません。しませんが、単純に飛行機の数が十五機も逆に減っているじゃないかみたいな、隊員の数は変わってないじゃないかみたいなことではなくて、やはり技術革新に対応して伸びていくんだという名目だけでは説明できない実は大綱水準そのもののよく言えば伸縮性といいましょうか、悪く言えば変質という問題がこの期間企てられているということはやはりあると思うのであります。私は、そこのところをもう少しく長い将来にわたって議論しなければならないと思うのですが、ここはそういうところを指摘した点で少し後の問題に含めてお話しするとして、大綱の改定はしないということですから、二番目の問題は、大綱に言う小規模限定侵略、この考え方が変わったんじゃないか、変質したんじゃないかということであります。もう一遍伺っておきますけれども、小規模限定侵略というのは何ですか。
  110. 西廣整輝

    西廣説明員 まず限定的な侵略という点から御説明いたしますが、限定的と申しますのは、一般論として申しますれば、まず手段なり規模あるいは時間的な限定、地域的な限定、そういったものを考えておりますので、手段について言えば通常兵器によるものというふうにお考えいただきたいと思いますし、地域的には当然のことながら日本防衛でございますので、日本を対象にした局地戦事態というふうにお考えいただきたいと思います。また、時間的な限定ということになりますと、相手方が半年なり一年の準備をした大がかりな侵攻ということではなくて、余りこちらが察知できるような状況ではなく準備して侵攻し得るような状況という形になりますので、そういったものをそれぞれひっくるめまして比較的その中の小規模なものということでございますから、我々が事前になかなか察知できないような形で起こり得る侵攻というように御理解いただきたいと思います。  なお、つけ加えさせていただきますが、これは固定的あるいはもう力として動かない一定のものではないということは御理解いただきたいと思います。
  111. 上田哲

    ○上田(哲)委員 固定的でないものだというのは理解しましょう。しかし、その段階その時点において小規模限定侵略というのは何であるかということがなければ、これは何に対応して自分を守るんだ守るんだと言ったって、少なくとも相手がやってくるんだから守るんだというのであれば、相手がやってくるんだったら何だということがまるっきり想定されない、確定されないという議論では意味がないことになります。防衛庁がそういうことをしてないとは私は思わぬのです。今日までの国会の議論の中では、それを何遍聞いても出てないのです。一個師団から三個師団だと言った例もあるし数個師団だと思われると言った防衛局長もいるのです。これは幾らひっくり返しても日本の国会の防衛議論の中には出てこないのです。  しかし、ひもとけばかつての防衛局長だった久保卓也さんが六百六十機、これはどこの国だって名前を出すことはないけれども、架空の国が日本に来意する場合の、欧州方面の兵力も回して最大に侵攻する航空兵力を六百六十機と想定したシミュレーションを行ったという事実があります。それ以来、状況が変わってくる、可変的だと防衛局長は今言われたが、そういうことが全然行われてないはずはない。新計画が策定されるについて、これだけの巨額負担を国民に向けるについて、そのシミュレーションというものが出てこなきゃならぬと私は思うのです。例えば大綱水準というものの、攻める側が出てこなくても、守る側の数値というものは何かということは、これまたなければならぬわけですから、そういう逆算から出ていっても一定のシミュレーションがあるだろうと私は思うのだ。そのシミュレーションの構え、組み方、考え方、この辺をひとつ、何個師団というような素朴な聞き方は意味あるとは思っていませんけれども、何らかの基準を設けての説明がもうこ川の段階ではあっていいんじゃないでしょうか。
  112. 西廣整輝

    西廣説明員 初めにお断り申し上げておきますが、現在我が国に対する侵略の意図、そういう脅威があるというふうに考えておるわけではございません。ただ、かねがね申し上げているように、軍事的脅威というのは、ある能力があって、それに意図が加わったときに脅威となるわけでございますが、そのときになってあわてて準備をしても間に合わないということで、防衛というものはやはり周辺諸国の軍備、能力というものについて一応着目して防衛政策を立てるものだというふうに考えております。そういう意味で、私どももかねがね我が国周辺にあります諸国の軍備の動向というものにつきましては、当然のことながら観察をいたしておるということだろうと思います。  そこで、その際にそれぞれの国の軍備の重なり質、あるいは配備、あるいはそれぞれの軍種なり目的というものを勘案をいたしまして、先ほど申しましたように目立った形で準備をしないで、日本に対して侵攻し得る能力というものはこのくらいのものかなという、当然のことながらそういう見積もりもいたすわけであります。それは、そのときどきのその置かれております軍備の状況によって変化はございますけれども、それなりに合理的なものがある程度導き出せるものだというように私どもは考えております。それに対して我が方の持っておる防衛力がどういう状況であるか、それに対抗して国防に当たった場合にどの程度の力を発揮し得るものであるかというシミュレーションは当然できるわけでございまして、それによって現状防衛力がどの程度であるか、大綱でこのくらいのものは欲しいといったものに対してそれがどの程度下回っているか、どういう点が問題があるのかということはわかるわけでございます。そこを、今後の防衛力整備において、数の問題もございますが、質的にどう改善をし、どうつくり直していくことによって所望の水準に達し得るかということで事業の中身が具体的に出てくるということでございます。
  113. 上田哲

    ○上田(哲)委員 大綱水準というものの数値、この数値のパターンは、これは一つの能力として考えると、この能力というのは量と質の相乗値、一定の相乗値である、こういう考え方で進めておられるというふうに理解していいですか。
  114. 西廣整輝

    西廣説明員 おっしゃるとおりでございまして、大綱では別表で大まかな数量というものは書いてございますけれども、それに加えて質的なものについては、周辺諸国なりあるいは世界的な軍備の動向科学技術動向というものを勘案して質的なものを見ていく、さらには、つけ加えますれば、先ほど来御論議もありました継戦能力とか、あるいは隊員の練度だとか、そういったものを含めたものが大綱水準というふうに理解をいたしております。
  115. 上田哲

    ○上田(哲)委員 大綱水準というのは、したがって一定の数値として表現されているということですね。
  116. 西廣整輝

    西廣説明員 おっしゃるとおりでございますが、それがぴしっとした一つの数値かということになりますと、これまた大綱の話に返って恐縮でございますが、大綱基本的な物の考え方というのが、相手の力に対して一〇〇%それに対抗するというようなことではなくて、日本自身が、先ほども申したように力の空白にならない、極端な軍事力の格差を生まないようにしておくというようなことを中心に考えておりますので、一割、二割そこにすき間があいたからといって直ちによその国が襲いかかってくるというような国際情勢ではないという前提に立っておりますから、その分につきましてはある程度の幅があるということは御理解いただきたいと思いますし、また、そのことは大綱をつくります当時に、それ自身は政治のリスクと申しますか、そういったことも十分御承知の上でお決めいただいたというように私どもは考えております。
  117. 上田哲

    ○上田(哲)委員 私は、さっき久保防衛局長の名前をあえて出しましたのは、今回の新計画がその当時の策定に係る基盤的防衛力構想に一貫して立つものであるという確認をとったからでありまして、なるべく抽象的な言い方でお尋ねをしているわけでありますけれども、そういう意味で言うと、当時がら進んでいるシミュレーションの、今の数値の算出のシミュレーションの基本的な枠組みは変わっていないということになりますか、なりませんか。
  118. 西廣整輝

    西廣説明員 ちょっと御質問、十分に理解できたかどうかわかりませんが、シミュレーションそのものについても、そのやり方等も若干の手直しはやっておりますし、そのときどきの我が方の力、相手の能力等も変わってまいりますので、そういった変化がございますけれども、基本的な判定の仕方というものは変わっていないというようにお考えいただきたいと思います。
  119. 上田哲

    ○上田(哲)委員 よくわかりました。質問を変えますが、大綱水準とは何かということを議論する側からの論理ですと、ブラックボックスといいますか、そこから先は踏み込みがたいことであります。逆に言って、現在のシミュレーションによって算出された数値からすれば、防衛庁当局としてはこの新計画によって日本防衛は果たし得るということを確認しているというふうに理解していいのですか。
  120. 西廣整輝

    西廣説明員 先ほど来申し上げておりますように、大綱水準達成されれば、現在のような国際的あるいは地域的な軍備のバランスというものはある程度保たれ、安定状況が続くのではないか、それがひいては日本に対する侵略を抑止することができるというように考えておるわけであります。
  121. 上田哲

    ○上田(哲)委員 ここから先は非常に数値の問題でしょうし、議論になじまないところでありましょうが、安全保障特別委員会の存在理由というのはこうした問題についてできるだけ理解をしていくということでなければならないので、私は、この側面からの討議を足がかりにして、ひとつ今後議論を発展していきたい。つまり単純な足し算ではなくて、一定のシミュレーション、そのシミュレーションの中からはじき出された逆算値として今回の新計画が策定されているという理解議論を後に続けていきたいと思います。  第三に私が指摘したいのは、今回の新計画による専守防衛の変質じゃないかということです。つまり別の言葉で言うと、これは抑止概念というものの変化ではないかと思います。  非常に抽象的な言い方になるといかぬから荒っぽい言い方をしますが、今回の考え方というのは、日本に手を出す者があったら米ソ戦にエスカレーションするぞ、こういう構えを見せるというどとですか。
  122. 西廣整輝

    西廣説明員 これまた大綱の性格で御説明することになると思いますが、私どもとしては大網のときに申し上げたように、日本防衛というのは軍事的に見れば日米安保条約というものを基調にして考えられておりますので、日米安保によるアメリカの支援と申しますか、そういったものと我が国防衛体制との間にすき間があいては困る。したがって、そういった点の間隙のない体制をつくることによって、日本にみだりに手を出せばアメリカ正面対決することになるぞという状況に常に置いておくことによって我が国に対する侵略を未然に防止しようというのが基本的な理念になっております。
  123. 上田哲

    ○上田(哲)委員 抑止概念が変わっているというところをやはりもうちょっとかたく聞かなければいけないと思うのですね。先ほど来確認したように当然シミュレーションの中から計画案というのができ上がっている、装備計画防衛体制ができ上がっているということであるとすると、今日の防衛庁の持っているシミュレーションは二つある。もちろん双方とも可変的なものですけれども、一つは小規模限定侵略に対するシミュレーション、もう一つは大規模戦争のケース、この二つのケースについてそれぞれシミュレーションを行っていると当然考えるべきでありますが、それでいいですか。
  124. 西廣整輝

    西廣説明員 私どもの行いますシミュレーションは一つ、小規模侵攻に対するものでございまして、限定的小規模な侵攻と申しますのは、言いかえれば、まさに米軍の来援等を待ついとまのないような状況における侵攻というようにお考えいただければ、先ほど申し上げた間隙のない防衛体制をつくるという意味が御理解いただけると思いますが、そういった状況における防衛能力を判定し、しかるべき措置をとって間隙を埋めることによって、我が國としてはまさに極めて低位の侵略事態から全面戦に至るような事態まで全般について、日米安保と相まって戦争の抑止ができるというふうに考えておるわけでございます。
  125. 上田哲

    ○上田(哲)委員 私が聞いているのは、小規模限定侵略に対するシミュレーションのほかに当然大規模戦争というか、そういう問題のシミュレーションも行っていますねということです。
  126. 西廣整輝

    西廣説明員 先ほどお答えしたと思いますが、私どもはそういう大規模な米ソが直接対決するといったような状況のシミュレーションは行っておりません。恐らくそういった面についてはアメリカが常にそういったシミュレーションを行い、みずからの能力を判定し、かつ同盟国に対するコミットメントの程度等もそういったものから判断し得るようにかねがねやっておると思いますけれども、我々の任務というのはあくまで限定的小規模事態にいかに対応するかということですので、その状況のシミュレーションだけはやっておるというものであります。
  127. 上田哲

    ○上田(哲)委員 日本がやってないとすると、日米の同盟関係からして、アメリカがやっていると今言われたその大規模戦争のシミュレーションに日本が組み込まれているということですね。
  128. 西廣整輝

    西廣説明員 これはかねがねお答えしておることで、どうも繰り返しになって恐縮でございますが、日本はあくまで自衛のための防衛力を持っておるということでございますから、その種の集団的自衛権の行使はできないということで、そういったものについては考慮してないということであります。また、米側についてはそういうシミュレーションは当然行われていると思いますけれども、基本的にはやはり米ソが戦うということが、地球上で行われる戦争があるとすれば、その中で最も起きにくい戦争であるというように我々は理解しておりますし、米ソも当然そのように理解しているというふうに私は思っております。
  129. 上田哲

    ○上田(哲)委員 防衛庁の考えている日本の三つの戦略観点といいますか、第一はソ連に二正面作戦を強いること、第二はソ連の海洋進出の阻止をすること、第三には極東で米軍に拠点たる基地を提供すること、これが日本の戦略的な位置づけであるというふうに伺うのでありますが、そういうことですか。
  130. 西廣整輝

    西廣説明員 ただいま申された点は、日本軍事力というか防衛力がどういう意味を持つかということよりも、まず第一点については、東アジアが世界戦略、世界の軍事的な状況の中でどういう役割を占めておるかということだろうと思います。そういう戦略的な価値といいますか地位を見ますと、東西関係というグローバルな関係から見ますと、ヨーロッパが第一正面といいますか第一戦線であろうかと思うわけであります。それに対して東アジアというのは第二戦線を形成しておることは間違いないわけでありまして、現実にソ連軍事力の四分の一ないし三分の一のものが展開をしておるという点で、ソ連はそういう点では二正面作戦と申しますか、二つの地域にかなり重点的な兵力配備をしておるということになろうかと思います。  第二点は、まさに日本の地理的条件といいますか、日本の持っております戦略的価値そのものであろうかと思います。御承知のように日本は東アジアに弧状に連なる列島線でありまして、それがソ連の海軍力の太平洋への進出をたまたま妨げるといいますか、そういったものに非常に影響を与える地理的条件にあるという意味で、日本の戦略的な価値というものはそういうところに非常に強くあろうかと思います。  さらに第三点は、日米安保条約によりましてアメリカ軍事力が現に日本に駐留をしておるということ、日本がそういう施設を提供しているということがございます。そのことは確かに安保条約の六条にもありますように地域の安定のためにアメリカがその施設地域を利用し使用し得るということで、アメリカの戦術的なプレゼンスを可能にしているという意味でおっしゃるとおりであろうかと思います。
  131. 上田哲

    ○上田(哲)委員 こういう考え方が新計画の根底に日本の戦略的な位置づけとしてあるわけですね。そうすると、こういう役割、位置づけというのはこれまでの抑止概念よりは非常に踏み出したものだということにならざるを得ないと私は思うのですね。長官、いかがですか。
  132. 加藤紘一

    加藤国務大臣 今度の中期計画大綱の枠の中で行われておりまして、先生指摘我が国の自衛のあり方、それから集団自衛権との関係、我が自衛隊の存在と日米安保条約との関係、それについては今回の件で基本的な枠組みは全く変わっていないと思っております。
  133. 上田哲

    ○上田(哲)委員 これは聞くのが時間のむだであったかもしれませんが、私は強い懸念を表明しておきたいと思います。  四番目に、今回の新計画によって米核戦略への踏み込みということがまさにはっきりするのではないかと思うのです。大綱前は核によらないということでありました。それから基盤的防衛力構想の出発点においては、つまり大綱の出発点においては通常兵器の中の小規模という概念であったと思うのですね。ところが今日の新計画が目指すものは、いわゆる北西太平洋扇形海域あるいは三角海域の防衛が重点になっている。この重点的な防衛ポイントとして突き詰めて言うなら、いわゆる日本列島守備隊論ではなくて、日本列島を盾にするもう一つ大きな戦略体系への位置づけということが出てきている。もっと端的に言うなら、この海域における米空母部隊への脅威を減らすための役割、こういうところに入っているということは否定しがたい枠組みだろうと思います。その点はいかがでしょうか。
  134. 西廣整輝

    西廣説明員 私、今先生の申された点は従来と全く変わっておらないというように考えております。  我が国防衛と申しますのは先生指摘のように国土の直接的な防衛ももちろんございます。さらには従来から海上自衛隊の主たる任務でございました国民の生活必需物資を確保するための海上交通の保護というような面も当然ながら我が自衛隊の固有の任務として持っておるわけであります。  さらに申し上げれば、有事におきまして、我々としては何度も申し上げておりますように日米安保体制というものを基軸にして日本防衛を考えております。またそういうものができることによって侵略の未然防止ができるということでございますので、米軍が来援してくれるための基盤の維持というもの、例えばアメリカの増援部隊が無事到着するようなシーレーンの確保も含めまして、あるいは弾薬等の補給品の確保も含めてそういったことができることが日米安保の維持という面で非常に重要であると考えておりますので、このことは従来からの我が国防衛基本的な構想の中に入っている問題でございまして、新たに核戦略云々とかそういうことは全くございません。
  135. 上田哲

    ○上田(哲)委員 日本防衛力が、絞って言えば、この北西太平洋における米空母部隊への脅威を減らすためにあるという点は否定されますか。
  136. 西廣整輝

    西廣説明員 米七艦隊の例えば機動部隊がどういう脅威にさらされているかということになりますと、七艦隊そのものが大変強力でございますので、我々がそれほど協力する余地があるかないかという問題がございますが、日本防衛そのものに七艦隊の例えば機動部隊が駆けつけてくれたということになりますれば、そのときの日本防衛作戦に参加しておる機動部隊、それを我が方が場合によっては守るということも当然あり得ることであるし、それは日本防衛のために非常に重要な一つの作戦であるというふうに考えております。
  137. 上田哲

    ○上田(哲)委員 防衛局長、ちょっとわかりやすい話をしましょうよ。  中曽根さんの日本列島不沈空母論、三海峡封鎖論、これで非常にわかりにくいことは、日本列島を守るというのなら、向こうからですから、日本列島の手前で守らなきゃいけない。ところが、日本列島でバックファイアを阻止する、ここから袋にしてこっちへ出さない。日本列島を通過しちゃったこっちで戦うという話はとても普通の論理ではわからないことなんですよ。だから、こういう問題としてなぜ北西太平洋が日本防衛のための中心になるのか、これは当然基本的な疑問でありながら何となく専門家ぶられて議論が進んでないのですね。  そういう意味からすると、例えばもっと具体的にいきましょう。今度は新計画でP3Cを百機体制にされる、P2Jとの問題があるからというような細かいことは別にして。四国一つを一機でもって完全に賄えるという性能だということで割り算をしますと、大体三角海域でもこの割り算をしていきますと、四十五機で足りるのですよ。これは実際には、一機あれば全部できるということにならないとかいろいろなことはありましょうよ。極めて算術的に言うと、日本列島を守るなら太平洋じゃあるまいに、何となく隔靴掻痒の感があるだろう、しかもその北西太平洋をそれは世界で一番P3Cを持って百機体制にもして、しかもその半分であれば賄えるところという計算が立つのにその倍も持つということは、これは明らかに今まで考えていた日本列島守備隊論的な発想よりもはるかに大きく出ていくんだということになっていきますね。この辺の変化というものをやはり率直に認めたのが新計画じゃないですか。
  138. 西廣整輝

    西廣説明員 先生変化と申されますけれども、私どもはこれそのものが大綱計画そのものであるというように考えておりまして、例えばP3C百機体制というものは、大綱でP3C程度能力があるものがこのくらい要るという計算値に立っておるものであります。  今、かなり広い海域がP3C一機でできると申されましたけれども、やはりT3Cの航続時間、そういったものから見まして、ある海域を瞬間的に二機でこのくらいできるということはございますが、それを継続的に哨戒をするということになりますと、百機というのは、かねがね私どもが申しております本土周辺の、国土周辺の数百海里あるいは千マイルの航路帯の防衛というものを行うについてのぎりぎりの数値であるということを御理解いただきたいと思います。  なお、日本を守る際にどうも太平洋の方に目が向いておって日本海その他に向いてないのではないかという御指摘でありますが、確かに我が国周辺で外国が所在するというのは日本海方面であります。したがって、当然、よその国から侵攻があるとすればそういう方向から来るであろうということは想定されるわけでありますが、いかんせん、それを守るために日本海なりオホーツク海に艦艇部隊を入れるということになりますと、やはり艦艇が行動するためにはそれなりの航空優勢と申しますか、そういった状況が確保されなければできない。それは現実においては不可能でありますので、仮に七艦隊あるいはアメリカの機動部隊にしろ、有事日本海なりオホーツク海に進出をして行動するというようなことはまず不可能であろうと私どもは考えております。ということは、やはり比較的安全な、航空優勢も確保し得る海域である太平洋側に所在をして、日本に侵攻する部隊を攻撃するといったようなことが、できる限界であろうかというように考えております。
  139. 上田哲

    ○上田(哲)委員 日本海はもう歯が立たぬ、だから太平洋でやるんだ、こういうことなんですね。私はそれだけじゃないと思うのです。  実は、八三会計年度、アメリカの国防報告から顔を出した同時多発戦略、これはイギリスの戦略研究所が出している「八一年−八二年戦略概観」によれば、ホリゾンタルエスカレーション戦略という言葉に置きかえているわけですけれども、これがずっと今日まで主流というか主な考え方になってアメリカ戦略を構築していますね。そういう立場で言うと、地球を一つのものとして考えて、米ソ有事の場合、攻めやすいところへ、やりやすいところへ、薄いところへ、有利なところへ戦線を拡大して、そこで水平エスカレーションしてたたく、あるいはそれが抑止力になる、こういう考え方。したがって、米ソ対決の主戦場が北西太平洋である、アメリカにとっては。つまり、対ソ優位の戦略的な海域というのが北西太平洋であるという位置づけが、いわゆる水平エスカレーション戦略というものであるアメリカ戦略の今日の集約点なんであって、そういう中に日本防衛というものがかけられている。このことが実は、北西太平洋にこうした重点あるいはP3Cを非常にたくさん配備する、こういうことの構えの内実ではないか、私はこのように考えるわけです。また、そのことが当然アメリカの主力部隊を構成する核戦略に日本が一体化するということをもたらすことになる、こういうふうに考えるのが当然な理解ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  140. 西廣整輝

    西廣説明員 私がお答えするのが適当かどうかわかりませんし、十分理解しているかどうかわかりませんが、アメリカのその、ある地域で紛争が起きたときにそれをシフトすることによって対応するという考え方は、私の理解するところでは、例えば中東地域のような、アメリカにとってあるいは西側全体にとって十分それに対応し得るだけの能力といいますか状況にない地域、そこで何か起きたときに、場合によってはよそにシフトしてそれに対応するというような論があるいは行われておるかとも思いますが、それが北西太平洋の云々ということには必ずしも結びつかないのではないかというように理解をいたしております。
  141. 上田哲

    ○上田(哲)委員 中近東ということを例示した場合もあります。それからヨーロッパではポーランドという例をとったこともあります、アメリカ側は。  しかし、明らかに北西太平洋というものが、SLBMの双方の配置からいってもこれは米ソ戦略の衝突地点といいましょうか、アメリカにとっては弱いわき腹と称する非常に重要な戦略海域であって、ここにシーレーン問題というのが出てくる根底があるわけですし、日本への要請もあるということになります。  これは私は当然な指摘であると思うので、これをうんと言ったら集団自衛権を全部のんでしまうわけですからお答えはないと思うのですけれども、私は、新計画はそういうものにいよいよ位置づけが本格化したものであるという指摘をしっかりしておきたいと思うんであります。  最後に、五番目に新計画に対する私の懸念として指摘したいんですけれども、具体的な十八兆四千億円もあるという大きな膨張をもたらす重要な要因を一つ挙げて御見解を承りたいのは、新洋上防空システムであります。  九月十八日に新計画が発足、決定しましたときの中曽根総理は、今回の計画は洋上撃破、水際撃破、機動力の重視であるということを言われているわけでありますけれども、まさに一点に絞れば、これは加藤防衛庁長官が六月に訪米されたときにも明らかにされたような新洋上防空システム、この問題が大きくクローズアップされてきているわけであります。私どもはこれは、長い間の問題であったシーレーンが単なる線であるという説明から面に変わり、いよいよ立体化したという説明も一つあるが、しかしそれだけではなくてもっと大きな、先ほど来申し述べた戦略構想の中での大きな役割分担という問題が出てきていると思うんですね。  これは、具体的に伺いますけれども、OTH、そして早期警戒機、迎撃機、さらに今回の新計画の中には内閣が否定されたはずの空中給油機やAEGIS艦の導入も検討と入っているわけでありますから、これはもう買うんでしょう。我々はこれに対しては大変な反論を持ちますけれども、それはそれとして、今ここで伺いたいのは、こういう大きなシステムを導入するということになると、例えば相当な金額ということになる。非常に小さく見積もって、例えばOTHは三百億、四百億という言い方もありますし、今回の新計画の中の数百億円規模の基礎工事費に該当する費用も発見できるんでありますけれども、あるいは全体としては一兆円規模というふうにも考えられる面もあります。この辺をどういうふうに算定されておりますか。
  142. 西廣整輝

    西廣説明員 洋上防空につきましては、正直申しまして幾つかの問題を現在抱えております。と申しますのは、大綱策定当時想定しておった状況からかなり変わった面が出てきておる。  第一点は、私ども大綱策定当時には、シーレーン防衛のために行動する海上部隊、これが洋上、遠く離れて行動する海上部隊が空からの攻撃を受けるということは余り想定しなくて済んだ、そういうことは非常にまれであろうと考えておったわけであります。それに対して、その後非常に航続距離の長い高速の航空機が出現をして、あるいは偵察衛星というようなものが出てまいりまして、洋上でもそういった攻撃を受ける可能性というものがかなり増大をしてきたという問題が一つございます。  さらに、武器の面について申し上げますと、ASM、航空機から艦艇を攻撃するミサイル、この性能というものが非常に上がってきて、非常に射程の長いものが出てきた。ということは、防御する側が相手の航空機を攻撃しようと思っても届かない。つまり、航空機の方としては自分の身を危険にさらすことなく安易に攻撃ができるというような状況になってきて、このミサイル対策をどうするかといったような新しい問題が出てきておるわけでございます。  そこで、今回の計画ではそういった洋上防空についてどういう手段が有効であろうかということを研究をし、しかるべき方法が見つかればそれについての着手をするという計画をいたしております。  例えば、初めに申し上げました、洋上、遠く離れたところの洋上防空ということになりますと、個個の艦艇をそういう広い海域で守るということは非常に至難でございますので、早い時期にそういう洋上に出てくる敵の航空機を発見をする、それによって、その発見したものに対していわばアラート態勢のような形で、数機の戦闘機あるいは管制機、さらには給油機というようなものを組み合わせた要撃ユニットというものを編成をして迎え撃つという形をとれれば、相手方もそういう洋上遠くまで護衛戦闘機等を随伴することはなかなか難しいわけでございますから、そういう意味では非常に強く抑止をすることが可能ではないか。そういった観点から、まずそこのキーポイントとなりますのはいかにして早く相手の行動が察知できるかということでございますので、そういう広域な警戒、監視というものがどういう形でできるかということで我々OTHレーダーというものに一応着目をしておりますが、まだOTHレーダーそのものがどういう性能であるか、どういうように使えるかということもわかりませんので、今後の課題になっておるわけでございます。  さらに、ミサイル対策としましては、先ほど先生も御指摘になりましたAEGIS艦、そういったものも現在対ミサイル能力の高い艦艇としてございますけれども、そういったものも含めて今後の洋上防空あるいは敵の航空優勢下に入っていく艦艇の対ミサイル能力をどう付与していくかという点を検討いたしたいということで考えております。  なお、計画の中にはそういうことで具体的な事業というものが盛り込めませんので、若干の着手する際の費用ということで数百億円のものを用意をしておるということであります。
  143. 上田哲

    ○上田(哲)委員 全部で、AEGIS艦まで含めたこの新洋上防空システムというものが完全に配備されることになったときにどのくらいかかるものかという点を……。
  144. 西廣整輝

    西廣説明員 まだ試算したことはございませんが、AEGIS艦というのは一隻で千数百億というように考えられますので、それを何隻持つかということによりますが、仮に一個護衛隊群一隻持つことになればやはりこれは数千億、一兆円まではまいりませんけれども、相当な金額になる。それからOTHレーダーそのものはさほど高価なものとは考えておりませんけれども、仮に先ほど申したような要撃ユニットというようなものを別途用意をする、現在の戦闘機とは別に用意をするということになればそれはそれなりに、たとえ十機であろうともかなりの金額になるということは間違いないと思います。
  145. 上田哲

    ○上田(哲)委員 こういうものがアメリカのためには役立つだろうが、日本防衛に役立つと言えるんですか。
  146. 西廣整輝

    西廣説明員 また最初に戻るようで恐縮でございますが、私どもの方の海上自衛隊が主たる任務としております海上交通の保護というのは、日本の国民が生存していくための必需物資は確保する、あるいは日本侵略をされておる、そういう際に防衛作戦を遂行するための継戦能力を維持するための海上交通の保護でございますので、まさにそれは日本の生存そのもののためのものであるというようにお考えいただきたいと思います。
  147. 上田哲

    ○上田(哲)委員 足し算しても明らかに兆を超す大変な兵器導入ということになるのです。しかも、これはもうだれもがわかっておるように、アメリカのためには役立つかもしれぬ、それはわからぬけれども、少なくとも日本のためには有効性が今確認されない。私が言いたいのは、これで、AEGIS艦であるとか空中給油機であるとかということの議論は後に譲りますけれども、同盟の方が安上がりだということがここで崩れだということを指摘したいのであります。単独防衛の方が金がかかる、同盟の方が安上がりだという論理はない。まさにこういうアメリカのために組み込まれるから金がかかるというところが出てきておるじゃないかという点をやはり一つ具体的に指摘をしておきたいと思います。これは同盟の弊害であります、危険であります。  時間が参りますから、最後にちょっと飛ぶんですが、ゴルバチョフ提案というものが今大きな問題、波紋を投げておりますが、その中で、五〇%の兵器削減提案の中に、三沢基地のF16を含む、これは逆な言い方で言えば、まさに日本がそうしたソビエト側から核攻撃基地を持っているということを指摘されたという意味合いを持っております。外務省は不快感を表明されたようでありますけれども、不快感だけでは説明がつかないわけでありまして、国民に向かって、これが核兵器基地でないというのであれば、そうした証明をする窓を含めたしっかりした説明、反論がしかるべき——お経のような話は要りません、端的に答えてください。
  148. 渡辺允

    ○渡辺説明員 お答え申し上げます。  最初に事実関係でございますけれども、ゴルバチョフ書記長がいろいろなところで、幾つか軍備管理の提案をいたしております。それで、御指摘のF16の問題につきましては、私どもの調べてみましたところ、どうもゴルバチョフ書記長自身の発言の中にはないようでございまして、それを一部説明をした発言の中に一つの例として上がっているようでございます。  そういうことでございますので、この提案自体についてどうこうと申し上げるあれはございませんけれども、今御指摘の核兵器との関係につきましては、私どもといたしましては、我が国の非核三原則にかんがみまして若干腑に落ちない発言であるというふうに考えております。
  149. 上田哲

    ○上田(哲)委員 ですから、ゴルバチョフが言ったかどうかじゃなくて、ソビエト側の提案という言い方で言えば、そういう指摘が行われた。日本国民にとっては、だれか言おうとやはり気になることなんですね。これを何らかの立証手段といいますか確認手段といいましょうか、そういう努力政府側がするということはないのですか。
  150. 渡辺允

    ○渡辺説明員 先生の御質問は、F16について……
  151. 上田哲

    ○上田(哲)委員 F16が核攻撃機種である、兵器であるということを指摘したところがあるとなれば、日本にとっては、米ソであるかはともかく、当然それに対して政府としては、国民の疑念を晴らすだけの処置を、例えばアメリカに対してもすべきではないのか、何らかの新しい処置はとらないのかということです。
  152. 渡辺允

    ○渡辺説明員 この問題につきましては、先生承知のとおり、従来から私ども御答弁申し上げているとおりでございまして、我が国に核兵器が持ち込まれているということはあり得ないということであろうと思います。  また、F16、それからもう一つ、何でございましたかちょっと忘れましたけれども、当時国会で御議論がございまして、一般的にいって事前協議制度について改めてアメリカに確認を求めたこともございますので、今回特に新しい処置をとることは考えておりません。
  153. 上田哲

    ○上田(哲)委員 以上いろいろ質疑をしてまいりました。  前段で私は、一%を守る、これは大綱水準達成という政府方針とともに、国民の多数の世論を背景にしつつ、政府の国民に対する公約としても、あるいは民主主義のあり方としても断固として守り抜くべきであるということを強調いたしました。十分な決意が伺えなかったことは残念でありますが、この点は、さらに論議を臨時国会に移して、政府の責任ある判断、答弁を得たいと思います。不満を持ってこれを後日に譲ります。  また、今提示された新計画については、私は第一に、最終的には大綱の変更、その途中経過としては大綱水準の実質的変質ではないかということを指摘をいたしました。また二番目には、大綱のいう小規模限定侵略の態様が変化してきたのではないかということを申し上げました。また、第三に明らかに抑止概念の変化ということを立証したつもりであります。さらに、こうした新計画が、アメリカ核戦略への組み込みを明確にすることなしには成り立たないことを明らかにしていると思います。その意味では、特にいわゆるホリゾンタルエスカレーション戦略の中心である北西太平洋に日本安全保障をかけるべきであるのかどうかの議論はさらに深めるべきであるということを申し上げておきたいと思います。また、第五に特にこの新計画中心となる新洋上防空システムというものの危険性、無効性というものについても注意を喚起しなければならないと思います。  こうした所論の中で言えば、私は三点の問題が浮かび上がると思っています。  一つは、いかに言葉の羅列はあるとしても、やはり新計画基盤的防衛力構想の域を超えて所要防衛力構想への道を歩みつつあるのではないかということ。そして第二に、集団自衛権の行使の領域に踏み込んでいるということをやはり指摘しなければなりませんし、しかも重税を前にしながら基本的に軍事同盟による国民負担増が図られるこの新計画に対しては、大きな国論の反対を背に負うて政府を鋭く追及しなければならぬ。  このことを私は強く申し上げて、恐らく賛同はされないでありましょうが、防衛庁長官が広くシビリアンコントロール、とりわけそれは院内ではなくて、この際国論に大きく耳を傾ける、あるいは近隣諸国への日本の平和政策についての責任をとる、こういう立場から、言葉のあやでない真摯な討議をこの新計画をもとにして展開されることを強く要望し、最後の御答弁を求めて終わります。
  154. 加藤紘一

    加藤国務大臣 先ほど防衛局長が申しましたように、私たちの今度の中期防衛力整備計画はあくまでも大綱の枠の中で、所要防衛力構想ではなくて基盤的防衛力構想の上に立ったものでありますし、また、集団自衛権の問題等、いろいろ御指摘がありましたけれども、従来から私たちが守ってきておりました防衛についての基本原則をあくまでも守り続けてつくっております。またそれは今後とも守っていかなければならないことだと思っております。  そういう意味で、いろいろ今後臨時国会等で御質疑をいただいても、十分にそれにこたえられるだけの計画をつくったつもりでございますので、その点も御理解いただきたいと思います。
  155. 上田哲

    ○上田(哲)委員 終わります。
  156. 森下元晴

    森下委員長 渡部一郎君。
  157. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、中期防衛力整備計画九月十八日閣議決定の分につきまして御質問したいわけでございますが、その前にちょっと急ぎの問題を申し上げることにいたします。  それは、靖国神社の中曽根首相による公式参拝に対する中国側の反応であります。  御承知のとおり北京及び延安等の地域におきまして学生デモが行われ、あるいは壁新聞等が掲載され、日本政府の行動が中国人の心を傷つけたという運動が始まっているわけであります。これは、その後鎮静化したようには見えておりませんで、散発的に中国の各地で行われ、中国外務省はこれに対し、日本政府に対しこの点に対する慎重な配慮を要求して談話を発表したといういきさつになっております。  この問題は、私ども、日本安全保障の問題からも論じられなければならないテーマではないかと思うわけであります。といいますのは、十一億の人口を擁し、第二次大戦の主要敵国であり、敵国というよりもむしろ日本が侵入した強大なエリアであり、その日本が日中共同声明において今後の平和への取り組みというものを約束した相手国でもあるわけでありまして、私どもは、その日中共同声明において、過去の日本の行動について少なくとも反省を明記し、戦争責任を明記して今後の日中友好に対する基本的な取り組みを説明し約束した立場でありますから、こうした問題については十分な配慮が必要ではなかったか。もしこの配慮を怠ることがあるならば、当委員会における安保論議どころではなくて、重大な結果を我が国に招来することがあり得る、こう思うわけであります。当然このような質問は中曽根総理個人に対して伺うべき質問ではございますけれども、国会閉会中でございますし、また総理の心境を極めてよく説明のできる立場にある防衛庁長官でもございますから、また国務大臣として最近ますます実力を発揮されておるところでもありますから、この問題について日本政府のお立場を表明していただくということが非常に適切ではないか、こう思うわけであります。  靖国神社問題について御質問しますということはきのう既に申し上げているところでもございますから、定めて内閣を代表して御準備も整ったことでもあろうと思いますので、この問題について慎重かつ適切なる政府を代表しての御見解を承りたいと存じます。
  158. 加藤紘一

    加藤国務大臣 靖国問題につきまして先生の御指摘ではございますけれども、私が政府を代表してお答え申し上げるのは適切ではない、こう思っております。  ただ、私たちも靖国神社に公式参拝した閣僚の一員でございますけれども、今回の内閣総理大臣及び閣僚による靖国神社の公式参拝は、国民や遺族の方々の多くが同神社を戦没者追悼の中心施設であるとし、政府を代表する立場にある内閣総理大臣及び閣僚が戦没者に対し追悼の意をあらわすことを望んでいるために行われているものでございます。  一方、委員指摘のように中国の方でいろいろな学生のデモがあったことは私たち承知いたしておりますし、軍国主義の復活を阻止するというようなプラカードもあったやに聞いております。私たち日本防衛の責任ある立場の人間としては、やはり諸外国が我が国防衛政策についていかなる見方をしているかということは常に考えておかなければならない、こう思っております。そういう意味で、最近の中国及び東南アジア諸国は私たちの国の防衛政策について長い時間の相互交流の結果だんだん理解の度が深まってきているのではないかな、こんなふうに思っております。  今度の北京のデモにつきましても、直接私たち防衛の現在の姿につきまして言及いたしているものは、私も注意して見ておりましたけれども、ありません。そういう意味で、今回のことは私たちの国が軍国主義的な復活をしつつあるという意味でのデモではないのではないかな、こんなふうに思っております。今後とも理解を深めていかなければなりませんが、私たちはそういう意味理解は大分進んできているのではないかなと思っております。  そういう意味で私たちは、現在新中期計画、それから、GNP一%の問題と靖国神社の問題が二つ同列に論議されておりますが、この二つはもともと違うものであって、私たち防衛力に関する議論というのは厳しい国際情勢の中で日本がいかに合理的に対処するかという現状の問題であって、一方、靖国神社の問題は戦争で命を亡くされた方に対する追悼の念をいかにしてあらわすかという国民の心の問題なのではないかな、こう思っております。
  159. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 大臣は私の質問を誤解しておられるようであって、一%の問題と中業の格上げの問題と私は絡めて申し上げているわけではありません。日中共同声明並びに日中平和友好条約において日本があらわに示した過去の侵略に対する深い反省の意がこの行為によって疑われる結果になったのではないか。  それは、中国政府自身が非常に日中友好を配慮する上で抑制的な外交措置をとりながらも、この問題に対して不快の念を示した。また、中国の中に広がっている青年のこうした風潮を考えますならば、日本と中国の友好に大きな水を差すきっかけになったのではないかという心配があるわけであります。したがって、この問題については、十分慎重な配慮を今後必要とするというふうにあなたが感じられるかどうかを聞いているわけであります。それが慎重な配慮が要らないというのであれば、日中友好に対しては重大な影を差す答弁になるでしょう。私は、その点を聞いているわけです。これは今後慎重な配慮が要るかどうか。これは問題としては小さく見えるかもしれませんが、青年は未来を担う者でありまして、その青年の心に重大な障害を与えたとすれば、我々としては、政治行動それ団体について、日中関係はもっと慎重な配慮が要るのではないか、こう伺っているわけであります。
  160. 加藤紘一

    加藤国務大臣 日中関係につきましては、過去の経緯もあり、また、その国交樹立に至ったときの我が方の指導者と中国側の指導者とのいろいろな話し合い、交流があったわけでございます。そういう意味で、私もそれなりに個人的な意見はございますけれども、この際、政府を代表して、この靖国神社の公式参拝問題と中国の反応という問題についてのコメントは、差し控えさせていただきたいと思います。
  161. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 これはまことにおかしいのであって、あなたは少なくとも閣僚の一員であります。そして、閣僚の一員として内閣の責任を分担する立場にあることは、私が言うまでもありません。  あなたは、この際、この靖国神社の公式参拝という日中関係に非常に打撃を与えた問題については、今後慎重な配慮が要るということぐらいは表明されてしかるべきだと私は思います。
  162. 加藤紘一

    加藤国務大臣 この問題は、官房長官中心にいろいろ状況を分析されたりしておると思いますけれども、政府としてのコメントは官房長官にお願いするのが筋であろうと思っております。
  163. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、あなたは何も言えない、公式参拝で中国人民の心を傷つけたのは何ら悪くない、こういう立場でこの答弁を終わられますか。
  164. 加藤紘一

    加藤国務大臣 防衛庁長官政府を代表して、この靖国神社の問題についてコメントするのは、差し控えさせていただきたいと思います。
  165. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 政府を代表しないで、あなたそれでは防衛庁長官としてお答えになったらどうです。防衛問題ですよ。これほど隣国との関係を悪くした問題が、防衛問題に影響がないわけはないではありませんか。
  166. 加藤紘一

    加藤国務大臣 日本防衛政策の責任ある立場といたしましては、過去の日中間の不幸な経緯を十分に頭に入れながら、今後私たち防衛政策近隣諸国脅威を与えたり、また疑念を持たせないようにするように最大の配慮をしていくのが務めであろうと思っております。
  167. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 今後においては、靖国神社みたいな問題については配慮を欠いていたわけでありますから、十分配慮してやっていくという意味ですか。
  168. 加藤紘一

    加藤国務大臣 靖国の問題についてのコメントは差し控えさせていただきますけれども、私たちが再び軍国主義の復活の疑念を諸外国に持たれないように、最大の注意と配慮を払っていくのが、防衛庁所管の大臣としての責任だろうと思っております。
  169. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 きょうはそのくらいにしておきましょうか。  けれども、こうした問題について、私は、日本安全保障という問題は本当に慎重に扱っていただかなければ困る。もう何が起こるかわからぬ。というのは日本国内で議論しただけではなくて、アメリカにも響けばヨーロッパにも響けば中国にも響く。当たり前なことを、私はひとつ考え直すきっかけにしなければいけないのではないかと思いますし、大臣もその点は十分配慮されるだろうと思います。  私はついでに申し上げておきますけれども、私の父親も戦死者の一人です。いろいろ靖国神社に祭られてうれしい人もある、けれどもうれしくない人もたくさんある、宗派を異にしていろいろな方々が日本の戦死者におられるわけであります。その戦死者の中で立派な方もあったろうし、立派でない方もあったかもしれない。だけれども、戦死者を悼むのは日本民族の心境だと私は思っております。しかし、日本では一神社の形式で靖国神社に対する公式参拝が行われたことでもめておりますが、アメリカではないのです。私はアメリカへ参りましたときに、どうしてだろうという思いがよくしておりました。ところが、ハワイに行きまして、アメリカの国立墓地に二つあるのですけれども、一つの墓地はハワイに置かれています。このハワイに置かれているパンチボールという名前の国立墓地は戦死者を全部祭っているのですけれども、この戦死者のところに最初は十字架が墓の一つ一つに並べられておった。ところが、戦争中仏教徒のある親が当時の国防長官に手紙を出して、我々の子供はキリスト教の拝み方では浮かばれない、こうしたことは困ると抗議をした。それに対して、国防次官がたちまちやってきて、十字架を引き抜いて、そしてならして、今墓石に当たるヘッドストーンのところに小さな仏教徒とか回教徒とかキリスト教徒とかマークがされているだけである。中央の像まで、キリストの像あるいはマリアの像はやめて、要するに総合的な像というものに切りかえられておる。何とその像は足にわらじを履いている。民族的な配慮、宗教的な配慮というものが行われておった。そこで、パンチボールのところにはいろいろな人々が宗教的な心配なくて全部集まることができた、こういういきさつがあるわけであります。  私は、アメリカ日本との当時のいろいろな論争とか戦闘の経緯とか、いろいろな批評のしようというものはあるかと思いますけれども、一つの戦争あるいは愛国心のいたすところとして、宗派の差を乗り越えるという慎重な配慮、それから民族の差を乗り越えるという配慮、そしてそれによる団結というものにアメリカ合衆国はどんなに配慮していたか、一つの典型的な例ではなかったかと私は思います。今度ハワイへ行かれたら現地を視察されるように私は要望したいと思います。それと同時に、靖国神社という形でなければならぬと言って押しつけることによって日本国内における団結を破壊するということは余り適切な処置ではないのではないかと私は思っておるわけであります。  長官にひとつこうした面からも御配慮をいただき、また中国人の心を傷つけたという面で気をつけなければなりませんのは、先ほど同僚議員の質問に対して大臣は、東南アジアの国々に対して日本防衛政策侵略主義であるとか軍国主義であるとかそういった印象を与えないように十分に配慮すると言っておられました。まさにいろいろな配慮の行き届いた施策をやっておられる御様子で、私はその答弁を聞いては安心した一人でありますけれども、その配慮が、中国との関係でこうした問題がこじれますと東南アジアの方は全部一遍にだめになってしまうというのが従来の経緯であります。私はその意味でこうした問題について特段の慎重な御配慮をもう一回望みたいと思いますが、いかがでございますか。     〔委員長退席、三原委員長代理着席〕
  170. 加藤紘一

    加藤国務大臣 靖国の問題につきましての先生の御意見は私の方からも官房長官に十分にお伝えしておきたいと思います。  先生が御指摘になりましたように、中国というのはアジアの中で極めて大きな影響力を持つ国であります。現在、私たちの国と中国は友好関係にありますけれども、この中国と私たちの国が防衛面について十分なる理解とそして信頼感が持てるようになってなければいけないという御指摘はそのとおりであろうと思います。特に、アジアにおいて非常に影響力の強い国でありますから、その点は私たちは考慮しなければならぬと思っております。したがって、今度新中期防衛力計画とか、それからGNP一%の問題につきまして、私たちが国内で問題提起し論議する傍ら、私たちは東南アジア諸国それから中国等の反応外務省を通じて十分に注意をしながら見てきたつもりでございますけれども、今後ともその理解を進められるように最善の努力防衛庁としてもしていかなければならない、こう思っております。幸いなことに、私たちは現在までのところ、今度の論争の結果、日本が新たな軍国主義への道を歩んだというふうにはっきりと規定する東南アジア諸国はなかったし、中国の場合もこの日本国内の論議を新華社で客観的に報道しただけにすぎなかったということはありがたい事実、うれしい事実だったと思います。しかし、これに安心することなく、私たちは我々の防衛力政策というものがどういうものであるか、今後ともその基本原則を説明し、その基本原則に沿った施策を私たちがしっかりやっていかなければならぬ、こう思っております。
  171. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 日本防衛計画は二面において日米安保条約を通してアメリカと提携をしているわけでありますが、防衛計画防衛同盟という形では提携しておりませんけれども、日中友好という大きな大綱がある、この点については認識を一にされることと信じますが、この点は今後とも十分配慮していただきたいと存じます。そうでないと、日本安全保障問題は幾ら議論してもこれは結論にならないからであります。  さてそれでは、うなずいておられますので、御同意と思いまして中期防衛力整備計画について申し述べたいと存じます。  またこの整備計画の日付がよくないですね。整備計画閣議決定された九月十八日というのは満州事変の勃発の日でありまして、満州でダイナマイトで列車を爆破した目に当たるのだそうでございますが、こうしたことを十分配慮されないでなさったのかすっかり忘れておられたのか、いずれにしても余りいい日ではなかったと私は思います。要するに、日本の中国侵略の重要な一つの日付であった。こういう点まで今後は細かく配慮していただけるとありがたいなと私は思っておりますが、これについては御答弁は不要であります。  さて「中期防衛力整備計画について」「昭和六十一年度から昭和六十五年度までを対象とする中期防衛力整備計画について、「防衛計画大綱」の基本的枠組みの下、これに定める防衛力水準達成を図ることを目標として、別紙のとおり定める。」と冒頭に記されております。それでは、「防衛計画大綱」という昭和五十一年の十月二十九日の国防会議及び閣議決定というものは五十一年から実に九年後の今日そのまま認められる計画であったのかなかったのか。同僚議員も一部議論されているところでありますが、私もその点を考えるわけでございまして、この点についてまず総括的に承りたいと思います。
  172. 加藤紘一

    加藤国務大臣 五十一年の「防衛計画大綱」は基盤的な防衛力構想に基づき、私たちの国が置かれた地理的環境等から見て、また財政状況、国民世論等から見てこの程度防衛力を平時から持っておくことが一番望ましいし、また国民のコンセンサスも得られやすいのではないかと政府が考えて決定いたしたものでございます。したがって、私たちはその策定されました状況から今日までいかなる変化があったかということをいろいろ考えながらやっておりますけれども、しかし、先ほどからるる各委員と私たち政府委員との議論にもありましたように、大枠は変わっていないのであるから、とりあえず私たちとしてはこの「防衛計画大綱」の水準達成することを目標として新しい中期防衛力整備計画をつくることが適当であろうと考えて、そのように決定をいたした次第でございます。
  173. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 「防衛計画大綱」については今大枠は変わってないというふうにおっしゃいましたが、そうなりますと、これは非常に矛盾が何カ所か出てくるわけであります。というのは、大枠は変わってないのだったら、小規模限定の侵攻というのが「防衛計画大綱」では予想されているわけでございますね。この小規模限定の侵攻が行われた場合というその小規模限定というのは、日本に対する攻撃が行われたときにという考え方で全部が計算されるわけですけれども、現在における小規模限定というものはどの程度を想定しておられるのか。それは十年前と余り変わらない程度のものを想定しておられるという意味合いになってこざるを得ないのですけれども、どの程度のものなのか、この際明らかにしていただきたいと思います。
  174. 西廣整輝

    西廣説明員 限定的な小規模侵略事態というものを具体的にというお話でございますが、正直申し上げて、その重なり質を具体的に申し上げることは、我々の考えております防衛力整備計画そのものの能力とも非常に関係ありますので御遠慮させていただきたいのですが、考え方は大綱策定時と現在と、いずれも現在我が国周辺にある軍備というものが特段の準備、長期間の準備をかけて本格的に侵攻するという状況でなくて、大体あるがままの姿に、一、二週間の短期間の準備で侵攻し得る状況ということで、それぞれの与えます条件というものは大綱当時と現在と全く同じ条件を与えて、この程度のものが侵攻し得るという兵力量をはじき出しておるわけでございます。  ただ、先ほど来、上田議員にもお答え申し上げたように、当時と現在とでは、現在我が国周辺にあります軍備そのものの量も違うておりますし、あるいは質も変わっておる、あるいはそれを運ぶ手段その他も変わっておりますので、同じ条件の中でも来得る量というものは変化があるということは御理解いただきたいと思います。
  175. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は十年くらい前に大分防衛問題で議論したことがあるので、先ほどからの言葉遣いを伺っておりましてちょっとはらはらして伺っておったわけでございますが、攻撃する前にちょっと申し上げておきますが、我が国は仮想敵国はないということになっておりますね。それはもうお認めのとおりであろうと思います。我が国は敵がないことになっておりますね。だからこうして議論するときに、そこのところを踏み込んでおやりになるのかならないのか、極めて奇妙なことになるわけでございますが、私の方からは何でも議論できる立場にありますから私の方から申し上げますが、例えば北方四島のところにソビエトの軍隊が一万人おる、戦闘師団も相当な規模のものがおる、私の聞くところによると数個中隊おる、またペトロパブロフスクには潜水艦が二十隻程度長距離の弾道弾を保有している、またウラジオストクには、隻数は余り明確ではありませんけれども六十隻前後のソビエトの艦隊が常時おる、また、アメリカの海兵隊に該当するものが一個師団ないし二個師団常駐しておるというような状況であると承っておりますし、また戦闘機においてはどうやら時々御報告といいますか報道が変わっておりますが、それによりますと五百機ないし千五百機というものが極東方面に常時滞空しておるというふうに聞いているわけでありますが、その程度でありますと限定的小規模といっても大変な数量になるわけですね。一、二週間の準備においても、それで日本に侵攻するといたしますと、これは限定的小規模という言葉でなくて一、二週間の準備でこれらが日本に対して侵攻するとなるならば、とてもではないけれども考えられないほどのレベルになるかな、私はそう考えるわけであります。この点、どうお考えでございますか。
  176. 西廣整輝

    西廣説明員 先ほど最初に御注意を受けましたが、最初、先ほど上田議員のときにもお答え申し上げましたが、私どもは現実に今日本に対して顕在化した脅威があるということは考えていないというふうに申し上げました。ただ、脅威が顕在化した段階で防衛力を準備するのでは間に合わないので、我々としては常に周辺にある各国の軍備の動向というものに着目をして防衛力というものを考えなくてはいけないということでございまして、仮想敵国は持っていないことは御指摘のとおりでございます。  なお、小規模限定侵攻というものがかなりのものではないかという御指摘でございますが、確かに我が国周辺には相当大きな軍備というものがございます。軍事力というものがございますが、それをある一定期間の準備期間で実際に日本侵攻に使おうと思えば、日本は島国でございますのでやはりそれなりの艦艇、船舶等の用意もしなくてはいけない、あるいは現にある部隊そのものが必ずしも全部がレディネスの態勢にあるものではないとか、いろいろな面があります。それから、それぞれの兵種なり装備の質あるいはねらいというものを見ますと、それはその国固有の防備のために使うものもございますし、ある国に対応して配備をされているものもあるというようなこともございまして、限られた期間、限られた状況の中で日本に指向し得る兵力というものはおのずから限界があるということで、確かにそれは年々変わってまいりますし、最近の状況では九年前に比べるとふえているという状況にはございますけれども、そう大きなものというか、周辺にある兵力の何割も、半分があるいは八割は来てしまうというような話ではないというふうに御理解いただきたいと思います。
  177. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 これはこういうふうにぼんやりお答えになりますと、それ以上余り詳しくお尋ねしても明快でないと思いますけれども、限定的小規模侵攻というものに対して読みが十年間しょっちゅう変わっておったのだろうと思います。今回もまたいろいろ変わっているのだろうと思います。  それに対して今度は別表の方を拝見いたしますと、その十年前の別表とほぼ同じものでこれは体系が組まれている。私は拝見いたしますと、その大綱でお決めになったものを達成するという意味でここに書かれていることはわかるわけでありますけれども、大綱で決めているとおりの配置でいいのかな、考えられていたのかなという感じがするわけであります。例えば陸海空三軍の軍人の数については、その後変更はこれはないようでありますね。また艦艇についても、隻数はそのままでございますね。飛行機の項もそのままですね。  ところが、現在の安全保障防衛政策の立場からいきますならば、これはこの分け方でよいのか、あるいはこういう任務分担でよいのか、あるいはこういう能力でよいのか。内部的に定めし御検討もあったことだろうと思います。しかしながら、今の段階ではこの計画閣議決定して政府方針とするということに重点があって、別表の中身等については今回余り触れることが好ましくないという立場でおやりになったように見えるわけであります。この点いかがでございますか、今後この中身については十分検討され直すおつもりがあるのか、またこのまま三年間はいくという方針でおられるのか、その辺を承りたいと思います。
  178. 西廣整輝

    西廣説明員 大綱水準と申しますのは、先ほど来お答え申し上げておりますが、我が方につきましても兵力の規模、いわゆる量とそれから質あるいはそれをバックアップするもろもろの後方体制なり練度、そういったものを加えた防衛能力というように御理解いただきたいと思いますが、その際、量につきましては御指摘のように別表で大まかな数量的な限界というものが示されております。  なお大綱策定時には、ちょっと長い話になりますので省略させていただきますが、量そのものは先ほど申したような、侵攻してくるかもしれない小規模侵攻の態様、それに応じて年々こちらの必要量というものを出しますと、毎年毎年目標を変更しなければいけないということもございまして、兵力量については、主として平時的な警戒監視なり訓練なり、あるいは領空侵犯対処なり、そういったものから兵力量をはじき出しまして、それででき上がった兵力で当時の小規模侵攻対処というものをやらしてみると、どの程度能力があるか、その中身を近代化することによって、どの程度小規模侵攻に対して対応できるかという検証をしたわけであります。そして、これも先ほど来申し上げておることですが、所要防衛力じゃございませんので、侵攻してくるものに対して一〇〇%あるいは一〇〇%以上の能力を必ずしも持たなくても、八〇なり九〇というものであれば、現在の国際情勢下ではそれなりの抑止効果もあるということで決められた量でございます。ただ、この量そのものも、あくまで当時の兵器体系というものを前提にしてつくられておりますから、兵器体系そのものが、軍事技術の進歩なりあるいは防衛構想といいますか、作戦構想の転換という戦術的な転換に上って変わっていくということは当然予想しておったわけでございますが、主体は、量的なものはできるだけ固定をして、それに質的にいろいろ手を加えることによって、若干ずつ動いていく侵攻態様に対して有効に対応できる防衛力を維持しようというのがそもそもの計画大綱の考え方になっておるわけでございます。  したがいまして、今回も当然この大綱枠組みの中で考えておりますから、兵力量の総枠については、その枠内でできる限りの質的な向上なり近代化を図ることによって、所望の大綱水準、つまり能力が得られるかどうかという検討をしたわけでございます。その際、御指摘のように、現状においてはできる限り陸海空の境、別表には、ごらんのように全体の枠組みがございますと同時に、陸海空の壁ができております。それを動かさないでどこまでできるかということでやっております。ただ、これは、先ほど来申し上げておりますように、今後さらに我が国に対する起こり得べき限定的小規模侵攻というものの態様が変わってきますと、そういった陸海空の任務分担なりも変えないというような固定的な考え方では対応できない事態もだんだん出てまいります。そういうことで、将来方向としては、やはり今先生指摘のように、陸海空の任務分担なり、そういうものも含めた検討ということをやりませんと、防衛力合理化効率化による能力向上ということが、現在の陸海空の枠組みの中のままではなかなか対応できなくなってくるときが来るということで、私どもはそういったものも含めて検討の対象にしておりますが、今回の計画そのものは、その枠組みは動かしていないというものでございます。
  179. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 非常に御丁寧に御説明いただいたので、私も素直に申し上げるのですけれども、これは明らかに陸海空の三軍の筋はそのまま取らないで、できる限りのことをした。量的には余りごたごたしないようにしてそのままにした。固定的に処理された。ですから、その三本の筋が、陸海空の筋も引かれているし量的な筋も引かれているし、そういう筋をそのままにしてやっておられるので、効率化という点では実質的にちょっと問題があるということを言外に認められたなという感じが私はするわけであります。それは、この中期防衛力整備計画というものに格上げする、閣議決定するということに重点が置かれていて、中芽の方は余り議論されてないなという感じがしているわけであります。私はその意味で、中期防衛力整備計画については大層疑念があると申し上げざるを得ないのであります。  今度はやはり金額的な問題に触れざるを得ないので……。例の一%のことでございますので、嫌な顔をしないでひとつ聞いていただくことにしまして、この一%の問題について触れるわけでありますが、大臣にまず基礎的なことを二、三。  五十一年の十月二十九日に「防衛計画大綱」が決定され、そして五十一年の十一月五日に一%の問題というものが同じく閣議決定された。この二つはペアで日本防衛力整備基本的な命題として扱われておったわけでございますが、この二項目は今日もなおかつ厳守していかれる、これを守っていかれる、こう考えてよろしいのですか。
  180. 加藤紘一

    加藤国務大臣 五十一年の十月二十九日に決められました大綱とそれから十一月五日に決められました閣議決定、今いろいろセットとして論じられておりますけれども、私たちはこれは別個のものであろう、こう思っております。そして、それぞれ別個の閣議決定として私たちは守ってまいりました。  大綱について言いますと、私たちはその枠組みを現在も守ってまいりたい、こう思って、今回の中期計画もその枠の中でつくられておるわけでございます。それから、一%に関する閣議決定は従来から守ってまいりたいと思いましたし、守ってまいりましたし、今後もできる限り守ってまいりたい、こう考えておりますが、それぞれは別個の閣議決定だと思っております。
  181. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この一%の問題につきましては、当時の三木内閣における説明が一%程度とたしかなっておった。めどとして一%。というふうに、めどもついていたし程度もついておるから当分の間このぐらいで、量的にもぼんやりとこうついておったと思います。しかしその後、宮澤官房長官時代にこれが一%以下というふうに国会答弁でなりまして、以降一%以下が厳守されて今日まで来たいきさつがあると思います。  これはちょっと重大な話になりますが、あなたのおっしゃりようはこの三木内閣で設定された当時の物の言い方に戻られるのか、一%以下というそれから後の内閣がずっと守ってきた宮澤答弁の路線に乗った上で何とか努力するというふうにおっしゃっておられるのか、どちらなんですか。
  182. 加藤紘一

    加藤国務大臣 従来、政府の答弁は宮澤答弁以来この金額を超えないことというふうになっております。仮にこれが超えてもいいということになりますと一%程度論ということになるわけですけれども、私たち今守らなければならないのは一%の中におさめるということだと思っております。それを単年度でできるだけ長い期間守れるように努力してまいりたいと思っております。
  183. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 わかりました。そうすると、宮澤答弁の枠の中で頑張る、そしてこの中期防衛力整備計画五年間の分については、先はわからぬけれども、今年はともかく一%の中で頑張る、こういう意味でございますか。
  184. 加藤紘一

    加藤国務大臣 本年度につきましては、ベースアップを仮に常識的な金額を実施したならばなかなか一%の中におさまり切れないのではないかという問題がありまして、それで今度新しい枠の問題を私たち政府部内で提起したわけでございますけれども、御承知のような政府決定がありましたので、できる限り守っていきたいと思っております。  六十年度について取り上げて申しますならば、先ほど各委員から御指摘のとおりGNP基準改定の問題もありますので、六十年度については弾力的に考えられる余地がかなり出てきたのでないかなと思っております。
  185. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そういたしますと、どちらが先かはわかりませんけれども、経済企画庁がこのたび行った名目GNPの改定によりますと、その伸び率を考慮いたしますと、GNPの一%という問題につきましては、GNPがふくらむわけでありますから、今年度の防衛費というものは十分その中に含まれてしまう、こう見ておられるわけですか。
  186. 加藤紘一

    加藤国務大臣 五十八年度のGNPにつきましての統計が出まして、これがかなりの金額の上方修正になったわけでございますから、六十年度につきましてはベースアップを実施してもかなり弾力的にその中におさめ切れるような状況が出てきたのでは狂いかなと予想されます。もちろん六十年度のGNPがどのような金額になるかは、経済企画庁はまだ明言しておりませんので確たることは私たち防衛庁としても言えませんけれども、かなり弾力的に考えられるのではないかなと予想いたしております。
  187. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そういうふうになってきたということを考えておりますと、今回の一%の問題については、防衛庁長官が一%を守るということについてだけやっていると日本防衛というものは問題があると提起されて、いろいろ政府部内の間でも頑張っておられたというのは私は新聞によって承知しているわけでございますけれども、私はGNP一%は日本防衛費の歯どめとして、確かに無制限に防衛費が増強することは好ましくないし、その与えるところの日本の外交方針その他外国に対する影響、日本国内の産業バランス等考えても好ましくないとは思いますけれども、長官GNP一%の問題についてこれをもう一回新たな立場で見直すということで努力されておったことも承知しているわけでありますが、この見直しとか断固一%を守るとか先国会から多数議論されていた問題は、こうした経企庁の基準見直しということによって実際的にはその枠の中に今年はおさまってしまった、こういうふうに言っておられるわけでございますか。
  188. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私たちは、最初から政策的に一%の撤廃があって、それをぜひやらなければならないというふうには考えておりませんでした。私たちが累次申しておりましたのは、六十年度について自衛官等のベースアップはちゃんとしなければならないし、そうなりますと八十九億円のすき間ではこれは実施できそうにもない、そうして当時、GNPの改定の問題は私たちも予想しておりませんでしたのでそうなった場合にはこのベースアップと一%の関係はどうするかという一つの問題があったわけでございます。これは純粋、客観的、数字的な問題でございます。それから、二番目に、「防衛計画大綱」の水準達成する五カ年計画をつくるとどうしても今後五年のGNPの枠の中におさまりそうにもないということが私たち予想されたものですから、そうしたならばこの問題はなかなか禅的答で済ますわけにはいかないだろう、したがってよりすっきりとした議論をしなければならないとするならば、この矛盾解決のために新しい枠ということを考えなければならないのではないか。この二つの問題点からスタートいたしたわけでございます。  第一の問題点につきましては、その後GNPの改定によりかなり弾力性が出そうなので少し問題が薄らいできたわけですが、五カ年の問題につきましてはこの間決定いたしましたように一・〇三八%となります。この問題はいろいろ政府部内でも討議いたしましたけれども、その整合性の問題よりもできる限り長い期間これを守るように努力すべきだという強い意見がございましたので、単年度につきましてできる限り守っていこうという決心をいたしておるわけでございます。
  189. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 お立場はよくわかりましたが、私の方から言わせますと、日本防衛費の算定は国際的に見て異常に低い算定になっているのではないかと思われます。  と申しますのは、私は前国会におきまして防衛庁の当時の宍倉経理局長議論をした際に、NATO方式で算定するとどのぐらいになるか大分議論したのを覚えておられると思います。私も大分調べてみましていろいろ議論させていただいたわけではありますが、そのとき結局、自衛官の年金等についてはNATOの方式はマル秘でよくわからないけれども、研究したところによると大体この辺ではないかというような前提つきで御答弁になりまして、GNP一・二を超えるというふうなお話でございました。私はそのときに、いわゆる第二次大戦中の遺族年金あるいは当時軍人だった旧軍人の年金等については日本の場合は非常に多く出ているわけでございますから、これは含まれないというお話でございましたがこれをもし入れたといたしますと、またそれに加えて、海上保安庁というのは日本では軍隊とはみなされてはおりませんで、運輸省所管のシステムとして発達させてこられたわけではございますが、その哨戒能力、救難能力、警備能力等は、外国におきましてはこのシステムのお手本になったアメリカを初めとしてコーストガードとして軍事費の中に算入されていることでありますからこれも入れるといたしまして、また国鉄の一部経費、ドイツ等におきましては国鉄の緊急時における能力というものは軍事能力であるという立場から防衛費の中に算入されているようでありますからこれも加えて、また科学技術研究費、特に基礎的な部門につきましてはアメリカの場合はほとんど国防総省からの支出であるというような例もございますのでその一部も算入する等の計算を仮にしてみるとどんなことになるか、私なりに勘定したわけでございますが、そういたしますとこの数値は二%ないし三%、多く見積もればもっとになりますけれども、そのぐらいになるのではないかと思われます。そうしますと決して小さな数値ではない、特に経済大国である日本としては非常に大きな数値が出てくるな、こう感じているわけであります。  要するに、日本の国が防衛費として考えている部分が小さいのであって、外国から見るならば日本防衛費に当たる勘定というのは非常に大きな勘定になるぞと私は思うわけであります。この点、大臣はいかがお考えでございますか。
  190. 池田久克

    ○池田説明員 今年四月に先生がこの問題について大変詳細な議論をされたことは十分承知しております。今の先生のお話の中で若干意見がございますのでその点をあらかじめ申し上げておきますと、自衛官の恩給とか年金は現在の防衛費の中に含まれております。これは共済組合の負担金とかそういう格好で入っております。  防衛費の問題でありますけれども、現在我々が申し上げている防衛関係費昭和三十年代から確定しておりまして、ずっと続けております。各国の防衛費のあり方についていろいろ調べてみますと、やはりその国の国防組織のあり方とか伝統とかそういうことでいろいろ差があるようでございます。そして御指摘のNATO定義が今お話しの背景だと思いますけれども、これも総額だけが各国出ておりまして、その詳細については秘になっておりまして、我々も定かにわかりません。いろいろな方法で推論いたしますと、例えば戦争中の恩給等につきましては職業軍人の分とかそういうものが中心のようであります。我が国の恩給費は御承知のように職業軍人だけではなくて、それ以外の軍人あるいは戦争被害の補償とかそういうことが入っておりまして区分されておりませんから、一・二%台という話は、一応軍人恩給の普通恩給を全部入れて計算をしておりました。  それから、研究開発とかそういう点についても各国まちまちでありますが、通算して申し上げますと、各国の防衛費の中で専ら軍事目的に供している研究開発とかそういうものが含まれているようであります。そうじゃないものについては入っていないと考えるのが妥当なのではないだろうかと思います。例が適当かどうかわかりませんけれども、例えばアメリカの研究開発の中でもNASAの分はどうも入っていないように我々には思われます。詳細はわかりません。  そういうふうに考えますと、いろいろな定義がございますけれども、押しなべて判断すれば、専ら軍事目的に使われている、そういう経費を計上しているように思われます。そういう観点から見ますと、現在の海上保安庁とか文教予算とか道路とかそういうものは我が方の防衛関係費にはなじまないものと考えております。
  191. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それは日本の考え方でありまして、外国の考え方ではない。私の知っているアメリカの軍事研究費は基礎研究に大量に出され保ておりまして、例えば雌のハエに雄のハエがどうして集まるかということにまで軍事研究費が出ているわけでありまして、それが軍事であるか平時であるかなどということについてはそう問われておらない。私は、基礎的研究に出されている費用の相当部分は軍事研究費に入っておるなと思っているわけであります。また、コーストガードについては日本では軍事とみなされておりませんのは私も知っております。しかし、それを入れているのか世界的な常識というものでございます。  したがって、私は、諸外国から見れば、この防衛費の算定は国内向けのお話だ、国際的な基準からいったら非常に低いぞと申し上げているわけであります。特に最近アメリカにおきましては、貿易摩擦に加えて防衛摩擦が爆発中であります。GNPの一%しか防衛費に出していなかったのか。最近、自民党の中の偉い人が議論されているのがアメリカでは大変なパブリシティーを得まして、こんなにちょっぴりしか防衛費に使っていなかった日本はけしからぬという議論にはね返りそうな雰囲気がございまして、私も別の意味で心配をいたしているわけでございます。私は、GNP一%と国内に向けて説明するはよい。しかし、アメリカに向けては、実際的にこのくらいの数値であるということについてもはっきり説明するのが本当ではなかろうか。そうでないと奇妙な数値になってしまうなど考えるわけであります。法律の弾力的運用とか弾力的解釈というのは我が国においてしばしば行われ、法改正を伴わないで事実が先行するということがよくありまして、当委員会でもさんざん問題になったところでありますが、私は、日本防衛力、それに対する予算というものはその成立の当初から小さ目に小さ目に説明するということが我が国防衛にとっては、ある種の説明を持ち得たなという感じがするわけであります。中国に対しても東南アジアに対しても小さいと見せた方がよかったのでしょうし、ソビエトに対しても小さいと見せた方がよかったのでしょう。したがって、私は、この問題については説明するべきところははっきり説明する方がいいなと思っているわけであります。  この点は御答弁は要りませんけれども、今後御研究をいただいて、どの程度のものなのか、一%超したか起さぬかというよりも、中身が算定の基準で倍も違ったのでは話にも何もならぬわけでありますから、私の言うところによれば三倍違うわけでありますから、これは議論というよりもむしろ研究をいただいて実質的に考え合わせてみる、私どもも御相談してみたいと思っているわけであります。今後の御研究を要望したいと思います。答弁されますか。それではその点はひとつ今後御研究をいただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  192. 加藤紘一

    加藤国務大臣 いわゆる統計というのは定義が重要でございますから、現在の議論は現在私たちが持っている防衛関係費の定義でやらさせていただきたいと思います。もちろん定義の問題ですから、諸外国の防衛費の統計の研究をするときに、ほかの国はどういうような基準でやっているのか、かなり秘のところもありますけれども、できるだけ研究してみたいと思っております。  ただ、現在この問題を提起いたしますと議論がいたずらに混乱いたしますので、現在のところはこの基準でやらせていただきたいと思います。
  193. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は混乱しないで立派になると確信しているわけでございまして、今みたいないいかげんな一%論というのは迷惑至極であると私は思っているわけであります。  さて最後に、外務省の方にわざわざ来ていただいて恐縮ですが、この防衛問題と貿易問題の両者がアメリカで今一緒に議論されるような風潮がございまして、心配されているところでございます。私どもその点について現状どうなっているか、どういうふうに対処されようとしているかということを承りたいと思います。
  194. 渡辺允

    ○渡辺説明員 先生ただいま御指摘になりましたとおり、米国の議会あるいは言論界等で一部に貿易問題と防衛問題をあわせて論ずるような傾向があることは確かでございます。ただ、米国の行政府自身はあくまで防衛問題と貿易問題は別に考えたいというふうに、はっきりした立場をずっととってきておりますし、私どもも当然なことながら、防衛問題は我が国防衛政策の立場から我が国としても努力する、貿易問題につきましてはやはり日米貿易関係という観点からそれぞれの問題の解決に努力するという方向で問題に対処していきたいと思っております。
  195. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 では時間が参りましたのでこれで最後にいたします。  GNPの一%問題に加えまして、中期防衛力整備計画そのものにつきまして私は何点かの疑点を呈しました。今後もこの問題はもう少し詰めてかからなければいけないと思います。単にこの計画だけでなくて、我が国防衛が本当にこれでいいのか、単なる数字合わせではなくて、中身のある議論にしなければならないと思います。  それからもう一つ、防衛力の問題について議論するときに、国際関係を無視して議論する、これはもうどうしようもない。仮想敵国問題というのは確かにあるわけでございまして、仮想敵国などという用語を使ってやり合っておりますと本当の議論にならないという状況が生まれてくるわけでございます。  私どもは、実質的に日本を安全に保つというためにはどうしなければならぬか、そしてまた日本の周辺諸国を平和にするためにはどうしなければいかぬかという原点をその議論の際には忘れてはならないと思うのであります。それと同時に、日本平和憲法に基づいた幾つかの枠組み、非核三原則とか武器禁輸三原則とかGNP一%以下とか、その内容については多くの議論がありますけれども、戦後今日に至るまで、私たちの先輩も含めまして随分苦心惨たんしながら日本の平和原側を希求しようとした、そういう汗の結晶だっただろうと私は思います。それが完璧にうまく仕上がっていないことも事実でありますし、これをさらによきものに仕上げていくというのが私たちに課せられた使命ではないかと思うわけであります。  防衛庁長官も大変な勉強家でいらっしゃるわけでございますから、ひとつこの辺も将来十分御研究いただいて、日本安全保障の基礎的な問題についても仕上げていくという意気込みでかかっていただかなければならないということを私は要望するわけであります。
  196. 加藤紘一

    加藤国務大臣 渡部委員指摘のとおりであろうと思います。私たちとしては、GNP一%を今後ともできるだけ守ってまいりたい、こう思っております。  しかし、その一%を守っても、その中で専守防衛に反するような装備をやったら、私たちはまた御批判を受けるし、それは許されないことであろうと思っております。そういう意味で、内容議論すべきであるということは、私たちもそのとおりであろうと思います。その内容議論は、単に装備の面につきまして一部の専門家的な議論をしていただくということだけではなく、委員指摘のように日本が置かれた国際環境そして防衛基本的な発想はどうあるべきか、それから国民世論、国民の意識、憲法のもとでどうあるべきか、そういう広い見地からいろいろ御議論いただくことは私たちは非常に賛成でございまして、それにつきまして政府の方も十分に御議論に応じられるようにしていかなければならないと思っております。きょう、この安保持でかなり内容にまで入りました御議論をいただいたことは私たちの刺激にもなりますので、今後とも私たちも十分に御議論に対し実のある論議ができますように精いっぱいの努力をしてまいりたいと思っております。
  197. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 終わります。
  198. 三原朝雄

    ○三原委員長代理 吉田之久君。
  199. 吉田之久

    ○吉田委員 海上保安庁おいでいただいておりますね。  まず初めに、海上保安庁に係る質問からさせていただきます。  私どもは概観して、今日の我が国海上警備体制が何となく弱々しいものなのではないか、いささか心もとない感じがいたすわけでございます。例を挙げれば、去る四月二十五日の朝、宮崎県日南市沖の日向灘で、日本漁船に偽装した不審な小型船を漁業監視船が立入検査をしようとしたところ、高速で逃げたことが端緒になって、海上保安庁の航空機四機、巡視船延べ二十三そうを動員した捜索、追跡が行われた、しかし首尾を果たすことができなかったようであります。今日まで長年にわたる海上警備体制が保安庁を中心にしてとられておりますけれども、たまたま不審船を捕捉したのは昭和二十八年に稚内沖で起きたソ連スパイ船のケースだけだというふうに聞いておるわけでございます。何かこの海上警備の体制を組むに当たって、現行の法制上では十分でない点があるのではないだろうかというふうな気もするわけでございますが、海上保安庁の責任者としてこの辺の問題をどう認識なさっておりますか。
  200. 宗形健壽

    ○宗形説明員 お答えいたします。  海上保安庁は海上保安庁法第二条によりまして「法令の海上における励行、」「海上における犯罪の予防及び鎮圧、海上における犯人の捜査及び逮捕」等を任務としておりまして、領海警備等海上における治安の維持は海上保安庁が第一義的に行う責任を有しております。     〔三原委員長代理退席、委員長着席〕  このため、領海を航行する外国船舶につきまして監視、取り締まりを打っておるものでありまして、我が国領海内で不法行為を行い、または不審な行動をとる外堀船舶のうち、不法行為船に対しては直ちに警告の上退去させ、悪質なものにつきましては国内法令違反として検挙しております。また、理由もなく排回または停留等不審な行動を行っている船舶に対しましては、当該行動の中止を要求しあるいは警告の上退去させる等必要な措置を講じているところでございます。  しかし、過去の事例におきまして、先生おっしゃるように高速船による不審な行動が発生していることも事実でございます。そのため、海上保安庁巡視船の性能の向上を図りますと同時に、諸外国の領海警備に係る法制度を調査研究して、我が国としましての領海警備のあり方について各般の御意見を踏まえて今後検討してまいりたい、かように存じております。
  201. 吉田之久

    ○吉田委員 御答弁はそれなりにていをなしておりますけれども、しかしおっしゃるとおり海上保安庁の能力によってその都度的確に退去させたりなし得ておるのであろうかという点が実は私どもの聞きたいところなんでございます、海の方は無害通航権というものがありますし、現行の我が国では領海を侵したこと自身は別に罪に当たらない、紛れて漂流したというようなことと余り変わらないのではないか。現にスパイ防止法もない現状であります。しかしいろいろと察せられるところ、密輸やスパイ活動は頻々に行われておることだけはお互いに否定できないと思うのです。  そこで、私たちが心配いたしますのは、刑法犯の範囲内での行動があったときにだけ海上保安庁というものは対応できるのではないだろうか。その際に海上自衛隊は何をなし得るかということなんでございますけれども、間々、例えば尖閣諸島の場合の中国の武装漁船があらわれたときなども海上自衛隊が協力をいたしております。しかしこれは航空機をもって情報収集に協力したけれども、この行動も建前上は訓練を行うという姿勢にとどまっていると私どもは存じております。  一方、巡視船の方も、仮に不法なスパイ活動等を行っておる不審な外国の船があるとして、これが退去を命じても一向にそれに応じない場合発砲できるかどうか。これは事実上は非常に難しいことになってくると思うのです。よしんば、そういうことを行って相手に命中した場合にどうなるだろうか。そういうことは行き過ぎだといって、社会であるいは国会で問題にならないだろうか。こういうことを絶えず考えながら海上警備に当たらなければならない我が国海上保安庁、これは言うならば絶えず恐れの哲学を感じながら対処しているのではないだろうか。今しきりにシーレーンの安全保障が論じられる時期になってきておりますだけに、平時におけるシーレーンの安全保障についての総合的な危機管理システムというものが現状では構築されていないりではないかというふうに考えるわけなんでございますが、このことに関しまして、海上保安庁と防衛庁長官の双方からこの現状をどうお考えになっているか、お答えをいただきたいと思います。
  202. 宗形健壽

    ○宗形説明員 お答えいたします。  平時における海上輸送の安全問題ということにつきましては海上保安庁の任務と考えておりますが、有事の際の外国の艦船等からの武力による攻撃に対応するシーレーン防衛につきましては自衛隊の問題であると考えております。
  203. 西廣整輝

    西廣説明員 御質問は、平時における海上のいろいろな緊急事態の問題だろうと思いますが、平時におきます海上における人命あるいは財産の保護あるいは治安の維持といったことは、第一義的には海上保安庁が担当すべき分野だろうというふうに考えております。  なお、私どもの方は自衛隊法によりまして随時必要に応じて海上保安庁と緊密な連絡をとる、状況によっては、海上保安庁の能力では極めて困難なような状況になれば特別な事態によって海上警備行動を行うというようなこともございますけれども、先生のお尋ねは、どちらかといいますと、そういったことよりも現在の内閣の中の体制として何らかのシステム、そういったものを考えておるかというような御質問だろうかと思いますが、その点につきましては先ほど臨調からもいろいろ勧告もありまして、さまざまな緊急事態にどう対応するかというようなことで内閣全体として今お考えになっておると思いますので、その一環としてこういった問題も取り上げられるのではないかというように考えております。
  204. 吉田之久

    ○吉田委員 長官、私ども国民の心配は、例えば昨年でしたか、自衛隊で射撃演習の最中に突然気のふれたような隊員が出て、そして味方を撃っちゃった。そして逃走した。自衛隊員が隊内で犯罪を犯して逃亡した場合に、それを追っかけるのは警察官であった。この事実を知っているわけなんですね。それから、密輸船やあるいはスパイ船が頻々に日本の領海の中に入ってきておっても海上自衛隊は何もできない。そして、海上保安庁といえども実力行使はほとんどできない。平時で特別のことはないとしても、そういう状態の累積の中で、ある日突然平時から戦時にがらっと変わるということはないと思うのですね。何となくその前兆らしきいろいろな行動が出てくるときに、さあ海上自衛隊は動けない、海上保安庁は対処できるのか、こういう非常な不安を感ずるわけなんですね。また、今のお話を聞いておりましたら、有事になった場合には海上保安庁は何もしないのかという疑いも出てまいりますね。  その込もう少し立体的に継続的に海上保安庁と海上自衛隊が、我が国の沿岸を警備する意味できちんとした体制を組まないといけないのではないかということをしきりに感ずるわけなんです。空の方は、しょっちゅう領空侵犯がありますね。これに対してはどんどんスクランブルを、年に何百回もかけておりますね。これは保安庁みたいなものはないわけですから、直接航空自衛隊が対処している。陸海空それぞれの対応がありますけれども、全部ちぐはぐでございますね。しかも、そういう状況の中で、そんなことがあっては困りますけれども、だんだん危機が迫ってきたときに我が国というのは本当に対応できるのだろうか。この辺はひとつ防衛庁の方も運輸省、海上保安庁の方も、少し現在の法律に欠陥がありはしないだろうかということを御検討いただくべき時期に来ているのではないか。  それから、今たまたまお話がありましたけれども、行革審の答申の中でも、国防会議を改組して安全保障会議にしなさい、こういう提案をいたしておりますが、その際に運輸大臣というものをそのメンバーの中に入れるべきではないか。これは先ほど公明党の渡部さんのお話の中でもちらっと出ておりましたけれども、やはり運輸大臣の持つ任務、責任、役割、それは有事の際に非常に重要な部分を占めていると思うわけなんですね。この辺のことにつきまして、防衛の責任者であります長官はどのようにお考えになりますか。
  205. 西廣整輝

    西廣説明員 国防会議のメンバーにつきましては現在防衛庁設置法で決まっておりますけれども、その条項の中に、事案によって関係のある大臣は状況によって出ていただいて御意見を述べていただくということになっておりまして、問題は常時出ていただくメンバーにどこまでを含めておくかということであって、それは会議の運営がどちらがいいかということで、状況によりましてはいろいろな省庁の大臣がそれぞれ関係を持たれるということもございますので、そういう点は弾力的に運用できるように現在の国防会議そのものがなっておりますし、将来についてもそういった方向で御検討になっているのではないかというように理解をいたしております。
  206. 吉田之久

    ○吉田委員 これは局長の答弁というよりもやはり長官お答えにならないと、一つの重要な政治判断につながってくる問題だと思いますが、どうですか。
  207. 加藤紘一

    加藤国務大臣 国防会議のあり方、それから新しく第二臨調で提起されました安全保障会議のあり方につきまして、いろいろ今政府部内でどう対処するか検討中でございます。そうした場合に、それぞれの関係の閣僚、どの人に入っていただくかというのはこれからの問題でございますので、ここでちょっと今的確な答弁は、検討中ということにさせていただきたいと思います。
  208. 吉田之久

    ○吉田委員 じゃ保安庁の方、結構です。  次に、シーレーン防衛の問題について御質問をいたしたいと思います。  このシーレーンの論議が出てまいりますと、国民やあるいは諸外国でもそうだろうと思いますけれども、いわゆる昔の帝国海軍が制海権を持つために懸命の努力をした。これは我が国の海軍だけではなしに、イギリスを初め諸外国の海軍の責任というか目標は、より多くの制海権を持つということであったと思うのです。その制海権という概念とこのシーレーンの防衛という概念とがどこかで非常につながってきたりラップしてきている傾向があるのではないだろうか。そういう点で、いわゆる制海権、シーコマンドというようでありますが、シーコマンドとシーコントロールとシーレーン防衛、これはそれぞれ段階の差、ニュアンスの差があると思うのですね。この辺につきまして長官はどう御認識いただいておりますか。
  209. 西廣整輝

    西廣説明員 私も余り学術的に勉強したことはないのですけれども、制海権という場合には、通常やや恒常的にその海域における支配権といいますか、軍事的な支配権を持ち続けるというような感覚ではないかと思っております。  なお、一方、制海というような言葉が時々出てまいりますが、それは、ある状況下においてある一定期間その海域について相手が自由にできないような状況にするという場合に使われておるというふうに理解をいたしております。  それからシーレーンの防衛と申しますのは、どちらかといいますと防衛庁独自の使い方かもしれませんけれども、通常、他国ではSLOCの防衛というかもしれませんけれども、私どもは日本の生存していくための生活必需物資なりあるいは継戦能力を確保するための海上輸送というものを確保するために、港湾の防備から始まりまして周辺海域の哨戒であるとか、あるいは海上護衛というような、航路帯をつくった場合の護衛というようなことも含めまして、総合的な効果によって海上交通の保護を確保しようというような、かなり海上自衛隊の任務そのものに近いような物の考え方をシーレーン防衛という言葉で御説明をいたしております。
  210. 吉田之久

    ○吉田委員 若干の説明がありましたけれども、このシーレーンの防衛というものは、全面的に一切の軍事力を駆使して海ないしその間に横たわる島嶼を制圧するというものではもとよりない。いわゆる海洋国家、資源小国である日本がどうしても調達しなければならない資源、それは遠い海路をたどってやってくる。まずそれを安全な状況に置こうとすることなんだ。したがって、それは絶えず恒常的に置かれた一定の帯そのものでもない。その船とともに安全を守っていく、そういう一つの措置なんだ、それがシーレーンなんだというようなことの説明がよほどはっきりなされませんと、ここから先の日本防衛問題は大変混乱を来すと思うのでございますね。同時に、アメリカに対してもその辺の認識をはっきりさせないと、やっぱりアメリカというのは超軍事大国でございますから、自分たちの尺度で海の防衛のことを考えようとする。しかし、日本の立場は違うんだ、これは一九八一年に鈴木元総理大臣が米国で、シーレーン一千海里は庭先と思って守るとおっしゃったことから端を発するわけなんですけれども、その鈴木総理が言い出して、そして日本が受けとめておるシーレーンのあり方、守り方、それとアメリカが要求しておる、あるいは期待しておるいろいろな構想、その辺のパーセプションギャップといいますか、そのギャップを残したままでシーレーン防衛や洋上防空を皆さん方が展開していかれようとするならば、それは国民の中にもいま一つ理解しがたいいろいろな問題が出てくる、これが今後の防衛問題の一つの論争の種や、あるいは理解を求めにくい溝をつることになりはしないだろうかという点を私ども大変心配するわけなんでございます。  ところが、現にアメリカのシーレーン防衛について一九八二年ハワイで開かれました日米安全保障事務レベル協議で、米国の統合参謀本部のビクリー第五部長が発言をなさっております。この発言というものが、アメリカの海軍あるいはアメリカの国自身が日本に抱いているシーレーンの向こう側の要求、理念、そういうものをいみじくも凝縮しているのではないかというふうに私どもは思うわけなんです。  その発言の要旨というものは、「日本本土および周辺海空域一、〇〇〇カイリの防衛は、中東、韓国など西側にとって極めて重要な戦略地域に紛争が発生した際に、米本土からの大規模な軍事力投入と、その長い補給路確保のために不可欠な要素だ。何も日本自身の防衛のためだけではない。世界的広がりを持った重要な問題だ」こういうことを述べておるわけでございますね。そういうシーレーンの防衛構想の中には三海峡の封鎖も当然含まれる、こういうふうに発言しておる。これが一アメリカの制服の発言だけでとどまるだろうか。事実はそうじゃないようでありまして、いろいろとその後のワインバーガー国防長官の発言や、あるいは向こうの議会の決議等におきましても、この思想というものがはっきりと出てきているわけなんですね。そこで防衛庁長官は、シーレーンの構想というか理念というものは、このビグリー部長が言うまさにそのとおりなんだという御認識に立たれるのか、いやそうじゃないんだ、全く違うんだというお考えを持っておられるのか。違うならば違うということ、どういう点で違う、この辺をまずはっきりしてからこの洋上の問題は考えざるを得ないのではないかと思いますが、いかがですか。
  211. 加藤紘一

    加藤国務大臣 仮にそのビグリー部長の言っていることがそのとおり正確であるとするならば、私たちが考えておりますシーレーンというものとはちょっと違うと思います。私たちが考えておりますのは、先ほど防衛局長が申しましたように、有事の際に我が国に参ります国民の生存を確保するための物資の輸送路を確保しなければならないということと、継戦能力等の面からの物資の輸送が確保されなければならないということであって、それはあくまでも日本有事であって、なおかつ自衛のための必要最小限のものについての概念でございます。  そういう意味では、今吉田委員が御指摘したその部長の発言というものとはちょっと違うのでないだろうかなという感じがいたしております。米国政府我が国のシーレーンの考え方について理解をいたしております。  また、SSCという場ではいろいろな議論がありますけれども、それの一つ一つについて私たちがコメントするということは、現在のところ差し控えさせていただきたいと思います。
  212. 吉田之久

    ○吉田委員 長官の御答弁が最後のあたりちょっとあいまいなんですが、向こうの一専門の部長がそう言うだけならばともかく、やはりこの発想というもの、思想というものはアメリカ全般の支配的な考え方だと我々は受け取らざるを得ませんし、あるいはイギリスのサッチャーさん自身の考え方の中にもそういうものがちゃんと含まれておる。イギリスのサッチャーさんも最近そのことを同じように申しておりますね。ですから、いわば西側が全体としての一つの強い鎖でつながらなければならない、それが極東の部分で非常に弱くなっては困る、それ自身を日本に分担してもらいたいんだというような発想は、当然やはり西側の普通の諸国からは出てくると思うのですね、これは正式な軍隊を持っておる国家でありまして、日本のような特殊な憲法を持っておる国家ではないわけなんですから。しかし、その中で、同じ西側であっても日本というのは別なんだ、これを丹念に説明していかないと、ここから先のシーレーンの防衛や洋上防空というものは思わざるつまずき、そして国民合意を破綻させることになりはしないだろうかという点を非常に心配するわけなんですね。  先ほどからのいろいろなお話でも、小規模限定的な紛争に対しては日本自衛隊だけで対処する、大規模にやってきたときには当然日米安保条約に基づいてアメリカに助けてもらう、核は全く向こうの傘に頼る以外にない、こういう発想であり、かつ今度のいろいろな中期計画を読ましていただきましても、もしくは有事の際にシーレーンを守るために日本アメリカと共同してこれを守るんだ、その共同して守る一部分の備えとしてこういういろいろな正面装備の新しい調達が必要なんだ、こういう説明をなさっていると思うのですね。  ただ、私たちの発想では、そういうふうにある日突然世界の大戦争が始まるだろうか、むしろそれよりも、いわゆる日本に続々と続いて来る補給路、それをどこかで日本にクレームをつけあるいは日本をいじめよう、苦しめようと考え、意図する国があるとするならば、その能力がある国であるならば、ある日突然潜水艦でタンカーや商船を撃つことはあるだろう。それで、それはもちろんその国が撃ったとは言わないでしょうね。何かの事故で沈んだんじゃないか。しかし、そういう中で国民にはどうも不安な状況が出てきておる。原因不明でそういうタンカーや商船が沈んでいく。そうするともう船は、乗組員自身が大変めいってきますね。あるいは乗り組まなくなるかもしれません。そういうことによって日本自身が、経済的な基盤が音を立てて崩れていく。こういうことのためにシーレーンというものがディスターフされる、極めて陰湿な形においていろいろ攻撃をかけられる、そういうことがまずあり得るのではないだろうか。これに対しては日本は守らなければならないと思うのですね。その守り方をまず考えようとするのがこれからのシーレーンなんだというような説明ならば、国民には理解できると思うのですね。しかし、そういうことは全然想定しないで、ある日突然太平洋を中心とする世界の戦争が勃発した場合アメリカ日本は助け合ってシーレーンを守るんだ、その一部のためにP3Cを百機置くのだとかあるいははAEGIS艦を置くのだとかOTHが必要なんだとか、こういう説明になりますと、それは月本はアメリカと一緒に世界の戦争に巻き込まれることを今から覚悟して準備を始めたのかということになると思うのですね。長官、そう考えませんか。
  213. 西廣整輝

    西廣説明員 今、先生が御指摘になりました海上交通の隠密破壊といったような事態につきましては、まさに先生指摘のように、海上で船が沈められるということがなくても、一隻、二隻日本の船がねらい撃ちになるというふうになりますと、船員の方そのものが船に乗らないということで海上交通が途絶するというような事態が当然考えられるわけでございます。そういった点につきましては、大綱の兵力量を考えるときに、平時からそういった海上交通の隠密破壊のような事態が起きたときに直ちに出動できるユニットというものが常にレディーでなければいけないということで、例えば護衛隊群みたいなものが最低四群はあって、一部は常にレディーの状況にあるということが必要である。それがありますれば、そういう事態が起きれば、これは相手を撃沈するとかそういうことではございませんで、海上の交通破壊というのは国際的に見て非常に影響の大きな問題でございますので、そのようないわば悪さをしている者を見つけ出し、どこの国がそういうことをしているということを指摘すれば、そういった事態はとまるであろうということで、現在の大綱の兵力量等の算定の際に、そういった平時といいますか、平時突然起きるかもしれないような事態、そういったものから兵力量というものを算定して、それがある程度別表にある兵力量の基礎になっておるわけでございます。
  214. 吉田之久

    ○吉田委員 今の局長の御説明はかなり説得力があると思うのですね。結局、そういう一つのユニットを用意し、それらが相互関連しながら想定されるその種の海上交通路の陰湿なる破壊に対しては対処できるではないか。これは日本でやらなければしようがないと思うのです。それをさえアメリカに助けてくれとは言えないと思うのです。そういうことのために、こういう新防衛計画というものが必要なのだ。しかも、そのことによってそういう事態を抑止できるのだ、このきちんとした説明をしませんと、いつ、領土、領海、領空だけを守る自衛隊が千海里果てまで出かけていくことになったのだ。それはもう紛れもなくアメリカとの集団安全保障の中に入っていく、それの一環だという観念を国民に与えてしまっては、これはなかなか協力を得ることができないと思うのでございます。そういう意味であの五十一年暮れにつくられた「防衛計画大綱」は、一つの歴史的使命を果たした。確かにあのデタナトの時代に、ともあれまず一通りの装備日本は整えようではないか。しかも、それが決して他国に脅威を与えるものではないという想定のもとにあの大綱がつくられ、そして今日まで十年間努力をされた。決して十分達成はされておりませんけれども、当初の目的の大綱の輪郭は既に達成されていると私は思うのです。あの大綱をつくられたときにAEGIS艦の存在はなかったと思うのです。OTHレーダーもなかったと思うのです。しかし、今に来てそれが必要だ。だとするならば、やはりこの辺で、今すぐとは申しませんけれども、本当に具体的に日本を守ってくれる、国民に説得力のある新しい防衛というものをそろそろ政府が責任を持って考えていくべきなのではないか。それが今度の新防衛計画でなければならないのではないだろうか。  例えば陸上の場合、極東国存在するソ連の兵力が全面的に一挙に日本のどこかに突入してくるということはだれも考えられませんし、そんなことはあり得ないと思うのです。しかし、こちらにとっても三海峡が必要であるというならば、そのシーレーンは向こうの国にとっても極めて重要なシーレーンであります。津軽海峡を強行突破する、あるいは対馬海峡というよりも、まず宗谷海峡を向こうは確保しようとする、そういう場合にはどうしても稚内だけは確保しなければならない、こういう想定のもとに向こうが構えてくるかもしれない。北方領土に既に一個師団を置いておる現状において、ひょっとして根室から上陸してくるということも考えられるかもしれませんけれども、その可能性よりも稚内の場合の方がはるかに大きい。あってはならないことでありますが、もしもありとするならばその辺が一番の急所なのではないか。ならば、それに対して逐次その対応を進めてそういう事態を起こさせないように抑止しよう、それがこれからの五カ年計画でなければならないと思うのです。それは今度の五カ年計画の中に一部盛り込まれ始めておりますことは、それだけ我が国防衛構想というものが現実化してきたなと私どもも考えておりますけれども、ただ単に十年一日のごとく、あのデタントの真ん中につくられた計画大綱を後生大事に、ただこれを達成するだけのために頑張っておりますという長官説明政府説明は今後国民に対して説得力を持つだろうかと私どもは懸念しておるわけなのですが、長官はどうお考えになりますか。
  215. 加藤紘一

    加藤国務大臣 シーレーン防衛につきましては、大綱の作成の前の段階から、海上交通路の安全確保という海上自衛隊の任務の最大のものとして存在しておったと思いますし、海峡、港湾の安全確保という意味大綱の中にもその精神は書かれておると思います。した勝って、海峡というものが我が方にとって重要であると同時に、また向こうにとっても重要であることは事実でございますが、そういった際に我が方でも対潜活動とか対機雷活動というような形をもって我が国の交通路の安全確保ということでやっていたと思います。  それがその後科学技術の進歩に従いましていろいろ変化してまいりますゆれども、その変化につきましてはいわゆる技術進歩に応じた我が方の質的向上ということで対処していき、また今度の五カ年計画の中でもそういう発想で盛り込まれていると思います。もちろん防衛計画のあり方というものが未来永劫このままでいいというわけではございませんし、私たちの今度の五カ年計画の中でも、大綱の枠の中でいろいろ合理化、近代化に努めることができるところはやってまいりましたけれども、その点も含めまして今後いろいろこの国会の場での御議論を参考にしながら対処してまいりたいと思っております。
  216. 吉田之久

    ○吉田委員 そういう意味で私どもこの国会で論議を始めているわけなのでございまして、いろいろこじつけの理屈はどのようにでもつくと思います。しかし、それに国民が合意しなければ本当の日本防衛はできないと思うのです。脅威とは何か。それは我が国侵略しようとする意図と能力を持っておる国がありとするならば、それが脅威である。だとするならば、それに対してこの日本を安全に守り続けようとすることは何か。それは、この国を守ろうとする意欲と能力がなければならないと思うのです。いかにこの中期計画達成していっても、いかに正面装備だけを整えても、自衛隊員の中に、国民の中に、本当に納得できる防衛だ、守ろうという意欲が出てこないと完全な防衛にはならないと私は思うのですね。  最後に、時間がありませんので一%問題についてちょっと聞きますが、当初の五九中業といいますか、今後の、格上げされるであろう新しい五カ年計画は十九兆二千億か三千億でしたね、防衛庁の考え方は。これはなかなか公式に言えないと思いますけれども、恐らく長官は否定なさらないと思うのです。防衛庁自身が今考えたこれからの五カ年計画というものは、限りなく一・一%に近づくものであったはずですね。ところが、国民の世論はあくまでも一%を守ってほしい。現にそれは十年間変わらざる自民党政府の公約でもありました。そこで、私どもの推測なのですが、自民党内でもいろいろ論議をされた、そして一%にも抑え切れないけれども、一・一%にはできない、そこで一・〇三八%という数字が出た、たまたまGNPの計算の算定基準が変わりまして、そのことを奇貨として、結果的には、どうやら五年間の平均は想定されるGNPの一・〇一六になりそうだ、そういうところにまず来ていると思うのですね。  そこで、お聞きしたいというようも確かめたい点は、これからの日本防衛というものは二つの定量的な面で縛られた。一つは、依然として一%枠というのは残っているはずですね。またこれは消えてないと思うのですね。それから、五年間で十八兆四千億という数字のグロスが決まってしまった。しかも先ほどの各党のいろいろな御質問に答えて、それは間違いなく上限値でありますと言ったから、それ以上はないということですね。国民の方から見れば、五十九年の我が国防衛費の支出でも、せっかく予算が組まれながら、節約額あるいは削減された部分が何十億かありますね。だから倹約しようと思えばできるんだなということを知っておるわけなんですね。これは大変いいことだと思うのですよ。できなければしようがないけれども、もはや要らないものがあるならば本当にそれは節約した方がいい。GNPのよほどの伸び縮みがあれば別でありますけれども、そういう努力を重ねていくならば、防衛行革というようなものを本気で進めていき、スクラップ・アンド・ビルドをどんどんやっていき、チェック・アンド・レビューを本気で防衛庁、自衛隊の中にも進めていくならば一島以内でいけるかもしれない、できればそうしてほしい、こういう気持ちは今時点で国民の中に非常に強まってきていると思うのですね。ですから、先ほど来の、まず単年度はできるだけ一%を守ります、なるべく長く守りたいと思います、守る努力をいたしますというお答えは、それ自身それで。いいと私は思いますけれども、言葉の答えよりも、本気でその努力をしょう、こういうお気持ちを長官は今日はっきりと持っていらっしゃるかどうか、その辺だけお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  217. 加藤紘一

    加藤国務大臣 たびたび申しておりますけれども、私たち防衛庁、自衛隊が使います防衛関係費というものもいわゆる行革とか効率化の問題に対して聖域であってはならないのだ、こう思っております。また、各省にわたります節約がかかってまいりましたときも、私たちもそれに応じてまいりましたし、また防衛庁、自衛隊の場合には海外から調達するものも非常に多いのであります。そして、円のレートが変わったりいたしますと、その辺をできるだけ有利に利用することによって調達金額を少なくする努力も現に五十九年度でもやっていると信じております。今後とも私たちはそういう努力は続けていかなければならないと思っております。しかし今の段階でそれぞれの装備、それぞれの予算が完全に節約できる範囲のものであるかと言われましたならば、今度の五カ年計画の中に要求いたしましたものも完全にぎりぎりまで財政当局との折衝の結果縮めたものでございまして、また調達時期をずらしたりすることによって原案よりも下がっているものでありまして、そう簡単にたやすくできるものではありませんけれども、吉田委員指摘のとおり、私たちも現在の形の中でその効率化に努めてまいりたいと思います。  また、吉田委員のおっしゃいますのは、それ以外に、もっとより根本にさかのぼって防衛のあり方等について議論して、我が国状況我が国の技術水準に合ったより効率的な政策ができないものかという根本的な問題も含んでおるように思いますけれども、その点につきましては、次の臨時国会または通常国会等で、特にこの安保特等の御議論、中身についての御議論をいただいた上で十分に考えてまいりたいと思っております。
  218. 吉田之久

    ○吉田委員 ありがとうございました。質問を終わります。
  219. 森下元晴

  220. 東中光雄

    東中委員 中期防衛力整備計画に関連してお伺いしたい。  今度発表されたといいますか説明されました中期防衛力整備計画は五九中業の政府計画への格上げた、こういうふうに一般に言われておるわけですけれども、昭和六十一年度から昭和六十五年度までの中期業務見積もりが防衛庁の中で策定をされて八月七日に国防会議に報告をされたと承知しておるのですが、その五九中業と閣議決定されました中期防衛力整備計画とは中身は一緒なんですか。違っておるとすればどこがどういうふうに違っておるのかお伺いしたいのであります。
  221. 西廣整輝

    西廣説明員 今回閣議決定されました中期防衛力整備計画は、そもそもの作業としては、五九中業という形で防衛庁内部の参考資料という従来の考え方でつくられたものが途中から政府計画にするというように変わったことは御承知のとおりであります。  それでは中期防衛力整備計画と中業とどう違うかということになりますと、具体的な中身を個々に申し上げるのはいかがかと思いますが、そもそも政府計画でございますので、この計画には財政当局あるいは外交当局その他国防会議のメンバーである各省庁の御意見も入った計画になっているということでありますし、政府計画ということで、五六中業あるいは五三中業等と比べますと、政府としてここまでは確定できるということでございますので、項目七の他について言えば、五六中業ほど細部にまではわたっていないという違いがあろうかと思います。
  222. 東中光雄

    東中委員 いや、五六中業と比較してくれと言っているのじゃなくて、五九中業として防衛庁長官は、八月七日でしたか、国防会議に報告をされたと伝え聞いておるのでありますが、それは報告されたのですか。その点はいかがでしょうか。
  223. 加藤紘一

    加藤国務大臣 五九中業につきましての防衛庁の原案を八月七日に国防会議に報告いたしました。
  224. 東中光雄

    東中委員 その報告された五九中業の原案は、五九中業として国防会議で承認をするという形ではなくて、国防会議を経て閣議決定にして、格上げというか別のものにしようということになったと承知しているのですが、それでいいのですね。
  225. 加藤紘一

    加藤国務大臣 報告したということで若干の混乱があるかと思いますが、それは作業の進捗状況、そして特に国防会議で報告が了承されますには他の省庁、特に財政当局との調整を経なければなりません。八月七日の段階で報告をいたしましたのは、その財政当局との調整がまだ完了していない途中経過という形で、財政当局と議論しておりますときの防衛庁の原案はこういうものでございますという形で説明したと申し上げた方が正確かと思います。
  226. 東中光雄

    東中委員 説明をされた従来の中期業務見積もりということになれば、防衛計画の作成等に関する訓令によれば、中期業務見積もりといってもそこには二つがある。一つは、いわゆる能力見積もりがある。「防衛力の不備点及び改善点に関する評価見積り」、いろいろ防衛の態勢の問題とかあるいは自衛隊の体制の問題、字は違いますけれども、そういう体制を基準にして決める、そういう問題点が中期業務見積もりの内容説明の中には当然入っているはずですね。そして、いわゆる事業見積もりというのもある。この二つがあるうちで、今度政府計画になると、その前半といいますか、能力見積もりの分はすぽっと外してしまったというふうに理解をしていいんですか。
  227. 西廣整輝

    西廣説明員 御指摘のように、防衛庁でつくっておりました当時の部内作業としては、中期の能力見積もりと業務見積もりという二つに分かれておるわけでございますが、今回政府レベルでお決め願ったものは、性格としては今後五カ年間になすべき事業中心とした事業見積もりに非常に近いもの、中心としたものというふうにお考えいただきたいと思います。いずれにしましても、そういうものを政府でお決めいただくについては、当然のことながら能力的にどういう現在の状況であり、どういう形に持っていくかということを十分御説明した上で決められたものでございますので、防衛庁として作業をいたした能力見積もりあるいは業務見積もり、両者の考え方というものが土台に入っておるというふうに御理解いただきたいと思います。
  228. 東中光雄

    東中委員 考え方じゃなくて、能力見積もりと業務見積もりを合わせて、中期業務見積もりとして今までは国防会議の承認を得ていたわけですね。今度は承認を得るという形じゃなくて、政府決定にするということになって、そこでは原案にあった能力見積もりの分は外してしまったということになっているんでしょう。そうじゃないんですか。そうじゃなかったら、じゃ能力見積なりの分があるんですか。  今事実上いろいろ説明されております「中期防衛力整備計画について」昭和六十年九月十八日国防会議決定閣議決定ということで、プリントをいただいておりますけれども、この中には能力見積もりというようなものはないように見えるんですけれども、どうなんでしょう。
  229. 西廣整輝

    西廣説明員 御理解いただきたいんですが、私どもは、防衛庁でつくっております例えば業務見積もりあるいは能力見積もりの表紙を、表紙だけかえて政府計画に格上げしたといったように、そのものがすぐ政府で御審議いただいて決定するか、あるいは防衛庁限りのものかということではございませんで、能力見積もりも含めて、今後五カ年間にいかなる事業に着手し事業をやるべきかという、業務の五カ年間の中期の防衛力整備計画という新しいものを、今回政府でお決め願ったというふうに考えております。
  230. 東中光雄

    東中委員 政府決定にすることによって、国会でも報告をし、シビリアンコントロールを確保するということになるんだというのが政府側の説明のように思うんですけれども、ところがこの閣議決定ないし国防会議決定と言われる文章を見ると、さっぱり——いわば事業見積もりだけ書いてある。この中業をつくる前の段階の制服レベルでの中期防衛見積もり、これは防衛庁長官が承認されたものがあるわけですね。国際情勢なりあるいは防衛体制なり、全部決めているはずであります。シビリアンは、そういう情勢分析をして、それで中期業務見積もりをつくる参考にされたい、それはよろしいといって、防衛庁長官は承認をした。できた。しかしそれはもう全然防衛庁長官どまりで閣議にも何にもかかっていかない。能力見積もりさえ外されてしまっている。結論だけ出ておるということで何のことだかさっぱりわからぬわけですな、具体的に言えば。  これはただ、この結果、十八兆四千億程度のこういう、私たちの言葉をかりれば大軍拡計画を進めていく上での権威づけですか、あるいはそのための政府決定という以外の意味を持ってないように思うのですけれども、なぜそういうふうに国防会議にしろ政府閣議決定にしろ肝心のことが入らないのかということについて、長官どう思われますか。
  231. 加藤紘一

    加藤国務大臣 この政府計画をつくる際に、能力見積もりにつきまして国防会議で十分御議論をいただきました。
  232. 東中光雄

    東中委員 いや、五九中業の中身でしょう、能力見積もりというのは。ところが、中業を国防会議決定にし、そして政府決定に格上げをするというときになれば、能力見積もりというのはもう説明事項になってしまって、そして見積もり自体では、中業の中身から少なくとも一つの分は外してしまっているということになっているじゃありませんか。全く私は、これは非常に奇妙なものだ、シビリアンコントロールなんてとんでもないことだというふうに思いますので、その点をまず指摘をしておきたいと思うわけであります。
  233. 加藤紘一

    加藤国務大臣 従来の防衛庁内部の資料たる中期業務見積もりの中にその二つがあったことは事実でございますし、また今回の政府計画をつくる際に、能力見積もりについて国防会議において詳細に御議論いただいたことは事実でございます。  その能力見積もりというものにつきまして、今後それをどういった形の文案にいたしますかということは——実は防衛庁内で従来から防衛庁内部の資料として必要であった中期業務見積もりというものを今後どういう形にするかということは、防衛庁内部の行政の話として今検討しているわけでございまして、その辺は私たちは落ち度がないものだと思っております。
  234. 東中光雄

    東中委員 そうしますと、中期業務見積もりの格上げではなくて、そこから出発したけれども、この政府計画ができたので、今までやってきた中期業務見積もりについては、防衛庁内部の問題として、それはどうするかということを今検討しておる。だからバトンを渡してしまって、後、防衛庁内部の見積もりなり計画なりというものはどうするかというのは、まだこれから考え直さなければいかぬ、あの訓令自体を変えなければいかぬということになるわけですか。
  235. 加藤紘一

    加藤国務大臣 繰り返しますけれども、また防衛局長も言いましたように、五九中業の原案をそのまま表紙をかえて政府計画に格上げしたというものではありません。したがって、今度の政府計画と、従来からありました防衛庁内部の中期業務見積もりとの関係を行政的にどういたしますか、それは検討中でございます。
  236. 東中光雄

    東中委員 次にお伺いしたいのですが、所要経費について、この政府計画では十八兆四千億程度ということが書かれておるわけであります。その中身が一向によくわからないのですけれども、「昭和六十年度価格でおおむね十八兆四、〇〇〇億円程度をめどとする」ということになっております。  そこで、このうちの正面装備については四兆七千五百億というふうに説明書きには書いてあります。そして新規契約額、正面は約五兆五千五百億円というふうになっておるわけです。  それでお伺いしたいのですけれども、この四兆七千五百億の中身には、例えばF15六十三機、一機は六十年度価格でということになっていますから、大体平均価格百八億ですか、という計算なんじゃないかというふうに思うわけですが、そうするとF15が六千四百億ぐらいになる。だからP3Cは平均価格が百十八億で今度請求をしていますから、概算要求ではやっていますから、それが五十機ということになればこれも六千億、七千億近くになる、こういうことで見積もった内容正面は四兆七千五百億、こういうことになっていくんだ、そう理解してよろしいですか。
  237. 西廣整輝

    西廣説明員 おっしゃるとおりでございまして、先生の言われた機数というのは契約する年度内に新たに発注する機数でございまして、金額の方は、十八兆四千億というのは期間内の歳出予算でございますから、期間内に支払うべきキャッシュの金がそれだけということで、後年度負担との差額が六十六年以降に支払うべきものということになります。  したがって、P3C、F15の例を挙げられましたけれども、おっしゃるように、F15は六十三機でございますので、総額的には約六千六百億円の契約金額であり、期間内に支払うべきものはおおむね二千九百億くらいということになります。  なお、P3Cにつきましては同様に五十機ということで、期間内経費は二千九百億くらいでございますが、契約総額としては五千七百億くらいということになります。
  238. 東中光雄

    東中委員 それで大きな点だけをお伺いしておきたいのですが、ペトリオットの五個群それから自動警戒管制組織、バッジの近代化の契約額と支出額、それからAEGIS護衛艦は何隻で幾らの額を契約額としてこの中に入れているのか入れていないのか、それからOTHレーダーについても入っているのか入っていないのか。入っているとすれば、その金額、契約額は何ぼ予定されておるのか、これをお伺いしたいのです。
  239. 西廣整輝

    西廣説明員 個々の資料を手元に持ち合わせておりませんので後ほどまたお答えしたいと思いますが、AEGISとOTHにつきましては、計画に書かれておりますように、OTHについては洋上防空なり監視という意味で今後その中の一環として研究課題である。場合によってはその状況を見て着手をするということでありますし、AEGISにつきましても、AEGISということはまだ念頭に特にあるわけじゃございませんが、艦艇め対ミサイル対策のための近代化ということでAEGISもあるいは検討対象になろうかと思いますが、そういったものについても今後の検討課題でございますので、いずれもAEGISを何隻買うというようなことは決めておりませんし、そのための経費というものはOTHについても同様でございます。  しかしながら、今申したように、研究の成果を得次第、できるものから着手をしたいということで、洋上防空関係の監視システムについては歳出について約三百五十億円、それから対ミサイル対策については約三百億円の経費を一応留保いたしております。
  240. 東中光雄

    東中委員 そうしますと、正面装備四兆七千五百億というふうにされておる中には、いわゆるAEGIS護衛艦の関係のものとして予想して入れているのはそのうちの三百億だけだ。実際にいわゆるAEGIS艦を一隻入れるとしても千億ないし千数百億、それが複数になればその複数分ということになるわけですね。それを、この十八兆四千億と言っている中身の中にはわずか三百億しか含まれていない、そういうふうに理解してよろしいですね。もし採用するということになったら、ぽっとそれが千五百億にふえていきよるというふうになるわけですね。
  241. 西廣整輝

    西廣説明員 おっしゃるとおり、六十一年度にもうAEGIS艦を建造するということで発注いたせば、五カ年間期間がございますので、千数百億の金が一杯で必要になると思いますが、先ほどからも申し上げているように、いずれも研究をしてその上で決心をするということですから、そう短時日に研究が終わるものではございませんので、発注をするにしてもかなり遅い時期になるということになれば、歳出予算はさほど必要がないということになろうかと思います。
  242. 東中光雄

    東中委員 そういう計算で十八兆四千億円というのが出てくるわけでありますが、それは三年後になると、作成し直すということになっていますね。これはどこが作成し直すのでしょうか。見直しをやり、作成し直すと、政府計画ですから。それはどこが見直しをし、どこが作成し直すことになるんでしょうか。
  243. 加藤紘一

    加藤国務大臣 それは今回政府計画ができますプロセスと似たようなプロセスをやることになると思います。防衛庁が原案をつくり、財政当局がまたそれに対してチェックするという形がその主力な部分で、またその際に外務当局とかいろんなところの御意見を入れていくことになるだろうと思います。
  244. 東中光雄

    東中委員 そうすると、三年後の見直しをやるときに、例えばAEGIS艦について検討した結果が出てくるとか採用するとかというようなことになってくると、その見直しの中でその分がふえてくる、こういうふうになる仕組みなんですね。今までの中業について言えば、毎年見直しをやって修正をしていますね。五六中業についても修正していますね、見直しをやって。そして、三年目には修正でなくて作成の見直しをやるというふうになっていますね。今度もそういうことじゃないですか。
  245. 西廣整輝

    西廣説明員 部内としては、実際の予算が成立した状況を見まして、中業というものがどう変わるかという点の手直し作業はいたしております。また三年後に新たな五カ年の中期業務見積もりをつくることにしておりました。
  246. 東中光雄

    東中委員 いや、五六中業の場合は五十八年、九年、見直しをやりて、そして六十年に今度は作成し直しになっているわけですね。それと同じようにやっていくと、こういうことでしょうか。
  247. 西廣整輝

    西廣説明員 いずれにしましても、五六中業も今回の五カ年計画も年次計画というものがございませんので、各年度ごとにどういう計画とのそごが出たかということは明白ではないわけでございますが、仮に大きく我々の通常考える合理的な整備のテンポとい書ものと違ってくるとすれば、それが残り何年、一年垣に変われば、今後四年間でどうそれが変わって吸収していくかとか、いろんな問題が起きますので、そういう検討はいたすことになると思いますが、計画そのものを見直すというようなこと祖なかろうと思います。
  248. 東中光雄

    東中委員 そうすると、今度の計画は十八兆四千億円、それはGNPの一・〇三八だということだったわけですはれども、「おおむね十八兆四、〇〇〇億円程度」というように今度は書いてあるわゆです。そして、AEGIS艦なんかを検討して必要な措置をとるということになっておりますから、その「必要な措置」として採用をするということになれば、三百億しか見積もっていないものが千数百億、二隻なら三千億近くに膨れ上がるということもあり得るという数字なんですね、十八兆四千億円というのは、そうじゃないですか。
  249. 西廣整輝

    西廣説明員 先ほど申し上げましたように、船というのは五年ぐらいかかりますので、六十一年度に直ちにAEGIS艦をつくるという決心をし、現に概算要求でもしておるということでありますれば、おっしゃるとおり千五百億の金が要るわけでございますが、これから検討し決心して着手することになっても、先ほど申し上げたように、三百億円ぐらいのリザーブを持っておれば建造は可能であるというように考えておるわけでございます。  なお、念のために申し上げますが、今国の経費というのは「おおむね十八兆四、〇〇〇億円」ということでございますが、六十年度価格という意味ではそれが限度額であるということであって、それが膨らむというようなことは考えておりません。
  250. 東中光雄

    東中委員 いや私が言うのは、「新規契約額(正面)約五兆五、五〇〇億円」とちゃんと契約額まで書いてあるわけですね。契約としてこの計画の中身は五兆五千五百億と書いてある。ところが、OTHレーダーを採用するあるいはAEGIS艦を採用するということになった場合、大いにあり得るわけですからね、六十一年度でもうそういう結論が出るというふうに私は言っているわけではなくて、五年間にそういうことがあり得るということが言われているから、そうすると、この契約額が千数百億ぼっとふえてくるわけじゃないですか。
  251. 加藤紘一

    加藤国務大臣 委員の御質問の趣旨がなかなかわからないところがあるのですが、多分、三年ごとにローリングで見直して、そしてまた大きく拡大していくことを考えているのではないか、そういう仕組みというのがローリング方式であるという御主張なのではないかと思います。現に、この間十八日にこの政府計画を決めて、翌月参議院の委員会で共産党の委員の方がそうおっしゃいましたので、私たちはそこで、ちょっと事実誤認ではございませんか、五六中業上がいろいろな見直しがあるときには、我々が中業の計画どおりできないから、特に五六中業の場合三年目でたった四六%で、そういう意味見直しが行われるのだということを申し上げたところでございますので、その辺は誤解のないようにお願いしたいと思います。  また、ローリングにより、またシビリアンコントロールが厳しく、また財政当局のコントロールが厳しく効いてくるのだと思っております。
  252. 東中光雄

    東中委員 いや、私が言っているのはそういうことを言っているのではなくて、今の説明を聞けばそういうことになりますよと言っているだけのことですよ。だって、採用するかどうかを検討するのでしょう。OTHは導入する方向でやるんだと言っているじゃないですか。導入した場合に、今概算三百億でやっておるけれども、三百億でいくのか、あるいはAEGIS艦の場合だったらずっとその五倍にもなるということになるわけだから、見直しの中へ入ってくるその数字というのはふえていく可能性がある数字なんだということが説明自体の中にありますよということを私は今言っているわけなんです。
  253. 西廣整輝

    西廣説明員 御質問の趣旨はわかりましたが、要は、今度の政府計画で決められておりますのは、期間内の歳出予算総額が決められておるわけであります。先生の御質問は、歳出予算総額の話と、それから契約機能額の問題とをやや一緒に論じておられるような感じがいたします。私が先ほどF15なりP3Cで契約機能額を申し上げましたけれども、それはあくまで参考のために申し上げたので、決まっておりますのは、歳出予算額二千九百億というものがそれぞれF15なりP3C分として入っておるということであります。したがいまして、AEGIS艦を仮に採用を決め発注することになっても、期間内五カ年間の歳出総額は三百億円の中で賄わざるを得ないということを申し上げているわけぞあります。
  254. 東中光雄

    東中委員 もう時間が来ましたから肝心のことを聞けなくなってしまったけれども、私の言いたいのは。そういうみみっちいことを言っているのじゃないのです。あなたの方だって、検討して採用することになると、防衛庁がこういう資料を出しているわけでしょう。そして契約額は五兆五千差百億と書いてあるけれども、そうではなくなる可能性がある、それよりふえることになる可能性がある。そこから、AEGIS艦を採用するということになった場合、後年度負担は、あなたは今支出額ということを言うけれども、二兆五千五百億じゃなくなるでしょう。三年先にAEGIS艦を採用するということになって契約してごらんなさい、後年度負担はずっと残るでしょう。だから、そういうものではないですよということを言っているわけです。  一%枠を守るか守らぬかということが大きな政治問題になっておる。あれは、一%枠を超えないことをめどとするものとするとなっているのですね。だから、尊重するとかなんとかというのはおかしな話なんですよ。するものとするというのは、するものとするかしないかのどっちかしかないのであって、尊重すると言って、そして五カ年計画は突破をしている。しかもその中身は、今言ったように、数字は細かく出されているようだけれども、実は——だって、AEGIS艦なんというようなものを採用するかせぬかということが問題になっているときに、何で三百億というようなものが出てくるのか、普通の常識からいったら考えられぬことであります。これは大軍拡計画で、その意図は、アメリカの要請にこたえての、北西太平洋における、日本アメリカの核戦略の中で役割を分担していく、そのための大軍拡計画だと私たちは言わざるを得ないということを申し上げて、時間ですから、やむを得ません、質問を終わります。
  255. 森下元晴

    森下委員長 これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  256. 森下元晴

    森下委員長 この際、お諮りいたします。  去る八月二十一日から二十三日までの三日間、愛知県、岐阜県及び静岡県において、国の安全保障に関し、自衛隊等の現状について実情調査を行ってまいりました派遣委員から調査報告書が提出されております。  これを本月の会議録に参照掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  257. 森下元晴

    森下委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は本号末尾に掲載〕     —————————————
  258. 森下元晴

    森下委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十八分散会      ————◇—————