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1985-06-19 第102回国会 衆議院 安全保障特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年六月十九日(水曜日)    午前九時三十分開議 出席委員   委員長 森下 元晴君    理事 小渕 恵三君 理事 椎名 素夫君    理事 玉沢徳一郎君 理事 三原 朝雄君    理事 上田  哲君 理事 前川  旦君    理事 渡部 一郎君 理事 吉田 之久君       海部 俊樹君    中川 昭一君       箕輪  登君    森   清君       渡部 恒三君    天野  等君       奥野 一雄君    加藤 万吉君       神崎 武法君    山田 英介君       東中 光雄君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 加藤 紘一君  出席政府委員         防衛庁参事官  古川  清君         防衛庁参事官  古川 武温君         防衛庁参事官  池田 久克君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房         長       西廣 整輝君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛庁教育訓練         局長      大高 時男君         防衛庁人事局長 友藤 一隆君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         防衛庁装備局長 山田 勝久君         防衛施設庁長官 佐々 淳行君         防衛施設庁総務         部長      平   晃君         防衛施設庁施設         部長      宇都 信義君         防衛施設庁労務         部長      大内 雄二君  委員外出席者         外務省北米局安         全保障課長   沼田 貞昭君         特別委員会第三         調査室長    鎌田  昇君     ————————————— 委員の異動 六月十九日  辞任         補欠選任   丹羽 雄哉君     中川 昭一君 同日  辞任         補欠選任   中川 昭一君     丹羽 雄哉君     ————————————— 本日の会議に付した案件  閉会中審査に関する件  国の安全保障に関する件      ————◇—————
  2. 森下元晴

    森下委員長 これより会議を開きます。  国の安全保障に関する件について調査を進めます。  この際、加藤防衛庁長官より発言を求められておりますので、これを許します。加藤防衛庁長官
  3. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私は、今回ワインバーガー国防長官の招待により、六月七日から六月十七日までの間米国を訪問し、同長官との定期協議を行うとともに、シュルツ国務長官マクファーレン大統領補佐官ルーガー上院外交委員長アスピン下院軍事委員長クラウ太平洋軍司令官会談し、また、米国軍事施設などを視察してまいりました。  ワインバーガー長官との協議の概要は、次のとおりでございます。  私から、まず、日米防衛関係我が国防衛政策につきまして、今日、日米間においては、経済分野で困難な問題がある中で、防衛分野では良好な状態が続いており、これを維持発展させるため、双方が最善の努力を行う必要があること、米国がこの数年来我が国の自主的な防衛努力を静かに見守るとの姿勢をとっていることは極めて建設的であり、今後ともその方向が望ましいこと、憲法や非核三原則の遵守、日米安全保障体制堅持等防衛に関する基本的な政策は、国民コンセンサスを得ているものと認識しており、今後ともこのような政策に従った防衛努力を着実に積み重ねてまいりたいとのこと等々の考え方を申し述べました。  ワインバーガー長官からは、いずれも貴重な意見である、ソ連軍事力増強等にもかんがみ、日本がみずからの国益の問題として防衛努力を行っていることを評価する、米国としてもこれに必要な支援と協力を惜しまない旨の発言がありました。  次に、五九中業について、私から、現在、「防衛計画大綱」に定める防衛力水準達成を期するとの方針のもとに作業を進めていることを述べ、正面と後方のバランスの確保我が国地理的特性への配慮など、この中業策定に当たっての基本的な考え方説明いたしました。  これに対し、ワインバーガー長官から、五九中業策定作業進展期待する旨の発言がありました。  さらに、私から、「日米防衛協力のための指針」に基づく各種の研究日米共同訓練装備技術交流進展について述べるとともに、日米安保体制が真の抑止力として揺るぎなく機能するよう、今後とも、双方がその内容の充実に一層の努力を払っていくことの重要性を述べました。  また、こうした交流の深まりに対応し、シビリアンコントロール観点からも、政策担当者間の交流を一層促進させる必要性を述べました。  ワインバーガー長官から、これらについていずれも同感である旨の発言がありました。  空母艦載機着陸訓練の問題については、最大の懸案として、私はもとより政府全体としてこの問題の解決のため最大限の努力を行っている旨述べました。  これに対し、ワインバーガー長官から、日本側努力はよく承知しており評価している、引き続き努力をお願いしたい旨の発言がありました。  以上のほか、ワインバーガー長官より、在日米軍駐留経費の負担について、我が国努力に対する謝意が表明され、私からは、沖縄駐留米軍事故防止に配慮するよう要請いたしました。  シュルツ国務長官マクファーレン大統領補佐官議会関係者及びクラウ太平洋軍司令官との会談におきましては、我が国防衛努力軍備管理、軍縮の問題等について意見を交換しました。  また、マクファーレン補佐官から、SDI研究日本の進んだ技術などの参加を希望する旨の発言が、また、クラウ司令官からは、日米共同訓練などについての発言がありました。  今回の訪米を通じての所感を申し上げます。  ワインバーガー長官との定期協議を初め米側関係者との会談において、防衛上の諸問題について充実した意見交換を行い、相互理解の増進を図ることができましたことは、大変意義深いことであったと思っております。  米側は、我が国の自主的な防衛努力を評価しつつも、厳しい国際軍事情勢にもかんがみ、我が国が一層の努力を行うことを期待しております。  私は、安保条約改定四半世紀の間に築き上げられてきた実績と信頼関係を踏まえ、日米防衛協力関係模索時代から定着時代とすべく、各般分野にわたって着実な防衛努力を行っていく必要があると考えます。  以上で、報告を終わります。     —————————————
  4. 森下元晴

    森下委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中川昭一君。
  5. 中川昭一

    中川(昭)委員 私は、加藤長官訪米された際の成果中心にいたしまして、日本安全保障について質問をさせていただきたいと思います。  長官、どうも御苦労さまでございました。  私は、防衛問題を討論する際に、まず根幹、常に考えなければならないのは、何を、どうやって、何から守るのかということを常に考えておるわけでございますが、まず、何を守るかにつきましては、我が国国民国土、そして平和と繁栄を守っていかなければならないということだと思っております。  そして、第二の、どうやって守っていくかにつきましては、我が国は戦後;買いたしまして、みずからの必要最小限度軍事力と、そして日米安全保障体制下での米国軍事能力の総和から成る抑止力を堅持するという政策を選択してきたわけであります。きょうはくしくも改定安保条約が国会で承認になりましてちょうど二十五年ですね。六月十九日、二十五年前だそうでありますけれども、非常に意義ある日だということでありますが、こういう中で、国際的な平和を堅持するとのグローバルな視点を考えなければいけないというふうに思っております。我が国西側の一員として我が国の平和と繁栄があるということでありますので、この点、世界自由民主主義体制を守るという巨大な責務は、いかなる国も一国で負担し得るものではなく、アメリカ軍事力中心として、西側のおのおのの国がそれぞれの立場で、緊密な調整のもとで責任を分担していくことが必要であると考えております。  そして、何から守るのかという点につきましては、常に日本にとっての軍事的脅威、これはやはりソ連中心とする日本に対する脅威というものを正確に把握して、これに応じた適切な防衛力整備を行っていく必要があると私は思っております。  そこで、長官に御質問を申し上げますが、まず、我が国防衛問題を論ずるに当たりまして、国際情勢を正確に把握する必要があります。最近のソ連極東における軍備増強が種々指摘されておりますが、長官訪米されて、ワインバーガー国防長官を初めとするアメリカ関係者との間で、国際情勢、特に日本を取り巻く環境軍事情勢、具体的に言えばソ連軍事的脅威について意見交換をされたと思いますが、最近のソ連中心とする国際情勢変化につきまして、長官はどのような認識で、ワインバーガー国防長官を初め、アメリカ関係者皆様にお話をなさったのか。そして、米側はどのような認識を持っているということを長官に申し上げましたかをまずお聞きしたいと思います。
  6. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私たち米国とは、防衛関係において非常に密接な関係を持っております同盟関係にある国でございます。そしてその双方関係がうまくいくためには、まず双方が現在の国際情勢及び国際軍事情勢について基本的には一致した見方を持つということが、その関係を維持発展させていくために重要な要因であろうと思いますし、その点は中川委員指摘のとおりであろうと思います。  最近の我が国を取り巻く国際情勢につきましては、基本的には我が方の見方米側見方は、ここ数年来一致しており、それほど大きな変化を生み出しておりませんし、今回も大きな新しい事態の変化ということをお互いに認め合ったことはありません。状況は、最近大きく変わりないのではないだろうかということでございます。  それはグローバルに申しますと、一九七〇年代の後半から現在までソビエトが行ってきておりました軍事力増強蓄積効果は非常に顕著なものがあらわれ始めており、また極東地域に見ますならば、極東ソ軍増強、それから我が方の国土であります北方四島におきます師団の配置、飛行場の整備等、またカムラン湾における軍事施設増強等、私たちにとっては憂慮せざるを得ない状況になっているということについての認識お互いに一致いたしておりました。
  7. 中川昭一

    中川(昭)委員 戦後四十年間、我が国の平和と繁栄というのは、我が国平和憲法あるいは専守防衛あるいは集団的自衛権の不行使といった政策をとっていたから四十年間我が国は平和で繁栄でいられたと長官はお考えになりますでしょうか。それとも、強いアメリカ前提とした抑止力による日米安全保障体制によって平和と繁栄を支えたのであって、最初に申し上げたような我が国姿勢というのはその上に乗っかっておる二次的なものだとお考えになっておりますでしょうか。
  8. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私たちの国の現在の防衛政策は、戦後二つの柱で成り立ってきております。大きな国際情勢そして核の抑止力、そういった問題につきましては米国との日米安保体制を柱とし、そして限定かつ小規模の侵略に対しては我が国みずからの防衛力で行う、対処する、この二本柱でやってきたわけでございまして、その二つとも私たちは必要な、欠けてはならない二本柱であったと思います。  一方、私たちの国の中には、安保条約につきましても、自衛隊存在そのもの自体につきましても、戦後かなりいろんな憂慮の念もありましたし、いろんな意見もあったと思います。  しかし、今述べました二つの柱というものが、私はアメリカの講演でも申したのですけれども、国民の各層、各世代を通じてのコンセンサスに現在ほぼなりつつあるのではないか。なぜこのようなコンセンサスがこの四半世紀の間に、中川委員もおっしゃいましたように、本日くしくも安保改定四半世紀でありますけれども、その間にこのように定着してきたと私たちが見ることができるようになったかといいますと、一つはやはり私たち政府防衛についての努力が着実かつ漸進的に行い、そして国民も、憲法に従い専守防衛シビリアンコントロールに基づき近隣諸国脅威を与えないという私たち基本政策をだんだん理解し、かつ信頼し、きっと我が国が再び軍事大国になることはないんだなという前提のもとに、自衛隊安保の二本柱を信頼してくれ始めだということが大きな理由になっているのではないかなと思っております。
  9. 中川昭一

    中川(昭)委員 それでは、長官アメリカに行かれたときに突然出された対日決議案、いわゆるバード修正決議についてお伺いをいたします。  突然アメリカ上院におきまして日本防衛努力を求める決議が行われたと承知しておりますが、長官訪米中にこういう決議を行うことの当否についてはいろいろと議論もあるかと思いますが、この決議に示されております内容につきましては、アメリカ国内における日本防衛力整備についての関心というものを正しく受けとめていくべきではないかと私は考えております。  そもそも、前に述べましたように、日本の平和と繁栄は、グローバルな観点から見た国際的平和と、自由と民主主義体制確保なくしてはあり得ないということで、アメリカはこのような観点での国際平和と自由民主主義体制の確立について、やはり中心的な役割を担っております。また、アメリカは、日米安保体制枠組みの中で我が国有事の際には実際に共同して対処する立場にあるわけであります。日本防衛というのは、長官も今回の訪米で力説なさっておりましたように、自主的な防衛ということでありますが、このような立場にあるアメリカ我が国防衛力整備に対して関心を持つことは、私は極めて自然なことであるというふうに思っております。このようなアメリカ関心内政干渉だとかあるいは貿易摩擦に絡めてきたとかいう批判があるようでありますけれども、我が国防衛政策基本的構造考えれば、全く的外れなアメリカ議会意見ではないというふうに私は考えております。長官訪米された際、アメリカ側関係者との間で我が国防衛力整備につきまして具体的に話し合われたとのことでありますけれども、アメリカ政府及び議会我が国防衛力整備に対する期待と評価について長官の御印象を伺いたいと思います。
  10. 加藤紘一

    加藤国務大臣 ただいま中川委員の御指摘は、日米関係、特に日米防衛関係につきましてのかなり基本的な問題の多くの分野、多くの側面についての御提起が含まれているように思います。私は考えるのでありますが、米国は、万が一日本有事になった場合に日本防衛のために駆けつけ、そしてともに対処してくれることを大統領と私たちの総理との共同声明などで確約してくれている国でございます。その意味で、その米国議会及び政府筋我が国防衛力整備につきまして関心を有することは当然であろうと思います。我が国防衛政策のあり方につき関心期待を持っているということは私はごく自然の成り行きであろうと考えております。しかし私たちは、米国期待関心というものを念頭に置きながら、我々の防衛政策防衛力整備は自主的に決定していくべき筋合いのものであろうと思っております。私は米国議会意見というものをそのようにとらえるべきでないだろうかと思っている次第でございます。  政府筋と話しておりますと、時々の時代の流れを感ずるのでございますが、かつてある米国政権、ある大統領時代には、日本には強く言うことによって日本防衛力整備が進むのだという政策をとられておったと思います。現在は日本アメリカとの関係は、本来はもうちょっと大人の関係であるべきだ、したがって日本が自国の防衛自分のこととして考え、自主的な判断でやるのであるから、それをじっと見詰めていくということの方が正しいのではないかということで、現在は強い圧力をかけるという態度を少なくとも行政府はとっておられません。私はワインバーガーさんとの会談で、その方がより建設的な意味を持つのではないだろうかということを申し上げました。政府筋としてはそのとおりであろうとワインバーガーさんも同意してくれました。一方議会には若干、よりもっと強く日本に要求すべきではないかという空気があることも私たちは承知いたしておりました。だからこそワインバーガーさんとの会談の冒頭に、やはりそれは経済に絡めないで、そして私たちの自主的な判断で行う方針を私たちはとっていきたいということを、アメリカ側もそれはそうですねといった会話が行われたわけでございます。私たちはやはり、議会の動きいろいろあろうと思いますけれども、その期待念頭に置きつつ、自分のこととして自主的に防衛の問題は対処していきたい、こう考えております。
  11. 中川昭一

    中川(昭)委員 自主的な我が国防衛努力アメリカ側は冷静に見守るということは、逆に返せば、長官初め防衛庁皆様方、そしてまた第一線の陸海空の自衛隊皆様のたゆまぬ努力成果だと私は理解をさせていただきたいと思います。  それでは、長官ワインバーガー長官との会談の中で、これからはシビリアンコントロールという意味も含めまして、政策担当者レベルでの協議をもっと頻繁にやりたいという御提案をなさったそうでありますけれども、その意味について御説明をしていただきたいと思います。
  12. 加藤紘一

    加藤国務大臣 この安保特で数回にわたり御指摘いただきましたように、現在日米の間では日米防衛協力のためのガイドラインに基づきまして種々の共同研究とか共同訓練などが行われております。それからまた、インターオペラビリティーにつきましての協議実務レベルで進められております。そういった観点に限らず、今後武器技術協力等につきましても、日米の間では互いに防衛についての同盟関係にあるわけですから、新しい道が開かれようといたしておるわけであります。現在、細目協定が詰められているわけでございます。そういった各般日米防衛面における協力が進むにつれ、いろいろな実務者、特に制服人たち交流は頻繁に行われていきます。  しかし、その際、政策担当者レベルの話し合いはどういうチャネルがあるかといいますと、年に一回行われます防衛首脳会議、今回行われたようなものでございますが、それ以外にはSSC、ハワイで行われます協議がございます。これは事務次官を中心に行っているものでございますけれども、それが定期協議とはいえ年一回程度で本当に毎日具体的に起こっていく問題の対処にフォローしていけるものであろうか、そういうサービス・ツー・サービス、制服制服交流が深まるにつれても、政策担当者レベル交流をもっともっと密にしておかないとシビリアンコントロール確保されることにならぬのじゃないかという気持ちがございまして、それを米側に提起いたしました。ワインバーガーさんからもそれは賛成であるということでございまして、この方途を今後具体的に詰めていくことに双方で合意いたしたわけでございます。
  13. 中川昭一

    中川(昭)委員 そのことが長官アメリカに行かれて、一つの象徴としておっしゃっているんだと思いますけれども、模索時代から定着時代へということの大きな柱と考えてよろしいんでしょうか。
  14. 加藤紘一

    加藤国務大臣 今まで日米の間ではどのような協力がどの原則で行われるか、いろいろ試行錯誤があったと思います。そして、現在はそれぞれ共同訓練にいたしましても共同研究にいたしましても、ある種の道、ある種の方向というものがいろいろな模索の結果出てまいりまして、これに基づいてより充実したものになっていく。その際にはやはりシビリアンコントロールをしっかりしなければいけない、委員おっしゃるように、定着時代においてもしっかりとシビリアンコントロール確保しておかなければならない、一つの大きなテーマになっておると思っております。
  15. 中川昭一

    中川(昭)委員 具体的な話についてちょっとお伺いをいたします。  OTHレーダー、オーバー・ザ・ホライゾンと言うんだそうでありますけれども、これについて長官アメリカ側技術的資料の提供を御要請なさったと聞いております。このOTHレーダーというのは一体どういうものなんでしょうか。そしてまた、日本の安全と平和にどのように役立つのかにつきましてお伺いしたいと思います。
  16. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私たちの国は専守防衛を旨とする国であります。専守防衛の一番重要な一番最初のものは世界の中に起こること、それが長期的なことであれ中期的なことであれ、また戦術的に短期的なことであれ的確につかんでおくことが重要であろうと思います。専守防衛の国はウサギのように常に耳を敏感にし大きくしておかなければいけないと思います。その意味で、今後の洋上防空体制それからこの近辺に起こるいろいろな状況を的確にキャッチするためにいろいろな情報収集機能を私たちは強化しておきたいと思っておりますが、OTHレーダーもそれに有益なものなのではないか、そういう関心を持って五九中業の中でどう対処していきたいか考えておりますので、とりあえずもうちょっとそのOTHレーダー技術を持ち、現に装備している米側にデータをいただけないかと申しました。向こう側からも、できる限りのことはしようという約束を得たわけであります。
  17. 中川昭一

    中川(昭)委員 それでは、我が国防衛基本である防衛計画大綱につきましてお伺いをいたしたいと思います。  防衛計画大綱は、現在行われております我が国防衛力整備の基礎となっておりますが、その見通しにつきましてもアメリカ国内でも非常な関心を呼んでいるようであります。この大綱というのは昭和五十一年当時、今からもう十年近く前の大綱の作成当時と比べますと日本を取り巻く環境日本自身も大きく変化していると私は理解しております。五十一年当時以降の極東におけるソ連軍事力を見ますと、潜水艦中心とした海軍力の面でもバックファイアを含む空軍力の面でも顕著な増強が図られておるわけであります。ソ連全体の軍事力におきます極東におけるウエートもどんどんふえておると私は認識をしております。  一方、我が国防衛政策の大きな柱の一つである安保体制に基づくアメリカ来援能力についてはいろいろな制約で無限でない以上、ソ連軍事力増強という事実を踏まえまして、我が国ももう少し必要な対応を図っていかなければならない。昭和五十一年当時の国際情勢前提とした大綱を現在の国際情勢のもとで見直すことが必要ではないかと私は考えておりますが、この点につきまして、長官の御認識と、またワインバーガー国防長官との話の中で向こうからどのような話が出たかということについてお伺いしたいと思います。
  18. 加藤紘一

    加藤国務大臣 ワインバーガー長官の方は、現在日本側が行っております防衛力整備方向、その現状というものはみずから設定した防衛力整備の目標に向けて着実に努力している状況だというふうに見ておられるようであります。それは、具体的に言いますと、防衛計画大綱に示されました水準を五九中業達成しようとしている日本の姿をイメージされておって、それを私たち達成しようとしておりますという説明に対して、それが実現されますように私たちとしても見ておりますというような表現でございました。  議会の方になりますといろいろ御意見がありまして、大綱水準なんかじゃだめじゃないか、もっと最近の情勢に合った新たな見直しをすべきでないかという議論もあるようであります。それが中川委員当初御指摘バード決議説明のくだりにもあったようでございます。  現在、政府としてどう考えて、防衛庁としてはどういうふうに努力しているかといいますと、まず大綱達成が重要であろう。国際情勢は動いておりますけれども、私たちとしては、国際情勢大綱設定のときと大きな枠組みにおいては変化はないのではないか。国際軍事情勢、特に極東状況につきましては先ほど申しましたように関心を払わざるを得ない部分がございますけれども、昭和五十一年に大綱を設定したときの大きな枠組み、つまり日米安保関係は守られている、中ソの関係は対立のままでいる、朝鮮半島におきましては南北の対立はあるけれども即時火を噴くような状況にはなっていない。こういった幾つかの大きな枠組みの設定はあの当時と現在は変わっていないと思っておりますので、大綱水準を見直すことは考えておりません。それよりもまず大綱水準をしっかりと達成し、この大綱をあくまでも防衛力整備についての国民との間のコンセンサスづくりの土台にし、そこを議論していきたい、こんなふうに思っておる次第でございます。
  19. 中川昭一

    中川(昭)委員 今、長官も最後におっしゃいましたが、大綱よりもまず大綱達成ということに御努力をなさるということでございますが、そうなりますと、六十一年度からの五九中業の策定というものが非常に大きな意味を持ってくると思います。そしてまた、ワインバーガー長官もその進展に大きな期待を寄せているというふうに言われておりますが、そうなりますと、五九中業大綱水準達成させるためにはGNP一%枠という関係がどうしても出てこざるを得ないと思います。  そもそも防衛力整備というのは、まず相手の脅威となる存在の大きさとその緊張度を見積もって、そしてその対処に必要な防衛力考える、具体的にはその手段となる人員でありますとか装備の質とか量とかを決めることで一国の防衛というものが決められていくというふうに考えております。その結果として必要な防衛予算というものが必要になってくるわけであります。  その過程におきまして財政の問題とかあるいはいろいろな外交的な配慮等々も出てくるとは思いますが、当然国会の中でもその過程で十分に議論もしていかなければならないと思っておりますけれども、現在のGNP一%枠というのが昭和五十一年当時の閣議決定で決められたそうでありますけれども、防衛予算の具体的な内容とは関係なく、とにかくGNPの一%の枠を超えてはならない、GNPというのは経済成長率でありますからどういうふうに変動するかわからないわけでありますけれども、そういうものを基準にして一%という枠をはめておるというのは、本来の防衛というものを議論するときにどうも主客転倒した議論ではないかと私は考えております。  一部の議論としては、一%を突破すれば軍国主義が復活するとか、あるいは他国に大変な脅威を与えるというような意見もあるようでありますけれども、それは冷静な事実認識を伴わない感情的な感情論ではないかというふうに私は判断せざるを得ないわけであります。  我が国が今必要とされておるのは、厳しさを増しておる国際情勢というものを我が国がいかに正確に判断をして、そして我が国が自主的にできるだけの防衛努力をする、そして日米安全保障体制がそれをバックアップするというもとでの我が国の平和と繁栄というものを確保していくためには、必要最小限度防衛力整備、つまり大綱達成、そのためには一%議論というものをもっともっと真剣に冷静に考えていかなければならないというふうに私は考えておりますけれども、この点につきまして、五九中業におけるGNP一%枠との関連につきまして、訪米を済まされてきた長官として御意見をお伺いをしたいと思います。
  20. 加藤紘一

    加藤国務大臣 我が国防衛力整備するときには、諸外国の動向とどういう相対関係において整備していくべきであろうかということは、「防衛計画大綱」を作成するときに大きな議論を先輩の諸子がなさったと聞いております。  そのときにありました議論は、諸外国の脅威増強に一〇〇%対応してやるべきであるという完全脅威対応論というものと、それから我が国の国内事情、例えば財政の問題もありますし、国民の意識もありますし、土地の制約もございますし、それから徴兵制度というものはもちろん私たちは将来もとらないわけですから、そういった志願制度の中における人員の確保問題等考えると、必ずしも一〇〇%脅威対抗は言うべくしてできない、したがってその場合には、最小限平時から保有しておかなければならない防衛力をこの程度とみなしてという基盤的防衛力整備という発想になったものと聞いております。  したがいまして、必ずしも諸外国の防衛力増強に一〇〇%対応するという発想は現在とってはいない、ただ、諸外国との技術的な水準の向上に即して我が国の装備の技術もかなり進歩させなければならないのではないか、そういった基本的な仕組みで現在の防衛力整備考えられているものだと思っておりますし、私たちは、それが現在我が国のとり得る防衛力整備政策の現実的な姿であろうと思っております。  そして問題は、そういった非常に控え目な節度のある我が国防衛力整備を規定いたしました大綱水準でございますが、その大綱水準からもかなりかけ離れております。したがいまして、策定後、現実に十年経ているわけですから、少なくとも六十一年度から六十五年度までを規定いたします五九中業では、この水準達成は必ずやらなければならないことなのではないだろうかな、こう考えております。  大綱水準達成と閣議決定一%の遵守ということは、二つとも昭和五十一年度以来歴代内閣の防衛庁長官及び総理大臣みずからがこの国会の場で言ってきたことでございまして、この二つが矛盾しない段階ではいろいろな議論も比較的すっきりしたと思っております。しかし、五十一年当時想定いたしましたGNPの伸びがその後急激に落ち、現在は三百十四兆ぐらいだろうと思いますが、当時の想定によりますと、現在五百兆になっているはずでございます。したがって、そこで大綱水準達成とGNP一%の問題が現在大きな議論になっているのだと心得ております。  一%の問題は、今後とも私たちは閣議決定は守りたいというふうに思っております。ただ、現在作業中の五九中業は、これは防衛庁の内部の資料であって、概算要求の基準になるものであって、また単年度を定めたものではなくて、五年のある期間をとったものでございますので、私たちとしては「防衛計画大綱」の水準達成中心にこの作業を進めてまいりたい、そんな気持ちで思っているところでございます。
  21. 中川昭一

    中川(昭)委員 終わります。
  22. 森下元晴

    森下委員長 上田哲君。
  23. 上田哲

    ○上田(哲)委員 本論に入ります前にひとつ、昨日大変ショッキングな事件が起きました。豊田商事の刺殺事件がありました。安全保障問題担当の大臣はどういう感想をお持ちなんでしょうか、それをひとつ承りたい。
  24. 加藤紘一

    加藤国務大臣 本日のこの安保特におきます訪米報告、それからそれに対してのお答えの準備に忙殺されておりまして、そちらまで十分にニュースをよく読んでなかったりいたしておりますので、感想は差し控えさせていただきたいと思います。
  25. 上田哲

    ○上田(哲)委員 守るに値する国、モラル、秩序が国民の福祉安寧を軸として行われる社会、ここをなおざりにしていかなる軍備もあり得ないのだということを私は冒頭に振って、質疑に入りたいと思います。  今回の訪米は、当初はキャッチフレーズなき訪米などと言われたのでありますが、終わってみて大変私どもは危惧すべき大きな点を感じております。抽象的でなくて具体的にひとつお伺いをしていきたいと思います。  OTH、超長距離レーダーの導入でありますが、訪米前の委員会で私はこの点をただしましたところ、長官は、導入検討というお答えでありました。今回の訪米の首脳会談で具体的に技術資料の提供を申し入れられたというわけでありますが、これは単なる検討ではなくて導入の意思の表明であったというふうに受け取っていいわけですね。
  26. 加藤紘一

    加藤国務大臣 我が国専守防衛を旨といたしておりますので、そういった情報収集機能また洋上防空の体制等のあり方を検討する際に、OTHレーダーも有益かもしれないという発想で、ついては十分にその技術的データ等を得てからでないと判断できないのではないだろうか、そういう意味米側技術的な情報の提供をお願いしたいと思うということをこの委員会で上田委員にお答え申し上げたわけですけれども、そのとおり向こう側に要請して、向こう側もできる限りの提供はいたしましょうという返答を得た次第でございます。
  27. 上田哲

    ○上田(哲)委員 お伺いしているのは、そういう申し入れというのは、先ほど来強調されておられる大綱水準達成、しかも五九中業における大綱水準達成ということの中に含まれるのだなということであります。
  28. 加藤紘一

    加藤国務大臣 五九中業の中でどういうふうにやるかということは、そのデータ等をいただいてそれで十分検討した上でないと判断できませんので、その判断の資料として必要なので提供を申し入れ、受諾されたわけであります。
  29. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 若干補足して御説明を申し上げさせていただきたいと思います。  このOTHレーダーの首脳会談におきますやりとりはただいま大臣から申し上げたとおりでございます。ただ、それとは別に私どもが今どういうふうに考えているかという点を若干補足させていただきますと、もちろん五九中業の中でそういった総合的な洋上防空体系の検討の一環としてOTHレーダーも検討をしていくという考えを持っておるわけでございますが、現在はまだ結論は得ていませんけれども、この検討の成果によっては具体的にこの事業を取り上げることもあり得ないわけではないというのが現在のスタンスでございます。
  30. 上田哲

    ○上田(哲)委員 はっきりしておきたいのですが、OTHは五九中業大綱に含まれるのか含まれないのか。私は、当然含まれる可能性の中で首脳会談に出されたんだ、こう理解しなければつじつまが合わないと思うのですが、確認したいと思います。
  31. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 私どもは、その防衛力整備基本枠組みは、まさに上田委員指摘のとおり「防衛計画大綱」の枠内ですべて考えていくべきものと理解いたしております。その意味で、海上防衛力整備の一環として考えております洋上防空体制の検討も、当然のことながらこの「防衛計画大綱」の基本的な枠組みの中で考えるべき問題であるわけでございますので、その点については我々も十分心して対処していきたいというふうに思っております。
  32. 上田哲

    ○上田(哲)委員 はっきりいたしましたが、五九中業の中に、大綱水準達成ということの中にこの問題が含まれるということですね。  その資料の提供を求められたということの中には、このOTHを、日本国産ということにはならないですから、となれば当然リリースということを含めて申し入れられたと思いますが、それでいいですか。
  33. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 先般の首脳会談におきましての表現という意味で申し上げますならば、加藤防衛庁長官から、OTHレーダーに関する技術、資料の提供等米国協力が得られればありがたい、こういう表現をいたしましてそういうお願いをいたしまして、ワインバーガー長官からはできる限り協力できるよう努力するという旨の発言があったわけでございます。  ただ、これは先般の当委員会でも先生から御指摘がございましたように、そういった技術提供というものがないとできないのではないかというふうなお話がございました。そのときもお答えを申し上げたわけでございますが、本件の技術については米国が開発をしているという経緯がございますので、何らかの形でそういったような技術協力が私どもとしても必要になるような問題ではないかというふうに理解はいたしております。ただ、具体的にそれがどういう姿をとり得るかという点は、当時もお答え申し上げましたが、これまた検討の一環としてもう少し詰めてみたいというふうに考えております。
  34. 上田哲

    ○上田(哲)委員 もっと端的に伺いたい。  第一に明らかになったのは、OTHというのは大綱の中に含まれるものとして検討するんだ、これでいいですね。  第二の問題は、それは国産できないのだから、国産する意思があるというならそう答えてください、そうでなければ、できないのだから当然リリースだ。今回の申し入れの中には技術提供とリリースの問題についても申し入れたかということを端的に聞いているわけです。
  35. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 今回の会談では、先ほど申し上げましたように、技術、資料の提供等米国協力を得たいというふうに申し上げたわけで、具体的な表現として委員が御指摘のようなところまでブレークダウンして申し上げているわけではございません。
  36. 上田哲

    ○上田(哲)委員 言葉の問題ではなくて考え方の問題として確認しておきますが、国産をするのか、そうでなければ、私は当然国産ではないと思いますが、リリースということになることを心組みとしているのか。
  37. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 現在の我が国技術水準から見まして、我が国で国産をするということはかなり難しい問題ではないかなというふうには思っております。
  38. 上田哲

    ○上田(哲)委員 とすると、技術提供までいったんなら、当然の手順としてリリースということを頭に置いてのことだろうと……。
  39. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 本件については検討をした上で結論を出すべきテーマでございますので、もし仮にこの検討の結果として本件のこのシステムを取り入れるというふうなことに結論が出た場合には、そういったリリースを要請する必要が出てくる可能性がかなり高いというふうに考えております。
  40. 上田哲

    ○上田(哲)委員 大体心組みはわかりました。  そこで長官、この問題は先般の委員会では日米会談のどの機関で申し入れるかはわからぬというお話でありましたが、承るところによると、長官自身がワインバーガー長官との会談の中でこのことを申し入れられたということですね。
  41. 加藤紘一

    加藤国務大臣 そのとおりでございます。大筋は私が申しました。
  42. 上田哲

    ○上田(哲)委員 その長官の申し入れの中身は、総合兵器体系、こういう表現で申し入れられたわけですか。
  43. 加藤紘一

    加藤国務大臣 総合兵器体系という言葉ではなく、警戒、監視、情報収集の手段としてOTHレーダーというものの有用性に私たちは着目いたしております、また、洋上防空における早期警戒の手段としてもOTHレーダーの利用が効果的ではないかと考えております、で、五九中業においてOTHレーダー、早期警戒機、要撃機、艦艇の対空システムといった総合的な洋上防空のあり方について検討したいと思っておりますので技術、情報の提供をお願いしたい、こういう表現をいたしました。
  44. 上田哲

    ○上田(哲)委員 わかりました。念のために確認いたします。  長官自身がOTHレーダー、早期警戒機、要撃機、艦艇の対空システム、こういう具体的な装備を挙げて総合的な洋上防空のあり方として検討したい、こういうふうに言われたわけですね。
  45. 加藤紘一

    加藤国務大臣 先ほど私が申したとおりでございます。
  46. 上田哲

    ○上田(哲)委員 こうなりますと、問題は、その洋上防空というところに非常に力点が置かれているわけですが、この洋上防空というのは、たまたまアメリカの上院決議にもありますような一千海里のエアレーンもシーレーン防衛に含まれる、こういう表現が出されておりますし、それについて長官の申し入れを、ワインバーガー国防長官も必要な支援を惜しまない、こう言われている合意があるわけでありますから、まさに端的に表現すれば、従来合意されていたシーレーン防衛、このシーレーン防衛の上のエアレーン防衛、海空一体となった総合的な兵器体系における防衛構想ということがここで合意されたんだ、あるいは長官が強調されたんだ、こういうふうに受け取っていいわけですね。
  47. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 長官からワインバーガー長官に申し上げましたのは、要するに洋上防空体制の検討をしたいということと、その一環としていろいろな兵器について総合的に検討したいというのが日本側の現在の状況であることを説明されたわけでございます。  それで、しからば我々が今どういうふうに考えているかという点でございますが、これは先般も委員から御指摘がございました問題でございまして、シーレーン防衛の問題というのは、これは大綱以前から私どもが重要なテーマで考えてきたことは事実でございます。ただ、大綱の作成当時と比べますと、洋上における経空脅威、空からの脅威がかなり増大をしてくるような科学技術の進歩があったということが言えると思います。したがって、もともと洋上防空の問題は考えていたわけでございますが、その重要性が増大をした、こういうことではないかと思います。  そこで、そのシーレーン防衛枠組みはどうなるかということになりますと、これは基本的には従来から申し上げておりますように、シーレーン防衛のための海上交通安全を確保するための防衛力整備に当たりましては、我が国周辺数百海里、航路帯を設ける場合には一千海里までの海域において海上交通の安全を確保し得ることを目標にしてやっていくというのが基本枠組みでございます。この枠組みは変わるわけではございません。したがいまして、そういう枠組みの中での洋上防空機能の重要性の増大、そういうふうな理解をしてこの洋上防空体制の充実強化をさらに進めたい、こういう考えでございます。
  48. 上田哲

    ○上田(哲)委員 今のお話の中にもありましたように、大綱の当初の考え方としては、洋上防空、シーレーンの上の空というところまでは考えはなかったわけではないがと言われたが、そちらの表現を使えば増大をしたという言い方だが、少なくともそれはこれまでとは違いますね、技術的進歩という言葉がつけ加えられたが。つまり海だけではなくて空を加えないとシーレーン防衛構想というものは生きを期さないのだ、こういう考え方に立った、こう理解していいんですか。
  49. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 シーレーン防衛の問題を考える場合に、単に水上の問題あるいは海中における潜水艦対策の問題だけを考えているのでは万全ではないんで、やはり洋上防空の問題を考えないと万全の体制にならないということは委員の御指摘のとおりだと思います。その洋上防空の問題が大綱策定当時に比べまして増大をしてきているということでございます。  この問題についてさらに一言つけ加えさせていただきますれば、「防衛計画大綱」自体の中に、本文の中で、諸外国の科学技術水準に対応し得るような防衛力を常に考えるべきであるという思想が出ておりますので、そういった思想を踏まえて私どもは現在洋上防空体制の充実強化を考えたい、こういう立場に立っておるわけでございます。
  50. 上田哲

    ○上田(哲)委員 もう少しはっきり説明を突き詰めたいのは、今までの考え方の中にもなかったわけではないと言われるが、今のお言葉の中にもあるように、大綱設定当時の考え方あるいは技術水準ではもう通用しないレベルにおいて海の問題と空の問題をつけ加えなければシーレーン防衛構想というのは完結されない、シーレーン防衛構想の中にはエアレーンと称する、もう一歩増大したと言われたそういう面をさらに増大、強化して考えなければ生きを得ないのだ、こういう考え方になった、こういうことでいいんですね。
  51. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいまの委員の御表現の中にエアレーンというお言葉がございましたが、エアレーンといいますと航空路というふうな感じがちょっとするように思いますので、ちょっとそこのところは私どもとしてもコメントいたしかねますが、私どもが申し上げておりますのは、いわゆるシーレーン防衛というものは海上交通の安全の確保でございますから、その際の空からのそれに対する脅威というものに着目しているという意味でございまして、そういう意味で空からの脅威の問題を従来に比べてより重視している。その意味においては、シーレーン防衛の中に空の問題が含まれているという意味で恐らく委員も御指摘だと思いますので、そういう意味でございますれば委員の御指摘のとおりでございます。
  52. 上田哲

    ○上田(哲)委員 はい、わかりました。  エアレーンというのは、たまたま長官在米中に米上院の決議の中にこの言葉が出ているので、これを私は引用したわけです。つまりそういう今のような考え方に立って、今回の訪米長官は洋上防空ということを重視して表明された、こういうふうに考えていいわけですね。これは長官から……。
  53. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいま御指摘の上院の決議につきましては、正確に私も、今ちょっと手元にございませんが……。
  54. 上田哲

    ○上田(哲)委員 いや、決議のことを言っているんじゃない。これは長官にお答えいただきたいんだが、長官が洋上防空の重視ということを言われているわけですね。洋上防空の重視というのは、今防衛局長が言われたようなそういう考え方で述べられたのだなと確認しているわけです。
  55. 加藤紘一

    加藤国務大臣 防衛局長の申したとおりでございます。
  56. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そうしますと、上院の決議にもそういう言葉があったわけだから、上院決議によって長官方向が、考えが変わった、影響されたとは言われたくないでありましょうから、私はその問題をセパレートして言っているわけです。たまたま向こうにも表現が出ているよ、こちらは洋上防空ということを重視したよ、その意味は何かということを客観的に明らかにしたかったわけです。  その点は明らかになったから具体的に伺いたいのです。向こう側の言う意味でのエアレーン、私はレーンだと思っていません、もっと面の、洋上防空の問題だと思っていますが、それはいずれにしても、そういう海の面と空の面を一緒にしてシーレーン防衛構想ということが評価されなければならない、こういうところになったということになると、具体的に技術的な進歩云々という言葉は使われるが、そういうものに対応して、これまで考えられていたようなレベル、例えば作戦用航空機四百三十機、こういうふうな数字では到底賄い切れないことになるだろう、あるいはまた早期警戒機、要撃機、AEGIS艦等々と挙げられたわけだけれども、例えば当然空中給油機等々の問題もシステムとして含まれてこなければならなくなるんではないか、こういう問題。つまり、これまでの考え方よりも一歩かさ上げした防衛体制というかシステム体制というものが要求されることになるんではないかということを伺いたいわけです。
  57. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 幾つかの重要な問題を御指摘をいただいたわけでありますが、そのまず第一点の、いわゆる面的な防衛に踏み込んでいくのではないかという点につきましては、これは従来から申し上げておりますように、そういう面的な防衛にまで踏み込むという考え方をとっているわけではございません。  それから、個々の装備の問題でございますが、例えば空中給油機の問題、これについては洋上防空を効果的に行う場合に重要な問題といたしまして、一つは母機対策というものがあると私どもは思います。それからさらに、母機から発射されるミサイルに対する対策というものがあると思います。そういう意味で、洋上防空のことを考えますと、やはりまず母機対策というものを従来よりも十分に検討をする必要が出てきている、こういう理解をしておりますので、そういう意味におきましては、早期警戒の機能、これをどう持つか、あるいはその早期警戒機でキャッチをいたしました情報に基づいて、場合によっては航空自衛隊の防空戦力をどの程度活用できるかということも検討課題でございますし、それを効果的にやるために空中給油機がどのように活用できるかというふうなことも検討の課題になるものだと思っておりますし、そういう総合的な検討をいたしたいというのが現在の考え方でございます。
  58. 上田哲

    ○上田(哲)委員 大変重要なことが出てきたんです。余り抽象的に回さないで端的にお答え願いたい。絞りますよ。四百三十機体制では到底できないだろう、それから、空中給油機の話が出たから、これも問題なんだけれども、それも含むことになるのかどうか、この二点。
  59. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 私どもが今考えておりますのは、そういった洋上防空体制を強化充実する場合であっても、大綱の現在の枠組みの中でやりたいということでございますから、その必要な航空機につきましても、航空自衛隊に関することでございますれば、大綱別表の約四百三十機の中でどういった工夫が可能かというふうな観点から考えていくということでございます。  それから、空中給油機の問題につきましては、これもしばしば委員からの御指摘もございましてこれまでもお答え申し上げておりますが、機能的に見ますと、洋上防空を実施していく場合の要撃態勢をさらに効果的にする機能を持っておるということは事実ではないかという認識は持っております。ただし現在の時点では、空中給油機につきましてのこれまでの研究の蓄積が少ないというのが現状でございまして、五九中業の中において本件について具体的な事業として取り上げ得るかどうかという点についてはいまだ結論を得ることができない状況でございます。
  60. 上田哲

    ○上田(哲)委員 もう少し端的にお答えいただきたいんだが、そうすると、五九中業でCAP態勢は入るんですか。
  61. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 CAP態勢と申しますのは、従来から、本土防空の問題に関連して、委員からもしばしば御指摘をいただいている問題でございます。これは今後の航空技術の趨勢を考えますと、必要性というものが今後増大してくるであろうということは、しばしば申し上げておるわけでございます。これはいずれにしてもオペレーションの問題でございますから、五九中業の中で具体的にそのオペレーションの問題まで触れるかどうかということについては、今の時点では明確に申し上げられる状況ではございません。
  62. 上田哲

    ○上田(哲)委員 もう少し端的にひとつお答えいただきたい。  一つは、方角を変えて確認しておきたいのですが、長官、OTHが、結局はソビエト軍事情勢というものをキャッチして米軍に伝達するという以外の機能は考えられないのだけれども、それ以外の機能が考えられますか。
  63. 加藤紘一

    加藤国務大臣 シーレーン防衛は、我が国におきます交通路の安全の確保等を踏まえた我が国自身の防衛の体制でございます。それにつきまして、最近経空脅威が増大している、したがって洋上防空を考えなければならない。そういった意味で、情報収集機能を的確にしようとする我が国自身の防衛のための対策として考えているものでございます。
  64. 上田哲

    ○上田(哲)委員 OTHの機能を私は聞いているので、それはOTHでなくたって議論はできることなのですよ。そういう機能をさらにまたシステムとして導入するということになってくるのは、今まではいろいろな考え方はあったろうけれども、はっきりした新たな意思表示なのです。この意思表示に立ては、やはりこれまでの述べられていたような大綱水準考えでは、今達成されようとしている五九中業なるものの中身が変わってくる。もっと端的にほかの言い方を使えば、これまで大綱の目的であった小規模、限定的な侵略に対し、一定期間独力で対処するというふうな体制をもう超えることになる、こういう段階に踏み込んだという見解はいかがですか。
  65. 加藤紘一

    加藤国務大臣 基本的な私たち防衛政策が変わっているものではございません。
  66. 上田哲

    ○上田(哲)委員 抽象的な議論はしようがないのですけれども、長官が今度語られてきた中身によって合わせていきますと、新総合兵器体制ということの中で、洋上防空体制というのが強化される。三軍合同の実動演習フリーテックスへの参加、インターオペラビリティーの強化、新しい共同作戦計画の策定等々が浮かび上がってくるわけですから、こういうことになりますと、これはどうしても今までの小規模、限定的な侵略に対してという構えとは違ってくるということにならざるを得ないと思うのですが、そんなことはないのですか、長官
  67. 加藤紘一

    加藤国務大臣 ございません。私たちの国としては、現在行っております我々の専守防衛に基づいた防衛力整備体系の中で、その体系をより効果的にするために、より情報収集を明確にするために、いろいろなことを私たちは検討し、そして情報を収集するわけでございますけれども、そういった効率をよくするためのものの一環としてOTHレーダーも、我が国防衛のために有用なのではないかなと思って、その検討するに当たっての技術的情報の提供を求めたものでございます。  OTHレーダーにつきましては、新聞等でかなり大きく報道されておりますので、何か膨大な、何千億の兵器体系が新たに導入されるようなイメージを持っておられる方もおると思いますけれども、OTHレーダーシステムそれ自体が新しい情報収集機能であるから、いろいろ御議論にはなりますけれども、そんなとてつもない大きな兵器体系とか通信情報収集体系ではございません。これは聞いてみなければわからないわけですけれども、装備の全体として見ても、かなり金額的にも、正直言いまして小さなものであろうと思いますし、そういった耳の一つとしてお考えいただいていいものであろうと思っております。
  68. 上田哲

    ○上田(哲)委員 OTHレーダー、早期警戒機、要撃機、AEGIS艦等々の体制に入っていって、これは当然に、だから非常に広範なエリア、距離の中に防衛体制が膨らむわけです。あまつさえ航空体制が広がるわけです。これは小規模、限定的な侵略に対する構えを超えるものだ、私はそう思うのですが、いかがですか。
  69. 加藤紘一

    加藤国務大臣 情報収集するということが、例えば委員おっしゃるような新総合兵器体系をもたらすものかどうかという点については、私はかなり疑問を持ちます。そういった新しい何か特別のディメンションを超えたものというような意識は、私たちは持っておりませんし、現にOTHレーダーの規模その一つとってみても、そんな大きいものではないと思っております。
  70. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そうすると、今長官の構想を実現されることになると、私たちは非常に大きい兵器体系に踏み込むというふうに思うので、その場合に、当然長官の頭の中には、五九中業では大綱達成をされると約束をされてきた。その大綱達成ということは、当然にGNP一%を超えるものだという想念があるのだと推定するのですが……。
  71. 加藤紘一

    加藤国務大臣 御質問意味がちょっとわからないのですけれども、新たな大綱の発想とか、水準を超えるような新たな新総合兵器体系というようなものは、今のところ、さらさら考えておりません。
  72. 上田哲

    ○上田(哲)委員 いや、一%を超える決意でこのことを考えておられるのだろうということです。
  73. 加藤紘一

    加藤国務大臣 また御質問意味がちょっとわからないのですけれども、OTHレーダーそのもの自体、恐らく私の感じでは、これはアメリカからの技術情報提供を求めなければわからないわけでございますけれども、恐らくP3C一機か二機みたいおコストの、そんなに大きくないシステムだと今のところ考えております。
  74. 上田哲

    ○上田(哲)委員 私が言っているのは、そういうことじゃなくて、OTHは二百億ぐらいでしょう。ですから、そのこと自体の金額の問題を言っているのではない。しかし、全体のシステム、洋上防空体制というものをこういう形で進められていくときには、当然に大きな経費の次元に入らざるを得ないのだということを私は言っているわけです。  これはこんにゃく問答になっちゃいけないので、一つ確認しておきたいのですけれども、私が特に注目しているのは、こういうことなのです。そういう大がかりな規模の立場長官が実は御自分の言葉で日米首脳会談で表明をされた、このことが非常に重要だと私は思うのです。  これは、八一年の鈴木訪米のときの共同声明が、シーレーンをアメリカ側からは公約ということで、今日まで非常に大きなプレッシャーを受けてきている。私は、あれを公約だと思わないし、昨年の予算委員会でも、中曽根さんは、これは公約ではないと言われた。しかし、アメリカは、国防報告等々の中で、日本の国策としてぐいぐい迫ってきている。これが今度の上院決議にもなっている。これはもう否定できない現実であります。これに拘束されるかどうかというふうな行きがかりは別として、明らかにそういうふうに日米関係がある。八一年のシーレーン発言も、シーレーン公約となった。当然今回の長官発言も、アメリカ側は、エアレーンというのは向こうの言葉ですけれども、洋上防空をシーレーンの上部を空で固めるという立場で、非常に大きな公約としての立場で押してくるだろうと私は懸念をするわけです。公約としてアメリカ発言されたものですか。
  75. 加藤紘一

    加藤国務大臣 そのような大がかりな体系というものを新たに向こうで言及してきたことはと委員おっしゃいますけれども、委員のお言葉のとおり、これはシステムを導入いたしましても、二百億程度のものかそこいらであろうと思います。そんな大がかりなシステムでないということは、委員も御承知のことのようでございます。したがって、これが新たな大きなものの公約ということには当たりません。  私たちとしては、シーレーン防衛というものを私たち防衛の目的として、そしてその体制をより効率的にするために、諸外国にいろいろ技術がありますもの、その中をより効率的に活用できればということで情報提供を求めているという、シーレーン防衛のより効率的な推進ということでお考えいただいていい、ごく技術的な一部の話であろうと思っております。
  76. 上田哲

    ○上田(哲)委員 OTHの二百億だけを話してもらっては困るんです。そんなことは言ってないのです。だから、OTHは装備とすれば、設備とすれば二百億ぐらいだろうがと言っているのでありまして、私が言っているのは、もう一遍よく聞いていただきたい。長官が洋上防衛、洋上防空ということで打ち出されたシステム全体と今後の方向考えると、これは膨大なものになっていくということを言っているわけでありまして、それをあなたが膨大なものであると言われなくても、それは見解の相違だからどうでもいいです。あなたがアメリカに行って防衛首脳会談アメリカの国防長官に向かって表明された洋上防空、この洋上防空という概念があたかも八一年鈴木声明の中で——声明ではなかったのだが、コメントされた言葉が公約となって今日に及んでいるように、長官が今回ワインバーガー国防長官に表明された洋上防空という概念が公約として相手方に受け取られることはないか、こういう懸念を言っているわけです。
  77. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私たちは五九中業のことも説明いたしました。それは、共同対処してくれる米側我が国防衛政策の現状を説明するのは当然のことだと思っております。ちょうどそれは、私たちがこの国会を通じて、委員の御質問に答える形を通じて国民に御説明しているのと全く同じでございます。国会に御説明申し上げているとおりのことをアメリカにも説明した、国会における説明アメリカに対する説明と違っていいものだとは思っておりません。そして、この洋上防空の体制をどうあるべきか検討しているということは、アメリカに行く前から私たち国会で申しているとおりでございますし、そのとおりを申してきたことであって、新たなことを公約するというような筋合いのものではなかったと思っております。
  78. 上田哲

    ○上田(哲)委員 新たなことであるかどうかは見解の相違ですから、それはいいのです。私の質問に端的に答えていただきたい。長官が具体的に早期警戒機や要撃機、艦艇防空システム等々を挙げて、OTHも含めて述べられたこうした洋上防空の考え方アメリカに対する公約ですか。そのことを聞いているのです。これは長官でなければ答えられないのです。
  79. 加藤紘一

    加藤国務大臣 我が国が現在行っております自主的な防衛努力についての現在の考え方アメリカ側説明してきたわけでございます。それは、ちょうど国会で皆様に御説明するのと同じように米側にも説明したということであって、公約とかという筋合いのものではございません。
  80. 上田哲

    ○上田(哲)委員 確認しておきます。公約ではないのですね。
  81. 加藤紘一

    加藤国務大臣 ともに共同対処してくれる国に我が国防衛政策説明するのは当然のことでありまして、新たな公約という筋合いのものではありません。私たちが要請したわけであります。
  82. 上田哲

    ○上田(哲)委員 わかりました。そうすると、アメリカから例えばあのシーレーンの鈴木元首相発言が公約である、国策である、こういう形で迫られてきたような、我々苦い経験を持っているわけでありますが、アメリカが今回の洋上防空の問題の長官発言を公約であるというふうに迫ってくるような場合には、公約ではないとはっきりお答えになるということでいいんですね。
  83. 加藤紘一

    加藤国務大臣 それでいいと思います。あえて言えば、私たちが情報を提供してくださいませんかと言ったら、できるだけ努力しますとアメリカ側がおっしゃったアメリカ側の言葉の方がコミットメントじゃないでしょうか。
  84. 上田哲

    ○上田(哲)委員 ペンタゴンのアワー日本課長の発言と伝えられているのですが、今回の、公約ではないのですが、防衛庁長官の表明によって五九中業が完了された場合には、日本の戦力は戦術的能力から戦略的能力になる。つまり戦略的能力という意味は、アメリカにおける対ソ戦略の中に重要な要素として組み入れられるという意味だと理解をするのですが、こういう見解についてはいかがですか。
  85. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 当時そういった報道が流れたことは私どももアメリカ滞在中に承知をいたしました。その詳細についてはもちろん私ども承知をしているところではございませんが、私ども念のために確認をしてみたところ、国防総省としては日本防衛力整備はあくまで日本の自主的判断によって行われるものであるという趣旨で話をしたことはあるというようなことでございまして、アメリカ政府としては、大臣がお答えになっておりますように、日本の自主的な防衛努力を尊重するという基本方針には何ら変化はないということであります。
  86. 上田哲

    ○上田(哲)委員 NLPのことでありますが、今回はペンタゴンだけじゃなくて国務省筋でも随分この話が出たというように伝え聞いております。その内容は一々ここで提起いたしませんが、確認しておきたいのは二点、今回の会談を通じてNLP問題、特に三宅島という問題でありますが、第一点は、日本政府は三宅島にNLPの正式決定をしてない、それから住民の意思を尊重して事を運ぶ、この二点は国会で長官の答弁されているところでありますから、この二点はしっかり守ってこられたことと思いますので、この点を確認をしておきます。
  87. 加藤紘一

    加藤国務大臣 NLP問題は、日米の間にあります防衛面分野におきまして、具体的な懸案の最大のものであろうと思っております。  私がアメリカ側に申しましたことは、この問題の解決のために全力を挙げなければならないと思っております、そして、できるならば、総理ないし私も国会で申しておりますように、三宅島にお願いできれば一番いいと思っております、しかし、それにつきましても、この問題は島の人たちの十分な理解を得た上でなければ進められるものではないと思っております、ということは申しました。そういうわけでございますので、上田委員指摘の二点は委員おっしゃったとおりでございます。
  88. 上田哲

    ○上田(哲)委員 確認しておきます。  それから、今回の会談でシビリアンの交流ということを述べられたのでありますが、私はこれについては二点の問題を確認しておかなければならないと思います。  シビリアンの交流ということが制服の独走をさしてはならないという意味ならば一つ意味を持ちます。しかし、同時にシビリアンコントロールの中核は国会なんでありますから、国会のそれについての機能が弱まるというような形では困る。特に今回は国防会議の改組等々が臨調等からの答申も出ている趣でありまして、その方向は官房中枢の強化ということはあっても国会機能というものが強化されるというふうには必ずしも受け取りがたい。そういう国会機能をさらに強化するということが裏づけにならなければこうした問題は片手落ちになるだろうということ。  それから、そういうものがない状態で制服、背広ともどもにやろうということになると、防衛庁の独走になるという心配もあるわけでありますが、政府部内においても明らかにこれは外交はあくまでも正規の外交ルートを第一とすべきものでありまして、これに防衛庁が取ってかわるべきものではない、この二点はしっかりしておかなければならぬと思います。いかがですか。
  89. 加藤紘一

    加藤国務大臣 内閣機能の強化とそれから国会との関係、国防会議、その観点からシビリアンコントロールが今後どうあるべきか、これはまた別個の問題であろうと思いますし、ここではちょっと言及をいたしませんで、日米関係におきますシビリアンコントロールという観点から申しますと、私たちシビリアンコントロールの一番最初の具体的な事務的なスタートというものは防衛庁の内局だと思っております。そういう意味で、制服レベルにおきます交流がどんどん進んでいる中で、それの程度、回数、規模に見合った、またはそれ以上の内局と国防総省のシビルとの間に必要な連絡調整機能は十分に機能していなければいけない、また、機能していなければまたいろいろな国民の皆さんから不安感を持たれまた御批判を受けることになろうと思いますので、その点はしっかりと体制を充実させなければいけない、そういう観点米側と話し合ってきた次第でございます。
  90. 上田哲

    ○上田(哲)委員 私が聞いているのは、防衛庁内部の話ではなくて、その防衛庁の独走になっては困る。だから第一に国会の機能というものを強化するということが裏づけになければならないというのが一点。もう一つは、外交ルートは明らかに正式な外交ルートがあるわけですから、それを越えるものであってはならない。この二点を確認しておきたいわけです。
  91. 加藤紘一

    加藤国務大臣 国会のコントロールというのは、シビリアンコントロールにおきまして最終的かつ最も重要な機能だと思っております。その意味委員の御指摘のとおりだと思います。これはいかなる意味においても弱体化させることがあってはシビリアンコントロールの一番の基本に反すると心得ております。また、外交機能を通じてしっかりとこのチャネルが働いているということも必要でありまして、従来のSSCというのが事務レベルにおける最高の場所でございますが、それの充実ということの枠の中でこの防衛政策担当者間の往来をもっと密にしたいということでございます。
  92. 上田哲

    ○上田(哲)委員 三沢に核貯蔵の基地が用意されておる、高度水中兵器施設というのがあって核爆雷を貯蔵、取りつける準備が整っている、あるいは嘉手納、また入間、所沢、依佐美、こうしたところにそうした核戦略に直結し得る核兵器の貯蔵ないし通信施設が準備されているという報道についてはいかがですか。
  93. 古川清

    古川(清)政府委員 お答え申し上げます。そのような報道が米国の新聞の中に出ましたということは長官訪米中に私ども承知したわけでございますけれども、これは単なる報道でございまして、私どもは、ウィリアム・アーキンという方がその報道をなさった、そういった発表をなさった方と新聞では承知しておりますけれども、具体的な根拠については何ら承知をしていないということでございます。
  94. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そういうものが持つ能力と実際とは違うという見解のようですが、能力としてももしそういうものがあったとすれば問題だと思いますが、いかがですか。
  95. 古川清

    古川(清)政府委員 これはたびたびの機会にそういう御質問がございまして答弁を申しておるところでございますけれども、私どもは、そういった貯蔵庫に当たるようなものは存在しているとは考えていないわけでございます。
  96. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そういうものがあればそのこと自体でも問題だということを確認しておきますが、最後に長官長官はこの訪米に関連してシアトルの原潜基地あるいはコロラド・スプリングスの基地等々を実際に見に行かれた。原潜の中に入ったのは日本人で初めてだ。たまたまあちこちで報道もされておるのですが、安保世代、安保反対のデモに加わった長官が今やこうした安保支持の立場に立つということが一つの大変意味ありげなものにされているということに私はやはり不快感を持っています。長官がそういう立場で、非核三原則で入れることのできない艦艇の中に現職長官として踏み入れられるということの、説明の方法はいろいろありましょうけれども、多くの人々がやはり一種の快からざる感覚を持っているであろうという点については、長官はどのようにお感じになっておられますか。
  97. 加藤紘一

    加藤国務大臣 今度、私の訪米の際にいろいろなスケジュールが事務当局の間でも検討され、私の意見も聞かれました。その際にシアトル郊外のバンゴールの原潜基地というものが検討の対象にされたときに、正直に言いまして私もいろいろ考えました。核の被害を受けた唯一の国民である日本人として、またその防衛庁長官として、それを見るべきなのか見ざるべきなのか、いろいろな意味での感慨もございました。  この問題につきましては、特に核と私たち国民との関係につきましては、恐らくいろいろな方のいろいろな見方があろうかと思います。そしてある種のちゅうちょがあったことも事実でございますけれども、現在この核の問題が私たち世界の中の防衛の中である種の非常に難しい問題であり、ある種の業であり、そしてお互いに核を持つことの危険性を感じながら持たざるを得ない核抑止の現実がある状況の中において、やはり防衛政策の担当者としては見る機会があったならば冷静な、そして客観的な冷厳な気持ちでその現場を見ることが必要なのではないか、その機会があったならば見るべきなのではないかと考えて予定に入れてもらいました。米側も、決してそう簡単に見せる場所ではないのですけれども、その日程の中に組み込んでくれました。  行ってみまして私たちが感じましたのは、いろいろな感慨がありますけれども、核を持っている国々が万が一の判断の誤りとかそれからいろいろな仕組みのミスが起きないようにするためにいかに多くのバリア、障害を設定しているのかということがわかったのが一つの収穫であったと思っております。それはバンゴールでもNORADでも共通なんですけれども、機械に依存してはならない。その双方の基地で言っていたのは、この災害が起きないようにするためには、ヒューマンファクターという言葉を使っていたと思いますが、人的要素、人的判断というものに最終的には基礎を置きたい。人間の合理的な判断力というものにすべてを頼るという形で、約十人ぐらいの人間のいろいろな形のチェックを経なければすべての操作ができないように綿密に考えでおるということを見、そして核を持っている国々の恐れと核を持たざるを得ないところの恐れというものを感じながら運営しているというのが印象的であったと思っております。
  98. 森下元晴

    森下委員長 加藤万吉君。
  99. 加藤万吉

    加藤(万)委員 今度の訪米の過程で、アメリカの上院の本会議で洋上防衛を含む八〇年代における我が国防衛問題に対する、言葉としては適切かどうかわかりませんが、我が国防衛計画そのものに対する非難的な決議がなされました。  従来、我が国防衛首脳がアメリカに参りまして議会でこのような非難決議的要素を持った決議が上程をされるアクションはあったのでありますが、大臣が在米中に、しかも記者会見をされた数時間後にこのような上院の決議がされるというのは、私は率直に申し上げまして、先ほどの大臣の答弁にありましたようないわゆるアメリカ議会側の希望の表明である、そういうものとしては受けとめることができない、こう思うのであります。  これは二つ問題があるのではないか。一つは、我が国の五九中業内容まで含めた防衛計画そのものに対する非難もありましょう。いま一つは、経済摩擦に絡んだ条件としてこの問題があるのではないか。大臣は、きょうの報告にもありますが、日米間の経済問題はさておいて、防衛問題についてはと、わざわざ日米間の経済問題ということを挙げられて避けられて、防衛問題については日米間には友好な条件がある、こう述べられておるわけであります。  どうなんでしょうか。この決議の持つ意味というのは先ほどの大臣の答弁以上の意思というものがアメリカ議会あるいはアメリカ国民の中にある、こう見てよろしいのでしょうか。
  100. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私たちは現在の日米防衛関係は非常に良好であろうと思っております。一方、経済の面におきましてはいろいろの摩擦があることも存じております。したがって、私たちは現在の経済関係の摩擦に左右されない、揺るがない日米防衛関係を維持発展させていかなければならないと申しました。その背景には、やはりともすれば、努力を怠ればこの経済関係の波が防衛関係に波及してくるおそれなしとしないからこそ、あえて私たちはその努力をしなければならないということを申し、そして、ワインバーガー長官の方からも同感である旨の発言を得ているわけでございます。議会があのような決議をしたことは議会の中の日本防衛努力に対する期待の表明として受けとめております。我が国と共同対処をするという国としてはいろんな意味日本に対しての期待を持つことは当然だろうと私は思っておりますが、私たちとしては、自国の防衛は自主的な判断でやっていきたい、こう思っております。  ただ、あの決議の中に若干、繰り返しますけれども、経済面における不満というものがああいう形で出てきている部分がないかなといえば、やはりその底流にはあったんではないかな、私はこう思っております。決議説明の中に、日本は今や言葉だけではなく、より多くの円を使うべきという表現がありますけれども、その辺に何か象徴的にあらわれているような感じがいたしました。
  101. 加藤万吉

    加藤(万)委員 大臣、この決議が上程をされる前にルーガー外交委員長とお会いになったんでしょう。その際にはそういう話が出なかったのですか。あるいはもし出なくとも、その会談の中からアメリカの上院における決議という何となしに会話の中で感ぜられる状況というのがあれば、それ以前に行われました新聞記者会見のような形には大臣の発表はならなかったのではないか、私はこう思っているのです。どうなんでしょう。
  102. 加藤紘一

    加藤国務大臣 ルーガー外交委員長とはその日、決議される六時間ぐらい前に会ったことになると思います。ルーガー委員長の方はこの決議の動きについては一言もおっしゃいませんでした。また、その決議が行われる二時間ぐらい前に私は個人的な関係で他の二人の上院議員にもお会いしましたけれども、この方も全然存じておられませんでした。また、後ほどあれ全然知らなかったという連絡も受けました。したがって、突然出されたものでございます。  じゃ、そういったことは予想できなかったのか、甘かったのではないかとおっしゃる方がおりますけれども、議会の中でそういった動きがあるということは私たち十分底流としては存じておるからこそ、経済問題と防衛問題は絡ませないようにしてほしいと、それが私たちの希望でもあり建設的なものであると思うということをワインバーガーさんとその前日の会談で申し上げ、また、私たちは自主的に物事を決していくということを一層強く強調したわけでございます。
  103. 加藤万吉

    加藤(万)委員 今いみじくもおっしゃいましたが、やはりアメリカに対する情勢の分析という問題は、後ほどのシビリアンコントロールの問題、これから交流会議を開くという問題も含めまして、私は率直に申し上げまして相当な甘さがあったんではないかというふうに実は思うのですよ。これは五十六年の例の鈴木前総理の会談の際にシーレーンの問題を取り上げた際にも、我が国アメリカに対する軍事的な情勢分析の甘さあるいは議会筋の我が国に対する要請の各種の条件があると思うのですが、その甘さの中からあの会談、そしてシーレーン問題がその後我が国議会においても大変問題になったことは御案内のとおりなんです。私はどう見ても、新聞は比較的好意的に書いたのでしょうけれども、大臣に対して非礼だという言葉も使い、同時に、この滞米中に起きたアクションというものを、従来もあったことなんですから、それ自身に対する対応としての大臣の現地における記者会見が、日本の側から見てもう少し慎重を期さるべきではなかったか。いわゆるアメリカとの友好関係が大変成熟している、あるいは大人の関係にある等々を含めました一連の言葉は、そういう条件ではない、もっと厳しさというものを、経済摩擦の条件も含めて厳しい条件にある、それを踏まえての大臣の記者会見があってしかるべきではなかったか、こういう見方が、私ども、報道される限り、その範囲で見る感覚として生まれてくるのですよ。これはこれ以上の論争をここで議論しても、お互い立場の相違もあるでしょうから、申し上げませんが、私は、率直に言ってそういう実感を持ちました。  さて、そこで、今度の一連の会談の中で幾つか特徴的なことがありますが、先輩議員の上田委員質問されたことでありますから、私は問題を限って二、三質問してみたいと思います。  一つシビリアンコントロールの問題です。どうなんでしょうか。文民交流会議、いわば背広組の日米間の話し合いの場というものが必要である、その前提で、きょうの報告にも出ておりますが、日米安保体制が真の抑止力として揺るぎなく機能するよう、交流の深まりにつれて文民、いわゆるシビリアンの日米間の会議を持とう、こう報告されておるわけですね。日米安保体制の真の抑止力として揺るぎなく機能をするよう、そのためにシビリアンコントロール会議をやろうといいますと、その範疇、その会議で持たれる議題の内容といいましょうか、どの辺の範疇までなるのでしょうか。例えば日米間の今までの共同訓練であるとかあるいは防衛機能の問題であるとか、そういう問題は主として制服組、あるいは技術交流その他もありますから、その場でやりますね。一体この会議で取り上げるという日米間の防衛問題の範囲というのはどのくらいの範囲までになるのでしょうか。
  104. 加藤紘一

    加藤国務大臣 日米間の防衛政策基本につきましては、私は、総理大臣と大統領との間に時に行われます日米首脳会談基本的な枠組みが話し合われ、また私たちが年に一回行われます防衛の首脳の協議議論されるものだと思っております。そういった枠組みの中でシビリアンが具体的に政策問題を論じ、そしてそれが従来の私たち基本防衛政策に合致しているかどうかのチェックを常にしていかなければならないと思います。そういったことをおろそかにして、ともすれば制服制服の間の技術的な話し合いだけが先行いたしますと、シビリアンコントロールという意味においてそごを来すということの御批判を受けると思いますし、国民の批判を受けると思いますので、政策的な観点から本来あるべき日米防衛協力基本政策としてどうあるべきか、それが基本政策に背馳しないか、そういった点をしっかりと確認していくのが政策担当者間の話し合いであり往来であろうと思います。
  105. 加藤万吉

    加藤(万)委員 政策問題が問題なんです。政策という場合、先ほどの議論じゃありませんが、例えば我が国のいわゆる憲法から来る我が国軍事力といわれる今日の防衛力整備の限界というのがありますね。これはやはりアメリカ側の要請に対して、我が国にはこういう政策がありますから、したがって云々という、そういう話し合う場があるでしょう。もう少し広く見まして、国際的な外交問題、国際的な米ソ間の緊張、あるいは、まあそんなことはないと思いますけれども、例えばアジアにおける朝鮮半島で何らかの紛争が起きた、それに対する政策的な協議——政策といいますと極めて幅が広いのですね。どうなんでしょうか、防衛庁として持つべき政策の限界というのはどこまででしょう。例えば今言いましたように、ジュネーブにおける軍縮という問題があったときに、アメリカに対して、例えば今日米ソ間ではこういう軍縮問題が討議をされ、同時に核の問題や、次の、エスカレートされるアメリカ側の持つ戦略構想、そういう問題について米ソ間でいろいろ論議をされている、そういうことも含めて、我が国はしたがってアメリカから、共同の自衛力としてこれだけの自衛力を強めてほしいといった場合には、いや、それはできませんという、そこまでの政策の幅というのはあるんですか。どうなんでしょう。
  106. 加藤紘一

    加藤国務大臣 繰り返しますけれども、総理大臣レベルの話し合いもありますし、私たち防衛首脳におきます話し合いもございます。それは単に純軍事的な問題だけではなくて、現在の国際情勢を踏まえて、それぞれの防衛がどうあるべきかが論じられるわけでございます。その際には、もちろん軍縮問題の討議の情勢等も念頭に置いて話し合われるのは当然のことでございます。純軍事的なものであったならば、それは決して防衛首脳の話し合いにはならぬ、こう思います。  また、その事務レベルにおきます話し合いとしては、毎年一回ハワイで行われますSSCがございます。この話し合いも、例えば具体的に行われておりますいろいろな訓練だとか共同研究が、例えば集団自衛権に当たらないかといった原則的なチェックも行っていくわけでございますけれども、そういった枠組みの中で、外交チャネルを通じた、SSCに表現されますような枠組みの中で行っていく話し合いがよりもっと頻繁にあった方がいいだろうということで、今回の、シビリアンの交流をより密接にと申したわけでございます。
  107. 加藤万吉

    加藤(万)委員 一つの範囲はわかりました。  いま一つ、今度の五九中業、これまた今の議論にありましたけれども、できる限り相手方の軍事力調査をし、あるいは装備の面でも、例えば今日、ミサイルに対するいろいろな装備問題があるわけですが、これなども監視レーダーをできる限り持って、我が国の情報能力を強めていく、そういう答弁が先ほどありました。例えばそういう今までの日米間の軍事機能としての質的な変化、そういう問題についてもこのシビリアンコントロールのこの会議で取り上げる課題になりますか。
  108. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 シビリアンの交流の促進という観点は、今回の首脳会談におきましては、基本的に日米防衛揚力の進め方の問題の一環として取り上げられた経緯があるわけでございまして、そういう意味におきまして、従来「日米防衛協力のための指針」いわゆるガイドラインに基づくいろいろな諸研究なり共同訓練なりとか、いろいろ進められております。そういったようなものが、いわゆる制服制服との関係で接触の機会がどんどんふえてきている、こういう実態を踏まえて、そういうふうな時代になってきたことを考えてみると、やはりいわゆるシビリアンの政策担当者レベルでの相互の、日米両国間の意思疎通の方もきちんとやっておく必要が強まってきた、こういうことで考えているわけでございますので、基本的には日米防衛協力のあり方について、より一層充実を図っていくというテーマとして御理解をいただければよろしいかと思います。
  109. 加藤万吉

    加藤(万)委員 少し様子がつかめました。日米間で決めたガイドラインの中におけるいろいろな情報の交換、それならば少しわかりました。  大臣がおっしゃるように、政策全般についてここでやるということになりますと、一体、外務省の外交ルートというものとどういう関係になってくるんだろう。戦前の軍部と外務との関係、御案内のとおりですね。特に満州侵略以来の軍部と当時の外交とのあつれきというものは大変なものがあったというふうに私ども先輩から実は聞いているわけです。私は、制服組の人が武器の拡大について自己増殖を続けるのは気持ちはわかるのですよ。なぜかと言えば、みずから命をかけるわけですから。私はよく言うのですけれども、安全という問題を考えるときに、通産省と消防庁では違うのです。なぜかと言えば、通産省は、これがあれば安全ですよと、こういう話し方なんですね。ところが、安全を破壊されたときに出るのが消防車なんです。したがって、消防士が突っ込んでもなおそこで安全であるというケースがなければ安全にはならないという、こういうのがいわゆる安全の最低の定義なんです。今度の場合でも、私は制服組の人が安全を求める、いわゆる自己増殖を続けるというのは、そこはわかるのです。自分の命をかけて戦うわけですから。そのときに命が惜しくないなんという人はだれもいないと思うので、当然それを守るための正面装備を拡大してほしい。しかし、それを抑制し、それをコントロールするのが外交のチャンネルあるいはシビリアンが持つ使命だろうと私は思うのです。したがって、自己増殖にいわゆる文民の人まで巻き込んで防衛力が増殖するのではないか、いわゆる自己増殖を続けるのではないかという不安を、率直に言って今度のこの会議の設定に合意をされたことについて私どもは持ったわけです。  一体、防衛庁におけるシビリアンコントロールという問題が、従来の制服組に対するいろいろな、今言いましたような危険な意味、自己増殖を続けるであろう、あるいは、時には武器によって外交をというそういうところまでいく可能性のある、戦前の状況を見たらそれはあったわけですから、そういうものをコントロールできる機能としてあったにもかかわらず、今度はアメリカとの間で国際的な情勢認識の統一をする、あるいは先ほど、ミサイルの問題に対する監視機能として新しい長距離レーダー機能を装備する、それに伴う艦船の購入もするなどということも、一部五九中業で出ておりますけれども、そういうことになってきますと、そういうものに繰り込まれた文民の背広組の会議ということになると、まさに日米間の軍事協力体制に対しては我が国の自主的な判断とか外交的なチャンネルから得た抑止というものは効いてこないんじゃないか、こういう危険性を私は実は感じたわけなんです。  さて、どうなんでしょうか。外務省見えておられると思いますが、この問題に対して外務省では何か、まあ大臣がアメリカでやられたわけですから、話をされてきたわけですから、何らかの話し合いがされていると思いますが、いかがでしょう。
  110. 沼田貞昭

    ○沼田説明員 私ども外務省といたしましては、日米安保条約の実施について責任を有しておりまずし、また軍縮の問題であるとかあるいはもろもろの戦略の問題であるとか、安全保障関係するいろいろな問題も担当しておりますので、そういう私どもの立場から見ましても、防衛面を含む日米関係全般の一層の増進とか発展のためにアメリカ政府との間で緊密な協議交流を今後とも行っていく必要があると考えております。  それから、先ほど防衛庁長官の御答弁の中で、防衛基本政策枠組みについては日米首脳会談等のいろいろな機会にトップレベルで話し合い、その枠組みの中において防衛当局の政策担当者間でも、意思疎通を両国間で円滑に行っていかれるということでございますが、それは私どもとしても有意義なものであろうというふうに考えておりますし、それを進めていかれるに当たりましても、私どもと防衛庁との間でも適宜必要な連絡をとらせていただきたいというふうに思っております。
  111. 加藤万吉

    加藤(万)委員 大臣、今外務省から御答弁があったとおりですが、今のこの視点を外しますと大変なことになると私は思うのですね。ワインバーガー長官あるいはシュルツ長官との間の話し合いでは、恐らく大臣はそのことを念頭に置かれてその問題をお話しされたと思うのですが、私が申し上げましたように、防衛力整備日米間におけるガイドラインあるいは基本政策、そういう中での政策ないしはシビリアンとしての協議、そしてお互い情勢認識ならば、それなりに認めることはできますが、それからはみ出した、いわゆるそれ自身がひとり歩きをするということになりますと、これは大変なことになる。大臣の決意をお聞きしたいのです。
  112. 加藤紘一

    加藤国務大臣 今加藤委員の御質疑を聞いていて、御懸念の所在というのがよくわかったわけでございます。私たちの感覚といたしましては、委員がおっしゃっていますように同じ気持ちでございます。  私たちとしては、純軍事的に言いますならば、より大きな装備を持った方がいいという気持ちは、制服の方にはあるかと思います。しかし、シビリアンコントロールの第一のチェックポイントとして存在するのが、防衛庁の内局であろうと思っております。そして、私たち内局及び大臣としての私は、国会においてこのように御質疑を受け、国会においてシビリアンコントロールを受けるわけでございます。そして二番目に、防衛庁に限らず政府全体、それは今委員指摘のように、外務省やほかの関係の部門も含めての国防会議があり、また内閣というものがあり、そして最終的に国会の御判断があるわけでございます。私たちとしては、まず第一に内局におけるシビリアンコントロールをしっかりしなければならない、そして第二に政府全体としてのシビリアンコントロールをしっかりしなければならない、こう思っております。  ハワイにおきますSSCというものは、防衛庁と、それから外務省も入っての会議でありますことを御想起いただきたいと思います。先ほどから私がSSCの枠組みの中でと申しておりますのは、単に私たち防衛庁だけが行うものではないということを申し上げているわけでございます。ただ、若干の実態を申しますと、そういったハワイのSSCという会議がかなり大きなものになるものですから、そうしますと、国会の関係で外務省、防衛庁も全員出席できるときが限られてきたり、なかなか小回りがきかないうちに制服レベルの交流が激しくなっては、いろいろな面でそこを来すことになりはしまいかという心配がございまして、SSCの枠組みの中でより小回りのきくものを、今後ともよくやっておいた方がいいのではないかということを、今度申し上げたわけでございます。そういう意味で、委員の御懸念と同じものの上に立った上での対処であるということで御理解いただきたいと思います。
  113. 加藤万吉

    加藤(万)委員 それなら一体、その必要性というものに対してなお疑問が出たわけですが、しかし大臣、今の答弁を一つの見解としてしっかりと当委員会として聞いておきたいと思います。  さて、いま一つ、大臣とワインバーガー長官との話し合いの中で、米軍の外国基地における兵器の事前備蓄の問題について話し合われました。アメリカ日本に兵器の事前備蓄の用意がありますか、アメリカ側は、ありませんというお答えだったようでございます。さらに、それに引き続いて大臣は、事前備蓄があることは日本の抑止効果の増大に寄与するというお話をされた、こう新聞は報道をしました。このことは事実でしょうか。
  114. 加藤紘一

    加藤国務大臣 そのとおりでございます。
  115. 加藤万吉

    加藤(万)委員 「事前備蓄は抑止効果の増大に寄与する」、大臣、一体この場合の事前備蓄というもの、例えば兵器の範囲をどの範囲までとお考えになったでしょうか。例えば今よく言われております在韓米軍、韓国にいる米軍のために相模補給廠などは兵器の備蓄がされています。これは戦車あるいはジープその他、車両ですね、五千両とも言われておりますが、そういうものでしょうか。それとも今各所で問題になっております、アメリカの情報機能として日本の各所に配置をされている例えば瀬谷の通信基地あるいは稚内の通信基地、三沢の通信基地あるいは所沢の基地あるいは座間の陸軍司令部等々ありますけれども、こういう機能まで含めて兵器というふうにお考えになり、そういうものがあることが結果的に我が国の抑止効果、いわゆる対ソビエトでしょうけれども、それの抑止効果の増大に寄与する、こういうふうに理解をされたのでしょうか。いかがでしょう。     〔委員長退席、椎名委員長代理着席〕
  116. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 私からちょっと技術的な点を御説明したいと思いますが、いわゆるポンカスと申しますのは、現在、米軍がNATOとの関係で実施をしております措置でございまして、事前に、あらかじめ指定されました場所にいろいろな、主要な武器、弾薬、燃料等の軍事資材を展開をし、配備をして集積をしておくということが基本でございます。そうすることによりまして、NATOに対するアメリカの増援部隊を身軽に急速に展開できる、そしてまた初期における戦闘能力を向上することができる、こういうことをねらいにしてやっておるわけでございます。  したがって、私どももその明細までは承知をいたしておりませんが、例えば陸軍でございますと、NATOの場合は四個師団分と支援部隊のための重装備を主にして、陸軍については西独に事前に配備をしておるわけであります。それから二個師団分の装備をベルギーとオランダに事前配備をする計画があるということのようであります。空軍について言えば、戦術戦闘飛行隊用の装備、燃料、部品等のほか、いろいろな補修用の資材等々を事前に配備をしておく。海兵隊について言えば、一個海兵両用戦旅団分の資材をノルウェーに事前配備中である。そういうようなことがNATOとの関係で米軍が現在とっておるいわゆる事前配備の概要であるということでございます。  ただ、ただいま先生御指摘のございました、日本の国内にこういったような措置があるとは、私どもは全く承知をいたしておりません。
  117. 加藤万吉

    加藤(万)委員 そうしますと、いわゆる在日米軍あるいは在韓米軍の兵器の事前準備としてではなくて、我が国がある国から攻撃をされた場合に米軍がそれに対応する武器の貯蔵、そういうように理解してよろしいのですか。
  118. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいま申し上げましたように、NATOとの関係で申し上げますれば、NATOには米国も入っておるメンバー国でございまして、NATOの諸国が攻撃を受けた場合に、それに対抗するために共同で防衛行動をとる、こういう仕組みになっておるわけでございます。したがって、その防衛行動の中に当然に米軍が来援をしてくるということを想定をして彼らは防衛の構えをつくっておるわけでございますから、その際に、米軍の来援を急速に短時間にするということのために、主要な装備等を、先ほど申し上げましたようなものを事前にヨーロッパの方に持っていることが極めて効果的である、そういう考え方になっておるものと理解をしております。
  119. 加藤万吉

    加藤(万)委員 防衛施設庁、見えておると思うのですが、相模原の補給廠にM109自走りゅう弾砲が入っていますね。せんだって私も調査して、これがどこかに行った、搬出をされた、こういうことでありますが、私どもお聞きした範囲では、相模原の補給廠にある兵器貯蔵は在韓米軍の兵器であるというように聞いておるのですが、今防衛局長がおっしゃいました、いわゆるNATOと同じように米軍が支援をするために、それに必要な兵器、武器として貯蔵がされる、そういうことを今度の大臣のお話では期待をしたんだ、もしこういうことになりますと、従来防衛施設庁が説明しておられましたその補給廠において貯蔵されておる各兵器といいましょうか、あるいは戦車も含めてでありますけれども、それとは意味が違ってまいりますが、どうなんでしょうか。例えば自走りゅう弾砲、これなどは今どういうように理解してよろしいのでしょうか。
  120. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  相模原補給廠は日米安保条約第六条に基づきまして、補給廠という性格の施設として我が国が提供をしておるものでございますが、その使用、運用の面にかかわりましては施設庁の所管ではございませんので、私ども承知している限りでは、先ほど来御議論のございます事前集積、事前備蓄の制度というのは日本にはございませんので、私ども、相模原補給廠の施設としての提供、業務あるいは労務の管理、これを担当いたしておりまして、所管が違いますので、担当省庁の方にお尋ねいただきたいと思います。
  121. 加藤万吉

    加藤(万)委員 防衛局長、先ほどの御答弁で、アメリカが来援する場合、NATOではこうこうこういう兵器が備蓄されていれば極めて迅速に対応できるということも含めて、兵器の備蓄について、長官の方から、それは抑止力として大変効果があります、こういうお話があった、こういうことですが、今相模原で、例えば自走りゅう弾砲などというものがありますけれども、これなどもそういう対象として今後は日本の基地に備蓄をされる、この期待する内容に含まれるというように理解してよろしいのですか。  なお、時間の関係係でついでにお聞きしますが、先ほど上田委員の方から三沢の基地における問題が提起されました。これも否定はされましたけれども、これもこれから、この長官期待をするという話にのっとってもしアメリカ側が要請してくれば、受け入れざるを得ない、そういうように私は理解をせざるを得ないのですが、いかがでしょうか。
  122. 沼田貞昭

    ○沼田説明員 まず、相模補給廠の御質問についてお答えいたしますが、相模補給廠につきまして、昨年でございましたか、米陸軍装備が置かれているというような報道がございましたときに、私どもの方から念のためアメリカ側に照会いたしましたところ、韓国において更新する等のために使用しなくなった車両等で保管しておきたいものを、保管スペースの関係で相模総合補給廠に例えば一時的に持ってくるというようなことはあるけれども、これは、先ほど防衛局長から御説明のありましたような、いわゆるNATO等で行われているような事前配備、ポンカスというものではないという説明があったわけでございます。  また、米側によりますれば、相模補給廠は、装備の保管とか維持等のために使用されているものであって、補給廠で必要とされる作業量がそのときどきによって増減することはございますけれども、その相模補給廠の任務自体というものは別に変わるものではない、すなわちこれまでの使用態様、一時的保管とか整備とかいうような任務自体は変わるものではないという回答があったわけでございます。  それから、M109の自走りゅう弾砲につきまして、そういうものが搬入されているのではないかというような報道があったわけでございますが、これにつきましては、私どもの方からことしの二月に米側に照会いたしましたところ、米側から在京米大使館を通じて、相模補給廠における装備等の詳細については公表しないということを回答いたしてきている次第でございます。
  123. 加藤万吉

    加藤(万)委員 大臣、今自走りゅう弾砲についてはアメリカ風からは、そういうものは公表しないというお話ですが、現地では、これは核をつけ得る最小限の兵器であるという話はよく聞いておるのですよ。そして、現地の司令官等は、これが相模原の補給廠にある、そして、今度は搬出をされましたが、それも認めておるのですね。これは外交チャンネルが悪いのか、あるいは日米間の極秘事項として、チャンネルの方ではちゃんと聞いておるけれども国民の側に知らせないのか。いずれにしましても、そういうものは日米の地位協定の枠を超えたものとして認識をしなきゃいかぬのじゃないか。大臣が、アメリカ日本における備蓄が抑止力などということは、軽々に言うべき言葉ではない、そういう補給基地を持っておるところでは。そういう国民感情というものを無視されたような発言としてこの大臣の——日米間のやりとり以上の、先の話ですね。日本に備蓄される用意がありますか、ありません、我が国にもしあるとすればそれは抑止力云々、こういう話は、補給基地を持っておるそれぞれ、横須賀もそうですが、あるいは相模補給廠もそうですが、市民感情、国民感情としては顔を逆なでされるような言葉なんです。ましてや今、三沢にもそういうものがあるのではないかという指摘があってみたり、自走りゅう弾砲のようなものが配備をされてくるということになりますと余計そうなんですね。これはきょうは時間の関係でこれ以上追及はいたしませんが、このことがやがて何らかの形で基地にはね返ってくるということになりますと、大変な問題を内包しているということだけ申し上げておきたいと思うのです。  最後に一問お聞きしますが、今度のアメリカのミッドウェーの艦載機の訓練について極めて困難であるというお話をされたということを聞きました。そして同僚の上田議員からその内容について確認がありました。さて、ミッドウェーがいよいよ十一月から艦載機がかわりまして、修理に入る、約六カ月間だ、こう言われておりますが、まず、外務省がこのことを御存じか。さらに、もし御存じならば、この間における、六カ月間の発着艦訓練というのはどこでやられるのか、ないしは、これはやられないのか、お答えいただきたいと思います。
  124. 沼田貞昭

    ○沼田説明員 先日、在日米海軍司令部がミッドウェーの改修について明らかにしたとの報道がございましたので、私どもの方から念のため米側に照会いたしましたところ、ミッドウェーにつきましては一九八六年中に戦闘攻撃機でありますFA18を受け入れるための工事が行われる予定であるけれども、現在その時期とか期間等について具体的に決まっているわけではない旨の回答を得ております。  また、その間に艦載機の訓練等はどうなるかということにつきましては、今申し上げましたように、工事の期間等がどのぐらいになるかということが現時点では明らかでないわけでございますけれども、その間の艦載機あるいは航空部隊の訓練等についても現在検討中であるということでございます。
  125. 加藤万吉

    加藤(万)委員 ことしの夏はミッドウェーが幸か不幸か航行中でありますから、夏における厚木基地周辺の騒音は避けられるということで、大変住民はほっとしているのですね。既にこの問題は、御案内かもしれませんが、裁判所において一つ方向が出ています。この騒音はもう人間として耐え得られる状況ではない、したがって国においてはしかるべき処置を早急に講ずるべきであるという、一言で言えばそういう内容指摘がされておるわけです。もちろん、そのことがありますがゆえに、次の基地として、あるいは発着艦訓練をする場所として先ほどの議論があったのだろうと私は思いますけれども、今度六カ月間もこれをやられたらたまったものじゃないですよ。今の外務省の報告では、修理に入るということは聞きましたけれども、その間にどうするのかということは聞いておりませんというお話であります。もしもミッドウェーが横須賀で修理をしている間この訓練が継続してやられるということになりますと、まさにそれは生き地獄に住むようなものですね。どういう形で確認されるかわかりませんが、防衛施設庁、もう一室防音、全室防音などで済む状況じゃないですよ。六カ月からやられたら、私は率直に申し上げまして、自殺者が決して出ないとは言い切れないと思うのです。そういうことも含めまして、この間の次の基地の問題、どこでどういう分散あるいは訓練をされるかということはこれから相当長期間要する問題でしょう。が、しかし、少なくとも今までは一月のうちにせいぜい一週間とか十日。六カ月の間やられた日にはもうまさに生き地獄でありますから、十分その間の連携をとりながら、住民の側に被害が及ばないようにひとつ最大限の配慮をしてほしい、こう思うのです。外務省、それから施設庁のお答えをいただきたい、こう思います。
  126. 沼田貞昭

    ○沼田説明員 厚木におきます艦載機の訓練が周辺の住民の方々にいろいろの困難を提起しているということは、私ども重々承知しているわけでございまして、今ミッドウェーの改修ということにつきましては、先ほども申し上げましたように、具体的な時期の長さとかその間の訓練の状況というのがどうなるかということは、アメリカ側がまだ検討中であるということでございますので、はっきりしたことは申し上げられませんが、今先生の御指摘のような点も踏まえて、今後引き続きアメリカ側とも連絡をとっていきたいと思っております。
  127. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  ミッドウェーの改修の時期あるいはその間のパイロットの訓練をどうするか、まだ決まっておらないという外務省の御答弁でございますが、厚木の問題は、先生御指摘のとおり、私ども施設庁にとりましての最大の問題でございまして、この期間が決まり、訓練方法等についての米側との討議の機会が参りました際には、先生御指摘の点を十分踏まえまして、厚木の騒音被害がこれ以上大きくならないような訓練のやり方等について十分交渉をいたします。そういう努力をいたすことをお約束いたしまして、まだ時期がわかりませんので、少なくともやはりお盆の時期、これは昨年ひどい経験がございますので、例えば盛夏を避けるとか、あるいはその間訓練を中止するわけにはまいりません、練度維持のためにどこかでやるわけでございますが、このやり方等については十分検討をさせていただきたいと思います。
  128. 加藤万吉

    加藤(万)委員 どうもありがとうございました。
  129. 椎名素夫

    ○椎名委員長代理 山田英介君。
  130. 山田英介

    山田委員 このたびの日米防衛首脳定期協議、帰国をなされまして御苦労さまでございました。何点か御質問をさせていただきます。  まず最初に、私は質問四番手でありますが、きょう今までの議論を聞いておりました中から、最初に確認をさせていただきたいと思っています。  一つは、アメリカ上院の対日修正案に対する見解についてでございますが、長官は、有事に際して日本に支援に駆けつける国である、その議会我が国防衛力整備関心を持つことは極めて当然である、我々はそれを念頭に置いて防衛力整備を自主的に行ってまいりたい、このような趣旨の御答弁がございました。  そこで、長官が申されておりますように、日米防衛協力あるいはその関係というものは、模索時代から定着時代へ、あるいは極めて安定的であり、その関係は良好であるというふうにおっしゃっておるわけでございますが、しかし、この対日修正案が決議をされるということについて知らされておらない、あるいは極めて抜き打ち的にこれがなされたということは、やはり長官のお言葉とはまた別にといいますか、それとは違って、現実には極めて日米関係というものは厳しいものが依然としてあるのではないか。そしてまた、こういうことは今後もさらに火を噴く可能性というものがあるのではないかというふうに私は考えておるわけでありますけれども、長官におかれましては、どういうふうに今後対応されていかれるのか、御所見を伺いたいと思っております。
  131. 加藤紘一

    加藤国務大臣 最初に、私たちアメリカ側我が国防衛政策及び防衛力整備状況について関心を持っているのは当然のことだと申しましたけれども、それは先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。そして私たちはそれを念頭に置きつつも、私たち政策は私たち自身の判断で決定したいということを申し上げたいと思います。  さて、そのアメリカ側にも二つ分けるとあると思います。議会の動きというものと、それから行政府の私たちに対する対処の仕方というのがあろうと思います。で、行政府の方は、現在日米関係を良好なものとし、経済防衛面をできるだけ絡ませないようにすべきであると思い、そして同時に、日本防衛力日本の自主的判断で決定するという方針は建設的なことであるという認識を持ってくれております。  ただ、議会の中には、最近の対日貿易問題等の不満もその根底にあり、日本に対していろいろな発言をしたいという空気があることは、私たち十分に事前に承知しておりました。だからこそ、私たちは行政府との話し合いで、絡ませないようにするためには、議会との関係で私たちが知る以上の御苦労をなさっているのではないかなと申しましたら、ワインバーガーさんもその点はよくわかってくださっていまして、ありがたいというようなことをおっしゃっておりました。それほど行政府の方ではいろいろな議会との関係で御苦労なさっているようでございます。  さて、例の決議でございますが、私たちも事前には知りませんでした。ホワイトハウスも国務省もそして国防省も全然知らなかったようでございます。私たちは今の段階で、そういうことは知らなかったわけですけれども、具体的な底流としては、当然予想され得るようなことであったものでございますから、さほど大きなショックは私たちは受けなかった。やはりそういう底流があったのだなというふうにニュースを聞いたわけでございます。私たちとしてはアメリカの行政府の方で、さっき言いましたような三つの点が私たちの間で確認されたということは、今度の会談の非常に大きな成果であった、こういうふうに思っております。
  132. 山田英介

    山田委員 余り大きなショックは受けなかったという御答弁でありますが、米国の行政府といえども対日防衛力整備あるいは充実ということは非常に希望しておるわけでございますので、そういう観点からすれば議会も行政府も底流においては全く同じような我が国防衛力整備に対する認識あるいは要望というものを持っておるわけでございまして、この点はその意味では行政府議会も利害が一致をしておるわけでございます。そこで、私は具体的に今後そういう問題が起こり得るという立場といいますか考え方を持っておるわけでございますが、その場合に具体的にどう対応されるかという点につきまして、もう一度お願いしたいと存じます。
  133. 加藤紘一

    加藤国務大臣 先ほど申しましたように、アメリカの中では日本に対していろいろ発言する際に強い圧力的な発言でいくべきなのか、それとも日本の自主的な判断を待つべきなのか、それは戦後ずっと四十年の間、単に防衛問題に限らず経済問題、自由化の問題等でいろいろな面で常にこの二つのやり方については議論があったと思います。ある意味では非常に古典的な米側の国会及び行政府の中における意見の対立だったと思います。その二つのアプローチのうち、行政府は特に防衛問題については過去五年間日本の汗を流す努力を見守る、そして日本自分判断でやり得る限りのこと、自分立場からやらなければならないことはしっかりやっているという信頼感を持ったときに、現在のような行政府のアプローチは維持され、続いていくものだと思っております。したがって、私たちの国も基本的な防衛政策があります、財政的な限界がございます、国民意見があります、したがってそういう中で自分のやり得る中でいかに汗をかくかということが一番の問題であって、そこで若干の懈怠でもあったならば向こう側としてはまたいろいろ発言するかと思いますけれども、私たちとしては自分らのでき得る範囲の中で一生懸命やることがその議会に対する対処であり行政府に対する対処であろうと思っております。
  134. 山田英介

    山田委員 経済的な問題と絡ませないでほしい、あるいは貿易摩擦等と絡ませないでほしいということだろうと思いますけれども、ワインバーガー長官にもそういう申し入れを長官みずからなされている、あるいはただいまの御答弁によりましても、アメリカ議会の中にこれらの経済問題と絡ませようという底流があるということでございますが、私は例えばP3CとかE2Cの米国からの購入とか、あるいはまたAEGIS艦、OTHの導入計画あるいは検討というようなこと、それからただいま出ました兵器の事前備蓄、兵器の購入ということでございますが、これらはやはりこういう摩擦を減殺させるという意図、そういう側面がないとは言い切れないと私は思うのですが、その点いかがでございますか。
  135. 加藤紘一

    加藤国務大臣 今の委員の御質問は、日米経済摩擦がある、そしてインバランスがある、したがってその面を解決するために、国民が一人幾らずつ消費物資を買うなどというよりも大きな兵器を購入した方がいいじゃないかというような議論につながるものだと思いますけれども、そういう議論は私たち日本国内でときどき耳にはいたします。しかし、私たちは私たち防衛力整備につきましては純粋に効率の面から論じていくべきであって、経済摩擦の解消のためにいろいろ配慮するということはまた論議を複雑にいたすと思いますので、そういう道はとらないつもりでございます。そういうことも含めて経済の問題と防衛の問題というのは分けて議論すべきではないかということを考え、また申したわけでございます。
  136. 山田英介

    山田委員 もう一つは「防衛計画大綱」が策定をされた当時の国際情勢ということにつきまして大きな枠組みとしては変化はない、このように長官先ほど御答弁がございました。具体的には安保条約が有効に機能しておる、あるいは中ソの対立がある、南北朝鮮が火を噴かない、こう挙げられたわけでございます。したがって、その大綱を守ればよい、しかしその大綱水準防衛力整備がおくれている、五九中業でぜひ完成させたいんだということでございますね。言われておりますのは、六十一年度から六十五年度までの所要経費というのは十九兆円台あるいは二十兆円かと言われておりますが、国民総生産比、防衛費一%の枠を突破するものでありますか。
  137. 加藤紘一

    加藤国務大臣 五九中業につきましては主に正面装備等については綿密に積み上げをいたしておりますけれども、これは全体の防衛費の中で二五%前後のものであろうと思います。そのほか例えば人件糧食費とかありまして一定の金額になるわけでございますが、現在の中業策定作業におきましては個々の案件について内局と各幕との調整をやり、それがほぼ完了した段階ではございますけれども、その他を含めまして全体的に幾らの金額になるかということにつきましてはまだ積み上がった数字がございません。したがって、それがどの程度の金額になるのか、何兆円になるのかということは現在のところ申し上げられません。ただ従来から安保特を初め各委員会でも申しておりますように、個別の討議の状況の報告を聞いて私の直観的な感じでは、一%の中でそれをおさめるのはちょっと難しいかなという感じがいたしているということは申し上げてきたところでございます。
  138. 山田英介

    山田委員 六十一年度が五九中業の初年度に当たるわけでございます。現時点で、ただいま御答弁ありましたけれども、初年度におきましてはGNP比一%を突破する見通し、見込みでございましょうか。
  139. 加藤紘一

    加藤国務大臣 その五九中業というのは五年の間の数字でございまして、各年割を決めておるものではございません。したがいまして、その金額、単年度がどうなるかというのはこれまた予算の概算要求のときの話になろうかと思いますし、またGNPの今後の見通しも非常に明確でないので、単年度でどういうふうになるかということを今、申し上げられる段階ではございません。
  140. 山田英介

    山田委員 不確定な要素があるからなかなかはっきりとは現時点で申し上げられないというようなことでございますが、訪米を終えられた現時点における長官のお考えとして、五九中業の初年度におきましては一%枠を守るという決意でこの策定の詰めに臨まれるのかあるいはまたこれはどうも突破しそうだなというようなお感じでありますのか、その点もう一度お願いします。     〔椎名委員長代理退席、委員長着席〕
  141. 加藤紘一

    加藤国務大臣 繰り返しますけれども、来年度の概算要求をどういうふうにいたすかということは、私たちまだ役所内部で具体的な詰めを行っておりませんし、それからまたGNPの来年度の見通しもまだ明確ではないということもあって、その点については今明確に申し上げられる段階ではございません。ただ一つだけ申し上げられるのは、私たちアメリカに行く前と行って帰ってきた現在の段階とで私たち見方考え方が変わっていることはございません。
  142. 山田英介

    山田委員 一点だけ。初年度の所要経費を含めて防衛費は一%以内におさめるという御決意はございますか。
  143. 加藤紘一

    加藤国務大臣 その点につきましては、来年度の概算要求をどうしようかということをまだ内部でも検討を始めておりませんので、現在申し上げられる段階ではございません。
  144. 山田英介

    山田委員 私がちょっと疑問に思いますのは、国際情勢は明確に大綱策定当時と大枠において変わっておらないという御認識がございますのに、GNP比一%を突破せざるを得ないと言われております五九中業において大綱水準を何ゆえに達成をしなければならないのか。それは水準と比べておくれておるというお話があるわけでございます。しかし、一%の枠内で大綱水準達成させていこうという努力なり決意なりがちょっと薄いのではないか、欠落をしておるのではないかというふうにも考えられるわけでありますが、この点いかがでございましょう。
  145. 加藤紘一

    加藤国務大臣 昭和五十一年当時に二つの大きな決定があったと思います。一つ大綱であり、一つは三木内閣における一%の閣議決定であったと思います。その二つはずっと政府のある種の公約になってきておったわけですけれども、その二つが相矛盾するようになりましたのは、一番大きいのは経済の成長の見通しが狂ったことだと思います。当時一三・三%の経済成長を見込み、そして当時の推測を現在に延ばすならば、現在のGNPは約五百兆になっておる前提であったわけです。ところが、現在私たちが手にしております政府見通しの最新のもので三百十四兆か三百十五兆というのが現在のGNP水準でございます。したがいまして、「防衛計画大綱」の水準をできるだけ早期に達成すると歴代の防衛庁長官ないし総理大臣みずから国会において申し上げてきたことと、若干矛盾してきているというのが現在の状況であろうと思います。それが一番大きな違いなのではないかと思います。  私たちとしては、防衛力水準につきましては、これで多いという御議論とこれじゃ少ないという御議論と、防衛問題についてはもう左右前後いろいろ御議論ございますけれども、その非常に複雑な議論をまとめて、なおかつ我が国の節度ある防衛力の姿を示しい今後どこまで防衛力が伸びるか知れないという国民の不安にこたえるという意味も含めまして、平時の水準として大綱水準を設定したわけですから、それをなるべく早く達成することが防衛に関する国民コンセンサスをより強固にするゆえんであろう、そのためにも達成するという目標はぜひ頑張ってみたい、こんなふうに思っている次第でございます。
  146. 山田英介

    山田委員 当時のGNPの伸びの見通しということを再三長官おっしゃられるわけでありますが、国力、国情に応じた防衛力整備ということが一つには我が国防衛力整備の大きな方針、流れとしてあるのだろうと私は思います。そうなりますと、見通しが狂ったから当然のように一%の枠を超えても仕方がないということには、にわかになりがたいと私は思うわけでございます。やはりそういう国力あるいは経済規模に見合った防衛力整備というものが基本になければならないのだろうと私は思っておりますが、その点いかがでしょうか。ただ、五百兆もいくはずだった見通しが三百数十兆しかいかない、だから一%を超えてもやむを得ないのではないかという角度だけではなく、やはりその時点における、その年度における我が国の力、その中で防衛力整備にかける費用はこれだけということにならないと、問題なのではないでしょうか。改めて伺っておきたいと思います。
  147. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私たちも、防衛力整備分野が、厳しい財政事情とそれに伴っていろいろ議論されている行政改革等から完全に遊離した聖域だとは思っておりません。私たちも、できる限り経費の節約をし、そしてそれぞれの装備が、現在の我が国の置かれた立場から必要かどうかということは真剣に議論されなければならないと思っております。そういう意味で、防衛庁の内部では、各幕の要求もいろいろありますけれども、まず内局中心にかなり厳しい査定をしながら、現在五九中業作業をいたしております。  ただ、あえて言えば、かなりGNP見通しが大きく狂っていることも一つの要因になっているということは御理解いただきたい。三百十四兆と五百兆前後というのは大きな乖離でございますので、その辺は御理解いただければと思いますし、人件費の伸びなどもかなりのものになっていると思っております。  ただ、委員指摘のとおり、我が国は、国際情勢変化に伴って潜在的な脅威状況に伴ってすぐ対応してすべてを考えるという体制はとっておりません。完全に一〇〇%脅威対応論というものはとっておらない。かなり節度ある防衛力整備をし、そして多くの部分は、かなりリスクがあってもそれは外交的な努力とかその他の総合安全保障政策の中で考えていくという基本を持って、基盤的防衛力の構想に立脚しているということも御理解いただければと思います。
  148. 山田英介

    山田委員 先ほど上田委員からも御指摘があり、また懸念が表明されたところでございますが、関連をいたしますけれども、「防衛計画大綱」、確かに二つあるわけです。「防衛力整備実施上の方針及び留意事項」というところを見ても、「諸外国の技術水準の動向に対応し得るよう、質的な充実向上に配意しつつこれらを維持すること」、それから「具体的実施に際しては、そのときどきにおける経済財政事情等を勘案し、国の他の諸施策との調和を図りつつ、」「留意して行うものとする。」云々とあるわけであります。今の長官の御答弁ですと、基盤的防衛力整備の構想を踏まえてやっておみと言われますが、諸施策とのバランス、財政事情等を勘案してというこっちの部分がかなり小さくなってきているのではないかと私は危惧をいたしております。  それから一%の問題につきましては、ジャパン・ソサエティーで長官が講演をされた中で、六〇年安保当時のことに触れまして、当時は安保条約に対しては三分の一くらいしか支持がなかった。ところが今日、七〇%からの支持といいますか理解を得られるような時代の大きな変化が出てきておる。その理由として幾つか挙げられております。我が国がどういうふうに努力してきたかという部分におきまして、非核三原則とか平和諸原則について国民一つの歯どめとして安保体制に対する理解を深めていったのだというくだりがあるわけでありますが、このとき我が国の平和諸原則という中で、GNP一%枠内で頑張ってきたという一%枠ということに、いただきました講演メモでは触れられていないように思うわけであります。長官としては一%枠を余り重要視しておらないのかなという気もするのですが、この点、触れられていないとすれば何で触れられなかったのでございましょうか。いただいた資料で見ると、我が国の平和諸原則あるいはそういう努力の中の一つとして非核三原則とかというのは入っておりますけれども、一%枠以内で節度あるという、こういう部分がないのじゃないかと思いますもので、その点、どうでしょうか。
  149. 加藤紘一

    加藤国務大臣 一%の問題に言及しなかったのは、特に意図があるわけではございません。ただ、私が考えておりますのは、我が国基本的な防衛政策の中で、憲法を遵守し、専守防衛にのっとり、そしてシビリアンコントロールを堅持し、そして近隣諸国脅威を与えない、そして佐藤内閣時代にできました非核三原則を遵守しというのは、本当にベーシックで基本的な政策だと思っております。そういうものを遵守してきたからこそ、国民の間に我が国防衛力整備についての信頼感が徐々に形成され、そして自衛隊というものと日米安保という二つの柱の我が国防衛政策にそれなりの理解が出てき、ある種のコンセンサスになってきているのだ、私ばこう思っております。  一%の問題は、累次国会でも申しましたように、当初はこれは当面の、四、五年の財政上のめどとして考えられたことは、当時の議事録、それから政府の答弁で明らかなとおりであります。しかし、それがその後、国民防衛力についてのある種の安心感を与えたということも事実だと思っておりますけれども、それは私も認めますけれども、やはり憲法とか専守防衛とか、そういったものの方がよりベーシックな防衛基本政策であろうと私は思っております。
  150. 山田英介

    山田委員 この点、また後ほど触れたいと思いますが、OTHとかAEGIS艦、言われております洋上防空システムなどが、私は「防衛計画大綱」で定める水準を超えることになるのではないかというふうに心配をいたしているわけでございます。また、そう現に言われておるわけでございます。それを押してまで、五九中業、六十一年から六十五年度までともかく達成をするのだというような姿勢は、私はやはりアメリカ一つの戦略といいますか、対ソ戦略、世界戦略の肩がわりを目指しているのではないか、あるいはそれを結果的に肩がわりをさせられるのではないか、そういうことになっていくのではないかという心配を一ついたしております。この点につきまして、御答弁をいただきたいと思います。
  151. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 まず第一に申し上げたいことは、私どもが考えております我が国防衛力整備基本的な枠組みは、大綱水準達成しよう、大綱に定める防衛力水準達成するということでございます。したがって、具体的ないろいろな防衛力整備考え方も、当然その中で検討をされているわけでございます。  御指摘の幾つかの問題は、洋上防空体制の充実の問題の一環として御指摘になったことだと思いますので、そういう観点から申し上げますと、私どもはやはり洋上防空体制の強化というものが、近時その重要性を増してきているということを認識をしていることは事実でございます。したがって、それをどういうふうに具体的に実施していくかということが問題でございますが、その場合に、個々の装備を切り離して、断片的に判断をしていくことはこれは適当ではないのであって、やはり全体としての洋上防空体制をどうするかというものを体系的に考えようというふうに思っております。  そのポイントは、一つは武器そのものに対する対策でありますし、それからもう一つは、武器から発射されるミサイルに対処する体制をどうするかという問題でございます。そういう観点から申し上げますと、まず、そういった武器がどういうふうに我が国のシーレーン、海上交通に対して脅威を与えてくるかという点を早く発見することが一番大事だということでございまして、そういう意味で、近年技術の発展をして具体化しておりますアメリカで採用しつつあるOTHレーダーというシステムがかなり有効ではないかな、そういうふうな見方を現在しておるわけでございまして、そういう意味で、先ほど来お答え申し上げておりますように、OTHレーダーにつきましては、検討を鋭意進めておるということは事実でございます。  それからもう一つの御指摘になりましたAEGIS艦の問題でございますけれども、これは言ってみれば、武器から発射されたミサイルに対処するための艦隊防空能力の向上のための一つのアイデアとしてそういうものがあり得るかどうか、こういう問題だろうと思います。  アメリカは現在そういうかなりミサイル対処能力の高いAEGIS艦というものの整備を始めておることは事実でございます。  ただ、我が国の今言った洋上防空体制の問題として考えてみた場合に、これはまだかなり大型のものでありまして、かなり高価なものでございますので、全体の洋上防空体系の中で費用対効果の点も含めて考えた場合に、果たしてこれが採用すべきものであるかどうかという点については、深く検討する必要がある問題だというふうに現在思っております。そういう意味におきまして、このAEGIS艦の問題を今ここで切り離して先取りをして採用を決めるということはできない、この問題についてはさらに引き続き継続をして検討をしてみたいというふうに今考えておるところでございます。
  152. 山田英介

    山田委員 この関係の問題では最後に長官一つございますが、一%枠を守りますということは、長官は今までのずっと発言の流れから見ておりますと、そういうふうにおっしゃってくださいと言っても、これは無理でしょう。青森県庁での記者会見でございましたか、そのときは一%枠を守りたい、こういう、たいという願望といいますか、希望みたいなニュアンスでおっしゃられておるわけでございますが、今アメリカから帰ってこられまして、この時点において一%枠を守りたい、守るために努力をする、こうおっしゃることはできますか。
  153. 加藤紘一

    加藤国務大臣 先ほども申しましたように、アメリカに行く前と帰ってきた後で私たちの気持ちは変わっておりません。一%は守りたいと思っております。
  154. 山田英介

    山田委員 あと何点がお聞きをいたしますが、先ほど先輩の委員からも御質問がなされておりましたが、長官は今回訪米なされてシビリアンの交流を深めたいと提言をして、アメリカ側も同意をした。このシビリアンの交流の目的というものは、先ほど来るる御答弁があったところでございますが、必ずしも長官のおっしゃるシビリアンの交流の目的と、アメリカ側がとらえておるシビリアンの交流の性格といいますか、意味づけというものが、私は大きな違いがあるように思えてならないわけでございます。いわゆる共同訓練とか、そういう実動の訓練、共同訓練が、昨年末の日米共同作戦計画の一応の策定が終えられたそれらを踏まえて、それで実動訓練というものがずっとここで極めて拡大をする傾向に今ございます。その実動訓練、共同訓練も、何といいますか、戦技の向上だけではなくて、やはりアメリカの対ソ戦略の一翼を担うというか、あるいは抑止力の大きな結果としてそういう力というものが作用してくるというような、そういうことで、余りこれが突出した形で際限なく繰り返し繰り返しアメリカ軍と我が国自衛隊との共同訓練が行われるということはどういうことかなという議論が一方にはあるわけでございます。  もう一つは、今度はそういう実動訓練、いわゆる制服組といいますか、そういう交流が盛んになってきたので、この辺でひとつシビリアンの交流もという御発想かと思うのですけれども、実際にはアメリカ国防総省の当局者の見解ということで報道されましたように、五九中業我が国達成すればアメリカ世界戦略の一翼を担うことが可能になる、そういう戦略的能力を持つことになるのだ、したがって戦略というものを考えた場合には政策担当者であるシビリアンの交流が非常に大事である、こういうとらえ方をアメリカがされているようでございます。そういたしますと、シビリアンの次元においても私はアメリカ世界戦略の一翼を日本が担うというか、あるいはそれに組み込まれていくというか、そういう危険性を感じるわけでありますけれども、シビリアンの交流長官が意図して、目的として提案をしたその中身と、アメリカ側がとらえておるシビリアンの交流ということにつきまして、長官はどういう御見解をお持ちでございますか。
  155. 加藤紘一

    加藤国務大臣 アメリカ側と私たちとの間でシビリアン交流といった場合に、その発想においていろいろそごがあるというふうには私たちは思っておりません。まず制服レベルにおきます各種の交流がありまして、これは極めて純軍事的な観点から論じられる可能性も多い分野であろうと思っております。それにつきましては、まず第一に我が国におきましても内局対制服の真剣な討論が行われなければならないと思いますし、アメリカでも国防総省のシビリアンとそれから各サービスとの間で真剣な討論が行われなければならないと思います。そして私たちシビルとシビルとがお互いに、純軍事的な側面だけではなく、各種の背景も踏まえながら、各種の政策的な判断も加えながらやっていくことがまず第一のシビリアンコントロールになろうと思っております。そしてまた、それは私たちとしてはしっかりとやっているつもりでございますけれども、単に国防、防衛当局に限らず、外務当局それからその他の政府の部門も入れたコントロールが必要だということも私たちは存じておるところでございます。ハワイにおきますSSCというのは、そういう場所であるわけでございます。ハワイにおけるSSCの枠組みの中で、より小回りのきく、短期的に出張して話し合ってくるとか、そういうようなことをしっかりやっておかないと、やはり純軍事的なサービス対サービスの、各幕対向こう側の各種軍との独走になってはいかぬということはよく頭に置いておかなければいけないのではないか。そういう意味で私たち防衛政策担当者における交流というものをもっとしっかりしなければならないと申したのでございます。  先ほど御質問ございました、日本が戦略的な意味を持つかどうかという御質問でございますが、防衛局長がお答えいたしましたように、若干の誤解があるのではないかというふうに思っております。
  156. 山田英介

    山田委員 「防衛計画大綱」は御案内のとおりでございまして、平時において一時的、限定的な侵略に対処する、それがいわゆる基盤的防衛力構想ということになっているわけでございますが、AEGIS艦とかOTHとか、あるいはまたP3Cを大量に購入する計画とか、こういうものが大綱考え方をはみ出していないとするならば、どこに根拠を求めておられるのか。局長どうですか。
  157. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 私どもが現在進めております防衛力整備は、量的な面で申し上げますと、「防衛計画大綱」の別表に定められているのが基本的な枠組みになっておるわけでございます。御指摘のP3Cにいたしましても、これは大綱別表の海上自衛隊の作戦用航空機の数約二百二十機という総体の数の中で整備を図っていくべきものであるということでございまして、いずれにいたしましても各種の装備は、例えばF15にいたしましても航空自衛隊の作戦用航空機約四百三十機の枠の中の話である。そういうことでございますから、私どもが考えております五九中業の事業量と申しますものもこういった大綱の別表の枠内で検討されていくというふうに御理解をいただければよろしいのではないかと思います。
  158. 山田英介

    山田委員 先ほど上田委員指摘されましたように、例えばOTHの場合には、我が国防衛のためにそれが機能するものなのか、あるいは極東ソ連軍の動向等を超早期に警戒管制いたしまして、これをアメリカに伝えるために導入するのかという、極めて基本にかかわる部分の問題でありますが、時間がありませんので、局長は今、別表に基づいてという御答弁でありますが、私は、別表とともにやはり大綱考えておる、あるいは大綱がおのずから規定をするといいますか、その精神といいますか、考え方というものをやはりきちっと踏まえて整備をしていかなければ、飛行機が四百三十機以内だからとか、一機出だからとかいう問題ではないだろうと思っております。  それはそれといたしまして、日米防衛協力をこれからも大いに拡大していこう、その中身の重要な一つは、軍事訓練ではなくて、日米共同訓練、実動訓練というところにウエートがあるのだろうと思います。それと、今申し上げましたシビリアンの交流も入ってくるかと思います。一つ伺いたいのは、これは先日報道にかかった部分でありますけれども、在韓米空軍と我が国の航空自衛隊との共同訓練につきましてアメリカからぜひ実施をしたいという要請があったと伺っておりますが、事実要請があったのかどうか。もしそれが正式に要請された場合には、防衛庁長官、これは要請を受ける、要するに共同訓練をやるということになるのでしょうか。それをひとつお知らせいただきたい。
  159. 大高時男

    ○大高政府委員 お答えいたします。  防衛庁といたしましては、航空自衛隊が保有していない機種を含めましてできるだけ多くの異なった機種間におきまして訓練を、外国軍隊との共同訓練も含めてでございますけれども、実施することは自衛隊の戦術技量の向上につながる、こういうことで必要であると考えております。また、こういった訓練を行いますことは所掌事務の遂行の必要な範囲内にとどまる限りにおきまして法的にも可能であると考えております。しかしながら、具体的にそういった訓練をいつ、どのように行うかということにつきましては、実施する場合のメリット、デメリットを勘案して慎重に判断すべきものであろうと考えております。  ただいま先生から御指摘の在韓米軍と航空自衛隊との共同訓練の問題でございますけれども、米側からも種々の戦闘機との間で戦闘機戦闘訓練を実施したいという一般的な希望の表明はございますけれども、現在のところ、在韓米空軍と航空自衛隊との共同訓練をやりたいという具体的な要請というものはないということでございます。(山田委員「あった場合」と呼ぶ)ただいま申し上げましたように、そういう要請がございました場合におきましては、その訓練の内容、目的、それから全般的な情勢等、メリット、デメリットを判断いたしまして決定すべきものであろうというふうに考えております。
  160. 山田英介

    山田委員 そのほかにも日米共同演習につきましては、大体陸海空各自衛隊と米軍との共同訓練は各個別々にこれは実動訓練それかられの上のといいますかペーパーの上での訓練等も大体踏まえられてきた。そうすると、この先を展望してみますと、いずれはアメリカの陸海空の三軍と我が国の陸海空の自衛隊との合同の実動演習というものも考えられておるのではないかと私思うわけでございますが、その辺の見通しはいかがでしょうか。自衛隊防衛庁としては積極的に対応しようという姿勢なのか、あるいは慎重に対応しようとするのか、もう一問ございますので、この辺について簡単にお答えください。
  161. 大高時男

    ○大高政府委員 ただいま先生御質問の陸海空三自衛隊と米軍の実動演習でございますが、御質問の趣旨が米陸海空三軍の参加する実動訓練ということでございますれば、こういったものを将来実施する必要はあるというふうに考えておりますけれども、現段階におきまして具体的な計画を持っているわけではない、当面本年の秋以降におきまして、先生先ほどお話のございました指揮所訓練、共同指揮所演習でございますがこれを行う計画でおります。後者の場合につきましては、現在のところ具体的な計画はないというところでございます。
  162. 山田英介

    山田委員 この共同訓練でございますが、日米安保体制枠組みの中で、あるいは我が国自衛隊防衛力整備によりまして抑止力を向上させていこう、そういういろいろなものがあるわけでございます。しかし、抑止力の向上といった場合には、その結果脅威を高めるという部分と、負けないという質的な向上といいますか実力を磨いていくとかという二つの効果をもたらすのだろうと私は考えるわけでございますが、抑止力という角度から、あるいは日米共同作戦計画が策定されたのだから、きょう時間がありませんから言えないのですけれども、防衛協力を一層高めようというかけ声の中でいろいろな共同訓練というものが積み重ねられていこうとしているわけです。しかし、特定の名前を挙げて恐縮ですが、東西の軍事バランスとか陣営とかいう次元からでございますけれども、例えばソ連我が国を見た場合に、今までなかった共同訓練というものがここに来て米軍とどんどん積み重ねられていくということになりますといろいろな反応が出てくるだろう、これは当然あり得るわけでございます。したがいまして、抑止力の向上、日米防衛協力の向上ということはそれはそれで言えることかと思いますが、余り一方に偏ってそれを遂行していこうということになりますと、かえって潜在的な脅威を顕在化させる大きな引き金になってくるという側面もあることをよく踏まえられまして、在韓米軍との共同演習にしても、あるいは三軍と我が国自衛隊の合同の共同訓練とかいろいろスケジュールが出てくるかもしれませんけれども、ぜひ慎重に対応していただき、我が国基本的な防衛力整備あるいは防衛力のあり方の軸から外れないようにお願いをしたい、このように私は考えております。  時間でありますので、以上で終わります。
  163. 森下元晴

    森下委員長 吉田之久君。
  164. 吉田之久

    ○吉田委員 先日来防衛庁長官ワインバーガー国防長官らとの重要な会談を終えられましたことにつきまして、大変御苦労さまでございましたという気持ちを最初に申し述べます。  さて、若干の御質問をしたいわけでございますが、先ほど来各委員の御質問の中に、当然のことながらGNPの一%問題が再三出てまいりました。このことに関しまして長官は、当初のGNPの伸び率二二・三%がそのまま持続されておるとするならば現在のGNPは五百兆円になんなんとするはずだ、しかし事態はそのように進まなくして現在三百十四兆円である、このことをしきりにお述べになっているわけでございます。それはまさに客観的事実をそのまま述べておられるわけでございますけれども、ただ客観的事実を述べただけでは余り意味がないと思うわけでございます。したがって、これを申し述べられる長官の気持ちの底には何があるのかということを伺いたいと思います。  当然推測できることは二つ考え方だと思います。まず一つは、今申したようにGNPの伸び率が当初の見込みどおりに進んでないので、一%の枠を厳守するとするならば遅々たる歩みではあっても五九中業等を徐々に進めながらやっていかざるを得ない、したがって「防衛計画大綱」を実現するためにはなおかなりの時間がかかることはやむを得ないことではないかという意味でおっしゃっているのか。あるいはいま一つ意味としては、本当は順調に行っておれば防衛費五兆円は使えたはずなのに現在使えない、たとえ少しでも何とか防衛費の絶対額をふやす、相なるべくは一%の枠をどこかで超えてでもしなければ当初の計画は実現できないではないかという気持ちをのぞかせていらっしゃるのか、そのどちらでございましょうか。
  165. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私が申し上げましたのは、そのどちらに属するのかわかりませんけれども、政府としては五十一年以来「防衛計画大綱」を早期達成したいという公約がございました、そしてそれがなかなか達成できないで今日に来ているわけでございますけれども、一つの公約でもあり、また大綱というものが防衛力整備についての国民の間のコンセンサスづくりの土台として機能し始めてきておりますので、できるだけ早くこの達成を期したいという気持ちを表明したものでございます。従来ならば恐らくこの問題とGNP一%の問題は余り矛盾しないでできたのかもしれないけれども、経済状況の変動で現在矛盾し多くの論議を呼ぶようになったということを申し上げたかったのでございます。
  166. 吉田之久

    ○吉田委員 私が長官に申し上げたいことは、いみじくも長官ワインバーガー長官に対して、国民コンセンサスを得つつある今日の我が国防衛憲法や非核三原則の遵守、日米安保体制堅持等防衛に対する基本的な政策がだんだん合意を得て今日に至っておるんだとおっしゃっておるわけでございますけれども、正直に申しまして、国民防衛に対するコンセンサスが次第に伸びております。その一番底にあるものは何か、それはGNP一%の枠内で進められていく防衛ということを肯定し是認してそしてこういう合意ができておると言わざるを得ないと思うわけでございます。だとするならば一%は守らなければならない。しかし、早急に「防衛計画大綱」に示された水準達成しなければならないということは、五十一年に決められた防衛計画大綱を何らかの意味で、事実上計画を変更しながら現に必要な近代化をそのまま早急に進めていき、そしてまた必要でないとは言えないけれども、やや我慢できるところは抑えていく、こういう実質的な変更を講じない限りこの命題は解けないのではないか、私どもの党は絶えずそのことを申しておるわけなんでございます。  ちなみに、今問題になっておりますOTHあるいはAEGIS艦の構想あるいはP3AEW・C、こういう兵器の導入は、当初の防衛計画大綱水準の中には恐らく想定されていないことだったと思うわけなんです。あるいは、鈴木総理が約束してこられましたシーレーンの防衛の問題、あるいは今度新たに問題となりつつあります洋上防空構想の問題、これらも十年前の構想の中には正直言って入っていなかったものではないか。しかし現に、それに対してそれぞれの対応がなされなければならないという現実でございます。  だとするならば、「防衛計画大綱」は変更しないまでも、実質的にその中身を現実に対応すべくいろいろと変化を求められるべき時期に来ているのではないかと思うわけなんですが、いかがでございますか。
  167. 加藤紘一

    加藤国務大臣 「防衛計画大綱」を策定したときには幾つかの弾力性を考えておったと思います。その一つに、防衛力整備の質的な面におきましては、諸外国におきます技術的な向上に対応したこちらの対処もしなければならないのではないか。数の面におきましては、それぞれ脅威対応論を一〇〇%とっているわけでありませんけれども、やはり数は少なくともぴりっとした効率のいい防衛力整備という意味では、今後いろいろな世界の中の技術革新が進むわけですから、それについては弾力的に対応していこうという当初の発想が計画大綱の中には書き込まれております。私たちが現在、いろいろな面で装備について新しいものを考えたりするのはそういった観点から御理解いただき、大綱の精神に沿っているものと考えていただければと私たちは思っている次第でございます。  もちろんその際におきましても、防衛力整備分野が財政事情ないし国内の種々の行政改革等の他の諸施策分野におきます努力と無縁であっていいものでありませんし、国会の御議論を踏まえながら、できる限り経費の面において節約していかなければならないことは当然のことだろうと思っております。
  168. 吉田之久

    ○吉田委員 私が申し上げたいことは、確かに計画大綱それ自身に若干の弾力性はあると思います。また、諸外国科学技術の進歩の中でいろいろと質的に変化してくる、そういうものと相対的に考えなければ防衛にならないという点で、今防衛庁が試みておられるいろいろな構想はそれ自身否定するものではありません。  しかし、一%という枠が限られておるわけなんです。しかもGNPの伸び率は極めて鈍化しておる。そういう中でそういう質的変化を求めようとするならば、何かを犠牲にしなければならないはずだ、その辺の代案と申しますか、対策と申しますか、そういうものが一向に明示されないから、我が国防衛計画がこのままの状態で進められていくとするならば、だんだん国民というものは不満を持ったり、あるいは不安を感じたりして、せっかく得られたコンセンサスというものがまた低下していくことにならないか、私はそれを大変恐れるわけなんでございます。  例えば陸海空の三軍の構想をこの際思い切って何らかの修正をすべきではないだろうか、そういう問題に当面せざるを得なくなってきているのではないかと思うのですが、長官はそういうことは全然お考えになりませんか。
  169. 加藤紘一

    加藤国務大臣 具体的に五九中業を策定するときに、従来の発想を変えて新しい観点で構成し直すべきではないかということは、四月及び五月の当委員会でもいろいろ御議論をいただきました。そして私たちも、国会におきます御議論を十分に踏まえて、そしてできる限り従来の発想にとらわれない形でこの作業を進めているつもりでございます。  具体的に申しますならば、我が国地理的特性を踏まえた装備のあり方がいかにあるべきか、それぞれの分野におきましてとらわれないで内局と各幕が議論いたしておりまして、それなりの議論、討議の結果を表に出すことができるのではないだろうかな、私たちはこう思って、まだ討論をいたしておるところでございます。
  170. 吉田之久

    ○吉田委員 ちょっと仮定の論議で恐縮でございますが、もしもGNPの伸び率が五十一年の当初のようなままで推移しておったとするならば、そしてGNPが五百兆を超えておる現状であるとするならば、格段に我が国防衛予算というものは順調に大きくなって、恐らくは防衛計画大綱水準は既に達成されておったかもしれない。もしもそれが達成されておったとするならば、恐らくこの時点で諸外国の諸情勢等勘案して新たなる、次なる防衛計画大綱というものが出されていい時期に来ているのではないか。たまたまそれがつまずいておるだけだ。しかし世界情勢はどんどん日に日に変わっておる。だから何かここで新しい構想を根本的に示されませんと、国民はこのままでどこまで防衛ができるのかどうか、しょせん間に合わない防衛ならばやめた方がいいじゃないか、間に合うための防衛だといっても、それがGNPの一%をどんどん超えていくような防衛であるならば大変経済的にも圧迫を感ずるし、将来に向かって不安を感ずる、こういう問題が出てくるわけでございまして、ひとつこの辺の問題は責任ある長官としていろいろと真剣に対応していただくべき時期に来ているのではないかということを申し添えておきたいと思います。  今度の日米防衛首脳協議の要旨、新聞等で拝見いたしましたら、長官は、防衛庁としては警戒監視情報の収集手段として超地平線レーダー(OTH)の有用性に注目している、五九中業ではOTHレーダー、早期警戒機、要撃機、艦艇の対空システムといった総合的な洋上防空のあり方を検討したいので、OTHレーダー技術的な資料の提供などを協力してほしい、こうるる申しておられますことに対しまして、ワインバーガー長官は、一言、努力するとお答えになっておるだけでございますけれども、先方のワインバーガー長官の答弁はそうであったといたしましても、さらに事務的にいろいろと向こうのしかるべき返答や計画等が示されたのではないだろうか。いずれにしてもかなり画期的な問題でありまして、長官は決意と期待を込めてこのことをおっしゃったと思うわけでございまして、その辺のアメリカ側の対応や得られた見解等につきましてお示しをいただきたいと思います。
  171. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 先ほど来大臣から御答弁申し上げておりますように、本件につきましては、総合的な洋上防空のあり庁について検討したいので、OTHレーダーに関する技術資料の提供等アメリカ側協力が得られればありがたいということを大臣の方かもお話しになりまして、それに対してワインバーガー長官は、できる限り協力できるよう努力をするというふうにお答えになったわけであります。したがって、基本的には日本が自主的な防衛努力の一環としてOTHレーダーの利用についての検討を進めるに当たりましての技術的な面の検討についてアメリカ側協力をするという点についての原則的な合意が得られた、というふうに私どもは理解をいたしております。したがって、今後そういう首脳会談における合意を踏まえまして、いろいろな専門的なチャネルにおきます資料の提供等を得られるものというふうに私どもは期待をしておるわけでございます。その点はこれからの具体的な実務レベルの問題として我々事務段階で鋭意取り組んでいきたい、こういう段階でございます。
  172. 吉田之久

    ○吉田委員 我が国としてそこまでいろいろとOTHの問題についてその導入の検討を図られた、資料を求めたいというからにはいろいろな資料が提示されると思いますが、それが導入をためらわすような資料にはまずならないと思うわけなんでございます。得るべき資料とは具体的に何と何々であるか、それからいよいよ具体的にこれを導入する場合に、どの地域のどのような情報を得るために導入したいと考えているのか、また導入した場合には陸海空のどこが運用することになるのか、この辺の構想についてお示しをいただきたい。
  173. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 まず第一点の得るべき情報と申しますと、これはかなり広い範囲があるかと思いますが、OTHレーダーの性能それからその効果とかそのオペレーションに当たっての配意事項とか、いろいろこれは大変高度の技術のようでございますから難しい問題があろうかと思いますので、そういったようなもろもろの要素が入ってくると思います。  それから二番目のどういった地域にどういった情報を得るために導入したいのかという点でございますけれども、この点は、私どもは基本的に本土防空なり洋上防空の観点から有益なものと考えているということを従来から申し上げているわけでございまして、具体的に申し上げますと、要するにより遠方の航空機あるいは艦船等の目標を早期に探知すること、それが基本的なねらいであります。この性能と申しますと最大探知距離は約千八百海里に及ぶものであるというふうに言われております。そういった意味で遠くの航空機、艦船等を早期に把握するというのが基本でございます。それからまたどこに置くのかという点につきましては、これはまさに今後の検討の課題でございまして、今ここで具体的に申し上げられる状況ではございません。  それから三番目の運用主体をどうするかという点でございますけれども、この点もこのOTHレーダーの活用の仕方等、それから技術的な面、そういった面も含めまして総合的に今後検討していきたいと思っておりまして、現時点ではまだ運用主体をどうするかという点については申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  174. 吉田之久

    ○吉田委員 それでは次の質問といたしまして、洋上防空用の早期警戒機の導入とは現在のE2Cを増加させるということなのか、それとも一部で報じられているようにP3AEW・Cを導入する可能性もあるということなのか。また、E2Cは航空自衛隊がこれを運用しておるわけでございますが、P3AEW・Cは海上自衛隊ということのようであります。そういたしますと、海空が別々の早期警戒機を導入することはいろいろな面で非効率的なことが出てこないだろうか、あるいは両者のすり合わせ等がうまくいくのだろうか、この辺が私どもにはよく理解できないところなんでございますけれども、防衛庁としてはどうお考えでございますか。
  175. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 私どもといたしましては、五九中業の中の一つの問題といたしましてOTHレーダーとか早期警戒機、要撃戦闘機、艦艇の対空火器等を組み合わせた総合的なシステムをどうするかといったようなことを検討いたしまして、効率的な洋上防空体制のあり方を検討したいというふうに考えていることはしばしば既に申し上げているところでございます。  この検討の結果がどういうことになるかはもちろん今後の問題ではございますけれども、一般的に申し上げまして同一機能の目的のために異種の、機種の異なる少数機を二つに分けて分担し、保有するといったようなことになることは、整備なり教育等の面でも非効率となるといったような問題もございますし、なかなか現実的には考えにくい問題ではないかなというふうに考えているところでございます。
  176. 吉田之久

    ○吉田委員 そういう考えにくい問題を抱えながらこれを進めていく、一体どうなさるのでございますか。それならば今までどおりE2Cを基本としてやっていかざるを得ないということにならないですか。
  177. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 そういうような意味合いから考えますと、早期警戒機についての基本的な考え方としては、一つはE2C、現在既に持っておりますから、そういうものを増強するという考え方があり得るのではないかなというふうに一つの案としては考えられるわけでございますが、現在まだ具体的に割り切って結論を出している段階ではございません。
  178. 吉田之久

    ○吉田委員 この問題はまた後日承ることにいたしまして、次に、艦艇の新対空システムとはAEGIS艦のことを指すのだろうかと思うわけでございますけれども、だとするならば、長官はAEGIS艦は艦隊に対するミサイルの集中攻撃に十分対処できると考えていらっしゃるかどうか。
  179. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 艦艇の防空能力という問題は、これもやはり全体としての洋上防空体制の中での一つの要素であろうかと思っておるわけでございます。先ほどもお答え申し上げたわけでございますが、艦艇の対空能力を一般的に言って増強していきたいという考えを持っていることは事実でございますけれども、それが具体的に御指摘のようなAEGIS艦というふうなものになるのがいいのかどうかという点は慎重な検討が必要な問題であろうと思っております。  洋上防空体制と申しますと、武器対策から始まって最終の発射されたミサイルに対する対処能力というふうな全体の問題でございますから、AEGIS艦だけを切り離して今ここでこれをやりますというふうに答えることは適当でない問題でございます。その可否については今後継続して検討をしていくべきものであるということでございます。
  180. 吉田之久

    ○吉田委員 AEGIS艦を導入するかどうかの可否についてはまだ検討中だということのようでございますが、私どもも、このAEGIS艦というのは海の要塞と例えられるほどになかなかのもののようでございますけれども、何しろ経費も千二百億ないしは千四百億ぐらいにつくかもしれないと言われておる艦艇でございまして、いろいろと予算上も苦しい局面に立たされている我が国防衛の現状におきまして、その導入の可否等につきましてはよほど慎重を期していただきたいと思うわけなんでございます。  これも他の議員からもいろいろ御質問がありましたけれども、アメリカ上院日本に対する防衛努力要請の決議が圧倒的多数で可決された。私どももあの採決の八十八対七という数字を拝見いたしまして、これはまさに容易ならぬ向こう議会一つの決定的な意見ではないか、あるいはそういう考え方が次第にアメリカの国論になってきはしないだろうかというふうなことを憂慮するわけでございますが、先ほどからの長官のお話では、さほどのショックは受けていないとおっしゃっておりますけれども、行政府は行政府の話し合いをしておる、議会議会でいろいろおっしゃるけれども、この種のことは間々あることだという程度に御理解をなさっておるのか、それともかなり順調にいった今度の会談であったけれども、最後にきて厳しく冷水を浴びせられたというふうに感じていらっしゃるのか、もう少し御説明をいただきたいと思います。
  181. 加藤紘一

    加藤国務大臣 先ほど申しましたように、私たちは、アメリカ議会の中に、我が国防衛力整備につきましていろいろな意見があり、また、防衛面に限らず、経済問題も含めて、日本に対して種々の議論が行われているということは、十分に承知いたしておりました。だからこそ私たちは、現在の防衛関係、非常に良好な防衛関係というものと日米経済摩擦を絡めるべきではないと思うし、そのようにワインバーガーさんも御努力いただいていると思うし、そして私たちが知る以上の汗を流して初めてこの防衛経済の問題の切り離しが行われているものだと思うし、その意味で感謝申し上げる。そしてその方向は今後とも続けるように御努力願いたいし、私たち努力していきたいと思うということを会議の冒頭に申しました。それから一日半後の、上院の決議が突然行われたわけですけれども、決議自体は突然でございましたけれども、書かれている内容、その大きな底流というものは、私たちが予想していたものと大体同じだったのではないか。そういう意味で、さほど大きなショックを受けていたわけではないし、冷水を浴びせられたという報道がございましたけれども、私たちのことなのかなと、何か若干けげんに思ったような感じでございました。
  182. 吉田之久

    ○吉田委員 議会のいろいろな決議、それはそれなりに先方の国家、国民に対するいろいろな配慮等もあってのことだろうと思います。また、議会議会といたしまして、我々もアメリカ議会、議員といろいろとよく対応しなければならないことであると思いますけれども、しかし、なかなかに世論は厳しくなってくるだろうと思います。日本経済発展が余りにも高度であるがゆえに、貿易摩擦と本質的には違う問題ではあるとしても、なかなかそう容易に分離できる問題でもないと思うわけでございまして、さらに一層の慎重な対応、配慮が必要ではないかと思うわけでございます。  そこで、最近アメリカの国防省筋が、五九中業達成されるならば、日本防衛力は戦略的戦力となると表明したということが伝わってきております。戦略的戦力と戦術的戦力はどう違うのか。ともあれ、我々の国是といたしております専守防御、これは戦術的戦力の範囲内にあると思うわけでございますが、アメリカ期待する戦略的戦力とは何なのか、あるいはそういう諸外国の日本に対する期待がありとするならば、それに対して長官はどのように対応されようとするのか、お聞かせいただきたいと思います。
  183. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 御指摘の報道があったことは、私どもも承知をしておるわけでございますが、詳細な状況を私どもは承知しているわけではございません。  ただ、私どもも、どういうことかなと思いまして、すぐ国防総省の方に念のため確かめたわけでございますが、その答えとしては、日本防衛力整備は、あくまでも日本の自主的判断によって行われるものであるという趣旨を話したのだというようなことでございまして、さらに、戦略的な重要な地位に日本があるというふうな事実認識の問題を言ったことはあるにしても、防衛力整備の問題について言えば、これはもうあくまでも日本が自主的に考えるべき問題だ、こういうことを言っただけであるということでございました。  そこで、では戦略的な戦力という表現、戦略的というのが一体何かということでございますが、これはなかなか表現として明確な定義が下せるようなものではないように思いますが、アメリカは、国防報告などで戦略、ストラテジーとか、あるいは戦略的と言って、ストラテジックという言葉をいろいろな意味で多様に使っているわけでございまして、用語的にもたくさんの言葉がいろいろなところに出てきているということでございます。  ただ、国防報告等で、特定の国の戦力を指して戦略的戦力と位置づけたような例は承知をしていないわけでありまして、そういう意味で、これは何だ、戦略的戦力とは何だということを私どもの方から明確にコメントいたしますことは差し控えさせていただきたいと思います。
  184. 吉田之久

    ○吉田委員 ありがとうございました。終わります。
  185. 森下元晴

    森下委員長 東中光雄君。
  186. 東中光雄

    ○東中委員 先ほど来の論議で、今度の日米防衛首脳会談加藤長官が、シーレーン防衛に当たって洋上防空の重要性が高まっている折から、早期警戒手段としてのオーバー・ザ・ホライゾン、OTHレーダーの利用が効果的と考え、その有用性に注目をしている。五九中業OTHレーダー、早期警戒機、要撃機、艦艇対空システムなど総合的な洋上防空のあり方を検討したいので、OTHレーダーに関する技術資料の提供などについて協力してほしいということを発言されて、ワインバーガー国防長官は、できるだけ協力するよう努力する、こういうふうに言われた。これは報道もされておりますし、今までの経過からいってもそうだと思うのですが、間違いございませんか。
  187. 加藤紘一

    加藤国務大臣 そのとおりでございます。私は、専守防衛我が国として、できる限り高度な情報を的確に入手するということは重要なことであり、非常に重視してもいいことでないかな。それがまた専守防衛の精神に合致しているのではないか。繰り返しますけれども、ちょうどウサギの耳のようなものだということをかつて坂田防衛庁長官がおっしゃいましたけれども、大きな防衛力を持たない国は、情報だけは的確につかむようにしていることが重要だとおっしゃったわけですけれども、私もそのように思っております。その一環でございます。
  188. 東中光雄

    ○東中委員 それで、長官の言われておるOTHレーダーの有用性というのに着目されているわけですが、どういう有用性に着目されているのか、お伺いしたい。
  189. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 OTHレーダーとは、英語で言いますと、オーバー・ザ・ホライゾンという言葉の略でございますが、これからもわかりますように、短波を電離層にぶつけまして、そして短波は電離層で反射する、こういう特性を持っておりますので、それを利用した技術でございます。  そこで、従来の一般的なレーダーに比べますと、より遠方の航空機、艦船等の目標を探知することが可能になるという仕組みのものでございます。したがいまして、私どもが洋上防空でありますとか本土防空とかを考える場合におきましても、より遠方でそういった航空機等の動静を探知することができますれば、それに対する対応行動をより早く準備することが可能になる、こういうことでございます。いわゆる情報警戒能力がこれによって大きく高まるということが基本的な私どもの理解でございまして、そういう意味で、私どもは専守防衛という基本的な防衛政策の中で考えた場合に、これは非常に価値の高いシステムではないかというふうに考えている次第であります。
  190. 東中光雄

    ○東中委員 資料提供を求められた、技術情報を求められた対象になっているOTHというのは、OTH一般ではなくて、今アメリカで開発し、配備しつつあるOTHBということですか。
  191. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 米国は現在二種類のものを持っているわけでございまして、一つが今御指摘のOTHBというアメリカ本土防空用のものでございます。それからもう一つは再配置が可能な海軍用のもの、大きく分けてこの二つのものでございます。本土防空用のものは既に配備が開始されておる段階でございます。私どもが、私どもと申しますか、大臣から首脳会談で申し上げましたのは、OTHに関する技術一般についてお話をしたわけでございまして、具体的にそのいずれのものと特定をして申し上げたわけではございません。OTHレーダーに関する一般的な技術、資料等の提供、これを依頼をした、それに対してワインバーガー長官原則的にこれにこたえるように努力をします、こういうことをおっしゃったわけでございます。具体的な話は今後の事務レベルでの問題と理解をいたしております。
  192. 東中光雄

    ○東中委員 国防報告やあるいは議会の国防総省報告なんかで出ているOTHの二千海里遠方、あなたの言葉で言えばより遠くのという、その二千海里と言えば四千キロ近くになるわけですけれども、そういう範囲内における、先ほど航空機、艦船とおっしゃいましたが、艦船も航空機もそれからさらにミサイルなんかも電離層に反射させた短波の乱れでキャッチ、探知できる、そういうOTHを予想されているわけですね。そういうことですか。
  193. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 現在私どもで理解をしている範囲で申し上げますと、先ほど申し上げましたように、より遠方の航空機、艦船等の目標を探知することが可能である。探知距離は、本土防空用のもので言えばアメリカの例で言うと約五百海里ないし千八百海里の範囲のものが探知し得る能力があるようでございますし、海軍用のものもおおむね同様の性能を持っているというふうに承知をいたしております。
  194. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、ここで検討すると言っているのは、Bだけじゃなくて海軍用のものも導入の検討対象としてやっておるということになるんですか。
  195. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 その辺はまだ具体的にどうということが決まっているわけではございませんで、まさに我が方の洋上防空等の体系を考えていく場合にどういったものがいいかというのは、今後私どもが詰めて決めていかなければいけない問題でございます。ただいまどっちというふうに具体的に申し上げられる段階ではございません。
  196. 東中光雄

    ○東中委員 OTHレーダーでキャッチできるのはサイトレーダーのように三次元、距離、高度、方向、そういうものも遠距離でキャッチできるということを前提にしてやっていらっしゃるのですか。
  197. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 この辺の性能の詳細についてはまさに私どもの検討を要する問題でございまして、今御指摘のような点について私どももまだ明確にお答えを申し上げられる状況ではございません。
  198. 東中光雄

    ○東中委員 機種はどうなんですか。
  199. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 その点も含めまして、どの程度の探知能力があるかという点も全体として今後の技術的な詰めの対象でございます。
  200. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、機種がわかるかわからぬかわからない、それから高度も距離も方向もそのレーダーでつかめるかどうか、そういう性能があるのかどうかわからない、しかしそれは有用性がある。これは非常に妙な理屈になりますね。実際はそんなものわかりっこないんじゃないですか、電離層に反射させたんでは。その点はどうなんですか。
  201. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 先生のお尋ねが距離、高度、機種等というふうに非常に細かい点までブレークダウンされた御指摘でございますので、その辺がどの程度まで可能であるかということについては今後詰めていかなければならない問題であろうというふうに申し上げているわけでございまして、このOTHレーダーの性能そのものがそういった遠方の航空機、艦船等の目標を探知し得る能力があるということは申し上げるまでもないことでございまして、であるからこそアメリカが現在装備を始めておる、こういう性質のものだと思います。
  202. 東中光雄

    ○東中委員 報道ではOTHレーダーの場合はその構造からいって一千キロくらいの間は死角になって探知能力はないんだというふうに一般に言われておりますね。その点はどうなんでしょうか。
  203. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 その点は先ほど申し上げましたように、探知距離が約五百海里から千八百海里にわたるというふうに申し上げたのはそういう要素があるわけでございまして、ごく近間のところを対象とするということではなくて、約五百海里ないし千八百海里のところを電離層に短波が反射するという特性を利用してつかまえようというところにこのOTHレーダーの特性があるということでございます。
  204. 東中光雄

    ○東中委員 といいますと、OTHレーダーでは——これは設置するとすれば、硫黄島になるのかどこか知りませんけれども、とにかく日本領土に設置することを考えている。それ以外には考えられぬわけですからね。そうすると、日本領域から五百海里、一千キロの間はOTHレーダーでは死角になっておるのだから、有用性があるどころか全く無効性なんですね。それより先のことだということになると、これは非常に奇妙なことになるんじゃないかというふうに思うのですけれども、こういうものをも含めて、OTHレーダーと早期警戒機と要撃機、それから艦艇対空システムなどの総合的な配置によって洋上防衛をやる。ここで言っている洋上防衛というのは一体どういうことなんですか。周辺空域の防衛じゃなくて別個の洋上防空というもの、一千海里シーレーンの上の一千海里空域の洋上防空ということになるんじゃないのですか。そこらはどうなんですか。
  205. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 まず第一点は、洋上防空とは何ぞやという位置づけの問題でございますが、私どもが申し上げておりますのは、これは従来から申し上げておりますいわゆるシーレーン防衛の一環としての問題でございます。したがいまして、海上交通の安全を確保することを目標とする防衛力整備は従来から我が国周辺数百海里、航路帯を設けます場合には約一千海里の海域における海上交通の安全の確保が目的であるというふうに申し上げておるわけでございまして、そういった枠組みの中において、近時空からの脅威が増大をしているから、それに対抗するための洋上防空能力を向上しよう、こういうことを考えているわけでございます。  それから第二に申し上げたいことは、その洋上防空体系を構成していく場合の考え方といたしましては、一つの兵器、武器ではこれはうまくいかない、したがっていろいろな性能を持ったものを組み合わせてやっていきたいということでございます。その最初になりますのが、一番遠くで端緒である目標を探知し得る能力を持つOTHレーダーではないだろうかな、こう考えているわけでございます。その端緒が得られました場合に、次の段階で考えられるオペレーションといたしましては、いわゆる早期警戒機を活用することが可能ではないのかなというふうに考えているわけでございまして、この点はただいま委員が御指摘になりました、近いところがブランクではないかという点にもお答えできる一つの要素ではないかなというふうにも考えられるわけでございまして、そういう早期警戒機能をそこで組み入れていくということが一つ考えられるのではないか。  それからさらに、その母機に対して、それを発見をすることになりましたならば、速やかにこれを阻止するということのためには、要撃機がまた有効ではないかなというようなことになるわけでございまして、それでもなおかつ我々の防衛網を突破してくるようなミサイル攻撃があった場合に、その最終段階として、ミサイルに対処する艦艇の防空能力をどうするか、こういう問題が出てくる。したがって、そういうものを全体としてどういうふうに考えていくべきであるかということが、私どもとしても現在大きな検討課題になっておるわけでありまして、できる限り効率的なものを組み合わせて、そういう洋上防空体制を充実をしていきたい、こういうふうに考えているわけであります。
  206. 東中光雄

    ○東中委員 「防衛計画大綱」によりますと、警戒のための態勢の目標というのは、「わが国の領域及びその周辺海空域の警戒監視並びに必要な情報収集を常続的に実施し得ること。」というふうになっています。「周辺海空域の警戒監視」であります。これは五百海里以上、二千海里の間というところを監視を、常時的にOTHでは監視をすることになるわけですけれども、この大綱で言っている「周辺海空域」の空域というのはどの範囲をいうのでしょうか。
  207. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 今御指摘の点は、大綱の海上自衛隊のところの部分をおっしゃっているわけですか。
  208. 東中光雄

    ○東中委員 「四、防衛の態勢」、その中に、「1、警戒のための態勢」、「2、間接侵略、軍事力をもってする不法行為等に対処する態勢」、だからこれは、防衛大綱の警戒のための態勢の基本を決めておるわけでしょう。
  209. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 先生の御指摘の点は、我が国防衛体制をどういうふうに構築すべきかという点を大綱の四番目のところに書いてありまして、その第一のものとして、「警戒のための態勢」が大事であるということがうたわれているわけであります。先生御指摘のように、「わが国の領域及びその周辺海空域の警戒監視並びに必要な情報収集を常続的に実施し得ること。」ということが書いてあるわけでございまして、これは一般的な表現で、こういう警戒監視の態勢、情報収集というものが極めて重要であるから、この点をまず第一に、専守防衛という観点に立って充実していくべきであるということをうたっているものだと理解をいたしております。
  210. 東中光雄

    ○東中委員 そんないいかげんなこと言っちゃいかぬですよ。警戒態勢の範囲は周辺海空域だということを規定しているのです。ところが、このOTHでいけば周辺五百海里、要するに、設置したところから周辺一千キロの海空域については効力を発生しない、それより先だということになるわけでしょう。これで一体、大綱の基準の中に入っているとどうして言えますか。周辺海域、周辺空域とは一体何かということについては、五十六年にこの国会でも随分論議をされました。周辺空域と周辺海域との違いについていろいろ言われました。僕は大綱について言っているのですからね。大綱の基準を、今度のOTHでいけばもう明らかに突破する。周辺海空域じゃなくて、沿海州やらソビエトのシベリアの南部やらペトロパブロフスクまでずっと続くような、そういうふうないわば戦略的な監視ということになってしまうんじゃないか。日本の周辺ではむしろそういうものがなくなってしまうのです。だって、五百海里じゃだめだと言っているのですからね、そういうのではいかぬと。  大村防衛庁長官が五十六年の五月十五日に周辺空域についてのいわば統一見解のようなのを文書によって明らかにされたことがあります。それによりますと、「周辺空域とは、本来、航空自衛隊が航空侵攻等に対処するために必要な範囲を一般的に指すものでありまして、サイトレーダーの探知距離、要撃戦闘機の行動半径などによりおのずから制約されるものではありますが、一定の空域を具体的に特定して考えているものではございません。」ちょうどこのころに、生田目空幕長がこのことについて、周辺空域について発言をしたことがあります。それによりますと、日米共同声明、鈴木・レーガン共同声明ですね、これに関連して問題となっている周辺空域について、防空の面からすれば、沿岸からおおむね二百海里の範囲内であるということを、わざわざこれは五十六年の五月十五日に記者会見でそういう趣旨のことを発言している。  だから、周辺空域といえば、随分論議をされている中で、空幕長が、防空の面からすれば沿岸おおむね二百海里、ところが、今度のOTHは五百海里までは全然効果がないというのじゃ、これはもうまるきり体制が変わってしまうということになるので、五九中業でOTHを入れていくという、そういう体系というのは、大綱水準達成の問題とは違った、はみ出したことになるんじゃないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  211. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいまの点は少し整理して申し上げたいと思いますが、私どもが海上交通安全を確保するために防衛力整備をやっている、これをいわゆるシーレーン防衛という言葉で呼んでおるわけでありますが、このシーレーン防衛基本的な土俵と申しますのは、従来から申し上げておりますように、我が国周辺数百海里、航路帯を設ける場合にはおおむね一千海里程度の海域においての海上交通の安全の確保を図ることが目標である、こういうことでございます。それは従来から何ら変更はないし、今後もそれを変える考えを持っているわけではありません。  その海上交通の安全確保を図るための手段をいかにして効果的にやるかという手段の問題を今考えているわけでありまして、その手段の中の一つに対潜水艦作戦ももちろんありますし、海上のオペレーションもあるのですけれども、それに加えて、空からの脅威に対する洋上防空の問題というのがありまして、その重要性が近年随分高まってきている、こういうことを申し上げておるわけでございます。そこで、その洋上防空をどうやったら効果的になし得るかという手段の問題でございまして、その第一のものが、なるべく早く脅威の端緒を発見をするということであることは理の当然であるわけでございまして、OTHレーダーというものはそういう脅威の目標をできるだけ遠方で早期に探知をすることが可能になる性能があるわけでございます。  したがって、そういうものを使った場合の私どもの海上防衛力整備考え方がそれによって何か変わっておるかと申しますと、それは全く変わっていないわけでありまして、シーレーン防衛というものが周辺数百海里、航路帯を設ける場合にはおおむね一千海里程度の海域の海上交通の安全の確保を目標とする、こういう枠組みには全く変化がない、この目的を達成するための手段をいろいろと今工夫をしておる、そういうふうに御理解をいただければよいのではないかと思います。
  212. 東中光雄

    ○東中委員 時間ですから終わりますけれども、仮にこのOTHを硫黄島に置いたとしても、日本の本土のほとんどはいわゆる死角の中に入ってしまって、五百海里以上ということになればもう——しかも覆う角度というのは六十度ですからね、それではもう全く、今言われているように早期に発見するといったって、シベリアの中でどんな飛行機がどんなふうに飛んでいるか、その性能も機種もわからぬ程度のソ連の中の動きを知るためのものだというふうにこれは言わざるを得なくなってきます。だからこそ、アメリカ側も戦略的な戦力というふうな言葉をさえ言い出してきているわけで、私たちは、これは質的な大変な変化が起こるものだというふうに考えますので、これはもう根本的に防衛庁長官考えてもらわないと、日本防衛の体制の基本にかかわってくる、これは大綱との関係からいっても極めておかしいということを申し上げておきたいと思います。
  213. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 結論として最後に申し上げたいことは、私どもは専守防衛という基本的な原則に従って最も効率的な防衛力整備をやるわけでありますから、そういう意味で、ウサギの耳をより長くしていくということでOTHレーダーの利用を今考えておるわけでございます。この点はぜひ御理解を賜りたいと思います。
  214. 東中光雄

    ○東中委員 終わります。      ————◇—————
  215. 森下元晴

    森下委員長 次に、閉会中審査に関する件についてお諮りいたします。  国の安全保障に関する件につきまして、議長に対し、閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  216. 森下元晴

    森下委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、閉会中審査案件が付託されました場合の諸件についてお諮りいたします。  閉会中、委員派遣を行う必要が生じました場合には、委員長において適宜、議長に対し、委員派遣の承認申請を行うこととし、その派遣の日時、派遣地及び派遣委員の人選等所要の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  217. 森下元晴

    森下委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  また、閉会中審査に当たり、委員会において参考人から意見を聴取する必要が生じました場合には、参考人の出席を求めることとし、その日時及び人選等所要の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  218. 森下元晴

    森下委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本日は、これにて散会いたします。     午後一時三十四分散会