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1985-05-22 第102回国会 衆議院 安全保障特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年五月二十二日(水曜日)    午後一時三十八分開議 出席委員   委員長 森下 元晴君    理事 椎名 素夫君 理事 玉沢徳一郎君    理事 三原 朝雄君 理事 上田  哲君    理事 前川  旦君 理事 渡部 一郎君       石原慎太郎君    月原 茂皓君       丹羽 雄哉君    三塚  博君       森   清君    天野  等君       加藤 万吉君    神崎 武法君       山田 英介君    安倍 基雄君       東中 光雄君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 加藤 紘一君  出席政府委員         内閣審議官   高瀬 秀一君         防衛庁参事官  古川  清君         防衛庁参事官  古川 武温君         防衛庁参事官  池田 久克君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房         長       西廣 整輝君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛庁教育訓練         局長      大高 時男君         防衛庁人事局長 友藤 一隆君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         防衛庁装備局長 山田 勝久君         防衛施設庁長官 佐々 淳行君         防衛施設庁総務         部長      平   晃君         防衛施設庁施設         部長      宇都 信義君         防衛施設庁建設         部長      大原 舜也君         防衛施設庁労務         部長      大内 雄二君         外務大臣官房審         議官      有馬 龍夫君         外務大臣官房審         議官      渡辺  允君         海上保安庁次長 岡田 專治君  委員外出席者         科学技術庁研究         調整局調整課長 須田 忠義君         外務大臣官房外         務参事官    太田  博君         外務大臣官房外         務参事官    瀬崎 克己君         農林水産大臣官         房企画室長   近長 武治君         通商産業省機械         情報産業局航空         機武器課長   伊佐山建志君         特別委員会第一         調査室長    鎌田  昇君     ――――――――――――― 委員の異動 五月二十二日  辞任         補欠選任   箕輪  登君     月原 茂皓君   藤原哲太郎君     安倍 基雄君 同日  辞任         補欠選任   月原 茂皓君     箕輪  登君   安倍 基雄君     藤原哲太郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国の安全保障に関する件      ――――◇―――――
  2. 森下元晴

    森下委員長 これより会議を開きます。  この際、委員長から一言申し上げます。  夏目防衛事務次官出席について理事会において協議いたしましたが、この件につきましては引き続き協議することになりました。  国の安全保障に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。月原茂皓君。
  3. 月原茂皓

    月原委員 きょうは防衛庁側に、最近新聞紙上で五九中業についていろいろ記事が出ております。しかし、国会の場でその考え方について、今までまとめて考え方なりを御説明を受けたことがございませんので、そちらの考え方を順次お尋ねしたい、このように思います。  現在防衛庁作成中の五九中業進捗状況、そしてまた、今後どういう手続でいつごろをめどにしてやっておるのか、そういうことについて御説明願いたいと思います。
  4. 加藤紘一

    加藤国務大臣 防衛庁内で大綱水準達成を期するという基本方針で、五九中業作成作業に着手いたしまして、四月連休前等に大変精力的に各幕と内局との話し合い、討議などが行われました。かなりの部分煮詰まってまとまってきているものもございますし、まだ継続的に話し合いをいたしておる部分もございます。しかし、全般的にまとまっている、基本的にある種のアイデアがまとまってきたものについては関係省庁との話し合いを、また御意見聴取等をしなければならないな、そういうことにそろそろ着手し始めているという段階でございまして、基本的にはことしの夏までに作成作業を終えていきたいと考えております。
  5. 月原茂皓

    月原委員 夏ごろまでに関係省庁と一応の話し合いをしながら進めて、最終的にはどういう手続でそれの策定を完結されるのか、それについてお尋ねしたいと思います。
  6. 矢崎新二

    矢崎政府委員 お答え申し上げます。  中期業務見積もりは、御承知のように、防衛庁の内部の参考資料といたしまして概算要求あるいは業務計画の基礎にするためにつくるものでございますが、五六中業の場合は、最終的には五十七年の七月に国防会議に内容を御報告申し上げ、御了承を得たという経緯がございます。  私どもはそういった前例を参考にいたしながら現在作業をしているわけでございまして、現時点では、先ほど大臣からもお答え申し上げましたように夏ごろには国防会議に御報告をし、御了承をいただきたいというふうに考えながら作業をしているところでございます。
  7. 月原茂皓

    月原委員 よくわかりました。夏ごろまでに国防会議にかけるということで関係省庁との折衝は既に始めておる、こういうことでございます。  そこで、五九中業整備方針、ただ大綱達成だということでだらだら計画をつくるのではなしに、今度の五九中業についてはどういうところに重点を置いて方針を立てておるのかということと、また、国民から見ると、どうも五三中業、五六中業、五九中業大綱ということだけ掲げて何かやっておるだけだな、こういう印象を与えると思いますので、五六中業とはどういう点が違う、どういうところがウエートが違うかということについて、考え方説明してもらいたいと思います。
  8. 加藤紘一

    加藤国務大臣 御承知のように、まず第一に今度の五九中業策定に際する基本方針は、栗原前長官が昨年五月に出されたわけですけれども、「防衛計画大綱」の水準を質的にも量的にも達成することをめどとしたいと考えております。  それから第二番目につきましては、いわゆる正面につきましては必要最小限事業を確保するとともに、我が国の地理的な特性、それから最近の科学技術趨勢等を考慮して、防空能力周辺海域防衛及び海上交通安全確保能力着上陸阻止能力等強化することを二番目の眼目にしたいと考えております。  三番目には、従来ともすれば、正面は一生懸命やってきたけれども後方については配慮がもう少し欲しかったという部分もありますので、正面後方バランスに配慮しながら、C3Iとか継戦能力即応態勢、抗堪性等重点を置いていきたい。  それから四番目には、御承知のように財政再建の時期でもございますし、防衛力整備の分野も決してそういった意味での聖域ではないと思っておりますので、効率化合理化によって財政負担の軽減にできるだけ努めていきたい、こんなことを五九中業整備基本方針にしております。  先生指摘の二番目に、ではいわゆる五九中業、五六中業、いろいろ言うけれども、どこが今までと違うのかということでございますが、一番目に、まず大綱水準との関係で、五六中業では大綱水準を基本的に達成することと述べておりましたことを、今度の指示では「達成を期する」と、より前向きに指示を出しておりますので、そこが一つ違うかと思います。  それから二番目には、先ほど申しました正面後方バランスをしっかりととることということを五九中業で明確にいたすことも、五六中業との差異ではなかろうか、こう考えております。
  9. 月原茂皓

    月原委員 それでは、数字とか数量はまだ十分ではないと思いますが、今長官がおっしゃった整備の基本的な方針に基づいて、陸海空について国民が皆関心を持っているようなことについて逐次お尋ねしたい、このように思います。  まず今長官が御説明になったところで、地理的特性を考えるということをおっしゃっておりましたが、現在の陸上自衛隊について、その地理的特性をどういうふうに考えられておるのか、その配備、そして主要な装備、特に最近国会でも議論になっておる戦車の問題がございますが、その戦車等配備について、そういうことを勘案して考え方があるのならば御説明願いたい、このように思います。
  10. 矢崎新二

    矢崎政府委員 五九中業の各事業につきましては、まだ現在確定的には申し上げられる段階にはございませんが、基本的な考え方、今どういう方向で進めておるかという点について御説明を申し上げたいと思います。  御指摘陸上防衛体制の問題でございますが、まず一つ師団近代化の問題でございます。御承知のように、日本の場合地理的特性と申しますのは四面環海という特色があると同時に、北海道という地域が海によって隔てられた地域であるという面での特色もまた一方であるわけでございます。そういったようなことを勘案しながら、陸上防衛体制を構築していく必要があろうかと思っておるわけでございます。そういう意味で、師団近代化に当たりましても、例えば北海道師団については戦車とか自走火砲主体としまして戦闘力充実を図っていきたいと考えております。他方、内地師団につきましては、対戦車火器強化とかあるいは老朽火器更新といったものを主体にいたしまして、機動性を重視した整備充実を図っていくというようなことを考えまして、全体として効率的なものを追求をしていきたいと考えておるわけでございます。     〔委員長退席椎名委員長代理着席〕  それからまた、北海道におきます初期対処能力強化という問題も我々は現在重視をしているところでございまして、その一つポイントとして戦車の持ち方の工夫ができるのではないかなと思っております。例えば内地戦車の一部を北海道転用配備をしておくといった措置につきましても、検討を進めているところでございます。  それから、以上申しました師団関係そのものではございませんけれども陸上防衛体制全般近代化という問題もあるわけでございます。そういう意味から申しますと、従来は若干手薄でございました部門、例えば洋上水際撃破能力向上するための地対艦誘導弾部隊整備をしていきたいという問題がございます。  それからまた空中機動力とか空中打撃力、これを充実をしていきたいという考え方もあるわけでございます。そういう意味で申しますと、装備でいえば輸送ヘリコプター新型のもののCH47あるいは対戦車ヘリコプターでありますAH1Sなどの装備につきまして、できるだけこれを重視して進めていきたいというようなことを現在検討をしているところでございます。
  11. 月原茂皓

    月原委員 今、防衛局長の御説明の中に老朽火器という言葉が出ましたが、一般には自衛隊は物すごい予算を使って新しいものばかり並べておるのではないか、最新鋭のものじゃないか、誤解だと思いますが、国会でも華々しい先端の議論ばかりしておるわけでございますからそういう考えを持っておるところがあると思うのです。  そこで、私思い出すのですが、昔中曽根現総理が防衛庁長官のころ、レアードさんというアメリカの国防長官が参りまして、一番強い部隊を見せてくれと言うので千歳の戦車師団を見せた。そうしたらなかなかすごいじゃないですかと言って、居並ぶ連中は非常に喜んだ。ところが昼食会になってどういうことかといったら、第二次世界大戦朝鮮戦争、そういうときに使った我々としてもう破棄してしまったようなものをよくもこれだけ手入れして走らせておるな、そういう点ですばらしいという言葉だったんだということでがっくりきたことがあるわけです。そういうところから大分改善されておるとは思うのですが、第二次世界大戦火器がまだあるのかどうか、あるいは朝鮮戦争時代火器はどうなんだということがあったら、この際御説明願いたいと思います。
  12. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 ただいま先生指摘のように、現在で申しまして私ども自衛隊装備している火器の中には旧型のものがございます。特に米軍から供与を受けました火砲は、御指摘のような第二次世界大戦当時のものが多くございます。台数で申し上げますと、ことしの三月末現在で迫撃砲りゅう弾砲加農砲、私ども火砲と一括して呼んでおりますけれども、六五%が実はこの第二次世界大戦当時のものでございます。また、朝鮮戦争当時のものはそう数多くございませんけれども、いわゆるバズーカ砲と言われております八十九ミリのロケット発射筒一つ例として挙げられると思います。しかし、陸上自衛隊火砲につきましては、射程の増大あるいは発射速度向上、自走化などの近代化を図るために、過去もそうでございますけれども現在も装備更新近代化に努めているところでございます。  たまたま、ただいま一九七一年にレアード国防長官来日当時の戦車のことにつきましてお話がございましたので、ちょっと現在と比較をいたしてみたいと思います。  まさに先生指摘のように、当時は第二次世界大戦当時使われておりましたM24型あるいはM4A3型、それから朝鮮戦争当時使われておりましたM41型、こういった旧型のものが全体の四一%を占めておりまして、当時新型と言われておりました六一式戦車が五九%でございました。しかし、その後おかげさまをもちまして近代化を図り、この三月末の戦車保有数を御紹介申し上げますと、六一式戦車が五百三十三台、その次の世代の七四式戦車、現在の主力でございますが、五百三十七台となっておりまして、逐一、六一式戦車が七四式戦車にとってかわられるということに相なっております。また、七四式の次の世代のいわゆる新戦車、これは今技術研究本部におきまして開発中でございます。
  13. 月原茂皓

    月原委員 今のことでよくわかりましたが、次に海上関係についてお尋ねいたしたいと思います。  「防衛計画大綱」をつくった時代、そのころから比べれば周辺におけるソ連軍太平洋艦隊増強そしてまたバックファイア、いろいろ予想はしておったにしてもこれだけ急速に配備されるとは思っていなかった、しかもベトナムの基地化が進んでおる、こういうところから海上自衛隊の問題について、特にシーレーンと俗に言われているそこら辺の守り方について非常に大きな違いが出てきたと思うのでございます。そういうものをにらみながら海上の方についてはどういう点が今度の整備問題点になるのか。例えばP3Cの問題あるいはAEGISの問題、こういうのが新聞に出ておりますが、そういう点を含めて考え方を御説明願いたいと思っております。
  14. 矢崎新二

    矢崎政府委員 御指摘のように、我が国の安全を確保するための海上交通安全確保の問題というものは極めて重要なポイントであろうかと思います。  現状は、例えば海上自衛隊のP3Cを含めます作戦用航空機の総数が大綱水準の約二百二十機に対しまして、六十年度完成時で見ますと百四、五十機というふうにかなり落ち込んでいる状態にあるわけでございます。そういうようなことから、まず海上防衛力につきましても大綱水準達成のための艦艇なり航空機の面の量的な達成を図るということが一つございます。と同時に、装備近代化という点も先生指摘の点も踏まえまして十分考えなければいけないと考えているわけでございます。そういう意味で申し上げますと、有事におきまして主として外洋で護衛、哨戒などの任務に従事いたします護衛艦隊装備につきましても、防空中枢艦になっておりますミサイル護衛艦DDGでございますけれども、こういったものの整備についても検討していかなければいけないわけでございます。その一つの例といたしまして先生が御例示になりましたAEGIS艦というものも一つ問題点でございます。こういったものの導入の可否につきまして現在検討していることは事実でございます。  ただ、AEGISシステムと申しますのは、ミサイルに対処するという能力面では確かにすぐれた面がございます。しかしながら、こういった問題は洋上防空体制全体の中の位置づけをどうするかということを考える必要があるわけでございまして、情報収集能力でございますとか航空自衛隊防空作戦のあり方とか艦艇対空火器等装備の仕方といったようなものの全体をひっくるめた総合的な検討ということがどうしても必要であるというふうに判断をいたしておりますので、AEGISシステムだけを切り離して取り扱うことは適当でないと現在判断をしつつあるところでございます。そういう意味洋上防空体制全体の中でさらに今後継続して検討していくことが必要ではないかというふうに現在考えているところでございます。
  15. 月原茂皓

    月原委員 次に、航空自衛隊防空の問題でありますが、これについても同じようにこの周辺、特にソ連空軍太平洋艦隊関係部隊増強が続いておると思いますので、飛行機の性能アップとかそういうものがございますが、それについてどういうふうに対処しようとされておるのか。特に最近ときどき報道されているのを見ると、CAP態勢の問題に絡んで空中給油機の文字もちらほらしていると思うのですが、そういうものも含めて御答弁願いたいと思います。
  16. 矢崎新二

    矢崎政府委員 航空自衛隊の問題にいたしましても、大綱水準と比べまして量的に現在がなり下回っているわけでございまして、大綱が約四百三十機の作戦用航空機を想定いたしておりますのに対して、六十年度完成時におきまして約三百七十機程度というふうに落ち込んでいる点がございますので、こういった面の量的な達成を図ることが一つの大きな問題であろうかというふうに思っているわけでございます。  それと同時に、最近におきます航空技術進歩に対応していくという意味装備の面、例えば電子戦能力とか各種の能力向上をもちろん図っていかなければいけないわけでございます。それと同時に、近時の航空技術進歩を考慮に入れた一つの新しい発想としての空中給油機能の問題も私ども検討していく必要があるというように考えておるわけでございます。近時の航空技術進歩は非常に著しいものがございまして、従来に比べまして低高度侵入能力でありますとか高々度の高速侵入能力が非常に向上してきているわけでございます。空中給油機をもし使用することができますれば、空中警戒待機をする時間が延ばせるということになりますので、こういった事態により迅速に対応し得るようになるのではないかという認識を持っております。それからまた、洋上防空の問題につきましても、航空自衛隊戦闘機が可能な範囲で我が国周辺で行います防空作戦というものもやはり一段と効果的に行い得る面もあるのではないかという認識を持っておるわけでございます。  こういった点を踏まえまして、空中給油機については現在諸外国実用機性能でありますとか運用の構想でありますとか施設面でどういった手当てが必要な問題を抱えておるかといった点について検討を進めておるわけでございますが、この問題につきましては、自衛隊としては研究の蓄積が少ないというのが正直言って実態でございます。そういうことから現在のところでは具体的な事業を計上するところまでいくことができるかどうかという点は見通しを得ていないわけでございます。ただ、今後とも引き続き検討を進めていく必要はあろうかというふうに考えておる次第でございます。
  17. 月原茂皓

    月原委員 先ほど長官の御説明で、洋上岩上陸阻止能力強化するというお話がありました。今、陸上海上航空についていろいろ今後のお考え方を聞きましたが、その洋上対処という点に絞って言うと、陸海空、今までの重複する点があるかと思いますが、どういう点を考えておるかということを簡潔に御説明願いたいと思います。
  18. 矢崎新二

    矢崎政府委員 現在考えておりますことを洋上撃破と申しますか、そういったポイントに焦点を当てて若干取りまとめて申し上げてみますと、現在次のような方向検討をしているわけでございます。  その一つは、我が国地理的特性を十分考慮するとすれば、まず何といっても第一に国土に戦火が及ばないようにできるだけ洋上ないし水際侵攻部隊を撃破し得る能力をつけていくということが非常に重要ではないかと思います。また、そういう能力を持つこと自体が抑止力を高めるというゆえんでもあろうかというふうに考えておるわけでございまして、そういう観点から、第一には陸上自衛隊につきましては先ほど申し上げました地対艦ミサイルSSM部隊整備を進めていきたいというふうに考えております。  それから第二に海上自衛隊について申し上げますれば、これは従来からやっていることでありますが、艦艇水上打撃能力向上等を進めていく必要があろうかと思います。例えば対艦ミサイル装備問題等がそこに当たろうかと思います。  それから三番目に航空自衛隊につきましては、支援戦闘機整備の問題がございまして、これはF1の後継機をどうするかという、FSXの取り扱いの問題があるわけでございまして、この点については現在検討を進めておるという段階でございます。  主な点はそういったようなことになろうかと思います。
  19. 月原茂皓

    月原委員 最近非常に通信技術というようなものが発展しておるわけでございますが、そういう点から見て通信衛星についてはどのように取り組もうとしておられるのか、御説明願いたいと思います。
  20. 矢崎新二

    矢崎政府委員 日本防衛にとりまして、やはり専守防衛という基本的な枠組みの中で考えます場合にはあらゆる事態に迅速に対応するということが非常に重要でございますから、そういう意味で申し上げますと、情報能力とあわせて通信体制というものができる限り高いものでなければならないというふうに私ども認識いたしておるわけでございます。そういう意味で五九中業におきましても通信能力向上についてはあらゆる面で努力していきたいというふうに考えております。  具体的な細かい点になりますとまだ検討中でございますのでここでは差し控えさせていただきますが、現在特に重視しております問題は、指揮統制等に必要な通信体制向上を図るための研究を進めていかなければならないということでいろいろ内部的に検討を進めているということが一つでございますし、さらにその中でもやはり通信衛星を積極的に利用をする必要があるんじゃないかというので、どういった利用方法があるだろうかという点について鋭意検討を進めておるわけでございます。
  21. 月原茂皓

    月原委員 次に、正面と直接関係がありませんが、今お話しのありましたFSX等についても国内開発であるかどうかというようなことが新聞紙上等で取り上げ、ニュースで取り上げられておりますが、基本的に自衛隊装備というものについては私は国産、日本技術のレベルアップにもなりますし、そういうふうな取り組み方をしていただきたいと思うのですが、それをどういうふうに考えておられるか。そしてまた、今までのむしろ国内開発のものが装備されないというのは研究開発体制、余り少しずつの予算をつけて長々といろいろさわったりいじったりしておるうちに時間がなくなってしまうというようなことになりますので、開発体制についても今後取り組んでいただきたい、このように思うのですが、御説明を願いたいと思います。
  22. 筒井良三

    筒井政府委員 自衛隊装備品の取得に当たりましては、もちろん我が国防衛所要に適合するということを前提といたしまして我が国技術を使いました国内開発の場合あるいは外国導入ライセンス生産、または輸入という諸形態がございますけれどもケース・バイ・ケースによりまして最も効率的、経済的な方法を使用していることは先生もよく御承知でいらっしゃることだと思いますけれども、諸外国技術向上に対応し得るような最新の装備というものを維持するためには国内開発というものが大変重要なものだと思いますし、防衛庁におきましてもその点を重要視しまして、本年度の予算におきましても研究開発費は三〇%を超える増額を認めていただいておる次第でございます。  また、研究開発体制について大変ありがたい御指摘をいただきましたけれども、限られた予算、限られた人員といった中でやっていきますためには、御指摘のとおりに体制充実、また各個々の研究者の心構え、そういった本当にやっていこうという気を持って今燃え上がりつつあるところでございますけれども、なお効率的に推進するように努力したいと存じております。
  23. 月原茂皓

    月原委員 今の点については、私は部外に積極的に自分の持てる力でどうもかなわないと思ったときには、五トンの荷物しか積めぬのを十トン抱えてえっちらおっちらやっておるのではなくて、五トンは直ちによそへ任すとかそういうふうな基本的な考え方、それをあなたの方でいろいろ検討していただきたい、このように思います。答弁はよろしゅうございます。  そこで、いよいよ時間も迫ってまいりましたが、五九中業そのものが、大臣も今まで何回となく答弁されておるとは思いますが、俗に言うGNP一%の関係はどうだ。関係というよりは実際数字的にはどういう感触であるか、これは今なかなか言えぬと思うのですが、感触で結構ですからお答え願えたらと思います。
  24. 加藤紘一

    加藤国務大臣 五九中業作成作業におきましては、先ほど申しましたように「防衛計画大綱」の水準を質的にも量的にも達成してみるようにということで今作業いたしております。その作業一つ一つかいま見たり、また途中経過を報告をもらったりいたしておりますと、その全体像というものはまだ集計されておらないわけですけれども、その作業を見る感じでは、GNP一%の範囲の中でその計画達成されるかどうかにつきましてはかなり容易なことではないんじゃないかなという感じがいたしております。もちろん、ただ、この中期業務計画というものの性格につきましての判断なんですけれども、私たちは、これは防衛庁内部のものであって、単年度のものではなく五年にわたってのものでございます。また、概算要求の基礎になる資料というふうに考えておりますので、このGNP一%についての閣議決定は決定された政府予算案の際におきます判断でございますので、もちろんこれは直接すぐ関係するものではないというふうに判断いたしております。
  25. 月原茂皓

    月原委員 最後に大臣にお願いしておきますが、むしろ今までの国会議論というものを踏まえてやられることも大事でございますが、これからの非常に将来を見通した計画でございます。そして、シビリアンコントロールそのものは、国会ももちろんでございますが、大臣もシビリアンとして防衛庁の指揮をとられておるわけでございます。そういうところから自信を持って一つ一つの問題を取り扱っていただきたい。非常に二十年、三十年前の証文のようなものにこだわって日本防衛の誤りのないようにしていただきたい、このことを要望いたします。  そして、今度大臣がアメリカの方に行かれますが、私が非常に心配しておるのは、大臣を心配しておるんじゃなくて今後の日米関係で心配しておるのは、貿易摩擦の問題もございますが、防衛の問題もこれは大切な問題であります。米国と日本との関係というのは理性に基づいた関係でございまして、愛情というか、生まれつきのそういうような、ヨーロッパの国と違う立場にあると思います。そういう意味で、新聞等によれば今度ワインバーガー長官あるいはシュルツ国務長官、そういう方々にお会いのようでございますが、そのときに十分日本の立場というものを説明して、こういうものがまた火を噴かないようにひとつ努力していただきたい。その決意をお尋ねして私の質問を終わりたいと思います。
  26. 加藤紘一

    加藤国務大臣 月原委員指摘のとおり、私たちは防衛政策を推進するに当たりまして一番重要な点は、シビリアンコントロールの仕組みをしっかりし、そして、それが実際にうまくちゃんと機能するように常に私たちが心がけているということが重要であろうと思います。そして、それをしっかりやることが国民の利益に最も合うんだという自信を持ちながら中期業務計画の決定の作業も進めてまいりたい、こう思っております。  もう一つ委員指摘日本とアメリカとの関係でございますが、私たち日本防衛にとりまして米国は最も重要な国であろうと思っております。そして、日米間はそれほどの交流が深いがゆえに、経済、貿易面では今若干の摩擦があろうと思いますが、幸いなことに防衛面におきましては非常にスムーズな良好な関係が現在維持されておることは幸せだと思っております。この関係をしっかりと維持させるためには、日ごろから双方が間断なき対話を続けていくことによって初めてそれが達成される、そういうことが最も大切だという観点で近々米国に国会のお許しが得られれば行ってまいって、その対話を深めてまいりたい、そういうふうに考えております。いずれにいたしましても、日米関係というのは本当に大切にしなければならない関係であろうと思っております。
  27. 月原茂皓

    月原委員 終わります。
  28. 椎名素夫

    椎名委員長代理 上田哲君。
  29. 上田哲

    ○上田(哲)委員 五九中業との関連で、一%問題についての長官の発言をただしたいのでありますが、前回の当委員会において、いわゆる直観発言、直観として一%におさまることは難しいんじゃないか、これは従来の国会の論議、内閣の約束、総理の公約と言うべき一%を守りたい、そういう立場からすると非常に重要な意味合いを持っております。一%を超えるという直観、確信、感覚、感触を得られたというのは、これは形容詞だけで言ってはならぬわけでありまして、そういうことを言われるのならば、やはりある程度のデータ、判断ということがなければならない。なしに言ったとなればこれは直ちに訂正していただきたいし、あるとなればどういうデータに基づき確信されたのか。
  30. 加藤紘一

    加藤国務大臣 前回当委員会で森委員の方から五九中業とその規模はどうなるか、こういう御質問がございまして、私の方から、現在作業中でございますのでそう明確なことを現在申し上げられる段階ではございませんので差し控えさしてもらいたいと申しまして、しかし、まあそうはいっても実際に責任者として作業の報告等を受けているのだから、何かその辺の感じはあるのじゃないかというような御趣旨のことをおっしゃいましたので、こういう当委員会のように防衛問題について直接御議論いただく委員会でございますので、できるだけ率直に申し上げるべきであろうと思いましてあのような発言をいたしたことは事実でございます。  その基本は何かといいますと、数字につきましてはその全体をまだまとめ切っておりませんので申し上げられる段階ではないし、またそういう報告も受けておりません。ただ、個々の装備を中心にいろいろ作業をいたし、また各幕と内局と議論いたしているわけでございますけれども、それぞれの作業の中間報告を個別的に聞きまして、それを五六中業のいろいろな議論の過去の話をいろいろ聞いたりして、私の中でまあ個人的にどういったスケールになるのかなということを見、また今後の経済成長が、GNP見通しがどのようになるのかというようなことを総合的に考えますと、現在でも一%との、天井とのすき間が少ないものでございますので、あのような感じがするということを申し上げた次第でございます。     〔椎名委員長代理退席、委員長着席〕
  31. 上田哲

    ○上田(哲)委員 じゃ撤回なさらないということですね。
  32. 加藤紘一

    加藤国務大臣 はい。作業をいたしております。そういう印象、これは私も現在もそのような感触を持っておりますので、相変わらずそのような感じを持っております。
  33. 上田哲

    ○上田(哲)委員 ある意味では正直なんで、その正直にひとつ乗ってさらに正直な答えをいただくべきだと思いますが、夏には出す、夏にはしっかりした数字ができる、こういうことなんですから、そこでそうした直観発言というのがますます撤回し得ないという核心に近づいているとすれば、最終像のコンマ幾つまでの数字が出ないとしても、概数においてはある程度見通しがついたということにならざるを得ませんね。その長官がやはり一%を超えるだろうなと今さまざま言われたが、さまざまなデータからそう思うと言われる、そうした大まかなデータというのはどういうものですか。
  34. 加藤紘一

    加藤国務大臣 御承知のようにあの中期業務計画はいわゆる正面装備等の将来の費用見積もりが中心でございまして、これは今全体の二六%ぐらい、防衛関係費の二六%ぐらいになるわけですけれども、それ等の見積もり等を集計したものが一つの核になるであろうと思います。その作業の見積もり全体まとまっておりませんので、今数字、概数はどうかということでございますが、それはまだ事実としてでき上がっておりませんので、申し上げられる段階ではございません。しかし、全体的に防衛庁が今作業いたしまして、今後大蔵省を初めとする各省の御意見を聞いていくわけですけれども、そういう過程を経ましても、私たちとしては現在の作業は精いっぱいの倹約をした作業をいたしているつもりでございますので、そう簡単に大幅に変わるものではないのじゃないか。そういう観点からいえば、夏までに完成される中期業務計画の最終的な全体像でも一%の中におさまり切ることはそう簡単ではないなと現在でも思っている次第でございます。
  35. 上田哲

    ○上田(哲)委員 少しわかってきました。五九中業の本来の性格というかあり方というのは今長官の言われたとおり正面装備ですから、その正面装備防衛費の中で占める比率の問題が相関的に出てきます。それをごらんになってそうだと直観するのだ、大体そういう感触だということがわかりました。  今二六%と言われたけれども、現実には二三%、ねらいは二六だが、今二三ですね。そういう形になっているはずです。そうですね。そういう数字というのはかなり大事な数字だから防衛庁では五九中業作成にとっては非常に神経を使っておられるところだと思う。夏までと言っている間にとにかくこの季節になっていますから、事務方の中ではかなり進んでいるというところで、大まかな丸い数字では見当がついているというのが今大体わかりました。正面装備部分が五兆五千億とか六兆円とか言われておるわけです。これは関係の方で結構だが、大体そういうところに固まったということですか。
  36. 矢崎新二

    矢崎政府委員 現在の五九中業作業状況は、先ほど来大臣からも申し上げておりますように、主要な事業についての考え方を固めつつある段階ということでございます。したがいまして、それを金額的にきちっと計算をする段階にまでまだ進んでいるというわけではございませんので、そういう意味で、先生指摘正面装備についての金額が幾らかというふうな点につきましては、私どもは今この時点で具体的にこのぐらいというふうに申し上げられる状況でないということを御理解を賜りたいと思います。
  37. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そういう答弁はしないでください。時間がもったいないじゃないか。だから、十九兆五千億の前半でおさまるかどうかなんという質問は今はしてないのです。直観というからには、しかも一回だけではない、ここまで来て総理大臣の発言と違う発言を担当大臣がするのだから。訂正しないと言われるからには、時期が進むにつれてますます確信が強まっている、その確信のもとになるデータがあるだろうというところまで来て、そしてそれは正面装備だということなんだから、正面装備というのが一体どれくらいなのかということがあるのでそういう確信が強まっておるというのだが、そこはどうかと聞いているので、わかりませんというような話を時間をかけて言わないでください。  経理局長、今までは二六ですね。今はとてもそこまでいくのですか、いかないのですか。
  38. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 六十年度の正面装備に要するお金は七千二百二十億ちょっとだと思いますが、その金額は二一二%でございます。
  39. 上田哲

    ○上田(哲)委員 長官、そこなんですよ。だから僕はもう一遍質問しますが、五九中業の主要装備の大体固まりが六兆円とか五兆五千億とか言われておるわけだ。というところまで来ているんじゃないかと言われているのだが、あなたが確信を持っているというのは主要装備のところのデータを見ながらそう思っているのだと今言われているわけだから、それは五兆五千億とか六兆とか言われているが、随分枠がありますね、大体そういう数字ですかと聞いている。
  40. 加藤紘一

    加藤国務大臣 特にそういったまとまった概数が現在あるわけではございません。まだございません。ただ、これからやってまいりますと、どうしても、五六中業でまだ達成できなかった、いわゆる積み残し分の処置もございますし、それから、いろいろ期間内にも古くなっていくものもあるでしょうし、そんなことをいろいろ説明を受けて、私が個人的に、これは天井がかなり迫っておるものですから、そういう中で見るとなかなか難しいなと、そして、特にまた正面装備費以外のいわゆる人種みたいなものももちろん、これは概数で、それこそ過去の積算の傾向値でやっていくわけですが、今度はそれよりは少しはしっかりと積算していくようにいたすようにいたしておりますけれども、そっちの方もそう簡単に人件費が減るという見通しもそう簡単なものではないと思います。したがって、そういうような全体を考えると、一%におさまるのはなかなか難しいかなという感じがいたしております。ただ、総理大臣国会でGNP一%を守りたいとおっしゃっておりますし、私たちもそう思っております。私たちもそう答弁いたしております。これは政府予算としての決定レベルについてのものが三木内閣当時の一%閣議決定だろう、こう思っております。
  41. 上田哲

    ○上田(哲)委員 どうもなまくら答弁でどうしようもないので、直観がある、それも訂正しないと言われるのだから、あなたがおっしゃったように、正面装備のところでやはり思ったのだと言うのだから、正面装備はどういうふうな傾向にあるのかということは、五兆五千だよとか六兆だとかという数字をもって言えないにしても、傾向はあなたつかまれたのだから、そういう傾向だよということは言われなければ国会論議になりません。  僕はちょっとさっき数字を間違えたのだが、これまでは見込みが二八・一%ないし二%ですね。そして二三でとまっているわけですね。宍倉さん、そこどうなんですか。あなたの方から正確に言ってください。
  42. 矢崎新二

    矢崎政府委員 五六中業を見積もった場合に、これは当時も御説明しましたが、全体の経費は大まかな推計だという前提で御理解いただきたいと思いますが、その当時申し上げた数字で言いますと、正面の経費としておおむね二八%程度ということでございます。現在の予算が、六十年度では約二三%ということになっておることもそういうことでございますが、先ほど大臣から二六%と申し上げておりますのは、これはちょっと分類の仕方の統計上の問題がございまして、装備品購入費の数字で見ると二六という数字もあるものですから、多少そういう点、ちょっと御理解をいただきたいと思います。
  43. 上田哲

    ○上田(哲)委員 わかった。その細かいことは言いますまい。細かいことは言わないが、長官、二八なんだけれども、二六と言ってもいいが、それが二三まででしかない。今度は主要装備をその二三%よりも上へ上げるということになりますか。全体の防衛費の中での主要装備のパーセンテージが今二三なんですね。二三より今度は上になるのか下になるのか。長官わからないかな。
  44. 矢崎新二

    矢崎政府委員 その辺がまさにこれからの作業の詰めのいかんによるわけでございまして、現在のところどの程度とういうふうにいくかということは具体的には申し上げられないと思います。
  45. 上田哲

    ○上田(哲)委員 だめだ。時間のむだで、しようがない。それじゃ質問変えますから……。  ずっと数字を出してもらうと、私の方も計算をしたし、そちらからも出していただいた数字を見ると、結局するところ、実質でいうと、これから五九中業予定期間五年間のGNPの総和、そしてその一%というのは実質で十七兆七千億ですよ。十七兆七千億を超えなければつまり一%以内なわけだ。直観的に超えるという意味は、それを超えるだろうという意味ですね。
  46. 加藤紘一

    加藤国務大臣 はい。今後の実質で見まして、GNPの推計が千七百七十二兆ですから、その一%は十七兆ほどになると思いますけれども、その十七兆七千億よりは超えるのじゃないかということでございます。
  47. 上田哲

    ○上田(哲)委員 十九兆五千億前後という言い方はどうですか。
  48. 加藤紘一

    加藤国務大臣 今私が持っております直観は、その一%、十七兆七千の中にはおさまり切れないのじゃないかなという以外のものはございませんで、そこから上の数字的な感覚はまだございません。
  49. 上田哲

    ○上田(哲)委員 まあしかし、かなりわかるところはわかってきました。  そうしますと、一%を超えるのだという――私たちは絶対納得しませんよ。しかし、防衛庁の今の計算の感覚としては一%を超える。しかし、一%を超えるんだということがあっても、考えておられるような大綱水準達成というのは問題があるように思いますよ。  細かい議論は、時間がなくなってくるようだから、きょうはやりませんが、そこで、五九中業長官指示、これは前長官だが、大綱達成を期するというのは、前よりは強い表現にはなったけれども、やはりこれはできないなということも一つ含まれている、こういう解釈があるのですか。
  50. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私たちは、大綱水準達成したい、こういう気持ちのあらわれの表現だと思っております。
  51. 上田哲

    ○上田(哲)委員 こんにゃく問答はいいのだが、そうすると、あなたが一%を超えるだろうなと思いながらやっていく五九中業というもののねらいは、何が何でも大綱をここに達成し切ってしまうということを今後の発言としてとらえておいていいですか。
  52. 加藤紘一

    加藤国務大臣 歴代の内閣総理大臣及び防衛庁長官がこの国会で、「防衛計画大綱」の水準を量的にも質的にもできるだけ早く達成しなければならないと言ってまいりました。そして、そういう背景のもとに前長官が昨年五月、五九中業達成を期するように作業をしなさいと言ったわけでございますので、私もその方針に従って、防衛力整備のためのコンセンサスの中核である防衛計画大綱水準達成を期するように今後作業を進めさせていきたいと思っております。
  53. 上田哲

    ○上田(哲)委員 言葉を変えましょう。  一%を超えるというのは、あなた方ももう既に腹を決めているところなんだが、今もろもろ私たちが得ている情報や積算の可能で見ていくと、今言われている「防衛計画大綱」は、五九中業期間をもっても達成できないと私は思うのですが、どうですか。
  54. 加藤紘一

    加藤国務大臣 達成できるような中期業務計画方針としてつくるようにと指示いたしておりますので、その達成を期していきたい、こう考えております。
  55. 上田哲

    ○上田(哲)委員 こういう議論はむだですね。  では、あなたが七月六日に出発されて、十日にワインバーガーにお会いになる。そのワインバーガー会談で、ワインバーガーがかねてからはっきり公式にも言っていることは、一%などは問題ではない、大綱水準も超えろ、こういうことを言っておるわけですね。ワインバーガーの要求と、あなたが今直観で超えるとは言いながら、今持っていかれる五九中業のアウトラインでは話が合わぬのですよ。具体的にはワインバーガーが、一%を超えなさい、そして大綱も超えて――向こうの言葉で言うとシーレーン構想ですが、そこまで一気に行きなさい。もう一遍言いますよ、一%は当然のこと、大綱も超えてもっとやりなさいという要求が出ることは、これまでの発言で十分想定されるわけですが、その場合どういうようにお答えになりますか。
  56. 加藤紘一

    加藤国務大臣 かつて、ワインバーガー長官を初め米国の政府当局者が日本防衛力整備についてどのように言い、またどのような場所で発言していたかにつきましては、また政府委員から正確に答弁させてみたいと思っております。しかし、いずれにいたしましても、米国の期待は、日米安保条約でともに共同対処する国ですから、私は期待としては頭には入れておきますけれども、私たちの国の防衛政策は、私たちの国の五九中業は、私たちの官主的な判断で決定していきたいと思っております。
  57. 上田哲

    ○上田(哲)委員 話が違いますが、一%論議が出るときに、あなたは直観的には一%を超えるだろうと言われますか。
  58. 加藤紘一

    加藤国務大臣 五九中業作業につきましては、現在ここの国会で述べておりますことと同じことを米国にも申すと思います。一%の閣議決定は、決定されました政府予算案についてのものでございますが、それにつきましては、私たちは一%を守っていきたいという政府の今の方針をそのまま申すことになるだろうと思います。
  59. 上田哲

    ○上田(哲)委員 アメリカに向かって一%を守っていきたいと言われる、しかし、出る数字は一%を超える、非常に巧みなお話になるようですが、なるべく判じ物にならないように、国内へ帰ってから話が矛盾しないようにきちっと話をしてきていただきたい。  そういう中で、貿易摩擦三百六十八億ドルの一つのツケとして、従来アメリカ議会で問題が起きる、政府が追い詰められる、そして日本政府に圧力がかかる、防衛費の膨張ということが出てくる。今回はそういう議論に対してはどう答えられますか。つまり、貿易摩擦の帳じりをこちらの軍事費増というところで合わせるようなことはしないということは、はっきり言われますか。
  60. 加藤紘一

    加藤国務大臣 ちょっと御質問の趣旨が理解できなかったところがあるのですが、それは、例えば装備品の購入とかで帳じりを合わせるような態度をとるかとらないかということでございますか。
  61. 上田哲

    ○上田(哲)委員 それと、それからこちらの防衛費増高のパーセンテージを上げておこたえしましょうなどということですね。
  62. 加藤紘一

    加藤国務大臣 日米関係は、いろいろな分野で幅広い関係を持っておる国でございますけれども、私たちとしては、貿易面の問題と防衛面の問題はそれはおのずから別個の問題であるという考えで対処していきたい、こう考えております。
  63. 上田哲

    ○上田(哲)委員 もう一遍国内に戻しますが、まだ決まっておらぬ、決まっておらぬといろいろ言われると、では、いつ決まるのかということになりますね。中業いつ決まるのかということになります。中業は結局政府部内資料なのだから国会に出すときだ、単年度予算に数字を出すときが超えるか超えないかの問題なのだ、これも一つの理屈です。しからばその理屈に乗って、一%を超えるかもしれぬと直観される長官が実際に一%を超えると国民なり国会なりがわかるのはいつなんですか。
  64. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私が一%の中でおさめ切ることは容易ではないなという感じがすると申しましたのは中期業務計画についてでございますが、それは夏までに決定したいと思っておりますので、国防会議に報告いたした段階で最終的には非常にはっきり明確になるだろうと思います。
  65. 上田哲

    ○上田(哲)委員 少なくとも中業が決まるのは、従来、七月というふうに受け取っておりましたが、七月じゃありませんか。私の聞いておるところでは八月中旬というふうに聞いておるのですが、そういうことになりますか。
  66. 加藤紘一

    加藤国務大臣 今のところ、夏のどの時点、七月、八月の何日ごろかということは、作業進捗状況もこれありますので、まだ最終的には決定いたしておりません。しかし、政府の内部で作業いたします対大蔵概算要求の基準になるものでございますので、大蔵省が概算要求の締め切りはある一定の日だと言いましたならば、その前には作業を終えていなければならない筋合いのものだと思います。
  67. 上田哲

    ○上田(哲)委員 七月中にはもう無理ですね。八月にかかるということは常識のようですが……。
  68. 加藤紘一

    加藤国務大臣 その辺もまだ定かに決定いたしておりません。
  69. 上田哲

    ○上田(哲)委員 これは長官おわかりにならないようなら、事務方で答えてください。やはりその辺の日にちというのはかなり注目を集めておる。七月だという認識でいたのですが、一説には十二月という説もある。これは否定されたようだけれども、しかし、七月ということだったら、今この段階でこの程度の話では済まぬわけですね。その辺の、もう少し詰まった作業日程があるはずだから、これはいつごろになるのですか。これは事務方で答えてください。
  70. 矢崎新二

    矢崎政府委員 前回の五六中業の場合の例で言いますと、七月の下旬に国防会議で報告をし、了承をいただいておる経過がございます。したがって、私どもの念頭にありますのはそういう前例が一つあるわけでございまして、そういうものを頭に置いて現在、鋭意努力をしておるわけでございますが、最終的にいつになるかということについては、まだ政府部内での相談が行われておるわけでもございませんので、具体的にこうだというふうには申し上げられないというのが大臣からお答えをした趣旨でございます。
  71. 上田哲

    ○上田(哲)委員 それなら出てくるなよ。もうちょっと時間を大事にしてください。  それでは長官、これはひとつしっかりお答えいただきたいのですが、あなたもハト派だと言われるのです。ハト派でも、一%を超えるのを早々と打ち出されるようでは、ハトかタカかわからぬという気持ちもあるが、やはり最小限ルールとして、国会の論議はどうでもいいがという議論もあるようだが、それじゃ話にならぬぐらいはあなただって恐らく同じ立場に立てるでしょう。シビリアンコントロールとはハウスの問題だということを大事にするという立場で、どこで一%を超えることになるのかというのは、さまざまな関所があるでしょう。概算要求というところでやはりどうしたって出てくるだろうと我々は思うし、人勧のところもあるだろうし、幾つかの関所というのはつくることができる。しかし、これは私たちは言いたくないことだけれども、少なくともそういう事態が起きた場合に、一方的にこれは政府部内機関である閣議及び国防会議の決定をもって足りるとする、つまり代官様からの一片の通告であるということでは相ならぬだろう。やはり政府としては一%維持八割という世論調査もあることでもあるし、国会がこれほど議論したことですから、そういう事態では十分に国会の論議を保障する、こういうことが当然な立場ではないかと私は思うのです。こういう立場を政治家として、国務大臣としてしっかり御見解を承っておきたい。
  72. 加藤紘一

    加藤国務大臣 防衛論議につきまして、私は国会は非常に大切な場であろうと思います。非常に大切というよりも、最も大切なところだと思っております。シビリアンコントロールにつきましては、例えば防衛庁の内局もありますし、国防会議もございます。それなりに、シビリアンで大多数が構成されております内閣における統制というのも重要だと思いますが、最終的にはやはり国会における国民の意思による統制というのが最も大切な部分だと思います。  したがいまして、従来総理大臣も申しましたようにいろいろの節目節目、重要な場面におきましては、従来の国会における御議論、自分たちが従来答弁してまいりましたお答えの趣旨、そういうことを踏まえながら考えてまいりますということを予算委員会でも申しましたけれども、それは私たちとしても当然守っていかなければならないことであろう、こう思っております。具体的にどういう国会の場でということは、それは行政府の立場の私たちから申し上げたら若干僭越になりますから、それは国会で御判断いただくことでございますが、国会が重要視されるべきであるということは当然だと思います。
  73. 上田哲

    ○上田(哲)委員 抽象論ではなくて、ある日ある朝急に閣議が決まりました、国防会議で決まりましたということは大変いびつな形だと私は思うのですよ。だから、それは国会がお決めになることだなんていう月並みな言い方じゃなくて、じゃ行政府として、行政府の防衛問題の責任者としてこうした大きな問題について、今あなたが最大に大事だと言われた国会に、こういう形でぜひ論議をしてもらいたいということを言われるのが当然の政治の見識なわけですから、具体的にもう一遍言いますが、ある日ある朝鶏が鳴いたら閣議が決まった、国防会議を通ったなどというのではなくて、そうではないためには行政府の側からはどういう論議を保障したいと考えるか、これをひとつ伺いたい。
  74. 加藤紘一

    加藤国務大臣 まだ先々どういった形になるかということも、仮定の問題としてお答え申し上げるには不確定要素が多過ぎますので、今の上田委員の御質問でございますけれども、ちょっと的確にはまだお答えできないと思います。しかし、いずれにいたしましても、日本の場合にはそれなりにマスメディアも発達いたしておりますし、いろいろな形で私たちの動き等も報道されております。したがって、ある日、朝突然全く考えられないことが防衛面に起こるというようなことはない国でございますし、そうあってはいかぬことだと思っております。
  75. 上田哲

    ○上田(哲)委員 これ以上言ってもしようがないのかもしれませんが、私は加藤長官にそこだけは期待しておきたいのですよ。マスメディアが報道したから国会は後から走ればいい、新聞を朝見ればいいだろう、テレビのスイッチをひねればいいだろうという議論はめちゃくちゃなんだ。きょうはほかの問題もちょっと議論したいのですけれども、そこのところは政府がハウスに対して討議を求めるというぐらいの姿勢をそのときに出されることを私としては注文をしておきます。細かいことを言わなくてもいいです。そういう私のあなたへの期待をあなたが政治家として、行政府の防衛責任者として、しっかり受けとめるということはいいですね。
  76. 加藤紘一

    加藤国務大臣 防衛政策の基本的な問題につきまして、議会の御意見を十分に聞くということは非常に大切なことだと思っております。その精神はしっかり守っていきたいと思っております。
  77. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そこで、少し具体的な問題を伺いたいのですが、しきりに発言がある。ここでは余り発言されぬけれども、青森発言であるとかあるいは防衛局長は、自民党国防部会に行って多少数字的な問題も出して説明をしておるとかいろいろなことがある。これはやはり私は非常に不権衡だと思っております。しかし、そんなことをあげつらっていても仕方がないので、あえてその辺を我慢して、具体的な事実を一つ、二つしっかり聞いておきたいのであります。  一つは、北の守り発言です。私はどうも今北の守りという意味がよくわからぬのですけれども、具体的に言いますと、現在戦車部隊が全部で千七十両、古いの新しいのという議論は別にして、総体で言うと千七十両。今本州の六百に対して北海道の四百七十、大まか六、四ですね。これを逆転するわけでしょう。私の方の数字では、北海道の今四百七十に百四十ふやして六十足して六百七十、そして本州の方を四百六十、つまり今の六百対四百七十を六百七十対四百六十、新しいのを含めて。こういうことになさる計画だというふうにキャッチしておりますが、それでよろしいですか。
  78. 矢崎新二

    矢崎政府委員 戦車保有数、約千百両、これをどういうふうに考えるかということでございますが、先ほどもちょっと申し上げましたように、内地にあります戦車について、一部北海道に配置転換をすることも必要ではないかという点を、現在検討をしていることは事実でございます。ただ、数字的に何両というふうに明確に結論をまだ出しておるわけではございませんので、その点は申し上げかねるわけでございますが、方向としてある程度そういうことを考えていく必要があるのではないかということでございます。
  79. 上田哲

    ○上田(哲)委員 これはわかっているじゃないですか。これぐらいはちゃんと言ってくれなければ困る。だから、五両や十両の違いはあってもしようがないけれども、つまり今の六、四を逆転して四、六になるのだ。北海道戦車がその分だけ余計厚くなるということは、これは長官も言われているわけですね。数字としてはこういうことになるはずだ。その方向はそれで間違いないわけですね。
  80. 加藤紘一

    加藤国務大臣 先ほど月原委員防衛局長がお答えしたと思いますが、戦車の台数等において北海道配備を従来よりしっかりとさせた数字にしたい、こう思っていることは事実でございます。ただ、現在の本土内、本土それから北海道配備の現況の数ですが、それでいいのか、ちょっと私の記憶している数と違うような気がいたしますので、ちょっと調べさせます。
  81. 上田哲

    ○上田(哲)委員 じゃその数字は調べてから報告をしてください。急いで、この後、今論議している最中でいいから。  問題は、北海道戦車をふやすというのはどういう意味があるのですか。これはつまり対ソ反撃のための守りということを重視しなければならぬ、こういうことですか。
  82. 矢崎新二

    矢崎政府委員 我が国の地理的な特性を考えてみました場合に、北海道という地域が、一つには本土から海を隔てて切り離されているというような地理的な特性があるわけでございます。そういった点から考えまして、やはり北海道につきましては、ある程度重点的な配備というものを従来から考えてきているわけでございます。その延長線上に立ちまして、近時におきます各種の軍事技術の動向というものを考えますと、迅速に対応する力というものがやはり大事ではないかというふうに考えておりまして、そういう意味で先ほども申し上げましたように、初動対処能力というものを、北海道地域においてもう少し高めておくのがいいのではないかというふうなことを考えているわけであります。
  83. 上田哲

    ○上田(哲)委員 じゃ数字が出たときに言いましょう。  大事なことをもう一つ洋上防空能力強化ということがしきりに言われるわけですね。これはぜひ本質のところで伺いたいのですが、大綱達成というその大綱の概念の中に、もちろん全然なかったのではないけれども、原理的にというか要素的にというか欠けていたものとしての認識で大きくクローズアップされているものが洋上防空能力強化ということなんだ、私はそういうふうに理解しているのです。これは私が自分でそう思っているというのじゃなくて防衛庁がそう思っているだろうというふうに理解しているということですよ。そうでしょうね。だから、そういう問題として五九中業大綱が当初大きくは予想していなかったものの非常に大きな要素として洋上防空能力強化ということが出てきたというふうに理解する。それでいいですか。
  84. 矢崎新二

    矢崎政府委員 海上防衛力整備につきまして従来から海上交通安全確保を念頭に置いていたということはかねてから申し上げているわけでございまして、大綱もそれ以前からもそういう考え方は基本的にはあったわけでございます。ただ、先生指摘のようにいわゆる洋上におきます経空脅威と申しますか空を経由してくる脅威の問題、これが大綱策定当時に比べればかなり増大をしてきているということは事実でございまして、そういう意味におきまして、洋上防空の重要性が非常に高くなってきているということは、大綱策定当時に比べての一つの大きな変化ではないかという認識を私どもも持っております。
  85. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そこで大きくクローズアップされてくるのが、例えば従来からいつやるんだ、あるいはやらないのかという問題になってくるCAP態勢であり、そしてさっきどうもよくわからない答弁でありましたけれども空中給油機というものがやがて必要になるので勉強はしておかなければならぬかなみたいなニュアンスが前よりは一センチくらい高まったかなというふうに聞いておりました。そういう流れの一番もとになるところは何かというと、今防衛庁のアイテムの中で言うとOTHでしょう。このOTHが今度長官がアメリカへ行かれるときの重要な議論のテーマになるのだろうと私は思います。その辺はどういうふうにお考えですか。
  86. 矢崎新二

    矢崎政府委員 御指摘のように、洋上防空の問題その他本土防空の問題を考える場合におきましても、我が国が専守防衛の建前をとっております以上できるだけ早期に端緒を把握できるということが非常に大事だと思います。そういう意味で私どもが最近研究しておりますところでは、先生指摘のOTHレーダーというものが有益ではないかというふうに見ておるわけでございまして、このOTHレーダーの問題については私どもとしては検討をする必要のあるテーマだという認識を今持ちつつあるところでございます。
  87. 上田哲

    ○上田(哲)委員 その検討というとこうが非常に大事なんで、これは向こうだって研究中で、アメリカは八六年に実戦配備ですか、だからまだわからない部分も随分あるはずなんだが、検討中ということは、遠い将来に置いておくということじゃなくて、具体的には五九中業中には形をなすべきものとしてそうなるかどうかについての入り口から入ってみる、私はあえて非常に抽象的に言っているのですが、そういう意味でありますか。
  88. 加藤紘一

    加藤国務大臣 OTHレーダーにつきましては、先ほど防衛局長も申しましたように、私たちの国のように専守防衛という国ではできるだけ早くいろいろな情報を確度を高く得ることが最も重要であり、またこれが憲法に基づく専守防衛の趣旨でもあろうかなと思っておりまして、このOTHレーダーにつきましては関心を持っているところでございます。これにつきましてどのような技術的な問題があるのか、どのような経費があるのか、いろいろ今検討中でございますし、五九中業にどのように織り込むのか、また織り込まないのか等につきましては現在決まっておりません。現在検討中というところでございます。
  89. 上田哲

    ○上田(哲)委員 お話のニュアンスはわかりますよ。かなり関心を持って、できることなら実現したいものだ、配備したいものだという立場での組み込みだというふうに考えていいわけですね。
  90. 加藤紘一

    加藤国務大臣 その前に、どの程度の効果があるものなのか、技術的にどういう意味を持つものなのか、今しっかりと研究をしておかなければいけない、関心を持って検討中というところでございます。
  91. 上田哲

    ○上田(哲)委員 それはもうとにかくアメリカですからね。アメリカの理解というか共同の体制がなければどうにもならないことなんですね。あるいはまたアメリカの非常に強く要求していることでもあった。したがって、今度のワインバーガーとの話し合いの中では当然日本側から何らかの回答をしなければならない順番にもなっているし、いきさつにもなっている。長官技術提供、つまりこちらが理解をしたいということに対して相手方の説明を求めたいということを言われるのでしょうか。
  92. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私たちとしてはOTHにつきましてその技術的な可能性、それからその有効性等につきましていろいろなところからできる限りの情報を集めたいと考えております。その意味でアメリカがどの程度の情報を私たちに提供してくれるかということも非常に重要なポイントになろうかと思っております。
  93. 上田哲

    ○上田(哲)委員 わかりました。重要な情報を提供してほしいということを提起されるということになるわけですね。
  94. 加藤紘一

    加藤国務大臣 防衛首脳会談でそれがどの程度論じられるか、これはまたわかりません。それよりももっと技術的な部分での情報交換というのが重要になってくるのではないかなと思います。余り技術的なことを言われましても私も余りわかりませんので、かなりそういう専門レベルの段階での意見交換、また私たちにとっての情報の収集、そういうものが重要になってくるだろうと思っております。
  95. 上田哲

    ○上田(哲)委員 向こう側もそれを大変期待しておるようですね。そこで、向こうにオファーされるときにそのリリースの可能性までも当然含まれると思いますね。
  96. 矢崎新二

    矢崎政府委員 現在は私ども自身日本防衛のためにどういうふうに考えるべきかということを検討しておるわけでございまして、アメリカから特段の要請を受けてやっているという事実はございません。ただ我々が研究を進めていく場合に、技術面あるいは情報面でいろいろ私どもではとてもわからない点が多いと思いますので、今後そういう面でいろいろな協力をアメリカ側にも要請をしなければならない場合があり得るかと思います。ただ具体的にどういうふうな協力要請を考えるかというところまで現在まだブレークダウンが進んでいる状況でもございませんので、細部につきましてはお答えできかねる点を御理解いただきたいと思います。
  97. 上田哲

    ○上田(哲)委員 だから、導入ということになれば当然リリースという形になるわけでしょう。これは論理的な必然を言っているわけだ。
  98. 矢崎新二

    矢崎政府委員 この技術そのものがもう先生十分御承知のようにアメリカが開発しております技術でございますから、そういったものを何らかの形で私ども利用可能な状況になりませんと具体化していかないだろうということは御指摘のとおりだろうと思います。ただ具体的にどんなふうな手順があり得るかという点は、今後私ども研究の一環としてもう少し詰めたいと思っております。
  99. 上田哲

    ○上田(哲)委員 日本側の理解としては、当然こういうものが配備されるとなればやがてCAP態勢となり、E2Cとなり、そして空中給油機という態勢になっていくという段取りになる、こういうものですね。
  100. 矢崎新二

    矢崎政府委員 御指摘のように洋上防空体制と申しますのは、体系的に有効な諸兵器の組み合わせを考えるべきであると思います。その中の検討対象になり得る候補のアイテムとして空中給油機の問題でありますとかあるいはE2Cの問題であるとかこのOTHの問題とかいうようなものが、それぞれ個々に整合性のあるものはどの程度のものかという見地から検討されていく必要があるというふうに思っております。
  101. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そちらで検討されておられるのはOTHFですか、OTHBですか。
  102. 矢崎新二

    矢崎政府委員 今御指摘の点は、アメリカが本土防空用に今配備中のものと海軍が開発中のものと二つのどれかという御指摘かと思いますが、現在私どもはOTHレーダーのシステム全体としての研究に着手をしている段階でございまして、明確にどちらのシステムというふうにまだ割り切ってお答えできる状況ではございません。
  103. 上田哲

    ○上田(哲)委員 私はこれは問題だと思うのですがね。OTHFなんというのはもうやめちゃっているんですね。だから、やるならBなんだろうと思うのだけれども防衛庁に資料はどんなものがあるかというふうに聞いてみたら、全く資料というほどのものはないんですね。委員長、これが一つ来たんですよ。こんな漫画みたいな絵が一つ来たんですよ。これじゃしようがないわけですね。実はこれは大変なものでありまして、今アメリカでもゼネラル・エレクトリック社が一九八二年六月に六千六百七十万ドルで実験用モデルの開発を請け負ったわけですね。そのコストが、八三年価格で十三億ドル。これは向こうのものを調べてみますと、写真を見ますと、こんなすさまじい、大きいものです。何か競馬のスタート台みたいな感じがしますが、これははるかに大きいわけですね。日本の場合は硫黄島あたりに受信基地、発信基地は南西諸島、これは大変なホリゾントの向こう側までやってしまおうというのだから、これはもう大変なことなんだが、これはアメリカの戦略の一端、下請ということにならざるを得ない。それから、情報収集とおっしゃるけれども日本のような位置づけの中では、こんなところへ置いたってほとんど意味がないわけですよ。これはまさに日米合同体制のアメリカを守るという、つまりシーレーンにもかかわってくるのだけれども、北西太平洋海域の問題としては意味が出てくるけれども日本本土防衛ということからすると大変ずれてしまう。私はこういう形での集団自衛権そのものを絵に書いたような姿になるんではないか、こういう問題点を強く感ずるわけです。これはいかがですか。
  104. 矢崎新二

    矢崎政府委員 私ども現在検討をしておりますのは、我が国防衛のために、OTHレーダーがどういうふうに役立ち得るかということを具体的に詰めようということでやっているわけでございまして、洋上防空の問題にいたしましても、本土防空の問題にいたしましても、基本的に、より遠方で目標が発見し得るということはプラスがあることは間違いないわけでございますので、そこら辺を今鋭意詰めておるわけでございます。  その運用に当たりましては、これを仮にやるとしても、基本的に我が国の個別的自衛権の範囲内で処理すべきことであることはもう当然でありまして、集団的自衛権の行使にわたるような枠組みに踏み出すということは全く考えられないことだと思っております。
  105. 上田哲

    ○上田(哲)委員 これは四千キロも向こうの長距離の動きをキャッチするというのだが、もともとは余り小さいものはとらえられないとか、これをとらえたところで、日本本土防衛にどれだけの意味があるのかとか、本当にたくさんの問題があります。しかし、これは従来からの日米会談で、三宅島のNLP問題とも並んで非常に強く出ていた問題でもありますから、今回の会談では出てくるでありましょうし、どういうレベルの話になるか知りませんけれども技術提供の申し入れと将来リリースの可能性についての提起というところへいくのはいいと思うのですが、いいと思うのですがというのは、なっていくのだろうと思うのですが、これはやはり私どもはこれまでの日本防衛構想というところから大変大きく踏み出すきっかけになる憂いを持ちます。  集団自衛権というのは、それに触れていないのだと強弁していれば、いつまでたったって何でもできるわけですが、我々としては、日米共同体制、軍事体制という中での非常に進んだ形がここで進められていくのではないかというふうに思えてなりません。  したがって、長官、この問題については今後軍事機密というような壁ではなくて、こういう問題を技術論的にはいろいろなことが言えても言えなくても、あっても、日米間で今どういうふうな進行状態にあるか、また五九中業の中でどのような姿で進められていくのかなと、ひとつできるだけ私たちに報告をしてくれるということを約束をしていただきたいと思います。
  106. 加藤紘一

    加藤国務大臣 基本的な防衛政策ももちろんですし、それからいろいろ個々具体的に進んでおります日々の防衛政策、また装備配備の仕方等、私たちはできるだけ国会で軍事上の機密にわならない範囲で情報を提供し、御判断をいただくべきであろうと思います。したがいまして、一般的に私たちもできるだけ御議論の材料は提供するつもりでございます。ただ、私たちが十分情報を持っていない場合とか、それから機密にわたる場合は、それは御勘弁をいただきたいと思います。
  107. 上田哲

    ○上田(哲)委員 訪米に当たってしかとお約束をお願いをいたします。  もう一つ、今度夏目次官が中国へ行かれた。先ほど来委員長も御発言がありましたので、私どもは後の動きを見守りたいと思いますが、防衛事務次官がああした使命を負って中国というところを訪問され、軍事担当者と重要な会議をされた。あまつさえ、これはもう報道でいろいろと出ておる。ところが、その御本人から国会では質疑をすることができない。国政審議権として私は大変おかしいと思います。これは委員長の御裁量でいろいろ今後の検討がなされるということでありますから、その問題に時間を費やすことはいたしません。その意味では長官が次官にかわってひとつお答えをいただかなければならぬが、一点に絞っていきますが、長官は漏れ聞くところでは、日中軍事関係というのは日米軍関係とは違うのであるということを言われたようであります。そうであるのかないのか私どもにはわかりませんが、違うとなれば何が違うのか。今日までは人事、衛生問題に限られていた関係が、やはり寄港問題等々まで云々される中でのナンバーツーの防衛責任者の訪中なんでありますから、これは私たちはしっかり関心を払わないわけにはいかない。締めくくって細かい感触を聞くことはできませんが、違うということは、例えば武器供与、共同訓練あるいは共同作戦計画、相互乗り入れ等々というものについてはやらない関係なんだということになるのでしょうか。あるいはそれらとは違って、別な表現で長官が日米関係とは違う日中関係と言われるのか、その辺の明確な、抽象的でない、何が違うのかというところをはっきりしていただきたい。私は、武器供与、共同訓練、共同作戦計画研究、そうした問題が違いの大きな柱ではないかと思います。いかがですか。
  108. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私たちの国の防衛の基本戦略は、私たちの国みずからが持つ自衛隊とそれから日米安保体制というものの二つの柱で成り立っていると思っております。したがいまして、私たちの国とアメリカとの関係防衛面においては特別の関係にあるだろう、こう思っております。そういう意味で、ほかの国とは同一には論じられない関係にあると思っております。我が国有事の際に、米国は私たちの支援のために力を尽くすことを大統領と我が国の総理との間でコミットしてもらっている、そういう国でございます。そういうコミットメントの基本にありますものは日米安全保障条約でありますが、その安全保障条約を結んでおります私たちの国とアメリカとの関係はおのずと日中関係とは別のレベルのものであろう。どこが違うかといいますと、安全保障条約を持っていることに伴って日米の間にありますいろいろな取り決めや旦ころの交流、そういうものは日中の間ではちょっと考えられないことであろう、こういうふうに思っております。
  109. 上田哲

    ○上田(哲)委員 非常に抽象的なので、それでは具体的に言います。武器供与、共同訓練、共同作戦計画、相互乗り入れ、これは日中にはないんだということでいいのですか。
  110. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私たちの国と中国との間で軍事協力に至るようなことはございません。それはどういうことを具体的に一つ一つ意味するのかということにつきましては、私たちもちょっとまだ十分整理し切れてないところがございますので、後日に時間をいただいた方がいいのではないかなと思いますが、基本的にはやはり日米安保のある国とない国、ここから発生する問題だと思っております。
  111. 上田哲

    ○上田(哲)委員 今のお言葉でいいのですが、軍事協力はやらないのだ、こういうことでしたね。
  112. 加藤紘一

    加藤国務大臣 そのとおりでございます。
  113. 上田哲

    ○上田(哲)委員 軍事協力の中に、例えば練習艦隊の相互乗り入れというのは含まれますか。
  114. 加藤紘一

    加藤国務大臣 その辺の言葉の定義もいま一つ明確でない部分があったりいたしますので、その点はいずれまた整理して申し上げたいと思います。
  115. 西廣整輝

    西廣政府委員 今御質問のありました三点について申し上げます。  まず技術交流といいますかいわゆる武器輸出にかかわるようなもの、そういったようなものは中国に対してはできない、それから日中共同作戦ということも当然ながらできないというふうに考えております。なお、従来の国会答弁等からいいますと、共同訓練でございますが、訓練の中にはいろいろなものがございまして、例えば特定の戦略的目的を持った共同作戦に基づくような訓練はできない、ただし一般的な戦術技能の向上であれば、これは日米間のみならず第三国ともできるというふうに我々は考えております。さらに言えば、練習艦隊の相互交流のような外交親善のようなたぐいのもの、そういったものはできるのではなかろうかと考えております。
  116. 上田哲

    ○上田(哲)委員 それでは、さらにそれをもし詰めるところがあったら詰めてください。一応伺っておきます。  外務省に伺いますが、アメリカの艦艇が中国に寄港しなくなった。しなくなった理由は、伝えられているところでは核の搭載艦は入れないのだという中国の姿勢に対して、その有無を言わない立場からいって寄港ということが非常に紛らわしくなるのでこれはできないということになったと聞いております。ニュージーランドの問題以来、核搭載艦の寄港という問題が我々には国論とともに非常に関心の強いところでありまして、こういう立場が中国において許されるならば、ニュージーランドとはちょっと遠いかもしれないが、中国がそうであれば、当然日本としても非核三原則があるのですから核搭載艦は入れないということをもっとその立場でアメリカに対して言うことができるのではないか。その場合にアメリカ側が、では日本に寄港しない、一切の艦艇を寄港させないということになったとしても、これは中国の例からいってもおかしくはないのだ、このくらいのことが非核三原則の立場からすれば当然出てくる姿ではないか。もしそれができないとなれば日米安保条約というのはそれもできないのだ、こういう解釈になるのかどうか。
  117. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 お答え申し上げます。  最初に先生指摘のございました米国艦艇の中国寄港についての状況でございますけれども、いろいろな報道がなされておりますが、米中それぞれの政府としては、なお幾つかの問題が残っているので協議を継続しているということになっているというふうに承知いたしております。  我が国の立場でございますが、これはもう私から申し上げるまでもございませんけれども、日米安保条約上の事前協議の制度に従って対処してきておるわけでございますし、私どもはそれでよろしいというふうに考えております。
  118. 上田哲

    ○上田(哲)委員 笑いながら答えているようじゃ恥ずかしいね。これは事前協議なんという話じゃなくて、中国でもニュージーランドでも非核三原則をそれだけ裏表ないように使っているわけだから、今この一回の論議で急に変わり得るとは思いませんからこれ以上同じ論議はしません。しませんが、国民から信頼される外交の立場からすれば、中国でも核の憂いがあるなら入港させないというのだから日本でも――これは嫌みになるといけないから言わないが、きょう初めて私たちに紹介された長官の訪米日程でも原潜の基地を見るという。何も原潜の基地に長官が行く必要はないじゃないかと私は思う。紛らわしいことではなくて、非核だけはしっかり守ってもらいたいということは強く申し上げておきます。  最後に一点。長官これはぜひ提案をしたいのですが、これまでさまざま議論が行われてくることの根底にシーレーンがあります。戦車北海道へ持っていこうとかいろいろなことがあって、それは陸に向かってのいろいろな配慮もあるでしょう。しかし、先ほど来大綱の大きな盛り上がってきた点といっても洋上防空とかいろいろなことが出てくる。そういう中ではOTHその他も全部含めてシーレーンというものに大きくかかわってきますね。  そこで、シーレーン防衛構想とは何だということが不明確なままいってしまってはまずいわけです。軍事費だけが高まっていくということだけではいかぬわけです。そうすると、シーレーンとは何ぞやということをこのあたりで、これまでのおとぎ話みたいな中近東からタンカーでぶかぶか足りない石油を運んでくるんだ、戦時になったら三分の一の食糧を持ってくるんだみたいなことを言っておったり、戦時中のコンボイの変形だなんということを言っておってはいかぬ。これは大賀良平元海幕長なんかが言っているように、ある時期にその用語が入ってきたものだからひょいと乗っちゃったんだという経過があるのだから、このあたりで本当に――野党の側からすれば踏み込んだつもりでいるのですが、本当に日本防衛ということをお考えになり、国民を納得させられるという焦点の一つがシーレーンであるならば、シーレーン防衛構想とは何だということをもうちょっと脱皮した言い方で定義をつくられるべきじゃないか。三次防にも実はその考えがよく探してみたらあったのだなんということをエンサイクロペディアみたいに言うのじゃなくて、やはりそのことを前向きにやられるのが若い長官の任務じゃないかと私は思う。  そういうことを去年の予算委員会で中曽根さんとやった。これは私はびっくりしたのだが、中曽根さんの方から言い出したのだ。その中曽根さんの言葉を整理して、これでいいのかと言ったら、これでいいからと言うので、もう三回確認して、今後はこの形でシーレーン防衛をやろうじゃないかという定義があるのです。これはことしの二月七日にもう一遍確認しているのですが、「もう一遍確認しておきます。」と言って言っているのが、「日本周辺数百海里において、哨戒、護送、沿岸防衛、港湾の防衛あるいは海峡防衛など、その総合的、複合的効果を目指すもの。なお、この構想を航路帯、海上輸送路、海上交通路とする用語は適切でなく、もし将来航路帯を設ける場合には大体一千海里の範囲で設ける意図を持つこういう言葉で、総理は、一言で言えば海上警備活動というふうに言えるもので、内容はそのとおりだからこの形で今後もシーレーン防衛議論していこうじゃないか、こう言っているわけです。土俵と言えば土俵があるわけです。しかし、これは大変大まかな言い方になっている。少なくともぷかぷか船を浮かべてタンカー並べるようにして石油を運んでくればいいんだよというようなことではないところまでは来ているけれども、そしてあなた方の方から言えば、集団自衛権の問題があるから口が腐っても海域分担という言葉は使えないだろうから、その辺のところは重箱の隅をつっつくつもりはないが、これは長官ぜひ、シーレーン防衛構想とは何かということをもう少しく内容を詰めて、正直にフランクに出されて論議の場をつくるべきではないか。ここらあたりが五九中業策定時期にも関連して大事なときではないかと私は思うのです。どうですか。
  119. 加藤紘一

    加藤国務大臣 シーレーン防衛の定義につきまして五十九年三月十三日に上田委員と中曽根総理との間でかなり詰めた御議論をなさったことは私も議事録で十分勉強いたしました。中曽根総理もある一、二の点については留保されて、その点についてはそれはそうですねとお互いに議論を整理されながらコンセンサスに持っていかれようとした議論は、失礼ですけれども非常におもしろい議論として後で議事録で拝読させていただきました。  私がそれを読みまして、また現在私たちが御質問を受けたらお答え申しますシーレーンについての私たちのポジションと大体合致してきているのではないか、その意味では議論の土台が非常に強固になっていいのではないかな、こんなふうに思っておりますが、いずれにいたしましても、細部で、まだいろいろ細かいところで違いがあるということであるならば、防衛論議をするときに概念が違っては意味がありませんので、これは詰めていくことは賛成でございます。ともすればシーレーンといいますと何となくベルトみたいな、帯の概念みたいな感じで言いますけれども、そうではなくて日本周辺数百マイル、航路帯を設ける場合には一千海里というような、そういったいろいろな概念の整理をやりながら、そしてどういう活動を前提にしているかということの議論は詰めていくことは重要であろうと思います。
  120. 矢崎新二

    矢崎政府委員 先ほど保留させていただきました戦車の保育数について御報告申し上げます。  五十九年度末の保有数の総数は千七十両、そのうち北海道に四百七十二両、約四四%でございます。それから、六十年度の予算で取得するものまでを含めたいわゆる六十年度完成時の数字で見ますと、総保有数は千百四十六両で、そのうち北海道の分が四百八十四両、シェアは約四二%、そういうことになっております。
  121. 上田哲

    ○上田(哲)委員 長官、せっかくいいところまで来たから、せっかくだから、ではひとつそういうものをつくってみせて、何かそういったたき台になるような文章とか考え方とかというものを出してみようというところまで約束していただけますか。
  122. 加藤紘一

    加藤国務大臣 シーレーン防衛というものはどういう概念で私たちがどう考えておるかということは常日ごろ申し上げておりますので、それを申し上げることは当然であろうと思います。
  123. 上田哲

    ○上田(哲)委員 終わります。
  124. 森下元晴

    森下委員長 前川旦君。
  125. 前川旦

    ○前川委員 私は、予定の時間が大分削られましたので、簡潔に質問したいと思いますので、簡潔に御答弁いただきたいと思います。  まず最初に、この間四月二十五日、宮崎県の日南市沖の日向灘で不審船を発見して以来の海上保安庁のとった経過についてごく簡潔に御報告をいただきたいと思います。
  126. 岡田專治

    ○岡田政府委員 二十五日の十時四十分ごろでございますが、宮崎県の水産課から私どもの油津海上保安部に次のような連絡が入ったわけでございます。同日九時ごろ同県の水産取り締まり船が日南市の沖合十一・二海里のところで船名第三十一幸栄丸、登録番号OT二-三三一一と標示した鮮魚運搬船型の船を発見いたしまして立入検査を実施しようとしたところ、突然二十二、三ノットの高速で南下して逃走中、こういう連絡があったとの申し越しがございました。  私どもとしましては直ちに当該船舶につきまして調査をいたしましたが、この船はたまたま当日の朝七時ごろ長崎を出港しているということがわかりまして、したがいまして、その船名あるいは番号等の同一性については極めて重大な疑義がある、こういうような認識に至ったわけでございます。したがいまして、直ちに私どもの稼働できる船艇、航空機を動員いたしましたところ、その二十五日の十五時十五分ごろ、宮崎県戸崎鼻から約三十七・五海里のところで速力約十ノットで北上中の当該船舶らしきものを当庁の航空機が発見いたしまして監視を続行いたしました。そして同日十九時三十五分ごろ、私どもの巡視船「こしき」のレーダーのサイトの中に当該不審船が捕捉されまして、これを追尾いたしたわけでございますが、残念ながら二十一時三十五分ごろ、レーダーから映像が消滅した、簡単に言えば見失ったわけでございます。  そこで、各方面に我が方の船艇を配備いたしますとともに、たまたま二十六日払暁、午前三時二十分ごろでございますが、我が方の巡視船が種子島の喜志鹿崎から百四十二度、二十三海里のところを針路百八十度、速力三十ノットで航走中のその不審船を発見いたしまして、それから我が方のもろもろの巡視艇等が五時から六時台にかけましてずっと追跡をいたしておりまして、その間、いわゆる旗族、旗でありますとかあるいはサイレンでありますとか国際VHF等を使用いたしまして停船命令を発したのでおりますけれども、それに従わず西方に逃走を続けたわけでございます。逃走は北緯三十度線にほぼ沿いながら、あるときは四十ノットの高速、また場合によっては極めて低速で逃走いたしまして、その間、当方の船艇及び航空機でずっと追尾したわけでございますが、四月二十六日の二十二時には草垣島から二百五十九度、約二百三十海里付近のところで我が方の巡視船五隻が不審船に接近いたしまして停船命令を行ったわけでございますが、やはり速力を増速いたしまして、二十八ノットぐらいに増速いたしまして、また我が方の巡視船との差が残念ながら徐々に拡大したというような状況でございました。  そして四月二十七日の〇一一〇、北緯三十度四十一分、東経百二十三度五十九分のポイント、ほぼ中国の杭州湾沖の堂島という島があるそうですが、それから九十三度、四十三海里付近におきまして我が方の巡視船のレーダー映像から消滅をいたした次第でございます。そのときの不審船の針路及び速力は三百十度、二十八ノットであった状況でございます。追跡をいたしました時間が約四十時間、追跡の航程はおよそ六百海里というのが大体の概要でございます。
  127. 前川旦

    ○前川委員 最初に発見して、これは通報があって追跡を始めたのですが、そのときの容疑は何で追跡を始めたのですか。犯罪容疑。
  128. 岡田專治

    ○岡田政府委員 これは不審船が標示しております船名、登録番号の船が他に実在しているということから、その該船の同一性が極めて疑わしい、したがいまして、船名、船籍等を確認、検査する必要がある、したがって、該船に停船命令を出し、漁業法の第七十四条第三項に基づく検査、質問をしようとした、これのいわば忌避をした、したがいまして、漁業法の第百四十一条第二号の検査忌避の罪に該当するものとして追跡をしているわけでございます。当初はそのような状況として追跡しているわけでございます。
  129. 前川旦

    ○前川委員 これは一たん見失ったんですね。四月二十五日の九時に最初に出会って、それから通報があって、あなた方が追っかけて、それで七時過ぎにレーダーで一遍発見したが、その後、夜追跡を振り切って一遍見失ったということですね。その間、同じ船、この三十一幸栄丸というのは佐賀関港に帰っている別の船があるということがわかった。あなたは漁業法違反だと言われましたが、どうなんですか、これは外国船だというふうに判断したんじゃないですか。どうなんです。
  130. 岡田專治

    ○岡田政府委員 私どもは不審船を捕捉、確認したわけではございませんので、外国船舶というふうに断定はしておりません。日本船名を名のっておりますので、その意味では宮崎県の水産取り締まり船が漁業法違反として検査をしようとし、それを忌避して逃走をしたというその状況を継続して、当初これの追尾を行っていた状況でございます。
  131. 前川旦

    ○前川委員 当初という言葉が出ましたが、新聞のあの記事は、全部といって全部ぐらい、海上保安庁は、十管は、偽装などから外国船と断定、スパイ船か密漁船あるいは覚せい剤運搬船ではないかとの見方を強め、こういう記事がどの新聞にも出ていますが、どこか途中で外国船だというふうに判断された過程があったと思うのです。最初は密漁船だと思って追っかけたでしょう。それから、私は批判をするために質問をしているのじゃなくて、この際ちょっと事実関係を明らかにしてもらいたいということで質問しているのですから、何も遠慮せずに本当のことを言ってもらいたいと思うのですよ。これは国の安全保障関係のある話ですから。どこで外国船ではないかという疑いを持ったんですか。
  132. 岡田專治

    ○岡田政府委員 今回の不審船は、日本船名を標示しているものでございますが、申し上げましたように、果たして日本船舶であるかどうか極めて疑問な状況であったわけでございます。しかしながら、我が方の追跡していた状況におきまして、大変高速で走っておるということ、通常漁船では考えられない。あるいは我が方の航空機が視認しておる状況におきまして、漁具の積載でありますとかそういう状況がない、あるいは航空機が接近いたしましたときに甲板上にいた人間が船室内に隠れたというような状況も視認しておる、ということからいたしますと、単なる漁業法という問題ももちろんありますけれども、それ以外に密輸とか密航とかこういう重要な犯罪を犯したかあるいは犯すおそれが非常に強かったか、こういう疑いがあったわけでございます。したがいまして、かなり執拗な追跡を行った状況でございます。
  133. 前川旦

    ○前川委員 防衛庁海上自衛隊に対してどの段階で協力の要請をしたんですか。
  134. 岡田專治

    ○岡田政府委員 事実の提供といいますか、事実に関する情報の提供という意味で、二十五日の夜に現地サイドにおいて情報を提供しております。
  135. 前川旦

    ○前川委員 この情報に対して、海上自衛隊はいつから飛行機を飛ばしたんですか。これはP2Jだと思いますが……。
  136. 矢崎新二

    矢崎政府委員 ただいまの海上保安庁からの不審船舶に関する情報を入手いたしましてから、P2Jを使いまして二十六日の未明から二十七日の未明にかけまして監視活動を実施をいたしました。出動いたしましたのは延べで五機でございます。
  137. 前川旦

    ○前川委員 海上保安庁の方は、追尾したのは巡視船艇二十三隻、航空機四機ということですか、新聞等に出ていますが、そのとおりでしょうか。
  138. 岡田專治

    ○岡田政府委員 そのとおりであります。
  139. 前川旦

    ○前川委員 漁業法の違反として立入検査を忌避したということで追っかける、これは犯罪としてわかりますが、外国船となると、これは犯罪を犯したと言い切れない難しい問題が出ませんか。単なる領海侵犯であれば、無害通航であれば自由に通れるわけでしょう。その辺の法的な判断はどういうふうに考えておられたんですか。
  140. 岡田專治

    ○岡田政府委員 外国船と判断するだけの材料もございません。要するに不審船でございまして、そういう意味で、我が方としては不審な状況を解明するという目的を持って追尾したわけでございます。
  141. 前川旦

    ○前川委員 単に漁業法の密漁船で二十三隻の巡視船、それからビーチクラフト、それから海上自衛隊まで応援してこれだけの大捜索陣を張るということはちょっと常識で考えられませんから、恐らく外国から来た不審船であるということで皆さんいきり立って、ようしということで大分力が入ってやったんじゃないかと思いますけれども、どうですか、その点。
  142. 岡田專治

    ○岡田政府委員 不審船であるということで事実の解明を熱心にやろうとしたわけでございまして、外国からとか、そういう断定する材料は持ち合わせておりません。
  143. 前川旦

    ○前川委員 実は新聞の記事の中に「宮崎、鹿児島県警は、この不審船から外国の密航者あるいは工作員が上陸したか、密輸入品が持ち込まれた疑いもあるとみて捜査員を動員、海岸線を捜索したり、空港、駅、主要道路などで検問を行った。」と書かれていますが、こういうことも実際あったことなんでしょうか。これはあなたの権限外ですけれども、やっぱり外国船だという疑いが非常に濃厚だというふうに皆さんが判断されてこういうことになったんでしょうか。前にも宮崎県で不審船の工作員が上がったことがありましたね。やっぱり外国船だということのあれが強かったんじゃないでしょうか。私がなぜ聞くかというと、さっき言ったように外国船であると法的に難しくなる。一遍中断しているでしょう。見失っている。見失っているということは追跡が中断したということになるから、公海法上なかなか難しい問題が出るんじゃないかという疑問がありますから、その事実関係をちょっと聞いているのです。
  144. 岡田專治

    ○岡田政府委員 まず私どもは、二十五日の十五時十五分でございましたか、そこにおきまして我が方の航空機によって当該船舶を、その姿、形といいますか、完全に認識をしております。そして、その認識と全く同一の船舶が翌二十六日の三時ごろだったでございましょうか、我が方の巡視船によってまた認知をされておる状況でございます。したがいまして、船舶についての同一性ということについては当然のことながら私どもは全く疑いを持っておりません。  それから、当該船舶は我が方の吐喝喇海峡を通過したわけでございますが、吐喝喇海峡の領海内を通過しております。その領海内を通過しているときに我が方の巡視艇から数次にわたる停船命令を発しておりますが、その停船命令を忌避してそのまま逃走を続けておる状況でございました。
  145. 前川旦

    ○前川委員 事実関係がよくわからない。これは同じ新聞に「作戦の指揮をとった十管本部の幹部は「捕まえたかったが、領海侵犯などの容疑も固まっておらず、強行接舷や発砲などの強硬手段はとれなかった」と、疲れ切った顔つきで話していた。」こういう記事が出ています。うそはないと思いますけれども、一体何の容疑で追っかけたのかということをもうちょっと整理をしないといけないんじゃないかというふうに思います。領海侵犯という談話も出ているんですね。領海侵犯で追っかけたんだろうか。どうなんですか、最終的には。
  146. 岡田專治

    ○岡田政府委員 そういうことではございませんで、まず漁業法の検査の忌避という状況が一つ、それから一般的に漁船としては余りにも不自然な動き、不自然な性能というものがある。そういう船が我が国の領海内に出没しているということについては、我が方の海上における警察権を行使しております私どもといたしましては、やはり密輸とか密航でありますとか、そういう重大な事犯に関係していると十分疑える状況があったわけでございます。したがって、これに対して停船命令を発し、また追尾、捕捉をしようとしたわけであります。
  147. 前川旦

    ○前川委員 どうもうまく私の胸にすとんと落ちるようによくわかりませんが、それはそれとして、新聞の記事によると「にじぐも」などが立ちはだかったけれども逃がしたということが出ておりますけれども、強制停船させるのにどういう方法があるのですか。この新聞記事を見ると、前に立ちはだかってぶつけるような感じがしますが、そんな荒っぽいことを実際やっているのですか。
  148. 岡田專治

    ○岡田政府委員 通常の、何といいますか違法の漁船なんかでございますと速力もせいぜい十ノットあるいはその前後でございまして、また航続力なんかからいたしましても、私どもが徹底的に追いかけますと、大体いわゆる強行接舷なるものができる状況にまでスピードが落ちるという例が通常でございます。しかしながら、この船のように三十ノット、四十ノットというような高速を出す船には到底強行接舷というようなことはとり得べくもございません。したがいまして、立ちはだかったという文章的な表現は、そういう意味新聞にあったようでございますけれども、前方に位して何とかこちらの停船の意思を伝えようという状況をそのように表現したのだと思っております。
  149. 前川旦

    ○前川委員 いや、私は非難しているのじゃないですよ。立ちはだかって体当たりするのは、何というか大したファイトだなと思ってちょっと驚いて、なかなかやれることではないなと思って聞いたのです。  それから、どの新聞にも全部出ておりますのは、前例がない発砲の許可をしたということ。これは一体どういうことを指すのか。どう考えても武器の使用――これは大型の巡視船ですから四十ミリの機関砲、それから二十ミリの機銃を備えておりますね。現場の船長の判断で武器の使用はできる、これは訓令十四号でできることになっておりますが、あらかじめ発砲の許可というのは、これはどういうことなんでしょうか。そういう事実があったのかどうか、これはどうなんでしょうか。
  150. 岡田專治

    ○岡田政府委員 まず、私どものいわゆる銃砲の使用についての基準は、ただいま先生お話の中にもございましたように、あくまでも現場の指揮者の判断にゆだねられている仕組みになっております。  なお、当該ケースにつきましては、先ほど申し上げましたように漁業法違反の状況が既に現行犯として発生しておりますので、相手側、人に危害を与えないという範囲内での武器の使用は理論的には許される状況であったわけでございます。しかしながら、当日の具体的な状況といたしましては、相手が極めて高速であってかつ操船能力にもすぐれておったというわけで、なかなか昼間はこちらの、何といいますか、威嚇射撃をするにいたしましてもそれなりの有効な射程というものがございますが、その中にはうまく入ってこなかった。それから夜間はそれ以下にかなり近接したこともありますけれども、夜間は威嚇のための射撃が威嚇にならず、具体的に相手側に危険を発生させるおそれもないわけではございません。そういうわけで、有効性と危険性の二つの観点から、威嚇射撃は現場の判断としてはしなかった。私どもとしては今回のケースについてはこれはやむを得なかったと思っております。  なお、普通このような船につきましては燃料切れをねらう、あるいは極めて高速の運転を長時間続けることによるいわゆる機関故障を予期するといいますか、そういうような戦術で対処するのが基本ではなかろうかと考えております。
  151. 前川旦

    ○前川委員 不思議でしょうがないのは、威嚇射撃とか空砲射撃ができるようになっていますね。ところがこの場合でも、とにかく威嚇射撃はできるけれども、相手を傷つけたらいかぬ、こういう制限があるわけでしょう。正当防衛じゃないのだから。向こうはただ逃げているだけだから。それで、向こうは日本の法規を知っていて、威嚇射撃したって逃げている限りは絶対にこっちをねらっては撃たぬのだと思えば、一つも効果ないじゃないですか。幾らでも逃げたら逃げっ放しになるじゃないですか。何の効果もないじゃないですか。これは一体どうなんですか。威嚇効果という意義がないじゃないですか。
  152. 岡田專治

    ○岡田政府委員 我が方の諸制度は、オープンな国柄でございまして、おっしゃるように威嚇射撃についても制度は知れわたっているわけでございますから、その効果が減殺されるケースがないわけではないと思っております。
  153. 前川旦

    ○前川委員 やはりこれは一遍考えてみなければいかぬのではないですか。威嚇射撃はできるけれども逃げたら逃げっ放し。本体、相手を傷つけることはできないのですから、威嚇にならないわけだ。つまり、抑止力にも何もならないわけです。威嚇射撃というのは空砲射撃とかいろいろ規定があるけれども、しかも四十五ミリですか四十ミリですか大きな機関砲を持って何の効果があるのだろうか、ちょっと不思議に思わないこともありませんので、この辺また機会があれば少し整理をしておかなければいかぬと思います。  では、発砲の許可というのは結局これからはあり得ないわけですね。あくまでも現場の判断でやるわけですから、あらかじめ発砲の許可をするということはあり得ないわけですね。これはなかったわけですね。
  154. 岡田專治

    ○岡田政府委員 そういう制度の仕組みになっておりませんので、そういうことはございませんでした。
  155. 前川旦

    ○前川委員 さっきの話にありましたが、四月二十六日一日かかって追跡したが、翌二十七日の午前一時十分ごろ屋久島の西約六百二十キロ、中国領海まで約六十五キロのところで見失った、相手は二十八ノットだった、さっきそういうふうに言われましたね。二十八ノットくらいで巡視船が追っかけてどうして見失うのですか。しかも見失う前は二十二キロなり二十五キロの距離でレーダーでちゃんと捕捉しておった。それが見失った、レーダーから消えた。レーダーから消えたというのは沈没するかなんかしか考えられぬのですけれども、要するにレーダーの枠から外に出たということなんでしょう。二十八ノットくらいで、こっちは三十ノットで追っかけていて、しかも北上したのでしょう、新聞の記事によると。どうしてここで捕まえられなかったのかと思うのですよ。見失ったというのが不思議で仕方がない。
  156. 岡田專治

    ○岡田政府委員 それは二十七日の深夜でございますが、そのときに至近距離におりました我が方の巡視船は皆大型でございまして、大体二十ノットから二十二ノットくらいの速度の船でございます。我が方の巡視船は、小型の船では三十ノット出るのもございますけれども、大型の巡視船はおおむねその範囲内のスピードの船となっております。
  157. 前川旦

    ○前川委員 今のはスピードが足りなかったような感じですけれども、それにしてはちょっと能力が頼りないと言ったら悪いかな、頼りないですね。  別の新聞記事には、五隻を残して引き揚げた、四月二十七日午前三時ごろ燃料切れ脱落ということを書いてある記事がありましたね。燃料切れ脱落して追っかけることができなかったの。燃料補給船というのは持ってないのですか。追っかけても燃料切れで途中で脱落をするようなことがあるのですか。この場合はどうなんですか。
  158. 岡田專治

    ○岡田政府委員 我が方では三十メートル型と称しておるものが一番早い、三十ノット出る船でございますけれども、これの航続距離が短うございまして、実際に燃料、帰りのことも考えますと、断念せざるを得なかった状況がございました。
  159. 前川旦

    ○前川委員 それは大変残念だったと思います。  それから四月二十七日の朝の五時過ぎから飛行機が飛んで再び捜索に加わったけれども、行方がわからなかった。これはビーチクラフトですね。夜は飛行機を引き揚げたと書いてありますが、海上保安庁の飛行機は夜は飛べないのですか。
  160. 岡田專治

    ○岡田政府委員 もちろん私どもの飛行機も夜、海難救助等に飛んでいるわけでございますけれども、我が方のレーダーの能力は、まだその規模といいますか能力が低いわけでございまして、特に今回の船のように極めて小さい船舶を相手にしては残念ながらその活躍を余り期待できないというのが現状でございます。
  161. 前川旦

    ○前川委員 これは十九トンの船ですね。十九トンの船だったらビーチクラフトのレーダーではつかまえられないという意味ですか、難しいという意味ですか。  それと、さっき僕が言った夜飛べないのかというのはまだ答えがなかったよ。夜全部引き揚げたと書いてあるが、これは本当なんですか。海難事故というのは夜起こらないのでしょうか。そんなことはないでしょう。
  162. 岡田專治

    ○岡田政府委員 この程度の小さな船でございますと、いわゆる飛行機から見る場合には、実際にレーダーで見えるものをさらに近づいて目で見るということが必要かと思うのでございますけれども、その点において現在私ども航空機は夜の捜索についてはまだ練度が向上しておりませんで、余り出動した記録はございません。
  163. 前川旦

    ○前川委員 何か海上保安庁の持っている飛行機なんか余り能力はないような印象を今の答弁で受けまして、これはちょっと問題だなというふうに思います。  さて、その見失ったときに、P2Jは見ていたと思うのですけれども海上自衛隊のP2Jもこの船を見失ったという記事と、ちゃんと見ていたという記事と二つあるのですが、これは自衛隊の方はどうなんですか。
  164. 矢崎新二

    矢崎政府委員 海上自衛隊が行っております監視活動といいますのは、自衛隊の任務遂行に必要な調査の一環として実施をしているものでございます。それに対しまして、今回の事案は、海上保安庁が御説明になりましたような個別の事件でございますが、こういった海上におきます治安の維持ということは第一次的には海上保安庁の担当する職務ということになっておりますので、この不審船舶についてもそういった治安の維持という面からの活動は海上保安庁が実施されたわけでございます、したがって、私ども防衛庁が実施しましたのはあくまでも一般的な監視活動ということでございまして、私ども自身が治安維持のための例えば捜査みたいな活動を本件について実施する立場にはなかったことは、まず前提として御理解をいただきたいと思います。  それで、私ども、先ほど申し上げましたように四月二十六日の未明からおおむね一昼夜にわたりまして、二十七日の未明にかけて監視活動を行ったわけでございますが、新聞記事にありますように、見失ったとかいうふうないろいろな表現で書いているところもあるようでございますが、要するに、私どもとしてはそういった自衛隊の任務に伴う通常行っております監視活動、その一環として実施をしたものでございますので、通常のそういう活動の範囲でこの監視活動を打ち切ったというのが実態でございます。
  165. 前川旦

    ○前川委員 これは海上保安庁と海上自衛隊で密接に連絡をとっているはずなんですから、監視活動ということは、どこに船がいるということは、P2Jはビーチクラフトとは比べものにならない能力のある飛行機ですから、ちゃんと把握しておられたでしょう。僕はそこのところを聞いているんですよ。新聞によると、P2Jもその船を見失ったという記事と、いやP2J、自衛隊の方はちゃんと見ていたという記事と二つあるんですよ。ですから私は、最初言いましたように事実関係だけを伺っているので、別に評論をしようとしているのではないので、一体、格段に性能のいいP2Jはこの保安庁が見失った瞬間ちゃんと監視してそれを見ていたのでしょう。どうです。それが本当なんでしょう。
  166. 矢崎新二

    矢崎政府委員 先ほど申し上げましたように、二十七日の未明の時点まで監視活動をしていたわけでございまして、その間において海上保安庁には必要に応じて情報の連絡はもちろんしておるわけでございますが、その時点で当方としては監視活動を打ち切っておりますので、それ以後のことにつきましては私どもとしても特段の情報は持っていないということでございます。
  167. 前川旦

    ○前川委員 それがそういうことになると不思議なんですね。新聞にはこういうことが書いてありますよ。母船が待ち受けて油の補給をした。油の補給をするときには停船してやるかあるいはスピードを落としてやらないと、四十ノットで走って油の補給なんかできないでしょう。ですからこれは捕まえるチャンスだったと思うのですけれども、ちゃんとこういう事実が新聞に出ているけれども捕まえられなかった。それから、北へ向かって、北朝鮮へ向かった、それで最後には北朝鮮の領海に入った、こういう新聞の記事も出ているのですけれども、こういう事実をつかんでいらっしゃるのかどうか、これはどうなんです。P2Jが見てないとそういうふうに行動はつかまえられませんね。そういう事実があったのかどうか、それをつかんでおられたのかどうか、これはどうなんです。
  168. 矢崎新二

    矢崎政府委員 ただいま御指摘のような報道があったことは私ども承知いたしておりますが、先ほど申し上げました海上自衛隊のP2Jによる監視活動の結果としてそういった事実を把握しているということは全くございません。
  169. 前川旦

    ○前川委員 全くございませんということでしたけれども、これは権威のある新聞が朝刊のトップで七段抜きで出しているニュースなんですね。発行部数からいったら恐らく自由主義陣営では最高のところを行く権威のある新聞の記事なんですが、政府筋の言ったこととして「二十七日未明に中国領海近くで見失った、とされているが、同筋によるとこれは政府筋のことですが、「その高速艇の行動は、その後も、対潜哨戒機P2Jのレーダー等により、すべて監視されていた。その結果、①中国領海すれすれの海上に母船が待ち受けており、高速艇は給油を受けた②その後、高速艇は北朝鮮へ向かったが、途中、いったん南転するなどのカムフラージュ行動をとった――などがキャッチされたという。」ということです。  何も事実無根でこんなことは出るはずはないのですよね。事実そういうことがあるんであれば、事実関係ですから、国会ですから、それははっきりおっしゃったらいいと思うのです。ここのところはどうなんですか。
  170. 矢崎新二

    矢崎政府委員 私もその記事を見ましてびっくりいたしまして、調べてみましたけれども、全くそういうふうな事実はございません。それですから、その記事がいかなる根拠に基づいて作成されたものであるかにつきましては私も推測することが全く不可能な状態でございますので、御理解を賜りたいと思います。
  171. 前川旦

    ○前川委員 「政府筋は十日、これについて、「捕まえようと思えば可能だったが、政府部内での協議の結果、政治判断として見逃した」」。こういう政治判断をするときには恐らく防衛庁長官も参加されますね。政府が政府部内で協議して、北朝鮮の船と断定したけれども、南北対話に配慮して政治判断としてわざと見逃した。政府部内でそういうことを協議するんであれば当然外務大臣防衛庁長官、参加されると思いますけれども、そういう事実はあるのですか。どうなんです。
  172. 矢崎新二

    矢崎政府委員 今回の事件につきましては、先ほど申し上げましたように防衛庁としては事件の捜査をする立場にはなかったわけでございまして、そういう意味で責任をお持ちでございますのは海上保安庁でございますが、その海上保安庁の方でどういうふうに対応されたがは、私どもが聞いている限りでは、先ほど海上保安庁次長から御答弁があったように理解をいたしております。先生指摘のような御相談を防衛庁として受けたというふうな事実は全くございません。
  173. 岡田專治

    ○岡田政府委員 私どもも当該新聞の記事は存じておりますけれども海上保安庁としてそのような協議をした事実は全くございません。
  174. 前川旦

    ○前川委員 もし外交問題になるとしても、これはちゃんとつかまえた後で外交問題になるのだったら後どういう処分をするかということは考えられるのであって、追跡している途中でこんなことで政治判断が入ったりするというのはおかしいと思いますが、あなた方がそれはないとおっしゃるのであれば、それはあったじゃないかという証拠を私は何も持っておりませんので、これ以上追及できませんけれども、しかし、もしこういうことがあったんであれば、やはり国会ですから、そこのところは率直に言ってほしいと思いますし、ないと言い切られるのであればないということでこれは仕方がありません。仕方がありませんが、もう一つ。  海上保安庁、「日本近海では公海を含め毎年五、六隻の不審船が確認され、覚せい剤密輸やスパイ活動に関与しているとみられるが、海上保安庁が捕そく連行できたケースはほとんどない。」「海上保安庁の調べによると、日本の領海内では、戦後、約二十隻の不審船が発見されているが、一回を除いてすべて捕そく連行に失敗している。」これは本当に失敗しているのですか。このとおり、戦後二十回も見つけて発見してもよくつかまえられなかったのですか、どうなんです。
  175. 岡田專治

    ○岡田政府委員 残念なことでございますけれども、私どもが直接確認をいたしました不審船が今回のこれを含めまして十七隻ございますけれども、それを捕捉するに至っておりません。一隻も捕捉しておりません。
  176. 前川旦

    ○前川委員 海上自衛隊がこれをやるには八十二条を発動しなければいけませんから、平時はなかなかやれませんね。やはり保安庁の仕事ですけれども、今のお話を聞くと、何か大変頼りないなという気がしないでもないのです、せっかく一生懸命やっていらっしゃるのにこんなことを言うと悪いけれども。どこに欠陥があるのか、予算に欠陥があるのか、船の構造に欠陥があるのか、どこに欠陥があって国民の期待にこたえられないのでしょうか、その点はどう判断されます。
  177. 岡田專治

    ○岡田政府委員 まず第一に、高速性能にやはり大変な差がございます。及びこのような船は極めて長い航続力を持っておるということで、我が方は航続力のあるものはどうしても高速性能が相対的に落ちるし、速い船はまた航続力の点で劣るところがあるというような状況がまずくかみ合いまして、現実的には捕捉できてないという状況になっております。
  178. 前川旦

    ○前川委員 時間が参りましたので終わります。
  179. 森下元晴

    森下委員長 神崎武法君。
  180. 神崎武法

    ○神崎委員 初めに、対米武器技術供与の問題からお尋ねをいたします。  昨日の日経の報道によりますと、防衛庁技術研究本部開発中のミサイル追尾誘導技術を米国防総省の要請でこのたび技術供与することになった、こういうことが伝えられているのであります。ミサイル追尾誘導技術を米国に供与する意向であるというこの報道内容、これは事実でしょうか。
  181. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 ただいま御質問のミサイル追尾誘導に関する技術の対米供与でございますけれども、ただいまのところ米側からまだ何ら具体的供与要請は行われておりません。したがいまして、これが第一号ということになることが確実になったということではございません。  この対米武器技術供与の問題につきましては、昭和五十八年の一月に政府としての意見の表明を申し上げ、そして五十八年の十一月に日米間で交換公文が成立しております。  その後アメリカ側の動きといたしまして、当委員会等におきましても御報告いたしておりますように、いみいろな技術、分野について日本はどういう水準にあるのだろうか、アメリカ側から見ましてどういう分野に関心があるのだろうかという調査を、二つの種類の調査団が参っておるわけでございます。一つは、一昨年の十一月に参りまして昨年の八月に報告書が出ましたカリー調査団というものでございます。これがおおよそ汎用技術を中心にして興味がある、それから約十六分野につきましての関心があるということを報告書に盛られているものでございます。続きまして今度は国防総省の技術の専門家が参りまして、十六分野の中でもミリ波とオプトエレクトロニクスと申しますか、光電子工学に関する分野につきまして、昨年の七月とそれからことしの四月に、主として防衛庁、通産省との技術開発体制の意見を求めるために二回来ております。こういったような次第で、アメリカ側としては日本側がどのような分野の技術をどのような水準で持っているのだろうかということを今調査をしている段階でございます。  そういった調査の内容が次第に明らかになってくると思いますけれどもミサイル追尾装置のようなものもこういったオプトエレクトロニクスというような技術を活用いたしておりますので、アメリカ側の関心の一つであろうかとは思いますけれども、まだ具体的な要請はございません。
  182. 神崎武法

    ○神崎委員 防衛庁長官は昨日の記者団の質問にも、この日経の報道についてはそのとおりだということを述べたということが伝えられているのですが、いかがでしょうか。
  183. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私驚いたのですけれども、記者団に、五、六名の方に囲まれてそういう事実はないと申したのが、認めたという記事になったものですから、よっぽど日本語がまずかったのかな、こう思っておりますが、全く逆の報道になっております。
  184. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、具体的なJMTCを通じての要請はないと思うのですけれども、米側から打診というのでしょうか、そういうのはあったのでしょうか。
  185. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 具体的な武器技術の供与ということを前提とした打診はまだございません。先ほど申し上げましたように、一般的な調査段階でこのような種類のものがいろいろ研究の対象、調査の対象になっているということでございますけれども、そういう意味での打診はまだございません。
  186. 神崎武法

    ○神崎委員 ミサイル追尾誘導方式としては、よく言われるのは指令誘導方式、それからホーミング誘導方式、それからプログラム誘導方式ということが言われているわけでありますけれどもミサイルにホーミング装置を搭載して、ミサイル自身で目標を捜索、捕捉、識別、追尾し誘導計算を行う、こういうホーミング誘導方式、これについて特に米国側が我が国技術に関心を持っているという点はあるのですか。
  187. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 ただいま先生が御分類になりましたように、ミサイルの目というような一種の誘導追尾装置でございますけれども、これにつきましては、一つは電波シーカーというレーダーを用いるものがございます。それからもう一つは光学系のシーカーでございまして、一つが赤外線、二つ目がレーザー、それから三つ目がイメージシーカーと呼ばれるものでございます。こういうようなものにつきましては、私どもの産業界あるいは防衛庁におきましては比較的進んだ技術研究を行っているものでございますので、アメリカ側が各種の調査団の過程におきまして関心をかなり示しているものであることは事実でございます。
  188. 神崎武法

    ○神崎委員 ホーミング誘導方式、これは今分類された中ではイメージホーミング、イメージというところでしょうか。
  189. 筒井良三

    筒井政府委員 ホーミング方式と申しますものは、ミサイルが追尾しまして、食いついて当たっていく最後の過程を一般的に言っている言葉でございますから、それがレーダーを使ってホーミングする場合もございます。赤外線を使う場合もございます。いろいろな方式がございまして、必ずしも画像追尾ということだけではございませんが、画像追尾も有力な一つでございます。
  190. 神崎武法

    ○神崎委員 今御答弁されたように、確かに信号媒体によりまして電波波ホーミング、特にその中でもミリ波ホーミングですか、それと赤外線ホーミング、可視光線ホーミングとか紫外線ホーミング等に分類されておりますけれども、この信号処理方法によりましてイメージホーミングとノンイメージホーミング方式、こういう分類がされていると思うのですね。その場合のイメージホーミング方式というのはどういうことでしょうか。
  191. 筒井良三

    筒井政府委員 一般にイメージホーミング方式と申しますものは、例えばテレビで人間が目で見るような画像、そういったものをミサイルの目が画像としてとらえまして、それを追尾、追いかけていきまして命中する、そういったものを言っております。
  192. 神崎武法

    ○神崎委員 イメージセンサー、イメージホーミングと言うのでしょうか、今お話があったように、テレビやVTR等に使われているような可視光、CCDですか、これによるイメージセンサーというものが開発されている。そのほかに赤外線のイメージセンサーとしてIRCCDの開発が、これは三菱電機の方で開発中だ、こういうふうに聞いているのですけれども、その点いかがでしょうか。
  193. 筒井良三

    筒井政府委員 光をイメージという画像追尾の方式をとります場合、先生が今おっしゃられましたように、通常の可視光、我々が目で見ている、テレビなんか使っているものでございますけれども、そういったやり方と、それから赤外線を使うやり方というものがございます。そういった関係でIRCCDという赤外線を使いましたところの特別の目玉の装置といったようなものを技術研究本部において研究していたことは事実でございます。
  194. 神崎武法

    ○神崎委員 これはあれですか、IRCCDは防衛庁の方から三菱電機の方に研究開発の委託をしているのでしょうか。それとも三菱電機の方で独自に研究開発をしているものですか。
  195. 筒井良三

    筒井政府委員 いわゆる研究試作という分野でございまして、部内で研究者がいろいろな研究を行うときに物を会社につくってもらうわけでございますけれども、その一環としてIRCCDを三菱電機と富士通と東芝の三社におのおの独特な方式をもちまして製作をしてもらったことはございます。
  196. 神崎武法

    ○神崎委員 この可視光を利用するCCDの方はいかがですか。
  197. 筒井良三

    筒井政府委員 可視光のCCDに関しましては需要がございますものですから、民間の技術が非常に発達しておりまして、私どもはでき上がった可視光のCCDを研究等には使うことはありますが、可視光のCCDそのものの研究試作ということは特にいたしておりません。
  198. 神崎武法

    ○神崎委員 ミリ波のホーミングですね、ミリ波についてはいかがですか。
  199. 筒井良三

    筒井政府委員 ミリ波のホーミングといいますものは、世界的にも実用化の例がまだ非常に少ない段階のものでございまして、ミリ波の特性からいいまして長距離のミサイルというようなことにはなかなか難しく、現実には例えばある砲弾の中に小さな子爆弾的なものを積みまして、それを戦車の集団の上で爆発させまして、小さな弾がごく近所の戦車を追尾して当たっていく、その程度のものに開発外国でもいろいろと行われているようでございます。我が国におきましては、ミリ波の誘導に関する基礎的な勉強をただいま行っている段階でございます。
  200. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、米国側が我が国のそういうホーミングの技術の中で関心を持っているというのは、今私が申し上げたそのCCDあるいはIRCCD、ミリ波、このうちのいずれでしょうか。
  201. 筒井良三

    筒井政府委員 まだ具体的にそういったお話を承っておる段階ではないと承知しております。
  202. 神崎武法

    ○神崎委員 全くそういう話はないのでしょうか。米国側が関心を持っているという十六品目の中にも、登場するものもあれば登場しないものもありますけれども、どうでしょうか。
  203. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 国防技術審議会のカリー報告の中で十六分野が掲上されております。しかし、これはかなり広い分野での御指摘でございますので、その後、昨年でございますが、先ほどの国防総省の技術調査団、これはマッカラム調査団と称しておりますけれども、マツカラム博士を団長とするのが、ミリ波とオプトエレクトロニクスについて調査を行ったわけでございます。  その調査結果につきましてまだ公表ないしは報告されておりませんで、恐らく近くそれが日本側にも概略伝達され、あるいはアメリカにおきましても発表される手はずになるのではないかなと思います。それを見ますと、アメリカ側がどのような分野について特に関心を持っているかということがわかると思います。
  204. 神崎武法

    ○神崎委員 防衛庁技術研究本部が実用化を急いでおります携帯のSAMといいますか、肩撃ち式の小型地対空誘導弾は、CCDを使用したイメージホーミング方式を採用した携行ミサイルというふうに言われているわけであります。目標を映像としてとらえることができるために、チャフとかフレア等のおとりにだまされることなく、命中率が飛躍的にアップするものだと言われているわけでありますけれども、このSAMの特徴というものはどういうものでしょうか。
  205. 筒井良三

    筒井政府委員 私ども、個人携行型の小型の地対空、対空ミサイルでございますけれども、それの技術研究を行っております。  私どもは部内で開発研究と二つの段階に分けておりまして、開発が一応装備化を前提とした段階のものでありまして、それに至る前の技術的要素だけの勉強段階技術研究と称しております。  その技術研究段階研究試作等を行っておりますが、この種の小型の地対空ミサイル、例えばスティンガーというようなものが外国製でございますけれども、こういったもののホーミング装置、誘導装置にこの程度の画像追尾を組み込んだ例としては、我が国が初めてだろうと思っております。
  206. 神崎武法

    ○神崎委員 それから、何か信号処理用として世界で最小かつ最高速のマイクロプロセッサーを開発しているということが言われておりますけれども、そういうものですか。
  207. 筒井良三

    筒井政府委員 歩兵が肩に担げる程度の小型のミサイルの頭に画像追尾を積みましたときには、先生がおっしゃいましたように、大変小型なプロセッサー、一種のコンピューターでございますけれども、それが不可欠の条件となりますので、当然それを装備しております。
  208. 神崎武法

    ○神崎委員 このSAMに使われているCCDを用いたイメージホーミング方式のミサイル、それから世界で最小かつ最高速のマイクロプロセッサーそういったマイクロプロセッサーの開発、そういった技術、これはアメリカから見てどうなんでしょうか。
  209. 筒井良三

    筒井政府委員 小型ミサイルとして、それなりに立派な技術と評価を受けておると思います。
  210. 神崎武法

    ○神崎委員 そのSAMの技術について、米国の方から技術供与の要請なりそういう打診というのはあるのですか、ないのでしょうか。
  211. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 先ほど来御答弁申し上げておりますように、この分野も含めましてまだアメリカ側から対米技術供与の要請あるいは打診というものはございません。
  212. 神崎武法

    ○神崎委員 SAMで使われているような技術ですね、このイメージホーミング方式の技術というもの、これは現在アメリカで進めているSDI技術との関連で、その応用が一体可能なのかどうか、その点はいかがでしょうか。
  213. 筒井良三

    筒井政府委員 SDIは、私ども承知しまする範囲におきましては、大変な、非常に広範囲なハイテクを駆使したシステムになるものだろうと思っております。したがいまして、技術常識的に言えば、先生のおっしゃったような技術もその一部にあり得る可能性はございますけれども、具体的に細かく、どういう計画ということはまだ私ども承知しておりません。
  214. 神崎武法

    ○神崎委員 例えば、アメリカの研究技術担当国防次官のデラワーという人が、弾道ミサイル防御のためには次の分野での先端技術が必要であるということを挙げているわけでありますけれども、その中に、一つは捜索、探知、追尾という、そういう技術というものを挙げているわけであります。発射されたミサイルと、それから分離されました弾頭あるいはおとりを識別し追跡するシステム、そういうシステム開発する分野で、このイメージホーミングですか、この技術というものは大変役に立つのじゃないか、このように思うのですが、いかがでしょうか。
  215. 筒井良三

    筒井政府委員 一般的に誘導武器等は捜索、探知、発見、追尾、識別とか、そういったいろんなプロセスがございます。これは大切な技術でございますけれども、SDIという非常に広範囲なウエポン体系におきましては、それがもっともっと幅広い、しかも深い高度のテクノロジーを必要とするものと考えております。当然在来のテクノロジーもその一つに入る可能性はあるかと思います。
  216. 神崎武法

    ○神崎委員 現にまだ実験段階であるようでありますけれど、アメリカ側の研究中のものにHOE、ホーミング・オーバーレイ・エクスペリメントというものがあるようであります。これはミニットマンの一段と二段を使って、最終段階が宇宙空間に対して弾道ミサイルが持っている温度、その赤外線をつかまえてホーミングしていく、そういう装置を持ったミサイルでありますけれども、この実験が非核でミニットマンを要撃して成功した、こういうことも言われておりますけれども、その点はいかがでしょうか。
  217. 筒井良三

    筒井政府委員 米国は種々のこの種の実験を行っておりますけれども、そのうちの一つの実験としておりまして、HOE、ホーミング・オーバーレイ・エクスペリメントということを米陸軍が行っておりまして、これは大陸間弾道弾が入ってくる最終段階の、最後の空気層にもう一回再突入するそのちょっと上のあたりで、ミサイルのようなもので直接に当ててそれを破壊するという、いわゆる運動エネルギーウエポンのたぐいでございますけれども、それの実験に昨年初めて成功したということを聞いております。
  218. 神崎武法

    ○神崎委員 また、新聞報道によりますと、四月の二十三・二十四日に米国のSDI研究計画専門家チームが来日して、関係省庁にいろいろ説明をしたということでありますが、その中でもSDIに必要な技術分野として相手のミサイルの探知、おとりの識別という項目も説明がなされたということが報道されているんですが、その点はいかがでしょうか。
  219. 筒井良三

    筒井政府委員 米国防省チームのSDIに関するテクニカルのブリーフィングは非常にまとまったブリーフィングでございまして、その中に確かに先生のおっしゃったような方式の説明もございました。
  220. 神崎武法

    ○神崎委員 防衛庁は、今まで具体的な要請はなかった、こういうふうにおっしゃるわけでありますけれども、どうも世界に誇り得るようなSAMの技術、このイメージホーミングの技術、これがありながら、しかもSDIに利用が十分可能である、そういった技術が目の前にありながら、それについて打診もしない、要請もしてこないというのは、何となく本当にそうなのかなというような、納得がいかないのでありますが、改めていかがでしょうか。
  221. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、日米間で交換公文が締結されましたのは昭和五十八年の十一月八日でございました。その後アメリカといたしましてかなり日本技術水準はどのくらいであろうか、どういうような特色のある技術分野を持っているのであろうか、それがアメリカの国防上の技術としてどうミートするのだろうかということを地道に調査をいたして今日に至っているわけでございます。そういう意味で、アメリカ側が何もしなかった、あるいはせっかちに何かするということではなくて、かなり地道にステップ・バイ・ステップでアメリカの問題意識のプロセスを今なぞっているところだと思います。そういう段階でございますので、我が国にかなりアメリカが欲しいというものがあるからすぐ手を出すということではなくて、調査をしてそして慎重に対処しているのが現状ではないかと思っております。
  222. 神崎武法

    ○神崎委員 これは今月の二十七、二十八日でしょうか、第七回の日米装備技術定期協議というのが東京で行われるということが言われておりますけれども、その中でこういう武器技術供与の問題についても突っ込んだ話し合いがなされるということがありますでしょうか。
  223. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 ただいま先生指摘の日米間の装備技術定期協議、これは昭和五十五年度から第一回が始まりまして、昨年八月ワシントンにおきまして第六回が行われたわけでございます。大体年に二回装備技術関係の問題を自由に討議をしようというディスカッションの場でございまして、何かを取り決めるというようなものではございません。ちょうど来週予定をいたしておりますけれども、アメリカの国防総省の担当者が来日をいたしまして東京でディスカッションが行われる予定でございます。  まだ議題等詰まっておりませんけれども、従来のことを考えますと、日米間で防衛装備関係技術協力はどういうふうにあるかというケーススタディーをやっておるようなものの報告、あるいは先ほど申し上げましたようなカリー報告あるいはマッカラム報告は大体こういうふうにまとまりつつありますから概略御説明いたしましょうというようなこと、あるいはライセンス生産をやっております技術がございます、アメリカ側からの方の技術日本へ流れてくるライセンス生産のそのリリース、どの分野についてのリリースを欲しいということを日本側がアメリカに言う場であるとか、あるいはFMSで買っている装備の供給を円滑にしてもらいたい、この辺がちょっと滞っているからひとつこの辺をよろしくお願いしますというふうな意見の交換が行われるのではないかと今予想をいたしております。
  224. 神崎武法

    ○神崎委員 一般論としてお伺いいたすのでありますけれども、武器技術供与の問題についてはJMTC、武器技術共同委員会、これを経るという、またその過程で外交経路を経るということが交換公文上明らかに定められているわけであります。それとただいまのような防衛庁とそれから国防総省との間で装備技術の定期協議というものが行われておる。その二つの関係ですね、これが一体どうなるのか。というのは、具体的な武器技術の問題が生じたとき、供与の問題、米国側が供与してもらいたいというものが生じた場合に、それはこの装備技術定期協議の席では論議しないんだ、あくまでも外交経路でやってくれというのか、あるいはこれは現場サイド同士で協議して、そしてあとは外交経路できちんとやってこさせるというのか、その点の手続関係はどうなりましょうか。
  225. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 片方の装備技術定期協議はディスカッションの場でございまして、昭和五十五年、つまり対米武器技術供与の交換公文が締結される以前から存在しているものでございます。その場面では自由討議でございますからいろいろなものが討議されるわけでございますので、場合によれば武器技術供与というものもまた問題として登場するかもわかりません。しかし、それが具体的な提案として登場するのは、もう片っ方のJMTCでございます。JMTCは、日本側は外務省、通産省、防衛庁の三省庁より成っておりまして、アメリカ側が在日米大使館の公使とMDAO所長でございます。そしてこの第一回が昨年の十一月六日に行われまして、以後開かれておりませんけれども、もしも対米技術供与という課題が出てまいりまして、アメリカ側が提案をする場合はこのJMTCという場を通じ、また、先生指摘のような外交経路を通じて申し込んでくるものでございます。片っ方はそういう意味でいろいろ決定をしていく場であり、また政府として関係省庁が参加いたしております。  片方の防衛装備定期協議は、私、ことで恐縮ですが、日本側が装備局長、私、そしてアメリカの国防総省側がリンドストローム国際協力技術担当の次官代理ということで、フリーディスカッションということを行っている場でございます。
  226. 神崎武法

    ○神崎委員 特に交換公文の中で、JMTCとは別に、供与についてのアメリカ側の「要請に関する関連情報」というのは、JMTCの会合に先立って、「外交上の経路を通じて日本国側委員部に伝達される。」ということが明記されているわけですね。その意味なんですけれども、それは一体、その日米のいわゆる防衛庁とそれから国防総省とのそういう現場サイドでの協議の場面でやりとりがなされて、手続だけをそういう外交経路でやってくれればけいというものとはちょっと違うと思うのですね。この点の意味、どうでしょうか、
  227. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 まさに先生指摘のように、交換公文には、JMTCという場面でみんなが集まって行う前に外交経路を通じまして、アメリカ側の要請というものが出てくることになっております。それは、私が先ほど申しました、私とリンドストローム国防総省次官代理との間の定例的な装備技術定期協議とは別の外交チャンネルを通じたものでございます。交換公文に基づくものでございます。
  228. 神崎武法

    ○神崎委員 要するに、本来は我が国は武器禁輸三原則を持っているわけです。ただ、特にアメリカとの間柄、関係で、これに例外を設けた。それがこの交換公文になっているわけですね。そうである以上、あくまでもこの武器技術供与に関する話し合い、その打診も含めて、これはこの交換公文に従って我が国になされなきゃおかしいんじゃないでしょうか。この点、外務省いかがですか。
  229. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 アメリカに対します武器技術の供与の手続につきましては、先ほど来、先生指摘のとおりでございます。交換公文上、JMTCは、この交換公文で行っております了解の実施に関して相互間の協議を必要とするすべての事項についての協議機関という位置づけを与えられておりますし、それからまた、実際にその武器技術の供与についてアメリカ政府から要請がある場合、それに関する関連情報は、外交経路を通じてJMTCに来るということになっておりますので、そういう意味では、対米武器技術供与につきましては、やはりJMTC、それからそれに関します外交経路を通じての手続が公式な、中心的なものになるかと考えております。
  230. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、公式でない、非公式の打診、これは現場サイドでどんどんやって構わないということですか。要するに、非公式、公式も含めて、ともかく武器技術供与の問題については、まず外交上の経路を通じて日本国側委員部に伝達されるんだ、それが出発なんじゃないですか。どうでしょうか。
  231. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 五十八年十一月に締結されました武器技術供与に関する交換公文、これに基づきます手続はまさに外交経路を通じましてまず始まるということでございます。ただ、どうやってこの武器技術あるいは防衛技術というものの協力、あるいは情報交換というものが、一切全部その武器技術供与に結びついたものだけが初めてそこで登場するというものではございません。日米間には常日ごろ装備技術ライセンス生産を通ずる協議もございます、あるいは装備を買うということもございます。一般的に技術関係装備関係を中心にいたしまして意見交換を行っていくということが安定した日米関係の持続というものにとって非常に重要なことでございますので、装備技術定期協議というものが年に二回開かれるということは、そういう一つの場として重要なものだと考えておるわけでございます。
  232. 神崎武法

    ○神崎委員 実際、防衛庁と国防総省の間で現場サイドで決まっちゃって、どの技術についてでは供与しましょう、ではあとは外交経路でやってくださいと、追認する形でこのJMTCというものが動くということになると、この交換公文の意味が全くこれは用をなさない、このように思うわけです。その点、いかがですか。
  233. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 そういうことはないと思います。まさにこの交換公文あるいはこの対米武器技術供与というものが行われるようになった背景というものを私ども十分踏まえているつもりでございます。交換公文の中におきましても、そのディスカッションの結果、日本側の委員会でその供与が適切であるかどうかということを日本側が自主的に決めることになってございます。また、相互援助協定等々におきますいろいろな条件というものがこの交換公文にも書いてございますけれども、そういうものを踏まえて日本側が決定する、外務省、通産省、防衛庁の三省庁から成る日本側の委員部というものがこれを決定していくということでございます。
  234. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、来月防衛庁長官は訪米をされるそうでございますけれども、そのときのお土産に武器技術供与の問題を持っていくというようなことは当然ないわけですね。
  235. 加藤紘一

    加藤国務大臣 その後、これからいろいろ会議がありまして、向こう側の代表が来たり、いろいろ話があると思いますが、そこでどういう話になるのか、私もちょっとまだわかりません。お土産に持っていくというような筋合いのものではないんじゃないだろうか、こう思います。
  236. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、要するに、これは防衛庁長官としてはきちんと外交経路に乗せて、そして向こうから正式の要請があった時点でそれについて我が国として対応するということでよろしいですか。
  237. 加藤紘一

    加藤国務大臣 それぞれの原則がありまして、そして技術供与に関するそれぞれの、双方のそれなりの委員会とか仕組みがもうできておるわけですから、そこでその仕組みに従って処理をしていくべきことではないかと思います。
  238. 神崎武法

    ○神崎委員 ちょっとわかったようなわからないようなことですけれども、要するに、ではこの交換公文の仕組みに従って処理される、こういうふうに受け取りたいと思いますけれども、よろしいですね。
  239. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 ただいま防衛庁長官がお答えしたとおりでございまして、武器技術供与につきましてはこの交換公文に基づきまして行われるものでございます。
  240. 神崎武法

    ○神崎委員 それから、先ほどお尋ねをいたしたイメージホーミングのように、場合によってはSDIに使用可能のような技術というものもあるわけですね。ところが、これについてアメリカ側はSDIには使わない、要するに通常の兵器に使用したいので供与してもらいたいという形で供与の要請があった場合、我が国としてはどういうふうに対応なさるのか、いわゆるSDIと切り離して、それは通常の兵器だということで対応されるのか、いわゆるSDIに転用が可能であれば、これはSDI絡みだという理解の上に立って判断をされるのか、その点はいかがですか。
  241. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 SDIに関しましては、政治的、技術的その他の関係を先般アメリカの専門家から関係各省承ったところでございますし、また、このSDI絡みであるとかないとか、その辺のところは仮定の問題でございまして、まだアメリカ側からはそれらしきものが何も出てきておりませんので、将来そういった具体的な要請というものがある場合には、先ほど来の対米武器技術供与の枠組みの中で、具体的事例に即しまして政府として自主的に判断し、慎重に決定していく、こういうことになろうかと思います。
  242. 神崎武法

    ○神崎委員 将来の問題であるとおっしゃるわけでありますけれども、その将来の問題として、基本的にSDIとSDIではない通常兵器、そこはどういう区別で防衛庁としても考えておられるわけですか。
  243. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 まだSDIに関しましては、これから政府部内でも慎重に検討を続けていく課題となっております。また、具体的にどのようなものが通常兵器に使われるものなのか、SDIにもまた可能なものなのか、あるいはそのボーダーラインなのか、その辺の具体的なイメージというものがまだ出てきておりません。先ほど申し上げましたような具体的事例に即しまして、政府として自主的に判断し、慎重に対処したい、こう考えております。
  244. 神崎武法

    ○神崎委員 よくわかりませんけれども、それは具体的な問題が出てきたときにまたお尋ねするといたしまして、交換公文を読んでよくわからないのは、アメリカに我が国が武器技術の供与をする場合、有償で供与することを考えているのか、無償で供与することを考えているのか、その点がはっきりしていないわけでありますけれども、民間技術の場合には当然有償ということが前提になろうかと思うわけでありますが、防衛庁開発した技術については、これは基本的にどういうふうに考えたらいいのでしょうか。
  245. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 五十八年十一月の交換公文の中にも書いてございますけれども、現実に具体的な要請があり、そして現実に対米武器技術供与ということがなされる段階になりますと、それと並行的に、あるいは多少の準備もあろうかと思いますけれども、実施細目取り決め、メモランダム・オブ・アンダースタンディンク、MOUと言っておりますけれども、その辺のアメリカと日本側の相談というのが出てまいるわけでございます。そういった中で、今の先生指摘のような問題も議論されてまいります。私どもといたしましては、まだアメリカ側とその辺を詰めておりませんけれども、当然に無償であるということはない、むしろかかった費用はいただきたいというのが今のところの私どもの気持ちでございます。
  246. 神崎武法

    ○神崎委員 それから、同じく交換公文の中身でひとつお伺いいたしたいのですけれども、交換公文の中で、「いずれの一方の政府も、他方の政府の事前の同意を得ないでその援助を他の目的のため転用してはならない。」というのが、これは4の(b)であるわけですが、この意味ですけれども、例えば先ほど私がお尋ねをした通常兵器として武器技術供与の要請があった。そして、そういう形で供与した、これがSDIに転用されるということであれば、これは事前の同意がなければそういうことはできない、こういう趣旨だというふうに理解してよろしいでしょうか。
  247. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 先生今御指摘の交換公文にございます規定は、この交換公文のもとになっております日米間の相互防衛援助協定に規定しておりますところを、ここでまた確認しておるという趣旨の規定と考えております。  それで、これがどういう意味を持つかということにつきましては、先ほど来防衛庁からも御答弁ございますように、まだアメリカから具体的な要請も出てきておりませんので、仮定の議論ということになってしまいますものでございますから、むしろそれをいろいろここで申し上げるのは適当でないのではないかというふうに考えます。
  248. 神崎武法

    ○神崎委員 今私がお尋ねしておるのは、交換公文の解釈上はそういう場合は事前の同意を得る場合に当たるのかどうかという点ですけれども、どうですか。
  249. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 交換公文の解釈の問題といたしましても、恐らく現段階では一般的にここに書いてあることがあるという段階でございまして、具体的な要請が出てまいりました場合に、その要請のあり方その他を踏まえて、具体的にそれがどういう適用を受けるかということを検討するということになるかと存じます。
  250. 神崎武法

    ○神崎委員 その場合の解釈のメルクマールと申しましょうか、基本的な考え方ですね。それは双方議論しているのですか。日米双方で議論はされておるのですか。
  251. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 ちょっと御質問の趣旨が私はっきり理解いたさなかったかもしれませんが、交換公文をつくります段階で、あの中にほかに、国連憲章の目的に従うとか、幾つかの規定がございますけれども、それぞれについてそれを再確認するという意味で、もちろんアメリカ側と話はいたしております。ただ、さらに具体的な適用の問題になりますと、これは具体的なケースが出てきたときにまたアメリカと話をするということになろうかと考えます。
  252. 神崎武法

    ○神崎委員 時間がありませんが、ちょっと別の問題で。  四月二十三、二十四日に専門家チームが来日して、SDIの関係関係省庁説明をなされているわけであります。その中で、新聞報道によりますと、エックス線レーザー兵器についても公式に、これは核爆発を応用した方法研究していることを認めだということが言われておりますが、それはそういう説明があったのでしょうか。
  253. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 四月にアメリカから参りましたブリーフィングチームのブリーフィングを受けます際に、私ども一応取りまとめのようなことをさせていただきましたので、そういう意味で最初にちょっとお答え申し上げますと、先生指摘のこの技術につきましてはアメリカ側から説明がございました。アメリカ側の説明は、まずSDIというものを全体として考えました場合に、これが非核であって、防御的手段で、究極的に核兵器をなくしていくという目的を持ったものだということを、全体についてはそういう性格を強調いたしました中で、核を動力源にする指向性エネルギー兵器というものをソ連が非常に関心を持っており研究を行っていると見られるので、アメリカとしても一応その可能性について研究している、ただこれはSDIというものを全体としてとらえました場合には、その中の非常に小さい部分であるという説明を受けております。
  254. 神崎武法

    ○神崎委員 その場合に、エックス線レーザー兵器については核兵器であるという位置づけをされていたのか、あるいはあくまでも全体として非核兵器だと言われる、その非核兵器だという位置づけをされていたのか、その点はどうでしょうか。
  255. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 説明は、先ほど申し上げましたように核をエネルギー源とする――ほかには例えば化学反応をエネルギー源とするとか、電気的なものをエネルギー源とするとか、そういうものがレーザー兵器にはあるようでございますけれども、そういう意味で核をエネルギー源とするものであるという説明はございましたが、それが核兵器であるとかないとかいう議論は特にございません。
  256. 神崎武法

    ○神崎委員 五月十五日付のニューヨーク・タイムズ紙によりますと、本年三月二十三日にアメリカのローレンス・リバモア国立研究所では、ネバダ州の地下核実験場で核爆発を利用したエックス線レーザー発生装置の実験を行ってほぼ期待どおりの成果を得た、そして、この装置については、アーサー王の剣にちなんでスーパーエクスキャリバーと名づけられた、こういう報道がなされているわけであります。  その直後にSDI専門家が来日しているわけでありますけれども、エックス線レーザー兵器、これがほぼ成功した、そういうような話はこの席上は出ているのでしょうか。
  257. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 私ども説明を受けました限りにおきましては、先ほど申し上げましたような理由でアメリカとしても研究を行っているという、比較的簡単な説明がございました。
  258. 神崎武法

    ○神崎委員 説明がないということでありますけれども、それからもう一つ、一九八五年度国防総省研究開発及び取得プログラム、リサーチ・デベロプメント・アンド・アクイジションというのですか、これはデラワー研究技術担当国防次官が昨年議会に提出した報告書でありますけれども、それによりますと、一九八五年度の主要開発項目、これがAからB、C、D、E、F、G、Hまでずっと分類されているわけであります。Aが戦略計画、Bが戦術計画、CがC3I、Dが化学戦抑止計面、Eが核兵器計画、Fが科学及び技術計画、Gが試験及び評価、Hが国際計画、こういうふうに分類されているわけでありますけれども、このEの核兵器計画の中で、Eの課題として「核励起指向性エネルギー技術の可能性と適合性の評価」が挙げられているわけであります。そしてその中の主要研究開発項目の長期的計画として、「核励起の指向性エネルギー兵器等」、こういうふうに明確に表示されているわけであります。  そういたしますと、これはアメリカの国防総省においても、明確にこのエックス線レーザーについては核兵器である、核兵器計画として位置づけられている、こういうふうに思うわけでありますけれども我が国の方からその点について指摘して、特に米国側の考え方、いわゆるエックス線レーザー兵器が一体核なのか非核兵器なのか、その点どうなんだ、こういう角度から確認をされているかどうか。
  259. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 先般のブリーフィングチームとの関係で申しますと、先ほど申し上げたような説明がございまして、それから私どもの方からもそれについて若干の質問等はいたしております。ただ、先ほど申し上げましたように、核兵器であるかないかという議論はいたしておりません。
  260. 神崎武法

    ○神崎委員 私はそこが納得いかないのですね。もともと国会で一番論議になったのは、このSDIが核兵器なのか非核兵器なのか、その点、我が国の非核三原則との関係でどうなのか、そこが対象になったわけですね。その一番大きな問題について、アメリカ側のその議会報告書の中で、核兵器計画の中にエックス線レーザーが位置されている、そういう記述があって、しかもその点について一体どうなのか、そこらに私は納得がいかないのですが、いかがでしょうか。
  261. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 今の御質問に対しましては、先ほど申し上げましたように、先方の説明それから私どもの若干の質問を通じて、それがどういうものであるかということについては先方の説明を受けたわけでございます。ただ、これは技術的な専門家を中心にしたチームでございましたこともありまして、それから、何せ二日間でSDIの全体についてまず第一回のブリーフを受けるという機会でもございましたので、そういうものとして私どもとしては理解をしたというところになっております。
  262. 神崎武法

    ○神崎委員 この点についてまだ検討されてないようでありますから、外務省の方で十分検討していただきたいと思います。  それから、時間がありませんので簡単に伺いますけれども、この説明会議に外務省と防衛庁のほかに通産省それから科学技術庁も出席されているようでありますけれども、通産省はどういうお立場でこの説明の席上に出席されたのか、あるいは通産省が特にその席上で関心を持って質問されたことなど簡単に御説明いただきたい。
  263. 伊佐山建志

    ○伊佐山説明員 いわゆる武器に関係することは私どもの所掌の一環でございますので、武器の状況についてはこれまでもアメリカを中心として関心を持って情報収集に当たってきたところでございます。で、四月に米国からのブリーフィングチームが来られたときも、やはりそういう一環で参加し、かつ政府として方針を決定することになるということもございますものですから、その検討に資するためにも我々なりによく話を聞いておこうということで参加した次第でございます。
  264. 神崎武法

    ○神崎委員 どういう点について関心を持って質問されたのか。
  265. 伊佐山建志

    ○伊佐山説明員 アメリカ側のチームのお話を聞いたということだけでございます。
  266. 神崎武法

    ○神崎委員 それから科学技術庁も出席されておるわけでありますけれども、本来ならば科学技術庁というのは科学技術の平和利用に徹しなきゃいかぬお立場なわけでありますけれども、SDIを推進しているその説明会にどういうお立場で出席になって、どういう御質問をされたのか。
  267. 須田忠義

    ○須田説明員 科学技術庁は科学技術に関する基本的な政策を所管する官庁でございまして、我が国の今後の科学技術政策を企画、立案、推進していく上でSDIの動向というものを十分把握しておくことが非常に重要だという観点から参加いたしました。特に特定の分野に関心を有したということではございません。
  268. 神崎武法

    ○神崎委員 私が先ほど申し上げましたアメリカの一九八五年度の国防総省研究開発及び取得プログラムを見ましても、一九八五年度計画では核兵器計画を独立させまして、エネルギー省と緊密に協力して、長期計画でこの「核励起の指向性エネルギー兵器等」の研究開発を強力に推進しよう、こういう姿勢がうかがわれるわけでございます。我が国科学技術庁がSDIといった軍事技術につきまして緊密に協力するようなことはあってはなりませんし、そういうことはないだろうと思いますけれども、その点は十二分に御留意をいただきたいと思います。よろしいでしょうか。――以上で終わります。
  269. 森下元晴

  270. 安倍基雄

    安倍(基)委員 私は民社党の安倍でございますが、私はこの委員会に所属しているわけではないので比較的防衛に関する素人でございますが、しかし、以前から安全保障の問題についてはどうやったらいいのかなということで非常に深い関心を持っているわけでございます。民社党も防衛問題については非常に関心が深い。私はその面にも共鳴して民社党に入ったというようなわけでございます。  現在、国会でGNPの一%問題が非常に議論されておりますけれども一つの問題がある。それは、確かに一%を突破するかしないかということは大きな問題だけれども、本当に日本防衛のためには何をすべきかということがまず先に問われねばならないということが大原則かと思います。しかしまた逆に、野党の立場からいったときに、一%を突破した後本当に日本防衛のためにあとどのくらいの軍備をしたらいいんだろうという本当のめどがどうもはっきりしないような気がするのでございます。戦前は、御承知のようにどのくらい軍艦を持てばいいんだ、あるいは航空機を持てばいいのだ。御承知のようにワシントン条約、ロンドン条約で英米対日本はどのくらいと。その後一応軍令部が、これでは足らぬ、これでは日本防衛できぬということでいわゆる統帥権の問題が出てきまして、これが五・一五とか二・二六という方へ関連したということは御承知のとおりでございますけれども、少なくともそのころは、どのくらいの軍備を持てばいいのだというめどがある程度あった。これなら勝てる、負けるという問題が一つありました。  それからもう一つは、第二次大戦というのは総力戦ということが初めてわかった。国内もばんばんやられるというようなことがわかった。それまでは勝つか負けるかということが中心であったわけでございます。この点を考えますと、確かにGNP一%を突破した場合に、何%までいけば日本防衛できるのかという基本問題がどうもはっきりしていない。そのために防衛庁の方も胸を張ってこのくらい欲しいということを言えない。また逆に、言ってみても到底許されるわけがないというような気持ちが根底にあるかと思います。大蔵省に抑えられでしまうというような話もあるわけでございましょう。しかし問題は、本当に野党が一%を問題にするということは、ちょっとおかしな面もありますけれども、逆に一%を超えたらどこまでいいかということについても与党の方でも確信がないのではないか。そうすると、日本防衛問題は一体どうなるのだ。本当に防衛庁は、ここまでやれば日本が守れるという基本的ないわば考えがあるのかどうか、研究なされているのかどうかということがいささか疑問に私ども感じるわけでございます。一口で抑止力と言えば簡単でございますけれども、本当に抑止力が効くのかどうか。どの辺まで日本が軍備をやれば抑止力に貢献するのかというような話でございまして、第一に私がお聞きしたいのは、GNP一%を突破したときに、実質的にどの辺の線を考えているのか。非常に素人的な問いでございまして、難しい問題でございますけれども、その点をちょっとお聞きしたいということが第一点でございます。
  271. 加藤紘一

    加藤国務大臣 我が国防衛のあり方及び防衛力整備のあり方をいかにすべきかということは、ある意味では戦後四十年国民全員が議論してきたところではないかと思います。そういう中で私たち防衛庁が考えておりますのは、基本的な防衛政策としては、新憲法に基づき、また私たちが準拠いたしております国防の基本方針に基づき、そして専守防衛、それから軍事大国にならないような配慮をしつつという幾つかの基本原則があるわけですけれども、では具体的にどういうものが防衛力整備としての一つのメルクマールになるかといった場合にあるのが、私たちは「防衛計画大綱」及びその別表に示される水準であろうと思っております。あの「防衛計画大綱」というのは、三次防、四次防といって防衛力整備をし続けてきて、そしてこの先どこまで防衛力が行くのであろうか、それから諸外国とのバランスから考えてどの程度の脅威に対する対応を考えるべきなのか、そういった多くの議論を踏まえて、いろいろな議論を踏まえて出てきたのが「防衛計画大綱」及びその水準ではないかなと思っております。したがって私たちは、いろいろ御議論あろうと思いますけれども、「防衛計画大綱」の水準達成することということを一つめどに、基準に今考えてまいりたい。そして「防衛計画大綱」及びその別表の中にあります、例えば航空自衛隊航空機だと四百三十機なんですけれども、そういうことでいいのであろうか。多過ぎるのか少な過ぎるのか。いずれにいたしましても、これをたたき台にいたして多くの議論が、実質的に防衛力整備の具体的な内容等について御議論いただくならば、より防衛論議というものは具体的な議論の深まったものになるのでないだろうかな、そんなふうに考えております。
  272. 安倍基雄

    安倍(基)委員 いろいろ検討の末、今のあれができているかと思いますけれども、よく、例えば戦争が始まれば一週間もつかもたぬかというようなことをいろいろ議論されるわけでございます。でも、一週間もったその結果どうなるのだ。最終的には結局どうも抑止力、たたきに来たら、要するにこちらがハリネズミのようだから、向こうは手を出すまいというようなことで、最後はどうもお茶を濁すといった言い方は悪いけれども、そういった話になってしまう。ですから本当に、今の防衛力の大綱で、ちょっと細かい話になりますけれども、今の状況で何日間くらい防衛できるのですか。
  273. 加藤紘一

    加藤国務大臣 それにつきましては、具体的な侵攻、相手側の侵攻の体制というものがどういった形で来るのか、どの程度の規模になるのか、どういう状況で来るのかによりますので、一概に何日もつというようなことは、論理的になかなか計算はできないのでないだろうかなと思います。
  274. 安倍基雄

    安倍(基)委員 いささか意地悪い質問であったわけでございますけれども、その次に、こういったことは米ソの軍事バランスが現在どうだ、現在だけじゃなくて、将来どうなるのだ、それに対して日本がどの程度持っているべきなんだろう。こういった米ソの軍事バランスがどれだけ、どの程度我が国防衛力整備参考にされているのか。今の大綱ができているかと思いますけれども、その辺の状況をお聞かせ願いたいと思います。
  275. 加藤紘一

    加藤国務大臣 ソ連の方は一九六〇年代以降一九七〇年代のいわゆるデタントの期におきましても、その期に米国が防衛努力を抑制している間においても、一貫して核及び通常戦力全般にわたる軍事力の増強を行ってきたと思っております。他方、レーガン政権は、このような傾向を放置すれば、米ソ間のバランスが非常にまずい形で崩れてしまうという懸念から、核及び通常戦力の近代化、そして抑止力の再構築に努めておることは、委員も御認識いただいているところではないだろうかな、こう思っております。  したがいまして、これが今後例えば五年とかそこいらの年数でどんな方向になるだろうかなということでございますが、それぞれの動きはございますし、また米ソの間でジュネーブで行われております軍縮についての動きもまた別の方向、逆方向であるわけですけれども、全般的に見ましてここ五、六年というような期の間に、現在のバランスというものが大きな方向で崩れていくというようなことにはならないのではないだろうか、そのように米国も努力するのではないだろうかな、こう思っております。  私たちとしては、そういう状況の中で限定、小規模のものに対処できる自衛力の整備をみずからの手でやると同時に、日米安保条約に基づきます抑止力というものを大切に考えていきたい、こう思っておりまして、そういった形の私たちの防衛力整備も、結果としては東西両陣営のバランスについて自由主義諸国にとっていい効果をもたらすもの、貢献するものだ、こんなふうに思っております。
  276. 安倍基雄

    安倍(基)委員 これが防衛力整備のいろいろ基礎のデータとなっておりますけれども、さっきのお話でちょっと私がまだ十分納得しないのは、一%突破したときに、ではどの辺に歯どめを持ってくるのか、歯どめがあるのかないのか。私は何も一%にこだわれということではもちろんないのですけれども、結局、我が党が非常に心配しているのは、突破してみたところで、今の大綱に基づけばそれで――大綱というのは一遍できてしまいますと、何かこれを持っていれば大丈夫だというような気になりかねないわけでございます。私は本当にそれがあれば大丈夫かというのはちょっと疑問だと思うのですよ。そうすると、どの辺まで防衛力を強化していけばいいのだろうという歯どめ的なものというか、いわばメルクマールをどこに置くのか。今の練りに練った大綱だからそれでいいんだとおっしゃるけれども、やはり国の生死にかかわる問題なわけでございますから、一%問題を論議したときに、これをいい方に転換するのにはぎりぎりの線我々は一体どの辺まで持たなくてはいかぬということをもう一遍論議する必要があるような気がするのでございますが、その点についてのお考えをお聞きしたいと思います。
  277. 加藤紘一

    加藤国務大臣 現在の「防衛計画大綱」に基づきます防衛力の整備が今後五十年でも百年でもそれでいいのかとか、それから今のは多過ぎるから将来にわたってはもうちょっと削減すべきではなかろうかとか、いろいろな御議論が私たちのところにも入ってまいります。これについては私たちも真剣に考えなければならないと思いますが、現在私たちはこの防衛力の整備の仕方、「防衛計画大綱」に従うということが節度のある防衛力についての我が国方針を示しますし、どこまで防衛力の整備が進むかという国民の疑問にも答える形になっておりますので、この大綱達成ということを考えてやっていくということが一番コンセンサスのもとになるのでないだろうかなと思っております。  一方、一%の問題があるわけですが、これを超えたら即あしたにでも軍事大国になるのではないかという御議論もありますけれども、私たちはそうは思っておりません。私たちの国は戦後軍事大国にならないで来ておりますけれども、これは単に一%問題だけでなく、いろいろな防衛基本政策をしっかり守っておるからこそ現在のような軍事大国にならない日本防衛力整備になっているのだと思います。  仮に将来一%を超えるようなときになったらどうするか、どういう新しい歯どめを考えるべきなのか、それで何%くらいまでがいいのかという御質問でございますが、これにつきましては私たち、現在GNPの将来の動向も明確ではございませんし、また防衛費に大きく影響いたします人勧の動向、またこれに対する政府の処理の方針も明確でございませんので、今申し上げるのは不適当であろうと思います。いずれにいたしましても、仮に万が一そういう事態になりましたら、従来の国会の御議論等を踏まえながら真剣に皆さんとともに御意見を聞き、討議していくべき問題であろうと思っております。
  278. 安倍基雄

    安倍(基)委員 私は一%を突破してはいかぬと言ってもおりませんし、二%、三%をめどにしろとも言っているわけではないんで、これを機会に本当にどのくらいまでやったら日本としては必要最小限なんだということを、もう既にできている、これで大丈夫だとおっしゃるかもしれませんけれども、一%問題がこれだけ問題になっているときに、防衛論からいって何が必要なんだ、どこまでが必要なんだ、なかなか戦前のように自分の力でやれるわけはない、それと同じ軍備を持とうと思ったって持てるわけはないんで、その込もう一遍私は防衛計画をよく検討すべきじゃないかというふうに非常に素人考えでございますが、考えておるわけでございます。  それともう一つ、ちょうどオイルショックのときに日本があわてふためいたということはよく御存じで、どうにか最近はエネルギーの備蓄、石油の備蓄なども行われ、エネルギー源のいわゆる転換も行われつつある。簡単に申しますると、日本は戦後安全ということについて非常に無関心であった。でございますので、現在一番大事なことは何日もつかもたぬか。抑止力ということもさることながら、いざというときに食糧なんかもある程度持っている、エネルギーも備蓄がある、ずたずたになってもある程度の生活はやっていけるという、いわば総合的な意味の安全ということにむしろ着目すべきじゃないか。第二次大戦までは敵をやっつけさえすればいいということだったようでございますけれども、その後はいかに被害を最小にとめるか。国内における被害、勝つ負ける以外の要素が随分あるのではないか。その辺でいわゆる総合的な安全保障ということをもっと考えるべきじゃないか。そのために現在のやり方でいいのかどうか。これは総合安全保障関係閣僚会議というのがあるのを知っておりますし、あるいは国防会議があることも知っております。国防会議というのは国防ということが中心でございますし、安全保障関係閣僚会議というのはちょっとお話の場みたいなものじゃないか、これは言い方は悪いのですけれども、決定権はないというような話もございました。アメリカにおけるいわゆる安全保障会議、ああいった種類のものをある程度考えて、じゃ我々としては次の段階では食糧の備蓄をやるべきだとかあるいはエネルギーの備蓄をやるべきだ、あるいは核シェルターをつくるべきだ、限られた財源の中で何に重点を置くのか。正面の軍備もさることながら、非常時において日本が安全であるためには何が必要であるかということを検討すべきなのではないか、そういう機関が必要なのではないか。  例えば、私はよく言ったんですけれども、もし日本がアメリカと同じようにずっと国の安全ということを考えておれば中近東の一部にすべてのエネルギー源をおんぶするような体制にはならなかったろうと思う。アメリカの場合には国内の天然ガスとか石炭とかいったものを保護する意味もあったかもしれませんけれども、しかしエネルギー源を非常に分散しておったわけですね。その結果オイルショックになってもびくともしない。これは常に国の安全ということを考えていたから、そうである。日本の場合にはとにかく経済成長をすればいいんだという一本やりで来たから、オイルショックのときにあわてふためいた。たまたまあのときそれは長続きしないで各国が省エネに努め、日本もエネルギーの転換をし、備蓄もやったということで、どうにか何年かたっておさまったんですけれども、例えば今度中近東に動乱が起こったときどうなるかという問題もあるわけでございます。こういった国全体の安全保障というものを考える機関が要るのではないか。そのための安全保障会議と名づけたらいいのかどうか、ある程度決定権を持った機関が必要なのではないかということと関連しまして、例えば今我々は食糧の備蓄ということを言っておりますけれども、これもやはりいざというときには必要なんじゃないか。あるいは核シェルターをつくるかつくらないかという問題もあるわけでございまして、この辺を総合的にだれが考えていくのか、だれが判断していくのか、その辺現在どうなっているかということと、これからどうしたらいいと考えていらっしゃるか。えらい一般論的な素人論でございますが、それについての事実とお考えをお聞きしたいと思います。
  279. 加藤紘一

    加藤国務大臣 国の安全保障を考えるときには単に防衛力とか軍事力の整備だけではなくて、それぞれの国が置かれている条件を考えて総合的に配慮しておくべきではないか。特に食糧だとかエネルギーだとかの備蓄体制等も含めて考えなければ片手落ちではないかという御指摘は私たち全くそのとおりであろうと思います。総合的な安全保障を考えないで軍事力、防衛力面における安全保障のみ考えては基盤の薄い、弱いものになり、片手落ちになるであろう、こう思っております。政府としては委員承知のように国防会議というところでその全体像を研究したりいたします。そこには外務大臣も通産大臣も全部入って総合的に議論いたしますし、また総合安全保障問題の関係閣僚会議というものがありまして、これにはより幅広い閣僚が集まって、幅広い観点から御議論をいただいております。そういうことがよりファンクションするようにしていくことが総合安全保障を考えるという観点から重要なのではないだろうかなと私たちも思っております。  それから、私たちの現在の「防衛計画大綱」をつくり上げましたときも、純軍事的に見たならばもっともっと大きな軍事力を持たなければならないかもしれない、諸外国の動向に完全一〇〇%対応する、脅威に一〇〇%対応しようと考えるならば、もっともっと持たなければならないかもしれないけれども我が国の地理的な状況、それから志願制度の中でどの程度の隊員が確保できるか、それから財政的な条件、国民世論から考えて、必ずしも一〇〇%対応できないかもしれないけれども、最小限この程度の防衛力は持ちたい、平時から持っていたいというのが現在の水準であろうと思います。そして純軍事的に見た場合には、持たなければならない部分と現実に保有する部分の差につきましては、リスクがあるわけでございますから、それこそまさに委員指摘の総合安全保障の観点から、外交的な側面からそのリスクを埋めるということを政治が請け負おうではないかという決断のもとにできているのが現在の防衛力の大綱の発想なのではないだろうか、基盤的防衛構想の発想なのではないだろうか、こう思っております。そういう意味で、私たちにとりましても総合安全保障という考え方は非常に重要な部分であろうと思っております。
  280. 安倍基雄

    安倍(基)委員 私も抑止力論というのに対して信頼を置いてきたのですけれども、よくよく考えたときに、本当に抑止力というのは効くものかという懸念が個人的な気持ちとしては何か出てきているわけです。であるから、どちらかというといざというときの備蓄とかそういう方にむしろ、主力を置くと言っては言い方が防衛庁に対して悪いのですけれども、国の安全を、どのくらい持ったらいいのかということを、今おっしゃったように完全に守るためには幾ら金があっても足りない、だからそれはやはりアメリカとの共同のもとにやらざるを得ない。しかし、そうすると、じゃあと何機ふやしたらいいのか、艦船をあと何十隻ふやしたらいいのかということも問題でしょうけれども、それだったら本当にいざというときの備えの方にむしろ金を使うべきじゃなかろうか。これは私見でございますけれども。  現実問題として我が国が今倍増してみたところで、要するに本当に抑止力ができるとも限らぬ。もちろん必要最低限というのは非常に難しいので、それは米ソの力関係、さっきもいろいろ話がございましたように、SDIなんてどのくらい技術進歩、発達しているかわからないときに、我々としては本当にどのくらい装備を持ったらいいのか、あと五年後あるいは今の飛行機は随分陳腐化してしまうかもしれないし、むしろ非常に心配である。その面では核シェルターとか備蓄とか、いざというときに国民が生活していけるような方にむしろ総合安全保障重点を置いておくべきじゃないかという個人的な感想があるのでございますけれども、今防衛庁長官にそういうところに重点を置けなんということは言えないかもしれませんが、第一の、いわゆる安全保障についての総合決定機関、現在ある程度閣僚相互でございますけれども、それは必ずしも決定的な力を持っているわけではない。国防会議との分担がどうなるのかということもはっきりしない。ですから、むしろそういった国防会議の上にもう少し機能するような形の総合安全保障を総体的に考える機関があってもいいのではないかということでございますけれども、その点についてのお考えもお聞きしたいと思います。
  281. 加藤紘一

    加藤国務大臣 総合安全保障というのは私たちは重要な考え方だと思います。それは先ほども述べました。それが政府の中でどういった機関で検討が行われるべきか、現在の検討のプロセスをどう判断するかということは、一防衛庁で申し上げるのは若干僭越なのではないだろうかな、こう思います。それは総理を中心に政府全体のあり方として御判断いただき、また臨調でもいろいろな御提言があるように聞いております。  先ほどの点に若干付言させていただきたいと思いますけれども、私たちはそういった意味で総合安全保障というのは非常に重要であると思っておりますけれども、また防衛力整備ということを完全に抜かした総合安全保障もないものだと思っております。総合安全保障の中で、いわゆる防衛力というものは大きな比重を占める部分だ、こう思っております。  委員が御指摘のように、抑止力というものがどの程度の効果を果たしてきているかということについては、なかなか検証の難しい部分もあるかと思います。しかし、少なくとも戦後、東西の陣営の対立の中で双方が核の抑止で核の紛争に至らないで来たことも、否定のできない事実なのではないだろうか。また、通常戦力につきましても、抑止力がない部分においで若干の、幾つかの紛争が発生したこと、バランスが崩れたときに紛争が発生したということもまた一つの事実ではないだろうか、こう思います。その意味で、私たちは防衛力の整備、それに伴う抑止力の維持も含めての総合的な安全保障を考えてまいりたい、こう思う次第でございます。
  282. 安倍基雄

    安倍(基)委員 時間も余りございませんから、今との関連で農林省の方、食糧の備蓄についてどういうぐあいにお考えになっておられるか。
  283. 近長武治

    ○近長説明員 それでは、食糧の備蓄につきまして、今私たちが持っております考え方について簡単にお話しいたしたいと思います。  食糧につきましては、いろいろな角度で国民に安定供給をしていくということが大事でございます。基本的にはなるべく国内で生産できる力をつけていきたいと思っておりますが、輸入の安定ということも大事でございます。私たち、念頭に置いておりますのは、一つ国内の不作の問題、それから外国からかなりの食糧の輸入を仰いでいるということがございますので、いろいろな事態を考えておかなければいけないわけですが、今先生の御指摘の問題もあろうかと思いますが、通常、例えば輸出国の港湾ストでございますとかいろいろな形での輸出規制ということも近い過去において経験がありますので、そういうことに備えて、いわば短期的な不足の事態に対処しながら食糧の一定量の備蓄をしておくというふうに考えております。  具体的には、米につきましては食管特別会計の中でやっておりますし、輸入に多く依存しております小麦についても食管の特別会計の中でやっております。そのほか飼料穀物、大豆につきましても、一定量を常時保有していく、こんな体制を今持っておるところでございます。
  284. 安倍基雄

    安倍(基)委員 今の問題とちょっと離れますけれども、外務省の方に今の安全保障の見地から対外援助というものを考えられているかどうかという点と、もう一つ、ボン・サミットの結果、SDIを含む交渉にどう影響しておるのかというお話を承りたいと思います。
  285. 太田博

    ○太田説明員 先生のただいまの御質問の最初の部分について、まず私からお答えさせていただきたいと思います。  我が国安全保障にとりましての基本が世界の平和と安定の維持であるということは、今さら申すまでもないと思います。我が国は対外援助を通じまして、開発途上地域の政治的、経済的、社会的な強靱性の強化を支援しておりますけれども、このような支援が開発途上地域開発途上国の平和と安定をもたらし、ひいては世界の平和と安定に貢献し、もって我が国安全保障に資する、そういう考えに立ちまして、援助を行っている次第でございます。  先ほど来先生がその重要性について御指摘になられました総合安全保障との関連で申しますと、以上のような観点から、我が国は経済協力を総合安全保障の重要な一環であるというふうに位置づけております。
  286. 瀬崎克己

    ○瀬崎説明員 先生御質問の第二の点でございますが、ボン・サミットと今後の米ソの軍縮交渉の関連でございます。御承知のように第一回目の軍縮交渉というのは三月の十二日に始まりまして、四月の二十三日に終わったわけでございます。第二ラウンドと申しますか、第二回目の会合は五月の三十日から七月の十六日にかけて行われるということが米ソ間で合意されているわけでございますが、何と申しましても{西側諸国が結束して、こぞってアメリカの交渉上の立場を支援するということが非常にこの軍縮交渉を成功に導く一つの重要な要素になっているわけでございますが、この関連で、ポン・サミットにおきまして、先生承知のとおり政治宣言が採択されたわけでございますが、その中に、「ジュネーブにおける交渉の開始を歓迎する。我々は、アメリカ合衆国の積極的な提案を評価する。我々は、同交渉において有意義な合意が達せられるように、ソ連が積極的かつ建設的に行動するよう求めるものである。」というくだりの文章が採択されているわけでございますが、このボン・サミットにおきまして、西側の首脳がこぞってこの交渉の成功のため、連帯して取り組むことの重要性につき、広く意見が一致したということを内外に示したわけでございまして、こういった西側の結束というものが、第二ラウンドの交渉におきまして、ソ連もやはり真剣にかつ積極的にこういった呼びかけに対応するということにつながっていくのじゃないかというふうに判断しておるわけでございます。
  287. 安倍基雄

    安倍(基)委員 私最初申しました対外援助の件で、これは今大蔵委員会でも言っているのですけれども、むしろ防衛的な見地からそれを使え、つまり援助はそもそもいいということではらまく必要はない。それは世界は広いわけですから、どこで紛争が起こるかということはございますけれども、どちらかというと防衛庁的な感覚も使って援助も使ったらいいじゃないか。その意味で、安全保障というものを総合的に見るならば、例えば防衛的に一番大事な国に重点的にやってもいいわけでございまして、どうも日本の対外援助というものが、日本安全保障というよりはちょっと人気取り的な、サラ金財政のときに何かお中元をばらまいておるようなものじゃないかと私はしょっちゅう言っているので、むしろ国家安全保障という面で、それはもちろんある程度グローバルな見方もございますけれども、その辺をやはりさっきも私が申しました安全保障機構というような、そういったものを含めて検討した方がいいのじゃないかという私の発想でございます。  いささか時間も終わりましたから、いわば非常に素人的な質問でございますけれども、ひとつもう少し広い意味安全保障という面から、一体今のままでいいんだろうか、特に一%問題が論議されているときに、防衛問題をもう一遍考え直す必要があるんじゃないかと私は思うのです。その点もう一度最後に長官お話を承って、終わりたいと思います。
  288. 加藤紘一

    加藤国務大臣 一国のあり方、防衛問題等はより広い視点から、より高度の次元から論じなければならないという委員の御指摘は、そのとおりであろうと思います。  私たちもそういう観点からできるだけ深くこの問題を考えてまいりたいと思いますので、委員からも時に触れ御指導をお願いできればと思います。
  289. 安倍基雄

    安倍(基)委員 それじゃ終わります。
  290. 森下元晴

    森下委員長 東中光雄君。
  291. 東中光雄

    ○東中委員 防衛庁長官にお伺いするのですが、去る五月九日に、アメリカ国防総省は同盟国の軍事的役割を分析した年次報告書「共同防衛に関する同盟国の貢献」一九八五年版が発表されました。  この中で米国防総省は、日本防衛費について、最低もしくは最低に近いところに位置しておる、公正な分担にはほど遠いと見られるという指摘をしておりますが、日本防衛庁長官、このアメリカの分析、指摘についてどう考えておられるのか。「公正な分担にはほど遠い」、公正な分担を要求しているようでもありますけれども長官のこれに対するお考えをお伺いしたいと思います。
  292. 加藤紘一

    加藤国務大臣 その報告は、たしか本年のもので五回目であったと思いますし、従来のトーンと余り大きな変化はないものだと承知いたしております。  その報告にもありますように、私たちの国はGNPに比しまして、またその他の多くの国力指数に比べましてかなり少ない防衛費で防衛政策を実行しておるということをかねて私たち国会で主張し、申し上げ、国民の御理解をいただくようにしておったわけですけれども、それがアメリカの国防報告、そういう形でまた明確にアメリカ側の認識としても述べられたものというふうに言っていいものだと思います。  それでアメリカはたしかGNPの六・五%前後であろうと思いますし、イギリスが五・三%前後であろうと思いますし、独仏が四・一、二%付近を移動しておると思います。私たち日本は〇・九九七%、いかに私たちの国が軍事大国になっていないかということが主張されているものであると思っております。
  293. 東中光雄

    ○東中委員 私の言うのはそういう意味じゃなくて、今言われたような対GNP比というのは、これもまた基準が随分違いますから、そういうことで私は言っているのではなくて、「公正な分担にはほど遠い」、公正な分担を要求しているような形になっておるけれども、米国と公正な防衛についての分担をやっている、そういう観点で見ておられるのかどうかということを実はお伺いしたかったわけですが、それはそれといたしまして、この報告書で継戦能力向上について、五九中業でこの傾向が続くなら――継戦能力向上について日本は非常に努力してきたという形で評価をした上での話でありますが、五九中業でこの傾向が続くなら、シーレーン防衛能力を含む日本自衛隊防衛能力は大きく飛躍するだろう、こういう趣旨のことが書いてありますね。五九中業では、この継戦能力向上をアメリカが言っているように重視をしていくのか、いくとすれば、継戦能力をどのような点で強化をしていこうと今されておるのか、その点についてお伺いしたい。
  294. 矢崎新二

    矢崎政府委員 有事におきまして真に有効な防衛力を整備していくということが私どもの基本的な目標でございます。そういう意味からいいますと、単に正面装備品だけをそろえていくということではいけないわけでありまして、これが有事において継戦能力を十分発揮し得るような形でバランスをとって整備していく必要があることは申すまでもないと思います。例えば弾薬の備蓄を増強していくことも非常に重要な問題でございます。関連する分野として申し上げますならば、別の概念で私ども申し上げております抗堪性の向上を図っていくということ自体も継戦能力向上に寄与する面がまたあるわけでございます。そういった各般の後方施策というものも関連して重要な分野ではないかと考えているわけでございまして、そういった面も含めまして私ども我が国の自主的な防衛努力の問題としてこの継戦能力向上ということを従来も追求してきたわけでございますし、五九中業策定に当たりましてもこれを重視してやっていきたいと考えているわけでございます。外国から言われたからやるというふうな性質のものでは全くないわけでございまして、日本自身の問題として我が国自身の判断として実施していきたいという性質のものでございます。
  295. 東中光雄

    ○東中委員 ところが日米安保条約の体系の中では、外国から言われたからやっているのではないと言っても外国から言われてそして実際にやっている、因果関係は別としてそういう関係にあると私は思うのです。  いずれにしましても、長官が四月十二日ですか、中曽根首相に対して五九中業について報告されたという報道があります。洋上撃破能力継戦能力それからC3Iの強化重点を置いて作業を進めているというふうな報告をされたというふうに報道されておるわけです。洋上撃破能力あるいは継戦能力は今お話を聞きましたが、C3Iというふうな問題について重点を置いておる問題というのはどういうことなのか。こういう報告自体が――頭をかしげておられるのでそれはやってないのですか。そこらをちょっとお伺いしたいのです。
  296. 加藤紘一

    加藤国務大臣 五九中業についての進捗状況の概要、段取りについては当然のことながら御報告申し上げました。しかし、具体的にC3Iがどうのこうのという詳細にわたって御報告するような段階ではまだございませんので、そんなところには言及いたしてはおりませんでした。
  297. 東中光雄

    ○東中委員 それではもう一点、防衛局長が先ほどOTHについて検討しておるという趣旨の答弁をされましたが、OTHということ自体はどういう機能を持っておるのかということです。洋上防空と言われておりますが、単に爆撃機だけではなくてICBMや巡航ミサイルも探知する、そうした能力、機能を持ったOTHの配備検討ということなのかどうか、この機能の点についてお伺いしたいと思います。
  298. 矢崎新二

    矢崎政府委員 OTHといいますのはオーバー・ザ・ホライゾンという頭文字をとっているものでございまして、このOTHレーダーと申しますのは、レーダー波を電離層に反射させることによりまして遠方の目標を探知するレーダーでございます。探知距離は千八百海里くらいにまで及ぶのではないかと言われているものでございます。そういうことで、これは遠くの目標が早期に探知できる能力のあるものでございますので、私ども我が国防衛を考えます場合に専守防衛という基本的な枠組みの中で考えておりますだけに、情報を早期に探知することが極めて重要な問題であろうという認識を持っておるわけでございます。  そういう意味で考えますと、本土防空を考える場合にも、あるいはまた洋上防空におきます可能な範囲内での航空自衛隊による防空活動というふうな問題を考える場合におきましても、目標が早期に遠くで探知できますれば、その対応行動もより迅速に効率的に実施できるということであることは御理解をいただけると思うわけでございます。そういう意味合いから私どもはこのOTHレーダーの性能その他、現在検討を行っているということを先ほど御説明申し上げた次第でございます。
  299. 東中光雄

    ○東中委員 OTHを所沢に配備するかどうかということが問題になったとき、これは昭和四十九年八月二日の当時の丸山防衛局長だったと思いますが、答弁の中で、「OTHがABMのシステムの中に入るかどうか、こういうお話でございますが、本年度の七五会計年度の国防省年次報告、これを現在の国防長官のシュレジンジャーが行なっておりますけれども、これによりますとICBMの早期警戒システムといたしまして三つのものをあげておりまして、一つが人工衛星でございます。それからもう一つが、OTHシステムでございまして、三番目がビミューズといわれておりますが、弾道弾の早期警報システムといわれるものでございます。」要するに、ICBMのシステムの中に入っておるといいますか、少なくともICBMの警戒システムである、ABM系のそういうシステム、膨大なレーダーだというふうに思うのですが、そうじゃないのですか。
  300. 矢崎新二

    矢崎政府委員 ただいまのお話は私も昔の話として承知いたしておりますが、OTHレーダーという問題はICBMの早期探知ということのために当時考えられていたシステムであったように思います。ただし、それは現在では衛星による監視等の方法にアメリカなんかは移行していると聞いておるわけでございます。  現在、アメリカがOTHレーダーのシステム開発配備したりしている新しいシステムと申しますのは、それとは全く別の機能を目的としているもののようでございまして、アメリカが現在国防報告等で書いているのを見ますと、本土防空用のものについては既に配備を進めておる段階でございますし、またそれと並びまして海軍用の移動可能なOTHレーダーシステムというものも現在開発中であるというふうな状況でございますが、その目的としているところは飛行物体を考えているようでございまして、航空機等がその目標として考えられている新しいシステムであると私は理解をいたしております。
  301. 東中光雄

    ○東中委員 ただOTHレーダーは四千キロも届く、地球の裏とは言わぬまでも、普通で言う水平線のはるかかなた、裏に近い方まで捕捉できる、こういうのが特徴なんですからね。そういう点で言えば、どういうものが開発されているか、開発を進めようとしているかということとは別に、本来そういう性質のものなんだ、このICBMを捕捉するような、そういうレーダーというのは日本には置かないんだ、ABM体系に入るような、そういうことは、日本は、米軍のレーダーの配備にしてもそういうものは認めないんだという趣旨のことを四十三年三月十三日の当時の増田防衛庁長官が答弁をしているのがあります。  それからどうも、名前はOTHで一緒だけれども新しいものが開発されているんだというふうに今言われたような気がしますけれども、これは質的に違う新しいものであれば質的に違う新しい名前をつければいいわけなんで、OTHという非常に遠くまで、遠距離で捕捉をするというのはアメリカの戦略的な配備日本防衛というよりはもっと広いそういうものにならざるを得ないのじゃないか。いわんや、ICBMを捕捉するというふうなことであるとすればこれは非常に重要なことになってくるので、増田防衛庁長官のときには、アメリカがそういうことをするということもないという形で答弁をしておるわけですね。今度は自衛隊がそういう種類のものを配備をするということになってくると、OTHの自衛隊配備ということになれば、核防衛戦略といいますか、そういう中へ自衛隊が積極的に入っていくような形になりはせぬかということで非常に重大な問題を持ってくるように私は思うわけであります。  そういう点で、新聞報道によれば、政府首脳の方からそういうことを言われて検討するようになったというようなことも言われておりますだけに、私たちは、そういう体制はやめるという方向検討すべきじゃないか、やめるということについての検討をすべきじゃないかというように思うのですが、これはどうでしょう。
  302. 矢崎新二

    矢崎政府委員 大変誤解をされている面があるように思いますが、私どもがこのOTHレーダーの検討を行っておりますのは、我が国防衛のために必要な情報機能、早期警戒機能というものをレベルアップしていきたいということが目的でございまして、そういう意味で、アメリカから言われてやっているというふうなことでは全くないわけでございます。私どもの自主的な判断でこういう検討を今進めているわけでございます。だれから言われたということではございませんで、防衛庁自身の判断として、こういう問題についても検討を深めていく必要があるということを考えてやっておるという事情を十分御理解を賜りたいと思います。
  303. 東中光雄

    ○東中委員 核戦略の中へ防衛庁自身が進んで入っていく、そういう体系になる危険を私たちは感ずるから言っているのであって、私たちの言っていることをも誤解されぬようにひとつお願いをしたいと思うのです。  そこで、もう時間が余りないのですが、五九中業策定ということになれば、当然それに先行する統合長期防衛見積もりあるいは統合中期防衛見積もりが既に策定されているんだと思うのですけれども、これは策定されて防衛庁長官に出され、防衛庁長官、承認されているのかどうか、まずその点をお伺いしたいと思います。
  304. 矢崎新二

    矢崎政府委員 統合長期防衛見積もりにつきましては、これは五八統長ということになると思いますが、昨年中に作業を終了いたしまして、長官への報告はことしの二月に終えております。  それから統合中期防衛見積もり、これは五九統中ということでございますが、これも本年当初に作業を終了いたしまして、長官の御承認を得ておるわけであります。
  305. 東中光雄

    ○東中委員 この長期及び中期の防衛見積もりに沿って今度は中期防衛業務、中業が出てくるわけですからね。中業の中に、また計画のほかに見積もりがあるわけですね、行政見積もり。  それから長期防衛見積もりなり中期防衛見積もりなりをことしの年頭あるいは二月、防衛庁長官が承認をされた。  それから、そこでの特徴ですね、前の五六中業策定のときのそういう見積もりに対して今度の見積もりは、これは変わっているのか変わっていないのか。  内容を一々細かく言えというのは、そんなことは私たちも言いませんけれども、どういうふうなものとして承認をされているのか。それは長官が承認されたわけですから、変わった点あるいは特徴点といいますか、そういうものについてひとつ明らかにしてほしい。その見積もりについて我々が、まるきり見当違いだということになれば、また中業もまるきり見当違いにいくことになる、論理的にそうなるわけですから、そういう点についてまず明らかにしてほしいと思うのです。
  306. 矢崎新二

    矢崎政府委員 ちょっとお答えの前に、先ほど五八統長、あるいは日付を正確に申し上げなかったかと思いますが、五十九年の二月に長官報告をいたしておることを確認的に申し上げさせていただきたいと思います。  それから、ただいま統長、統中の内容の問題でございますが、統合長期防衛見積もりはどういうものかという点でございますが、これは、この見積もりを作成いたします年度の八年後以降の見通し得る期間を対象としているというかなり先の期間を対象にしているものであることは従来から申し上げているとおりでございまして、それでは何をしているかといいますと、将来の防衛力の質的な方向などを検討をするという性格のものでございます。  それから統中はどういう内容かと申しますと、これもしばしば申し上げておりますが、作成年度の二年後以降の五年間を対象にするという中期のものでございますが、その性格といたしましては、防衛力整備の前提となります内外諸情勢の見積もり、それからこれに対する防衛構想等を検討をするというものでありまして、中期業務見積もり作成に資するという性格のものでございます。  したがって、ごく長期の一つの将来見通しみたいなものを統長というものをつくることによって検討いたし、それを踏まえてさらに中期の内外諸情勢の見積もり、防衛構想等の検討をこの統中でやっておる、これらを踏まえて先生指摘中期業務見積もりというものが作成されていく、こういう仕組みになっているわけでございます。  中身がどう変わったのかということでございますが、これはそもそもこの性格上、内容を公表をいたしますことは一種の手の内を示すということにもなりかねない問題を含んでおるものでございますから、従来から公表を差し控えさせていただいておることを御理解をいただきたいと思います。
  307. 東中光雄

    ○東中委員 内容を詳細に全部公表せいと言っているわけではないのでありまして、要するにそういう長期の見積もりをやり、中期の見積もりをやり、そういう中で五九中業策定していく。五六中業策定したときも、三年前に同じような体制でこうやってきた。その間に、そのときの八年先と今度の八年先ということについての変化は何にもないというのだったらこれは意味はないわけですし、あるとすればどういうことなんだということについての考え方というのは堂々と明らかにして、詳細をどうこうというのではなしに、私はそういう点は国民の前にただして、それ自体がいいのかどうかということも大いに、八年先のことを見通すということについての限界というのは随分あり得るわけですから、いずれにしましてもそういうことを明らかにして、今度策定はこの夏にするということですが、防衛庁長官は日米防衛首脳会議に何か来月七日出発されますね。安保事務レベル協議も行われると思うのですけれども、そういう中では、いわゆる防衛見積もりあるいは五九中業に関連をした整備についてアメリカ側と話し合うことになるのかならないのか。そういうことの話し合いの中で今度は策定作業完成させていくというようなことにどうもなるように私たちには思えるわけですけれども、そういう点はどうなのか、全く関係なしですか、そこらの点についてお伺いをしたいと思います。
  308. 加藤紘一

    加藤国務大臣 米国が我が国防衛政策について非常に関心を持ち、またいろいろの期待を持つということは日本とアメリカとの防衛関係から見れば当然のことであろうと思います。しかし、私たちは、我が国防衛政策及び防衛力整備方針等につきましては、そういうことは念頭には置きますけれども、私たちが自主的に決定してきましたし、今後もそうしたいと思いますし、そうすべきであろうと思っております。  五九中業につきましても、もう既に六十年度予算案が成立した段階から特にスパートをかけましてしっかりと議論をいたしております。まだ十分に完全なまとまった形ではございませんけれども、かなり重要な部分はもう討議がスタートいたしておりますので、六月に私が日米防衛首脳会議をやって、それからいろいろなことを言われて、こっちへ来てまた作業するなんぞということではスケジュールがいません。もともとそんなことは考えておりません。
  309. 東中光雄

    ○東中委員 時間ですから終わります。
  310. 森下元晴

    森下委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三分散会