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1984-04-04 第101回国会 参議院 予算委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月四日(水曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員の異動  四月三日     辞任         補欠選任      太田 淳夫君     塩出 啓典君      鈴木 一弘君     藤原 房雄花      下田 京子君     安武 洋子君  四月四日     辞任         補欠選任      海江田鶴造君     水谷  力君      出口 廣光君     吉村 真事君      中西 珠子君     刈田 貞子君      塩出 啓典君     太田 淳夫君      山田  勇君     柄谷 道一君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         西村 尚治君     理 事                 金丸 三郎君                 亀井 久興君                 初村滝一郎君                 藤井 裕久君                 村上 正邦君                 和田 静夫君                 峯山 昭範君                 内藤  功君                 伊藤 郁男君     委 員                 安孫子藤吉君                 長田 裕二君                 梶原  清君                 古賀雷四郎君                 沢田 一精君                 志村 哲良君                 杉山 令肇君                 田中 正巳君                 竹内  潔君                 内藤  健君                 成相 善十君                 鳩山威一郎君                 真鍋 賢二君                 増岡 康治君                 松岡満寿男君                 水谷  力君                 宮澤  弘君                 宮島  滉君                 吉村 真事君                 糸久八重子君                 久保  亘君                 佐藤 三吾君                 志苫  裕君                 瀬谷 英行君                 高杉 廸忠君                 矢田部 理君                 太田 淳夫君                 刈田 貞子君                 塩出 啓典君                 中西 珠子君                 藤原 房雄君                 和田 教美君                 安武 洋子君                 柄谷 道一君                 山田  勇君                 青木  茂君                 木本平八郎君                 野末 陳平君    国務大臣        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  森  喜朗君        厚 生 大 臣  渡部 恒三君        農林水産大臣臨        時代理        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)       中西 一郎君        通商産業大臣  小此木彦三郎君        運 輸 大 臣  細田 吉藏君        郵 政 大 臣  奥田 敬和君        建 設 大 臣  水野  清君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    田川 誠一君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 藤波 孝生君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       後藤田正晴君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  栗原 祐幸君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       河本 敏夫君    政府委員        内閣参事官    中村  徹君        内閣官房内閣審        議室長             兼内閣総理大臣         官房審議室長   禿河 徹映君        人事院事務総局         職員局長     叶野 七郎君        青年対策本部        次長       瀧澤 博三君        公正取引委員会        委員長      高橋  元君        公正取引委員会        事務局経済部長  佐藤徳太郎君        公正取引委員会        事務局審査部長  伊従  寛君        警察庁刑事局長  金澤 昭雄君        警察庁刑事局保        安部長      鈴木 良一君        行政管理庁行政        管理局長     門田 英郎君        行政管理庁行政        監察局長     竹村  晟君        防衛庁参事官   古川  清君        防衛庁参事官   西廣 整輝君        防衛庁参事官   冨田  泉君        防衛庁長官官房        長        佐々 淳行君        防衛庁防衛局長  矢崎 新二君        防衛庁衛生局長  島田  晋君        防衛庁経理局長  宍倉 宗夫君        防衛庁装備局長  木下 博生君        防衛施設庁長官  塩田  章君        防衛施設庁総務        部長       梅岡  弘君        防衛施設庁労務        部長       大内 雄二君        経済企画庁調整        局長       谷村 昭一君        外務省アジア局        長        橋本  恕君        外務省北米局長  北村  汎君        外務省欧亜局長  西山 健彦君        外務省中近東ア        フリカ局長    波多野敬雄君        外務省経済局次        長        恩田  宗君        外務省経済協力        局長       柳  健一君        外務省条約局長  小和田 恒君        外務省国際連合        局長       山田 中正君        大蔵大臣官房長  吉野 良彦君        大蔵大臣官房総        務審議官     吉田 正輝君        大蔵大臣官房審        議官       行天 豊雄君        大蔵省主計局長  山口 光秀君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省銀行局長  宮本 保孝君        大蔵省国際金融        局長       酒井 健三君        国税庁次長    岸田 俊輔君        国税庁間税部長  山本 昭市君        文部大臣官房長  西崎 清久君        文部省大学局長  宮地 貫一君        文部省体育局長  古村 澄一君        文部省管理局長  阿部 充夫君        文化庁長官    鈴木  勲君        文化庁次長    加戸 守行君        厚生大臣官房総        務審議官     小林 功典君        厚生大臣官房会        計課長      黒木 武弘君        厚生省公衆衛生        局長       大地 眞澄君        厚生省医務局長  吉崎 正義君        厚生省保険局長  吉村  仁君        厚生省援護局長  入江  慧君        社会保険庁長官        官房審議官    小島 弘仲君        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産大臣官        房総務審議官   塚田  実君        水産庁長官    渡邉 文雄君        通商産業大臣官        房会計課長    山本 雅司君        通商産業省通商        政策局次長    村岡 茂生君        通商産業省貿易        局長       杉山  弘君        特許庁長官    若杉 和夫君        中小企業庁長官  中澤 忠義君        運輸大臣官房長  松井 和治君        運輸省鉄道監督        局長       永光 洋一君        運輸省航空局長  山本  長君        郵政省貯金局長  澤田 茂生君        郵政省簡易保険        局長       奥田 量三君        郵政省電気通信        政策局次長    富田 徹郎君        郵政省電波監理        局長       鴨 光一郎君        建設大臣官房長  豊蔵  一君        建設大臣官房会        計課長      牧野  徹君        建設省計画局長  台   健君        建設省都市局長  松原 青美君        建設省河川局長  井上 章平君        建設省道路局長  沓掛 哲男君        自治大臣官房長  矢野浩一郎君        自治大臣官房審        議官       土田 栄作君        自治省行政局長  大林 勝臣君        自治省行政局公        務員部長     中島 忠能君        自治省行政局選        挙部長      岩田  脩君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君    説明員        会計検査院事務        総局次長     佐藤 雅信君        日本国有鉄道総        裁        仁杉  巖君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和五十九年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十九年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十九年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 予算委員会を開会いたします。  昭和五十九年度一般会計予算昭和五十九年度特別会計予算昭和五十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  それでは、これより山田勇君の一般質疑を行います。山田君。
  3. 山田勇

    山田勇君 きのうから待ちに待った私の質疑の時間が参りましたので、まず冒頭に、きょう御出席大臣方にお尋ねをいたします。  宮澤事件を筆頭に、江崎グリコ、誘拐事件の多発、保険詐欺殺人事件ロス事件を含みます、世の中の歯車は非常に狂っているように。思います。風俗の乱れ等々、今政治は何をなすべきか、我々政治家が真剣に党派を超えて考えなければならないように思います。教育の改革を言われておりますが、口先だけではだめだと思います。悪いことが当たり前のような世の中風潮にあって、きょう御出席の各大臣方の、まずこの一連のこういうような事件、問題についての御所見を伺いたいと思います。田川さんから行きましょう。
  4. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 山田さん御指摘のように、最近、特異な事件が随分起こってまいりまして、また青少年の犯罪もふえてまいりまして、御指摘のとおりでございます。これはいろいろ原因があると思いますけれども、今おっしゃったように、国民の模範となるべき我々政治家がまず襟を正して、率先垂範してこうした社会におけるいろいろな矛盾を正していかなければならないと私は思っております。同時に、不正を働いた者はやっぱりそれ相当の責任をとってもらわなければならぬ、そうして不正はどんどん摘発して、犯罪を犯すことが割に合わないのだということを知らしめる必要があると思うのです。私は警察の方も担当しておりますが、取り締まる方の立場として、犯罪が起これば必ずこれは検挙するというような姿勢で取り組んでいく決意でございます。
  5. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは大要、国家公安委員長から申し上げたとおりでありますが、私は、ちょっと三年ぐらい前の資料になりますけれども、よく演説で使います中に、東京ニューヨーク、ハンブルク等々、世界主要国における人口十万人当たりの殺人事件の率が、東京が二人、ニューヨークが二〇・一人、ほかの国が大体日本の倍から三倍。そうして検挙率は、西ドイツと日本が九七・六か九六・七、ニューヨークが七〇%、こそ泥が、日本が四九%、ニューヨークがたしか一一%。だから世界一等殺人事件が少なくて、世界一等検挙率が高い、大変その点においては立派だと、こういうことを演説でよくしておりました。しかし、今、最近のいわゆる世相とかあるいは風潮とかいうようなものを見ておりますと、日本国民だれしも世界一そういう犯罪の少ない国だという感じは持っていないと思います。したがって、今自治大臣からお答えがありましたように、国民ひとしく、なかんずく選挙でもって選ばれる我々個々がいわゆるそういう風潮に対して厳しくみずからを律して対応していかなければならぬと、こういうことではなかろうかと考えます。
  6. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) お答えいたします。  政治に信頼が失われるということが一番いけないことでございまして、一番大切なことだと思っております。これは政治家は非常に重大な責任があると思っております。しかし、全般に、衣食足りて礼節を知るという昔の言葉がございますが、礼節を知るということが正しいと同時に、衣食足りておかしくなっている、たれている、こういうような面がないかということを、これだけの経済的繁栄の中でいろいろな問題が起こるということは私はその面から反省をしていかなければならないのではないか、かように思っております。
  7. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 私に与えられた職務は、国民の皆様が健康で安心して暮らせるようにすることで毎日頭がいっぱいでありますが、最近考えさせられるのは、どんなにおいしい食べ物でも、その食べ物をおいしいと感じる舌がなくなってしまえばおいしいもおいしくないもないのでありますから、今、戦後三十九年、この国は、十年、二十年、三十年前と比べれば、前と比較すれば物質的にはかなり進んできておるのでありますが、にもかかわらず、今、先生御指摘のように、世の中が混乱、困窮しているのは、やっぱり人の心を大事にする――かえって戦争前は経済的には貧しくても何か豊かな心があった。最近は物質的には恵まれてきて、かえって心の貧困が何か楽々とした世の中をつくっている。  そういう点で、すべての人がお互いに、自分より少しでも恵まれない人がおったらその人に対する温かい思いやり、また少しでも人の、あるいは世の中の世話になっている人は、そのことに対する感謝の気持ち、そういう心が豊かになっていけば、もっともっといい、幸せな日本ができ上がる。そのためには、今、運輸大臣からもお話がありましたように、まず世の中を正しくするには、やはり政治家が、私どもが汗を流して国民皆さんのために一生懸命働いているということを国民皆さんに知っていただくことも世の中を正すために大事なような今気持ちがいたしておるところでございます。
  8. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 私のかねがね考えておることですが、物質文明というのが高度に発達してくる段階で、これは世界歴史、古い過去にさかのぼっても同じだと思うんですけれども精神文明というのが少し傷ついてくるというような関係にあるのじゃないか。しかし、ごく最近で言いますと、私、真言宗ではございませんが、空海さんのある種のブームが起こっておる。やはりある種の波があるのだろうと思いまするけれども、健全な要素もこれあり、また困った現象もこれあり、その辺のバランスといいますか、兼ね合いを考えながらいい方へ持っていくという努力はしなければならない、かように思います。
  9. 山田勇

    山田勇君 ありがとうございました。  関西空港建設が、ことしの十月、会社設立によって今一歩を踏み出すわけでありますが、関西空港建設関西復権の核となり、経済発展に寄与することは大変喜ばしいことでありますが、しかしながら、地元住民にとっては環境破壊の不安も大きく、漁業補償の問題など解決しなければならない問題は山積をしております。新会社は、公共的な役割と経済的で効率的な企業運営を両立させながら、関西はもとより我が国全体の発展のために大きな貢献をしなければなりません。空港建設の最も大きな意義をお聞かせください。
  10. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) お答え申し上げます。  御案内のように、現在の大阪空港は、累次の訴訟等にも見られますように、また午後九時までしか使用ができないといったような点で、完全に飽和状態と言いましょうか、行き詰まり状態にあることはもう御承知のとおりでございます。関東では成田に新空港ができておりますけれども、これも工事途中で行き詰まっておるような状況でございまして、国際航空並びに国内航空とも東京大阪に向かっての要望、そこからの飛んでくれという要望が非常に強いわけでございます。今、国際的に見ましても、三十数カ国が日本に参りたいという希望を持っておるのでございますが、残念ながら東京関西ともに行き詰まっておるためにこれを受け入れることができない、したがってこちらからも飛べないということになっておる状況でございまして、私どもそういった航空の新時代を開くために、日本的な意味からも立派な国際空港をつくる。関西へ今計画いたしておりますのは二十四時間使用できるという空港のつもりで、そういう計画で進めることにしておりますが、そういう日本全体の国際空港、あわせて大阪を中心にしました関西空港、こういうことでございまして、その持っておりますいろんな意味は、これはもう一々挙げることができないほどはかり知れない大きいものがあると思います。これなくしては航空は完全に行き詰まるということでございますから、むしろ必至である、どうしてもやらなければならない、こういう意味があると考えておる次第でございます。
  11. 山田勇

    山田勇君 新空港建設に着工するのは、どういう条件がそろえば始めるのか。それはまた、いつごろになりますか。
  12. 山本長

    政府委員山本長君) お答え申し上げます。  ただいまこのように予算の御審議をされておるところでございますし、また関係法案も御提出申し上げておるところでございますので、これが御承認いただけるということがまず前提でございますが、私たちといたしましては、そういう予算法案の成立ということを前提といたしまして、五十九年、本年の十月一日というものを目途に事業主体としての関西国際空港株式会社を設立いたしたいと、こういうふうに考えておる次第でございます。この株式会社によりまして、いままで政府直轄で諸般の準備を整えてきたわけでございますが、さらにそれを引き継ぎまして、準備を整えて、できれば六十年の後半にも着工いたしたいというふうに考えておる次第でございます。  具体的な着工の準備といたしましては、会社運輸大臣の定める基本計画というものに従ってさらに詳細な計画を作成し、あるいは航空法、あるいは公有水面埋立法諸法令に基づく所要手続、それからこういった手続を進めていく場合における関係機関との調整、こういうものを終える必要がございます。さらに、具体的には先生おっしゃいましたような漁業者との調整、あるいは土取り地と申しますか、土をどこからとって、どう運んでくるかというふうな面についての計画の決定及び関係者との調整等々、それからそれに伴うアセスメントの実施というふうなものが準備としてございます。
  13. 山田勇

    山田勇君 この空港の持つ公共性と、株式会社としての利潤の追求をどう調和させる考えでございますか。
  14. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) 今回の関西国際空港株式会社、法律による特殊法人株式会社建設をし、運営をすることにいたしたわけでございますけれども、申し上げるまでもなく、航空法上の第一種空港でございます。国の責任においてつくるという建前の空港でございます。したがって、私はあくまでも公共性ということが優先をするという考え方でございます。しかしながら、株式会社にしましたゆえんのものは、その中へいわゆる民間活力を利用してできるだけ早く借金が返せるように、そして空港がペイして成り立っていくように、そういうことで企業的な要素を入れたわけでございます。しかし、金もうけに走って公共性が失われるというようなことは絶対に許せない。したがって、公共性優先、その範囲内において企業性をどこまで発揮できるか、できるだけのことを民間活力でやってもらいたいと、かように考えておる次第でございます。
  15. 山田勇

    山田勇君 公共事業投資民間活性化の位置づけの中にあって、この空港を第三セクター委託をし、第三セクターの中で空港を建ち上げるということでございますが、細田運輸大臣成田空港のときのたしか航空部会の長をされて、初代の今井総裁と我々運輸委員会の間を行ったり来たりして、大変御苦労があったように思います。  まず、成田のときには国庫負担率が八〇%だったですね。今回はほとんどそういう第三セクター委託をしてやるということになりますと、経営が黒字になるのは大体何年先にと見込んでおられますか。
  16. 山本長

    政府委員山本長君) お答え申し上げます。  相当この建設事業は大きな事業でございますけれども、やはり適切な計画に基づきまして建設され、かつ運営されていくことによりまして、収支採算と申しますか、収支採算性は確保し得るというふうに考えておる次第でございます。航空輸送の今までの実績あるいは政府の将来の経済の長期の展望等を勘案いたしまして所要検討調整を行った結果、私たちの試算によりますと、開港後おおむね五年程度損益計算上の利益が生じるものというふうに見込んでおるのでございます。もちろん、その五年に至るまでに累積の欠損がたまりますから、それが解消できるというのはおおむね九年程度というふうに考えておる次第でございます。
  17. 山田勇

    山田勇君 株式会社になることによって国の責任の所在があいまいになるようなことはないんですか。例えば大きな事故が発生した場合等々は、そういう場合はどうするんですか。
  18. 山本長

    政府委員山本長君) お答え申し上げます。  こういった建設事業につきましては、建設過程におきまして大きな事故とかというものが、あるいはもくろみというものが狂わないように細心の注意を払って行う必要があると考えますが、しかしながら災害でございますとか、予期せぬ事態が発生するということも考えられないわけではございません。そういった場合におきます責任と申しますか、事後の処置というものにつきましては、やはりこの設置管理主体特殊法人たる株式会社ということでございますので、この会社責任をとるということがこれは本則でございます。  ただ、国際空港の整備という行う事業が非常に公共性に富んでおる、また第一種空港でもあるというところから、国の会社に対する責務というものを明確にするという観点から、これは法律上あるいは予算的にも措置しておるところでございますけれども、この会社の発行株式総数の少なくとも二分の一以上は常に政府が持っていなければならぬというふうな法律案の措置をいたしております。また、予算的と申しますか、資金計画上は実際は三分の二程度を国が保有するというふうな資金計画を持っております。そういった助成の措置を講ずると同時に、所要の監督措置をも講じておる次第でございます。したがいまして、国といたしましては、これらの助成措置、監督措置というものを通じまして会社が的確にこの事態に対応できるように、責任を果たし得るように適切な措置を講じてまいりたいと、こんな考えでございます。
  19. 山田勇

    山田勇君 空港は沖合に浮体工法か埋め立てかで、我々も十年ほど運輸委員会に所属していたんですが、これは運輸省の方もなかなか明かさなかった問題ですし、またそういう大きな利権も絡むものですから、浮体工法か埋め立てかということはなかなか結論が出にくかったし、我々の情報の中にも出てこなかったですが、ここまで煮詰めれば、これは埋め立てでやるんですか、それとも浮体工法でやるんですか、はっきりとした形でちょっとお示しをいただきたいと思います。
  20. 山本長

    政府委員山本長君) 確かに、先生おっしゃるように大きな議論がございました。この点につきましては、航空審議会でも相当な時間をかけまして建設工法の審議をしていただいたのでございます。その結果、この空港建設の工法につきましては埋立工法が適切だと、こういうふうな御答申をいただき、政府としての計画も埋立工法というものを計画の内容といたしております。
  21. 山田勇

    山田勇君 今、工法が明らかになりました。埋立方式でやるということでございます。埋め立てにすれば二億立方メートル以上の土砂が要ると聞いておりますが、土砂の採取にはどこが決まっておりますか。決まっている場所があれば明らかにしていただきたいと思います。
  22. 山本長

    政府委員山本長君) この埋め立て土砂の採取地につきましては、給論的に申し上げますとまだ決めておりません。この採取地の選定につきましては、実は昨年度から運輸省におきまして、大阪府と和歌山県の県境でございますいわゆる葛城山系と言っておりますが、あの泉南市、岩出町といったあたり以西の丘陵地を調査対象地域といたしまして、その選定のために必要となる基礎資料を得るための諸般の調査を現在実はやっておるところでございます。この事業主体の設立が認められれば、引き続きその所要の調査をこの事業主体が行っていくということになると考えております。こういった調査の結果として得られる諸般のデータをもとにいたしまして、採取に伴う経済性でございますとか、あるいは防災面での安全性、あるいは環境への影響、それからまた跡地の利用の計画といった社会的な要素も加味いたしまして、これは地元の関係地方公共団体等と密接な連絡調整を行った上で決定をしていくべきものであると、このように考えておる次第でございます。非常に重要な事柄でございますので、手順を踏んで慎重に決定をするというふうに、これは事業主体ができてから事業主体を私たちといたしましてはそういった指導をしていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  23. 山田勇

    山田勇君 今、跡地利用も十分考えるということですが、大阪府下だけでも実際に、民有地ですが、景気のいいときには土砂をとる。土砂をとったらとりっ放しで、後は雨が降れば垂れ流しというような状況で、それを府税によってまたフォローしなければいけない、砂防法などでそれをフォローしているというようなことですから。相当な土砂をとらなければいけません。私の資料の中では、泉南、阪南、岬、和歌山、十二カ所ぐらいで今ボーリングをやっているはずですが、その跡地利用ということを今おっしゃったんですが、十分に配慮をしていただきたいと思います。  空港へのアクセスは、どういう種類とルートをお考えになっておられますか。
  24. 山本長

    政府委員山本長君) 空港はそれ自体だけでは機能いたしませんので、先生がおっしゃるように、アクセスというものと相まって機能を果たすものでございます。この空港のアクセスとして機能すると同時に、またこれは地域の根幹交通施設としても機能いたしますような交通施設につきましては、国が地方公共団体等の協力を得て計画面の論調整を行い、そしてお互いに協力し合いながらこの整備をしていくという考え方に基づきまして具体策を検討していく必要があると考えておるのでございます。  この空港の立地するところから見まして、空港には道路アクセス、鉄道アクセス、それから海上アクセスというものを将来整備していく必要があるというふうに考えておる次第でございます。現在、あの地域におきまして道路計画として整備が進められておる道路がございますが、そういった道路と空港とを結びつける、あるいは既存の鉄道と空港とを結びつける、こういった計画を考えておる次第でございます。これらの問題につきましては、先ほど申し上げましたような考え方に基づきまして、関係者間で十分協議、調整を図りながら具体化を図ってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  25. 山田勇

    山田勇君 今、鉄道とおっしゃいましたが、これは関西線の湊町という駅がございます。そこら辺が一大ターミナルになって、空港に入る国鉄としての鉄道、私鉄では南海、ただ道路問題につきましては、海上輸送等々言われましたが、湾岸道路、これが非常に今地元の話題になっております。神戸から和歌山までの湾岸道路というのはやるのかどうかというのが非常に問題になっておりますが、その点いかがですか。
  26. 台健

    政府委員(台健君) この地域の自動車交通のアクセスの中心となるというふうに私たち考えておりますのは、近畿自動車道を考えております。湾岸道路につきましては、長期的には湾岸道路も重要なアクセス路線というふうに考えております。
  27. 山田勇

    山田勇君 じゃ、現在では全然湾岸道路に対する計画はないということですか。
  28. 台健

    政府委員(台健君) 現在、湾岸道路につきましては、神戸市の東灘区から泉大津市の臨海町に至ります約三十八キロメートルにつきまして阪神高速道路大阪湾岸線といたしまして事業を実施しておりまして、このうち、大阪市港区港晴から堺市三宝間の約八キロを供用しているところでございます。今後は、今申し上げました事業化している区間のうち、大阪市の西淀川区の中島から同港区港崎の間、それと堺市三宝から同じく出島西町間につきましては、現在の第九次の道路整備五カ年計画の期間内の供用を目途に事業の進捗に努めているところでございます。
  29. 山田勇

    山田勇君 何度も聞かにゃ言わぬというのはちょっと困るんですわ。もうわかっていることだから、言えばいいんですわ。不動産屋が動くような問題と違うんです。海の上へ橘げたですから、モノレールみたいに建てるんですから、ほとんどは公有地を使うんですから、言ってもそう問題ないんですが、何度も言わにゃ言わぬというのは困ったものですな。  そういうことで、滑走路は当初三千三百メートルですが、これらは長距離の国際線の大型機の離着陸には支障は全くありませんか。
  30. 山本長

    政府委員山本長君) いわゆる第一期と申し、オープンまでに整備する滑走路の長さは三千三百というふうに計画をいたしております。最終的にはこれを四千にするという計画でございますが、現在就航いたしております一番大きな飛行機、いわゆるジャンボ機でございますけれども、ジャンボ機が日本からノンストップで海を渡るのは太平洋でございますが、アメリカの西海岸までノンストップで行ける、しかもフルロードで行ける滑走路の長さというものとして三千三百は十分でございます。ただ一部、数は少のうございますけれども、アメリカの東海岸、ニューヨークまでジャンボがフルロードで行くという場合には三千三百では不足でございます。四千メートル必要でございます。しかしながら、やはりこの空港をできるだけ手がけた以上は早く供用を開始するということが必要でございますし、さらにまた諸般の事情あり、機能的にはアメリカの西海岸までノンストップで行けるということになりますと、ヨーロッパあたりはもちろんアンカレジあるいはモスクワというものを経由して行く、あるいは東南アジアヘ行くというものにはもちろん支障はございません。東海岸までジャンボでノンストップというものについては若干不足でございます。それ以外のところについては機能的には支障が行いと、こういう滑走路の長さでございます。
  31. 山田勇

    山田勇君 運輸省、成田をつくったときにも、あれだけの大きな747ができるということは予測し得なかったですよりだから、北ウイング、南ウイングなんて、その当時としたらば相当大きな規模のものをっくり上げたようですが、ジャンボが就航したときには、運輸省が当初思ったときより早く大型機は就航してきた、いわゆる航空機の開発の方が早かったという形の中で、あの蛇腹的な、こう全然面が合わなくて慌てて改修工事をした前例があるんですよね。だから、今、私、科学技術に所属していますが、恐らくスペースシャトルが使っているような水素エンジンの筒、ロケットエンジンといいますか、そういうような開発が思ったより早くこれは来るんですよね。ニクソン政権時代のときにいわゆるケネディ基地の予算を半分に削減したためにエンジニアが三百五十人民間レベルへ、航空会社エンジニアへ再就職した。そのために思ったよりいわゆるエンジン開発が早まった。そういうことで、スペースシャトルのようなああいうものが就航する可能性があるんですよ。ロケット推進エンジンというやつです。これになりますとマッハ二・何ぼで飛びますから四時間で行くんでしょう。  そういう先行きのことを考えていくと、当初三千三百メートルでは不足なんですよ。だから、IATAの要請によってこの間いわゆるスペースシャトルが初めて夜間着陸を試みだというのは、これはやっぱりIATAの大きな要請があってアメリカ政府がそれを受けたんですからね。そういうようなことを考えていくと、いわゆるロケット推進エンジンということを考えていくと三千三百では不足でしょう。
  32. 山本長

    政府委員山本長君) 私、先ほどの御答弁で、三千三百でこれで永久に十分だというふうに申し上げたつもりではございません。最終的な形といたしましては、四千メートルが望ましいというふうに考えておると申し上げたつもりでございます。しかしながら、最初にオープンするまでには三千三百でと、こう申し上げたのでございます。この計画面におきましても、三千三百メートルで供用をしながら自後四千メートルに延長し得るように計画面の手当てはしてございます。具体的には、あそこの海面を地盤改良いたしますと言に相当高いやぐらを立てて改良工事をやらなければならない。そういたしますと、航空機の運航に支障が生じてまいります。したがいまして、第一期のその三千三首で供用するまでの間の工事期間中にその四千メートル延長部分について地盤改良工事をやっておくという手当てを実は計画面でいたしております。そういたしておきますと、空港の運用に支障を生じないで延長の工事が引き続きできる、こういう計画面の手当てをしておるのでございます。私は三千三百で永久に十分だというふうに申し上げたつもりではございませんので、御了解願いたいと思います。
  33. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) 補足して。  今、航空局長からお答えをいたしましたが、私も先生おっしゃるように航空の進歩発達というのは大変なスピードでございますので、直ちに引き続いて四千にはする、そういうつもりでやっていくということになると考えておる次第でございます。また、そうしなければならぬと思っております。
  34. 山田勇

    山田勇君 これは航空局長ね、内陸サイドにいわゆる航空事務系統を置くのか、それとも附帯したその空港の中に入れていくのか、単なる離着陸だけとカーゴだけを扱うのか、泉南四市四町の位置づけとしては、何かごみとたばこの吸い殻だけをほうられるような形の開港のあり方ではないので。また、それから通関でしょう。一日に、二十四時間として年間十六万回か十七万回の離着陸をする。一日に平均延べ七万人の人間が入ってくる。それの通関、そういう事務系統をどっちへ置くのか。空港サイドに入れてしまうのか、それとも湊町を出て天下茶屋あたりぐらいでその大きな通関事務をそこで終了さすのか、その辺をもう少し具体的に計画の中で教えていただ煮たいと思います。
  35. 山本長

    政府委員山本長君) お答え申します。  先生の御質問のあだ力も非常に航空審議会で審議をしていただいたときに問題になった点でございまして、大阪湾の中に島をつくって空港にするわけでございますから、具体的健はその島の中にどれだけの施設を置くかということになるわけでございます。航空機の離発着に全く直接必要な安全施設等々だけを置いて、極端なセムを言いますと、旅客のターミナルとか貨物のターミナルといったいわゆる機能施設というものを分離いたしまして陸側に置くというふうな実は考え方も一つあったことも事実でございます。しかし、それでは余りにも空港の機能というものから見て不便過ぎる。また、諸外国の空港計画というものを見ましても、そういった機能施設、利便施設といういうものと離発着のための施設というものを五キロなり三キロなりも離れておるというような空港も実はございません。そういったところから空港の離発着に直接必要な施設だけでなく、旅客のターミナル施設、貨物のターミナル施設、あるいは給油のための諸施設、それから供給のための諸施設等々、空港として一体的に機能し得るための必要な施設というものにつきましては空港の施設の中に置くというのが適切であるという考え方に基づきまして実は計画をしておるのでございます。  ただ、空港というものに付随いたしまして、空港の管理者が設置をするわけじゃございませんけれども、いろんな具体的にはホテルでございますとか、空港を取り巻く諸施設と申しますか、諸産業と申しますか、いうものが立地することになります。そういうものにつきましては、対岸の土地あるいはそういったところに立地をする、あるいは空港と離れてダウンタウンに貨物の取り扱いの施設あるいは旅客の取り扱い施設というものを設置している例も実は成田近辺にもございます。ああいった施設が空港の島から離れたところで設置され、機能するということも予想されるところでございます。
  36. 山田勇

    山田勇君 運輸省の航空関係皆さん方は、大変私はこの関西空港には御苦労があったと思うんですよ。地質、海流、それから気象、いろんな形の中で一生懸命調査をなされて、トンビに油揚げとは申しませんが、財政難の折からそういう第三セクタ一をつくって発足するということになりましたが、新しい空港ができますと、新会社できますと、今までそれに一生懸命携わってこられた運輸省の皆さん方が一斉に、これは国家公務員ですから、引いてしまいますと、そういう新会社が果たしてできますでしょうか。いわゆる経験者というものはどうしても必要になってくる。そういう形の中で、その新会社が新しいどういう形でどういう身分でそういう人たちを雇用するんですか。それとも一切もう運輸省と縁を切ってしまうんですか、一般企業並みにするんですか。その辺がちょっと定かじゃないんで、その辺はどうしますか。
  37. 山本長

    政府委員山本長君) この新しい空港建設事業も、突然にそれが発足するのじゃございませんで、今までの調査あるいは検討、研究というものを引き継いで行うわけでございます。そういった調査、検討、研究あるいは諸作業というのは、国がやっておる部分が相当大きな部分がございますし、それから関係の府県で行っておられる部分もございます。やはり新しい組織体が機能いたしますためには、そういった知識経験を持った人たちがこの会社に入りまして働くということがやはりどうしても必要だと考えております。  その会社へ行った職員の身分はどうなるかということでございますが、これは会社の職員でありまして、国家公務員でもなければ地方公務員でもないわけでございます。しかしながら、職員が今までの知識経験あるいは技術力を持って行き、あるいはまた職員が例えば運輸省へ帰ってくる、大阪府へ帰るというふうな人事交流というものがやはり必要になってまいると思います。そういった場合に、身分は一方は国家公務員であり、一方は会社の職員ではございますけれども、そうした人事交流というものがうまくいくように、その人事交流をすることによって職員の処遇というものに不利にならないように、これは給与面でもありますし、それから将来退職する場合の退職金でございますとか年金でございますとか、そういったものについて影響してくるわけでございますので、そういった面について職員の不利にならないように、また人事が円滑にいくように、こういった措置はいたしていく必要があると思います。そういったことで、これまた関係省庁との御協力を得なければなりませんが、話し合いを進めておりまして、そういう措置を講じていただくということにしていきたいというふうに考えている次第でございます。
  38. 山田勇

    山田勇君 空港問題、あと一点だけ。ちょっと時間がないんで。  答申案の第一項に、現在の伊丹空港廃港を前提としてというふうにうたわれてありますが、その点どうですか。もうこの辺ではっきりと、伊丹空港をどうするのかということも地元の大きな問題になっています。その点いかがですか。
  39. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) 現在の大阪空港、伊丹にございます空港につきましては、新空港ができるまでに決めるということに一応はなっておるわけでございますけれども、それでは遅過ぎると思います。非常に重大な影響を各方面に持っておるものでございますから、できるだけ早く現在の空港を新空港ができた後どうするかということについて方針を決定すべきだと考えておりまして、いろいろな角度から現在調査を既にいろいろいたしておる段階でございます。なるべく早く決める、こういう方針で進みたいと思っております。
  40. 山田勇

    山田勇君 それと、関西空港といえば、第三者が会社をつくってやるにしても建設事業ですね。それが万博のように、確かに万博の当時は道路等等でそれなりの恩恵があったわけですが、東京資本がインプットされて、残ったのは太陽の塔と、あと道路という形で、七割ぐらい東京資本へ持っていかれたということがあります。だから中小企業分野調整法という法律もあるんですから、大手へ発注しても、その割にずうっと縦割りで零細企業まで、少なくとも空港建設に対しての利点といいますか、そういう恩恵を浴するような形、対策というものを十分配慮して考えてください。  それから、最後ですが、環境庁へこれはお願いですが、空港へのアクセス交通による大気汚染、騒音、埋め立てによる瀬戸内海の水質変化、土砂採取をする土地周辺の環境影響調査など、工事進展に伴う自然破壊など、運輸省や工事関係機関にもどしどしと注文をつけて、なるべく環境破壊をしない形の中で十分、これは答弁結構です、環境庁にもお願いをいたしておきます。  続いて、下関市水道局のことについてちょっとお尋ねをいたします。下関市水道局の労使紛争についてでありますが、概要は御存じのことと思いますが、水道局職員と一般行政職員との給与、労働条件などの格差が大き過ぎるのでこれを是正する問題でありますが、下関市水道局員と一般行政職と比較しますと、年間で単純平均百十七万円も水道の方が給与が高く、残業料も普通であれば二五%のところ水道は一六五%、深夜の場合は一九〇%と、やみ協定もしているようであります。また、労働時間においても、一般職は千九百二時間に対し水道局は千七百七十五時間と少なくなっています。市民の間からも是正の声が強く叫ばれ、市議会も是正の決議文を可決しておりますが、行政改革に取り組んでいる政府としては、この問題にどう対応し、どう行政指導すべきだとお考えになっておられますか。
  41. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 下関の水道局におきまして、給与の適正化等をめぐって昨年来労使間に紛争が生じておりますことは私どももよく承知をしております。山口県を通じて承知をしているわけでございますが、現在、地元におきまして地方労働委員会等を煩わしながら紛争解決のために努力が続けられているということを伺っております。  自治省といたしましては、関係当局間において良識ある円満な解決が図られ、適正な勤務条件が確立されることを期待をしているわけでございます。できるだけひとつ地元で解決をしていただくように希望をしております。ただ、御承知のように、地方公務員の給与は国家公務員に準じて適正に決められることを私どもは平素指導しておりまして、こうしたことを踏まえながら解決していただくことを期待をしているわけでございます。
  42. 山田勇

    山田勇君 続いて、嫌煙権連動というのがございます。私も余り熱心ではないんですが、たばこ吸うんですが、運動に少し関係しておりますが、たばこを吸わない人にとって、そばで吸われるくらい苦しいものはないようです。もちろん健康面でも間接喫煙の害というものが立証されております。吸う人と吸わない人のルールづくりが重要な問題であります。厚生大臣はこの嫌煙権運動を現在どういうふうに評価なさっておられますか。
  43. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 御指摘のように、これは、たばこの健康に対する害、たばこの吸い過ぎが国民の健康に好ましくないということでは、私は国民の合意といいますか、これ共通認識ができておると思います。  そこで、厚生省としては、これはまず、今も先生からお話がありましたが、病院というようなところは、これは体のぐあいの悪い人が集まってくるところですから、そこでたばこを吸っている人がそういう人にたばこの煙を吹きかけるようなことに、これがなることはまことに好ましくないので、国立病院等に喫煙室をつくらせて、それ以外のところでたばこを吸わないように、さらに自治体病院等にもこういうことを今普及してまいりまして、少なくともそういう病院というようなところではきちっと喫煙室ができておって、そしてほかの人に迷惑をかけることのないようにということを進めておりますし、運輸大臣がきょういらっしゃいますが、国鉄などでもたばこを吸わない人の特別の車両をつくって、それにしても迷惑をかけないようにというようなことをいろいろ御協力をいただいているようでございます。また、保健所という機関が、これは全国の国民皆さんの健康を守る指導機関としてございますから、ここで、たばこの健康に与える影響といったようなものの指導、啓蒙運動をする。  また、この問題に非常に熱心なそれぞれの団体がございますので、そういう団体といろんな連絡をこれはとりながら、少なくとも、今、先生おっしゃったように、たばこを吸う吸わないは、ここまで規制するわけにいかないわけで、私なども、これは厚生大臣になったから、やっぱり此の誤解をいただかないためには、たばこをやめようと、こういつも思って、一度一カ月ぐらいやめたんですが、これまた予算委員会で難しい問題なんかされるとまた吸ってしまうと、こういうことで、わかっちゃいるけれどもやめられぬというか、これやめようとしてやめられないのがたばこでございます。しかし、この吸い過ぎが健康に好ましくないということでは、もう国民的な合意というか、共通認識ができておるということを私は考えておりますので、たばこをやらぬ人に邪魔にならないようにと、そういう指導は今後してまいりたいと思います。
  44. 山田勇

    山田勇君 厚生大臣、全くそのとおりでありまして、嫌煙権運動というのは何も吸う人の権利まで奪おうというのではなく、厚生大臣が今おっしゃったように、私立の大学病院なんかの方がそういう施設をもう既に持っているわけですが、国立病院、自治大臣もお聞きいただきたいと思いますが、市役所だとか公共施設にそういうものはないわけでございまして、その点、厚生大臣、田川自治大臣も、そういう公共施設にそういう部屋をつくっていただくように、ぜひお願いをいたしておきます。  その点、国鉄の方はいち早く、車両一号というんで、一号車がたばこを吸っちゃいかぬ車両というのをつくっていただきました。私は、かつて授乳室、おっぱい列車、それから車いすの部屋、あれは当初国鉄車両の中で中売りするためにスペースあけていたところです、正直言ってね。ただそこへそういうふうに持っていってもらったというふうに、非常に実績は、国鉄はすぐにやっていただきました。ただ、今回ちょっと大臣、残念なのは、また半分グリーンの方もやるということですが、煙というのはこれは回りますので、仕切りをするわけにいきませんので、半分というようなけちけちしたことをやめて、やっぱりグリーン十一号なら十一号全部やらないと、これ効果ないんですよ。だからその辺どうですか、もう半分も。だからやっぱり吸えないところでも、僕ら飛行機に乗っても辛抱しますからかえって健康にもいいんで、いっそ一車両ということにやってください。これはおととい、半分やるということになっていますが、半分というようなもうけちけちしたことはせぬと、ぜひ一車両、きょうは総裁もお見えですから、ひとつお願いします。
  45. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) 国鉄、私鉄を問わず車両の中、それから混雑する駅、待合室、そういうところで禁煙の場所をできるだけふやす、あるいは時間的に長くするという要望は非常に強いものがございます。そこで、私は大臣就任以来、こういう禁煙の場所をふやし、時間を長くするという方向で国鉄を初め関係の方面にいろいろ相談を持ちかけておるわけでございます。そこで、ごく最近、国有鉄道としては、現在の状況では勉強できる限りといいましょうか、できる限りのことをしてくれたと思っておりますが、今おっしゃるような御希望もあると思いますけれども、これらの点につきましては国鉄総裁からお答えをさせていただき、私は御趣旨は非常に結構だと、こう思っておりますが、そこのところ、まあ一般の喫煙者の方との間の調和点をどうするかという問題でございますので多少難しいところもあろうかと思いますが、国鉄総裁からまたお答えをさせていただきたいと思います。
  46. 仁杉巖

    説明員(仁杉巖君) お答えいたします。  ただいまの問題は、御説明のような問題があると思っておりますが、例えば東北の新幹線等ではグリーン車は一両しかございませんので、やめると全部なくなってしまうというようなこともございまして、それからほかのところでもそういう現象が起きる場合がございますので、一応牛車というような設定をしたわけでございます。  なお、これにつきましては、ごく少してございますが、アンケート調査をいたしましていろいろ調査をいたしました結果では、やはり御説のように、一車全部をやれという御意見もございましたけれども、その説よりも、まあ牛車でいいじゃないかという御説の方が多かったようでございます。しかし、これを実施するのは大体来年の春になる予定でございますから、この間におきまして、もう少しいろいろ先生の御説も踏まえまして検討をいたしますが、一車両の場合には牛車で勘弁をしていただかないと全部禁煙車ということになりますので、御理解を願いたいと思うわけでございます。
  47. 山田勇

    山田勇君 そうですか。僕は東海道の方ばかり思うものですから、十一、十二とグリーンが二車両あるものですから、そういう点もありますが、その場合、これからジョイント部分に喫煙室みたいに灰皿か何かを設置して、吸いたい人はデッキのところで吸って、また入ってくるというふうなこともしてもらわなければいけませんね。飛行機の場合はそうなんで、まあ一緒のことなんですが、これは御答弁結構ですが、総裁ひとつ前向きに御検討いただきたいと思います。  時間が参りましたので、最後にサラ金問題。冒頭述べましたように、今の世相というものは非常に殺伐として、どこかで歯車が狂っている風潮がございます。その中で、このサラリーマン金融について幾つかお尋ねをしたいのですが、時間の都合上、割愛させていただきながら質問させていただきます。  サラ金が社会に及ぼすさまざまな悪影響を排除するための紆余曲折はありましたが、昨年四月、サラ金規制のための諸法律が制定されました。その際、民社党・国民連合は、この法律は今後とも情勢の推移に応じて改善に努めるべき点が残された次善の策であるとはいえ、野放し同然の状態よりはサラ金利用者の救済、サラ金地獄の未然防止、またサラ金業界の健全化を進めるものとして評価をし、賛成したものであります。この規制法は昨年十一月施行され、既に五カ月が経過しており、その効果いかんがそろそろ明らかになりつつあるのではないかと思われますが、大蔵大臣、これまでの推移でごらんになって、規制法の効果をどう評価しておられますか、まずお伺いをいたします。
  48. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは具体的には銀行局長からお答えさせた方が正確だと思いますが、あのような紆余曲折を経ながらも、あれは議員立法でとにかくあの法律が施行されるに至ったと。そこで、私どもといたしましては、これは警察庁、法務省、自治省、もちろん都道府県、経済企画庁等関係省庁と協議をしながら、この関係法令及び通達を厳正かつ的確に運用をして、サラ金禍の減少及び利用者の利益の保護に努める。だが、いささか施行後、日なお浅く、このような効果が出ましたという口に見えるようなもの、それを今申し上げるところまでいっておりませんが、経過的にいろいろ出た問題もございますので、銀行局長からこの上お答えすることをお許しいただきたいと思います。
  49. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 今、大臣が御答弁されましたように、余り具体的にどういう効果があったかという御質問に対してはなかなかお答えしにくいのでございますが、ただ、最近サラ金業者の方の貸し方が随分慎重になっているとかそういうふうな声は開きます。それからこれは新聞報道でまことに恐縮でございますけれども、先ごろ警察庁の方で発表された自殺者とか家出人等の資料でございますが、サラ金法が施行される前と後とでは、サラ金苦によります自殺者とか家出人が非常に減っているというような、こういう何か数字もあるようで、これは後ほどまた私どもといたしましても警察から聞きたいと思っておりますが、こういうふうな数字もございまして、やはり法律施行前と後とは、いろんな意味で効果があるのじゃないだろうかというふうに考えております。私どもといたしましても、この法律が非常に効果が上がるように、関係省庁、都道府県等とも十分連絡しながら適正な法の執行に努めてまいりたいと、こう思っております。
  50. 山田勇

    山田勇君 ちょっと違うんですがね。そういう健全化した部分もあるでしょうが、過重貸し付けといって、十万円くらい借りにいっても、今資金がだぶついているものですから、過重に二十万貸しておきましょうというのが今の方法だと思うんです。サラ金すべてが社会の諸悪の根源というのじゃございません。それは借りる者が一番悪いんです。借りたら当然返さなければいかぬのですがね。そこで、消費者をサラ金地獄から未然に防ぐため、また健全な消費者金融機関を育成するため、大蔵省が、金融問題研究会、これに消費者金融のあり方について意見を求め、それによって消費者信用法というようなものの新立法に着手するという話を聞いておりますが。新聞にも以前一部報道されたように思うんですが、この消費者信用法というのはどういうような法案ですか。
  51. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) これはまだごく私的な研究会の御意見でございますから、それによって、政府といたしましてそういう法律をつくるということを決めたわけじゃございませんけれども、一応その研究会の中で言っておられますのは、やはり今の消費者金融問題につきましては、金利一つとりましてもいろんな法律があって規制されておる、非常に統一がとれていない。あるいは消費者保護の問題につきましてもいろんな法律がございまして、なかなか一本化されていなくてわかりにくい、あるいは効果が上がっていないということでございまして、そういう問題を特に金融面から消費者信用というものをとらえまして、金利とかあるいは消費者保護等につきまして一本にいたしました法律によって規制した方が規制の効果が上がるのじゃないだろうかというふうな御提案がございます。こういう点につきましては、先ほども大臣申し上げましたように、この問題は、一大蔵省だけじゃございませんで、法務省、警察、通産、経企庁、いろいろな関係省庁ございますので、これから先ほど御指摘の研究会の御報告の御意見なども踏まえまして、関係省庁と十分協議した上、政府としての考え方をまとめていくということかと思っております。
  52. 山田勇

    山田勇君 最後の質問になろうかと思いますが、若干、有害図書等々の問題、それから風俗営業の取締法についてお聞きしたかったんですが、かいつまんで風俗営業等の取締法改正について、改正の基本的な考え方、規制対象の拡大、警察の行政権、指導権の強化など、規制、取り締まりがひとり歩きをして、必要以上に警察の介入が多くにならないか、性産業に対する、少年を働かせない、出入りさせない、それはどんな業種を考えているのかという点について、もうこれは最後なんで簡単で結構でございます。警察庁、せっかくお呼びしたんでお答えいただきたいと思います。  有害図書については、文部省の方、済み。ません、時間がなかったものですから、お聞きすることできませんでした。
  53. 鈴木良一

    政府委員鈴木良一君) お答えいたします。  現在の少年非行の状況にかんがみまして、どうしても風俗環境の浄化、少年非行の防止、あるいは善良な風俗の維持という観点から、必要な限度におきまして改正をしなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。今、セックス産業はいろいろな形で発展しておりまして、いろいろな名前がついておりますが、ヌード喫茶、のぞき劇場その他もろもろのものがございますけれども、そういうふうなものを中心にして、必要な範囲において進めてまいりたい。今お話しのように、ひとり歩きをしてはならないという御指摘でございますが、これは十分自戒しながら立法作業に取り組んでまいりたい、かように考えております。
  54. 山田勇

    山田勇君 ありがとうございました。(拍手)
  55. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で山田君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  56. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、木本平八郎科の一般質疑を行います。木本君。
  57. 木本平八郎

    木本平八郎君 まず、厚生省関係からお願いしたいんですけれども、最初に中国残留孤児の問題でございますけれども、総理が先ごろ訪中されたときに、中国残留孤児対策についてどのようなことを話し合われたか、ちょっとお聞きしたいんですが。
  58. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) お答えいたします。  日中首脳会談において中曽根総理から中国の趙総理に対し、中国の政府関係者、養父母に心からの謝意を表明するとともに、親族捜しの今後の一層の促進について引き続き協力を得たいということを要請いたしました。これに対して趙総理からは、日中友好の精神と人道主義にのっとり、さらに日中間の協議の結論に基づいて、引き続き日本側に協力する旨の発言があったと聞いております。
  59. 木本平八郎

    木本平八郎君 それで、一応形式的というか、儀礼的な応酬だったと思うんですけれども、そのほか、随行の事務局で何か特別に、こういうふうにやろうじゃないかと、非公式でも前向きの施策が話し合われたかどうか、その点はどうでしょうか。
  60. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 御指摘の点については、これは国会でも幾たびか私も質問なりあるいは強い要望なりをお聞きいたしまして、今後の肉親捜しを一胴促進させる、また残留孤児の皆さん方が、肉親が見つからない場合でも、自分の祖国なのでありますから、この国に永住できるとか、そういう方面のいろんな取り決め等をいま進めておるわけでありますが、これは政府委員から詳細答弁させたいと思います。
  61. 入江慧

    政府委員(入江慧君) 中国残留孤児の問題につきましては、今、大臣が申し上げたことで大筋はあれなんでございますが、要するに昨年の一月から事務レベルでどういうふうにこの問題を解決していくかという問題を話してまいりまして、それの協議の結論が出まして、それを文書にしたものの交換を去る三月十七日にいたしました。それの内容は、中国政府は今後とも日中友好、人道主義の立場に基づいて孤児の肉親捜しに協力するということで、一方、日本側としましては、肉親が見つかりまして孤児がこちらに定住するようになった場合に、向こうに残される養父母等の扶養の問題をどうするかというような問題、あるいは肉親が判明しない孤児も、希望するならば向こう側に残される親族との関係で円満に話し合いをしてこちらに永住する道を開く、そういうような問題が含まれておりまして、それを具体的にどうするかということは、去る三月十七日に文書交換されたばかりでございますので、これから早速、中国政府と事務レベルで話し合っていきたい、そういう段階になっております。
  62. 木本平八郎

    木本平八郎君 それで、ちょっと事務局の方からもう一度、今までのいわゆる肉親捜しですね、これは何回も答弁されていると思いますけれども、ちょっと念のために今までの状況を御説明いただきたいんです。
  63. 入江慧

    政府委員(入江慧君) 肉親捜しにつきましては、日中国交回復以後、肉親を捜してほしいというような調査依頼が出るようになりまして、三月三十一日現在で申し上げますと、肉親を捜してほしいという孤児の数は千五百二十八名おるわけでございます。それで、これらの人々につきましては、五十五年度から訪日調査という形でやっておりますが、その前には、私どもが持っております例えば満州の開拓団員の名簿でありますとか、そういう資料を使っての調査、あるいは報道機関の協力を得て行います公開調査でありますとか、昨年の三月には全国の都道府県、市町村に孤児の方の写真とか肉親捜しの手がかりになります資料を盛り込んだ冊子を配りまして、いろいろな方法でやっておるわけでございますが、その結果、今申し上げた千五百二十八人のうち、これまで七百三十四人の孤児の身元が判明しておりまして、現在調査中の者が七百九十四名ということになっております。
  64. 木本平八郎

    木本平八郎君 それで、今まで判明した人が百六十一人おるわけですね。その中で現在日本に帰ってきて永住しているという人が百七十七人、それから一たん日本へ帰ってきたけれども、もう一度中国へ帰っているという人が三百八人というふうになっておりますが、この数字、いいわけですね。
  65. 入江慧

    政府委員(入江慧君) 現在までに肉親が判明した者は七百三十四名おりますが、そのうち訪日調査によりまして判明した者が百六十一名ということになっております。それで、これまでに判明しました七百二十四名のうちに、永住帰国した人間が百七十七名ということでございます。
  66. 木本平八郎

    木本平八郎君 それで今後、孤児の肉親捜しの促進策としてどういうふうに考えられているか、今後の計画、それをちょっと説明いただけませんか。
  67. 入江慧

    政府委員(入江慧君) 先ほど申し上げました口上書の交換が行われることになりまして、これまで五回行ってまいりました訪日調査というのが軌道に乗るようになりましたので、当面五十九年度につきましては、予定しております百八十名の訪日調査を実現すべく中国側と話し合いに入っていきたいということでございますが、残る孤児もかなりおりますので、一方、その関係者がどんどん年をとっていくということで、このテンポを速めるべきであるというのが皆様の御意見でございますので、この訪日調査を効果的にするために、さらに予備的、補助的な調査もやっていきたい。例えば、私どもは、現在、未帰還省なり戦時死亡宣告を受けた人間で、十三歳未満の者が約三千名、私ども手元の資料としてございます。その三千名につきまして、別れたときの状況がどうだったかということを個別に再度詳細に調査して、資料の再整備をしたい。それで一方、孤児の申し立て等と突き合わせますと、孤児捜しがさらに促進されるのじゃないか。そういうふうに周辺の調査を強化しながら効果を上げていきたいというふうに考えております。
  68. 木本平八郎

    木本平八郎君 今まで日本に来たのは、私の調査では五回で、トータルで二百六十二人ということになっているわけですね。まあ一回当たり大体平均五十二人だということなんですけれども、今の御答弁で、大体百八十人ぐらいの規模で今後とも招待していきたいということですね。それで、百八十人に対して去年からついこの間まで合わして五十人と六十人で百十人ですね。どうしてこういう百八十人の計画に対して百十人しか消化できないのか、その辺の事情はどうでしょう。
  69. 入江慧

    政府委員(入江慧君) 実は、訪日調査を始めましてから、途中で、中国側に置いてくる養父母の扶養の問題とか、一時こちらに里帰りした人間がまあそのまま居座ったような事例がございまして、それで、向こうに残された家族が生活に困るというような問題がありまして、そういう問題を事務的に解決しなければ今後訪日調査はちょっと困るというような意見が中国側から一昨年出まして、それで、そういう問題についてどうするかという話し合いを行ってきた結論が先ほどの口上書なんでございます。したがいまして、その問題をどういうふうに解決するかという取り決めを行うに当たって話し合っていった期間ですね、要するに訪日調査というものが、何といいますか、ルールに乗っていないといいますか、その都度中国側と話し合ってきたものですから、あちらの側の事情等もありまして予定の数がこなせなかったということでございますけれども、五十九年度につきましては、今回口上書の交換が終わりましてレールに乗るということになりましたので、私どもはできるだけその予定した数は消化したいと、またそういうことで中国側と話し合っていきたいというふうに考えております。
  70. 木本平八郎

    木本平八郎君 努力をされていると思いますけれども、要するに今後まだ調査しなければいけない人が七百九十四人ですね。それで、単純に考えましても、百八十人ずつ消化しても四年半かかる。それから仮に去年並みのペースで百十人だと七年かかるわけですね。そのほかに、来たけれども見つからなかったからもう一遍来るという人なんか集めますと、やはり下手すると十年ぐらいかかるのじゃないかという心配があるわけです。先ほど御説明がありましたように、日本側の実父母がもう相当年齢に達しているわけです。あの時分に三十歳としても、もう四十年たってますから七十ですね。日本人の今寿命が非常に延びているといっても、七十歳の老人の生存率というのは大体二人に一人だと思うんです。そうしますと、せっかく日本へ招待しても、おふくろさんやおやじさんが亡くなっていたという非常にかわいそうなことになるということなんで、ぜひこれは、期間的に時間がないんで、非常にアクセレートしてもらいたいと思うわけです。  そこでひとつ、どうも私の感じではお役人というのは非常に慎重になさるけれども、例えば百八十人招待する予定だったところが、中国側の手続が間に合わなかったからやむを得ず百十人になりましたということで見逃されるというケースが多いわけですね。ぜひ百八十人何としてでも実現するんだということで、二回の予定がだめだったら三回にしてでもやるというふうなことで進めていただきたいと思うんですけど、その辺に何か支障がございますでしょうか。
  71. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは先生の今のお話、実は私も厚生大臣に就任して同じようなことを考えたんです。千人に満たない人数なんだから、幾ら予算が厳しくても、予算面ではその程度のことはとれないはずはないんだから。しかも、今、先生おっしゃるように、年というものは、これはもう待ってないわけですから、だから一遍にやる方法はないかなと思いましてね。ところが、実際にその作業をしてみますと、この前五十人、皆さんの御協力でやったんですけれども、これはまず政府予算というよりは、報道関係皆さん方の全面的な協力がなくてはこの作業は一歩も進まないんですね。テレビに出してもらう、新聞に出してもらう、これがやっぱり五十人ぐらいが一度の人数としては限度なんですね。これは百人も二百人も一遍にテレビに出たってだれだかわからなくなっちゃうというような問題、いろいろございまして、そこでやっぱりもうこういう情報化時代なんだから、まず事前調査をしっかりすればいいだろうと考えまして、中国にビデオを持っていったりなんかしていろいろ事前調査をやるということを考えてみたんですが、これも国情の違いと思いますが、中国の場合は、こっちで当たり前だと思うことが向こうの国では大変だというような問題があって、これはいろいろ考えてみたのですけれども、五十九年は精いっぱいで百八十人ということで、しかしこれは、何が何でもまた報道関係皆さん国民皆さんの御協力を得て進めなければならないと、今援護局で張り切って頑張っておるのですが、今度訪日の調査が始まったとき、先生にもぜひ援護局でやっている現場においでをいただきたいと思うんですけれども、援護局の者は必死にやっているんですが、そういう作業は技術的、事務的に大変制約される問題があるんです。  しかし、そういう中でも、御指摘の、もう年は待っていないんですから、あの悲惨な戦争で取り残された一番大変な人なんですから、一年も故国の上を踏んでいただくように私どもも今知恵を絞っておりますし、先生方にも知恵があったらひとつ教えていただいて、何とか先生の御要望を一歩でも二歩でも前進させるように努力してまいりたいと思います。
  72. 木本平八郎

    木本平八郎君 今、大臣も非常に前向きの御回答で安心したんですけれども、私はこの際、向こうにおる孤児は全部でも千五百人ですよね、千五百人ぐらいならもう全員来たい人を一たん日本へ呼んで、それで日本にじっくり腰を落ちつけて肉親捜しをさしてやったらどうなんだろうと。今、大臣も言われたように、例えばテレビとか新聞とかでニュースバリューがないと余り来ても意味がないとか、捜すのに非常に効率が悪くなるという事情はもう当然あると思うんです。その辺の兼ね合いですけれども、私はこれは人道上の点から考えましても、国民感情からいっても、まあ千五百人ぐらいだったらもう全部引き取ってもいいのじゃないかという気がするんですけれども、その辺はいかがでしょう。
  73. 入江慧

    政府委員(入江慧君) 御指摘の点はごもっともなんでございますけれども、千五百人のうち残るのは七百何名ということでございますが、それぞれ向こうにおります孤児は職場もありますし、家庭も持っているという事情がありますので、やっぱりその辺も考えなければいけないという点が一つございます。それともう一つ、こちらへ来てからの調査の効果という点につきましては、今大臣が申し上げたように、やはり効果的に調査をするにはある程度おのずから限度があるということがございますが、先ほど申し上げた口上書で、親が未判明の者も日本に来られる道が開けておりますので、こちらへ来て捜すだけの何といいますか、向こうにおります家族との話し合いがつけば幾らでもこちらへ来られる道が開けたわけでございますから、先生御指摘の趣旨を踏まえまして、できるだけ早く実現できるように最善の努力をしてまいりたいというふうに考えます。
  74. 木本平八郎

    木本平八郎君 それで、実際に日本に戻ってきた孤児の人たちの生活状況というのはどういうふうになっているか、簡単で結構ですから、ちょっと教えていただきたいのです。
  75. 入江慧

    政府委員(入江慧君) こちらに帰ってまいりましていかにスムーズに日本の社会に溶け込んでいくか、それで安定した生活を送れるかということは、もう親捜しと同様に、それ以上にまた非常に難しい問題でございます。それはなぜかと申しますと、日本語がわからないということでございまして、しかも四十年の生活環境が全然違うということで、生活慣習も違うということでございますが、こちらに帰ってきている孤児七十名程度につきまして五十七年に行いました生活実態調査によりますと、その時点では孤児本人で、男性では七二%、女性では二二%の者が就労しているということになっております。そのほか、一般的に申し上げますと、やはり帰国当初はどうしても生活保護を受ける人間が多うございますけれども、三、四年しますと大体生活保護を三分の二ぐらい離れるというような実態になっております。こういうことでございまして、生活慣習に即した言語教育といいますか、日本語の習得というのは非常に重要でございますので、去る二月に所沢に帰国孤児の定着促進センターというのをつくりまして、帰国直後四カ月そこに入っていただいて、生活慣習を覚えていただくと同時に日本語の勉強をしてもらう、例えば買い物の仕方とか郵便局の利用の仕方とか、あるいは人間関係では近所とのつき合いの仕方とか、また職場での人間関係、そういうものを現場に即して日本の慣習を覚えながら日本語の勉強をしていただくということで、スタートしましてまだ二カ月余でございますから効果のほどはわかりませんが、こういうことを行うことによりましてかなり効果は上がるのじゃないかということを期待しております。
  76. 木本平八郎

    木本平八郎君 環境になれるということについては、人間の順応性みたいなものは、私の海外経験でも中年でも割合に順応性があってなれていける、言葉だとか習慣だとか。要するに一番問題は職業だと思うんです。その辺を今生活保護でつないでいただいているようですけれども、これはやっぱり真剣に将来考えなければいかぬ問題じゃないかと私も思います。  それで、中国に残されている養父母というんですか、今現実におる養父母たちの生活状況でちょっと紹介していただけるような例がありましたら教えてほしいんですが。
  77. 入江慧

    政府委員(入江慧君) 養父母の状況については現在ちょっと把握しておりません。
  78. 木本平八郎

    木本平八郎君 確かに孤児を預かってくれたわけですから、それでその人たちを見捨てて孤児だけが日本へ帰ってくるというのは人倫道徳上非常に大きな問題があると思いますし、孤児自身もそういうことには耐えられないと思いますので、その辺は十分に周りの者もやっぱり配慮をしていかなければいけないというふうに考えるわけです。それで、孤児が永住帰国する場合に、その養父母たちも希望するなら一緒に日本に引き取ってあげる、我々の孤児が向こうで四十年間養ってもらったわけだから、今度はあと残された人生を日本で養ってあげるというふうなことはどうでしょうね。もう養父母たちも皆六十、七十の相当高齢だと思うんですけれども、その辺の大臣の所感はいかがでございますか。
  79. 入江慧

    政府委員(入江慧君) 孤児が、肉親が見つかりましてこちらに永住帰国する場合に、養父母も一緒について来たいという希望がある場合には従来とも一緒にこちらに来る旅費も負担しておりますし、定住の施策もその養父母について行っております。それと、あと養父母の問題で、そういうふうについて来られるような事情がなくて向こうに残る養父母の扶養の問題につきましては、先ほどもちょっと触れましたけれども、孤児が本来負担すべき扶養費ですけれども、孤児はこちらへ来ていろいろ生活も大変だということで、個人が負担すべき扶養費の二分の一を政府が援助しまして、あと二分の一を民間の善意の寄附に仰いで向こうの養父母の援助をするということを考えております。ただ、具体的にどうするかというのはこれからあちらと事務レベルで話していく段階でございます。
  80. 木本平八郎

    木本平八郎君 その養父母の扶養の問題については、政府としてもいろいろ考えておられると思いますけれども、私が事情をよくわからないままにちょっと計算しますと、大体向こうの生活費というのは月二十五元ぐらいだと。そうすると年間三百元、相当の年ですから、十五年間としても四千五百元ぐらい。これを一元百三十円で換算しましても、一人当たりどう考えても六十万円ぐらいなんですね。仮に千五百人の孤児一人に対して四人の要扶養者がおったとしても、六千人。そうすると、全部それを補償的に日本がやっても三十六億で済んじゃうわけですね。三十六億円というのは、財政事情の厳しい折からこの金額は大変だという考えもありますけれども、私はくだらない数字を持ってきて比較する気はありませんけれども、まあ贖罪じゃないけれども、三十六億円ぐらいで我々の民族のそういう借りを清算できるんなら安いものじゃないかと思うんですが、その辺いかがでございますかね。
  81. 入江慧

    政府委員(入江慧君) この問題は、やはり養父母になりますと恐らく七十年、八十年向こうで住んでおられるわけですから、養父母を全部こちらに、何といいますかお招きするということにつきましても、養父母の方自体にやっぱり生まれたところで死にたいというような素朴なあれもございましょうし、したがいまして扶養費の支払いということで考えておるわけでございまして、金の問題じゃなしに、それぞれの事情に即応してみんなが円満に、何といいますか、生活していけるように配慮してまいりたいというふうに考えます。
  82. 木本平八郎

    木本平八郎君 ぜひ、今のようなお考えでこの問題を積極的に進めていただきたいと思うわけです。  それで、先ほどちょっと御説明がありました所沢ですか、何か中国の帰国孤児の定着促進センターというのは、きょう現在何人ぐらいおって、どういうふうな何をやっているか、簡単で結構ですからちょっと御説明いただけませんか。
  83. 入江慧

    政府委員(入江慧君) 現在のところ十一世帯五十二名が入っておりますが、間もなくあと四世帯二十五名が入る予定でございます。  そして、そこでは先ほどもちょっと触れましたけれども、生活に即した日本語教育ということで、先ほども申しましたが、生活指導の面で、大ざっぱに申し上げますと日常生活をどうするかというようなこと、あるいは対人関係をどうすればいいかというようなこと、そのほか制度、法律がどうなっているかというようなことをやるわけでございますが、要するに机上の勉強じゃなしに例えば買い物ですと、一回員い物の対話を知って、すぐそばにあるスーパーに連れていきまして、こちらの指導者はそばで見ていて、実際に現場で買ってもらう。あるいは交通機関の利用の仕方ですと、この間もちょっと新聞に出ておりましたけれども、所沢から新宿の繁華街まで一人で行ってもらう、それを横から見ているというようなことで、非常にきめの細かい指導をやっております。
  84. 木本平八郎

    木本平八郎君 今後とも中国の残留日本人孤児の問題については積極的に進めていただきたいと思うわけですけれども、この問題について、やはり終戦のときに三千人置き去りにされた、この置き去りにした方の実父母も、特に母親は自分の子供を置いていくというのはもう断腸の思いだったと思うんですね。その母親たち日本で今まさに死んでいこうとしているわけですね。孤児が死んでいるということがはっきりわかっていればもうあきらめがつきますけれども、あの子どうなったろうと最後まで思いを残してこの世を去っていくというのは、我々としても見るにたえないのじゃないかという気がするわけです。特に、三千人置き去りにされて、中国人のおかげで千五百人生き残ったわけですね。これがもしも逆だったらどうだろう。今、日本がそういう状況になって、どこかの外国のなにが引き揚げていく、そのときにそれを我々が本当に面倒を見るだろうかという反省がやっぱり日本人の中にあると思うんですね。そういう点で、この問題につきましてはただ単に残留孤児の問題、あるいは実父母の問題というふうなことじゃなくて、やはり民族の愚を清算するというか、本当にそういうことから我々日本人も過去のことは過去のこととしてちゃんとやるんだということが、やはり現在緊張が高まっている世界的な問題で、自衛上からも非常に重要じゃないかと思うものですから、ぜひ今後とも積極的に進めていただきたいと思うわけです。  次に、健康保険の問題についてちょっとお伺いしたいんですけれども、現在、健保のレセプト審査は一件について七秒しか時間がかけられていないということなんですけれども、この点はどうなんでしょう。
  85. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 単純に、現在レセプトの請求枚数が約八億件ございます。それを審査委員の数と審査委員の実働時間で割りますと、先生おっしゃったように、一レセプト当たり七秒という計算に相なります。
  86. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 青木茂君の関連質疑を許します。青木君。
  87. 青木茂

    ○青木茂君 私は、去る三月三十日の大蔵委員会で医師の領収書の発行の問題について御質問を申し上げました。そのときに厚生省の答弁は、領収書というのはかなりどころではなくほとんどの医師が発行している、こういう御答弁をいただいたので、これは我々の常識とえらく違うと。だから、その根拠はどこにあるんでしょうか。ほとんどの医師が発行しているという根拠ですね。
  88. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 「日経メディカル」という雑誌があるわけでございますが、その「日経メディカル」の調査によりますと、日本病院会で調査をいたしまして、入院医療費につきましては九八%が領収書を出しておる、そして外来につきましては八六・七%というものが領収書を出しておる、こういう回答を得ておるわけでございまして、恐らくそれに基づきまして御答弁を申し上げたのではないかと、こういうように思います。  ただ、私ども、先生がおっしゃいますように、どうも実感として合わないのではないかと、こういうことがございます。それは恐らく、領収書というのは、一金幾らというのも領収書でございますし、また診察料は幾ら、手術料は幾ら、注射料は幾らという、私どもはこれは領収明細書というように考えておるわけでございますが、領収明細書を発行している数ということになりますと非常に少ないのではないかと、こういうように考えます。
  89. 青木茂

    ○青木茂君 領収明細書まで出してくれれば、これは言うことないんですけど、単純な領収書さえ出してくれているという人の方がむしろ我々が回ったところによると少ないんだけれども、今の調査はどういう調査対象ですか。
  90. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 日本病院会所属の病院、九百八病院について調査をしたものでございます。
  91. 青木茂

    ○青木茂君 そうすると、病院だけであって、医院だとか診療所は含まれておらぬわけですね。
  92. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) そのとおりでございます。
  93. 青木茂

    ○青木茂君 それじゃ意味がないんですよ。病院というのは企業でいえば大企業だから、領収書程度のものを出すのは当たり前の話であって、これは病院が明細書を出さないということの方がむしろけしからんので、国民がかかるのは、いわゆる開業医というのは、町の医院であり診療所であるわけなんですよ。そこを問題にしているのに、ほとんどの機関が発行しているという断定ですね、厚生省側の答弁は。これは甚だおかしいと思うんですけれども、どうなんでしょうか。
  94. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 領収書につきましては、お金を払って、患者の方から請求があれば、これは民法の規定によって領収書を発行する、これは普通の商取引の原則でございまして、したがって領収書をいただきたいという患者の方の求めがあって医療機関の方が発行しないというケースは非常に少ないのではないかと。あるいは私どもの感覚からいいますと、確かに一々領収書をもらって帰るという感覚がないわけでありますが、それは恐らく患者の方が領収書を下さいということを医療機関の方に言わないからではないかと、こういうように考えております。
  95. 青木茂

    ○青木茂君 政治とか行政とかいうものは、血が通ってくれなければ困るんですよ。今の医療の状態からいいまして、非常に患者としては、領収書を請求するときは恐る恐る言い出さざるを得ないような雰囲気があるんですよ。そして医師側では当然それを踏まえたら自主的に出さなければいけないんですよ。それが僕は変な制度以上の血の通った医療のやりとりだと思うんです。それを厚生省側が、患者が請求しないから出さないと言っておったのでは、この問題一歩も進みませんよ。ここのところどうでしょうか。
  96. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 私ども現在行政指導をやっておるわけでございますが、領収書の交付につきましては、少なくとも患者が支払った金額についての領収書、例えば一金幾ら、こういう領収書でもいいからそれを出してくれ、こういうことを行政指導をしております。それから明細書の方につきましては、これはやはりなかなか医療機関の事務的な負担というものが相当多くなるものですから、例えばコンピューターを導入しておる医療機関等につきまして、そういうところから明細書の発行というものをやっていくように行政指導をやっておるところでございます。
  97. 青木茂

    ○青木茂君 行政指導をやっていただくのは当然なんですけれども、問題は厚生省側の行政指導の熱意の問題なんですよ。患者の方が言い出さなければ医師側は領収書を出さないんだというような答弁の中に何があるかということは、医師側に対して行政指導を積極的にやらないという裏の意味が含まれているんですよ。そこのところはどうなんですか。
  98. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 現在の制度では、家族や国保につきましては、三割ないし二割の負担でございますので、これは領収書を必ず請求をし、私は大体もらっておるのではないかと思います。金額が少ない場合は別でございますが、多い場合にはやはり税金の控除の資料というようなこともあるわけでございますから、もらっておると思います。問題は、本人の場合でございますが、本人の場合は現在は一都負担、初診のときに八百円払うだけでございます。したがって、医療費が幾らかかろうと八百円しか払わなくてもいいと。その八百円の領収書を患者の方がもらう気になるかどうか。もらっても、きょうの医療費というものが全体がわかるわけではないわけでございまして、領収書に対する感覚というものが現在の段階ではそれほど緊急の要求を持ちにくい原因がひとつその辺にあるのではないか、こういうように考えております。
  99. 青木茂

    ○青木茂君 だから、御答弁の筋がすべて患者側に問題を持っていってしまうわけですよ。八百円であろうと八円であろうと、金を受け取ったら出すべきなんですよ。そういう方向に持っていくべきなんですよ。それはどうですか。
  100. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 金銭の授受でございますので、それは当然のことだと思います。
  101. 青木茂

    ○青木茂君 当然という御回答が出たわけですから、これは医療費控除の問題もあるんですよ、一年たまれば八百円だろうと大きな問題になるということもあるんですから、厚生省はもう医師のどんな小さい金額でも領収書発行はほとんど義務的なものであるというぐらいの強い行政指導をお願いをしたいと思うわけですけれども、この点大臣の御見解はいかがでございましょうか。
  102. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今お話がありましたように、これはお金を支払って領収書をいただくのも当然であるし、また領収書を出すのもこれ当然であると思います。これは我々スーパーで五十円、百円の買い物をしてもあれば出てくるわけでございますから、そういう指導をしてまいりたいと思います。
  103. 青木茂

    ○青木茂君 医師においては出さないのが多いから我々はそれを言っているのであって、その出さないのが多いという現状を一回厚生省は実態調査をしてくださいよ。厚生省が言ったなんていったらみんな出すから。本当に秘密に調べろとは言わぬけれども、とにかくそういうふうにしていただいて、実態を把握して、患者の側で物を考えてください。  これは医療費制度だけの問題じゃないんですよ。問題は小さいようですけれども、僕は今度の予算全体の問題にかかわってくると思うんですよ。すべて国民である、患者も国民ですね。そういうところに負担を強いてしまって、医療費高騰の本当の元凶であるところの医師側への切り込みというのは物すごく少ない、だから問題なんだ。予算全体だって国民の負担のみ非常に大きいけれども、もっと本当に金を使っているところ、補助金の問題だって、特殊法人の問題だってそうですよ。そういうところへの切り込みというものが極めて薄い。だから、私は領収書という小さな問題を取り上げましたけれども、これは今度の予算全体の性格の問題だということをひとつ十分お気をつけいただきたいと思うわけでございます。  これで関連質問を終わります。
  104. 木本平八郎

    木本平八郎君 次に、大蔵省及び行管庁にお伺いしたいわけですけれども、私は財政のことはよくわからないんですけれども国民の率直な印象として、今、残高が百十兆円になっている、それで将来は、七十二年には百九十兆ぐらいになると、今これだけコントロールしてもそれだけどんどんふえていく公債残高ですね。これがこういう計画で一応うまくいくんだという説明があるわけですけれども、大蔵省としてこれで絶対に大丈夫だという御自信がおありになるのか。それとも、相当危ない綱渡りだというふうにお考えになっているのか、その辺ちょっとお聞きしたいんですけれども
  105. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今、御指摘のとおり、この年度末には百二十兆を超すということになります。それで私どもとしては、そこで国民皆さん方に今問いかけておるという状態だと思います。御承知のように、かつては経済社会七カ年計画というのがございまして、それで租税負担率は二六カ二分の一ぐらいまでにしようと、それで公共事業は二百四十兆にしようというようなある程度定量的な数字がございました。それがたび重なる石油ショックによりまして国際同時不況ということから、例えば二百四十兆の公共事業は百九十兆に下方修正するという大変な見通しの違いといいますか、やむを得ざる事情とはいえそういうものがあった。したがって、今度は八〇年代の経済社会の展望と指針、これにおきましては定性的なものを並べまして、定量的なものといえばよく私が申します七、六、五抜きの四、三、二、一、すなわち七ないし六程度の名目成長で、五がなくて、四が実質成長、三が消費者物価、二が失業率、一が卸売物価と、こういう数字なんですね。そうすると、その経済の一部である財政というものを今そこからとって、我々は六十五年度に赤字公債の脱却を努力目標として、まずそれを専一に努めましょうと、そして全体の公債残高を対GNP比に対してその後第二段階としてこれを減らしていきましょうと、そこまで申し上げておるわけです。  しかし、それでは余りにも、例えば先生に予算審議していただくに当たっても、定量的なものは全くないじゃないかと、そこで展望とか仮定計算、これをお出ししてこの予算審議の手がかりとしていただいておる。したがって、これをどういう手法で埋めていくかということになりますと、もろもろの仮定計算等で、まあ言ってみれば国民皆さん方に問いかけ、まずは国会の議論を通じ、終局的には受益者も国民でございますし、負担する方も国民でございますから、そこで国民のコンセンサスが那辺にあるかということを求めていこうという姿勢で今臨んでおるということでございますので、定量的な財政再建計画とか、それが今出せる環境にない、それをむしろ問いかけておると、そういう感じてお受けとめいただくことをお願いしておると、こういう現状でございます。
  106. 木本平八郎

    木本平八郎君 今、実は私の質問の目的を定量的なところに的を絞っていこうと思っておったのですけれども、大臣に先を越されちゃったんですけれども、その前にちょっと財政の専門家にお聞きしたいんです。仮に七十二年度に百九十兆ですか何かに公債残高がなっても大丈夫なんだと、日本経済力からいけばそんなことはもう全然気にすることはないんだというふうな御意見もあるようなんですけれども、その辺いかがでしょうか。
  107. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) これは仮定計算をお出ししておりますが、その中で七十二年に百九十兆という国債残高になるケースがございます。それでいいとか悪いとか一切申し上げておりません。
  108. 木本平八郎

    木本平八郎君 いや、私がお聞きしているのは、専門家として、こういう公債の残高というのは国力あるいは経済力との相関だと思うんですよね。小さいところなら一兆でもだめだと、ところがアメリカのような大きなところだったら二百兆ぐらい何ともないだろうということも言えるわけですけれども、その辺の見解、それをちょっと聞かしてほしいんですが。
  109. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 国債残高が、例えばGNPに対する比率がただいま四一%ぐらいでありますが、これがどの程度ならいいかということを数字で申し上げる学説とか理論というのはないと思うんです。ただ、GNP比が年々非常な勢いで上がってきておるということは問題ではないかと、現在そういうような状況でございますので、こういう状況から早く脱却しなければいけない。このGNP比が上がっていくスピードが避ければ速いほど利払い費がふえていくスピードが速いということでございますので、それが今の財政を苦しくしている一番大きな原因だと思います。したがって、その逆を申せば、残高がふえていくスピードをとりあえずまず落としていく、それからその次は、残高のGNP比が減っていくように持っていくという二段構えの考え方で対処していくのじゃないかと思います。
  110. 木本平八郎

    木本平八郎君 それで、昭和七十二年というと大分先になり過ぎるので、よく言われている昭和六十五年に百六十六兆ぐらいですね。このときにGNP比は幾らぐらいになるというふうな想定で計算されていますか。
  111. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) これも仮定計算でございますが、借換債を発行するケース、今おっしゃいました六十五年が百六十六兆余り、そのときのGNP比は三八・六ぐらいでございます。
  112. 木本平八郎

    木本平八郎君 三八・六というのがいいか悪いかは私もよくわからないんですけれども、大体世界の各国のなにを見てましても、そのくらいならいけるのじゃないか。問題は、GNPがそのときに何兆かちょっとお聞きするのを忘れたんですけれども、そこに本当にいくかどうかという問題なんですね。その点に、大蔵当局、財政当局として極めて不安がおありになるのじゃないかと思うんですけれども、まずこれを達成するための前提がどういうものがあるか、成長率とかそういったものにどういうものがあるかちょっとお聞きしたいんです。
  113. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) これは、成長率は一応六・五と、名目成長率は置いているわけでありますが、なぜだんだん国債残高のGNP比がこういうふうに落ちていくかというところは、前提として特例公債を六十五年度ゼロにするように毎年均等に落としていくという前提に立っておりますし、それから建設公債につきましてもおおむね横ばいという前提に立っておりますので、こういうふうに顕著にGNP比が落ちていくわけでありまして、今申し上げました特例公債を六十五年度新規発行をゼロにするという前提は、これは歳入歳出両面にわたりまして非常な努力をしなければなかなか到達できない課題であると、これはもう大臣がしばしば申し上げているとおりであります。
  114. 木本平八郎

    木本平八郎君 それで、ちょっと時間がなくなってくるので少しはしょって、先ほどの定量という問題に入っていきたいんですけれども、我々というか、国民として非常に不安に感じているのは、財政当局が、例えば特例公債を五十五年にやめるとおっしゃった。それが五十七年に延びた、それで五十九年ですか、それでまた今度六十五年度と。それでもう今や、ああ言っていても多分六十五年でもまずだめだろうと、こういうふうに思っているわけですね。最近、政治に対する不信というものは見透かしているわけですね。例えば選挙のときには増税はしませんと口をぬぐっておられたんですね。ところが同氏は、選挙が終われば必ず増税すると知っていたわけですね、案の定だと。そういうふうに何を言われてもみんな見透かしてしまっているわけですね。その辺の不安を取り除かないとこれはもう非常に大問題じゃないかという気がするわけですね。その辺で普通対案があるわけですね。もしもそういうGNPが達成できなかったら、あるいは名目成長が六・五%ですか、六・五が達成できなかったらどうするんだというふうな対案を常にお考えになっていると思うんですけれども、その辺はどうでしょうね。
  115. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 今申し上げましたのは、六・五というようなのは仮定計算の前提としてそう置いておるということでございます。御質問の趣旨は、六十五年度に特例公債を脱却することを政府は努力目標にしているじゃないかと、これは昨年の八月に決めました経済の「展望と指針」におきまして、財政につきましては六十五年度特例債脱却を努力目標として努めていこう、こういうことでございまして、じゃ六十五年度脱却への具体的な経済と財政の数字的な道筋というものがあるかとこう申されれば、それは数字的にはない、それは努力目標として努めていくんだと、こういうことで我々歳入歳出両面にわたりまして努力していこうということなんでございます。
  116. 木本平八郎

    木本平八郎君 それは要するに、六十五年に多分だめだろうと我々は見透かしているわけです。ところが、それはどうしてもやっぱり六十五年に脱却しなければいかぬということになると、どうも六十三年、四年で危なくなってきたら、やっぱり次の手を打っていくということは絶対必要だと思うんですね。これはやっぱり政府としてもその辺を考えていただかなければいけない。ところが過去を見てみますと、こういうビジョンはいろいろ書いておられるけれども、それが諸般の事情でできなくなりましたと、ついては、もうこうするしかないと、それでずるずる引っ張られて百十兆ですか、これも結局最後は国民に払わなければいかぬわけですね。その辺でもう少しあらゆるケースを考えて手を打っていくという姿勢が政府全体に足らないんじゃないか。民間の発想からしたら、もうそんなことしたら一遍につぶれてしまいますが、その辺がどうもあるのじゃないかという気がするんですね。  それで、ちょっと時間のなにがありますけれども、昼前に一つだけお聞きしておきたいんですけれども、要するに歳出歳入の要調整額が六十年度三・九兆、六十一年度五兆ですか、こういう数字が出ていますね。これについては実際には歳出をカットするか、歳入をふやすかどっちかですね、歳出カットをどういうふうに考えておられるかちょっと説明してほしいんです。
  117. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 一般歳出につきまして、中期展望におきましては後年度負担推計、現在の制度とか施策を前提にすれば、後年度においていわば自然にこのくらいふえていくだろうという前提でこれは試算しているわけであります。したがいまして、一般歳出につきましてもそういう点を見直しまして、いかに抑制していくかということをここ二、三年毎年やっているわけでございまして、去年とかことしは前年度並み、おおむね前年度並みまで抑制したわけでございます。それだけでそれじゃ後やっていけるかというと、歳入歳出全体にわたりまして、それぞれの項目全体にわたりましてメスを加えていかざるを得ない。この前も質問にお答えいたしましたが、国債費でございますとか、地方交付税につきましても考えていかざるを得ないと思いますし、それから税外収入等につきましても考えていかざるを得ない。そういう各方面にわたりまして努力を重ねていかざるを得ない。それは大変厳しい道でございますが、そういうことで要調整額をなくしていくように努力してまいりたいと思います。
  118. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 午前の質疑はこれまでとし、午後一時委員会を再開し、木本君の質疑を続けます。  これにて休憩いたします。    午後零時一分休憩      ―――――・―――――    午後一時三分開会
  119. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 予算委員会を再開いたします。  昭和五十九年度総予算三案を一括して議題とし、休憩前に引き続き、木本平八郎君の質疑を続けます。木本君。
  120. 木本平八郎

    木本平八郎君 午前中に引き続いて質問したいんですけども、ちょっと時間がなくなってきているので、財政再建が非常に大変だということだけ確認したいんです。  まず、先ほどの要調整額ですけれども、これを自然増収でカバーできるだろうというふうなお考えですけれども、これは極めて難しいのじゃないかという感じがするわけです。したがって、先般来中曽根総理が何回も否定されていますけれども、大型間接税の導入が多分あるんだろうというのは、これはまた国民は見透かしているわけですね。早ければ来年にもやるだろうというふうに思っているわけですけれども、ところがこの間接税というのは、いろいろ計算がありますけども、途中省いて私の計算では、三百兆のGNPに対して二・五%とか三%とかやっても三兆円から五兆円ぐらいにしかならないわけですね。そうすると、先ほどの要調整額をカバーするのがいっぱいだと、したがって仮に自然増収があっても国債の償還には向かない。それで、こういう間接税を入れても国債の償還はやはり予定どおり一兆円ぐらいずつしかいかないんじゃないかという気がするんですが、その辺どうでしょうか。
  121. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず基本的に、木本先生のお話のありました脱却年度を五十九年から六十五年、今度率直に言って、五十九年はあきらめました、六十五年にしますと言うのは我々としてはかなり勇気の要った幅でございます。それはやっぱり政治不信というお言葉をお使いになりましたように、従来が余りにも見通しが違い過ぎたということの方がむしろ政治不信につながりはしないかと、こういうことで、ある整合性は八十年代の指針と展望の中に持ちながら、かなり思い切って努力目標の設定を変更したと、こういうことでございます。  それから自然増収の問題でございますけれども、今度の仮定計算というのは、今六ないし七の名目成長率の真ん中の六・五をとってそれに十年間の平均値の弾性値一・一を掛けたものでございますだけに、これを仮に七%成長にして計算すれば、それは今おっしゃったように自然増収等がかなり期待できますけれども、やはり整合性といえば六ないし七の中間値と、こういうことをとったわけであります。したがって、今大型間接税問題に対する御言及もありましたが、確かに大型間接税、これを総理の口をかりますならば、多段階で幅広く、しかもかなりの額、こういう認識だと。じゃ、単段階はどうだと、こういう御質問も出てまいります。私どもが言っておりますのは、税制調査会で指摘されておりますので、幅広い検討だけはしなさいよと、したがって勉強は続けていこうと。ただ、ちょうど私が五十四年、五十五年、また大蔵大臣の当時で、一般消費税(仮称)がぽしゃった時期でございまして、だから本当に国民のコンセンサスがそこにあるという判断をしなければ、これは実際問題乱暴にやれるものじゃないという反省もあるわけです。  したがって、その要調整額をどうするか、要調整額をもう一つ仮定の事実に基づくとすれば、現行の施策、制度をそのままということでございますから、ここにもう一つ、二つメスを入れる歳出削減の問題も出てくるじゃないか。いよいよぎりぎりになると、サービスを受ける方も国民だし、その負担する方も国民だから、そこでどこにコンセンサスを見出すかという、少しくおれについてこいという感じでなしに、一緒に考えましょうと、こういう今姿勢で対応しておるわけでございますので、私どもも、そういう仮定計算の上に立ったものとしても、先生がおっしゃるように、そう容易に要調整額が自然増収とかそういう問題で埋められるものとは思っておりません。したがって、切り込みということになると、痛みを受けるのもまた国民、負担するのも国民ということになれば、どこにそのコンセンサスを求めるかというのが今の精いっぱいの、この国会等の議論を通じながらこれから模索していこうということでございますので、歳入歳出両面にわたっていかに合理化していくかということを毎日考え続けていかなきゃならぬ。非常に正確さを欠く答弁でございますが、政治姿勢とでも申しますか、そういうことでお答えをしたわけであります。
  122. 木本平八郎

    木本平八郎君 今、大臣が勇気を持ってその延ばすということを言わざるを得なかったと。今後ともぜひその勇気を持っていただきたいんです。  それで、細かい仕組みについてはほかの委員会で質問することにしまして、もう一度。我々見ると、これは財政再建というのは本当に大変なことだと。この際やはりあだやおろそかじゃうまくいかない、本腰を入れてやらなきゃいかぬという状況だと思うんですね。これをやっぱりはっきり国民に訴えるべきじゃないかと思うんですけれども、その辺はいかがでしょうか。
  123. 竹下登

    国務大臣竹下登君) そこで、いろいろ財政の現状について国民皆さん方にも御理解をいただこうといろんなPRをやっておりますけれども、財政というのはなかなか茶の間へ入りにくい課題でございまして、一生懸命私どもも努力いたしました。特に前大蔵大臣の渡辺美っちゃんは茶の間へ入りやすい顔でございますので、だんだんそういう形で茶の間へ入りながら、国民皆さん方にも御理解をしていただくことによって初めてみんなのコンセンサスができてくるという感じを私どもも持っております。  それと同時に、もう一つ国民皆さん方に理解していただきたいのは、やはり企業経営と違って、仮に今赤字公債の発行をするなりいろいろな手を打つなりしても、それが企業経営であれば数年後に果実を生んでもいいが、予算というのは単年度主義でございますということと、それからやっぱり失敗がトタで国民の負担増に結びつくというところで、歯切れが悪い運営とかという批判を受けがちなものでございますので、その辺も国民の皆様方に対するPRはこれからも努力していかなきゃならぬ課題だと思っております。その最高の場が本当は国会であると、こう心得ております。
  124. 木本平八郎

    木本平八郎君 そこで、行管庁長官にお伺いしたいんですけれども、こういう財政を再建していくということになると、何としても行革を推進しなきゃいかぬと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  125. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 行政改革は行政の組織あるいは機構、運営全般にわたっての改善合理化を図っていく、能率のある行政の仕組みにつくりかえるということ、そして同時に、どうしても硬直化しますから、世の中の変化に機敏に対応できるような行政にしなければならぬ、これが私は行政の改革であろうと思うんです。その過程において、当然のことながら経費の節減ということが出てくるのは当たり前のことでございまして、ただそれだけに財政収支の改善、それを唯一の目的にしたものでは理論的にはないわけでございます。しかし、今回の土光臨調の答申というものは、そもそもの発足が厳しい財政の状況のもとで何としても財政の再建をやらなければならぬじゃないかと。しかしこれは、経費の削減その他でやはり国民皆さんに痛みを伴うことにならざるを得ない、ならば、今国民皆さん方の中には、行政の仕組みの中にいろいろな不合理があるではないかと、まず行政それ自身が姿勢を正すべしということが私は今度の第二臨調発足のゆえんであったと思うんです。そういうようなこともございますし、同時に財政再建を何としてもやらなきゃなりませんから、理論はそういう理論であっても、私は、今度の行政改革というものは財政の再建に役立つような行政改革でなければならぬということで、政府としても懸命の努力をしていこうと、かように考えているわけでございます。
  126. 木本平八郎

    木本平八郎君 確かに、おっしゃるように、去年どことしは行政改革がうまくいっていると思うんです。これからいよいよというところだと思いますけれども、素朴な印象では、どうも内閣は最近行政改革が一歩後退しているんじゃないか、何か教育改革とかあちこちに一生懸命やって、どうもこれ忘れているのじゃないかという気がするんですけれども、その辺いかがでしょうか。
  127. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) そういう声があることは私も承知をいたしております。ただ私どもは、去年の改革が第一歩、入り口付近だろうと。それで、ことしの国会に御審議をお願いする三十本の法律改正があるわけです。これがやはりいよいよ本格的な行政改革になっていくなと、こう考えておるわけです。やはり国政の最重要課題でございますし、同時にまた行政改革は、本当は、何といったって熱しやすく冷めやすい国民性もありますし、こういう難しい問題であればあるほど熱いうちにやってしまわなければ私はいかぬなと、こういうつもりでございますけれども、本来的にこの仕事は時間がかかる。例えば年金の統合の問題、これは長年の課題ですね、去年から取りかかった。しかし、完成の日時は七十年といったようなことでございますので、ここはやはり熱いうちにやろうという気持ちを持ちながらも、相当長期にわたらざるを得ないということでございますから、政府としては、やっぱり肝心なことは、行政改革というのはこれまた国民になじみにくい中身なんですね。しかしながら、これはどういうことなんだということを本当に平易に訴えて国民の理解と支持を仰いでいく、これが私は一番大切ではないかと、かように考えまして今後とも私どもとしては最大の努力を傾けていきたいと、かように考えております。
  128. 木本平八郎

    木本平八郎君 長官は前回の内閣では官房長官をやっておられまして、今回行管庁長官、普通の我々の認識では、中曽根内閣においての行革の中心は総理と後藤田長官だというふうに認識しているわけですね。それで、ぜひここでお確かめしたいのは、やはり長官としてはこの行革に自分の政治生命をかけていくというふうなお覚悟があるのかどうか、その点ちょっとお伺いしたいんですがね。
  129. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) これはやはり中曽根内閣の看板の政策でございますから、中曽根内閣としては行革の推進に最大限の努力をしていく、こういうつもりだろうと思います。私はいつどうなるかわかりませんから、その日その日をともかく大切にして、今は行政管理庁の長官でございますから、最大の努力を行政改革にささげていきたいと、かように考えております。
  130. 木本平八郎

    木本平八郎君 それで、少し生意気なことをお聞きしたいんですけれども、先ほどの百十兆円の赤字国債も、歴代自民党内閣のはっきり言ったら失政の積み重ねだと思うんですね。今度の行革も失敗するとまた十年後にツケがくるわけですね。お二人、いずれか総理になられるとかといううわさもありますけれども、そのときにやっぱりあれはおれは関係がないんだと言われると困るわけですね。その辺の党としての、内閣としての責任ですね、その辺をどういうふうにお考えになっているか、ちょっとお二人にお伺いしたいんです。
  131. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは百二十兆ありまして、その百十兆が五十年代以後でございます。したがって、これは日本の戦後の経済史をひもといてみましても、一九四五年に戦争が終わって最初の五年間は、お互い同じゼネレーションでございますから、食うに精いっぱい、その次の私は五〇年代というのはある意味において前進の時代ではなかったかと、それから今度六〇年代にいわば高度経済成長、まあ前進の時代から繁栄の時代とでも申しましょうか、それで七一年のドルショックというものがやはり一つのきっかけになりまして、続いて七三年暮れの第一次石油ショック、引き続き第二次石油ショックと、だから確かに本当の意味における財政がこういう状態になったというのは五十年度以降と言っていいんじゃないかなと。  一方、それじゃ国民経済はどうかといいますと、ちょうどその年次に合わせてみますと、二十五年前が一人当たり所得がアメリカの大体五分の一、十五年前で三分の一、十年前で半分ちょっと、それで五年前で十対八ぐらい、今やまさに肩を並べると。したがって、国民の側にも財政の問題を問いかけていくだけの余裕というのは、こちらが余裕がありますと申し上げては非礼ですが、そういう充実した面もある。したがって、そういう歴史の積み重ねの中に、今おっしゃいましたように、さて自由民主党の、今は連立政権でございますけれども、単独政権がずっと続いているわけです。それはやっぱり政権政党としていつでも厳しく受けとめていかなきゃならぬ課題だと。  ただ私は、議会制民主主義というのは、これは当然政権交代を前提としたものでございますから、したがって半ば永久政権のごとく私どもが政権を担当しておればおるだけに、しょっちゅう身を引き締めていなければならぬ課題だと。マスコミの批判も、まあ学生時代には七対三で、いわゆる反体制には三、体制側には七の批判が絶えず当たる。それが例え九対一であってもそれに耐えていく、また自助能力とまた自己反省というものをしょっちゅう持っていかなければならぬのがいわば政権政党の使命であり、また、ある意味において人間としては業としてそれを受けとめていかなければならぬではなかろうかと、こんな感じがしております。
  132. 木本平八郎

    木本平八郎君 そこで、朝から繰り返し申し上げておりますように、国民というのは案外賢くて、ちゃんともう見透かしている、知っていてだまされているわけじゃないけれども、やっているわけですね。この際、やはり政府の方から財政が本当に大変なんだ、いわばがん患者にあなたはがんなんだということを宣告して、それでやはりみんなで、政府も本当に政治生命をかけてもらわなきゃ困ると思うんです。それで、みんなが痛みを分かち合って、これに真剣に取り組む時期じゃないか。それでこの時期をおくらせると、もはや手おくれになるのじゃないかという気がするんですが、その辺いかがでございますか。
  133. 竹下登

    国務大臣竹下登君) そういう意味において、長期の展望に少しでも立ってということから、今度も制度、施策の根本にまでさかのぼったいささかの歳出削減というものもやってきた、こういうことでございますので、なかなか外科手術は容易でない。しかしながら、その手術というよりも、国民の側の理解というものを求めていく努力をこちらとしてはやっぱり精いっぱいやらなきゃならぬ、そういう考え方に立って対応していくべきであると絶えずお互い心に言い聞かしておるということではないかと思っております。
  134. 木本平八郎

    木本平八郎君 それで後藤田長官、外科手術というのは、やはりもう現状では行政改革だと思うんですけれども、これはもう相当痛くてもやっぱりやらなければいかぬのじゃないかという感じがするわけです。ところが、前回も同僚議員から一応の質問がありましたけれども、そのときは参議院を少し比例代表で少なくした方がいいのじゃないかというふうな発言だったわけですけれども、やはり議会も定数削減というふうなことを考えて、まず隗より始めよで、国民運動で真剣にやらなきゃいかぬときではないかと思うんですけれども、その辺いかがでしょうか。
  135. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 先般のこの委員会でもそういう御議論が出ましたけれども、あのとき総理が御答弁になりましたように、これはやはり行政府の者として、立法府の構成について積極的に意見を述べるということはこの際はいかがなものであろうかということで、ここらで御勘弁願いまして、気持ちの内は御推測を願いたいと、かように思うわけでございます。
  136. 木本平八郎

    木本平八郎君 多分そういうお答えがあると当然覚悟をしているわけですけれども、それで先ほど後藤田長官も、こういう行政改革に政治生命をかけるとおっしゃったわけですから、やはり国会の問題、こっち側の問題ということじゃなくて、行管庁長官として国会の方にお願いする、そしてどうしても行政改革の一つの引き金というか導火線というか、それにしていただきたいという姿勢があっていいんじゃないかと思いますが、いかがですか。
  137. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) お気持ちはよくわかります。御意見として拝聴さしていただきたいと、かように思います。
  138. 木本平八郎

    木本平八郎君 この問題は自分で自分の首をくくるようなことになりますから、もうこの辺でやめておきます。  次に、農林省にちょっとお伺いしたいんですけれども、食糧危機の問題についてなんですけれども、ことしは非常に雪が多かった。それで四月一日にも雪が降ったというふうな異常気象の発生があるわけですね。こういう状況を踏まえて、今たまたまアメリカが非常に豊作で、食糧の世界的な需給のバランスがとれていますけれども、こういう異常気候が続くとすれば、アメリカがもしも不作になったら、日本の食糧自給率は三三%しかないという点から大変な問題になるのじゃないかと思うんですけれども、この世界の食糧の需給の展望について農林省にお伺いしたいんです。
  139. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) お答えを申し上げます。  最近、確かに異常気象等が続いておりまして、食糧の問題についていろいろな問題が出ていることも事実でございますが、最近、国連環境会議におきましても、耕地問題につきましては砂漠化の進行、あるいは最近では太平洋の東部のエルニーニョ現象であるとか、また米国、豪州における熱波、干ばつ等によりまして、非常に世界の食糧需給事情が、そういうものをめぐる環境が不安定であるということは御指摘のとおりでございます。ただ、短期的に世界の穀物需給の動向を見ました場合、米国は非常に大きな生産力を持っておりますが、この過去三、四年は過剰だったために、去年、おととしあたりはむしろ減反政策を強化しているというような状況でございます。しかしながら、現在ではアメリカ初め豪州その他の主要穀物輸出国というのは十分な繰越在庫を持っておるというので、我が国への供給には心配はないというように考えております。  ただ、中長期的に食糧需給を見ました場合には、やはり今後人口の増加、現在約四十二億の人口が二〇〇〇年には約六十二億になる。約五割増加をいたします。それも多分に発展途上国において非常に多い。反面、耕地はわずか四%しかふえない。その間、生産性の向上等によりまして収量は増加するといたしましても、非常に逼迫基調が長期的にはあるのではないかというように心配をいたしております。米国政府あるいは農林省、FAO等におきましても中長期の予測を行っておりますが、やはり中長期的には決して楽観を許さない状況であるというふうな現状でございます。
  140. 木本平八郎

    木本平八郎君 これは将来の可能性の問題ですから、今からこれをどうこう言っても水かけ論になる可能性はあるんですけれども、今農林省も決して安心できないというふうな御意見なんですが、それで私ども終戦後の経験でも、この食糧難というのはもう大変な苦しみだという感じがするわけですね。ところが現在は、あの当時と対応力というのは大分違っているんじゃないかという気がするんですけれども、その辺はいかがですか。
  141. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 今、御指摘のとおり、戦後日本人の食生活が非常に変わってまいりまして、戦前の穀物主体の食生活から、最近では畜産物であるとか、あるいは野菜、果実、そういうものを入れました多分に洋風のものになってきておりますが、穀物中心の食生活というものは健康上もやはりいいというような私ども感じを持っておりまして、今後の動向といたしましては、穀物を中心にしながら、主として米でございますが、今、日本でとれる米というものを基幹にしながら、あと畜産物、あるいは野菜、あるいは果実、あるいは魚というようなものを入れまして、多様な現在の食生活水準、こういうものを保っていくのが一番望ましいのではないかというふうに考えております。
  142. 木本平八郎

    木本平八郎君 最近は都市にサラリーマンが集中していまして、それでサラリーマンというのは我々のときとは違って、もう、すきやくわだとか、かまなんというのは、使うところか見たこともないという連中ですね。そうなると食糧不足になっても、ゴルフ場の芝を引っぱがして芋畑をやれといったって農作業もできない。そういうことで、もう昔に比べて都市のサラリーマンというのは極めて脆弱だ、この食糧不足に耐久力がないと考えられるんですけれども、その辺はいかがですか。
  143. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 御指摘のとおり、都市のサラリーマンの方々に農産物供給問題まで御心配いただくということは私ども農政を担当している者としては非常に残念に思うわけでございます。農政の基本といいますのは食糧の安定供給、安全保障の確保というものがやはり最重要課題であるというふうに私ども考えておりますので、農政の展開におきましても、それを基幹としてやっております。  そこで、現在の食糧自給の問題でございますが、確かに御指摘のとおり食物自給率、これは総合的には三三と言われておりますが、これは実は価格価値換算でございまして、これは米であるとか、麦であるとか、魚であるとか、そういうものをそれぞれの自給率を全般として見る場合、単なる便法としてそういうものをとっているわけでございます。  個別に見ました場合には、米はここ三、四年余り不作が続きました関係で現在は在庫も逼迫をしておりますけれども、潜在的に見ました場合には現在でも約千三百七十万トン程度の生産力を持っております。これに対しまして、食糧は消費が大体千六十万トンあるいは七十万トン程度のものでございまして、三百万トン程度の潜在生産力を持っている。あるいは畜産物等につきましてはほとんど七割から八割、鶏、鶏卵等に至りましては一〇〇%自給というように、物によりまして非常に違っております。むしろ不足が心配されておりますのは小麦であり、あるいは大豆であり、あるいは飼料でございます。そういうものは主として土地利用型作物でございまして、反面、私ども今申し上げました米あるいは牛乳につきましても、これは消費が減退しているわけではありませんけれども、むしろ消費の伸びが生産の伸びより少ないという意味で供給過剰である。かんきつにつきましては、逆に消費が減退をしておる反面、生産力が依然として大きい、むしろ過剰の問題が現在起こっております。こういう過剰のものを大豆あるいは小麦、飼料というようなものにできるだけ振り向けていくということを私どもは基本にしているわけでございます。  それからもう一点、飼料の問題でございますが、やはり先ほど申し上げましたように、戦後の国民食生活、これは畜産物は切っても切り離せません。今後もまだふえてまいりますが、残念ながら鶏、豚、最近では大家畜の牛でもそうでございますが、トウモロコシ等あるいはメース等に依存をしている。これはなかなか日本で生産がコスト的に合わない、また収量も低いということもございまして、畜産物の種類がふえる限りはやはり今後も飼料の自給率の低下ということは避けられないわけでございます。そこで、私どもできるだけ飼料問題というのは今後の総合的自給率、先ほど申し上げました価値換算で見た場合の自給率、これを表面的によくするためにはやはり飼料問題は一番かぎを握っているというふうに考えているわけでございます。
  144. 木本平八郎

    木本平八郎君 何も農政を心配しているわけじゃなくて、サラリーマンの生死の問題ですから、いかに生き残るかという大問題だから、その辺から私も非常に関心を持っているわけです。  そこで、今の御説明は一応今ベストを尽くしているということだと思うんです。それは誠意は認めますけれども、私が質問したいのは、非常事態になったときにどういうふうにやるんだという点なんです、平時のことはいいんです。そこで、仮に食糧が全部輸入がストップしたとなった場合、今全国の耕地が五百五十万ですね。五百五十万ヘクタールでもってそれを賄おうとすれば大体日本人の栄養水準というのはどういうふうになるのか、ちょっと説明してください。
  145. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) ただいま御指摘の問題につきましては、一昨年、農政審議会におきましていろいろの研究をいたしておりまして、それによりまして、試算でございますが、現在の五百五十万ヘクタールの耕地をできるだけカロリーの高いもの、こういうものに変えていく、具体的には例えば米、バレイショ、カンショというようなものをたくさんつくっていくとか、畜産物につきましてもできるだけ中小家畜の方は小規模な自家飼料でやれるものというようなものにだんだん生産状況を変えなきゃいかぬわけでございますが、そういう試算を前提にしました場合には大体二千カロリー程度、やはり日本人の国民の基礎代謝量は大体千四百五十カロリーと言っておりますので、日常の生活は十分可能であるというようなところまでは維持できるだろうというように考えております。これ以上やるためにはやはり現在の五百五十万ヘクタールの耕地をさらにふやしていくというようなことが必要になってくると思います。
  146. 木本平八郎

    木本平八郎君 その二千カロリーというのは昭和何年ころの生活水準でしょうか。
  147. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 大体昭和二十九年ごろの時期に当たろうかと思います。
  148. 木本平八郎

    木本平八郎君 昭和二十九年というのは大分よくなったときですけれども、それでも大変だったと思いますが、それで、まずそういう備荒対策を考えるときに日本の場合稲作技術といえばやっぱり水田だと思うんですけれども、その水田の生産力を上げるということが非常に必要だと思うんですけれども、水田対策についてどういうふうにお考えですか。
  149. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 質問されたのは水田対策あるいは水田の重要性というような御質問だったと思いますが、日本の国土あるいは長い農業の歴史から見まして水田は農業のやはり基盤であり、これが今後この生産力を維持していく、最大限に維持していくことが一番必要だというふうに考えております。
  150. 木本平八郎

    木本平八郎君 ところが実際は休耕田であり、どんどん化学肥料を使って荒らしちゃっている、生産力が落ちているという状況じゃないですか。
  151. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 御指摘のように、やはり最近有機質の投与が少ないというようなところから土壌の問題についても御心配があることは事実でございますが、私どもは、やはり土壌改良については今国会に地力増進法という形で農地の土壌改良、地力増進の手段につきましては御提案を申し上げる予定でおりますが、基本的には最近四年余りの不作はやはり異常気象だというのが大きな原因でございまして、生産性としてはやはり向上しているというように私ども考えております。
  152. 木本平八郎

    木本平八郎君 いや、土壌というのは、そのときにやろうとしたってだめだと思うんですね。日ごろから土壌を肥沃にしておかなきゃならぬという必要であると思うんです。それに対して今、休耕田だとか転作でごまかしているという点もありますけれども、どうも水田を荒らしているんじゃないかという気がするわけですね。  そこで、私はちょっと逆転の発想で提案したいんですけれども、要するに休耕田を全部、結論的には復活して、それで今、休耕田になっているのは大体七十万ヘクタールあると聞いているわけですが、その五十万ヘクタール程度、今転作したのを二十万として、五十万程度で米をフル生産する。そしてその五十万ヘクタール、何か加工用、原料用ですかに六万ヘクタールあるといいますから、四十四万ヘクタールですね。そうすると、大体四十四万ヘクタール、全部米をつくるということになると、どのくらい生産量は見込めますか。
  153. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 現在の単収の水準から見まして、平均的には大体四百八十キログラムでございますが、質の悪いものを考えれば大体五百キロということで、全体としては約二百二十万トンというふうになろうかと思います。
  154. 木本平八郎

    木本平八郎君 私は、この二百二十万トンですね、これを五トンで、今多収穫米をやるという発想を持っているわけです。私は、鴻巣の農業センターで多収穫米中国九十一号ですか、あれを試食に行きましたけれども、結構あれは食えるじゃないかと。終戦後我々の食った外米だとか黄変光なんかに比べたら非常にいい。あれならいざとなった場合いけるという感じなんですが、あれを植えて、それは今五トンですけれども、将来品種改良をしていってハイブリッドなんかできてくると十トンも可能だという話も聞いているんですけれども、その辺はどうでしょう。
  155. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 先生今御指摘のように、私ども長期的に十五年の計画を立てておりますが、今の収量を大体五割程度上げるということを目標に現在やっております。その第一段階は大体三年間、五十五年から始めておりますが、大体一割程度アップをする、それが先生先ほど言われた品種、中国九十一号というように思っておりますが、ただ全国平均的に収量を上げるためには、先ほど申し上げましたように五割の水準を上げるには十五年程度はかかる、どうしても品種改良が平均的にいくにはそういうものがかかる。  それからもう一つの問題は味でございますが、やはり戦後非常に国民の舌がよくなってきておりまして、米でも最近はいわゆる四類米、五類米と言っておりますが、そういう味の落ちるものにつきましては、どうしても米から離れてまいります。むしろ、新潟、仙台、いわゆるササ、コシですね、こういうものにどうしても偏っているというのが現状でございます。
  156. 木本平八郎

    木本平八郎君 それで、私のアイデアは、要するに水田の農業生産力は最高限度に保っておく、そして平時はササニシキ、コシヒカリのような、うまいけれども収量の少ないものをつくっておく、そしていざ非常時になればまずくてもいいから、多収穫米をやって飢饉に備えるということなんです。それで、平時としては千百万トンぐらいですか、食糧として一千万トンぐらいあればいいということなんですけれども、千三百四十万トン、それが多収穫米でふえても、四百万トンぐらいふえるかもしれないですね。それをじゃどうするかということがあるわけです。私はむしろ、新聞なんかに出ていますように、モザンビークのようなああいう世界で飢えている国民というのは四億人もおるわけですね、そういうところに経済援助で回したらどうかということを考えているわけですが、外務省いかがですか。
  157. 柳健一

    政府委員(柳健一君) お答えいたします。  開発途上国に対する食糧援助でございますが、御案内のとおり、余剰米が生じましたときに、過去、昭和四十六年から四十九年とそれから五十四年から五十八年でございますか、いわゆる食糧援助規約に基づく援助といたしまして使用いたしてまいったわけでございますが、昭和五十八年度で終わりまして五十九年度から使えなくなっている。そこで、この食糧援助規約でございますが、この食糧援助規約によりますと、加盟国が食糧援助を行う場合には食糧援助規約及び小麦貿易規約の加盟国、特に開発途上国からの援助用の穀物の買い入れを優先するようにということを勧告いたしております。したがいまして、先ほど申し上げました期間に私どもが余剰米を使っておりましたときですら、これは十分尊重して、例えばタイとかビルマからということのお米を使ってきているわけでございます。  そこで、今、先生の御質問の、また余ったときにはこれを援助に使ったらどうかということでございますが、これは今申し上げました食糧援助規約の条文の趣旨を十分尊重した上で、今後また対処していくということになろうかと存じます。
  158. 木本平八郎

    木本平八郎君 もちろん平時的な考え方ならそうだと思うんですけれども、民族一億二千万が生き延びられるかどうかという観点から考えると、当然そのくらいの交渉はしなきゃいかぬのじゃないかという私は危機感を持っているわけです。まあ本来なら、今、山村大臣が行っておられますけれども、米国とソ連の間には穀物協定があるわけですね。ところが、日本はそういう保障がない。安保条約はありますけれども、食糧の安保はないわけです。ある意味ではソ連よりももっと不利な立場に置かれているわけです。こういう米国の食糧優先供給保障みたいなものを取りつける可能性はどうでしょうね。
  159. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 昭和五十年ごろだったかと思いますが、当時の安倍農林大臣とバッツ農務長官の間におきまして三年間の長期の安定供給を保障する取り決めのようなものをやったわけでございますが、その後もやはり穀物が過剰であった時期にそれが果たしていいかどうかというような議論もございました。ただ、アメリカはやはり日本の最大の友好国でございますし、日本には優先的に供給するんだというようなことがございまして、お互いに毎年、穀物につきましての情報交換ということをやっております。また、私ども昭和四十九年当時におきまして、例の石油ショックの後、大豆の禁輸措置があったという経験もございまして、アメリカにおきましても現在、法的な協定はございませんけれども、そういう禁輸措置はとらない、私どもには十分な情報交換をし、できるだけ供給するという約束がございます。
  160. 木本平八郎

    木本平八郎君 種々困難があることは当然だと思うんです。それを一つ一つ克服していくというのは、これからの政治の課題だと思います。  そこで、私なりに少し計算してみたんですけれども、過剰米を援助に使うという場合、仮に援助米を二百二十万トンとして、この中で加工原料用には三十万トン今計画で充てるという話ですね。これが七万円、そうすると二百十億円、これは買い上げ価格が十五万円で処理費用が二万円、それからメーカーに売り渡す値段が十万円で、差し引き七万円という計算なんですけれども。それから援助米を政府が半額ぐらいで買い上げる。今、食用米が三十万円ですね、三十万円を十五万円の半額ぐらいで買い上げるとして、これを無償援助に振り向けるとすれば、二百二十万トンで三千三百億円なんですね。それで、回転在庫を百五十万トン持っているとして、一年の保管費が大体トン当たり二万四千円ということで三百六十億円。それで合計しますと、無償援助に要る金が全部で三千八百七十億円になるわけです。それで、それ以外に、多収穫米ですから大型圃場の整備費が要るだろう。これが、わかりませんけれども、大体三十万ヘクタールぐらいを百五十万円ぐらい掛けて四千五百億円ぐらいかかる。それを十年間で割ると、一年間にすれば大体四百五十億円、これを合計しますと、二百二十万トンのものを援助に使うという構想で四千三百二十億円の財政負担があるわけですね。  それに対して、逆にそれをやることによって転作奨励金が四十五万円要らなくなりますね、五十万ヘクタール分。これが二千二百五十億円引ける。それから、いわゆる多収穫米というか、他用途米の奨励金が今七万円ずつ出ていますね、これが三十万トン分引けるから二百十億円引ける。そうしますと、この構想に必要な財政負担というのは差し引き千八百六十億円なんです。約二千億円ですね。この計算に間違いがないかどうか、ちょっと確かめていただきたいんです。
  161. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) ただいまの数字の基礎を今伺いましたので、実は一つ一つ妥当かどうかについては申し切れませんが、大ざっぱに言いまして、大体その程度の感じではないかと思いまう。
  162. 木本平八郎

    木本平八郎君 そうしますと、全部で二千億円かかるとそれで、今現在、予算の規模が五十兆円ですね。五十兆円に対して二千億円というのはわずか〇・四%なんです、〇・四%。これは少し説明が足らぬかもしれませんけれども、要するにこれだけのことをやっておけば一億二千万の人間が何とか生き延びられる、二千カロリーぐらいで生き延びられるということなんですね。だから、これだけのことをやっておけば、いざとなったときには多収穫米を五百五十万ヘクタールにつくって、援助をストップすれば何とか日本の中で賄える、二千カロリー程度で賄えるという計算なんですけれども、その辺はどうでしょうか。
  163. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 今、御提起の問題につきましては、例えば十五万円でそれだけのものを農家が生産をするかという点がまず第一の問題としてございます。現在、生産費でトン当たり約三十万円近い金でございますから、それを仮に十五万円で買う。私どもは現在、他用途米を計画いたしておりますが、これが今大体一俵一万円で十七万円、数量としては大体二十六万トンぐらいでございます。これを二百数十万トンまで引き上げることは可能かどうかということがまず第一の問題でございます。  その次に、これを輸出に充てる、あるいは無償援助でやるか、あるいは有償でやるかにしましても、現在、タイ、インドネシアあるいは米国等伝統的な輸出国がございます。これらの輸出需要に対してこういうものは相当の影響を持ってくるということで、先ほど柳局長からもお話しございましたが、食糧援助にしても輸出にしましても、国際市場の攪乱という意味でやはり各国との協調上いろいろ問題があるというようなこともございまして、この問題についてはなお慎重な検討が要るというように考えます。
  164. 木本平八郎

    木本平八郎君 各国との調整というのは、これは先ほどの援助米、それからODAの問題なんかとも同じで、これはもう非常に解決しなきゃいかぬ大問題だと思うわけです。ただ、解決するときの態度として、民族のサバイバルだという認識でもってやるのとやらないのとで大分違うと思いますので、その辺は別途やっていただかなければしようがないということは私もアグリーいたします。ただ、先ほどの十五万円というのは、十七万円で二十六万トンかなんか買っている、二百二十万トンを全部十五万円で買えるかどうかという問題ですけれども、これは大型圃場の整備なんかをやると生産性が相当上がるし、それで、結構これでいけるんじゃないかと私は思うわけです、専門家じゃないですけれども。  ただ、ついでに申し上げますけれども、農家が米づくりで食えなくなったというふうにしたのはもう全く農政の責任だと私は思うんです。歴代の自民党内閣だとは言いませんけれども、本当に農政の失敗だったと思うんですよ。この際、やはりできれば農民は米づくりで食えるというふうにするのが当然だろうと思うんですね、サラリーマンの立場とちょっと違いますけれども。しかし、それにしてもこういう状況になってきたら、やはり彼らもちゃんと自立して国民のための食糧確保ということをやってもらわなければ困るので、その辺においては利害は一致すると思うんです。  そこで、先ほどの何ですけれども、二千億円なんですね。二千億円で、五十兆円でしょう。これを大蔵大臣にお聞きしたいんですけれども、これだけで民族のサバイバル、生命というか、生活が保障されるとなれば安いものじゃないかという気がするんですけれども、いかがでしょう。
  165. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 二千億円といいましても、それは実際問題、相当な金でございます。だが、民族のサバイバルが保障されるというその対価としてどれぐらいが適当かということになりますと、私もにわかにこれぐらいが適当だろうということもお答えする基礎的な知識を持ち合わしておりませんけれども、今の先生の発想というのは、いわばお米というものを基本に置いて、千九百カロリーとか、二千億というのを根拠として、そうしてその遊休期間といいますか、そういう状態でないときにはこれを開発途上国等々に輸出ないし無償援助をしてという発想でございます。  私どもも、このお米の余剰時代にいつでも議論しましたのは、事実それだけがいわゆる農家の言う生産費所得補償方式の価格として合うものかどうかということと、先ほど外務省からお答えありましたように、やはり私どもが、かつてベトナムとかいろんなところへ援助が行われますときには、その隣接の地帯にあるタイとかビルマとか、そこへ金を出して、そこから送ってもらう、これは開発途上国の主産品でございますから。と同時に、いま一つは、大量なものを輸送するにつきまして、例えばインドのカルカッタならカルカッタの港へ一応着いたとします。着いても今度は配給機構がないわけですね。そうすると、そこでいわば黄変米になり、腐ってしまう。したがって、小さいところから小さい港へそれぞれ送ることによってやっと本当の食糧供給の実が上がる。こういうような問題もございまして、短絡的にその問題を議論いたしてみますと、なかなか難しい問題が数ございます。  それと同時に、いわゆる食糧安全保障の問題については、農林省のオーソドックスな食糧自給度を上げる政策の中におのずから組み込まれていきつつあるというふうに私は食糧安全保障の問題については認識をしております。それと、もう一つは、千九百カロリーとか二千カロリーとかいうところまで詰めた議論を、いわゆる農政当局はしておると思いますが、私どもとしてはそこまでまだ議論したことがございません。
  166. 木本平八郎

    木本平八郎君 それで、たまたま中西大臣がおられるので、ちょっと農業の方の専門家としてお聞きしたいんですけれども、要するに今までの農政というのは、どうも農民対策とか農村対策とか非常に、ミクロ的な見方しかしていなかった。この際やっぱり農政自身を見直すという必要性からも、こういう食糧危機というものがもう現実に非常に身近な問題として迫ってきているわけですから、これをきっかけに、やはり農政全体のあり方を見直してもいいのじゃないかと思うんですけれども、その辺どうでしょう。
  167. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 先ほどからいろいろ伺っていまして思うんですけれども、言ってみれば国民的な課題の一つであろうと思います。そういった意味で、農政審議会でもかねて問題にしておられますし、きょうの御議論のような議論が各方面でなされている。そして十分議論を尽くした上で、そう遅くない時期に、できるだけ早い時期に、こういう問題についてはこう対処しようではないかというような合意づくりができれば大変ありがたいなと考えておるところでございます。農林水産省の事務当局自身はかねて数年前からこの問題と取り組んでおります。きょうのお話だけで尽きる話でもございません。今後とも検討をさしていきたいと思います。
  168. 木本平八郎

    木本平八郎君 それから、水産庁の方にお伺いしたいんですけれども、要するに一つのまた備荒対策なんですけれども、今サケ・マスを放流していますね。サケ・マスというのは放流しておけば、後は四、五年自分勝手に遊んできて、大きくなって帰ってきてくれる、非常に都合がいいわけです。備荒の場合には、なるべく手のかからないものでやっておかなきゃいかぬと思うんですけれども、サケ・マスの養殖というんですか、放流の事情についてちょっと説明いただきたいんです。
  169. 渡邉文雄

    政府委員(渡邉文雄君) 御指摘のように、一般論として言いますと、サケ・マス、特にシロザケは放流しましてから四年目に戻ってくるというのは事実でございます。種類によりましてはなかなかそううまくいかないものもございますが、昭和五十二年に二百海里になりまして、北洋のサケ・マスの日本の沖取りが相当程度締め出されたということがございます。そのことを契機といたしまして、もちろん明治時代からふ化放流の技術開発その他のことが行われておったわけでありますが、五十二年のころを契機といたしましてふ化放流量をかなりふやしてまいってきております。当時、五十二年ごろに四万トン前後でございました回帰量が、現在では十万トンを超しまして、昨年はたしか十二万ぐらいまでふえております。そのために、サケの値段もかなり下がってきているというようなのが最近の事情でございます。
  170. 木本平八郎

    木本平八郎君 私の聞いているところでは、日本のサケ・マスの放流可能な川が約六百六十河川ある、その中で約半分ぐらいが今使われている、まだあと未開発が半分ぐらいあるということですね。その未開発を全部整備して、多少効率は悪くなっても、サケ・マスを放流するということになると、大体どのくらいの生産量というんですか、回帰量を見込めるか、その辺どうでしょう。
  171. 渡邉文雄

    政府委員(渡邉文雄君) 現在、三百四十ばかりの河川でやっております。ただ、気温、サケの生態等によりまして、非常に適する川とそうでない川がございまして、限界的にいえば福岡県ぐらいまでの川は理論的には可能でございます。千葉県ぐらいまで太平洋岸でございますと可能なわけでありますが、実際には例えば北海道の河川に比べますと、そういう限界地の生産力というのが非常に少なくなるのは当然でございます。現在、三百四十ばかりの河川のほかに、残り三百ぐらい理論的には可能な川がございますが、かといいまして倍ということにはなかなかならないかと思います。私どもの全くの仮の計算でございますが、現在の十二万トンの回帰に比べまして二、三割はふえようかという計算は成り立ちます。  ただ、この際特に申し上げたいのでございますが、御指摘の視点からいたしますと、そういうことは非常に望ましいことでございますが、現実の魚の需給という、短期的な需給を見ますと、ここ数年、回帰量が非常にふえたということでサケの価格が非常に下がっております。そのことが他の魚の価格にも大変影響いたしまして、そういう意味での短期的な悩みというのが絶えずつきまどうものであるということにつきましても御理解をいただきたいと思います。
  172. 木本平八郎

    木本平八郎君 それを仮にその未利用の河川に全部やるとすれば、大体金はどのぐらいかかりますか。
  173. 渡邉文雄

    政府委員(渡邉文雄君) 毎年のふ化放流のための事務的な育成費のほかに施設整備等を加えますと、当面二百億前後の金が必要ではないかというふうに思います。
  174. 木本平八郎

    木本平八郎君 いろいろそれを実施するには問題があると思うんですけれども、やはり先ほどの食糧の確保という点から、これは真剣に検討してみる価値があるんじゃないかと思うわけです。  最後ですけれども、この備荒対策を考える場合に、やはり日本には昔から民族の知恵で、マンジュシャゲを植えたとか、山芋を日ごろ平時に植えていたとか、あるいは山の中にクリだとかカキだとかシイだとか、そういうふうなものを植えて非常に備えたわけですね。それで何回か非常に助けられてきたということなんですけれども、こういうのを一つのやはり国民運動として盛り上げるということにおいて、国民のそういう食糧危機に対する意識だとか、そういうものも喚起できるのじゃないかと思うんですけれども、その辺はいかがですか。
  175. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 先ほどもちょっと触れましたが、国民的な規模で考えるべき問題が多々あろうと思います。私の総理府としても、いろんな問題を国民的なレベルで考えていただくような運動をやっていますが、その中に先生お話しのようなことも組み込んでいくということも一つの重要な仕事であろうと思います。
  176. 木本平八郎

    木本平八郎君 最後に一つだけ。  それで、今、食糧危機対策につきましては、これはもう農林省だけでは私は解決できないと思うんです。したがって、政府全体として対策本部的なものをなにして、それを総理府で考えて、いただくというふうなことでぜひ前向きに御検討いただきたいと思うんです。  これでもって私の質問を終わります。(拍手)
  177. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で木本君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  178. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、和田教美君の一般質疑を行います。和田君。
  179. 和田教美

    和田教美君 私は、まず軍縮問題について御質問をしたいと思います。  去年の十一月、十二月と、INF、つまり中距離核戦力の削減交渉、それからSTART、戦略兵器削減交渉というのが相次いで中断をいたしました。これが極度に冷却化した米ソ関係、これのいわば象徴だというふうに見られておるわけでございます。ソ連のチェルネンコ新体制ができましてから、一時この冷え切った東西関係に何らかの緊張緩和の動きが出てくるのではないかというふうな楽観的な見方もあったんですけれども、最近ではやっぱりだめか、INFなどの早期再開は当面望めないのではないかという見方がだんだん多くなってきているようでございます。一部には秋のアメリカの大統領選挙まではだめじゃないかというふうな見方さえあるわけでございます。  そこで、外務大臣にお尋ねしたいんですが、外務大臣としてはどういう判断をされておるか、お聞かせ願いたいと思います。
  180. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) INF交渉は中断したままになっておりまして、ソ連は、アメリカは欧州におけるいわゆるパーシングⅡとかあるいはまた巡航ミサイルを配備以前の状況に返せ、そうすればINF交渉再開に応ずると、こういう姿勢でありまして、したがって今の西側は、そういう方向では困難でありますし、姿勢をとることは困難でございます。さらにまた、アメリカの大統領選挙もやはり米ソ関係を考えるとき、当然ソ連はチェルネンコ政権もこれは頭の中に入れておるでしょうから、そういうことを全体的に判断をいたしますと、なかなかこの交渉の再開というのは難しいのじゃないかと、私も現在の状況では悲観的な考え方をいたしております。
  181. 和田教美

    和田教美君 このINF交渉というのは日本にとっても非常に重要な関係がございます。つまり、ソ連のアジア部におけるSS20対、この六月から配備が開始されますアメリカの艦対地巡航ミサイル、こういうアジアでも中距離核戦力の増強競争というのが起こっておるわけで、直接関係がある問題でございます。そこで、日本としては何とかこのINF交渉を始動させるということが絶対に必要だと思うので、そのために日本政府は懸命の努力をすべきだというふうに思います。西側の中でも、例えば西ヨーロッパの諸国の首脳はかなりこれについて独自的な動きをしておるわけでございまして、例えば西独のコール首相などは、アメリカの大統領に対してとにかく事態を打開するために米ソ首脳会談を早く開けというふうなことを直談判に及んだりしているわけでございます。  そこで、私考えるんですけれども、来るべき六月のロンドン・サミット、ここでこの軍縮問題というのを非常に大きな議題として取り上げて、西側の各国とも連携をとって、日本政府としてアメリカにひとつ米ソ首脳会談を早急に開けというふうな働きかけをやったらどうかと思うんですが、その点外務大臣はどうお考えでしょうか。
  182. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) サミットにおけるどういう問題を議題にするかということは、個人代表で相談をしておりまして、まだ決まったとも聞いておらないわけでございますが、しかし当然、こうしたINF交渉あるいはSTARTの交渉は中断しておる、これが世界政治状況ですから、サミットの首脳が一堂に余すれば、その問題を避けではなかなか通れないのじゃないか。もちろん首脳の判断ですから、中曽根総理がどういうふうに判断するかということにもつながっていくわけでしょうが、避けて通れる問題ではないようにも思うわけであります。そういう中で日本も核軍縮を主張しておりますし、やはりINF交渉の中断が一日も早く終わって再開されるように、やはり国際的にあらゆる努力はしなければならぬと、こういうふうに思います。
  183. 和田教美

    和田教美君 INF、STARTなどが中断されておるというふうな状況が当分続くということであれば、今、春会期を迎えて開かれておりますジュネーブの軍縮会議、これはことしから従来の軍縮委員会が解消されたものですけれども、この軍縮会議の存在がますます重要になってきたと私は思うわけです。これには日本も参加しているわけでございまして、日本が軍縮を訴える場としては国連のほかにはこれぐらいしかないというふうに思うわけです。大いに発言してもらいたいと思うんですけれども、しかしその前に一つ指摘をいたしたいことは、どうも日本の外務省の軍縮に取り組む体制というものが少しお粗末というか貧弱ではないかという考えでございます。中曽根総理は、ことしは軍縮の年だと非常に強調されておるわけですが、その割合には外務省のスタッフというのは貧弱じゃないかというふうに思うわけです。  そこでお尋ねしたいんですが、軍縮会議の日本政府代表部の職員は一体何名ですか。それから米ソその他主要先進国、特に軍縮に熱心なスウェーデンなどのスタッフはどのくらいですか、それをお聞かせ願いたいと思います。
  184. 山田中正

    政府委員山田中正君) 軍縮会議に臨みます各国の体制の比較、各国の事情がそれぞれ異なりますのでちょっと難しいのでございますが、まず昨年を例にとりまして、春夏両会期を通じまして出席いたしました数は、米国が二十名、英国が十名、ソ連が二十八名、西独が六名、スウェーデンが二十三名でございます。我が国の場合は十二名でございますが、二件人事異動がございました者が二重に数えてございますので、実質十一名でございます。なお、常駐しておりますのはアメリカが九名、英国が三名、西独六名、ソ連五名、スウェーデン四名、日本五名ということでございます。これは会議に実際に参加する要員でございます。ただ、ヨーロッパ諸国の場合及びアメリカは会議の場合に出張してたくさん参加しておるという事情でございます。
  185. 和田教美

    和田教美君 外務省の本省の機構ですけれども、国際連合局の中に軍縮課というのがあるわけですけれども、例えばアメリカ、イギリス、西独、スウェーデンなどを見まして、この軍縮問題を一つの課だけで担当しているというようなところがございますか。具体的にこれらの国々の機構をひとつ教えていただきたいと思います。
  186. 山田中正

    政府委員山田中正君) お答え申し上げます。  米国の場合は、軍備管理軍縮庁という機構がございまして、約百六十名のスタッフを抱えております。英国の場合は外務省の中の軍縮部で約二十名でございます。ソ連は外務省の国際機関部で軍縮を担当いたしておりますのは約二十五名でございます。西独は外務省の軍縮軍備管理部で約十七名、スウェーデンは外務省の政務局第六部というところで扱っておりまして、約八名でございます。我が国の場合は現在実員十二名でございます。
  187. 和田教美

    和田教美君 今お聞きのように、日本の軍縮問題についてのスタッフというのは非常に貧弱だということはやっぱり言えると思うんですけれども、今度の政府の行革の内部部局の再編成ということで外務省の機構改革があるわけですけれども、軍縮機構がこの際少し強化されるかと期待をしていたんですけれども、どうも現状維持だということで大変遺憾でございます。ひとつその点は安倍外務大臣、大いに考えていただきたいと思うんですが、いかがですか。
  188. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 全くそのとおりであります。この国際関係、非常に複雑で多岐になってまいりました。外務省は少数精鋭主義でやっておりますが、なかなか人員等足らないわけでありまして、特に軍縮問題は大事でありまして、代表部にやっと一名増員にはこぎつけたわけでございますが、それ以上は困難でございますが、そういう中で全力をひとつ傾けなきゃならぬと思います。
  189. 和田教美

    和田教美君 それでは、ジュネーブの軍縮会議での当面の課題についてお聞きしたいと思います。  日本は核の問題については核実験の全面禁止、それから非核の分野では化学兵器の禁止ということを作業部会で検討するということを最重点課題にして今まで取り上げてきたわけですが、私はこの取り上げ方は適切であると思います。特に、私はジュネーブの日本政府代表部の活動、特に全面核実験禁止について、日本のすぐれた地震探知技術などについて、検証問題などで大いに貢献しているということを評価するものでございます。実際に今の焦点は、もちろん地下核実験も禁止するということにあるわけでございますけれども、STARTとかINFとか、そういう現在既に持っておる核をいかに減らすかという交渉も重要ですけれども、これから地下核実験によってどんどんできていく新型の核兵器をつくらせないようにするというための努力ということも大変必要だと思うわけでございます。ところが、ことしはどうも全面核実験禁止の作業部会を設けるということ自体が危ぶまれておるという報道があるわけでございますが、外務省としてはこの点どういうふうに判断をし、どういう対応をとられておるのかお聞かせ願いたいと思います。
  190. 山田中正

    政府委員山田中正君) 先生御指摘のように、核軍縮の分野におきまして、ジュネーブ軍縮会議で我が国が最重点を置いて努力いたしておりますのが核実験の全面停止でございます。先生御指摘ございましたように、本年まだその作業部会ができておらないのは大変残念でございますが、ただこの問題は、従来から長く取り扱われてきた問題でございますし、私ども努力をいたしまして、極めて近い将来に何とか作業部会設置の方向に持っていくようにいたしたいと思っております。
  191. 和田教美

    和田教美君 ぜひその作業部会をつくるように、そして作業部会が進展するようにということを注文をいたしておきます。  次に、化学兵器の禁止問題ですけれども、これは非常に緊急な問題だと私は思うわけでございます。イラク・イラン戦争で、どうもイラク軍が強力な毒ガス、二種類の毒ガスを使ったということが、名指しこそ避けたですけれども、国連の調査団がそれを指摘いたしました。そして、この化学兵器の使用ということについて安倍外務大臣も談話をわざわざ発表されておるというふうな状態でございます。とにかくこの化学兵器というのはちょっとした費用で簡単につくれるという大変厄介なものでございますけれども、一体、日本政府としてはこういう状況についてどういうふうなお考えを持っておるか、外務大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  192. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今般、国連による現地調査の結果、イラン領内において化学兵器の使用が確認をされたわけでありますが、こうした兵器の使用は一九二五年のジュネーブ議定書違反であり、極めて遺憾であると考えます。かかる立場から、先般私の談話におきまして、今後このような兵器が使用されることのないよう強く訴えたところでありまして、また我が国としては包括的な化学兵器の禁止に向けて、国連及びジュネーブ軍縮会議におきまして引き続き積極的な努力を行っていく考えでございます。
  193. 和田教美

    和田教美君 この化学兵器の禁止問題につきまして、実はジュネーブの軍縮会議でソ連が提案をいたしました、二月のことだったと思いますけれども。化学兵器の禁止問題の進展のために、廃棄の開始から完了まで特定の施設に限って国際的査察員が常駐する監視体制を認めるという、非常に注目すべき提案をしたわけでございます。このソ連提案についての評価はいろいろあって、この化学兵器の禁止というのは、もちろん単に廃棄だけではなくて、開発、生産、貯蔵というふうな問題もあるわけですから、大したことはないという、非常に部分的な提案だという評価もあるんですけれども、私はやっぱりこれはチェルネンコ政権の最初の軍縮問題についてのサインではないかというふうに重視しているわけなんですけれども、この点は外務省どういうふうにお考えですか。
  194. 山田中正

    政府委員山田中正君) 先生ただいま御指摘のように、ソ連は今回化学兵器の廃棄の部分のみでございますが、について恒常的な査察を認めるということを公にいたしました。基本的に検証の問題は、先生も御指摘ございましたように、廃棄の部分だけではなくて、開発、生産、貯蔵全面にわならないと効果的な措置がとれないわけでございますが、ただ、従来ソ連が検証というものに非常に後ろ向きであったという点からいたしますと、やはり今回のソ連の立場というのはそれなりに評価すべきものだろうと思います。ジュネーブ軍縮会議におきましては、化学兵器については作業部会が設置されておりますので、この部会におきましてこの検証問題を効果的なものにするよう努力していきたいと思います。
  195. 和田教美

    和田教美君 防衛庁にお尋ねしたいんですけれども、今度イラクが使ったと言われております化学兵器、これは一体どういうものであるか。それからまた、現在世界でどのくらいの化学兵器が毒ガスその他あるのか。特に米ソの貯蔵量、そういうものについておわかりの点を教えていただきたいと思います。
  196. 古川清

    政府委員(古川清君) まず、最初の御質問でございますけれども、先生も御指摘になりました調査団の報告というのがございまして、私もその点正しい情報として考えておるわけでございますが、この国連の事務総長の報告の中では二つの種類の毒ガスが使われたと言っております。  一つは、マスタードガスと言われているものでございまして、これはびらん性でございまして、皮膚とか肺から吸収しまして、発疹あるいは水泡ができまして死亡に至る。それからもう一つの方は、神経剤の一種のようでございまして、タブンと言われている名前のガスでございまして、これは吸入いたしますと呼吸困難あるいは窒息等の症状が出る。この二つの溝ガスが使用されたということをこの国連の報告書は述べているわけでございます。  それから、世界におけるガスの貯蔵でございますけれども、毒ガスの種類としましては今申し上げた、神経に作用するもの、あるいはびらん性の毒を発生するもの、あるいはホスゲンと言われておりますが窒息剤、あるいは血液のヘモグロビンに作用して死亡に至らせる青酸ガス、あるいはカビから取られます猛烈な毒がございますけれども、ボツリヌスとかそういったカビ毒、こういうものが言われているわけでございますが、世界にどの程度のものが貯蔵されているかということにつきましては、実ははっきりした点わからないわけでありますが、ことしのアメリカの軍事態勢報告の中にこういった記述がございます。これによりますと、若干詳しくなりますけれども、ソ連が神経剤については四種類、びらん剤については六種類、血液剤については一種類、カビ毒については一種類以上保有しておる、アメリカの方は、神経剤については二種類、びらん剤については一種類を保有しておると、こういった報告がございます。
  197. 和田教美

    和田教美君 ソ連とアメリカとどちらが多いんですか。どのくらいの量ですか。
  198. 古川清

    政府委員(古川清君) この点は私どもはっきりした数字はつかんでおりません。
  199. 和田教美

    和田教美君 とにかく今会期でのジュネーブの軍縮会議で、この問題は緊急の問題ですから、ぜひ大きな進展をするように日本政府として全力投球をしていただきたいと思います。  さて次に、私はアジアにおける地域的な軍縮話し合いの場づくりということを訴えたいのですけれども、その前にちょっと関連質問がございますのでお願いします。
  200. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 塩出啓典君の関連質疑を許します。塩出君。
  201. 塩出啓典

    塩出啓典君 外務大臣、外務省にお尋ねいたしますが、宇宙を舞台にした軍拡競争について質問したいと思います。  我が国も、国連におきましてこういう問題に取り組んではきておるわけでありますが、現実にはますますエスカレートしておる、こういう点を非常に憂慮をいたしております。報道によりますと、米国のレーガン大統領は宇宙軍縮交渉をソ連とやることを拒否をし、その理由として、衛星攻撃兵器の検証が困難である、それと、このままソ連の方がはるかに優位を固定する、ソ連の方がはるかに進んでおる、そういうような理由から軍縮交渉をやめてソ連に負けない宇宙兵器開発を強力に推進をしておる。こういう報道でございますが、これについてどのように理解をしておるかお伺いをいたします。
  202. 山田中正

    政府委員山田中正君) お答え申し上げます。  今、先生から御指摘ございましたレーガン大統領の報告でございますが、これはアメリカが、ソ連は既に逆用可能な射術屋システムを保有しておりまして、また改良対衛星システムを含めまして同分野における研究、開発、実験を継続しつつあると、こういう事態にかんがみまして、今次報告書においても、この現時点で検証可能な交渉が行われないのであれば米国の立場が不利になるということを明らかにしたというふうに認識いたしております。なお、報告書におきましては、アメリカが対衛星軍備管理問題に伴う困難性にもかかわらず本件問題の検討を継続する旨、また軍縮会議において宇宙軍備管理問題を検討する用意があるという点も明らかにいたしております。
  203. 塩出啓典

    塩出啓典君 これは外務大臣に要望したいわけでございますが、やはり我が国といたしましても、こういう宇宙への兵器の配備、あるいは宇宙空間における武力行使並びに宇宙から地球へ向けての武力行使を禁止する、こういうような国際条約の締結に努力をすべきである、アメリカのこういう姿勢は非常に反省を求めるべきであると、このように考えるわけですが、外務大臣の御決意を伺いたいと思います。
  204. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 我が国は、近年の宇宙開発のための科学技術の著しい進歩は人類の未来に大きな可能性をもたらすと同時に、宇宙における軍備競争の懸念を生んでいると認識をしております。宇宙の平和利用のための各種プロジェクトに力を注いでいる我が国としましては、宇宙における軍備競争防止に関しても今後現実的な観点を踏まえての十分な検討が進められるべきであると考えております。こうした観点から我が国は、本年の軍縮会議の場におきまして、まず第一歩として、宇宙における軍備競争防止問題を検討するための作業部会が速やかに設置されるように努力を重ねてきております。また、国連総会においても、本問題に関連する決議に賛成し、また決議の共同提案国となるなど、その審議に積極的に参加してきているところでありまして、今後とも積極的に本問題に取り組んでいく決意であります。
  205. 塩出啓典

    塩出啓典君 最後に、これは防衛庁長官にお尋ねしますが、我が国も偵察衛星を持つべきであると、こういうような意見も一部にあるわけでございますが、防衛庁としてはこの問題どう考えているのか、これをお伺いして関連質問を終わります。
  206. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 我が国の防衛は、御案内のとおり専守防衛。専守防衛という立場からいたしますと、衛星というものは非常にいろいろな情報が把握できますのでこれは重要なものだと、そういうふうに考えておりまして、この問題に対する我々が関心を持っておることは事実でございます。しかしながら、現在のところ、この衛星に対して具体的な構想と、そういうものはございませんし、また保有するという気持ちもございません。重大な関心は持っておると、こういうことでございます。
  207. 和田教美

    和田教美君 アジアにおける地域的な軍縮話し合いの場を持てという私の提案について申し上げたいと思うんですけれども、ヨーロッパにおいては今お話ございましたINFにしても、あるいはジュネーブの軍縮会議にしても、さらにまた中部ヨーロッパの通常兵力の削減交渉、いろいろな軍縮ないし緊張緩和、話し合いの場、あるいはチャンネルというものがあるわけでございます。ところが、日本を中心とするアジア部を考えた場合に、全く米ソ関係が敵対しているだけでそういうチャンネルというものは全くできていないわけでございます。いろんな特殊事情はあると思いますけれども日本政府としてもこの辺でひとつそういうものをつくっていく努力を率先して考えるべきではないかと思うんですが、外務大臣のお考えを聞きたいと思います。
  208. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) もちろん我が国は従来から外交の重要な柱として、国連、ジュネーブ軍縮会議の場で核軍縮を初めとする軍縮の促進に積極的な貢献を行ってきておるわけです。また、政府としましては、一般的にはアジア・太平洋地域において真に実効性のある軍備管理、軍縮が実現をすることは長期的に適切な目標であると、こういうふうに考えておるわけですが、現下の諸条件の中ではやはりこのアジア地域だけに限って軍縮問題を協議する、そういう場をつくるということは現実問題としてはなかなか私は困難じゃないかと、こういうふうに思うわけでございまして、長期的な目標として一つのその方向について我々は期待を持つわけですが、現実問題は現実問題としてこれに対応していかなきゃならぬ。そういう面からなかなか困難な点がいまの現実、客観情勢の中にはあると、こういうふうに認識しているわけです。
  209. 和田教美

    和田教美君 その問題とも関連をするわけでございますけれども、信頼醸成措置ですね。これをひとつやったらどうかというふうに思うわけでございます。大韓航空機撃墜事件だとか、最近の日本海での米空母キティーホークとソ連原子力潜水艦との衝突事故などを見まして、極東におけるこの危機回避システムというか、そういうものをつくっていくことが大変重要だと私は思うんです。しかも中曽根総理自身が、今国会の衆議院本会議の答弁で、現在必要なのはアジアの緊張を緩和することと信頼醸成措置を考えていくことだと、こういうふうに答弁されているわけですが、外務省は非常にこれまではソ連との間の信頼醸成措置については消極的な態度をとっておったんですが、安倍さんいかがですか。
  210. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今日の厳しい情勢の中で信頼醸成措置を講ずるということは、これはやっぱりアジア部においても必要であろうと思うわけなんです。そういう意味を踏まえて中曽根総理も言及されたことであろうと思いますが、この信頼醸成措置を行うには、一体、例えばソ連との関係で何をやったらいいか。我々から言うと、例えば北方四島におけるソ連の軍事基地が厳として存在しておるわけでございますが、そうしたやはり軍事基地を撤回してもらうとか、あるいはまたSS20の無用なああした拡張はやっぱりこれをやめて、むしろSS20を極東から撤去する、こういうことがむしろ信頼醸成措置をつくる大きな大前提になっていくのじゃないか、こういうふうに思っておるわけでございます。現実問題としては、期待はし、また希望もし、努力もしなければならぬが、現実問題として日ソ間においてはそうしたやはり北方四島問題あるいはまた極東における軍事力の増強問題というものもありまして困難な点があるわけでございますが、しかしこれは今後の課題として取り組んでいかなければならない、こういうふうに思っております。
  211. 和田教美

    和田教美君 非常に厳しい関係にあるということはヨーロッパだって同じであって、それにもかかわらずヨーロッパ方面では軍事的な意味での信頼醸成措置というのができておるわけでございますから、その点はひとつぜひ努力を願いたいと思います。  次に、新聞記事によりますと、政府筋は、イラン政府が我が国の政府に対して防衛庁の最新鋭三次元レーダ一と中型輸送機C1を輸出してほしいと、外交ルートを通じて打診してきたということを明らかにしたという記事が出ております。きのうもこの委員会で取り上げられましたけれども、この点は事実ですか。それと、そういうもし申し入れが正式にあれば政府としてどういう対応をするのか、それをひとつお答え願いたいと思います。外務大臣及び通産大臣、通産省の担当でございますね。
  212. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 本件につきましては、イラン側より極めて非公式な形で言及があったものでありまして、この種の問題については具体的な案件が出てきた段階で関係各省とも協議の上、慎重に検討すべきものである、こういうふうに考えておるわけでございます。いずれにいたしましても、本件はまだ具体的な案件、こういうものにはなっておりませんので輸出の可能性について検討する段階にはない、こういうふうに考えております。
  213. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 通産省にいたしましても、昨年の末そして三月と、二度にわたりまして、この輸出の可能性につきまして非公式な打診があったことは事実でございます。その際、輸出申請等の具体的な段階になれば慎重に検討いたしましょうと、かように回答したわけでございまして、まだ実際的な具体的な段階には立ち至っていないということでございます。
  214. 和田教美

    和田教美君 どうも御答弁があいまいな点が多いわけですけれども、この問題は、こういう武器、しかも紛争当事国のイランからの申し入れだったということであれば、そういう正式な申し入れがあるないにかかわらず、これは明確なことであって、武器輸出三原則に抵触をする、これは断るという態度をとるのは当然だと思うんですけれども、重ねてひとつ外務大臣のお答えを願います。通産大臣。
  215. 杉山弘

    政府委員杉山弘君) お答えを申し上げます。  ただいま両大臣から御答弁がございましたように、まだ非公式な打診の段階でございまして、詳細な内容を私どもも承知をいたしておりません。したがいまして、今の段階で特にこの問題について確定的なことを申し上げるのは差し控えさしていただきたいと思いますが、いずれにいたしましても、より具体化いたしました段階で外務省、防衛庁等とも御相談の上、慎重に対処いたしたいと考えております。
  216. 和田教美

    和田教美君 どうもよく答えが理解できないんですが、慎重とか正式な申し入れがあってからというふうなことで非常にあいまいな答えをされておるわけですが、さっきも申しましたように、これほど明確な、とにかく断ることは明らかだというふうに私は思うのですけれども、その点はいかがですか。  それと、防衛庁にひとつお聞きしたいんですけれども、この三次元レーダーというのは、これは果たして武器なんですか。武器でない、武器にも民間用にも使える汎用の製品だというふうにお考えなんですか。もし汎用だというふうに考えられると、いまのような答弁が出てくるわけでございますけれども、その点はいかがですか。
  217. 木下博生

    政府委員(木下博生君) 防衛庁で装備しております三次元レーダーは、昨日も御答弁申し上げましたが、四十年代の中ごろから逐次装備しているものでございまして、警戒管制用に使っておるわけでございますが、そういうレーダーというものが、武器輸出三原則で通産省の方で規制しておられます武器というものに当たるかどうかという問題については、むしろ通産省の方で御判断になっている問題でございますので、武器輸出三原則の運用という面につきまして言えば通産省の方にお聞き及びいただきたいと思います。防衛庁といたしましては、今回の話は一昨日聞いたばかりでございますので、まだ検討をいたしておるわけではございません。
  218. 和田教美

    和田教美君 いや、今防衛庁に聞いているのは、三次元レーダーは武器ですかと聞いているのです。
  219. 木下博生

    政府委員(木下博生君) 三次元レーダーは防衛庁の装備品でございますが、武器かどうかという問題につきましては武器輸出三原則の運用の問題でございますので、通産省の方にしかるべき情報を差し上げて、通産省の方で御判断いただくべき問題だと思っております。
  220. 和田教美

    和田教美君 通産省のお答えを願いたいと思うのですが、今申しました三次元レーダーは武器ですか。
  221. 杉山弘

    政府委員杉山弘君) 先生御案内のように、武器輸出三原則等におきます武器の範囲と申しますのは、軍隊が使用し、直接戦闘の用に供するものということになっておりまして、その具体的な範囲につきましては、輸出貿易管理令の別表の百九十七の項から二百五までの項に掲げるもののうちこれらの定義に該当するものということになっております。今防衛庁からお話のございました、防衛庁で使っております三次元レーダーがこれに該当するかどうかということにつきましては、今申し上げました定義との関係で、防衛庁でお使いになっているものの具体的な性能、仕様、実際の使用方法というものを詳しく伺ってみた上でないと今にわかには御答弁できませんので、御了承いただきたいと思います。
  222. 和田教美

    和田教美君 全くわかりませんね。とにかく防衛庁以外に、それじゃ三次元レーダーを使っているところがあるのですか。
  223. 木下博生

    政府委員(木下博生君) 航空管制用レーダーとしては運輸省関係でも使っておられるわけですが、三次元レーダーということで防衛庁が注文をいたしまして日本のメーカーにつくらせて使っておりますものは、今のところ日本では防衛庁だけでございます。
  224. 和田教美

    和田教美君 それなら明確に武器じゃないですか。  それからC1ですね。これは防衛庁が開発したものですね、これはもう明らかに武器ですか。
  225. 木下博生

    政府委員(木下博生君) 防衛庁で装備してあります装備品は、いわゆる、ミサイル等のたぐいから被服等に至るまで、それから食糧品に至るまで防衛庁で使っているわけでございまして、防衛庁が使っておりますからすべて武器だということは必ずしも言えないかと思います。今C1についてお問い合わせがございましたが、C1につきましては、従来、五十一年ごろかと思いますが、この国会の場で御質問がありましたときに、通産省の方では武器ではないという御答弁をなさったというふうに了解しておりますし、レーダー一般につきましてもそういうような同じような御議論があったというふうに承知しております。
  226. 和田教美

    和田教美君 そうすると、今のイランの申し入れについては、武器でないということで輸出を認めるというケースが大いにあり得るということになりますね。通産大臣、いかがですか。
  227. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) これは非常に難しい問題でございまして、全く非公式な申し入れが、通産省の幹部に対して駐日イラン大使からあったわけでございます。ですから、先ほど申し上げたように回答したわけでございますが、事実具体的に輸出申請というようなところにきて初めて慎重に判断し、慎重に検討すべき問題であると私は考えます。
  228. 和田教美

    和田教美君 きのうの御答弁では、安倍外務大臣は、武器輸出三原則というものもあるから、その点も踏まえて考える、大体これを断るというふうな意向のように答弁をされたんですが、きょうの通産大臣その他の答弁は全くニュアンスが違うんですけれども、重ねて外務大臣のお答えを願います。
  229. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 武器であるかどうかというのは通産省が貿管令に基づいて判断すべきことでありますが、武器輸出三原則というのが厳然とあることはこれは事実でありますし、またイラン、イラクがとにかく今日まで四年近く干戈を交えている、こういうことも事実でございます。そういう点は現実問題として横たわっておる。そういう中で武器であるかないかということは、これは三原則、貿管令に基づいて通産省が慎重に判断をされることになると、こういうふうに言っているわけであります。
  230. 和田教美

    和田教美君 武器輸出三原則が空洞化、全く形骸化しないようにひとつこれから判断をしていただきたい。
  231. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) ちょっと誤解があるといけないと思いますので。私どもは、具体的段階になって慎重に検討し、慎重に判断するということが、その中にはもちろん武器輸出三原則のことも念頭に置かなければならないということであります。
  232. 和田教美

    和田教美君 その問題はそれくらいにいたしまして、今、世界はますます軍事化の傾向を強めておるわけでございます。SIPRIの推定によりますと、一九八二年までに世界の軍事支出の規模が七千億から七千五百億ドルに達したと言われております。ところが、アフリカ大陸では、最近新聞で連日報道されておりますように大変な餓死者が出ている、特にモザンビークなどでは既に十万を超える餓死者が出ているというふうな報道があるわけでございます。軍縮を単なるお題目で唱えるだけではもうだめなんで、本当にやっぱりそういう飢えた人たちに対する緊急援助というふうなものも必要になってきている状況ではないかと思うんですが、少しでも軍事費を減らしてそういう方向に向けるという考え方について、河本経済企画庁長官は前々から非常にそういう問題について関心がおありのようですから、ひとつ河本長官のお話を聞きたいと思います。
  233. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 今の御意見、私も全く賛成でございまして、国連の最近の調査によりますと、世界の飢餓人口は全人口の約一割と言われておりまして、そのさらに一割が毎年餓死しておる、こういう報告が出ております。その三割が子供である、こういう報告も出ておりますが、私が専門家に計算をしてもらいまして、この飢餓人口を救済するのにはどれくらいな食糧が必要かということを計算してもらいましたら約八千万トンである、そのうち一千万トンは国際機関で援助を現にしておるから残るのは七千万トンである、八千万トンのうち七千万トンである、それに必要な資金は約百六十億ドルである、こういうお話でございました。でありますから、今お話しの世界の軍事費合計八千億ドルであるということになりますと、その二%あれば世界の全部の飢餓人口が救える。そういう意味におきまして、私は現在の軍拡競争の方へ走っておる世界の流れをお示しのような軍縮の方向に方向転換ができればこれは大変ありがたい、こういうように痛感をいたしております。
  234. 和田教美

    和田教美君 次に、大分時間もたってきましたから、情報公開制度の問題についてお尋ねしたいと思います。  去年の三月に出ました臨時行政調査会の最終答申ですけれども、行政情報の公開の問題につきまして、原則公開に転換すべきだということが書いてございます。また、国民一般に対する情報開示制度、いわゆる情報公開制度ですね。この問題についても、「積極的かつ前向きに検討すべき課題」だというふうに書いてございます。臨調答申が出ましてからもう一年たっているわけですけれども政府は一体この問題についてどう取り組んできたか、行管庁長官。
  235. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 御質問のように、情報公開制度について臨調からの答申がございました。この情報公開というのは、行政に対する公正、それから国民の信頼の確保という意味合いから、これは私は世界の流れもそういうことですし、国内的にもだんだん地方団体等でもやっておる団体がふえておりますし、政府としてもこの問題、積極的に取り組むべしということで、御答申の趣旨に沿いまして、私の方にこれはやはり専門家の意見を聞いて勉強しろと、こういう御答申がありますから、それに従って今七名ばかりその道の専門家にお集まりをいただきまして、横浜国立大学の成田教授を座長にしまして、私の方で現在鋭意勉強中でございます。  ただ、御案内のように、情報公開というのは他方でやはり、公の機関がいろんな情報を集める、その情報を今言ったような立場で公開もしなければならぬ要請がありますけれども、やはり公の機関が集めたものを、これはまたそれを今度はプライバシーの問題で、およそ自分の情報というものは自分が管理する権利があるんだといったようなやかましい要請もあるものですから、それを双方を勉強しながら私どもとしては臨調答申の趣旨に沿って前向きにできるだけ早く結論を出すようにしたいと、かように考えて今鋭意勉強中でございます。
  236. 和田教美

    和田教美君 いつまで勉強を続けるんですか。
  237. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 今、期限は切っておりません。今言ったように、前向きにできるだけ早くと、こういうことで御理解をしていただきたい。何せ今申しましたように、片方、プライバシーの問題がありまして、大変これは厄介な問題だと私は理解をしております。
  238. 和田教美

    和田教美君 この情報公開制度というのは、国民一般に行政機関に対する情報の開示請求権を認めて、そのための手続を決める制度のことをいうものであります。すでにアメリカ、フランス、北欧その他で九カ国が情報公開法というのを制定してやっておるというふうな状態でございますけれども、私はやっぱりこういう情報公開制度というのはもう不可欠の問題であって、先進国の一般的な流れだと思うんですけれども、どうも政府はこの情報公開法についてはっきりした言明をしないわけですが、一体、行管庁長官は、情報公開法をおつくりになるつもりなのか、その辺はいかがでしょうか。それから、官房長官もお見えになっておりますから、中曽根総理はその点についてどうお考えなんでしょうか。
  239. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) もちろんこれは、最終の結論は立法措置にまで踏み込まなければならぬ、こういう私の考え方でございますが、ただいま言ったように、この問題は私は、何といいますか、一般的な空気、それだけで軽々に結論を出すべき筋合いのものではない、これはよほど慎重にやりませんといけない、しかし最終の目標はそこに置いて勉強を進める、できるだけ早く結論は出したいと、かようなことでございます。
  240. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 情報公開の問題につきましては、ただいま行管庁長官から御答弁がありましたように、臨調答申に基づきまして鋭意検討を急いでいるところでございます。法律につきましても、ただいま行管庁長官からお話のあったとおりでございます。総理もそのような考え方でおるかと思います。
  241. 和田教美

    和田教美君 この情報公開というのは明らかに地方が先行をいたしております。既に東京でもそういうものをつくろうという動きになってきましたし、大阪、神奈川県、あるいはまた最近では川崎市も条例をつくりました。この地方自治体の先行という問題について、現在の状況についてひとつ田川自治大臣のお答えをお願いしたいと思います。
  242. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) 地方におきます情報公開条例の制定状況でありますけれども、ことしの三月末現在におきまして、都道府県におきましては神奈川、埼玉、長野、大阪の四府県、市町村におきましては福岡県春日市でありますとか、山形県金山町でありますとか、そういったところを初めとしまして十一団体、合計十五団体ということになっております。これ以外の団体におきましても、都道府県の段階におきましてはほとんどすべての団体で研究会とか審議機関というものを設けて現在勉強をしておるところでありまして、今後おいおいふえてくるものであろうと思っております。
  243. 和田教美

    和田教美君 最近、川崎市でできました条例を見まして非常に注目されますことは、請求権者の範囲を限定しないで、外国人を含めた市民以外のだれでも情報開示を求めることができるという規定ができております。自治大臣はちょうど川崎を選挙区とされておるわけですけれども、この考え方については自治省は必ずしも賛成でないというような報道もありましたけれども、どうお考えでしょうか。
  244. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 今、行政局長から地方の状況を御紹介いたしましたが、情報公開の請求権者の範囲をどのようにするか、最終的にはその団体の議会が判断すべきものでございまして、この範囲をどうするかというのはいろいろ問題、議論があるわけです。川崎の議会でも、何大もということでなくて、川崎に居住する、あるいは事務所を持つ人とすべきではないかという議論もあったように私は聞いております。これまで条例を制定された地方公共団体は、ほとんど請求権者の範囲は、そこに住んでいるというふうに、居住者、事務所を持っている人に限って決めているわけでございまして、今度の川崎の問題は、和田さん御指摘のように何大もと、とういうふうにしたわけですけれども、これは初めての制度でございますから、範囲をうんと広げるということは事務上の問題、費用の問題があるのではないかと思うんです。川崎の場合は、何大もといって外国人までこれを公開できるというふうに宣伝されておりますけれども、従来ほかの自治体で条例をつくったところも、これはもう請求権者の範囲は自治体に居住する者あるいは事務所を持つ者に限られてはおりますけれども、その自治体にいれば外国人でも開示できるわけです。  問題は、やはり初めてのことであると同時に、もう一つは費用の問題、人員の問題、こういうような問題がありますので、とりあえずは居住者、居住地域というものに、一自治体に限られてやっていった方がよろしいのではないだろうかというのが自治省の考え方でございます。何大もというのがいかぬということじゃなくて、もし議論があってどちらがいいかといえば、最初のことであるし、一度こういうことで試してみたらどうだろうかというような考え方でございます。
  245. 和田教美

    和田教美君 今のお話のように、地方自治体ではもうどんどん進んでおるわけでございます。ところが、国では慎重、慎重ということで非常にスロー、スローのような感じを受けるわけですけれども、実は中曽根総理も行管庁長官時代に、五十七年の四月でございますけれども衆議院内閣委員会での答弁でこういうふうに答えられておるわけです。情報公開によって中央官庁の権限が縮小するなどの問題が出てくるが、この際歴史の進歩のためには改革すべきものは改革すると、大変歯切れのいい答弁をされておるわけですが、今の後藤田長官の答弁とは大分ニュアンスが違うわけですが、中曽根行革を引き継いでいかれるおつもりだということであれば、当然そういう積極的な発言があってしかるべきだと思うんですが、いかがですか。
  246. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 私は、情報公開の問題について基本的に総理のお考え方と変わったところはございません。総理はこの国会の施政方針演説の中でも触れていらっしゃると思いますから、これは先ほど言ったように、勉強してできるだけ早く結論を得たいと、こういうことでございますが、私が申し上げたいのは、こういう事柄を、何といいますか、あっちもやり、こっちもやっているからといったような、ただそれだけでやるべき筋合いのものではなかろうと。やはりマイナスの面というものもよほど考えませんとこれは大変なことになるおそれがありますから、そこらも彼此検討しながらできるだけ早く結論を得たいと、こういうのが私の趣旨でございます。
  247. 和田教美

    和田教美君 去年の五月十日のたしか読売新聞だったと思うんですが、「書類洪水にアップアップ 官庁ひそかに民間預け」と、こういう記事が出ておりました。要するに官公庁や外郭団体の文書類が次々と民間の倉庫業者の専用庫に運ばれているという記事です。例えば、この記事によりますと、埼玉県比企郡の小川町というところの山中にありますワンビシ・アーカイブスという情報保管センターですけれども、ここに例えば年間四千四百万円もかけて特許庁のいろいろな書類が入っておるというふうな記事が出ております。特許庁だけではなくて、運輸省だとかいろいろなところがそういう書類を外部の民間の倉庫に預けているということでございますが、一つの特許庁だけで年間四千万も払っておるということですから、相当膨大な額を払っているんだろうと思うんですが、行管庁でこれを把握されておりますか。
  248. 門田英郎

    政府委員(門田英郎君) ただいま手元に資料を持っておりませんが、私どもの方でも、御指摘のワンピシ倉庫というお話でございましたけれども、業者の名前はともかくといたしまして、各省庁で持っている非常に膨大な量にわたる磁気テープのたぐい、マグネットテープでございますが、このテープ類につきましては、地震あるいは火事その他の天災等によりまして、せっかく保有している、今後とも行政上使っていかなければならない重要な磁気テープでございます。地震があったらたちまち記録が壊れてしまうというふうな脆弱な代物でもございますので、情報の安全という見地からデュアルシステムをとる、二重に管理する。一つは役所で持っていて常時使う、もう一つは、別途在庫品として同様のコピーを持っているというふうな指導を全般的にコンピューターを利用していく。これも時代の趨勢でございます。その中において情報の安全を図るという見地から行っている、こういうことでございます。ただいま委員指摘の幾ら幾ら払っている、どういう情報、どういう磁気テープがどういう民間倉庫に積まれているということにつきましては、ただいまつまびらかにしておりませんので差し控えさしていただきたいと思います。
  249. 和田教美

    和田教美君 今のお話ですと、磁気テープだけだというふうな感じがするんですけれども、この記事によりますと、例えば特許庁の場合、特許関係申請書類、これは永久保存だからどんどんふえてくるから、もうあっぷあっぷしちゃって外に出しているということのようでございますけれども、磁気テープだけですか、相当書類を民間に預けているんではないんですか。
  250. 若杉和夫

    政府委員(若杉和夫君) お答えいたします。  磁気テープだけではございません。磁気テープは先ほど行管庁の局長が申し上げたとおりでございまして、どうしても必要なものを危機防止の安全管理上やむを得ずやっています。それからそのほかのものは、具体的に申しますと、品川区勝島地区に約二千平米の倉庫を保有しております。それは借りております。この資料はどういうものかと申しますと、七割が出願書類それから公報類でございます。この利用頻度を申しますと、年間一万七千二百五十件現実に利用しています。これは庁内の利用及び庁外、つまり民間の方の需要に応じてやっております。  なぜ倉庫を借りておるかということになりますが、はっきり申し上げまして本庁のスペースが極めて狭い、どうにもやりくりがつかない、やむを得ず借りておる、かような状況でございます。なお、経費は、先ほど先生おっしゃったとおりでございまして、五十八年度で約四千六百万円ほどかかっております。
  251. 和田教美

    和田教美君 そうすると、永久保存の書類だから毎年毎年ふえていくわけですね。そんなことをいつまでもやっていたら、これこそ行政改革に反するんではないですか。それからまた、大体どのくらい金がかかっているということも全く行管庁が把握していないというのもおかしな話でございまして、その辺、後藤田さんいかがですか。
  252. 若杉和夫

    政府委員(若杉和夫君) 永久保存というのは若干誤解がございまして、出願書類関係は一定の基準を設けまして廃棄しております。ただし、御承知のように、特許の場合に終戦後から、まあ戦前からと申しましてもいいのですが、急角度に出願がふえておりますので、廃棄するものと入力するものとの差が物すごく多いのでございまして、たまる一方というのは率直に言って残念なことでございます。ただ、そういうスペース問題はお金の問題にも絡みまして大きな問題になります。したがいまして、我々としては今後十年をかけまして完全コンピューター化システムを建設中でございます。そうなりますと歯どめが完全にかかります。したがって、未来永劫に書類の洪水に悩まされるようなことに無策でいるわけではございません。
  253. 和田教美

    和田教美君 官庁の文書整理というのは大体民間に比べたら十年ぐらいおくれているというふうなことを言われるんですけれども、今のお話を聞いていると全くそのとおりだと思うんです。今のは一例でございまして、運輸省にしても同じようなことがあろうと思うんですが、行管庁長官、行革の一環としてこの問題いかがでございますか。
  254. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 今お話の中にございましたように、役所の書類の整理、保管、こういった問題が役所の間でも区々ですし、もう少しここらはきちんと保存期限とかあるいは恥の扱いという点は、むやみやたらに秘ばかりの判こを押している役所もあるわけですね。こういったようなことはこういう情報公開の前にやはり私はきちんとやるべき筋合いのものだ、そういう問題もありまして、私がさっき言っているように、この取り扱いは前向きでやるが慎重に段階を追ってやりたい、こう言っているのはそういう趣旨も含んでおる、かように御理解をしていただきたい、こう思います。
  255. 和田教美

    和田教美君 大分時間もたってきましたから、私、日米経済摩擦の問題について少し論議をしたいと思っていたわけですけれども、時間がございませんのでほんのはしりだけを少し申し上げたいと思うんですけれども、現在、日米間には牛肉、オレンジの輸入枠の拡大問題のほかにVAN、付加価値通信網への外資参入の問題、コンピューターのソフトウエアの保護の問題、金融資本市場の自由化、いわゆる円ドル問題などがあってさまざまな摩擦が集中豪雨的に起こっているわけでございます。ことしはアメリカは大統領選挙の年で、レーガン政権は日米経済摩擦で目に見えた形の成果を上げる必要に迫られているということがあるかと思いますけれども、そうなりますと、これが米国の強硬姿勢の一因だろうとも思うわけです。しかし、そうであればアメリカが全般的に、例えば今の牛肉、オレンジの問題一つを取り上げましても、今の強硬姿勢を一挙に軟化させるということはなかなか考えにくい。日本政府も相当腹を固めてやらなきゃいかぬと思うんですけれども、その辺についてどういうふうに受けとめているか、またどのように対応していくか。この問題について、外務大臣、それからこの問題のまとめ役になっておられます経企庁長官、それから財政の大蔵大臣と、それぞれ御見解を聞かせていただきたいと思います。
  256. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日米間には懸案の問題が確かに山積をしております。今、農産物交渉がいよいよ本格的に始まったわけでございますが、さらにその他VANの問題だとか円ドル問題とかサテライトの問題とかあるいは関税引き下げの問題、いろいろあるわけで、政府としましては経済対策閣僚会議で大体この農産物の問題とVANの問題は三月三十一日をめどに、さらにその他の問題については四月いっぱいをめどにパッケージにしてひとつ解決を図ろうという基本方針を固めておるわけでございますが、今お話のようにアメリカも大統領選挙を控えてなかなか強腰でございます。農産物交渉にまさに象徴されておると言ってもいいわけでございます。日本もそれに対して出貿易を推進するという立場に立ってやらなければならぬことはやらなければなりませんけれども、しかしやはり日本としての国益を守るための限界というものもあるわけでございます。そういう中で、これから政府で努力しながら、なおかつ日米間で十分この折衝を行って、何とかこの問題を日米間の政治的な大きな問題にしないで、経済問題なら経済問題としてこの始末をつけるということで努力をしてみたい、しなければならぬ、こういうふうに思いますが、前途はなかなか容易ならざるものがあるわけでございます。
  257. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 今お示しの個々の問題につきましては、外務大臣御答弁のような目標で今作業を進めております。四月末を目標にある程度の目鼻をつけたいというのが作業の目標でございます。これはある程度私は進むと思うんですけれども、ただ、この個々の問題がある程度解決をいたしましても全体の日米貿易のアンバランス、日本側の黒字というものが非常に大きな数字になっております。昨年は二百二、三十億ドルでありましたが、ことしはアメリカの景気がさらにいいものですか、飛躍的にさらに拡大を続けておる。この一月から三月までの我が国の黒字を見ますと、昨年に比べてさらに大幅にふえそうな気配でもございます。したがって、個々の問題が解決をいたしましても、全体の大きな不均衡をどうすればよろしいかという問題が残るわけでございます。我々はこの問題につきましては、理屈は大半日本側にある、こう思っておるのですけれども、しかし余り不均衡の金額が大きくなりますと、理屈抜きにいろんな議論が出てまいりますので、その点大変心配をいたしておりまして、これを放置いたしますと自由貿易体制が崩れるおそれすらある、このように憂慮をいたしております。  この問題を解決するためには私はやはり二つの方法があると思うんですが、一つは、我が国の円が今、実力以下に評価されておると思っておりますが、日本の円が何とかもう少し実力に近い水準に回復できないか、こういう問題が一つあろうと思います。それからもう一つは、やはり輸入を拡大するといいましても、国内の購買力が弱いと外国から物が買えませんので、内需の拡大がやはりその前提条件だ、こう思っております。だから、個々の問題の解決のほかに全体の黒字幅をある程度圧縮するためには、以上申し上げました二つの課題をどうこれから進めていくかということが大きな問題点であろう、こう思います。
  258. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる私の関係では円ドル問題になりますが、円ドル問題でかつて言われておったように、日本が円安を誘導しておる、この誤解は大体解けておると思うのであります。我が方が絶えず主張しておりますのはいわば米国の高金利問題、ただし、この問題はさらにこれを追及していきますと、いわば向こうの歳出削減に対する内政干渉にもなるかもしれませんけれども、それを主張いたしておるところでありますし、経済諮問委員会での向こうの発言を聞いておりましても、日本に円安誘導をしておるという事実は全くないというふうに、だんだんこの問題は私は解決がついたんではないか。そうなると今度はやはり基本的な自由化あるいは国際化の問題でございます。この問題につきましては、今度は第三回は四月十六日にやるわけでございますけれども、我が方としては我が方のよって立つところの金融機関のいわば歴史的根源がございますし、それらの相違をも踏まえながら主体的に、しかしやっぱり積極的にこれに対応していかなきゃならぬ、こういう考え方であります。
  259. 和田教美

    和田教美君 牛肉、オレンジの問題については山村農水大臣がアメリカに行って交渉が始まるという段階でございますけれども、きょうあたりの新聞には盛んにいろんな記事が出ておりますけれども、例えば日本側の最終妥協案が高級牛肉では毎年平均六千五百トンぐらいの増、オレンジについては一万トンぐらいの増だというふうな記事も出ておりまして、日米間の主張が少し縮まってくる可能性など報道しているのですけれども、農水省の事務当局の方いらっしゃっていると思いますけれども、交渉の現在の段階において見通しはどうですか。
  260. 塚田実

    政府委員(塚田実君) お答えいたします。  交渉は六回にわたって事務ベースの協議が続きまして、今夜半から山村大臣とブロック通商代表との間で協議が始まるわけであります。そこで、従来の経緯をたどってみますと、現時点での焦点は主に牛肉とオレンジについての輸入枠の数字の問題になってきていると私は考えております。もっとも米国は自由化の要求を捨ててはおりませんけれども、一時横に置くというような態度を見せておりますので、問題は輸入枠にかかっていると思っております。そこで、新聞報道でいろいろありますけれども、牛肉、オレンジそれぞれについて今日まで日米間の輸入枠の数字についてはかなりの相違があるというのが現状であります。私どもいろいろ米側の動きも探っておりますけれども、米側のこの輸入枠の数字についての態度はなかなかかたいようであります。また、私どもの方にとりましても農政上おのずから限度があるわけでございまして、今回の交渉、大臣が言われますように、うまく妥結できれば非常にいいわけでございますけれども、見通しとしてはかなり厳しい交渉になるのではないかというふうに考えております。
  261. 和田教美

    和田教美君 交渉の経過を少し見たいと思うんですけれども。  もう一つ、VANだとかソフトウエア保護の問題について特に目立ちますことは、国内における不協和音と申しますか、つまり縦割り行政による各省庁の権限争い、縄張り争いです。例えばVANについては郵政省と通産省、コンピューターのソフトウエア保護については文化庁と通産省、これがそれぞれ対立をしておる。大蔵省の場合も例えば円の国際化、自由化について日銀と必ずしも見解が一致しないというふうなことでございます。このような国内の混戦状態だとアメリカにつけ入れられるおそれが非常にあると思うんでございます。この辺いいかげんで調整しなければいかぬと思うんですけれども、そろそろ時期が来ているのではないかと思いますが、それぞれの関係省庁の方、通産、郵政、文部、それから大蔵、さらに官房長官のお答えをいただきたいと思います。
  262. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) かねてからVANに関する考え方は通産省は全面自由化すべきであるということでございますが、このことにつきましていろいろ関係省庁と調整していくことは事実でございます。中でも郵政大臣と私とが非常にいがみ合っている、仲が悪いというようなことでございますが、今も仲よくああして並んで座っておりますし、そのようなことはございません。ただ、意見の合わないことは事実でございまして、二人が丁々廃止する前に実は二人で相談して、これは党のしかるべき機関に預けようではないかということで今調整をお願いしているところでございます。  ソフトウエア保護につきましては、これは今後の情報化社会の実現に及んでやはりソフトウエアの権利を保護すべきであるということを我々考えているわけでございますが、これは文化庁とて保護するという考え方には変わりありません。しかしながら、その内容等についてかなりの隔たりがあり、アメリカともやはり意見が異なりますので、これは多少時間がかかりますけれども、鋭意調整しているところでございます。
  263. 奥田敬和

    国務大臣奥田敬和君) 流れとしては今通産大臣が話したとおりでございますけれども、電気通信事業法案、これは郵政省が今提案準備を行っておるところでございます。とりわけアメリカ側も特にこのVAN問題に関しては大変強い関心を示しておることは事実でございます。私の方にも三月五日付でブロック通商代表からできるだけ制限がない形で外国企業にも参入させてほしいという期待を込めた要望が参っておることも事実でございます。しかし、私としても無差別、原則日出の原則で対応しようとしておるところでございますけれども、何しろ電気通信の役務を代行する事業でもございますし、ユーザーの、利用者の立場のそういった信頼、秘密の保護等々も考えなければいけませんから、最小限の行政措置の担保はとらなければいけない、これは通信主管庁としても当然であろうかと思っております。通産省とも鋭意話を詰めておるところでございます。最後の詰めの段階に入っておるということが言えると思います。
  264. 鈴木勲

    政府委員鈴木勲君) コンピューターソフトの問題でございますけれども、文化庁におきましては、これは判例も示しておりますように、現在、著作権法の保護を受けておりますし、著作権審議会の小委員会からの報告もございますので、著作権法の改正によって対応したいというふうに考えているわけでございますが、通産省におきましては新たなプログラム権というような構想をお持ちでございます。ただ、この考え方の間には、通産大臣もお話がございましたように、プログラムの保護をどうするかという実質的な内容でございますとか、法の形式でございますとか、あるいは国際的な保護の関係等につきましてかなり相違がございます。しかし、今後とも国内的及び国際的にコンピュータープログラムのよりよき保護が図られますように、私どもといたしましても通産省との間におきまして鋭意調整を進めて努力をしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  265. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆるユーロ円市場でアメリカから、第一回、いろいろ問題点を提起された中にユーロ円という言葉が一番最初の議題にのっております。したがって、私どもとしては、この国内金融資本市場の自由化がまず国際化への基本となるべきものであって、いわゆるユーロ円、すなわち外国にある円はそれに平仄を合わしてやるべきである、したがって自然の進展というのが一番この金融市場の流れの中では必要だという基本的考え方は日本銀行も大蔵省も同じ考え方で臨んでおるわけでございます。ただ、最初の議題にユーロ円と、こう出ておりますと、何かその方がいかにも我々アドホックグループで対応する者がそこだけに眼を向けておるというような印象を与えたとすれば、それは残念なことであって、日本銀行と大蔵省の間でいわゆるユーロ円に対する考え方の相違はございません。
  266. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) ただいまそれぞれ関係大臣あるいは文化庁長官からお答えをいたしましたとおりでございます。一つ一つの問題につきまして省庁がまたがって関係をいたしますと、それぞれの省庁によって若干意見を異にするところもございます。仲よく隣り合わせて座っておるように見えておりましても、相当深刻に対立するようなこともございますけれども、それにいたしましても、同じ政府の中のことでございますので、特に対外的なことになりまして、そのことによって国益を損なうようなことになっても大変でございますので、御指摘のような御趣旨に沿うように、何か問題点がありましたら速やかに調整をしていくようにいたしたい、このように考えておる次第でございます。
  267. 和田教美

    和田教美君 終わります。(拍手)
  268. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で和田君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  269. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、久保亘君の一般質疑を行います。久保君。
  270. 久保亘

    ○久保亘君 事務レベルの協議のまとまらないまま山村農水大臣が渡米されたのでありますが、政府として、農産物日米交渉の決着の見通しをどのように持っておられるか、御説明いただきたいと思います。
  271. 塚田実

    政府委員(塚田実君) お答えいたします。  農林水産大臣、昨日訪米いたしまして、今夜半から山村・ブロック通商代表間の協議が始まることになっております。そこで、大臣訪米されたわけでございますが、私ども、米側が今回の協議でどの程度の弾力性を示すかということにつきましては、具体的なことを持っている、また見通しもあるというわけではございませんけれども、大臣といたしましては、現に日米間におきまして結ばれております牛肉、オレンジに関する協定が空白状態になっているというこの事実、これは放置できないというようなこと。それから大臣がみずから訪米されることによって初めて米側の弾力性を引き出せるというようなお考えのもとで訪米されたわけであります。協議の見通しにつきましては、先ほども申し上げましたけれども、主として輸入枠をめぐる動きになろうかと思いますけれども、米側の立場もなかなかかたいようでございますし、私ども農林水産省といたしましても越えられぬ一線というのはあるわけでございますから、協議の見通しはなかなか厳しいものになろうかというふうに考えております。
  272. 久保亘

    ○久保亘君 決着できない場合にはどのような事態が考えられますか。
  273. 塚田実

    政府委員(塚田実君) お答えいたします。  山村大臣も何とか妥結に持ち込みたいというふうにお考えでございますし、私ども、決着をしなかったことについて、まだ交渉が始まる前でございますので申しにくいわけでございます。そこで、ただ申し上げておきたいことは、無理な要求をのんでまで妥結する気はないということでございます。
  274. 久保亘

    ○久保亘君 官房長官、中曽根総理大臣は山村さんに全権を委任するということをおっしゃっているようですが、全権を委任するというのは、譲歩の限界を示してあるのですか。それとも、もうすべて農水大臣の判断に任すと、こういうことですか。
  275. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 従来から、この農産物交渉につきましては農林水産省が窓口といいますか、責任を持って事務協議を積み上げていく、そして日本の農業を守るということを一面考え、そして日米の調整をする、こういう立場に立ってひとつ結論を見出してもらいたい、こういうことで協議を積み上げてきたところでございます。今回もその延長線上に立ちまして、農林水産大臣がすべてひとつ責任を持って交渉に当たってもらいたい。それはいろいろこちらで数字を前もって申し上げるのではなくて、行って向こうとよく調整をしてもらいたい。しかも、農林水産大臣が御協議になって、その後例えばだれかがさらに立つとか、あるいは総理大臣がさらに立つとかというようなことではない。農林水産大臣が責任者としてこの問題の取りまとめに当たっていただきたい、そういう意味で全権を委任した、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  276. 久保亘

    ○久保亘君 農林水産省としては、アメリカ側の譲歩が引き出せるんじゃないか、アメリカ側の弾力が期待できるんじゃないかということですが、日本側の方は今度の交渉において弾力を持っているんですか、持っていないんですか。
  277. 塚田実

    政府委員(塚田実君) お答えいたします。  大臣は、訪米されるに当たりまして、大臣が渡米されることによって米側の弾力性が引き出し得るものというふうに御判断されているわけですが、私どもの方の態度は、一貫して申し上げておりますように、衆参両院の御決議あるいは衆参両院の農林水産委員会から農林水産大臣への申し入れがことし一月ありましたけれども、そういうようなものを踏まえて、農業者が犠牲にならないという基本方針に立ちまして対処するということにしているわけであります。そういう意味で、まだ私ども現在の日米間のこの隔たりから見まして、数字についてのまず米側のその弾力性が那辺にあるかということを見定めないうちは、私どもの方の態度の基本方針はそうでございますけれども、中身についてはまだ交渉中でございますので差し控えさせていただきたいと思っております。
  278. 久保亘

    ○久保亘君 日本側は、牛肉でいえば六千五百トン、アメリカ側は八千トンというところで今両者の数字の開きがあるということが伝えられておりますが、大体そういうことは当たらずとも遠からずということですか。
  279. 塚田実

    政府委員(塚田実君) お答えいたします。  マスコミでこの問題につきましてかねてからいろいろの数字が言われておりますけれども、私どもといたしましては、この問題につきましては日米間で一切公表しないということに合意しておりますので、コメントを差し控えさせていただきたいのですけれども、数字については一切私どもとしては、事務当局としては否定するということでございます。
  280. 久保亘

    ○久保亘君 報道の限りでありますけれども、アメリカ側はこの数字を一方的に発表したと言われておるんですが、これは事実ですか。
  281. 塚田実

    政府委員(塚田実君) 先日、ブロック通商代表が記者会見において牛肉の数字につきまして一部言及したというような報道がされておりますけれども、外務省を通じて照会いたしましたところ、その数字につきましては正しくないと、そういう言及はしていなかったということでございます。
  282. 久保亘

    ○久保亘君 与党の幹事長は、きのう山村さんが出発されるに当たって、記者会見で、今度の決着は数字の上では困難ではないか、もしまとまらなかったら今度はアメリカから日本に来て続けたらいいということを言われているようでありますが、外務大臣、せっかくお休みのようですけれども、この決着の見通しはどういうふうにお考えになっておりますか。
  283. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは先ほどから審議官が申し上げましたように、現在の状況ではなかなか非常に厳しい、お互いにといいますか、歩み寄るということは厳しいという感じを私も率直に持っておるわけでございますが、交渉でございますから、最後の土壇場になりますといろいろバリエーションというのがあるのじゃないかと思っております。まあどういうことになりますか、完全決着ということになりますか、あるいは全然だめになるのか中間的な数字があるのか、いろいろな形があると思いますけれども、我々としては何とかアメリカ側も弾力性を持って、そうしてこの問題をひとつ解決をしてもらいたい、解決するためにひとつ努力してもらいたいと、こういうふうに思うわけであります。
  284. 久保亘

    ○久保亘君 経済企画庁長官は、与党幹事炎やその他各大臣の記者会見とはちょっと違ったニュアンスで御発言のようでありますが、今度の日米交渉について経済企画庁長官の御見解をお聞きしたいと思います。
  285. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 農産物の問題は、日米の貿易全体から見ますと金額も極めて少額でありまして、この問題の解決によって日米間の貿易不均衡が解決する、そういうものではございません。しかしながら、ずっと長い間の両国の象徴的な貿易の対決点といいますか、摩擦の一番の中心の問題になっておりますので、金額のいかんにかかわらず、この問題が解決するかしないかということは日米関係に非常に大きな影響があると私は考えております。そういうことで、今双方が数字を出し合っていろいろこれから交渉するわけでございますが、こういうものは双方がある程度譲り合って妥結いたしませんと、一方が一切譲らない、こういうことではこれはお互いに話になりませんから、そういう形で話が妥結することを期待いたしております。ただしかし、農林水産大臣がやっておられるわけでありますから、その結果を今見守っておるというのが現状でございます。  ただ、アメリカ側は数量だけのことを言っておるのじゃございませんで、それは輸入の仕方であるとか、あるいは国内の流通市場等でもう少し工夫ができないのか、もう少し工夫をして我が国国内の需要を拡大するような方法はないものだろうか、こういう提案もいたしておるようであります。私は農林関係の人たちからお聞きいたしますと、我が国の酪農は将来はEC並みの競争力を持つようにしなきゃいかぬ、こういうことを目標にしているんだ、こういうことを聞いておりますが、しかりとするならば、やはり国内市場の拡大についてもう少しいろいろ工夫をする余地があるならばいたしまして、そして我が国の酪農の競争力をさらに拡大をする、同時に対外問題も解決する、そういう方法があれば大変よろしいと、このように期待をしておるわけでございますが、これはこれからの交渉いかんにかかっている、このように思います。
  286. 久保亘

    ○久保亘君 官房長官、今度の農林水産大臣の交渉はもう期限を切っておやりになっておるわけですか。
  287. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 従来の枠組みが三月末でひとまず切れております。したがって、できれば三月末までに新しい枠組みというのを結論を見出したいということで従来も協議を重ねてきたわけでございますので、何日までに、あるいはいつまでにというふうに切っておるわけではございませんけれども、やはりせっかく山村農林水産大臣に御渡米いただきましたので、一日も早く決着を見出すように、こういう希望を持っている次第でございます。
  288. 久保亘

    ○久保亘君 今度の農水大臣の渡米については決着するまで向こうで頑張れということですか、それとも一応一定の時期で帰られる、こういうことですか。
  289. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 国会中に国会の御了承を得て出かけておることでございますので、国会には七日の土曜日まで渡米するために国会をお休みさしていただくことをお許し願いたいということを申し出て、それから出発をしたところでございます。
  290. 久保亘

    ○久保亘君 そうすると、それまでに決着しない場合には一応何らかの方法でこれをまた継続させる、こういうことになりますか。
  291. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 協議を重ねてまいります中で当然総理大臣あるいは外務大臣等にいろいろアメリカから連絡が来るものと、このように考えておりますが、いつまでにどのようにするか、あるいは引き続き交渉するようなことになるのか、すべて農林水産大臣にお任せをして御出発をいただいたところでございます。
  292. 久保亘

    ○久保亘君 次に、防衛庁にお尋ねいたしますが、グレナダ事件とアフガン事件とについて、防衛庁はこの二つの事件をどういうふうに区別して見ておられますか。
  293. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) ただいま防衛庁の政府委員がおりませんので、かわって外務省の方からお答えをしてよろしゅうございましょうか。
  294. 久保亘

    ○久保亘君 防衛庁に聞いているんだ。
  295. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) アフガニスタンの場合は、委員御承知のとおりに、侵入が開始されたときにアフガニスタンを有効に支配する正統政府が存在していたわけでございます。そういう事実にもかかわらず、ソ連軍が同国に侵入をして政府を倒したというのが政府の把握しておる事実関係でございます。  他方、グレナダの状況につきましては、最終的にアメリカ政府が説明しておりますところを我が国が情報として把握しておるところを申し上げますと、アメリカの説明は、東カリブ海諸国機構という機構がございまして、その加盟国からその設立条約に基づく集団的措置として援助を与えるように要請を受けたということで、この集団的な措置はグレナダでビショップ首相が殺害された後に政府が機能しなくなったという状況のもとで総督からの要請があって行われたものである、それからグレナダ在留のアメリカ国民保護のための活動は国際法上の原則によって正当化される、こういうのがアメリカの説明でございます。政府といたしましては、そういうアメリカの説明にある事実関係前提とする限りにおきましては、アメリカの行動は国際法上合法と認められるというふうに判断しておりますけれども、もちろんこの前提となっている事実の詳細というものは、政府として最終的に把握しているわけではございません。
  296. 久保亘

    ○久保亘君 防衛庁は。
  297. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 防衛庁として、アフガンの問題とグレナダの問題についてこうするとかこう見ると、そういう見解はまとめておりません。
  298. 久保亘

    ○久保亘君 これはあなた方の方でお出しになったものですね。「防衛読本」、御存じですか。
  299. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) お手元にありますのはビジュアルでございますか。これは防衛庁が直接発行した冊子ではございません。
  300. 久保亘

    ○久保亘君 そうすると、防衛庁は責任ない、これには。
  301. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) それは別の人格を持った団体で編集をして出したものだと思います。
  302. 久保亘

    ○久保亘君 監修防衛庁長官官房広報課と書いてあるが、防衛庁は責任ないのかね。
  303. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) これは防衛庁で監修という形になっておりますが、発行者は防衛庁ではございません。
  304. 久保亘

    ○久保亘君 そんなことを聞いているんじゃない、あなたの方に責任があるかないかと聞いているんだ。
  305. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  「ビジュアル 防衛読本」と申しますのは、五十八年度版白書の普及版ということで、初めて防衛庁が監修をいたしまして朝雲新聞社がこれを発行したものでございます。その本の性格でございますが、従来防衛白書普及版なるものを約八万部印刷して出しておりましたけれども、かたいというような批判がございまして、グラフとか写真とかそういうものを中心にできるだけわかりやすく解説しよう、こういうことでやったもので、その意味では防衛庁の白書室で監修をして出したものでございますので、民間で出してはおりますが、私どもが監修をいたしております。
  306. 久保亘

    ○久保亘君 これによればグレナダ事件については出兵事件となっております。アフガニスタンに対しては軍事介入、この区別は、防衛庁はその性格については検討していないと言われているけれども、どうしてこの区別がついているんですか。
  307. 古川清

    政府委員(古川清君) お答え申し上げます。  アフガニスタンの方は今もってソ連軍は兵を引いておらないわけでございまして、グレナダの方は事態が収拾されますとこれは手を引いておる、これが大きな違いでございます。
  308. 久保亘

    ○久保亘君 あなた、そんな子供だましのようなことを言っちゃいかぬよ。撤兵したらそいつは出兵事件に変わるのかね。
  309. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) どういう意味でそういう言葉を使ったかよく調査いたしまして後刻お知らせいたしたいと思います。どういうことでやったか、どういうことでそういう言葉を使ったか、書いたのは朝雲新聞というところですが、監修はこちらでございますので、そこら辺のところを少し時間をいただきまして、どういう意図でやったかということを御報告さしていただきます。
  310. 久保亘

    ○久保亘君 書いたのは、これは朝雲新聞社が書いたの。
  311. 古川清

    政府委員(古川清君) お答え申し上げます。  さようでございます。
  312. 久保亘

    ○久保亘君 日本の防衛に関するようなこういう重要なPRのものを民間の新聞社に書かせて、それでこれを広報資料として使うのかね。
  313. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えをいたします。  従来も朝雲新聞社等にそういう編集その他を依頼しそれを監修をしておる、こういう広報上の文献はございます。
  314. 久保亘

    ○久保亘君 そういう文献があるとかないとかは聞いておらぬよ。これを聞いている。
  315. 古川清

    政府委員(古川清君) この「ビジュアル 防衛読本」につきましては、グレナダについては出兵事件、それからアフガニスタンについては、アフガニスタンへのソ連の軍事介入ということばを確かに使っております。この趣旨は、出兵と申しましても、あるいは軍事介入と申しましても、これはいずれも厳密な法律的な用語では当然ないわけでございます。そこのニュアンスは、ソ連の軍事介入と申しますのは、ソ連がアフガニスタンに入りましたときには正統な政府がカブールに存在をしておったわけでございまして、ソ連が入ってきて正統な政府をつぶしてしまった。今もってソ連軍は十数万の兵隊を置いておるわけでございまして、実効的にソ連軍がアフガンに入っておる、正統政府をつぶして入っておる、こういう点で大きな違いがあるわけでございます。いずれにしても、介入と申しましても、あるいは軍事介入と申しましても、出兵と申しましても、いずれも厳密な法律的な用語でないというところは御承知いただきたいと思います。
  316. 久保亘

    ○久保亘君 さっきの説明と大分違うじゃないか。さっきの説明がそれじゃ間違いなら間違いのように直しなさいよ。
  317. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  318. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。
  319. 古川清

    政府委員(古川清君) 私が今申し上げた方が正しいお答えでございまして、出兵と申しましても、あるいは軍事介入と申しましても、いずれも厳密なる法律的な用語ではございません。それで軍事介入の方は正統なる政府が存在していたにもかかわらずこれを侵入して倒しておる、片っ方の方はそうではないというところに大きな違いがある。そのニュアンスをここで出しておる。これでもって御了承いただきたいと思います。
  320. 久保亘

    ○久保亘君 アメリカがグレナダに軍を送ったときには、グレナダには政府はなかったのですか。
  321. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 先ほど御説明いたしましたように、グレナダにおきましてはビショップ首相という政府の首脳がおりまして、それが殺害をされたわけでございます。殺害されまして政府機能が事実上崩壊して消滅した、そういう中で、御承知のようにグレナダは英連邦に属している国でございまして総督がいるわけですが、そのスクーン総督という人が当然にその国の国家を代表する正統性を持っている唯一の人物であるというふうに判断されるわけですが、このスクーン総督からの要請に応じて出兵が行われたというのがアメリカの説明でございます。
  322. 久保亘

    ○久保亘君 その総督の立場を言うならば、イギリスとの関係があるんじゃないですか。
  323. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 若干技術的な点でございますが、英連邦の一国といたしまして形式的な元首はイギリスのクイーンでございます。そのクィーンを代表する資格で総督がグレナダにおりまして、グレナダが事実上の、事実上のと申しますか、法律的にクイーンの委任を受けてグレナダにおりますところのいわば元首ということになるわけでございます。
  324. 久保亘

    ○久保亘君 この問題はまた聞きましょう。ただ私、これに対して防衛庁は責任があるのかないのかまず聞きたかったので、今の問題を取り上げたのです。何か都合が悪くなるとこれは朝雲新聞社の問題だと言う。そして一方では、防衛白書を民間にわかりやすく説明するためにこれが編集されておるんだとあなた方は言っている。それで、これは非常に広範に配られておるんです。もし防衛白書と違うんならこんなものを配らしたらいかぬでしょう。そういう問題、きちんとしてもらいたい。  それから、この中に非核三原則に関する記述がありますが、非核三原則はこれは憲法の問題ではない、こう書いてありますが、この点について防衛庁の考え方をきちんとしておいていただきたいと思います。
  325. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) ただいま御指摘の点は、従来もしばしば御議論のあったところでございますが、政府といたしましては、従来から、自衛のための必要最小限度を超えない実力を保持するということは憲法によって禁止されていない、したがってその限度の範囲内にとどまるものである限りは、核兵器であるとあるいは通常兵器であるとを問わず、これを保有することは憲法の禁ずるところではないと、こういう解釈をとっているわけでございます。しかしながら、憲法上保有を禁じられていないというようなものも含めまして、一班の核兵器につきまして政府としては政策として非核三原則によってこれを保有しないということにしているわけでございます。それからまた、法律上あるいは条約上におきましても、原子力基本法及び核兵器不拡散条約の規定によりましてその保有が禁止されていると、こういうことでございます。
  326. 久保亘

    ○久保亘君 防衛的性格ということで憲法上許容される核兵器は具体的にどんなものですか。
  327. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 私どもといたしましては、先ほども申し上げましたような政府の基本政策あるいは法律ないし条約上の制約からする核兵器を持たないという基本的な枠組みの中で防衛政策を考えておりますから、防衛庁といたしまして核兵器について検討をしたことはございません。
  328. 久保亘

    ○久保亘君 殊さらに憲法の問題ではないという前提を置いて、しかも国会決議とも書いてないんです。いわゆる原爆の体験国として非核三原則があると、こう書いてある。それならば、憲法上の問題でないとわざわざ前提を置く以上は、核兵器は憲法上は許容されているということを、あなたが今説明されたようなことなんだから、それなら憲法上許容される核兵器とは何かということがなければそういうことは言えないじゃないですか。
  329. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) ただいま先生御指摘の部分は九ページの「専守防衛」のところかと思いますが、ここで我が国の憲法の趣旨を説明をしておるわけでございます。それの流れの中で「非核三原則」というものが最後に出てきておるわけでございますが、これは政策的にそういうことを選択をしている、採用をしておるということをここで最後に締めくくりに述べているというプロセスがここに出ておるわけでございまして、我が国といたしましては一切の核兵器を持たないという点は一貫した政策でございます。したがって、私どもとしては、そういった個々の核兵器をどういうものならいいとか悪いとかというようなことを検討したことはございません。
  330. 久保亘

    ○久保亘君 それならば、わざわざ憲法の問題ではないという前提を加えて誤解を招くような書き方をする必要はないじゃないですか。
  331. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) ここのくだりは、先ほど申し上げましたように、書かれている趣旨は専守防衛という憲法の趣旨を説明をしておるわけでございますので、その説明の一環として非核三原則についても触れているということであろうというふうに私は思います。
  332. 久保亘

    ○久保亘君 それじゃ今度は核兵器を離れてお聞きしますが、攻撃的な兵器と防御的な兵器との区別を防衛庁はどのようにしておられるんですか。
  333. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) この点につきましては、先ほども申し上げましたように、我が国におきましては、憲法の解釈といたしまして、自衛のための必要最小限度を超えるものはこれは保持できない、そういうものは持てないということになっておるわけでございます。しからばその保持を許されない具体的な自衛力の限度という問題でございますけれども、これもしばしば御説明申し上げておりますように、これはそのときどきの国際情勢、あるいは軍事技術の水準その他の諸条件によって変わり得る相対的な面を持っているということは、これまた否定ができないわけでございます。もっとも、性能上専ら他国の国土の壊滅的破壊のためにのみ用いられる兵器、例えばICBMでございますとか長距離戦略爆撃機といったようなもの、こういうものについてはいかなる場合においても保持することは許されないものであろう、こういう解釈を従来からとっているところでございます。
  334. 久保亘

    ○久保亘君 それじゃ、ICBMのようなものは攻撃的兵器だと言われる。ABMはどうなんですか。
  335. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) これは私どもも具体的な個々の兵器について検討をしたことはございませんが、ABMというのは、我々が聞いているところでは、防御的な機能を果たすために開発をされ配備をされているもののように聞いております。
  336. 久保亘

    ○久保亘君 それなら、このABMが戦略兵器制限交渉のトップバッターで登場したのはどういうことですか。
  337. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 私ども防衛庁といたしましては戦略兵器制限交渉に直接携わっておりませんので、そこら辺の扱いが国際関係の中でどういうふうにどういう判断で取り上げられてきたかということについては詳細は承知をいたしておりません。
  338. 久保亘

    ○久保亘君 それじゃ防衛庁は、兵器の攻撃的性格、防御的性格ということについては何にも検討したこともなければわからぬということですね。そうすれば、いかなる兵器であっても、これを使う人、使う場所、使い方によって兵器はすべて攻撃的兵器ともなり得る、こういうことなんじゃないですか。
  339. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) この兵器の性格としてどういうものが持てるかという問題でございますれば、先ほど申し上げましたように、自衛のための必要最小限度の範囲を超えないものというのが基本の枠組みではないかと思います。後の個々の問題につきましては、やはり先ほど申し上げましたように、性能上専ら他国の国土の壊滅的破壊のためのみに用いられる兵器というものはこれは持てないだろうということでございますが、具体的には個々のそのときどきの国際情勢とか国際技術水準といったようなものを総合的に判断をしていく必要があるだろうという考え方を持っているわけでございます。ただいま先生がおっしゃいましたABMというようなものについては、私どもとしては検討をしたことはございません。
  340. 久保亘

    ○久保亘君 そういうことであれば、今のあなたの考え方に立ては、やっぱり核兵器というのは壊滅的な打撃を与えるんです。そうすると、これはやっぱり核兵器は防御的兵器という理解に立ち得ることはない、こう考えでいいですか。
  341. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) この核兵器と申しましてもいろんなバリエーションがあり得るわけでございまして、その中でも原水爆のような極めて超大型なものもありますし、そういうものはもちろん壊滅的な打撃を与えるというふうな性格になるのではないかと思いますが、他方、かつて国会でも御答弁を政府側からしたことがございますけれども、極めて性能の小さい核兵器、例えば核地雷のようなもの、こういうようなものであれば憲法上の判断としてはこれは持てないものではないだろうということをかって政府側からも答弁したことがございます。ただ、それは憲法解釈の問題でございまして、政策的に我が国としては一切の核兵器は持たないということを決めておりますが、我が国の自衛隊がそのようなものを採用をするということはないわけでございます。
  342. 久保亘

    ○久保亘君 核地雷といえども、これは敷設する場所によって、使い方によって防御的兵器というふうに限定できないでしょう。核地雷がやっぱり仮に日本の本土内に敷設されれば、自国の国民の生命を殺傷し自国の国土を破壊するんですから、このような武器は防衛のための武器とは言えないんじゃないですか。
  343. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) ただいま私が例示として申し上げたのは、その当時も同様の御説明をしておるわけでございますが、防御用の機能を果たすべく、そういった極めて小型の力の弱い核地雷のようなものを持つということは、憲法上の解釈として言えばそれは可能なものに入るだろうということを申し上げただけでありまして、これは我が国としてはそういうことを考えているわけでもございませんし、そういう計画もございません。これはやはり非核三原則といたしまして私どもはそういう核兵器は一切持たないということは一貫した政策でございますので、私どもが現実にそのようなことを考えているということではございません。その点は御理解を賜りたいと思います。
  344. 久保亘

    ○久保亘君 最後に聞いておきますが、自衛隊が持つ持たないということは別にして、中性子爆弾は憲法の許容する範囲に入るのか入らないのか。
  345. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 先ほども申し上げましたように、私ども個々の兵器についてそんなに詳細に検討しているわけではございませんので、明確にここで卒然とお答えするほどの知識は持ち合わせておりません。
  346. 久保亘

    ○久保亘君 核兵器の個々の兵器について何ら防衛庁として検討も加えられておらず、そしてこのことについて定見も持たずして、あなた方の広報文書に非核三原則は憲法の問題ではないと言い切ることはおかしいんじゃないですか。
  347. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 憲法の解釈といたしましては、核兵器の一切を保有し得ないということではないということはかねてから政府の解釈として申し上げているところでございまして、核兵器を持たないということは、政府がとっております政策としての非核三原則、これに由来するものでございますし、それからまた先ほど申し上げましたように、原子力基本法でありますとか核兵器不拡散条約といったようなもので規制をされているという性質のものでございますから、そこは非核三原則というものの性格は、憲法イコール非核三原則ということではなくて、我が国の選択をしている政策方針ということであることをそこで解説をしているというふうに私は理解をいたしております。
  348. 久保亘

    ○久保亘君 それでは非核三原則は、今のようなあなたの御見解だと、これは日本の国是であるということを明示しておく必要がありませんか。防衛庁長官の方がいいね。
  349. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) これはかねてから、政府として国是として採用している政策だというふうに申し上げております。
  350. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 非核三原則は国是であります。  それから、今のいろいろの御議論を承っておりまして、憲法上の問題はこれはどこまでも論理的、観念的な問題でございます。ですから、論理とか観念の中ではいろいろのことが出てくるわけでございます。しかし、現実には我々の方は国是として非核三原則でいく、原子力基本法がある、核兵器の不拡散条約もある、そういうことで現実に持たないと、こういうことでございますので、いろいろ御議論の中に、防衛庁はそれは研究していないのかとか、研究しておるのかとか、これはどうだというときに、いささか御満足のいけるような御答弁ができなかったわけでございますが、私はこの御議論を聞いていまして、我が国が持たぬことは事実でございます。事実でございまするけれども世界の軍事技術の進歩というものについて絶えず防衛庁が関心を持っておる、勉強しておるということが必要でございますので、それらの点につきましては留意をして対処してまいりたい、こう考えております。
  351. 久保亘

    ○久保亘君 それでは、防衛庁の広報文書は、非核三原則を国是として堅持しているというふうにお書きになるお気持ちはありませんか。
  352. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  防衛庁の白書がただでさえかた過ぎる、これはなるべくやわらかくしようと、こういうことで企画をいたしましたので、趣旨としては国の政策としてこれは持たないのだということを書いておりますので、そういう趣旨のことをわかりやすく書いたということで御理解をいただきたいと思います。国是というほど張り切っては言っておりませんが、持たないということははっきり書いたつもりでございます。
  353. 久保亘

    ○久保亘君 書く意思があるかどうかと聞いている。書かないということですか。聞いたことを答えぬとだめだ。
  354. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 言葉のやりとりで、国是というよりも、これはどういう意味かというと、国の基本的な政策と、そういう意味だと思うんですよ。だからそういう意味の表現。これを使う、使わないという問題はあると思います。ですから、今御提示の問題につきましては、国の基本的政策というような意味合いで国民にわかるように書けという趣旨であれば、私も同感でございます。
  355. 久保亘

    ○久保亘君 それでは次に、世界銀行の総裁の言葉をかりれば、人類にとって二つの危険な爆弾は核と債務であると言われております。そのいま一つの爆弾、核についてお伺いをいたしましたが、もう一方の危険な爆弾である債務について、開発途上国の八三年末における累積債務総額は見通しどの程度になりますか。
  356. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) 開発途上国の八三年末の累積債務残高の見込みは、約六千億ドルというふうに見込まれております。
  357. 久保亘

    ○久保亘君 防衛庁、世界の年間軍事支出はどの程度ですか。    〔委員長退席、理事初村滝一郎君着席〕
  358. 古川清

    政府委員(古川清君) これについてはいろんな考え方及び資料があり得るわけでございますけれども、一つの資料といたしまして米側の資料によりますと、トータルで六千五百六十七億ドル程度ではないかという資料がございます。
  359. 久保亘

    ○久保亘君 OECDの開発途上国の対外債務報告では、八二年末で六千二百六十億ドル、そして伸び率はずっと暦年十数%で伸びてきておりますが、先ほどの六千億ドルというのは一千億ぐらい足らぬのじゃないですか。
  360. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) 御指摘のように、OECDでも見込みを出しておりますが、OECDでは、開発途上国六千二百六十億ドルと八二年末で出ております。なかなか累積債務は、対象範囲やなんかが異なるとか、統計が必ずしも十分ではないというような問題がございまして正確な数字の把握というのが十分にできていないのが現状でございます。そこで私どもも、世界銀行とかIMFとかOECDとかそういうところと協議をいたしまして、そういうような債務の数字をできるだけ正確に把握するような相談を進めておりますが、なかなか短期の債務とかいろんな問題がございまして数字に若干そごがあるのが現状でございます。
  361. 久保亘

    ○久保亘君 大体、世界の年間の軍事費と累積債務の総額が同じぐらいになっておりますが、この累積債務残高の主要債務国別の金額をちょっと示してみてください。
  362. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) モルガン・ギャランティー銀行が発表しております資料でお答えさしていただきますが、八二年末で一番大きいのが、ブラジルが八百六十三億ドル、メキシコが八百四十六億ドル、アルゼンチンが三百八十八億ドル、ベネズエラが三百三十二億ドル、アジアで、韓国が三百七十二億ドル、インドネシアが二百十九億ドル、フィリピンが二百七億ドルというような数字が発表されております。
  363. 久保亘

    ○久保亘君 その累積債務の中で、日本民間金融機関による対外貸し付けの残高はどうなっておりますか。
  364. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) 我が国の民間銀行の開発途上国に対する中長期の貸し付けの残高は、昨年の九月末で約三百七十億ドル、短期の貸付残高が二百億ドル、倉計いたしまして約五百七十億ドルくらいございます。  個々の国ごとの数字というものにつきましては、相手国に対する問題もございまして差し控えさせていただきたいと思いますが、地域別に分けて主要債務国について申し上げますと、中南米のブラジル、メキシコ、アルゼンチン、ベネズエラ、これに対しまして約二百六十億ドル、アジアの韓国、インドネシア、フィリピンに対しまして約七十億ドルでございます。
  365. 久保亘

    ○久保亘君 国別で邦銀の貸付残高を説明することは困難ですか。
  366. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) 国別に申し上げますと、相手国が日本の銀行からどのくらい借りているかというようなことで、相手国政府に対する外交的な配慮も必要かと存じます。ただ、先ほど申し上げましたブラジル、メキシコ、アルゼンチン、ベネズエラ、約二百六十億ドルと申し上げましたが、それらの国がIMF等の関係で発表いたしている数字もございますのでそれを申し上げますと、ブラジルが約八十億ドル、メキシコが約百億ドル、アルゼンチンが約四十億ドル、ベネズエラも約四十億ドルというのが昨年九月末の数字でございます。
  367. 久保亘

    ○久保亘君 世界全体の民間銀行の貸付残高というのは国際決済銀行の統計によって明らかになっておるのに、邦銀の貸付残高だけが数字を示せないというのはどういうわけですか。
  368. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) お答え申し上げます。  御指摘のように、BISは国ごとのトータルの数字を出しておりますが、BISの数字も、一つの国に対する債権国別のカントリーワイズの数字は発表いたしておらないと理解いたしております。
  369. 久保亘

    ○久保亘君 それでは、アジアの諸国のうち、韓国、インドネシア、フィリピンの三国の数字が示せないと言うなら、多い順番にちょっと番号をつけてみてください。
  370. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) 昨年の九月末現在で申し上げますと、日本の銀行の貸付残高で、韓国、インドネシア、フィリピンに対する貸し付けで順位を申し上げますと、大きい順で、韓国が一位、インドネシアが二位、フィリピンが三位という状況でございます。トータルして約七十億ドルでございます。
  371. 久保亘

    ○久保亘君 邦銀の貸付残高は、今、中南米とアジアに限って三百三十億ドル程度ということでありましたが、世界全域にわたって今邦銀の貸付残高というのは総額幾らになっておりますか。
  372. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) 我が国の民間の金融機関の対外貸付残高は、昨年の九月末現在で約千二百億ドルでございます。
  373. 久保亘

    ○久保亘君 千二百億ドルといえば大体二十五兆円を超える債権になるわけでありますが、相手側にとってこれらの累積債務の返還が非常に困難になっておるものが多いように聞いておりますが、この邦銀の累積貸し付けについてどのような対応を日本政府としてはおやりになっておるんですか。
  374. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 我が国の民間金融機関の対外貸付残高は五十八年九月末で千二百億ドル。それから、一九八二年の夏以来中南米を中心にしまして債務返済に困難を来す国が増加をいたしましたが、それらリスケジュール、延滞を起こした外国政府等に対する貸付残高は約三百億ドルと、こういうことになります。しかしながら、これらの国の多くは、経済調整のプログラムのもとに厳しい自助努力を、いわゆるIMFが何といいますか、債権者を代表していろいろ経済調整をやるわけでございます。したがって、関係当事者の適切な対応と相まって、国の債務の支払いが最終的に回収不能となるというような事態は回避されるものと我々は期待しております。今日まで最終的にパァになったというものはございません。
  375. 久保亘

    ○久保亘君 その場合に、返済が非常に困難となったものに対して新規融資をやって返済をやらせる、こういうやり方をとっておりますか。
  376. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) 開発途上国が債務の支払いに困難を来した場合に、それに対しましては、まず第一に、支払い遅滞になっている債務の返済の猶予、いわゆるリスケジュールというようなことをやるのが多いわけでございます。それからそのほかにいろいろ新規融資も行うことはございます。それから債務救済の一環として返済資金をリファイナンスするというようなこともございます。それらにつきまして、民間銀行、それから国際的な金融機関、それから各国政府、そういうものが協力して資金ギャップを埋めるようなふうなことで今日までやってきております。
  377. 久保亘

    ○久保亘君 全世界的に見れば七千億ドル、百五十兆円以上の累積債務が存在をしているという、これは非常に問題の発火点になりやすいことだと思うんですが、そうすると、今大蔵省としては我が国の持っている累積債権については格別心配するようなことはないと、こういうことでございますか。
  378. 竹下登

    国務大臣竹下登君) もとより全く心配していないわけではございません。そこで、よく言われるISバランスというのがございます。すなわちインベストメント、投資と貯蓄というのはバランスがとれていなければならぬ。銀行で言えば預賃率とでも申しますか、いわゆる投資先、貸出先というのは、簡単に言えば個人か企業か国か地方団体か外国がと、これだけでございますよね。したがって、そういう意味において、健全性を保つためにやはりガイドラインを設けまして、これ以上、およそこれまでだよというガイドラインを設けております。元来は金融機関のそれは自主的に投資先を見つけられるわけでございますけれども、およそその点についてガイドラインを設けて、言うなれば危ないことのないようにと、こういう指導、これは行政指導を行っておるわけであります。したがって、いろいろ八二年から出てまいりましたところに対しましてはIMF等がやっぱり入りまして、こういうふうな経済調整をしたらどうだとか、あるいはこの点をもっと改善したらどうだとか、いろいろな指導をいたします。それがパリ・クラブでございますとか、あるいは最近は東京でもいろいろなそういう協議が行われることが多くなりましたものの、そこで各国の代表等が集まっていろいろ協議をいたしましてこれに対応してまいりますので、全体として、いわゆる表現はおかしゅうございますが、国損を招くとでも申しますか、そういうことは避けられる問題であると。全体的には我が国の場合は、何と申しましょうか、金融機関の自主性とはいえガイドライン等でいろいろ指導しておりますので、回収不能になるというような状態はないという期待を絶えず持ち得る状態にあるではないかという感じがしておるところであります。
  379. 久保亘

    ○久保亘君 それでは次に、少し教育問題について。  大学の不祥事件が最近相次いでまいっておりますが、九州産業大学の補助金不正受給事件は、文部省としてどのように決着したと考えておいででございますか。
  380. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 最近、私立大学の経常費補助に対します不正受領、あるいはまた今お尋ねではございませんでしたけれども、学内の刺殺事件など不祥事が相次いで起きておりまして、学校法人の管理運営に適正を欠く事例が出てまいりましたことに対しまして、これは一私学のこととはいえ、私学全体あるいは高等教育にかかわる社会に及ぼす影響からいって、私は極めて遺憾なことだと思っております。  問題を起こしました大学につきましては、補助金の返還あるいは打ち切りの措置、そしてたび重ねまして理事体制の刷新の指導をいたしておるところでございます。私学全般に対しましては、こうした問題に対しまして、問題意識として、事務次官通達などもいたして徹底を図らしているところでございます。また、今御審議をいただいております予算の中には、新たに学校法人運営調査委員会、仮称でございますが、これを設置をいたしまして、今後適切な指導助言をしていけるようなそういう方向に今努力をいたしておるところであります。  九産大につきましては、今、五年間大学経常費打ち切りという措置をいたして、厳しい指導をいたしておるところであります。
  381. 久保亘

    ○久保亘君 大変文部省としては厳しい制裁措置をおとりになっている九産大の補助金不正受給やその他学内のもろもろの事件に対して、最近九産大の理事会で、鶴岡前理事長に対して退職功労金三億六千五百万円、そして大学の研修所としてつくられた美津島の九産大研修所を無償で鶴岡氏に贈与する、そのほか理事長公舎も次の行き先が決まるまではどうぞお使いください、こういうことで決められたと聞くんですが、この点について文部省はどのようにお考えですか。
  382. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 今、久保さんから御指摘をいただきましたことは新聞の報道でも承知をいたしておりまして、私学の自主判断でやったこととはいえ、社会一般の納得が得られるようなことではないと、私はそのように感じておりまして、早速事情を聴取すべく現在大学からその間の事情、経緯を今聴取をいたしておるところでございます。もちろんその報告を待って適切な判断をしなければなりませんが、先ほど申し上げましたように、何といいましても今の理事体制の刷新をしなければならない、そのことにさらに強く指導を重ねていきたいと、こう思っております。
  383. 久保亘

    ○久保亘君 特に私、この中で問題だと思うのは、大学が研修所としてつくったものを、やめた理事長にあなたに上げますというようなことを、こんなことを決められるんだろうかと思うんですが、いかがですか。
  384. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 前の瀬戸山文部大臣も国会で申しておられたのを新聞でも承知をしておりますが、どうも一般の常識で考えられないようなことが起こり得るということでございまして、今の御指摘のこともまさに公私混同でございますし、学校法人としてあるべき私は事柄ではないと、こう思っております。
  385. 久保亘

    ○久保亘君 私、この大学の学長に直接確かめてみました。この研修所はつくられてから大学の公式スケジュールの中に研修所の使用が組み込まれたことは一度もない。もともとこの研修所は理事長の個人の物としてつくられたのじゃないかという感じがするんですが、これらの点についても厳格にひとつ調査をしてもらいたいと思うんです。
  386. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) ただいまのことを含めまして、今の退職金あるいはまた現在住んでいる公舎をしばらく使うというようなこと、これらにつきましては確かに私学自身が判断するとはいえ、どうしても常識で私どもも考えられませんので、ただいま事情聴取をいたしておるところでございます。何といいましても、問題は、やはり今の理事体制というところに問題があるわけでございまして、端的に言えば、前理事長、そしてまた、そのことにかかわり合いを持ち、責任があると言われている人たちが理事会を運用していくというところに問題がある。言葉はちょっと、国会でございますので、久保さんはおわかりをいただけると思いますが、このところをきちっとするようにさらに強く厳しく指導いたしておるところであります。
  387. 久保亘

    ○久保亘君 特に文部省の行政措置によって百億に上る補助金が打ち切りになり、その上、やめる理事長に数億の大学の資金や財産が渡される、こういうことになれば、その負担は全部学生にいく、これは私は許せないことだと思う。これらのことについて文部省として可能な厳重な指導をやっていただくようにお願いをいたしておきます。  次に、時間がありませんので、国鉄の運賃について運輸大臣にお尋ねいたしますが、ことしの運賃が地域差別運賃で値上げをおやりになる法的な根拠と考え方について御説明いただきたい。
  388. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) お答えいたします。  国鉄の運賃は、鉄道国有以来、単一の運賃をとってまいったのでございます。これに対して、地域別に差別をつけるということがことし初めて国鉄から今申請が参っておることは御承知のとおりでございます。この点につきましては、長い間国会におきましても非常な論議が続けられておるところでございまして、理論的にも実際的にもいろいろ一長一短あるわけでございます。ただ、昭和五十二年に運賃を政令で決めるというのができました。その中では、こういう差別運賃をつくるということは可能であるという解釈でございますし、特にその裏づけとして五十五年には法律が、国鉄の再建特別措置法で差別をつけるという項目を設けましたし、また運賃法の第十条の二というもので、第二項をつけまして差別運賃を設けることができると、こういうことになったわけでございます。このことにつきましてはいろいろ一長一短あると思っておりますが、臨調の答申並びに国鉄監理委員会からの勧告等がございまして、ことし初めて国有鉄道としてはこれに従う義務があるということになっておりまするので、ただいまそういう申請が出、今、運輸審議会で審議をいたしておるところでございます。
  389. 久保亘

    ○久保亘君 赤字ローカル線についての差別運賃ということは、法的に可能となっていることはわかります。しかし、このことについては非常に問題があるんです。それならば、東京、大坂の国電と一般幹線との間に差別賃率を適用できるというのは、法的な根拠は何ですか。
  390. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) 原価を一応線区別に見ますと、大都市におきましては営業係数がいいわけでございます。したがって、今の運賃を上げなくてもいわばペイしておるという形になっておるわけでございます。ローカル線につきましてはこれは赤字が大きい。特に私鉄との比較、競争関係がありますが、私鉄やバスとの関係におきまして、大都会の付近の国鉄運賃は、私鉄あるいはバスよりも非常にどちらかというと高位にある、ローカルにおいては私鉄が高くて、場所によりましては国鉄の倍ぐらいになる、こういうことに相なるわけでございます。つい最近発足いたしました第三セクターによる三陸鉄道も、運賃は国鉄の大体五〇%高ということで出発することになっておるようなわけでございます。
  391. 久保亘

    ○久保亘君 地域別の運賃を導入しなかった場合、今度国鉄が収入増加の見込みとして千八百億円を考えておられるようですが、その場合に全体的に賃率をどれだけ上げればいいんですか。
  392. 永光洋一

    政府委員(永光洋一君) お答えいたしますが、地方のローカル運賃を若干の割り増しをいたしますことによりまして約五十億程度の増収が図られる予定でございます。さらに、大都市の運賃を抑制いたします結果、本来なら、幹線並みに取れば二百二十億ほどのお金が取れないということでございまして、賃率をどの程度というのは、それぞれ細かいのでちょっと今現在わかりませんが、絶対額としてはそういうことでございます。
  393. 久保亘

    ○久保亘君 一方では上越新幹線のように膨大な累積赤字を持ち、そしてローカル線に特別な賃率を掛けてたった五十億の増収を図る。こういうことで、実際にはローカル線の利用率がさらに低下して、ローカル線が運営できなくなるというようなことをお考えになりませんか。
  394. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) そういう御議論が非常にあること、殊に運輸審議会でもそういう公述人からの公述があったことも承知しております。五十億のためにローカル線がこれだけ痛めつけられてはどうかと、また客が鉄道離れを余計するのじゃないかと、こういうお説のような説があることはもう私ともよく承知しておりますし、また全国から反対の署名運動等も盛んに参っておるわけでございます。ただ、鉄道のこれは本当は公共性企業性との問題に関連するわけでございますが、第二臨時行政調査会の答申あるいは国鉄の再建監理委員会の考え方というものが、公共性の問題よりもむしろやはり競争と企業性というものを尊重するという方向でございまするので、これはおっしゃるような心配があることは私どもも承知しておりますが、今それらの点を運輸審議会で御審議をいただいておるということでございます。
  395. 久保亘

    ○久保亘君 必ずしも運輸審議会において国鉄の申請どおりにはならぬと、こういうことですね。
  396. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) 運輸審議会の御答申というのは、そのとおりにするということにはなっておりません。ただ、地域的な差別をつける三段制で今度出してきておるのでございますが、私どもが運輸審議会の審議状況を承っておるところによりますと、その三段階制はやむを得ないのではないかと、反対の意見があることも織り込んで、三段制にすることはやむを得ないじゃないかという傾向に今あるようでございます。まだ最終的な答申が出ておるわけではございません。
  397. 久保亘

    ○久保亘君 時間がなくなりましたので、あと一つ二つ特にお尋ねしておきたい問題について。  一つは、先般、台湾出身旧日本兵の補償に関連してお尋ねをいたしましたが、同様な立場にある韓国出身の旧日本兵に対する補償問題はどうなったのか。  それから、シベリア強制抑留者に対する補償請求がありますが、この補償請求は日本政府が受けとめるべきものだと考えておりますが、この点について政府の御見解を承りたいと思います。
  398. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 軍人、軍属として徴用されました韓国人に対します補償の問題でございますが、これは先生御案内のとおりに、昭和四十年に締結されました日本と韓国との間の請求権及び経済協力協定というのがございますが、ここでもってすべて一括して解決されたと、こういうことで、国と国との間におきましてはこの問題は提起されることはございません。  それからもう一つ……
  399. 久保亘

    ○久保亘君 ちょっともう一遍。
  400. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 一括処理されたわけでございます。国と国との間の請求権の請求といたしましては、これは外交上完全に終結されている、こういうことでございます。
  401. 久保亘

    ○久保亘君 終結されているね。
  402. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) はい。  それからもう一つ先生からお尋ねがございましたサハリンのケースでございますが、この問題につきましては、これは今のような請求権云々の話というのをそういう観点からは私問題提起されたというふうに承知しておりませんし、またそういう観点では私ども……
  403. 久保亘

    ○久保亘君 いや、サハリンじゃない、シベリア。シベリア抑留者のことを言っている。
  404. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) どうも失礼いたしました。
  405. 西山健彦

    政府委員(西山健彦君) シベリア抑留者の問題についてお答え申し上げます。  ソ連に抑留された方々が強制労働を強いられるなど、大変な御苦労なされたことはまことに遺憾なことであると考えております。しかしながら、さきの大戦に関しましては、戦中戦後を問わず、国民のすべてが多かれ少なかれ戦争による各種の犠牲をこうむっているわけでございます。したがいまして、これらのいわゆる戦争犠牲というものにつきましては国民のひとしく受忍しなければならなかったところのものでございまして、国に補償する義務が特にシベリアに抑留された方々についてあるというふうには考えていないわけでございます。  なお、このシベリア強制抑留者の問題等につきましては、現在民間の有識者による戦後処理問題懇談会というものを開催いたしまして、どのように考えるべきかを御検討いただいていると承知いたしております。
  406. 久保亘

    ○久保亘君 今の点はおかしいんでね、ハーグ陸戦法規とか捕虜の待遇に関するジュネーブ条約などによれば、明らかにソ連政府に対して抑留者は請求権がある。ところが、ソ連政府に対しては日本政府が請求権を放棄しておるんです。それならば日本政府がその請求権を受けとめるべきものだと考えますが、いかがですか。
  407. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) ただいま久保委員指摘のように、今度の第二次大戦の末期にソ連との関係において生じました日本人の軍人あるいは一般邦人の抑留の問題につきましては、政府といたしましては、ソ連側に非常に国際法上問題のある行為があったという認識でございます。ただ、これも委員が御指摘になりましたように、共同宣言の中でこの請求権の関係は一切解決をするという形になっておりまして、国と国との関係におきましては、この問題は日本国からソ連国の政府に対して問題を提起するということはできない関係になっているわけでございます。それ以上その個々の問題について日本の国内法上どういう手当てをすべきかという問題につきましては、御承知のように最高裁の判例等もございまして、こういう国際条約におきまして放棄をいたしました請求権、国際法上の立場から申しますと、国の外交保護権の放棄ということになるわけでございますけれども、そういう行為が我が国内法上補償の対象になるべき問題がどうかということは、これは基本的に我が国内法あるいは国内政策の問題でございますけれども、法律上の問題としては、これが国内法上の補償義務を政府に生ぜしむるものではないというのが政府の法律的な立場であるというふうに承知しております。
  408. 初村滝一郎

    ○理事(初村滝一郎君) 瀬谷英行君の関連質疑を許します。瀬谷君。
  409. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 ただいま法律上の立場を言われたけれども、問題は政治的にどうするかということなんですよね。国民のすべてが長期にわたって外国に抑留されたわけじゃないでしょう。シベリアに、あの寒いところに長期にわたって抑留された人たちの問題をどうするのか。請求権を放棄した以上は、日本政府が当然これは配慮をする義務があるというふうに考えるべきだと思う。だから、その点をうやむやにしていいということにはなりません。したがって、もう関係者の年もとっているわけでありますから、速やかにこれらの問題についても政府として責任ある措置をとるべきではないかというふうに考えるのが常識だと思うのでありますが、その点はどうですか。
  410. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かに今おっしゃいますように、法律的には解決済みだと言っても政治的には確かに問題があると私も思うわけです。ですから、シベリアに抑留された抑留者の人たちも、日本政府に対しまして見舞い金とかあるいは補償金の要求の運動を行っておりますし、あるいはまた戦争が終わって海外から引き揚げてまいりました引揚者団体も、またそれに伴いまして補償等の措置を要求もいたしております。台湾兵の問題もあることも事実でございます。これらは請求権の問題としては片がついたとしても政治的には問題が残っておるわけでございまして、一応横並びの問題等もあり、また日本の財政上の問題等もありまして非常に取り扱いが困難でありますし、政府としては、これらのやはり戦後処理の問題は一応の解決済みであるという建前をとっておるわけでございますけれども、まあ割り切れない気持ちも我々政治家も持つわけでありますし、そういう被害を受けた方たちも持っておるわけですが、何分にもやはり横並びの問題等もありまして、また政府がこれまで一貫して答弁した立場等もありまして、いろいろと調査等は進めておりますけれども、現実的に補償措置をとるとかいうことは今困難な状況にある、こういうふうに私も判断をいたしておるわけであります。
  411. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 台湾兵もいれば朝鮮兵もいたわけです。これは南北朝鮮にわたっておるわけです。さらに、このシベリアの抑留者というのはちょっとケースが違うわけですよね。暖かいところにいて捕虜になった人の場合とは事情が違うのです。それだけに犠牲者も多いわけです。したがって、政治的な配慮というものがやはり何らかの形で行われるのが私は筋だろうと思うのでありますが、その点に対する配慮は、政府としてはもう少し突っ込んでいいのじゃないかと思うのでありますが、その点はどうですか。
  412. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) シベリアの問題を特に強調してお話してございまして、この点につきましては戦後処理懇、七名の方々ですが、私の諮問機関ということで、もう二十回目ぐらいになりますが議論をしていただいております。実態的な問題、法令的な問題、大体検討は終わりまして、これから詰めの段階に入ろう、こういうことで、シベリアの問題、在外財産の問題、軍人の恩給の欠格者の問題、その三つを柱にして作業が進んでおるところでございます。  シベリアの問題につきましては、恩給の受給者の対象になっておる方もおられますし、加算の対象になっておられる方もございます。また、戦後の戦傷病者戦没者遺族等援護法の対象になった方もおられます。一応片はついておるということではあるのですけれども、今お話しのように、だんだんお年を召してきて、なおそのことについて政府の対応を求めておられる方もたくさんおられます。そういったことを踏まえて、戦後処理懇の審議の促進を図ってまいりたい、かように考えておるところでございます。
  413. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 久保委員の質問に関連をしますのでちょっとバックしますけれども、先ほどの憲法と核武装についてのやりとりを聞いておりますと、まことにどうも遺憾な点がございます。もう政府側の答弁というのはしどろもどろを絵にかいたようなものです。ああいうことでは中学生だってごまかし切れないと思うんです。だから、私はもう少し頭を下げるところはちゃんと下げてもらいたい、こういう気がするんです。あの種の図書について責任を持つ以上はもう少ししっかりそめ監督をする必要があるのじゃないでしょうか。その点どうですか、防衛庁長官
  414. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) これは、この間志苫さんからも御指摘をいただきまして、無用な誤解を招かないように対処していきたいと、こういうことでございますので、御了承いただきたいと思います。
  415. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 長官が知らなかったというふうに最初聞き取れたんですが、やっぱり知らないじゃ済まないですよね、防衛庁が監修しているんですから。そうすると、この出てきた刷り物というのは、これは突っ込まれるというと、さっきのやりとりを聞いていてごらんなさい、みっともないっならないですよ、あれは。時間つぶしの言い訳ばっかりなんですよ。ああいうことを国会の場でもって見せられるということはまことに情けないんです。だから、あの種のものが発行される前にきちんと内容を規制するということを私はやってもらいたいと思うんです。風俗営業の問題を規制をするというようなことは、それも必要かもしれないけれども、これは人畜無害なんですから。この種の問題は、日本の国連に関する問題だから、私は防衛庁長官として責任を持ってもらいたいというふうに考えますが、いかがですか。
  416. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 先ほど申し上げましたとおり、無用な誤解を招かないように対処いたしたいと思います。
  417. 久保亘

    ○久保亘君 最後に、先般の総選挙にかかわって、奄美大島特別区における選挙賭博事件の捜査が大々的に進められてまいりましたが、この捜査の結果について御報告をいただきたい。
  418. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) お答えいたします。  奄美群島区におきます選挙に関しまして、その際選挙賭博事件が行われたわけでありますが、現在までに百二名検挙いたしまして、解明をされましたかけ金の総額が一億八千六百九十万円でございます。
  419. 久保亘

    ○久保亘君 この事件の捜査は、賭博事件としてやられたのか、公選法にかかわって捜査に入られたのか、その点はいかがですか。
  420. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) 事件そのものは、刑法の賭博罪の検挙でございます。
  421. 久保亘

    ○久保亘君 そして、捜査の結果、公選法上の問題は指摘されなかったのですか。
  422. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) 公選法の違反といたしましては、買収等で二十五件、二十九名を検挙いたしております。
  423. 久保亘

    ○久保亘君 自治大臣にこの問題について、選挙をめぐって警察が調べただけで一億八千万に上る賭博が行われたということについて、選挙の担当大臣としてどのような御見解をお持ちですか。
  424. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 奄美で、前回の選挙で非常に大規模な賭博事件、それに絡む選挙違反があったということは本当に残念なことでございまして、こういう事件はもう再び起こさないように自治省としても啓蒙宣伝をしなければならないし、また警察としても、今後こういう事件に対して厳正な態度で取り締まっていかなければならない。そういう意味で、再び起こさないように努力をしていくべきであると、このように思っております。
  425. 久保亘

    ○久保亘君 本日は時間がありませんので、本件に関してはまた機会を改めてお尋ねをいたしたいと思います。  これで質問を終わります。(拍手)
  426. 初村滝一郎

    ○理事(初村滝一郎君) 以上で久保君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  427. 初村滝一郎

    ○理事(初村滝一郎君) 次に、志苫裕君の一般質疑を行います。志苫君。
  428. 志苫裕

    志苫裕君 きょうは主として談合問題でお尋ねをいたしますが、その前にちょっと一、二問。  防衛庁長官、ワインバーガー・アメリカ国防長官の五月来日が伝えられておりまして、当然に日米防衛首脳会談なども予定されるでしょう。それで、例のアメリカの国防報告に盛られておるシーレーンの防衛慫慂が、要求されるといいますか、慫慂されることも考えられますし、また報道によりますと、シーレーン絡みでこの硫黄島の基地機能の強化というものが求められるとも言われておりますし、懸案の艦載機の発着場というのですか、訓練場というのですか、これの問題、いわば厚木の代替基地の問題についても決着が求められると思うんですが、日本側の対応はどういうことでしょう。
  429. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) いろいろ報道をされておりますが、ワインバーガー国防長官が五月の初旬から中旬、そこら辺のところで我が国を訪れる、その際に私にもお会いをしたいというような、そういうまあ正式ではございませんけれどもいわゆる内意として伝わってきております。したがいまして、特別の事情がない限りそういうことになるのではないかと心得ております。  そこで、議題を何にするかというようなことが報道の中に出ておりますが、今回私が会う場合、特定の議題を構えてお話をするというような気持ちはございませんし、また向こうの方からも、これこれの問題について話し合いをしたいということも来ておりません。したがいまして、日本にいつ来られてどの程度おられるのかわかりませんけれども、今の段階で、公式非公式は別といたしまして、こういう問題について話したい、こういうことをやってみたい、そういうようなことがないところを見ますと、これは報道に言われているようなお話を、討議を煮詰めていくというようなものではないと思うんです。ただ、ワインバーガー国防長官は、安倍外務大臣が行かれたときにも、早く日本防衛庁長官と話をしたい、会いたいと、こういうことでございますので、私も初めてお会いするわけでございますから、そのときにいろいろ話をいたしますが、むしろ私の希望といたしますと、アメリカの国防長官がいわゆる国防問題を中心とした哲学を、どういう哲学を持っておられるか、私は私なりに日本の防衛を預かる身として一つの私の考え方を述べてみたい。そういう何といいますか、基本的な問題、基本的な物の考え方について話し合いをしたいと、そういうふうに考えておりまして、特定の問題について向こうからも来ておりませんし、こちらからも言っておりませんし、また今までの経過からいくと、なかなかそういった問題についてのお話をする時間的な余裕がないんじゃないかと、こう考えております。
  430. 志苫裕

    志苫裕君 ただ、ぶらっと来るわけはないんでね。外務大臣、何か情報ありますか。
  431. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) やはり今防衛庁長官が話されたように、日米防衛協力といいますか、全般的な国際情勢も踏まえた日米関係について話をされるのじゃないかと、こういうふうに思っております。
  432. 志苫裕

    志苫裕君 そこで防衛庁長官、先ほど指摘した硫黄島の問題と艦載機の問題ね、これ、出るだろうと、また出る可能性もあるわけで、皆さんの方の対応はどうですかと、こう聞いておるんです。
  433. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) そういう問題が出るか出ないかわかりませんが、出たときには、我々の方の今までの経過を率直にお話をするということになろうかと思います。
  434. 志苫裕

    志苫裕君 出たとこ勝負じゃ困るんですが、硫黄島については、基地機能の強化ということは応じがたいという従来の見解ですね。
  435. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 今お尋ねの硫黄島につきましては、訓練基地としての整備を進めてきたわけでございまして、それ以上のことを現在考えておるわけではございませんので、その辺はもし何か聞かれればそういうことは説明をすることになろうかと思いますが、今具体的にそういう話があるというわけではございません。
  436. 志苫裕

    志苫裕君 例の厚木の代替基地、何か三案出ているような話でいたんですが、今どうなっているんですか。
  437. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 三案と申しますのは、現在あります自衛隊の基地の使用ということ、それから新しく飛行場の新設ということ、それから三つ目には何らかの形の海上浮体構造物というような三つのテーマで調査をいたしておるその三案でございますけれども、米側はこの問題、どの案ということでなしに、かねてから強く要望しております。したがいまして、今までの日米会談等におきましても、常に要望はいたしておりますが、先ほど大臣からお答えしましたように、もし出れば現状を率直にお話しするということになろうかと思います。
  438. 志苫裕

    志苫裕君 三宅島の議会が誘致すると言うたりやめたと言うたりしているようですが、防衛施設庁とどういう接触になっているんですか。
  439. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 今もお話がありましたように、去年の十二月に村議会の議決で誘致したいという議決がございまして、その後、一月の二十日だったと思いますが、反対の議決が出まして、現在そのままになっておりまして、私どもまだ村の方に何らかの接触をしておる段階ではございません。
  440. 志苫裕

    志苫裕君 ですから、誘致というのは皆さんの方で働きかけたという意味ですか。
  441. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 十二月の村議会の議決は、もともと三宅島としましては、ジェット機の発着する飛行場が欲しいという御要望がございまして、そのための議会の中の特別委員会もあったわけですが、そういう経過から飛行場が欲しい、その際に官民共用の飛行場ということで誘致したいという話が議会で議決になったわけであります。その場合の官民の官というのは、米軍機の訓練飛行場の意味を含むものであるという意味の説明が当時、村議会の方から我々にあったわけでございます。そういう意味で、村の方の、村といいますか、村議会の意見としましてそういう議決があったということでございます。
  442. 志苫裕

    志苫裕君 その点はそのくらいにしまして、次へ参ります。  外務大臣、もう一遍くどいようですが、この間も西側の一員論が議論になりましたが、突き詰めて言うと、西側の一員論というのは、西側の国ですというだけじゃそれは一員論ではないわけであって、西側の国だからどうしようというのが外交スタンスなんですか。
  443. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 西側の国といいますか、自由主業諸国の一員として、今、世界情勢が非常に厳しい状況の中で、やはり自由主義国家としての一つの連帯と協調をもって平和を守り、あるいはまた軍縮等に対して積極的に足並みをそろえていかなければならぬ。あるいは経済問題等についてもサミット等もあるわけでございますが、この経済問題等についても、自由貿易を守るというふうな中で共同歩調をとっていこうと、こういうふうなことじゃないかと思います。
  444. 志苫裕

    志苫裕君 ところが、アメリカ側では、もっぱら軍事分担とか軍事協力とか、いわば東西関係から見た海外協力の肩がわりと、そういう概念で論じられており、それにことしの外交青書は同調したのじゃないですか。
  445. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、御承知のように日本には守るべき一線というのがありますから、こういうアメリカが、アメリカはまあ世界戦略を持っておりますし、あるいはそういう中で日本も大いにやってもらいたいという期待はあるかもしれませんけれども日本日本の憲法というのがありますし、防衛の基本的な原則というものもあります。非核三原則というものもあるわけですから、やはりそうアメリカが思っているようにはいかないわけで、その辺のところはやはりきちっと説明をするところはしていかないと、今後の日米関係をかえって悪くするおそれがある。日米関係は非常に協力的でなければなりませんけれども、その辺の理解がやっぱりアメリカ側にないと困ると私は思います。そういう意味では、例えば経済協力についていろいろと話し合いをしたときも、日本経済協力の限界というのはやっぱり南北関係の中での人道的な配慮、あるいはまた相互依存という立場をこれは崩すわけにはいかないということをはっきりと申し上げた次第でございまして、やっぱりこれからの日米関係を考えるときに、その辺のところは非常に私は重要なポイントじゃないかと思います。
  446. 志苫裕

    志苫裕君 防衛庁の西側の一員論というのはどういう概念なんですか。
  447. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 私ども考えておりますのは、自由と民主主義を基調といたします我が国といたしましては、米国を初めといたします西側諸国との連帯と協調を重視する、そうしてみずから適切な規模の防衛力を保有するとともに、米国との安全保障体制によって我が国の安全を確保するというのが最も賢明な道ではないか、そういう考え方をとっておるわけでございます。
  448. 志苫裕

    志苫裕君 だから、わかりやすくいうと西側諸国の軍事協力体制ということなんでしょう。
  449. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 外務大臣のお話にありましたとおり、自由主義陣営の一員といいますか、そういうことで外交、経済、いろいろやっているわけでございますが、その中にあって、我が国は我が国の独立と平和、安全を守るために必要最小限度の憲法の枠内における防衛力の整備をしていく、それと同時に、日米安保条約で我が国を守っていく。そういうことが自由主義陣営、西側陣営の中で非常に重要な意味を持つ、そういう認識でございます。    〔理事初村滝一郎君退席、委員長着席〕
  450. 志苫裕

    志苫裕君 自由と民主主義を共通の価値観とする国だというのだが、昔からそうなんだ、なぜ最近西側の一員論を言うかということが議論の対象になっているのでね。外交スタンスでいえば、同じ自由と民主主義の価値観というものを持っていても、例えば三木さんのころは等距離外交と言うたんだし、外務大臣の親分である福田さんのときには全方位外交と言うたんだし、大平さんのときにはイコールパートナーシップと言うたんだし、鈴木さんは何か外務官僚だか何かにはめられて日米同盟と言って、そして中曽根さんになったら運命共同と、こう言っているんだ。それはやっぱり西側の一員というものの持つ意味を、平板じゃなくて立体的に、歴史的にいうと私はその西側の一員論は、特にことしの外交青書で書いたことの意味は大きいという意味で、日本の外交スタンスは変わったのかと聞いているわけだ。どうなんですか。
  451. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私は、日本の外交のスタンスは変わっていないし、またこれからも変えるべきでない、こういうふうに思います。  日米間では安保条約もありますし、軍事協力というのは当然あるわけでありますが、西側の中で、西側の一員として、いわゆる西側全体の中で軍事的なコミットをするというようなことは日本としてはあり得べからざることでありまして、やってはならないことであります。ですから、例えばNATOとの関係におきましても、しばしばNATOにコミットするのじゃないか、軍事コミットをするのじゃないかと、こういう発言もあったわけでございますし、この前のウィリアムズバーグ。サミットでもそういう批判もあったわけでありますが、日本の立場はあくまでも政治的な連帯と協調、そういうものを強く述べたと、こういうことであって、軍事面において軍事的にコミットするということはこれはあり得ないわけでございます。この辺はやはり外交の面においてもきっちり守っていかなければならない日本の一つの基本的な原則であろうと、こういうふうに思います。
  452. 志苫裕

    志苫裕君 軍事的にコミットしたがっておるから心配をしておるわけでして、これはまたいずれ議論いたします。  防衛庁、シーレーン防衛の日米共同研究が進んでいるわけですが、有事のシナリオは何ですか。
  453. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 国際情勢というのはかなり流動的な要素を持っているわけでございますから、我が国がいかなる場合にいかなる攻撃を受けるかということについては、これは一義的にはなかなか決めがたい点があろうかと思います。基本的には、大きく分ければ、日本が単独で攻撃されるというケースもあるでしょうし、それからまたどこかの紛争が波及をして、その結果として日本が攻撃をされるというケースもあり得るとは思います。いずれにしても、その事態はかなり多様でありまして、一概にこうだというふうにはなかなか言いにくいだろうというふうに思います。
  454. 志苫裕

    志苫裕君 単独侵攻型か波及型かによっては随分研究も違ってくると思うんですが、専門家の間では単独侵攻型はあり得ないというのがそれぞれ日米ともに国防筋からも盛んに出ている話ですが、日本の防衛庁はどういう判断なんですか。
  455. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 防衛庁といたしまして今後の防衛を考えていく場合に、どちらかというふうに片方だけに決め切ってしまうということはなかなか難しい問題ではないかと思います。したがって、いろんな場合を想定をしていくということが基本ではないかと、こう思います。
  456. 志苫裕

    志苫裕君 では、シーレーンに限定しないで、全体としての日本有事の想定を問いますが、この局地的があるいは地域的か世界的か、これいずれの場合も全方位で皆さんは有事を想定しているんですか。
  457. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 私どもが今防衛力整備に当たりまして基本的な枠組みとして考えておりますのは、これはもう御承知のように防衛計画の大綱でございまして、防衛計画の大綱におきましては、限定的かつ小規模な侵略に対しては原則として独力で対処し得るというようなことを基本として防衛力整備を考えておるということでございます。
  458. 志苫裕

    志苫裕君 そうおっしゃるだろうと思うんですが、そうなりますと、いわば平時の防衛力、さらに限定的小規模な侵攻、奇襲対処というものがいわば防衛力構想になるわけですが、それがどうして海峡封鎖などという大げさなところまで話が広がるんでしょうか。
  459. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 我が国が攻撃を受けますパターンとしては、先ほどはその二つの分け方で、単独で攻撃される場合、あるいは紛争が他地域から波及をしてきて攻撃される場合というふうに申し上げましたが、これをまた、何といいますか、侵攻される方の形態に分けてみますと三つほどに分けられると思います。一つは、陸海空の戦力によります我が領域に対する侵攻、それから二番目に、海空戦力によります我が国への攻撃、それから三つ目に、海空戦力をもってする我が国の海上交通の妨害というようなことが想定をされるわけでございます。また、その三番目に申し上げました海上交通の妨害ということになりますと、これにどう対処するかということで、いわゆるシーレーン防衛という問題が出てくるわけでございまして、これにつきましては、シーレーン防衛というのは、究極的には我が国の海上交通の安全を確保するというのが目的でございまして、そのための手段としては、例えば海峡の防備あるいは港湾の防備、哨戒、護衛等々のいろんな作戦を組み合わせてやっていく、その累積効果によって海上交通の安全を確保するというのが基本でございます。したがいまして、そういった諸作戦の一つといたしまして海峡の防備ということも場合によっては考えるケースがあり得るというふうに私どもは位置づけているわけでございます。
  460. 志苫裕

    志苫裕君 最後にしますが、まあシーレーンは、しばしば議論がありますように、何かこう線じゃなくて、言ってみれば海域ということを意味するわけです、無数の船が歩けばそれが全部シーレーンでありますから。しかし、そのシーレーンというのは世界の国々にとって全部自分のシーレーンでもあるわけです。おれだけ通るというわけにこれいかぬのですね、公海ですから。そこで、国籍不明の潜水艦に我が艦船が攻撃されたとしましょうか。これは有事ですか。
  461. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 今、御指摘の問題は、我が国が武力攻撃を受けたというふうに考えるかどうかというポイントではないかと思います。これは実際問題としてはいろんなケースがあり得るかと思いますけれども、ただ、我が国の船舶が公海上でたまたま攻撃を受けたということだけでもって、直ちに我が国に対する武力攻撃があったというふうには認定するということじゃございませんで、我が国に対する組織的、計画的な攻撃であるというふうに認定されたときに、そこで我々は自衛権を発動して実力行使をする、こういうふうに考えておることは従来からもしばしば申し上げているとおりでございます。
  462. 志苫裕

    志苫裕君 それでは談合問題の質問に入りますが、質問の趣旨をひとつのみ込んでもらうために、若干の見解を述べます。  私は、二月十日の代表質問で、利益誘導型の政治あるいは選挙のことを取り上げて、政治家が中央利益の運び屋として介在する余地をなくするという意味から公共投資の分権型を主張しました。しかし、利益誘導型のもう一つの側面というのは、公共工事の談合なんです。談合なければ利益は来ない。この談合問題には、競争価格の制限という経済領域の問題と、もう一つは政、官、業の癒着という政治領域の問題の二つの側面がある。昭和五十六年、公取が静岡の建設業界を摘発して以来、このことを機にしまして厳しい非難が集まって、本委員会でもさまざまな角度からいわば論議、提言等が行われまして、そしてこの問題について、かかわる諸官庁はすべて厳正な対応、特に公共工事の発注者として襟を正した入札執行を約束しました。  さて、そこでお伺いするわけでありますが、しかし私は、業界のトップが百年の慣行だと言うだけありまして、なかなか我々の見るところでも後を絶ったとは思えない。今、私の手元にも幾つかの資料や情報がありますが、きょうはそのことはそうとしまして、まず私、若干おしゃべりをしましたが、あれ以来、すなわち本委員会の議論以来、このそれぞれの所管事項についてどのような対応をしてこられましたか。その結果がどのような状況、傾向を示しておりますか。まずそれをひとつ、法その他を所管をする官庁から、大臣から報告をもらいたい。さらに続けて、大口の発注者としての建設、文部、厚生、農林もと言いたいところですが農林はいないので、防衛施設庁、ここからひとつ、どのようないわば入札執行姿勢ないし改善の措置をとったか、みずからの所管事項について談合事例等がなくなったか、御報告願いたい。
  463. 水野清

    国務大臣(水野清君) まず、建設省からお答えをいたします。  昭和五十六年九月の静岡事件を契機として、公共工事の入札をめぐるさまざまな問題に対処するために、建設省としましては建設業者団体に対して、刑法初め関係法令を遵守して適正な活動を行うように指導いたしてまいりました。五十七年の三月及び五十八年の三月に出されました中央建設審議会の建議に基づきまして、積算基準及び入札結果等の公表、指名審査の厳正化等の入札制度の合理化対策を講じ、地方公共団体に対しましても同建議の趣旨の周知徹底に相努めてきたところでございます。今後ともその推進に努めてまいるつもりでございます。
  464. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 文部省に関連してお答えを申し上げます。  公共工事の入札等につきましては、文部省といたしましても従来から適切な執行に努めてきたところでございます。ただいま御指摘をいただきました年次にわたりまして種々の批判を受けました状況にかんがみまして、文部省といたしましても建設省初め関係省庁とも連絡し、中央建設審議会の建議も受けて、公共工事請負契約業務を適正かつ厳正に行うために対応策を講じたところでございます。具体的な措置といたしましては、入札結果等の公表、競争参加者を適正な数にすること、積算基準の公表予定価格管理の厳正化等について関係各機関を指導して、実施しているところでございます。それ以後は文部省関係で談合問題として取り上げられたり、指名停止等の措置を具体的に取り上げられた事例はございません。今後とも指導を適切にしてまいりたいと思っております。
  465. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 厚生省については厳正公平に、そのような御心配が全くないように努めてまいります。
  466. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 防衛施設庁でございますが、昭和五十七年の六月以降におきましてとった措置を申し上げてみます。一つは、合議制による指名審査機関の設置ということでございます。それから二番目には指名基準の合理化、三番目には入札辞退の自由、四番目としまして指名業者数を適切な数とすること、五番目としまして入札結果の公表等の措置を講じたところであります。今後とも発注工事の公正確保につきましては、中央建設業籍議会の建議の趣旨も踏まえまして、一層配慮してまいりたいと存じております。
  467. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 昨年の三月二十六日にこの委員会でお答えをしたわけでございますが、談合入札、入札に当たりましての談合が独占禁止法の三条または八条の違反であるということは明らかでございますけれども、一方で五十万と言われております業者の方々の中には独禁法がいかなる行為を禁じておるのか、そういうことについての認識が必ずしも徹底していないということが痛感せられたわけでございます。談合入札の再発を防止するためには、独禁法上可能な事柄、独禁法上禁ぜられておる事柄、それをより具体的に建設業者の方に示して、それにいわゆるガイドラインをつくって、それによって遺漏なきを期していくということが基本であるというふうに考えたわけでございます。  そこで、昨年の夏以降、発注官庁、監督官庁でありますところの建設省、それから諸公団、地方公共団体、建設業の各種の団体、そういうところにいろいろとヒヤリングをし、また実地に当たりましてその状況を調査いたしまして、その結果、内部で慎重な審議を行いました結果、ことしの二月の二十一日に談合に関するガイドライン、正確に申しますと、「公共工事に係る建設業における事業背団体の諸活動に関する独占禁止法上の指針」というものを発表いたしました。今後この指針についてさらに正確な趣旨の周知を図りまして、業界の方から知らずして独禁法に触れるということがないように御指示、処置をしてまいりたいと思います。  繰り返すようでございますが、今回のガイドラインの公表は、従来からの私ども公正取引委員会のいわゆる談合事件に対する対応というものを変えるわけではないわけでございまして、今後とも公表したガイドラインの活用を図るなど、独禁法違反行為の未然防止に努めていきたいと、そう思っておりますし、仮に法律に違反した行為がありましたらば、その際に厳正に対処してまいりたいと考えております。
  468. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) 警察といたしましてとりました措置でございますが、各都道府県警察に対しまして積極的に違法な談合事件の検挙を行うように指示をいたしております。五十七年、五十八年の二年間で二十事件の検挙をいたしておりますし、ことしに入りまして四件の談合事件について捜査継続中でございます。
  469. 佐藤雅信

    説明員佐藤雅信君) お答えいたします。  御質問は、会計検査院の検査の結果、談合があったのかどうかということをお聞きになっていることかと思いますが、御承知のように、会計検査院は、国等の収入支出の決算を検査いたしまして、その会計経理の適正を期することが職務になっております。したがいまして、工事の検査につきまして、計画、設計、それから積算、施工、そういった面の検査は十分やっておるわけでございますが、受注者を検査する権限はございませんので、談合につきまして具体的な事実を証拠によって会計検査院が明らかにするということはできかねる次第でございまして、これは警察の捜査にお任せするということにいたしております。
  470. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 自治省といたしましては、次官通達その他の通達によりまして、地方団体に対しまして厳正に対処するようにという指導をしていると、このような報告を受けております。
  471. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 国の契約は貴重な国民の税金を財源として行う調達行為でございます。したがって、大蔵省としましては、会計法令の規定に従って国の契約事務の厳正かつ円滑な処理によって予算の適正な執行が行われるよう、機会あるごとに要請をしております。今後とも適切な指導に心がけてまいりたい。  以上でございます。
  472. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 役所関係の契約の事務について、その公正さまたは公明性、これは何よりも信頼確保の上から非常に重要でございまするので、行管庁といたしましては昭和五十六年の八月、それから五十八年の九月に各省庁に対して改善方を監察の結果求めております。この二つの調査は行政機関及び特殊法人の契約事務が、会計法あるいは予決令に基づいて公正性とか、経済性とか、公明性とか、こういったような点が確保されているのかどうかということを頭に置いて調査をしたわけでございます。その結果、随契でやっておるもので他に業者が存在をし、競争契約への移行が可能であるというもの等について競争契約方式の拡大を図っていただきたい。二番目は、競争契約における指名業者の数、これについてはやはり予決令で決まっておりますから、その業者数を指名をする。同時に、指名の偏りを防止をしていただきたいと、こういうような点を各省庁にお願いをしたわけでございますが、各省庁はただいま各省の大臣あるいは局長さん方からお答えしたように、私どもとしてはこういった行管庁の要請に対して適切に対応していただいておるのではないかと、かように考えておるわけでございます。
  473. 志苫裕

    志苫裕君 建設省ね、とった措置はわかりました。それでどうなったんですか。状況はどう変わったんですか。
  474. 台健

    政府委員(台健君) 二度にわたります中央建設審議会の答申を受けまして、建設省並びに中央の発注官庁、それから公団、都道府県、市町村と、それぞれの発注機関を指導しているわけでございますが、中央それから公団等につきましてはほぼ実施に移されております。なお都道府県、市町村につきましても徐々に実行に移されておりまして、近いうちにすべての発注機関において実行されるものというふうに期待しております。
  475. 志苫裕

    志苫裕君 そういうことを聞いているんじゃないでしょう。そうやったら談合は減ったんですか、ふえたんですか。
  476. 台健

    政府委員(台健君) 静岡事件以後の五十六年以降で見ますと、いわゆる談合を理由といたしまして私たち建設業法に基づきまして建設業者を処分いたしました事件は、五十六年が六件、それから五十七年が三十三件でございまして、それ以前の年度と直ちに比べるわけにはまいりませんが、減少しているものというふうに認めております。
  477. 志苫裕

    志苫裕君 六から三十三、これは減ったということですか、こういうのはふえたという数字じゃないですか。
  478. 台健

    政府委員(台健君) 五十六年と五十七年だけを比べますとふえておりますが、五十八年は処分件数ゼロでございますので、どうしても処分件数は年度によって偏りがございますので、傾向値で見ますと、ふえたというふうには考えておりません。
  479. 志苫裕

    志苫裕君 今のは建設業法による処分ですね。それでは指名停止等も含めたらどうなっていますか。
  480. 豊蔵一

    政府委員(豊蔵一君) 建設省の発注官庁としての立場からの御説明を申し上げさしていただきたいと思います。  まず第一に、五十六年のいわゆる静岡事案というようなものが起こりましてから、建設省の直轄工事の発注に関しましては、公正取引委員会あるいは警察等によりまして談合事案として取り上げられた事例はございません。ただ、建設省に登録しております業者が、他の事業主体の方々の発注に関連いたしまして独占禁止法違反あるいはまた談合罪によりまして起訴されるといったような事例がございまして、そういうような場合に、私どもの方でもこれは指名回避あるいは指名停止といったような措置をとらせていただいておりますが、その件数を申し上げますと、五十六年度におきましては五十五件、五十七年度におきましては二十二件、五十八年度におきましては七件と、このように相なっております。
  481. 志苫裕

    志苫裕君 検査院、受注者は調べられないから談合であるかどうかわからない、こういう答弁ですが、角度を変えましょう。  検査院が見て、例えば前に検査報告がありましたように、設計見積もりを誤った、そうしたら、誤ったまま落札をしたというようなケースはどうですか。
  482. 佐藤雅信

    説明員佐藤雅信君) 会計検査院が、最近の例でいきますと、五十六年度、五十七年度の決算検査報告の中で、今御指摘のような工事費に積算過大があったというふうに認めまして不当事項として指摘いたしましたもののうち、一回の入札で落札側が予定価格に接近しているという事例が両年度とも若干ございます。  この一例を申し上げますと、これは新聞等であるいはもう御存じかと思いますが、五十七年度の決算検査報告に掲記されております中に、防衛施設庁の那覇防衛施設局で給油所の設備工事の積算に当たりまして、タンク室のモルタル工費の算定において一平方メートル当たりの単価を採用すべきところを一立方メートル当たりの単価を採用したために、契約額が三千五十万円でございましたが、これが約七百十万円割高になったという事例がございます。ただ、先ほど申し上げましたように談合があったかどうか、これは私どもではわかりません。  以上でございます。
  483. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 佐藤二吾君の関連質疑を許します。佐藤君。
  484. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 建設大臣、始関さんが建設大臣のときだと思うのだが、ちょうどこの時期、私は決算委員会で談合問題を取り上げまして、いわゆる要請職員、各県の土木部の部課長の技術職員、これらが各県を持ち回りで動いておる、この問題について現状はどうなっておりますか。
  485. 水野清

    国務大臣(水野清君) 建設省の要員が地方自治体の土木系の大事に関与をしているかどうか、そういうようなお話だと思いますが、地方公共団体の土木系の人事というものは、大体地方公共団体に適任者がなくて、地方公共団体の長の方から推薦の依頼のあったものに対しては、建設省の方として適格者と認められる者を推薦してはおります。いずれにいたしましても、これらの人事は都道府県知事の任命に基づいて行われておりますので、建設省としてはそれ以上の介入はしないつもりでございます。
  486. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 今、要請職員は全体でどのくらいですか。
  487. 豊蔵一

    政府委員(豊蔵一君) 昭和五十八年の十月の資料でございますが、都道府県におきます部長クラスのポストには、その県の方がついているケースが五七・九%、七十のポストになっておりまして、ほかの県からおいでになったり、あるいはまた建設省から出向しておるというようなケースが四二・一%、五十一件というふうに相なっております。また、課長さんのクラスでは、やはりその県の出身の方が六八・六%、二百七十一名、それから他の県あるいはまた碓設省から出向しておりますのを含めまして三一・四%、百二十四名、このように州なっております。
  488. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私はなぜこの問題を取り上げているかといいますと、今建設大臣が言ったように、この職員については各県の知事から要請があって建設省はあっせんしておるんだと、こういう言い方をしますが、しかし姓前はそうかもしれませんが、実態はそうじゃない。それなら例えば知事会とかブロックの知事会で協議すればいいことである。ところが、建設省がそういうことをやっておるがゆえに、職員については言うなら事実上登録されたような形になる、登録されたようなのがもし建設省ににらまれたらやっていけない、こういう事態が私は生まれておると思うんです。現に五十六年のときには、御承知のとおりに大分県では土本部長が渡海建設大臣によって首を切られている。これもそこにあるわけです。なぜそれを切らしたのかということで追及すると、これは、建設省の技術職員というのは建設省と顔のつながりがなければもう役に立たない、転用がきかない、こういうことで事実上知事のいわゆる人事権というのがそこでストップになる。これは耕地関係も同じです。この点については私は改めるべきだということを当時言っておったんですが、自治、建設大臣の答弁をいただきたいと思います。
  489. 水野清

    国務大臣(水野清君) 地方自治体の先ほど申し上げました土木系の方々の人事というのは、姓前論のようなことを申し上げましたけれども、事実上、各都道府県の知事あるいは市長などから要請があって出しているわけであります。そして必ずしもその人が力があるから、ないから、その人がおるから予算がつくとかつかないとかということでは、まあそういうふうに言われている面もございますが、確かにそういうふうに世間一般では、あれは建設省から来たから予算がたくさん取れるとかなんとかいうようなことを言われている面もございますけれども、同時にこれは、先生御承知のとおり、予算獲得というのはなかなか単なる土本部長あたりでできることではございませんので、ある意味では、これは国会議員の先生方でも、私でも建設大臣になる前は建設省に陳情書を持っていって頭を下げましてやったりなんかしておりまして、必ずしもそういう人事と結びついたことではないと私の方は認識をしておりますし、万一またそういうようなことがあればこれは大いに是正をさしたいと、かように思っております。
  490. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 佐藤さんおっしゃったような傾向はやっぱり私どもも認めないわけにはいかないと思うんです、あると思うんですね。こういう問題が起こってくるのは、先般来お話がありましたように、やっぱり補助金行政というのが非常に強く残っていると。こういうことが改正されない、なかなか一遍にのけられないというところにもありますし、許認可専務がまだ中央にこびりついているというようなところからきている問題であって、そういうところを根本的に直していきませんと、なかなかこういうことを一挙に直していくというのは非常に無理じゃないかと思うんです。そういうふうに思っております。
  491. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私は、これは建設大臣、自治権とのかかわりを持ちますから、やはり早急に、少なくとも事前協議を知事としなければ人事が異動できないということだけはやめてもらいたい。その点をひとつこの際強く申し上げておきたいと思います。  ところで、今年の天下りを見ますと、人事院の審査だけでも二百六十七ですが、約三千人、課長職以上の退職者の中で事実上布庁があっせんをして天下りが行われておる。このことがこの際にも問題になりましたが、談合その他の業者との癒着のパイプ役を果たしている。これは文部省もそうですが、そういう意味で、これはやめるべきだというのが当時の倣い世論であったし、意見でもあったわけですが、今度は定年制ができました。定年制が六十歳まで身分を保障するということにもかかわらず、これらがなお続けられていることについては、私はまことに遺憾に思うんです。そういう意味で、特に多い大蔵、建設、厚生、文部、各大臣の見解を聞きたいと思います。そして最後に、内閣官房長官のひとつこの天下り大事に対する御見解をいただきたいと思います。
  492. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私も今度大蔵大臣になりまして、今まで大臣になって、自分が一番年寄りだったことは今度が初めてでございます。その点、我が大蔵省を見ましても、幹部職員で大正生まれが私と事務次官と二人、こういうような状態になりました。したがって、例えば岸信介先生とか椎名悦三郎先生とかそういう人は大体四十歳と四十一歳で事務次官になっていらっしゃる。あのころから見るいわば平均寿命ですか、そういうものの伸び方からいたしますと、やはり徐々にそういう方向に来ておるということにはなるではないかというふうに考えております。  しかしながら、全部を六十歳に仮に張りつけるといたしますと、いわゆる新陳代謝、活力、そういう問題で、やっぱり皆さんが六十までということは必ずしも適当ではないというふうにも感じております。したがって、次は天下りと、こういうことになりますが、そのいわゆる天下りというものは、我が方なんかも、佐藤委員御承知のとおり、金融機関の方が率直に言って数は多うございます。これはいわゆる天下りじゃございません、再就職先と両方のために、私は、その人が公務員であられたときに培われた経験、知識というものが両者のために非常にちょうど調和していいという面は、またこの再就職の場合に大いにあり得ることではないか、こういう感じがいたしておるところでございます。
  493. 水野清

    国務大臣(水野清君) 五十八年におきます建設省の課長以上の退職者で人事院の承認を得まして民間企業に就職した者は四人ございます。建設省職員が在職中の、今大蔵大臣も申されましたが、そのポストで得た知識とか経験というものが、やっぱり第二の人生の際にはある程度これが生かされて初めて第二の人生ができるわけでありまして、退職後どうしても関係した建設会社とかそういったところに就職をするのは、まあ本人の生活という問題もございますから、ある程度はひとつお認めをいただければと思っておるわけであります。ただ、在職中の職務に関する営利企業に対して何か特別なものを与えておいて、それをまた退職後に利用するというようなことについては、これは厳正にひとつ点検をしていきたいと思っておりますし、御承知のとおり人事院規則その他で退職後二年間はそういうものにつけないようになっておりますので、事実上今の行政のいろんな変化から申しまして、二年間というタイムラグというのは、私は、在職中のいろんな知識がそのまま企業に入ってその企業の利益に直接つながるということも割合に少ないのではないだろうかというふうに思っておりますが、今後とも公正な措置を講じていくように努力をしていきたいと思っております。
  494. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) お尋ねの昭和五十八年度におきまして、文部省関係者で承認を得まして営利企業へ就職した者は二十八名でございます。うち十三名は人事院の承認、他の十五名は人事院の承認権限の委任によりまして文部大臣が承認をいたしております。承認に当たりましては、ただいま建設大臣が御答弁申し上げましたように、当該企業等への関与におきまして、離職前五年間に契約関係があるかどうか等慎重に検討してこれを行うことといたしております。なお、二十八名の内訳といたしましては、本省関係が二名、大学の事務局等が十二名、教官関係が十四名でございます。  なお、六十歳定年に対する考えをということででざいましたが、文部省といたしましては、定年制施行の本年度末にふきましては大変多くの該当者がございまして、二千九百九人でございます。通常年の約三倍ということになることを考慮いたしまして、特例定年、三年を限度とする勤務延長、定年退職者の再任用という措置が定められておりますので、この特例制度の活用、後任補充の円滑な措置等十分配慮しながら、また国立大学の教育研究という面もございますので、これらに支障のないようにして十分に配慮しながら進めていきたいと、こう考えております。
  495. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 厚生省の昭和五十八年の本省課長以上の退職者数は十三名。退職者の就職先は、国家公務員特別職二名、国際機関一名、特殊法人三名、公益法人六名、その他一名。つまり、国家公務員法の定めによって人事院の承認を得て民間会社に行った者は一名でありますが、これは本人がすぐれた技能を持ってどれを評価されて行ったもので、私は問題が全くないと、こう承知いたしております。  ただ、今、佐藤先生から御指摘のことを考えてみますと、人生五十年どこう言われておった時代から、今、人生八十年になろうとするわけでありますから、役所の方を五十四、五歳でおやめになる、後進に道を譲る。それから、健康な体で頭もはっきりして、家に帰って寝てばかりいるわけにもいかないでしょうから、やはり再就職の問題というのは出てくることでありますし、また今後の高齢化社会ということを考えれば、健康で元気なうちは世の中のために一生懸命働いてもらうことが望ましいわけでありますから、今後定年制の問題とか、そういう有機的に考えて、役所の人は天下り先ばかり考えているなどと言われることのないように、しかも役所で働いたすぐれた技能なりあるいは知識なりを世の中のために明るく役立てていけるようなことを私どもは考えていかなければならないと、こう思っております。
  496. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 国家公務員の営利企業への就職につきましては、審査機関であります人事院が国家公務員法の趣旨にのっとって厳正に審査に当たっている、こういうふうに今考えているところでございます。  個々の公務員の立場に立って考えてみますると、先ほど来各大臣から御答弁申し上げましたように、いろいろと第二の人生をどう生きるかというようなことについて考えてみまして思いをいたすところもあるわけでございます。憲法には職業選択の自由なども与えられておるわけでございますし、その辺との兼ね合いをどうするかという問題はございますけれども、しかし国民皆さん方を見ていらっしゃる目もあるわけでございますし、大体こういうものには常識的にというものがあるわけでございますから、常識的に考えて国家公務員の営利企業への就職というのが国民から見てこれは余りよくないなというような、ある限度を超えないようにやっぱり気をつけていくことが大事ではないか、こんなふうに考えておりまして、政府全体としてそんなふうに対処してまいりたい、また指導もしてまいりたい、こんなふうに考える次第でございます。
  497. 志苫裕

    志苫裕君 公正取引委員会、先ほど独禁法上のガイドラインを設けた旨の御報告がございました。少しこれについてお伺いをいたしますが、まず、新たに設けられた理由、目的は何ですか。
  498. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 先ほども申し上げたことでございますけれども、公共工事のいわゆる入札談合事件というものにつきましては、一定の取引分野における競争の実質的制限に当たるということで、これは独禁法の三条または八条によって適正、厳正な処置をとってまいったわけでございます。  ところで、昨年の三月の予算委員会でもお答えをいたしましたけれども、独禁法は必ずしも理解が十分になされていないと考えられる面がございます。と申しますのは、一口に五十万という多くの業者の方がおいでになって、具体的な入札に参加の場合に、どのような行動をとったらいいのか、どこまでが禁止された範囲なのか必ずしも十分御理解が及んでいないという面がございます。殊に中小の事業者の方が九九%以上でございますから、その建設業界における一種の何と申しますか、混乱というものは避けがたいと思ったわけでございます。そこで、具体的に建設業界の実態に即して各般の御意見も伺って、五十四年に出しておりましたいわゆる一般の団体ガイドラインというものを建設業界の実際の行動の態様に即して改めて書き直したものを出したということでございます。したがって、これは独占禁止法の枠内で、五十四年の一般ガイドラインの延長線上でつくったものでございまして、五十四年の一般ガイドラインと同様、例えば受注予定者を決定いたすとか、入札価格を決定いたすとか、そういうことにつきましては独禁法違反であるという考え方を変えてはおらないわけでございます。
  499. 志苫裕

    志苫裕君 まあわかりやすく、国民も聞くんでしょうから、一つ何々、二つ何々という理由を言ってもらった方がいいんですよ、長々したセンテンスにしなくてもいいですから。  それで、本当は概要をお伺いすれば一番わかりやすいんでしょうが、私は知っていますからあえてお伺いしませんが、まず公取委員長、これは各閣僚もそうですが、この問題は、どうして談合をなくするか、談合をやりにくくするためには何を選択するかということが核心だったんですよ。談合をなくするにはどういうことを選択するかと、しかも事柄がもう政治の問題になっておるということで、いわば世論も沸騰したわけであって、私はこのガイドラインを読んで感ずるのは、どうもそういう脈絡は感じられないということをまず冒頭に申し上げておきまして、ちょっと聞きますが、原案から数次の改訂が行われたんでしょう、巷間いろいろな話も伝わってきますから。文章は短いけれども、短い文言の中に実にたくさんの意味が込められておる。もう何でもかんでも入っているという感じね。どうにでも読めるというあいまいさがこの文章にはつきまとっています。その辺がいかにも建設業界らしいけどもね。  まず、聞きますよ。ここで言っていますね、建設業の諸特性、実態、これで指針をつくったとなっています。建設業の諸特性と実態を言ってください。
  500. 高橋元

    政府委員(高橋元君) ガイドラインの前文にも申しておりますように、「公共工事に係る建設業は、単品受注請負型産業であり、そのほとんどが中小企業であって、競争が激しく、採算性を度外視した安値での受注も一部にあるとの指摘もあることから、指名制度や予定価格制度をその内容とする官公庁の発注に係る競争入札制度の下にあること等の公共工事に係る建設業の諸特性を勘案」して、一般ガイドラインを踏まえて、建設業の実態に即した形で指針を定めたわけでございます。
  501. 志苫裕

    志苫裕君 だから、建設業の実態というのはどういうことなんですか、談合に即して話してください。
  502. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 通常、独禁法の対象になります談合行為と申しますか、今、三条違反のカルテル行為と申しますのは、製造業というのを典型的に頭の中に置いておりまして、見込みで生産をいたしまして在庫をたくさん持っておる、しかも、つくりますものが大体同種のものを多量につくるという場合が主でございます。建設業の公共工事に係る契約というのはそれといささか性格を異にしておりまして、継続的に発注が予定されるというものではない。しかも、一つ一つが違ったものをつくって納入するということをその本質としておるわけだというふうに理解しております。  そこで、建設業の請負契約ということになりましょうか、建設業に係る契約の特色というものに着目をして、しかも五十万と言われております業者の方々の理解しやすい文言で書くということに苦心をしたわけでございます。
  503. 志苫裕

    志苫裕君 どうもあなたの答弁はわかりにくい。私がかわりに言えば、ここに書いてあることは、一つ、単品受注請負産業であること、二つ、ほとんどが中小企業であること、三つ、出血受注競争があること、四つ、指名制、予定価格制による契約の片務性があることというのが特性というんでしょう。なぜそういう答弁をしないんですか。
  504. 高橋元

    政府委員(高橋元君) ガイドラインの前文を読みましたときに今お示しのことはお答えをしたつもりでございますが、表現が適切でなければ、ただいまの御指摘の趣旨が趣旨でございます。
  505. 志苫裕

    志苫裕君 そういう特性があり、それから先ほどあなたが申し上げた実態があるので、建設業は談合が普遍的に行われており、談合の必然性、不可避性があるということなんですか。
  506. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 談合に必然性があるという考え方は私ども全く持っておりません。一定の取引分野における競争の実質的制限ということで、これは独禁法で禁止しておることでございますから、受注予定者を決める、入札価格を決める、それから入札の場から特定の事業者を排除する、そういうことはすべて独禁法の三条または八条違反であるという見解は明らかに申し上げておきたいと思います。
  507. 志苫裕

    志苫裕君 念のために聞きますが、この談合についての公取の見解はいささかも変わっていないんですね。念を押します。
  508. 高橋元

    政府委員(高橋元君) お尋ねのとおりでございます。
  509. 志苫裕

    志苫裕君 それじゃ、いずれまたこの問題は、前の公取委員炭との答弁の食い違いがあるかないかは後ほど検証します。  そこで、違反の例示というのが普通だと私は思うんですが、違反とならない例示というのも珍しい。抜け道教えますという文章の感じなんだな。その点はどうなんですか。
  510. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 情報提供活動、経営指導活動、これらは一般的な考え方で申しますと、事業者の合理的な経営判断を助けるのが情報提供活動である、それから構成事業者が自主的な判断に基づいて事業の改善を図るに役立つものが経営指導活動である、こういう考え方をとっておりまして、これにつきましては事業者団体のガイドライン以来各業態を通じて同じであります。ただし、情報活動または経営指導であっても、競争制限行為につながっていく場合、この場合は排除される、これも一般の業態と同じ考え方であります。  そこで、今回取り上げましたガイドラインは、情報活動なり経営指導活動というものが適法に行われる範囲の限界を書いておるわけでございまして、それがいわゆる談合という形で入札予定者を決める、または入札価格を決める、そういうことにつながった場合には、たとえ許されている、ここに独禁法違反とならないと書いてあります各十六の行為態様につきましても違反になるということを明らかにしておるつもりでございます。
  511. 志苫裕

    志苫裕君 五十八年十二月二十三日の日経に、すっぱ抜きでしょうが、原案と称するものが出ました。これによりますと、違反事項は四項目の例示になっています。これが最終的には一つのセンテンスになっていますね。そして、違反とならない事項の例示というふうに書きかえられておるわけね。だから私は、これこれこれこれは違反になりますよというのは普通ありそうなことだ、これこれは違反にならないという例示はおかしいということと同時に、この四項目の違反事項というのが一つのセンテンスにまとめられたということはどういう意味を持つんですか。四つのうち一つでもさわれば罰則、こうなるのか、四つ全部にさわらなければ罰にならない、どっちなんですか。
  512. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 四つの項目というものをまとめて一つの文章にしたわけでございますから、したがって独禁法違反になるというケースについては、十二月二十三日と今お話がございましたけれども、当初から表現の問題は別といたしまして内容的には変わっておりません。
  513. 志苫裕

    志苫裕君 この文章、「一定のルールを定める等により受注予定者又は入札価格を決定したりするようなこととならない限り、独占禁止法に違反することとはならない」。入札価格を決定したりするようなこととならない限り、その前に一定のルールを定める等四つの項目が一本の文章になっていますね。だから、一番最初があってもけつがなければいいとか、真ん中があっても前がなければいいとかというふうに読むんですかと聞いているんですよ。
  514. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 典型的な行為態様をそこに書いたわけでございますから、一定のルールは競争の実質的制限の要件でないわけでございますから、一定のルールのない談合でありましても、その場合には法違反になる。それから、するようなことという場合に二つしか書いてないではないかというお話でございますけれども、例えば入札の場から競争事業者をゆえなく排除するというような行為は「ようなこと」の中に含まれて、これも競争の実質的側隈であるという理解でございます。
  515. 志苫裕

    志苫裕君 何でそういうわかりにくい文章にしたんですか。
  516. 高橋元

    政府委員(高橋元君) これは典型的な行為をはっきり書いて、それがここにございますように、「競争入札において、一定のルールを定める等により受注予定者又は入札価格を決定したりするようなこととならない限り、」ということで、表現としては足りるという判断でございます。
  517. 志苫裕

    志苫裕君 それで聞きますがね、建設省に聞きましょうか。さっき建議業の特性があるので、こういうふうにガイドライン、一口にいうと緩めた、違反にならないケースを挙げたと。単品受注型産業、ほとんど中小企業、出血受注競争、契約の片務性ということについて、例えばダンピングの問題からいきましょうか、ダンピングの実態はあるんですか。
  518. 台健

    政府委員(台健君) どういう行為をダンピングと称するかは問題でございますが、建設省が最低制限価格あるいは低入札価格調査におきますところの調査基準価格を下回る入札価格、または予定価格の八〇%を下回る入札という線を引いて、都道府県と市町村の発注工事を対象といたしまして、昭和五十六年度と五十七年度の各上半期における入札実態を調査したことがございますが、五十六年度の上半期の調査によりますと、これに該当する件数は九百二十三件で、全発注件数に対しまして〇・九四%でございました。
  519. 志苫裕

    志苫裕君 五十七年の三月十三日の予算委員会では、ダンピング化が起こるというふうなことが一般論として言われるけれども、実態としてそのようなことは把握されていない、もう一方で、予定価格と落札価格とのこれは九九・八%であるという答弁がなされているじゃないですか。今のこととはどういう関係になるんですか。
  520. 台健

    政府委員(台健君) 先ほどの御指摘は官房長の答弁だと思いますが、静岡事件等を契機といたしまして、中央建設審議会で審議していただきます際に、実は指名業者数を建設省におきまして、五十七年度から試行といたしまして指名業者数をふやす措置をとったわけでございますが、その指名業者数をふやす前と後とで先ほど申しました意味のダンピング的な行為に該当する件数があるかないかを調査した結果のうちの前半部分を申し上げたのが先ほどの結果でございまして、御指摘の答弁はそれ以前の静岡事件のときの審議の答弁というふうに理解しております。
  521. 志苫裕

    志苫裕君 そうすると、あの議論があったので談合が少なくなって、いわばたたきが行われて出血受注が多くなったという認識なんですか。
  522. 台健

    政府委員(台健君) 先ほどは半分申し上げましたのですが、昭和五十六年度の上半期の該当件数が九百二十三件で、全発注件数に対しまして〇・九四%でございました。五十七年度の上半期と申しますのは、多くの発注者が指名業者数をふやす制度を採用した後でございますが、そのときの件数は千八百三十八件で、全発注件数に対しまして二・〇一%となっておりまして、倍以上の増加数になったわけでございます。これは直ちにダンピング、出血受注がふえたというふうに即断するわけにはいきませんが、そういう傾向にあるというふうな数字というふうに理解しております。
  523. 志苫裕

    志苫裕君 公取はそのように見ているんですか。
  524. 高橋元

    政府委員(高橋元君) たたき合いの実態については、私ども必ずしも正確に把握しておりません。建設省の御意見を今伺っておるところでございます。
  525. 志苫裕

    志苫裕君 建設省がそう言っておるから、そういうことなんだろうということなんですか。
  526. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 一件一件の公共工事の入札の場合の落札価格というものを私どもは正確に把握するだけの能力がないわけでございます。したがって、著しい事例があるかどうかということを建設省に伺っておるというふうに申し上げております。
  527. 志苫裕

    志苫裕君 公取委員長、まことに恐縮ですが、談合人にも論理があるようでありまして、業者側の言う談合の論理はどういうものだと御理解しておられますか。
  528. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 一昨年の三月の十三日だったと思いますが、前の橋口委員長からお答えをしておったはずでございますけれども、先ほど委員からお示しのありましたように、例えば片務性でございますとかダンピング請負産業でございますとか、指名制度がある、予定価格制度があるから、したがって公共の請負の国の利益が侵されるものでない、そういう御主張がありますけれども、それについては公正取引委員会としては競争の実質的制限にあって、即公共の利益に反するという見解を申し上げておりまして、今も同じ考え方でございます。
  529. 志苫裕

    志苫裕君 いかなる談合もそれが競争を実質的に側限する限り、例外なく違法である、この見解でよろしいですね。
  530. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 具体的なケースについて、そのような事柄が指摘されますならば、おっしゃるとおりであります。
  531. 志苫裕

    志苫裕君 実際的に拘束力のあるやり方を反復継続して行うこと、拘束力と継続性のあるルールが伴わなければ違反ではないという見解が一部にありますが、公取委員長の見解はどうですか。
  532. 高橋元

    政府委員(高橋元君) いわゆる偶発的な談合についてのお尋ねかと思います。  先ほども申し上げたことでございますが、ルールの存在は競争の実質的制限が成立する場合の必須の要件ではありません。したがって、偶発的な談合でもケース・バイ・ケースで判断するのが原則でございますけれども、例えば個別の入札談合行為であっても、背後にルールがある場合はもちろん、ルールが全くないものでも相当程度の規模である、または地域経済に与える影響が大きなものである、こういう場合には独禁法上問擬される。この点も一昨年、前の委員長からお答えしておるとおりの考え方であります。
  533. 志苫裕

    志苫裕君 この若干、「記」以下の事業者の計画的な事業の実施というのは、事業者が計画的に受注をすることであり、それに役立つ団体の行動というのは談合のことじゃないんですか。
  534. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 経営指導または情報活動、これが即談合になるというふうには考えておりませんので、それは例えば構成事業者の事業の改善を図るのに役立つ、または事業者の合理的な経営判断を助ける、そういう意味でむしろそれ自身違反となるおそれはない、しかしながら、それがいわゆる受注予定者の決定なり入札価格の決定ということを通じて競争の制限になるならば、情報活動でも経営指導活動でもどちらも違法になる。そういうことをこのガイドラインには書いておりまして、今お尋ねのような事柄は私たちとしては考えておらないわけであります。
  535. 志苫裕

    志苫裕君 発注予定工事に関する情報というものには当然に価格に関する情報も含まれると思わなければなりません。価格に関する共通の認識がそうすれば形成されます。この点はいかがですか。
  536. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 私ども承知しております限りで申しますと、発注予定工事に関する情報ということは、東京都の場合を取り上げますと、予算でおおむね公表されたようなものとなっており、さらに一カ月前にその内容は正式に公表しておるという事例もあるようでございます。発注予定工事に関して発注官庁側に予定価格が事前に知れ渡っておるということは、これは制度的にはない、あり得ないということだと思いますので、私どもは発注予定工事に関する情報としては、その価格に関する情報は入っていないという理解をしておるわけであります。
  537. 志苫裕

    志苫裕君 そうしますと、価格について共通の認識が醸成されるようになれば、それはカルテルですね。
  538. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 醸成されるかどうか、具体的なケースについて判断すべきことだと思いますが、共通の、つまり価格カルテルまたは受注予定者の決定カルテルがあるという事態が認定できますならば、それはお尋ねのようにカルテルであるということであります。
  539. 志苫裕

    志苫裕君 事業者団体には任意団体も該当しますか。
  540. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 独禁法の二条で事業者団体を決めておりますので、任意団体であっても、法人格を持っておりますものでも、いずれの場合も事業者団体になり得るというものだというふうに考えております。
  541. 志苫裕

    志苫裕君 二十四条の事業協同組合のことをこの機会にガイドラインに入れなかった理由は何なんですか。
  542. 高橋元

    政府委員(高橋元君) これは既に五十四年の一般ガイドラインの中で協同組合の活動というものが具体的に著かれておるわけであります。それを参照していただくということで繰り返さなかったわけであります。
  543. 志苫裕

    志苫裕君 個別の談合、すなわち第三条が盛り込まれていないのは、従来と同様の取り扱いだという意味ですか。
  544. 高橋元

    政府委員(高橋元君) ルールのない、いわゆる偶発的な談合行為というものについての法的見解は、従来と同様であります。
  545. 志苫裕

    志苫裕君 そこで通産大臣、実は中小企業が多くて五十二万もあるという。しかし、業界に特性のない業界はないんでして、みんな特性はあるんです。だけれども、これは中小企業が五十二万もおるということなんです。しかし、中小企業が一億円で三百人以上といいますと、田舎の県なんかへ行きますとこれは大手なんですよ。そんなわけで、中小企業に幾らか官公需の仕事を分け与えるというこの法律は、事実上、田舎でいうと大手へいっちゃいます。これが建設業の実態であることは間違いがない。となりますと、事業の確保といいましても、中小企業の中の中とか中の人とか、こういうものを持ってこないとなかなか現実に合わないという問題がありますが、この点どうお考えですか。両方答えてください。
  546. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) それは中小企業の定義の問題だと思うんでございますが、建設関係、そのようなことが確かにあると思います。しかし、一般的に中小企業一億円以下の、現実に一億の資本であっても従業員が五人というような企業がありますし、あるいは中堅企業をどう扱うかということもありますし、中小企業をどういうふうに定義づけるかということは非常に難しい問題であると思います。しかも、建設業の場合に一億円以下であっても中小企業であると、今まで通産省としてやってきたということになれば、それをもしも変えるということになったとしたら、これは中小企業政策の後退というようなこともあり得るわけでございまして、この問題非常に難しく、総合的に今中小企業政策審議会の定義改定問題小委員会で検討してもらっているところでございます。
  547. 志苫裕

    志苫裕君 最後にしますが、公取ね、ガイドラインは建設業が中小企業であることの特性に着目していることについて私も幾らか同感するものがあります。であれば、なおさらにいわゆる大手の企業団体にはまさに適用の必然性はない、規制を緩める必然性は全くないということについて御答弁をいただきたいということと、警察にお伺いしますが、このガイドラインによって全体の雰囲気、談合に対する雰囲気が変わることは間違いないと思う。にもかかわらず、警察の談合に対する対応は変わらないかどうか、最後にお伺いします。
  548. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 先ほどもお答えしておりましたけれども、今回の公共工事のガイドラインは十六項目でありますけれども、その中で十項目は情報提供活動と経営指導活動を内容としております。こういう事柄は必然的に中小企業に関係が一番深いというふうに思います。そういう意味で、当初中小企業が九九%に達しておるということからわかりよいガイドラインをという趣旨は達成されておると思いますし、法のもとでは企業規模の大小によってカルテルが許されるということはないわけでございまして、そういう意味で中小企業の方も含めて、これによってよりわかりよいガイドラインができたというふうに考えておるわけであります。
  549. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) お答えいたします前に、先ほどの数字、ちょっと間違っておりましたので訂正させていただきます。  談合の検挙件数で五十七年、五十八年で二十件と申し上げましたが、十六件でございまして、現在やっておりますのが四件、合わせて二十件と、こういうことで訂正をさせていただきます。  それと、お尋ねの警察の取り締まりの姿勢でございますが、ただいまお話ありました指針は、これは独禁法上の指針でございまして、警察の談合罪の取り締まりにつきましては、刑法の構成要件に該当するか否か、これを証拠工事実をつかんで明らかにしてまいるという従来からの方針に変わりございません。
  550. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で志苫君の質疑は終了いたしました。(拍手)  明日は午前十時に委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十五分散会