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1984-04-03 第101回国会 参議院 予算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月三日(火曜日)    午前十時一分開会     —————————————    委員の異動  四月二日     辞任         補欠選任      飯田 忠雄君     中西 珠子君      神谷信之助君     下田 京子君      柄谷 道一君     山田  勇君  四月三日     辞任         補欠選任      田代由紀男君     出口 廣光君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         西村 尚治君     理 事                 金丸 三郎君                 亀井 久興君                 初村滝一郎君                 藤井 裕久君                 村上 正邦君                 和田 静夫君                 峯山 昭範君                 内藤  功君                 伊藤 郁男君     委 員                 安孫子藤吉君                 長田 裕二君                 海江田鶴造君                 梶原  清君                 古賀雷四郎君                 沢田 一精君                 志村 哲良君                 杉山 令肇君                 田中 正巳君                 竹内  潔君                 出口 廣光君                 内藤  健君                 成相 善十君                 鳩山威一郎君                 真鍋 賢二君                 増岡 康治君                 松岡満寿男君                 宮澤  弘君                 官島  滉君                 糸久八重子君                 久保  亘君                 佐藤 三吾君                 志苫  裕君                 瀬谷 英行君                 高杉 廸忠君                 矢田部 理君                 太田 淳夫君                 中西 珠子君                 和田 教美君                 下田 京子君                 山田  勇君                 青木  茂君                 木本平八郎君                 野末 陳平君    国務大臣        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  森  喜朗君        厚 生 大 臣  渡部 恒三君        農林水産大臣臨        時代理        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)       中西 一郎君        通商産業大臣  小此木彦三郎君        運 輸 大 臣  細田 吉藏君        労 働 大 臣  坂本三十次君        建 設 大 臣  水野  清君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国務公安委員        会委員長)    田川 誠一君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 藤波 孝生君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       後藤田正晴君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  栗原 祐幸君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       河本 敏夫君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  上田  稔君        国 務 大 臣        (国土庁長官) 稻村佐近四郎君    政府委員        内閣法制局第一        部長       前田 正道君        人事院総裁    内海  倫君        人事院事務総局        給与局長     斧 誠之助君        総理府人事局長  藤井 良二君        警察庁刑事局長  金澤 昭雄君        行政管理庁行政        管理局長     門田英郎 君        防衛庁参事官   古川  清君        防衛庁参事官   冨田  泉君        防衛庁長官官房        長        佐々 淳行君        防衛庁防衛局長  矢崎 新二君        防衛庁装備局長  木下 博生君        防衛施設庁長官  塩田  章君        防衛施設庁総務        部長       梅岡  弘君        防衛施設庁施設        部長       千秋  健君        防衛施設庁労務        部長       大内 雄二君        経済企画庁調整        局長       谷村 昭一君        環境庁企画調整        局環境保健部長  長谷川慧重君        環境庁水質保全        局長       佐竹 五六君        国土庁地方振興        局長       川俣 芳郎君        法務省刑事局長  筧  榮一君        外務省アジア局        長        橋本  恕君        外務省北米局長  北村  汎君        外務省中南米局        長        堂ノ脇光朗君        外務省中近東ア        アフリカ局長   波多野敬雄君        外務省経済局次        長        恩田  宗君        外務省経済協力        局長       柳  健一君        外務省条約局長  小和田 恒君        外務省国際連合        局長       山田 中正君        外務省情報文化        局長       三宅 和助君        大蔵大臣官房審        議官       田中 泰助君        大蔵省主計局長  山口 光秀君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省理財局長  西垣  昭君        大蔵省理財局次        長        吉居 時哉君        大蔵省銀行局長  宮本 保孝君        大蔵省国際金融        局次長      佐藤 光夫君        国税庁次長    岸田 俊輔君        国税庁調査査察        部長       冨尾 一郎君        文部大臣官房長  西崎 清久君        文部大臣官房審        議官       齊藤 尚夫君        文部大臣官房会        計課長      國分 正明君        文部省初等中等        教育局長     高石 邦男君        文部省大学局長  宮地 貫一君        文部省管理局長  阿部 充夫君        厚生大臣官房総        務審議官     小林 功典君        厚生大臣官房会        計課長      黒木 武弘君        厚生省公衆衛生        局長       大池 眞澄君        厚生省医務局長  吉崎 正義君        厚生省社会局長  持永 和見君        厚生省保険局長  吉村  仁君        社会保険庁長官        官房審議官    小島 弘仲君        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産大臣官        房総務審議官   塚田  実君        農林水産大臣官        房審議官     中野 賢一君        農林水産省構造          改善局長     森実 孝郎君        通商産業省通商        政策局長     柴田 益男君        通商産業省貿易        局長       杉山  弘君        通商産業省立地        公害局長     石井 賢吾君        通商産業省基礎        産業局長     野々内 隆君        運輸大臣官房長  松井 和治君        運輸省鉄道監督        局長       永光 洋一君        運輸省自動車局        長        角田 達郎君        労働大臣官房長  小粥 義朗君        労働大臣官房審        議官       平賀 俊行君        労働省労政局長  谷口 隆志君        労働省職業訓練        局長       宮川 知雄君        建設大臣官房長  豊蔵  一君        建設大臣官房会        計課長      牧野  徹君        建設省計画局長  台   健君        建設省河川局長  井上 章平君        建設省住宅局長  松谷蒼一郎君        自治大臣官房審        議官       田井 順之君        自治省行政局長  大林 勝臣君        自治省行政局公        務員部長     中島 忠能君        自治省財政局長  石原 信雄君        消防庁長官    砂子田 隆君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君    説明員        会計検査院事務        総局第一局長   西川 和行君        会計検査院事務        総局第五局長   中村  清君        日本国有鉄道総        裁        仁杉  巖君        日本国有鉄道常        務理事      岡田  宏君    参考人        国際協力事業団        総裁       有田 圭輔君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○委嘱審査に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十九年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十九年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十九年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 予算委員会を開会いたします。  昭和五十九年度一般会計予算昭和五十九年度特別会計予算昭和五十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。     —————————————
  3. 西村尚治

    委員長西村尚治君) この際、昭和五十九年度一般会計予算外二案の審査委嘱についてお諮りいたします。  本件につきましては、先刻の理事会におきまして協議の結果、次のとおり決定いたしました。  審査委嘱する委員会及び各委員会所管は、お手元配付のとおりでございます。審査委嘱する期間は、第一種常任委員会については四月六日及び七日の二日間、特別委員会につきましては四月九日午前の半日間とする。  以上でございます。  ただいま報告いたしましたとおりとすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和五十九年度総予算審査のため、本日の委員会国際協力事業団総裁有田圭輔君参考人として出票を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 御異議ないと認めます。  なお、出席時刻等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  8. 西村尚治

    委員長西村尚治君) それでは、これより矢田部理君の一般質疑を行います。矢田部君。
  9. 矢田部理

    矢田部理君 大蔵大臣に伺いますが、財政再建を五十九年は失敗をして六十五年に延ばしたということでありますが、六十五年に至るまでの財政再建方途を具体的に示していただきたい。
  10. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに、五十九年赤字公債脱却という一つ目標はこれは断念をいたしました。したがって、今度は六十五年度を努力目標と定めておるわけでありますが、それに行く行程表とでも申しますか、それにつきましては、今直ちにこのような行程で進みますというものを準備いたしてはおりません。幾たびか申し上げますように、あるいは展望そしてまた仮定計算等をお示しし、国会論議を通じ、国民各界各層の意見を聞きながらその方途を見出していきたい。すなわち、歳出削減ぎりぎりどこまでいけるのか、されば負担増を求めなければならないのか、あるいはそれらの組み合わせによるのかとかということは、その論議過程を通じながらその方向を模索していくというのが今日の現状であります。
  11. 矢田部理

    矢田部理君 六十五年という時期を設定しながら、中身はただ漫然と先送りをしたということになるわけでしょうか。
  12. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 六十五年というのは、御案内のように八〇年代後半における経済社会展望と指針というものにある種の整合性をもちまして、その経済の一部である財政再建期間のすなわち赤字公債脱却努力目標年度をそこに求めたと、こういうことになるわけであります。したがって、それに至る間のいろいろな今展望等をお示ししながら具体的には議論過程の中でそれを詰めていきたいと、こういうことであります。単年度ごと伸び率をこれぐらいにしたらこういうことになりますとかいうような資料を御議論の手がかりとして提案申し上げておるということでありますので、いわば五十九年を六十五年に延ばして、その中で明確なまだ行程表が出ていないではないかとおっしゃる批判は、そのままお受けしなきゃならぬ批判だと思っております。
  13. 矢田部理

    矢田部理君 鈴木内閣時代にとってきたいわゆる増税なき財政再建と、六十五年という目標時期までにいわば赤字公債の体質からの脱却という二つの柱はそのまま維持するというふうに考えてよろしゅうございますか。
  14. 竹下登

    国務大臣竹下登君) もとより、増税なき財政再建というのはこれはやはりてことして、それを絶えず念頭に置いていなければならぬ。六十五年までに、六十五年を努力目標年次として、赤字公債からの脱却というのがいわば第一段階目標であるということは御指摘のとおりであります。
  15. 矢田部理

    矢田部理君 この二つ枠組み基本枠の中でやるとしまするならば、どうしたってやっぱり経費削減一般会計経費削減ということに重点を置かざるを得ないわけでありますが、その削減計画費目等についてどの程度まで大蔵大臣としては内容を持っておられるのでしょうか。
  16. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今度五十九年度でお願いしております中の具体的なものといたしましては、地方財政対策でございますとか医療保険等々ございます。あるいは食管等削減もあるわけでありますが、大体私どもが考えておりますのは、臨調財政審等々で指摘されたものについて、特に今後ともその制度施策の根源にさかのぼって、やはり歳出削減対象と申しましょうか、歳国会理化対象としてこれから取り組んでいかなければならない課題だというふうに考えております。
  17. 矢田部理

    矢田部理君 この二つ枠組みのもとに一般経費削減ということに焦点を置いてやるとしましても、それはもうできる限界はだれが見ても明らかでありまして、そうそうそこから財政再建への中心になるというわけにはいかない。そこに財政問題に対する非常に不信があるわけですが、その辺はどう考えておりますか。
  18. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはだれが見てもという表現をお使いになりましたが、客観的に見て歳出削減だけでやっていくということには大変な困難がつきまとうであろうということは大方の御認識のいただけるところであろうと思います。したがって、そうなればいわゆる受益者国民であれば、負担する方も国民でありますから、その行政サービスというものの限界をどこに求めるか。されば、それに伴う負担をどこまで容認するかというような考え方というものは、やはり議論過程において出てくる問題ではなかろうか。しかし、私どもといたしましては、いわゆる歳出削減ということは、これは非常に難しい問題だという認識はあるにいたしましても、いわば現行の施策制度そのものを守って、その不足するものは国民負担増にこれを求めようということが先行した場合には、その瞬間から歳出削減に対する切れ味が鈍るとでも申しましょうか、心構えが揺らいでくるということを絶えず認識していなければならない課題だというふうに理解をいたしております。
  19. 矢田部理

    矢田部理君 一般会計の問題はまたいずれ論じるといたしまして、きょうはちょっと特別会計の方に少し焦点を当てて議論をしてみたいと思うのであります。財政再建という観点から見て特別会計というのはどんな位置づけに促しておられるのか、あるいはどんな問題点認識されておられるりかを伺っておきたいと思います。
  20. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは予算編成に当たりましては、かねてから一般会計特別会計を通じて歳出節減合理化に努めてまいるという方針で今日にも至っておるわけであります。五十九年度予算、今御審議いただいておる中身におきましては、この制度の根本にまで踏み込んだ歳出削減ぎりぎりの努力を行ってきたわけでありますが、例えば五十九年度予算において実施することとしております、先ほどもちょっと例示として申し述べましたが、地方財政対策医療保険年金制度、あるいは食管食糧管理費改善合理化等は、一般会計そして特別会計を通じての改革の一つである。地方財政対策は、交付税及び譲与税配付金特別会計、こういうものにございますし、医療保険厚生保険特別会計年金厚生保険特別会計国用年金特別会計食管食糧管理特別会計、こういうことになっておるわけであります。特別会計につきましては臨調答申趣旨に沿って、社会経済情勢推移等を踏まえ、その事務事業内容、範囲及びその存続の必要性について絶えず見直しを行ってきておるわけであります。今後とも特別会計の設置につきましては、その必要性は厳しく審査することはもちろんでございますが、ことしまたお願いを申し上げております特許の特別会計ということにいたしましても、機械類信用保険特別会計、これを廃止して、すなわちスクラップ・アンド・ビルドという趣旨を徹底して総体的には抑制に努めてまいろうと、こういう考え方であります。
  21. 矢田部理

    矢田部理君 大蔵所管特別会計であります産業投資特別会計とか幾つかの特別会計利益金推移を見ますと、最初の見積もり決算ベース利益金が非常に大きく隔たりがある。これはどういうことなんでしょうか。
  22. 吉居時哉

    政府委員吉居時哉君) ただいま手元資料がございませんので、調べまして後ほどお答え申し上げます。
  23. 矢田部理

    矢田部理君 ちょっとそれ……。
  24. 吉居時哉

    政府委員吉居時哉君) お答え申し上げます。  産業投資特別会計の前年度剰余金受け入れ数字でございますけれども、これはいろいろ年ごとに変わっておりますが、これは主として開銀からの納付金受け入れ数字でございまして、それが年ごとに変わっておると、こういうことでございます。
  25. 矢田部理

    矢田部理君 大蔵所管特別会計はたくさんあるわけでしょう。その予算ベースでの見積もり決算ベース利益金の額が大変隔たりがある、乖離があるというのはどういうわけかと、こう聞いておる。
  26. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) 御質問の趣旨が余りよくわからないのでございますが、大蔵省所管特別会計というのは、造幣印刷資金運用部国債整理基金外国為替資金産業投資、地震再保険と、こうあるわけでございます。それで、予算見込みました利益金決算上の利益金がかなり違うのじゃないかという御指摘かと思いますが、造幣印刷につきましてはそう違わないと思います。資金運用部以下の事業をやっております会計金融会計でございまして、金利の動向等によりまして収支状況がかなり変わってくるということは免れないと思います。
  27. 矢田部理

    矢田部理君 産投会計について五十五年から予算ベース決算ベースでどの程度の差があったかをちょっと述べてください。
  28. 吉居時哉

    政府委員吉居時哉君) お答え申し上げます。  産業投資特別会計の前年度受け入れ剰余金でございますが、まず五十五年度から申し上げますと、五十五年度の予算では六十三億五千六百万でございまして、決算では九十一億七千四百万、こうなっております。それから五十六年度でございますが、予算ベースでは三十三億七千三百万でございましたが、決算ベースでは九十億五千八百万でございます。五十七年度は予算ベースでは八十七億二千四百万でございましたが、決算ベースでは百四十六億四千百万と、かようになっております。  以上でございます。
  29. 矢田部理

    矢田部理君 五十八年はどうなっているのか。
  30. 吉居時哉

    政府委員吉居時哉君) 五十八年度は、予算ベースでは百十八億二千五百万と、こうなっておりまして、決算は出ておりません。見込みでございますが、百七十七億三千百万と、これは見込みでございます。
  31. 矢田部理

    矢田部理君 私が調べた数字と少しく違いますけれども、それにしても予算決算との間にかなりの隔たりがある。しかも、それが恒常化しておる、常態化しておる、これはどういうことなんでしょうか。
  32. 吉居時哉

    政府委員吉居時哉君) ただいま申し上げました数字につきましては、先ほど申し上げましたように開銀からの納付金でございますけれども、この開銀からの納付金予算計上に当たりましては、概算納付分ということを計上しておるわけです。ところが、一年間たちまして決算をするという段階になりますと一年間の丸々の受入額が出てくるという点で、先ほど申しましたように予算決算との間に数字の差があるわけでございます。
  33. 矢田部理

    矢田部理君 予算決算は全く同一になるということはないかと思いますが、それにしても毎年、年によっては二倍以上、決算予算とに差がある。あなたの数字でも、五十六年度は予算ベース三十三億、決算ベース九十億と、三倍近い差があるというのは少し過小の見積もりにすぎませんか。これはどうしてこういうことが毎年毎年繰り返されるんでしょうか。
  34. 吉居時哉

    政府委員吉居時哉君) お答え申し上げます。  今、御指摘がありましたのは昭和五十六年度の数字かと思いますが、五十六年度におきましては開銀納付金以外に日本航空株式会社からの配当金ども含まれておりますので、このように数字の差があるということでございます。ちょっと今手元に詳しい資料がございませんが、そのような開銀以外の利益がここに入っておるという点で数字の差があるわけでございます。
  35. 矢田部理

    矢田部理君 そうじゃなくて、もともと小さく利益を見積もっておいて、その倍も三倍もの利益が出る会計にもなっているわけですね。こんなずさんなやり方はないのじゃありませんか。  じゃ、ついでに自動車損害賠償責任保険特別会計保険勘定について、五十五年度以降の両者の関係を出してください。
  36. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) 運輸省所管でございますので運輸省からお答えするのが筋かと思いますが、政府委員がいないようなので便宜申し上げますが、この特別会計保険勘定と保障勘定に分かれております。大きなのは保険勘定でございますので、保険勘定の利益金推移を申し上げますと、五十七年度の決算額が百四十五億でございます。それから五十八年度が七十七億、五十九年度の予定額が二十一億ということに予定しております。
  37. 矢田部理

    矢田部理君 五十五年度からわかりませんか。
  38. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) ただいま手元資料がございません。
  39. 矢田部理

    矢田部理君 私から指摘しますと、五十五年度が予算ベースで七十八億、決算ベースで四百二十八億、五十六年度は予算で七十一億、決算で二百六十六億、大変な隔たりなんですね。これまた格差が、ばらつきが恒常化しておる。これはどういうわけなんでしょうか。
  40. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) これも私からお答えするのが適当かどうかわかりませんが、便宜お答え申し上げますと、この自賠責の特別会計保険勘定は再保険をやっているわけでございます。したがいまして、民間の元受け保険で引き受けました保険料の一部が納付されてくる。これが歳入でございます。それから再保険の方は、これは民間の方から要求があった再保険で来るわけでございますので、再保険金の支払いは。そこで、これは保険でございますから、当然フラクチュエートがある、こういうことでかなりの積立金を持ったという時代がございます。  そこで、これは思い起こしていただきたいのでございますが、昨年度、この特別会計の積立金の一部を国庫に納付していただきました、一般会計に。そういうふうにして調整いたしました。
  41. 矢田部理

    矢田部理君 いや、なぜこんなに大きな差が毎年恒常的になっているのか。予算決算というのはできるだけ合わせる、全く一致するわけにはなかなかいかぬでしょうが、それが筋じゃないのですかと、こう聞いている。
  42. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) 事業規模といたしまして三兆数千億、場合によりますと四兆という支払い、収入もそれに似たものでございますが、そういう収入と支出がある仕事をしている。その中で、これは保険でございますから出たり入ったり、そのときどきによりまして保険金の支払いというのはフラクチュエートするのは否めない。したがいまして、その程度の誤差が出てくるということはあり得ると思います。これはいかに厳密に見積もりましても、そういうことはあり得ると思います。したがって、その後の保険料なりの算定等々によりまして、長期間に調整されてくるという性格のものだと思います。
  43. 矢田部理

    矢田部理君 差があったり、多少でこぼこがあるのは私も理解をします。しかし、毎年恒常的にこれだけ大きな差が続いている。産投会計もそうなんであります。これでは予算を何のために審議しているのかわからぬじゃないかということが問題点一つなんです。
  44. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) この自賠責につきましては四兆という仕事をしている。一%狂いましても四百億違うわけですね。その中で百億とか数十億とかという狂いがあるのは、これはやっぱりいかに正確に見積もりましても、事柄が保険でございますから、保険というのはそういうウインドフォールの損害を補てんするわけでございますから差が出てくるのはやむを得ないのじゃないか。そのために、ある程度保険料の算定その他において余裕を見込んでやっている、こういうことだと思います。
  45. 矢田部理

    矢田部理君 しかし、予算ベースで七十億程度の規模のものが決算ベースで四百億になる、これは少し出過ぎじゃありませんか、それがずっと毎年続くというのは。
  46. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) 先ほど申し上げたとおりでございますけれども、四兆でございますから、四兆の一%狂ったって四百億狂うんです。ですから、その一%狂っちゃいかぬ、保険の仕事をやっていく上に、それはやはり酷ではなかろうか。時々によりましてその狂い方が違ってきていいのじゃないか。しかし、それじゃ損するように保険料を設定するかというと、これは民間が元受けでやっている仕事でございますからマイナスの方に振れるということはまずあり得ない。そうすると、プラスの方で調整するよりしようがない。こういうことでございますから、やむを得ないのじゃないかと思います。
  47. 矢田部理

    矢田部理君 全然納得しません。前年度四百億の利益が出ているのに翌年度七十億しか組まない。その年また二百六十億出るのに、今度はその翌年の予算は二十五億しか見込まない。これは幾ら何でもひど過ぎやしませんか。
  48. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) そういうふうに狂うので、時々、時々というのは二年に一遍ぐらいですが、単価その他の見直しを行っておる。また、これは何年かに一遍でございますが、民間における保険料の算定も見直しておる。こういうことで長期にわたっては調整されるのでございますけれども、短期的にはやっぱり誤差が生ずる。これは保険という仕事の上からやむを得ないということは御理解いただきたいと思います。
  49. 矢田部理

    矢田部理君 ちょっと納得できぬな、これは。  これは一つの例を挙げているんですが、かなりのやつがそうなんですよ。農業共済再保険特別会計などは、今度はマイナスに全部狂うんです。
  50. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) 農薬共済は、これは農作物の災害の程度によりまして支払い金がうんと変わってくるわけです。したがって、長期的には保険料の調整によりまして均衡をとるようにしておりますが、例えば昨年でございます。冷害で保険金の支払いが非常にふえるというときには一般会計から繰り入れをして保険金を払っている。それがいつもそうかというと、やがて保険料の算定が適正に行われている限りには均衡を取り戻しまして、逆に特別会計から一般会計に返すという事態を生じておるわけでございまして、この会計、何十年もやっておりますが、一般会計から繰り入れているのを大体において返してきている。今は一般会計から繰り入れをもらっている、そういう過程でございますが、長期的に見ますとそういうことで均衡を維持している、こういうことでございます。これは保険会計でございますから、そういうようにフラクチュエートがあるのはやむを得ない、それをカバーしているのが保険だと思います。
  51. 矢田部理

    矢田部理君 したがって、私も単年度で見たり、二、三年で見ているのじゃなくて、この数年間のやつを、傾向、問題点としてとらえているわけでありまして、それがずっと私が指摘したような問題になっている。これでは予算決算との差が大き過ぎる、産投会計も含めて。これをできるだけやっぱり近づけるような努力をしてしかるべきだと思いますが、いかがですか。
  52. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) 仰せのとおり、見積もりと実績が狂わないようにあらゆる努力をしなければならない、これはおっしゃるとおりだと思うのでございます。ただ、先ほど申しましたように、保険事業などにつきましては、単年度で見ます、あるいは二、三年で見ます限りは狂いが生ずることはやむを得ない面があることも御理解いただきたいと思うのでございますが、やっぱり中長期的には均衡がとれるようにこの保険料その他いろいろな面におきまして調整をとっていく、そういう筋合いの事業であろうかと思います。御趣旨の点は今後とも努力してまいりたいと思います。
  53. 矢田部理

    矢田部理君 今の答弁で納得するわけではありませんが、そこで自賠責などはむしろ利益がたくさん出ればそれはやっぱり保険料の引き下げなどに回すべきだというふうに私は考えますが、同時に、産業投資特別会計などはもう少し一般歳入に繰り入れることが可能なのではないかというふうに一つは思います。もう一つは、産投会計などはどだい必要なんだろうか。先ほど大蔵大臣が適正に見直しをしていくと言っておりますが、これなどは廃止してしかるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  54. 吉居時哉

    政府委員吉居時哉君) 産業投資特別会計は、先生も御承知のとおり、昭和二十八年に、経済の再建、産業の開発、貿易の振興のために、国の財政資金をもって投資を行うということで設置されたものでございます。設置当初は、開銀や輸銀あるいは電発といったようなところに対しまして、経済の再建あるいは貿易の振興のために必要な資金を出資または融資という形でもって資金の供給を行ってまいったわけでありますが、その後におきましては我が国の経済社会の変化に対応しまして、それに即応して産業の開発やあるいは貿易の振興という点に重点を置いて現在に至っているわけでありまして、現在では北海道東北開発公庫あるいは沖縄振興開発金融公庫あるいは金属鉱業事業団等に対する出資という形で、言うならば地方産業の開発等の役割を果たしているわけであります。産投特別会計は、今後とも今申しましたような意味で経済社会の変化に即応して出資を行っていくということのほか、既に一兆七千億にも上る出資金あるいは貸付金の管理を行うという仕事もございますので、引き続きその役割を果たしてまいるものと、こういうふうに考えている次第であります。
  55. 矢田部理

    矢田部理君 二十八年にできて、いわば経済の再建のためにもともとつくられたわけですね。それで、産業開発、貿易の振興、地方によってはまだ役割もないわけではないでしょうが、全体としては縮小をしていくという方向でやっぱり整理の対象にしていいのではないかというふうに私は思っているんですが、いかがでしょうか。大蔵大臣に。
  56. 竹下登

    国務大臣竹下登君) だから、今御指摘なさいましたように、経済の再建、これは二十八年当時から見ればうんと変わってきておりますから、したがって産業開発と貿易振興、こういうところへ役割が移って、今見ますと、おおむね地開——地域開発というところの役割を果たしてきておるわけですから、うんと減って、いわば高度経済成長以前、高度経済成長を通じ、そうしてある種の目標を達成し、地域開発の方へ傾斜がかかって今日に来ておる、こういうことであろうと思うわけであります。したがって、御指摘もございますので、産投会計そのものについては経済社会の変化に対応して慎重に検討を加えてこれからもいかなければならぬ課題だというふうには、御指摘の理論をフォローしてみますとそういうふうになるではないかと、私どももそういう考え方に立って、ただ地域開発というのがありますから、一遍にパアにするというのはなかなかできませんので、そういう方向で検討を続けておると、こういう姿勢を持ち続けるべきだと思います。
  57. 矢田部理

    矢田部理君 会計検査院に伺いますが、かつて成田新幹線構想があって、もう既に成田の駅はできておる。大変なお金をつぎ込んでいる。そのまま、さたやみになってしまった。あるいは原子力船「むつ」の問題があるわけですが、検査院の考え方をちょっと述べていただきたいと思います。
  58. 中村清

    説明員(中村清君) 御指摘の成田新幹線の問題でございますが、日本鉄道建設公団におきましては、ちょっと概要を申し上げますと、昭和四十九年二月以来、東京都心と成田空港を結ぶ全長六十五キロの成田新幹線の建設工事を行っておりまして、五十七年度末までに建設費それから建設利息合わせまして総額八百二十八億を投入している状況でございます。しかし、その工事につきましては、成田空港駅施設、トンネル延長二・一キロ区間、それから高架橋六・六キロ区間、これが完成したのみでございまして、また用地につきましては二十二万平米を買収したのみで、その後買収を中止している、こういう状況でございます。  と申しますのは、東京都心寄りの区間につきましては、地元住民の反対運動が強いとか、あるいは地方公共団体の協力が得られない、いろいろ問題もあるわけでございますが、こういう問題を抱えておりますので、それにかわるものとしていろいろ検討はされておるようでございますけれども、いずれにしましても、私どもとしましては、現在投資効果が上がっていない、その点に着目いたしまして、そのためには投資効果をぜひ発現していただきたい。しかし、問題としましては、公団が現在いろいろと困難な問題に直面している、こういう点がございますので、政府はもとよりでございますけれども国民とかあるいは関連業者等の協力を得ましてその施設の利用について速やかな方策が図られる、そういうことを期待して特記という形で掲記したものでございます。
  59. 矢田部理

    矢田部理君 「むつ」は。
  60. 西川和行

    説明員(西川和行君) お答えいたします。  原子力船「むつ」につきましては、多額の国費を費やしながら、建造後十余年たっておりますのに依然として実験航海等が実施できる状態になっておりません。そこで、事業効果の発現が著しく遅延しております結果をとらえまして、この事実を明らかにして一般の注意を喚起するために五十七年度の決算検査報告にも掲記いたしたものでございます。
  61. 矢田部理

    矢田部理君 運輸大臣、これはこれだけ巨額の費用を投じて幻の新幹線になってしまった。だれが責任を持つんですか。
  62. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) お答え申し上げます。  成田新幹線の工事実施計画の認可は、昭和四十七年の二月でございます。それが今日まで、今会計検査院から報告がございましたように、八百数十億という金を使って何らの効果を発揮していない、まことにこれは申しわけないことだ、かように思っておるわけでございます。実は、この使われた金のうちの大半と申しては少し過ぎるかもしれませんが、半分以上のものは成田空港のターミナル施設でございまして、このターミナル施設は空港の設備と一緒にやっておかなければならないということで、途中の問題よりも先にターミナルの工事だけが先行したという形が偽らざる実情であるのでございます。  そこで、新幹線につきましては、今工事の施行認可はそのままにあるのでございますが、いろんな事情から新幹線のこの認可した計画では実行できない、また財政面からも非常に問題がある、国鉄、私鉄、いろいろな緑もございますので、いろいろあるわけでございます。そこで、昭和五十二年の十一月に当時の田村運輸大臣が、この新幹線計画というものを一応棚上げして、そして千葉県の人口急増地帯における通勤交通も兼ねた高速鉄道にしたらどうか、こういう提案をされまして、関係の方々にお集まりいただいた機関を設けましていろいろ検討いたしました。A、B、C案、三案ございまして、そのうちのB案と称するものでございますが、大体、田村私案に近い線のものでこれをやることが適当ではないか。これは現在ある線も最大限に利用いたしますし、いろいろやるわけでございまして、この案で固まった場合には当然この成田のターミナル施設は生きるということになるわけでございます。  いずれにいたしましても、大変長くかかっておるわけでございまして、私ども運輸省としては非常に大きな、しかも成田とアクセスはよくありませんからこれをよくしなきゃなりませんし、こういう点で非常に心配しておりますが、私としましては、早急に決心をして、千葉県の通勤交通も東京の通勤交通もあわせてこれは早急に案を決定して、かかった金を活用できるように早くやらなければ、いつまでたっても、ぐずぐずして知っては利息ばかりつきますので、そういうふうにしたいというふうに考えておる次第でございます。
  63. 矢田部理

    矢田部理君 大蔵大臣、これは原子力船「むつ」もそうなんですね。金食い虫か金食い船か知りませんが、全く効果が上がっていない。やっぱり巨額のお金が投じられている。この二つをあわせて、どういう感想をお持ちですか。
  64. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 感想といいますと、財政当局としてはそれはその都度都度、原局で必要と認められることを予算の調整の段階において調整し予算づけをして、年々御審議をいただいておる。それで、それが当初計画されたことよりもスピードにおいて実効が上がらないということについては、それは私どもも遺憾という認識には立つわけでございます。が、それぞれの課題によってそのときの社会事情等がございますので、一概に財政当局側からの断定的見解というのはなかなか難しいことではないかというふうに考えます。
  65. 矢田部理

    矢田部理君 成田新幹線もそうですが、土地取得等の見通しが立たないままずるずるとのめり込んでいってもう既に八百億、また金利がついているわけですね。こういう巨費をやっぱり投ずることになる。原子力船だって同じ愚を繰り返さない保証はない。もう既にそういう状況に達している。やっぱり決断をすべきときがあるのじゃありませんか。私は廃船にすべきだと思います。成田もこのまま放置するのは一体どういうことなのか、だれの責任なのか、そんなことでいいのかということをやっぱりもう一回厳しく問い直さなきゃならぬと思うんですが、いかがでしょうか。
  66. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) 成田につきましては、まことに遺憾な事態でございます。したがって、まだ計画も決定しておらぬというような状況では困るわけでございますので、早急に東京から、都心から成田までのアクセスをよくするという本来の目的と、それから東京並びに千葉の通勤交通を緩和する、相当宅地開発その他で需要もございますので、そういうものとあわせて早急に計画を決定してこれを生かすという方向に持ってまいりたい。そういう目途が立たなければこのままずるずるべったりということになりますので、はっきりしたものにいたしたい、かように決意いたしておる次第でございます。
  67. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 科学技術庁長官いらっしゃらないようでございますので……。私どもといたしましては、この五十九年度予算、今御審議いただいております予算の編成に当たって、科学技術庁と私ども協議をいたしまして、最小限必要な予算、それは今後どういう方向に変化いたしましても必要なものということで予算づけを行ったわけであります。したがって、そのことは一定の期間で今後の方途が決められるというふうに私は理解をいたしておりますが、今日までに至った原子力船の歩みにつきましては、担当大臣いらっしゃいませんので、私からこれについて申し述べることはこの際適当ではなかろうというふうに思っております。
  68. 矢田部理

    矢田部理君 経費が厳しい折から、こういう問題にこそ大蔵当局がきちっとした決断をすべきだというのが私の意見であります。  経済協力に移ります。  外務大臣、一月の末にシュルツ国務長官との間に経済援助等をめぐる会談があったようですが、その内容を御報告いただきたいと思います。
  69. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かに、一月の末に訪米いたしましたときに、シュルツ国務長官との間で、日本の経済協力の進め方、またアメリカの経済協力の進め方等につきまして意見の交換をいたしました。これは日米間で昨年から大体経済協力について意見の交換をすることが重要であろう、こういう認識のもとで話し合いをいたしたわけでございますが、日米間にはやはり経済協力については基本的な考え方の相違もだんだん出ております。どちらかというと、アメリカの方は経済協力を二国間を中心にして進めていこうという考え方でありますし、日本の場合は多極、そうして二極、両々相まって進めていこうというふうな考え方でございました。その点につきましては、また基本的に日本とアメリカとでは、日本の場合は人道的な配慮あるいはまた相互依存、こういう立場を貫いて協力を進めるということで、アメリカとの間には認識の差がありますが、それはそれなりに今後とも両国間の立場を踏まえながら意見の交換はやはりしていこうということでいたしたわけであります。
  70. 矢田部理

    矢田部理君 アメリカと日水は違うかのようなニュアンスで答弁をされましたが、どうも協議を続ける過程を通してアメリカ型になってきているのではなかろうか。  河本長官、「一九八〇年代経済社会展望と指針」、それから、前の七カ年計画、これを比べると大分違ってきている。アメリカ型になってきていると思うんですが、いかがでしょうか。
  71. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) やはり経済協力の基本方針は南北問題を中心に考えていく、この基本方針は私は貫いておる、このように思います。
  72. 矢田部理

    矢田部理君 すぐれて南北問題であるにもかかわらず、東西関係を絡ませているところに問題を歪曲している問題点があるというふうに思うんですが、いかがですか。
  73. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今、我々が例えば日米で協力してやっているタイだとかフィリピンの農業開発プロジェクト等については、こういう問題については意見が一致して進めておるわけでありますけれども、しかしアメリカは、例えば多国間援助というものについては、どっちかといいますと、今、少し抑えぎみでありますし、日本はむしろ多国間援助についてはこれはやはり南の意見も踏まえながらこれを進めるべきであるということで、考え方について私たちは多少の差を感ずるわけでありますし、また二国間の援助につきましても、アメリカは政治優先といいますか、そういう面が非常に強く出ていることは、これはアメリカの世界戦略といいますか、そういう面から当然のことであろうと思いますが、日本はあくまでも人道主義あるいはまた相互依存、こういう形を貫いております。  ですから、アメリカと日本との間には、経済援助につきましても、一面においては一致する面もありますが、相当やはり開きもあることも事実であります。それはそれなりにお互いの立場というものを踏まえながら意見の交換等をしていく、さらにまた協力してやれるプロジェクトについては協力していこうということで総括的な話をしているだけでありまして、具体的にそれ以上突っ込んだ話には今のところは相なっていないというのが現状であります。
  74. 矢田部理

    矢田部理君 問題点を三つばかり指摘したいのでありますが、七カ年計画では国際機関等への協力、つまり多国間援助方式をとっておったのに、その項目が「展望と指針」では全く欠落してしまっている。二点目、「展望と指針」では、当該国と我が国との関係等を総合的にとらえるということで二国間援助に重点を置いた記載になっている。さらに、西側一員論という立場を貫く。こういうことになっているのでありまして、完全にアメリカ型になっている、追従しているというふうに考えられるんですが、いかがですか。
  75. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 我々は、日本の経済協力の基本方針はこれまでも変わっておりませんし、これからも変えようという考え方は毛頭持っておりません。あくまでもやはり人道の立場あるいは相互依存というのが中心でなければならない。この筋を通さなければ、日本が平和国家、平和外交を進めるという立場を貫くことはできないということであります。そういう中で、ですから多国間援助につきましてもこれを進めていく、あるいは二国間援助もそうした精神に基づいてやっていくということでございますが、多国間援助につきましては、これはやはりアメリカ等のそれぞれの了承といいますか、協力がなければこれを進めることができませんので、そういう点で相当日本としても全体的なバランスの中でおくれが出ておることも事実でございまして、日本の経済協力というものを、西側といいますか、そういう立場に立った戦略的なものにしていこう、こういう考え方は毛頭ないわけでありまして、やっぱり南北問題を考え、あるいはまた開発途上国の発展というものを考えて、相互依存、人道というものを貫いた形での援助でなければならない、私たちはそういうふうに考えてこういう基本路線を歩んでおるわけであります。  具体的に今御指摘の点の計画内容については、事務当局から答弁いたさせます。
  76. 谷村昭一

    政府委員(谷村昭一君) 今、御指摘の点でございますが、我々、作成の過程におきましては、今、外務大臣がお答えになったような基本的なポジションを変えておるつもりは全くございません。ただ、今の御質問にはございませんでしたが、「展望と指針」で主として考えましたのは、こういう日本の財政状況が非常に厳しい状況にございますので、やはり援助が、二国間の援助につきましてそれが効果的に実施されることが極めて重要ではなかろうか。そういう意味で、二国間の援助につきまして、新しいそれぞれの低開発の発展段階別に応じて経済協力を効果的に実施すべきであるという点を主体に文章で書きましたために、あるいは先生が御指摘になりましたような二国間援助に重点を置いておるかのごとき印象を与えたかもしれませんが、本来の趣旨は、二国間援助がそういう発展途上国の発展段階に応じて実施されるべきである、そういう点がこの「展望と指針」の重点でございます。
  77. 矢田部理

    矢田部理君 三段階論をとっていることは私も承知をしておりますが、今私が指摘したように、記載そのものが変わっているというふうに思うんです。
  78. 谷村昭一

    政府委員(谷村昭一君) 今の御指摘の点は、私が今申し上げたようなことでございまして、基本的ポジションが変わっているとは我々は思っていないわけでございます。具体的に文章のウエートの置き方とか、そういう点は確かにございますが、基本的なポジションは変わっていないと思っております。
  79. 矢田部理

    矢田部理君 全く了解できませんが。  二月の六日にアメリカ国務省のウルフォウィッツ次官補がアメリカの下院の外交委員会で証首した経済軍事援助の内容について御説明をいただきたいと思います。
  80. 柳健一

    政府委員(柳健一君) ただいま手元にございませんので、至急取り寄せまして御報告いたします。
  81. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  82. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。
  83. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 事務当局も、その質問についての御指示がなかったものですから、今ここでは用意しておりませんが、もちろん外務省の方にはウルフォウィッッの報告があるようでございますから、早速取り寄せまして、そしてこれについての御質問にお答えをしたい、こういうふうに思います。
  84. 矢田部理

    矢田部理君 時間がないから私の方から言いますが、三つ言っているわけですね。前線国家の防衛、シーレーン近接国家との協力関係、フィリピンの軍事施設の継続利用ということで、韓国、タイ、フィリピンなどへの援助を重視をすると。その姿勢を明らかにしているんですが、そうでしょうか。
  85. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私も見ておりませんけれども、しかしアメリカの考え方としては、今おっしゃるような考え方が当然出ているということも十分考えられるわけであります。
  86. 矢田部理

    矢田部理君 東アジア・太平洋方面でその三国に軍事援助の九二%を振り向けている。そこで、アメリカは軍事援助を中心にする、日本に経済協力の分担を求めてきている、こういう絵になるのではありませんか。安倍・シュルツ会談もまさにそういう延長線上にあったのではありませんか。
  87. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 軍事援助と経済援助は違うわけでありまして、我々がアメリカと話し合ったのは、経済援助につきまして話し合ったわけであります。今後とも話し合おうということにいたしておるわけでございます。特にタイの農業センターとか、あるいはまたフィリピンの日米協力で行っておるプロジェクト等、今後ともこれに類するような協力を進めていこうというふうなことについて話し合ったわけですが、経済協力につきましては、アジアにおいてやはり日本が経済協力の七割を集中しておるということに対しては、アメリカもこれを非常に評価をしておる。特に東南アジアあるいはまた韓国、中国、そういう国々に対する日本の援助というものに対してはアメリカはこれを大変高く評価したわけでございますが、軍事援助との関連ではほとんど話は、我々の間では意見の交換はありませんでした。
  88. 矢田部理

    矢田部理君 あなたが意識したかどうかは知りませんが、少なくともアメリカはそういう構想で日本に協力を求めてきているということを十分踏まえてやりませんと、事を誤るのではないかというふうに思うわけであります。  マルコス政権に対する認識はどういうふうに受けとめておりますか。
  89. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) マルコス政権というのは長い間、十七年ですか、続いておるわけでありまして、そして最近では、ああしたアキノ事件というものが起こりまして、政局がといいますか、政治そのものが非常に不安な状況に、一時は極度に不安な状況に陥ったわけでございますが、最近では相当の反マルコス勢力もあるわけでありますけれども、しかし政治そのものは非常な不安な状況からだんだんと小康を取り戻しておる。こういう中で、今選挙に向けて、特に重要な選挙に向けていろいろな動きが始まっておる、こういうふうに認識をいたしております。
  90. 矢田部理

    矢田部理君 ここに石原慎太郎氏の認識があるんですが、「いったん権力の座につくと、マルコス大統領は、シソン議長を投獄の後、矛盾の解決を図る代わりに、戒厳令、議会の閉鎖、政治的脅迫と略奪と権力の悪用によって、自らが大財閥になりおおせ、今ではフィリピンそのものを大方、手中にしてしまった。今日では貧困、治安、綱紀の乱脈は徹底し、もはやフィリピンは近代社会の体を成していない」、こういう認識は間違いでしょうか。
  91. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私は政府の立場ですから、外国の政府についていろいろと日本の政府という立場から物を言う、コメントするということは差し控えさしていただきたいと思いますけれども、しかし客観的に、とにかくマルコス政権が十数年も続いておる、これはまさに一種の独裁的なものであるということはもう客観的な事実じゃないかと思いますし、そういう中でアキノ事件というのが起こったということも、これはもう事実であります。その真相も明らかでないわけでございますが、そういう点に絡んで非常な反体制の動きも起こっておるということも、これは事実として、我々は客観的にこれを受けとめておるわけであります。
  92. 矢田部理

    矢田部理君 そういうマルコス体制のもとで今経済的な苦境に立っているわけでありましょうが、五百五十億円の借款をするということが大変問題になっているわけですが、その点はいかがでしよう。
  93. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かにいろいろと問題が提起されておりますし、またフィリピンの野党の諸君から私に対しましても、日比の将来というものを考えてこれは差し控えてほしい、こういうふうな要請があることも事実でありますが、まあしかし、これは日比間においてはこれまで長い間経済協力という形で、大体、タイだとかあるいはインドネシア、そういう国々と同じような経済協力を続けてきておるわけでございますし、そしてまたことしも去年と同じようなやはりこれは協力をするということは、これまでの日比間の関係からすれば当然のことじゃないか。特に今フィリピンが非常に、もちろん政治の不安というのが背景にあるわけですが、経済が不安で外貨がなくなっておる、そして国民生活が非常に圧迫をされておる、こういう状況でございますので、それだけにやはり日本もこれまで続けていた経済協力というものをやはり自然な形で続けることがフィリピンの今日非常に危機に瀕しておる経済を救うゆえんにもつながっていくのじゃないだろうか。そういうふうに思っているわけで、これがマルコス政権の支持につながるとか、あるいはまたマルコス政権そのものをバックアップするとか、そういうものじゃなくて、やはりフィリピンの経済あるいはフィリピンの国民、そういうものに対するやはり日本の責任の一つであろう。そういうふうに考えて、いわば事務的とも言うべき立場でこれを進めておるわけでございます。これは、政治の問題としてこれを取り上げるということは、今後の日比関係というものを考えるときに私はむしろマイナスになっていくのじゃないか、そういうふうな判断もいたしておるわけであります。
  94. 矢田部理

    矢田部理君 特に疑問なのは、商品借款を三百億とか三百五十億とか渡す、こういうことになっているわけですね。もともと商品借款は、後発途上国の国際収支の悪化が原因であり、かつその上限は二百億円ぐらいというふうに言われておったのに、三百億以上も中進国に近いフィリピンに渡すというのはいかにも異例ではないのか、何か意図があるのではないかと思われますが、いかがですか。
  95. 柳健一

    政府委員(柳健一君) お答えいたします。  商品借款の供与と申しますのは、後発開発途上国に対して供与するというのではございませんで、開発途上国の国際収支の状況が非常に悪くなりまして、その当該国の経済の安定にとって緊急に必要な物資すら輸入ができないというような状況になりましたときに、そういう経済の安定のために緊急に必要な物資を輸入するために、そういう国際収支の状況が非常に悪くなった国に対して供与する。したがいまして、被供与国の所得水準でございますね、そういうものとは過去におきましても関係なしに供与しているわけでございます。それから金額につきましては、これは過去の例をさかのぼってみますと、大体先生がおっしゃいましたように、二百億円ぐらいのものがかなり多くございます。
  96. 矢田部理

    矢田部理君 これは、商品借款三百億とか三百五十億とか言われているんですが、金額は幾らぐらいですか。どうしてこういう金額が算出されることになるんでしょうか。
  97. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 昭和五十八年度の第十二次でございますね、第十二次円借款の中での商品借款の金額についてはまだ確定いたしておりませんので、向こうと協議検討中の段階でございますので、額について申し述べるのは控えさしていただきたいと存じます。
  98. 矢田部理

    矢田部理君 一般的に商品借款を与える場合にはどういう算出方法で金額を出すんでしょうか。
  99. 柳健一

    政府委員(柳健一君) これはほかのプロジェクト借款の場合と一般原則は同じでございまして、先方政府から要請がまずございます。そして先方政府の見解で、現在の例えば国際収支の危機を乗り切るためにどの程度のものを必要とするからぜひこれだけ供与してくれと、借款を出してくれと言ってまいりますと、私どもの方でまた先方政府からいろいろと出されました経済状況、国際収支の状況、その他全体を総合的に勘案いたしまして、かつ日本政府の財政的な制限もございます、制約もございますし、いろいろなものを総合的に勘案した結果、額を決めていくわけでございます。
  100. 矢田部理

    矢田部理君 相手国の企業名などは出るんでしょうか。
  101. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 申しわけありません、相手の何とおっしゃいましたか。
  102. 矢田部理

    矢田部理君 企業名。
  103. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 商品借款の対象は、先ほど申し上げましたように物資を対象としておりますから、企業は一切出てまいりません。
  104. 矢田部理

    矢田部理君 そうではなくて、その相手国の経済、国際収支が悪化して、円などがないために原材料が買えない、そういう企業が出てくるわけでしょう。そういうところに援助をするのじゃありませんか。
  105. 柳健一

    政府委員(柳健一君) ちょっと御質問の趣旨が依然としてよくはっきりわからないのでございますが、先ほどから申し上げておりますように、相手国の企業は、国によっては国の場合もございます、民間の場合もございます。特に途上国の場合は国営企業が多うございますから国の場合もあるわけです。だから、どの企業がどの物資を必要とするから輸入するというのではなくて、その国が経済を運営していくのにとって必要最小限度緊急なものを輸入したいということで、物資を対象に供与するわけでございまして、その上で、どこのどういう企業がそれを輸入することになるかということは相手国政府が決めていく問題だと思います。
  106. 矢田部理

    矢田部理君 もちろん相手国政府が決めるんでしょうが、そういうリストみたいなものは出てきているのかと、こう聞いている。
  107. 柳健一

    政府委員(柳健一君) そういう企業名というものは一切出てきておりません。
  108. 矢田部理

    矢田部理君 いずれにしても、これは私どもは、野党の人たちや多くの人たち、例えばアキノ氏の弟とか、先般野党の党首の、指導者の方が見えられましたけれども、少なくとも選挙が終わるまではやめるべきだと、選挙中にやればマルコス体制の援護射撃だというふうに受けとめる、民主主義の回復するまではやめるべきだと、こういう主張があるわけでありますが、私もその主張はもっともだと思うんです。その点で外務大臣、いかがお考えですか。
  109. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私も、日比の関係を考えますと、これは毎年続けてきておるわけでありますし、今回もまだ決めてはおりませんけれど、大体五十七年度並みの規模を考えておりますし、大体フィリピンとしてもそれを一応の当てにしておるわけでございますので、これはむしろ政治的という面を離れて、やはりフィリピンの経済もああいうふうに悪化しておりますから行わなければならない、こういうふうに思うわけでございますが、しかし日本がこれまでフィリピンに援助してまいりました、それはそれなりにフィリピン政府あるいはフィリピン国民も非常に評価をしております。そういう中で、いろいろとフィリピンの野党の諸君からも確かに我々に対しても直接の要請等もあるわけでございます。  そういう点、我々は考えなければならぬ面もありますけれども、しかし選挙の前とか後がいうことを政治的に判断をしてこれで援助を出すということが、援助そのものがむしろ非常に政治的になるわけでございますから、我々はそういう政治的な判断を離れて、やはりこれまでやってきた自然の姿で、特にフィリピンが非常に経済的に、原因は別として現実に今困っておる、こういう状況を見るとき、やはり我々は、今日の段階において昨年並みの援助ぐらいはこれはしなければならないのではないだろうか、こういうふうに判断もいたしておるわけでございます。そういう点について、日本の誠意について、またいろいろと反対される野党の皆さんともフィリピンの日本の大使館等を通じましていろいろと話し合いもいたして、納得を今求めておる次第でもあります。
  110. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 瀬谷英行君の関連質疑を許します。瀬谷君。
  111. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 結局、商品借款はどういうものかといえば、急場しのぎの痛みどめの麻薬みたいなものじゃないか、こういう感じがするんですね。これはマルコス政権に対する痛みどめにはなっても、フィリピン国民にとって果たして薬になるかどうかということは疑問だと思うんですよ。そこのところを考えるべきじゃないでしょうか。  特に、アキノ氏の暗殺事件というものを軽く見ちゃいかぬと思う。これは私は近代国家にはちょっと考えられないことです、白昼公然と政敵を暗殺するんですから。日本でもそういうことはありましたけれども、それは徳川末期ですよ。坂本龍馬が新撰組に殺されたなんて事件があった。やや徳川末期に似ているような気がするんです。こういうマルコス政権にてこ入れをするという効果が結果的には出るんじゃないかと思うんですが、その点はどうお考えになりますか。
  112. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私は、まだ最終的に政府全体として決めておるわけではありませんし、交換公文とかあるいは閣議決定をしなければこれは決まらぬわけでございますので、今いろいろと検討している最中でありますけれども、この経済協力がマルコス政権を直接助けるものになる、そういうような筋合いのものではないのじゃないかと。それよりはむしろ今危殆に瀕しているフィリピン経済を救う、そうしてそれはまたフィリピンの国民生活に一つの大きなプラスを与える、そういう面での効果というものをむしろ期待をしておるわけでありまして、そういう政治的なものを離れた、これまで続けてきた、そしてまた大体五十八年も五十七年並みにはやらなければならぬということは、日比間ではこれまでの長い十一次までやってきました借款でございますから、一つの約束事みたいになっておりますので、これは出さざるを得ない。そしてその点は、やはり商品借款にしてもプロジェクトにしても、確実にフィリピン経済あるいはフィリピンの国民生活にこれが直接つながっていくということをやっぱり見届けた上で、これはきちっと実施をすべきであろう、そういうふうに思っておるわけであります。
  113. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 外務大臣の御答弁は多分に建前に終始しているような気がするんですが、しかし建前は、企画庁長官は南北問題としてとらえるべきであるとさっき御答弁がございました。しかし実際には、本音の方は東西に走っているような気がするんですよ。一体、建前は南北、本音は東西ということでいいのかどうか。この点、企画庁長官の見解も承りたいと思うんです。
  114. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) アメリカは今外務大臣から御答弁のように東西問題を中心に援助を考えておりますが、日本はあくまで南北問題の解決ということが中心であります。ただ日本の場合、基本姿勢は日本がアジアの一員であるということ、それから自由世界の一員である、しかも自由世界において第二の経済力を持っておる、これがまあ基本の立場だと思います。そういうアジアの一員であるという、また自由世界の一員であるというそういう立場から、今外務大臣のような御答弁になったのだと思います。
  115. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 自由世界の一員としてふさわしい政権であるかどうかということも我々が十分に吟味しなければならないんじゃないかと思うんです。このマルコス政権は民意、世論によって支持されているんじゃない。これはもう武力によって支持されていると、こういう政権ではないかというふうに我々は見ざるを得ないんでありますが、その点はどのような御認識なんでしょう。
  116. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日本の場合は、今先ほど河本経済企画庁長官からお話がありましたように、日本の場合の経済協力の基本は南北問題、そういうものの中での人道主義、さらにまた相互依存という立場のもとにこれを行うのが基本原則でございます。そして南の立場、いわゆる開発途上国における政体にはいろいろの形があるわけでございます。決して日本のような自由主義、民主主義の国ばかりではございませんで、いろんな形があるわけでございますが、それはその国なりのやっぱり政権として合法的な政権である以上は、日本としてもこれを認めて、そして外交関係を結んでいる以上は、そうしたやはり前提に立って、これに対する今の基本原則のもとでの経済協力はこれまで進めておりますし、これからも進めていかなければならぬ、こういうふうに思っております。  確かに、フィリピンの場合においてはアキノ事件、我々もああしたテロ事件に対してはまさに唾棄すべき事件、排除されなければならない事件だと、こういうふうに思いますし、真相もこれは究明されなければならぬ事件だと、こういうふうに思うわけでございますが、しかしまだ今真相は解明中だというふうに承っております。そういう中で、とにかくフィリピンに長い間経済援助してきた、そしてまたフィリピンはアジアの一国である、しかしそのフィリピンが現在外貨が極度に不足をして、そして経済も大変な混迷に陥っている、そういう状況で、ちょうど五十八年度の経済援助の時期が来ておるわけですから、そしてフィリピンと日本との間には昨年並みの経済援助はいたしましょうという大体基本的な合意というものもあるわけでございますので、これはまだ決定はいたしておりませんが、慎重にすべきところは慎重にしなければなりませんが、我々はやはり援助するという方針でこれには対応をしていかざるを得ない、対応をしなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。
  117. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 もうマルコス政権は土台骨が腐っておると思うんです。私はやはり今考えると、大分前に南ベトナム・サイゴン政権が倒れたことがあります。あの南ベトナム政権に対する経済援助は、鶏一羽が幾らについたというふうに言われたんですよ。ところがあのとおりでしょう。結局、日本の経済援助というのは南ベトナムの亡命政権の亡命資金に回されてしまったというような感じなんです。だから、もしこういう土台骨が腐っておるような政権に肩入れをするということがどういう結果になるか。南ベトナムのような例をたどると、どぶに金を捨てるようなことになると思うんです。そういう場合にどうやって責任とったらいいのか、どうやって国民にそれを納得させたらいいのか、その点もお伺いしたいと思うんです。
  118. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日本の場合も国民の血税によるところの大事な資金が中心になるわけですから、これはやはり経済協力というものは慎重に行わなければならぬわけでありますし、そしてまた、今申し上げましたようなやはり人道主義、相互依存主義というものに基づいて、この原則を踏み外してはならないと。これは私はそういうふうに肝に銘じておるわけでございますし、フィリピンにつきましても、まだ決定はいたしておりませんが、今の瀬谷委員の御指摘等も踏まえながら慎重に対応していきたい。ただ、先ほどから申し上げますように、我々はフィリピンの場合に対しても、マルコス政権を援助する、助けると、こういうことでこの援助をしていくわけではありませんで、あくまでもフィリピン、そしてフィリピンの国民、フィリピン経済、これを救済していく、これが今度の経済協力の大きな目的である、こういうふうに御理解もいただぎたいと思うわけであります。
  119. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 南北と言った以上は、あくまでもその原則を通してもらいたいと思うんです。南北と言いながら東西に走る、札幌の道路を救急車が走るようにあっちこっちされちゃ困るので、その点を念を押して私の質問を終わりたいと思います。
  120. 矢田部理

    矢田部理君 外務大臣の答弁にもかかわらず、客観的に果たす役割がマルコス政権へのてこ入れでおるということは否めないのでありますから、そこは十分留意して延期すべきだということを私も主張しておきたいと思います。  同時にまた、援助の質の問題があるわけでありますが、フィリピンに限らず、医療とか教育という観点での援助がまた非常に大事だと思うのですが、厚生大臣や文部大臣、どんなふうにお考えでしょうか。
  121. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) これは医療関係などいろいろの国に経済援助をやっておりまして、非常に喜ばれております。今も私のところにそれぞれの国から非常に強い要請がありますから、これも大変大事なことだと思います。
  122. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 御指摘の点はいろいろな面から考えられますが、留学生の交換、あるいはまた教育者あるいは学者の交流、極めて重大だと思いますし、とりわけこれからの日本の間がASEANを中心にし、あるいはまた世界全体に対して大きないろんな意味での役割を果たしていくという意味でも、さらに国際交流を各般について広めていかなければならぬ、このように考えております。
  123. 矢田部理

    矢田部理君 厚生大臣に伺いますが、やっぱり現地の人たちの話を聞きますと、大きい病院を建ててもらっても、結局は財閥や政府高官、軍人などしかかかれない。むしろ小さな診療所をいっぱいつくってもらった方がいいんだというような視点で言われておるわけですが、いかがでしょうか。
  124. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 御指摘のような点も聞いておりますので、これからきめ細かく、やはりせっかくやるのでございますから皆さんに喜んでいただけるような援助を進めていくように努力してまいりたいと思います。
  125. 矢田部理

    矢田部理君 文部大臣、留学生の交換を言われましたが、日本はまだまだ数の面で不足しているんじゃないでしょうか、一体どんな計画をお持ちですか。
  126. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 留学生の交換等につきましては、どちらかといいますと、やはり先進諸国中心であったというふうに承知をいたしております。これから特にアジアを中心にして留学生あるいは教育者等の交流を深めていかなければならぬと考えておりますが、総理も二十一世紀に向けて少なくとも年間十万人ぐらいはというような希望の構想も立てておられますが、逐年その方向に向かって努力をしていきたいと考えております。  これはまた、私の全くの私見でございますが、教職員の、先生方の海外派遣というのも大変大きな成果を上げております。先生方が広く世界を見て、そして子供たちに対して世界の情勢等をお話をしていただくと同時に、世界の教育関係者の皆さんとの交流を深めるということで大変意義あるわけでございますが、私は、そろそろこれも先進諸国よりもむしろアジアを中心にした発展途上国に対して先生方の交換を進めて、お互いにアジアを中心にして、二十一世紀を担う青少年に対して大きな教育の役割を果たしていく、こういう方向に少し姿勢を変えていくべきではないかな、こんなことも考えておりますが、今後とも特段の前進をさせるために努力をしてまいりたいと、こう考えております。
  127. 矢田部理

    矢田部理君 労働大臣に伺いますが、八四春闘が山場に入ってまいります。仲裁裁定で決着ということになろうかと思うのでありますが、仲裁裁定についてはどんな受けとめ方をしておりましょうか。
  128. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) 人事院勧告とか仲裁裁定、これはもう御承知のとおり、公務員と公企体職員の労働基本権制約の代償措置でありますから、私といたしましては、特に労使関係というものは非常に大切だと、日本は諸外国に比べて労使関係は官民ともに安定しておる方だ、これは非常に大切にしなければならぬ、そういう観点から最大限の努力を払っていくという基本姿勢は変わりません。
  129. 矢田部理

    矢田部理君 運輸大臣、いかがですか。
  130. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) 公労法三十五条で既に明確になっておりまするように、仲裁裁定は労使双方を拘束する、服従しなければならないという決定でございます。協約にかわる決定でございます。政府もできるだけこれの実現に努力をしなければならぬということになっておるものでございます。さように理解しております。
  131. 矢田部理

    矢田部理君 これは労働大臣も運輸大臣も共通なんでありますが、今お話があった公労法の三十五条、双方とも最終決定としてこれに服従すべしと、これが原則だということをひとつきちっと踏まえてほしい、この原則に近づけるような努力をしてほしいと思うのですが、いかがですか。
  132. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) 三十五条の精神を体して、そしてこれはもう最大限努力するということは法に明記してあると思っておりますので、そのとおり努力をいたします。
  133. 矢田部理

    矢田部理君 ただし書きがあって、十六条の国会承認論があるわけでありますが、これは例外だと、ましてこれを議決案件などにするのは邪道だというふうに御理解をいただきたいのですが、いかがですか。
  134. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) 最大限努力するということが大前提であって、そしてその後に予算上どうしても都合の悪いときには、それは議会に語るということになっておるから、あなたのおっしゃるように、原期は最大限努力、そしてその後はそのときの財政事情というのが法律の趣旨であろう、こう思っています。
  135. 矢田部理

    矢田部理君 人事院総裁お見えになっておりますが、ことしの勧告についての考え方をひとつ伺いたいと思います。
  136. 内海倫

    政府委員(内海倫君) お答えを申し上げますが、ことしの勧告の考え方ということが殊さらに今までの考え方と変わるものではございませんので、考え方としてはずっと今までやってきております考え方、あるいは今まで行っております勧告の調査のやり方、こういうものは在来どおりの考え方と方式で行いたい。既に一月におきましての公務員の給与の実態調査も行っておりますし、また四月時点の民間給与の調査の仕方も既に在来の方式にのっとって準備を進めておるところでございます。要は、私どもは、その行います勧告が政府において、あるいは国会において尊重をしていただき、でき得れば完全実施ということにつながるように努力をしていただきたい、これを希望しておるわけであります。
  137. 矢田部理

    矢田部理君 昨年度の不履行分があるのですが、これはいかがしますか。
  138. 内海倫

    政府委員(内海倫君) 昨年度の積み残しというふうなものも、今回の民間と公務員との給与の較差を調べていけば、おのずからその中に入ってくるものと考えられておりますから、そういうふうな較差が出た場合、それを勧告せざるを得ない、こういうふうに思います。
  139. 矢田部理

    矢田部理君 総務長官、勧告を受けられてからの対応についてお聞きをしたい。それからまとめて官房長官に仲裁裁定、人勧の扱いについてお尋ねをしたいと思います。
  140. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 人事院勧告が八月でしょうか、今人事院総裁がおっしゃったような計算に基づいて出る。私どもといたしましては、労使関係の秩序といいますか、安定した現状は、これはひびが入ってはならないと考えておりますし、また公務員の士気に影響があるようなことがあってはこれは大変だと思います。そういった意味におきまして、人事院勧告が出ました上で、基本的に尊重するという立場を堅持しながらその実現に努力をしてまいりたい、かように思っております。
  141. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 本年度の人事院勧告につきましては、その勧告が出されました段階で、人事院勧告制度を尊重するという基本姿勢に立ちましてその実施に向けて最大限の努力をしてまいりたい、そのように存じております。また、仲裁裁定につきましても、裁定が出されました段階で、先ほど来閣僚から御答弁がございましたように、公労法三十五条の精神を踏まえまして政府としての態度を検討していくようにいたしたい、このように存じておる次第でございます。
  142. 矢田部理

    矢田部理君 ずっとここ仲裁裁定も完全に実施されていない。人事院勧告は大幅に値切られてきておるという状況を踏まえて、ことしは何としても完全実施のためにきちっとやっぱりけじめをつけてほしいというように思いますので、その点を要望、しておきたいと思います。  それから、厚生大臣と文部大臣に伺いたいのでありますが、最近、予算の特徴は軍事費だけが突出をして、社会保障費や教育費がずっと圧縮をされておる、この傾向をどう思いますか。
  143. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 今度の五十九年度の予算は九兆二千四百五十億の厚生省の予算を御審議をいただいておるわけでありますが、これは予算総体の中の政策予算では二八%になっております。もちろん厚生大臣としては社会福祉関係の予算あるいは医療保険予算、これは多いにこしたことはございませんけれども、しかし全体の中で政治は行われるのでありますから、今回の予算、心身障害者の問題とか、あるいは在宅老人の皆さんから非常に期待されておるヘルス事業のものとか、あるいは重度障害者のものとか、かなり大蔵省から我々の要求する新規の予算も認めていただいておりますし、そういう意味では決して全体の中ではバランスを考えれば福祉の後退ではないと、努力した点もお認めいただきたいと思います。
  144. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) お尋ねの、全体の予算の中で文部省予算、教育予算もまた極めて厳しい財政状況の中で抑制をされているわけでございます。確かに教育につきましての予算は、これは遠い将来の日本の国の発展のためにも、どうしてもおざなりにはできないことではございますが、これまではどちらかといいますと、やはり高度経済成長の中で、教育の施策につきましては各般の助成策を含めながら新しい施策も取り入れてまいりました。確かに、現下の情勢の中では教育予算全体においては極めて厳しい、特に教育予算は、トータルで見ますと、人件費というものが非常に多く占めておるわけでございますので、政策経費が厳しくなっておることは十分承知をいたしておるところであります。しかしその中でも、これまでの施策につきましては文部省の中でいろいろと努力を重ねてきております。また、これまで続けてまいりました施策の中でもいろいろと有効適切にやはりこれを予算面の中で工夫を凝らしていく、こういう中で教育行政に支障のないように進めてきたところでございます。
  145. 矢田部理

    矢田部理君 七〇年代は教育や社会保障費がずっと伸びていた、八〇年代に入ると逆転現象になっておる。福祉を削って軍拡をという予算はいかにもやっぱり情けないわけでありますが、その点で満足だということにはならぬのじゃないか、極めて不十分だと思うわけでありますが、今後とも注意していただきたいと思います。  そこで、外務省かもしれませんが、イランから自衛隊の三次元のレーダー、輸送機C1の輸出を求めてきているそうでありますが、事実かどうか。これは明らかに紛争当事国でありますから、武器輸出三原則に反するのではないかと思いますが、いかがですか。
  146. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) イランから、公式ではございませんが非公式に、C1であるとか、あるいはまたレーダーについて日本からの輸出を求めておると、こういうことでありまして、まだ正式な要請とかそういうものは全く出ておらないと、こういうふうに承っておりますが、もちろん日本には武器輸出三原則もあるわけでございますし、イランからそうしたものについての正式な輸出を求める要請が出れば、その時点におきまして貿管令その他を踏まえて、これは通産省の所管になるかとも思いますが、判断をしていただかなければならぬ。日本の法律あるいは原則に従ってこれは対処していくのがもちろん当然のことであろうと考えております。
  147. 矢田部理

    矢田部理君 イランが紛争当事国で、当然あの三原則に当たるということは認めるわけでしょう。
  148. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いわゆる武器輸出三原則に言うところの紛争当事国であるかどうかということにつきまして、これは法律的な見解もあると思いますが、もちろん常識的に見て、三年九カ月、四年近くもう戦争に等しいことをやっていることは事実でありますし、それを我々は踏まえていかなければならぬことはこれはもう当然至極であろうと、私はそういうふうに常識的に考えております。
  149. 矢田部理

    矢田部理君 国税庁、福島交通で五十億の使途不明金が出され、解明しているそうでありますが、解明はついたかどうか、その特徴を述べていただきたい。
  150. 岸田俊輔

    政府委員(岸田俊輔君) 福島交通及びその関連会社及び関連個人につきましての調査は昨年終了をいたしております。調査に当たりましては、相当期間をかけておりますし、収集いたしました情報を念頭に置きまして適正に処理を終了しております。
  151. 矢田部理

    矢田部理君 特徴はどうかと聞いている。
  152. 岸田俊輔

    政府委員(岸田俊輔君) 個別の企業の内容でございますので、それぞれ特徴と申しましても、どの点が特徴になるかということは必ずしもはっきり申し上げられないかと思います。
  153. 矢田部理

    矢田部理君 明確にはっきりということはともかくとしても、概括的に言ってください。
  154. 岸田俊輔

    政府委員(岸田俊輔君) 先般来、新聞報道が出ているわけでございますけれども、大まかなところ、あえて内容は否定しないという程度でとどめさしていただきたいと思います。
  155. 矢田部理

    矢田部理君 公務員は、調査の過程で刑事事件に相当するような問題があれば告発の義務を負うわけでありますが、背任その他の疑いがかけられるようなケースはありませんでしたか。
  156. 西村尚治

    委員長西村尚治君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  157. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。
  158. 岸田俊輔

    政府委員(岸田俊輔君) 国税庁の税務調査は税務を中心にして行っております結果、その他の犯罪事実その他については確認をしておらないというのが現状でございます。
  159. 矢田部理

    矢田部理君 警察庁に。どんな関心を示しているか。
  160. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) 福島交通の疑惑につきましては、現在関心を持っておるわけでございまして、幅広く情報の収集に努めておるところでございます。  なお、当然のことではございますが、証拠上刑事責任を追及し得るような事実があれば、厳正に対処してまいりたいというふうに考えております。
  161. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で矢田部君の質疑は終了いたしました。  ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  162. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。  それでは、午前の質疑はこれまでとし、午後二時三十分に委員会を再開することとし、これにて休憩いたします。    午前十一時四十九分休憩     —————————————    午後二時三十分開会
  163. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 予算委員会を再開いたします。  昭和五十九年度総予算三案を一括して議題とし、これより中西珠子君の一般質疑を行います。中西君。
  164. 中西珠子

    中西珠子君 国際国家日本という概念についてまずお伺いしたいと思いますが、中曽根総理は施政方針演説の中で国際国家日本という言葉を六回もお使いになり、また衆議院の予算委員会における答弁におきましては、これはシンボリックな表現であると答えておられます。この国際国家日本というものにつきまして、外務大臣、経済企画庁長官、大蔵大臣はどのように理解していらっしゃいますか、お伺いしたいと思います。
  165. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは中曽根総理のボキャブラリーの一つだと思いますけれども、私はこれに対しましてこのように解釈しております。現在、相互依存関係が非常に深まった中で、世界の平和と繁栄なしに日本の平和と繁栄はない。また、我が国の国際的地位の向上に伴い、各国の我が国に寄せるところの期待と要請は極めて大きいものがある。また、我が国としてはこうした世界の期待にこたえ、世界の平和と繁栄のために、経済面のみでなくて、政治的あるいは文化的にも積極的な役割を果たす必要があり、総理大臣はそうした認識のもとに国際国家ということを言われておるのではないかと、こういうふうに認識をしておるわけでございます。私も、そうした考え方のもとに、日本がこれからの世界の中でその役割を果たしていく、積極的に発言もしなければならぬし、また積極的にその役割も果たしていかなければならぬ、そういう時代に入ったと、こういうふうに考えております。
  166. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 今、我が国の経済は世界経済全体の一割以上を占めておりますし、しかも我が国は貿易立国でありますから、ほとんど全部の必要な資源は外国から買わなければならない、こういう立場にもございますので、深く世界とかかわっておるわけであります。特に、世界の平和とそれから自由貿易体制というものがなければ日本の存立というものはあり得ない、こういう意味で日本は世界と深くかかわり合っておると、こういう趣旨で使われたのではなかろうかと、こう思っております。
  167. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いささか財政経済の方からいえば、サミット参加国七カ国で大体人口が六億ですから世界の人口の一三%、それからGNPが五六ぐらいでしょう、五六%。それから今度はその中でアジアというものを見ると、人口が二十五億、そして日本を除く二十四億のオールアジアがGNPで八千億ドルぐらい、それから日本が一兆二千億ドルぐらい。そういうことから見ても、国際社会に果たさなければならない役割があるという意味で、国際国家と、こう言えるのではないかと、このように思います。
  168. 中西珠子

    中西珠子君 世界の繁栄と平和なくしては日本の繁栄と平和はない、そういういわゆる国際国家日本といたしまして、国際協力は非常に重要だと思うのでございますが、殊に開発援助という面で政府はどのような基本的なお考えをお持ちでいらっしゃいますか。外務大臣、経済企画庁長官、大蔵大臣にお聞かせ願いたいと思います。
  169. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 我が国の経済的な地位が高まり、経済的な実力がついてくるにつれまして、やはり開発途上国に対するいわゆる開発援助といいますか、経済協力はますます必要になってくるし、またそれが日本の国際的な役割であろうと私は思うわけでございます。この開発援助は、やはり南北問題というものを踏まえて、いわゆる人道という立場あるいは相互依存という立場、そういう基本的な立場に根幹を置いてこの援助が実施をされていかなければならない。今日までもそういう根本理念のもとに日本は経済協力に取り組んでこれを進めておるわけでございますが、今後ともこの姿勢を貫いていきたいと思いますし、この援助は今倍増計画のもとに、厳しい予算の中ではありますが、五十九年度予算におきましても一番高い伸び率を確保することができたわけでございます。この姿勢を今後とも続けてまいりたいと思っております。
  170. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 我が国は、平和憲法のもとでの平和国家を標榜しておりますので、やはり世界平和のために発展途上国に対して積極的に経済協力をしていく、これは国の基本方針であります。国際社会に積極的に貢献するという表現をとっておりますが、そういう意味で世界平和のために、できるだけ発展途上国の自立的な発展のための援助をしていく、こういう方針だと思います。
  171. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ことしの乏しい財源、窮屈な財源の中でも、この予算の中で最高の伸び率ということは、ぎりぎりの努力一つのあらわれではないかというふうに理解しております。
  172. 中西珠子

    中西珠子君 ただいま開発援助に関しては、予算は苦しい中から最高の伸び率ということで一生懸命努力したとおっしゃいましたが、それは大変結構なことだと思いますけれども、五十九年度の政府開発援助ODA予算は一般の会計分が五千二百八十一億円で前年度比九・七%の伸びということでございますけれども、これには海外経済協力基金の赤字補てん分二百九億円が入っているわけでございます。これを差し引きますと五・三%のアップにしかならないというわけでございまして、そういたしますと、防衛費の予算の伸びよりはずっと少ないということが言えるのではないかと思いますが、外務大臣いかがですか。じゃ大蔵大臣お先に。
  173. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはいろんな赤字補てん、欠損金の処理の方法がございますけれども、言ってみれば、それは発生した欠損、言うなれば利子補給に当たるものでございますね。その限りにおいては一般会計から利子補給をすることによって開発援助に向ける金利がそれだけ下がるわけでございますから、やはりこれはODAの一部にカウントしていただく性格の予算であるというふうに認識しております。
  174. 中西珠子

    中西珠子君 外務省のODAの事業予算総括表によりますと、五十九年度のODAの総計はGNPの〇・四三八となっています。もちろんこれは仮の集計だと思いますけれども、ただいま大蔵大臣がおっしゃいました海外経済協力基金の赤字補てん分はODAと考えてもらっていいのじゃないかということでございますけれども、その赤字というのは過去の援助から生じた赤字であって新規の融資には使えないわけでございますね。そうすると、赤字補てんは国内の問題であって、対外的には開発援助とは言えないのではないかと思うのです。そして、この海外経済協力基金の赤字補てん分までも含んだODAの対GNP比を国際的にも発表なさる予定でいらっしゃいますか。外務大臣、いかがですか。
  175. 谷村昭一

    政府委員(谷村昭一君) 今の赤字のための交付金でございますが、これは事業計画の中の一環といたしまして、いわゆる事業規模の中に出資として織り込まれるわけでございますから、いわゆる過去の赤字を埋めるという意味では確かに赤字補てんでございますが、しかしながら、事業を達成いたしますための資金の一助になることは間違いございません。そういう意味におきまして、過去の赤字を埋めるという役割だけではなくて、五十九年度の事業規模を維持する上でも、この二百九億円というのは極めて重要な役割を果たすわけでございます。そういう意味で、これはODAにカウントすることが正しいやり方ではないかと、こう思っておるわけでございます。
  176. 中西珠子

    中西珠子君 この点に関しまして、経済企画庁長官はどのようにお考えでいらっしゃいますか。
  177. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) これは開発援助の条件をよくするために非常に安い金利で相手に長期間貸しておるわけであります。しかも、資金調達のコストは高くついておる、こういうことでありますので、やはり援助計画を円滑に推進するために必要な資金であると、このように私どもは判断をしておりまして、これは別のものだと、こういうことには考えておりません。
  178. 中西珠子

    中西珠子君 ODAの集計をし、そしてそれをGNPの比率であらわすときに、諸外国で赤字補てん分までも入れている国がございますか、外務省、いかがでしょう。
  179. 柳健一

    政府委員(柳健一君) お答え申し上げます。  ただいま先生が御指摘になっておりますのはODAの予算でございまして、このGNP比率というのはDACにも届け出ている数字ではございませんで、予算上仮に集計をした結果を仮の数字として出しているだけでございまして、DACに出しておりますのはすべて支出実績でございます。
  180. 中西珠子

    中西珠子君 先ほどの質問の中で、これは仮の集計と思いますがとちゃんと断っておりますし、それからODAのその支出集計を報告するときに、赤字補てん分もお入れになるかどうか、それもODAと考えるかどうかという御質問をしているわけです。お答えになってください。
  181. 柳健一

    政府委員(柳健一君) ただいま申し上げましたように、この二百九億円というのはただいま経済企画庁から御説明がありましたように、赤字補てんではございますが、右から左へ返されるお金ではない、五十九年度の経済協力基金の原資として使われるお金であるというふうに説明がございましたが、いずれにしてもこれは予算のことでございまして、これはDACへ届け出る数字ではございませんで、DACへ届け出る数字はあくまでも支出のドルベースでの実績でございまして、これは二百九億円というものが支出実績としてDACに届け出るという数字と直接つながらないわけでございます。
  182. 中西珠子

    中西珠子君 それはそうですね。しかし、昭和五十七年度決算においてこの二百九億円という赤字を出しました海外経済協力基金の収支の不均衡というものは、これは体質的なものである調達資金と貸出資金の金利の逆ざやによって出てきた構造的なものではないかと言われておりますが、政府は五十八年度、五十九年度における赤字の幅をどのように予想していらっしゃいますか、またこの赤字体質改善のためにどのような対策をお考えになっておりますか。大蔵大臣、お願いします。
  183. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) 海外経済協力基金、御指摘の収支対策でございますけれども、基本的な検討をしなければいけないなというふうに私ども考えておりまして、経済企画庁を中心にいたしまして、関係各省庁が集まって、今、中期的な視点から検討を開始しているところでございます。しかし、とりあえずの措置といたしまして、その検討が時間がかかりますものですから幾つかの措置をとらなければいけないなということを考えまして、幾つかの措置をとることにいたしておるわけでございます。  一つは、五十八年度の円借のプレッジを抑制することにいたしたわけでございますけれども、五十九年度のプレッジにつきましても、基金の収支状況、諸般の情勢を考えながら、適当な水準に抑えていきたいなと、かように考えているのが第一点でございます。それから二番目に、一般案件につきましても従来同様慎重な方針をとっていきたいな、かように考えているわけでございます。三番目に、金利でございますけれども、五十八年度分から平均して〇・六%ほど上げたわけでございますけれども、今後、円借款の原資の調達コストあるいは我が国のODAの質等を勘案しながら、適宜金利の見直しもやっていかなければいけないのではないかなと思っておりますし、四番目に、償還期間につきましても、相手国の経済力とかあるいは借款の形態等に応じて短縮する方向を考えなければいけないのじゃないかなということで考えておりますし、最後に基金の支払い引受書、LCOMと申しますが、その発行手数料として本年度から〇・一%供給するというような措置を当面実施していきたいと、かように考えているわけでございますが、冒頭申し上げましたように、中長期的な観点から抜本的には考えてまいりたい、かように考えております。
  184. 中西珠子

    中西珠子君 先ほど新中期目標のお話が出ましたが、新中期目標ODA五カ年倍増計画につきましては、諸外国の政府首脳もこれは日本の国際的な公約であると考えている、またその計画の実行の可否について深い関心を示していると聞いております。政府はこの新中期目標の達成をどの程度国際的に責任のあるものとお考えになっておりますか、外務大臣、お願いします。
  185. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いわゆるこの新中期目標達成につきましては、すでに我が国もしばしば内外に対してこれを言っておりますし、今お話しのように、内外の期待も大きいわけでございます。この新中期目標は、我が国のこのODA実績の五カ年倍増を内容とするものでありまして、同目標の最初の二年間である八一年、八二年の支出実績については、円ドルレートの動向、これは円が安かったということでありますが、あるいはまた国際開発金融基金に対する増資交渉の進捗状況、これは御承知のように国際開発金融機関に対してはなかなか各国の足並みがそろわない、アメリカ等もなかなか踏み込まないということもあって、それに対する増資がおくれる、そういうふうな状況等がありまして、これは我が国のコントロールの及ばない要素であります。そうした要素があって、対前年度化四%とかあるいはまた四・七%というふうな減少に終わっておるわけであります。同目標達成期間五カ年のうちに最初の二年間の実績しか出ていない状況ではございますけれども目標達成の見通しについては確たることは言えませんけれども、しかし新中期目標のもとでODAの拡充については従来よりも格別の配慮を行ってきておるわけであります。予算もそれなりに充実してきておるところでありますし、この目標のもとで今後ともその拡充にはひとつ努力をしてまいりたい。これは各国もそれぞれ先ほど申し上げましたように注目をしておるわけでございまして、この目標は我々としてはあくまでも堅持をして、それに向かって、苦しい財政の状況でありますし、また実際の支出についてはそれなりに日本の責任でない状況もあるわけですが、そういう情勢はそれなりとして努力は重ねていかなければならない。そういう決意を持ってこれからも真剣に取り組んでまいる考えであります。
  186. 中西珠子

    中西珠子君 今、外務大臣から御決意のほどを伺ったわけでございますけれども、新中期目標の実績を見ますと、八一、八二年の二年間で、これはドルと円のベースの問題もございますけれども、約六十二億ドルということでありまして、これでは八五年までに目標を達成するのは非常に難しい。六十年度の予算で二〇%以上の伸びを確保しなければ達成はできないのではないかと言われているくらいでございますが、大蔵大臣、いかがでございますか。
  187. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 先ほど来御議論があっておりますように、ODAの実績総額で一九七〇年代後半五カ年間の総額の倍以上とするように努めようと、こういうことでございます。先ほどお答えがありましたように、為替レートの問題と、それから今もいろいろまだ難航しておる国際機関への出資の問題、どちらかといえば、これは私どもの方が割合先行するんですね。しかし、交渉事でございますから、現実は順番でいえばどういう順番になりますか。かなり先行する側におりますけれども、現実の落着はかなり時間がかかってそれらが後送りになっておるということが、率直に申しまして今日まだ頼りないじゃないかと先生がお思いになるゆえんのものがそこにあると思います。したがいまして、やっぱりこれは全体とのバランスを考えなきゃなりませんけれども、この中期目標に向かっては精いっぱいの努力をこれからも、いわゆる六十年度予算編成に当たってもそのことを念頭に置いて対応すべき課題だという理解はいたしておるつもりであります。
  188. 中西珠子

    中西珠子君 一九八二年の日本のODAの対GNP比は〇・二九%でございます。御承知のとおりDAC加盟国十七カ国の中で十三位でございます。国民一人当たりの額で申しますと第十五位となっております。国際的な援助基準として、ODAの対GNP比は〇・七%の目標を達成してほしいということが繰り返し国際的に要請されているわけでございます。  例えば、一九八〇年十二月の第三十五回国連総会で、第三次国連開発十年のための国際開発戦略が採択されました。その中で、ODAの対GNP比〇・七%の援助目標を達成していない先進国は同目標を一九八五年までに、また、いかなる場合にも八〇年代後半までに達成してほしい、またGNP一%の援助目標も、それ以後できる限り早期に達成することとするという要請がなされておりますが、日本はこれに対して、ODAの〇・七%目標を一九八五年までに達成するという特定の期限及び一%の援助目標については留保するという旨表明したということを聞いております。国連の場でこのように留保を付して、その上みずから決定した新中期目標、すなわちODA五カ年倍増計画も達成できないということになりますと、これは平和国家として世界の平和と安定のために援助を行っているはずの日本のイメージが大変損なわれることになるのではないかと思います。ただいま大蔵大臣からも、外務大臣からも、新中期目標達成のために現在の財政事情の厳しい中を御努力なさるということを伺ったわけでございますが、この対GNP比〇・七%という国際的な目標についてはどのように政策上位置づけをなさっておりますか。外務大臣と経済企画庁長官と大蔵大臣にお聞きしたいと思います。
  189. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) GNP比〇・七%というのは、先進国としてのやはり国際的な目標でありますし、日本は留保をつけておりますけれども努力はしなきゃならない目標であると私も認識をしております。残念ながら今〇・二九という状況でございますが、しかし私たちは、今お話しのように平和国家、平和外交を推進する上において経済協力の役割というのは非常に重要でございます。そのために新中期目標を設けて、これに向かって今月を尽くしておるわけでございます。なかなか困難な状況でもありますが、我々はこの目標は捨てない。捨てないで、あくまでも目標達成に向かって今後ともひとつ全力を傾けてまいる、そういう決意でございます。
  190. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) もう既に〇・七%を達成しておる国もあるわけでございますから、日本は新中期目標の次の目標といたしましてはそれを目指していくということが大事だと思いますが、しかしいずれにいたしましても、当面は新中期目標をどう達成するかという大きな課題がございますので、まずそれを解決してからのことだと思います。
  191. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはいわゆる開発援助を行う先進国側の地位に立ちました日本というのは、最初は敗戦国の環境の中から立ち至っておりますので、総体のGNPからすれば御指摘のとおりでございますが、まずは新中期目標に向かって全力を尽くそうというのが政策課題ではなかろうかというふうに心得ております。
  192. 中西珠子

    中西珠子君 新中期目標達成のための御決意のほどを伺いましたが、援助の量的な増大の問題ばかりでなく、質的な改善という面では何か目標なり計画なりをお持ちでいらっしゃいますか。外務大臣、いかがですか。
  193. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはもちろん援助については量も大事ですし、同時に質も大事であります。いまの新中期目標は、とにかく量を増大していこうということに目標を置いてあるわけですが、同時にまたこれは質的なものが背景になければ意味のない援助でございますし、私たちはこれまでの援助を続けておる過程の中でいろいろと失敗といいますか、批判も受けたことがありますが、そういう中で日本の援助というものはだんだんと充実をしてまいった。そして、相手国の政府あるいは国民の非常に高い評価を現在では私たちの援助というものは得るに至っておる、こういうふうに私は存じておりますし、この基本的な姿勢を今後とも貫いていかなければならない。本当に援助する相手の国の国民に心から喜んでいただける、そういう援助に持っていかなければならない、そういうふうに思います。
  194. 中西珠子

    中西珠子君 援助の質と申します場合に、一応国際的な比較の対象とされます要素としては、贈与比率とか借款におけるグラントエレメントとか、また援助の分野それから地域それから技術協力の割合、またいわゆるLLDC、後発開発途上国への援助の割合というものが言われるわけでございますけれども、日本の援助のこういったものに対する特色についてはどのように把握しておいでになりますか。外務省。
  195. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 援助の質につきまして、ただいま御指摘のございました贈与比率でございますが、先進国十七カ国の援助の中で贈与の占める比率の平均は大体四分の三、七五、六%にいっておりますが、日本の場合はまだ四〇%前後、これは御指摘のとおり確かに日本の質はまだその点では見劣りがしていると思います。  それから、先ほど先生御指摘になりました一人当たりの国民の分担額だとか、それからさらに御指摘になりましたグラントエレメント、このグラントエレメントというのは援助の中の贈与性でございますが、いま申し上げましたように、贈与が低いものでございますから、どうしても全体のグラントエレメントも下がってしまう。技術協力につきましても、大体先進国の平均を見ますと、多国間も入れまして全体のODAの二割ぐらいは技術協力に出しているが、日本の場合は一〇%そこそこという点で、確かにそういう面ではまだまだ今後改善の余地が多いと、こういうふうに考えております。
  196. 中西珠子

    中西珠子君 LLDCへの援助の比率はどうでございますか。
  197. 柳健一

    政府委員(柳健一君) LLDCに対する援助の比率は、最近の数字で私が記憶いたしておりますのはたしか一六、七%だったと思います。これは年によってちょっと動いておりますが、ただLLDCも含めました低所得国という概念がございます。つまり、一人当たりの国民所得が、GNPが六百ドル以下の国でございますが、これに対する日本の援助は大体日本の二国間援助の七割近くいっておりますが、最新のデータでございますが、DACの平均が六割弱になっておりまして、そう日本の成績は悪くない、むしろ平均を上回っておる、現状ではそういうふうに考えております。
  198. 中西珠子

    中西珠子君 援助の分野ではいかがですか。
  199. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 援助の分野につきましては、最近この数年でございますが、我が国も、農村、農業開発、あるいは飲料水とかそういうものを含めまして基礎生活援助分野と私どもは呼んでおりますが、医療協力であるとか、エネルギーの開発であるとか、そういう基礎的な生活援助分野の援助を日本は大分近年ふやしております。それから、人づくりの援助も近年非常に力を入れてきております。ただ、日本の援助は従来ともどちらかというと経済インフラの分野が非常に多かったことは事実でございまして、その傾向を徐々に改めながらそういう基礎生活援助分野に力を入れているというのが現状でございます。
  200. 中西珠子

    中西珠子君 教育とか保健とか福祉の分野においても援助をやっていただくように要望したいと思います。  次に、こういった経済協力、経済援助、技術協力というものをやっていく上におきまして、評価という問題が非常に大きな問題であり、また重要な問題と思いますが、評価の体制はどのようになっておりますか、お伺いしたいと思います。外務省、外務大臣、お願いいたします。
  201. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 先生御指摘のように、評価は非常に大事だと思います。それで、実は援助の評価につきましては、かねてからずっと行ってきたわけでございますが、特に昭和五十六年度から外務省の経済協力局の中に経済協力評価委員会というものを設置いたしまして、従来行ってまいりましたいろいろの外務省あるいは各省が援助を実施しております国際協力事業団なり海外経済協力基金といったものの行ってまいりました評価を総合的に把握して、かつ組織的に行っていくという体制をつくったわけでございます。その結果といたしまして、現在私どもがいたしておりますのは四つの形態の評価を行っております。  一つは、外務省が関係省庁及び経済技術協力実施機関、つまり国際協力事業団あるいは海外経済協力基金の協力を得ながら行う。第二番目が、在外公館が現場におりますから実施する。三番目は、民間団体及び民間の有識者に委託して実施するということ。第四番目には、OECFなりJICA自身が行う評価。こういうふうな評価を四つの手段を通じて行っておりますが、先生御案内のとおり、この経済協力の評価と申しますのは相手国側の自助努力の部分まで評価しなきゃならないわけです、両方相まって成立するわけでございますから。したがいまして、そういう意味では日本の国内で会計検査を行うのとはちょっと事情が違いまして、やはり特殊かつ機微な性格を持っているわけでございますので、相手国政府とも十分協議をしながら、相手国政府の協力を得ながら上手に円満に行っていくということに心がけている次第でございます。
  202. 中西珠子

    中西珠子君 経済企画庁の対外経済協力審議会の答申「今後の経済協力の在り方について」というのが五十五年十一月十二日に出ましたが、その中で、援助の効果についての評価方法の改善の必要性指摘されておりますが、この答申も考慮に入れて委員会などをおつくりになり、またその評価の方法についても改善をなすったのかどうかお伺いしたいと思います。外務省と経済企画庁長官にお伺いしたいと思います。
  203. 谷村昭一

    政府委員(谷村昭一君) 援助の効果の評価につきましては、大きく分類してみますと二つあろうかと思います。一つは、個別のプロジェクトがどの程度の効果を発揮しておるかという問題と、そのプロジェクトが相手国経済全体についてどの程度の効果があるかという二つの問題があろうかと思うわけでございます。個別のプロジェクトの援助の効果につきましてはこれは比較的測定可能なわけでございますが、その援助全体が相手国の経済全体にどの程度効果を発揮しておるかということにつきましては、まだいろいろ難しい問題が正直言ってございます。ただし、企画庁といたしましても、この援助の効果が最大限発揮できますように、今の答申の趣旨に沿って現在その手法につきましていろいろ勉強いたしておりまして、五十八年度におきましても、民間の機関、これは経済協力に十分な能力を持っておる機関でございますが、それに委託をいたしまして、個別の国によってもまた非常に違うわけでございますので、数カ国を選んで調査をいたしておりまして、近くその結果が出てくることになっておりますし、五十九年度も引き続いて実施をいたしたいと思っておるわけでございます。
  204. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 援助の効果測定につきましては、ただいまもお話がございましたように、プロジェクト自体がうまくいっているか、相手にどの程度喜ばれているか、両国間の親善関係をどの程度促進したか、いろいろな角度から検討しなきゃなりませんので、関係各省とも十分御相談しながらやっていきたいと思っております。
  205. 中西珠子

    中西珠子君 外務省の評価委員会は、民間に委託もして時々はその評価をなさると伺いましたが、国際協力事業団の評価検討委員会というものは、これは内部だけで国際協力事業団事業に関して評価をなさっているんですか。国際協力事業団総裁、お願いいたします。
  206. 有田圭輔

    参考人有田圭輔君) お答え申し上げます。  主として事業団内部で委員会を設定して検討を行っておりますが、コンサルトをその他外部の人も参加して一部行っている次第でございます。
  207. 中西珠子

    中西珠子君 やはり民間の有識者の参加を得て恒常的な、常設的な評価の機関と体制づくりをお考えいただきたいと思います。  それから、先ほどちょっと申しました対外経済協力審議会の五十五年十一月十二日の答申に、国際機関を通じての援助や協力の推進が必要だということが強調してございますが、外務省は多国間援助、マルチバイプログラムとしてアソシエートエキスパートの予算などをお取りになって、多数の若い人々を国連の諸機関に送り込まれて多大な実績を上げておられますし、その点では大いに敬意を表するわけでございますけれども、一般的に日本のODAは二国間援助が圧倒的に多くて七八・三%を占めておりますし、多国間援助、すなわち国際機関を通じての援助は二一・七%ということで、これはDAC諸国の平均三三・五%よりもかなり下回っております。この二国間援助というものはやはりひもつき援助という批判もまつわりがちでございますので、国際機関を通じた多国間援助というものをもう少しふやすおつもりはありませんか。外務大臣、いかがですか。
  208. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 大臣からお答え申し上げる前に一言、事実関係でございますので申し上げますが、一九八二年度の実績につきましては、先生ただいま御指摘のとおりの多国間と二国間の援助の数字でございますけれども、例えば過去四、五年を振り返ってみますと、大体日本の援助は七対三、つまり二国間が七割、多数国間が三割というのを、まあ年によってどうしてもこれは実績でいろいろでこぼこがございますが、そういう数字で参っておりますし、DACの方の平均も大体そういう数字で参っておりまして、八〇年のごときは日本は多国間が四割になっております。これは年によってでこぼこがございますが、大体七対三の前後を回っております。
  209. 中西珠子

    中西珠子君 多国間援助をふやしていただきたいという要望を申し上げて、次の質問に移ります。  事後の評価の問題はいろいろお伺いいたしましたけれども、援助の対象国の選び方、プロジェクトの決定の仕方というものについてはどのような体制になっておりますか、お伺いしたいと思います。
  210. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 先ほど大臣から答弁されましたように、大きな考え方は南北問題の根底にございますところの相互依存関係、つまり日本とその国との政治的、経済的その他総合的な関係、それから人道的考慮、貧困の度合い、この二つを基準にいたしておりますが、具体的に相手国からの要請プロジェクトの実行可能性でございますとか、開発計画に占める重要性とか、その国の経済状況、GNP一人当たりがどうであるかとか等等、経済財政状況、そういうことを考慮に入れてやっております。  具体的にちょっと申し上げますと、例えば資金協力の例で申し上げますと、一つにはプロジェクトの適格性でございますね。その適格性というのは、例えばプロジェクトの実行可能性ということ、それから相手国の経済開発計画に占める重要性と優先度、あるいはプロジェクトの成熟度でございますね。そういうものを、一つの例でございますが、具体的な資料を先方から取り寄せまして、十分に吟味した上で決めておるわけでございます。
  211. 中西珠子

    中西珠子君 巨大な額の国費を投じてやっていくというプロジェクトもあるわけでございますし、また日本の開発援助はプロジェクト中心主義だとも言われておりまして、そして非常に巨額なプロジェクトもあるわけでございます。それで、その意思決定の過程には、納税者の国民の代表を参加させる必要があるのではないかと思うのですが、例えばデンマークでは百万ドル以上のプロジェクトは国会の承認が要るというふうになっております。日本ではいかがでございますか。
  212. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 毎年各国から、国会で御承認いただくODA予算の総枠をはるかに上回る額の援助要請がございますが、政府は、具体的なプロジェクトにつきまして、それぞれ個別に各国ときめの細かい交渉を行うことによりまして、相手国を納得させながら、予算の範囲内にすべておさまるようにやりくりして決めておるのが現状であります。この場合、例えば大きなプロジェクトに限った場合でも、事前に国会承認を求めることは、何が大きなプロジェクトであるかという定義の問題は片づくとしましても、交渉中でありますと、我が方の手のうちが相手にわかってしまう、こういう都合の悪いことも出てくる可能性もあります。また、交渉が終了した後であれば、修正を受けたり、あるいはまた不承認というようになった場合には相手国の信頼を失うということもあることでございます。そこで、援助は今や一種の国際的な責務となっておるわけでありまして、我が国としましては、タイミングを逸することなく、迅速に援助を実施していく必要があると考えております。こうした観点から、ほとんどすべての先進国におけると同様に、援助につきましては、国会承認というような重い手続によらずに国会に援助予算の大枠を承認をしていただく、そして政府がその中で、外交交渉権の範囲内で具体的なプロジェクトにつき交渉をし決定をするという、従来より行われてきている方法が現実に適しているものと考えておるわけでございます。
  213. 中西珠子

    中西珠子君 いろいろ大きなプロジェクトに関して問題が起きる場合もあるわけでございますから、事前の国会承認ができなくても、事後には巨額なものは報告していただくというふうなことはできないでしょうか。
  214. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 全体の予算の中で、その年その年で我々予算を決定して、そしてプロジェクトに対してこれを実施していくわけでございますし、大きなプロジェクトにつきましては、大体国会の御質疑等を通じまして政府としてもこれをできるだけ明らかにして、そして御理解を求めるようにいたしておるわけであります。
  215. 中西珠子

    中西珠子君 援助の対象国に関連いたしますが、国際協力事業団では、相当数の専門家を海外の技術協力、技術援助などに派遣していらっしゃいますが、ことしの予算におきましても相当派遣人数はふえているわけでございますが、この対象国の選び方はどのようになすっているか、また派遣する専門家の中に婦人がどのくらい含まれているか。過去においての数字で結構でございますが、そのようなお話を承りたいと思います。総裁、お願いいたします。
  216. 有田圭輔

    参考人有田圭輔君) この専門家の派遣対象国をどう選ぶかという御質問でございますが、私どもの専門家の派遣というのは長年継続しております。基本は、相手国政府からいろいろ要請がございます。いろんなプロジェクトもあれば、あるいはプロジェクトでなくて関係省に顧問に来てほしいとかいろいろございます。そういうものを政府の方でも御審査いただきまして、私どもの方に指示がございます。御相談を受けます。そうして選択して派遣しておるわけであります。  私の記憶では毎年、最近では専門家千五百人程度は派遣しております。それからそれ以外に、約三百件の開発調査がございます。これで専門家がやはり四千五百名ぐらいですか、四、五千の専門家が出ております。トータルでは非常な数でございます。その中での婦人の数はどのくらいかというのは、ちょっと私、数字手元に持っておりませんが、これは余り多くありません。しかし、同じような専門家と申しましても、ボランティア活動の方の青年海外協力隊でございますね。この方の婦人の参加率というのはかなり多いわけであります。私の記憶でも、最近の派遣でも百二十名のうちに数十名の婦人が入っておるということでございます。  また、詳細な数字については、もし御要望があれば資料をつくりまして御提出申し上げます。
  217. 中西珠子

    中西珠子君 資料を要望いたします。お願いいたします。  それからやはり国際協力事業団でございますが、研修員の受け入れ事業予算も前年度に比べますとふえているわけでございますけれども、この研修員の選考方法はどのようになすっていらっしゃいますか。
  218. 有田圭輔

    参考人有田圭輔君) 研修員の受け入れも同様でございまして、ただいま五十八年度は集団コースが約百八十五ございます。そのほかに個別でも受け入れております。これは毎年事前に関係各省の方で御相談になり、集団コースにつきましても、一括提示するものは提示する、その後新しく要望が多いということで追加もするということで集団コースを決めております。そこで、かなり事前に相手国政府に対しまして、ことしはどういう分野にどの程度の要望があるかという要望をお伺いして、それを整理して、関係各省と相談します。また、これは関係各省の要望だけでは運営できません。受け入れ機関の方に、これこれの分野のものをこのくらいそれぞれ受け入れてくれるかと、あるいは研究所、あるいは大学、あるいは各企業にお伺いを申し上げて、そして大体の配分を決める。もちろんその配分どおりにいくとは限らず、出入はございます。そういうのが実情でございます。
  219. 中西珠子

    中西珠子君 大体において、その対象国、相手国の政府に任せて、そして在外公館が書類選考をして、それをこちらに送っていらして、こちらの政府の方でお決めになるということらしいんですけれども、書類選考だけでは非常にいろんな問題も起きますので、慎重を期していただきたいと思います。  これにつきまして、女性の割合というものの資料もまた、先ほどの専門家のとあわせて御提出願いたいと思います。どうぞよろしくお願いします。  続きまして、経済援助とか技術協力をやっていく、殊に効果的に継続していくには人材の育成が大変必要だと思うのでございますが、政府はこの点につきましてどのような考え方をお持ちになり、どのような対策を立てていらっしゃいますか。外務省、文部省にお伺いしたい。
  220. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 技術協力に必要な人材の育成につきましては、実は昨年十月に国際協力事業団に国際協力総合研修所というものを設立したわけでございますが、大きく分けますと二つぐらいの重要な仕事があると思うのでございます。  一つは、現在日本の国内で宮なり民なりにおられる方々で、専門家で出ていっていらっしゃる方方、それの派遣前の研修をしたり、あるいは近い将来に海外に出ていただけるような方々の技術訓練の研修をするとか、その他いろいろな制度を持っておりまして、そういう方々の技術の錬磨と申しますか、そういうことをやっておるのが一つと、もう一つは、ライフワークとして、つまり生涯の仕事として国際協力の仕事に従事したいということを考えておられる方々が、例えば協力隊のOBの中にもどんどん出てきておりますので、そういう方々の受け皿となって、そういう方々を、国際協力事業団の先ほど申し上げました研修所で、常時給与を差し上げてそこで錬磨していただいて、かつ海外にも専門家として出ていっていただく。国内に帰ってくればまた海外から受け入れた研修員の先生もやっていただくとかいうように、一生涯国際協力の仕事に従事なさる方々も育成していくということと、両方をただいまやっており、後の方は始めたところでございます。
  221. 中西珠子

    中西珠子君 外務省も遅まきながらお始めになったという感じを受けますけれども、文部省はどうでございますか。
  222. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 成人の再教育の観点から、大学の機能を広く社会に開放するということは極めて意義のあることでございます。文部省といたしましては、こうした観点から種々の施策をとっております。夜間部、通信教育、それから昼夜開議制、特別選抜、公開講座、聴講生、それから研究生の受け入れの推進を指導する、逐年その充実を見ていあところでございますが、なお経済協力や技術協力のために先生から御指摘がございましたような派遣者に対する研修については、派遣機関から協力の要請がございますならば十分検討してみる課題である、このように考えております。
  223. 中西珠子

    中西珠子君 先ほど国際協力事業団の国際協力総合研修所が昨年から発足したお話を承りましたけれども、これと通産省の貿易研修センターとの相違について御説明願いたいと思います。
  224. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 貿易研修センターの方は通産省から御説明申し上げた方がいいと思いますが、国際協力総合研修所は、さっき申し上げましたように政府ベースの援助、つまり技術協力に携わる人材の育成ということが中心の役割になっておりますが、私ども貿易研修センターの方は我が国と外国との経済交流を促進するため、貿易を中心とする国際的な経済活動についてビジネスマン等を対象に研修を実施しているというふうに了解いたしております。
  225. 中西珠子

    中西珠子君 通産省の貿易研修センターにつきまして最近希望者が減っているという話を聞いているんでございますが、現在の研修の状況それからセンターそのものの活動状況について御説明願いたい、それから相違点についても明らかにしていただきたいと思います。
  226. 柴田益男

    政府委員(柴田益男君) 貿易研修センターは、ただいま外務省の柳経済協力局長から御答弁を申し上げたと同様でございまして、その目的とするところは、貿易を中心とする国際経済活動に従事するビジネスマンを対象に、国際経済人としての資質を身につける必要な研修を行うということを目的としておりまして、業務内容も、世界各地の地域研究とかあるいは国際経営、語学研修あるいは外国人研修生との交流等を実施しておりますし、最近時点におきましては欧米のビジネスマンの研修も行っているところでございます。  それから、研修生の最近の推移でございますけれども、国際経済情勢の変転に伴いまして、各コース別の研修生の変化はございますが、トータルとして見ますと、静岡県の富士宮市にあります研修所の収容人員いっぱいということで今研修を行っているところでございまして、コース内容はそのときの要請によりまして変えているところでございます。四十二年に設立いたしまして、現在までの総研修生は約三千六百人でございます。
  227. 中西珠子

    中西珠子君 沖縄国際センターというのができるそうでございますが、それと労働省の行っている職業訓練の分野における海外技術協力の関係についてお伺いしたいと思います。
  228. 宮川知雄

    政府委員(宮川知雄君) 職業訓練を通じます海外技術協力につきましては、労働省といたしましては、従来から外務省、国際協力事業団と十分御相談しながら進めてきているところでございます。  お尋ねの沖縄の国際センターにつきましては、先生御存じのように職業訓練だけではございません。医療保健、あるいは農業、水産、そうした幅広い人づくりのための施設ということでございますが、この施設につきましては、日本語の教育その他基礎的な研修、そういうことが中心になる施設ということのようでございまして、いわば各論的な、例えば職業訓練でまいりますと、当然沖縄所在の公共訓練施設あるいは民間企業にこれを委託するというようなことになろうかと思います。特にASEAN諸国の場合には技術的な水準が高こうございます。要請の水準が高こうございますので、沖縄の公共訓練施設だけでは間に合わないということもございます。当然、本土各地に所在しております公共訓練施設あるいは民間企業を頼むということもございますので、そういうところまで含めまして、センター、特に外務省と十分御相談を進めながら、むだのないように効率よく海外技術協力を進めてまいりたい、かように考えております。
  229. 中西珠子

    中西珠子君 関係各省庁と国際協力事業団の有機的な連携、そうして実効性ある海外技術協力をお願いしたいと思います。  次に、国際協力事業団の海外青年協力隊員新規派遣人員でございますが、これは派遣三年間倍増計画のもとに百五十名増加したということでございますけれども、それで海外青年協力隊として働いた若い人たちが帰国後就職難だという話を聞いておりますが、隊員の身分保障とか帰国後の就職などについて政府はどのような対策をおとりになっておりますか、お伺いしたいと思います。
  230. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 青年海外協力隊員の帰国後の身分の安定は重要な問題でございますので、全般的な施策といたしまして、日本の国内におきます地方ブロックの活動の強化ということ、それからまた特に再就職の難しいような業種の帰国隊員の就職促進のために業種別対策というようなことをやっております。  具体的に、例えば帰国予定隊員につきましては、隊員がまだ海外にいるときから求人情報収集、伝達とか、帰国後の就職希望調査の実施とかというようなこともやりますし、また隊員名簿をつくって関係企業へ配付するとか、いろいろのことをやっております。それから帰国されました後は研修会を実施いたしましたり、あるいは個別相談、進路相談をするとか、あるいは支援団体との連携をとりながら、地方に帰っていただいた後でも就職がうまくいくように工夫するとかいうようなこともやっております。さらにまたもっと前の段階として、現職で参加できるようにということの促進も国家公務員、地方公務員あるいは民間の方々等それぞれにつきまして、そういうものの促進のためのいろいろな方策を講じておるところでございます。
  231. 中西珠子

    中西珠子君 現職派遣につきまして、地方で国家公務員の派遣法のような条例ができておりますか。自治省、お願いいたします。
  232. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 昭和五十八年三月現在で、都道府県につきましては、二十九団体、これが休職条例措置を講じております。それから職務専念義務の免除により派遣をした実績を有します団体が八団体となっておりまして、補助金が少ないのと地方の定員の管理の問題がありまして、十分ではございません。しかし、非常に重要な仕事でございますので、なるべくこの機運を醸成してまいりたいと、このように思っております。
  233. 中西珠子

    中西珠子君 先ほど大蔵大臣にもお願いしたのですが、それは地方で国家公務員に適用する派遣法のようなものをつくる可能性につきまして、これは補助金が少ないという今の自治大臣のお話でございますが、いかがなものでございますか。
  234. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 青年海外協力隊員、これは私が今から二十年ほど前にケネディさんのピースコー、ジャパニーズ・ピースコーというつもりで始めまして、そうしたら、ケネディさんと私の力のアンバランスとでも申しましょうか、こっちは二十人ぐらいで向こうは二千人ぐらい、こういうことになりまして、そのときある種の虚脱感を感じた、これは若き日の思い出でございます。それから今日充実して、どこへ行っても大変愛されております。これが予算ということは、それこそたとえそれが一粒の麦となろうともというようなある種のロマンを持ちながらやってまいりました。その帰国後の就職、特に技術関係の人は向こうへ行っておる間、それだけおくれて帰ってくる、こういうようなことがございましたので、いろんな経緯をたどってきて今日この状態になったわけです。海外へ先生もお出かけいただきますと、必ずといっていいごとく、どこの地域においても、たとえみんなじゃなくても、一人でも訪ねてくれて話を聞くということは非常に楽しいことだと思っております。そういうかかわりから、この予算に対して今日まで自分なりに関係してきたところでございますので、これからも当然これは外務省の方でいろいろお考えいただくことでございますが、財政当局としてもその実態に対応すると。私が大蔵大臣でありましょうとも、なかりましょうとも、そういうものではないかというふうな理解をいたしております。
  235. 中西珠子

    中西珠子君 それではちょっと話題を変えまして、日本はいろいろ諸外国から誤解されている向きもあると思うんですけれども、日本に対する海外の理解を深めるために、海外啓発活動とか人的交流、文化交流というものは非常に重要だと思います。この重要性にかんがみて、五十九年度は一〇・六%のアップで九十五億円の予算が一応入っておるわけでございますけれども、諸外国は、殊に先進国はこういった海外啓発活動、人的交流それから文化交流にどのくらいの予算を使っておりますか、お教えいただきたいと思います。外務省、お願いいたします。
  236. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) お答えいたします。  広報、文化それぞれの制度につきましては、これは文化の概念自体も非常に多岐にわたりまして、また制度自体もその国によって非常に変わっておりますので、例えば政府開発援助のような国際的な一定の基準がないという意味におきまして、なかなか正確な国際比較は困難でございますが、大体の我々が把握しております感じといたしましては、先進国、アメリカ、ヨーロッパの主要国の大体二分の一ないし三分の一ぐらいだろうという推定をしております。
  237. 中西珠子

    中西珠子君 やはり海外啓発活動は重要でございますから、たくさん予算をお使いになって効果的にやっていただきたいと思います。  それから、国外のPRもさることながら、日本は平和国家であり、資源小国でありますし、国民の一人一人がやはり国際協力、国際理解を深めていく必要性があると思うのでございますが、外務省はもっと国内のPRにも力を入れていただきたいと思います。また、文部省と協力して、社会教育の面でもっと成人向けの国際理解、国際協力の必要性国民に浸透させるということができないものでしょうか。
  238. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 御指摘の点、まことにもっともだと存じます。国際協力の必要性についての理解を国内において求めるために、いろいろと私どもテレビとか講演会活動とか、あるいは広報用の刊行物の発行を通じましてやるほか、地方自治体及び民間とも密接に協力しながら、例えば講演会を開いたりなんかしながらいろいろやっておりますが、実は、例えば総理府が五十六年九月に行いました世論調査によりますと、国民の約八〇%が理解をして、これを支持しているというあれが出たことがございます。ただしかし、御案内のとおり、厳しい財政事情のもとでさらに援助を拡充していかなければならないわけでございますから、今後とも一層PRについての努力をいたしたい、こういうふうに考えております。
  239. 中西珠子

    中西珠子君 総理は施政方針演説の中で、国際国家日本のためには大学を国際化しなければいけないとおっしゃいましたが、大学のレベルではもう遅過ぎる、小学校の段階から国際理解、国際協力の必要性というものを教えなければいけないと思うんですが、文部大臣、いかがでしょうか。
  240. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  241. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。
  242. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 学校におきます因際理解教育につきましては、小学校、中学校、高等学校の社会科等におきまして十分に国際理解の精神を養うことについて配慮をいたしております。  時間がございませんので細かく申し上げられませんが、例えば小学六年の社会科では、世界の中の日本人としての自覚を持つように指導をいたしておりますし、道徳におきましては、広く世界の人々に理解と愛惜を持ち、人類の幸福に役立つようになるように、こういうようなことをテーマとして道徳の中でも指導しておるところであります。また、国際協力を進める上で基礎となってまいります外国語の教育につきましても、今回の学習指導要領の改定におきまして、外国語につきましては、聞き、話すという基礎的な能力の育成を一層重視をしたところでございます。このほか、文部省といたしましては、英語教員の研修事業充実を図っておりますし、最近は米英両国から外国人講師を招致をいたします。この人員を倍増いたしておりまして、英語教員の資質の向上、中学校、高等学校の生徒さんに外国人と直接話す機会を提供するようにいろいろと配慮をいたして、効果はかなり上がってきております。また、高校時代に海外との交流生活をできるようにということで、民間団体に補助金を交付いたしたり、学校へ周知を徹底させるように、そうした協力を行っているところでございます。
  243. 中西珠子

    中西珠子君 それではちょっと、文部大臣に教育改革問題でございますが、教育の荒廃というものが叫ばれて久しいのでございますけれども、健全な次の世代の育成には、やはり家庭と地域と学校との有機的な連携というものが必要だと思うわけでございますが、この次におつくりになる臨時教育審議会ですか、いわゆる教育臨調ですね。これに草の根の婦人の声、母親の声というものを代弁できるような女性の代表を入れていただきたいと思うんですが、不可能でございますか。
  244. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 臨時教育審議会につきましては、今、先生から御指摘をいただきましたことはかなり重要な課題でございます。臨調指摘いたしておりますように、追いつき型日本の社会というのはこれである程度終わったんだ、これからはむしろ国際社会の中において日本がどのように世界の役割を果たしていくのか、こういうことを指摘をいたしておるところでございますので、この新しい教育見直しについては、教育の国際化というところをやはり大きくひとつ柱として御審議をいただきたいなと、私といたしましてはそういう希望を持っているところでございます。審議会につきましては、これから慎重に審議委員につきましては検討してまいりたいと思いますが、幅広い分野の方々を広く国民の各階層の中からお願いをしたいというふうに今検討をいたしておるところでございます。  先生から御指摘ございました父母の意見を反映させる、あるいは御婦人の意見を反映させるということはもちろんのことでございますが、どういう方をどういうふうにお選びをするかということについては、ただいまのところはお答えは差し控えさしていただきたい、こう思っておりますが、五十二年の国際婦人年のときの政府の審議会等に対する婦人参加の決定がございますので、その決定につきましては十分留意をして人選をさしていただきたい、こういうふうに考えております。
  245. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 峯山昭範君の関連質疑を許します。峯山君。
  246. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 先日の新聞報道によりますと、アフリカ諸国の飢餓が重大な局面に差しかかっているという報道があります。特に「餓死十万人」というふうな見出しで相当大きく大変な様相になっているようでございますが、外務省としましてはこのアフリカの飢餓の問題をどういうふうに掌握しておられますか、初めにお伺いしたいと思います。
  247. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) アフリカ諸国が最近といいますか、この数年間相当深刻な飢餓に直面しておる、食糧不作に直面をしておるということでございまして、例えばモザンビークでは三年越しの干ばつによりまして推定七万人から十万人の死者が出ていると承知をいたしております。このような被害状況につきましては、実は先月末に我が国を訪問した同国のシサノ外務大臣よりも直接私、話を聞いた次第でございまして、そういうことを踏まえまして、モザンビークに対しましても、同国に対する五十八年度における食糧援助、これは四・六四億円であります。また、初めての食糧増産援助、二億円でございますが、これを実施しましたが、さらに同国の深刻な食糧不足状況にかんがみまして、先月十六日の閣議におきまして五十万ドルの干ばつ緊急援助の実施を決定をし、また本年度におきましても早い段階で同国への食糧援助及び食糧増産援助を実施すべく現在検討をいたしておるわけでございまして、三月十六日の閣議におきましては、さらにこの干ばつ被害により食糧不足に見舞われておるところのアフリカ諸国のうち食糧援助必要量が十万トンを超える五カ国、すなわちモザンビーク、セネガル、エチオピア、ソマリア及びガーナに対して総額二百万ドルの干ばつ緊急援助の実施を決定もいたした次第でございまして、相当アフリカの諸地域が深刻になっているということで、日本としてもそれなりの責任を持ってこれに対する援助を進めていかなければならない、こういうふうに考えて、実施もしておる段階でございます。
  248. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 今月の一日には、パリで国連主催のアフリカの干ばつを救うためのキャンペーンとも言うべき会議が開かれたそうですけれども、日本でもこういうふうな意味のキャンペーンなり国際会議なり、そういうようなものをやった方がいいのじゃないかと思うんですが、この点はどうですか。
  249. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日本もやはりそれなりに食糧援助、その他対策のための援助を続けておるわけでございますが、日本が世界の中で大きな国際的な役割を果たす国になりましたわけでございますから、各国とも呼応しながら、場合によってはまた、日本がイニシアチブをとるということでそうした面についての積極的なキャンペーンといいますか、あるいはまた努力をいたさなければならない、そういうこともまた我々の責任だろうと考えておるわけで、その点についてもひとつ勉強させていただきたいと思います。
  250. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 イラン・イラク戦争でイラクの毒ガス使用を非難する国連安保理事会の議長声明というのが先日発表になりましたけれども、その声明の内容と、それから日本の対応についてお伺いします。
  251. 山田中正

    政府委員山田中正君) お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、安全保障理事会では、事務総長が委嘱いたしました国連の専門家によります調査報告の結果、この中でイラン領内において空中投下爆弾型の化学兵器が使用されたことが確認されたということが出ておるわけでございますが、その調査報告というものを留意いたしまして、この化学兵器の使用というものは一九二五年のいわゆる毒ガス議定書、化学兵器の使用を禁止いたしました議定書の違反であるということに遺憾の意を表明いたしまして、イラン・イラク紛争が早期に解決するよう一層の努力を求めるという内容のものでございます。  それから、我が方の対応ぶりでございますが、我が方はこれに先立ちます二十九日、外務大臣の談話で我が国の基本的立場を表明いたしております。その立場はこの安全保障理事会の議長声明の立場と平仄を一にするものでございます。
  252. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 アメリカは早速この毒ガス製造の原料となる化学物質の輸出を禁止しているように新聞でも報道しておりますが、日本これはどういうふうになっているのか。アメリカはそういう五種類の化学物質を禁止したというふうに報じておりますが、この五種類の化学物質とはどういうものなのかということ、日本はこの物質を製造しているかどうか、それでイラクに輸出しているかどうか。この点もちょっとあわせてお願いします。
  253. 野々内隆

    政府委員(野々内隆君) お答え申し上げます。  まず、米国が輸出規制をしたというふうに伺っております五品目は、弗化カリウム、それからジメチルメチルフォスフォネート、メチルフォスフォニルジフルオライド、オキシ塩化燐及びチオグリコールの五品目というふうに聞いておりますが、詳細は現在照会をいたしております。それで、この五品目のうちで現在日本で生産がされておりますものは、弗化カリウム、それからオキシ塩化燐、チオグリコール、この三品目の生産が確認をされておりますが、残り二品目につきましては今のところ確認いたしておりません。多分生産されていないのじゃないかと思います。  それで、この生産されております三品目のうち輸出実績がございますのが弗化カリウムとチオグリコールでございますが、これは通関統計がもっと広い分類になっておりますので統計上確認はできませんが、この生産いたしております企業へ照会いたしましたところでは、輸出対象国の中にイラン、イラク向けは入っていないと言っておりますが、統計上の確認は現在いたしておりません。  以上でございます。
  254. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 イラン、イラクとも我が国にとりましては大変大事な国であろうと思います。そういうふうな意味で、このイラン・イラク戦争が一日も早く終わっていただきたいと思いますし、停戦、和平への行動というのがこれは非常に大事になってまいりますが、最後に外務大臣のお考えをお伺いして、関連質問を終わりたいと思います。
  255. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) イラン・イラク戦争がもう四年近く続いておるわけでございますし、さらに最近では拡大をする可能性すら出てきたということで、大変これは心配もいたしております。もしそれでホルムズ海峡が閉鎖する、封鎖されるというふうなことになりますれば、第三国の介入ということになって大変な事態に陥るということも憂慮されるわけでございます。そういう中にあって日本は、今お話しのように、イラン、イラクに対して、両国とも非常に関係がいいわけでございますので、私も昨年イラン、イラクも訪問いたしまして、強くこの戦争のエスカレーションの防止を訴えてまいったわけでございます。まあ日本が仲介とか調停とかに立つ、そういう役割はないわけでございますけれども、しかしやはり平和的な環境をつくる、あるいはまた戦争の拡大を防ぐ、そういう意味においては日本は日本なりにできることがあるのじゃないかということで、現在もイラン、イラクそれぞれ政治的なパイプを持ちながら、一生懸命になりまして戦争の拡大防止のために活動をいたしております。それなりの私は、いささかではございますが、成果も上がっておると思っておりまして、今後とも全力を尽くしてまいる考えであります。
  256. 中西珠子

    中西珠子君 三月二十二日だと思いますが、新聞報道、またテレビ放送によりますと、総評と公務員共闘会議、それからPSI、これは国際公務員労連だと思いますが、これが人事院勧告の不完全実施ということについて三月二十一日にILOに提訴したということなんですが、その内容、それから政府の受けとめ方、それから政府のこれからの対応の仕方についてお伺いしたいと思います。総理府総務長官、お願いいたします。
  257. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) お話しの提訴でございます。三月二十一日に五十八年の人事院勧告六・四七%についての実施が不完全であるというふうなことと、もう一つは当事者、政府、使用者側、労働者側の当事者についてのことでございますが、当事者が参加できるようなことはどうかというような話を柱にしまして、総評と公務員共闘両方から提訴がなされたわけでございます。今回の提訴につきましては、政府としてはILOからまだ御連絡いただいておりません。御連絡いただく段階で政府の見解を求められると思います。連絡を受けてから検討をいたしたいと、かように考えておるところでございます。
  258. 中西珠子

    中西珠子君 人事院総裁にお伺いしたいと思うんでございますが、昨年八月の人事院勧告のいわゆる積み残し分、これをどのようになさいますか。ことし八月の人事院勧告に盛り込むおつもりでいらっしゃいますか、お伺いしたいと思います。
  259. 内海倫

    政府委員(内海倫君) お答え申し上げますが、この問題につきましては本委員会でも数回お答えを申し上げておりますが、私どもは、本年のいわゆる給与に関する調査を今実施中でございまして、民間給与と公務員給与の較差というものが恐らくは出てまいると思います。そうしますれば、その較差についての勧告というふうなものが私どもの手によって行われるわけでございますが、恐らく積み残し等の分も、そういうふうな較差の中にあるいは含まれて出てくるであろうと思いますので、そういうふうな形で処置が、少なくとも人事院の勧告という形では処置されることと、こういうふうに思います。
  260. 中西珠子

    中西珠子君 昭和五十七年はいわゆる人勧凍結、人事院勧告が凍結されましたね。それから五十八年度が人事院勧告の不完全実施ということでありますと、人事院の勧告というものは公務員の労働基本権の制約の代償措置であるということでございまして、人事院の勧告制度というものは労働基本権制約の代償機能を果たしているわけでございますね。人事院勧告というものが尊重されないということが続きますと、これはこの代償機能を人事院勧告制度が果たさなくなる、また形骸化してしまうというおそれもあるわけでございます。そして、そればかりでなく、人事院そのもののレーゾンデートルというものも問われるのではないかという事態になっては困ると思うのでございますが、人事院総裁のその点に関しての御所信を承りたいと思います。
  261. 内海倫

    政府委員(内海倫君) 勧告の見送りあるいは抑制に関しまする実情につきましては、ただいま御質問いただきましたとおりでございます。人事院総裁といたしましては、こういうふうなことが今後繰り返されるということは、決してこれはいいことではございません。何よりも望むところは、政府並びに国会におかれまして、今後こういうふうなことの起こらないようにぜひ懸命の努力をしていただく、私どももまたそのために一生懸命しっかりとした勧告をしなければならない、そういうことでございまして、人勧の機能を尊重するがゆえに、これをぜひ政府、国会でもお守りをいただきたい、こういうように思います。
  262. 中西珠子

    中西珠子君 この人事院勧告の尊重ということは、財政状況が非常に厳しいときに難しいことだとは思いますけれども大蔵大臣はこの人事院勧告の尊重ということにつきましてどのようにお考えでいらっしゃいますか。
  263. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 昭和四十五年にこの人事院勧告がいわゆる四月からの完全実施と、こういうことになったわけであります。それまでは、十月実施から毎年九月、八月、七月、六月、五月だけ飛ばして今度は四月ということになったのが昭和四十五年であります。私は、昭和四十六年、内閣官房長官をしておりましたときに、初めて人事院勧告に対して組合関係者の皆様方と話をするときに、一つの定着した慣行になったという、ある種のすがすがしさみたいなものを感じた経験を持っております。しかしながら、その後いろんな経緯を経てああしてたまたま私が前回大蔵大臣をしておりますときからいわゆる凍結、俗に言われる凍結、見送りと、こういうことをしなければならない諸般の情勢に至ったということから、今日に至っておりますので、私どもはやはり当初から今日に至っておるあり方について、最大限尊重して努力をしていくべきものであるという自己認識はしておるつもりであります。
  264. 中西珠子

    中西珠子君 これは日本政府の国際的な公約でもあるわけでございます。と申しますのは、一九五八年、昭和三十三年ですかに、公企体の職員とそれから公務員、地方と国家公務員と両方の結社の自由問題また労働基本権問題の提訴が行われまして、以来ILOの結社の自由委員会に八年間この問題がひっかかっていたわけでございます。そして解決を見なかったために、ILOの結社の自由委員会というのは御承知のとおり国連とILOの合同の委員会の予備審査をするところでございますが、八年間も決着を見なかったために、ILOと国連の合同の委員会の発動ということになりまして、そして日本政府は、ILOと国連の合同の実情調査調停委員会というものにこの問題を付託することに対して承諾を与えられ、そしてこの委員会が日本に来日したわけでございます。承諾を与えられたわけですから内政干渉ではないわけでございますね。これがいわゆるドライヤー委員会でございまして、そしてドライヤー委員会が勧告をしたわけでございますね。そしてその結果、ILO八十七号条約が批准されました。  そして、ドライヤー委員会のしてきたものの中に、国家公務員、地方公務員の労働基本権を制約するならばその代償措置が必要であると。労働基本権の制約は必ずしもその国によって、立法によって制約することは、エッセンシャルな重要な仕事についてはできるんだけれども、その場合は代償措置が必要であるというのが一応国際的な建前でございますね。これに対して日本政府は二十年間、人事院が国家公務員の労働組合権の、労働組合権ばかりでなく団交権、また団体行動権、すなわちスト権制約の代償措置なんだから、その代償措置を人事院勧告がやっているのだから、これを日本政府は尊重しておりますということを、ILOに対しても世界に対しても二十年間おっしゃってきたわけでございます。  ですから、この国際公約というものをやはり守っていただきたいということと、難しい財政状況ではあっても、やはり人事院勧告を守って給与改定をやっていただきませんと、公務員の士気というものにも影響するし、また労使関係にも悪い影響を与えるかもしれないということを恐れますし、また公務員ばかりでなく、恩給生活者それから年金生活者の年金の給付にも影響を与えるし……
  265. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 中西君、時間が参りました。
  266. 中西珠子

    中西珠子君 民間にも影響を与えるということでございますので、この人事院勧告は尊重するというお約束を政府でやっていただきたいと思うんでございますが、いかがでございますか、総理府総務長官。
  267. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) その経過なりについて大蔵大臣からも先生からもお話がございまして、昨年、一昨年の経過はまことに遺憾なことであるということもよく理解しておるわけでございます。そういった意味合いにおきまして、人事院勧告を尊重するという基本的な立場はこれは堅持してまいらなければいけない、かように考えておるところでございます。
  268. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で中西君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  269. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、佐藤三吾君の質疑を行います。  速記をとめて。    〔速記中止〕
  270. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。  佐藤君。
  271. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 労働大臣、一言あっていいんじゃないですか。
  272. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) どうも失礼しました。
  273. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 まず私は、土呂久公害の訴訟の問題についてお尋ねします。  宮崎県高千穂の土呂久砒素公害訴訟が三月二十八日に原告側が全面勝訴しました。この判決の特徴は、鉱業法百九条を適用して無過失連帯賠償責任を問うた判決であります。しかし、住友が翌二十九日に控訴しました。原告二十三名中十三名が死亡する、三名が病気で倒れておる。こういう事件だけに、私は人道上の観点からいってもこのような控訴は認められないというふうに思うんですが、通産大臣、この問題に対する対応をどうなさっていますか。
  274. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) まず、この経緯につきまして政府委員から説明させます。
  275. 石井賢吾

    政府委員(石井賢吾君) 住友金属鉱山は、五十一年に宮崎県知事のあっせんによりまして和解いたしまして、この和解金二億五千万円を支払い、誠意をもって本件に対応してきたというふうに私どもに報告いたしておりますが、今回の判決につきましては三点、法律上及び事実認定上の疑義がございますので、これにつきまして上告審にその解釈を求めたいということで控訴をしたというふうに聞いております。  会社側の説明によりますと、第一は、操業を行っていない同社に対しまして、大正時代からのすべての損害について賠償責任を認めたこと、これが第一でございます。第二は、慢性砒素中毒症の認定要件を広範にとらえていること、これが第二点でございます。第三点は、さきに申し上げました宮崎県知事のあっせんに基づく和解による補償の範囲が極めて限定的に解釈されておること。この三点が主要の疑点として、これを明らかにいたしたいということで控訴をしたというふうに説明を受けております。
  276. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) この訴訟は、鉱業法百九条に基づく公害の賠償訴訟でありまして、国は当事者となっておりません。しかも、これは一審から二審というぐあいで住友金属が控訴した問題でございますし、いわば争訟中の問題でございますので、行政側が今の段階で発言は差し控えたいと存じます。
  277. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 労働大臣、去年の三月二十一日に判決が出ました労災の松尾鉱毒事件についてはどうなっていますか。
  278. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) 土呂久の方でございますか、松尾でございますか、ちょっとはっきり聞き取れなかったんですが。
  279. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 松尾。
  280. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) 松尾鉱山の方でございますか。今、担当の政府委員がいないものですから、私詳細を承知いたしておりませんので、至急問い合わせて御報告させていただきたいと存じます。
  281. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 労働大臣、これは内容を言いますと、やはり砒素なんですよ。労災認定の問題にかかわる事件ですが、この判決は、さっき通産省が答弁したような認定基準を上回って、体全体が事件だと、こういうことで該当するんだということで判決しておる。これは確定しておるんです。
  282. 平賀俊行

    政府委員(平賀俊行君) 先ほど御答弁申し上げましたように、担当の政府委員がおりませんので、至急その資料を調べて御返事申し上げます。
  283. 西村尚治

    委員長西村尚治君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  284. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。
  285. 石井賢吾

    政府委員(石井賢吾君) 日本鉱業松尾鉱山にかかわります労災補償問題でございますが、私ども承知している限りにおきまして、判決に従いまして日本鉱業はこれを解決したというふうに聞いております。
  286. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そうしますと、この百九条というのは通産省はどう理解していますか。
  287. 石井賢吾

    政府委員(石井賢吾君) 百九条は、ただいまの日本鉱業のケースと異なりまして、いわゆる職員等の関係ではございませんで、住民との関係を律する規定でございます。この百九条にかかわります限りにおいて、先生御指摘のように無過失損害賠償責任を規定した規定でございまして、かつ鉱業権の移動が頻繁に行われるであろうという想定のもとに、最終鉱業権者を含めまして無過失損害賠償責任の規定を定めたものというふうに理解いたしております。
  288. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 いや、今、住友が言った三つの条件ですね、そのうちの一つがこのさっきさかのぼっての連帯の問題でしょう。もう一つは、認定基準のオーバーした事件、これは松尾鉱山事件できちっと決着がついておる。ここにかかっておるわけですから、これを通産省としてどう理解しておるんですか。
  289. 石井賢吾

    政府委員(石井賢吾君) 係争中の事件でございますので、行政サイドとしてコメントするのは差し控えたいと思いますが、会社側の百九条との関連における法律上の疑義、先ほど簡単に申し上げたわけでございますが、要するに閉山をしてから鉱業権を取得した、それで鉱業権者になってから何らの操業もしていないということだけではございませんで、昭和十五年に定められました旧鉱業法、ここで初めて無過失損害賠償の規定が設けられたわけでございますが、その以前に発生した損害についてもすべて責任を負われているという点について異議があるというのが会社側の考え方のようでございます。
  290. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 ですから、百九条はそのことを含めて連帯責任のあれを規定しておるんじゃないですか。
  291. 石井賢吾

    政府委員(石井賢吾君) 政府としての最終的な責任ある回答は法制局と協議いたしませんとできませんが、会社側が問題といたしておりますゆえんは、昭和十五年に旧鉱業法で無過失損害賠償責任の条項が設定された、それは不遡及のはずである、それ以前の損害についても損害賠償の資めに応ずる必要があるのだろうかという点を一番大きな問題点としているというふうに聞いております。
  292. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 いや、会社側の弁じゃなくて、国としてこの鉱業法の制定の趣旨は何ですか、それなら。
  293. 石井賢吾

    政府委員(石井賢吾君) 先ほど申し上げましたように大きなポイントは二点でございます。一点は、鉱業権者に鉱業の操業等に伴います損失に対して無過失の損害賠償責任を設定したことが第一。第二は、鉱業権の移動が割合頻繁にあるであろうことを念頭に置いて最終の責任者等を確定した点。この二点であるというふうに理解いたしております。
  294. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そうしますと、くるくる変わっていく鉱業権、ではそれで受けた被害者にとってはたまったものではないということで私は昭和十五年にこの法が制定されたと思うんです。法文を見ると、さかのぼって前の鉱業権の人もいろいろございますが、その分までさかのぼってこれは遡及適用する仕組みになっております。そういう面から見れば当然これは私は判決の方が正しいと、こう思うんですけれども、その点については通産大臣どうですか。
  295. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) これは先ほど申し上げましたとおり、鉱業法百九条によるいわば平たく申し上げれば賠償責任は鉱業権者にあるということによって、住友金属がこの理由をもってさらに控訴したわけでございまして、判決が正しいとか正しくないとかそのような論評は行政側としては避けるべきであり、しかもこれを控訴したということは、争訟中の問題をこれも行政側がとやかく言うべきではないということを先ほど私が申し上げたわけでございます。
  296. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 では角度変えましょう。  これを制定した趣旨は先ほど申し上げた二点ですね、この鉱業法百九条。それに伴って通産省が厳正に監督官庁として指導していくその任務は通産省にあるのかないのか、どうなんですか。
  297. 石井賢吾

    政府委員(石井賢吾君) 百九条そのものの履行に関しまして当事者に疑義があった場合には、最終的には司法判断を仰いで決定さるべきものというふうに理解いたしております。
  298. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 行政官庁の責任を言っておる。
  299. 石井賢吾

    政府委員(石井賢吾君) 百九条に関しましては、これは無過失損害賠償責任を定めたものでございますので、直接的に行政当局とのかかわり合いはないというふうに判断いたしております。
  300. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 ここまで十五年に制定した法の趣旨からいって、やはり鉱毒被害が次々出てくるというそういう情勢を受けて私は立法したと思うんです。そういった法の精神から照らして、私はやっぱり公害が出ないように、人に被害が加わらないように監督指導するのが通産省の立場じゃないかと思うんですが、通産省、この問題についてどういう指導をやってきたのか。
  301. 石井賢吾

    政府委員(石井賢吾君) 鉱業権の施行に伴います公害防止責任は一義的に鉱業権者にあるわけでございますが、この具体的な義務を履行するために規則を制定いたしております。危険防止の措置をとることを鉱業権者に義務づけてあるわけでございますが、これらについて通産省としては指導監督する責めにあるわけでございます。
  302. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そこで大臣、監督指導の責任はあると。それが結果的にはこういう事件を引き起こして、そして今お話のように大正時代からずっと引き続いてこの事件が続いておる。ようやく判決が出た。そしてその判決は最終的に原告は全面勝訴という事態になったわけですが、問題は二十三名の原告のうち十三名が亡くなっておる、三名が今既に病床にある。もし控訴していくと、控訴が終わらないうちにほとんど原告が亡くなってしまうという事態にあるわけです。そういう状況にあることについて、私は人道的な観点からもこの問題について監督指導責任官庁としての通産省が説得をするべきじゃないかと思うんですが、いかがですか。
  303. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 通産省が監督指導していたにもかかわらずこのような事態を招いたということはまことに残念でございます。残念であるけれども、しかし法的な意味でこれを控訴ということをした以上、やはりたびたび申し上げることでございますが、争訟中の問題について、これを行政側が今の段階でいろいろ言うのは不適当なことと存じます。人道上の問題はまた人道上の問題として考えていくべき問題であると私は思います。
  304. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 それでは、もう一つの問題をただしますが、環境庁は、この判決の中で認定基準が四点についてですが範囲を広げて全身に関係すると、こういう判決になっています。これについては松尾鉱毒事件のさっきの判決にありましたようにこれは決着をしました。これを受けての今度の判決でございますが、どういう考え方ですか。
  305. 上田稔

    国務大臣(上田稔君) お答え申し上げます。  環境庁といたしましては慢性症、中毒症につきましてはこれを公害といたしまして、そして今、先生のお話の病像につきまして定めておるのでございますが、これは内外のいろんな知見や、また慢性症、中毒症の専門家の御意見をお聞きをいたしまして、そして決めさせていただいておるのでございますが、これにつきましては常に検討をいたしておりまして、四十九年にも、また五十六年にもただいま先生のお話のとおりの病像につきまして追加をさせていただいておるところでございます。今回また判決が出ましたので、それにつきましてもひとつよく吟味をさせていただきたいと、こういうふうに考えておるところでございます。
  306. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 再検討するんですね。
  307. 上田稔

    国務大臣(上田稔君) よく吟味をさしていただきたいと思っております。
  308. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 ぜひひとつ再検討してもらいたいと思います。  次に自治大臣、知事あっせんをこの事件では行っておるわけですね。それが極めて不十分であるということを判決では指摘しておるんですが、いかがですか。
  309. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 不十分だという判決につきましては、知事さんができるだけ努力をしたものではないかというふうに思っておりますけれども、判決についてとやかく私の方から批判をするということもできません。私としては、ある程度努力をされたのではないか、このように思っております。しかし、先ほど申しましたとおりでございます。
  310. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 いまだに土呂久の河川は汚れて、特に坑内水それから川の砂等については、五十七年の宮崎県の調査を見てもまだ環境基準を超えておる。この対応はどうしているんですか。
  311. 佐竹五六

    政府委員(佐竹五六君) お答えいたします。  御指摘のとおり、五十七年度の公共水域の水質測定調査によりましても、土呂久川におきまして十二検体中五検体について環境基準を上回る値が検出されております。なお、下流の岩戸川では検出されておりません。環境庁といたしましては、この測定結果公表とあわせまして、水質改善を要する地域については所要の調査検討を行って必要な対策を行うよう通達しているところでございます。それを受けまして、ただいま宮崎県では通産省と御相談になって休廃止鉱山に対する対策として所要の検討を行う、かように承知しておるわけでございます。
  312. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 自治省どうですか、自治大臣。
  313. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 御質問の趣旨がちょっとよくわからなかったんですけれども、もう一回。
  314. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 いまだに汚染が続いておるわけです。それで、これに対する宮崎県の調査でもそういう事実を確認しておるわけです。どう対応するのかということです。
  315. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 地方自治体は身近な問題についてはという立場から行政を指導していかなければなりません。自治体から様子を聞いてみませんと、私どもからどうこうということを申し上げるわけにまいりませんので、環境基準が十分でないということであればなるべく十分にやっていただきたいというのが地方の声ではないか、このように思っております。
  316. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 自治省は調べておるんですよ。
  317. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) そうした報告もちょっと私受けておりませんから、後ほどちょっと聞きまして御報告いたします。
  318. 石井賢吾

    政府委員(石井賢吾君) 土呂久鉱山につきましては既に休廃止になっておりますが、この休廃止鉱山の公害防止措置を通産省としてこれまで実施してきたところでございます。昭和四十六年度か五十七年度までにかけまして総額一億三千万円を投じまして、堆積場、沈殿池、洗鉱場等の公害防止工事を実施したわけでございます。  確かに先生のおっしゃるとおり、利水点におきます環境基準をオーバーするときが主に渇水期に生じているということでございます。これは坑内水の廃水基準そのものは、排出基準、廃水基準をクリアいたしておるわけでございますが、渇水期になりますと上流からの水量が減りまして希釈される量が減る。ということになりますと、時によって環境基準を上回る結果になるわけでございます。ところが、この坑内水というのは利水上の重要な水源ということで地域でなっております。そのために本年度、鉱山保安監督局、それから県及び町当局と相談をいたしまして、五十九年度に金属鉱業事業団がこの土呂久鉱山区域内の総合調査を実施することといたしております。これは主として汚染源の負荷量の調査、あるいは利水転換が可能かどうか、あるいは土呂久川上流の伏流水として減少してしまう現象がございますが、こういったものをどうとめ得るかというような総合的な調査を実施いたす予定といたしておりまして、この結果に応じましてまた所要の対応を考えてまいりたいというふうに考えております。
  319. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 官房長官が見えましたからちょっと一言聞きますが、今、土呂久の公害訴訟の問題で質疑があったんですけれども、この問題は住友が控訴をしまして判決に従わないという態度になって今新たな局面を迎えておるんですが、現実に原告二十三名中十三名が死亡するという事態で、控訴中に全員亡くなるんじゃないかと言われておる。これは国が何ら関与すべき問題でないということでは済まされぬと思うんですが、官房長官としての見解をいただきたいと思います。    〔委員長退席、理事初村滝一郎君着席〕
  320. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 犠牲になっておられる方々はとてもお気の毒なことだと心からお見舞いを申し上げたいと存じますが、通産省から御答弁申し上げたと思いますけれども、関係省庁の意見としてお受けとめをいただきたい。政府としては心から御同情申し上げますけれども、そういった政府としては関与する立場ではない、こんなふうに思いますが、そのようにお受けとめをいただきたいと存じます。
  321. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 納得できないな。僕は納得できないね、今の答弁は。
  322. 初村滝一郎

    ○理事(初村滝一郎君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  323. 初村滝一郎

    ○理事(初村滝一郎君) 速記を起こして。
  324. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 何回も申し上げるようでございますが、今も官房長官が言われたとおり、お気の毒なことに対する人道上の問題は人道上の問題といたしまして、法というものがある以上は、やはりこれは控訴するという住友金属側の立場も尊重すべきであると思うのでございます。この控訴した住友金属側に対して行政側がとやこう言うことは私はいかがかと思いますし、またこれもたびたび申し上げることでございますけれども、争訟中の事柄に対して行政側がこれに対して介入し発言を行うことはいかがかと思うのでございます。
  325. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 僕は介入とは言っていないんです。問題は国の方にも責任があるだろう、こういう事態が推移しておることは。そして百九条で法律もきちんとしておる、連帯賠償責任を。そのことに住友が不服を言うなら、行政の側としては、やはりそれにそんなむちゃなことを言うものじゃないですよという立場があってしかるべきじゃないですか。
  326. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) おっしゃるとおり、通産省といたしましてはこれを監督指導する立場であることはおっしゃるとおりでございます。その監督する立場を考えればこれはまことに残念なことであると言わざるを得ないと思うのでございます。しかしこの場合、百九条というものが、先ほど申し上げたとおり平たく申し上げれば、賠償責任というものが鉱業権者にあるということは、この法もまた尊重しなければならないということであるわけであります。
  327. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私はその問題とあわせてさっき言った、もう現実にどんどん亡くなっていっておるという事実、その問題を二つとらえて国の対応はないのかと、こう聞いておるんですよ。
  328. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 会社側がこの判決の内容を不当であるということになれば、通産省としては、不当であり控訴したという立場を尊重せざるを得ないわけでございます。これも繰り返し申し上げるように、通産省が監督指導の立場にあり、その立場ということから考えればまことに残念であると何回も申し上げている次第であります。
  329. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 もう一つないですか。官房長官どうですか。
  330. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 所管庁であります通産省のただいま通産大臣がお答えをしたとおりであるかと、このように考えます。
  331. 石井賢吾

    政府委員(石井賢吾君) 大臣からお答え申し上げましたように、本件は百九条に基づきます鉱業権者の無過失損害賠償責任の規定にかかわります当事者訴訟でございます。その限りにおきまして当事者の法解釈あるいは事実認定にかかわる疑義についてはこれを法廷の場で明らかにしていくということが当事者の責めかと思います。当事者がその道を選択いたしたわけでございますので、行政としてこれに介入することはなかなかできないわけでございますが、私どもとしましては現在被害者に対しまして公害健康被害補償法の第二種地域の指定を行いまして療養給付等の給付金の交付等を行っておるわけでございますが、私どもとしましては、これは金銭だけの問題ではございませんが、できるだけ早くこの控訴審の決着がおりることを期待いたしたいというふうに思う次第でございます。
  332. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私は、二十八日に判決があって翌二十九日に控訴する、これは異例ですよ、こういう問題について。そして通産省は監督官庁としてそれにかかわってきておる。そういう面から見ると、それはもっと何らかの対応があったんじゃないかと私は思うんですよ。それだけに、この問題の解決に当たって通産省の今の態度は私は極めて心外です。もっとやはり人道上の見地からも、監督官庁の責任からいっても問題の決着を急ぐべきだ、そう思うんです。どうですか。
  333. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 決してとやこう言うつもりはございませんけれども、二十八日に判決があって二十九日に控訴したということが異例の早さであるとおっしゃられましても、これは控訴したことは事実でございますから、先ほど申し上げたとおり私の考え方は何回も述べたとおりでございます。
  334. 初村滝一郎

    ○理事(初村滝一郎君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  335. 初村滝一郎

    ○理事(初村滝一郎君) 速記を起こして。
  336. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 判決が出て控訴した経緯があるわけですから、この事態をどうこうするということはなかなか難しいと思うんですが、しかし問題は、やはりこれだけでは幽霊裁判になる公算も多いわけですから、さらに大臣が仲介の労をとって和解への努力をすべきじゃないかと私は思うんですが、いかがですか。
  337. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 大変難しいことだと思いますけれども佐藤委員の御意見は御意見として承っておきます。(「全然話違う」と呼ぶ者あり)
  338. 初村滝一郎

    ○理事(初村滝一郎君) 小此木通商産業大臣
  339. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) もう一言つけ加えまして、佐藤委員の御意見は参考として承っておきます。(「どういう意味だ」と呼ぶ者あり)
  340. 初村滝一郎

    ○理事(初村滝一郎君) 小此木通商産業大臣
  341. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) どうもたびたび御迷惑をかけます。  佐藤委員の御意見を行政上の参考として承っておきます。
  342. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 ぜひひとつお願いしておきます。  問題を変えます。中曽根行革について二、三お尋ねしたいと思います。  中曽根行革が始まって四年たちますが、内閣の看板である行革にもかかわらず、予算編成期には、二万、三万という陳情団が訪れる。そして飲食を含めるとその経費が二兆、三兆円とも言われる。この点についてどうとらえておるのか、行管庁長官と大蔵大臣の見解を聞きたい。
  343. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 御質問の御趣旨は、行政改革の実が上がっていないのじゃないかと、その一つのあらわれとして、相も変わらざる陳情行政じゃないかと、こういう御質疑だと思うんです。  行政改革につきましては、これはもうこの内閣の最重要課題として懸命に取り組んでいるわけですから、前国会もああいう七つの法律案をお願いをし、この国会も八十四件の国会への提出案件中三十件が行革関連の法案なんです。私は、これからが本当の正念場であると、かように考えておりますので、そこらは政府のこれからの努力、誠意、熱意というものをぜひひとつ見守っておいていただきたいと、かように、思います。  ただ、この陳情行政につきましては、これは地方の人あるいは民間の人の政府に対する、あるいは行政に対する熱意のあらわれであると、こういうように御理解をしていただかぬと、本当はあんな陳情なんていうのは要らないと私自身は思いますけれども、これはみんな必死の思いで、何とかこの乏しい財政状況の中でも、おれのところの仕事はこういうふうにしてもらいたいと、こういうことで来ておるんだというふうに御理解をしていただく以外ない、ただ、いいこととは私は思っておりません。
  344. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私の方から申しますならば、今、後藤田長官からお答えがございました後半の方の関係だと思います。相も変わらず田舎から、田舎という言葉はちょっと適切じゃありません。地方からたくさん出てくるではないかと。私もその地方出身でございまして、なるほどそう言われてみれば余り大都市からはお見えになりませんですから、やっぱりそういうふるさとを思う心というものが地方ほど強いのかなと、しみじみとそういう感じを持って今承っておりましたが、好ましいことだとは決して思っておりません。
  345. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 好ましいことではない。自治大臣、この陳情団の七、八割が、さっきも出たように自治体関係者が多いんですね。どういうところに原因があると思っておるのか。
  346. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 私も自治省をお預かりして、随分陳情が多いなという感じを受けました。これは今、後藤田さんおっしゃったように、行革が進められておりますけれども、まだ緒についたばかりでありまして、補助金行政あるいは国の関与とか必置規制とか、そういうような一連の問題がまだ十分行われていない。そういう縦割行政ですね、そういうところがまだ不十分であるというところにあるのではないかと、こういうふうに見ております。
  347. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 自治体関係者が多い一番大きな理由は何ですか。
  348. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 許認可事務とかあるいは補助金の行政とか、そういうようなことがまだまだ残っているというところにあるのではないかなと思います。
  349. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 行管庁長官、私もそうだと思うんです。この点が非常に今度の行革では、国と地方の役割分担を含めてやられていない、どうですか。
  350. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 今、田川さんがおっしゃいましたように、やはり許認可の事務が非常に多い。それから、縦割行政で個別の補助金、これは大変数が多いといったようなことで、そういった陳情行政の一つのこれは原因になっていると率直に言わざるを得ないと思います。そういうようなことでございますから、今回の行政改革ではやはり許認可事務のできる限りの整理をやっていこうと。それから同時に補助金等については、これはせんだっても言いましたように、私は補助金を悪とは思っておりません。しかしながら、余りにも個別の小っちゃな補助金があって、効率性に乏しい、あるいはまたもう既に役割を終わっておるのがただ惰性となつであるとか、非効率なものも多い、こういったようなものはできる限りサンセット方式をやるとか、あるいは統合化をするとかいうようなことで、補助金についてももう少し効率性のあるやり方に改めていこうということで、これも政府としては行革の一つの柱として努力を傾けていきたいと、かように考えておるわけでございます。
  351. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 なかなかしかしこれが進まない。私は、きょうはそういう意味で、建設、厚生、労働、農水、運輸、文部、大蔵、各大臣おいでですから、自分の所管庁でどうしてこれができないのか、その点ひとつお聞きしたいと思います。
  352. 豊蔵一

    政府委員(豊蔵一君) お答えいたします。  まず建設省でございますが、私どもの方の補助金関係につきましては、立ちおくれております社会資本の整備を全国的に推進していくというような立場から、国と地方公共団体が相協力いたしましてその整備を進めていく、そういう立場から各種の補助金等も運用さしていただいているところでございますが、先ほど来第二臨調から御答申をいただきまして、これらの趣旨に沿いまして補助金につきましてもその重点化、効率化を図る、あるいはまた必要でないものにつきましてはできる限りの圧縮を行う等々努力してはきております。しかしながら、また一面、これらの補助金の効用といいますか必要性につきましては、全国的に統一的なやはりレベルをそろえて公共施設を整備していくというような観点から、現在の状況の中でできる限り非合理的なものは合理化するということで臨調の方針に従って順次整理してまいっておるところでございます。
  353. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 農林水産省関係の補助金の合理化問題について御説明申し上げます。  農林水産業は自然条件に左右されやすく、特にまた一年一作でございますし、また我が国の場合には農林水産業の経営の規模が非常に小さい、また収益性も低い、また作目も非常に多様である、また農家自身がそういう状況から見まして投資力に非常に乏しいというような条件がございますので、私ども農林水産行政を的確に進める上におきましては補助金は非常に重要な意味を持っているわけでございます。特に、最近の農林水産業をめぐる厳しい情勢から見まして、農業生産の再編成であるとか、農業構造の改善等を全国的視野に立って進めるとか、また地域間のバランスを保って進めるという意味では補助金は有効な政策手段であると考えております。  しかしながら、補助金につきましては、硬直化の問題あるいは既得権化等の弊害も指摘されておりますし、また財政上も非常に厳しいという点もございまして、臨調からも農林水産業関係の補助金の合理化縮減等につきましていろいろ御指摘を受けておるわけでございます。それを受けまして、私ども五十七年度におきましては、地域の創意と自主性を生かした効果的な補助事業の実施が図られるように、大幅に統合メニュー化を図る等の整理合理化を行ったところでございますし、また五十八年度におきましては、地方公共団体に対する人件補助費等につきまして、臨調答申趣旨を踏まえまして普及事業等につきましては交付金制度というものを導入したわけでございますし、また農地調整職員、土壌保全調査職員等につきましては一般財源化を図った。また、五十九年度におきましても補助金等の大幅な縮減ということを行いますとともに、補助から融資へという格好で補助金につきましても合理化を図っていくという観点から、畜産振興資金供給事業という融資事業を新たに発足させる等、整理合理化を進めているところでございます。今後におきましても、臨調答申趣旨を体しながら補助金の合理化には一周努めてまいりたいと考えております。
  354. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 厚生省関係の行政事務あるいは補助金も同じでございますが、大変国民生活に直接密着したものでございまして、地方からの御要望も大変強いという特殊性がございます。ただ私ども臨調答申趣旨も十分尊重いたしまして、可能なものについてはできるだけ整理する、合理化するということで今までやってきておるつもりでございます。  ちなみに例を申しますと、例えば補助金の整理合理化について申しますと、年々それを行ってきているわけですが、五十九年度では百三十七件について合理化を行っています。整理合理化あるいは統合メニュー化といったもので百三十七件の合理化をやっております。また、許認可、機関委任事務等々も問題になっておりますけれども、機関委任事務で申しますと、御案内のように、さきの臨時国会で成立をいたしました行政事務の簡素合理化及び整理に関する法律、これで厚生省関係で十二本の法律を整理しております。臨調答申では二年間で大体一割を整理しろと、こういうことでございますが、それを上回る数の整理を行っております。ただ、これで十分とは考えておりませんで、今後もできるものにつきましては極力整理合理化を図るということで対処したいと思っております。
  355. 松井和治

    政府委員(松井和治君) お答え申し上げます。  運輸省関係の補助金でございますが、五年前の五十四年度には全体で八十六件の補助金がございました。これを整理目標二十一件という目標を立てまして五十八年までに二十一件の整理を終わったわけでございます。五十九年度予算におきましては、運輸省所管一般会計の補助金の総額を前年度に比べまして六百三十億円削減をいたしたところでございます。なお、五十九年度には補助金の件数は五十八年度と全く同件数でございます。今後とも私どもといたしましては、引き続き各種補助金の見直しに努力をしていきたいというふうに考えております。
  356. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) 労働省関係の補助金ではいわゆる失業対策事業関係の補助金が多いわけでございますが、これにつきましては補助金の一割削減といったことを実施をいたしておりますが、なお残された問題としまして職業訓練関係の補助金につきまして、いわゆる人件費相当分の交付金化といった問題が残っておりますので、これらについては五十九年度にそうした面を実施に移していきたい、五十九年度検討し、その翌年度から実施するように進めていきたいと考えております。
  357. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 文部省関係でございますが、教育につきましては、特に義務教育は市町村が責任を持っております。したがいまして、国といたしましても義務教育の妥当な規模と内容を保障するという意味で各種補助金があるわけでございますが、臨調指摘等の内容に基づきまして、五十九年度につきまして文部省関係全体といたしましては整理いたしましたものが五作、メニュー統合を行いましたものが五件ございます。さらに、全体の臨調指摘事項の一割削減の関係で申しますと、全体で四百二十億円の削減をいたしておるわけでございます。なお、機関委任事務の関係につきましては、法律関係で二本、政令関係で二本の整理をいたしております。さらに、許認可関係につきましては、指摘のございました史跡名勝関係の現状変更の許可に関するものについて、それぞれ個別具体の問題について都道府県の権限に移譲をいたしておるというふうな実情でございます。  以上でございます。
  358. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 今、各省の意見にありますように、それぞれ努力しておると。しかしこれは、ほいとのばくちと同じで、ほいとのばくちというのは、こじきがばくちをするのをほいとのばくちという、金がないから声だけ大きい。これが今の実態だと思うんですね。これはやっぱり行管庁、しっかりしなければならぬと同時に、自治省もしっかりしなければならぬと思うんだけれども、やっぱり地方不信があるんじゃないですか。どうですか。
  359. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 地方不信というよりも、地方の実態をよく把握していないという面が一つあるんじゃないかと思いますね。それからもう一つは、やはり地方自治体自身もみずから努力をしていくという姿勢がいま一つ足りないという、この二つの面ではないかなというふうに私は思っております。
  360. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 行管庁長官にお聞きしておきたいと思うんですが、補助金のメニュー化という、このメニュー化が自治体の側から見ると手続が簡素化されていないんですね。メニュー化になっておるけれども、行ってみると、昔の課をずっと回らなければだめだということだ、手続上は。こういった問題がある。  それからこれは運輸省にも聞いておきたいんですが、運輸省に主として多いのは、自治体が補助金をつければ国が補助金つけるという、何か自治体に補助金を強制しておるようなやり方をやっておる。これらについてはいかがしますか。
  361. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 補助金でメニュー化しても、そういう手続は少しも変わっていなくて厄介な条件をつけているとか、あるいは人件費補助なんかを交付金に改めていただいておるのがあるんですね。これはいいことだと思うんです。ところが、実際の交付金の際の手続は今までと一つも変わらぬといったような苦情が私の耳に入っております。そこらはよくまたそういった個別具体的な問題につきまして各省庁から御説明を承らしていただいて、改むべきところは改めていきたい。ただ私は、補助金全体につきまして、これはやはり先ほど言ったように合理化をしなければなりませんが、これは各省非常に努力をしてやっていただいておるということだけは御理解をしていただきたい。  ただ問題は、補助金はやめましたと、こう言われても、ところが新しい補助金がまた出てきて、そして合計してみるというとまあ要するにネットの減になっていないという面がございますから、行管庁としてはそこらは十分各省から御説明を聞かせていただいて、実質、補助金の合理化になっていないといったような面については各省にひとつ御再考を願いたいというようなことも各省と十分協議をさしていただきたい。ただ、ことしは御案内のように初めてじゃないですか、補助金の総額のネット減。金額も四千三百億の補助金の減を初めて実行したわけでございますので、ここらも政府の取り組みのあらわれであるというふうにぜひひとつ御理解をしていただきたいと、かように思うわけでございます。
  362. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) お答えいたします。  国が何か自治体に対して補助金を出させるようにしているのじゃないかというお話でございますが、そのようなことではございません。典型的なものは地方の鉄道あるいは過疎バスに対する補助金だと思いますが、こういうものについては国も補助をするが、地方団体もシビルミニマムを達成するために補助をするんだということなんでございまして、形式的には一応自治体が出してそれを国が埋める、国がそのうちの半分を出すと、こういう形になっておるのでございまして、両方で出し合うという形になっておるので、こちらが出すからおまえさんの方も出せと、こういう形ではなくて、両方でやろうということにしたのが、形式的には今おっしゃったような形に聞こえるわけでございましょう。さように思っております。
  363. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 自治大臣はこの問題、どうですか。
  364. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 一部に御指摘のようなこともあると思いますが、最近の傾向としてはそういうようなことがだんだんだんだん少なくなってきているのではないかというふうに見ておりますし、またそうさせなければいけないと思っております。
  365. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私は、行管庁長官、自治大臣が答弁したように、これは早急にいかない問題もあります。しかしきちっと目標を定めて計画的にやっていかなければならないものだと思うんです。その点はひとつぜひ今後とも努力願いたい。  そこで、私は臨調答申を見て一番疑問に思うのは、第一次答申と最終答申が逆さまになるような内容の一番典型的なのが地方事務官問題。これは行管庁長官も、先日の宮澤質問に対して私は本意ではないと、こういう答弁をしたんですが、いかがですか、これは。
  366. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) この問題、政府部内あるいは自由民主党との間でも長い間議論があり、また第二臨調の中でもいろんな意見がございました。私個人の意見を今さら申し上げてもこれは何の役にも立ちませんが、政府としては、いろんな論議の末に臨調でああいう御答申があり、しかもその臨調答申を受けて政府としては閣議の決定をして、そして行政改革大綱を決めたわけでございますから、私といたしましては、行管庁長官として、そしてまた国務大臣としてこの線に沿った改革をやっていこうということで、今国会にも三省の分について改正法律案の御審議をお願いをしたいと、かように考えておるわけでございます。
  367. 初村滝一郎

    ○理事(初村滝一郎君) 高杉廸忠君の関連質疑を許します。高杉君。
  368. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 去る三月一日、大阪における一日行革審で、岸大阪府知事は、臨調答申は本質を見誤っている、地方の手の届かない、過度の中央集権を打破し、地方分権こそ臨調の責務であると厳しく批判をしています。地方労働局問題はナンセンスの一言で片づけたと、こう報道をされているわけであります。また、自治大臣の御出身でありますが、神奈川県、御承知のとおりに長洲神奈川県知事も三月の県議会で、労働県として重大であり、国に再検討を申し入れる、こう答弁をしているわけですね。このほか二十を超える都府県が反対もしくは再検討の意見書、要望を提出して、ほとんどの府県が反対の意見表明をしている、こういうふうに聞いているんですが、労働大臣と自治大臣、どのようにお考えになりますか、伺います。
  369. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) ただいま行管長官から御答弁がございましたように、この地方事務官制度論議については長い歴史もあることであり、それからこの調査会自体の中でも非常に議論をせられたことだろうと思っております。しかし、地方事務官の廃止の問題については、いまだに各都道府県の中にももちろん御意見がたくさんございまして、現状の地方事務官制度の方がまだいまだによいという御意見の方もおられますし、事務配分するにしても地方寄りにもっとやった方がよろしいという御意見の方もあって、再検討するようにという声はそれは聞いております。    〔理事初村滝一郎君退席、委員長着席〕  しかし、既に臨時行政調査会の最終答申が出ていまして、私どもも閣議でこれを了承いたしておりますので、その御意見は長い間のやっぱり経過を踏まえて今日も御主張されておるとは思いますけれども、私どもといたしましては、この臨時行政調査会の答申の趣旨に沿って地方事務官を廃止するという、これは政府の方針を貫かなければならぬと思っております。
  370. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 自治省といたしましては、従来から地方事務官についてはこれを地方公務員とすべきであるという方向で努力をしてまいりましたが、お話がありましたようなことでいろいろ論議の結果こういうような臨調の答申になったわけでございまして、このことは率直に申しまして大変残念なことである、このように思っております。しかし、臨調の答申というのは最大限尊重しなければならないというようなことで、今回の関係法案の国会提出に同意をしたわけでございます。自治省といたしましては、地方団体の反対の声ももちろんよく承知しておりますし、終始地方自治体の立場に立って粘り強く調整をしてまいったつもりでございます。今度のこれによって地方行政の場で混乱が起こらないように私ども最大限の努力をしてまいりたい、このように思っております。
  371. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 労働大臣ね、これまで地方の労働行政というのは、職業安定、訓練、雇用保険、失業対策、労働福祉、これらなどは都道府県が地方事務官と一体となって進めてきたところですね。しかも、労働福祉、中小企業振興対策など都道府県の総合的な福祉、産業政策の一環であると言われます。高齢者、身体障害者の雇用対策、これなども重要な役割も果たしてきたところであると考えるのです。これらをなぜ分離しなければならないのか、極めて影響が大きい、こういうふうに考えるのですけれども、これまた労働大臣とあわせて自治大臣からも伺いたいと思うんです。
  372. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) 確かに、今までは身分は国家公務員でも、県庁の中にありましてこれはもう一体になって知事の指揮監督下で、しかし身分は国家公務員であっても、そういう多少の違いはあっても一体になってやってきたことは事実であります。それを今度生木を裂くようにするのはこれはかえってまずいのではないかという御意見にも私どももやっぱり耳を傾けなければならぬところもございましたけれども、しかしどうも臨調の答申が出まして、そしてその臨調の答申を出す前にも臨調の中でもいろいろな御意見があったということも、これは論議を尽くされたということも聞いておりまするので、職業安定行政をやっぱり事務の性格と実態に即して地方と国に配分をしたものだということで、地方事務官制度を廃止するということにしたという結論が出まして、私どもその臨調答申を最大限尊重しなければならず、またそういう国としても方針を決めたということでございます。しかしながら、おっしゃるとおり、廃止に伴って国と地方とのより一層な連携というものはもちろん大切でございまして、これは臨調の答申にもございますけれども、連携の必要性について特に指摘をせられておりまして、政府としても、地方事務官制度の廃止に関する法律において、国の行う職業紹介などと、それからただいま委員のおっしゃるような都道府県の講ずる雇用に関する施策とが相互に密接な関連のもとに連絡、協力していかなければならぬというようなことは、これは当然十分に考慮さるべきことだろうと思って、その円滑な協力、連絡が図られるように全力を挙げてまいりたいと思っております。
  373. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 御指摘のように、労働関係につきましては、特別、国と都道府県の施策が一体となって運営されて効果を上げてまいりましたから、今後とも国と地方の協力関係を維持することができるように配慮をしていかなければならないと思います。特に、雇用対策法に国と地方公共団体とが相互に連絡、協力すべき、こういう規定も設けられることになりました。したがいまして、今後とも雇用対策につきましては国と地方の円滑な協力関係ができますように努力をしてまいるつもりでございます。
  374. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 この際、厚生大臣、今の地方事務官のこと……。
  375. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 臨調の基本答申が、身近な事務は地方へとしておるのは、これは地域の実情を踏まえて処理するのが適当な事務は地方公共団体の事務とすべきであるという趣旨でございまして、臨調の最終答申では、社会保険事業が全国一律の基準で保険料を徴収し、これを全国的にプールして一律に給付を行う国の事業であることにかんがみ、基本答申の三つの視点に照らし、福祉年金関係事務を除いては国の事務とすべきものと判断いたします。
  376. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 今、厚生それから労働、自治各大臣からもお話がございましたが、行管庁長官は、本意は違うけれどもこの場で言うべきじゃないというような意味もございました。これは官房長官、私は臨調答申にも無理があると思う。第一次ではちゃんと、身近なところは身近なところで処理すべきだ、そして今度は最終答申では採決でやる。私はこの問題については再検討すべきだと思うんですが、内閣としてどうこの問題に対応しようとしておるのか、御見解を聞きたい。
  377. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 臨調からそれぞれ答申をちょうだいいたしまして、行政管理庁におきまして年々の行政改革の計画を立てて、それを実行に移してきておるところでございます。  先ほど行管庁長官から御答弁がございましたように、今国会におきましても、着実に行政改革を進めていくためのそれぞれ法案を提出をし、御審議をお願いしておるところでございますし、まだこれからの路線につきましても、従来のいわゆる臨調路線に従いましてその計画を進めてまいりたいと、このように考えておりますので、どうか御理解をいただきたいと存じます。
  378. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 これは私は法案審議の際に大混乱が起こると思いますが、そこら辺はひとつぜひ慎重な対応をしていただきたいということだけつけ加えておきます。  次に移りますが、基準法と指導要綱の関係で、建設省、何か最近建築審議会に基準法の抜本見直しの諮問をしたようですが、どういう内容ですか。
  379. 松谷蒼一郎

    政府委員松谷蒼一郎君) お答え申し上げます。  市街地建築の制度につきまして、三月の下旬でございますが、今後の経済社会の動向に対応して市街地形態がいかにあるべきかということで諮問をしております。
  380. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 その中身はどういうことですか。
  381. 松谷蒼一郎

    政府委員松谷蒼一郎君) 建築基準法の中にはいろいろな建築物に関する形態の制限がございます。例えば建ぺい率の規定でございますとか、あるいは建物の前面道路の幅員による斜線制限でありますとか、あるいは隣地境界線による斜線制限でありますとか、そういったいろいろな形態上の制限がございますが、そういったものが数次の改正によりまして若干複雑化してきております。そういったものをできるだけ現在の社会的な情勢に対応して簡素化あるいは合理化できるような方策があるかどうかというようなことでございます。
  382. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 自治大臣、今全国一千ぐらいの自治体で宅地開発指導要綱をつくっていますね。この問題は基準法の不備からきておるわけです。そのために武蔵野市長は裁判ざたにまでなったですね。この関連で、建築基準法の改正に対する自治省としての対応があってしかるべきじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  383. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) ちょっとその点は私よくわかりませんので、政府委員から説明させます。
  384. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 私の方の消防に関する限りは、建築同意などの関係だけでございますから、これは別に防火上問題がないので、そういたしたわけでございます。
  385. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そうじゃなくて指導要綱の問題です。
  386. 台健

    政府委員(台健君) 御指摘の開発指導要綱は二種類ございまして、二つ中身がございまして、新規に宅地開発を行います場合の行政指導を行います指針としての性格と、それから既成市街地におきましてマンション等を建設する場合に行う行政指導の指針としての性格というふうな内容を持っているのが制定されております。  御指摘のように、現在、五十六年の九月の調査によりますと、全国で千七の指導要綱が定められているわけでございますが、その制定のきっかけと申しますか契機は、人口なり産業の大都市及びその周辺市町村への集中の時期に当たりまして乱開発を防ぐ目的、それから良好な住環境を備えた宅地開発なりマンション建設を確保しようという目的、それから地方財政に急激な負担がかかるのを軽減しようというふうな三つぐらいの目的で制定された要綱を私たちは調査結果、把握しております。
  387. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 今、自治省に私は聞いたんです。建設省が何で答弁したのかわからぬ。できぬのですか。
  388. 田井順之

    政府委員(田井順之君) 自治省といたしましては、建築基準法関係の制度改正等に伴いまして特に指導要綱について特定の指導をしたことはございません。
  389. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 この指導要綱は、日照権を含めて建築基準法の不備を補う意味での要綱じゃないんですか。
  390. 田井順之

    政府委員(田井順之君) 先ほど建設省からもお答えがありましたように、指導要綱の中にはいろんな目的が含まれておりますが、それはそれぞれの自治体が現行法のもとで十分な措置がとれないというような認識のもとに、地域の実情に応じたいわゆる行政指導の基準を定めたものであるということで、自治体それぞれに内容は異なっております。
  391. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 大臣、この問題は今度の建築審議会にかけるんですか。
  392. 松谷蒼一郎

    政府委員松谷蒼一郎君) さきに諮問をいたしました建築審議会の関係につきましては、先ほど申し上げましたように、建築の形態規制でありますとか、あるいは指導上の問題でありますとか、あるいは容積率の問題でありますとか、基本的には建築基準法そのものにかかわる制度についての諮問を考えておりまして、指導要綱につきましてまでその答申を得るようなことは想定はしていないと思うのです。
  393. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 いや、私が聞いておるのは、指導要綱をつくらないでいいような建築基準法の改正を、見直しを考えておるのかどうかということを開いておるわけです。
  394. 松谷蒼一郎

    政府委員松谷蒼一郎君) 建築審議会の御議論の中で、あるいはそういった指導要綱に関連するもの、例えば日影規制でありますとか、そういうようなものに関連してあるいは御議論が及ぶということも想定されますが、基本的には建築基準法にかかわる制度についての諮問をしたものでございます。
  395. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 これは自治大臣、武蔵野裁判で争っているように、法律じゃございませんからああいう事件に発展するわけですね。したがって、私は、建築基準法をせっかく見直すわけだから、これはやっぱり自治省からも、指導要綱で補完しないでいいように、きちっと見直しの中に入れるべきだと思うんですが、いかがですか。
  396. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) よく検討して、相談をしてまいります。
  397. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 次に、消防庁に説きますが、最近の大火で、例えば川治のホテル火災、ニュージャパンの大惨事、これは一体何が原因でこうなったのか。私は建築基準法の問題だと思うんですが、いかがですか。
  398. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 最近、川治プリンスホテルあるいはニュージャパンのホテルで火災がございまして、この際の火災になって大きな被害を出した一つの理由に、避難訓練というのを実施していなかったというのが川治のプリンスホテルの大きい例でありますが、そのほかにも防火管理体制が不備でありましたりいろんなことがございまして、火災発生時の対応が適切にできなかったというのが大きな原因であります。これは消防法の原因として述べられておりますが、建築基準法の関係で見ますと、建築構造に違反があったということが問題にされたということを聞いております。また、ホテル・ニュージャパンの問題につきましては、消防法上は、もう報道で何回もされておりますように、スプリンクラーの問題がございまして、その設備が設置されていなかった。その点で消防法の違反があったということが大きい火災になり多くの被害を出した理由にされております。建築基準法の関係では、防火区画が不備で容易に延焼を拡大してしまったということが問題になったというふうに聞いております。
  399. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私も川治、ニュージャパンを大火の後見たんですが、川治の場合に、防火壁があればあれだけの大量の死亡はなかった。それからニュージャパンも、扉が防火壁できちっとしておった部屋は焼けてないんですよ。そうでないところが焼けておるわけですね。こういうような事例から見て建築基準法と重大なかかわりがある。特にそれは四十九年の改正の際に自民党、民社党共同で修正した、いわゆる遡及義務、ここが削除されたところに今日の原因があると思うんですが、この点は今度の建築基準法の見直しに入れるのか入れないのか、どうなんですか。
  400. 松谷蒼一郎

    政府委員松谷蒼一郎君) お答え申し上げます。  ホテル・ニュージャパンあるいは川治プリンスホテルの火災の原因につきましては、先ほど消防庁の長官から御説明がありましたように、種々の不適格な条項、特に違反防火区画あるいは避難階段等に関する防火区画等の問題があったかというように考えております。  このたびの建築審議会についての諮問につきましては、そういった建築物の単体の規定、すなわち防災関係の規定につきましては諮問をしておりませんで、都市的な形態としての建築物の設置のあり方がいかがであればいいかというような点についての諮問をしたわけでございますので、そういった防災関係につきまして御議論をいただくという予定はございません。
  401. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 建設大臣、今ホテルが問題になっていますが、これは雑居ビル、病院もほとんど遡及がされていない。いつニュージャパンと同じような事例になるかわからない状態にある。私は、せっかく基準法を見直すんですから、この際この問題も一緒に検討してそうして万全を期すべきだと思うんですが、いかがですか。
  402. 水野清

    国務大臣(水野清君) ニュージャパンや川治プリンスホテルの火災の原因その他については、今政府委員からお答え申し上げましたが、防災基準に関する遡及適用条項を当初は建築審議会の答申には織り込んでございましたが、国会の審議においてこの条項が削除されております。しかし、そのかわりに大規模な特殊建築物につきましては、例えばデパートのエスカレーターのようなところとか、あるいは病院とか、そういったところは個別に徹底的な調査をいたしまして行政指導を既にやっております、そして所期の防災目的を達成できる見通しを得ましたために、五十四年三月「建築物防災対策要綱」というのを制定して指導に当たってまいったわけでございます。その間にニュージャパンの火災の発生を見たことはまことに遺憾なことでございますが、これはこの要綱に基づく改修が実施される以前に発生した事件でございまして、防災管理上の不備などの原因と相まって大きな災害となった。いろいろな条件が複合的にそうなったのだと私どもは理解をしておるわけでございます。しかし、防災対策要綱に基づく改修指導についてはおおむね所期の計画に沿って進捗をしてまいりましたが、なお一層各個ごとに指導をしていきたい、消防庁ともよく連絡をとってやっていきたい、かように思っております。
  403. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 見直すのか見直さぬのか、その点はどうなんですか。肝心な点は。
  404. 水野清

    国務大臣(水野清君) 百貨店であるとか大きな病院だとかいうようなものを見直すということは、例えば建築物の構造からいって事実上廃棄せざるを得ないというようなケースが多いわけであります。そこで、今申し上げましたように、いろいろな形で行政指導によってそれを補完をしていく、そのかわり今後改修をするとか、そういった際には建築基準法上の厳しい規定を適用して運用していく、さように考えているわけでございます。
  405. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 問題は、大臣、私が言うのは、消防法はちゃんと改正になったんです。建築基準法だけ同じ趣旨のものが落とされたわけです。この事件はそこから起こっておるわけです。ですから、私は指導要綱では弱いと思う。この際見直すべきだと思う。いかがですか。
  406. 松谷蒼一郎

    政府委員松谷蒼一郎君) お答え申し上げます。  既存の建築物に対して建築基準法の改正されました規定を遡及適用するということは、建物全体の構造を改めるというような場合がございます。それに対しまして消防法の関係につきましては、スプリンクラーでありますとか、警報装置でありますとか、一般的には消防用の設備を建物、すなわち古い建物に設置をするということでございますので、相対的に申し上げますと、既存建築物への遡及の中身は建築基準法の方が非常に厳しゅうございまして、またこれを一律に適用することが非常に難しい。そこで、これらにつきましては、個々の建築物につきまして防災上のいろいろな観点から十分検討をして、主に行政的な指導をしていく方が妥当ではないかということで、ただいま申し上げましたようないろいろな既存不適格建築物に対する防災指導の改修を実施しているところであります。また、その効果も非常にあらわれておりまして、現在のところ、私どもが考えております防災改修の目標に対しての改修率は九五%を上回るというような状況でございます。
  407. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 何が九五%ですか。
  408. 松谷蒼一郎

    政府委員松谷蒼一郎君) お答え申し上げます。  全体の要改修建築戸数のうち改修をされました建築物でございます。
  409. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 もしそれが事実なら、大臣、もう改修するのはわずかに五%と、こういうことになるわけです。私はそう見ていないけれども。もしそういうことなら、私はなおさらのことこの際ひとつ見直しの中に入れるべきだということをぜひ要請しておきたいと思います。  時間がありませんから次に移ります。  通産大臣、テクノポリスが地方で非常に花盛りになっているんですが、現状はいかがですか。
  410. 石井賢吾

    政府委員(石井賢吾君) 昨年の十一月に十四の地域から、いわゆるテクノポリス法に基づきます開発計画の承認申請がございまして、これに対しまして二月十日に、これら計画につきまして四省庁の検討結果としまして、ある一定の課題をこなしてからでなければ承認できないということで課題をお出ししたわけでございますが、課題に対応してまいりました九地域につきまして三月二十四日にテクノポリス計画の承認をいたしたところでございます。
  411. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 大臣、十四地区で今後の事業とか、それから雇用とか、そういう見通しはどういう見通しですか。
  412. 石井賢吾

    政府委員(石井賢吾君) 十四地域全体で、最終的な共通目標となりますのは、工業出荷額を六十五年度までにいかに引き上げてまいるかという問題でございます。これにつきましては、五十五年から六十五年までのそれぞれの工業出荷額の伸びをそれぞれの地域ごとに設定をしてもらったわけでございます。かつ、この工業出荷額の伸び率を、一つは先端技術産業の導入企業によって達成する部分と、それから地域企業、既に地域に立地しております企業の高度技術の利用化によりまして達成する部分と、この二つによってそれぞれの計画をつくっていただいたわけでございます。
  413. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 その見通しの数字を言ってください。
  414. 石井賢吾

    政府委員(石井賢吾君) 合計で申しますと、現在十四地域では九兆六千億の出荷ベースでございますが、これは現在と申しますのは五十五年でございます。六十五年にこれを十九兆四千億にまで引き上げたいというのが十四地域の計画となっております。
  415. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 確信がありますか。
  416. 石井賢吾

    政府委員(石井賢吾君) ただいま申し上げましたように、二つの部分、要するに現在立地しております企業の発展部分と、導入企業による依存部分と、この二つでございまして、大ざっぱに申しますと、地域企業の構成比の方が圧倒的に高いわけでございますので、現在、産、官、学の連携体制を各地域によってとっておりますが、これらを活用してまいれば地域企業の発展も期待できますし、同時に先端加工技術産業の地方展開も現に動いておる段階でございますので、それらによりまして私どもは何とかこの実現に期待をかけておるところでございます。
  417. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私は、このテクノを思うと二十年前の新産都を思い出すんです。この新産都がちょうど今と同じように、新産都、新産都と、こう言った。ところが、結果は一体どうなっておるか。これはひとつ国土庁長官ですか、自治大臣ですか、新産都の現状をひとつ報告いただきたいと思うんです。  私の調査では、六四%はまあ土地が売り上げできたと、こういうけれども、しかしあとは草ぼうぼうという実態でしょう。しかもそこにテクノは来ないんです。テクノは別の地域なんです。こういう状態で、自治体の財政負担の最たるものになっておる。そういうことがテクノにもまた再来するんじゃないか、こういうふうに心配するんですけれども、ここら辺についてはひとつ自治大臣、それから通産大臣、さらに国土庁長官
  418. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 時間が来ましたので簡潔に願います。
  419. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 締めくくりとして、官房長官のひとつ考え方を聞いておきたいと思います。
  420. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 新産都市など御指摘のような問題もあると思うんです。やはり中央から押しつけぎみなところに問題が出てくるのではないか。地方の自主性、特殊性ですね、そういうものを重視してやらなければいけない。新産都市などの経験を踏まえてテクノポリスについては地方の自主性、特殊性を十分生かしつつ、また関係省庁とともども地方を指導してまいるつもりでございます。
  421. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村佐近四郎君) 新産都市の問題については、ただ国土の均衡ある、九州から北海道まで全くバランスをとって指定をしたわけです。その間において極端にいいというのは大分であるとか岡山、これは地方の経済の活性化、雇用、こういった関係に大変役立っております。ただ、一部よくないところ、名前を挙げてはいかぬと思うがこれは本当の一部です。そういう意味から八五%までは成功しております。そういう意味からテクノの張りつけの場合もこういった教訓を生かしながら、各地域的にやっぱり国土の均衡ある発展と、こういった形からこういった教訓を生かしつつ張りつけがされておりますから、これは私は地方時代に備えて大変大きく役立っていくものであると、こういうふうに考えております。
  422. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) テクノポリス構想は、新産都市構想のように基礎産業中心の工業開発と違うわけでございます。いわば地域の主体的、自主的な開発計画というものを基本といたしておるわけでございまして、そこに先端技術を導入し、新しい技術の集積地域として行うものでございまして、新たな大きな公共投資というようなことを想定していないわけでございます。くどいようでございますが、地域の自主的な、また主体的な開発意欲、これを尊重して進めていくということで御理解願いたいと思います。
  423. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) それぞれ大臣からお答えをしたとおりでございます。問題はやっぱり国政のメニューを押しつけるということではなしに、だれが主人公であるか、主人公は地方である。それに対して国政がお手伝いをしていくというぐらいのつもりで地方の盛り上がる意欲に国政が対応していくということが大事かと思うのでございます。通産省を中心にいたしまして、それぞれの省庁とよく連絡をとり合いまして、看板倒れにならないように政府として対応してまいりたい、このように存じております。
  424. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 時間がございませんので、せっかくおいでいただいたのですが質問できませんので、また次の機会によろしくお願いいたします。(拍手)
  425. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で佐藤君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  426. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、下田京子君の一般質疑を行います。下田君。
  427. 下田京子

    下田京子君 運輸大臣にお尋ねしたいのですが、疑惑が疑惑を呼んでおります福島交通社長の小針氏によります東北新幹線駅用地、また周辺用地の買い占め問題でお尋ねしたいと思います。  まず、新白河駅の場所が決まるまでの経過、御説明ください。
  428. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) 本件に関しましては、この工事の施工の認可を私どもの方でいたしておるわけですが、実際上は国有鉄道の方でこれをやっておりまするので、国鉄の方から答えさしていただきます。
  429. 仁杉巖

    説明員(仁杉巖君) 新白河駅でございますが、昭和四十六年一月十八日に、これは東北新幹線全体でございますが、これの基本計画が決まりまして、その後鉄道建設審議会の議を経まして昭和四十六年四月一日に運輸大臣による整備計画の決定並びに同日付で国鉄に建設の指示を受けております。そこで、国鉄が調査をいたしておりますが、それはルートの選定に必要な調査、停車場調査、それから設備計画、車両計画、建設費、工事工程というようなことでございますが、これらを総合いたしまして昭和四十六年十月二日に工事実施計画の認可申請を運輸大臣にいたしておりまして、四十六年十月十四日に運輸大臣による認可をちょうだいいたしました。この時点において新白河の駅が正式に決定したということでございます。
  430. 下田京子

    下田京子君 ちょっと確認。四十六年十月十二日に実施計画認可申請が出ているんじゃないでしょうか。
  431. 仁杉巖

    説明員(仁杉巖君) 失礼しました。  十月十二日でございます。それで、認可が十月十四日でございます。
  432. 下田京子

    下田京子君 四十六年の十月十二日に、国鉄は新白河駅の場所、それからルートを含めた工事実施計画を運輸大臣に認可申請を出した。旧鉄内部でもってこの新白河駅の場所が内定したのはいつでございましょうか。
  433. 仁杉巖

    説明員(仁杉巖君) 古いことでございますのでよくわかりません。これは線路によっていろいろの経過がございますが、私どもが関係した線の中では、前日に決めだというような例もございますし、一週間とか十日前に決めだというような例もございますが、この件につきましては、古いことで、調査をした結果ではよくわかりません。
  434. 下田京子

    下田京子君 古いと言いますけれども、まだ東北新幹線ができ上がっていないんです、全部。ぜひお調べください。
  435. 仁杉巖

    説明員(仁杉巖君) 承知いたしました。
  436. 下田京子

    下田京子君 ところで、国鉄にお尋ねいたしますけれども、場所を選定する際に、用地が確保しやすいかどうかということも一つ大きな原因になるかと思うんですけれども、いかがですか。
  437. 岡田宏

    説明員(岡田宏君) お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、ルートを選定いたしますときには、特に市街地周辺を走りますときには、市街地のいわゆる公共用地でございますとか、あるいはもろもろの公共施設、道路との関係、それから支障物の有無、そういったことを考えてルートの選定をいたすのが一般的でございます。
  438. 下田京子

    下田京子君 質問に答えていないみたいなんだけれども、用地を買収しやすいところも一つ要件に入るでしょう、どうなのかと聞いているんです。
  439. 岡田宏

    説明員(岡田宏君) お説のとおりでございます。
  440. 下田京子

    下田京子君 ところで国鉄さんは、小針社長が西郷村の土地買収工作を春ごろから開始して、駅の位置決定する二週間前に、九月二十九日ですが、正式に売買契約を交わしているんですけれども、こういう小針氏の動きというものは承知していたと思うんですが、いかがです。
  441. 岡田宏

    説明員(岡田宏君) 承知していなかったと承知いたしております。
  442. 下田京子

    下田京子君 知らないというのもちょっと変なんですね。とにかく契約書もございます。お配りいたしました資料をごらんいただきたいと思うんですけれども、実に小針社長の土地買い占めの実態というもの、調べまして驚くばかりでございます。登記簿なんかでいろいろと調べてみましたが、新白河駅が建設された西郷村で、実に私の調査によりますと二万六千七十五平米、うち駅の位置が正式決定前に約八千平米買われている。決定後も次々に買いまして、白河市分で二万七千三百十八平米、合わせて約五万平米買い占めております。運輸大臣、先般、同僚議員が質問をされましたときに、こうした実態について調査されるというふうに約束されていると思うんですが、調査されましたか。
  443. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) 本件に関しましては、鉄道監督局長並びに国有鉄道の方で調査をするように命じてございますが、まだその報告を受けておらない状況でございます。調査をいたしておる段階でございます。
  444. 下田京子

    下田京子君 調査の段階だと言いつつ、先ほど古いことで何せ忘れたなどという御答弁があった。これは大変けしからぬ話だと思います。  次に、さらに重大な事実が判明したんですけれども、西郷村で小針氏が買い占めた土地が実は国鉄に所有権が移っているんですね。登記簿にはっきり示されております。資料をごらんいただきたいと思います。約六千平米です。つまり、小針氏の買い占めた土地に新幹線の新白河駅が建設されたということになるわけなんです。そうですね。
  445. 岡田宏

    説明員(岡田宏君) 先生御指摘の六千三百平米余につきましては、御指摘のとおり、結果としてそのようになっております。
  446. 下田京子

    下田京子君 まあ結果としてそういうことだと、偶然のようなお話ですが、そういうふうにも言えない大変問題があるように思うんです。  運輸大臣、これらの事実ですね、小針氏があらかじめ知っていなかったらどうだったか。恐らく事前に知っていたことによって買うことが可能になったんではないだろうか。つまり、先ほど駅をつくる際の一つの条件になりました、用地が取得しやすいというふうなことにも相なってこういう結果になったのではないかと思うんです。
  447. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) どうも確かな証拠を持っておるわけではございませんから断定的に物を申し上げることはいかがかと思うのでございますが、大体この辺に線路がつくだろう、この辺に駅ができるだろうという思惑で土地を買い占めるということは、これはもう往々にして、単に白河や東北新幹線だけではなくてあちこちにあって、大変残念なことだと思っておるわけでございます。
  448. 下田京子

    下田京子君 つまり、事前に知って土地転がしというふうなことで価格がつり上げられるというケース、残念だというお話がありましたが、新白河駅の敷地用地のうち福島交通から取得した約六千平米、千九百坪ですか、土地交換ということになっているんです。登記簿謄本を見ていただけばわかりますが、どこの土地と交換したんでしょうか。
  449. 岡田宏

    説明員(岡田宏君) お答えいたします。  宇都宮の国鉄用地と交換をいたしております。
  450. 下田京子

    下田京子君 ところで、この宇都宮の土地なんですが、宇都宮新幹線駅前なんですね。交換地がわずか六十八坪しかありません。これと新白河駅用地約千九百坪という交換ですね。余りにもふつり合いではないかと思うんです。これが等価交換というふうに言えるんですか。
  451. 岡田宏

    説明員(岡田宏君) お答えいたします。  福島交通から交換受けをいたしました土地の面積が六千三百三十八・八六平米でございます。宇都宮の駅前で国鉄用地を渡しました土地が二百一十三・九一平米でございます。この面積に差がございますのは、白河の土地の単価と宇都宮の土地の単価の差でございまして、すなわち白河の土地、福島交通から譲り受けました白河の土地の単価に比べまして、福島交通にお渡しをしました宇都宮の土地の単価が非常に高いということからこのような面積差が生じているものでございます。また、これに伴いまして若干の交換をいたしておりまして、結果的には交換受けをした資産価額と交換渡しをした資産価額は等価ということになっております。
  452. 下田京子

    下田京子君 面積が、小針氏が受け取った交換の土地というのは、実に国鉄から交換してもらった三十分の一ですから、逆にいうと、今言われたその土地単価というのが三十倍だと、こういうふうに相なるのではないかと思うんですね。  それでお聞きしたいのですけれども、土地の評価がこうなりますと大変重要なポイントになります。だれが土地の評価を行ったのか。また、坪当たりの評価額は幾らなんでしょうか。
  453. 岡田宏

    説明員(岡田宏君) 土地の単価の方からお答えを申し上げますが、新白河の方で福島交通から受けました土地の単価は、一平方メートル当たり二万四千二百円でございます。宇都宮で福島交通に譲り渡しました土地の単価は、六十九万六千円という評価をいたしております。これらの評価につきましては、不動産鑑定士から鑑定評価を取り、受け地、渡し地ともそういったことで決定をしたものでございます。
  454. 下田京子

    下田京子君 今、それぞれどのぐらいになっていますか。
  455. 岡田宏

    説明員(岡田宏君) ただいまの時点での単価ははっきりいたしませんけれども、一説によりますと、宇都宮の単価につきましては百万を超えているぐらいの単価は出ているという報道もございますが、私どもの方で確認をいたしておりません。
  456. 下田京子

    下田京子君 公示価格との関係がどうなっているかということも含めまして、交換契約等も含めたやっぱり全容を私、知らしていただきたいと思うんです。
  457. 岡田宏

    説明員(岡田宏君) 買収した時点におきます鑑定評価の面におきまして、公示価格をいろいろ参考にいたしておりますが、公示価格から比準をいたしました価格は、この譲渡いたしました鑑定の価格とほぼ同額でございます。
  458. 下田京子

    下田京子君 交換契約書を後で当委員会にお出しいただきたいと思います。
  459. 岡田宏

    説明員(岡田宏君) 提出させていただきます。
  460. 下田京子

    下田京子君 今の交換先のあれなんですが、等価だということで今お話にありましたけれども、事実、百万円を超えているようですね。また、新たな開発計画も組み込まれている。ところがまた驚きましたことに、そうして国鉄から交換していただいた福島交通のこの土地が、実は片仮名の株式会社フクコーというところに変わっております。同じ小針さんが社長をやられているところでございます。つまり、自分の会社の中で土地を転がしていって、そして地価をつり上げていくというふうなこともございます。その辺も含めまして御調査をいただきたいと思います。
  461. 岡田宏

    説明員(岡田宏君) 調査をさせていただきます。
  462. 下田京子

    下田京子君 ところで、国鉄の幹部であります資材局長さんが、四十六年四月一日に鉄健公団に天下り、四十九年三月三十一日におやめになって、その四月一日に福島交通株式会社に就任されているというふうな事実、御承知だと思いますが、こういう筋からは駅予定地が知り得ることもあるのではないかと思うんですが、いかがですか。
  463. 岡田宏

    説明員(岡田宏君) 今、先生の御指摘の事実につきましては、私どもの方として調査をいたしておりませんので、調査をいたしまして後刻御報告申し上げます。調査をいたしておりませんというのは、その資材局長が鉄建公団にというお話がございましたけれども、その点についてちょっと承知をいたしておりませんので、その点について。
  464. 下田京子

    下田京子君 事実だから、だからそういう推測が成り立つのではないか。
  465. 岡田宏

    説明員(岡田宏君) いや、仮に、資材局長とおっしゃいましたけれども、資材局長をしていた者が鉄道建設公団に行き、鉄道建設公団から福島交通にOBとして入社をしていたといたしましても、そういうルートを通じて今のようなお話の情報が漏れるということはあり得ないことであるというふうに考えております。
  466. 下田京子

    下田京子君 あり得ないということですが、また聞きたいのですけれども、駅の位置を最終的に決定する際に、運輸大臣に、国鉄の内部ではどのような部門を通って、どういう手続を通りまして最終的に大臣に承認を求めるのか。
  467. 岡田宏

    説明員(岡田宏君) 国鉄の中では、理事会を開きまして、理事会の決定に基づきまして運輸大臣に認可の申請をいたします。
  468. 下田京子

    下田京子君 運輸大臣、自民党の交通部会や鉄道建設審議会からもいろいろと意見を聞いてお決めになるんではないかなと思うんですが、運輸大臣も承認するに当たっては与党の意見なんかもいろいろお聞きするでしょうし、国鉄の側もまた与党に説明して相談もするでしょうし、こういう形で決まっていくのだと思うんですが、どうですか。
  469. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) 駅の場所をどこに決めるかというようなことについて相談はいたしません。全体として認可をする際に鉄道建設審議会にこれはかけるということでございます。
  470. 下田京子

    下田京子君 鉄建審はかけなかったらお話になりませんし、自民党の交通部会にもかけないんですか。
  471. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) 交通部会には、これは相談をして決めるというような性格のものではございませんので、決まった後で交通部会に報告するようなことはございます。あらかじめどこにするかというような点については、むしろ技術的、経済的、いろんな角度から決まるものでございまして、政党等の中で相談をして決めるというものではございません。これはもう確実にさようでございます。
  472. 下田京子

    下田京子君 果たしてそうでしょうか。当時、運輸部会長をされていたのが現運輸大臣なんですよね。すると、相談ありましたか。
  473. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) その当時、私、交通部会長をしておりましたかどうかちょっと記憶が薄れておりますが、駅の場所を現実にどこにするかということについて、私は特別の相談を受けたことはございません。
  474. 下田京子

    下田京子君 細田現運輸大臣は、四十四年から四十六年まで自民党の交通部会長をされていましてね。  法務省刑事局長にお尋ねしたいんですけれども、仮に、運輸省関係者が新幹線ルートや位置の情報を事前に漏らせば、これは公務員秘密漏えい罪が成立するのではないかなと思うんです。また、国鉄職員が漏らしたとなるとどうなりますでしょう。
  475. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 国家公務員でございましたら、今、委員指摘のとおりでございますが、国鉄の役職員につきましては国家公務員法の適用が排除されておりますので、公務員法違反の秘密漏泄罪は成立いたさないと思います。
  476. 下田京子

    下田京子君 もし国鉄職員が漏らした場合にはどうなるかということで御答弁。
  477. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 罰則の規定の適用はございませんので、あとは国鉄内部の問題かと思います。
  478. 下田京子

    下田京子君 外務大臣にお尋ねいたしますが、あなたは福島交通株式会社より、この新幹線の駅決定をめぐる四十六年のみに正式に届け出られた政治資金がございます。額は少ないわけですが、七十万円小針氏より受け取っておりますけれども、この年だけなぜ正式にこうした献金を受けられたのか。
  479. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) その当時のことを全然覚えておりませんし、それは正式に出ていればそのとおりだろうと思います。
  480. 下田京子

    下田京子君 正式に出ていたのですが、どういう関係からだったか覚えていませんか。
  481. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 全く覚えておりません。正当な政治献金ということですから、これまでのつき合いで、していただいたと思っております。
  482. 下田京子

    下田京子君 おつき合いでいただいたということですから、おつき合いがあったからということはわかりました。  官房長官にお聞きしたいんですけれども、中曽根総理は先般我が党の瀬崎衆議院議員の質問に答えまして、防衛庁長官時代にこの小針社長と知り合って、福島交通から会費をいただいたと発言しておりますけれども、この防衛庁長官時代というのはいつごろでしょうか。
  483. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 小針氏との関係はどういうことであったか私知りませんが、今お尋ねの防衛庁長官に在任をいたしましたのは第三次佐藤内閣、昭和四十五年一月十四日に就任をいたしまして、四十六年七月五日に終わっております。
  484. 下田京子

    下田京子君 運輸大臣にお聞きしたいんですが、先ほど政治家というのはそういうところに関係しないんだと、こういうことだったんですが、当時の新聞を調べてみました。これは四十六年九月二十二日の福島民報なんですけれども、新幹線「白河停車が確定 月末の鉄道審で本決まり」、こういうことになっておりまして、これによりますと、二十一日、自民党首脳から、今月末に開かれる鉄建審にかけると、もう亡くなりましたが漢代議士を通じて伝えてきた、こういうことを言っておられますが、そのときの自民党首脳ということになると、だれでしょう。
  485. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) 私にはわかりません。  それから、先ほど申し上げたことと今の御質問とは矛盾があるようにお考えかもしれませんが、白河に駅をつくるというようなことが鉄道建設審議会の委員の方に早くわかったかどうかということは、これはそういう意味で政治家が関与しておる、政治家が与党、野党ともに委員の中に入っておりますから、これはわかること似十分あり得ると思います。ただ、私が言うのは、この駅がどの辺にできるかということについては、白河の駅が現在の駅のところにできるとか、あるいはどこか離れた場所へできるとか、そういうようなことについては相談にあずかるものではないということを申し上げたわけでございまして、駅の名前がどことどこの名前が挙げられるかということについては、鉄建審の委員の方、あるいは鉄建審が開かれる前に御存じになるということは十分あり得る、かように思っております。
  486. 下田京子

    下田京子君 いずれにいたしましても、福島県で三つの駅ができるかどうかということで、最終的に政治力が動いたということを新聞が報道しているわけです。その新聞社の社長でもあります小針氏がみずから報道もされているということ、これはわかりました。  国税庁にお尋ねしたいんですけれども、福島交通不動産の使途不明金ですね、これは五十二年から五十八年の七年間で五十億円、それ以外に四十七年から五十一年の五年間で三十億円あるというふうなことが、特に五十四年の税務調査で明らかになったとしていますけれども、この三十億円の使途不明金のその行き先について明らかにすべきだと思うんですが、御調査されましたか。
  487. 岸田俊輔

    政府委員(岸田俊輔君) 私ども、使途不明金につきましてはできるだけ解明するための努力を続けているわけでございますけれども、通常私ども税務署は任意調査でございまして、なかなか解明に至らないのが現状でございまして、そこで残りましたのが使途不明金でございますので、その先を確認するわけにはいかないと思います。
  488. 下田京子

    下田京子君 報道によりますと、五十四年のこの税務調査は任意調査でないと言われておりますが。
  489. 岸田俊輔

    政府委員(岸田俊輔君) 私どもの調査は、基本的には質問検査権に基づいて調査をいたすわけでございますけれども、通常の場合、納税者の協力を得ながら内容を解明していかなければならないために任意調査でやっているわけでございまして、この調査も恐らく通常の任意調査で行ったと思います。
  490. 下田京子

    下田京子君 刑事局長にお尋ねしたいんですけれども、これも報道によりますと、東京国税局は、四十六年の東北新幹線ルートの公表直前に福島交通不動産が新幹線新白河駅周辺の土地を買い占めた、ルートや駅の設定場所の情報収集のために政治家に金を配った、このため四十七年決算期に使途不明金を初めて計上することになったんだ、ところが途中で追及をやめてしまったと、こう言っているわけなんですが、刑事局長、もし小針氏が新白河駅の設定に関する情報を得た謝礼に政治家に使途不明金の一部を使っていたとすれば、刑法百九十八条あるいは百九十七条の贈収賄罪が成立する疑いがあると思うんですが、どうでしょう。
  491. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) お答えいたします。  具体的な事実関係が明らかでございませんので、いかなる犯罪が成立するかどうかについては断定的なお答えはいたしかねる次第でございます。(「一般論だよ」と呼ぶ者あり)
  492. 下田京子

    下田京子君 今、一般論というお話がありましたが、まさにそういうことで、情報を得た謝礼に政治家に渡したとした場合の一般論。
  493. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 改めて申し上げるまでもございませんが、収賄罪の場合いろいろな要件がございますので、その場合にも、その政治家と称される方の職務権限、あるいはその職務に関する金であるということが明確で、その職務とその金品との対価性と申しますか、報酬性と申しますか、そういう性質、いろいろの点が確定されて認定されれば贈収賄罪の成立ということが考えられます。ただし、贈収賄罪の時効は普通の場合五年でございます。
  494. 下田京子

    下田京子君 時効なんて開いていませんでしょう。  国税庁、お聞きしますけれども、今のようにいろいろある。しかし、いずれにしても一般的に贈収賄罪が成立するような疑いもあるわけですから、単に国税庁の使途不明金の解明は脱税というようなものだけじゃないんですね。さっき任意調査だということをおっしゃいましたけれども、農民や商人が任意、任意といって強制にも値するような形で自殺者まで出しているようなことをやっていて、やるべきことをやらないというのはおかしいです。これはちゃんと調べるべきです。
  495. 岸田俊輔

    政府委員(岸田俊輔君) 御指摘のように、使途不明金につきましては、我々も今後とも最大限の努力を続けて解明したいと思っております。
  496. 下田京子

    下田京子君 当然です。ぜひ解明してください。  次に、当面する外交問題でお尋ねしますけれども、まず農産物交渉について。本日、お昼ですか、山村農相が訪米いたしましたけれども、決着の見通しがついて訪米したんでしょうか。
  497. 塚田実

    政府委員(塚田実君) お答えいたします。  山村農林水産大臣は、お話しのように、きょうのお昼、渡米いたしました。アメリカ時間で、あす、あさってと、ブロック通商代表と協議いたすことになっております。  そこで、今後の見通してございますけれども、山村大臣のお気持ちでは、米側が弾力的になるかどうか具体的なものはないけれども、私が行くことによってアメリカの譲歩を引き出せるという考え方から渡米するというふうに言われております。私ども事務当局としても、今後の交渉の見通しとしてはなかなか厳しいものがあるというふうに考えております。
  498. 下田京子

    下田京子君 農相はかねてより、訪米は最終決着段階でたと言っていたにもかかわらず、どういうことで行かれましたか。
  499. 塚田実

    政府委員(塚田実君) お答えいたします。  まず、現在の牛肉、かんきつに関する協定は三月三十一日をもって切れておりまして、協定が空白状態になっていることであります。このように空白状態をこのまま放置することは適当でないというふうに考えておりますし、また第二は、協定があること自体がアメリカ国内におきます保護主義の台頭を抑止する力、抑止力となって働いているというようなこと、このようなことなどを総合的に勘案して、大臣としては、自分が行くことによって米側の譲歩を引き出したい、このように考えているところであります。
  500. 下田京子

    下田京子君 米側の譲歩を引き出すために渡米したということですけれども、外務大臣、今、農相が訪米する意味はどういうふうにとらえられておりますか。
  501. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日米農産物協定が三月三十一日に切れるわけで、それまで事務当局間で話を続けて、何とか新しい協定を結ぼうということで努力を重ねたのですが、大きな開きがあってなかなか縮まらない。そういうことで期限も切れる。そこで最後の段階として山村農林水産大臣が行かれたわけでございますが、今説明がありましたように、我々としても、何とかトップ同士の、責任者同士の交渉によって決着することを望んでおりますけれども、しかしいろいろ情報を総合しますと、アメリカの態度も非常に厳しいものがあります。日本もまた譲れない一線というものもあるわけでございまして、前途は必ずしも楽観は許さない。しかし、これから山村農水大臣とブロックUSTR代表と何回か折衝に折衝を重ねて、その結果、我々としては何とか打開の道が生まれることを期待をいたしておるわけであります。
  502. 下田京子

    下田京子君 お互いに譲歩ということでございますけれども、今までかねてより委員会なんかでも御質問してまいりましたし、そういう中で明らかになっているのは、農水省当局も農水大臣ももうこれ以上の輸入自由化、枠拡大というのは日本農業にとって危機きわまりない、大変な危険な状態だと、こういうことを言っておりました。安倍外務大臣は、訪米した際に、一月、はっきりと自由化、枠拡大はできないんだと、そういう主張をされてこられたんでしょうか。
  503. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私は、アメリカに対しては自由化は絶対日本としては応ずることができない、どんなことがあっても応ずることができない。ただ、日米間のこの安定した状況、さらにこれからの友好関係を考え、あるいはまた農産物のいわゆる貿易というものの将来を考えれば、それはやはり話し合いによって解決をしなければならぬかもしれない。しかし、アメリカがそれにはある程度譲歩といいますか弾力性を持ってこれに臨んでもらわないと、今のアメリカの主張ではちょっとなかなか話にはならないということをアメリカ側には言って、アメリカに主として弾力性を求めたわけでございます。しかし、その後の状況を見ると、アメリカの方もなかなか弾力的な気配が見えない。今回も私からもシュルツ国務長官に対して、大局的な立場に立ってアメリカの弾力的な立場を強く求めておるわけでございますが、今度の交渉というのは、そういう意味では非常に重要な交渉になる、まさに真剣勝負だと言ってもいいんじゃないかと思うわけでございまして、そういう中で日本の立場というものを山村農水大臣も十分踏まえておられるわけでありますから、そういう中での交渉が続いて、そうして全体的に煮詰まって決着するということを望んでおるわけです。
  504. 下田京子

    下田京子君 日米農産物交渉には過去の歴史があるんです。東京ラウンドのときに、今は亡くなりました当時の中川農相とストラウス会談がやられて、詰めてくるんだと言ったんですけれども、結局日本が譲歩したんです。ですから、今回も農業団体は、農相訪米に対して遺憾の意を表していることは御承知だと思うんです。  官房長官にお尋ねしたいのですけれども、前に立木議員が総理に聞きました。選挙公約で、本当に日本の農業を守り、ガット提訴も恐れず長期的にやると、こうおっしゃっているんですが、その決意は変わらないと思いますけれども
  505. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 三月いっぱいで従来の枠組みの日限が切れておりまして、何とか年度内に決着をつけたいと。こういうことで日本の農業の問題について一番心配もし責任を持っております農林水産省が会談に臨んで事務協議を積み上げる、日本の農業の発展に不利益にならないようにアメリカと交渉する、こういう基本姿勢で従来も会談を進めてきたところでございます。御存じのとおり、佐野経済局長とスミス代表との間での協議では決着に至りませんでしたが、あと日限も切れましたし、これを解決をするためには山村農林水産大臣の訪米以外にない、アメリカの方からもシュルツ・安倍間で、あるいはブロック・大河原大使間で山村農林水産大臣の訪米を歓迎をすると、そういうふうな感触も出てまいりましたので、日本の農業を守るということを常に念頭に置いて交渉に臨むと、この基本的な考え方は変わっておりませんが、ぜひ決着に導くように努力をしたいと、こういう決意に燃えて農林水産大臣が訪米をいたしたところでございます。従来申し上げてまいりました路線とは変わっておりません。決意は同じでございますけれども、今日の時点でぜひ大臣の訪米をと、こう考えまして、きょう出発をいたした次第でございます。
  506. 下田京子

    下田京子君 努力をしたけれどもだめだったということにならないように強く要請します。  それから、外務大臣にお尋ねしますけれども、三月三十日、日本の貨物船「輝潮丸」がニカラグアのコリント港で機雷に触れ損傷、乗組員が負傷したという報道がありますけれども、この事故の詳細を御報告くださいませんか。
  507. 堂ノ脇光朗

    政府委員(堂ノ脇光朗君) お答えいたします。  三月三十日、日本郵船がチャーターしております「輝潮丸」が、午後八時ごろでございますが、ニカラグアのコリント港に入港しておりまして、接岸に向かう航路上で突然爆発によると思われます振動を受けました。これによりまして乗組員二人が軽傷を負ったということでございます。ただ、船体そのものにはそれほど大きな被害はなかったという報告を受けております。
  508. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 内藤功君の関連質疑を許します。内藤君。
  509. 内藤功

    内藤功君 その同じ場所で他国の船舶も同様の事故に遭っていると思いますが、その状況をあわせて御報告願いたい。
  510. 堂ノ脇光朗

    政府委員(堂ノ脇光朗君) 類似の事件といたしましては、三月の初め以来、例えばオランダのしゅんせつ船、それからパナマの貨物船、それからソ連のタンカー、それからリベリアのタンカーと、これらがニカラグアのコリント港またはサンディーノ港におきまして被害に遭ったというふうに伝えられております。それぞれの事故の詳細につきましては私ども余り承知しておりません。
  511. 内藤功

    内藤功君 この機雷敷設は、ニカラグアの前の独裁政権であるソモサ軍の残党、いわゆるFDNがやったと報道されております。機雷による商業港の封鎖というのは、人道上も国際法上も許すべからざる行為だと思うんです。政府は、この事故発生以後どういうふうに対応されてこられましたか。
  512. 堂ノ脇光朗

    政府委員(堂ノ脇光朗君) ただいまの先生の御指摘のございました機雷の設置は、反政府勢力のFDNとおっしゃいましたけれども、我々が得ております諸情報から見ますと、民主革命同盟という団体がございまして、これもニカラグアの反政府団体でございますが、この団体が機雷敷設の声明を行ったというふうに聞いておりまして、私どもはこの情報が入りますと同時に、運輸省側にこれを伝えまして、そして本邦の海運会社に対してこれを知らしてほしいということを申し上げまして、また運輸省側からは日本船主協会を通じて本邦の各船会社にその旨通報しているというふうに聞いております。そういうような事前の措置のほかに、またその後入ってまいりました情報につきましても外務省から運輸省に知らせるということをやっておりますし、また今回の事件に際しましては、直ちに在ニカラグア大使館の職員がコリント港に赴きまして、船長から事情聴取をするということを行っております。
  513. 内藤功

    内藤功君 私はレーガン政権の責任は重大だと思うのですね。すなわちワインバーガー国防長官は、去年の三月にニカラグアの反政府勢力にあらゆるレベルの軍事援助を与えていると言明しております。アメリカの雑誌「タイム」も去年の三月二十八日号で軍事援助をやっているということを報道しております。またレーガン政権は、昨年七月以降にニカラグアの海上封鎖を検討すると言っております。最近では上院の承認を得て二千百万ドルの援助予算を組んでいる。私は明らかに背後にレーガン政権があると思います。今回の機雷事故について米政府の責任をどう考えるか、この点、外務大臣にお伺いしたいと思います。
  514. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) この反革命といいますか、革命団体の背後に米国政府があるかどうか、一般的に言われておることもありますけれども、しかし我々が確認しているわけではありません。しかし、この触雷事故と米国政府との関係というものを今ここで我々憶測をする段階じゃないと思います。かつてソ連のやはり船舶が触雷をしたということでアメリカ政府の責任を求めて、アメリカ政府から明確にそうした責任はない、またそういうアメリカ政府が責任を負わなければならない事実はないということではっきり否定をいたしておるわけでございますし、ただ単なるこういうことでアメリカ政府の責任をとやかく言うという段階では私はないと、こういうふうに思います。
  515. 内藤功

    内藤功君 私は、背後に、アメリカのレーガン政権の責任は免れないと思います。よくお調べをいただきたいと思います。  次に、イラン政府が我が国にC1輸送機と三次元レーダーの輸出を非公式に打診をしてきた。C1と三次元レーダーというのはどんな性能を持ち、我が自衛隊ではどんなふうに運用しておるか、これをお伺いしたい。
  516. 木下博生

    政府委員(木下博生君) C1輸送機は、昭和四十年代初めから防衛庁が開発いたしまして、中型輸送機としてジェットエンジンをつけた輸送機として今運用しているものでございまして、防衛庁に現在二十九機ございます。それから三次元レーダーにつきましては、方位と距離とそれから高さ、この三つを一度に探知することができるレーダーでございまして、四十年代中ごろから防衛庁で装備しているものでございます。
  517. 内藤功

    内藤功君 C1の運用の仕方、これが落ちています。
  518. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) お答え申し上げます。  ただいま御指摘のC1の運用の形態は、航空自衛隊に輸送航空隊というのがございまして、そういうものに大体配備しておりまして、航空輸送の業務に使っておるというものでございます。
  519. 内藤功

    内藤功君 輸送機は空挺部隊を降下させるためにも使うし、ジープやりゅう弾砲を送るためにも使う。第三次元レーダーはさっきお話しのように飛行機の目標を捕捉するために使うわけであります。自衛隊が現に戦闘用として使っているものですね。また、イランの方はイラクとの全面戦争体制下でもう軍事目的に使う以外にこの意図はあり得ないんです。ですから、これは私は紛争当事国への武器輸出になる。武器輸出三原則に基づいて直ちにはっきりとこれは拒否する、こういう問題だと思うんですが、けさの外務大臣の答弁、ちょっと歯切れが悪かったので、通産大臣、外務大臣のこの点の明快な御答弁を求めたいと思います。
  520. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ちょっと私の今答弁が問題になっていますのでお答えいたしますが、今、確かにイランからおっしゃるような件についての非公式な打診があることは事実です。しかし、これが正式な要請というようなことでもないわけですから、我々は正式な要請があった段階において、日本の立場ははっきりしておりますから、それを踏まえて対処すればいいのじゃないかと、こういうふうに思っておるわけてあります。正式なまだあれがないわけですから、そういう申請があった段階で、これは各省庁それぞれ関係もある案件でありますし、それはそれなりに日本の立場というのがありますから、それを踏まえてきちっとすればいいのじゃないかと、こういうふうに申し上げた次第であります。
  521. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 通産省に対しましても非公式にこの輸出の可能性について打診があったことは事実でございますが、しかしまだ非公式な輸出の可能性の打診であって、輸出申請とかそのような具体的な段階になったら慎重に検討すると、このような回答もしているわけでございますから、私はそれでよろしいと思います。
  522. 内藤功

    内藤功君 はっきり拒否すべきだとなぜここで言えないのかということです。その場合は拒否すべきだと、拒否するということがはっきり言えないんですかね。その点だけなんです。
  523. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 通産省幹部にそのような非公式な打診があったわけでございまして、通産省大幹部たる私にまだ打診があったわけじゃございませんので、したがいましてそのような回答をいたしたというわけでございます。
  524. 下田京子

    下田京子君 次に、四十人学級問題でお尋ねしますが、総理が国民的合意を図りつつ教育改革を進める、こういうふうにいつもおっしゃっております。とすれば、もうはっきりしているのは四十人学級なんですね。文部大臣、六十年から全市町村で四十人学級、ちゃんと実施しますね。
  525. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 四十人学級を決めます定数改善計画につきましては、六十六年までの十二年計画につきましての計画変更はいたしておりません。最終の目標到達年度も変更いたしておりません。したがいまして、今後そうした多くの要望、またこれまでの経緯を踏まえまして、できる限り具体的に進められるように最大限努力してまいりたいと、こう思っております。
  526. 下田京子

    下田京子君 具体的に最大限努力するということですが、あいまいです。  文部大臣、昭和五十五年、第四回自由民主党の夏季全国研修会の中で、四十人学級について講演されているんです。再度御紹介くださいませ。
  527. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) ちょうど当時、私が自民党の文教部会長をいたしておりまして、党員の夏季研修で講演をいたした件であろうと思いますが、その当時、四十人学級を大変苦労いたしまして予算化をいたしましたことを思い出して、党員の皆さんにいろいろ申し上げました。ここにいらっしゃいます竹下当時の大蔵大臣にも大変いろんな意味での御指導もいただきながら、大変その当時のことを思いながら感慨無量でございます。その内容を全部話をしろといいましても、これは大変な量でございます。
  528. 下田京子

    下田京子君 四十人学級だけ。
  529. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) とにかく個人一人一人の能力を開発していくためには四十人学級がいいか悪いかということ、絶対のものであるかどうかということは別といたしましても、各国の先進諸国の例を見ながら、四十人学級にこの際我が党としては踏み切ったわけですというような経緯を党員の皆さんに御披露を申し上げたと、そういうところが御紹介できるところではないかと思っております。
  530. 下田京子

    下田京子君 財政の厳しいときに何で四十人学級かという声もあるんだけれども、教育の投資効果というのは何十年も先にならなければわからないんだと、だから踏み切ったんですと答えているのです。ちょうど今、同じようなときじゃないでしょうか。大臣、当時と態度が変わったんですか。
  531. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 当時と今の財政状況とは若干違いますが、当時はやはり財政当局や、あるいは我が党の中にもいろいろと四十人につきましてのやはり賛成意見、反対意見と、いろいろ議論がございました。我が党は、そうした議論を党の政調の部会の中で議論を交わしながら具体的に政策を進めていくというそういう政党でもございまして、私は党の皆さんにお願いをいたしますときに、今、下田さんから御指摘をいただきましたようなことを、財政が厳しくても勇気を持って財政負担をかけないで何とかやっていこうではないか、そのためにいろいろと知恵を使っていこうではないか。そういう意味で、先ほども申し上げましたが、竹下当時の大蔵大臣からもいろいろとお知恵を拝借をして、十二年計画というのはちょっとこう夢のような計画でございましたが、まあそれもまた教育にかけるロマンのようなものだな、こんなふうに当時、党の皆さんや、あるいは財政当局との合意を見て進めたわけであります。私は、当時は党のそういう政策を進める立場でございました。今は政府の部内にいる一国務大臣といたしまして、何とかしてこの財政状況の中でも、当初申し上げましたように、この計画の中で何としても進めていきたい、この気持ちは何ら変わっておりません。
  532. 下田京子

    下田京子君 気持ちは変わっていないということですから、これはもうおやりいただくということだと思うんですけれども、この四十人学級問題、いつごろから出ていたか、御存じでしょう。
  533. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 当時のことでございますので、事務当局から経緯を説明させます。
  534. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) 昭和二十二年ごろからこの話はございまして、いろんな経過をたどりながら、具体的に法律の形でできたのは今回の十二カ年計画による改定でございます。
  535. 下田京子

    下田京子君 その昭和二十二年に教育局長より地方長官に通達が出されていると思うんですが、その覚書の文書でどう言っておりますか。
  536. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) 御指摘の覚書がありまして、文部大臣と当時、全日本教員組合協議会という組合との間に団体協約が結ばれたわけでございます。その中に「一学級の収容人員は四十名以内とする」という覚書が交わされたわけでございます。この覚書は、昭和二十三年政令第二百一号によりこの団体協約、覚書は無効ということで、無効の措置がとられているわけでございます。
  537. 下田京子

    下田京子君 いずれにしても、「民主的な教育の確立並に労働条件の維持改善のための不可欠の要件」だということを、大臣、この覚書で述べているんです。もう戦後四十年近くにもなっているのに延び延びになっているのがこの四十人学級なんです。やらないとは言っていないわけですから、来年からやるとおっしゃってください。
  538. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 臨調指摘等もございますし、また行革関連法案の三年間の抑制期間というものもございます。先ほどからたびたび申し上げておりますように、全体的な到達年度計画については変更いたしておりませんし、また私自身も党の部会長時代にこの四十人学級の政策に踏み切った責任を持つものでもございますので、意欲は全く喪失しているわけではございません。ただ、明年度の予算編成に際しまして、この夏には概算要求の取りまとめをいたさなければなりません。そのときに当たりまして四十人学級をどのようにこの配置計画の中で進めていくか、このことを協議していかなければなりませんので、ただいまの時点では具体的にどのようにするかということについては答弁を申し上げることは差し控えたいと、こう思います。
  539. 下田京子

    下田京子君 先ほどとかなり答弁後退ですね。六十年度に全市町村で四十人学級するのに財源は幾らあればいいですか。
  540. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) 十二カ年計画でございますので、その十二カ年で目標を達成するということでございます。したがいまして、各年度は年度ごと予算で決まるわけでございます。その内容は具体的に政令で決めていくわけでございます。したがいまして、来年度以降どういう形で定数改善をしていくかということは、来年度の児童生徒数の状況がどうであるかという把握を前提にして考えていかなければならないわけでございます。そういう意味で、五十九年の五月一日現在における児童生徒数がどういうふうになるかということの掌握を始めまして、来年度の予算要求の時点までにその内容を固めていくということになりますので、具体的な人数それから経費をこの段階で申し上げることができないのでございます。
  541. 下田京子

    下田京子君 特例法が解除になって、仮に六十年から実施した際の計算は可能だと思います。四千四百人でどうなりますか。
  542. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) これも、教職員定数は全体の四十人学級の改善分、それから配置率の改善、自然減というトータルの数字で教職員全体の総数が決まるわけでございます。したがいまして、その部分だけを抜き出して計算しても余り意味がございませんので、余り意味のない数字をこの席で申し上げることは差し控えたいと思います。
  543. 下田京子

    下田京子君 言ってくださいと言っているのに、意味がない、こっちは意味があるから言ってくださいと言ってるんですよ。何言ってるんですか。意味がないなんというのはおかしいじゃない、こっちは意味あるから言ってるのに。それはおかしいですよ。意味があるかないかは、それは考え方の違いじゃないか、とんでもないです、これは、意味がないなんて。
  544. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) 四千四百人の単価で計算すれば、およそ百二十一億程度でございます。しかし、これはあくまでその分の定数の経費でありまして、教職員全体の総数というのは自然減少もありますし、その他もろもろの要因が重なり合って総合的に何ぼになるかという計算をもとにして国庫負担金の人件費をはじくわけでございますから、そういう意味でその部分だけを申し上げても意味がないと、こういうことを申し上げたわけでございます。
  545. 下田京子

    下田京子君 その自然減も含めまして、第五次計画で総理が言う四十人学級もその他の部分も仮にやったとして、私の試算で百三十四億円です。P3C一機分なんです。こういうことで子供を犠牲にしないように。大蔵大臣
  546. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まだ概算要求も出ておりませんので、その段階で検討をいたします。
  547. 下田京子

    下田京子君 さっき文部大臣も言いましたけれども、つまり臨調答申というのは何を言っているかというと、財政再建ができるまでやらないと言っているんですよ。とんでもないことなんです。本当に子供の立場に立った教育をやるというのか、どちらなのか。六十六年までやればいいということじゃないんです。今の子供に責任を持つのも、文部大臣、あなたの責任じゃないですか。
  548. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 教育の諸条件を整えるということは各方面にわたって行われるべきでございまして、そのことだけを取り上げて、大臣としての責任をとらないというのは、いささか私も納得がいかないところでございます。たびたび申し上げておりますが、確かに今の時点では犠牲になるのかもしれませんけれども、しかし全体的な計画を何とかして、下田さん、あなたが要望されると同じように、私自身もこの問題は何としても解決をしたい、こう願ってこれからも努力していきたい、こう申し上げているところでございます。
  549. 下田京子

    下田京子君 安上がり教育を目指す臨調答申と、本当に子供に行き届いた教育を保障するか、どっちなんだということが今迫られているんです。  次に、私学助成の問題ですけれども、これもばっさり削られています。五十八年度で納付金が公立と私立の高校でどうなっているか、お知らせください。
  550. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 昭和五十八年度の公立と私立の高等学校の入学時の納付金でございます。  授業料、入学科、それから私立の場合には施設整備費というような徴収金がございますので、それを足し算した計算でございますけれども、私立学校の場合が約四十二万円でございます。公立学校が七万六千九百円ということでございます。
  551. 下田京子

    下田京子君 しかし、私立だけ端数を言わないのはおかしいじゃない、ちゃんと言いなさいよ。
  552. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 大変細かい数字で省略をいたしました。四十二万六百六十四円でございます。
  553. 下田京子

    下田京子君 経済的理由で私立学校を中途退学した人の数はどうでしょう。
  554. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 五十七年度の私立高校の中退者数は四万七百二十七人でございます。そのうち、経済的理由によるものが二千八百三十八人、中退者総数の約七%でございます。
  555. 下田京子

    下田京子君 私の地元の福島県の会津若松に若松一高というのがあります。ここで退職者問題が出ましたけれども、その原因と結果がどうなったか。
  556. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) ただいま御指摘がございました若松第一高校でございますが、福島県知事所轄の学校法人が設置している学校でございますので、福島県に照会をいたしましたところ、次のような回答を得ております。  まず、この学校では、本年初めに二回にわたりまして教職員に対して希望退職を募ったわけでございます。この希望退職を募ることとなりました原因といたしましては、入学者数が減少したということによりまして、教職員数を過大に抱えていることは学校の経営上問題があるというようなことが原因であったと聞いております。しかしながら、五十九年度の実際の入学者数が関係者の努力によりまして、五十八年度百三十四人しか入らなかったわけでございますが、五十九年度百八十一人が確保できるというようなことになったということから、再検討いたしました結果、一応現在のところでは退職者を出さずに済ませるという方向になりつつあるというように聞いております。
  557. 下田京子

    下田京子君 経営問題もさることながら、実は経営者がはっきり言っているのは、私学助成削減、それから六十年度までしかない過疎地域の特別助成金、これが六十一年から削られる、大変なんだということを挙げているんです。  そういう状況を考えて官房長官にお尋ねしたいのですけれども、私学振興助成法の制定の際の提案者なんです。今のようなこの私学の現実を見てどう思いますか。
  558. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 所管である森文部大臣がお見えでございますが、思い出話でございますので、私から申し上げてもいいかと思うのでございますが、日本のいわゆる高度成長期には教育に対する需要、要求も拡大をいたしまして、大学生の場合も八〇%、幼稚園でも八〇%というふうに、その大部分を私学に依存するというようなことでございました。そこで、私学振興助成法という法律を制定して、私学への援助を法の精神に照らしてそれぞれお願いをしていこう、こういうことで立法いたしたのでございます。  その後、年々私学助成が拡大をいたしてまいりまして、一時は大学も高校以下も三〇%というところまでまいりましたが、ここのところ少し大学の方は落ち込んで約二〇%という数字、二一・五%という数字を数えておるようなことでございます。しかし、こういう臨調路線の非常に財政状況の厳しい時期でございますので、むしろ私学経営に十分御配慮をいただいて、ひとつ教育の条件を整備していくという従来の方針がだんだんと私学助成で整備されてきておりますので、さらに教育を充実していくように経営者にも御努力も願おう、そしてできる限り児童生徒、学生が負担増にならないようにひとつ面倒を見てもらっていこう、こういうことで年々文部省としても大蔵省の御理解を得て段取りを整えてきておるところでございます。  確かに、私学助成が少し減額になってきておる感じはいたしますけれども、しかしこういう時代に、これだけやっぱり補助金整理という考え方の強い時代に、法律があったからまだここまでこれたんだろうと思いますし、またこういう時代であれば私学経営者としても頑張っていかなければいかぬ、こういう気持ちにまた奮い立たされておるのではないかというふうに思いますので、一層の私学経営者の方々の御自覚もお願いをして、私学教育がさらに前進をしていくように、充実をしていくように私どもも心から念願をしておる、こういう気持ちが今日の偽らざる心境でございます。
  559. 下田京子

    下田京子君 少しどころではないんです。五十年当時にもう逆戻りという実態なんです。経済的理由で中途退学をしなければならない生徒、それから公私の差が約三十四万四千円にもなっているという現実、これを放置することが許されるんでしょうか。まさに、本当に行政の責任というのは、行き用いた教育をするための整備をしていくのが課題なんです。そこを明確に押さえて私は対応をいただきたいと思うんです。文部大臣どうです。
  560. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 私学助成法を制定いたしました際の提案者であります藤波官房長官から当時のお話をいただきました。私も当時文教委員をいたしておりまして、藤波長官に変わらないぐらいこの私学助成法を大事にして、何としても成立をさせたい、そして私学を日本の国の教育の大きな柱として国が認知することが大事だ、こういう考え方努力をしてきたものでございます。しかし、私学の助成というのは、私学が経営する、この経営をする経費の差額を補てんしていくというものでは本来ないわけでございまして、官房長官からも今お話がございましたように、私学自身もいろんな意味で努力をし、改善をし、そして何といいましても国民の税金をちょうだいするという、こういう私学助成というものの意味もやはり十分に私学関係者の皆さんにもお考えをいただき、いろんな意味で給与の面あるいはむだな経費を省く、そんなことに、今厳しい財政状況の中でありますだけに、私学全体もそのように取り組んできて、次第次第に効果も上がってきているところでございます。  先ほど先生が御心配なさいました若松第一高等学校にしても、確かに先生の退職者希望を募りましたけれども、希望者がなかったということでございまして、その結果、また一生懸命私学の経営に意欲を見せようということで努力をなさいました結果、ことしの応募者といいましょうか、入学者はさらに上回ってきたというようなこともございます。こういうことも、私学の皆さんは私学助成という一つの大きなものを糧としながら一生懸命努力をしていく、そこにやっぱり私立学校という意味の建学の精神というものが私は大変いい形で生かされてきておるのだろう、こういうふうに思うわけでございます。確かにパーセンテージにおきましては当時から見ますと若干今低迷をいたしておることは、こうした財政状況の中でやむを得ないことでございますが、私学振興助成法を制定いたしましたこの精神を私はこれからも大事にして、私学こそ日本の国の教育に大きなやはりかかわり合いを持っている大事な教育の柱である、こういう考え方でこれからも努力をしていきたい、こう下田さんに申し上げておきたいと思います。
  561. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で下田君の質疑は終了いたしました。(拍手)  明日は午前十時に委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時十二分散会