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1984-04-02 第101回国会 参議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月二日(月曜日)    午前十時一分開会     —————————————   委員の異動 三月三十日     辞任         補欠選任      大鷹 淑子君     鳩山威一郎君  三月三十一日     辞任         補欠選任      土屋 義彦君     松岡滿壽男君      梶原 敬義君     久保  亘君      太田 淳夫君     飯田 忠雄君      中野 鉄造君     塩出 啓典君      吉川 春子君     神谷信之助君  四月二日     辞任         補欠選任      塩出 啓典君     太田 淳夫君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         西村 尚治君     理 事                 金丸 三郎君                 亀井 久興君                 初村滝一郎君                 藤井 裕久君                 村上 正邦君                 和田 静夫君                 峯山 昭範君                 内藤  功君                 伊藤 郁男君     委 員                 安孫子藤吉君                 長田 裕二君                 海江田鶴造君                 梶原  清君                 古賀雷四郎君                 沢田 一精君                 志村 哲良君                 杉山 令肇君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 竹内  潔君                 内藤  健君                 成相 善十君                 鳩山威一郎君                 真鍋 賢二君                 増岡 康治君                 松岡滿壽男君                 宮澤  弘君                 宮島  滉君                 糸久八重子君                 佐藤 三吾君                 志苫  裕君                 瀬谷 英行君                 高杉 廸忠君                 矢田部 理君                 飯田 忠雄君                 太田 淳夫君                 塩出 啓典君                 和田 教美君                 神谷信之助君                 柄谷 道一君                 青木  茂君                 木本平八郎君                 野末 陳平君    国務大臣        法 務 大 臣  住  栄作君        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  森  喜朗君        厚 生 大 臣  渡部 恒三君        農林水産大臣   山村新治郎君        通商産業大臣  小此木彦三郎君        運 輸 大 臣  細田 吉藏君        労 働 大 臣  坂本三十次君        建 設 大 臣  水野  清君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    田川 誠一君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)       中西 一郎君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       後藤田正晴君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  栗原 祐幸君        国 務大 臣        (経済企画庁長        官)       河本 敏夫君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       岩動 道行君    政府委員        内閣官房内閣審        議室長            兼内閣総理大臣        官房審議室長   禿河 徹映君        内閣法制局長官  茂串  俊君        内閣法制局第一        部長       前田 正道君        人事院事務総局        任用局長     鹿兒島重治君        警察庁刑事局長  金澤 昭雄君        警察庁刑事局保        安部長      鈴木 良一君        警察庁交通局長  久木 禮一君        行政管理庁行政        管理局長     門田 英郎君        行政管理庁行政        監察局長     竹村  晟君        防衛庁参事官   古川  清君        防衛庁防衛局長  矢崎 新二君        経済企画庁調整        局長       谷村 昭一君        科学技術庁計画        局長       赤羽 信久君        国土庁計画・調        整局長      小谷善四郎君        国土庁大都市圏        整備局長     杉岡  浩君        法務大臣官房司        法法制調査部長  菊池 信男君        法務省刑事局長  筧  榮一君        法務省保護局長  吉田 淳一君        法務省訟務局長  藤井 俊彦君        外務大臣官房長  枝村 純郎君        外務大臣官房領        事移住部長    谷田 正躬君        外務省アジア局        長        橋本  恕君        外務省経済局次        長        恩田  宗君        外務省経済協力        局長       柳  健一君        外務省条約局長  小和田 恒君        外務省国際連合        局長       山田 中正君        大蔵大臣官房審        議官       水野  勝君        大蔵省主計局長  山口 光秀君        大蔵省主計局次        長        兼内閣審議官   保田  博君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省銀行局長  宮本 保孝君        大蔵省国際金融        局長       酒井 健三君        国税庁直税部長  渡辺 幸則君        文部大臣官房長  西崎 清久君        文部大臣官房審        議官       齊藤 尚夫君        文部省初等中等        教育局長     高石 邦男君        文部省大学局長  宮地 貫一君        文部省管理局長  阿部 充夫君        厚生大臣官房審        議官             兼内閣審議官   古賀 章介君        厚生省公衆衛生        局長       大池 眞澄君        厚生省環境衛生        局長       竹中 浩治君        厚生省医務局長  吉崎 正義君        厚生省社会局長  持永 和見君        厚生省児童家庭        局長       吉原 健二君        厚生省保険局長  吉村  仁君        社会保険庁年金        保険部長        兼内閣審議官   朝本 信明君        農林水産大臣官        房総務審議官   塚田  実君        農林水産省経済        局長       佐野 宏哉君        農林水産省畜産        局長       石川  弘君        通商産業大臣官        房審議官     山田 勝久君        中小企業庁長官  中澤 忠義君        運輸大臣官房総        務審議官     西村 康雄君        運輸省鉄道監督        局長       永光 洋一君        運輸省自動車局        長        角田 達郎君        運輸省航空局長  山本  長君        労働大臣官房長  小粥 義朗君        労働省労働基準        局長       望月 三郎君        労働省職業安定        局長       加藤  孝君        建設大臣官房長  豊蔵  一君        建設大臣官房会        計課長      牧野  徹君        建設省都市局長  松原 青美君        自治大臣官房審        議官       田井 順之君        自治大臣官房審        議官       土田 栄作君        自治省行政局長  大林 勝臣君        自治省行政局公        務員部長     中島 忠能君        自治省行政局選        挙部長      岩田  脩君        自治省財政局長  石原 信雄君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局刑事局長   小野 幹雄君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和五十九年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十九年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十九年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 予算委員会を開会いたします。  昭和五十九年度一般会計予算昭和五十九年度特別会計予算昭和五十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。     —————————————
  3. 西村尚治

    委員長西村尚治君) まず、一般質疑についての理事会における協議決定事項について御報告をいたします。  審査日数は四日間分とすること、質疑時間総計は五百六十分とし、各会派への割り当ては、自由民主党・自由国民会議及び日本社会党それぞれ百六十分、公明党・国民会議百分、日本共産党、民社党・国民連合及び参議院の会それぞれ四十分、新政クラブ二十分とすること、質疑順位等についてはお手元の質疑通告表のとおりとすること、以上でございます。  右、理事会の決定どおり取り運ぶことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 西村尚治

    委員長西村尚治君) それでは、これより高杉廸忠君一般質疑を行います。高杉君。
  6. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 私は、一般質疑として、福祉全般、そして中小企業、労働安全、あるいはこれに関連する幾つかの御質問をし、そしてなおかつ、明年開かれます地元としての万博関係もありますので以下御質問をし、さらに引き続きまして宇都宮病院問題もただしたいと考えております。  まず、中小企業関係についてお伺いをいたしたいと思います。  二月の日銀の調査企業短期経済観測調査、そしてまた経済企画庁による月例経済報告でも景気回復していると、こう発表されています。しかし、失業率の上昇、倒産件数の増加など、景気回復は実感としてはいまだの感が免れません。景気回復輸出主導で行われている結果、輸出比率が低い中小企業においては回復波及効果が及びにくいと考えます。そこで、中小企業関係について、まず金融政策として金利引き下げについて伺いたいと思うのです。幸いにも最近の円高傾向のもとで、公定歩合の引き下げが機動的に発動されなければならないと思いますが、経済企画庁長官から景気の動向並びにこれらについての所見をまず伺います。
  7. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 景気は、今お話しのとおり、第二次石油危機から五年ぶりでようやく回復方向に向かいつつあると思います。ただしかし、長い間の厳しい不況が続きましたので、地域と業種によるばらつきが相当厳しく残っております。経済の力がもう少し強くなりますとそういう点もだんだんと緩和されるのだと思いますけれども、現時点はいい方向であるけれども、このばらつきを一体どうするかということが当面の大きな課題だと、このように思います。そういう中で、円高がこのままずっと定着するということでありますならば、金融政策もある程度機動的運営ができる条件一つそろうわけでありますから、その点は大変結構だと思いますが、ただ、ほかにもいろいろ条件がございますから、それだけで金融政策を機動的にやれるかどうか問題があろうかと思いますが、いずれにいたしましても物価は非常に安定しておりますし、その中で実質金利が相当高い、こういう点がやはり景気の足を引っ張っておる一つ問題点だと思いますので、これからの大きな課題であろうと思います。
  8. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 大蔵大臣伺いますが、政府系金融機関基準金利について、中小企業関係金融機関にあっては長期プライムレートよりは優遇された金利貸し出しを行うべきだ、こういうふうに私は考えますが、大臣、いかがでしょう。
  9. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 御趣旨方向は、それは結構なことだとは私も思っております。ただ、いわゆる長期プライムレート水準の問題につきましては、今度一応三月二十八日から八・一であったものを七・九で、いわゆる長プラと同水準にいたしましたが、これはこの原則はそうなっておるわけでございます。しかしながら、これはなぜそうなっているかというと、申すまでもなく、要するに今資金需要が緩和しております。それから政府系中小機関の収支がいわばかなり悪化しております。そうなると、当然のこととして一般会計から補給金、いわゆる利子補給等いろいろな形でしなければならぬということもございますので、原則はそういうことになっておるわけでございますけれども、国民公庫と中小公庫、これにつきましては、中小企業経営改善貸し付け、近代化促進貸し付け倒産対策貸し付け等につきましては政策的必要性が高いというようなことから、長プラを下回ります低利な貸し付けを今日も行っておるわけであります。今後とも原則原則として、政府中小関係金融機関中小企業貸し出しについてはそのような配慮はしていかなければならぬことであるという考え方は、認識はそう離れていないと思っております。
  10. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 通産大臣伺いますが、ことしに入って倒産件数は、一月に千四百九十三件、二月に千六百三十九件と、前年同月比で大幅に倒産件数が増加しているわけです。中小企業倒産防止についての対策をお伺いをいたしたい。
  11. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 我が国全体の経済を見ますと、非常に緩慢ながら景気回復基調を示していることははっきり数字が示しているわけでございますが、反面、倒産件数史上空前数字になっていることも事実でございます。このことにつきまして私ども非常に深刻に受けとめ、憂慮いたしているところでございますけれども、通産省といたしましては、五十九年度予算の中でも、政府系金融機関貸付規模の十分な確保あるいは下請企業対策、さらには倒産対策、諸施策の万全を期しまして中小企業経営の基盤を強化するということを一層固めていく所存でございますが、詳細につきましては中小企業庁長官から説明いたさせます。
  12. 中澤忠義

    政府委員中澤忠義君) 補足して御説明申し上げます。  ただいまの御質問は、中小企業倒産防止対策ということで具体的にはどういうことかというお言葉かと思いますので、四点申し上げたいと思います。一つは、先ほど大蔵大臣の御答弁にもありましたように、中小企業金融公庫等によります倒産対策貸し付けという形で、通利を下回ります有利な条件におきます貸し付けを十分確保するということでございます。第二に、中小企業信用補完面で弱い点がございますので、倒産関連特例保証制度ということで、これもまた有利な条件保証をするということに力を入れております。また、前もって関連倒産を防ぐという形で、倒産防止共済事業という事業が既に四年間の実績がございますけれども、これも強化をするということにいたしております。また、何よりも未然倒産に対して十分な指導相談をするということが必要でございますので、倒産防止特別相談事業という形で経営危機に陥った中小企業に対する相談を受けるということにしておりまして、この点につきましては、五十九年度におきましても相談室の増設をしておるところでございます。  以上でございます。
  13. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 中小企業倒産原因別に見ますと、二月においては不況型倒産が全件数の六二・五%を占めて、近年にない水準になっているわけです。どのように分析をし、どのような対策あるいは倒産防止、こういうものを具体的に進められようとするのか、伺います。
  14. 中澤忠義

    政府委員中澤忠義君) 御指摘のように、最近の倒産の要因を見てまいりますと、販売不振でございますとか、あるいは貸付金の回収困難という形でございますとか、いわゆる不況型倒産が六二%以上占めておるということは確かでございます。この原因についての分析でございますけれども、やはり景気全体としては回復基調でございますけれども、中小企業関連いたします建設でございますとか、あるいは小売業という面におきまして、もう一つ回復のテンポが遅いということがございますし、また中小企業長期不況によります体力の消耗という形での息切れがこの際出てきておるという点に倒産水準が高いという問題があるというふうに認識を持っております。これに対する対策でございますけれども、先ほど申し上げましたように、関連倒産を防ぐということに一つの重点を置いておりますけれども、また未然にこれを防止するというために相談事業等々の指導を強化してまいりたい、かように考えております。
  15. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 通産大臣伺います。  本年二月十六日の談話で、昭和五十七年二月から実施されてきた大規模小売店舗届け出にかかわる当面の措置として、引き続き継続することが適切であると述べておられます。抑制措置継続期間については触れられていませんけれども、当面とはどの程度のことを言いますか、伺います。
  16. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 今回の措置は、中期的な観点から流通産業及び流通政策のあり方について取りまとめられました八〇年代の流通ビジョンを受けまして、関係各方面からの要請をも踏まえまして、今の段階で適切と考えられる措置を行ったわけでございまして、これにはっきりとした期限をつけたわけではございません。当面この措置によってこの関係を見守っていきたい、かようなことでございます。
  17. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 さらに伺いますが、大型店出店競争に何らかの形で歯どめが必要だと思うんです。行政指導という形での抑制には私は疑問を持っているわけですが、現在、法律的に明示されていない事前商調協を法律に取り込んでいただいて、事前商調協で一定の調整が得られたものについてのみ三条の受理を行うというような形を考えてもいいじゃないか、こう思うんです。大臣所見伺います。
  18. 山田勝久

    政府委員山田勝久君) 先生御承知のように、二年ほど前に大型店集中出店届け出がございました。その状況を踏まえまして、五十七年二月から行政指導という形でございますけれども、大型店法の適切な適用ということを目標にいたしまして、抑制自粛措置を講じてまいった次第でございます。ことしの二月から、ちょうど先ほど大臣御説明のように継続改善ということをとったわけでございますけれども、過去二年間の効果というものは非常にあったと思います。五十四年度には五百七十六件の届け出がございましたけれども、五十七年度には百三十二件でございます。五十八年度に入りまして、昨年の四月からことしの二月までの実績が百九件でございますから、おおよそ年間百十件から百二十件というふうに低水準でございます。こうしたことは、大店法の趣旨に基づきまして行政指導というプラクティカルな方向でやってまいった効果があろうかと思います。いろいろ地域によって事情が異なりますから、それぞれの地域自主性と私どもの方針というものを両方まぜ合わせまして行政指導という格好でやっております。特に二年前から、また現在もでございますが、先生指摘のように、三条届け出の前に、事前十分周辺中小企業皆様方の御意見を聞き、調整を重ねるという措置を講じておりますので、こういった三条届け出件数も低くて済んでおると同時に、これからも地域というものを考えた、そして地元の声を聞いた方針をとることとしております。これが今の現行法の体制をより適正に行う目的で行っておるものでございますので、事前十分周辺中小企業との意見調整、そういうことをやっているわけでございます。
  19. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 二年前に当面の措置を行い、先般これを引き続き継続することといたしたのでございますが、この問題は何といっても周辺中小小売商商売を活発にするということが必要であることと同時に、やはり消費者保護ということにも十分配慮しなければならないわけでございます。したがって、周辺中小小売業者たち商売を活発にするということが、その意見を十分に聞いてあげて、大型小売店舗との円満な協調の上にこれを調整していくということが何よりも大切なことだと考えております。
  20. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 次に、労働関係でただしたいと思います。  労働者派遣事業と安全衛生問題について、労働省はさきの労働者派遣事業問題調査会報告書の五十九年二月に、その法制化を図るために準備中とのことでありますが、その進捗状況について伺います。
  21. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 本年二月に石川吉右衛門座長からの研究会報告が出されまして、現在その内容を踏まえまして中央職業安定審議会審議をいたしております。そこで、労働者派遣事業等委員会という専門の小委員会を設けまして検討を開始いたしておりまして、既に二回開催をし、何とか今国会中にもその結論を間に合わせたいというようなことで、今鋭意検討を続けていただいておる、こんな状況にございます。
  22. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 さらに伺いますが、一部の方から意見が出されていますね。反対の動きもあるわけです。この法制化に当たっての問題点、焦点は何か。それから職安法労働基準法労働安全衛生法、この関連、これを明らかにしていただきたい。
  23. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) この大きな問題点としてございましたのは、現在の派遣事業というものが、これが非常にたくさんの労働者がそこで就業をしておる、こういう現状を踏まえまして、何らかの形でそれについての保護を図っていく必要がある、こういう基本点では一致をいたしておるわけでございますが、その方法におきまして、一つは、現在あるいろいろな労働者需給、既存の供給システムというものの中でこれを規制していく、あるいは対応していく、こういうことでやるべきだ、こういう意見と、それからもう一つは、やはりこういう新しい動きに対しては何らかの新しい特別な規制を設けて、そういう規制をした上でこれを新しいルールの上に乗せていくべきだ、こういうようなところが基本的に今対立をしておるということでございます。しかし、この研究会の報告の論議の過程におきましてはそういう大きな二つの分かれた議論がございましたけれども、大勢としては何らかの措置を講じた上で新しく制度化をして認めていくべきだと、こういう考え方が大勢であるわけでございます。  それからまた、既存の法律との関係でございますが、職業安定法との関係におきまして、これはひとつ労働者供給事業との関係でこの派遣的事業をどう位置づけていくのか、こういう問題がございます。それからまた、労働基準法あるいは安全衛生法との関係では、やはり派遣先における使用者の使用者責任というものを一体どの程度認めていくのか、どういう形で認めていくのか。それから一方、それと派遣元の方の使用者責任、そういったものとの関連、調和、限度、そういったようなところがやはり一つ法的には問題になっておるところでございまして、そういった問題も含めて現在検討をお願いしておるという段階でございます。
  24. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 今述べられましたように、一番問題は、労働安全衛生法上の事業者責任が不明確な点であると思うんですね。その事業が急増していると、こう思うんですが、その実態、これはどうなっていますか。
  25. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 労働者派遣事業そのものにつきましては、派遣事業という特別の法律概念がまだ固まったものがあるわけではございませんので、そういう意味におきましては特に派遣事業という形で限定した調査というものはないわけでございます。したがいまして、私ども調査いたしておりますのは、そういう派遣的な仕事が行われておるものを一部含む、そういう業種等につきましての調査でございますが、例えばビルメンテナンス業というものは、五十六年度でございますが、約八千事業所ございまして、そこに約三十万人の労働者が就労しておる。あるいは警備業では、約三千の業者が都道府県の公安委員会の認定を受けておりまして、そこに約十二万人の労働者が就労しておる。あるいは情報処理サービス業では、約五千の事業所がございまして、約十六万人の労働者が就労しておる。あるいはまた、事務処理サービス業については、これは明確な定義あるいは業界団体もないため正確な数の把握はできませんが、約六十社から八十社程度。それから登録スタッフというような形でいきますと約六、七万の労働者がいる。こんなようなことが推定をされておる。こんなような状況にあるわけでございます。  それからまた、もう一つ別の角度から見ますと、企業の中で他の会社の労働者が就業している、そういう企業の割合というものを見てみますと、約一六%の企業におきまして他社の労働者を自分の会社で雇っておる、こういうようなものがあるわけでございまして、そういう雇っておる業種という面で見ますと、清掃員であるとか、警備員であるとか、オペレーターであるとか、プログラマーあるいはタイピスト、そういったような関係の業務について他の会社の従業員を使っておる。こんなようなものが出ておる。こんなような実態にあるわけでございます。
  26. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 さらに伺いますけれども、この事業におけるトラブルというのは非常に多いと聞いているんですね。裁判例も多いと聞いているんですが、その実態はどういうように把握されておりますか。
  27. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) やはり裁判例としていろいろ出ております。相当出ておりますが、出ておりますもののほとんどの問題は、派遣されておる労働者とそれから派遣先企業との間で一体雇用関係があるのかどうかという、関係のあるなしというのが一番やはり争われておる問題でございます。判例の方を見てみますと、具体的には派遣元の企業と派遣先との関係で、要するにもとの関係が、請負契約が解除される、そういうことに伴いまして、この派遣先事業所へ行っている労働者が実際には派遣先で就業を続けられなくなる、こういうような問題が出てまいるわけでございますが、その場合に派遣先の事業所でずっと働いていたのだからそこで雇用関係があるのだ、あるいはもうないのだと、こういうような関係の問題で実際に争われているのが裁判所で多いわけでございます。これについては、判例はそれぞれケースによっていろいろ違いがございますので一律的な理論というものがあるわけではございませんが、それぞれ具体的な事実関係に基づきまして雇用関係があるとかないとか、こういうような判断が出されておる。そういった裁判例がいろいろ出ておる。こんな状況にございます。
  28. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 さらに伺いますが、それならこれらの問題というのは法制化によってどのように改善されるんですか。
  29. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 実は、この研究会におきましても、あるいはまた現在派遣事業等小委員会においてもいろいろ議論された、あるいはまた議論されておるところのやはり非常に大きな問題の一つでございまして、要するにこういう派遣先と派遣事業者との間、派遣労働者との関係というものをどう見ていくのか、使用者責任というものをダブルで認めていくのか、あるいはどういう限度で認めていくのか、これはやはり実務的にも大変難しい問題もございまして、非常に法律専門家でも議論のあるところでございます。そういうような意味で、今そういった点も一つの大きな課題として鋭意議論を詰めておる、こんな段階でございまして、まだ明確な方向性がはっきり出ておるわけではないわけでございます。今後の重要な問題の一つとしてはっきりさせていきたい、このように考えております。
  30. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 さらに伺いますが、その派遣先事業主と雇用関係関係ですね。これは部分的に責任を負うと、こうなっているんですが、その境というのはどうなんですか。
  31. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 御指摘のように、ダブルで仮に認めた場合にどこまでだという点についてはなかなか具体的にケース、ケースによって問題が出てくるわけでございます。例えば、派遣先において時間外勤務を特に命じたというような場合、これはまああれでございましょう。それからまた、安全衛生の遵守義務というようなことになってきますと、使用者、派遣先での責任というようなものがやはり相当大きくなってくるであろう。あと、それと派遣契約との関係がどうなっておるのか。要するに派遣元と派遣先においてどこまでそういうことが命じ得るようになっておるのかどうか、こういったような、そういう派遣契約とのまた関係というようなものを詰めていかなければならぬわけでございまして、まさにその辺の境界問題というのは、労働者派遣契約という新しい契約概念をどういう法律概念として構成するのか、そういったような問題との絡みで考えていかなければならぬ問題だと、こう思っておるわけでございます。
  32. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 さらに伺いますが、この「労働基準行政の運営」という中に、派遣労働者の安全衛生上の管理責任はどういうふうになっているか。
  33. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 現行の労働安全衛生法におきましては、あくまでも派遣元の事業主責任ということで規定されておるわけでございます。
  34. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 さらに局長、その安全衛生の作業方法、作業指揮、これはどこが負うか、その責任、それはどちらが負うか。
  35. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) ただいまもお答えいたしましたように、現行法ではあくまでも派遣元が使用者責任を負うわけでございますが、今ここで御質問の問題の提起になっている派遣事業をどういう形で派遣契約として法律構成をするかということになりますれば、やはり実態的な判断、例えば安全衛生上の問題は現場で作業指揮をしている使用者が一番客観情勢を知っておるわけでございますので、そういった者に使用者責任を、安全衛生上の管理責任を負わせるかどうかというような点を今具体的に審議会で議論をしているという実態でございます。
  36. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 さらに局長、安全教育の問題ですけれども、具体的には、雇い入れ時の安全教育とか職務変更時の安全教育とかということはどういうふうになるんでしょうか。
  37. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 安全衛生の教育の問題につきましては、先生指摘のように、雇い入れ時の安全教育あるいは職務変更時の安全教育または危険有害業務の特別教育というような教育をしていかなければならぬわけでございますが、この点につきましても、派遣事業というものを制度化した場合には、やはりそういったものをどちらが行うのが実態的であるかというような議論を踏まえて今検討中でございます。
  38. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 労働大臣伺います。  労働者派遣事業は、職安法労働基準法の盲点をついて、事業者責任を不明確にしたままの現状というのは、私は見逃すことができないんです。そこで、対象分野の限定とか、許可制度のあり方とか、就業条件の明確化だとか、社会保険の適用、こういうような多くの問題を抱えていると思うのですが、法制化に当たって慎重に対処していくべきだと考えます。労働大臣の御所見伺います。
  39. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) この問題は、おっしゃるとおり我が国の経済社会活動に影響が非常に大きゅうございまして、また我が国の雇用慣行とか労働法制のあり方に、今局長が申し上げましたようになかなか深い関連、かかわり合いがある重要な問題でございますので、今審議会にもかかっておりまするが、慎重な検討を要するものだと、法制化は必要ではあるけれども、慎重な検討を要するものであると私は考えております。
  40. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 次に、技術革新とその対応策について伺いますけれども、いわゆるMEを中心とする技術革新については、その雇用への影響、これは各方面から実態調査報告が出されており、その早急な対応策が必要と、こう言われているわけなんですが、この際政府の具体的な対応策を伺います。
  41. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) 工業用ロボットを初めとしますME関係の機器の導入に伴いまして、雇用の面を初めとしていろんないわゆる労働の面で影響が出てくるということでございますので、まずはそうした影響の調査研究、これを第一にいたしております。それから、それに伴いまして、具体的にロボットの導入等をめぐりまして、労使関係者のコンセンサスづくり、これが大事でございます。こうしたコンセンサスづくりを進めていく。それからまた企業で現実にそういうME機器がたくさん導入されておりますので、それに対応する形でのいわゆる職業訓練の充実、それからロボットあるいはその他のME機器に関係します安全衛生面の対策、そうしたものについての対応を進めているところでございます。
  42. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 さらに伺いますが、特に五十九年度における施策と予算
  43. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) 施策の項目としましては、今申し上げたような事項が中心になるわけでございます。具体的に申し上げますと、例えばコンセンサスづくりといたしましては、雇用問題政策会議の場でいろいろ御検討をいただいておりますが、さらに加えて部門別の労使関係者の会議を進めていくといったようなことも考えております。さらに職業訓練に関しましては、そうしたME機器についての訓練をやれるようなそういう機器の整備を図るといったようなことを中心に考えております。そうした諸経費を含めまして約四億七千万円ぐらいの予算を計上いたしておるところでございます。
  44. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 この工業用ロボットですね、これは私は危険有害な業務に限定すべきだと考えているんですけれども、まず労働省、それから通産省から伺います。
  45. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 工業用ロボットなどが導入されております理由といたしまして、労働省調査によりますと、省力化のためというのが六三%、それから製品の品質精度の向上のためというのが六二%、あるいは職場環境の改善のためというのが四%、こういうような数字がございます。あるいはまた、労働省の同じく労働生産性調査によりますと、配置労働者数の減少を目的としたのが七八%、それからまた職業性疾病の回避のためというのが三〇%、これはマルチアンサーでやっておりますので、足して一〇〇を超えますが、それから事故による災害の防止というのも二三%の事業者がやっておる、こういうようなことでございまして、こういうME機器の導入にはいろいろな理由があるわけでございます。例えば製品の品質精度の向上、こういったようなことも導入のやはり重要なねらいであるわけでございまして、そういった意味で、危険有害業務ということだけに導入することはなかなか難しいと、こう思っておるわけでございます。  しかし、現実にこの機器の導入におきましては、労働者のこういう機器への適応の問題あるいは配置転換等々の問題もあるわけでございますし、あるいは現に雇用の抑制というような傾向ももちろんあるわけでございます。そういう意味でいろいろこういう職務の内容、職務の構成といったものにいろんな影響が出てきておることも事実でございます。そういう意味で、こういったものの導入に際しましてやはり雇用に及ぼす影響というものについて一層注意を払いながら、できるだけこういう好ましくない、あるいは問題のある面については、この面の克服をしながら、やはりこの導入に伴う例えば御指摘のような危険有害業務を人間にかわってロボットがやってくれる、こういったような積極面といったようなものをさらに伸ばしていくというような方向づけというものが大事だと、こう考えておるわけでございます。  なお、現在やはりMEの導入と雇用の問題に関しましては、公労使のトップレベルから成ります雇用問題政策会議、これは有沢広巳先生を座長にいたしておりますが、この雇用問題政策会議の場におきまして、現在何らかの提言をしていこうということで、今議論をまとめつついただいておるわけでございます。小委員会をつくりまして詰めていただいておりまして、この四月中にはそこから雇用問題とMEの関連の問題について新しい提言が出される、こういうような段階でございますので、そういう提言を踏まえて我々の方もそういう方向での検討努力を進めていきたいと考えておるところでございます。
  46. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 大蔵大臣、工業用ロボットに対する課税についてはどうなっていますか。
  47. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは一度本院の本会議においてもそういう御質問があったことがございます。よくロボットがある種の産業革命を起こすだろうというときに、ジョークの中で、ロボットには冷暖房施設が要らない、ロボットにはブレッド・アンド・バターが要らない、ロボットは労働組合をつくらない、こういうような、これはジョークでございますけれども、そんなことが言われたことがございます。今日工業用ロボットというのが生産性向上に大変それなりに機能を果たしておる、したがって本院における本会議の場合は、人が減って年金の掛金をする人が少なくなる、こういう御議論もございましたが、しかしそういう省力化の中で、給与が上がって会社の利益が上がっていけば、別の意味における法人税、それから人一人のまた給与が上がりますのでまた掛金もふえてくる。だから、直接それの問題で議論するには必ずしもなじまないかもしらぬ。しかし、ロボットというものが大きく社会経済の中で雇用状態に変化をもたらす、これは労働省の方でもいろいろ御腐心をなすっておるところであります。  それで、これは私は思いつきで、一遍物品税で、便益性の方でこれを考えてみたらどうだと。しかし、それにもやっぱり組み立てる部品その他を見ても、便益性ということだけでこれ論ずるわけにはいかぬ。したがって、やはり全体の雇用政策に及ぼす影響等を考えながら対応すべき問題でございますが、直ちにもってこれが言ってみれば失業者をふやしておるとか、あるいは労働時間の短縮をしておるとか、あるいは年金掛金の人口を滅しておるとかいうだけでもってロボット税という新税を検討するという状態にまではいっていない。ただ、問題提起でございますから、これは将来の課題としては、どの角度からとらえるかは別として、お互い検討をしなきゃならぬ産業革命に応じた一つ課題ではなかろうかというふうに理解をしております。
  48. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 次に、日本労働安全衛生コンサルタント会の活動について伺いますけれども、基準行政の中でも積極的に活用をうたっています。その実績、そして今後の方針、これについて伺います。
  49. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 日本労働安全衛生コンサルタント会の活動につきましては、ちょうどこの会が昨年の四月一日に誕生をいたしまして設立が許可されまして、その後活動をしておるわけでございますが、労働省といたしましては、会員を対象としてこの資質の向上のための研修についての技術的援助並びに資料の提供等を行ってきたところであります。また、コンサルタントの活国策につきましては、安全衛生管理特別指導事業場に対する診断、安全衛生改善計画の作成指導中小企業共同作業環境管理事業における指導、それから各種の講習会等の講師の依頼あるいは安全衛生パトロール等の実施等につきまして、コンサルタントを活用するように都道府県の労働基準局及び労働基準監督署を通じまして事業者等に対して勧奨を行っているところでございます。今後ともコンサルタント制度の発展のためにコンサルタント会に対しまして引き続き必要な指導援助に努めるほか、コンサルタントが広く活用されるような措置検討してまいりたい、こう思っておるわけでございます。
  50. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 さらに局長、労働災害防止団体法に基づく安全管理士との競合ですね、これは改善をしていく必要があると思うんですが、どういうふうにお考えになりますか。
  51. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 先生指摘の安全管理士及び衛生管理士は労働災害防止団体に属する職員でございまして、中央労働災害防止協会に属する管理士と業種別災害防止協会に属する者とがございまして、後者につきましては、主としてその会員である事業主及び事業主団体に対する技術指導を担当する者でございまして、中央労働災害防止協会に属する管理士は、それ以外の業種に属する事業主及びその団体に対する技術指導を担当するという区分けになっておりますが、これに対しまして労働安全コンサルタントと労働衛生コンサルタントは労働大臣が行う試験に先生御承知のように合格をしまして登録を受けて労働者の安全衛生水準の向上を図るために事業場の安全衛生についての診断及びこれに基づく指導をそれぞれの専門分野について業として行う者でございまして、その業務は高度な技術的専門分野でございますので、両者の業務が競合しているとは私ども考えてはいないわけでございます。しかしながら、現実には先生おっしゃるように、両者の活動が相接して展開される場合が考えられますので、無用の混乱が生ずることのないように、私どもとしては先生の御趣旨も踏まえて指導をして調整していきたい、こう思っております。
  52. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 労働大臣に御所見伺いますけれども、このコンサルタント会を積極的に活用していく、これについては五十六年の十月に出されました政府の質問主意書に対する答弁書でも明らかになっています。これを具体的に実現していただきたい、こう思いますけれども、大臣、いかがでしょう。
  53. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) 労働安全衛生コンサルタントの活用の奨励につきましては、労働災害防止計画、毎年度の労働基準行政運営方針等によって都道府県労働基準局で指導を行っておるところでございます。しかし、労働安全衛生コンサルタントの人員、専門分野においては地域的に相当な格差がございますので、コンサルタント制度が必ずしも十分に機能していない点もございます。今後コンサルタントの質と量の確保に努める一方、御指摘質問注意書の答弁の趣旨にのっとりまして今後とも必要な援助を行ってまいります。
  54. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 次に、年金関係について伺います。  年金の一元化について各制度共通の基礎年金を創設という点では、公的年金の一元化に向けて昨年の共済の統合に続くものと受け取っているのですけれども、各共済制度を含めて今後の一元化、この構想はどういうふうになっていますか。
  55. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 先生御承知のように、今国会に厚生年金、国民年金、船員保険、この民間の年金を一元化する法律を提出してぜひこれは成立をさせていただきたいと思っておりますが、これに伴って閣議決定で六十年度には共済年金とこの新国民年金の一元化を図って基礎年金による共通の新国民年金をつくるという方向にまいっております。
  56. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 さらに伺いますけれども、被用者の無業の妻という地位については、厚生年金の場合も共済年金の場合も同一だと考えているんですけれども、この基礎年金の対象者とする改正が今時点で盛り込めなかった理由というのはどこにあるんですか。
  57. 古賀章介

    政府委員古賀章介君) 法案を策定いたします経緯の問題でございますので私から御答弁いたしますが、今回御提案しております年金改正法案は、先生御承知のように、国民年金、厚生年金、船員年金保険の三制度に関するものでございます。共済年金につきましては、今厚生大臣が答弁されましたように、昭和六十年に基礎年金を導入する等の今回の改正の趣旨に沿った改正を行いまして、六十一年度から同時に実施するということにしておるわけであります。それで、基礎年金の導入に伴いまして共済年金制度のあり方を検討する際に、共済組合員本人とその配偶者をあわせて考えることが妥当である、例えば共済年金の給付水準を考えます際には夫婦とか世帯で考えることが必要でありますので、切り離すことは適当でないという判断に立ったものでございます。いずれにいたしましても、共済年金につきましては六十年に改正を行いまして、六十一年度からすべて同時に実施をするということになっておるわけでございます。
  58. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 一元化の最大の目的というのは給付と負担の公平を図る、こういうことだと思いますし、基本的には年金業務の一元化をしなきゃいけないと思うんです。どうでしょう。
  59. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 全く当然のことであります。そのように進めていこうと思っています。
  60. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 先ほどもお話がありましたとおりに、閣議決定に向けて七十年を目途に年金制度全体の一元化を完了させるというような、こういうことですから、それならば十年間に具体的に何を、あるいはどういう目標を掲げてやるんですか。
  61. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 御案内のように、五十九年に民間年金一元化いたしまして、六十年に共済年金が基礎年金の部分で一本化されるわけでありますが、年金には今までの既得権とかあるいはいろんなものがありますので、それらを配慮しながら六十一年に一線に並んで発足できるようにそれらの準備を進めてまいるということでございます。
  62. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 具体的に言ってもらわないとわからないのだが、目標はわかりましたけれども、具体的に何をやるんですか。
  63. 古賀章介

    政府委員古賀章介君) 補足をさしていただきますが、五十九年、六十年におきましては、先ほど来申し上げておりますとおり、基礎年金の導入ということをやるわけでございます。六十一年度以降におきましては給付と負担の両面にわたる制度間調整でありますとか年金現業業務の一元化等の整備を推進しまして、先生がおっしゃいました昭和七十年を目途に制度全体の一元化を完了するということでございます。  その具体的な内容でございますけれども、それは昭和六十年における共済年金への基礎年金の導入という、その制度改正を終えました後で、その内容を十分見きわめた上で今後検討するということでございます。したがって、繰り返すようでございますけれども、共済年金に基礎年金を導入するということ等の改正を行いました後で、制度全体の内容を見て、さらに段階を進めて検討を進めていくということでございます。ゴールとしては七十年の一元化に向けて段階的にその改革を進める、こういうことでございます。
  64. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 次に、五人未満の事業所の適用問題について伺うのですが、社会保障制度審議会の答申の中でも「被用者に対する厚生年金保険の適用の問題の解決に着手しないと、基礎年金の導入に伴い、」「被用者との不均衡が」生ずる、こういうふうに言われているんですけれども、この点についてどうお考えになりますか。
  65. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 五人未満の事業所の適用について、これは今、先生指摘のように、社会保障制度審議会からも御答申をちょうだいいたしておりますので、まず法人の事業所、これを強制加入にする、全部一緒にすればいいわけですが、これはいろんな事務上の問題がございますので、法人以外の事業所については任意加入にして、今後またさらに進めてまいりたいと、こういうことでございます。
  66. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 それでは具体的に聞きますが、この五人未満で適用になっていない事業所の数、人数。
  67. 朝本信明

    政府委員(朝本信明君) 昭和五十六年十一月に実施いたしました健康保険、厚生年金保険、両制度一緒にやっておりますが、その適用状況調査結果によりますると、未適用事業所の数は九十万四千カ所、その従業員数は三百六十五万五千人と推定いたしております。
  68. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 その適用しなかった理由というのは具体的に何ですか。
  69. 朝本信明

    政府委員(朝本信明君) 五人未満の事業所等につきましては、従来から小規模で変動が著しいというような特性、それからこれに基づきます適用技術上の難しさ、二番目といたしまして、新たに生ずる社会保険の業務を処理するための業務処理体制の整備の難しさなど多くの問題が存在しておりまするところから、これらに対する厚生年金保険及び健康保険の強制適用を行ってこなかったということでございます。
  70. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 現在の法制度のもとでも、今説明があったように、一定の要件を備えたものについては任意包括によって適用されているわけですね。じゃ、この適用の事業所の数、適用者数を伺います。
  71. 朝本信明

    政府委員(朝本信明君) 任意包括適用についてでございますが、昭和五十七年度末現在で事業所数は二十七万四千カ所、被保険者数は二百二万七千人でございます。
  72. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 大変な数だね。  そこで、労働大臣に伺うんですが、労働保険の場合の労災、雇用は、一人でも従業員がいれば全面適用になっているわけですね。それでは、この適用事業所の数、従業員の数、どの程度になっていますか。
  73. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) 労働保険につきましては、五十年から農林水産業の一部を除いて全面適用になっているわけでございますが、現在の適用事業所総数は二百十六万、そのうち五人未満の事業所の数は約百万、九十七万が正確でございます。そういう数字になっております。
  74. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 さらに伺いますが、この五人未満の零細事業所で、現在保険料の徴収や給付の上で問題が特にありますか。
  75. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) 五人未満の事業所の場合には、新しく事業を起こしたところ、あるいはやめたところの把握が難しいといったことが他の大規模企業に比べるとあるわけでございます。そうした面を直接行政機関だけで全面的に把握することはなかなか困難な面がございますので、労働保険の場合には、個々の事業主の委託を受けて、この保険料の納入事務を行います事業主の団体を労働保険事務組合という形で認可をしまして、その事務組合によって収納をやっていただいているといったような工夫をしているところでございます。
  76. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 今回の改正案では、法人に限って拡大するというふうなお話ですね。ところが私は、そうなりますと、五人未満でも法人とそうでないところに差別があって格差がまた拡大する、こういうふうに考えるんですが、いかがですか。
  77. 朝本信明

    政府委員(朝本信明君) お尋ねのとおり、同じサラリーマンという点に着目いたしました場合、五人以上の事業所に働く方々、それから五人未満の小さな事業所に働く方々、年金、医療保険の取り扱いが若干異なってくるということは御指摘のとおりでございまして、そのために五人未満の事業所につきましても今後任意包括適用制度を推進してまいりたい、かように存じておるわけでございます。
  78. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 せっかく大きな大改革を実行して、今後長期にわたって安定した制度へまさに画期的な改革を行おうとしておる現在でありますから、少なくとも労働と厚生の関係でも今お話をいただいたように違いがある、全面適用にしていくべきだと思うんです。大臣に最後の所見伺います。
  79. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 御趣旨は、私の考えも先生の考えも同じでございまして、やはり社会保障の恩典というものは国民すべての竹が平等にその給付を受ける方向に進まなければならないということからこの年金改革が行われておるわけでありますから、今回五人未満法人でもこれを対象にしたことは大きな前進であると思いますが、今御指摘のように不十分に残された点があります。これは今、政府委員から答弁しましたように、いろいろな事務的な問題で今回はそこまでいかなかったのでありますが、今後目的を達成するために努力をしてまいりたいと思います。
  80. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 次に、障害児の就学問題について伺うんですが、障害児の親がどうしても身近な普通校に就学させたいと希望するときに盲聾学校や養護学校に強制すべきではない、こういうように思うんですが、文部大臣、いかがでしょう。
  81. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) お答え申し上げます。  学齢期に達しました心身障害児のごく一部に長期的にわたり登校していない者があることはまことに残念でございます。しかし、心身障害児の教育は、一人一人の障害の種類、そして程度等に応じまして、特殊教育諸学校等で手厚いきめ細かい教育を行うことが最も大切であるというふうに考えております。就学すべき学校の決定に当たりましては、各教育委員会が就学指導委員会に諮りまして、子供の障害の状態につきまして総合的に調査審議し、慎重に判断するとともに、十分に親の理解を得られるように努力をして、保護者と十分に協議をしながら努めておる、そうした指導をいたしておるところでございます。
  82. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 鈴木前総理は去る五十六年三月十六日の本院予算委員会において、強制することは教育の本旨にもとる、この旨の発言をしております。文部省はこの方針を自治体に対してどのように周知徹底しているか、どういうようなことをされたか、伺います。
  83. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 鈴木前総理の答弁の趣旨は、障害の種類と程度に応じて適切な教育を行うという現行制度を前提としておりまして、その実際の運用に当たりましては、先ほども申し上げましたが、保護者の気持ちを十分しんしゃくしつつ、子供のために最も適切な判断をしてもらいたいというそういう心情を強調されたものであるというふうに承知をいたしております。文部省といたしましても、従来からの方針に従いまして、かつ鈴木前総理の答弁の趣旨を体しまして適切な就学指導指導いたしておるところであります。
  84. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 佐藤三吾君の関連質疑を許します。佐藤君。
  85. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 私も障害児の親なんですが、そういうことで特に文部大臣に聞きたいと思うんですが、今御答弁の中に出ましたけれども、どうしても親の同意が得られぬ、こういう場合に、行政の対応として、あくまで障害児学級への就学を強制するのか、それとも入学時期を過ぎて実質的に未就学状態になっても親を説得するのか、実験的、段階的に、暫定的に普通学校に就学させるのか、いずれの方法をとるように指導しているのか、その点ひとつ。
  86. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) 先ほど文部大臣が御答弁申し上げましたように、障害児の種類、それから障害の程度、そしてそれを見きわめて、その子供が将来自立自活できるような形の教育環境をどういう形で与えることが一番必要か、そういう観点で就学指導をやっているわけでございます。ですから、ただ教育委員会の一方的判断ではいけないので、医者であるとか教育者であるとかいろいろな有識者による就学指導委員会をそれぞれの市町村教育委員会に設けているわけでございます。  そこで、問題になりますのは、親の気持ちと、それからそういう就学指導委員会の判断に差異が出てきたときにいろいろな問題が生ずるわけでございます。したがいまして、物事の本質は、この両者の調整を図っていくというのが最終的な対応として必要であるというふうに考えておりまして、今三つの方式の設問がございましたけれども、一方的に就学を特殊教育諸学校に強制するということをとる前に、やはり念には念を入れて、十分保護者の理解が得られる粘り強い話し合いを継続しろというのを基本の線で指導しているところでございます。
  87. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 そうしますと、大臣、これは強制はしない、そう受け取っていいんですね。
  88. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 強制はいたしません。ただいま局長からも申し上げましたように、また私も申し上げておりますように、十分にその障害の程度に応じまして、教育委員会が中心になりまして、またお医者さん初め関係者とも十分な協議をしながら、何としても親の理解を得られるように最大限の努力をしていくということでございます。
  89. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 強制しないとすれば、実質的に未就学状態を続けながら説得するということは私は間違いだと思うんです。その理由は、第一に、親を説得し同意を求める義務が教育委員会にあるからには、入学式までにそれができないことは教育委員会の責任であって、親や子供の責任ではないと私は思うんです。第二に、未就学のままで説得を続けることは実質的に強制に通ずる、そういうふうに思うんですが、大臣の見解を聞きたいと思うんです。
  90. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) 四月一日までにその状態が解消するように全力を挙げて両方の話し合いを続けるというのが基礎でございますが、四月一日以降もそういう状態に陥っていくケースが全国的にも幾つかあるわけでございます。その際にどういう対応をとるかということで教育委員会も非常に悩むところでございますが、若干の時間がおくれてでもその最終調整を求めていくという方向で対応しているのが現状でございます。したがいまして、今のところ、じゃ暫定的に普通の学校にそれを入れていくというようなことまでの対応の段階に若干のおくれがあってもその調整を図った上でと、こういう対応をしているわけでございます。
  91. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 そういうことになれば、大臣、やっぱりこれは強制になりはしないですか。
  92. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 強制は、あくまでも強制的にどこどこに行きなさいということを指示することになるわけでありますから、今、局長が申し上げておりましたように、教育委員会が理解を得られるようにできる限りの話し合いを進めるということでございますから、強制というふうに考えてはいないつもりでございます。
  93. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 最後に、強制にならぬようにひとつさらに努力をしていただきたいと思いますが、問題はちょっと違いますが、厚生大臣一つだけお聞きしておきたいと思うんです。  先般、私は、カネミ訴訟の問題について、上告をすべきじゃない、これはやっぱり縦割り行政の矛盾というんですか、問題点が浮き彫りになっている事件ですからね。しかも、もう一つは、被害者が、罪のない人たちが二十数年苦しみ悩んでおる。同時に、国が上告すればカネミ、鐘淵の会社自体を支援することにもなる。こういうことはいろいろあろうけれども、この際ひとつ話し合いの中で解決すべきじゃないかと、こう私は言ったんだけれども、上告しましたね。これは私は、上告をすべきでないということがこういうふうになったことは非常に遺憾だと思うんです。大臣の見解と、あわせて住民の自治を預かる自治大臣の見解も聞いておきたいと思うんです。
  94. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 先般の福岡高裁判決において、いわゆるダーク油事件に対応した公務員がそれぞれの義務を尽くしていれば食用油による被害発生の危険性を十分予測することができ、国がこれに基づいて直ちに適切な処置をとっていれば本油症被害の拡大を阻止することができたとして、国に国家賠償法第一条第一項の責任があるとされました。この判決について私どもも慎重に関係省庁で、これは法務省、農林省でございますが、検討した結果、本件については、国の関係職員の職務権限、有害物質に対する知見の状況等から見て国の法的責任を見出しがたいと考えること等にかんがみ、さらに最高裁判所の審理、判断を仰ぐのが相当と考えて上告をいたしました。しかし、厚生省としては、裁判上の問題とは全く別個に、今後とも行政としてとり得る処置を講じてまいるとともに、種々の問題について患者の方々と十分話し合いを続けてまいりたいと思います。
  95. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 病気になられた皆さん方、本当にお気の毒だと思います。裁判とは別にしまして、地方自治体は住民の健康その他身近な問題について面倒を見なければならない立場にありますので、そのような配慮のもとに当該自治体に対して指導をしてまいりたいと、このように思っております。
  96. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 障害児の就学問題ですが、実際上未就学となっているケース、また入学式を目前にしてまだ就学決定を見ないケース、これは全国でどのぐらいあるんですか。
  97. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) 障害のために就学の猶予、免除という制度がございますが、現在約二千人ぐらいが猶予、免除の手続を終えているわけでございます。それからそれ以外の省で、障害の種類、程度に応じていかなる学校に就学するかということで、先ほど来の話し合いがまだ十分ついてないというのが、私たちの現時点で承知しているところでは十二、三件ございます。
  98. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 資料を提出いただきたいと思いますが、よろしいですか。
  99. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) 具体的にまだ解決していないところのケースの氏名とかそういうものでございますか。
  100. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 はい。
  101. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) それは後で提出いたします。
  102. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 なお、お願いでありますが、社会党の調査によりますと、たくさんの方が全国でまだ決まっていないんです。ですから、これは後で提出をいたしますから、就学できるように適切に御指導いただきたいと思うんですが、どうでしょう。
  103. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) そういう方向で教育委員会指導してまいりたいと思います。
  104. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 それでは見解を伺うんですが、第一に、学校教育法第二十二条の該当の障害児が普通校に就学している多くの事例というのは、これは違法なのか合法なのか、合法だが不適当なのか、正式にはどういう見解なんですか。
  105. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) 学校教育法の建前からいいますと、保護者は、義務教育九年間、小、中、それから盲、聾、養護学校いずれかの学校に就学させなければならないという義務を負うているわけでございます。そこで制度としては、盲、聾、養護学校にそれぞれの教育目的がございまして、それに応ずる生徒を収容していく、こういう制度で特殊教育諸学校を整備してきたわけでございます。そして、そのために小、中学校は市町村に設置義務を課すし、特殊教育諸学校については都道府県に設置義務を課するというような制度、仕掛けにしているわけでございます。したがいまして、制度の建前からいえば、盲、聾、養護学校に就学すべき者がそっちの方に就学をしていくというのが制度の建前でございます。しかし一方、法律論として違法かどうかというぎりぎりの議論になりますと、保護者の観点からいいますと、小、中、盲、聾、養護学校いずれかに就学さしているから保護者の就学義務を履行しているというような形になるわけでございます。そういうことで、建前としては、それぞれの種類の学校に就学させるということを制度の建前としておりますから、望ましいやり方ではない。しかし、法律上違法であると、そこまでの断定はできないという見解でございます。
  106. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 じゃ、合法だが不適当ということだな。
  107. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) 適当ではないということでございます。
  108. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  109. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。
  110. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) 制度の趣旨は、それぞれの学校に行くことを趣旨としているわけでございます。したがって、そういう法律、制度の趣旨に合っていないという意味で、適当でないということを申し上げているわけでございます。
  111. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 大臣、教育現場で一番大事なのは、親、子及び教師の意欲であると考えます。チャレンジスピリットであると考えます。障害児が普通児の世界に挑戦しようとする意欲というのは好ましいことだと考えます。子供たちには無限の可能性があって、これを行政が封じ込めるようなことはすべきでないと、こう考えるんです。大臣いかがですか。
  112. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 子供たちが教育に対してチャレンジ精神を持つというのはとても大事なことだと私も思います。しかし、先ほども申し上げましたように、心身の障害の程度あるいは能力、いろんな角度から十分このことを検討しなければなりませんし、教育委員会の方の指導も、単にその程度、能力の度合いを教育委員会から申し上げるというのではなくて、医師だとかあるいはまた現場の先生方の御意見とか、そうしたことをすべてしんしゃくをしながら親の理解を得るようにお願いをしているわけでございますので、そのことと、チャレンジ精神を全くそこをとめてしまう、その子供たちの希望をとめてしまうと、そういうことではない。あくまでも医師の専門的な考え方や、またそのお子さんが学校にお入りになって、その学校で他の生徒さんや先生と協調していただくということもまた学校教育の現場でとても大事なことですし、特に直接指導するのは何といっても学校の先生ですから、学校の先生の現場の声も十分お聞きして教育委員会として指導をしている、こういうことでございますから、先生のチャレンジ精神と全くこれが反するということではないと思っております。
  113. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 次に、筑波科学万博関連について伺いたいと思うんですが、施設の参加状況、それからこの現状、これはどうなっていますか。
  114. 赤羽信久

    政府委員(赤羽信久君) 筑波万博を行いますについては、政府を初めいろんな財源があるわけでございますが、一部を民間の御寄付に期待する、これが御指摘の施設参加と呼ばれるものでございます。資金計画上は七十二億円を予定しておりまして、現在のところ約八割程度御応募をいただいて、さらに満額の達成に努力をしているところでございます。
  115. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 見通しはどうですか。
  116. 赤羽信久

    政府委員(赤羽信久君) まだ一年ございまして、景気も悪いということで、今まで速やかな御回答をいただけないところもあったわけでございますけれども、今後の努力により相当程度達成していきたいと考えております。
  117. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 次に、筑波研究学園都市の熟成について伺うんですが、科学万博は既に概成された。それはその研究学園都市の熟成に役立てることを目的にしているのだと思うんですが、いかがですか。
  118. 杉岡浩

    政府委員(杉岡浩君) お答えいたします。  科学万博がこの筑波学園都市で開催されまして、これが日本だけではなくて、世界に筑波学園都市を紹介するということは非常に意義があることでございまして、筑波学園都市が今後熟成する上において非常に大きな意義があるというふうに考えております。また、この科学万博が開かれることに伴いまして関連施設、すなわち道路あるいは鉄道あるいは医療施設、水道等の諸施設がこれに伴いまして整備されます。したがいまして、この筑波学園都市のみならず茨城県南部地方の整備がこれによって進むというふうに我々は考えておる次第でございます。この筑波万博によりまして、その活力がこの地区に得られるわけでございますが、我々といたしましては、この活力をさらに生かしまして、筑波学園都市の熟成のために努力してまいりたいというふうに考えております。
  119. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 万博を契機にして、後の問題も含めて、筑波研究学園都市を構成する六カ町村の発展というようなことにはどうしても鉄道の新設が強く望まれているわけですし、期待も大きいわけですが、これはどうでしょう。
  120. 西村康雄

    政府委員西村康雄君) 今お話しのように、この六カ町村の方面の鉄道交通は非常に常磐線から離れておりまして、そのための発展の可能性というのは、少なくとも鉄道による利用というものが現在期待できない状況でございます。したがいまして、今後この地域が飛躍的に発展していくということのためには、今後の科学万博におきます常磐自動車道の発展あるいはこれらの沿道の整備ということが当面のかなめになるかと存じております。
  121. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 ぜひその期待にこたえていただきたいと思うんです。  次に、未来都市の施設の導入によって、関係市町村等についてはメンテナンスにしても地元負担が非常に多いんですね。縦は国土庁や住宅公団で行っても後は地元に任すというようなこんな状態ですね。自治体が非常に困るわけですが、こういう点についてはどういうふうにお考えになっているんですか。
  122. 杉岡浩

    政府委員(杉岡浩君) 筑波学園都市の建設に当たりましては、その事業の特殊性から、国といたしましても、また住宅公団といたしましてもいろんな面において、例えば立てかえ施工あるいは特別の財政援助等の措置を講じてきておるところでございます。  ただいま先生おっしゃいましたように、筑波学園都市は新しい都市でございます。したがいまして、真空集じん施設あるいは共同地域冷暖房といったような新しい施設が入ってくるわけでございますが、そういった例えば集じん施設等につきましても、またこれは現在試運転中でございますけれども、将来、例えば業務施設等からの手数料によって賄う等々、いろんな面において市町村の負担を少なくしようというような配慮をいたしておるところでございます。いずれにいたしましても、この筑波学園都市が熟成をいたしまして、種種の経営が十分成り立つように我々は期待をいたしておるところでございます。
  123. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 大蔵大臣、ちょっとお願いを含めてあるんですが、国賓として来日された方というのは必ず学園都市に行かれるわけですね。その特別交付金の五億円というのは来年で打ち切られるような、終了するというようなことで、存続していかないとこれはもう大変なんですね。これから万博もあるし、外国から大勢の方々が来る、そのたびに地元が大変な負担になるということはこれじゃちょっと困るわけですから、特に存続をして、その発展のために寄与していただきたいと思うんですが、どうでしょう。
  124. 杉岡浩

    政府委員(杉岡浩君) まず、国土庁の補助金でございますので、それにつきまして事務的に御説明さしていただきたいと思いますが、現在、財政援助措置特別交付金でございますが、これは筑波研究学園都市における町村財政負担特別措置要綱によりまして、昭和五十一年からこの筑波学園都市が建設され、その途上におきまして非常にその経費が大変でございますので、昭和五十一年から昭和六十年という十年間の特別交付金ということになっておるわけでございます。昭和六十一年以降の問題につきましては、まだ現在、これから二年ございますので、その段階におきましていろいろな角度から検討してまいりたいというふうに考えております。
  125. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私も正確に中身がわからなかったわけでございますが、科学技術博覧会の議員連盟、私も一緒に務めさしていただいておりますので、これから勉強さしていただきます。今、何とも申し上げようがございません。
  126. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 時間もなくなりましたが、最後に宇都宮病院事件についてお伺いをいたしたいと思います。  その後の捜査並びに調査状況についてどうなってますか。厚生省、それから警察関係、国税庁関係、まずそれぞれに伺います。
  127. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 栃木県と密接な連携をとりながら調査を続行しているわけでございますが、既に県におきまして三月十四日、二十二日、二十三日、二十四日の四日間立入調査を実施しております。また、厚生省におきましても、二十六日及び二十七日現地に職員を派遣いたしまして、県の調査結果を聴取し、いろいろと情報交換をしておるところでございます。  現在までに判明しております主要な点につきましては、医師数、看護婦数の不足、それから病室外に患者を収容しておること、次に無資格者によるエックス線照射の疑いでございまする。なお、患者預かり金のずさんな会計処理についても指摘をされておるところでございます。さらに、栃木県におきまして継続調査を行っておる状況でございます。  このような所見にかんがみまして、患者、家族に対します相談窓口の機能を強化すること、それから患者の転退院の促進、医療従事者の補充等病院側の改善措置を促す強力な指導を行っておるところでございます。また、県に対しまして入院患者に対する実地審査の実施を指示しておるところでございます。
  128. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) 警察側の捜査状況でございますが、栃木県警察におきましては、去年の四月と十二月に発生をしました事件につきまして現在捜査を行っておるわけでありますが、三月の十四日と二十八日の二回にわたりまして捜索、差し押さえを実施いたしました。引き続きまして二十九日に、四月に発生をしました事件につきましては傷害致死容疑、十二月に発生をいたしました事件につきましては傷害容疑ということで関係被疑者五名を逮捕いたしまして、現在捜査中でございます。事件は宇都宮地検の方に送致をいたしております。あわせまして、そのほか無資格診療につきましても現在捜査中でございます。
  129. 渡辺幸則

    政府委員(渡辺幸則君) 国税当局といたしましては、既にお尋ねの宇都宮病院につきましては調査を実施済みでございまして、その結果、過去の所得につきましても把握をいたしておるわけでございます。過去の五年間におきまして当初の申告以外のものとして追加申告をされましたもの、これはおおむね修正申告ということで調査の結果等を反映いたすわけでございますが、その合計が三億八千八百万円に達しておるわけでございます。
  130. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 この事件によって逮捕者が出たことはまことに不幸なことなんです。しかし、今回の人たちは、最初に私どもが指摘した二件のリンチ殺人の疑いの関係者のみではなくて、そのほかにも疑いがあると思うんですが、今後も厳正に対処する、こういうことであろうと思いますが、公安委員長、再三御答弁いただいていますが、厳正にひとつ徹底糾明も含めてお願いをしたいと思うんです。
  131. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) ただいま警察庁の金澤刑事局長が述べたように、この宇都宮病院につきましては厳正に対処をしてまいっておるつもりでございます。また、今後につきましても、犯罪容疑があればこの種のことについては徹底的に厳正に取り締まってまいる、このような方針で臨んでいるつもりでございます。
  132. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 調査を願った死亡者あるいは受傷者あるいは暴行を受けた者、事情聴取をした者、それから宇都宮地検の本件の担当検察官、検察事務官、そのうち専念している人、これはどのような数になるのですか、伺います。
  133. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) 事情聴取しました関係者の数等につきましてはちょっと今手持ち資料ございませんので、数についてはまだ後刻御報告したいと思います。  あと、検察庁側につきましては、法務省の方からお願いしたいと思います。
  134. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) お答え申し上げます。  本件につきましては、被疑者五名、三月三十日に地検で送致を受けまして、翌日勾留請求をして、現在勾留して取り調べ中でございます。なお、そのほかに宇都宮地検としては、宇都宮地検に対します直接の告訴事件、告発事件が合計二件ございます。それらをあわせまして現在宇都宮地検で捜査中でございますが、何人が専従しているか私も詳細存じておりませんが、宇都宮地検としては事件の重大性にかんがみ、現時点で可能な限りの人員を投入して迅速かつ適正な事実の解明に当たるものと考えております。
  135. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 前回も申し上げましたが、松本院長補佐、この方は元南署の次長をしていたんですね。この人はこう言っているんですね。告発を受けても部下が警察にいるから怖くないよ、こんな発言までしていると聞いているんです。したがって、厳正、公正を期するためには、東京地検で扱うか、十分な応援を出して宇都宮地検に特捜班を編成するなど、こういうことしかないのじゃないかと考えるんです。いかがですか。
  136. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) 前職員がこの病院に勤務しておることは事実でございますが、警察といたしましては、ただいまもお答えいたしましたように全力を尽くして事案の解明に当たっておるところでございますし、今後もそのつもりでやってまいりたいと思います。警察で捜査は十分にできるというふうに確信をいたしておるわけでございます。
  137. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) お答えいたします。  東京地検でというお話もございましたが、宇都宮地検におきましても厳正に本件の捜査に当たっておるところでございまして、宇都宮地検の捜査を見守りたいと思います。  なお、事案が進展いたしまして宇都宮地検で人員等で不十分であるというような事態が万一発生いたしますれば、それに相応いたしまして他の検察庁から人員を派遣するなり相応の捜査体制をしいて厳正に対処いたしたいと考えております。
  138. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 院長及び看護人に対する告訴が次次と起こされているような状況なんです。医療も保護もない現状の中で、厚生大臣ね、大臣が県知事と十分協議をしていただいて、県知事に緊急調査監督委員会などをつくっていただいて、宇都宮病院の所在地で結構でありますから、そういう人たちの患者さんの身柄を預かる、こういうようなことも考えていいのじゃないかと思うんです。大臣、どうでしょう。
  139. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 既に栃木県におきましては、関係部門を挙げまして特別なチームを組みましてこの問題に対処している最中でございます。調査はもとよりでございますが、判明する問題点に即応いたしまして必要な改善の指導監督に当たっているところでございます。したがいまして、ただいま御指摘のような問題につきましては、その機能を県において発揮しつつある状況にあるということで御理解を賜りたいと思います。  なお、先ほども答弁で申し上げましたように、相談窓口の機能強化あるいは転退院の促進、精神鑑定による実地審査の実施等、国としても県にこれを指示いたしまして、県で現在これを進めている最中でございます。このようなことを通じまして、入院中の患者さんの処遇には万全を期してまいりたいと、かように考えているわけでございます。
  140. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 昨日のロンドンで発行されておりますサンデータイムスに、我が国の宇都宮病院リンチ殺人事件は六件と報じられたと聞いているんです。日本の警察、検察は全貌解明を迫られていると思うんですが、全力を挙げてほしい、こう思います。公安委員長、それから厚生大臣、特にお願いをしたいと思うんですが、いかがですか。
  141. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 今、政府委員からその経過、今後の対策について答弁をさせていただきましたが、先生から幾たびか御心配をちょうだいしているように、精神障害者という特殊の立場にある患者の皆さん方の人権保護という極めて我々に与えられた重大な問題でございますから、入院しておられる患者の皆さん方のまず安全、それから今後こういうような御心配を起こさないようにということで全力を尽くして対処してまいりたいと思います。
  142. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 警察といたしましては、犯罪容疑があれば厳正に対処をしてまいります。御懸念されているようなことは絶対にございませんことをここで申し添えておきます。
  143. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 最後になります。
  144. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 時間になりましたから、簡潔に願います。
  145. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 宇都宮病院人権侵害事件というのは国際的にも恥辱であると考えるんです。そのためにも、我が国はダエス報告に対して賛意を表していくべきだと考えます。今回の事件にかんがみましてつくづく感じましたことは、精神障害者の救援センター、こういうものを必ず設立して、いろんな事情で病院にも家にも帰れない、こういう方々ですから、私たちは多くの方々のこういう期待、そういうものにこたえなければならぬと思うんです。これだけは、ぜひひとつ厚生大臣、実施をしていただきたい、こう思いますが、最後に御所見を伺って質問を終わります。
  146. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) ダエス報告書の勧告は、国連人権委員会差別防止・少数者保護委員会において本年の夏具体的取り扱いが審議されると聞いております。先月末、外務省より検討の依頼がありましたので、現在、厚生省において検討中であります。ダエス報告書の勧告は、精神障害者の人権を保護し、適正な医療を行うための必要な処置について提言したものであって、我が国においては精神衛生法により基本的にはこの勧告の趣旨が実施されているものと考えておりますが、なおこれはよく勉強をいたしまして、今、先生御心配のようなことのないように、また世界から日本が笑われるようなことのないようにこの問題に対して一生懸命頑張ってまいりたいと思います。
  147. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 救援センター。
  148. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) それも頑張ってまいります。
  149. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で高杉君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  150. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、梶原清君の一般質疑を行います。梶原君。
  151. 梶原清

    梶原清君 私は十二時までに質疑を終えたいと存じておりましたが、時間が詰まってまいりまして、私に与えていただきました時間さえ切ってしまったわけでございます。若干予定を変更いたしまして、主として要望なり提言を申し上げたいことを中心に進めてまいりたいと存ずるわけでございます。  まず、文部大臣にお願いをいたしたいと存じます。  御存じのとおり、我が国のことわざの一つに「親苦、子楽、孫乞食」ということわざがございます。親が営々として働き、苦労して財産を築く、その子が親がつくった財産で楽をして生活をする、孫が落ちぶれてこじきになる、こういう趣旨のことわざでございます。私事にわたりまして恐縮でございますが、このことわざと申しますのは、私が若いころ、国鉄の駅で働き、家で百姓を手伝いながら、昔の専検と申します旧制中学校の卒業検定試験を受けておりましたころ父から教わった言葉でございます。一つの家が栄え、そして没落をしていく戒めの言葉として教えてもらった言葉でございます。確かに、この「親苦、子楽、孫乞食」ということわざは一家盛衰のことわりではございますけれども、最近になりましてしみじみと感じますことは、一つの国家、一つの民族についても同じことが言えるのではないだろうか、私はそう思うようになっておるわけであります。世界の数々の歴史がそれを証明しているではないか、こういうふうに思うわけであります。  翻りまして、最近の我が国の現状を見てみますと、国土も狭く、小資源国である我が国が、国民の営々たる努力によりまして自由世界第二の経済大国になっております。物も豊かになりました。しかしその反面、大臣も御案内のとおり、校内暴力、青少年の非行に見られるような深刻な教育の退廃がございます。また、百二十兆円にも及ぶ国債発行残高に象徴されておりますような深刻な財政問題もあるわけでございます。どんなに苦しくとも今にして頑張らなければ、「親苦、子楽、孫乞食」の轍を踏み、我が民族の将来が危なくなってしまうのではないだろうか、このように心配をするわけであります。その意味におきまして、政府におかれて行財政改革を強力に推進されるとともに、このたび教育改革、教育刷新を内政の最重要事項として強力に取り組まれますことは、まことに時宜を得たことと心から敬意を表する次第であります。  この教育改革の問題につきましては、当委員会でも既に十分な質疑がございましたので、ただ一つ、「初め半分」、初めが大事だという言葉がございます。どうか最初の取り組みを間違わないように慎重にやっていただきたい。そして、我が民族の将来にとって極めて重要なこの大事業に粘り強く強力に取り組んでいただきたい、このことを強く期待申し上げるわけでございます。文部大臣の御決意のほどをまずお伺いいたしたいと存じます。
  152. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 梶原さんの大変含蓄ある御指導をいただきました。梶原さんから見ると、私などはまだ人生経験も極めて少のうございます。ただ、私も私事を申し上げて恐縮ですが、私の郷里は昔の田舎の名主でございましただけに、父が戦争から帰ってまいりまして事業に手を出しまして何回も失敗をいたしまして、蔵から財産がどんどん売られるのを見ながら、私の祖父が私を呼んで、あんな者になっちゃだめだぞと、こう言って父を非難をいたしました。父は私を呼んで、戦争に負けて多くの戦友や部下を亡くした、財産というのは残すためにあるものではなくて危急存亡のときに使うために先祖が残してくれた、今、森家の名誉を守るために、信用を守るためにこの財産は者なくしてしまう、おまえには財産は何も残さぬが信用だけはしっかり残しておいてやる、こう小学校のときに言われた父の言葉というのを今でも私は大変ありがたく思っておりますし、今日こうして国政へ出ることができたのもその信用のおかげだろうなと思って感謝をしておりますし、改めて今、梶原先生のお話を伺いながらそのことを思い出した次第でございます。  確かにおっしゃるとおり、きのう私は岡山県の自由民主党の政経文化パーティーでも申し上げて、「衣食足りて礼節を知る」、こういうことわざがございますが、衣食満ち足りてついつい子供のことを忘れてしまったのがどうも日本の現在ではないだろうか。経済を追求することも大事、昔の人も今の人もやはり経済は追求しただろう。しかし、新しい価値観を得た人たちは、やはり経済を追求するためには他の周りのことには余り目を向けなくなってしまった。そのことは、例えば不良雑誌をつくる。すばらしい日本で、有数な図書出版会社であっても編集人に任してしまって、とてつもないような不良雑誌をつくっておることに社長自身が全然気がついていない。あるいは、昔からやっぱり映画はいわゆるエロ、グロ、ナンセンスのものはあったと思うし、そのこと自身をとがめ立てることではないとは思いますが、子供たちの登校の道に平気でポスターを張るということに対する大人の配慮、そんなものが今日的に欠けている。これはやっぱり経済追求型というだけではなくて、経済を営む人たちの価値観も時代とともに変わってきている。こういうところが私は今日の社会の荒廃であろうというふうに考えております。  今、御激励をいただきました臨時教育審議会も初めが大事であるということでございまして、常々申し上げておりますように、戦後の日本の教育は世界の中で大きな注目を集めているわけでありますから、そういう意味では今日の教育は定着もしておりますし、世界から評価を受けていることは事実でありますが、同時に、その中で教育基本法あるいは憲法というその精神を大事にしながら、将来二十一世紀を担う青少年にふさわしい教育はどうあるべきか、こういうことを御議論をいただこうというものでございまして、そのためには人選にも十分気をつけて、そしてこの予算委員会を通じまして与野党の先生方からもいろんな御指摘がございました。そうしたことも十分踏まえながらこの教育の改革の任に当たっていきたい。  先月二十七日、法案の閣議決定に際しまして、私がその担当大臣を命ぜられました。極めて浅学でありますけれども、今、先生がおっしゃいましたとおり、とても大事な、将来の日本にとってのまさに命運がかかっておるようなそうした大事でございますので、私も一生懸命多くの諸先輩の御指導をいただきながら、また国会与野党の先生方の御指導もちょうだいをしながら文部大臣といたしまして職務遂行に全力を尽くして取り組んでまいりたい、こういう所存でございますので、今後とも御指導を賜りますようにお願いを申し上げる次第であります。
  153. 梶原清

    梶原清君 心強い御所信をちょうだいいたしまして本当にありがとうございました。ぜひ大いに頑張っていただきますように心からお願いを申し上げ、お祈りを申し上げる次第でございます。  それでは次に、行財政改革の問題に移るわけでございますが、私は交通関係の若干の事例を挙げまして、予算編成なり、予算執行、行政運営に総合的な立場で取り組んでいかなければならないという提案をいたしたいと存ずるわけであります。  その一つといたしまして、過疎地域におけるバス輸送の問題がございます。過疎地域におけるバス事業は過疎過密現象の進展に伴いまして非常に経営が苦しくなっておるわけでございます。そして、これに対応いたしまして運輸省におきましては、過疎バスの補助制度をずっと以前から拡充してまいりまして、これに取り組んでいただいておるわけでございます。また、文部省におかれましても、これまたずっと以前からスクールバスの補助制度を設けて、過疎地域における通学輸送を確保する努力を続けられておるわけであります。聞くところによりますと、十年ほど前からこのスクールバスを住民利用にも道を開くようになさっておるようでございますが、またそして、数字的には把握できておりませんけれども、各地方自治体におきまして医療施設への輸送を確保するための目的で自家用バスを運行しておられるケースが多々あるようでございます。つまり、いろいろの取り組みがなされてきておる。こういうふうに言えるわけでございますが、私が考えますのは、このように個々に取り組まれておりますものを何とかまとめて、専門のバス事業者できめ細かな輸送サービスが提供できるような方向に持っていくことができないだろうかということでございます。  これまでの観念では、バス事業といいますと、すべて大型バス、がらがらの大型バスを一日数回走らせているというのが実態のようでございますけれども、発想を転換いたしまして、もし従来のバス会社が直接できなければ小型バス専門の小会社をつくる、その小会社が路線バスの運行なり、スクールバスの肩がわりなり、貸し切りバスもやる、つまり何でも屋の地域の実情に合ったきめ細かな輸送サービスを慣用的に運営していく、こういうふうな状態に持っていくのがいいのではないだろうか、私はそう思うわけであります。世の中のことはすべて手のひらを返すように一度にできるわけのものではございませんので、どこかでやってみて、そしてこれを全国的に一般化していくということがいいのではなかろうか。要するに、各省ごとに進めておられる施策を総合した形で取り組むようにしてはどうかというのが私の提案でございます。その際、財政当局におきまして予算の編成に当たって温かい御指導を配慮していただきたい、このことをお願いするわけであります。  第二の事例といたしまして、空港の騒音対策でございますが、とりわけ問題になりました大阪国際空港の騒音問題、年に五百億、六百億もの騒音対策事業費を投じていろいろの施策を進めております。飛行場の周辺地域につきましては、任意申し出によりまして土地の買い入れ、そして氏家の移転補償というのを進めておりますけれども、仮に住居が百戸ありますと、一軒抜け二軒抜けして、歯が抜けるようにして抜けていくわけであります。そうしましたら、残る住民の方々は、二次公害といいましょうか、非常に迷惑になってくるわけであります。  そこで私が思いますのは、飛行場の周辺、直近の地域を都市公園にしてはどうか、都市公園事業として取り組んではどうだろうか。そうすれば建設省からの補助金もいただける、公共事業としての事業遂行もできる、また税金の面においても特例措置が講じられる。都市公園機能とそれから飛行場の環境対策、この二つの機能をあわせ持ったような施策ができるわけでございます。付近の住民の方々と相談をして適切な都市公園づくりをしていく、そういう取り組みが必要ではないか。と申しますのは、今、運輸省航空局の線で飛行場づくりをやっておる、それの環境対策を航空局の手でやっておりますけれども、しかし発想を転換して、そこへ建設省が所管されておりますところの都市公園を持ってくる。こういうことによって、いろいろ各省でやっておられますものをこれをうまく調整して取り組むことが、これが実情に沿うことにもなり、また国費をそう使わなくても済むようになるのではないだろうかというのが私の提案であります。  第三の事例といたしまして、同様のケースが新幹線の場合にもあるわけであります。グリーンベルトをつくらなければいけないところもございましょう。そのときは同じような考え方で取り組んでいただきたい。また、最近テレビで放映されましたわけでございますけれども、上越新幹線をつくりますときに、当然のことながら、その側道といいましょうか、工事用道路、数メートル幅のものを建設する。そして、新幹線ができ上がりますと、それを市町村道として市町村に引き取っていただく。こういうことが行われておるわけでございますが、市町村側といたしますと、財政事情その他からスムーズには引き取っていただけない、トラブっておる。したがいまして、その側道用地が管理者も十分でないままに放置されておりますために、テレビに放映されたり新聞に出たりするわけであります。  そこで、この新幹線といいますのは、広い地域にわたりまして必要な基幹交通施設であります。ぜひつくらなければいけない。新幹線をつくるときには当然工事用道路も要り、側道も要る。それができ上がった段階では市町村道として有効に使っていただかなければいけない。そうするならば、最初の段階からうまく各省ごとの事業計画を調整して、そしてこれが円滑に進むように取り組んでいく、こういうことでなければならないのではないだろうか、私はそう思うわけであります。現在、テレビにも出ておりましたケースから考えますと、側道として取得した土地はその資金が寝ておるわけでございます。金利負担もかさんでおる。こういう状態でございますので、政府全体としての取り組みをすることによってその円滑化を図れば国鉄の資金負担、金利負担も軽くなるわけであります。現在、国鉄は二十兆円に及ぶ長期債務を抱えて大変になっております。その金利負担だけでも大変でございます。それのよってもって生ずる利子負担といいますのは、それは今申し上げましたような一つ一つをうまく解決をしていく、取り組んでいくということによって、国鉄の利子負担も少なくなってくるのではないだろうか、私はこう思うわけでございます。  この三つの事例を通じまして各省にまたがる事業を国全体の立場で調整していく、また国土庁の事業調整費の活用も図っていただく、国土庁さんのお立場でできるだけ事業調整してやっていただくというようなことが今後大切ではなかろうかということを御提案し、また御要望申し上げるわけでございます。  時間をはしょりまして十分お聞き取りいただけなかったかと存じますが、要は予算編成の段階における、またこうした事業に取り組む際の総合調整機能というものが非常に大切だ、それを今後努力してやっていただかなければいけないということを提案申し上げるわけであります。このことにつきまして、関係大臣または政府委員、事務当局から御所見を賜りたいと存ずるわけでございます。
  154. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) お答えいたします。  専門家である梶原委員からの御提案でございまして、一つ一つおっしゃるとおりだと存じております。特に、一、二点重立った点について私からお答えし、詳細は政府委員に答弁をいたさせますが、私は運輸行政について地方の県知事さんなりあるいは市町村長さんとの関係というものが非常に疎遠であるといいましょうか、これは発生的に運輸のことは縦割りでずっと運輸一本でやるということになってまいった関係からかと思いますけれども、県知事さんも市町村長さんも陳情に見えるというわけで、一緒にやろうということが比較的少ない。これは農林行政や商工行政やあるいは教育行政、いろんな点と非常に違うところだと思っております。特に、そういう点、私どもの運輸行政については、中央の各省はもとよりでございますが、地方の機関と一体になる。できれば私は、年来、各地方機関の中に運輸専門の担当の、運輸を地方の立場から考える、今は重大なときでございますので、そういう部門を設けてもらう。非常に今熱心にやっていただいており、あるいは運輸省からも役人を一時派遣しておるところもあるので、そういうところは非常にうまくいっておりますが、そういう点を十分考える必要があると思っております。  特に、新幹線の問題につきましては、これから整備新幹線を敷こうという話が起こっておるわけでございますが、これはあなたの言われるようなことで考えていかなければ、あるいはさらにもっと強化をして、もっと地方と本当に一体になってやるということを考えなければ鉄道そのものができないのじゃなかろうか、かようにも考えておるわけでございまして、十分今後とも御指導いただきながらそういう点に注意をしてまいりたいと思います。
  155. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) スクールバスの御指摘でございましたが、スクールバスの購入費補助というのは、三十四年以来、僻地を持つ市町村に対しまして遠距離児童生徒の通学対策のために、バス購入のための補助をいたしたものでございます。先生指摘のように、できれば定期バスがあって、それが利用できるものであるなら定期バスの方がある意味ではもっといいのかもしれません。あるいは公営にするのか民間のバスなのか、その辺はよく自治体で御協議をいただくことが大事だと思っております。ただ、通学の場合は登下校の時間というのが、登校は定まっておりますが下校は少しばらつきもございますし、それから僻地によっても、また山間によっても非常にさまざまな道筋もありますので、必ず子供たちが学校に登校すること、下校することをきちっとカバーできるかどうかというのはとても困難な問題だろうと思います。でき得る限り町村が中心になってお考えいただくということが最もよろしいと思いますが、子供の通学を完全に確保してあげるということが、教育的な見地からしてこの方向が一応いいという判断をいたしておりますので、当面は補助事業を続けていかなければならぬと考えております。
  156. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ただいま例示をして、いろいろな各種公共事業の融合調和、こういう観点からの御意見を交えた御質問であります。私どもといたしましても、予算編成の段階からそういうことを期待いたしております。したがって、その一例がいわば国土庁の調整費というような形になっておるのも一つの証左でございましょう。しかしながら、特に今の御発言、地域に密着したプロジェクトであればあるだけに、その地域の方が描かれた青写真というものを、各省庁にまたがる公共事業でありましても、それが計画の段階から融合調和されて、また実施の段階にもそれが非常に計画的に調和された形で運ばれていくことが最も好ましい姿でございますので、今のような考え方を念頭に置きながら、今日も検討を進めていないわけじゃございませんが、一層検討を続け、御趣旨に沿うような執行体系ができることに私どもも努力したいと考えております。
  157. 小谷善四郎

    政府委員小谷善四郎君) 先生が御指摘のように、大規模な公共事業等を計画する場合には事前の段階からの調整も大切でございまして、私どもの調整費におきましても、その事業の実施の前に周辺の土地利用等も含めまして、全体計画との調整を図りながら計画を取りまとめるというようなことでやっておりまして、その面で調査調整費等を活用して、関係する公共事業を担当する各省庁が共同して調査を実施する、その結果総合的に整合のとれた計画を立てられるような方策を講じるというようなことをやっておるところでございます。  なお、既にできております、例えば空港等の環境対策等について調整費を活用できるかということでございますけれども、これにつきましては、公共事業の進度の不均衡を調整するという目的を持った事業調整費でございますので、そういう点でなじみにくい点がございますけれども、環境対策あるいは周辺整備を推進する方策について必要があれば関係省庁と国土庁としても十分連絡調整を図ってまいりたい、このように考えております。
  158. 梶原清

    梶原清君 あと二点触れさせていただきたいと存じますが、その第一点は、先般来、当委員会でも問題になっておりましたが、国鉄が品川駅の貨物跡地約四万六千平米の土地を一千億円の高値で売却した、こういう問題でございますが、一般公開入札をいたしまして高値で落札をした。私は、これは考えようによれば当然のことでございます。もしも、特定の私人に安い値段で落札をさせるということは、考えようによればとんでもない話であります。国鉄が現在非常に財政事情が苦しくて困っておるわけでございますけれども、この土地につきまして正規の手続で一千億円で落札をしたというならば私はこれは当然のことである。ただ問題は、その土地をどのように使うか、周辺の区なり東京都という立場でこの土地をどのようにして使うか、都市計画の問題ではなかろうかと思います。そして、国鉄の立場と周辺の自治体との関係をよく総合調整をした上で取り組んでいくべき問題がその前にあるのではないか。入札をして、そして高値で落札をしたということだけが問題ではなくて、それが問題でなくて、その以前の問題が重要ではなかろうか、私はそのように理解をいたしておるわけであります。そういう総合的な立場で事前に取り組んでいただくということをぜひお願い申し上げたい。これは御要望だけを申し上げるわけであります。  第二点といたしまして、今回の運輸省の組織改正、許認可官庁から政策官庁へということで組織改正が行われようとしているわけでございます。政策的な遂行を図っていく、これは大いに結構なことでございまして、ぜひひとつ頑張っていただきたいと存じておるわけでございますが、ただここでひとつぜひ皆様方の正しい御認識をいただきたいと思うことがございます。  これは例として挙げますのは、昭和四十六年に許可認可等の整理に関する法律というのが出まして、行政簡素化の立場で軽貨物自動車運送事業、軽自動車で貨物を運送する事業というのが免許制を外されまして現在自由営業になっております。その結果、どのような結果になっておるか。事務当局もお見えになっておりますけれども、私から申し上げますと、沖縄と奄美大島の周辺にいわゆる軽タクという現象が起きております。本来は貨物を運ばなければいけない、そうした事業者の方が旅客を運んでおります。そこで、陸軍事務所の係官がその軽タク事業者に、あなたは貨物を運ばないで旅客を運んでいるのではないか、こういうふうに問い詰めますと、我々は旅客などは運んでいない、貨物を運んでおると。この御婦人の方のハンドバッグ、この御婦人の方の買い物袋を荷物として運んでおるのだと。生徒のかばん、これを荷物として運んでおるのだと。この女の人はどうか、この生徒はどうかと言いますと、これは買い物袋なりハンドバッグなり、そしてこのかばんの付添人でございます、こういうことで、今、沖縄と奄美大島に千数百の軽タクグループがあるわけであります。それがだんだんと、これはいわば白タク行為をやっているわけでありますけれども、学校の門前にたむろをいたしまして生徒が下校してくるのを待っておる。その待っておる間におしっこもすれば、車の中で賭博行為をする、社会的なひんしゅくを買うという事態になっておるわけでございます。これの取り締まりのために、行政簡素化ところの騒ぎでなしに運輸省の出先機関は今本当に大変な思いをいたしておるわけでございます。苦労をしておるわけでございます。何のための行政簡素化の措置であったかということを疑問に思わざるを得ないような事態でございます。  そこで、私は、許認可行政から政策誘導行政へ、許認可官庁から政策官庁へということはこれはぜひ進めていただかなければいけない。何も必要でない手続なりをする必要はございませんし、重箱の隅をつつくような許認可行政の運用をする必要もございません。なるべく簡素化ということでやっていかなけりゃいけませんが、要は中心は、本質的なものは外してはいけない、このように思うわけでございます。  何が本質的なのか。これも私なりの見解を申し上げますと、こうしたテレビなりラジオというような品物は、生産をして貯蔵して消費をするという過程をとります。したがいまして、これは貯蔵財と言われております。ところが、タクシーのような運送サービスにつきましては、運ぶときと運ばれるときが同時であります。生産と消費が同時で、中に貯蔵という過程はないわけであります。したがいまして、それを即時財。と言っております。車に乗る人は、この車が果たして安全で確実で快適な輸送サービスをしてくれるかどうか、料金は適正な料金であるかどうかということは、おりてみて初めて、運ばれてみて初めてわかるという性格のものであります。したがいまして、この運送サービスを提供するこういう事業につきましては、どの車に乗っても安心して乗れるタクシー、こういう状態を政府が確保し、担保をしなければならない、それが免許制である、私はそう思います。免許制を外してしまって、そして自由にしてしまって、そして何の政策か、私はそう思うわけであります。持つべきものは、やはり権利すべきものはかっちり権利しておいて、そして十分な政策的な仕事をしていくということが望ましいのではないだろうか、私はそう思っておるわけであります。  一昨年の八月に公正取引委員会から発表されました「政府規制制度及び独占禁止法適用除外制度の見直しについて」という見解が発表されました。今までの免許制度はこれはいけないから許可制にせよ、届け出制にせよという考え方でございますが、私は今申しましたような見地から承服するわけにならないわけであります。今申しましたような即時財につきましては、国民の利益を守る立場から免許制が採用されておるのでありまして、何も運輸省の権益のために、業者の権益擁護のために免許制を採用しておるのではない、こういう信念に基づいて、確信に基づいてぜひともひとつ行政を運営していただきたいと、このように強くお願いを申し上げる次第でございます。行政管理庁にもお話を申し上げておりますし、公正取引委員会の方にも私の見解を申し上げておりますが、ぜひこの点を間違わないようにやっていただきたいということを御提言申し上げ、御要望を申し上げて、私の質問を終わらせていただきたいと存じます。
  159. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) 先般の品川の国鉄の土地売却は、いろいろな意味で非常な御批判を両方の側からいただいておるのでございます。今後、国有鉄道の財産処分というのは非常に大きな問題になるわけであります。特に、今年二月の貨物の方式改正によって大変な広大な用地があいてまいりました。片方で、今御質問にございましたような莫大な借財を抱えておる国鉄でございます。しかし、国鉄の持っております土地は、原則としましては都市計画にとって非常に重要な土地ばかりでございます。そういった意味で、先般の経験にかんがみて、今御説にありましたように、私どもどのようにこれを扱うかという基本原則について、国土庁あるいは大蔵省あるいは自治省、我々の方が一緒になって基本原則を打ち立てていくことが必要ではないかというふうに考えておる次第でございます。  あとの点につきましては、自動車局長からお答えいたします。
  160. 梶原清

    梶原清君 要望ですので、結構でございます。
  161. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) それじゃ、あとの点につきましては、私、事情をよく伺っておりますので、十分善処いたしたいと思います。
  162. 梶原清

    梶原清君 どうもありがとうございました。(拍手)
  163. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で梶原君の質疑は終了いたしました。  午前の質疑はこれまでとし、午後一時二十分まで休憩いたします。    午後零時十九分休憩      —————・—————    午後一時二十三分開会
  164. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 予算委員会を再開いたします。  昭和五十九年度総予算三案を一括して議題とし、これより飯田忠雄君の一般質疑を行います。飯田君。
  165. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 各大臣に御質問を申し上げますが、法律の解釈につきまして、恩赦令は恩赦令特有の性質があると思いますので、その恩赦令に特有の立場から解釈をし、公職選挙法は公職選挙法の目的がございますので、その立場から解釈をするのが正しいのではないかと思いますが、所管の大臣及び関係大臣の御答弁を求めます。
  166. 住栄作

    国務大臣(住栄作君) 恩赦法なり公職選挙法、それぞれ所管する省がございます。例えば、恩赦法につきましては法務省の所管でございますので、解釈は、最終解釈になるかどうかは別問題でございますけれども、第一次解釈、一次的な解釈としては法務省でやるのが当然だと思っております。
  167. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 公職選挙法は私の方で主管をしておりますので、また私の方で解釈をさしていただきます。
  168. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 私の質問は、どこの所管でやるというのじゃなしに、どういう立場で、どういう趣旨で、どういう方法で解釈をなさるのかと、こう聞いたんです。
  169. 住栄作

    国務大臣(住栄作君) まあ大体法律に則して書いてございますから、ただ、その個々の文言をどう解釈するかと、こういうことにつきましては、立法趣旨その他客観的にその文言がどういうことを意味しておるかという立場から解釈をすることがあり得ると思います。
  170. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 それでは、公職選挙法をお尋ねする前に、先般質問主意書を私、国会法七十四条によって提出いたしました。この御答弁をいただいたわけでございますが、この御答弁が納得いかぬ点がございますので御質問を申し上げます。  減刑令というのは、これは政令でございますが、昭和二十七年政令百十八号という政令は限時法でありましたか、いかがですか。
  171. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) お答えいたします。  このお尋ねの減刑令は、ある基準日を基準として、その減刑についての効力を定めた規定でございます。特に限時法というような性質のものではないと思います。
  172. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 限時法でないといたしますると、現在でも有効だと解釈できるのですが、それでよろしゅうございますか。
  173. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) 限時法というのが、通常いろいろな意味で言われていると思いますけれども、この減刑令については、先ほど申しましたように、一定の、昭和二十七年でございますけれども、昭和二十七年当時の日を基準にして、一定の場合に減刑の効果を定めたものでございまして、その点は現在から見ても同じことだと思います。
  174. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 この減刑令は政令でありますから、これは閣議を経て公布、施行されたと思いますが、いかがでございますか。
  175. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) おっしゃるとおりでございます。
  176. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 この減刑令によりますと、減刑令の一条の第二項によりますと、減刑は裁判が確定する以前の者についても行う趣旨のことが書いてございますね。方法が書いてありますけれども、それを前提としなければわからぬような条文でございますが、裁判確定するまでのその以前の者についても減刑を行うということは、これは恩赦法の趣旨から出てきたものであると思います。その点、いかがですか。
  177. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) この減刑令の一条の二項についてのお尋ねだと思いますけれども、この一条の二項は、ただいま御指摘のように、この減刑令の基準にした昭和二十七年四月の当時でございますが、その当時の前に禁錮以上の刑の言い渡しを受けているが、まだその裁判が確定していない者についても減刑令の対象にしておることは間違いございません。それで、ただ、この二項を引き続いて読んでみますと、この日の後に裁判が確定したときに、その確定裁判につき刑を減軽するというふうに定めております。すなわち、確定しなくても、確定とは全然問わずに、未確定の言い渡しそのものを減軽するという趣旨ではございませんで、その後裁判が確定した、その確定裁判の刑について減軽をするということでございますので、この減刑について法律が定めております恩赦法六条でございますが、恩赦法の六条でも、刑の言い渡しを受けた者に対して減刑すると書いてありますが、それと同趣旨に出るものであると考えております。
  178. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 恩赦法の第六条には、今おっしゃいましたように、刑の言い渡しを受けた者について減刑するとございますね。それに対する答弁書を見ますと、答弁によりまして、「「刑の言渡を受けた者」とは、刑の言渡しを受け、その裁判が確定した者をいう。」と、こういう御答弁をいただいておるんです。裁判が確定した者についてだけ減刑するんだと、こういう御答弁をいただいておるんですが、これと先ほどの話とは矛盾いたしませんか。
  179. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) 法律的に矛盾していないと思います。それは、私が先ほど申しましたように、減刑令の一条の二項は、その後に確定したときにその確定した裁判の刑について減軽するというふうに定めておるのでございまして、恩赦法六条が、刑の言い渡しを受けた者、すなわち言い渡しを受けたという裁判の効力を生じた者、すなわち確定裁判ということになるわけでございますが、その確定裁判の者に対して減刑を行うという趣旨に出るものでございまして、矛盾はしていないと思います。
  180. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 恩赦法の六条を見ますと、「減刑は、刑の言渡を受けた者に対して」と、こう書いてありますね。そしてそれを受けまして政令の方で、刑の言い渡しを受けて裁判が確定しない者についても減刑するということになっていますね。そうしますと、六条の解釈で裁判が確定しなきゃならぬというのだったら、減舟令の方もそういうふうに書かないと困るでしょう。その点はいかがですか。
  181. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) さらに結局同じお答えをすることになると思うのでございますが、なるほど裁判がまだ確定していない者に対しても、その日までに確定した者とのバランス上減刑令の対象として救済しようという趣旨に出たものであることは間違いございません。ただ、この減刑令の一条二項は、先ほど来申しましたように、その罪について裁判が確定したときに、その確定裁判としての効力を生じたその確定裁判の内容の刑を減軽するというふうに定めておりますので、恩赦法六条の規定の趣旨と変わらないと思うわけでございます。
  182. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 今の御答弁は私は全く納得がいかぬのですが、なぜ納得がいかぬかといいますと、減刑をする対象を六条は決めまして、「刑の言渡を受けた者」と、こう言っておりますね。ところが、減刑令の方でも減刑をする対象でしょう、対象は。裁判が確定していない者についても減刑するぞと言っておりますね。そうすると、六条の方も、これも刑の言い渡しを受けたということは裁判の確定ということは含まない、裁判の確定は関係ないんですよ。そう解釈しなければ、政府解釈が矛盾撞着を来すのですが、いかがですか。
  183. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) 確かにおっしゃるとおりに、裁判が確定していない者を対象とするという意味において、恩赦法六条の趣旨より広まっているのではないかという感じを持たれるのはやむないことでございます。しかしながら、先ほど申しましたように、それはまだ確定していないのに、未確定の状態のままのときに、その言い渡しで、ある刑そのものを減軽しようというのではないわけでございまして、やはりその罪について裁判がその後いろいろな状況で係属して、それで確定裁判に至ったと、そうすると、確定裁判で初めて刑というのが確定するわけでございます。その確定した刑について減軽をあらかじめするという、いわばあらかじめそういう宣言を減刑余でしたということでございますので、確かにおっしゃるように、減刑令を出した当時においては、未確定の者をもバランス上広めて救済しようという趣旨の規定ではございますけれども、しかし、恩赦法六条にのっとって、やはり裁判としての効力を生じたその刑を確定した、その刑について確定したときに減軽するということでございますので、恩赦法六条の趣旨は、そこまで恩赦というものが広まるのだと、その限度では恩赦というものはそういうことまで予定しているものだと当時理解をして政令が出されたものだと思います。その点については合理的な考え方であるというふうに思うわけでございます。
  184. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 どうもいいかげんな詭弁を弄してはいけませんよ。減刑令の方ではっきりと裁判が確定していない者でも減刑すると、こういうわけで、そのやり方は裁判が確定したその刑で減軽すると言っておるだけの話で、あれはやり方の問題だ、対象の問題じゃありませんよ。対象は裁判が確定しない者でも恩赦を行うということですよ。そうじゃありませんか。
  185. 住栄作

    国務大臣(住栄作君) 吉田局長るる説明をしておるとおりでございますが、恩赦法の六条、「減刑は、刑の言渡を受けた者に対して政令で罪若しくは刑の種類を定めてこれを行い、」云々と書いてございます。私どもこの「言渡を受けた者」というのは確定判決というように解釈をしておるわけでございます。そこで、昭和二十七年の減刑令の第一条一項は、これはもう当然のことでございますが、既に確定した者についての減刑を決めておる。ところが第二項では、この昭和二十七年四月二十八日の基準日に刑の言い渡しを受けただけだ、まだ裁判確定していない、そういう者をどう扱うかということを決めておるわけでございまして、この二項の条文の字句どおり、この政令の施行の際まだその裁判が確定していない者に対しては、この政令施行後その確定裁判があったときに減刑をするんだと、こういうことを書いておるわけでございまして、あくまでも減刑の対象は裁判が確定した者について行うんだ、こういう趣旨が第二項だと思います。これはどういう対象を減刑するか、これは一つは立法政策もあったのだろうと思うのでございますが、しかし恩赦法の第六条は、刑の確定をした者についてだけでございますので、減刑令の方も、基準日に確定していなくても、その後確定裁判があった場合に減刑ができるんだと、こういうように書いてある。したがって、恩赦法の六条、減刑令一条というのは決して矛盾するものではないと、こういうように考えておるわけでございます。
  186. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 どうもおっしゃることが法理論上筋が通っていないが、それじゃ、刑の言い渡しとか裁判の確定という言葉は、これはもともとは刑事訴訟法によるのですが、刑事訴訟法の中で、「刑の言渡」という言葉が裁判の確定という意味を含む条文をお示し願いたい。
  187. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 刑事法の関係の用語例でございますが、今御指摘の「刑の言渡」、あるいは「有罪の言渡」、あるいは「判決の言渡」という言葉が当該判決の確定と同じ意味に用られている例でございますけれども、そういう例は必ずしも少なくはございません。典型的な例を申し上げますと、例えば再審に関します四百三十九条、あるいは裁判の解釈を求める申し立てに関します五百一条等でございます。  典型的な例と申し上げました再審の規定を若干詳しく申し上げますと、再審の規定四百三十九条に栄きましては、「再審の請求は、左の者がこれをすることができる。」の二号に「有罪の言渡を受けた者」という規定がございます。この「有罪の言渡を受けた者」といいますのは、有罪の言い渡しを受け、その判決が確定した者を指すということはその言葉自体からは出ておりませんが、再審の請求でございます。御承知のように再審は、確定した判決、すなわち通常の不服申し立て方法をもっては争い得ない状態に立ち至った裁判に対し、非常救済手続として非常上告、再審等が設けられております趣旨からいいましても、このことは確定を意味することは当然のことであろうかと思います。  なお、ついでに、そうではなくて、刑の言い渡しを受け、「刑の言渡」というような言葉が必ずしもその確定を意味しないという場合、それもないわけではございません。その一つの例といたしましては、刑事訴訟法の三百四十八条でございますが、これは仮納付の判決でございます。そこにおきましては、最初に二項を申し上げますと、二項で「仮納付の裁判は、刑の言渡と同時に、判決でその言渡をしなければならない。」、ここで言う「刑の言渡」というのは文字どおり刑の宣告という意味でございます。と申しますのは、そのもとであります。第一項において、「裁判所は、罰金、科料又は追徴を言い渡す場合において、判決の確定を待ってはその執行をすることができず、」云云の場合には、仮納付を命ずることができるという規定でございます。これは罰金その他の有罪の判決を言い渡す場合において、判決の確定を待っては間に合わないという場合に行われるものだということが明記してございます。したがいまして、この場合には二項に言う「刑の言渡」というのは、文字どおりその裁判の宣告を言うというふうに当然解されるわけでございます。したがいまして、刑事訴訟法等の関係では何も言わないで「刑の言渡」というのが確定を意味するという場合が非常に多うございます。それも原則的と言えるかどうかは別といたしまして、その前後の趣旨等からこれはまさに明白でございまして、それが確定を意味しない場合には、今の三百四十八条のように確定前であるということが条文にその他の部分で明らかにされておる場合であると、このように考えております。
  188. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 この問題は、今のような三百代言式な御答弁では了解できないんです。再審の場合は当然判決があってからのことは当然のことなんですよ。あの場合に、確定のあった者はできるなんと書けないでしょう。だから「言渡」と書いてあるだけなんです。この問題は時間を浪費しますので、法務委員会のときにゆっくりやらしていただきます。こういういいかげんな御答弁では私は了解できません。  質問主意書の方へ戻ります。質問主意書で、とにかく「禁錮以上の刑の言渡しを受け、その裁判が確定したことをいう」というふうに法解釈をなされておるが、この「刑の言渡を受けこというこの恩赦法ですよ、恩赦法の言葉が裁判の確定ということを意味するなら、政令の方のあの一条二項は出てこないはずなんです。それが出てきたということは、当時政府としてはこの恩赦法の方は裁判の確定は意味しない、確定しなくてもできるんだという法解釈があったはずなんです。それは今でも生きているでしょう、政令規定の中で。いかがですか。
  189. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) この当時の考え方はその後取りやめたとか、そういうことでは決してございません。ただ、ここで何度も同じことを申し上げる結果になって恐縮なんですけれども、やはりこの減刑令の一条二項は、確定して、その確定裁判となって決まったその刑について減軽をするという趣旨でございますので、恩赦法六条と矛盾するものではないというふうに重ねて申し上げざるを得ないわけであります。
  190. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 この御答弁は私は納得いきませんので、明らかに矛盾したことを書いておきながら、そうでないとおっしゃる答えは納得いきませんので、もう一度よく皆さん相談してお答え願います。
  191. 住栄作

    国務大臣(住栄作君) 相談してということでございますが、私ども先ほど来申し上げておりますとおり、そしてまた答弁書でお答えしたとおり、この「言渡を受けた者」というのは裁判の確定した者だと、こういうように考えておるわけでございます。これは答弁書でお答えしたように、政府の中におきまして閣議決定の上答弁書としてお答えしておるわけでございまして、統一的な見解である。御理解いただきたいと思います。
  192. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 答弁書では、有罪の言い渡しを受けて不服なので上訴したと、上訴した理由でそれが確定しない場合、そういう場合でも減刑するという趣旨だというふうに受け取れる答弁書なんです。最初の六条のところでは確定しなきゃならぬと、こう言っておきながら、減刑の方では、上訴の理由で確定しない場合は構わないよというそういう答えなんです。これはどういうことなんですか四
  193. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) 答弁書の中で、未確定の者も未確定の状態のままでなおかつ減刑令の対象にしているとうかがえる趣旨があるということでございますけれども、この点はそのような答弁書にはなっていないと思うわけであります。ただ、質問主意書の二の(2)のところにおきまして、減刑令の一条二項に言う「「禁こ以上の刑の言渡を受け、………まだその裁判が確定していない者」とは、いかなる者をいうのか、見解を伺いたい。」という点につきまして、確かに「基準日前に禁錮以上の刑の言渡しを受けたが、同令施行の際、上訴中などの理由により、まだその裁判が確定していない者をいう。」というふうにお答えしております。これは裁判確定していない者についての解釈としてであると私は理解しておりますが、先ほど来申しましているように、あくまでも減刑令の対象にいたしましたのは、その後裁判が確定したときに確定したその裁判の刑について減軽するという趣旨でございますので、決して答弁書は未確定の者をも減刑の対象にするというような趣旨で答えているのではないと思います。
  194. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 もうこれは時間の節約上、この問題は答えは後でゆっくり留保いたしましてお聞きすることにいたしますので、次に進みます。  公選法の被選挙権の制限の規定につきまして御質問を申し上げますが、昭和三十年二月九日の最高裁大法廷の判決理由の中で、被選挙権は憲法上の国民の権利ではなく機能であり、国民全体の奉仕者である公選公務員となり得る資格であって、法律でこれを定めるものである。これは憲法四十四条に基づいて法律で定めるものだ、こういう見解が述べられておりますが、これにつきまして御見解をお伺いいたします。各所管大臣、者お願いします。
  195. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) ただいま御指摘になりました三十年二月九日の公選法事件というのは、御承知のとおり選挙犯罪に問われた者のそれに伴う公民権停止を踏まえた判決でありますが、その補足意見の中にただいま先生が読み上げられたような文言があると承知しております。その判決の趣旨はただいまお話しのとおり、選挙権、被選挙権につきましても一定の場合法律によっての規制があり得るものだということを書いたものと認識しております。
  196. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 選挙権は、これは憲法十五条に基づく国民の権利である。しかし、被選挙権はその資格だと、つまりみんな権利じゃなくて機能であるというふうに言ってますが、この点の御説明、御見解を伺います。
  197. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 何しろ最高裁判所の判決文の中身そのものでございますので、それについて私どもが見解とか批判がましいことを申し上げるのはいかがかと思います。ただいま御指摘のとおりの条文があり、そのような趣旨に了解しております。
  198. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 それでは次に、質問を変えますが、同じ最高裁の大法廷の判決の中で、斉藤さんと入江さんが言っておられることは、「わが憲法上法律は、選挙権、被選挙権並びにその欠格条件等につき憲法一四条、一五条三項、四四条但書の制限に反しない限り、時宜に応じ自由且つ合理的に規定し得べきもの」、こう述べております。これについてはいかがですか。
  199. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) ただいまお挙げになりましたのも同じ判決の中の補足意見の一部そのままでございまして、先ほどお答えしたとおりに存じております。
  200. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 同じ最高裁の大法廷の判決理由の中で次のように言っているんです。「選挙に関与せしめることが不適当とみとめられるものは、しばらく、被選挙権、選挙権の行使から遠ざけて選挙の公正を確保すると共に、本人の反省を促すことは相当である」、こういうふうに書いておりますが、だから制限をしてもそれは参政権の不法な制限じゃない、こういうふうに言っておられますが、この点はいかがでしょう。
  201. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) まさにそのような趣旨に基づきまして公選法二百五十二条が設けられているのだというように承知しております。
  202. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 公選法の十一条、御存じだと思いますが、これによりますと、禁鍋以上の刑に処せられた者について欠格条件が決められております。ところが、選挙犯罪についてはその条文の中で例外規定を設けろということになっておりまして、選挙犯罪では、例えば禁錮以上の刑に処せられた者の場合は裁判が確定した役と、こう書いてあります。選挙犯罪は裁判の確定ということが要件になっておるわけです。しかし、そうでない一般犯罪の場合は裁判の確定は要件となっておりません。同じ法律の中で書き分けているんですよ。どうですか、この問題はいかがですか。
  203. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 公選法の第十一条は、一般犯罪に関しまして、かくかくの刑に処せられた者につきましてのという表現で選挙権の制限をしております。この処せられたというものが、先ほど来お話がありましたように判決の確定と解しているということは既に御承知のとおりでございます。二百五十二条の方はいわゆる選挙犯罪に伴う公民権停止の規定でありますが、この方も、かくかくの公選法違反の刑に処せられた者は、その判決確定のときから何年間というように停止期間が書いてあるわけでございまして、私どもはこちらの方は期間を定める必要上その始期を書かざるを得なかったのであると、したがって確定の日という言葉が出てきただけであって、二百五十二条の処せられたる者と十一条の処せられたる者との間には基本的な食い違いはない、そういうふうに考えております。
  204. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 ただいまのは、あなたがそう解釈をされるだけの話であって、法文にはどこにも裁判の確定という言葉はないんです。裁判の確定という言葉があるのは二百五十二条の場合だけ、選挙犯罪についてだけです。立法常識からいきまして、そのように書き分けておるときには、ない方は関係がないということでしょう、そう解釈しなければおかしいでしょう、どうですか。
  205. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 法律の形にもよるかもしれませんが、十一条はかくかくの刑に処せられた者と書いてあります。二百五十二条の方もかくかくの刑に処せられた者は確定の日から何年間内と、こう書いてあります。したがって、処せられた者に関する限りこの点矛盾はないと考えております。
  206. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 条文をよく読まれたかな。選挙法の十一条の中で、選挙犯罪についてだけ特別の規定を設けるということをわざわざ断っているんですよ、同じ条文の中で。これはどうですか。
  207. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 先ほどのお読み上げになりました最高裁の判決の中にもございますように、結局、選挙に直接関係のある犯罪を犯した者については特に取り上げて制限を付する合理的な理由があるということで、一般犯罪の場合と両方を十一条が区分しているものであって、その点についても特に本質的な差はないと思っております。
  208. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 それではお尋ねいたしますが、十一条を裁判確定ということを持ち込んで解釈いたしますと、事実上十一条はほとんど死文に等しいものになりますね。犯罪を犯しまして選挙に出る、有罪になっても上訴すれば場合によっては十年間は有効だということになる。そういうような十一条を没却するような、空文化するような解釈が法解釈として正しいでしょうか。
  209. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 申しわけありません、ちょっとよく理解できない点があったのでございますが、十一条が判決確定をした場合の選挙権停止だと考えても特に問題はないだろうと思います。
  210. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 それはあなたが勝手にそう言われるだけで、本当は問題があるんですよ、これは。  よく総理が三審制の問題を持ち出して答弁しておられますね。三審制があるから、もし被選挙権をないということにしてしまうと、もし無罪になったらどうするかということをよくおっしゃいましたね。そうでしょう。この問題は明らかに総理も疑問に思っておるけれども、三審制の問題があるからそう解釈するということじゃありませんか。    〔委員長退席、理事初村滝一郎君着席〕
  211. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 先ほどの十一条の刑の確定するまでは選挙に立とうと思えば立てるんだと、こういう御意見でございますけれども、法律的に見ますとやっぱりそう言わざるを得ないと思うんです。ただ、ここで決められておりますのは、私のつたない見解でございますけれども、公職に立候補をするという者は当選すれば公職者になるわけですから、ですからそういう公職にある者は一審で有罪になれば、なるような者は、当然これは責任を痛感して立候補しないだろうというようなことも考えられてこういうような規定ができているのではないかというふうに私は見ているのでございます。
  212. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 十一条は明らかに有罪の判決を受けた者は資格がない。資格ですよ、権利じゃありませんよ、資格がないというふうに決めてある。決めてあるのに政府の解釈で資格があるということになさるから選挙問題が崩れてくるんです。どんな悪いことをしても上訴すればいつでも出れるとなったら、そういうことになるでしょう。そういう問題につきまして、三審制の問題で私ちょっと申しますが、よく三審制で、無罪になった場合に余りにもかわいそうだと、こうおっしゃるが、では有罪になった場合はどうか、私はお尋ねしたいんです。  そこで、ちょっと記録、統計を教えていただきたいんですが、上訴をいたしまして無罪になった件数、上訴をして有罪となった件数、これを過去五年間でいいですが、その件数を教えていただきたいんです、どちらが多いか。
  213. 小野幹雄

    最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 昭和五十三年に判決を受けた者の数でございますが、約八万一千人おります。そのうち控訴を申し立てましたのが九千八百九十四人ということで、約一万人でございます。五十四年は八万人判決を受けまして九千四百六十六名の控訴申し立て、五十五年は七万九千八百人ばかりのうち約九千名、五十六年は七万九千人のうち八千七百名、五十七年は約八万人のうち八千五百名ぐらいが控訴を申し立てております。率にいたしまして大体一〇%から一二%ぐらいということでございます。  そのうち控訴審で無罪になりました数を申し上げますと、五十三年は三十名、五十四年が二十三名、五十五年が二十五名、五十六年が二十名、五十七年が十一名ということでございます。なお、控訴審で差し戻しになりましてその後はっきりしていないというのが、五十三年で二十一名、五十四年で二十七名、五十五年で四十一名、五十六年で三十四名、五十七年で二十六名、こういうことになっております。
  214. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 今の御報告でおわかりになりましたように、無罪になる者は余り多くない。そうしますと、無罪になるから気の毒だからということは理由にならぬので、有罪になったことを考えますと、有罪になりますと国政の上で大変な影響を及ぼします。罪人が政治に関与するということを国が認めることになる。そういうことは一体どうでしょうか、御答弁願います。
  215. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 飯田さんのおっしゃろうというお気持ちはよく私も理解できるわけでございます。ただ、一般の犯罪にも三審制があるように、万一上級審で最初の判決と違ったような判決が出たというような場合に、選挙をやられるような方が選挙ができなくなっちゃう、そうして後になって無罪になったというようなことになれば、これはもう全く取り返しのつかないことになってしまうわけでございます。そういう意味で、気の毒だとかなんとかということではございませんで、一般の犯罪で三審制がある以上、公職上の選挙についてもこれはやむを得ない。ただ、先ほども申し上げましたように、政治に携わり公職についた音あるいはこれからつこうと選挙に出るという者は、少なくとも疑いをかけられた、あるいは起訴された、逮捕されたというような時期に当然これは責任をとるべきものだと。これが従来からずっと一般の社会常識にもなっておるし当たり前のことなんで、そういう当たり前のことにたまたま例外的に人物が出てきた、出てきたから、これは法律的に一審でもう立候補することができないと、こういうようなことをやられるというのは少し問題があるのではないか、こういうのが私どもの考え方でございます。
  216. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 私の考え方とまるきり反対の考え方を持っておられます。私はこういうものは法律どおり公選法が生きるような解釈をするのが正しいので、その結果選挙に出られなくなったといいましても、いろいろ事情がありまして、これはいつまでもとめるべきじゃないということであれば、そのための恩赦法がある。恩赦法で恩赦にして自由の身にすべきですよ。それを政府の方では恩赦法を厳しく解釈をして出られぬようにしておいて、肝心の公職選挙法は緩やかにしていくというそういう態度がおかしいじゃありませんか。恩赦法で見ますと、特赦だって言い渡しを受け取れば特赦できるんですよ。そう書いてあるんです。それをわざわざ裁判が確定しなくてはならぬなんて政府で解釈をおつけになるからできない。なぜそんな無理な解釈をなさるのか。私はたから最初お尋ねしたでしょう、法律解釈はどうだということを。
  217. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) これは法律解釈というよりも一つの政治諭でございまして、もちろん法律の解釈も重要でございますけれども、それではこの公職選挙法で、今飯田さんのおっしゃるように、こういう係争中の者であっても一審で有罪になれば立候補させないような、そういうような制度をつくる前に、まだやるべきことは、幾つかできる方法があると思うんですよ。だから、そういうことをもう少し広くお考えになれば、一挙に立候補制限をやらないでも方法が幾つかあるはずでございます。これは立法府の皆さん方がお考えになれば当然現行の枠の中でやるべき方法は幾つもあるし、それからまた、これは世論がそのようなことを防ぐ方法も私はあるのではないか。ですから、今おっしゃった気持ちはよくわかりますけれども、何も今すぐ法律をそのように改正をしないでもほかに方法はあるというふうに私は見ているのでございます。
  218. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 私は法律を改正せいと言っておるのじゃないんですよ。現行法で、現行法そのもので立候補は制限されておる。それをわざわざ政府が解釈でこれをゆがめられるというのはおかしいではないかと申し上げているんです。どうですか。
  219. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 公職選挙法十一条の解釈を、有罪の確定を見ないで一審有罪でこれを適用するというのはちょっと問題があるように私は思っておりますし、従来からの考え方としてそのような解釈はとれないというふうに思っております。
  220. 初村滝一郎

    ○理事(初村滝一郎君) 峯山君の関連質疑を許します。峯山君。
  221. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 先ほどから政治倫理の問題についてずっとお伺いしているわけでございますが、私はちょっと方向を変えまして、政治資金規正法の問題についてお伺いします。  政治資金規正法の見直しにつきましては、もう既に附則第八条の施行後五年後見直しというのが大分過ぎているわけでございますが、当然私は、この附則の中にあります「政治資金の個人による拠出を一層強化するための」云々というふうにございますので、そちらの方向検討が進められていると思いますが、その後の状況等あわせて御答弁いただきたいと思います。
  222. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 政治資金規正法の見直しにつきましては、御指摘のような附則の規定もありますし、極めて重要な問題だと考えているところであります。ただ、この問題につきましては、かねてからこういう機会にも御答弁がありましたとおり、それぞれの政党の財政的基盤そのものにつながるものであり、それぞれの政党のよって立つ基盤も違いますので、なかなか一律にはいかない面を持っているわけでございます。  御指摘のような個人寄附という問題につきましても、各政党の御努力にもかかわらずここ数年間の経過を見ましてもなかなか一定のところから先には伸びない状態になっております。そういうことを考えまして我々もいろいろ過去の公表の内容などの勉強をしているわけでございますけれども、やはり基本的にはそれぞれの政党のこれから先の経理的な基盤をどうするかということでもありますので、まず十分各党の間の御意見も承っていかなければならないのではないかという状態でございます。
  223. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 過去の収支報告書の分析をやるというふうな話、御答弁が前ありましたが、その分析の結果はどうなっていますか。
  224. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 個別的な数字を持ってまいりませんでしたけれども、やはり我々の関心は先ほど申し上げたように寄附、殊に個人からする寄附がどの程度伸びておるであろうか、どの程度のパーセンテージを占めているであろうかということでございます。これにつきましては過去いろいろ統計をとって調べてみたのでありますけれども、やはり各政党、政治団体の収入のうちの四%から五%ぐらいから先にはどうも伸びてこないのでございます。確かに数字が一時四%から五%にちょっと上がりましたけれども、これは制度の改正に伴うものでありまして、実質的には四%程度で低迷しておる、これが一番重要なポイントではないかと考えております。
  225. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 自治大臣にお伺いしますが、ことしの一月、昨年もそうでございますが、特に自民党の中で、企業献金の緩和の方向で政治資金規正法の改正を検討していくというふうな方向を決めたという報道があるわけでございますが、そもそもこの企業献金にもたれかかったいわゆる政治献金というのを個人献金の方向にというのが初めの方針だったわけですが、大臣のお考えをお伺いしたい。
  226. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 前回の政治資金規正法の改正の趣旨というものも、できるだけ政治資金は個人献金に移していった方がいいという思想が流れているように私は見ておりまして、峯山さんおっしゃったように、そちらの方向へ行く方がむしろ好ましい姿であるというふうに見ております。ただ、企業献金がもうそれは全くけしからぬ、悪だという解釈は私はとっておりませんで、企業が浄財として政治家あるいは政治団体に寄附をするということが一概に悪いということを申すわけにはまいりません。一部に企業献金の枠を現在よりも広げるという御意見がありますけれども、前回の政治資金規正法の改正の趣旨から見まして、また国民的な感情から見まして、今、企業献金の枠を拡大するというのは私はいかがなものかというふうに思っております。
  227. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ぜひこの政治資金規正法の見直しに早急に取り組んでいただきたいと思います。  それと関連をいたしまして、これは自治大臣並びに国税庁にお伺いしたいと思うんですが、先般から当委員会におきましても何回か問題になっております例の福島交通の使途不明金の問題であります。これは非常に重要な問題を含んでおりまして、これは自治大臣、いわゆる政治家に、レベルは何千万というレベルですね。何億というのもあるようでございますが、そのお金をいわゆる政治家に貸した、借りた、これはどういうことになるんですか、その取り扱いですね。国税庁と、それからこれは自治大臣のお考えをお伺いしておきたいと思います。
  228. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 個々の事実関係をよく承知しませんので、あくまで一般論としてお答えしなければならぬと思いますが、政治資金規正法との関係での貸借ということになると、まず第一に、政治家個人に関するものであればそれが政治活動に関する貸し借りであるかというのが最大の問題になると思います。それでなければ、何といいますか、例えば家をお建てになるとか就学資金だとかというようなお話になれば、これは政治家個人との関係では政治資金規正法の網の中に入ってこない、政治団体に関するものであれば貸付金そのまま報告書に載ってくる、こういう関係になると思います。
  229. 渡辺幸則

    政府委員(渡辺幸則君) 所得税及び法人税の課税に則しましてお尋ねの場合を申し上げますと、貸し付けをされました個人あるいは法人、それから貸し付けを受けました政治家の方それぞれにつきまして、貸し付けということ自体については別に所得は発生をしないわけでございます。貸し付けをしました方につきましては貸付金というものが立っておるわけでございまして、それに対して貸し付けを受けました方につきましては借入金という格好で立っておるわけでございます。その間に貸し付け、借り入れの授受があるということでございまして、資産、負債同額のものが動いておりますので、そのこと自体では所得にならない、したがって課税関係は発生をしないということでございます。
  230. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは自治大臣、もしこれがこのまま通ったといたしますと、これは実際問題大変なことですね。政治家の皆さんにお金を貸した、証書も利息も何にもなし、返済もいつでもいいと、事実こうなっていますね。これは中身を詳しく私あえて申し上げませんが、いずれもこういうようなものからいきますと、もしこれが通過したとすれば大変なことになってしまう。現在の政治資金規正法はまさにざる法になると思いますが、大臣のお考えをお伺いしておきたい。
  231. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) よく政治資金規正法はざる法だとおっしゃいますけれども、政治資金規正法の運営を厳しくやっていけばざる法なんということは私はあり得ないと思うんです。罰則もありますし、問題はどの程度まで調べることができるかというところに問題があるわけでございまして、自治省としてはそのような調査権はございませんけれども、犯罪が成り立つという容疑があれば、これはもう検察当局、警察が行動を起こすわけでございまして、恐らくいろんな情報収集をしておると思うんです。私は警察の方も担当しておりますけれども、警察当局にもこういう問題は容疑の事実があれば厳正に対処すべきであるということをこの事件が明るみに出ましてから言っているのでございまして、事柄の性質上なかなかわからない面も随分あるわけでございまして、新聞に出ていることがすべてであるかどうか、こういうことも疑問でございますが、いずれにいたしましても犯罪の容疑が少しでもあれば私どもは厳正にこれに対処していくという決意でおるわけでございます。
  232. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 生命権と生存権の保障問題について御質問を申し上げます。  角膜及び腎臓の移植に関する法律というのがございますが、この法律では、死体から腎臓、眼球の摘出をし、他人に移植することを認めております。ところが、この法律には死体の定義がございません。死を決定する根拠法規なしに死体ということでやっておりますので、場合によりますと生体解剖になるおそれがあると思いますが、こういう問題についていかがお考えでしょうか、所管大臣にお尋ねいたします。
  233. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 御指摘のございましたように、我が国では死につきましての法律上の定義等はございませんけれども、伝統的にはいわゆる心臓死をもって死としておるところでございまして、また御指摘のございました角膜及び腎臓の移植に際しましては、死をしっかりと確認してから行っておりますので、生体解剖というふうなことはないと考えます。
  234. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 かつて札幌医大の和田教授の心臓移植問題がございました。この結末はどうなったのでございましょうか、お尋ねいたします。
  235. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) お答えいたします。  お尋ねの事件は昭和四十三年の事件でございます。昭和四十三年八月八日の札幌医大の和田教授の行為が殺人あるいは業務上過失致死等に当たるのではないかという告発がございまして、札幌地検で捜査をいたし、これを不起訴処分にいたしております。昭和四十五年九月一日、不起訴処分にいたしております。
  236. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 あの和田教授の事件は、告発をされたのは、あれは生体解剖ではないかということだったと思いますが、あれは生体解剖でなくて死体解剖だというふうに考えられて不起訴になさったのでしょうか。
  237. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 生体解剖というお言葉でございますが、被疑事実として告発されました事実は、当時水泳中の事故で仮死状態にあった甲という人、そこの胸部から心臓を摘出して他の患者に心臓を移植したという事実につきまして、その胸部を切開して心臓を摘出したことが殺人ないし業務上過失致死に当たる、あるいは、移植を受けました人について見れば、拒絶反応によって患者が死亡することが明らかであることを知りながらその手術を行ったという点で殺人あるいはその関連で業務上過失致死に当たるのではないかというのが告発事実でございます。これにつきましては、殺人の件につきましては、心臓摘出時においてその人が生存していたと認めるに足る証拠がない。それから、もう一人の移植を受けた方に対する事実につきましては、延命効果を期待した治療目的による手術であって、未必的に殺意も認めがたいということで殺人罪については不起訴でございます。それから、業務上過失致死罪等の成否につきましても、当時の医学上の問題もいろいろ検討いたしました結果、この和田教授の行いました手術、これは違法なものとは認めがたいということで不起訴になっておるわけでございます。
  238. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 違法なものと認めがたいとおっしゃいましたが、死亡を確認したという証拠があったんでしょうか。
  239. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 理由といたしましては、当時生存していたということを認めるに足る証拠がないということでございます。
  240. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 生存したという証拠がなければ死亡したというふうに解釈なさるのでございますか。
  241. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 生存したという事実が証拠上認定されなければ、殺人罪あるいは業務上過失致死罪の成立はないわけでございます。その前提となります生存していたという事実を認めるに足る証拠がなかったということでございます。
  242. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 これは、何をもって死とするかという点の認識が不完全であるために起こった問題だと私は思います。死というものに対して、生死を明確にするということが重要だと思いますのは、憲法の十三条は、生命に関する国民の権利について「最大の尊重を必要とする。」と、こう決めております。ですから、どこまでが死でどこまでが生だという問題は、早急に法律で決めるのが筋ではないかと思いますが、いかがですか。
  243. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 死につきまして、その定義等、これを法律で決めるかどうか、これはその国の置かれております諸般の条件、広くは文化の問題ではないかと思うのでございます。  死に関する声明で有名なシドニー宣言というのがございますが、この冒頭の部分で、「大部分の国で医師の法的責任とされており、今後もそうであるべきである。」と、こう書いておりますが、また最近、医学の進歩によりまして新たに起こった脳死について各国の状況を見てみますと、脳死を死と法律で明記しておるところもございまするし、医学的には脳死を死と受け入れているけれども、法律的な規定はないところもございます。また、認めていないかあるいはあいまいなところもございます。一九八二年九月現在で、アメリカ合衆国について見ますと、三十三州では法で決めておる。その他のところは、医学的には死としておりますけれども、法律では決めておらない。こういう状況でございまして、一概に決めるべきかどうか、という問題だと思います。
  244. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 病理解剖ということがございますね。病院で人が死にますと解剖するわけですが、これは死後、宣告後、火葬前にやってしまいます。法律によりますと、火葬、埋葬というものは、これは時間的に制限がある。二十四時間の時間を置けとなっているんですが、その時間を考慮しないで病理解剖は行われております。それは法律上許されることかどうか御見解を承ります。
  245. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 病理解剖でございますけれども、ある病院がいい病院であるかどうか判断する一つの物差しを示せと言われれば、この病理解剖をどれだけやっているかというのがよろしいかと思うのでございますけれども、この病理解剖を行いますには、担当医師は大変な努力をするわけでございます。生前から誠意を尽くして診療に当たっておりませんと、なかなかその遺族の了承は得られない。そこで病理解剖をするに当たりましては、遺族の承諾を受けて行うということでございます。  それから今、時間の問題がございましたけれども、ある国立病院の例でございますと、やはり死亡して悲嘆に暮れておる遺族の承認を得るわけでございますから、早くて三時間後ぐらい、遅いときで十二時間ぐらいということでございます。これまで特段の問題は承知をしておりません。
  246. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 法律がなぜ二十四時間という制限規定を置いているかという問題の回答にはなりませんが、まあ死んでいるからいいということであるならば私も了承いたします。しかし、死んでおるかどうかという証明がないと犯罪を構成するんじゃありませんか。
  247. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 先ほども申し上げましたように、死の判断は医師が総合的に判断するわけでございますが、伝統的には心臓死をもって我が国では死としておるわけでございますけれども、特に書面をもって証明するということではありませんが、死を確認をしておるわけでございます。
  248. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 心臓死を伝統的に決めておるとおっしゃるけれども、それはどの法律で決めておりますか。
  249. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 先ほども申し上げましたように、我が国では法律では決めておりません。医学的な事実と国民の共通の認識に基づいて伝統的には心臓死をもって死としておると、このように理解をしております。
  250. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 そういうことでありまするならば、死というものを法律で決められた方がいいと私は思います。先ほど脳死というお言葉が出ました。脳死というものは今日の医学において再び生き返らない状態だということを聞いておりますが、それが真実ならば脳死をもって法律の死とするということをお決めになることはいかがでございますか。
  251. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 法律をもって決めるかどうかということにつきましては先ほどお答え申し上げましたけれども、生と死の問題は連続しておるわけでございます。そこで重要なことは、いかなる手段を講じようとも蘇生をしないという事実が確認されることが重要なことでございます。例えば、脳死に至りました場合にも末端の細胞は生きているものがあり得ます。伝統的な心臓死の場合にも同様でございます。したがいまして、脳死のみを死とするということはいかがであろうか、心臓死もやはり死であろうかと思います。
  252. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 監獄法という法律を御存じだと思いますが、監獄法によりますと、死刑の規定がございます。死刑にする場合は死刑にする絞縄、つまり縄を首にかけましてつるすわけですが、死相があらわれたのを検して後五分間たたなければ外してはならないとなっております。その理由はなぜだとお考えでしょうか。
  253. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 恐らく確実に死を確認するためというふうに考えております。
  254. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 死を確認すると言うのですが、それは生き返らないということを確認するためですね。生き返らないのは、脳の全部が死んでしまったということが起こって初めて生き返らないということになると私はお医者さんから聞いたんですが、この点について責任の方はどうお考えになりますか。
  255. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 先ほど、重要なのは臓器の死ではなくて、いかなる手段を講じましても今お話のありましたように生き返らないことであると申し上げましたけれども、お話にもございましたように、脳死の場合には生き返りません。また心臓死の場合にも生き返りません。したがって、脳死のみをもって死とするのはいかがであろうかと思うわけでございます。
  256. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 ここに新聞記事がございますが、五十九年三月十九日の読売新聞です。これによりますと、病院内の基準では脳死を死とするというふうになっておると、こう書いてあります。従来、腎臓移植は脳死の段階で行った例が非常に多いということが書いてあります。こういう御調査をなさっておるでしょうか。
  257. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 今日、死と判定いたしますのは伝統的な心臓死が主体でございます。また、この死に至る過程でも心臓死の方が主体でございます。そこへ医学の進歩によりまして脳死という状況が出てきたわけでございますけれども、およそ十年前に脳波学会が脳死の判定基準をつくりました。そこで、この脳死の判定をいたします場合には、その基準に準拠しているものが大多数であると承知をいたしております、一方、脳死につきまして考えます場合に、まず医学関係者の間で脳死についての考え方をはっきりと固める必要があると考えまして、昨年度から脳死に関する特別研究班というのを設置いたしまして、いろいろと今御検討をいただいているところでございます。そのときに各病院の状況等が明らかになってこようと存じます。
  258. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 前にもありましたように、心臓はこれは取りかえることができますね。心臓死をもって死とするのなら心臓を取りかえるということができるんですが、これはどうして生死を判定しますか、お答え願います。
  259. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 先ほど脳死のことについて申し上げましたけれども、心臓移植、外国で行われております場合には脳死が主体であろうと考えます。
  260. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 心臓とか肺とか、ほかの臓器は皆取りかえがきくのに脳は取りかえがどうもきかないように聞いておりますが、脳でも取りかえがききますか、お尋ねします。
  261. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 私の知識の範囲では、今日の医学ではできないと存じます。
  262. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 脳は取りかえがきかない基本的なものです。だからこれが死ねば死でしょう。心臓とかほかのものは死んでも取りかえればそれで生きるではありませんか。いかがですか。
  263. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 心臓移植によりまして死を免れるわけでございますから、死に至った者に心臓移植してもこれは蘇生をしないわけでございまして、病気でもって傷んだ心臓を取りかえますとその人は死に至らない、こういうことでございます。
  264. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 心臓が死んだ瞬間にまだ脳が生きておる、こういう場合に取りかえればいいわけじゃありませんか。いかがですか。
  265. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) これは技術の問題になろうかと存じますけれども。脳は酸素欠乏に非常に弱いわけでございます。それで完全に酸素の供給がとまりますと数分で機能がなくなりますので、今お話のありましたように、瞬間的に取りかえるというのは極めて難しいのではないかと思います。
  266. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 心臓移植のときには取り去る心臓は死んでおるでしょう。そのときまだ脳が生きておりますね、取りかえがきくじゃありませんか。どうですか。
  267. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 先ほども申し上げましたように、心臓移植の対象となる患者は心臓が病気なわけでございましてまだ死に至っておらない、その心臓を取りかえるわけでございます。
  268. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 ですから、脳死を死ということにいたしまして、脳が死なない限り生きておるとして扱った方がいいのではないか。そして、生きておればほかの臓器は取りかえるということができるような、そういう法律をつくることが今日の急務ではないかと申し上げているんです。憲法の十三条は、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と書いてある。そういう問題があるのに、これを最大に尊重しない行政、国政というものは問題ではありませんか。いかがですか。
  269. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 今、専門的な立場で政府委員からいろいろ答弁をさせていただきましたが、申し上げましたように、現在のところ、我が国の長い慣習もございましょうし、また国民的合意もありますし、また臨床の今までの長い体験の中で心臓死というものが我が国の一般常識の中で死の判定基準になっておったわけでありますが、これは別に法律に書き込んでおるわけでも何でもございません。今、先生からいろいろ御指摘がありましたように、最近医学的に急速な進歩が行われ、内臓、臓器、そういうものの移植とかいろんなことが行われまして、最近は脳死をもって死の判定基準とするべきであるというような声も私どももいろいろお聞かせをいただくのであります。しかし、まだやはり脳死をもって死の判定基準とするというところまで国民的コンセンサスが得られておるものとも私ども思いません。しかし、先生の今問題にされておる点が今後の医学上の進歩、そういう意味で大きな内容を持っておることも事実でございます。  そこで、私どもは、先ほど政府委員からも答弁がありましたように、脳死についての研究班というものをつくりまして、これを医学上の立場から今勉強をしていただいておるのでありますが、これらの検討の結果を踏まえて、やはり人間の生命の尊厳という私ども侵してはならない一つのこれは法律以前の大事な基準というものがございますから、そういう中で、これは新しい進歩をしていく医学に現実を合わせていく、まさにこれは二十一世紀の問題でございますので、これらの問題、私ども大いに勉強して先生の期待にこたえてまいりたいと思います。
  270. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 脳死の問題につきまして、ぜひ立法化する方向で進めていただきたいと要望をいたす次第でございます。  次に、現在の刑法のおかげで大変困った事態が生じておるわけです。例えば精神異常者とか心神喪失者というものが犯罪を犯しました場合に、これを罰する刑法がない、したがいまして野放してあります。そういう刑法で一体いいのかという問題がありますが、この点についてお尋ねいたします。
  271. 住栄作

    国務大臣(住栄作君) これは釈迦に説法みたいなことになりますけれども、現在の刑法は責任能力ということを基準にいたしまして処断をしておるわけでございますが、近代国家と申しますか、先進国すべて主観主義刑法と呼ばれるような観点からこれを処理しておるわけでございまして、意思能力のない者を処罰の対象にしないと、こういうことでございます。ただ、そうなってまいりますと、今御指摘のように、心神喪失だとかということになって、犯罪に当たる行為を犯しても処罰はされない。それが一体いいのかどうなのか、こういうことが大きく問われていることも事実でございまして、その一つの考え方として、刑法の改正案等におきましては、保案処分と申しますか、治療処分と申しますか、そういうようなことも考えられておるわけでございまして、確かに今御指摘の問題は大変重要な問題と思っております。
  272. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 ぜひ刑法改正、これはやらねばならぬと思います。今の刑法は明治憲法の思想でできた刑法ですから、これを今の憲法の思想の刑法に一日も早く変えていただきたいと思います。憲法十三条の精神を生かした刑法をお願いをいたす次第であります。  時間がなくなりましたのでその次の問題に入りますが、現在学習塾というものが非常に盛んでございます。そして入学試験を受けるためには皆学習塾へ行く、こういう状況でございますが、これが今日の教育を混乱さしておるもとだというふうに指摘する人もございます。教育の根本がここにあるというふうに言う人もございます。文部大臣の御見解をお尋ねいたします。
  273. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 学習塾につきましては、いわゆる補習型のものもございますし、それから進学塾的なものもございまして、それぞれ実態はさまざまでございますし、ここに通う児童生徒もそれぞれ理由の差異があるわけでございます。文部省といたしましては、学習塾に通う社会的な背景、このことにむしろ問題を絞りていかなければならぬというふうに考えます。飯田先生も十分御専門でございますから御承知のとおりだと思いますが、端的に言えば、学歴偏重による社会的な風潮あるいは現在の学校教育に対する指導のあり方、あるいは入学試験のあり方、そしてもう一つ一番大きな問題としては、やはり子供の養育に対する親の関心のあり方、これが学習塾に通うこうした時代背景であろうというふうに私どもは考えております。  文部省といたしましては、児童生徒が学習塾に通うことを必要としない状況をつくるということが肝要なことであろうというふうに考えておりまして、そういう面での学校教育の充実を図っていかなければならぬと考えております。先ほど申し上げました背景の裏返しになるわけでございますけれども、入学試験の改善をすること、あるいは学習指導や進路指導の充実、あるいは、何といいましても先生の資質を向上して、子供たちあるいは親のそうした不安感を除去してやること、そうしたことが指導の方法として大事なところではないか、このように考えておりますが、なかなか社会の進展の度合いと学校教育の中の一つの親に対するかかわり合いとのやはり限界というものもございますが、大変難しい問題でありますが、これはもうとにかく努力をしていかなければならない問題だと、こういうふうに考えております。
  274. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 今の学校制度を破壊しておる一番大きな問題は、もとはやはり入学試験だと思います。入学試験のない教育制度を研究していただくことが必要ではないかと思いますが、なるたけ全員国立大学に入れる、そして一年生で大部分の人を追い出してしまう、そのくらいの覚悟でおやりになる教育制度を考えていただきたいわけです。そういう根本的な教育制度を考えられるかどうか、文部大臣にもう一度答弁をお願いをいたします。
  275. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 私も、高等教育に進みたい人にはどんどん進んでいただいて、そしてそれこそ憲法にはっきり書いてありますように、能力に応じて学んでいただくということが一番理想的だと思います。しかし今、飯田先生から大胆でしかも大変興味ある御提言をいただきましたけれども、五十九年度の国公立大学だけ見ましても入学定員が約九万七千人でございまして、共通一次試験に限ってでありますが、志願者が約三十六万一千でございますから、この方々が全部国立に入るということではないといたしましても、この皆さんを全部国立大学に入れると一体どういう学園、あるいはどういう高等教育の規模をつくらなきゃならぬのか。あるいは、問題は一年の間の教育のシステム、それから今度は二年に進むときに、今、先生から御指摘いただいたような仮に試験をする、進級制度をすると、そこにまた激烈な競争が出てくる。あるいはそれに漏れた人たちは一体どこへ行ったらいいのか、また学校に残るのか、これが社会に出ていくための就職の問題というものも考えていかなければならぬ。そういうさまざまな問題も考えておかなければならぬことでございまして、そういうふうに基本的な理念といいますか、哲学としては、学びたい人は入れてあげて、そして学問をしながら進級していくという、この基本的な私は手筋は大事だというふうに思っております。  どうも今の大学は入る前に勉強して、そして入ってから勉強しないということになってしまう、いろんな理由はあるんだろうと思いますが。私も国大協の先生方とお話しを申し上げているときには、むしろ入ってからついていけないから塾にあるいは家庭教師につかなければ学べないというぐらいのやはり教育に対する気持ちがなければ本来の高等教育機関ではないんじゃないかなということも申し上げたことがございますが、基本的な問題としては、入試改善に関するいろんな角度で今国立大学協会もあるいは私立大学も御検討いただいていることでございますので、文部省といたしましても基本的な形は、できるだけ子供たちには負担にならないような形で大学に入っていただいて、そして大学こそ文字どおり高等教育の学問を研究し、そしてさらにそのことを後世に残していく、あるいはそういう文化を継承していく、この基本的なやはりスタンスが大事だと、このように考えております。
  276. 初村滝一郎

    ○理事(初村滝一郎君) 時間が参りました。ごく簡単にお願いします。
  277. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 共通一次試験を廃止する御意思はございませんか。
  278. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) たびたび申し上げておりますが、従来の経緯の中で共通一次というものはやはりみんなで編み出した方法でございます。確かに悪の権化のように言われている向きもございますが、むしろこのことを改善して、一次試験と二次試験の組み合わせを工夫していくことの方が今日的なやはり国民的な要請にこたえるものであろう、こういうように考えております。
  279. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 終わります。(拍手)
  280. 初村滝一郎

    ○理事(初村滝一郎君) 以上で飯田君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  281. 初村滝一郎

    ○理事(初村滝一郎君) 次に、瀬谷英行君の一般質疑を行います。瀬谷君。
  282. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 最初に、農産物の問題について農水大臣にお伺いしたいと思うのでありますが、農林水産大臣がアメリカに行くとか行かないとかいうことがいろいろと取りざたをされております。もし行かれるとすれば、どういうふうなある程度の見通しがついているのか、あるいは行かないとすれば、どのくらい時期をずらして、その間にいろいろな調整が行われるという可能性があるのか、それらの状況についてまず最初に御報告をお願いしたいと思います。
  283. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) 牛肉、かんきつ、これの輸入数量に対する日米合意は四月でこれは空白になっておるわけでございます。私としましては、今度の訪米問題につきましては現在関係方面と相談中でございますので、この結論を得次第、適切に対処してまいりたいというぐあいに考えております。また、かなり煮詰まってきておるのかということでございますが、この前の高級事務レベル会議、佐野・スミス会議でございますが、それ以来具体的には出てきておりません。ただ、私の訪米ということによって弾力的なものが出るというような感触は得ております。
  284. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 これはやはり外交問題でありますから、外務大臣としても責任のある問題だと思うのであります。問題は農産物だけにとどまるかどうかという問題があるわけです。農産物にしても牛肉とかオレンジだとかというふうに言われますと、一般の人はすき焼きが安くなるか高くなるか程度にしか考えないかもしらぬ。オレンジなんか入ろうと入るまいとミカン食ってるから関係ねえやという人もあるかもしれない。しかし問題は、ここの一角が突破されることによってその後にもろもろの影響が出てくるということになると、これは重大事だというふうに心配をするわけなんです。だから、それらの後々の問題を考えてじっくりと農林水産大臣が、何といいますか関所の役割を務めることになっておるのかどうか、その辺が心配なわけです。だから、その点について具体的にひとつお話し願いたいと思います。
  285. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) 先生おっしゃいましたとおり、何か日米貿易摩擦の象徴に牛肉、かんきつが取り上げられておるようでございます。一般の人からいうと、全然関係のない人は、何かオレンジと牛肉を買えば全部貿易摩擦はなくなっちゃうじゃないかというような感覚を持っておられる方もおられるようでございます。ただ、これは量としては微々たるものでございますが、しかしこの日米合意というものがアメリカ国内における対日強硬論者に対する抑止力というか歯どめになっているということも言えるわけでございますので、私としてはこの空白期間をできるだけ早く埋めたい。そういうような意味からも、いずれにしても最終責任は私が負うということで、できるだけ早い機会にこの問題を解決したいというぐあいに基本姿勢として考えております。
  286. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 農水大臣としてのどこで歯どめをかけるのかというような点についてお伺いしたい。
  287. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) 今お答え申しましたとおり、この日米問題が象徴的に取り上げられておるとは申しますが、しかし私としては、農林水産大臣として我が国農業を守るという立場を堅持してまいります。ちょうど一昨年五月、参議院農林水産委員会で御決議もいただきました。そしてまた本年一月、申し入れもいただいております。この趣旨に沿いまして、農業者が犠牲にならないように、我が国農業が着実に発展していくということを念頭に置いて交渉に当たってまいります。
  288. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 農協の人たちの意見をいろいろお聞きしてみましても、問題は単に牛肉、オレンジにとどまらない、非常に後のことを心配をしておられるわけです。せきを切ったようにという言葉があるんですけれども、そういう心配を我々としてもせざるを得ないと思うし、特に農民の方たちにしてみれば極めて深刻な問題だと思うのであります。それらの多くのほかの問題に波及をするおそれなしに、ここでもって食いとめることができるのかどうかということが一つ問題なんでありますが、その点はどうですか。
  289. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) この前の事務局会議で物別れになって以来、大きな隔たりというものはこれはまだ変わっておりません。そのままでございます。ただ、いろいろ外交ルート等を通じて交渉しておるうちに、私の渡米によって弾力的なものが出てくるというような感触を得ましたので、その感触を得ながら、先ほど申しました農林水産委員会の決議、そして申し入れ、この趣旨を踏まえて交渉に当たってまいります。
  290. 初村滝一郎

    ○理事(初村滝一郎君) 矢田部理君の関連質疑を許します。矢田部君。
  291. 矢田部理

    ○矢田部理君 ちょっと前に戻りますが、牛肉、オレンジの輸入枠拡大をめぐる日米間の対立点、問題点をかいつまんで一度説明をいただきたい。
  292. 塚田実

    政府委員(塚田実君) お答えいたします。  牛肉、かんきつに関します日米農産物協議は一昨年の十月から六回にわたって行われております。すべて事務協議でございます。その中で最大の争点は、牛肉、かんきつ双方について米側が自由化を求めているところにあります。それで米側は、これは本年の四月一日、昨日からでも自由化してもらいたいというのが当初の要求でありまして、私どもは一貫して自由化はできないということを言ってきているわけであります。その後協議を重ねるうちに、米側は即時完全自由化というようなことから、将来のある時点で自由化をするという自由化時期の明示というのに変わってきておるわけであります。それも協議を重ねているうちに、私どもの自由化時期の明示はもうできないという態度に対しまして、先方は、自由化時期の明示も一時棚上げしていいというような態度に変わってまいって、現在の争点はまさにいろいろありますけれども、主な争点は輸入枠の大きさにかかっている状況にございます。
  293. 矢田部理

    ○矢田部理君 輸入枠の対象をめぐる数字的な対立点を説明してください。
  294. 塚田実

    政府委員(塚田実君) 米国側は、牛肉、かんきつについて一定の数量を我が方に要求しておりますけれども、これは協議の過程において交渉の内容は外部に公表しないということで日米双方が合意しておりますので、交渉の内容にかかわりますものですから、ひとつぜひ御容赦いただきたいと、このように考えております。
  295. 矢田部理

    ○矢田部理君 数字などはマスコミに毎日のように出ているじゃありませんか。
  296. 塚田実

    政府委員(塚田実君) お答えいたします。  確かに数字につきましてマスコミでいろいろ取りざたされておりますけれども、私ども政府の立場といたしまして、そのような数字については一切関与しておりませんし、まさにノーコメントと言わざるを得ません。
  297. 矢田部理

    ○矢田部理君 時間がないから言いませんが、大筋において間違いないと言えますか。
  298. 塚田実

    政府委員(塚田実君) お答えいたします。  残念ながら、大筋という表現においてもちょっとお答えは差し控えさしていただきたいと思います。
  299. 矢田部理

    ○矢田部理君 数字程度は。
  300. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) 先生御存じのとおり、新聞は全部数字が一緒じゃないわけです。みんなばらばらな数字です。しかし、一つ言えるのは、大きく隔たっておるということだけは事実でございます。
  301. 矢田部理

    ○矢田部理君 大きく隔たっているということになると、簡単に妥協する、あるいはできる可能性はないということじゃありませんか。
  302. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) そのとおりでございます。
  303. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこで外務大臣、何かシュルツ長官から手紙が来たそうですが、どんなラブレターでしょうか。
  304. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 農林水産大臣が懸命にこの農産物交渉の解決に向かって努力されておりますし、外務省としましても外交ルートを通じて解決に向かって力を尽くしているわけですが、そういう中で私からもシュルツ国務長官とかあるいはブロックUSTR代表に対しまして、やはりアメリカが弾力的な姿勢でもってこれに臨まないとこの農産物交渉は妥結しないと。といいますのは、今、農林水産大臣がお話をいたしましたように、日米の差が開いているわけであります。相当開いておる。そして日本側の提案というものは、日本が農村、農業の立場というものを踏まえて、農水大臣としては、しかしそういう中でもこの農産物交渉を何とか解決したいということでもう全力を挙げて、誠意を持って打ち出した数字であるわけでございまして、これ以上は日本としてもこれからの日本の農村の将来というものを考えると、なかなか譲歩というのはそう簡単にいくものじゃないと。  こういうことでありますから、これはやはりアメリカに日本の実情、立場というものをもっと理解をしてもらって、少し私はアメリカが理解が薄いのじゃないかと率直に言って思っておるわけですが、やっぱりもう少し理解をしてもらって、アメリカ側がむしろ弾力的な姿勢で歩み寄ってもらわないと、そうしないとこの交渉というものは到底妥結をしない。そういうことでアメリカ側に対してもっと大局的ないわゆる政治的な判断というものを強く求めたわけであります。事務当局だけの交渉で、アメリカのああいう事務当局者の話を聞いておると到底これは物にならない。  ですから、やはりもっと高い立場で、日米両国という立場も踏まえて、将来の立場も踏まえて、全体のことも考えながら農産物交渉ではもっと弾力的な姿勢でこれに取り組んでもらわぬと困るということを強く訴えまして、その結果としましてシュルツ長官から、この問題につきましては政治家としての立場で対応するようにひとつしましょうと、あるいはまたブロック代表からもそういう趣旨の実はメッセージをいただいたわけでございますが、しかしこれは解釈の問題でして、私はそういう趣旨から見ますとほのかに一つの明かりが見えたと、多少の弾力性というものはその発言から見えてきたように思います。事務当局の発言と違って、やはりもっと高い立場で一つの弾力的な姿勢でこれに応じようという姿勢は確かに見えたと思うわけでございますが、しかしそれでは果たしてこれが妥結するかどうか、そこまでアメリカが考えてくれるかどうかというのは、これはこれからの交渉次第であるわけで、実はわれわれがやったのはそうしたアメリカに対しての弾力的姿勢を求める、そのための努力でございました。
  305. 矢田部理

    ○矢田部理君 外務大臣の発言が、伝えられておるところによりますと訪米論に傾いている。しかしながら、私どもから見ますと、大きな隔たりを埋めるような確かな感触を持つことの方が先ではないかと。これは山村さんの方が正しいんですよ。その確かな感触は全くないんですか。ない中でも訪米した方がいいという判断ですか。
  306. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは最終的には農林水産大臣の御判断によるわけでありますし、同時にこれは政府全体としての判断にもよるわけでありますが、私は、隔たりは確かにありますけれども、しかしこれはやはり責任者同士が話し合うことによってこの交渉の妥結の可能性もないわけではないと思います。私は実は福田内閣のときに官房長官をしておりまして、当時の中川農林大臣が当時のストラウスUSTR代表と今回改定するいわゆる農産物交渉を行いました。その経過も知っておるわけですが、相当あの当時も開きがありましたけれども、責任者でもって決裂寸前に行きながら何とか決着はいたしたということでもございますし、やっぱり外交交渉ですから、トップ同士が話し合うことによってこれは可能性も出てくる。事務当局が動きがつかなくてもトップ同士で話をすることによって可能性は出てくるのじゃないかと、こういうふうに思うわけでございますし、同時にまた、やはり日米のこの協定が三月三十一日に切れたわけですから、切れた協定をそのままほうっておくわけにはいかない。そして事務当局だけで交渉して、そこでもって決裂したということで、象徴的とも言えるこの協定をこのまま放置しておっては、これは日米間にとって大変悪い事態が生まれてくる。こういうふうに思うわけで、そういう意味でやはり最終的にはトップ同士が話し合ってそして決着をつけなければならない、こういうふうに思うわけでございます。しかし、交渉の前途は極めて困難であることは農水大臣が今お話をしたとおりであります。
  307. 矢田部理

    ○矢田部理君 最終的には日米首脳で政治的決着をという考え方のようですが、ここ数日中にもやっぱり訪米すべきだという考え方ですか。
  308. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは今、政府、党でいろいろと相談をしておりまして、最後には農林水産大臣がこれを最終的に判断をされて決断をされることであろうと思いますし、我々としても、何としても事が農産物、そして日本の農村や農業にかかわる重要な課題でございますから農林水産大臣の決断を待っておる、こういうことであります。
  309. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこで農林水産大臣、あなたの決断が日本農業の浮沈にかかわる極めて重大な立場に立たされておるわけですが、気持ちのほどをひとつ。
  310. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) まさに先と言われたとおりの心境でおります。いずれにいたしましても、最終の責任は私によってこれを行うということにおいて最終的な決着を遂げたいと思っておりますが、先ほど瀬谷先生にも御答弁申し上げましたとおり、我が国農業を守るという立場を堅持してこの交渉の決着を見てまいります。
  311. 矢田部理

    ○矢田部理君 大臣、アメリカの手のうちというか、弾力的にとか、この間にとかというお話があるわけでございますが、もうちょっと見定める努力をすべきではないでしょうか。
  312. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) 今、関係方面と意見調整中でございますが、ただ、今のままで行って、それではどれまで待っていれば具体的なものが向こうから出てくるのかということを考えますと、今の段階で、先ほど外務大臣からお話しいただきましたように、政治家として話し合いたいというようなことできておりますし、これをただ待っておっても、これらの間違いない数字が向こうから出てきたというようなことはないと思いますので、とりあえず私は、やはり向こうの弾力的立場、どれぐらいどうなってくるとかということを見ながらやるべきではないかなというようなことを、もうこれはずっと慎重に待っておりましたが、関係方面のいろいろな情報収集の結果、そういうようなことも考えております。今、関係方面で調整中でございます。
  313. 矢田部理

    ○矢田部理君 抽象的には、日本農業を守るためにとか言うんですが、具体的に聞くと、少し大臣は動揺しているのじゃありませんか。
  314. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) 具体的に私も申し上げたいのですが、しかし今交渉中でございますので、具体的に申し上げますとやはり国益に沿わないところもございますので、ひとつその点は御容赦いただきたいと思います。
  315. 矢田部理

    ○矢田部理君 アメリカがもう少し具体的にすべきだという考え方が一つと、あなたが行って、今まで説明した数字を譲歩するというような考え方も中身には持っておるんでしょうか。
  316. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) 今行けば、私が行くことによってアメリカからの数字も出てくるのではないかと思っております。
  317. 矢田部理

    ○矢田部理君 ですから、アメリカに弾力的に対応することを期待すると同時に、こちらでも弾力的に対応するという考え方に立ってきておるのかと、こう聞いておるんです。
  318. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) 今、交渉中でございますので、ひとつその点は御勘弁いただきたいと思います。
  319. 矢田部理

    ○矢田部理君 どうも大きな隔たりがあって、いろいろ外務大臣あてに手紙などが来ているようでありますが、どうも私の見るところ、大幅にアメリカが譲歩をする可能性は極めて薄い、確かな感触も得られていないという状況のもとで軽々に渡米すべきではない、もうちょっと外交チャネルを通して、いろんな機会を通じて向こうの意向を確かめてしかるべきだということを外務大臣にも要請したいと思いますし、農林水産大臣もやっぱりその立場をもう少し見守らないと大変なことになるというふうに私は思っているわけです。特に、レーガンは選挙が近くなってきておりますので、いろいろ向こう側内に政治的な思惑なども絡んでいようかと思うのでありますが、それに乗ぜられることは困るし、特にあなたの抽象的な、日本農業を守るという声明だけではなしに、やっぱり具体的に守るためにも、この際簡単に渡米をして問題を政治的に決着を図るというようなことについてはまだまだ距離があり過ぎる、その点十二分に慎重に行動をしてほしいということを特に要望をしておきたいと思います。
  320. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) 私が行くことによって弾力的にはなる、しかし政治的にということで決着をしてしまってはと、先生心配なさるのはごもっともでございますが、ただ私は、この前の、三月三十一日を迎える直前に至りましても、できるだけ早く決着したい、しかし期日にとらわれて無理な決着をするつもりはありませんと申し上げましたが、今回におきましても、行って、余りの隔たりがあるというような場合のときには無理やりに決着をするということは考えておりません。
  321. 矢田部理

    ○矢田部理君 終わります。
  322. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それでは、アメリカに行っても事と次第によっては妥結できないということもあり得る、しかし当たって砕けるということで、言いたいことだけはどうしても言って、押すだけは押してくるんだと、こういうお考えのようにちょっと今のところは聞き取れるんですが、そのように理解してよろしいんですか。
  323. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) 渡米するからには、全力を挙げて決着をつけるべく、話し合いがつくようにやってまいるつもりでございますが、しかし余りにも隔たりが大きい場合は、先生おっしゃったとおりでございます。
  324. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 日本はアメリカの下請会社じゃないわけですから、何もかも押しつけられて泣き寝入りをする必要はないと思うんです。例えば、日本で使っている飛行機なんかは、有名なロッキードを初めとしてみんなアメリカ製なんですね。したがって、その上さらに牛肉だ、オレンジだ、さらにそれ以上に米だ何だということになりますと大変なことになるわけです。どうもアメリカの今までの態度というのはそういうふうに見える気がするんでありますが、その点は、外交の大局的見地に立つならば、対抗策といいますか、対応策といいますか、それがこちらになきゃならぬだろうと思うんですが、その点は外務大臣はどのようにお考えですか。
  325. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) おっしゃるように、アメリカも日本もそれぞれ独立国で対等の主権国家でございますから、やはり外交交渉においては堂々と日本の国益を守ってやらなければならない。できないことはできないし、また、できるこ とはやるというのが基本的なことであろうと思うわけでございます。そういう中で、もちろん日米関係は友好関係にあるわけですから、できるだけ問題を外交的に、あるいは政治的にもお互いに協力し合う、あるいは妥協し合うものはしていくという心構えといいますか、そういう姿勢も大事だろうと思うわけであります。  なかなか日米間には厄介な問題が横たわっておりまして、今の農産物の問題なんかもその一つでありますが、どうしても決着できないというときはこれはやむを得ないわけでありますし、あるいはその他関税引き下げも要求をしてきておりますし、また今、竹下大蔵大臣の手で行われております円ドルの問題とか、あるいはまたVANの問題とか、あるいはサテライトの問題とか、いろいろと懸案事項が経済問題だけでも今山積をいたしております。何とか我が国としましては四月いっぱいぐらいでそうした問題については日米間で決着を図るということで努力を続けておるわけでございます。しかし、何もかもアメリカの言うとおりするわけにはいきませんし、日本の立場を通しながら、しかし同時に自由貿易体制を守っていく。保護主義がアメリカに非常に台頭してくるということは我々として日本の立場からやはり避けなければならない、こういうことでもございますので、そうした面からも考えながらこれらの問題に適切に対処をしていきたいと、こういうふうに思うわけであります。
  326. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 大蔵大臣にもお伺いしたいんですが、農水大臣にだけ荷物を背負わせていてもなかなか大変だろうという気がするんです。あらゆる面で対応策ということを考えなきゃいかぬだろうと思うんです。経済的にもいろいろと考えることがあれば、これはやっぱり全般の問題として考えていく必要があるだろうと思うんでありますが、その点は大蔵大臣はどのようにお考えでしょうか。
  327. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる対抗手段、これは率直に申しましてなかなか難しい問題だと思います。ただ、今象徴的に山村大臣の方の担当の問題が出ております。瀬谷委員のおっしゃったように、日米関係というのはそれがすべてかというふうな印象すら与えるぐらいでございますが、私の方が担当しておりますいわゆる円の自由化、国際化、俗に言う円ドル問題、また今、外務大臣からお答えがありましたVANの問題とか、そうした問題それぞれが総合して元来はあるわけでございますから、私は、私どもの分野の中で我が国の国益をも踏まえ、そして我が国の国際的にやらなければならない立場をも考えながら、総合的な見地の中から進めていかなきゃならぬと。私の立場から、一つ一つに対するいわゆる対抗措置というようなものは今念頭にはございません。
  328. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 農水大臣としては、その点のあらゆる対策という面に、対抗措置といいますか、対応策というか、そういう準備はございますか。
  329. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) まず、今、関係方面といろいろ協議しておりますが、そこで渡米した方がよろしいじゃないかという場合には渡米して、とりあえず向こうの御意見伺います。その御意見を伺った上でこれをいろいろ交渉をいたしまして、我が国農業をこれなら守れるということであればいわゆる合意をする、それが基本姿勢でございます。
  330. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それでは、今度は別の問題に移ります。  大韓航空機事件に関する国際民間航空機関、ICAOでありますが、この報告によりますと、操縦士の過失ということにすべてをまとめてしまっているような感じがするわけでありますが、どうもこの点ごまかしが多いような気がするんでありますが、外務大臣所見をお伺いしたいと思います。
  331. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 本件の調査報告書は、国際的に高い権威を有するICAOが国際的な協力のもとに中立的な立場から総合的に行った唯一の調査結果でありまして、調査報告書みずからも認めておるように、ソ連の非協力、あるいは生存者の皆無、ブラックボックスの未回収等の制約から航路逸脱の原因は断定できないとしながらも、原因として考えられる仮説として、乗務員の操作ミスの可能性が高いとしているのであります。したがって、我が方としましては、本件調査報告書の所見につきましては、やはりICAOが先ほど申し上げましたように、そうした中立的な立場、国際的に一つの評価を得ている立場というものから、この報告書を重い存在ということで認識をし、また評価もいたしておるわけでございます。
  332. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 今、ソ連の非協力ということもおっしゃいましたが、アメリカの非協力ということはないんですか。
  333. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私らの報告を受けた範囲内では、アメリカは積極的に協力をしたと、こういうふうに聞いております。
  334. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 じゃ、運輸大臣に今度はお伺いしますが、一体、運輸省としてはICAOに人を派遣してどのような報告を聞いておるのか、その点をお伺いしたいと思うんです。
  335. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) 専門的なことにわたりますので、航空局長から答えさせていただきます。
  336. 山本長

    政府委員(山本長君) お答え申し上げます。  ICAOにおきまして諸般の調査をいたしました過程におきまして、私たち航空サイドの専門家が全面的にこれに協力をいたしたのでございます。先生お尋ねのICAOにおける討議と申しますか、審議の場におきましても、外務省の職員とともに運輸省も運航関係あるいは管制の関係専門家、さらにパイロットの経験のある、知識のある者も政府の一員に加えまして参加をいたしたのでございます。
  337. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それだけじゃよくわからないんですがね。結論的にいうと、この大韓航空機の事故の原因として考えられるのは故意か過失が、二つに一つしかないんです。そして過失を主張しているわけです。ところが、乗務員の過失ということが裏づけられているかというと、日本の日航のパイロットによると否定されているんです。そういうことはあり得べからざることとして否定をされている。実際の経験のある乗務員によって否定されているものが何で権威があるということになるのか。その点非常に疑問があると思うんですが、その点どうですか。
  338. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 事務当局からお答えをしていただきますが、私も、まさかあんなことを乗務員がどういう形にしろ行うというふうなことは常識として考えられないわけでありますが、ICAOの報告によれば、これは過失といいますか、乗務員の操作ミスということに近いと判断せざるを得ないというふうな報告でございますし、我々としては、いろいろの証拠がすべてなくなっておりますので、そうしたICAOの総合的な報告、判断というものにやはり一応の信頼をおかざるを得ないのではないかと、こういうふうに判断をしておるわけであります。
  339. 山本長

    政府委員(山本長君) 日本航空の話が出ましたけれども、日本航空におきましては、航路を逸脱しないようにということで、搭載機器のINSという、慣性航法装置という機器の操作の手順、これは二重三重にもチェックをして操作をするということ、あるいは飛行中におきましてその位置のずれを確認しながら飛ぶということ、また気象レーダー等を利用しながらさらに確認をするというふうな航法をとっておるのでございまして、大きなこういった逸脱ということは考え得ないことでございます。ただ、ICAOの報告書にも、こういったICAOの報告書に書かれております一つの仮定も、原因についての仮定というものにつきましても、パイロットに相当の不注意が重なって初めて起こり得るものだと、こういうふうに書いてございますが、事故というものは、このICAOの報告におきましても、外務大臣から御答弁ございましたように、原因というものを確認、確定したものではございません。事故というものは往往にして常識的にはあり得ないと考えられることがあり得るということもございます。したがいまして、ICAOのこれは偏らない、どこの国にも属さない専門家が調査をした、限られた範囲における調査の見解でございますので、私たちとしてはこれはやはり重きを置いて考えざるを得ないと考える次第でございます。
  340. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 大韓航空のパイロット自身が否定をしてるんですね。これは韓国中央日報に記載をされた大韓航空機の機長のそれぞれの見解をもとにしても、一〇〇%あり得ないと、こういうように言っているんです。そのINSのフィンガーズエラーでありますけれども、それはボタンの押し間違いということを言っているんですね。しかし、どういうふうに押し間違えたかというと、経度百三十九度と百四十九度を間違えたんだろうと。そうすれば、こういう間違いになる。三と四を間違えた。三と四を間違えるということは、電話のダイヤルなんかの場合は3と4は隣り合っているから間違えることはあるだろうというふうに素人考えでは思う。ところが、このINSの押しボタンは電話のダイヤルのようになっていないんですね。(資料を示す)こういうふうに三つずつ四段になっているわけです。1、2、3、4、5、6、7、8、9と、こうなっている。そうすると、3の隣りに4がないんですよ。3の下段の端っこの方に4がある。この3と4を押し間違えるということがあるかどうかですね。外務大臣も考えてみてほしい。特に防衛庁長官、あなたにも、この3と4と押し間違えるということがあると思いますか。  また、航空自衛隊にこの種のエラーというものがかつてあったかどうか、その点どうですか。
  341. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) お答え申し上げます。  航空自衛隊が洋上に設けております訓練空域等へ出ていって訓練をしにいく場合に、これは通常レーダーの覆域の中で訓練をしておりますので、地上からも監視を常時しておりますし、そういう何といいますか、計画している飛行状態を大きく外れるということは考えられないわけでございますし、従来もそういった例を聞いたことはございません。
  342. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 仮に指の押し間違いが一回あったとしても、このINSは三つあるわけです。その三つのINSを複数の人間で相互にチェックしながら押していくわけです。三回も念入りにこの3と4を間違えて押すということは常識的に考えられないでしょう。その点どう思いますか。
  343. 山田中正

    政府委員山田中正君) ICAO報告書で、先ほど大臣が御答弁申しましたように、仮定の問題として可能性があると言っておりますのは、ICAOの報告書でもINS三基について現在位置の入力を間違えた場合のシナリオを一応検討はいたしておりますが、その可能性はむしろなかったのであろうということになっております。ICAOの報告書でINSの入力ミスの可能性として挙げておりますのは、大韓航空機、リットン社のINSを三基積んでおりますが、その一番、コントロールユニットでございますが、それの現在位置に先生指摘のように十度の押し間違いがあったと、そして他の第二、第三には正常の位置を入れておったと、その場合のシミュレーションをやった結果でございます。
  344. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 この3と4を押し間違えるということはあり得ない、これは素人だましなんですね。いかにも素人だったらそう思うかもしれないということだけれども、実際問題としてこの3と4を押し間違えるということはない。それから読み間違いということも、3と4というのは読み間違いがないわけですよね、余り。3と8だとか、3と5だとかいうのは、これは読み間違いということがある可能性もあるけれども、3と4との読み間違いというのはないし、それから韓国の中央日報に載っております機長の対談会を見ましても、報告書はやっぱり間違いはなかった、金浦に送ってこられたその報告書も間違いはなかったと。アンカレッジの飛行計画書の写しが来ているけれども、やっぱりそれを見ても間違っていないというんですから、そうすると押し間違いもあり得ないし、それから読み間違いもあり得ないということになってくる。そうすると、過失という仮説というものがどう考えてみても成り立ち得ない。第一、当事者である大韓航空の機長のメンバーが一様に何百万分の一の可能性もないと、こういうことを言っておるわけですよ。したがって、もしあるとすればそのVORチェック、このシェミア、ここでもってチェックをしたという事実があるかないかなんでありますが、おかしなことに、アメリカ側はシェミアにおけるその記録というものは発表していない、こういうことがあるわけです。そうすると、これはアメリカ側の非協力ということになってくるんでありますが、その点はどのようにお考えでしょうか。
  345. 山田中正

    政府委員山田中正君) 先ほど大臣が御答弁申しましたように、本件はICAOの国際調査でございまして、ICAOが我が国とかアメリカにそれぞれICAOの判断において必要と考える情報の提供を求めたわけでございますが、先生指摘のシェミアの件につきましては、ICAOの調査報告書の中に記載してございますのは、当時シェミアのレーダーは民間航空機の航法援助の使用に供されておらなかったということ、さらにシェミアのレーダーのカバーいたします範囲は二百海里でございまして、本件大韓航空機はそれをはるかにそれたところを飛んだものと思われるという記載がございます。
  346. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 このINSの押し間違いがあったとしても、なおその航路逸脱に気がつかないということはあり得ないというのが、これがパイロットの意見であります。これは日本のパイロットも韓国のパイロットも、一々細かく言いませんが、同様の指摘をしております。つまり、パイロットによっては、このような仮説は成り立ち得ないということを証言しているわけです。その点は、それでもなおかつ報告書の方が多数決で決まったんだから間違いないんだというふうに断言していいのかどうか、パイロットによって否定されるような報告書というものに権威があるというふうに考えていいのかどうか、ここが問題だろうと思うんでありますが、その点はどうですか。これは外務大臣にお伺いしたいと思うんです。
  347. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) あの事故の原因につきまして予断を持っていろいろと我々が推測をすることは大変危険なことであろうと思うわけでございます。常識的に言えば到底考えられない事故でありますし、さらにまた証拠というものがすべてもうなくなってしまっておる。ブラックボックスも最後まで米ソ両国で捜したんですが、ついに手に入らなかったと。それからやはり、その当時の生存者は一人もいない、重要な機材の手がかりもないということでございまして、そういう状況ですから、やはり最も信頼をして判断の基準としなければならないのはICAOの調査報告でありまして、これは先ほどから申し上げますように、これまでもそうでありますが、国際的にも非常に評価の高い、信頼性の高いものでありますし、あるいはまた中立的な立場をとっておるわけでございますし、そのICAOが全力を挙げて各方面からのあらゆる情報を収集してそして作成した報告書ですから、やはり我々としましては、そのICAOの報告書というものに一つの重い信頼を置かざるを得ない、こういうふうに思うわけでございます。  ただ、ICAOの場合ももちろん断定しておるわけではないわけでございまして、やはり搭乗員の操作ミスであろうと、こういう一つの推測をいたしておりますが、断定しておるわけではもちろんないわけでございますが、全体から見ますと、やはりこの報告書に我々は一つの信頼を置かざるを得ない。残念ながら、もう決定的な証拠というものが出てこないということが、我々としては非常に真相究明の上において決定的なものとして欠けるものがある、こういうことについては私もそういうふうに考えますが、しかし今の状況ではICAOの報告というものに一つの大きな重さというものを置かざるを得ない、そういうふうに思うわけであります。
  348. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 この報告書が、全乗員のかなりの不注意を前提としているが、このような不注意は国際民間航空においてかつてなかったというほどのものではない、こういう弁明をしているわけです。ないわけじゃないという弁明なんです。しかし、そんな弁明を裏づけるような事実があったのかどうか、この点は運輸大臣の方に聞いてみたいと思うんですが。
  349. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) 今回の事件の原因につきましては、そう簡単にわかるものならばもうとっくにわかっておるわけでございます。これだけの大事件でございますから、当然究明すべきあらゆる手段が尽くされておると思います。何にいたしましても、証拠になるようなものが何も残されていない。全員死亡しておるということでございますので、ただいまの御質問に対してもお答えをすることがいかがかと実は思うわけでございまして、いろいろ個人的な判断その他があると思いますけれども、軽々にはこれは言えないことではなかろうかと、かように存じておる次第でございます。
  350. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 いや、私がお聞きしたいのは、例えば五時間も航路逸脱をして五百キロも離れたところを飛んだというような事例がかつてあったかどうかということです。
  351. 山本長

    政府委員(山本長君) このINSを使って、非常に飛行経路を正確に飛行させるための計器でございますが、これを使ってなおかつ大きく飛行経路をずれたというふうな事例は、私は全世界的に調べたわけじゃございませんが、聞いてはおりません。
  352. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 これは信頼性が高い高いと言うけれども、個々の問題になりますと、全くもうパイロットによって否定されているんですよ。韓国のパイロットによっても日本のパイロットによっても否定されている。それから最後の弁明も、今答弁のとおりに事例はないんです。したがって、これが権威があるというふうには考えられないということでありますが、もうこの問題は、ともかくICAOの報告は出たけれども信用できないと、インチキであるということが具体的に指摘できるからそのことを申し上げているのです。だから、こんなことは多数決でもって、いやICAOの報告だから正しいんだというふうにはいかないと思う。その点を申し上げておきたいと思います。  それから今度は、対外経済協力問題について先般もお伺いしましたけれども、フィリピンに対する借款供与という問題は、これはこの間もフィリピンの野党の方が参りましていろいろ話を聞いたんでありますけれども、マルコス政権に対する不信というものは極めて根強いものがある。そのマルコス政権を介さないで借款供与ということはあり得ないわけだから、これは事実上マルコス政権に対するてこ入れになるじゃないか。そういう点は極めて素朴な疑問であろうと思うんであります。それをあえて押してフィリピンに対する借款供与を行わなければならないのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  353. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かに、フィリピンの野党がマルコス政権を攻撃しておりますし、日本の対フィリピン経済協力はマルコス政権を強化するものであると、こういうことで反対をしておることはこれはもう事実でございます。我々のところにもそういう要請が来ておるわけでございます。    〔理事初村滝一郎君退席、委員長着席〕  しかし、日比の間には、これまでASEANの一国としてまた同じアジアの国としてまた隣国として、フィリピンに対して経済協力を毎年続けてきておるわけでございまして、これはインドネシアとかあるいはタイ、マレーシア、そういう国々とともに大体同じような規模の経済協力をずっと続けてきております。そうして、それはフィリピンの経済、民生の発展のためには大きな寄与を果たしておる、こういうふうに我々は考えております。それなりにフィリピン政府あるいはフィリピンの国民から日本の協力に対して謝意も表明をされておるわけでございます。そして今回も毎年続いておる経済協力の一環といたしまして、いわゆる五十八年度分として供与をするわけでございまして、そしてそれは前年並みということで行うわけでございます。  これはやはりこれまでの日比の関係から見まして行わざるを得ない協力でありますし、特に今回の場合はフィリピンの経済がいわゆる政治の不安等もありまして極度に悪くなっておりまして、外貨はほとんどない、こういうふうな状況で、フィリピンの経済はこのまま放置すれば大変な混乱をする。そしてそれはフィリピンの国民の生活にも大変な打撃となってあらわれる、こういう状況にあるわけでございますので、したがって我々としては、マルコス政権を助ける、こういうことではなくて、やはりもうほうっておいてはフィリピン経済は壊滅してしまう、こういう意味でフィリピンの民生の安定、国民生活の確保というために、やはり隣国として日本がこれまでどおりの経済協力をするのはこれはもう当然のことではないか、こういう基本的な立場で今回もこれを行うことで今実は協議をいたしておる段階でございます。
  354. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 マルコス政権に対するてこ入れという心配をするのならば、これはやはり慎重を期するということと、それから借款というものが生きるような保証というものを必要とすると思うのであります。それがどこへ流れていくかわからない、どんぶり勘定でもってともかくマルコス政権に事実上援助するのだということになりますと、これは日本の援助というものほかえって反感を買うということになると思うのでありますが、そういう点の心配はないでしょうか。
  355. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 全く我々もおっしゃるようなことに十分気をつけていかなければならないと思います。それでこれが野党か言っているようにマルコス政権を助けるというふうなことに直接つながる、そういう方向で資金が思うように使われるということになってはこれはいけない、困ることでありまして、やはり日本の援助というのがフィリピンの今の国民経済全体に大きなプラスとなってはね返っていくというものでなければならぬわけでございまして、それにはやはり経済協力をやるに当たりましても、いわゆる経済協力のプロジェクトをあるいはまた選択しなければなりませんし、あるいは商品借款も出てくるわけでございますが、そういうやっぱり借款について、これはどういうふうに使われるかということを最後まで見きわめるといいますか、見定めるといいますか、そういう点で日比間で話し合いをつけた上でこれは実行をされるべきであろう、こういうふうに考えておりますし、その点については私も慎重にこれは事を運ばなければならないということで今取り組んでおるわけであります。
  356. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 五月十四日にフィリピンでは選挙があるということなんでありますが、今、日本が具体的な経済援助を行うということになると、だれが考えてもこれは選挙に対して大きな影響力を与えるということになると思います。したがって、選挙の前に軽はずみな経済援助を具体的に行うということには問題があると思うのでありますが、その点の時期的な問題はどうですか。
  357. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 時期的にはこれまでもずっと前例的なものがあるわけでございまして、やはり選挙の前とか役とかいうことになりますと、それそのものが政治に絡むというふうに誤解をされる。選挙の前にやれば選挙から後に延ばすべきであるとの意見が出、選挙後に延ばせばむしろ政治に日本の借款というものが利用されるということになるわけで、そういうフィリピンのもちろん政治のある程度の安定というものは重要性があるわけでございますが、そうした選挙絡みというふうなことはむしろ我々は判断の外に置いて、この問題は冷静に先ほど言ったような立場から事務的にむしろ対応をしていくべきじゃないか、こういうふうなことで今やっておるわけであります。
  358. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 日本の対外経済援助、これはこのフィリピンのみならず全般的には非常に莫大なものになると思います。これらについてこれは大蔵大臣から今度はお伺いしたいと思うのでありますが、やはり日本自身の財政が困難なときに、近所隣に対するそういうつき合いの方だけ従前どおりというのもどうかという気がするんでありますが、全般的に見て対外経済援助というものは見直しをする必要がないのかどうか、その点についての大蔵大臣の御見解を承りたいと思います。
  359. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、まず私が予算の提案理由説明におきまして、「経済協力強につきましては、国際社会の一員としての責任にかんがみ、個々の施策の優先度について十分吟味を行った上で、重点的に財源を配分することとし、前年度当初予算に対し七・九%増の五千四百二十九億円を計上しております。」と、こう申し述べておるところであります。  したがって、私いつも思うのでございますが、確かに財政は厳しいときであります。したがって、ぎりぎりの選択ということでございますが、ちょっと二、三年前の資料になりますが、世界四十五億七百万といたしましてその五七・六%がアジアにあります。大ざっぱに二十五億。それで、一億の日本とオールアジアの二十四億とを比べてみますと、GNPで一兆二千億ドルが日本として、オールアジアで恐らく八千億ドル程度だと私は思います。そうして、こういう海外経済協力というものは、またそういう開発途上国の国民の方方の繁栄に資することももとよりでありますが、ひいては貿易立国である我が国に対していろいろな好影響が将来出てくるということも当然考えられるわけであります。  それといま一つは、いささか私見になりますが、いつもこの種の経済協力の会に出て感じますのは、日本の国が、特に一九六〇年代でございましょうか、四五年に戦争が終わって五〇年代の半ばから、言ってみれば中進国になっていくその当時の経緯を見てみますと、世界銀行一つとってみますと、新幹線も東名高速もあるいは黒四ダムも、そういう日本の近代化の象徴的なものと言われるプロジェクトがそれぞれそういう国際機関からの借款援助というようなものにおいて今日の繁栄があるということを思うにつけ、一層私はその重要性を痛感をするわけでございます。したがって、この問題につきましては予算の伸び率で今年度との予算よりも伸びておる予算でございますが、これとて私ども現在の財政事情を考えたぎりぎりの選択だったと。やはりこの経済協力というものは我が国として国際社会に果たす責任のみでなく、過去を振り返りやらねばならぬ仕事だということをいつも痛感しておることをつけ加えさせていただきます。
  360. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 大蔵大臣にもう一つ伺いしますが、不公平税制の是正という問題は国民の関心が深いところなんですが、先般の総理の答弁は、野末議員の質問に対する答弁だったと思いますが、煙に巻いたような格好で何か要領を得ず、禅問答のやりかけのような感じを受けたのでありますが、この具体的な方法と、それからもう一つ、これは教育問題に関連をしましてお伺いしたいのでありますが、予備校とか壁とかこういういわゆる教育産業、昔はなかった言葉だと思うんです、教育産業なんていう言葉は。この教育産業に対する課税の問題を一体どうするかといったような問題と関連をしてくると思うんでありますが、これらの点について一緒にひとつ御答弁願いたいと思います。
  361. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず、不公平税制という言葉は、確かに使う人によってさまざまな意味を持っておると思います。とかく自己中心的になりがちな我々人間でございます。総理がお答えなさったのは、したがって不公平税制というのを強いて極言して言うならば、日本人のバランス感覚に著しく反するものというような表現をなさいましたが、それはそれなりに私は抽象的な言葉としては適切な言葉だと思っております。  そこで今度は、税制上からの不公平税制とは何ぞやと、こういうことになりますと、一番理論的には租税特別措置でございましょう、いわゆる特定の政策目的を実現するための税負担の公平をある程度犠牲にして講じられる政策税制でございますから。したがって、これは一つの税制上の理論的にいえば代表的例示としてやっぱりあるべきことでございましょうし、これを逐年見直していくということは当然やらなければならないことでございます。  それから今御指摘のございましたいわゆる公益法人、これは宗教法人といわずあるいは学校法人といわずということになりますが、全般的には公益法人のいわゆる課税のあり方というものにつきましては、引き続き検討をすべき課題だというふうな指摘も受けておりますので、国会の御議論等を正確に税調にお伝えしながら、私どももこれに対しては引き続き検討を続けていかなければならない課題であるというふうな認識を持っております。
  362. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 教育問題について私の前にも質問がございましたけれども、なぜ教育の荒廃があるのかという問題は、これは深刻に考える必要があると思います。しかし、それは現在の文部行政の責任でもあるわけですから、教育臨調といっても、どういう方向を向いているんだかさっぱりわからぬ。このままでいって果たして教育改革ができるのかどうか、制度そのものを変えなければならぬというのか、内容を変えなければならぬというのか、どうしたらいいのか、その点についての文部大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  363. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 瀬谷先生から今いろいろ御指摘ございました。教育全般にわたりましていろいろと検討をしていかなければならない点は多くあるわけでありますが、特に社会の急激な変化がございます。また、教育の量的拡大等もございます。それもまた教育に大きな影響を与えているわけでありまして、今日さまざまな問題点指摘されているわけであります。こういう国民的な要求というのは非常に高まってきておりますので、新しい教育を改革するいわゆる臨時教育審議会におきまして、この国民的要請にこたえまして長期的な展望に立つ、もう一つは政府全体の責任においてこれと取り組む、こうした観点でこの設置をお願いをするものでございます。  この審議会では、教育及びこれに関連する分野あるいは各行政部門の諸機能、あるいはまたその他これから二十一世紀を担うにふさわしい子供たちがどのような教育の仕組みの中で歩んで行くべきなのか、あるいはまたもっと国際的な面から日本の教育も見てみなければならない。こうしたいろいろな角度からあるわけでございまして、これらを調査審議をしていただきたいと、こういうふうに考えているわけでございます。  なお、審議事項等々につきましては、たびたびこの予算委員会でも申し上げておりますが、新しい審議機関自身がお考えをいただくものである。このように考えているところであります。
  364. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 教育の方向について、私は昔の時代に返るのがいいというふうに考えたらとんでもないことだと思うんです。  そこで、「君が代」について先般もちょっと質問が自民党の方からありましたけれども、「君が代」が今日歌われているのかどうか、歌うように指導しているのかどうか、実情は一体どうなっているのか、この点をお伺いしたいと思います。
  365. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 国歌につきましては、学校では学習指導要領におきまして、社会、音楽、特別活動等で適切な機会をとらえて指導をいたすことといたしております。例えば小学校では一年から六年まで各学年に指導すること。小学校、中学校、高等学校におきましては特別活動で、「国民の祝日などにおいて儀式などを行う場合には、生徒に対してこれらの祝日などの意義を理解させるとともに、国旗を掲揚し、国歌を齊唱させることが望ましい」、このように定めているわけでございます。  また、お尋ねの各学校での実態はということでございますが、昭和五十五年になりますけれども、全国規模の調査によりますと、卒業式では、大体、小学校、中学校で七割程度、高等学校では六割程度が「君が代」を斉唱しているというふう に調査結果が出ております。  なお、「君が代」の歌詞につきまして、また大意につきましてのお尋ねであろうというふうに受けとめますが、「君が代」の歌詞は詠み人知らずと評しておさめられております古今和歌集に由来をいたし、日本民族の伝統や感情に支えられて受け継がれて現在の歌詞になったと、このように承知をいたしております。確かに現代的な歌詞ということは言えないのかもしれませんが、「君が代」の大意は、現行の憲法のもとでは、日本国の象徴である天皇をいただいている日本の繁栄を願ったものである、このように素直に理解すべきである、私はこのように考えておるわけでございます。  先般もこの委員会でも申し上げましたけれども、自分の国を愛し、自分の国を尊敬し、そして自分の国に誇りを持つということは、世界全体の各国と協調するということにおいてもとても大事なことだというふうに思います。そういう意味で、これからの世界の国の中で生きていく、とりわけ二十一世紀を担っていく子供たちにとって、自国の国旗や国歌を大切にしていく、そのことはまた他の国の国旗や国歌を大切にするということになる、このような基本的な考え方で教育の中にも指導をしていかなければならぬ、こういうふうに考えておるわけでございます。
  366. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 近ごろ成人式なんかで私感じますことは、「君が代」斉唱というと拒絶反応が起きるんですね。仕方なく歌っているという感じが強い。歌詞もどうも現代にそぐわないという感じがするわけです。したがって、この「君が代」が歌われるようになるためには、やはりもう思い切って新しい国歌を考えてみるということも必要じゃないかという気がするわけです。日の丸は、これは別に私は何も言いませんけれども、「君が代」の場合はやっぱりメロディーですからね、このメロディーがその歌詞と合わない。それからみんなが歌いにくい、湿っぽい、それから軍隊でも「君が代」だけは歌わしたことはないですね、私の記憶では。こういうわけですから、これら「君が代」はやはりもう再検討してみる価値があるんじゃないか。その点ちょっと大臣所見を聞きたいと思います。
  367. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 各種の世論調査などを見ましても、「君が代」は国歌としてふさわしいということに対してはかなりの数字を示しております。また、これまでの歴史的な経過を見ましても、私は、極めて国歌としてふさわしいと、こういうふうに判断をいたしております。ただ、これは私のいささか私見を交えてで恐縮でありますが、私がちょうど小学校二年のとき終戦になりましてからは、しばらくの間は何か「君が代」を歌うことをちゅうちょしたようなそういう教育的な期間がございました。そういう経緯を経て今日的に私どもがこうやって人生を生きてまいりますと、確かになじめる、なじまないというようなことも出てくるのかもしれません。そういうこと自体が私は非常に日本の国にとって不幸なことだというふうに考えます。  私は、国歌というのは、いろんな国の国歌も勉強してみましたけれども、ソ連の国歌もアメリカの国歌もフランスの国歌も、みんな軍歌とちっとも変わってないんです。やはりそれは国が独立をしていくといういろんな戦いの中から国が興る一つのもとを歌ったものであろうというふうに拝察はできるわけでありますけれども、そういう点から見ますと、日本の国歌というのはやはり私は優雅であるし、極めて自然のなぞらえもできておりますし、比喩も極めて日本的な文化の薫りが高いというふうに、私は余りその方にそんな見識はございませんけれども、私はいかにも日本の国の歌というのは、やはり長い日本の歴史というものをたたえ歌っているようなそんな感じがいたしてなりません。確かに、天皇ということについての危機感というのは、瀬谷先生の御年代から見ればやっぱりあると思います。また、私たちの年代から見ると、また天皇に対するいろんな考え方がございます。しかし、少なくとも今日の日本の国は平和憲法、天皇は国民統合の象徴であると、こうきちっと定めてあるわけでありますから、その国民象徴の統合でおられる、日本の国の国民が未来永劫に平和で、そして長く繁栄してもらいたい、こういう願いを込めて歌うという意味で、私は極めて国歌として世界に誇っていいものだと、このように感じております。
  368. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 私は、もう懐かしのメロディーの部類へ入っちゃっているんじゃないかと思うんです。その証拠に、第一皆さんだって宴会の席上で「君が代」でも歌ってごらんなさい、一遍に座が白けちまうんです。だからこれはやはりみんなが希望を持って歌えるような、うれしいときにみんなが期せずして歌えるような歌を考えるというのも一つの方法ではないか、こういう気がいたします。これは今後の問題として考える価値があると私は思うんです。みんなが無理して歌うとか、仕方なく歌うという国歌があっちゃいかぬと思う。それで、これは新しい国歌を考えるということも必要であろうということなんですよ。  それから最後に、関西空港の問題について運輸大臣にひとつお尋ねしたいと思います。  地元の同意が得られているのかどうか、それから成田の二の舞を踏むことのないような十分な配慮というものが行われなければならぬと思うんでありますが、今後それらの点を十分に考えて法案の審査に当たられるおつもりがおありなのかどうか、それをお伺いして私の質問を終わります。
  369. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) 関西の新空港につきましては、成田空港の二の舞をやっては絶対にいけないということで、極めて慎重に地元との関係を扱っておる次第でございます。いわゆる三点セットと言われる空港の計画案、環境影響評価案それから地域整備の考え方、こういうものにつきましても、地元の方々のいろいろ御意見も公聴会を開いて十分に承り、御審議も願って、今度の法律案作成にまでこぎつけた次第でございます。しかしながら、これは、法律案が通過をいたし、会社ができたからということでおしまいになるのではなくて、これからが始まりでございますので、今後とも、特に地方機関を、地方公共団体を通じて、またあるいは直接に住民の皆さん方との連絡を十分密接にとりながらやっていきたいと思っております。そうでなければ完成することが非常に難しいと、かような覚悟でやるつもりでございます。
  370. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で瀬谷君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  371. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、 松岡滿壽男君の一般質疑を行います。松岡君。
  372. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 先日、名古屋で一日行革審が行われたようでありまするが、引き続いて各地でこれが行われるということでありまして、地方の行革につきまして国民の関心も高まってきつつあるわけであります。国と地方が行財政面におきましては車の両輪ということが言われておりますけれども、特に国民にとりましては、県、市町村の行革というのは非常に身近な問題でありまして、その成り行きが注目を集めておるところであります。行革に際しまして、当初地方では、地方の側から言いますると、行財政の再配分あるいは地方分権の確立と、いわゆる地方の時代を目指しての熱い期待があったと思われるわけでありますけれども、各論になりますると、やはり補助金、許認可事務等行財政の権限の地方への移譲は余り行われていないように思われます。この際、国と地方のあるべき役割分担についてどのようにお考えか、御見解を賜っておきたいと思います。  また、行革はより小さな政府を指向するものと思われますが、欧米先進諸国での反省を十分に踏まえた上で、公的部門の果たす役割と民間部門における機能分担について、御意見があれば、まず行管庁長官と自治大臣のお考えを承っておきたいと思います。
  373. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) お答えを申し上げます。  御案内のように、国全体の統治機構といいますか、我が国の場合には、国は国として末端までやっていく、地方は地方としてやっていくといったような仕組みではございません。やはり国の事務の相当大きな部分というものは地方団体、あるいは地方団体の機関にお任せをして、そして全体としての統治機構ができる限り効率的に、スムーズにいくように、こういうことでできておるわけでございますから、したがってこういった際の行政の改革という場合には、何としてでもやはり国の行革、同時に地方の行革、これは相並んで進めなければ実効が上がらない、こういうことであろうと思いますが、その際に一つの基本は、やはり行政の守備範囲を見直す。その守備範囲というのは、公の機関と民間の分担、これは今高度成長の時代を通じて大変公の機関の役割がふえておりますが、ここらで一度やはりその分担をまず見直す必要があるだろう。今度は、公の機関の中で国と地方との間に機能分担ということで役割を見直していく、こういうことが私は基本にならなければならぬのではないか、こう思います。  そういった立場に立ってやる場合にも、やはり国と地方との間については、何といっても身近な行政というものはできる限り地方に任せる方が私はしかるべきであろうと、こう思うわけでございます。殊にまた地方分権、地方自治というのはやはり国としても大変重要なことでございますから、何といっても地方分権という立場に立って、できる限りは地方に任せるということでなければならぬなと、こう思うんですが、何せ御案内のように終戦直後のあの大改革の当時から相互に不信感があるわけですね。これが今日非常に私は難しくしておる原因だろうと思っております。  そこで、まずその一つは機関委任事務、これについてはやはり思い切った見直しをする必要があるだろうと。その際にあわせて許認可等については、その面についても民間にもう自由にやってもらうといってしかるべきものもあるのではないのか。さらに、今度は地方公共団体にお任せしておる仕事がございますが、これについて余りにも国の規制が大きくなり過ぎておりはしないのか、ここらの見直しが必要であろう。三番目は財政面でございますが、財政面については例の補助金というものの役割、これは私は否定することができないと思います。補助金は悪なりといったような物の考え方では私は改革は失敗をするであろうと、こう思います。しかしながら、補助金にむだがあることも事実だし、それから同時に、補助金を通じて余りにも国の関与が厳し過ぎやせぬのか、ここらは私はメスを入れる必要があるだろうと、こう考えているわけでございます。  そこで、地方公共団体の今度は自身の問題としては、やはり地方公共団体も今日もう少し組織あるいは事務事業、こういうものの減量化、効率化もやっていただかなければならない。さらにはまた、地方公務員の数がどんどんふえ過ぎておりますから、これらについてもメスを入れる。同時に、給与あるいは退職金、こういった問題で国民的な批判があることも事実でございますから、こういう点についてはやはり見直しをお願いをしなければならぬのではなかろうかと、かように考えておるわけでございますが、こういったようなことで、行管庁としては臨調からもいろいろ答申をちょうだいしておりますから、その線に沿って、やはり地方の自治というものを尊重しながら、ただいま申し上げたような行政改革を国全体の中での改革の一環として、地方にもぜひお願いをいたしたいと、かように考えているわけでございます。
  374. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 今、後藤田行管庁長官が述べられましたことにもう尽きるわけでございまして、後藤田さん、かつて地方行政、財政も担当しておりまして、私が申し上げたいことのすべてをお話しになりまして、全くそのとおり、そのような考えております。
  375. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 御指摘のように、やはり国や国民の地方に対する不信の背景には、やはり地方公務員の定数が急速にふえた、急増したということと、高過ぎる給与、退職金、さらにはやはり行政立案能力についての問題であるとか、あるいは行政の守備範囲の適正化の問題、このようなことがあるだろうというふうに思われるわけであります。  第一に、地方公務員の増加率ですけれども、ようやくまあ減ってきていると、特にふえ方が減ってきてるということでありますが、昨年は一般行政職はむしろ四千人ぐらい減っておるわけであります。しかしながら、やはり昭和四十年代の後半に年十万人ぐらいふえた時期があるわけでありますから、まさにそういう面ではパーキンソンの法則を地でいった部分もあるわけであります。しかし、そういうものは反省をしていかなければいけないわけでありますけれども、やはり高度成長時における都市人口の急増でありますとか、あるいは住民要求の高まり、そういうものも背景にあったわけでありますけれども、この急増の原因とか、それから、特にそのふえておりますのは教育職員でありますとか、警察官あるいは消防職員、保母、看護婦というものでありますけれども、そういう職種とふえた原因につきまして、政府委員の方からお答えをひとついただきたいと思います。
  376. 中島忠能

    政府委員(中島忠能君) 地方公務員の数の増加の話でございますが、一つの基準といたしまして、私たちが統計をとり始めました昭和四十九年から昭和五十八年までの九年間に三十七万人余り実はふえております。しかし、一口に地方公務員と申しましても、その中には今、先生がお話しになりましたように学校の先生とか、警察官とか、あるいは消防職員等がおりまして、そういう職員の数というのは国が法令で決めるという建前になっておりますので、今申し上げました増加数のおおむね七〇%ばかりはそういう職員で占められております。あるいはまたそれ以外にも病院関係で職員がふえておるとかいうようなこと、あるいはまた福祉関係で職員がふえているということがございますが、それはそれぞれその時代の行政需要に応じてそういう職員をふやしてきたというふうに思います。  ただ、私たち、地方団体の定員管理というものを指導する立場といたしましては、そういう中にありましても、やはり安易に増員を行うことなく、今までの職員の中でそういう行政需要にこたえていけないかという指導もまた十分丁寧にしていかなければならないだろうというふうに考えております。私たち、地方公務員の定員管理につきまして指導する場合には、一つは、今申し上げました、やはり国が、いわゆる必置規制と申しまして、法令とか、あるいはまた通達とか、補助金等で地方団体の職員の数というものを規制しておる、そういうものを見直していくということと、もう一つは、やはり地方団体独自で管理できるものにつきましては、事務事業を見直していくとか、あるいはまた民間に委託していくとか、そういうことを通じまして地方団体の職員の数というものをできるだけ厳しく抑制していくということが必要だというふうに考えております。
  377. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 やはり合理化の進まない原因の背景には、今御指摘のような問題があるだろうと思うんです。そういう必置規制でありますとか、職員配置に関する規制、そういうものはできるだけ緩和して、そして地方の公共固体の自主的な改革努力を進めていくことがやはり必要だというふうに考えております。  次に、公務員の給与関係、地方公務員の給与の問題ですけれども、国との格差の現況と、そういう事態になった原因というものにつきまして改めて伺っておきたいと思います。
  378. 中島忠能

    政府委員(中島忠能君) 地方公務員の給与が国家公務員に比べて高いということはかねがね言われておるわけですが、その原因と申しますのは、一つは、地方団体で採用しております給料表というのがやはり国の給料表に比べて自然に給与が高くなるような仕組みになっておる、給与表そのものが不適正であるということを一つ指摘しなければならないと思います。第二番目に、初任給が国家公務員の初任給よりも高いということ。そして第三番目に、一斉に昇給を短縮するとか、あるいはまた運用を通じて昇給期間を短縮していくとか、そういうことが行われておる。そして第四番目に、いわゆるわたりと申しまして、本来の等級よりも高位の等級に格付して給与を上げていくということ。そういうことがあろうかと思いますが、そのいずれも私たちから地方団体の方によく話しまして、そういうような不適正な給与運用、給与制度というものを見直すように強く指導しているところでございます。
  379. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 この給与の問題は、背景として、高度経済成長時代に民間企業に人材が流れていくということから、ある程度給与是正をして人員を確保しなければいけなかったという背景もやはりあるだろうと思いまするし、市町村の合併時期に高い方にならしていくという背景もあったと思うわけであります。しかし、いずれにしても執行部側の姿勢についても反省しなければいけない問題はたくさんあるわけでありまして、地方自治体側も不適正の是正に向かって猛反省して、自主的にこの問題を解決して、やはり国、国民の信頼を回復していくということが肝要ではないかというふうに考えております。  また、民間企業等は率先して合理化、効率化を進めておるわけでありますけれども、国、地方ともに国民へのサービスという大目的に向かって合理化、効率化を努力してまいらねばならないわけであります。現在、この事務事業の外部委託でありますとか、施設の民営方式、物件費の経費節減あるいは地方団体がかねてから主張しております福祉、文化、教育、スポーツ等の多目的複合施設づくり、こういうものに国、地方を通じていろいろな努力を重ねておるわけでありますけれども、こういうものによる成果の実態というものをひとつ御報告をいただきたいと思います。
  380. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) 地方の行革の大きな宿題といたしまして、特に事務事業の民間委託、民間活力の導入という趣旨も含めまして、民間委託でありますとか、あるいは現在行っておりますむだな事業の排除、こういうものを、どちらかと申しますと、地方団体の方が石油ショック以来自主的に国に先駆けてまず手をつけてまいっております。  現在自治省といたしまして、これまでのそういった行革につきまして二年に一回悉皆調査をいたしておりまして、五十八年度の成果につきましても近く調査をすることにいたしておりますが、大体行政機構の簡素合理化につきましてもほとんどの県が手をつけておりますし、さらに出先機関あるいは外郭団体の整理、これも大半の都道府県において実績を上げております。さらに事務事業の民間委託につきましては、県及び市町村ともにそれぞれの分野に応じて民間が行うに適切なものを選び出しまして毎年積極的にやっておるところでありますし、さらに今後五十八年度の実績につきましても近く調査をいたす所存でありますし、私どもは大いに期待をしておるところであります。
  381. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 事務事業の外部委託、具体的には清掃事業とかごみ、し床とかかなり高いパーセンテージで委託を行っておるという実態があると思うんです。さらに施設の民営方式につきましては、地方自治体におきまして市民参加でいろいろな施設を運営していく、先ほど申しましたような福祉、文化、各般の施設につきましてそういう努力をいたしておりまして、公民館の民営化、こういうものも検討されておる自治体もあるというふうに聞いておるのですけれども、この事務事業の外部委託の実情と施設の民営化、こういう努力につきましてもう少し具体的な御説明をいただけないでしょうか。
  382. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) ただいま外部委託のそれぞれの部門につきましての委託率とかそういったものの数字は持ち合わせておりませんが、従来の実績でまいりますと、特に庁舎の警備、清掃あるいは情報関係の電算の共同処理、それから先ほど例に挙げられました福祉施設でありますとか、その他の公の施設についての管理の委託あるいはし尿処理、ごみ処理、これにつきましての民間委託、こういったものが市町村におきまして特に事務事業の委託件数の増加しておる例というふうに承知しております。
  383. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 地方自治体の方から多目的複合的施設づくりにつきましては過去におきましても強い要望がありまして、最近になりまして国側の方も非常に積極的にそういう施設づくりに御協力をいただいておるようでありますけれども、やはりこれから合理化を進めてまいります際に、各省庁の縦割り行政というものが地方から見ますると非常にブレーキになるケースが多いわけであります。先ほど御要望申し上げました国側の関与の緩和と同時に、縦割り行政の是正というと非常に大げさでありますけれども、十分な連携をとられまして、そういう施設をつくることが非常に効果が上がるような方向でこれからも対応をお願いいたしたいと思いまするし、同時に、補助金の総合化等につきましてもこれから積極的にお取り組みをいただきたいと思います。いずれにいたしましても、この行政改革は国と地方がお互いに牽引し合い、同時に助長し合って目的達成をしていかなければならない事業でありますから、そういう点につきましてひとつ十分な御配慮をお願いをいたしたいと思います。  地方財政でございます。国と地方とは有機的補完関係を保ちながら公経済を運営をいたしておるわけであります。租税収入は国と地方がほぼ二対一で分け合っておるわけですけれども、地方交付税、国庫支出金などの支出で国と地方との比率は一対二から一対三になっておるわけであります。ここに行財政の再配分ということが言われておるゆえんもあるわけでございます。地方財政は、昭和五十年度以降毎年巨額の収支不均衡状況が続きまして、その都度応急措置で対応をいたしております。昭和五十九年度の地方財政計画においても地方財源不足額は一兆五千百億円と見込まれ、地方債等により補てんされているところであります。国も昭和五十九年末見込みで百二十二兆円借入金累積額があるわけでありますけれども、地方も御承知のように五十四兆四千億円の巨額に達する累積額があるわけであります。地方団体は行政規模が小さいこと等を考慮すれば、国よりも財政が逼迫しておるということが言えると思います。  そこで、今後これらの対策として、中長期の視点に立脚して地方財源の充実、地方交付税等の財源の安定的確保のための方策を検討すべきであると思いますけれども、この点についていかがお考えがお伺いをいたしたいと思います。
  384. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 最近の地方財政は、五十九年度の場合で申しますと、歳出を徹底的に抑制するという前提に立ってなおかつ一兆五千百億円の財源不足を生じております。これについては、御提案申し上げておりますような地方財政対策を講じまして、五十九年度の地方財政運営に支障なからしめるように必要な施策を講じたわけでありますが、今後を展望いたしますと、税収入あるいは交付税収入等前提の立て方によりましていろんなケースが考えられるわけでありますが、いずれにしても、歳出を国に準じて徹底的に抑制するという前提に立ちましても、なおしばらくかなりの財源不足の状態が続くのではないかと、このように思われます。この中期的な地方財政の姿につきましては現在いろんな想定を置いて検討中でございます。いずれにしても、財源不足がなおしばらく続くという以上、これについて適切な財源措置がなされなければならない。五十九年度の財政措置に準じまして、これからも必要な地方財源が確保されるような措置を講じていかなければならないと、このように考えております。
  385. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 国の行財政改革に伴いまして、国庫補助金等について毎年度マイナスシーリングが行われておるわけでありまして、その廃止、縮減が図られているところでありますけれども、その際地方に負担が転嫁されることがあってはならないと考えております。しかし、昭和五十九年度予算において、地方団体は国庫補助金等の一部、例えば児童扶養手当について負担転嫁、いわゆるツケ回しが行われたと、こういうふうに言っておるわけでありますが、今後このようなことがないようにすべきだと思いまするし、地方団体とも事前に十分に相談すべきであると思いますけれども、いかがお考えでしょうか。  また、補助金等を廃止または縮減する場合には、必ずそれに伴う事務事業の廃止または縮減を図ることが必要であると思いますけれども、どのようにお考えでしょうか。この点について五十九年度予算ではどのように対処されておられるかお伺いをいたしたいと思います。
  386. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 私どもは補助金の整理合理化そのものには賛成の立場に立っておりますが、ただ、回の財政負担を軽減するという手段として地方への負担転嫁が行われる、こういうことはあってはならないと思います。あくまでも先生も御指摘のように、事務事業そのものの見直しを前提にして補助金の合理化、適正化がなされるべきものであると、このように考えます。  なお、ただいまその一つの例として児童扶養手当の改正に関連する問題の御指摘がございましたが、私ども、制度そのものを変えないままに地方への負担を求めることは、この児童扶養手当制度の制度化された以来の経緯からして納得できないという立場をとっておったわけでありますが、五十九年度におきましてはその制度が改められまして、社会福祉施策としての改革がなされております。そういう前提で、他の社会福祉施策との均衡も考慮しながら地方負担等について同意したわけであります。今後とも補助金制度の改革に当たりましては、あくまでも事務事業そのものの改革を前提にして、その改革の内容に応じて地方の負担は考えられていくべきだと、このように思います。
  387. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 次に、広域行政についてお伺いをいたしたいと思いますが、昭和四十五年から広域市町村山が実施をされてまいりまして、現在、全国で三百五十八圏域で実施をされております。これによりまして市町村が広域的な行政についての視野を広めてきたということは非常に評価すべき点があると思うんですけれども、この問題につきましての成果と問題点につきましてお伺いをいたしたいと思います。
  388. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) 昭和四十年代に入りましてからの住民生活の広域化に伴いまして、今御案内の三百五十八圏域の広域市町村圏というのが設定をされまして今日に至っております。既にもう十五年間の歴史を経たわけでありまして、それぞれの地域の実情に応じましてそれぞれの特色のある施策がとられてきたわけであります。広域ネットワークの整備でありますとか、あるいは生活環境施設の整備、さらには教育、文化、スポーツなど、あらゆる面にわたって広域の成果を上げてまいっておりますし、既に地方自治の上でこの広域行政というのが定着しておるという私ども印象を持っておるわけであります。もちろん、そうかといって問題点がないわけではございませんで、今後さらに広域行政を進める上での問題点として、現在、地方制度調査会におきましても、昨年来、調査の主な項目として論議が行われておるところであります。問題点として大きく三つに分けられると思います。第一の問題は、これまで定着してまいりました広域市町村圏の広域行政機構というものをもうぼつぼつ法的な位置づけというところに持っていく必要はないのであるか。それからもう一つは、それに伴いまして広域市町村圏の行政についての財政措置の充実強化。それから三番目の問題としましては、こういった広域行政機構の処理体制の問題。  御案内のように、一部事務組合あるいは協議会方式を使いまして共同処理を行っておるわけでありますけれども、管理者あるいは議会の議員もそれぞれの構成市町村の管理者なり議会の議員の兼務というのがほとんどであるという実情から、なかなか話し合いの日程調整も難しいとか、そのために意思疎通に欠ける、こういった問題もあるようでありまして、今後さらに組合の数の統合あるいは共同処理体制の充実のための内部処理の効率化の問題、こういった問題点の解決を図ろうとしておるところでありまして、今後こういった問題を中心として、さらに広域行政の推進に努めてまいる所存でございます。
  389. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 こういう広域行政の中で、消防であるとか病院、あるいは福祉関係につきましては、市町村がかなりそういう行政になれてきておるのじゃないかと思うんですけれども、これをさらに一歩進めるためには、二番目に御指摘のような財政的な措置というものがやはりかなり必要になってくると思うんですけれども、そういうものにつきましては今後どのようなお考えで対応されるのか、ちょっとお伺いいたしたいと思います。
  390. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 広域行政をより効率的に進めるための財政的な裏打ちといたしまして、従来からも地方債の活用あるいは地方交付税の配分上いろんな考慮を払ってきたわけでありますが、今後さらにこれをより一層効率的にするために、五十九年度の地方債計画上、地域総合整備事業債というものの中に、町づくり対策のために市町村が主体的にいろいろ計画をつくられたものについて、これを総合的に起債措置をするという新しい枠を考えております。  この具体的な内容につきましては、さらに各地方自治体の意見も拝聴しながら、より効率的な配分をしていきたいと思っておりますが、いずれにしてもこの新しい地方債措置によりまして広域行政が一層効率的に計画的に進められるようになるのじゃないか、このように期待いたしております。
  391. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 ただいまの町づくり総合対策ですか、非常に地方としては歓迎をいたしておりますので、ぜひこういう角度からのお取り組みを今後ともお願いをいたしたいと思います。  次に、地域の交通網の問題であります。運輸大臣までお越しいただくこともなかったんですけれども、地元の青年会議所の諸君はかなり熱心にこの問題に取り組んでおるようでありますので、お伺いをいたしてみたいと思うんですけれども、産業構造の変化によりまして、いわゆる軽薄短小という時代に一部なってきておるわけですけれども、また文化とか経済の分散が、やはりニューメディア時代に突入するとともに、地方においても非常に重要な問題になってきておるわけです。新幹線や主要道路の行かない地域の開発、活性化のためにコミューター航空の問題がいろいろと論議をされております。なるほど建設費で見ますと、新幹線は一キロ当たり五十六億、最近ので六十二億ぐらいかかるわけです。高速道は一キロ当たり三十四億円ぐらいかかる。現在、離島航路で三カ所ぐらい行われておるようでありまするが、またこの方式の魅力というのは、やはり第三セクターの活用というものがあるわけですけれども、大体二十五億から五十億ぐらいででき上がる。こういうコミューター航空の問題につきまして、特に山陰地区の青年会議所の皆さん方は一生懸命取り組んでおるようでございますので、この際、運輸大臣の方のお考えがございましたら、ひとつお伺いいたしたいと思います。
  392. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) 近時の航空に対する輸送需要というのは非常に上がってまいっております。空港をつくりたいという地方がもう非常にふえてまいっております。それで、大型のジェットが着陸するような空港をそんなにたくさんつくるというわけにはまいりませんので、やはりコミューター空港というものをつくって、支線というような格好で便利をよくしていくということは、一つのこれから日本がとっていかなければならぬ航空の大きな方向であろうと思っております。ただいままでのところは、離島についてそれらしきものがあるわけでございますが、離島でなくても非常に不便なところで、それほど大きな人口もないというようなところ、これは病気などの場合も非常に有効にも働きますし、いろんな点で役に立つものでございますので、これから私ども、地方の皆さん方と御一緒になっていろいろ研究してまいらなければならぬと思っております。  ただ、一番ここで問題になりますことは、航空機も滑走路が短くて小型のものもいいものがだんだんできてまいることになっておりますし、その点はよろしいんですが、航空会社の採算の問題がなかなか研究を要する点がございます。こういう点につきましては、過疎の鉄道や過疎のバスと似たような問題があるわけでございますけれども、やはりどうしてもこういうものを含めて検討課題であろうかと、かように思っておる次第でございまして、積極的に私としては検討してまいりたいと、かように思っておる次第でございます。
  393. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 ぜひこの問題は、日本の地形とかそういう面から考えますると、一考を要する大きな問題だというように思いますので、地域開発の問題も含めてひとつ積極的にお取り組みをいただくということでございますので、ぜひお願いを申し上げたいというように思います。  都市基盤の整備の問題でございますが、現在のゼロシーリングの中でそれぞれ重要な事業の進捗がおくれてきておるわけでございまして、下水道も三、四年おくれておりまするし、都市内道路関係につきましても、既に着工しておるものが完成するまで、このままのペースでいきますと十年ぐらいかかる、あるいは都市計画街路で未着工の分は七十年ぐらいかかるのじゃないかと、気の遠くなるような状況になっておるのです。非常に省内におかれましてもいろいろな角度から検討され、困難な問題だとは思うのでございますけれども、やはりここらで公共事業のそれぞれの緊急度あるいは必要性から、優先度というと非常に難しい問題でありますけれども、その辺の選択が迫られてきておるのじゃないかという感じがするのですけれども、大臣の方のお考えございましたら、ひとつお聞かせを願いたいと思います。
  394. 水野清

    国務大臣水野清君) 松岡先生の御指摘のようなことを私も就任以来考えておりまして、しかし今、御自分でもおっしゃっておられましたが、下水とか公園とか街路とかいろんなものがたくさんございますが、では、それは下水を優先して公園はどうでもいいとか、街路を優先して公園はどうでもいいとか、あるいはその逆であるとか、そういったようなことというのはなかなかこれは非常に難しいわけであります。それぞれがこの四年来の公共事業数の伸びが非常に悪いために、あるいは前年並み、あるいは国費で申しますと、やや前年よりマイナスでございますが、そういったような中で、いかようにして全国の市町村、あるいは都道府県からの要望におこたえをしていくかということで非常に苦しんでおります。それは事実でございます。  ただ、私が在任来考えて、役所の方々とも話をしておりますのは、これは予算の成立をしていただいたらということが前提でございますが、ともかく経済効率ということもひとつ導入してみようじゃないか。例えば、よく申し上げるのですが、トンネルであるとか橋であるとか道路であるとかいうようなものが九割なり九割五分まででき上がっておるところにまた少しずつ予算をつけるのでなくて、新規に事業を起こしたいというところには、ちょっと御迷惑だがそういうところは御遠慮願って、集中的に早くひとつ道路を通す、バイパスを通すとか橋をかけるとかいうようなことをして、いままでの長年蓄積してきてその結実が得られないでいるような事業にひとつ早く花を吹かせてやろうじゃないか。これがせめて予算の乏しい、伸びの乏しい公共事業費の中でやり得る選択ではないだろうかというような話をしているわけでございます。  先生のおっしゃったように、どの項目に重点を置くかということについては、これはなかなかその選択の問題というのは、それぞれの項目において需要が非常に強いわけでございますから、建設省としては国民のニーズといいますか、そういったものを踏まえて重点的な投資配分をしてまいりましたし、これからもやるつもりだと、こういうわけでございます。なお、特定の財源が充てられております事業については、その趣旨を生かすようにして十分やっていきたいと、かように思っておるわけでございます。
  395. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 経済効率とか、やはりそういう道路のように目的税を取っているものなんかにつきましては積極的に対応されるということでありますが、この中で、例えば下水道事業でございますね、これはやはり完成させれば使用料というものが取れるわけでありますし、このところ軒並みに三、四年着工しているやつが完成がおくれてきておる。特に流域下水道は、御承知のように複数の市町村が関連を持つわけでありますから非常に影響が大きいわけでございます。特に、その目的が環境の水質保全の問題であるとか大きな目的を持っておるわけでありますから、そういう投資効率の面から見まして、下水道事業等につきましてはひとつこれも積極的にお取り組みをいただきたいということをお願いを申し上げたいと思います。政府委員の方で何か投資効率を上げるための方策があれば、ひとつお示しをいただきたいと思います。  また、下水道の使用料の問題ですけれども、現在の算定方式、それと使用料の格差の現状等につきまして御報告をいただきたいと思います。
  396. 松原青美

    政府委員(松原青美君) お答え申し上げます。  御指摘のように、下水道の建設期間が長期化いたし失して供用がおくれているケースが全国的に出ております。下水道の普及率は、御承知のように全国平均で見まして人口普及率が三二%という状況でございまして、なるべく早く下水道の供用を開始したい、普及率を上げたいと考えておりまして、この下水道の供用を早めるために基本的には必要な予算を確保するということが最も重要なことでございますが、昨今の厳しい財政事情のもとで残念ながら十分な予算の手当てができないという状況でございまして、そのために従来考えてやっておりました下水道事業の施行につきましてさらに効率的な施行を図っていきたい、こう考えておりまして、きめの細かい段階的施行を行おうと。流域下水道につきましても、特に流域下水道は広域的な汚水を集めますものですから管渠延長が非常に長くなってまいります。この管渠の建設に相当の期間を要しまして、処理場から遠隔にある市町村の下水道の供用というものがおくれてまいりますものですから、流域下水道の管渠につきましても、私どもいわゆる二条管方式と言っておりますが、この段階的な施行等を取り入れまして、早期に広域供用開始ができるような計画でやるよう公共団体を指導いたしてございまして、この方針を今後ともとってまいりたいと思っております。  それから下水道の使用料金でございます。御指摘のように、地域によって相当な格差があるわけでございまして、下水道の建設は公共の責任において行うべきものでございます。ただ、この利用者につきましては、利用の態様によりまして適正な使用料を徴収することが社会的な負担の公平という観点からも必要で、下水道法でも下水道使用料金の徴収ということが決められているわけでございます。ただ、使用料の具体的な額につきましては、それぞれの地方公共団体の条例で定めることになってございます。定めました経緯等を見ますと、建設年次差によるいわゆる下水道の維持管理費と、それからそれに要しました起債等の償還経費の差がかなりばらついてございます。  具体的に砕いて申しますと、早い時期から下水道を整備しており、事業費が安いといいますか、低い事業費で既に建設されているストックを持っているところは割合低い傾向が出ております。ただ、それだけではなくて、他の近隣の市町村との均衡ということも考慮して条例で定めているようでございます。建設省としては、従来から汚水にかかる維持管理費と建設費にかかる借入金の償還経費の範囲内で、下水道の果たしておる公共的な水質保全、都市の居住環境の向上という公共的な役割というものも考慮しながら、社会的に妥当な額になるよう指導いたしておるところでございまして、ただ、その結果でもかなりのアンバランスが出ているという状況でございます。したがいまして、こういうバランスがとれるようにということもございまして、建設促進がまず第一点の目的であったわけでございますが、昭和四十九年度から下水道の建設の補助率というものを大幅に引き上げてまいっております。そういうことをやってまいりましても、結局もとのストックの有無によってどうしても差が出てくるという現状でございます。
  397. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 道路でありますけれども、先ほどちょっと触れさせていただいたのですが、都市内道路整備促進というものがやはり地域におきましては、いわゆる市町村の一番強い要望だというふうに思うんですが、この点の状況あるいは見通しについてお伺いをいたしたいと思います。
  398. 松原青美

    政府委員(松原青美君) 都市計画決定されております都市内の道路の整備率は、現状で計画決定の延長に対しまして約三七%という低い状態でございます。先ほど先生から御指摘がありましたように、これの完成ということになりますと数十年先ということが言われて知ります。ただ、これも都市によりましてかなり差がございます。全国平均が三七%でございますが、先生地元の光市あたりはもっとかなり高い水準になっているはずだと思うわけでございます。ただ、これが整備ができませんものは、幾つかの原因がございますが、第一は道路財源、街路の財源が不足しているということ。それから都市内に非常に高密度で居住し、権利関係の錯綜している土地の買収が非常に難しい、こういうこと等が主な原因でございます。  御承知のように、都市計画をされました道路整備街路事業は、ガソリン税等を財源としました道路整備特別会計の一環でございます。道路交通体系全体との整合性、都市内交通体系の整備という観点から、街路事業の促進を図ってまいるよう努めてきたわけでございます。今後とも、これも先ほど下水道のところで申し上げましたように、ひとつ効率的な街路事業の執行ということに努めまして、住みよい機能的な町づくりというものを進めてまいりたいと思っております。
  399. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 いわゆる地方の時代に向けて、こういう生活環境の整備は非常に重要な課題でありますから、それぞれお金のないときには知恵と汗を流しながら頑張っていくようにひとつお願いをいたしたいというふうに思います。  それから上水道の問題でございますが、三月二十六日に生活環境審議会の答申が出たようでありますが、この料金格差を二倍以内におさめるようにというようなお話のようであります。ちなみに現状は、御承知のように十五立米当たり五千五百円が最高、また最低が十五立米当たり三里二十円というふうに伺っておりまして、この格差は実に十七倍あるわけであります。先ほどの下水道の使用料と比較するわけにはいきませんけれども、非常に大きな格差があることが一つ事実としてございます。これに対する対応をどういうふうにしていかれるお考えか。  もう一つは、やはり広域水道を現在建設中のところがたくさんあるわけです。これが完成時には、現在の予測で物すごい高料金になるわけです、ダムとかみんなこうくっついてくるわけですから。例えば、今度はトン当たり現在の試算で六百二十九円になるだろうというところがあるわけです。こういうものに対する対応を一体どうしたらいいんだろうかと、国民生活にとりまして水というものはこれは基本的に大切なものだと思うわけでございますけれども、そのばらつきをどう抑えていくのか、高料金にどう対応していくのか、この辺につきましてのお考えをお伺いいたしたいと思います。
  400. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 今、松岡先生指摘の問題、生活環境審議会の答申をちょうだいいたしておりますので、この趣旨を十分尊重して水道事業の適切な運営が図られるよう水道事業体等に対する指導、また水道事業に対する補助金制度の適切な運用により高料金の抑制を図る等により、生活に密着した家庭用の水道料金の格差是正、今お話がありましたように二倍以上開いておる、これは大変な問題でありますから、これをできるだけ格差を縮めるように、今私どもいろいろの対策を立てておるところでございます。詳細は政府委員から答弁させます。
  401. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) 先生お話しの広域水道の問題でございますが、広域水道は大変重要な事業でございます。ただ、お話しのような点がございますので、これから広域水道の計画をいたします場合の計画規模の適正化でございますとか、あるいは計画をつくった後におきます社会経済的諸条件の変化に対応した所要の見直し等々につきまして、十分事業体に対しまして効率的な運用ができるように指導をしてまいりたいと思っております。  それからまた、国庫補助制度につきまして、高料金対策に役に立ちますようより知恵を出してこれから進めてまいりたいと、このように考えております。
  402. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 水道料金の問題になりますると、これは市町村固有の業務だということですぐ突き放される部分があるわけでございますけれども、このように非常に大きなばらつきが出てきておりますし、非常に市町村は困惑いたしておりますので、温かいひとつ御指導をお願いいたしたいというふうに思います。  次に、高度情報化社会における人づくりの問題につきまして、文部大臣にお伺いをいたしたいと思います。  科学技術の進歩は労働を軽減し、生活環境の大きな変化をもたらしたわけであります。科学偏重、物質優先の現代社会は、ある面では精神の発達をおろそかにしてきたわけです。努力、忍耐、自己抑制、愛情、勇気、信仰心、あるいは人間相互の理解などの人間としての不可欠な要件を見失おうとしておりますし、肉体的にも鍛練の機会をみずから排除してしまう、そういう傾向が結果的には体力の退化現象をもたらしておるというように考えます。  私は、科学技術の進歩は人類の幸福への手段であって目的であってはならないと考えております。ローマ・クラブのアウレリオ・ペッチェイ会長は「科学の進歩は道徳的、社会的、政治的なものであり、習慣行動の進歩であること。一言で言えば文化的でなければならない」と言っております。科学の進歩が人類を死滅し、地球を破滅するものであってはならないのです。科学は目覚ましい進歩を遂げ、技術の進歩に社会が振り回されるような事態にならぬよう、ニューメディア時代に人間と人間との間に機械が入るような環境に向かって、我々が心身健全に適応していくための教育のあり方についてこのような見地から検討されるべきというふうに思いますけれども、御所見をお伺いいたしたいと、かように存じます。
  403. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 情報化社会の進展、技術革新の進展、社会の変化が学校教育にそれなりに対応していかなければならぬということは当然のことでございます。しかし先般、私も仙台の太白小学校に参りまして、一年生が教室の中にパソコンというんでしょうか、テレビゲームみたいなものを置きまして勉強をしておられまして、確かに新しい時代にはそうした機器に対してなれるということは大事なのかもしれませんが、ボタンを一つ押すということがとてつもない新しいものを生み出していくということの恐れというものをやはり人間が抱くということは一番大事です。そういう意味では今松岡さんが御指摘をされましたとおりであろうと思います。  いささか私的な見解でありますが、文明と文化というのは、私は逆行するものだと考えております。文明というものはやはり便利なものでございますから、便利なものにどんどんおぼれていけば、文化というやはり心を中心にしたものがこれはおざなりになっていくという、そういう相反するものがあるというように私は感じております。したがいまして、義務教育におきましては、やはり何よりも大切なことは、基礎的、基本的事項を確実に身につけさせること。二番目といたしましては、一人一人の能力と適性等に応じた教育を行いまして、みずから学ぶ力と創造力を育成すること。三番目には、豊かな情操や道徳性を育成することが最も大切であるというふうに考えております。文明社会が、あるいはロボット社会、科学技術社会が進めば進むほど、ボタンを押す操作をする人々の人間の心が最も正しい判断をしなければならない。そのように教育の中できちっと私は制度化しておかなければならぬだろう。こんなふうに考えて、今後ともそうしたことに重きを置いた学校教育の振興に重点を置いてまいりたいと、このように考えております。
  404. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 ありがとうございました。  次に、今日までの教育は知育偏重の教育であったのじゃないかと思うんですけれども、「記憶力のみ訓練する教育は「本を積んだロバ」をつくるようなものだ」と、五十数年前に既にアレキシス・カレル博士が言っておるわけです。今日の教育に、精神力を鍛えたり自制心を養成するような精神活動、特に道徳観念、また、美しいものに感動する感受性、美的感覚などの面が欠如しているのではないか。こういった面が、現実を理解することもできず、社会における当然の役割も果たすことができない人間をつくっているのではないか、こういうふうに思われるわけでありますけれども、文郡大臣のお考えと、今後のこういった面の教育政策についてお伺いをいたしたいと思います。
  405. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 先ほども松岡さんの御指摘に申し上げましたとおりでございますが、やはり人間がお互いに人間同士触れ合っていく、その中で人間同士のやはり秩序感、そうしたものをつくり上げていくということが最も大事だというように私は考えております。したがいまして、先生と生徒、それから生徒同士あるいは先輩後輩、そうした人間的な触れ合いが、できる限り学校の現場の中で情操ができていくようなそういうやはり仕組みを学校教育の中にも考えていかなければならぬ、むしろそのことに重きを置くようにしていかなければならぬ、このように考えておるところでございます。体験あるいはまた勤労学習、あるいはことしの予算でもお願いをいたしておりますが、自然の中で学ぶことによって、人間の最も大切な点は何なのか、そうしたことを自然の中に身につけさしていくという教育をやはりこれから重点を置いていきたい。文部省としてはそのような方向を積極的に進めていきたい、こう考えているところでございます。
  406. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 大変心強い御答弁をいただきましてありがとうございました。  次に、「花と緑」の推進についてお伺いをいたしたいと思うんです。  中曽根総理が提唱されまして非常に意欲的に取り組んでいただいておるわけですけれども、この緑化推進連絡会議の設立の趣旨とその後の開催状況についてお伺いいたしたいと思います。
  407. 中西一郎

    国務大臣(中西一郎君) お尋ねの緑化推進連絡会議、これは緑化の推進ということが国土の保全、水源の涵養、生活環境の整備、そのほか今お話しになっています人づくりの問題、あるいは日本だけの国土ということでこの緑化推進連絡会議ができていますが、世界じゅう各国共通の大変大きな課題になっておる地球的な規模の問題だとも考えます。そんなことで、昨年の三月から設置されまして三月一日に初めて、その後四月に二回目、いろいろ都道府県、地方の市町村長等にも御連絡をいたしまして、その間に実施要領が各省庁で決められました。その運動が今推進されております。そして、昨年の暮れの十二月末でございますが、各省庁からの施策の状況関連事業の推進の実態について御報告を受けたというのが現状でございます。関係省庁十省庁にわたっておりますが、これからも連絡を緊密にしてまいりたいと、かように考えております。
  408. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 この問題につきましては各省庁が対応しておられるわけでありまして、これはある面では縦割り行政のいい面と悪い面と両方出てきておるわけでありまして、地方から見まするとどこが一体窓口になっているんだろうかという戸惑いも非常にあるわけであります。この点よく連携をとっていただきたいと思いまするし、特に植生調査というものを全国的にやってみたらどうだろうか。それぞれの土質、気候風土が違うわけでありますから、そういう調査を全国的にやられて、花と緑を植えればいいというものでは私はないだろうと思うわけでございまして、その辺を御検討いただきたいと思います。  時間が参りましたので私の質問をこれで終わらせていただきますけれども、二十一世紀に向けまして我々の子孫がますます繁栄し、精神的にも肉体的にも豊かな社会を築いていくこと、これが私どもの願いであるわけでありまして、行政改革、人づくりも一朝一夕でできるものではありません。今ここで後顧の憂いのないように、断固たる信念を持って国民も行政も行改革に取り組み、時代に即応しつつ人間性豊かな人づくりを推進していくことを願って、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
  409. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で松岡君の質疑は終了いたしました。  明日は午前十時に委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十二分散会      —————・—————